法務委員会 第10号
- 発言数
- 260 件
- 登壇者
- 19 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1991/04/12
会議録
○伊藤委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案及び小澤克介君外七名提出、日本国との平和条約の規定に基づき日本の国籍を離脱した者等についての出入国管理特別法案の両案を一括して議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木喜久子君。
○鈴木(喜)委員 私は、この法律の主として十条に絡む問題について伺いたいと思うのですけれども、まず一番初めに、十条に限らずこの特例法というものについての全体の基本理念、これはどういう趣旨でこういうものをおつくりになったかということと、そして、なかんずく十条というこの一文を設けられた趣旨についてまず伺いたいと思います。
○股野政府委員 まず、この特例法案の基本的な趣旨でございますが、これは提案理由の中でも御説明申し上げましたとおり、日本に終戦前から引き続き居住して、平和条約の発効に基づいて日本の国籍を離脱された在日韓国人・朝鮮人、さらには在日台湾人の方々並びにその子孫の方々が在留しておられるということでございますところ、これらの方々が我が国の社会秩序のもとでできる限り安定した生活を営むようにすることが重要であるという考えに基づいておりまして、そいういう方々につきまして、歴史的な経緯、それから我が国における定住性というものを考慮いたしまして、これらの方々の法的地位のより一層の安定化を図るというために入管法の特例を定めるということを目的といたしております。 ただいま御指摘のございましたこの法案の第十条、これは再入国の許可の問題にかかわる条項でございます。ただいま申し上げましたような趣旨、すなわち、これらの対象となる方々の法的地位のより一層の安定化ということを図るその一環といたしまして、この再入国の許可の制度につきましても一つの特例を設けておるわけでございます。第十条の中にございますように、一般法であります入管法では、再入国許可の有効期間というものは、まず当初一年以内ということになっておりまして、さらに必要がある場合に海外でもう一年は延長できる、したがって、最大限二年というのが一般の制度になっております。 それにつきまして、この法案の対象となる方々には、その特例といたしまして、当初与えられる再入国の有効期間を四年に延ばす、最大限四年にする、さらに、海外での延長が一年間認められますので、合計しまして最大限五年の有効期間が認められる。それによって、この方たちが日本での居住ということを安定的にすることができるように配慮をした、こういう趣旨になっております。
○鈴木(喜)委員 今局長のお話しになった中に出てこない部分だと思うんですけれども、こうした基本理念をつくられるというところで、韓国籍の場合には協定永住だ、そして朝鮮籍の場合には特例永住というような形で、その処遇にある程度差がついていた。そうした差がついていたことを今度は一本化して特別永住というような概念で考えて、そして、今まで歴史的な経緯ということからいけば同一の経緯を持っているその人たちについて、その子孫や何かも全部一緒に同じような形での処遇をしようじゃないかというような考えが入っているものと理解しているんですけれども、それでよろしいかどうか。そういうふうに思っておられるかどうか。そして、こういった考えの中でも、昨年の九月に社会党と自民党、それから朝鮮の労働党、こういうところでの共同宣言の精神というものを、この法律の中でも日本政府としても生かして考えているというようなこともあると思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○股野政府委員 委員御指摘のとおり、この法案では新たに特別永住者という法的な資格、法的な地位を設けさしていただいておりまして、この法的地位は、現在までのところ、ただいま委員御指摘のとおり、例えば協定永住許可あるいは一般の入管法によって永住資格を得られた特例永住者あるいは通常の一般永住者と、さまざまな方々がこれまでもおられます。さらには、昭和二十七年でございますかにできました法律百二十六号の規定によって日本に居住しておられる方も、さまざまな在留の資格をもって現在日本に居住しておられる方々につきまして、同じ歴史的な経緯と定住性があるということにかんがみまして、それらのさまざまな日本における在留の資格というものを新しい特別永住という形で一本化したという意味において、この法律は、それぞれの今までの違った法的な資格を一つの同様の資格を付与する、そしてその同様の資格に対して同様の処遇をするという法的な規定になっております。
○鈴木(喜)委員 そういうことでこの法律ができ上がっているという、これからの平等の取り扱いということ、非常にその点をお願いしたいというふうに思っているところでございます。 さて、この十条という問題でまず入管法の中の二十六条の問題との絡みで考えますと、先ほど局長からのお話がありましたように、その年限をある程度ふやすという、十条だけを読めば再入国の許可についての年限が少し長く延びてきた、今まで一年のところが最大四年であり、また向こうで延ばす期間は一年、全部合わせれば五年という形で、今までに比べればかなり長い期間になっている。そこのところの違いだけが書いてあるんですけれども、まずこの二十六条の中で見てみますと、「法務大臣は、本邦に在留する外国人がその在留期間の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもつて出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる。この場合において、法務大臣は、その者の申請に基づき、相当と認めるときは、当該許可を数次再入国の許可とすることができる。」という条文、これは別に変わっていないわけでございますから、この中で見ますと、結局のところ、この再入国の許可を与えるかどうか、数次にするか、年限をどうするかということについても、法務大臣に裁量の範囲が非常に多いというふうになっていると思うんですね。 ここの点で一つ一つ項目を絞って見ますと、この年限の問題、それから一次か数次かという分け方の問題、それからそのほかに、法務大臣がこれまででも考慮されてきたであろうと思われる要素としましては、申請者の国籍がどうであるのかということ、行き先がどこであるのかということ、それからもう一つが指紋押捺について拒否をしているか否か、その他の事情もあるんでしょうが、具体的な項目を挙げますと、そうしたことが一つ一つ、これを許可するかどうか、どのくらいの期間にするか、数次か一次か、こういうふうな裁量の中身として、要素として考えられてきた部分じゃないかというふうに思うわけです。 こういった大臣の裁量に任されている部分について、現在まで許可の実態としては、今私が申し上げましたようなことについてどういった形で考えられてきているか、特にその一つ一つの項目について例えばどうであるのかということについてお答えいただきたいと思います。
○股野政府委員 委員がまず最初にお述べになりました一般法である入管法の二十六条の規定は、この特例法においてもそのまま維持することになっておるわけでございます。すなわち、法務大臣が許可を与えることができるというこの条項につきましては基本的に維持するわけでございますが、これは一般に再入国許可ということにつきまして、出入国管理の一つの重要な側面でございますので、この点は法務大臣の裁量行為として行ってきておるところでございます。 それでは、その具体的な裁量の判断に当たってどういうことが考慮の中身となってくるかと申しますと、これはまず一般法の入管法でございますので、それで一般論として申し上げますと、その再入国許可を申請される方が日本においてどういう在留状況にあるかということが、これは大事な要素の一つとなってまいりますし、さらに今度は、海外に渡航される場合の渡航の目的、それから渡航先、また渡航先の国と日本との関係、さらにはこれに関連するような国際情勢等々についての諸事情を総合的に勘案して決定させていただいているということでございます。したがって、ただいまの御指摘のような場合につきまして、これは在日韓国人の方々あるいは在日朝鮮人の方々についても、これも同様に、今申し上げましたような各種の要素というものを総合勘案して決定をさせていただいているということでございます。
○鈴木(喜)委員 今、総合的に同様のことを現在でもなされているというのですが、私たちが調査したところによりますと、実態としてそうはなっていないのではないか。同じ行き先であったとしても、朝鮮の人の方には、そこで出てくるものは数次ではなく一次であり、また期間も今現行法上で最大初めのときに一年というところが三カ月というような期間になる、こういった差別というものがずっとあったというふうに聞いておりますが、その点いかがでしょうか。
○股野政府委員 私が今申し上げました趣旨は、例えばその申請者の方の日本における在留状況とか渡航目的とか渡航先とか、各個の要素を例示させていただきましたが、こういう要素について、どういう方からの申請であってもすべて総合勘案させていただくということで、同じ扱いであるという趣旨でございます。 さて、その結果といたしまして、裁量行為でございますので、個々の事案によっては違いが出てくるということは、これはあり得ることでございまして、在日朝鮮人の方々についての問題になりますと、北朝鮮と日本との間に国交がないということ、さらには朝鮮半島情勢、それにまた関連してくるところの国際情勢等の諸事情がこの総合判断の中に入ってまいります。そういう総合判断の中で、案件によって、在日朝鮮人の方についての決定内容とそれ以外の方の決定内容について、今の御指摘の期間の問題も含めまして、違いが起こるということもあるということでございます。
○鈴木(喜)委員 この際、国際的な関係、国交が回復しているかどうかという問題についてもその裁量の中の判断の材料にされるというお話ですけれども、今こちらに定住しているその人たちについて、韓国籍であるか朝鮮籍であるか、その国籍がどこであるかというその問題をその中で重要視して、そこでの期間というのがおのずから違ってくるような形での御判断というのは、これから先もなされるということであると、さっき初めに伺いましたときには、いかにこれは全部平等に取り扱うんだ、同じ特別の定住ということでやるんだというふうにおっしゃっても、またそこで、そこにはおのずから差異がありますというようなお話で、これから先も同じような結論が出てこないということが考えられてしまうのですが、その点はいかがでしょうか。
○股野政府委員 日本と北朝鮮の間に国交がないということについては、総合判断の中の一つの要素として従来も判断の中に加えさせていただいてきているわけでございますが、判断全体として行うものでございますので、関連する諸要素につきましてまさに総合的に判断するということで取り組んできておるわけでございます。 さて、法案を出させていただきます際のこの法案の趣旨というものは、冒頭も申し上げましたように、同じ歴史的経緯と同じ定住性を持っておられる方々について、この法律の上において同じ待遇、同じ法的地位にしよう、こういう趣旨でございます。したがって、今後の再入国許可の決定について、その再入国許可という行為自体が一つの大臣の裁量行為であるという点は、これは変わらないわけでございますけれども、その裁量行為の運用につきましては、当然のことながら、ただいま申し上げましたようなこの特例法の趣旨というものを十分生かし、尊重して運用していくという心構えでございます。
○鈴木(喜)委員 もう一度そこで、おっしゃっていることは、そのまま聞きますと大変それで喜ばしいことだなというふうに考えるのですが、具体的に考えますと、非常にまだそこでの差別というものが総合的な判断という言葉の中に隠れて出てくるのではないかという、その危惧感がどうしてもぬぐえないのです。今のところで、国際的な関係、国家間の交際というもの——朝鮮国籍の方でも、自分の親族でありまたはお友達である、そういう私人間の関係で何か行為があってどこかに出かけるということがある場合に、ほかの国籍の方と差異があるような形、それだけが判断の材料ではないとおっしゃいますけれども、しかしそれじゃ一体どこに差異があるのかということを一々見た場合に、結局そこのところに帰着してしまうということは、出てくるおそれはなしとしないわけです。 この点、結局国家間の国交の問題、そういった国交の問題というものは切り離して、今日本が日本の中で平等に取り扱うという場合には、日本国民が例えばその国へ出かけていくときに、そこの国が国情が非常に不安定であるとか国際情勢上うまくない、日本人に対してもそういった形で渡航するときに許可が与えにくいような場合であればそれはともかくですけれども、ただ単に、今までここで特例の定住者であるということをもって、そしてその行き先について、私たち日本の国民が行くのと違う形での配慮というものがなされるというようなことがあると、やはりこれは問題があるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
○股野政府委員 いろいろこの問題について考えなきゃならない要素なり側面があるという点を、今委員から御指摘をいただきました。私どもは、この点は十分念頭に置いてこの問題に対処していかなければならぬと思っております。 そこで、国際情勢というようなことあるいは国家関係というようなこと、これはどうしても我々の考慮の中に入れるという点は必要になってくると思いますが、他方、委員御指摘のとおり、人道的な内容である、あるいはその渡航の目的というものがごく通常の海外旅行であるというようなこと、こういうことは、またこれは重要な要素として考慮しなければなりません。こういうようなことをいろいろ総合して判断させていただきますが、基本的には先ほど申し上げましたとおりでございまして、この特例法というものを提案させていただいております趣旨というものを十分考慮して運用をしてまいるということでございます。 在日朝鮮人の方について特に御指摘がございましたので、在日朝鮮人の方々について申し上げれば、この在日朝鮮人の方々の再入国許可申請というものについて、何か特段の事情があるというような場合は除きまして、一般のことであれば、それは例えば在日韓国人の方の申請と同様の取り扱いをするというように配慮をしてまいりたいと考えております。
○鈴木(喜)委員 ぜひともそのようにお願いしたいと思います。 新聞等で時々見ております、これまでも演奏旅行にアメリカに行くというような場合に、再入国許可というものが得られないということで非常に問題になって、最終的には再入国を法務大臣が許可されたというような事例でありますとか、その他にもこういった形で新聞種になり社会的な問題になれば、その際には今まででも法務大臣の許可がおりていたけれども、そういうふうにならないたくさんの事例というものが現在隠れたところにあるわけでございまして、こういうものをこれから先は今局長がおっしゃいましたような形でぜひとも平等な扱いを、それが特にそういった今言った国籍ということによって差別されるようなことのない形でお願いしたいと思いますし、私の申し上げました、一歩進んで、韓国籍の方、台湾籍の方ということではなく、日本人と同様に、私たちは海外に行けばそのまま当然日本にまた戻ってくるということがあるわけでございます。韓国の方にしろ、朝鮮の方にしろ、台湾の方にしろ、それと同じことだと思うのです。こちらに定住しているんですから、一遍行って戻ってくるのはまさに当たり前のことでございますから、そういう点も勘案されて、渡航の許可というものについて、今現在十条その他の法律はありますけれども、その範囲ではありますけれども、許可に際してはそういった形で十分に日本人と同様の御配慮をいただきたいと思います。 この点も含めて、特段の事情ということを今局長の方から言われましたが、もし差し支えなければ特段の事情の一例、二例を挙げていただけますでしょうか。
○股野政府委員 これはなかなか難しい点でございますが、我々としても先ほど申し上げましたような基本姿勢でまいりますので、裁量行為でございますので、どうしても個々の事案ごとの判断ということになりますが、まさに特段の事情がある場合ということ、しかもこれは当然のことながら限定的な内容になってまいりますので、そういう場合はこれはまたそれなりの対応をしなければなりませんが、そういう特段の事情がないという場合であれば、これは一般の方と同様の取り扱いをする、こういう趣旨でございます。
○鈴木(喜)委員 はっきりはいたしませんけれども、もしもこれがある程度結果において差別をされたような結論が出ているような場合には、特段の事情について政府の方から、その挙証責任といいますか、その点について説明を明らかにしていただけるというふうに、私は今のお話では理解をしました。 特段の事情が通常はないわけでございますから、ある場合にはこういうことでこうなったんだということについて明らかにされるということが含まれているお答えであろうと思いますが、この点についてまとめては後で大臣にも伺いたいのですが、この平等な取り扱いということだけについて、大臣、今御裁量権をお持ちなのは大臣でございますので、一言お答えいただけますでしょうか。
○左藤国務大臣 今お話しのように、今回の法律の、そういった制定いたしたいという趣旨というものを十分考えた配慮をしていかなければならない、このように考えております。
○鈴木(喜)委員 抽象的なお話ですが、今局長がるる述べられたことのすべてを配慮していくというお話であろうと思います。 そこで、社会党案について提出者の方から伺いたいと思います。 まず、こうした、今もお話の中で平等に取り扱うということがありますけれども、なぜ私も日本人と同様の取り扱いをすべきじゃないかということを言うかといいますと、平和条約でもってその国籍が日本から離れたというところばかりでなく、その前から定住に至るところに、もう非常に大きな歴史的な経緯というものがあるというふうに考えています。この点について、我が国にこういった方々が定住せざるを得なかったというような経緯とか、または定住の実態について伺ってみたいと思います。
○小澤(克)議員 お答えいたします。 社会党案では、第一の「目的」のところに「平和条約国籍離脱者及びその子孫の有する歴史的経緯及び本邦における定住性にかんがみ、」このようにうたってあるわけでございます。今の御質問は、歴史的経緯及び定住性の両方にかかわる問題だろうと思います。 まず、歴史的経緯につきましては、今の御質問にもありましたが、何といっても、日清条約あるいは日韓併合条約によって日本の植民地とされ、そのことによって一たん日本国籍を強制された方々で、そして後に平和条約発効によって今度はその日本国籍を奪われた、こういうことが一つでございます。それからもう一つつけ加えますが、その際に、本人の意思あるいは好むと好まざるとにかかわらずそのような取り扱いを受けたということでございます。 いま一つは、今の御質問の中心にあったとおりでございますが、日本に定住するに至った、本邦に流入するに至ったその経過でございます。これにつきましては、一口で言えば極めて過酷な植民地支配の結果である、このように言えるかと思いますが、朝鮮半島に関連して言えば、大きく分けて二つの要因があったと思います。一つは、まさに社会的、経済的な要因、いま一つはいわゆる強制連行、こういった二つの要因であったと思います。 そして、最初に述べた社会的、経済的要因は、さらに大きく分けて二つぐらいの要素に分かれると思います。その一つは、一九一〇年からの日韓併合条約の結果始まりました日本の植民地支配のもとで、いわゆる土地調査事業というものが一九一〇年から一九一八年にかけて行われました。これは、名目は近代的所有権の確立を名目とするものでございました。 前近代的な土地の利用関係があったわけでございまして、そこにはいわば政治的な、徴税権に類するような年貢を収集する権利から、さらには土地所有者の地代収集権のようなもの、それからまた耕作権というのでしょうか、そのような各種の権利が一つの土地に重層的にあるのが、これが前近代的な土地の利用関係の特徴でございます。それは日本でも江戸時代までまさにそのような状況があったわけでございますけれども、そこに近代的な全き所有権、すなわち使用、利用、それから収益、処分の全的な支配権を持つ所有権というようなものを導入すると、それ自体大変な無理があるわけでございます。しかも、それが植民地支配というもとに強行されたために極めて多くの土地が国有地という形になってしまった、このことが一つございます。資料によりますと、十三万余町歩の耕地が駅屯土、それから九十余万町歩の田畑が国有未墾地ということで国有地に編入されております。 それからもう一つは、東洋拓殖株式会社という植民地経営の会社があったわけでございますが、ここが、この間に大きくその所有地を増大させております。一九一〇年から一九一八年までの間に、一万一千町歩から七万七千町歩にほぼ七倍になっております。さらに大小の日本人地主が、八万七千町歩から二十万町歩へとその土地所有を拡大しております。これらは、政治的、経済的な力を背景に土地を収奪したというふうに言って差し支えないかと思うわけでございます。 このような背景で、朝鮮人の自作農の多くの者がその耕作権を奪われて、都市あるいは本邦に流入せざるを得なかった、こういう経過がございます。小作料が日本の植民地支配の間に従前の五〇%から七〇%まで引き上げられたという歴史的な事実もございます。 いま一つの要因は、これは日本側の要因でございますが、第一次世界大戦後に日本の経済が飛躍的な発展を遂げまして、そのために労働力の不足を来した、これがまた吸引力となりまして朝鮮人労働者の大量の流入を結果としてもたらしたわけでございます。日経連の専務理事をされました前田一さんの書かれました「特殊労務者の労務管理」という一九四三年の書物がございますが、その中に、「欧州大戦勃発以降内地の産業は勃興し、事業界は未曽有の殷盛を告げ、労力の需要は頓に増加を来し、その結果内地労働者の吸収のみを以ては充分ならず、寧ろ内地人に比して賃金の低廉なる鮮人労務者を積極的に誘引するに如かずとする機運を醸成し」たという記載がございまして、内地に流入した朝鮮人労働者の賃金は日本人の半分にすぎなかったというようなこともございます。 同じ書物の中で、前田さんは、「彼等は極めて僅かな収入を得るに過ぎなかったが、その生活費も亦想像以上に低廉なもので、おそらく人間としての最低限度の生活を維持して居るに過ぎない状態であった。住居は粗末で壁は落ち屋根は打ち辛うじて雨露を凌ぐ程度のもの、殊に食物の点に就いてはよくもあれで生存に必要な栄養が摂取されるものかと疑われる程であり、食ふ分量は多いが、彼等は全く米と塩と野菜で生きて居る有様であった」、このような記載があるわけでございます。 いま一つは強制連行でございます。これはもう言うまでもないことでございますが、時間の関係がありますので省略いたしますが、国家総動員法に基づき国民徴用令の施行として大量の朝鮮人労働者が強制的に連行され、炭鉱等で過酷な労働についたという歴史的事実があるわけでございます。 このような経過によって日本に定住することになった、このような歴史的事実は、私どもはやはり正面から見据えていかなければならないことである、このように認識しております。 長くなりました。
○鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。 こういった形での定住化の、今の小澤先生の方からの御発言ですが、こうした経緯というものについては、政府側でもやはり同じような認識に立っておられますかどうか。一言で結構でございます。
○股野政府委員 「歴史的経緯」という言葉をこの法案の提案理由の中でも申し上げさせていただいておりますが、歴史的経緯ということはさまざまな内容がございまして、これらの特例法案の対象になられる方々についても、従来大変いろいろな御困難がおありであったということを十分認識しております。
○鈴木(喜)委員 それではもう一つの問題ですね。国籍と並んで再入国許可の裁量の中で大きな位置を占めていると思われるのが、指紋押捺の拒否か否かということの問題でございます。 これは、先ほどの局長のお話の中で在留状況という言葉がございました。この中にそういうものが入っていて、そして指紋押捺を拒否しているかどうかということによって再入国を許可するかしないか、そういったことが重要な要素として今まであったということなんでしょうか。
○股野政府委員 指紋押捺の問題について、我々として外国人登録法という法律の中の一つの重要な要素としてこれをとらえてきております。在留の状況という言葉を先ほど使わせていただきました。これは非常に幅広い言葉でございまして、そのお方の在留の資格も含めた総合的な内容でございます。 この指紋押捺を、政府側としては、この指紋押捺についての制度があるという状況においては、ぜひその法律に従った対応をしていただくことが必要であると考えておるわけでございます。しかるに、その指紋押捺の義務に違反しておられるという方から再入国許可の申請がございますと、これは当局といたしましては、やはり先ほど申し上げましたいろいろな要素を勘案する中で、そういう外国人登録法の違反があるということも踏まえた審査ということを行っているところでございます。 ただ、この点につきまして、御存じのとおり昭和六十二年の外国人登録法の法改正がございまして、指紋押捺について、一回押してあればもういいというような制度の緩和が図られております。そういうようなことも踏まえて、現在指紋押捺を拒否をしておるという人であっても、永住者であるというような場合等については、そのいろいろな関連した事情を考慮しまして弾力的に許可を決定させていただいているという事情がございます。
○鈴木(喜)委員 今回のこの特例法ができたということは、直接は外登法の問題ではございませんけれども、今の現状の局長のお話から進んで、指紋押捺というそのこと自体が非常に人権をじゅうりんした問題であるという認識のもとに緩和がされてきつつある、そして、もしかしたらこれはなくなるかもしれないという状況の中でございますので、ぜひともこの点も裁量の範囲の中からはひとつ除いていただいて、定住をされているということであれば、今おっしゃったのは弾力的にというお言葉ですので、その点を私どもは非常に希望を持ってお聞きしたいと思いますけれども、この点について結果の差異があるというようなことは、これが特段の事情であるというようなことのないようにお願いをしていきたいと思います。 特に、再入国ということをここで拒絶されてしまってもどうしても外国に行かなければならない、そういう事情があって、もし行ってしまいますと、もうそこで既に定住という権利がなくなる、また向こうからの申請で日本には帰ってきたとしても、定住権が失われるといったような状況がある中では、結局は日本から出さないという形に事実上なってしまう。こういうことのないように、国籍とともに指紋押捺の問題についてもお考えいただきたいと思います。 時間が少ししかありませんので、最後に大臣から、本法をつくって、そしてこれを運用していくということに当たり、御所信を伺いたいわけでございます。 特にその十条をめぐって入管法の問題がありますので、許可に当たって、数次または一次であるとか、または期間を、原則的に言いますと四年が最大限でございますから四年、そして向こうに渡ってからの一年、基本的にはここが中心であって、特段の事情のない限りこれを変えることがないというような形で、もちろん本人の意思が前提でございますけれども、そういった形を考えるに当たって、国籍または今の指紋押捺の問題、行く先、目的、そういったものについて、一体どのような基準でこれからこの法の運用をしていく上で考えておられるかを含めまして、お話しをいただきたいと思います。
○左藤国務大臣 再入国許可の問題につきまして、こうした特別永住者という立場、そういったものを今回配慮してのことでございますので、そうした申請も含めまして、申請者の我が国におきます先ほどから局長が御説明申し上げた在留状況、渡航目的、渡航先あるいは渡航先の国と我が国との関係、国際情勢、いろいろな問題が絡んでくることでありましょうけれども、そうした場合に許可を与えるときに、有効期間あるいは数次とするかどうかというようなことについても、そうした事情をやはり考えていかなければならないわけでございます。今もお話がございましたように、特別永住者というような制度を設けて配慮するという意味から、その法的地位を設けるこの特例法の趣旨を十分考えてこれからやっていかなければならない、この法を設け、また運用していく上において、どうしてもそういった点を十分配慮してやっていかなければならないというのが我々の考えでございます。
○鈴木(喜)委員 まだ時間がありますので伺います。 今おっしゃったのでは現行法と変わりないような気がしてきました。ここで大臣おっしゃっていることは、今までのこういうことを勘案して十分やっている。この法の趣旨というものを一体どう考えておられるのか、その点についても、もう一度もう少し鮮明に、大臣自身がこの法の趣旨というものをどのようにとらえておられるのか、おっしゃっていただきたいと思います。
○左藤国務大臣 提案理由の説明のときにも申し上げましたけれども、終戦前からずっと引き続いて日本に居住して、そして昭和二十七年のこの平和条約の発効、このときに日本国籍を離脱した方々、そういう在日韓国・朝鮮人及び台湾人とその子孫、こういう方々のことにつきましての、我が国におきます定住性というものを考えまして今回のそういった特例法をお願いしたわけでございますので、そういう趣旨から考えまして、今のそういうまた歴史的な経緯というものを考えまして、そうした意味で、出入国管理及び難民認定法というのが一般的にあるわけですから、それの特例という形で今回の法を立案し、御審議をお願いしておるという趣旨から考えて、今申しましたような点について十分配慮を申し上げる、また配慮しなければならない、このように考えておるところでございます。
○鈴木(喜)委員 終わります。でも一言だけ言いますけれども、十分に配慮するのは、国家の側から、大臣の側からの配慮ではなくて、これは今いらっしゃる定住者の方の立場から十分に配慮していただきたいと思いますので、その点は股野局長のお話と一緒だと思いますが、もう一回大臣もきちんとその点について御配慮と、平等原則を守っていただきたいと思います。一言だけ、守るとおっしゃってください。
○左藤国務大臣 今局長も申しましたとおり、私も同じ考えでやらなければならない、守っていかなければならない、こういうように考えます。
○伊藤委員長 御苦労さま。 北側一雄君。
○北側委員 公明党の北側でございます。 九一年問題を契機といたしまして、在日韓国人の法的地位、待遇につきまして本年一月に日韓覚書が交わされまして、永住権等につきましては本件の入管特例法によって一歩前進することを一応評価するものでございます。まだまだ多くの課題がもちろん残っておるわけでございますけれども、まず最初に、在日韓国・朝鮮人の法的地位、また待遇問題の基本的な考え方を法務大臣にお聞きしたいと思います。 まず、大臣もよく御存じかと思いますけれども、戦前からの日本の植民地支配、それから日本への強制連行、そして一九五二年のサ条約発効に伴う一方的な日本国籍の喪失等の歴史的経緯、他方では、現在彼らの中で、戦後日本で生まれた人が七割以上を占めております。日本で生まれて教育され、日本で定住し、また日本でしか生活手段を持たない人が大半でございます。五十年前に日本に来たときに二十の方が今はもう七十歳、お孫さんが成人をする年齢でございます。私は、彼らとその子孫には当然日本人に準じた法的地位と待遇を与えなければいけないというふうに考えます。 大臣は地元が大阪六区でございまして、一番在日の方が多くおられる地域でございます。在日の方の心情とかこれまでの状況を一番よく知っておられる大臣ではないかというふうに私は考えておるのですけれども、大臣の基本的なお考えをお聞きしたいと思います。
