労働委員会 第11号
- 発言数
- 79 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1993/05/11
会議録
○岡田委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
○永井委員 きょうは労基法の審議については最後の委員会になるようでありますので、労働大臣にひとつ集中的に質問していきたいと思うのであります。 非常に慎重に長時間をかけて審議してまいりました。それなりに政府の方も誠意を持って答弁をしてきていただいたわけでありますが、まだまだ私どもからいたしまして不十分な面が多過ぎる、あるいは不明快な点もございますので、そういう立場で質問をしていきたいと思うのであります。 今日、さまざまな観点から欧米諸国並みの労働時間水準の確立が求められているわけですね。その中で、政府も「生活大国五か年計画」の中で年間総実労働時間千八百時間の実現ということを目標として掲げてきているわけでありますが、それについては各党ともに基本的には異存がなく、その実現方法が問題であること、こういうことについては本委員会においても繰り返し私ども同僚議員から指摘をし、質問をされてきたところであります。 この年間千八百時間の内訳としては、政府は、完全週休二日・週四十時間労働制、時間外労働時間を年間百五十時間程度、年次有給休暇二十日間の完全取得などを考えておるわけでありますが、これを一体どのようにして実現をしていこうとするのか、ここが不明快なのであります。 政府が今回、ようやくのことにいたしましても、来年四月からの週四十時間制の実施に踏み切ったことにつきましては、私も高く評価するにやぶさかではありません。しかし、政府案では、時間外・休日労働の縮減にいわば弱腰であって、年次有給休暇の付与日数の引き上げも見送られているわけであります。この点は何としても不十分であり、納得しがたいわけであります。 四月六日の本会議におきまして私は質問に立ったわけでありますが、そこでも強調いたしましたけれども、千八百時間という目標は待ったなしであり、必ず実現しなければならない大きな課題であります。お互いにこの千八百時間の実現という国民的緊急課題に取り組む立場から、政府・与党におきましてもより積極的な姿勢が示されることを私は期待をしていきたいのであります。 さて、我々は去る四月十六日の夜、政府案の法律案について審議が各党一巡した後の理事会におきまして、社会、公明、民社、社民連の四党共同の要求として、労働基準法改正案に係る四党共同要求というものを提出をいたしまして、政府・与 党に、十分検討の上、前向きに回答するように求めてきたところであります。 そこで、以下、私は社会党、公明党、民社党を代表する立場でこの共同要求に沿って労働大臣に確認のための質問をしていきたいと考えるわけであります。大臣、よろしゅうございますか。 まず第一番でございますが、週四十時間という新たな法廷労働時間にかかわる猶予措置についてであります。 労働基準法は、労働者の保護法として労働条件の最低基準を定めるものでありますから、原則として産業・業種や企業規模等によって異なった扱いをしてはならない性格のものであります。一定の経過措置あるいは適用猶予措置を講ずることがやむを得ない場合でありましても、法のもとの平等という原則を十分に踏まえて、その期間はできるだけ短期間に、また、その対象範囲もできる限り限定すべきであると思うのであります。 政府案では、経過期間については三年間であることが明示されているものの、対象範囲については一定の規模、業種について命令で定めることとされ、その具体的な内容はなおはっきりしていないのであります。 当面週四十時間労働制の適用を猶予するという新たな経過措置の対象となる事業場につきましては、ただいま指摘しましたような点を十分に踏まえて、その対象となる規模、業種を極力限定することとすべきであると考えますが、まず、この点についてお答えをいただきたいと思います。
○村上国務大臣 きょう最終を迎えたこの労働基準法の審議、今日まで御熱心に御議論賜りましたことに、まず感謝を申し上げます。 そこで、今の御質問にお答えをいたしますが、平成六年四月における猶予措置の対象事業の範囲については、新たに実態調査を行い、その結果を踏まえ、できる限り限定することといたします。 なお、その後においても適宜実態調査を行い、その結果を踏まえ、猶予措置の水準及び範囲について所要の検討を行うことといたしたい、このように思っております。
○永井委員 その次に、政府案において、週四十時間制の適用を猶予する期間が平成九年三月三十一日まで、つまり一九九六年度限りとその終了時期が明示されていることは私は評価をいたしたいと思うのであります。これによって、対象事業の労使はそれぞれ具体的なスケジュールを組みつつ週四十時間制の実施に向けて努力することになっていくであろうし、政府としてもこれに対して必要な援助をすべきであると考えます。 しかし、この点については、先般、この三月で終わるはずだった週四十四時間制の適用猶予措置、つまり週四十六時間制の適用をさらに一年間延長するための政令改正が強行された事実がありますために、特に労働団体を初め労働時間短縮を推進してきた人々の間には政府・与党に対する不信感が非常に強く、政府は本当に経過措置を三年間で終わらせる考えなのか心配する関係者が少なくないわけであります。 そこで、この際、政府は責任を持ってこの法案を提出していること、また、猶予措置の対象となる事業場に対する週四十時間労働制の適用が、政府案どおり一九九七年度の初めに円滑に行われるよう必要な指導・援助措置を講ずることを明言していただきたいと思うのでありますが、お答えをいただきたいと思います。
○村上国務大臣 猶予措置の対象事業については、猶予期間中であっても、できるだけ早期に週四十時間制が実施されるよう関係省庁とも連携を図りながら事業主に対する啓発指導等必要な指導・援助を行い、平成九年度からの週四十時間制への移行が円滑に行われるよう努めてまいります。
○永井委員 第三点目でありますが、労働基準法第四十条は、業種、業態により公衆の不便を避けるためなどの理由で必要な場合について、命令で労働時間や休憩時間に関する特例を定めることができることとしているわけですね。 このいわゆる四十条特例につきましては、九一年四月に暫定的週法定労働時間が四十四時間とされた際に、それまでは五人未満について一日九時間、週五十四時間であった特例措置が、十人未満について一日八時間、週四十八時間に短縮されてきているわけであります。 特例適用労働者は、現在全雇用労働者の約二割となっておりますが、法定労働時間が短縮されれば特例措置についても相当に短縮措置がとられるべきであるのに、今回政府案の提出に当たりましては、これらの労働者の労働時間短縮が明らかにされていないことはまことに遺憾であります。 この週法定労働時間の特例措置につきましては、「公衆の不便を避けるために必要」という特例措置の趣旨を十分踏まえて、その対象範囲を極力縮小すべきであって、その対象とすべき事業や規模を早急に見直すこととして、また、週四十時間制実施スケジュールに合わせて、一九九四年度から週四十六時間制、九七年度から隔週週休二日制に相当する週四十四時間制とすべきであると考えますが、どうでございますか。
○村上国務大臣 労働者十人未満の商業・サービス業等に係る労働時間の特例については、改正法の施行にあわせて、その水準を短縮する方向で検討するとともに、その対象事業の範囲についても、最新の実態を踏まえ検討いたします。 また、週四十時間制が全面的に実施される段階における特例措置のあり方については、改めて中央労働基準審議会に検討をお願いすることとし、その結果を踏まえ、適切に対処いたします。
○永井委員 次に、時間外・休日・深夜労働についてお尋ねをいたしたいと思うわけであります。 ここ数年間、日本は労働時間短縮のために労働時間法制等を改正しているにもかかわらず、総実労働時間はなかなか短縮しないばかりか、むしろ逆に過労死がふえているのは、日本の法制度に欠陥があるからではないかとの疑問が外国にあると聞いています。昨年の九月十二日に来日いたしましたEC議会の代表団からも、同じような問題が、私ども労働委員会の理事会のメンバーとの懇談の席上でも指摘をされてきているわけであります。つまり、残業に対する法的規制がないことが問題とされているのであります。 冒頭にも触れましたように、「生活大国五か年計画」では、時間外労働年間百五十時間程度が想定されているわけでありますが、現状ではとてもその実現は望めずに、やはり時間外・休日労働の上限規制があって初めて、私はその目標を達成することができると思うのであります。 我々は、時間外労働をゼロにしようなどと言っているわけではありません。現在女子労働者については年間百五十時間という規制がございますが、男女雇用機会均等法を口実に、これを撤廃して、いわゆる青天井の男子と同じようにしようという動きも片方で出てきているわけであります。これは本末転倒のとんでもない議論であって、我々はむしろ逆に、男子についても女子と同様の上限規制を設けるべきだと考えますが、せめて、いきなり百五十時間でなくても、上限規制を導入すべきだと考えますが、この点についてひとつ明確にお答えをいただきたいと思うのであります。
○村上国務大臣 時間外労働の規制については、時間外労働協定の適正化指針に基づく目安時間の遵守の徹底に努めるとともに、同指針の内容についても速やかに必要な見直しを行います。 法定休日労働についても、指針の内容の見直しにあわせて、その規制のあり方について検討いたしたい、このように思っております。
