法務委員会 第11号
- 発言数
- 147 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1992/05/28
会議録
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
○北村哲男君 日本社会党の北村でございます。 民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案についての質疑を行ってまいりたいと存じます。 最初に、これは非常に技術的な問題でもありますし、なかなかわかりにくい点もありますので、そういう技術論に入る前に、一般的な国民感情という意味で大臣にお伺いしたいと思うのですけれども、大臣は長い政治家としての生活をされている中で、一度や二度は裁判を経験されたことがあると思います。しかし、普通の一般の国民はなかなか裁判になじみにくいというふうに言われておるのですけれども、この出された法律案関係資料を見ましても、日本全体でも年間十二万件ぐらいしか裁判は起こされてないのですね。そうすると、これは千人に一人というくらいの割合でございます。 なぜ日本国民が裁判になじみが薄いのかということを率直にお考えになっていただきたいと思うのですけれども、確かにアメリカなんかと違って、日本は古い規律、社会規範なんかがあって、裁判になじみにくい国民性もあるかもしれませんけれども、制度の上では通常言われているのは、二つあると思うのです。 一つは、訴訟費用が不透明で高過ぎる、だからなかなか裁判に行くのをちゅうちょするという問題と、もう一つは、裁判が遅くていつ結論が出るかわからないということが普通に言われておるのです。私は、その二つが大きな点かなというふうに思うのですけれども、その辺の大臣の目から見た御感想をお伺いしたいと思うのです。
○国務大臣(田原隆君) ただいま委員が御指摘になりましたが、私も全く法律に関しては、特に民事とか刑事とか、そういう基本法に関しては全く素人でございますが、裁判を受けるといったら何となく気が重くなって、いや面倒くさいやという気になったりするというのは、進めていくと経験的にやはり先生のおっしゃったような二点だろうと思うのです。どうせやったって時間がかかるわいというのと、えらい金がかかるわいというふうな、この率直な気持ちがあるのじゃないかと思うのです。 その点は私も感じておりましたが、それじゃどうしたらいいかという問題がこれから起こってくる問題だと思うのですけれども、時間がかかるというのは手続を早くするという方法はないかどうかという問題になってきますが、それについては民訴の問題だろうというわけで、法制審議会の中にもそれを勉強する部会ができておりますから、そこで今検討中でございますが、できるだけ進行の早い手続、運用を期待できるようにしていただきたいと私は思います。 それから金の面ですけれども、訴訟の費用を私なりに分析してみますと、訴訟費用と訴訟に伴う費用としての弁護。士費用等がありまして、その訴訟費用の中にも当事者が払う費用と裁判に要る費用とあるし、その裁判費用の中にも手数料とその他があるし、手数料の中にも申立手数料とその他の行為手数料とがある。そういうふうに、だんだん分けていくと結構な費用になっておるということで、憲法で何人も簡単に、ためらいなく裁判が受けられるように、あるいは裁判を求められるように保障されていると思うのですけれども、それがそうもいかないというのはその辺にあるのじゃないかなという気がいたしております。 以上、あわせまして私も先生と同感でございます。
○北村哲男君 大体認識は一致しているという点では大変うれしいのですが、第一の結論がなかなか出ないという点は、それは法曹人口とかそういう問題で、前回の国会でも司法試験制度の改革で人数をふやして充実しようということで手がつけられてきて発展していくと思うのです。 二番目のお金の問題なんですけれども、今大臣言われたように、確かに訴訟費用といっても申し立て費用そのほか、一番大きい問題はやはり弁護士費用がとても高くかかるのではないかということが一番の関心の的だと思うのですけれども、裁判をするにはさまざまな費用がかかる中で、今回訴訟費用すなわち通常は訴訟印紙代というふうに言われているのですけれども、それはもう非常に微々たるもので、例えば普通の規定からいいますと、十億円の訴訟をすると弁護料というのは大体三%が着手金なんですね。そうすると、約十億のうち三%というと三千万円かかるわけです。ところが、その訴訟費用というのは大体〇・五%で、五百万円ということになると非常に低いのですけれども、それから見ると今回の改正というのは一つの柱の中の非常に微々たるもので、改正も五百万がゼロになるのならばいいのですけれども、その五〇%ですから十億円の裁判に対して約二百万ぐらい少なくなるというので、それから見ると国民が裁判に近づきにくいあるいは遠い存在だということについてわずかな一歩の前進かもしれませんが、ほとんど解決にならないような気がするの、ですけれども、その辺の御感想はいかがでしょうか。
○国務大臣(田原隆君) 一面おっしゃるようなことだと思うのですけれども、裁判の弁護士に対する費用については、これはまた法曹界の問題として、特に日本弁護士連合会を含めた多そういう連盟とか会とか、そういう御自体でお考えにならなければいかぬ問題が多々あって、少し時間がかかる問題だと思うのですが、政府側から提案して緊急避難的といいますか、できるだけ早く解決できる問題から手をつけていこうとすれば、今日御提案申し上げているような事柄になるのではないか、そういうふうに考えております。
○北村哲男君 今回の改正案提案理由の説明の中に、民事裁判を国民にとってより利用しやすいものとするために、手数料の目的価額の高額部分の引き下げを行ったというふうにありますが、それが本当に国民にとって利用しやすい民事裁判制度にすることになるのかどうかという疑問は今申したとおりです。すなわち国民にとって利用しやすい裁判は、例えば弁護士費用の問題、あるいはそのほか後に述べる訴訟救助の問題とか、あるいは法律扶助の問題とかという形で法的にやはり救済していくという方法をもっと総合的に充実していくということが大事だという気がするわけです。 しかし、それはそれとしまして、とりあえずはこの中立手数料の問題、それもわずかながら一歩前進だということで、その点について技術的な問題を聞いていきたいと思うのですが、まず、この中立手数料を納めさせるという理由は一体どういうものだろうか。 といいますのは、申立手数料は絶対納めなくてはならぬというのはもう絶対的なものではなくて、まあいろんな例を見ますと、ほとんどしなくていい、ゼロに近いものとかあるいはそのほかのいろんな制度というのがあると思うのですけれども、特に日本でこの中立手数料を出しますということについての理由は一体何だろうかという点についてはいかがでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 委員御指摘のとおり、裁判の申し立てに対して手数料を取るか取らないかというのは、これは国としての政策の問題であろうかと思うわけでございまして、現に世界各国でも極めてまれな例でございますけれども、入り口においては手数料を取らないという国もあると承知しているところでございます。 ただ、現在の我が国の制度は、御案内のような形で手数料をいただくということになっておるわけでございますが、この考え方は、こういう方法をとっております理由として私どもが理解しておりますところは、基本的には裁判に係る費用は国費をもって、言いかえれば国民全体の負担をもって賄うということであるけれども、国民には裁判制度を利用する者、これもかなり頻繁に利用する者と全く利用しない者とがある。そういったことを前提として国民全体の公平という観点からは、裁判を利用する者にその制度の運営費用の一部分を負担させるということが公平にかなうのではないか。さらにはその利用する者相互の間におきましても、その裁判によって求める利益の多い者と少ない者との間でその差を設けることが公平なのではないか、そういう国民全体の負担関係の公平ということを理由としているものというふうに理解しております。 あわせて、これは副次的な目的かと思いますけれども、申し立てについてある程度の手数料を徴収するということがいわゆる乱訴を防止するという観点からも有益であるという考え方に基づいているものというふうに理解しております。
○北村哲男君 確かに今二つの理由、受益者負担といいますか、利用する者に負担をさせるということ、それからどこかの国のようにむやみに訴訟社会になってしまうという乱訴の防止というためにお金を出させることによって少しブレーキをかけるということもあるかと思いますが、それでは日本の現行の制度は、少額の場合は若干多いのですが、平均すると〇・五%が訴訟費用というか申し立て費用の一つの基準なんですけれども、これはどういうところから〇・五%という数字がはじき出されたのでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 具体的な手数料の算出比率につきましては歴史的に若干の変動があるわけでございますけれども、私ども承知しておるところでは、この基本的な構造ができましたのは明治二十三年に制定された法律によってできたというふうに承知しております。それによって現在の基本構造ができ上がって以来若干の修正を経ながら今日まで至っているということでございまして、最初に設定する場合の比率というのがどういう基準でできたかということについては余りつまびらかな資料を用意しておりませんが、これはドイツの制度を承継したというふうに聞いておりますので、そのドイツの当時の比率というものを大体基準にしてそれに近い形で設定されたものではないかというふうに考えております。
○北村哲男君 〇・五%の根拠はどうもそのまま外国の制度を持ってきたというふうにしか聞こえませんが、まあいずれそういうものの検証も必要かと思うのです。 それで、今の我が国の申し立て費用のもう一つの基準はいわゆるスライド制、〇・五%だから高額になればなって幾ら高くなっても〇・五%という形で進んでおるのですけれども、このスライド制というのはどういう根拠で選ばれたのか。 というのは手数料というのは、十万円を返せという訴訟も一億円を返せという訴訟も手数は変わらないような気がするので、そうするとスライド制は必ずしも合理的とは限らないという一つの反論もあると思うのですけれども、スライド制の合理的な根拠というのはどういうところにあるのでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) このスライド制もただいま申し上げましたドイツ法に倣ったものというふうに理解しております。 このスライド制をとっておる理由といたしましては、先ほどちょっと触れましたが、裁判の運営費用というものの全部ということではなくてごく一部でございますけれども、制度を利用する者が負担するのが公平であるということを前提にしてそして利用する者の間でどういう形で負担するかということを考えた場合には、少額の請求をする人からそんなに高額な手数料を取るというわけにもまいらないというような考慮からやはり求められる利益の額に応じて多くの利益を求めようとする方には多くを負担していただくということが利用する者相互の間の関係から考えて公平なのではないかということで、請求額に応じて高額な手数料をいただくということにしているのではないか、それが基本的な理由ではないかというふうに考えております。 なお、その請求額が大きいということはやはり紛争としての規模が大きいわけでございますので、それだけ一般的に申し上げますれば慎重な審理が必要であるということが一般的な傾向としては言えようかと思います。さらには、先ほど申しました乱訴の防止という観点からむやみな額を請求されては相手方も迷惑だということもございますので、そういった観点もあわせて含まれているというふうに考えております。
○北村哲男君 それでは、先ほどからちらほらとよその制度、外国の制度なんかが出てきておりますので、そう詳しくは必要ないので概観程度でいいのですが、日本法は大体ドイツ法を学んだというふうに言われますが、今の大体経済はアメリカ社会、アメリカ経済の様式のようなんですけれども、ですからアメリカあるいはドイツ、フランス、イギリスあたりの訴訟の申し立て費用の概観を言っていただきたい。 それから、もし御準備願えておるのであれば、例えば一千万円の訴訟を出した場合に各国では大体どのぐらいかかるのか、そして、その金額で差が出るならば、じゃ一千万円の十倍の一億円の訴訟をした場合には今の四つの国で一体どのくらいの差が出るのか、これについてちょっと御説明を願いたいと存じます。
○政府委員(濱崎恭生君) まず、前提として諸外国の訴訟費用制度に関しましては、その歴史的な沿革を反映いたしましていろんな制度がございます。また、裁判の機構自体にも違いがございます。そういうことでございますので、提訴の際に納付する手数料だけを取り出して単純にその額を比較することによって民事裁判を利用する者が負担する負担の全体を正確に対比できないという面があるということについて申し上げる必要があろうかと思います。 諸外国の手数料制度の詳細、大変調査しにくい事情がございますので概観だけ申し上げさせていただきたいと思います。 今、御指摘のアメリカでございますけれども、アメリカの連邦裁判所では請求額のいかんを問わず百二十ドル、日本円に換算いたしまして一万数千円という定額の制度になっておりまして、州の裁判所では州ごとに異なりますけれども、ほとんどの州では日本円に換算して一万円ないし二万円程度の定額制をとっております。 次に、イギリスでございますけれども、これは高等法院、ハイコートにおきましては、これも定額でございまして七十ポンド、一万数千円程度の定額制ということでございます。県の裁判所、カウンティーコートにおきましては、低額部分についてはスライド制が採用されておりますが、最高限度額が定められておりまして、その最高限度額も日本円に換算して一万円前後という金額になっております。 それからドイツでございますけれども、これはいわゆるスライド制を採用しております代表的な国でございます。我が国と同様に訴額に応じて所定の額を順次加算して手数料額を算出するという制度でございます。ドイツは非常に細かい分類の金額区分をしておりますが、最高額の部分の訴額百万マルクを超える部分につきましては五万マルクごとに百五十マルクの手数料割合、比率にいたしまして〇・三%ということになっております。要するに低減方式をとっている一番高いところの比率が〇・三%ということでございます。 フランスという御指摘であったかと思いますが、フランスは先ほど申しました珍しい例でございますけれども、申し立て手数料をいただいておらないということでございます。 次に、訴額一千万円、一億円に相当する各国の手数料はどのぐらいかということでございますが、これは必ずしも算定方法の細かいことについては若干正確性に誤りがあるかもしれませんが、一応概算してみましたところを円換算をした上で申し上げますと、訴額一千万円の場合は、我が国では五万七千六百円ということでございます。アメリカ、イギリスの場合は、先ほど申しましたような定額制でございます。ドイツでは約九万円余りという金額になるものと推定されます。それから訴額一億円につきましては、我が国では五十万七千六百円ということでありますが、ドイツでは約六十万円余りという金額になるものと思われます。
○北村哲男君 今の概観で各国さまざま、ゼロからその他いろいろあることはわかるのですけれども、今度の改正で日本は逆に低くなっていくということをやっておられるのです。 ところで、このような改正の方向づけをされた、しかもかなり緊急にされたということの背景には日米構造協議があるというふうに言われております。 すなわち、直接的には日米構造協議で問題にされたのは独占禁止法違反に対する罰則の強化ということがあったのですが、それとともに民事訴訟を提起しやすくするようにというアメリカからの要求があったという点があります。その要求内容はどういうものであったのかと、それとの関連はこの民事訴訟法の費用の改定、特に高額部分を下げていくという形についてはどういうことがあったのかという点についての御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 御質問の事項について経緯を説明させていただきます。 日米構造協議のいわゆる排他的取引慣行の場面におきまして、アメリカ側は我が国の独禁法違反行為の抑止対策が不十分であるということでさまざまな要求をしてきたわけでございますけれども、その抑止効果を上げるための一つの方策として独禁法上の損害賠償請求訴訟の活性化を図るべきであるということを主張いたしまして、その中の一つの対策として、独禁法違反に基づく損害賠償請求額は往々にして高額な請求になるべきところ、我が国の制度のもとでは提訴手数料が高額に過ぎる、それが我が国でその損害賠償請求訴訟が活発に利用されない一つの大きな理由なのではないかということで、独禁法上の損害賠償訴訟に限って提訴手数料を免除する、あるいは大幅に引き下げるという制度を導入すべきである、こういう主張、要求をしてきたわけでございます。 そこで、法務省といたしましては公正取引委員会と協力いたしまして問題提起に対応する検討をしたわけでございますが、我が国の制度のもとではやはり独禁法上の損害賠償訴訟に限って提訴手数料上特別の手当てをするということは制度上極めて困難であるし、国民的理解も得られないのではないかという結論に達しまして、そういうことを平成三年の初めに開催されたフォローアップ会合においてアメリカ側に伝えたわけでございます。 ただ、法務省といたしましては、そういった問題提起とは別に我が国の民事訴訟全般の問題として、これは提案理由説明で申し上げておりますように、近時の経済情勢の変化にかんがみて高額訴訟が次第にふえているという情勢の中で、やはり高額訴訟の手数料の算出基準、すなわち三百万円を超える部分については一律に〇・五%ということでいいのかどうかということについてこれは国内問題として関心を持っておったところでございまして、その旨をアメリカ側に伝えたという経緯がございます。 そういったことで、アメリカ側から提訴手数料引き下げの要求があったということが今回の改正の一つの契機になっているということは事実でございますけれども、今回の改正はあくまでも我が国独自の問題として、提案理由として申し上げておりますような理由によって民事裁判を国民にとって利用しやすいものにするという観点から行ったというものでございます。
○北村哲男君 確かに日米構造協議が一つの契機になったということがありますし、またそれに沿った改正案だと思うのですけれども、アメリカが確かにああいう新しい国、そして多民族国家というような言葉はおかしいのですが、さまざまな国の人たちが集まってできた国で法律だけがルール、社会規範として力を発揮する。その中で、訴訟が国民の権利を守る唯一のよりどころになっているということはよくわかるのですけれども、一方それが一つの訴訟社会、あるいは訴訟の弊害が多く出てきているということをよく聞きます。 特に、アメリカの法曹社会人口と申しますか、要するに訴訟で食べている、法律で食べている人口が六百五十万人といって、自動車産業に次ぐもう一つの大きな産業になっているというふうに聞きます。ところが、日本は弁護士の数は一万五千人ぐらいですから、多く見てもたった五万ぐらいで、産業としては認められない、単なる専門家集団、あるいは職人の集団のような立場だと思うのです。 そういうところで今、日本で一つの訴訟社会を認めるということは非常に混乱を招く。特に問題とされている乱訴を受けたときに、日本の裁判所制度あるいは法曹制度がそれを受け入れるだけの力はないと思うのですけれども、そういう流れをアメリカからの要求によって受け入れていって、そして大きな訴訟を日本の司法制度が受け入れることによって混乱を招いていくのではないかという心配もあるのですけれども、その辺についての御見解はどうでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 今回提案しております提訴手数料の高額部分についての引き下げ、これは先ほど申しましたように、アメリカ側からそういった要求があったということが一つの契機になっておりますが、私どもとしては決してアメリカの要求があったからそれに対応するために、アメリカに満足してもらうためにこの改正をするという考え方ではございません。その点はこれまでの構造協議フォローアップ会合の場面でも十分にアメリカ側に伝えているところでございます。あくまでも我が国の国内の問題として、かつ乱訴を慫慂するということではなくて、国民が裁判を利用しようとする場合にその入り口である提訴手数料というものがネックになるということがないようにという観点から今回御提案しておりますような改正案を提出させていただいたわけでございます。 したがって、今回の改正によっていわゆる乱訴を促進するとかいわゆる訴訟社会化を招くとか、そういった性質のものではないというふうに考えております。
