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121回国会参議院1991/09/24

法務委員会公聴会 第1号

発言数
111
登壇者
11
会派数
5
開催日
1991/09/24

会議録

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会公聴会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  去る十九日、種田誠君が委員を辞任され、その補欠として北村哲男君が選任されました。  また、去る二十日、八百板正君が委員を辞任され、その補欠として佐藤三吾君が選任されました。     —————————————

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) 本日は、借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案につきまして、お手元の名簿の四名の公述人の方々から御意見を伺います。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ本委員会のために御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。  本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の法案審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず飯塚公述人にお願いいたします。飯塚公述人。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 飯塚でございます。  私は、当委員会で御審議中の借地借家法案に関し、日本弁護士連合会の意見を踏まえまして、賛成の立場で意見を申し述べます。  本借地借家法案は、日弁連の意見をほとんど採用された形で作成されているものと考えておりますので、本案成立までの日弁連側の意見形成の過程についていささかの説明をさせていただきます。  日本弁護士連合会におきましては、昭和六十年十一月に公表されました法務省民事局参事官室作成の「借地・借家法改正に関する問題点」に対し、各地弁護士会から寄せられた意見照会の回答を基礎といたしまして、昭和六十一年五月にこの問題点に対する意見書を作成し、法務省当局に提出いたしました。  この意見書作成の基本的な姿勢といたしましては、現在の社会経済情勢のもとで、法制度の整備、公平な利害関係の調整及び借地・借家の取引慣行等に関し、いかに適切に対応すべきかの視点から意見を取りまとめることといたしました。  参事官室が作成しました問題点並びにその説明に対する各弁護士会の意見の主なものを紹介いたしますと、人口の都市集中による都市及びその周辺における土地の希少性の増大と地価の異常な高騰に伴い、戦前には予想されなかった借地価額の高額化現象が起こり、地代と地価のアンバランスにより、地代の持つ意味の不明確さをもたらしていること、借地・借家関係の態様も多様化しており、現行法が当事者間の利益調整に適当であるとして定めている方策と現実の要請との間にずれが生じてきているのではないかと思われること、また、現行法の規定が、現実の借地・借家取引上生ずる問題に十分に対応することができない面があるのではないかなどの指摘をしておりまして、参事官室が作成した問題点には、このような新しい社会経済現象に対応しようとする斬新な構想も盛り込まれていると評価し、新しい社会経済情勢に法改正をもって妥当な基準を確立し対処すべきであるという意見がありました。あるいは借地・借家の取引慣行について、適切な法制度の整備が必要であるとする意見が多くありました。  その一方におきましては、我々弁護士は、借地・借家問題につきましては貸し主または借り主の代理人として、あるいは調停委員や法律相談などを通じて、それぞれの立場から多角的な関与をしていることから、従来裁判例などの積み重ねにより、長年にわたって確立された権利を不当に弱体化させ、国民生活に悪影響を与えることのないよう最小限の改正にとどめるべきであるとの意見、また、借地・借家関係は地域によって需給の態様が異wなるので、土地利用の実態に応じてきめ細かな配慮をすべきであり、大都市を中心とする 地域に発生している問題への対応を全国一律に適用すべきではないとする意見などが出され、参事官室の問題点に対する意見につきましては、日弁連としては統一見解をまとめることはできませんでした。したがいまして、賛否両論の併記あるいは検討を要するとして意見を留保した事項も数多くありました。  各弁護士会のこのような視点は、法務省当局が平成元年三月に意見照会を求めてきました借地・借家法改正要綱試案に対する回答においても、同一視点に立ったものが多く見受けられました。日弁連におきましては、司法制度調査会内に設けられた部会において、これは約三十名の各地弁護士により構成されておりますが、各単位会の意見を十分考慮しながら可能な限り意見の統一を図るよう努めました。そして、改正要綱試案に対しては、基本的には土地住宅事情及びこれをめぐる社会経済情勢にかなりの変化が生じていることは認められる、したがって両方を見直し、改正の必要性、改正内容を検討することは有意義であること、借地・借家の問題は、各地域により実態や慣行に相違があり、これらについての配慮を十分にすべきであること、さらに、既存の借地・借家関係に対し過大な影響を及ぼす両法の改正は避けるべきであるとの認識のもとに改正要綱試案に対する意見書を作成いたしました。  私は、昭和六十年五月から日弁連の推薦を受け、法制審議会民法部会幹事として本改正問題を扱いました財産法小委員会に所属し、財産法小委員会並びにその準備会に出席して、逐一日弁連の意見を反映させるべく関与してまいりました。したがいまして、本国会に継続審議中の借地借家法案について申し上げますと、ほぼ日弁連の意見を取り入れられていること、さらには衆議院において、新たに締結される普通借地契約に関して、当初の存続期間経過後の更新期間について、第一回の更新期間は二十年とする旨の修正がなされたことにつきましては、借地権の保護に十分配慮していただいた点を高く評価したいと存じておるわけでございます。  さて、この法案の全体を眺めてみますと、現行法の借地法、借家法を改正し、新たな契約関係に適用しようとする部分と、新しい契約関係を創設しようとする条項の二つに大まかに分類することができるのではないかと思います。  そこで、現行借地法を改正する条項の主な点は、次に述べる条項になろうかと思います。  まず、借地権の当初の法定並びに最低存続期間を三十年とすること、それから借地権の更新後の期間について、先ほど述べました第一回の更新期間を二十年、二回目以降の更新期間を十年とすること、それから借地契約の更新拒絶の要件、いわゆる正当の事由について具体的な例示を挙げたこと、それから建物が滅失した場合の再築について、残存期間を超えて存続すべき建物を築造する場合に、借地権者から借地権設定者、いわゆる地主に対し通知するという制度を導入するとともに、更新期間中の建物の再築について、借地権設定者の承諾が得られないときは、裁判所による承諾にかわる許可の裁判を求めることができる非訟事件手続を採用すること。借地権の対抗力に関し、登記されている建物が滅失した場合に、明認方法により借地権を確保する制度を採用したことなどであります。  これらの改正条項の中で、特に重要な点は、第六条の借地契約の更新拒絶の要件、すなわち正当事由の問題でございます。この正当事由の存否につきましては、借地権の存続、消滅という重大な効果に直接影響するものである以上、その内容はできるだけ明確であることが望ましいわけでございますけれども、絶対的な事由を列挙することは困難であり、また適切ではありません。結局のところ、正当事由を判断する際に考慮すべき事項を例示的に挙げた上、包括条項を定めざるを得ません。第六条に例示された事項は、これまで実務で形成されてきた判断事項を適切に取り上げているものと言えます。特に改正妻網試案において例示されていました「土地の存する地域の状況」が除かれたことは、正当事由の判断の背景にある事情とはいえ、借地契約の当事者間における諸事情とはその性質を異にするものでありまして、土地所有者の土地の有効利用を例示に挙げることと実質的に同じ効果を持つものでありまして、その除外は適切な措置であると考えます。  次に、借地に関して新しい契約関係を創設しようとするものの主な点は、定期借地権の設定ということでございます。時間がございませんのでその内容は省略いたしますが、いずれも、この三種類の定期借地権の設定につきましては、いわゆる借地需要の、ニーズの多様化に対応するものとして日弁連としては一応受け入れ、評価いたしております。  この定期借地権の中で、特に問題になりましたのは、存続期間を五十年以上とする定期借地権についてでございまして、定期借地権上の建物の善意の貸借人の保護についていろいろな議論がなされました。本法案においては、三十五条におきまして、一般的に借地上の建物の善意の貸借人の保護という形で、一年以内の期間内で明け渡しを猶予するということで処理されましたが、やむを得ない借地ではないかと考えております。  次に、借家関係でございますが、借家関係の現行法を改正する主な点は、先ほど申し上げました借地と同じように、正当事由の例示でございます。それからもう一つは、造作買取請求権を任意規定化したことでございます。正当事由の例示につきましては、借地の場合とほぼ理由が同じでございますので、省略させていただきます。  借家関係における新たな制度といたしましては、期限つき建物賃貸借制度の導入でございます。特に転勤、療養、親族の介護、その他やむを得ない事情がある場合に、自己の生活の本拠を離れなければならないとき、一定期間を確定して建物賃貸借契約ができるとした点については、いわゆる国民経済的に見て利用価値のある適切な制度と言えると思います。ただし、この制度の趣旨を十分徹底させる必要があり、乱用の危険を防止しなければならないと思います。  最後に、地代・賃料の増減額の紛争解決の手段として調停前置主義を採用した点について申し上げます。  当面の措置としてはやむを得ないものと考えます。地代・賃料の増減額の紛争は迅速かつ低廉に解決しなければなりません。将来的には、公的機関において適切な地代・賃料の額を公示できる制度を設けるか、あるいは一定の算定方式をつくり出すか、いずれかの方法により紛争の回避を図るべきではないかと思っております。現行制度においては、調停制度を利用することは妥当な解決方法と思います。ただし、これには調停委員会の構成員の資質の向上、待遇の改善など、検討すべき事項が残されているのではないかと思います。今回の民事調停法の改正の中で、調停委員会の決定に従う旨の当事者の書面による合意があるときは、決定により紛争を最終的に解決する制度を新たに設けることとしておりますけれども、衆議院において、調停条項に服する旨の書面による合意については、調停の申し立て後になされた合意に限る旨の修正がなされた点についても、日弁連意見と一致するものとして大いに評価いたしたいと存じます。  借地・借家法の改正問題は、昭和六十年半ばから改正の審議がなされ今日に至っておりますけれども、今回の改正案は朝野一致した形で作成されているものと思われます。かように評価する以上、早急に成立させて法の趣旨を一般に知らしめることが望ましく、それにより新聞報道に見られるような不当な契約交渉を曲がりなりにも排除できるのではないかと思われ、議員の先生方に一層の御努力をお願いし、私の意見陳述といたします。  ありがとうございました。

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) どうもありがとうございました。  次に、宮尾公述人にお願いいたします。宮尾公述人。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) 宮尾でございます。  私は、経済学専門ということでございまして、この借地借家法に関しましては法律関係の議論が大変多いわけでございますが、少しは気分転換ということで経済的な議論もすべきだろうというふうに解釈しております。  私は、経済学と申しましても、主に都市経済学、都市政策、住宅、土地などについての研究をしておりまして、この借地借家法につきましては、したがって、私の著書、論文、雑誌、新聞等に私の意見を述べている次第でございます。私自身借地・借家にいろいろ住んだ経験がございまして、日本でもでございますが主にアメリカ、カナダで十五年ほどいろいろなところに住んでまいりました。そういう個人的な経験も踏まえまして、一応専門家の立場を踏まえて、今回の借地・借家法の見直しについての意見を申し上げたいと思います。  基本的な立場といたしましては、今回の法の改正は基本的に正しい方向を向いておるというふうに私自身は考えております。ただし、幾つか注文をつけたいということで、幾つかお話をしたいと思います。大体二つぐらいの点をお話しいたします。一つは、法そのものに沿った私の意見、評価ということ。二つ目は、その経済的効果ということについてお話をしたいと思います。  まず、この法案の評価でございますが、これは基本的には当事者間、貸し主、借り主の間の対等な契約関係を少なくとも新規契約分についてはできるだけ尊重する、あるいは確立するという方向であって、これは基本的に正しい方向だというふうに思います。  諸外国で生活をしたり、あるいは研究をした経験によりますと、基本的な借地・借家関係というのは、原則として対等な契約関係だということがどの国でも前提になっております。ただし、その原則を踏まえて、特定の弱者その他問題の起こるところにいかに対応するかというので特別法があったり、そういういろいろな対応策というのがあるわけです。日本の場合、その原則がなかなか確立しておらないというのがこれまでの問題だったと思います。したがって、少なくとも新規契約分については、例えば正当事由については、貸し主、借り主両方の事情を比較するということが少なくとも明示をされてくるということは大変評価できるというふうに思います。  ただし、あえて注文を申しますと、既存のものにはこれが当てはまらない、新規分についてこれを適用するということは、一見諸外国にある特別法的な保護的な社会法的な性格を既にこれまで持ってきた、あるいはこれからもそういうことを残すというふうに見えるのですが、しかし私の目から見ますと、それはかなり無原則的に残している面があるわけで、当然既存の部分についても新しい形が両者に、貸し主、借り主両方とも利益になるという側面は十分ございます。また、新しい側面についても、保護的な政策あるいは特別的な方策が必要かもしれません。したがって、何か原則を決めた上で、ある理由のもとに保護的な方策をとるという諸外国の方法にできるだけ近づけていくというのが今後の課題ではないかというふうに思います。  そういう点でよく問題になりますことが、業務用対居住用という問題でございますが、これは諸外国ではどういうふうに考えられているかと申し上げますと、基本的には原則自由あるいは対等な者の間の契約関係ということが原則でございますが、その原則に沿っているのが大体営業用、事業用、特に大規模な店舗、商業などはどこの国でもそういう原則に沿って自由になっております。居住用についていろいろな保護的な措置、特別保護制度がございますが、これは原則でカバーできない問題というものに対する対処として出てくるわけでございます。したがって、例えばよくフランスの例で引かれますように、居住用だけではなくて中小の商業あるいは事業などを保護するという特別法もあるというのは、そういう趣旨に沿ったものだというふうに考えます。したがって、日本の場合、原則をきちんと踏まえた上で、どういう理由で特別法あるいは保護をするかということをこれからきちんと議論していくということが将来の課題ではなかろうか。  もう一つ、日本でその点で問題になりますのが、具体的に申し上げますと、居住用でもお年寄りがそういう法改正によって、はっきり申し上げて追い出される危険が非常に高いというようなことが大きな問題になりますが、これは実は諸外国でももちろんある問題でございます。これをどのように扱うかと申しますと、諸外国ではよくグランドファーザーズクロースというようなことを申しまして、その方一代限りそういう特別な扱いをするというようなことで、無原則的ではなくてその人のためを考えてその人を保護するということになっております。したがって一代限りということで、それが代々続くということはないという歯どめがかかったりしております。ですから、それがいいか悪いかはともかく、日本でもそういう形で、今後原則を踏まえた上でどういうふうに既存のものを考えていくかということが課題かと思います。  それから二番目の、最初の法に沿った点での二番ですが、これは当事者間の交渉の方策として、今回かなり経済的な手段を明示的に出したということが特徴かと思います。私はこれは大変評価しております。例えば、正当事由を補完する財産的あるいは金銭的な給付の申し出を考慮するというようなことは、ある意味で経済的な要素を加味していろいろな問題を調停していくということで、これは大変前進だというふうに思います。現実を追認したというふうに言われていますが、明示することはそれなりに意味がある。純粋に狭い意味での法律的議論ですと、どうしても勝ち負け、ゼロか一が、白か黒かということになりますので、仮にそれが決着がついても後々いろいろな禍根を残すということで、それが現在非常に問題が残っているところだと思うのですが、経済的なものによってゼロと一の間の非常にファジーな解決があり得る。それから地代や家賃の改定というのは、主として経済的な問題については調停、話し合いというようなものを強調する、これもある意味で前進であろうというふうに思います。ですから、全体的に見まして問題はありますが、経済学的に見ますと、法そのものの方向は正しい方向を向いているのじゃないかというふうに考えます。  それから、二番目の話の経済的効果ということについて申し上げますが、これは大変難しいことで、だれもきちんと予測はやっておりませんで、私も今それは努力をしている最中で、結果を申し上げる段階ではございません。非常に大ざっぱなことを申し上げますと、当面いろいろな借地権、借家権のメニューをふやしたということはそれなりに大きな経済的効果があろうというふうに予測されます。大変大づかみに申し上げますと、普通借地権、特に新規の部分の普通借地権をある程度正常化するということは、主に地方の借地に対してかなりの影響がある場合があるだろう。  具体的に申しますと、長野県でいまだにかなり普通の借地というのが設定されておりまして、それほど高い権利金を取らずにかなりの借地が出ております。私の同僚で長野県の飯田におります人が詳しく調べた経過などを見ますと、今、普通借地権を現状以上に正常化しますと無借地権が出る地域は少なくとも出続ける、あるいはもっと出るということになりますから、地方では普通借地権の改定はそれなりに意味があると思います。しかし大都市圏、特に首都圏ではそれでもなかなか借地・借家というのは出にくい状態だと思いますので、その点で、新しい定期借地権あるいは期限つきの借家権というものがそれなりの効果を持ってあろうというふうに私自身は考えております。  大ざっぱな予測というか、それほどでもないのですが、一つの手がかりは、よく引用されております定期借地方式によってどれだけ土地を貸したいかというアンケートがあるというふうに言われております。これは日本不動産研究所でやったもので、いただいた資料wの後ろの方にも出ておると 思うのですが、これで見ますと、調査した個人のうち半分が土地を定期借地権であれば貸したい。法人であれば三分の二が貸したいという答えが出ております。これは調査対象が何かを調べなければいけませんが、私が注目しておりますのは、特に首都圏における市街化区域内農地をどうするかというような問題について非常にこれは大きな影響があるのではないかというふうに考えております。  今、その他の土地住宅政策で大変市街化区域内農地が注目されておりまして、これは農家の方自身がいろんな理由で今後借地をしたい、借家をしたい、貸したいという御希望が出てきておりますが、そういうときに定期借地が大変大きな影響を持つ。今半分といいましたが、それを例えば三分の一ぐらいに考えましても、首都圏三万ヘクタールあると言われる市街化区域内農地の、どのくらいの時間の幅をとるかによりますが、仮に三分の一が宅地化されますと一万ヘクタール、百万戸レベルの家が建つほどの効果があろうというふうに言われておるわけです。  ちなみに、これに関しまして大都市法というのが整備されまして、これから十年間に大体首都圏で四百万戸ぐらい家を提供していこう、そのうち新規の物を半分ぐらい提供していく。そのうち少なくとも七十万戸ぐらいは農地から住宅を出したいという計画がございます。この七十万戸が一体どこから出てくるかということはまだ今のところはっきりしておりません。したがって、先ほど非常に大ざっぱな計算で一万ヘクタールに百万戸というのはかなり過大な数字かもしれませんが、少なくとも七十万戸ぐらいはかなりの部分借地・借家の形で首都圏で出てくれば、特にファミリー型の賃貸住宅がほしいサラリーマンにとっては大変な朗報かというふうに考えます。  それから、その他の土地政策の点に関連することですが、やはりその他の土地政策も農地をいかに有効に活用し、またそれが農家にとってもプラスになるような形にするかという政策一連のものが動き出しております。具体的な例では、改正生産緑地法が今月の初めに既に動き出しましたが、その他農地の宅地並み課税等、そのよしあしはともかく動き出しております。したがって、そういうものの補完的な政策としてこの借地借家法を見ますと、大変大きなしかもプラスの効果があるというふうに考えております。  それから最後に、海外その他で長い経験を持つ立場から申しますと、やはり一言申し上げなければいけないのは、既に日米構造協議で日本は借地・借家法の改正をいわば公約しております。これについても賛否両論あるとは思いますが、少なくともそのように対外的に公約したことを実行するということは大変大切なことでございまして、しかもその目的は日本人の特にサラリーマンの生活をいかによくするか、住宅宅地政策をいかに改善するかという政策の一環として借地借家法が大変注目をされておる。したがって、必ずしも満足とは言いませんが、今回はかなり少なくとも新規分については正常化を図っていくという方向が打ち出されたことは大変評価できるというふうに考えております。  以上でございます。