○永井委員 時間外・休日労働の規制のもう一つの方法でありますが、割り増し賃金率の引き上げということがあります。 平成四年度の労働白書は、所定外労働と新規採用のコストが等しくなる割り増し賃金率というものをはじき出しまして、それは六九・三%と試算をいたしております。現行法では、その二五%という低い数値もさることながら、算定基礎に実は一時金が算入されていないことも加わりまして、使用者に対する抑制と労働者に対する補償の機能を全く持ち得ていないことは明らかであります。 また、国際的に見ましても、ほとんどの国が時間外五〇%、休日一〇〇%となっておりまして、我が国だけがいわば取り残されているのであります。労働基準法の制定過程では五〇%となっていたものが、戦後の経済復興を図るために二五%に当面の措置として抑制されたという事実がございます。一日も早く国際水準に引き上げなければ、不公正な競争条件として非難されてくるのは当然なことであります。本会議のときにも私は指摘をいたしましたけれども、単に経済摩擦というものは市場開放だけの問題ではない、このことを私は銘記をすべきだと思うのであります。 我々は、この割り増し賃金率につきましては、その算定基礎に一時金を加えるとともに、時間外五〇%、休日一〇〇%とすべきでありますが、当面は、時間外三五%、休日五〇%として、段階的に引き上げることとし、これを法律に明記する必要があると考えています。 仮に政府案のようにするにいたしましても、「生活大国五か年計画」の最終年度には五〇%とすること、それを前提に段階的に引き上げていくことを明確にすべきだと考えますが、どうでございますか。ここは、性根を据えてひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
○村上国務大臣 時間外・休日労働の割り増し賃金率についての今回の改正は、時間外・休日労働の抑制、国際的な公正労働基準の確立等の観点から政策目標を掲げたものであるとの認識に立って、段階的な引き上げを図るよう努めてまいります。 具体的な道筋に関する先生の御指摘については、貴重な御意見として念頭に置きながら、ただいま申し上げた立場に立って、当面、まず、法定休日労働の割り増し賃金率について改正法の施行にあわせて引き上げることとし、時間外労働の割り増し賃金率の引き上げについても、週四十時間制への移行スケジュール等を踏まえつつ、引き続き中央労働基準審議会に検討をお願いをしていきたい。
○永井委員 経済のサービス化、そして国際化、情報化等の進展によりまして、従来にも増して社会の二十四時間化が進み、労働者の深夜労働も非常に多くなってきています。若者に対する非行問題もここから発生をしているというふうに指摘をする向きもございます。 深夜労働は、昼働いて夜寝るという人間の生体リズムからすると決して好ましいとは言えないわけでありまして、社会が必要とする分野に極力限定すべきであります。また、医療など明らかに社会が必要とする産業におきまして、深夜業が多いことを理由に看護労働者等から敬遠され、国民医療の確保の観点からこのような労働条件の改善が求められていることも周知のとおりでございます。 豊かでゆとりのある生活の実現が我が国の目標とされている今日、深夜労働のあり方が問い直されなければならないにもかかわらず、今回の改正ではこれが全く見送られてしまっているわけであります。これは非常に遺憾であります。 我々は、深夜労働についても、深夜時間帯の拡大、回数及び勤務間隔の制限等の規制措置を講ずるとともに、割り増し賃金率を時間外労働と同様の取り扱いとすべきであると考えますが、これはどうでございましょう。
○村上国務大臣 今回の時間外・休日労働の割り増し賃金率の改正は、時間外・休日労働の抑制の観点から行うものであり、深夜労働の問題は別途の課題として今後検討してまいります。
○永井委員 別途の課題として検討してもらうのは、それはそれでいいのでございますが、ここに非常に多くの問題点があるという認識に立って対応してもらいたい、このことを強く求めておきたいと思います。 その次に、変形労働時間制の関係について質問をいたしたいと思います。 変形労働時間制は、労働者にとりましては生活リズムを崩すおそれのある制度でありますから、その導入につきましては、より慎重な態度が必要であります。確かに労使協定が条件となってはおりますが、労働組合のない企業、事業場が残念ながら大半を占めているという日本の実情を踏まえれば、一定の法的規制が欠かせないわけであります。 今回の一年単位の変形制の導入については、年単位の休日増を図ることがその理由とされていますが、毎日の生活リズムを崩さないようにしつつ年間休日カレンダーを組む、特に、まとまった休日が確保されるようにするためには、まず一つは、一日の上限時間を八時間、一週の上限時間を四十八時間とすること、二つには、一週間に一日の休日は確保される、つまり六日働いたら一日は休めるというように連続労働日数の上限を定めるといったような法的規制が必要だと考えるのでありますが、この点についてお答えをいただきます。
○村上国務大臣 一年単位の変形労働時間制の一日及び一週の上限については、一週の上限は四十八時間とすることを前提に、現行三カ月単位の変形労働時間制より縮小する方向で検討いたします。 連続労働日数の上限については、一週間に一日の休日が保障される日数とし、これが上限として適切に機能するよう配慮いたします。
○永井委員 労働者がその家庭において乳幼児や介護を必要とするお年寄りを抱えているような場合には、変形労働時間制を適用されますと、家族的責任と職業生活を両立させることが困難になってまいります。こうした家族的責任については、ほとんどと言っていいほど女性の肩にかかっているというのが現実の姿であります。こうした女性労働者が変形制のもとで働かせられるということになりますと、事実上本人の意思とは異なって結果として退職を強要されるようなことにもなっていくおそれがございます。 三カ月単位の変形労働時間制の導入が盛り込まれていた六年前の労働基準法改正案の審議の際にも、私は強くこの点を指摘してきたのでありますが、結局、使用者に配慮義務が負わせられることになったわけであります。今回一年単位の変形制を採用するに当たりましても、当然三カ月単位の変形制の場合と同様に、育児、介護等の家族的責任を有する者、勤労学生等の特別な事情のある労働者について十分配慮することを義務づける必要があると思いますが、この点いかがでございますか。
○村上国務大臣 育児、老人介護等を行う者については、三カ月単位の変形労働時間制の場合と同様に、一年単位の変形労働時間制の適用に際しても必要な配慮がなされるよう措置いたします。
○永井委員 次に、一年単位の変形制ということで変形制の期間が大幅に延長されることになるわけでありますが、上限規制を設けたり、家族的責任等への配慮を使用者に義務づけたりしても、なお労働省の言うような趣旨に反してこの制度が意図的に乱用される、悪用されるということが非常に懸念をされているわけであります。 したがって、まず、この制度の趣旨、政府がこのような制度を導入しようとした趣旨を周知徹底させますとともに、労使協定の届け出の際には、その内容を十分チェックすることが必要であると思うわけであります。また、届け出の内容にとどまらず、その制度の利用の実態を十分把握をいたしまして、必要な措置を講ずることも必要であると思いますが、その対応についてお答えをいただきたいと思います。
○村上国務大臣 一年単位の変形労働時間制については、乱用されることのないよう十分指導するとともに、改正法施行後三年以内に実態調査を行い、その結果に基づいて必要な見直しを行います。
○永井委員 この変形労働時間制では、一カ月単位の変形制にも実は問題が存在をしているわけであります。この制度は六年前までは四週間単位の変形制でありましたものが、交代制労働と結びついて労働者の健康にも大変な悪影響を及ぼしているということが各種の調査でも指摘をされてきた わけてあります。 最近では、この制度を利用して、一日の労働時間を長くした上で週休三日制を導入する企業なども実は出てきているわけであります。労使協定が要件とされていないために、労働者の過半数がこれに反対であっても、使用者の経営方針のままに働かせられてしまっているという例も数多くあると実は聞いているわけであります。 したがって、一カ月単位の変形制につきましても、三カ月単位の変形制と同様の規制措置を講ずること、少なくとも労使協定の締結やその届け出を要件とすべきだと考えますが、どうでございますか。
○村上国務大臣 一カ月単位の変形労働時間制については、その利用の実態の把握に努め、適切な運用がなされるよう十分指導いたします。
