文教委員会 第5号
- 発言数
- 171 件
- 登壇者
- 21 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1991/04/09
会議録
○委員長(下稲葉耕吉君) ただいまから文教委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨八日、森暢子君が委員を辞任され、その補欠として浜本万三君が選任されました。 ─────────────
○委員長(下稲葉耕吉君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。 本日は、本案審査のため、参考人として、筑波大学教授齊藤博君、社団法人日本レコード協会会長高山登君の二名の方々に御出席をいただております。 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。 皆様には、御多忙中のところ御出席いただきましてまことにありがとうございます。 当委員会では、著作権法の一部を改正する法律案の審議を進めているところでございますが、本日は、本案に対し皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。 つきましては、議事の進め方でございますが、まずお手元の名簿の順序でお一人十五分程度御意見をお述べいただき、お二人の参考人から御意見を伺った後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。 それでは、まず齊藤参考人よりお願いいたします。齊藤参考人。
○参考人(齊藤博君) ただいま御紹介いただきました筑波大学の齊藤でございます。日ごろ考えておりますことを本日お話しさせていただきます。 まず、著作権法の特質でございます。 第一点といたしまして、著作権法は私法性を有しております。著作権法は私法でございます。著作物なり実演等に関しましては、さまざまな側面から眺めることができます。例えば、出版等の統制という面から眺めることもなされてきたところでございますし、さらには著作者等の老後や病気に際しましての救済という面から眺めることもなされるかもしれません。しかし、今の時代の著作権法を見ます限り、そこには行政取締法規としての性格もございませんし、著作権法に社会保障法としての機能を期待することも行き過ぎのように思われます。 著作権法は、著作権や著作隣接権、著作者人格権という私権の保護に力点を置きました私法なのでございます。民法を一般法といたしますと、著作権法はその特別法と申すことができます。 第二点としまして、著作権法は普遍的な性格を有しています。著作物の作成や利用は、人類に普遍的な事柄のように思われます。意見を自由に表明でき、あるいはさまざまな作品に接することができるという基本的な権利が保障され、かつ個人の財産権等が保障されています限り、著作物等を保護する仕方にしましても、著作物等の利用を確保する仕方にいたしましても、各国にさほどの違いは生じ得ないところでございます。ここに、諸 国の著作権法は画一化の道をたどるのでございます。そして、この画一化の動きは、著作物等の利用技術の開発、普及を介しましてさらに促進されます。レコードや映画、ラジオ、テレビ、各種の複製機器、コンピューターや宇宙衛星など著作物等の利用技術は、一国で開発されますとさほどの間を置きませんうちに他の国々にもたらされまして、著作物の利用形態にも変化をもたらすのでございます。 したがいまして、技術先進国におきましては、その種の新たな技術に対応しました新たな法制度の模索がなされまして、比較的類似の法的対応がなされてきたのでございます。ほとんど時を同じゅうしまして、諸国に著作権法改正の機運が起こるということになるのでございます。 第二としまして、新しい技術への対応につきましてお話をさせていただきます。 印刷術から始まりまして、コンピューターや光ケーブル、宇宙衛星など、著作権法はその時代の人類の到達し得る技術に常にかかわっているのでございます。その点におきまして、著作権法は常に新しい課題に直面する宿命を担った法律でございます。技術開発のテンポが速いだけに、対応がおくれますと著作権制度の一部が空洞化することになりかねないのでございます。その一方、著作権法が先回りしまして、将来開発されるであろう技術を織り込みまして規定を用意いたしますと、今度は技術が予測した方向に開発されるとは限りませんで、せっかく規定を用意いたしましても空振りに終わってしまうこともございましょう。どうやら新たな技術の開発されました都度小刻みに対応せざるを得ないのではないかと存じますし、現にそのようになされてきました。近年、技術開発のテンポが一段と速くなりましたのに伴いまして、そのような小刻みの対応も顕著でございます。先生方の御尽力によりまして貸与権の創設、コンピュータープログラムの保護の明確化、有線送信権の創設などが達成されてきたところでございます。 著作物等の利用に関する技術は、今なお速いテンポで動いております。著作物等を蓄積する技術にいたしましても、ディジタル化の進みます中で、今や音にしましても画像にしましても、それに文字にいたしましても、従来とは比較にならないほど手軽に速く、しかも大量に蓄積できる時代に入りました。もちろんただいまのところはアナログ、ディジタル混在の時代でございますが、ディジタル主流の時代を迎えつつあることもまた確かでございます。著作物等を伝送する技術にいたしましても、ディジタル化の進みます中でさまざまな媒体を目の当たりにするようになってきました。光ケーブルはもちろん、宇宙衛星に至るまで日常の生活の中に溶け込んできつつございます。 ここで注目しなければなりませんことは、著作物等を利用する技術が急速な勢いで拡散しつつあるということでございます。例えばコンピューターの端末機器を含めまして著作物等を複製し得る機器にいたしましても、このところ小型化、低廉化の道をたどり、今や素人が容易に使用できる状況になってきました。性能のすぐれた技術の拡散は徐々に玄人と素人の境目をあいまいにいたしまして、素人でありましても市販のものに匹敵する複製物を製作する時代に入ってきたのでございます。玄人と素人の混在する時代、産業と文化の混在するファジーの時代に入りつつあるように存じます。このような状況の中におきまして、著作権制度も改めてそのあり方が問われようとしているように思われます。 ここで、ただいま吟味しています具体的な課題に触れますと、著作権法三十条に関しましての私的録音・録画問題、コンピューター創作物の問題がございます。いずれもただいま著作権審議会の小委員会におきまして吟味を続けているところでございますが、とりわけコンピューター創作物に関しましては、我が国が世界に先駆けまして検討を開始した課題でございます。 コンピューターによって創作されましたものを一体どう評価しどのように保護するのか、こういった全く新しい課題を考え始めたわけでございますが、さながらボートピープルのように、どこの港にたどり着くのかわからない状況でございました。その後、吟味を続けますうちにわかりましたことは、コンピューターシステムを道具として、ツールでございますね、道具として用いグラフィックなり作曲をすることにつきましては、さほど難しい問題はないのでございますが、仮に人の介在がなくコンピューターシステムを通して全く自動的に作品がつくられるということになりますと、果たしてその作品を著作物と言えるのか、著作者は一体だれなのか、こういったこれまで著作権法の直面しませんでした課題に行き着くことになるのでございます。 幸い、完全自動化は今のところ、部分的な過程では論じ得ましても、一つの作品全体を作成する域にまでは達していませんからよいのでございますが、将来翻訳などにおきまして完全自動化が達成される蓋然性が高いということになりますと、技術開発の方向を慎重に予測しながら何らかの結論を導き出さなければならない段階に入っているように思われるのでございます。 第三としまして、法文化の違いと相互の理解につきましてお話しさせていただきます。 著作権法の普遍的な性格、したがいまして著作権等の保護に関する諸国の法制もおのずから画一的になることにつきましてはさきにお話ししたところでございますが、一点だけ付言させていただきます。それは、国際著作権界、それも先進諸国の間に見られます法文化の違いでございます。同じく著作権法制を考えるにいたしましても、アプローチの仕方に違いがあるのでございます。一つにはヨーロッパ大陸を中心としました諸国による大陸法的アプローチ、もう一つには英米法系諸国によるコモンロー・アプローチでございます。しかも、両者は著作者とか著作物というような著作権法制の基本的な概念につきましてはっきりと対立しているのでございます。 著作者について申しますと、大陸法的アプローチは、実際に精神的な創作作業を行います自然人に注目しまして、この自然人に著作者を限ろうとするのでございます。これに対しまして、プロダクションでございますね、制作を重視するコモンロー・アプローチによりますと、団体なり企業という製作者をも著作者に含めようとすることになります。著作物につきましても同様でございます。自然人の精神的な創作行為を前提とする大陸法の考えに立ちますと、著作物の範疇にレコードなどの製品を加えることはいたしませんで、それらは著作隣接権の客体として保護しようとするのでございます。 著作権の語を英語で訳します際にも、両者に違いがはっきりとあらわれます。著作者に焦点を合わせます大陸法系諸国は、著作権の語を英訳しますときにオーサース・ライトの語を用います。その一方、コモンロー諸国におきましてはコピーに焦点を合わせます。したがいまして、その訳語といいましょうか用語としましてはコピーライトを用いるのでございます。 このような違いはございましても、長きにわたって培われてきましたそれぞれの法文化でございますので、これを一元化することは妥当ではございません。それぞれの国が相互にその立場を理解し合い、歩み寄る努力が必要のように思えるのでございます。WIPO、世界知的所有権機関におきまして行われております著作権法のモデル規定を作成する作業にいたしましても、またEC諸国における調和の動きにいたしましても、そのような努力のあらわれと申すことができます。今国会に提案されています、外国のレコードにつきまして実演家及びレコード製作者に貸与権を付与すること、著作隣接権を五十年に延長すること、それに外国で製造されました外国原盤の商業用レコードの無断複製等の行為に対する罰則にいたしましても、そのような動きの中に位置づけることができるように思うのでございます。 御静聴ありがとうございました。
○委員長(下稲葉耕吉君) 齊藤参考人、ありがとうございました。 次に、高山参考人にお願い申し上げます。高山参考人。
○参考人(高山登君) 御紹介をいただきました日本レコード協会の高山です。 日ごろからレコード製作者の保護につきましては一方ならぬ御高配を賜っておりまして、本日は私どもに意見表明の機会を与えていただきましたことをあわせ厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。 今回の著作権法の一部改正は、すべて私どもレコード製作者にとり関係深い問題でございます。当委員会での速やかな御審議をいただき、今国会の成立を心からお願いする次第でございます。 今回の法改正について、レコード協会の意見を申し上げたいと思います。いずれもレコードの保護の強化にかかわるものであり、大変ありがたい改正でございます。 まず、今回洋盤に貸与権が与えられることになります。レコード製作者は、昭和五十八年の暫定法及び昭和五十九年の改正法により貸与権が与えられました。しかし、この貸与権は邦盤に限られておりました。貸しレコード業が出現しまして十年、貸与権が与えられて六年になりますが、これまで洋盤に貸与権が与えられなかったことから、外国レコード製作者は不公平な取り扱いであるとして強い不満を表明してまいりました。外国レコード製作者の貸与権保護は長年の宿願でもございます。 今回、外国レコード製作者にも貸与権が与えられることになり、洋盤の依存度の高い我が国のレコード産業にとり極めて有益な改正となると思います。なお、貸与権の行使に当たりましては、これまでも日本レコードレンタル商業組合との間に円滑な秩序形成に心がけてまいりました。一方、貸しレコード業者も、レコード製作者にとって貸与権の必要性は認めているものであります。今後とも円滑な運用を図りたいと考えております。何とぞ、外国レコード製作者に貸与権を与えられ、不平等な現状の改善を図っていただきたいとお願いする次第でございます。 次に、著作隣接権の保護期間の延長でございます。 現在、レコードの保護期間は三十年であります。近年におきます先進諸国の大勢といたしましても、また我が国の国際的地位の向上の点から見ても、たとえ条約上の義務が二十年であっても、それは最低限の期間であり、国際的レベルである五十年へ延長していただきたいと考えております。保護期間が五十年以上の国は、フランス、イギリス、オーストリア、スウェーデン、ドイツ、ドイツは演奏家のみでございますが、またアメリカ、アメリカはしコード製作者のみでございますが、そういう国が挙げられます。 日本の著作権保護は、開発途上国の東南アジア諸国にとりましても立法時のモデル的役割を果たすものでございまして、我が国が率先して範を示す必要があると思います。 録音録画技術、機器機械の発達普及によって、音質の劣化のない複製が容易となっております。レコードの物理的寿命もCDの出現により半永久的になっており、収録されているヒット曲の寿命も長いものが多くあります。音楽創造者の権利が長く保護されるということは、音楽文化保存の役目を担うレコード製作者の保護の強化であり、音楽文化の保護につながるものと考えております。 次に、法律第百二十一条二項の改正の件でございます。 一九七八年、レコード保護条約加入前の外国レコードについて、国内リプレス盤からの無断複製に対しては罰則により保護されてまいっております。しかしながら、外国リプレス盤からの複製は、リプレス盤すなわち輸入盤と考えていただきたいと思いますが、それからの複製は法の盲点として罰則が適用されておりません。このため、法の盲点を悪用した業者が続出し、一九八九年では六百万枚、一九九〇年には一千五十万枚のレコードが製造販売され、これは我が国洋盤レコードの一九%にも達しております。外国レコード製作者に何らの使用料も支払われておらず、外国レコード製作者からは不公平な差別であり、我が国への不満が寄せられております。 外国リプレス盤からの複製にも罰則が適用される今回の改正を、ぜひお願い申し上げたいと存じます。あわせて、法施行と同時にこれらの不法複製レコードが市場から排除されるよう、所持罪の適用もお願いするものでございます。 次に、レコード産業の構造としコード制作の実態について御説明を申し上げたいと思います。 業界規模は、貸しレコード業が出現しました一九八〇年に二千九百二十八億円強の生産額を記録した後は一九八四年まで次第に下降線をたどっておりまして、同年には一九八〇年との対比で九三・六%の二千七百四十一億円まで生産は減少いたしました。その後、画期的な技術革新と言われるCDの出現によりまして、金額では六年かかり一九八六年に、また枚数では十一年かかって一九九〇年に、ようやく一九八〇年の実績を超えることができました。 オーディオ商品をパッケージ別に見ますと、昨年一九九〇年の総生産額の金額の中、レコードは、従来のアナログレコードでございますが、これは〇・五%、ミュージックテープが一六%、CDは八三・五%であり、現在当協会会員ではただいま申し上げました従来のレコードは製造しておりません。一部のプレス専門会社でわずかな製造が行われているにすぎません。CD化はディジタル時代の幕あけであり、音声のみのCDだけでなく技術の進展とともにCD―G、CD―V、レーザーディスクなどのAVソフトの開発が盛んになりました。最近ではVSD、ビデオ・シングル・ディスクでございますが、またCD―I、CD―ROMなどのAV、またコンピューターの複合型のソフトの市場への導入も検討されております。このように、ソフトメディアの多様化を迎えようとしておるのが現在の業界でございます。 次に、外資の参入状況について述べますと、世界第二位の規模を有する日本レコード市場に対する外国のレコード産業の参入への欲求は極めて強く、外国のレコード会社と日本のレコード会社の資本提携が盛んになり、協会加盟社二十七社中、一〇〇%の外資の会社を含め十社が資本提携もしくは外資系の会社となっております。 この傾向は小売の段階でも進んでおりまして、一九八〇年代前半にアメリカのタワーレコードが日本の市場に登場したのを初めとしまして、昨年にはイギリスのヴァージン・メガストア、またHMVが参入いたしまして、いずれも今までの日本のレコード店にはない大規模な店舗面積、在庫種類を誇り、日本市場への定着化を図っております。 次に、関連業界に与える影響について申し上げたいと思います。 レコード産業を取り巻きます業界は多岐にわたりまして、放送、有線放送、貸しレコード、カラオケ、BGMなど直接レコードを使う産業からレコードソフトを再生するためのハードの産業に至るまで、市場規模にいたしまして三兆五千億から四兆円の規模を有しております。 この中で、レコード産業を見ますと四千億円程度の規模にすぎませんが、当業界は音楽関連産業の中心に位置しております。レコード制作者のレコードのヒットがあるために、先ほど申し上げた放送であるとか貸しレコード等関連産業が産業として成り立っているのであります。人々に潤いを与え、同時に関連産業に大きく貢献していると考えております。 アーティストの発掘であるとか育成、またヒットレコードづくりについて申し上げたいと思います。 ただいま申し上げましたように、関連産業を支えていくためにレコード会社は有力な新人を発掘し、育成し、いかにヒット曲を生み出していくかを追求し続けております。 さらに詳しく御説明しますと、ヒットするまで にはそのアーティストの衣食住の面倒を見、トレーニングに努め、赤字覚悟でライブハウスでの伴奏の演奏家を手配し、演奏活動の場を与え、ヒットを生み出す努力を傾注しておるわけでございます。プロダクションとの契約では、育成費に五千万円を投資するということも珍しくありません。ただし、新譜曲数は年間CDで一万四千曲に上りますが、これらがすべてヒットするというものではございません。 レコード会社は、このようにしてヒット曲を多数創作することで利益を生み出し、再生産活動の糧とし、また同時に、利益として余り期待はできませんけれども、純邦楽であるとか伝統芸能であるとかクラシックであるとか、そういった芸術的価値のあるレコードの制作に充て、音楽文化の維持向上に努めておるわけでございます。 次に、レコードと著作権制度について申し上げたいと存じます。 レコード制作者にとりまして複製権は根本の権利でございます。レコード文化の創造活動を続けていくためには著作権制度による保護は不可欠のものであり、制度は常に新しい事態に対応し改正されていかねばならないと思います。レコード制作者の複製権は、旧著作権法時代から絶対的な権利として現行法に引き継がれているのであります。レコード制作に関する人々、作詞、作曲の著作者、また演奏者、歌唱者、そしてレコード制作者などの努力の結晶であるレコードの無断利用を放置するということは、これらの人々の創造活動のサイクルを乱すものであり、侵害を排除しなければいけないと考えます。海賊盤や私的録音の増大はレコードの販売を阻害し、レコード製作者の権益に重大な影響を及ぼすものであり、放置できないと思います。 レコード製作者は、著作者に著作権使用料を、演奏家に演奏料を一枚一枚のレコードの売り上げから支払っております。製造されたレコードが放送に、カラオケに、またレンタルに利用されますと、さらにそれらの利用についても著作者や実演家に使用料が支払われます。創作に関する人々の創作活動の根源にレコードが存在すると自負いたしております。そして、創作に関する人々の創作活動の基幹となるのがレコード製作者の複製権であると思います。その複製権が保護され、保護が延長されますことは、レコード製作者のみならず創作に関係する人々にとって重要なことでございます。 複製権に関連して、レコード製作者が当面している問題として私的録音・録画問題がございます。いわゆる家庭内録音・録画の問題であります。この問題の解決策として、欧州諸国で制度化されております報酬請求権制度の導入について、現在著作権審議会において審議が進められております。私どもが問題を提起して十年に及ぼうとしておりますので、本問題について早期解決をお図りいただきたく、この機会に御理解、御協力をお願いする次第でございます。 次に、最近衛星放送、通信事業の進展、ディジタル技術の進歩によりレコードを利用する新しい媒体が出現してまいりました。現在、私どもレコード製作者のレコードの利用に対する権利、いわゆる二次使用料を受ける権利は放送と有線放送に限られています。レコードは多方面で営利目的に利用されています。本来、これらの利用に対しレコード製作者の権利は広く及ぶべきと考えるのであります。このレコード製作者の二次使用料を受ける権利は報酬請求権であるため、権利軽視の風潮を生じやすく、今後の改正が望まれるのであります。日進月歩の科学技術の発達、普及に対応し、適切な著作権制度を確立していただきたいと考えております。 今回の法改正は、我が国が世界第二のレコード産業国にふさわしいものとして国際的に高く評価されるとともに、我が国の文化に対する姿勢について国際的な信頼と評価を高めるものと確信いたしております。去る三月十九日、シドニーにおいて開催されました私どもの国際団体でありますIFPIの理事会に私も出席してまいりましたが、そこで今回の法改正の経過状況を報告しましたところ、称賛と拍手をもって迎えられました。 今後とも、レコード製作者への御理解と御支援をお願いし、お礼の言葉といたします。 ありがとうございました。
