商工委員会 第16号
- 発言数
- 120 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1993/05/12
会議録
○井上委員長 これより会議を開きます。 参議院送付、内閣提出、不正競争防止法案を議題といたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田和子君。
○吉田(和)委員 日本の経済の大変な成長とともに、知的財産を守るさまざまな権利の付与、そしてその権利を守るということで重要性が増してきているわけでございます。これから二十一世紀に向けて、先端技術の発達で大変技術的に、内容的に大変細かく多様化し難しくなっていく中で、知的所有権の確保というものが注目をされ、ますますこれから問題になってくるだろうということが予想される中で、今回の不正競争防止法の改正が行われるわけでございます。昭和九年に制定されて以来大きな枠組みは変更されなかったということでございますけれども、近年の国際化に向けて、また国際化の中でその主導的な立場をとって国際的なハーモナイゼーションを進める上で日本は大変重要な位置にある、その中での改正ということで、これからの状況に適応した法の改正をやっていかなければならない、内容でなければならないというふうに考えるわけでございます。 まず最初に、国際的な各国の動向というものがあろうかと思います。各国の国情に合わせた不正競争の防止の仕組みが各国それぞれにあり、そしてその国々が集まっていろいろな国際的なハーモナイゼーションを目指しているわけでございますけれども、まず各国の状況がどういうふうになっているかということを伺いたいわけでございますけれども、第一条の「目的」のところに「国際約束の的確な実施を確保する」というふうにございます。国際約束とは具体的に何を指しているのか、各国の情勢なども加えながら御説明をいただきたいというふうに思います。
○熊野政府委員 まず、ここの法律において「国際約束」と言っているわけでありますけれども、国際約束といいますのは、一般的に申し上げまして、国際的な取り決めでありますところの条約とか協定といったもので、我が国がその履行を国際的に約束したものを指しているわけであります。 本改正案におきます不正競争に関する風際約束というのは、具体的に申し上げますと、工業所有権の保護に関するパリ条約、それからそのパリ条約の特別取り決めでありますところの、虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定というものがございます。こういった国際約束を踏まえまして、国際的ハーモナイゼーションの観点から不正競争の防止を図っていく必要性にもかんがみまして、この法案におきましてはこれら国際約束の的確な実施を確保することを法目的の一つとして掲げているものでございます。 各国の動向というお尋ねがございましたので、若干その点について敷衍をさせていただきます。 各国は、こういうパリ条約あるいはマドリッド協定等に基づきましてそれぞれ類似の不正競争防止のための法律を持っております。特に、最近におきましては、御案内のとおりガット・ウルグアイ・ラウンドにおいてTRIP協定という中でいろいろ不正競争防止の関連の議論が行われているわけでありますけれども、この中では、従来の先ほど申し上げましたパリ条約にないものといたしまして営業秘密の保護が義務とされているところがございます。これにつきましては既に我が国の不正競争防止法は平成二年の改正におきまして営業秘密の保護を導入しておりまして、いわばこのTRIP協定の発効に先駆けたものとなっているわけであります。 さらに、こういう不正競争の防止に関する国際的な関心の高まりを背景といたしまして、WIPO、世界知的所有権機関という国際機関がございますが、このWIPOにおきましても昨年の七月から不正競争防止法の国際的なハーモナイゼーションに向けての作業が開始をされているところでございます。この中身はまだ議論を始めたばかりでございますので必ずしも明らかではありませんけれども、先ほど申し上げましたように、いろいろな国際約束それから各国の動向等を踏まえて今回の改正に当たっても法制を整備いたしましたので、国際的ハーモナイゼーションの観点から十分対応したものというふうに考えているところでございます。
○吉田(和)委員 まさに今国際化の中で、今回の改正が国内法の整備で国際化に向かってこれから大きく適用をされていかなければならない、そういった大幅な改正が望まれている状況だというふうにお答えの中で今伺ったわけでございます。 お話に出ましたWIPO、世界知的所有権機関においての検討が始まっているというふうに伺いました。特に、その加盟国の中でも主導的な立場をとっていかなければならない経済大国日本の立場として、今回のこの改正がまだまだ踏み込んだものであってもいいのではないかという箇所もあるわけでございますけれども、今回のこの改正でこれから主導的な立場をとる日本の国内の法として十分に適合がなるか、この改正がなるかということで、いかがでございましょうか。
○熊野政府委員 国際的な関係につきましては、ただいま申し上げましたように国際約束は十分踏まえておりますし、それからただいまのTRIPのようにまだいろいろ議論中でありますけれどもほぼ方向が固まっているものについては、既にその内容を先取りしているところでございます。それから、ヨーロッパ各国あるいはアメリカ等の先進国における法制の状況、あるいはコモンローの動向等も十分踏まえまして対応しているので、そういう点では国際的に見ても全く遜色のないものになっていると思います。 他方、国内的な実態との関係で申し上げますと、いろいろ現行法に基づく運用、具体的に申し上げますと、各種の判例があるわけでありますけれども、これらの判例等も十分踏まえて、産業構造審議会におきまして専門家の方々に集まっていただいて、十分な検討をしてそういうものを取り上げてまいりましたので、実態に対しても即応したものになっているのではないかというふうに考えております。
○吉田(和)委員 今回、一般条項を導入をしなかったという点があるわけでございます。現行不正競争防止法は、不正競争を限定列挙しているという形になっているわけでございます。不正競争の内容が大変多種多様になっている、これからますます複雑になってくるものに対して、十分な対応をすることができるのだろうかというふうに思うわけでございます。限定列挙方式を維持をしたというふうな段階、どういうふうな考えであったのか、なぜ導入をしなかったのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
○熊野政府委員 ただいま委員御指摘のように、いわゆる一般条項方式、本法におきましては不正競争に当たる行為を限定列挙しているわけでありまして、したがいまして、その限定列挙されていないものでも、社会通念上不正競争になり得るようなものが規制の対象とならないから、そういうものもカバーするように一般条項を設けたらどうかという問題提起はかねてからあるわけであります。 その点につきましても、先ほど申し上げましたように、産業構造審議会の場で大変熱心にかつ慎重な御審議をいただいたところであります。これについては、積極論もあれば、消極論の両方の御意見がございました。また、国際的にも両方の対応があり得るわけであります。結論的に申し上げますと、昨年十二月に出されましたこの審議会の中間答申におきまして、今後、さらにその必要性でありますとか、あるいは導入した場合の問題点について検討を行っていくことが望ましいということで、当面はその導入を見送るということで成っているわけであります。 なお、最近いろいろな専門家の御報告もあるわけでありますけれども、一般条項を導入しておりますところのドイツにおいてその運用状況を見てまいりますと、裁判所の判断が下級審と上級審で異なるケースも多うございまして、一般条項のもとで必ずしも裁判所の判断が安定しているとは言えず、事業者の予測可能性を害しているといった弊害がいろいろ指摘されているところであります。これは、実は産業構造審議会の審議の過程でも非常に問題にされたわけでありますし、他方、我が国の法制がドイツの法制と違うとか、いろいろな専門的な理由もございます。不正行為法そのものに差しとめ請求を認めない立場をとっている我が国の法制と、それから不正行為法においても差しとめ請求を認めているドイツの法制との違いとか、そういうことも含めて、先ほど申し上げましたように、今後、勉強は続けていこう、いろいろ問題点も検討はしていこうということでありますけれども、さしあたりは一般条項を設けずに、むしろ社会通念上不正競争であるとコンセンサスが得られた行為につきましては、その都度、迅速に、機動的に本法の改正をお願いをいたしまして、そして個別条項を設けて対応していく方が、安定性と申しますか予測可能性と申しますか、それに対応できるのではないかというふうに考えて、そちらの方が適切ではないかというふうに考えている次第でございます。
○吉田(和)委員 まだその状況に達していないというふうな御見解なのだろうというふうに思います。 パリ条約では、「工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は、不正競争行為を構成する。」というふうにうたっているわけでございますけれども、一般条項を有しないというふうな我が国の不正競争防止法は、パリ条約に当てはまっているのだろうか、違反をしていることになるのではないかという見解についてはどうでしょうか。
○熊野政府委員 パリ条約は、第十条の二におきまして、基本的に三つ言っております。 第一は、「各同盟国は、同盟国の国民を不正競争から有効に保護する。」それから第二の点は、「工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は、不正競争行為を構成する。」これがただいま御指摘の一般条項ではないかというところでございます。それから第三、「特に、次の行為、主張及び表示は、禁止される。」と言っております。そして三つ挙げておりまして、競争者の産品、活動との混同を生じさせる行為、これはいわゆる混同惹起行為でございます。それから第二が、競争者の産品、活動に関する信用を害する行為、信用棄損行為でございます。それから第三に、産品の性質等について誤認を生じさせる行為、誤認を起こす行為でございます。 今申し上げましたように、第三の三つの行為の禁止については、これを最低限の義務ということで、義務としているわけであります。したがいまして、各同盟国においてこの三つは必ず守らなければいけないというものでありますが、それ以外にどのような行為が工業上または商業上の公正な慣習に反する行為、先ほど御紹介申し上げました第二項でございますけれども、それに当たるかは、それぞれの国の判断というか裁量にゆだねられているわけであります。 したがいまして、これはどういうものをそれぞれの国においてそういう行為とするかということで、一般条項を持たないということは、パリ条約の違反にはならないというふうに考えております。
○吉田(和)委員 次に、知的所有権を守る規制の態様や目的が違うものに、工業所有権法、著作権法、独占禁止法等があるわけでございます。 不正競争のこの法案の検討に入らせていただいて、それらのほかの法との兼ね合い、実態、どういうふうに運用されているのだろうかということにつきまして、私自身が大変わかりにくい状況であったわけでございます。特に、独占禁止法と不正競争防止法との関係はどのようであるか。独禁法も公正な競争を維持する上での大変大きな法でございます。これから不正競争防止法とあわせて施行される両輪として、守っていかなければならない法だというふうに考えておりますけれども、この独禁法と不正競争防止法の関係、それを伺いたいわけでございます。
○森国務大臣 お答えを申し上げます。 不正競争防止法は、独占禁止法とともに競争秩序の維持を図る法律でございます。独禁法は、カルテル、私的独占などの自由競争を制限する行為を禁止するとともに、公正な競争を阻害する行為を不公正な取引方法として禁止し、もって公正かつ自由な競争秩序の維持を図ることを目的とするものでございます。 これに対しまして、本法は、不正競争の防止により事業者の営業上の利益の保護を図るとともに、これを通じて公正な競争秩序の維持を図ることを目的といたしておるものでございます。また、目的達成のための規制手段におきましては、独禁法が公正取引委員会の排除命令等行政規制を中心とするのに対しまして、本法は事業者間の民事的規制を中心とするものでございます。 このように、不正競争防止法と独占禁止法は互いに相補って公正な競争秩序の維持を図るものでございまして、不正競争防止法の今回の改正によりまして右目的はさらに効果的に達成されるものではないかと考えているところでございます。 不正競争防止法につきましては、今後も適時適切な見直しを図りながら、独占禁止法とともに公正な競争秩序の維持に遺漏なきを期してまいりたい、このように考えております。
○吉田(和)委員 大臣の方から明確にお答えをいただきました。独禁法とともにこれからますます重要性を帯びてくる、両輪として不正競争防止法を充実をさせるというふうなお答えをいただいたわけでございます。 そのほかの工業所有権四法というのがございます。それから著作権法、それらの法との関係はどういうふうになっておりますでしょうか。
○熊野政府委員 不正競争防止法は、いわゆる特許法等の知的財産権法とともに知的財産保護の一翼を担うものでございます。 特許法等のいわゆる知的財産権法は、客体に権利を付与するという方法によりまして知的財産の保護を図るというのが基本でございます。これに対しましてこの不正競争防止法は、保護されるべき一定の事実状態を前提にいたしまして、その行為に着目して規制を行うという方法によって知的財産の保護を図っているものでございます。そういう意味で、異なる観点からいわば相補って知的財産の保護の充実を図ろうとするものでございます。 具体的に申し上げますと、本法の規定する不正競争の類型のうち、例えば他人の商品または営業と混同を生じさせる行為は商標法によっても保護されるわけでありまして、そういう意味で営業上の信用を保護するものでございますし、それから、例えば他人の商品の形態を模倣する行為、第二条第一項第三号でございますけれども、これは意匠法とともにそういう人間の開発成果を保護するものというふうになっているわけであります。 そういう意味におきまして、一般に、ある事実が法律の複数の規定、ただいま申し上げました例で申し上げますと、不正競争防止法と商標法といったふうな複数の規定の要件を満たす場合には、それぞれの規定の適用について特段の調整規定がない限りにおきましては、各規定が重畳的に適用が可能となるというのが一般的な建前でございます。そういう意味におきまして、本法と工業所有権四法等との両方の要件を満たす場合には、両方のいずれかの法律によって、その中身にもよりますけれども対応が可能であり得るということになります。
○吉田(和)委員 今度の改正で、営業者同士の問題だけではなくて、消費者保護の観点からも意義があるべきではないかなというふうに考えているわけでございます。おとり広告とか比較広告の中の悪質なものもこの法で規制をされるべきではないかというふうに思いますけれども、その点についてはどうでしょうか。
○熊野政府委員 おとり広告とかあるいは比較広告とか悪質なものかどうか、こういうことだと思います。 おとり広告といいますのはどういうものをいうかといいますと、実は不当景品類及び不当表示防止法それから同法の告示に基づきまして、公正取引委員会がおとり広告とはこういうものだというのを説明しております。三つございます。 第一に、実際には取引することができない商品または役務が広告されているもの。要するに取引することができない商品。それから第二が、実際には取引する意思がない商品または役務が広告されているもの。取引する意思がないにもかかわらず広告している。それから第三が、商品または役務の供給量でありますとか供給の時期でありますとか、あるいは供給の相手が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されてないような広告というふうになっておりまして、こういうものにつきましては公正取引委員会により排除命令等のいわば行政規制の対象になっているところでございます。 他方、本法におきましても、例えば商品の数量について誤認させる行為につきましては第二条第一項第十号に規定があるわけでありますし、それから競争者の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するような行為は、これも第二条第一項第十一号において規制の対象としているところでございます。こういう意味におきまして、先ほど申し上げましたようないわゆるおとり広告がこれらに該当する場合には、当然のことに規制の対象となり得るわけであります。 事実、既に現行法のもとにおきましても、裁判所の判決の中に、広告に表示された商品の供給量等が著しく限定されているにもかかわらず、限定されていることが明瞭に記載されてない場合に、商品の数量について誤認させる行為として民事的請求の対象となり得るものを述べたものがございます。 それからまた、販売の意思がない商品を広告に使用して、広告した商品について虚偽の説明をする行為を行った場合に、これらを一体としてとらえて、競争者の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為として民事的請求を認めた事案もございます。 こういうふうに、おとり広告に関しましては、既存の不正競争類型に該当する場合には、この不正競争防止法におきまして民事規制の対象ともなり得まずし、それから他方、最初に申し上げましたように、公正取引委員会の広範な行政規制の対象とするというふうになっていることにかんがみますと、新たな不正競争類型として位置づけるかどうかにつきましては、なお判例の蓄積あるいは取引社会の実態を踏まえつつ、今後の検討課題とさせていただきたいというふうに思っております。 それからもう一点、比較広告について申し上げますと、比較広告の中には真実の情報に基づく比較広告もございます。この真実の情報に基づく比較広告は需要者に対して商品や役務の選択の情報を幅広く提供するというプラスの面もあるわけでありますから、これを一概に規制することは適当でないわけであります。したがって、比較そのものが問題なのではなくて、内容が虚偽であったりあるいは欺瞞性がある場合には悪質であるわけでありますから、こういうものについては内容等の誤認惹起行為、この第二条第一項第十号の規定あるいは信用棄損行為、第二条第一項第十一号の規定でございますけれども、この規定によって対応していくことが可能であるというふうに考えているところでございます。