○永井委員 この実態の把握という問題が、言葉では言えてもなかなか効果を上げることが難しいという面を幾つも私は経験をしてきておりますので、今大臣の答弁にありましたように、実態の把握に努める以上はきちっとそれを押さえ切って適切に対応してもらいたい、このことを重ねて要望しておきたいと思います。 その次に、年次有給休暇の問題についてお伺いをいたしたいと思います。 年次有給休暇の日数が少ないことも、我が国の年間総実労働時間が欧米諸国に比べまして極めて長くなっている要素であることは、もう指摘するまでもございません。 六年前のことばかり申し上げて大変恐縮でありますが、六年前の労働基準法の改正のときには、最低付与日数を六日から十日へ引き上げました。その際、中小企業につきましては六年間の経過措置を設けるということになりまして、来年三月でその経過措置が終わることになっていることは御承知のとおりであります。 その法案審議の際も、私は強調したのを記憶しているわけでありますが、年次有給休暇につきましては、欧米諸国では六年前の当時既に四週から六労働週の水準になっていたのでありますから、欧米並みの労働時間の水準を実現しようとすれば、十日ではとてもとても少な過ぎる。せめてILO百三十二号条約、一九七〇年に採択されました年次有給休暇に関する条約が最低限のものとして要請している三労働週の付与は必要不可欠であり、当然行政の側がとるべき責任だと私は思うのであります。 六年前の当時の平井労働大臣は、このような私の質問に対しまして、「当然政府としても、今後の検討課題の一つであると認識している」と答弁をしています。参議院では、当時の中曽根総理が浜本議員の質問に対しまして、「今後適当な時期に、ILO条約の水準を参考にさらに付与日数の増加を図ることを検討する」と答弁をしているのであります。さらに、衆参両院の社会労働委員会でも同趣旨の附帯決議が全会一致で採択をされています。 それから既に六年が経過しているにもかかわらず、今回の改正案では見送られているということは一体どういうことなのか、ここが私は理解ができないのであります。六年前のあの審議の経過からいきますと、中曽根総理も答弁しておりますように、「今後適当な時期に、ILO条約の水準を参考にさらに付与日数の増加を図ることを検討する」、六年間もたったんだから当然今回の法改正には休日の増、法的休暇の増ということが出てくると私は考えておったのでありますが、それが出てこなかった。一年間で新たに数日間の有給休暇を与えなければならないこととした場合に、果たして倒産するような企業が出てくるのか。私は、一日や二日仮に休日をふやしたからといって、そのことが理由で企業が倒産するとも思えないのであります。 政府は、「生活大国五か年計画」が掲げる年間総実労働時間千八百時間の内訳として、年次有給休暇二十日間の付与と完全消化を想定しているはずでありますから、なおさらのことであります。政府の対応につきまして、私は極めて不満であり、理解に苦しむところであります。 そのような立場から改めて確認的に質問をするわけでありますが、年次有給休暇の最低付与日数につきましては、ILO条約の最低限の要請である三労働週、つまり十五日以上とすべきではないのか。今回は見送られたといたしましても、早急に引き上げを検討すること、そして少なくとも、政府の「生活大国五か年計画」の対象期間中、つまり一九九六年度までには最低付与日数を十五日以上とすべきであり、場合によっては、その目標に向かって段階的な引き上げを図ることも検討すべきだと私は思うのであります。また、今後年次有給休暇の付与日数の引き上げを検討する際には、継続勤務年数一年ごとに加算される有給休暇については二労働日とするとともに、総日数の上限を二十五日とすることも十分考慮すべきではないかと考えますが、この点も含めて、大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
○村上国務大臣 年次有給休暇の最低付与日数については、ILO条約の水準を参考に、先生の御指摘も貴重な御意見として十分に念頭に置きながら、その増加を図ることについて、来春を目途に中央労働基準審議会に検討をお願いし、速やかにその結論が得られるよう努力してまいります。 また、連続休暇取得促進要綱に示した年次有給休暇の平均二十日付与、二十日取得の達成に向けた労使の自主的な取り組みの一層の促進を図ることとし、そのための実効ある方策について引き続き検討いたします。
○永井委員 年次有給休暇につきましては、付与日数の増加とともに、その完全消化ということが非常に大きな課題であるわけですね。それは政府自身も十分に承知をされていると思うのであります。この年次有給休暇が完全取得されることを前提とした要員計画を使用者が策定するようにすること、年次有給休暇が本来の趣旨に沿って安心して完全取得されるようにするためにも、病気休暇、看護休暇を法制化すること、そして年度初め等一定の時期に労働者一人一人がその年次有給休暇の取得時季を一斉に申し出るようにすること、計画付与制度を活用して連続休暇制度の普及を図るなど、年次有給休暇の完全取得を促進するため、実効ある措置を講ずる必要があると思うのであります。 とりわけ病気休暇とか看護休暇の問題が私は非常に重要だと思うのでありますが、経済大国にふさわしいというほど福祉の制度が十分に整備されていない、これは事実であります。だから、もしも本人が病気になったときに、昇進に差し支えるとか昇格に差し支えるとか賃金がカットされるとか、いろいろな心配があって、実は休暇を使いたくても使わずに残していく、こういう実態があるだけに、そのことを十分に念頭に置いて、ひとつ大臣の答弁をお聞きしたい、このように思います。
○村上国務大臣 完全取得の促進については、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法に基づく企業内における労働時間短縮推進体制の整備を一層推進し、計画付与制度の活用、連続休暇制度の普及に努めるとともに、より実効ある方策について引き続き検討いたします。 病気休暇、看護休暇の普及のあり方については、年次有給休暇の完全取得の促進の観点からも検討いたします。
○永井委員 その次に、出稼ぎ労働者の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。 出稼ぎ労働者が年次有給休暇の付与を要求しておりますことについては、労働省も先刻御承知のとおりだと思うのであります。 労働基準法上は、従来、一年以上の継続勤務を年次有給休暇付与の要件としている一方で、出稼ぎ労働者の雇用形態は、有期雇用、臨時雇用という形態になっていることからして、法的には出稼ぎ労働者の年次有給休暇は保障されてこなかったのであります。しかし、現実には同じ事業主に何年も反復して雇用される場合が非常に多く、そのため、出稼ぎ労働者には強い不満が存在しているわけであります。 今回、年次有給休暇の継続勤務要件が六カ月に短縮されましたことは一歩前進でありますけれども、出稼ぎ労働者の年次有給休暇はなお保障されているとは言えないのであります。今度の改正案では、六カ月を超える期間雇用される出稼ぎ労働者には、十日の年次有給休暇が保障されることになるわけでありますが、例えば五カ月間の雇用者については年次有給休暇は全く保障されず、不満が増幅されることになる面も指摘せざるを得ないのであります。 したがって、今回の改正を契機にいたしまして、新たな観点から、出稼ぎ労働者にもその実態に応じて年次有給休暇が付与されるように、関係業界等を強く指導すべきだと考えますが、どうでございますか。
○村上国務大臣 年次有給休暇の継続勤務要件が六カ月に短縮されることに伴い、出稼ぎ労働者対策要綱に基づく出稼ぎ労働者に対する有給休暇の付与日数の目安について見直しを行い、出稼ぎ労働者にもその実態に応じて有給休暇が付与されるよう、関係業界等を指導してまいります。
○永井委員 その次に、裁量労働についてお尋ねをいたしたいと思います。 今回の改正案の作成に当たりましては、いわゆるホワイトカラーの労働時間管理のあり方をめぐりまして、裁量労働制の適用対象の拡大が検討されたと承知をいたしています。 昨年九月の労働基準法研究会報告では、いわゆるホワイトカラーについて「裁量労働制の活用を図るべきである。」とした上で 例えば、管理・監督者に準ずる者、専門的な業務を行う者のうち、本社において高度な経営戦略上の問題の企画に携わる者のように労働時間の配分など労働の態様について自律的に決定している者などを対象業務に加えて命令で列挙することとし、列事業務以外については許可制(許可基準は例えば業務遂行方法の裁量性や休日・休暇の確保及び待遇の問題が考えられるが、具体的には、中央労働基準審議会の意見を聴いた上で決定)とすることが適当であると考えられる。 そのようにこの報告では指摘をいたしています。 しかし、日本のいわゆるホワイトカラーのあり方は、欧米諸国の場合とは随分違いまして、形式的には自律的に働いているかに見えましても、実際には、不本意ながらもサービス残業を重ね長時間働かされているという場合が非常に多く、いわゆる過労死などという実に不名誉な問題も生じているのが実情であります。 今回の改正案では、対象業務を命令で明確にするにとどめて、引き続き検討することとされたようでありますが、裁量労働制の適用対象業務を定めるに当たりましては、ただいま指摘しましたような我が国の実情を十分踏まえて、労働者保護の観点から十分慎重に検討すべきだと考えますが、これについてもひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
○村上国務大臣 今回の改正は、現在通達で例示している五業務を中心に裁量労働制の適用対象業務を命令で明確に定める趣旨であって、その具体的決定に際しては、御意見を踏まえ、労働者保護の観点から十分慎重に検討することとし、その利用の実態の把握に努め、適切な運用がなされるよう十分指導してまいります。
○永井委員 次に、特別業種対策についてお尋ねをいたしたいと思います。 道路貨物運送業は、最近、労働組合の取り組みなどもありまして所定休日がふえてきているようでありますが、時間外労働は実は削減をされていないのであります。今なお長時間労働となっております。 事業者間の需要者側へのサービス供給等の過当競争と、荷主や消費者が便利さを求めること、混雑する道路事情、そういうものなどが相まって、この産業の長時間労働は構造的なものになっておりまして、今や労働時間短縮は個別の労使の努力を超える課題があるというふうに指摘をせざるを得ないと思うのであります。 したがって、道路貨物運送業につきましては、トラックから他の輸送機関に振り分けるモーダルシフトや共同配送等、物流システムの改善を図る必要があるとともに、当面、時間外労働の削減を図るために時間外労働適正化指針を適用いたしまして、さらに自動車運転者の労働時間等の法的規制措置を早急に検討する必要があると考えますが、どうでございましょう。