○委員長(下稲葉耕吉君) 高山参考人、ありがとうございました。 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。 これより質疑を行います。 なお、参考人の皆様に申し上げます。各委員の質疑時間が限られておりますので、恐れ入りますが、お答えはできるだけ簡潔にお願い申し上げます。 それでは、質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
○西岡瑠璃子君 本日は、筑波大学教授齊藤博先生、そして日本レコード協会会長高山登先生、御多忙の中を御出席いただきまして貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。 それでは、私の質問に移らせていただきたいと思います。 お二人の参考人の御意見を、御説明をちょうだいいたしまして、まず最初に、今回の法改正で外国の実演家、レコード製作者にも一年間の貸与権とその後の報酬請求権を付与することになったということを伺ったわけですが、国際化の視点からもそれは評価されるとただいま高山先生もおっしゃったとおりでございます。そこで、一年間の許諾権が円満な形で行使をされるか、そこのあたりに若干の危惧を持つわけでございます。 と申しますのも、我が国のレコード貸与の場合には、レコード製作者と貸しレコード業者の間で御承知のように円満な秩序が形成をされてきているわけですね。その背景には、貸しレコード業者の存在が無視できないほど大変多くなっているという実態が先行したということと、我が国特有の日本的な和とか譲り合いとかあるいは共存共栄とか、そういった考え方が契約にも入り込んできたことなどが挙げられると思うわけです。 ところが外国、とりわけアメリカにおきますと、権利は権利として行使をするということが基本であり出発点である。アメリカのレコード製作者、実演家が法律上一年間の貸与権、許諾権を持っている以上、それを行使したい、あるいは当初は許諾をしているが使用料問題などがこじれて許諾権を行使してくるといったことがあり得ないことではないと考えるわけです。外国との摩擦と申しましょうか、フリクションを避けようとした今回の新たな制度が、むしろ何か問題を起こしそうな火種を抱えているような気もするわけでございますけれども、そういった点についての懸念はないのか。 また、円満に秩序が形成されていくために、今後例えば政府とか特に文化庁にそのための何か御要請になられるような具体的なお考えがおありになるのか。その点をまず最初にお二人の参考人にそれぞれ簡単にお答えをいただきたいと思います。
○参考人(齊藤博君) お答えします。 ただいま御指摘がございましたように、日本的な法意識といいましょうか、これは確かにございます。他方、欧米流の合理的な権利意識からいたしますと許諾権は許諾権である、禁止権を行使する、こういう余地は十分ございます。しかし、その中にありましてもやはり我が国の法文化といいましょうか法意識、これにつきましては御理解をいただく。これは、時間はかかりましてもその種の努力は必要であろうかと思います。 なお、業界としてどういう具体的な対応をなさるか、これは高山参考人の方からお話があろうかと思います。
○西岡瑠璃子君 じゃ、お願いいたします。
○参考人(高山登君) ただいまの御質問でございますが、私ども業界といたしましては、まず国内の邦盤のルールづくりにレンタル商業組合との間で全力を挙げましてお話し合いを現在まで進めてまいりました。そして、ほぼそのルールづくり、秩序づくりが形成される方向にまいりました。洋 盤につきましては、これからでございます。邦盤と同じルールで適用できますように外国のライセンサー、外国レコードメーカーに対しまして、私どもレコード協会加盟の全メーカーが努力してまいりたい。邦盤と同じようにルールが形成されるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。そして、この業界が秩序ある形成ができますように努力を重ねてまいります。 ただいま御質問の中の、権利は権利ということはございますが、私どもはビジネスでございますので、より実態に合った、またビジネスとして成立できるような形にぜひつくり上げていきたいというふうに考えております。
○西岡瑠璃子君 それでは続きまして、一九七八年以前の外国レコードにつきまして、外国リプレス盤から無断で複製することは、これまでは法の網をくぐる形ではあっても違法ではなかったというわけですよね。今回の改正により、それが禁止をされることになったというふうに解釈をしてよろしいかと思います。 そうしますと、一九七八年以前の複製物は大体どのぐらいになるのでしょうか。そして、このうち今回禁止の対象となる外国リプレス盤からの複製はどれぐらいになるんでしょうか。高山会長にお伺いしたいと思います。
○参考人(高山登君) 一九八九年でこの無断――無断といいますか、私どもにとりましては違法と考えておりますけれども、その数量というのは、先ほど申し上げましたが約六百万枚。それから、現在例えば一九九〇年では一千五十万枚ぐらいの量になっているということでございまして、全体の洋盤の中の、六百万枚の場合は一二%に当たりますし、一千五十万枚の場合は一九%の多きに当たるということでございます。
○西岡瑠璃子君 今回の措置によりまして、国内のレコード製作者、外国のレコード製作者は、具体的にそれぞれどの程度の額のメリットを受けられるのか、試算が出ておりますでしょうか。高山参考人にお願いいたします。
○参考人(高山登君) ただいまの九〇年一千五十万枚という枚数を金額に直しますと、約二百億円になります。
○西岡瑠璃子君 それから、先ほどお話を拝聴しておりまして、高山参考人のお話の中に家庭内録画の報酬請求権制度の早期解決、実現に向けて努力をしてほしいという一項がございましたね。この家庭内録画というものの報酬請求権制度を確立するということは、非常に難しいことじゃないかというふうに私の素人考えでは思うんですけれども、どうでしょう。
○参考人(高山登君) 私どもも、この考え方をお諮りして既に十年になるということで、現在でも第十小委員会で検討しておりまして、大変難しいということは事実でございます。しかし、私どもは一歩も引けないということで、ぜひお願いをしたいというふうに考えております。ユーザーの御理解がまず第一だというふうに考えておりまして、これは家庭内でコピーするときにお客様がお支払いするんだという仕組みをぜひつくっていきたいものだというふうに考えております。そのための運動を現在展開いたしております。
○西岡瑠璃子君 時間がありませんので、次に著作権審議会の構成メンバーにつきましてお二人の先生にお伺いしたいと思います。 大変著作権問題が複雑高度化してきておりますから、皆様の御苦労はさぞやとお察しいたします。この委員の構成を拝見いたしますと、その道のエキスパートで構成されているわけですけれども、例えばJASRACとか芸団協、レコード協会、NHKその他いろいろあると思うんですが、さらに電子機械工業会なども加わっております。こういった関係団体が加わることでさまざまな立場が審議に反映するメリットがある反面、バックの団体、業界の利益代表としての意見を言わざるを得ない場合もあろうかと思いますし、いろいろとデメリットもあると思うんですけれども、その点はいかがなものかということ。 もう一つは、私、女性の立場から申し上げますと、現在十九人の委員のうち女性が二人ですけれども、今日の女性の職場進出とかその他もろもろの状況を考えて、女性をもう少し加えていただくことはいかがなものかということで、お二人の先生の率直なお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(齊藤博君) お答えいたします。 今のお話でございます委員の構成、とりわけ念頭にございますのは多分第十小委員会の構成ではないかと存じますが、確かに権利者団体の代表、それから業界、ユーザー側の業界でございましょうか。ユーザーと申し上げていいのか、機器メーカー、それからテープメーカーの団体の代表が出ていらっしゃいます。加えまして消費者サイドからも出ていらっしゃいます。 今御指摘ございましたように、やはり最終的なユーザーでございます女性の立場からこの問題につきましては積極的な御発言があってよろしいかと思います。そういう意味では御趣旨に賛成でございます。
○参考人(高山登君) 私、大変不勉強でございまして、といいますか、私ここの協会長になりまして一年になりますが、第十小委員会が一回も開かれておりませんので、どういうメンバーでどういう御意見の方がどういう討論をしているという現場に私は立ち会ったことがございません。しかし、サボっているわけじゃなくて、ワーキンググループが今非常に活発に第十小委員会は動いていて、もうすぐまとめに入る段階まで来ていると思います。 この構成メンバーについては、私からの意見はちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、文化庁さんともよく相談して勉強したいというふうに思います。
○西岡瑠璃子君 最後に一つ、外国における海賊版の実態についてお伺いしたいと思います。 東南アジアなど著作権関係の条約に加盟をしていない国々では、日本のレコードなどの海賊版が大量に出回っているというふうに聞いております。そうした実態につきまして把握をされておられましたら、お聞かせいただきたいと思います。また、この件につきまして今後我が国がどのような対応をすればよろしいのでしょうか。もし御意見がいただけるようでしたらば、高山会長にお教え願いたいと存じます。
○参考人(高山登君) 海賊版につきましては、特に東南アジア、具体的に名前を申し上げてよろしいのかどうかと思いますが、タイ国とかその辺が非常に大変だというふうに聞いております。これは世界的な問題でございまして、特にIFPI、国際レコード製作者団体の最大のテーマでございまして、香港にそれの駐在がございまして、ここが積極的にこの海賊版防止のための努力を重ねておるわけでございます。 日本もやはりアジアの一国として、私はこれについて指導的な立場に立ってやる必要があるというふうに思いますが、ざっくばらんに申し上げましてやはりお金がかかるということで、IFPIに対しましてもそういう面での資金のバックアップを、我がレコード協会としても増額をしてやっていくというようなふうに考えております。
○西岡瑠璃子君 以上で私の質問を終わらせていただきます。 ありがとうございました。
○針生雄吉君 ど素人なもので、とんでもない見当違いの質問になるかもわかりませんけれども、勉強させていただきたいと思います。 最初に、齊藤教授に教えていただきたいんですけれども、著作権料を安くすれば多くの人に聞いてもらえるんじゃないか、多くの人に聞いてもらえれば非常にクリエーティブな芸術活動に資するところ大であって次の世代につなぐことができる、罰則を強化するとその活性化がなくなるというような、ジレンマといいますか、そのバランスのとり方が非常に難しいと思うんですけれども、そういったことが、先ほどお話がありました法体系の違いで各国の保護の落差といいますか、それがどういうふうにあらわれているか。例えばアメ リカ、英米法体系のところは非常に罰則が厳しいとか、ヨーロッパ系は穏やかであるとか、それが日本に対してどういう影響を与えているか、そういう一般的なことを教えていただきたいと思います。
○参考人(齊藤博君) お答えいたします。 まず、第一点の著作物の使用料でございます。これは、著作権法は二面がございまして、いわゆる純粋の民事的な部分と、それから罰則がございます。 二つ御質問があったのではないかと思います。著作物の使用料を安くすれば多くの者が積極的にさらに文化に接することができるという御指摘でございます。 短期的に言いますとそうでございますけれども、創作者の立場を考えますと、やはりみずからの精神作業に対しましてそれなりの使用料でございましょうか、これが適宜入るという仕組みにいたしませんと、今度は創作の意欲その他につきまして大きな影響が出てまいります。そうすると、使用料が安ければいいということで推移しますと、長期的には文化がやはり枯れてくるような気がいたします。これが第一点でございます。 それから、罰則につきましてでございますが、世界的な傾向としまして、どうも著作権法の中での罰則につきましては強化の方向が見られます。これは、残念ながらさまざまな著作物の利用手段というものが普及してきますものですから、どうしても積極的な罰則による対応というものも求められてくるのではないかと思っております。我が国もその中に位置づけられていると考えております。
○針生雄吉君 次いで、高山会長にお教えいただきたいと思いますけれども、著作権料、それはどういうふうにして決められるものなのか。 例えば、ちょっと聞いたんですけれども、「リンゴの唄」を一分間流したいと思うと三百万円ぐらい要求されるとか、そんな話を小耳にしたことがあるわけです。それを使うときの基準と申しますか、JASRACとかそういう組織にはきちっとした著作権料の規定、こういうときには幾らというようなのがあるようでございますね。そういうような著作権料の決め方というものは、歴史的な経緯もあるんでしょうけれども、どういうふうにして決めるものなのか。
○参考人(高山登君) 著作権ですから、作詞者とか作曲家とか、そういうことになると思いますけれども、これは今御指摘のようにJASRACとのルールがきっちりございます。これは文化庁さんの認可のもとにその料率というのが決められているということだと思います。 それから、そういうところへ委託しないで個人で持っていらっしゃるという場合があると思います。その場合は、その都度値段をつけるということはあろうかとは思いますけれども、今では極めて例外的なことだというふうに思います。 ちょっと御質問のあれが……。
○針生雄吉君 そういう仕組みについて、そのJASRACそのもの、いろいろな決め方があると思うんですけれども、そういう決め方をもっと改正しなきゃならないとかあるいはJASRACそのものを別の組織にしなければならないとか、そういう議論というものはないものなんでしょうか。
○参考人(高山登君) 私は、現在ではそのような議論は業界内ではなされていないというふうに思いますし、ルールは明確に規定されております。 ですから、恐らく御質問は、むしろ演奏とかそういうので値段が何百万なんというのが出てくるんではないかと思います。
○針生雄吉君 ありがとうございました。 ─────────────
○委員長(下稲葉耕吉君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、浜本万三君が委員を辞任され、その補欠として森暢子君が選任されました。 ─────────────
○高崎裕子君 それでは、齊藤、高山両参考人にお尋ねいたします。 著作権法では、実演家は、映画の著作物において録音され、録画された実演については、以後の録音権、録画権、それから放送権、有線送信権、これが適用されないということになっております。これは、法律上権利の規定が適用されないという意味は、契約で権利を確保することを前提としているというふうに言われているわけですけれども、実際には出演契約で利益を守るということは非常に難しいというふうに思うんですね。 現に、日本俳優連合が九〇年の九月から九一年の二月までにNHKで衛星放送された邦画六十六作品の主な出演者にアンケート調査をしたんですけれども、この中でも、劇場上映以外の使用については特に条件の取り決め、約束があったのかという問いに、アンケートに答えた方一〇〇%がなかったと答えているのが象徴的だと思うんです。 特に、過去の映画の場合、現在のようなテレビとかビデオなどのメディアの発達、利用状況というのは全く想像することはできなかったと言ってもいいかと思うんです。現在のテレビでの再放映の状況を考えてみますと、俳優などの実演家の権利を見直して正当な保障を与えるということは急務だというふうに思うんですけれども、この辺についての両参考人のお考え方を聞かせていただきたいと思います。
○参考人(齊藤博君) お答えします。 実演家と映画の問題につきましては、非常に難しい問題がございます。御指摘のように、録音・録画権、放送権、有線放送権、これが映画に出演しますと落ちてしまいます。映画につきましては、どうしても知識を集約し資本を集約した産業であるという点で、利用面を重視して、著作権につきましても製作者に集中している、こういうことがございます。 したがいまして、どうもこの実演家の問題につきましても、同じ発想が九十一条、九十二条に盛られているのではないかと存じます。 そして、ここでは映画への出演契約の内容、これがやはり現段階におきましては重要になります。録音・録画の許諾に際しまして、映画の利用の可能性というものを見通していく、これは御指摘のようにかなり大変なことでございますけれども、少なくとも現段階におきましては、それを権利者のサイドでもいたさなければならないところであろうかと存じます。 確かに、現実には力関係に両者大きな差があるんではないかという問題もあろうかと存じます。これは、実態面がどういう状態なのか、これはやはりさらに吟味していく必要があろうかと存じます。 それから、先ほど申し上げましたように、著作権法はやはり一般法として民法を持っております。したがいまして、民法理論、これは契約につきまして随分苦労してきたわけでございますので、民法理論の活用ということもなしていく余地がなおあろうかと存じます。 それから、研究者にも責任がございまして、著作権法の領域におきましてもなお契約面につきまして本格的な研究をしていく、この必要がございます。例えばドイツにおきましては、譲渡目的論でございましょうか、目的譲渡論というんでしょうか、ツベックユーバートラグングステオリーというのがございます。こういう譲渡目的というものを中心にしまして研究をしてございます。我が国におきましても、若い研究者がこのテーマにつきまして研究を始めてございます。まあ今後の問題かと存じます。
