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120回国会衆議院1991/04/26

法務委員会 第11号

発言数
221
登壇者
22
会派数
5
開催日
1991/04/26

会議録

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所今井民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ────◇─────

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 内閣提出、借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  まず、両案の趣旨の説明を聴取いたします。左藤法務大臣。     ─────────────  借地借家法案  民事調停法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────

左藤恵自由民主党法務大臣

○左藤国務大臣 借地借家法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  現行の借地法におきましては、借地権の存続期間、契約の更新等について、借家法におきましては建物の賃貸借契約の更新等について、それぞれ強行規定を中心とした民法の特別規定が置かれているところでありますが、いずれも大正十年に制定された法律であって、昭和十六年に改正された後は、今日まで基本的な枠組みは変わっておらず、この間の社会経済情勢の大きな変化、特に土地・建物の利用に対する需要の多様化に対応し切れていない状況になっており、これに対応するためには、借地借家法制のあり方について再検討をし、現行法に見られる画一的な規律を改めて、より利用しやすい借地・借家関係を実現するための手当てが必要であります。  この法律案は、このような見地に立って、借地法、借家法及び建物保護ニ関スル法律を統合した単行法を制定し、現行法の基本的な枠組みである借地権の存続期間、借地・借家契約の更新等の仕組みを見直してより公平なものとするほか、新しい類型の借地・借家関係を創設するなどの改善を図ろうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、  第一は、借地権の存続期間及び契約の更新後の期間中に建物が滅失した場合の法律関係を改めることであります。現行法では、借地権の存続期間を、堅固な建物の所有を目的とするか、堅固でない建物の所有を目的とするかによって差を設けていますが、建物の社会的・経済的耐用年数等の変化及びより適切な当事者関係の調整の要請にかんがみ、一律に当初の存続期間を三十年、更新後の存続期間を十年とすることといたしております。また、契約の更新後に建物が滅失した場合に、妥当な事前の権利調整が行われるように、新たな建物の築造には借地権設定者の承諾を得る必要があるとするとともに、借地権設定者の承諾にかわる裁判所の許可を非訟事件手続をもって得ることができるようにすることといたしております。  第二は、借地関係、借家関係に共通の点として、借地・借家関係の解消の要件となっている「正当の事由」を明確にすることであります。現行法では、貸し主がみずから使用することを必要とする場合その他正当の事由がある場合とだけ規定しておりますが、これを改め、貸し主及び借り主が使用を必要とする事情を中心として、従前の経緯、土地・建物の利用状況等幾つかの基本的な判断要素を示し、もって、具体的な実情に一層即した判断をすることができるようにすることといたしております。  第三は、更新のない借地権という性格を有する定期借地権の制度を一定の要件のもとに認めることであります。必ずしも永続的な土地利用を望むものではないとの需要に対応するために、現行法では認められていなかった類型の借地権として新たに設けるものでありますが、通常の更新のある普通借地権との関係をも考慮し、その要件を絞って、存続期間を五十年以上とする長期のもの、存続期間を十年以上二十年以下とする事業用のもの及び三十年以上経過した後に建物を土地所有者に譲渡する建物譲渡特約によるものという三つの類型の定期借地権を認めることとしております。  第四に、借家関係においても、転勤等の単なる貸し主の意思を超えたやむを得ない事情で生活の本拠を移転させざるを得ないような場合には、その持ち家を一定の期間に限って貸すことを認めるため、更新のない確定期限の借家の制度を導入することとしております。  なお、この法律案の経過規定におきましては、法律案の成立前に既に存在する借地関係及び借家関係につき、この法律案の更新関係の規定を適用することに対して借り主の間に不安が生じかねないこと等を考慮し、その適用をしないものといたしております。  以上がこの法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。  次に、民事調停法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  借地法及び借家法においては、宅地の地代・借賃及び建物の借賃が事情の変更等により不相当となった場合には、当事者がその増減を請求することができることとされておりますが、その増減の是非に関して当事者間に争いが生じた場合には、最終的には、通常の民事訴訟でその紛争を解決することになっております。しかし、地代・借賃は、合意により定めるのが原則であり、その後の事情変更による増減も、本来は当事者の合意によりすることが望ましいものであります。また、この点をめぐる紛争の解決を直ちに通常の民事訴訟手続によらしめることは、この紛争の本質から見て、迅速さに欠けるところがあり、むしろ当事者の互譲により条理にかない実情に即した解決を図る調停手続を積極的に活用すべきであると考えられます。  そこで、この法律案は、民事調停法の一部を改正し、宅地の地代・借賃及び建物の借賃についての紛争を調停をもって迅速かつ適正に解決することを促そうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、  第一は、地代及び借賃についての紛争がある場合に、原則として調停を経なければ訴訟を提起することができないとする調停前置主義をとることとしております。  第二は、調停委員の専門的判断を生かして、仲裁的な手続で地代及び家賃についての紛争の解決を図ることを可能にする趣旨で、調停委員会の決定に従う旨の当事者の書面による合意があるときは、その決定により紛争を最終的に解決する制度を新たに設けようとするものであります。  以上がこの法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くだ さいますようお願いいたします。

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ─────────────

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 これより両案の質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。星野行男君。

星野行男自由民主党

○星野委員 ただいま大臣からの提案理由の説明にもございましたように、現行借地法、借家法は、第一次世界大戦後の大正十年、民法の特別法として制定されたものでありますが、これは、当時極端に弱い立場にありました借地人、借家人を保護することにより国民生活の安定を図るという、社会政策的な目的で制定されたわけであり、昭和十六年にはさらに契約関係の解消に正当事由を要する旨の改正がなされ、時代の要請にこたえ、その目的を十分果たしてきたものであります。  しかしながら、法制定後七十年、昭和十六年の改正からも五十年を経過いたしまして、我が国の社会経済情勢も大きく変わってまいりました。一つは、現下最大の政治課題であります土地政策上、土地の有効利用の促進と土地供給の拡大を図ることが不可欠でありますが、現行借地法、借家法がネックとなりまして、これがなかなか進まないという状況にあります。いま一つは、画一的な借地人・借家人保護の考え方だけでは、土地・建物利用の多様化という社会的ニーズに対応し切れなくなってきたことであります。  このような社会的状況のもとで、借地法、借家法を見直して、土地・建物を貸しやすく借りやすくすることにより、いわば社会全体の資産ともいうべき土地・建物を、より多くの人が利用できるようにすることが今日における社会的な要請となってきたわけであります。  本法案は、このような状況を踏まえまして、いわば社会的権利である借地権・借家権保護の基本的な精神を維持しながら、しかも現下の社会的要請にこたえるべく、慎重な検討を重ね、でき上がったものと理解をいたしております。  法形式の上からは、現行借地法、借家法及び建物保護ニ関スル法律を借地借家法として一本にまとめ、法文形式も平仮名、口語文に改めてわかりやすくしたものであり、今回の法案提出に至るまでの法務省御当局並びに関係各位の御苦心と決断に敬意を表する次第であります。  以下、順次御質問を申し上げます。  まず、先ほど述べましたとおり、現行借地法、借家法は大正十年に制定されたものでありますが、その制定の時代的背景と経緯及びその趣旨につきまして、改めて御説明をお願いいたします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように現行の借地・借家法は大正十年に制定されたわけでございますが、大正十年に先立つ期間は、ちょうど第一次世界大戦後のいわば住宅難の時代だったということが言えようかと思います。もっと先をただしますと、日清、日露の両戦役を通じまして、日本のいわば産業資本というものが非常に活発になりまして、人口が都市に集中するというような現象が明治の後期から大正にかけてずっと続いていたわけでございます。そういうものを背景といたしまして、非常に住宅難、宅地難であったということが言われているわけでございます。  しかしながら、当時、そういう建物の所有を目的とする土地の利用というのは、民法の賃貸借の規定によってされるということになっておりました。民法の起草者といたしましては、いわゆる建物の所有を目的とする土地の利用権というのは地上権というようなことを考えていた節があるわけでございますけれども、現実にはすべて賃貸借という形で土地の利用がされておる。ところが民法の賃貸借の規定は、これは動産も土地も建物もいわば一緒くたにしたような形での賃貸借の規定でございまして、例えば契約の期間も二十年を超えてはならないというような規定になっておりましたために、圧倒的に多くの借地契約が非常に短期の賃貸借契約を結ぶというような形になっておりました。  そういうようなことから、特に借地関係が非常に不安定になりまして、この関係についての争いが生じたというのが当時の状況でございます。また借家についても、解約の申し出からすぐに明け渡さなければならないというような状況があったわけでございます。  こういうような背景のもとに、何とか借地人、借家人の権利をもう少し保護して安定的なものにする必要があるというようなことが指摘されまして、大正十年にようやく借地法が制定され、また同じく借家法も制定された、こういうことになるわけでございます。  契約の当事者間の実質的な公平を確保する、あるいは具体的には、これは借地についてでございますけれども、長期の存続期間を認める、借家については解約期間を六カ月とするというようなことが新たに定められた、こういうことになっているわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 ありがとうございました。  さてそこで、今回の法案提出に至るまで、臨時行政調査会あるいは臨時行政改革推進審議会及び土地政策審議会等で、しばしば借地法、借家法見直しの必要性が指摘されてきたところでありますが、その背景や借地方式による土地利用の現況等につきまして御説明をお願いいたします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 御指摘のように、昭和五十年代の後半から臨時行政改革推進審議会の答申等、各方面におきまして、広い意味での土地政策の一環として借地・借家法の見直しということが提言されてきたわけでございます。  もとより借地・借家法というのは貸し主、借り主間の法律関係、つまり、いわば私人である貸し手、私人である借り手、その両者の関係の調整を目的とするものでございまして、これは土地の有効利用とか住宅の供給の促進を促すというような土地政策を直接の目的とするものではないわけでございます。しかしながら、このような提言をされるに至った背景には、御指摘のように、現行の借地・借家法の規制が画一的で現在の社会経済情勢に適合し切れないのではないか、そういうような認識があったというふうに私どもは考えているわけでございます。  そういう認識に関する限り、私どもの認識とこれは一致するわけでございまして、今回の改正は、このような点を踏まえまして、定期借地権制度の創設を初めとして、借地・借家に対する多様化した需要にこたえようとするものであるということでございます。土地政策とかそういうものを直接の目的とするものではございませんけれども、こういうような制度を導入することによりまして良好な借地・借家の供給が促されまして、結果的に土地の有効利用とか住宅の供給促進につながっていく、そういう意味では広い意味におきまして土地政策の一環としての効果を持ち得る、こういうふうに考えているところでございます。

鈴木省三国土庁土地局土地政策課長

○鈴木説明員 借地方式による土地利用の現況についてお答えいたします。  これまでの借地の動向について、一戸建て、長屋建ての持ち家で見ますと、昭和三十八年においては、持ち家総数約七百六十万戸のうち敷地が借地であるものは約二百二十一万戸であり、比率では約二九%でございました。しかしながら、その後持ち家総数が増加する一方、敷地が借地であるものは減少傾向にあり、昭和六十三年においては、持ち家総数約二千百十六万戸に対し、敷地が借地であるものは約二百一万戸と、比率で九・五%まで低下しております。

星野行男自由民主党

○星野委員 日米構造協議におきましても、最終報告で借地法、借家法の改正を行うことが示されておりますが、これはどのような経緯によるものでありましょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 日米構造問題協議におきまして、米側から、土地問題の一つとして借地・借家法の見直しを進める必要性についての問題提起がございました。これに対しまして日本側から、借地・借家法の見直し作業の状況について説明したところでございます。  この借地・借家法の見直しというのは、これも先ほど申し上げましたように、土地問題には大きな問題がたくさんあるわけでございますけれども、その中の一つの問題として指摘されたわけでございまして、米側の認識といたしましては、日本における土地問題が日米の経済摩擦の一つの大きな原因となっておる、こういう認識があると私どもは理解しているところでございます。そういうこととの関連におきまして、借地・借家法の見直しが問題として取り上げられたわけでございます。  これに対しまして私どもは、この日米構造協議が始まる前から、既に昭和六十年から、先ほどお答え申し上げましたような認識のもとに、現在の社会経済情勢というものを踏まえて借地・借家法の見直し作業を進めておりましたので、そのことについてアメリカ側に説明し、アメリカ側もそれを了承したということになっているわけでございます。具体的に借地・借家法の中身について、このようにせよとかあのようにせよという議論は一切なかったわけでございますけれども、要するに諸情勢の変化に対応して借地・借家法の見直しを行うということについて私どもがアメリカ側に説明をした、こういう経過になり、それが最終報告に盛られておる、こういうことになっておるわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 国土庁に確認をしておきたいと思いますが、先ほどのように借地方式による土地利用の現況が全体の利用の中で二九%から九・五%に割合が下がっている、こういうことでありますが、今回の借地借家法の制定によりまして、つまり借地・借家法の見直しによって、相当程度借地方式による土地利用の促進が図られる見通しがあるのかどうか、その点を確認したいと思います。

鈴木省三国土庁土地局土地政策課長

○鈴木説明員 お答えいたします。  現在、改正内容に盛り込まれております定期借地権制度の創設につきましては、新規借地の供給拡大による土地の有効利用促進に資するものと考えております。

星野行男自由民主党

○星野委員 さて、このたび借地・借家法を廃止いたしまして新法を制定するわけでありますが、現行法の立法趣旨を変更することになるのかどうか。あわせて、新法を制定する形にしたわけでありますが、この点につきましてお尋ねをいたします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 まず最初の、現行法の立法の趣旨を変更することになるのかどうかという点でございますが、今回の借地借家法案というのは、借地・借家をめぐる社会経済情勢の変化に対応し得るようにという見地から、契約当事者間の実質的な公平を図りつつ所要の措置を講ずる、こういうことを目的とするものでございまして、基本的に借地権及び建物賃貸借の存続を保障する現在の借地・借家法の考え方、つまり借地権者なりあるいは建物賃借人の権利の安定化を図ることを目的とする点において、現行法と変わるものではございません。趣旨は全く同じでございます。内容的にも、借地権及び建物賃貸借についての存続期間、契約の更新等について民法の特別規定を定めるということにおいても変わりがないわけでございます。  そこで、二番目の御質問である現行法の改正でなく新法制定とした理由でございますけれども、現在は借地法と借家法と建物保護ニ関スル法律という三つの法律になっているわけでございますが、借地法と借家法につきましては、その趣旨とか性格に共通する面が非常に多くて、一般にも借地・借家法と一括称されているというような実情がございます。そういうようなことに加えまして、この新法におきましては、借地及び借家の双方に関連をする規定を新たに置くということもございまして、これを単行法にするのが望ましいというふうに最終的に判断したわけでございます。  また同時に、従来の漢字片仮名まじりの非常に難しい法文スタイルを改めまして、現代語文により表記いたしておるわけでございますが、これは国民に非常に密接な関係を有する法律でございますので、わかりやすくということはもう当然のことでございますけれども、現在の一般の法律スタイルから申しましても、現代語に改めて、できるだけわかりやすく一本の形にするのが望ましいというのがある意味においては当然の要請ではないか、こういうようなことから、実質的な内容において、旧法と申しますか、現行法と全く変わりがないものがたくさんございますけれども、これをまとめまして新しい法律にしたということになるわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 わかりました。  さて、改正内容の概要についてでございますが、先ほど大臣から提案理由の御説明で大まかな御説明はちょうだいしたわけでありますけれども、もう少し詳しく改正内容を御説明願いたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 何と申しましても、現行法で認められている借地・借家関係のほかに新しい類型の借地・借家関係を認めたこと、これが一番大きな特色でございます。借地については、定期借地権という制度、これは三つの類型がございますけれども、三つの類型の定期借地権というものを新たに創設したということでございます。借家につきましては、確定期限つきの建物賃貸借の制度を新設した、これが大きな特色になろうかと思います。  それから第二番目には、現行法で認めております普通借地権及び建物賃貸借につきまして、その権利義務関係の基本的な枠組みというものは維持しながら、存続期間、更新等について当事者間の調整をより公平かつ合理的なものとすることを図ったということでございます。  具体的には、普通借地権の存続期間の適正化という見地から、現行法ですと建物の種類によりまして二十年あるいは三十年というのが基本的な存続期間になっているわけでございますけれども、これを一律三十年にしたということ、それから更新後の存続期間につきましては、現行法ですと二十年、三十年という基本的な期間に対応いたしましてやはり二十年、三十年ということになっているわけでございますけれども、当事者間の権利関係の調整をできるだけ事情の変更に応じて図るというような見地から、これを一律十年とするというようなこと、それから借地契約の存続期間中あるいは期間の更新後に建物が滅失した場合、これは取り壊しを含むわけでありますけれども、そういう場合における再築をめぐる法律関係について、従来非常に不安定な要素があったわけでございますけれども、これについてきちんとした手続を設けたということ、それから貸し主が更新を拒絶するための要件である正当事由をより明確にいたしたこと、ということが具体的には現行法の普通借地権等についての改正であるということが言えようかと思います。  その他、借地権の対抗力の問題だとかあるいは自己借地権の創設だとか、あるいは民事調停法につきましては地代家賃の増減額請求について、これに限ってということでございますけれども調停前置の制度等を設けた、こういうことになるわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 現行借地法では、今御説明がありましたように、法定期間は堅固な建物は六十年、その他の建物は三十年、これを契約で三十年、二十年まで短縮することができる、こういうことになっているわけでありますが、改正法では、堅固な建物、その他の建物の区別を取り払いまして、一律原則三十年、こう定められることになっているわけであります。この堅固な建物、その他の建物の区別を取り払った理由について、もう少し詳しく御説明願います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 当初の存続期間を一律に三十年ということにいたしたわけでございますが、私ども、建築実務家等にいろいろな実情等のお話も伺ったわけでございますけれども、実際の建築実務上は、鉄筋コンクリートのビルでありましても、築後三十年ぐらいで普通の建物でございますと建てかえの検討がされるというようなこと、建物の経済的な耐用年数と申しますか、非常に大きなビルは別といたしまして、普通の小さなビルでございますと、三十年という期間が建物の所有を目的とする場合に適当な期間ではないかというようなこと、そういうようなことに加えまして、現行法における堅固の建物についての最短存続期間が三十年であるというようなこと、三十年ということになりますと借地権の一応の安定性が確保されたと評価される期間でもあるのではないか、こういうようなことから、当初の存続期間は三十年ということにしたわけでございます。  木造建物については契約で二十年まで短縮することができるわけでございますけれども、これは、木造と堅固の建物をそれほど区別する社会的な実情というのはなくなっておるということで、一律に、現行法上堅固の建物について最低期間として認められる三十年という期間を採用した、こういうことになるわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 今お話がございましたように、木造の建物もかなり長期間もつわけでありますし、鉄筋の建物につきましても三十年、四十年たちますとかなり古ぼけてくるというようなことで、かねてから堅固な建物とその他の建物の区別が必ずしも妥当ではないのではないかという感じを私自身も持っておったわけでありますが、そういう点で、今回その区別を取り払って一律三十年、こういうことで、それ自体妥当なものである、私はそう考えております。  問題は、借地契約を更新する場合、更新後の期間が十年ということで、この点についてはやはり不安要素が残ることでもあろうかと思います。今ほど御説明もありましたけれども、更新後の期間を十年としたことについて、もう少し詳しく御説明を願えませんか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 お尋ねのように、基本的な存続期間については三十年というふうに一律にいたしたわけでございます。そういう意味では、現行法の木造建物の所有を目的とする借地権につきましては、契約で二十年というふうになっているのが普通ほとんどでございますけれども、これが一律三十年になるという意味におきましては、期間が長くなった、こういうことになるわけでございます。  しかるに一方では、更新後の期間につきましては十年というふうに区切ったわけでございます。これは現行法ですと、まさに御指摘のように木造建物については二十年、堅固建物については三十年ということになるわけでございますが、これが十年というような期間に短縮されたというふうになるわけでございまして、この点についてこれまでと大幅に変わるのではないかというような御疑問が出てこようかと思うわけでございます。  私どもは、このように更新後の存続期間というものを十年としたのは、基本的な存続期間を三十年とすることとした上で、それが経過した後における更新につきましては、貸し主、借り主の間に生じたいろいろな変化というものをできるだけ多くの機会にこの借地関係に反映させると申しますか、そういうことができるようにするのがお互いに公平であろうということを考慮したわけでございます。社会経済情勢の変化というのは非常に激しいわけでございまして、当事者の家族構成とか資産などから見ましたライフサイクルというようなものも、十年経過しますと非常に変わってくる。当初は正当事由が貸し主側にはなかったけれども、十年くらいのサイクルで見ますと正当事由が生ずるというようなこともある。これが現行法ですと、正当事由というものが生じても、例えば堅固の建物の場合ですと場合によっては三十年待たなければならない、その間非常に苦しい状況に置かれるというようなこともあるわけでございます。そういうような社会経済情勢の変化というものに対応してできるだけ当事者間の利害を公平に調整する機会というものを設けるという趣旨で、十年という期間にしたわけでございます。  この十年という期間にはいたしましたけれども、しかし正当事由がないとまた十年延びてしまうわけでございまして、結局、正当事由がない限りいつまでも借り主としてはそこに借りておられるということになるわけでございます。そういう意味で、権利の保護が現行法に比べて薄くなったというふうに私どもは考えてない、現行法どおり基本的な保護は与えられておるというふうに考えているところでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 御説明は理解できるわけでありますが、ただ、十年ごとに更新ということになりますと、今、特に大都市圏におきましては、更新ごとにいわゆる更新料を授受するということが一般的な慣行になっているようであります。そうすると、借地人の立場からすると更新料を払う回数が多くなる、仮に正当事由があるとした場合にですね。そんなことにもなろうかと思いますが、このあたりはどう考えておられますか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 契約の更新に際しまして更新料を支払うというようなことが、慣行として一部の地域にあるというようなことを私ども承知しているわけでございます。果たして全国的な現象であるかどうか、これは必ずしもはっきりいたしませんが、大都市及びその周辺部においてはそのようなことが行われておる、また、更新料の額につきましても地域によってさまざまであるというようなことも、実は承知しているわけでございます。  仮にそういうように更新の機会に更新料を支払うというようなことがされておりますと、この更新の機会がこれだけ多くなりますと更新料もたくさん取られるのではないかというような御心配があるいは出てくるのかもしれない、というふうに私どもも考えないわけではございません。  ただ、この点について一つ申し上げたいことは、仮にその更新料を取るという慣行が適正妥当なものであって容認し得るものだというふうに考えるにいたしましても、現在の借地人、借家人の方には、これは後からもお話があろうかと思いますけれども、現行法どおりの更新の規定が働きますので、現在の借地人、借家人の方がこれから十年ごとに更新料を取られるということにはならない。これは従来どおり、もし更新料を払うというのが正しい慣行であるとするならば、二十年ごとあるいは三十年ごとにそれが問題になるということでございまして、それは現行と全く変わらない。その点でもし御不安があるということであれば、その不安は本当に理由のない不安であるということで解消していただきたい、というふうに私ども思います。  それから、この新しい借地借家法が成立しました場合には、今度は、新しく今後締結された借地契約では更新は十年ということになりまして、もし十年ごとに更新料を払うべき事情が生ずるということになりますと、あるいはそういうことが十年ごとに行われることになるわけでございます。その場合には、当然に更新後の期間は十年であるということを前提としたいろいろな判断がされるわけでございまして、新しい借地契約を締結する場合において、あるいはそれに基づく新しい更新をする場合において、当然にそのことは合理的に判断される、借地人が地主側の不当な要求に屈するようなこと、これはないように当然できるということが考えられるわけでございまして、その点、十分に理解を賜りたいというふうに私ども考えておるところでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 次に、借地契約更新拒絶の正当事由でありますが、一応御説明をちょうだいしたわけでありますけれども、現行法とどう変わったのか変わらないのか、その具体的な内容と各要素の比重について、もう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 正当事由は、現行法では、土地所有者がみずから土地の使用を必要とする場合その他正当の事由がある場合というふうに規定されているわけでございます。非常に簡明といえば簡明でございまして、正当の事由というのは一体具体的にどういうことを中身として判断するのか、ということが従来から問題になっていたわけでございます。  具体的にこれが問題になるのは裁判の場でございますので、これまでの裁判実務におきましては、いろいろな基準を具体的な事案に応じていわば判断基準として定めていたということが言えようかと思います。今回のこの正当事由というのは、このようにこれまでの裁判実務におきまして掲げられていた、正当事由を判断するに当たって考慮すべき事情というものをいわば法律の明文の規定に掲げたということでございまして、実質的には、これまでの裁判実務で示されている正当事由の判断基準と異なるところではないというふうに私ども考えているわけでございます。  では、その正当事由の中でいろいろな事情を掲げておるけれども、それにそれぞれの力点の置き方の違いがあるのかというお尋ねであろうかと思います。  この第六条に正当事由の規定があるわけでございますが、まず第一に当事者の使用の必要性を主たる判断要素とする、これを最も重要な判断要素といたしているわけでございます。これは、現在の裁判実務におきましても、当事者双方が土地や建物の使用を必要とする事情が主として考慮されている、その他の事情は副次的な要素として扱われているというふうに解されておることから、このような規定ぶりにしたわけでございます。  当事者の使用の必要性がその他の要素より重い位置づけをされているわけでございますが、その他の要素といたしましては、借地に関する従前の経過とかあるいは土地の利用状況、財産上の給付をする旨の申し出がある場合にはその申し出なんかも考慮するということでございまして、基本的にはやはり当事者が土地の使用を必要とする、その必要性をめぐって判断がされるというふうに考えておるところでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 この正当事由につきましては今までの判例の集積をこの改正法で明文化したものである、こういうふうな趣旨と受け取らせていただいたわけでありますが、そうすると、更新拒絶の要件の中の主たる内容は、借地権設定者及び借地権者双方が土地使用を必要とする事情、これが主たる内容で、以下のものは副次的な要素である、こういうことでございましょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 御指摘のとおりだと考えております。

星野行男自由民主党

○星野委員 そこでまた疑問になりますのが、正当事由について、現行法並びに現在までの判例による積み重ねとこの改正内容が基本的に変更がないということでありますれば、特段これを改正する必要、法文で規定する必要もないのではないか、こういう考え方もあろうかと思いますが、この点はいかがでありますか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 御指摘のような考え方も十分あり得るところだとは私ども考えております。ただしかし、現行法でも、私も先ほど申しましたように、土地所有者、これは借地権設定者というふうに読みかえてもいいわけでございますけれども、借地権設定者がみずから土地の使用を必要とするということになっておりまして、土地所有者側で自己使用の必要性があればほかの要素はなくてもすぐ返してもらえるんだ、こういうふうに読もうと思えば読めないわけではないわけでございます。そういうことではないということで、土地使用をする必要性というものについては、借地権者の側の必要性、それから土地所有者側の必要性、そういうものを総合勘案して考えなさいというふうに判例、裁判実務ではなっているわけでございます。  そういうようなことから、この際そういった裁判で示されているような基準というようなものを明確にして、そしてそれに沿って具体的な事件について妥当な判断をするというふうにした方がベターではないか、こういうふうに考えたわけでございます。つまり、正当事由の内容を明確にしてより実情に即した判断をすることができるようにするという趣旨でされたものでございます。  先ほど申し上げましたとおり、別にその内容が同じなら現行法どおりの表現にしたらいいじゃないかというのも、それは一つのお考えかもしれませんけれども、せっかく新しいわかりやすい法律をつくろうという趣旨で始めた作業でございますので、正当事由の中身についてもできるだけ詳しく書こうということでこのような案になっているわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 わかりました。  わかりましたが、ただ一点、この法文には「借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、」いうところの立ち退き料、これをここに書き込んであるわけでございます。立ち退き料を払うことがいいことか悪いことかの判断は別にいたしまして、現在立ち退き料による正当事由の補完の慣行がない地域も全国の中にはあるのだろうと思いますが、こういうふうに明確に挿入することは、そういう立ち退き料の慣行のない地域にまで立ち退き料支払いを広げることになりはしないか、こういうことを心配いたしますが、この点はいかがでございますか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 この法案におきましては、立ち退き料の提供に触れた規定があるわけでございます。借地権の存続期間の満了に当たりまして借地関係を終了させるのがいいかどうかということを判断する場合に、当事者間の利害の調整をすることが相当であるというようなことが考えられる、そういうような際に、立ち退き料の提供というようなものがあればこれも一つの判断要素として考慮してよろしいという趣旨でこの規定を置いたわけでございまして、常に立ち退き料が提供されることが望ましいというわけではございませんし、また、まさに御指摘のように借地慣行あるいは借家慣行につきましては、先ほどもちょっと更新料の話で触れましたけれども、大都市あるいはその周辺地域、地方というものによっていろいろな慣行がある、それは、それぞれの地域における借地の供給状況あるいは借地に対する需要状況等々いろいろな要素が絡み合って、その地域にそういったいろいろな慣行が合理的に許容し得る範囲内で生じているということだろうと思うわけでございます。ですから、裁判所がそういう具体的な事件について御判断をする場合には、やはりその地域における借地慣行とか借家慣行というものは十分考慮の上、立ち退き料についても判断をされると私どもは考えているわけでございます。  立ち退き料の提供ということが慣行にない地域について、法文にこのような制度が出たから当然に立ち退き料の提供がないと正当事由の補完がされないということには決してならないと私どもは考えております。