○村上国務大臣 週四十四時間制に対応して本年一月に改定された自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の周知徹底に努めるとともに、引き続き週四十時間労働制への移行に対応してその内容についても必要な見直しを行うことといたします。
○永井委員 その必要な見直しをする際に、今私が指摘しましたように、日本の物流システムというのは、経済摩擦の中でも非常に強く諸外国から指摘をされてきている経過がございますから、そこを踏まえて、ひとつ必要な見直しを図るように最善の努力をしてもらいたいということを重ねて要望しておきたいと思います。 その次に、建設業関係であります。 建設業も道路貨物運送業と同様に長時間産業でありまして、いわゆる三K産業に挙げられているわけです。したがって、若者の新規参入が非常に得られにくい状況となっています。そういう面では深刻な人手不足の業種となっているわけであります。 建設業は受注産業の典型でありますから、受注条件の決定に当たりましては、どうしても発注者側の支配力が強く働くことになってしまいます。 したがって、受注側が計画的な休日等を確保できるように、発注時期の平準化、適正工期の確保等受注条件の改善を図るための指導を強化拡充するとともに、現場における土曜休業等週休二日制の確立に必要な措置を講ずる必要がありますし、特に政府は、公共事業の発注に当たっては、その模範を示す必要があると私は思うのであります。 また、この産業では日給月給制の労働者が非常に多うございます。休日がふえることはいいのでありますが、休日がふえること、つまり労働日数が減少することが賃金収入も減ることに直接つながる場合が非常に多いことも一面問題であります。 週休二日制等労働時間短縮を推進するためには、月給制の普及促進を図るなど、日給制労働者の労働条件が基本的に確保されるよう十分指導する必要があると考えますが、この点について、大臣の決意を込めたお考えを聞きたいと思います。
○村上国務大臣 建設業における週休二日制等労働時間短縮を推進するため、建設省等と連携を図りつつ、発注時期の平準化、適正工期の確保等受注条件の改善が図られるよう努めるとともに、月給制の普及促進を図る等、日給制労働者の労働条件が確保されるよう十分に指導いたします。
○永井委員 その次に、中小零細企業に対する援助問題についてお尋ねをいたします。 欧米諸国並みの労働時間水準の実現が国民的緊急課題となっている中で、中小企業であってもこの課題に対応した努力が求められているわけでありますが、実際に中小企業が労働時間の短縮を進めようとすると、そこにはさまざまな障害が出てまいります。また、そのために国の援助が必要な場合も多いのが実情であります。 そこで次に、中小企業に対する援助措置について具体的に伺ってまいりたいと思います。 中小企業の多くはいわゆる下請企業でありますが、その下請企業の労働時間短縮を阻んでいるのが親企業の発注の仕方であります。週末発注あるいは週の初めの納入や短納期発注など下請企業の労働条件を全く無視した発注が非常に多うございます。これはユニオン連合の実態調査でも具体的な数字でそのことが示されているわけであります。政府・通産省も、下請振興基準を改正して、これらの無理な取引が是正されるよう行政指導を進めているところのように承知をいたしておりますが、一向にそういう問題がなくなっていかない。この振興基準の存在さえ十分知られていない のが実情であります。そのことは、先般の地方公聴会で、経営側の代表の方の発言の中にもその事実が示されておりました。 したがって、これら親企業による短納期発注等の無理な取引をなくするために、当面、政府一体となって改正下請振興基準の周知徹底を図るとともに、法的措置を含む実効ある措置を検討すべき時期に来ていると思うのでありますが、この点についてお考えをお聞きいたしたいと思います。
○村上国務大臣 下請企業における労働条件の改善向上に資するため、関係省庁と連携を図りながら下請振興基準の周知徹底を図るとともに、関係省庁への協力の要請、定期連絡会議の開催等により、短納期発注の改善等取引慣行の是正に向けて、政府全体として強力な取り組みを進めてまいります。
○永井委員 政府全体として強力な取り組みを進めるという御回答でありますから、これを重く重く私ども受けとめて、ひとつこれからの対応を見守っていきたいし、お願いもしていきたいと思うわけてあります。 中小企業における労働時間の短縮の促進援助に関しましては、二年前にいわゆる中小企業労働力確保法が成立をし、昨年は労働時間短縮促進法が成立をしています。また、今審議中の労働基準法等改正案とセットで労働時間短縮奨励金制度が今年度予算に盛り込まれているわけでありますが、我々はこれらの措置を評価しておりますけれども、活用されなければ何の意味もないわけですね。 そこで、積極的な立場から質問するわけでありますが、政府におきましては、これらの法律なども活用し、また労働時間短縮助成金についてもなお一層拡充を図る等、中小零細企業に対する時短支援策をより一層積極的に推進すべきだと考えますが、これもお答えをいただきたいと思います。
○村上国務大臣 中小零細企業における労働時間短縮を促進するため、新たに設けられる助成制度等の積極的な活用に努めるとともに、その利用状況等を勘案しつつ、必要な指導・援助の充実に努めてまいります。
○永井委員 次に、労使協定の締結等の当事者である労働者代表の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。 これは古くて新しい問題でありまして、毎回のようにこの問題は提起をされてきているわけであります。 六年前の——六年前六年前と恐縮ですが、六年前に大改正をやったわけですから……。六年前の労働基準法改正案の審議の際に、我々は、改正案では労使協定の比重が高まりますが、労働者の組織率等を考慮いたしますと、この労使協定というものが本当に労使対等の立場で締結されるかどうか非常に危惧されるところであり、特に労働者代表の選出については、監督的立場の労働者が労使協定締結の当事者となっているような例もしばしば見受けられるのが実態であること、したがって、本当の意味で労働者の声が代弁されるようにしなければならないし、そのために立候補・秘密投票制の法制化も含めまして、そのための手だてを講ずる必要があることを今までも強調してまいりました。この点については、実態面でも、したがって対策の必要面でも、今日もなお基本的にその問題点は変わっていないのであります。 聞くところによりますと、中小企業の組織率は全体の中小企業労働者の一・八%という実態なんですね。何が原因で労働組合ができないのか。経営者が理解がないのか、いろいろな問題点はあろうかと思いますが、そういう実態は今も変わっていないのであります。 きのう発表されました労働基準法研究会報告、私もいただきましたが、この報告でもこの点に触れておりまして、 現在労働基準法に定めがない労働者代表の選出方法、権限、任期等について、明確化することが適当であり、特に、過半数代表者の選出につき、投票、挙手等民主的な手続によること等の現行の労働者代表の選任の手続について法律上明確化することについて検討することが適当である。また、併せて労働者代表がその地位、職務等の故に不利益な取扱いを受けないような方策についても検討することが適当である。 としているわけですね。きのうの晩、じっくり読ませていただきました。 そこで、改めて確認的に質問するわけでありますが、労使協定の締結等の当事者である労働者代表につきましては、労働者の意見が正しく反映されるような民主的な手続によって選出されることを確保するために法的措置を含め必要な措置を講ずべきであると考えますが、これは極めて大事なことでありますから、ひとつ大臣、しっかりとお答えをいただきたいと思います。
○村上国務大臣 労働者代表の適正な選出について指導に努めるとともに、その選出のあり方に関する法制上の問題として、ただいま御指摘の労働基準法研究会の検討結果を踏まえ、労働契約法制問題の一環として検討してまいります。
○永井委員 重ねて私は大臣に申し上げますが、労働組合が存在しないこと、いろいろな理由があったといたしましても、形式的には法律に基づいて従業員を代表する者との間にいろいろな問題の処理をするということになっていくわけですが、そんなことが守られている例というのはほとんどないのですよ。この委員会で審議をすれば言葉の上で簡単に済んでしまいますけれども、実態というのは、大臣、大変なものなんです。だから、従業員代表の選出方法につきましても、これは法律できちっとしてやらないと、あるいはいまだに労働組合を不逞のやからと思っているような町の工場のおやじさんのような人たちも現実に幾らかいるわけですから、労働組合をつくることについては当然の権利であるし、また健全な労使関係を保っていこうとすれば労働組合を育成強化することも必要でありますから、その点も十分に考慮に入れてそういうことについて検討してもらいたい、こう重ねて私は要望しておきたいと思います。これは長年労働運動をやってきた者の実感からそう申し上げるのですから、ひとつ十分に考えてください。 次に、就業規則の作成・届出義務の問題であります。 就業規則は労働条件を決定する上で重要な意味を持っていることは言うまでもありません。労働者の組織率が今申し上げたように非常に低くて、拡張適用する場合を含め労働協約によって一定の労働条件が確保されている労働者が極めて少ない状況のもとでは、特にこの就業規則において労働条件が明確にされることは決定的とも言えるほどの重要な意味を持っているわけであります。 しかしながら、現行法では就業規則の作成・届出の義務を課されるのは、常時十人以上の労働者を使用している使用者となっているわけです。サービス経済化などの産業構造の変化の中で小零細規模の事業場がふえている今日、いつまでも現行法のままにしておいてよいのか、私は大いに議論のあるところだと思うのであります。 昨日発表されました労働基準法研究会報告でも、この点に触れております。その触れている内容は、 当面、常時五人以上の労働者を使用する事業場について、就業規則の作成を義務付けることとするのが適当である。 このように報告の中で触れているわけであります。これは非常に重視すべきことだと考えます。 そこで、改めて確認的に質問をいたしますが、この際、就業規則の作成・届出義務を課す使用者の範囲を常時五人以上の労働者を使用している使用者に拡大するとともに、常時五人未満の労働者を使用する使用者については、パートタイム労働者の場合のように雇入通知書の交付を義務づける等、労働条件を明確にするための適切な措置を講ずるべきではないかと思うのでございますが、これについてもひとつお答えをいただきたいと思います。