○左藤国務大臣 今お話しのとおり、確かに生野区を中心としたところ、非常にたくさんの韓国人、朝鮮の方々が定住しておられるわけであります。先ほどお話がありましたけれども、強制連行ということで来られた方もたくさんいらっしゃいますけれども、それ以前から、たしかあれは大正十四年ぐらいだったと思いますが、平野川の改修というのがありまして、そのときに朝鮮半島からたくさんの方が来られて、その方がその作業が終わった後そのまま定住されたというような経緯があるように聞いております。 そうした方々がたくさんおられるところの問題でもあり、またそうした中におきまして、確かに強制連行で来られて、また終戦の前後の非常に混乱したときに我が国におられたという経緯もあります。そして、平和条約が行われて、国籍を自動的と申しますか、そういうふうな形で離脱されたというような、そういう今までの終戦前後を通じての我が国におられる状況。そして、その方々は今お話がありましたようにもう非常に高齢に達せられた、その子孫が非常にたくさんおられる。こういう方々の歴史的な経緯、また定住性というものを考えますと、当然こうした方々の一層日本においての定住性といいますか、そういうものを安定させなければならないというような、そういう意味がより高まってきた。このような意味から見ましても、現行の出入国管理及び難民認定法で定められているものではいけない、より一層定住性を確保する、そういう意味におきましての特例を定めよう、これが今回の法案を提出申し上げた趣旨でございます。
○北側委員 大臣、入管特例法は今大臣のおっしゃった趣旨でございます。それ以外にも数多く残されている課題が、この在日韓国人の法的地位、待遇の問題でたくさん私はあるのではないかと思っておるのです。 そのまだ残されておるさまざまな課題について、可能な限り日本人に準じた法的地位と待遇を与えていかないといけないのじゃないか、その必要性は大臣が地元で一番よく知っておられるのじゃないかというふうに私は考えておるのですけれども、大臣いかがでしょうか。
○左藤国務大臣 いろいろな問題がこれ以外にも、今回の法案以外にも私はたくさんあろうと思います。外国人登録関係の問題を、一層サービスといいますか、そういうようなものをよくしていくとか、そのほかにもまだいろいろな、当省の所管の事項だけでなくて、日本全体として考えていかなきゃならない問題が幾つかあろうか、このように思います。
○北側委員 この法的地位、また待遇問題とパラレルに考えていかなきゃいけない問題が、私は帰化の問題じゃないかと思っているのです。在日韓国・朝鮮人の方々の帰化の問題、これをやっぱりパラレルに私は考えていかなければいけない。 この今回の永住権の問題では、一般の外国人の永住権取得の方法と在日韓国人また朝鮮人の方々の永住権の取得の方法とが、全く取り扱いが違うわけですね。取り扱いを違うようにしなければいけない状況にあるわけなんです。私は、それと同じように、帰化の問題についても、一般の外国人の日本への帰化の問題と、先ほど述べましたような歴史的経緯と日本人と全く変わらない定住性を持っている彼らの帰化の問題とは、取り扱いに違いがあってしかるべきであると考えております。具体的にはこの後聞かしていただきますけれども、彼らの帰化につきまして、一般の外国人より帰化の要件が緩和されるべきだし、また帰化手続ももっと簡易化をされなければいけないんじゃないかというふうに考えております。 私は、決して彼らの帰化を奨励しているわけじゃなくて、もちろん韓国籍でいたい人には韓国籍のまま日本人に準じた法的地位と待遇を与えていく、一方では、帰化をしたいと望む人たちには、緩和された要件のもとで簡易な手続で帰化を認めていくべきである、そのように考えておるわけなんです。例えば、帰化した彼らがいわば韓国系の日本国民として自分たちの民族の誇りを持って生きていけるような、そういう日本の社会をつくっていかねばならないんじゃないか。私は、日本の内なる国際化を進めていく一番の問題がこれじゃないかと思っておる次第でございます。 大臣、帰化についての、今私が申し上げました基本的な考えについての大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
○左藤国務大臣 帰化を許可するにつきまして、国籍法の定める帰化の要件に従って今まで適正に判断しておるところでございますけれども、御指摘のような方々につきましては、日本で生まれて日本の教育を受けて日本の社会にもう定着しておられる、こういう事情はそうした場合に十分考慮しなければならないし、また現在も考慮していると私は考えておりますけれども、その帰化の許可申請があった場合にできるだけ速やかに許可をする。そういう方針で実務の運用をしており、また今後もこの方針で臨んでいかなければならない、このように考えておるところでございます。
○北側委員 大臣の方から、帰化の申請があった場合には速やかに許可するように運用していかなければならないという御答弁をいただきました。 そこで、具体的にこの帰化の要件の問題、手続の問題を少し聞かせていただきます。 今お話ございましたように、帰化の要件につきましては国籍法の五条で規定をされております。その一項の三号に「素行が善良であること。」という要件がございます。まず、これからお聞きいたしますが、「素行が善良であること。」というふうに五条一項には書かれておるわけなんですが、これはどの程度のものを求めておられるのか、お聞きしたいと思います。
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。 素行が善良であるか否かの調査は、申請者の素行が平均的な日本人と同程度のものであるかどうかというような観点から調査をいたしておるわけでございます。具体的には、法律違反の行為とか、あるいは納税がきちんとされているかどうかというような点について調査をするということになっているわけでございます。
○北側委員 平均的な日本人と同じような人たちであるかどうかという抽象的な御基準、今おっしゃっていただいたのですけれども、例えば永住権を取得されるような在日の韓国人の方、朝鮮人の方、また台湾人の方、そういう方々が帰化申請をした場合にどう取り扱いをされるのかという前提でお聞きをいたします。 交通事犯をその方が犯されたような場合に、例えば速度違反、駐車違反等で交通切符を切られた、交通反則行為を犯されたというふうな場合の取り扱いはどのようになっておりますでしょうか。
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。 交通反則行為あるいは道路交通法違反とか、あるいは業務上過失というようなことで刑罰に処せられるということがあるわけでございますけれども、こういうものでございましても、相当過去のものであるというようなことでございますと、ほとんどもう問題にされないという扱いになっております。これは例えば、非常に重大な犯罪を犯しまして刑務所に服役をしたというような方でございましても、服役終了後相当期間を経過して、その間に犯罪行為もないというようなことでございますと帰化が許可される。現にそういった方々、非常に数は少のうございますけれども、帰化の申請がありますと許されるということでございます。 そこで、問題は交通違反行為でございますけれども、申請の直前あるいはその期間が非常に接着してその種の行為があるということになりますと、少し様子を見させていただくという意味で、若干の期間を置かしていただくというような扱いをしているわけでございます。また、中身のことも当然でございますけれども、例えばスピード違反を繰り返しておられる、相当何回も繰り返して反則行為として反則金を納めておるということでございますと、やはりスピード違反というのは非常に大きな事故のもとになるものでございますので、そういうようなことをしないように注意をしていただくという意味で、若干の期間は観察期間として置かさしていただいて許否を決める、こういうことになっておるわけでございます。
○北側委員 ちょっと具体的に言います。 交通反則行為を例えば一回ないし二回やった、その場合に帰化申請をした、これが帰化要件の障害になるかどうか。いかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 一回ないし二回の交通反則行為であるということでありますと、これはほとんど障害にならないというふうに申し上げて差し支えないのではないかと思います。
○北側委員 今の御趣旨は、頻繁に交通反則行為を犯しているような特殊な事例は別として、そうでないような場合には帰化要件の障害にならないというふうに理解さしていただいてよろしいわけですね。
○清水(湛)政府委員 そのように理解していただいて結構かと思います。
○北側委員 次に、交通反則行為を超えてしまって罰金のある場合ですね。罰金刑を科せられるような交通事故、交通事犯を犯したような場合に、この素行要件の障害になるのかどうか。これはいかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 これもケース・バイ・ケースということが前提にはなるわけでございますけれども、申請の直前あるいは非常に短い期間の間に一回、まあ一回というふうに限定をしてお話し申し上げますけれども、例えば業務上過失というようなことで罰金刑に処せられておるというようなことでございますと、そのような罰金刑が処せられた背景とかそういうようなものをよく調査いたしまして、もう少し様子を見させていただく、また同じような同種の罰金刑に処せられるような行為が起こるか起こらないかというようなこともございますので、若干の期間は、観察をするという意味で期間をかしていただくというような扱いを現実にはしているところでございます。 ただしかし、許否の判断は総合的な判断でございますので、いろいろな事情を考慮して、今後この種のような犯罪を犯す可能性は全くない、本人もそういうことについては、例えば非常に注意深く車の運転をしているというような事情がはっきりしているような場合には、許可をすることもあり得るということでございまして、あくまでも個々の事案に応じて全体的な観察の中でそういうような判断をする、こういうことになっているわけでございます。
○北側委員 今のお話は、罰金の場合はケース・バイ・ケースであるというお話なんですけれども、交通事犯で罰金を科せられる場合というのは、普通の日本人の場合でもある意味ではよくある。例えば速度違反なんかで、たしか三十キロオーバーですと、これは交通反則行為の適用ではなくて罰金刑ではなかったかというふうに思うのです。そうした場合というのは、ある意味では我々の周囲にそういう方というのはおられるわけでございまして、決してその方が素行が善良でないとか、私はとても言えないと思うわけでございます。 特にこの在日の韓国・朝鮮人の方々に関しましては、私は、少なくとも交通事犯による罰金刑のような場合にはこの帰化要件の障害としないような取り扱いをすべきではないか。もちろんほかの要件はあるわけで、ほかの要件は当然それぞれ調査されるにしても、この問題だけ取り上げますと、交通事件で罰金に処せられるような場合には、永住権を取得されている在日韓国・朝鮮人の方々の場合は、帰化としては原則的には不問にしていくような考えがあっていいのじゃないかというふうに私は思うのですが、大臣いかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 これは大変いろいろなお考えがあろうかと思います。ただしかし、今交通戦争と言われるような、車をめぐる事故等が大きな問題になっているわけでございまして、私どもも車を運転する場合には、スピード違反をしないようにとか、あるいは交通に関する法規を遵守するようにと、日ごろ日本国民の一人として心がけているわけでございます。そういうような状況を考えますと、やはり交通関係の罰金刑に処せられるような行為についてこれを不問にするというようなことは、現段階ではちょっと私どもにはできないのではないかというふうに考えている次第でございます。
○北側委員 それでは、こういうふうにお聞きしましょう。 交通事犯で罰金刑に処せられる場合にもさまざまな情状があるかと思います。ですから、交通事犯で罰金刑が科せられるからといって直ちに帰化要件の障害になるわけではない、事案によっては帰化要件の障害とならない場合も十分あり得るというふうに考えてよろしいか。 それから、先ほどからしばらく待っていただくというお話が出ておりますけれども、このしばらくというのはどの程度待つような取り扱いをされておられるのか。大体で結構でございます、聞かせていただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 罰金刑を受けたからといって帰化の障害に当然になるということではないということは、仰せのとおりでございます。 私どもは全国の法務局で多数の帰化申請事件を取り扱っておりますので、それぞれの窓口で区々の扱いをする、またいろいろな御相談があるわけでございますけれども、そういう御相談に対して区々ばらばらな回答をするということでは困りますので、罰金刑に処せられるような交通違反行為があった場合には、そういう処分を受けたときから一年ぐらいの範囲内ではちょっと帰化の許可は難しいというような扱い、逆に言うと、一年たつともう帰化の許可はする、その間何もなければというような、一つの形式的な取扱基準と申しますか処理指針と申しますか、そういうような形で内部は指導しているところでございます。 しかし、具体的な個々の事件のケースによってはその幅が若干出てくることも、それはあり得ないわけではございません。短縮することもありますし、その間、例えば罰金刑には処せられてないけれどもスピード違反で交通切符を何回も切られたというようなことになりますと、これまたちょっと事情が変わってくるというようなこともあるわけでございます。しかし、基本的には、一回の罰金刑に処せられる行為があったからそれがもう当然障害になるというようなことではないというふうに御理解いただいて結構だと思います。
○北側委員 それでは次に、重加算税もしくは過少申告加算税が課せられるような場合に、素行要件としてはどうなのかということなんですが、これはいかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 納税義務というのは国民の基本的な義務の一つでございますので、これを適正に履行しているかどうかということを、素行要件の一つとして私どもが調査をするということになっているわけでございます。 この関係では、所得を隠ぺいして重加算税を課せられるとか、あるいは過少申告加算税を取られておるというようなケースが間々あるわけでございます。そういうふうなものにつきましては、先ほどの刑罰に触れる行為をした場合と同じでございますけれども、過去にそのようなことがあったからといっても、その後は適正に納税をしてそういうようなことはもうない、ここ数年間はそういうことは一切ないというようなことでございますと、全く障害にならないということになろうかと思います。 ただしかし、最近のうちに重加算税が課せられているというようなことでございますと、再びそういうことをする可能性があるかどうかというような点について疑義が生じますので、若干の期間を置いて許否を決定させていただくというような扱いを、現実の事件の処理においてはさせていただいておるということでございます。一年ないし二年程度の期間を観察させていただきまして、その間、重加算税に処せられるとかあるいは過少申告加算税を取られるというようなことがなければもう帰化は許可される、こういうようなことを言って差し支えがないのではないかというふうに考えております。
○北側委員 過少申告加算税を課せられるだけであれば帰化要件の障害にはならない、これはそう言ってよろしいわけですね。
○清水(湛)政府委員 過少申告加算税につきましても、これが累年にわたっていないというようなことでございますと、ほとんど障害にならないということでございます。
○北側委員 次に、この国籍法の五条の一項四号の生計要件でございます。「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。」という要件がございます。これは、在日韓国人の方、朝鮮人の方々ということを前提にして、どの程度のものをこの要件で求めておられるのか。
○清水(湛)政府委員 帰化の要件としての生計要件につきましては、かつては申請者本人が独立に生計を営むことができるということが法律上の要件でございましたけれども、昭和五十九年の法律改正によりまして、本人だけではなく、生計を一にする配偶者とかあるいはその他の親族の資産とか技能によって生計を維持することができるということであればその要件を満たすというふうに法律が改められたところでございます。 そこで、在日韓国人の方々あるいは朝鮮半島出身者のそれ以外の方々について、現実の問題として、例えばこの生計要件が満たされていないということで不許可になるというような事例は、現在はまず皆無と言っていいかと思います。それぞれ立派な職業を持っておられますし、きちんとした生活をしておられますし、そういうような意味で、生計要件を理由として不許可となったという事例はちょっとこのところはないというふうに私自身は考えております。
○北側委員 今のお話では、在日韓国・朝鮮人の方々の場合は生計要件がほとんど問題とならないという御趣旨でございますね。 そうしますと、今の素行要件のお話、生計要件のお話を総合して考えていきますと、彼らが帰化申請をした場合には大半が、ほとんどが帰化の許可がなされるというふうに考えてよろしいわけですね。
○清水(湛)政府委員 これは、過去の統計からも示されているところでございますけれども、申請があればほとんどの方々は帰化が許可されておるというのが実情であるという御理解で全く差し支えがないというふうに思います。
○北側委員 それでは次に、帰化手続の簡易化の問題を聞かせていただきます。 今のお話ではほとんどの場合帰化の許可決定が出るわけですが、この帰化の許可決定が出るまで、申請から決定までどの程度の時間がかかっておるのか、御答弁をお願いします。
○清水(湛)政府委員 帰化事件の処理につきましては、私どもの一つの目安と申しますかめどといたしまして、申請が法務局にされたときから十カ月ないし一年ぐらいの間には許否の結論を出すということで従来から努力をしているところでございます。ほとんどの事件と申しますか、ほとんどのものについては大体この期間内に処理されているという実情にございますけれども、ただ、大量の事件を抱えている東京とか大阪等の大都市局、これは若干、まことに申しわけございませんけれども、今やや事件処理がおくれております。 そこで、私どもといたしましてはいろいろな措置を講じまして事件早期処理方の督励をいたしているところでございまして、その成果は最近やや拡大と申しましょうか、かなりあらわれてきて、処理が速くなっておるという実情にございます。このことは、帰化を申請されておられる方々もそういうふうに感じておられるというふうに私どもは理解しておるところでございます。 先ほど申しましたように、委員御指摘のとおり、在日朝鮮人の方々、韓国の方々、これはほとんどの方々が帰化の要件を満たしている方でございますので、そういう方が申請された場合には、とにかく速やかに帰化の許可の処理をしたいということで私ども現に一生懸命努力しておるところでございますので、この点については御理解をお願いいたしたいというふうに思います。
○北側委員 今までのお話で、在日韓国人の方々、朝鮮人の方々が帰化申請をする場合にはもう大半が、ほとんどが許可をされるのだ、生計要件なんというのはほとんど問題になっていないのだ。そして、素行要件の方もある意味では非常に簡単に調べがつく問題ですよね。ですから私は、一年もかかる、また東京、大阪等ではさらにかかるというのが、どうしてそんなに時間がかかるのかがなかなか理解しがたいわけでございます。彼らの場合にはもっと簡易な手続を検討すべきじゃないか、一般の外国人の方々と同様な調査を踏まれておられるからそんな時間がかかるわけで、やはり別の取り扱いをしてもいいのじゃないかと私は考えるわけです。結果として大半の人が許可されておられるわけですから、私は、さらに簡易化の手続を部内で、彼らの場合について別な取り扱いができるような特別な配慮をなされて簡易化をされるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、ほとんどの方は帰化の要件を満たしておる、日本で生まれ日本で育ち、日本の社会に完全に入り込んでいるという方々でございますので、こういう方々について事改めて一から百まで全部調査をする必要はない、おっしゃるとおりだと思うわけでございます。そういう観点から、例えば従来でも、永住許可を受けている方とか協定永住の許可を受けている人につきましてはかなり調査を簡略化して結論を早く出すように努めておる、こういう措置を現実に講じているわけでございます。 ただ、ひとつ御理解を賜りたい点は、帰化をいたしますと日本人になるわけでございまして、日本の戸籍法に従う戸籍をつくらなければならない。この戸籍をつくるためには、やはり父母等の身分関係というものは正確に認定しなければならない。たまたまいろいろなことがございましてその身分関係が複雑であるというような方も、たくさんはございませんけれども、一部にある。こういうような事件が出てまいりますと、処理に非常に時間を要する。これがほかの事件の処理にも影響してくるというようなこともございまして、これが帰化処理の中の一つの重要な問題になっているわけでございますけれども、やはり身分関係の認定だけは、これは正確に慎重にするということがございまして、そのために相当の時間を要しているという実情もあるということを御理解いただきたいと思う次第でございます。
○北側委員 帰化申請の際にさまざまな書類を添付してまいるわけなんですけれども、私のいただいた書類では、例えば事業の概要を記載した書面、それから生計の概要を記載した書面、かなり詳細な内容を書かなきゃいけないようになっておるのですね。例えば生計の概要を記載した書面では、食費に幾らかかっているんだ、住居費に幾らかかっているんだ、光熱代、水道代は幾らだ、衣服費は幾らだ、こうした、ある意味では家計簿をそのまま出すような詳細なものを求めているわけなんですよ。また、事業の概要を記載した書面でも、負債としてどこから借り入れしているんだ、それを具体的に書かされるようになっているわけなんですね。取引先についても、こういうところと取引があって、年間取引額は幾らだ、取引の内容はこうだ、そういうことまで記載しなければいけないような書面になっております。 先ほどおっしゃったように、生計要件はほとんど問題にならないわけでございまして、こうした不必要な調査がなされているんじゃないかなというふうに私は考えているわけなんです。今一年かかっているものを、もっと短縮するような努力をしようと思えばできるんじゃないかなと私は考えておるのですけれども、いかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、生計の概要を記載した書面とか事業の概要を記載した書面、これを見ますと、やや項目が細か過ぎるというような点はあるいはあるかと思います。いろいろな可能性を考えてこういう項目を立てているわけでございますけれども、現実に出される書面を見ますと、かなり概数的な数字でこれが記載されておるという実情もあるようでございます。 それからもう一つは、こういう書面を出していただきますと、ほとんどそれによって生計要件パスというようなことになるわけで、改めて生計要件を調査をするというようなことはしておりません。こういう書面を出しておくことが、逆に申しますと帰化事件の処理の迅速化にもつながってくるという要素もあるわけでございまして、余り書きにくいような書面であるということになりますと問題かもしれませんが、そういう処理の迅速化の一助にもなるということもまた御理解していただきたい、こういうふうに思う次第でございます。
○北側委員 私が申していますのは、調査が不必要にその方のプライバシーに立ち入るようなことはよくないということも申し上げているわけなんですね。定期預金が幾らあるんだとか、そんなの帰化には関係ないじゃないですか。そんなことまで聞く必要はないというふうに私は申し上げているわけです。不必要なことは聞かない方がいいということを申し上げているわけなんです。一応書いていただければそれでいいんだったら、そんなもの求めるべきじゃございません。私はそう考えております。 〔委員長退席、田辺(広)委員長代理着席〕 また、調査のために居住地の近隣とか勤務先まで聞き取り調査に行かれることもあるかと思うのですね。その辺も、その方のやはりプライバシーの問題と常にこれはある意味では衝突する場面があるわけでございまして、相当慎重にやっていかないといけないんじゃないかなというふうに、在日韓国・朝鮮人の方々の場合を前提にして、彼らのある意味では素性というのはよくわかっているわけですから、だから私は、そういう配慮がなされるべきであるし、プライバシーを尊重しなければいけないし、また、帰化手続がもっと短くなるようにしていくべきであるというふうにお願いを申し上げます。 もう一度御答弁をお願いします。
○清水(湛)政府委員 プライバシーを尊重しなければならないというのは、これは当然のことでございまして、帰化事件の調査に当たりましては、担当調査官はそういう点に十分配慮して調査をしておるものと私どもは確信しているところでございます。 そういうような帰化の許否を判断するについて、関係のない事柄まで根掘り葉掘り調査をするというようなことは現在はしてないというふうに私考えておりますけれども、そういうことでいろいろ誤解を受けるというようなことがあるいはあるかもしれない、なぜこういうことを聞くのかという、その聞く意図がお互いに認識が食い違いまして、いろいろな誤解を受けるということもあるかもしれませんけれども、今後とも、そういうような許否に関係ない事柄でいろいろな不安を与えたりプライバシー侵害の心配を与えるというようなことがないように、職員の指導には徹底を期してまいりたいと思います。 それとともに、帰化事件の早期処理、これは私ども、年来そのために努力をしているところでございますが、先生御指摘の問題点、いろいろ私どもも考えまして、さらに簡素化できるものは簡素化し、迅速化できるものは迅速化できるように努めてまいりたいというふうに思います。そういうことでますます努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○北側委員 最後に帰化の点で一点だけお聞きします。 確認をさせていただきたいのですが、帰化手続の中で、氏名の問題でございます。例えば在日韓国人の方が帰化申請をして帰化許可決定が出るという場合に、名前を韓国での本名、例えば金(キム)さんとか、それから朴(パク)さんとかおられますけれども、金(キム)もしくは朴(パク)というふうに本名を使っていいのかどうか。また、逆に係官の方がこれを金(キン)とか朴(ボク)とかというふうに日本名にすることを指導していないのかどうか、この点いかがですか。
○清水(湛)政府委員 帰化後の氏名につきましては、日本式の氏名にするように強制をするというようなことは、現在はいたしていないわけでございます。かつては日本人らしい氏名を使用するようにかなり強く指導をした時代もございますけれども、現在ではそのような指導はしておりません。韓国式の氏名も認めています。 ただ、帰化の申請がありました際に、帰化に当たって定めた氏名はそう簡単には変えられない。既に御存じのように、日本人でも氏を変えるについては家庭裁判所の許可を必要とする。しかも、やむを得ない事由がないと家庭裁判所は許可をしないということになっておりますので、一たん決めますとそう簡単には変えられない、こういうような問題もございます。今後二代、三代にわたって朴(パク)とか金(キム)とか、そういう名前でいいということも考えてそういうような帰化後の氏名にされるのかどうかというようなことについて、慎重に氏は決められたらどうかというようなアドバイスはするということにいたしているわけでございます。 なお、帰化後の氏名に使用する文字につきましては、常用平易な文字を使用するように戸籍法の規定に従いまして指導をいたしております。日本人でもこの戸籍法の制約を受けまして、どういう字でも使えるということではございませんので、そういう字を使うように指導はしております。しかし、申請者がこれ以外の文字を現実にもう使っておる、つまり戸籍法で認められている文字以外の文字を現に使っておる、それを変えると社会生活上非常に困難を来すというようなことでございますと、そういう文字の使用も認めておるというのが実情でございます。 そういうことでございまして、日本式にすべてしなければならぬというようなことで、これを強く指導するというようなことは現在はいたしていないということで御理解をいただきたいと思う次第でございます。
○北側委員 今のお話は、本名で構わないというお話ですね。本名で帰化をして構わない。金(キム)さんなり朴(パク)さんなりの本名で日本人として戸籍がつくられるんだというふうに理解させていただきます。 次に、外国人登録の問題についてお聞きをいたします。外国人登録制度なんですが、この制度の目的を、これからは住民サービスというところに大きく力点を置いていかないといけないんじゃないかというように私は考えております。大臣、その点いかがでしょうか。
○左藤国務大臣 外国人登録制度は、法第一条に明記してありますとおり、本邦に在留する外国人の居住関係及び身分関係を明確にし、そして在留外国人の公正な管理に資するということを目的として設けられたものであります。この制度は、今日、出入国管理行政ばかりではなくて、労働とか福祉とか文教、住民といった各行政面でも役立っている、このように承知しているところでございますが、現行法下の外国人登録制度の基本目的を踏まえた上で、今先生御指摘の点も十分念頭に入れて検討してまいりたい、このように考えているところでございます。
○北側委員 先般の日韓覚書で、指紋押捺に関しまして、指紋押捺にかわる手段をできる限り早期に開発するんだというふうにうたわれております。この指紋押捺にかわる手段、現在どのように検討しておられるのか、法務省としていつごろまでにこの代替手段案について出されるのか、この点についてお聞きしたいと思います。
○股野政府委員 ただいま委員御指摘の指紋押捺にかわる手段というものにつきましては、我々法務省当局として、現在、写真、署名及び外国人登録に家族事項を加味するということを中心に検討をいたしておりまして、具体的に申し上げますと、写真については本人であるかどうかということを確認し得るような鮮明な画像が得られる方法など、合理的なものを検討をいたしたいと思います。署名については、その署名の実施の方式というものについて検討をいたしておるところでございます。また、家族事項を外国人登録に加味するということにつきましては、例えば父母あるいは配偶者あるいは子などの氏名とか生年月日、続き柄というようなものなどを登録原票に記載するというようなことを現在検討中でございます。こういうことを検討中でございまして、具体的な方策というものはまだ固まったわけではございません。 ただ、委員御承知のとおり、ことしの一月、日韓の両国間で覚書というものについて双方の外務大臣が署名をした経緯がございますが、その覚書の中で、日本政府として、今後二年以内に指紋押捺にかわる措置を実施できるように、所要の改正法案を次期の通常国会に提出することについて最大限努力する、こういうことを明記させていただいております。そこで、法務省当局としてはこの方針に沿って現在開発を進めているところでございます。
○北側委員 来年の通常国会に出されるということですから、ことしの夏ごろにはある程度の案が法務省の方からは出てくるというふうに考えられますが、これはいずれにしましても、指紋押捺にかわる新たな手段が実施されますのは日韓覚書が調印されてから二年以内というふうになされておりますので、二年間の期間があるわけですね。この間に十六歳を迎えられた方々、形式的には指紋押捺をしないといけないということになりますけれども、この取り扱いをどうなされるのか。もう二年後には指紋押捺というのは廃止されることが明確になっているにもかかわらず、この二年の間に十六歳を迎える人の取り扱い、特に指紋押捺拒否を仮にされた場合にどうされるのか、その点の御答弁をいただきたいと思います。