○吉田(和)委員 次に、二重価格の表示についてお伺いをいたします。 消費者も大変いろいろな情報を得ておりますので、大体価格の見方というものをわりかた正確なものを身につけているのではないかと思うのですけれども、この二重価格表示がこのごろ当たり前のような使われ方をしているところに悪質性を感じるというか、不正なのではないかというふうに思うことが本当に多いわけでございますけれども、やはり虚偽の表示であり商道徳上許されない。何らかの規制をきちっと与えるべきではないか。今度の改正法においてこの二重価格表示というものはどういうふうな扱いになりますでしょうか。
○石黒政府委員 お答えを申し上げます。 先生御指摘の二重価格表示の本法案における取り扱いという点でございますが、結論から先に申し上げますと、本法案の規制対象になるというふうに考えております。例えば、実際より高い虚偽の価格を市価として表示をいたしまして、それより安い価格を販売価格として表示をするというようないわゆる二重価格表示と申しますか、この行為は需要者をだます虚偽の表示であるという観点から、本法案の二条一項十号で規定されております品質内容に関する誤認惹起行為というのに該当するのではないかというふうに考えております。 実際、判例の取り扱いにおきましても、例えば東京高裁で五十三年に判例が出ておりますけれども、原石ベルギーダイヤモンド事件という判例がありましたけれども、そこでは市価百万円、当店販売価格五十万円というような表示で販売をしたという事例でございましたけれども、本案件につきまして高裁の判決では、二重価格表示を「需要者をだます虚偽の表示として商品の品質内容に関する誤認惹起行為による規制の対象となる」というふうに判断をしているところでございます。
○吉田(和)委員 次に、平成二年の改正で盛り込まれました営業秘密の保護について、その後の経過を伺いたいわけでございます。二年に近い経過があるわけでございますけれども、営業秘密の保護についての改正で問題点は起きていないか、しかるべき実績が上がっているかどうか、そのことについてまずお伺いをいたします。
○熊野政府委員 ただいま委員御指摘のように、平成二年に改正を行いまして、それを契機といたしまして企業におきましても営業秘密の保護の重要性ということについての認識が高まってまいりまして、例えば、営業秘密の社内管理体制の整備のために組織をつくるとか、あるいは規定を充実するとか、あるいは具体的なマニュアルを作成するといったふうな対応がなされてきているものと承知しているところでございます。 前回のこの改正法施行後、これは平成三年六月十五日に施行しておりますけれども、施行後平成五年の三月までにこの営業秘密に係る訴訟件数というのは二十七件というふうに出ております。うち二件は裁判が済んでおる、二件は和解、一件は取り下げ、残り二十二件は係属中ということのようでございますけれども、そういう状況でございます。 ただ、実態を申し上げますと、この具体的に訴訟になっているもの以上に、専門の弁護士の方等に聞きますと、訴訟にまで至らなくても、この規定を前提に当事者間の話し合いによる解決がいろいろふえているということのようでございますので、そういう意味でこの改正は経済社会の運営に役立っているものというふうに考えているところでございます。
○吉田(和)委員 大企業と格差のある中小企業、組織的にも人材面でも非常に力量の違いがある中小企業においで秘密管理という体制を十分にとるということは本当に難しいのではないかというふうに思われるわけでございますけれども、その点についてはどういうふうに経過が出ておりますでしょうか。
○熊野政府委員 平成二年の改正を機にそれぞれの企業でいろいろな対応がなされたことについては先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。 その後、特に中小企業の方々にもよく理解をしていただくために、私どももこの改正法の趣旨の周知徹底を図る努力をしてきているわけであります。例えば、解説書の発行とか全国各地における説明会の開催といったふうな地道な積み重ねも行ってきております。そういう意味で、今回の改正後も当然そういうことをやる必要はあると思っておりますけれども、そういう状況であります。 それから、中小企業との関係で、特に営業秘密がどうかということでございますけれども、中小企業におきましては、当然大企業と違って管理の仕方とかそれぞれのやり方がありますので、中小企業にとってもこの営業秘密の保護の規定というのは有効なものではないかというふうに私ども考えておるところでございます。
○吉田(和)委員 中小企業内の労務管理強化という観点で弊害が生じていないか、労働者の転職の自由をも妨げるようなことになっているんではないかというふうに懸念されるわけでございますけれども、その点についてはどうでしょうか。
○熊野政府委員 まず企業内における労務管理強化につながるんではないかというふうな御指摘だと思いますけれども、そもそも行き過ぎた就業規則でありますとかあるいは労働に関する管理規則といったものは、言うまでもありませんけれども労働基準法あるいは労働組合法その他の労使関係の基本を律する法律の問題であると認識しております。 この法律におきます営業秘密の保護につきましては、企業の有するあらゆる情報の保護を図るということではなくて、企業の事業活動の中核的な役割を担うような、生産方法でありますとか販売方法といったふうな技術上、営業上有用性を有する情報に限定して法的保護の対象とするものであります。したがいまして、営業秘密として認められるためには秘密として管理されていることが要件とされているわけであります。したがって、従業員がこの情報は営業秘密であると認識できるように特定して管理されていることが必要でございます。例えて言えば、金庫の中に保管してあるとか、したがって一般の従業員は自由には閲覧できない、そういうことでございます。したがって、その従業員に対して必要以上に漠然と広範な範囲の情報について守秘義務を課しているだけではこの営業秘密には該当しないことになります。 それから、よく言われるのは、退職従業員の行為が規制対象となって、その転職とか何かが問題ではないかということがあるわけでありますけれども、これも不正の利益を得る目的またはその保有者に損害を加える目的がある場合に限られておりますので、その目的の有無につきましては、単に営業秘密の保有者でありますところの企業側の利益のみならず、その元従業員でありました人の生活権の確保の問題でありますとか職業選択の自由といった観点からも十分に勘案されなければいけないということであります。 こういうふうに考えますので、この規定の趣旨にかんがみまして、従業員の行動の自由に不当な影響を与えるようなことは全くないと考えているところでございます。事実、法律改正後、これまでそういった意味での問題が生じたというケースは聞いておりません。 いずれにいたしましても、当省としてはこういった趣旨を常に周知徹底させる努力をしてまいりたい、その上でこの法律の適正な運用が図られるように遺漏なきを期してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○吉田(和)委員 時間が迫ってきておりますので、特にお伺いをしておきたかったことを最後に伺わせていただきます。 損害賠償についてなんですけれども、推定規定の適用ということを導入された。どういうふうな基準で、何を取り入れてその基準としたかということをお伺いをしたいわけでございます。
○熊野政府委員 一般的に申し上げまして知的財産侵害に係る損害賠償請求におきましては、その損害額の立証が大変困難でございます。そこで、いわゆる工業所有権四法でありますとか、著作権法等におきましては既に損害額の推定規定が設けられておるところでございます。現行の不正競争防止法にはこういった推定規定が実は存在しないわけでありますけれども、不正競争に係る損害賠償請求においても先ほど申し上げましたような工業所有権四法と同じように損害額の立証は大変困難でございますので、現行法のもとでは判例も苦労をしておりまして、例えば商標法等の規定を類推適用するといったふうな形で被害の実効的な救済を図る努力をしているところでございます。 今回の改正におきましては、こういった判例を明文化いたしまして、不正競争による被害者に対する救済手続の充実を図るために損害額の推定規定を入れたわけであります。
○吉田(和)委員 この改正が、文章も平仮名化されるということでわかりやすい法律に一歩近づいていくんだろうなというふうに思うわけでございますけれども、内容は大変把握しにくい。一般の人たちがどういうものの範囲でデッドコピーとされるのか、とらえ方によっては非常に難しい問題のある内容でございます。今度の改正を含めましても、積極的に周知に努めていくべきだろうというふうに思うわけでございます。その周知に向けましての決意を最後に伺いたいというふうに思います。
○熊野政府委員 ただいま委員御指摘のとおり、本法は法律的にも大変難しいところがございます。したがいまして、法律に書いてある内容について十分に趣旨を御理解いただくようにする必要性が高いと思っております。 前回の改正の際にも、解説書を発行いたしましたり、あるいは全国各地で説明会を開催したりする努力を行ったところでありますけれども、今回のこの全面改正を機に、改めて解説書も全面的につくり直して、さらにこれまで使ってきた過程でいろいろ御疑問があった点でありますとかあるいは御質問があった点等も踏まえて、内容を充実したものをつくって周知徹底を図ると同時に、本をつくるだけじゃなくて、地方にも参りまして、中小企業の方々にも関心のある方には十分御理解をいただけるように説明会を開催したり、あるいは業界団体等を通じてそういう解説のパンフレット等をできれば機関誌に掲載していただくといったふうな努力もしてまいりたいと思います。
○吉田(和)委員 ありがとうございました。終わります。
○井上委員長 安田範君。
○安田(範)委員 不正競争防止法についてお伺いいたしますが、その前に、せっかく大臣御出席でありますので、ちょっと離れた形で若干今日の政府の方針あるいはまた通産省としての考え方についてお伺いをしておきたいと思うのです。 御案内のとおり今日冷戦構造が崩壊、解消したというような状況で、世界的にも大変な変動の時期を迎えているわけでありますし、同時にまたそれは国際的な問題だけではなしに、我が国におきましても大変な影響と申しまするか、体制そのものについてもいろいろと振り返ってみなきゃならない、あるいは見直していかなきゃならない、こういうものが非常に多く出てきているのが今日の状況だと思うのであります。 そこで、基本的な問題でありますが、一つは、冷戦構造の解消ということについての認識と、これについての評価ですね。 もう一つは、これに基づいて起こってまいります日本の対処すべき方向とでも申しましょうか、産業のかかわりなんかも含めてどのようなお考えを持っておられるか、こういうことについてお聞きをしたいわけでありますが、特に重要な部分といたしましては、世界は冷戦解消の中でとりわけ際立って軍備の縮小という流れが非常に強いわけです。そういう軍備の縮小の流れに基づきまして、我が国におきましてもそれと同じような形でいろいろな意味で防衛力の縮小等についても運動すべき必要があろう、かように私ども考えているわけでありますけれども、これらにつきまして、大臣、どのような所感をお持ちか、最初にお聞かせいただきたいと思うのであります。
○森国務大臣 お答えを申し上げます。 今安田委員から御指摘ございましたように、最近の国際情勢には大きな変化が生じておりまして、特にソビエト連邦の解体によりまして東西冷戦が名実ともに終結したことの結果といたしまして、総じて言えば好ましい方向への流れがさらに進行しつつある、このように認識をいたしております。しかしながら、国際情勢は現在も変化を続けているところでございまして、不安定性及び不確実性に特徴づけられた新たな時代にあっては、これらの変化を今後なお慎重に見きわめていくべき状況にあろうか、このように考えております。 御質問が幾つかございましたけれども、例えば通産省としてはどのようにこの事態に対処すべきかというような御質問も一つございました。委員御承知のように、先般、東西貿易・産業・経済大臣会合というものを東京で、昨年のドイツのミュンスター会議に続いて開かせていただきました。御承知のことでございますが、G7の通商産業大臣、それから従来のロシアを初めとしてのいわゆる計画経済の中にありました東欧の諸国、そういう国の経済あるいは産業担当大臣においでをいただきまして、その経済改革につきましていろいろと議論をいたしたわけでございますが、そうした国々もやはり戦後の日本のこの発展といいましょうか、復興といいましょうか、このプロセスに非常に関心を持っておられました。 わずか四十年か五十年の間にこれだけの経済発展をしたその秘訣は一体何だったのであろうかというようなことなども大変な御関心ぶりでございましたけれども、端的に申し上げて、やはり中小企業を中心とする産業の育成を進めてきたこと、あるいは従来の軍需工場的なものを民間の企業に育成をしてきたこと、そして無資源国の我が国が外国から資源を求めそれに付加価値をつけて海外に輸出をしていったことなどを、これからの自分たちの行くべき一つの方向として参考にしたいということを各大臣もおっしゃっておられました。 もちろん我が国だけでできることではございませんけれども、戦後の我が国の今日の繁栄というのは多くの世界の国々の援助あるいはいろいろな意味でのお手伝い、お手助けもあったというふうに我々は考えておりますだけに、通産省としてはこうした国々の経済繁栄のためには、ミクロ的な手法が主体的だと思いますし、もちろん相手の国の要望があるということが前提でございますが、そうした自助努力に対しましてお手伝いをしていくというのが、今のこの安定した、冷戦構造が崩壊をしたこの世界の国の安定した秩序をつくっていく上において我が省の果たし得る大事な役割ではないか、私はこのように認識をいたしておるわけでございます。 もう一点、軍縮の御質問がございましたけれども、自衛隊の規模等を規定をいたしました我が国の防衛力整備の指針でございます防衛計画の大綱は、独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を整備しようとするものでございまして、このような状況のもとに、かかる大綱の基本的な考え方は今日もなお妥当であるというふうに認識をいたしております。したがいまして、現在直ちに大綱を見直しまして防衛力整備目標そのものを変更する段階までには至っていないと考えております。 いずれにいたしましても、我が国の防衛力のあり方につきましては、国際情勢の変化をも踏まえまして引き続き精力的な検討を行いまして、現中期防衛力整備計画期間中には結論を得ることといたしておるところでございます。
○安田(範)委員 今答弁の中で、中期防、五年間で二十二兆七千五百億円、こういうことで予定をされているわけでありますけれども、東西冷戦の解消ということと世界の軍縮の潮流というものを考えてみた場合には、やはり日本自身も、局地的な問題は別にいたしましても、一つの潮流として、これについては厳粛に受けとめる必要があろう、かように思います。 そういう中で、とりわけ日本の産業構造という立場から考えまして、御案内のように総額で二十二兆七千五百億という話なのですけれども、その中におきまして多くの防衛産業というものが成り立っているわけですね。この防衛産業も、財政難等もありますから、そういうことを含めて逐年削減の方向、大体五千億とかあるいは七千億とかいう形で出ておるのです。 これは将来にわたりまして日本のあるべき方向というものを考えてみた場合には、自衛力の縮小というものはやはりどうしても国民的な要求、要望ということになってくるのではないかと思います。これに合わせた形で、周辺に特に紛争等が起きれば別な話かもわかりませんけれども、今日の状況ではなかなかそういうことは考えにくい状況があると思いますし、とりわけ日本がどこからか攻撃されるということは大変想像しにくい、こういうこともあろうと思います。そういう意味におきまして、国民の志向といいますか、考え方のレベルとしましては、やはり日本の自衛力の縮小、こういうことも相当強い要求であろう、こう思うのですね。 そういう面で考えますると、今まで防衛産業ということに相当力点を置いてやってまいりましたそれぞれの企業、これも当然質的な転換を図っていかなきゃいけない、言うならば産業構造の転換ということになろうかと思うのですが、こういうことについて、幾つかの資料なんかもありますけれども、相当シビアに企業は見ておりますね。 そういう面からしまして、通産省としましても、やはりそれぞれの企業の、特に今日まで防衛産業を主軸に置いた企業、こういうものが防衛産業から民需産業へ転換をする方向に相当の支援というか、ある意味での協力体制、そういう指標なんかもつくりつつ、民需への転換が容易にできるような方向、こういうものを示唆する必要があるのではないか。 とりわけそれぞれの企業には、御案内のようにそれぞれ従業員がたくさんおるわけですね。そういう面からしますると、やはり雇用の問題も当然かかわってまいるわけであります。そういうことも考えまして、やはりもうちょっと通産としましてはこれらの問題について真剣な、積極的な取り組みというものがあっていいのではないかというふうに思うのですが、まだそれらのことについて残念ながら耳にしたことがないものですから、これらについて、もし当面考えていることがあったり、あるいは既に何かやってまいったということがありましたら、ひとつお知らせをいただきたい、かように思います。