○参考人(高山登君) 私は映画は詳しくないんで、俳優さんのことについてはちょっとわかりませんが、歌手はよくわかります。 それで、レコード製作者は実演家と同じ立場で隣接権を持っているわけでして、私ども同じ権利を共有しているということで、やはり実演家の権利というものは絶対保障されるべきだという強い考えを持っております。ぜひそうあるべきだと思います。
○高崎裕子君 それでは、齊藤参考人にお伺いします。 齊藤参考人は、芸団協の機関紙一月号で、日本の著作権法で最も不十分と思われますのは契約に関する規定です。ないんです。特に今おっしゃるように契約意識ということになりますと、日本の場合、まだそう高いわけではございません。立法の面で細かい手当てをしておく必要もあるのかもしれませんね。これは前から気になっていたと、こう述べていらっしゃるんですね。私もこの点は非常に大事なことじゃないかと思うんですけれども、もう少し詳しくそのお考えを教えていただければと思います。
○参考人(齊藤博君) お答え申し上げます。 著作権にしましても、それから実演家の権利にいたしましても、利用の許諾あるいは譲渡の制度がございます。その種の規定は著作権法にあるわけでございます。したがいまして、あとはその具体的な契約を両当事者でどう締結していくか、この内容の問題になります。 その際に、一つは、どうも権利者サイドにおきましてもある種の法意識、まあ表現が難しいんでございますが、これが比較的薄いんではないか、こういう点が一つございます。しかし、それはそれとして、客観的に力関係に大きな差があるんではないか。先ほど申し上げたところと重複いたすわけでございますが、これは実態はこれからきちっと吟味してみる必要があろうかと思います。その上で民法理論も活用して、なお不足があるという場合には、著作権法の中に何らかの手当てが必要ではないか、このように段階を追って考えているところでございます。
○高崎裕子君 それでは、時間の関係で最後の質問になりますが、これは両参考人にお伺いいたします。 私的録音・録画問題について著作権法第三十条が私的使用のための複製を許容しているわけですが、録音・録画機器の著しい開発、普及に伴って家庭内における録音・録画が簡単にしかも頻繁に行われるようになり、これは先ほど西岡さんからも出されましたけれども、著作権者及び著作隣接権者の経済的利益が脅かされてきているわけです。このため著作権者等は、西ドイツ、フランスなどがとっている報酬請求権制度を我が国にも導入してほしいということで主張もされています。 著作権審議会は、この問題を解決するために具体的な方策について検討を行うということで、第十小委員会を設置して昭和六十二年度からずっと検討を進めているはずなんです。これは、五十三年以降は衆参で十一回も推進の附帯決議も行われているという大変大きな問題にもなっているわけですが、この問題について、早くから西ドイツの法制度を御紹介もされ第十小委員会の主査でもあられる齊藤参考人は、特に私的録画それから録音についての報酬請求権制度の導入について、現在どのようにお考えでいらっしゃいますか。 高山参考人にも、その点のお考えをお聞かせいただければと思います。
○参考人(齊藤博君) お答えします。 ただいまお話がございましたように、主査としてお答えするということになりますとなかなか難しゅうございますので、それじゃ別の意見は何かというのも、なかなか話しにくいんでございます。 一般的に申し上げますと、報酬請求権、この制度はやはり利益調整の制度であろうかと思います。著作権等を制限し過ぎている場合は金銭によってその利益調整をする、こういう制度であろうかと思います。考え方としましては、最善の方策ではございませんけれども、現実的な方策であろうかと存じます。 それならば、一九六五年の西ドイツ法、これはパーフェクトであったのかといいますと、どうも、その後同国におきましても二十年を経まして改正をしているくらいでございます。やはりなお吟味の余地があると。我が国におきましては、確かに対応がおくれておりますけれども、おくれた以上、やはり世界に誇れるよう日本の独特の方式、これが編み出せればよろしいんではないか。 それからもう一つ、技術開発、これは抑えてはいけませんので、技術を活用しながら、しかしどこかにしわ寄せがありますときには何らかの調整を、利益調整をしていく、これは必要なことではないかと思っております。 以上です。
○参考人(高山登君) 家庭内コピーの問題につきましては、我が協会としても大変な量が行われているというふうに調査で出ておりまして、量にしまして年間で大体八十億曲分ぐらいがコピーされていると。これをアルバムに換算しますと約六億枚から七億枚ぐらいに相当すると。この数字はさらに、私どもが商売しているアルバムの約三倍の量に当たるというぐらい大変大きなものというふうに思っております。 そんなことで、ぜひこの報酬請求権をというお願いでございますけれども、技術とソフトがともに発展していけるためにはこの方法が今考えられる最良の方法であるというふうに私ども考えておりまして、ぜひ実現を急いでいただきたいというふうに思っております。
○高崎裕子君 どうもありがとうございました。
○笹野貞子君 両参考人の先生、お忙しいのにきょうはありがとうございました。 それでは、保護期間の延長の問題についてお尋ねをしたいというふうに思います。 今回の改正法案は、著作隣接権の存続期間を三十年から五十年に延長をしております。こういう延長するということは隣接権の保護強化につながることであって、これ自体は別に決して悪いことではありません。しかし、三十年というふうに延長をしたのは六十三年、三年前だったんですね。どうも三年間でまた再延長ということなので、私からしますと何か朝令暮改のような、せっかく延長してまた延長というのが随分早いなという感じがするんです。先ほど齊藤先生から、これは非常に小刻みに常に改正していかなければいけないというお話がありました。しかし、五十年間に延長したチェコやオーストラリア、さらにはドイツやイタリアの最近の動きがありますけれども、六十三年当時は既に先進国ではもう五十年という期間は出していたわけですね。 そこでお尋ねしますけれども、六十三年の改正のときは、外国のそういう例を参考にした三十年延長だったんでしょうか。既にそのときには、きょう改正の審議をしているこの五十年という年限は審議に上がらなかったんでしょうか。その点をちょっとお尋ねしたいと思います。
○参考人(齊藤博君) お答えいたします。 当時におきましても、当然諸国の保護期間につきましては参考にいたしました。とりわけ当時の西ドイツ、あるいはイタリー、それらの国につきましては大いに参考にしたところでございます。 以上でございます。
○笹野貞子君 それでは、今回の改正は、また改正してすぐまたやり直しという状態はできるだけ避けなければいけませんが、先ほど先生は、小刻みに改正をしなければいけないという、その小刻みですね。三年前から今度改正するためには、どのような状況が変化したから今度五十年という改正をしなければならなかったか。あるいは、今度改正するこの五十年に延長をというのが、諸外国の状況を見ますと七十五年にしたり、あるいは行為後五十年じゃなくて死後という、その著作者が亡くなってからというようなところもたくさんあるわけですから、今回の改正がこれで十分なものかどうか。小刻みに改正する、その都度合わせてという先ほどの言葉に非常に適切な今度の改正であるかどうか。 そして、私は、できればこういう保護の問題はやっぱりきちっとしたものにしたいというふうに思いますので、高山会長、五十年というこの期間はそういう業界にとっても適切な期間であるのか、そこら辺をお聞かせください。 まず、齊藤先生、お願いいたします。
○参考人(齊藤博君) お答えいたします。 先ほど小刻みと申し上げましたが、後で容易に 修正できるから小刻みということではございませんで、その都度全力投球をしまして小刻みの改正をしていく。したがいまして、三十年にしましたときにも、その当時におきましてはやはり最も妥当であったという判断かと存じます。ただいまの五十年につきましても同様でございまして、その後どう情勢が変化したのか。これ、二点ございます。 一つは、西ドイツが五十年にいたしました。そういうよその動きがございます。それから、国際著作権界もちょっと動いてきておりまして、先ほど触れましたように、コモンロー・アプローチとそれから大陸法的アプローチ。これは、大陸法的アプローチの方は著作隣接権を重視していきます。重視していきますが、保護期間が著作権に比べて短い。コモンロー・アプローチでございますと、著作権として保護していく。隣接権を認めないわけでございますね。そうすると、どうも方向としましては著作権の保護期間に大体そろっていく、国際的な協調の中ではそろっていくことにもなりそうな気がいたします。 そういう点で五十という数字、厳密には著作権の保護期間とは違いますけれども、現段階では最善なのではないかと思っております。
○参考人(高山登君) 長ければ長いほどいいかということについては、やっぱり疑問があると思いますね。それで、私ども業界としましては、二十年から三十年になる前からもう五十年というお願いをずっとしてまいりまして、念願でございました。このたびこの念願が果たされるということで、満足です。
○笹野貞子君 満足ですか。
○参考人(高山登君) 現在、現時点では国際レベルにも合った適切な年数だというふうに私は思います。
○笹野貞子君 それでは、外国レコードの保護について高山参考人にお話をいただきたいんですけれども、改正案の百二十一条の二、これを見ますと、国内レコード会社による国内リプレス版につきましては随分保護していることがわかります。しかし、外国レコード会社による外国リプレス版、すなわち輸入版ですね。輸入版につきましては、国内リプレス版と外国リプレス版との間で随分差がありますね、今回は。この差というのは、問題がこれから生じないかどうか。 あるいは、それについて外国から非常にいろいろな意味で慎重な対応を迫られているわけですけれども、レコード保護条約に加盟しているか加盟していないかという問題、これがこれからの問題にならないかどうかですね、その点。そして、この差をつけることに何か意味があるのか、そしてこれから問題にならないのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(高山登君) 国内のレコードは保護されていたわけですね。ところが、それが輸入版にはされてなかったので、国内と同じにしようということであるわけですから、ちょっと今の御質問の趣旨が私、理解しかねたのでございますが。
○笹野貞子君 今度の改正で、国外のレコードも保護しようとしているわけですけれども、レコード保護条約に加盟している国と加盟してない国とによって保護の対象が違うということはいかがなものでしょうかという質問なんです。
○参考人(高山登君) これは、やはり保護条約に加入している国のみそういうふうになるというふうに認識しておりますので、加入してない国のものはやっぱり保護されないということになると思いますが、ほとんどの国が加入しておりますので、ほとんど全部行き渡ると、こういうふうに思っております。
○笹野貞子君 問題ないというふうに受け取って構わないものでしょうか。 それでは、時間がなくていろいろなことをお聞きしたいものですから、大変申しわけないんですけれども、先ほどJASRACの話が出ました。私などは大変興味があるんですけれども、先ほどの質問とちょっと角度を変えまして、つまりJASRACのルールというものについて。 今度は著作権の隣接権を持った人ですね、隣接権の使用料について、アーティストとかその演奏とかそっちの方の配分のルールというのは、これはちょっと私、自分の娘の件がありまして質問しにくいんですけれども、これはやっぱりルールというのはきちっと決められているものなんですか。今度は取る方じゃなくて、配分の方です。高山参考人に。
○参考人(高山登君) JASRACの著作権につきましては、配分の料率で全部決まっております。
○笹野貞子君 大変ありがとうございました。 以上です。
○小西博行君 御苦労さまです。 きょう、先ほども保護期間という話が出まして、三十年を五十年に延長するということ、ちょっと私どももぴんとこないところがあるんですが、例えば普通民間の場合に特許権というのがございまして、大体十年したら特許権が切れますね。そのときは、一斉に各企業は同じものをつくるという制度が実は産業界にはあるわけです。それとまた意味が相当違うだろうとは思うんですが、いずれにしても、この三十年を五十年にすれば国際的に恥ずかしくないというんでしょうか、それでいいという判断をされたというふうに聞いておるんですが、そのように理解していいんだろうと、私はこう思います。先ほど申し上げたような産業界の場合は新しい技術がどんどん入ってくる、そして過去の技術というのはもう死んでしまう、そういう意味があるんだろうと思います。芸術活動というのはどうもそうではないというふうに理解してよろしいんでしょうか、齊藤参考人にお尋ねします。
○参考人(齊藤博君) お答えします。 保護期間、実演家等の権利の保護期間とそれから技術の保護期間、御指摘のようにちょっとやはり性格が違うと存じます。実演家等の期間にしましても、長い期間、例えば五十年目いっぱい保護されるものもございましょうし、そうではないものもございます、これは現実の問題になりますが。したがいまして、可能性としては長く確保しておく方がよろしいのではないか、このように思っております。
○小西博行君 高山参考人にお尋ねします。 この改正で、先ほど五十年ということをもう前からこいねがっていたということですから、それで十分かもしれませんが、今後のこの改正だけでこれからは諸外国と、先進諸国との関係が特に強いと思うんですが、これで十分なのかどうなのか。あえて言うなら、もう少しこの点をこういうふうにしたい、してもらいたい、そういうものはございませんか、ほかに。
○参考人(高山登君) 隣接権の三十年から五十年ということにつきましては、これでよろしいかというふうに思っております。ただ、そのほかにいろいろといいますと、もう何といいましても業界としましては、やっぱり先ほどから出ております報酬請求権の問題につきまして速やかな方向づけを出していただければというふうに思っております。それが最大の問題でございます。
○小西博行君 最後ですけれども、高山参考人にもう一つお尋ねします。 先ほどタイの話がございましたね。そういう国も相当あるんだろうと思うんですが、今度この法律を通しまして、さっきのお話しでは一応国際的に恥ずかしくないレベルに整理されたと私ども判断するわけですが、諸外国から評価した場合に、日本の場合は割合今までこういうものはずさんだったですよね。この法律が施行されてきちっといきますと、大体上位にランクされる、恥ずかしくない、このように判断してよろしいでしょうか。 齊藤参考人にも、あとちょっと御意見を。
○参考人(高山登君) 一応恥ずかしくないものになるというふうに私は思います。
○参考人(齊藤博君) 私も同感でございます。諸国の法制をハーモナイズするのに一番しやすい部分がこの保護期間ではないかと思っております。
○小西博行君 終わります。
○委員長(下稲葉耕吉君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれをもちまして終了いたします。 この際、一言ごあいさつを申し上げます。 参考人の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせくださいましてまことにありがとうございました。本委員会を代表し、厚く御礼申し上げます。(拍手) 速記をとめてください。 〔速記中止〕
○委員長(下稲葉耕吉君) 速記を起こしてください。 ─────────────
○委員長(下稲葉耕吉君) 去る三月二十九日、予算委員会から、四月九日の午後、平成三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管について審査の委嘱がありました。 この際、本件を議題といたします。 予算の説明につきましては既に聴取しておりますので、これより直ちに質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○小林正君 既に衆議院、参議院の予算委員会等の場の中で、八九年の十一月に国連総会で全会一致で採択をされ、そして翌年の九月ですか、発効いたしました子供の権利条約の問題についてお尋ねをしておきたいというふうに思います。 限られた時間ですから、条項の各項目、内容にかかわりまして御質問するということは到底できません。この間、政府の方針というものがまとまった形で出されておりませんで、質問に対する答弁という形で部分的にいろいろな考え方が出されているということもありますので、概括的な問題について基本的な姿勢といいますか、そういうことについてお伺いをしてまいりたいというふうに思います。 一九四八年に世界人権宣言が国連で採択をされて以来、国際的な人権に対する関心というのは極めて高くなりまして、国連が主体的に戦前までにありましたさまざまな差別を克服する手だてを講じてまいりまして、国際婦人年とか、あるいは児童年、さらには障害者年というようなものも設定をされまして、以降のアクションプログラム等もその中から生み出されてきて、多くの成果をおさめてきたということがございます。そうした中で子供の権利条約も、七九年の児童年をスタートにしてそういうことが取り組まれてきて今日があるわけであります。それで、この問題につきまして文部大臣に、基本的にどういうふうに受けとめておられるのかということをお尋ねをしておきたいというふうに思うんです。 日本では、戦後間もない一九五一年、昭和二十六年に児童憲章というのが制定をされました。これは、従来の考え方を乗り越えまして、法律とは異なりますけれども、児童のために国民がなすべき道徳的規範を示した宣言というような意味合いから、法的拘束力はもちろんないんですけれども、そうしたものとして国民に示された積極的な意味というものは大変大きかったと、こういうふうに思います。それをスタートにして、国連でのさまざまな活動があったわけで、そういうものを踏まえてどのようにお考えかということです。現代的な意味での子供観といいますか理念というか、そういったようなこともぜひお聞きをしたいというふうに思います。 また、この条約の内容が、子供の置かれている発展途上国やそれから先進国のそれぞれの実態に着目しながら、それを克服する手だてを示しつつ、さらには二十一世紀へ向けての未来志向性といいますか、そういう要素も含んだものとして提起をされているわけであります。そういうことを含めましてまずお伺いをしたいというふうに思います。 そして、その次に、あわせて名称の問題ですね。子供の権利条約あるいは児童の権利条約、子供か児童かという名前の問題なんですけれども、これについても予算委員会等の場では若干出ておったというふうに思うんですが、例えば学校教育法上で言いますと、学齢児童というと小学生のことを指しているわけですね。そして、この条約の二十八条の一項(b)、中等教育の項の中では、児童という用語を使いますとどうも言葉としてちょっと成り立たなくなるような表現にならざるを得ないというふうに思うんです。 そして、さらにはこの範囲なんですけれども、十八歳末満ということで十八歳というものを成年ととらえるとすれば、大人と子供の関係からすると子供という概念で条約としてくくった方が言い方としてはいいのかなという気もしているわけです。そして、十八歳末満といいますと、十八歳から未満でさかのぼってゼロ歳、そしてそれ以前の段階ですね。つまり胎児の段階は一体どうなるのかという問題もあるというふうに思うんです。 といいますのは、児童憲章でまず最初に第一項でこう言われているわけです。「すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、」と書いてあるわけですね。そして「育てられ、その生活を保障される。」ということになりますと、まさにどういう形で生まれるのかということについても児童憲章の中では定めているわけでして、そうなると、当然のことながら生まれる以前からそうしたものが対象になっているんじゃないか。つまり、胎児から十八歳末満ということで考えていくべきだと思うんだけれども、そのことについてもあわせてどうであるかという点について、ごちゃごちゃ言いましたけれども、まずお願いしたいと思います。