○北村哲男君 直接なるとは言いませんけれども、その流れをつくっていくのではないか、その契機になるのではないかという一つの危惧を申し上げたわけです。 それはそれとしまして、少しく今度の改正案の直接的な内容を聞きたいと思うのですけれども、今回の改正案は、一つは通常訴訟の申立手数料の計算の仕方の改正と、それから二つ目は借地非訟事件、三つ目が民事調停事件に対する手数料、この三つを改正しておるのです。 民事訴訟費用というのはこの法律の二条ですが、十九項目に分かれて、今の三つのものはもちろんあるわけですけれども、そのほかさまざまな費用がたしか十九項目に分かれて規定してあると思います。ちょっと六法全書を持ってきていないので言えませんが、例えば強制執行の費用だとかそのほかさまざまなものがあると思うのですけれども、今回この三つのものだけを改正の対象にされたというのはどういうところにあるのでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 委員御指摘のとおり、訴訟費用には非常に多数のものがございます。先ほど大臣も概要を申し上げましたけれども、いわゆる裁判費用のほかに当事者費用と呼ばれるものがございます。御指摘の民事訴訟費用法二条に掲げられておる四号以下の手数料、これが十九号まであるわけでございますが、それは多くはいわゆる当事者が負担する当事者費用ということでございます。 今回の改正の対象といたしておりますのは、裁判費用の手数料のうち、さらにその中のいわゆる行為手数料を除いた申立手数料、その申立手数料のうち、さらにその申し立ての種類に応じて定額制をとっているものといわゆるスライド制をとっているものとがあるわけでございますが、今回の改正は、その申立手数料のうちでいわゆるスライド制をとっているもの、これについて、そのうちの高額部分についての改正を行おうとするものでございます。スライド制をとっているものを網羅いたしまして今回の改正の対象にしているというふうに申し上げることができるかと思います。
○北村哲男君 そうすると、この民事訴訟費用等に関する法律第二条を見ると訴訟費用というのはずらっと十九項目あるのですが、この中でスライド制をとっているものはこの三つの改正で全部網羅できるというふうにお伺いしてよろしいのでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) スライド制をとっているものは、訴訟の関係で申しますと、いわゆる訴え提起の手数料のほかに控訴、上告等の提起手数料というものもございます。また、支払い命令の申し立ての手数料というものもございます。 そういった手数料の定め方は、訴えの提起の手数料を基準といたしまして、その額の一・五倍とか二倍とかあるいはその半額とか、そういう形で定められております。したがって、訴えの提起の手数料を今回の提案のように改正することに伴いまして自動的にそういった手数料についても改正が加えられるということになるわけでございます。 そういう関係にございまして、結論として申し上げますと、いわゆるスライド制をとっている手数料につきましては、具体的には御指摘の三つの手数料を改正することによって全部実質的な改正が加えられる、こういう関係になります。
○北村哲男君 大体わかりました。一審だけのスライド制を変えれば当然控訴、上告あるいは抗告とか、そういうものも全部自動的に変更になってくるという意味で改正の対象になっているというふうにお伺いしたいと思います。 ところで、この三つの種類、類型の訴訟、すなわち一般の民事訴訟それから借地非訟事件、そして民事調停事件、三つが対象になっているのですが、出されました法律案の関係資料の中を見ますと、この資料の七ページには「地方裁判所第一審訴訟事件における訴額別新受件数の推移」ということで、昭和五十八年から平成二年までのずっと推移が書いてあります。確かに、一億円を超えるものが年々〇・一%ないし〇・二%上がっておって、昭和五十八年と平成二年を比べると、ちょうど倍ぐらいにふえているということはわかるのですが、こういうものが今回の改正の実態的な背景というふうになっていると思うのです。ところが、この民事調停事件あるいは借地非訴事件というものについてそういう実態的な裏づけがあるのかということについては資料が載ってないのですけれども、それについてはこういう訴訟事件と同様に調査をされて、現実に高額事件がたくさんあるということを検討されておるのでしょうか。それはどちらか、裁判所でも法務省でも結構ですが。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 調停事件についてでございますけれども、調停事件につきましても同じような傾向がうかがわれるということでございます。 この法律案参考資料には出ておりませんけれども、調停事件について最近の五年間、昭和六十二年から平成三年ということで申し上げてみますと、一千万円までの事件、これは調停の目的の価額が一千万円までの事件でございますが、これを簡易裁判所、これはほとんど簡易裁判所でございますが、これについて申し上げますと、大体九〇二二%、それから一千万円を超える事件は三・五%、それから算定不能の事件が六・二%というふうになっております。 したがいまして、今回の改正で影響のございます一千万円を超える部分というのは三・五%という数字になっております。件数にしまして千九百五十六件、こういう数字になっておるわけでございます。それが、昭和六十三年では四・二%、平成元年が四・二%、こうふえてきたわけでございます。ところが、平成二年には逆に三・八%というふうにパーセントとしては減っておるわけでございます。これは、全体の事件数等が平成元年まで減っておったんですが、平成二年にふえたというような関係でパーセントがやや減ったのではないかというふうに思っておるわけでございます。 それから、次に地裁について申し上げてみますと、地裁の調停事件、これは御承知のように事件数が二千件前後という非常にオーダーとしては少ないわけでございますが、これが昭和六十二年でいきますと、そのうち一千万円を超える部分は一五・一%という数字になっておりますが、それはその後一六 ・二、一五・四、一七・一、一六・一、まあ若干ではありますが増加の傾向を示しておる、こういうことでございます。 それから、借地非訟でございますが、実はこの借地非訟と申しますのは事件数が年間千件程度でございまして、私どもの方でこれについての請求の目的の価額についての事件数というのは実はとっておらないわけでございます。それで、今回のこういう検討がございまして、若干東京地裁のごくサンプルということで昨年の二カ月分、昨年の五月、六月と二カ月だけとったわけでございますが、そういたしますと、この場合には東京地裁全体で四十九件あったわけでございます。そのうち一千万円までの事件と申しますのが十三件ございまして、一千万円を超えるのが三十六件ということで、借地非訟につきましては、特に最近土地の値段が非常に高騰しておるというようなこともあろうかと思いますけれども、高額の事件が多いということがうかがえるわけでございます。
○北村哲男君 ですから、私がちょっとここで感じるのは、どうも今回の改正が、実際に高額の事件がふえて国民が不便を感じているという本当の実態的な調査に基づいてやられたのかどうかという点について少し疑問を感じるわけです。ただ、スライド制だけをひっくるめて対象にされたというような気がする。特に、今の借地非訟事件についても、そうであろうことは想像はつくのですけれども、実態的な裏づけがない。今後は当然されていくのだと思いますけれども、その点についてはやや観念的というか、形式的な改正のような気がするのです。 それはそれとしまして、一つ別の観点ですが、今までずっと訴額一千万あるいは訴額一億円というふうな話をしてきたわけですけれども、この訴額というのは一体どうして決められるのか。これは確かに、民事訴訟費用等に関する法律の四条には「訴訟の目的の価額」という用語があり、かつ民事訴訟法二十二条なんかには、目的の価額は訴えをもって主張する利益をもってこれを算定するというふうな言い方をしてあるのですが、それを見てもすっきりこない点があるのです。 一体、簡単に言うならば、例えばお金を一億円貨しだからそれを返してくれという場合は訴額が一億円というのはよくわかります。しかし、片やこの土地を返せという場合には、時価一億円のものであっても実際は時価でははからなくて、固定資産税という時価よりも実際はるかに低い、三分の一ぐらいの額を基準として訴額を決める、それが目的の額、いわゆる訴額というふうに言われている。そうすると、土地と実際のお金では全く違うということがあります。 そういうことで、一体訴額というのはどういう基準でどういうふうに決められるのかという点について、まず説明を願いたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) まず、法律の考え方として私どもが理解しているところを申し上げさせていただきますが、この「訴ヲ以テ主張スル利益」というのは、訴えを提起した原告が全部勝訴の判決を受けたとすれば、その判決によって直接に受ける経済的利益、これを客観的、金銭的に評価して得た額であるというふうに言われております。財産上の請求でない請求については、その額を算定することができないわけでございますけれども、財産上の請求である限りは、すなわち経済的な利益を享受するということを本質とする請求に係る訴えである限りにおいては、要するに裁判所において具体的な事件の内容に応じて必要な要素を基礎にしてこれを算定することができるという考え方で法律が定められておるというふうに理解しております。 そういうことで、事案に応じて具体的には受訴裁判所の裁判長において今申しましたような金額を算定するという考え方でできてくるものと承知しております。実際には訴訟の類型によって具体的に定めることが非常に難しいものもあろうかと思いますが、それは個々具体事案に応じて裁判所において判断されるのが適切であるということでこういう制度になっているものと考えております。
○北村哲男君 ちょっとよくわからない難しい部分があるのですけれども、具体的に先ほど私が申しました土地の問題がございます。お金の場合はすぐわかります。土地の場合は実勢価格と固定資産税評価額で大いに違いますね。実際の受ける額は実勢価格の土地なのに、実際の訴額は固定資産評価額というふうに言っておりますね。 しかももう一つ、いわゆる基準があると思うのですが、固定資産税評価が決まっている土地は固定資産税評価額でいけるけれども、土地の中には固定資産税評価が定まっていない土地があると思うんですよ。それは今度は実勢価格でいくというふうな基準があると思うのですけれども、その例はどうでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 訴額算定の実際でございますので、担当しております私ども裁判所の方から申し上げたいと思います。 訴額の算定につきましては、今法務省の方からお話がございましたように、個々具体的な事件によって決まるということでございます。最終的には受訴裁判所が決める、こういうことでございますが、まずこれは入り口の段階といいますか、訴え提起の段階におきまして印紙を張ってこられる、それを受付の窓口で受理をして裁判体に回す、こういう手続になっておるものでございますから非常に数が多いということで、受け付け事務といたしましてはある程度の基準といいましょうか、要領のようなものを示さないと、これは全国的に非常に窓口が混乱して裁判所の事務も渋滞いたしますし、申立人の方も非常に困るというようなことがございますので、これは最高裁判所の民事局長通知というのを実は昭和三十一年に出してございます。「訴訟物の価額の算定基準について」という通知を出しておるわけでございます。 これはあくまでも受け付け事務の参考基準ということでございまして、「訴訟物の価額に争いがあるとき等の基準となるものではない。」というふうな注記があるわけでございます。これが六法全書にも付録というようなことで載っておるわけでございます。それによりますと、今お話のございました不動産につきましては、地方税法の固定資産税評価額があるものについてはその価格とし、その他のものについては取引価格とする、こういうようなことになっておるわけでございます。 どうしてこういうことになっておるかということでございますが、これもあくまでも受け付けの際の客観的な資料というのが必要である。いわゆる時価、取引価格ということになりますと、なかなかそれを示す客観的な資料というのがないというような場合がかなりあるわけでございます。それを探求するためにいろいろ調べるというようなことになりますと、いわば入り口論のところで非常に、場合によっては鑑定なんかもしなきゃいけないというようなことがございまして、むしろそれは本体の訴訟に入る入り口の問題でございますから、そこにそれほど力を注ぐというのはいかがなものかというようなことがございまして、そういうことでございますので、一応の基準としまして、不動産の課税価格というようなものを基準にしておるわけでございます。 もちろん、それについて、それはおかしいじゃないかというような争いがございますと、それは初めに申しましたように、訴訟物の価額に争いがあるときの基準というものではございませんので、それにつきましてはやはり受訴裁判所の方でいろいろ調べてやっていただくということがあくまでも基本でございますけれども、とりあえずといいましょうか、受け付けの第一段階では今申しましたような価格を基準にする、こういう考えでできておるということでございます。
○北村哲男君 私が申しましたのは、特に土地は実勢価格、すなわち取引価格と固定資産税の額が随分差があるのでその辺の矛盾があることと、地方税法の三百四十九条によっていわゆる固定資産税を納めるための基準額が定めてあるものについてはそれでいく、実勢価格よりはるかに低い額で定めるのに、それがないところは今度は取引価格でいくというふうな基準が今の民事局長通知で出ているわけですね。 そうすると、これをつくられたときは確かに固定資産税評価の対象にならないような土地は取るに足らない土地であるからほとんど問題にならぬだろうというふうに思われるのですけれども、しかし昨今はいわゆる別荘地の開発とかなんとかで、とても高い土地が各地にできるわけですね。そうすると、もうそこでは片や固定資産税という低い額で、片や何にもないから実勢価格というふうに非常に矛盾したものが出てくるのじゃないか。それは今言われたように、余り矛盾がある場合は各受訴裁判所の方で御審査を願えばいいということになるのだと思うのですが、そういうふうに理解いたします。 ところで、これは衆議院でもお聞きになっていますが、訴訟費用の矛盾で大変話題を呼んだ事件がありました。これは昨年でしたか、いわゆる湾岸戦争へ出した日本の九十億ドルが不当であるということで、五百七十一名の人が差しとめ訴訟を提起した。そうしましたところ、裁判所の方で、これは東京地裁の民事二部の涌井裁判長ですが、その裁判長から手数料として三兆四千億円の費用を納入すべしと。 三兆四千億円というと、日本が湾岸戦争で出した金が九十億ドルで、約一兆二千億円ですよね。その三倍のものを訴訟費用として出せというふうな意見を出されたというので、もうびっくりしちゃって、社説にも載って、あれは何だと、訴訟費用というのは一体どうして決まるのだということで、本当に訴訟費用という問題が、初めてでしょう、多くの国民の関心の的になったということになるのですけれども、それは一体どういうことでそういうことになったのか、そしてその後その裁判長の見解が出されたというのですが、見解というのは一体どういうことなのか。いわゆる見解の次に、今言われたように、受訴裁判所の決定というのがあると思うのですけれども、それとの関係と、それからそのてんまつですね、一体どうなったのか。結論を申しますと結局八千円ぐらいで済んだということになって、何か非常に茶番のような話になってしまうのですけれども、その点についての御説明をいただきたいと存じます。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今お話のございました事件でございますが、実はまだ現在東京地裁で、後ほど御説明いたしますが、係属しておるわけでございますので、私どもとしては記録からうかがえる客観的な事実を申し上げたいと思います。 この事件は、東京地裁の平成三年のワの二六一一号という事件でございまして、平成三年の三月の初めに訴訟が提起されたわけでございます。それで、この事件の請求の趣旨と申しますのは、大ざっぱに申しまして九十億ドルの支出差しとめ、それから自衛隊派遣の差しとめ、それから原告が五百七十一名ございまして、それぞれ慰謝料ということで一万円ずつ五百七十一万円を支払え、こういうことであったわけであります。 これにつきまして、原告が訴状提出されたときに一応の訴訟物の価額というのは訴状に書いてあるわけでございますが、六百六十六万円、こういうことであったわけであります。この六百六十六万円というのはどういうことかといいますと、この九十億ドルの支出差しとめ及び自衛隊派遣の差しとめ、この訴訟については訴額の算定ができないということで九十五万円、それから五百七十一万円の支払いを求めておりますのでこれが五百七十一万円、訴額は六百六十六万円だ、こういうことで印紙を張られて訴状が出たわけであります。 その際、原告代理人の方では訴額算定につきましては訴状を提出されたと同時に、訴額算定についてもし自分たちの原告の言っておる訴額と別の考え方があるとするならばそれについて自分たちの方に言ってほしい、こういう訴額算定についての上申、こういう書面が出たわけでございます。それで、その上申書によりますと、これと裁判所が異なる見解を有する場合にはさらに詳細な意見書を提出する用意があるというふうに書いてあったわけであります。 そこで、この受訴裁判所におきましては、今報道では三兆円を払え、手数料が三兆円だというような報道がされた。この裁判所の、いわゆる見解と言われておりますが、それが出されたわけでございます。これについてはこういうものでございます。日付が平成三年三月二十日となっております。実際に原告の方に渡ったのは三月二十八日のようでありますけれども、こういうふうに書いてあるわけであります。この事件の訴額の算定については次のような問題点があると思われるので、この点について意見があれば書面で提出されたい、こういう前書きがございまして、要旨はこういうことでございます。一般に金銭の給付等を求める請求については給付等に係る金銭の額を基準として訴額を算定すべきものとされており、そのような考え方を前提とすると九十億ドルをもって訴額算定の基準とすべきこととなるのではないか、こういうような問題点を指摘したということでございます。 これは、報道によりますと、裁判所が訴額は九十億ドルだと言った、こういうような報道がされたわけでありますけれども、これは決して裁判所の最終的な判断というものではございませんで、原告がこれと異なる意見があればさらに詳細な意見書を出す用意があるという疑問を提起されたわけでございますので、裁判所の方としてはこのような疑問があるのではないか、問題点があるのではないか、こういう指摘をしたわけでございます。 これに対しまして原告の方で、五月七日付でございますけれども、その裁判所の先ほどの問題点の指摘に対しまして、訴額算定についての意見書というのを原告代理人の方からお出しになったわけでございます。それについて原告の方では、どうして九十五万円かという理由を詳細に述べた、こういう経過になっておるわけであります。 それで、最終的にはそういう意見をも踏まえまして、裁判所の方では平成三年、昨年の五月二十七日でございますけれども、この訴え提起の手数料として二百六十七万九千円を支払え、こういう印紙の追徴命令が出たわけでございます。この考え方は、九十億ドルの支出差しとめによって原告が得ることとなる利益というのはなかなか算定が不能または算定が困難であるから、一人九十五万円と。それでその人数、原告一人ずつの利益は別である、こういうことで、それ掛ける原告数ということでございます。こういう印紙の納付命令を出したわけでございます。これが裁判所の正式な裁判ということでございます。 こういうものを受けまして、原告の方では、六月八日に二人だけ原告が残りまして、そのあとの五百六十九名という方はこの九十億ドルの支出、それから自衛隊の派遣の差しとめを求める訴え、これは取り下げた、こういうことでございます。取り下げると同時に、残った二名分の手数料が不足しておる分が四千円ということでございますので、その印紙を追徴したということでございます。その後、訴訟は現在、印紙の問題はそういうことで解決いたしまして、現在は弁論が続けられておるという状況でございます。 マスコミ報道等では、先ほど申しましたように、裁判所があたかも九十億ドルあるいは九十億ドル掛ける人数分といいましょうか、そのような訴額を示したというような報道がされたわけでございますが、それはあくまでも原告がいろいろ問題点があれば指摘してほしいという問題点、その問題点を指摘したという書面でございまして、最終的な判断は、先ほど申しましたような印紙の最後の納付命令にあらわれておるということでございます。