星野行男自由民主党

○星野委員 次に、契約更新後における建物が滅失した場合の再築についてでございます。現行借地法では第七条で「借地権ノ消滅前建物カ滅失シタル場合ニ於テ残存期間ヲ超エテ存続スヘキ建物ノ築造ニ対シ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ借地権ハ建物滅失ノ日ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ三十年間、其ノ他ノ建物ニ付テハ二十年間存続ス」、こう規定してあるわけでございますが、改正法によりますと、建物が滅失した場合において、土地所有者の承諾なく借地権者が建物を再築したときは土地所有者は契約関係を解消することができる云々ということで、非訟事件手続による再築の道が開かれることになっているわけでございます。このあたりが大分違ってくるような気がいたしますけれども、少し詳しく御説明をお願いいたします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 借地契約の存続期間中あるいは更新後に建物が滅失した場合の法律関係について、やや詳しい規定を置いております。基本的にはそんなに変わっていないわけでございますけれども、形の上ではかなり変わっているような印象を与える部分ではないかというふうに私ども考えております。  現行法ですと、御指摘のように、建物が滅失した場合には借地人は建物を建てるのは勝手でございまして、自由に建てられます。しかし、地主の方で異議を申しますと、その借地権の存続期間は本来の存続期間の満了によって終了する、こういうことになっております。異議を述べないと、そこから改めて二十年ないし三十年の存続期間が始まる、こういうことになっておるわけでございます。ところが、現実には地主の方で異議を述べたか述べなかったか、あるいは述べるチャンスがあったのかなかったのかというようなことで、一体滅失後再築した建物の存続期間というのはいつまで続くのだということが、その後になって非常に争いの対象になることがしばしばあるわけでございます。  そこで、そういう紛争をあらかじめ回避するという意味で、まず建物が滅失した場合に、建物を建てかえるという場合にはきちんと地主の承諾をもらいなさい、地主の承諾を得た上で建物を建てかえなさいということにする、承諾がなかったら、現行法と同じようにまず基本的には本来の存続期間満了時に存続期間は満了して、そこでまた正当事由があるかどうかを判断していただくことにしようということにしたわけでございます。そしてさらに、今度は借地契約の更新後の建物の減失につきましても、これは現行法と若干違ってくる点でございますけれども、やはり地主の承諾が要る。ただこの場合には、地主の承諾がないまま無断で建物を再築してしまいますと、地主の方にいわば借地契約の解約権が生ずる、解約されてしまう、こういうことになるわけでございます。  そうしますと、これは借地人の方としては非常に不利になるのではないかという疑問が出てまいりますけれども、そこはそうではなくて、借地人の方では、もし地主が承諾してくれなければ、理由もなしに承諾しないということになりました場合には、裁判所にその地主の承諾にかわる許可の裁判の申し立てをいたしまして、裁判所に許可をしてもらうということで、やはり正当な理由がある場合には引き続き建物の再築をすることができる、こういうことにいたしたわけでございます。  要するに、異議があったかなかったか、あるいは異議を申し述べる機会が与えられたか与えられなかったかということによる非常にあいまいな状態を、本来の存続期間内における建物の滅失、それから契約更新後における建物の減失、その若干の扱いの違いはございますけれども、基本的には承諾を中心にいたしまして以後の法律関係を明確にするということでこの法律関係を整備いたしておる、こういう内容になっているわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 契約更新後の建物滅失の際の再築、そのあたりが不安といえば不安ということでありますが、いずれにしても貸し主、借り主の話し合いによってやる、話がつかない場合には裁判所に判断を求める、そういうことになるのだろうと思いますけれども、御説明としては理解をいたします。  それから、定期借地権は新法の目玉的なものであると思いますが、その創設の趣旨及び概要について御説明をお願いいたします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 現行法でございますと、借地権の存続期間が満了しても貸し主の側に正当事由がないと契約の更新を拒絶することができないというのは、既に御承知のとおりでございます。そのために土地の所有者といたしましては、土地を一たん貸しますとそれを返してもらうことが事実上できないということになりまして、結局、土地を貸す際には貸し主としては高額の権利金をどうしても取りたい。しかしながら、土地を借りる方から見ますと、高額の権利金は払えないということにもなってくるわけでございます。こういうようなことのために、結局土地は貸しにくく、また逆に言うと借りにくくなる、こういうような状況が出ておるという指摘があるわけでございます。  いろいろな経済情勢、社会情勢の変化ということから、他人の土地を借りていろいろなことをしたいという人の中には、更新がなくてもよいから、一定の期間だけでよいから安い資金で土地を利用したい、こういうようなことも多々ある、そういう需要もかなり出ておるということでございまして、現実に、これは紳士協定かもしれませんけれども、更新しないという約定で土地を借りて、権利金も安くという、そういうようなことが行われておることも指摘されておるわけでございます。  そこで、この法律案では、そういったような状況を踏まえまして、じゃどういう程度の定期借地権というものを認めたらよろしいかということがいろいろ議論されたわけでございますが、これがみだりに乱用されるということになってはまたかえって大きな問題でございますので、一定の要件を定めまして、いわば長期の定期借地権、それから短期の事業用の定期借地権、それから建物の買い取り特約つきの定期借地権、というような三つの借地権の類型を認めることといたした、こういうことになるわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 定期借地権の設定についてでございますが、どのような契約方式をとることになるのでありましょうか、御説明をお願いいたします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 定期借地権につきましては、まず第一のタイプである存続期間を五十年以上とする定期の借地権、これは用途は別に事業用でも住宅用でも構わないわけでございますけれども、存続期間が五十年以上というのが要件になっております。そういう契約につきましては、これは書面でやっていただくということが一つの要件になっております。この書面につきましても、とにかく五十年という期間があるわけでございますから、その間関係者が死亡するとかあるいは契約証書が紛失するというようなことも十分に考えられますので、この法律案では「公正証書による等」ということで、できるだけ公正証書なんかによってやれば、公正証書は公証役場に保存されますので、後日の紛争も少なくなるというような意味で、公正証書によることが望ましいという趣旨でそういうような表現になっておりますけれども、基本的には書面で明確な契約をしていただく必要がある、こういうことになっております。  それから、存続期間を十年以上二十年以内の期間とするいわゆる事業用借地権につきましては、これは事業用という目的による制限がございます。この事業用借地権につきましては、事業用ではないのに事業用と称してこの契約がされるというようなことになりますと、また乱用の問題が生じてまいりますので、この借地権につきましては、その設定は「公正証書によってしなければならない。」ということで、この公正証書の中に、どういう事業用のものであるかというようなことは明確に書いていただくということになろうかと思います。  それから三番目の建物譲渡特約付借地権、これは三十年たったら建物を地主の方に譲渡するという特約をつけた借地権でございますけれども、これにつきましては、条文上は何も契約設定の方式について要件を定めてはおりません。これはなぜかと申しますと、このような定期借地権の場合には、建物譲渡特約があるわけでございますから、いずれその建物の方に譲渡特約に係る仮登記というものはしておきませんと、特約による権利を保全することができないということになりますので、通常の場合は譲渡特約に係る仮登記をするということが予定されよう。仮登記がされるということになりますと、登記簿はいわば最大の公正証書でございますので、これによって権利の存在は明確になるということになるわけでございます。  いずれにいたしましても、定期借地権については、書面とか場合によっては公正証書というような形で、きちっとした形で契約をしていただく必要があるということをこの法律では規定しておるわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 この定期借地権でありますが、今の御説明によりますと、五十年以上のいわゆる長期型、これについては公正証書等の書面によってしなければならない、法文にもそう記載してあるわけでありますが、公正証書等の書面というのは、大体公正証書以外のどういうものを想定しておられるのでありますか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 私先ほど申し上げましたように、五十年後に問題になるわけでございますから、確実な正確な文書が望ましい。そういう意味では、公正証書が一番いいのではないかというふうに考えるわけでございます。しかしながら、まだ我が国におきましては、一般的にこの種の契約を常に公正証書でつくるというようなことまでには一般の国民の意識水準がなっていないというようなことも考えまして、公正証書に限定するということについてはやや問題があるというふうに実は考えたわけでございます。  できるだけ正確な文書という意味で申しますと、それは例えば弁護士さんが関与した契約書なんというのは正確な文書というふうに言えようかと思います。いろいろな文書が考えられると思いますけれども、立会人とか関係者が証人として立ち会うというような形での、厳格なきちっとした文書、そういう長期の保存に耐え得るような文書が望ましいというふうに考えておるわけでございまして、ただ法律形式上はそういうものでなくてはならないというようなことにはなっていないということになるわけでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 時間の関係で余り詳しくは伺えませんが、そうすると、この「公正証書による等書面によってしなければならない。」公正証書以外の書面というのは、例えば弁護士が立会人になって作成する借地契約書、そういうものが典型的なものとして考えられるわけでありますか。それが一点。  もう一つは、定期借地権が登記される場合でありますが、普通の借地権との区別をどのように考えておられますか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 公正証書以外では、弁護士による作成文書などは本当に最適なものであるというふうに私どもは考えております。  それから、定期借地権が登記されるというようなことになりました場合には、これは普通の借地権についても地主の方が登記に応ずれば登記をすることができるわけでございますが、不動産登記法の改正によりまして、定期借地権であるか普通の借地権であるかということは、登記簿上明確にするということにいたしております。定期借地権につきましては更新がないという大変重要な事実がございますので、そういうことを公示するように、所要の手当てを、この附則の第十五条でございますけれども、いたしておるところでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 わかりました。  次に、定期借地権が消滅した場合、いわゆる上物、借地上の建物はどうなるのでございましょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 長期の一般的な定期借地権、これは第二十二条でございますが、また事業用の借地権、これは第二十四条でございますけれども、法文の中に、その場合には原則として建物の買い取りを請求する権利がないということを明らかにいたしております。普通の借地権でございますと、期間が満了して、貸し主の方に更新拒絶の正当事由があるというような場合には、借り主の方から貸し主に対しまして、建物を買い取ってくれという買い取り請求権があるわけでございますが、定期借地権についてはこのような請求権を認めておりません。建物は取り壊して更地で借地権設定者に土地を返還するということになるわけでございます。当事者間で建物の処分について別段の合意をするということは妨げられませんけれども、原則的な形はそのようになっているわけでございます。  それから、建物譲渡特約付借地権においては、これは建物は譲渡するということになっておりますので、当然に借地権設定者に建物は移る、こういうことになろうかと思います。

星野行男自由民主党

○星野委員 そうすると、定期借地権が消滅して建物を取り壊す、そういう場合のその借地上の建物の賃借人の立場はどうなるのでございましょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 定期借地権に基づいて借地権者が建物を建て、それをさらに第三者に貸しているという場合が考えられるわけでございますが、この場合、一体その建物の住人がどうなるのかというお尋ねでございます。  このうち、まず先ほどちょっと申し上げました第二十三条の建物譲渡特約付借地権の場合には、建物の所有権が借地権設定者の方に移りますので、建物貸借人の位置というものもそのまま引き継がれるということに当然のことながらなります。これは、たとえその賃借人が建物引き渡しを受けた時期より前に借地権設定者の建物譲渡に関する仮登記があるといたしましても、これは明文の規定がございまして、第二十三条第二項でございますが、貸借人と借地権設定者との間に期間の定めのない建物の賃貸借がされたとみなされることになっております。従来どおり貸借人はその建物の使用を続けることができます。  第二十二条の一般定期借地権、つまり五十年以上の期間を定めた定期借地権、それから第二十四条の事業用借地権の場合には、借地権が消滅すると建物の貸借人もその土地から立ち退かなければならないということになります。ただしかし、その借地権が消滅するということを知らなくて、急に借地権が定期借地権だからもう消滅した、だから建物、借家人も出ていってくださいと言われても、これは非常に困るわけでございます。そういうようなことから、建物の貸借人が定期借地権の終期をその一年前までに知らなかった場合には、裁判所に一年の範囲内で土地の明け渡しにつき期限の猶予を求めることができる。急に言われたという場合には、そこから一年は建物の借家人は住んでおられるように、裁判所に期限の猶予を求めることができる、こういう形での手当てをいたしておるところでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 次に、期限付借家制度についてでありますが、この賃貸人不在期間における期限付借家制度創設の趣旨について御説明を願います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 これは、転勤等の事情によりまして建物所有者が一定期間その建物に住むことができないという場合に、普通でしたらその期間だけ建物を貸したい、建物をあけておきますと建物の維持の面でもいろいろ問題がございますので、転勤の間だけは貸したいというふうに普通考えるのが人情でございますけれども、現行法のもとでは、貸し主はそういうことで貸しましても期間が満了した際に正当事由がないと契約の更新を拒絶することができないということになっておりますので、転勤から帰ってきたときに必ず建物を返してもらえるという保証がない、こういうことになるわけでございます。  そこで、このような場合に建物所有者は建物を貸すことをためらって、結局空き家のままにするか、あるいはだれかにただで使わせる、賃貸借という形をとらないというようなことになってくるということがあると言われているわけでございます。こういうような建物につきましては割合いい住宅もあるというようなことでございまして、借りる方から見ますと一定の間だけでもいいから貸してもらいたい、正当事由なんか私は主張しない、一定期間が来たら必ず出ますというような方も現実にはいるということなんでありますけれども、しかしいざということになりますとなかなかその点がはっきりしないというようなこともあって、トラブルのもとになるというようなことが指摘されているわけでございます。  そこでこの法律案では、この法律の規定に定めるような事情が明らかに認められるという場合には確定期限の建物賃貸借というものを認めようということでこのような制度を導入した、これは持ち家を持っている勤労者の方々からかなり強い要望があった改正事項でございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 今回の新法は既存の借地権あるいは借家権には適用しない、こういうことを明確に記載してあるわけでありますが、そのことについてその理由と、それからその新法を既存の契約関係には遡及適用しないんだということを、御説明をはっきりとお願いをいたしたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 この法律案におきましては、既存の借地・借家関係に対しましては新法の更新に関する規定は一切適用しないで従前の例による、つまり現在の借地・借家法の規定によって規律されるということを明らかにいたしているわけでございます。この新しい借地借家法をつくりまして、これを既存の借地・借家関係にどういうふうな形で適用するかということにつきましては、この法案が最終的に決まるまでの間、各方面に大変いろいろな議論がございました。従来の借地・借家法の改正につきましては既存のものについても適用するというような例が多かったわけでございますが、しかしこの点については既存のものには適用すべきではないというような意見も多々あったわけでございます。  一つには、やはり借地関係あるいは借家関係というのは人間が生活する最も基本的な基盤でございますので、こういう基盤を規律する法律が改められるということになりますと、それによって自分たちの今までの法律関係というものが影響を受けるのではないかというようなことについて非常に不安を持たれる。それが生活の基本にかかわる問題でございますだけに、そういうような不安が出てくるということになりますと、これは単なる不安である、法律的にはちっとも心配がないというようなことを申し上げましても、それはやはり不安は不安として残るということは否定しがたいということが言えようかと思います。  そういうような観点から、法制審議会におきましても、新しいこの法律の規定は既存の借地・借家関係には適用しないのが望ましい、仮に適用するにいたしましても、例えば更新に関する規定は改正法施行後二回目以降の更新から適用するというようなことで対処すべきだというようなことでございました。ただしかし、正当事由につきましては、これは現在の判例実務をそのまま法文化したものであるから、正当事由条項については既存の借地・借家関係にも適用すべきだという答申をされたわけでございます。  しかし、私ども関係方面といろいろ議論を重ねるうち、更新に関する規定はもとよりのこと、正当事由に関する規定につきましてもやはり不安を持たれる方がおる、しかもその不安というのは先ほど申しましたように生活の基本、基盤にかかわる事柄であるから軽視することはできないというような議論がございまして、最終的には既存の借地・借家関係には正当事由条項を含めまして一切適用しない、更新あるいは更新後の存続期間、正当事由、すべてこれは従来の法律の規定によって規律されるということを明らかにいたしまして、無用な不安というものを除くということにいたしたわけでございます。  そういうことで最終的にはこの法律案ができ上がっておる、この点、既存の借地・借家関係の方々にはくれぐれもよく理解を賜りたいというふうに考えておるところでございます。

星野行男自由民主党

○星野委員 ありがとうございました。終わります。

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 御苦労さまでした。  小澤克介君。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 最初に大臣にお尋ねいたしますが、今回借地・借家法の改正案が政府提案として提案されたわけでございますが、今なぜこの借地・借家法を改正しなければならないのか。とりわけ先ほどの提案理由説明の中で、現行法は社会経済情勢の大きな変化、特に土地・建物の利用に対する需要の多様化に対応し切れていない状況になっており、これに対応するために一定の手当てが必要である、こうなっているわけでございますが、もう少し具体的に、今なぜ改正しなければならないのか、その理由あるいは動機について明確にしていただきたいと思います。

左藤恵自由民主党法務大臣

○左藤国務大臣 借地法それから借家法ともに、昭和十六年以来基本的な改正がないままに半世紀が過ぎたわけでございまして、この間、今お話がありましたように社会経済情勢というのは大変に著しい変化をしておる、そして現行法の仕組みではとても対応できない、こういうようなことを我々も考えるわけでございます。特に、現行法が借地・借家の関係の存続を画一的に規定しておるという点につきましては、借地・借家に対する需要というものが非常に多様化してきた時代に対応できない、土地建物を貸そうとする者にとっても借りようとする者にとっても、それが一つの障害になっている、このように考えるわけであります。  今回の改正は、こうした社会経済情勢の変化に対応できるようにということで、定期借地権、期限つきの借家の制度といった更新のない新しい類型の借地・借家関係を創設しようとか、いろいろそうした意味での借地・借家関係の改善を図ることを目的といたしております。  今回のこの借地・借家法の見直しによりまして、良好な借地・借家の供給が促されまして、国民生活の基盤整備に寄与するものと、そういうことを我々は期待いたしまして、こうした改正法案の御審議をお願いをしておるところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 ただいまのお話の中で、需要の多様化に対応するということから定期借地権その他新たな制度の導入を考えた、ここのところはそれなりに理解できないわけではないわけでございますが、今次改正案を見ますと、そのような新たな制度を設けた以外に、既存の借地・借家関係にもいろいろな影響を及ぼす改正があるわけでございます。そこのところに私どもは最大の危惧を持っているわけです。  今次改正の最初のきっかけは、私どもが聞いているところでは、一九八五年ですか、昭和でいえば六十年に法制審の民法部会財産法小委員会で借地・借家法の改正問題に着手するということが決定され、そして同年の十月に「借地・借家法改正に関する問題点」という報告、これがたたき台として報告された、ここから始まっているわけでございますけれども、その際の改正論議の高まった背景として、必ずしも新たな需要、ニーズに応ずるということではなくて、むしろ既存の借地・借家関係についてのいろいろな不満あるいは問題点が指摘され、それが大きな動機になっているというふうに聞いているわけでございます。  その一つは、現行の借地・借家法では貸す側に不利であって借りる側に著しく有利であるということから、地主、家主側の不満があり、いわば一種の巻き返しという形で借地・借家法の見直しの一つの動機になっている。  第二に、いわゆる土地有効利用あるいは都市再開発というのでしょうか、そのような要請を背景に、民間デベロッパーなどから、借地・借家人、貸借人側の権利が強過ぎることがこれらの都市再開発の障害になっている、これを解消するために見直してほしい、こういう二つの要請が背景になっているということ、これは争えない事実だろうと思うわけでございます。  そして第三番目に、新たなニーズに応ずる新たな制度が欲しいということだった、このように聞いているわけでございます。  そういたしますと、今回のこの改正論議の出発点において、既存の借地・借家について、これを借地人、借家人側に不利益な方向で解消していこうという動機、背景があり、それが今回のこの最終的に確定された法案にもいろいろなところでその影を落としているのではないだろうか、このように思うわけです。最初の出発点がどうであったのか、明らかにしていただきたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  昭和五十年代後半から、いわゆる臨調、臨時行政改革推進審議会の答申等、各方面から、広い意味での土地政策の一つとして、借地・借家法の見直しというものが提言されたわけでございます。また、政府の土地政策大綱の中におきましても借地・借家法の見直しということが言われているわけでございます。ここで借地・借家法の見直しというのは、やはり現在の社会経済情勢の変化に対応し得るような形での借地・借家法というもののあり方を考える、ということが基本であったというふうに私は考えているわけでございます。  もちろん、そういうような議論がされる過程におきましては、いろんな意見がありますし、また、あって当然だと私どもは思うわけでございますが、例えば、これは法制審議会の審議の過程におきましてもいろんな意見が出てきたのと同じように、こういう改正作業を始める前におきましても、例えば土地を貸している方々の団体から、そういう方々の立場、利益を主張する形でのいろんな改正意見、あるいはそういう方から見ますと、現在の借地・借家法というのは不満な点が多いというふうにあるいはお考えになってのことだと思いますけれども、そういうような立場からいろんな意見を述べられる、あるいは民間の開発業者、デベロッパーの方々が自分の事業遂行の過程でいろいろ感じた借地・借家に関する問題点についているんな指摘をされるというようなことは、当然のことながらあった、これは今でもあるのかもしれませんが、そういうのは当然の議論だろうと私どもは思うわけでございます。  ただしかし、私どもは、そういう情勢の中であるいは臨調なり政府がやはり借地・借家法の見直しというものを決めた背景には、そういういろんな議論はあるけれども、やはり社会経済情勢というものの変化に対応して、借り手であるあるいは貸し手である個人あるいは私人の立場というものを、公平な立場から現在の社会経済情勢にマッチするように調整するというような見地、そういうような意味で現在の社会経済情勢に対応し切れない面があるのではないかというようなことから、土地政策の一環ではございますけれども、いわばその一つの枝として借地・借家法の見直しというものが提言されたのではないかというふうに認識しているわけでございます。  こういうような認識は、これは法制審議会でも最終的に考えられた認識でございまして、先ほど来大臣が申し上げておりますように、社会経済情勢の変化に対応した形での借地・借家法のあり方、見直しというものをいたした結果が今回の改正法案になっておる。決して借地・借家についての不満を一方的に組み入れるとか、あるいは直接に土地の有効利用を目的とするというような立場ではないわけでございます。  もとより、この借地・借家法は貸し主、借り主間の法律関係の調整を目的とするものでありますから、これが合理化され円滑化されるということになりますと、借りやすい、貸しやすい法律関係というものがそこに生じて、良好な借地あるいは借家が供給され、それが土地の有効利用、住宅の供給促進につながってくる、そういう意味でいい影響を持つということが考えられるわけでございまして、そういう意味での土地政策の一つとしての借地・借家法の見直しである、こういうふうに考えているところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 今の御説明の中で、最後の部分の、新たな需要に、ニーズに対応する制度をつくろうというところは、先ほどから繰り返して申し上げているとおり必ずしも理解できないものではないのですが、既存のものについても一定の見直しをするというところについては、なぜ今そうしなければならないのか、何とも理解しがたいわけでございます。  私が言うまでもなく借地・借家法は民法の特別法でございますけれども、我が国社会において極めて重要な役割を持つ民事法の基本法の一つだというふうに考えております。そしてその本質は、旧来からの大地主制度下における借地・借家が我が国社会は非常に多かったわけでございますが、これは恐らく明治以前からの制度を引きずっているんだろうと思います、そのような中で社会的経済的な弱者を保護しようという、まさに社会立法そのものであったわけです。このことは借地法の十一条、それから借家法の六条のいわゆる片面的強行性、すなわち貸借人側に不利益に変更することはできない、この規定に端的にあらわれているわけです。もちろん当事者間の利害調整という本質を持った民事法でありますけれども、このような典型的な社会立法という本質を持った制度なわけですね。  先ほどから社会経済情勢の大きな変化と言われるのですが、この間において賃貸人側と賃借人側との経済的、社会的な力関係が変化した、あるいは逆転したとかいうような情勢の大きな変化が本当にあったというふうに御認識なんでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 借地・借家法というものの位置づけと申しますか、不動産賃借権の強化の歴史ですね、明治四十二年の建物保護法あるいは大正十年の借地・借家法あるいは昭和十六年の正当事由改正等々、借地・借家人に関する法制というものをどういうふうに意義づけるかというのは、大変難しい問題だと思います。先生は社会政策立法という形で御指摘されましたけれども、そういう面は非常に強くあるということも私どもは否定いたしませんが、同時に、昔のように大家、たな子というような、いわば非近代的な上下関係というものだけが借地・借家ではございません、それから、産業政策上の見地から見ますと、経済的にも非常に貧しい人たちだけが借地人であるということでもない、いろいろな要素が借地・借家法の中には込められているというふうに考えているわけでございます。  そういうような前提で考えますと、借地・借家法というのは、おっしゃるように社会的な面から弱者保護のために片面的な強行規定があるということも十分承知しているわけでございますけれども、基本的には借り手である借地人、借家人、あるいは貸し手である地主、家主というものの立場を公平に調整する、合理的に調整するということに尽きるのではないかと思うわけでございます。そういうような合理的な調整規定のいわばあり方として、例えば更新後の存続期間の問題あるいは正当事由の問題があると思うわけでございますけれども、現在の社会のように時代の変化が非常に激しい、社会経済情勢の変化が激しいというときには、貸し主側に生じた事情、借り主側に生じた事情というものをできるだけ適切にくみ上げて、これを継続的な法律関係である借地関係あるいは借家関係に反映させるというような方策をとることもこれまた重要なことではないか。  そういうようなことから、恐らく先生は、基本的な存続期間を三十年とし、更新後の存続期間を十年としたという問題を念頭に置かれてそういうお話をされていると思いますのでその点について触れるわけでございますが、やはりそういう社会経済情勢の変化、ライフサイクルの展開の速さというものを考えますと、今回の改正案のようなことに至るというふうに私どもは考えているわけでございます。  それから定期借地権につきましては、先ほど来星野委員の御質問にもお答えしたとおりでございますけれども、社会的な需要として一定の期間だけ土地を借りたい、安い資金で土地を利用したいというような方々も非常にふえております。また、そういうことなら土地を貸したいという方もまた一方にはたくさんおられるというような社会現象に着目したというところでございまして、これも一つの大きな社会経済情勢の変化であるというふうに考えるところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 私の質問は、社会経済情勢の変化というのが、賃貸人側と賃借人側の力関係といいますか、社会的経済的地位の関係に変化があったという御認識なのかどうか、そこをお尋ねしたのですが、そこはいかがなんでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 力関係という言葉が具体的に何を意味されるのかちょっとわかりませんが、つまり現在の社会経済情勢、昭和十六年に正当事由条項というものが入り、それが戦後の住宅難の時代に非常に大きな働きをして、その点に関する膨大な裁判例が積み上げられたということもあるわけでございますが、そういうものを踏まえて、例えば法務省の内部で昭和三十五年に借地・借家法の全面改正を企図した時代もあるわけでございます。そういういろいろな時代時代の変化に対応いたしまして、現在の借地・借家法が貸し手、借り手の利害を公平に調整するという見地から妥当であるかどうか、こういう点から私どもは法律の見直しをするわけでございまして、力関係がどちらが上になった、下になったというような社会的強者、社会的弱者ということではなくて、公平な見地から見て適切妥当であるかという観点からの法律の見直しをしているわけでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 最初に指摘しましたとおり、これはまさに片面的強行性を持った社会立法でございまして、貸借人側を保護するという弱者保護の制度である、このことはだれしも否定できないと思うのです。したがって、そうではなくて見直しだとおっしゃったのでは、これは何のことかよくわからない。つまり弱者が弱者でなくなったのか、あるいはその弱者の程度が軽減したのか、需給関係に変化があったのか、それらの御認識が何度聞いてもどうしても出てこないのですけれども、そこはどうなんですか。そこが一番基本じゃないかと思うのですけれども。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 御指摘のように、大正十年の借地法、借家法、あるいは昭和十六年の正当事由条項の追加、これは俗に不動産賃借権の物権化現象というふうに言われている一連の動きでございます。具体的には明治四十二年の建物保護法による対抗力、それから大正十年の借地法等による長期の存続期間の保障、さらに長期存続期間の保障が昭和十六年の正当事由条項で強化される、こういうような形で、一連の法律改正は賃借権の強化という方向で来ておるということはだれしも否定しないところでございます。  今回の改正案は、基本的にはそういう枠組みに一切手をつけていないわけでございます。賃借権を従来どおり物権的に保護する、物権ではございませんけれども物権的に保護するということ、その長期安定を図るということ、これについては何ら手をつけていないわけでございます。ただしかし、借り手、貸し手間の利害関係を時代の変化、情勢の変化に応じて合理的に調整をするということがやはり必要である、こういうことからこの改正案が組み立てられておるということになるわけでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 今次法案提出の直前、土壇場で、少なくとも更新関係の規定については既存の契約に適用はしないということが決まったわけでございますけれども、しかし最初からそうであったわけではなくて、まさに既存の契約をどうするかということがずっと大きなテーマとして議論されてきたわけですね。ここからもわかるとおり、賃貸人側と貸借人側との利害関係を微調整する、微調整かどうかはともかくとして、調整する。それが方向づけとしては貸借人側の不利益な方向での調整であることは、これはだれしも否定できないと思うんですね。そうだとすれば、それを妥当とするような社会経済的な情勢の変化があったんだということでなければ論理的な整合性が全くないわけですね。だから、そこのところの認識を聞かせていただきたいわけです、どうしてもなかなかそこのところを明確におっしゃっていただけないんですけれども。  いずれにいたしましても、地主側の巻き返しというようなことが動機となったとすれば、これはなかなか私どもとしては容認できないところでございますし、ましてや都市再開発というような動機であるとすれば、これは当事者間の利害調整という民事法の本質とは全く違った次元の問題でございますので、都市再開発などということは、都市計画あるいは国土計画といった一種広い意味での行政目的といいますか、そういう観点から解決をしなければならない事柄でありますし、仮に当事者間の法律関係が都市計画等に関連するとしても、これを賃借人側の不利益な方向で解消しなければならない論理的な必然性は全くないわけでございまして、逆に貸借人側が底地権を取得していく方向での解決もあり得るわけなんですね。ですから、その辺の理念が明確にされていないというところが今次改正法案の最大の問題点ではないだろうかというふうに思うわけでございます。  そこで、そもそも現在我が国で、統計どういうふうにとったらいいか難しいかと思うんですが、借地上の建物というのは建物のどのくらいの割合を占めるんでしょうか。

