法務委員会 第5号
- 発言数
- 168 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1991/09/26
会議録
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 理事の補欠選任についてお諮りいたします。 千葉景子君が一たん委員を辞任されたため、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認めます。 それでは、理事に北村哲男君を指名いたします。 ―――――――――――――
○委員長(鶴岡洋君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。 借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案について、土地問題等に関する特別委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、連合審査会は本日午前十時十五分から開会いたします。 この際、午後一時まで休憩いたします。 午前十時二分休憩 ―――――・――――― 午後一時開会
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 委員の異動について御報告いたします。 本日、三石久江君及び佐藤三吾君が委員を辞任され、その補欠として篠崎年子君及び國弘正雄君が選任されました。 ―――――――――――――
○委員長(鶴岡洋君) 借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。 前回に引き続き質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○千葉景子君 きょうは、法案に入ります前にちょっと一点、ちょうど時期的に緊急の課題がございますものですからそれをお尋ねいたしまして、その後法案の方の質問を何点かさせていただきたいというふうに思います。 この問題といいますのは、昨年六月に入管法が改正になりました。それに基づく運用の問題なんでございますけれども、とりわけ留学生の中で専門学校を卒業された方が改めて就労のビザを取得をしたい、こういうケースについて最近大分混乱といいましょうか、取り扱いが変わってきているのではないかというような御意見が私のもとへも届けられておりますので、ちょうど専門学校などこの九月時期で卒業される方も多いものですから若干御質問をさせていただきたいというふうに思います。 そこで、一つのちょっと例を挙げさせていただきたいというふうに思うんです。これは一九五八年に生まれた中国人の鄭超美さんという方の例でございます。これは典型の例がと思いますので挙げさせていただくわけでございます。 鄭さんは中国の上海で高校を卒業しまして、中国で三年間服飾デザイナーとして実務に携わってまいりました。そして一九八七年に留学のために日本に参りまして、まず二年間語学の勉強をして、そして一九八九年の十月に東京のデザイン専門学校に入学をしたわけでございます。そして、ことし九月末に卒業が予定をされておりまして、在学中は一九九〇年、九一年、二年続けてファッション画とか手工芸展などで賞を獲得するなど、成績もなかなか優秀だというふうに評価をされている方でございます。彼女は、以前から卒業したら日本のアパレル関係の企業などに就職を希望しておりまして、特に今中国とのそういう関係が活発になっていること、そういう意味では語学もでき、そしてそういう実務も経験をし、その技能も身につけているという彼女はなかなか人材としても期待をされるということもあり、大変期待をしていたところでございます。 鄭さんが日本に留学した当時というのは入管法の改正前でございますので、専門学校に入学をした後ワーキングビザを取得して就職をするという方も多く、鄭さんも成績と技能がきちっとしていれば問題なく就職もできるだろう、そして就労もできるだろうということで大変期待をして勉強を続けてきたわけでございます。幸いにもこの鄭さん、一九九〇年の十二月、昨年の十二月にファッション関係の商品開発、製作、販売等を行っているアパレル専門会社の試験にも合格をいたしまして採用の内定も受けました。そして、いよいよ卒業して就職をするということでことしの七月に就労ビザの申請をいたしましたんですが、九月に不許可という通知を法務省の方からいただきました。 これは一つの例でございますけれども、こういう類似のケースなども大変ふえているようでございまして、九月に卒業する方の不安を大きくしているということが今言われております。四月に既に卒業して就職が決まって就労したいという方で、これもやはり就労ビザが取得できずに帰国をされたケースなども大分出ているということを私も知らせていただいたところでございます。 そこで、ちょっとこの改正に伴って一体どういう運用がなされているのかお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。 まず、改正法に伴う法務省令、これによって在留資格の細かい基準が定められました。しかし、それが発表されたのは施行直前の平成二年五月二十四日の官報でございまして、国会でもその内容というのは詳細には検討していないというのが実情でございます。そういう意味で、私どももなかなかその内容というものが定かでない部分もあるので、お尋ねをしたいというふうに思うんです。 入管法改正前は専門学校と大学を明確に区別するようには書かれていない。そういう細目がなかったわけでございまして、専門学校でも卒業すると比較的容易に就労が認められていたんではないだろうかというふうに思われます。省令によりますと、その部分が、技術とか人文知識・国際業務などの部分で、資格として「大学を卒業し若しくはこれと同等以上の教育を受け又は十年以上の実務経験により、当該技術若しくは知識を修得していること。」が基準になっているわけです。一応明確になったといえば明確になったような気がするんですけれども、この改正前と改正後ですが、考え方あるいは基準、そういうものが具体的に変わったんでしょうか。それとも運用上で弾力的になったとかあるいは厳格になったとか、その辺の違いというのはございますでしょうか。まず、その点お聞きしたいと思います。
○政府委員(股野景親君) ただいま委員から具体的な御指摘をいただきました。その点について、まず御質問をいただきました改正入管法の施行前とそれから施行後の取り扱いに何らかめ変化があるかという点からお答え申し上げますと、この点は基本的に変更はございません。すなわち、改正入管法前に行っておりました取り扱いというものが改正入管法施行後も基本的に同じ取り扱いをいたしております。 改正入管法の施行に伴いまして一つ新しく起こりましたことは、その判断の基準となるところを法務省令によって公表した、こういう点でございますので、基準が公表されたということはございますが、その取り扱いの内容については変更はございません。
○千葉景子君 内容には変更がないということでございますが、私の手元に資料として留学生種類別の在留資格変更申請及び許可、不許可件数というのがございます。これは平成元年、平成二年までの統計でございまして、それを見る限りでは確かに専門学校生につきましても必ずしも極端に減少しているというわけではございません。ただ、平成二年というのはこれは改正前と改正後どちょうど二つにまたがっている統計になります。そういう意味では、平成三年度、まだ上半期ということになりますけれども、その統計が出されているのか、その辺をお尋ねしたいと思いましたが、またこれは統計がとられておられないということでございますので、これはぜひまたでき次第お知らせいただきたいというふうに思います。 それと同時に、この専門学校を卒業された方の内訳なんですけれども、例えば私も知り得る限りのいろいろなケースを調べてみますと、例えば本国で大学を出られて、そして専門的技術のために日本へ来て専門学校に入られているという方についてはどうもかなり就労ビザの取得が容易な気配がある。それに引きかえて、向こうで高校を卒業してこちらで専門学校に入って卒業したという場合には、どうも最近就労ビザの取得というのが厳しくされているのではなかろうかというふうに思えるんですが、その辺の区別というか基準、あるいは統計のようなものは出されていらっしゃいますでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 専門学校を卒業された方の本邦における就職について、その方がどういう学歴ないしは実務経験を持っておられるかということが実際の就職ができるかどうかにどう響くか、こういう点でのお尋ねでございます。 この点は、先ほど申し上げました法務省令で示しました各種の審査の基本となる、その審査の基準としての上陸審査基準がございますが、この中でいろいろな要件が示されております。そして、その要件でまいりますと、通例、日本で専門学校を卒業される方は在留資格の中でいわゆる人文知識・国際業務という在留資格への変更、これを希望される方が多うございますので、その人文知識・国際業務という在留資格でどういう要件が定められているかという点が問題になってまいります。 そうすると、この点ではこの在留資格で基本的に審査基準は二つの観点からの定めをしております。一つは、大学もしくはそれと同等以上の教育を受けている人たちを対象としている分野でございます。それからもう一つは、外国の文化等の外国人としての特性を生かして日本で就職を行おうと、こういう方たちでございます。 そこで、日本の専門学校の卒業の方は、現在の基準ではこれは専門学校を卒業したことをもっては「大学を卒業し若しくはこれと同等以上の教育を受け」た者ということには該当しないことになります。そこで、日本で専門学校を卒業された方はもう一つの実務経験をどれだけ持っておられるかということで判断をされることになります。他方、先ほど委員御指摘のように、本国で大学を出ておられるということであれば、これは大学を卒業しているということになりますから、これは大学を卒業するということでの判断があるわけでございます。 そこで、先ほど御指摘の具体的な案件も含めまして、多くの場合、専門学校の卒業の方はこの実務経験がどれほどあるかということ、これが一番基本になって判断をされるということになっておりまして、その点については改正入管法施行前も、それから改正入管法施行後も基本的に取り扱いは同じでございます。
○千葉景子君 今のお話をお聞きいたしまして、これは個別の判断になろうかというふうに思いますので大変難しいと思いますけれども、私が最初に典型的な例ではないかということで紹介をした鄭さんの件ですが、この鄭さん、日本では専門学校卒業ですけれども、本国では実務経験も積んできているということもございます。そう考えますと、これはどういうことで就労ビザの取得ができなかったんだろうかと大変疑問に思うケースではなかろうかと思うんですけれども、その点についていかがでしょうか。こういうのを見ますと、従来より大変厳格になっているなり、基準が非常に狭くなってきているのではないかというふうに思わざるを得ないんですけれども、いかがですか。
○政府委員(股野景親君) ただいまの具体的な御指摘の点につきまして私どもも調査いたしましたところ、先生おっしゃるように、実務経験という点がポイントでございますが、御本人は、省令で示されました基準で「三年以上の実務経験を有すること。」ということに対して、この実務経験という点でそれに不足するという状況が一つあったということ、それからもう一つは、報酬額においても「月額二十五万円以上の報酬」ということが省令の基準で定められておりますが、この点にも満たない条件だったということ等が一つ大きな判断材料になって、この場合在留資格の変更を認めるに相当の理由がない、こう判断されたものだと聞いております。
○千葉景子君 これはここで、それはおかしい、違うと言っていても始まらないかと思いますが、実務経験の点それから給与ですか、その点についても若干の違いはあろうかというふうに思いますけれども、実際に経験を積んでいるということもございます。そして、きちっとした就職の決定もなされているというようなことを考えますと、一体そういう取り扱いが妥当なのかどうかということは大変私も疑問がまだ残ります。そういう意味で、ちょっとそれはまた改めて検討させていただきたいというふうに思います。 ただ、最近、専門学校の方でも就労ビザが取れないというケースが多いという認識のもとに、卒業しても就労ビザは取れないかもしれませんよ、それでもよろしいですかというような説明をせざるを得なくなっているというふうに言われております。そういう意味では、やはり法務省の方もその辺の、確かにここに基準は書かれておりますけれども、なかなか普通の留学生なりあるいは人にとって一体どのくらいの基準であれば、どういう資格があれば就労ビザが取れるかどうかということは大変判断しにぐいところだというふうに思うんです。そういう意味で、もっとその辺の説明とかあるいは広報活動とかすべきじゃないかというふうに思うんです、明確なわかりやすい基準でもって。その辺いかがでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 冒頭で委員も御指摘いただきましたように、今法務省令で定めました上陸審査基準というものは既に公表されているところでございますが、公表されたものを法務省側といたしましても各種の定期刊行物や新聞等の広報手段やあるいは法務省の機関を通じましてその周知徹底というものに努力をしてまいったところでございますが、なお、例えば御指摘の専門学校の側で学生さんにその基準がもっと明確になるように私どもとしても配慮すべき点もあろうかと思いますので、この点は一層努力をしてまいりたいと思います。
○千葉景子君 特に、この九月とかあるいはまた来年の四月とか卒業される方も多いわけですから配慮をいただきたいと思います。それと同時に、仮にこの新入管法、基準も明確になったということで、今後そういう点を徹底していただくということは当然必要なことだというふうに思うんです。 ただ、きょう紹介をさせていただいた鄭さんの例もそうですけれども、入管法の改正前にいろいろな期待を持ち、そして卒業すれば就労も大筋大丈夫だろうということも含めて、実務経験も持ちながら、そして来られた留学生などですと、滞在をしている途中で入管法が改正になりました。その結果、今法務省の御説明では、基準は変わっていないんだ、より明確になっただけだというお話でございますけれども、改正によって厳しくなった、取り扱いがどうも違ってきたんじゃないかという不安はより大きいわけです、期待を持ってきたわけですから。そういう意味では、ちょうどこの秋、来年の春ぐらいが入管法改正前に留学生として来られた方の最後ぐらいになろうかというふうに思うんですけれども、その辺については十分に配慮をするということが必要じゃないかというふうに思うんですね。 そうしませんと、せっかく日本で技術を学ぼう、そしてそれによって自分も日本で、そしてまた本国に帰ってもそれを生かして頑張っていこうと言っていた留学生が、その留学期間をむだにといいますか、それを生かし切れずに帰国してしまう、せざるを得ないということにもなってしまいます。そういう意味では、改正前と改正後、異ならないと言われますけれども、どうも大分期待とそしてそれとは反する実態というものがあるようですし、そういうふうに受けとめられているということもありますので、その辺十分に配慮をする、あるいは審査に当たっても説明をする、そういうことが必要ではないかというふうに思いますが、その辺はいかがでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 委員も既におっしゃっておられますが、法務省当局といたしましては、改正法の施行前と施行後において取り扱いは基本的に何ら変更しておらないわけでございます。 そこで、改正前に一定の期待というものを仮に持っておられたとしても、それは法務省が従来から一貫して行っておる基準に合っているかどうかということにおいて取り扱いを決めさせていただくことになっておりますので、せっかくの御指摘ではございますが、現在おられる方についての新しい在留資格への変更については、現在の定まっている基準というもの、これは基本的に従来から扱ってきたものと同じでございますので、その点で判断をさせていただきたいと思いますが、我々としてはその基準の中身が関係者の側で十分御理解いただけるようもっと努力すべきであるという点は私どもとしても感ぜられるところでございますので、その点の周知徹底に努めて、専門学校の学校側及び学生側両方にこの点が明確になるように、さらに配慮してまいりたいと思います。
○千葉景子君 ぜひこれからも、せっかく学びそしてこれからの技術をという皆さんですので、それが逆に日本に対する反発などにならないように、ぜひ十分な配慮をいただきたいというふうに思います。 それでは、法案の方について何点か質問させていただきたいというふうに思います。 私の後、同僚の北村委員の方からも、また個々の問題点など残された部分、質問があろうかというふうに思いますので、私何点か私自身残っている部分についてお尋ねをしたいというふうに思っております。 今回の借地借家法の改正問題ですけれども、この間の審議で、どちらかといえば借地借家法といいますか、どうしても先に借地というものが出てきます。そしてまた、改正点におきましても大きな部分、借地に係る部分も多いものですから、そこがかなり中心になっている感じもいたします。ただ、私は現状を考えてみますと、これだけ土地も相当な高騰をしているという状況ですから、そういうことを念頭に置きますと、借地法の改正というものが直ちに新しい借地関係を増加させたり、そういうことにはならないんじゃないかという感じもいたします。確かに、定期借地権とかそういうものによってまたこれまでと違った新たな需要供給というものが出てくる可能性はあるのかもしれませんけれども、どうもどちらかといえば、これから借家の問題、ここがかなり大きなポイントになってくるんではないか、そんな感じもいたします。これは私の思いでございますので、実際にどう動いていくかというのはよくわかりません。 しかし、高価な土地、高い土地ということになりますと、これを今後借りようということになり、ますと、そう一個人でわざわざ土地を借りてそこに家をつくろうというようなことにはなかなかならないだろう。できるとすれば企業であるとか、やはりそういうことになってくるだろう。逆に、そうなりますと、企業とかあるいはそれに対応できるような資産のある者を考えますと、それを借りるというよりも、むしろ土地をそれなら買って、そこに上物、家を建てて、あるいは何か大きな集合住宅なりつくってそれを貸す、こういうより有効な手段ということをとるのが一般的な考え方ではなかろうかというふうに思います。そうしますと、やはり都市部、周辺部などでは今後この借家の問題というのが一つは大きなまたポイントになってくるような感じがいたします。 そこで、この借家の問題、今回の改正ということも含めて何点がお聞きしていきたいというふうに思いますけれども、借家の場合というのは、従来からもそうですが、契約期間というのも短期、大体二年ぐらいというので定められているケースが多いわけですね。そうなりますと、そこで早くも更新という問題が出てくるわけです。そうすると、これから最も早く借家の関係で新しい法のもとでの正当事由の判断などが出てくるのではなかろうかというふうに思います。これも借地の関係と同様これまでの考え方と基本的には変わらない、判例のそのままの明文化だというお話でございますけれども、ここが私非常に心配なのは、今回の明文化されたことによって、やはり立ち退き料とかそれから財産上の給付ということで、かわりの物件とかそういうことによって更新時期に非常に借家人の不安定というものが増す危険というのは大きいというふうに思うんですね。 それで、貸し主の例なら、まあ何か立ち退き料なりかわりのものさえ出せば何とかなるんではないかというような、土地以上に、家ということになりますので、そういう感じもありますし、それから借り主の側では、まあそういうものが提供されれば余りごちゃごちゃ対立をしてたり、あるいはもう面倒くさいから、それがあればもう、ここで住んでいるのが一番いいけれどもまあしょうがないかなというふうな風潮をやはり生み出しかねないような気がいたします。 それから、先ほど言ったように、借家の供給の側がこれからどちらかといえば個人というよりも一つの企業であったり大きな不動産業者のようなものであったりしますと、貸す側の自己使用とかそういうことは余り直接関係がなくなってくる。 そういうことを総合して考えますと、今度財産的な処理というものがかなり強くなってくるんじゃないだろうかな、そんな気がするんですけれども、この辺でやはり、あくまでも正当事由の中で財産上のものというのは補完であって、ほかのきちっとした要件を十分に吟味して対応するということを借地以上に徹底をしていく、とりわけ不動産の業界だとかそういうところにも徹底をしていく必要があろうかというふうに思うんですけれども、この辺の見通しとかそれから運用、どうお考えでしょうか。
○政府委員(清水湛君) この立ち退き料の問題につきましては、もう既に繰り返し御答弁申し上げておりますように、補完的な要素でございまして、立ち退き料だけで正当事由が認められるということにはならないということは申し上げてきたところでございます。 これからの居住関係の、借家を中心にして動いていくのではないか、こういうお話でございます。私どもも、実は長期の定期借地権というようなものが、これは例えば住宅・都市整備公団あたりで、紳士協定ではございますけれどもこういう形で土地を都市部の周辺の農家から借り上げまして、そこに団地アパートをつくるというようなことを現にやっておられるというようなことを聞いているわけでございます。したがいまして、この定期借地権を個人の方が使うということもたくさんあると思いますけれども、企業なりそういう公的な機関が土地を借り上げて賃貸アパートをつくるというようなことで大いに効果を発揮するんではないかというふうに思うわけでございます。 そういうことで、借家関係というものが今後の中でかなりウエートを占めてくるという御指摘は、私どももそのようになるのではないかなという気が率直に言ってするわけでございます。そういう場合に、最初に申し上げましたように、立ち退き料というのはこれはあくまでも正当事由の補完的要素でございますので、ぎりぎりの議論をいたしますと何でも金を出せば追い出せる、こんなことにはこれは絶対ならないわけでございます。また、そうあってはならないのは当然でございます。当事者がいろんな事情を考慮して話し合いの上で立ち退き料をもらって円満にそこを出ていくということはそれはあり得ることでございますけれども、金さえ出せばいやでもそこを出ていかなければならないということにはならない、こういうふうに考えている次第でございます。 また、このことにつきましては、御指摘のように、関係者に十分に周知をいたしましてそういう誤った運用がされないように私どもこれから大いに努力をしていかなければならない、かように考えている次第でございます。