○国務大臣(井上裕君) お答えいたします。 今先生から詳しいお話がございまして、これはいろいろ予算委員会にも権利条約の問題また批准の問題も出ました。具体的なことは局長から御答弁をさせていただきますが、やはり児童の権利に関する条約は、世界じゅうで現在でも一日に約四万人の児童が下痢やあるいははしかなどで、簡単に防ぐことができます原因でも命を失っておる。そのほとんどが開発途上国の児童であること。また、先進国におきましても、親による虐待や麻薬といった児童の権利の侵害が存在することなど、世界の多くの国々において極めて困難な条件のもとで生活している児童が存在しておる。また、これらの児童が特別の配慮を必要としている状態にかんがみまして、特に開発途上国におきます児童の生活条件を改善するための国際協力、この重要性を認めて策定されたものと私ども思っております。 御案内のように、本条約に盛り込まれております個別具体の事項につきましては、日本の国内の関係法規との関連等について、現在、関係省庁において検討が行われているところであります。
○政府委員(長谷川善一君) 先ほど先生の方から児童の権利と言うのか、これは英語ではライツ・オブ・ザ・チャイルドとなっているわけですが、これは児童と言うのか子供と言うのかというような点についてのお尋ねがございました。名称については、現在もまだ確定をしておる段階ではございませんので、検討中でございます。 児童を政府の方で使っております主な理由としましては、国連の児童権利宣言――児童権利宣言と訳しておりますので、それがもとになっておるわけでございます。法律的には通常、児童という言葉を使っていることが多いわけでございます。子供というのを使ったのは、例えば祝日に関する法律で「こどもの日」というような使い方をいたしております。また、民法上は子という言葉を使っております。いずれにいたしましても、種々意見もございまして、確かに二十八条のところにつきましても議論の対象にはなっております。今検討中ということでございます。 それから、生まれる以前の子供ということでございます。これは直接文部省とは関係がないわけでございますけれども、条約の検討の途上におきまして、これが含まれるかどうかという点につきましても検討されておるというぐあいに聞いております。
○小林正君 今の話ですとまだ検討中ということなんですけれども、今の学校教育法上のいわゆる学齢児童なんという使い方、それから学校現場で児童生徒と言う場合、一般社会的あるいは教育現場で使われている用語の方からしますと、児童というのを十八歳末満の子すべてに適用するというのはいかにも無理があるんじゃないかという気がするんですね。それは文部省から見ても当然そのような認識はお持ちだとは思いますけれども、その辺もう少し突っ込んだ御答弁はいただけませんか。
○政府委員(長谷川善一君) これはまだ各条項ごとの整理をやっておるところでございまして、もうちょっと突っ込んだというところはまだ申し上げる段階にないわけでございます、申しわけございませんが。
○小林正君 この条約という面からいくと確かに外務省が主管をされているということを伺っておりますし、今文部大臣の御答弁でも省庁間云々というお話もあったんですけれども、やはり基本的には文部省が子供と深くかかわっているという点では一番中心的な部分だろうというふうに思いますので、ぜひ教育現場や社会通念上使われている用語を採用するように、ぜひ文部省としての主張を私はお願いをしておきたいというふうに思います。 それから、十八歳末満という言い方なんですけれども、やはり十八歳を成人ととらえた場合にそういう言い方になってきているわけですから、その辺のところで言いますと国内法上のいろいろな問題もこれから出てくるのかなというふうに考えるわけです。 それと、文部大臣が今お話しになりましたけれども、私はもう少し理念的な部分でお話を伺いたかったのは、権利に関する、あるいは人権というものについての第二次大戦以降のこうした流れの中でどう受けとめたらいいのかという問題意識としては、従来子供について一人前とか半人前とかという言い方が日本では過去にあったわけで、そういう点からすると扱われた方がそういう言い方になっています。それからもう一つ言いますと、大人と子供という場合に、よく料金表示なんかのところに大きい人、小さい人と書いてありますね。だから、ああいう言い方で言うと、人には違いない、大きいか小さいかだと、こういうことになるわけです。 基本的な立場からいうと、今まで言われてきたような意味で保護の対象としての子供の見方、子供観というものに対して、子供自身もまた権利を行使する主体だということをこの条約上の文章では明文化されているわけですよね。ですから、そういう面で言いますと保護の客体から権利行使の主体へという、極めてコペルニクス的と言ってもいいぐらいの大きな転換だろうと思うんです、見方がですね。その辺について文部大臣としてどうこれを受けとめておられるのか、その辺をもう一回。
○政府委員(長谷川善一君) ただいまの先生の御指摘、大変に感銘深く聞かせていただきました。 国連で子供の権利について扱いました一九五九年の十一月、国連総会で採決いたしました子供の権利宣言というのがございます。そのあたりから実は権利ということについての国連全体としての認識があったわけでございます。ただ、それが徐々に国際的な児童年とかそういうような経過を経てまいりまして、権利宣言を具体的に実施する、それを具体化するという形で先般、今度の条約がまとめられたというぐあいに承知いたしております。かなり長い歴史がございます。 その間にどういうような変遷があったというような点につきましては一々つまびらかにいたしませんけれども、権利という問題につきましては相当前から国連では意識されておったということは事実でございます。
○小林正君 次に、批准にかかわって幾つかお尋ねしておきたいと思うんですけれども、実はユニセフの駐日代表事務所の方とこの問題で話し合いをしたことがあるんですが、発展途上国の問題、そして先進国、日本のような国々の課題というのは、この条約を受けとめる問題意識というのはやっぱりかなり違うわけですね。発展途上国の場合、さっき文部大臣もちょっと触れられましたが、やはり年少労働等の問題、それからストリートチルドレンの問題、あるいはまた生存そのものにかかわるような飢餓とか、そういうような課題もあるわけです。 そして、日本の場合には、生存にかかわる問題としては親子心中というのが日本の何か極めて特異なケースとしてよく指摘をされますが、そういったような問題もありますし、学校教育の中でのさまざまな問題、それから教育制度そのものにかかわる課題も日本の場合にはあるというふうに思います。国内法で言えば、教育基本法から学校教育法、さらには教育委員会規則、そして世間で関心を呼んでいるのは、この条約と校則との関係はどうかといったような問題が指摘をされているわけです。そして、これらの問題について国内法との関係で条約批准についての障害、どういうものを意識されているのか。それから国内法を抜本的に変えるということがこのことから出てくるのか、こないのか、その辺の問題意識。さらには国内法を修正するという形で処理できると、こういうふうにお考えかどうか。 というのは、ユニセフの代表事務所の話ですと、国内法の修正または修正することを宣言することで批准に道が開けるというような言い方をするわけです。そして、留保ではなくて宣言で付加、付け加えるというような言い方をしているんです。そして早期批准と、こういうことなんですね。こういうことでは、私としてはいろいろ問題が出てくる。またこの後の質問でそれに関連する想定できる課題について申し上げたいと思いますが、その辺についてはどうお考えでしょうか。
○政府委員(長谷川善一君) ただいま文部省の方で検討をいたしております課題と申しますのは、第二十八条をよく例として申し上げておるわけでございますけれども、そのほか相当の条項にわたっております。関連する法規も御指摘のとおり相当ございまして、それとの整合性というものは非常に重要でございます。我が国の憲法におきましても条約の遵守ということは非常に強く言われておるわけでございます。条約と国内法の規定が矛盾するということのないように、条約の批准に伴う国内法の整備というのは、通常の条約の場合、遅くとも条約の批准と同時に行うのが通例であるというぐあいに承知しております。 我が国が条約を批准いたします場合は、国内法との矛盾というのをすべて洗い出し、そういう矛盾がないという状況のもとにやるわけでございます。ただいまおっしゃいました、将来にわたってこうするというような宣言でやったというケースは、承知しておりません。ただ、留保とか解釈宣言とか、そういうようなことは通常の条約の場合は許されるわけでございます。よほどの場合にはそういうようなことがあるということも承知しております。
○小林正君 というのは、今の質問と関連をして、例えば道交法上自動二輪について十六歳で免許が取得できるという問題がありますよね。これについて各県段階では、今の交通戦争と言われるような状況の中で子供たちが命を落とすケースが大変に多いということで、いわゆる三ない運動とか、神奈川の場合で言うと、もっと加えまして四プラス一ない運動なんというのまでやって、持たせないようにというようなことをやってきたと思うんです。しかし、今はそれは反省の段階に入りまして、むしろそうした交通事情というものの中で安全な運転とかマナーというものはどうあるべきかと。もっとそれを積極的に利用して、将来にわたって子供たちが交通禍に遭わないようにするための訓練ということで、避けて通らないで前向きに受けとめていこうというふうなことも今行われているわけなんです。それは余談なんですけれども。 つまり、法と校則、法律上認められていても校則ではだめよと、こういう実態が一つの例としてあるわけです。これで考えてまいりますと、それ が退学の原因になったりしているわけで、仮に批准されますと、校則と法との関係を含んで条約違反という問題が出てくるわけですよね。その場合に、国内法をきちっと整備して整合性を持たせておかないと、民事訴訟が多発をするというような事態も想定をされるというふうに思うんですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。
○政府委員(長谷川善一君) 国際法と国内法の問題かと思います。各国の憲法とかあるいは国内法と条約などの国際法の内容が矛盾した場合、いずれの規定が優先するのかという問題につきましては、御承知のとおり古くから多くの研究や検討がなされておりまして、種々の学説も存在するというぐあいに承知いたしております。実際に両者の間に矛盾が生じた場合は、その国の憲法における条約に関する規定、憲法の中に条約をどういうぐあいに扱っているか。日本の場合は、条約の遵守ということが強く言われておるわけでございますが、それぞれの国の国内法制にとりましてかなり難しい問題になるわけでございます。 全く御指摘のとおりでございまして、そういうような矛盾が生じるということがないように、条約を批准する場合には、事前に国内法の諸規定との関係につきまして詳細な検討を慎重に行うというのが我が国が条約を批准する場合の通例であるというぐあいに承知いたしております。
○小林正君 もう時間がありませんが、これから子どもの権利条約批准に向けての体制を整える意味で、文部省として国民各界各層、教育現場等から御意見を聴取されるというような場面をおつくりになる意思があるのかどうか。仮にその場合に、対象になっております子供の代表を入れるというようなことをお考えかどうか。子供にはこの条約上意見表明権や意思決定権への参加というのが含まれておりますので、それについてどうお考えか。 それから、いろいろこれからまだ整合性を求めて整備が必要だというお話がございました。その場合に、十二月の予算委員会での森委員に対する外務大臣の答弁は、本国会あるいはまた次期国会までにはというお話をされているんですけれども、大体いつをめどに考えられているのか、あわせてお伺いをして質問を終わりたいと思います。
○政府委員(長谷川善一君) 各界各層の意見ということでございますけれども、条約の批准に向けました手続の取り進めというのは、お尋ねの各界各層の意見聴取なども含めまして、条約関係の事務を所掌する外務省において総体的には検討されるべきことと考えております。しかし、この条約の批准に関しまして文部省に対しまして意見を述べたいという要請が関係の団体等から相当数ございますので、私どもの方では担当の部局におきましてこれをそれぞれ誠実に聴取しておるというのが現在の状況でございます。 先生御指摘の、高校生レベルの意見を聞くということにつきましては、子供に関しますものでもそのような条約とか法律とかいうようなことにつきましてそういう意見を聞くというようなことはやっておりませんし、現在そういうような場を設けるというようなことは文部省としては考えておりません。 この条約の批准につきまして、できる限り早急に作業を進めるようにという総理からの御指示もございますし、また関係省庁を取りまとめて批准に向けた作業を行う中心になっております外務大臣の方からも、遅くとも次期通常国会には提出したいという旨の答弁が国会であったということもよく承知いたしております。 全体を通じました検討作業の状況というのは、文部省としては全体を詳しくは承知していないわけでございますけれども、国内法の整備というのが必要であるケースには、遅くとも条約の批准と同時に行わなければならないと理解しておりまして、それに向けて鋭意検討を急いでおるというのが現在の状況でございます。
○会田長栄君 私は、井上文部大臣が、遊んでくれた先生が忘れられないと、教職員のあり方をめぐって教育の原点を指し示したものとして深い感銘を受けています。 そこで、平成三年度の文部省所管予算概要説明を受けて、私が第一にお聞きしたいのは初等教育の充実についてでございます。特にこの項の中にあって教育の資質向上を図るためとして初任者研修制度を小学校、中学校、引き続いて高等学校にも本格的に実施するようになっています。 そこで、まず第一に、この初任者研修制度導入に当たって国がどのぐらいの予算を計上しているか、これを受けとめて各都道府県がどのぐらいの計上をしているか、その所要経費をまずお尋ねいたします。
○政府委員(菴谷利夫君) 初任者研修に関する平成三年度予算、今案として御審議していただいていますが、総額でいきますと二百九十六億六百九十万程度でございます。それで、都道府県はまだ合計額は調べておりませんが、これの約倍ぐらいだと思います。
○会田長栄君 それから、もう一つお尋ねしておきたいのは、校外研修の日数、宿泊研修の日数、夏休みの期間中における研修の日数、多いところ、平均、最も少ないところ、これをお尋ねいたします。
○政府委員(菴谷利夫君) 我々が今把握していますのは、校外研修の日数は、四泊五日の宿泊研修を含めましておおむね全国で三十日間の平均でございます。それで、多いところは、小中高で一応別々に申し上げますと、小学校は多いところで四十日、少ないところが三十日、それから中学校では、多いところが四十日、少ないところが三十日、こうなっております。それから長期休業中に係るものにつきましては、平均でございますので小数点を削りますと、小学校で約十日、中学校は約九日ということになっております。高校については、試行ということで把握はまだしておりません。 以上でございます。
○会田長栄君 全国連合小学校長会が平成元年度の初任者研修についての研究紀要というものを刊行いたしました。 そこで、お尋ねいたします。これ、文部大臣お読みになったでしょうか。
○政府委員(菴谷利夫君) 大変恐縮でございますが、きのう夕方から急速いろいろ準備しまして、これ、大臣もほかに忙しいことがございましたので、私どもの方でまだ届けていないわけでございます。大変恐縮でございます。
○会田長栄君 私は、最初申し上げたとおり、井上文部大臣が遊んでくれた先生が忘れられないという、まことに新鮮でなおかつ教育の原点を指し示していることに大変感銘を受けたからそのことを聞いているんですよ。 それだけ申し上げて、具体的にお聞きしますが、それではこの全連小の校長会が研究紀要として発表した中身につきまして、文部省内部としてどういう感想をお持ちですかということをお聞きします。
○政府委員(菴谷利夫君) 私も二度ばかりざっと目を通して検討といいますか、よく読んでみました。全連小の平成元年度におきますこの調査でございますが、先生御承知のように一応二つの項目で調査をしております。「初任者の勤務の実態と研修内容等の調査」、それから「初任者研修の実施状況に関する調査」、いずれも平成元年七月二十日から八月の末までの間で調べたわけでございますが、印象としましては、この分析では、初任研については、「我が国学校教育史上類例のない出来事」ということで「成功に導くよう最大限の努力を傾注している」、そういうような出だしもありますが、「初めての体験であり、それなりの困難点や問題点も派生している」ということで、いろいろなアンケート調査をして整理しておりまして、研修の内容、それからいろいろな条件の整備の問題等、あるいは指導教員、それから初任者本人、さらに代替教員の確保、そういったことについていろいろな工夫やらあるいは問題点を指摘している、こういうことでございます。
○会田長栄君 教員養成委員会が実施した「初任者研修の実施状況に関する調査」の報告の中で、まず一つは、今お答えいただいたように、指導教員は週二回ないし三回、年間六十回以上、特に一回当たり二ないし三時間となっています。特に、一番多いところでは五時間をやる。新採用教員というのはどちらかといいますと、非常に新鮮でしょう、期待も持って来るでしょう、同時に不安もあるでしょう。その中で子供から学び、仲間から学び、そして一日一日進歩しているんですよ。そういう中にあって、とりわけこの現場の校長会の人たちがみずから計画をしてやった中で、こういう報告を出さざるを得ない。これは指導教員も大変でしょう、受ける新採用教員も大変ですよ、これ。 文部省では、鉄は熱いうちに鍛えると言うのかもしれません。しかし、鍛え過ぎたら形残りませんよ。私、そう思うんです。その点で、この報告されている中身について私は真剣に文部省でも検討して対応しなければいけないんでないか、こう思っているからこの問題はお聞きしているんです。見逃すことできない問題なんですよ、これ。どうでしょうか。
○政府委員(菴谷利夫君) 全連小が、平成元年度の初任研に関して、最初の本格実施ということで、その実施状況等を全国の学校の五%でございますが抽出して調査されたということは、我々としても非常に多としているわけでございまして、この内容に関しましては、今後より一層この初任者研修が効果があってスムーズにいきますような観点から大いに研究の材料とさせていただきたいと、こう思っておるわけでございます。