○北村哲男君 大体わかりました。本当に裁判所が、とても途方もないことを一つの権威を持ってこうだというふうに出された見解というふうにも報道によると理解できるので、そうではないということを御説明願いましたので、そういうことで結構です。 さて次に、今回の改正案を見ますと、今までと違うところは、この参考資料の二、三ページ、改正案概要一覧表を見ますと、一千万円までは従来と一緒ということ、それから一千万円から一億円までは〇・四%、それから一億円から十億円までは〇・三%、十億円以上は〇・二%というふうに細かく切ってありまして、それで要するに十億円以上はすべてどんなに高くなってもこれは〇・二%ということで、これはもう天井知らずということになると思うのです。 ところで、どうしてこういうふうに〇・四、〇・三、〇・二と、それでまた〇・二で区切ってしまうのかということで、それを裏づける資料として、先ほどもちょっと触れたのですけれども、実際にそういう事件が本当にふえておって、国民が不便を感じているのかということに疑問を持って見ますと、この資料の七ページにあります訴額別新受件数の推移というところを見ますと、一億円を超えるものについては確かに平成二年は千六百九十八件、十万分の千六百九十八件ですから、約一・五%ですね、ここに書いてあるとおりだと思うのです。それが確かに数年前からは倍ぐらいにふえているのですが、数としては非常に知れている。しかし、一億円以上だけならば一億円以上で恒切ればいいのに、実際にスライド式の改正では一億円超十億円と十億円以上というふうに分けてあるわけですけれども、この一億円を超える中で、さらに細かく一億円から十億円まで、それから十億円以上というふうな事件のいわゆる調査というか、それはどれぐらいふえているのかということはお調べになっているのでしょうか。その点についてはいかがでしょう。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 一億円を超える事件のあとのさらに詳細な内訳ということでございますが、実はこれ私どもの統計といたしましては訴額は一億円までということで切りまして、一億円を超えるものというのは一律にしかとっておらないわけでございます。 これはどうしてかということでございますが、今の参考資料の七ページにございますように、一億円を超える事件といいますのは三けたの段階から最近は一千件台ということでございまして、今御指摘ございましたように、大体一・何%というような数といたしましては非常に少ない数でございます。そういうことで、それ以上区別を設けるほどの必要性はないのではないか、こういうことで実はこの統計はとっておらないわけでございます。 ただ、今御指摘もございましたように、だんだんとこの割合はふえてきておるということでございます。したがいまして、今後の問題といたしまして、私どもの方では一億円を超えるものについてさらにもう一つ、例えば今お話のございました十億円というような区切りを設けまして、さらにそういうものもとる必要が出てくるのではないかという御指摘もごもっともでございます。そういうものをとるような方向で検討したいというふうに考えております。
○北村哲男君 これからおやりになるのは当然だと思うのですけれども、しかし一千万から一億円、一億円から十億円、十億円以上と区切って法改正をされるのに、その裏づけとなる統計資料もなくてなぜこの○・二%が合理的なのか、それについてはどうも腑に落ちないところなんです。統計がないとおっしゃるならば、恐らく先ほどから私が言ったように、観念的、形式的に〇・四、〇・三、〇・二とお決めになったというふうに理解をせざるを得ないのです。 それでは、もう一つ別の観点から、国民のだれがこの今回の法改正の利益を受けるのかという点について聞いてみたいと思うのですけれども、この一億円を超えるもの、これは千六百九十八件が平成二年の例なんですが、その程度の中でどういう種類の訴訟が一体あるのだろうか。というのは、私が聞くのは、これはもう本当にお金持ちが自分の利益のために訴訟しているのだから、わざわざ下げる必要はないのではないかという考えが一つ出てくるのです。というのは、バブル経済で土地がどんどん値上がりしていく。その土地をめぐる訴訟、これはふえている。非常に多かったと思うのです。それは恐らく十億円、百億円の訴訟がいっぱいあったのじゃないかと思うのですけれども、そういう人たちを助ける必要は私はないと思うのです。 それからもう一つは、会社間の訴訟、特許事件あるいはそのほかの会社間訴訟、これはまた会社の利益を守るためのコストとして国がわざわざ保障してあげる必要はなくて、これは一つの経済行為であって、国民の裁判を受ける権利には違いないのですけれども一それは経済コストとして当然はじき出されるものだと思うのです。 だから、いろんな分類があると思うのですけれども、例えば一つは、この一億円以上の事件というのは原告あるいは被告が個人か法人かというふうな問題、あるいは本人訴訟でやっている事件が一体あるのだろうか。というのは、一番最初に申しましたように、これは訴訟するにはそのほかの費用がいっぱいかかるわけですから、この手数料だけを考慮してあげることによってどれだけの利益があるのかという問題。それから事件の性格として、土地の問題あるいは会社間における紛争、あるいは恐らく今回の対象とされている公害訴訟あるいは医療過誤、製造物責任問題で多数の消費者、多数の国民が対象とされている訴訟、これも確かにあると思うのです。それは確かに頭にあるのですけれども、その人たちはさておいて、ほとんどの事件が余り助けなくても堂々と自分たちの力で生きていける人たちのために安くしているのじゃないかという疑問が頭にあるのですけれども、その辺の分析はされておるのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 一億円を超える事件ということで申し上げたいと思いますが、この法律案の参考資料に載っております千六百九十八件、平成二年でございますが、この事件は訴訟の新受ということで、訴訟が受理された段階でもっての数字でございます。 今お話のございました本人訴訟かどうかというような点につきましては、実はこれは訴訟がある程度進んでみないとわからないというようなことがございまして、私どもの方では、この千六百九十八に対応する数字は持っておらないわけでございますが、訴訟が終わった既済事件でございます。ですから、新受よりは少し一年なり二年ずれるわけでございますが、平成二年の既済事件について申し上げたいと思います。既済事件の地方裁判所第一審訴訟事件ということでございます。 会社か個人かということでございますが、実は会社か個人かということについての統計というのは、これは全く司法統計では原告がどういう属性かというのはとっておらないわけでございます。これは申しわけないんですが、ないわけです。 それから次に、本人訴訟か代理人がついた訴訟が、こういうことでございます。これにつきましては資料がございまして、平成二年に終わった一億円を超える事件というのは全部で千四百三十六件あるわけであります。大部分の事件は弁護士さんがついております。双方に弁護士さんがついた事件、これは千百八十七件ということでありますので、パーセントにしますと八二・七%ということであります。それから原告側だけ弁護士さんがついた事件、これが百六十六件ありまして、一一・六%、それから被告側のみに弁護士さんがついた事件が二十八件、一・九%、それから双方本人訴訟という、これはごくまれにございますが、五十五件、三・八%ということでありまして、ほとんどの事件は弁護士代理人が選任されておる、こういうことでございます。 それからもう一つは、この一億円を超える事件の中で公害事件等がどれぐらいあるかということでございます。これもちょっと基準がまたぐらぐらしまして申しわけないのですが、公害事件につきましては受理の段階で調べた資料がございますのでそれで申し上げますと、公害事件、平成二年の新受件数全部で三百四十一件でございます。そのうち一億円を超える事件、これは訴状によってでございますから若干その後の動きはありますが、訴状によって見ますと、一億円を超えた事件が七件ということであります。 それからもう一つ、高額な事件として典型として言われております医療過誤の事件でございます。これが新受件数が三百六十五件ございまして、そのうち一億円を超える事件というのは四十四件、こういうことになっております。 それから、初めにちょっとお話のありました土地建物の関係でございます。これは平成二年で申しますと全部で三万五千件余りあるわけでございますが、そのうち一億円を超える事件、これが二百四十一件ということでございます。パーセントといたしますと一%には満たない、〇・何%、こういう数字になっております。
○北村哲男君 ところで、数字は確かにおっしゃったのですけれども、国民の一人一人が裁判をしやすくするという目的にかなうというふうに、今の分析というか統計から直接に結びつく、医療過誤なんかは確かに個人個人が対象になると思うのですけれども、そういうものとそのほかの余り考慮を払う必要がないのではないかということについて、それについてはどういうふうにその分析の結果、お考えになりますか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 国民一人一人にどうかというお尋ねでございますが、これはもう委員よく御承知のところでございますけれども、個々の事件というのはそれぞれの事件の顔というのがございまして、まさにその事件、事件によって判断していかなければならないわけでございます。私どもの把握しておりますのは冷たい統計数字ということでございますので、それからどう分析するかと言われましてもなかなかこれは難しいわけでございます。 裁判所としましては、裁判所に持ち出された事件、これを一件一件、適正迅速に処理をしなければならない責務を負っておるわけでございますが、国民が裁判所に裁判訴訟を提起しようと、こういうふうなことを考えましたときに、一つのハードルといいましょうか、一番初めに委員が御質問されたように、一つのハードルといたしまして手数料の問題もあるということは事実でございます。ですから、それが国民のどういう階層の人に役に立つのかと言われましても何とも申し上げようがございませんけれども、全体といたしましてはやはり国民の裁判を受ける権利に資するものではないのかというふうに私どもも考えまして、今回の改正につきましては法務省の方にいろいろな形で統計数字その他の資料を提供する等いたしまして協力をしておる、こういうことでございます。
○北村哲男君 法務省の方は今の点はどのようにお考えで、あるいはどういうふうにそれを分析しておられるでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 今回の改正の趣旨はもう再三申し上げておりますけれども、要するに高額な請求をされる方には相対的には手数料をたくさん納付していただくというスライド制の枠内で、しかし手数料という制度から考えた場合にはどこまでも請求額に比例してということでは適当ではないのではないかということで、高額部分については順次引き下げるということが適当だという判断のもとに改正案を提出させていただいたわけであります。決して高額な請求について特別な恩恵を与えるという考え方ではございません。あくまでも高額な請求については高額な手数料をいただくと、ただ、その比率の問題についてはやはり修正すべき点があるというふうに考えたわけでございます。 それから、事件の性質はいろいろ個々各別でございますけれども、その事件の性質に応じて手数料をどうするということを考えるのは適当ではないのではないか、やはりあくまでも訴訟というのは、どういう請求であれ、自己の正当な権利の実現、確保を図るということで提起されるわけでございますので、どういう訴訟であるから手数料を高くあるいは安くということは考えにくいのではなかろうか。先ほどアメリカの要求との関係で申し上げましたが、アメリカの要求は独禁法上の損害賠償訴訟に限ってという要求でございましたけれども、そういうことは国の制度としてできないというふうに我が国から説明しましたのも、そういう考え方を含んでいるものでございます。 それから、高額訴訟の中で、いわゆる企業等がかかわる訴訟といわゆる一般市民がかかわる訴訟との比率がどうかということは、先ほど来最高裁当局の方で御答弁されたように定かではないわけでございます。例えば、医療過誤の話が出ましたけれども、交通事故に基づく損害賠償請求、死亡事故、あるいは死亡よりももっとひどい障害、不具になったような事案ということを考えますと、請求額としては一億を超える、二億に近いという請求はこれは珍しくないのではないかというふうに推測いたします。そういう事件というのは現に相当数あるだろうし、これからもだんだんふえていくのではないか。 例えば、そういう二億円の請求ということについて考えますと、今回の改正によって手数料は約三〇%近くの低減になるということでございます。そういったこと、それから先ほど来出ております、一人一人の請求額は少なくても多数の方が一つの訴えをもって請求されるという場合には、算定上その合算額をもって基準とするということになっておりますので、そういった場合にも相当の効果を及ぼすということで、今回の改正が決して一般市民にとってはほとんどメリットのないものであるということではないであろうというふうに思っているところでございます。
○北村哲男君 それでは、高額の場合はわかるのですが、一千万円以下について今回手をつけられなかった理由。これは、同じように下げればより国民が利用しやすくなるのじゃないかと思うのですけれども、それはどういうところにあるのでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 繰り返しになりますけれども、今回の改正の趣旨は、要するに基本構造は現行の制度を維持しながら、その中でとりわけ手数料としては割高感の強い部分について大方の御異論のない範囲内での改正、これをできるものは早くということで考えたものでございます。 今回、改正の対象としておらない一千万円以下の部分、これについて手数料をもっと引き下げるべきかどうかということは、これはもしこれを引き下げるとするならば現在の手数料制度の基本構造にかかわる問題でございます。 〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕 これにつきましては、もっと安くという御意見があることは承知しておりますけれども、しかし私どもとして今回改正の対象としておる部分のように引き下げるべきということについて、異論のない分野であるということではなかろうと思っているわけでございます。 そういった部分についても全面的に手をつけるということになりますと、提訴手数料制度の抜本的な改革ということになります。そういったことについてはもっと各方面の御意見を聞いた慎重な検討が必要であろうと思っておるわけでございまして、現在、法制審の民事訴訟法部会におきまして民事訴訟手続に関する見直しの検討をされておって、その検討事項の候補の一つとして御指摘のような問題も一つの考え方として掲げて意見照会をしているところでございますので、そういった点については改正に具体的に取り組む必要があるのかどうかという問題も含めまして、そういった審議の推移を見守って慎重に考えていくべき問題だと考えております。
○北村哲男君 ちょうどその問題に移っていこうと思っていたところです。 「民事訴訟手続に関する検討事項」ということが法制審において検討されておるわけですが、これは法制審議会民事訴訟法部会が平成二年七月十三日の第二十六回会議において、民事訴訟法手続の見直しを審議事項とすることを決定したというところから始まっていると思います。これはもう民事訴訟法全体の多岐にわたっているのでここで聞くつもりはありませんけれども、この中でこの訴訟費用というのは当然検討対象に資料を見ますとなっております。 それは、今までも少し質疑の中でも疑問を呈してきたんですが、現行法の民訴二十二条というものは訴訟物の価格、すなわち訴額は訴えで主張する利益によって算出することを定めておるけれども、その価格の具体的な算定の方法については現行法は規定をしておらないんだと。したがって、一般的な解釈として今まで説明されたように、裁判所の裁量によってその価額を決めるというふうにしておられるのだけれども、その点についてはっきり裁量で決めるというのなら決めるというふうに訴訟法上決めたらどうかとか、これは当たり前といえば当たり前のことなんですが、まず、そういうことについての民訴費用に限っての進捗状況を聞いていきたいと思うのです。 というのは、この民訴手続の検討の中で当然検討課題になっているのに、この問題だけ突出して、しかも総合的に、今濱崎部長さんが言われたように全面的に抜本的に変えようという作業の中で検討されているのに、これだけ取り出してさっさと突出してしまったということが一つあると思うのですね、問題が。どうしてだろうかという疑問、今までもかなり解明されておりますが。それと、今訴訟費用についての問題はどのような進捗状況、それから将来どういうふうになりそうなのかという点について御説明願いたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 法制審議会の審議の今後の進捗の見通しについては、これは民事局長の方からお答えいただくのが適当かと思いますが、まず前段の法制審議会の審議と今回の改正案との関係について申し上げさせていただきたいと思います。 提訴手数料のあり方がどうあるべきかということについてはいろんな御意見があるところであります。先ほど申し上げましたけれども、一千万円以下の部分について現在の手数料の程度が高いのか安いのか、それぞれの御意見があろうと思います。具体的には、百万円の訴訟ですと八千数百円、五百万円で三万円余り、一千万円の請求ですと五万円ちょっと、そういう手数料額になっておるわけでございますが、それが高いのか安いのかということについてはいろんな御意見があろうと思います。 それからまた、そのほか今委員御指摘の訴訟物の価額の算定基準といったものについて、現行法では具体的な事案において受訴裁判所の裁判長が算定するということになっておりまして、これはいろんな類型の訴訟がある、その訴訟物の考え方についても時代に伴って学説、判例の考え方も変わってくるという中で、やはり個々具体の事案に応じて妥当な解決を図るという観点からは、基本的には現在のような制度が妥当であるというふうに思っておりますけれども、これについてももっと基準がつくれるものは基準をつくるということを考えるべきだという御意見があるわけでございます。 〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕 そういった非常に幅広い、かつ基本的な観点から、そういった問題についても法制審議会の検討事項の候補ということで掲げられているわけでございますけれども、これらについては多様な考え方があるところでございます。 それから、法制審の民事訴訟法部会の検討事項、大変幅広い多様な問題を抱えておられるわけでございますので、それほど早急に結論が出るということはなかなか期待しにくいであろうと思われますし、またさらに、そういった問題についてたくさん問題がある中で、具体的な今回の改正の対象としてそういうものに取り組まれるかどうかということも、今後の審議の推移によるわけでございます。 そういうことで、そういった基本的な問題については、各方面の意見を十分に聞いて慎重に対応しなければならないということでございますが、今回の改正の対象としております問題についてはこれは法制審議会等の審議を経るまでもなく、もちろんそういった関係の学者の先生方の御意見も参考にさせていただきましたけれども、そういった幅広い審議を経るまでもなく、各方面の大方のコンセンサスを容易に得ることができる、そういった改正を、それじゃ、そういった抜本的な改正がされるまで待つ方がいいのか、それとも、できるものはできるものから早くということの方がいいのか、その選択の問題かと思うわけでございまして、私どもとしては、やはりそういった状況から、できるものは早くということで対応するのが適切であろうということで、今回の立案をさせていただいたわけです。 しかも、今回の改正の方向が、これから検討いただく方向と方向が逆であるということであればまた別問題かと思いますけれども、決して、今回の改正がこれからのいろんな基本的な問題の検討の妨げとなるという関係にあるものではないと思っておりますので、そういう意味からもそういう選択の方が適切だろうというふうに考えた次第でございます。