永井紀昭法務省大臣官房審議官

○永井政府委員 委員のお手元に差し上げております借地借家法案関係資料の資料編にもございます。この統計資料の二十五ページにもございますが、一戸建ての持ち家、いわば普通の住宅の敷地が借地であるものの割合の推移という、総務庁の統計がございます。これをごらんいただきますと、全国平均でとりますと、下から二番目のラインでございますが、昭和三十八年当時には、いわゆる居住用建物の敷地が借地であるものの割合は、全国で二九・一%でございます。それがその後ずっと比率が低下しておりまして、昭和六十三年では全国で九・五%に比率が低下しております。  東京圏では、一番上のラインでございますが、三十八年当時四六・七%であったのが、六十三年の当時は一四・五%という数字になっております。なお、全国的に、昭和六十三年度では敷地が借地であるものの絶対数は二百一万戸、こういうように言われております。これは、先ほど国土庁からも御答弁がありましたとおり、やはり持ち家政策といいますか、そういうことで持ち家がふえてきたという点もあるわけでございますが、一方では貸し地の供給が非常に減ってきているということも現実でございます。  それからその他、二十六ページには商業・業務用ビルで敷地が借地であるものの割合の推移が出ております。これは六十年までの統計でございますが、昭和四十年代の中ごろには約三五%程度あったものが、現在では二九・一%になっている。  それから二十七ページでは、個人の持ち家住宅建設における土地の取得方法に占める借地の割合の推移ということで、やはり四十年代は一四、五%あったものが現在では五、六%に下がってきている、こういう状況で、やはり貸し地の提供が非常に減ってきているという現実があろうかと思われます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 漸減傾向にあるけれども、しかし現時点で全国平均で九・五%、一割近い。しかも東京圏では一四・五%というかなりな比率にあることがわかったわけでございますが、そもそも建物という物に対する支配権といいますか所有権が賃借権という債権の上に乗っかっているという、本質的に不安定な状況だろうと思うのですけれども、まあ借地法は地上権も含めた規定でございますが、地上権は実際問題として非常に少ないのでこれはまあ別といたしまして、賃借権に関して言えばこのような本質的な不安定を含むものだと思うのですけれども、そういったものが現在においても一割近い、東京圏では一五%近いということは、これは諸外国の法制度等と比べてもかなり例外的なものではないだろうかと思うわけでございます。このことを本質的にどうお考えなのか。きょうは最初でございますので、極めて基本の基本、理念的なところを主として伺おうかと思っているわけですけれども、どうお考えなのか。  まあ二つ方法があると思うんですね。それは、先ほどの御答弁にもありました物権化をしていくという形で、本質は賃借権という債権であるけれども、より安定的な権利としていこう。昭和三十年代などの改正で志向されたのはこのような方向だったと思うのですが、これはこれで一つの解決方法だろうと思いますし、もう一つは、やはりこういう本質的に不安定なものは解消していくんだ、これはまあ土地の所有権と建物の所有権を一つのものに収れんさせていく、こういう二つの方向性があり得ると思うんですね。この辺について、一体どういうふうにこの建物所有目的の借地というものを考えておられるのか。そこのところをお聞かせ願いたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 大変基本的な問題で、また難しい問題だと思います。  私どもは、例えば法務省としてどう考えるかというふうに言われますと、少なくとも現在は土地と建物は別個の不動産であり、土地と建物を結びつける占有権原として地上権と賃借権というものがある、そういう法制の仕組みに立っておるということの前提ですべてを考えなければならないわけでございまして、その基本的仕組みを変えるということは大変難しい問題ではないかというふうに思っているところでございます。  私ども推測いたしますに、確かにおっしゃるように賃借権は単なる債権である、特に民法の規定を見ますと、民法の賃貸借についての規定というのは非常に弱い。本当に弱い。まさに債権としての規定しかない。そういう債権に関する規定で重要な土地と建物を結びつける占有権原にしておるということが、ある意味においては問題の出発点にすべてなっておるということだろうと思います。この点は先生の御指摘どおりだろうと思います。  明治の立法者が明治二十九年に現行民法をつくりまして三十一年から施行しているわけでございますけれども、その直後の明治三十三年に地上権ニ関スル法律をつくりまして、本法施行の際に工作物等を所有する目的で土地を使用する権利を持っている者は地上権者であるというふうに推定する法律を設けたわけでございますが、民法の立法者は、あるいは建物を所有目的とする土地の使用権原というのは地上権を主体に考えたのではないかというふうにうかがわれる節々もたくさんあるわけでございます。  しかしながら、現実の運用というのはほとんど民法の賃貸借の方に行ってしまった。その結果何が起こったかといえば、例の、売買は賃貸借を破るという地震売買でございまして、これが結局明治四十二年の建物保護法につながり、さらに存続期間についても、民法では長期は二十年を超えてはならぬという非常に期間を制限した賃貸借の規定になっているわけでございますけれども、不動産の賃貸借については大正十年にそれをいわば原則を逆転するような形での法改正をした。それで存続期間を長期に保障する、正当事由によってさらに保障し、対抗力を与え、それから解約の困難性を強め、さらに譲渡性を強めるという形での賃借権の物権化というものに法制は整備されてきたわけでございます。そういう意味では、借地権というものに地上権と賃借権を含めて、かなり地上権化、物権化してきたということに現在の法制はなっているわけでございます。そういう基本的な仕組みは、結局民法以降の特別法によって補充されてきておる。その補充の状況というのは現在かなり完璧な状況になっておるというふうに私どもは思うわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、当事者間の利害関係の公平な調整という面は、これは今後の時代時代の変化に応じて残されている問題であろうというふうには考えているところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 債権の上に建物所有権という物権が乗っかっているという本質的な不安定ということを指摘したわけでございますけれども、さらにさかのぼれば、そもそも建物が土地の定着物であることは明らかなのですけれども、それにもかかわらず土地とは別個、独立の物権といいますか所有権の客体だ、そして別々の法的な運命に従うということ自体にどうも本質的な無理があるのではないかなと思うわけでございます。恐らくこれは我が国独特の法制度ではないかと思うのですが、昔のような非常に簡単な建物で、いざとなれば解体してほかのところに移せるとか、あるいはバラックのようなものならばいざ知らず、現在経済的にもだんだん落ちついてきて非常に立派な建物が普通の民家でも建っておりますし、ましてやビルなどはもう非常に高層建築などが相次いでいる。こういう情勢の中で、建物それ自体が昔と大きく変わってきている中でこういう我が国独特の法制度というのは本当にいつまで維持できるのかなというところに基本的な疑問も感じるわけでございますが、この点についてはどうお考えなんでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 委員御承知のとおり、ドイツ、フランス、イギリス等欧米の諸国におきましては、建物は土地の一部でございまして、独立に建物の登記をするということはないわけでございます。もちろんドイツの住居所有権法とか、土地に含まれるという前提での特別の登記というのはございますけれども、基本的には土地登記一本で、土地が一個の不動産であるということになってその中に建物が包含されるということになっているわけでございます。  我が国が明治の初期に民法を制定するに当たりまして土地・建物を別個の不動産というふうになぜしたのか、別個の権利の客体ということになぜしたのかということについては種々の議論があるところでございますけれども、これはいろいろな資料を見ましても、江戸時代以来からの我が国の慣行を考慮して、民法自体はドイツ法を継受したわけでございますけれども、不動産の仕組みにつきましては我が国古来の慣行を考慮して土地・建物を別個にした、こういうふうに聞いているところでございます。そういうことで我が国の法制は土地・建物は別個であるということを前提にしてすべての法制が組み立てられているわけでございます。税法にしてしかり、その他もろもろの法律すべてそうでございまして、こういうものを一体化するということは大変な困難を伴うことになるのではないかというふうに考えられるところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 諸外国の制度などについて詳しく伺おうかと思っていたのですが、何か大臣の御都合もあるということで、質問時間が余りございません。  諸外国でも土地の所有権を持たない者がその上に何らかの利用権を設定して建物を所有するということは、ないわけではないと聞いておりますが、それはあくまでも例外的なものである。特に、その利用者というのは一般の消費者ではなくてデベロッパーである場合が多い。それからまた、賃貸人側も多くの場合公共団体であって、売り払いによって処分することが許されてない公有地を一定の限度内で私的利用に供するというような場合を主とした、極めて例外的な制度であるというふうに聞いているわけでございます。  我が国でも、特に最近、公社公団などが集合住宅を建てようとする際に、地主が売却に応じてくれないということから、建物の存続期間を基準として定期性の土地賃借権を設定するというようなニーズがあるというふうには聞いております。これはこれで一つの合理的な制度かなというふうに思うわけでございます。そういう定期性の賃借権をそのニーズに応じて新たにつくるということについては、一つの解決方法かと思うわけです。もしそういう方向であれば、これはこれで例えば担保なども設定できるような物権化を図る、しかしその期限は明確にするというようなことが一つの解決かなと思うわけでございます。  もう一つは、既存のものについては、やはりこういう基本的な不安定を解消するには、私は、現に利用している側が底地を買い取るという方向で、建物と土地の所有権の分離という不安定な状況を解消するという解決があり得ると思うのですね。そういう視点が、この改正案にはもちろん、従前なかったのではないか。そこが私は一番批判を持つところでございます。  戦後行われた農地改革において、これはまさに土地を利用する者が所有をするべきであるという理念、土地を耕す者が所有するのだという理念に基づいて農地改革が行われた。このことが日本の民主化、あるいは当時としては農地というのは非常に主要な生産手段であったわけでございますから、その後の日本の経済的な発展等に大きな功績をしたことは、だれしも否定できないわけでございますね。そういたしますと、やはり借地についても、利用者側の方へ所有権を統一していくという視点が私は必要なのではないだろうか。もちろん農地改革のような、戦後のようなドラスチックな、何といいますかイノベーションというよりはレボリューションに近いようなことは、現在の社会情勢下では行いがたいかと思いますけれども、しかし方向づけとして、そのような方向づけも当然考えるべきではないだろうかと思うのですが、いかがでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 借地権者に底地の所有権、そういうものの移転請求と申しますか、売り渡し請求権を与える、そして法律関係を簡明にするという御提案でございますけれども、これは、そういうような権利を認めるということは、恐らく借地・借家法の枠外の問題でございまして、国の政策として、これは一つの独立の大きな問題として判断されるべき事柄だろうというふうに思います。  地主さんと借地人が話し合いで底地の所有権を取得するということは、これは一向に構わないことでございますけれども、地主の意思に反してでもそういうことができるということになりますと、やはり大変いろいろな問題を考えなければならないのではないかというふうに思いますので、ちょっと私ども、この当否については答えかねるという状況でございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)委員 先ほど申し上げたように、終戦直後のような激動期であるわけではございませんから、その地主の意思に反しても強制的に買い取りできるというような非常にドラスチックなことを今行うということは、それはなかなか難しいだろうし、妥当かなということもあろうかと思いますけれども、しかしそのように誘導するということは十分可能でありますし、しかも私は、これは借地・借家法の枠外の問題とは考えません。現に、今次改正案も、どう見ても賃貸人側に有利な、賃借人側に不利な方向がかいま見えるわけでございますので、これは方向が逆ではないかということを指摘をいたしまして、大臣が退席されましたので、私の質問はこの程度で終わりまして、私の残り時間は同じ会派の他の質問者にお譲りするということで御了解を得ておりますので、これで終わりたいと思います。

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 御苦労さまでした。  午後零時二十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十四分休憩      ────◇─────     午後零時二十分開議

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡崎宏美君。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 午前中私ども社会党の小澤議員の方からも質問をさせていただいたわけですけれども、それに引き続く形でいろいろお尋ねしてみたいと思います。小澤議員の方からも、なぜ今の時期にこの改正案をということでかなり繰り返してのお尋ねをしたところですけれども、私も実は、今回新しい法律として提案されているわけですけれども、これから審議を重ねていくに当たりまして、その趣旨あるいは目的について、ここにやはり大きな問題があるのではないかと思っておりますので、改めてお尋ねをしたいと思います。  今回新法として提案をされた、その目的といいますか趣旨について、改めて、できるだけ具体的に説明をお願いをいたします。

左藤恵自由民主党法務大臣

○左藤国務大臣 現行の借地・借家法、これは、先ほど申しましたとおり、借地に対する需要の多様化等、社会現象または経済情勢の非常に著しい変化があるわけでありまして、それになかなか対応できていないということで、今やらなければならない緊急の課題であろう、そういうことから今回の改正をしようということに踏み切ったわけであります。現行法の不都合な点は幾つかあると思います。そうしたものを解消して当事者の権利義務関係をより合理的にしていこうということで、言ってみれば利用しやすい、すなわち貸しやすいしまた借りやすい、こういう借地・借家制度を目指すのが今回の改正の趣旨である、このように申し上げていいんじゃないかと思います。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 貸しやすいといいますか、手続の問題として、社会的あるいは経済的な情勢の変化に、そういうお言葉が午前中もかなりございました。これはたしか午前中の民事局長の答弁の中でも否定はされなかったと思うのですけれども、現行法は民法の特別法として、自由契約のもとでは地主、家主が借地人、借家人よりもやはり優位にあることから、地主、家主の私権の一部を制限することによって借地人、借家人の地位の安定化を図る。はっきり言うと、持てる者と持たざる者との実質的に対等な契約関係を保障していく、そのためのものというふうに私は現行法を理解しているのです。さらに、土地、住宅の利用というものを自由契約にゆだねるのではなくて、ここは小澤さんもお尋ねになっていたと思うのですが、労働立法のように社会政策的に取り扱うという見方、そういう配慮が含まれているというふうに私は理解しているわけです。民事局長も、そればかりではないけれども否定はしない、たしかそういうふうにおっしゃっていらっしゃって、こういう趣旨、目的といいますか、理念というものが現行の借地・借家の法律の中には含まれているんだ、そういうふうに私受けとめたわけなんですが、それは間違いがありませんね。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 借地・借家法の立法の趣旨が、委員のお言葉にございましたように、持たざる者を保護すると申しますか、あるいは借地人の立場が非常に弱いのでこれを社会政策的に保護する、こういう要素があるということは否定できないところだと思います。しかし、それに加えてさらに、建物の所有目的のために土地を利用するということでございますので、土地・建物の長期安定化を図る、つまり借地関係の継続的な安定を図り、個人の住宅を保護すると同時に産業も保護する、明治、大正時代に勃興した産業資本の投下というのが多くは借地を利用するという形で行われたということもその背景にはあるわけでございまして、そういう一つの権利としての保護、財産権としての保護というような面ももちろん含まれておるというふうに考えているところでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 それで私、午前中の質疑答弁を聞いておりましてよくわからないというか、ぜひ具体的にお示しをいただきたいと思うことがありますのは、今答弁の中でも、私が理解をしている現行の法律の持つ理念は否定しないけれども、貸す側の財産権というものもありました。その中で、社会的経済的情勢の変化ということを説明としておっしゃっているわけです。午前中もこの部分についてやりとりがあったわけですけれども、社会的経済的情勢の変化というものについて、どういう変化なのかを具体的に説明をいただきたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 もともと借地・借家法は、他人の土地なり建物を借りてそこで住み、あるいはそこで事業を行い、あるいはそこでいろいろな営業を行うということでございます。そういうことで借地・借家関係というのが成り立つわけでございますが、社会経済情勢が非常に多様化いたしまして、いろいろな形で土地を借りいろいろな形で家を借りる、こういうような借りる方にもいろいろな需要が生じてきているということではないかということでございます。特に土地についてでございますけれども、何も永久に土地を借りるということでなくてもよろしい、権利金の授受がされるという前提でございますけれども、安い権利金で、つまり安い資金で一定の期間だけ土地を借りてそこで事業をしたいという方もおられる。また、貸す方でも、いろいろな社会経済情勢があるけれども、一たん土地を貸してしまうとほとんど永久に返らないということでは困る、間違いなく返してくれるということであれば安い権利金でもお貸ししますという方はたくさんおられるわけでございます。これが借地に関する新しい需要の一つのタイプでございますけれども、そういうような要請というものが現に出ている。そういうものにこたえるような形に現在の借地法はなっていない、そういうものをやはり合理的な範囲で許容するように法制を整備すべきであろうということでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 私も、家を借りてというか、部屋を借りて住んでいる人間ですから、多くの借りる側の人たち、特に大勢の、働いているごく普通の人たちの生活をどうしてもまず一番に考えざるを得ないのですけれども、そういう我々にとりましては、土地そのものでもうかるという現象が起きている一方で、私たちは働けども働けども我が家を持つこともできない。なおかつ、では職場に近いところに借りようかといっても、いろいろな要素があってちょっとやそっとの経済的な保障では借りることもままならない、こういう社会的経済的変化というものは身近に感じているところなんですけれども、私、後でもちょっとお尋ねをしてみたいのですが、こういう我々にとって現行の借地あるいは借家の法律というのは、やはりある部分で、とにかく自分は、借地で親が家を建てていたけれども、ここで生まれて親が死ぬまではここにいたいとか、それは町場の中で実は今いっぱい問題が出てきているのです。とにかく自分たちが、働いている人が長期的に安定してここで暮らしたいという保障を求めるのは極めて当然なことだとは思うのですけれども、それを辛うじて守ってきていたのが現行の借家法、借地法でないかというふうに理解しているのです。  何で私がこの考え方にこだわるかといいますと、これは結局持たない者が今も申し上げましたようにとにかく生活をしていく上で、長期的に安定を求めていく上で、そのときにこの周りではこれからビルが建っていくところだとか、特にこれまでのいろいろな経過を見てきますと、経済界からの要請というのも非常に強いような気がするのです。市場経済を優先していくことがもしも進んだ場合に、一人一人の人の生活の安定というものがそこで損なわれることがあるのではないか。ひょっとしたらこの新しい提案をされている法律がそういうことに手をかしかねないような場面というのはないのだろうかという危惧を持つのです。  というのは、私も、これを私たちはどんなふうに見ていったらいいだろうかと思いまして、実際に生活をしている人にどういう影響があるかというのを知りたいと思って聞いてみたのです。そうしましたら、これは恐らく大臣も法務省の当局の皆さんも御承知のことだろうと思うのですけれども、実際世間では、今出ている案がもう二、三年前から、もっと前からだと思いますが、特にこの二年くらい前からは、借地・借家法というのは変わって、そして皆さんはそういう意味ではその時点でここにはもう長くいられないようになりますよ、こういうことも言われて追い立てられるケースが実は出てきている。これは知らないからそういうことにもなっているのだというのは一つでしょうけれども、しかしうそであれ、それを使って追い立てている側の人たち、不動産であるとか建築であるとか、いろいろな業界の関係の人たちが既にこれを使ってやろうとしているその裏には、これまでの保護という部分の要素を薄めて、土地の利用であるとかいうことも一つの理由にしてこれからはやっていけるのですよという宣伝を含めてやっているわけで、そこに私自身は、今回の法律の目的なりあるいはその趣旨というものを出す際に、持たざる者の保護という部分を何とかして明らかにしていくことはできないのだろうかというふうに思っているのです。  つい最近聞いた話では、実際神戸でも十八軒ばあっと土地を借りて建てている、長屋なら長屋としましょう、その人たちが、もうここは借地・借家法が変わると周りにはこれからビルが建つ、あるいはここは高層にしていった方が非常に有効利用できるというふうなことも言われて出ていくことを求められているということも聞いております。  ちょっと長々となりましたけれども、説明の言葉では公平な見地、これは午前中の説明の中では、社会的弱者、強者という見解はとりません、また合理的な調整というものを時代の変化に応じてやるためのものです、こういう説明だったわけです。ではこの部分、公平な見地、合理的な調整というのは、そういう意味では追い立てを今求められているような人にでもわかるように具体的に説明をしていただきたいということと、現行の保護をするという目的も変わらず残るとしたら、それを明らかにしていくということを考えられないものかということについてお尋ねいたします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 借家についてもお話がございましたのでちょっと最初に申し上げておきますが、今回の借家法の改正では、要するに期限つきの借家権、つまり持ち家を持っている勤労者の団体等からの強い要請で実現いたしました期限つきの借家権という制度を導入するというのが基本的な改正でございまして、そのほかにも正当事由の明文化というところがございますが、借家については、その他の点については基本的な改正はないわけでございます。  借地については、期間を一律に、基本的な期間を三十年とし、その更新後の期間を十年とするという改正はございますけれども、これについてもやはり正当事由が必要であり、その正当事由については基本的には従来と変わりがないという考え方をとっておりますので、私どもは、借地・借家法がそういう社会的に弱い立場にいる人たちの権利を保護し、その居住関係を安定させるという目的でつくられたという面、こういう面は依然として今回の改正案においても厳しく維持されておる、その点は全く緩むところがないというふうに考えているわけでございます。そういうことに加えて、さらに既存の借地・借家人の方々の不安な心理状況というものを推しはかりまして、既存の借地・借家関係につきましては新法の更新等に関する規定は一切適用されないということで、従前どおり全く同じように保護されますよということを、法律の上で明らかにしているわけでございます。  ですから、本当はこれ以上くどくどと説明することは必要ないのかもしれませんけれども、それでも一部の人たちに、委員御指摘のような、現に借地・借家に住んでおられる方に対して、新しい法律が通ると追い出しやすくなるというようなことを言っていろいろなことをするということは大変遺憾なことであり、残念なことであり、むしろこの新しい法律によってそういう人たちの権利はちっとも変わらない、今までどおりであるということを、あらゆる機会に私どもも説明しておりますけれども、関係の皆様方におかれてもそういうことを強く御説明願いたいと、私ども期待しているところでございます。  そういうことでございまして、基本的に借地・借家関係の安定というものを図るということ、そういうことについての基本的な立法態度というのは、従前も現在も全く変わってないということを御理解いただきたいと思う次第でございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 今おっしゃっておいでのことはわかりましたけれども、これからまだ審議がずっと続いていきますので、私ももっと具体的なものを今現実に起きていることでお尋ねもしてみたいと思いますが、法務省当局の方でもいわゆる持たざる者である人たちの実情というものをぜひつかんでいただきたいと思います。その上で、この部分について本当にこれで保護し得るであろうか、これまでの部分がきちんと維持されていくであろうかということを考えてみたいと思うのです。  午前中の答弁の中でおっしゃっておいでだったことを少し具体的に教えていただきたいというふうに質問したのですけれども、時代の変化に応じての合理的な調整、社会的弱者、強者という見解はとっていない、公平な見地で調整をしていくということにつながるのだろうと思うのですが、これはわかるといえばわかるが、わからないといえばわからない。もう少し具体的に御説明をいただけませんか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 社会的弱者とか強者という言葉が適当かどうかはともかくといたしまして、借地・借家人の方が非常に弱い立場にある、こういうことから、そういう立場を保護しなければならない、そしてまたそういう人たちの権利を長期安定的なものとして確保しなければならないということで借地・借家法が大正十年に制定され、昭和十六年にもそういった趣旨の改正がされた、こいうことになっているわけでございまして、そういう基本的な借地・借家法の構造というものはこの新しい借地借家法案においても全く変わっていないし、その立法の趣旨が、委員おっしゃるように社会的弱者を保護するということであるというような表現もできるというならば、それは全く変わっていないということでございます。そういうことを前提とした上で、しかしながら現在の社会経済情勢というのは非常に大きく変わっているし、しかも変化の度合いも激しい。そういう変転の激しい時代というものを考えるときに、今の借地・借家関係の当事者間の権利関係の調整というものが果たして十分にうまく機能するだろうかどうか、こういうことから私どもは考えたわけでございます。  その典型的な例が更新後の期間十年ということでございますけれども、現在ですと例えば二十年という期間で貸す、あるいは三十年という期間で貸しますと、更新は当然に二十年、三十年になってしまう。最初の期間が満了したときに更新をすることが相当であったといたしましても、その後貸し主の側にいろいろな事情が生ずる、例えばお子さんが結婚する、あるいはどうしてもうちをそこに一部つくる必要があるというような、事情が変わることがあり得るわけでございます。現行法ですと、それを例えば二十年の期間で貸した場合には、二十年間待たないとそういうことを裁判所で判断していただけないということになる。場合によっては、三十年待たなければならないということも極端に言えば出てくる。そういう状況でございますので、それをできるだけ裁判所なりなんなりで公平に当事者の事情というものを判断してもらう機会をふやすということがやはり必要になるのではないか、それはやはり十年刻み程度の期間が相当ではないかということで、更新後の期間を十年といたしました。しかし、これは決して借地人の立場を弱めるものではなく、十年たったときに地主の方でその土地を返してもらうには正当事由が必要であるということにおいては、従前もこの法案も全く変わりがないわけでございまして、正当事由がない限り結局土地は返らないわけでございますから、その意味においては借地・借家人の保護は変わってない。ただ、そういう事情の変化に応じて権利の調整をする機会が従前より若干ふえる、これは時代が激しく変わっておりますのでそういう機会をもっと設ける必要がある、こういう趣旨のものでございまして、借地人、借家人の権利を弱めるというようなことは全くないというふうに私どもは考えているわけでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 まだこれからも審議がありますから、社会的、経済的な情勢の変化というのを結局どうとらえていくかというのはまた後へ譲るというか、そういう機会にもさせていただきたいと思いますが、とりあえず現行の法で保障されている持たない者の方の権利というのは何ら変わるものではないということと受けとめて、次にお尋ねしたいと思います。  今もお話にありましたけれども、借地権の存続の期間、これは今度、最初の存続期間というのは一律に三十年ということに言われているわけですね。この三十年とされた根拠といいますか、理由は何なんでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 現行法ですと、契約によって借地権の存続期間を定める場合には木造ですと二十年、鉄筋等の堅固ですと三十年ということになっておりまして、大部分の借地契約は二十年あるいは三十年という契約期間が定められるというのが普通になっているわけでございます。  今回、この借地権の存続期間を一律三十年とした趣旨は、まずその前提として堅固と非堅固の区別をなくそう、二十年、三十年という区別をまずなくそうではないか、これに区別を設ける合理性はない、こういうことがまず第一にあったわけでございます。じゃその場合に、二十年の方に合わせるのか三十年の方に合わせるのかという問題があるわけでございますけれども、この点につきましては、私どもいろいろ建設省の建築専門家等の意見も非公式にお伺いしたところでございますけれども、一般に鉄筋コンクリートの建物でございましてもやはり三十年程度たてば建てかえというものが検討されるというような状況にあるというようなこともございます。たまたま現在ですと鉄筋コンクリート等の堅固な建物については最低の存続期間が三十年となっているというようなこともございますので、二十年を格上げして三十年一律ということにすれば借地権の一応の安定性は確保されることになるのではないかというようなことから、当初の存続期間は一律三十年というふうにいたした、こういうことでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 ついでにお尋ねします。  その後、契約の更新後というのは、これはさっきもたしかお答えいただいたと思いますが、原則一律十年、これについてもついでにお答えをお聞きします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 原則的な存続期間を三十年というふうにした上で、本当と申しますかある一つの考え方といたしましては、原則的な存続期間が三十年経過した後においては、当事者が、正当事由が整ったときに例えばいつでも土地を返してもらうというようなことにすべきだというようなお考えも、あるいはないわけではなかったのでありますけれども、しかし、少なくとも現行法が、当初二十年なら二十年というような存続期間であれば更新後の存続期間もそうなるというような法制になっているというようなことも考慮いたしまして、更新後の存続期間は十年というふうにしたわけでございます。  なぜ十年にしたのかということにつきましては、先ほど来御説明申し上げましたように、現行法のように二十年、三十年という単位では、その正当事由があるかどうかを判断してもらう機会が十分に与えられるということにはならないのではないか。十年という期間は、そのような正当事由があるかどうかを判断してもらう機会の保障、そういう機会を一方では地主の方に保障しなければならないということと、しかし借地人の権利の安定ということも考えなければならない、こういう両者から考えていって、いわばその均衡点として十年という程度の期間が相当ではないか。現在の社会情勢、経済情勢の変化の目まぐるしさ、家族の構成とか資産とか、一種のライフサイクルというようなものを考えますと、十年単位ぐらいで正当事由の有無をチェックすることがお互いに公平ではないのかということから十年というふうに、いろいろな議論を経た上で一律十年というふうに決めたわけでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 済みません、ちょっと確認なんですけれども、最初の存続期間のときに堅固な建物の場合三十年とおっしゃったのは、六十年じゃなくて、最初の存続期間も三十年ということですか。そして更新後もこれまでは三十年だったと、現行の方ですよ。最初の存続期間の堅固な建物というのはやはり三十年だったということですね。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 六十年というのは、存続期間について定めがなければ法律の規定で六十年になる、こういうことでございます。しかしながら、契約で存続期間を定める場合には三十年を下ってはなりませんよということになっておりますので、ほとんどの契約は堅固の建物については三十年という契約をする、そして三十年という契約をしますと更新後の存続期間もまた三十年になる、こういう意味で申し上げたわけでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 わかりました。  それで、これはとんでもない質問かもわかりませんけれども、例えば堅固な建物がこれからこの条文に基づいて十年単位で後ずっといくときに、仮にその建物がまだどう見ても老朽化していない、こういうふうな場合に、やはり取り壊しもあり得る、それは契約に基づいてということになるわけですが、そういうこともあり得るということですよね、これは。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 更新をすることができない、つまり、貸し主側に正当事由があるということで、三十年の期間あるいは更新後の十年の期間が満了して土地を返還しなければならないということになりますと、借り主といたしましては、現行法もそうですし、この新しい法律でも同じでございますけれども、その建物の買い取りを貸し主側に対して請求することができる、こういうことになっております。もちろんその請求をしないということもそれは自由でございますから、請求をしないこともあり得るかもしれませんけれども、普通はその建物の買い取りを請求して、貸し主の方で建物の所有権を取得する、こういうことになろうかと思います。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 更新の場合、十年ごとというのは、例えばライフサイクルなんかも考えて、そういういろいろな変化を見て機会をふやすということでさっき御説明いただいたのですが、その逆の方の人の場合、借りる側の人たちの中でちょっと今いろいろなことを聞いていますのは、更新のたびにかなり高い更新料を求められる。借りる賃料の値上げもやはりその都度言われるわけですが、そうすると、貸す側にすれば、貸す側の事情を説明をして相手に求める機会が多くなるということではあるけれども、借りる側からすれば、特に高い更新料をずっと求められてうーんと言っているような人たちからすれば、その更新料を求められる、それに伴っていろいろトラブルを起こす機会がふえるとも言えるのではないでしょうか。何か更新料というものについては地域的にも非常に差があったり、これはいろいろ問題があるというふうに聞いているのですけれども、そういうトラブルを生みかねない、そういう機会をふやすということにはならないでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 この十年ごとの更新の際に更新料を請求されるのではないかという御指摘でございますけれども、これは現在の借地人、借家人、十年は借地でございますけれども、現在の借地人の方にはこの十年という更新の規定は適用になりませんので、更新のたびごとに更新料を請求する機会がふえることはない、これはもう従前どおりということでございます。この法律が通った後に借地契約をした人たちが三十年たって、さらにその十年後の四十年後に初めて十年ごとの更新料というものを請求されることになるということだというふうに思われるわけであります。  私どももその更新料の実態というものについて必ずしも正確に把握しているわけではございませんけれども、更新料などというものは全然取らないで、そのまま黙って更新している、もう何も言わないでずっと更新しているような地域もたくさんある、しかし大都市周辺部でそういったたぐいのものが最近授受されているところもある、その額もまちまちであるというようなことも聞いているわけでございます。  確かに十年の期間が満了した際に、正当事由があるかどうかというようなことについて、貸し主、借り主がお互いに法廷にまで持ち出して争うというようなことは好ましくない、円満に話をつけて円満に更新しましょうというようなことで、あるいは更新料というようなものが払われているのかなというような感じもしないわけではありません。しかし、基本的に正当事由というものがなければ再び更新されるわけでありますから、いたずらに更新料を支払わなければならないというようなことにおびえる必要はないのではないかというふうに実は私は考えております。むしろ十年ごとに、先ほど申しましたように、貸し主側の事情の変更、借り主側の事情の変更、そういうものをそこで突き合わせていろいろな両者の関係の合理的な調整をするということに非常に意味があるわけであって、これは非常に大事なことではないかというふうに考えるわけでございます。  そういう意味で、先ほど申しましたように、十年の期間というのはいろいろな諸要素を考慮した上でのかなり合理的な期間だというふうに見ていいのではないかと私どもは思っているところでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 その十年がいいか悪いかというのは、また私も一生懸命調べてみたいと思うのですが、その更新料というのは、これは今のようにそんなに心配することないのじゃないでしょうかと言われるには非常に問題のあるところもかなりありそうですから、これはぜひ一度お調べをいただきたいなと思っております。本当に払わなくてもいいものを多くの人が、地主さんと借りている側とのその関係を悪くしないがために、結局求められるままに払っているというのが大方のケースだろうと思いますので、一度その実情というのは調べておいていただきたいなと思います。また、私たちにもその調べていただいたものを教えていただきたいと思っております。  正当事由の問題なんですけれども、これはこの間大臣も本会議で趣旨説明されて、そして各党質問しましたが、それに対するお答えの中でも、今回の法案における正当事由についての表現内容は、従来の判決における判断の要素を書き出したものにすぎなくて、だから今回の法案が成立し施行された後の裁判においても、従来の裁判と比べて判決の傾向に変化が生じるというふうなことはあり得ませんよ、とにかく変わりませんよということをかなり繰り返しておっしゃっておられたと思うのです。これは法務省としての見解だというふうにも思うのですけれども、それはそういうふうに理解していいわけですね。