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) どうもありがとうございました。  以上で公述人お二人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。

野村五男自由民主党

○野村五男君 それでは、宮尾公述人より最初にお聞きしたいと思います。  先生が長い間御経験をなされているという中から今御発言なされましたが、西欧諸国では我が国ほど借り手の保護が厚くないようであると言われておりますが、我が国で特に厳格な借地借家法制がとられ、借り主の権利が保護されている理由についてどうお考えになるかお聞きいたします。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) お答えいたします。  確かに、諸外国では、一般原則的には日本ほど借り手を保護しておらないということはございます。しかし私が申し上げましたように、ある特別な法律によって保護している側面もまたございます。  どこが違うかと申しますと、日本の場合にはどうしても法律ができた経過、大正時代あるいは戦時立法ということで大変住宅難の時代、それから戦後の住宅難の時代で、借りている人を保護しなくてはいけないということでそれが続いておるというふうに言われておるわけですが、やはり法律のあり方も問題でございまして、日本の場合には借地とか借家という形で切りまして、あとはかなり一律に、全国一律に法律ができておるということで大変問題の解決を妨げる点がございます。諸外国では借地・借家は大体一つのまとまりを持っておりまして、借地と借家を特別分けておりませんが、それについてかなり多様にいろいろなケースについて対応するように法律ができております。ですから、一般は原則的には自由であるが、どういう状況では保護する。それから地域によって違います。アメリカでは特に地域が保護するかどうかもかなり決めまして、例えば家賃統制令のようなものがある都市とない都市というのがはっきりしておりますし、それはそれなりの選択が、地域差がございます。したがって、まずは原則が違うということと、それから地域差があるし、どういう理由で保護されているかということがきちんとしておるということが西欧では大変な特徴がと思います。  最後に一言つけ加えますと、借地借家法的なものは諸外国でもあるわけですが、その法的な理由、理念というのがやはりきちんとしている点が私は大変印象的です。それは、今回の法改正でも多少不満な点ですが、単なる利益調整の手段を合理化するというような次元の話だけではなくて、何が目的で借地借家法があるかということがかなりちゃんとしている。例えば、アメリカでは最近借地・借家を保護する方向が出ておりますが、それは借りている人を守るというよりはむしろ家を、住宅をいかに改善するかという点に主な理由があるわけです。したがって、これはヨーロッパでも比較的浸透している考え方ですが、だんだんと都市が衰退していって住宅が衰退していくことは社会的に望ましくない、社会的に良好なストックをいかに持ち家であろうと借家であろうと残すかというような視点が入っておりまして、それで保護ということがそれにくっついておるという面がございます。しかし、日本の場合にはその点がほとんど抜け落ちておりまして、いかに住んでいる人を保護するかということだけが前面に出ておりますところが問題で、御質問の意図はそこら辺にあると思いますので、確かにその点、日本では再考が必要かと思います。

野村五男自由民主党

○野村五男君 経済学者の間には、借地・借家法の廃止を含め規制の緩和を主張する意見が強いのか、それとも規制緩和について逆に消極的な意見が見られるのか、お伺いしたいと思います。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) 経済学者十人いれば十人違うことを言うというふうに言われておりまして、大体の問題について経済学者は意見が違うのでございますが、不思議に借地借家法につきましてほとんど意見が一致しているというのが特徴的でございます。  具体的に申し上げますと、土地住宅問題の専門家の間でも、例えば地価税についての評価はどうなるかというとてんでんばらばらでございます。それから、その他土地政策について大体意見が一致しないんですが借地借家法についてはほとんど一致しておりまして、これは今回の改正のように正常化を図り、借り主を保護するということは、結局借り主のためにも経済的効果としてはなっていない。基本的に借地・借家が非常に出にくい状態では、ますます自分の住んでいるところにしかみつくより方法がなくなるという悪循環に陥っている。これはしかし非常によろしくないということで、基本的には規制緩和の方向にw大体一致しております。ただし意見が分かれるのが、先ほど私 が申しましたように、それでは市場を自由化し、規制緩和したときに、よく言われる弱者が一体どうなるのか、お年寄りは一体どうなるか、家賃が上がった場合払えない人はどうなるのか、そこに対する対応をどうするかということでは意見が幾つか食い違うところがございます。  私個人といたしましては、それは基本的には他の社会政策、特に家賃補助等の所得、資産面で補助をすることが恐らく正論でございまして、家賃を抑えたり法律的に取引を規制したり賃貸関係を規制することによって保護しようということは、結局は保護されている人間のためにならないというふうに考えておりまして、主に欧米で教育を受けた経済学者の間ではその意見は一致しているというふうに考えております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 土地所有者の間には、一たん土地を貸しましたら容易に返ってこないという現実とともに、地代がなかなか上がらないという点に、土地を貸すことに対して前向きになれない理由があると言われております。他方、現実の地価は土地の収益力を無視した価格となっており、これを基準にして地代を考えるのは本来不当であるとの指摘もあります。地代をめぐるトラブルは借地関係をめぐるトラブルの中でも筆頭に挙げられていると思います。当事者が納得できるような適正な地代についてどうお考えになるか、お伺いいたします。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) これは大変難しい問題でございまして、できるだけ短くお答えするにはどうしたらいいか今考えておるのですが、一つの問題は、地代算定方法という中に、地価の上昇率を考えて地代を決めるというような方式があるというふうに聞いております。そのことから地価が上がると地代をそれに応じて上げるということで、地価が非常に上がるときにはそれが問題になるというふうに言われております。しかし、経済学的な視点から申し上げますと、地代というのは賃貸市場におけるいわば需給関係を反映して決まるものでございまして、それは直接的には地価の上昇とは一対一の関係にはないというふうに私自身は理解をしております。したがって、算定方式の中ではその精神に一番近いのは、原則はありませんが、その周辺の事例を見て決めるというのが一番それに近いことでありまして、地価の水準その他のことで余り機械的に決めていくというのは問題でございまして、そういう点で、地代と地価というのを関連させないで議論するのが原則でございます。地代が決まった後で、その長期的な値上がり、将来の上昇等をかんがみて地価というのは結果として決まるというのが正常な地価の決まり方であるというのが経済学的な解釈でございます。  現実の問題は、むしろ地代を改定する方法が非常に煩雑であって、ほとんど地代を改定することについてのコストの方が、地代を上げてその収入が多少ふえることよりも大きいということが地代の上昇を大変妨げているという面があるというふうに私自身は考えております。したがって、地代が不当に低く抑えられていることが地主が土地をぜし返してもらいたい、更新になったら無理やりそれを返してほしいということにつながりまして、それが借り主の権利侵害につながるということで正当事由が必要だ云々という一連の循環がございます。  考えてみますと、地代がきちんと決まっておって、きちんと地代が取れれば貸している方はむしろ借りてもらった方がよろしい面があるわけで、したがって、この地代の決定というのはもう非常に重要な問題の源泉でございます。今回の法改正にありますように、いかに地代の決定をスムーズに考えていって、できるだけ市場の需給関係を反映するものにしていくかということが大切な要件でございます。  それに最後つけ加えますと、そのように地代が上がっていくことを容認するような考え方が地代を払えない方の権利を侵害するのではないかという点につきましては、やはりそれは地代を抑えるのではなくて、地代を払えるようないかにその他社会経済的な政策をとって補助し、それをサポートしていくかということが大変重要なことであろうというふうに思います。  その他幾つかの点があるのですが、また後の質問の関係でお答えしたいと思います。

野村五男自由民主党

○野村五男君 最後に、宮尾先生にもう一問お伺いいたします。  借地・借家法の改正に反対する論者の中には、その見直し自体には反対はしませんが、借地・借家法にまず手をつけるのは妥当ではないとの意見を示す者があります。このような論者は、土地税制、都市計画などほかの土地政策の充実が先決事項であって、これらにより地価が安定し土地の利用計画も定まった後に、最後に借地・借家法の改正をすればよいとの考えをとっているようであります。これに対しまして当局は、借地・借家関係の合理的なあり方は、ほかの行政的な施策を施すに当たっての基礎となるものであるから先行してもおかしくないとの立場を示しているところであります。この点についてどうお考えになるか、お伺いいたします。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) お答えいたします。  この点については大変難しいことで、これは経済政策の一番根本的な問題にも触れることですが、簡単に申し上げますと、今回の件に関しましては、私自身は既にほかの政策が動き出しておるというふうに考えております。これは、先ほども申し上げました税制面でもさまざまの問題がありますが、宅地並み課税という問題が現実のものとして今起こってきております。それから、これは主に建設省あるいは東京都などが特に市街化区域内農地を宅地化するための、あるいは借家を提供するためのいろんな方策をとっております。例えば低利の融資でもって借家の建設を促進させようという政策、あるいは税制上の恩典を与えてそれを促進しよう等の政策が、一連のものが既に決定し、既に動き出している側面がございます。ですから、もう既に借地・借家法についてはこれに着手しなければ遅いという状況になっているということが第一点でございます。  それから第二点は、先ほどから強調しております借地・借家法が正常化あるいは改正されることによって危惧される弱者の保護についての政策がなければこれを改正するのは問題ではないかという意見もございますが、これにつきましても事実上は、これは特に東京都の区部ですが、それから東京都も最近動き出しておりますが、特に高齢者の家賃補助というものが既にいろいろな形で動き出しております。したがって、仮に高齢者が住んでいる家から別のところに移らなければいけないという状況が万一起こった場合でも、その家賃の差額は公的な形で補助するものが徐々に出てまいりまして、今東京都が各区の動きを支持するというようなことも出てきております。それから、高齢者に限らずこのごろは新婚世帯にも家賃補助を上げようとかいろんなことが出ておりまして、若干行き過ぎみたいなところがございますが、そういうことが動き出している。したがって、今借地・借家法を見直すことは非常に適当な時期であるというふうに考えております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 ありがとうございました。  それでは、飯塚先生にお願いいたします。  借地・借家関係をめぐりますトラブルとしてはどのような事件が多いのか、訴訟に持ち込まれないで解決されるものはあるのか、お伺いいたします。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) お答えいたします。  一番多いのはやはり地代・家賃の改定の紛争でございます。その次には土地所有者による建てかえのための明け渡し請求の紛争がございます。地代・家賃の紛争につきましては、一昨年から東京地裁あたりでは、訴訟になったときには調停に必ず回して解決するというような形でトラブルの解決をしておりまして、かなりそれは功を奏しているように報告を受けております。この訴訟に持ち込まれないで解決するというのは、やはりデベロッパーが開発をしたいときにかなり時価以上に金銭的な補償をして明け渡させるというような形での解決が主でありまして、借地人あるいは借家 人においてそこが生活の本拠である場合には、必ずしもそういう形での解決も容易にできていないというのが現状だろうと思います。

野村五男自由民主党

○野村五男君 借地・借家関係をめぐる当事者の不満は必ずしも借地・借家法自体の問題に限られないであろうが、借地・借家法の現行規定についてはどのような点に最も不満を抱いているか、借地・借家法以外の面においてはどうか、お伺いいたします。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) まず、主に土地所有者あるいは建物所有者の問題にかかわってくるわけですけれども、土地所有者に関しましては、一度貸した土地は返ってこない、これは正当事由が障害になって返ってこないという不満が非常にあるわけでございます。それからもう一つは、地価の上昇に伴ってそれに相当する地代の収入が得られないということがやはり不満の大きな部分を占めているのではないかと思います。  それから借地人、借家人関係につきましては、比較的積極的に調停あるいは裁判所においても保護しているように見受けられますけれども、これからの社会経済情勢の変化というものがどういう形で作用するかちょっとわかりません。ただ、やはり地代あるいは家賃というものが地価の高騰に伴って高額化してくる、かなり値上げ請求というものが厳しく行われてきている状況にありまして、これにつきましては、借地人、借家人は非常に困惑しているのではないかと思います。  さらに、特に土地の賃貸借関係につきましては更新料の問題があります。これにつきましては、やはり地価の高額化に伴って更新料も高くなってくる、それの負担に耐えられない借地人がかなり多くいるというように認識しております。  借家関係につきましては、現在借家期間というものが大体二年ごとあるいは三年ごとの更新という形になっております。その契約書の中身は、必ずそこに更新料とかいろいろな形で借家人から金銭の給付を取るような形での約束がなされておりまして、これは一応約束事でございまして、借家人としては払わざるを得ない。しかし、近時の賃借料の値上げということから経済的に非常に厳しい状況に置かれているのではないかと思います。  それから、借地・借家関係以外で、借地・借家をめぐる紛争あるいはトラブルというものの問題ですけれども、やはり税制面からの影響というのが非常に多いと思います。私も調停委員で調停にかなり関与しておりますけれども、例えば借地の解消についての立ち退き料の問題でありましても、立ち退き料を一時にもらうとそれに対しての税金がかなりかかる。そうすると、実質的な立ち退き科プラス税金分というような形でかなり高額な金額が提示されてきまして、非常に利害関係を調整するに苦労するというような状況にあります。

野村五男自由民主党

○野村五男君 借地・借家関係において、法律上の保護にもかかわらず、借り手は圧倒的に弱い立場に置かれているとの見方もあるが、他方衆議院の公聴会では、弁護士の方から訴訟の場では逆に借り手が強いと感じられることが多いという見方もされました。いろいろな次元があると思いまして一概には言えないであろうと思いますが、同じく弁護士たる実務家として現場の感じ方としてはどうなのであろうか、お伺いいたします。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) お答えいたします。  まず、容易に解決をすることができるのは大地主あるいは企業が持っている土地に関する紛争の処理でございます。この場合には比較的解決がなされておりまして、例えば借地の場合に、借地権割合が実際は七割あるいは六割というような形で路線価の表示がなされておりましても、場合によっては金額の調整ではなくて土地を分ける、例えば五五%を借地人がもらって解決するというような形での解決が比較的なされているように思います。難しいのは、地主といっても、自分の住まいとあと一カ所ぐらいしかないというような小地主の場合の解決は非常に難しいことになっておりまして、やはり借地人の立ち退き料の金額の要求が非常に高くなっておりますから、地主としてはそれだけのお金の用意ができない、それで明け渡しをあきらめてしまうというようなことは間々見受けられるわけでございます。  それから、我々、借地関係での解決をする場合には借地人あるいは地主双方から事情を聞くわけでございますけれども、やはり自分のいるところの更地価格を幾らと認識するか、それが一番肝心なことだろうと思います。更地価格の金額が大体一致しておれば調停においての解決というのは比較的容易にできているように見受けられます。

野村五男自由民主党

○野村五男君 正当事由の改正について、現行法のもとにおける実務の扱いは、基本的には法案第六条、第二十八条に示されたものと同様であると考えてよろしいかどうか、お伺いいたします。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) それは、そのとおりであろうと思っております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 法案第六条、第二十八条では、正当事由の判断における補完的要素として立ち退き料の申し出が示されているところであります。  そこでお伺いします。現実の裁判あるいは実務においてこの点はどう扱われているのか、お伺いいたします。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) これは、通常最初から金銭提供をして訴訟を起こすというのは余り例を見ないのではないかと思うのですが、建物収去、土地明け渡しの訴訟の途中においてやはり請求の趣旨を追加いたしまして、幾ら幾らの金銭を提供することを条件にとか、あるいは裁判所の提示する金額を支払うことを条件にとかという形での訴えの変更をするような形が多いのではないかと思っております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 その扱いを立ち退き料による借り手の追い出しであると批判する見方がありますが、どうお考えになりますか。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) これは、いろいろな評価の仕方はあろうかと思いますけれども、やはり現行の法制度の中で、借地・借家法というのは終局的には裁判所の判断基準というものでございます。ですから、やはり裁判所を信用するということで私は考えていただきたいと思っております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 より一般的に、借地関係の終了においては当事者間の利害調整の手段として金銭のやりとりをすべきであるとの考え方があるようでありますが、どうお考えになりますか。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 借地関係の解消の場合に、立ち退き料等金銭の授受が通常行われるような形に現在なっております。その理屈づけにつきましてはいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、我々が一般的に認識している考え方といたしましては、借地人が当該土地において居住することによってその土地を維持し発展させたという一つの功労があると思います。したがいまして、借地関係解消の場合には、その土地に対する価値の上昇というものを土地所有者に一方的に与えるということは不合理である。ですから、そういうキャピタルゲインをやはり借地人にも与えるべきであるという考え方があろうかと思います。

野村五男自由民主党

○野村五男君 地代・家賃をめぐるトラブルは、借地・借家関係をめぐるトラブルの中でも筆頭に挙げられているところであります。  そこでお伺いします。今回の改正案により地代・家賃紛争については調停の活用により迅速適正な解決へと一歩踏み出すわけでありますが、この改正についてどうお考えになりますか。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 当初この問題は、調停制度の活用ということよりも裁判所による非訟事件手続の中で解決すべきであるという意見が弁護士会の中にも多くありました。  ただ、これにつきましては、裁判所における受け入れ体制の問題等にいろいろ難かございまして、非訟事件での取り扱いということは断念せざるを得ない状況でございました。そうだとすれば、現行の法制度の中でどういう解決の方法が一番よいかと申しますと、やはり地代等をめぐるトラブルというのはわずかな金額の問題、わずかという表現はちょっとおかしいかもしれませんけれども、立ち退き料等と比べますと金額がかなり低いところ、それからある一定期間における解決という形になりますから、やはり調停という形でお 互いに話し合って合理的な線を見出すことが一番適切かと思います。  ただ、問題は、調停委員会の構成の問題になろうかと思いますけれども、大都市におきましては弁護士も不動産鑑定士もある程度の人員を確保できますから、調停委員会の構成はそういう専門家の人の構成ができるかと思いますけれども、地方都市においての調停委員会の構成で、そういう専門家を全部構成員に加えるということは不可能ではないかと思います。ただ、この点に関しましては、やはり裁判所の運用次第で当事者の意見の聞き方、地代あるいは家賃の周辺の情勢の見方、そういうものを努力すれば的確な数字が把握できるであろうと思いますので、現行のもとにおいてはこの調停制度に期待いたしたいと存じます。

野村五男自由民主党

○野村五男君 調停条項による裁定の制度は、当事者に解決を押しつけることにつながるとの意見もありますが、調停委員の御経験を有する立場から再度お伺いいたします。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 私の経験から申し上げますと、調停が成立するまでというのは非常に調停委員は神経を使って当事者の意見を聞いてまいります。たまには調停委員の中に強権的な人もいないわけではありませんけれども、一般的には双方の意見を十分聞きながら適正なところで調停を成立させるという努力をしておりますので、当事者に解決を押しつけるというようなことは心配されなくてもよろしいのではないかと思っております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 最後にお伺いいたします。  地代・家賃をめぐるトラブルを解決するには、裁判所以外の機関による解決が望ましいとの考え方があるようですが、どうお思いになりますか。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 第三者機関によって解決するという道も十分考えられますけれども、この地代あるいは家賃の額を決定するにつきましてはいろいろな要素が考えられます。やはり公平な立場で決めるという場合には司法機関の網のかかった中で決めるのが相当ではないかと思います。ただ、司法機関が判断する場合の資料として、やはり公的な機関で適正な地代、適正な家賃がどの程度であるかということを地域的に細かく作成することが今後重要ではないかと考えております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 終わります。