○森国務大臣 我が国におきましては、防衛産業の全工業生産額に占めます比率は、委員御承知だと思いますが、○・五七%という数字でございまして、諸外国と比べまして小さい。また、主要関連企業におきます防衛部門の売り上げの割合も、平均約三%という低い数字にとどまっております。 したがいまして、我が国の防衛力のあり方につきましては、国際情勢の変化をも踏まえまして、引き続き精力的な検討を行っているところではございますが、我が国におきましては、防衛力整備の水準の増減が我が国経済全体としての産業構造、雇用に与える影響は極めて限られたものにすぎないのではないかというふうに考えております。 ただ、今委員から御指摘ございましたように、企業ごとにとりましては、やはりかなりのウエートを示している企業も個々にはあるわけでございまして、これにつきましては当然企業の自助努力あるいは構造の改革の努力もしていただかなきゃなりませんし、それにつきまして我が省としてもいろいろな形で御支援を申し上げていくということは、委員からのお話のとおりであろうというふうに考えております。 ただ、例えば、従来航空機産業などにつきましては、民間航空機に関する研究開発に対しまして、これに参加いたしますように積極的な助成もいたしておりますし、またこうした航空機産業が海外の航空機産業と一緒になって共同開発、共同研究なども進めているところでございまして、こうしたことに積極的に我が省としても助成をしてまいりました。こうした助成は航空機産業の民需開拓のまた一助にもなっている、このように考えておるところでございます。
○安田(範)委員 大臣、ただいま、外国に比較をしますると防衛産業はそれほど大きくないよという話がありました。防衛費全体についても多くないというふうな御指摘があったのですけれども、しかしそうは言いつつも、国内の産業、企業、こういうものの中身を見ますると、なかなかそういう言葉だけで整理をするわけにいかないような気もしているわけであります。 と申しますのは、これはちょっと前ですが、報道されたものがあるんですが、「防衛産業の主な分野別売り上げ見通し」ということで、例えばこの報道にあります企業名としましては、日本製鋼、これは九四年度には九一年度に比較をして四四%減になるだろう、こういうふうなことを予測しているわけですね。ダイキン工業、これは弾薬なんかをつくっているところなんですが、これは九四年度に、九二年度に比較して四%減、さらにまた誘導武器(ミサイル)、三菱重工や三菱電機、東芝、川崎重工、これらにつきましても九四年度には九〇年度に比較をいたしまして、九四年度というと来年度ですね、これで四五%減であろう、こういうふうなことを見通しておるんですね。 その他ありますけれども、こういうような形で考えますると、その企業の中におきまして今まで受注されたものと比較をしますると大変な受注減だ、こういうような状況でありまして、特にこれは企業主だけではなしに、そこに働いている労働者としましてもこれは相当強い関心を持っている、こういう状況であります。 別に兵器産業、そのまま持続をしようということではありませんよ。この点は誤解されては困るのでありますが、とにかく軍縮というものを土台に置いて考えてみた場合には、当然の成り行きとして三〇%とか四〇%の受注減になるであろう。こういうことが予想される場合には、防衛産業を質的に転換をして民需の方向でそれらをカバーしていく、こういうことが必要になってくるんじゃないかという考え方が持てるわけですね。 したがって、そういう面からしますると、やはりそれは企業努力でせよということで、企業に全部お任せ、努力をしなさいということだけで済むのかどうか。これはやはり雇用の問題も含みますから、そういうことを含めていかにして円滑に民需の方に移行してまいるか、同時にまた、日本経済の成長のためにどう役立たせていくか、こういうことも極めて重要であろうと思うのですね。 こういう面をひとつ考慮に入れまして、大臣の先ほどの答弁では、軍縮というものが、言うならば期待できるのかどうかわからないような内容の答弁だったものですから、私の方でそういうことを期待するのは無理がどうかわかりませんけれども、しかしやはり今日の国民的な一つの考え方を基礎とすればそういう方向というものをやっていく必要があろうし、特に世界全体の流れということを考えてみた場合には、率先して日本もその方向で踏み出すべきであろう。 こんなことを考えますると、やはり民需への転換、これについては通産としても積極的に行動してまいるということが求められていると思うのでありまして、これは大臣ないしは通産の担当の方、どなたでも結構ですけれども、所感があればこの点についてお聞かせをいただきたいと思うのです。
○森国務大臣 私が先ほど御答弁をさせていただきましたのは、全体的な、全工業生産額に占めます比率ということで○・五七%でございます、あるいはまた主要関連企業におきます防衛部門の売り上げの平均ということで三%と申し上げたので、日本の全産業に対しての影響というのは他の国と比べて比較的安定をしておるといいましょうか、直接の影響はない、こう申し上げたわけです。ただし私はまあ企業名は申し上げませんでしたけれども、個々の企業別に見ますと、今委員からも個別的にお話しになったとおり、かなりのウエートを占めているという企業はございます。この点については、先ほど申し上げましたように、十分通産省としても民需転換に対して支援をしていくということは当然のことでございます。 ただ、国としてこういうものを買い付けましょうとか特定の企業に云々ということは、これはやはり政府としてはとらざる立場でございますので、やはり基本的には企業の自助努力あるいは構造改革の努力に対して、通産省としてもいろいろな形で支援をしていくということは極めて当然なことだ、このように申し上げたわけでございまして、その点は委員考えておられますことと全く違っていないというふうに私は考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。 具体的に、何か細かなことでしておることを申せということでございましたら、事務当局からお話をさせたいと思います。
○安田(範)委員 ただいまの話で大体理解はつくわけなのです。 ただ、そういう中で特に航空宇宙産業の分野については、やはり相当な転換をしないといけないのじゃないのかな、こういうような印象を受けております。これらにつきましては、いろいろ関係企業なりあるいはその労働団体等々でも相当の検討を進めているようであります。特に戦闘に必要な、言うならば戦闘機とかそういうものじゃなくて、今日政府でも大分考えに入れているような気配は出てまいっておるようですけれども、超大型輸送機の開発あるいはまた超音速輸送機の国際共同開発、こういうようなことについても、企業、労働者一体になって、民需という意味で十分今後模索をして、模索というよりは具体化をしていかなきゃいけないというような方向が出ておるようであります。こういう面についても、具体的な問題で恐縮なのでありますが、いろいろと今後検討される必要があろう、こういうふうに一つは思います。 さらには宇宙、特に航空エンジンの関係ですが、この開発の助成、こういうものについてもやはりやる必要があるのじゃないかなというふうないろいろな議論も出ております。さらにはまた航空機、衛星、ロケットの開発、これに必要な大型風洞試験の設備、こういうものもなかなか企業単独ではという話が相当強くあるようでありますから、こういうこと全般にわたりまして、今日までの防衛産業から民需への転換、こういうきめ細かい一つ一つの分野についてさらに細かく検討されつつ、適切な対処をされたいというふうに、私は漠然とですけれども感ずるわけなのです。こういうようなことについて、局長ですか、御答弁をいただければと思います。
○熊野政府委員 先ほど来大臣からお答えしたとおりでございますけれども、若干補足をさせていただきます。 まず、個別の企業で申しますと、企業によっていろいろ違いはあると思いますけれども、先ほど委員の方から御指摘のありましたような企業でも、防衛関連の売上は企業全体から見れば大変小さいところもございます。それから、かなり比率が高いところもございますけれども、またそういう企業においては大変広範な仕事をやっておられるわけであります。もちろん防衛産業関連のものもございますけれども、極めて幅広くやっておられるわけであります。したがいまして、やはり基本的には、その全体の経済発展、それから新しい製品をつくっていく努力とかそういうことの中で、いろいろ問題が解決されていくというのが基本ではないかというふうに思うわけであります。 他方、ただいま御指摘のありました航空機とか宇宙につきましては、必ずしもただいま委員が御指摘になったそういう観点だけではなくて、従来からその重要性にかんがみまして、例えば航空機産業につきましては、研究開発についての助成をいろいろやってきているわけであります。あるいは国際共同開発についてのいろいろな助成をやってまいっておりまして、委員既に御存じだと思いますけれども、航空機の国際共同開発促進につきましてはV2500という、これ社民間航空機用のジェットエンジンの開発でございます。あるいはB777ということで、次期大型民間輸送機の開発についても助成をしているわけであります。あるいは、次期の中型の民間輸送機につきましてもYXXという格好で、これはまだ始まっておりませんけれども、予備作業等々をやっております。それからさらに、うんと将来ということで、超音速輸送機につきましてもいろいろな助成措置あるいは国際的な共同開発、エンジン、その材料等についての調査をやっているところでございます。 それから宇宙関係につきましても、これは従来からやはり航空機とは別の体系で、いろいろ科学技術庁とも協力をしながら、あるいは宇宙開発事業団とも協力しながら、通産省としてもその開発のために必要な助成をやってきているところでありますけれども、今後ともそういう観点で、最も将来性のある、あるいは先端的な産業であり、かつ国際共同開発が世界的にいわば常識になっている世界でございます。そういう世界について、できるだけ我々もバックアップをしていきたいというふうに考えているところでございます。
○安田(範)委員 これが主題でありませんからこの程度にいたしますけれども、ただいまの航空宇宙産業の売上規模など大体一兆円と言われているのですね。その中で防衛産業は七五%という数字も出ておるのです。民需が二五%ですね。そういう面も考えますると、やはりこれからの日本の産業構造というものについて相当深く、真剣に検討する必要があろう。とりわけ申し上げておきたいのは、大体一千億ドルの黒字というのは通常ベースになってしまっているわけですね。これがほとんどの経済摩擦の基盤になってきているということから考えますると、日本の経済構造全体がもう一遍見直されるべき時期に来ているのだろう、こういうようなことも考えますが、きょうはこの程度にいたしておきます。 改めてまたこの辺について議論をいたしたいと思うのですけれども、ぜひ、ただいま申し上げましたような関係、とりわけ防衛産業から民需へ、そしてその基礎はやはり軍縮の方向、こういうものを強く主張しておきたいと思いますから、これについてはひとつ理解をしていただきたい、かように申し上げておきたいと思うのであります。 大臣、何かもうそろそろ時間ですから結構ですよ。 それで、不正競争防止法の関係に入らせていただきたいと思うめであります。 一つは、今回の改正、もう何遍もお話がありますように、昭和九年に制定をされた。特に、パリ条約を一つのきっかけにして、三回ほど途中改正をされまして、今日また大改正という時期を迎えているわけでありますけれども、率直に言いまして、大改正といいましても片仮名が全部平仮名に変わったということ、これはまさに大改正に違いないのですが、その他新たに三つの規定が盛り込まれた、この程度であろうと思うのですね。 そういう中で、一つはっきりさせておきたいと思いますのは、今回の改正でおおむねこれは国際的に大丈夫、言うならば、ハーモナイゼーションといいますか、そういう国際協調はこれで大丈夫ですよというふうな自信が持てる法律になったのかどうか、国内においてもこれで実効が上がるよ、そういう形の整備がなされたのかどうか、この辺についてひとつ所信のほどをお聞きしておきたいと思うのであります。
○熊野政府委員 ただいま安田委員の御指摘にありましたように、この不正競争防止法をめぐる国際的枠組みといたしましては、いわゆる工業所有権の保護に関するパリ条約があるわけであります。このパリ条約上の義務は既に満足するものになっているわけであります。 それから第二に、現在交渉中のガット・ウルグアイ・ラウンドのTRIP協定におきまして営業秘密の保護というものが義務として取り上げられているところでございます。御案内のようにまだウルグアイ・ラウンドは終了していないわけでありますから、そういう意味でまだ国際約束になっているわけではありませんけれども、いわば先進各国の法制等も踏まえまして、平成二年の改正によって既に営業秘密の保護を導入して協定の発効に先駆けたものとして対応を図ってきているわけであります。さらには、WIPOにおけるハーモナイゼーションの動きもいろいろありますけれども、この中身はいまだ固まっているものではありませんけれども、今回の改正に当たりましては、当然のことながらハーモナイゼーションの具体的内容に影響を及ぼすであろうところのアメリカあるいはヨーロッパの先進国におけるいろいろな法制等を参考にいたしまして法制の整備をさせていただいたわけであります。 そういう意味におきまして、諸外国の法制、国際的な枠組み等、あるいはその枠組みの今後の動向等を十分に勘案したものでございますので、国際的に見ても遜色のない、十分に整備されたものの一つになっておると思います。もちろん、今後におきましていろいろさらに国際的なハーモナイゼーションの中身が進んでまいりまして、我が国の法制上不備が出れば当然それについては迅速に機動的に対応していきたいというふうに考えております。 それから、国内の状況につきましても、いろいろ判例等で努力をしていただいて、立法的に対応した方がいいようなものを全部洗い直しまして、産業構造審議会における専門家の方々に集まっていただいて、それらの御議論を踏まえて新しい類型等をつけ加えさせていただいたわけであります。また、法文上も平仮名化によってできるだけわかりやすくというふうに努めたつもりでありますけれども、必ずしもまだ決してわかりやすい法律ではないという御指摘もそのとおりだと思いますので、私どもとしてもできるだけわかりやすい解説書をつくったりして国民の皆様に御理解していただくことが大切であろうというふうに思っております。
○安田(範)委員 今局長から話がありましたように、わかりにくいといいますか、なかなか難しい、判断しにくい法律だ、こういう内容があると思うのですね。その典型的なのが「模倣」という言葉なんですね。 「模倣」とは何ぞやという話になるのですが、どの程度までが模倣なのか、非常に判断に苦しむ内容であります。この程度ならば模倣でない、この程度ならば模倣ですよという一つのガイドラインといいますか、そういうものがあるのかどうか、できるのかどうかという問題ですね。これは最終的には裁判所が判断するのですよという話になろうかと思うのですけれども、しかし、裁判所に判断しろといったって、それ以前の問題として今お話しのように中小企業とかその他の事業者にいろいろPRしますよ、そういう話のある中で、極めて不透明な、不明確な模倣という内容、これはちょっと私どもも理解しにくい内容でありますが、一つはこの模倣の問題ですね。 もう一つは、「著名」ですね。これも御案内のように、お話も随分あったと思うのですが、ドイツにおいては七、八〇%が理解をしているといいますか、そういうことならばこれは著名だという一つの尺度ができているようなんですけれども、なかなかこれも一般の事業者、私ども市民という立場の中におきましてこの著名というものが、これは著名か、これは著名でないのかという判断がつきかねる、こういうような状況もあろうと思うのですね。この辺については裁判所の判断を待つ前、裁判所の判決を得る前の段階としてどういうふうにきちんとした理解をすればよろしいのか。この辺について若干説明をいただきたいと思うのであります。
○熊野政府委員 「模倣」というのがどういうことかということについてまた御説明しますと非常に法律的な説明になって大変恐縮だとは思うのですけれども、主観的な要件と客観的な要件がございまして、主観的な要件というのは、やはり模倣の意図があること、それから客観的な要件というのは、要するに形態が同一であるというふうなことになろうかと思います。結局、御指摘のように判例の積み重ね等に頼らざるを得ないわけでありますけれども、典型的な判例にもあります例を一つ申し上げますと、木目の化粧紙、こういう木目のものをそのままデッドコピーをしたようなケースは、これは明らかに意図もあるし、それからただいま申しましたように全く同じものでございますから、そういうふうに模倣の典型例ではないかというふうに思います。 それから、意図についてはなかなか難しいのでありますけれども、実際にはその商品が、市場で既に原告が私はこういう商品を流通させていますよというようなことで宣伝広告したりあるいは流通しているようなときには、いわば模倣した被告側の主観的な要件が推定されるのではないかというのが判例の考え方でございます。 それから、もう一点お尋ねのございました「著名」でございますけれども、「著名」というのは、実は第二条第一項第二号におきまして著名表示の無断使用を規制しているわけであります。これはどういうことかといいますと、混同が生じてない場合でありましても使用者から差しとめを認めようということでございますから、逆に申し上げますと、相当の注意を払うことによりまして通常の業務であればそのような表示の使用を避けることが可能な程度にその表示が知られていることが必要であるというのが基本的な考え方でございます。そこで、結論的に申し上げますと、「著名」というのは単に広く認識されている以上に、具体的に申し上げますと全国的に知られているものでなければならないというのが「著名」ということの考え方でございます。これは実は既に商標法に「著名」という言葉の用語例がございまして、その商標法の「著名」というのはそういう全国的に知られていることである、全国的なものでなければならないという東京高裁の判決が、昭和五十六年の判決でございますけれども、判例でも明らかにされておりまして、そういうふうに確立をされた概念になっているところでございます。
