労働委員会 第2号
- 発言数
- 145 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1992/03/11
会議録
○川崎委員長 これより会議を開きます。 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
○永井委員 今労働界ではいわゆる春闘の真っ最中でございまして、一番最初の山場が三月の二十五日だと言われているのでありますが、これは国全体のいろいろな問題に影響を与える労働界のいわば生活向上を目指す運動でございますから、そういう立場から、きょうは大臣に集中的に質問をしてみたいと思うわけであります。 個々の問題に触れるのではなくて、マクロ的にいろいろな問題を大臣に聞いてみたいと思うのでありますが、まず最初に、宮澤内閣が発足した当時、宮澤総理は生活大国を目指すということを言われました。そのことを受けて労働大臣は、この前の所信表明の中で、生活大国論を提唱されている宮澤内閣の閣僚の一人として、世界有数の高い経済的水準に達した我が国の高い経済力をすべての勤労者と家族の方々に還元し、ゆとりある豊かな暮らしを実現することが生活大国づくりの基盤であり、労働行政の使命である、こういう趣旨のことを言われました。このような基本的な認識に立って労働行政を進めてもらうことは私は極めて有意義なことだと思いますし大切なことだと思います。したがって大賛成でございますが、いかにして実現するかということが問題なんですね。何ぼ言葉の上だけで生活大国論をぶってみても、国民はなかなか納得してくれないと思うのですね。具体的にそのことが自分の生活の中に実感として受けとめることができて初めて評価されるのであります。 この生活大国論争ということについて、せんだって経済企画庁が、経済審議会の新経済五カ年計画策定作業の参考にということで一般から意見募集をしておるのですね。これは御存じでしょう。その募集をした中から、生活大国は本当に実現できるんだろうかということのいろいろな意見が出されているものを、特徴のあるものを新聞が発表いたしました。 新聞を使って恐縮でありますけれども、ちょっと御紹介申し上げますと、こういうことを言っています。言葉だけがひとり歩きをしているのではないか、生活大国という言葉が。あるいは、現在の生活のレベルは、住宅、老人問題、勤務時間などの面で、生活大国を目指せるほどのレベルにも達していない、こういう認識を示している。あるいは、これは私も切実に思うのでありますが、私も小さい家に住んでおりますからそう思うのでありますが、せめて三坪ほどの庭が欲しいとか、息子は長時間労働で女性と交際する暇がなく当分結婚できそうにもないとか、あるいは勤務時間が長過ぎて朝夕家族と顔を合わせることもできないとか、こういうことが報道されております。私は、これは国民、勤労者の実感ではないかなと思うのですが、そのことを一つにまとめて言えば、生活大国とかけ声はあるけれども、それは夢のまた夢だ、こう新聞では報道しているのですね。 このような国民側の受けとめ方について、大臣としてどのような感想をお持ちか、まず冒頭にお聞きしておきたいと思います。
○近藤国務大臣 ただいま先生からも御指摘がごさいましたが、いわゆる国際的にも経済大国と言われている日本でございますが、その豊かさの実感が勤労国民の中にない。したがって、よく言われる経済力にふさわしいようなゆとりと豊かな国民生活を実現したい、これが宮澤内閣の掲げる生活大国でございますが、このためにいろいろなことが必要でございます。 そうした勤労国民の勤労の条件と生活条件を含めて、これも先生御指摘ございましたが、ただいま春闘でいろいろな角度から議論されていることは、私は歓迎すべきであると思いまして、まずは率直に労使の間でこの話を進めて、いい結論を出していただきたいと思うわけでございます。 いろいろなことが大事だけれども、まず総労働時間、これが日本は欧米に比較して、まあ比較の仕方もございますけれども、二百時間、三百時間多いわけでありますので、ずばり言って、この総勤労時間、総労働時間をせめて欧米水準に近づけるということが具体的な生活大国へのステップである、かように私は今考えておるわけでございます。
○永井委員 春闘ということで今、労使間でいろいろな交渉がされているわけでありますが、労使間で物事を決めるに任せるというだけであっては生活大国はできない、実現させることはできないと思うのです。そういう労使間の努力もさることながら、行政の側がそれに対してどのように実際の援助ができるか、法制面においても具体的な行政の執行面においても。私は、そういうことが労働行政にとって極めて大事だ、それが大臣が冒頭に所信表明で言われましたように労働行政の使命だ、ここに結びついていると思うのです。そういう立場を踏まえてこれからも大臣に先頭に立って頑張ってほしいわけであります。 去る二月三日の衆議院予算委員会で、マスコミを随分にぎわせたりあるいは海外からも批判を受けました宮澤発言というものがございます。今アメリカに欠けておりますものはというところから始まって、勤労意欲に欠けているのではないかという趣旨のことを言われた。いろいろ釈明をするのに、文脈の前後を見てくれということであります。その前後を見て、必ずしもアメリカを批判したものではない、こういうふうに言われておりますが、果たしてそうだろうか。宮澤さんの腹のうちに本当にそういう意思がなかったのかどうなのか、これは国際的な問題になりましただけに、私どもは非常に重視をしています。また、櫻内衆議院議長が、アメリカの労働者は怠惰に過ぎるという趣旨のことを言われて、これまた問題になりました。日本の政界のトップが次から次へそういう問題発言をされることは、私は、極めて遺憾なことだ思うのです。 労働大臣は、そういう予算委員会の宮澤総理の発言に対して、翌日の閣議後の記者会見で、米国は怠け者だということはないというように否定されましたね。米国のごく一部にそういう人がいたとしてもそれを取り上げるのはいけないことだ、そういう批判的な見解を述べられまして、いわば日本の労働行政を預かる責任者として、我々の正しい評価はこうなんだということを言われたわけです。私は、これは労働大臣の一つの大きな見識だと思って敬意を表したいと思うのです。これは大臣の見識であります。あるいはアメリカのトヨタの社長も反論しているのでありますが、「だれも米国の労働者が怠け者だなどということはできないし、彼らの労働倫理の高さを示す例にはことかかない」、こう言われているわけです。 私は、そういう言葉の使い方一つが国際的な紛争に火をつけるといいますか、火種になっていくことが非常に怖いと思うのです。 その後大臣が記者会見で発表されました「労働生産性水準の国際比較」というものがありますね。この国際比較で見ますと、確かにアメリカは日本の一・三倍、ドイツは日本の一・二倍、フランスは一・三二倍、こういうふうになっているわけですね。全産業ではアメリカは日本の一・六二倍、ドイツは日本の一・三九倍、フランスは一・四六倍となっているわけですね。これは労働大臣が示されました国際比較表の数字であります。 日本の総理大臣がこのような事実を知って言ったのか、知らずに言ったのか。まるでアメリカの労働者が怠け者であると言っているかのように受け取られるような発言をして外国から批判的に受けとめられるということは、極めて重大なことだと私は思うのでありますが、この際、労働大臣はこの問題についてどのような所感をお持ちであるか、改めてお聞きをしておきたいと思います。
○近藤国務大臣 日米に限らず、日本の労働者と諸外国の労働者の勤労意欲といいますか、また、勤労観とか生産性についていろんな議論が行われて、それが先生御指摘のように国際的な問題にも発展しているということでございます。総理の御発言も、私も予算委員会でその現場で承っておりましたし、また、改めて議事録などを読んでみるわけでありますけれども、決して総理は、アメリカが怠け者で日本がどうだという言い方じゃなしに、日本も最近バブル経済で、コンピューターを勉強した理工科の学生がむしろマネーゲームというかマネービジネスに走っている傾向もあるので、そういったことを踏まえながら、そういうことに対する一つの反省の思いも込めて発言をされたと私は理解するわけでございますけれども、たまたま櫻内先生の発言があった。また、武藤議員が質問されて、そのときにはどうも金曜と月曜の車を買ってはいけないというような、多少これもおもしろおかしく、私などもしょっちゅう聞く話でありますが、そういうおもしろい話がどんどん走っちゃっていますから、そういう中での発言であったこともあって、ミスリードといいますか、いろんな形でそれが問題にされておったことであります。 実は、私は労働行政を扱う責任者として、客観的に、日本の労働者と欧米の労働者の一人当たり生産性がどう違うのか、しかも今度は、労働時間が長いから時間当たりはどうなのか、そして、今、為替レートは貿易に関係する商品を中心としてできたレートでありますので、もっと生活実感に即して、いわゆる購買力という形で評価したらどうかということを事務局に命じまして、至急に計算をして客観的なデータを示せ、こういうことでつくらせて発表させていただいた、こういうことでございます。
○永井委員 この問題になった直後にそういうふうに的確に対応してもらったことは非常によかったと私は思っております。 これは生活大国論が言葉だけ走っておりますので、私はそれにこだわって非常に恐縮でありますが、この宮澤発言の関係で宮崎さん、宮澤総理の政策ブレーン、こう言われているのでありますが、元経企庁事務次官ですね、この宮崎さんが記者会見でこのように言われております。「「宮沢氏ともあろう人が」と語気鋭く言った。そして「額に汗して働け、という労働倫理は古い。宗教改革当時から言い継がれてきたことです。人間を肉体労働の苦痛から少しでも解放するために、機械化、合理化を進めてきたんじゃないですか」」こう宮崎さんが指摘をされたと新聞で報道されております。私は立ち会って聞いたわけじゃございませんけれども、まあ日本の総理の発言ですから、世界じゅうにこのことがすぐに電波で広がっていくわけでありますから、それだけ総理の立場というものは、もっと自分の立場をしっかりと踏まえていろんな対応をしてもらわなければいけないと思うのであります。 また、例の作家の小田実さんがこのように言っております。イタリアの労組幹部から聞いたことだがという前置きで、「イタリアでは、労働者に対する管理強化を「ニッポニザチオーネ」」こう言うそうですね、つまり日本化だと。イタリアでは労働者に対する管理強化をすることを日本流だ、こういうふうに言われるというわけです。それだけ日本の労働者は管理社会の中で締めつけされているということを言っていると思うのでありますが、イタリアの労働者がストを行うときに、「我々は日本人ではない」というプラカード青掲げてストライキをやっているのを見たというのですね。そして、「朝早く「ウサギ小屋」を飛び出し、ろっ骨の折れそうな満員電車で一時間以上も耐え、賃金が払われない「サービス残業」に精を出す。」これはこの前銀行でありましたね。労働省が直接調査いたしました。「こんな東京の平均的サラリーマンの「労働倫理」とは、いったい何なのか。「そんな国の企業とまともに競争したくない」欧米では労組に限らず、多くの人々がそう考えている。」こういうふうに言っているんですね。 これは新聞記事を引用してごめんなさいね、やはり新聞が今マスコミの一番中心でありますからそのことを使うのでありますが、このような欧米諸国の日本の企業に対する、あるいは企業活動に対する、あるいは日本の労働者の働きのあり方に対してのそういう批判といいますか、あるいはそういう危惧を持っているということをもっと直視しておれば、櫻内議長のような発言は出てこなかったであろうし、文脈上はいろいろな問題が前後にあるといってみても宮澤総理の誤解を与えるような発言は出てこなかったのではないか、私はこう思います。 この宮澤発言をとらえて、これまた新聞で特集記事も出ておるわけでありますが、こういうふうに言っていますね。「宮沢発言の内容が不適切にして不正確、そして不遜ではなかったかことある新聞の解説記事で書いているのでありますが、世界一の金持ちの国になったなどと言われているけれども、それは国民生活の実態とはかけ離れ過ぎているではないか。日本が国際経済の撹乱者となることを食いとめて、日本の経済社会のひずみを直すことが国際的にも国内的にも強く求められているときに、宮澤発言というのは、まるで正当な勝利者であるかのように他国を批判しているのは問題だ。だから、文脈の問題ではないんだ。経済大国と言われてきた日本の総理の実際の認識というものは、なぜ国際的に日本が批判をされているかということを本当にしっかりと把握したものになっていない。このように新聞では署名入り記事で批判をしています。 何も新聞記事に迎合するわけじゃありませんけれども、私も同じように思うのですね。だから、その関係について、もう一回くどいようですが労働行政のトップとしての所見を伺っておきたい。
○近藤国務大臣 私も閣僚の一人でございますので、閣僚になる前からもそうでありますが、宮澤総理とは個人的にいろいろお話をしている関係でございます。言わずもがなでございますけれども、宮澤総理は我々の仲間といいますか自民党国会議員の中で最も国際的な理解のおありになる、感覚がおありになる方でございまして、物事を客観的に見ていらっしゃるという点から考えれば、我々の中で最もハイランクだというふうに私はあえて考えておるわけでございます。ですから、あの発言はたまたまいろいろな発言の後引き続いての発言でございましたので、先ほど申しましたようないろんな誤解で受けとめられて、それが国際的に報道された。今、日米関係が大変大事な折からでございますので、私は残念なことであると思います。 私の方の労働省で発表した記事が、国内の新聞だけじゃなしに、ワシントン・ポストやニューヨーク・ヘラルド・トリビューンといったアメリカの有力紙にも掲載されまして、日本政府は客観的な評価をしているということで、ある意味では、そうした日米間の感情的なテンションといいますか緊張関係を緩和した効果もあったのではないかと私は考えているわけであります。 ただ、先生のお話にございました、早く起きて、そして働きまくって、残業して、しかも往復は満員電車で肋骨も折れそうだ、こういうようなことは、これはマスコミの誇張であったにしても、そう言われても仕方がないような面も現実に我が国労働者にございますので、そういう勤労環境、生活環境を直していくことが生活大国のための政策の重要な分野だ、私どもはかように考えて改善に努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
○永井委員 生活大国論にこだわってえらいごめんなさい。私はこれが非常に基本だと思いますから申し上げるのでありますが、それでは、日本の現実はどうなっているか、いわゆる労働分配率問題があります。 この労働分配率問題を見ますと、非常に興味のある論文として、盛田ソニー会長が文春に発表されました「「日本型経営」が危ない」の写しをここに持っておりますが、これを私読ませていただいて、なるほど日本の経営者の中にもここまで頭の切りかえをしてきた人がいるのかと思って、ある意味では非常に敬意を表しているわけであります。ここで盛田氏が言っている内容というのは、この前も同僚の岩田議員からちょっと触れられたようでありますけれども、もう一度私はこの問題について尋ねてみたいと思うわけであります。 この盛田論文、膨大な論文でありますから全部御紹介することはできませんけれども、もちろん大臣は読んでいらっしゃると思いますよ。その中で私の気になったことをちょっと申し上げるのでありますが、「「欧米産業に追いつけ、追い越せ」の大号令の下に、技術開発、製品開発、生産性向上、品質管理といった様々な側面に日本メーカーはあらゆるリソースを投入し、気が付いてみると、自動車・エレクトロニクス・工作機械など様々な分野で、日本製品は驚くほどの競争力を世界的に誇るようになりました。」これは現実に今までのことを言っているわけですね。 「日本の製品の欧米市場における圧倒的な競争力はいまや政治問題化し、その市場へのこれ以上の日本製品の進出を法的・政治的に阻止しようとする動きが欧米各国で勢いを得ている現状です。」こう分析をされているわけです。私はこのとおりだと思うのですね。 また、その論文の中で労働分配率に関連をしてこのように言われています。「政府の産業振興政策の影響もあって、各分野で過当競争といわれるような熾烈な競争が行われるようになったのです。」「企業の業績が好調で、利益が大幅に上がっても、企業はその利益を一層の競争力向上のため、研究・開発や生産設備等への再投資に振り向け、更には、景気その他企業を取り巻く経営環境の悪化に備えて内部留保に回すようになったのです。」 この内部留保の金があのバブル経済のときにどんどん土地の買い占めに使われたことは、もう周知の事実ですね。一生懸命政府の産業振興政策の影響を受けて、行政指導も受けて企業の業績が好調になってきた。その利益の金を労働分配率の方に回すのじゃなくて内部留保に回して、その内部留保に回した金で土地の買い占めやそういうところにさらに進出をしていった。これが土地の高騰を招いて、ますます生活大国じゃなくて生活貧国になってしまった。私はそういうことを具体的な事実として盛田さんがここで触れられていると思うのですね。 そしてまた、さらにこう言われています。これからが大事なのですが、「従業員との関係では、労働時間、給与水準の面で欧米とは随分格差が広がってしまいました。」その労働分配率は、ここで言われているのは一九八〇年から八四年の五年間の平均で見てのことでありますが、日本の七七・八%に対して、アメリカは八〇・三%、旧西ドイツは八八・八%、フランスは八九・二%、こう指摘をされています。これは後で正確な数字をお教えいただきたいと思います。 さらに、企業の地域社会との関係で見ると、手持ちの最近のデータだ、こういうふうに断っていらっしゃいますけれども、企業の社会還元というこの寄附額は、税引き前の利益比で日本が〇・三三%、これに対してアメリカは一・五五%というように大きな開きがある。企業が社会に貢献するという面でも、日本は内部留保の金はどんどん積み上げていくけれども、還元をしていないではないか。「このような経営理念の違いが、ひいては最終製品の価格の格差を生じさせ、欧米企業には到底太刀打ちできない日本企業の価格体系をつくり出している」、こう指摘をされているのです。 これは我々が今まで言ってきたことでありまして、今さらという感じがしないでもありませんけれども、過去のことを振り返ってこれでいいのかということを具体的に指摘をされたというこの論文にはまさに真摯さを私は感じることができると思うのでありますが、これに対して日経運の永野会長がかみついています。 日本の賃金が低いという、いわゆる労働分配率が低いという盛田さんの主張は間違っている。ソニーはそんなに賃金が安いのかというところから始まって、日本の賃金は世界の最高水準にある、こういうように具体的に指摘をされて、財界の中で大論争になったことは御承知のとおりですね。それは、春闘の山場と言われているこの三月末を目前に控えておりますから、財界の労務対策をもって任じている日経連でありますから、あえてそういうことを意識して言われたと思うのであります。 しかし、私は、この論争というものは極めて大事なポイントを我々に示してくれていると思うのですね。だから、この盛田論文というものを経済界の中に一つの大きな流れの変わる方向が出てきたというふうに私は評価をするのでありますが、この盛田論文について大臣などのように所感をお持ちですか。
○近藤国務大臣 盛田論文の前半は、先生おっしゃったように、我が国企業の過当競争といいますかシェア争いといいますか、そのための設備投資競争、これはまさに事実である。ただ、そのことが現在のような大変強力な日本の経済体質といいますか産業構造をつくり上げてきたということも事実でございますから、私は、盛田論文の前半は正しいし、また、それはそれなりに正当に評価すべきだと思っている一人でございます。 問題は、ここから先どうだというわけでありますけれども、まさに先生おっしゃったように、盛田さんも言っているわけですが、いいものをつくって外国に売って、それも喜んで買ってもらっているわけだけれども、それでいいかということであります。先ほどイタリアの労働者のお話も出ましたけれども、決してあの人が言っていることを全部認めるわけではございませんが、やはり欧米的な生活様式に対して日本の企業がいいものをつくって売りまくって、そして欧米の産業に対して大きな脅威を与えているということも事実でございますから、私は、翻って、日本の産業のあり方そして産業労働者の生活の実態についてこの際再考慮する時期に来ていると思うわけであります。 そこで、分配率の問題を先生お話してございましたが、細かい数字はまた事務局から説明をさせてもいいわけでありますけれども、日本の高い成長率というのは日本の高い設備投資率によってもたらされたわけでありまして、日本の高い設備投資というのは日本の高い貯蓄率がその背景にあった。そして、そうした企業投資を可能にした高い貯蓄率の一つの大きな要素に先生御指摘の企業の内部留保があって、企業が内部留保をしてそれで自己投資をしていく、それがまさに日本の経済成長を支えてきたという面も私は無視できないと思うわけであります。 ただ、これからの日本の産業構造のあり方を考えた場合に、この際、勤労者に所得を還元しないで会社が内部留保して、そして自己投資をしていくという形がいいのか、これは経営者も含めて一たん個人所得として還元して、そしてそれを今度は改めて貯金なり株式市場を通じて、企業が一たん個人に返したお金を金融資本市場を通じて調達をして投資をする、こういうことにするのか、このあたりが議論の分かれるところでございます。 ただ、どんな世の中になってもある程度の投資、設備投資や社会資本の投資がないと、ただ働いて消費してそれで終わってしまう、こういう社会になりますから、ですから、一たん還元して戻すのか、それとも企業が内部留保の形でやっていくのかということについては議論が分かれますけれども、私はやはりある程度の堅実な民間投資、社会資本の投資が行われるような体制が望ましいと思っておるわけであります。 盛田・永野論争につきましては、これはお二人のいろいろな御意見の違いがあるわけです。ただ基本的には、盛田さんがむしろ趨勢的な日本の経営のあり方、また所得分配のあり方を考えていらっしゃる反面、永野さんは、先生おっしゃったように、当面春闘を控えてのいわば日本の経済界の労働の責任者としての立場からの御発言であって、私もお二人と個人的な話をする機会が多いわけでございますけれども、そう違ったことをおっしゃっているようには私は考えておりません。ただ、マスコミには多少その差が大きく取り上げられている面があると思いますが、多少長期の見通しと当面という形で私はその違いを理解しておる、こういうことでございます。