千葉景子日本社会党・護憲共同

○千葉景子君 きょうは、飯塚、宮尾両公述人にお忙しい中をおいでいただきましてありがとうございます。貴重な御意見、御提言をぜひ私たちも参考にさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いをいたします。  さて、総括的な問題になろうかというふうに思いますが、飯塚公述人からも宮尾公述人からもこういう問題点が御指摘ありました。一つは、飯塚公述人から、この法案の検討の過程で弁護士会の内部でも、今東京などを中心にした土地高騰などを含めて借地・借家関係にも大変大きな影響が出ている。しかし、今回の改正を全国一律に適用することがいかがなものかというような意見もあったということが御指摘ありました。それから宮尾公述人の方からは、また視点は違うかと思いますけれども、日本の場合ですと原則とそれから特別な措置、ここが大変不明確であって、例えば業務用と居住用の区別であるとか、これもやはり一律に適用することの是非ということが御指摘あったかというふうに思うんです。そういう意味でこの法律の今後の問題点ではございますけれども、まず飯塚公述人にお聞きしたいというように思います。  この借地・借家法の改正だけで今後のよりよい借地・借家関係というのを実現するというのはなかなか難しい面もあろうかというふうに思うんです。そういう意味で、土地問題あるいは住宅問題などについて何か現場の皆さんの声などを聞きながら感じていらっしゃること、あるいはこういう点がこれから大いに改善すべき点だというようなところがございましたら御指摘をいただきたいというふうに思います。  また、宮尾公述人にも、先ほどの原則とそして特別な措置というのが不明確であるという点、もうちょっと御説明をいただければ幸いかと思います。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 今回の借地・借家法の改正に関しまして一番重要な問題は、やはり住宅事情ということにあろうかと思います。  先ほども御説明申し上げましたように、現行法のもとでは一たん貸したらなかなか返ってこないという危惧があって、借地の供給が非常に阻害されているというのが現実であろうと思います。しかし他方、大都市及びその周辺地域における借地による住宅の供給の希望というのはかなりあろうかと思いまして、その円滑な実現のためには、本来の普通借地契約による形での供給を期待することは非常に難しいと思われます。そういう意味で、今回、長期型の借地期間を五十年以上とする定期借地権の設定ということでそれに対処しようとすることはかなり評価できると思います。  ただ、これは周辺地域の土地所有者の意識の問題にかかわることでございまして、現実問題としては住宅・都市整備公団、そこが東京周辺におきまして、期間七十年として七十年を経過した段階では建物を収去して返すという形での借地契約をして、現実にそれが実行されております。また、ある住宅のデベロッパーにおきましては、期間を三十五年として地主からそのデベロッパーが借りまして、建物をそこに建ててその建物を売るわけですね。ただし、その建物は三十五年経過したら地主に戻して借地関係を解消するというような形で、現実にそういう開発が行われておりますが、現行法の中ではいろいろ工夫はされているようですけれども、やはり現行法に抵触するということはぬぐえないと思います。  ですから、土地が高いとかそういうことはさておきまして、借地借家法の面から見た住宅の供給ということに関しましては、今回の改正案というのは非常に効果があるのではないかと思っております。  それからまた、新しい制度の中の定期借地権で短期型、いわゆる十年以上二十年以下の期間を事業用については認めるという形の事業用の定期借地権という問題がございます。これにつきましては、やはり住宅の問題とはまた別でございまして、借地をしてそこで事業を営もうという要求はかなりあるように身受けられます。現実問題といたしましては、昭和五十八年ごろから土地信託という形で十年以上の期間で信託会社が運用するという事業用の土地の賃貸関係というのが見受けられますけれども、これはやはり信託八社だけしか使えないということでもありますし、信託会社にとってそれが企業化に適切か適切でないかの判断が恐らくそこに入ろうかと思います。実際の土地所有者で短期なら土地を貸してもいいというそういう土地所有者の希望、あるいは短期なら土地を借りてもいいという需要側の希望に対応することは現行法ではできませんが、今回の事業用定期借地権についてはそれが応用されるということで結構な制度ではないかと考えております。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) お答えいたします。  まず初めに、住宅政策との関連でございますが、現在、一番問題になっておりますのは、一般サラリーマン、特に家族がいるサラリーマン向けの大都市圏における借家がほとんど出てきていないという点が非常に大きな社会問題になっておるというふうに考えております。そういう点で、サラリーマン向けの借家をふやすにはどうしたらいいかという観点で考えますと、今回の法案について幾つかの問題点が浮かび上がります。  これは余り細かく申し上げませんが、一つは、やはり既存のものには一切適用されないということになりますと、大体、都市圏の既に建っているところはほとんど影響されませんで、先ほど言いました新しく周辺の市街化区域内農地とかその周辺部がさらに開発されてくるということで、果たしてそれがサラリーマンのニーズに全面的に合っているかどうかというふうな問題がございます。したがって、これからの課題としましては、どのように既存のものにいい影響の部分を及ぼしていくような方向がこれから見出されるかという大変難しい問題が出てまいると思います。  この点で二つ申し上げますと、一つは、どうしても借地権というのが議論の中心になりますが、やはり当面は家ですから、借家権についてもう少し議論をしていただければと思います。特に期限つきの借家について、今回多少改正になりますが、もう少し幅の広い形の期限つきの借家制度というのがもっと入ってきていいのではないかというふうに私自身は考えております。  それから、既存のものにつきましては、先ほど申し上げましたように、なぜ既存のものを残すのかということは大変大きな問題でありますが、今後もう少し詰めて、具体的な例としましては、もしもお年寄りを保護するためであるとすれば、そのために最も効果的で、しかもほかに副作用がない方法は何か。これは例えば、その方一代限りを温存するような形で保護した方がいいのか、あるいは現行のような形にするのか、あるいは諸外国の方法のように特別法をつくるのか、そういうことを大いに検討していただいて、余り無原則に既存のものは一切当てはまらない、新規のものは一切当てはめるというようなことは望ましくないだろうというふうに考えております。  それから最後に、原則と特別ということの敷衍でございますが、これは今回の法案を見直せという一つの視点に、営業用対居住用という点がよく問題になります。営業用はもう少し自由にしていいのではないかという議論がよく聞かれます。これは特にデベロッパー、それから貸す側の方が、特に企業関係の方が主張されるわけですが、私はこれも方法としては同意見なんです。見方は単に、営業用なら余り影響がないから少し緩めたらいいのではないかとかそういう議論ではなくて、もう少し契約関係というのを両者対等にしていくという原則の上にのっとって、原則自由、自由契約という中でそれを位置づけていく、その中で一体問題はどこにあるか。その場合には、必ずしも居住用対営業用で分かれないかもしれません。営業用の中でも、例えば中小、零細のものをどうするかというような議論が出てくるかもしれません。それから、居住用でも、果たしてお年寄りだけにするのか等という議論がございます。そういう議論をやはりこれから詰めていくことが大変大切なことで、やがては原則論と特別法という形に集約されていくことが望ましいのではないかと私自身は考えておる次第でございます。

千葉景子日本社会党・護憲共同

○千葉景子君 それでは、飯塚先生に何点がお尋ねしたいというふうに思います。  今回の改正では、新しく定期借地権などが取り入れられておりますけれども、一方、この委員会でも質問させていただきましたが、残された課題、例えば借地権の登記請求であるとか、あるいは担保化の問題であるとか、こういう点は今回盛り込まれませんでしたが、実務の立場から考えまして、かなり今現実に物権的な権利あるいは高額な権利として借地権などは評価をされるようになってまいりましたが、この担保の問題あるいは登記の問題などについてはどうお考えになりましょうか。今後そちらの方向をやはり検討すべきなのか、あるいはむしろそうでない方向の方がよいとお考えか、実務的な見地からもしお考えがございましたならばお答えいただきたいと思います。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 借地権の登記の問題につきましては、昭和三十五年の借地法に関する改正のときに、借地権の物権化というのを柱に掲げたためにその当時の改正が挫折したようなことを伺っております。この借地権の物権化的な問題あるいは登記請求権の問題というものに関しましては、かなり土地所有者からの抵抗が強いのではないかと思います。したがいまして、これをいつまでも追っかけているというのは今の状況の中では余り得策ではないのではないかと思います。  それから、担保化の問題でございますが、要綱試案の中には、登記された借地権については担保に提供することができるという形で金融の道を開いたような議論があったわけでございますが、こういう経済情勢の中で、不動産をめぐる金融という道をさらにふやすということについては多少社会的な抵抗を感じざるを得ないということで今回は実現を見ませんでしたけれども、ただ、住宅ローン等で現実に住宅を建てる場合にはこの借地権の担保化という形での道をある程度開いてあげた方が借地による住宅の供給を促進するという形ではよろしいのではないかと思っております。

千葉景子日本社会党・護憲共同

○千葉景子君 それから、先ほど存続期間あるいは更新後の存続期間の問題につきまして、衆議院で、初回に限ってですけれども、十年が二十年に修正をされたことについて評価をされるというお答えでございました。この存続期間あるいは更新後の存続期間、これについては今回堅固の建物、非堅固の建物、一律に規定をされるという形になりました。従来ですと区別をして年月も違うということですけれども、この点について実際どうでしょうか、区別の必要を感じられませんか。あるいは、更新後の存続期間についても十年が二十年に延ばされたということを評価されたということは、法案では十年と大変短くなったわけですけれども、その点については逆にどうお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 今回の法案の中で、借地権の当初の存続期間が三十年ということにつきましては、日弁連におきましても大方の賛同を得ることができております。これは改正試案の説明の中にもありましたとおり、借地権を保障する合理的な期間は何年かということの立場からいろいろな説明がなされておりまして、三十年ぐらいが相当であろうということで、日弁連も一応それについては賛成したわけでございます。  それから、更新後の期間の十年ということにつきましては、昭和三十五年の案では、当初の存続期間経過後は期間の定めのない契約とするというような形で提示されておりまして、昭和六十年のときの問題点においてもそういうような形てたしか出ていたと思います。これにつきましては、更新後の十年あるいは二十年というのはやはり正当事由の見直しの時期であるということから一応十年ぐらいであればやむを得ないであろうということで、特に期間の定めのない契約になるよりも一応十年間は更新後保障されるという形でそれを弁護士会としては認めた形になっております。  ただ、御承知のように土地所有者からは正当の事由がなくても期限が来れば明け渡しの請求を受ける。それに対しての解決というのは、更新料の請求という形で、本来の目的は更新料を取得するというようなことになろうかと思いますので、そういう意味からいいまして衆議院で二十年という形で更新後の第一回の期間を延ばしていただいたということは借地人の方に十分配慮をしたことであろうと思いまして、評価をするという表現を使ったわけでございます。

千葉景子日本社会党・護憲共同

○千葉景子君 今、更新料のお話が出ました。今回は存続期間あるいは更新後の存続期間というのが一定の限られた期間になってまいりまして、更新の回数とかが従来よりはふえてくるということになります。そうなりますと、その折に必ず更新料等が貸し主、借り主の間で問題となってこようかというふうに思うんです。これについては、現在土地の高騰なども含めてかなり高額な更新料、あるいはいろいろな形での金銭の授受というのが行われておりますが、それについては法的にはなかなか規制とかあるいは基準などを定めるということも難しいようでございます。  しかし、こういう更新と絡めて考えますと、これが異常に高騰したり、これがまた不当に借り主の側に大きな負担になったりしますと、適切な借地・借家関係ということにむしろ逆行するということにもなりかねません。そんな意味で、更新料等について現実の状況を踏まえながら、今後の扱い方、例えば法的に規制ということは難しいかもしれませんけれども、適切な指導とか、あるいは何らかの通達といいましょうか、そういうようなことは必要ないでしょうか。その辺はどんなふうに評価をなさっていらっしゃいますか。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 更新料の問題につきましては、更新料の問題につきましては、今回の改正法案がこれから締結される借地関係に適用されると いうことが前提となりますし、現在の日本国民の意識といたしましては、やはり土地をめぐる契約というものにつきましては非常にその権利の存亡について気を配った形での契約がなされているのが現状だろうと思います。ですから、更新料を幾ら払うかということは、その期限が来てみないと現実にどうだということは言えないのですが、現状の中では裁判所あたりで認定されているのは、恐らく更地価格の一〇%以下が更新料として認められているだろうと思うのですけれども、やはりその問題は裁判所の判断を仰ぎながら考えざるを得ないだろう。それはどうしてかというと、やはり土地の価格がどういうようにこれから変わっていくのかということはちょっと予測し得ないということがございまして、これから三十年あるいは五十年という期限が到来した時点でないと更新料についての評価もはっきりしたことは新法のもとでは言えないというように感じております。

千葉景子日本社会党・護憲共同

○千葉景子君 今、新法のもとではなかなか予測が難しいというお話でございましたけれども、現行の中での問題点というのはございますでしょうか。更新料あるいはその他の金銭の授受に関連して問題点があれば御指摘ください。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) これは先ほど申し上げましたとおり、更新料の要求がかなり高額化してきているということが一番問題であろうと思います。借地人が、約定があったとしてもそれが適正な更新料の要求でない場合には、これを拒否して訴訟の段階で解決するという手段を選ばざるを得ませんけれども、更新料に関してはやはり地価の高騰というのは直接影響しているように考えております。

千葉景子日本社会党・護憲共同

○千葉景子君 更新料、あるいは先ほどお話にございました地代の問題などは、最終的には調停、それから裁判所の適切な判断などを積み重ねていく、それに期待をするしかないというようなことにもなろうかというふうに思うんですね。しかしながら、残念なことに裁判所に判断を仰ぐ場合、これですと適切な額なり判断というのが出ようかと思いますけれども、なかなか借地・借家、貸し主、借り主の間で裁判にまで至らない。しかし、何らかの形で関係を継続していきたいということでこういう金銭の授受というのがやむを得ず高額で行われるというようなケースも多いかというふうに思うんですね。  それから、今回よく問題になりますけれども、新法は従来の契約関係には適用されない。必ずこれは適用されないんですから御心配ありませんという法務省などのお話でもございますけれども、これも更新時期あるいは契約を切りかえるというような形で事実上、旧来の契約にも新法が何らかの形で影響を及ぼしてくるというようなことも考えられます。こういう点で、今後裁判所を通さない現実の借地・借家関係の中で適切な法律運用とかあるいは適切な借地・借家関係というものを確立する意味では、それをどう皆さんに理解をいただき、あるいはそれを両者納得できるかというところが大きな問題かというふうに思うんです。法務省の方でもかなりこれを徹底する、広報活動も行われるというようなことをおっしゃられておりますけれども、実務の面から見て法務省のみならずいろいろな省庁などを通しての指導なども必要かと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。日弁連などでもそういう問題について今後取り組みをなさるかと思いますけれども、そんな点で御要望とが御指摘がございましたらお話しください。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 新法はこれから締結される契約関係に適用されるということになっておりますけれども、現実問題は、正当事由につきましては現在の裁判例から抽象的に抜き出した例示を記載されているわけでございます。また、特に借家関係などにおきましては、正当事由の補完金の提供によって解決されている裁判例というのは非常に多いかと思います。  そこで、借家関係はともかくといたしまして、借地関係におきましては不動産鑑定士という国家の制度があるわけでございますが、この不動産鑑定制度というものの充実をやはり図るべきではないかと思います。更新料あるいは土地の時価の評価等を考えますときに、我々自身も実際の取引がなされていればすぐ結論は出るわけでございますけれども、直接取引のない事例の地域におきましてはやはり不動産鑑定に頼らざるを得ない。ただ、鑑定の基準というものは通常三つの方式があるわけですけれども、さらに最終的には鑑定士の私的な意見が入ってくるというところで、一〇〇%の信頼を置いてそれを取り上げるというわけにはいかない。そこに裁判所がその鑑定士の意見を資料として裁判で判断するという形でしか解決の道がないのではないかというように思っておりますが、いずれにいたしましても、ある一定地域における地代あるいは家賃あるいは時価の評価というものが公的な機関で認識できるような形をとれるのが一番解決の道としてはよろしいのじゃないかと思っております。

千葉景子日本社会党・護憲共同

○千葉景子君 飯塚さん、もう一点。  従来の契約に適用されないということの周知徹底についてはどうお考えでしょうか。先取りして、旧来の契約でも新法になったら新法になりますよというような形で強制をされているというような実態もないわけではないようですが、その点今後の周知徹底について何が御指摘などございましたらお聞かせください。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) これはまず、我々専門家の中でそういう趣旨のことを徹底して宣伝して一般に広める必要があろうかと思いますし、また法務省当局を初め、国土庁あるいは建設省等におきましても、今度の改正法案が新しい関係にだけ適用されるのだということを、例えば不動産業者に対する指導にもかかわってくると思いますけれども、いろいろの形で国民に浸透させていく必要があろうかと思います。  そういう意味で、現在新聞報道で時々、新法が適用されるから契約更新をどうのこうのという形での土地所有者からの不当な責めというものを早急に防ぐ必要があろうかと思っております。

千葉景子日本社会党・護憲共同

○千葉景子君 では、最後に宮尾先生に。  先生の御専門は都市政策等の御研究ということでございます。今回は、この借地借家法案というものを通じてのこれからの家の問題あるいは土地の問題ということになりますが、やはりこれのみですべてが解決するわけではございません。そういう意味では、将来のよりよい町づくり、都市政策ということで今一番ポイントとして先生が御指摘されたい点がございましたら、簡単で結構ですのでお答えいただければと思います。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) 簡単にお答えいたします。  大変広いテーマでございますので土地住宅、特に住宅に限って申し上げますと、先ほども少し触れましたが、二つほどの視点があると思います。  一つは、住宅問題が大変首都圏、特に東京で大きな問題になっておりますが、実際問題としては、現実にある住宅が大変空き家になっておったり、なかなか再開発が進んでおらないという現状がございます。具体的に申し上げますと、いわゆる木賃住宅、げた履きアパートと前に言われていたものがいまだに日本全国六百万戸も七百万戸も残っておりまして、そのかなりの部分が東京の中心部あたりに残っております。これが恐らくかなりの部分が空き家になっておりまして、こういうところを今後どういうふうに再開発していくかということは大きな課題でございます。  この点で、なぜ再開発が進まないかの一つの理由は、実は権利関係が非常に複雑である、それから所有が非常に細分化しておる、インフラがなかなかできておらないというような問題がございます。ですから、もちろん当面は既存のものに当てはまらないということを決め、またそれを強調することは大切でございますが、長期的な観点で、今後、今ある借地・借家関係をいかに借りている人にも貸している人にもプラスになるような形で考えていくかということは大きな課題として残っているわけですから、現状で余り、既存のものに は当てはまらないよということだけを強調され続けていくことはいかがかというふうに思っております。  それから第二点は、新しい住宅を供給させるにはどうしたらいいかという点でございますが、この点で私は今回の法案を大変評価しておりまして、特に定期借地権の問題、その点について細かく飯塚公述人の方から御説明がありましたが、私が注目しておりますのは、三十年以上で建物の買い取り権つきという三十年プラスぐらいの契約が恐らく非常に有効に活用される可能性があるんだと。現実にサラリーマンは、二十代から五十代ぐらいの働き盛りに大都市で働くというときに住宅が必要である月これが今は大変無理して家を買うかあるいは社宅に住まうかで、ほとんど貸し家というのは小さな規模の回転率の高いものしかないというもので余り解決がないわけです。ですから、ここに三十年ぐらいの期間をもって一応自分の持ち家として住める、しかし三十年たったらそこはどうなるかというのは非常に多様なオプションがあるというような形で考えていくのが一番よろしいのではないかと思います。  現実にこれを公的な住宅の供給に使おうということで既に動き出しておりますし、民間の方もこれを使って供給を進めていこうということが出てきております。これについての税制上の恩典、低利融資等の政策の一連のものができておることは大変評価できることでありますので、これをさらに進めることが非常に大切かというふうに考えております。