○会田長栄君 それから、初任者研修に伴って増置された非常勤講師の場合、教職未経験者を配置された学校が四〇%近くに上るというんですよ。これはもう問題の結果が出ているでしょう。そのために試行をやったんでしょう。そして本格実施するという年であれば、これは当然、当初皆さんの持っていた考えと現場との間にもろもろの問題がやっぱり出てきているということだけは確かなんですよ。 だから、どのようにこれを真剣に受けとめて対応していくかというのは、私は、この初任者研修制度を導入したときの議論からいっても、あるいは六十三年の五月二十四日、参議院の文教委員会で粕谷照美委員から全会一致の附帯決議が提案されて確認し、その上に立って文部大臣からこの附帯決議というものは真剣に受けとめて対応しますというお話があったでしょう。試行をやって、今本格実施をしてみてこれだけの問題が出てきているというんであれば、私は真剣に受けとめて対応することが現場で悩んでいる、苦労している者に対する文部省のあり方だと思うからお聞きしているんです。それがなかったら変な話です、これ。
○政府委員(菴谷利夫君) 今先生が御指摘のようなこの初任研スタートに当たっての法案審議等、あるいは粕谷委員からのお話その他、一応我々もその後引き継いでおりまして、承知しております。そして当時、非常勤講師に関する確保の点につきましても十分留意をしたつもりでございまして、各県にはいろいろと工夫をしていただくように申し上げました。 例えば、早い時期に退職予定者に個別に働きかけておくとか、あるいはそういう人たちに説明会を開催し、もしできたら登録などしていただく。あるいは校長会などを通じまして教育界一般にその趣旨を徹底して理解をしていただくとか、さらには新聞、ラジオ、広報誌等でPRするなど、一応その当時思いつくようなことは申し上げたわけでございますが、初年度ということもあり、それがすべてではなかったかもしれませんがこういうことに、こういうことにと言いますのは、非常勤講師の確保がなかなかスムーズにいかない点があるということは御指摘のとおりでございます。 今後ともその点は大いに意を用いまして、今言いました方策も含めて、各県、市における非常勤講師確保のいろいろなノーハウがあると思いますので、それを集めまして、そしていろいろなところへ説明をし、普及し、努力していただく、こういうこともやりたいと思っております。 なお、先生おっしゃいました非常勤講師の教職経験に関することでございますが、五年以上の経験というものが我々の把握では六〇%くらいで、五年未満ということで四割くらいというふうに承知しているわけでございます。
○国務大臣(井上裕君) お答えいたします。 初任者研修制度につきまして、平成元年度から各種学校ごとに本格の実施をしているわけであります。これまで各都道府県におきましておおむね順調に実施されているということを私聞いたわけでありますが、今先生のお話がございまして、これからまた円滑に実施していくためには、なお幾つかの今のお話、課題があると思います。 例えば、地域によって非常勤講師の確保やあるいは初任者の負担軽減に一層の工夫、こういうものを努力しなくちゃならない。あるいは教育委員会のヒアリングや関係団体の調査でもこれは指摘されておるところでありますので、これらの点につきましては、今お話がありました非常勤講師の確保の困難なこととか、あるいは初任者の負担が若干大きいとか、そういうことにつきましては今後とも初任者研修制度が円滑かつ効果的に実施されますように、ひとつ各都道府県そしてまた指定都市の教育委員会にお話をして指導してまいりたい、このように考えます。
○会田長栄君 初任者研修制度、試行して本格実施するわけでありますから、試行した段階で問題や課題が出れば、当然早急にそれに対応していくというのは、文部省の、各都道府県教育委員会の責任だと私は思いますよ。しかし、そういう問題は大したことないというように扱われているとすれば、これはゆゆしき問題なんですね。初任者が子供たちに質の高い触れ合いができないからといって導入しているんでしょう。その補充をする補充教員に教職未経験者を充てなければいけない、ましてやその数が四〇%だなどということは、それは仏つくって魂入れないというやつですよ。そういうときにはその対応策というのは早急に真剣に受けとめなきゃ、せっかく文部大臣が教育の原点を指し示すようなことを言っていただいても何ら一つも変わってこないではないか、私はこういう気がしてならないからこれ粘っているんです。どうぞよろしくお願いしますよ。 これは、現職教育委員会でも同じく実施して、初任者の勤務実態と研修内容等の調査結果が出ているんです。これは全国の小学校の校長会がまとめたものですよ。ぜひ早急に手をつけなければ、昭和六十三年五月二十四日、参議院文教委員会、全会一致のもとに附帯決議を上げたこの中身にも誠意をもって対応していないと私は断ぜざるを得ないんですね。 もう一度ここでお聞きします。本委員会で満場一致で可決されたものを本当に尊重して取り組んでいくのかどうかということについて聞かせてください。
○国務大臣(井上裕君) これはもう委員会全員の御希望でございますので、私どもも一生懸命各県教育委員会を指導してまいりたい、このように考えます。
○会田長栄君 それでは最後に初任者研修問題、その基本になってここまで追い詰めているものというのはこれなんですよ、「初任者研修実施要項モデル」、文部省が出した中身ですよ。 したがって、今日、初任者研修が小中高とも本格的実施をされる場合、小学校での校長会のこの教訓というのを私は生かしていかなければいけない。そういう意味ではこのモデル要項というものについて、各都道府県教育委員会に指し示したものも改めて見直さなければいけない時期に来ているのではないかと思うから、その点についてお聞きいたします。
○政府委員(菴谷利夫君) 都道府県や指定都市に実施要項のモデルとして示しましたものにつきましては、御承知のように既に法律で書いてあるものについてそれを確認の意味で書いているも の、それからその法律の趣旨を敷衍すればこのようになるであろうというもの、さらに具体的にたくさん問い合わせがあるであろうものを、大体標準的にはこうするということを整理して示したものでございます。研修がより一層充実するという意味では絶えずモデルについても、永久に不変ではなくて見直すということが必要だろうと思います。 いずれにしても、各部道府県における経験が平成元年、二年となってまいりましたので、そこにおけるいろいろな努力、改善点、問題点等をお聞きしながらいろいろと検討をしてみたい、こう思っておるわけでございます。
○会田長栄君 初任研の問題については、要するに今私が指摘したような問題もある。とりわけ研修の日数が多過ぎる。だから、新鮮な若い先生の自主性、創造性というのも尊重されないようになっている。その点は、せっかく導入したと、こういうことなんだけれども、問題があり過ぎるような気がしてならない。しかし、校長会は成果も同時に報告している。私は、どうしてもこの制度そのものは、このモデルを出したところの原点からもう一度見直すべき時期に来ているのではないかと見ているから、ひとつこれだけは私の意見として申し上げておきます。 それでは次に、初任者研修と関連をいたしまして育休の問題、改めて代替教員の問題についてお尋ねいたします。 初任研実施に伴って条件つき採用期間が六カ月から一年間になりましたね。そのために育休がとれない状況というのが起こってきています。これは、初任研実施前はそういうことはなかった。その点で、この考え方というのは文部省で把握しておりますか。把握しているとすれば、これに対する対応はどうなっていますか。これは義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律というところに実はあるわけなんでありまして、その点については女性差別撤廃条約と関連をして、ひとつ前向きに文部省がとらえて対応する必要があると思うからお尋ねいたします。
○政府委員(菴谷利夫君) いわゆる条件つき採用期間が一年に延びましたのは、もう御承知のように一年の初任研を導入したことと関連してでございますが、現行の育児休業法上、条件つき採用期間中の者に育児休業が認められないのはおかしいではないかという趣旨だと思いますが、教育職員について育児休業が認められている趣旨は、義務教育諸学校の女子の教育職員の職務の特殊性、その女子教員が職務に慣熟している時期に中途退職されるということについては学校としても非常に重要でございますので、中途退職することなく育に専念するということによってその後も継続勤務をできるようにする、これが御承知のような理由でございます。そういう意味で、法制上いきますと、条件つき採用期間中の職員についてはまだ慣熟するに至ってないということで、そこでは条件つきの職員は想定していないというのが制度の説明でございます。
○会田長栄君 それだから、例えば初任研が実施される前は、採用されて半年後でも育休がとれたんですよ。ところが、初任研が実施された後はなかなかうまくいかないというケースがあるから、せめて女性差別撤廃条約というものを批准している状況を踏まえれば、ここは文部省でも柔軟に対応してやるべきときに来ているんじゃないですかという意味のことを含めての質問なんですよ。
○政府委員(菴谷利夫君) 六十三年度までの育児休業に関する取得状況、これは先生おっしゃるとおり、我々も調査がありますけれども、申請をすればまず例外なく育児休業と、こうなっております。平成元年ないしは二年に関する調査はまだこれからでございますので統計的な面はございませんが、今までそういう、私ども限りではございますが、とれなかったというようなことは、もちろん調査してみなければわかりませんが、まだ耳に達してないということでございます。 そして、今の点に関しましては、女子教員ということもございましょうが、制度全般との関連もあると思いますので、ここでにわかにどういうふうにということをお答えするのは差し控えさせていただきたいと思います。
○会田長栄君 時間が短いから言えないんだけれども、要するに初任研対象者の教員でも結婚する権利はある。結婚すればお産する。当たり前なんですよ、これ。初任研対象中は結婚してならない、お産してならないなんていったら、これはおかしなものですからね。しかし、現実にはそうではないんですよ。正確に調査してください。全国で一人か二人などという例外じゃないんです。それはやっぱり例としてあるんですね。私が知っている範囲で二十二件あるんです。 だから、その点ではやはり私は前向きに、育児休業法が政府提案で可決されるような国会状況になっているでしょう。そのときに、今まであるところでこういうものに対応しているようでは私はいかぬじゃないかと。もう少し柔軟に文部省は対応して指導していったらどうなんですかという意味でありますから、どうぞ、今までは全然なかったではなくて、私はありますとこう言っているんですから、これは大事なところですからひとつ頼んでおきますよ。 これと関連をして、前回私はこの委員会でも質問しましたけれども、義務教育諸学校等の女子教員、保母等の育児休業に関する法律の第三条の第二項を理由にして、いまだに産休、育休すべて代替を自分で見つけてこいという声は消えません。これは、前回、そういうことのないように指導してくれるということだから、私もその心配は解消いたしましたが、その点はひとつ改めてお願いしておきます。
○国務大臣(井上裕君) 新たな育児休業制度が現行の水準を下回ることのないように、これは我々としても希望しておりまして、必要に応じ関係省庁と協議してまいりたい、このように考えます。
○会田長栄君 それから、教育職員免許法改正によって、十五年ゼロ単位の中で産休が今まで通算されてきたんですね。ところがされなくなったでしょう。この点について、対応できるように研究していただけませんか。
○政府委員(菴谷利夫君) 免許法改正は、六十三年の十二月にありましたが、あれは十五年ゼロ単位という、ある意味で自動的に現職におりさえすれば上の、上といいますか二級から一級という上進制度を廃しまして、若干の単位を要求すると、もちろん経験年数によって逓減いたしますが、そういう制度でございます。 今ちょっと私聞き取れなかったのは申しわけないんですが、産休期間、育休期間が抜けると、こういう意味でございますか。
○会田長栄君 産休が通算されないでしょう。――時間なくなっちゃったので、終わりだ。 それじゃ、ひとつよろしく。
○秋山肇君 この委員会室の周りを見ますと、今数えてみましたら二十二の永年勤続の先生方の肖像画がかかっております。私の正面にありますのは岩間正男先生の肖像画であります。今、五十数年前の小学校の入学式のことを思い出していたんですが、私は世田谷区の塚戸小学校というところで小学校一年から六年まで岩間先生に六年間持っていただいたわけであります。ことしは桜がおくれておりますから、入学式に桜の花は東京でもまだちょっと早かったかもしれませんが、私どもの子供のころは、たしか小学校の入学式というと桜の花が満開で、校庭にあった大きな桜が満開だったなというふうに今思っております。大臣もおっしゃっておる遊んでくれた先生という意味からすると、何か勉強の思い出、何年に何を教わったかなどというのは思い出さないですね。 御存じの方もいらっしゃると思いますが、岩間先生は宮城師範を出られて神宮の大会に出られた短距離の選手でありまして、私どもも一年生のときから、小さな校庭でありましたけれども駆けっこをやらされて、小学校四年のときには、六年生はもとより高等科の連中とやってもリレーは我々の方が速い、走り幅跳びは当時の小学校の記録を 破っているというような、スポーツで猛烈なスパルタ教育を受けたわけであります。そして、最近またドッジボールがはやってきましたけれども、冬の寒いときは一時間目は勉強しないで必ずドッジボールをやる。一時間目に体を温めて次から勉強に入るというような、そういう先生でありました。今は思い出になりますから申し上げておきますが、先生にはライオンというあだ名をつけまして、ライオン、ライオンなんて言う。先生なんて言わなくてもライオンと言うと、おうなんて答えるような、そういう先生であったわけです。戦後の先生の組合活動、政治活動というのはもう皆さん方十分おわかりだと思います。 そんなことを思いながら、大臣がおっしゃっている気持ちというのも私も同じだなと。そういう先生が今小学校の先生にいらっしゃるのかなと。私も、そういう意味では丈夫な体にしていただいたし、勉強の基礎というのをしっかりとたたき込んでもらった先生でありまして、そういう先生の前で何か質問をするというのは、お前だらしない、いいかげんな質問をするなよと言われているような気もしながら、本題に入りたいと思います。 今回の平成三年度予算案について、その概要及びポイントを文部省にお伺いいたします。また、この予算案について文部大臣はどのような所感をお持ちでしょうか。
○国務大臣(井上裕君) 今先生お話がありましたですが、私実は――校庭の桜はやわらかいつぼみを帯びております。四月になったら、この桜の花も満開になるであろう。この桜の花とも別れていかなければなりません。私、昭和十五年に卒業式で読んだ答辞の一節ですけれども、ちょうど半世紀たちますが今まだ覚えております。これは雑談になりますが。 今の先生のお話ですが、御案内のように、文部省予算につきましては非常に厳しい財政の中で、四十人学級を初めといたします第五次教職員定数改善計画の達成、また公立学校施設の整備、あるいは私学助成の推進、さらにまた科学研究費の拡充、留学生交流推進体制の充実、生涯学習、また文化・スポーツの振興、こういう必要な予算が措置されているわけであります。 御案内のように、財政厳しい中でありますが、二千五百七十二億という増、全体が五兆五百五十九億四千四百万。私どもとしてはもっともっとということでございますが、全体が今一般歳出四・七%のうち五・四。これは昭和五十五年度から十一年ぶりで、五・七%あった、そこまではいきませんでしたが、しかしもっともっと予算を欲しかったわけでありますから、今の状態でこれからもひとつ予算獲得には頑張りたい、このように考えております。
○秋山肇君 政府全体の一般歳出に占める文教予算の比率は近年低下を続けていましたが、平成三年度予算案でようやく微増となり、今後新しい時代の変化に対応して教育改革を進めていくためにも、また生涯学習、生涯スポーツ、文化の振興など新しい行政需要にこたえるためにも文教予算を重視し、質的な拡大のみならず量的な拡大を図っていかなければならないと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(井上裕君) まさに先生言われるとおりでありまして、これは私どもやはりこのシェアの問題、一三%台を今行っておりますが、そういう中で、厳しい財政の中でありますが、今おっしゃったような生涯学習の問題であるとかいろいろな諸問題を、やはり予算がなければできないことでありますから。 ただ、やはりこれは私どもの半分、五四・一%、二兆七千三百六十一億というものは義務教育、こういうことに充当する中で、あと残った予算の中でやるわけでありますから、非常に厳しい財政のもとで大変だと思いますが、今先生が言われたとおりのことを前向きでひとつ検討いたしたいと思っております。
○秋山肇君 次に、生涯スポーツの振興についてお伺いします。 近年、高齢化社会への移行、都市化の進行、国際化、情報化の進展など、国民生活を取り巻く社会環境が大きく変化していることは大臣も御承知のことと思います。二十一世紀に向けて今後とも我が国が活力ある社会を維持し発展していくためには、国民が健康な心と体を持つことが不可欠だと思います。スポーツは心と体の健全な発達を促し、明るく心豊かな生活を営む上で重要なものであり、今後国民一人一人が生涯を通じてスポーツに親しむことができるような体制の整備を図ることが急務であると考えます。生涯スポーツ振興の重要性について、文部大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(井上裕君) スポーツは、今まさに先生おっしゃったとおりでありまして、心と体の健全な発達を促すとともに、明るい豊かな社会をつくるために、活力に満ちた生きがいのある社会、この形成にまさに必要であります。特に、近年高齢化の進展やあるいは自由時間の増大、これを背景といたしました生涯スポーツ、この関心が非常に高まっております。今後とも私は、国民の一人一人が日常生活の中で生涯にわたりまして積極的にスポーツに親しむことができるように、必要な施策を講じたい。 幸い、平成二年の補正予算におきまして、スポーツ振興基金をつくっていただきまして、この問題でやはり私は、生涯教育のスポーツにも幅広くそういうものを使わせていただいて、ぜひそういうことで皆さんの健康即高齢化に対します対応と、そういうことも考えております。
○秋山肇君 生涯スポーツの推進のためには、国民が日常的に利用できる体育館やプールなどのスポーツ施設が整備されていることが必要ですが、現在我が国のスポーツ施設はどの程度整備されておりますでしょうか。また、文部省としてどのように整備を進めていくつもりなのか。スポーツ施設の現状と、その整備方針をお伺いいたしたいと思います。
○政府委員(野崎弘君) お答えいたします。 現在、体育・スポーツ施設の設置状況、これは昭和六十年の数字でございますが、総数で二十九万二千カ所ということになっております。このうち公共スポーツの施設が六万カ所、そして体育館はそのうち五千五百カ所、水泳プールが三千カ所、野球場が四千七百と、こういうような現状になっております。このうち公共スポーツ施設につきまして、前回の調査が昭和五十五年でございますが、この六十年との比較をしますと、五十五年が二万九千ということで、ほぼ五年間に公共施設が倍になっている、こういうような状況でございます。 今後どういう考え方でこの整備を進めていくかということでございますが、平成元年十一月に、保健体育審議会から、「二十一世紀に向けたスポーツの振興方策について」という答申をいただいたわけでございます。その中にスポーツ施設の整備の指針が示されておりまして、地域の施設、市区町村域の施設、そしてさらに大きく都道府県域の施設という三つの施設の区分を設けまして、それぞれの機能を持った施設を整備していく必要がある、こういうことが示されたわけでございます。私どもといたしましてはこの方針を踏まえまして、各地方公共団体がスポーツ施設の計画的な整備を図るに当たりましては、財政事情等も考慮しながら、所要の財源の確保に努めてまいりたいと、こういうふうに思っておる次第でございます。