○永井委員 経済界の中で労働分配率の問題をめぐって、あるいは企業の理念について、これだけ論争が巻き起こったことは珍しいんですよ。私は、これはある意味ではいいことだと思っています。しかし、ここで盛田さんが言っておりますように内部留保、今、社会資本投資と言われましたけれども、それを私たちはとめろとかなくせとか言っているわけではないのです。これは大事なことです。しかし、労働分配率を意識に置かずに、内部留保により目が向き過ぎた、このことを自己批判されておるわけですね。 欧米の労働に対する倫理観と日本の倫理観が、経営者では全く違うんだ、労働者の受けとめ方も違うんだ、これが国際的な摩擦の主たる原因ではないか、こういうふうに指摘されていると私は思うのですね。単に物が安い、物が豊富でどんどん集中豪雨的にという言葉を使われたことがありましたけれども、集中豪雨的に物が欧米諸国の市場に入り込んでくる、そのことだけでここまで国際的に批判を受けているわけじゃないと私は思うのですね。盛田さん言われておりますように、内部留保を否定はしない、企業の体質を強化することには大きく役立ってきた、しかし利益を従業員や株主または地域社会などに還元していくという側面が陰に隠れてしまっていた、日本の経営陣はこれにもっと目を向けるべきではないかということを言われていると思うのですね。 これに対して、永野さんがいろいろ反論されたわけです。ちょっと言いますと、「日本の労働分配率は低いが、それによって、今日の繁栄を築き得た。」大事なことですね。「日本の労働分配率は低いが、それによって、今日の繁栄を築き得た」ということは、経済大国だと言っている日本は、働く側の不当な賃金の抑制といいますか、生活貧国と言われるような、まさに経済大国にふさわしくないような生活水準を強要されてきたことが、結果的に経済大国を築き上げたというのと同義語なんですよ、この言葉は。同じ言葉なんです。そう思いませんか。「日本の労働分配率は低いが、それによって、今日の繁栄を築き得た」ということになると、働く者、労働者の犠牲の上に経済大国をつくり上げてきたということになるじゃないですか。「適正な労働分配率は国や企業の経済・経営の目標を長期的に、いかに設定するかで決まってくるので、単純に高低を論じても、意味がない。高めれば、遅れている社会資本の整備、高齢化社会への対応、世界への貢献などを実現する余力を失わせてしまうのではないか」こう言っています。これは労働分配率を抑えてきた言いわけなんです。いわば低賃金構造の中で、しかも長時間労働をやって、労働省が既に経験したように、大手銀行でもサービス残業が当たり前になっているという実態の中で、今の経済大国ができているんじゃないですか。 だから、この論争は、単に経済界の中の論争として受けとめるわけにいかない。労働行政を預かる側は、この労働分配率のあり方についてももっと積極的に提起をしていくべきだ、こう思うのです。 そのことは後で聞きますが、そこで、とりあえず日本、アメリカ、ドイツの労働分配率は正確にどうなっているか、ちょっと事務局からお答えいただけますか。
○椎谷説明員 労働分配率のとり方といいますのは実はいろいろございますけれども、私どもが通常使っておりますもので申し上げますと、国民所得に占めます雇用者所得の割合という形で見ておりますが、これは全部一九八九年ベースで申し上げますと、日本の場合は六八・四%でございまして、アメリカが七四・五%、イギリス七四・五%ですから、その両国よりは低いわけでございます。ただ、ドイツが六七・二%、フランスが六九・三%ということでございますので、ドイツ、フランス並みということが言えるかと思います。
○永井委員 数字のとり方はその根拠をどこに求めるかで少し違ってきますけれども、日本が欧米諸国と比べて分配率が低いことは事実なんですね。これは大臣、認めますね。 そこで、国民生活が向上していかないこの現実を踏まえて、じゃ労働行政はどうあるべきかということがこれから問われていくと私は思うのですね。 労働省の海外労働白書というのがありますね。ここに私もその資料の写しを持っているわけでありますが、「一人当たり労働費用の推移」というのがあります。これで見ますと、アメリカの労働省の資料のようでありますが、アメリカを一〇〇とすれば、一九八九年の実績で言いますと、当時の西ドイツは一二三、日本は八八、こうなっていますね。イギリスの七三というものは日本よりも低いのでありますが、イタリアの九二、フランスの八九を今言われたように下回っているわけですね。こういう状況の中で欧米諸国に日本の製品がどんどん入っていくわけでありますから、日本は失業を輸出してくるんじゃないかとか、あるいは日本はアンフェアだと言われても仕方がないと私は思うのですね。その意味でも、日本の場合、労働分配率の向上に私はもっと積極的に努めなくてはいけないと思いますね。 今も盛田論文を参考にさしていただいたわけでありますが、盛田論文でもこのように指摘をされています。大事なことだと思うのですね。もう先刻御承知だと思うのですが、あえて私はもう一回触れますけれども、これからそういう国際的な対立といいますかそういうものを解消していって、世界の中の日本になるためにという前提がついているのでありますが、「我々企業人は、まず最初のステップとして、次のようなことを考えていくべきではないでしょうか。」ということで提起をされております。 その一つは、生活に豊かさとゆとりが得られるように、十分な休暇をとり、労働時間を短縮できるように配慮すること。経営者の立場でですよ。旧西ドイツあるいはフランス並みへの速やかな移行は現実的でないかもしれないけれども、少なくともとりあえずはアメリカのレベルを目標としてやってみたらどうか。これは経営者の言い分です。我々は千八百時間と言っていますが、こう言っています。そして、現在の給与は、企業の運営を担うすべての人たちが真の豊かさを実感できるレベルにあるのか。貢献している人々がその働きに応じて十分に報われるシステムになっているか。これは経団連の副会長です。そういう重職にある人がそのように問いかけているわけです。問題の提起をしているわけです。あるいは、株主に対しても、日本の株主への配当は低過ぎる。内部留保もいいけれども、欧米並みの配当性向を確保できないか、こういうことも提起されています。四つ目に、資材・部品の購入価格、納期の面で取引先に不満を持たせているようなことはないか。 私はこれは大事なことだと思う。過去にこの種のことを私はこの委員会で何回も議論してきました。いわゆる重層多重型というのですか、大きな企業に対して系列会社が幾つもある。例のかんばん方式がそこから出てきたのですね。私は、何回もかんばん方式についてこの委員会で提起したことがありました。幾ら労使間で休日を決めておっても、三十六条協定で制限をしておっても、大企業の都合によって直前に急遽そういう勤務形態を変えなければいけないという実態が七〇%近くもあるという数字だってあるのです。私は、きょうはその数字を持ってきてはおりませんけれども、そういうことを提起をしたことがございました。そのことを言われているんですね、具体的に。いわゆる内部企業に対して大変な無理を言ってきたのではないか。 盛田論文ではこう言っております。「企業の活動を支えてくれる協力会社に対しても、自社の競争力向上を重視するあまり、時には無理を言ってきたきらいがあります。」時にはじゃないのですよ。無理の言いっぱなしなんです。盛田さんは経団連の副会長という立場にありますから、この程度で表現をおさめられておりますけれども、こんなものはもう日常茶飯事なんですよ。無理の言いほうだい。その結果、これらの企業にかかわる関係者の利益と経営方針との関係が欧米とは大きくかけ離れてしまったということも自己批判をされている。私は、これは非常に大事なことであって、何としてでもこの労働分配率を高めること、後で触れますが、時間短縮などを含めて労働環境をよくしていくこと、これが今労働省に問われている最大の課題ではないかと思うのです。 議論を吹っかけて恐縮でありますが、ここは議論の場でありますから、この関係について大臣からひとつお答えいただきたい。
○近藤国務大臣 先生の御指摘がいろいろな企業の合理化努力、かんばん方式というお話もございましたけれども、私は、最近までの日本の経済の発展また経営の合理化、生産性の向上、コストのダウン、削減ですね、これはまさに、ある意味では涙ぐましいぐらいの努力を生産工程の各面にわたって企業が努力してこられた、それが現在のような世界と比較しても効率的な日本の会社経営また生産システムをつくり上げたことは、これは否めない事実でございまして、やはりそのことを私たちは非常に評価して、むしろ諸外国もそうした日本の合理的な生産システムを学びたい、かつて私はアメリカの経営学を学んでおったけれども、今は逆に、日本の経営手法を欧米の学者や実務家が学びたい、こういうことに変わってきたと思うわけであります。 そういう中でややもすれば長時間労働というようなことがあったし、また、特に最近かんばん方式が象徴といわれますような、もう最低の在庫で、そしてこっちの元請の要求どおりに部品を提供してくれ、こういう在庫管理の合理化が逆にそのしわを下請の方に寄せて、下請で土曜日曜なしに働かなければならなかったような状況が現実にあったことも私たちは認めざるを得ない。 ですから、過去は過去、これまではこれまでだし、これからの日本の産業構造や経営のあり方を考えた場合に、それをもう一回考え直して、そして労働時間を適正にし無理な要求を下請におろさぬような新しい生産システムを考えることが大事である。 これは私もいろいろな機会に申し上げておりますが、実はこれまでは日本の労働者の条件というのは産業発展や経営の言ってみれば従属変数であって、こっちが先に決まって後で労働条件が決まるような面があったけれども、これからは、むしろ、人間というのは週休二日制で週四十時間だ、そういうような労働条件を一つのいわば基本的な労働単位として、その組み立ての上に経営のあり方、生産のあり方、そして産業のあり方を考えていくという、私は、実はこれらの労働条件を独立変数にして、こっちを先に決めて、その上で産業や経営のあり方を考える、こういうふうに発想の転換が必要ではないかということを労働大臣になって以来申し上げているわけでございます。 そういう形で過去のいろいろなことのいわば功績を認めた上で、合理化の努力は努力として、しかし、基礎的な労働条件というのはこれからは表に出しながら新しい経営や産業のあり方を考える時代に今日本は入りつつあって、そのことが国際的にも理解をされる日本の経営や産業をつくっていくことになるのではないか、かように考えておる次第でございます。
○永井委員 この問題ばかりやっておるわけにいきませんのでこれ以上言いませんけれども、最前申し上げましたように、財界の中で、春闘でいえば労務管理的な立場を持っている日経連の会長の発言が、繰り返し申して恐縮でありますけれども、労働分配率が低いからきょうの繁栄があったのだ、こういう趣旨の発言をされている。これは長時間労働を前提にし、低賃金を前提にしているわけでありますから、これでは日本の労働者が生活大国にふさわしいような生活を受けることができない、これはもう自明の理なんですね。私は、大臣がかつて経済企画庁長官をされておったから、なおさらこのことについて執拗にお尋ねをしておるのです。経済企画庁長官の経歴を持っていらっしゃるわけでありますから、そういう人が労働大臣になってもらっているわけでありますから、労働大臣として分配率を高めるためのいろいろな行政面からのアプローチがあっていいのではないか。 また、この盛田論文に対しましては経済界の中でも随分と賛成者が出てきています。新聞の報道によりますと、松下電器の社長であるとか日立製作所の副社長であるとか、あるいはキヤノンの会長あるいはオムロンの社長、これらの人は盛田論文に賛成の意思表示をされているわけであります。随分財界の中も今変わってきつつあると私は思うのです。このチャンスに、私は、この労働分配率を高めて、そして長時間労働もなくして、欧米並みに自分たちの暮らしを謳歌できるようにしてもらいたい。いわゆる消費者物価の水準を見たってアメリカとは随分差があるわけですから、為替レートとは別に実感としては違うわけでありますから、このことを、とりわけ大臣のこれからの手腕に期待をしたいと思いますので、労働省を挙げて取り組んでいただきたいと私は思います。 次に、今春闘で一番大きな問題となっておりますいわゆる時短の問題、時間短縮の問題について取り上げてみたいと思うわけであります。 時間短縮を促進するための法律案も提出されるようでありますから、そのときにもまた質問をしていきたいと思うのでありますが、ここに松下電器の機関紙の号外を持ってまいりました。ちょっと大きくしたのです。「一八〇〇時間に向け「最終答申」成る」。今の労働界では画期的なことなんですね。松下電器だけではなくて三洋電機もあるいはパイオニアも同じように千八百時間へのプロセスを労使間で協定いたしました。労使間で努力をしてこういう成果をとっていくのでありますから、私はすばらしいと思うのであります。 しかし、国を挙げて時間短縮に取り組む姿勢がまだまだちょっと見えにくいと私は思うのです。一九九二年度じゅうに年間総実労働時間を千八百時間程度に短縮するという現在の政府の経済五カ年計画、この目標達成がほとんど絶望的だというふうに労働省から言われたという新聞報道もありました。私は絶望してもらっては困ると思うのですよ、政府がそういう目標を掲げて経済政策を立ててきたのですから。しかし、片方でそういうニュースも流れる。そんな中でありますだけに、労使間の努力でここまで来たということを、時間短縮の積極的な促進に向けて一つの大きな光明だと私は思っています。 そこでお尋ねするのでありますが、我が国の労働時間の現状について、ごく簡潔に企業規模別及び業種別にちょっと数字を明らかにしてくれますか。
○佐藤(勝)政府委員 労働時間の規模別、業種別のお尋ねでございますけれども、昭和六十三年四月から改正基準法が実施をされまして、それ以来着実に年間三十数時間というテンポで減ってきておりますが、これを規模別に見ますと、五百人以上の事業場で、平成三年、暦年でございますけれども、二千二十七時間。それから百人から四百九十九人、つまり五百人未満のところで二千十四時間、三十人から百人未満のところで二千十二時間というふうになっております。 ただ、これで見ますと、規模別に差が少ない。むしろ小さいところの方が若干低目でございますが、中身を見ますと、規模の小さいところでは、週休二日制の普及がおくれておるというようなことで所定時間は長い。それに対しまして大きなところでは、所定時間は短いけれども、残業、休日労働といったようなところが長いわけで、結局合わせてほぼ同じレベル、こういうような状況でございます。 それから業種別でございますけれども、これまた大変差が大きいわけでございまして、建設業、運輸・通信業といった年間二千百六十時間程度に達しているところもあれば、一方におきまして不動産業あるいは電気・ガス・水道業、あるいは卸売・小売業といったところのように千八百時間台あるいは千九百時間台に到達しているところもございます。 いずれにしましても、業種別、規模別にいろいろな差が見られるところでございます。
○永井委員 概略の話でありますから細かいことまではなかなかここで把握することはできませんけれども、例えば私の持っている資料、これも労働省の統計資料の一部でありますが、例えば製造業でいいますと総実労働時間は二千八十時間、こう出ています、これは全部を平均しての話ですけれども。そしてその中身は、所定内は千八百五十九時間、所定外が二百二十一時間、こうなっています。これは製造業のことを言っているんだが、大体似たり寄ったりの数字がそれぞれの企業ごとに出てくるのですが、この総実労働時間の中身を精査すれば、いわゆる統計資料に出てこない働く時間というのは随分あるのではないか、私はこう思うのですね。 例えば自動車教習所というのがありますね、運転免許を取るところ。ちょっとここに資料を持ってくるのを忘れたのでありますが、あそこでは一時間の時限を五十分間教習すれば、十分間次の時間まで時間があきます。この時間は、その一時間の記録を書いたり、あるいは次への準備をしたりする時間なんですが、この十分間が、ほとんどの自動車教習所で例をとりますと、これは仕事をしたことになっていない、休憩時間として扱われているという実態がわかってまいりました。だから、一日十時間教えるとすると一時間分浮いてくるから一時間分余分に働け、これは形を変えたサービス労働なんですね。銀行で浮き彫りになりましたけれども、そんなことはどこへ行ってもついて回っていると思うのです。だから、本当の実労働時間というのはもっと長いのですよ。このことを前提にして時間短縮の問題を労働省は扱っていくべきだと私は思うのですね。 この前の労働基準法の改正のときに、これは八八年四月に改正したのでありますが、三年後、つまり九一年度中、ことしの三月末に見直しか行われることになっていたはずであります。これは、労働基準法の改正法の附則第七条でそのことが明確になっていますが、この見直し検討作業は一体どのような状況になっておりますか。
○佐藤(勝)政府委員 今お話しのように、基準法の改正附則の七条で見直しのことが書かれているわけですが、これに基づきまして、昨年の四月に中央労働基準審議会に基準法の労働時間法制全般にわたっての見直しをお願いいたしておりまして、中央労働基準審議会では、専門の労働時間部会を設けまして、三者構成で、現在、広範な問題点の整理とその方向についての議論をしていただいているところでございます。
○永井委員 そうすると、その見直し作業が具体的にどのように結論が出るのかということはまだ定かでないわけですね、どうですか。
○佐藤(勝)政府委員 具体的にどういう議論が行われてどういう方向に行きつつあるかということにつきましては、現在御報告する段階ではございません。
○永井委員 この労働基準法の改正に向けてのこともあるのでありましょうが、今申し上げたように時間短縮を促進する法律案を準備されている、この時間短縮を促進するという法律と今の中基審の作業の関係はどうなっているのですか。
○佐藤(勝)政府委員 労働基準法の見直し作業と、まだ提出されておりませんが、ただいま準備中の法案とは直接の関係はございませんが、ただいま準備中の仮称促進法は、将来の基準法の改正も含めまして労働時間短縮をするための労使の努力を促進をするということで、時間短縮がその基準法改正等が行われた場合にそこに到達することが容易になるような方策の一つとして私どもは考えているところでございます。
○永井委員 ここのところがどういう関係を持つのかよくわからぬのだけれども、今度の促進法と中基審の検討を受けて労基法を改正することとの関係がよくわからぬわけでありますが、これも新聞報道などで読みますと、時間短縮を促進する法律案を作成する過程において、行政の介入を極めて嫌う経営側の立場に配慮して、当初の労働省の構想よりもかなり後退したというふうな解説記事が出ていたことを私は記憶に持っているのですが、そんなことあったんですか。
○佐藤(勝)政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどの御質問に対してちょっと補足をさせていただきますが、言ってみれば、労働基準法は労働時間の最低基準そのものを決めております。例えば原則週四十時間というふうに決めておりますが、現在準備中の法案は、基準そのものを決めるというのではなくて、労使がそういった基準あるいはそれ以上のところに向けて短縮をするための努力の促進をする、これから提出される法案でございますので、詳細な中身は申し上げるのはいかがかと思いますが、そんな考え方でございます。 それから、ただいまの御質問でございますけれども、実は現在準備中の法案、この準備をいたしますに先立ちまして、昨年の十月に中央労働基準審議会に当面とるべき労働時間短縮のための方策はどうしたらいいのかということで検討をお願いしております。この検討は、法律によってやるもの、しからざるもの、全体を含めましてどういう方策をとったらいいかということで、熱心に公労使三者の御議論をいただきました。その結果出てまいりましたのが、一月三十日にいただきました建議でございました。この建議は公労使三者全会一致で、その過程にはいろいろな議論があったことはもちろんでございますが、最終的には三者一致の建議ということでいただきまして、労働省としてはその建議の内容を忠実に法案化をいたしまして、その法案要綱を三月の四日にその法案要綱として同じく中央労働基準審議会に諮問をしている段階でございまして、恐らくきょうじゅうにでも答申がいただけるものと期待をいたしておりますが、そういうものでございまして、私どもはあくまでもこの一月三十日にいただきました建議が出発点となって法案を準備させていただいている、こういう考えに立っておるところでございます。
○永井委員 この時間短縮の問題は、改めての機会にもっと詳しくお聞きしたいと思いますが、ひとつ労使の交渉に任せるという、協定は直接は労使が決めていくのですが、労働基準法を最低のものとして決めていくのですが、より強烈なインパクトを与えるようなことを私は労働省に期待をしておきたいのです。今これだけ労働時間が世界的に問題になっているわけですからね、国際的に。それを排除するために労働省がどこまでインパクトを与えることができるのか、私は、これを日常の労働省の行政指導のあり方として強く要望しておきたいと思います。 もう一つは、長時間労働になっている中に休暇の問題があります。 私は、ここに労働組合のユニオン連合が出しました白書を持っているわけでありますが、この中でいいますと、企業規模三十人以上の全産業の統計をとりますと、平均の付与日数が十五・五日、取得日数は八・二日、これはずっと十年間ほとんど横ばいなんですね。付与日数も横ばいなら取得日数も横ばいなんです。いわば半分しかとっていないということです、休暇を。率の数字でいいますと、五二・九%しか消化されていない。これはどこに原因があるんだろう。単にとらないのが悪いというだけでは済まぬと思うのです。もちろん全部の産業じゃありませんけれども、労使紛争が起きておるところなどでは、経営側が休暇をとることを認めないというところもあります。例えば、具体的な例を挙げますけれども、岡山電気軌道、この間私たちも調査に行ってまいりました。そこでは、幾ら休暇をくれと言ってもくれない。法事だと言っても、くれない。だから休んだら賃金カット、処分、こうなってくるわけですね。そういうところは異常な例でしょう。そんなところがすべてではない。それは異常な例でありましょう。そういうところを除いても、全体的に休暇取得率が五二・九%で、極めて低過ぎる。もっとゆとりを持とうではないかという労働側の立場からいいますと、休暇がとりやすいようにしなければいけない。 その休暇のとりにくい一つの原因の中に、日本独特の、これは社会的なあり方がそうなっていくのでありましょうけれども、病気をしたときに休暇がなかったら困る。そのときのために休暇をためて置いておこう。あるいは、家族に病人が出たときには介護しなければいかぬ、そのために休まなければいかぬ。そういうこと、あるいは子育ての最中なら、学校の参観にも休暇を使わなければいかぬ、そのために休暇を置いておく。ところが、たまたま自分が病気をしなかった。しなかったら、労使問で、その休暇は買い上げてもらえるという制度もある。だから、それは別に損することではないのではないかというようなことから、結果的に、休暇の消化というものがおくれてきたと私は思うのです。 これは、言いかえれば、思い切って病気休暇を認めるとか、一時介護休暇や授業参観の休暇など、一つの例でありますが、こういうものを法制化して別途に保障すれば、もっと安心して年次有給休暇を使うことができる。労働界が言っているように、いろいろな目的に使うことができる。これが社会全体の、どういいますか、簡単に平たく言えば、住みよい町づくりといいますかね、そういうことにつながっていくのではないかと思いますが、そういうものについて制度化をする必要があると思うかどうか。今すぐにできるかどうかではなくて、あると思うかどうか。欧米では随分こういうものが政治的に制度化されておりますね。そういうことが、必要があると思うかどうか、お答えいただけますか。