中野鉄造公明党・国民会議

○中野鉄造君 極めて限られた時間でございますので、端的に具体的な問題をお尋ねいたします。  まず、飯塚先生にお尋ねいたします。  本法の十二条の二項にいわゆる明認方法を採用しておりますけれども、これはこの間の審議のときも私ちょっとお尋ねしたわけですが、これは非常に不安定かつ不十分ではないか、このように思います。そのためには土地賃借権の登記請求権を認めるということが、一番大事なことじゃないかと思うわけですけれども、今この請求権がないわなんですね。双方が合意すればそれはできるとしても、やはりこれは請求権を認めるということを考えるべきじゃないのかなと思うんですけれども、この点についていかがでしょうか。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) これは、基本的に賃貸借契約という債権契約をどういうように考えるかという問題になろうと思うのです。  ですから、賃貸借契約という債権契約であれば、期限が来たら必ず返すというのが契約上の約束事になるわけです。それが今度土地賃借権登記請求権、いわゆる登記された賃借権になると、これはもう明らかに物権的なものになってくるわけで、非常に借地人が強い権利を有するということになってくると思います。ですから、そういう形になってきますと、借地の供給というのが現在も阻害されているわけですけれども、それ以上にこの登記制度を認めることによって借地の供給が全くなくなるのではないかという心配がある点は否めないと思いますので、私としてはこの制度を認めるかどうかということは、やはり一つ政策の問題として考えなければならないのではないかと思っております。    〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕

中野鉄造公明党・国民会議

○中野鉄造君 宮尾公述人にお尋ねいたしますが、先ほどもちょっと出ておりましたいわゆる債権の物権化という件については、先生はどのようにお考えでしょうか。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) これにつきましては、経済学者の間でもいろいろな意見がございますが、私の個人的な見解といたしましては、やはり所有というものと賃貸というものはそれぞれの市場、マーケットで正常化していくということが本来望ましいことでございます。そういう意味から言いますと、賃貸にかかわることから権利が発生し、それが物権化するということは、実は賃貸市場の正常化及び所有権市場の正常化にとっては必ずしもプラスでないというふうに私は考えておりますので、長期的な原則的な話としましては、借地権、借家権の、特に借地権についての物権化が問題になっておりますが、そういう形はなるべく避けていくということが望ましいというふうに考えます。  しかし、現実に生じている借地権をどうするかという問題がございます。これについては、先ほど私が申し上げましたように、借地権の持っている効果、役割、社会的意味というものにかんがみますと、いかにその効果をかんがみながら正常化していくかというふうに考えていくべきであろう。それは極端なことを申し上げますと、諸外国にありますグランドファーザーズクロース、日本ではこういう問題は大体おばあさんが追い出されるというようにおばあさんが出てまいりましたが、諸外国ではおじいさんが出てまいりましてグランドファーザーズクロース、おじいさんの条項というのがございまして、これは大体その方一代限りの形で物権的なものを認めたり、あるいは保護をするという形のものがあって、その方が亡くなったときの相続の政策の一般的なところでなるべくそれが長期物権化しないような方策をとるということを考えているというふうに私自身は解釈をしております。ですから、やはりこの問題は、いかに賃貸市場を賃貸市場として正常化していくか、それから住宅の所有権の移転の市場でもってそれを正常化していくか、それぞれのことを考えていくべきであろうというふうに考えます。

中野鉄造公明党・国民会議

○中野鉄造君 最後に、飯塚公述人にお尋ねいたします。  本法案の四十四条の鑑定委員についてお尋ねいたしますけれども、この三項に、鑑定委員に対して旅費、日当、宿泊料を支給するということになっております。ところが、土地鑑定の費用というのはもう御承知のようにかなり高額なものになるわけですけれども、この土地鑑定がなければやはり適正妥当な鑑定委員会の判別ができない、こういうことになるわけでございまして、そこでお尋ねしたいのは、この土地鑑定料に相当する金額を鑑定委員に支払う必要があるのではないのか、こう思うんですが、鑑定料という文言はこの条文の中に出ておりませんけれども、ここは鑑定料というものも明記しておくべきじゃなかったかと思うんですが、専門家の立場からどうお考えでしょうか。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 私自身は鑑定委員の経験はございませんが、現実には弁護士が裁判所に対して鑑定委員として報告する事例が非常にあるわけでございます。裁判所が一般的に扱う鑑定についての料金という問題は、通常市中で行われる不動産鑑定士の料金よりも大幅に安くなっております。現在では土地取引というのは規制されて非常に少なくなっています関係上、鑑定事件というものは比較的容易に鑑定意見が出てくるわけですけれども、昨年以前におきましては、例えば公的機関の鑑定につきましては、不動産鑑定士あたりは鑑定料が安いから民間の鑑定をすることの方がいいというようなことで、なかなか公的な鑑定ができなかった実情にございます。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕 そういう不動産鑑定士が行う鑑定と、またこの四十四条に規定された鑑定委員会が行う鑑定というのは、実質的には多少差があろうかと思います。  おっしゃるとおり、私は鑑定料相当額を鑑定委員に払えというのはちょっと財政的な面から不適当であろうと思いますし、弁護士が一応弁護士自身のいろんな資料に基づいた判断で鑑定意見を出すということでございますので、不動産鑑定士に支払う鑑定料相当額までは私は出す必要はないのではないか、こういうように思っております。

中野鉄造公明党・国民会議

○中野鉄造君 終わります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 両先生は本法案に賛成の立場で御意見をお述べいただいたわけですが、私は反対の立場で質問をさせていただきたいと思います。  時間が大変限られておりますので、質問を一括してお話しさせていただきますので、よろしくお願いします。  一つは、現行の借地・借家法は、言うまでもあ りませんが、我が国の今日までの歴史の中で長年にわたって借家人、借地人の権利を擁護することを基本にして社会法的な性格を保持してまいりました。今日こうした法案が出されまして、それがお話しのように、今後の経済的効果にプラスになる、あるいは新しい経済情勢の変化に対応するものだということで賛成というお話がございましたが、私は強いて言うならば、それは今日の情勢に見合った土地・建物の有効的高度利用あるいは経済的効果、これが優先されていくという方向、あるいはまた中曽根内閣以来積み上げられてきた規制緩和や民活というそういう方向、それが強まることによってこの法案は実質的には社会法的性格から経済法的性格への大きな転機になる重要な問題だというように考えておるわけです。そういう立場で安易にこの法案の方向に賛成することはできないと思いますが、そういった点について両先生の御意見はどうであろうかということが第一点であります。  第二点は、今日の社会経済情勢というなら、最も特徴的典型的なのはバブル経済の中での異常な土地高騰、そしてその中で経済効率の向上を求めて、いわゆる底地買いから、あるいは地上げから、あるいは莫大な金額への賃料の改定要求が一般化して広まっていくとか、そういった状況が実は先行しておるわけですね。そういった今日の社会情勢のそこのところに視点を据えるならば、まさに借地人、借家人の権利を一層明確に、かつきちっと保障することこそが時代的要請ではないのかという感を私は強くするのでありますが、その点についてどのようにお考えかということを伺いたいのが第二点であります。  第三点としては、賃料改定問題が議論されました。これは調停前置によって迅速適正な解決に期待ができるというお話でしたが、私は今日の状況から見て適正な賃料になるかどうかには重大な疑問がある。不動産鑑定の乱用にならないか。不動産鑑定ということになれば、利回り期待を中心にして、経済的収益を地主、家主の側が上げるということに力点が置かれて、結局借家人、借地人が高額な地代を押しつけられていく、そういう状況にならないか。そういう意味では、迅速な値上げということの犠牲を借地人、借家人がこうむるおそれがあるのではないかと思っておるんですが、そういった点について飯塚先生の御見解をお伺いしたい。  それから最後に、宮尾先生にお伺いしたいのですが、この借地法、借家法の改正は、日米構造協議の中で確認をされて日本の対米公約になっている、だからこれはぜひ実行していく責任が日本政府にあるという趣旨のお話がございました。日米構造協議で了解されたこの問題が日米間の政治的コミットメントであるということを外務省も言っておるわけですが、そういう対米公約になっているということについて、いやそうではない、土地利用について意見交換しただけであって対米公約とまで言えるものじゃないという、そういう意見もこの委員会で実は民事局長もおっしゃっているわけですが、先生の御意見はどうであろうか。まさに対米公約になっていると私は理解しておりますが、それだけにこの問題は日本の主権にかかわる重大な問題であるというように思うんですが、その点の御見解をお伺いしたい。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 今、橋本先生からの御質問は、まず、今回の法案につきましては今日の社会情勢に見合った土地の有効利用を前提にした改正ではないかというような趣旨のお話でございましたけれども、我々法案作成に関与する立場といたしましては、当然社会的な情勢あるいは経済的な変化というものを無視して法案をつくるというわけにはまいりません。ただしかし、今回の借地関係あるいは借家関係の調整ということになりますと、やはり日弁連が昭和六十年あるいは平成元年に問題点に対する意見書、それから試案に対する意見書の総論の部分で述べておりますように、現場の認識としては、やはり借地人、借家人あるいは地主、家主の間の適正な利害関係を調整するものとして改正の必要があるんだという一つの認識のもとにこの作業に当たっております。  借地法、借家法が社会法から経済法に変革するのではないかという御質問でございますけれども、これは御趣旨は理解できないわけではございませんけれども、やはり我々は私権の調整というものを中心に据えて考えざるを得ない立場から、先生の御意見は御意見として承っておきたいと思います。  それから、借地人あるいは借家人の権利の確立の問題でございますけれども、これは物権化になればまた別でございますが、やはり債権契約の中での借地・借家関係ということになりますと、それなりの契約当事者の契約内容に拘束されるということが前提であろうかと思います。  バブル経済云々の問題に関しましては、私としてはそれが今回の法改正に直接つながっているというように理解しておりません。  それから最後に、賃料改定の問題でございます。これはやはり国土政策といいますか、地価対策ということが直接的に影響するのではないかということは現場におりましてよくわかっております。例えば現在、土地の譲渡制限がかなりきつくなっておりまして、昨年であれば国土利用計画法に基づく所有権移転の届け出については、価格そのものが実際の売買価格より一割ないし二割安かったというような情勢でありました。本年度に入りまして特に国土利用計画法による届け出の金額が実勢価格よりも高い、実際に契約される金額はそれよりも二割、あるいはそれが二割安くなってもなかなか土地の譲渡ができていない、いわゆる地価の下降現象が生じているわけです。ですから、そのときそのときの社会経済情勢の変化の中でやはり適正な賃料というものがどういうものかということをこれから我々も勉強して、公的な見解を打ち出していかなければならないのではないかと考えております。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) それではお答えいたします。  まず、社会法、経済法云々のお話でございますが、ちょっと視点がずれるかもしれません。  私がアメリカ、カナダに十五年ほど住んでいる間、大体家を借りて住んだわけですが、所得もそれほど高くない時期から大分上がった時期まであるのですが、どの時期を思い返しましても、借りる家がなくて苦労したという経験は一回もございません。どの町に行ってもどこの地域に行っても、あらゆる種類の貸し家が豊富にございます。これが実は最大の保護になっておりまして、もしも家賃を不当に上げる家主がいたら、すぐそこから別のところに移ることが一番の対抗手段でございます。ですから、こういう基本的な保護というのは実は原則を貫くことによって保護されるというのが大前提にございます。したがって、対等な契約関係によっていかに借地・借家市場を正常化するかということが実は一番勤労者階層にとって保護になっておるわけです。その上で、さらにそれから漏れる非常に低所得の方、御老人の方をどうやって保護するかというところで特別法が出てくるわけでございまして、よくそういう議論の整理をして法案を考えていく必要があるのではないかというのがまず第一のポイントでございます。  それから第二点は、それに関連いたしまして、確かに現在の借地人、借家人を守らなければいけないという議論はあるのですが、それではそれ以外の人は守らなくていいのだろうか、これから借地人、借家人になりたい人はどうなるのか。私のように外国から帰ってまいりまして、日本で貸し家を探しても一つもない。今借りている人は少なくとも安い家賃で守られているということが、果たしてそれが勤労者を守ることになるのでしょうか。したがって、現在ある方を守るだけではなくて、これから入ってくる方をいかにオープンに守るか、実はそれが先ほど一番最後の日米構造協議の問題でもありますし、いかにオープンに保護ということを考えていくかということになりますと、そこはやはり原則に戻っていくのだろう。  それから三番目は、家賃の問題ですが、確かに安い方がいいという直接的な意味はわかります が、これは今実は、東欧諸国、社会主義諸国、共産圏諸国で問題になっております公定価格を低く抑えることによって一つも供給が出ない、自由市場では豊富に物が出回るということを一体どういうふうに考えるのかということにも通ずる問題でございますので、この点は原則的にもっと考えていく必要がある。  それから最後に、日米構造協議の問題でございますが、これはいろいろな解釈がございます。確かに、あれはアメリカの交渉相手とただ話をしただけだという解釈がございます。少なくとも土地利用に関しましては、私はあの日米構造協議で日本がそれなりに結論を出したことは、アメリカの要求というよりは日本の中の意見、特に日本の経済学者の意見をアメリカの財務省のエコノミストが聞きまして、もしかしたらその中に私が英語で書いたものもインパクトがあったのかもしれませんが、そういうものをまとめて出したものでございまして、あれは実は日本の中の意見がただアメリカ経由で出てきたというふうに私自身は解釈しております。したがって、ほかの項目につきましてはいろいろな問題があるかもしれませんが、少なくとも土地利用ということに関しましてはあれは実は日本が本来やるべき問題であって、したがって日本が日本に対して公約しているというふうに私自身は解釈をしております。

紀平悌子各派に属しない議員

○紀平悌子君 両先生に同じことをお伺いしたいと思います。  私は、経済的あるいは社会的に弱い立場にある方につきまして政府にいろいろ質問申し上げました。その立場からでございますので、お答えできる範囲で結構でございます。  借家などについての弱者保護政策でございますけれども、宮尾先生は、基本的には、他の立法政策に任せるべきとはおっしゃいませんでしたが、立法政策によるものではないかとおっしゃいました。ただ現状の中で、お年寄りの家庭あるいは母子家庭など非常に幅広い問題、そして福祉の対策というものを、高齢化社会に向かっております現在、日本は山ほど抱えております。その中で他の立法政策でということはどのくらい実現可能性がございましょうか。追いついてこられるでございましょうか。この点につきまして、この一点に絞りますので、お二方から順次お答えをいただきたいと思います。

飯塚孝弁護士

○公述人(飯塚孝君) 借家関係における弱者の保護という立場からの御質問でございますが、今回の法務省の改正要綱試案では、借家関係に関しでもかなりの改正の問題点の指摘があったわけでございます。  平成元年の建設白書を拝見いたしますと、昭和六十三年度でございますけれども、質のよしあしは別といたしまして、日本全国に約三百九十万戸の空き家があるというような報告になっております。ですから、これが大都市に集中しているのか、あるいは地方都市に散在しているのか、あるいは木賃住宅もあるいは木賃アパートも二戸に数えられている可能性もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、借地関係はかなり建設省等で実態調査をして実情の把握ができておるようでございますが、借家関係におきましては三百九十万戸という空き家の報告があるということは非常に数の上では驚いているわけですけれども、その中身の実態の把握を早急にしてその対策を立てていただかなければならないと思います。  また、特に調停委員の立場で非常に感じたことは、ある行政区におきましては、区民住宅あるいは母子家庭のための住宅、あるいは老人のための住宅、そういうものの住宅の手当てをもうあきらめてしまっているのではないかというほどその区内に住んでいる方々が困っている実情を見ております。いずれにいたしましても、土地を持って住宅を取得するということは容易にできない状況でございますので、やはり行政の面で良質な住宅の供給をすべきであろうというように考えております。

宮尾尊弘筑波大学教授

○公述人(宮尾尊弘君) お答えいたします。  私は先ほどから、弱者に対してやはり特別な配慮が必要な側面があるということを強調してまいった次第です。確かにその点、他の立法あるいは他の政策で補完すべきだということがございますが、しかし確かに、それは借地借家法の中で考えていくということもございまして、したがって既存のものにこの際当てはまらないということは、それに対する暫定的な措置ということでそれなりの意味を認めているものでございます。  しかしながら、そのような既存のものに当てはまらないという形でいくことが本当に今の弱者の保護につながっているのだろうかという問題点がございます。やはりこれから高齢化社会になってお年寄りがふえてくる、あるいは所得の高い人もいるけれども低い人も出てくるという格差もまた必然的に出てまいりますが、そういうときに一番必要なのは、多様なニーズに合う豊富な種類の借地・借家があらわれてくるということが最も基本的な保護の形でございまして、それに制約になるような形というのは結局自分の首を絞めているということになりますので、保護のあり方というのをもう一つ考え直す時期に来ているのではないかというふうに考えます。  それから、それに関しまして既存のものの保護のあり方をよく見ますと、それが本当に弱者を保護することになっているのかという点の疑問が生ずることは先ほどから御指摘が幾つかあるとは思いますが、一番の問題は、例えば借地権につきましては、それが物権化し、しかも代々続いていくということが本当に高齢者ないしは困った方を保護する形になっているのだろうかということを考える必要があるというふうに思います。それは、もしその方の次の世代に無原則的に受け継がれれば、その受け継いだ方が必ずしも弱者でないとすればそのときに弱者の方はそれだけ割を食うわけですから、本当に弱者のことを考えるのであれば本当に弱者のところに配分がいくようなシステムをもっと積極的に考えていただくことが必要かというふうに思う次第です。  あと、私はどうしても経済学者として強調しておきたいことは、先ほどから地代の問題等がありますが、確かに高い地代というものは困る人が出てまいります。しかし、それを抑えたからといって解決にはなりません。これはあらゆる市場において共通の問題でございます。ですからこれは、いかに地代をできるだけ市場で合理的なレベルに持っていくか、それによって余り紛争や調停や裁判ということが必要ないようなできるだけ自由な契約に任せるという方向に持っていくかということが大切でありまして、それに対して高い家賃をいかに支払うことができるようにさせてあげるかという視点が重要でございます。  この点で他の政策が非常に重要で、これが先ほど申し上げました特に高齢者に対する家賃補助、所得補助その他所得面、資産面でいかに補助していくか、ここの徹底的な充実というものが今後の大きな課題でございまして、この点で少しずつ区や都が前進を見せているということが一つのシグナルでございますので、それと呼応して借地借家法も、少なくとも新規の分については今回発足をし、それから既存の分についてそれに見合って考え直していくというのが順序かというふうに考えております。

