法務委員会 第6号
- 発言数
- 61 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1993/04/16
会議録
○浜野委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所今井民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○浜野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。 ――――◇―――――
○浜野委員長 内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村巖君。
○中村(巖)委員 本日の議題は商法等の一部を改正する法律案並びに商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、こういうことでありますけれども、戦後も商法の改正というのはたび重なっているわけでございまして、最近でも平成二年に改正がなされたところでございます。殊に、最近の改正というのは商法の部分部分をとらえて順次改正をしていくというようなやり方でやられているように思うわけでございまして、先般平成二年の改正でも商法のある一部分について、特に大小会社の区分というかそういう問題についてなされたわけですが、今回の改正は、その内容を見ますると三点にわたっているというふうに思われるわけでございまして、一つは個別株主権の強化、こういうことで二つの制度改正がなされ、それからさらに監査役制度についての改正、さらにはまた社債制度についての改正、こういうことでございます。 これを見ましても、やはりある点をとらえて、ここのところだけは部分的に今回はやろう、こういうことでなされているように思われるわけでございます。したがいまして、今後ともまた二年あるいは三年置きに別の部分の改正というものがやられるのではないかな、こんな感じを持っているわけでありますけれども、まず、今回の改正に当たりましてこの三点にとりあえず限定をしてやられたという、こういうことがなぜであるのかということをお聞きをしたい。 同時に、今回の改正に当たって、巷間伝えられておるところでは、自社株の取得制限の緩和、こういうことも加えて出してこられるのではないか、こういうふうでございましたけれども、実際にはこれは今回は出されておらない、こういうことでございまして、この点についてなぜ今回これを出すに至らなかったのか。 今申し上げました二点についてお伺いをしたいと思います。
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。 まず最初の、今回の商法の改正の理念と申しますか目的と申しますか、そういう点でございますけれども、御承知のように、現在の商法は明治三十二年に制定施行された。その前に、ヘルマン・ロエスレルというドイツから来た人がつくった、明治二十三年でございますか、旧商法というのがございまして、それが明治二十六年に一部施行されたという経緯がございますが、明治三十二年の法律が新商法でございます。戦前の商法というのはそれほど大きな改正はございませんでしたけれども、昭和十三年に大改正がされたということは御存じだと思います。ところが、戦後、日本の経済が戦災による復興を経て急激に発展するのに対応いたしまして、商法の改正が非常にしばしば行われるようになったわけでございます。 こういうような状況の背景には、商法が必ずしも経済の進展にうまくマッチしていないというような根本的な認識があるわけでございますけれども、特に非常に重要な問題となりましたのは、昭和三十年代に日本の経済の高度成長が始まって、三十年代から四十年代にかけまして、大企業がいわゆる粉飾決算というようなことで倒産をして、従業員に迷惑をかける、下請企業に迷惑をかける、会社債権者に迷惑をかけるというようなことが非常に顕著になってきたわけでございます。そういうようなことから、会社の監査制度あるいは会計制度というものについて抜本的な改正を加える必要があるというのが戦後商法の一つの改正の流れであるというふうに申し上げることができると思います。それとの関連におきまして、株主の権利を強化する、株主がもっと会社の経営にタッチして会社の企業行動というものの公正、適正を図る、こういうことが一つの重要な問題である、こういうふうに認識されたというふうに私どもは考えております。 そういうことから、実は昭和四十九年の商法改正で、監査役制度についてまさに抜本的な、ほとんど従来の考えを百八十度転換するような形での監査制度の改正というものが行われたということは御存じだと思います。公認会計士等の監査法人による大会社についての監査制度の強制という相当革命的な改正が四十九年にされました。 ところが、この監査制度につきましては、その後も例えばロッキード、グラマン事件だとかあるいは先般の金融・証券等の不祥事等がいろいろあるわけでございますけれども、まだまだ四十九年改正では足りない面があるのではないかというようなこと、つまり四十九年の大改正を踏まえてやや足りない点があるということから、昭和五十六年に監査制度の充実強化を図って、ほぼこれによって我が国の商法における監査役の権限というのはほとんど一〇〇%強化されたということが言えるわけでございます。 ただ、しかしながら、その後も実際に監査の事務に当たる監査役さん方の御意見とかいろいろな社会情勢というものを踏まえまして、せっかくいろいろないい武器を与えられたけれども、それをうまく行使することができない、こういうような問題の指摘がございまして、さらにそれを一歩進めるという意味で、今回監査役の任期を伸長して地位の安定を図る、あるいは大会社について監査役の員数をふやす、あるいは監査役会という組織によって、いわば取締役、経営執行陣にしっかりした意見を申し述べることができるようにする、こういうような形での制度の補充をするということが今回の商法の改正の一つの大きな流れ、これは戦後の商法の監査制度の充実強化というもののいわば到達した一つの点であるというふうに私どもは思っているわけでございます。 それから、もう一つの問題である株主制度の強化の問題。日本の企業というのが実際問題としては経営陣に支配されて、株主の利益というものが必ずしも重視されておらないのではないかというようなことがかねてから問題になっていたわけでございますけれども、これをどうするかということが一つの重要な問題でございました。 そこで、例えば四十九年改正でもしかりでございますけれども、五十六年改正におきまして、株主総会制度の抜本的な改善を図る、例えば株主の提案権、質問権というようなものを株主総会における権利として明定をするというようなことが重要な改正項目になってきたわけでございます。 しかし、それでもなお我が国の株主の地位というのは十分に守られていないのではないかというような指摘がございました。これは、例えばアメリカとの関係が非常に緊密になるに従いまして、アメリカ会社法と日本の会社法との比較というような、これは歴史的な背景が違いますので制度が非常に違いますけれども、そういうような観点から見ますと、やはりもう少し株主の権利というものを強化する必要がある。 例えば、法律上はかなり強く株主の権利が認められているわけでございますけれども、これを実効的に行使するということがなかなか難しい。株主が最後によりどころとするのは代表訴訟ということになりますけれども、これも実際問題としてなかなか提起するのが難しいというような問題の指摘がございました。これは日米経済構造協議等でも問題があったわけでございますけれども、そういうような観点を踏まえまして、権利があるというだけではなくて、権利を行使することができるような環境をつくるということがやはり大事だろうということで、代表訴訟制度の改善だとかあるいは株主の帳簿閲覧権の要件の緩和というようなことに焦点を絞りまして、この改正をしたわけでございます。 個別に申しますとそういうことになるわけでございますが、実は昭和四十九年の商法改正の際に、法務委員会、衆議院の当委員会におきまして、会社制度の抜本的な見直しを図るべきではないかというような附帯決議がございました。そういう附帯決議を踏まえまして、監査役制度の強化だとかあるいは株主の権利の強化、さらには、その中で積み残されております現在の問題といたしましては、企業の合併あるいは分割、こういうようなものを現在の国際的な潮流に合わせて簡素合理化し、あるいはもっといろいろな形のものを認めるべきではないかというような議論がまだ積み残された問題として残っているわけでございますけれども、基本的には、そういう戦後の経済の発展の流れに応じて、会社の行動の適正化を図るとか株主の権利を図るという観点から累次の商法の改正が極めて頻繁に行われておるというのが最近の状況であると申していいかと思います。 そういう状況の中で、第二番目の質問でございますけれども、自社株取得の制限緩和の問題が一つございます。この自社株取得の問題につきましては、実はこれは商法の根本原則でございまして、会社の資本充実あるいは資本維持という観点から日本の商法はこれを厳しく禁じておるわけでございます。例外的にのみこれを認めておる。私どもは、学生時代から会社法の根本原則である、最も基本的な命題であるというふうにこの原則を教えられていたわけでございます。しかしながら、最近における諸外国の諸情勢あるいはいろいろな問題等がございまして、日本のこの規制はやや厳し過ぎないかというようなことがございます。そういうような意見が経済界からもございますし、また学者の一部にもそういう意見があるというようなことを踏まえまして、現在法務省におきまして、自社株取得規制緩和についての研究、検討作業を進めておるところでございます。 具体的には、法務大臣の諮問機関でございます法制審議会の商法部会で現在これを勉強しているわけでございますけれども、ついせんだって、一月でございますか、これについての問題点を約十三項目に整理いたしまして、公表をいたしました。これは非常に難しい問題があるわけでございまして、どういう理由でこの取得の規制を緩和するのか、あるいは取得事由によって制限を設けるのか設けないのか、あるいは取得をする場合の財源とか数量について規制を加える必要があるのかないのか、あるいは取得する場合でもこれはオープンのマーケットから取得するというふうに限定をすべきなのかそうではないのか、あるいは一たん取得した自己株式を長期保有するということを認めるのか認めないのか、認めるとすれば新株発行との調整をどうするのかというようなもろもろの問題、あるいは企業会計上どういった形で処理をするのかというような問題が次々に出ているわけでございまして、こういうような問題について問題点を整理いたしまして、現在関係方面に意見照会をしているところでございます。 私どもといたしましては、こういう意見がどういう形で出てくるかまだわからない状況でございますけれども、そういう回答を踏まえまして、できるだけ速やかに、できるならば次の通常国会に何らかの形で結論を出してみたいというふうに考えまして、目下鋭意努力をしておる、こういう状況でございます。自社株取得の問題については今回見送りになっておりますけれども、そういう状況であるということでございます。
○中村(巖)委員 今次改正の理念について丁寧に御説明をいただきました。社債制度のことはお触れにならなかったわけでありますけれども、今のような状況の中でまた二、三年後には合併・分割の問題等々が出てくるだろうと思いますし、平成二年改正の際にも改正すべく取り残された部分というものがあるわけでありますけれども、それもまた早晩何か解決をしなければならない、こういう問題になってこようかと思われるわけでございます。 それはそれとして、自社株取得の制限緩和問題というのは、一つには何か、かつて株価が低迷して、今はちょっと低迷しておりませんけれども、株価を底上げするというか、そういうような目的で自社株取得制限緩和をやろうというような考え方もあったわけでございます。やはり自社株取得制限をある程度緩和することは、それはそれでいいと私は思いますけれども、そんな変な目的でやるというのはよくないことである。しかも、慎重にやらないとそれこそいわば株価操作のもとになってしまう。こういうことで、ぜひその点は法務省としても慎重に考えていただきたいというふうに思っているところでございます。 次に、今回の商法改正の中の、社債制度の問題は別としてそのほかの問題については、従来も日米構造協議の中で取り上げられてきた問題が、別にアメリカが言ったからどうということではないでしょうけれども、今度の改正として取り上げられている、こういうことでございます。これで日米構造協議の問題すべてをクリアした、こういうことにはならないだろうと思いますけれども、一部は今回の改正に取り入れられているわけです。あと日米構造協議で問題になった事柄というのはどういうものがあるのか、それらのうち今回取り上げられなかった問題については今後どうしていくお考えなのか、その辺を伺いたいと思います。
○清水(湛)政府委員 先ほど社債のことについてちょっと私失念してしまいましたけれども、社債については、やはり企業の資金調達の合理化という面から、実は昭和四十年代から問題が提起されてきておりました。ただ、この発行限度規制を撤廃するということだけでは済まない、もしそれを撤廃するのであればもろもろの客観的な諸条件の整備というものが必要であるということで、一応暫定的に発行限度をふやすという社債発行限度暫定措置法というものを当委員会で御審議を願ったという経緯がございます。この点についてはまた詳しく御説明する機会があろうかと思います。 今回の商法の改正で取り上げた事項のうち、例えば代表訴訟制度の改善だとかあるいは社外監査役、アメリカには監査役制度というものはございませんで、取締役会が中心で、取締役会が会社の業務の監査機能を持っておるということでございますから、アメリカの場合で申しますと社外取締役というような概念になるわけでございます。日本では監査役という制度がございますので、社外監査役というような形で今回の法案に盛り込んでおりますけれども、そういうような点についても大変厳しい議論が日米構造協議でございました。 そのほかには、例えば株主の帳簿閲覧権の問題。アメリカでは監査制度というものはございませんで、日本では監査役が会社の業務あるいは会計の監査をするということになっておりますが、アメリカではいわば株主の直接監査ということになっておりますために、株主が会社の会計帳簿を閲覧することについて非常に要件が緩やかになっておりますが、日本はその点非常に厳しい。これは監査制度というものがあるからだという説明がされているわけでございますけれども、そういうようなものが日本では厳し過ぎるのじゃないか、もう少し緩和すべきである、こういうような問題、いろいろな問題が指摘されました。 さらには、会社の合併の弾力化の問題だとか、あるいは私どもとしては、日米の関係法律の食い違いのためにとてもそういうアメリカの要求には応じられないというような形で拒絶をした問題も多々あるわけでございます。一応将来の問題として私どもさらに検討したいというふうにアメリカ側に要求して、今回の改正法の中にそのままでは取り込まれていないというような問題といたしましては、先ほど申し上げました会社の合併法制の弾力化だとかあるいは会社法におけるディスクロージャー制度の拡充。例えば今回の株主の帳簿閲覧権の要件緩和というのも一種のディスクロージャーの拡充でございますけれども、もっと広い意味におきまして会社の財務状況を広く一般国民に知らせるというような意味でのディスクロージャーということになりますと、これは証券取引法の問題でもあり、商法の問題でもございますが、そういうものについての対応が今回の商法の改正では漏れておるというような問題。 それから、アメリカ側が強く指摘いたしました株式の相互保有の問題、これはいわゆる企業の系列問題の法的な側面という形で指摘された問題でございますけれども、相互保有との関連におきまして、先ほど委員御指摘の自社株取得の規制というものの位置づけ、そういうものについての検討をアメリカ側が迫ったというような状況がございます。そういうものについては今回の改正では触れられてはいないという状況になっているわけでございます。 会社法につきましては、かねて御説明申し上げましたとおり、昭和四十九年以来計画的な改正作業を進めているわけでございまして、現在主要なテーマとして、日米構造協議でも問題になりました会社の合併・分割、この分割が非常に難しい問題を含んでおりますけれども、分割法制の簡素合理化というような問題、さらには全体的に会社の組織の機構、管理の問題、それから中小規模企業における計算の適正確保の問題等々、非常に多くの問題があるわけでございまして、自社株問題もそのうちの一つでございますが、そういうものの総合的な検討作業を現在は進めておる、こういう状況になっているわけでございます。