○安田(範)委員 くどくは申し上げませんけれども、やはり法律は国民全体が十分に理解ができるものでなければならないし、特にこの法律に直接かかわるような事業者あるいは個人にしてもそうですけれども、やはりわかりやすく納得ができる、こういうものでなければならないことは当然だと思うのですね。したがって、そういう観点からいたしまして、ただいまの「模倣」なりあるいは「著名」の問題等についても、判例や何かありますから背景というものはしっかりしているというふうに思いますから、それはそれで結構ですけれども、それをやはりきちんとみんなにわかりやすく、国民にわかりやすくしっかりと啓発行為をやってもらいたい、かように考えて申し上げておきたいと思うのであります。 それともう一つは、パリ条約の一般条項の関係なんですけれども、さっきも質問があって答弁をされました。一般条項を採用するかしないか、盛るか盛らないかについては積極論、消極論があってというような答弁もお聞きをいたしたところでありますけれども、これはこれからの経済情勢というものは非常に変化が多いわけですし、同時にまた市民、国民のニーズも多様多岐にわたるというようなことからしますると、いろいろなものが新しくできてくる要素というものがあるわけですね。 そういう面からしますると、新しい類型と申しますか、そういうものもどんどん出てくる、こういうことを考えますると、やはり一般条項というものがあった方が即対応できるというようなことがあって、私としてはこれはやはり盛り込むべきではなかったのかな、こんな印象を強く持ったわけでありますけれども、これについてはさっきからの答弁もずっとお聞きをしておりますのでその域は出ないと思いますから、今後の問題として十分に御検討、とりわけ勉強するという話がありましたね、そんなことを踏まえて一層検討されたいということだけ申し添えておきたいと思うのであります。 時間が大分なくなってしまいましたものですから、次に、不正競争防止ということについてはハーモナイゼーションで、まあハーモナイゼーションということになれば世界各国共通のという意識が基盤になると思うんですね。 そういう面からしますると、日本の製品、商品、そういうものが外国で模倣される、国内法ですから国内の不正競争にしかこの法律は適用されないことになりますけれども、それが時には輸入される、輸入されればそこで法に抵触をするという状況になるのですが、輸入以前の段階で、やはりそれぞれの国の中でいろいろな形で模倣されるということもあり得るんじゃないかと思うのです。あるという話も聞いております。 実は、時間があればそういう実態などについてもお聞きしたいのですけれども、時間がありませんから割愛いたしまして、このことについて、外国で日本製品、日本商品等の模造、こういうもの等については、これはやはり特に途上国と申しまするか、あるいは中進国なんという言葉も使いますが、そういう中での商品の模造というものがないような形で、国際的なお互いの倫理性といいますか、そういうものをしっかりと確立していく必要があるんだろうというふうに思うのです。 そういう面で、実情としてはあるという話を聞いておりますけれども、これについてそれぞれの国々がお互いにしっかりした倫理観なりあるいは道徳観というものを確立してもらう、こういうことについての日本政府としてのしっかりした努力が必要なのだろうというふうに思いますが、この点はいかがですか。
○石黒政府委員 お答えいたします。 不正商品問題、特に発展途上国を中心にしまして、日本商品のデザインを模倣するという問題について、どう取り組むかということでございますけれども、御案内のように、我が国の商品のデザイン水準や技術レベルあるいはブランドイメージというのが大幅に向上いたしてきた関係から、最近そういう我が国商品なりブランドが海外企業から模倣、盗用されているというのが目立っているというふうに事実認識として考えています。したがって、これはまず実態調査ということも必要でございますので、いろいろ実態調査はいたしておりますけれども、それを踏まえて具体的にどういうことができるかということでございます。 第一義的には、知的財産の侵害に対してはやはり企業が、知的財産権者みずからが保護する、守るということで、外国におきまして著作権をとるとか商標権をとるとかいうことによって、みずから守るということが必要なわけでございますが、諸外国の法制が必ずしも整合がとれていないという観点もございます関係上、そういう国に対しましては、そういう法制ができますように、いろいろ各国協議の場におきまして、あるいは民間レベルでもそういうことで法制の整備あるいは作成方を強く要請しておるところでございますし、またその作成に当たりまして、いろいろ協力をするという形によりまして、その実効を上げているところでございます。 今後ともそういう観点で、不正競争の防止、不正商品の防止という観点に力を入れて努めてまいりたいというふうに考えております。
○安田(範)委員 時間が参りましたものですから、これで終わりますけれども、この法案は参議院先議でありまして、参議院の議事録もずっと読ませていただきまして、問題点がないわけではない、こういうふうな印象も受けてはおります。 いずれにしましても、これからも世界各国にあって、世界の調和といいますか、そういうものはもちろん大切にしなければいけませんし、それに合わせた形で日本の法律というものを整備していかなければならない。同時にまた、それぞれの知的所有権の保護ということについては、もちろん極めて重大なものですから、これについても、外国からちょっと何か侵害されても物が言えないというようなことであっては困りますから、そういうことも含めて、これからもなお一層法律の充実のために努力をしていただきたいということを申し添えて、終了させていただきます。 ありがとうございました。
○井上委員長 遠藤乙彦君。
○遠藤(乙)委員 不正競争防止法案に関しまして質問を進めます。 この不正競争防止法は、知的財産法の重要な一翼を担う法律と承知をしております。高度に発達した経済社会においては、発明、デザイン、ノウハウあるいは芸術作品等、人間の知的創作活動の産物である無形の財産、いわゆる知的財産の保護が重要な課題となっておりまして、各国において、この特許とか商標、意匠、著作物等を法的に保護するための制度が整備されているところでございます。 しかしながら、現代における経済活動のボーダーレス化という状況にあって、知的財産の保護は一国だけで完結するものではないということでございまして、国際的に調和のとれた保護制度を各国が整備していくことが重要であると考えるわけです。 そこで、最近の日米特許摩擦に見られるような問題も、根底には、それぞれの国における知的財産保護制度の違いが国際的な摩擦の原因となっている面があるわけでございまして、国際経済社会の調和のとれた発展という観点からも、知的財産に関する法制度についても、いわゆる国際的ハーモナイゼーションを進めることが極めて重要であると考えるわけでございます。本法案においても、国際約束の的確な実施を目的の一つとしておりまして、この流れに対応するものと考えるわけでございます。 そこで、まずお聞きしたいわけなんですが、この法案と不正競争の防止をめぐる国際的枠組みの関係はどうなっているのか、この点につきましてまずお聞きしたいと思います。
○熊野政府委員 まず、不正競争防止法についての国際的枠組みの根幹をなしますものは、工業所有権の保護に関するパリ条約でございます。このパリ条約において、不正競争からの有効な保護を付与すべきことが規定されておりまして、具体的に申し上げますと、競争者の産品あるいは営業所と混同を生じさせるような行為、いわゆる混同惹起行為でございます。それから、競争者の信用を棄損する行為、信用棄損行為、第三に産品の性質等を誤認させる行為、こういった誤認惹起行為、これらが最低限の義務としてパリ条約に規定されておりまして、現行不正競争防止法においてもこれらの義務は基本的に満足するものになっております。 それから、最近の動きといたしまして、ガット・ウルグアイ・ラウンドでなおいろいろ議論が続けられているわけでありますけれども、いわゆるTRIP協定の中で知的財産権の問題が扱われております。その中に営業秘密の保護の規定がございまして、これにつきましては、既に平成二年の本法の改正によりまして、営業秘密の保護を導入しているということで、TRIP協定の発効に先駆けて対応を整備させていただいたところでございます。 さらには、ガットの議論と並行いたしまして、世界知的所有権機関、通称WIPOという機関におきましても、昨年来いろいろ不正競争防止法についてのハーモナイゼーションの議論がされているわけであります。この議論の中身はまだ具体化はしておりませんけれども、当然のことながら、各国における法制の現状等を踏まえまして、中身のハーモナイゼーションを図っていくことになるわけでありますから、今回の改正におきましても、私ども、各国の法制の動向等を踏まえまして、それに対応できるようにしたつもりでございます。 もちろん、今後その動向のいかんによっては、この法案で必ずしも十分でないことも出てくれば、それに対応する必要もありますし、必ずしも国際的な動向だけではなくて、国内のいろいろな経済社会の動きに対応しても、あわせて努力をしていく必要があろうというふうに思っております。 〔委員長退席、安田(範)委員長代理着席〕
○遠藤(乙)委員 この不正競争防止法に関しましても、国際的なハーモナイゼーションの動きがあるとのことですけれども、今後不正競争の防止にかかわる制度のハーモナイゼーションに当たりましては、積極的にこれに参加をして、リーダーシップを発揮していくことが重要であると考えるわけです。そのためには、我が国不正競争防止法が、国際的に見ても各国を納得させるような整備された内容であることが必要であると考えるわけでございます。 そこで、今回の改正を踏まえまして、我が国として、不正競争防止法の国際的ハーモナイゼーションに向けてどのように取り組んでいくつもりなのか、方針をお伺いしたいと思います。
○熊野政府委員 知的財産権制度というのは現代の、技術が大変進歩した社会においては非常に重要な、いわば経済活動の一つの制度的な基盤をなすものであるというふうに考えられているわけであります。したがいまして、いわゆる工業所有権四法でありますとかあるいは著作権法と並んでこういう不正競争防止法というものも知的財産法制度の一環として大変重要であるし、しかもそういう経済活動が国際的に非常にボーダーレスということで、国境を越えて入り組んで行われているわけでありますから、できれば、できるだけハーモナイスされたものが必要なわけであります。そのことが事業者にとってもむしろ公正な競争が確保されて、経済発展に資するということになるわけであります。 そういう観点から、国際的にもガットにおいて、いわば単に商品の波打ち際における貿易だけではなくて、まさに国内の制度でありますところのそういったものまでハーモナイスをしようという努力が行われている。わけてあります。あるいは、もともとそういう知的所有権を専門にしておりますWIPOにおいてもいろいろな観点からハーモナイゼーションの努力が行われておりまして、そういうものに我が国もこれまでも積極的に参加をしてきております。 それから従来から、先ほど申し上げましたように、例えば営業秘密については国際的な動向あるいは各国の法制を参考にいたしまして既に手当てをしていただいたところでありますし、あるいは今回の改正を整理させていただきました暁には、そういうものを踏まえて、我が国の法制はこうなっているということで、各国に対する働きかけ等も積極的にやっていって、国際的なハーモナイゼーションの取り組みに我が国としても積極的に参加していく基盤ができるのではないかというふうに考えているところでございます。
○遠藤(乙)委員 近年の経済のグローバル化という傾向にかんがみますと、外国企業と我が国企業が訴訟を行うことも大いに考えられるところだと思います。例えば、我が国の企業がアメリカにおいてアメリカ企業のトレードシークレットを侵害したような場合、どういった法令が適用され、どこの裁判所に訴えられるのか、こういった点につきまして御説明をいただきたいと思います。
○熊野政府委員 お尋ねのように、それぞれの国がそれぞれ独自の法律を定めておりますので、その法律はハーモナイスされているといっても、当然内容は異なっているわけであります。 ただいま委員が例に挙げられましたように、我が国の企業がアメリカにおいてアメリカの企業からトレードシークレット、例えばそういうことを侵害したような場合にどうなるかというケースで御説明をさせていただきますと、日本とアメリカの不法行為とかあるいは不正競争の防止に関する法律の内容というのは異なっておるところがあるわけであります。 そこで、二つの問題が出てまいります。一つは、どこの国で裁判を行ったらよいかというのが第一の問題でございます。それから第二の問題は、事案に関係する国のうちのいずれの国の法律で判断したらよいか、つまり裁判所はどこか、法律はどこの法律がという問題が出てくるわけであります。 それから、今事例として取り上げましたような、アメリカの企業が日本の企業を訴えるというようなケースにおいては、一般的には、アメリカの企業としてはアメリカの裁判所に対して提訴をするというのが通常だろうと思います。しかしながら、被告が日本企業でありますから、もしアメリカの企業がそうしようと思うならば、被告の所在地であります日本の裁判所に提訴することも制度的には可能でございます。 それから、適用されるべき法律でございますけれども、不法行為につきましては、不法行為が行われた地の法律を適用するという原則がございます。行為地法主義の原則と言っておりますけれども、したがいまして、ただいまのような事例で申し上げますと、アメリカでそういう不法行為が行われたということになりますと、アメリカの法律において判断されるということになろうかと思います。
○遠藤(乙)委員 この改正法案を見ますと、現行法第三条の外国人の権利能力に関する規定が見当たらないわけですけれども、我が国におきましては、パリ条約の加盟国の国民または国民とみなされる者以外は本法に基づく訴えを提起できないこととされていたわけですけれども、外国人の権利能力に関する規定を削除した理由はいかなるものか、この点につきまして御説明をいただきたいと思います。
○熊野政府委員 外国人の権利能力につきまして、民法第二条が一般的な原則を定めているわけでありますけれども、それによりますと一内外人平等主義を採用しております。ただし、法令または条約によって例外を設けることを認めているわけであります。この例外を認めていることを受けまして、現行不正競争防止法第三条におきまして、実はパリ条約の同盟国民または準同盟国民にのみ権利の享有を認める、いわゆる相互主義を現行法は採用しているところでございます。 しかしながら、不正競争防止法は本来民法の不法行為法の特則と位置づけられるものでございます。したがいまして、本則でありますところの不法行為法が実は内外人平等に不法行為からの救済を認めているわけであります。 そこで、こういうことを考慮いたしますと、不正競争防止法において外国人の権利の享有について制限を設けることは適切ではないのではないか、むしろ内外人平等に権利を与えることの方が本則との兼ね合いにおいても適切であるというふうに考えまして、この改正法案におきましては、不法行為法と同様に内外人平等取り扱いということで、パリ条約の同盟国の国民または国民とみなされる者以外は本法に基づく訴えを提起できないとする現行法の規定は削除したわけであります。そういうことで、内外人平等主義を鮮明にしたということでございます。
○遠藤(乙)委員 この第二条第一項第一号には、「需要者の間に広く認識されている」という要件が置かれているわけでございますけれども、これは具体的にだれにどの程度知られていれば足りるのか、これにつきまして御説明をいただきたいと思います。 〔安田(範)委員長代理退席、委員長着席〕
○熊野政府委員 この六号におきます規定は、実は登録によって保護が認められているような登録商標の場合と異なりまして、その商品等の表示が登録されていない場合でありましても差しとめ請求権を与えるものでありますから、いわば保護に値する一定の事実状態が形成されていることが必要なわけであります。そこで、対象となる表示が「需要者の間に広く認識されている」ことという要件を設けているわけでありまして、これをいわば周知性要件というふうに言っているわけであります。 そこで、それでは「需要者の間に広く認識されている」というのはどういうことかといいますと、「需要者」というのは具体的に申しますと、その商品の取引の相手方を指すわけでありますから、最終需要者に至るまでの中間的な各段階の取引業者も全部含んでおります。それから、「広く認識されている」ということは、実はこれは全国的に知られている必要はありませんで、例えば一地方で、判例で申し上げますと、横浜市という一市内においてという例がございますけれども、一地方で認識されていれば足りるということで、判例上そういうことで解されているわけでありまして、繰り返しになりますけれども、「需要者の間に広く認識されている」というのは、そういう意味でいわば一地方で、具体的に一地方というのをどうするかはまた個々のケースによってまいりますけれども、一例で申し上げれば横浜市というふうに御理解いただければと思います。
○遠藤(乙)委員 また、この条項はパリ条約の第十条の二の規定を受けたものであるわけですけれども、パリ条約上はこの周知性の要件は存在していないわけです。そこで、この周知性要件とパリ条約第十条の一との関係はどうなっているか、この点につきまして御説明をいただきたいと思います。
○熊野政府委員 御指摘のように、パリ条約第十条の二におきまして、いわゆる混同惹起行為は、「いかなる方法によるかを問わず、競争者の営業所、産品又は工業上若しくは商業上の活動との混同を生じさせるようなすべての行為」とされておりまして、周知性要件は存在しておりません。したがって、今御指摘のような御疑問が、パリ条約上どういう関係になるのかということが出てくるわけでありますけれども、パリ条約において、「混同を生じさせるようなすべての行為」を禁止すると規定しているといたしましても、どの程度の混同であれば保護すべき混同を生じさせるような行為かということについては具体的に規定されておりません。したがって、結局のところ各国の判断にゆだねられるということになりますので、我が国の不正競争防止法においては、その要件を明確にした方が競争者の間の秩序のために適切であるということで、周知性を要件としたわけであります。 そういう意味で、私どもといたしましては、周知性要件についてパリ条約上の問題は何ら生じないというふうに考えているところでございます。