○佐藤(勝)政府委員 病気休暇等の制度がないことが有給休暇の消化率を悪くしているのではないかというような観点からの御質問でございますけれども、そういうことがありがちではないかというようなことも考えられますけれども、一方におきまして、病気休暇制度につきましては、病気休暇制度があるかないかで年次有給休暇の取得率がどういうふうに違うかというようなことを労働省も調査をしたことがございます。そういう調査から見ます限り、現状におきましては、そういった休暇制度があるかないかということと取得の状況とは余り関係がないような結果も出ているわけでございます。 いずれにしましても、不時の必要のためにとっておくとか、あるいは職場の環境が休みづらいというようなことで、あるいは休みが終わってから来たらむしろ忙しくなるというような、言ってみれば、相当日本的と思われるような理由で取得をしないということも調査の結果明らかになっていることは事実でございます。そういうようなことから言いますと、まず労使の意識を変えていくということは、この問題については極めて大事な問題であろうかと思います。 そういうことで、従来から、連続休暇取得促進要綱というようなものをつくって、普及に努めております。最近では、そういう要綱の内容に即したような制度を企業としていろいろつくって、休みがとりやすくなるようなことをしておられる事例も大変ふえてきておりますので、私どもは、こういった努力をさらにやっていきたいと思っております。 年休の買い上げの問題、これは年次有給休暇の趣旨に反する扱い方でございますので、こういうことは決して好ましくないわけですし、特に基準法の範囲内での年休の買い上げということは許されないことでございますし、それ以上のものについても好ましいものではないというふうに認識をいたしております。
○永井委員 いずれにしたって、休暇がとりやすいようにすること、あるいは労働者の方も、思い切ってそれを全部使い切るという、お互いそういうところにスタンスを置きませんと、なかなか年次有給休暇の消化はできないと思うのです。 さらに、かつては労働基準法施行規則第二十五条において「使用者は、法第三十九條の規定による年次有給休暇について、継続一年間の期間満了後、直ちに労働者が請求すべき時季を聴かなければならない。」云々の規定がございました。これをこの前削除したわけですね。削除したのでありますが、やはり私は、この際法改正をやって、使用者は毎年一定時季に一斉に年次有給休暇を請求する時季を義務づけるぐらいなことをやるべきではないか、こう思いますので、これはひとつ一遍検討してもらいたいと思うのです。 時間がありませんから、最後になりましたけれども、この前、所定外労働の削減問題について労働省が一定の要綱を策定いたしましたね。そして各都道府県知事に通達しているわけでありますが、この中身を簡単に言いますと、所定外労働時間を毎年一〇%ずつ削減することを掲げているわけですね。そして、それを中心に経済計画を策定していくのでありましょうが、目安時間自体が一週間で十五時間、一年間で四百五十時間などと告示の中で指摘をしております。言いかえれば、所定外労働時間を一年間で四百五十時間までやれという奨励にもなりかねない。だから、私は、この適正化指針そのものに問題があると指摘せざるを得ないと思うのでありますが、この適正化指針をもう一回、時間短縮をより積極的に進める立場で見直しかできないものか、私はこう提起をしておきたいと思うのです。 そして、そのことも含めて、ゆとりある豊かな勤労者生活を実現する上で、労働行政に期待されるものは極めて大きいわけでありますから、スローガンだけではだめであって、具体的かつ着実に実現をしていくような方法をひとつとってもらいたい。これは、冒頭に申し上げました生活大国論を夢のまた夢にさせないための決意として、要望は要望として、最後に大臣にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○佐藤(勝)政府委員 それでは、私の方から所定外時間の上限の目安の告示の問題だけ申し上げますが、目安の性質は、先生御承知のとおりでございますけれども、これにつきましては、この三月四日に、これも中央労働基準審議会にお願いをしまして、現在の上限の目安を見直していただくという作業を始めていただくようにいたしておるところでございます。
○近藤国務大臣 先生からいろいろ御指摘がございましたが、労働時間の短縮という問題は、これはかねてから言われておったことでありますけれども、今日ほどまさに社会の大きな要請になったことはない。宮澤内閣は、生活大国を目指して、総理の所信表明からこの問題について触れているわけでございますし、また、現在春闘においても労働時間短縮については労使ともこれはもう一致している、こういうことでございます。したがいまして、告示の問題、いろいろな問題がございますが、それはそれとして、やはり社会的な考え方の基本において労働時間をどうしても短縮しなければならない状況になっておりますので、我々も、時短促進法等法的な準備をいたしますし、また、折に触れて、労働省の私たちも積極的に関係者にいわば説得に当たっている、指導に当たっているという状況でございますので、私は、片方で、労働力不足という状況もあって、むしろそのことが労働時間短縮を推進している社会的な、経済的な要因でもある、かように考えておりますので、一層努力してまいりたいと思います。
○永井委員 終わります。
○川崎委員長 岩田順介君。
○岩田委員 春闘問題について若干お伺いをしたい、こういう予定をしておりましたが、昨日、労働省は身体障害者の雇用問題について発表をされておりますので、何点かごの点についてまずお伺いをしたいと思います。 障害者の雇用の促進等に関する法律が三十五年にできまして、以来、この問題について努力をされてまいったのでありますが、なかなか進展をしないという状況です。六十三名以上の企業に障害者の雇用を義務づけた法律でありますが、現状は、たしか一・六に対して一・三ちょっとくらいではないか、そういうふうになっています。年々改善はされておりますけれども、しかしなかなか到達しない、こういう現状であります。 そこで、国連障害者年、ことしか最後の年でありますが、労働省がこれに向けて精いっぱい努力をされてきたことは評価をするわけであります。特別対策もいろいろやられております。その結果、百十三社に対して特別指導をなされてきたわけでありますが、具体的にこの百十三社の取り組み状況及び公表された企業名をお伺いしたいと思います。
○若林政府委員 ただいま先生御指摘の公表を前提といたしました指導を百十三社について行ってまいりまして、企業のトップみずからが先頭に立って障害者雇用に取り組むという対応がなされてまいっておりまして、多くの企業におきまして障害者の雇用に積極的な取り組みがなされたというふうに私ども理解をいたしておるところでございます。 この結果、おおむね全体の三分の一に当たります企業が法定雇用率を達成いたしまして、この三分の一と合わせまして全国平均実雇用率以上の企業、ただいま先生おっしゃいました一・三二が平均でございますけれども、全国平均実雇用率以上の企業が半数近くになっておりまして、百十三社の平均の実雇用率は、指導を開始いたしました平成三年六月一日現在では〇・六一%でございましたが、平成三年十二月一日現在で一・二九%と大きく改善したと考えております。 しかしながら、取り組みが不十分でございまして一定の改善が見られませんでした企業につきましては、昨日、その旨を公表いたしたところでございまして、その企業は四社でございます。石岡信用金庫、株式会社サトウダイヤモンドチェーン、ワーナー・ランバート株式会社、株式会社アルペン、この四社でございます。
○岩田委員 百十三社のうち四社が公表をされたわけであります。 先ほども局長がおっしゃいましたが、「平成三年六月一日現在の一般の民間企業における産業別障害者の雇用状況」というのを手元にいただいておりますけれども、非常にばらつきがありますね。これで見ますと未達成割合、これなども七〇%以上というところも産業によってはあるわけでありますが、こういったところについてどう指導されたのか。また、四社が公表された、これは、百十三社の指導の状況は今お伺いをいたしましたけれども、おっしゃいますように確かに〇・六一から一・二九にまでふえたことは評価をいたしますが、実感といたしまして、公表された会社が非常に少ない、しかも、どういう効果をねらって四社だけをされたのかということも理解しがたいわけであります。もう少し全産業をにらんで、督励する意味もあったわけでしょうから。その辺はいかがか。つまり、四社だけというのは一体どういうことなのか、お伺いしたいと思います。
○若林政府委員 まず、規模別とか産業別とか申します場合に、未達成企業の割合は確かにばらつきがあるわけでございまして、産業別で申しますと、金融・保険・不動産業でございますとかあるいは卸売・小売業といったところの実雇用率の未達成割合が高いという現状にございます。 しかし、今回のこの百十三社の選定に当たりましては、そういったような産業別に重点的にということはございませんで、あくまでも、これまで累次にわたりまして指導をいたしましたけれども改善が見られなかったものについて私ども対象にしたわけでございます。 そして、今回四社ということでございますけれども、先ほど申しましたように、多くの企業が法の趣旨を十分理解していただきまして、トップが先頭に立ってこの対策に当たっていただいたわけでございまして、私どもはあらかじめ、全国平均雇用率を達成するあるいは一定の雇用率、〇・八%に線を引いておりますけれども、〇・八%を達成してもらって、しかもいろいろな雇用改善のための取り組みがなされた場合につきましては公表対象から外していくという一つの基準をつけてやってまいりましたけれども、この四社を除きまして残りの企業はこれをクリアしたということでございます。 こういった面では、結果四社でございますけれども、企業名の公表制度というものは、あくまでも公表を前提にして改善を図っていくということでございまして、そういった面から申しますと、各企業の自主的な取り組みが促されまして、この制度の趣旨が果たされ、また、この制度が機能したというふうに私ども考えているところでございます。
○岩田委員 これまでの障害者雇用の状況につきましては、大企業よりも中小企業が雇用するいわゆる努力が雇用率の達成に非常に貢献をしてきた、下支えになってきたということが一般的に言われておりまして、一体大企業はどうするんだ、企業責任はもっと重たいのではないかという指摘があったことも事実なんですね。 それで、国連障害者の十年の最終年度、ことしを基準にしていろいろな運動も起こりまして、いろいろな要求もあって労働省も努力をされてきたのでありますが、ただ、その点でいいますと、今局長おっしゃいましたように、四社公表されたうちの一社が千人を超える企業で、あとは千人以下になっているわけですね。御説明もわかりますけれども、日本の企業の構造等を考えていきますと、千人以上とりわけ大企業の果たすべき役割は、この問題だけではないのですけれども、全般的に重いし厳しいことは今永井委員がるる議論された中でも言えるのではないかと思うのです。四社のうち一社だけが千人を超えている、大企業に甘いのではないかという指摘は当然起こると思いますが、これはいかがですか。
○近藤国務大臣 先生御指摘のとおり、四社のうち一社だけが千人以上の企業だ、こういうことでございます。確かに、御指摘にもございましたが、千人以上の大企業の障害者雇用率は最近は多少はかばかしくない状況であることも事実でございますので、労働省としては、特に大企業に対する指導に精力的に取り組んでまいったわけでございます。ただ、今般百十三社を公表を前提として指導したわけでございます。そのうち五十七社が千人以上の企業でございましたが、この五十七社はそれぞれトップを中心に積極的な取り組みを行って、現在一社だけが千人以上では残ったということでございます。 いずれにいたしましても、大企業はまだまだ熱心ではないじゃないかという御指摘もございますし、私たちはそういったところをさらに十分注意して指導に当たってまいりたい、こういうことでございます。
○岩田委員 なお一層の努力を要請をして、この問題については質問を閉じたいと思います。 時間がごく限られておりますから、春闘問題について何点かお伺いをしたいと思います。 ことしの春闘というのは、先ほどの議論を聞いておりましても、単なる労使問題を超えた大きな視点というか問題意識がこの春闘にかぶさっている。これは、国民生活はもちろんでありますけれども、国際問題としての春闘という位置づけもあるわけですね。 今永井委員からもいろいろ議論がありまして、例えば盛田論文に対する日経連の批判だとか同調だとか、これにつきましては過日の委員会でも私若干申し上げましたが、これは歴史的に労働組合側から、いろいろな産別はありましたけれども、産別を越えて大体盛田論文に言われている問題というのは言われ続けてきたんですね。ようやくここに来て、世界のトップ企業であるソニーの盛田会長が言われているところに大きな意味があるんだろうというふうに思います。恐らく連合も、幾つか問題は感じていても総論としては大賛成、こういうことじゃないかと思いますね。今労働大臣の御答弁を聞きましても、いや、あれは全くけしからぬということではなくて、むしろ逆ではないかというふうに思います。 ところで、そういう世論形成が大体国内でできているにもかかわらず、じゃ実際この春闘、具体的な回答日が押し迫っていますけれどもとなりますと、なかなかそうはいかない。日本企業のトップクラスの考え方は、盛田さんの論文や、それから大内力先生が主宰されておりました例の雇用問題政策会議ですか、あの報告ともほぼ一致しておりますけれども、まあ反対論者はいないんじゃないかと思います。しかし、それぞれの組合、それぞれの労使になりますと、日本の特徴的な企業別組合の観点からいきまして、マクロでは賛成であるけれどもしかし現実はなかなかそうではない。それから、その中でも企業の抱えなければならぬ責任として環境問題まではとてもいかないということで、ばらばらに意見が分かれてくるというのが実態じゃないかと思います。 そういう状況の中で、永井委員もおっしゃったと思いますけれども、私は、労働省としては、一方では労働大臣に対して追い風が来ているんじゃないかというふうに思いますが、これを精いっぱい受けて、賃金の問題についても時短の問題についても、雇用者の問題についても女子労働の問題についても、一歩たりとも引かない、こういう決意が必要ではないかというふうにつくづく感じるわけですね。 宮澤総理も昨年の春闘並みなんということをおっしゃっていましたが、総理がそういう予想というか期待をされたのも初めてじゃないかというふうに思いますけれども、総じて、私が今永井委員の議論を聞いていまして感じることは、やはり大臣、賃金が低い、こういう実感をするわけですね。つまり一言で言いますと、経済大国に見合った、経済力に見合った賃金ではないということが大きく言えるんじゃないかと思います。この点について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○近藤国務大臣 永井先生といろいろとお話を申し上げたわけでありますが、春闘を契機に日本の労働者の賃金や労働時間や生活条件、そういったものがまとめて大いに労使の間で議論されることは非常に大事なことであって、私は、活発な議論が行われて適正な結論を労使ともども得ることを期待しておるわけでございます。 いろいろな議論がございますが、今回の春闘の最大の眼目は何かといったら、私は労働時間問題ではないかと思います。労働時間短縮について議論されてきましたけれども、今ぐらい社会的な関心が高いときはないし、その気になっているときもないし、また同時に、あえて申しますが、現在景気が調整過程に入っているわけでございます。ですから、どんどん高度成長しているときにはそれこそシェア争いで労働時間も残業残業という面があったかもしれない。だけれども、現在景気が調整過程だということがある意味では労働時間を短縮しやすいようなそういう企業環境になっているわけでございますので、これをすぐに一挙にできなくても、ある程度プログラムを持って二、三年、数年の間に千八百時間に達するような努力を各企業ごとに、また産業ごとによくやっていただきたいというのが私の強い希望でございまして、それを最優先にとらえていただいて、その中で、具体的なミクロの賃金問題については、やはり会社の経営があってのことでありますから、それは労使の積極的な、率直な、活発な意見を交換の上でしかるべき適正な水準にぜひひとつ到達していただきたいというのが、私の率直な思いでございます。
○岩田委員 賃金問題についてはかなり慎重な発言ではなかったかというふうに思いますけれども、大臣おっしゃるように、これは労使の問題、企業の問題がありますからなかなか簡単に言える問題ではないと思いますが、総じて私が思っていることをそういうふうに申し上げましたのは、時間短縮は何とかしよう、しかし賃金についてはなかなか困難であるという状況になっていくと思います。 ただ、この賃金問題についてもやはり大臣に頑張ってもらわないと、景気は冷え込んだ、落ち込んだ、当面ちょっと大変だろうというような警戒感だけが先に走って賃金問題の抑制になっていく。毎年のパターンなんですよ。毎年のパターンだけれども、盛田論文でも言われている推測、行間から読み取れるのは、このバブル経済を挟んで、これまで日本企業というのは稼ぎに稼いできたと言ったら語弊がありますけれども、ため込んできた、これほど世界にばらまいてきたわけですから、そういった意味では労働時間、これは一大目標であることは私も否定をしませんけれども、賃金についてもやはり同列に、豊かさ、ゆとりの根本であることは間違いないのですから、そういうことで申し上げたわけで、ぜひこれは理解を特にとどめていただかないとやはり問題ではないかというふうに思うのです。 毎日新聞に「「生活大国」への道 92春闘に問う」というシリーズが出ておりましたけれども、その中で、ドイツとアメリカと日本の比較的類似した三人の労働者の生活実態を出しております。 若干申し上げますと、アメリカは三十九歳のGMに働く夫婦と五人の子供さん、七人家族なんですが、この方の年収が、大体六万ドルですから七百八十万円ですね。車が三台で、一戸建てで十室のマイホームを持っている。日本円にしますと大体一千百万円くらいで買えたということが載っておりますが、彼が満足かどうかということについては、もちろん満足しているというふうに言っています。これは記者の目があるから受けとめ方はいろいろありますけれども、しかしこういうふうに書いています。日本の労働者は「緊張が高くてストレスもたまっているんじゃないの。彼らが幸せかどうか知らないが、仕事以外でもストレスの多い生活らしいじゃないか。それに人が多いから、土地も持てない」、こういうふうにアメリカの三十九歳の労働者は言っております、 ドイツの、これはベンツに勤めている四十歳の方なんですけれども、年収が五万五千マルク、約四百四十万円ですね。それに郊外に、どこの郊外でしょうか、とにかく三百平方メートルの土地を入手して一年前に家を建てた。地下一階、地上二階、地下にはワインの貯蔵庫とバーがある。三千二百万円で建築をした、こういうふうに載っています。 それから日本の、これは本田技研なんですけれども、三十五歳。本田技研というのは時間短縮が随分進んでいるところですね。昨年一年間、この三十五歳の労働者がやった勤務時間というのは千八百九十時間ですから、これは見事なものだと思いますね。それぞれ四十時間から三十九時間前後のドイツ、アメリカの労働者と勤務時間はそう長短がありません。 それから、いわゆる勤務時間も余り変わらないという同じような条件の人をとっているわけですが、ここで感じますのは、日本の労働者はとてもじゃない、幸せとは感じない。ゴルフだって行きたいけれども年に二回か三回、あとはパチンコか庭の手入れ、こういう落差があるのですね。 例えばドイツなんかは、こういうふうに賃金は余り差がないのだけれども、我々から見ると大変うらやましい家を持てるというのは、これは財形の問題ですね。ドイツの労働者は日本等に比べて世界に先駆けて財産形成をやってきたのですね。労働者が同じように我々にも財産が持てるような給料をくれということで、長い歴史かかって運動をやって今日まで到達しているわけですね。アメリカは財形なんというのは余りないですね。ほとんどないでしょう。ところが、土地が広くて安いのですよ。ですから、こういうふうにできる。まさに日本と比べますと雲泥の差がある、こういうことを感じます。 それから、旅行はどうかというと、やはり一週間単位ぐらいに欧米は家族旅行で行くのですね。日本はなかなかそうはいきませんね。労働大臣、日本の旅行というのは、最近リゾート法でも問題になりましたが、豪華主義になって、なかなか一家五人、一家四人行こうといったって大変なんですよ。行く時間と帰る時間、お父さんは疲れてしまって大変な状況である。しかも、一泊は何万円と豪華主義になっているのですよ。向こうはお金がかからなくて行けるシステムになっているところが違うのですね。 そういった意味でも労働者生活、労働者の豊かさ、ゆとりに対して、今まではちょっと間違ってきたのじゃないかというふうに思いますね。リゾート法も規制して縮小しよう、これは失敗したからそうなっていますけれども、この時期にやはり労働省としてもいわゆる勤労者の余暇利用についてもっと大胆にいくべきではないか。一時期いろいろありましたけれども、雇用促進事業団がやっている例のハイツ、これはなかなか今人気がいいのじゃないですか。ああいう安くて簡単に利用できるもの、こういったものに一方では対処していかないとなかなか難しいというふうに思いますね。 もう一つは、賃金は余り変わらないのですけれども、ドルで換算をしていくと、しかも購買力平価で見ますと大変な差があるのですね。ドイツなんというのは四百四十万ぐらいですが、ぐっと上がるのですよ。これも一概には比較してどうだということは言えませんけれども、しかし大きな格差の要因ですね。それから物価問題があるでしょう、内外格差。 とにかくこのドイツと日本とアメリカの三人の労働者の生活実感については、アメリカとドイツは非常に幸せだと思う。日本の労働者は、三十五歳の彼はくたくたとは言っていませんけれども、想定できますわね。この差を一体どうするのか、これが当面というかここしばらくは大きな問題になっていくのではないかというふうに私は思うわけであります。 つまり、ここで私が労働省にお尋ねしたいのは、これまでは何かというと貿易収支がどうであるとかGNPがどうであるとかということを一つの基準にして、それを支えて額に汗して働いてきた労働者の生活実感というのを見てきたかどうか、この点が今政府にも我々にも問われているのじゃないかというふうに思いますが、この点はいかがですか。