○中村(巖)委員 そうすると、私が御指摘申し上げたように、やはりまた二、三年後には商法を改正しなければならないということになるわけですね。 あと、日米構造協議の中でアメリカが強く言っていた一つは累積投票制度の復活、こういうことをかなり強く言っていたのじゃないかというふうに思われますけれども、今申し上げた近くまた改正があるという部分と累積投票制度についてはどう考えているのか、その点をお伺いいたします。
○清水(湛)政府委員 会社法につきましては、昭和四十九年以来計画的に問題点を取り上げまして、現在改正作業を進めているわけでございまして、合併法制などについてはかなりの煮詰まった議論がなされております。分割についてはまだまだちょっと足りないという点がございます。したがいまして、自社株の問題だとかあるいは中小規模の企業における計算の適正化の問題だとか合併法制の問題、これは今回の法改正の問題とは違う問題でございますので、いずれ二年あるいは三年後にはまたその部分についての改正案の御審議をお願いしなければならない、こういうふうに考えております。 累積投票の問題につきましては、私も日米構造協議に出席しておりまして、当初アメリカ側が非常に強く要求した制度でございます。実はこれは昭和二十五年にアメリカの商法をまねして日本に導入をした制度でございますけれども、実際問題としては日本ではそれほど有効に機能をしていない。累積投票という制度によりますと、非常に少数の株主でも取締役を会社の経営陣の中に送り込むことができる、こういうメリットがある、つまり少数株主を保護するための制度である、こういうふうに説明されているわけでございますが、実質的には会社の中に派閥的対立を持ち込む結果になる。利益を追求する企業体としてみんなが一致団結してやっていかなければならない会社の経営陣の中に一種の党派的な対立を持ち込むという要素があって非常に問題が多いというようなことがかねてから指摘されておりまして、私の記憶が正しければ、これは昭和四十九年の商法改正の際に定款でそういうものを排除することができるようにいたしたわけでございます。 実質的には日本では廃止をしたということになるわけでありますが、日米構造協議の過程の中で、アメリカ側がその復活を求めました。ところがしかし、アメリカでも実はこの累積投票制度というのは非常に問題があるということで多くの州がこの廃止に踏み切っておりまして、アメリカ側がそういう問題を提起した時点におきましては、たしかアメリカではわずか十三州の州においてしかこのような制度を採用していない、その他の多くの州はこれを廃止してきた、こういう歴史があるわけでございまして、私どもも、そういうようなアメリカにおける累積投票制度の歴史みたいなものを指摘しまして、復活することは困難である、こういうようなことを申し上げまして、この問題は、私どもとしては今のところ、再びアメリカ側が日本に強く求めてくる問題ではないというふうに認識をいたしております。 しかし、例えば会社の株式を二十数%持てば取締役のうちの何分の一かはその派が占めることができるというような問題があるわけでございまして、今後どういうふうに展開することになるかわかりませんけれども、現段階では一応解決済みの問題であるというふうに私は認識いたしております。
○中村(巖)委員 それでは、改正点の中身に入っていきたいと思います。 まず第一に、二百六十七条でありますけれども、株主の株主権の強化のために株主の代表訴訟について制度を改める。それについて、従来から二百六十七条というものはありましたけれども、実際にはほとんど利用されていないのではないか。株主が取締役の責任を追及して訴訟を起こすということは現実には件数としては余りないのではないかというふうに思われますけれども、まずその点で、第一に裁判所の方に、株主代表訴訟というものが近年どういうふうに、どのぐらい提起をされているのかということをお伺いいたしたいと思います。
○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。 この株主代表訴訟でございますが、実は私どもの定期的な統計ではこういうのに限ってはとっておらないのでございますが、取り急ぎ、昨年の末でございますが、その係属件数を調べました。これも地方裁判所の本庁について取り急ぎ調べたわけでございますが、その件数を申し上げます。 昨年の十二月三十一日現在に係属しております株主代表訴訟、これは全国で三十一件ということでございます。そのうちほとんどは株式会社の取締役についての責任追及の訴えでありますが、そのうち二件は有限会社の取締役、一件は株式会社の監査役ということになっておるわけでございます。
○中村(巖)委員 その件数が多いのか少ないのかということになるといろいろ議論はありましょうけれども、アメリカあたりでは株主代表訴訟というのが非常に濫用されている、こういうことが言われております。いわばこれは一株の株主でも提起ができるわけでありますから、本当はもっともっと訴訟が起こっていいはずのものであろうというふうに思っております。それがなかなか起こってこないというのは制度そのものに欠陥があるのか、こういう問題ですけれども、訴訟物価額の問題、今回価額を、従来のいろいろな議論があった中から、訴訟物の価額の算定不能という形で貼用印紙が極めて低額で済むというふうに改正をされましたけれども、それだけで事は解決するのかどうかということが問題であります。何で日本ではこういう株主代表訴訟が少ないのかということを少し考えてみたいと思うわけで、その辺についてのお考えをお聞かせいただきたい。 それと同時に、今回それを少しでも何とかしたいという思いかどうかわかりませんけれども、二百六十七条の訴訟物価額の問題が出されてきたわけでありますけれども、そのほかに「訴訟ヲ行フニ必要ト認ムベキ費用ニシテ訴訟費用ニ非ザルモノヲ支出シタルトキ」はそれを会社に請求することができるんだ、こういうふうなことも加えられたわけであります。それがどういう意味を持つのかなという感じもするわけで、既にしてこの二百六十八条ノ二の中で弁護士費用というものについてはこれは請求できるとなっておるわけです。そのほかに、今申し上げたような部分をつけ加えたって大したことはないのではないか、ほとんど問題にならないのではないかというふうに思いますけれども、その内容としてどういうものを想定されているのかということについてお尋ねをいたします。
○清水(湛)政府委員 アメリカでこの代表訴訟というのが非常に多く利用されておる、むしろ濫用の弊害がある。つまり、本当の正しい意味での代表訴訟の提起ではなくて、会社に対していろいろな不当な要求をするための手段としてこのような訴訟を起こすということがよく文献などで指摘されております。そういうことの背景には、一つには、アメリカは訴訟社会というふうに言われる方がおります。果たして訴訟社会というのがいかなることを意味するのかわかりませんが、弁護士の数も多くて非常に訴訟が多く提起されている事実がある、そういうアメリカの国民の訴訟というものについての考え方が一つ背後にあるのだろうと思います。 それからもう一つは、これは必ずしも実証的に証明されているというわけではございませんけれども、先ほどちょっと私が申し上げましたように、日本では監査制度の充実強化というものが図られまして、あるいは公認会計士等による会計監査人制度というものがかかりまして、会社の業務運営のかなり厳しいチェックがされている。それにもかかわらず不祥事が起こっているのは何事か、こういうことがございますけれども、戦後の累次の改正によりまして監査制度がようやく有効な機能を果たしつつあるというふうに私どもは実は思っているわけでございます。それでもしかし、不祥事は現実に起こっておりますから問題はございますけれども、そういうような面がございます。 ところが、これに対して、アメリカでは監査制度というものがございませんで、会社の業務のチェックというのは株主みずからがする、こういうシステムになっております。例えば、先ほど来問題になっております株主の帳簿閲覧権の問題。日本では今回発行済株式の百分の三以上の株式を持っていないと帳簿閲覧をすることができないということになっておりますが、アメリカは、州によって会社法が全部違いますのですべてがそうであるというふうに断言はできませんけれども、一株の株主でも会社の会計帳簿を閲覧することができる、こうなっております。それはやはり、日本では株主による会社のコントロールということよりか、株主総会で選ばれた監査役が会社の業務の適正運営をチェックするというシステムをとっているということとの関連においてそういうことになっているのだろうと思うわけでございます。 したがいまして、監査制度を欠くアメリカにおきましては、そういった代表訴訟という形で訴訟を提起して会社の不正をなくす、こういうようなことにどうしてもなっていかざるを得ない。特に、歴史的に日本とは違いましていろいろな国から多数の方が来ておられるというような社会構造でございますので、話し合い解決というよりか訴訟によって解決をするということになりがちだということを言われているわけでございますけれども、そういうようなことが一つの背景にあるのではないか。 日本ではしかし、そうはいっても非常に数が少な過ぎるのではないかというようなことがまた一面では言われております。実は、この日米構造協議におきましても、本当に株主の権利をきちっと守ろうと思えば代表訴訟を活用するというのは唯一残された道ではないのか、なぜこういう形で訴訟が日本では起きないのか、逆に起こらなさ過ぎるというような意味での指摘がございました。アメリカは起こり過ぎる、こちらは起こらなさ過ぎる、こういうような問題意識だろうと思います。 そういうことから私どもも、この代表訴訟制度の活性化ということについてはどうしたらよろしいかというようなことで、例えばこれまでも昭和五十三年十二月の法務省の民事局参事官室の試案で、例えば取締役の責任追及について査定制度を導入するというようなことを考えたらどうか、あるいは勝訴した株主には相当の費用請求権を認めたらどうか、あるいはいろいろな非訟事件手続法を導入してもっと簡易にできるようにしたらどうかとか、いろいろな議論がされたわけでございます。今回、一番問題である訴額の点について、これは議論が分かれていたという面もございますけれども、非常にこれを低額化して、現行の訴訟費用であれば八千二百円の印紙を張れば訴訟を起こすことができるということ、それから最後にお尋ねの「訴訟ヲ行フニ必要ト認ムベキ費用ニシテ訴訟費用ニ非ザルモノ」も会社に請求をすることができる、こういうことにいたしたわけでございます。 勝訴した株主がいろいろな費用を使った、それが訴訟費用であるものについては敗訴者が負担しますから、これは別に会社に負担を求める必要がない。また、現行法ですと弁護士費用で相当なものは会社に請求することができるわけでございますけれども、現実の訴訟ということになりますと、その株主の方でそのために事前にいろいろな準備をしなければならない。弁護士さんのところへ持っていく前の段階においてすらも具体的な事実関係を調査したり、あるいは弁護士さんの事務所に行くためにいろいろな旅費も使ったり、書類を集めるためにいろいろな役場に行ったり会社に行ったりというようなことで相当の費用を使う、あるいはいろいろな申請書類をつくるために司法書士さんにも相当の報酬を払わなければならない、こういうようなものがあるわけでございますが、これは弁護士費用ではないということでございます。 本来の狭い意味での訴訟費用のほかに、あるいは狭い意味での弁護士費用のほかに、現実に訴えを提起しようといたしますと現実にはそういう相当の調査費用がかかる、そういうようなものにつきましても、勝訴をした場合には、これは会社のためにやったわけでございますから会社に請求をすることができるようにする、こういうふうにしてこの代表訴訟制度の費用負担というものについての合理化を図った、こういうことになるわけでございます。
○中村(巖)委員 次に、株主の会計帳簿閲覧謄写権でございますけれども、これは従来余りうまく制度が機能していなかった。それは、確かに少数株主権といっても非常に制限がきつい、そういう点もあったわけでございます。今回、それを百分の三にまでおろしたということでありますけれども、百分の三にしたってやはりそれだけの株式を持っている人というのはなかなかないのではないか。 会計帳簿の閲覧謄写権というのはいわば会社のディスクロージャーとして極めて大事なことでありまして、一面におきましてはやはり会社も、秘密というか、全部裸にされてしまったらとてもじゃないという部分もあることはあるわけでありますけれども、やはり株主にしてみれば、もうちょっと公開をしてもらえないのか、ディスクロージャーをしてもらえないのか、こういうことがある。その両方の要請の谷間にこの問題はあるわけでありますけれども、百分の三にしてみましたところで、二百九十三条ノ六、七にそのほかの実質的な制限条項というかそういうものがありまして、なかなかこれは実際に公開されることがないのではないか、こういうふうに思われます。その点いかがですか。