○村上国務大臣 就業規則の作成義務の範囲等については、ただいま御指摘の労働基準法研究会の 検討結果を踏まえ、労働契約法制問題の一環として検討してまいりたいと存じております。
○永井委員 答弁の言葉は短いのですが、その言葉の短い表現の中にいろいろなものが含まれていると私は感じるのですが、ひとつそこは大臣よろしゅうございますね。どうも余り答弁が簡単過ぎると何かはぐらかされているんじゃないかという気がしますので、ここはひとつ大事なところですからちゃんとしてくださいよ。 その次に、我が国の労働者の組織率は非常に低いということは今申し上げてまいりましたが、そのために劣悪な労働条件のもとで働く労働者がたくさんいるわけです。だから、労働基準法や労働安全衛生法、最低賃金法などの労働者保護法の持つ意味が極めて大きいわけであります。しかし、せっかく労働者保護のための法律がありましても、それが守られなければ何の意味もないわけですね。現に、労働省が毎年発表しております労働基準監督の結果でも、違反事業場が後を絶たないわけであります。 労働基準監督署の監督官等の数が少ないことをそういう意味からは指摘せざるを得ないと思うのであります。日本の監督行政従事者一人当たりの事業所数は、西欧諸国の場合の六ないし九倍にもなるとデータでは示されているわけであります。実際、この監督実施率は以前の五%程度からこのところ低下傾向を示しまして、最新データである一九九一年では三・二%でしかないことが明らかになっています。これを少なくとも二〇%程度に引き上げることとして計画的に増員すべきであります。法律の趣旨の徹底、実効確保を図っていく、多様化した今の産業の実態に適切に対応するような指導を強化する、こういうことが私は非常に必要だと思うのであります。 このような意味で、労働基準法の履行の確保、労働時間短縮の促進を図るために、あるいは労災事故を少なくしていくために、労働基準行政の指導・監督体制を充実強化していくべきではないかと考えるのです。これは労働省に対しては非常に強い援軍の立場になると思うのでありますが、この近代社会において−私はよくひとり言で言うのでありますが、政府の中の政府だと思っている省がある。名前は言いませんけれどもね。しかし、これだけの発達した近代国家日本で、経済大国と言われている日本で、少なくとも労働省が閣僚の中で最重要閣僚だと言われるような、そういうものになっていかなければいかぬと私は思っているのですよ。そういう立場からも、この問題について指導・監督体制を強化していくべきだと考えますが、ここはひとつ大臣、しっかりとお答えいただきたいと思います。
○村上国務大臣 短い答弁ですが、的確に御答弁を申し上げておるつもりでございます。 労働基準法の履行確保、労働時間短縮の一層の促進を図るため、労働基準監督官等の増員を初め、労働基準行政体制の充実強化を図ってまいる所存であります。
○永井委員 まことに簡単で明瞭でございますが、ひとつよろしくお願いします。 次に、冒頭私が指摘しましたように、国民的緊急課題となっている欧米諸国並みの労働時間の実現、政府の「生活大国五か年計画」が最重要課題として掲げる年間総実労働時間−ここが大事ですね、総実労働時間ですからね、所定内労働時間じゃないんですから。年間総実労働時間千八百時間の実現のためには、今回の労働基準法等の改正案は極めて不十分だと我々は考えます。 労働基準法を唯一の手段と考えるべきでないことは私たちも十分承知をしておりますけれども、我が国の実情では労働基準法に依存しなければならない度合いが極めて高いことも否定できないところであります。 政府案では、中小企業等につきましては三年間の適用猶予期間を設けるとしても、日本でもようやく来年四月から週四十時間労働制が実施されることになるわけであります。この点は、冒頭に申し上げましたように、我々も高く評価をしているわけであります。しかし、これまで多くの同僚議員が繰り返し指摘してきましたように、時間外・休日労働の規制の問題や年次有給休暇の付与日数の問題など、政府案ではなお不十分であることははっきりしているわけであります。そのほかにも、労働時間法制にかかわる問題点が多く指摘をされてきています。 仮に今回は政府案のように措置するにいたしましても、政府としては、これで事足れりといった態度をとることがあってはならない。引き続き追加的な法的措置を検討すべきでありますし、特に改正法施行三年後には、当初の目的等に照らして、いわゆる総実労働時間千八百時間ですよ、当初のその目的等に照らしてその施行状況を十分に点検をして、労働時間法制のあり方について改めて具体的に検討することとすべきではないかと考えますが、これについても決意を含めてお答えをいただきたいと思います。
○村上国務大臣 改正法施行三年後に、その施行状況を勘案しながら、今後における労働時間法制のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることといたしてまいる決意でございます。
○永井委員 そこで、時間も少なくなってまいりましたから、最後に申し上げておきたいと思うのでありますが、今我々は労働時間短縮とそのための労働基準法等改正案につきまして審議をしているわけでありますが、今我々が直面している課題というのは、単に法的措置によってともかくも労働時間の短縮が実現できればよいというようなことではなくて、戦後の日本の経済社会の中に四十年間、五十年間、半世紀に近い間続いてきました基本的な発想の転換が求められているのだと私は思うのであります。 経済構造調整、いわゆる前川レポートということで叫ばれてまいりましたが、はやそれから七年の歳月がたってまいりました。我が国経済社会のさまざまな側面についてさまざまな角度から議論されてきたわけでありますが、その一つが大量生産・大量消費という発想を清算することであり、また働きづめでゆとりのない生活のあり方を清算することだと私は思うのであります。 あるサラリーマン向けの文庫本でありますが、ちょっとその内容を御紹介申し上げておきますと、こういうことがあります。「追加注文は逆に単価が高くなるドイツ人感覚」ということが書かれておりました。ドイツは御承知のように今総実労働時間千五百時間台に突入しておりまして、この労働時間短縮問題ではまさに世界の一番の先進国ですね。そのドイツ人の感覚についてこういうふうに触れております。 注文の個数が多くなるほど単価が安くなる、これは日本の常識である。一定のものを発注してそれに追加注文する場合は単価が安くなるというのは日本の常識だ。薄利多売の精神は、その面では日本は脈々と生きているわけであります。いわゆるお客様は神様である。しかし、この論理がどこの国でも通用すると思ったら大間違い。ドイツ人の商売感覚では、追加注文で数がふえたから安くするなんてことは全くない。例えば、日本の業者がドイツのメーカーに多量の商品を発注し、さらに追加注文を出したといたしますと、日本側は個数がふえたのだから単価は安くなると考えるわけであります。ところが、ドイツ側からは意外な返事が来た。追加分は残業しなくてはならない、だから単価を引き上げてくれないと受け付けない、これがドイツの感覚であります。これは日本人にない発想であります。日本は輸出におきましてもがむしゃらに頑張る、相手が要求すれば何としてでも生産をする、要求しなくても欲しがるように販売作戦を練る、これが貿易不均衡の原因になっているというふうに実は指摘をしてきているわけであります。 あえて私はもう一回申し上げますが、大臣、去年の九月十二日という日にちは私は忘れないのですよ。ECの議会代表団が来て、労働委員会の理事と懇談をいたしました。岡田委員長を初め各党の理事が出席をしたわけでありますが、そのときに彼らが言ったことは、この貿易不均衡というの は市場開放の問題だけではありませんよ、いわゆる商品をつくり上げるプロセスにおいて、日本はヨーロッパと比べて極めて賃金が低い、住宅環境が悪い、福祉がおくれている、長時間労働である、そういう条件のもとでつくり出された商品と、そうではなくて、賃金が高くて生活環境がよくて福祉が進んでいて短時間労働になっているヨーロッパでつくられた商品とが、自由経済という基本原則のもとで同じテーブルの上で貿易の競争をすることほど不均衡はない、不公平はない、これを強く強くECの議員団は私どもに言ったわけです。これは、事実認識はしておりましても、私は大変に衝撃を受けました。だから、あえてこのことを私は発想の転換ということで求めているのであります。 また、これは労働省の外郭団体でありますが、労働研究機構が出している「週刊労働ニュース」というのがありますが、そこの名誉論説主幹の芦村さんが書かれた「時評」というものがございます。