紀平悌子各派に属しない議員

○紀平悌子君 ありがとうございました。  終わります。

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) 以上で公述人に対する質疑は終わりました。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  午後一時から公聴会を再開することとし、これにて休憩いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時開会

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会公聴会を再開いたします。  休憩前に引き続き、借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案につきまして、公述人の方々から御意見を伺います。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ本委員会のために御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。  本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の法案審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず星野公述人にお願いいたします。星野公述人。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) 星野英一でございます。  東京大学で三十数年教えておりましたが、昭和六十二年に退官いたしまして、以後千葉大学で教えております。専門は民法でございます。  法制審議会の委員も兼ねておりまして、民法部会の委員をずっと務めており、このたびの借地・借家法の改正案の検討に際しましてはずっと参加してまいりました。また、昭和三十一年に開始されました戦後最初の借地・借家法の改正問題の検討には、駆け出しの法制審議会幹事といたしまして、途中外国留学で二年欠席いたしましたけれども、末席で参加しております。そして、昭和三十五年に公表されました御承知の借地・借家法改正要綱案の作成にも関与しております。  そこで、本日は、これらの経験をもとに、二、三の点について申し上げたいと存じます。  まず、全体的なことにつきまして五点ほど申し上げたいと思います。  第一に、今回の改正のいわば正式の検討は昭和六十年に始まったものでありますけれども、実質的な検討は既に昭和三十一年に始められていたものであります。その際、まず問題点を作成いたしまして各方面からの意見を仰ぎ、さらにこれに関連いたしまして学会その他法律関係の諸雑誌におきまして検討がなされております。また、当時かなり何カ所かで実態調査を行いました。その上で、その成果といたしまして借地・借家法改正要綱試案ができ上がったわけでございます。今回の改正に際しましても同要綱案が重要な参考資料となっておりまして、本改正案の中にもそれらを受け継いでいる規定が存在するということを申し上げたいと存じます。あえて申しますならば、今回の改正は、途中中断はございましたけれども、実は三十五年前からの検討の結実であるということが言えようかと存じます。  しかし、第二に、言うまでもないことでございますけれども、昭和三十五年以後の我が国における借地・借家関係をめぐる社会関係の変化も著しいものがございます。今回の改正の直接の機縁もそこにあったことは、これまた周知のところでございます。したがって、私どもは昭和三十五年の改正要綱案を一つの出発点といたしながら、今日の社会の要請を十分に受けとめて考えてまいりました。  そこで、第三に、今回の案をつくるに際しましては多方面から実に多くの意見を求めつつ検討してまいったわけでございます。昭和六十年十一月に「借地・借家法改正に関する問題点」というものを発表いたしまして各方面の意見を求めましたところ、七十を超える団体から意見が寄せられております。また、それを参考にいたしまして検討した結果できました借地・借家法改正要綱試案に対しましても八十通ほどの意見が寄せられまして、これらを考慮いたしまして最終案ができ上がったものでございます。なお、この間も学会や雑誌等におきまして多くの検討が行われておりまして、それらも十分に参照いたしました。  そこで、第四に、それらの大まかな内容をまず申し上げますと、結局、昭和三十五年の改正要綱案以来のものと、その後の社会的変化に対処するものとがあるということが言えようかと存じます。  昭和三十五年当時は、既に住宅難は緩和してきたと言われておりまして、判例などにおきましてもそのように言っているものが存在しております。他方、昭和二十三年から三十五年までは借地による住宅建設がかなり行われていた時代でございます。そこで、同案は、一方で借地権を物権とするとともに法律関係を明確化するということを考え、他方で両当事者の利益のきめ細かい考量を図ろうとしております。しかし、この案に対しましては、借地権の物権化の点に強い反対があって、それがこの案が日の目を見なかった大きな理由であると言われております。この点、私も委細は存じておりませんけれども、そのようなことが言われておったわけであります。したがいまして、今回の案で参考にされましたのは、法律関係の明確化という点と、両当事者のきめ細かいバランスを図る点であったということができます。  次に、その後の社会事情の変化を申し上げますと、これも一口で申しますと、既に言われておりますとおり、借地・借家関係、広く申しますと土地・建物の利用関係の多様化ということでございます。借地・借家の終了につきまして正当事由というものを要件といたしましたのは、戦時中の住宅難に対処するための昭和十六年の借地法、借家法の改正であります。この要件は、戦後の住宅難に直面いたしました判例によって、立法者の考えていたのとは異なって借地人、借家人の事情その他一切の事情を考慮するべきものとされまして、さらにこれと、とりわけ借地法における借地期間のかなりの長期の保護というものが相まちまして、その後の事情の変化に対し、両法がやや硬直化してまいりまして、社会の多様な要請に応じられないという結果を生ずるに至りました。  より具体的に申しますと、昭和十六年の改正は、借地人、借家人をいわば弱者としてこれを保護しようとするものであり、今日におきましてもそのような事例は少なくないことは明らかでございます。しかし、必ずしもそうとは言えない場合もまたかなり存在するようになってまいりました。例えば住宅・都市整備公団が借地人になるというような場合などがそれであります。いずれにいたしましても、地主が土地を借地に出すことが著しく減ってきていることは統計的に明らかなようでございます。  そこで、一方におきましては、弱者である借地人、借家人の保護という従来からの理念を維持しつつ、さらにきめ細かい考慮をこの点にも加えていく。他方で借地の供給をしやすくするために、合理的な一定の借地関係のメニューを提供しようとして苦心しているのがこの案であるということと私は理解しております。  第五に、土地政策、住宅政策の問題でございますが、これを直接実現することは本法案の目的でもなく、その内容でもございません。借地借家法のできることというのは両当事者の利害の妥当な調整にありまして、それ以上のことではございません。この点につきましては、改正の検討が開始されました当初、外部からはかなり言われていたことでありますし、また、それを期待する向きもかなりあったようでありますけれども、これは市場経済体制をとっております我が国の私法の一環をなす借地借家法といたしましてはやや無理な要求でありまして、借地借家法に直接これをおさめるということは適当でもないというふうに思われます。  以下、各論的に問題とされることの多い一、二の点に触れたいと存じます。  第一に、定期借地権は余り利用されないのではないかと言われることがございます。確かに、これによりまして急速に借地がふえるとは言えないでしょう。しかし、三つの類型それぞれにつきそれなりの利用が期待できると考えられます。事業用のものはこれはもう相当の需要があるというこ とは明らかであります。長期のものと建物譲渡特約つきのものは、住宅・都市整備公団やデベロッパーによる都市周辺の土地につき利用されることが期待されます。現にそれらは、実はこれらのものにおきましていわゆる紳士協定として行われているわけでございます。というのは、現在におきましては法律上はそのような特約は有効とはされておりませんために、結局、業者である借地人、まあ住都公団みたいなものが必ず一定の期間後には返してくれるであろうという信頼のもとに行われているわけでありますが、実はそれはおかしいことでありまして、やはり法律がある以上は法律のルートに乗せていくということを図っていくべきであります。  また、現在多く行われております土地信託でありますが、これは建物譲渡特約つきのいわゆる定期借地権に対応するものでございますけれども、土地信託に任せておけばいいということにはならないと思われます。やはり借地借家法としてもこれに対応するような借地権というものをつくっておくということが必要ではなかろうかと思われます。また、特に土地信託あたりになりますと、極めて複雑な内容のものでございまして、むしろもう少し単純明解な形で、一般人にわかるような借地権というものをこちらが提供しておくということがやはり国としての責任ではなかろうかと考えております。  第二に、普通の借地権につきましては、案におきまして更新後の最短期間を十年にしたことが実はかなり取り上げられて議論されておりますが、この点は衆議院の修正におきまして最初の期間を二十年とされましたので、比較的問題はなくなったかと思われます。  ただ、一言だけ申し上げておきますと、実はこの更新後の最短期間を十年とするということは、昭和三十五年の案におきまして既にこうなっておりまして、当時から議論があったわけでありますけれども、少なくとも当時におきましては大方の賛成を得ていたものでございまして、それが今日に至って、むしろこれも短か過ぎるということになるかどうかというのは若干疑問があるのではないかと私は考えております。その理由というのは、両当事者の利益の均衡点としてはちょうどこの辺が適当なところではないかというふうに考えられるわけでございますが、御修正がございますので、これに関しましてはそれ自身別に私は反対ではございませんし、これ以上のことは申さないことにいたします。ということは、つまり、これらの点は極めて微妙な両当事者のバランスというものを考えているわけげございまして、十年だから非常に悪く、二十年だから非常にいいとか、あるいは逆だというようなことにはならないということを申し上げたかったわけでございます。  第三に、正当事由につきまして申し上げたいと存じますが、これは判例を明確にしたものでありまして、実は昭和三十五年の実と、具体的な内容といいますか、あるいはその考慮すべき要素につきましては異なりますけれども、要するに明確化という考え方によっておるわけであります。しかも、今回の改正案は考慮されるべき要素につきまして段階をつけて規定しているわけでございまして、これもほぼ判例に従っているわけでありますが、自己使用の必要性とそれ以外のファクターというものとで重要性が違うということがわかるような規定の仕方をはっきりしているつもりでございます。その点で、三十五年の案よりもずっと、いわばリファインされているというか、あるいはさらに言えば両当事者の事情というものをバランスよく考慮しているものでございます。  次に、第四でございますが、先ほどとは反対に、現在ある借地人が期間満了のときに定期借地権にさせられるおそれがあるということも言われることがございます。しかし、これは実は合意の問題でございまして、地主に正当事由がないと借地人が考えます場合には、例えば弁護士などに相談いたしまして普通の借地権のままで更新するように交渉してもらえばよろしいわけであります。また、それはある意味では法律的には当然のことでございます。  仮に、この一つ一つの定期借地権について見てまいりますと、五十年の定期借地権にしようと仮に地主が言ってきたといたしますと、これはむしろその方が借地人にとって有利でございますから、恐らくそういうことはないでありましょう。  建物譲渡特約付借地権の場合がややデリケートでありまして、現在が普通建物所有のための借地権でありますと、更新後の期間がどうなるかという点で若干違ってくるわけであります。つまり、更新後の期間が二十年になるのか、それとも三十年になるけれども、というのは譲渡特約つきのものですと三十年になるけれどもそのときに借家権になってしまう、それから二十年のものになるけれどもそのときまた正当事由が問題になるという、どちらを選ぶかということはかなり難しい判断を要することになりますけれども、いずれにいたしましても、不利なものを押しつけられないで済むはずでございます。  なお、事業用の借地権につきましてそれになるということは普通考えられませんけれども、しかし、もしもそういう話が出てまいりました場合には、これは先ほど申し上げましたように、交渉すればそれで済んでしまうだけの話かと思われます。  なお最後に、いろいろ性格の違ったもの、つまり一方ではなお弱者である借地人、借家人を保護するというもの、普通借地人が比較的それに近いかと思いますし、建物譲渡特約付借地権の場合がそれに次ぐかと思いますが、そういったものと、それから例えば事業用の借地権といったように、借地人が事業用のものであって短期の間に投下資本を回収できる、その程度のものである、こういうような場合、あるいは長期の借地権、定期借地権といったようなもの、それからまたさらに、今回はもう既にできております借地権につきましては従前の例によるということにしておりますので、若干違った性格のものが幾つか並ぶということでありまして、これを一つの法律におさめることの適否がやはり言われることがございますけれども、この点は逆のことも言えるわけでございまして、余りいろいろな法律をつくってしまうよりは一つのものにおさめておいて、しかしそれぞれ違った制度の趣旨というものをはっきりさせて解釈をしていけばよろしいわけでございますから、余り問題はなかろうかと存じております。  以上をもちまして、私の公述を終わります。

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) どうもありがとうございました。  次に、田崎公述人にお願いいたします。田崎公述人。

田崎信幸弁護士

○公述人(田崎信幸君) 私は、弁護士として、都市部における借地・借家関係に関する訴訟あるいは法律相談などの紛争の解決に努めてまいりました。このようないわば実務家としての立場で、今回の借地・借家法の改正作業を注目してまいりましたが、その際、私が最も念頭に置いていたことは、まず今回の法改正によりまして、現在ある既存の借地・借家権、この権利関係はどうなるのか、第二に、法改正施行後の土地・建物の賃貸借の形態による利用というものはどうなっていくのかという点でありました。  一九八五年に具体的な改正作業が開始されましてから、今回この両法案を見ますときに、確かに当初検討されておりました借地・借家権の保護の上でかなり問題があるのではないかと思われていた幾つかの改正項目あるいは制度の新設といったものは削除されまして、また、このたび法案提出に当たって既存の法律関係には適用しないということが述べられました。また、さきに衆議院において三点の修正がなされましたが、私は、これらのことを借地・借家権の権利保護の上では改善あるいは前進であるという意味で評価をするものであります。しかしながら、それでもなおかつ、私はこの両法案には借地・借家権の権利を守っていく上でまだ疑問があると考えるものでありますので、これまで既にほかの公述人が述べられた一般的な制度等の陳述との重複は避けまして、この疑 問点についてのみ述べることといたします。  まず第一に、この両法案によりまして既存の権利関係が本当に守り抜かれるのであろうかという点であります。法務大臣、政府委員は繰り返しこの点を強調されました。私は、この点を確実にしてもらいたいと思っております。しかし、現在の既存の借地・借家関係についてこの新両法案の及ぼす影響を見ますならば、かなり問題があると考えます。新法が施行されますならば、土地・建物利用関係につきまして二種類の法規制が生じます。普通借地権については特にそうであります。外形的には同じ土地・建物利用形態でありながら、二種類の権利が併存していくというこれまでに全く例がない継続的な法律関係というものが出現をいたします。特に長期間にわたる居住と営業とを保護する借地権、借家権の権利者にとって一番大事なことは、まず第一に安定した継続した使用期間が保障されることであり、第二には使用の経済的な対価が利用形態に適合した負担可能なこと、この二つでありまして、このいずれか一方が欠落をしても結局のところ借地・借家権は守られないのであります。  この観点から両法案を見ますならば、まず立法形式の問題につきまして大きな危惧の念を禁じ得ませんが、その根本的な原因は借地借家法案が現行法を廃止して、単に経過規定中の附則によって現在の権利関係を守るという極めて不自然な規定の仕方をしたことに原因があると考えます。  新法によりますと、借地法、借家法、建物保護法の三法は廃止をされました。原則として、新法を既存の法律関係にも遡及して適用させ、例外的に幾つかの項目につきまして「なお従前の例による。」、などとして、旧法、つまり現行法によって生じた効力を妨げないという形で規定されておりますが、このような規定の仕方が私はやはり極めて不適切であると考えます。借地借家法に関連する国民は数千万に及び、都市部では過半数に及びます。しかも、その国民の日常的な基礎的な権利関係を規律する法律を廃止してしまって、法律専門家にしかわからない、あるいは専門家ですら難しいような規定の仕方をするということが法治主義の観点から見て極めて疑問だと考えます。しかも、このような権利関係は、例えば家督相続において戦前の旧民法を適用するように、過去の一回的な歴史的事実に適用するという問題ではなくて、これから将来数十年にもわたって国民を規律していく基本法なのです。  当参議院法制局の参事をしておられる田島信成氏の著書によりますと、「現代社会の基本となる法令は、国民の誰もがこれを読んで、容易に理解しうるものでなければ、民主主義・法治主義の理想は達せられない」と指摘されており、私もそのとおりだと思います。国民は、自分を規律する根拠となる法律を容易に知り得ることができなければなりません。さらに田島氏は、そもそも「経過規定」というものは、「法令の制定又は改廃があった場合において、新しい法令を一挙に適用すると、従来の法令の下で形成されてきた社会関係は大きな打撃を受けることがあるので、スムースに新しい制度に移行することができるように、一定の限度において旧法令の効力を持続させるために法令の附則に置かれるものである」と述べておられ、もともと暫定的な特例措置であることを明らかにしておられます。これは恐らく立法技術の常識であろうと思います。  借地・借家関係は、労働法などとともに、恐らく貸し主、借り主間の力関係において大きな差がある領域であります。法律は、確かに最終的には裁判規範として裁判所において機能するといたしましても、まず第一次的には権利関係の当事者に対する行為規範として第一線で機能いたします。裁判などの法的な解決に訴えられるものはごく氷山の一角とも言うべきであり、ほとんどは法律の専門家が関与しないところで紛争が解決されている、そういう実態を見なければならないと考えます。例えば、多数の借り主を管理している貸し主の場合を見るとわかりますように、同じような権利関係がなされているものについて、新旧両法に基づく二種類の契約によって適用するなどということは事実上考えられず、結局、このような附則による既存の権利関係の規定というものは、いずれ新法へ一本化するものではないか。うがった見方をすれば、そこへ誘導されていくのではないかとすら疑念が残るのであります。  また、このような規定により現行法が廃止され、新法が施行されますと、既存の借地・借家関係についてもさまざまな圧力等をかけて、あるいは地代、更新料、建てかえ承諾料等の支払いの譲歩と引きかえに契約をし直して、事実上、新法による契約に切りかえていくことが起こり得ると考えます。新法が成立前の今日でさえこの種の圧力、交渉等は数知れず、確かにひどいものは訴訟に訴えれば無効になし得るかもしれませんが、当事者が渋々妥協して署名した場合など、法的な解決を期待できない分野が多いのであります。  また、契約期間が来たとき、地代・賃料あるいはその他新法による用途規制等の新たな特約をなした上で契約書をつくり直すことも考えられますが、これは果たして旧契約の更新なのか、新法によって新たに契約をし直したのか、当事者間においてもさほど意識はされず、識別は困難であると考えられます。借地は長期間でありますからともかく、借家についてはわずか二、三年のうちにすべての更新時期が来るのであります。私は、既存の権利関係を本当に保護するのであれば、それにふさわしい法規制の仕方をなすべきだと考えます。  第二点は、更新に関する正当事由に関してでありますが、便宜、借地・借家あわせて述べます。  この点についても、政府の説明では、新法の規定は現在の判例等で示されている基準を明確化、法文化しただけであるから、正当事由について新旧いずれを適用するかは形式的なことにすぎず、実質においては同じ運用がなされると述べられており、結局のところ、新法が適用されるのと同一の結果になることを事実上認めておられるのであります。もちろん重要なのは、実質的な内容の判断基準がどうなるのかという点でありますが、私は新法により判断基準の枠組みが広がって、事実上、明け渡し等の機会が拡大されることにつながると考えます。確かに、新法が例示しております要素というものは、過去の判例において判断要素として、あったかと言われますと、確かに判断された要素であることは間違いありませんが、問題は、判例の中で他の多くの要素と総合的に判断されるというのと、法文に判断要素として明記された場合とでは、当事者及び裁判所等への影響もその機能において異なるものであると考えます。  また、判断要素の中に、主たる要素と従たる要素とをランクをつけて段階的に規定しているから問題ないという説明がありますが、これも実務を見ますならば、二層に分けて判断するということはなされないのであります。すなわち、実務においては、まず第一義的に主たる要素があるかどうかを判断して、それがないからといって即審理を打ち切ることはしないのであります。当事者双方にあらゆる主張、立証を尽くされた上で総合的に判断されるのであって、しかも、ほとんどの事件については和解が勧告され、その中で金銭の提供等が必ず提案をされることになっておるのが実務であります。  正当事由の要素は、その時代の土地住宅事情を極めて微妙に反映をし、具体的にこの間内容が変わってきており、これは財産上の給付の取り扱いの変遷や、近時、土地・建物の建てかえ、有効高度利用を理由とする明け渡しの申し出がふえてきたこと等を見れば明らかであります。特に、財産上の給付はいまだ正当事由を補完するものという位置づけでなされており、借地関係についてはいまだ認めた例も少ないのであります。正当事由がほとんどない場合、または少ない場合には明け渡しを申し出にくく、こういう点において事実上の明け渡し要求を抑制しているのでありますが、財産上の給付が明記されるとなれば、このような状態から財産上の給付を申し出れば、それが正当事由の判断要素として堂々と判断をしてもらえると いう期待あるいは理解から明け渡し要求をしやすくなり、貸し主及び裁判官も借地・借家権を金銭の給付で換算して評価をするという傾向が強まるのではないか生懸念するのです。  実務におきましても、貸し主の使用の必要性はほとんどないと思われる場合においても、和解で一度は金銭の給付等が話し合われるということを念頭において申し立てることもあります。また、従前の経過、土地・建物の利用状況等が明記されることによりましても、更新料の支払いや賃料値上げの有無が考慮され、また、周辺の状況に見合った有効利用をしているかなども実質的に考慮されることになりかねないと考えます。借り主としてみれば余り貸し主ともめずに更新料等の支払いには応じ、また高度利用を図ることに努力しようという傾向に持っていく、こういうことを考えるのであります。  判例におきましても、賃貸し人と賃借り人の双方の使用の必要性、その度合いを比較考量いたしまして、自己使用という基準を持ちつつ、総合的に判断をして、社会的に妥当な解決をしてきているのでありますから、新法の四要素を明記したからといって判断が特にしやすくなるとは思えず、実際には、先ほど述べましたように、双方の具体的な事情が主張、立証されるのでありますから、特に明確化したことになるというふうには言えず、かえって各要素がひとり歩きするおそれがあると考えます。  このような弊害を考えますと、現行法のままかあるいは双方の使用の必要性を主従の区別を明確にして記すことで十分であると考えます。  時間が超過して恐縮ですが、最後に一点、賃料等の改定手続について申し上げます。  これは実体的な要件とともに手続面でも、施行後申し立てられるものについては既存の契約も含めてすべてに適用されることが条文上明記されております用地価高騰がもたらした地価と賃料とのギャップが貸し主と借り主双方に解決困難な事態をもたらしており、民事調停法一部改正におきまして、調停によって双方の互譲と話し合いによる賃料が決められればよいのでありますが、実質的にはこの二十四条の三、事実上の仲裁条項によって借り主に不利な判断がなされる可能性があることを懸念いたします。  現在、地代・家賃の話し合いができず調停となりますと、貸し主側より鑑定がなされて、事実上それが押しつけられる結果になることが多いのであります。鑑定の根拠となる不動産鑑定基準は昨年一部見直しはされましたものの、いまだに高騰した地価の地代・賃料等への反映を全面的に抑えることはできず、そのはね返りが借り主を苦しめております。調停におきましても、私は多くの良心的な調停委員、鑑定委員の方が努力されていることは認めますが、高過ぎると思われるデータの集積や鑑定による数字を示され、あるいは鑑定をなすに当たっても、その結果は極めて地価を反映して高いものになることは事実であります。中には、裁判所が任命した鑑定によっても、これは私が直接経験した事件でありますが、土地の価値が上昇するならば、賃借り人もその土地の価値の上昇に見合った利用形態で営業努力をなすべきである、賃借り人の怠惰による犠牲を賃貸し人に押しつけるべきではないというような鑑定結果も出ております。  しかしながら、地価が何倍になったからといって売り上げが何倍になるわけではないのです。実際には鑑定による結果が高過ぎるのを不相当として鑑定結果より低い金額の判決をした例すら多数最近出ております。スライド法あるいは近隣比準方式であればよろしいのですが、地価に見合った平均利回り法によりますならば、とても借り主側の負担能力を超える例がほとんどなのです。この調停で示された額が納得できなくても自費で三十万以上も出して鑑定をするという借り主は少なく、このような鑑定が重視されているような実務の現状を見ますならば、私はこの調停委員会が仲裁的判断をなすということについては極めて危倶の念を持ちます。借り主側の立場を弱くし、不当な条項が出されて、しかもそれに対しては終審として異議申し立てができないということについては極めて危険だと考えます。  以上、まだほかにもございますが、私の実務経験に照らしますと、まだまだ借地人、借家人の置かれている実態を踏まえた新法の検討が必要であって、私が述べましたことは決して杞憂ではありません。既存の権利者でさえ三千万、あるいは都市部の居住者の過半数がおり、将来も借家人は恐らく国民の過半数にもなろうというときに、生活と営業の最も身近な基本法であるこの両法案の制定につきましては、逐条ごとにいろんな現実に起こり得る可能性を検討した上で、権利の保護に欠けることのないように慎重な審議をお願いしたいと思います。