左藤恵自由民主党法務大臣

○左藤国務大臣 この法律案におきます正当事由の規定というのは、これは借地・借家関係の解消の要件であります正当事由があるかないかということを判断する場合に、今お話がありましたように、またこの前お答えを申し上げたとおり、裁判の実務で考慮されている要素、これを規定に掲げることによりまして、具体的な実情に即した判断をすべきであるということを法文上明らかにするということをねらったものでございまして、したがいまして、その正当事由の内容の実質は基本的に現行法で行われておるものと変わることはない、このように確信をいたしておるところでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 ちょっと重ねてお伺いをすることになるのですが、調査室の方からもたくさん判例集を実はいただいて、もう私なんかは法曹界というものには門外漢だったものですから、読みこなすのも大変だったのですけれども、その判例をたくさん見せていただいて思ったのは、裁判の場合というのは裁判官の方が法に基づいて、と同時に裁判官の方の自己の良心に基づいて判断というものを下していく、これはごく当たり前のことだと思うのですね。ただ、逆に言うと、その判決にはどうしても個々の裁判官の方の判断というものが出てくる。だから、微妙に違う判決がある、あるいは場合によっては全く違う結論が出る場合も全くないとは言えないというか、それは否定はできないと思うのです。  とすれば、従来の判決における判断の要素を今回書き出しているということは、今までの判決で主流といえばいいのかな、多数を占めているといえばいいのかな、そういう考え方がベースになっているのだというふうに解釈していいわけなんでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 正当事由につきましては、現在の法律の条文が非常に簡明と申しますか、簡単過ぎて具体的に何を言っているのかよくわからない、こういうような指摘が前からあるわけでございます。と同時に、正当事由の有無というのは、それぞれの借地関係あるいは借家関係によって、ある意味においてはみんな違う。つまり、それぞれの関係がそれぞれの個性を持っている。いろいろな経過にいたしましても、利用の状況にいたしましても、貸し主側の家族構成、借り主側の家族構成、それぞれの人たちが使用する必要性等々、本当にいろいろな事情が絡み合っているわけでございまして、そういうようなことから、例えば最高裁判所は「当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し社会通念に照し妥当と認むべき理由をいう」という非常に抽象的な言葉で正当事由を包括的に定義しているわけでございますが、基本的にはやはりそういう判例のような考え方でやるべきものだろうというふうに思います。  具体的な事件について、結論が一見逆になるような事案でございましても、事案を詳細に検討してみますと、それはそれなりの理由なり事情があるということになって納得することも、私ども多々あるわけでございます。そういう個別的なものが背景にあって、個別性が非常に強いという前提で、しかし、だからといって現行法のように非常に抽象的な表現ぶりでいいのかということになりますと、これは非常にまた問題でございまして、私どもといたしましては、従来の最高裁の判決あるいはもろもろの判決に示されている正当事由の判断要素につきまして、できるだけこれを列記して、裁判所が具体的な事件について判断する場合におきましても、それに照らして漏れなく事情を適正に判断することができるようにする必要があるというようなことから、今回判例で示されている判断要素を、事の軽重はございますけれども、中心的な要素と補完的な要素というようなニュアンスはございますけれども、そういうものを法文化いたした、こういうわけでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 恐らく貸している側と借りている側の双方の事情というものを比較して、そしてどちらが求めるものが逼迫をしているかということで判断をされている、そういう大きな枠の中の裁判の結果だろうというふうに思っているのですけれども、そうであるとしたら、今回、法の方は抽象的だったから少し具体的に出したいということなんですが、私も現場でずっと公務員をやっておりました。一つのことを判断する際に、法文の中に具体的に挙がった項目といいますのは、これは仕事をする際には極めて大きな枠はめをいたします。どうしてもこれに左右されていきます。  そうしますと、裁判の場合は、法文が極めて抽象的であれ、双方からいろいろな事情を聞くことによって最終的にどちらがその枠の中では困窮度は逼迫をしているのだろうかというものがもちろん求められていくわけですけれども、これがこれからまだ後でも問題になるだろうと思いますが、法文の中に今四つほど具体的なものが挙がっているわけですが、挙がった場合にはこの四つが非常に枠はめをしていく、左右をしていくということにならないかということを、随分私自身は心配をしているのです。  例えば、挙がった項目の中の一つに「土地の使用を必要とする事情」というのがございますね。これは現行では「自ラ土地ヲ使用スル」というふうにはまる部分じゃないかと思うのです。すると、みずからというのはこの改正案の方ではないわけでして、みずからというのがないというのは、これはどういうことを指しているのだろうか。さらに、この四つの項目が挙がったということは、ではこれからどちらがどうかというのをはかっていくときに、この四点が裁判の中でも大きく影響を与えてくるのではないかというふうにちょっと危倶しますので、御説明をお願いいたします。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 正当事由の判断の主要要素として、当事者が土地の使用を必要とする事情というのが一番大きな判断要素になっているわけでございます。御指摘のように、現行法では「土地所有者カ自ラ」その土地の使用を必要とする事情という、「自ラ」が入っておりました。これを取ったわけでございます。  この「自ラ」という言葉につきましては、昭和十六年の改正当時におきましても、一体これは何を意味するんだ、地主個人その人一人が使用する必要性なのか、あるいはその家族なのか、あるいは親族を含むものなのか、あるいは自分の企業をいうことなのかというような、いろいろな議論があったわけでございます。かなり広くも解釈したり狭くも解釈する。しかし、仮に「自ラ」の中に自分の家族は入るけれども親族は入らないというような説をとりましても、親族の使用の必要性は結局正当事由の方に入ってくるから、それは同じことではないかというような、いろいろな議論が繰り返された経緯があるわけでございます。  裁判例でも議論になっているところでございますけれども、結局、貸し主側はこういう形で自分は土地の使用をする必要があるんだということをまず言っていただく、それが自分であるかあるいは自分の子供であるか、自分の親戚であるか、自分の経営する企業であるかは問うことなく、とにかく自分はこういう形でこの土地を使用したいということを言っていただく。借り主側は、自分の土地を使用する必要性はこういうことなんだ、それを率直に言っていただく。それを裁判所が総合的に判断して、どちらの使用の必要性の方を立てたらいいのだろうかということで判断すれば足るのではないか。  だから、みずからとかなんとかと言わなくても、総合的な使用の必要性というものをお互いに言っていただいて、そしてそれを裁判所が判断をするという形にすれば足る。現実の裁判所の判断もそういう形でされておる。先ほど私ちょっと説明いたしましたけれども、例えば最高裁の判例なんかでも、そういう形で当事者が土地の使用を必要とする事情等を判断して決めるというふうになっているというふうに考えるわけでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 結局、土地の有効利用ということが、「自ラ」というものを取った場合において非常にその事情の中に組み込まれていくのじゃないかという危惧を持っていらっしゃる方もたくさんおいでだと思うのですね。  そしてもう一つは、「土地の利用状況」ということもありますけれども、それには、とにかく神戸でもよくあるわけですが、ビルの谷間の中に住宅がぽつんと残っているとか、繁華街の中の住宅だとか、そういう人たちの立ち退きを迫っていく理由にならないかということについて非常に危惧を持っていらっしゃる方もたくさんおいでなんです。これはもう時間が余りありませんからまたの機会にお尋ねしたいと思うのですが、その「自ラ」を取るということについてはやはり多くの疑問が残っておりますので、ぜひここの部分はこれからお尋ねしてみたいと思うのです。  それと、ちょっと私よくわからないことがありましたので、せっかくおいでいただいたものですから最高裁の方にお尋ねしたいことが一つありますのと、それから、定期借地権の問題がこれから大きく出てくると思うのです。これは恐らく、よくも悪くも今回の改正案の目玉なのかなとも思うのですが、二つお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思うのです。  この定期借地権に関して三つのパターンが挙がっているわけですが、これはどういう人といいますか、企業といいますかが求めてくるのだろうか、利用しようとするのだろうか、選択しようとするのだろうかということを、できたら具体的に、こういった業界の人たちではないかとか、こういうことが具体的に今法務省当局の中で頭の中に描いているものだということを、ぜひ説明をいただきたいと思います。  それと、裁判所の方にお尋ねをしたいのですが、これは調停前置主義ということで今回提案をされているわけですが、現在裁判所に家賃とか地代にかかわる紛争といいますか、裁判所に寄せられているものはどれぐらいあるかということと、それから、仮にこの改正が通ったとして、調停委員会というものに持ち込まれるということになるわけですけれども、どれくらいの件数を予測していらっしゃるでしょうか。それから、調停委員会というのはどういうふうに構成をされていきますか。求められているのは、解決を非常に迅速に行うということが求められているように思いますので、それに際してこの調停委員会というのはどういう働きをしようとしているのか、準備をされようとしているのかということをお尋ねしたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 定期借地権についてお尋ねでございますので、先に私の方から答弁させていただきます。  定期借地権には三種類の類型があるわけでございますけれども、そのうちの定期借地権、つまり五十年以上の期間を定めてする定期借地権とか、あるいは三十年の期間経過後に建物の所有権を貸し主の方に移転するという建物譲渡特約付借地権というような場合には、これは法律上特定の利用方法というものを規定しているわけではございませんが、恐らくこれまで紳士協定としてされている住宅・都市整備公団の契約とか、あるいは場合によっては公共団体等がそういう形での契約で土地を借り上げて公営住宅等をつくるというようなことをしているというふうに言われているわけでございますけれども、そういった形での契約が型的なものとしては考えられますけれども、それ以外にもかなり幅広く利用されるのではないかというふうに想定しております。五十年という期間は長いといえば長いわけでございますけれども、しかし、五十年たったら間違いなく返してもらえるという点も一つの大きな魅力ではないかというふうに思っております。  それから事業用借地権につきましては、事業目的という限定がございまして、期間も十年以上二十年以下というふうに短い期間で定期の借地権として利用していただく、こういうことになっております。今まで私どもの考えているところでは、郊外の外食店舗とか量販店、遊技場といった短期間で収益を上げるというような目的、逆に言うとある意味においては十年程度あるいは十数年過ぎますと店舗が陳腐化するというような、最近のそういった業種の形態というようなものに照らして考えますと、そういうようなところが利用するのではないかというような感じがいたしておるわけでございます。事業用という限定がついておりますので、この利用はある程度そういった面にだけ限定されてくるというような見込みで考えております。

今井功最高裁判所民事局長

○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  まず第一点でございますが、地代賃料の改定に関する事件数がどれぐらいあるか、こういうことでございます。これにつきまして、平成元年度の事件を調査いたしましたので申し上げますが、まず訴訟でございます。訴訟は地方裁判所及び簡易裁判所合わせまして約二千件ということでございます。それから、現在あります調停でございますが、これが約千五百五十件、こういう数字になっております。  ところで、もし今回の調停前置主義が採用されますとこれがどうなるか、こういうことでございます。現在調停に来ております調停事件千五百五十件と申し上げましたが、これをさらに分析してみますと、調停には、当事者の方から裁判所に来て調停をしてほしい、こういう申し立てによる事件、それから訴訟事件がございまして、訴訟をやっているうちに裁判所の方でこれは調停でやった方がいい、こういう事件は職権で裁判所の方から調停に回す、この二つがあるわけでございます。その申し立てによる事件——失礼しました。先ほど千五百五十件と申しましたのは、申し立てによる事件が千五百五十件でございます。調停全体では約二千件ということでございます。失礼いたしました。訂正させていただきます。  そこで、今度この改正がされた場合に調停に回るのは、現在調停にある事件二千件、これは全部そのままでございます。それから、訴訟から回る事件がございます。訴訟から回る事件は二千件、訴訟も二千件でございますが、そのうち職権による事件は四百件、これは二重にカウントされますから、それを引かなければいけません。結局、二千件引く四百件ということで千六百件程度ふえるのではないかということでございます。もちろん、これは平成元年度一年の事件でございますから、今後この紛争がどうなるかということによって事件数はかなり違うことにはなろうかと思いますけれども、現在の推定では約千六百件ふえる、こういうことでございます。  次に第二点、調停委員会の構成でございますが、調停委員会は、裁判官が一人、それから民事調停委員というのがございます。これは民間の有識者、弁護士の資格を持った方あるいは不動産鑑定士等の専門的な知識を持った方、このような方が選ばれておるわけでございますが、そのような民事調停委員二人以上ということで、普通は裁判官一人と民事調停委員二人、合計三人で調停委員会というのをつくりまして、そこで当事者の言い分をいろいろ聞いて合意ができるようにする、これが調停でございます。  それから第三点のお尋ねでございますが、第三点は、今後そういうことで賃料増額事件がふえた場合にその処理体制はどうかということでございます。  今申し上げましたように、おおよそ千六百件ふえる、こういうことでございます。ところで、民事調停事件は全部でどれくらいあるかと申しますと、平成元年度では約五万六千件という数字でございます。そうしますと、それに比べますと千六百件という数字はそれほど大きな数字ではない、割合を占めないということになろうかと思います。もっとも、このような地代家賃の増減に関する事件が増加いたしますと、不動産取引についての専門的な知識を必要とする、こういうケースがふえてこようかと思います。それに対しましては、従前からいろいろ行っておるわけでございますが、調停委員に対する研修会あるいは研究会ということで、特にこのような紛争についての知識を与える、あるいはトレーニングをする研修の機会をふやしていきたいというふうに考えております。また、事件数の動向を見まして、そのほかにもいろいろ事件処理に支障のないような手当てを講ずることにしたい、このように考えておるわけでございます。

岡崎宏美日本社会党・護憲共同

○岡崎(宏)委員 定期借地権というのは、私は今当局が描いていらっしゃる実例というものをお聞きしたのですが、公団の住宅というものについても、それから外食産業などを初めとする短期間に営利を得てかわっていくという産業を町の中にふやしていくことについても、これは法務省の枠外だということになるかもわかりませんけれども、人が住むという町づくりを国が一生懸命やっていこうとすると、これは非常に大きな問題を生んでくるのじゃないかというふうに素直に思いましたので、またこういう観点からもいろいろな質疑をさせていただくことになると思いますけれども、きょうはそういう具体例を思い描いていらっしゃるということをお伺いしたということで、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 小森龍邦君。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 今回の借地・借家法の改正に当たりまして、今現在の歴史的な状況というものをかなり深く洞察をしておかねばならない、こういう感じもございますので、まず最初に、必ずしも法律の名前は借地・借家法ということではありませんけれども、この現在の法律が対象としておる、一連の法律が民法からその社会的弊害を一つずつ保護していくためにとられた改正のそれぞれの節々の時期があると思います。そのそれぞれの節々の時期について、どういう社会的弊害を解決しようとしてこのような法律がこの時期つくられたか。例えば、明治四十二年だったと思いますが、一九〇九年の建物保護法というようなもののところからひとつお知らせをいただければ、かように思います。とりあえず私の質問は、この明治四十二年と大正十年、この節の二つをひとつお聞かせいただきたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、明治四十二年に建物保護ニ関スル法律というのが制定されました。これは、明治二十九年制定の民法典のもとでは、他人の土地の上に賃貸借で土地を借りて建物を建てるという場合には、賃借権について当然に登記をすることができるという方法がございませんので、建物を建てましても、その後に土地が第三者に売却されますとその賃借権は吹き飛んでしまう、つまり、建物はしたがって取り壊してその土地から収去しなければならない、こういうことに結論としてなったわけでございます。これを俗に地震売買というふうに呼んでいるわけでございます。貸借地の底地の売買がありますとその上にある建物は取り壊して収去をしなければならない、あたかも地震があって建物が壊れるがごとき状況になるということで、地震売買と言われたわけでございます。  そういうことでは、建物の経済的価値を無用に滅失させてしまうということもさることながら、そこに住んでいる人たちの権利は全く保護されないということになりまして、急遽、これは当時の議員提案でございますけれども、建物保護ニ関スル法律として明治四十二年につくられたわけでございます。  その後、大正十年に借地法、借家法というものがつくられたわけでございます。この建物保護法によって一応は保護される形になりましたが、借地契約も期間が三年とか五年だとか、あるいは借家契約も極めて短期間というような形で契約が結ばれておりましたために、借地人、借家人の権利関係が非常に不安定であった、そういうようなことがございました。時あたかも日本の経済も発展途上にありまして、大都市に多数の人々が集中するようになって住宅難も大変なものになったというようなことから、この借地人、借家人の権利を保護してその安定を図るべきであるというようなことから、大正十年になってようやく借地法、借家法という形での現行法の母体となる法律が制定されたわけでございます。  考えてみますと、明治二十九年に民法典が制定されたわけでございます。恐らく当時の民法典の制定者の考え方は、建物の所有を目的とする土地の権利というのは、物権である地上権、これは存続期間は五十年を原則とするわけでございますが、地上権というものを考えたというふうに推測されるわけでございますけれども、現実の土地の利用形態は、民法に定める土地の賃貸借、賃借権という方法によってすべてほとんど賄われるということになってしまった。  ところが、民法に定める貸借権というのは、動産も不動産も、土地も建物もいわば一緒くたにした形での法律規制でございましたために、その保護が非常に薄い、弱いものであったということになっているわけでございますが、そういう弱い賃貸借契約が利用されているということから、借地人、借家人の権利は非常に不安定になった。それを保護するために、建物保護法については、明治三十七、八年の日露戦争後の経済状況の中で急遽保護する必要がある、大正十年の場合には第一次世界大戦後のいろいろな社会経済情勢の変化というのがあるわけですけれども、そういうものをバックにいたしましてこの法律がつくられたというふうに私どもは考えているわけでございます。  さらには、御指摘にはございませんでしたけれども、昭和十六年当時の第二次世界大戦を背景にして、借地人、借家人の居住の安定を図る必要があるということから、昭和十六年にいわゆる正当事由条項が付加された、こういう経過をたどってきたというふうに申し上げることができるのではないかと思っております。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 そうなりますと、明治四十二年の建物保護法ができたときの事情というのは、当時の社会的背景が、ほっておくと借地・借家人の権利が守られないで社会的な一つの大きな矛盾となってくる、こういうことが考慮されておるように思います。明治四十二年という年がどういう年であったかということは、社会的な不安というものがこういう土地とか建物とかをめぐってのみ起きておったのではなくて、私の調べたところによりますと、この年に初めて我が国六大都市において職業紹介所というものが設置されておる。だから、雇用の問題についても社会的な不安というものが大都市において考慮されねばならなくなった時期だ、こういうことを思うわけであります。  それからまた大正十年、一九二一年でありますが、これもちょっと調べてみますと、神戸の三菱、川崎造船所においてストライキが起きている年なのであります。それからまた一九二一年というと、この明くる年の一九二二年に部落解放運動の実質的な初めての取り組みである全国水平社、あるいは農民組合、日本共産党の創立、こういう出来事が続いております。  それで、先ほどは私の質問にさらに加えて昭和十六年、これは戦争中のことでありますが、ここでまた正当事由というものを差し込んでひとつ安定を図ろう、こういうことになったようでございまして、これだけの大改革というのは、必ず社会的な大きな節目というか、考慮しなければならないことというものがあって、しかもそれは人々の権利というものを市民法的な感覚から次第に社会法的権利の方向に重点をかけてきた、こういう歴史の歩みではないかと思います。  そうしますと、今回の借地借家法というものは、この改正案として出されておる時点というものは、人々の権利感覚、感覚というとおかしいか、権利の中身、つまりそういう人々の権利というものを今日の社会の分析に基づいてこういうふうに是正しようという形で出てきたと思うのですが、先ほど私の使いました市民法的な権利と社会法的な権利との関係に置くと、やや市民法的な権利の方に逆戻りの方向ではないのか。つまり、一つの財産をめぐって力ある者の力をずっと抑える方向で来た、ところが、今度はそこのところを少し自由にする。それにはいろいろな説明があるわけですけれども、しかし大まかに言うとそういう方向をたどっておると思いますが、そういう方向をたどらねばならない今日の社会情勢なのか、この辺はいかがでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 借地人の権利を強化するという場合に、強化というのは一体具体的に何であるのかということになろうかと思うのであります。  私は、やはり借地権をいわば一種の物権に近いものにして保護をするということだというふうに言っていいと思うのでありますけれども、それをさらに具体的に申し上げますと、一つには、先生御指摘の第三者に対する対抗力を付与するということ、これは、明治四十二年の建物保護法によって完成された。借地についてはそうでございます。借家については大正十年の借家法の制定まで待たなければならないわけでございますけれども、権利が強力であるためにはその存続が保障されるということがやはり必要でございまして、大正十年の借地法におきましては、最低の存続期間が二十年とされたということになるわけでございます。  さらにその辺を、昭和十六年の正当事由条項の追加によってさらにその存続を強固なものにした。つまり、対抗力を与え、その権利の存続を強固にし、かつ、各種の判例理論の積み重ねによって、背信的な、信頼関係を破壊するような行為がない限りそうたやすく契約を解除することができないというのは、判例理論はそういうものをバックにしたものだと思いますけれども、そういう形で借地・借家関係の存続の安定を図る、これが権利を強くするという第二番目の中身であろう。  その三番目の中身は、その権利の譲渡性を強めるということだろうと思います。これは今まで出ておりませんでしたけれども、昭和四十一年の借地法の改正によりまして、裁判所の許可という手続は必要でございますが、譲渡性が強化されたということになるわけでございます。  そういう借地法の歴史というものを考えてみますと、借地権の強化、つまり社会立法的な意味での強化、あるいは借地権を財産権として保護するという意味での強化、あるいは近代的な権利として形成するという意味での権利の強化、そういう意味は、ある意味においては現行法において私どもはほぼ完成していると言って差し支えないのではないか。  今回の改正は、そういうような明治四十二年以来積み重ねられてきた借地権の強化という歴史の中で、それを前提として、なおかつ借地人と貸し主の関係、特に借地についてでございますけれども、権利関係の調整の合理化を図る、円滑化を図るということでございまして、今までの借地法の歴史の中における借地権強化の歴史にいささかも反するものではないし、それを前提として当事者の権利関係の合理化を図っているものであるというふうに私どもは認識しているところでございます。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 明治四十二年という年は、特定された四十二年に限ったことではないのですけれども、私がかかわる運動から歴史を分析をしてみる、そういう機会があるわけですけれども、土地というものに対する所有関係が、江戸時代のいわゆる地主と言われておった者が土地を所有していた面積と、明治以後農地を含めて土地を所有した、つまり金持ちが土地をだんだん所有して、農地でいうたら地主と小作の関係の小作人がふえていく、それから借地の問題でいえば住宅に使う借地のような、この問題にすればやはり借地がふえていく、そういうことが余り進み過ぎて、これはちょっと調整しなければならぬ、こういう社会的な状況があったと思います。  農地の場合、以前も私指摘したことがあるのですけれども、そういう土地所有関係が日本の封建制というものをいつまでもはびこらせた。つまり、江戸時代は四公六民と言われておったわけでありますが、その四公六民が、本来ならば明治以後の新しい税制によりましてもっと小作人が楽にならなければならなかったのが、余り楽にならなかった。だから、明治の初めに大きな農民一揆が次から次へと起きるのでありますが、そういう状況というものが、次第に土地所有関係というものが、明治三十年代いっぱい、四十年代の初頭にかけてまでずっと力ある者に集中しておった、そういう歴史があるわけであります。それにある程度歯どめをかけたのですから、これは私は、単純に土地所有は金で売買したらよいという、資本主義社会が生み出した市民法的な権利感覚を少し是正したということで、まことに妥当であったと思います。  また、次の大正十年ごろは、日本の資本主義は、さらに第一次大戦の後を受けて工場というものがどんどん広がって都市に人口が集中し始めたわけですから、都市化現象が生まれてき出したわけですから、そこでやはり是正をしなければならぬ。それは、都市及び都市近郊にというよりはむしろ工場に近いところに労働力を吸収しなければならぬという、資本主義の一つの経済要請というものがあったと思います。それを円滑ならしめるためにやはりここでひとつ手を打っておかなければいけぬ。それはしかし、結果から見れば借家人、借地人の権利を守るという形になったことで、これもまあ私も妥当じゃなと、歴史の発展方向としてうなずけるわけであります。  昭和十六年、これも戦争たけなわな時期でありますから、どういうことなのか、これは私は社会的な解釈をまだ十分にしておりませんが、戦意を鼓舞して、天皇のもとにすべて力ある者もない者も赤子の一人だ、こんな感覚から来ておるのではないかと思います。これはよく調べてみなければわかりませんが、しかし、それなりに一つ一つ節目があってこうできておるのでありますが、今回の問題は、先ほどお話があったように、果たして合理的に権利関係というものを安定をさせて、そして社会の動きというものを滑らかにしていくということになるだろうか、これが私の非常に大きな危惧の中身なんであります。  そこで、そのことに関係をいたしましてお尋ねをするわけであります。今回はもともと、アメリカとの構造協議というものがあるそれより少し前に、一九八五年にこの問題を何とかしようという動きが始まっておるように記録から見受けるわけでありますが、しかし、直近、一番近いところでの出来事というのは、やはり日米の構造協議によって、先方も借地・借家法を見直しなさい、日本の国も最終報告として借地・借家法を見直します、こういうことになっておるわけであります。  大体、この構造協議ということ自体の本質から照らして、一体この構造協議というものは、今日の我が国の経済状況というもののどの辺をどのように直さねばならないとしてアメリカといろいろ接触をされたのか、これをちょっとまず通産省の方からお聞きいたしまして、それの一環として、土地利用という関係ではひとつ建設省の方からお尋ねをしたい。その双方からまず聞かせていただきまして、果たしてそれが、法務省が手をつけられるところの借地・借家法というのは、先方からのそういうことがあったとはしても妥当なのかどうかということをさらにお尋ねをする質問をいたしたいと思いますので、まずひとつ通産省、続きまして建設省の方からお答えをいただきたいと思います。