○近藤国務大臣 先生御指摘のように、日本とアメリカとドイツの大体同じような為替レート換算の年収の労働者において、今御指摘の生活実感の差がある。 ポイントは三つで、一つは、消費者物価が日本は高い。それは購買力平価で計算すると大きな差が出てくるということも出るわけでありますので、消費者物価は食料、医療をどう安くするかという問題が一つございます。第二点は住宅ですね。これはもうおっしゃるように全く比較にならないぐらい彼我の地価の違いがございますから、これをどう下げるかという問題。それから、第三点はまさにレジャー。これまた日本の場合は一点豪華主義で、ともかくわずかな時間に行くのでデラックスなところということなんでありますけれども、アメリカやドイツ、私も生活経験がございますけれども、もっと本当に家族で安くキャンピングなんかをして生活を本当に楽しめるということ。この三つが、私は、先生おっしゃったことでありますけれども、特徴的に彼我の生活実感の差をつくっている大きな要因であると思います。 そこで、結論を急ぎますが、労働省もこういった問題について大変努力をしてまいりましたけれども、私は労働大臣として思いますことは、やはり労働行政の範囲以外の問題がたくさんございます。消費者物価の問題からレジャーの問題からまた住宅について、そういう労働者生活の各般にわたる問題について実はこれまで以上に労働省が積極的な発言をして、そして関係各省にも十分に配慮をしてもらう、適切な政策を実行してもらうということでなければならない、こういうことだと思います。 私、実は円高時代の経企庁長官をやったわけでございますが、やはり円高に基づいての経済構造調整をやったわけです。それが成功したと思いますけれども、今度は、私は、高い労働力というものを一つの経済政策のてこにして、そういう時間においてもまた生活内容においても、まさに経済大国にふさわしいものを、言ってみれば基準労働単位とでも申しますか、それをてこにしての全体の産業経済調整というものを実は労働省がボトムアップで中心になってやるべきではないかというぐらいの気構えで、ひとつこれから頑張っていきたいと思っております。
○岩田委員 これで終わりますけれども、例えば賃金の問題につきまして従来から問題になっているのは、やはり賃上げと税金の問題、それから賃上げと物価の問題ですよね。九〇年と九一年のいわゆる環境を見ましても、賃金がアップする、その後物価が上がる、これを間引きしますと昨年は五・六%ぐらいのアップ率なのですが、実際は一%前後に減ってしまうのですね。それから、これは国税庁の民間調査か何かで出ておりますけれども、五%の賃上げをしますと一一%の税金アップにつながるというような数字も出ているやに思いますが、大臣としてはことしの賃金について、宮澤総理は昨年並みと言われましたが、そんな昨年並みでは今言われましたような格差について一歩たりとも近づくことはできぬと思いますが、いかがですか。
○近藤国務大臣 たびたび申し上げておりますように、まず、私は、時間短縮をこの際関係者の努力で具体的に実現し、ことしから来年、再来年にかけての具体的なプログラムを産業ごと、また会社ごとにつくっていただいて実現をしていただきたい、こう思っておりますが、それが実現できる前提で賃金交渉に望んでいただきたいということであります。 ただ、あえて私も元の経企庁長官の立場で申しますと、これから内需拡大の大きな要素は勤労者所得でしょうから、勤労者所得が時短を行うことで仮にもマクロ全体で下がるというようなことは決して内需拡大の面から望ましいことではない。だから、ミクロの企業の対応と、それからマクロの関係をどう持っていくかということが、このあたりがことしの経済政策の大きな課題だということが一つ。 それからもう一つは、私はこれも予算委員会で申し上げましたけれども、時短をすることでそれが実行できるために、特に中小企業の場合には相当徹底的な合理化、ロボット化投資をしていかなければならない。これを片一方で推進するための税制、税制というのはまた一つの制度問題でありますけれども、例えば融資制度、既にもう中小企業労働力確保法という法律があって、最低五・五から六%ぐらいの非常に低利の融資制度がございますが、これを積極的に活用していただいて、そういう時短と並行してロボット化、省力化投資がまさに全国的に進むということになれば、これが我が国のことしの経済を支える大きな内需増大要因にもなるということでございますので、そういう点から、時短が労働者の収入減になって時短リセッションなんということになったら大変ですから、むしろ時短景気にする、時短をてこに景気を上げていくぐらいの決意を宮澤内閣は持つべきではないかということで、閣議その他の場でもたびたび発言をしているということでございます。
○岩田委員 終わります。
○川崎委員長 岡崎宏美君。
○岡崎(宏)委員 何点がお尋ねをしていきたいと思いますが、まず最初に、スタートが四月一日と目前になりました育児休業法についてお尋ねをいたします。 この育児休業の制度は、昨年の国会で法が成立をしました。これは働いてきた人たち、今働く人たちの本当に長年の願いが運動となって、そして実を結んだ一つの成果だと思いますし、その間には、労働省の皆さんにも随分お骨折りもいただいて、この四月からはぜひ実のある、実際生きた制度として歩いていってもらいたいと思うわけですけれども、私も随分お問い合わせを一般の方からも受けておりますし、また、どんな中身か知りたいということで勉強会などにも何度も足を運んでやっているわけです。そういうところで意外に素朴な質問として出るのは、申し出てもとれない場合がある、そんなふうにいまだに思っている人たちもいるわけなんです。 今それぞれが普及に努力をしている最中ですけれども、こういう現状もあるということをひとつ認識をいただいて、なお積極的な広報等の努力をしていただきたいと思うわけですが、この目前に迫った制度について、広報などの現状がどういうように進んでいるのかをお尋ねしたいと思います。
○近藤国務大臣 この法律は、さきの通常国会で先生方に御審議いただいて通していただいたわけでございますので、あれからこの四月まで半年以上の準備期間がございました。ですから、各県の婦人少年室などを中心としまして育児休業法についてのPR、セミナー、説明会をずっとやってきておりますので、相当おわかりになっていらっしゃると思いますが、先生御指摘のように、申し出ても認めないということが仮にあったとすれば、それはまたしかるべく、まさに現場の婦人少年室等を中心として大いに企業の側にも御理解をいただく、そういうことでさらに指導を進めてまいりたいと考えております。
○岡崎(宏)委員 ぜひ積極的に努力をしていただきたいと思います。 そして、この制度が本当に生きていくために、それに付随するさまざまな問題点もこの間指摘があったわけですけれども、一つの大きな課題になっておりました休業明けの保育所問題、入れるかどうかが大変大きな問題だったのです。これはつい先ごろ厚生省の方から通達が出ました。かなり踏み込んだ内容の通達で、多くの働く人たちにとって非常に喜ばしいことだと思っております。 その通達が出たことも踏まえて、さらにまたいろいろな場面で実際安心して育児休業をとることに進んでいける、それに付随する問題もさまざまなところで配慮があるということが大きな前提となっていくと思うのですけれども、最近こういう問い合わせがありまして、ぜひ検討いただきたいと思っているわけですが、年次休暇に関する問題なんです。 今回の法の中では、一年というか子供が一歳になるまでというものですけれども、しかし、労使の交渉の中でそれを上回るものは、これは進んでいっていいわけですね。たまたまある組合からの問い合わせなんですが、二年間育児休業をとることができる、こういう企業が出てきたわけなんです。 その組合から実は問い合わせがあったわけなんです。昨年の暮れに労働省から出されている基発第七百十二号「育児休業制度の労働基準法上の取扱いについて」という通達、これで年次有給休暇の扱いについてもあるわけなんですが、育児休業をとる、その期間については、年休の算定上の扱いですが、労働日からも欠勤日からも除外するということになっている。ところが、二年間という休業になってきたときに、年休を算定する基準日から次の基準日までずっと休業期間中が続いているということになりまして、結果的にゼロ分のゼロ・イコール・ゼロということになって、二年後の休業明けを迎える時点に年休がなくなるのではないかという事態が予測をされるということになってきました。 これは実際の生活から考えてみますと、休業明けに働き出して、子供が小さい問は本当に突然の休暇というものが必要な場合がたくさん出てまいります。ここで全くゼロということになりますと大変不安で仕方がないわけで、これは育児休業を本当に活用していくためにも、まだ少ないであろう問題だと思いますが、ぜひゼロ分のゼロにならないように、つまり休業に入る前の段階を基準にするような配慮ができないかどうか、そういう検討がなされないかどうかということをお尋ねしたいと思います。
○佐藤(勝)政府委員 育児休業をとりました場合に、法律上の要求である期間につきましては、今御質問の中にありましたような取り扱いをいたしますので問題はないかと思います。ただ、事業主が法律の要求を超えまして、子供が二歳や三歳に達するまでの育児休業制度を設けるというようなことがあり得るのだろうと思いますけれども、育児休業期間が一年を超える場合につきましては、前年に労働日のあることを前提として有給休暇を付与するというのが労働基準法三十九条の規定であるわけでございますので、前年に労働日が全くない場合に法律によって年次有給休暇が付与されるということは、通達でやるというようなことを超えまして、いわゆる法律上そういうことが義務づけられているとは考えられない問題であろうと思います。 それで、育児休業法によって義務づけられております期間を超えるような育児休業制度が事業主あるいは労使の間で決められまして行われる場合には、そういった問題も含めましてよく話し合って、そのことによって解決を図るという以外にないのではないかと考えております。
○岡崎(宏)委員 育児休業によって休むというのは、例えばスキーに出かけていって転んで骨を折って休んだ、そういう言ってみれば自分の勝手の休みではないわけで、そういうことを考慮した上で、なおかつ今回の法で保障されている一歳までというそこを超える場合であっても、それはよりよいものとしてとらえていくならば、義務づけられていないからということだけで切って捨てるのではなくて、今すぐ決めてくれというわけではないけれども、しかし、これは前向きにぜひ検討していただきたい、積極的に配慮していただきたいというふうに思っております。それがまた数が少ないことであるがゆえに、ぜひ特例的なことも含めて配慮を強くお願いしておきます。 次に、パートタイムの問題であります。 前回の労働委員会でも私はパートタイムの問題について少しお尋ねをいたしました。その際にも、今、女性でいえば五百五十万の人たちがこういう形態で働いている、それは増加の傾向である、こういうお話でございました。実際、今の時期、税対策も含めまして各地で私どもも一一〇番、こういう取り組みをしているのですが、税以外についてもかなりの苦情というふうな相談もございます。どういうふうな相談、トラブルが、多分これは各地の労働省の出先でもつかまれていると思いますが、今現在、どんなことを把握されているか、お知らせいただきたいと思います。
○松原政府委員 お答えいたします。 具体的なトラブルと言えるかどうかわからないのですけれども、私どもが把握いたしておりますパートタイム労働者の方々の持っておられる不満の一番大きいのは、賃金が安いというのが出てまいります。
○岡崎(宏)委員 それだけですか。
○松原政府委員 もちろんそれだけではございませんで、雇用が不安定だというようなことを心配の種として挙げられている方もありますし、それから、場合によりましては、パートタイム労働者というのは本来労働時間が短いということで働く方なわけですけれども、例えば残業があるとかいったことを指摘される方もあります。ただ、全体としてどれが最も大きな声がといいますと、それは圧倒的多数の声が一番最初に申し上げました賃金の点でございます。
○岡崎(宏)委員 わかりました。私たちが一一〇番で受け付けている中身とほぼ一致をしておりまして、賃金が安いというのは本当に圧倒的なんですけれども、あと、出していただいた雇用に対して不安定であるということ、あるいは、本来パートというのは一般の労働者よりも時間が短い、だから働きに行けると思って行ったのに実際には残業を求められる、断ると、二番目に出てきました、雇用の不安定というか来なくていいというふうに結局なっていくので何も言えなくて困っているというふうな声が出てくるわけなんですね。 そこで、パートタイマーの形で働く人たちに、働く時間が短いということが違う以外は、働くということに関してこの人たちもきちんとした保護規定があって当たり前だと思うのですけれども、それは前回もそういうふうに申し上げて要求をいたしました。 そこで、パートタイマーというものに対する今の位置づけですが、多分労働省もこの間随分統計もとっていらっしゃるし、そういう中で出てくる数字から姿を想像していただくと、たまに遊び半分で働きに行っているということではなくて、ほとんど恒常的に働いている、勤続年数も伸びてきている、家計の補助というよりも中心部分にもなろうとしてきている、そういうものもはっきり見えてくるのじゃないかというふうに思います。労働省の方でもいろいろな努力をされてきているのは承知をしております。指針についてもなかなか守られていないという現状は確かにあるわけですが、指針を一生懸命広げられていることだとか、あるいは労基法の改正で年次有給休暇を比例的に付与する、あるいは雇用保険法の改正で短時間労働の被保険者の特例を持つということ、あるいは昨年の中小企業退職金共済法の改正、こういう形で努力があるということは私たちも評価をして、その上でなおかつ、前回もお話ししましたけれども、社会党あるいは他の四党の皆さんとパートタイムの労働法というものを私たちは提案をしております。そしてそれをこの委員会の中でももっと時間を割いて、積極的に小委員会を設置するなどしてぜひ検討してほしい、こういうことも申し上げたわけですけれども、今回もう一度それに対する取り組みの姿勢、決意というものをいただきたいと思うのです。 私たちが提案をしたパート労働法についてぜひ検討をしていただきたい、これについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○近藤国務大臣 先生もおっしゃっていますように、私もこれからの我が国の労働マーケットにおいてパート労働力というものは非常に重要な役割を果たしつつある、また果たすであろうというふうに思っているわけでございます。ですから、パート労働者のいろいろな問題、先生御指摘ございましたけれども、有給休暇の問題だとか保険の問題だとか契約の問題その他について、これまでも個別にいろいろの配慮をしてまいりました。パート労働指針というものもあってやってまいったわけでございます。 そこで、御指摘もございましたけれども、野党の皆さんで、パート労働法という法律をつくったらどうだと、こういう御提案があることも十分に承知しておりますし、皆さんの御意見でございますから私ども検討するにやぶさかではございませんが、またへこれはいろいろなことについて議論も賛否あることも事実でございますので、そういった議論を十分に考えながら検討させていただきたい。 ただ、さっき言いましたように、いろいろな具体的な問題についてそれなりにやってきておることも事実でございますので、新しい法律の形でやるのか個別にしかるべき対応をするのかとかいろいろな議論もありますので、いずれにいたしましても、いろいろ勉強させていただきたいと思います。
○岡崎(宏)委員 ぜひ大臣を先頭に積極的に検討をお願いしたいと思います。 次に、育児休業法ができた、そして次に介護休業、ここに今一つの焦点が移ってきていると思うのですけれども、この介護休業の制度についてお尋ねをしたいと思います。 労働省の来年度の予算案の中にもこれに対して——今の年度の予算の中で実態調査あるいはガイドラインの策定について含まれており、そしてそれを踏まえた上で新しい年度の予算では、東京と大阪の二カ所で各十社にふる介護休業等の導入検討会議も開催をする、制度の導入実施に取り組んでもらおう、こういうものが含まれているわけで、ぜひこれは進めていっていただきたいと思うのですが、現在、これまでの調査の中で出てきた普及の状況、それからどういった内容の制度があるのか、またガイドライン、これはもうこの年度が終わるわけですけれども、大体でき上がってきているのか、でき上がってきているとしたらどういう内容なのか、お聞かせいただきたいと思います。
○松原政府委員 私どもが昨年の二月現在で把握いたしました数字によりますと、いわゆる介護休業の普及率は十三・七%という状況になっております。ただ、この調査はいわゆる普及率だけを調査したものでございまして、今御指摘のどういった内容かというところまでは詳しく把握はいたしておりません。 それで、今先生おっしゃいました、今年度ガイドラインの検討をしているということでございますが、それは確かにそのとおりやっておるわけでございまして、その検討に資するために今調査もやっておりまして、それについての分析もやっているところでございます。そういうものがさらに分析がまとまってくれば、もう少しこの介護休業制度の内容などが具体的にわかってくるというふうに思っております。 ガイドラインについては、今鋭意そういった調査、分析を並行してやりながら、どういったものをつくっていくか、最終的な御議論をいただいているところでございます。私どもとしては、なるべく早い時期に結論を出していただきたいということで検討会議の先生にお願いをしてございますけれども、御承知のとおり、これにつきましては、期間をどうするかとか対象の範囲をどうするかなど非常にさまざま検討する点がございまして、まだいつでき上がるかというところを確答させていただくまでには至っていないというのが実態でございます。
○岡崎(宏)委員 できるだけ早い時期といいますか、平成三年度中ということで私たち思っておりましたので、もう三月半ばになるわけですから、いろいろなところからもこの内容については注目もされておりますし、できるだけ早い時期にその検討の結果というものが出されることを望んでいます。 実際、先ほど時短の話なんかも出てきましたけれども、ことしの春闘の時期に合わせるように企業の方では介護休業の制度を取り入れているところも大分出てきています。現場の段階が踏み込んでいって広がっていくというのはいいことなんですけれども、ぜひ労働省の中でもそれにおくれをとらないで、積極的に制度を広げるということで進めていっていただきたいと思いますが、その辺について一言決意をいただければと思います。
○近藤国務大臣 介護労働の重要性については私ども十分に認識をしておりますが、ただ、一つの制度が普及するためには、ある意味では条件がだんだん醸成していくことが必要でございまして、育児休業も、いろいろな議論、またいろいろなそういうことをする企業の数がふえてきて、それをいわば法律化して制度化するということでございますので、局長からの説明もございましたが、今十数%の普及率ということでありますけれども、これを見ながらそっちの方向で検討していく。ただ、先生に申し上げるのは釈迦に説法でございますけれども、育児の場合にはある程度限定されておりますね。介護の場合は、いろいろケース・バイ・ケースで複雑な面もございますので、一つの法律できちっとパターンの設定ができるかどうかという問題もございますが、事の重要性については十分認識しておりますので、いろいろ勉強させていただきたいと思います。
○岡崎(宏)委員 ぜひ努力をお願いをいたします。 関連をして、これはぜひ方向性なりお聞かせいただきたいと思うんですが、ILOの百五十六号条約、それに付随して百六十五号勧告についてです。 家族的責任を有する労働者の機会及び待遇の平等に関する条約ということなんですが、勧告の中には、実際の労働条件についても具体的な指摘をする項目もございまして、この間、これを私たちは、早く批准をすべきである、そのための国内のいろいろな整備をするべきである、こういうふうに要求もし、指摘もしてまいりました。育児休業、それから介護休業、パートタイムの保護、この三つがおおよそ整備をされていけば、これは批准ができるというふうに考えるわけですけれども、育児休業は実際にスタートいたします。あと残る二つ、介護休業についても、パートタイム労働法についても、検討はお約束をいただいているわけです。 実は、私ども社会党の前の委員長であります土井たか子議員が、一九八五年、衆議院外務委員会でこの問題に関して質問をされておりまして、それに対して当時の外務大臣である安倍晋太郎さんがこんなふうに答えておられるわけです。「ILO条約は、女子差別撤廃条約とは異なりまして、具体的な労働条件を決めているものでありまして、女子差別撤廃条約とはいわば補完的な関係にある、両者相まって国際的な水準と男女の雇用の機会、待遇の均等が達成されるものと考えております。」「とりあえず百五十六号条約につきまして検討を進めたいと思っております。」なお追いかけて質問をしました土井さんに対して、とにかく百五十六号条約につきましては承認をお願いするということでこれから努力をするわけでございます、そういう立場で次の国会には取りまとめて御報告を申し上げるということであります、批准をするという方向でやっていくというふうに答弁をされているわけなんですが、それから実際今、七年経過をしておりまして、少しずつ進んでいるということは認めながらも、ぜひこれを批准をするということをかなりスピードをつけて私たちはお願いをしたいと思うわけです。 「婦人労働の実情 概要」労働省婦人局が出されたものでこの数字を私もずっと拾って見ていったんですけれども、女子の雇用者が平成二年で千八百三十四万人、その中の配偶者がいるかどうか、こういうことで見ていけば、有配偶者が一千六十一万人、五八・二%になっている。年齢で見ていっても、四十五歳から四十九歳層がかなりの勢いでふえていることだとか、あるいは子供のいる共働き世帯が非常に多いことだとか、こういうことを見てきましたら、介護休業も、特に四十五歳から四十九歳というふうな年齢層にとってみれば、自分の親が寝込んだりけがをしたりということで介護しなければならないという、そういう必要の度合いを非常に大きく持った年齢層になっていると思うのです。 ですから、先ほどもお尋ねをして、検討もしていただくということですけれども、ぜひこの部分には焦点を当てて早い時期に制度が普及をしていくように、その上でこの百五十六号条約が実際批准ができる時期を早く迎えることができるようにということをぜひ要求をしたいと思いますが、それに対して大臣のお答えをいただきたいと思います。
○近藤国務大臣 実は、私自身も介護労働者を必要とする年代といいますか、そういう親を持っている年代に入っておりますので、先ほど申しましたように、この必要性については十分認識をしているわけでございます。 ILO百五十六号条約については、先生、前の安倍外務大臣の答弁を引用されたわけでございますが、基本的な方向としてはそういうことだと思います。ただ、批准する以上は、国内の態勢ができてないとせっかく批准しても実行できませんので、そういう国内態勢を準備して整合性を持った上での批准まで進む必要があるわけでございますので、いろいろ国内態勢の整備、これから多少時間もかかるかもしれませんが、方向はそういうことで努力してまいりたいと思います。