○政府委員(清水湛君) 一般的な民事訴訟法の改正作業の今後の進捗状況等の予定でございますけれども、平成二年の七月に、民事訴訟法手続の全面的な見直し作業に着手するということでこの作業を始めたわけでございますが、裁判所、弁護士会、あるいは学者の代表の方々に参加していただきまして、どういう点を検討の対象とするかということで、検討事項の取りまとめというような作業を進めてまいったわけでございます。これが昨年の十二月に「民事訴訟手続に関する検討事項」という形で取りまとめられました。 まさに、先ほどお話がございましたように、訴訟費用の問題についても幾つかの問題点を整理検討いたしております。その他相当大幅な検討事項を抱えているわけでございます。これらの検討事項は、直ちに一つの結論と申しますか解決の方向を示すというものではございませんで、この検討事項を示しまして、これに対して各方面の意見を聞くということでございます。昨年の十二月に関係各界にこの検討事項を示し、あるいはこの検討事項についての簡単な説明をけまして、関係方面の意見を照会いたしているわけでございます。ことしの六月十五日までに各界の意見はお寄せいただくということになっているわけでございます。この意見が出てまいりますと、そういうものを踏まえまして、次の段階の作業として一つの改正試案をつくると、こういうことを今のところ考えております。この改正試案をつくりまして、さらにこれを一般に公表いたしまして、各界からの意見を聞く、その意見を踏まえて、さらに最終案を作成するというのが法制審議会民事訴訟法部会の今後の作業日程ということになろうかと思います。 今回の改正作業というのは、ちょうど明治二十三年に民事訴訟法が制定されまして、昭和六十五年に該当する年、平成二年がちょうど百年に当たるというようなことも一つの契機になっているわけでございますけれども、訴訟手続法につきましては、大正十五年にかなり大幅な改正がされましたが、ほとんど、その間もちろん数次の改正はされておりますけれども、基本的な枠組みというのはそのままになっておるという状況にございます。 しかしながら、社会経済情勢が大きく変化し、民事紛争も複雑多様化した、こういうような状況に適切に対応することができるかどうか、あるいは裁判に時間と費用がかかり過ぎて訴訟手続が非常に複雑ではないか、あるいは国民にわかりにくいというような御指摘があるわけでございまして、そういうことの解消のためには、裁判所、弁護士会等いろんな運用の面で今まで努力をされてきたわけでございますけれども、運用だけではなかなか解決しにくい面がある。そういうことから、この訴訟手続法自体の全面的な見直しをする必要があるということでこのような改正作業が現在進められておる状況であるということでございます。
○北村哲男君 この「民事訴訟手続に関する検討事項」の中で「訴訟物の価額の算定」という項目があります。その中に問題点として、「工業所有権に基づく差止請求等の訴訟」及び「賃料増減請求訴訟」、そして「債務不存在確認訴訟等における価額の算定について準則を設けるものとする考え方」ということが検討材料にされております。先ほどから出ております訴訟の目的の価額の算定基準、これはいわゆる最高裁の民事局長通知なんですけれども、その中には当然基準として出ていないんですが、それぞれのことを聞くともう時間がありませんので、この「準則を設けるものとする考え方」という意味はどういうふうにするということを言うのですか。その点について一点お伺いしたいと思います。
○政府委員(清水湛君) この訴額の算定につきましては、先ほど来から大変議論になっているわけでございます。法律には何も規定がない、現実には裁判所が裁量で行うと、現実にはというか、法律上の解釈といたしましても裁判所の裁量で訴額を認定する、こういうことになっているわけでございます。 しかしながら、この裁判所の訴額の認定につきまして、弁護士会の委員等から、どうもいろんな不統一あるいは不明確な点があるのではないか、こういうような御指摘があったわけでございまして、その御指摘が多くされた点が先ほど委員御指摘の工業所有権に基づく差しとめ請求等の訴訟の問題、あるいは賃料増減請求訴訟の問題、あるいは債務不存在確認訴訟等における価額の算定、こういうような問題でございました。 例えば賃料増減請求訴訟でも、地代の値上げ請求をいたしまして一定の期間の値上げ相当額の給付を求めるということでありますと、これは訴額は自明なものになってくるわけでございますけれども、値上げ請求の結果、一月の地代が幾らになったという確定訴訟ですと、一体その場合の訴額は幾らになるのか。一月仮に五万円上がったといたしますと、二年分ぐらいを訴額として見るのか、あるいは三年分ぐらいを訴額として見るのかというような、端的に申しますとそういうような問題もあるわけでございます。 それから、債務不存在確認訴訟なんかにおきましても、債権者の方で主張する金額が余りにも膨大である。原則的な扱いといたしましては、債権者の主張する債権額、これを訴額の基準といたしましてそういう債権が存在しないということで債務不存在の確認訴訟を起こすということになりますので、訴額は債権者の主張する金額ということになります、形の上では。これは非常に膨大な金額になるということもあるわけでございまして、そういうような細かい問題でございますけれども、いろんな考え方が出てきて窓口でいろいろ混乱が生ずるということも現にあるということでございます。 そこで、そういうものをできるだけ統一するように何か法律の中で一つの基準と申しますか、そういうものを示すか、あるいはそれ以外の方法を考えるかというようないろんな意見があるわけでございますけれども、何らかの形でそういう一つのめどとなるようなものが示されるということが望ましいのではないかという御意見がございまして、こういう検討事項となったわけでございます。 ただ、具体的にこれを法律の中に準則的なものを書くのか、あるいは最高裁判所規則の中に書くのか、あるいは一切そういうものは書かないで、先ほどの最高裁の民事局長通知みたいなものをもっと具体的に詳細にお決めいただいて実際上の運用でそれを解決するということにするのか、いろいろ考え方はあると思いますけれども、そういうものにつきましても御意見を伺いたいというこどでこのような検討事項が示されているわけでございます。
○北村哲男君 今の点はよくわかりました。 それで、最後になるのですけれども、訴訟救助という制度と、それから先回も林田先生の方から細かく質問された法律扶助という制度、これはまさに今回の改正の中で国民が裁判をしやすくするという制度の現行の一つは法律上の制度、もう一つは半官半民と申しますか、財団法人で進めている制度でありますけれども、この訴訟上の救助というのがこれは民事訴訟法百十八条で定めてあるのですが、この問題について簡単にその意義と、一体何が救済されるのかということ。 それで、問題として指摘したいのは、訴訟救助というのは、訴訟費用を支払う資力のない人に対して訴訟上の救助を与えることができるという救済制度なんですけれども、現実にこの運用が果たしてどのくらい機能をしているかという点について、現在の裁判所では、訴訟費用のうちその一部である貼用印紙だけを限定的に猶予している、すなわち一部救助が日常的に行われていると聞きます。 反面、裁判所が支出を伴うような訴訟救助に対しては非常に消極的な姿勢が目立つという指摘もあります。これは、会計検査院の検査の際に裁判所の債権管理の甘さを指摘されたことが原因であるとも言われておるわけですけれども、それが本当であるとするならばゆゆしき問題であります。それはなぜなら、訴訟救助制度あるいは法律扶助事業というのは、ある程度お金のない人を対象にするのですから、貸し倒れとかなんとかというのはあるのは当たり前のことなんであって、そういうことを見込んだ制度であるのに、回収ができないから金を貸さない、救助しないというふうな形で、消極的な形で裁判所は運用しておられるのじゃないかという指摘がなされているのです。 そういう意味でその二つの点、まず、訴訟救助の制度は一体法は何を救済しようとしているのか。それから、現実に裁判所がその運用において消極的な姿勢を示しておるということが言われておりますけれども、それはどういうことなのか。これをもっと幅広く活用する方法はないのだろうかという点についてのお伺いをしたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 裁判所における運用の問題については最高裁当局からお答えいただくのが適当かと思いますが、その前提といたしまして、訴訟救助制度の趣旨、範囲ということでございますけれども、これは既に委員御案内のことかと思いますが、いわゆる訴訟費用を支払う資力のない者が勝訴の見込みがないではないという場合に、申し立てによって一定の訴訟費用について受訴裁判所が支払いの猶予等を認める制度でございます。 その範囲といたしましては、民事訴訟法百二十条に規定されておりますけれども、「裁判費用並執行官ノ手数料及其ノ職務ノ執行二要スル費用ノ支払ノ猶予」、それから「裁判所二於テ附添ヲ命シタル弁護士ノ報酬及立替金の支払ノ猶予」、それから「訴訟費用ノ担保ノ免除」ということでございます。大ざっぱに申し上げれば、訴訟費用の関係につきましては、申立手数料のみならず裁判所に納付すべき費用をその対象とすることができるという制度になっているわけでございます。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 訴訟救助制度の運用の実情について申し上げたいと思います。 まず、件数でございますけれども、平成二年の件数をとってみたいと思いますが、平成二年でこの救助をしてほしいという申し立てのございました事件でございますが、地裁では千百六十件、簡裁の事件で三十四件ということで、大体千二百件ぐらいの申し立てがございました。その中で救助が与えられた件数でございます。実はこの救助が与えられた件数と申しますのは第一審の訴訟だけについてしか統計がないものですから、救助申し立てについてはそのほかの行政訴訟だとかいろんな事件がございますので若干それとずれるわけですけれども、この第一審訴訟で訴訟救助を付与された件数、これが平成二年で申しますと、地裁で七百三十八件、簡裁が四十四件ということで、八百八十件ちょっとという数字になっておるわけであります。 それで、現実の運用でございますが、先ほど法務省から御答弁ございましたように、要件が二つございます。訴訟費用を支払う資力なき者、それから勝訴の見込みなきにあらざるとき、こう二つの要件がございます。したがいまして、その二つの要件についてそれぞれ審査をしなければいけないわけでございます。一つの資力の問題でございますが、これにつきましては、申立人の収入、資産、家庭の状況あるいは支出が予想される訴訟費用の額というようなものが一応の考慮要素ということになろうかと思います。また、勝訴の可能性につきましては、訴状の記載であるとかあるいは準備書面の記載、それからどういう証拠があるか、こういうような資料を疎明させまして決めるわけでございます。 その際に、今、一部救助というお話がございました。確かに一部救助という救助がされる場合もございますし、それからそうじゃなくて、全部救助という例もございます。申立手数料について一部救助があるということでございますが、この救助で裁判所に出します費用としましては、申立手数料が費用の中ではかなりの額に上るというようなことが一つ大きな理由ではないかと思います。そのほかに、現実に支出を要する費用としまして大きいのは、普通は鑑定の費用というのがかなり大きくなるわけでございます。場合によっては鑑定料だけ救助するというようなケースもあるわけでございます。 それから、後の取り立てができないからそれで救助をしないのではないかというようなお尋ねでございますけれども、あくまでも要件といたしましては、今申しましたように、資力要件、それから勝訴の見込みなきにあらざるとき、この二つの要件でやっておるわけでございまして、その二つの要件があれば当然救助はしなければならないものでございますし、各裁判所としましては具体的事件に応じましてそういうようなことでやっておるものだと私の方は理解をしております。決して後で取れないからということで救助をしないという例はないのではないか。もちろん、終わった後の債権管理ということは、これはやらなければいけませんけれども、しかし債権管理をやったから必ず取れるというものでもございません。適正な債権管理をやるということが前提でございますけれども、そうだからといって、そういうことを考えて救助をしないということはないというふうに理解をしておるわけでございます。
○北村哲男君 先ほど示された統計から見まして、七百数十件とか八百件ということを言われました。確かに、訴訟の総数が十万件以上ある中で七百件あるいは八百件程度というのは非常に少ない割合なわけで、それは確かに訴訟費用というのは、全体の訴訟を進める中の費用の中の申し立て費用とかその点は非常に少ないという点で利用者が少ないのかなという気もするのです。 一方、同じように訴訟救助というかそれに類したものとして扶助制度があります。これは、いわゆる弁護士費用を含めたすべてのものを補助する制度なんですが、将来的にはとても大事な制度だと思うのです。これを見ますと、昨年の統計から見ても、申し込みが一万四千三百九十四件あって、それに対する決定が四千八百九十六件ということで、かなり数の多い利用者があるようです。こういうこともありますので、今後、訴訟救助それから扶助事業を含めた形での国民の利用しやすい制度というのを確立していっていただきたいと思うのであります。 最後に、もう時間もありませんので、大臣に一言お伺いしたいと思うんですけれども、私は、すべての国民が訴訟費用の負担が大きいために裁判を受けることができないような事態を避けるためには、今の訴訟救助の制度というものをもっともっと大きく活用して、あるいは宣伝をして国民に周知させていただきたいことが一つでありますけれども、しかしながら単に裁判所に納める費用だけを救助されても現実の裁判の追行はできない士思うのです。それで、いわゆる大きい意味での訴訟救助というのは法律扶助制度全体を見据えて決めざるを得ないと思うのです。すなわち、訴訟費用の中に弁護士費用までも含めたものを対象とした救助制度を確立しなければ実質的に本当の救済制度というのはないと思います。 今までの申し立て費用から急に法律扶助制度に飛んでこの制度の必要性を言うのも奇妙なんですけれども、この前の自民党の林田先生の方からもかなり詳しい御質問があったのですが、国民の裁判を受ける権利を実質的に保障し法の支配を貫徹するための制度として、弁護士費用を訴訟費用に含めた救助制度ないし扶助制度の確立こそ国家的な裁判として必要ではないかと私は思うのですけれども、その点についての大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(田原隆君) ずっと御議論伺っておりまして大変貴重な御意見でありましたが、いわゆる狭い意味の訴訟上の救助というのは、先ほど裁判所並びに政府委員から答弁あったとおりでありますけれども、私は素人的に考えて法律扶助というのは非常に広い概念でとらえなければいかぬ、こう思っております。 その中で非常に狭い概念としての訴訟上の救助もあれば、それから法律扶助という、非常に広く考える中でもうちょっと狭く考えたものとしていわゆる法律無料相談と訴訟援助というようなことに分かれていくのではないかなとこう思うのです。 それで、訴訟援助について、今まで協会を通して民事訴訟のみ認められておりますが、これも国庫補助を間接的にこれを通してやっておりますけれども、無料法律相談にも出してくれという御意見が盛んに最近ありますが、その辺まで私自身も勉強してみる必要があるのじゃないかというふうに考えておりますし、また、民事のみならず刑事的な感覚からも国選弁護人というのを出すことは訴訟援助の一つでありますが、無料法律相談の方にも初めから弁護人をつけてくれ、弁護士をつけてくれという声も聞いておりますが、ここらも勉強してみなければいかぬ問題ではないかと思っております。 さらに家事、人権その他いろいろありますけれども、やはり諸外国と比べてみてもどうかな、それから、国民が憲法上認められた裁判を受ける権利等を有効に生かすためにもそういう面が必要ではないかな、資力のない人、お金のない人等が裁判を受けられないということがないようにするのがやはり必要ではないかなというふうに考えております。
○北村哲男君 終わります。
○中野鉄造君 お昼休みに食い込んでおりますので、答弁はできるだけ簡単にお願いいたしたいと思います。 まず、冒頭、大臣にお尋ねいたしますが、この本法案の提案理由め説明のときに、訴訟の目的の価額が高額な事件が増加してきたので、また、国民が裁判を受けようとする場合に過度の負担となることがないようにするための対策だといった説明がございましたけれども、民事事件の申立手数料額がどうあるべきかは、これは本来このような事件数の増減とは無関係ではないかと、こう思いますし、極端に言えば、たとえ一件しかないとしてもその事件の内容にふさわしい手数料額が定められるべきだと思いますが、この点いかがでしょうか。
○国務大臣(田原隆君) 基本的には先生のおっしゃるとおりだと思いますが、先ほどの質疑のときに政府委員からお答えしておりましたけれども、本来、訴訟費用は国家が負担すべきではないかなという思想があって、しかし受益者負担的な思想もあるので、こういう費用負担するという考え方がある。さらに、乱訴を防ぐというふうな意味からこれは出てきでおるというようなこと等を考えまして、ただ、形式的なものよりも本当は実質で決めるべきじゃないかなということには、私は傾聴すべき点が多いと考えております。
○中野鉄造君 そこで、重ねてまた大臣にお尋ねいたしますが、この趣旨説明の中にも言われておりますように、これまでの一連の経緯から見て、今回の改正は、国民の裁判を受ける権利の保障のためとなっておりますけれども、それよりも、それ以外の要素が大きく働いたといった感を深くするわけです。 それは、先ほどの質疑の中でも言われておりましたけれども、しかしそれはそれとして、「緊急」という言葉が答弁の中にもありますけれども、緊急を要するという、この「緊急」という言葉の本当の中身は一体何なのか、そういうことについて具体的にどういう事態を指して「緊急」とおっしゃっているのか、そのことをお尋ねいたします。
○国務大臣(田原隆君) 結果的にはSIIの問題ではありません。特別に申し上げる理論づけを持っておりますが、きっかけは確かに日米構造協議の中で独占禁止法に関する部分の問題があったと思うのです。しかし、それだけで我が国のそこの部分だけいじるわけにいきませんので、全般の問題もありますが、国民の裁判を受ける権利の確保というような意味からいっても、最近訴訟費用が高いという声もありますから、それに対応することがたまたま一致して「緊急」という言葉を使わせていただいたわけであります。