○遠藤(乙)委員 また、「本法施行ノ地域内二於テ」という文言がこの案では削除されておりますけれども、この趣旨はどういうことなのか。 また、この削除の結果、外国のみで広く知られているものは本法の規制の対象となるのか否か、この点につきまして御説明をいただきたいと思います。
○熊野政府委員 現行法において、「本法施行ノ地域内二於テ」という文言がありまして、不正競争の行為態様として、混同を生ずるような商品の輸出が規定されておるところであります。これはどういうことを想定しているかと申し上げますと、外国で他の輸出者の商品との間に混同が発生することをあらかじめ輸出の段階で防止いたしまして、それによって国内企業者間の輸出に関連した不正競争を阻止しよう、そういう趣旨のものでございます。 そこで、外国で混同が生じるためには、無断使用された表示が他人の商品を示すものとしてその行った先の外国で広く認識されていなければならないわけでありますけれども、現行法では、実は今御指摘のように、「本法施行ノ地域内二於テ」と規定をしておりましたために、法文を解釈していきますと、法文上、その表示が国内において周知でなければならないということになるわけであります。そこで判例においては、実は海外で混同を生じている事例におきましても、海外においては周知と混同があるということを認めた上で、さらに法文上の規定を満たすために、国内においてもあえて周知が必要であるという認定をしなければならなかったという苦労をしているわけであります。 そこで、判例はいわばかなり無理な運用をしてきておりまして、むしろこういった運用を是正するためには、「本法施行ノ地域内二於テ」という要件を削除して、内外を問わず需要者間で広く知られている表示を法対象とした方が立法的にはよいのではないかということで、かような対応をしたわけであります。 したがいまして、輸出行為について、外国においてのみ周知の表示につきましても、我が国からの輸出によってその外国において我が国の他の輸出業者の輸出品と混同を生じている場合には本法の規制の対象となるわけであります。
○遠藤(乙)委員 続いて、この第二条第一項第二号に規定されております著名表示の無断使用規制につきましてお伺いしたいのですが、本規定の趣旨はどういうことなのか、お答えいただきたいと思います。
○熊野政府委員 六号は、事業者が長い間いろいろ営業努力をいたしまして自分のブランドを著名にしたというようなときに、そのブランドを他の人が冒用することによりいわば第三者が著名ブランドのイメージでありますとか確立された名声にフリーライドする、ただ乗りするということを不正競争として規制しようとするものでございます。 それで、ブランドの冒用に関しましては、現行法上は実は混同を要件としているところでございます。いわば他人のブランドを冒用することによりその混同が生じる場合には規制できるということになっているわけでありますけれども、商品が全く違う、あるいは営業の種類が全く違うという場合には、それはもう全く違うのだからむしろ混同は生じないということになりまして、そういう場合は規制をされないということになるわけであります。 例えば一例を申し上げますと、香水としては極めて有名なブランドの香水がある、それを例えばホテルの名前に利用したということになりますと、通常それはもう香水の名前であるということをみんな知っておりますから、同じものであるという混同はしないわけでありますけれども、しかし、その著名なブランドのイメージにただ乗りするということは生ずるわけであります。 それからまた、登録商標になる場合でありましても、登録による商標権の効力というのは登録にかかわりますところの指定商品の類似の範囲にしか及びませんので、今申し上げたと同じような問題が生ずるわけであります。 そういうことで、現実にはただいま申し上げましたようなブランドの冒用事例、一例を申し上げますと、ディズニーの名前を風俗営業に使った、ディズニーランドという子供の夢というイメージのものを風俗営業に使った事例において、混同は生じてないけれども問題であるということで、判例は混同を拡張解釈してそれに対応してきております。そういう行為はむしろ端的に混同を要件としない新たな不正競争類型とした方がいいのではないかということで、今回の改正におきましては著名表示の無断使用を不正競争として新たに規制対象に加えることにしたわけであります。
○遠藤(乙)委員 この第二条第一項の「不正競争」の定義を見ますと、輸入行為が不正競争として明示されているわけです。この「輸入」の概念はどの段階で輸入なのかがあいまいなように思うわけですけれども、具体的にどの時点で輸入と認められるのか。また、「輸入」の文言は現行法にないようですけれども、「輸入」は今回の改正により新設されたのかどうか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
○石黒政府委員 お答え申し上げます。 二つ御質問がございました。 「輸入」はどの段階で輸入になるかということでございますけれども、本法案におきましては、不正競争行為が行われる具体的な危険性が発生する時点、すなわち本邦への陸揚げ時をもって輸入と解するというふうに考えております。 通常、輸入という概念は、貨物が外国から船舶等により我が国に運ばれ、保税地域に陸揚げされ、その後通関を済ませて内国貨物となる一連の過程を指すというふうに解釈されておりますが、具体的な輸入の時期をどう確定するかというのはそれぞれの法目的によりまして若干の異同がございます。 例えば外為法、外国為替及び外国貿易管理法上の輸入は、輸入貿易管理の観点から、船舶等から陸揚げした時点と解されております。また、関税法上は、関税の確定、徴収等の税関手続の適正処理の観点から、輸入許可を受けまして完全な内国貨物となる時点、すなわち通関時というふうに解されておるところでございますが、本法におきましては従来から、不正競争行為が行われる具体的な危険性が発生する時点ということで、陸揚げ時点というふうに解釈をしているところでございます。 なお、後段の御質問でございますけれども、「輸入」という言葉が新たに入ったという点でございますけれども、現行法におきましては「販売、拡布」「輸出」という表現になっておりますけれども、この「拡布」という表現は商品を取引に置く一切の行為というふうに解釈されておりまして、輸入も拡布に含まれるというふうに従来から解釈されていたところでございますが、今回現行法を平仮名表記に全面的に改めるという際に、その趣旨を明確にするために「輸入」を明示したということでございます。
○遠藤(乙)委員 次に、営業秘密につきましてお聞きしたいのですが、この営業秘密につきましては、平成二年に本法の改正によりまして保護が図られているところでありますけれども、平成二年法の施行状況はどうなのか。また、この営業秘密については、訴訟手続上の問題点がありまして米国等からも改善を要求されていると聞いておりますけれども、これは法務省にかかわる問題かと思いますが、通商産業省としての見解はどうか、この点につきましてお聞きしたいと思います。
○熊野政府委員 平成二年の改正におきまして営業秘密の保護を取り入れていただいたわけであります。それを契機にいたしまして、企業においてもいろいろ営業秘密の保護の重要性について、それぞれにおいて認識が高まりまして、社内管理体制を整備するための組織をつくるとか、あるいは規定を充実するとかマニュアルをつくるといったふうな努力が行われてきておるものと承知をしております。 それから、具体的に法律との関係でどういうふうな施行状況になっているかということを申し上げますと、平成三年の六月十五日に改正法は施行されたわけでありますけれども、それから二年足らずの平成五年三月までの間の訴訟件数でございますけれども二十七件となっております。このうち二件が裁判が行われ、二件が和解、一件が取り下げ、二十二件が三月の時点で係属中ということでございます。ただ、訴訟件数は必ずしも多くはないわけでありますけれども、この法律を専門としている弁護士の方にいろいろお話を伺いますと、訴訟にまでは至っていなくても、この新法の規定を前提にして当事者問でいろいろ話し合いが行われて解決が図られているような事例が大変ふえているということのようでございます。 それから、もう一点御質問のございました営業秘密に係る訴訟の手続上の問題点というのは、アメリカでありますとか、あるいは関係者において指摘されているものといたしまして、秘密保護の問題がございます。そもそも営業秘密でございますから、裁判に出たことによってその秘密が保全されなければなかなか裁判ができないじゃないか、こういったたぐいの問題でございますけれども、我が国におきましては、訴訟手続上は、御案内のとおり、憲法上、裁判公開の原則でございますけれども、要求されているために、その営業秘密に係る訴訟手続を非公開にすることは、これまでのところ極めて困難な状況になっているものと思います。 いずれにいたしましても、この問題は委員の御指摘にもありましたように、営業秘密に関する固有の問題ではなくて、民事訴訟手続全体のあり方の問題でございますから、その中で検討されるべき問題ということで、法務省で民事訴訟法全体の改正作業を検討されている中でいろいろ御検討いただきたいとただ、通産省といたしましては、営業秘密の保護を的確に図っていくためには、もちろんそれなりのいろいろな手続なり要件は必要だと思いますけれども、ある範囲内でその秘密保持の必要があるのではないかという趣旨のことを法務省には申し上げておりますけれども、いずれにいたしましても、法務省の民事訴訟法の改正作業全体の中での検討に期待したいという立場でございます。
○遠藤(乙)委員 この法案では、不正競争に当たる行為を第二条第一項で限定列挙しているわけですけれども、何が不正競争に当たるかということをあらかじめ規定しておくことは不可能に近いと思うわけです。むしろ、経済社会の変化に応じまして発生する新たな不正競争に柔軟に対処するためには、一般条項を設けることが適切なのではないかと考えるわけですけれども、またこのパリ条約でも「工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は、不正競争行為を構成する。」と規定されております。本法案におきまして、この一般条項を規定しない理由はいかなるものかという点につきましてお伺いしたいと思います。
○熊野政府委員 ただいま委員御指摘のように、一般条項を設けたらどうかということにつきましては、この法案の内容を御審議いただきました産業構造審議会でも大変熱心な議論が行われております。それで、その議論の中には消極論、賛成論、積極論、両方の御意見がございました。ただ、結論的には、昨年十二月の中間答申におきまして、なお引き続き検討していく課題ということにされたわけであります。そこで限定列挙はどうかということでございますけれども、従来から限定列挙をしておりまして、また今回もそういうことで、必要に応じ、経済社会の実態に即して、あるいは判例の動向等に即して新たな行為類型を追加させていただいているところでございます。 したがいまして、要は常にそういう状況をフォローしながら、国際的な状況でありますとか国内の競争実態でありますとか、経済社会の実態でありますとか、フォローしていって、その都度機動的に本法の改正をお願いして、個別条項を追加していくということの方が適切ではないかというのがさしあたりの考え方でございます。それは一つには、一般条項ということになりますと、何が不正競争なのか、事業者の間では非常に不安定な状況になります。したがって、これは少なくとも不正競争だということを明示しておいた方がそういう意味では安定性があります。 事実、ドイツは一般条項を導入しているわけでありますけれども、そのドイツの場合には、二つ、私どもとしては申し上げたいと思いますのは、そもそもドイツにおきましては一般法であります不法行為法においても差しとめ請求権を認めているわけであります。ところが、我が国の一般法でありますところの民法においては差しとめ請求を認めてないわけでありますから、そういう意味において、民法の方に認めてない差しとめ請求権を認めるときに一般条項を入れるとその関係をどうするのかという大変難しい法律的な問題が一つございます。それからもう一つは、ドイツにおいての事例を見てみますと、運用状況を見てみますと、裁判所が上級審、下級審で別々の判断をするようなケースが出てきて、むしろ混乱している、判断が安定しないというような問題も出てきて、先ほど申し上げましたような事業者の予測可能性をむしろ害しているのじゃないかという弊害も指摘されているようなことでございます。 ということで、結論的には、なおこれからも私どももいろいろな実態その他を常にフォローしてまいりますし、それから専門家の方々ともいろいろな機会を通じて議論はして勉強は続けていきたいと思いますけれども、その上で的確にコンセンサスのできたものを法改正をお願いして類型を追加させていただくというやり方の方が当面適切なのではないかというふうに考えておるところでございます。
○遠藤(乙)委員 時間が来ましたのでちょっと最後の一点だけ総括的にお伺いをします。 この知的財産の保護あるいは公正な競争ルールの確立は産業政策の観点から見ても重要な課題だと思うわけですけれども、今回の改正はその点時宜にかなったものと評価をする点があるわけですけれども、最後に、この不正競争防止法の理念と産業政策ということで、通産当局の見解をお伺いしたいと思います。
○熊野政府委員 我が国産業は今後独創的な研究開発を進めて、できるだけ個性を生かしたような方向に進むことが要請されておるわけです。この要請というのは従来ももちろんあったわけでありますけれども、戦後四十数年を経て、世界のいわばトップランナーの一人として国際的なプレゼンスを持つようになった現時点においては、ますますそういう意味での独自性の発揮、あるいは個性豊かな活動をやっていくということが大変重要なことではないかというふうに思います。 その意味において、裏返しでありますけれども、他人の独創性を尊重することも極めて重要な原則になってくるだろうと思います。そういう観点から申し上げますと、特許法等の工業所有権法でありますとか、あるいは著作権法でありますとか、この不正競争防止法といったものはそういうお互いが個性を生かしてやっていくという、いわば産業政策の基本的な考え方にとっても全く軌を一にするものでありまして、産業社会の制度の基盤をなすものではないかというふうに考えております。 そういう意味で、この不正競争防止法は経済社会、産業社会のいわば倫理的、道徳的な水準を示すようなものともいえるわけでありますから、こういう法改正の成果を各国にも十分、国内における普及も大切でありますけれども、先ほど来委員各位から御指摘賜っておりますように、国際的なハーモナイゼーションの場にも積極的にそういうことを主張できるような法案の内容にしていただくということではないかということで考えております。 いずれにいたしましても、その独自性、そしてフェアな競争ということが我が国産業が世界の中で発展していくために重要なことではないかというふうに考えております。
○遠藤(乙)委員 以上で終わります。
○井上委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。 午前十一時五十九分休憩 午後零時三十三分開議
○井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。小沢和秋君。
○小沢(和)委員 まず大臣にお尋ねをいたします。 不正競争防止法は、昭和九年、日本がパリ条約の会議に参加するため制定され、以来数回の改正は常に条約改正など国際的な動きへの後追いでありました。それが前回から状況が変わり、今回は世界知的所有権機関、いわゆるWIPOで不正競争防止法の国際的モデル法の検討が始まったばかりの段階で、先取り的に改正が提案されております。なぜこのように急いで改正を行う必要があったのかお尋ねします。
○森国務大臣 委員から御指摘ございましたように、現行法は昭和九年に工業所有権の保護に関するパリ条約ヘーグ改正条約に加盟するために必要最小限の義務を履行するため制定されたものでございます。その後も御指摘のとおり、条約改正等に対応した部分的な改正を行ってきたものでございまして、その基本的な枠組みは変えていないわけでございます。 このため、現行法は実態面において、例えばデッドコピーや著名ブランドの無断使用のような競争上不正と観念される行為でありましても、現行条文に該当しないために規制の対象とならなかったり、また手続面におきまして損害額の推定規定がない等、他の工業所有権法等に比較して不十分である、近年の多様な不正競争行為に機動的、実効的に対応できない状況にある、判例は現行条文の拡張解釈、地法の規定の類推適用等の工夫を積み重ねることによりまして個別案件における具体的、妥当な解決を図る努力を重ねてきておりますが、このような判例の努力にも限界がございまして、むしろ近年の不正競争行為の実態に即した一方的な解決を図るべきとの指摘をいただいていたところでございます。 今回の改正はこのような状況を踏まえまして、これまでに蓄積された判例や我が国経済社会の環境変化を踏まえまして、また我が国が名実ともに先進国としてふさわしい法制度を整備し、現在WIPOにおきまして進められております国際的ハーモナイゼーションの作業において重要な役割を果たすために現行法を全面的に改正することといたしたものでございます。
○小沢(和)委員 今の大臣のお話では、WIPOなどで積極的な役割を果たすために急いだというお話のようでありますが、私が伺っているところでは、さらにもう一つの要因として台湾や韓国などで日本の商品をまねたものが大量に生産され、また売られているので、こういう事態を抜本的に改善するようこれらの国々に要請するためにも日本が立派な不正競争防止法をつくる必要があったのだと聞いております。 本当にそういう効果をこの改正で期待できるのか。台湾、韓国などがそういう模倣商品で経済を伸ばしているのが現実だとすれば、よほど国際的な圧力が集中しない限り自国に不利に作用するような法制度の整備に取り組むか疑問を感ずるわけであります。先ほどそういう要請をしているとの答弁がありましたが、それでは先方の対応はどうかということも含めて御説明いただきたい。