○股野政府委員 ただいま委員御指摘のとおり、指紋押捺にかわる新しい措置が実施されるまでの間は現在の指紋押捺制度というものが法のもとで維持されるわけでございまして、確かに今後二年以内にこれにかわる措置を導入するということを明言しておりますが、それまでの間は、指紋押捺というものが本人がその本人であるというその同一人性を特定する上での重要な手段と考えておるわけでございます。そこでその意味は、これにかわる手段ができるまでの間は依然あるわけでございます。したがって、そういう点を考えてこの問題については対処しなければなりませんので、仮に指紋押捺の制度が維持されている間に十六歳に達せられる方で指紋押捺をしないということになりますと、これはやはり法違反という状況が起こるわけでございます。 この問題についていろいろな観点からの御議論がございまして、我々としてもいろいろ対応を考えたわけでございますが、しかしこの問題は、やはり同一人性を特定するという必要性が基礎にあるということでございますので、指紋押捺にかわる手段が開発されるまでの間は、指紋押捺制度というものは維持せざるを得ない。しかし、その指紋押捺制度にかわる手段というものをできるだけ早く開発するということに最大限の努力をするということで臨んでいくことにいたしております。 その間について、これは法律を、指紋押捺というものがあるということを踏まえて、ぜひこれは外国人登録法の趣旨を尊重していただくように、私どもとしましては強く希望をいたす次第でございます。(北側委員「拒否された場合はどうですか」と呼ぶ) この問題についても、現在の外国人登録法が有効である、その指紋押捺制度も有効であるということを踏まえて対処せざるを得ないと思いますが、今の問題が全般としてこういうかわる制度を開発中であるということも十分念頭には置きながらも、しかし、やはりその制度は制度として維持していくという観点での対処ぶりが必要になってくると思います。
○北側委員 時間がございませんので、また私午後に質問がございますので、外国人登録に関する質問をまた午後にさせていただきますけれども、今の問題で一言だけ言わせていただきますと、もう二年後に廃止するのが明確なわけです。それで、指紋押捺拒否をされた方々につきましては、おっしゃっている趣旨はわかりますけれども、私はその方々については、柔軟な運用を当然なされていかないといけないというふうに考えております。ぜひその点、当局とされても御配慮をお願いしたいと思います。 とりあえず質問を終わらせていただきます。
○田辺(広)委員長代理 引き続いて、質問を続行いたします。木島日出夫君。
○木島委員 今回の改正の一つの柱であります、退去強制の問題についてお伺いをいたします。 昭和四十年法律第百四十六号の日韓法的地位協定の実施に伴う出入国管理特別法六条で退去強制に関する特例がつくられて、今回の法改正でそれが新法の第九条になるわけであります。最初に昭和四十年に特別法がつくられてから今日までの間に、第六条に基づく退去強制が実行された件数、及び一号から六号まであるわけですが、その何号が何件使われたか、数字を示していただきたいと思います。
○股野政府委員 ただいま御指摘の、在日韓国人・朝鮮人の人であって退去強制手続の対象になった方ということでございますが、この統計につきましては、私ども法務省として統計をつくっているのが昭和五十三年以降のことについて統計をとっている次第でございますので、その統計をとっている内容で御説明させていただきますと、昭和五十三年以降平成二年末までの間に退去強制手続というものの対象になった人は千九百九十五名、こういうことになっております。その中で今御指摘の昭和四十年の日韓法的地位協定に基づいてつくられました出入国管理特別法の第六条の該当者ということになってまいりますと、この六条該当の刑罰法令の違反者は、ただいま申し上げました数として八十五名が統計の中で記録をされております。(木島委員「一、二、三号、四号、五号、六号の種別。八十五名のうち」と呼ぶ) この八十五名の中で、いろいろな状況を判断しまして、退去強制手続の対象にはなりましたが、いろいろな審判手続等を経まして法務大臣による在留特別許可の対象になった者が五十五名ございました。結果として、実際に退去強制令書が発付された者は、八十五名のうち三十名ということになってまいります。 実際に送還された者につきまして、これは先ほど申し上げましたように昭和五十三年以降の統計になっておりますが、ただいまの出入国管理特別法第六条の中の一項の六号「無期又は七年をこえる懲役又は禁錮(こ)に処せられた者」という条項に該当する者でございますが、これが十九名でございます。それから、別途入管法の二十四条の該当者で「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮(こ)に処せられた者。」すなわち二十四条の第四号のリという条項に該当する者が十三名。それから同じく入管法の第二十四条の第四号のヘ、これは外国人登録法に違反して禁錮以上の刑に処せられた者という条項になりますが、これが一名。さらに入管法の第二十四条の第四号のヘ、ロに該当する者、すなわち外国人登録法に違反して禁錮以上の刑に処せられた者であって、不法残留となった者、これが一名。さらにもう一人、入管法の第二十四条第四号のチとロの該当、すなわち覚せい剤取締法に違反して有罪の判決を受けた者でかつ不法残留となった者、これが一名。こういう内訳になっております。
○木島委員 ただいまの答弁に明らかなように、少なくとも昭和五十三年以降は、特別法第六条一項一号、二号、三号に基づく理由、要するに内乱、外患、外交に対する罪及び外国の元首、外交使節またはその公館に対する犯罪行為により禁錮以上の刑に処せられた者、これらを理由とする退去強制は全くなかったということは確認してよろしいわけですね。
○股野政府委員 この昭和五十三年以降の現在の三十名の退去強制令書が発付された者については、御指摘のとおりでございます。
○木島委員 続いて、その具体的なものをもうちょっと詰めてお聞きしたいのですが、過去五年間においてもとの協定永住者等韓国人の退去強制件数が三件あるとお伺いしているのですが、その具体的な中身についてお示しいただきたいと思います。
○股野政府委員 これは、過去五年間におけるもと協定永住者等の韓国人の退去強制件数の中で、韓国人の三人の方について御説明を申し上げますが、この三人の方のうちの一人の方が殺人罪、それからあと二人の人が覚せい剤取締法違反、こういうケースになったわけでございますが、これらについてはそういう内訳でございます。 まず第一の殺人の刑でございますが、これは韓国人で、協定永住許可で在留中に昭和五十年に殺人により懲役十五年の刑が確定して、服役後、六十二年に送還を行ったというのが第一でございます。 それから、覚せい剤取締法違反に関連しまして二人ございますが、一人は、協定永住許可で在留中に昭和五十三年に覚せい剤取締法違反で懲役十年の刑が確定いたしまして、服役後、六十一年に出国をしたということでございます。それからもう一人、同じ覚せい剤取締法違反によった者については、これは特例永住許可で在留中の者でありまして、実は覚せい剤取締法違反で一遍服役をしました後、昭和五十八年に在留特別許可を一遍受けた経緯があるのでございますが、六十年に再び覚せい剤取締法違反で服役をして、またそれの結果として六十二年に懲役一年八カ月という判決が確定し、服役後、六十三年にこの人物は送還をした、こういう三つのケースでございます。
○木島委員 特別法第六条の四号と五号は今回の法案が成立いたしますとなくなりますから、少なくとも本法案対象の永住者については覚せい剤等を理由とする退去強制はなくなるというわけでありますが、今回の特例法の第九条の第四号には「無期又は七年を超える懲役又は禁錮(こ)に処せられた者で、法務大臣においてその犯罪行為により日本国の重大な利益が害されたと認定したもの」は退去強制の対象になるということで、これが残るわけですね。特別法との違いは、特別法は「日本国の重大な利益が害されたと認定したもの」という要件がない。今回はその要件が入ってきたわけであります。先日の同僚委員の、「日本国の重大な利益が害された」とはどういう場合かという質問に対する答弁もありました。 そこで、具体的にお聞きしますが、先ほど、過去五年間に一件殺人により懲役十五年の刑が確定後退去強制になったという例を指摘されましたが、今回の法改正ができますと、これは退去強制の対象に具体的になるのでしょうか、ならないのでしょうか。日本国の重大な利益が害されたと認定される事案でしょうか、されない事案でしょうか、どうでしょうか。
○股野政府委員 今非常に具体的なケースについて御指摘がございました。法令上、まず委員御指摘のとおり、この新しい特例法では、昭和四十年の法的地位協定に基づく日韓特別法の第六条の第六号よりもさらに限定を付しているということでございます。そうしますと、ここで申し上げておりますように、日本国の外交上の重大な利益……(木島委員「いや、四号は外交上ではないですよ」と呼ぶ)三号が外交上の重大な利益でございますが、四号で日本国の重大な利益ということでございます。ここは、先般申し上げましたように、国家的な利益という観点での犯罪行為ということになっておりますので、通常の犯罪行為、一般人の個人的な犯罪あるいは通常の社会的な犯罪というものでなくて、国家の利益というものにかかわってくるような犯罪でございますから、その意味で、御指摘のケースの通常の殺人罪だと、これは当たってこないということになります。
○木島委員 わかりました。 先ほどの答弁の中に、六条の一項六号の「無期又は七年をこえる懲役又は禁錮(こ)に処せられた者」で十九名が退去強制の対象になったという御答弁ですが、これはおわかりでしたら答弁願いたいのですが、この十九名の中身は今私は聞きませんが、今回の法改正で、この十九名のうち日本国の重大な利益が害されたと認定できるものがあるかどうか、わかりますでしょうか。わからなかったら結構です。
○股野政府委員 恐縮でございますが、十九名の個別についての資料がございませんので、ちょっとその点の御答弁は差し控えさせていただきます。
○木島委員 続いて、では本法案の九条一項三号の、外国の元首、外交使節またはその公館に対する犯罪行為により禁錮以上の刑に処せられた者で、法務大臣が日本国の外交上の重大な利益が害されたと認定したもの、ということについてお聞きします。 これは特別法の六条の一項三号と全く同じ文章ですから、法解釈も全く同じだと思うわけなんで、ちょっと確認をしたいのですが、「外国の元首、外交使節又はその公館に対する犯罪行為」というのは、外国の元首や外交使節やその公館が被害の対象であるという意味に解釈してよろしいのですか。
○股野政府委員 その犯罪行為の対象がそうなっているということでございます。
○木島委員 ちょっと具体的にお聞きしますが、例えば公館に対する犯罪行為としてちょっと考えられるものとして、在外公館に関する住居侵入とか不退去、それから建造物損壊あるいは放火などが考えられるわけですが、在外公館がこういう罪名に当たる犯罪の被害者になった場合にはこの条文が発動されるというふうに聞いていいわけですね。
○股野政府委員 委員も御指摘のとおり、そういう犯罪行為で日本国の外交上の重大な利益が害されたと認定された場合でございます。
○木島委員 それから、外国の元首、外交使節を被害法益とする犯罪としていろいろ考えられるのですが、公務執行妨害の対象になった傷害、暴行、逮捕、監禁、脅迫、強要、名誉棄損、こういう罪名の被害者が外国の元首、外交使節の場合は、もちろん日本国の外交上の重大な利益が害されることが前提ですが、発動されるということになるわけですね。 〔田辺(広)委員長代理退席、委員長着席〕
○股野政府委員 さように考えております。
○木島委員 さてそこで、そうしますと、例えば北朝鮮や南朝鮮や台湾等の政治に対する不満があって例えばこういう在外公館に対して住居侵入があったということになると、この条文が発動される可能性が非常に強まってくるのですが、そこで、「日本国の外交上の重大な利益」というのはどういう要件で縛るのでしょうか。
○股野政府委員 これは、その個々の行為でまた判断しなければなりませんが、その犯罪行為のまず目的とするところは何だ、それからその犯罪行為が一体どういう態様で行われたのか、それからまたその結果がどうであったかということ、さらには例えば外国の元首なり外国の使節の本国が事件についてどういう反応なり対応をしたかというようなこと、そしてそういうことを総合的に判断して、我が国とその国との外交関係にどういう影響がそれで及ぶのか、こういったようなものが総合的に判断されて、そしてこの「外交上の重大な利益」ということを判定していくということになると思います。
○木島委員 私は、本法に基づく法定特別永住者や特別永住許可をされた者については、歴史上の経緯等にかんがみ、退去強制は本来やってはならぬものであると考えるわけです。少なくとも社会党案に見られるような内乱、外患に限るというのが最低限の態度ではないかと思うわけであります。今回枠が若干拡大されているという点は大変不満なわけであります。その運用において厳しく縛りをかけるべきではないかということを申し述べまして、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。
○伊藤委員長 中野寛成君。
○中野委員 入管法の審議がいよいよ大詰めを迎えるに当たりまして、今日まで長い間、韓国を初め該当する皆様方の折衝あるいは内容の詰めにつきまして、法務当局が大変な御苦労をいただきましたことに心から敬意を表したいと思います。 各論につきましては午後にいたしまして、基本的な認識、またそのことが今後残されております課題についての対応の基本にもなろうかと思いますので、基本的な認識についてまずお伺いいたしたいと思います。 法務大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、恐らく日本全国の中で在日韓国人もしくは在日朝鮮人と言われる方々が一番多いのは、くしくも大臣の選挙区ではないかというふうにも思うのでございまして、左藤法務大臣のときにこの法案の審議をするということになったことにも、何かくしき因縁を感じるような気がいたします。また、それだけに今日まで大臣が、一政治家としても日韓関係等については随分と心を配ってこられたことを私自身承知をいたしております。そういう中で、在日韓国人など終戦前から引き続き我が国に在留する者で平和条約により日本国籍を離脱した者の法的地位のあり方について、やはり基本的に私たちはもう一度認識を一つにしておく必要があるのではないだろうか、こう思うのであります。 韓国のある学者が私にこう言ったことがあります。在日韓国人は永遠のエトランゼでなければならないのか、言うならば在日韓国人として永遠に旅人としての扱いを受けるのかという問題提起をしたことがあります。また私も、在日韓国人の皆さんや、また韓国に訪問いたしましたときに、いずれ在日韓国人か韓国系日本人かの選択を御自身でされる時期が来るのではないかと思います、これは日本側からどちらを選びますかという強制をするものではないと思います、旅人ということでもなく、むしろいわゆる日本における少数民族としての歴史的誇りを持ち、民族的プライドを持ちながら、そしてその民族独自の文化を継承しながら、しかし韓国系日本人として生活をされるということを考える時期も来るであろう、こういうことを申し上げたことがあります。しかし、これはあくまでも私も友人として申し上げたわけでありまして、日本側から提言したり強制したりするものではないということも承知をいたしております。しかし、それほどに日本人社会の中にあって日本人と同じ権利義務の関係にあるべき人々である、こうも思うのでありまして、そのためには、他の経緯を持つ外国人の皆さんとはおのずから違いがあると思います。 この認識につきまして、アメリカですと国籍取得、市民権取得、そして在米外国人、大別して三種類がありますが、日本の場合にはその市民権取得という部分が制度上ありません。そう考えますと、ある意味では、日本のこの問題に対する仕組みのあり方と同時に、日本で生活をしておられる皆様方のプライドと感情を大切にしながら、国際社会にあって日本があらゆる人々にとって住み心地のよい国である、これは逆に日本のプライドということになるであろうと思います。そういうことを基本的に認識しながら、これら法律及び制度は整備されていかなければならないであろう、こう思うのであります。 法務大臣の基本的な御認識をお聞かせいただきたいと思います。
○左藤国務大臣 在日韓国人、平和条約国籍離脱者及びその子孫の方々にとっては、これらの人々が持っております今日までの歴史的な経緯、先ほども申しましたが、それから定住性、こういったことから考えまして、これらの人々が我が国の社会秩序のもとで安定した生活を営むことができる、こういうことにしなければならない、それが大切なことである、こういうふうに我々考えております。 今先生がエトランゼというお言葉をお使いいただきましたが、まさにその言葉自体は、さらに旅人よりももっと、異邦人とか異国人とかいうふうな、国籍的なものをより強調しておるのではないか、そういう意味では非常に的確な御表現じゃなかったかな、このように思いますが、そうしたこともありまして、政府としてはこれまでもこういった方々の法的地位の安定に努力をしてまいりましたけれども、今後これらの人々に対して一層安定した法的地位を付与する必要がある、これが今国会にこの法案を提出して御審議をお願いしておる一番基本的な考え方であろう、このように思うわけでございます。
○中野委員 そこで、今回、入管法の改正問題につきましては、これは言うならば二十五年間の懸案事項でありました。私も国会で、もうそろそろ論議を始めるべきではありませんかと申し上げたのが十年ほど前だったと思います。やっとこの機会を得ましたが、この機会に日韓の法的地位協定について改めて協議をし直し、そして単に三世以下の問題ということだけではなくて、いろいろな、在日韓国人の処遇の問題、法的地位の問題、権利の問題等々について議論がなされ、また要望もありました。随分多岐にわたりましての折衝が日本と韓国の間で行われました。そして新たにその協議の結果に関する覚書が結ばれたわけであります。今回は入管法の改正でありますが、この覚書と特例法案の関係、そしてまた今後残された課題について、法務省としてどのような作業をされておりますか、その作業日程、プログラムと今後のスケジュール、そしてまた基本的な御認識を法務当局からお伺いしたいと思います。
○股野政府委員 ただいま委員が御指摘いただきましたように、今般のこの特例法案を提出させていただきますにつきましては、委員御自身も大変な御努力を日韓関係においてお払いいただいたという経緯があると、私どもも十分承知をいたしております。多数の関係者の方々の御努力によって一つの大きな成果が得られてきていると考えるわけでございまして、何とぞこの法案の御審議についてもよろしくお願いを申し上げる次第でございます。 その経緯の中で、委員御指摘のように、日韓両国の外相がことしの一月に署名をいたしました覚書がございまして、その内容は、入国管理法の関係する事項のほかに、外国人登録法に関係する事項があり、また教育問題あるいは公立学校の教員への採用問題、さらに地方公務員への採用問題、こういう各事項について、日本政府が在日韓国人の方々について対処方針として考えているところを取りまとめて表明をしているという次第がございます。こういう事項の中で法務省が直接所管いたしますところは、この入管法の関係と、それから外国人登録法の関係になってまいります。 入管法関係につきましては、現在御審議を願っておりますこの特例法案の御審議をいただきました上、御可決をいただきました際に、これを速やかに所定の手続を経まして施行し、実際の運用に当たりまして、先ほど来御論議をいただいておりますいろいろな観点というものも我々十分踏まえて、この法案の趣旨に基づいた適正な運用を図ってまいる考え方でございます。 それからもう一つの重要な懸案になっております外国人登録法関係の事項につきましては、これはただいま申し上げました日韓の両国外相が署名をしました覚書の中で、一つのスケジュールというものを示してございまして、今後、すなわちことしの一月から起算いたしまして二年以内に指紋押捺にかわる措置というものが実施できるように、その指紋押捺にかわる手段を開発して、そして、その結果を法律案に取りまとめさせていただきまして次期の通常国会においてこれをお諮りする、こういうことで考えさせていただいております。したがって、現在はその指紋押捺にかわる手段というものの開発に最大限の努力を集中しているわけでございまして、この点、我々の成果を早く取りまとめたいと考えておるところでございます。
○中野委員 外国人との関係におきましては、よく相互主義という言葉が言われます。この在日韓国人の皆様を初め、今回の対象になります方々については、いわゆる相互主義では処し切れない特別の措置が必要なケースということで、先ほど大臣が基本的認識を申し述べられた、まさにその御認識に基づいてなされたものであります。 よく言われますが、例えば押紋押捺の問題もそうでありますけれども、すべての外国人に一律に改善をして対応するもの、それから今回のように歴史的な経緯を踏まえて特別の扱いをするものと、法務省としての扱いについては二種類あるのではないだろうか、こう思うのであります。ちなみに、そういうことも含めまして、日韓法的地位協定に基づく協議、これは在日韓国人が対象でありましたが、特例法案が、在日韓国人のみならず、平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者及びその子孫を対象とするとなったわけであります。もちろんこのことについては、在日韓国人の皆さんも、この平和条約に基づいて日本の国籍を離脱した方々については理解をされるところであろうと思いますが、それ以外との区別というものが当然あるであろうと思いますし、また、申請を要せずに特別永住者とする者、すなわち、法定特別永住者の制度を設けることとした理由というものがあると思うのであります。 このようにして、この区分けはなかなか微妙でございますし、当然歴史的背景のみならずいろいろな理由が存在するであろう、こう思うのでございまして、その区分けにつきまして、そしてまた、分けるということは、当然その歴史的背景があって特別にしなければいけないという日本政府側の、ある意味では義務といいましょうか、そういうものがあるというふうにも考えることができると思うのでありまして、この整理の仕方につきましての基本的御認識をお聞かせいただきたいと思います。
○股野政府委員 委員御指摘のとおり、日韓の法的地位協定に基づく協議というものが、この法案を提出させていただきます過去の一つの重要な背景としてあるわけでございますが、その日韓の協議を踏まえました上で、なおかつ、在日韓国人の方々が持っておられる歴史的経緯と定住性というものを考えます場合には、やはり同様の歴史的経緯と定住性を有せられる方々がおられる、これは日本政府としても十分に考えて対処しなければならないところであったと考えます。 そこで、その考え方をこの法律案の中に取りまとめさせていただきまして、日本国との平和条約に基づいて日本国籍を離脱することになった人々について一定の要件を定めました上で、それについては、在日韓国人の方であっても在日朝鮮人の方であっても、あるいは在日台湾人の方であっても同じ法的な地位を付与する、こういう整理をさせていただいたわけでございます。 それからまた、同じ特別永住者という法的地位を認めるわけでございますが、手続面では若干の違いを設けさせていただきましたのは、法的に既に、例えば協定永住許可者あるいは特例永住許可者のように、一定の手続を過去にとっておられて、永住許可という点では一つの永住資格を持っておられるわけですが、それについて今度の新しい法案でさらにその中身が豊かになる、こういうことでございますけれども、既に過去に手続等をとっておられてもう身分関係がはっきりしておられるという方について、これは新しい手続をお願いすることなく法定の特別永住者という資格をここでひとつ認めることにした。他方、これから新しく生まれてこられる方々等があり、あるいは、例えば二重国籍の方であって外国籍を選択されたというような方につきましては、これはやはり手続上ひとつ申請という手続をとっていただくということが法的な手続として大事だろう。しかし基本的には、認められますところの特別永住という資格においては、手続の違いはございますが内容的には同じになるということでございます。
○中野委員 時間が参りましたから終わりますが、民族の誇り、そして人間としての感情、それらのものが制度を超えて錯綜するわけでありますし、根底にその気持ちが極めて重要な要素としてあるわけでありますから、今後の具体的な対応、運用等々を含めまして十分な御配慮がなされますように御要望申し上げまして、終わりたいと思います。
○伊藤委員長 御苦労さまでした。 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時七分休憩 ────◇───── 午後一時開議
○伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 本日は、両案審査のため、参考人として日本経済新聞社論説委員小井土有治君、愛知県立大学外国語学部教授田中宏君、弁護士金敬得君、以上三名の方々に御出席をいただいております。 この際、一言ごあいさつを申し上げます。 参考人各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。 両案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。 次に、議事の順序について申し上げます。 御意見は、小井土参考人、田中参考人、金参考人の順序で、お一人十五分以内に取りまとめてお述べをいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。 それでは、まず小井土参考人にお願いいたします。
○小井土参考人 大変重要な衆議院の委員会で意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、大変恐縮でございます。私、日本経済新聞におきまして一応韓国問題、朝鮮半島問題を担当しているということからお声をかけていただいたのだと思いますが、法律の専門家ではございませんので、一般論的な意見の開陳になりますことをお許しいただきたいと思います。 皆様御承知のように、我が国と韓国は、本年一月の海部総理の韓国訪問、ソウルにおきます盧泰愚大統領との首脳会談におきまして、未来志向の友好関係の確立ということの合意で一致いたしました。これは、極めて近い隣国として当然の合意でありますけれども、両国の地政的な関係ということを考えますと、なぜ今ごろなのかという疑問がわくわけです。疑問というよりも、むしろ私としては悔悟の念にとらわれざるを得ない、こう申し上げてもいいかと思います。 こうした両国の合意が今の時点で成ったという背景には、両国の不幸な歴史、特に我が国の戦前における加害者としての行動があったわけでありますけれども、我々は今、隣国同士としての当たり前の良好な関係を築いていかなければならない時期を迎えている、こういうふうに思います。今、世界的に見ますと、ソ連、東欧の自由化に続きまして、朝鮮半島でも韓ソ両国の国交樹立、中国と韓国との経済的な関係を中心とする全般的な関係の改善、当事者である南北対話の進展、さらには我が国と北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国との国交交渉の進展ということなど、脱冷戦の動きが強まっておりますけれども、こうした中で我が国としては、地方自治体を含む政治は無論のこと、企業、さらには国民一般の果たす役割は極めて重いと考えております。 その際重要なことは、盧泰愚大統領が来日しました際に国会での演説で訴え、皆様お聞きになったかと思いますが、歴史認識を深めることが非常に重要であろうかと思います。私もソウルに長期滞在した経験がありますが、今顧みますと、両国関係の歴史についての私の知識と認識がまことに浅く乏しく、かつ、韓国の人々の歴史認識あるいは対日認識についてほとんど無知に近かったということを率直に白状しなければならない次第であります。 さて、私がソウルにおりましたときに大使を務められました須之部量三氏は、韓国側から大変評価された大使でございましたけれども、須之部さんが座長をされました日韓二十一世紀委員会の最終報告書は、両国関係についての基本となるべき重要な諸点を指摘をしております。 第一は「建設的なパートナーシップの発展のために歴史感覚の醸成が必要である」という点です。これまた当然のことでありますけれども、こうしたことはふだんの我が国の学校教育や日常生活の中で忘れ去られているのではないかと思います。両国の人的交流は日ごとに活発になっておりますけれども、まず歴史認識のギャップの存在を認め、それを克服するための努力を積み重ねることが揺るぎない友好関係の確立につながるのだと考えております。 第二に、委員会の報告書では「日韓両国には歴史が重い荷物として作用しているということを認識する一方、これを克服し、建設的な関係を築き上げるための努力を傾けるべきである」ということを指摘しております。歴史の重荷には多くの問題があると思いますが、在日韓国人問題はその代表的なものであると受けとめてよいと思います。在日韓国人の皆さんに対する不当なべっ視、差別はまことに恥ずべきものとしか言いようがない、こう申し上げてよいのではないかと思います。 ただ、そうした背景には、二十一世紀委員会の報告書が指摘しておりますが、「日韓関係の歴史に深く根ざした問題であるだけに、法制的なものだけでなく、多くの複雑な社会的・心理的な側面をも持っており、その解決は容易ではない。特に、日本の社会が持っている同質的な性格が、自分と異なるものへの寛容性の欠如につながり、外国人に対して排他的な姿勢をとらせて」きている、そういうことがあると言えると思います。 在日韓国人の方々は、本法案の提案理由説明でも述べられておりますけれども、我が国での定住性がますます強まっておると思います。しかも、その定住には苦い歴史的経緯があるわけであります。したがって、我が国の社会秩序のもとでできる限り安定した生活を営めるようにすることが極めて重要であると考えます。 在日韓国人の方々に対する社会的・心理的側面の問題の改善には、これは教育の問題などもかかわりまして相当時間がかかるかもしれませんけれども、まず、本委員会がただいま審議されている法制的な待遇改善が全般的な改善につながる第一歩になるのではないだろうか、かように考えております。これらの人々にはこの法案の内容でもまだ不満もあろうかというふうに推察いたしますけれども、本法案は待遇改善の重要な一里塚である、こういうふうに評価してよいのではないだろうかと考えます。 以上述べましたのは私の個人的な見解でありますけれども、日本経済新聞でも、日韓首脳会談当時、子孫に誇れる新しい日韓友好関係の確立をということを社説で訴えておりまして、この法案もその重要な一歩であると認識をしておるわけであります。 法案の内容について一、二だけ私見を述べさせていただきます。 幾つか事務の機関委任ということがございますけれども、この点は、詳しくは触れませんが、評価してよいのではないだろうかと思います。 それから、退去強制について幾つかのケースが出ておりますけれども、問題になるのは「法務大臣においてその犯罪行為により日本国の外交上の重大な利益が害されたと認定したもの」というくだりではないかと推察いたします。ただ、現在の我が国におきましては、国会の厳しい監視あるいは各種民間団体の厳しい監視ということが存在しております。したがいまして、法務大臣の政治的、恣意的な運用ということはそれほど憂慮する必要はないのではないだろうかというふうに考えております。 再入国許可の問題につきましては、現行制度あるいは諸外国の事例から見まして、大幅な改善であるという評価をしてよろしいのではないだろうかと思います。それから、在日韓国人の方々が日本企業に就職し、場合によっては海外駐在するというケースも出てきているのではないかと推察いたしますが、そしてその場合の海外駐在期間、これも長期化する傾向にあるだろうというふうに思いますけれども、原則四年、最大限五年という期間は、十分であるというような評価をしてもよいのではないだろうかというふうに思います。さらに、この期間の延長ということは、入管当局の行政の簡素化という問題にも貢献するのではないかという気がいたします。入管当局の事務処理量も増大する傾向にあると漏れ承っております。したがって、こういう期間の延長ということは、在日韓国人の皆さんの利便に役立つだけでなくて、入管当局の事務処理の簡素化、合理化、さらには迅速化につながるというような側面もあると考え、これも一応評価していいのではないだろうかというような感じがしております。 以上、一般論的なお話を中心に、私の本法案を評価する意見を述べさせていただきました。