○岡崎(宏)委員 ぜひ批准のためにも、さかのぼるようですが、パートあるいは介護といった課題、積極的な改善というか、法整備がなされるようにお願いをしたいと思います。 最後に、均等法の見直しの問題についてお尋ねをいたします。 均等法ができて五年を経過しまして見直しの時期に来ているということで、さまざまな意見が出てきております。つい二月でしたか、去年の六月に総務庁が出した行政監察結果に基づく勧告に対して労働省の方から回答がなされたと思うのですね。その内容について御報告をいただきたいと思います。
○松原政府委員 総務庁の勧告に対します回答、非常に広範にわたっておりますので、どの点をお答えすればいいか、もう少し特定していただければと思います。
○岡崎(宏)委員 いわゆる女子保護規定についてです。
○松原政府委員 女子保護規定につきましては、総務庁の勧告は、「労働省は、雇用における男女の均等な機会及び待遇を実質的に確保する観点から、労働基準法の女子保護規定のうち、女子の時間外労働、深夜業等の規制の基本的な在り方について検討を進める必要がある。」というものでございました。 これに対して、私どもが回答いたしましたのは、「労働基準法の時間外労働、深夜業等の女子保護規定の在り方を考える際には、男子を含めた全体の労働者の労働条件等労働環境の整備及び女子の就業と家庭生活の両立を可能にするための条件整備の状況等を勘案する必要がある。」ということを踏まえまして、「実際上の男女の機会均等を確保するための方策について、学識経験者等の専門家の意見を求めつつ、幅広く検討を行うこととしている。」というふうにお答えしたところでございます。
○岡崎(宏)委員 総務庁の勧告は、その文面を見てみましても事業団体からの声が非常に強いということがありまして、私たちはあの内容についてはいささか危惧を持っていたのですけれども、労働省の回答の中には労働者側の声というものも配慮があるんじゃないか、そんなふうに受けとめているわけなんです。 きょう朝からの時短をめぐる話の中でも出てきていると思うのですが、今の男性の働き方、この現状というのは余りにすさまじいものがある。きのうでしたかきょうでしたか、新聞を見ていて、外国のお友達にとても忙しい毎日を送っていると手紙を書いたら、返事に過労死に気をつけてというふうに返ってきた、そう言われるほどひどい実情も含んでいる。結局、その現状が変わらないままに女子に対する保護規定だけが緩和をされていくことになると、この中に女性もほうり込んでいくという結果になるんじゃないか。 それは最近、経済企画庁の方が生活大国づくりに向けていろいろな人たちに声を寄せてくださいというふうにお願いをしたらたくさん返ってきたそうですが、その中にこんな声があったそうです。勤務時間が長過ぎて、朝夕家族と顔を合わせることができない。これは長時間労働であるがために、あるいは通勤時間も長いがためになっている結果なんですけれども、これは生活をしている者にとっては、一方で、さっきの条約批准にしても、家族的責任をそれぞれが持ってより豊かに生きていくということからいけば、本当にほど遠い状態なんですね。だから、ここのところをまず乗り越えることができないままに保護規定だけが見直されていくということになると非常に危険なものを持っている、あえて指摘をさせていただきたいと思います。 これから見直し作業というものが実際進んでいくのだろうと思うのですけれども、その作業の中で、実際の生活の豊かさ、ぜひこういうことを視点に置いた作業になるように、これは要望をして、大臣から御意見をいただいて、終わりたいと思います。
○近藤国務大臣 先生御指摘の、国際的に過労死と多少漫画化して言われたわけでありますが、そういう状況の中に女性もまさに平等に送り込むのか、こういうような危惧については私も十分理解いたしますので、まず、私ども男ともの労働環境もちゃんとしなければならないということではありますが、これまた理論的に物を申し上げれば、まさに男女雇用機会均等でございますから、ひどいところに女性を入れるということじゃなくて、こっちもよくしながら、しかし男女め雇用の条件のいわば均等化、平等化というものは、やはり方向としてはそういうことなのかな。ただ、いろいろ問題も十分わかっているつもりでございます。これもまた勉強させていただきたいと思います。
○岡崎(宏)委員 最後、一言で終わりますから。 十分に現状を把握していただく、もし均等の問題をおっしゃるのであれば均等そのものの中にも新たな問題もある、こういう検討も実際必要でありますということを申し上げまして、終わりたいと思います。
○川崎委員長 午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時十五分休憩 ————◇————— 午後零時四十二分開議
○川崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。井上義久君。
○井上(義)委員 初めに、今春闘に対する大臣の基本的なスタンスについてお伺いしたい、こう思います。 我が国は、七三年の第一次オイルショック、七九年の第二次オイルショック、そして八六年の円高不況等々、この二十年間幾つかの危機を乗り越えて世界の経済大国になったわけでございます。その原動力の一つは、私は、我が国のさまざまなシステム、特に経営システムであるということは言うまでもない、こう思うわけでございます。 しかし、日本的経営と言われておる競争、効率、成長、これを経営の中心的な課題として労使で追求をしてきたそのやり方自体が今問われているのではないか。具体的に言いますと、成功し過ぎたために海外からの批判を浴びることになってきた。対外関係で、日本企業のその国際競争力の強さそのものが、理の当否を超えて、経済摩擦の要因になっているということが一つであります。それからもう一つは、この競争力を支える中に、マイナスの要因として、長時間労働や過労死、サービス残業あるいは単身赴任といった人間的側面、家庭人あるいは市民としての側面の多大な犠牲が存在するということではないかと思います。したがって、今、この日本的経営のよい部分は残しながら、世界やあるいは社会、あるいは勤労者との共生を図った経営に転換していくことが求められているのではないか。 そういう意味で、ことしの春闘は、こうした日本的経営のあり方を修正させる出発点とすることができるかどうかという意味で重要な意義があると思うわけでございます。このままでは、必ず世界の中で孤立化していくと思いますし、私は、少々の競争力の低下があったとしても、大変革を実行すべきではないか。私としては、この春闘の中で、労使ともにこうした現状を直視して、中期的展望に立って我が国の企業経営のあり方をどう変えていくのか、具体的にどういう方法で変革していくのか、それを徹底して議論していただきたいな、こう思うわけです。 あわせて、今申し上げましたように、今春闘の意義というのは極めて重要だと思いますし、政府も生活大国を目指すというふうに言っておられるわけでございますから、春闘というのは労使の良識ということなんでしょうけれども、我が国のあり方を考えるという意味でも、少々波風があっても政府はこの春闘に参加するというくらいの決意が必要なのではないかな、私はこう思うわけでございますけれども、冒頭、大臣の今春闘に対する基本的なスタンスというものをまずお伺いしておきたいと思います。
○近藤国務大臣 我が国の春闘というのは、言ってみれば我が国固有なことでございまして、毎年労使の責任者が相寄って、そして賃金、ベースアップから始まっていろいろなことを議論する。いろいろ言われますが、年に一度、単に賃金だけではなしに、経営のあり方、産業のあり方、また広く生活条件や労働条件の問題について議論することは、私はむしろ積極的に春闘というものを評価す る一人でございますので、先生から御指摘があったように、この際、もう忌悼のない意見を労使の間で交換され、議論を尽くされることは非常に大事だと思うわけであります。その中で、まさに、これまでの日本の産業のあり方、経営のあり方、労働条件のあり方というのが、これまでもいろいろ国際的にも問題にされましたけれども、今回ぐらい問題にされた時期はないと言っても決して言い過ぎではない。 実は私ちょうど五年前に、円高不況のさなかに経企庁長官をいたしました。そのときは、円高不況に対応して、内需拡大でしかも輸入を促進するという形の経済構造調整政策の推進に当たった一人でございますけれども、あのときはいわばハイ・バリュー・オブ・エンだったわけです。今度はハイ・バリュー・オブ・レーバー、労働の高い価値というものを一つのてこにした新しい経営のあり方や産業のあり方、そして国際分業のあり方というものを真剣に議論してみる時期であって、そういう観点から、円高不況と同じような形の、もっと根本的な幅広い経済構造調整政策を進めるべきじゃないか、こう思っておるわけでありますが、その基本は、たくさんあるけれども、私はやはり労働時間ではないかと思うのです。 やはり労働時間というのは具体的数字であらわれますから、我が国は二千時間を超える労働時間である、そしてアメリカは千九百時間である、ヨーロッパになると千七百とか六百とかである。ですから、どんなにいい物をつくっても、日本は、ともかく土曜日曜なし、残業残業で物をつくっている、おかしいじゃないか、これがアンフェアなトレードだということにもなるわけでありますので、私は、今度の春闘で、いろいろなことを議論していただくことも大賛成でありますが、まず一つどうしてもやっていただきたいことは、労働時間短縮については、これはもう労使ともどもこの点については共通認識があるようでございますので、まず労働時間短縮について各企業、そして産業ごとにプログラムを持っていただいて、すぐにはできなくとも、もう二年、三年後にはきちっとした欧米並みの労働時間にする、この決意で話を進めていただいて、これを何とか実現していただくことが今度の春闘の最大の課題ではないか。時短春闘ということをおっしゃる方もありますけれども、私は、もうずばり言って時短春闘で、これはまさに生活大国づくりのための大きな春闘だという見方をしてもいいのではないかとすら思っておる次第でございます。
○井上(義)委員 今時短のお話が出まして時短春闘、私も全く同感でございます。この時短の問題は後ほど触れるといたしまして、春闘の大きな課題の一つは賃上げという問題でございます。 連合が八%、二万円以上ということで要求を掲げていらっしゃるわけですけれども、それに対して経営者側は、マスコミ報道等を通して聞こえてくることは定昇程度二・二%と、相当な開きがあるわけでございます。連合側の物価上昇分プラス定昇プラスアルファ、これはもっともな要求だと思いますが、それに対して日経連は、実質経済成長率マイナス就業者増という従来から言われております生産性基準原理、これを持ち出して譲らない、こういう現状でございまして、この賃上げの問題は、労使の交渉の最大の焦点ということで、政府としては非常に物が言いにくいんだろう、こう思うのです。 私は、議論はいろいろあると思うのですけれども、景気減速下で企業収益が落ち込んでいる、そういうことを考慮に入れたとしても、ここ数年高収益が続いたわけでございますし、さらに、先ほど述べましたように生活大国に一歩踏み出せるかどうかという観点からいいますと、少なくとも消費者物価上昇率に定昇をプラスした五%、これが最低限ではないか。五%に乗るかどうかというのは、ある意味で変革の年となるかどうかの一つのメルクマールではないかというふうに思っているわけでございます。 あわせて、対外的なことを考えますと、経常黒字が非常に膨らんで海外の目がまた相当厳しくなってきているわけでございまして、内需拡大と三・五%の経済成長率、これは一つの公約になっているのだろうと思うわけでございますし、そのためにはGNPの六〇%を占める個人消費に対する刺激が非常に大事ではないか。したがって、賃上げ抑制を許すことになると、国民の購買力が落ちて景気低迷を長引かせてしまうのではないか。連合総研の試算でも、仮に賃上げが定昇分の二・二%程度にとどまった場合は実質GNPは二・一%にとどまるというような指摘もあるわけでございまして、かつてのような低賃金、黒字増、外圧、バブル、こういう繰り返しにならないためにも、私は相当大幅な賃上げが今回の春闘では必要ではないかなと思うわけでございます。 この点に関する大臣の、言いにくいとは思いますが、連合の旗開きのときに積極的なエールを送っていらっしゃったので、エールになるようなお話をいただければと思います。
○近藤国務大臣 最初に申しましたように、私は、今度の春闘最大の目標は時短の実行をしていただきたい、だから時短春闘とおっしゃってもいいのじゃないですかというくらいに申し上げたわけであります。 そこで、時短はわかった、賃金はどうするんだという話なわけでありますけれども、経営者サイドで見ますと、時間短縮ということはある意味ではコストアップだ、こういう見方も十分にあるわけですね。今度は勤労者の立場で考えますと、時短というのは残業がなくなる、所定内も含めて減るということになると、これは線の引き方がありますけれども現金収入の減ではないか。そうすると、これは世の中でいろいろなときに、時短は賛成だけれども現金収入が減では困るから何とかしてもとへ戻せという議論もありますね。だから、その点は両側の見方をあえて申しますと、経営者側は、時短するならコストアップだからとてもペースアップはいかないよというような議論であれば、片方では、時短が進むとその分だけ現金収入が減って困るからむしろ今度はペースアップでふやしてという議論と、私はこれはそれぞれ立場立場で難しい問題があると思うわけであります。 ただ、私も経企庁長官を前にやった経験であえて申し上げますれば、これからの日本の経済成長を進めていくための大きなファクターが、先生もおっしゃいましたように消費需要をどう拡大するのだということが内需拡大の大きな決め手であれば、その消費需要のもとは何かといったら勤労者収入ですからね。だから、勤労者収入が減って消費需要が仮に減るようなことであれば、先の見通しもなくなる。これはマクロの議論です。マクロの議論とあしたの経営を考えているミクロの議論とは必ずしも一致しない問題がございますので、そのあたりを今後どういうふうに考えていくかということが大事な課題だと思うわけでございます。 こういう状況の中で賃金だけが上がって、ただでさえ悪い経営の見通しがもっと悪くなるというようなことで、積極的な設備投資や企業活動がシュリンクするというようなこともマイナスであれば、ある程度の現金収入の確保ということもないと消費の方も伸びないという議論もあって、このあたり、率直に申しまして私ども政府が個々の企業の賃金決定の中に入って、あなた方どうしなさいと言うことはやるべきことではない。そこはまさに労使の話し合いによるわけでありますけれども、あえて一言申し上げれば、そういう状況の中で、時短について積極的な考え方と、賃金についても勤労者の方々の生活という面も十分考えて、それなりの配慮を労使の双方において行われることが望ましいのではないか……。 これくらいまでで、ひとつよろしくお願いいたします。
○井上(義)委員 どちらにスタンスを移すか、ことしの春闘がそういう意味で生活大国という方に多少なりとも重心が移ったなということが私は非常に大事だと思いますので、今の大臣の御答弁はそういう趣旨であろうと理解させていただきたいと思います。 このことに関連いたしまして、先般ソニーの盛田会長が、貿易摩擦問題に絡んで、日本企業の低い賃金と労働分配率が競争力をけた違いに強くさせ優位に立たせているという指摘をされて、日本企業の経営の抜本的な見直しを発言されて、これが論争になっておるわけでございますけれども、私も本年、新年の我が党の政策勉強会で直接お話を伺いまして、勇気ある発言だな、こういうふうに思っておるわけでございます。 それで、連合の試算で恐縮なんですけれども、製造業、生産労働者の賃金を比較いたしますと、まず年間総賃金を為替レートで換算してみますと、日本を一〇〇といたしますと、アメリカ、西ドイツがともに九七で、日本が世界一ということになるわけでございます。しかし、労働時間の差を考慮に入れて時間当たり賃金で見ますと、日本が一〇〇に対してアメリカは一〇三、西ドイツでは一二二ということで、これは世界最高というのは虚構になってしまうわけでございます。さらに、この時間当たり賃金を為替レートではなく今度は購買力平価で換算をいたしますと、日本が一〇〇に対してアメリカ一六二、西ドイツ一五一となるわけでございます。つまり、日本の賃金は西ドイツの六六%、アメリカの六二%にすぎないという現状があるわけでございまして、この点についても、私はこの春闘で、こういった購買力平価で西ドイツの六六%、アメリカの六二%という賃金水準をどう高めていくか、その端緒がどうできるかということなんだろうと思うのですが、この賃金水準について大臣の御感想をお伺いできればと思います。
○近藤国務大臣 過日、労働省も同じように、日本、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスの一人当たりの生産性、それから時間当たりの生産性、それを購買力平価で換算した場合の比較をしたわけでございますけれども、まさに御指摘のように、為替レートで換算したのと購買力で換算したのと非常に違ってくるわけであります。購買力平価というのは、それぞれの国で同じようなものを買う場合にどれくらいのパリティーになるかということを計算して出した数字でありますが、それで見ると日本の賃金は低い、だからノミナルの賃金を上げるということでは必ずしもないんです。 問題は、そういう購買力平価と為替レートのギャップにあらわれているような我が国の生活関連物資の高さが問題でございまして、私は、我が国労働者の実質的生活を購買力平価で欧米に近づけろというお話は賛成であります。まさに、購買力パリティー自身が変わるような、消費者物価の構造にメスを入れて、同じ賃金だけれども実質的な使いでがあるような形の政策が望ましい。単にノミナルの賃金を上げれば、今度は為替レートで国際競争の問題が出てくるわけであります。むしろ、それよりも国内の消費者物価の適正化に政府がもっと本腰で取り組むべきだこういうふうに考えております。
○井上(義)委員 大臣の御指摘、そのとおりでございます。ただ、やはり両方必要なわけでございまして、その辺の検討もぜひ政府として進めていただきたい。 もう一つ、賃金水準と裏表の関係にあります、いわゆる労働分配率という観点から今議論が盛んに行われておるわけでございまして、これもやはり非常に大きな問題なんだろうと思うのです。 これはいろんな比較のデータがあって一律ではないめですけれども、個人事業者数を考慮に入れて修正を加えた労働分配率の各国比較ということで、それぞれ年度が違うので正確ではありませんけれども、日本が七六・四%、アメリカが八〇・八%、イギリスが八一・二%、旧西ドイツが八八・八%ということで、欧米先進国はいずれも八〇%台であるわけでございまして、世界一の経済大国、こういうスローガンを掲げておる割には、日本の経済の現状では日本の労働者は正当に報われていないのではないか。やはり成長の成果が公正に分配されていないということは、私はいろんな考え方があると思いますけれども、そのことは明確に指摘できるのではないか。 国民生活を向上させるという意味では、この労働分配率というものを先進居並みに引き上げていく、そして労働者に利益を還元していくという大きな方向性というものをこの春開で確立していかなければいけないのじゃないか。そういう観点からも、今回の賃上げの問題というのはかなり重要だ、こういうふうに思っておるわけでございますけれども、その点はいかがでしょうか。
○近藤国務大臣 先生御指摘のように、労働分配率の計算をいたしますと、これはいろんな計算の仕方がございます。経済企画庁は経済企画庁で、労働省は労働省てやっているわけでございますが、いろんな計算をしても、おっしゃるように日本の労働分配率は欧米よりも低い。程度はいろいろ違いますが、低いことは事実だと思うわけであります。私は、これは日本のこれまでの経済成長と密接な関係があって、結局、我が国の場合の経済成長率の高さは我が国の大きな設備投資によってもたらされた。その設備投資の裏には我が国の貯蓄があって、その貯蓄は法人貯蓄と個人貯蓄と分けていきますと、労働分配率の低さという形は、こちらから見ると、それはむしろ企業が社内留保して、勤労者に払わないけれども内部留保で設備投資をしていったことが現在の成長の大きなファクターだ、こう考えるわけであります。そういった会社中心の経済成長から、一回所得を勤労者に返して、これは重役さんも含めて返して、改めて貯蓄をしてもらう、改めて株式市場を通じて投資をしてもらうという形になれば、これは一つの、会社中心の経済発展から個人中心の経済発展へのパターンの変化ということになるかもしれませんが、やはりこれはいろんな経過のあることでございます。私は、基本的な方向としてはだんだんそういうことかな、こういうことでありますけれども、今すぐどうだというお話になると、これはいろんな考え方があると思います。 例えば、日本の場合は社宅だとか会社のレクリエーション施設があるわけです。そうすると、欧米の場合には自分の収入で家を建てて、自分の収入で遊びに行く。日本の場合には会社中心で、会社が社宅、寮をつくり、またいろんな保養センターをつくる、こういうことでありますから、労働分配率の率だけを考えて、それじゃ日本の労働者と欧米の労働者が実質的な生活の点でどうかといったら、社宅とか会社の保養施設というものは欧米にないところでありますから、そちらの面から見ると、結果的には日本の労働者もそう悪くはない、こういう話にもなるのじゃないかということでございますので、御指摘は、いろいろこれは議論のあるところでございますが踏まえながら、ひとつ我々としてもこれから検討を進めていく。ただ、基本的に、決めるのはまさに労使で話をしていただくことでありますので、我々としては一つの考え方を今後整理することである、かように考えております。
○井上(義)委員 基本的には労使の問題、こういうことでございますけれども、これはやはりこれだけ大きな転換をこれからしていかなければいけないということでございますから、政府としてそれなりの決意を持って、それにふさわしいといいますか、それを誘導するような政策展開が非常に重要だと私は思うのです。 例えば、今御指摘がありました社宅ですとかいわゆる福利厚生、これは確かに欧米諸国に比べて日本はかなり手厚いということは我々も痛感しておるわけですけれども、ただ、やはりどうしても企業中心、要するに、企業に勤めている間は家もあるしゴルフにも行ける。ところが、会社をやめた途端に、家もなければそういうさまざまな余暇をエンジョイするような余裕もないということがあるわけでございまして、そういう意味からいいますと、高齢化社会を迎えて個人の生活のスタイル、これをどう確立するかということがこれから日本にとって非常に大きな課題だと思うのです。 そういう意味からいいますと、例えば労働分配率でそういうものも含めてやるとそう違わないのではないかという議論というのは、私は、基本的に間違っている議論だ、そこをやはり企業中心から我々の人間中心、生活中心に変えるんだということをはっきりさせないと、この問題はどうもうやむやになってしまうんじゃないか、こう思っているわけでございまして、その点、大臣いかがでございましょうか。