○中野鉄造君 そこで、この法案の中身に入っていきますけれども、今回のこの改正は手数料の引き下げを内容とするということがその主体になっておりますが、私はこの引き下げに反対する者ではございませんけれども、一つ気がかりになるのは、逆に昨今の経済事情の変動に基づく必要性はなかったのか、この点がちょっと疑問に思うわけです。 と申しますのは、現行法の手数料額は昭和五十五年に引き上げられて以来ずっと据え置かれたままになっているわけですね。そこで、今回のこの改正に当たって手数料引き上げの必要性についてやっぱり検討されたのでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 今回り改正の趣旨は、先ほど来御答弁申し上げておりますけれども、いわゆるスライド制の高額部分についての制度が高額な訴訟がふえるに伴って少し高さに、過ぎるという意識が急速に高まってきたということから、その部分についての、ただいま大臣も御答弁申しましたような早急な改善の必要ということから立案し、提案させていただいたわけでございます。 若干補足して申し上げますと、早急にといっておるのは、委員御指摘のように、提訴手数料のあり方というものについてはもっと基本的な観点からの検討が必要だという御意見があるところでございまして、そういった観点からの検討はもとより必要でございますけれども、それにはやはり各方面の意見を十分に聞いて慎重に対応する必要があるということでございまして、各方面に異論のない範囲内での是正というのは、それを待つまでもなくできるものはできるものから実施するということが適当であるということで、そういう意味で早急に改正の必要があるというふうに表現させていただいたつもりでございます。 前置きが長くなりましたけれども、申立手数料を定額で定めている部分がございます。例えば、保全手続でございますとどのような事件でございましても千五百円ということになっております。それから、いろんな書類の閲覧でございますとか、謄抄本の交付の手数料というようなものももちろん定額になっているわけでございます。そういったものについてはやはり貨幣価値の変動、物価水準の推移に照らして余りに不相当になった場合にはこれを改めるという必要があるわけでございまして、そういった観点を中心として、御指摘のとおり昭和五十五年に引き上げの改正をさせていただいたわけでございます。 今回この改正をするにつきましても、あわせてそういうことの改正の必要がないかどうかということも検討いたしたわけでございますけれども、今回、昭和五十五年から現在までの消費者物価指数を例えば見てみますと、前回五十五年に改正したときのような大幅な変動があるわけではない。具体的に申しますと、二十数%の上昇という程度にとどまっておるということから、現時点でそういった部分について引き上げをするというまでの事情の変更はないのではないかというふうに考えまして、今回は専ら高額部分の引き下げということに限って提案させていただいた次第であります。
○中野鉄造君 たまたま今国会で、次の委員会あたりでは刑事補償金の基準額引き上げを内容とする刑事補償法の改正案というのも審議される予定に、なっておりますけれども、こちらの方は同じく昭和五十五年に引き上げられてから今回で三回目の引き上げになっております。刑事補償法と民訴費用法は、これは全く性質が異なるものでございまして、単純に比較はできませんけれども、経済情勢の変化に基づく改正であるという点では、これは共通するのではないかと思います。 この二つの法律を比較して、金額引き上げの基準の相違点について具体的に御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 昭和五十五年に民事訴訟費用についての額の引き上げを行った。わけでございますが、それは昭和四十六年に民事訴訟費用法が制定されてからの貨幣価値の変動、消費者物価指数の変動等を基準にして引き上げを行ったものでございまして、そのときはおおむね定額の部分につきましては三倍に引き上げるという改正をしたわけでございます。 ところで、刑事補償法と民事訴訟費用法とでそういった検討の期間が違うのではないかという御指摘でございますが、実質において御指摘のとおりでございます。刑事補償ということについて考えますと、これはやはりそういった指数が何倍にまでなる間、従前のままで放置しておいてよろしいという問題ではないわけでございまして、それは若干でもある程度のそういう経済情勢の変動がありますれば、それに対応して相当な引き上げを行っていくということが、性質上不可欠だと思うわけでございます。 それから、一般の手数料と言われているものの中にも、いわゆる当該手続を処理するに要する費用の実費の全体を利用する方々に負担していただく、いわゆる実費主義で費用を定めているものが多いわけでございます。そういうものにつきましては、やはり実費というものが経済情勢の変動に伴って、あるいは貨幣価値の変動に伴ってだんだん高くなってくれば、それに見合った改正というのを時宜を失せずに行わなければならないという要請があろうかと思うわけでございます。 ただ、この民事訴訟費用法における提訴手数料について申し上げますと、これは先ほど来申し上げておりますように、民事訴訟の運営に係る裁判官を初め職員の給与でございますとか、物件費でありますとか、施設費でありますとか、そういったすべての運営経費を当事者に実費として負担していただくという構造にはなっておらないわけでございまして、先ほど来申しておりますように、負担の公平という観点からそのうちの一部分を負担していただく、こういう構造になっているわけでございますので、そういった見地から申しますと、実費主義をとっている手数料のようにその実費が相当程度変動すれば必ずそれに応じて是正をするという、そういう直接的な結びつきというものは少ないのではないか。そういうことで、民事訴訟費用につきましては、必ずしも何年ごとに見直しをするというような取り扱いはしておらないということでございます。
○中野鉄造君 余り煩雑にその手数料の改正をやりますと、やっぱりこれは非常に現場の職員の皆さん方は混乱すると思いますけれども、今お答えがあったように、経済情勢の変化に基づいて、私、考えたときに、現在の手数料額についてどのように評価されておるのか、高いと思われますか、低いと思われますか。
○政府委員(濱崎恭生君) その評価、私ども法務省事務当局として最終的な評価をしているわけではございません。 ただ、いろんな手数料を総合して考えました場合に、今回、高額部分の手数料については、提案しております程度の減額をすべきである、それとの差額の部分は高いという認識のもとにこういう改正案を提出させていただいたわけでございますが、それ以外の部分については現在の金額というものが高過ぎるとも安過ぎるとも、そういう認識は持っておらないわけでございます。 さらに言えば、高過ぎるという御意見もあることは承知しておりますけれども、現在の手数料等の額が国民が裁判を受ける権利を阻害するというような額のものであるというふうには言えないのではないかと現段階では考えているところでございます。これも先ほど来御答弁申し上げております法制審議会の民事訴訟法部会の検討の一対象となっておりますので、そういった御議論を踏まえて、私どももそういった問題どうなのかということをこれから将来の問題として考えてまいりたいと思っているところであります。
○中野鉄造君 大体適当ではないかという判断だろうと思いますけれども、国民の裁判を受ける権利の保障という観点に加えて、先ほども申しましたように、余り頻繁に手数料の改正が行われると非常に現場では混乱するという、そういうマイナス面もございます。 そこでお尋ねするわけですけれども、現在作業が進んでいる民事訴訟法の全面的な見直しか済むまではこの手数料の改正というものは行わないと、そういうお約束はできるんですか。
○政府委員(濱崎恭生君) 手数料等の額につきましては、基本的には常に経済社会情勢の変動に対応してこれを是正すべき必要が生じたときには適切に対応しなければならないという性質の問題だというふうに思っております。したがいまして、今の段階で、御指摘の法制審議会の検討が済むまでは費用法について一切改正を考えないということを将来の問題としてお約束するわけにはまいらない性質のものでございます。その点は御理解いただきたいと思います。 ただ、今回、手数料算定基準について改正を加えたわけでございますが、手数料算定基準といったことについて考えますと、これを頻繁に改正するということになりますと、これは現場で混乱のもとになるというのは御指摘のとおりだと思いますので、そういった算定基準といったような観点から余り再々改正をすべきものではないという認識は持っておりますので、そういう点を踏まえて対応していきたいと考えております。
○中野鉄造君 次に、この手数料の納付の方法、つまり収入印紙の問題についてお尋ねいたします。 印紙をもってする歳入金納付に関する法律第一条に、「国に納付する手数料、罰金、科料、過料、刑事追徴金、訴訟費用、非訟事件の費用」等は、「印紙をもって、これを納付せしめることができる。」と、こういう法律があるわけですけれども、逆に言えば、申し立ての手数料は、法第八条によって、収入印紙を張って納付させることとしているわけで、理論的には現金等による納付の方法をこれは禁じているわけじゃないわけなんです。 財政当局や予算財源の面からいえば、租税とあわせて租税印紙収入としてとらえる方が便利なことはこれは十分理解できますけれども、今後の問題として現金等の納付の方法を認めることができないのか。それが困難であるとすればどこがネックになっているのか。その点をお尋ねいたします。
○政府委員(濱崎恭生君) 現行の民事訴訟費用法では、手数料は収入印紙で納めるということになっております。 これは、昭和四十六年に現行の民事訴訟費用法を制定いたしました際に、現金納付の方法との選択、どちらがいいかということも検討されたようでございますけれども、結局当時の考えとしては現金納付の方法は当事者にとってかえって面倒である、あるいは窓口の取り扱いについて混乱の生ずる可能性がある、あるいは過誤納付があった場合の返還手続の関係でもいろいろ困難があるということで、かえって当事者に不便を与える結果となるおそれがあるのではないかということで収入印紙をもって納付するという方法を選択し、現金納付の方法を採用するかどうかということはその後の検討にまつということにされたわけでございます。 最近、この点につきまして、手数料の額が高額であるものが増加するに伴いまして、印紙で納める場合の問題点もだんだん指摘されるようになりまして、現金納付の方がいいのではないかという御議論も出てきておることは承知しております。 また、先ほど来申し上げております法制審議会の民事手続についての見直しの検討事項の一つの候補としても、そういった問題点も取り上げて意見照会がされておるところでございます。現金納付、印紙納付の方法、それぞれいいところとデメリットの面があるかと思うわけでございますけれども、そういった全体を比較してどちらがいいのかということはこれから最高裁事務当局とも相談して考えていきたいというふうに考えているところであります。
○中野鉄造君 現在のように、収入印紙による納付方法がとられている場合、いろいろ記憶に新しいところでございますが、偽造だとか変造だとか、そういったような事件が非常に頻繁に起こっております。 私も、この間ある印刷の専門業者の人たちにちょっとお尋ねしたところ、お札は透かしたとか何とか非常に高度な印刷技術を要するけれども、印紙なんというものは簡単にできると、こういうようなお話を伺ったことがあります。そういうところからやっぱり印紙の取り扱いというのは非常にこれは問題があるんじゃないのかなという気がしてならないわけです。 そこで参考までにお尋ねしますけれども、今裁判所内におけるいろいろな再犯防止対策を含めて、収入印紙に係る偽造、変造の動向について、そういうようなことにかんがみどういうような配慮をなされているのか。それとまた、消印についてどういう配慮をなされているのか、これが一点。 それと、またそこにもかかわっできますけれども、近年の印紙犯罪の動向、それから印紙犯罪処罰法に基づく最近の起訴動向について、これは法務省と警察庁にお尋ねしたい。 そして三点目に、大阪だとかあるいは東京でもいろいろな最近事件が起きておりますけれども、金券を割り引いて買い取るところがありますね。あるいは商品券だとかチケットだとか、そういうようなものを買い取るところがあります。それは同じ額で買い取るならばこれは両替として別に問題ありませんけれども、幾らか割り引いてそれを買い取る。ところが、これは民間で発行している金券だとか商品券だとかチケットはいいとしても、政府が発行しているものを割り引いてやる。これは古い古銭だとか古い切手だとか、同じ政府で発行したものであってみても逆に高額に買い取るわけなんですね。ところが、現在流通している印紙だとかそういうような政府が発行しているものを割り引いて買い取る、こういうようなことを取り締まる法律はないと思うんです。こういう点についてどういうようにお考えになっているのか、この三点についてお伺いいたします。
○最高裁判所長官代理者(上田豊三君) まことに残念なことでございますが、昨年の十月に、東京高等裁判所に勤務していました裁判所の事務官が印紙を窃取しまして、その後にカラーコピー機で偽造した収入印紙を張りつけているという事件が発覚したわけでございます。 そこで、早速この事務官が逮捕されました翌日に全国の裁判所に対しまして書簡を出しました。その書簡の内容は、収入印紙の厳正な保管、それから収入印紙の保管事務及び消印事務の相互チェック体制の確立、収入印紙の真正、正しいかどうかという真正の点検の励行、こういった所要の措置をとるとともに、収入印紙をなるべく早く消印できるように裁判官への理解を求め、書記官等に対しましても適正迅速な事務処理を指導する、こういった内容の書簡を出したわけでございます。 さらに、各下級裁判所が書記官事務等に関しまして査察を行いますが、昨年度の重点事項の一つに収入印紙の取り扱いに関する事項を追加いたしまして、収入印紙の管理体制等について重点的に査察を行うよう指導したところでございます。 下級裁判所からは、まだ消していない収入印紙の管理につきまして、例えば未消印収入印紙処理簿といったものを備えつけまして、こういったまだ消していない収入印紙に関するチェック機能を十分に働かせたり、あるいは全国的に見ましてなるべく早く収入印紙を消すということについての理解が深まってきているというふうに承知しております。
○政府委員(濱崎恭生君) 印紙の偽造、変造等につきましては、印紙犯罪処罰法という法律に基づいて刑事罰の対象になっておりますが、同法に基づく最近三年間の起訴数につきまして統計資料によって申し上げます。一印紙犯罪処罰法違反事件で起訴された人員は、平成元年が四名、平成二年が七名、平成三年が一名というふうになっております。
○説明員(林則清君) 印紙犯罪ということで事件の統計はとっておりませんが、印紙犯罪処罰法違反の統計上の検挙件数、これは事件全体の中で個々の犯罪事実の成立ごとに一件と数えるわけでございまして、一事件で何件にもなる場合があるわけでありますが、これにつきましては過去三年間で総計三十六件というふうになっております。 それから、最近における主な検挙事例でございますが、先ほどお話がございましたが、裁判所の職員が真正の収入印紙を窃取した上でカラーコピー機を利用して額面十万円の収入印紙を偽造し、これを手数料納付書に貼付して使用したという事案、あるいは山口組系の暴力団幹部ら三名がオフセット印刷機等を使用して額面千円の収入印紙約四千枚を偽造したという事案、それから、これは平成元年の事件でございますが、雇用保険法に基づく社会保険料支払い用の雇用保険印紙、これを偽造して日雇い労働者被保険者手帳に貼付して使用した、こういった事案が見られるところでございます。
○中野鉄造君 そこで最後にお尋ねいたしました、そういったようなものを割り引いて買い取る商売があるわけなんですけれども、そういうところがなければ今おっしゃったような事件も発生しないと思うんです。そういうようなものを幾らでも買い取るところがあるからこそそういう事件が絶えないわけなんですけれども、いわゆる政府発行のそういったようなものを取り締まるというようなことはお考えになっておりませんか。
○政府委員(濱崎恭生君) 私どもその関係の所管でございませんので正確なところは存じませんけれども、恐らく現行法上いわゆる金券ショップ等で印紙を扱ってはならないという、そういう観点からの取り締まり規定はないんだろうと思います。基本的には、そういうものも含めて売買の自由という範疇の問題として考えられておるのではないかと思います。 そういうものについて取り締まりをした方がいいのかどうかということにつきましては、これは法務省の問題というよりは印紙というものを所管しておられるところでまず第一次的にお考えいただくべき問題ではないかと考えておるところでございまして、法務省として現在そういうものについて手当てをすべきかどうかということについての御答弁はいたしかねる状況にございますので御理解いただきます。
○中野鉄造君 ちょっと参考までに聞きますけれども、こういうものを所管されているところは大蔵省の印刷局あたりになるんですか、いかがでしょう。
○説明員(松谷明彦君) まことに申しわけございませんが、私この点を所管しておりませんので明確なお答えは申し上げかねるところであります。 印紙として収納しておりますのは確かに私ども大蔵省でございますが、印紙のいろいろな手続その他を決めているところについてはちょっと所管でございませんので、申しわけございませんが差し控えさせていただきます。
○中野鉄造君 なかなかこの問題は放置しておくというわけにもいかないと思うんです。こういうことはやっぱりそれなりの取り締まりをしていくべきじゃないかと思いますが、今後いろいろ私どもも含めてこれは検討しなくちゃいけない問題だな、こう思います。 ところで、収入印紙の形式というのは大蔵省告示でこれは定まっておりますが、一円から十万円まで、こうなっておりますね。そこで、五十億円の訴訟の場合には十万円の印紙を使用しても最低限百十五枚の印紙が必要になってくるわけですけれども、これはかなりの枚数が必要になるわけでして、実務上非常に不便ではないかと思いますが、この点いかがお考えなのか。 また、使用する収入印紙については、常識的になされているとは思いますけれども、意地悪のつもりでかなんか、例えば一円印紙をたくさん持ってきてこれで受け取ってくれと、こう言われてもそれは受け取らざるを得ないと思うんです。 そこで、大蔵省当局にお尋ねするわけですが、先ほども申しましたように、最近の経済情勢から考えて、この十万円を超える高額収入印紙発行の必要性についてどういうようにお考えでしょうか。
○説明員(内野正昭君) お答えいたします。 十万円を超えるような高額印紙の発行につきましては、現在までのところ関係する省庁から具体的な要望は承っておりません。しかしながら、最近の経済情勢等勘案して、十万円を超える高額印紙を発行する必要性についてただいま先生から御指摘ございましたけれども、関係省庁の考えを聴取してみたいと思っております。 ただ、先生からも御指摘あったわけでございますけれども、その際、十万円を超えるような高額の印紙の発行となりますと、偽造防止をどのように行うかといった観点、あるいは現在発行されております高額紙幣との金額のバランスといったような点を考慮し、慎重に検討する必要があるのではないかなというふうに考えております。
○中野鉄造君 予算編成に当たっての財源のウエートとしてやっぱり一番高いのは租税及びこの印紙収入であろうと思いますけれども、財源としての印紙収入の見込みについてどのように推計されているのか。抽象的には最近の運用実績等を勘案してということになるのでしょうが、見込み額についての基本的な考え方がおありだったらお尋ねいたします。
○説明員(松谷明彦君) 平成四年度におきますところの裁判の手数料収入としては約百二十二億円を計上しているところでございます。 具体的な積算の中身につきましては、今回の改正によりまして手数料の一部が引き下げられることになるわけでございますが、それが例えば近時における高額訴訟の増加傾向あるいは今回の改正等により民事訴訟事件全般の事件数がどの程度増加するのかといったような観点につきまして、これは法務省の方でいろいろ御検討いただき、そうしたことも加味いたしまして今回の手数料収入見込み額を計上しているわけでございます。
○中野鉄造君 「平成四年度予算及び財政投融資計画の説明」によりますと、印紙収入、いわゆる収入印紙は一兆三千八百六十億円、こうされておりますけれども、改正法による収入見込み額も同額とされております。 そこで二、三お尋ねしますけれども、本案による改正は印紙収入見込みに影響がないと推計されておるのか。二番目に、前年度予算よりも三百九十億円減収見込み類とされている原因はどこなのか。三つ目に、印紙収入における内訳、いわゆる民事訴訟等の申立手数料による見込み額をどの程度見ておられるのか。
