法務委員会 第9号
- 発言数
- 79 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1991/04/09
会議録
○伊藤委員長 これより会議を開きます。 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。 理事太田誠一君から、理事を辞任したいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 引き続き、理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、理事に与謝野馨君を指名いたします。 ────◇─────
○伊藤委員長 内閣提出、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案及び小澤克介君外七名提出、日本国との平和条約の規定に基づき日本の国籍を離脱した者等についての出入国管理特別法案の両案を一括して議題といたします。 順次趣旨の説明を聴取いたします。左藤法務大臣。 ───────────── 「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱 した者等の出入国管理に関する特例法案」 〔本号末尾に掲載〕 ─────────────
○左藤国務大臣 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案について、その趣旨を御説明申し上げます。 我が国には、終戦前から引き続き居住し、昭和二十七年の日本国との平和条約の発効に基づき日本の国籍を離脱した在日韓国・朝鮮人及び台湾人並びにその子孫が多数在留しておりますが、これらの人々の我が国社会における定住性がますます強まりつつある今日、これらの人々が我が国の社会秩序のもとでできる限り安定した生活を営むようにすることが重要であると考えられます。特に、在日韓国人の法的地位等の問題については、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定に基づき、韓国政府との間で、昭和六十三年以来累次にわたり協議を行ってまいりましたが、本年一月の海部内閣総理大臣訪韓の際に協議は決着し、その内容を取りまとめた覚書に日韓両国の外務大臣が署名いたしたところであります。 この法律案は、右に述べた経緯を踏まえ、在日韓国・朝鮮人及び台湾人並びにその子孫を対象として、その歴史的経緯及び我が国における定住性を考慮し、これらの人々の法的地位のより一層の安定化を図るため、出入国管理及び難民認定法の特例を定めることを目的とするものであります。 次に、この法律案の主要点につきまして、御説明申し上げます。 第一は、これら対象者について、特別永住者として本邦で永住することができる資格を設けることであります。その第一点は、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法に基づく協定永住者など、この特例法施行前から既に永住許可を受けている者などにつきましては、法施行後は特別永住者として本邦で永住することができることとするものであります。第二点は、法施行後に新たに出生した者などにつきましては、申請に基づき特別永住者として永住することを許可することとし、その申請受理等の手続は、市区町村の長において行うこととするものであります。第三点は、法施行前から引き続き在留している者で、定住者等の在留資格をもって在留する者につきましては、申請に基づき特別永住者として永住することを許可することとし、その申請受理等の手続は地方入国管理局において行うこととするものであります。 第二は、これら特別永住者に対する出入国管理及び難民認定法の特例を定めることであります。その第一点は、特別永住者に係る退去強制は、内乱、外患もしくは国交に関する罪、外交上の重大な利益を害する罪またはこれに準ずる重大な罪を犯した者に限定することであります。第二点は、特別永住者につきましては、再入国許可の有効期間を四年以内とし、さらに、一年以内に限り在外公館での延長を認め、再入国許可による出国期間を最大限五年とすることであります。第三点は、再入国の許可を受けて上陸する特別永住者につきましては、再入国管理及び難民認定法第五条に定める上陸拒否事由につき審査しないものとすることであります。 以上がこの法律案の趣旨であります。 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
○伊藤委員長 小澤克介君。 ───────────── 「日本国との平和条約の規定に基づき日本の国籍 を離脱した者等についての出入国管理特別法 案」 〔本号末尾に掲載〕 ─────────────