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) どうもありがとうございました。  以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。

野村五男自由民主党

○野村五男君 最初に、星野先生にお伺いし、その後で田崎先生にお伺いしたいと思います。  今回の改正が大正十年の法の制定、昭和十六年の改正の精神に逆行するもので、借り手の権利を一方的に弱めるものであるとの批判があります。これに対し当局は、基本的には借地・借家関係の安定を図る趣旨で、民法の特別規定として定められた借地・借家法の基本精神を少しも損なうものではなく、社会経済情勢の変化、主として借地・借家関係の多様化に対応させたにすぎないと説明し、改正反対論が指摘するような要素は、六十年の法制審議会による見直しの開始当時に一部の論者にはなかったわけではないが、法制審議会による見直し自体は借地・借家法の筋に従って行われてきたと述べておりますが、この点をどうお考えになりますか。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答え申し上げます。  私も、ただいま先生がお話しになりましたように考えております。基本的には、これは借地・借家法の、先ほど申し上げましたいわば弱者保護の精神というものは生かしていると申しますか、その点をある意味ではむしろ強化した面もございます。そういう点を例えば一つ挙げますと、現在、普通建物使用の借地権というのは、契約をいたしますと二十年ということに最初なるわけでございますけれども、それに関しましても三十年ということにしておりますので、例えばその一つを見ましても、むしろある意味では借地人の権利を強めるという方向にも行っているわけでございます。  問題は、先ほど申し上げましたように、借地人あるいは借家人が事業体その他、かなり強者であるという場合も相当見受けられるということでございまして、そういう場合についてどう対処するかということが問題になってまいりますが、これも一律に弱者保護ということだけでいきますと、先ほど申し上げましたように紳士協定と申しますか、裁判所に行けば、うっかりすると無効と言われかねないような契約であるということになったり、あるいは土地信託といったような大変巧妙な技術ではございますけれども、余りにも複雑な技術を使ってやらざるを得ないということになるわけでございますので、そういうものは十分な需要があり、しかも合理的な範囲でそのようなものについてのメニューというものをつくって提供するという形で多様化を認めるということによって対処する。これが適当であろうということになったわけでございまして、いわば先ほども申し上げましたように、ある意味では幾つかの違った借地あるいは借家というものの併存というものを認めるという形でそれを対処いたしましたが、基本になっておりますいわば弱者保護的な意味での借地・借家法というものは変わっていないというふうに、あるいはむしろ先ほど申し上げましたように強化されている部分もあるというふうに私は考えております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 星野先生に再度お伺いします。  西欧諸国の法制あるいは実務では、我が国ほど借り手の保護が厚くないようであり、経済学者の間には借地・借家法の廃止を含め、規制の緩和を主張する意見が強いようであります。これに対し今回の法案はより穏健なものになっているように思われます。借地・借家法による規制を廃止すべきであるとする議論ないしはこれを大幅に緩和すべきであるとする議論についてはどうお考えになりますか。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答え申し上げます。  西欧諸国の法制あるいは実務のことはなかなか複雑でございまして、それぞれの国の社会的な背景もございますし、それから、何よりも向こうにおきましては借地という関係は原則的にございませんで、つまり地主が建物を建てて、しかもアパートとして貸すというのが、これが原則的な形態でございますので、その点では直ちに諸外国の借地・借家といいますか、あるいは諸外国ではほとんど借家だけと言った方がよろしいわけですが、これは対比することができない面がございます。  他方におきまして、ごく例外的に存在いたします日本で言う借地に当たるものにおきましても、これはまた極めてある意味では物権化が徹底しているということにもなりますが、他方、それだけに割り切っておりまして、更新を認めないというようなことにしているところもございます。  したがって、この点はなかなか一律に引き合いに出すことはできないわけでございますが、確かに一部の経済学者の中には、今、先生のおっしゃいましたような御意見があることはよく存じておるつもりでございますし、伺ったこともございます。ただし、これにつきましては、私は幾つかにやはり分けて考えなければいけない問題があろうかと思います。  一つは、これは何といっても借地あるいは借家関係が、繰り返しのようで恐縮でございますけれども多様化しておりまして、したがって一方においては、つまり借地人、借家人が非常に強いといったような場合につきましては、いわば合理的な合意ができる、取引をして合意ができるわけでありますので、その限りでは、ある意味で借地・借家法の規制という言葉を仮に使わせていただきますと、緩和してもいいという場合はあり得るかと思います。しかしながら、数はちょっとわかりませんけれども、相当多数を占めております居住用の建物を建てるための借地という場合につきましては、どうもそうはならないのではないかという感じがしているわけでございます。そこで苦心の策、ある部分は緩和してもいいし、ある部分は緩和するのは必ずしも適当ではなかろうということを考えましてこのようなメニュー方式というものがとられていると私は理解しております。  それから第二に、全面的に緩和したらいい、やめてしまったらいいという御意見も大分聞くわけですが、これはやはり必ずしも適当ではないと思います。というのは、そのようになりますと今度はいわば弱い方の借地人、借家人の方にしわが寄ってしまうおそれがあるわけでございます。そういう意味では規制をやめるということはとても考えられないということになります。また、大幅に緩和ということの意味も問題でございますけれども、そう大幅な緩和ということはできないのであって、いわばある部分について、つまり、かなり要件を絞った上で十分に、何と申しますか、借地人、借家人が強いという場合に関してのみある種の自由化をするということが適当であろうというふうに考えております。  経済学の先生なんかがおっしゃいますことは、例えば借地でも自由にしておいたらいいじゃないか、そうすればどんどん貸し地が出てくるというふうにおっしゃるわけですが、この点は必ずしもそうは、出てくることは出てくるかもしれません。そして、例えば三年なり五年なりの借地というものをしようということを言ってくるかもしれません。これは今度は逆に借地人側の立場に立ちますと、せっかく家を建てて三年、五年しかもたないようなものを建てるということは無意味なことでありますし、非常に生活が不安定になりますから、もしも合理的な借地人であるならばそのようなものを借りようという者は出てこないはずでございます。したがって意味がなくなる。  他方、もしも借地人の方がそういうことを気がつかないで、まあ日本の場合にはそういう人も少なくないかと思いますけれども、何となくそれでとにかく借りられるのだからいいやということで借りてしまったといたします。そこで、例えば三年なり五年なりたったところで約束によって借地が終了するといって明け渡しを請求されたといたしますとどういうことになるかということですが、これは裁判所に参りますと、大正十年の借地法、借家法ができます前に随分あったことでございますけれども、三年、五年の借地あるいは期間の定めのない借地といったようなものにつきましては、これは当事者と申しましても、地主の方はそういう意図があったのでしょうけれども、借地人の方にはそういうことをするいわば合理的な意思がなかったのだ、つまり冷静に判断してしたものではないのであって、そのような条項というものは例文であるとして無効にしたものがかなりございます。これは下級審でございますけれども、あります。そのようなことになりますと、これはまた非常な混乱を生むということになるわけでありまして、一体どの契約が合理的な考量、つまり借地人の十分な判断能力のもとになされたものであるかどうかというこの判断を裁判所がしなくてはならなくなるわけでありますから、非常に錯綜した関係になります。  そこで、そのようにほっておいてしまうということは、やはり国家としてはとるべきではないのじゃないかというふうに思われますので、今回定期借地権を幾つかつくりましたけれども、これもやはり全く自由にしておくというのでなくて、ある種の合理的なメニューというものをつくりましてそれを選びなさいという形でやっております。これは居住あるいはそのほか広く営業でもよろしいわけですが、そういうものの安定を図るべき使命を持っております国家としてはそのようになすべきではなかろうかというふうに考えております。

野村五男自由民主党

○野村五男君 正当事由の改正について、現行法のもとにおける実務の扱いは基本的には法案第六条、第二十八条に示されたものと同様であると考えてよいか。土地の利用状況や建物の現況を含めることについて批判があるが、どうお考えになるかお伺いいたします。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答え申し上げます。  私も正当事由、この第六条あるいは第二十八条でございますが、現行法における判例はこのようになっていると思います。というより、むしろこれは判例を整理したのがこの六条ないし二十八条だというふうに私どもは理解しております。  先ほどもちょっとお話がございましたけれども、まず第一次的に土地の使用の必要性というものを比較考量することは、これはもう動いておりません。もちろん、これは裁判所によりましては若干違ったものも個々に出てくることが全くないとは申せませんけれども、一般的な考え方としては両当事者の土地使用の必要性を比較考量する。そして、その他の種々の事情、その事情の中には、もう既に先ほど申し上げましたが、昭和三十五年のころから住宅難の緩和ということを申しまして、これは借家でございますが、正当の事由を幾らか広く認めるという傾向になっております。これはある程度当然と言ってもよろしいことかと思いますが、そういう意味でそのような社会的な事情というものを考慮することもまたこれは判例のとってきた立場であり、学説もまたこれに基本的には賛同しているわけであります。  ただいまお話しの具体的な土地の利用状況とか建物の現況でございますが、この点も実は下級審の判決ではほとんどこのように言っております。そして、この点につきましてもほぼ学者の中の大方の合意があろうと思われますので、裁判所に参りました場合にはほとんど問題はなかろうかと思います。  ただ問題は、先ほどもちょっと田崎公述人からお話がありましたように、世の中でいわば今回の改正についての誤った宣伝を、宣伝なのか誤解なのかその点はわかりませんがいたしまして、今回は地主、家主の権利が強くなったのだからおまえは出ていけというようなこと重言うということがあるやに承っておりますけれども、これは非常に誤解でございまして、立法当局者はもちろんのこと、弁護士さんにしてもあるいはジャーナリストの方々も大いにその点は一般の素人の方々を啓蒙していただきたいというふうに考えております。ぜひお願いしたいところでございます。

野村五男自由民主党

○野村五男君 それでは、もう一点ほどお伺いいたします。  委員の間には、法律はわかりにくく、依然片仮名文語体の法律も数多く残されているが、早くどうにかならないかとの意見が強い。どうお考えになられますか。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答え申し上げます。  確かにおっしゃるとおりの面がございまして、したがいまして、これは先ほど申し上げませんでしたが、今回の借地法、借家法の改正が平仮名口語体にしたということ自身、やはり一つの重要な意義を持っている。内容につきましてはいろいろ御意見もございましょうけれども、そのこと自身は十分に評価していただいてよろしいのではなかろうかと考えております。  なお、そのほかの法律に関しましては、これは新聞などにも報道されておりますように、国民の基本に関します民法その他幾つかの法律に関しまして現代語化するという研究が始められております。実は、私も新聞などに報道されておりましたような形でその研究会の一員として今検討を進めているところでございますけれども、これもぜひ早急に実現したいと思っております。もっとも、この場合も内容に触れるということになりますとなかなかそれだけでも大変なものでございますので、民法などの場合には内容には触れない。ただ、現在ないようなものが民法にはございますので、そういうものは落とさなくてはならなくなるかと思いますが、そうなりますと、これはやはり実質的に民法の改正ということになりますのでやや厄介な問題がございますけれども、しかし内容に可能な限り触れないで、そして平仮名でわかりやすい口語体のものにしていきたい、あるいはいろいろなテクニカルタームなども可能な限り改めていきたいといったようなふうに考えておりますので、その点はお話のとおりでございます。

野村五男自由民主党

○野村五男君 それでは、田崎先生にお伺いいたします。きょうは午前中お二人の公述人からお伺いし、またお伺いするわけでございますが、時間の都合で最後に一点だけお伺いさせていただきます。  地代・家賃をめぐるトラブルは借地・借家関係をめぐるトラブルの中でも筆頭に挙げられております用地代・家賃をめぐるトラブルを解決するには裁判所以外の機関による解決が望ましいとの考え方があるようでありますがどうか、お伺いいたします。

田崎信幸弁護士

○公述人(田崎信幸君) 私も地代・家賃に関する紛争を迅速かつコストを安く解決できれば望ましいということはそのとおりでありますが、問題は、先ほど申しましたように、現在の地代・家賃のトラブル、紛争をめぐる両当事者間のギャップが余りにも広過ぎて、両者のコンセンサスを得るということが非常に困難である、そこに致命的な問題があるのです。  先ほど鑑定事例も幾らか紹介しましたが、スライド法とか比準賃料等によりますと、例えば五万円ぐらいとしますと、利回りで計算しますと十倍以上になる。貸し主側は底地利回り法を主張し、借り主側はそれではとてもやっていけないのでスライド法で勘弁してくれと、これだけ極端な分け隔たりがございますので、結局のところ貸し主としても借り主が維持できなければ契約を継続できないのですから、判例等におきましては総合的に判断をしてかなり利回りを下回るところで解決されているのが実情であります。したがって、解決の手続とか方法を見るについても、このような本当の原町が地価急騰等がもたらしました双方の大変なギャップに根本的な原因があるという点を基礎に置いて考察すべきであると考える次第です。