○伊藤委員長 ありがとうございました。 次に、田中参考人にお願いいたします。
○田中参考人 御紹介いただきました田中でございます。 この法案についての私の意見を申し上げる手順ですけれども、最初に、この法律をどういうように考えたらいいのかということについての私の意見をちょっと申し上げてみたいと思います。 今回の法案は入管法に関する特例を定めるということで制定されるわけですけれども、入管法は申すまでもなく外国人に関する最も重要な基本法の一つで、外国人登録法と二つで基本になると思いますけれども、その基本法において今回の特例は、旧植民地出身者の置かれている状況というものを包括的に取り扱うという点では、戦後四十数年、入管法が制定されて随分時間がたちますけれども、初めてのことだと思います。従来は、六五年に結ばれた日韓条約に基づくいわゆる協定永住制度というものがあって、きょういただいた資料でも約三十二万の人がその該当者となっていますけれども、それ以外の同じ歴史的な背景のある人については何ら特別な配慮はなされずに、別の言い方をすれば全く一般の外国人として在留するという形をとってきた、それを是正するということで今度の法律が出されたという点では、大変重要な法律だと思います。 その場合にどういう基本的な観点に立って物を考えるべきかということを最初にちょっと申し上げたいと思うのですが、昨年韓国の盧泰愚大統領が日本にお見えになり、日韓の間で新しい時代を迎えるということがこの間大いに議論をされてきたわけです。昨年盧泰愚大統領が来日された折に海部首相は、不幸な過去を謙虚に反省し、率直におわびの気持ちを申し述べたい、こういうようにあいさつをされたはずです。さらに天皇も、貴国の人々が味わわれた苦しみを思い、痛惜の念にたえません、という言葉を使われたわけですね。これらの認識が今回の法案の中にどのように反映されているか、この法案を見たときに、まさに今私が御紹介したような言葉がにじみ出るような、それが伝わってくるような法案であるかどうかということが、私は考えるときの最大の出発点ではないかという気がいたします。 少し具体的なことに入りますけれども、まず最初は、この法案のタイトルが「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者」、これは別の言い方をすれば先ほど申し上げた旧植民地出身者ということになろうかと思いますけれども、この人たちを一本化してまとめるときの出発の時期のとり方です。 この法案では、従来の入管当局の考え方を踏襲しているようですけれども、一九四五年の九月二日、昭和二十年の九月二日、ミズーリ艦上で日本が降服文書に調印をしたその日を起点にして、それ以前から引き続き日本にいる人という時間的な範囲を設定している。ところが、この法律のタイトルにありますように、日本国の国籍を離脱したという日本側が考えている日は、一九五二年の四月二十八日、昭和二十七年の四月二十八日の講和条約の発効日、この時点で日本の国籍がなくなったというのが日本政府の公式見解のはずです。したがって今回も法律のタイトルにそれをお使いになっていらっしゃるわけですね。 この資料集の中に入っているいわゆる民事局長通達と呼ばれる、どういう人たちがどの時点で日本の国籍がなくなるかという、その具体的なことを示した有名な民事局長通達というのが参考資料の中に入っておりますけれども、そこにもありますように、講和条約の発効の時点で、しかもこの民事局長通達は、内地にいる人もすべて日本国籍をこの日になくする。そうすると、裏側から読めば、朝鮮半島や台湾にいる人も含めて講和条約の発効の時点で日本国籍を失う、これが民事局長通達なんですね。そうすると、この一九五二年の四月二十八日以前に日本に入国をした二つの地域からの人たち、これは当然特例の対象にしなければ理屈が合わないのではないか。 できるだけそういう範囲を狭くしたいというのも一つの考え方ですけれども、逆に、先ほど御紹介したような歴史認識を本当に踏まえてやるとすれば、従来はそうであったかもしれないけれども、今回はみずから定めた講和条約発効時点に少なくとも時点をとらないと、従来のままの踏襲では、先ほど御紹介した総理なり天皇の言葉が果たして十分具現されているかどうかという疑問が残らないだろうかということですね。 それからさらに、これは社会党案も含めて非常に不十分だと私は思うのですが、具体的な人間の問題を考えるときにはいろいろな実態があるわけですね。特に長い植民地統治というようなことを踏まえれば、日本と二つの地域との間にはさまざまな人の行き来があって、ある時点で期日を決めますと必ずそれに漏れる人が出てくるわけです。それをどこまでもどんどん入れていくということになると、これは恐らく実務としても成り立ちませんので、少なくとも今回の特例法の対象になる人たちに極めて近い関係にある、例えば家族ですね、例えばたまたまそこで線を引くと、奥さんは韓国にいて日本に御主人がいるということはあり得るわけですね。 そういう場合に、現在の場合は、いやもうこの起点より後から来た人は一般外国人だということにするしかないわけです。ところが、せっかくこういうものをつくるのであれば、どの範囲を入れるかということは一義的には決められませんので、ここは入管当局の御判断にゆだねるしかないと思いますが、少なくとも窓口をつくって、それに非常に近接する人については特別永住を与えることができるという条項を加えておいて、これは常識的に、今言ったような家族関係とかそういうことを見ていけば、おのずとどの部分については特別永住を持つ人とともに扱うことが妥当であるのかということがわかるだろうという気がするのですね。生身の人間の問題を考えるとすれば、どうしてもそういうことが必要ではないだろうか。 それから、これは相当技術的には難しいかもしれませんけれども、ぜひ申し上げておいた方がいいと思うのは、基本的にはこの法律は日本国との平和条約を起点に考えていますけれども、実は歴史的な背景を同じくする、あるいはこの提案趣旨の中にあります定住性というような、この提案趣旨の説明の中には歴史的経緯というのと定住性というのが二つのキーワードとして使われていますけれども、そういう点で考えると、中国大陸出身の日本に居住する中国人、台湾人の場合にはこの法律で植民地支配との関係の部分はカバーできますけれども、中国には、東北地区に満州国という、形の上では外国を日本はつくりました。さらに日華基本条約で基本的には非常に緊密な関係があったと言われる、日本との基本条約を結んだ中国の汪精衛政権、例えばそこから中国人強制連行というのを日本政府はやりましたけれども、これは今にして思えば外国人を連れてきたのですね。 朝鮮半島はその限りでは帝国臣民ということになりますけれども、外国人を日本に国策のために連れてきて働かせるということをかつてやったわけで、そうなると、中国大陸というのは平和条約の発効に伴って云々ということでは該当しないですけれども、歴史的経緯をともにするとか、あるいは定住性ということで見れば、全く同じカテゴリーの人がこの法律の外に置かれることになる。これを同じ法律で一緒に解決するということは技術的にも非常に難しいと思いますけれども、私は、先ほど申し上げた窓口をつくって、そういう人たちを今度できる特別永住というカテゴリーに加える余地、それをやはり設けておかないと、こういう形できちっと網をかけてしまいますと、それからこぼれた人はどんなことをしても特別永住を得ることはできないという制度に結果的になるわけですね。その点のことをやはり考える必要があるのではないか。 次に、退去強制の問題というのがあります。これは、外国人である以上、何らかの意味での退去強制についての制約を受けるのはやむを得ないという一般論はもちろん成り立ち得ると思いますけれども、冒頭で申し上げた歴史認識を踏まえて考えた場合に、法務大臣が重大なという認定をしたときには退去強制ができるという形で、従来よりもかなり網は、絞りはかけてありますけれども、もう一歩踏み込んで、外交とか内乱、外患という刑法で非常に厳密に規定されている以外のものが、例えば懲役七年というのが依然として残っているようですけれども、もう少し絞るということの方が冒頭で申し上げた歴史認識を具体化するということにならないだろうか。その点では、私はまだ退令の制限については不十分な部分が残っているというふうに申し上げざるを得ないと思います。 次に、再入国許可の点です。これは年数を、一般外国人は最大二年を今度の特別永住の該当者については五年まで伸長するということがポイントですけれども、再入国許可の問題は、期間が長いか短いかというところに問題があるのではなくて、むしろ再入国許可が付与されるかどうかという、そこの判断のところに歴史的経緯なり定住性という立法の趣旨が全く反映されていないという、ここがこの条項については最大の問題だと私は思います。 別の言い方をすれば、期限については配慮をするけれども、再入国を与えるかどうかについては何一つ制約を受けない。別の言い方をすれば、入管当局が従来と同じ考え方で運用することが可能である。入管当局がどういう運用の仕方をするかということについては、もちろん裁量ですから、裁量というのはどちらにでも向きますけれども、ただ残念ながら、長い間問題になった指紋の問題の中でも、指紋を押していないということで、親が亡くなってお葬式に行くというときでさえ法務省当局は再入国を認めないという、過剰な制裁を現実にやったわけですね。指紋を押さない人には刑事罰がきちんと担保されているわけですが、そのほかに再入国をも加えて制裁を加えるということを、ついこの間までやったわけですね。そういう裁量の中に、歴史的な経緯のある人が同じ裁量の中で再入国がもらえるかもらえないかをお任せするということで果たしていいのだろうか。 日本人も旅券の取得については一定の制約があります。非常に限定的な制約がある。逆に、その制約を受けない範囲であれば再入国許可は原則許可というか、許可しなければならないとかあるいは許可するものとするというような条文で、はっきり再入国の許可というのは、居住権の延長として、生活の本拠が日本にあるわけですから、日本人が海外に旅行すると同じような性質の行為にすぎないという原点に立てば、期間を伸長するという今回の改正案というのは、より重要な点で非常に問題があるという気がいたします。 あともう一点だけ申し上げて、時間が来るようですから終わりたいと思いますが、冒頭で申し上げましたように、入管法といいますのは、日本における外国人にかかわる最も基本的な法律の一つであるわけですね。当然日本における外国人の中に、今回の特別永住という、資料によりますと大体六十一万人ぐらいの人たちがその対象になるという試算が出されておりましたけれども、この外国人は一般外国人と違うということが非常にはっきりしてくることになりますね、先ほど言いましたように退去強制についても、あるいは再入国についても。ところが、外国人は一人の人間ですから、再入国とか入管以外のあらゆる分野で、一人の人間として日本の中で生活をしている。 この法案に直接は関係ないでしょうけれども、立法府として今後いろいろ立法政策を進められる上で、外国人であるがゆえに制約されている、制限されている、いわゆる国籍条項で不利益をこうむっているさまざまな制度が日本にはたくさん残っているわけです。それをいつも日本人か外国人かという、二分法で今まできたわけですけれども、せっかく入管法の中に特別永住という、一般外国人とはかなり際立って違ったカテゴリーの外国人がはっきり誕生することになるわけですから、その人たちは単なる外国人ということで排除されるということをより抑制するような立法政策が今後他の分野で広がっていくことが、海部首相の言葉を具体化することにつながるのではないか。 たくさんありますけれども、一つだけ申し上げて、時間が来ますので終わりたいと思いますが、日本のさまざまな法制度の中の、戦争犠牲者援護立法と呼ばれる一連の法律があります。私が調べたところでは十三本法律があるようですが、この法律はいずれも、日本国籍を持たないと戦争犠牲者としての補償が受けられないという制度になっています。例えば日本の戦争に駆り出されて負傷する、左腕を失った、日本人であれば大体障害年金が三百万ぐらい出るようですけれども、朝鮮人であれば、日本国籍がないというただそれだけの理由で、一銭の障害年金ももらえないというのが現状なんですね。 それで、これももとへ戻れば、まさに今度のこの法案のタイトルにあるように、あなたたちは日本国との平和条約に基づいて日本国籍がなくなった、だから、天皇の赤子として戦争に行って戦死しようと戦病者になろうと、一切関知しないというのが残念ながら今日まで続けられているのですね。日本国籍を平和条約によって失った人たちは、一般の外国人と違うわけですから、かつて帝国臣民、天皇の赤子という形で日本の戦争に駆り出された人たち、その人たちの遺族なり、あるいは障害を持って生活をしている人たち、これが全く放り出されているわけですね。この法案のタイトルにある精神を体して立法政策を改善するということは早急にしていただきたい。そういう意味で、今度のこの法律のタイトルにある発想、平和条約のところで国籍が変わったということから生じたさまざまな矛盾、これを今後全面的に見直す出発点として、この法律は大いに活用していただきたいという気がします。 ちょっと時間が過ぎましたが、失礼します。
○伊藤委員長 ありがとうございました。 次に、金参考人にお願いいたします。
○金参考人 御紹介いただきました金敬得と申します。 きょう、ここにおられる諸先生方の前で今から十五分ばかり話させていただけることになったわけですが、ここの会場におられる中で、あるいは傍聴人の中にもおられるかもしれませんが、この法案のタイトルの対象者は恐らく私ぐらいじゃないかと思うのですね。私は、この法案で言うところのいわゆる日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者の一人でございます。それで、ちょっと私事にわたりますが、もう少し皆さんの御理解をいただけるためにお話し申し上げますと、私は実は一九四九年に和歌山で出生いたしました。在日韓国人あるいは在日朝鮮人二世でございます。私の父親は、一九〇八年に韓国の一農村で生まれたわけでございます。当時は日韓併合の前でございますので、私の父親は大韓帝国国民として出生したわけでございます。それで、一九一〇年の日韓併合によって、私の父親は二歳で日本帝国国民という地位になるわけですね。それで、一九二七年、満の十八のときに父親が日本に来日するわけです。それで、日本で私を初め私の兄弟、全部含めて六人いるのですが、すべて日本で出生いたしました。それで、その六人はいずれも結婚しておりまして、子供をそれぞれもうけまして、全部合わせますと約十五、六名になります。いわゆる三世が十五、六名になっておるわけでございます。両親はいずれも日本の地で数年前に亡くなりました。でございますので、私の家系からいきますと、一世はもういない、それから、私のめいが既に結婚しまして子供を産んでおりまして、二名おるのですが、四世が二名いる、こういう構成になっておるわけでございます。 これは私事を申し上げるようでございますが、実は在日の今この法案の対象者になっておる約六十万の家族構成は、ほぼ今私が申し上げたような構成と考えていただいてよかろうかと思います。だから、ほとんどがもう、日本生まれの二世、三世、四世が九〇%を占めておるということでございますね。そういう人々の法的地位を規定する法律であるということをまず御念頭に置いていただきたいということでございます。 もう一つ、この法律のタイトルが「日本の国籍を離脱した者」となっておりますが、ここでひとつ御注意いただきたいのは、離脱したといいますと何か自分の意思で離脱したというふうに考えられるかもしれませんが、それは必ずしもそうじゃないということですね。詳しくは申し上げませんが、いわゆるサンフランシスコ講和条約で朝鮮が独立をした、それに伴って朝鮮人は日本の国籍をなくすのだというふうな民事局長通達が平和条約発効の十日ぐらい前に出て、現在に至っておるわけですね。この国籍の喪失措置に対してはいろいろ法的疑義が残っておりまして、現在まで議論があることは御承知のことと思います。 一つは、日本の憲法上民事局長通達というのが——その民事局長通達の出されました当時、既に日本国憲法は施行されておりまして、日本国憲法は、十条で「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」こうなっておる。そうしますと、従前日本国民とされておった人々の国籍を存続させるのかさせないのかということは、これは法律で、国会の論議を尽くしてしなければいけなかったはずなんですね。それがなされずに、一片の民事局長通達でなされておるというところに、一つの日本の国内法上の問題点があるわけでございます。もちろんこれにつきましては、御存じのように最高裁判所は、これは一片の民事局長通達でやったのではなくて、サンフランシスコ講和条約の朝鮮の独立条項、それの当然解釈としてそういうふうにしたのだと、そういう立場に立っておるわけでございますが、これについても、平和条約の草案過程をずっと調べてみますと、必ずしもそうは言えないというのが現在の有力な学説でございます。 しかし、ともあれその後の日本国籍の喪失の経緯を今ここで云々しても、事実としてそれ以降日本国籍がないという形で日本の行政がずっと進められてきておりますので、問題は、そういう国籍を離脱したという歴史的経緯に問題があるというところを、彼ら旧植民地出身者の法的地位を考えていく場合には、法的にも絶えずそこのところは評価をしていただいた行政なり立法作業をしていただかないと、正当な解決が難しいだろうというふうに思うもので、そう申し上げるわけでございます。 特に、この日本国籍の喪失につきましては、最高裁判所の判例の補足意見にもありますように、朝鮮に対する植民地支配なかりせばそうであったであろう状態に原状回復するのだというのですね。法的に非常に疑義のある措置でございましたけれども、それを辛うじて合理化できるとすれば、将来に向けてあしき植民地支配をなかったものにしよう、だから原状回復しようじゃないかというところでこれが辛うじて合理化されておる、そういうものなんでございますね。そうしますと、果たしてこの原状回復の意味というのは、一体在日朝鮮人あるいは韓国人に対する法的地位を考えていく場合にどのように具体的に評価されなければいけないのかということが次の問題になると思うのでございます。 そこに対する私の考えは後ほど述べさせていただくことにして、とりあえず日本が日本国籍喪失措置に伴ってなした措置というのは、きょうこの法案の中で廃止、削除されることになっております法律百二十六号の二条の六項、これ一つだったのですね。それ以外に、かつての特別の歴史的経緯なり日本での生活実態、そういうものに対する配慮が一切なしに、とりあえず日本の入国管理令の適用を受けることになるので彼らについても何らかの入管法上の在留資格なり在留の期間を与えなければいけない、しかし、在日朝鮮人はそういう期間や在留資格なしに日本国民として生きてきた関係で、その在留資格、在留期間のどこにも当てはめようがない、であるから、別途法律で定めるまでの間彼らについての在留資格、在留期間なしに日本で居住することができる、これが法律百二十六号の二条六項というものでございますが、日本が旧植民地出身者の日本国籍喪失措置に伴ってなした唯一の法的措置は、この法律百二十六号の二条六項、これだけなんでございますね。これ以外には一切なしに、日本の戦後措置は一たんは終わったといいますか、非常に未決の戦後処理だと私は考えますが、そういう形であったわけです。 それが、一九六五年の日韓条約によりまして一たんは協定永住という制度ができまして、入管特別法というものがあって、この入管特別法も今回の法案によって廃止されるというふうになっておるわけですが、その入管特別法といいますか日韓法的地位協定のときの一つの協定永住権者に関する論議で私なども非常に印象深いのは、当時、永住権の範囲をどの範囲にするかという形で日韓両国で激しい議論があったわけです。韓国側の方は、日本で生まれ育った旧植民地出身者は子々孫々にわたって日本での永住権を保障するべきだ、そういう主張をしたわけでございます。ところが、日本政府の基本的立場は、かつて日本国籍を有しておったとされた者に限定すべきだ、それ以外の子孫については協定永住は必要ないという形で、それで協定永住、二代目までは永住権を認めましょう、しかし三代目以降については二十五年後に再協議しましょうという形で政治的妥協が図られまして、九一年問題というのが生じたわけです。 その九一年問題は一月の海部総理の訪韓の際の日韓外相覚書で一応の決着がついたわけですが、そのときの日本側の議論はどういうことだったかといいますと、子々孫々にわたって日本での永住権を認めるということは、日本にゆゆしき少数民族問題を残すことになる、これは日本の将来に禍根を残すことになるんだという、これは当時の佐藤栄作総理の答弁でございます。これは佐藤栄作総理の答弁だけでなく、ここに日経新聞の方もおられますけれども、当時の日本の社説というものを私すべて調べたことがあるのですが、全く同じ論調なのでございます。すべての社説が、朝鮮人が日本の社会で永住権を持ってずっと住むということは日本の社会に禍根を残す、これは日本の社会としてやってはいけないんだ、これが当時のマスコミであったわけです。そういう雰囲気の中で日韓法的地位協定あるいは日韓条約というものが締結されたわけですが、それから二十五年たっているわけですが、今回の法案の中で、在日韓国人あるいは朝鮮人あるいは台湾人、旧植民地出身者に対しては子孫にわたって覊束的な永住権を認める、やっとそうなったわけですね。だから、逆に言いますれば、二十五年前の佐藤栄作総理あるいは日本のマスコミの憂慮が、二十五年たった現在ではそうじゃない、むしろ朝鮮人が朝鮮人として永住していくことが日本の社会にとって少なくともマイナスではない、そういうことを言っていられるような時代ではないという状況を迎えておるということは言えるのじゃないかと私は思うのです。それが一つでございます。 それからもう一つ、日韓協定の問題点は、日韓協定によって在日韓国人・朝鮮人の中に法的地位の違う者が生じた、その問題があったわけですが、それも今回の法案の中で韓国籍、朝鮮籍を問わず一本化するということで、そのこと自体も戦後四十数年ぶりにやっと一本化の法律ができる、この点も私は評価できると考えております。 ただ、私が先ほど申し上げました少数民族をやっとこの法律で、少なくとも六五年当時の議論とは違って子々孫々にわたって永住権を認めていこうとなった、果たしてその意味合いが本当に朝鮮人が朝鮮人として日本の社会で生きていく、そういう存在として日本が積極的に認めていこうという気になっておるのか、それとも、もうどうせ二世、三世、四世になっておるんですから、こういうものを認めたところで朝鮮人は朝鮮人としての文化、そういうものを恐らく維持できないだろう、であるから認めていいだろうという、これは非常に微妙でございますが、どちらの方に立つのか。 私としては、やはりこれから二十一世紀を目指す日本で、かつてのような、少数民族が日本に残るのが日本の社会に禍根を残すというような考えではだめだろう。ですから私は、この法律は、在日韓国・朝鮮人の戦後処理、言ってみれば日本国籍喪失に伴い原状回復、それの出発点にやっと立ち戻った、大事なことは、この法案の次に彼らが本当に韓民族なり朝鮮民族として日本の社会で生きていくために必要なさまざまな社会的障害、差別というものをいかにしてなくしていくか。 特にこの場で私お頼みしたいのは、やはり就職差別、それから日本の学校教育の中で学んでおる子弟が九〇%でございますので、彼らに対して韓国語、韓国の歴史を教えてくれとは言わないまでも、彼らが日本の学校教育の中で差別を受けない、日本人に対しては差別はよくないという教育、彼らに対しては堂々と韓民族として、あるいは朝鮮民族として生きていける、それが人として生きる道だということを教えてもらえるような教育、そのためには日韓の正しい歴史教育が必要でございましょうけれども、そういうところに対する配慮がぜひともお頼みしたいところでございます。 また私事にわたって恐縮でございますけれども、実は七四年に日本の横浜地方裁判所で非常に有名な判例があります。日立製作所に就職を拒否された朴鐘碩君という人に対する判例なんですが、その判決の中で、日本の大企業は朝鮮人を朝鮮人という理由で採用しないのは周知の事実である、こういうくだりがあるわけです。それが七四年の判例でございますが、実は私は、七二年に大学を卒業いたしまして、日本のジャーナリストになることが志望であったのでございます。日本の大学の就職課に相談に行きましたら、君、それは無理だよ、一〇〇%だめだからあきらめなさい、ではどういうところに就職できるのですか、日本の一部上場企業はだめだ、二部以下で非常にあなたのことをかわいそうだと思ってくれる社長さんがあらわれたら温情で採ってくれるだろうから、そういうときは日本名で就職しなさい、こう言われたのですね。 要するに、日本の七二年当時の現状はそうだったわけです。それじゃいかぬと私は思いまして、それで司法試験を目指すわけです。司法試験を目指した動機も、実はこれも差別だと私は思うのですが、当時司法試験は外国人でも受けられる、しかし合格した暁に司法研修所に入るに際しては日本に帰化をしなければいけない、日本の国籍を持っていないと司法研修所に入れないんだ。そうすると、研修所に入れないと弁護士になれないわけですね。ところが、弁護士法は、戦前の弁護士法と違いまして、戦後は国籍条項がなくなっておるのです。にもかかわらず最高裁判所がひょうたんのように真ん中を締めておったという、これは日本の皆様方の目から見るとどう見えるか知りませんが、私の目から見ると明白な民族差別である。 というのは、一つは、自由業の弁護士に外国人がなれないという理由はない。それからもう一つ、日本で合格できる外国人というのは、前例もすべてそうですが、旧植民地出身者以外はないのですね。アメリカ人が日本に来て司法試験の勉強をしたからといって、あの試験に合格できない。最高裁は、過去の例から見てそれを十分知っておるのですが、外国人ということで彼らを切る。切られるのは結局旧植民地出身者だったということですね。そういう問題は現在もまだあるということですね。ですから、何としても就職差別について、この法律ができた直後でも結構でございますから、できるだけ韓国人あるいは朝鮮人が日本の社会で日本人と同等な立場で就職できるような、そういう法案並びに社会環境づくりをぜひともお願いしたいと思うわけでございます。 それから、もう一つの民族教育のことについてでございます。昨年の五月に盧泰愚大統領が訪日されまして日本の衆議院の本会議場で演説しましたが、その中でこういうくだりがあったのでございます。日本の皆様方は、かつて韓半島で子供が学校で自分の本名を使った、あるいは親から教えられた言葉を使った、それを理由にしてむち打たれた経験がある、その痛みはなかなか御理解いただけないでしょう、というふうに盧泰愚大統領が言われたわけですが、これはまさに日本が戦前、植民地時代になした同化政策、韓国語を使ってはいけない、名前までも韓国の名前を使ってはいけない。私もおじいさんの戸籍謄本、除籍謄本を韓国から取り寄せますと、金というのが消されて金澤という除籍謄本が出てくるわけです。それが日韓の植民地支配の歴史であるわけですね。 韓半島におきましては、そういう歴史は日本の敗戦とともに終結しておるわけでございます。しかし、事きょうの法案の対象者であります六十万の在日朝鮮人の方に目を向けてみますと、彼らはいまだに約九〇%までが通名という、かつての創氏改名時代の日本名を名のらざるを得ないという現状にあるということですね。これが学校に通っておる子供の場合も同じなんです。こういう自己の出自を明らかにできない、それは明らかにできない朝鮮人の側にも問題点があることを私は認めますが、決してないわけではございませんが、しかし、やはりそれはそうせざるを得ないようにしておる周囲の圧力がどちらかといえば根本原因だと思うわけでございます。ですから、そういうものをなくす方向でぜひとも立法作業をお願いしたいと思うわけでございます。 というのは、私も韓国人の一人の立場としまして、確かに逆境というものは、艱難なんじを玉にするという言葉もありますが、それを克服できれば、それはそれなりに一つの人生経験で貴重なものとなるのですが、しかし、それは非常に各個々人に大変な努力と大変な能力を要求するものなんですね。ですから、政治家の皆様方にお願いしたいのは、逆境を克服するのは個人の力かもしれないけれども、そういう逆境をなくするのは政治家の力である、ぜひとも日本の行政並びに政治の力でそれをやってほしいということをお頼みしたいわけです。 それから、ちょっと時間が過ぎましたがあと二、三分。 今回の法案に関しましては、先ほど田中教授の方からありましたように、日本国籍の離脱ということを基準にするのであれば、やはり一九五二年四月二十八日が基準にならなければおかしいだろうということは、私も同様の意見でございます。それから、再入国につきましては、やはり私も指紋押捺の段階で、指紋押捺を若干の間ですが拒否した期間があったのですが、何度入管に足を運んでも再入国を出してもらえなかった。韓国に出張も行けずに、そういう非常に苦い思いがあるわけですが、再入国というのは、期間の問題じゃなくて、日本に生活の本拠を持っておる在日韓国・朝鮮人については、少なくとも日本人が旅券を今申請すればそれは覊束的に旅券が発行される、それと類似の、よく似たような要件で再入国が覊束的に出るというような、そういうところの御配慮が必要じゃないか、期間よりもですね。 それからもう一つ、退去強制条項に関しましては、私の個人的な考えをこの場で率直に申し上げさせてもらえば、旧植民地出身者に対しては退去強制条項は全面的に廃止すべきだというのが私の考えでございます。私も、韓国に三年住んでいる間に、実際に協定永住権者で七年を超える刑を受けたことの理由によって韓国に強制送還された人と会ったことがあるのですが、彼らは韓国では生活できません。やむを得ず再度日本に密入国してきたというケースも私は存じ上げております。彼らは、見つかるとまた韓国に送られる。韓日間でキャッチボールになってしまうわけですね。こういうことはもうそろそろやめてもいいんじゃなかろうか。 それから、仮に世界にそういう例がない、外国籍を持っておりながら一切の強制退去をしない例がないということ、政府の方がよくおっしゃるその論理に乗るとしても、それであれば内乱、外患に限るべきであって、特に今回の改正法案の一項三号、外交使節だとかそういう人に対する犯罪行為、これは日本の刑法が一九四七年に外交官だとかそういう人に対する特別な刑を排除した、それを日韓法的地位協定のときに復活させたものでございまして、日韓法的地位協定は強制退去条項を縮小したというふうに一般的に解せられておるわけでございますけれども、どうもこの条文だけは、入管法で定めておる強制退去条項よりももっと厳しくした条項ですから、少なくともこの条項は今回の特例法案から落とさなければいけないのではないか、私はこういうふうに思うわけでございます。 非常に私事にわたって恐縮でございましたけれども、私が今ここで最後にお願いしたいのは、海部総理がこの前韓国に行きまして、在日朝鮮人もともに生きる人々だということをメッセージの中で述べましたけれども、本当に在日韓国・朝鮮人が日本の社会にあって日本人とともに生きていけるような法的、社会的環境づくりをぜひともしていただきたい。 よく、在日韓国・朝鮮人は日韓あるいは日朝のかけ橋になるべき存在だというふうに言われるわけですが、現状の在日朝鮮人の置かれている社会生活実態からいきますと、これは不可能です。というのは、日本人も朝鮮人も全部ゼロで生まれるわけですが、日本人の場合は、長じるに従ってプラス日本人という形で、日本の文化を身につけ日本人らしくなっていくわけですが、朝鮮人は、日本で生まれますとマイナス朝鮮人になっていくわけです。日本から、朝鮮人は劣等だというイメージをぶつけられる。そのイメージに耐えられなくて、彼らは自分が朝鮮人ということを隠していく。長じるに従って、思春期になって、これはどうもおかしい、人として生きていくのにどうもおかしい、差別から逃げるのはおかしいんじゃないかというふうに悩みに悩んだ末に、やっと自分が韓国人として生きようじゃないかというアイデンティティーに到達するわけです。それに約二十年を要するわけです。そうすると、その二十年のギャップがある人が、そこで気づいて努力してみたところで、なかなか韓国を理解するということはできがたくなるわけです。既に日本人と、普通の日本人が二十まで生きた、その二十年間のギャップがあるわけなんです。 ですから、私は本当にお頼みしたいのは、在日韓国・朝鮮人が本当の日韓のかけ橋となれるように、ゼロで生まれて、日本の社会で長ずるに従って、プラス朝鮮人、プラス韓国人として、みずからの出自を隠さない、そういうふうに生きていけるような社会環境をぜひともつくってほしい、それをお頼みして、私の陳述を終わらせていただきます。 どうもありがとうございました。