○清水(湛)政府委員 この株主の会社帳簿の閲覧権が従来ですと十分の一ですから、発行済株式の総数の一割を持っていなければ会計帳簿の閲覧ができない、こういうことになっておるわけでございまして、現実に一割の株式を持つというのはこれは大変な大株主である、こういうことは全く御指摘のとおりだと思います。それを今回、一〇%から三%までに要件を下げたわけでございます。その三%でも、大会社について考えますと三%の株式を持つというのは大変なことだ、まさに御指摘のとおりだと思います。大変な巨大会社について考えますとそういうことが言えるかもしれませんけれども、しかし必ずしもそうではないというような規模の会社もあるわけでございます。私どもの計算というかいろいろな経済関係の本などを読みますと、相当数の者が閲覧権者として出てくる、こういうことになってくるわけでございます。 ただ、問題は、株主の会計帳簿の閲覧権というのは一体何のためにあるのかということでございまして、一般の企業の財務内容のディスクロージャーというのは、例えば貸借対照表とか損益計算書、あるいは証券取引法の規制を受ける会社でございますと毎年定期に出す有価証券報告書というようなものがございまして、それに相当詳細な会社の業務の中身に関することが記載されております。そういうものがまた一般の公衆の縦覧にも供される、こういうことになっておるわけでございますけれども、この商法の中で株主が会計帳簿を閲覧するというのは、実はこれはいわば一種の前提行為でございまして、株主の権利として例えば取締役の解任請求をするとかあるいは総会の招集請求をするとか、そういうようなものが一定の株式を持っている、例えば百分の三とか百分の五の株式を持っている株主に認められているわけでございますが、例えば取締役の解任請求をする前提として帳簿をやはり閲覧する必要がある、そういう場合に会計帳簿の閲覧の合理性というものが出てくるのではないか。 この帳簿閲覧の対象となるのは、これは会社の営業上の財産とかその価額、あるいは取引その他営業上の財産に影響を及ぼす事項を記載する諸帳簿、総勘定元帳とか日記帳とか仕訳帳簿、補助帳簿等、すべてを意味するわけでございますから、やはりこれを見るということのためには、会社法上認められているただ単に見るだけではなくて、いろいろな株主としての権限を行使するということの前提でございますので、やはりそういうものとの整合性と申しますかそういうものを考えなければならない。そういうようなことから、現在の商法の中でいろいろな株主の権利が、百分の三というような持株数を要件として取締役の解任請求等々の権利が認められているというようなことも考えまして、こういうことにいたしたわけでございます。アメリカ流の会社制度の考え方とはちょっと違った日本の会社法というものの全体の仕組みの中で考えますとこの程度のものが合理的なものではないか、こういうふうに私どもは考えたわけでございます。
○中村(巖)委員 百分の三でもこれは実際上余り利用されることがない。しかも、なおかつ条文の上では、要するに「会社ノ業務ノ運営若ハ株主共同ノ利益ヲ害スル」ときは見せなくてもいい、あるいはまた、見せろというためには部分を限定しろとか理由書を付せとか、そういういろいろな制限があって、やはりそれはもう少し緩和しなければいけないのではないかな、こんな感じがするわけであります。 次に、監査役制度でございますけれども、監査役制度については大変問題があるわけで、詳細に聞きたいわけでありますが、時間がないので聞けないわけです。根本的に言わせてもらえば、確かに法務省は一生懸命になって監査役制度の強化ということでやってこられたけれども、結局、平たく言えば監査役というのはだれが選ぶのか。それは法律の上では株主総会が選ぶことになりますけれども、その株主総会にこういう人を監査役にしたいと提案するのはだれかといえば、それは取締役会あるいは代表取締役である。社長が監査役を任命し、監査をしろ、こういうわけでありますから、社長に任命された者あるいは取締役会で任命された者が、取締役会の業務が不適正であるというようなことは言いにくいに決まっていることであります。 だから、これを抜本的に本当は考え直さなければいけないのじゃないか。例えば、監査役を監査役会で選ぶんだとか、あるいはまたそのほかの方法で選ぶとか、あるいはまた監査役については先ほどの累積投票制度を用いるとか、何かその辺のことを抜本的に考えないと、やはり監査役制度というのは十分に機能しないではないか。それが証拠に、税法上で使途不明金というものがいろいろ言われておりますけれども、使途不明金なんというものは本当は監査の段階で指摘がなされなければならない、こういうものだろうと思うわけであります。使途不明金の議論をしているとなかなか難しいことになりますので、これが違法であるとか取締役会の業務執行としてどうなのかという議論は省略しますけれども、やはりそういうものも本来的には税務署から指摘をされる以前に監査の段階で明らかになってこなければならないだろう、こういうふうに思います。 質問としては、この監査役制度というものを、今までの考え方の延長線上でいくのではなくて、抜本的に考え直すことは考えておられないのか、その辺を伺います。
○清水(湛)政府委員 この会社法というものの法的性格というか、それをどういうふうに考えるかということともつながってくると私どもは思います。会社というのは、御承知のように、営利を目的とする社団でございまして、一定の株主が資本を提供して企業活動をし、それによって利益を上げて、それを株主に還元する、こういうのが簡単に申しますと会社でございます。そういう場合に、会社が資本を提供する株主の利益を守り、あるいは取引先の債権者に迷惑をかけない、あるいは、会社は多数の従業員によって企業活動を維持しているわけでございますから、従業員の利益もきちんとした形で守る、こういう仕組みになっているわけでございます。 そういう全体の仕組みが適正に公平に、不法・不正行為が行われないようにワークをするということが大事でありまして、そのために会社の内部機関として株主総会という機関があり、それから選任された取締役会という機関があり、さらに取締役会によって選任された代表取締役というものがある。そういう執行機関をチェックするために、さらに会社の内部組織として株主総会で選任された監査役があり、監査役にはそれにふさわしい権限が与えられておる、そういうような仕組みをつくるのが会社法の目的でございまして、具体的にそういうような行為について法務省が監督をしたりいろいろな是正措置を講ずる、こういうようなことは会社法は予定していない、あくまでも株主なり監査役なり取締役なり他の債権者が自分の権利を守ろうと思えば守れる措置をそれぞれの会社法の中に用意をするというのが法律の目的だと思います。したがいまして、私どもは、そういう監査なら監査という面から考えますと、監査役が十分に活動して十分な権限を持つということがまず第一、そしてその権限を十分に行使することができるというようなシステムをつくるということが大事、そういう意味での制度は十分に用意をしなければならないと思っているわけでございます。 ただ、問題は、じゃ、各権限を持ちかつ権限を行使し得る能力を持ったような監査役にふさわしい人が現実に会社によって選ばれておるのかということになってきますと、制度の改善はされてはおりますけれども、その運用面においては種々の問題があるということは、私ども十分に承知いたしておるところでございます。その辺を今後どうするか。会社法という一つの組織法の枠組みを離れた全く第三者の機関からそういうようなものを持ってくるということになりますと、やはりこれは株主総会というものの意思を離れた形で監査役を選任することになりますので、問題が生じないか。これは今大会社について認められております公認会計士あるいは監査法人というような外部監査機構によるチェックということに期待せざるを得ないのではないか、こういうふうに実は思うわけでございます。 立派な監査役を選ぶために、例えば監査役会で監査役を選ぶ、そしてそれを候補者として株主総会に示して株主総会の承認を受ける、こういうようなシステムにしたらどうかというのも一つの御提案であり、従来もそういうような議論がされた経緯もないわけではございません。しかし、今のシステムは、取締役会で監査役の候補者を決める、それを議案として株主総会に諮って株主総会で監査役を選任するというシステムになっておりますけれども、実は監査役は取締役会に出席する権利があるわけでございまして、また意見を陳述する権利がある、また株主総会に諮る監査役候補者につきましても、監査役の立場からその人が適当であるかどうかということについて意見を述べることができる、こういうことになっているわけでございまして、制度的には十分に監査役が活動し得る場面というものが提供されていると思います。 ただ、実際企業の動きを見ますと、多くは社長さんの意に沿うような人が監査役になっているとか、そういうようなことは現実の姿としてあるわけでございまして、そういうものにつきましては、日本の企業のあり方の問題として、企業の組織法、商法の問題というよりむしろ企業行動の問題として、私どもはそういうことについては十分な配慮というか考えを持って企業の経営者は当たっていただかなければならない。もしそういうことができないならば、株主の方から、今回代表訴訟というような形でこれは利用しやすくなると私どもは考えておりますけれども、そういうような形で是正を図っていくということにならざるを得ないのではないか。制度上の改善の問題と運用面の問題、二つあるわけでございまして、運用面については、これは法務省ではなかなかできないことでございますけれども、現実の企業経営者において十分な努力をしていただくということがどうしても必要ではないか、私はこういうふうに思っているわけでございます。
○中村(巖)委員 運用面が悪いからこそ法律上の制度を何とかしなければならぬというのが本当のところだろうと思いますけれども、その辺については時間がないのでそれ以上議論をいたしません。 次に、社債制度の問題に入っていくわけでありますけれども、社債制度の今回の改正は、発行限度額を撤廃してしまおう、こういうことでございます。それだけを考えてみますと、限度額を撤廃したら社債を過大に発行して、そのために社債そのものを償還できない、社債の債務超過というかそういうことが起こってくるのじゃないか、こういうふうに紙の上で考えるとそういうことになるわけでありますけれども、現実に社債がどういうふうに発行され運用されているのかということの面から考えてみると、必ずしもそういうことは起こらないのではないかなという気もしないではないわけであります。 その点でまず大蔵省にお聞きをいたしたいと思いますけれども、現実にどういう会社がどのくらいの量の社債を発行しているのか。どういった社債を発行しているのかという問題もありますけれども、社債は、日本の企業の企業金融といいますか、そういう中でどういう地位を占めているのか、その辺のことをお聞かせいただきたいと思います。
○東説明員 社債市場には、公募債市場と私募債市場とがございます。このうち、公募債市場でございますが、これはある程度まとまった発行ロットのものとより高い流通性を期待いたしますような投資家のニーズに即しましたものを背景として形成されております。他方、私募債市場でございますが、これは比較的少額ではございますが、あるいは流通性の面で制約はございますが、利率等の条件面から投資目的で保有したい、こういった投資家のニーズに即してこれを背景として形成されてきております。 従来から、このような公募債市場と私募債市場との基本的な性格の別を踏まえまして、企業の規模、実情に応じ、例えば電力会社とかNTTを初めといたしますようないわゆる大企業につきましては公募債市場を中心といたしまして、他方、業種的には区々に分かれますが、中小企業につきましては、私募債市場を中心にそれぞれ社債発行による資金調達を行ってきているところでございます。 社債の内容といたしましては、普通社債のほかに転換社債それから新株引受権付社債が発行されておりますが、これらの発行額につきまして平成四年度、これはまだ五年の二月末までの額でございますが、この間における内外市場を通ずる発行状況を見てみますと、普通社債につきましては約七兆四千億円、転換社債につきましては約六千億円、新株引受権付社債につきましては約一兆五千億円、合計いたしますと約九兆五千億円、こういった状況になっております。 次に、このような発行状況が企業金融に占める地位、こういうお尋ねでございますが、この点につきまして、我が国企業の資金調達に占めます社債発行の割合について見てまいりますと、いわゆるセキュリタイゼーションと申しましょうか、間接金融から直接金融への流れとか、特に最近におきましては、現在の金融情勢あるいは株式市場の状況のもとで株価等に左右されないような資金調達手段としての普通社債の重要性が高まってきております。 こういった状況のもとで、昭和五十年度の状況を見てみますと、当時企業金融に占める社債のウエートは九・三%であったわけでございますが、先ほど申し上げましたような状況のもとで例えば平成三年度、この時点をとってみますとこの社債のウエートが二七・九%、こういった形で具体的な増加傾向を示しているところでございます。
○中村(巖)委員 そういうような状況というものは、今御説明いただいたのですけれども、簡単に言えば小さい会社が社債を発行するということはほとんどないんじゃないか、まあ言えば資本金五億円以上とかあるいは十億円以上の企業でなければ社債というものはなかなか出せないのではないか、その辺の実態はどうなのかということを実際は伺いたかったわけでございます。 それと同時に、社債が発行されるためには商法上のいろいろな発行の条件というかそういうものがあるわけでありますけれども、そのほかにも証券取引法等々を通じて、有価証券届出制度あるいは発行登録とか格付会社による格付制度というようなものがあって、そういうものも一つの制約になっているんじゃないかというふうに思われますけれども、その辺の商法上を除いた発行の手続というか、それはどうなっておりますでしょうか。
○東説明員 公募社債でございますが、企業が国内で公募社債を発行するに当たりましては、御指摘のとおり証券取引法によりまして、投資家保護等のための企業内容等の開示制度、いわゆるディスクロージャーでございますが、この企業内容等の開示制度の一環といたしまして、有価証券届出書を大蔵大臣に提出することが義務づけられているわけでございます。 ただし、金利動向あるいは市場状況等に応じましてより機動的な起債対応を可能といたしますように、制度的には証取法上、別途、御指摘の発行登録制度が設けられているわけでござさいます。この発行登録制度を利用いたします場合には、あらかじめ発行登録書を大蔵大臣に提出することによりまして、登録後一定期間、これは一年あるいは二年の期間でございますが、そういった一定期間は、実際の発行に当たりましては、個別に有価証券届出書を提出することなしに、いわゆる発行登録追補書類、簡便なこの書類の提出をもって実際上発行することができる、こういう制度がございます。 さらに、社債権者保護の観点から、大蔵省の行政指導といたしまして、企業が公募社債を発行する際に充足しなければならない基準、こういう基準といたしまして、適債基準を公表しているところでございます。この適債基準におきましては、例えば企業が国内で無担保普通社債を発行する場合につきましては、当該社債につきまして、いわゆる格付の段階でございますがBBBという格付、これ以上の格付を取得していることを要する、こういった形で発行企業の信用力、すなわち元利償還の確実性の程度を示す基準といたしまして格付を用いて、先ほど申し上げましたような適債基準を公表しているところでございます。
○中村(巖)委員 これから議論をしようと思ったのですが、時間がなくなりまして議論ができないわけでありますけれども、なかなかこの社債制度というものも難しいものがあります。企業としては社債という形で資金を調達するということは大変大切なことには違いないわけでありますけれども、それがまた流通市場を通していろいろ流通をするということになりますと、一つの投資ということになるわけであります。しかもなおかつ、この転換社債であるとかワラント債というようなものは株価と非常に連動するということで、そういうものをいわば一般投資家がつかんだ場合にいろいろなリスクというものがあるというその意味で、一般投資家も保護をしなきゃならないという側面もあるわけでございます。そういうことも留意してこの社債の運用というものがなされるべきである、こういうことだけを御指摘申し上げまして、時間がなくなりましたので、実質的な議論はできないままですけれども、終わらせていただきます。