長谷川榮一通商産業省通商政策局北米通商企画官

○長谷川説明員 若干長くなりますけれども、先生ただいまお尋ねの日米構造協議の発端を含めまして御答弁をさせていただきたいと思います。  御案内のように、日米構造協議でございますけれども、一九八九年七月に、我が国の当時の総理大臣でございます宇野総理とブッシュ大統領の共同発表がございまして、そのときの基本的な問題意識と申しますのは、日米間の経常収支のインバランスの解消というものが政策課題でございまして、そのために、それ以前に従来から講じてきておりますマクロレベルの政策のみならず、両国間の経済構造の障壁となっている事項につきましてもお互いに話し合って解決をしていこうというようなことで合意をしたわけでございます。  その後、約一年にわたりまして両国間の関係省庁の次官、局長クラスが集まりまして、昨年の四月には中間報告を出しまして、さらに昨年の六月末に最終報告を出したわけでございます。  これは米側とも共通でございますし、ほかの省庁も共通だと私は信じておりますけれども、この構造協議の基本的な目標は、ただいま申し上げました対外不均衡是正に向けましての経済政策、協調努力を補完するものとしまして、日米双方がそれぞれ相手国の構造問題を指摘し合いまして、お互いが相手方のそれぞれの指摘を踏まえ、自国として必要と考える構造改革に取り組むというようなスタンスで臨んだわけでございます。  したがいまして、そうしたスタンスの中で、最終報告におきましては、日米双方がそれぞれ相手国から提示されましたアイデアを参考としまして、これはあくまでも参考でございますが、それぞれがみずからの判断としてこれまでに、その時点までにと申し上げるのが正確でございますけれども、とりました措置、それからその時点、つまり最終報告の時点でその後とることを予定しております措置を取りまとめまして最終報告をいたした、そして、我が方としましては、そういう意味で最大限の措置を盛り込んだわけでございます。  それで、この最大限の措置というのは一体どういうような観点から取り上げているかということでございますけれども、国民生活の質の向上、消費者利益の増進、それから我が国経済を国際社会とより調和のとれたものとするようなことに資する、そうした施策、措置を列記いたしたものでございます。  以上でございます。

木村誠之建設省建設経済局宅地開発課宅地企画室長

○木村説明員 お答えいたします。  構造協議関係のお話は、ただいま通産省からお話があったとおりでございますが、先生のお尋ねの趣旨は、土地利用と借地・借家法の関係についての経過ということかと存じます。  御承知のとおり、昭和五十九年以降、東京圏を中心とする地価高騰が大変な状況になってまいりまして、これに対応しましていわゆる土地臨調というものが設けられまして、六十三年の六月に土地臨調の答申がなされ、それを受けまして同じ六月に政府として総合土地対策要綱を定めたわけでございます。要は、土地の異常な高騰に対応してどうやって国民の手に届く住宅宅地供給をやっていくかという観点から、総合的な土地対策をまとめたわけでございます。  その中では、私どもが担当しております宅地供給の問題のほかに、税制、金融、その他あらゆる問題について抜本的な見直しをやらなければならないということで議論がなされておったわけでございまして、その時点におきまして既に借地・借家法の問題についても言及があったわけでございますが、もうちょっと進んでまいりまして、今般の借地・借家法の改正の前段といたしまして、今回の借地借家法そのものにつきましては、先ほど法務省からもお答えがございましたとおり、当事者間の合理的な権利調整のルールを確立することかと承知しておりますけれども、一昨年土地基本法が成立いたしまして、いわゆる土地の所有から利用への転換を図るべきだということを国会でお決めいただいたわけでございますが、その中で、土地の適正な利用、計画的な利用を推進すべきではないかということがうたわれておりました。  そういったものを実現する手だてとして、私どもも税制あるいは都市計画その他の面でいろいろな制度改正を行ってまいったわけでございますが、やはり土地の利用の基本となるところである借地・借家法につきましても、そういった土地の適正な利用、あるいは今サラリーマンにとりまして全く手の届かない状態になっております住宅、とりわけ優良な賃貸住宅の供給といった面にも資するということを念頭に置いていただいて、御検討をしていただく必要があるのではないか、そういう趣旨で、先般の、ことし一月に策定されました政府の新しい総合土地政策推進要綱におきましても、このような趣旨が盛り込まれておるわけでございます。  もちろん、先ほど申しましたとおり、今回の法改正がそのことのみを目的としたものではない、むしろ居住の安定に大変配慮された方向で御検討されたものと私ども承知しておりますが、やはり土地の適正な利用の推進という観点も重要な課題だというふうに認識しております。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 構造協議のアメリカからの対日要求の土地利用のところを、新聞の報道するところでその項目を読んでみますと、借地・借家法を改正するということについては、やはり住宅を建てることを促進できるようにするというのが根底にありまして、もちろんそれは、その限りにおいては住宅を供給するということでまことによいことだと思いますけれども、そのためにつまり土地の所有権が動きやすいようにしなければならない。そうすると、つまり開発側の利益、便利ということにどうしても重点を置かざるを得なくなっておるのではないか。  したがって、要するに、住宅でもどんどん建てばアメリカからいろいろなものを輸入する。その輸入機会が拡大される、輸入のチャンス、向こうからいえば輸出のチャンスが拡大をされるというところにねらいがあるように思うのですが、土地の問題というものを片づけるというのは、そこを調整するというのは、借地・借家人の権利関係の調整によって行うというのではなくて、この間総理に対しても質問をいたしましたが、やはりその他の我が国の経済の根本のところにメスを入れて庶民の利益を守っていくというのが本筋ではないか。  後ほどまた、時間の関係もございますから、きょうは今回の改正案の中身について私の方から余り全面的な論理展開はできませんけれども、一、二また指摘させてもらおうと思っていますが、やはりこの借地・借家法の改正というのは、今日の社会が直面しておる土地問題を、ほかの経済的な理由によって、東京、首都圏、あるいは全国的に中小都市に至るまで非常に土地の値上がりがあって、その値上がりにまつわるそれぞれの利益の関係、それは必ずしも地主が値上がりを待っておるというだけでなくて、それを借りておる者も、実は借りておることの最終的な処理をするために値上がりを待ってやった方が得だという者も出てくる、そういう形で社会的な混乱が生まれてきておると私は思うのでありまして、権利関係の調整でこれをやるというのはまことにこそくではないか、こう思います。  ことし一月、私は国連の関係の用事がございましてニューヨークへ行ってまいりました。三年ほど前に行ったときもそういうことが問題になっておりましたが、その後またさらに一段と進んできたのは、ニューヨークのあの大きな高層ビルを日本の大企業がどんどん大企業の所有物にアメリカ側から買い取っておる。それが使われておるのかと思ったら、窓をのぞいてみると使われてはいないのですね。とにかく金が余っておるからそういうものへ投資する、こういう関係だと思うのです。聞いてみると、あの大きなビルをニューヨークのマンハッタン街において六十棟ほど買っておるそうです。その意味でも日本に対するアメリカの国民の感情というのは余りおもしろくない。  今日の経済状況でもうけた金を海外資産に投資しようとするのが、ある程度海外で反発を食って、それでまた日本国内でそれが処理される。東京近郊が値上がりする。中小都市も値上がりする。これが実は根本的な問題なんでありまして、その根本的な問題ではなくて、借地・借家の関係の法律で権利関係を調整することによってそれを何とかしようということになると、やはりこれは開発本位だ。開発をする者が便利なようになっておるのではないか。  一例を挙げれば、例えば更新期限を十年にしておるということは、それは非常に回転というかテンポを速くする。テンポを速くするというのは、住宅用地を確保するという意味ではまことに合理的なように見えるけれども、そこで今までずっと何十年間も培われてきた国民の権利関係というものが制約をされる、こんな関係だと思うのですが、その辺のところを視野に入れて、法務省民事局長はどういうお考えでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 昭和五十年代の後半から、臨調の答申とかいろいろな各方面から土地政策の一つとして借地・借家法の見直しというようなものが提言されているわけでございます。また、平成二年六月の日米構造問題協議の最終報告におきましても、委員御指摘のとおり借地・借家法の見直しというものがうたわれております。もちろん、この日米構造協議におきましては土地問題が非常に重要な問題として挙げられているわけでございますが、それに対する幾つかの政策の中の一つとして借地法、借家法の見直しというものが挙げられていることになっているわけでございます。  もとより借地借家法は、貸し主、借り主間の法律関係の調整を目的とするものでございまして、土地の有効利用とか再開発とか住宅の供給の促進というような土地政策を直接の目的とするものではないわけでございます。ただしかし、このような提言とか指摘がされるに至った背景には、現行の借地・借家法の規制が余りにも画一的で、社会経済情勢の変化に対応していない、そのためにいろいろ借地・借家関係の円滑な発展というものの障害になっておるのではないか、こういうような認識があったというふうに私どもは考えているわけでございます。  そういう認識でございますと、確かに、大正十年に借地・借家法が制定され、昭和十六年の改正以後、基本的な枠組みについての改正というものは一切されずに今日まで来たわけでございます。この間の社会経済情勢の変化というものはまことに目覚ましいものがあるわけでございまして、素直に現在の社会経済情勢に照らして現行法を考えてみますと、まずいろいろな問題が当然のことながら出てくるということになるわけでございます。  こういうような点を踏まえまして、新しい形としての定期借地権制度の導入というようなこと、あるいはこれは既存の借地・借家関係には全く関係のない事柄でございますが、今後締結される借地契約につきましては、更新期間は十年として、十年ごとに更新の当否をチェックするというようなこと、これは社会経済情勢の変化に対応して、正当事由が必要であることは今までと変わりませんけれども、正当事由の有無を判断する機会をふやすという意味でこのような調整をする必要があるのではないか、こういうことになったわけでございます。  今回の借地借家法案が成立いたしますと、私どもといたしましては、これによって良好な借地・借家の供給が促されまして、結果として土地の有効利用とか住宅の供給促進に寄与する、少なくともそういうものの障害になるということにはならないのではないかというふうに考えるわけでございまして、そういう意味ではやはり借地・借家法の見直しというものも土地政策の中に一つの位置づけとしての位置を持つということは、これは意味あることである、こういうふうに考えているところでございます。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 このたびの法律に関して、一例をとってちょっとお尋ねしてみたいと思います。  要するに、更新の期間が十年ということになってくると、これまでよりは少なくとも更新の機会というものがせっぱ詰まって早く訪れてくることになります。そうすると、更新料は裁判では払わなくてもよいことになっているようですが、現実の慣行、実際は更新料をかなり払っておる。この間の衆議院の本会議での議論でも、質問に立たれたある党の代表者は、地価の一割にも及ぶ更新料を払わされておるのではないかという意味のことがございました。私も調べてみると、七、八%から一割ぐらいがどうも相場になっておるようだ、こういうことを聞いておるのでありますが、更新の期間が短くなるということは、それだけみんなが権利を制約されて、なるほど土地の回転は早いかもわからぬけれども、その土地の回転、つまり開発ということに、今まで何十年もかかって守られてきた、我が国の社会経済の発展の状況に応じてそういうふうに社会法的な是正が行われてきたのを、今回は逆の方向へ戻す、こういうことではないかと思うのですが、民事局長は、更新料というものについては、現状どう把握されておりますか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 借地契約を更新するには、やはり更新を拒絶するには正当事由が必要であるということに法律上はなっているわけでございまして、更新料を支払うというようなことは予定はされていないというふうに私どもは考えております。  ただしかし、私どもの聞くところによりますと、地域によっては、期間満了の際に更新料を支払うというようなことをされる方があるというようなことであり、またその更新料なるものの金額につきましても、地域によってまことにばらばらである。また、何のために更新料を支払うのかということにつきましても、これは一種の名義書きかえ料的なもの、あるいは更新料を払うかわりに地代を少し安くしてもらう、つまり地代の前払い的な性格を持つものであるとか、いろいろな説明がされているようでございまして、法律的にいかなる性格を持つものであるかということはどうも定かではないというところが実情でございます。  そういうことが慣行として、私はまだ慣行にはなってないのではないかというふうな気がいたしますけれども、事実として行われておるということでございますと、更新についてのチェックの機会がふえるたびごとに更新料を取られるのではないかという御心配がわき出てくるというのもうなずけないわけではないと思います。  しかし、まず申し上げたいのは、この更新料云々の問題は、現在の借地人、借家人の方については十年ということは問題になりません。現行法どおり二十年、三十年の更新期間でございますから全く御心配には及ぶ必要がないということ。それから、この法律が成立いたしまして、この法律に基づいて契約をなさる方については、最初の十年の更新期間、つまり四十年後にさらに十年間の期間延長をするために更新料を支払うということは問題になるのかもしれませんけれども、私どもとしては、正当事由というのは現行法と同様に必要であり、その中身も要件も実質的には変わっていないということでございまして、借地人、借家人は十分に保護されているわけであります。そのことを十分に自覚して的確な対応をする必要があるし、また十分に的確な対応をすることができると実は考えているわけでございます。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 この更新料というのが慣行になっていないと言われるわけですが、しかし実際に行われておれば、それは常識的には慣行という言葉でもって表現をしておるわけです。じゃ、法律的な厳密さをもって言う場合は慣行というのはどういうことなんだろうか、私もいろいろ思いをめぐらせてみますけれども、法律的強制力がなくてまかり通っておるのが慣行というのだと私は思うのです。更新料というのは法律的強制力がないのです。それから、何か判例によっても否定されておるのです。判例によって否定されておってもやるというのは社会的な慣行だと思いますね。  現実にそういうことがあるわけですから、現実にそういうことがあるということになればいや人々の権利を守るんだと言うのなら、なぜこの改正の時点で更新料支払い義務なしと明確に打ち出さないのか。それが現実に行われておることは知っておりながら、いや従来の分は古い法律でいくんだからと言うても、これはきょう俎上にのせれば時間がかかるからのせませんけれども、つまり、いつの間にか新しい法律の考え方で、力ある者にずっと押される。法律的な知識のない人は、はあ法律変わってるんですかということでぱっと書きかえさせられたりということもあろうと思うのです。そんなことを考えると、なぜ更新料支払い義務なしとこの際書き込まないかというところに私は非常に臭いものを感ずるのですね。要するに開発本位で、開発の邪魔になる人々の権利意識は抑えてでも前へ進もう、こういうことじゃないかと思うのですが、支払い義務を法律で決めなかったということの意味をひとつお知らせいただきたいと思うのです。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 この法律では、貸し主が更新を拒むには正当事由がなければそういう異議を述べることができないことになっているわけでございまして、貸し主の方で積極的に正当事由があるんだということを言わなければならない、あるいは立証しなければならない、こういうことになっているわけでございます。その際、貸し主の方で当然に更新料をよこせということは法律上の権利としてはないというふうに私どもは実は考えているわけでございます。  恐らくそういうことで貸し主と借り主の間が円満にいくと申しますか、法律を盾に裁判まで持ち込んでというようなことではなくて、円満に話し合いでということで、あるいは更新料名義で若干の金銭の授受が行われるということは世間によくあることとしてあり得ることだとは思いますけれども、だからといってそれが法律上当然認められるとか、法律上の権利であるということにはならないわけでございまして、あえてそこまで、更新料の請求権はないというふうに書かなくても、それはそういう趣旨に理解されるのではないかと考えております。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 物事が逆立ちをしておると私が思うのは、もともと土地政策は欠陥があり、その土地政策の欠陥があるというのは、我が国経済に大変な欠陥があってアメリカからぶつぶつ言われる。細かい項目でいくと二百何項目、そのうちの幾つかはまことに正当なことを言っているなというのもあるのですが、要するにアメリカが二百何項目ぶっつけてくるということは、国際収支の貿易上のインバランスというものがしりに火がついたからアメリカがそういうことをやろうじゃないか、日本もやはり安定した貿易をやりたいからそういうふうにやりましょうということになったのだと思うのです。そういうもともと状況が悪いところへもっていってこういうふうな形になってくると、例えば更新料だって払わなければよいわけなんですけれども、借地・借家の貸し主と借り主の側の難しい交渉を更新料でうまくくぐり抜けて、しばらくしておると土地が上がる、またそれに対する一つの地上権みたいなものが自分の財産として拡大できる、こういう感じになる。つまり、諸悪の根源は日本の経済のちょっと間違った構造にあるので、そこにあるとすれば、そういう問題を国民の権利関係、借地・借家の権利関係にしわ寄せして解決するというのは、今までの歴史の流れに逆行するのではないか、こういうふうに私は思うのです。  私も、いやそれは土地を借りておる側、家を借りておる側の中にも悪いのがいますよと聞くのです。しかし、その原因は、社会的に考えてみてちょっとあれは行き過ぎじゃないか、居座り過ぎじゃないかというような状況が生まれてくるのも、今日の社会経済の一つのあり方の上に乗っかった現象でしょう。だから、それを先ほどのように簡単に更新料を払わなくてもいいんだからと言ったところで、現実に払っているというのは、我が国社会の今日の状況を反映した民間同士の一つの対応ということになって、それは決して住宅確保の、力の弱い者を安定させることにはならない。払える者はいいけれども、払えない者は出ざるを得なくなってくる、人情負けしてしまうということを恐れるのです。くどいようですけれども、もう一度ひとつお答えいただきましょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 先ほど申しましたように、更新拒絶の要件といたしましては、「借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。」つまり借地権設定者が更新はだめですよということで異議を述べるについては、そういうような正当な事由がある場合でなければ述べることはできないということになっておりますので、そもそもその要件が満たされていない限り借り主としては更新を主張することができるわけでございます。  あと、その枠組みとは別に、借地権設定者と借地人が話し合って、両者の円満のために更新料なるものの支払いをするということはあり得るのかもしれませんけれども、それは法律的な問題としてとらえることはいささか難しいのではないかなというふうに私は考えます。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 きょう私が予定しておる論理、質問の中身というのは、こういうところに主眼を置かずに大きな流れをひとつとらえたい、こう思っておりますので、これはこの辺で打ち切らせてもらいます。しかし、民事局長が言われておる、正当事由がなければ更新料を請求されたってそれは拒絶したらよいということなのですけれども、その正当事由自体が文面で見る限り拡大されておる、これはまた日にちを変えて議論しますけれども、だから先ほどの答弁では私の不安というのは取り除かれないのです。それだけちょっと申し上げておいて、私の質問の中身を次に進めたいと思います。  建設省の方にお尋ねをしてみますが、今日我が国一億二千数百万の人口を数えますが、それ相応の世帯数があるのだと思いますけれども、借地とか借家ということにかかわって、貸す側であろうが借りる側であろうが、おおよそどれくらいの人口に対する影響力を法律は持っているのですか。事実の数字として、国民の何割ぐらいに影響を持つ法律なのですか。

木村誠之建設省建設経済局宅地開発課宅地企画室長

○木村説明員 お答えになるかどうかわかりませんが、俗に日本の持ち家借家比率は、大体持ち家が六割と言われております。ただ、これは持ち方にもいろいろな形があるので正確なところはわかりません。  それから借地がどういう状況になっているかということにつきましては、国土庁なりいろいろなところで調査されておりますが、昭和三十八年ごろには戸建ての中で借地というのは三割ぐらいあったと聞いておりますが、それが最近時点の調査では一割以下に減ってきておるというふうに伺っております。土地を借地に出す方が非常に減ってきておる、これはやはり土地を借地にするとなかなか戻ってこないというようなことに対する懸念があろうかと思っております。  それから、住宅の話はちょっと私専門ではございませんけれども、特に賃貸住宅に対するニーズが近年高まってきておりまして、例えばいわゆる最低居住水準未満の住宅というのは全国では一割以下でございますが、東京圏では一四%ございます。戸数にして百四十万戸、その中で特に賃貸住宅の状況というのは悪うございまして、先ほど申しましたとおり優良な賃貸住宅を求める声は、特に若年のサラリーマン等の間に多いのではないかというふうに思っております。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 そういうふうな視野に立って総務庁の地対室長にお尋ねをしますが、同和地区、未指定地区は恐らく統計数字に載っていないと思いますからわからないと思いますけれども、指定された地域、四千六百か七百ほどの地域の中での持ち家と借家、借家といいましても公営住宅のようなものもございますが、要するに持ち家でない立場にいる者はどれくらいの比重があるのでしょうか。

萩原昇総務庁長官官房地域改善対策室長

○萩原説明員 生活実態把握調査の最新の数字で申しますと、パーセントで申し上げますと、同和地区が持ち家が六八・一%でございます。これに対しまして、それに最も近い住宅の統計調査で申しますと、日本全体での数字が六二・四%というふうになっております。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 それで、この六八・一%という数字は、例えば同和対策を行ったためにいまだ借金を多く背負って払いつつあるというそこまでの細かいことはわからないにしても、それを見ていく上で、同和対策の住宅の融資を借りて建てた家というのはどれぐらいの割合になるでしょうか。

浅野宏建設省住宅局市街地建築課住環境整備室長

○浅野説明員 お答えいたします。  同和対策といたしまして、持ち家と言いましょうか、住宅の新築資金等貸付事業という事業をやってございます。この中身は三つございまして、住宅を新築するというもの、持ち家を住宅改修するというもの、あるいは持ち家を持つための宅地を取得するため、この三つあるわけでございますが、これを合わせまして、これまでの実績で申し上げますと約二十万件実施をしてきておるというところでございます。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 それをこの六八%というものに当てはめてみて、このうちどれぐらいの割合になるのですか。——すぐできなかったら次のときに……。

浅野宏建設省住宅局市街地建築課住環境整備室長

○浅野説明員 新築資金の貸付件数はちょっと今資料を探しておりますけれども、約七万件だったと覚えておりますが、先ほどの同和地区の持ち家率が六八%でございますので、これも計算いたしませんとすぐ出ませんですが、全体の世帯数を掛け合わせればその比率が求められるということだと思います。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 この辺の数字から出てくる問題点は、また機会を改めていろいろとお尋ねをしたいと思います。  そこでもう一度通産省の方に話を返しますが、今日の我が国の経済の局面を見る上では、構造協議の俎上にのった中身を見るとよくわかるわけであります。その中で私が特徴点としてとらまえたいのは、日本の経済の大きな数字的な発展ですね。ちょっと悪口的に言えばバブル現象になってくる要因というものは、経済というものと日本の政府の権力構造、権力構造と言うと大げさになりますが、行政的な一つのスタイルですね。それが例えば行政機関の恣意的なまた権力行使ということになりますが. 恣意的な行政力の作用というようなものをアメリカ側は指摘をしていますね。それを恣意とか不透明というような言葉で表現をしておるわけですね。例えば審議機関なら審議機関一つとってみましても、政府の政策を立案するためのワンステップである審議機関の場合も、アメリカの指摘は、かなり公平性を欠く。だから、これは恐らく政府においても何々審議会だとかというようなものについてアメリカ側に返事をされておるんじゃないかと思いますが、そういう日本経済の動きの中にさまざまな恣意的な行為があって、例えば大店法の認可の問題だっていつごろになるのかわからぬという状態が今まで続いておって、それをすごく短くするというような動きになったのもアメリカ側からの指摘の問題ですし、またこれは運輸関係ですけれども、貨物の営業の認可を得る場合もいつやってくれるのかわからぬというようなことは、私も何回もそういう話はしたことがありますけれども、行政のまことに恣意的なことですね。酒の販売の認可を取るにしてもたばこの認可を取るにしても、基準みたいなものが大分出始めておりますけれども、庶民は随分手の届かない権力行使であったというようなさまざまな問題があるわけでありますが、アメリカと日本とのこの構造協議というものについて通産省は、これらの排他的なビジネス慣行とかあるいは価格メカニズムとか系列取引とかという中にアメリカは指摘しておると思いますが、どういう受けとめをされていますか。