○小澤(克)議員 日本社会党・護憲共同を代表し、日本国との平和条約の規定に基づき日本の国籍を離脱した者等についての出入国管理特別法案につきまして、その提案の趣旨を御説明申し上げます。 日本国との平和条約の規定に基づき日本の国籍を離脱した者等、すなわち、いわゆる在日韓国・朝鮮人及び在日台湾出身者の方々の法的地位の問題は、我が国が過去の歴史に対する深い反省のもとに解決していかなければならない重要な課題であります。 まず、在日韓国・朝鮮人の方々につきましては、これらの方々は、日本による植民地統治によって生活基盤を奪われ日本本土へ移り住むことを余儀なくされた人々や、強制連行によって日本本土に連れてこられた人々及びその子孫であり、今や、我が国に在留する外国人の中でも最も定住性が強く、日本社会の一員として日本国民と同等の義務及び負担を負っているところであります。したがって、その法的地位について、他の外国人よりも安定的なものとされるべきことは当然であります。とりわけ、再入国の許可に関しては、これらの方々の生活実態からして、日本国民の海外渡航と同様に扱うべきであります。 また、在日台湾出身者の方々に対しましても、日本が台湾を植民地とした経緯等にかんがみ、在日韓国・朝鮮人の方々と同様な措置を講ずるべきであります。 以上のような観点に立ち、本法律案を提出した次第であります。 この法律案の概要は次のとおりであります。 第一は、平和条約国籍離脱者であって、平和条約発効日以後引き続き本邦に在留するもの及び平和条約国籍離脱者の直系卑属として出生し、引き続き本邦に在留する者は、法務大臣によりその旨の確認を受けて、特別永住者として本邦で永住することができるものとすることであります。 第二は、特別永住者の確認手続について手続規定を設けたことであります。すなわち、確認申請をなし得る期限は原則として本法施行の日から五年とするとともに、申請手続の窓口事務は、申請者の便宜を図り、居住地の市町村の事務所において行うべきものとし、さらに、法務大臣は、右の確認をしたときは、特別永住者確認書を交付するものとすることであります。 第三は、特別再入国の許可についてであります。すなわち、特別永住者に対しては、その者の申請に基づき、特別再入国の許可を与えるものとするとともに、その有効期間は五年とし、さらに一回に限り有効期間を五年延長することを在外公館で認めるものとすることであります。 第四は、特別永住者に対する国外退去強制事由及び再入国の際の上陸審査事項について、一般の外国人に対するよりも著しく制限を加えたことであります。すなわち、特別永住者については、内乱または外患に関する罪により禁錮以上の刑に処せられた者である場合に限って、退去強制の手続をとり得るものとし、また、再入国の際は、上陸拒否事由についての審査を行わないものとすることであります。 以上がこの法律案の提案の趣旨及び概要であります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○伊藤委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。 ─────────────
○伊藤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 両案審査のため、来る十二日午後一時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ─────────────
○伊藤委員長 これより両案の質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小澤克介君。
○小澤(克)委員 法務大臣にお尋ねいたします。政府提出案について順次伺います。 本法案につきましては、いわゆる在日韓国人の三世問題についての日韓の合意を契機にいたしまして、さらに一、二世、それから歴史的経緯を同じくする朝鮮籍あるいは台湾籍の方々についてもこれを均てんをするということから今回の特例法案が提出されるに至った、そのように理解をしているわけでございます。 ところで、この問題につきましては、まず、過去における我が国日本の植民地支配の結果として生じた事象でございますので、これはやはり日本自体の問題として解決すべきであった問題ではないだろうかと思いますし、第二に、これは何といいましてもこういった方々の人権保障という観点から安定的な法的地位を保障すべきである、この二つの観点から、これは我々の問題として、外国政府との交渉にまつまでもなくもっと早期に解決すべき問題ではなかったか、このように思いますが、この点について法務大臣いかがでしょうか。
○左藤国務大臣 お話しのように、平和条約締結後かなりの年月がたっておるわけであります。そうした意味におきまして、もっと早くできればこういった問題について話し合いを進めていくべき性格のものであったと思いますが、両国の政治情勢とかいろいろなことから今日まで延びてきたと私は思います。 最近になりまして両国のそうした意味の話し合いを進める場ができてきたことは非常に喜ばしいことであり、遅まきであるというふうな御批判は確かにあると思いますが、現段階においてこの問題を話し合いをし解決をしていこうということから本法案を提出したという経緯もございますので、私は、その点を御了承いただきたいと思います。