○浜野委員長 山田英介君。
○山田委員 具体的に何点かお伺いをさせていただきたいと思います。 今回は商法改正でございますが、関連して有限会社法の関係でございますけれども、現行の法律におきましては有限会社の役員の任期の規定がないわけでございまして、設立後数十年がたっても設立当初の役員が登記簿に記載されているケースが非常に多い。あるいは役員が死亡ないし辞任していてもこの変更の登記がされてない会社も現実にある。さらに、株式会社の場合には、休眠している会社であるかどうかというのは、二年ごとの役員の変更登記で判断ができるわけでありまして、あるいは休眠している株式会社であれば、一定の条件を満たせばといいますか、該当すれば、職権で解散登記をすることができるようになっております。有限会社の場合は、相当数の休眠会社が現実にあるんじゃないか、こう指摘されているわけであります。 以上申し上げましたように、定期的にその登記をしなければならない規定がないわけで、したがって、商法第二百五十六条の規定「取締役ノ任期ハ二年ヲ超ユルコトヲ得ズ」、こういう規定を有限会社の取締役の任期についても準用するようにされたらどうなのか、こういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 委員御指摘のように有限会社法制をどうするかというのは、実は大変な問題でございまして、先ほど中村委員の御質問に対する答弁では落ちていたかもしれませんけれども、株式会社の大小会社の区分の問題あるいは合資、合名会社のあり方の問題とともに、本来中小企業のために利用されるということで想定されていた有限会社が実は必ずしもそういう状況にはなってない、こういう問題がございます。 そこで、確かに、その取締役の任期などについては株式会社は二年以内でなければならないということになっておりますが、有限会社についてはその任期がない、現行法はそのとおりでございます。終身取締役、それがまたいろいろ問題を生んでおりまして、恐らく現在有限会社の数、百五十万社ぐらい登記簿には登記されているわけでございますが、恐らく相当数の有限会社がもう実体を失っておるということになっているのではないかというようなことだと思います。 こういうふうに任期について法規制がない。株式会社の取締役の任期についてはそういう短い二年という規制があるというのは、やはり株主総会における信任投票の機会を多くするということだろうと思いますが、有限会社については、先ほどちょっと申しましたように、会社の閉鎖性が非常に強く、例えば社員などもたしか五十人を超えてはならなかったと思いますけれども、小人数の人たちが集まって経営する企業だという実態から、現在はそういうことになっておるのではないかというように私ども思っております。しかし、これは先ほども申しましたように、大変大きな有限会社も実はあるわけでございまして、そういうものについて従来のままの規制で放置しておくということは大変問題だという認識を持っております。 現実に、昭和六十一年の五月に商法・有限会社法改正試案を公表した際には、有限会社の取締役の任期を最長三年とする、今までは無制限だったものを三年にするというある意味においてはドラスチックな提案でございますけれども、そういうような提案をいたしましたし、また平成二年の商法改正の際の国会の附帯決議におきましても、実は任期制の導入が取り上げられております。 今回、こういう商法の改正については、日米構造協議等との絡みにおける監査制度、代表訴訟制度の改善と、それから既に相当長期にわたって昭和五十年代から問題とされていた社債法の全面改正という問題を主たる点にいたしておりますので、有限会社法については手をつける余裕がなかったというのが、はっきり申し上げますと実情でございます。会社法全体の見直しの問題として有限会社法の問題、重要な問題でございますので、今後の改正作業の中で御指摘の取締役の任期というような問題についても、これは各方面の意見をさらに聞く必要がありますけれども、積極的に対応していく必要があるというふうに考えている次第でございます。
○山田委員 御答弁にありますように、建前といいますか、閉鎖的なもの、一般的に有限会社というものをそう見ておる、それはそういうことなんだろうと思います。しかし、昨今の状況というのは、例えば株式会社の場合には、これから設立しようと思えば資本金は一千万円以上にしなければならぬ。既に一千万円以下の資本金で設立されている株式会社については、あと二年くらいでしょうか、そのうちに一千万円に資本金を変更しなければならぬ。こういう局面を迎えて、実際に株式会社から有限会社へ、この際、有限会社が三百万円ですか、改正されましたことを踏まえて、従来の株式会社が有限会社に組織変更するというケースも非常に多いようでございます。そういうことからいたしますと、有限会社というのは一般的に閉鎖的な会社であるとは必ずしも言えなくなってくるということでありますので、局長御答弁のように、次期の法改正にありましては、ぜひひとつ前向きにこの点をしっかり取り上げて改正の実を上げていただきたいというふうに思います。 と同時に、もう一つは、有限会社法の三十三条で規定されておりますけれども、必要常設機関ではない、任意に監査役を有限会社においては置くことができる、これが三十三条第一項「有限会社ハ定款ニ依リ一人又ハ数人ノ監査役ヲ置クコトヲ得」ということで、必ずしも置かなければならないという規定になっていないわけでございます。 るる申し上げましたようなことによりまして、まず、監査役をこの三十三条に基づいて置いたときには、監査役のこの任期も商法第二百七十三条の規定、これをやはり監査役の任期ということで準用すべきではないのか。また、そういうこととは別に、この三十三条第一項の規定をこの際廃止して、監査役を株式会社と同じく必要常設の機関として見直すということについても、ひとつ前向きな積極的な御検討をいただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。
○清水(湛)政府委員 御指摘のとおり、現在の有限会社法では三十三条で「有限会社ハ定款ニ依リ一人又ハ数人ノ監査役ヲ置クコトヲ得」と書いてありまして、監査役を置かなければならない、こういうことにはなっていないわけでございます。これはやはり先ほど申しましたように、社員の数が五十人以内というような極めて小規模、閉鎖的な会社、企業形態のあり方というものを想定して、それほど難しく組織、機構等について定める必要がない、むしろ少数の社員の信頼関係というものを前提とした企業経営をするのがふさわしいのではないか、こういうふうな発想だろうと思います。また、仮に有限会社に定款によりまして監査役を置きましても、これについてもまた任期がございませんで、適当にやめたときに再任をするとかあるいは一生監査役であるというようなことも認められる、こういうことになっているわけでございます。 しかしながら、先ほど先生の方から御指摘ございましたように、平成二年の商法改正で最低資本金制度というものが導入されました。恐らく最近の会社設立はかなり有限会社の方に流れているのではないか、こういうような指摘もあるわけでございます。そういうような状況を踏まえまして、有限会社の合理化というか近代化と申しますか、そういうことはやはり真剣に検討しなければならないというように考えております。現に、私が先ほど申しました六十一年五月の法務省民事局参事官室の試案と申しますか、それでは、この段階では有限会社の規模を考慮しまして、商法特例法二条の基準に該当するような有限会社、つまり資本金が五億円以上あるいは負債総額が二百億円以上の有限会社、例えばそういったたぐいの有限会社については監査役を置かなければならないというような規定にしたらどうかという提案も実はしているわけでございます。 この五億とか負債総額二百億円以上というのは厳し過ぎるのじゃないかと私は思いますけれども、小規模の株式会社でも監査役は置かなければならない、一千万程度の株式会社でも監査役は置かなければならないわけでございますから、それとの対比におきまして、やはりこれは真剣に考えなければならない。特に企業の計算の正確化、きちっとした経理を行う、それによって社員の利益を図り、取引先の債権者あるいは従業員の利益を図るという立場から考えますと、これからますます監査役というものの果たす役割というのは重要になってくるというように思います。 そういう意味で、この監査役の問題についても、これは有限会社法全体の見直し、これは近々のうちにやらなければ、現に私どもやっているわけでございますが、いつ、二年後、三年後に結論が出せるということは現状ではお約束申し上げることはできませんけれども、真剣に検討すべき問題である、こういうふうに考えているわけでございます。
○山田委員 それで、先日来、政治改革論議が本格化しているわけでございますが、それらを伺っていても、最低限やらなければならないことは、いわゆる企業の使途不明金、それからいわゆる政治家のかかわりというところから直接的に端を発して、要するに選挙制度も含めて変えていかなければならないのではないか、こういう議論になっているわけですけれども、その中で、一つは、企業経営者の姿勢、株主に不利益を与えないようにしていくという姿勢が大事である。もう一つ、やはり会社の監査制度というものをしっかりしなければならぬ。少なくともこの二つはしっかりやらなければならぬという議論が交わされているわけでありまして、したがいまして、会社法全体の法務省御当局のいわゆるスケジュールというものがあり、それとは別に今日的な大きな国民、国家の要請として、そういう意味でいわゆる監査の問題とか取締役の任期の問題とか、そういうものをしっかりやらなければならぬという要請もあるわけでありますから、この機会は、しっかりと法務省の方ではその要請にこたえる御努力を一層していただきたいというふうに思うわけでございます。 わかりました。局長のそういう御答弁、また世論とか政治改革の必要性とかということもまた加わってきているということをぜひしっかり踏まえていただいて、ひとつまた特段の力を入れていかれるよう心から望みたいと思います。 それからもう一つ、これは商法第百八十八条の関係になるのですけれども、昭和三十八年の商業登記規則改正の前は、取締役と監査役については住所も登記簿の記載事項であった。しかし、事務簡素化などの理由によりまして、三十八年規則改正後、登記事項から取締役、監査役とも住所については除かれた、こういう経緯があるわけでございます。 しかし、この商業登記制度というものを考えましたときに、取引の安全とか債権者保護を目的とするということであるならば、それは事務の簡素化という観点も大事かもしれませんが、取締役とか監査役の住所を登記簿に記載するということはやはり非常に大事なことではないのか。それは、役員としての自覚が生まれる、あるいは取引の相手方にとっても、責任の所在というものが代表取締役だけじゃなくて取締役、監査役にも及んでくる、また取引の安全がそれによって図られてくるというふうに考えますと、事務の簡素化という目的だけではないのだと思いますけれども、それが主要な目的であるならば、もう一度取締役、監査役の住所を登記の記載事項とする。これは実は、一〇〇%すべての役員がかわるという場合には、実際にはいわゆる職能の代理申請とか、あるいは申請時に登記用紙に基本的に登記事項を全部書いて申請するということでありますから、そういう意味では、いわゆる登記事務として一〇〇%登記官がやらなければならないということでもないわけであります。 これはいかがでございましょうか。要するに、住所を入れないと、どこのだれだか明確にされてないがゆえに、現場的には架空名義があり得る。現実に、外国人が本名と通称名の二つを登記しておった。それはやはり、住所があるかないかによって非常に大きく違ってくる、あるいは未然に防止できるということでもあります。やがてまた商業登記についてもコンピューター化が完成するわけでありますから、事務的な負担というのはそう極端に大きいということじゃないのじゃないでしょうか。それよりもむしろ、取引の安全とか債権者の保護を図る、あるいは今日的な政治改革の必要性が叫ばれている背景を考えた場合に、私はそちらの方が非常に重いのではないのか、事務の簡素化もそれは大事ですが。 いかがでありましょうか。したがって、百八十八条二項七号は「取締役及監査役ノ氏名及住所」、あるいは取締役が住所を記載されれば代表取締役は氏名だけでいいわけですから、八号は「代表取締役ノ氏名」、これを要するに「前項ノ登記ニ在リテハ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス」というふうに手だてする必要があるのじゃないでしょうか。
○森脇政府委員 お答えいたします。 御指摘ございましたとおり、以前、取締役及び監査役につきましては、氏名及びその住所も登記事項とされていたわけでございます。これが昭和三十七年の商法改正によりまして、現行法のとおり、氏名は登記事項である、住所は登記事項でない、こういうようになったわけでございます。 その際の改正の理由でございますが、株式会社におきましては、代表取締役が、取締役会の決定の執行あるいは日常事務についての決定及び執行ということを行う機関として位置づけられておりますので、この代表取締役の住所を登記事項として開示しておけば、他の取締役の住所まで開示を求める必要性は乏しいのではないかということが一点ございました。 さらに、取締役あるいは監査役の員数でございますが、これにつきましては商法上上限を設けてございませんので、会社によっては多数の取締役あるいは監査役が在任するという場合がございまして、これらについての住所までをも登記事項といたしておきますと、そのうちの一部の者の住所変更があった都度に登記変更の手続をとらなければならないといったことで、煩雑にたえないというようなことが理由に挙がっておったと承知しているところでございます。 したがって、現在特にこれを改めることは私どもとしては考えておらないところでございますが、今御指摘ございましたような事情もございますので、なお今後商法改正作業等の中で検討してまいりたい、かように考えております。