長谷川榮一通商産業省通商政策局北米通商企画官

○長谷川説明員 先生からいろいろ具体的な例をお取り上げいただきましての御指摘でございますが、ちょっと順不同で若干お答えになっているかどうかわかりませんが、お言葉が出ましたものにつきましてお答えをしていきたいと思います。  釈迦に説法になるかもしれませんけれども、今審議会というのが例えば一つの例示で、かえって私どもの政府の意思決定を恣意的にしているのじゃないかというようなお尋ねもあったわけでございますが、まずこの点について先に御答弁をさせていただきたいと思っております。  審議会は、むしろ行政が、行政と申しましてもこれは法治国家でございますから、法律に従い、そして民意を反映しました憲法上定められた最高機関でございます国会の意思のあらわれとしての法律に基づいての行政しかできないわけでございまして、そのもとで法律上認められましたさまざまの裁量権というものも実際あるわけでございますが、その裁量も恣意的にやってもいいというふうに私ども決して思ってないわけでございまして、重要な法律の運用ないしは政策決定をするときに、さまざまの利害を有される方々の意見をむしろ直接に聞いた方がいいというようなことで審議会という制度があるもの、というふうに基本的に私は承知をしているわけでございます。  しかしながら、この審議会でございますけれども、ここでの議論につきましてアメリカ側の一部に、審議会におきます意思形成が必ずしも公にされずに、若干言葉が悪いのですけれども、いわば透明性がないではないかというようなことを言っている人がいることも、これまた事実ではございます。しかし、この審議会の機能を考えましたときに、さまざまの方がさまざまのお立場から物事をおっしゃり、それを調整する、非常に口幅ったい物の言い方をさせていただければ、まさに民主政治というものはそういうものだという面もあるわけでございますから、それを逐一公表するということになりますと、恐らくそこの委員でお越しいただいている方々が自由に御発言ができないというような不都合もあるわけだと考えております。したがいまして、私どもは日本国政府といたしまして、この構造協議の最終報告に「以下の原則を確認する。」ということで、成果の公表、それから審議会等の委員の人選についての原則、具体的には、消費者利益を効果的に反映する者をメンバーにするというような原則を掲げたようなわけでございます。  それで、次に御指摘ございました排他的商慣行等々あるいは系列でございますけれども、アメリカから見ますればなじみの薄い商慣行ないしはビジネスの実際の働きざまというのがあるのも、これまた事実かと思います。しかしながら、一般に系列というふうに言われているものを申し上げますと、資金力には必ずしもすぐれておらない中小企業のような会社を、人的、技術的にすぐれているのでむしろ資金力にまさります相対的には大きい企業が長期的に資金的にいわばコミットするといいますか、支援を約束して、その中でそうした小さな企業の持っておりますその可能性を最大限に生かしていくというような経済活動があったことも事実でございますし、こうした面で見ますれば、その系列というものもあながち悪い面だけではないわけでございます。  そういうことで、先ほどから申し上げております日米構造協議の最終報告が昨年六月末に出ました後にも、政府は官房長官の名で系列に関します談話等を発表し、いい面も悪い面もあるけれども、いずれにしても独禁法等々に具現されております競争にマイナスになるような要素があればそれはよくない。ちょっと正確な言葉遣いを今持ち合わせておりませんので、正確でなくて恐縮でございますけれども、そういうようなことで私どもとしては、この構造協議を契機にしまして、日本の制度、行政の運用を少しでもよくしたいということでやっているわけでございます。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 確かに今の日本の経済の状況、日本の経済の構造というものが能率ということではまことに都合がよいかもしれない。しかしながら、世の中は能率だけではいかないのでありまして、そこにさまざまな人間の権利関係というものがきちっと安定させられていて、人々の幸せというものは成り立つわけであります。大変な金持ちの国だと言われておるけれども、豊かさを実感できないというのは、この前の罰金制度の問題のときに、私は、可処分所得というものが、例えば住宅費にたくさん取られて、親が教育費に回したりなどする金が制約されているじゃないかという数字を一度話したことがありますが、そういうふうに、確かにトータルに見て、能率ということについてはまことに好都合な国かもしれません。しかし、そこにはさまざまな矛盾というものが生まれてくるわけであります。  それで、アメリカが言うには、日本政府は行政に一層の透明性を持たせ、官僚の自由裁量を削減し、消費者利益を反映させるための指針を策定すべきである、あるいはまた、国会は、行政指導の内容が問い合わせに応じて明らかになるよう情報公開法をつくるべきである、規制緩和のための諮問委員会を設置すべきであるなど、この規制というのが、社会法的な意味からいえば規制を強化しなければならぬのですけれども、この規制に行政力の恣意が加わる、ここが非常に大きな問題となってくるからいろいろ世の中に矛盾が生まれてくる、こういうことだと思います。  そこで、時間がだんだんたちますから、ちょっと十分に意を尽くさないままに具体的な事例に入らざるを得ないのでありますが、例えば先般、広島新交通システムに大きな事故がございました。これは要するに橋げたが落ちたわけなのでありますけれども、通行人が十数名亡くなった、作業員も数名亡くなった、こういう事件であります。要するに、日本の経済の構造というのが、建設なら建設一つとってみても構造的に非常に複雑になっておる。これは元請があり、下請があり、孫請、ひ孫請が現実は仕事をしていたのですね。だから、作業現場で死んだ人もひ孫請なのですね。  そういうふうなことを考えると、日本の経済の構造を直さずして、法務省がこの借地借家法案で、ちょっとお話は少しばかり飛躍しますけれども、権利ということでくくっていくと、権利関係というものはその社会の構造によって一定程度その時点で落着をしておるものなのでありまして、経済構造がそのままになっておるのに、例えばデベロッパーが金があるのに任せてどんどん土地をやっていくというような状況がそのままになっておるのに、権利関係だけをちょっとつつくということでは本質的な解決ができない、こういうふうに私はずっと思い続けておるのであります。  それで、先ほどの広島の新交通システムの問題を建設省にお尋ねしますけれども、こういうような下請、孫請、ひ孫請というような形になっておって、果たして人々の権利というものが守られますか。その点、どうでしょうか。

伴襄建設省大臣官房審議官

○伴説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、このたび広島新交通システムの建設工事現場で橋げたが落下いたしまして、死者が十四名、負傷者九名という重大災害が発生いたしました。まことに遺憾なことでございますし、御遺族の方には深く弔意を表す次第でございます。  今先生お話しの建設業というのは、そもそも総合組み立て産業でございまして、総合的な管理監督機能をする業界と、それからそれぞれ専門の分野を持って直接施工する分野がございまして、それが組み合わされて成っている産業でございます。したがって、その工事の適正な施行のためには元請、下請関係の合理的な運用をするということが非常に重要なことだと思っておりまして、その指導については従来から努めてきているところでございます。  こういう複合的な建設生産のあり方はやむを得ないものとして、それの合理化をどうするかということで建設省はかねてから検討いたしておりまして、今までのような元請、下請という言葉は非常に上下関係を想像させるような言葉でございますので、これからは元請、下請と言うのをやめて、総合工事業と専門工事業というような分類にして、それで生産システムの合理化指針を出そうということで、この間、二月に指針を出したわけでございます。要するにパートナーシップ、分業関係で専門工事業と総合工事業をやろうというふうに考えております。  この合理化指針では、今回のような事故防止につきまして指導要綱を徹底しておりまして、元請が下請を選定するに当たっては、そういう労働安全管理の状況は全うされているかどうかといったようなことも見て選定するとか、あるいは労働安全衛生法を遵守するということも大事ですし、それから安全衛生教育を実施するということも大事でございますので、これを元請の立場それから下請の立場にある業者につきましても要求しまして、特に元請を通じて指導助言するという仕組みもつくっておるところでございます。  いずれにおきましても、建設工事の適正な施行に向けまして、元請、下請関係の合理化について今後とも十分努力してまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 理屈で言えばそういうことになるのですけれども、実際問題は、総合建設業が請け負ったものをそれぞれに小刻みにして渡すときに、ひ孫請ぐらいまでいったら、建設省なら建設省が発注する際に見積もっておる工事費目に対する金額というものは、随分下がっておると思うのですね。そういう段階ごとに工事費が下がっていくから、工事は勢い能率的にやらなければならぬということで、それはある程度技術的にも進歩する一つの刺激剤ではありますけれども、かなり危険を冒してやらねばならぬ、こういう問題が生まれてくるわけです。  要するに、例えばこの新交通システムで、労働基準法違反で十六歳の少年が作業現場で働いておったという事実が何よりもこれを明確に示すのです。つまり、こんな経済のシステムでは人々の権利は守れないのであります。言葉の上でうまく言ってもそうはいかないということを十分に考えてもらいたいし、なぜこの借地借家法の審議でそういうことを出すかというと、民事局長に考えてもらいたいのは、日本の経済というのは、何か一つとって考えてみても、なかなか人々の権利を守れるような実際の仕組みにはなっていないのであります。  私はきょう、人権擁護局長にも聞いてもらいたいと思って質問をするという予定を出しておるのですけれども、人権擁護局長にもそれをよく聞いてもらいたいと私は思います。つまり、今の人々の権利というものは長い間の歴史の所産としてできてきたし、憲法は、「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」となっておるのです。しかしながら、その憲法に基づいてできておる労働基準法に違反をして、十六歳の少年があんな危険なところで働いておって、振り落とされて死んだのであります。これはずっとたどっていったら、どういう不幸な家庭の状況であって、十六歳でそういうとび職のような仕事を、危険なところに身をさらさなければならなかったかというまた一人の運命をずっと突き詰めていけば、今日の日本の社会を分析する上でかなり大事な、貴重な材料となると私は思います。  そういうことで、要するに、この議論は今回に限らないからこれからも続けますけれども、やはり全体として経済が高度に発展する、先ほどの話でいいますと、まことに能率よく、効率よくできるその裏側に、人々の権利が侵害されるという副産物をつくりつつ社会が動いておるのですから、そういう社会の状況を考えてやらなければ、明治四十二年、大正十年と、それはそのときなりに知恵を絞ってやっておる。経済の要請にもこたえた。しかし今日は、余りにも過重にこの経済の動きの要請にこたえんがために、言葉は住宅供給を円滑にするということですけれども、その裏側にはデベロッパーの開発をたやすくしていくということが潜んでおるように思えてならないのであります。  それで、ついでのことでいかに行政が恣意的であるかということの一例を出しますと、先ほどの新交通システムのあの事故があったときに、あそこが交通どめになっておればああいうことにならなかったのです。工事人の事故の範囲にとどまったのです。ところが交通どめにしてなかったのです。見ると、警察は、ああいうときには交通どめにするようにということで、サンプルの箇条書きにした一つの許可証みたいなものがあるのですが、わざわざそこを消しているのですね。そこをわざわざ消して、そして通行させつつ工事をやっていた。テレビで最初に聞いたときには、迂回路がないということを私は聞いたのです。しかし、私は広島県の出身ですから行ってみました。迂回路はちゃんとあります。私はそこを通ってみました。その後テレビが上からそこの現地を映しておるのを見ると、私が通った迂回路が映ってきます。それで、これは警察のミスです。しかし、その警察のミスがあるのに、警察側が工事のジャッキがよくきかなかったとかサンドルの組み方がどうだとか言って、つまりひ孫請のところの工事のあり方に何か理由をつけたようなことが新聞でどんどん報道されておる。こういう行政権力の恣意というものは許されないと私は思うのです。そういうようなことが経済の基盤の中にあって、人々の権利というものが今とかく問題にされておるわけですから、全般的に見てひとつ考えていただかなければならぬと私は思うのであります。  そういうことで、篠田人権擁護局長、あなたは、我が国の人権を擁護する唯一の行政機関の一番先頭におられる責任者でございます。今日の社会情勢の動きと人権擁護とを、この前から言っておりますように行政機関の横並びの方へ、これは人権擁護ということではこう考えてもらわなければいかぬということを絶えず言っておかないと、なかなかそういう観点というものが行政を行っていく上で、あるいは政策立案の上で十分に吸収されないと思うのでありますが、人権擁護局長はその点はどうお考えでしょうか。

篠田省二法務省人権擁護局長

○篠田政府委員 お答え申し上げます。  非常に大きい重大な問題と思いますけれども、先ほど委員がおっしゃられましたとおり、憲法で保障されている人権というものをできる限り尊重されるようにということで、私どもといたしましては、やはり関係省庁と横の連絡をより一層緊密にしてやってまいりたいと考えております。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 その際に私は、これは地対室長にも人権擁護局長にも再度見解を承っておきたいと思いますのは、そういうふうに一生懸命やるとは言われるけれども、実際にやっておられることは、この人権侵犯事件の問題でもあるいは差別事件の問題についてそういうものが激発しておるという状況に立って、それの基盤というものは同対審答申でも明確に実態差別との相互因果関係があると言っているのですからね。  しかし、今の行政施策を進めていく過程の中で、そういうものはちょっとほとりの方へ追いやって、そして余り問題にせずにいっておるのではないか。これもしかるべき適当な機会があったら私は具体的なあれを挙げてやりたいと思いますが、そういうことになっておるのじゃないか。差別事件でも大きな事件はほとんど解決してないでしょう。相手側の本当の反省というものを取りつけてないでしょう。これはそういうことを一つの基盤として地対室の方は物を考えていられるわけですから、人権というものが一つの具体的な事件として侵害される場合に、いやそれは人権侵犯事件だとか情報事件だとか。情報であろうが何であろうが、その情報のもとになって侵害を受けておる者は侵害されておるのですよ。そこらのところを人権擁護局長なりにもう一度あなたの考え方を述べてもらいたいし、地対室長もその点を述べていただきたい、かように思います。

篠田省二法務省人権擁護局長

○篠田政府委員 お答えいたします。  同対審のお話が出ましたので、一言それについて触れさせていただきたいと思います。  同対審でも我が国経済の二重構造ということが指摘されておりますけれども、物的な面と意識の面に相関関係がある、それも指摘されておるところでございます。その相関関係のあり方というのは、また一つの難しい問題がございまして、必ずしも正比例するわけではない。例えば物的な状態がよくなっても差別意識というのは依然として残っている、そういったようなこともあるわけでございまして、差別意識が残っている限りは私どもとしては啓発を続けてまいらなければいけない、そういうふうに考えております。  それから、情報収集事案についてお話がございましたけれども、仮に具体的に人権侵犯とはいかないまでもやはりこれは啓発が必要であるというような事件につきましては、私どもとしては啓発を行っているところでございます。

萩原昇総務庁長官官房地域改善対策室長

○萩原説明員 同和行政を進めていく上で、私ども何度も同じことを申し上げるわけですが、憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題であるということでやってきておるわけでございます。  現在の状況でございますと、昭和四十四年以降法律に基づいてやってきました特別措置によって、物的な環境というものはかなりの改善を見たというふうに評価をしておりますし、運動団体からも一定の成果があったという評価をいただいておるというふうに考えております。しかしながら、おっしゃったように心理的な差別事象というものはなかなかなくならないということも現実として認識しておりまして、現在は、このような状況をもとに同和行政として何をやるかということに取り組んでおるところでございます。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 今人権擁護局長が言われた、実態と心理とは必ずしもきちっと正比例するようなものではないという話がございました。それはそのとおりだと思います。しかし、なぜそれがずれるかということは、ほかの動物のように頭脳が単純でないから、一たび頭脳に反映された意識、形成されたその観念というものは、根のない花が一定期間美しい花の形態を保つように、差別だから美しいことはないけれども、つまり根を切り取られた花が一定の形態を保つように、一定の期間観念の相対的独立性として横行するのです。だから啓発が必要なんです。しかし、それが横行しよる間にほかの社会的条件によってちょっと刺激されたら、またそれがばあっと膨らむのです。だから、そこらのところを考えてもらって人権擁護局はひとつ頑張ってもらいたい、こう思うのであります。  そこで、法務大臣にちょっとお尋ねしておきますが、要するに差別というものは、他の動物の世界にどの程度あるのかということはよくわからぬけれども、人間は高度な頭脳を持っておるからあるのですが、たまたま法務大臣は宗教家であるということを私聞いております。人間の本性的な性質を親鸞上人は罪の深さと言った、それからキリストは原罪という形で提起しておると思いますが、そのことを宗教家として受けとめられれば、やはりこれは執拗に繰り返し繰り返し人権の問題というのは取り組んで、できるだけ差別のない、可能な限り差別のない社会をつくらなければならぬと思いますが、法務大臣のその点についての熱意のところを聞かせておいていただきたいと思います。

左藤恵自由民主党法務大臣

○左藤国務大臣 今のお話につきましては、同対審の答申におきましても実態的差別と心理的差別が相互に関係をもって作用しているということを指摘されておるわけでありまして、そういった地域改善対策の事業を行うとともに、偏見による差別の解消を目指して積極的な啓発をやっていかなければならない、こう考えるわけであります。  今お話がありましたように、宗教的な立場からどう考えるかということでございますが、人間というものの存在、そうした基本的な人権というものをお互いに守っていかなければならないという点から見まして、今御指摘のような、例えば親鸞上人のお考えということであれば、言葉の中に御同朋、御同行という言葉がございます。これは、どんな立場にありましても自分が一人の人間として進んでいかなければならないということを、人間に上下の差別も何もないんだ、こういうことで、仏様を信じるそういう立場は皆同じであるというようなことを言っておられるのだろうと思いますが、私は、そういった観念というもの、そういうのが本当の人種差別を、あるいはまた人権というものを一人の人間として尊重していかなければならない、そういう差別をなくする基本ではなかろうか、このように考えるところでございます。

小森龍邦日本社会党・護憲共同

○小森委員 もう時間に協力してやめますが、要するにこれからの議論というものを、きょう不十分でありますけれども質問の過程を通じて論点はわかっていただいたと思いますので、またこれはいずれ引き続きになると思いますから、そういう観点で、なるべく国民の前に物事を浮き彫りにしたい、こういう念願を私は持っておりますので、そのことを申し上げて、きょうは質問を終わります。

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 御苦労さまでした。  冬柴鐵三君。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 公明党の冬柴鐵三です。  この法律案というのは、借地法、借家法に加えて建物保護法を廃し、単独法に統合するという画期的な改正でありまして、きょうはその総論的また概括的な質問をいたしたいと思います。  現在、我が国で借家住まいの国民というのは、全国で四割近くを占めております。その意味で、本法の改正は多くの国民の現実の利害に関するものでありまして、極めて慎重な対応が必要であると考えます。  法務大臣は先ほど本法につきまして、社会経済情勢の大きな変化、特に土地・建物の利用に対する需要の多様化に対応し切れていない状況になっており、これに対応するための必要からこの改正案を提出する、このような趣旨の説明をされましたけれども、今特に都市圏における借地・借家人の多くは、更地価格の一割とも言われる巨額の更新料や毎年のごとく要求される地代家賃の増額請求に悩まされている現況にありますし、加えて、希有な事例かはわかりませんけれども、地上げ屋と言われる人たちの暗躍に居住の安定を脅かされている人も少なくないと考えます。  今回の見直し作業の端緒は、昭和六十年、経団連が発表した土地政策に関する意見に発しまして、内需拡大、民活導入の名のもとに推進をされ、その改正の方向がいわゆるデベロッパーの要求に沿い、地上げ屋を利し、弱い立場にある借地・借家人の既得の権益を制限するものではないか、このような懸念が喧伝されてまいりました。  そこで法務大臣に伺いたいのでありますが、借地・借家関係の現状をどう認識していらっしゃるのか、また現行制度につきまして、そのそれぞれが社会経済情勢の変化にかんがみどう不合理となっていると認識をされるのか、その懸念への回答も含めて、総論的で結構ですが、御答弁をいただきたいと思います。

左藤恵自由民主党法務大臣

○左藤国務大臣 今回の改正の主な点につきましては、先ほど来いろいろ御審議いただき、また提案理由の説明でも御説明申し上げましたが、定期借地権の制度の創設、期限つき借家制度の創設、借地権の存続期間の見直し、正当事由の明確化、地代家賃増減額請求手続の改善、そういったいろいろな点を取り上げておるわけでありますが、先ほど来お話を申し上げているとおり、定期借地権につきましては、一定期間に限って借地を必要とするなど借地に対する需要が多様化をしておるということに対応していこう、こういうことであり、期限つきの借家についても同じようなことでございます。  また、先ほどから先生方皆さんお話しになっております、社会経済情勢の変化というものはどういうふうに見ているのか、こういうことでございますけれども、非常に速いテンポで動いておるということから考えまして、当事者間の関係の調整というものを、現実には法が最初に予定したものとは非常にかけ離れてしまっておるというようなこともありまして、その実情に沿って行うことができるような借地権の存続期間の見直しだとか、更新後の借地権の期間を十年にするとか、あるいは正当事由につきまして、先ほどから御説明申し上げておりますように、実際の、現在実務で考慮されている要素を掲げていく、そしてその内容を明確に法定化するとか、そういったことをしてこの間の調整をしていきたい。地代家賃の増減額の請求をめぐります紛争につきましても、調停手続を積極的に活用するなど簡易迅速な解決をしていこう。こういうような点で借地・借家関係につきまして経済社会情勢の変化に見合った合理的なものにしようということであり、借り主の権利が弱まるということにはしてはなりませんし、また、それは考えていない、こういうことだと思います。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 それでは順次個別問題に入りたいと思います。  まず、定期借地権について伺いたいと思います。  現行の借地法では、借地期間満了とともに必ず返還する、このような特約をいたしましても、借地権者に不利な特約として、法第十一条によって無効とされてきました。すなわち更新のない借地契約は認められなかったわけであります。しかし、その結果、地主としては一たん借地権を設定すれば半永久的に土地の返還を受けることができないというふうになるために、借地権設定が行われるということが著しく減少してきたという傾向が明らかでありました。まれに借地権設定が行われる場合にも、高額な敷金あるいは権利金という名目の金員授受が慣例化してしまった。これは地域的にそうでない場合もあるかわかりませんけれども、私はそのような認識をいたしております。その意味で、更新のない借地権という法領域を新たに定期借地権として創設されたことは、今回の改正法中最も評価のできるものであると私は考えるものであります。  そこで伺いたいのですが、東京都下における新規借地につきまして、住宅地及び商業地で、それぞれ更地価格の何%の権利金の授受がなされているか、その実情について説明をいただきたいと思います。     〔委員長退席、田辺(広)委員長代理着席〕

永井紀昭法務省大臣官房審議官

○永井政府委員 ある調査では、東京都では新規借地につきまして、住宅地ですと地価の七〇ないし八〇%、商業地区でございますと地価の七五ないし八五%というふうな調査がございます。ただ、権利金の授受そのものですが、これは住宅地、商業地を分けた統計はありませんが、貸している者と借り主の側と回答が若干ずれておりまして、東京の場合ですと、借り主側の回答では七○%が権利金を授受している、それから貸している側では六〇%が授受がある、こういう回答になっております。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 今回の改正によって定期借地権というものが現実に行われることになりますと、このようにいわば常識外れといいますか、交換価格の八割というようなものが授受されないと借りられないという硬直化したものは是正されるのではないかと期待するわけでありますけれども、ただ、そのような大きなものでなくても、定期借地権でも、借地権設定にはやはり権利金あるいは敷金の授受というものが相当高額で行われるのではないか、そうも考えられます。また、収益性の高い事業、業種というようなものについて頻繁に利用されるのではないかというふうに思うわけであります。言いかえれば、住宅用地として本当に定期借地権というのは利用されるのであろうか、そのような感じもするのであります。それが第一点。  それからもう一つは、このように高収益の方が定期借地権を設定して土地を借りるという場合に、地代につきましても相当高額なものが決められてしまうのではないか、そういう傾向が生ずるのではないか、それが比隣の、従来の安定した住宅用地についての地代増額の一つの要因になるのではないだろうかという心配をするのです。法務省に聞くのはちょっと酷な話なのかもわかりませんけれども、法案提出者としてその点についてどのようなお考えを持っていられるのか、お伺いしておきたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 まず最初に、権利金のお話がございましたが、確かに私ども、法律の方は明るいのですけれども、権利金の実態というふうなものについて分析する能力は余り持ち合わせてはおりませんので、果たして正しい答えができるかどうかわかりませんが、現在の借地契約における権利金というものは、ほとんど半永久的に土地が戻ってこないという前提での計算だろうというように私どもも思うわけでございます。しかし、定期借地権は一定の期間が契約で決まっておりますので、したがいまして、権利金というものもその期間に見合うものということで、実質的には現在の借地契約の権利金よりかなり下がるのではないか、特に事業用の定期借地権についてはかなり下がるのではないか、そういう意味では利用しやすくなるというふうに予想されるところでございます。  それから第二番目の、定期借地権の導入により住宅地の供給が減少するのではないかというようなことでございますけれども、これはいろいろ見方があるわけでございまして、委員御指摘のような御心配もあるいは絶無であるというふうには断定しがたいところもあろうかと思いますが、私どもの考え方では、事業目的の短期の定期借地権というのは、用途が事業に限られるということ、それから期間も短いものであるということでございますので、大体住宅地として貸し出されることが想定されない土地がその対象となるのではないかというふうに予測いたしております。したがって、この制度の導入が住宅地の供給の減少につながるということにはならないというふうに見込まれるところでございます。  それから、長期の定期借地権、現在住宅・都市整備公団が更新のない借地権を取得して賃貸住宅等を建設しているわけでございますが、これは定期借地権を利用してむしろ住宅を供給するということですから、御質問の趣旨には沿う制度ではないかというふうに実は考えております。恐らくこの長期の定期借地権というのは、こういう形で大量の住宅供給の手段として使われるということが大いに期待されるというふうに考えているところでございます。  それから、地代でございますけれども、定期借地権の地代が総体的に高額になるかどうかということは、一義的にはなかなか言いにくい面があろうかと思います。これは権利金の授受とも関係する事柄でございまして、一律に高くなるということには必ずしもならないのではないかというような感じがいたします。さらに、個々の借地における適正な地代の決定に当たりましては、近傍の土地の地代というものは当然考慮されるわけでございまして、その場合にはやはり土地の利用状況その他の要素を勘案して、それが類似の土地であるかどうかということが非常に重要なポイントになろうかと思います。周辺の住宅地の地代を決めるという場合に、事業用の定期借地権の対象となる土地というのは、近傍でございましても類似の土地では必ずしもないというようなことでございますので、やはり仮に事業用の定期借地権の対象たる土地の地代がやや住宅地の地代に比べて高額であるというようなことがあり得るといたしましても、それが直ちに周辺の住宅地の地代にはね返るということにはならないのではないかというふうに私どもは考えております。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 定期借地権はそれぐらいにしまして、次に、法改正施行後設定される普通の借地権につきましてお尋ねをしたいと思います。  これについては更新期間を十年に短縮されるというふうになっておりますが、そのたびに更新料を要求される機会が多くなって、借り主の居住の安定を害することになりはしないか、こういう心配をするわけであります。ちなみに、現行法下において更新料支払い義務があるという根拠は、私は現行法からは見ることができないわけでありますけれども、現実には、これは一定地域ではありますが、大都市部ではこの支払いが慣例化している、このように私は認識をいたしております。  そこで、東京都下二十三区内と限らせていただきたいと思いますけれども、住宅地及び商業地においての更新料の授受の額はどの程度になっているのか、その点について、もし調査したものがあればお知らせいただきたいと思います。

永井紀昭法務省大臣官房審議官

○永井政府委員 東京二十三区で昭和五十九年から六十二年までに授受された例が、住宅地で六十八事例を調査いたしました結果、地代の五ないし十三年分が全体の六〇%を占めておりました。それから、商業地で三十一事例を調べましたところ、地代の五ないし十三年分がやはり全体の五二%を占めておりました。これらを総括いたしますと、地代の九年分あたりが中心的に更新料の額となっている、こういう統計がございます。     〔田辺(広)委員長代理退席、山口(俊)委員長代理着席〕