○石黒政府委員 お答えいたします。 外国の不正商品の問題でございますけれども、午前中にも簡単に御答弁申し上げましたけれども、我が国の商品のデザインのレベルなり技術レベルなりあるいはブランドイメージの大幅向上というのを背景といたしまして、我が国の商品やブランドが海外の企業によってまねされるあるいは盗用されるという事例が目立つようになってきているのは事実でございますし、特に韓国、台湾、東南アジア諸国においては不正商品の事例が多く、また商品の種類別に見ますと、電子・電気機器、雑貨等に模倣事例が多いというふうに実態を把握しているところでございます。 この不正商品の防止のためには、まず第一義的には権利者がみずからの判断で対応すべきでありまして、そのためには海外において著作権なり意匠権なりそういうものを確保した上で権利行使をするということが基本になるわけでございますが、発展途上国における不正商品の防止に関しましては、知的財産保護に関する制度の整備、適正な運用や国民意識の向上等、なかなか民間ベースだけでは解決しにくい問題が多いのも事実でございます。このため、政府としても不正商品問題の実態を詳細に把握をしつつ、不正商品の事例の多い国に対する取り締まり要請、発展途上国における知的財産保護制度の整備に関する要請、協力を行う等、積極的に取り組んできているところでございます。 それでは具体的にどういうことをやったかという御質問もございましたので、それについてお答えをいたしますと、例えば韓国でございますけれども、日韓貿易産業技術委員会というのが毎年一回行われておりますけれども、この場におきまして不正競争の実態等を説明し善処方を要請してきておりますし、また台湾との関係におきましては、民間ベースの日台貿易経済会議の場で不正商品の取り締まりの要請というのが行われていることでございます。ちなみに台湾におきましては、一九九二年に、昨年のことでございますが、公正交易法という法律が発効したという実態にあるようでございます。
○小沢(和)委員 時間がないので次に行きます。 今回、不正競争防止法が全面改正されるわけであります。私は、せっかくのこういう機会であるのに、この法律の目的を「事業者問の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保する」ことに限り、消費者保護を掲げなかったことを大変残念に思っております。パリ条約第十条の二でも、「各同盟国は、同盟国の国民を不正競争から有効に保護する。」と規定しております。なぜ「事業者間の公正な競争」の結果として間接的に消費者保護を実現すれば足りるという立場に立っているのですか。
○熊野政府委員 本法におきましては、ただいま委員からも御指摘のございましたように、競争事業者による民事的な措置を通じまして公正な競争秩序を確立しようということで、消費者の保護を直接の目的とはしていないところでございます。しかしながら、公正な競争秩序が確立されることにょりまして、結果的には消費者の保護にもいわば間接的に資することは当然ではないかというふうに考えているところでございます。また、社会的な悪性の強い一定の類型につきましては、刑事罰を適用するということによりまして消費者保護の観点をも加味されているところであります。 他方、我が国におきましては、消費者保護の観点からは、特に表示を中心といたしまして景品表示法のほか個別の業法がございます。例えば宅地建物取引業法でありますとか旅行業法でありますとか訪問販売法でありますとか薬事法、食品衛生法、家庭用品品質表示法といったいろいろな個別の法律がございまして、消費者保護の観点から広範な規制が図られているわけであります。 それから、仮に誤認惹起行為によりまして取引関係に入った消費者を救済するという規定といたしましては一般的に民法の規定があるわけでありますし、また特別法といたしましては割賦販売法あるいは訪問販売法等におきまして、一定期間内での契約の申し込みの撤回を可能とするような、いわゆるクーリングオフの制度が規定されているところでございます。 こういうふうに消費者保護を目的とするいろいろな法律が存在をしております中で、あえてこの事業者間の公正な競争を確保するという我が国の不正競争防止法の法目的を変えてまで直接に消費者保護に対応する必要性は乏しいのではないかというふうに考えているわけであります。 なお、産業構造審議会におきまして本法の改正内容等を御議論いただきました際にも、この消費者保護の観点ということにつきましてはいろいろな議論が行われました。いろいろな観点から議論が行われましたけれども、結論的に申し上げますと、ただいま申し上げましたような理由から当面は見送りまして、今後とも勉強を続けていこうということになっているところでございます。
○小沢(和)委員 私がお伺いしたいのは、法律というのはそのときどきの経済の変化、発展に応じて変わっていいのじゃないかと思うのです。なぜ消費者保護を目的に加えてはまずいのですか。どういう不都合が起こるのか具体的に説明を願いたい。
○熊野政府委員 本法は御説明申し上げておりますように、民事的な措置によって一定の行為に対する救済を図ろう、こういうことでございます。したがって、その民事的措置で特に損害賠償とそれから差しとめ請求権を認めておりまして、差しとめ請求権を認めているところが非常に特徴になるわけであります。 それで、差しとめ請求権をそれでは消費者に認めるのかあるいは消費者団体に認めるのかというふうな御議論があり得るわけでありますけれども、裁判には大変な時間とコストがかかるわけでありますから、必ずしも適切ではありませんし、先ほど御説明申し上げましたような我が国の法制の中で、消費者の声を行政上の措置にできるだけ反映するようなシステムの方が実質的な消費者保護の利益にかなっているのではないかというふうに考えられるわけであります。 そういう意味におきまして、先ほど申し上げましたように広範な行政規制の対象とされているわけでありますし、また消費者の声を行政上の規制や指導に反映させるためのシステムとしては、関係各省いろいろな努力をしているわけでありますけれども、例えば通産省の場合を申し上げましても、消費者相談室というものを昭和五十年以来設置をしておりまして、本省それから各通産局に設置をしておりますけれども、年間六千件に及ぶいろいろな苦情や問い合わせが来ております。そして、それらに対して、必要な行政上の措置を発動すべきものあるいは消費者に対する的確な情報の提供等、それぞれ所要の対応の措置を図っているところでございます。 さらに、今法律上細かい、細かいというか大変重要なわけでありますけれども、仮に先ほど申し上げましたような差しとめ請求権といったふうな訴権を付与するということになりますと、また新たに手続面においていろいろな問題点も出てくるところであろうと思います。 そういう意味におきましても、我が国の法体系全体の中で、こういう点につきましてはなお慎重な検討が必要ではないかというふうに考えているところでございます。
○小沢(和)委員 今局長は個別の法律でいろいろ保護するようにできておるというふうに言われました。私も景品表示法など幾つか調べてみたのですけれども、どれも消費者の利益が侵されている状態を命令など行政の力で改めさせるという仕組みになっております。そのこと自体は必要なことだと思いますけれども、消費者自身がその状態を改めるために動けるようにはなっておらないわけであります。ですから、先ほど来この不正競争防止法で一番の特徴は差しとめ請求権だというふうに言われましたけれども、この差しとめ請求権を、不正競争によって被害を受けた消費者がみずから行使できるようにすれば、権利を保障していくという点では飛躍的に改善されるのではないかというふうに考えますが、いかがですか。それから、答弁は簡単にお願いしますよ。私は簡単に答えられるように質問しているのですからね。
○熊野政府委員 先ほども申し上げましたように消費者保護を図る観点からは行政上の措置で的確に素早く迅速に対応する方が適切ではないかというのがまず一般的な考え方ではないかと思いますし、事実我が国の消費者保護基本法におきましては、第一義的には消費者の保護というのは行政の責任としているわけであります。そういう意味で、各般の行政上のいろいろな法律に基づいて、それによって消費者の保護を図るという対応がなされているわけであります。 それから、仮に消費者が被害を受けて、救済する方法が消費者自体のものとしてないわけではなくて、民法の規定というものは当然にあるわけでありまして、一般ルールとしての不法行為であります債務不履行等によって被害を受けた消費者自身が事業者に対し、みずからこうむった被害の損害を請求することができるのは言うまでもないわけであります。 そういうことで、繰り返しになって恐縮でございますけれども、全体的な裁判におけるコストとか時間とか、そういうものを含め消費者の便宜を考えるならば、当面できるだけ消費者の声を迅速に対応できる行政上の措置に反映するシステムを充実していくことが理にかなっていることではないかというふうに考えるわけであります。
○小沢(和)委員 今裁判よりも行政の方が敏速に対応できるというふうに言われました。だけれども、今までいろいろなこの種の関係で問題になったことがありますけれども、すべて行政が敏速に対応してきたのか。行政の対応が非常におくれたとか、あるいはとうとう行政が全然動かなかったために救済が受けられなかったというようなことというのは、しばしば社会問題にもなったのではありませんか、私、時間が切迫してきたから具体的なことは言いませんけれども。 さらにお尋ねしたいのですが、これまでの第一条第一項三号から五号までの商品内容等誤認惹起は、今度は役務内容も含めて新法に引き継がれているわけでありますが、これは昭和二十五年に改正された際、消費者保護の規定として取り締まり法規の面から取り上げるべき性質のものと政府も認めていながら、便宜上この法の中に入れたことを政府の説明資料の中でも認めております。だから、こういう規定を事業者が活用して積極的に差しとめ請求するなどということも余り考えられない。実際に、そういうことはほとんどなかったのではないですか。そういうことを考えても、やはり消費者団体に少なくとも請求権を認めるべきではありませんか。
○熊野政府委員 まず、消費者保護を目的の中に加えるべきかどうかという第一点がありますけれども、今の御質問は消費者団体に差しとめ請求権を付与すべきではないかということでございますが、その点に限って、手続面等の問題を申し上げたいと思います。(小沢(和)委員「いやいや、手続面なんか聞いていませんよ。そういう事例があったかと聞いているのですよ、活用した事例が」と呼ぶ)本法においてでございましょうか。 本法においては、そもそも訴権は事業者間の問題として、事業者間に訴権があるわけでありますから、そもそも消費者がそういう訴権を目的上持っていないということであります。
○小沢(和)委員 いや、だから、私がお尋ねをしましたのは、この第一条第一項の三号から五号までの誤認惹起などのようなものはもともとは消費者保護のためのものだというのは、あなた方は提案したときから認めているのですよ。そういうようなものは、大体競争している業者が競争相手に対してそういう消費者保護の観点から取り入れられたような法律を使って裁判を起こすなどという事例はほとんどないのではないですか。結局、これは掲げられても休眠状態に。あって役に立たなかった条文になっておりはしませんか、こういうことをお尋ねしているのですよ。
○熊野政府委員 委員御指摘の昭和二十五年の、必ずしも私つまびらかにいたしませんけれども、先ほども申し上げましたように、いわば本法の目的は、競争事業者による民事的な措置を通じて公正な競争秩序を確立しようというのが原則でございますから、消費者の保護は直接は目的としておりません。しかしながら、公正な競争秩序が確立されることによりまして、消費者保護にも間接的に資するということは当然でございます。そういう意味で、おっしゃったような御趣旨のことがあるのではないかと思います。 なお、実は不正競争防止法、その後におきまして景品表示法のような法律ができて、その後いろいろな点で、先ほど御紹介しましたような消費者保護の立法の努力が重ねられてきているのではないかというふうに思います。
○小沢(和)委員 残念ながら、時間が来ましたので、これで質問を終わりたいと思うのですけれども、私が提案しているようなことは、既に不正競争防止法の先進国ドイツでは実現をしているわけであります。ドイツは、この法律を制定してから既に百年の歴史を持っております。初めは、今の我が国の法律と同じく、事業者間の公正な競争を確保することを目的として同業者団体にのみ提訴権を付与しておりました。しかし、その後、市場における消費者も一定類型の不正競争行為により被害をこうむる以上、単に競争の保護のみでなく消費者の保護もあわせて考慮さるべきであるという見解が有力になり、一九六五年の改正で消費者団体にも提訴権が付与されることになったわけであります。私は、日本もドイツのこういう経験に学ぶべきだと思います。 最後に大臣にお尋ねしたいと思うのですが、私は、今回の法改正で消費者保護の観点が正面から押し出されなかったことを大変残念に思いますのでできるだけ速やかに目的の中に消費者保護をはっきりと掲げ、消費者団体に差しとめなどの請求権を付与する改正を行っていただきたいと思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。
○森国務大臣 現行法は、競争事業者による民事的措置を通じまして公正な競争秩序を確立しようとするもので、消費者の保護を直接の目的としておりませんが、公正な競争秩序が確立されることによって消費者保護にも間接的には資することは当然でございまして、さらに、社会的悪性の強い一定の類型に対しては刑事罰を適用することにより消費者保護の観点をも加味しているところでございます。 産業構造審議会におきましても、不正競争防止法の目的に消費者利益の保護を加え、不正競争の停止、予防請求権の請求権者を消費者、消費者団体にも拡大すべきか否かという点については活発な論議が行われたわけでございますが、昨年十二月の答申ではなお時期尚早ということで、引き続き検討していくべきだということになったところでございます。 国民の立場に立ちまして施策を推進すべきことは、行政を預かる者としては常に心にとめるべきことでございまして、今後とも、委員御指摘のように、消費者保護行政には遺漏なきを期してまいりたい、このように考えます。
○小沢(和)委員 終わります。
○井上委員長 川端達夫君。
○川端委員 大臣、よろしくお願いします。 今回提案をされました不正競争防止法案、抜本的な法改正ということで、この背景の一つに、いわゆるフリーライドというものは公正な競争を阻害するという考え方に立ってきているという意味で理解をしておるのですが、この考え方自体は、かねがねいろいろな形で欧米諸国から日本の経済活動のあり方の部分で批判がある部分の一つの大きな考え方の問題に取り組まれたということでは、一つの大きな評価をすべきことだというふうに思っております。 本来、競争というのは、ほかの成果を盗んだりまねたりするということ自体が大変不公正なことであるということ自体、ややもするともうけ第一の中で恥ずべきことが忘れ去られているという日本の風潮というものにも一つの大きな警鐘を法的にも鳴らすことになるということで評価をしているものであります。 この中にも、著名表示冒用の禁止という新たなものも盛り込まれたということでも結構なことだというふうに思っているのですが、一つだけこの法案の中身でお尋ねをしておきたいことは、第二条第一項第三号で、いわゆるデッドコピーは不正競争の範疇に入る、こういう規定になっております。これは審議会の答申も含めてそういうことを入れられたのでありますが、この法案では「最初に販売された日から起算して三年を経過したものを除く。」というふうに例外規定がわざわざ入っております。答申でも「請求権の行使に期間的制限(三年〜五年間とするのが適当)を設けることについても併せて検討することが適切である。」これを受けてのことだと思うのですが、このことの基本的な考え方と実情とをお尋ねしておきたいと思います。 わざわざこういう例外規定が設けられたということで、悪く読みますと、三年を過ぎたものはデッドコピーしてもいいんだということに読めるわけです。法律的にその三年以降の部分はという考え方はあるとは思いますが、法律は別にして、これはもう基本的なモラルの問題として、こういうデッドコピーというものをしてはいけないという価値観に立ってやるときに、わざわざこの三年を経過したものは結果としてデッドコピーをしてもいいということをお書きになった理由というのは何かあるのかどうか。せっかくつくられたのに何かこれは惜しいなという感じを持つわけです。その理由というのをお尋ねしたい。そして、答申では三ないし五年ということがあったんですが、これが三年というふうにされた理由もあわせてお尋ねしたい。 もう一つは、現実に被害を受けたものとして三年経過していたという部分では、現実にはほかの部分ではどういうことが対応できるのかということもあわせてお尋ねをしたいと思います。