○政府委員(濱崎恭生君) 委員の御質問の中には、裁判所の印紙収入の問題と、印紙はいろんな場面で使われておりますので、印紙収入全体の問題との御質問が含まれておると思いますので、私どもの方からは、今回の改正と裁判所関係の印紙収入の関係について先ほど大蔵当局の方から御説明がありましたけれども、若干補足して申し上げさせていただきたいと思います。 平成四年度の裁判所の収入印紙概算見積もり額は約百二十二億円とされておるところでございますが、今回の改正をしない場合と改正が実現された場合とでその総額にどの程度の変化が生ずるかということは、一応数字的な概算はしたわけでございます。その結果によりますと、これは施行期日がまだ決まっておりませんので、平成四年度についてどれだけの期間が適用対象になるかがまだ決まっておりませんが、仮にこれを半年分として考えた場合には、大体数億円程度、裁判所関係の印紙収入が減少するという計算になるわけでございます。数億円と申しますと、もう少し具体的に申し上げますと、三億円から六億円ぐらいの間ではないかというふうに考えておるところでございます。 ただ、先ほど大蔵当局からもお話がございましたように、最近高額訴訟の増加傾向がございますし、いろいろ裁判所においても手続の改善等による訴訟手続の効率化ということが図られている結果として訴訟が増加するということも考えられる。さらには、今回の改正によりまして今まで若干請求額を控えていた者が少し高額の請求をするということになるという効果があるかもしれません。 そういったことを考えますと、かなり予定よりも印紙収入額が増加すると見込まれる要素もあると思われるわけでございまして、そういったことを総合して考えますと、単純に計算上だけから申しますと先ほど申しましたような減収ということになるわけでございますけれども、相当程度、そういった後に申し上げましたような事情によってカバーされるのではないか。したがって、この改正によって、平成四年度の裁判所関係の手数料収入につきまして見積もり額を変更するまでの影響はないのではないかというふうに考えている次第でございます。
○説明員(清水治君) 印紙収入の金額についてのお尋ねでございますが、お答えさせていただきます。 平成四年度予算におきまして、印紙収入、収入印紙に係る金額は、御指摘のとおり一兆三千八百六十億と見込んでございます。平成三年度の補正後の予算額が一兆四千二百五十億ということで、三百九十億、四年度予算の方が減少しております。これにつきましては、最近におきます印紙収入の収入状況あるいは収入印紙の売りさばき状況などを勘案いたしまして、印紙収入全体として見込ませていただいております。 ちなみに、印紙収入の中には登録免許税ですとか印紙税のように印紙で納付されるものがございますが、平成二年度後半以降最近におきます不動産取引の低迷が見られまして、こうした不動産の取引の低迷状況を反映いたしまして登録免許税などが低調でございました。こういった点を反映いたしまして、印紙収入全体としてやや減少傾向にあるものと考えております。
○中野鉄造君 最後になりますが、今、大蔵省からもいろいろ答弁がありましたけれども、本案改正について大蔵当局と法務省、いろいろ協議をなさった経緯があるのかどうか。もしなかったならなかったで結構ですけれども、その点いかがでしょう。
○説明員(松谷明彦君) 本改正につきまして法務省、大蔵省間での協議があったかどうかということでございますが、もちろんこの改正案につきましての改正の趣旨、概要、あるいは改正法が国会を通過して施行された場合の印紙収入への影響については、事前に法務省から説明を受けているところでございます。
○政府委員(濱崎恭生君) ただいま大蔵事務当局の方で御答弁いただいたとおりでございます。事情について御説明して御理解をいただいているところであります。
○中野鉄造君 終わります。
○委員長(鶴岡洋君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分まで休憩いたします。 午後零時四十六分休憩 ―――――・――――― 午後一時四十二分開会
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○橋本敦君 まず最初に、訴訟費用の関係でお尋ねをしておきたいんですが、今回は一千万円以下ということがこの改正法ではもとのままということになります。しかし、実際の事件の数の多さからいいますと、資料でも一千万円以下が圧倒的に多いわけでございまして、民事訴訟費用全体の問題としてはこの部分にも考慮を払うべきであったのではないかということが同僚委員の質問にもございましたが、私もそう感じておるわけでございます。 この民事訴訟費用のあり方については、かねてからいろいろ議論がございまして、御承知のように、日弁連の民訴法の改正問題委員会が九一年二月十四日に出しました報告でも、検討すべき事項の第四点にこれを掲げまして、大体どういう根拠で訴訟の費用の印紙貼用をやらせるか、その基準なり根拠なりも含めて、もう一遍基本的な議論が必要ではなかろうかというような問題が提起をされておるわけであります。 諸外国の例も午前中お話がございましたが、将来の課題として我が国の訴訟費用がどうあるべきかというこういった問題については、引き続いて議論を深めてほしいということを希望するんですが、この点はいかがでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 今回の提出いたしました改正案は、委員御指摘のとおり、大変部分的なものでございます。御指摘のとおりに、提訴手数料を含みます訴訟費用に関する基本的な問題点としてさまざまなものがございます。日弁連からもいろんな御意見が出ているということは私どもも承知しておりますし、手数料の関係に限りましても、例えば上限を設けるとか、あるいは上訴関係の手数料のあり方とか、多数当事者訴訟等についての算定方法の基準化といった御意見を伺っているところでございます。 私どもといたしましては、そういう問題について常に関心を持っていかなければならないというふうに考えておりますが、午前中も御説明申し上げましたように、現在法制審議会の民事訴訟法部会におきまして、国民に利用しやすい民事裁判の実現という観点から、民事訴訟手続全般について見直しの検討がされておる中で、そういった問題についても改正を検討する必要があるかどうかということについて広く意見を聞くための検討事項の公表を行っているところでございまして、そこで基本的な議論がされるということを期待しているわけでございます。私どもとしましては、そういうことでの議論の推移を見守りながら、将来の問題として考えていかなければならないというふうに考えております。
○橋本敦君 きょうは、民事裁判に関連をして次の問題に質問のテーマを移していきたいと思っております。 実は最高裁の方で、各地の裁判官会同でいろんな法律問題を議論されるという経過がこれまでございまして、裁判官会同におけるそれらの議論が最高裁事務総局からまとめて、例えば労働関係ですと「担当裁判官会同概要集録」ということで出されておるのを私どもは承知をいたしておりますが、そういった裁判官会同というのは大体いつごろから行われてきたものでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) この会同なり協議会と申しますのは、戦後最高裁判所が発足をしましてから、その当時から行われてきたものだというふうに承知しております。
○橋本敦君 その会同というのは、初めのうちはどなたが出席をなさったか、どういう議題で行われたか、これが公に知られ得る状況で公然と行われていたようでありますが、ところが後に、次第にそういった体制がなくなりまして、全く部内だけで行うということで、資料も公開はしないということが原則になってきたように伺っておりますが、間違いありませんか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) この会同、協議会の結果でございますけれども、従前といいましょうか、戦後初期の段階のものを私どもいろいろ印刷物で見るわけでございますが、そのころのものを見ますと、会同の出席者、それからその会同の議論の経過というものにつきまして、議長はこういう発言をして、それから会同員がこういう発言をしたという速記録のようなもので出されておった時期が一時ございます。最近はそのような形ではされずに、むしろそれをある程度取りまとめたといいましょうか、そういうような資料が多いというふうに認識をしております。
○橋本敦君 その資料が取りまとめたという形で出される、その資料を取りまとめる責任は最高裁事務総局が責任を持ってなさっている、こういうことですね。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) そのとおりでございます。
○橋本敦君 最高裁事務総局がおまとめになるについて、その会同をどの範囲で開くかということについては、裁判官の任意の参加なのか、それとも最高裁の指名によって参加をされる裁判官が決まるのか、どうなっていますか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) この点につきましては、会同、協議会いろいろございますけれども、全国、全高裁、地裁から裁判官を集めるというのもございますし、あるいは協議のテーマによりましてはその半分、地裁ですと大きなところを中心に半分ぐらいというようなところもございます。 それぞれの高裁なり地裁からだれが出席するかということにつきましては、各高裁なり地裁におきましてだれが出るかというのを決めていただく。ただ、私どもの方では、その会同、協議会の趣旨に照らしまして、例えば執行事件でありますと執行を担当しておる人に出てきてもらいたい、あるいは労働事件でございますと労働事件を担当しておる人から出てきてもらいたい、あるいは場合によってはベテランの裁判官の方がいいんじゃないかと、この程度のことは申し上げておりますが、具体的な人選につきましてはそれぞれの裁判所においてお選びいただいていも、こういうことでございます。
○橋本敦君 それを高裁管内で主宰する場合は、当該地の高裁長官が責任を持たれるわけですか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今のは高裁管内のことでございますが、責任者といいますか、主宰者といたしましては高裁長官と、こういうことになるわけでございます。
○橋本敦君 それで、その会議録というようなものは特に公にしないということで、その概要を取りまとめたものは部内資料として裁判官にそれは配付されるんですか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) この取りまとめたものにつきましては、それぞれの内容等にもよりますけれども、できるだけ広くの裁判官に利用していただきたいということがございます。 ただ、何と申しましても、裁判官の数も多うございますし、その経費といいましょうか、そういう関係もございますので、大体のところは各庁用といいましょうか、各裁判所に阿部か、あるいは民事の場合ですと民事の裁判官室に一部とかというような形で、いろいろその資料の中身によって違いますけれども、そのような形で配付しておるわけでございます。特に各裁判官個人個人というのは、全部調べたわけじゃございませんが、多分そうないのではないかというふうに思っております。
○橋本敦君 一応これは部内資料として公表はしないという扱いのものですか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) この会同、協議会と申しますのは、裁判官の自由な研究会ということでございまして、できるだけフランクな立場でフリーに議論をしてもらいたい、こういうことがございますので、余り公表するのには適当でないようなのも中にはございます。しかしながら、むしろ公表して部外の方にも知っていただいた方がいいというのもございます。例えば、新しく法律ができまして、具体的に事例を申し上げますと、先般、もう大分前になりますが、民事執行法というようなものができました。その際に、どういうような取り扱い、申立書はどうするかとか、いろんなことが協議されたわけでございますが、そのようなものにつきましては、申し立てをされる弁護士さん、あるいは一般の方という方にも知ってもらっている方がいいというのもございます。そのようなものにつきましては、公表といいましょうか、市販といいましょうか、公表のような形にしておるのもございます。 それから、自由な雰囲気のもとでということで、一時、部外秘というような、あるいは取り扱い注意というような取り扱いをした例もございますけれども、最近では余りそういうのも好ましくないのではないかということで、特に内部用ではございますけれども、場合によってはといいますか、原則としては余りそういう部外秘というような取り扱いは望ましくないんじゃないかというような反省もございまして、最近ではそのような事例は少ないのではないかというふうに認識はしております。
○橋本敦君 そうしますと、最高裁事務総局がまとめた上巻、下巻に分かれております「労働関係民事行政事件担当裁判官会同概要集録」と言われるものは、これは別に秘密でも何でもないという扱いでいいということですか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) そのとおりでございます。各裁判所の資料室ございますが、そこにも備えつけをしておるということでございます。
○橋本敦君 ところで、部外秘等の扱いをしたこともあったというお話がございましたが、この裁判官会同が実は今おっしゃったような自由な意見交換の場ということではなくて、次第に最高裁の意向が各裁判官に浸透していくような、そういう嫌いが多くなってきて、事実上の裁判権の独立に対する制約という問題を起こしかねないという意味で、司法上の大事な問題だという批判が既に古くから在野法曹を中心に起きておったということは御存じですか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今、御指摘のような議論というのがあることは承知をしております。 ただ、私どもといたしましては、こういうのは先ほど申しましたように一般的な研究協議の場だということでございまして、特にこれによって具体的な事件の処理というものが影響されるということがあってはならないことでありますし、現実にもない。特に裁判官と申しますのは憲法にも保障されておりますとおりに、独立して職権を行使するというところが裁判官の裁判官たるゆえんでございまして、裁判官になる者としましては、そのことを誇りといいましょうか、そのことに生きがいを感じて裁判官になっておるわけでございまして、決してこのような会同なり協議会が行われたからといって具体的な裁判の中身に影響が与えられるということは全くないというふうに認識しておるわけでございます。
○橋本敦君 その問題がまさに私がきょう質問する中心課題なんですね。 今そういうようにおっしゃいますけれども、在野の研究会、シンポジウム等いろいろ行われておりまして、最近では大阪の民主法律家協会もこの問題でシンポジウムを開いておりますが、そこでは具体的な裁判に影響を及ぼしたおそれがあるという、そういった指摘も議論としてなされておるんですね。 例えば、一つの例を取り上げて考えてみますと、日立製作所の残業拒否解雇事件というのがございました。これは日立製作所で田中秀幸さんという方が、終業十五分前にきょう残業しなさいというように言われて、きょうは友人との約束がありますからということで残業を断ったわけですが、それが出勤停止処分になり、依然として残業は本人の同意を要するという考え方を変えないから、企業秩序の問題としては許せぬということで解雇にまで至ったというケースでございました。 その事件が仮処分一審、二審と参りまして、本訴の一審が東京地裁八王子支部で昭和五十三年五月二十二日に行われて、たった一回の残業拒否でこれを解雇するのは懲戒権としては行き過ぎだということで勝訴の判決がございました。仮処分二審でも東京地裁でも勝訴の判決があった。それが東京高裁に行くわけですが、東京高裁で昭和六十一年三月二十七日に今度は逆転判決がなされるわけですね。 この経過は間違いないですね。まずその点だけ。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 間違いございません。
○橋本敦君 その逆転判決がなされる昭和六十一年の三月二十七日なんですが、その前の昭和六十年六月に広島・高松高裁管内で裁判官会同が行われまして、まさに一般的な議論の研究ではなくて、具体的なこの事件のケースそのものに該当する設問の検討が行われたことが明らかであります。 設問の要旨は、「使用者は、労働者に対し、一方的に時間外労働を命じ得るか。また、時間外労働の命令に従わなかったことを理由に懲戒処分をすることは可能か。」という問題、まさに本件の具体的な最大の争点にかかわる設問であります。これが行われまして、当時の高裁長官が四ツ谷裁判官であったと思いますが、その主宰のもとでこの会同がなされまして、そしてその協議内容というのが出されてまいりました。 その協議内容というのは裁判内容ではありませんから、この本に、事務総局が編さんした集録に具体的に出ておりますから、これはもう問題ないわけでありますけれども、その内容を見ますと、基本的には時間外労働には労働者の同意が要るんだ、しかしそれは個々具体的な同意でなくて、包括的な同意でよろしいと。その包括的な同意というのは、労働者が雇われる際に、その会社に対して自分は時間外労働については、これは承服しない、異議を述べるということがありますよとか、そういったことについてきちっと言っておかないと包括的に同意があったものとみなされて、三六協定のもとで就業規則があり、そこで残業を命じられれば包括的同意がもうあったものとみなされて残業義務が生じてくる、こういう考え方ですね。こういう考え方に基づいて一たんそういう労働義務が発生している以上は、時間外労働であろうが義務があるんだから、それに違反をするならば当然懲戒の対象となるという、こういう協議内容がこれによって明らかになるわけです。 そういうような協議内容が行われて、そして今指摘した東京高裁の判決では、この協議内容と異なって懲戒権の問題については慎重に検討するということで労働者を勝たした判決が変更される東京高裁判決に至るわけですが、この協議内容の考え方と東京高裁判決の考え方と理論的に共通するものがあることは否めないのではないか、この点はどう見られますか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今仰せのような協議の結果というのが概要集録に載っておることは事実でございます。 先ほど、この問題は当該具体的な事件の問題ではないかとおっしゃったわけでございますが、これはここにもございますように、広島・高松高裁管内の協議会でございまして、問題を出すのは広島・高松高裁管内の参加された裁判官がお出しになったということでございます。その方がどういうことでお出しになったのかというのは私どもよくわかりませんけれども、今おっしゃった事件は具体的には東京地裁八王子あるいは東京高裁の事件でございますので、そういうことから見ますと、その具体的な事件をどうこうということではないのではなかろうか。 また、一般的に申しましても、裁判官がこういう問題を出す場合には、自分のところにある事件の中での問題点というのがもちろん頭にある場合もございますけれども、しかしそれはそういうものを具体的に出すわけではなくて、一般的な法律論、抽象論というような形でいろいろ他の人の参考意見を聞く、こういうことでございまして、ほかの論文を読んだりというようなことと全く同じだということでございます。