○千葉景子君 これは繰り返しになりまして、私も局長も耳にたこという感じがなさると思うんですけれども、法はそのとおりなんですよね、法自体は。それから、御説明でも、そうではないしそうあってはならないと、もうこれはよくわかります。 ただ、実際、私人と私人との関係で、そしてしかも住んでいる場所です。ですから、お互いに気まずくなるとか、それでごちゃごちゃ話がちっとも決まらないとか、そういうことになりますとどうしても、そんな面倒くさいことならばというのが一般の社会のあり方なんですよね。ですから、そこのところが今回のこの法案の非常に難しいところでもあろうかというふうに思うんです。法務省では決してそうじゃないと確信をなさっているというのはわかりますけれども、それをいかに本当にそうあらしめるかという問題になると、確信とそして実態とが乖離していくということもあるんじゃないかというふうに私は懸念をするわけですね。その点については、また今後、実務に携わる者もそれから行政機関も十分に考えていかなければいけないところであろうというふうに思います。 それと借家の方ですけれども、今度は転勤などに伴う期限つきの借家権というものが新たに導入をされることになりました。これは転勤などは理解を十分できるところですね。法文上はございませんけれども、今でも紳士協定的なものでこういうことが行われていることもございます。しかし、今回はさらに療養とか親族の介護、そしてその他やむを得ない事情ということも入っているわけですが、これは実際にどんなケースを想定されていらっしゃいますでしょうか。どんなことで利用されるというふうにお思いですか。
○政府委員(清水湛君) この三十八条の期限つき建物の賃貸借の規定というものは、更新を認めないという非常に一般の借家権についての例外的な措置でございますので、このような契約ができる場合というのを厳しく限定する必要がある、こういうことがまず第一に言えるわけでございます。そういうようなことから、この三十八条におきましては「転勤、療養、親族の介護」というふうにその本来の住居を離れなければならない典型的な例を事例として掲げ、その例を踏まえて、「その他のやむを得ない事情」という形でかなり絞っているわけでございます。 私どもがこの法案をつくる過程の中でいろいろな方々からお話を聞き、実態をいろいろと知ったところによりますと、九〇%は転勤の場合だろうということでございますけれども、そのほかにもあり得るということからこの「やむを得ない事情」というものを加えたわけでございます。具体的に挙げますと、一定の期間留学する場合とか、あるいは定年に備えて勤務地から離れたところに持ち家を取得したけれども定年まで空き家にしておくのはもったいない、こういうようなことが考えられるのではないかというふうなことでございます。 いずれにいたしましても、こういう厳しい要件を課して一般の借家権とは異なる扱いを認めるわけでございますので、こういう契約をする場合にはやむを得ない事情というものをきちんと書面に書いて、その書面どおりのやむを得ない事情があるということを明確にしなければならないというふうにいたしておりますとともに、もしそういうやむを得ない事情がないにもかかわらずこういう契約がされたということになりますと、この特約は無効でございますからこれは一般の借家権になってしまう、こういうようなことにも相なろうかというふうに考えているわけでございます。
○千葉景子君 これは「書面によって」ということでございますけれども、これは別に私的な普通の書面でいいわけですから、考えてみますと契約時点とか日常ですと、それを別に第三者が判断するとか見てこれはよろしいとかよろしくないというものではないわけですね。当事者間でこういう事情だからこの期限つきの定期の借家権にしようということですから、これはなかなか判断というのは難しい部分があろうかというふうに思うんですね。ですから、これを幅広くというか少しルーズに解釈をしてしまいますと、まあ何でもかんでもとは言いませんけれどもちょっとした事情がこの要件にされてしまう、こういう危険もあるように思います。そうなりますと借家の方が需要が増加しているという中で、下手をするとすべてではないけれども、本来ならば通常の借家でよろしいのにこちらの三十八条が適用される借家に置きかえられてしまう、こういうようなおそれというのがありそうな気がいたしますけれども、その点についてはどうでしょうか。 そういう意味では、「書面」とはなっておりますけれども、これは「転勤、療養、親族の介護」までは一応載っておりますけれども、何らかのその辺についてもう少し何か指導される文書であるとか説明であるとかそういうことを明確になさらないと、借家ですから相当な幅で出現をしてくるんじゃないかという気がしますが、いかがですか。
○政府委員(清水湛君) こういう建物の賃貸借契約、個人と個人で契約をするということもあると思いますが、不動産の宅建業者等を介してこういうような契約をするということもあるわけでございます。そういう意味で、そういう方々にこの制度の趣旨というものを正確に理解してもらうということ、これが私ども非常に大事なことだと思っております。 この三十八条の要件、これは非常に厳しく書いているわけでございまして、かなり具体的な事実を例示しているわけでございます。そういう事実、例えば、転勤なら転勤という事実がないのにこの三十八条二項で言う「やむを得ない事情を記載した書面」、こういうものの中に転勤の事実を記載しているが現実には違うと。こういうようなことがもし行われるといたしますとそれは無効でございますので、これは一般の借家権として扱われてしまうということにもなる。そういうことであるということもよく理解していただいた上でこのような例外的な特約はしていただく、こういうことがお互いの、貸す方にも借りる方にとっても大事なことであるというふうに思いますので、先ほど申し上げましたように、関係方面あるいはさらにはこういう一般の国民の方々にもこの点をよく理解していただくということが必要だというふうに思っております。また、転勤がほとんどの場合でございますので一般のサラリーマンというのが想定されるわけでございますけれども、そういうような方々にもよく周知され得るような的確な方法も考えてまいりたいというふうに思っているところでございます。
○千葉景子君 私も時間がもうほぼ終わりになりましたので、最後にこれをお聞きして終わりにしたいというふうに思います。 今回のこの法律改正というのは非常に長期間にわたりまして検討が加えられ、そしてその間に問題のあるべきところが直され、あるいは修正が加えられ、そういう形で進んでまいりました。その結果という意味ではないんですけれども、今回の法律の構成自体が極めて異例な形になったわけですね。というのは、今後は同じような契約関係でありながら法的根拠が二本立てになっていくわけです。旧法での関係とそれから新法に基づく関係と二本で進んでいく。しかも、法律としては旧法はなくなってしまう。そして、ただ旧法を使うことというのはこの新法の附則という中で書かれているということになるわけですね。 しかし、現実、これからしばらくの間、相当に長期間旧法で契約関係を処理するということが大変多いわけです。ところが、それ自体は法律がなくなっちゃって、それはこの附則で旧法を使うよということが記載をされているという、何というんでしょうね、こういうやり方、法律の仕組みというのはこれまでにまずなかったのかな、あったとしてもめったにあるものではないと思うんです。一回限りの関係というのは、例えば何年間猶予期間を置くとか、そこでもう終わってしまうとか、そういうことによってどこかで一本化になっていくというようなことはあろうかというふうに思うんですけれども、こういう更新が繰り返されたり、あるいは代がかわったり、そういうことも含めて長期間二本立てでいくというのは、非常に何かこれは難しいなという感じがするわけですね。 そういう意味で、今後、この二本立ての法律関係、これをどういうふうに――ここ数年、一、二年ぐらいはみんなこの審議を覚えていたりしますのでわかりやすいですけれども、しばらくたったころ、一体これはどっちだったんだろうかとかいろいろと混乱も出てくるだろう。法の仕組みからいってもこういう二本立てでずっといくということが本当にいいことなのかどうか、こういうような問題もあろうかというふうに思うんです。 こういうことを総合的に考えまして、法務大臣、今後この借地借家法の行く末といいますか、それについてどんなふうにお考えでしょうか。それから、いろいろな問題点が出てこようかと思いますけれども、そういうことについて今後やはりどう対処をしていこうというふうに決意をなさっていらっしゃいますかお聞きして、私の質問を終わりにしたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 借地人、借家人の権利を保護していたずらな不安を除去する、そういう観点から既存の借地・借家関係には新法の更新及び更新後の法律関係に関する規定は適用されないというふうに法文の上で明確に規定いたしておりまして、法律の適用関係の二本立ては今後も続いていくわけであります。 これにつきましては、混乱が生ずることのないように建設省を初め弁護士会、関係の方面の御協力をいただいて、今回の改正の趣旨、内容を広範に国民の皆さんに十分理解していただけるよう積極的な広報を行っていく、あらゆる機会をとらえてそうした周知徹底に努力をしていきたい、このように考えておるところでございます。
○北村哲男君 最高裁判所にお伺いしたいと思うんですが、よろしゅうございますか。 今回の借地借家法によって調停前置主義が採用されることになります。しかも、これは単に調停前置主義をとるだけでなく、書面の合意によって最終的に調停委員会の決定に従うという一種の仲裁制度の採用もあわせてとることになりまして、調停委員会の決定が判決以上の効果を与えるということにもなるわけですが、そこで、それに関連して二つほどの質問をいたします。 一つは、調停委員会のあり方の問題、二つは、その書面による合意というものがどういうふうなことになっていくんだろうかという問題であります。 最初の調停委員会のあり方でありますが、これは調停委員会が現在あるよりもより一層の質的充実が図られなければならないと考えますが、その具体的方策としてどのようなことを考えておられるのか。例えば、調停委員の給与あるいは報酬の問題ということについて問題はないのか、あるいはこの調停委員というのが名誉職的な色彩に偏り過ぎてはいないだろうか、あるいは地代・家賃の鑑定のあり方、あるいは調停前置主義をとってそこに重点を置くならば、家庭裁判所には例えば調査官制度のようなものがあります。専門職を置いてありますけれども、そのような制度を検討する必要はないのかという問題についてであります。 ちょうど、私のところに、きょう今部屋に帰っておりましたら、さるところの借地借家人組合から陳情というか手紙が参っておりまして、同じようなことが指摘してありました。というのは、「現在の調停委員の構成の問題です。」、どこそこでの、ある場所ですが、どこそこの場合、「この調停委員たちの全部が有資産階層者であり、真に借地・借家問題の実態を体験していない人たちばかりです。したがって、調停案が絶えず地主や家主寄りのものになっています。地代や家賃のことばかりでなく、更新時の更新料、増改築時の承諾料等、すべてが地主や家主の側に立つ判断です」というふうなことを訴えてきておられます。これは一回ではなくて多くそういうものがあります。 そういうことを踏まえまして、調停委員会のあり方について、今後、最高裁判所としてどういうふうなことを考えておられ、どういうふうにしていこうとしておられるかという点について御説明をお願いいたしたいと存じます。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今回の法案によりまして調停前置制度が採用された、また調停委員会による調停条項の裁定という制度が導入されるということになりますと、調停の役割というのがますます大きくなるということは委員御指摘のとおりでございます。こういうことを踏まえまして、私ども裁判所としては、やはり調停制度というものを今より一層充実強化しなければいけないというふうに考えておるわけでございます。 今のところの予想では、この調停前置制度をとることによりまして、事件数は大体千六百件程度ふえるのではないか、これは一応の見通しですが、そのように考えております。 〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕 そこで、この調停委員の制度でございますが、委員御承知のとおりでございますが、調停委員の制度につきましては、昭和四十九年に調停制度の大幅な改正がされまして、調停委員の資格だとかが強化されたわけでございます。また、それに伴いまして、調停委員に対する報酬というものが従前は日当ということであったわけでございますけれども、この制度の改正によりまして委員手当というものになったわけでございます。これによりまして、調停委員に対する報酬も相当程度引き上げられたというふうに理解をしておるわけでございます。その後、この手当の額につきましても、毎年経済事情の変動あるいは公務員給与の引き上げというようなことに伴いまして、逐次増額をされてきておるということでございます。 そこで、調停委員につきましては、できるだけ幅広い階層の方、また幅広い経験を持った方を迎えたいということで、各裁判所としましては、例えば弁護士会あるいは大学だとか市町村、それから商工会議所だとかいろんな団体等に働きかけをいたしまして、適任と思われる調停委員を推薦をいただきましてその中からふさわしい方を調停委員に採用する、こういうような政策をとってきたわけでございます。 ところで、今回の改正によりますと賃料の増額、あるいは減額についての事件が増加することでございます。そういたしますと、この不動産取引の専門家というものが非常に重要になってくるわけでございます。例えば、不動産鑑定士でありますとか、土地家屋調査士でありますとか、そのような方々を今までより以上に必要とするということになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、そのような方々を事件数の動向をも見守りながらふやしていくという方策をとろうというふうに検討しておるわけでございます。 それから、そういう方だけではなくて、現在おられる調停委員につきましてもその方々の執務能力の向上、特にこのような不動産関係の事件についての執務能力の向上ということが必要になってくるわけでございます。これにつきましては、従前から裁判所ではいろんな形での研修会、研究会というものを調停委員を対象に行っております。この中で、今後特にこのような賃料の関係の事件について、そのような研修を強化するということを考えなければいけないだろうというふうに思います。 また、調停は御承知のとおり、調停委員だけではなくて、裁判官が入りました調停委員会で事件を処理するわけでございますので、これは当然のことでございますが、その調停委員会を構成いたします裁判官につきましてもいろんな機会に今回の法律の改正の趣旨というものを徹底していかなければならないだろうというふうに考えておるわけでございます。
○北村哲男君 やはり新しい制度に対しては新しい対応をもってする必要があると思いますし、特にまた先ほどの手紙の中にこういうふうな具体的な指摘もあります。例えば、「二人の調停委員の中、貸す側と借りる側の双方一人ずつにしていただきたいのです」というふうにありますので、そういう点も配慮されて、研修等も含めて正しい適切な調停委員会ができることを期待しております。 次に二つ目ですが、書面による合意によって最終的な調停案をつくることができるという規定が新しくできることになりますけれども、これは当初は事前に書面による合意があればそれでいいんだということが衆議院の段階で修正されて、調停にかかってからそれ以後になって書面による合意があった場合にできるということに変わっております。確かに、それは町の文房具屋で売っている決まった文書の中に、調停委員会に出してそこで決まったものはそれに従いますということを不動文字で書いたものが一般に出回ると、それが借家人あるいは借地人に押しつけられるということを防止するという意味ではこれは確かに修正は効果があったんですが、今度は私は、調停委員会に行ったときに調停委員会がそういうことを押しつけるんではないか、そのおそれを感じるわけです。事前のことは半分は確かに改善されました。 というのは、今裁判所の中でもかなり強引と思われる和解の勧告あるいは押しつけというのが多く行われて、弁護士会の中でも世間でも問題になっております。そういう傾向が調停委員会の中まで持ち込まれて、そして調停委員会が出てこられた当事者の方々に、もう私たちの意見に従いなさいというふうになってしまうんではないかというおそれがありますので、その辺の注意を喚起するとともに、やはり同じような訴えがあります。今の制度の中でも、先日の何々裁判所の調停委員会の中で、調停委員会にこの件は調停委員の判定に従うことに合意してくれと第一回目に言われたと、それに従わなかったらどうなるかわかりませんよというふうなことを言われて非常に困っだということも訴えられております。 そういうことは事実私どもも経験していることでありますので、その点についてどういうふうに考えておられるのか、どういうふうに改善されようとしておられるのかということについて御意見を聞かせていただきたいと存じます。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) この調停制度は、当事者の納得、合意ということによりまして民事の紛争を解決する制度でございまして、これはあくまでも当事者が心から納得して初めて効用を発揮するものだというふうに考えておるわけでございます。決して当事者の意思を無視して押しつけたりということがあってはならないというふうに考えておるわけでございます。 今回、新しく民事調停法の関係で「調停委員会が定める条項」という制度が地代借賃増減事件についても取り入れられるということになるわけでございますけれども、これにつきましてはこのような場合にこの条項が働くものだろうというふうに考えておるわけです。 具体的に申しますと、調停委員会でいろいろ事情を聞きまして、調停委員会の方がこういうような案で合意をすればどうかというようなことで当事者に説得をするわけでございますが、ところが、相当いいところまで行って、もうちょっとすれば合意ができるだろうというところまで行った。しかしながら、どうしてもいろんな事情がありまして、当事者双方が自分たちの合意というような形では解決をしたくないというようなケースがあり得るわけであります。そのような場合に当事者は、調停がまとまらないと訴訟で解決しなければいけませんけれども、しかし訴訟までやるのはどうかと、余り訴訟までは持ち出したくないというようなケースもありまして、そのような場合にぜひこの調停手続の中で解決をしてほしいというようなケースがあろうかと思います。そのような場合に初めてこの二十四条の三という新しい制度は効用を発揮するのではないかというふうに思うわけでございます。 現在、同じような制度は商事調停、それから鉱害調停についてございまして、これについては、このような調停条項を定める場合には当事者を審尋しなければならないということが最高裁判所の規則で決まっております。今回の法律が成立いたしました場合には、同じような規定を最高裁判所規則の中に設けるということを検討しなければいけないと思っておりますが、そのような審尋の機会に当事者双方の意見を聞きまして、この書面があるけれども本当にこういう書面のような合意をしたのかどうか。それから、今回調停委員会で調停条項を定めるけれども、それについてはそれで定めることがいいのかどうか、あるいは、もし定めるとしたらどのような条項を定めてほしいのかというようなことを当事者から聞きまして、その上で本当にそういう条項を定めて解決するのがいいんだというケースに限ってこの制度が働くものだというふうに考えるわけでございます。 冒頭申しましたように、調停というのはあくまでも当事者の合意によって、また互譲によって事件が解決するものでございますから、決して当事者の意に反して、あるいは当事者が嫌々ながら合意するというようなことがあっては調停制度というものがうまく働かないというのは御指摘のとおりでございます。このような国会での御論議とか、あるいはこの立法趣旨というようなものにつきましては、調停委員の方々にはいろいろ研修とか研究会とかいろんな機会がございますので、そういう機会に徹底するようにということで私どもも努めたいというふうに考えておるわけでございます。
○北村哲男君 もう一点だけ。 これは既に何人かの委員からも聞かれていることかもしれませんが、新しく借地借家法が制定されることになる今その審議をしているわけですけれども、その六条と二十八条の更新拒絶の要件としての正当事由ということが問題になっております。 現行の法律では、単にみずから土地・建物を使用することを必要とする場合、その他正当事由とだけ簡単に書いてあるものが、新法では、土地については土地の利用状況、従前の経過、明け渡しの条件としての財産上の給付という三つの要件、そして建物については、さらにそれに加えて建物の現況という要素を加えました。この正当事由の具体化、明文化によって、最高裁判所として正当事由の解釈の拡大とか、あるいは逆に固定化ということで一体考えられるのだろうか。裁判所として、この新しい規定が裁判に対する姿勢に変化があると考えられるのか。また、裁判する側の立場から、従来とは違った角度で正当事由を例えば拡大して明け渡しをしやすくするとかという解釈にならないのだろうか、そういう心配が多くの人々から寄せられておりますけれども、その点については最高裁としてはどのようにお考えでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 具体的な法律の解釈、適用の問題でございますので、必ずしも私ども事務当局からお答えをするということはあるいは適切でないのかもしれませんが、私どもも前には地方裁判所でも裁判をしておりましたし、そのようなことを踏まえて申し上げたいと思います。 法律の解釈、適用の問題でございますが、これは申すまでもなく、この文理といいましょうか、が一番重視されるというのが原則であることは言うまでもないことでございます。今回、この法案におきまして、六条、二十八条で、正当事由に関する考慮要素というものがいろいろ規定されたわけでございます。これにつきましては、これまでの裁判例において正当事由の判断に際し考慮されてきた要素を法文において明記したものであるというような説明がされております。これによりますと、今回の改正によりまして判例が正当事由を従来より拡大して解釈するということはないというふうに考えるわけでございます。従前の判例の帰結、結論をそのまま条文に書いだというような説明でございます。 また、法律の解釈に当たりましては、当然のことではございますが、立法者意思というものも非常に重視されるわけでございます。立法者意思、つまり立法機関である国会の方で、これがどのようなものであるということで法律を制定されたかということでございます。具体的には、国会におけるいろいろな御議論あるいは御論議というようなもの、これが非常に参考になるわけでございまして、このような国会における審議の経過というものも、私ども事務当局としましては各裁判所、裁判官にいろいろな機会に周知をするというような努力もしたいというふうに考えておるわけでございます。