○近藤国務大臣 先生の御指摘、よくわかります。 ただ、これは会社主義と個人主義、会社中心と個人中心に分けていいのですけれども、欧米は個人中心、我が国は会社中心。ただ、日本の会社を大きくした非常に大きな要素は、やはり会社中心からです。例えばアメリカの場合に、GMの技術者がスカウトされて今度はクライスラーの技術者になる。どんどん競争会社へかわっていくわけですね。どんどんスカウト合戦がある。日本の場合には、東芝の技術者が三菱電機の技術者にそう簡単にはならない。やはりそこは会社にロイヤルティーがあって一生懸命技術を勉強してやっているわけですから、そういうことも日本の経済発展を支えてきた大きな人間関係だと思うのです。みんなばらばらになって、どんどんいいところへ行きなさい、そこまで割り切っていいのかどうかというふうに実は私は思っておるわけであります。 ただ、行き過ぎという問題もどうだというふうに先生のお話はとれますので、私の立場であえて申し上げれば、いろんなことを考えながら、しかし、方向としては、会社人間からやはり個人を中心とした人間にこれから漸次変わっていくことかな、こういうふうに私は個人的には考えております。
○井上(義)委員 冒頭申し上げましたように、やはり日本的経営のよさを残しながら、どううまく転換していくかということが課題であるという認識は私も持っておるわけでございまして、ぜひそういう方向に日本の社会が進むようにこれからも努力していかなければならないと思っておる次第でございます。 次に、時短の問題について少しお伺いしたいと思います。 時短の問題で、ことしは時短春闘というふうに言っても過言ではない、こう大臣からお話がございました。私もそのとおりだと思います。ただ、この問題は基本的には労使の問題だと思うのですけれども、じゃ労使に任せておいてこの時短が進むのか。特に日本の場合は労働組合の組織率が二五%、あと七五%は具体的に例えば労使で交渉するといってもこれはなかなか厳しい立場にあるわけでございまして、その意味からいいますと、これはやはり政府が本腰を入れて取り組まなければいけない、ある意味で強制力を発揮してでもやらなければいけない問題だろうというふうにこの時短の問題については私は思っているわけでございます。 それで、何点かちょっとお伺いしますけれども、特にこの労働時間の短縮の問題というのは、先ほどから話が出ていますように、今まで余りにも企業人としての側面に偏り過ぎていた、それを、時間配分というものを、もう少し家庭人あるいは地域の市民とか個人といったところに比重を移すことにあるんだろう、こう思うのですね。こうした点を踏まえますと、労働時間の短縮というのは、先ほどからお話ししておりますように、日本的経営変革の切り口としてどうしてもこれは前進させなければいけない、こういうテーマだと思うわけでございます。 まず基本的に、六十三年に閣議決定されたいわゆる経済運営五カ年計画、これで平成四年までに千八百時間を達成する、こういう目標が掲げられているわけでございます。昭和五十四年の八月に新経済社会七カ年計画がございまして、そこでも我が国の労働時間の水準を昭和六十年度までに欧米主要国並みにするというふうにしてきたのですけれども、これは計画倒れに終わってしまったという経緯があるわけでございます。今回再び計画倒れになってしまうというようなことがあると、これはゆゆしいことになると思います。 ただ、平成四年までに千八百時間というのはちょっと無理な現状であるというような状況も伺っておりますので、じゃ千八百時間をいつまでに達成するのかということをまずお聞きしたい、こう思うのです。ヨーロッパなんかでは既に千六百時間に向けて動きが始まっているわけでございまして、そういう点を踏まえますと、いつまでにこの千八百時間を達成するという決意でいらっしゃるのか、お伺いしておきたいと思います。
○近藤国務大臣 先生御指摘のとおり、現行の経済五カ年計画は平成四年度末までに千八百時間を目標として努力するということでありますけれども、今平成三年で二千十六時間。毎年毎年大体四十時間弱、三十七、八時間労働時間が減っておりますから、この四十時間の率でいいますと、あと一年ぐらいの間にそれを達成することは極めて困難であろうということでございますが、千八百時間という数字がもう出ておりますので、これを何。年に達成するか。そうすると、二千時間から千八百時間ということは二百時間ですね。ということは、例えば三年で達成しようとすると、これは六十時間で千八百時間ですね。今のレートが約四十時間弱ですから、五割増しにして六十時間、六十時間で三年やって百八十時間、まだ足りない、こういうことですね。ですから、これはなかなか簡単なことじゃない。 ただ、幸い、先ほどから言っておりますように、時短に対して非常な関心がある。関心どころか皆さん決意を持ってやっていらっしゃるということと、それから、我が国は今経済調整過程にあることが残業を減らして実労働時間を短縮するためのある意味では好機にもなっているのですね。ですから、私は、まさにこういう経済調整の時期こそが時短ができることで、片一方で依然として労働力不足だということであれば、土曜日曜働いたのでは人が集まらないということもあって——ですから、労働力不足と経済調整というものを考えていきますと、私は、過去の時期と比較して今ぐらい時短が実行しやすい社会的、経済的環境はない、だからここはひとつ時短で頑張っていただきたい、こういうことでございます。 いつまでにするかということは、今申しましたように、四十時間やっているのを五割増しにしたら六十時間ですから、倍にして八十時間、倍にしても二年半かかる、こういうことですから、今の政府の経済五カ年計画を新しくしようということで検討しておりますし、私の方も雇用審議会の方でこれからの雇用政策についての計画を並行して検討しておりますので、そのあたりでどの辺の数字を引き継ぐか、今問題点をあえて御説明させていただいたらこういうことでございます。
○井上(義)委員 時短の環境は整ってきている、ただ、これは基本的に労使の問題ということでいきますと、先ほど言いましたように労働組合の組織率が二五%ですから、業種によっては進む面もあると思いますけれども、全体で見ますと達成はなかなかできない。そういう点を考えますと、いついつまでにこのぐらいはやるんだとまず結論をきちっと出して、じゃそのために今何をしなければいけないのかという労使の問題、それから、じゃそれをバックアップする国としてはどういう政策を立てなければいけないのかということをやはり明確にしないとこれは達成できないと思うのですね。 それで、具体的にちょっとお伺いしますけれども、労働時間短縮の具体策としては、一つは所定労働時間を削減していく、二つ目は所定外労働時間を削減する、三つ目は年次有給休暇を拡大し、また完全消化をさせる、当たり前の話ですけれども、この三つがあると思うのですね。 それで、まず所定労働時間の問題ですけれども、労基法三十二条では四十時間ということを定めているわけでありますけれども、前回の労基法改正の国会論議の際に、政府は九〇年代前半にできるだけ速やかに移行できるように努力するとして、さらに、九〇年代前半の半ばである九三年までに週四十時間制に移行すべきではないかという野党側の質問に対して、当時の中曽根総理は、実現するように一生懸命努力してまいりたいというふうに答弁されておるわけであります。この九三年というのは来年でございまして、しかも、六十三年閣議決定の経済五カ年計画の最終年度ということになるわけでございます。 生活大国を掲げて宮澤内閣は御出発になったわけでございまして、このスケジュールというのは早めることがあっても遅くなるようなことがあってはこれはスローガン倒れじゃないか、こう思うわけでございまして、ヨーロッパは既に三十五時間への流れができているという状況を踏まえますと、この三十二条の四十時間と、この移行くのこれからの考え方をちょっと教えていただけますか。
○佐藤(勝)政府委員 週の法定時間につきましては、前回の労働基準法の改正のときに週四十時間ということを原則として法定をいたしまして、後は段階的にそこに向けて短縮をしていくということで、昭和六十三年の四月から四十六時間、それから昨年の四月からは四十四時間ということを原則にいたしたわけでございます。 その中で、同じくこの改正法の附則の中で、改正後三年たった時点で見直すということがございましたので、先生が今御質問になっているようなスケジュールといいますか今後の予定という意味も含めまして、新たな時間法制の全体の見直しを開始いたしたわけでございまして、現在中央労働基準審議会でいろいろ御検討をいただいている最中でございます。私どもとしては、この結論を年内にいただきたいということでお願いをしているわけでございまして、その結論をいただいて必要な措置をとりたい、かように考えております。
○井上(義)委員 次に、所定外労働時間の問題でありますけれども、労基法の精神からいって、本来の労働時間というのは所定労働時間ということなんだろうと思うのですね。例外として労使協定によって所定外の労働時間を認めている。例えば労基法では、女性については母性保護等の立場から時間外労働の制限がされておる、しかし男性については坑内労働を除いてこの制限がない。今過労死というような問題まで言われているわけでございまして、いわゆる労使協定によって所定外労働時間を認めるというこの労基法三十六条の考え方自体が実は長時間労働のしり抜けになっているというふうに言わざるを得ないわけでございます。 要するに、労働時間を短縮していくためには、労基法三十六条そのものを改正して、例えば男性にも所定外労働時間の制限というものを明確にするというようなことが必要なのではないか、そう思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
○佐藤(勝)政府委員 ただいま御指摘のように、現在の労働基準法では時間外労働の限度を労使協定で決めるようになっておりますけれども、これはもともとの考え方からいいますと、無制限に認めるという趣旨ではないわけで、どうしてもやむを得ない必要のあるときにその限度でやるというのがもともとの制度の本旨であろうかと思います。その限度を労使の合意のレベルということで制度化をしているものであるというふうに考えております。他方、日本の場合に、不景気になった場合には労働者の数を減らすということをできるだけしないというような雇用慣行もありまして、できるだけ雇用者の数を保持しつつ労働時間によって短縮をするという面がございますので、そういった面から考えても比較的合理性のある制度というふうに考えられてきているわけでございます。 いずれにいたしましても、三六協定や労使協定があるからといって幾らでも長いものがあっていいんだという考え方には法律そのものも立っておらないわけでございますし、我々もそうは考えておらないところでございます。
○井上(義)委員 そこがもうちょっと考えた方がいいのじゃないかと思うところなんですね。 要するに、例えば平成元年二月九日の労働大臣告示の指針では、時間外労働時間の目安時間というのは年間四百五十時間になっているのですね。統計上から見た所定外労働時間の平均値から比べると、はるかに高い数値になっているわけです。そうすると、平均値があるいはそれに近い数値をもってして、これが上限ですよと言われるならいいんですけれども、ある意味ではマキシマムのところにその目安を持ってきているわけでございまして、これについては拘束力がないわけでございますが、そこで残業のマキシマムに近い数字を提示して、これを指導する。聞くところによりますと、監督署の届け出に当たっては、ほとんどのところが、限度いっぱいの届け出をしている企業が多いということでございまして、これでは要するに残業を促進する、四百五十時間まではいいんですよということをわざわざ労働大臣が示しているようなもので、これが逆の考え方にならなければならないのじゃないかというふうに思うのですけれども、どうなんでしょうか。
○佐藤(勝)政府委員 現在の労働大臣告示によります所定外時間の限度の目安は、今おっしゃいますように、年間でいいますと四百五十時間ということでございます。 御承知のように、現実に行われております時間外労働のレベルというのは業種別なりあるいは規模別に大変違いのあるところでございまして、その中で、どの辺をとって目安としたらいいのかということは基本的な問題でございます。一つの考え方は、これは今さら申し上げるまでもないことですけれども、比較的低い限度を定めて、そこに抑えるようにという指導をするのがいいのか、あるいは、その結果それを守るとができないという状態が一般化をするというこ配もあるわけでございますが、他方において実態を考慮しつつ、努力をして守れる範囲で、かつ実態を改善するという実効が上がるようなところでその目安のレベルを求めるということも必要なわけでございます。 そういうことからいいますと、四百五十時間というのは大変長いようではございますけれども、これを定めました二年前におきましては、このレベルで一応定めて、実態としての所定外時間をできるだけ抑えよう、こういう考え方に立っていたわけでございますけれども、最近の実態を見ますと、労働時間短縮の内容として、所定外労働時間を削減するということが非常に大きな要素になってまいりました。そういうことからいたしますと、この目安時間をこのまま維持をしていくのは必ずしも適当ではないということで、これも見直すべく、現在審議会へ既にお諮りをしている段階でございます。
○井上(義)委員 目安時間というものをさらに下限修正していくということと同時に、もし三六協定在そのまま存続維持するということであれば、今度はもう少し拘束力を持ったものにすべきじゃないかというふうに私は主張しておきたい、こう思います。 それからもう一つ、所定外労働時間の問題で、いわゆる三十七条で定めております時間外労働の割り増し賃金規定の問題であります。 本来、所定外労働時間というのは一定限度で臨時的に行われるものであって、恒常的なものであってはならないということから、いわゆる抑制効果と勤労者に対する代償措置ということで定められているわけでございますけれども、現行二五%ということで現実的にこの抑制効果というものを果たしていないのじゃないか。その意味からいいますと、連合等では五〇%にすべきというふうに主張しているわけでございますけれども、割り増し賃金規定も一つの重要な要素だと思いますが、この点についてのお考えぱどうでしょうか。
○佐藤(勝)政府委員 この割り増し賃金率につきましての議論は最近いろいろなところで行われているわけで、とりわけ所定外時間を減らすためにこれを上げることがいいのではないかという議論が広く行われておることはよく承知をいたしておるわけでございます。 外国の例を見ましてもいろいろでございまして、法律で全く規定をしていないような国も先進国の中にございますし、あるいは法律で規定をして二五%としている国も日本のほかにもございますし、あるいはそれより高い率を定めているところ、いろいろやり方があるわけですが、押しなべて、今、労使協定で二五%より高い率を定めている例が比較的多いように思います。 その中で、我が国についてどう考えるかということでございますけれども、割り増し率の長時間労働抑制効果は今先生おっしゃったようなことでございますが、一方におきまして、時間短縮それ自体がコストの面に対する影響が非常に大きいところに割り増し率を上げるということがどういう効果を持つのだ、ダブルパンチではないかというような考え方をとる方もおられますし、あるいは、最近は収入よりも時間を選ぶという方の割合が労働者の中でもかなりふえてきてはおりますけれども、なお所得選好が高いということになりますと、むしろ時短に対しての効果というのは一体どっちに働くのかということをお考えになる方々、いろいろな議論があることは御承知のとおりでございます。 現在、この問題も含めまして、基準法の労働法制全体の問題につきまして、先ほど申しておることの繰り返しになりますけれども、審議会で熱心な議論が行われておる状況になってきておりますので、今まで申し上げてまいりました点、あるいは先生がおっしゃいました点も含めまして、そういうところでこれから議論がされていくもの、こういうふうに考えているところでございます。
○井上(義)委員 その次に、年次有給休暇の問題でございます。 労基法三十九条で、一定の条件を満たした勤労者に対して年休を与えるよう使用者に義務づけております。また、行政通達においても、年休は勤労者の権利であることを明確にしているわけでありますけれども、これを使うか使わないかというのは勤労者にゆだねられている。我が国の労使関係の現状では、会社を休むということはかなり遠慮が伴うのが実情で、このために病気であるとかよほどのことがないとなかなか休まない。これが年休の完全消化を妨げている大きな原因だと思うのですね。この遠慮があり、とりにくい現状をどう打破するかということは、労働時間短縮にとって大事な問題です。 この際、発想を変えて、企業がこの消化に気を使うように、例えば年休の消化を義務づける、あるいは年休の消化率の悪い企業名を公表するとか、何か強制措置を伴うような措置が必要なんではないか。西ドイツのある会社では、年休をとれば逆に割り増し賃金を払うというぐらいの決意でこの年休を消化させているのですね。ここはやはり抜本的に考えないと、なかなか変わらないのじゃないかと思いますが、これについてどうでしょうか。
○佐藤(勝)政府委員 年休の消化率ということになりますと、実際に付与されている日数の半分をちょっと超えるぐらいしか消化をしていないという実態の中で、その理由が、休んだ後がえって忙しくなる、あるいは周りの人に迷惑になるということが大きな原因になっているということは調査にも出てきているわけです。 そういう点からいいますと、労使の意識改革も必要ですけれども、意識の問題だけではなくて、年休をとっても業務に差し支えないような体制をあらかじめ考えておくということ、これは従来必ずしも行われていなかったことですけれども、そういう点の工夫も必要なんで、そういう点も含めた問題について、連続休暇取得促進要綱というようなものも労働省でまとめまして啓発に努めているところでございます。 最近ではそういったもろもろの内容を取り入れて企業でいろいろな工夫をしている例が多くなってきているという状態もございまして、そのことも大事でございますけれども、もう一つ制度的な問題としましては、御承知のように六十三年から実施をされております改正基準法の中では、年次有給休暇の計画的付与ということで、一部の日数につきましてあらかじめ年の初めに計画を立てて消化をできるような制度を新たに取り入れたところでございます。 それ以外にもいろいろな問題がございまして、例えば労働者が請求をしたときに使用者が与えるというのが現在の制度の基本でございますけれども、むしろそれを事業主がとらせなきゃいけないような制度にしたらどうだというような御意見もございます。そういういろいろな御意見の中で、これも労働時間法制全体の見直しの中でこれから議論が行われていく、こういう状況にございます。
○井上(義)委員 先般の予算委員会で我が党の市川書記長がサービス残業の問題について御質問いたしました。そのときに、労働者の勤務条件の実態が正確に把握できるような統計がとれるように調査検討するという御答弁をいただいておるのですけれども、実はこのサービス残業という問題は、労働時間短縮の陰に隠れた非常に重要な問題でございまして、この解消ということは、実質的な生活大国、ゆとり、豊かさを築いていくという意味で非常に重要だと思うのですね。 この調査検討というお話があったのですけれども、これについてその後どうなっておりますでしょうか。
○佐藤(勝)政府委員 まず、今の御質問自体にお答えする前に一つの前提を申し上げておきますけれども、毎月勤労統計値、我々がここでときどき申し上げております数字は毎月勤労統計の数字でございますけれども、この数字がいわゆるサービス残業のようなものを反映していないのではないかということをよく言われます。ただ、統計のとり方自体は、賃金の支払いの対象になっているかどうかを問わず実際に労働した時間を書く、こういうことになっておりますから、それに従って記入がされている限りは、先生がおっしゃるような問題は大きな問題ではないというふうに思います。 しかしながら、一方においてサービス残業というような実態もあるということでございますので、事の性質上、調査して出てくるものかどうかというお答えは、かなり問題でございます。そういうものでとらえられないのでそういったような言葉が出ているということも考えられますので、毎勤統計が正確にとられるという努力は別途いたすつもりでございますけれども、一方においてサービス残業の方の問題というのは、今申し上げましたことも含めましてなおよく研究をさせていただきたいと思います。
○井上(義)委員 最後に大臣、この労働時間短縮の問題は非常に重要な問題でございます。今後も引き続きやっていきたいと思っておりますけれども、これまでずっと指摘してきましたように、これは労使の問題にとどまらず、どう枠組みをつくっていくかというこの制度の政策の問題が非常に重要である。そういう意味では、労基法の改正であるとか、あるいは時短促進法というようなことも考えられているようでございますけれども、そういう枠組みをどうつくるか、社会的なルールをどうつくるかということについて、最後に大臣の御決意をお聞かせいただきたいと思います。
○近藤国務大臣 労働時間短縮につきましては、現行の改正労基法の中で一応四十時間にして、それを附則で、大臣告示で別途指示しているわけでございますが、こういうことを片や遵守してもらいながら、一歩突っ込んだ具体的な労働時間短縮の促進を図っていきたいと思います。それが現在私どもの準備しております労働時間短縮促進法でございまして、国が全体としての計画をつくりまして、それから各企業ごとに労使を代表する形の人に、組合がないところは労を代表する形の人たちと話し合いをして、各会社ごとに計画をつくっていただく。 ただ、これは個々の会社の問題ではなしに、例えば下請、元請の関係もあって、元請は時間短縮するけれどもそれを全部下請にしわを寄せてしまうこともあれば、また、各企業内で地域ごとに競争するような、例えば建設会社の場合なんか、自分がやったってあっちがということがありますので、そういう元請、下請の関係だとか、地域ごとについても時短が促進できるような形の条件整備ということを、これは地区地区の労働基準局なり監督署が中心になって、また県や市と相談しながらやろう、こういうことで具体的な計画を会社ごと、そしてそういう業界、地域ごとに進めるような体制を今後整備し、片一方において、そういう形のいわば指導強化と同時に、それができるために必要な、例えばロボット化、省力化融資について、既に現在中小企業労働力確保法の中で特別の低利融資という規定がございますけれども、さらにこれを大いに積極的に活用していただく。そういういろいろな角度からの労働時間短縮に向かって具体的な施策をこれから精力的に講じてまいりたい、私はかように考えております。
○井上(義)委員 以上で終わります。
○川崎委員長 金子満広君。
○金子(満)委員 限られた時間ですから、端的に質問したいと思います。 年間労働時間千八百時間というのはもう常識みたいに言われますし、近藤大臣も所信表明で繰り返し言われていることなんですね。 それで伺いたいのは、千八百時間の積算の基礎、こういうようにすれば千八百時間になるんですという基礎があると思うのですね、ただ漠然とじゃなくて。それを労働省としてどういうふうにやるか、最初に伺っておきたいと思います。