○小澤(克)委員 私は、この種の問題は他国政府との交渉に基づいてやむを得ず行うというべきものではないのではないだろうかというところで、基本的に批判を持つものでございます。とりわけ法百二十六号、この二条六項の規定でございますが、この二条六項に該当する方々は、「別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間、引き続き在留資格を有することなく本邦に在留することができる。」在留資格がないという規定に今日まで置かれてきたわけでございます。「在留資格を有することなく本邦に在留することができる。」というのはやや趣旨不明なんですけれども、いずれにしても、極めて不安定な状態に今日まで置かれていた、このことは十分批判されてもやむを得ないのではないだろうかというふうに思うわけでございます。 そこで次の質問でございますが、政府案の「目的」でございますけれども、この法案の「目的」が極めてそっけないというか、ことになっております。なぜこの特例法案を定めなければならないのか、そのことをやはり目的としてきちんと書き込むべきではないだろうか。確かに法案の趣旨説明には若干の言及があるわけですけれども、何も議事録をひっくり返して見なくても、六法を読めばこの法律の目的が明確にわかるということでなければならないのではないだろうかと思うわけでございます。過去の歴史的経緯、そしてそういった歴史的経過の結果、日本における定住性が強まっている、こういった方々の生活の安定に資するためであるということをなぜ明確に「目的」のところでうたわなかったのか、あるいはそもそもそういう目的ではないのかどうか、そこについて明らかにしていただきたいと思います。
○股野政府委員 ただいま委員御指摘の、この法律案の制定に至りますその基礎にある考え方というものについては、ただいま委員御指摘のありましたとおり、これらのこの法案の対象となられる方々につきましての歴史的な経緯、それからまた日本における定住性というものを踏まえた考え方になっておりまして、その点はまた先ほど大臣から申し述べられました提案理由、さらにはまた法案の中にあります「理由」というところにも記してある次第でございます。その点はこの法律のまさに基礎となっている趣旨でございます。 それではなぜその法案の第一条の「目的」というところにそういうことについての言及がないのかというお尋ねでございます。 この点は、私ども立法技術的にいろいろ考えまして、この法律というものは、ただいま申し上げました歴史的経緯と定住性を有する方々についての法的な地位にかかわる問題を定めるわけでございますが、この法律は、その一般法でありますところの入管法、これの特例を定めるという内容になっておりまして、この対象になられる方々の法的地位についての一般法あるいは基本法というような考え方ではなく、この方たちの入管法上の取り扱いについての特例を定めるという、対象範囲が限定された内容になっているということがございましたので、その意味で、この法律について特例法であるという趣旨を明らかにするという書き方をさせていただいたわけでございます。 そういう意味で、その趣旨の基礎にあるものが、委員御指摘のとおり、これらの方々の歴史的経緯及び定住性というものについて、これらの方々の本邦における生活の安定に資するという考え方があるということは、これは我々まさにその考え方に基づいてこの特例法案をお諮りしている次第でございます。 ただ、第一条の「目的」の書き方につきましては、ただいまのように一般法ではなくて、別途一般法であるところの入管法の特例を定める、そういう観点で、対象となります事項が限定的な事項であるということから、このような表現をさせていただいた次第でございます。
○小澤(克)委員 入管法との間で一般法と特別法の関係に立つ、したがって特別法が優先適用されるという法技術的な事柄はよくわかりましたけれども、やはり目的というのは、その法を適用する際の基本理念になるわけでございますので、なぜこの特例を、そのような一般法に対する特別法を定めなければならなかったのか、あるいは定めるべきであったのかという、その趣旨、目的をやはり明確にしておくべきではないだろうかというふうに思います。このこともやはり批判を免れないことであることを指摘しておきたいと思います。 今のお答えの中で、特に記載はしてないけれども、この法案の目的といいますか、底流には、一定の歴史的経緯を有する方々で、しかもその歴史的経過に起因して日本に定住するに至った方々、そしてその定住性がますます強まっている方々に対して、その安定的な生活を保障する趣旨であるということはそういうことかなと思うわけですが、そのことは間違いないでしょうか、一応御確認願いたいと思います。