○北村哲男君 それでは、最高裁判所の方はもうそれで結構でございます。どうもありがとうございました。 それでは、法務当局の方にお伺いします。 これも既に何回も聞かれてきて確認をされておることと思われますけれども、とても大事なことなので民事局長の方に確認をとっておきたいのですが、それは附則四条並びに六条等の、例の新法は現行法には適用がないんだという問題であります。すなわち、既存の借地・借家関係に適用しないということを本当に何回もくどいほど明らかにしてこられました。しかし、ちょっと私の方でもまだ釈然としない問題があるんです。 というのは、例えば今までの政府答弁では、更新時に当時者双方合意の上であっても現行法契約を新法の契約に切りかえることはできないというふうな答弁とか、事実関係が続いている限りは新法への切りかえはできない、あるいはきょうの午前中の局長の御答弁でも、定期借地権への切りかえが脱法的である――脱法的という言葉を使われたんですが、脱法的であるような場合は無効であるというふうな表現をされました。しかし一方で、衆議院のこれは四月二十六日の御答弁では、「既存の借地関係における両当事者が契約を合意解約し、その後これを新法のもとの契約にし直すということは、形式的には妨げられない」ということを言っておられます。この「形式的には妨げられない」というのは非常にわかりにくい言葉なんですが、ということは実質的にはこれは無効だというふうにおっしゃるのか。そうなると私は非常にわからなくなってくるのです。 ということで、具体的に簡単にお聞きしたいんですが、まず一つは、既存の借地関係がある場合、その存続期間中に建物はそのままで両当事者の合意によって現行契約を解約して新たに新法によって新しい契約をするということは、これは法律的に有効ですか無効ですか。
○政府委員(清水湛君) 私が申し上げましたのは、当事者が合意で解約をするということを妨げるものは何もない、こういうことでございます。しかし、その上でまた改めて同じ土地について、つまりそこを一たん退去して借りるというようなことではなくて現在そのまま住んでいる状況で契約をする、こういうことになるわけでございます。そういう場合に、一体そういうことはどういう目的のためにされるのか、こういうことが問題になるのではないかということでございます。 もちろん新契約を設定するということになりますと、最初の存続期間が三十年で、今回一回目の更新期間が二十年、その後は十年、十年ということになるという問題はございますけれども、少なくとも既存の契約、もし当初の契約が二十年あるいは三十年ということでございますと、今後における更新後の期間というのはずっと二十年、二十年、二十年、二十年でいくということになるわけでございます。そういう更新後の期間を将来短縮するという目的でそういう形での合意解約、新設定契約をするということになりますと、これは実質的に更新後の期間について借地人を保護している、つまりそういうものについて不利な特約をした場合にはそれは無効とするという強行的な保障規定に反することになるであろう、こういうことを申し上げたわけでございます。そういう意味で一種の脱法的な行為になるということでございます。 午前中の御議論でもございましたが、従前の契約について事業用の定期借地権、これは十年以上二十年以下という期間の契約でございますけれども、これに切りかえるということができるかという問題についてもそういう趣旨でお答えを申し上げた次第でございます。
○北村哲男君 もう一度お伺いします。 そうず谷と、たとえ不利でもいいんだ、新しい法律によって二十年間でいいんだというふうに借り主がはっきり意思表示をして、それで前の契約は解約しましょう、そして新しく新法によってやりましょうということを決めた場合はどうですか、その場合でも脱法的になるのですか。
○政府委員(清水湛君) 借地法における借地人に不利な特約が無効であるというふうにしている趣旨は、借地人が任意の意思に基づいて地主と契約した場合でも、その立場から必ずしも実質的にこれが任意にされたものとは言えない場合があるということから、一律借地人に不利な特約は無効であるというふうに、現在の借地法なり借家法は要するにそういう意味での強行規定を置いているわけでございます。ですから、多くの場合、借地人の方でどういう合理的な動機あるいはまた別な要素があって、それとのかれこれ比較対照をして、実質的に見てもだれが見ても不利益ではない、あるいは借地人にとっては利益であると、こういう場合もそれはあり得るかもしれません。しかし、現実にそういう特段の事情もないのにそういう行為をあえてするということはやはり無効、強行法規違反という結論になるであろうと、こういうことを私は申し上げた次第でございます。
○北村哲男君 しつこいようですが、もう一点。 それでは、現在続いている借地権を五十年の定期借地権にした方が自分は有利だ、その方が便利なんだというふうに考えてそれに切りかえる、あるいは現在のを解約して新しい契約にし直す、これはどうでしょうか。どうでしょうかというのは、二十年、二十年と続くよりも五十年を一回の方がいいという方が普通考えやすいと思うんですけれども、その場合は率直に言って有効というふうにお考えですか、あるいは脱法的、あるいは無効というふうにお考えでしょうか。
○政府委員(清水湛君) 大変悩ましい質問を受けたことになるわけでございますけれども、私ども基本的には正当事由がない限り更新で続く、こういう前提をとっているわけでございます。ですから、現在二十年の契約をしておってそれが今後とも二十年、二十年、二十年で続くということになった結果において百年も続くということはあり得るわけでございます。そういう場合に、じゃ、もうあと今後五十年間だけ使わせてもらえば、あとはもう間違いなく返しますと、こういう判断を借地人がする。また、その方が客観的に見ても、あらゆる事情を考慮しても借地人にとって有利であるという場合も、私はないとは断定はしないわけでございます。しかし、多くの場合、先ほど申し上げましたような特段の事情もないのに五十年の定期借地権、五十年たったら間違いなく返すというようなことは、一般的にはその借地人にとっては不利な特約ということになるのではないか。これはやはり具体的な事件で、借地人の方でどういう事情で、どういうまた別途の事情があってそういう契約をしたかということを詳細に検証されて判断されるべき問題だということは言えようかと思います。
○北村哲男君 ほぼ確認がとれたと思いますが、なお新法への押しつけがなされるんではないだろうかという不安というのはどうしてもぬぐえないんですね。その辺については、またちょっと積み残しの問題かと思います。 それでは、次の問題に移ります。というのは、今まで審議の中で余り質疑されていないと思われるところについて、特に日本社会党は質問時間も多いこともありますし、これも義務だと思いますので聞いていきたいと思います。 まず、新法の三十五条一項、二項で、借地上の借家人の保護という規定があります。この規定はいかなる意味でつくられたのかということなんですが、この規定は地主と借地人が合意によって、あるいは正当事由の補完としての明け渡し料を地主が借地人に支払うことによって借地契約を満了させることができる、そして借地上の建物を借りている借家人を一年以内に出てもらうことができるという結果になって、必ずしも借地上の建物の貸借人を保護することにはならないんではないかというふうに思えるんですけれども、その点をどういうふうにお考えになるかという意味で、その規定の説明を伺いたい。 それから、もうちょっとさらに加えますと、現行法のもとにおいても、底地を地主あるいは第三者が買い上げる、いわゆる地上げ屋の手法がこの規定によってやりやすくなってしまうんじゃないかというイメージをちょっと感ずるんですけれども、その辺を加えて御説明を願いたいと思います。
○政府委員(永井紀昭君) 委員御指摘のとおり、現在借地権が存続期間の満了等によりまして、更新がそのときされなくて終了した、こういう場合には借地上の建物貸借人は土地の占有権限を失うわけでございますから、土地所有者に土地を明け渡さなければならないという、こういうことになってしまいます。これが非常に、いわば土地の所有者と貸借人とが結託いたしまして、いろいろそういう追い出しを図る手段に使うということもあり得るわけであります。これは、裁判例等におきましても場合によれば一種の背信であるとか、悪意とか職権乱用とか、いろんな形での救済ということも考えられているわけですが、ただ制度的にはこれは基本的にはいかんともしがたい面があるわけですね。 そこで、今回この三十五条を入れましたのは、借家契約をする場合に建物の貸借人が建物がどういうふうな権限に基づいてその土地の上に立っているかということについて必ずしも知らされていない場合がある。貸借人にとりましては明け渡しか不意討ちとなることがある。こういうことが考えられるわけです。そういった矛盾といいますか、こういう問題点は従来から指摘されてきたわけでございまして、土地と建物とが不動産として別個であるということからもともと起因するというふうに考えられておるわけでございます。 そこで、この法律案におきましては、借地権が存続期間の満了によりまして終了いたしまして、建物の貸借人が土地所有者に対して土地を明け渡さなければならない、こういう場合におきまして、建物の貸借人が実はこの借地権の存続期間の満了ということを知らなかったときには、裁判所は貸借人の請求によりまして移転準備に必要な相当の期限を付与する、これは御指摘のとおり、最大一年の範囲になっております。また、借地権の存続期間の満了前一年以内に知った建物貸借人につきましても、知ってから一年の範囲内で期限の付与をしようということにしたわけでございます。ある意味では抜本的なといいますか、解決策にはなってない部分があろうかと思いますが、ただやはり貸借人側に不意討ちといいますか、あるいは移転準備というようなことで少しでもそういったような期限の付与をするという保護的な面を取り入れたらどうかということで、こういう三十五条のような規定を設けたわけであります。
○北村哲男君 この三十五条というのは新設の規定なんですけれども、現行法との比較を簡単にしていただきたいんです。現行法だと借地人と地主が合意をしてもう契約やめましょうと言いますね。そうすると、上に家が建っていましてそこに人が住んでいる、嫌なやつだ、追い出したい、あるいは土地を売ってもうけてどこかに行きたいというふうに考えた場合、その借家人の地位はこの三十五条よりも不安定なんですか、あるいはもっと現状では保護されているということなんですか、どちらなんですか。その点を踏まえての説明をお願いします。
○説明員(寺田逸郎君) ただいま審議官が申し上げましたように、原則はこれは土地の占有権限が失われた場合には建物の貸借人というのは直ちに出ていかなきゃならない、こういう関係になりますが、しかしながら、合意で土地の所有者と借地人とが土地の占有権限をなくすということによって第三者である建物貸借人の地位が脅かされてはならないという別の法理がここで働くわけでございまして、最高裁の昭和三十八年の四月十二日の判決によりますと、このような場合には原則としてそのような合意解約の効力を建物の貸借人に対して主張することができない、つまり建物貸借人はこのような合意解約によって追い出されることは原則としてはないということが言われているわけでございます。
○北村哲男君 ということは、今の最高裁判決は新法のもとでも同じように継続されると考えてよろしいわけですね。
○説明員(寺田逸郎君) そのとおりでございます。
○北村哲男君 わかりました。 次の質問に移ります。ちょっと唐突ですけれども、附則一条、これは「この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」という規定がございますけれども、大体想像するところきょうあたりでこの法案は議了の日程に上がっています、まだわかりませんけれども。そうすると、一年以内と申しますと、大体どのぐらいで新しい法律は施行されていくんでしょうか。
○政府委員(清水湛君) これは「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める」ということになっているわけでございますが、私どもがこういうふうにいたした趣旨というのは、一つには、借地借家法というのは国民の日常生活に非常に密接に関連する法律である、そういうことから新法が施行されるまでの間にその内容を十分周知徹底しなければならない、こういうような周知徹底にある程度の期間を要するということ。 それから、実は借地権について今後新しく定期借地権というような制度を設けました。借地権についての登記請求権が当然にはないという考え方でございますが、定期借地権についても登記をしようと思えばできるというふうにしなければなりませんし、そのことを登記簿上も明らかにしなければならないということで、附則の方で不動産登記法の改正をお願いいたしておるわけでございます。これは定期借地権の登記に関することでございます。そういうものにつきまして、一部現在の登記所ではコンピューターで処理しておりますので、それに関する部分のコンピューターのプログラムを修正しなければならない。そのために若干の時間を要するというような問題。 それから、裁判所の方で民事調停法の一部改正によりまして、先ほど最高裁の民事局長の御答弁がございましたけれども、新しい地代・家賃についての調停制度、これが円滑に運用されるようにするためには、既存の調停委員についてのいろいろな研修とか、あるいは調停制度の運用を適切ならしめるための諸制度の準備というようなことについて若干の時間を要する、こういうようなことがございますので、そういうものをどのように見たらいいかということを考え合わせまして、大体非常に広く見ますと一年はかかるんじゃないか。 しかし、新しい制度でございますので、できるだけ早く定期借地権の制度などは活用したいという方も一方におられるというような事情もございますので、この法案が風会で通過、成立させていただいた場合におきましては、速やかに施行期日を具体的にいつにするかということについても検討に入りたいというふうに現在考えているところでございます。
○北村哲男君 あえて私がこういうことを聞いたのは、たった。一年で、最大限一年になっているんですね。今いろいろな課題、宿題が課されています、PRの問題、調停制度それから不動産登記法とか。それで、たった一年で足りるんだろうか。むしろできるだけ早くじゃなくて、本当にその間にできるだけ多くの宿題を完了されて出発していただきたいという趣旨で、ちょっと一年は短いなという意味で聞いたわけです。早くやれという意味じゃないんです。 次に、今民事局長も言われましたが、不動産登記法が変わります。附則十五条に不動産登記法の一部改正、これはもう非常にわかりにくい。私どもが読んでもさっぱりわからないことがごちゃごちゃと二ページにわたって書いてありますが、不動産登記法がどういう趣旨でどういうふうに変わるんだということを簡単にわかりやすく、もう一回聞いたら忘れないというぐらいの説明でお願いします。
○政府委員(永井紀昭君) 附則十五条は不動産登記法の一部改正をしております。これは不動産登記法の条文がもともと錯綜しているものですから、それを丁寧に書いているものですからこういうふうに一見わかりにくくなっているんですが、端的に言いますと、二つの問題があるわけです。 〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕 一つは、ただいま局長が答弁申し上げましたとおり、新しい定期借地権でありますとか、あるいは期限つきの建物賃貸借という更新のない借地・借家関係ができました。これは地上権の場合ですと登記請求権がありますから、地上権が非常に少ないといいましてもそういう場合もありますので、それは当然登記をするということが考えられます。それから、借地権の場合ですと、それぞれ貸し主、借り主の双方の合意で登記をすることができます。その新しいタイプのものにつきまして登記をする場合に、こういうふうに書きなさいという指示をしているものが一つでございます。 もう一つは、実は自己借地権の制度を設けましたものですから、その関係で建物の所有を目的とする土地の賃貸借がどうかということを現行の不動産登記法は明らかにしておりません。そこで、建物の所有を目的とするんだということを自己借地権の場合に明らかにするという、この二つのところを明らかにしている、整理したものだという御理解をいただきたいと思います。
○北村哲男君 要するに、新しく設けた定期借地権あるいは自己借地権、これは登記ができるんだということを頭に入れておけばいいということですね。
○政府委員(永井紀昭君) はい。
○北村哲男君 次に、新法をずっと見ますと、随所に転借地権及び転借家権という項目が二条、五条、六条以下ずらりと並んでおります。旧法では、そのような形でよく読むと確かにあるような気もするんですけれども、こういうふうに目立つ形で出てないと思うんですが、どういう趣旨で転借地権あるいは転借家権を規定されたのか、簡単な説明で結構です。
○説明員(寺田逸郎君) 多少技術的な問題でございますので、私から御説明させていただきます。 旧法は、そもそも法律の書き方自体が土地の所有者と借地権者ということですべて法律の規定がございますしからば、土地の所有者でない、人から借りた人がさらに第三者に貸す、これはどういう法律関係になるかと申しますと、これもやはり借地権であることに逢いないわけでございます。ただ、そのことを旧法はどういう形で明らかにしているかと申しますと、全く明らかにしている規定は実はないわけでございます。もっとも旧法は、旧法と申しますか現行法でございますが、第八条におきまして「借地権者カ更二借地権ヲ設定シタル場合二之ヲ準用ス」という規定がございまして、いろいろな制定のいきさつを考えますと、この規定自体が命のような法律関係、つまり人から借りた人が第三者に貸すという場合の借りた人とさらに借りた人、この二人の関係をも規律するという意味で制定されたのではないかと疑われる余地があるわけでございます。 しかし、その後の解釈論を見ますと、現在ではほぼ争いがないと理解してよろしいのではないかと思いますが、今申しましたように、人から借りた人がさらに第三者を相手にして貸し借りをする、このような関係もすべて土地所有者と借地権者、つまり借りている人が土地所有者で、さらに借りている人が借地権者、こういうように条文自体を読むということになっております。 しからば、第八条は何を規定しているかということになりますと、これは例えば更新の請求がある場合に、当然のことながら第三者がさらに借りている場合には建物は第三者の建物なんです。そういう建物が建っている場合に、例えば現行法の使用継続の要件に当てはめてみますと、第三者が使っているのに借り主が使っていると同じように見られるかどうかという解釈論上の疑義がございます。その疑義をこの第八条がカバーしているんだ。つまり、第三者である転借人が使っていても貸借人が使っていると同じように評価して、貸借人ともとの土地所有者との間の賃貸借関係の使用継続による法定更新があるかどうかということを決めるというのがこの第八条の実質的な意味だというように現在では解釈されております。 しかしながら、このことを第八条だけで読むには新しい法律をつくったというのに甚だ不親切だというように考えまして、したがいまして、今回はそもそも定義におきまして、土地所有者に当たる者は借地権設定者、その者から借りている者を借地権者、こういうように定義自体を変えまして、さらに今言いました三者関係になる場合に転借地権という新たな定義を設けまして、転借地権者と土地所有者はどういう関係に立つのかということを明らかにしたわけでございます。 したがいまして、今御指摘になりました五条の第三項におきましては、今私がまさに申し上げましたような関係が明らかにされておるわけでございまして、使用継続の有無については、第三者であります転借地権者が使っているのはその転借地権者の利用自体を借地権者の利用、こういうようにみなして、もとの土地所有者と借地権者の間の法律関係における更新の有無を判断する、このような意味が第三項の意味でございます。 なお、ただ一言付言しなければならない点がございますのは、長くなって恐縮でございますけれども、新たに意味が出てきた規定が幾つかございます。 それは、例えば現在、建物買取請求権の規定がございますけれども、転貸借が行われている場合に、転借人であります第三者が建物の所有者でございますが、その者が建物買取請求権を有するかどうか、つまり条文上は借地権者が建物買取請求権を有している、こう書いてあるのに、転借人であります第三者が建物買取請求権を有するかどうかという解釈論上の疑義がございます。これは現行法の枠内では解決されておらない問題でございまして、ただ有力な解釈論としてそれは当然有すべきだと、そうしないと借方でいる人も建物買取請求権を持ってない、転借人も持ってないということではまことに投下資本の回収に不合理ではないかという有力な意見がございます。その意見に従いまして、今回は新たに建物買取請求権の規定、これは十三条でございますけれども、十三条の第三項で転借地権者と借地権設定者、先ほど申しました土地の所有者と転借人、これの間において準用するということの意味は、第三者であります転借人が土地所有者に直接建物買い取りを請求することができる、こういうような意味でございまして、このような意味では現在よりもさらに借りている側に保護が厚くなっているというように御理解いただければと思います。