野村五男自由民主党

○野村五男君 ありがとうございました。

北村哲男日本社会党・護憲共同

○北村哲男君 日本社会党の北村でございますが、まず星野公述人の方にお伺いしたいと思います。  先ほど田崎公述人から、正当事由を細分化して規定したということについての疑問が呈されました。特に実務においては、土地を使用する事情という主たるもの、それから従たるものとしての借地に関する従前の経過とか土地の利用状況とかあるいは明け渡しの条件として金銭を渡すということ、これは従たるもの。しかし、実際は一緒になるのではないかというふうな疑問が呈されましたけれども、この点について星野公述人はどのようにお考えでしょうか。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答え申し上げます。  実際はと申しますか、改正案の六条でございますが、これは正当の事由ということが一つの要件でございまして、あとの今お話しのファクター、主たるファクター、従たるファクターというのは、これは考慮すべき要素ということになっております。そういう意味では正当の自由ということだけが一つ要件になっておりますが、この正当事由というのは、先ほども田崎公述人からお話がございましたように、両当事者の事情を比較考量し、あるいはそのほかあらゆる事情、その中には場合によっては社会的な住宅事情あるいは周辺の事情といったようなものも考慮するというのは、これは最高裁判所の判決も言っているところでございますので、その辺の事情をいわば整理してはっきり書いたというのがこの六条の案でございます。これは私が漏れ承っているところでは、裁判所などにもやはりある程度はこういうふうに書いてもらった方がやりやすいということを言っておられる向きが少なくないというふうに伺っております。たしか裁判所の方の意見にもそれが出ていたかと思います。  これで余り裁判所に行けば問題ないと私は思いますが、ただ問題は恐らく裁判所に行く前のところではないかと思います。特に、先ほどお話がございました金銭のところで、金銭を出せばそれで済むのだというような言い方がなされるというおそれがあるということですが、これはあくまでおそれでございまして、やはりこの点は借地人、借家人の方々も十分に本条の趣旨というものを御理解いただいて、言うなれば弁護士さんに相談するなり頑張っていただければそれで済むことだろうというふうに考えております。  なお、ちなみに、ちょっと戻りますけれども、私が少なくとも地方裁判所あたりの判決を相当数調べた限りでは、貸し主の方に自己使用の必要性がないのに、ほかの事情だけで、あるいは特に金銭を払うということだけで正当事由ありとした判決は、私が本を書きましたのは昭和四十三年ぐらいでございますけれども、恐らく、そのころにはほとんど皆無ではなかったかと思います。それからその後の判例も若干フォローしておりますが、皆無とは言えないかもしれませんけれども、ほとんど皆無に近いと言っていいのではないか。したがいまして、これもよく新聞に報道されておりますように、これは借家でございますけれども、何億出すと言っても明け渡しを認めなかったというような判決もございます。もちろん、その何億を、まあ十億ぐらいでございましたか、出すことによって明け渡しを認めたものもございますので、その辺裁判所は非常に苦労しているとは思いますけれども、しかし基本線としてはやはり自己使用の必要性の比較考量ということが中心になるということは間違いがないというふうに考えております。

北村哲男日本社会党・護憲共同

○北村哲男君 ただいまの金銭、財産上の給付ということについてですが、これは公述人はごらんになったかどうかわかりませんが、先回衆議院の方で加藤一郎さんがお出になりまして、金銭のと ころについてこういうことを言っておられるんです。  正当事由があって土地を返すというような場合  に、今まではゼロか一〇〇かの解決で、返すか  続けるかどっちかになってしまって、そこがや  はり硬直化している。そこで、返す場合でもあ  る程度の金銭を払うべきではないか、それか  ら、続ける場合でも今度は続ける方で若干のも  のを払うべきではないか、これは今までもござ  いますけれども、そういうことで金銭的な調整  をそこで図って、ゼロと一〇〇の間で中間的な  解決が図れるようにしようということでこうい う規定をつくったというふうに言っておられるんです。  六条を見ますと、払うのは貸し主が払うというふうに規定してあるんですが、借りる方でも払うべきだということがこういう議論の中であったのだろうかと思って私ども見てびくっとしたんですけれども、そういうことについてはどのようなお考えでしょうか。実際この条文を見るときに、反対の方、借りている方もお金を払って続けさせてくれということまでもこの条文から読んでいくべきなのか、あるいはそういうことが経過の中であったということなのか。その点についてはどのように、御存じかどうかわかりませんが、そういうことを加藤公述人が言われましたので、御一緒にその研究をしてこられたお立場からお考えをお伺いいたしたいと思います。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答え申し上げます。  実は、私の先輩でございますので少し申しわけないのですが、ただいまお話しの加藤一郎公述人の御発言、今拝見しておりますけれども、今まではゼロか一〇〇かの解決で硬直化しているというのは、ちょっとこれはやや不正確ではないかと私は理解しております。今まで、既に、ちょっと先ほど申し上げましたように、いわば正当事由を補完するといいますか、つまり自己使用の必要性、そのほかの事情プラス金銭の給付といったような補完事由としての金銭の給付をさせて明け渡しを認めるというケースは非常に多くあったわけでございますので、少なくとも判例におきまして決してゼロか一〇〇ではなかったわけでございます。この第六条に関する限りはそれをいわば明文化したということだけでございまして、その点では余り問題はないように思っております。  それからまた、現実に裁判に行かない例におきましても、これはやはり立ち退き料、明け渡し料などと申しまして貸し主の方が相当のお金を払って出ていってもらうというケースが大体通常でございます。特に借家の場合には明らかにそれがございます。むしろ借家人の一般通念として立ち退き料が取れるのだということが余りにも強くなって、今度は逆に家主の方が困っているという例すら聞かないこともないような状況かと思います。  それからもう一つ、第二番目にお話しになりました、今度は期間が満了いたしましたときに借地人なり借家人の方からお金を払って継続してもらうということでございますが、これは六条等々においてそのことを予想しているというものではないというふうに私は理解しております。ただ、現実にはそれが行われているということでございまして、これは何と申しますか、法律論というよりは一種の経済的な問題として理解できないこともないわけでございます。  それはどういうことかと申しますと、権利金などとの関係がございまして、地主、家主といたしましては権利金を最初に仮に取って貸したといたしましても、権利金というものが一体いかなる性格がということは実は不動産鑑定士さんのお話などを聞いてもよくわからないのですけれども、これが一定期間の賃料の前払いだという例を仮にとってみますと、そういたしますと例えば三十年間の賃料の前払いだったといたしますと、それが過ぎましてあと二十年というようなことになったときに、では、あとまた二十年間の賃料の前払いをもう少ししなくてはならないのじゃないかという問題も出てこようかと思います。ただし、この場合も、先ほどもちょっとお話がございましたように、地価の高騰に見合ってそれに利回りを掛けるというわけには到底いかない。そんなものは払えるはずはございませんので、そこのところはそのようにはならない。  これは地代増減の問題になるかと思いますけれども、前に案に出ておりましたときには、経済的な状況としても、賃金の上昇とかそれから物価の上昇といったようなものも書いておりましたが、その辺は経済的な状況ということに全部含まれるということで落としたわけでありますけれども、賃金にスライドするのは、これは比較的問題はございません。払う方としては問題がない。しかし、賃金よりも物価の上昇率が高い場合を仮に考えてみますと、これもある程度はやむを得ないかもしれない。というのは、貸し主なども非常に零細な貸し主がございますので、地代・家賃で生活しているという人もありますから、そういたしますと、貸し主が生きていくためにも物価にスライドするということは考えられるかもしれません。問題は、地価の上昇分をどうするかということでございますけれども、これは私の考えでは地価の上昇分というものを直ちに地代・家賃に反映させることは適当ではないと考えております。  というのは、これは例えばお金を貸した場合、金銭消費貸借を考えてみますと、元本が全然動かないわけでございます。ところが、土地などの場合には、いわば元本に当たるものの価値、価格が上がってしまうと、それをもとにして平均利子率を掛けるというのはちょとある意味ではいかにもお金と余りにも違い過ぎるという問題がございます。しかし、今度は逆に地主、家主側に立ってまいりますと、今貸したならばそのくらいの地代が取れたのに前に貸したために非常に安いのでこれはかなわぬということになり、そしてそれが実は期間満了等の場合には正当事由がありますためになかなか明け渡し請求ができないということで、何かと相手方、つまり借地人、借家人の債務不履行にかこつけて明け渡しを迫るという例があるわけでございまして、ますますその争いが陰湿化してまいります。  そういう点から申しまして、これは地主、家主側のジェラシーではありますけれども、その気持ちも全くわからないわけではないので、そこのところはやや日本的に幾らか考えて、そちらの方は地価高騰分も幾らかは色を付けましょうというようなあたりにおさまるのだろう、そのように私は考えております。

北村哲男日本社会党・護憲共同

○北村哲男君 あと一、二点簡単にお答え願いたいんですが、一つは、借地権の物権化について検討はされたけれども否定されてきたということを言われました。それから、現在登記請求権については否定されておりまして、特に今度十条では明認方法という、ちょっと旧式というか古小形の方式をとっておるんですけれども、一つは、物権化ということについて否定されてきたということについての先生のお考えと、それから登記請求権についてはどのようにお考えなのか、認めるべきか、あるいはこれはもう否定していくべきなのか、その点について簡単に御説明を願いたいと存じます。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答え申し上げます。  実は、借地権の物権化ということでございますけれども、これも何段階かに分けてお答えしなければならないのですが、一つは、借地権の物権化という言葉自身ややあいまいな言葉でございまして、例えばヨーロッパ大陸系の国ではみんな賃借権は債権に入っております。その中でも例えばフランスなどを見てまいりますと、賃借権の譲渡はできるということで可能性があるわけでございます。六百十二条のような規定はございません。しかしただ、譲渡は自由だけれども、譲渡禁止の特約をつけられるということになっておりますので、譲渡性が必ずしも物権か債権かの基準にはならないというようなこともございます。  それから、そこで一体何が物権、つまり賃借権の場合に一体どういうものが物権でありどういうものが債権であるかということはなかなか簡単には言えないので、私どもといたしましては、個々 の問題、例えば今の譲渡性の問題とか、あるいは特に外国などでは目的物が売られました場合の新所有者に対する対抗力の問題がございまして、対抗力がある場合に物権であるというようなことを言っているものもあります。したがいまして、外国では、ドイツ、フランスなどでは賃貸借が債権のところに置いてありますけれども、賃借権物権論というものが常に少数説ながら説かれ続けてきたというようなこともございまして、余り物権であるからこうだ、債権であるからこうなるというふうなことにいたしませんで、個々の問題について妥当な解決をした方がいいだろうというのが私たちの基本的な考え方かと思います。  それで、物権化が否定されたということでございますけれども、この点もそういう意味ではかなりニュアンスのある点でございまして、仮に物権化ということを民法で申しますと、旧民法のボアソナードの例を申しますと、ボアソナードの旧民法では賃借権は物権となっておりました。それが現行民法にいたしますときに債権にされたわけでございますけれども、ではその物権ということはどういう意味がということをボアソナードはほぼ三つに分けて言っております。  一つは、目的物の新所有者に対する対抗力の問題でございまして、新所有者に対抗できる、まさに物権というのは第三者に対して主張できるということが物権でございますから、そこで対抗力があることが物権の一つの標識である、こういうふうに申しております。この点は、実は我が国では既に建物保護法とか借家法で非常に簡便な方法での対抗力の具備が認められておりますし、そもそも民法の中で六百五条、後にお答え申し上げますけれども、六百五条で一定の方法で対抗力を備えることが認められておりますので、その限りでは物権に近づいたということになります。  次に、譲渡性でございますが、この点は我が民法は六百十二条でありまして、原則はございませんけれども、借家の場合に譲渡性を認めるという意見は営業用の建物の場合を除きましては余りないかと思いますが、借地に関しては認めた方がいいという意見が強くございまして、これは実は昭和四十一年の改正のときに実際は裁判所の手続をとれば譲渡してもらえるということになりました。現行の九条ノ二とか三といったようなものでございます。審判を見ておりましてもほとんどの場合に譲渡が認められておりますので、したがってその限りでボアソナードの言う物権性も相当程度にこの限りでは認められてきたということになります。  第三番目にボアソナードの言っておりますのは、賃借権に対して抵当権を設定できるということでございます。この点に関しまして実は私どもも検討いたしまして、当初の間はそれが入っておったわけでございますけれども、非常に難しい問題がございます。借地の場合に賃借権に設定した抵当権、それから今度は建物にも抵当権をつけることがございまして、その両者の関係をどうするかとか非常に難しい問題が起こってまいりますものですから、これはもう少し広く民法一般の問題として考えまして今後の検討事項にしようということで、いわばとってある問題でございます。仮にそれが認められてまいりますと、もはやこれはボアソナードの意味における物権化がもうほとんど完成してしまうということになります。したがって、実は昭和三十五年に物権ということをいきなり言ってしまったものですから、そこで抵抗がございましたわけなんですが、実質的な個々の点について申しますと、既に物権化は相当認められているということになろうかと思います。したがって、私は物権化が三十五年でいわば建前として否定されているけれども、実質的には着々として進行しているというふうに考えております。  それから次に、登記請求権の問題でございますが、実は私自身個人的には登記請求権を現行法六百五条の解釈論においても認めていいと考えております。ただし、これは大正十年の大審院の判決がございまして、これは債権である、賃借権は債権であるから物権と違って登記請求権はないのだという判決が出まして、学者も何かその当時余りこの問題を意識しておりませんでしたのでしょうか、異議なくそれをみんな認めてしまいましたものですから、私の考え方が少数説というか、最初にそういうことを言ったのは私ぐらいじゃないかと思うのです。その後若干の同調者を見出すに至りましたけれども。  したがって、今でも解釈論としてはそれを申したいと思っておりますけれども、いずれにしても、立法をいたします際にこの点も議論をいたしましたが、この点も特に三十五年の際に物権にして登記請求権を認めるということに対する、具体的には登記請求権に対する抵抗であったものですから、そんなところで今回のせっかくの改正というものをむだにしては仕方があるまいということで、しかもこの点は現在、建物保護法あるいは新法によりましても対抗力は非常に簡便に認められるようになっておりますし、それから先ほどお話しのように、これも現行の建物保護法により進んでいる点でございますけれども、一種の明認方法によります対抗力を認めておりますので、その限りでは登記請求権を正面から認めなくても実質的には問題はないというふうに考えております。

北村哲男日本社会党・護憲共同

○北村哲男君 どうもありがとうございました。  田崎公述人にお伺いしますが、一つは、新法は旧法には影響がないという形になっておりますけれども、しかし、現実には新法をつくることによって現在の借地・借家関係に大きな影響を及ぼすというふうに言われております。そこで、大きい意味ではそういうことなんですが、特に新しい今回の目玉的な規定でをある三つの種類の定期借地権がございますね。この新設が現状の借地・借家関係に及ぼす影響というのはどのように考えておられますでしょうか。

田崎信幸弁護士

○公述人(田崎信幸君) 先ほど地代に関して申しましたように、現在新たに借地に出して対価を得るという意味ではもう本当に地価の〇・何%ぐらいしか取れないというような状態において、もうほとんど新法以降におきましても私はそれほど普通借地権は出てこない、強いて言えば先ほど言われている三種類の定期借地権については幾らか需要があると考えております。ただ当事者、とりわけ地主から見ますと、いわゆる期限が定まっていて更新がないメニューと更新がある普通借地権が両方目の前にあらわれたときに、やはりこれはすべての貸し主として見れば普通借地権ではなくて定期借地権を選ぶという傾向になるだろうと思うのです。  問題は、それが新規の設定だけであればよろしいのですが、私は既存の借地関係の地主層に対してもそのような大きな心理的な影響を持ってあろうと思うのです。ただでさえ既存のものについて、とにかくあなた方の根拠法、借地法はもう廃止になったのだということのもたらすインパクトというのは相当あると思うのです。そういった意味において、普通借地権から定期借地権への転換あるいは期間の通算といったことは、要綱試案の段階では検討され後に削除されておりますけれども、類型がかなり違いますから、先ほど述べたように、不当にだまされたり圧力を加えてずるずると変えられるということはさほどないかもしれません。  しかしながら、当事者にとって有利不利ということは極めてこれは多様でございまして、例えば普通借地権、既存のものについて更新料等例えば一千万円請求されたとする場合に、それは払えないという場合に、それではお金は払わなくていいけれども、そのかわりこの際例えば事業用の定期借地権に切りかえてくれないか、あるいは地代をもう少しまけてやるかわりにこの際話し合って切りかえたらどうだというふうなアプローチが多数なされる可能性はある。その場合に、不当な圧迫等によるものは裁判所に持ってくればいいとは言われるのですけれども、私はやはり現場の力関係等を見ますと、必ずしもそのように借り主側が合理的に打算的な計算をして判断できるばかりとは考えられない。その点に不安を感じておるという点はございます。

北村哲男日本社会党・護憲共同

○北村哲男君 田崎公述人は立法形式について多くを語られました。なるほどというふうに私も考えるんですけれども、となると、全然反対というならまた話は違うんですが、もし形式が今の形式で附則に書いただけだと国民の皆さんにわかりにくい。しかも、前のものは廃止する。もうなくなってしまう。六法全書に載るかどうかは別にしまして既にない。これでは権利保護に欠けるではないか。しかも、何十年も先までというふうに言われましたけれども、そうすると、よりよい形というのはどういう形のことをお考えでしょうか。

田崎信幸弁護士

○公述人(田崎信幸君) 私は、とにかくこれだけ数千万に上る国民の、しかも生活、営業の根拠法でございますから、この権利を何ら手をつけずにこれまでどおり引き続き保護していくのだということであればやはり現行法の規定は存続させるべきであると考えます。  その上で、例えば定期借地権等あるいは期間の定めのない借家権等新種のものは、これは既存のものと全く原理を異にするわけでございますから、それは例えば特別立法という形式で、いわば借地・借家そのものが民法から見れば特別法でありますけれども、居住に関しては基本法でございますから、特別法という決め方もあるだろう。その方がお互いに合意によって切りかえられるとか、あるいは不当に圧力を加えられて転換させられてしまう、そういう紛らわしいこともなくなるし、お互い違いがすっきりしていいのではないか。これはほかのいろんな法の領域では多々あることでございますので、そういうことも私は検討してほしかったというふうに思っております。

北村哲男日本社会党・護憲共同

○北村哲男君 ちょっと別の質問なんですが、借地借家法案の三条並びに四条の期間の問題なんですけれども、三条で堅固の建物及びそれ以外の建物を一緒にして三十年というふうにしましたですね。それから四条では、更新の場合は十年、しかし衆議院において、最初の更新のときの場合は二十年とする、それより先は十年とするというふうに変えられた。この考え方について公述人はどのような御意見をお持ちなのか、その点について伺いたいと存じます。

田崎信幸弁護士

○公述人(田崎信幸君) 堅固、非堅固の区別をなくして三十年に一本化されたことについては、確かにある程度の合理性はあるだろうと考えます。確かに、現行法におきましては木造では二十年、鉄筋等では三十年、そういったものが一般的でありますから、その意味では、三十年にそろえられたという意味では、従来の木造建築等から見れば、星野公述人が言われたように、前進であるかもしれません。  ただ、実際に私ども現場と申しますかその建物等を見る場合に、とりわけ都市部のいわゆる防火地域等ではもうほとんどが鉄筋建物で、その存続期間は物理的には三十年をはるかに超えるわけですね。税法上の償却というのはもっと長い期間が定められております。そういった意味で、確かに第一回目の二十年あるいはその次の十年といってもそこで打ち切りではなくて、貸し主側に更新拒絶のチャンスを与えるということでありますから、それでいいのではないかという見方があるかもしれませんが、先ほど述べましたように、貸し主側から見れば一回でも更新料等の例えば財産的な給付を求めるとか、あるいは何らかの形で解約を求めるという機会が更新二回目以降回数がふえるということは、やはり権利の保護としては弱いのではないかと考えます。