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 法務大臣、大変なことでありまして、土地を借りて上に自分が家を建てて、更新期間が来たときに、これは全国的とは申しません、東京二十三区内でありますけれども、その平均をすれば九年分に相当する更新料という法律的には全く義務のない金品の授受が要求をされといいますか、請求をされ、またこれに応じている人がいるということは、法治国家において大変な問題だと思うのですね。ですから、今回の改正法が旧来のものには影響がありませんと幾ら言われても、それはもう守るのは各個人、借家人そのものであるあるいは借地人そのものであると思いますので、よほどPRをきちっとしてもらわなければいけない。これは後でまた提案をしたいと思います。この今の事実、義務なき者が約十年分にも相当する地代を更新料として払っているというのは驚くべき事実だと思うのですね。その点について十分認識をしていただきたいと思います。  さて、法制審議会の答申、これはたしか二月四日だったと思いますけれども、その時点の要綱と今回の改正法案との対比をいたしましたときに、改正案におきまして、更新及び更新後の法律関係に関する新法の規定は既存の借地・借家関係には適用せず、従前どおりにするという思想が盛り込まれたことは、現に借地・借家関係にある者の既得権益を尊重しそして借地権や居住権の安定の確保をしている、不安を解消しているという点では非常にすぐれていると私は評価をしたいと思うのです。ただ、国民の不安を解消するために、従来の法律関係には影響しないかどうかという点についてちょっと細かく聞いていきたいと思います。  特に、既存の、既存のというのはこの改正法施行以前に借地・借家関係にある者の契約の更新についてでございますけれども、改正法附則第六条には、「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。」また同十二条には、「この法律の施行前にされた建物の賃貸借契約の更新の拒絶の通知及び解約の申入れに関しては、なお従前の例による。」このような定めが見られます。したがいまして、既存の契約に関しましては、改正法第六条あるいは改正法二十八条という更新拒絶の要件である正当事由の規定は一切適用されないと私は理解するのですけれども、それでいいのかどうか、明快な答弁をいただきたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 御指摘のように、更新に関する規定、つまり更新後の存続期間あるいは更新するかどうかの要件でございます正当事由に関する規定、これは新法施行前に既に設定されている借地・借家関係には一切適用がない、これは規定の上で明確にされておるというふうに言って差し支えないわけでございます。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 今挙げました附則の両条文には、「従前の例による。」このように書かれております。また改正法の附則の七条の二項あるいは八条、九条一、二項、そのほかたくさんありますけれども、こういう条文には、何々については「適用しない。」こう明快に書かれているのです。その点で、更新拒絶とか解約申し入れについて「従前の例による。」という定め方をなぜされたのか。もっと端的に改正法六条あるいは二十八条は「適用しない。」こういう書き方をしてもよかったのじゃないかと思うのですが、そこに何らかの差異があるのかどうか、その点について説明をいただきたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 普通、法律を改正しまして、その結果古い条文と新しい条文があるというような場合がございます。そういう場合に、改正法が施行されましても依然として古い条文が適用されるという場合には、いわば法律の表現の約束事といたしまして、「従前の例による。」こういうような表現を使うというふうに私ども理解いたしております。  それに対しまして、何々については何々の規定は適用しないという場合は、これは、新しい制度をつくった場合に新しい制度を既存の関係にも適用するかどうかということが問題になるわけでございますけれども、そういう場合には「適用しない。」つまり、旧法にはなかった新しい制度については適用するとかしないとかということをはっきり書きますけれども、いわば新旧交代の場合に、旧によるという場合には「従前の例による。」という表現ぶりをしておるということでございまして、その点は明確だというふうに考えております。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 ここの「従前の例による。」というその「例」ですね。これは何を指すのか。そしてまた、現行借地法、借家法というのは、新法附則第二条によって本法成立とともに廃止されてしまうということになるわけです。そうすると、端的に言えば、従前の借地契約あるいは借家契約というのは現行法の例によるわけですけれども、それがなくなってしまう、法令全集からなくなって廃止法令の中へ入ってしまう、だけれどもそれによる、こういうことになるのか。この借地・借家関係というのは今後相当期間更新されて、継続をされていくということを考えますと、現行法令全集に載っていないそのようなものによって規律されるという領域ができるというのはいかがなものか。そしてもう一度言い返しますと、「例による。」というのは現行の借地・借家法を指していると考えていいのかどうか、その点についてのお答えをちょうだいしたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 「従前の例による。」と申しますのは、この新法施行前の当時規律していたその法律の規定によって扱われる、こういう意味でございます。おっしゃるように借地法、借家法は附則第二条によって形式的には廃止されますので、理論的にはその法律をそのまま適用するということは形式的にはおかしいということになるのだろうと思うのであります。  ただしかし、そういった「例による。」ということになりますと、それは、従前は廃止されたその法律によって規律されており、それと全く同じように扱いますということですから、その限りにおいては実質的には従前の関係規律法規というのは生きておるような扱いを受ける、こういうことになろうかと思います。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 そうするとそこが、法源といいますかこれがちょっとはっきりしなくなってきまして、従前の法源はすべてそのとおりにやるんだとも読めるのですね。そうしますと、借地・借家法という実体法とともに、それの具体的な判断である判例法、形成された判例法というものも「従前の例」に入ってくると思うのですね。その点いかがですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 判例法は、従前の法律に基づいてされた一つの解釈基準と申しますか、そういうものでございますので、従前の法律に従って更新等が行われる以上、従前の法律についての解釈、判例というものも当然生きた形で、適用になるという言葉はちょっとおかしいと思いますけれども、そういう解釈をもって行われることになると考えております。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 そうすると、ちょっと循環論法みたいになるのですが、新法、改正法のうち正当事由だけに限って言いますと、法務大臣も提案理由で説明をされ、また同僚議員への答弁でも答えられたように、今回の正当事由というのは従来の判例で形成された規範というものをまとめ上げたものだ、いわばその結論だ、こういうふうにおっしゃるわけですね。そこにぐるぐるっと回ってきますと、既成の借地・借家関係には新しい法による正当事由は適用しない、それはもう一切関係ないんですとこうおっしゃるのですけれども、ぐるっと回って、従前の例によって確立された判例法の内容が新法であれば、新法は適用されるのじゃないですか。その点どうですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 私ども前から説明しておりますように、新法の正当事由は従前の判例等で示された基準をいわば整理して法文化したものである、こういう立場をとっているわけでございます。ですから、法制審議会の答申におきましても、存続期間の更新等に関する規定は、期間についての規定はこれは原則適用しないということでもいいけれども、正当事由については既存の借地・借家関係についても適用すべし、こういう答申をいただいているわけでございます。私どももそれでいいという考えでいたわけでございますけれども、しかしいろいろな見方をする方々が、新しい正当事由条項は現在の正当事由条項よりも借地人に不利益になるのではないかというような御心配を抱かれる向きがある、こういうような現象があるということを実は知ったわけでございます。  それに対して、いや、これは現行法と同じですからどうぞ御安心をと申し上げましても、しかし借地とか借家という生活の基盤に係るものについてそういう御心配が出てくるということでございますと、これは毎日のことでございますから、いろいろ不安が生ずるということもこれまた無理からぬ面があるわけでございます。実質的には内容が同じだからこれは適用してもいいというふうに考えるわけでございますけれども、そういう不安があるというのであるならば、規定の上でも形式的にも明確に「適用しない」とした方がお互いに安心ができると申しますか、そういうことになるだろうということで、最終的に「適用しない。」ということに踏み切ったわけでございます。恐らく、私どもの考え方に従えば実質的には同じような運用がされることになるのではないか、なるというふうに考えているわけでございます。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 これは大変な問題でして、総論ということを言いましたので、また機会を得て、今の局長の発言だけでも一時間ぐらいこれはいろいろやれるのじゃないかと思いますけれども、それは次に譲りましょう。  さて、正当事由についてもう少し伺っておきたいのですけれども、現行法に「自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合」、この要件中「自ラ」という部分を新法は取り除きましたね。私は、判例法は「自ラ」という言葉を削除してしまうというところまではいってないと思うのですよ。  そういたしますと、今法務大臣も説明され、局長も説明されたように、この正当事由は全然両方径庭がないんだ、変わりはないんだ、ただ整理しただけだということが言い切れるかどうか、この一点でもちょっとどうかなと思うのですけれども、簡単で結構ですが、御答弁いただきたい。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 現行法の「自ラ」という言葉は何を意味するのかということについていろいろと解釈論争があるということは、もう先生よく御存じのことですから説明を省略させていただきます。ただしかし、その正当な事由というものを考える一つの基準といたしまして、結局土地所有者側の事情それから借り主側の事情、そういうものを総合的に判断をする、こういうことに実は判例における正当事由の解釈基準というものは帰着するのではないかというふうに私どもは認識しているわけでございます。ですから、この改正法案では、それぞれの事情とかそういうものにさらに付加して各種の事情を総合勘案して、社会的に妥当な結論を出すという趣旨であのような条文になっておる、こういうふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 じゃ、次に移ります。  改正法には、こういう分類がいいかどうかは別としまして、四つの事情を挙げているように思うのです。一つは双方の土地使用を必要とする事情、これに、その後ろに「のほか、」と書いてあるのが重要だと思うのですが、これを一つとしましょう。それから二つ目は従前の経過、三つ目は土地の利用状況、四つ目は財産上の給付の申し出。この二、三、四を考慮して正当事由を判断するというような立て方になっているように思うわけでありますが、この四つの判断要素と申しますか、この関係をどう考えていられるのか、説明をいただきたいと思います。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 この中で一番重要なのは、借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情、これをまず最初に抜き出しているわけでございます。そういう事情のほかに、借地に関する従前の経過とか土地の利用状況並びに財産上の給付をする旨の申し出をしたというふうなことを考慮するということでございまして、基本的には双方が当該土地の使用を必要とする事情を基本として考える、その事情の補完的なものとしてその他の事情を考える、こういう趣旨だというふうに御理解いただきたいと思うわけであります。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 従前の経過を補完的に一つの正当事由の判断にしたという典型的な判例、それからまた、土地の利用状況、これを補完状況として認めた典型的な判例、一つぐらいずつで結構ですけれども、それを挙げていただきたいと思います。

寺田逸郎法務省民事局参事官

○寺田説明員 御説明申し上げます。  従前の経過、これは非常に多様なファクターがあろうと思いますが、ここで一番わかりやすい例といたしましては、契約の締結がどういういきさつでされたかというようなことであろうかと思いますが、それは、例えば東京高等裁判所の昭和五十六年一月二十九日の判決、これは貸し主の方がやや恩恵的に土地を貸した、こういうことが最終的に正当事由をプラスに判断するファクターとして考慮されております。このほかに、権利金の授受でございますとか、貸し主の不信行為について、例えば東京地方裁判所の昭和五十三年五月三十一日あるいは東京高等裁判所の三十四年十月十九日に、それぞれ判決がございます。これらが私どもが考えております従前の経過に相当いたします。  土地の利用状況でございますが、これは典型的には、例えば建物が非常に古くなっておりましてほとんど使っていない、土地を使っていると言えないような状況になっているというようなケースが考えられますが、これに相当する判決といたしましては、最近でございますと、神戸地裁の昭和六十二年五月二十八日の判決、あるいは少し前になりますが昭和五十二年九月十六日の大阪高裁の判決、これらが相当すると考えております。  立ち退き料は、これはもう膨大に判決がございまして……

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 それはいいです。  この二つは、今挙げられたようにやはり、判例として私はもちろん認めますけれども、下級審で、ちょっと古いものが多いですね。最高裁の判決、そういうものがと思ったのですけれども、それはいいです。  次に、先ほど「自ラ」という言葉を除いてしまったということとあわせて、「土地の利用状況」、こういう要件を明文化してしまったということをあわせますと、従来判例では恐らく認められなかったと私は思うのですけれども、地主の土地の有効利用あるいは高度利用の必要性というものとあわせ、かつ、財産上の給付の申し出を加味することによって、何か細い管ではあるけれども正当事由が成立することになりはしないか。恐らく現行法のもとでは、こういう事案では正当事由は認められないだろうと僕は思うのです。しかし、この改正法の正当事由はそれを積極的に解することになりはしないかというふうに思うのですけれども、これは具体的な事例ですし、裁判所がやることですからあれですけれども、提案者としてはそういう事例についてはどう考えていられるのですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 土地の利用状況というのは、先ほどお答えに出ましたけれども、ほとんど土地を利用してないような状況というものについての判例はあるわけでございます。しかしながら、それ以外にもいろいろな、利用の程度とか利用の状況というものがあるわけでございます。そういうものは考慮するわけではございますが、そのほかに、土地の高度利用とか有効利用というような、むしろ個人的な事情よりか社会的な要請としてのそういう高度利用とか有効利用というようなものが一体どの程度正当事由判断に考慮されるのかということでございますけれども、基本的には、それ自体が当事者間の、貸し手と借り手の関係を規律する判断要素としては、有効利用とか高度利用というのは独立の判断要素にはならないというふうに私どもは考えております。  ただ、これもいろいろなケースがあり得ることですから、断定的に申し上げるということは非常に難しいと思いますけれども、土地の利用の状況というものを一つの背景、バックグラウンドとして、土地の高度利用というよりか、むしろ土地の有効利用というような要素がその一つの背景的な要素として、土地の利用の状況を考える場合にその中に入ってくるということが絶対にないということにはならないのではないかというような気がいたしますけれども、有効利用ということ、そのこと自体が独立の要素として正当事由の判断要素になることはない、このように申し上げて差し支えないというように考えております。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 これの議論もまた継続をいたしまして、次は借家関係についてお尋ねしたいのです。  借家の正当事由の判断につきましても、「自ラ使用」が削られたというのは同じことなんですが、建物賃貸人の「収益を必要とする事情」というものがひっついているのですね。「収益」というのは何ですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  六条の土地につきましては「土地の使用を必要とする事情」ということになっておりまして、借家については「使用又は収益を必要とする事情」というふうになっております。土地につきましては、これは建物を建てるということが使用でございまして、土地自体を収益の対象とするということは、普通の場合は考えられない。ところが、建物につきましては、その建物でいろいろな営業行為をする、商売をするということもあり得るわけでございまして、単にそこに居住して使用するというだけではなくて、その建物を利用して引き続き商売をして収益を上げる必要がある、こういうような要素が出てくるのではないかということで、土地、建物の性格の違いからこのような表現になった、こういうふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 この都心部において一等地に低層の借家が建っている、我々が見ましても、ビルの谷間に低層で建って、この土地の所有権というものは絶対なものであるとはいえ、もう少しいい利用方法はないのかなということを感じるのは、借地人、借家人を問わず国民一般が思うことだと思うのです。  ただ、だからといって家の貸し主が、今は低層であなたからもらっているのはもう固定資産税にも満たないようなものだけれども、これを高く建てかえれば、その費用は要るけれども相当高収益になる、すなわち社会的な意味での底地の利用としても社会的な責めを果たすことになる、だからあけてくれ、みずから使用するのじゃなしに、もっと有効的利用をこの土地でしたい、そして、それは言いかえれば高収益が得られる、これが明け渡し理由になるわけですか。そういう判例法が現行法であるのですか。その点、どうでしょう。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 そのようなビルの谷間に木造家屋がある、そこに借地人が住んでおる場合でも、借地人がその土地を引き続き使用を必要とする事情、土地所有者がその土地を使用する必要性、こういうものがやはり基本になるわけでございまして、例えば、土地所有者としてはほかにちゃんとした家があってそこに住んでおる、ただ、それをいわば再開発ビルにしてもっと収益を上げたいということでございますと、これは今の借地人に貸すよりか、ほかの借地人に貸して、場合によっては自分が商売するということもあるかもしれませんけれども、それでやろうということでございますから、やはり使用の必要性という点において土地所有者側は劣ると言わざるを得ないということになろうかと思います。  しかし、そのほか土地の利用の状況というものがございまして、そこが余りにも利用しているというような状況にはならない、名目的に利用している、現実の具体的ないろいろな紛争の中でも、借地人と称する人が、実際はほかの方のマンションなんかに住んでいるのだけれども、名目的にビルの谷間の木造家屋に住んでいることにしているというようなケースが、訴訟事件でもあるわけでございます。そういう状況が出てまいりますとまた違った要素が出てくるのかもしれませんけれども、基本的には、借地人側がその土地を使用しなければならない事情がある、本当にそういう必要性があるかどうか、土地所有者側が自分あるいはその家族、その他関係者を含めて、土地所有者側がそこを使用する必要があるかどうかということによって基本的には決すべき問題であろうというふうに思うわけでございます。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 今借地を言われましたけれども、私は借家法の関係で、例えば木賃アパートといいますか、そういう言葉がありますね。そういうものがある。近隣は開発された、もうその中も歯抜けのような形になっている、そういうものを建てかえる必要がある。そのときに、正当事由、家主はほかに立派な邸宅があって、それをみずから使用するという必要はどう見てもない、この場合であっても、この土地、建物を収去してもっと高層のものに建てかえれば高収益が得られる。収益を得る必要、高度利用することによって高家賃とか高収益を得られるという事例のもとで、今回の改正法、明け渡し請求をした場合に、それは正当事由と言えるのかどうか。  おっしゃるようにこれが主たるものですから、主、従といえば主たる要件になるわけでしょう。それを主たる要件として、あと補強要件としての財産上の給付とかをひっつけることにより収去できるのかどうか。もし現行法で、判例でこれを認めたものがあるのかどうか。全然変わってないとおっしゃるから、そこの点についてお尋ねしたいのです。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 具体的にどういう事情になっているのか、大変難しい問題でございまして、おっしゃるようにビルの谷間で周辺は全部高層ビルになっておる、あるいはもう全部鉄筋化して新しい住居形態になっておる、そういうような状況で、そこにいわばぼろの木造の家が建って、そこに借家人がいる、こういうようなことでございます。  そういう場合に、家主側がそれを高層化して自分の収益を上げるということ、これだけが主たる動機だということになりますとあるいは問題かもしれませんけれども、御質問にございましたように、だれが見てもここのところはもう、防火とかそのような見地からいっても若干の堅固な建物にするとか、少なくとも数階、四、五階程度の建物にはすべきだ、むしろそこで頑張るのが常識的にはやや問題ではないかというようなことが出てくるということになりますと、建物の利用状況に周辺の状況が反映されて、利用状況必ずしも適切ではないということで、正当事由が認められる場合もあるのではないかというふうに私自身は考えております。  ただ、これも具体的なケースの問題で、言葉をちょっとかえると要素がすぐ変わってまいりますので、私の判断が果たして正しいのかどうか、余りにも事実が具体的過ぎて責任のある答弁ができかねるような感じがいたすわけでございます。ただ、その場合でも、例えば建てかえた建物に従前の借家人を入れるとか、あるいは建物を建てかえる間は仮住まいを提供するとか、いろいろな条件がつくはずでございまして、現実の裁判実務、私も若干の経験がございますけれども、そういうような場合にはやはり借家人に仮住まいを提供する、その後の住まいに再度入れる、家賃等についても十分考慮するというようなことで、話し合いで円満に解決される例が多いのではないかという気もいたすわけでございます。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 またこれは大きな論点ですので次に譲りまして、次に、改正法には十条二項に現行法になかった新しい制度を導入していられることに目を引かれるわけであります。これは立木の明認方法と類似の公示方法を定めたものだと理解するわけですけれども、従来こういう制度がないときには、借地上の建物が火災類焼とかいわゆる自分の方から火を出して焼いてしまったというときには、私の弁護士経験でもそうですけれども、地主と借地人との間で先を争って仮処分合戦が行われるという、火事場で非常に不幸な人を前にしてこういうことがやられているのが現状であります。  そういう点ではこれを導入したことは私は評価できる。家まで建てなくても、少なくとも看板ですかをそこに立てれば、その対抗要件、安定した借地権というものを確保できるという意味ではすぐれた制度の導入だと評価するのですが、ここで、公示した立て札の効力ですけれども、これを引き抜いたりする争いが、仮処分の前に行ったら抜けておった、そんなこともあり得ないことじゃないと思うので一言聞いておきたいのですけれども、公示の継続性はどう考えておられるのですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 これは難しい問題ではございますけれども、例えば登記なんかですと、偽造申請書類等によって不当に抹消されたというようなものにつきましては、これは依然として登記の対抗力は存続するというようなことになっているわけでございます。しかし、従来から明認方法などにつきましては、その明認方法が抹消されると申しますか、消失する原因がどのような原因であるにせよ、そのようなものがなくなると、そのときから対抗力はなくなってしまう。つまり、公示の存続が対抗力の存続の要件であるというような考え方が一般的にはされているところでございます。したがいまして私どもも、この十条の二項の対抗力につきましては、やはり公示が存続することが要件である、公示の存続がなくなればそのときに対抗力もなくなる、こういうふうに考えております。  そこで、先生御指摘のように、お互いにもし借地関係について争いがあるというようなことになりますと、公示札を立てる、その晩行って引っこ抜いてきてすぐ底地の登記をするというような変な争いが限界上の問題として私はあり得ないことではないとは思いますけれども、そうめったにあることでもなかろうというような気がいたします。基本的にはなくなると言わざるを得ないわけでございますけれども、仮処分合戦みたいにお互いに意識して抜き合うというようなことになりますと、これはむしろ背信的悪意、つまり自分の不法な行為によって公示力を消滅させておいて、その間に底地の所有権移転登記を得てその権利を主張しようということになるわけでございますから、一種の背信的悪意の論理というのはこういう場面には適用されることになるのではないかというふうにも考えております。実情はさまざまでございますから、果たしてそうなるかどうかはわかりませんけれども、極端な場合にはそういう論理で対応することができる、こういうふうに考えております。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 次に、既存の借地・借家の賃料増額請求について調停前置主義がやはり適用されることになると思われるわけですが、その点はそういう理解でいいんですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 御指摘のとおりでございます。     〔山口(俊)委員長代理退席、委員長着席〕

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 ここで「当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意」、こういう要件がされていますけれども、これは印刷をした賃貸借契約中の一般条項でもこの合意の成立は認められることになるのですか。管轄合意とかこういうものを、ゴマ粒のような字で印刷されて、それですぐ判を押してしまうという、日本人は余り読まずにやってしまうのですが、それでもこの合意に当たるのですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 書面による合意は、調停前に定型の契約書においてされたものも排除されるわけではない。形式的にはそれでもよろしいということになるわけでございます。ただし、定型の契約書によく書かれている場合には、借り主としては内容をよく理解していないというようなことがよく起こるわけでございまして、俗にいわゆる例文解釈の問題として効力を持たないというような判例、法理があるわけでございますが、そういうようなことでその効力が認められないというようなこともあろうかというふうに思います。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 そこで、そういう合意の上に「申立てにより、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。」この要件ですが、この「申立て」というのは当事者の一方、すなわち増額請求人の申し立てのみでいいのか。それともこの調停の場における当事者双方、すなわち増額請求人及び被請求人、調停申立人と被申立人、その両方の申し立てが要るという解釈もあり得ると思うのですけれども、提案者としてはどういうお考えなんですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 これは純粋に形式論でございますけれども、申し立てとしては当事者一方の申し立てがあれば一応法律的にはいいということになろうかと思います。ただしかし、問題は、本条の申し立てがあれば必ず調停条項を調停委員会としては定めなければならないというものではございませんで、調停委員会は、調停条項を定めることによって紛争の解決をすることが相当ではないというようなことが認められる場合には調停条項を示さないという裁量権がある、私どもこういう解釈をとっておるわけでございます。ですから、一方の当事者が申し立てても、例えば他方の当事者は申し立てないけれどもこれに応ずる意思が明白であるというようなことが明らかであれば問題がないわけでございますけれども、調停を拒否するような態度が出ておるというような場合には、調停委員会としては結局調停条項を示すことができないことになるのではないか、またそういう運用がされるのではないかというふうに思っているわけでございます。  基本的には、調停条項による裁定の制度というのも、調停の制度の枠内におきまして、つまり、お互いに話し合って、互譲の精神に基づいてやるという枠組みはあるわけでございます。実際の運用でございますと、まだ若干の相違があって最終的な合意には達しないけれども、例えば値上げ幅について、一方は五百円と言い、一方は千円ということで、ある程度歩み寄っているんだけれども、なかなか最終的な金額に達しないというようなときにこういう制度が活用されるということを私どもは期待しておるわけでございまして、事前に書面による合意があるという場合におきましても、互譲の精神に合致する雰囲気は全くないというようなときには、やはり調停委員会としては調停条項を示すことができないはずだ、こういうことになろうかと思います。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 これについてはまた最高裁あたりに調停についての基準とか、そういうものをきちっとしていただいて、これはいわば仲裁裁定契約みたいなもので訴訟行為だと思いますので、不服申し立てができませんので、相当慎重にやらないと大変なことになるのではないかという感じも私は受けます。  さて、今回の法改正の動きにつきまして私も今いろいろと質問させていただいたわけですが、各種のマスコミにおきまして、借り主の権利を大幅に制限とか、あるいは借地・借家人の権利を弱め土地の供給をねらうとか、正当事由の拡大により借り主の追い出し要因になるなどという大きな見出しで、この改正法は、参事官室がつくられた試案の段階からいろいろな報道がされてきたように私は思うわけです。そういう報道が借地・借家人の不安を必要以上に醸成し助長してきた嫌いもあると思います。また、見逃してはならないのは、こうした報道に便乗して、これを援用し不正あるいは不法な明け渡し要求等に利用している、そういうことも現実にあるわけですね。  私は、この法案はいろいろな変遷をたどって、試案段階から法制審の答申、そしてこの法案と、内容が随分変遷を重ねてきて、そしてその都度、借地・借家人の利益というものに影響を少なくする、また既存の既得権を害するようなことをしないという方向に進んでいることは進んでいるんだろうと思うのですね。それを国民にきちっと理解してもらうために、法務省は特段の努力をしなければならない。先ほど、法務大臣にも後で伺うからと申しましたけれども、法律的には支払い義務のない更新料というものを、平均約九年分の地代に相当するものを払っているという実情が、これは全国ではないけれども、東京二十三区という限られた特異な場所だと思いますけれども、そういう事実があるということは、こういうものに対して正確な情報を伝える努力を今後しなければいけないと思うのです。  本会議におきまして我が党が提案をいたしました借地・借家一一〇番、こういう無料のいわゆるフリーダイヤルを設ける等の工夫をしていただく。そして、この借地・借家関係が今国民の注視の的ですから、一体自分の権利はどうなるんだろうという不安を覚えていられる国民はたくさんいらっしゃると思うので、少なくともその人たちに正確な情報をお伝えできる。これはそう簡単に言いましても、いわゆる個々の法律相談にたぐいすることでありますので、弁護士法との関係等もいろいろあるとは思うのですけれども、ぜひこの借地・借家一一〇番というようなものをフリーダイヤルでつくってほしいというふうに思うのです。そういう提案をいたしたいと思うのですけれども、大臣、いかがですか。

左藤恵自由民主党法務大臣

○左藤国務大臣 確かに今お話ありましたPRの問題につきまして、十分正しく御理解いただけるような努力というものをしていかなければなりませんし、この法案を提出することに決めました閣議の後でも、私、記者会見で、そういうことを努力するということも申し上げました。今後ともこの積極的な広報を行うわけでございます。今先生御提案のフリーダイヤルでそうした相談の電話というようなものを設けるということも、これは建設省とも十分打ち合わせをして、そしてそうしたこの法律案の趣旨、内容が国民の皆さんに十分理解していただけるように、誤解から無用な混乱が起こることのないように努力していかなければならない、このように考えております。