○佐藤(勝)政府委員 年間総実労働時間千八百時間になるためには中身はどうかということだろうと思いますけれども、中身は、一つは所定時間につきましては完全週休二日制、それからもう一つは年次有給休暇につきましては二十日付与の二十日消化、それから時間外労働につきましては年間百五十時間程度、これが実現しますと、あとはいろいろな祝祭日がありますので、あるいは欠勤の日もございますけれども、大体千八百時間になる、こういうものがあえて計算の基礎と申しますか、申し上げれば以上のようなことでございます。 〔委員長退席、永井委員長代理着席〕
○金子(満)委員 それでも千八百時間を越えてしまうんですね。現在政府が公にしている点でいうと、一日八時間労働、週四十時間、それから週休二日制ということ。それから、実際には年次有給休暇は現在十日なんですね、これを二十日にしたい。そして祝祭日、休日がございますね。これを全部入れてどうなるだろうか、こういう問題ですよ。そうすると年間労働日は幾日になるのか、二百三十四日になると思うのですよ。これだけでも千八百時間に近づくわけですね。それで年次有給休暇十日だったらもう千八百時間超えてしまうんです。ですから、これで千八百時間にするというのは、いいかげんな目測とかこの辺でとかいうのじゃなくて、年間の労働日はこれだけにする、時間外労働はしたがってこの範囲におさめなければならないんだ、連休を含めて二十日間は絶対実現するというようにならないと、うたにうたっていてもどうしようもないんですね。外国に、千八百時間です、そうか、幾らか考え直したかというようなことだけでは済まないんですね。 ですから、もう一度伺いますけれども、千八百時間について厳密な計算をしたことはあるんですか。
○佐藤(勝)政府委員 ただいま余り詳しくごちゃごちゃと申し上げるのはなんだと思いまして非常に簡単に申しましたけれども、厳密に計算したものはございます。 それによりますと、千八百時間と申しますのは、出勤日数が二百二十三日、欠勤日数が三日、労働日数が二百二十六日、休日、休暇の日数が年間百二十九日というようなこと、それから所定外時間が百四十七時間、所定内時間が千六百五十四時間ということで千八百一時間になる、詳しく申し上げますればそういうことになるわけでございます。
○金子(満)委員 そこで、前回も申し上げたわけですけれども、大臣、これですよ。局長は御存じのものですが、さっきも質問がありましたけれども、「時間外労働協定を結ぶに当たって」労働省、都道府県労働基準局、労働基準監督署が出して、これは今使っているわけですね。 先ほどの質問の中で局長からお答えがありまして、見直しするということですが、前回私が質問したあの段階では、まだ、見直しする、取りやめるということは言わなかったのです。ただ、大臣は見てないからよく見て検討させてもらうということは言いました。そこで、きょう見直しということになったんですが、大臣、これはもう見直しということでよろしいですね。
○佐藤(勝)政府委員 大臣の前に私の方から一言。 現在の告示は平成元年にできたものでございます。御承知のとおりですが、そのときに二年たったら見直すという了解事項がございまして、それに基づきまして今回見直しに着手をすることになったわけでございます。 見直しの中身でございますが、先回の労働委員会で先生から御指摘のあった点がどうかというよりも、全体の見直しということで考えております。
○金子(満)委員 大臣、見直しということですけれども、これはもちろん大臣も確認できることです。よろしいですね。 では、よろしいということを大臣の言葉で確認しますが、もともと一九八二年のときには年間の目安は、四百五十時間はなかったのですよ。それで八九年のときに年間四百五十時間をつけたのです。四百五十時間はどう計算しても合わないのですね。したがって、千八百時間に対して時間外労働年間四百五十時間というのは、まず整合性がないということなんです。これが労働省の文書で出ている限りは真意を問われるのですよ。 大臣は口ではああいうことを、きれいごとを言うけれども、何だ、基準監督署で配っているのはこれじゃないか。春闘の中で時短問題がありますから、私も幾つかの基準監督署の問題を聞いてみました。みんな問題になっております。けれども、上から何とも言ってこないから引っ込めるわけにいかぬと言うわけです。こういうのが幾つか出ているから、大臣、せっかく見直しということになりましたから、私はこれはきょう以後使用しない方がいいと思うのです。これは大変誤解を生んでいるのです。大臣の言っていることと違うじゃないかというのはどこでも広がっておりますから、この使用は、労働省としても見直しということで、別にこれでなければできないということではないのですから。この点どうですか。
○佐藤(勝)政府委員 現在の告示は、これは正式な手続を経て現在有効な告示でございますから、新しい告示が公布されるまではこれに基づいて仕事をするのが我々の責務であろうと思っております。 なお、四百五十時間は非常に長いというお話でございますが、いろいろな実態がある中で、どうやったら現実に少しでも減らしていけるかということを考えながらのあり方でございます。現実の問題と、あるいはこれを規則ですぱっと切れば減るというものであれば我々も余り苦労はないわけでございますけれども、その辺を考えながらどうやっていくかということにつきましては、みんなが苦労をしながら進めたいと考えているところでございます。
○金子(満)委員 もともとこれは労働省の大臣告示なんです。でも、見直しするということは今大臣が確認したのだから、まだ生きておりますから生きておりますからといっても、これをやったら矛盾が拡大するだけですよ。私は、ここのところが官庁機構、官僚の悪いところだと思うのです。そういう点では、大臣は新鮮な感覚でなったわけですから、これはまだ正式に見直しの答えが出るまでだめですじゃなくて、私は、これは使用はやめるように言えると思うのですね。法律じゃないのですから、採決とらなくたっていいんだよ、大臣がうんと言えばもうそれでOKですからね。それをやらないと、本当に現場の、基準監督署の職員は困っているのです。今みんな、質問が出ますからね。大体、労働省の職員がみんな困っているのじゃないですか。
○佐藤(勝)政府委員 この告示は、御承知のことと存じますけれども、三十六条に基づきます協定の届け出がありましたときに、この目安時間を超えているものにつきましての指導をこれによって行っているというものでございまして、新しい告示ができる前にこの告示を、手続としてもこれを直ちにやめるなんということは考えられないわけでございますが、最初にこの告示がつくられました以前の状態に戻るということでございまして、指導のよりどころがなくなるということでございます。 監督署の職員が困っているというお話がございました。私は、そこをここでそう言われて確認をしたわけではございませんけれども、監督署で指導するよりどころでございますので、監督署でもこれを大事に考えて扱っているものと思っております。
○金子(満)委員 こんなことを幾らしつこくやってもしょうがないけれども、もうこれは余命はないのですよ。生命力ないのです、脳死なんですよ。それをまだまだと、そういうのが私はけしからぬと言うのです。だから、適当に下がやるだろうと言うかう、適当にやってこれを奨励するようなことはないと思いますけれども、これは念のために申し上げておきます。 そこで、関連ですが、時間外労働の割り増し賃金、割り増し率ですね。これは、基準法の三十七条で二五%になっておるのですが、二五%以上ですからね。二五%でとめなくちゃならぬ理由は全然ない。これは最低基準ですからね。 そういう中で、これは大臣に伺いますが、欧米諸国では二五%で通しているところはわずかにありますよ。実際は五〇%、一〇〇%なんです。休日は一〇〇%なんです。これが普通ですから、二五%を上げるという点では、日本でも考えていいし、当然考えていると思いますが、どうですか、その点は。
○近藤国務大臣 二五%はいわば最低の割り増し率でございますから、各企業の現場でそれを超える割り増し率を労使で協定することはもちろん積極的にやっていただいていいわけでありますし、諸外国は率が高いのではないかという御指摘もそのとおりであります。あるという御指摘もそのとおりだと思います。 ただ、当委員会でも再三私申し上げておりますように、何と言ってもことしは時間短縮を進めていただこう、こういうことでございますので、まずこれをきちっとやっていただいて、なおかつ割り増し率がということでまあ首をひねる会社もあるわけでございますので、まず時短を進めて、これが定着した上で今度は二五%をさらにやる。法律やそういう規則で決めなくても、労使、各会社で決められることでもございますので、私は、当分は二五%を決めておいた上でそれぞれ現場で、しかるべく労使で話し合いでお決めをいただくことではないかな。ともかく時短だけは積極的に進めさせていただきたい、こう思っておるわけであります。
○金子(満)委員 簡単に、問い直しですけれども、時短をやる、それが完成したら次に時間外労働に対する割り増し賃金の率を決める、こういう縦線じゃないわけでしょう、同時にやったっていいわけでしょう。二五%を超えるということはいいことだと私は思っているのですよ。また、そうあるべきだ、労働省の行政指導の面でもできるだけそうしてほしいということは言えると思いますが、どうでしょう。
○近藤国務大臣 二五%を超えて上げられる力のある企業もございますれば、地方の中小企業なんかの意見も私よく聞くわけでありますが、もう二五%でも限度いっぱいだという声も実はあることも事実でございます。ですから、それを一律に上げるということではなしに、時短もすれば二五%上げるという、そういう話を取り決める会社があってもいいわけでありますけれども、私ども行政の立場で御協力、御指導をお願いするのは、今の現段階で時短だけはひとつきちっと当面はやっていただきたい、こういうことでございます。
○金子(満)委員 二五%を上げることは、これは望ましい、できれば、そういうことだという、それは気持ちはよくわかります。 そこで、この春闘の中で、たくさんの労働組合から時間外労働についての賃金の割り増し率を上げるという要求が皆出ているのですね。きのうの新聞にも出ていますけれども、そういう中で金属四産業と言われる鉄鋼、自動車、造船、電機、ここはゼロ回答で、率は全然上げませんという。これは、今大臣が言う中小企業じゃないのです。それで、こういう企業の中では、例えば外国に製造工場を持つ。そこで外国人労働者の場合には、その国の条件に応じて割り増し賃金を出しているわけですね。国内ではそれをやらぬ。ですから、外向きはいいけれども、中はだめです、こういう回答が出ていて、これからどうなるかわかりませんけれども、今の大臣の考え方、一般的に二五%を上回る方がいいということは、中小企業は困難にあるけれども、そういう大企業の困難というのはないわけですから、この点は、今の大臣の言葉で、これは確認をいたしませんけれども、進むようにしてほしいと思うのです。 そこで、次は、時間短縮を進める場合、中小企業の問題というのは非常に大きなウエートを占めるわけですね。特に欧米に比べて日本では中小企業、下請企業が物すごい幅を持っている。また、これがあるからこそ今日の経済発展がある、このことは否定できない事実だと思うのです。 そういう中で、労働省では、去年の八月に「「所定外労働削減要綱」の策定について」という文書を出しました。この中に「ゆとりある勤労者生活を実現するためには、労働時間を短縮していかなければならず、そのためには完全週休二日制の普及促進、年次有給休暇の取得促進、連続休暇の普及・拡大に加えて所定外労働を削減していく必要がある。」こういうのを出していますね。これが実行されることを望みますし、一日も早くこういう方向が出なければならぬと思うのです。それから、きょうの日本経済新聞に労働大臣のあれが出ていますが、こういう中で、時間短縮のための融資、特に中小企業金融公庫などの金融機関が時短融資を見直して、もっと広げてやっていくということも述べているのです。これは実行してもらうべきだし、どんどん普及していかなければならぬ。 そういう中で、これもまた先日、二月の末ですか、通産省の中小企業庁が、下請企業の時短を図るために最大の妨げになっている親企業による発注方式の改善を提起しました。私も幾人かの業者にも聞いてみました。これを具体的に促進してもらいたいというのは、内容的に言えば、中小企業の労働時間短縮の妨げとなっている週末発注週初め納入、終業後発注翌朝納入、発注内容の変更等について抑制してくれ、これが中小企業庁ですよ。特に印刷の中の製本関係の下請になると、金曜土曜が多くなってしまう。そうすると、せっかく休もうと思ったのが、もうだめ、土曜残業、日曜は休日出勤、それで月曜が納品、こういうパターンになるので、どうしても発注は月初めにしてくれ、これは当然のことだというこの点が出ているわけですね。それから、中小企業庁では、下請単価の改善もしてくれということとか、あるいは共通の下請企業を持っている親企業では、休日の調整というか、連休も含めて休日の調整をぜひやってほしい、こういうのを関係業界に要請したということになっているわけですね。 実際問題、現在ですら、中小企業、特に下請企業の方は、三Kですか、きついというのは労働時間のことだけでなく、きつい、危険、汚い、これで労働力がどんどん不足する。私は、これは加速すると思うのです。このままいったら、あそこに行って働こうという意欲をなくしてしまうんだと思うのです。そういう意味で、言っていることはいい。労働省の去年の八月のものも結構です。中小企業庁のことも同じです。これを実行することだ。しかし、最大の問題というのは、言うことは言うが、なかなか実行に移っていけない、ここに最大の問題があるんだと私は思うのです。ですから、強制力という問題とか、あるいは義務的にどうするとか、行政的にどのような規制ができるとか、ここをよく考えていかなければなりませんけれども、一番いいのは法律で決めるということだと思うのです。 ですから、労働基準法の抜本的な改正の問題についても、私はそれは、一日八時間、週四十時間、週休二日で、そして二十日以上の年次有給休暇、そして時間外労働、残業についても上限を決め、私どもとすれば、一日二時間で、一カ月二十時間、年間百二十時間、上限で抑えない限り千八百時間にならぬ、こういうものをやっていかなければならぬ。しかし、そこまでいく過程でも、すぐ手を打つべきものはいっぱいあるのですね。 そういう点で、今労働省としてこういうことは打ち出してやっておる、しかしというときに、何をどうして実行するか、この点を基本的なことだけ伺いたいのです。 〔永井委員長代理退席、委員長着席〕
○近藤国務大臣 千八百時間を言いながら実行できなかったいろいろな理由があるわけでありますけれども、先ほど先生おっしゃったような中小企業、元請、下請の関係だとか、発注のあり方だとか、いろいろな問題がありますから、これはあえて申しますが、労働省もこれまで時短をやってきたけれども、今ぐらい真剣にやったことはない。あえて私この際強調して言いたい内閣としても、総理以下みんなこの話をしているわけであります。 そこで、私は、やはり時短を殊に中小企業で実行するためのポリシーパッケージが必要だと思うのです。ですから、労働省がいわばボトムアップといいますか、そういうことをきちっと決めて、それで具体的に中小企業行政の面で中小企業庁にも協力を仰ぐ。また下請、元請関係で言えば、時短することで中小企業の製品の値段が上がってくる面もありますね。それを不当にたたいて買うようなことを元請がすれば、それは公正取引に違反するじゃないかというぐらいのことで、ひとつそっちの方からもチェックをしてもらうとか、そういう面と同時に、やはりロボット化、合理化で時短が進むという面も大いにありますから、これは現在ある融資制度を、まだまだ私はPRが不足であり、もっともっと活用していただいていいと思うのであります。 実は私今言っておるのですが、労働基準監督署のデスクに中小企業労働力確保法等の関係、そういう融資関係の資料も置いてもらいまして、そして中小企業の方が来られたら、こういう制度がありますよ、これを活用してくださいということぐらい、むしろ一つの融資コンサルタントぐらいのことを末端の基準監督署がやったらどうだというようなことも今検討させておりますし、今の制度は制度でいいけれども、もう一歩有利なことは考えられないか。向こう二年、三年の間に思い切って時短する人に対しては、これは現在の率よりさらに下げたような率で融資をするということも、考え方としてそういう考え方があり得ないかというようなことも実は私検討をさせている、こういうことでございます。
○金子(満)委員 労働省が労働時間短縮のために何をするかという点で、たくさんの仕事をいろいろの業界団体に委嘱しているのですね。私も計算してみたら、十二あるのですね。例えばその一つに中小企業時短促進援助事業とか、あるいは労働時間短縮啓発事業とか中小企業における労働力確保のための労働時間短縮援助事業とかもありますし、あるいは企業系列別週休二日制等推進特別指導とか、とにかく十二ありますよ。こういうものを考えてみた場合、例えば中小企業時短促進援助事業は社団法人全国労働基準関係団体連合会、地方の場合には地方的なこれですが、こういうものでやっているわけですね。 そうしますと、問題提起はできるのですが、実行の点になってくるとどうなるのか。大体事業主及び事業主団体なんです。聞きおきますと言っても、悪く言えば聞きおいてやらないということになるのです。罰則もなければ何もないのですね。それで善意に期待するといえばそうで、悪意の人はいないといえばそうなんだが、全部善意で積極的なら来年の三月三十一日までに千八百時間になるわけだから。その点を私たちが考えたときにこういうようなことが一つある。これは委託といいますか、ですから直接やれないわけですよ。それからもう一つは、企業系列別週休二日制等推進特別指導というのは各地方の労働基準局でやっておるわけです。労働省が直接やるわけですね。これも地方の状況を若干聞いてみましたら、人手が足らないそうです。言うことは一人でしゃべれるわけですよ。しかし、やる人は一人しかいないという場合がうんとあるのですね。地方の労働省のいわば出張所ですよ。そこがどんどん人員削減を八〇年代からずっとされてきていると思うのです。時短を促進する、特に中小企業関係に徹底をさせるという点では、とにかく人を集めて話をする以外にない。こういう状態を打破するためには、私は必要な人員は大臣のところでふやしたらいいと思うのです。全然ふやさず、小さな政府で大きな仕事といったら、下手をすると、小さな政府で何もしない、現地はしゃべっているだけというようになりますからね。 この二つの点、委託の方と自身でやれるという点について、何か改善を図った方がいいと思いますが、どうですか。
○近藤国務大臣 先生おっしゃるのはよくわかりますが、まず、今労働力不足、人手不足なのになぜ時短をするんだ、逆じゃないかという議論があります。私は、むしろ人手不足だから時短をしなければ、週休二日でなければ人が集まらない、それは地方の中小企業ですら全部わかっておるのです。ですから、最初言いましたように、今くらい関係者が時短をしなければならないという思いが強いときはないわけでありますので、これまでもやってきましたけれども、これまで以上に積極的にやる、まさにそういうタイミングじゃないか。ただ、さっき言いましたように、そのために必要な設備投資のための融資だのそういったことについては、これまでもありますけれども、さらに考えられないか検討しようと申し上げました。 それから、基準局、監督署の人数が足りないじゃないか、こういうお話でありますが、私も二、三のところへ参って話を聞くと確かにそうでございます。まあ数がふえるように御援助をいただくのはありがたいことでございますけれども、労働省はまさに省力化で、労働力を適正に適当に使え、こういうふうに皆さんにお話し申し上げておりますので、労働省がまず率先してそういうことも努力しなければならない立場でございますので、安易にというと言葉がどうかと思うのですが人数をふやすということでなしに、繰り返しますけれども、今本当にそういう社会的な雰囲気が地方の末端にまで盛り上がっておるということで、時短が促進できるベストチャンスに今我々はある。ですから、追い風が吹いていますので、この際御努力をお願いしたい、こういうことでございます。
○金子(満)委員 最後に。確かに時短をしなければ中小企業の労働力の不足は救われないと思うのです。これは言われたとおりで、私も最初に申し上げたとおりです。だから私は、時短をするためには二足の義務づけ、行政指導の上での規制をやる、そして方針を理解しないというか時短に協力しない企業については公にするというようなことをも含めてやっていかないと内緒で内緒でということになりますから、そういう点は今後ぜひ積極的にやってほしい。 以上申し上げて、終わります。
○川崎委員長 伊藤英成君。
○伊藤(英)委員 今労働組合は春の取り組みということで鋭意やっている最中でありますけれども、今の労働組合のいろいろな取り組みは、日本の経済あるいは日本の国民の生活の仕方という意味においても非常に重要な取り組みをしているというふうに私は思うのです。それで、一つは今の日本の経済の状況を考えて、いわゆる賃金の引き上げの問題をどういうふうに考えるかということだと思うのです。 大臣にまずお伺いいたしますけれども、今の経済成長の三・五%の目標を達成するという意味において相当な水準の引き上げということが重要だと思うのですが、その辺のことについてどのように認識をされておりますか。
○近藤国務大臣 現在の政府見通し三・五%のGNP成長率を達成するためにいろいろなファクターがございますが、その中で、いわゆる雇用者所得の伸びはグロスで六・一%を想定しております。労働者数の頭数のふえが大体百二、三十万、ですから二%ぐらいの伸びですから、それを引くと一人当たり四%ぐらいの所得の増の計算になるわけでございます。 春闘もさることながら、これは労使でお話をお決めになることだけれども、同時に、現在のような労働力不足の状況を考えますと、いわゆる春闘でカバーできないような中小企業労働者の方々がたくさんおられて、私も地方のいろいろな話を承りますが、大企業以上に労働力不足は深刻でございます。こういった方々は賃金を上げる形で労働力を確保されている面も相当あるので、全体の雇用者所得六・一%、頭数を引いて四%程度の全体としての所得増というのは実現できるのではないかな、こういうふうに考えております。春闘は春闘として、全体の雇用者一人当たりの収入増というのは、人手不足という状況を考えていくと、私はそれぐらいのものになるのではないかなと考えております。
○伊藤(英)委員 この間、予算委員会の公述人として何人かをお呼びして私も質問をいたしました。世界の経済をどういうふうに運営していくのだろうかと考えたときに、今のアメリカの状況は御承知のとおりなかなか大変な状況にある。そしてもう一方の大きな柱であるヨーロッパを考えますと、その中においてもドイツが最も中心になると思うのですが、ドイツも旧東ドイツとの統一ということもあり、昨年に引き続いてことしも経常収支も赤字になりそうな状況であります。要するに、世界をどういうふうにやっていこうかとしたときに、日本の役割というものがどんなに今大きいかということをもっともっと日本のリーダーは認識をしないといかぬという意見がありました。私ももっともだと思うのですね。 そういうふうに考えたときに、現在の日本の情勢を考えれば、じゃ日本はどういうふうに景気をアップするのか、世界の経済状況の中でリードするかというふうに考えれば、これは極めて重要な話だと思うのですね。いかがですか。