○伊藤委員長 大変ありがとうございました。 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。 ─────────────
○伊藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。星野行男君。
○星野委員 自由民主党の星野行男でございます。 ただいまは小井土先生、田中先生、金先生からそれぞれ貴重な御意見、御教示を賜りまして、まことにありがとうございました。 まず、小井土先生にお伺いをさせていただきます。 田中先生からもお話がございましたように、我が国政府は、我が国がかつて行いました朝鮮半島及び台湾に対する植民地支配について深く反省をいたしております。また私たちも、そのような事情のもとでいろいろな理由から終戦前より我が国に居住し、日本国との平和条約の発効によりまして日本国籍を離脱した在日韓国人・朝鮮人、そして台湾人の皆さん、そしてその子孫の方々に深い御同情と心からなる友愛の礼を表明いたしたい、そう思っております。そして、このような歴史的な経緯と、そういう方々の我が国における生活の実態を考えてみますときに、我が国といたしましても、こういう方々の法的地位の安定や生活の向上にできる限りの努力をしなければならないことは当然であると考えております。特に日韓関係におきましては、在日韓国人の法的地位につきまして、先輩政治家の方々が長い年月にわたりまして大変な努力を積み重ね、そしてまた政府間におきましても、御案内のいわゆる日韓法的地位協定に基づきまして、昭和六十三年から累次にわたり政府間の協議を積み重ねて、本年の一月、海部総理の訪韓によって決着を見た、こういう次第でございます。 本特例法案もそういう経緯を踏まえて提案をされたわけでございますが、その内容についてでございます。先ほど小井土先生からいろいろとお話がございました。繰り返しになるわけでありますけれども、特に日本国との平和条約の発効により我が国の国籍を離れた在日韓国人・朝鮮人・台湾人の方々の子々孫々に至るまで、この特例法は我が国における永住資格を認める、こういうことでございますし、また退去強制事由につきましても、入管法第二十四条の規定を大きく限定をしていることも事実でございます。また、再入国許可の条件につきましても、海外の在留期間を最長五年とするなど、そういう方々の法的地位の改善につきましては飛躍的な改善が図られているのではないか、そう考えるわけでありますが、いま一度先生から、今回の特例法につきましてどのような評価をなされるのか、繰り返しになりますけれども、確認をさせていただきたいと思います。
○小井土参考人 星野先生にお答え申し上げます。 星野先生の歴史認識あるいは本法案に対する評価と私の意見は、大筋一致するだろうというふうに考えております。冒頭の意見表明でも私は、日韓関係が日韓両国にとってだけでなくて、アジアあるいは世界全体の流れの中でも極めて重要であるということを申し上げましたけれども、その視点から見ましても、この法律案は意義あるものであろうというふうに考えております。 それから、先ほど金参考人から大変、体験に基づいた、あるいは身近な方々の見聞あるいは体験といいますか、そういうものに基づいた貴重な意見が表明されまして、私も大変参考になりましたけれども、現段階においてはこの法律案が妥当なものではないだろうかというふうに考えております。 ただ、つけ加えて意見を申し上げさせていただけますならば、先ほど金参考人から通名、日本名の問題が出ましたけれども、私はこれは非常に重要な問題であろうかというふうに思っております。韓国の方々が御自分の名前で日本社会で外国人として堂々と日本人とつき合えるような環境をぜひ、韓国の方々もつくっていただく必要があるだろうし、それ以上に我々日本人がそういう対応をするということが必要であろうかと思います。それは学校教育及び家庭教育などの中で培っていくことが必要であると同時に、この一月の日韓両国外相の覚書にも触れておりますけれども、教育問題あるいは就職問題などでの対応が必要なんだろうと思います。 それから、就職問題についても、今日本では、人口の高齢化、若年者の減少、出生率の低下という問題が出てくる中で、構造的な人手不足という問題も生じてきております。日本の企業あるいは社会は、その企業なり社会の利益という視点からだけ考えるということは危険でありますけれども、非常に能力を持つ立派な外国人、特に在日韓国・朝鮮の人々あるいは台湾の方々に日本の企業あるいは社会の発展のために働いて貢献していただくことも必要なんだろうと思います。企業あるいは日本の社会も徐々にそういうふうに認識変化が進んでいるというふうに私は考えておりますが、これがさらに一層促進されることが望ましいだろうというような考えをしております。
○星野委員 恐縮であります。小井土先生から大変いいお話をちょうだいしましたが、もう一点だけ。 今お触れになりました一月の日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書で、在日韓国人等についての「公立学校の教員への採用については、その途をひらき、日本人と同じ一般の教員採用試験の受験を認めるよう各都道府県を指導する。」こうございます。また、地方公務員の採用についてもそういう方向で「地方公共団体を指導していく。」こう書かれてございます。在日の方々、優秀な方々がたくさんいらっしゃると思うのでありますが、そういう能力を活用すると同時に、そういう方々が本当に、この世に一回しか生まれてこないわけでありますから、自分の人生を思う存分生きていただく、そのためにも必要なことではないか、こう思っておりますけれども、今の教員採用の問題あるいは地方公務員採用の問題等について、簡単にひとつ先生お答えをお願いいたします。
○小井土参考人 日韓の覚書で「公立学校の教員への採用については、その途をひらき、日本人と同じ一般の教員採用試験の受験を認めるよう各都道府県を指導する。」それから「地方公務員への採用については、」「採用機会の拡大が図られるよう地方公共団体を指導していく。」という合意が成立し、これを両国政府が確認した意義というのは非常に大きいと思うのです。そして、この公立学校の教員への採用については、なぜ今までそれほど促進されなかったのかということについて、私は疑問があります。いろいろな国の方々が日本の若い世代の教育に立ち会っていただくということは、極めて重要なことではないかと思います。 先ほども二十一世紀委員会の報告の中の同質性という問題についてちょっと触れましたけれども、余りにも狭い社会の中で育った人間だけによる教育では、開かれた国際化時代の中にあって、すばらしい人間というものの教育について落ち度があり、危険性があるだろうと思います。極端に偏った外国人の外国式教育ということも、これまた懸念がないわけではありませんけれども、そういうような懸念はそれほど大きくないだろうと思います。したがって、この覚書の線に沿った各都道府県での対応ということを期待したいと思います。 それから、地方公務員への採用についても、政策的な、あるいは大変高度な政治的決断を行う公務員というところになりますとこれはまた議論が分かれるところでありますけれども、そうでない一般的な地方公務員への採用の増大ということについては、積極的に取り組んでいただきたいというふうに私は考えております。
○星野委員 ありがとうございました。 それでは、金先生にお願いを申し上げたいと思います。 先生が日本人でも難しい司法試験に合格をされ、現在弁護士として活躍をしていらっしゃることに、私ども本当に驚異的な、それこそ敬意を払っている次第でございます。 ところで、先ほどいろいろとお話を伺いました。そういう大所高所の議論をしているには時間がございませんので、一点だけ再入国許可の条件であります在留期間、これが入管法二十六条の三項では現行一年を超えない範囲内ということを、四年、さらにもう一年延ばすことが可能で最長五年、こういうことになるわけでございます。このことにつきまして、私ども日本国内におきましても、例えば郷里を離れて三年もいますと、人も変わたったり、あるいはもう忘れられてしまったりして、どうも定住者だとは認められないような感じになるのでありますが、そういう点から見ますと、四年あるいは五年というのはかなり長い期間ではないかと思うのでございますが、この一点についてどう評価しておられますか、お聞かせをいただきたいと思います。
○金参考人 きょう皆様方のお手元に配付させていただきました「共に生きる日本社会を考えるシンポジウム」という資料集がございます。これは、きょうの参考人の田中宏先生あるいは東京大学の大沼保昭教授等と私ども一緒につくったのでございますが、その中にも、私どもの提案では再入国期間は五年に、というのは日本の旅券の有効期間が五年でございますので、そういう形で期間は五年というような提言をしておりまして、それについて今回入管当局が四年、一年プラスということでございますけれども、期間をそういうふうにしたということについては私どもは評価しております。
○星野委員 それでは、田中先生に一点だけ。 先生からいろいろと御教示を賜りまして、これから国際化の進展する中、あるいはまたいろいろと韓国その他の国々との友好関係が進展する中での課題として私ども受けとめさせていただきました。また勉強してまいりたいと思います。ただ、現状を踏まえて、今回の特例法案は従前よりは前進、こういう評価をいただけるのではないか。したがって、今後の新しい展開、前進の一歩と小井土先生はおっしゃいましたが、そういう評価はいただけないものでございましょうか。
○田中参考人 基本的には、私が申し上げましたように、従来のいろいろな経緯を踏まえて、平和条約によって日本国籍を喪失したというある意味では原点に戻って問題を考え始めようという出発点になったという点では、新しい出発が起こされたというようには考えております。
○星野委員 ありがとうございました。 終わります。
○伊藤委員長 小澤克介君。
○小澤(克)委員 委員の小澤でございます。 参考人各位におかれましては、御多忙の中をおいでいただきまして、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。私ども、参考にさせていただきたいと思います。 若干お尋ねしたいと思います。ちょっと順序不同になりますが、まず田中先生にお尋ねしたいと思います。 田中先生、私どもの社会党案についても御批判も含めていただいたのですが、余り評価の方はしていただけなかったように聞いておりました。特に、社会党案では、特別再入国許可制度というのを設けまして、日本人における旅券発給とほぼ同じ要件で覊束的にこれを許可しなければならないとしたところが政府案との最大の相違点ではないだろうかというふうに思います。 私どもがそのようにした理由は、これは歴史的経過も当然でございますが、これらの方々の定住性の実態からすれば、出国と再入国という法的構成をとらざるを得ないにいたしましても、実質的には日本人における海外渡航、出国と帰国、帰国という言葉は外国人ですから妥当でないかもしれませんが、要するに生活の本拠地に帰ってくることである、この実態に着目すれば、これは日本人における旅券発給とほぼ類似した取り扱いをしなければ本当の意味での海外渡航の自由ということが保障されないのではないだろうか、こういう発想から社会党案のような構成をとったわけでございます。この点については、むしろ先ほどのお話からすれば評価していただけるのではないだろうかなというふうにも思うわけでございますが、その他の点も含めてで結構でございますが、社会党案についてどのようにお考えか、お尋ねいたしたいと思います。
○田中参考人 どうも失礼しました。社会党案については、結果的には申し上げたことになったかもしれませんけれども、例の四月二十八日にするか九月二日にするかということを一つ問題を出しましたけれども、きちっと言及しなかったのは大変失礼だったと思いますが、社会党案は、基本的には四月二十八日を起点にしているという点で、私は、政府案よりは大変進んでいるというのか、すぐれているというふうに思っております。 それから、再入国の点についても、私は、ポイントは期間の問題ではなくて再入国許可の付与そのものの覊束性というのか、それが確実に与えられるように保障するということが歴史的経緯なり定住性を踏まえたという立法趣旨に沿うことになるので、ただ期限を少し長くしたということだけでは問題ではないか。その点も、社会党案は再入国許可ということについて基本的には覊束的に許可が与えられるような法制をとろうとしていらっしゃるという点で、政府案よりは非常にその点はきちっとしていらっしゃるというように思います。 私が社会党案について言及したのは、結果的にはその周辺の人たち、特別永住を取得することになるであろう人たちの周辺の人たち、あるいは周辺ということでは片づかないかもしれませんけれども、中国大陸の出身者等がこの特別永住の中に入れるような窓口を私は設けてほしい、その点については社会党案もという形でしか社会党案に触れなかったものですから、どうも失礼いたしました。
○小澤(克)委員 大変ありがとうございました。 今御批判いただいた点は、私どももいろいろ検討したのですけれども、率直に言いまして、立法技術的に非常に難しいものがございまして見送ったという経過がございます。旧満州国については、私どももちょっとそこまで思い至らなかったわけでございますが、今後も大いに勉強させていただきたいと思います。 それから、金先生にお尋ねいたします。 金先生の今のお話、大変感銘深く伺わせていただいたわけでございます。ともに生きるという姿勢が在日の方々にも、そして何よりも日本人にとって必要なのではないだろうかということを改めて痛感したわけでございます。 そこでお尋ねしたいのですが、この問題を欧米の方々に言ってもなかなか御理解いただけない。その一つは、それならなぜ帰化しないのだ、こういうふうにおっしゃるわけですね。日本ではそんなに帰化が難しいのかということを言われます。日本はそれほど帰化が容易でないことは事実でございますが、しかし私は、問題はそんなところにあるのではなくて、我が国においては帰化というのは国籍、ナショナリティーの問題でございますので、ある国家にともに帰属し、そこに国家の構成員という法的地位を設定するかどうかという、まさに法的地位の問題でございますが、どうも国籍の問題と民族の問題とがやや混同されがちでございまして、帰化をする、その国籍を得るということが即民族的同化を事実上強制されるような、我が国にそういう社会的実態があるのではないだろうか。民族というのはもちろん社会学的な概念でございまして、法的概念の国籍とは全く別でございますし、さらに、余計なことでございますが、生物学的な概念の人種というのともまた別の概念でございます。 そのことが一つと、それからもう一つ、逆に在日外国人の方々の方にも、例えば大韓民国の公民である、あるいは朝鮮民主主義人民共和国の公民であるという、ある国家への帰属が同時に民族への帰属意識の一要素となっている、民族的アイデンティティーの一要素というふうに思っていられるというか観念しておられるといいますか、そういう要素があって、その帰化ということがなかなか難しい。 したがいまして、私どもは、その帰化すればいいではないかという言い方は決してしてはならないのでありまして、これは日本古来の大変いい風俗だったと思うのですが、日本人は外国人を非常に丁重に扱ってきたという歴史があるわけでございますので、外国人を外国人として、しかし丁重に、そしてその人権は十分に保障し、その民族性を十分に保持していただきつつともに生きるという姿勢が必要なのではないだろうかというふうに私は考えるのですが、いかがでしょうか。
○金参考人 民族と国籍の問題、私も非常に難しい問題で余りよくわからぬ点があるのですが、私の個人的な、全く個人的な考えですが、確かに民族と国籍とは私は違うと思うのです。しかし日本の社会というのは、国籍イコール民族であるかのような、そういう風土、非常に強い単一民族意識といいますか、の親和が非常に強い。 一つその例示で申し上げますと、日本が七九年に国際人権規約を批准いたしまして、一九八〇年に国連の事務総長あての第一回報告書が出されたのは御存じだと思いますが、それに関連しまして、少数民族保護条項に関して、日本の外務省の報告書の中には、日本には少数民族はいないんだ、だからこの条項は問題にならないという報告書を出したわけですね。それで、一九八七年に第二回目の報告書が出されるわけですが、その八七年の第二回の報告書では、少数民族保護条項に関して、日本にはアイヌという特殊な文化を持った少数民族がいる、それだけはやっと認めるに至ったのですね。ただし彼らは日本国憲法上、日本国民として全く平等の権利を持っておるので、何らの権利の侵害はない、少数民族としての権利の侵害を受けていないんだというのが日本の八七年の報告書であるわけですね。 私は、国際人権規約の少数民族の保護条項というのは、日本国民だから、あなた方はそのまま日本国民として形式的平等でほっておけばいいということで済む問題じゃないと思うのですね。積極的に、彼らがアイヌ民族として生きることを望む限り、彼らに対する社会的環境づくりをしていくことが人権規約上の義務だと思うのですが、それになっておらないということですね。 それと、この問題に関連してもう一つ、在日朝鮮人と関連づけて言いますと、実はアイヌが日本に何人いるかということについては全国的統計がございませんでして、唯一北海道庁の統計があるのでございますが、それは北海道内のアイヌ、北海道内に住んでそのアイヌの血を受けている人、かつ、みずからがアイヌということを名乗り出る人、要するに隠していない人、そういう限定つきでございますが、公称二万四千人と言われておるわけですね。日本全国に広げて、あるいは差別を受けるからといってアイヌということを名乗り出ないような人も入れればもっとふえると思うのですが、しかし一応公称二万四千であるわけです。二万四千のアイヌを仮に日本が報告書の中で少数民族として認めるのであれば、既に平和条約発効以降現在まで日本に帰化をした朝鮮人あるいは韓国人だけでも十五万人になるわけですね。なぜ十五万の朝鮮人、韓国人を少数民族と位置づけができないのか。やはりそういう事実が、日本の社会がなかなか日本の国籍を取って民族的に生きるということを認めておらない社会。 ですから、何も韓国人は日本だけに住んでいるのじゃございませんで、アメリカや中国やソ連にもたくさん住んでおるわけでございますけれども、例えばアメリカでは、アメリカの移民の歴史はそう長くないのですが、例えば検察官でパクという検察官がいるとか、そういうことがあるわけですが、日本の場合は、帰化なされた方で検察官がいるというふうに聞いておりますけれども、それは全部日本名になっておるということですね。それが帰化に際して日本名を強要したのか、あるいはみずからの意思でそうしたのか、韓国名を使うのが不利益だから私は日本名を使おうという形になったのか、そこのところは私の知るところではありません。しかし従前、日本が帰化の申請書に、帰化後使用する氏名の欄に「ただし日本的氏名を用いること」というのを八五年まで書面に書いておったという事実があるわけでございますし、現在も窓口ではそういう指導をかなりしておるというふうに私の方では聞いております。そういう事実があるということです。 それから私も、本当に日本の社会で裁判官、検察官の中になぜ朴さん、金さんが出てこないのか、あるいは国会議員の中に朴さん、金さんがどうして出てこないのか。あのペルーのアルベルト・フジモリさんがまさに二世で、それと対比して言えば、在日の中で朴さん、金さんを名乗る二世の国会議員がどうして出てこないのか。やはりそういう社会に日本の社会がなってこそ朝鮮人側の心の垣根が解かれていくのじゃないか。 垣根というのは、私は法的、社会的差別と心の垣根、両方あると思うのですが、足を踏まれた方がいつその心の垣根を解くかというなかなか難しいところがあるのですね。日本の社会がやはり、童話の太陽と風の話じゃありませんけれども、風をぴゅうぴゅう吹きつける限りはコートをしっかり閉めておくしかない、そこに太陽の光をすっと当てていただければコートを自然に脱ぐ、やはりそういう関係じゃないかと私は思うのでございます。 余り答弁にならないかもしれませんが、この程度にさせていただきます。
○小澤(克)委員 最後に、もう余り時間がありませんので、小井土先生にお尋ねいたします。 小井土先生の最初の御発言、ずっと注意して聞いていたのですが、韓国あるいは在日韓国人とのみ御発言でございました。これは余り意図されたのではないと思いますけれども、韓国籍に限らず朝鮮籍あるいは台湾の方々も今回の法案の対象になっているわけでございます。 それで、私が思うに、この日韓の交渉に基づいて、これがきっかけとなって今回の法案が提出されるに至った。政府案のことでございます。そして同じ扱いを同じ歴史的経過を有する者あるいは一、二世にも均てんし、さらにそれ以外の同じ歴史的経過を持つ者に均てんする、そういうプロセスを経てこの法案が提出されたわけでございますけれども、この在日の方々の問題は、何よりも日本の植民地支配という歴史的経過から生じた結果であるということが一つ。それから、何よりもこれは人権の問題であるということが一つ。この二つからすれば、必ずしも二国間交渉になじむ問題ではなくて、日本が日本自身の問題として、もっともっと早期に解決すべき問題ではなかったかなというふうに思うわけでございます。そのような発想についてどうお考えかというのが一つ。 それから、もう時間がございませんのでついでにもう一つお尋ねいたしますが、この政府案、妥当な法案であるという評価のようにお聞きしましたが、私は、この再入国のところについては、法制度として全く法務大臣の自由裁量のままになっているということ、運用の面でいろいろ最近は改善されているということでしょうが、しかし、法制度として自由裁量がそのまま原則が残されている。これは特別永住権を保障するということと基本的に矛盾するのではないだろうかと思います。 それから、原則四年になったとおっしゃいましたが、これは長期が四年という趣旨でございまして、実際に何カ月与えるか、そしてこれを数次とするかシングルとするか、これもすべて法務大臣の自由裁量のまま。入管法の原則は、そこは何ら変更されていないということでございますので、その辺についてどのようにお考えか、この二点をお尋ねしたいと思います。
○小井土参考人 私の冒頭の発言が在日韓国人という言葉だけだったと思いますが、これは先生御指摘のように、在日韓国人のみならず在日アジア系の方々、と言うとまたオーバーな表現になりますけれども、朝鮮の方あるいは台湾の方を含意しての在日韓国人という表現であったということを御理解いただきたいと思います。 それから、植民地支配の結果であり、人権問題ということからこの法律につながったという点は、全く同感であります。 それから御質問の第一点、二国間交渉ということでなくて、日本がもっと早期に自主的に解決すべきではなかったかという点も、全くそうだと思います。これはこの問題に限らず、日本の政府あるいは政治家の皆様にもっと積極的に取り組んでいただきたいという私自身の希望を申し述べたいと思います。 第二点の再入国の問題でありますけれども、この点について、私法律の専門家ではありませんので的確な御返事が申し上げられないのをおわびいたしますが、先ほどもちょっと触れましたけれども、国会の厳しい監視あるいは民間団体の厳しい監視ということがございますので、法務当局も恣意的な運用はできなくて、法の制定の精神あるいは趣旨に沿った運用は行われるのではないだろうかと期待しております。
○小澤(克)委員 ありがとうございました。
○伊藤委員長 北側一雄君。
○北側委員 三名の先生方には大変お忙しい中貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げます。本法案並びに在日韓国・朝鮮人の方々の法的地位、待遇を今後検討していく中の非常に大切な、貴重な材料とさせていただきたいと思います。 まず最初に小井土先生にお聞きしたいと思いますけれども、先ほどのお話の中で、日韓二十一世紀委員会の報告書を挙げられまして、日韓の建設的なパートナーシップを築くためにも、まず日韓での歴史認識のギャップを埋めていかねばならないというお話がございました。私も全く同感でございます。日本の若い世代、戦後生まれの若い世代がこれまでの日韓の歴史について余りにも知らなさ過ぎると申しますか、日本の植民地支配、同化政策、強制連行、そして戦後の一方的な国籍の喪失、こうした経過について知らなさ過ぎる、ここに大きな問題点があると私は思います。 具体的にここの歴史認識のギャップをどう埋めていけばよいのか、先生の忌憚のない御意見を聞かせていただきたいと思います。
○小井土参考人 先生の御意見に全面的に賛成であります。ただ、認識ギャップをどう埋めていくかということについての的確、即効的な対策というのはないのではないだろうかと思います。 まず、我々大人が、韓国に対する不当なべっ視、差別というものが現にあると思いますが、これを改めることが必要であろうと思います。そして、例えば家庭の場などにおいてもそういう言動をしないということ。仮にそういう言動をした場合は、なぜそういう言動をするようになったのかということについて、体験的に子供たちと対話するというようなことも必要なのではないだろうかと思います。 それから、学校教育においても大いに改善していただきたいと思うのです。例えば学校教育において日本の歴史を学ぶ場合、どうでしょうか、受験勉強のため、かなり古い時点で日本史の教育が終わっている。私は、場合によれば日本の歴史教育あるいは社会科教育は、現代史からさかのぼっていって教えるというようなことをやる必要があるんだろうと思うんですね。現代と全く関係のない昔の話だけを教育しているのでは意味がない。ただし、昔の話といっても、韓国の方々の心に深く刺さっているのは、秀吉時代の問題というのがあります。それから、江戸時代の通信使の問題があります。通信使の問題については日本の教育ではほとんど触れてない。私も学校教育の過程で教えてもらった記憶がないのでありますけれども、これは韓国文化あるいは大陸文化の日本への伝播という点で大変な役割を果たしたわけですね。ですから、この辺の学校教育を大いに変えていただくということが必要なんではないかというような感じがします。 それから、最近は修学旅行で韓国に行かれる方々が多いのでありますけれども、これも事前の教育ということと、現地で現地の若い高校生あるいは中学生との対話の集会というようなことも持つようにしたら、一段と効果があるんではないかというような感じがしております。 お答えにならないかもしれませんが、以上であります。
○北側委員 金先生にお聞きいたしますが、まあ同じ質問でございます。 今の日韓での歴史認識のギャップを埋めていかなければならない。特に日本の方ですね。先ほども先生の方から就職差別を初めとする差別をなくさなければならない、また韓国人、朝鮮人の方々が通名を名乗らざるを得ないような日本の社会の周囲の状況があるんだというふうなお話がございました。こうした日本の社会、差別をなくすようなそうした日本の社会をどのようにつくっていけばいいのか。私は、本当に日本にとって内なる国際化の第一歩がこの在日韓国・朝鮮人の問題ではないかというふうに痛感をしておるんですけれども、在日の先生のお考えをぜひ聞かしていただきたいと思います。
○金参考人 私も非常に若輩の身で、余り口幅ったいことは言えないのでございますけれども、やはり日本の最近はやりの国際化ということがありますけれども、やはり私自身も日本の社会の内側から日本を見る者として、日本の国際化というのは、外に向かっての日本国の発展といいますか、それだけが国際化であればやはり非常に問題があると思うんですね。日本の世界に向けての地位が上がれば上がるほど日本の国内、日本の内側が開かれていかなければ、やはりそこが同時並行、盾の両面にならないと真の国際化は私は難しいんじゃないかと思っておるのでございます。そういう内なる国際化のやはり第一歩、日本の国際化の第一歩は、旧植民地出身者に対するきちっとした戦後処理をすることじゃないかと私は思うんです。 先ほど私、原状回復の意味ということについては後で申し上げると言いましたのですが、言う機会がなかったのですが、実は旧憲法から基本的人権の尊重、国際協調主義という新日本国憲法になった途端に、従来日本帝国臣民としての地位に置かれておった人間が外国人という地位になって、日本国民と外国人という地位の格差というのは、ある大学教授は日本人の基本的人権は外国人の関係においては特権であると言ったぐらいに、格差が大きかったのですね。最近は徐々に縮まっておりますけれども、そういう状況に置かれてしまった。やはりその問題点を、一体彼らにとっての原状回復とは何なのか。それは、やはり植民地支配によるところの同化政策から、いかに彼らを朝鮮民族として日本の地の社会にあって生きられるようにするかということが、まさに彼らにとっての原状回復じゃないかと思うわけですね。 先ほど田中参考人の意見にあった戦争傷痍病者、彼らにとってなくした生命、手足はもう二度とは返らないのですが、彼らに対しては、やはりその失った手足に対して代価を与える、補償ですね、それとやはり謝罪、やはりこういうものがないと、私はどうしても日本の国際化ということはちょっと言いづらいんじゃないかという気がするのです。 それで、特に私は日本の外国人政策を、ずっと変遷あるわけでございますが、どうも私の目から見て感じますところは、やはり一たん規制をしておいて、それで何か言われて、在日朝鮮人の方からあるいは中国人の方から、あるいは世界の方から何か言われて、問題があるぞと言って、すったもんだした末にやっと、じゃあここのところはちょっと是正しましょう、こういう形で現在までやってきたんですね。しかし、これから二十一世紀に向かってあともう十年も残らない時代で、いつまでそういったやり方をするのか。僕はだめだと思うのですね。だからやはり、海部総理がいみじくも共に生きよう、共生しよう、在日朝鮮人は。そうだと言ったのですから、そうなれば私は、言われてやるのではなくて、積極的に在日朝鮮人のための特別法、総合的な、入管法プロパーだけではなくて、そういうものを真剣にやはり論議していってほしいと思うのです。そういうことが成ってこそ初めて、一つの歴史ギャップといいますか、それも埋まるのではないか。 いろいろやることあると思いますが、在日朝鮮人に関しては私はそういう時期が来ておる。国会に審議会を設けるなり何なりしてやっていただければと私は思っておる次第でございます。
○北側委員 ありがとうございます。 田中先生にお聞きいたしますが、先ほど田中先生のお話の中で、本法案の平和条約国籍離脱者の定義、昭和二十年、一九四五年九月二日以前から引き続き本邦に在留する者という定義が大前提としてあるわけなんですけれども、先生のお話、一九五二年四月二十九日のサンフランシスコ平和条約発効以前とすべきではないか、その御趣旨は本当に非常によくわかるわけですけれども、本法案で言っております平和条約国籍離脱者に形式的に先生がおっしゃったような当てはまらない人で、同じく居住の安定を与えていかねばならない人がいることはもう事実でございます。先ほどの先生のお話では、そういう方々、平和条約国籍離脱者に近接する人々、また強制連行されてきた同じような立場の中国人の方々、そういう方々にも本法案で与えております特別永住というのを与える方法を検討すべきであるというお話がございました。私も全く同じ見解でございます。 具体的にこれ、特別永住をそういう方々に与えていく方法、ケース・バイ・ケースになってくるかと思うのですけれども、先ほども先生少しお話しされましたけれども、具体的にどういう方法を今後検討していけばよいのか、もう少し具体的に先生の御意見をお伺いしたいと思います。