○股野政府委員 冒頭、大臣からの提案理由の御説明の中にもございましたように、これらの方々の歴史的経緯と日本における定住性、こういうものを十分勘案いたしまして、これらの方々の本邦における生活の安定に資するということがこの法案の基礎となっている趣旨でございます。
○小澤(克)委員 では次に、政府案のこの対象者でございますが、これまでの政府の考え方といたしましては、平和条約発効によってこういった旧植民地出身の方々が国籍を、いわゆる日本国籍を喪失した、「離脱した」という表現ですけれども、それまでは形式論的に言えば日本人であった、こういう御理解だというふうに認識しております。そうであるとすれば、基本は、この平和条約発効時に日本に在住していてそれ以後日本に在住していたというのがむしろ基本ではないだろうかと思うのですけれども、そのようにしなかったのはいかなる理由によるのでしょうか。
○股野政府委員 この点につきましては、これまでも私ども、この法案の背景にありますところの、昭和四十年にできました日本と韓国の間において締結された在日韓国人の方々についての法的地位協定の問題でのいろいろな考え方というようなものを整理してまいりまして、その積み重ねの上にこの法律も考えさせていただいた次第でございますが、従来からの物の考え方として、こういう日本における特別の法的地位というものを認めようという方々については、やはり終戦前から引き続き日本に居住しているという方々を対象にする。終戦があって、そしてやはりそこで一つの歴史の区切りがあった。したがって、やはりそのとらえる時点は終戦ということが基礎にあるという考え方で、前回の日韓法的地位協定の際もその考え方で臨んだ次第でございますし、その同じ流れに乗って、今度も終戦前から引き続き本邦に在留しておられる方を対象にする、またその方々の子孫という方を対象にする、こういう考え方をとらせていただいている次第でございます。
○小澤(克)委員 終戦前において本邦に居住を開始した人に限定するという趣旨は、私の理解では、この方々が何も好きこのんで自分の生まれ故郷を離れて日本にやってきたわけではなくて、日本の植民地支配に起因して、その結果としていろいろな要因から日本に居住せざるを得なかったということがその背景にあるのであろうというふうに思います。したがいまして、日本の植民地支配が終了いたしました終戦時、終戦時をポ宣言受諾のときにするかあるいはミズリー号における降伏文書調印にするかはともかくといたしまして、いずれにしても、既に植民地支配が終了した後になって本邦に入ってきた人については、たとえその時点で形式的にはまだ日本人であったとしても、もはや特例的に扱う必要はないであろうということは、私もそれなりに理解できるわけでございます。しかし、その植民地支配の結果、植民地支配に起因して日本に流入といいますか居住を開始された方々を特例的に扱うという趣旨を貫けば、その後、終戦後一時帰国したけれども、しかし既に日本国内に居住の本拠があって、かえって本国にはもはや居住を継続する条件がなかったためにやむを得ずまた戻ってこられた方々、この方々もやはり日本の植民地支配の結果として日本に定住せざるを得なかった方々の範疇に入るものでありますから、当然この特例的な取り扱いの対象に含めるべきだと思うわけでございますけれども、一時帰国者を排除したのはどういう理由によるものでしょうか。
○左藤国務大臣 いわゆる一時帰国者ということになりますと、終戦後自分の意思で本邦での在留をやめて本国に帰られたものである、こういう方々で、終戦前から引き続いて本邦に在留する者としての歴史的な経緯はないので、特別法の対象とすることは適当でない、このように考えたわけでございます。 なお、終戦後、占領中は本国への引き揚げは可能であったわけでありますが、本邦での入国が非常に厳しく規制されておりますので、その後入ってこられた方というのはほとんど不法入国の方々、こういうふうに言わざるを得ないわけでございます。
○小澤(克)委員 確かに自分の意思で一たんは本国に引き揚げた。しかし、先ほど言いましたように、日本の植民地支配に起因いたしまして、本国ではもはや居住を継続する条件がなかった。むしろ日本に居住するしかないということで再び舞い戻ってこられた方々、これはやはり日本の植民地支配の結果のうちに当然含まれると思うわけでございます。したがいまして、これはやはり特例的な扱いをしなければ、その安定的な生活を保障するという、人権保障の観点からいって欠けるのではないかと思うわけでございますが、いかがでしょう。再度答弁願いたいと思います。