○秋山肇君 国民が安全にスポーツを楽しむためには、正しい知識と技術を持った指導員、トレーナーによる適切な指導が受けられる体制を整備する必要があると考えます。 文部省では、最近社会体育指導者の資格認定制度を整備したと聞いておりますが、その概要及び現在の状況についてお伺いいたします。 また、近年はスイミングクラブやエアロビクス教室、ゴルフ練習場などの民間事業者によるスポーツ施設がふえており、生涯スポーツの振興に大きな役割を果たしていますが、これらの施設の指導員や、スキーやゴルフ、テニス等のレッスンプロについて、その資格のあり方や資質、指導力 の向上、あるいは社会的地位について、文部省としてはどのようにお考えでしょうか。
○政府委員(野崎弘君) まず、社会体育指導者の資格認定制度でございますけれども、これは保健体育審議会の建議を受けまして、昭和六十二年の一月に、「社会体育指導者の知識・技能審査事業の認定に関する規程」、こういうものを設けまして、スポーツ団体が行いますスポーツ指導者の養成あるいは資格付与事業のうち、一定の基準に達したものにつきまして、スポーツ指導者の資質向上を図る上で奨励すべきものを文部大臣が認定する、こういう制度として創設したものでございます。 現在、と申しますか平成二年の五月現在でございますが、四十一種目について認定を行っておりまして、現在この資格を取得した者が一万三千九百人ほどおるわけでございます。 さらにその中で、今先生御指摘ございました商業スポーツ施設の指導者につきましても、御指摘のようにそういう指導者の養成確保が大変大事なわけでございまして、これにつきましても資格認定制度を設けておるわけでございます。 これまでのところゴルフ、水泳、スキー、テニスの四種目につきましてこの認定を行っておる次第でございまして、現在これによりまして四百五十人近くの者がその資格を取得している、こういうような状況でございます。私どもとしましては、この認定制度を活用しながらその資質あるいは社会的地位の向上を積極的に図っていきたい、このように考えております。
○秋山肇君 スポーツの指導員が適切な指導を行うためには、スポーツやその体に与える影響等に関する科学的な研究に基づいて指導方法が確立されることが必要であります。特に、だれもがスポーツに親しむためには、年齢や体の状態、運動歴などに応じた適切なトレーニングや練習方法等の研究が急がれると思います。文部省ではどのような施策を講じておられますか。
○政府委員(野崎弘君) スポーツの科学的研究に基づきます指導方法の確立、これは大変私どもも大事なことと思っておるわけでございます。財団法人の日本体育協会がスポーツカリキュラムの開発等のスポーツ医・科学研究というものを実施しておりまして、それに対し国といたしましても補助を行い、科学的な指導方法の研究の推進に努めているところでございます。 その研究と同時に、やはりそれは現実に国民の場に指導するということで生かされなきゃならないわけでございまして、そういうことで国民の年齢、性別、体力等に応じたスポーツプログラムの提供、相談、そういうものに応じることができるスポーツプログラマーの養成というのも行っているわけでございます。このスポーツプログラマーにつきましては、先ほど御答弁申し上げました認定制度の中でその認定を行っているわけでございますけれども、さらにその充実を図るということで、平成三年度からは、都道府県がスポーツプログラマーの養成をするに必要な経費につきましても計上をさせていただいているところでございます。 なお、文部省では、このスポーツ科学の研究、科学的トレーニングの場の提供等を行います中核的施設が必要であろうということで、現在国立スポーツ科学センターを設置する計画を推進しているところでございます。これはもちろん我が国の教育水準の向上ということがねらいにあるわけでございますけれども、同時にそれは生涯スポーツの分野においても幅広い活用ができるのではないか、このように考えている次第でございます。
○秋山肇君 いろいろなスポーツの普及に伴って運動障害を起こしたり事故を生じたりというか、そういうものが多くなることが予想されます。このため、運動障害の予防や治療方法の確立、スポーツに特有の事故の治療方法など、スポーツ医学の研究を進める必要があると思います。 現在、大学でスポーツ医学に関する講座等は置かれていますでしょうか。また、このような講座等の設置や研究の推進について、文部省の方針はいかがでしょうか。
○政府委員(前畑安宏君) 大学においてスポーツ医学にどういう取り組みをしているかということにつきましては、ただいま御指摘の一つにはスポーツ障害の予防と治療、さらには運動機能の向上、そしてまた一般人の健康管理、こういった問題があるわけでございますが、医学部におきましては現在のところスポーツ医学といった講座を設けている例はございません。一般的に整形外科であったり、あるいは公衆衛生学といった講座の授業の中でそういったスポーツに係る事項、障害といった問題を取り扱っているというふうに承知をいたしております。しかしながら、体育学部の関係におきましては、国立大学においてもスポーツ科学とかあるいは健康教育学といったような講座を設けて授業を行っておりますし、また私立大学の体育関係学部でも、授業科目としてスポーツ医学といったものを幅広く取り上げておるところでございます。 大学がそれぞれどういうふうな講座を設け授業科目を設定するかということにつきましては、具体にそれぞれの大学で判断をすべき問題でございますので、私どもとしてはこれに対して基本的には容喙をできない立場にありますが、各大学の自主的なそういった取り組みがあれば、これについては支援をしてまいりたい、このように考えておりますし、ただいま体育局長から答弁がございましたスポーツ科学センターといったようなものが設置をされますれば、そこで鋭意スポーツ医学についても推進が図られると、このように期待をいたしております。
○秋山肇君 大臣、今のスポーツ医学の問題ですね。これだけ生涯スポーツも含めて国民が全員スポーツに参加するというような時代になってきているわけですから、今のお答えでいろいろなあれがあるというのはわかりますけれども、国立大学、例えば筑波大学のような、体育学部を一応持っている、また医学部もあるというような、そういうところでとりあえず国立として取り組んでいくというお考えはありますでしょうか。
○国務大臣(井上裕君) 筑波大学ではきっとやっております。
○秋山肇君 スポーツ医学の学部というのはあるんですか。ないでしょう、スポーツ医学部というのは。体育学部はあるんですけれども。
○国務大臣(井上裕君) 筑波大学では体育専門学群というところで、講座名は体育科学系、それで授業科目は運動医学ということでやっております。
○秋山肇君 これはもう通告なしでやりますけれども、例えば私学でということで、早稲田だとすれば人間科学部だとか、今のに類するようなことをやっている学部を新設しているところはあるわけです。 私が言いたいのは、今も大臣のお答えの中にある、医学部の中で整形外科を専攻される人が、体協のスポーツ診療所でスポーツ医やっているから、水町先生なんかがスポーツ医学やっているのかなというと、そういう学部は全然ないというふうに私は素人なりに思っていますけれども、もうこの時期になってくると、やっぱり医学部の中にもそういう専門の部というか、科というのか、その辺をお考えになってもいいんじゃないかなと思ったものですから、あえて質問しているんですが、いかがなものでしょうか。
○政府委員(前畑安宏君) 医学に対するいろいろな御要望というのは、当委員会でも針生先生から東洋医学といったようなお話も承っております。 現在、医学部は専門四年間で四千八百時間という授業時間が原則的に行われておりまして、これは土曜日を四時間といたしますと、月曜日から金曜日までが六時間という授業時間になるわけでございます。その中でどういうふうな授業の充実を図るかということについても、いろいろな方面からいろいろな御意見がございます。新しく授業時間数をふやすというのは大変難しい状況にありますが、現在、先ほどもお答え申し上げましたが、講座としては設置をされておりませんけれども、それぞれ筑波大学におきましてもスポーツ医学と いうものを授業時間の中に取り入れてやっておるわけでございまして、全体としての医学教育の中でどういうふうな授業科目を取り上げていくかということにつきましては、いろいろと御要望のある中で、これをさらにふやしていくということにつきましては大変難しい問題があろうと、このように考えております。
○秋山肇君 システムとして、また文部省として取り組むというのはなかなか難しいのかというふうにも思いますけれども、この生涯スポーツということが予算に入ってきて、いろいろな形でスポーツが皆さんの中に浸透しているわけですから、整形外科を専攻して出てくる方だけじゃなくて、逆に言えば今のお話は、筑波大学にしても、我々が大学で運動部のころにやったトレーニング方法と今は違っている。そういうトレーニングじゃない。また、スポーツに全然かかわったことのない人たちが入りやすいというか、けがのないスポーツのやり方。どちらかというと昔運動をやっていた人は、会社の運動会なんかで走りましてアキレス腱を切っている。片側だけならまだいいけれども、両足を切ったというような人もいるわけですよ。 例えば、オリンピック選手で、この間新聞に出ていた私の後輩の飯島あたりも、百メーターの日本記録を持っていたのがアキレス腱を切っているわけですね。そういうようなことが一般の人にあってはいけないから私はくどいことを言っていますけれども、何かこれはぜひひとつ前向きに大臣お考えをいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(井上裕君) この間、予算委員会のときもお話が出ましたが、形成外科とか整形外科とか内科とか、こういう縦割りの講座は全部できているんですが、一つの講座を持つというのは財政的な問題でやっぱり大変だと。そういう中で、この整形外科あるいはまたいろいろな一般外科の中で、横のそういうスポーツ医学の問題、そういう問題は考えてできると思います。
○秋山肇君 あと、国際交流に関連して質問を用意しているんですが、時間がありませんから、これで終わります。
○針生雄吉君 私は、学校教育における性教育のあり方について二、三の質問を通じて問題提起をしたいと思います。 最初に、学校教育における性教育の必要性を文部省としてはどう認識し、どう対処しようとしておられるのか、お伺いいたします。
○国務大臣(井上裕君) 学校におきます性に関する指導におきましては、発達段階に応じて科学的知識を与えるとともに、人間尊重と男女平等の精神に基づいた生き方をみずから身につけていくことを支援することが重要と私どもは認識をいたしております。 こういう観点から、保健体育、あるいは家庭、さらに道徳、そしてまた特別活動などを中心に教育活動全体を通じ、性に関する指導を行うこととしておりまして、これは新学習指導要領においても、思春期の心身の発育あるいは発達に関する内容をさらに充実させております。今後とも各種指導資料の活用あるいは教員研修会の開催を通じ、地域や学校の実情に応じまして性に関する指導の充実に努めるよう指導してまいりたい、このように考えております。
○針生雄吉君 性教育に関しましては、家庭教育あるいは社会教育との協力体制が非常に大切であるとか、学校教育にすべての責任を負わせるべきではないというようないろいろな意見もあるわけでございますけれども、教育の目指すべき目的の一つとして生命の尊厳への態度の涵養ということが挙げられると思いますので、その点からいっても精神的、基本的な方向性の検討、確立と同時に、医学的、学問的な成果も取り入れて、それらの知識を導入して学校教育における性教育の現場をリードしていくという姿勢も大切ではなかろうかと思います。 次に、厚生省の方に来ていただいておりますので、二点お尋ねしたいと思います。 最初に、優生保護法による指定医から届け出のあった人工妊娠中絶実施の件数についてお尋ねをいたします。特に、二十歳未満の年齢層における過去十年間の人工妊娠中絶実施の実数の推移をお示し願いたいと思います。
○説明員(廣瀬省君) お答えいたします。 人工妊娠中絶件数は、直近のデータである平成元年におきまして四十六万六千八百七十六件となっております。その十年前の昭和五十五年は五十九万八千八十四件でありまして、人工妊娠中絶件数は過去十年間におきまして徐々に減少傾向にあると言えると思っております。 昭和五十五年と平成元年の年齢階層別の人工妊娠中絶件数を比較いたしますと、ほとんどの年齢階層におきましては件数が減少しておりますが、四十歳から四十四歳までが五万二百八十件から五万四千四百九件へと、また二十歳未満が一万九千四十八件から二万九千六百七十五件へと増加をしております。 以上でございます。
○針生雄吉君 今も挙げられました数字からおわかりのように、こういう傾向、二十歳未満の年齢層においては実数として二万九千件、これは全体の人工妊娠中絶数が減っている傾向に反しまして実数としては増加しているわけであります。また、ある研究者の報告によりますと、特に十八歳、十九歳の年齢層においては、人工妊娠中絶を受けたことのある人の比率がこの十年間で倍増しているという数字も挙げられるわけであります。十八、十九歳といえば、高校生活を終わって大学生あるいは社会人になったばかりの年齢であります。ここで、中等教育までの間に正しい受胎調節の知識をもっと教えておくべき必要性があるのではないかとも思われるわけであります。 まあ皮肉っぽいことを言う人は、十代の妊娠中絶数が急激に外国のようにふえないのは、この程度の増加で抑えられているのは、性教育が徹底していないからだと。性教育を徹底したらもっとふえるだろうと、そういう見方をする人もいるわけでありますけれども、しかし私は、この十八、十九の年齢層における人工妊娠中絶の実数、比率の低下というものは性教育の一つの目標であり、また性教育の効果のメルクマールとして意味があると思っております。 次に、厚生省の方に続いてお尋ねいたします。 民間団体によるものやあるいは公的機関によるものなどいろいろ形はあると思いますけれども、思春期の男女青少年を対象としたいわゆる電話等による相談システムが全国的にあるわけであります。思春期精神保健相談とか性の悩み電話相談とかこうありますが、厚生省が予算措置をして委託をやっているものはないということでございますけれども、厚生省として思春期の男女青年が抱いている性に関する悩みはどんな項目についてか、掌握しておられる点があれば、お持ちのデータがあれば、そのうちの男子の小中高校生の性の悩みベストスリーを挙げていただきたいと思います。
○説明員(廣瀬省君) お答えいたします。 厚生省関係では、精神保健センターにおける心の電話相談、それから思春期精神保健相談等で性の悩みに関する相談についても応じておりますほか、平成三年度予算案において新たに保健所における性の悩み相談事業を盛り込んだところでございます。 先生の御質問のところでございますが、残念ながら現在のところこれらの相談事業における性の悩みに関する具体的相談内容についての統計を持っておりませんが、ある産婦人科医師が行った性に関する相談についてのデータによりますと、二十歳未満の男性からの相談件数千八百十一件のうち一番多いのはマスターベーションに関するもので三百九十六件、二一・九%、次に、性器の形や大きさについて三百十六件、一七・四%。三番目に、包茎二百八十五件、一五・七%という結果が出ております。 以上でございます。
○針生雄吉君 私の手元にあります宮城県の教育委員会の社会教育課での思春期電話相談、平成元 年度の男子小中高校におけるベストスリーも、やっぱりマスターベーション、射精に関するもの、性器の形に関するもの、包茎に関する質問と、そういうふうになっております。ありがとうございました。 さて、指導要領の改編に伴って性教育のあり方の検討も加えられつつあると思いますけれども、文部省として性教育のガイドラインを示す「生徒指導における性に関する指導」という生徒指導研究資料がありますけれども、これを改訂するとか、あるいは保健体育その他の教科書の改訂も行われることと思います。 私は、中等教育修了までに、男女ともにでございますけれども、受胎調節、避妊に関する正確な知識を学ぶように指導すべきではないかと思うのでありますけれども、来たるべき改訂に際してその方向性をよりはっきり打ち出すお考えはありませんかどうか、お尋ねをいたします。
○政府委員(野崎弘君) 方向性と申しますか、新学習指導要領、既に告示をされておるわけでございまして、今移行期間に入っておるわけでございますが、私ども基本的考え方は、性の知識というものを適切な時期に提供していくということがやはり大事だと、このように思っておるわけでございます。 そういうようなことから、小学校では体育の時間で思春期の体つきの変化とか、それから中学校では教科「保健体育」におきまして二次性徴、道徳で男女の人格尊重、あるいは特別活動での性的な発達への適応などを扱うことにしております。そしてまた、高等学校では、教科「保健体育」で思春期・結婚と健康、あるいは教科「家庭」で母性の健康と生命の誕生、特別活動で男女相互の理解と協力などというようなこと、そういうふうなことで発達段階に応じた指導ということを重視していきたい、このように思っております。
○針生雄吉君 性教育でいろいろな項目があるわけでございますけれども、避妊という方法を、ぜひとも実際に効果のある方法を強調していただきたいし、また実際に用いる方法についても知識として、まあそれを選択するかどうかは別として、知識として教えるという方向にいかなければならないと思います。 例えばピル、経口避妊薬に関しましても、ミニピルと言われる副作用の非常に少ないピルも来年早々には一般に出ると思いますし、あるいは子宮内挿入器具、子宮内装着器具と言われるIUD、そういったピルであるとかIUDであるとか、そういう効果的な方法があるんだということをしっかり初等教育の間から教えておくというのも、その人工妊娠中絶を減らすという意味においては大変有効なことだと思います。もちろんコンドームというのもありますけれども、これは失敗率、妊娠率が七%から二八%と言われておりまして、これはエイズの予防などには非常に効果的なわけでありますが、そういった避妊の方法を具体的に教えてあげる方向性というものも考えていただきたい。御検討をいただきたいと思います。 また、マスターべーション、射精に関しましても、男の子供たちに現場の電話などを通じて性教育や性の悩みの相談に携わっている人々の実感としては、男の子の場合はもう性教育イコール射精教育だと言う人もいるぐらいでありまして、大変重要なポイントでもあるわけであります。六十一年度版の指導資料でも、あるいは指導事例の中でも、かなり詳しく論ぜられておりますけれども、マスターベーションあるいは射精に関する指導に関しましてもさらに議論を深め、医学的な考え方の変化なども勘案して適切な指導ができるようにすべきだと思います。 その他、学校教育における性教育の充実のために、例えば担当の先生方に対する研修を強化すべきであるとか、あるいは学校医に準じてコンサルタントの専門医を協力医としてお願いする問題であるとか、あるいは性教育用の教材、副教材としてスライドとかビデオの分野でも、文部省推薦のビデオがあってもいいのではないか。レンタルショップから借りてきて親子ともどもに性教育のビデオを見るなんていう時代が来ないとも限らないと思いますけれども、そういうような文部省推薦のビデオという構想であるとか、いろいろな問題がありますけれども、また別の機会に提言をさせていただきたいと思います。 きょうはありがとうございました。