○熊野政府委員 委員御指摘のとおり第二条第一項三号におきまして、他人の商品の形態を模倣した場合に「最初に販売された日から起算して三年を経過したものを除く。」というふうになっているわけであります。これは、そもそも商品の形態の模倣が不正競争と考えなければいけないというゆえんは、いわば先行者がお金を投じましたり、あるいは労力を投じたり知恵を出したりいたしまして商品化をした成果にフリーライド、ただ乗りをするということは競争上不正ではないかということで不正競争行為というふうに考えたわけであります。 こういう趣旨にかんがみてみますと、基本的には模倣を禁止するのは先行者の投資回収期間におおむね限定することが適切ではないかというふうに考えられるわけであります。そこで、先行者の投資回収期間を一律に決するということは、確かに事例によって異なりますからなかなか難しいわけではありますけれども、一方で差しとめということを認めているわけでありますから事業活動にも重大な影響を与えるという点もあるわけでありまして、やはり政策的見地から一定の確定期間を定めることが適切ではないかということになるわけであります。事実、特許法等におきましても、例えば発明等の価値はその事案によってさまざまであるわけでありますけれども、政策的な見地から権利の存続期間については一律の期間を定めているわけであります。そういうふうに他の知的所有権法におきましても政策的見地から一定の確定期間を定めている。 それから国際的に見ましても、実は現在ECにおきましてライフサイクルの短いデザインの保護を目的といたしまして、登録をされていないデザインにつきましても模倣に対し差しとめ請求権を与える制度を検討中でございます。まだでき上がっておるわけではなくて、共同体の意匠に関するEC規制案ということで提示をされておるわけでありますけれども、この案におきましても権利期間はデザインの公表時から三年間ということに実はなっております。そういう意味で国際的ハーモナイゼーションという観点からもこの期間決定については三年ということが考えられるのではないか。 さらに、実態上いろいろなケースを調べたものがございます。社団法人日本デザイン保護協会が平成三年十月に発表しております報告書で、意匠とかいうものについての、どのくらいの期間持っているかということを調べているわけでありますけれども、これは業種によって非常に差がございます。非常にライフサイクルの短いものから長いものまでございますけれども、比較的長いものでも実は千数百日というぐらいになっているわけであります。千二百日とかそういうことでございますので、そういう観点からも三年ということが一つのあれではないかというふうに考えたわけであります。したがいまして、いわば三年というのは国内の実態、それから国際的なハーモナイゼーションあるいは他のいろいろな関連の法律との関係等々勘案して三年としたわけであります。 しかしながら、そういう期間の設定は期間経過をした後デッドコピーをやっていいよと積極的に認めようという趣旨でないことはもちろんでございまして、法律上は違法とされないということでありましても本来他人の創意工夫あるいはいろいろな労力によって得たものを模倣するということは商業道徳上歓迎されるべきものではないというのは社会通念であろうと思います。そういう意味で、この三年に限るというものが積極的にそういう期間経過後のデッドコピーを認めたものでないことは委員御指摘のとおりでございます。 なお、その商品の形態が商品等表示として需要者の間に広く認識されるように至った場合は、本法の第二条第一項第一号の混同惹起行為に該当する場合はあり得るわけでございます。したがいまして、そういう場合にはこの混同惹起行為として規制の対象となつ得ると思います。もちろん個々の事例によって判断をする必要はありますが、一般的に申し上げればそういうことではないかと思います。 また、不法行為の要件を満たす場合には、当然のことでございますけれども民法に戻って損害賠償の対象とはなり得るということでございます。
○川端委員 大変ありがとうございました。 もうほとんど時間がありませんので大臣に御所見も含めてお尋ねをしたいのですが、こういう国内でデッドコピーのものをつくるとかいうそういう生産者の立場の部分、そしてまねられた部分ということに関しては、今回の法改正も含めていろいろな規制あるいは保護が加えられることになったわけですけれども、よく日本の人たちが海外に旅行をしていわゆるにせブランド商品なるものを大量にお土産として買ってくるというふうなことが、割に私たちの周りにも現実にはたくさんあります。そしていわゆるブランド志向というんですかね、そういう本当の中身がいいとかということではなくて、まさににせものであってもブランドだけがそういうものであるというものをつけているのが何かいいような風潮というのが、日本のある一部かもしれませんが、行為として随分たくさん見られる。そしてそのこと自体が、欧米の人から見れば本当に信じられない行為みたいな評価も、批判も受けているということがよくあります。 日本の場合に、いわゆる特許とか実用新案あるいは意匠法等々のそういう知的財産も含めて、そういうものに対する権利意識、侵害意識というものが非常に希薄なんではないか。これは産業、商業という観点以外に、私は日本人というものの心の豊かさ、貧しさという部分に何かつながっていく非常に好ましくない事象の一つではないかなというふうに常々感じております。 そういう意味で、通産大臣というお立場でいわゆる消費者の、これは先ほどからのいろいろなデッドコピーも含めて買う側の意識という問題、それからそういうもの、産業を所管されるという部分でそういう消費者というものをある一面で見られるというお立場でこういう問題に真剣に取り組んでいただきたいということと同時に、大臣のお立場というか通産大臣というお立場を離れて日本の国の政治の中枢におられる立場として、そういう事例に見られるような何か日本人の心の豊かさみたいなものに関して、私はかねがね教育の問題も含めて大変大きな問題を抱えているんではないかなというふうに思うのですが、これは具体的な答弁ということではなく何か感想でもありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
○森国務大臣 川端委員からの御指摘は、通産大臣という立場でお答えを申し上げるということよりも、同じこのハウスの中にいる政治家同士ということでお聞きをいただければと思うのでありますが、やはりこうしたコピー商品が出るというようなことは買う人があるからでありまして、恐らく今のような日本が、また日本の国民が、教育的にかなり進んでおりますからにせものと知らないで買うという意識は余り持っていないと思います。そういうことを意識して買うというのは、これは大量に買うものじゃないわけでありまして、時計など、間違って買ったらこれはにせものだったということは昔はしばしばあった。最近はむしろ今川端さんおっしゃいましたように、にせものだということの一種のしゃれみたいなもの、遊びみたいなもので大量に買うということが間々ある。 かつて私が大蔵委員長をいたしておりましたときに与野党の皆さんと視察に参りましたASEANの国でございましたが、まさににせブランドのデパートがございまして、そこにすべてのブランドが入ったものがもう本当にたくさんあるんですね、驚きましたけれども。要は、そういうことを承知の上でたくさん買い求めていくというのがやはり日本人には多いということもこれは否定できないことでありましょうし、そういう面では、今委員がおっしゃいましたように、日本人の教育的な面、日本人の知的なレベルの面ということで、世界から批判を受けるあるいはそのことを問われている時代が来ておるのじゃないかなというような感じを私も感想として持っております。 そういう意味で、我が国の産業は独創的で個性豊かなものを目指していくということは当然でございますが、逆の立場で言えば、知的財産の保護というものはこのような産業を発展させる基盤となるものでなければならぬわけでありまして、知的財産の適切な保護の実現は我が国の国民の意識のレベル、文化的レベルという面から見ても極めて重要なものであると私は考えております。 今通産省として、もう一つ円高に関連していろいろな問題が問われていますが、その中によく内外価格差というのがございます。これもまた逆でございまして、何か安いとにせものではないかということで、当然内外価格差があってはいけないわけですから本来の価格に見合ったものにしなければならぬわけですが、安いとこれはにせものではないかということになって、逆に言えば、非常に高いと本物だという意識を日本の消費者は持っておるということも、これと逆な立場でございますけれども、そういう面での日本のこうしたレベルといいましょうか、文化的なレベルといいましょうか、そうしたものをさらに啓蒙していく必要がある。 そういう意味でも、こうした法律を整備して、産業面の育成ということもございますけれども、こうした法律があるのだということを国民にさらに周知徹底していくということも、私は極めて大事なことではないかと思います。 川端委員のそうした御指摘も十分踏まえて、通産省としても両面からこうした問題に真剣に対応していきたい、このように考えて、お答えとさせていただきます。
○川端委員 ありがとうございました。終わります。
○井上委員長 次に、和田貞夫君。
○和田(貞)委員 不正な商行為あるいは不正な商品の横行というようなものは、よくよく考えてまいりますと、どうしても消費者の皆さん、買う側の方が意識が低いというか、消費者以上の悪意を持った働きをする、そういうような中で生じてくること、あるいはそのような行為に対して余りにも処罰が軽過ぎる、罰則が甘いという二面的なところから、そういう不正な商行為であるとか不正な商品が横行するという原因が生まれてくるのではないか、こういうふうに思うわけです。 そういう点からいいまして、今回の法改正は、片仮名法を平仮名にするということも含めまして、例えば後で申し上げますけれども、罰則規定を強化したということ、あるいは法人に対しまして重課を適用させだというような非常に前向きな評価ができる法改正であるというようには思うわけです。 しかし、今も御指摘がございましたように、例えばデッドコピーの場合に、答申があえて三年ないし五年ということになっておるのにもかかわらず三年ということに限ったために、本来模倣というものはやってはいけないという倫理が公然と、先ほど局長が商道徳の問題だというようには言っておりましたけれども、不正行為をやったり不正商品をつくるというような者は、もちろんもともとからそういうものがない者がやるのでございますから、この倫理をその面でむしろ後退させることになることを非常に恐れるわけでございます。 そういうようなことで、総体としては非常に評価できる改正案であるということを前提に置きまして、逐次条文について質問をさせてもらいたいと思います。 まず、念のために、改正法の第二条一項一号の行為というのは現行法の第一条一項一号の行為というように解釈をしていいかどうかということを一つ。それから二つ目は、第二号に「他人の著名な商品等表示」という表現がございます。この「著名」というのは、先ほども議論されておったわけでございますが、先ほどの御答弁を聞いておりますと、「著名」とは全国的な視野の周知性、「広く認識されている」という一号の表現は地域的な周知性という答弁がなされておったわけでございます。ここでもう一度、「著名」とはどの程度の周知性であり、「広く認識されているもの」というのはどの程度の周知性であるかということをお答えいただきたいと思います。なお、あわせて、一号、二号にうたわれているところの類似行為、類似というのはどの範囲までのものかということもお答えいただきたいと思います。
○熊野政府委員 御質問が幾つかにわたりましたので、順番にお答えさせていただきます。 まず最初は、第二条第一項第一号の規定は現行法の第一条第一項第一号の規定と同じなのかという御趣旨であったと思いますけれども、現行法の第一条第一項第一号で商品の混同を生じさせる行為、それからまた同項第二号で営業の混同を生じさせる行為を不正競争として規定しているところでございます。これに対しまして、この改正法案におきましては、現行法の商品の混同を生じさせる行為と営業の混同を生じさせる行為をあわせて規定しております。あわせて「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を不正競争ということで規制したわけでございます。 なお、現行法に存在いたします「本法施行ノ地域内二於テ」という文言を削除しておりますが、これはいわゆる周知性要件というのが、後ほども御説明申し上げますけれども、判例上一地方において知れていれば足りるということになっておりますので、本法施行の地域内において広く知られているとすると、日本全国で知られている必要があるという誤解をかえって招くおそれもありますので、明確にするためにむしろそれを削除したわけであります。 それから、文言だけで申し上げますと、現行法では販売、拡布、輸出とありますところを、改正法案におきましては「譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し」というふうに書き改めておりますけれども、これは現行法の三つの表現を現代語に書き改めたものであります。 以上申し上げましたとおりでございまして、結論的に申し上げますと、第二条第一項第一号の規定は現行法の取り扱いを何ら変えるものではございません。実質的には同じものでございます。 それから、第二の御質問でございます。第二の御質問の点は、周知性と著名性についての解釈ということだろうと思います。 まず、周知でございますけれども、第二条第一項第一号で「需要者の間に広く認識されている」という表現を周知性要件と言っているわけでありますけれども、先ほども申し上げましたように、これは全国的に知られている必要はなくて、一地方で認識されていれば足りるものということでございまして、判例の一例を申し上げますと、横浜市内という範囲内でという例があるところでございます。 それから、第二条第一項第二号の「著名」という規定について申し上げますと、これは混同が生じていない場合であっても使用者からの差しとめ請求権を認めるものでございますから、相当の注意を払うことによってそのような表示の使用を避けることが可能な程度に表示が知られていることが必要だというふうに考えられます。したがいまして、「著名」というのは、周知よりは範囲が広くなりまして、単に一地方で知られているだけでは足りず、やはり全国的に知られているということが必要ではないかというふうに考えられるわけであります。この点につきましては、既に商標法に「著名」の用語例がございまして、またその「著名」の解釈についての判例上の扱いも確定をしているところでございます。 それから、第三の御質問は、第二条第一項第一号の「類似」についての解釈がと思います。これにつきましては、一般的に申し上げますと、「類似」というのは、いろいろな表示の外観でありますとか、呼び方、呼称でありますとか、どういうものをコンセプトとしているとか、そういういろいろな要素を基本としながら、実際には、取引事情を勘案して、それぞれのケースに応じて弾力的に判断されるということになろうかと思います。 最後の、取引事情について判例の御紹介を申し上げますと、不正競争防止法における商標の類否の判断に当たっては——類否というのは、類似しているか類似していないか、否かという類否でございますけれども、類否の判断に当たっては、各商品主体の競業関係の有無、競業関係があるかないか、競業関係があるとしても程度はどの程度か、それから商品表示選択の動機はどういうものかといったふうなものを考慮して、その取引業界の実情に照らして、商品主体のそれが類似なものとして混同を生ずる恐れがあるか否かによって決すべきである、なかなかこれも大変難しい説明でありますけれども、そういうことで「類似」を判断すべきであるというふうにしているところでございます。
○和田(貞)委員 念のためにお聞きしておきますが、具体に、日本の国内で著名でない、国際的にも著名でない、ところがフィリピンならフィリピンヘ行けば、フィリピンの国で著名なということであれば、これはやはり著名なということに該当いたしますか。
○熊野政府委員 本法は日本国の法律でございますので、法域は日本国に限っているわけでございます。ただし、日本国の輸出者同士が例えば外国のどこかある国に行って、それで混同を生じるような場合については、輸出者同士が、日本国から出る場合には、輸出の差しとめ請求を日本でできる、こういう法律上の扱いにはなっております。 他方、日本では全く著名でなくて、外国へ行って、その外国で外国の製品として著名なものに日本の商品が入ってきたときどうなるかということについていえば、この法律の対象とはなりません。その場合には、その国の法律でその問題は扱われるということになろうかと思います。
○和田(貞)委員 次に、デッドコピーについてお尋ねしますが、これも時間の関係がありますので、二つ三つあわせて質問いたしたいと思います。 第三号の、形態の模倣でございますが、同一の形態のみを対象にして類似の形態を対象にしなかったのはなぜかということが一つ。それから、この条文の中での「同種の商品」ということと「類似の商品」ということと同じことなのか違うのか。それにあわせて、既に公知になっていて、新規性も創作性もない商品形態でも模倣と言えるのかどうか、この三つについてひとつお答えを願いたい。
○熊野政府委員 まず、デッドコピーについて、形態の模倣とはどういう意味がというのが第一点の御質問がと思います。 これにつきましては、要件として、主観的な要件と客観的な要件があると考えております。 主観的な要件というのは、模倣の意図があるかどうか。それから客観的な要件というのは、まさに結果が同一であるかどうか。ただし、その同一は実質的な同一性ということだろうと思います。したがいまして、最終的な判断は個別の具体の事案に応じて判断せざるを得ませんので、なかなか一概に言うことは難しいわけでございますけれども、一般論として申し上げますと、全体を観察して同一か否かを判断する、その場合に、やはり公知の部分、だれでも知っているような部分は余り重要な要素ではなくて、特徴的な部分がどうであるかということが評価をするときのポイントになろうかと思います。 こういう考え方というのは、実は既に意匠権侵害訴訟等におきまして各種の判例の積み重ねがございます。そういうものが参考になるものではないかというふうに考えているわけであります。したがいまして、今後、解説書等を書く場合には、そういう判例等を十分に紹介をしてまいりたいというふうに考えております。 それから、「同種の商品が通常有する形態」を適用除外としているわけでありますけれども、これはどういうことを想定しているかと申し上げますと、例えばテレビの形態。テレビの形態というのは、大体立方体の四角い格好をしているわけでありまして、しかも前面にブラウン管があって、それからブラウン管の画面があって、スピーカーや操作ボタンが設けられているのが通常の形態であるわけであります。したがいまして、このテレビとこっちのテレビは同じような形態になっているじゃないか、それでそれは不正競争かというと、それは不正競争に当たらない。同じような商品だからほぼ同じような格好をするだろう。非常に独特なものが出てくればまたこれは別の考え方があるかもしれませんけれども、通常テレビというものはそういうものだということで、そういうものをこの部分まで模倣だということで不正競争行為にはしない、こういう趣旨が適用除外にしているゆえんでありまして、「同種の商品」というのは、そういうことでございます。 それから、デッドコピーの規制におきまして、創作性のないものを保護対象とするのかどうかということでございますけれども、実は意匠法は、意匠の保護あるいは利用を図ることによりまして、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的として、独占的な排他権、権利を与えて保護しようというものであります。そういう意味で保護対象も、それにふさわしいような新規性で創作性を有することが意匠であることの要件になっているわけであります。 他方、本法におきます、不正競争を防止することにより公正な競争を確保するという観点からのデッドコピー規制というのは、必ずしもそういう意味で創作性を要件としておりません。先行者が資金や労力を投下して商品化して市場に売り出しまして成果を得ようとしているときに、後から来た人が、みずからは全く資金や労力も投下することなく、いわばデッドコピーをつくってフリーライドする。よく事例に出されます例は、木目の化粧紙を、よく売れているものがあったらそれを写真に撮って同じものをつくる、こういうのはまさにフリーライドということで、こういうものに対する保護を与えようというものであります。そういう意味におきまして、意匠法の言うような創作性のないものでも保護対象としているわけであります。 いずれにいたしましても、そういう意味で意匠法と本法とは、目的とか要件とか手段においていろいろ差異はございますけれども、相補って知的財産全体を保護する機能を果たそうというのが我々の考え方でございます。