○北村哲男君 今の点について二つほど追加して質問します。 今は借地人と転借地人ですね。さらに、転々借地人も同じように考えていいのかという問題が一つ。 それから、今説明がありましたけれども、五条の三項を見ますと、最後に「前項の規定を適用する。」というふうな規定がありますね。その「前項の規定」というのは二項のことですけれども、その二項を見ましても、「借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。」と、また一項に移っていますね。五条の一項は、「借地権者が契約の更新を請求したときはこ云々とありますが、転借地人も借地の更新の請求ができるのか、その二点についてお伺いしたいと思います。
○説明員(寺田逸郎君) まず、さらにもう一つ転貸借があった場合にどうなるかということでございますが、これは法律の規定は非常に複雑になるために書いてございませんけれども、当然のことながら転々借地権者も、今の例えば建物買取請求権について言えば、直接土地所有者に対して建物を買い取ることを請求することができる。これはもちろん転々借地権者がもともとの借地権者に対して、借地権者の有する転借地権者に対する関係での借地権契約が終了した場合には、当然これは借地権者に対しても建物買取請求権を有する、このような関係になるわけでございます。 次に、第五条の契約の更新の請求でございますが、これは実は現行法自体の問題でございまして、現行法上も転借人がこの更新請求をすることができるかということについては法文上は明らかでございませんが、解釈論上は有力な学説として代位して請求することができるということにされております。したがいまして、これはその解釈論をそのまま新法においても引き継ぐというように御理解いただければと思います。
○北村哲男君 大体よろしいんですが、有力な学説ということですが、判例もそれに含まれているかどうかということは、後でほかの質問とあわせてで結構ですから、わざわざ答えることありません。私もそれは代位してできるというふうに考えておりますので、あえて聞いたわけです。 次に、新しい法律の民事調停法の一部を改正する法律案について伺います。 わずか二条の改正なんですが、この改正中、二十四条の二の二項というところがございます。その中に、「調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、受訴裁判所は、その事件を調停に付さなければならない。」という、これは調停前置主義、「ただし、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。」という例外というか、じゃ、これだったらどっちでもいいのかというふうに考えられます。わざわざ今まで論争したことは一体どういうことなのか。すなわち、これだけ読めば、裁判所の任意の判断で、これは調停に付そう、これは付するべきではないというふうに勝手に決めていいのか。あるいは、この「付することを適当でないと認める」という場合は特殊な限定的な場合なのか。限定的な場合であるならば、なぜ、「適当でないと認めるとき」というふうなあいまいな言葉を使って改正をしたのか、その三点についてお伺いしたいと思います。
○政府委員(永井紀昭君) 二十四条の二の第二項ただし書きでございますが、確かに裁判所の判断によって調停前置を不要とするという場合があるということが規定されているわけでございます。これに当たるかどうかは専ら裁判所の判断にかかるわけでございますが、このただし書きを置いた具体的なケースを想定しましたのは、例えば相手方が行方不明である、合意がおよそ成立する余地がないという場合、あるいは既に別の事件で多くの年度の地代・家賃の紛争について調停をして不調に終わっているというような個々具体的なケースで判断する。あるいは相手方が調停に付することを頑固に拒否している、およそもう最初から調停には出ないともう明らかに言っている、呼び出しても出てこようとしない。こういう場合には、およそもう裁判所としては無理だということを判断するということでございます。 それでまた、もう一つ考えられますのは、公団住宅の家賃のように行政的な審査を受けて大量かつ画一的な基準に基づいて賃料が定められる、こういうような場合は個々人の合意という問題は捨象しなければいけませんので、そういう場合は例外的なこととして考えております。 こういった幾つかのケースがあるものですから、若干「適当でない」というぼやっとした表現にはなっておりますが、裁判所が適正な判断をされるということを期待しているわけでございます。
○北村哲男君 わかりました。 大体二種類というか、いわゆる物の性格的なものとそれから事件そのものの態様を見て、それは今後の調停例の集積によって決まっていくということになるんだと思います。それでよろしいわけですね。
○政府委員(永井紀昭君) そのとおりでございます。
○北村哲男君 それでは調停法の方は結構です。 附則に戻りますが、附則の六条と十二条をちょっと比較してみたいと思います。 六条は、「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。」という言葉がございます。十二条を見ます。これは今度は借家の方です。「この法律の施行前にされた建物の賃貸借契約の更新の拒絶の通知及び解約の申入れに関しては、なお従前の例による。」。すなわち、前者の借地の場合は「契約の更新」という抽象的な言葉、それから十二条では「契約の更新の拒絶の通知及び解約の申入れ」と具体的に記載しております。これは、わざわざ分けた意味、すなわち本文の六条においては更新拒絶のやり方は異議という方法が書いてあります。そして、異議とは何かということで正当事由――六条へまた一遍戻りますけれども、これは意識をされてこのような規定の差を設けたのか。そうだとすれば、特別な意味があるかどうかをお伺いしたいと思います。
○説明員(寺田逸郎君) これも多少文言に関する問題でございますので御説明させていただきますが、まず十二条の方は、これは「更新の拒絶の通知及び解約の申入れに関してはこと書きましたのは、これは更新の拒絶の通知及び解約の申し入れについての要件、すなわち正当事由がここで実質的に新法と旧法の間で変わった唯一のものでございますが、それを意識してこう書いたわけでございます。 これに対しまして六条の方でございますが、こちらの方はただ「契約の更新」とだけ書いてございますが、これには当然のことながら意味がございまして、ここであえて契約の更新の請求あるいは使用継続と書かなかったのは、要件が変わっているのは実は正当事由が主なものでございますが、それ以外にもう一つございます。 それは、今回建物の朽廃による借地権の消滅という制度を廃止いたしました。これとの関係で、従前更新の請求をする場合には建物の存在ということが常に要件になっていた。これに対しまして、使用継続については建物の存在そのものは要件になっていないが、しかし、正当事由を要する関係を念頭に置きますと、それは常に建物がある場合でなければならないと、こういう規定になっていたわけでございますけれども、それは使用継続の法定更新というのが、実は建物の朽廃による借地権の消滅後にも生ずるという解釈論を前提にしてのことでございます。これに対しまして、今回は使用継続による借地権の法定更新が生ずるのは期間の満了に限られているわけでございます。したがいまして、当然のことながら建物の存在というものは使用継続の要件だというふうに考えて構わない、つまり朽廃ということはあり得ないので建物は常にあると考えていい、このような考慮で使用継続による法定更新の要件自体もやや変わっているところがございます。 この二つをひっくるめて、さらに更新の効果でありますところの更新後の存続期間もここであわせて読むのが能率的でございますので、それらをすべてあわせて契約の更新、こういうように条文上はするというのが附則の書き方としては合理的だという考慮に基づきましてこのようにしているわけでございます。
○北村哲男君 ちょっと今の説明よくわからなかった点もあるんですが、それなりに意味があるというふうに、無意識にこういうふうにやったんじゃなくてそれだけの意味、また六条を書き出すと切りがないというところから簡単に書いたというふうに理解したいと思います。 それから、先ほど千葉委員からもお聞きになった三十八条のことなんですが、これはやむを得ない事情とかその点については結構なんですが、転勤とか療養とか介護そのほかのやむを得ない事情によって建物を一定期間使うことができないという点であります。 この一定期間ということなんですが、どなたかお聞きになったかもしれませんけれども、その一定期間というのは一体どのくらいなんだろうか。十年でも二十年ぐらいでもいいんだろうか、あるいは短いのはある程度わかるんですけれども、長いと法的安定性といいますか、その辺について疑問があるのではないか。例えば、即決和解なんかで明け渡し猶予期間を認めても、五年以上の明け渡し猶予期間というのは普通認めない。おかしくなってしまいますね、もう認めないと同じですから。そういう点で、この一定期間というのは一体どういうことを想定し、ある程度限定があるのか、幾らでもいいのかということ、その辺の説明をお伺いしたいと思います。
○説明員(寺田逸郎君) これは大変難しい問題でございまして、実は私どもも立法するに際しましては、その期限を切るということによってより簡明さを増すということも検討したわけでございます。しかしながら、転勤一つをとってみましても、海外勤務で非常に長い場合もございますし、一定以上はどうしてもそれを排除する合理的な理由があるかと問われますと、これはなかなかその合理的な理由を説明することが難しいと言わざるを得ないわけでございます。したがいまして、法律の上ではその一定期間を限るということはいたしておりません。 しかしながら、他方、本拠地に戻ってくることが明らかになったという別の要件がございまして、そのような要件を満たすというためには、それは二十年、三十年先に戻ってくるのが今から明らかであるということはちょっと考えられないわけでございまして、そういう側面からおのずからある程度の年数に限られてくるということが言えるのではなかろうかと考えております。
○北村哲男君 決めようがないということでこのように決めたというふうに理解をしておきます。 それから、やはり新設の規定なんですが、十条二項を見ていただきたいと思います。 これは借地権の対抗要件の問題ですけれども、建っている建物が火事か何かでなくなった、あるいは台風でなくなった、その場合に、更地だから第三者が勝手に買っていったときにその救済方法はあるかという問題だと思います。 それについて、新しい法律は全く新設の規定を設けまして、建物の「滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときはこ登記をしたと同じように第三者に対して対抗要件があるというふうに規定しました。いわゆる明認方法という言葉を使われておりますし、また掲示による公示方法というふうにも言われておるわけです。例えば、不当労働行為なんかでポスト・ノーティスというのがございますね。これは縦横何センチ、そして何々で悪いことをしました、何々何月何日というふうにはっきりした文書で書いて、それで公示方法としてはっきりさせる、そうするとわかりやすいわけなんですけれども、これでは一体、例えばそばの電柱に走り書きで紙っぺらに書いて、この家いつなくなりました、何々ですとぺたっと張っておいた、それでもいいのかということもあります。 果たしてそれで対抗要件としてなり得るのか、あるいは権利保護の条件として十分なのかということもありますので、その辺はどういうことを想定し、どういうふうに考え、どういうふうに国民に対して指導をされようとしておられるのか、どうしてもその辺が――わかるような気もします、大きなマンションを建てるときにでかい看板が立っていますから。あれならいいんですけれども、個人ではやはりそういうことまではできないということもありますので、その辺のイメージと、それから今後の運用について御説明を願います。
○説明員(寺田逸郎君) この規定も借り主の保護を今回補充するという趣旨でつくったものでございまして、従前建物がなくなったときには建物の登記をもって第三者に対抗力を有したという状態がなくなります。その場合に、しかし次に建物を建てるまでの補充的な期間何らかの対抗要件を認めてもいいのではないかということはかねてから学説の指摘があったところでございまして、それを今回このような形で実現したというように御理解いただければよろしいわけでございます。 このようないわば明認方法、おっしゃったとおりでございますが、そのような方法にいたしましたのはいろいろいきさつもございますけれども、最終的には現在の建物保護法そのものが一種の明認方法的な運用をされているわけでございまして、本来は土地の取引をする第三者に対する対抗要件でございますから、土地の登記簿に借地権の登記を設定しておくべきである。しかしながら、通常土地の取引をする者は現地を見る、現地を見れば所有者と別の者が持っている建物がある、それを見て借地権がある、こういうことがわかるというわけでございまして、これは広い意味では一種の明認方法的なものでございます。こういうものの補充としては、やはり現地を見て何らかの借地権の存在の手がかりがわかる方法でないと補充としても適当ではないということで、今回このように、いわば立て札のような掲示による対抗要件の補充ということを認めたものでございます。 これはどのようなイメージにとるかということでございますけれども、法律の要件といたしましては、「見やすい場所に掲示する」ということになってございまして、そばの電柱にという今の挙げられた例がございますが、これは実は先ほど申しましたように、建物のかわりになるものでございまして、この掲示を見ればそのままもとの登記簿にたどり着ける、こういうことが基本的な機能としてなければならないわけでございますので、したがいまして掲示としても相当しっかりしたものが土地の上に明らかに立てられているというようなことになって初めて対抗要件の補充としての意味があるわけでございますので、私どもといたしましてはそのような趣旨を今後関係者に十分明らかにするという方法で、その形式等についても何らかのスタンダードを決めるというような努力もいたしたいと考えております。
○北村哲男君 ほぼ時間もなくなってまいりましたので、最後に大臣の所見をお伺いして終わりにしたいと思います。 今回の借地借家法案に対しては、実に多くの陳情を受けたり、反対集会などに出て多くの人たちの不安の声を聞いてまいりました。それらの人々は、現に借地人であったり借家人である人がほとんどで、現実に新法の適用を受けない人たちではあります。確かに法律の上では何度も確認をしていささかの不安もないはずでありますけれども、しかし皆様方の不安は危惧にすぎないと言い切るには私もいささか不安をなお感じております。そして、新法の及ぼす波及効果を恐れるものであるわけです。 これはまた、現実にも悪徳な大地主とかその手先となっている地上げ業者らが既に借地人とか借家人に対して圧力をかけ始めている事実があらわれていることからも想定できるわけでありますけれども、私は法務委員になって初めての経験で一昨年入管法の改正をやりました。そして昨年、入管法の改正が施行されたわけですけれども、そのときも今日本にいる外国人労働者には適用はないんだ、心配することはないんだということを再三確認をして施行したのですが、しかし思わぬ波及効果が生じて入管行政に大混乱を及ぼしたということもあります。 今回の新法施行についてもそのおそれがないとは言えませんので、そこで大臣に対して御所見をお伺いしたいわけですけれども、この不安を感じている多くの国民の皆様方に対してどのような対処をしておられるのか、あるいは新法を利用して借地・借家人に圧力をかけようとしている悪徳な人たちに対してどのような対策を講じようとしておられるのか、あるいは新法の施行によってどういう効果を期待し、新法の適正な運用を図るためにどのような対策を講じておられるのでしょうか。この三点につきまして、何も三つに分けてお答えになることはないと思いますけれども、大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終えたいと存じます。
○国務大臣(左藤恵君) 何度もお答えを申し上げているとおりでございますが、この法案は借り主の権利を弱めるものではなく、また新法の借地・借家関係の更新及び更新後の法律関係に関する規定を現在ある借地・借家関係には一切適用しないということを法律自体明らかにしておるわけでありまして、現在ある借地・借家関係は新法になっても従前と変わらない扱いを受けるようにしておるわけでありますけれども、今お話しのように、仮に今回の改正に便乗して、新法になると借り主が不利になるというような事実に反することを言って借り主との交渉を有利に運ぼうとするような貸し主がいるとすれば、これは今回の改正の趣旨をあえて曲解するものと言わざるを得ません。まことに遺憾なことでありまして、何度も申し上げておりますように、これまでも法案の内容をわかりやすく説明したパンフレット、リーフレットをつくるとかいろんなことで周知いたしておりますが、この法案が成立いたしましたら、さらにより広範な国民の方々に十分理解していただけるような積極的な広報をあらゆる機会を通じて行っていきたい、その趣旨の徹底に努力していきたい、このように考えておるところでございます。 それから、この法律にどんな効果を期待しているか、こういうお話でございます。これも今回の改正は、現行の借地・借家法が借地に対する需要の多様化等の社会経済情勢の変化に対応し切れないようになってきている、こういう点を改めていきたい、そして当事者の権利義務関係をより公平かつ合理的なものにしよう、そういうことで利用しやすい借地・借家制度を築くということを目的にしておりますので、この改正によって良好な借地・借家の供給が促されて、将来の社会生活の基盤整備に寄与する、こういうことを期待しているところでございます。
○北村哲男君 終わります。
○下稲葉耕吉君 私は、現在までいろいろ議論、質疑が繰り返されたわけでございますが、その中で数点確認し、さらに内容をちょっと深めてまいりたいという立場で質問いたしたいと思います。 まず、法務大臣にお伺いいたしたいと思いますが、大臣は本法審議の冒頭、提案理由の説明の中で、「大正十年に制定された法律であって、昭和十六年に改正された後は、今日まで基本的な枠組みは変わっておらず、この間の社会経済情勢の大きな変化、特に土地・建物の利用に対する需要の多様化に対応し切れていない状況になっておりこと、そういうふうな情勢の背景のもとに本法の改正をされたということでございますが、この借地・借家関係の多様化という問題を本法の改正との関連においてどういうふうに認識されておられるのか、もう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 現行の借地・借家法におきましては、借地権の存続期間、更新等につきましてすべて画一的に規律をしておる。そのために地主に借地として土地を提供することをためらわせたり、また契約の際に高額の権利金を支払うことにつながるなど、土地・建物を貸そうとする側にとっても借りようとする側にとりましても利用しにくいものになっており、現実に存在します、更新がなくてもよいからあるいは短期間でもよいから高額の権利金を支払わないで土地を借りたい、こういう借り手側の需要にこたえることができないわけであります。 そこで、このような借地需要等の多様化に注目して、更新のない定期借地権制度、それから確定期限つき建物賃貸借、こういった新たな類型の借地・借家関係を創設し、また借地権の存続期間、更新に関する規定を合理化するなど時代の変化に対応した利用しやすい借地・借家制度とするための改正をすることとしたものでございます。
○下稲葉耕吉君 そこで、きょうは午前中に土地特と連合審査をやったわけでございます。私は、本法の改正と土地問題というのは重要なかかわり合いがあるんじゃないかというふうな理解を持っているわけでございますが、PR用に法務省民事局で出されました資料を見てみますと、借地・借家法の画一的、硬直的な規制を諸情勢の変化に応じて改め、貸しやすく借りやすい関係をつくり出すという観点から見直し作業が行われたと。なお、この見直しか、 土地の有効利用対策として行われるものではな いかとの見方が一部で示されているようです。 しかし、借主と貸主の関係を、具体的な事情に 応じて適切に規律することができるようにする というのが、借地法・借家法の制度の趣旨で あって、借地法・借家法をどのように改めて も、それが直接に土地の有効利用に結びつくも のではありません。この「直接」という表現がくせ者かもしれませんけれども、こういうふうなことが書いてございます。 借地借家法という法律の立場からいえば、直接的には私はおっしゃるようなことだろうと思うんですけれども、やはりおよそ法律というふうなものは国民生活の安定、福祉の増進、そういうふうな国民的なニーズというものが背景にある、土地問題はまさしくそういうふうなことではないかと思うんですね。そういうふうな観点から、法務省はどのように理解されているか、この点についてひとつ見解を承りたい。
○政府委員(清水湛君) 土地問題が現在、政府の当面している非常に重要な問題であるということは私どもよく認識しているわけでございます。また、そういう問題に対応する政策の中の一つとして借地・借家法の見直しということが指摘されておることもまたそのとおりでございます。 私どもといたしましては、先生御指摘のように、借地借家法というのは貸し主と借り主の私法的な私的な契約関係というものがまずベースにあって、その契約関係を公平、公正にかつ合理的に調整するというのが借地借家法であるというふうに考えるわけでございます。こういう借地借家法の中に土地の高度利用とか有効利用というようなものを直接持ち込んで、例えば正当事由などにつきましてもそういう要素をもっと深く加味した形での正当事由条項というようなものを考えるべきであるというような御議論が私ども昭和六十年以来法改正作業をしている過程の中で寄せられたこともあるわけでございますけれども、借地借家法というようなものの基本的な性格というものを考えますと、そういう公的な面でのいわば行政目的的な要素を私人間の契約関係の調整規定の中に入れるのは適当でないということで、最終的にはそのような主張は退けられたという結果になっているわけでございます。 しかしながら、大臣もしばしば御答弁なさっておられますように、借地人と地主、借家人と家主というような方々の権利関係が円滑に調整されるということになりますと、そこに貸しやすく借りやすいというような借地・借家制度というものが生まれてくる。そのことを通じて良質な借地が提供されるあるいは良質な借家が提供される。そういうことを通じて、例えば定期借地権制度などが住宅・都市整備公団等によって利用されるという可能性があるということが指摘されているわけでございますが、そういうようなことによって住宅宅地政策に、間接的にではございますけれども寄与するという面がある、そういう形での寄与を私どもは期待しておる。こういう意味で、この借地借家法と土地政策とのつながりを認識している次第でございます。