○高崎裕子君 春が過ぎまして夏が来ますと水泳のシーズンになりますが、北海道にとって切実なプールの問題についてまずお尋ねいたします。 北海道は学校のプール整備自体がおくれておりまして、小中学校は全国最低。これ自体大変問題なんですけれども、それに加えて夏が短くそれほど暑くならないという北海道の特殊性から、プールの使用期間というのは非常に限られております。道東では一カ月にも満たないという状況なんですね。そこで、プールがある学校では、その利用期間を延長するという目的でプールに上屋を設置しています。この上屋建設には三分の一の国庫補助が出ることになっているんですけれども、実際の補助率というのは極端に低いというのが現状です。 例えば、昨年建設された小樽市の西陵中学校の場合ですけれども、プール本体が建設費で八千八百十五万円に対して国庫補助が一千二百五十三万と、補助率で一四・二%であるのに対して、上屋については三千百八十九万円に対し国庫補助が二百三十六万と、補助率がわずか七・四%で、本体に比べて約半分ということなんですね。北海道のような寒冷地にとっては、上屋があることで二カ月以上プールの使用期間が違ってくるということでは、児童生徒の健康や体力づくりに必要不可欠なものということで、おくれているプールの整備を促進するためにも特に上屋の補助について改善すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(野崎弘君) 今先生御指摘ございましたように、積雪寒冷地などで利用期間の延長などを行い施設の効率的な利用を図る、こういうことで水泳プールの上屋の補助を行っておるわけでございます。 金額が低いんではないかという御指摘があったわけでございますが、平成三年度の予算案におきまして建設単価、一平米でございますが、一平方メートル当たり一万二千百円ということで、対前年度二・六%のアップを図ったところでございます。
○高崎裕子君 改善に努めておられるということは重々承知の上で、しかし、下と上屋の補助率が今言ったように極端に違う。北海道の場合は、雪が積もるというその重みで鉄骨が曲がらないようにする必要があるものですから、雪に備えるためにどうしても頑丈なものをということになると、上屋の建設だけでやっぱり二千万、三千万という莫大な費用がかかるわけですね。これはもう特別なものをつくるんじゃなくて、そうしなければプールとしてはずっと使っていけないということですので、これぜひ、これは行ってみないと本州の方にはなかなかわかってもらえないということもありますので、これから国会が終わりましたらぜひ大臣も現地に足を運んで調べていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(野崎弘君) 今先生の御指摘ございました点、私どもとしても一生懸命努力をしたいと思っていますが、何分全体の財政状況があるわけでございますので、その中でできる限りの努力をしてまいりたいと思います。
○高崎裕子君 北海道のこういう特別な事情を考慮しまして、ぜひこれからも努力をしていただきたいと思います。 次に、学校ではなくて社会体育関係のプールの場合は、これは全く国の補助が上屋についてはないんですね。しかし、今何度も述べましたが、積雪寒冷地にとっての上屋というのはもう必要不可欠なものだという点で、今各自治体が大変努力をしてプールに上屋を設置しているんですけれども、社会教育関係については全く補助がない。これはぜひ補助をいただきたいというのが各自治体の切実な希望でもあります。この点をぜひ検討していただきたいんですけれども、いかがでしょう か。
○政府委員(野崎弘君) 社会体育施設の野外の施設につきましては、確かに上屋の補助が現在ないわけでございます。ただ、この問題につきましては、今全体の財政状況というのはやはり大変厳しいわけで、プールをつくりたいという希望も大変多いという中で、新たな補助制度をつくることにつきましてはやはり慎重な検討が必要じゃないかと思っております。 なお、社会体育施設につきましては、屋外のほかに屋内の水泳プールにつきましての補助を行っておるわけでございまして、そちらの方は単価も高くしておるわけでございます。社会体育施設ということになりますと、やはりこの年間の利用とかいろいろなことを考えますと、むしろ屋内の施設というようなことも考える対象としてあるんじゃないかと、このように思っております。
○高崎裕子君 保健体育審議会でも、考え方としては学校はこれから屋内プールをというふうにも方向づけされておりますし、一番いいのはやっぱり屋内プールだと思いますが、しかしそれはもう大変多額な費用がかかり、財政状況が厳しい地方自治体にとっては大変な負担になるということで、当面やっぱり上屋に補助をということが現実的な問題として切実になっておりますので、大蔵省との関係とかいろいろあるかとは思いますけれども、ぜひ前向きに検討していただきたいということを希望しまして、次の質問に移りたいと思います。 国連・障害者の十年最終年を前に、我が国は五百万を超える障害者と家族がいるという中で、一部に前進は見られるんですけれども、全面参加と平等ということからいうと非常にほど遠い現状にあるということで、まさに国の責任が問われてくる問題だろうと思うんです。養護学校高等部の整備等についてはこれまでも質問して、まだまだ問題はあるんですけれども、きょうは障害児の卒業後の進路の保障という点でお尋ねします。 人事院の方にお尋ねしますが、国家公務員の点字試験の問題です。今年度の国家公務員の採用試験の一部に点字試験を実施するということ、これは関係者の方が本当に十年以上も待ったということで大変喜んでいらっしゃるんですけれども、実施される試験でまたやっぱり問題点があるという指摘もなされておりまして、その一つが試験時間なんですね。点字を読む触読には大変時間がかかる。さらに、試験では長文を読んで空欄を埋める問題で、空欄を探すのに時間がかかるし、点字は消しゴムで消したりできないので、まあ難しいということがハンディとしても実際にあるわけですね。 現実に点字試験が導入されている司法試験とか大学入試センター、大学、あるいは自治体で神奈川県等々では、解答時間というのを全部一般の一・五倍にしているんですね。ですから、共通して一・五倍。ところが、今回の国家公務員の採用試験では三分の四倍、つまり一・三三倍ということで、これは要するに門戸は開かれたけれども、通常司法試験などは一・五倍、入試もそうなっているのに一・三三倍ということは、門戸は開いて試験は受けたが、試験時間との関係では結果的には受からなかったということにはならないのかということで、関係者が大変この時間の関係で危惧もされているんです。これ、公示直前ということで時間的にはまだちょっとは時間があるということで、これはぜひ改善していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○説明員(尾木雄君) 人事院といたしましては、近年の障害者に対する社会通念の変化にかんがみまして、今年度から国家公務員採用試験の一部につきまして新たに点字試験を実施するということにしたわけでございます。 今お尋ねの解答時間のことでございますけれども、点字の場合は、墨字、いわゆる漢字仮名まじり文に比べまして読み取りに時間を要するといった点を考慮いたしまして、その解答時間につきましては一般の場合よりも延長するということで実施することを考えているわけでございます。この場合に、今まで実施してきておりますⅠ種試験、Ⅱ種試験につきましては、一日の拘束時間が一次試験の場合で八時間というふうになっておりまして、この時間を延長することにつきましては、点字による受験者の肉体的あるいは精神的な疲労度等の問題を考えますと、一日の試験の中で設定する時間を余り長時間とすることはいかがなものであろうか、適当ではないという考え方のもとに、今回三分の四倍で実施するというふうにしたわけでございまして、その結果、一日の拘束時間はそれでも約十時間ということになっているわけでございます。 今御指摘がございましたように、司法試験あるいは大学入試センター試験、さらには地方公共団体の職員採用試験におきまして、二分の三倍で解答時間が実施されているではないかということでございまして、この点については人事院としてももちろん承知しているわけでございますけれども、仮にⅠ種試験の第一次試験を同様に二分の三倍というふうにした場合には、拘束時間が十一時間と、朝八時三十分から始めまして夕方七時四十五分というようなかなり長時間になるわけでございまして、受験者の精神的、肉体的な負担を考えますと、司法試験並みに行うのはやはり難しいという判断をしているわけでございます。
○高崎裕子君 時間の関係でちょっときょうはやりとりできませんが、体力的な配慮とはおっしゃいますけれども、やっぱりそれだけ解読に時間がかかるとかハンディがあるわけで、ほかの試験は一・五倍、これが合理性があるということで皆そうなっている。日数の問題だとかいろいろ技術的な問題はあると思いますけれども、一・五倍にはならないことで結果的に門戸が開かれないという、そこの危惧というのは消えていないわけです。ことしも実施されるわけですし、今後ずっと継続されていくと思いますので、ぜひ時間の問題、それから今回は行政だけですが、それ以外にも盲人の方にふさわしい仕事というのはいろいろあると思いますし、職域も広げていただくということを含めて要望しておきたいと思います。 次に、その次の問題なんですけれども、試験は受かったけれども採用されないということでは、これはやっぱり問題だと。法定雇用率が〇・一%上がっているのに納付金制度という抜け穴もありまして、従業員が千人以上の事業所でまだ未達成が八一・二%ということで、企業の中では障害者の方の雇用が極めて不十分だと。これを指導する国がみずから率先して採用していくということにならなければ、なかなか企業も採用していかないという問題があると思うんです。合格してからではなくて、ポストはちゃんと用意するから積極的に受けてほしいという形で対応していかなきゃならない、これがやっぱり国の責任だと思うんです。ここは文部大臣、ぜひ文部省としても進路保障という点で積極的に対応していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(井上裕君) 今、人事院の任用局企画課長からのお話がありましたが、やはり試験に合格しませんと、こういう道がありますよということであれですが、やはり試験に合格した場合、文部省におきましては従前から人事院規則による選考採用により、視聴覚障害者の職員を採用しております。 今回実施する予定の点字による試験の合格者からの採用につきましても、本人の適性や、御案内のようにお一人ではなかなかできない仕事があります。だから、介助者の確保、こういうものを考慮して検討いたしたい、このように考えます。
○高崎裕子君 ぜひ積極的に対応していただけますよう要望して、次は、厚生省と自治省に来ていただいていますので、簡潔に御答弁いただきたいんですが、精神薄弱者が入所する福祉施設の措置費の問題です。 北海道では、重度障害者への重度加算のうち、一般棟に中軽度の障害者と一緒に入所している重度障害者の部分が昨年初めてカットされたということで大問題になったわけです。見込み以上に重度棟の整備が進んだということのようですけれど も、結局そのしわ寄せを北海道が受けて、最も多い施設で十五人が助成をカットされ、金額で減収額が七百五十万。既に概算で支給されているために、年度末になって急に返せと言われても大変だ、頭が痛いと関係者、施設の方は悲鳴を上げていらっしゃるんですね。本来は、専用棟の有無にかかわらず、重度障害者がいればその介護とか指導というのは同じ手間がかかるわけですから全員を対象にすべきだということで、そのカット分の復元と、今年度はこういうことが起こらないようにぜひしていただきたいということが厚生省。 そして、次に自治省ですけれども、障害者の政治参加の問題です。 今、統一地方選挙が行われていますが、障害者の方々がみずから政治に積極的に参加しようという動きがあって、みずから手話通訳とか字幕で政見放送を実施している、自主開催しているというところもありますが、障害者の方々の政治参加を保障するという点で点字公報の発行とか、政見放送に手話や字幕を入れるということを直ちに実施すべきだと思うんです。検討されているというふうにも伺っていますが、これはもうぜひ早急に実施できるように要望をしたいんですけれども、いかがでしょうか。
○説明員(吉武民樹君) 重度の精神薄弱者の方の施設における処遇につきましては、私ども重度棟を整備するということを一番基本といたしております。重度の方につきましては居室の面積も広い面積をとめまして、そして棟の中にできれば医務室も備えまして医療もあわせ備えたような処遇をいたしたいということで、これを基本にいたしまして、そういう重度棟に入室される方につきまして職員の人件費あるいはその他の経費に充てるために重度加算もかなりの負担を行っていることを基本にいたしております。 それから、重度棟が整備されてない施設につきましても、全体の予算の範囲内で可能な限り重度加算を行っている、こういう仕組みにいたしております。全国的に各地域で重度棟の整備は推進をしていただきまして、ただいま私どもの施設のうちの三割ぐらいの状態に達しております。 今お尋ねの北海道の場合、平成元年度の整備ではたまたま北海道では重度棟の整備が皆無でございましたが、平成二年度にはまた北海道においても重度棟を相当整備していただいております。 私ども全体の予算枠、それから加算対象者の増に毎年努めておりますので、今後とも重度者の処遇のためにその充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
○説明員(牧之内隆久君) 点字公報につきましては、できるだけこれをごらんいただく方を多くしていくということが基本でございますけれども、一方では公正さというものが期待されているわけでございますので、公選法上は候補者から申請がございましたらこれをそのまま載せるということが基本になっております。したがいまして、公報そのものを点字化するということはなかなか困難でございますが、現在ほとんどの府県におきまして、候補者の氏名なりあるいは経歴を点字化したものをお知らせという形で対応しているところでございます。私ども、その内容の充実につきまして今後とも指導、協力をしてまいりたいと考えております。 また、政見放送につきましても同じように、できるだけ多くの方にごらんをいただくということでその便宜を図っていくということが基本でございますが、これも同じように公正さ、それと候補者間の公平さというものが求められるわけでございます。出ました政見放送をできるだけ正確に手話化していくということは、これは一定レベルの水準を持った多くの手話通訳の方の確保がまず何よりも前提条件となりますし、また政見放送はいろいろと専門用語も多うございますので、それの手話化をどうするのか、あるいは画面処理をどうするのか等いろいろ問題がございますので、現在、政見放送研究会というものをつくりまして、学識経験者の御意見を入れながら検討しているところでございますが、なかなか問題が多いという実情でございます。
○笹野貞子君 教育予算のことについて二、三お聞きしたいというふうに思います。 平成三年度の文部省予算は、先ほどの審議にもありましたように五・三六%ふえたという、大変ふえたところに力点が置かれておりますけれども、しかし国の一般会計の全体の伸びを見ますと六・二%なわけですから、一般会計から比べますと文部省予算というのは、ふえたふえたというこの言葉というのは余り当たらないというふうに思います。 そこで、五・三六%の伸び率というのは近年の文部省予算の状況に比べれば伸びたということですけれども、内容的には給与の改定に伴う人件費のいわば当然に膨らむ予算がふえたからふえたということにとどまるわけで、私に言わせますと、教育の重大さから見まして大変物足りないように思います。 そこで、大臣にお聞きいたしますけれども、この五・三六%ふえたふえたという、そのふえたという意味を大臣はどのようにまずお考えになっているか。そして、この平成三年度の予算でどの点に一番力点を置いて、この予算の編成のプロセスでどのように考えて予算編成をしたと大臣はお考えか、その点をお聞きいたします。
○国務大臣(井上裕君) やはり全体的なもの、御案内のように、国債費あるいはまた地方交付税交付金などの増加している状況の中で、一般歳出の中では確かにこれは自慢できるほどではございませんが、やはりこの数字は一応昭和五十五年から十一年ぶりにこれだけ五・四という形。一般歳出が四・七ですから、もっともっとふやせばいいわけですが、そういう中で徐々に、まあ早く言えば私どもは食いとめたと言えると思うんです。 私自身は、そういう予算の中で、やはり今言った第五次教職員の定数改善計画、これは四十人学級というのは与野党の先生方また私どもの悲願でありましたから、この問題で予算のそこへの配分。あるいはまた公立学校の施設整備、これも一生懸命やりました。私学の予算は、たしか七十億ですけれども、切られた中では、まあ言葉が適当じゃないかもしれませんが、一応三千四百六十五億という中で、確かにこのパーセンテージは減っておりますが、大学の方は二千五百六十億、高校は七百九十九億、それから御案内のように、装置八十二億、設備二十一億、新たに私立高校の施設にたとえ四億でもここへ入れたということ、さらに留学生問題とかいろいろございますが、先ほど箇条書きに並べましたことに重点を置いたわけであります。
○笹野貞子君 私は、教育が重大だ、だから予算が非常に必要だというその認識においては大臣と一緒だと思います。 そういう意味で二、三お尋ねいたしますけれども、教育費の内容の点についてはいろいろな意味で非常に問題があるんですが、きょうはそこまで立ち入りませんで、ハードの面ですね、ここが非常に問題点があるということで。 先日、東大の工学部長吉川弘之さんの「私の科学技術観」という論文がありますが、これを見ますと、今日本の高等教育は非常に劣化状況にあるという大変危機感を感じている論文でありました。全くそうですので、これを読みまして私も大変ショックを受けまして、東大の工学部に実際に行って見てまいりました。本当にそうなんだろうかということで見てまいりましたところが、非常に私もびっくりいたしました。まず大変狭い、汚い、そして中は暗い。もう非常に、これが日本の最高の研究をしている大学の内部なんだろうかというような状況。そして、先生の研究費は非常に少ない。これは大臣も御存じのように、ずっと上がっておりませんですね、研究費が。そして、先生は忙し過ぎる。また、構内の道路はでこぼこ、汚い、雨が降ると泥だらけという大変な状況になっています。 まず第一に、大臣はこういう状況を現実に見たことがあるかどうかをお聞きしたいのが一つと、それから教育体制がこういうふうに貧弱にどんど んなっていく、そのための改善をどうしたらいいかということの二点をまずお聞きしたい。
○国務大臣(井上裕君) 数年前に見たことがございます。 それから、この間「日経サイエンス」ですか、有馬学長のお話、これもよく見せていただきました。これは山本先生からの御質問だったかと思いますが、私もこれを見せていただきました。大変そういうことで、中ではたしかトイレまで汚れているので学校へ行くのをやめたという子供もいたとか、あるいはまた助教授がやはり民間の会社へ移ったという例もよく聞いております。 ただ、今のお話でありますが、非常にこれ財政厳しいということがどの委員会でも出るんでしょうが、私どもも今実は二十年以上のものが八百二十六万平方メートル、全体の四三%、また、文部省としてこれら膨大な建物を適切に維持保全をして有効活用を図る、現下の財政事情だと非常に厳しい。しかし、今おっしゃいました老朽建物の改築、改修につきましても鋭意努力していきたい。 平成三年度予算におきましては、これらの状況を踏まえて五十一億円の増額を図ったところでありますが、今後とも財政事情厳しい折でありますが、ぜひひとつお願いをいたしたい、このように考えております。