○和田(貞)委員 念のためにお尋ねしますが、ある商品が白色であった、同じ形態で赤色でつくられた、これは同種の商品なのか、類似する商品なのか、どちらですか。
○熊野政府委員 具体的なケースは、正確な具体的な事例をもって判断しなければなかなか難しいわけでありますけれども、ただいま和田先生が御提起されました事例が、形態が非常に意味があるというものであって、たまたま片方が赤で片方が白のような場合でありましたら、それは問題になると思います。
○和田(貞)委員 どういう問題なのですか。
○熊野政府委員 要するに、ここで申し上げております同種の商品に入ると考えます。つまり、形態がその商品の特徴をなしているわけでありますから、赤であろうと白であろうと同種の商品と考えられると思います。
○和田(貞)委員 わかりました。 それでは次に進みますが、三年以内の商品に限った理由を聞きたいのですけれども、社団法人日本デザイン保護協会がアンケート調査をやった結果の報告書があるわけなんです。その資料によりますと、第一位製品のライフサイクルが、一年未満、一年から二年未満、二年から三年未満、いわば三年未満のトータルが四八・六%なんです。三年から五年未満、五年から十年未満、十年以上、いわば三年以上のものがトータル五一二二%になる。さらには、この第一位製品の最長のライフサイクル、十年以上が何と四五・八%あるんですね。これが資料で出ているわけです。答申が三年ないし五年ということであったにもかかわらず、あえて三年以内ということに限定したのはなぜか、これを一つお聞きしておきたいと思う。 あわせて、三年を経過した後でも民法による損害賠償請求は妨げられないと思うのですが、それはどうか。さらには、この三年以内ということにしたのは、意匠登録が、審査期間が大体三年ないし四年かかっているので、その関係で三年というようにしたのか。さらには、三年経過した商品は改正法第二条の一項一号、二号によるところの保護を受けられるのかどうか、これだけひとつ質問したい。
○熊野政府委員 御質問が何点かにわたりましたので。 まず第一点は保護期間を三年に限った理由いかんということだったと思います。これにつきましては、そもそもデッドコピー規制を図っておりますのは、先行者が先ほど来申し上げておりますように資金や労力を投下いたしまして商品化をした成果にただ乗りをするということは競争上不正な行為ではないかということで規制をしているわけであります。これが規制をする趣旨でございますので、これにのっとって考えますと、模倣を法律上禁止するのは先行者の投資回収の期間に限定するのが適切ではないかというふうに考えられるわけであります。しかしながら、先行者の投資回収期間というのは物によって違うことは当然でございますけれども、そういう意味で一律に決することはなかなか困難であります。しかし他方、差しとめという効果が及ぶわけでありますから、そちらから考えると重大な影響も与えるということになるわけでありますので、政策的な見地から請求を一定の期間に限って認めるというのが適切ではないかということであります。 その点につきましては、特許法等の工業所有権確保等におきましても、それぞれの発明の値打ちその他についてはいろいろ差があるわけでありますけれども、権利の期間というのは一定に限っているわけであります。 それから、国際的に見ましても、ECにおきますライフサイクルの短いデザインの保護を目的といたしました保護の制度が、模倣に対して差しとめ請求権を与えるということで、この不正競争防止法と同じような考え方にのっとった規制案が現在検討されているわけでありますけれども、これにつきましてもデザインの公表時から三年間ということになっているということであります。 それから、和田先生御指摘の調査とちょっと、大変申しわけないのですけれども該当のものを今あれでございますが、私どもの社団法人日本デザイン保護協会が平成三年十月に発表いたしました短いデザインのいろいろなもの、早期に保護すべき意匠とかそういうものについての平均期間を調べたものがございます。それによりますと、短いものは数十日、長いものでも千日を超えるものは、運輸運搬機械とか産業用機械の一部に千二百日というものがございますけれども、概して皆短いわけであります。 つまり、ここで念頭に置いておりますものは、そもそもライフサイクルが短いようなものをここで保護しよう。ですから、三年過ぎたらほとんどライフサイクルがなくなるようなものがあるわけです、一方に。そういうものについては早く手当てを、だれかがまねして、それを権利をとっていたりすると間に合わなくなる、そういうときでも例えばすぐにこの不正競争防止法によって差しとめ請求ができるというところに意味があるのではないかと思います。したがって、非常にライフサイクルが長いようなデザインでありましたら、むしろそれは意匠権をとっていただいて、そういう権利を確保して保護をするというのがやはり適切なのではないかというふうに考えるわけであります。 したがいまして、三年経過した後においてやるのは勝手がということになりますと、これは本法上は一応今のデッドコピーの対象ということにはならないわけでありますけれども、商業道徳上当然に歓迎されるべきものでないことは言うまでもありません。 それから、その商品の形態が商品等の表示として需要者の間に広く認識されるように至った場合におきましては、本法の第二条第一項第一号、いわゆる混同惹起行為として規制の対象となる場合が当然にあると思います。 それからまた、それが不法行為の要件を満たす場合には、民法に基づく損害賠償の対象となることもあり得ると考えます。
○和田(貞)委員 わかりました。 ただ、このデザイン保護協会の資料をどこをとるかということで異なってくるわけですが、答申が三年ないし五年ということになっておるにもかかわらず、五年としてもよかった、それをわざわざ三年にしたのはなぜかということを、こういう資料もあるのに、にもかかわらずということを言ったわけでございまして、それ以上どうこう言いません。 時間の関係で、これまた二つ、三つ合わせて質問いたしますが、先ほども申し上げましたように、救済面の充実をしたということが非常に私は評価できると思うわけです。 ところで、この法律と近似した法律がやはりありますね。さきに特許庁が提案された特許法あるいは実用新案法、意匠法、商標法、通産の関係じゃございませんが文部省の所管の著作権法、これはいずれも権利侵害に対するものでございますので、法人重課がこの不正競争防止法に重課されて、これ以外の、今指摘いたしました法律に法人重課が伴わないというようなことで、果たして法体系上整合性を欠くのではないかというように思うわけでございますが、将来的にどうするかということも含めて、ひとつあわせてお答え願いたいと思うわけであります。 さらに、著作権法は、これは恐らく後で文部省の方に言ってもらいますが、時間がありませんので先に申し上げておきますと、必ず文部省の方は、これはあくまでも一種の振興法なんだ、だから不正競争防止法のようにそういう取り締まるという法律でないので、こういう言葉が必ず出てこようと思いますので先に申し上げておきます。 それにいたしましても、やはり模倣という行為は同じ類型であるわけでございますから、罰則を強化した方がむしろ保護が非常に強められるということになりやしないか、こういうように思うわけでございます。 私は、この機会に申し上げておきたいと思いますが、調査室の方でもらいましたこの資料によりますと、警察庁の調べで過去の知的財産権関係の法令違反検挙数を見てますと、この不正競争防止法の違反件数よりも商標法の検挙数あるいは著作権法の違反の検挙数、これは非常に大きいわけですね。むしろ年によっては七倍も八倍も検挙されておる、こういう資料をいただいているわけであります。にもかかわらず、先ほども御指摘いたしましたように不正競争防止法は今回は法人重課を一億円以上ということで導入された。ところが、特許法以下それはない。著作権法においては罰金刑もなお百万円で据え置かれておるというようなことで非常にアンバランスがあるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。 したがいまして、この点について将来にわたってはどうするかということも含めてひとつお答え願いたいと思います。
○姉崎政府委員 御説明いたします。 工業所有権関係の法律と不正競争防止法の法目的が、広い意味で知的所有権の保護あるいは協業秩序の維持という意味ては同じでございますが、この実際に法が適用されるあり方といたしましては、御案内のとおり工業所有権の場合はこの権利を付与するということで、これを通じて産業の発展に寄与するということを目的といたしておりますので、基本的にその不正競争防止法の立て方とやはり異なっております。したがいまして、先ほど先生が言われました全体の知的所有権関係法制の整合性という観点は一つございますが、やはり個々の法律に則して見ていただく必要があるのではないかということでございます。 工業所有権の、特許関係の法律でございますが、実はこの権利の侵害がございましたときに、被害者というのはまさにこの権利者に限定されるわけでございます。 一方、この不正競争防止法において違法行為が発生いたしますと、これはもともとのオリジナルの商品の製作者のみならず競争秩序全体に広く影響を与える、消費者も含めまして影響が広いわけでございます。そういう大きな違いがございまして、工業所有権に関する侵害は不正競争防止法に比べますと反社会性の度合いがやはり低い。したがって、基本的には特許関係の侵害については権利者が自分は侵害を受けたという申し立てをすることで初めて犯罪になり得るということになっておりまして、この侵害の抑止のためには刑事的な規制によるよりは当事者間の言うならば民事救済が抑止力として実際は働いているというのが実態でございます。したがいまして、この工業所有権関係の法律について、今回特許関係の法律の罰金規定を改正いたしましたが、法人、個人の区別をするということはいたさなかった次第でございます。 今後についてどうするかということにつきましては、やはり先ほど申し上げました他の法律との整合性という点はもちろん踏まえつつ、しかし法人についてとりわけ違法性が発生し得るかどうかという実態も今後の推移を見ながら検討させていただきたいということでございます。
○伊勢呂説明員 著作権の罰則のあり方につきましては、著作権などの保護の実効性を確保する観点から適切に定める必要があるというふうに考えております。現行の百万円の罰金の額につきましては昭和五十九年に引き上げたところでございますが、以来九年を経過いたしまして、物価の上昇、権利侵害行為による被害額の増大などの状況の変化を生じているところから、御指摘の趣旨も踏まえまして今後適切な対応というのを検討してまいりたいと思っております。 なお、法人重課の規定につきましては、知的所有権法制全体の中でのバランスの観点、国際的な動向などの種々の観点からとらえる必要がございまして、今後の検討課題とさせていただきたいというふうに考えております。
○和田(貞)委員 ひとつ検討課題として前向きに、どうやら前向きにということはやらぬということに近いようなことが非常にはやっておりますが、やるという前提に立って前向きに、文部省の方も中小企業庁の方もひとつよろしくお願いしたいと思うのです。 最後の質問でございますが、虚偽表示、不当景品類及び不当表示防止法という法律、それから家庭用品品質表示法という法律がありますが、この法律は一応排除命令なりあるいは通産大臣が改善命令なりをする、その命令に違反をした場合に処罰するという罰則規定なんですね。ところが、この法律は直罰規定であるわけですね。同じような法律で少し均衡を欠くように思うわけなんですが、これらの均衡を考えられながらなぜこの法の改正をやられたのかということをひとつお聞きしておきたいと思うわけでございます。あわせて、この品質表示法の違反の表示については直接本法で処罰することはできないかどうか、これをひとつお尋ねしておきたいと思うわけでございます。 そのことをお答えいただいて、最後にひとつ通産大臣の方から、この運用面が非常に難しい面も伴うと私は思いますので、法の運用というのは公正に、公平にやらなくてはならないと思いますので、しかとこの法の運用について留意し善処する点もたくさんございますので、大臣の方からその点の決意を述べていただくということで、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○熊野政府委員 大臣の御答弁の前に、景表法あるいは家庭用品品質表示法との関係、それから罰則のバランス等について御質問がございましたので、お答えさせていただきます。 まず、景品表示法は、商品あるいは役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、公正な競争を確保し、一般消費者の利益を保護しようとするものであります。また、家庭用品品質表示法は、一般の消費者が商品選択に際しまして目安となりますような家庭用品の品質に関する表示の適正化を図るというのがその目的でございます。したがいまして、これらの二つの法律、景品表示法及び家庭用品品質表示法は、それぞれ公正取引委員会あるいは通商産業大臣による行政規制でございまして、行政規制の違反に対して、例えば命令に対して違反した場合に罰則が科されているところでございます。 それに対しまして、本不正競争防止法は、不正競争の防止によって事業者の営業上の利益を保護するとともに、これを通じて公正な競争の確保を図るというのが目的でございます。こういう観点から、例えば不当な表示、第二条第一項第十号でございますとか、そういうものについては差しとめ請求とか損害賠償といったふうな民事的な。請求ができるようになっているわけであります。また、一定の特定のものにつきましては、社会的な意味合いが大きいということで、罰則も科するようになっているわけであります。 以上、申し上げましたように、景品表示法、家庭用品品質表示法及び不正競争防止法は、それぞれ規制の仕組みを異にしております。ただ、対象といたしまして、不当な表示を規制の対象としているというような点においては共通しているわけであります。 したがいまして、個別のケースによって、具体的なケースで判断する必要がありますけれども、物によって、同じ行為が景品表示法や家庭用品品質表示法に基づく行政規制の対象となると同時に、したがって、そういう意味でその罰則の対象となると同時に本法の構成要件にも該当する場合には、本法に基づいて被害者が民事的請求を行ったり、司法当局が刑事罰の対象とすることもあり得るわけであります。したがって、そういう意味では重畳的な適用がなされているわけであります。 そこで、そのバランスについてどうかということでございますが、結局いろいろな法律の間のバランスというのは、例えばこの不正競争防止法と他の、先ほど御質問のございましたような工業所有権立法あるいは著作権法といった法律との間のバランスの問題も片やございますし、片や、ただいま御指摘のございましたような景表法あるいは家庭用品品質表示法とのバランスはどう考えるかといったふうないろいろな問題があるとは思いますけれども、そういう問題につきましても、法制局、法務省等といろいろ議論して、その結果としてこういう提案をさせていただいたわけでございますので、よろしく御理解を賜ればありがたいと思います。
○森国務大臣 午前中からの御論議でも答弁を申し上げておりますように、一般に法律は広く国民の理解を得るということが必要であるわけでございまして、特に本法のような法律は国民の権利義務に関するものであるために、一層深い理解を得る必要があるというふうに認識いたしております。 前回の改正時は、東京のみならず通産局所在地等の地方におきましても、広範に説明会を開催いたしましたり、わかりやすい解説書の発行等を通じまして周知徹底を図ってきたところでございますが、本法が国民に利用されやすいように、本法の立法経緯、改正内容等の周知徹底を図ることによりまして十二分に御理解をいただくことが重要であると考えておりまして、なお詳細な解説書の発行あるいは説明会の開催などを行い、内容等の周知徹底に関して積極的な対応をしてまいりたいと考えております。 また、和田委員から非常に細かに、この改正法を評価していただきながら、なお運用について十分なる留意がありますように御親切なる御質問をちょうだいいたしておりますが、私ども、委員の意のあるところを十二分に酌みまして、事務当局にも運用について十分に遺漏のないように努めてまいるように徹底してまいりたい、このように考えております。
○和田(貞)委員 終わります。
○井上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————
○井上委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 参議院送付、内閣提出、不正競争防止法案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○井上委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○井上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時五十八分散会