○田中参考人 私が申し上げたのは、二種類あるというふうに考えて、一つは、文字どおり平和条約に基づき日本国籍を離脱した者の家族というように考えていいだろうと思うのですね。 それからもう一つは、これは理論というか理屈の上では大変難しい話になると思うのですが、中国大陸の出身者で、私は、五二年、昭和二十七年の四月二十八日を起点にすべきだという考え方ですから、それ以前から日本に住んでいる、そしてその人たちから生まれた子供たち、これは同じ考え方ですけれども、それをこの法律によって新しくつくられる特別永住というカテゴリーの中に加えることができるような措置をとる。 法務省の方では、当然個々の外国人の在留の経歴というのか、経緯についてはほぼ完全な資料を持っているはずですから、今回も恐らく従来公表されたことのない数字が今回の法案の資料として載ってますけれども、それは特別永住の対象になる人はどういう人かということが出されているわけで、こういう資料というのは従来は把握できなかったのですね。例えば中国人が何人いるかというようなことはもちろんわかるわけですけれども、今回のこの資料の中で、例えば中国人の中で台湾の人でなおかつこの講和条約、政府の場合には九月二日ですが、九月二日以前からいる人ないしその子孫が正味何人いるかということは今度初めて把握されたわけで、そういう形で把握するデータは入管の方で全部お持ちのはずですから、恐らく不可能ではないんじゃないかという気がいたします。
○北側委員 以上でございます。
○伊藤委員長 木島日出夫君。
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。 三名の参考人の先生方には大変貴重な御意見を賜りました。十分に参考にさせていただきたいと思う次第であります。 順次お聞かせ願いたいと思います。 小井土先生にお聞かせ願いたいのですが、歴史認識を深めることが大事である、特に歴史認識のギャップを埋めることが大事であるとおっしゃられました。その具体的な中身について、日本にある歴史認識はどういうものであるか、在日韓国人という言葉を使われましたが、韓国、朝鮮、中国、台湾等にある歴史認識はどうなのか、具体的にお聞かせ願いたいと思うわけであります。 私は、この問題の出発点は、第二次世界大戦の誤り、侵略、併合が誤りであったということを明確に日本として、政府としても認識をすること、そしてそこから出発して、対等、平等の立場から物事を考えていくことではないかと考えておるわけであります。私ども日本共産党は、あの大戦中侵略戦争は誤りであると植民地解放を唱えた政党としても、痛切にそのことを感じているわけでありますが、先生のおっしゃられている歴史認識のギャップ、もうちょっと具体的にお聞かせ願いたいと思うわけであります。
○小井土参考人 木島先生から大変難しい質問を受けまして、正直言ってお答えに戸惑います。私の使った言葉を逆に御質問いただいたので私が逃げるわけにまいりませんけれども、ちょっと正確ではございませんが、端的に我々日本人一般という感じで申し上げさせていただきますと、日本人は、今先生がおっしゃったように、侵略、併合という問題について、時の経過とともに頭の中からそういう事実関係あるいは歴史的事実というものを忘れ去ってきているのではないかという感じがします。ところが、盧泰愚大統領の国会演説でもございましたけれども、受けた側の人々はその痛みをなかなか忘れないということでございます。 私ソウルに数年間滞在し、それから昨年でしたか、韓国の政府関係者あるいは野党の例えば金大中氏、さらには各新聞社の論説委員の皆さんと率直な意見交換をすることがありましたけれども、その場合非常に痛切に感じ、また厳しく言われるのは、日本が過去の国として行ったことについて厳しく認識していないのではないかということです。昨年の日韓関係の是正にかかわる交渉の中でも、韓国政府が過去の歴史について厳しく日本の認識表明ということを迫り、日本側は総理大臣あるいは天皇陛下のお言葉ということで対応したわけでありますけれども、基本的には、私は、日本政府あるいは日本国民が、一億総ざんげというような形でなくて、もっと明確な形で過去の歴史に対して早期に態度表明を行うべきではなかったのか。そういうことがなかった。要するに、別の言葉を使いますと、ボタンのかけ違いがあったということが韓国、朝鮮民主主義人民共和国あるいは中国の方たちの日本に対する厳しい批判の目として現在も残っているのではないかという感じがします。 したがって、過去の認識を我々は相手国側の立場に立って我々自身の認識を深めると同時に、日韓二十一世紀委員会が「日韓交流の現状と課題」という文書の中で表明しておりますけれども、青少年交流の一層の拡充というようなことを通じて改善していくことが必要なのではないかというような感じがします。明確な答弁ができなくて、おわびしたいと思います。
○木島委員 田中先生、金先生御両名が原案作成者となられております「在日韓国・朝鮮人の処遇改善に関する提言」、本日も示されましたが、私も法律時報で既に読んでいるわけであります。 そこで、この提言から見て、今回出された特例法案の持っている前進面と不十分な点という点が先ほど両先生からおっしゃられたと思うのですが、一つ田中先生にお伺いしたいのですが、退去強制について、歴史認識を踏まえるともう一歩踏み込んで絞りをかけるべきではないか、不十分ではないかというお話があったのですが、中身については触れられませんでした。この提言を見ますと、退去強制制度が残っていること自体が在日韓国・朝鮮人への差別の象徴と考えられている、基本的にはなくすべきである、仮に残しても内乱、外患にかかわる犯罪に限定すべきであるということが書かれております。もちろんこういう認識なのでしょうか、具体的に田中先生にお伺いします。
○田中参考人 もちろんそういうことでございます。 象徴するというように私が考えますのは、日本の社会で、非常に残念なことですけれども、在日朝鮮人の問題がいろいろ出たときによく口にされる言葉は、朝鮮に帰れということをよく言われるのですね、子供がいじめる場合でも。退去強制を制度として持つということは、国家がいざとあらば追い返すぞという意志表示をするということになるのですね。ですから、要するに国家は厳にそのことをしない、これは別の見方をすれば非常に国家の名に値しないという考え方をするかもしれませんけれども、しかし、私が紹介したように、率直におわびの気持ちを申し上げたいと本当に思っているのなら、そのくらいのことはやってもいいのではないかというくらいの腹を決めて事に処さないと、残念ながら日本の国内には非常に排外意識とか差別意識というものがあるわけですから、そういう点で国とか政府というのはより自己に厳しく当たるべきだという点で、この退去強制事由というのは非常に象徴的なものなのですね。 指紋の問題が大騒ぎになったときも、私は本当に残念だったと思いますけれども、大阪府警の外事課長というまさに担当に携わる課長が、指紋を押すのが嫌なら帰ればいいじゃないかということを堂々とテレビカメラの前で、全国にあれは放映されたのです。ところが、あの外事課長発言が公の立場で批判されたというのは、これは私は知らないのです。言われっ放しです。日本の政治家は非常にひんしゅくを買うことをよく言いますけれども、それは厳に慎む必要があるという点で、国家が外国人の追放権をきちっとみずからがそれを制約するということは、一つのあかしだという点で大変重要な事項だというように私は思っています。
○木島委員 ありがとうございました。 金先生にお伺いしたいのですが、先ほど民族と国籍の問題のかかわりについてお話がありました。先生も原案作成者として名を連ねております先ほど述べました提言、この中にはこういう言葉があります。「日本には帰化制度がありますが、これまで帰化は事実上在日韓国・朝鮮人がその民族的矜持を捨て、百パーセント日本人化することを求める制度として機能してきました。そのため、完全に日本社会の一員として定着している二世、三世の在日韓国・朝鮮人の間にすら、「帰化」への嫌悪感が残っています。」という言葉があります。これらの点についての実態とその背景等について、もうちょっと突っ込んでお聞かせ願えれば幸いであります。
○金参考人 例えば私の体験でございますけれども、私が司法試験に合格したときに、最高裁判所の方からやはり帰化してくださいと言われたわけでございます。私は、日本の方にいつもこう申し上げるのです。帰化しなければ、要するに日本の国籍を取得しなければ得られない権利のために帰化を持ち出すのならまだ話はわかるというのです。しかし、日本の弁護士あるいは司法修習生になるためになぜ帰化を持ち出さなければいけないのか。要するに、私の目から見ると合理性がないわけです。 そういう帰化政策、時間がないので簡単に言わせてもらいますけれども、私はいつも、在日の六十万あるいは七十万というのはフライパンに入れられた豆のようなものだと言うのです。日本の社会は、そのフライパンの豆を火にかけてあぶっていくわけです。熱くなって耐えられなくなると豆がはじける、はじけた豆を拾って日本人にしていくという、その火の役割をしてきたのが差別である、その先頭に立ったのが法的、行政的差別だ、その法的、行政的差別が植民地時代以来の日本人の差別意識を助長したと私は言えるのではないかと思うのです。 やはり日本の社会にもまだそういう民族差別は厳として残っております。例えば最近でも、引っ越して表札に朝鮮の名前をぱっと掲げて、それで引っ越しのときに朝鮮語なんか使ってやりますと、日本の方々は引っ越しのあいさつに行きますね、それで私ども行きますと、門をあけてくれない人がいるのです。数軒ですがあります。それは多くはありませんが、あるのですね。十軒回れば何軒かある。そういう日本社会の差別意識、やはり非常に根深いものがあると思うのですが、これを何らかの形で、行政なり政治なりがその差別意識をなくする方向にリードしていかなければならぬと私は思うのです。ところが、日本の帰化政策などは、例えば帰化しなくてもいいときの権利の対価として帰化しなさいということが出てくるというのは、やはり帰化を迫られる当事者にとっては非常に屈辱的なものとならざるを得ないと私は思うわけです。そういう実態があることは間違いないです。社会的にも、例えば日本人と結婚するときに、いや、うちの娘と結婚したいなら帰化しろとか。帰化したって人間変わりませんね、民族性は全然変わらないのですが、なぜそういう言葉が今でも出てくるのか。ちょっとそういう状況があるものですから、なかなか皆さんあれだと思います。 だから、私はそういう状況をなくすためにも、まず朝鮮人が朝鮮人として今あるがままに生きられるような法制度をまずつくった上で、その後に来る段階として国籍の選択はまさに個人の自由に任されるべきだという形で、そういうときも、国籍の取得の制度が今のような一〇〇%法務大臣の自由裁量という帰化のやり方がいいのか、これについては私は疑問を持っております。特にそういう経緯のある人については、国籍喪失の経緯も踏まえて、一〇〇%法務大臣の自由裁量の帰化というのではちょっとやはり制度的にもまずいんじゃないかという、個人的な考えを持っております。
○木島委員 行政や国の施策として差別意識をなくすようにリードしなければいけないというのは、まさにそのとおりだと思うわけであります。そういう先生の立場から見て、本件の特例法がどのくらいリードしていると見られるか、いかがでしょう、ざっくばらんに。それを聞いて終わりにします。
○金参考人 だから私は、これは今後を見なければいけないと思うのです。この法律自体は、従前の入管法と比べて進歩していると率直に言えると私は思うのです。それは、まず在日朝鮮人、旧植民地出身者が中国人も含めて一本化されたということ、それから子々孫々にわたる永住権を認めた、そういうことで従前、今ある法と比べれば、進む方向に行っていることは間違いないと思うのです。 ただ、私が申し上げたいのは、こういう入管法、外国人登録法、これは直接関係ありませんが、そういう法律が外国人を規制する二大中心法としてあるわけですが、在日朝鮮人が日本の社会で生きていく上にとって、もっとそれ以上に社会生活上重要なのは、やはり学校で学んでいるときに人間としての誇りが持てるような教育を受けられるということ、それからもう一つは、その教育の現場を離れて社会に出たところで、スタートで挫折を味わわなくてもいいような、自分が得た能力をそのまま伸ばしていけるような社会、だから民族教育と職業選択といいますか、そこらあたりの本当の保障が一番重要だと私は思うのです。そういうものにつながるものとしてこの法案があるのであれば、これは本当に積極的に評価できると私は思うのですが、これで終わりであとは従前どおりというのじゃ、この法律自体は別にマイナスじゃありませんけれども、どうもこれからの日本の社会の国際化に向けては評価に値しないのじゃないかなという……。この法案自体はいいと私は思います。
○木島委員 ありがとうございました。終わります。
○伊藤委員長 中野寛成君。
○中野委員 民社党の中野寛成でございます。参考人の皆様方、きょうはありがとうございました。 まず小井土先生から、質問時間が短いものですから、三先生にまとめてお尋ねをさせていただきたいと思います。 まず、小井土先生が歴史的認識のギャップの問題について触れられました。社会的、心理的意識の改善、これを実は私は今日まで意識差別と表現をしてまいりました。もう一つは、制度上の差別を行政差別と申してまいりました。この行政差別についてはかなり改善をされてきたことは事実だと思いますが、今金先生もおっしゃられました事例のように、意識差別の方はなかなか解消されません。そういう意味では、これからこの行政差別の解消が意識差別の解消につながっていけばと、そのためには運用面においていかにして心を込めてやっていくか、この今日までの反省が法案にどうにじみ出ていくかという田中先生の御指摘は、まさにそのことも意味するかというふうに思うわけであります。 実は十四年ぐらい前になりますか、一連の在日韓国人の問題につきまして、国民年金のことや、銀行融資のことや、公営住宅の入居の問題や、ずっと順番に取り上げてまいりましたが、そのときに、今法務省にいらっしゃるかどうかわかりませんが、法務省の方が私にこう言いました。中野さん、どうしてそんなに在日韓国人の問題に熱心なんですか、余りそれをやり過ぎればかえって票が減りませんか、選挙に不利になりませんか。法務省の方が心配するくらいに、当時必ずしも意識差別は解消されていなかったというふうに言っても過言ではないと思います、さすがに最近の法務省の方はそんなことをおっしゃいませんが。 在日韓国人、チェイル・ハングサラムもしくはチェイル・チョソンサラムに対する意識だけではなくて、外国人に対する日本人の意識改革というのが必要であろう。教育の問題があります。行政差別を解消することによってリードする役割を果たすこともあります。また、小井土さん初めマスコミの皆さんが大いに書き立ててくださるということもとりわけ大きな効果があるだろうと思います。これらのことについて、現在日本人の心の中に巣くっている心理、それをいかにして改善していくか。とりわけ日本人の場合は難しいと思いますが、難しければ難しいほど努力が必要です。それらのことについて、今日までの御体験の中で、こういうことをもっとやればいいのではないかというふうな御提言がありますればお聞かせをいただきたい、こう思うのであります。 次に、田中先生にお尋ねをいたしたいと思います。 先ほど離脱という言葉についても触れられました。御指摘のとおりだと思います。離脱させられたと言った方がいいのであろうと思います。同時に、御指摘の講和条約の発効した日を起点にするというお考え方については、一九四五年九月三日から一九五二年四月二十七日までの間のいわゆる戦後入国者の問題、それからもう一つは、一時帰国者、これは法務大臣声明でかなり救済された部分はありますが、しかし必ずしもすべてが解決したとはいえないと思います。もう一つ、潜在居住者の問題があります。これは、法律的には非常に難しいことですが、しかしこれも実際上はほっておけません。先ほど金先生が、強制送還をされても向こうではとてもではないけれども生活できる状況ではない、これは潜在居住者の場合、同じことが言えると思うのです。これらのことにつきまして今後どういうふうにしていくべきかについて、あわせてお聞かせをいただきたいのであります。 もう一つ、日本人で、すなわち日本国籍者で韓国人と結婚をした、夫婦ですから、できれば同じ国籍を持ちたい、もしくは同じ境遇を共有したいという気持ちがその愛情の中から生まれてくることの方が多いであろうと思います。そのときに、もし韓国籍に国籍を変えた場合に、もともと韓国人の方は特別永住者になります。しかし、その方と結婚した日本人は、国籍を変えた場合特別永住者にはなりません。むしろ逆の立場に立たされるわけであります。これは法制上どう対処すべきなのか。そしてこの問題は、今後むしろ数は多くなるわけです。こういうケースが極めて多いと思われますが、これについての法整備というのはなかなか難しい。これをどうお考えになられますか。技術的な問題でございますので、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。 それからもう一つ、金敬得先生にお尋ねをいたします。 今も国籍と民族の関係についてお話がありました。私は、韓国人の皆さんの結婚式に呼んでいただくことがありますが、そのときに無理を承知でこういうスピーチをします。 あなた方は日本で生まれた韓国人です。生まれながらにして国際人です。日韓のかけ橋になるという希望を我々は当然持ちますが、そのときに二つお願いがあります。一つは、日本に生まれたのですから、日本人以上に日本の歴史と文化について勉強してください。また、韓国人なのですから、誇りを持って韓国の歴史と文化を勉強してください、韓国に住んでいる韓国人以上に。そのことによって、すばらしい日韓のかけ橋どころか、国際人としての誇りを持って生きていっていただきたい。これが一つのお願い。もちろん、それができるようにする環境をつくるのは政治家の仕事です。そして、その環境が極めて厳しいことも御指摘のとおりです。しかし、あわせて御本人たちにも誇りを持ってほしいという願いを込めて申し上げます。 もう一つは、ぜひ韓国へお帰りになったときに、うそでもいいから日本はいい国だと言ってくれませんか。韓国にお帰りになったときに、韓国人の皆さんが、チェイル・キョッポー、在日同胞が日本でそんなにいじめられているのだということで、日本と韓国の間について特に反日感情が強くなる、これは決していいことだと思わない。むしろお互いに仲よくするためのかけ橋としての役割を果たすために、ぜひそういう役割も果たしてもらえませんかということをあえて申し上げることがあります。 もう一つ、これは日本側から言うべきことではないと思っておりますが、あえて皆さんが私を日本の国会議員ではなくてハンゴクッケーイオン、韓国の国会議員みたいだと言ってくださる言葉に甘えてときどき申し上げることは、在日韓国人は永遠のエトランゼでなければならぬかという韓国の学者の方からの問いかけがありましたが、この問いかけの意味は、実は私の解釈とは違うのだろうと思いますが、こういうふうに申し上げることがあります。在日韓国人であり続けるのか、韓国系日本人であろうとする日が来るのか、この選択の自由を要求する日が来るでしょうか。日本側からセットするというよりも、これはむしろ皆さん方から要求がなければ日本側から申し上げることは極めて失礼なことだと思います。こういう問題提起をすることがあります。 しかし、先ほど来言われておりますように、この問題については、日本社会における少数民族についての国民の意識と、そして少数民族を大切にする行政上の仕組みとが必要であります。そういうものがあって初めて帰化を屈辱的とも思わなくなるでしょうし、同時にまた、国籍取得権が得られることを失礼とも思わなくなられるのではないだろうかというふうにも思います。その環境がまず先に大切であろうと思います。この点について、率直な御感想をお聞かせいただければありがたいと思います。 では、小井土先生からお願いします。
○小井土参考人 在日韓国人の方々などに対する行政的な改善というのはあるけれども、社会的、心理的意識の改善が進んでいないというお話がございました。全く私はそのとおりであるだろうと思います。これは、日本人のアジアの方々に対する差別というのは、大ざっぱに申し上げますと、やはり明治以降の歴史に起因しているのではないかというような感じもいたします。 要するに、先ほど申し上げましたけれども、朝鮮通信使などに対しては大変な尊敬の念が払われたということがあるわけですね。しかし、明治以降、日本では脱亜入欧といいますか、あるいは先進国に追いつき追い越せ、あるいは白人崇拝というようないろいろ複雑な感情が日本人の中で育って、これが長い歴史の間で定着してしまっていて、韓国あるいは朝鮮、中国の方々に対していわれなき不当な差別、べっ視ということにつながっているのではないかというふうに思います。 最近はアジア各国あるいは世界各国から外国人労働者が日本を目指して来ておりますが、こういう人たちに対しても大変な差別、不当な待遇という問題があると思います。日本人の白人以外の外国人に対する、我々日本人と同じといいますか、要するに、人間的な待遇あるいは人間的なつき合いというものが、これから大変になっていくのではないかという気がいたします。 そういう中で、人口の問題あるいは人手不足の問題ということから、有用な外国人人材の活用ということを企業なり、地域なり、社会が必要とし、迫られている中で、意識の改善というものも進むのかなというような感じもしております。ただ、大変時間がかかるのだろうと思います。 先生が先ほど、結婚式の中で二つお願いしているということをおっしゃっておりましたが、その中で、やはり歴史を学んでもらいたいということをおっしゃっておりましたが、これは私、繰り返しになりますけれども、日本の学校教育、家庭教育の中でも実践してほしいことであるというふうに思っております。 それから、私に対する質問ではないのですけれども、私と同じ考えを金先生に御質問されたので、一言だけ触れさせていただきたいと思います。 帰化が非常に難しいということがございます が、韓国系日本人というふうに将来在日韓国人の方々がなっていただくことも必要なんではないかなということを、私考えたことがございます。したがいまして、質問されていないことでありますけれども、金先生のお答えを丁重に聞かせていただきたいというふうに思っております。
○田中参考人 私に質問されましたのは、たしか二つあったと思います。一つは潜在居住者の問題、これは私もかねがねいつも気になっていることなんですけれども、どこの国でも不法入国というか密入国者の問題というのは大なり小なり抱えているわけで、例えばアメリカのメキシコからの移民労働者の問題についても、アメリカは八六年に入管法改正をしたときに、結局いわゆるアムネスティーを実施して、申告をした人には在留を許可するという手続をとったと言われていますけれども、どこの国でも、法を犯した人を簡単に免罪にするということには抵抗があるだろうということはもちろんだと思うのですね。 しかし、別の見方をすれば、潜在居住者というのはまさに無権利状態に置かれるわけで、私もそういう人と話をしたことがありますけれども、例えば運悪く路上で交通事故に遭遇をして足を負傷した、その場から立ち去るだけでも大変だという状況になったとしても、その人にとって絶対やってはいけないことは、警察が来るまでそこにいてはいけないわけで、足を引きずりながらでもとにかくそこから逃れるというのが至上命令なんですね。ましてや加害者に補償要求するとか、そんなことは到底できないわけです。最も典型的な泣き寝入りを余儀なくされるわけですね。例えばどこかで仕事をしていたとしても、夜遅くまで働かされて非常に安い賃金しかもらえない、もう少し上げてくれないかという話をしようと思っても、運悪ければ、おまえ、そんなこと言うなら入管に行くかと言われれば、どんなに長時間低賃金で働かされても、ただ黙って耐えるしかないという、非常に悲惨な状態に構造的に置かれるわけですね。 そうなると、法を犯した者だからやむを得ないといって国家がほうっておくのか、やはり彼らも同じ人間であるということで、国家が譲歩してその人たちの存在を公認するか、これは国家としては非常につらい選択を迫られるわけですね。 ところが、私の知っている限り、いわゆるアムネスティーということを日本の法務省はやったことがないのですね。一度もやったことがないのです。ですから、今回本当にこれをやるのであれば、思い切って一度国家が全面的に譲歩して、とにかく潜っている外国人を全部自首させて在留を許可する。もちろん別の見方をすれば、そんなことをやったら、また潜ってきて、そのうちに許可になると思ってどんどんふえるという言い方をしますけれども、それはアメリカだってフランスだって同じです。だけれども、国家が譲るという雅量があるのですね。ところが、日本は残念ながらそこのところが、とにかくいついつまでに申告した人は全部在留を許可するという、ちょうど恩赦があると全部免罪になる、ああいう方式を外国人の在留について一度もとったことがないのです。そういう意味で、潜在居住者の問題というのは、一度どこかで国家が譲歩するということを体験するという意味で大事じゃないかという気が私はします。 それから、もう一つのお尋ねは、先ほどもちょっと申し上げたのですけれども、私も余り細かい立法技術は申し上げる能力ありませんけれども、ただ今回の法案ですと、こういう範疇に入った人は、法務省の試算では六十万八千ですか、この人たちは特別永住というステータスを保障するということで、一つの線引きがきちっとなされるわけですけれども、それに非常に近接した人は、そういうものに属さない人は特別永住という資格は申請によって取得できないようになっているのですね。ところが、例えば入管法の方にある一般永住というものは、ほかの外国人、他の在留資格でいる人が申請によって一般永住に移行できるわけです、もちろんそこで審査というのが入りますけれども。ところが、この特別永住という資格は、それに属さない人が申請によってそこに加わる余地がないのですね、ここへ線を引いて、その人以外はだめだということですから。 それで、それに非常に近接する人については、その特別永住の中に参加できる余地を残す、そういう制度を何かつくって、法務大臣はそういうことを与えることができる、そういう立法的な解決というのは不可能ではないんじゃないか。 それで、さっき言いましたように、中野先生がおっしゃったのも、その範囲を、結局、日本の人が結婚をして日本の国籍を離脱して韓国の国籍を取るという選択ももちろんあり得るし、現にあると思いますけれども、ただその場合には、日本の国内であるとき突然外国人になるわけですから、そうするとその時点でその外国人はどういう在留資格で日本に在留するか、日本の外国人管理に服することになるわけですから、そのとき重要な在留資格というのをどうするか、例えば今度できる新しい特別永住という人と結婚している人は、その特別永住の仲間に入れるような余地を設けておくということは可能ではないか。恐らく今度再入国なんかでも、四プラス一で五年間ということになりますと、同じ家族の中で、ある人は四プラス一の再入国ができる、しかしそうでない人は従来どおりの一プラス一、最大限二年。そうすると、一緒に向こうに行って生活をするということがあった場合に、やはり不都合が起きるわけですね。 そういうことで、人間本位のことを考えれば、せっかく新しい制度を導入したときに、それに付随する人たちというのをその中に加えられるような工夫というのは、やはりしておいた方がいいのではないかという気がいたします。 こうすればいいんじゃないかというちゃんとしたことを余り申し上げられませんけれども、どうも失礼しました。
○金参考人 中野先生の結婚式のスピーチ、まさにおっしゃるとおりだと思うのでございます。私もそういうことを考えまして、下手な朝鮮語といいますか韓国語ですけれども、家では韓国語で通しておるわけです。 ただ、一つのエピソードを申し上げますと、これは私の友達で、韓国で生まれ育った韓国の弁護士さんですが、日本語を勉強したいというので、日本の大学に行くといって家族を連れて私の家の近くに一年ばかり来たことがあるのです。その子供さんがちょうど幼稚園に通うようになった私の息子と同じ年だったもので、同じ幼稚園に通ったのですが、その二人の子供が、私はいませんでしたが、母親を交えて話しているときに、私の子供が、これは韓国語で言ったのですが、母親に、お母さん、日本では韓国語を話すと人は変な目で見るよと言ったのですね。それを聞いておった韓国から来た韓国の弁護士さんの息子さんが、変な目じゃないんだ、ばかにした目で見るんだというふうに言ったのですね。まだ幼稚園に行ったばかりの子供が、日本の社会ではそれを感じるわけですね。日本で生まれた人じゃなくて韓国から来た、まさに両親とも韓国の弁護士夫婦の子供さんが、そういうふうなことを日本の幼稚園に少し行っただけで感じる。 そういう日本の客観状況があるというときに、韓国人として恥じずに強く生きろということを、私ども口ではしょっちゅう言って、そういう形で自分らに自戒も含めて言っておりますけれども、まだ日本の客観状況がなかなかそれを容認するようなところにまではいっていないということを御理解いただきたいと思うのです。 それからもう一つは、私はよく日本で、こういう在日朝鮮人、自分自身の問題でございますので、日本の社会ができるだけ開かれた社会になってほしいというふうに常々言っているわけでございますけれども、韓国に向けても、韓国ももっと開かれた社会にならなければいけない、特に日本に対して外国人の人権云々と言うのであれば、韓国内の外国人に対する人権、それをきちっとやらないとやはり説得力を持ちませんよと。確かにまだ韓国はGNP一人当たり五千ドルの国でございまして、日本のようにその五倍いっている国と違いますので、それはその国の発展状況に応じた外国人政策というのはあろうかと思いますけれども、しかしそれは、方向性としてはそういう形でやらなければいかぬということは常々言っておりますし、韓国がそういう社会になることを私も望んでおるわけでございます。 それから、韓国系日本人という考え方でございますけれども、これは、先ほど申しましたように日本の社会は、韓国系日本人として存在することを現状はなかなか容認しない。例えば、司法試験に合格してもうあしたでも検察官になれる、裁判官になれるという人がなぜ本名でやれないのか。法務省が強要しているかどうかは別として、なぜ本人がその気になってそういうことがやれるような社会にならないのか。むしろそれが日本の社会を豊かにするのじゃないかと私は思うのですが、しかしまだ現在までのところそういう人が出てきていない。むしろ、韓国籍、朝鮮籍を持っている人ですらなかなか本名を名のれない。 特に日本の学校に通っている在日の子弟が、最近は日本の先生方にも非常に御理解のある先生が多くなりまして、まず民族意識の第一歩は本名を名のることからだと言って、学校でそういう教育をしてくれる先生方もふえてきておるのでございますけれども、十人入ってきた生徒さんを中学なり高校なり三年間一生懸命そういうふうに教育をして、卒業式で辛うじて本名を名のれるようになるのが一、二名だというのですね。その一、二名が、卒業式の全校生徒の前で、涙を流しながらすべてを、自分が本名を名のるに至った経緯を話すというのですね。 当たり前のことですね、自分が生まれ育って持った本名を名のるのに何で涙を流さなければいけないのかという、これが日本の社会の現状であるということを御理解いただきたいということですね。なかなか韓国系日本人として生きるという生き方が、日本の社会は、観念的には考えられても、現実的にはなかなか難しかろう。 一つの例証としまして、例えばそういう形で帰化した十五万人、私の知るところでは、大体そういう当時の日本の法務省の政策でしたから、日本名で帰化している。創氏改名の名前で。仮に、じゃ日本が多民族社会あるいは韓国系日本人のそういうものを認める、かつて帰化するときに日本名で帰化させた人間に対しては、韓国の姓に戻りたいといった場合に、届け出のみで制度的にそれを認めるという法制度を果たして準備できるかどうか。むしろそういうことを始めていくことが韓国系日本人への、日本側がやっていく一つの道じゃないかと私は思うわけです。 それからもう一つ、韓国系日本人という考え方が出てくる背景には、やはり民族国家間の対立があって、民族国家間の対立がある限り外国人と日本国民との間にはしょせんは法的地位の違いはどこかにあるのだ、例えば参政権の点とか、そういうことの考えが基本的前提にあるのであろうと私は考えるのですが、しかしこの民族国家の枠組みが、外国人と日本国民が永劫に法的地位が違うのだというような民族国家の枠組みの論理が、果たしてこれから先何年間有効性を保ち得るか。それは何年かは有効性を保ち得るでしょうけれども、恐らく僕は一世紀は有効性を保ち得ないのじゃないかと思うのです。 だから、そういうところから見れば、何も国籍を変えることによってみずからの法的地位の差別を解消していくという方向にいくのじゃなくて、国籍の意味が相対化されてくる、そういう方向に向けての方向性というのは、その国内で外国人として生きることにむしろ積極的意味があるのじゃないか、私はそういうふうに常々思っておるわけでございます。 それからもう一つは、韓国系日本人の道がもう一つ時期尚早だと私が申し上げたいのは、日韓の関係を見たときに、例えば私が韓国側に日本はそんな悪い国じゃないというような形で弁解するときにでも、私が日本国籍を持った立場でやるよりは、韓国籍を持った立場でやった方がはるかに説得力があるのです。それは、日韓の戦後処理がまだきちっとついておらない、謝罪の問題も含めて。何かあるごとに謝る、謝らないという問題が出る。一方では、日朝の国交回復というのはまだなされておらないわけですから、そういう現状で韓国系日本人への道ということは、在日朝鮮人にとって必ずしも日韓・日朝のかけ橋になるような道ではない、現状を私はそういうふうに考えておるわけでございます。 答えになったかどうかわかりませんが……。