○笹野貞子君 そこで、大臣、こういうお話をすると必ず財政事情が大変とか予算がないということになります。しかし、教育という問題はこれは普通の問題と違って人間を育てるわけですから、目に見えない状況で手を抜くと、大臣もこの間言ったように百年先にツケが回ってくるわけです。ところが、日本の今の財政の算出のプロセスを見ますと財政論理優先、つまりシーリングというものに常に型にはめられていて一定の上限を決められてしまう。 そこで私は大臣にお伺いしたいんですけれども、こういう重大な問題のシーリングという制度、これを破らない限りにおいては、教育がいかに重大だ、教育にたくさんお金をかけるべきだと言っても、結局その論理の前にはどうしようもなくなってしまいますね。日本のように資源のない国というのは、何を資源にするかというと人材である。これはもうだれでも言うことなんですね。すばらしい人間を教育するということは、これから二十一世紀に向けて国際社会の中で太刀打ちするためには人材を確保しない限りは太刀打ちできない、こういう状況です。 そこで、シーリングにとらわれない予算がありますね。例えば防衛予算とかODA予算なんというのは、これはシーリングがないですね。そうすると、大臣、どうでしょうか、この教育という、人材を養成することがこれから国際社会の中で太刀打ちできるんだという、こういう大きなものは防衛予算とかODAと同じレベルに持っていってシーリングを取り外して、そして日本の文教予算というものの重要性を説明するということに対して、大臣はこのシーリングというものをどうお考えか。これを取り外せるだけの御努力ができるかどうか。そして、日本の将来、二十一世紀に立ち向かうためには人材が重要だという私の論法に対して、御賛成いただけるかどうかをお聞きいたします。
○政府委員(坂元弘直君) シーリングの問題ですが、いわゆるシーリング、私ども正確には概算要求基準と言っておりますが、概算要求基準そのものの考え方は昭和三十年当初よりございまして、ただそのときの概算要求基準というものは、例えば対前年度比二五%増の範囲内で要求をすると。例えば文部省で言いまして今の五兆の予算で申し上げますと、対前年度比二五%というと一兆二千五百億、その一兆二千五百億の枠の中で要求をするようにということでございました。それが、財政状況が厳しくなりまして、対前年度比一五%増あるいは五%増というようなことになりまして、さらには臨調答申に基づき五十七年度から対前年度比ゼロ、あるいは対前年度比、経常経費については一〇%減、投資的経費は五%減というようなことになりまして、平成三年度の概算要求基準に当たりましては、投資部門については対前年度比ゼロ、それから経常部門については一〇%、そういう経緯でシーリングが設定されているわけでございます。 それからもう一つ、防衛関係とODAにつきましては、概算要求基準が全くないということではございませんで、対前年度比、防衛関係で言いますと、ちょっと正確な数字は忘れましたが、六%ぐらい増の要求枠は与える、それからODAについては八%ぐらいの枠を与えるという、そういう枠の中で防衛費もODAも要求はしているわけでございます。そういう意味では概算要求基準というものはODAも防衛費もあるということでございますが、ただ、今申し上げました、一般的に文部省でかかっておる概算要求基準というもののように、経常部門については対前年度比一〇%減というような厳しい概算要求基準ではない、そういう仕組みになっております。 今の国の財政事情が大変厳しい状況下でございますので、この概算要求基準を原則的にある程度各省横並びで決めるということも、財政当局の立場から見ればやむを得ない手法であるというふうに私ども考えております。 ただ、私どもも、先生も御承知のように学術研究などはビッグプロジェクトを抱えておりますので、この辺のビッグプロジェクトを今後こなしていくためには何とか特別に文教関係でも、文教関係全部というわけではないとしても学術関係については何か特別の配慮をしていただけないかというような希望を従来から持っておりまして、毎年財政当局にはいろいろとお願いをし、折衝してきているわけでございます。 いずれにしましても、私ども今のようなシーリングの中でも財政当局の理解を得ながら文教予算の充実のために努力をしていきたいというふうに考えておりますし、願わくば先ほど申し上げましたビッグプロジェクトを抱える学術予算については、何か特別の配慮がいただけないかというような強い希望を持っておることは事実でございます。
○笹野貞子君 あと一分ありますので、大臣、今文部省は非常に厳格なシーリングの枠がある、でも、ないのもあるわけですから、今のODAと同じように、そのような予算獲得に対する情熱のほどをひとつお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(井上裕君) 官房長からのお話のように、今までの長いあれがあります。確かに二五%、あるいはこれだんだんゼロになって、そして今度マイナス、片方は一〇。まあマイナス五は取られましたが、この一〇%シーリングずっと続いておりまして、八月の概算要求の前にもう六月からヒアリングが始まるわけですから、実はきょうもそういう、省内で何かいいことを考えなくちゃならないということでみんなで今、私はない頭を絞って一生懸命やっておりますが、やはり政府内で決められた中ではとにかくこれを、そういう希望は持っておりますが、じゃここでお約束しろということはなかなか私としてはできません、国全体の財政事情を考えますと。しかし、その中でもひとつ一生懸命やりたいと思います。
○笹野貞子君 ありがとうございました。
○小西博行君 私も、実は大学の予算の問題について少しお尋ねしてみたいと思います。 「日経サイエンス」という雑誌がございます。この四月号に前畑高等教育局長が書かれておりまして、拝見させていただきました。たくさん書かれておりますから全部をお話しするわけにいきませんが、ただ、その中で「現在の大学問題のほとんどは資金不足に原因があり、このままでは大学の人材養成、基礎研究の機能が衰退してしまう。資金を増やすことが、とりもなおさず大学の改善策になる。」、このようにおっしゃっております。相当お金に困っているのかなと、こういう感じでありまして、先ほどの質疑の中で、かなり予算がふえたというお話でありますけれども、どうも大学改革の一番基本は予算面が非常に弱い、そのように私は受け取ったんですが、もしそうではない、あるいはもっと詳しくその辺を説明できれば していただきたいと思います。
○政府委員(前畑安宏君) 大学の方でいろいろな意欲を持って取り組むという動きがございますが、私どもとしてなかなか大学の意欲的な取り組みに応じ切れない状況にあるということは、私どもとしても大変残念な状況にあると思っております。先ほど官房長からお答えを申し上げたようなこともございますけれども、そういった政府全体としての厳しい財政状況の中で、例えばいわゆる基幹的な経費でございます教官当たりあるいは学生当たりの積算等につきましても、平成二年度には一%の増、また、ただいま御審議いただいております三年度予算におきましても若干の増を図っておるところでありまして、今後とも鋭意努力をさせていただきたいと、このように考えております。
○小西博行君 そこでお尋ねしたいんですが、私も大変不勉強で余り中身について知らなかったんですが、国立大学、例えば東京大学、京都大学、こういう国立大学九十六校ありますけれども、トップの総長さんあたり、こういう方々がいわゆる予算権とか人事権が全然ないんだと、このように承りまして実はびっくりしたわけです。 恐らく各大学というのは、それぞれ研究の中身について、もちろん教授会なんかございまして、今度はこういう研究したいからぜひともというように学校の中ではいろいろやりますよね。ところが、現実問題としてはそうではなくて、どうも大臣、ずっと行きましてやっぱり最終的に責任というのは文部大臣にあると、例えば予算についても。それが実態だというふうに私は初めて知ったわけでして、もっと内部で相当やっぱりかんかんがくがくやりながら、じゃ文部省にはこのぐらいの予算を要求しよう、こういう格好になって相当総長は責任あるんだろうと、こう思っていましたら、実はないというのがどうも実態なようで、文部省の方から恐らく大学の事務局長さんというのが入っておりますが、例えばその人を罷免するということすら実は、罷免するのが目的じゃありませんけれども、もし問題があって、それも総長には権限がない、そういうふうに私は理解したんですけれども、その辺は間違いないでしょうか。
○政府委員(前畑安宏君) 予算権という言葉の使い方がいろいろあろうかと思っております。 ただいま先生御指摘ございましたような、大学で何かをやりたい、例えば新しい講座をつくりたい、新しい学校をつくりたい、あるいはこういう設備を買いたいというときには、先生御指摘のように、大学のまずは各学科で、さらには学部で、さらには評議員会で十分審議をして、そして私どもの方に各大学からの要求というのが出てまいります。それを私どもの方で、各大学をそれぞれの優先度あるいは国としての優先度というものを勘案しながら、先ほど来話が出ております予算要求の面のシーリングあるいは定員要求面のシーリングといったものを勘案しながら、それを精選をして財政当局あるいは行政当局へ要求をする、こういうふうな仕組みでございますので、大学の学長にその大学はどういうことをやるかということについて何らの権限がないということでは決してございません。 ただ、予算という言葉で、全体としての国立学校特別会計という予算があり、東京大学に予算がないということでは、確かに予算というものは国立学校特別会計一本になっておる、こういうことではなかろうかと思っております。
○小西博行君 私も、それは金が全然ないのに東京大学が維持できるとは思っておりません。 ただ、例えば東北大学の西澤学長あたりも、昔は、これ昭和三十九年から予算の仕組みが変わったんですね。それまでは割合優秀な学者あたりを、学長さんが自分の権限において相当な人を引き抜くというんですか、学校に入れてそれ相当の給料を遇するというようなことが割合自由にできたんだけれども、最近はそういうことがなかなかできないというようなことを、現実に現場の方々からそういう悩みがあるということを文書で私は読んだんです。 今、大して変わらないというふうに表現されたような気がするんですけれども、大分中身が違うように私は受け取ったし、東京大学の総長さんからもそういうコメントが出ているような部分が実はございます。これは全部ずっと言えばいいんですが、時間がありませんからかいつまんで話しているわけですが、そういうような何かしら大学の当局の方が非常にやりづらいというような問題がもしあるとするなら、同じお金を使うのだからもうちょっと融通をきかしてあげるというのが大事じゃないかと思うし、東京大学の総長とかあるいは京都大学の総長というのは文部事務次官よりも給料が上だというのは初めて知ったんですけれども、かなりの給与というんでしょうか出しながら、現実は割合その権限がないものだというのを見まして実はびっくりしたわけです。 会社の場合ですと社長に権限がなければ何にもできないんですけれども、そういう意味で私はちょっと奇異に感じたものですから、文部大臣、その辺どうでしょうか、私の考え方は間違っているでしょうか。大学についての責任体制がもう少し何かきちっとあった方がいいんじゃないかと思うんですが。
○国務大臣(井上裕君) 私は、大学はやはり自治でそれぞれ研究する機関でありますから、管理面で学長あるいは総長がこうだああだと言うことは、やはり御遠慮しているんじゃないか。また、大学全体の、大学は各学校と違った自治ですから、私自身としての考えは、やはり教授自体の研究あるいはまた自治も任せるというような形でいっていいんじゃないかなという感じがします。
○小西博行君 独断専行というんじゃなくて、当然教授会もあるし評議員会というのもございますから、そういう中で大学の一つの方向決めは当然やっていかなきゃいけないと思うんですが、どうも中身をいろいろ調べてみますと、大変弱いなという感じを実は受けた。それだけに責任をとらなくていいという部分が出てくるかもわかりません。つまり、マネジメントと自分が研究者としてどうやるかという、この辺のジレンマが当然学者としておありだろうというふうに思いますので、何もマネジメントばっかり全部やれということではないんですけれども、その辺をひとつ一度調べていただきたい、このように思います。 それからもう一つは、先ほどの局長のお話じゃありませんけれども、大学関係が非常に予算が少ない。したがって、民間の予算をもう少し出していただくようにということで、いろいろ税法上の処置なんかございまして、大学に対して民間から金出すかわりにいろんな研究をひとつやってほしいと。その研究をどんどんやっているうちに、民間から引き抜きにかかる。民間の優秀な会社というのは給料も随分違うようですから、そっちに行ってしまう、こういうことも現実問題として起こるんですが、やっぱりそうは言いながらいろいろ大学の先生方の援助も得なきゃいけない。 ただ、そのときに大学の研究施設が民間の研究の場合に使えない。例えば夕方以降でないと使えないとか、あるいは残業をやった場合にやたらに残業手当がかさむので、そういうこともちょっと困るとか、いろんな問題が出てきておりますので、そういう民間の資金を大学に結集してそして研究をやる、こういう分野についての御意見がございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(長谷川善一君) 民間との共同研究の仕組みというのは、昭和五十八年に創設いたしております。まだこれは各企業あるいは各大学の方の受け入れ態勢というようなものが完全にできておりませんので、まだ十分に利用されていないこともあるのでございますけれども、従来から大学は受託研究ということで、例えば農水省、厚生省、あるいは地方公共団体、あるいは企業からもそうですが、幾つかの研究を受託されてやっておったわけでございます。そういうことはよくあったわけでございます。そのほか、奨学寄附金といいまして、民間の企業からの寄附金というのは、年々相当額国立大学にも入っておるわけでございますが、共同研究を大学でできる、あるいは 企業の方に部分的には譲ってやったり、そういうことができるというシステムをつくって、それの利用が年々ふえてまいっております。平成元年度七百五件、平成二年度に七百三十件、これはかなり伸びてはおります。 いろいろな問題もございますけれども、仕組みをきちっとやって大学がある程度主体的に、企業の何といいますか目的に引きずられるものでなく、大学としてもあるいは社会的にも有意義なものに取り組むようにということでやっておるシステムでございます。
○小西博行君 時間が余りありません。ほかにもやりたいことがたくさんあったんですが、留学生の問題を、これは予算関連ですから。 十万人構想というのがありますね。留学生に対する補助金が少しずつ、千円ずつぐらい上がったりというようなことなんですけれども、どう見ましてもこんなことではなかなか間に合わないような気がしてならないんですね。 というのは、留学生の住宅関係、これを見ましても大体八〇%は民間の宿舎とかアパート、こういうところに住んでおりますので、その家賃の高さもさることながら、これからどのように具体的にそういう条件の整備をしていくのかなと。その場合に、見ていまして、わずかずつの補助金を上げるだけではどうにもならないんじゃないか。もうちょっと大勢の留学生を迎えてもいいような予算的な措置をこれからもとっていかなければ間に合わないんじゃないか。文部大臣は新しくなられたわけですから、おれは十万人構想なんて言ってないぞと言うかもしれませんが、あれは総理が言われたことで、やっぱり現在でも生きているんじゃないかというふうに思います。 もう少し長期的な具体的な年度ごとの計画、それをびしっと出してもらえるような体制をつくらないと、これは奨学金の問題もありますし、受け入れのときのいろんな条件もございますし、それからこれは大学の場合四年間、あるいは修士過程は二年と、こういうふうになっておりますので、条件がちゃんと整理されていないと、何かわいわいしながらいつの間にか四年間終わった、それで日本に対しては非常に厳しい評価をして帰られる、帰ってもなおそういう嫌な運動をされるというのが、これからもひょっとして続くんじゃないかとちょっと不安になりますので、これから先の留学生の受け入れということに対しての文部大臣の決意なり、あるいは何かお考えがあったら、ぜひ聞かしていただきたい。私は、ちゃんとやっぱり計画を立てるべきだと、こう思います。
○国務大臣(井上裕君) これは先生言われるように、もう留学生現在四万一千を突破して、二年ぐらい先行といいますか進んでおりますから、これはもう二十一世紀に十万人は突破すると。そういう中でやはり今おっしゃった住居、そういうこともいろいろ考えなくちゃならない。私は、留学生実は評判いいと思ったんですが、この間宮崎緑さんとちょっと対談したとき、実は大臣御存じないけれども若干悪いですよと。それはやっぱり住居の問題。こういうことをひとつ、具体的には当局から答えさせたいと思いますが、私は、総理が言われた十万人というのは、今のスピードでいくとやはりもっとふえるのではないかというような感じです。
○政府委員(長谷川善一君) ただいま先生御指摘ございました千円の単価増というあれでございますけれども、現在成績優秀な私費の留学生に対しまして学習奨励費というのを出しております。これは、平成二年度三千七百名を対象にしておったわけですが、御審議いただいております三年度の予算案では五千人にふやしております。数はそれだけでございますけれども、先生もお触れになりましたように、例えば住居費一つにしましても食費にしましても、若干ずつは毎年上がっておるわけでございます。数も大事ではあり、あるいは若干ずつでも給与を上げなきゃいかぬというようなこともございまして、いろいろ各方面の御協力もいただいておるわけでございます。 留学生関係の予算というのはODA関係で面倒を見ていただいておりますので、年間十数%の伸びというのを毎年見ていただいておるわけでございますけれども、なお留学生の伸びている数というのが相当なスピードでいっておるわけでございます。特に大都市圏における住居の問題というのが非常に大きいというわけでございます。 現在、文部省では、本当に二十一世紀に向けて真に有効な留学生政策の進め方ということで、有識者から成る協力者会議を設けまして、改めて年度ごとのいろいろな計画を御審議いただくように願っております。 そのほか、財団法人の内外学生センターに依頼いたしまして、相当な経費も措置いたしまして、宿舎の確保ということには全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
○小西博行君 終わります。
○委員長(下稲葉耕吉君) 以上をもちまして平成三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管についての委嘱審査は終了いたしました。 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(下稲葉耕吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十三分散会