それをちょっと御紹介申し上げますと、一九八五年当時の同盟が日本の労働組合としては初めての時短国際シンポジウムを開催した際に、CGT・FOのベルナール・ムルゲ書記は、残業で収入を稼ごうという意識や発想は我が国では一世代前のものだと、痛烈に日本的慣行を批判しているということが紹介をされておりました。そして、あれから七年、景気後退による残業収入減で企業別労働組合は中高年層の苦情に悩まされ続けてきている。これは明らかに労働者自身の自己革新の欠如を物語っているものである、このように芦村さんは指摘をされているわけです。ある意味では、労使ともに非常に参考にしなくてはいけない問題だと思うのであります。 労働者は、もっともっと生活時間を大切にすべきであります。時間を安く売らないようにしなければならないし、使用者もまた、労働者を安く思いどおりに働かせようという発想を改めてもらわなくてはいけない。使用者に発想を改めてもらうその一つのきっかけというものは、労働行政にあると私は思うのですね。そのことを私はあえて指摘をしておきたいと思うのです。もの、資源を大切にして自然や環境を大切にするような経済社会に転換をすべきであります。 そのような意味で、我が国の労働時間短縮問題というのは、単に労働時間が結果として短縮されるかどうかということだけではなくて、もちろんそれも大事でありますが、そこにとどまらずに、日本の経済社会のいわば質が問われている、私はそういう問題だと認識をするわけであります。使用者はもちろん、労働者も消費者も行政の担当者も、そして我々政治家も含めて、社会全体の意識変革が求められている非常に大切な時期だと私は認識をいたします。 その意味で、労働大臣には労働時間短縮の先頭に立っていただきたい、そして、適切な経済社会というものに発展をさせるようにひとつ努力していただきたい。貿易不均衡の問題についても、そういう観点から重要閣僚としてひとつ参画をしてもらいたい、成果を上げてもらいたい。これは要望しておきたいと思います。そして、それを通じて日本の経済社会の変革においてもそういう意味では全体的に大きな役割を果たしていただきたい、このことについて大臣の決意を求めまして、私の質問を終わりたいと思います。
○村上国務大臣 先ほどからの先生の御質問の中にもありました、労働大臣というものは閣僚の中で最重要閣僚でなければならない、まことに同感でございます。 私はもともと、国家の基本というものは、防衛、外交、教育、これが三つの大きな柱だ、こう思って、議員になりましたときには、もし閣僚となるならばいずれかの三閣僚になりたい、こう実は思っておりましたが、しかし、私は今労働大臣になりまして、これほど重要なポストはないという認識に立っております。防衛、外交、文教の中に、労働行政というものを一枚加えていかなければならない、こう思って、大いに張り切っているところでございます。 そこで、そういう前段を置きながら、今私が課せられている大きな問題といたしまして、生活大国実現、心豊かな生活を送っていく、ゆとりのある生活を実現していくという、この大きな課題をいただいておるわけであります。 衣食足って礼節を知るという、たびたびこの委員会でも申し上げてきた言葉でございますが、私は、衣食ということについてはある程度国民の皆さん方はそれなりに満足感を持っておられることだと思います。そこで、やはり質的に最も大事な時間ということについて今その回答を出さなければならない、我々の未来に向かって、将来に向かって、あすに向かって。そういうことを考えましたときに、時のゆとりということについて、今日、御審議を賜ってまいりまして、週四十時間労働ということについての大きな意義ということをかみしめているところでございます。そうした意味からいたしまして、私は、この時間短縮、特に、これもたびたび申し上げてまいりましたチャップリンの「モダン・タイムス」じゃございませんが、時間と機械に追われていくような、そうした生活からの脱却を一日も早く図っていかなければならない、そういう認識に立ちましてこの問題に処してきたところでございます。 そうした意味からいきまして、今、所管大臣としての考え方はどうだ、その決意を示せ、こういうことでございますので、今申し上げたこと等々御勘案いただいて私の決意のほどをお酌み取りいただければありがたいな、こう思っております。 私ども政治家の目的といたしまして、貧しさからの解放、病からの解放、争いから解放していかなければならない。こうした崇高な理念というものの根本は、やはり時間という中においてそういういろいろな解決の道があるんだ、こういうふうに私は思っておりますので、時のゆとりというものを持つということがいかに人生にとって、国家にとって大切なことであろうかというふうに考えておるところであります。どうぞよろしく御理解を賜って、これを決意とさせていただきます。
○永井委員 終わります。
○岡田委員長 次に、金子満広君。
○金子(満)委員 きょうの委員会で質疑は打ち切るということですが、私は、この点についてはこれまでも反対してきましたから、この点を明確にして、きょうは時間がたくさんございませんから、一つだけ、千八百時間が成るかどうかという問題についてだけ質問したいと思います。 まず、今回の労基法の改正で、年間労働時間を千八百時間にする、それが実現できるようにするという決意は伺っておるのですが、計算してみるとならないのですね。どう計算してもなりません。 この改正案でいきますと、一日は八時間です、週四十時間、これは四十時間は猶予期間がありますが、とにかく週四十時間。週休は二日、年五十二週で百四日です。それから、年次有給休暇は十日ということになっています。欠勤が平均して三日ぐらいだろう。それから祝祭日が十五日あります。これで計算をいたしますと、年間の労働日というのは、一年三百六十五日から週休で百四日を引きます、さらに有給休暇で十日を引きます、欠勤で三日、祝祭日で十五日を引くと、二百三十三日という労働日になります。そこで、二百二十三日に八時間を掛けますと千八百六十四時間ということになります。つまり千八百時間にならないのです。 それでは、どのようにして千八百時間にするか。いろいろの努力目標はあると思います。したがって、今問われているのは、一日八時間をさらに減らすか、それとも週四十時間をヨーロッパ並みにもっと短縮するか、あるいは有給休暇を今の十日をどのくらいふやすか、こういうことになってくると思いますが、この点はどう考えていますか。
○石岡政府委員 千八百時間達成に向けまして、政府側は千八百時間のケースのモデルをあらわしているのは御承知のとおりでございます。 その場合、モデルの考え方を申し上げますと、 週休日が百四日、それから週休以外の日が十五日という点は先生の御指摘どおりでございます。しかし、有給休暇を二十日完全に消化するという前提も置いているところでございます。そうしますと、出勤日数が二百三十三ではなくて二百二十三という想定をいたしております。その場合、八時間を掛けますと、二百二十三日の場合もそうならないのでございますが、実態を調べてみますと、現在のところ一日七時間二十分程度になっておりまして、政府のモデルにおきましては、二百二十三日に七時間二十分を掛けまして千六百五十四時間が所定内労働時間という想定をしております。 ただし、これはあくまでもモデルでございまして、これを一つの目安として、週休日をふやし、有給休暇の日をふやし、それから残業時間を百五十時間程度に減らしていく、そういう努力をして千八百時間の達成に努力をしてまいりたいと考えております。
○金子(満)委員 有給休暇を二十日にすれば確かに二百二十三日になりますね、これは。計算上そうなる。それから、八時間がもう少し短くなれば計算上はいろいろ出ます。しかし、それは今度の労基法の改正で具体的にそこは入っていないわけです。つまり、努力はしている、努力の方向がありますという意味だと思うのですね。 それで、一日の所定を七時間半として計算すれば千七百四十七時間半になります。しかし、一日七時間半にしても、時間外労働の上限というのを決めなければならない。これは年間五十二時間にしなければ千八百時間にはどうしてもならないのですね。 ですから、いずれにしても有給休暇は二十日にするように努力するのならするとして、時間外労働の上限を今度は法制化していないわけだから、極端に言えば野放しなんだから、そういう点で上限を少なくとも年間五十二時間にしない限りはこの計算は合わなくなるのですが、上限を決めるということは、今はないけれども、将来考えているのかどうなのか、その点伺っておきます。
○石岡政府委員 先生の方から今数字をいろいろお聞きしたわけですが、政府側のモデルは、先ほど言いましたように、一日が正確には七時間二十五分と計算しておりまして、所定内労働時間が千八百時間の場合は千六百五十四時間を想定しております。その場合の所定外労働時間、残業時間は百四十七時間を想定しているところでございます。 現状、平成四年度では、既に所定外労働時間が百四十四時間という実績が出てきております。これはもちろん不況による影響もあってこうなっていることではありますけれども、こういう実績が出ておりますので、できるだけ景気が回復しましても残業時間が余り伸びないように、時間外の目安制度などの適切な運用を通じまして、残業時間の規制を行ってまいりたいと思います。やはり上限規制を法律で行うのはいろいろ問題があるのではないかと思っておりまして、目安制度の適切な運用を通じて行ってまいりたいと思っています。