○中野委員 ありがとうございました。
○伊藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。大変ありがとうございました。 どうぞ御退席をお願いいたします。 速記をとめてください。 〔速記中止〕
○伊藤委員長 速記を起こしてください。 ─────────────
○伊藤委員長 質疑を続行いたします。岡崎宏美君。
○岡崎(宏)委員 きょうの朝から引き続き質疑があるわけですが、私の社会党の他の議員の方からもこの特例法案については先日から引き続いて質疑も行われておりますし、先ほど参考人の皆さんからもお話をいただいた中で、私たちは今後にまだ大きな課題を持っているというふうにも思いますので、この特例法案を考えるに当たっても同時に大切にしていきたい課題として、外国人登録法にかかわる問題について私はお尋ねをしたいと思います。 〔委員長退席、星野委員長代理着席〕 ことしの一月十日に交わされました覚書の中でも外登法にかかわる合意事項がございますので、この部分についてまず確認をお願いをしたいと思います。この合意事項については在日韓国人の方のみならず在日朝鮮人、そして在日台湾人の方にも適用されるものと受けとめてよろしいでしょうか。
○左藤国務大臣 本年一月十日の日韓両国外相の署名いたしました覚書におきまして、在日韓国人について今後二年以内に指紋押捺にかわる措置を実施できるよう所要の改正法案を次期通常国会に提出するということを明らかにしたわけでございます。そして今指紋押捺にかわる手段の開発など一連の作業を進めておるわけでございますが、この作業に当たりましては、日本におられる在日の韓国人と同様、歴史的経緯及び定住性を有する在日朝鮮人等の存在を念頭に置いて検討をいたしておるところでございます。
○岡崎(宏)委員 今大臣もおっしゃったわけですが、覚書の中で「指紋押捺については、指紋押捺に代わる手段を出来る限り早期に開発し、これによって在日韓国人三世以下の子孫はもとより、在日韓国人一世及び二世についても指紋押捺を行わないこととする。」そうされた上で、「指紋の押捺に代わる手段については、写真、署名及び外国人登録に家族事項を加味することを中心に検討する。」こういうふうにございますけれども、具体的にどのようなものを現在検討されていらっしゃるのか、お願いをいたします。
○股野政府委員 この点、現在、ただいま大臣がお話しになりました基本的な方針というものに基づきまして制度を開発中でございます。まだ開発の途中でございますので具体策を固めるというところまでには来てないわけでございますが、開発に当たりまして基本的なポイントとしております点、これがまず三点ございまして、第一は、本人を特定する上での写真をどう活用するかという点でございます。これは、写真が本人であるということを十分確認し得るような鮮明な画像を得る、そういう方法など合理的なものが必要であろうということを検討しているところでございます。 二番目に、署名という点も一つ考慮の対象にしておりますが、署名というものもなかなかいろいろな問題がございますので、署名ということを本人確認の方式として考える場合に、実施のどういう方式が考えられるのかということを今鋭意検討しているというところでございます。 それから三番目に、家族事項というものを外国人登録に加味するということを検討しておるわけでございますが、この点もいろいろな観点から現在検討中でございまして、登録原票というものがございますので、それにその家族事項を書く場合、例えば父母、配偶者、子というような人々についての氏名や生年月日や続き柄といったものを先ほど申しました登録原票に記載していく、こういった内容で、今その具体的な姿について鋭意検討しておりまして、先ほど申し上げました我々の基本的な考え方として、ことしの一月の覚書で一つのタイムスケジュールというものをお示しいたしておりますので、それに沿って現在この具体的な方策を検討しているところでございます。
○岡崎(宏)委員 検討中なので具体的な部分まで余り細かく言えないということなのでしょうけれども、写真の活用というのは、現在日本の中でもいろいろな証明に本人を確認するための写真というものが通っておりまして、できるだけこれは簡単であるべきだと思いますし、その署名という分も今検討の中にあったわけですが、その際、現在署名ということを考えて検討されている中で、民族の固有の文字、これを使うということも含めて検討されていらっしゃるでしょうか。
○股野政府委員 まさにこの署名ということが、どういう文字を使うことが署名として有効であるか、また先ほど申し上げましたように、本人を本人であると確認するための一つの手段としてこの署名ということがなければいかぬということがその署名の意義でございますので、そうするとそれがどういう文字が適当なのか、これはよく考えなければいけない点がございます。そういう意味で、現時点では、大変恐縮でございますが、どういう文字によるべきであるかということそのものも今一生懸命検討しているという状況でございます。
○岡崎(宏)委員 きょうそこの部分だけでやりとりをするわけにもいきませんし、今後の問題として、特にこの外登法の関係については政府の方からも恐らく改正を提案されるだろうということもございますので、そのときにまた私たちとしては意見を言いたいと思います。ただ前提として、どの国籍の人であれ、私たちがこの今の日本で一緒に生きていくというときに、それぞれの人たちが持つ誇りというものを大切にし得るようなものでなければならない、決してここに住む外国の人たちを管理していくためのものであってはいけないということで考えていただきたいと思います。 今も、指紋の押捺を廃止していく、なくしていくということがスケジュールとして上がってきている、こういうことでしたけれども、現在、なくそうというところまでは来た、しかし法改正施行まではまだ今の時点では進んでいない。この期間内に新たに登録される方がないとは言えませんね。その方に対しては、指紋の押捺をすることが現時点では義務づけられております。しかし、今いろいろな経過の中でなくそうということになったときに、しかもそれがすぐ目の前におおよそ見えているときに、まだ法施行がされていないから、改正されていないからといって指紋の押捺を義務づけるのはどうかと思うのですが、先にとにかく指紋の押捺だけはやめましょう、こういう改正をするお気持ちはございませんか。
○股野政府委員 御指摘の点は、この指紋押捺にかわる手段を開発する時期との関連で、我々政府部内、また関係者、そしてさらには具体的に韓国側とのお話し合いもありましたので、いろいろな点からの御論議がありまして、我々内部でも多角的な検討をいたしました。基本的には、今委員御指摘のとおり、今後二年以内というタイムスケジュールの中で指紋押捺ということは撤廃されていく、そしてそれにかわる手段が導入されるということでございますが、何分この指紋押捺が本人を特定するための手段として非常に重要な意味合いをこれまで持ってきている。それにかわるものがない段階で本人を特定する手段がなくなってしまうということは、これは制度上とてもそのままでいいということにはいかない要素があります。 そこで、いろいろこの問題も検討いたしましたが、まず、現在の法体制のもとでは、委員御指摘のとおり一定の年齢、具体的には十六歳になられますと、外国人の方に指紋押捺をしていただく義務が生じます。これは現行法上まずそういう義務がございますので、もし仮にその点について何か暫定措置を考えるとしても、やはりそれを改める法的手段が必要でございます。 さて、そういう法的手段を講ずるということについての問題点と、それから今目前にまでその指紋押捺にかわる手段を開発するという時期が来ているときに、そのための開発とまた法的な新たな措置というものと両方いろいろ考えた結果でございますが、非常に早い期間に現行制度について指紋押捺にかわる措置を開発するということ、これをもってこの問題に対応させていただくのが一番堅実的な道であろうという結論を得ておるわけでございます。 したがって、この点について現在そういう法制度があるわけでございますので、その間は、法務省当局としては、義務の年齢に達せられた方、義務を持っておられる方はやはりこの現在の法制度についてそれを守っていただきたいということ、しかし同時に、日本政府としてはこれにかわる手段の開発については最大限急いで行うということ、この二つのことをもって対処させていただくということでございます。
○岡崎(宏)委員 最大限早期にということも含めて譲ったとしても、仮に該当した人が、私は指紋を押すのは嫌だ、こういうふうにおっしゃった場合に、今の場合でしたらこれは違反ということになって刑事罰に当たってまいります。しかしこれは、今回特例法をつくろうという考え方からいっても、タイムリミットをつくりながら改善していこうという考え方からしても、やはり不合理ではないかと思います。せめて告発はしない、こういう法務省、大臣の考えを各関係のところに通達するという運用上の問題というのは、これはできるのではないでしょうか。
○股野政府委員 大変難しい御指摘でございます。やはり法秩序を維持していくという立場にあります法務省当局としては、本人のお気持ちが仮に指紋押捺をしたくないということであっても、法律上の義務はひとつ守っていただきたいと申さざるを得ないわけでございます。また、それではそれに対する違反者についてどう対応するかということについて、今御指摘のような告発をしないということをまた法務省当局として言うことも非常に困難があるということでございます。 御存じのとおり、この問題についての全般の取り扱いは、昭和六十二年の外国人登録法の改正で、指紋押捺について一回押すということがあればいいという基本的な改革を行っているという経緯があり、さらにその後、指紋押捺制度のあり方について、国会でのいろいろな御論議も踏まえての検討も当局として行ってきたということはございますので、そういういろいろなことを考えてこの問題について対応させていただいている。政府としては、そういう意味でいろいろなことを考えながらこの問題については対応させていただいているということが、私どもとして申し上げることであろうかと思います。
○岡崎(宏)委員 法があるから守って当たり前というか、守るようにというのは一つの筋ではありますけれども、しかし、私は何で今回改善に向けて動き出したのかということを考えたときに、それを大事にしようとするなら、人権というものを法務省は本当に大事にしようとするなら、あえてもう目の前に、これはやはり我々としてはあってはおかしい制度として、なくしたいからというものについて嫌だと言う人が出てきた場合に、しかも一回きりだというけれども、その最初の一回に当たる人が嫌だと言うときに、それを告発していけばしかも刑事罰に当たる、言ってみれば犯罪人扱いをされ得るということに関しては、これは私は、法務省としては勇気のある判断をされてもいいのではないかと思うのですが、あえてもう一度お聞きをいたします。
○股野政府委員 先ほど申し上げたとおりでございまして、法の立場ということから言うと、やはり一つの、そこには基本的なものも守らなければならない。ただ、この問題については、先ほど来その指紋押捺ということの扱いに関しまして、政府側の制度も、そしてまた今後の取り組み方についてもいろいろ新しい考え方を取り入れてきているところでございますので、違反者に対する対応ということについてもそういうことも念頭に置いた上での対応をしている、こういうことでございます。
○岡崎(宏)委員 私は、あえて国の法律が、その人間が、特に一人の人が社会的に何にも悪いこともしていないのに、しかもこれまでの経緯で私たちは前に向かって進もうとしているときに、法が新たに人権を侵害するというふうなことを生まないためにも、ぜひ今とは言いませんけれども、そういう決断を求めておきたいと思います。指紋押捺をやめていく中で、これまでに皆さんに押していただいたといいますか、そういう資料がたくさんあるはずなんですけれども、これの取り扱いについてどういうふうにされていくおつもりでしょうか。
○股野政府委員 委員御指摘のとおり、これまでに指紋押捺をなさっておられる人々について、まずその登録原票に押された指紋というものがございますが、そういうものは、これは各市区町村側で保存がされております。他方、この指紋をもう一つ指紋原紙というものに押していただいておりまして、その指紋原紙の方は、これは法務省側で保管をしておるという状況がございます。 さて、そこで今度の、現在検討中でございますが、外国人登録法の改正法案を国会でお諮りをして新しい法体制というものが将来できた段階において、ではこの二つの種類の指紋の記録というものをどうするかということが確かに考えなければならない点でございますが、これもまさにこの外国人登録制度のあり方についてとの関連で今考えている、検討中の課題でございます。
○岡崎(宏)委員 参考までに教えてください。今どういう保管のされ方をしているんでしょうか、それぞれ。
○股野政府委員 これは、市区町村では市区町村側でそれぞれ保管され、法務省側では一括して法務省の側で、今の保管をしている中身はそれぞれ原票かあるいはその指紋押捺の原紙かという違いはありますが、それぞれの市区町村あるいは法務本省の側で保管をきちんとさせていただいているということでございます。
○岡崎(宏)委員 実は私が今お尋ねしたかったのは、現物を保管していらっしゃるのか、ちょっときのう説明していただいたときに、マイクロフィルムで保管をされているようなことをお伺いしたのですが、そういうことを具体的にどういう方法でされているかをちょっとお尋ねをしたいんです。
○股野政府委員 大変恐縮でございますが、昨日どういう御説明を申し上げたか私もよく存じませんが、原票はやはり原票そのものでございます。 それから、法務省側で保管しておる原紙、こも私自身見ましたが、原紙そのものを保管いたしております。
○岡崎(宏)委員 時間ですからあれですが、もう一つ、登録証明書調製用原紙というのがありますね、写す際の。あれはどういうふうになっておりますか。今何か、もう既に使った後は廃棄をしているというふうにもちょっとお聞きをしたのですけれども。
○股野政府委員 これは、今の登録原票の上で指紋があるわけでございますが、そういったものを今度は外国人登録証明書として一つのカードにいたしまして、それを地方入国管理局に送っていただいて、そして外国人登録証明書にちゃんとつくって、そしてまたそれを御本人の手に行くように各関係の市区町村の方にお送りする、こういう作業があるわけでございますが、そういうときに、今の調製用の原紙で転写された指紋というのがございまして、これは、そういう地方入国管理局で証明書をつくりました後は、やはり調製用の原紙というものも市区町村側にお返しをいたしております。そこで、その市区町村側にお返しをしました後、市区町村側でその調製用の原紙は順次廃棄する、こういう扱いになっております。
○岡崎(宏)委員 現に指紋があるものが廃棄をされている一方で、登録原票、それから指紋の原紙の廃棄について、まだこれからの検討課題ということなんでしょうけれども、これは私は、ぜひ第三者の立ち会いのもとできちんと廃棄をしていく、これまでに済んだことは済んだこととしてずっと置いておくのではなくて、指紋を嫌だと思いながら押してきた人たちのその気持ちを考えても、きちんと廃棄をしていく、あるいは希望する人にはお返しをするということも含めて考えていただいてもいいのではないかと思います。ともかくもうここから何とかすればいいんだということではなくて、過去にやってきた事実は、もう一つ一つの事務的なものも含めて事実だと思いますけれども、そこも含めてぜひきちんとやっていただきたいと思います。 もう時間が終わったそうですからなにですが、最後に要求だけいたします。 外国人登録証明書の常時携帯について、これも覚書の中で触れられております「常識的かつ弾力的な運用」を検討していくということになっております。しかし、この文言そのものでは極めてあいまいでして、当事者の人たちの気持ちからすれば、一つ間違えばこれによって犯罪人という扱いにもなりかねない。常に不安と、それから人としての誇りというもの、これを傷つけられていっている。私たちだったら自分の写真をつけたカードを、例えばおふろ屋さんに持っていくだろうか、あるいはスーパーに行くときも、お茶飲みに行くときも持っていないといけないであろうか、その途中であんた持っているかどうかと聞かれて、仮に持っていなかったときに、なぜだ、違反だということで追及されたら、そういうことを考えていきますと、この「常識的かつ弾力的な運用」というものは、やはり当事者の皆さんの気持ちというものをぜひ一番に酌んでいただくものでなくてはなりませんし、さっき指紋の押捺でも私お願いしましたが、国の法によって人権が侵害される、こういうふうな批判をいただくようなことがあってはならないということを忘れないでいただきたい。それを念頭に置いて具体的な案をぜひ早期に出していただきたいと思います。それをお願いをしまして終わります。
○星野委員長代理 御苦労さんでした。 北側一雄君。
○北側委員 それでは、午前中に引き続きまして質問をさせていただきます。 外国人登録の問題でございますけれども、午前中、指紋押捺にかわる手段について、開発され、実施されますのが二年後である。その実施までの間、十六歳を迎えて指紋押捺をすべき人の取り扱いについては、その運用は柔軟にしなければいけないというふうに私は考えますし、罰則の適用については絶対にすべきではないと考えております。ただ、先ほどからの御答弁を聞いておりますと、法律が残っているから仕方がないという御答弁でございますけれども、それはわかりました。それでは、仮にこの外国人登録法の十四条一項並びに十八条一項八号の罰則、この二つの指紋押捺に関する規定について、二年間適用猶予の法案を提出させていただいて、可決できればそれに従うということですね。
○股野政府委員 この点、先ほども申し上げましたとおりに、いろいろな角度から検討した結果でございますが、指紋押捺にかわる手段というものが一つあって、そこで本人が確認できるということであろうかと思いますので、やはりその問題との関連が明確にされる点が必要であろうかと思います。
○北側委員 私の質問は、二年間適用猶予の法案をつくればよろしいのですねと言っているのです。
○股野政府委員 まさにその猶予ということが、それではその本人をどういう手段で特定していくのかということとの関連で考えられなければならないので、今その二年間の例えば暫定措置といったようなことについても、そのような点での御検討及びそれにかわる措置といったものがそこにお考えいただかなければいけないのではないかというのが、我々の今まで考えているところでございます。
○北側委員 それでは、ちょっと時間がありませんので、今の問題については追って改めてやらせていただきたいと思います。 外国人登録原票というのがございます。今私こちらに書式を持っておるのですけれども、この外国人登録原票に刑務所など矯正施設への在監歴を記入するよう、法務省が市区町村に指示しておったというふうな事実があるのかどうか。具体的に言いますと、法務省の入国管理局がつくった内規の外国人登録事務取扱要領の「在監者等に関する特則」というのがありまして、そこに、市区町村長は、矯正施設の長から入監の通知を受けた場合、原票の備考欄に施設名と出入監年月日を記入すること、というふうな特則があるかのごとく書いてあるのですけれども、まず、こういう事実があるかどうか、御答弁をお願いしたいと思います。
○股野政府委員 この点については先般のこの委員会でもお取り上げをいただきまして、その際に御説明した経緯もございますが、この外国人登録法の趣旨が、基本的に外国人の居住関係ということを明らかにするという趣旨が基本でございます。 そこで、ただいま先生御指摘になりました外国人登録原票の備考欄というところに、その外国人の居住関係を明らかにするという趣旨から、もし当該外国人について矯正施設への入監があった、あるいは移監があり、出監ということがあったというような場合には、矯正施設の側から通報をいただくということ、そしてその旨だけが単に居住関係を明らかにするという意味で記載をされているという事実がございます。
○北側委員 私は、これは大変大きな問題じゃないかと思います。この外国人登録原票というのは、三十年とか三十五年とか、長期にわたって市町村の窓口に保管される原票でございますよね。その原票に、現在の居住先を知るためとはいえ、そういう必要性があるとはいえ、結果として過去の在監歴等もずっとこの備考欄に記載されてしまうというのは、やはり御本人のプライバシーといいますか、それを大きく侵害するものではないのか。そういう現在の居住先、いるところを確認する必要があるというのであれば、それは別途別の方法でやるべきであって、こういう三十年間も三十五年間も残るようなそうした原票にそういう在監歴をずっと残しておくというのは、私はおかしいと思います。いかがでしょうか。
○股野政府委員 この点、先ほど来申し上げておりますように、このことはあくまで居住関係を正確に把握するということの趣旨で出ていることでございまして、もとより登録原票というものをきちんと保管していくということによって、ただいま御指摘のような問題があってはならないと思っておるわけでございますが、この問題について我々は、外国人登録法という趣旨からの取り扱いということにしているわけでございます。今御指摘の観点というものがあるのではという御指摘、この点は我々としても心にはとめる必要があろうと思いますが、何分にも基本的な外国人登録法の運用にかかわる問題でもございますので大変難しい問題がありますが、そのような今お取り上げいただいたような視点から、すなわち矯正施設というところでの取り扱いについての人権というような観点から何か考えられるところがあるかどうか、これは今後考えてみなければならない点であろうかと思います。
○北側委員 いずれにしましても、備考欄に十年前、二十年前のそうした在監歴が残ってしまうわけですね。そこはもう現在の居住地でなくても残ってしまうわけなのです。結果としては在監歴をずっと記載しているのと変わらないわけなのです。それはもう全く不必要な記載であると言わざるを得ないと思います。現在の居住先がどこかということを知るためであるならば、そんな矯正施設の名前とか入った日、出た日まで詳しく書く必要は全くない、私はそのように思います。そういう記載については備考欄からなくしていただけるよう、御検討いただきますようお願いをいたします。ぜひ前向きに検討してください。よろしくお願いします。大臣、いかがでしょうか。
○股野政府委員 大変難しい点ですが、今委員もたまたま御指摘いただきましたように、現在の居住関係を把握するにはその点についてどうだろうかという御視点、過去の記録でそこまで書くことが必要であるかという点、こう幾つかごらんになられてそういう点もお感じになられたと思います。そういうようにいろいろこの点は難しい点がございます。特に、市区町村の側にしますと、一定の時間がたちますと、その居住関係というものをきちんと把握したいというときに御本人がどこにおられるのかわからないという事情が起こるのも、これも問題でございますので、そういう観点も含めて現在の居住関係という視点も考えなければならぬという点でございますが、今いろいろ御指摘いただきましたので、この点について今後どういうことが考えられるか、我々としていろいろ考えてみる必要はあろうかと思っております。
○北側委員 大臣、検察庁や警察じゃないわけなのですね。どうして外国人登録原票に結果として在監歴が残るような形での記載をしないといけないのか、私は大きな問題であると思います。別な方法でもできるはずです。大臣、どうでしょうか。
○左藤国務大臣 そうした本人の所在というものはどうだったかということ、それが犯罪で収監されたかとかそういうことでなくて、他から所在を知る方法があるとかいうふうなことであれば、何かそういった方法に切りかえていかなければいかぬだろうと思いますし、そういった面も含めまして検討さしていただきたいと思います。
○北側委員 ありがとうございました。それでは、時間がございませんので次へ行かしていただきますけれども、入管法の言うところの平和条約国籍離脱者という定義でございます。平和条約国籍離脱者の要件に当たらない人でなおかつ今回の法案と同じような取り扱いをしていくべき人が、少数ながらおられるわけなのですね。では、そういう方に対してどうしていくのかという問題をぜひお聞かせ願いたいのです。例えば戦前に一時帰国されて戦後に帰ってこられた方とか、それから事情があって戦後に一時帰国された方とか、さらには日本にいる家族を追って戦後日本に来た人とか、こういう方々については本案の適用はございません。いわゆる平和条約国籍離脱者には当たらないことになってしまいます。それはやはり問題であって、本法で言う特例永住者とできるだけ同様の取り扱いをしていかなきゃいけないんじゃないかと私は考えるものでございます。いかがでしょうか。
○股野政府委員 この点、まさにこの特例法というものの該当者の範囲の問題でございまして、いろいろな御議論をいただいているところであります。私どもも、この法律によってつくられる新しい法的地位というものが、格段に御当人のために有利な内容になっているということもひとつ考えなければいけないと思っておりますので、やはりどこかで一つの範囲を絞っていくということは必要であろうかと思います。 そこで、現在の法務省の考え方は、この問題についてのいろいろな検討を経て従来からとっておりました考え方として、昭和二十年の九月二日以前から引き続き本邦に在留している人ということを一つの範囲の線として出させていただいたわけでございます。そうすると、ただいま委員の御指摘のような、例えば一時戦後の時期に帰国をしてまた日本に来た人とか、あるいは戦後日本に入国をした人というのは該当しなくなってまいりますが、この問題についても、昭和四十年の日韓法的地位協定の締結時にいろいろな経緯がありまして、その際に法務大臣声明というものも発せられて、そういう方々について一つの日本政府としての配慮をすることを行った経緯があり、実質上そういうことによって、法務大臣による在留特別許可、さらにその後そのほとんどの方がまた申請をされて永住という資格をとっておられるということがございます。 そういった経緯も踏まえて、私どもとしては、こういう今のこの法律そのものの該当者という意味では一つの範囲というものを設けさせていただいておりますが、それに近接する立場の方々についての問題ということは、従来からの経緯を踏まえ、先ほど申し上げました法務大臣声明というものが昭和四十年にも出されている、そういう経緯も踏まえて配慮をしていく、それは一般入管法上での永住資格の取り扱いということも含めての、全体的な入管法の体系全体の中でできる限りの配慮をさせていただくということで対処していく考えでございます。
○北側委員 できるだけ今回の特例永住者の方々と同様の取り扱いを運用上していただきますよう、心からお願いを申し上げる次第でございます。 次に、これは結論だけ、答えだけで結構でございます。 ここの四条、五条の許可の意味なんですけれども、これは覊束裁量である、ですから申請があったら必ず許可しなければいけないという趣旨でございますよね。だから実質的には届け出制度とは何ら変わらないものであるというふうに考えてよろしいわけですね。 それともう一点、四条二項の「六十日以内」という届け出期間があるわけなんですけれども、この「六十日以内」を徒過した場合の取り扱いをどうされるか、その辺について御答弁をお願いします。
○股野政府委員 法的に申しますと、実は先生も御存じでいらっしゃると思いますが、やはり申請による許可と届け出というのでは、一つの違いがございます。ただ、この内容につきましては、ただいま先生がおっしゃったとおり、一定の要件を満たしておればこれは必ず許可しなければならぬということで、覊束的な規定になっておりますので、その行為として届け出の行為と類似した効果があるということは言えると思いますが、法的には、これは届け出とはまた別の申請と許可、こういうことになっております。 それからもう一つ、申請期限の問題でございますが、これは法的にこういうことを規定させていただいておりますけれども、従来からこういう問題の取り扱いについては、やむを得ざる事情があるといった場合には、当然こういう法律の趣旨というようなことももちろん考えた上で弾力的に対応させていただいております。
○北側委員 永住権を取得している外国人、在日韓国人の方々、朝鮮人の方々等の永住権を取得している外国人の方に、一定の要件のもとで地方参政権を与えることをそろそろ検討していってもいいのじゃないか。これは今すぐに結論が出てくる問題でないのは、もちろん承知の上で申しておるのですけれども、日韓覚書の中でも韓国の方から要請がございましたし、現実に今日本の社会にいる在日韓国人の方の例をとれば、自治会とかPTAとか、地域社会の中で本当に発展に貢献しておる方がたくさんおられるし、納税をきちんとされていても参政権がないために税金の使途のチェックができない、監査請求ができないというふうな状況なわけですね。外国の例では、スウェーデンやデンマークやノルウェーでは、地方参政権を外国人にも一定の要件で認めております。 大臣、例えば大臣の地元の生野区の場合ですと、十五万五千人の人口のうち四分の一の三万八千人が在日の方なんですね。ところで、今統一地方選挙をやっておりますけれども、生野区の市議会議員の定数は五なんです。南の住之江区の定数は四なんです。ところが、有権者数を見てみますと、生野区は九万五千人余、住之江区は有権者数が十万人余いるのですよ。それなのに住之江区の方が一つ定数が少ないわけなんです。なぜ少ないかといったら、この在日韓国人のような方々、そういう方々の人口も含めた上で定数をつくっているからなのです。 だから、私は、今申し上げたような趣旨から考えましたら、今すぐにどうこうということではなくて、そろそろ自治省でも検討していただいていいのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○谷合説明員 改めて申し上げるまでもございませんけれども、選挙は、公権力の行使とか公の意思決定に携わることになります公務員を選任する行為でございます。外国人にそうした選挙権を付与することについては極めて難しい問題があるというのが、私どもの考え方でございます。