○橋本敦君 その論文を読むのと全く同じだという、その読むのが一般の研究論文ではなくて最高裁事務総局が責任を持ってまとめた裁判官会同の内容だということですから、裁判官への影響力というのは一般の論文を研究的に読むことと違って非常に大きいということを考えなきゃならぬのです。そこが問題なんですね。 しかも、その設問が、今おっしゃったように、管内が違うと言うけれども、この問題についての協議の結果については、裁判官には部内資料として図書室でも見れるし、また配付をされることもあるんですから行くんですよ。いいですか。 しかも、もう一つの問題は、この裁判官会同、広島で主宰をされた四ツ谷巌裁判官が、六十二年一月二十八日に最高裁にお入りになって、最高裁第一小法廷の裁判長におなりになるんですが、その第一小法廷の四ツ谷裁判長のもとでこの事件が最高裁で審理をされて、そして二審の原告を負かした判決が維持されて最高裁判例が出る。こういうことで関係者の間では、まさにそれはこの協議をまとめた四ツ谷裁判官が裁判長におなりになって下した判決というのは、それ自体公正なものとして納得できるかという議論さえ出てくる、こういうことにもなってくるわけですね。 そういう意味で、司法行政というのは、これは基本的にはやっぱり公正ということが基本でなくちゃならぬし、裁判を受ける国民から見てその公正がどう担保されるかということだし、それから司法行政として事務総局がおやりになるこういう会同で具体的ケースがどんどん議論をされて、それが裁判官に具体的に影響を及ぼすということになれば、それはまさに裁判権の独立という憲法にかかわる問題にもなってくるわけですから、これは本当に慎重でなきゃならぬし、重大な問題でなきゃならぬわけですね。 私は、この問題で非常に注目されるのは、平成元年十一月十六日に日弁連で元裁判官に対して、こういった会同に出席した経緯についてアンケート調査をやられまして、それが意見として出ておるんですが、それを読んでみて、私はこれは大変だなと思ったんです。 この方は行政事件会同に出られたんですが、その雰囲気について、だれ一人として指名されなければ質問も意見も出さず、あらかじめ指名の順番も当局によって決められていたような感じだ。私はそういうことは事前に知らないから発言をしたんだけれども、挙手して発言をすると、周囲から意外な顔をされて赤面した覚えがある。以後は積極的な発言をする気を失ってしまったことを記憶している。会議の方向は、まず問題について提案庁がその趣旨を説明して、その次に二、三の庁が指名されて意見を言うが、まとめとしては、各庁の研究や協議の結論を言うけれども、最後に事務総局の派遣の判事がとうとうと議論を整理して締めくくる。そして、この事務総局の議論というものを持って帰るためにもうみんなは真剣にメモをして、そして、持って帰って伝達をする、そういう空気になっていて、自由闊達な研究ということとはほど遠い雰囲気だったということをはっきりとおっしゃっているのがあるんです。 これは一つ重要なやっぱり私は証言だと思うんですね。こういうような問題がありますから、大阪の民主法律家協会としても、この問題についていろいろ検討を加えまして、そして、この問題については、裁判の独立を侵すというような具体的なおそれがあるから、こういった会同については最高裁事務総局としては、この際、これを廃止するという方向で、司法の独立と権威を擁護する立場に立ってもらいたいということを決議して、そういった文書を最高裁にも送っているというように聞きましたが、そういう文書は届いていますか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 多分、ことしの五月一日に民主法律家協会会長亀田得治という名前で最高裁判所に来ておりますのが恐らくそれではないかと思いますが、そういうものは来ております。
○橋本敦君 じゃ、最後に。 この趣旨は、真剣にお読みになれば今私が指摘したような問題で、憲法七十六条三項に基づく裁判の独立を守るということで、最高裁による、司法官僚による裁判統制ということになってはならぬということを憂えて厳しく指摘しておる問題であります。 この裁判官会同の問題については、多くの事例を挙げてこれからも私はまだ議論をしていきたいと思っておりますが、さしあたりきょうは第一回として、以上の程度で質問を終わります。
○萩野浩基君 連合の萩野浩基です。よろしくお願いいたします。 さて、このたびの改正案を見まして思うのでありますが、今回も手数料額の上限といいますか、これについてどうも明確でない。このことに関しましては、通告をきちんとしてなかったんじゃないかと思いますが、けさから同僚の委員の質問の中に、この辺について重要な点であるのに触れられてなかったように思いますので、ちょっと質問させていただきたいと思います。 この訴えの提起の費用は、御案内のとおりに、訴訟の画的の価格が十億円を超える部分、その価格五百万円までごとに一万円、これは〇・二%と思いますが、という費用がかかることになっております。これはどう見ても、ここに上限がないというのがどうも不思議に思うわけです。上限のない手数料は、果たして憲法等から考えてみましても、国民の裁判を受ける権利から考えると、もしかしたら司法の民主化への、とり方によると逆方向ではないか、私はそのようにも考えるのであります。 どうかこの辺は実にナイーブな質問でございますが、リーズナブルな合理的な御答弁を、簡単でいいですから、私これを読んで素朴に感じたことなんで、お答えいただきます。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、現行法のものでは三百万円を超える部分については二十万円ごとに千円ということで、率にして〇・五%でございますし、今回の改正案のもとにおきましても、十億円を超える部分につきましては五百万円ごとに一万円、率にして〇・二%ということでございまして、そういう率で高額になればなるほど手数料も高額になるということでございます。したがいまして、御指摘のとおり上限はないわけでございます。 この趣旨は先般来申し上げておるとおりでございまして、負担の公平という観点から、あるいは副次的には乱訴の防止という観点から、やはり請求額が、求める額が多くなればそれに応じて、今回率を少し低減させるわけでございますけれども、手数料を徴するということが適当であるという考えに基づいているわけでございます。 なお、憲法との関係に言及されましたけれども、これは現行制度も今度の改正案におきましても請求額が高額になれば手数料が高額になるということでございますが、手数料が高額であるがゆえにその負担能力がない、しかも勝訴の見込みがないではないと認められるときには訴訟上の救助という制度によりまして手数料の納付について猶予をする、したがってそういう要件が認められれば手数料を納付しないまま訴訟を提起することができるという制度がございます。そういうこともございますので、それとあわせ考えますれば国民の裁判を受ける権利を侵すということにはならないというふうに考えているところでございます。
○萩野浩基君 今の説明を聞きますと、本当はもっと私なりの理論展開をしたいんですが、時間の都合もありますから、この辺は今のでは私は十分な答弁にはならないんじゃないかと思います。今後ともその点、また次の図もいろんな案が出てくるときにやはりリーズナブルでラショナルな、合理的な整合性のある説明がつくように今後ともひとつ研究をお願いいたしたいと思います。これは素朴な質問でございます。 さて、次の問題、これも同僚議員の北村先生等からも指摘されておりましたが、やはり今回の改正案の背景にはどうしてもこれは日米関係があり、特に最近緊迫しております。アメリカにおきまして、私、一昨年講義に出かけましたときにトレードフリクションというタイトルで講義をさせられたんですが、そのディベートの中でトレードフリクションではないと、今は日米関係はトレードウォーだというような厳しい言葉まで出てきたのには驚いて帰ったわけでございます。アメリカの方々の言い分というのは日本の排他的なものとしての独禁法をどうしても挙げられるわけです。それからまた、日本では慣行となっておるような政府と民間との癒着関係、こういうようなものをもっと日本は正していかなきゃいけないんじゃないかということをとても言われたわけです。 今回、この改正案に関しましても、独禁法違反の損害賠償訴訟に関する提訴費用の引き下げということでありますが、これはやはり北村先生の方からの質問もありましたが、どうもアメリカからの改正要求とのかかわり合いが私はあるんではないか。そういう点から考えまして、現時点における日米構造協議の進捗状況、それからまたできれば今回の改正について、余り詳しく言われますとこれまた時間がなくなってしまいますから、できれば外務省並びに法務省の方から簡単に御答弁いただけたらと思います。
○説明員(佐々江賢一郎君) お答えいたします。 日米構造協議におきましては、独禁法の問題につきまして日米間でいろいろこれまで意見交換を行ってきております。特に、アメリカ側の観点からいたしますと、我が国の市場における透明性の問題あるいは公正性の問題の観点から、自由かつ公正なやはり競争が促進されることがこれはもう日米関係という点よりもむしろ日本経済にとって重要である、そういう点から独禁法自体について幅広い観点からこれまで議論してきているということでございます。 具体的には、独禁法及びその運用をいかに強化するか、あるいは独禁法の違反に対する損害賠償制度の活用の問題、それから系列関係に関する監視の強化、あるいは景品規制の緩和等につきこれまで議論してきているということでございます。 こういう議論を踏まえまして、これは九〇年の六月にアメリカとの間で今後構造協議においてこういうことをやっていくということを一応話をしたわけでございますが、その中では、例えば課徴金の引き上げであるとか独禁法のガイドラインの策定、公表、あるいは独禁法に係る警告の公表等々、いろんな措置が我が国自身の措置として盛り込まれている次第であります。他方、現時点ではさらに何ができるか、まだいろいろとお互いにアイデアを交換している状況ということでございます。
○萩野浩基君 法務省、一言でいいです。ネゴシエーションをしているかしていないかだけ、簡単でいいです。
○政府委員(濱崎恭生君) 私どもも関連する場面におきまして外務省と協議をしながら日米構造協議の場に参画しているわけでございます。 今回の改正につきまして、端的に申し上げますれば、日米構造協議の中でこの問題が取り上げられたということが一つの改正に着手する契機になっているという関係にはございますが、私どもとしては、決してアメリカ側の要求に対応するという形で立案したというものではないというふうに考えております。
○萩野浩基君 今のような答弁ですとちょっと次の質問は少し変わってくるかもわかりませんけれども、今回の改正案というのは一般の人たちにとっては訴訟費用が下がるということで、非常にグッドサウンドに聞こえてくるわけなんですが、個々の国民サイド、市民生活から考えてみますと、同僚議員から同様な趣旨の質問もございましたけれども、国民サイド、市民からするとどうもちょっと遊離しているんではないか。その背景には、やはりバブル経済のはじけた今日、もう本当に実際に自分たちの生活を必要としている一般国民の生活の面よりも、ともすると大企業、特に多額な目的物に関係ある訴訟、また先ほどお話しになりましたような日米構造協議、そういう中から出てくる圧力ではないか、こういう見方もちまたにはあるわけです。 もちろんそういうことはないんだという趣旨で改正案をおつくりになったと思いますけれども、国民とか市民のそういう立場に立ったものであるんだというのを簡単でいいですから、やはりここは表明しておいていただきたい、こう思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 今回の改正の目的は決してアメリカ側の圧力に対応してということではございませんし、また訴訟を利用される方々のうちどういう方々に特別の利便を及ぼすというようなことを目的とするものでは毛頭ないわけでございます。あくまでも民事訴訟全般につきまして、やはり手数料のあり方として高額部分については少なくとも急ぎ改善を加える必要があるという考え方に基づいて立案したものでございまして、そのことによる効果というのは訴訟手続を利用される方々にひとしく及ぶということでございます。 高額訴訟についての手当てであるから一般市民にとっては余りメリットがないのではないかという御指摘かと思いますけれども、提案しておりますように、訴額一千万円を超える部分から少しずつ引き下げということでございまして、一千万円を超える訴訟、現在では地方裁判所の第一審訴訟事件の二〇%程度になっておりますが、どういう方が原告であるかということの数字というのは特段ないわけでございますけれども、一千万円を超える訴訟に一般市民がかかわられるということはこれは決して珍しい、少ないものではないのではないかというふうに私考えております。 例えば、午前中も申し上げましたけれども、医療過誤とか交通事故の損害賠償請求、これは死亡事故あるいは死亡にも匹敵する重大な被害を受けたという場合には少なくとも数千万円という単位の請求になるわけでございますし、一億を超え二億に近い請求というものも決して少なくないわけでございまして、もちろん御指摘のように大企業が取引関係の訴訟を起こすという場合にもこのメリットが及ぶわけでございますけれども、相当の部分はそういった形で一般の市民という立場の方々が訴訟を利用される場合にも及ぶものだというふうに考えております。
○萩野浩基君 先ほど申し上げましたとおりに、せっかくの改正なんですからその趣旨がなるべく徹底するようにひとつよろしくお願いいたしたいと思います。 それから次に、先ほどの中にもちょっと触れましたが、高額の損害賠償請求訴訟のケースにおきまして、その利用者を一般市民と仮定しますと、乱訴防止の役目というものも私はないとは言いませんけれども、依然として訴訟利用を困難にする面もまだ残っているんではないかと思われるわけです。それからまた、訴訟利用者の家計規模や、または訴訟行動に投資が可能なリソースの量と、それから訴訟対象の価額の高低との間にどうしても明確な論理関係が見つかりません。強いて見出せば、北村先生の質問のところでもありましたが、スライド制というようなものも果たしてどこまで正当性があるかというのはこれはなかなか説明はつかないと思います。だけど、いずれにしましても、手数料というものは比例的に連動関係にあって当然なんだというようなちょっと感じがするんですが、この辺ひとつ説明をしていただきたいと思います。もう少し詳しく。 それから、ちょっとついでに関連ですから申し上げておきますが、現行の手数料システムにまだ私はいずれにしても課題が残っていると言わざるを得ないと思うんです。そこで、より公平で、国民、市民の立場から論理的に説明可能な手数料システムというものをこれから研究し、改善する姿勢があるかどうか。これはできましたら大臣にも言いただきたいんですけれども。
○政府委員(濱崎恭生君) まず、事務当局の方から二点についてお答えをさせていただきます。 まず、現在、現行法も改正案におきましてもとっておりますスライド方式の合理性ということでございます。これにつきましても午前中に若干申し上げたと存じますけれども、現行制度は民事裁判の運営経費、これは膨大な経費がかかるわけでございますが、その基本的な部分は国費をもって、言いかえれば国民全員の負担において賄うということであるけれども、やはり利用する者と利用しない者との公平という観点から、その一部分を利用する方に負担していただくというのが公平であるという考え方に基づいているものだと思います。 その中で、求める利益の額が多ければそれだけたくさん手数料を負担していただくという理由でございますけれども、これは利用される方で全体として運営費用のうちのある程度のものを負担していただくという場合に、利用する人相互の間でまたどういう負担のあり方が公平かという観点から考えた場合に、やはりその訴訟によってたくさんの利益を求めるという方にたくさん負担していただくということが公平なのではないかという考え方に基づいているものと理解しております。あわせて、副次的には乱訴の防止、数学的にも、請求の額の面においても、要するに、どうせ請求して認容されなくてももともとというような請求がされないように、それをできるだけ避けるように。という観点も含まれているかと思うわけでございます。 もちろん、委員の御指摘にございましたように、当事者の負担能力と求める額の間に相関性が一般的にあるわけではないということは御指摘のとおりかと思っております。ただ、その基本的な考え方は、やはり求める利益の額に応じて負担割合を変えていくということであろうと思います。そのスライド制の中身におきまして、現行法のもとでは三百万円を超える部分についてはどこまでいっても一律〇・五%ということでございますけれども、それでは少しバランスが悪いのではないかということで一千万円を超える部分から順次低減するという改正を加えて、御指摘のような問題を是正するということを考えているわけでございます。 それから、今後の検討でございますが、これも先般来申し上げているので簡単に申し上げますけれども、手数料のあり方という基本的な問題についてはいろんな御意見あるところでございまして、現在法制審議会の民事訴訟法部会における検討の一つの候補としてそういう問題も掲げられておるところでございます。そういった議論を踏まえて考えてまいりたいと思っております。
○萩野浩基君 大臣は結構です。最後に。 もう時間も少なくなってまいりましたので、これを最後の質問にいたしたいと思いますが、やはり午前中の質問、午後の質問にもちょっと関連しますが、御案内のとおり、憲法第三十二条の裁判の機会均等、こういう精神から考えてみますと、訴訟費用の支払いが苦しい当事者にも利用させるべきであると。これは午前中の質疑応答にもございました。つまり、私はやはり訴訟上の救助制度について、現在の日本の現状を見るのに、外国と比較してみましても私どうしても先進国として現制度の内容はまだ不完全である、こう言わざるを得ないと思います。それは、手数料だけのお金の問題とかそういう問題ではなくて、いろんな面からこの救助制度についてもうある程度考え直さなきゃならない。もし弁護するならば、この財団法人の法律扶助協会というのが現行制度の不足したる点にある程度補助的な役目をしているというので、まあ国がこれにおんぶしておるというのはやはりまだ後進性が残っておる、こう言わざるを得ないと思います。 さて、俗に言われる先進国の法治国家、これを比較しますと、きょうもアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等々の数字を挙げられましたのでこれを聞こうとは思いませんけれども、アメリカ、イギリスは法律扶助方式をとっておりますし、ドイツは訴訟救助方式というものをとっております。多分こういう答弁が出てくるんではないかと思いますが、日本はそのいいところをとった、すなわちミックス方式である、ベストミックスといいますかそういう方式であると言われるかもしれませんが、私は、これは制度比較論から見ましてもまだ日本はおくれているんじゃないか、残念ながらこの救助制度はおくれていると言わざるを得ないと思うんです。そこで、将来救助制度の発展のためにこれは何としても前向きに我々は進んでいかなければならないと思いますので、その点につきまして誠意ある認識に基づいた答弁と、それから大臣の方から一言これに対してのコメントをいただきたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 憲法上の裁判を受ける権利を実質的に確保するという見地から、委員御指摘のとおり、民事訴訟法上の制度としての訴訟上の救助の制度と、それから現在法律扶助協会が実施しております法律扶助の制度というものがあるわけでございます。この両方の制度をもって資力がないがゆえに裁判を受けることができないということがないようにということになっているわけでございまして、私どもとしても大変重要な制度であると認識しております。 法律扶助ということにつきましては直接私の所管の問題ではないわけでございますけれども、私どもとしましても司法制度といったものについて所管しております立場におきまして、今後ともその制度の安定、充実といった観点からできるだけの努力をいたしたいと思っているところでございます。
○国務大臣(田原隆君) 午前中の御質問もありましてお答えしたのでありますが、広い意味で非常に広くとりますと、法律扶助と訴訟上の救助というのを一緒にしたものが私は広い概念だろうと思うのですが、法律扶助についてもさっきの協会ですね、これが後進性のあれみたいに言われましたけれども、私はこれは国費を通して間接的に補助する部分と協会みずからが助けてやる部分とあるので、そんなに後進的な感じはしないと思っておるのですけれども、ただ、先生の言われる意味がよくわかりますので、私も十分勉強させていただきたい、そういうふうに考えております。
○萩野浩基君 終わります。