○山田委員 済みません、質問時間が来たわけでありますが、恐縮でございますが、もう一点だけ。 実は、閉鎖された商業登記簿、これは現在、二十年間の保存期間ということで取り扱われているわけでございます。ただ、先般不動産登記法の改正がありまして、その前、六十三年だと思いますが、不動産登記法の改正時に、閉鎖された不動産登記簿については二十年間の保存期間とされておりましたけれども、不動産のいわば履歴でありますから、それを公示する資料でありますので二十年は少ない、したがってこれは少なくとも五十年あるいは永久保存という中で、たしか五十年に取り扱いが変更になっているはずでございます。したがいまして、それとの均衡も踏まえて、この際、閉鎖された商業登記簿は、二十年間を少なくとも五十年間の保存期間または永久保存ということでひとつ保存期間をお考えいただきたい。 現実に抵当権設定登記などを見ていきますと、二十年以上も前からの会社の名前が出ている場合が往々にしてあるわけでありますが、その会社につきましては、二十年間で閉鎖されて処分されてしまいますと、基本的にもう確認のしようがないという不都合もありますので、これについてはひとつ明快な、前向きな御答弁をお願いしたいと思います。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、閉鎖商業登記簿の保存期間は昭和二十六年以来二十年ということになっておりまして、これは変わっておりません。 ところが、土地登記簿の方の保存期間は、昭和三十五年までは三十年、二十年と三十年という十年の違いがございますが、三十年でございましたが、昭和三十五年に、商業登記と合わせる必要があるということかどうか、これは必ずしもはっきりしませんが、二十年というふうに改められました。 さらに、昭和六十三年に、これはコンピューター化をするための不動産登記法の改正でございますが、五十年に改められたわけでございます。磁気ディスクによって登記簿を調製するということになりますと、閉鎖登記簿の保管場所も相当狭くて済むというような問題も考慮されたと記憶いたしております。 そういう状況でございますけれども、商業法人登記について、ではいつまでの保存期間にするかということになりますと、少なくとも土地登記簿のように、その権利関係がどういうふうに変わってきたか、二十年前の所有者あるいは三十年前の所有者はだれであったかとか、だれとだれとの間の売買で土地がどういうふうに分筆されてこういうふうに移ってきたかというようなことが土地については問題になることが比較的多いということが、このような一たん閉鎖された登記簿の保存期間が長期化されている一つの理由だろうと思います。 商業登記については一般的にそういうことはないわけでございますけれども、先生がたしが御指摘のように、いわゆる休眠抵当権なんかについて、これは前回の法改正により手当てはされましたけれども、抵当権の登記が消えないまま二十年、三十年たっているというような抵当権の登記があって、その登記権利者の中にもう既に実在しない法人が登記されておるということも確かにあることは私ども十分承知しているわけでございます。それを商業登記簿の保存期間を長期にするという形によってそういう問題に対応するのが適当であるかどうかということは、これはやはり少し考えてみる必要があるのではないかというふうに思います。もっとほかの方法で対応できるということも十分考えられるような気もいたしますので、御指摘の点は一つの意見として私ども承りまして今後の参考とさせていただきたい、こういうふうに思います。
○山田委員 終わります。ありがとうございました。
○浜野委員長 正森成二君。
○正森委員 私は、昭和四十年代後半から五十年の初めまで数年間法務委員をさせていただいておりましたが、以来ほかの委員会に所属しておりました。きょうは十数年ぶりに質問させていただくわけで、非常に懐かしい感じがすると同時に、長らく離れておりまして勝手がわかりませんので、失礼な点があるかもしれませんが、お許し願いたいと思います。 私は従来の議論はよく存じませんが、商法改正案が法務委員会にかかっておりますので、議論が法律的な問題に集中したのではないかと思います。私は、きょうは観点を変えまして、経済的な問題あるいは企業ファイナンスというような観点から主に質問をさせていただきたいと思います。 委員長及び理事のお許しを得て、質問が委員の皆さんにおわかりやすくなる一助にもと思って資料を一枚お配りすることをお許しいただきましたので、ごらんいただければ幸いだと思います。 まず第一に、私はきょうは社債発行限度額の廃止について集中して伺いたいと思いますが、今度の改正でこの限度額を廃止する理由、それはどこにあるのか、簡潔で結構ですから答えてください。
○清水(湛)政府委員 現行社債発行限度の規制自体につきましても、主要先進国の中でこのような発行限度規制をしておるのは日本だけではないかとか、あるいは普通に企業が金を借りる場合には何も限度がないのに、社債という形で資金を調達する場合には限度規制があるのはなぜなのかという意味での問題提起というのはかなり昔からあったわけでございます。しかし、非常に財務内容の悪い企業が社債を発行するということになりますと、社債権者の保護に欠けるというようなことも起こり得るということからこの制度の御説明をしてきたわけでございますが、私どものこれまでの経過によりますと、昭和四十年代あるいは五十年代になりまして、企業の社債発行需要が非常に強い、商法の規制が厳し過ぎるというような問題提起がされました。 ただ、その際、私どもといたしましては、商法の発行限度規制だけを撤廃するということでは社債権者の保護には事実上大変な問題になる、こういうことでとりあえず、先生も御存じだと思いますが、昭和五十二年に、一応商法の規定はそのままにしておいて発行限度だけを暫定的に二倍にふやした、つまり担保付社債だとか転換社債だとかそういった償還の確実性を有するような債券については商法の定める発行限度の二倍までは発行していいという暫定措置法をつくりまして、これはあくまでも暫定的なものだ、根本的な改正といたしましては、やはり社債権者保護というものを中心とした現在の商法の全面的な見直し、それからもう一つは、証券取引法におけるディスクロージャーとか社債の格付制度というものが当時非常に未熟でございましたので、そういうようなものの充実発展のぐあいを見きわめる必要がある、こういうようなことから、いわば暫定的な措置を講じてまいりました。 その後、証券取引法も順次整備され、社債の格付制度というものも急速に整備されるという客観的状況が生まれてきたわけでございますが、そういう状況をにらみながら、社債発行限度を撤廃するとする場合には社債権者保護のためにどういう措置を講じたらいいかという、社債法全体の枠組みの中で研究、検討を昭和五十年代の終わり、正式には昭和六十二年から法制審議会の審議が始まっているわけでございますが、そういった形での審議を始めました。 その中で、結局この社債権者保護を専らその職務とする社債管理会社、従来は募集受託会社という、発行会社側のいわば代理人でもあり社債権者側の代理人でもあるような募集受託会社があったわけでございますが、それをやめまして専ら社債権者の保護のための会社をつくるというような、全体の規制を改めることによりまして今回限度規制を撤廃した、こういうことになるわけでございます。
○正森委員 今の答弁は非常に経過を述べた公式論で、現実の企業の必要性という現在の問題は全く捨象してしまった答弁ですが、大蔵省にも来てもらっておりますから、バブルの時代に企業は非常にエクイティーファイナンスで資金の調達を行ったわけですが、一九八六年から八九年の間でどれくらい調達しましたか。また、九三年(平成五年)から九五年でその償還予定額は幾らか、述べてください。
○東説明員 一九八六年から八九年の間におきますいわゆるエクイティー関連社債、転換社債及び新株引受権付社債が具体的内容でございます。この発行を通ずる資金調達額は、一九八六年度におきましては約六兆円、一九八七年度におきましては約九兆六千億円、八八年度約十三兆円、八九年度約十八兆六千億円、合計いたしますと四十七兆二千億円という状況でございます。 他方、一九九三年以降の償還予定でございますが、これにつきましては、一九九三年は約十一兆円、九四年は約六兆三千億円、九五年約四兆四千億円、九三年以降の償還予定額トータルといたしましては約四十兆三千億円程度ではないかと見込んでいるところでございます。まさに一九九三年が今後数年間のピークとなる見込みでございまして、なかんずく、九三年の上半期の償還額は約六兆三千億円に上っておりまして、半期のみで九四年以降の年間償還額を上回る見込みでございます。 なお、付言いたしますと、このように償還がピークを迎えます九三年上半期におきまして償還を迎えます転換社債、ワラント付社債につきまして、発行した企業に聞き取り調査をことし一月にやっております。(正森委員「聞いてない、聞いてない」と呼ぶ)よろしゅうございますか。一言だけ、具体的に非常に償還のめどが立っている、そういうことを一言申し上げただけでございます。
○正森委員 よほど気になると見えて、聞かないことまであらかじめ答えましたが、私どもが理解しておりますのは、やはりそういうぐあいに非常にエクイティーファイナンスをやった、ところが株価が下落したのでそれは結局後に残ってしまったということで、償還額が一挙に九二年、三年、四年、特に九三年に集中した。しかし、株価の先行きが非常に低迷しておりますので、前のようにエクイティーファイナンスでやるわけにはいかない。そこで、社債を発行して何とかファイナンスしなければならないという要請が非常に強いから今まさにこの法案の提出が行われているので、民事局長は経済のことを知らぬでも勤まるからああいう答弁でいいのでしょうが、実際の経済というのはそういうものではないのですね。 そこで、その点について少し質問させていただきたいと思いますが、ここに「日本版オリジナル特集」というのがありまして、その中で、皆さんも御存じだと思いますが、「複合不況」という本をお書きになりました京都大学の元教授の宮崎義一さんという方がおられます。この「複合不況」という言葉は非常に流行語になりまして、こういう学術の本にしては珍しくベストセラーを続けて、政府の景気対策にもその考えが一部採用されていると見られる節もあります。 その方が「続篇複合不況 バブル後遺症その後」というのをお書きになりました。これは非常に示唆に富む論文で、この前の「複合不況」という本は、なぜそうなったかという原因を詳細に分析されておりまして非常に啓発される部分が多いのですが、その結果は、家計部門と金融部門と事業法人というふうに三つに分けまして、それが景気の動向にどういう影響を与えるかということを分析されたものであります。これでありますが、非常におもしろいのですけれども、多くを述べる時間がありませんので、質問に必要な限度でそのさわりを申し上げたいと思います。 事業法人の部分についてどういうことを言っておられるかといいますと、大蔵省の数字と若干違いますが、「エクイティファイナンスによる資金調達額は(八七年度十一・七兆円、八八年度十七・六兆円、八九年度二十六・五兆円)、総額じつに五十六兆円弱もの巨額に達したが、一九九〇年以降の株価暴落によって、転換価格・ワラント行使価格を割ってしまった。そのため、社債の株式転換が困難になり、「一九九二年から九四年までの三年間に満期償還用必要資金が合計二十三兆円に達すると見込まれている」」これが経済白書、一九九二年からの引用、こういうぐあいになっております。 その後で事業法人の失敗という点を指摘されておりまして、「事業法人は、その設備投資計画において、とりかえしのつかないミスを犯してしまった。いざなぎ景気を超えんばかりの平成景気の最中、一九八六年から九〇年までの五年間、年率一五%前後の高率で設備投資を伸ばした(その間のGNPの伸びは平均五%であった)。その盛んな設備投資は、」云々と言って、どういうぐあいに使われたかと分析した上でこう言っているのですね。「その実態は、ワラント債、転換社債など、異常な低コストによる資金調達によって“過剰”な資金調達を行ない(それは八六~八九年の四年間に九十四・四兆円にも達する。そのうち約三分の一の三十一兆円は設備投資に充当された)、その低コスト資金を前提にして引き起こされた設備投資がかなりあったことを見落としてはならない。 事実、エクイティファイナンスの調達コストは、二%以下であったし、先物為替をヘッジすると、」危険転嫁ですね、「金利コストが時折マイナスまで低下するケースも見られた。また、これらの社債が順調に株式に転換することに成功すれば、企業にとっての資金調達コストは、株式利回りに等しい一%程度にとどまったことであろう。」これが「東証要覧」百九ページからの引用ということで書かれております。 「ところが、バブルの崩壊によって、未転換のまま満期を迎えたエクイティファイナンスの償還資金は二十三兆円に達しており、事業法人企業の上に重くのしかかってきている。かりに普通信を発行してこの償還資金を調達しようとすると、六%以上の調達コストを覚悟しなければならないであろう。」ということを指摘されて、結局二%以下でもうかるだろうというので、それで安易な設備投資をした。それは猛烈な、過大な設備投資なのですが、その上に、二%なら何とかペイするだろうというのが、エクイティーファイナンスが株に転換しませんから普通社債を発行しなければならないということになると、突然その金利負担は六%ぐらいになる、だからそれが事業法人の経営内容を非常に悪化させているんだ、ここにも景気問題で大きな問題がある、こういうことを指摘して、「もし投資を決意する時点においてあらかじめ資金調達コストが六%に達すると予測されていれば、おそらく決意するに至らなかったであろうかなり巨額の設備投資が、事業法人のもとに累積されているものと推定される。」こういうように言っているのですね。 だから、そういうように事業法人が非常に過大な投資を行ったということを指摘されまして、時間の点で省略しますが、「その耐久年数の間、減価償却費の負担増など固定費の急増の上に、金利負担の急増が重なりあった形をとって損益分岐点を高め、事業法人の企業収益を悪化させ、新規設備投資意欲を削減させるにちがいない。」こういうことを言いまして、日産自動車の例なんかを挙げているのです。日産自動車は、この間、座間工場というようなイギリスの皇太子や鄧小平まで見学に行った最新鋭の工場を閉鎖するというようなことまでやっているのです。これは事業法人の投資計画等の明白な失敗であります。 宮崎さんは、結論として、「これらは、いずれも、エクイティファイナンスによって長期間にわたって安い資金コストのままで資金調達が可能と思い込んだ事業法人の失敗であって、責任は事業法人自らが負うべき性質のもので、安易に政府に頼るべきではないだろう。」こう言っているのです。 大臣、ですから、事業法人がそういうような判断ミスと行け行けどんどんで現在の状況を引き起こしているわけであります。ところが、今回出されている社債限度額を撤廃するというのは、結局、今までエクイティーファイナンスを過大に行って、それで一般の投資家は右肩上がりに上がると思って買って、キャピタルゲインが得られますからそれなら十分にもうかると思ったらどかんと下がってしまった。だから、投資した資金はせいぜい一%、二%ぐらいに回るか回らないか。ワラントなどはもう紙くず同然になったというような状況で大損害を受けているのです。もちろん、事業法人も今言ったような非常な損失をこうむっています。 それで、今度それを埋めるためにどうするかといえば、今まで自分がエクイティーファイナンスをやったけれども、株価が上がらないで低迷あるいは下がる、このごろやっと二万円になりましたが、最高時に比べたら半分ぐらいになっておる。それで、できないから今度は社債を発行する、それは限度を取っ払って幾らでも発行できるようにする、そうすれば、結局、自分の失敗を政府の力をかりて法律を変えることによって社債権者という一般投資家に転嫁する、それを法務省は一生懸命援助するということになるのじゃないですか。私はこの法案が経済学的に持っている本質はそこにこそあるというように言わなければならないと思うのですが、いかがですか。