○北側委員 私は、今すぐ結論を出せなんというような性急なことを言っているのではなくて、これまでの在日韓国人や朝鮮人の方々の歴史的な経緯、本当に日本でしか生きていけない方々なわけですよ。実際、地域社会の中で密着した生活をされて、地域社会の発展のために貢献されている。自治会などで役員もされている方がたくさんおられるわけですよ。そういう方々がたくさんおられる中で、地方参政権について認めていいのかどうか、日韓覚書でも韓国から要請があるわけなんですから、省内で検討することを開始してもいいのじゃないか。すぐにイエスと言えと言っているのじゃないのですよ。いかがですか。
○谷合説明員 日韓協議のときに韓国政府の方からそうした地方参政権についての要請があったということは事実でございますし、私どもそれに対しましては先ほど申し上げましたような考え方を述べさせていただいたところでございます。ただ、そうした要請があったという事実を踏まえて、覚書にもそうした記録がなされたというふうに承知をしております。 この問題については、事柄の性格上大変難しい問題が含まれておると考えておりますので、私どもとしては、現時点では先ほど申し上げましたような考え方を変えるわけにはいかないわけでございますが、そうした要請についての事実は十分受けとめさせていただいているということでございます。
○北側委員 非常に大切な問題、これはまた別の機会に時間をかけてやらせていただきたいと思います。 同じような質問なんですけれども、地方公務員への採用拡大の問題につきまして、日韓覚書の中で「採用機会の拡大が図られるよう地方公共団体を指導していく。」というふうに書かれております。この地方公務員への採用拡大、在日韓国人の方々、朝鮮人の方々の地方公務員への採用拡大について、具体的にどのように取り組んでいかれますのか、御答弁をお願いしたいと思います。
○金子説明員 先般の日韓三世協議の決着の際に、政府の方針をただいま先生お申し越しの点で表明したところでございますが、この趣旨につきましては、本年初めからの都道府県あるいは政令指定都市の総務部長あるいは総務局長会議等におきまして、種々説明をいたしております。また、個別の地方公共団体からの相談に対する助言等を通じまして、その周知徹底を図っているというような段階でございます。今後におきまして、地方公共団体におきまして当然の法理に抵触しないというような職種につきましては、外国人の採用機会の拡大を図るよう指導に努めているところでございます。
○北側委員 もっと具体的に御答弁いただきたかったのですけれども、時間が来ましたので終わります。 先ほどの地方参政権の問題にしろ地方公務員への採用拡大にしろ、公の意思形成にかかわるとか公の権力云々とか、そういう非常に抽象的な言葉で否定してしまうことには大きな問題があるのではないかというふうに私は考えております。 以上でございます。
○星野委員長代理 木島日出夫君。
○木島委員 午前中に引き続いて、これから再入国許可の問題についてお聞きをいたします。 今回の特例法によりましても、再入国許可の問題につきましては、期間が一年から四年に延びた、最長五年に延びたということは大きな前進であろうかと思いますが、実は先ほど来の参考人の意見として、田中宏先生からは、問題は期間じゃない、どういう場合に再入国の許可がおりるのか、そちらの方こそ問題であるという意見が述べられました。また、同じく参考人の金さんからも同様の意見が述べられまして、再入国許可の問題につきましては、外国人として扱って法務大臣の自由裁量に任せるのではなくて、旅券発行の要件と同じように日本人並みに扱うべきであるという意見が述べられました。 ところが、午前中の股野入管局長の答弁をお聞きをいたしますと、あくまでもこれは法務大臣の裁量である、そして在留状況、渡航目的、渡航先、渡航先の国と日本国との関係、国際情勢など総合勘案すると述べられました。そして、運用として特例法の趣旨を考慮するということにとどまりました。 そこで、まず大臣にお伺いいたしたいのですが、三人のうちお二人の参考人からかような意見が述べられたことに対してどういう所信なのか、お伺いをしたいと思います。 〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
○左藤国務大臣 お尋ねの件は、いろいろな条件とかそういうことについてどういうふうに考えるかという御趣旨であろうかと思いますけれども、やはり一つの公正、公平な規則のものは必要ではなかろうか、そのように何かの基準がなかったならば、全く自由裁量というふうなことであってはならないのじゃないか、私はこう思います。その裁量いたしますときの基準というものが公正、公平に行われなければならないのじゃないかと思うことが一つ。やはりそうしたことについて、客観情勢とかいろいろな問題がまた変わっていくというふうなこともありますので、そういう意味でも、そのときの情勢によって判断をしていくという、法務大臣の自由裁量というのはそういう意味での自由裁量であろう、こういうふうに考えます。
○木島委員 審議の中で再々、再入国許可の問題について、外国人登録法上の指紋押捺を拒絶した者に対して再入国許可を与えないという点について質問がなされておりました。昭和六十一年度版の「出入国管理」と題する法務省入国管理局の出版物を見ますと、昭和五十七年に外国人登録法の一部改正法が国会に提出されて、指紋押捺制度は維持されることになった。このときの国会で、私ども日本共産党から指紋押捺制度は全廃すべきであるという提案も出したのですが、否決されたわけであります。ここで「改正法の施行(五十七年十月一日)を機に、指紋押なつ拒否者に対しては原則として再入国を許可しないという方針で臨むこととした。」と大変厳しい指摘があるわけであります。そして昭和六十年中の不許可件数が三十六件で、そのうち三十一件が外国人登録法上の指紋押捺の拒否を理由とするものであるということが書かれております。 先ほど入管局長から、昭和六十二年の法改正以後は指紋押捺拒否者に対して、永住者については弾力的に運用しているという答弁がありました。昭和六十二年以降指紋押捺拒否を理由とする再入国許可が不許可になった例があるのかどうなのか、数字を示していただきたいと思います。
○股野政府委員 ただいまの委員からの御質問は、永住者等の資格を持つ者について、昭和六十二年以降指紋押捺拒否を理由として再入国許可を不許可になった例があるか、こういう御質問であろうかと思いますが、これは、昭和六十二年の改正以降についてはそのような不許可にした例はございません。
○木島委員 これは、指紋押捺拒否者で再入国許可の申請があったけれども全部許可したということでしょうか。そもそも申請がなかったということでしょうか。
○股野政府委員 再入国許可申請を出されて、それを許可したということでございます。
○木島委員 先ほど来、これから次期外登法の改正問題まで二年くらい時間がある。その間に仮に指紋押捺拒否者があっても、そのことゆえをもって再入国許可を不許可にするということはしないということを答弁していただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
○股野政府委員 ただいま申し上げましたように、この永住者等について、昭和六十二年の法改正以降、弾力的に対応してきているということがございます。また、今般こういう特例法というものを提出をさせていただいておりますので、その特例法の趣旨ということも十分考えていく必要があると思いますので、そのようなことを十分踏まえて、弾力的な対応ということについては心がけてまいる所存でございます。
○木島委員 再入国許可問題について、指紋押捺拒否を理由としては不許可にしないということの運用が図られるであろうと思います。しかし、あくまでも本法が成立しても再入国許可問題については法務大臣の裁量に任されてしまう。在留状況とか渡航目的とか国際情勢など、全くどのようにでも解釈できる事由によって不許可になるおそれは厳然として残るわけであります。 そこで、こういう日本の今の永住外国人、特に今回問題になっております特例許可永住者、特別許可永住者に対する処遇がいかに国際的におくれているかの問題について次にお聞きいたしたいのですが、外務省お呼びしておりますのでお聞きします。 現在、国連で出国・帰国の権利宣言に関する論議が進められております。一九八八年に国連の差別防止・少数者保護小委員会に、ムバンガ・チポヤさんという方から出国・帰国権利宣言草案が提出されました。その草案の十一条によりますと、「居住国を離れる合法的永住者は、その国に帰る権利を否定されない。」ということが明文で規定されております。このような宣言案が、一九八八年に私が述べた小委員会に提出されたかどうか、まずその事実をお聞かせ願います。
○角崎説明員 お答え申し上げます。 先生御指摘のとおり、宣言草案が現在国連人権委員会の下部機関でございます差別防止・少数者保護小委員会の下に設置されました作業部会におきまして審議されております。現在、前回、昨年の作業部会におきまして第一条より第四条までの審議を行ったところでございます。
○木島委員 八八年にチポヤさんから出された宣言草案の第十一条に、私が今述べた条文があることも事実ですか。
○角崎説明員 第十一条は、居住国を離れる合法的永久居住者は、本宣言第七条に規定されているのと同様の合理的理由がある場合を除き、その国に戻る権利を否定されないという条項でございます。
○木島委員 第七条にいろいろ制約を記載した幾つかの文言があるわけなんですが、例えばその中の「「国の安全」に基づく制約」というのがあるのですが、それなんかを見ましても、「権利の行使が明らかな、緊急かつ重大な危険を国家に生じさせる事態においてのみ、援用できる。」とありましたり、「「公の秩序」に基づく制約」というのもあるのですが、これを見ますと、「保護されるべき特定の利益と直接に関係するものでなければならない。」非常に制約が強いわけでありまして、少なくともこの宣言草案が成立して第十一条の文言あるいは第七条の文言がそのまま採択されるようになりますと、再三法務省の入管局長が答弁されているような、在留状況とか渡航目的とか国際情勢などを理由にして再入国許可をしないというようなことは、国際的には通用しないということになると思うわけであります。 そこで、この権利宣言、特に十一条について、国連のこの小委員会から日本政府に対して意見を求められたことがあるかどうか。それに対して日本政府としてはこの十一条に対してどういう意見を述べたのか、教えていただきたいと思います。
○角崎説明員 お答え申し上げます。 日本政府は、宣言文全体につきましてコメントを求められました。我が国は、こういう宣言案が国際的な文書として作成される以上、普遍的な内容のものとする必要がございます。それで、そのためには、同小委員会の作成いたします草案は、各国からの意見を踏まえて十分な議論が尽くされる必要があるというふうに考え、国連に対しましてはそういう観点からコメントを提出いたしました。 御指摘の第十一条でございますが、合法的永住者の居住国に帰る権利について規定されているところでございます。我が国といたしましては、合法的永住者といえども外国人である以上、その再入国も基本的には外国人の他国への入国に当たり、外国人の入国を認めるか否かは主権国家の裁量に任されているのであって、合法的永住者の居住国への帰国権が国際法上確立されているとは言えないという認識に立ちまして、同条の削除を求めた次第でございます。
○木島委員 国際人権上非常におくれた態度を、日本政府はこの問題におとりになっている。こんな態度をとっているのは西ドイツぐらいしかないわけですよ。この宣言草案に対する各国のコメントも出ております。例えば国連難民高等弁務官事務所、こういうところからどういう意見が出ているかというと、先ほど私が指摘した第十一条の文章の中の、「この宣言第七条に基づいて適用されるのと同様の正当な理由を除き、居住国を離れる合法的永住者は、その国に帰る権利を否定されない。」という文章なんですが、国連難民高等弁務官事務所の意見は、「この宣言第七条に基づいて適用されるのと同様の正当な理由を除き、」という、そういう制約を取っ払え、無条件で「居住国を離れる合法的永住者は、その国に帰る権利を否定されない。」そういう宣言をつくれと言っているのです。日本政府のとった態度とまるっきり違うわけであります。それから、ポルトガルとかフィンランドなども、合法的永住者はもちろんその国に帰る権利を認めろという意見を言っているわけですね。なぜこんなおくれた態度を日本政府はとるのですか。外務省は、そういう態度をこの小委員会に報告したときに、法務省と相談したのですか。
○角崎説明員 お答え申し上げます。 当然のことながら、関係省庁とは協議をした上でコメントを提出いたしております。
○木島委員 法務省の、この宣言草案十一条に関する態度はどうだったのですか。
○股野政府委員 この問題、ただいま外務省側から御答弁申し上げましたような、国際法上こういう問題がどうなっているかというようなことも踏まえての検討を我々でも行ったわけでございますが、合法的永住者が居住国へ帰国する権利というものが国際法上まだ認められたというところまではきていない、こういう認識で、私どもはこの条項について問題があるという考え方を持っております。
○木島委員 いや、既に認められたからそれを日本政府が認めろというのじゃないのですよ。国際社会でそういうルールをこれからつくっていきましょうということで、小委員会へ権利宣言草案が出たわけでしょう。それで小委員会から世界の各国に、こういう国際間のルールづくりをするけれどもどういう意見でしょうかという照会が来たわけでしょう。それに対して、そんなものをつくってはならぬという態度を日本政府が国連に対して行うということは、国際人権が一歩前進するのを足を引っ張っているということになるのじゃないですか。法務大臣、どうですか、こんな態度を日本政府がとることが国際社会にとっていいことかどうか、お答えください。
○左藤国務大臣 今のお話はいろいろの意見があろうかと思いますが、まだ日本の中におきましてそういったところの認識までに到達していないというようなことから、第一段階におきましては今のそういった回答をしたのではなかろうか、このように思います。
○木島委員 実は、国連で今作業が行われているこの出国・帰国の権利宣言づくりは、別に今ここで論じられているような、特別な歴史的経緯があって日本に在留している在日朝鮮人、在日韓国人、在日台湾人の問題ではない、一般論としてこういうルールづくりをしようと言っているときなんですよ。ましてや歴史的な事情があって、侵略戦争があって、そして併合があって、それに基づいて強制連行等のような歴史的に恥ずべき行為を経た上で日本に連れてこられた皆さんがやむなく日本に居住する、日本の国内でしか生活ができない、そしてもう既にそれが二世、三世の時代になっている。先ほど金参考人は、自分らから見るともう四世の時代になっている、もう日本の国の中でしか居住できない人たちが九〇%になっているとおっしゃっておったわけなんですよ。まさにもう日本人と同じじゃないか。ただ、国籍は韓国だ、民族としては韓国人である、しかしその民族としての誇りを持って日本人と共生したい、こういう人は合法的永住者の中でも特に保護されなきゃいかぬ、特に出国と入国の自由は認めなければいかぬと思うのですよ。ところが、法務省あるいは外務省、日本政府がこういう国際的なルールづくりに対しても足を引っ張るなんという態度が変わらなければ、在日韓国・朝鮮人の法的地位というのは本当に守られないんじゃないかと私は思うわけであります。 どうでしょうか、本法案が出されてきて、これは一歩前進の法案ですから今後が大事だと言われているわけでしょう。そういうかたくなな態度は少なくとも撤回をして、そういう国際人権を前進させる立場に法務省は立つべきだと思うわけでありますが、法務大臣、どうでしょう。
○股野政府委員 いろいろ御論議があるところだと思います。しかし、この法案を提出させていただきました私どもの考え方というものについては、これは従来の、今までのいろいろな法制度の大幅な変更等前進を遂げよう、こういう内容になっておりまして、やはりこういう問題については、一歩一歩国内でのいろいろな意見、日本の国内でのいろいろなほかの制度との関連、法体系全般等を見ながら着実に進めていくということが必要ではなかろうかと思いますし、特にこの特例法案につきましては、私どもも思い切った内容にさせていただいており、またその運用に当たっても、従来の経緯等について十分尊重した運用を図ってまいる、こういう態度でございますので、そういう私どもの努力のほどもやはりひとつ御理解願いたいところでございます。
○木島委員 終わりますが、国際社会は、長い時間をかけて一歩一歩合法的永住者の出国、帰国の権利を認めていこうじゃないか、一歩一歩進んできているのですよ。この段階に至ってまだそういう態度を日本政府、法務省がとっていることはまことに遺憾であるということを私申し述べまして、質問を終わらせていただきます。
○伊藤委員長 中野寛成君。
○中野委員 午前中に基本的なスタンスにつきましてお尋ねいたしましたので、これからは若干具体的な問題について、対象者の皆さんが心配をしておられることがありますので、お尋ねを申し上げたいと思います。 まず、引き続き在留する者には、退去強制事由に該当して在留特別許可を受けた者や、退去強制令書の発付を受けて現在収容または仮放免中の者がいるわけでございます。国へまだ帰っていない人たちがいるわけでございます。そして、新法における退去強制事由には法律が変われば該当しない、こういう人たちの場合は、この新法が施行されることによって救済されますか。
○股野政府委員 引き続き在留する者ということにつきまして、ただいま御指摘の在留特別許可を受けたという人たちについて考えますと、在留特別許可を受けたということは、本邦での在留を否定されたということではございませんので、したがって、本邦に引き続き在留を認められた者ということで、本邦での在留は継続している、こういう扱いで臨む考え方でございます。 それからまた、退去強制令書の発付を受けて収容をされているというような場合でも、その後何らかの事情で退去強制令書というものの発付処分が取り消された、こういうことも現にあるわけでございますし、それで在留特別許可が付与される、こうなりますと、やはりこれも同様に引き続き在留する者として取り扱うことにいたしております。
○中野委員 次に、第五条の対象者は、平和条約国籍離脱者でありまして現在永住の資格を有しない者ということでありますが、これらの者について覊束的に永住を許可するということでありますけれども、これも申請さえすれば特別永住者として認めるという趣旨かどうか。
○股野政府委員 御指摘の点、今の第五条の対象者というものについては、在留期間の定めのある在留資格というものを有しているということになってまいるのですが、そういう方たちは、在留期間の更新等のために地方入国管理局に出頭をされます。そういうときに特別永住の申請をしていただければ、それは覊束的に永住を許可しようということでございまして、お話しのとおりでございます。
○中野委員 この手続、申請に当たりまして六十日以内という規定があります。この六十日以内に申請できない場合、すなわち外国で生まれた、天災や人災に遭ったというふうなことで相当な理由がある場合には、現在は、こういう場合は後日申請をしても認められるという弾力性があるわけでありますが、これはこの新法においても適用されますか。
○股野政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますように、やむを得ない事情というものがあった場合に、六十日以内に申請ができなければ、これはそういうやむを得ない事情というものを踏まえて弾力的に対応してまいります。
○中野委員 生まれてからしばらくの間は二重国籍者になるということになりますが、その後、一定年齢に達しまして日本国籍を離脱する子供たちも対象となりますか。
○股野政府委員 おっしゃるとおりでございます。
○中野委員 次に、先ほど参考人に意見を述べていただきましたときにも実はお尋ねしたことでありますが、日本国籍者、日本人で、婚姻、養子縁組などの理由で特別永住対象の国籍に変更した、例えば韓国人と結婚をして、そしてやっぱり配偶者と同じ国籍、同じ境遇にありたいという気持ちで韓国籍にいわゆる国籍転換をしたという場合に、これは手続をとりますと、国籍取得の自由、選択の自由はあるわけでありますが、そうすると、自分で望んで韓国籍になったんだという理由は一方あります。しかしながら、やはりこれは、夫婦または親子ということになりますと、一つの家族として、単位として、むしろ同じ境遇を与えてあげるということが人道上必要なのではないか、私はこう思うのであります。 いわゆる日本に住んでいる韓国人であるがゆえにこの特別永住が認められる、しかしその人と結婚をした日本人が韓国籍に変わりますと特別永住者ではない、この逆転現象が起こるわけであります。また、そういう御夫婦が日本で就職をし、そして海外へ派遣をされるということになると、帰国するときに別の待遇を受けるという問題が起こるわけであります。このことについては、この新法は配慮した内容にはなっていないわけでありますけれども、これらのことについて、むしろ運用上配慮する、もしくは将来の検討課題として前向きに取り組まれる御意思はありませんか。
○股野政府委員 一つの逆転現象という御説明でございましたが、あるそういう状況、法的に、つまり元日本人だった人の地位ということになってまいりますので、その点、確かにこの特例法の対象には入ってないわけでございますが、しかし元日本人でございますので、これは日本政府としても、日本での在留ということについては最大限の配慮をすべきだと思います。そこで、当面もしそういうことが起こりますと、これはまあ一般入管法のもとでの永住ということについてできる限り配慮をしていくということになろうかと思います。この新しい特例法でどうするかといった点はひとつ検討課題ということではあると思いますが、当面は一般入管法のもとで永住ということについて最大限の手当てをいたすという考えでございます。
○中野委員 先ほど来同僚委員からもたびたび質問されておりますが、この強制退去に関連をいたしまして「日本国の重大な利益」、そして一方で「外交上の重大な利益」という部分もあります。もちろん外交上の重大な利益とは日本国の重大な利益の一部をなすものであるというふうには思いますけれども、これらについては、この法律の趣旨からして極めて厳しく限定的に解釈をしなければならないであろう、こう思うのであります。法務大臣の認定、まあ自由裁量という言葉を使っておりますが、法務大臣も自由裁量で勝手にやるということは当然お考えではないでしょうし、むしろ正確には、法務大臣の認定が下される場合にこれは極めて限定的に解釈しなければなりませんが、これに該当するような事例がここ何年間かの間にありましたか。また、今後これらについての法務省の基本的な姿勢をお聞きしたいと思います。
○股野政府委員 全く御指摘のとおり、退去強制事由で、第九条でございますが、ここに書かれているような内容について限定的に扱っていくべきは、これは当然でございます。特に「日本国の重大な利益が害された」という表現は、これは全体の流れが単なる個人犯罪とかあるいは通常の社会的な犯罪ということでなくて、あくまで国家の基本にかかわるようなそういう犯罪ということでございますので、これはそういうことで限定的に運用していくべきものだと思っております。また、じゃ、近年においてそういうようなカテゴリーでの退去強制があったかという点でございますが、私どもの現在の承知している限りではございません。
○中野委員 同じく再入国につきましても、これまたよく法務大臣の自由裁量とか、また法務省が制裁手段としてこの再入国許可を利用したとかという指摘がなされるわけでございます。これらにつきましても、やはりこの法の趣旨にのっとって厳格にといいますか、限定的にといいますか、むしろこれこそ覊束的に認めるというくらいの姿勢を基本的に持ってもらわなければなりません。このことについて法務省の御見解をお聞きします。
○股野政府委員 まさにこの再入国許可の規定の適用に当たりましては、この法の趣旨を十分に尊重した運用が必要であると思いますし、その意味において、特段の事情というものがない場合において、その扱いについては、この法の趣旨が十分に生かされるような規定の運用を行っていくべきであると思っております。
○中野委員 これらの審査に当たりまして、言うならば一々法務大臣が御自身で書類を読んで、御自身で判断をされてということはないわけであります。担当の皆さんがそれぞれ審査をし、判断をされると思いますけれども、これも恐らくは、私の承知する限り、特定の担当者が一人で判断するというふうなことではないと思います。実際上、現在法務省はどういう運用といいますか手続をとっておられますか。また、今後そういうことについての注意の仕方をお考えですか。
○股野政府委員 許可をする場合ということは、これはもう御本人の方々の便宜を考えまして、できるだけ簡易に決裁がなされるようにいたしております。問題はどういう場合に不許可とするかということでございまして、現行の法体制においても、不許可ということは、これは何かそこに特段の事情があるといったことでございますので、これについては単に、例えば申請を受け付ける地方入国管理局の手元に置くことにとどめませんで、必ず法務本省の方に進達をいたし、法務本省の方で十分な検討というプロセスを経るようにいたしておりまして、その意味において、決して一部の人が十分な考慮なくして不許可にするというようなことがないように取り計らっております。
○中野委員 最後に法務大臣にお尋ねをいたしますが、これはもう基本的なことで結構でございます。これは、入管法の問題は人道的な意味ももちろんあります。そして先ほど来審議をしてまいりましたように、韓国や朝鮮や中国、台湾、いわゆる旧植民地に対する歴史的な経過の中で、日本がなすべき当然の義務としてなさなければならない部分もあります。同時にまた、日本が極めて人道的な国である、また権利を大切にする国である、また諸外国との友好関係を極めて重要に考える国であるということを全世界に示す一つの要素でもあります。 そういう意味では、歴史的経過を踏まえながら極めて前向きに、単に閉鎖的に考えるのではなくて、まさにいかにして開放的にし得るかという視点において考えなければならないであろうというふうに思うのでありまして、今後の運用またその他の諸問題についての検討、そういう中において十分その精神が生かされるように御努力をいただきたいと思いますし、また大臣の地元では、昨年からこの韓国からの、いわゆる朝鮮通信使の歴史を振り返るために四天王寺ワッソーなどが企画をされて、大変な人気を呼んでおりますし、また、そういう歴史があったということを学校では教えられませんけれども、むしろ具体的な実際のひな形を見て改めて認識を強くした人たちもたくさんいるわけでございます。 そういうことなどを踏まえながらしっかりとした歴史観を持ち、しっかりとした人道的精神を持っていく、そのことのための一つの象徴でもあるというふうに思うのでございまして、今後のこの法の運用にかけた、またその他の問題にかけます基本的な心構えについて、結びに大臣からお伺いをいたしたいと思います。
○左藤国務大臣 今先生お話がございましたとおりの考え方でやらなければならないと思います。一つの歴史的な経緯、それからまた、そうした日本に今おられる、今度の適用の対象になられる方々、そうした方々の生活の一層の安定という問題と、それからもう一つは、やはり国際親善というふうな将来的な日本として当然考えていかなければならない問題、そういった点をあわせますと、単に法律の条文の問題だけでなくて、その運用の点につきましても特別の配慮を払っていかなきゃならない、このように考えるものでございます。
○中野委員 この問題については、いわゆる旧植民地出身者のためにやるのではなくて、まさに日本と日本国民の誇りと名誉にかけて、全世界に一つの指針を提言するという気持ちで、今後とも大臣今御答弁いただきましたような姿勢を堅持して御努力をいただきたいと御要請を申し上げて、終わりたいと思います。 どうもありがとうございました。 ─────────────
○伊藤委員長 この際、お諮りいたします。 ただいま審査中の小澤克介君外七名提出、日本国との平和条約の規定に基づき日本の国籍を離脱した者等についての出入国管理特別法案につきまして、提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ─────────────
○伊藤委員長 以上で内閣提出、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案に対する質疑は終局いたしました。 ─────────────
○伊藤委員長 この際、本案に対し、塩崎潤君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党の五派共同提案による修正案が提出されております。 提出者から趣旨の説明を求めます。中野寛成君。 ───────────── 「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱 した者等の出入国管理に関する特例法案に対 する修正案」 〔本号末尾に掲載〕 ─────────────
○中野委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。 本案の趣旨につきましては、既に、当委員会の質疑の過程で明らかになっておりますので、この際、案文の朗読をもって、その説明にかえさせていただきます。 それでは案文を朗読いたします。 「日本国との平和条約に基づき日本の国籍 を離脱した者等の出入国管理に関する特 例法案に対する修正案 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離 脱した者等の出入国管理に関する特例法案の一 部を次のように修正する。 第十条の見出し中「特例」を「特例等」に改め、 同条に次の一項を加える。 2 法務大臣は、特別永住者に対する入管法第 二十六条の規定の適用に当たっては、特別永 住者の本邦における生活の安定に資するとの この法律の趣旨を尊重するものとする。」 以上であります。 何とぞ本修正案に御賛同くださいますようお願いいたします。
○伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 この際、修正案について発言を求められておりますので、これを許します。冬柴鐵三君。
○冬柴委員 私は、修正案提出の全会派を代表して、一言法務大臣に所信を伺います。 ただいま提出された修正案は全会派一致によるものでありますので、可決されることとなると思われます。 そこで、修正案についての大臣の御認識及びその運用についての御見解を伺います。
○左藤国務大臣 本修正案の趣旨は、いわゆる在日韓国・朝鮮人及び台湾人の人々の有する歴史的経緯及び我が国における定住性を考慮し、特別永住者に対する再入国の許可については、これらの人の本邦における生活の安定に資するとの本法律の趣旨を尊重するものとする旨の規定を追加しようとするものと考えます。 したがって、本修正案が可決された場合の運用に当たりましては、特別永住者の我が国における定住性の実態を尊重し、その者の海外渡航が円滑に行えるよう配慮して、この修正の趣旨を十分に尊重する所存であります。
○冬柴委員 終わります。
○伊藤委員長 これにて修正案に対する発言は終わりました。 ─────────────
○伊藤委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論に付すのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 まず、塩崎潤君外四名提出の修正案について採決いたします。 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○伊藤委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。 これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○伊藤委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ───────────── 〔報告書は附録に掲載〕 ─────────────
○伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時五十五分散会