○股野政府委員 政府案の基礎になっております考え方は、ただいま大臣から申し上げましたとおり、終戦前からの引き続きの居住ということを要素と考えることによって法案を規定させていただいているわけでございます。 ただいまの一時帰国者の問題につきましても、これまで法務省当局としてもいろいろ考えてまいった次第でございますが、新しい特別の法的な地位をここで認めるという方々をどの範囲でこの対象者とさせていただくかということ、いろいろ考えた次第でございますが、先ほど申し上げましたような、従来からのこの問題に関する考え方として、政府が、終戦前から引き続き居住をしているということを一つの要素としておりますので、その考え方によらせていただいたわけでございます。 なお、戦後の一時帰国者の方々についての日本における待遇につきましては、昭和四十年当時の日韓法的地位協定締結等の関連で法務大臣声明が出されて、在留を特別に許可し、また申請があった場合にはその方たちの在留状況も勘案した上で永住も認めるということで、一般永住への道を開いているということが、我々法務省当局としてこの問題について出した一つの結論であり、方針でございましたので、その方針にこの法案もよらせていただいているということでございます。
○小澤(克)委員 私としては納得できるものではございません。昭和四十年六月二十二日の法務大臣声明も、このような声明を出さなければならなかったということは、一時帰国者といえども、先ほどから繰り返しておりますが、日本の植民地支配の結果として日本に居住せざるを得なくなった人たち、そして日本に定住性を強めてきた方々ということがその理由であろうかと思うわけでございます。そういたしますと、単に一時期帰国したからという理由でこれを除外するということは、私はやはり不合理であろう、人権保障という観点からいって欠けるものではないだろうかと思うわけでございます。このような批判があるということを指摘をしておきたいと思います。 次に、第三条でございますが、これは法定特別永住者ということで、第三条に規定してあります要件に該当する者は当然にこの特別永住者たる地位が付与される、こうなるわけでございます。これについては、このような考え方も成り立ち得るかと思いますが、権利保障という観点からすれば、やはり本人の意思にかからしめるのが本来の姿ではないだろうか。この方々は、かつて本人の意思とは無関係にある日突然、日韓併合条約あるいは日清条約ですか、下関条約ですかによって本人の意思と無関係に、好むと好まざるとにかかわらず日本国籍を強要され、そして今度は平和条約発効によって本人の意思とは全く無関係に、これまた本人の好むと好まざるとにかかわらず日本国籍を剥奪された、こういう方々でございます。ここでまた本人の意思と無関係にこのような特別永住者としての取り扱いをするということは、終始一貫して本人の意思を無視することになりはしないだろうか、やはり申請主義をとるべきではなかったかと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
○股野政府委員 御指摘の第三条については、法定特別永住者として法律によって新しい地位を得られる方々が規定してあるというのは御指摘のとおりでございますが、私どものこの規定をつくりました考え方は、この方々の中に、例えば日韓の法的地位協定に基づいての協定永住許可を得ておられる方、あるいは特例永住という形での永住許可をとっておられる方々が含まれておるわけでございますが、これらの方々について、そのそれぞれの許可をとられるに当たりまして、申請をしていただいて許可をさせていただくという手続をかつてとらしていただいていることがございまして、その経緯が一つあるということと、それから、この新しい特別永住者という資格は、一つの法的地位としては該当者の方々にとって大変優遇された地位をつくるものになるという観点から、そういう意味で御当人たちにとっていい内容のものである、今までの法的地位をさらに安定的にし有利なものにする、そういう内容でもあるということから、これらの方々については新たに手続をとるという、いわば手間をもう一度おかけすることを省かしていただいて、しかもその内容がいい内容であるということで、こういう法定の特別永住者という方々についての規定を設けた、こういう考え方でございます。
○小澤(克)委員 客観的に見て、この特別永住者たる地位が本人にとってより有利といいますか安定的なものであることは間違いないと思いますが、しかし人はさまざまでございまして、自分は大韓民国の国民である、あるいは朝鮮民主主義人民共和国の公民である、そのことに自己のアイデンティティーの基本を置いておられる方にとって、主観的にはこのような特別な地位など特に与えてもらいたくないということをお持ちの方も当然いらっしゃると思うのですね。それはそれで、客観的には有利な地位だから取得するのが当然だというふうに思われるかもしれませんけれども、人はそのようにただ結果の合理性だけで行動するものではございませんので、そのような意思は意思としてやはり尊重するという哲学が必要なのではないだろうか。一定の要件に当たる人たちは当然に一定の運命に従わせるというようなことは、たとえ本人に有利だという善意から生じたものであっても、やはりどこかで人を管理しようという思想のあらわれではないだろうかというふうにも思うわけでございます。この点もやはり批判を免れないということを指摘をしておきたいと思います。 それから第四条でございますが、これは法定ではなくて許可に係る特別永住でございますが、ここで「出生その他の事由により」という「その他の事由」というのは、具体的にどんなことが想定されるのでしょうか。