○清水(湛)政府委員 先生からいただいた「証券市場における企業の資金調達」というこの棒グラフから見ても確かにわかりますように、かつては株式、転換社債、ワラント債というような、いわゆるエクイティーファイナンスと言われるものによって企業が大量の資金調達をしたという事実がございます。ところが、最近は株式市場が非常に低迷しているということで、その比率がぐっと下がり、やや普通社債による資金調達がウエートを増しておる、これは確かにそのとおりだろうと私どもは承知いたしております。 しかし、社債発行限度の撤廃という問題は、そういう資金調達市場がどういうふうに動いているかということとはかかわりなく、既にエクイティーファイナンスが非常に盛んに行われていた昭和六十二年あるいは五十年代に、そもそもこのような資金調達の方法として社債発行限度規制をするということは合理的であるかどうかという観点から、法律の面あるいは経済の面からもその問題が提起されて、検討されてきた問題でございます。ですから、法務省の法制審議会で限度額撤廃という結論を出しかかった時期にたまたま株価大暴落という事象が起きましたけれども、それとは私どもは関係がないというふうに実は考えておるわけでございます。 資金調達の方法を合理化する、適正化する、こういう観点から純理論的にこの問題を検討してきたということをまず御理解いただきたいと思います。 そしてまた、例えば企業が、株式は別でございますけれども、大量の転換社債を発行した、あるいはワラント債を発行した。ところが、株式市場の低迷のために、多くの社債は転換をせず、あるいはワラント債のワラントの部分はいわば紙くずと同様のものになったというような事実がいろいろな報道でされております。そういうものの社債の償還ということになりますと、現行法でも、発行限度規制にかかわることなく、償還のための社債は自由に調達することができるということに法制上はなっておりますので、これからの新規の資金調達という面では限度規制撤廃というものがある程度有効に機能してくると思いますが、これとても、社債権者を保護するという基本的な前提条件を崩さない、これをきちんと守るということによって商法の目的は達せられる、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。
○正森委員 今のは答弁のように見えて答弁になっていないのです。社債発行の限度を広げるというのはずっと前からやっていたと言うけれども、そのまさに前からやっていたときこそ、ワラント債やらCBやらというので社債を、あれは社債なんですよ、転換社債だとか新株引受権付社債なんです、それをどんどん広げるというときに、まさにその審議をしていたのです。今度法改したら転換社債やワラント債はなかなか発行できない。そうすると、そういうエクイティーを伴わない社債の発行限度をふやすということがまさに必要になってきて、その要請にぴったりこたえているのです。だから、前からそういう審議をやっていたなんということは全く理由にも何にもならないということを指摘しておきたいと思うのです。 そこで申し上げたいのですが、そうすると一般投資家をどういうぐあいに保護するのですか。
○清水(湛)政府委員 社債を発行するという場合には、これはほとんど公募という形をとると思います。公募ということになりますと、今回の商法の改正案におきましては社債管理会社というものが設置される。この社債管理会社は、社債権者の代理人でございまして、社債権者のための権利の行使とか、あるいは場合によっては裁判上の諸手続をとる、こういうことが義務づけられておる。社債権者のために善良な管理者の注意義務をもってその義務を行使しなければならない、こういうことになるわけでございます。 それと同時に、先ほど大蔵省の方からもお答えになりましたけれども、社債発行の際には、有価証券届出書という非常に厳しい内容を持った届出書を大蔵大臣に提出しなければならない。これが一般公衆の縦覧に供される。さらに、社債発行後におきましても、毎年定期的に有価証券報告書を大蔵省に提出して、これも一般公衆の縦覧に供される。 さらには、社債応募という面ではなくてあるいは社債が発行された後の社債の売買ということにつながるかもしれませんけれども、社債についての格付、信用できる社債であるのか信用できない社債であるのかということが非常にわかりやすく、しかも非常な精度をもってこの日本でもできるようになった。こういう客観的な環境が整備されているわけでございます。 私どもといたしましては、今回の改正によりまして、社債権者の保護は十分に図られるものというふうに考えているわけでございます。
○正森委員 民事局長、非常に自信を持った答弁ですけれども、答弁を分けますと、まず第一に社債管理会社でいろいろ社債権者を守るということ、それからもう一つはディスクロージャーとか格付、この二つに分けなければいけないですね。 社債管理会社で守ると言いますけれども、これは率直に言って、何か問題が起こったときに、社債権者の集会を開くとか、あるいは当該会社に対する調査権をもって調べるとか、あるいは差し押さえをするとか、とどのつまりは、順調に返済されればあるいは利息が払われれば、そんなこと普通はやらないのが当たり前なのです。そんなことをやらなければならないときは既に非常事態であって、まずい事態が起こったときに出動するということで、それはせいぜいのところ、できるだけ損失を少なくする、あるいは平等に配分を受けるのに役立つことにすぎないのです。だから、問題は事前にそういう不祥事が起こらないようにするにはどうすればよいかということになるわけであります。 もちろんその中ではディスクロージャーと格付が非常に関係してくるわけでありますが、この機会に大蔵省に聞いておきましょうか。格付については今度緩和されましたね。どういうぐあいに緩和されましたか。
○東説明員 御指摘の点は恐らく、我が国市場におきまして普通社債を発行する場合の当局の行政指導として設定しております適債基準におきまして格付を信用力の基準として用いておりますが、その格付基準につきまして、従来無担の普通社債につきましてはA以上としていたわけでございますが、今般、四月一日以降はこれをBBB以上と一段階下げております。
○正森委員 今お答えになったとおりなんですね。これはあくまで行政指導で、法律で決めているものではありません。 きのう資料をいただきましたら、大蔵省は平成五年三月二十六日付で「普通社債、転換社債及び新株引受権付社債の適債基準及び財務制限条項の見直しについて」というのを出しております。 これを見ると、長いから全文は読みませんが、「公募債の適債基準については、公募債市場のより一層の活性化を図るべく、早急に自由化を実現することを基本とし、現下の市場状況等を踏まえつつ、着実な緩和措置を講ずるものとし、」云々となっているのです。だから、緩和措置を行う。 その内容は何かと見てみますと、今言ったように「無担保社債について、「BBB格相当以上」まで緩和したこと」と書いてあります。つまり、今まではAでよかったものが、限度を取り払って、限度を取り払うのなら適債基準を厳しくするのかといったらそうじゃなしに、限度は取り払う、適債基準は今までAだったのがBBBというように一段階下げることをやる。 それだけではないのじゃないですか。あなた方は財務制限条項というのを設けておるようですが、それもさらに緩和して、こうなっているのじゃないですか。「発行する当該社債がA格相当の場合には、発行時に既存担保付社債等を除く担保提供債務が純資産額の五〇%以下であることを要するとの現行の取扱いを廃止する。」だから、廃止してしまうのですよ。「ただし、発行する当該社債がBBB格相当の場合は、発行時に既存担保付社債等を除く担保提供債務が純資産額の二五%以下であることを要する。」というようにするのでしょう。 だから、担保付社債の場合は、それが有効に機能するかどうかはともかく、担保があるのです。ところが、無担保社債についても、限度は取り払うわ、純資産額の必要量はこういうぐあいに緩和するわ。それで、もともと企業がどれくらいきちんと営業をやっているかということについてはBBBというように下げる。ということになれば、行政指導で強制力はないということですが、実際の業界では大きな影響力を持っていると思うのですけれども、無担保社債権者は十分に保護されない。 かつて、エクイティーファイナンスについて、一般の家計部門で、株のことなんかよく知らない人が買って、ワラント債が何物であるかも知らない、だから期間が徒過してしまってももうちょっと株が上がるまで待とうかなんて思っているうちに紙くずになってしまってえらい迷惑したという、これは私らも選挙民からいろいろ聞いているところであります。そういうことで一般債権者に迷惑をかけておいて、今度は無担保社債の限度を取っ払うということで、また損失はそっちの方へかぶせるということではないですか。 これは私の危惧ではないのですよ。ここに持ってきましたが、「公社債月報」というのがありますね。これは公社債引受協会が出しているものです。これを見ますと、当時の羽田大蔵大臣が年頭所感というのを書いており、その次のページをあけてみると日本銀行総裁の三重野さんもまた年頭所感というのを書いておるのです。非常にいいお顔で写っておりますが、その平成四年一月号の巻頭論文があるのです。これは「企業金融の環境変化と今後の展望-普通社債の役割-」というので、三國陽夫さん、株式会社三國事務所代表取締役というので、これは私的に適債基準といいますか格付をやっておる方のようであります。その方が論文を書いているのです。この方は公務員ではないから割と気楽に、気楽にと言ったら語弊がありますが、本音を書いているのです。 大蔵省は知っているかもしれませんが、この論文は、長く言うと時間がかかるので、まず第一に、企業の資金調達がかつての銀行に頼る間接金融からエクイティーファイナンスなど自分で資金を調達する直接金融に変わってきたという歴史を指摘した上で、「現在みられる普通社債への動きは、企業の資金調達が、銀行の支配や影響から一段と離れるという点が大きな特色である。まず、普通社債は無担保であること。株式とはまったく無関係であることという二点から、銀行の支配や影響は企業に及び難い。そして、銀行は投資採算上普通社債の主たる消化先ではあり、えないことから、」利率の点その他いろいろですね、「銀行の枠外に企業の資金調達が位置づけられることとなろう。それは、企業部門が銀行の仲介なしに家計部門から資金調達を行う「直接金融」の時代の始まりである。」こういうふうに定義しているのです。つまり、普通社債に大きく頼るというのは、これは家計部門から直接資金を銀行を経ないで獲得するという時代に入るのだということをまず指摘しているのですね。それはある程度そのとおりだと思います。 そういうことを言った上で、こう言っております。今バブルが崩壊して不良債権がいっぱいあるということで「銀行融資の健全性が問われ始めている。」という問題提起をして、「今後、銀行投融資のリスクを低く抑えるためには、どのような銀行行動をとったらよいのだろうか。」こうみずから問うて、第一は、これは言うまでもありませんが、審査の健全化である。つまり、バブルの時代には、土地があるということになればどんどん貸して、しかも普通は七割ぐらいで貸さなければいかぬのが、八割は超えて十割から十二割で貸すということ、ここにはそう書いてありませんよ、そこは私のアドリブですが、そういうことを指摘した上で、第二のところでこういうことを言っているのです。 「第二に、系列グループヘの資金調達を、銀行借入から投資家が直接投資できる有価証券の発行へと可能な限り移行させることである。」これが銀行の財政の健全化のために必要だと指摘して、「さらに銀行は有価証券の保有を原則として止めること、」こんなことはなかなかできないと思いますが、「同時に系列グループに対する救済融資を行う主力銀行の役割を放棄することである。」こんな大胆な提案をした上で、次が大事なんです。「系列、非系列に限らず、大企業の倒産の損失は、」大企業が倒産することをある程度予想しているのですね。大企業というのは大体資本金十億円以上、こう言われておりますが、「大企業の倒産の損失は、有価証券を通じて広く薄く投資家の負担に委ねざるをえないのである。」つまり、投資家に損失を負担させるのはやむを得ないんだ、こういうことを言って、「銀行の有価証券保有、あるいは主力銀行としての役割は投融資先にリスクが不在の場合のみ可能であったということは、いくら強調してもしすぎることのない事実である。」つまり、リスクのないところを銀行は負担せい、リスクのあるのは一般投資家、家計部門へということにならざるを得ないんだ、普通社債の動きというのはそういうことになるんだ、こういうことが、この論文が中心的に言っていることであります。 その後でこういうことを言っているのですよ。「このことによって、有価証券投資の中に、多額の損失を被るものも生じよう。投資家が損失を甘受する上では、企業内容開示制度によるリスクの透明性と、」ディスクロージャーが大事だということを言っているのです。「有価証券の価格形成における公正さとの二つが厳然と守られる必要がある。」この後の方は適債基準だとか株価だとかいろいろなことを意味しているのですが、その後で「しかる上で、自己責任原則で投資を行うのである。納得した上で馬券を買い、外れた馬券が紙屑になったとしても、誰も文句をいわないのと同じである。」よう言いよったな。つまり、普通社債を買うのは馬券を買うのと一緒だ。自己責任で買って、それで自分の見込みが当たらなくてそれが紙くずになった、馬券を買って外れたからといって文句を言うのはだれもおらぬだろう、自分が悪いのだというようになるだろうと、どんずばり指摘しているのです。 そういうようなことになる可能性のあるのが本法案の改正なんです。担保のない普通社債についてまで限度を取っ払う、それでおまけに発行基準は大幅に緩和する、こんな乱暴なことはない。バブルの時代にエクイティーファイナンスで失敗していろいろなところに迷惑をかけ、自分も企業の遂行上迷惑をかけ、日産のように超一流の工場だったところまで閉鎖しなければならぬ、二千五百人の従業員は解雇あるいは九州へ行かなければならない。地元の座間市だとか神奈川県を私調査しに行ったが、非常に大きな問題になっているのです。そんなことをやった企業の都合のために奉仕するような社債の限度枠を撤廃するということが一体だれの利益になるものであるかということは非常にはっきりしているのじゃないですか、私はそう思わざるを得ないわけであります。 これについて、民事局長は何か答えなきゃしようがないような顔をしておりますが、後藤田法務大臣、大臣は、大蔵やら通産と違って政治家ですから、一般投資家から票をいただいている政治家としての御感想を伺いたいと思うのです。 その前に、まだもう少し時間があるかもしれませんが、私はあと一、二点質問したいと思っているのですけれども、通産省来ていますか。――通産省が来ておられるからちょっとだけ聞いておかなければいけませんね。 通産省も私の言ったことを大体肯定するような答申をいただいているのじゃないですか。ここへ持ってきました。それは産業構造審議会産業金融小委員会の中間報告であります。きのう通告しておきましたから読んできていただいたと思います。時間がもうなくなってきましたので、お答えしていただくかわりに私の方でそのさわりのさわりの部分だけ読み上げさせていただきたいと思います。 第四章の第二節ですが、「エクイティファイナンスの問題点と今後の可能性」の中でこう言っております。デットというのは、社債、借り入れ等の負債のことですが、「①デットとエクイティの適切な組合せを考えないで安易にエクイティに偏ったファイナンスを集中的に行った点、②低利調達を梃子に一部に行き過ぎた「財テク」に走る動きが見られた点、③無償交付や配当性向の引上げ等株主に対する利益配分が未だ十分に行われていない点等の問題点が指摘されている。」こういうように言っているのです。だから、通産省の審議会でも、そういう点は明白に認めているのですね。別のところの第五章では、「最近のエクイティファイナンスについては、中長期的に円滑な産業金融を確保するため、企業、銀行、証券会社共にこれによる市場の混乱の反省に立ち、今後は、発行時のコストだけではなく株主利益確保の必要性、資金調達の目的等をよく考え、市場実勢を尊重し慎重な対応を行うことが必要と考えられる。」こう言っています。 時間がありませんので、私の読んだところは書いてあるということだけ答弁してください。