北村哲男日本社会党・護憲共同

○北村哲男君 第六条の異議を述べる場合の正当事由についても大きく問題になっておりますが、従来の法律では貸し主側だけの土地の自己使用その他正当な事由という規定がございましたね。今度は貸し主側も借り主側も両方規定してあるという法文、法形式であります。両者のバランスを図るんだという考え方もあるかと思いますけれども、こういうふうな形式の変更についての御意見はどのようにお持ちですか。

田崎信幸弁護士

○公述人(田崎信幸君) 確かに、現在でも貸し主の自己使用という規定がございますけれども、判例では貸し主、借り主双方の必要とする事情の利害得失等を判断されていることはそのとおりだと思うのです。しかしながら、貸し主のみずから使用するというそのみずからという自己使用の要件がやはり一つの大きな判断基準と申しますか、枠組みになっているということは間違いないことでありまして、例えば貸し主側がみずから使用する必要は全くない、しかし貸しビルをつくって収益を上げたいとかテナントを入れたいという場合を見ますならば、やはりその違いというものばないとは言えないだろう。そういった意味で、従来の正当事由の判断基準の枠組みを変更することにつながるのではないかと考えます。

北村哲男日本社会党・護憲共同

○北村哲男君 終わります。  どうもありがとうございました。

中野鉄造公明党・国民会議

○中野鉄造君 まず、星野先生に伺いたいんですが、先ほど星野先生からお話がありましたように、先生は六十年以来法制審の財産法小委員会のメンバーとしてあるいは小委員長という立場で本法案の作成に大変御尽力くださったということを聞いておりまして、心から敬意を表します。  そこで私は、まず先生のそうした立場にあられたというところから、本法案の既存の借地・借家関係の適用という課題についてお尋ねいたしますが、この課題につきまして法制審議会の答申段階においては、普通借地権の更新後の法律関係に関する規定については既存の借地権には適用しないことを原則とする、仮に適用する場合にも改正施行後二回目以降の更新から適用させるなど一定の期間を置くこととする、こういうようになっておりましたが、政府原案においては明確に既存の契約関係には原則として適用しない、こういうふうになりました。この経緯、またこれをどのように評価されますか、そこのところをお尋ねいたします。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答えいたします。  最初は、まず一般的な問題でございますけれども、これは既存のものに適用しないということになりますと、いわば借地借家法というものが二つあるような形になります。普通借地権につきましてあるいは借家法につきましてそういうことになります。これは非常に複雑な形になるわけでございまして、余り法律のやり方としては好ましくないのではないかというふうに考えました。また、現にその点はやはりなお今でも私個人としては考えているわけでございます。  したがいまして、これはちょっと冗談めいてまいりますけれども、このような形で今回の改正案におきましては既存の借地・借家関係はそのままということになりますので、六法全書、私は編さんの衝にも若干当たっておりますけれども、六法全書にこの既存の借地法、借家法等々を載せておかなければならないということになります。現にそのようにするということに先日決まったわけでございますけれども、いたずらに本のページを増すというようなことにもなりかねないわけでありますし、甚だ複雑ではないかというふうに思っております。  ただし、いきなり、特に十年でございますね、更新後の十年ということになりますと、やや何と申しますか、私はこの十年にしたということ自身について不適当だとは思っておりませんけれども、やはりある程度の移行期間ということも必要でありましょうから、結局三十、そして十、十といったようなあたりのところで切りかえるというのがいいのではないかというのが一つの案でございました。  しかし、当初からやはり借地権、借家権というものは非常に重要なものであるから、特に借地についてはそういうものであるから、この辺については一種の既得権ということで既存のものには適用しないことがいいという意見が強くございまして、どちらかというと既存のものには適用しないという考え方の方がこれは委員の中では強かったのではないかというふうに理解しております。しかし、両方の意見が相当強くありましたものですから、たしかこれは最終段階では、この辺は非常にデリケートな問題でございますので、むしろ立法当局にお任せしていいのじゃないかということ になったかと思います。そこから先になりますと私どもの関知することのできない部分になってまいりますので、そのようなことになったかと思います。  私は、既存のものに適用しないということ自身についても、これも一つの行き方であるというふうには十分思いますので、それが悪いというふうにも考えておりません。ただ、いずれにしても複雑さを増す。いつまでたっても隣の家は旧借地法、自分の家は新借地法、普通借地権というのはいかにもおかしいことになるような感じもいたしますので、そういう問題が残るということは確かだろうというふうに思っております。

中野鉄造公明党・国民会議

○中野鉄造君 時間がございませんので結論だけお尋ねいたしますが、今回のこの借地借家法というのは貸し主と借り主の権利関係を規律する法律であるというように理解しておりますけれども、しかしこの法律の結果、今度は我が国の土地住宅政策にも大きな影響も及ぼしてくる、こういうことはこれは否定できません。  そこで、土地住宅政策並びに都市政策を推進することと、今申しました貸し主、借り主の地位と権利を守るということは非常に二律背反的にとらえられがちでございます。これはもうどっちの方も優劣つけがたい大事な課題でございますけれども、今回の法制審ではこうした課題がどういうように論議されたのか、その辺もお尋ねしたいと思います。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) その点は、この改正を問題にいたし始める機縁となった問題でございますので、当初はいろいろと議論がされましたし、それからこれは実は昭和三十五年のときにはむしろその色彩が強かったのですが、少しこの話になりますと、土地政策、住宅政策というものを思い切って借地法、借家法に盛り込んでしまった方がいいという考えが当時は実はございました。しかし、今回の改正の過程では、そういうことを考える向きも相当あったわけでございますけれども、しかしどうもこれはやはり基本的には無理ではないかというか、そういうことが一つ大きかったわけでございます。  というのは、今日のように特に借地問題が非常に大きくなり、先ほど来お話しになっております地代・家賃の値上げが問題になりますのは、結局地価の高騰ということが大きいわけでございます。地価の高騰が始まります昭和三十五年までは借地というものは相当あったわけでございますし、もちろん戦前にはございました。つまり、地価が高騰しない場合には普通借地権というのは十分に出てまいるわけでございます。それからまた、現在でも幾つかの実態調査によりますと、例えば長野県飯田市とか北陸あるいは東北地方あたりには普通借地権というものの設定が現在のままでかなり出ているという調査がございます。したがって、そういった地価の高騰がなければ問題はないということでございます。  地価高騰に対してどうするかということで今お話しになりましたいろいろな矛盾が出てくると思いますが、どうもその問題を我々は解決することはできませんし、どうにもなりませんということが一つございます。むしろこの点は先生方にひとつぜひよろしくお願いしたいところでありますけれども、私どもは、借地法として考えられます土地政策あるいは住宅政策といたしましては、やはり両当事者の権利義務関係というものをバランスよく考えるということによって、いわば間接的にそのようなものに奉仕するということではないだろうかというふうに考えている次第でございます。

中野鉄造公明党・国民会議

○中野鉄造君 終わります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 私は、時間が短いものですから、両公述人の先生にお伺いしたいとは思いましたが、田崎先生に絞って御意見を聞かせていただくことにいたします。  一つは、二十日に法務大臣が異例の談話を出されました。審議中の法案に対して大臣が談話を出されるということはまことに異例なことなんですが、その内容というのは、その談話に基づいて言いますと、現在ある借地・借家関係には新法の契約の更新及び更新後の法律関係に関する規定を一切適用しないことを法律自体が明らかにしており、現在ある借地・借家関係が新法になっても従前と変わらない扱いを受けるようにしている。したがって、現在の土地建物を借りている方は今回の改正によって不利益を受けるのではないかとの不安を抱かれることは全くない、こうおっしゃっているわけですね。その出された意図はともかくとして、本当に今回の改正によって不利益を受けることは一切ないということが言えるのかどうかということを国会で論議をし審議をしているその中で、大臣が国会外で一切心配ないということをおっしゃるということは、私は国会の審議権との関係から見て問題がある談話だと言わざるを得ないと思います。  それはまあ私の見解ですが、先生の見解として、大臣がこんなふうにおっしゃっているとおり受け取れるのか、それともやっぱりいろいろ不安があるという、そういう不安を多くの借家人、借地人の方がお待ちになるのもこの法案に則して言えばそれなりに合理的な理由がないわけじゃないとお考えなのか、この点まずお伺いしたいと思うわけであります。  それから第二番目の問題といたしまして、現在の借地・借家人の皆さんにとって何が一番大きな問題であり、また不安なのであろうかということを実務の経験から先生は特に御理解になっていると思いますが、東京借地借家人組合連合会が東京二十三区で調査をした調査報告がございますが、一番困ったことは何かという問いに対して、借地について一番多かったのはやっぱり更新拒絶の問題約四〇%、借家二戸建てについても明け渡し立ち退きを迫られているのが困るというのが四〇・六%、それから借家共同住宅でも明け渡し立ち退きが一番多くて三五・八%になっております。それから二番目は、借地にしても借家にしても賃料の値上げ、これが困るというのがかなりパーセントの高い数字で出ているわけですね。  だから、基本的に今の社会状況の中で借地人、借家人が迫られている一番の困った課題は明け渡しであり、それから賃料の改定、この二つの問題ですね。この二つの問題についてこの借地・借家法改正はどうか、こうなりますと賃料改定については既存の契約にも文句なしに新法の適用がされていくということですから、今までと変わりはないとはもう言えなくなってくる。しかも、その二つの不安に対して先生のお考えによれば、一つは正当事由の問題で新しい要素を書き加えることによってそれがひとり歩きをする、あるいは財産給付を引きかえにするということで明け渡しをどんどん容易にしていくという心配があるという御指摘があった。では賃料の問題についてはどうかというと、調停制度そのものは否定はしないけれども、現在の物すごい土地価格がそのまま借家人にはね返って負担を超えた賃料の押しつけとなるということになれば、これは大変だということの話があった。  私は、まさにこの二つの現在の借地・借家人の皆さんが抱えている一番の大きな困難な問題について、この新法は権利をしっかり守るどころか新たな重大な困難をもたらすことになるという心配をしているんですが、そこらあたりについて第二点目としてはお話を伺いたいと思うわけであります。  それから第三点としては……

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) 橋本君にお願いします。簡単にお願いいたします。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 わかりました。  不動産鑑定の乱用ということがこれからの調停あるいはその賃料改定問題で進むのではないかという心配をしておりますが、その点はいかがでしょうか。  以上です。

田崎信幸弁護士

○公述人(田崎信幸君) 第一点についてお答えいたします。  私も、法務大臣がたびたび繰り返されましたように、今回の新法案は従来の借地・借家法の社会 法としての借地・借家権の保護の精神はいささかも変わることなく、かつ既存の権利関係については一切適用しないという言葉を本当に実効性あるものにしていただきたいと考えております。しかしながら、先ほど述べましたように、子細に今回の両法案の規定、新旧両法の経過規定、立法形式といったものが、とりわけ借地・借家関係の第一線と申しますか、現場でどのように変容を来ずであろうかという点を基軸に置いてみますならば、やはり先ほど来述べましたように、全く既存のものに影響を及ぼさないところか極めて大きな弊害を及ぼすおそれがあると言わざるを得ないのです。  賃料につきましては、もうこれは明文ではっきりと新法施行後に申し立てられたものについては実態的にも手続的にも新法を適用されることが明記されておりますから、これはもう問題の余地がありません。また、存続期間につきまして、最も大事な更新拒絶正当事由につきましても、確かに規定上は「なお従前の例による。」という附則六条がございますが、これもたびたび政府委員等から御説明になっておりますように、結果的には新旧同一の適用の結果となるであろうということから見れば、新法に示された新たな正当事由の基準が動き出すということは否定できないと思うのです。  以上の二点によりまして、私は、法務大臣のお言葉をそのまま借地人、借家人の方々が受けとめて安心できないと言われているのは全く根拠のないことではなくて、この規定のあり方から見て極めて事実に即したやむ孝得ない心配であろうと考えております。  次に、第二点でございますが、私も冒頭に、借地・借家関係で最も大事なことは、長期的に権利関係の存続が保障されることと適正な負担能力を超えない経済的負担、その二つが伴わなければだめだということを申しました。しかしながら、とりわけ都心部におきましては再開発の波に借地人、借家人は現に大いに脅かされており、かつ負担能力をはるかに超える賃料の値上げに責めたてられておるのでございまして、これもまた、私は極めて借地人、借家人の方々が新法施行を前にして大いに不安を感じておられることは根拠があることだと考えております。  それから第三点の鑑定の問題でございますが、これも個々の鑑定人あるいは鑑定事例を見ますと、いかにして地価のはね返りを賃料に乗せないか、抑止するかということでさまざま努力をしておられるのでございますが、いかんせん、その不動産鑑定基準の根底にある考え方が地価とは切り離し得ない、地価がやはりベースにございますので、ある程度修正をして、例えば差額配分等についてはとらない、もっぱらスライドないし比準賃料を基準にした考えを優先するということで修正されておりますけれども、それでも相当に値上げをもたらすのであります。ですから、乱用というとちょっと語弊がありますが、やはり現在のそういう鑑定制度あるいは鑑定結果に基づく調停案あるいは調停委員の説示というものが極めて大きな意味を持っている現在の調停制度というものを前提にして、民事調停法とりわけ二十四条の三の仲裁的な条項等は判断しなければならないというふうに考えます。

紀平悌子各派に属しない議員

○紀平悌子君 初めに、星野先生、田崎先生に大変いろいろな御意見を承りまして疑問が大分解消されたように思います。ありがとうございます。そして、時間がございませんので星野先生に一点だけお願いをしたいと思っております。  憲法上でも実生活上も居住権というものは非常に大事な保障さるべきものだと思いますので、借地借家法は生活関連法としてある意味では最重要な課題ではないかというふうに思っております。先ほどから、官民法曹そして学者の皆様方による借地・借家問題についての長年の御研さんの結果の借地借家法であるということは理解いたしますけれども、私の懸念は、場合によっては借地借家法の法の理念と実際の法の適用との間に大きく開きが生じるケースがあるのではないか。特に経済的な弱者とのかかわりでございます。低所得層、お年寄り、母子家庭、そういったところにひずみが及ぶのではないでしょうか。  午前中の公述人である宮尾先生からは、弱者保護政策、この件に関する問題は他の立法政策によるべきだというふうなお考えも承ったわけですけれども、その点に絞ってひとつお答えをちょうだいしたいと思います。

星野英一千葉大学法経学部教授

○公述人(星野英一君) お答え申し上げます。  おっしゃいましたとおり、この居住の安定ということは非常に重要な問題でございます。それで、今回の改正はそれに配慮したというか、繰り返して恐縮でございますけれども、ある意味では従来の借地法、借家法よりも借り主の権利を強化しているという面もあるほどでございます。  それから、先ほど来非常に問題になっております更新拒絶なりあるいは解約申し入れ等の要件に関しましては、どうもこの点は見解の相違がいろいろあると思いますので読み方があれでございましょうけれども、少なくとも当初から起草に参加した者といたしましては、現在ありますこの借地人、借家人の保護を減らすということは全く考えておりませんでした。そして、これはむしろ判例というものをもとにして、また判例というのは、先ほどもお話がございましたとおり、昭和十六年の改正というものが貸し主側の事情だけを考慮する、しかも自己使用の必要性があれば直ちに正当事由ありとしていたものに対しまして明文に反する解釈をいたしまして、貸し主、借り主側の事情も考慮するということになりまして、しかも貸し主側に自己使用の必要性があってもそれだけでは明け渡しの正当事由にはならない、この二点におきまして非常に重要な解釈の変更というのでしょうか、裁判所による解釈がなされたわけでありまして、それをこのたびの改正もそのまま受け継いでおるわけでございます。したがいまして、その点では問題はないと思いますので、運用と申しましても、裁判所に行った場合には問題がないだろうと思います。  問題は、新聞などで間々、特にこの改正の当初見られたことですけれども、これで貸し主の権利が強くなるのだからというようなことが報ぜられておりましたが、あのような誤解でありますかあるいは何かためにするところがあったかそこは全くわかりませんけれども、ああいうことが一般に出るということがむしろ問題でございまして、先ほども申し上げましたように、ぜひこの点は十分に関係の方々、特に私はこれは弁護士の先生その他の方にお願いしたいわけですけれども、そうではないのであるということを十分にPRしていただきたい。これは立法当局にもお願いしたいところですが、十分なPRということをお願いしたいと思います。  それからまた、特に弁護士の先生には、率直に申し上げまして、これは私も最近日照の問題にかかわったものですからわかるのですけれども、素人の人というのはもう弁護士事務所の敷居が高くてとても行けないということを盛んに申しております。それからまた、現在、現実に弁護士数が非常に不足しております。これは大体自分の家の近くにお医者さんがどこにあるかということはだれでも知っておりますが、弁護士事務所がどこにあるか知っている人は余りいないのではないかと思います。私自身、父親が弁護士でありましたのである程度わかりますけれども、確かに弁護士というのは社会的に地位が高い。逆にそれだけに寄りつきにくいという印象を与えているかと思います。  このような問題は、先ほどお話のありました弱者である母子家庭なり老人といったようなものについて非常に重要な問題になりますので、例えば何かそういう方々に問題が起こったときにはいろいろな相談の機関があると思いますが、相談の機関からさらに弁護士さんの方にも話をして、弁護士が参りますとこれはまた逆に素人は非常に小さくなりますから、弁護士が自分の方へついて相手の方へ交渉してくれれば、向こうも弁護士をつけてそこで非常に合理的な話ができるということに なりますので、弁護士さんの御活動をぜひお願いしたいし、また弁護士数の増加、ちょっとこれは顧みてほかのことを申しますけれども、例えばそのために司法試験の採用人数をふやすといったような問題とか、そういういろんな問題に関係いたします。あるいは広く法律サービスというもののもう少し大衆化と申しますか、一般化と申しますか、そういうことが基本的な問題だと思いますので、そちらの方でぜひお願いしたいと思います。  先ほど田崎公述人がおっしゃいました心配が全くないとは私は申しません。しかし、それは事実の問題でありまして、私自身その日照のあれでわかったのですけれども、要するに素人というのは相手に言いくるめられてしまうというところがありまして、相手が法律はこうなっているなんて言うと、ああそうかと思ってしまうわけですけれども、実はそうなっていないということで、私自身、憲法だのあるいは最高裁の判例などを引用いたしまして、日照権というものはある程度あるのだということを申して盛んにそういう素人の人々を啓蒙いたしまして、結局裁判所へ行って非常に有利な和解ができたわけでございます。そういうことがございますので、この問題につきましても特に率直に申し上げまして、やはり弁護士さんが余りシュリンクしていただいては困るので、むしろ弁護士さんがやるんだと。とにかく決してこの法律というものは、世の中でだれが言い出したのかわかりませんけれども、貸し主をむやみに強くするとかそういうものでは全くないのであって、その基本的な理念は変わっていないのだから心配するな、何かあったら自分のところへ来てほしいということで大いにやっていただきたいというふうに思っております。

紀平悌子各派に属しない議員

○紀平悌子君 ありがとうございました。  終わります。

鶴岡洋公明党・国民会議

○委員長(鶴岡洋君) 以上で公述人に対する質疑は終わりました。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  これをもって公聴会を散会いたします。    午後二時四十六分散会

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