○紀平悌子君 よろしくお願いいたします。 法務省から事前にレクをしていただきました。非常に内容的には簡単なことなんだから簡単にできますよというふうなお話でございましたので、私も安心して伺いました。確かに簡単でございますが、本委員会でのけさ方からのいろんな論議を伺っておりますと、緊急是正であるということであって本質的にはなかなか簡単でない問題があるということがややわかってまいりましたところでございます。 いろいろ繰り返しになる質問もあるかと思いますけれども、お伺いいたします。 今回の民事訴訟費用等に関する法律の一部改正につきましては、国民が利用しやすい民事裁判の実現のため、申し立ての手数料のうち訴訟目的価額が一千万円を超えるものにつき引き下げを図るということになっておりますが、法務省からちょうだいしました資料を拝見いたしますと、地方裁判所第一審訴訟事件数におきましては、むしろ訴額が一千万円を超え一億円までの訴訟は全体の一四%から一九%程度、割合に少ない。その逆に、訴額が一千万円までの事件は全体の八〇%から八五%と多いように拝見しております。 ということは、国民サイドから申しますと、むしろ大企業や特別に高額な目的物の訴訟などよりも、より身近に必要な少額の訴訟についての手数料こそ引き下げた方が利用しやすい司法制度になるんではないかと常識的に考えるわけでございますが、今回はそれは図られなかったということでございます。 そこで、まず、訴訟額一千万円以下の事件、地裁第一審での数の内訳を三年分、二百万円ずつの区分でお教えをいただきたいと思います。どのレベルが一番多いかというのをちょっともう一回確かめたいわけでございます。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 一千万円までの事件でございますが、二百万円ごとということでございまして、実は私どもの統計は二百万円できちっときれいにはとれてないわけでございます。今とっておりますのは、九十万円、百二十万円、百五十万円、二百万円、二百五十万円、三百万円、五百万円、一千万円、こういうレベルの問題でとっておるわけでございます。それを全部申し上げましてもやや煩雑になると思いますので、二百万、五百万、一千万、こういうことで切りたいと思います。平成元年で申しますと、総数が十一万七千三百七十二件ございまして、そのうち二百万円までの事件でございますが、これが四万五千六百七十二件、パーセントで三八・九%でございます。それから二百万円を超えて五百万円までの事件、これが二万九千十九件、二四・七%ということでございます。それから、五百万円を超えて一千万円までの事件が一万四千六百七十七件、一二・五%となっております。それから、これは平成二年について申しますと、総数は十一万二千五百十八件ございまして、そのうち二百万円までの事件が四万一千二百二十三件、三六・六%、それから、二百万円を超えて五百万円までの事件が二万七千六百三十六件、二四・六%、それから、五百万を超えて一千万円までの事件が一万四千百二十六件、一二・六%、大体こういうことでございます。
○紀平悌子君 日米構造協議と今回の改正との関連については、先ほど萩野議員が詳しく外務省そして法務省からお答えをいただいたようでございましたのでこれは省きますけれども、お答えの中身というのは、これは日本国法務省独自の考え方でなさったわけで、日米構造協議がきっかけにはなったけれども絶対的な理由でもない、あるいはそのほかいろいろ言われているような理由ではないということ、御確認いただけますか。
○政府委員(濱崎恭生君) 日米構造協議との関係は今整理されたとおりでございます。 そのほかの関係と申しますのは、先ほど申しましたように特定の訴訟について、あるいは特定のこういった立場の人々の訴訟のために特に有利になるようにというような考慮、目的からのものではないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
○紀平悌子君 次いで伺いますけれども、今回の提案理由の御説明の中で「近時の社会経済情勢を反映して、訴え提起の手数料の額を算出する基礎となる訴訟の目的の価額が高額な事件が増加しことございますが、まず「近時の社会経済情勢」というのは具体的にどの事象を指すりでしょうが。あるいは、どのような事象を指すのでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) これは文章の問題でございますけれども、特定の事象を取り出してここに書いてあるというつもりではないわけでございます。むしろ訴額が高額な事件が比率として増加しておる、これは資料としてつけておりますのでごらんいただいているとおりでございます。 このもう一つの原因としては、いわゆる一般的な貨幣価値の変動、物価の上昇に伴って請求額も高額になるということもあるかと思いますけれども、その増加の程度以上に高額な訴訟の比率が増加しておる、とりわけ一億円以上の訴訟ということになりますとその比率はかなり大幅に増加しておるということでございまして、その中には一般の国民がそういった訴訟にかかわる機会がふえているというものも含まれているわけでございます。 そういう高額な訴訟がふえている原因が何であろうかということを考えてみますと、これはやはりいろいろ社会経済情勢、いろんな情勢を反映してそういうことになっているのであろうというふうに推測されるわけでございます。その原因としてどんなものが考えられるかということでございますけれども、これは例えば地価、土地の価格の暴騰ということによって土地等をめぐる紛争の訴額が非常に高くなっているという問題もございましょうし、また社会経済活動が次第に複雑多様化する、あるいはその活動の規模も大型化するというようなこと、これを反映して、一たん何か異常な事態が生じますとそれの及ぼす影響が大きなものとしてあらわれてくる、紛争が生じた場合にはその紛争の規模も相対的に大きくなるというようなことがあろうと思います。 例えば公害でございますとか、そういった生活環境に影響を及ぼすような行為によってその影響が非常に広範囲に及ぶといったようなこともその一つの場面であろうかと思いますし、いわゆるバブルと言われているようなものもその一つの現象であろうかと思われます。そのほか取引一般の規模が大きくなっているというようなこともあろうかと思います。 そういったもろもろの社会経済全般にわたる諸情勢を反映して相対的に高額訴訟がふえているのではないかというふうに考えられますので、そういうふうに記載しているわけでございます。
○紀平悌子君 御丁寧にありがとうございました。やや具体的な感触がつかめました。 それから、手数料というものでございますが、裁判費用のこれは一部というふうに考えていいんじゃないかと思います。裁判の当事者としての国民に裁判の運営費用を手数料という形で負担させるということでございますが、これはどういうふうな基本的な考え方であるべきと思われますでしょうか。法務省のお考えをお聞かせいただきたいんです。 また、訴え提起の手数料の決め方、目的価額に対する割合というのはどのような観点から決められたものなんですか。確かに、一見、訴額が大きくなればそれにスライドして費用も大きくしていいようですけれども、よく考えてみますと、必ずしも裁判費用は訴額に比例をして上昇するというものでもない、そこにはおのずから限界があると思います。また、裁判所や関係弁護士などにおかれても手続としては訴額に比例して手間がふえるわけでもないんじゃないかというふうに思われますので、現行法制ではとにかく訴額の一定割合だけ手数料が要求されるというシステムになっているということは、国民の側からいうと裁判を受ける権利の制約の原因の一つになりはしないかと思われます。法務省はどう考えていらっしゃいますか。
○政府委員(濱崎恭生君) お尋ねの一点は、手数料を利用者に負担させる根拠は何かということと、その負担の割合において請求額が多くなればそれに従って多額の手数料をいただくということの理由という二点だろうと思います。 結論的に申し上げますと、その二点いずれにつきましても基本的には要するに民事訴訟制度の運営経費をだれがどういう割合で負担するかという負担の公平の問題、これが基本であろうと考えております。副次的な目的といたしましては、いわゆる乱訴の防止、要するに負けてもともとというような考え方での訴訟の提起というものは相手方にとっても迷惑でございますので、それはできるだけ避ける必要があるというようなことがあろうかと思います。 まず、前段の方の当事者の負担の問題でございますけれども、再三御説明申し上げておりますように、民事訴訟に係る運営経費、これは裁判官を初め職員の給与、あるいは物件費、施設の維持費、そういったものも含めた運営経費の全部を裁判を利用する方に負担してもらうという構造にはなってございません。そのうちの全体的に見ますればごく一部分を当事者に負担していただくということになっているわけでございますが、これは基本的には裁判を受ける権利という観点からその経費は国費をもって、具体的には国民全体の支出をもって賄うということであるけれども、やはり利用する人としない人、頻繁に利用する人と一度も利用しない人との公平という観点から考えますと、そのある程度の部分は利用する人に負担していただくのが公平ではないかということでございます。 それから、利用する者相互間の公平という観点から考えました場合には、運営費用全体のある程度の部分を利用者で負担するという場合に、その利用者相互間の公平ということを考えますと、その手続によって多くの利益を求められる人と少額の利益を求められる人との関係について考えますと、やはりその求める利益の額に応じてたくさん負担していただくということが公平にかなうのではないかという考え方でございます。 御指摘のとおり、額が二倍になれば手数も二倍になるという性質のものではないであろうかと思います。その具体的な個々の訴訟ごとに要する経費というのはこれは事件ごとに千差万別でございますので、ある程度平準化して考えなければなりませんけれども、一般的に申しますれば、請求の規模が大きくなればそれだけ争点も多くなるし、慎重な手続を要するという面がございますので、全体的に見ればある程度の相関関係はあろうと思いますが、それが比例するというものではないであろうと思いますけれども、負担の公平の観点というのが考え方の中心であろうと思っております。 それからまた請求額の点におきましても、やはりみだりに多額の請求をするということは相手方にとっても迷惑だという考慮が入っているかと思うわけでございます。
○紀平悌子君 次に、午前中、北村委員の御質疑の中に出てまいりました問題ですが、三月四日、昨年の湾岸戦争九十億ドル追加政府支出の問題のときに、新聞その他で取り上げられまして、現在係属中というケース、なかなかその御発言というか御見解というものが一般の国民にはちょっと納得できないような御見解であったということはまさにそのとおりだと思うんです。 それで、先ほどいろいろ社会状況が複雑多岐になってきて、例えば建設事業に関しましても公害問題、環境問題等が惹起されるというふうなお話がございました。こういった官民の大規模ないろんな開発の工事がございますけれども、これに係る住民訴訟または集団訴訟においても手数料額の算定方法が何か裁判所同士でもまちまちで、個々の裁判所の判断次第ということが現実であるということも伺っております。こうした住民訴訟や集団訴訟における訴額の算定方法とか基準の明確化あるいは客観化というのが国民の裁判を受ける権利を保障する上でも今後は必要じゃないかというふうに考えますが、法務省はどうお考えになるでしょうか。申しわけございませんが、ちょっと簡単にお答えいただければ、本質のところだけずばっとお願いいたします。
○政府委員(濱崎恭生君) 現行の制度は、それぞれ訴額は事件ごとに受訴裁判所の裁判長が判断する、それに基づいて手数料の計算がされるということになっております。 訴訟の類型というのはこれは極めて多種多様でございます。したがいまして、その具体的な事件において訴えをもって主張する利益が何ほどかということは、それはやはり個々の裁判所においてその事案に応じて判断されるのが適当であるということで現行の制度ができているわけでございます。そういう構造を基本的には私ども、無理に基、準を設けるということになりますと、かえって硬直化するというようなこともございますので、個々の裁判官の良識ある判断にゆだねるのが適当であるというふうに考えております。 ただ、御指摘のとおり、訴訟の類型によってはあらかじめある程度明確な基準を設けることが妥当であると考えられる場合もないではなかろうかと思われます。この点に関しましては、法制審議会の民事訴訟手続の見直しの審議の中におきます検討事項の一つとしてそういった考え方、問題点も指摘して御意見を伺っているところでございますので、そういった問題点の指摘に対する各方面の御意見、それを踏まえた法制審議会民事訴訟法部会の審議の経過というものを見守りながら考えてまいりたいと思っております。
○紀平悌子君 日常生活でさまざまな法律問題が持ち上がった際に、保険金で法律相談が受けられる法律相談保険を導入するという構想が聞かれておりますけれども、法務省はこれをどう考えていらっしゃいますでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 現在、日本弁護士連合会におきまして法律相談保険あるいは権利保護保険といったものの導入に付けまして御検討をされておるというふうに聞いております。保険会社あるいは損保協会あたりからの具体的な意見聴取も含めて熱心に研究されておる、また単位弁護士会である第二東京弁護士会においても同様の取り組みをしておられると聞いております。 現段階では、まだその構想の詳細というものは私ども伺っておりませんけれども、そういう制度が適正に機能するものとしてできるということは、国民の弁護士へのアクセスあるいは裁判へのアクセスという観点から、一つの望ましい方向ではないかというふうに思っているところでございます。現在弁護士会で検討されておるところでございますが、私どもも関心を持ってまいりたいと思っております。
○紀平悌子君 最後になりますけれども、少し問題が違うんですけれども、若年層の破産事件が大変ふえております。破産法の改正について法制審議会ではどのように受けとめられて現在取り上げられていらっしゃるのでしょうか。
○政府委員(清水湛君) 消費者信用市場の急速な拡大に伴いまして、若年消費者が複数の業者から返済能力をはるかに超えた多額の債務を負担するというような事例が増加しておりまして、そういう方々からの自己破産申し立て事件が裁判所において急増しているということがあるわけでございまして、こういうような問題にどう対処したらよろしいかということで破産法という法律を所管する法務省のサイドからも私ども関心を持って現在対応しているところでございます。 この法制審議会におきましても、平成二年の七月に開催されました民事訴訟法部会におきまして今後の審議事項をどうするかということを議論した際に、この倒産法制の見直しということも今後検討すべき重要課題であるというような点についてこれは異論がなかったわけでございますけれども、それよりさらにより緊急的に、国民にとって利用しやすい、わかりやすい裁判手続を設けるという見地からの民事訴訟手続の見直しか優先するということになりまして、法制審議会におきましては目下民事訴訟法の全面的な見直し作業をしているわけでございまして、破産法の改正に関する具体的な議論、どういうふうに改めたらよろしいかというような具体的な議論をする段階にはまだ現在立ち至ってはいないわけでございます。 ただ、御指摘のように消費者破産の問題を含む倒産法制の見直しについては非常に重要な問題ではないか、何とかこれは考えるべきではないかというような意見が非常に出ているわけでございまして、例えば若者が自己破産をする、簡単に自己破産の申し立てをして、同時に破産免責という手続によりまして従来の借金をすべて棒引きにしてしまうというような制度が利用されているわけでございますが、こういうような制度のあり方の問題をも含めまして、いろいろな御意見が最近各方面において出ているように思われるわけでございます。 そこで、法務省といたしましては、このような各方面の議論を踏まえまして、必要に応じまして法制審議会におきまして具体的な諸問題について審議をしていただき、その意見を求めるというようなことについて適切に対応してまいりたいということに現在なっているわけでございます。
○紀平悌子君 質問通告、ほかにも申し上げておりましたけれども、時間不足と私の不手際のためにし切れませんで、御用意いただきましたことをむだにいたしまして、おわびを申し上げます。 終わります。
○委員長(鶴岡洋君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。 これより討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。 民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(鶴岡洋君) 全会一致を認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ―――――――――――――
○委員長(鶴岡洋君) 刑事補償法の一部を改正する法律案及び少年の保護事件に係る補償に関する法律案を一括して議題といたします。 まず、政府から両案について順次趣旨説明を聴取いたします。田原法務大臣。
○国務大臣(田原隆君) 刑事補償法の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。 刑事補償法による補償金額は、無罪等の裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑の執行等による身体の自由の拘束を受けていた場合については、拘束一日につき千円以上九千四百円以下とされ、また、死刑の執行を受けた場合には、本人の死亡によって生じた財産上の損失額として証明された額に二千五百万円を加算した額の範囲内とされておりますが、最近における経済事情にかんがみ、これらの額を引き上げることが相当と認められますので、右の「九千四百円」を二万二千五百円」に、「二千五百万円」を「三千万円」に引き上げ、補償の改善を図ろうとするものであります。 次に、少年の保護事件に、係る補償に関する法律案について、その提案の趣旨を御説明いたします。 少年が罪を犯した疑いがあること等を理由として刑事訴訟法または少年法の規定によりその身体の自由を拘束された場合等において、刑事手続により無罪となった場合等であれば補償の対象となるのに対し、家庭裁判所における少年の保護事件に関する手続において犯罪その他の非行が認められないことにより不処分等の決定を受けても、これに対して補償を行う制度はありませんでした。 これは、少年の保護事件に関する手続が専ら少年の保護を目的として行われる利益処分であること等によるものでありますが、非行が認められなかった場合に、身体の自由の拘束等が結果的には少年にとって理由のない不利益を与えたこととなることは否定しがたいところでありますので、このような場合に、刑事手続におけると同様、不利益を受けた少年に、対し身体の自由の拘束等による補償を行うこととするため、この法律案を提出することとした次第であります。 この法律案の要点は、以下のとおりであります。 その一は、補償の要件についてでありますが、非行が認められないことにより、審判不開始決定、不処分決定または保護処分取消決定等を受けた少年等が、当該非行に関して身体の自由の拘束または没取を受けた場合に、補償をすることとしております。 その二は、補償をしないことができる場合についてでありますが、補償の要件を満たしても、本人が審判を誤らせる目的で虚偽の自白をしたこと等により身体の自由の拘束等が行われた場合、身体の自由の拘束が他の非行によって基礎づけられる場合、本人が補償を辞退している場合その他補償の必要性を失わせまたは減殺する特別の事情がある場合には、補償の全部または一部をしないことができることとしております。 その三は、補償の内容についてでありますが、身体の自由の拘束による補償については、刑事補償法第四条第一項に定める金額の範囲内で相当と認められる額の補償金を交付することとし、没取による補償については、没取した物を返付し、返付できないときはその物の時価に等しい補償金を交付することとしております。 その四は、補償の機関についてでありますが、審判不開始決定等をした家庭裁判所が補償に関する決定及び補償の払い渡しを行うこととしております。 その五は、特別関係者に対する補償についてでありますが、補償に関する決定を受ける前に本人が死亡した場合においても、本人の配偶者、子、父母等で本人と生計を同じくしていたものまたは少年法第二条第二項に規定する保護者であった者に、本人が生存していたとしたならば受けたものと認められる補償と同一の補償をすることができることとしております。 その他所要の規定の整備を行うこととしております。 以上が、刑事補償法の一部を改正する法律案及び少年の保護事件に係る補償に関する法律案の趣旨であります。 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○委員長(鶴岡洋君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。 両案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。 午後三時五分散会 ―――――・―――――