○金子(満)委員 時間外の実績は一四四時間と言われました。だとすると、行政指導の面で、上限というのは決めないけれども、なるべく上に伸びないようにはしていきたいということですが、それが単純にできるようだったら全然問題ないんですね。諸外国みんな法制化しているのですから、やはりそこのところは明確にしていくということ、これは私の要求だし、考えたから、はっきりさせておきたいと思うのです。 それから、有給休暇二十日ということが言われましたけれども、いつ二十日にする予定なんですか。努力目標で結構です。
○石岡政府委員 「生活大国五か年計画」の最後のところで千八百時間という目標を定めておりますので、計画期間中できるだけ早い機会に有給休暇二十日取得、二十日消化ということが実現できますように、政府としては努力したいと思っております。
○金子(満)委員 時間がなくなりますが、時短問題というのは、きのうきょうの話ではなくて、政府の計画が計画どおりにいったことは今まで一回もないんです。極端に言えば、かけ声倒れとか計画倒れとか、言ってはみたもののとか、常に出てくる言葉は努力、努力、努力の積み重ねだけなんですね。 八〇年に二千時間にするということを政府は決めました。これは八五年が目標期限だった。余裕があります、週休二日にしますと言ったが、これはだめになった。八五年になったら、九〇年には二千時間にしますと、またやった。九〇年になったら、ならない。そして、労基法の改正を八七年にやって、翌年に今度は千八百時間を出した。これも実はことしの三月三十一日で千八百時間になるわけだったが、これもならない。さあ今度は、二度あったことが三度あり、四度目か五度目か知らぬけれども、そういうことになりかねない。 努力という言葉はわかるんですが、かけ声倒れにならないようにするためには、どうしても千八百時間をまずやる。そのためには、週四十時間だけでは不可能なんだから、年次有給休暇をできるだけ早く二十日にする、時間外労働の上限は年百二十時間内に抑える、このことが不可欠だと思います。 そういう点で、計画倒れにならないように千八百時間をどう実現するか、最後に大臣の決意を聞いて、質問を終わりたいと思います。
○村上国務大臣 労働時間の短縮は、働く人々がゆとりと豊かさを実感できる生活大国実現のための大きな柱であるということは言い続けてまいりました。そのため、千八百時間という政府の目標達成に向けて、現在御審議を願い、きょう衆議院においては最終の委員会、この場において可決を願うわけでございますが、その成立を見まして、その円滑な実施を図っていくよう労使の積極的な取り組みを推進していきたい。 まあこれ以上のことを言えと言っても、これが精いっぱいの私としての意思表示でございます。
○岡田委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————
○岡田委員長 この際、本案に対し、金子満広君から、修正案が提出されております。 提出者より趣旨の説明を求めます。金子満広君。 ————————————— 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する 臨時措置法の一部を改正する法律案に対する 修正案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○金子(満)委員 ただいま議題となりました労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、日本共産党を代表して、その趣旨を御説明いたします。 言うまでもなく、今日、過労死まで生み出している長時間過密労働を解消し、人間らしい労働と生活を取り戻すことは、国民多数の共通の願望であるばかりか、国際的にも注目されている重大かつ緊急の課題であります。 ところが、政府提出の改正案は、小さな部分的改善は見られるものの、週四十時間労働への移行は労働者の三十数%であり、大部分の労働者はその実施が先送りされているだけでなく、中小零細企業に働く労働者は、何と四十八時間労働がそのままにされているのであります。 また、変形労働時間制の問題や裁量みなし労働の点では、新たな改悪が行われ、さらに時間外労働でも、その上限規制さえも行わず見送りであります。 これでは、労働者の体力と健康の維持、家族との団らん、文化的な社会生活は到底保障することにはなりません。 したがって、我が党は、労働者、国民の期待にこたえ、政府案に対し、十九項目の抜本的な修正案を提出しました。 その主な点は、次のとおりであります。 第一は、労働時間の短縮を直ちに実行するため、法定労働時間を例外なしに一日拘束八時間、完全週休二日、週四十時間労働制を行うこと。 第二は、一年単位の変形労働時間制の導入は行わない。変形労働時間制については、過所定四十時間、週休二日制の範囲で、一日上限は一時間延長、所定九時間までとすること。 第三は、裁量みなし労働は拡大せず、その範囲は現行のままの五業種を法定し、その導入は労働者の要求によるものとする。 第四は、時間外労働の上限を一日二時間、月二十時間、年百二十時間を法定し、時間外割り増し率を五〇%に、深夜・休日割り増し率を一〇〇%とする。時間外労働については、労働者本人の拒否権を明記する。 第五は、すべての労働者に年次有給休暇を最低二十日与える。一定日数の連続取得と完全消化を使用者に義務づける。 第六は、賃金、昇給、昇格における男女の差別の禁止を明記する。 第七は、中小企業に対する必要な援助を行うこと。 その他であります。 以上が、修正案の主な内容であります。 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いし、提案の説明といたします。 以上です。
○岡田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 —————————————
○岡田委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付します。 討論の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤英成君。
○伊藤(英)委員 労働基準法等改正案に対する賛成討論を行います。 私は、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議及び民社党を代表し、政府提出の労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、これに賛成し、日本共産党提出の修正案に反対の立場で討論を行います。 ドイツやフランスなどと比べ年間三カ月分ほども長いという日本の労働時間の現状を改善することが国民的緊急課題となって既に久しいことは、改めて指摘するまでもありません。宮澤内閣が昨年六月に策定した「生活大国五か年計画」において、労働時間の短縮が第一番目の課題として取り上げられ、年間総実労働時間千八百時間の実現がうたわれておりますが、極めて当然のことであり、その内訳として、完全週休二日・週四十時間労働制、所定外労働年間百五十時間程度、年次有給休暇二十日完全取得などが想定されていることも、妥当であります。 さて、我々は、日本の現状では、労働時間短縮を実現する上で労働基準法の果たすべき役割は大きいと考えており、そうした立場から、今回の労働基準法改正に係る政府案の内容がどのようなものになるか、大いに注目していたのでありますが、国会に提出されました政府案の内容を見まして、残念ながら、これでは不十分であると指摘せざるを得ませんでした。 政府案が、一定の規模、業種の事業場については三年間の経過措置を設けつつも、来年四月から週四十時間労働制を実施することとしていること、また、この改正法案とセットで、時短に取り組む中小企業への援助措置を拡充することとしていることなどについては、我々も高く評価しております。しかし、時間外・休日労働の縮減については、政府案では、その上限規制は見送られ、割り増し賃金率を二割五分以上五割以下の範囲内で命令で定めることにはするが、当面、時間外労働の割り増し率は引き上げないとするなど、縮減に余りにも弱腰なのであります。また、年次有給休暇の付与日数の増加も見送られています。これでは、年間千八百時間という政府の経済計画に掲げられた目標の達成は、困難だと言わなければなりません。 しかしながら、来年四月から週四十時間労働制を実施することは、我が国でもようやく完全週休二日制が確立することを意味するもので、画期的なこと、これはぜひとも実現する必要があります。 一方、時間外・休日労働の縮減の問題については、労働大臣は、割り増し賃金率の引き上げに関する改正規定は、時間外・休日労働の抑制、国際的な公正労働基準の確立等の観点から政策目標を掲げたものであるとの認識に立って、段階的な引き上げを図るよう努めると約束するとともに、我々が、せめて「生活大国五か年計画」の最終年度には五〇%とすべきであると主張したのに対し、貴重な意見として念頭に置きながら対処すると約束されました。 また、年次有給休暇の付与日数の増加の問題についても、我々が、せめて「生活大国五か年計画」の最終年度までには最低付与日数を十五日とすることを前提とし、段階的引き上げも含めて、早急にその増加について検討すべきであると主張したのに対し、貴重な意見として十分念頭に置いて対処する、来春にも中央労働基準審議会に検討をお願いすると労働大臣は約束されました。 さらにまた、引き続き追加的な法的措置を検討すべきであり、改正法施行三年後に、今後の労働時間法制のあり方について検討すべきであるとの我々の主張も受け入れられたところであります。 我々は、基本的な主張については留保しつつも、これらの政府の対応を、一応、評価することとし、今後に期待して、政府の動向を見守っていきたいと考えます。 労働時間短縮問題は、労働基準法の改正がすべてではありません。この問題については、労使間のみならず、国会や政府はもちろん、国民全体が引き続き努力する必要があることを、この際、強調しておきたいと思いますし、我々ももちろん、そのために引き続き努力することを申し添えて、私の賛成討論を終わります。(拍手)