○近藤国務大臣 先生おっしゃるとおりだと思いますが、あえて申しますと、三・五%GNPの成長率を達成するのに、例えば日本が輸出をふやす形で三・五%のGNP成長を仮に達成したとしたら、これは今の状況の中では世界に対してむしろ非常にマイナスの要因を持つわけでありますから、したがって、輸出の増大に依存しないで、まさに内需を中心とした三・五%の経済成長を達成するということが最大の課題でございまして、そのために政府といたしましても先般総理を中心として新しい経済対策を考えて、予算を通す、前倒しをする、補正予算はもう早く消化する、いろいろなことを考えておりますので、内需主導型の三・五%の経済成長の達成ということに私たちは全力を尽くして取り組んでおる、それが先生お話しの国際的な我が国の役割にも合致する道ではないかと考えておる次第でございます。
○伊藤(英)委員 今大臣の言われた輸出ではなくて内需を拡大するということが、私も本当に今重要だと思うのです。 実は今の日本の景気の状況というのは、いわゆる在庫調整、製品在庫がいっぱいという状況でありますよ。だから、今いろいろな議論の中で、例えば今の公定歩合を早く下げろとかいろいろな話が出たりいたしますが、私はできることはできるだけやった方がいいと思っていますが、例えば金利の引き下げという話は今の日本の状況の中で本当にそんなに効くんだろうかというふうに考えると、今大臣の言われた内需拡大という意味では、本当は金利の引き下げはひょっとしたらそんなに効かないかもしれない。設備投資か何かでは効くかもしれません。しかし、今は個人消費支出がどれだけ伸ばせるかということですよね。金利を引き下げていったら、物を買おうとする個人からすれば預金の金利もどんどん減っていくわけでありますから、ひょっとしたら一般個人はなかなか消費には向かわないかもしれない。そういう心理に置かれることも事実ですね。問題は、どれだけ個人消費支出を伸ばせるかということが実は現在の経済についての最も重要な視点ではないか、私はこう思うのです。 これは大臣も同感だと思いますが、そういう意味で、今のいわゆる賃金引き上げの意味というのは極めて大きいのだと思うのですね。どうでしょうか。
○近藤国務大臣 先生おっしゃることはよくわかります。マクロで見ると、やはり所得の増大が消費の増大につながるわけでありますから、したがって、マクロの雇用者収入の増加が内需拡大の大きなファクターであるということは事実だと思います。 ただ、個々の企業に戻ってまいりますと、私もこの委員会でたびたび言っておりますが、ことしは時間短縮を進めていただきたいと言っておるわけでありますが、時間短縮を進めて、そして今度は賃金のアップというものを考えたときに、会社としては、これは大変だ、見通しがそう明るくないのにそういう賃金支出がふえてしまうということで、企業の大事な投資活動もむしろクールダウンするというようなことになっても、マクロはともかくミクロでは困りますので、そのあたりをどういうふうに考えられるか。 ただ、私がこれを申し上げておりますのは、時短をすることで労働時間が減りますけれども、それが即今度は労働者の現金収入の減ということになりますれば、それがずっといってしまう、言ってみれば時短リセッションになるのかなという心配もあるわけであります。私は、時短を進めていただきたい、しかし同時に、労働者の方々の現金収入はトータルとして減らないところか、ある程度物価上昇もあることでありますから、全体としてふえていただく、そういうこともこれから内需拡大政策の非常に大きなポイントじゃないか、こう思っておるわけであります。 ただ、私、最初申しましたように、今労働力不足という状況の中でありますので、そういう春闘でカバーできる以外の雇用者がたくさんいらっしゃって、こちらの方はある程度賃金を上げていかないと人が集まらないという面もございますので、全体としての雇用者所得というのはある程度の伸びを期待していいのではないか、こう考えておるわけであります。
○伊藤(英)委員 生産性基準原理とよく経営者団体も言われますね。生産性基準原理という考え方と今の労働分配率というものについてどういうふうに認識をされて、今後どう考えるべきだろうというふうに大臣は思われますか。
○椎谷説明員 私が改めて申し上げるまでもないと思うのでございますが、いわゆる生産性基準原理と申しますのは、使用者側でございます日経運が唱えているものでございまして、これは個々の賃金というよりも、むしろ国民経済レベルで賃上げ率というものを考えた場合に、賃上げ率というのを実質国民経済生産性上昇率、つまり実質成長率から就業者の増加率を引いたものでございますが、その枠内で決めることが物価の安定の基礎になるという言い方でございまして、この議論の論拠になっておりますのは、労働分配率を一定と仮定した場合には物価の上昇率というのは賃金上昇率と生産性上昇率の差でございますと、こういうことでございます。 他方、労働分配率と申しますのは、何も賃金上昇だけではなくて、これもマクロの経済活動の結果として決まるものでございまして、例えば経済成長のパターンですとかあるいは就業構造の変化によっても変わるわけでございますので、そういう意味で労働分配率というは、生産性基準原理自身は労働分配率一定という前提を置いた上での物の言い方でございますが、他方、労働分配率は労働分配率として経済活動の結果として決まってくる、こういうものではないかというふうに思っております。
○伊藤(英)委員 私がそれを質問したのは、それでは日本として今後どういうふうに考えるか、もちろんこれはマクロの概念と考えてもいいですよ。日本として今後どういう方向に持っていった方がいいのかなという意味からですが、どのように思っていらしゃるのか。
○椎谷説明員 御質問の趣旨は、その労働分配率の問題について特にどういうふうに考えるのかということだと思いますが、確かに、勤労者生活の向上ですとか、あるいは先ほど来大臣も言われておるように、内需主導によります均衡のとれた経済成長ということを考えていく上でも、経済成長の成果というのが適正に賃金等に配分をされていくということが必要だと思います。 ただ、再三申し上げておりますように、それはマクロの経済としての問題でございまして、個々の企業におきます賃金のあり方というのは、そういう個々の企業の置かれた事情も考えまして労使が真剣に話し合って決めていっていただくということではない一かと思っております。
○伊藤(英)委員 私は、個々の企業はいろんな状況もある、だから、日本全体として見たときに、どういうふうに趨勢としてといいましょうか考えたらいいかなということでありますが、椎谷部長でしたかね、部長に意見を求めでいいのかどうか、大臣の方がいいんだろうと私は思うのですが、今経営者団体も、すべてとは言いませんが、経営者団体の中のそのリーダーの皆さん方の中にも、ああ、日本は世界の中でいろいろ見たりしていると少し考え直した方がいいのじゃないだろうかというふうに思い、強く主張している人もいますよね。経団連の副会長で頑張っていらっしゃるソニーの盛田さんも、日本は日本の経営のあり方として、労働分配率についてもこれこれ、それぞれのアメリカやヨーロッパと比べるとこういう状況になっている、日本はもっとこういうふうに考えなければいけないではないかと提起をしておりますが、ああいう意見は妥当ではないと労働省は考えられますか。
○近藤国務大臣 盛田さんの意見は傾聴に値する意見であると、私も盛田さんの書いたものを読んで思います。 ただ、私は現時点に立って物を判断した場合に、これもたびたびこの委員会で申し上げておりますけれども、時短を何としても促進いたしたい、それは片や労働力不足だから時短をしなければならないという面と、逆に、今経済が調整過程に入っておりますので、大企業の場合には残業残業でやってきたのが残業をやらなくなったということが時間短縮の非常にいい条件をつくった、こういう面もあるわけです。ですから、私は、この際思い切って時間を短縮して、そして、これから景気がよくなったときには、今度は時間をふやさないでいけるようなロボット化とか合理化投資もあわせてやってもらいたい、こう思っておりますので、まずそちらに当面経営として取り組んでいただきたい、こう思っているわけであります。 そこで、盛田さんの議論は議論として、この段階でその労働分配率を労働者側にプラスになるような形がいいのか、既にもうこれは率直に言って景気が悪くなっておりますので、計算上は労働分配率は高まるわけですね、会社の利益は減ってくるわけですから。だから、私の今の個人的な考え方は、そういう時短の方に経営も考えていただいて、そのための条件整備をしていただく。そして、景気がよくなった段階で今度は、よく言われますが、会社中心の経営から、所得を一句分配して、改めて個人の貯蓄を投資してもらうという形で会社が必要な資本調達をしてもらう。今は内部留保で、自己調達の形できたわけでありますけれども、そういう形の会社の資金調達というようなこともこれから考えていくというようないろいろなことを考えていくことで、会社中心の経済から個人中心の経済に漸次パターンを変えていくということではないかと考えておる次第でございます。
○伊藤(英)委員 今大臣の言われた極めて短期的なことを言えば、賃金は余り上がらなくて時間の短縮だけということであれば、恐らくこれは消費をますます抑制するファクターに動くでしょうね、だからそれは避けなければならぬということだと思うのですよ。それは断じて避けなければならぬということでありますから、時間短縮も重要でありますし、時間短縮すればするほど賃金も引き上げた方が日本の経済のためには、これは極めて必須のことになると私は思います。 さっき申し上げたのは何も非常に短期的な話じゃなくて、日本のこれからのやり方という意味で労働分配率の話は真剣に考えなければならぬ。さっき大臣がおっしゃったとおり、今までともすれば会社中心になる。会社の事業を行いますと、これはその企業所得のうちで、ともかく総体的に言えば企業の財務体質を高めることあるいは設備投資等に向かうというような度合いが大きくて、そしてそこに働いている労働者あるいは勤労者も、いわば消費者あるいは生活者という立場よりは、何となく会社人間というのに結果としてなってしまう、その考え方を直さなければならぬ。その結果が労働分配率等にもあらわれてくることになるわけですね。そういうことを真剣に考えれば、さっき部長のおっしゃったような、何となくこれがいいんだ、これが適切だと言わんばかりの発言というのは、私は労働省がこれから日本をどうしようかと考える上においては、これはちょっとどうかなという気がするのですよ。 だから、生活大国にしようというふうに本当に思うなら、そして今のいわゆる会社の経営の仕方、そこに働く労働者の働き方、生活の仕方というものについて意識革命をしようと思うなら、それなりの発言の仕方、行動の仕方があるのだろうと思うのですけれども、いかがですか。
○近藤国務大臣 先生の御指摘のとおり、私は日本の経済を支えてきたいろいろな要素の一つが会社中心主義にあると思うのです。もう会社でみんな頑張って、会社に対するロイヤルティーを持って働いて、それを今度は会社が内部留保しながらさらに投資をする。一部は、欧米の会社にないことでありますけれども、社宅をつくる、寮をつくる。ですから、もうみんな会社中心にやっているわけですね。そして、技術者もいい技術をやったらもうほかに浮気をしないでその会社に全部ささげる、こういうことであった。 私は日本の経済のダイナミズムはまさにそこにあったと思うわけでありますけれども、ここまでまいりますと、今度は会社も大事だけれども個人も大事だというような形にだんだん意識が変わってきて、そうなってくると、いい人材を集めるためには賃金を上げてということは、所得分配率もだんだん今度は上がってくるという形がこれからの会社のあり方になってくる。盛田さんはそういうことを言っていらっしゃるというふうに私も解釈しているわけでありますけれども、しかし当面どうだ、こういうお話になれば、当面、こういう環境の中で会社も組合も何がベストかということをひとつ考えて、現実的な対応をしていただくということではないのかな、こういうことでございます。
○伊藤(英)委員 先ほど大臣は賃金の引き上げもしなければいけないし、時間短縮ということについての重要さを強く主張されておりましたけれども、それに関連して今時間外の割り増し率を労働組合も取り組んだりしておりますが、労働時間短縮と時間外割り増し率の引き上げというか割り増し率というものの関係について、どういう認識をされておられますか。
○近藤国務大臣 私はばかの一つ覚えみたいに、今度の春闘は時間短縮だよとお願いしておるわけでございますが、時間短縮をして、今度割り増し率を上げてしまう、そうすると、景気はいま一はっきりしない、経営の方々もいろいろ御苦労されると思いますので、現在の、それはお任せすることだけれども、二五%の最低率は変えないでおいて、時間短縮をまずやっていただいて、それから次の段階で場合によってはまた労使話し合っていただいて二五%をさらに上げていくということはあってもしかるべきでありますけれども、ここで時短も割り増し率もと両方を同時に求めるよりも、私は今は時間短縮に絞っていただいて、そして後でそのお話をしていただくということではないか、こう考えております。
○伊藤(英)委員 今労働基準法で時間外割り増し率二五%以上と決まっていますね。なぜ二五%以上といういわゆる割り増し率なる概念があそこにはあるのでしょうかね。
○佐藤(勝)政府委員 なぜ二五%があるかということでございますが、これは所定時間以上に働くことによります労働者のいろいろな面での負担に対する代償措置という面が非常に大きいかと思います。また、一方から見ますれば、ある程度のコスト効果によって無制限に時間外労働がふえることを防ぐという機能もあろうかと思っております。
○伊藤(英)委員 これはいろいろな見方もあるのかもしれませんが、私はこう思っているのです。 これは労働時間に対する価値だと思っている。価値論だと私は思っているのです。所定内の時間はこういうふうにありますよ、所定外で働くときの、二五%か三〇%か五〇%かわかりませんが、ともかく時間外の価値、これを例えば二五%なら二五%というふうに一応認めましょうというふうにしているのですね、だと思います。大臣が時間短縮が大切だ、時間短縮が大切だと、しかもばかの一つ覚えのようにやりますと言われるなら、時間外割り増し率はその次ですよというような話は私には全然理解ができないですね。 要するに、これは働く時間が例えば一日八時間なら八時間といたしましょう。その八時間働いた後の時間というのが自分たちの人生にとって、自分たちの生活にとってどんなに大切になっているんだよ、どんなに価値が高くなっているんだよ、過去自分たちが認識していたよりは今の方がどんなに価値が高いと私たちは認めるよ。だから時間短縮をするんでしょう。例えば二千何時間だとか、それを二千時間にしよう、千八百時間にしようというのは、その期間は一生懸命働くんだけれどもそれ以外のところは自分たちの人生にとってどんなに大切になっているかという意味だと思うのですよ。私は、その認識がなければ、なぜ時間短縮するんだという基本のところにいくと思うのですね。 というふうに考えれば、その価値は高いんだから割り増し率を上げようと考えるのは私は当然の論理だと思うのですね。どうですか。
○近藤国務大臣 今基準局長が申しましたように、割り増し率を上げることで時間外労働というものを抑制する、こういう効果があることはまさにそういうことだと思うわけでありますが、やはり労働時間短縮というものは会社にとってはコスト増大という面もあるわけでありますので、またばかの一つ覚えであれですけれども、時間短縮をして、そしてそれにコストが多少ふえる、しかも、また割り増しか高くなってさらにコストが増大するということであれば、時間短縮はちょっと控えたいというような、そう考える面もあるでしょうから、したがって私は、まず今回は時間短縮にしていただいて、景気がよくなったときに所定外労働がふえてくる、そのときはどうするんだということはまたその段階で労使でいろいろお話しになっていただく。ですから、国全体として二五%を上げるかどうかということについては多少時間をかして議論させていただきたい、こういうことでございます。
○伊藤(英)委員 これは私が言ったのでは僭越なのかもしれませんが、経済というものについて最も造詣の深い大臣でありますから、それでもあえて私は言うんですけれども、この割り増し率というのは、先ほども申し上げたように、いわゆる働く人から見れば価値が高いんだから、それでもそのときに働かなければならない、あるいは働くという状況が起こるかもしれませんね。したがって、価値の高いその時間を自分はそのために費やすわけですから、それについて割り増し率をアップするのは当然のことでしょう。それから企業の方からしても、これは言われたようにコストアップになります。それは、価値が高いというふうに世の中も見るわけだから、当然の話ですね。そういうものが実は時間短縮を推し進めることにもなるでしょう。 どうしても何かの理由で働くという場合には、それはそれだけのコストを払ってもらいましょう、これが私は経済の基本的な原理だと思うのですね。それは自分たちの価値観と経済原理というものがマッチする話ですよね。これはある経営者と話していましたら、ある経営者も言っていました、なぜもっとそういうことをやらないんだろうか、割り増し率をアップするということをですね。コストは高くなるけれども残業してもらおうという話は、経営者として考えればあるかもしれません。だけれども理にかなっているじゃないか。それを労働省が何となく順序があるよと言うような感じというのは、私には理解しにくいなという意味なんですね。 それからもう一つ、これは先回も申し上げましたけれども、今日本は本当に国際的になっていますのでは日本が、他のアメリカならアメリカ、ドイツならドイツの会社と熾烈な競争をやっていくといたします。そのときに、時間当たりの賃金がどうのこうのという話ではなくて、そこに割り増し率のような制度上の差が、かなり差があるときに、こういうのはフェアな競争なんだろうか、フェアなんだろうか。見方を変えれば、ソーシャルダンピングのような性格を持っているということにはならないんだろうか、こういうふうにもし温存するという話は。アメリカやヨーロッパが高くて日本が割り増し率が低かったらですよ。いかがですか。
○近藤国務大臣 それはちょっと私言葉が足りなかったと思うのでありますが、労働省としては割り増し率を上げてはいけないとは言っていないわけでございます。ただ、基準として、そのいわば最低として二五%という数字をこの際三五なり四〇なり五〇に上げるかどうかということについては、現在は二五%ということにいたさせておきます、そこから先はそれぞれ労使がお話しになって、おれたちは三〇がいいよ、四〇だよという話になれば、それはまさにそうしていただいていいわけでありますから。ただ、時短を進めたいというこの段階で、同時に最低の割り増し率も上げなさいということを言うことではないのではないでしょうかということを実は申し上げておるわけであります。
○伊藤(英)委員 時間も参りましたので、最後に、今の件について質問をして終わりたいのですが、この問題については本委員会でも前に私も申し上げました。そして、そのときに佐藤局長は、海外の問題も含めて私が申し上げで、この問題についてこれは検討したいという話をされました。もちろん今中央労働基準審議会でも審議されていると思いますが、この割り増し率の引き上げについてどういうふうに検討をしているのか。その状況、スケジュール的なことも含めて質問して終わります。
○佐藤(勝)政府委員 労働基準法の時間法制につきましては、ただいまここで御議論の行われておりました割り増し賃金率、あるいは時間外労働の問題も含めて、労働時間法制全体につきましての見直しを昨年の四月に中央労働基準審議会にお願いをいたしました。私どものお願いとしてはことしじゅうに結論を出していただきたい、こういうふうにお願いをしているところでございます。
○伊藤(英)委員 終わります。 ————◇—————
○川崎委員長 次に、内閣提出、労働保険の保険料の徴収等に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。近藤労働大臣。 ————————————— 労働保険の保険料の徴収等に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○近藤国務大臣 ただいま議題となりました労働保険の保険料の徴収等に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 近年の雇用保険の失業給付に係る収支状況は、平成二年度末決算において積立金規模が徴収保険料額の二倍を上回るに至るなど黒字基調で推移しており、保険料率を現行のまま維持すれば、単年度収支の大幅黒字が続くことが予想され、これに伴い積立金もさらに上積みされる情勢にあります。 一方、雇用保険制度につきましては、雇用情勢等の諸事情の変化を踏まえ、高齢者問題への対応その他検討すべき諸課題があり、今後、十分かつ慎重に検討を行うことが必要となっております。 政府といたしましては、このような状況を踏まえ、当面の対応といたしまして、暫定的な措置として失業給付費の負担者である労・使・国庫の負担をそれぞれ軽減することとするほか、失業給付に関して速やかに対応すべき事項について所要の措置を講ずるため、この法律案を作成し、関係審議会にお諮りした上、提出した次第であります。 次に、その内容の概要を御説明申し上げます。 第一は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正であります。 平成五年度以後当分の間について、雇用保険率を千分の三引き下げることとしております。 第二は、雇用保険法の一部改正であります。 その一は、失業給付の改善を図ることであります。 定年後における継続雇用の促進に資するため、定年時の賃金と比べて継続雇用終了時の賃金が低い場合には、労働大臣が定める方法による定年時の賃金をもとに基本手当日額を算定することができるよう賃金日額の計算の特例について規定の整備を行うこととしております。 また、現在賃金水準が二〇%を超えて変動した場合に基本手当日額表を改定することとされておりますが、最近における賃金水準の変動に十分対応することができるようにするため、賃金水準が一〇%を超えて変動すれば基本手当日額表を改定することとしております。 このほか、基本手当の減額に係る内職収入控除額について、前回の改正後の賃金水準の変動を考慮して引き上げる等の措置を講ずるとともに、高年齢者等所定給付日数の多い受給資格者の再就職の一層の促進を図るため、再就職手当の支給要件の改善を行うこととしております。 その二は、国庫負担に関する暫定措置を設けることであります。 求職者給付に要する費用に係る国庫の負担額について、平成四年度につきましては、現在国庫が負担することとされている額の十分の九、平成五年度以後当分の間につきましては、現在国庫が負担することとされている額の十分の八に相当する額とすることとしております。 以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○川崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時四十二分散会 ————◇—————