○下稲葉耕吉君 命の御説明で大体理解できるわけでございますが、私が逆の面からお話しいたしたいのは、国民生活に関係なしにこういうふうなものは法律改正して、そして国民生活がどういうふうになろうがなるまいが、法律改正という一つの小さなというと語弊がございますけれども、法律という枠の中で改正すればいいんだというふうな判断ではないだろうというふうに理解するものですから、またそういうようなことであってはならないというふうな基本的な考え方から今申し上げましたような質問を念のためにいたしたわけでございます。 それでは、三番目の質問に入りますが、衆議院で一部修正されました借地契約の更新後の存続期間の問題についてでございます。 政府原案の段階で私どもいろいろ勉強させていただき、そしてまたその後のいろいろな専門の学者の意見等を聞いてみますと、更新後の第一回の期間を十年から二十年に改めると衆議院で部分修正された、こういうふうなことは制度の根幹にかかわる修正ではないだろうかというふうな意見がございます。衆議院ではそれを一致してのまれ、そして我々そういうふうな線で議論しているわけでございますけれども、政府原案をつくられた法務省の立場、そして現在の考え方、それをお伺いいたしたいと思います。
○政府委員(清水湛君) 政府原案で更新後の存続期間を十年と、こういうふうにいたしましたのは、しばしば御説明申し上げておりますように、当初の基本的な存続期間を三十年に延長する、こういうことをまず前提とした上で、三十年経過後におきましては当事者間の事情の変更というようなものをできるだけ当事者相互間の契約関係に反映させることが望ましい、こういうようなことから十年刻みにするということにいたしたわけでございます。そうすることが普通借地権というものをめぐる法律関係というものを合理的かつ公平、円滑に調整するために必要だというふうに考えたわけでございます。しかしながら、衆議院における御審議におきまして、当初の存続期間に限って二十年とする修正案が提案されまして法務委員会でその部八月が可決されたということでございます。 私ども立案に当たりました政府側といたしましては、当初の原案どおり存続期間を十年とするということが望ましいというふうに考えているわけでございますが、最初の更新期間だけに限って二十年とするということも、普通借地権の関係に当事者間の事情の変更を適切に反映するという趣旨に反するものとは言えない、こういうようなことからやはりこの修正の理由とされている借地関係の安定というか借地人の権利の安定という見地というようなものを考慮いたしますと、この修正は修正として私どもは謙虚に受けとめることができる、こういうふうに実は考えているわけでございます。
○下稲葉耕吉君 では、次の問題に入ります。 地代・家賃をめぐる紛争が多いようでございます。欧米に見られますように、住宅と事業用の建物を区別するというような仕組みもあるようでございますが、例えば地代・家賃を物価にスライドするとかというような議論もあると思うんですけれども、どういうふうな形が日本の経済情勢あるいは国際関係の中における地代・家賃をめぐる一つの方向がどうか、その辺について御意見ございましたら承りたいと思います。
○政府委員(清水湛君) 地代・家賃をめぐる紛争というのは、最近土地の値段が非常に上がったというようなこともございまして紛争事件が多くなっておるというふうに私ども聞いているわけでございます。 そういう意味で、地代・家賃をどういうふうな形で決めるのがいいかということは午前中の連合審査会におきましても御質問があったところでございますが、例えば物価スライド条項とかあるいは固定資産税額に基準を置いてその何倍とするというようなことを契約で定めているという例も現実にあるわけでございます。また、そういうものにつきまして裁判例におきましても、合理的な範囲内においてそういう特約は有効であるというようなことをいたしているところもあるわけでございます。しかしながら、本質的に地代とか家賃というようなものを経済法則をも含めてどういうふうな形で定めるのが適当かということにつきましては、これはそういう面での専門である不動産鑑定基準等におきましてもいろんな考え方が示されているところでございます。 私どもといたしましては、地代・家賃をめぐる紛争につきましては、今回新たに採用されます調停前置による調停委員会における適切な活動等によりまして具体的な紛争については合理的、妥当な地代・家賃が決められるということを期待しているわけでございます。そのほかにも、そういう現実に調停とか訴訟というものに持ち込まなくても、その前の段階で何か合理的な形での地代・家賃を決める制度はないかというような問題提起があるわけでございますけれども、現在のところいろんな考え方がございまして、そういうものを制度化するという状況にはなかなか立ち至っていないというふうに実は考えている次第でございます。
○下稲葉耕吉君 そこで、調停制度の問題になりますが、最高裁判所にお伺いいたしたいと思います。 この法律が改正されますと、先ほど同僚議員の質問に対しましては千六百件ぐらい件数がふえるんじゃないだろうかというふうな御答弁でございましたけれども、要するに量、質の両面にわたる調停制度の体制の強化等々が必要だと思うのでございますが、量と質の面について具体的にどういうふうな対応を考えておられるかお伺いいたしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今回の法案によりますと、調停前置主義というのがとられております。これによりまして、地代・家賃の増減事件でございますが、調停では、私どもの予測ではほぼ千六百件程度の事件がふえるのではないかというふうに考えております。このような事件の増加ということに対処しまして、調停制度というものについての国民の期待も高まるというふうに思いますし、それに応じて裁判所の方も今御指摘のように、質、量両面においてその体制を整えなきゃいけないだろうというふうに考えておるわけでございます。 具体的に申し上げますと、この種事件が増加ということになりますと、不動産取引についての専門的な知識を必要とする事件であるということでございます。したがいまして、これらの事件につきましてはこの事件の処理に当たる調停委員というのが非常に重要な役割を果たすわけでございます。これらの調停に関しましては、その当該地域め不動産取引の実情に通じた調停委員あるいは不動産鑑定士あるいはそれ以外のこれらについての専門的な知識を持つ調停委員の活用ということが必要になるわけでございます。活用と申しますと、一つはそういう調停委員の数をふやすということでございます。それから、それ以外にも、その事件担当の調停委員ではなくて、調停委員会を構成する調停委員以外の調停委員でも専門的な知識経験に基づいて意見を述べることができるという規定が民事調停規則の十四条にございます。そのような規定の活用ということも考えなければいけないというふうに思っております。 また、現在調停委員に任命されておられる方の執務能力の向上という点も必要でございます。裁判所におきましては、従来から調停委員を対象としまして各種の法律知識あるいは調停事件の類型に応じた知識の修得だとか、それから具体的なケースに応じまして、その具体的なケースケースの事件の初めから終わりまでどういうふうにして進行するのがいいかというようなケース研究というようなものも行っております。このような研修会、研究会というような機会をとらえまして、調停委員に対しまして今回の改正法の趣旨あるいは賃料改定事件に必要な専門的知識を修得させるというようなことについて十分配慮をしていきたいというふうに思っております。 また、調停は調停委員だけでやるわけじゃございませんで裁判官も入るわけでございますが、これらの事件を担当する裁判官に対しましても、今回の国会での御審議の経過をも含めまして法改正の趣旨を十分に研究し勉強するというような機会を設けたいというふうに考えておるわけでございます。 このような方策をとりまして、今回の法案によりまして調停制度にかけられました期待というものにこたえていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
○下稲葉耕吉君 先ほどの同僚議員の質問に対する法務省の答弁でも、附則一条によりまして一年以内に本法が施行されるということになるわけですね。そうすると、今最高裁からお話がございましたように、増員の問題もちょっと出ましたが、来年度はもう施行されるわけですね。何か具体的な要求をなさっておられますか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 調停委員の関係でございますが、実は調停委員と申しますのは委員御承知のように、非常勤の国家公務員ということでございまして、いわゆる裁判所職員定員法による定員というものの枠外でございます。調停委員は執務をするたびに委員としての手当を受ける、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては各裁判所に対しまして、この法案が成立いたしましたら各地におきましてこのような専門的な知識を持った調停委員をより発掘するようにしていただきたいということをお願いしまして、そのような措置をとって法律の施行に備えたいというふうに考えておるわけでございます。
○下稲葉耕吉君 今、私質問いたしましたのは、裁判所系統の予算を見ておりますと大変窮屈でございます。そういうふうな意味で、何とかやはり私どもといたしましても大いに協力しなくちゃいかぬわけでございますから御質問申し上げているわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。 そこで、次に移りますが、法務省にお伺いいたします。 法制審の答申と本法との関係、特に相違点、重立ったところで結構でございますから御説明いただきたいと思います。
○政府委員(清水湛君) まず第一に、借地契約の更新後の存続期間が答申では十年とされているわけでございますが、これを既存の借地関係に適用するかどうかということにつきまして、法制審では適用しないのが望ましいと。つまり、これは永久に二本立てでいい、そういうことにするのが望ましいということとはしつつも、仮に適用する場合には、改正法施行後二回目以降の更新から適用するようにすべきだという形での答申がされているわけでございます。これは、今回の法案と答申がそういう意味では違うというわけではございませんで、法制審議会の基本的な考え方の部分に私どもが寄ったと、こういうことで、その点の矛盾はないというふうに申すこともできようかと思います。 それからもう一つは、正当事由に関する規定でございます。 これにつきまして法制審におきましては、これは今までの正当事由に関する判例在いわば分析してそれを法文化したものにすぎないのであるから、これは既存の借地・借家関係にそのまま適用しても差し支えない、そういった趣旨の答申をいただいているわけでございます。しかしながら、この点につきましても私ども法制審議会の答申をいろんな各方面と接触して御意見を伺ったわけでございますけれども、形の上では条文が変わるというようなこともございまして、正当事由について既存の借地・借家関係の方が不安を抱かれるというようなことが強く指摘されました。そのことをも考慮いたしまして、正当事由に関する規定は、これも既存の借地・借家関係には適用しない、こういうことにいたしたわけでございます。大きなところといたしますと、この正当事由の関係ではないかというふうに申して差し支えないと思います。
○下稲葉耕吉君 一番最初におっしゃいました両論併記といいますか、それが一本化されたような形に、法律ではもちろん一本ですが、そういうふうなことが、これは私の杞憂かもしれませんけれども、本法に対する理解、後で触れますが、というふうなことで若干問題になったのかなというふうな気がせぬでもないんですけれども、それはそれといたしまして。 そこで、最初に大臣にお伺いしましたように、社会経済情勢の変化ということ、そのような流れの中で本法の改正ということになったわけですけれども、大正十年から昭和十六年まで二十年かかった、そして昭和十六年から本年まで五十年、そして今度改正される。そうしますと、現行法が旧法になって新しい法律ができるわけです。それで二つの法律でずっといくわけですね。そうしますと、また二十年か三十年あるいはもっとたった場合に、また借地借家法の改正と、こういうふうなことが社会経済情勢の変化によって絶対出てこないとも限らないのではないか。そうしますと、あと三十年たったら今度は法律がまた三つになってしまうということがないわけでもない。どういうふうな社会情勢、経済情勢の変化があるかもしれませんからね。そういうようなことが心配されるんですが、心配し過ぎでしょうかね。法務省、どうですか。
○政府委員(清水湛君) 私どもは現時点における社会経済情勢の変化に対応し得るという形で今回の法律案を作成しているわけでございまして、将来これをまた変えるということは考えておりませんので御理解をいただきたいというふうに思う次第でございます。
○下稲葉耕吉君 それは、民事局長が局長をなさっておられる間はないだろうと思いますけれども、私が申し上げますのは、やはり世の中というのはそのときどきで変わるし、したがってそれに対応するために法律も変わるわけですからね。今度は両法で、二つの法律でずっといくわけなんだけれども、やはり立法者としてはそういうふうなことまで一応見通して、そしてそういうふうな中で現行法をどういうふうに改正していくかという考え方も当然おありだったんだろうと思うんだけれども、そういうようなことを申し上げているわけでございます。 それから、時間も余りございませんので、最後に触れたいと思うんですが、本法の審議を聞いていて、各党共通におっしゃることは、やはり法律の中身を国民に周知徹底させてほしい。どうも誤解だとか偏見だとかというふうなことがあって、それが一つの大きな世論なりなんなりになっている。これはもう困るわけでございます。だから、法務省としてはいろんな資料をつくられたと思うんですが、我々の手元にはよく見せていただけるんですけれども、国民の目にはほとんどこういうふうなものは触れないと思うんです。 そこで、ちょっと具体的な質問をいたしますけれども、法務省の予算の中でこういうふうな広報用の予算というようなものは今年度は幾らでございましょうか。
○政府委員(堀田力君) 法務省七局その他の外局合わせまして、平成三年度の広報関係予算は約一千四百万円でございます。そのうち、この借地借家法改正の重要性にかんがみまして、民事局関係、この法案関係で約五百万の予算措置を講じております。
○下稲葉耕吉君 法務省は大変いろいろ仕事が最近ふえておられまして、入管法の改正の問題にしてもそうです。それから難民あるいは偽装難民対策、いろいろ苦労されておられます。予算も足りないし人も足りない、予備費までとられまして難民対策なりなんなりいろいろ講じられているというような経緯もある。五百万ぐらいの金で国民に周知徹底させますとおっしゃるんだけれども、新聞広告を全ページ一つ買い切りますと五百万ではとても足りません、一回だけで。それから、テレビだ何だかんだとおっしゃるけれども、それはやはり政府広報にしても金がかかるわけですね。 だから、私が申し上げたいことは、借地・借家法の改正というこれは大変大きな法律の改正であるわけですし、我々は認識している、五十年ぶりの大改正というふうなことで。ところが、国民一人一人のこれに対する認識というのは薄い。しかも、それが直接国民の一人一人に関係のある住関係です。衣食住の住関係に影響のある大切な法律なんです。ですから、それは本年度の予算で五百万、PRを徹底してやるとかあるいはコンピューターの問題なりなんなりをいろいろおっしゃっていました、体制の整備だとか何だかんだ。もちろん当然そういうようなことをおやりにならぬといかぬけれども、私は、この制度が国民の中に定着するかしないかというのは国民の理解と協力がいかに得られるか、正しく法律の中味を認識してということだろうと思うんです。そのためには、やはりもっともっと努力しておかれなくちゃならない。来年度の予算はまだ決まらないわけですから、いろいろおありだろうと思います。 それと同時に、この問題は一法務省だけの問題じゃないと思うんです。政府全体の問題だと思うんです、国民生活に密着する問題ですから。ですから、法務省とされましても、例えば政府に直接話をされて、具体的には内閣広報室が予算持っているんですから、そういうふうなものから引き出していただいて、テレビだとか新聞だとかあるいはとういうふうなものだとか、あるいは週刊誌だってありますよ、そういうような形で協力してもらうということがやはり本当の理解を早めることになるんじゃないだろうか、こういうふうに思います。 そういうふうな立場から、最後にひとつ大臣の決意をお承りいたしたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 今、先生お話がありましたように、大変このPRといいますか周知徹底というものは大切なことでもありますので、本年度の予算を今官房長が御説明申し上げましたが、全力を挙げてやらなければなりませんけれども、一つは政府広報予算全体の問題としてPRを考え、また関係の建設省とかそういったところにもお願いしていく。 さらに、施行まで一年以内ということにもなっておりますので、明年度の予算におきましてもこういった点について努力をいたしまして、広範な国民の皆さんに御理解をいただけるように努力をしていかなければならない、このように考えているところでございます。
○中野鉄造君 きょうは、私は極めて具体的な実務的な問題についてお尋ねしたいと思います。 現行法のもとで、借地及び借家が期間満了だとか、あるいは債務不履行によって解約をというようなことも含めて、いわゆる明け渡しを認めた判決というのが過去五年間ぐらいにどのくらいの件数があったのか、おおよそのところでいいんですが、お尋ねしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 私どもの統計では、借地・借家の期間満了ということに限っての統計というのは実は申しわけないんですが、とっておらないわけでございまして、統計の分類でいきますと、借地・借家含めました土地の明け渡し、建物の明け渡しということでとっておりますので、そういう土地の明け渡し、建物の明け渡しということで述べさせていただきたいと思います。この中には借地・借家の事件はもちろん入っておるわけでございますが、そのほかに不法占有についての明け渡しであるとか、あるいは売買契約に基づく明け渡しというようなものが入っておるわけでございます。 そういうことで、その事件数を申し上げますと、地方裁判所の事件でございますが、昭和六十一年から平成二年の間、五年間をざっと調べたわけでございますが、判決の言い渡しかございました件数は、ほぼ毎年、土地が千五百件程度、それから建物が八千件前後ということでございます。そのうち、土地または建物の明け渡し請求を認容した、認めたということでございますけれども、この件数でございますが、これは例年、土地がそのうちの約八〇%、建物が九五%程度ということになっております。平成二年の数字で申し上げますと、土地は千百五十七件、建物が六千八百九十七件ということでございます。 それから、地方裁判所のほかに簡易裁判所でも、この種事件を扱いますので、それも申し上げますと、簡易裁判所では、土地の明け渡し事件は毎年約二百件、建物が毎年二千件から千五百件程度ということでございます。そのうち明け渡しを認めた判決でございますが、これは例年、土地がそのうちの七〇%、建物が九五%程度ということになっております。
○中野鉄造君 こうしたことをなぜ聞くかと申しますと、今回の法案の大きな柱として、土地・建物の有効利用促進のための定期借地権だとかあるいは定期借家権、期限つき借家権というのが認められたわけですけれども、しかしせっかくつくったこうした定期の借地権あるいは借家権というものが、期限終了後も約束に反して継続使用され、かつ、その違法状態が是正されないというようなことになったとしたならば、これはせっかくこうした定期借地権あるいは借家権というものが画餅に等しいものになってしまうんじゃないのか、こういう危惧があったものですからお聞きしたわけですけれども、こういうことにならないためにどういうようにこれに対応されていくつもりか、今のこの現状にかんがみて、その点お尋ねいたします。
○政府委員(清水湛君) 仰せのとおり、定期借地権とか期限つき借家権の場合には、その期限が到来した場合には、これは必ず土地を明け渡してもらうなり、家を返してもらう、こういうことが必要になるわけでございます。しかしながら、現実の問題として借地人なり借家人がそこに居座って動かない、こういうこともまた世の中に間々あることだというふうに思うわけでございます。その場合には結局訴訟、訴えを提起して、まあそれは調停をということも考えられましょうが、要するにそういう訴訟等の法的手段をとって、最終的には強制執行をするということになるわけでございます。 ただしかし、これまでと違う点は、従来ですとその訴訟を起こした場合でもそもそも明け渡しをする義務があるかないか、賃料不払いを理由とする解除が有効であるかどうか、あるいは期間満了によって正当事由が認められるかどうかというようなことがこの主たる争点になってくるわけでございまして、そういうことをめぐって非常に長期の訴訟の時間を要した、こういうことがあるわけでございます。 今回の定期借地権につきましては、そういう定期借地権であるかどうかというようなことが争いになるとこれはまた深刻な問題になる可能性があるわけでございますけれども、そういうことを防ぐという意味におきまして、この事業用の借地権でございますと公正証書でつくりなさい、また長期の五十年以上の借地権でございますと公正証書によることが望ましいけれども、そういったたぐいの書面をつくるべきである、それから建物譲渡特約付借地権でございますと、建物に仮登記をするというような形できちっと証拠を保全するということもあわせて法律上の手段といたしているわけでございますから、居座りをしたといたしましてもそういうきちっとした証拠に基づいて訴えを提起しますと、極めて短期間のうちに裁判所から明け渡しを命ずる判決をもらえることになるのではないかというふうに考えられるわけでございます。その上で強制執行をするということになるわけでございますが、そういった定期借地権である、あるいは期限つき借家であるということをきちっとした文書で明確にしておくということが何よりも肝要かというふうに思うわけでございます。 この点も、先ほど来問題として指摘されております。知徹底と申しますか、定期借地権というものはこういうものなんだと、書面はこういう形できちっと保存しておきなさいというようなことからまず広報、PRしていかなければならないというふうに思う次第でございます。