冬柴鐵三公明党・国民会議

○冬柴委員 終わります。

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 木島日出夫君。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私は、二十三日の衆議院本会議におきまして、本借地借家法案のねらいとか背景とかについて質問をいたしましたので、きょうは具体的な内容について立ち入ってお伺いをしたいと思います。  本借地借家法が提案されたことによって一番不安に感じているのは、何といっても現行の既存の借地・借家人であろうと思うわけであります。先ほど来、国土庁の答弁によりましても、我が国に借地上の建物が二百万あるということが答弁されました。また、昭和六十三年の総理府の住宅統計調査によりますと、我が国の借家住宅総数が一千四百一万四千六百戸。そのうち公営、公社、公団の借家を除きますと、民間借家が九百六十六万六千三百戸、そして世帯数が九百七十一万九千三百、そして世帯人員が何と二千百五十一万三千四百人と、二千万を超える人たちが現に借家に住んでおるということであります。二百万の借地上の建物があるということは、そこに住んでおる人が、仮に一世帯三人だとして六百万人の人たちが借地上に住んでおるというふうに仮定をいたしますと、これはやはり現存の借地・借家契約が一体どうなるのかというのが最大の問題になろうと思うので、短い時間でありますが、同僚議員からも質問がありましたが、私はなお不明な点について絞って質問をさせていただきたいと思う次第であります。  附則の四条によりますと、「この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。」要するに遡及効あることを前提にして、例外規定があった場合だけ除かれているわけであります。  そこでお聞きしたいのですが、附則第六条によりますと、「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。」という文言がございます。そこでは「契約の更新に関しては、」という言葉を使っておるわけであります。しかし、この新借地借家法を見ますと、第三条は「借地権の存続期間」です。四条は「借地権の更新後の期間」です。五条が「借地契約の更新請求等」です。六条が「借地契約の更新拒絶の要件」、こういうことであります。要するに、借地契約の期間と借地権の更新とは、法律上明確に違うわけであります。ところが、附則第六条によりますと、「契約の更新に関しては、なお従前の例による。」という言葉がありまして、契約の期間に関しては従前の例によるとは読めないわけですね。そこはどうなんでしょう。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 これは法律の読み方の問題だと思いますけれども、「契約の更新に関しては、」という意味は、具体的には、契約が更新するための要件及びその効果に関してはという意味で「契約の更新に関しては、」という表現を使っておるわけでございます。具体的には、要件である正当事由及び効果である更新後の期間に関しては従前の例によるということを規定したものでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 どうも重大な答弁だと思うのですね。今の答弁だと、そうすると、基本契約に基づく借地契約の期間についてはこの六条から外れちゃうのですか、どうなんですか。現行借地法は原則六十年、三十年、更新後は三十年、二十年ですね。新法はそれを、堅固、非堅固を問わず一律三十年にして更新十年にするわけですね。今の局長の答弁だと、期間についてはこの六条の規定に入らないというような答弁ですが、これは重大な問題だと思うのですよ。どうですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 つまり、更新後の期間につきましても……(木島委員「更新前の期間ですよ」と呼ぶ)更新に関してはでございます。私が言いましたのは「契約の更新に関しては、」ということで、つまり契約の更新の要件及び効果に関してはという意味でございます。それで、更新後の期間に関しては従前の例によることを規定している、こういうふうに答えた次第でございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 現存借地契約で期間の定めのないもの、それは一応六十年ということで法解釈されているわけですね。そうすると、その契約はこの法が成立すると一体どうなるのですか。六十年になるのですか、それとも三十年になるのですか。これは大事なところですから、はっきり答弁してください。

寺田逸郎法務省民事局参事官

○寺田説明員 先ほど委員が御指摘になりましたように、この法律の附則の規定の第四条が一番の原則を定めておりまして、そこのただし書きをごらんいただきますと、廃止前の借地・借家法の規定により生じた効力を妨げないとなっております。最初の存続期間はもう既に発生しているわけでございまして、これはこの四条のただし書きで六十年、三十年あるいは三十年、二十年という効果が生じるわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 非常にわかりにくい附則ですね。第四条を素直に読んでも、期間が守られるんだというふうには普通読めないのですよ。  では、四条に「ただし、附則第二条の規定による廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。」とありますね。その効力というのは何と何を挙げるのですか、全部挙げてください。全部挙げてもらわなければ安心できないですよ。

寺田逸郎法務省民事局参事官

○寺田説明員 今問題になりますのは存続期間でございまして、ここの一番の問題は存続期間、既に生じた効力ということで規定されているわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 四条のただし書きの「生じた効力を妨げない。」というのは、既存の借地法、借家法の規定により生じた効力、いろいろあるわけですよ。では、何と何を入れるのですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 これは、こういう法律の経過措置を書く場合の一般的なスタイルでございますけれども、例えば附則二条の規定による廃止前の建物保護ニ関スル法律について申しますと、建物保護法で対抗力が生じているという効力があるわけでございます。この建物保護ニ関スル法律が廃止されまして、今度新しいこの借地借家法の中に取り込まれました、その中身は同じでございましても根拠規定は違う、こういうことになりますので、建物保護ニ関スル法律によって生じている対抗力、そういうものは依然としてありますよ、こういう意味でございます。  それから、借地及び借家法の規定により存続期間の定めだとかあるいはいろいろな、例えば具体的な更新請求をしているという請求の事実があるということがございますと、そういうものについては既に旧法の借地法あるいは借家法の規定によって行われたわけでございますから、それに応じた効力は依然として認められます、こういう意味でございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 時間の制約がありますから打ち切りますが、何か非常にわかりにくい附則だと思うのですね。更新前の既存の契約の借地期間については、附則四条の「効力を妨げない。」の言葉で救われる。既存の契約の更新後の借地期間については、附則第六条の「契約の更新に関しては、なお従前の例による。」という言葉で救われる。救われる言葉すら違う。一体どちらで救うのかも私が聞かなければわからないという点は、非常に不明確だと思います。  きょうで審議が終わるわけではありませんから、いろいろな問題についても私は後から聞きたいと思います。時間の関係で次の質問に移ります。  それでは、附則第六条の「この法律の施行前に設定された借地権」という言葉の概念、意味についてお聞きいたします。既存の契約が本借地借家法が成立した後合意解約されて、一応形だけでも新契約がつくられた、新契約は新しい借地借家法に基づく契約とするという条項が新契約の中に入った、そういう合意解約、新契約の成立という法形式がとられた場合に、どっちの法律が適用になるのでしょうか。明確にお答えいただきたいと思うのです。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 既存の借地関係における両当事者が契約を合意解約し、その後これを新法のもとの契約にし直すということは、形式的には妨げられないことになるわけでございます。ただしかし、本当に真意に基づいて合意解約をしたのかどうかということが一つ問題になりますとともに、通常の場合に、実情は何にも変わらないのに合意解約をして新契約を結ぶという合理性と申しますか、そういうことをする合理的な根拠というものがない。つまり、ある意味におきましては、合意解約をして新契約をし直すということは、借地権者がみずからの権利を場合によっては一部放棄するということにつながることもないわけではございません。したがいまして、そういうものに見合う事情というか、そういうものが普通はあるわけでございます。それもないということになりますと、極めて不自然であるということになりまして、実質的には本意に基づく解約ではない、つまり、合意解約自体が無効である、したがって新契約もまた効力がない、依然として旧契約が存続するというように解釈される場合、これは具体的な紛争が生じた場合における裁判所の判断の問題でございますけれども、あり得ることであると考えているわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 合意解約があって新契約が成立した、その合意解約が真意かどうかによって違う可能性があるという答弁でした。何がその真意かという基準がここで明確に示されなければ非常に不安で仕方がないと私は思うわけです。特に、九百六十六万戸の民営借家の住宅が現存している。大体日本の借家契約というのは二年ですよ、法務大臣。二年たつと更新していくのです。更新のときには必ず新しい契約書が取り交わされていくわけです。そういう場合、ではどうですか。二年たって新しい借地・借家契約が取り交わされた、その借家契約書の書面の中に新規法律に基づくものとするというような条文があったときには、それは真意はどうなんですか、局長。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 私ども、既存の契約には新法の規定は適用されないわけでございますから、借家人あるいは借地人の方がそのことをよく認識して、合意解約に応ずるという挙に出ることがないように慎重に行動していただけるもの、あるいはそういうふうにしていただけるように十分にPRするということを大臣も先ほど申し上げているわけでございます。そういう状況を踏まえた上で、当事者がいろいろな要素を考慮して合意解約をして新規契約をするということでありますと、それ自体を妨げる方法はないということでございます。それから、もちろんまだ新法も施行されてないのに新法下で契約をし直すということを定めましても、いわば予約と申しますか、そういうものについての効果は認めることができないというふうに考えております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 法律を具体的に認識しているかどうかじゃなくて、この法律が仮に成立した後一年か二年たつと、日本の全国の借家人は大体二年ぐらいで契約更新時なんですから期間が来てしまうのですよ。そのとき必ず新しい契約書が家主によって提示されてくるのです。それに署名しなければ引き続き借家権があるかどうか不安だというのが現実ですよ。借家人が家主から提示された契約書にサインする、その契約書に不動文字で、本契約は新しい借地借家法に基づくものとするという一項が入ったらそれはどうなんだというのですよ。そういう契約は新しい借地借家法が適用になるのかと聞いているのです、特に正当事由の関係とか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 恐らく問題になりますのは、正当事由条項がどちらの規定が適用されるかということだけだろうと思うわけでございます。実質的には正当事由条項についての基準の違いはないと私どもは考えているわけでございます。  ただしかし、御指摘のような問題、新しい契約書、契約の書きかえという行為を普通するわけでございますが、実質的にはこれは、更新したことをお互いに確認し合うという意味のものでございますと、それは単に更新後の契約関係について新しい書面を取り交わしたということでございます。そういうことでございますと、新規の契約とするというようなことを書きましても、その効力は認めがたいということになるだろうと思います。つまり、本当の意味での合意解約と新規契約というふうに見られない場合に該当するのではないかということでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 それでは、改めて聞きます。契約期間満了が来て当事者間で新しい契約書が取り交わされて、その中に文言として新法律に基づくものとすると入った場合に、真意に基づくものとは見られないという場合は具体的にどういう場合を指すのか、明らかにしていただきたい。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 通常の場合、これは具体的に紛争になった段階で初めて問題になるということになるのだろうと思いますけれども、そういう契約書を取り交わす過程における当事者のいろいろな言動とかなんとかということが問題になりましょうし、基本的にはそういう行為をする合理的な必要性、理由の存在というものも非常に重要な判断要素になるだろう。通常だったら、従前どおりの保護が与えられているわけでありますから、合意解約と新規契約し直しというようなことはしないはずでございまして、その辺のことが十分にしんしゃくされるだろうというふうに考えているわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 では、借地についてお聞きしましょう。現行借地法に基づく普通の借地権で、新法ができた後、期間満了前、期間がまだ来ていないときに、地主から、もう古い契約は解約しよう、新しい法律に基づいて新しい借地契約をつくろうという申し出があった場合に、新しい借地契約を普通借地権じゃなくて定期借地権に切りかえるということを借地人もお受けした場合に、それは有効になるのですか、どうですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 定期借地権には三種類のものがございますから、具体的にそのいずれの要件に合致しているのかということが問題になろうかと思いますけれども、普通の借地権で現にそこに家を建てて住んでおるという状況のもとで、事業という要件もない、あるいは五十年という要件もない……(木島委員「当然要件があった場合ですよ」と呼ぶ)では、まず考えられるのは五十年という定期借地権ということだろうと思いますけれども、先ほど来申し上げておりますように、当事者の方では、例えば旧法の規定に従って更新、更新でいって二十年ごとの更新でいろいろ問題を起こすよりは、今から五十年なら五十年ということにした方が有利であるということだって考えられないわけではないと思います。そういうような契約をし直すことについての合理性と申しますか、当事者が真意に基づいてそういうことをし直したということでありますと、当然にそれが無効であるとかいうことにはならないのではないか、その効力が認められる場合がある、こういうふうに言っていいのではないかと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 では、もっと具体的に聞きましょう。現行法で地主さんから土地を借りて魚屋さんを経営していた、そういう魚屋さんがあったときに、この法律が新しくできたということで、その契約を一応括弧づき合意解約して法二十四条に基づく事業用借地権、魚屋営業のための借地権、それで十年でしようということで十年間の事業用借地権契約が当事者で締結された、別に脅迫とか暴行とかいう要素がなかった場合に、それはどうなっちゃうんですか。有効になるんですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 私ども合理的に考えた場合に、魚屋をそこで営業していたという場合に、現行の借地法ですと、仮に期間が二十年の契約だったということになりますと、正当事由がない限り二十年、二十年という形で期間は更新していくわけでございます。そういう状況であるにもかかわらず、二十四条の事業用借地権、十年以上二十年以下の期間に限定して、しかもその期間が過ぎれば返すというような、現にそこで魚屋を営業している方にとっては極めて不利な契約を何らの理由もなしにするということは普通考えられないわけでございまして、必ずそこにはそれなりの、またそれぞれの理由というものがあって、世人を納得せしめ得るだけの理由があればまた話は別でございますけれども、普通はそういうことはちょっと考えられないというふうに考えております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 実は、私は本会議質問で、埼玉県の蕨の国道沿いの、これは借家でしたけれども、現存家賃が月四万円、それを四十万に値上げされているという事件を紹介したでしょう。そういうことは借地だって大いにあり得るんですよ。四万円の地代をこれから四十万にする、これはもう相場が上がってるんだから。それは勘弁してくれ。じゃ四万円でいい、そのかわり、この法二十四条ですか、定期借地権の事業用借地権にしてやろう。地代は四万でいいでしょう。四十万円から四万円に下がれば非常に安心して、それじゃおれは十年借地権があればいいやということでこの定期借地権、事業用借地権を選んだら、そういう場合、有効になっちゃうんでしょう。どうですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 相手方の窮迫、無知、そういうものに乗じて不利益な契約がされる、そこに脅迫的な言辞とかあるいは暴力的な行為がないにいたしましても、非常に相手方が困っている、あるいはその新しい法律関係について無知である、そういうものに乗じてその種の契約を締結したということでありますと、それは裁判になって問題になった場合には、当然その契約は有効というふうに判断されるとは私どもは考えておりません。  ですから、大臣もたびたび申しておりますように、新しい借地借家法あるいは既存の借地・借家関係というものについての今回の法律のあり方というもの、これは厳に峻別しているわけでございますから、そういうものについて新しい法律が出れば不利益になるというような宣伝をされる、それを利用するというようなことは、かえってそういう人たちに大変大きな混乱を起こしているのではないかというふうに私ども考えるわけでございまして、法務省はもとよりでございますけれども、関係方面において、既存借地・借家関係は従前どおり保護されるということを力説、強調していただきたいというふうに考えているところでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私は全然納得できないと思うんですね。例えば正当事由の問題についても、法務大臣も局長も再三、この正当事由の言葉の変更は、現行裁判の事例を集約したものであって何ら変わりないんだとおっしゃっておるわけですね。しかし、どうですか、試案の段階と要綱の段階と今回の法の段階で全然言葉が変わってるじゃないですか。そうでしょう。先ほど来ほかの委員からも指摘をされておりましたが、例えば借地についての正当事由については、試案の段階では「土地の存する地域の状況」という言葉がありました。今回それが落とされています。借家については、試案の段階では「建物の存する地域の状況」というのが入っていましたが、今回外れました。ところが、試案の段階、要綱の段階になかった「収益」という言葉が今回入ってきちゃっているんですよ。  これは何を意味するかというと、一九四一年ですか、昭和十六年に正当事由制度が導入されてから五十年間の日本の裁判の判例の集積というのは、膨大なものです。いろいろ地主に有利なやつもあるでしょう、地主に不利なやつもあるでしょう。どこをどう抽出するかなんというのは難しい作業ですよ。それは、試案と要綱と今度の法案で言葉が違っているというのを見ても、この判例を集積して正しく判例の動向を探るというのがいかに難しいかということは、この言葉が法務省が出してきた案ですら変わっているということから見ても明らかだと思うのですね。非常にその面では、後からこれは私は正当事由の問題に絞って聞く機会をつくりますけれども、まことに法務大臣や民事局長の答弁には、私は納得できないものがあると言わざるを得ません。そのことだけ言って、時間が来ましたからやめます。

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 中野寛成君。

中野寛成民社党

○中野委員 この借地借家法、今回の抜本的な改正の理由でありますが、現状貸し主は、一度貸したら返ってこないということの防衛策として高額な権利金を慣習化させたり、また一方借り主の方は、地主等が契約の終了が容易でないということによって警戒するものですから、借りたくても借地等の供給がないという状況が生まれている、こういうことを解消しようという前提があるのかどうか。  すなわちそのことによって、言うならば貸し主にとって大変不利な状況が多い、めり張りをつけて、そして借地等の供給をふやそう、そういう目的があるということをよく言われてまいりました。しかしながら今日までの経緯の中で、実は「土地の有効利用」というのが法制審の答申では当初入っておった。ところが、今回の最終答申においてはそのことが入っていないという変化があるわけでありますね。しかし、もしその有効利用という言葉を入れることによって、借り主ではなくて貸し主に有利な環境をつくろうという意図があったというふうに思われ、そしてそのことがこの法案についての借り主側の不安感を増幅させるということにつながるという考え方であったとするならば、これはやはりよほど注意をしなければならぬということになるわけであります。といって一方、現実に土地の有効利用が促進されるようにしたいという社会的な要望があることも事実であります。これらのことにつきまして、法務省はどういうふうにお考えでしょうか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  土地の有効利用という社会的な必要性と申しますか、そういうものに対してどういう形でこたえるかという問題だろうと思うわけでございます。一つには、御指摘のように、例えば正当事由条項の中に当該土地・建物の存在する地域の状況というようなものを正当事由の要素として入れまして、そして有効利用の見地から更新を拒絶することができるようにするというのが一つの方策として考えられるというふうに思います。それからもう一つは、そういう正当事由を拡大するのではなくて、今の借地制度は制度として存置しながら、いわば一定の期間に限って土地を利用したいあるいは利用させたいという需要が一方に生じているという状況がございますので、新しい類型の借地関係というものを導入してそういう新しい需要にこたえる、そのことの結果として良好な宅地が供給されることになる、こういうようなことが考えられるということでございます。  今回の改正法案というのは、結局のところ後者の方法、つまり定期借地権という新しい類型の借地制度を導入することによりまして有効利用というようなことにつながることを私どもは期待した、こういうことになるわけでございます。  正当事由条項の中に土地の有効利用とかあるいは土地・建物の存する地域の状況というようなものを入れますと、これは先ほどもちょっと議論になりましたけれども、従来の判例理論で認められた正当事由条項をはみ出すことになります。要綱試案におきましては、そういう有効利用とかあるいは土地・建物の存する地域の状況等を正当事由の要素にしたらどうかという形で、まあ試みの案という形で法務省がこれを作成しまして発表いたしましたところ、各方面から、それでは従来以上に借地人、借家人を不利な状況に追い込むことになる、土地の地域の状況、つまり高度利用とかそういうような政策的な要素が入ってくる、あくまでも借地・借家関係というのは借り手と貸し手の間の関係であって、そのいずれかが公的な要請である土地の再開発というようなことの犠牲になるべきではない、いずれかが犠牲になるというような形での正当事由は認めるべきではないというような意見が非常に強く出てまいりまして、最終的に土地・建物の存する地域の状況というのは除外すべきだということに法制審議会の結論がなったわけでございます。その結果といたしまして、正当事由につきましては従来の正当事由に関する判例を整理して法文化をするということにとどまった、こういう経緯になっているわけでございます。

中野寛成民社党

○中野委員 例えば地上げ屋をいかにして防止するかという問題がありますときに、実にあくどい、悪知恵を働かせ、いわゆる脅迫とかという言うならばハードな手段だけではなくて、極めてソフトな手段だけれども実に緻密に計算された悪知恵を働かせて、そして無知な借家人または借地人の皆さんに不利なことを押しつける、そういうことが起こり得るということが今回も一番心配をされています。  これも反対運動をしている方々からの提供ですが、先ほどもお話がありました土地賃貸借契約書の特約条項のところに、「新しい借地法が制定された場合は、それに応じて改めて契約をする事とする。」ということで印鑑を押させられているというようなケースがある。結局これなども、先ほど来の局長の御答弁を聞いておりますと、実は十分に保護されているというふうに聞こえる答弁なのですが、しかし裁判にいくまでに、もうここで判こを押してしまったのだからやむ得ないと思って泣き寝入りするというケースが、むしろこれから避けられないのではないかということも心配するわけでありますね。  同時に、民間同士でもそうでありますが、例えば私もどちらかといえば公営住宅の借家人ですけれども、公営住宅の建てかえのときに担当者の方、これは建設省に関連するかもしれないけれども、担当者の方がいろいろその仕事を忠実に実行しようと思って努力をされると、その努力が熱心であればあるほど、逆に借家人の方からはしつこい、または大変な一つの圧迫感というものを感じる。そういう中で泣く泣く了承をしてしまうというケースがあったり、また、そういう公の仕事をしている人に対してまでも不信感が募る。例えば公社公団等に対しても不信感が出てくるというふうなことが現実に起こっていることは事実であります。  決してあくどいことをしたつもりは担当者の皆さんにはないかもしれません。しかしながら、正当な仕事としてやっておられても、そのことを大変大きな圧迫と感じるというケースがあることも事実であります。こういう、新たに法律が抜本改正がなされる、それはよかれと思ってやったことでも、そのことを弱い立場にいる人たちはどうしても一つの圧迫として感じる場合がある。  また、地上げ屋という言葉に代表されるような人たちの場合は、この機会にそれを悪用して、そして自分たちに都合のいい解釈を押しつけて何かをやろうとする。そういう動きというものが現実にもう既に始まっている。こういうことをいかにして避けるかというのは、それこそ極めて十分過ぎるぐらいの配慮、注意というものが払われなければならないであろう、こういうふうに思うのでございますが、これらのことについての徹底、PR、そして指導、これらのことについてはどうお考えですか。

清水湛法務省民事局長

○清水(湛)政府委員 この問題につきましては、法務大臣も大変御心配になりまして、先ほどもお話がございましたけれども、閣議決定の直後に特に大臣談話を発表したというようなこともあるわけでございます。特に、既に借地・借家人となっておられる方については、現行法によって将来とも規律されるということが明確になっているわけでございまして、何らの変更も受けないということになっているわけでございます。にもかかわらず、新しい借地借家法が出ますと既存の借地・借家人の権利が弱められるといったたぐいの記事を流すというようなことがあるわけでございまして、このために余り法律を御存じでない方々が動揺して、そういう悪質な地上げ屋の言うままになってしまう、こういうようなことがあるというような報道があるわけでございます。  私ども、これはもう大変残念なことでございまして、何とかそういう誤解に基づく混乱というものはなくしたいということでいろいろな広報手段を実は考えているわけでございまして、できるだけ速やかに具体的な広報措置を講じたいと思っております。また、法務省の地方組織である地方法務局というのがございますけれども、そういうような組織も通じまして、既存の借地・借家の方々につきましては従来と同様の扱いがされるということを十分認識して不当な言動には乗ぜられないように、十分にPRをしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

中野寛成民社党

○中野委員 これらの問題で悪意を持っている人たちの犠牲になりやすいのは、どちらかといいますと日本の法体系に疎い外国人である。とりわけ日本の場合には、外国人に家を貸すとか土地を貸すのを大変嫌う傾向がある。先般は入管法の問題で論議いたしましたけれども、これが一つありますね。それから高齢者の皆さん。それでなくても生活そのものに大変な不安を持っておられる高齢者の皆さん、おじいちゃん、おばあちゃんにとってもこれは大変大きな影響を与えるであろう。また、心理的不安を与えるであろう。また、低所得者の皆さんにとっても、なかなか貸してくださる人が少ないというふうなことがあったりして、これまた大きな不安を感じるということがあると思うのであります。そういうことにつきまして十分御配慮をいただかなければいけない、こう思うのであります。  きょうは建設省からもお越しをいただきました。これは住宅そのもの、また土地の需給関係にも関連をいたしますし、そしてまた、いわゆる弱者、強者という表現は当たらないかもしれませんけれども、心理的に弱者と感じている人たちには大変大きな影響を与えます。そのためには、やはり住宅供給という政策が加味されなければ、十分な効果というものは発揮できない。また、法律が守ろうとしている権益を守ることにも実質上つながってこない。それらが両々相まって一つの効果を発揮するということになるであろうと思うわけであります。ゆえに建設省の立場から、今回の借地借家法の抜本改正に関する建設省としての御見解と、それからあわせまして、このことがいわゆるプラス面だけが大いに作用しマイナス面が皆無になるようにするためには、建設省の方で行う住宅政策が極めて大きな意味を持つと思いますが、そのことについての御決意をお聞きしておきたいと思います。

小川忠男建設省住宅局民間住宅課長

○小川説明員 お答えいたします。  まず第一点の、今回の改正について建設省としてどう受けとめておるかというふうな点でございますが、今回の改正、先ほども御答弁ございましたように、基本的には、やはり賃貸借当事者双方の利害調整の確保と申しましょうか、合理的な借地・借家関係の確立を図るというふうなことを目的にしておるというふうに理解しておるわけでございます。定期借地権でございますとかあるいは確定期限つきの借家の特例というふうな制度が導入されておるわけでございまして、私ども住宅政策を預かる立場から見ますと、これらの一連の措置によりまして、賃貸人の土地あるいは建物返還に関連する不安が解消されるというふうなことを通じまして借地あるいは借家の供給に資するであろうという形で、積極的に評価しているというふうな点がございます。  それから第二点の、これに伴いますマイナス面というふうなものに住宅政策としてどう対応するのかという御質問でございますが、基本的には、やはり今回の改正の趣旨といいますか、従来の権利関係については全く影響がないというふうなことを、借地人、借家人、末端というと語弊がございますが、それぞれの方々に正確に趣旨が徹底するというふうなことが第一義的ではないかと思います。この問題につきましては、先ほど来御答弁ございましたように、法務省の方でもいろいろ御検討されておるようでございますが、私ども建設省の立場からも、従来も公共団体に住宅相談の窓口というのがございますので、今回の一連の改正の内容につきまして、改めまして趣旨徹底を図るようにという、相談体制の充実というふうなものを検討したいと思っております。  それから、高齢者でございますとか社会的弱者に対して、基本的には住宅政策としてどうやるのだというふうなことでございます。これはなかなか一朝一夕に解決はしないとは思いますが、公営住宅におきましてもあるいは公団住宅におきましても、家賃の面においてないしは入居対策というふうな面において、優遇倍率と申しますか、入りやすくするようにというふうな措置を講じておるわけでございまして、若干時間はかかるかとは思いますが、引き続きそういうふうな点で強化充実を図っていきたい、このように考えております。  以上でございます。

中野寛成民社党

○中野委員 建設省にもう一点だけお聞きしますが、どちらかといいますと公営住宅について、二つの特色——たくさんあるのですよ。私自身が最近ちょっと問題意識として思いますのは、東京や大阪などの都心部にいかにして若い人たちを呼び戻すかという意味での住宅政策が一つありますね。これはこれとして一つの重要な意味があると思うのです。  それからもう一つは、例えば公営住宅の建てかえ等の場合に高齢者の皆さんの不安感というのが大変強い、そこから来る抵抗といいますかね、そういうものを私どものところにもよく要請を受けるわけであります。おじいちゃんがここで最期の息を引き取った、私も最後までここに住みたい、少々古くなっても、というこの心情も一方でありますね。しかし、もっと大きいのは家賃の問題がありますね。こういう方々に対してやはりきめ細かく配慮をしていく住宅政策というものが、とりわけ公営住宅の場合には望まれる、こう思うのであります。これらのことにつきまして基本的にどういう姿勢をもって臨んでおられますか、お尋ねをいたします。

五十嵐健之建設省住宅局住宅政策課長

○五十嵐説明員 お答えを申し上げます。  公営住宅につきましては、まず一般論といたしまして、高齢者の方々と申しますのは、一般的にはその所得の伸びがとまってしまうというようなことから、できるだけ公営住宅の方であるいは公的な賃貸住宅の方でお引き受けするという姿勢で、できるだけ多くの公共住宅をつくりたいというのが、基本的に臨んでいるところでございます。  それから、先生御指摘の、そこで建てかえ等が起こった場合の問題につきましては、従前でもいろいろな対策を講じているところでございますけれども、例えば平成二年度から始まりました制度でも、リロケーション住宅というような、従前居住者対策を充実する対策を講じているところでございます。今後、公営住宅、それから公団住宅も同様の問題があろうかと思っておりますけれども、従前居住者の方々ができるだけ納得いただけるような形で進めてまいりたいと考えております。

中野寛成民社党

○中野委員 時間が参りましたので終わりますが、その他具体的な法解釈論につきましては、次の機会にいたしたいと思います。

伊藤公介自由民主党

○伊藤委員長 御苦労さまでした。  次回は、来る五月七日火曜日午後二時十分理事会、午後二時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会

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