○長島説明員 お答えいたします。 今先生、実際に中間報告書の本文そのままお読みになりましたので、その点におきましては事実でございます。
○正森委員 それでは、初めに申し上げた点を含めて大臣に御答弁いただいて、時間が参りましたので終わらせていただきます。
○後藤田国務大臣 これは私からお答えすることは釈迦に説法ですね。しかし、今のあなたのお話を聞きますと、バブル経済が崩壊をした今日、バブル経済そのものに対する批判、そういう批判の上に立って、今度の改正もどうやら救済しようとしている人が間違っておるのじゃないか、こういうような御意見だと私は承ったのです。確かにエクイティーファイナンスに頼って企業経営者が低いコストで資金調達をやり、そのやり過ぎ、そしてその返還期になったときに転換ができなくて、これは銀行からお金でも借りなければいけませんね、そうすると大変なコストがかかるといったようなことで、それが去年、ことし、来年あたりまで大変な問題になるということは百も承知をしておりますが、そういったことで、特定のその者を助けるために、今度また新たにこういう債券で、直接金融で一般の国民にまた迷惑をかけるのではないか、その改正だ、こうおっしゃるのだけれども、私はその結論が違うのです。 あなたの御批判は御批判として十分わかるのですけれども、しかしながら、我々はやはり国民経済全体を、バブル経済がよかったとは言っていないのですから、この後始末をどうするかということも我々政治にとっては大変重要な役割でございますから、そういったようなことを頭に置きながら、国民経済を円滑に運営していくようにこれから先どうすればいいんだということを考えて、我々としてはこういった案をお願いしておるわけです。 そこで、こういった制度をとる以上は、債券を買う人間に、買う個人に迷惑を将来かけるといったことのないように、あなたもおっしゃっておりました、政府の答弁の中にも先ほど言っておりましたが、ディスクロージャー制度のさらなる整備をやる。あるいはまた格付制度についても、あなたはなお広げておかしいじゃないかと言うけれども、そうではなくて、実態に合って、迷惑をかけないように格付制度についても行政指導でしっかりやりますよ。それから同時に、この社債管理会社ですか、これも義務づけるといったようなことでできるだけの対応策を講じながら、必要な企業資金を直接の市場から獲得しつつ現在のこの経済全体の不況を何とか回復しなければいかぬではないかといったような我々の物の考え方、立場は違うけれども、これはひとつぜひ我々としては理解をしてほしい。しかし、あなたの御指摘は十分理解ができることでございますから、その点はひとつ我々のこれからの行政の上にも生かしてまいりたい、かように考えます。
○正森委員 政府閣僚であり、副総理としての後藤田法務大臣としては、ああ答弁するより仕方がないと思います。私どもも、日本経済が資金の点にしろ、生産の点にしろ、販売の点にしろ、国民に有意義で迷惑をかけないように運営されることを望んでいるのは人後に落ちません。ただ、いきなり限度額を撤廃するというようなことはいささか乱暴ではなかろうかという問題点を指摘したわけでありますが、今後の運営上ぜひ御配慮を賜りまして、国民がまた大きな被害を受けることがないようにしていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○浜野委員長 中野寛成君。
○中野委員 まず法務大臣に、基本的なスタンスについてお伺いをいたしたいと思います。 今度の商法改正の目的、意味、時代的背景というのがやはりあると思うのです。日米構造協議でアメリカの方からの要請もあった、また一方で、最近続く企業の不祥事、会社の不祥事、そういうふうな背景の中で、これは政治改革も同じですが、会社の社会的責任というものをもっとしっかりと踏まえた企業経営ができるように体質を改善していく、そういう意味もあると思います。それから、本来は、アメリカの要請というものがありますけれども、そのもう一つ背景には国際社会からの要請、もしくはこういう会計制度のあり方とか商法のあり方とかというものについての国際的な動向も一方ではあると思うのです。ですから、先般のEC第四号指令というのがあるのですが、これによるEC域内の商法改正がどんどん進められていって、アメリカも大体これに同調をしていって、そしておおよその方向性というものが固まってでき上がってきた。日本はそれのおつき合いはまだきちっとはできていないわけであります。 〔委員長退席、星野委員長代理着席〕 その基本的なスタンスというのは、今日まで株主保護を会社法が重視するという傾向があった。しかしながら、ECの方では会社の当事者すなわち従業員それから第三者、今ここでも議論されておりますが、債権者をどうして保護するか、そういう方向に、いわゆる株主保護重視から従業員とか債権者をどう保護するかという方向に比重が移されてきた、こういうふうに言われているわけです。これはなぜかというと、会社の活動というものが国際化して頻繁に国境を越える、そういう中で取引の当事者たちが国籍も法制度も異なる人々を相手にせざるを得なくなった、そういう中で考えられてきた一つの新しい方向づけだ、こう思うのです。 そこで、物的有限責任の会社、すなわち日本で言う株式会社、有限会社について最低資本金制度を確立しよう、これは日本もこの前やりました。あと二つ、決算書の様式、その内容の開示の程度を統一しよう。三つ目は、開示される会社についてはその計算の正確性を担保するためにできるだけしっかりした監査人による監査を強制しよう。この第二、第三の面について日本はまだ整っていない、不十分だ、こういう指摘があると思うのですね。 そこで、この時代的な背景というものについて、そしてまた、最近とりわけ取りざたされております会社の不祥事、そのときに会社というものがいかに社会的責任をもっと認識しなければいけないか、この基本的なスタンスについて、まず大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○後藤田国務大臣 私は、商法の改正というのはたびたび今日まで行っておりますが、そういった延長線上の中で、今後の改正というものは、日本の経済が急激に変化をしてきた、やはり商法等の規定もその経済の変化に対応できるような内容に変えなければならぬということが、しばしば商法改正をやっておる理由であろうと思います。 もう一つは、日本の経済が国際化しましたから、それだけにやはり国際的な、それぞれの国の立場で違いはありますけれども、大きな流れというものはあるわけですから、それと日本のシステムが食い違っておったのではぐあいが悪いではないかといったような点からの意味合いも込めて今回もまた改正にとりかかっておる、こう私は理解をしております。 おっしゃるように、企業そのものも社会的に大きな存在としての責任感もありますから、そういうような意味合いから、債権者に対する企業の立場、さらには従業員の問題、これらも当然頭の中に置いて考えなければなりません。私はちょっと先生のところとそこの意見が違うかもしれませんが、株主というものの立場が、先生の御意見ではそれを中心に今日まで来ておったといったようにお伺いしたのですが、外国の商法、会社法等の立場と日本のは、どうも制度もそれからまた企業の運営においても、株主の立場が日本のは非常に軽視せられておるのではないかな、私は実はそういう見方をしているのですね。株主というものは会社法上もいま少しく立場を強化してもらわぬことには一ただ、この点は日本の株主の態度にもよるのですね。 要するに企業経営に参加をする、投資をして利潤を上げて配当をもらうといったような考え方よりは、投機の対象としてしか考えていない面が非常に強いのではないか。ここらは一般の国民大衆の皆さん方も多少物の考え方を変えていただかないといけないのではないかな。しかし、同時に、それならばそれでいま少しく株主というものの立場というものを法律上もきちんと保護してあげませんと、配当なんていったって今問題になりませんよね。 そういうようなことを考えて、だから株主の立場、さらにはまた会社としての企業責任という意味においての経営のあり方、債権者に対する立場であるとかあるいは従業員の生活の問題とか、いろいろな点に目配りをしながらやっていかなければならないのが今日の会社の大きな責任ではなかろうかな。それにふさわしいような日本の会社法のあり方に変えていく、国際基準にも漸次合わせていく、こういうことでなければならぬのではないかな、こう思いながら、この法律案の説明を聞いたときには私は私なりに理解をしたわけでございます。
○中野委員 私の質問のときに言葉が足りなかったかもしれません。というのは、ECなどを中心にした国際社会では株主重視だったけれども、それがだんだん従業員や債権者の保護を重視する方向にきている。日本の場合にはどちらかというとそれが逆であったという経過があった。これは大臣のおっしゃる認識と私も共通するものがあるのです。 ただ、この株主保護については、会社法だけではなくて、日本の経済の仕組みや証券・金融の仕組み等も含めて考えないといけないことだと思うのですね。ですから、確かにおっしゃるように、バブルのときに一番顕著にあらわれ、また最近もその傾向を心配しているわけであります。 株式というのは、株主が株式を買うというときには、おっしゃるように、本来は投資が目的でなければいけないのに、言うならば投資はどこかへ行ってしまって投機の方になってしまった。投資中心であれば平均株価というのは、専門家によると、本当は一万五千円以下、むしろ一万三千円ぐらいでないとおかしいという見解もありますね。そういう意味では、それ以上の株価が続いているということは、やはり日本の場合には投機の方が意識が強いのではないかというふうにも思われるわけです。これはやはりしっかりした会社の体質、社会的責任、そして、バブルを生み出すという経営ではなくて健全な本業でその経営が行われるということになりますと株価というのも投資の方が中心になってくるのではないか、こう思います。そういう意味での認識は同じであります。 ただ、国際社会の動向ということをしっかり踏まえてお互いに比較ができる、そういうことでなければ日本社会は特異な社会ということで国際社会から信用されない、そしてまた余計な要求を突きつけられるというふうなことがあり得るわけで、時に日米構造協議でアメリカが言うのは、大体日本のことをわかつとらぬというふうに日本側は怒るし、向こうの方は向こうで日本というのはわけのわからぬ国だと思うし、そういうことが今日の実態だったのではないか、こう思うわけであります。 そこで、諸外国との比較から入ってしまいましたので、ちょっと順番を変えて質問をしたいと思います。 監査役制度の比較を先に申し上げますと、諸外国の監査制度としていわゆるアメリカ型の、取締役会に監査委員会を設けて、その中で過半数の社外重役を含んだ一元的方法、そして一方ではドイツ型の、取締役会と監査役会を設けて、監査役会に代表取締役の任免権を付与するという二元的方法があると言われているわけであります。 いずれにせよ、その運用がきっちり行われますとこの監査の実は上げられるわけでありますが、日本の場合は基本的な形はドイツ型と大きく似ているわけであります。しかしながら、取締役会に代表取締役の任免権を付与するなどということは日本の場合はないわけでありまして、確かに形式的には株主総会で代表取締役等は選ばれるわけでありますが、なかなかその実効が発揮されていないという批判があるわけであります。できるだけ制度的にもこの辺は独立した形がとれるようにしていくことがやはり必要なのだろうと思うのですね。なかなか日本の場合は、きのうも言いましたが、国民性がドライではなくてウエットでありますから、みんなで渡れば怖くないという体質の方が強いものですから、そうすると、やはり制度の方から固めてやるというふうにしませんと、国民性の変化を求めているのでは間に合わないということがあろうと思うのですね。この辺の制度についてはいかがお考えですか。
○清水(湛)政府委員 私ども、会社法というのは比較的諸外国共通のものになっているというふうに実は考えています。民法とか、その国における国民の個人的な生活面を規律するような法律と違いまして、商業取引の世界でございますので、歴史的にも各国株式会社法の共通化という大きな波が流れておるというふうには考えているわけでございます。 ところが、日本の会社法というのは、これは明治の初期にドイツ人に来ていただいてつくっていただいたドイツ法を継受した形での会社法でございますが、昭和二十五年にアメリカ法を大幅に取り入れた会社法に変えたわけでございます。例えば昭和二十五年の改正で取締役会という制度が新たにつくられました。アメリカでも取締役会という制度がございまして、取締役会が非常に強い権限を持っている。その際に、日本では監査役の権限を大幅に縮小してしまいまして、監査役というのは会計の監査だけをしていればよろしい、業務の執行は取締役会が監査をすればよい、こういう発想になったわけでございます。 これは実は今のアメリカの会社法、アメリカは州によって全部法律が違っておりますけれども、アメリカの標準的な会社法の面から申しますと、現在取締役会があって、取締役会が会計の監査をするというような形になっているわけでございますけれども、そういうものに共通する制度があった。しかしながら、一方で、先ほども申し上げましたけれども、そういうふうにはしたのだけれども、取締役会というのは社長さん、代表取締役の言うとおりのいわば機関になってしまった、これをチェックするためにはかつてのドイツ法的な監査役、つまり戦前の監査役というのは、監査役会という会は組織しておりませんでしたけれども、非常に強い権限を取締役に対して持っておりました。そういうような権限を復活させる必要があるということで改正されましたのが昭和四十九年の監査役制度の大改正だと思います。 そういう意味で、いろいろな国際的な流れがございますし、またそういう問題があるからこそ日米構造協議あたりでいろいろな注文がつく。私どもに言わせれば、ちょっと細かいことまで文句を言い過ぎるのじゃないかという気持ちは率直に申しますとあるわけでございますけれども、そういう国際間の取引があるものですから、個々の制度面についていろいろな注文がつくという面は確かにございます。 恐らく日本の会社法はドイツ法をまねた部分がかなりあるわけでございますが、ECにつきましては、EC会社法という域内を統一するための会社法がつくられております。そういうものがかなり統一化される動きを示しておる。そのために、フランスもイギリスもドイツもかなり統一的な会社法を将来目指すことになると思います。そういう影響を受けまして、私どもも国際社会の中で会社法のあり方を当然先生御指摘のように考えていかなければならない。 ただ、いろいろな歴史的な背景、制度がございまして、また日本人の株式会社に対する考え方とか心情というようなものがありまして、そういうものが非常に違うという点もよく指摘されるわけでございますが、そういうものを受けましてこの制度を全く同じにしてしまうということにはまだ相当の時間を要するのではないか。 例えばドイツでは監査役会というのがございまして、監査役が株主総会で選ばれる、その監査役会で取締役を選ぶ、監査役会が最高の権限を株主総会に次いで持っておるというような監査役を非常に重要視した組織になっております。日本では株主総会と取締役会に対応する監査役会というような制度が今回出ましたけれども、そういう意味ではドイツに近いのかもしれませんが、全く同じにするというようなことについてはまだまだ相当の時間を必要とするのではないか。しかし、事会社法に関する限り国際的な流れは無視することはできないし、みんな関心を持って眺めておるところであると私は理解いたしております。