○中野鉄造君 次に、第八条の第四項なんですが、非常にこの法文の意味がわからない点があるんです。その最後に、「権利を制限する場合に限り、制限することができる。」、非常にわかりづらいんですけれども、これはどういうことなんですか。
○説明員(寺田逸郎君) わかりにくいことばかり御説明申し上げましてまことに恐縮でございますが、八条の四項と申しますのは、まさに八条の一項と二項との関係で出てくる規定でございまして、この新しいタイプの普通借地権におきましては、更新後は基本的に両当事者は解約の申し入れ権を持つということでございます。もちろん、その原因というのは一方においては建物の滅失があったとき、他方所有者側が解約をするには借地権者が承諾を得ないで建物を築造したとき、まあ実際を考えてみますと建物が滅失した機会に双方が解約権を持つ、こういう関係に立っているわけでございます。これはこの機会に、実は前にも御説明申し上げましたけれども、十八条の非訟事件に誘導しで、そこで将来の権利関係を事前に調整していただく、これが立法のねらいでございます。 ただ、こういう関係は言ってみればその機会に権利の調整を行うわけでございますけれども、当事者がそういう関係を望まないという場合もあり得るわけでございまして、解約はさせないということを事前に合意するということもこれは可能でございます。ただし、その場合に借り主は解約できないけれども貸し主は解約できる、こういう状態は余りに貸し主側に有利でございますので、そういうことはできない。つまりここは強行規定でございますので、その関係で四項の規定は非常にわかりにくくなっておりますけれども、言いたいことは、この借り主側の権利を奪うのは貸し主側の権利が奪われているときに限る。つまり言ってみれば、その期間中は両方は解約しませんよということを約束することはできる。しかしながら、貸し主の方が解約権を持っていて、借り主の方は解約権を持っていない、こういうのは許さない、こういうことを規定しているわけでございます。
○中野鉄造君 何だかわざとわかりにくいように書いているような気がしてならないんですね。今おっしゃったようなふうなことであれば、もう少しわかりやすく書けたはずじゃないかと思うんです。 それと同じようなことで、今度は三十五条の第一項、ここにも非常に誤解を招くような文言があるんです。例えばこの三十五条、これは「借地上の建物の貸借人の保護」に関する規定ですけれども、第一項中に「建物の貸借人が土地を明け渡すべきときはこと、こう書いてあります。しかし、土地を明け渡すべき契約上の義務者は、これは土地の貸借人である建物の所有者なんですね、ここは。だから、建物の貸借人は建物賃貸借契約に基づいて建物の賃貸人である建物所有者に建物明け渡しの義務はあっても、法律上土地を借りているわけじゃないんですから、「建物の貸借人が土地を明け渡すべき」というのはちょっとおかしいんじゃないか。言わんとするところはわかりますけれども、先ほど言ったようにどうもおかしいなと思うんですね。 だから、ここは例えば「建物の貸借人」ではなくて、「土地の貸借人」と書くべきであって、「土地の貸借人が土地を明け渡すべきことに伴い建物の貸借人が建物の賃貸人に建物を明け渡すべき」と、こういうように書けばよかったんじゃないかと思うんです。建物を借りている人が土地を返すというのはどういうことか非常にちょっとわかりづらいんですけれども。
○説明員(寺田逸郎君) またまた非常に御説明難しいところばかりでまことに恐縮でございますけれども、これはもともと土地をどのような場合に明け渡すかということがここで問題になっている。したがって、述語は「土地を明け渡す」ということにならざるを得ないわけでございます。確かに、建物の貸借人というのは建物を借りているのであって土地を借りているわけではない、これはまさにおっしゃるとおりでございますけれども、他方法律上は建物の貸借人というのはその建物を占有していることによって土地を占有してるんだと。したがいまして、訴訟で建物の貸借人を土地の所有者が追い出す場合には、建物から退去して土地を明け渡せと、こういう判決が出る。これは弁護士先生方は御承知のとおりでございますが、そういうことにならざるを得ないわけでございます。 したがいまして、ここは借りているわけではございませんけれども、占有という物理的な状態は生じていて、それで契約関係はない、そういう場合に明け渡すのはまさに対象は土地であって、占有しているのは建物の貸借人だという非常にややこしい関係を規定するという、まあ従前なかった新しい貸借人の保護を規定しているために多少わかりにくいということでございますけれども、そういうことを目的としているためにそうならざるを得ないわけでございます。
○中野鉄造君 それは、当然建物が宙に浮いているわけじゃないですからわかりますけれども、やはりこの点も国民の側がちょっと見たときにわかるように、今申しましたように、「土地の貸借人が土地を明け渡すべきことに伴い」と、こういうように書けばよかったんじゃないかと思うんです。 まあもうこれ書いてるんだから、これをまた修正しろなんて言ったって無理でしょうが、この間から何回も私は言っていますけれども、とにかく法律用語というのはちょっと一般国民が見たってわかりずらい、弁護士の先生方が見たってわかりずらいとおっしゃるんですから、もう少しこういうような点もひとつ検討していただきたい、こう思います。 それから、次に十一条の二項なんですが、地代等の増額請求に関する条文についてお尋ねしますけれども、この項で、「地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者」、つまり借り主ですね、借り主は「増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。」、こう規定してあります。ここで言う「相当と認める額」というのはどういう額なのか。いわゆる借り主が自分で判断してこのくらいでいいと思った額なのか、それとも従前の地代等の額を言うのか。 今までの判例あたりから見ますと、借り主が従前の地代等の額を自分で相当の額と判断して供託していたのに、その額が不当に安い、こう裁判所で判断されて、債務の本旨に従った地代等の提供ではないという理由で契約解除が認められてしまった、こういう実例があるやに聞いております。したがって、その「相当と認める額」とは、法務省ではどの程度のものを考えていらっしゃるのか。従前の地代等の額の何%増ぐらいをもって相当の額と言われるのか、その辺のところをお尋ねしたいと思います。
○政府委員(清水湛君) 実は、この十一条の規定は、昭和四十一年の改正の際に改正された条文でございます。 この「相当と認める額」というのは、結論から先に申しますと、借地人が自分の主観において相当だと思っている額、こういうことでございます。 実は、なぜそういうことになったかという背景をちょっと説明いたしますと、四十一年改正前におきましては、地主の方から地代の値上げ請求がありますとそこで客観的に相当な額にもう地代は改定されてしまう。例えば、一万円のものがその請求の時点で客観的に相当な額が二万円だということになりますと、一万円のものが二万円になってしまう。ところが、二万円であるかどうかというのは実は裁判が確定してみないとわからない、後にならないとわからないわけでございます。そういうときに一体借り主は幾ら支払えばよろしいのかということが問題になりまして、従来どおり一万円払ったのでは、これは賃料不払いということになって債務不履行ということになり契約解除の理由になるこういうことに当時の裁判例はなっていたわけでございます。しかし、裁判で争って何年かたった後に、いや実はあのときの地代は二万円が相当だったと言われても困るわけですから、そのときに自分で大体見当をつけて一万八千円とか一万九千円の金を支払っていれば債務不履行ということにはならないということになったのかもしれませんけれども、それでは余りにも借り主側としては不安定な地位に置かれる、こういうことになったわけでございます。 そこで当時、四十一年改正におきましては、借り主の方で自分ではこの辺が適当だという金額を支払えばよろしい、これは争いになっているでしょうから当然供託ということになると思いますけれども、その程度の金額を供託しておけばよろしい。その場合一万円が自分としては正しいんだと思うなら一万円でもよろしい、しかし一万二千円ぐらいじゃないかと思えば一万二千円でもよろしい、こういうことでございます。しかし、その後裁判で二万円が正しい額だったということになりますと、差額一万円あるいは八千円について年一割の割合による利息をつけて全部払いなさい、こういう年一割の利息というペナルティーをつけて幾らでも相当な額であれば支払いあるいは供託すればよろしい、こういうことにいたしたわけでございます。 そこで問題は、一万円のものが二万円という程度でございますといいわけでございますが、何年にもわたって周辺の地代あるいは家賃というものはどんどん、例えば三万とか四万になっている。そういうときに例えば昔々決めた地代なり家賃が千円である。だれが考えたって千円なんというのはおかしい、本人自身も内心ではおかしいと思っているというような状況があるにもかかわらず、ずっと例えば千円しか払わない、千円しか供託をしていないということになったようなときに、それでもなお自分が適当だと思う金額さえ支払いあるいは供託しておけばよろしいのかということが問題になってくるわけでございまして、借地・借家関係における信頼関係というようなものを前提に考えますと、そのような著しい、何と申しますか信頼関係を破壊するような行為については、やはり債務不履行ということで契約を解除することを認めてもよいのではないか、こういう考え方が出てくるわけでございます。 実は、昭和四十一年の立法当時におきましても、余りにも著しい不当に低額な支払いまたは供託については、それは契約解除をもって地主、家主側は対抗することができるんだという考え方がございました。その後、裁判所で非常に著しいそういう事案につきまして解除を認めるというような例がございましたけれども、私どもといたしましては、それは非常に極端なやはり例と言わざるを得ない。根本的には、当事者が自己の主観において相当と認める額を支払いまたは供託しておく限り契約解除ということにはならないということで差し支えないというふうに考えている次第でございます。 今回の改正ではこの点については何ら触れてはおりませんけれども、解釈は全く変わるものではないというふうに考えております。
○中野鉄造君 このことは、そのずっと先に出てきます三十二条の二項の家賃の場合も一緒ですね。
○政府委員(清水湛君) 仰せのとおりでございます。
○中野鉄造君 この件については今お話がありましたように、供託しても意味がなくなるというか、非常にそういったような利子がついてみたりなんかして、判決が出るまではそういったようなことでリスクが大きい。だから、地代だとか家賃、こういうことがこれからその調停前置主義が導入されたとしても、やはりこの問題については、こういうようなときはこうだというような、いろいろなそういった面で先ほどからお話があっておりますように、ひとつ大いにPRに努力をしていただきたい、こう思うわけでございますが、大臣お願いいたします。
○国務大臣(左藤恵君) 今のお話のとおり、いろんな面で誤解がないようにPRに努力しなければならない、このように考えております。
○中野鉄造君 次に、十七条の二項についてお尋ねいたしますが、「造改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときはこ云々というここのところなんですが、この場合、借り主がこの裁判申し立てをする前に増改築を無断で強行した、その後で裁判所に増改築承諾にかわる裁判を申し立てたときはどうなるのか、認めるのか認めないのか、この点をお尋ねします。
○説明員(寺田逸郎君) この十七条の第二項は、現行法の第八条ノニと全く同一のものでございまして、これを現代語化したにすぎないところでございます。したがいまして、今の問題非常に難しい問題でございますけれども、現行法の解釈ということになります。 現行法におきましては、第十七条の第二項に相当いたします第八条ノ二の第二項の造改築の許可の申し立てというのは、これは建前といたしましては増改築をする前にすべきであって、事後的な許可を求めるということはできないという解釈がとられております。ただし、救済的と申しますか、一定の範囲でどうしてもこれが認められないわけではないという場合もまたないわけではないわけでございまして、増改築に着手した後でも、それを容易に取り壊して原状に復することが可能なような場合に認めないというのはやや酷ではないかというところから、解釈論的にはその程度の範囲では認めてもいいのではないかというような考え方がとられているところでございます。 なお、増改築の禁止の特約に違反いたしましてこの建物が建てられたという場合には、必ずしも増改築無断特約違反ということで解除即立ち退きになるというわけではないということもまた判例上認められているところでございます。
○中野鉄造君 そうしますと、その次の十八条の一項、これも同じようなことになるんでしょうか。
○説明員(寺田逸郎君) 原則的には同様と考えております。
○中野鉄造君 次に、四十条についてお尋ねしますが、四十条には一時使用の場合の適用除外規定が示されておりますけれども、この一時使用と、この法案の一つの柱であります期限つき建物賃貸借、これとはどういうように違うのか。将来どちらに該当するかで紛争を生ずるようなことが出てくるのじゃないかということを懸念いたしますので、この一時使用と期限つき賃貸借の違いを手続上あるいは内容上の面からお答えいただきたいと思います。
○説明員(寺田逸郎君) この第四十条の「一時使用目的の賃貸借」と申しますのは、典型的には例えば貸し別荘のようなものでございまして、その賃貸借の性質自体が一定期間、これは極めて短期間に限られるのが通常でございますが、そういうものを想定しているわけでございます。ところが、現行法ではこれが言ってみれば正当事由による契約関係の解消という全体の制度の枠外にある唯一のものであるために、この正当事由によらないで解消が認められるような借家をしたい人はしばしば一時貸賃借だということでこの四十条の、現行法では第八条でございますが、適用を主張するわけでございます。 それで、裁判所の解釈でございますが、現在のところは先ほど申しましたように、賃貸借の性質自体が一時的なものが本来ではございますけれども、一部いわば拡張的に一時賃貸借と認められているものがございます。それが今回正式に条文で認められました三十八条、あるいは三十九条もそれに該当するわけでございますけれども、賃貸人の不在期間の建物賃貸借、こういうようなものでございまして、現に裁判例では転勤の間だけという約束で借りるというのも一時賃貸借に当たるのではないかということが問題になった事例がございます。多くの裁判例ではこれは否定されておりますけれども、中には認められたものもございますし、先ほどこの三十八条に当たると申し上げました、例えば公務員が定年後の老後の住まいとして家を買っておく、それをしばらくの間人に貸しておくというようなケースで、定年までの間にかなり期間があったケースでは、最終的にはこれが一時賃貸借と認められたケースもございます。 しかしながら、私どもがこの三十八条を新たにつくりましたきっかけとしては、やはり学者の間からかなり強い批判がございまして、そのようなものは本来の四十条、一時賃貸借の範囲を超えているのではないか、少し乱用的な運用をされているのではないかというようなことが指摘されておりました。確かに、貸し手の側の事情で一時賃貸借というのは本来の趣旨にやや反するところがございます。しかも、これがしばしば乱用的に使われるということもまた事実でございますので、そこで今回三十八条というのを新たに設けました。ただし、三十八条の適用対象となるためには同条二項で、先ほど御説明申し上げましたとおり、「事情を記載した書面」というのが契約の必須条件ということになっております。 したがいまして、今後は形式的には四十条と三十八条を分けるのはこの「事情を記載した書面」ということになりまして、その事情自体が、貸し主側のやむを得ない事情が三十八条、そうでなくて借り主側の事情と申しますか、賃貸借自体の性質というのが四十条、内容的にはそういう区別ができるということになりまして、比喩的に申しますと四十条の適用範囲はややそれで狭まるのではないかというように感じております。
○中野鉄造君 最後に、先日の公聴会のときにも鑑定委員に対する鑑定料の件についてお尋ねいたしましたけれども、鑑定委員、それから今回の調停前置主義採用下における民事調停委員、これは当然ふやさなくちゃいけないのかと思いますけれども、こうした鑑定委員及び調停委員の増員及び手当についてどのようにお考えになっておりますか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) まず、調停委員の関係でございます。 調停事件につきましては、調停前置主義の採用ということで地代・家賃の改定事件については事件数がふえることが見込まれるわけでございます。私どもの予測では大体千六百件程度ふえるのではないかというふうに考えております。したがいまして、この種事件を担当する調停委員というものが必要になってくるわけでございます。現在も実は、地代・家賃の改定事件については調停事件がございますけれども、これが大体二千件足らずということでございますから、その八割ぐらいがふえる、こういう計算でございます。したがいまして、この千六百件という件数は、調停事件全体が大体年間で六万件ございますから、それに比較いたしますとそれほど多いというわけではございませんけれども、専門的な知識、経験を有する調停委員が必要だという意味では御指摘のとおりでございまして、私どもとしては事件数の動向を見ながら専門的な知識を持った調停委員の増員ということを考えたいというふうに考えておるわけでございます。 次に、鑑定委員でございますが、これはいわゆる借地非訟事件の鑑定委員ということでございます。そうしますと、借地非訟事件がこの法律の改正によりましてふえるのか、ふえないのかということが問題になるわけでございます。実は、現在の借地非訟事件とほぼ同じように新しい法律でもなっておるわけでございますが、十八条の「借地契約の更新後の建物の再築の許可」という点がこの法律で新しく定められた事件ということになるわけでございます。ただ、こういう事件が現実に起きてくるのは実は非常に先の話でございまして、少なくとも三十年はかかるということでございます。と申しますのは、これにつきましては、これは更新に関する規定の一部でございますので、従前の借地契約については適用がないということでございますので、この法律施行後に契約をされた借地契約、それが更新ということでございますから、三十年、その後の問題でございますからこれはそのときに考えるということになりまして、当面はこれについて手当てはしなくてもよいだろうというふうに考えております。 ただ、若干気になりますのは十七条の規定でございます。これは「借地条件の変更及び増改築の許可」ということでございまして、借地条件の変更につきましては、現在も非堅固の建物から堅固の建物にするということは規定にございますけれども、これがやや今回は広くなるということでございます。しかし、大筋においてはそれほど変わるというわけでもございませんので、それほど事件はふえるわけではなかろうということを考えておりますので、現在のところは今のような鑑定委員の現況ということで賄えるのではないか。もし施行後に事件が相当ふえるようですと、その時点で鑑定委員の増員というようなことも考える必要があろうかと思いますが、今のところは現在の体制で十分いけるのではないかというふうに考えているわけでございます。
○中野鉄造君 終わります。
○橋本敦君 前回は、正当事由をめぐる問題について質問をいたしましたが、きょうは定期借地権問題と賃料改定をめぐる問題に絞って質問をしたいと思います。 最初に、定期借地権の問題でありますけれども、これが普通の借地権と根本的に違う点は、これは言うまでもありませんが更新の権利がない、期間が来れば必ず借地権が消滅する、こういう意味ではこれまで借地法が規定していた借地権とは根本的に百八十度以上大転換をする、そういう新しいシステムを導入しようというわけであります。 この定期借地権の創設が今度の法案の重要な目玉の一つであることは法務省として間違いないと思うんですが、これが宅地の供給なり住宅の提供なりといった国民的ニーズに沿うものであるということを期待すると連合審査でも大臣は答弁されたんですが、そのように思っておられるわけですか。
○政府委員(清水湛君) 御指摘のとおり、定期借地権制度あるいは確定期限つきの建物賃貸借制度、こういうのが今回の改正法の主要な点の一つであるということでございます。 そういうことで、大臣が前々から御答弁されておりますように、こういう制度の導入によって新たな借地の供給が促されるであろうということを私どもは期待しているわけでございます。
○橋本敦君 普通の借地権と、この法が制定された後、この定期借地権との関係を考えると、貸す方つまり地主の側の貸しやすいのはどちらの制度だと法務省は考えておりますか。
○政府委員(清水湛君) どちらによるかということはそれぞれの地域の事情、地主側あるいは借り主側の事情、その他いろいろな事情によることであろうと思います。それぞれのケースに応じてそれぞれの類型のものが利用されていくというふうに考えております。
○橋本敦君 法務省は、この定期借地権が多く利用されることを期待しているでしょう。
○政府委員(清水湛君) 現在、この改正法によって認められている借地権のメニューが多様化されましたので、それぞれのメニューが適切に利用されるということを期待しているわけでございます。