○岡田委員長 次に、金子満広君。
○金子(満)委員 私は、日本共産党を代表して、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、日本共産党の修正案に賛成、政府案に反対の討論を行います。 反対の第一は、既に短い質疑時間の中でも明確にされました変形労働時間制の問題であります。 この変形労働時間制が八時間労働制を崩壊させるものであり、同時に、使用者にとっては残業代の節約であり、さらには労働時間の伸縮を企業の都合にゆだねるものであります。この変形労働制を三カ月からさらに一年に延長させるなら、これが建設、自動車、電機、出版、金融、デパートなど広範な企業に拡大することは必至であります。 今、日本の労働者の残業代、年間総額は昨年約十兆円、しかも、その八〇%が恒常的な残業となっており、ここに変形一年が導入されるなら、労働者の年間手取り収入は激減することになります。さらにこれが、家事、育児、女性労働者に深刻な影響を与えるということであります。まさに変形労働一年こそ、企業の強い要求の実現であります。 次は、裁量みなし労働の枠を外し、これを大きく拡大することに新たな道をあげたという問題であります。 労使間で一日八時間と決めるなら、仕事が終わらず九時間、十時間、それ以上働いても八時間とみなすなどということは、それ自体、法定労働時間制そのものを根底から覆すものと言わざるを得ません。 特に、営業、企画、金融、管理、外販、セールスなどの職種、労働者、ホワイトカラーに請負・ノルマ制を課すなら、仕事持ち帰り残業、職場泊まり込み残業は慢性化し、過労死を増大させるものであることを厳しく指摘しなければなりません。 既にこの変形労働一年と裁量みなし労働の枠外しについては、国会での審議が進むにつれて、全国の労働組合、婦人団体、法曹界、そして有識者の中からも、痛烈な批判と反対の声が広がってい ます。 また、長時間過密労働を放置し、労働者の健康と家庭生活のリズムを狂わせ、子供の育成と教育にも重大な障害をつくり出している時間外労働についても、もはや国際的には常識とさえなっている上限規制すら行わないということは重大な問題であります。 以上指摘しただけでも、政府改正案の本質がいかに労働者、国民の願いに反したものであるか明らかであります。 民意に逆行するこの改悪条項は、必ず広範な国民の厳しい批判と反対の声となり、歴史の審判を受けるであろうことを確信し、政府案に対する私の反対討論を終わります。 以上です。
○岡田委員長 これにて討論は終局いたしました。 —————————————
○岡田委員長 これより労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。 まず、金子満広君提出の修正案について採決いたします。 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○岡田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。 次に、原案について採決いたします。 これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○岡田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 —————————————
○岡田委員長 この際、本案に対し、大野功統君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議及び民社党の四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。 提出者より趣旨の説明を求めます。河上覃雄君。
○河上委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 豊かでゆとりある勤労者生活の実現、「生活大国」への前進、国際協調の推進等の観点から、労働時間の短縮は国民的課題となっていることにかんがみ、政府は次の事項について適切な措置を講ずるべきである。 一 猶予措置の対象事業について、猶予期間中であっても、できるだけ早期に週四十時間制が実施されるよう、関係省庁が連携を図りながら、事業主に対する啓発、指導等必要な指導援助を行い、平成九年度からの週四十時間制への移行が円滑に行われるよう努めること。 二 時間外・休日労働の割増賃金率についての今回の改正は、時間外・休日労働の抑制、国際的な公正労働基準の確立等の観点から政策目標を掲げたものであるとの認識に立って、段階的な引上げを図るよう努めること。 三 一年単位の変形労働時間制については、濫用されることのないよう十分指導するとともに、改正法施行後三年以内に実態調査を行い、その結果に基づいて必要な見直しを行うこと。 四 年次有給休暇の最低付与日数については、ILO条約の水準を参考に、その増加を図ることについて来春を目途に中央労働基準審議会における検討を開始し、速やかに結論が得られるよう努めること。また、「連続休暇取得促進要綱」に示された年次有給休暇の平均二十日付与、二十日取得の達成に向けた労使の自主的な取組みの一層の促進を図るとともに、そのための実効ある方策について引き続き検討すること。 五 建設業における週休二日制等労働時間短縮を推進するため、発注時期の平準化、適正工期の確保等受注条件の改善が図られるよう努めるとともに、月給制の普及促進を図る等日給制労働者の労働条件が確保されるよう十分指導すること。 六 下請企業における労働条件の改善・向上に資するため、関係省庁が十分連携協力しつつ下請振興基準の周知徹底を図るとともに、短納期発注の改善等取引慣行の是正に向けて、政府全体として強力な取組みを進めること。 七 労働基準法の履行確保、労働時間短縮の一層の促進を図るため、労働基準監督官等の増員をはじめ労働基準行政体制の充実強化を図ること。 八 小中、高等学校の完全土曜休日制の早期実施に努めること。 九 改正法施行三年後に、その施行状況を勘案しながら、今後における労働時間法制のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。 以上であります。 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
○岡田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 採決いたします。 大野功統君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○岡田委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。 この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。村上労働大臣。
○村上国務大臣 ただいま決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。
○岡田委員長 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○岡田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○岡田委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。 パートタイム労働に関する小委員長大野功統君から、小委員会における調査の経過等について報告を求めます。大野功統君。
○大野(功)委員 パートタイム労働に関する小委員会における調査の経過等について、その概要を御報告申し上げます。 かねてから、当小委員会においては、パートタイム労働に関する諸問題について調査検討を行ってきたところですが、去る四月二十七日、労使団体及び学識経験者からの意見の聴取及び質疑を行いました。 参考人の意見としては、パートタイム労働者に対する対策の充実強化を図ることが必要であることについてはおおむね一致していたところであります。しかしながら、その方策としては、 一 パートタイム労働者がその能力を有効に発揮することができるようにパートタイム労働市場の適正かつ健全な育成という観点からの法的整備が必要であるという意見、 一 パートタイム労働者に対する差別的取り扱いを是正することが急務であり、そのためには罰則つきの法律による規制が必要であるという意見、 一 雇用管理の改善等のためには労使が自主的に努力することが重要であり、法律を制定することは必要ないという意見、 などが述べられたところであります。 これに対し各小委員からは、パートタイム労働対策の基本的考え方、パートタイム労働対策の対象とすべき者の範囲、法的整備のあり方等について質疑及び意見があったところであります。特に法的整備のあり方については、罰則によらず雇用管理の改善等を進める法律が必要という意見と罰則により差別を禁止する法律が必要という意見があったところでありますが、小委員会としては、パートタイム労働者に対する対策の充実強化が必要であり、そのため、何らかの法的整備が必要であるという認識では意見の一致を見たところであります。 以上でございます。
○岡田委員長 以上で小委員長の報告は終わりました。 次回は、来る十四日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時十六分散会 ————◇—————