○中野委員 株主総会が本当に業務、会計の面で、言うならば民主主義構造でそのチェック機能を果たすのはなかなか難しいですね。また、最近の総会屋の問題だとか一口株主の問題とかいろいろ出てきますと、株主総会の運営は本当はなかなか難しい。そうすると、やはり大所高所に立って株主の立場を大事に考え、かつ従業員や債権者のことも考える、企業の社会的責任という視点も踏まえて考えることができるのは権威を持った監査役会、そしてまた取締役会でなければならないだろう。そういう意味では、監査役会の力はより一層中立公正的な立場で考え得る機能を強化する、場合によっては今回出されております社外監査役、それからもっと人格識見ともに豊かな会計専門家を養成していくことも一方で大変大事なのではないか。今回の改正は若干その方向に踏み込みつつあるかなと思っておりますけれども、私はまだまだそれはあくまでも端緒であるとしか思えないわけであります。 先ほど大臣が大体株主が軽視されているのじゃないかというふうに言われたのですが、日本の場合には、先ほども申し上げましたように、商売で物を売るのじゃなくて信用を売るんだとか、船場商人の家訓みたいなものもあるぐらいですから、どちらかというと、社長は親で従業員は子供であるというふうな関係もあって、言うならば株主保護という株式会社システムはまだ日本にはある意味では本当に定着していなくて、先ほど申し上げた欧米とは逆に、従業員とか債権者を優先するという、むしろ欧米諸国の方が精神は日本型に近寄ってきつつあるのではないかとさえ思うのですね。だから、ある意味では日本の会社法をより現代的に変えていくことは精神的にはそんなに難しくないことなのではないかとさえ思うのですよ。ですから、もっと思い切って、日本は、日本本来の国民性に合わせるためにも、企業道徳だとか商道徳だとかそういうものをもっと大事にするという意味でも、監査役制度などはより一層充実させてしかるべきなのではないか。 私はどちらかというと、日本の場合には企業が中心で、株主に対する配当、従業員に対する給与ではなくて、企業内の蓄積をふやすことによって企業の力をつける、企業中心社会になり過ぎているという気がするのですね。そのことも打破していきませんと、これからの国際社会での信用がつかなくなってくる。日本の古い経済体質、それは日本の企業中心の、企業エゴ的な体質に対する批判なのではないのかという気がするのですね。これを打破していく必要があると思うのですが、もう一度、基本的には大臣から、そしてまた具体的な方向づけについては民事局長からお答えいただきたいと思います。 〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
○清水(湛)政府委員 先ほど大臣の方から日本では株主が軽視されておるのではないかというような見方も一つある、こういうことを御指摘されました。私どもも実はそういう認識でございまして、よく引き合いに出されることでございますけれども、日本の株主総会は本当に短期間にしゃんしゃんで終わってしまう、本当の意味での株主と会社の経営執行部との間の対話がない、こういうようなことがよく言われております。ところが、ドイツあたりは、これは私は自分で見たわけではございませんけれども、ドイツの株主総会は、株主さんが自分で弁当を持って、一日がかりで株主総会が開かれる、そして自由な質問をして、経営執行部がそれに対してフリーに答えるというような形で、本当に株主が十分にいろいろな意見を述べる場が提供されておるというような話を私は聞くわけでございます。 そこで、そういうような観点から、昭和五十六年改正が主体でございますけれども、株主総会における株主の地位の強化ということについての非常に重要な法改正が五十六年にされました。と同時に、実際上株主総会を牛耳っておるのではないかといういわゆる総会屋につきましても罰則を設けるというような非常に強硬手段を講じまして、総会屋による株主総会の支配を除外しようというような改正をいたしたわけでございます。そういう意味におきましては、五十六年改正は非常に重要な意味を持っておるわけでございます。 ところが、現実には、やはり株主総会が一定の期日に集中してしまうというようなこともございまして、なかなか株主が自由に発言をすることができないような状況が出ているんだというような指摘が新聞紙上等でもされているわけでございます。そういうことの基本には、やはり株主というものの地位を考えた会社経営というものが考えられなければならないと思うのでございますけれども、そういう株主の地位を代弁するものとして、一方では取締役会があり、取締役会から選任された代表取締役というものがあるわけでございますが、それと並ぶような強い機関としての監査役の組織、機構というものもやはり考えていかなきゃならない。 そういう意味では、先ほどもお答え申し上げましたけれども、四十九年改正で監査役の地位というか権限を飛躍的に強化して、その足らざる部分を五十六年に補充し、そういう意味では現在の監査役というのは、権限の面から見ますと大変立派な権限、また責任も重大な責任を持っていることになっているわけでございますが、これがなかなかうまく行使されないというような現状もあるということから、今度は行使をしやすくするというようなこと、つまり地位も、今までは二年だけれども、三年という任期にすれば安心して会社の執行部について物を言えるんじゃないか。員数もふやせば、小人数のときよりか発言力も強くなるんじゃないか。さらに、監査役会という組織もつくれば、組織的な発言ができるので、言いたいことも言えるんじゃないか。あるいは社外監査役、これはアメリカでは社外重役という形で、法制化はされておりませんけれども、証券取引所に対する上場基準としてそのような制度の設置が要求されているようでございますが、そういった第三者的な立場からの公正な発言というものが反映されるような社外監査役制度というものを導入いたしまして、与えられた権限を十分に行使することができるような体制をつくっていく。そして、そういうことを通じて、企業が各種の法令を間違いなく守って社会的な非難を受けるような行動をしないようにあらかじめチェックをすることにするということで、株主総会機能の強化とあわせて監査役制度の充実強化というものがやはり非常に重要な問題である、こういうふうに私どもは認識しているわけでございます。
○中野委員 今の御答弁の方向については、認識を一にする部分が大変多いんですね。徐々に徐々に努力をされ、積み重ねてこられているなということはわかるんです。私は、日本の株主総会の姿等も今おっしゃったとおりだと思うんですね。そうすると、先ほども私も申しましたように、監査役会の役割、使命というのは極めて重い。 そこで、先ほどちょっとECのケースを申し上げましたが、例えばそのケースの中で、「開示される会社については、その計算の正確性を担保するために、域内各国が」これはECですが、「当該国の法律によって国家資格を付与したしかるべき人格ある監査人による監査を強制することとした。」言うならば、日本でいえば公認会計士、しかもその中で「人格ある」という、これは形容詞ですが、資格を持っているだけではいかぬということで、より一層の大変強い指示をしているわけですね。 日本も、私はむしろ日本の経済体質から考えますと、日本こそそういうことが必要なのではないかな。ですから、今回社外監査役を設ける、一人ふやし、かつ任期を二年から三年にするということでありますが、私は、三年をもう一つ延ばして五年ぐらいにして、そして自立性を持たせてやってもいいと思いますし、やはり資格を持った人を必ず入れる。もちろん公認会計士の監査もあります、システムもありますが、監査役の中にそれをむしろ義務化させる、そしてもし人数が足りなければ専門家を育成しふやすというくらいの思い切ったことがあってしかるべきではないか。それが、今、日本で軽視されていると言われる株主の保護にもつながるし、そしてまたそこで働く人々また債権者の保護にもつながっていく。最近の日本の企業の不祥事等を見るにつけても、そのことの重要性を特に痛感するのでありまして、なお一層の努力が望まれると思いますが、もう一度お伺いいたします。
○清水(湛)政府委員 監査役の制度というのは、これは会社の内部機関でございまして、監査役による業務の執行の監査とか会計監査というのは、いわば内部監査と言われているものでございます。我が国では既に、これは大会社についてのみでございますけれども、資本金五億円以上あるいは負債総額二百億円以上の株式会社につきましては、これは監査法人、公認会計士または公認会計士によって設立された法人格のある監査法人による監査を受けることが義務づけられております。これは外部監査といっておりますが、こういった専門家による外部監査というものが現に義務づけられておるという状況にあるわけでございます。 恐らく先生の御指摘の問題は、そういう大会社に加えて、さらにもっと監査役自身の中にもそういった専門家を入れるとか、任期も三年ではなくて五年にすれば安心して監査役の職務を遂行することができることになるのではないか、こういう御指摘だろうと思います。 実は、監査役の任期につきましては、現在二年でございますけれども、これを三年にするについては、現に監査役である人たちの意見とか各方面の意見をいろいろ伺ったのでございますが、人によっては、任期は二年だけれども必ず一回は再任をする、最低四年にする、こういうような制度を設けたらどうかとか、あるいはもっと、五年というような考え方もないわけではございませんでした。しかし、いずれにいたしましても、これは株主総会が最終的には決めることでございますので、再選の保障というようなことは、これは法律で明らかにするわけにはまいらないというようなこと、大方の意見として、取締役は二年でございますので、監査役については三年、もし再任されれば六年という長期の期間になるというようなことが考慮されまして三年になったわけでございます。 あるいは、将来もっと監査役の権限を強化するために任期は五年にしたらどうだという意見が、もしこの新しい法律が国会を通過して施行された場合、いろいろな経験を踏まえてそういう意見が出てくることもあるかもしれないと思います。また、社外監査役の五年というような要件につきましても、これは五年が絶対的だということではございませんで、今後のいろいろな運用の実情等から、そういったものについてのさらに改正が必要であるというようなことも出てこようかと思います。 さらに、この社外監査役に選任される人たちについてもどういう人たちがいいのか。本当の意味で会社の企業行動というものを公正なものにするということをチェックし得る能力のある人、こういうことになるわけでございますが、弁護士さんとか公認会計士さんとか税理士さんとか、あるいはそういった職業の専門家以外に徳望、良識のある、企業経営についての深い知識経験を有する人、こういうような人が必要だと思いますけれども、現実にはそれぞれの企業において本当に企業のためになるふさわしい人を選任されるように努力をされる。法務省としては、これを具体的に指導するというわけにはなかなかまいりませんので、制度は用意いたしましたので、現実の企業においてこれをその制度の趣旨に従って活用していただく努力をしていただく、こういうことに大いに期待をいたしたいと思っているわけでございます。
○中野委員 最後に、東京佐川とか共和、こういう会社の問題が先般来起こったわけでありますが、いずれも経営内容の開示が求められない非上場企業だったわけです。外部監査は義務づけられているわけでありますが、この商法監査というものは監査結果の公開義務がない。そこで、東京佐川に対する監査意見が、適法だったのか粉飾の問題がある不適法だったのかは、会計士協会に報告されておりましても、守秘義務に阻まれて公開はされない。 企業の監査というのは本来、会社、債権者、株主の利益を守るためにあるわけですけれども、監査報告書のあて名が社長名になっておりますから、その扱いは社長の一存で決まるとも言われているわけであります。また、平成三年度に商法監査を受けた企業は三千三百七社、公認会計士協会の調査ではそのうち二十から三十社に不適法意見が出されているとも言われております。 問題となった共和事件の共和ですが、商法監査が必要であったにもかかわらず受けていなかったと言われているわけですけれども、その理由として、最低でも数百万円かかる監査報酬を払うよりも監査を受けなかったときの罰金、百万円以下の過料ですね、百万円払っている方が得だということで開き直った。この共和に限らず多くの会社が監査を受けていないというふうにも言われているわけでありまして、まだまだ監査制度についてはいろいろ欠陥が多いのではないか、こういう指摘があるのでありますが、今後の方向も含めてお答えいただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 会社に対する監査結果をどういう形でディスクローズするか、こういう問題でございます。 現に株式会社については、実は法律上計算書類を官報その他で公告をすることが義務づけられているわけでございますけれども、現実にはそれがほとんど履行されていない。株式会社の数が百数十万社あるわけでございますけれども、実際上それを履行しているのはごくわずかである、一万社程度ではないかという説もあるわけでございます。実はそういうものについてどういう形でディスクローズをさせるかということが、これは先生からも御指摘の問題でございましたけれども、法制審議会内部、法務省内部でもかねてからの懸案事項でございまして、これを例えば商業登記所に貸借対照表、損益計算書等の提出を義務づけて一般公開をするというようなことにしたらどうかとか、あるいはそういうことをする以上会計専門家による事前監査、正確な監査を要求する必要があるからそのための専門家の養成が必要である、公認会計士だけの数では足りない、こういうような問題も指摘されております。そういうような問題が種々ございますために、一般の中小会社のディスクロージャーというものがまだ実現をする状態にはなっておりません。非常に残念なことでございますけれども、私どもは、その問題は引き続き懸案事項として現在検討させていただいております。 それから、先ほど先生の方から、監査報酬が六百万でもったいない、過料は百万円で済むので罰せられた方がいいという、そういう方がおられるのかどうか私ちょっと今まで知りませんでしたけれども、そういう違法行為をしてまでも正当な外部監査を忌避するということはゆゆしい問題だと思いますので、そういうようなことがないようにもし必要なら法改正等を含めた対応をする必要があるのではないか、こういうように今考えた次第でございます。
○中野委員 時間が来ましたので終わりますが、先般も不動産登記法で申し上げましたけれども、言うならば商法、会社法の片仮名法律という古臭い法律、今申し上げたようにまだまだ改善、改正していかなければならない課題は多いわけですし、時代の要請、国際社会からの要請もあります。総合的な、抜本的な改正を含めてこの商法問題について法務省がなお一層精力的に真剣にお取り組みいただくことを要望して、終わります。ありがとうございました。
○浜野委員長 次回は、来る二十日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時四分散会