○橋本敦君 かねてから地主団体の要求は、一たん土地を貸したら返ってこないというようなことではなくて、つまり更新がなくて必ず返ってくる、そういうシステムをやってほしいというそういった要求がかなり広範な展開をされていたわけです。だから、基本的に定期借地権制度の創設がその期待にこたえようという方向であることは、これは間違いないんです。 そして、しかもこの問題が一たん法制化されますと、地主の側としては三十年、それから二十年の更新、さらに更新、返してもらうには正当の事由があるかないかが大問題になる、こういうのじゃなくて、五十年たったら必ず返してもらえるならそっちの方がいい、事業所用だったら十年または二十年で必ず返してもらえるならそっちがいいということで、定期借地権の方に地主の選択が傾いていって、普通借地権というのが影を潜めていくということになる傾向が実は出てくるようにこれは予測される。そうなりますと、この法律によって我が国の借地制度というものはこれまでの借地権の長期安定化、それの保障ということからまさに大転換をしていくという重大な問題になってくるのは明らかであります。 そこでお尋ねしますけれども、三つの態様の定期借地権を創設するというんですけれども、まず第一番目の五十年の定期借地権を考えてみましょう。この上に建物が建って、たくさんの貸借人の皆さんが借家人としていらっしゃる。定期借地権ということを知らずに居住をして、そして突然もうこの土地は五十年で半年先に終わりますから出ていってくださいと言われたら、一体借家人の保護はどうなるんです。その場合、この法律では一年の余裕だけしかないんでしょう。
○説明員(寺田逸郎君) これは、先ほども議論の対象になりました第三十五条の「借地上の建物の貸借人の保護」という制度がございまして、これが定期借地権であることを知らなかった、したがって存続期間の満了によって貸借人が土地を明け渡すべきであることを知らなかった、こういうケースは裁判所の裁量によって一年を超えない範囲内において明け渡しの期限が許与される。したがって、一年間は保護されるというそういう可能性があるというわけでございます。
○橋本敦君 だから、私が言うとおりじゃないですか。どんなにけしからぬ、おれは知らなかったと言っても一年たったら出ていかされるんですよ。そういう定期借地権だということを知らさないで、貸して期待感を持たせて、賃料を平気で地主が取っておったということになると、たまらぬのは借家人でしょう。そういった保護についてはたった一年の猶予しかないというのは、これは問題ですよ。 それだけではなくて、事業所用という問題を考えてみましょう。なるほど十年、二十年で返ってくるなら地主は貸そうというインセンティブが働くかもしれない。しかも、事業所用だったら収益性が高いから居住用よりも家賃を高く取れるという期待感があるかもしれない。だから、事業所用の定期借地権は、私は都市部ではうんとふえるという状況は、これは法務省や大臣が考えられるとおりあるでしょう。しかし、その結果町はどうなるか、今でもオフィスビルが建ち住民が立ち退いた後は駐車場がどんぜんできて人の住めない町になっている。だから、結局住民を追い出した後、事業所用、事業所用ということで短期定期借地権の問題で人の住まない町が一層深化をしていく。都市におけるドーナツ化現象が今まで言われていますけれども、そういった状況をつくり出すということさえ考えられる。 それから、もう一つの三十年しか期個を認めない建物譲渡特約つきの定期借地権を考えてみましょう。マイホームを持つという庶民の夢は大変です。やっと土地を借りて、そして家を建てた。ところが、土地を借りるのに三十年しか貸しません、建物譲渡特約しか貸しませんよと言われて、泣く泣くそれを借りたとしましょう。そうしたら二十年、二十五年一生懸命働いてローンを払ってほっとしたら三十年が来て、三十年たったら古い建物だということで安い価格で地主に買い取られて、自分は今度は借家人に転落をし、いつ明け渡しを要求されるかもわからぬという状況になる。こんなもの借家人にとって有利なこと一つもありませんよ。 だから私は、この定期借地権の創設というのはこれは全体としてまさに土地の高度利用なり住民の追い出しなり、あるいは貸した土地は必ず返す、この原則を貫徹するという地主の要求なりに沿うということではあっても、一般の国民にとってそうプラスになるようなものではないと考えていますが、大臣の所見はいかがですか。大臣の考えを聞きたい。
○政府委員(清水湛君) 定期借地権制度が地主側の要請だけでできたようなお話でございますが、これは前々から説明しておりますように、現在の借地法が非常に硬直、画一的な規制をしておりますために貸す方としても貸しにくい、また借りる方としても低額の権利金で短期間でいいから一定の土地を借りたい、こういう現実の需要があるわけでございますけれども、そういう需要にこたえられるような形で借地の提供がされていない、こういう事実に私ども着目しているわけでございまして、地主側の要請を一方的に受け入れるとか、そういうようなことでは全くござ、いませんので、そのことをまず御説明しておきたいと思います。 それから、そういうような定期借地権制度というものを前提にして、その上にいる借家人というものがあり得るわけでございますけれども、その借家人の保護につきましては、先ほど御指摘いたしましたような三十五条その他の規定におきまして保護されているいこういうことになるわけでございます。この点も、例えば現行法で借家期間が正当事由があるということで満了するということになりますと、現行法ではすぐ出ていかなきゃならないということになるわけでございますけれども、その点もきちんとした形で――この保護が十分であるかどうかということについてはそれは御意見はあるかもしれませんけれぜも、少なくとも一年間はそこに住んでおられるという形でこの貸借人を保護しておる、こういうことでございますので、その点は御理解をいただきたいと思う次第でございます。
○橋本敦君 それは、法務省は私が言うとおり認めるような答弁は法案を提出している建前からできぬでしょうけれども、実態として私が指摘した借家人の皆さんや都市の住環境を住民本意で整備するという観点から見て問題があるという指摘は、これは真剣に受けとめでもらわなきゃいかぬと思いますよ。 大臣も私と同じ大阪ですが、現に大阪の町というのは再開発その他の中で人の住めない過疎現象が進んでいること自体は、それ自体大きな問題になっているじゃありませんか。そういった問題について、この定期借地権の創設で防止できる、それを防ぐことができるという保障は私はこれは何もないと思いますが、大臣いかがですか。
○国務大臣(左藤恵君) 今までの借地・借家関係は、そのまま続けていくわけでありますけれども、新しく今度定期借地権の制度を創設するということは、結局今まで提供してくれなかった地主さんが新たにこういう条件ならば提供してもいいと、その要請にこたえるというような意味での法改正でありますから、そういう意味では幾らかでも私はそういうものを提供してくれる促進を図ることができる、それによって将来の国民生活の基盤整備に貢献できる、このように考えるわけでございます。
○橋本敦君 繰り返しになりますが、地主が貸しやすくしてやるんだというお話ですが、貸しやすくする結果は私が指摘したとおり、事業用定期借地権の短いものが広まる可能性はあるし、あるいはまた、五十年定期借地権というものが広まる可能性はあるけれども、住民あるいは借家人はそれによって保護され保障されるどころか、重大な利益侵害を受ける問題が、これが残りますよということを言っているんですよ。 次に、賃料問題に話を移します。 法務省は、「借地・借家法改正に関する問題点」という説明の中で、「最終的には、土地所有者が民事訴訟を提起して解決しなければならないことになるがこ、これは賃料問題、「些少な地代の増額のために」、あるいは家賃でもそうですが、「訴訟を提起することは、経済的に釣り合わない。このことが、借地制度を利用し難いものとしている原因の一つになっているので、この紛争を未然に防止し、又は簡易迂遠に解決することができる制度が整備されることにより、借地制度は、大いに利用し易いものになるとの意見が強い。」という説明をされておりますね。借家についてもそうでしょう。 つまり、賃料紛争は裁判によらずに早く迅速に解決するようにしてくれればもっと貸しますよという意見がある。こういう意見があるということを説明の中で言っているんですが、これはもちろん貸し主側の意見でしょう。
○政府委員(清水湛君) いろいろ意見照会をして、各界の意見の問題点に対応する分析でございまして、貸し主側だけだというふうに限定するのはいかがかというふうに思います。貸し主側だけの意見ではないというふうに考えております。
○橋本敦君 借り主側の意見ですか。
○政府委員(清水湛君) 貸し主側だけの意見であるというふうにばちょっと考えてはいないわけでございます。
○橋本敦君 借り主側の意見はこういう意見がありますか。
○説明員(寺田逸郎君) 今、御指摘がありました点は、問題点に対する説明の中で挙げているものでございまして、問題点というものはそもそも一定の方向を出しているわけでございませんで、こういう解決もあり得る、その場合はこういうことを背景にしたものだという説明をいたしているわけでございます。したがいまして、これが貸し主側の意見だ、学者の意見だというような背景があるわけではございません。客観的な御説明を申し上げているということでございます。
○橋本敦君 客観的にどこの意見かというんです。もう時間がないからこんな問答で時間をつぶすのはたまらぬですよ。ずばっと国民の前にはっきりと答えるような答弁しなさいよ。 そこで、いいですか、今回の民事調停法の改正とも絡んで、賃料紛争の迅速な解決ということが一つはここで論議をされているんです。迅速な解決自体、私も決して否定しませんよ。また、調停制度そのものも、私も職業柄の経験もありますが、当事者が話し合って解決することが基本であるならば結構ですよ。問題は、今日の賃料改定という問題、この状況の中でこれをどう見るかということなんですよ。言うまでもありませんが、最近は地代や家賃の増額がどんどん出で、この間も紹介しましたけれども、借地借家人組合の皆さんの調査で、一番困っているのは何ですかといったら、明け渡しを要求される問題です。その次はというと、賃料を増額される問題ですと答えている。現在の賃料はどうですかという質問に対して、みんな高いと思っている。それをさらに上げられる。こういうことが最近、近年増大をしている背景的事情の根幹に何があるかと言えば、共通のコンセンサスとして異常な地価の高騰という問題があるということは、これは認識として一致すると思うんですが、間違いないでしょう。
○政府委員(清水湛君) そういう地価の異常な高騰というのが一つの原因となっているというふうに認識いたしております。
○橋本敦君 この土地の異常な高騰の責任はだれかというのは国会でさんざん論議をしました。論議をして、結局政府のこれまでの土地政策、そこに重大な誤りがあり、政府の責任だということも明らかになってきた。そうなると、そういう政府の土地政策の失敗から異常な土地高騰を引き起こして、その責任は政府がとらないまま借地人、借家人が異常な賃料高騰ということで犠牲を押しつけられる、こんな不公平なことが社会的に許されるのか。そこで、賃料は適正賃料、相当賃料というんだけれども、どうあるべきかということは、今真剣に問われなきゃならないわけですよ。 そこで伺いますが、どの程度の賃料が適正であるかということについて明確な基準なりあるいは明確な算定ルールなりが今我が国に確立されておりますかおりませんか、簡単に結論だけ答えてください。
○政府委員(清水湛君) 地代・家賃は原則的には当事者の合意で決めるということになるわけでございますが、紛争になりますと、御存じのように、鑑定人に鑑定をしてもらうというようなことになるわけでございます。その際、鑑定の手法として、土地鑑定委員会等で定めております不動産鑑定評価基準というようなものがあるわけでございますが、この中にも賃料を定める手法として幾つかの種類のものが掲げられているわけでございまして、これだけが決め手である、増減額の査定の方法であるというふうなことには必ずしもなってない。結局、あらゆる事情を考慮して決められているというのが実情ではないかというふうに思う次第でございます。
○橋本敦君 おっしゃるとおり、基準はないんですよ。だから、最高裁も判例の中で諸般の事情を総合的に検討してということにならざるを得ないんでしょう。 ところが、諸外国では、学者の皆さんもお調べになっていますが、例えばイギリスの場合では家賃係員、家賃裁判所というのがあって、そこで公正な家賃があらかじめ決定される、それが登録されているというシステムがあるというんですね。アメリカでは多くの都市で、各自治体が家賃統制、これを行って不当な値上げが起こらないように上限を決めるなどの処置をとっておる。日本にはこれもない。フランスではもっと進んでいて、フランスでは賃貸借関係全国委員会というのが設けられて、ここで毎年適正賃料について協約を結ぶんですが、その際の協約の当事者として賃貸人側もありますが貸借人側、例えば日本で言えば全国借地借家人組合連合会というのがありますが、それが法的に当事者として適正賃料について地主側と交渉をして、協約をして、そしてそれが決められることによってそのことが基準になっていくというシステムになっておるわけです。また、ドイツの場合では、標準賃料表ということが賃貸人と貸借人の利益代表の協議の中からそれが決められていって、規範化されていくというシステムになっている。 日本では、貸借人側の皆さんの意見をこのようにして反映するシステムというのは制度的にありますかありませんか、ないでしょう。
○政府委員(清水湛君) 法務省の所管の内部にはそのようなものはないというふうに申し上げていいと思います。
○橋本敦君 法務省の所管にもないし、政府の所管にもないんですよ。だから、我が国の貸借人の皆さん、借地人及び借家人の皆さんの苦しみに対応して制度的にこれを適正なものにしていくというような社会保障的な意味も含めた全体的な適正賃料のシステムが確立されておらぬというのは重大な問題です。そういうものが確立されておれば、賃料紛争の迅速な解決を調停前置であれ何であれやることは容易でしょうし、また可能でしょう。ただ、そういうシステムがないときに今の現状で調停を中心に迅速にやっていこう、こうなりますと、局長がおっしゃったように、鑑定ということを使わざるを得ない場合が多々出てくる。ところが、その鑑定なるものも御存じのように、積算法というのがあったり、あるいはスライド法があったり、賃貸事例比較法があったり、収益分析法があったり、そこで差額配分方式というのが出てきたりして確立されておらぬのです。 しかも、不動産鑑定の結果は現在の地価の異常な高騰、この異常な部分をカットカットして適正な地代をもともとはじき出して、そこからというそういう手法がなかなかできなくて、今の高い地代を基本にして利回り率を考えて収益率を考えるという手法が入ってきて、結局高いものを押しつけられてくる。私は多くの裁判例や経験もありますけれども、一挙に二倍、三倍というのが鑑定の結果出てきて、それが裁判の結果になっている例もたくさん知っていますよ。最近の裁判の傾向としてこういう不動産鑑定を裁判所も多く利用するようになっていること、そこでは鑑定の結果にほぼ近い額の認定がなされるケースが多いこと、これは私の知っている範囲でそうですが、局長のお考えはどうですか。
○政府委員(清水湛君) 地代・家賃についての紛争が裁判所に持ち込まれますと、裁判官としては法律の専門家でありましてもそういう賃料の額とか不動産の価格ということについてはこれは必ずしも通じているわけではないということから、不動産鑑定士という資格が国家資格として認められているわけでございますから、そういう方々の鑑定に基づいて裁判が適正に行われておるというふうに私どもは考えているわけでございます。
○橋本敦君 裁判が適正に行われておるか行われていないか聞いていないんですよ。不動産鑑定の結果を援用して、ほぼそれに近い賃上げ額が裁判で認容されているケースが多いというのを判例その他検討なさってその傾向は把握しておられますかと聞いているんです。適正かどうか言っていない。そういう傾向に現になっているでしょうというんですよ。
○政府委員(清水湛君) 私の非常に短期間の経験でもございますけれども、やはり当事者が真剣に争うということが多いわけでございまして、鑑定も二回、三回行われるというようなこともございますし、そういういわば食い違った鑑定の中で裁判所が総合勘案して適正な地代を決めるということが多く行われているというふうに思うわけでございまして、裁判所が無批判に鑑定結果をそのまま採用しているということはないのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。
○橋本敦君 そういうことをおっしゃるなら、法律時報六十一巻七号で大阪市大の池田恒男氏が大阪地裁の裁判傾向を分析して、次のように述べておられる事実を指摘しておきましょう。こういうふうに言っておりますよ。「若干の賃料裁判の結果を分析すると」次のことが明らかになるとして、「不動産鑑定士による鑑定を吟味しようとする姿勢が感じられる判決も相変わらず見られるもののこ、次ですが、「そのような姿勢がほとんど感じられない判決もかなり目立つようになった。」、こう言われているんですよ。確かにそういうことが現にあるんですよ。だから私が言いたいのは、鑑定を援用するということが必ずしも今日の社会情勢やあるいは借家人、借地人の皆さんの現実の事情に具体的に即応した適正な賃料をはじき出す上で決定的にそれがいい材料になるという保障はないということですよ。 先ほど言ったように、フランスあるいはイギリスの例で見られるような社会的公正な基準の確立を借家人の意見を入れてつくり上げるというシステムはない。そして今日の異常な土地高騰はまだ続いている。そこで土地鑑定を多用するならば不当に高い賃料が出てくるというおそれがあるが、それを防ぐという具体的な算定方法、基準も確立されていない。そういう状況の中で、迅速に賃料紛争を解決するという問題は安易にこれは進めるわけにいかない重大な問題を含んでいるんだということを私は指摘しているわけであります。 最後に、大臣に伺いますけれども、まさに適正な賃料ということで借家人や借地人を保護する具体的なそういう法律的な手だてはこの法案にはないということはお認めになりますか。
○国務大臣(左藤恵君) そうしたことではなくて、この借地人、借家人の保護というものにつきましては、何回も申し上げておりますように、従来の法律の既存の借地・借家関係については一切適用しないということでもございますし、そうしたことで従来どおりの取り扱いを受けることでもありますから、今お話しの点の問題とは今回の改正は立場が違う、申し上げていることが違うのじゃないか、私はこのように考えるところでございます。
○橋本敦君 よくわかりませんが、終わります。
○紀平悌子君 法務省にお伺いいたします。 昭和六十三年の統計によりますと、民営借家については二千百五十一万人、公営住宅については六百四万人、公社公団の借家には二百三十五万人もの人が住んでいると言われます。人数にして三千万人に及ぶ多数の国民が借家人として今回の借地借家法のもし制定があれば影響を受けるという立場にあるわけです。 もちろん左藤法務大臣及び法務省側の御説明では、本改正によって借り主の権利が侵害される事例がふえるとは思われない、また本法等の強行規定に反した借地・借家契約上の特約は裁判上無効であるから心配ないとおっしゃっておられるわけですけれども、例えば暴力団の絡む嫌がらせ、地上げなど非合法的な行為または新法の成立を見越して親の代からの借地を契約更新によって明け渡しを求められた例、品川の大井の例ですけれども、あるいは借地・借家契約が口頭で行われていた地区で貸し主が新法を先取りした内容で新規契約の締結を求める傾向が強まったり、新旧両法を二本建てにする趣旨を没却させる方向での借地・借家関係の変化が既に生じております。今後もし成立いたしますと、旧法、新法の混合型、また古いやり方を新しく改めるという傾向が強くなり、借り方はやはり弱く、相談するにも金がかかる、こういうことになるのではないかと懸念いたします。 持ち家はもちろん、借地・借家関係における貸借人の地位の安定は憲法第十三条、二十五条の要請するところでもありますし、国の責任でもあります。肝要なことは、今国民がこの法の趣旨と内容をよく知るということにあると思います。法務省では現行三法による借地・借家契約の貸借人の保護を継続させるため、また新法成立の場合新法の趣旨を徹底させるため、先ほど来パンフレット、リーフレットを三種類でございますか、これを心がけていらっしゃるということは伺いましたけれども、どのような方策を今後具体的にとられますか。短くで結構ですので、具体策をお示しいただきたいと思います。
○政府委員(清水湛君) 現在におきましても、先生御指摘のように、パンフレット、リーフレットとかチラシ三種類のものをつくりまして、各市町村の窓口とか法務局の窓口におきましてかなりこれは関係方面に広く配布されているのではないかというふうに私ども考えております。 こういうような広報活動をすること自体が命までの法務省の法案においては珍しいことでございますけれども、今回この法律が国会を通過した暁にはさらにこれを徹底してやってまいりたい。いろんなマスメディアを有効に活用して周知徹底を図るとともに、私どもいろんな各方面における説明会等につきましても積極的に出席しまして、この周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
○紀平悌子君 法務大臣にお伺いいたします。 本法案審議中に、先ごろ異例の記者会見をなさいまして、そして、この法律の趣旨というものの徹底を図られたように思います。これは法務大臣がこの法律成立前に既に起こっている事態について非常に御心配があったということだと思います。これも具体的にお答えいただきたいのですけれども、NHKあるいは民放等で、記者会見でなく直接国民にお訴えになる、趣旨を御説明になるということの御実行がいただけますでしょうか。
○国務大臣(左藤恵君) そうした機会を何とかこちらの方からもお願いして、できればそういうことをぜひやらせていただきたい。それからさらに、各地におきまして私、何かそういった御趣旨を徹底することができるような、国民の皆さんに御理解いただけるような説明会といいますか、そういうようなものにも積極的に出て御理解をいただきたい、このように考えておるところでございます。
○紀平悌子君 ありがとうございます。 前回、審議の際に厚生省に対して御質問申し上げましたその御回答として、平成元年七月一日付で被生活保護世帯は全国に六十四万五千五百八十五世帯、そのうち倍家に住む世帯は四十四万四千三十五世帯で、全保護世帯の六八・八%にも及んでいます。また、母子家庭でも、昭和六十三年十一月一日付で全八十四万九千二百世帯、そのうち民間借家に住む者二十七万九百世帯、三一・九%を占めております。また、さらに昭和六十年の国勢調査では、六十五歳以上の親族のいる高齢者世帯、この九・三%に当たる八十五万七千世帯が民営借家に住んでいるという実態を同省からお答えをいただきました。 そうした家庭向けに特に借地借家法についての広報宣伝を充実させていくべきところだと思いますけれども、いかなる対策をお考えでいらっしゃいましょうか。そこに特に絞ってやっていただきたい。そして、先ほどたしか五百万という、耳を疑いましたけれども、予算五百万円でございますか、ゼロが足りなくはないですか。五百万の民事局の予算というふうに承ったんですが、私はこの法律に責任を持つためにはもっと何とか法務省の中でやりくりなさってこのことのために予算を出していただきたい。平成三年度予算、民事局五百万ということではとても無理じゃないかというふうに思います。 それから、表現と内容の問題ですけれども、近ごろは例えばお年寄りのいらっしゃる世帯では、特に私などももうそろそろ小さな字は読みにくい、読まないというふうになってきておりますので、ぜひ大きな字で、そしてこれは若い人にも読んでもらうために漫画でも入れて、そして内容は、一番懸念している部分、例えば今までの三法の契約者は新法の適用除外になるんだということやら、そのほか立ち退き料というものの提供だけで立ち退かされるというようなことはないというようなことを端的にお書きいただきたいということなんです。そして、時間がございませんので全部言ってしまいますけれども、お約束をきょういただきます。 そうしませんと、次になかなか法務委員会が間遠でございますので、どうなりましたかというふうに伺う機会が少ないので、いろんな法律について私、何となく懸念を残しながら新聞記事を見て心配しているわけです。この問題に関しては、積極的にどんなふうな広報をなさったかということを当委員会に御報告をなさるというぐらいの意気込みでお願いをしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(清水湛君) 生活保護世帯とか母子家庭等のいわゆる弱者とされている方々につきましては、これは正当事由条項の適用に当たりましても十分にその使用の必要性が認められるということで保護されるというふうに私ども考えているわけでございますが、そういうような方々を含めまして、今回の借地借家法で既存の老人世帯とかそういうような方々が不当な要求で家を出されるとか、あるいは借地から出されるというようなことはないんだということを、そういう点に重点を置いて積極的に私どもPRしてまいりたいと思います。 それから、民事局の予算、五百万円を本年度はいただいているわけでございますが、確かにそれだけでは足りないということは言えようかと思います。先ほども下稲葉先生の方から、政府広報予算なんかをもっと有効に使うことにも少し頭を使ったらどうかというような御指摘もございまして、私ども大変ありがたいお話だというふうに思っているわけでございますが、そういう面につきましても少し努力をしてみたいというふうに思います。 それから、具体的にどういうふうな広報をしたかということについて、私ども先ほど申し上げましたように、法務省としては異例のパンフレット、リーフレットをつくるというようなことを今までしたわけでございますが、これから弁護士会、司法書士会、建設省、関係各方面の協力を得つつ、あらゆる可能な方法での広報活動に努めてまいりたい。また、そういうことについてもその実情等をお話しする機会を設けさせていただきたい、こういうふうに考えております。
○紀平悌子君 最高裁にお伺いしたいと思います。 正当事由の中に、これは何回もお話が出てきていますので、もうお答えは済んだとおっしゃられそうでございますが、やはりこれにこだわっております。財産給付が法文化されました。あくまでも補完的な条件であるから判例の集積を参考とされたということですので、決して財産給付ということがひとり歩きしないというようなことは伺ってはいるのですけれども、私の認識では、裁判所の判例というものが一つの命綱になっているように私の中ではそう考えているわけです。 さて、そこでお伺いしますけれども、最近の判例の中で財産給付というものはどのような位置づけなんでしょうか。これは、それだけではひとり歩きしないということはわかりましたけれども。 また、財産給付と引きかえに明け渡しを命ずるような判例がもしあるとすればいつごろから出始めましたか、また、いつごろからふえたというふうなことがございますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 立ち退き料の支払いに関する最高裁の判例といたしましては、前の委員会でも委員に御説明いたしましたとおり、この資料にもございますが、昭和三十八年の三月一日の判決、あるいは昭和四十六年十一月二十五日の判決があるわけでございます。これらの判決は、いずれも立ち退き料の提供につきましては、それのみで正当事由の根拠となるものではなくて、他の諸般の事情と総合考慮され、相互に補完し合って正当事由の判断の基礎になると判示しておりまして、立ち退き料の支払いは他の条件と独立してそれのみで正当事由を根拠づけるものとはしておらないわけであります。その後も同じような趣旨の最高裁の判決がございます。 例えば一つ申し上げますと、本年でございますが、平成三年三月二十二日の最高裁の判決ではこのように言っております。「立退料等の全員は、解約申入時における賃貸人及び貸借人双方の事情を比較衡量した結果、建物の明渡しに伴う利害得失を調整するために支払われるものである」と言いまして、やはり立ち退き料の提供を正当事由を補完する事情の一つとして考慮すべきものというふうに言っておるわけでございます。 それから、もう一つのお尋ねでございます。この立ち退き料の支払いと引きかえに明け渡しを命じた判決はいつごろからされたか、こういう御質問でございます。 実は、一番初めの第一号がどれかということは正確には把握しておらないわけでございます。判例集等を見ますと、既に昭和二十年代の半ばごろに言い渡された判決におきまして、立ち退き料の支払いと引きかえに建物の明け渡しを命じたというものが判例集に載っておるわけでございます。 それから、いつごろからそのような裁判例が多くなったのかということでございます。これも実は全部そういう判決を調べたというわけでもございませんし、調べるすべもないわけでございますけれども、その後の各種の判例集に登載されたものを見ますと、いろいろそういうものがふえてきておるということでございます。これは複雑な利害関係を調整するためにこのような立ち退き料の支払いを正当事由の補完要素として考慮する、こういう方法が徐々に広く認識されるようになりまして、それに伴いまして裁判例も徐々にふえてきたというふうに承知をしておるわけでございます。
○紀平悌子君 重ね重ねの御答弁でありがとうございます。 実はこのように伺いますのは、今までの判例で財産給付そのものがそれだけで正当事由にならないということですけれども、いわゆる二本立てあるいは二階建てと言われます法律が実現いたしましたとき、この法律自体未来永劫のものではない。先ほど下稲葉委員がお触れになり、そのお答えを伺いましたけれども、経済も社会も人の動きというのも変わってまいります。ですから、ここ十年というとちょっと早過ぎるかもしれませんけれども、七十年あるいは百年ぐらいの時間帯で見て、あるいはもう少し縮めてその三分の一ぐらいの時間帯で見て、判例もいわゆる裁判所の判決というものも他の要素によって動いてくるかもしれない。ですから、今のところ、きょうここの第百二十一国会での審議において、判例がこうだからということで私も一時ちょっと裁判所を信じましょうというような気持ちが強かったんですけれども、これは未来永劫というものでもないなという懸念から、大変重ね重ねの失礼な質問かもしれませんでしたけれども、お伺いをいたしました。 お願いをしたいことは、今後ともやはり公平かつ弱い者の保護というふうな法の基本精神にのっとっての方向で裁判所も頑張っていただきたいというふうにお願いをしたい。これはお返事は結構でございます。 次に、法務省にお伺いいたします。 財産的給付の内容は金銭以外にどのようなものが想定されるのでしょうか。また、借地価格が高額になっている今でございますので、この財産的給付はどんな基準でどのように算出されるのが適当と考えておられますか。正当事由の中で、もし貸し方と借り方の必要性が拮抗してきたときは、立ち退き料は借地権の何%ぐらいと評価されるのが妥当なんでしょうか。お答えになれる範囲で結構でございます。また、この質問もやはり借り方は弱いというふうな考えに立ってお伺いするわけですので、お答えの範囲で承ります。
○政府委員(永井紀昭君) まず、最初の「財産上の給付をする旨の申出の中には、金銭のほかに代替土地でありますとか、代替家屋の提供の申し出ということが考えられております。また、判例の中にもそういうものが一部ございます。 それから、いわゆる立ち退き料というものの基準といいますか、これは極めて難しゅうございます。これはやはり個別個別の事情で、どういう利害関係があって、どういう経緯があってといういろんな問題が入ってきているわけでございますから、一つ一つの事件において個性がございまして、この算定基準というのは非常に難しゅうございます。もちろん地域的な状況等もあります。 それで、例えば判例等でありますのでは、前にも御紹介したことがあるかもしれませんが、昭和六十一年の東京高裁の判例などにおきましては、実はその実質的な争いは、明け渡しということについての争いはもうない。出ていくということを了承していまして、実は借地権割合の争いが要するに両者にありまして、借りている側はこれは八割五分だ生言い、貸している側は、いや八割だと言う。ところが、地価が非常に高騰しているものですから、坪当たりが非常に高額なものですから、その八割五分と八割でも相当な、億単位、何千万というそういう差が出てきたというような、こういう事例がございます。こういう場合ですと、正当事由の判断といいますよりは、むしろ本当の経済的な利害調整といいますか、経済的に双方が借地権割合をどう見てどういうふうに清算するかというような、そういう観点が強いという特異なケースもございます。ただ、一般的には個別個別で非常に金額等も違ってきておりまして、いわゆる算定基準というものの統一的なものはなかなか申しがたいというのが現状でございます。
○紀平悌子君 続けて法務省にお伺いいたします。 仮定の問題でこれも恐縮ですけれども、一つの予測として、正当事由に係る補完事由としての財産給付が法文上位置づけられたことで、やがて今後の裁判において仮に運用上補完事由を越えて独立の正当事由化していくことも考えられる。これは仮定の問題で大変恐縮ですけれども、これは少額の金銭の提供のみで貸借人に立ち退きを迫ることも可能にするわけです。むしろ法改正によって弱い立場の貸借人がさらに弱い状況に置かれる。そういう方向性は予測可能ではないでしょうか。法務省の見解をお伺いいたします。 そして、もしそうだとして、財産的給付の内容として、法文上、代替地、代替借家の提供、紹介、あっせんの実現というような貸借人保護の条項を設けるということも考えられなかったのかなと。法制審議会ではこの点は議論にもならなかったのか、あるいは議論があったとすれば教えていただきたいと思います。
○政府委員(清水湛君) この正当事由に関する規定は、たびたびお答え申し上げておりますように、当事者双方が土地なり建物の使用を必要とする事情というものをまず考慮して、それで甲乙つけがたいという場合のいわば補完的な要素としてこの金銭的給付の申し出をすればその申し出を考慮するということでございまして、そういう財産的給付でございますか、財産的給付の申し出をする義務があるわけではない、任意にそういう申し出があればそれも考慮するということでございます。したがいまして、財産上の給付だけがひとり歩きして独立の正当事由として認められるということにはならないというふうに条文文理上もそのように私どもは考えているわけでございます。 それで、財産上の給付は、先ほどから申し上げておりますように、金銭だけではございませんで、代替地とか代替家屋というようなものが当然考えられるわけでございまして、法文の上では金銭だけに限定いたしませんで、財産上の給付という形でそのようなものも含ましめるという趣旨でこれを表現しているところでございます。
○紀平悌子君 法制審の議論は。
○説明員(寺田逸郎君) 財産上の給付につきまして法制審でどういう議論があったかでございますが、詳細はこの場で申し述べるのにやや複雑過ぎるのでございますけれども、現行法は御承知のように正当事由しか書いてございませんで、実は裁判所の中にもこの立ち退き料、俗に言う立ち退き料、この財産上の給付ですべて正当事由を満たせるというような考え方の裁判官も実はおられるのではないかというような御議論が出まして、現にそのように例えるんではないかと思われるような判決もないわけではないわけでございます。むしろ現行法よりも現在のような表現の方が財産上の給付というものが補完的要素にすぎないということを明らかにできる、将来にわたってもそういう意味で裁判所を拘束できるという意味で、法制審ではむしろ現在のような規定の方がいいということがまず第一点でございます。 続きまして、その名前をどうつけるかでございますが、これはまたなかなか難しい問題でございますけれども、代替地、代替家屋というようなものが俗に補完的要素になるということは、これはまた先ほどもございましたけれども、昭和二十年代から問題になっているわけでございます。ただ、建物を家に限らず、一般的に財産的価値があるものは、別にこれは金銭に限らず何でもいいんではないかというようなのがむしろ御議論の主流でございまして、そういう意味では代替地、代替家屋ということを法文上で表現するのはわかりやすいわけでございますけれども、わかりやすさと正確さというのはこれまた相反するところがございまして、代替地と書きますと何が代替なのか、代替ではないではないかという争いをまた別にもたらすというような可能性がございまして、そういうものを避けるということで、財産上の給付ということでまとめさせていただいたわけでございます。
○紀平悌子君 もう時間が参りましたので、最後にお願いを申し上げます。 今回、この法案が通った時点で、借地・借家人の弱い立場、特に経済的あるいは社会的に弱い立場にある方々を十分に保護する方向での法の運用をぜひお願いしたいと思います。私自身この審議に加わって責任の一端、政策決定の一端にあったわけですから、私自身の決意といたしましても、この法の理念というものが真に御説明にあるようなことであれば、これはその理念に沿った実現に努力もしたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。 終わります。 ―――――――――――――
○委員長(鶴岡洋君) 委員の異動について御報告いたします。 本日、斎藤十郎君及び下条進一郎君が委員を辞任され、その補欠として平野清君及び石原健太郎君が選任されました。 ―――――――――――――
○委員長(鶴岡洋君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより両案に対する討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○橋本敦君 私は、議題となっております借地借家法案について、反対の立場で討論をいたします。 言うまでもなく、これは国民の居住権あるいは借地権、借家権、重大な暮らしの根幹の権利にかかわる重要な法案でありまして、参議院に法案が来てからわずかの間にも四十万を超える請願の署名が寄せられていることからも国民の関心の高さがわかります。 この法案の審議に当たって公聴会を行い、連合審査を行ったことは、これはこれとして当然よいことでありますけれども、さらにこの問題について審議を尽くすべきであるという私の意見にもかかわらず、それが入れられずに質疑を終局することになった点について、まず遺憾の意を表明したいと思うわけであります。 さて、この法案の背景的事情については、私が質問の中でも指摘をしてまいりましたが、一つには中曽根内閣以来の民活、これの規制緩和の問題あるいは都市再開発を含む土地の有効利用の問題といった財界の要望が広く進められる中で、行革審の答申にも土地の有効利用の一環として現行法の見直しか提起をされるに至りました。そしてまた、日米経済協議の中で日本政府が借地・借家法の改正を対米公約としたということも重大な問題を含んでいるわけであります。 こうした背景事情から考えましても、本法案の基本的なねらいが実は土地の高度利用、これを中心として都市再開発を進めるなど、財界、大企業、建設業界の利益の期待にこたえる、そういった面を色濃く持っていることは否定し得ないところだと思うわけであります。 具体的に、簡単に反対理由の要点を述べます。 まず第一は、この法案が借地権の存続期間を短くすると同時に、何よりも定期借地権を創設することによってこれまでの法の根幹をなしておりました借地権の長期かつ安定的な存続性という法の基本的性格を大きく変えるという問題であります。このことによって、借地借家法は社会法的性格から経済模的性格へ質的な変化をしたと指摘する学者もあるくらいでありまして、そうした中で借家人、借地人、これらの皆さんの利益と権利がまさに経済変動の波の中で軽く不利益に扱われていくという、そういった重大な危険にさらされることになっていくことを否定し得ないのであります。 第二の反対理由は、正当事由の拡大の問題であります。 法務省は、これは従前の判例の集約であって実質的に変わらないと、こういう説明をしておりますけれども、しかしながら、これが正当事由の一要素として法文化されることによって、これまでの判例を通じて財産給付と引きかえに明け渡しを認容する判決が増大する傾向などとも相まって、実質的には正当事由の拡大という、こういう状況をもたらしかねない危険は十分にあるわけであります。 次の反対理由は、地代・家賃の値上げの問題であります。 これはきょうも指摘したとおり、社会的に借地・借家人の団体的な意見が組み入れられる、そのことによって適正賃料が担保されるという、そういった社会的システムや法的仕組みがない、しかも現在の土地高騰、これがおさまらないところかバブル経済がこれからも収束するそういった状況にもないもとで、不当な賃料値上げの犠牲が借地人、借家人に紛争の早期迂遠な解決の名のもとに押しつけられるという危険を私は否定できないのであります。 こうしたような本法案の内容については、今後とも重大な問題でありますので、さしあたり最後に申し上げたいのは、従前の契約には適用しないというその問題であります。そのこと自体は大事なことでありますから貫徹してもらいたい。だがしかし、そのことが本当に貫徹される保障があるかということになりますと、現行法は消滅してしまうわけでありますから、その点についての不安はこの法案によってはどうしてもぬぐい去ることができない。そのために悪質な家主や地主が、新法のもとでは明け渡しか容易になるとか、立ち退き料で追い出すことができるという宣伝をしている。そういった余地を残しているわけでありまして、こうした不安を残したまま本法案に賛成するわけにはいかないわけであります。 以上で反対の討論を終わります。
○委員長(鶴岡洋君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより採決に入ります。 まず、借地借家法案の採決を行います。 本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(鶴岡洋君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 次に、民事調停法の一部を改正する法律案の採決を行います。 本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(鶴岡洋君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました 北村哲男君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。北村君。
○北村哲男君 私は、ただいま可決されました借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議の各会派及び各派に属しない議員紀平悌子君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 借地借家法案及び民事調停法の一部を 改正する法律案に対する附帯決議(案) 現下の我が国の土地・住宅情勢及び借地・借 家の実藤等にかんがみ、政府は、次の諸点につ いて格段の努力をすべきである。 一 借地・借家制度が国民の極めて多くの世帯 と関連を持ち、かつ、人の生活基盤たる住宅 そのものにかかわる重要な制度であることに かんがみ、本法の趣旨の周知徹底を図るこ と。特に、既存の借地・借家に住む国民の不 安を払拭するためにも、既存の借地・借家関 係には更新等の規定は適用されない旨及び特 約で新法を適用させることは無効である旨 を、マスコミその他あらゆる方法を通じて周 知徹底させること。 二 我が国の住宅需給の現状にかんがみ、総合 的かつ理念ある土地・住宅政策を推進すると ともに、特に低所得者・老人等の弱者の安定 した居住及び生活を保護する低家賃公共住宅 の充実を図るよう努めること。 三 定期借地権及月期限付借家の制度について は、同制度が土地及び建物の供給に資するも のであるという趣旨を十分生かすことのでき るよう、その運用に必要な配慮をするととも に、その旨の周知徹底を図ること。 四 建物滅失の場合の明認方法は補助的手段で あることにかんがみ、借地権の登記を含めた 借地権の公示制度の検討に努めること。 五 更新拒絶の正当事由につき掛酌するに当 たっては、貸主及び借主の使用の必要性が主 たる要素で他の要素は補完的に考慮されるも のである点において従来と異ならないもので あり、特に、財産上の給付の申し出が明文化 されたことによりその提供が義務化されたわ けではなく、他方その提供のみによって正当 事由が具備されるものではないことを周知徹 広させるよう努めること。 六 地代・家賃の増減額手続きに際しては、民 事調停制度の理念に照らし、適正かつ迅速な 解決が図られるよう、その趣旨を徹底すると ともに、必要な体制を整備するよう努めるこ と。 右決議する。 以上でございます。 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(鶴岡洋君) ただいま北村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(鶴岡洋君) 多数と認めます。よって、北村君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、左藤法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。左藤法務大臣。
○国務大臣(左藤恵君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して善処してまいりたいと思います。
○委員長(鶴岡洋君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時二分散会 ―――――・―――――