○股野政府委員 「出生」の場合は、文字の示すとおりでございます。「その他の事由」といいますと、ただいまの在日韓国人等の方々の中では、御両親について一方の親が日本人でおられるという方々がおられます。最近特に在日韓国人あるいは朝鮮人等の方々で日本人の方々と結婚される方々の数が多いという事情がございますので、そうなりますと、これらの方々、日本人と韓国人の方々あるいは日本人と在日朝鮮人の方々の結婚の場合の子供さんが二重国籍という問題が起こってまいります。特に韓国の場合に、そういう点でこれは選んでいただく必要が起こってまいるわけでございますが、この韓国の方々の場合につきまして、二十二歳になるときにいずれか一方の国籍を選んでいただく。そのときに、それまでは日本人としての国籍を持っておったのですが、日本の国籍を離脱されるという選択をされると、そこで外国人になられます。そこで外国籍の選択をされるということを考えて「その他の事由」ということでございますので、出生以外に、二重国籍の方々が外国籍を選択されたということを想定した事態でございます。
○小澤(克)委員 四条二項でございますが、六十日以内に許可申請をした場合は法務大臣は許可しなければならない、覊束的に許可をすることになるわけでございますが、これは六十日を徒過した場合はどうなるのでしょう。
○股野政府委員 実はこれは、昭和四十年の日韓法的地位協定に基づきますところの在日韓国人の方々についての特別法の中で、協定永住許可の手続に関してこのような六十日という一定の期間を設けさせていただいたということがございました。この場合、出生あるいはその他の事由でとにかく外国人として日本に在留されることになりますので、やはり一定の期間を設けてその中で申請していただきませんと、その方の法的地位というものが不安定になりますので、そういう意味での一定の期限を設けさせていただいたということが趣旨でございます。 それでは、もし何かの事情で六十日を仮に超えてしまったらどうかという点は、これは客観的に判断させていただいて、まことにそれはやむを得ない事情があったと判断されるような場合でございますと、その六十日を仮に超えた場合でも、その申請についてはこれを受理して手続をとらせていただくということをさせていただくことにいたしております。
○小澤(克)委員 六十日を超えると一般永住とかなんとか、そちらの扱いになるということでは必ずしもないのでしょうか。
○股野政府委員 さようではございませんで、やはり特別永住者としての手続をおとり願いたいということでございます。
○小澤(克)委員 そうしますと、この二項の読み方としては、覊束的に許可されるための条件として六十日以内というように厳格に読むことではなくて、手続的に六十日以内にしなさいよというだけのことなんでしょうか。
○股野政府委員 基本的には六十日という期間をぜひ守っていただきたいわけでございますが、先ほど申し上げましたように、万やむを得ないという事情の場合には、その期間を超えることについても申請は受理させていただくということでございます。
○小澤(克)委員 そこで、これはやはり両親に対する周知徹底が必要であろうと思うのですが、その辺について法の運用はどのように考えておられますか。 それからもう一つ、さかのぼりますが、第三条の法定特別永住者については、これはまさに法定でございますから、何らの手続を経ず観念的には当然にこの特別永住者たる地位を取得するのですが、それがどのように本人に知らされるのか、あるいは外登法上の在留資格の書きかえ等は、具体的に手続はどのようになるのでしょうか、その辺の運用についてお答えください。
○股野政府委員 まず前段の、出生その他の事由で日本国籍でないままに日本で特別永住を得られようとされる方について、これはやはり御指摘のとおり御両親がしっかりしていただくことが大事でございますので、この点は十分関係各方面に周知徹底するよう、当局といたしまして広報それからまた説明に十分努力をさせていただきたいと存じております。 それから、後段の御質問の第三条の特別永住者の方々につきましては、この規定で特段の手続をとらずに新しい法的地位を得られるわけでございますが、それでは御本人がそれを例えば確認したいというようなときでありましたら、これは随時当局としてもちろん確認をさせていただくということでございまして、その場合には外国人登録証にあります在留の資格の表記の仕方を新しい表記の仕方にさせていただくということでございます。 それからまた、仮に一定の期間特段に何もしないという状況でございましても、例えば外国人登録につきまして五年に一度確認申請の時期が参ります。そのときには確認申請という手続をおとりになりますので、そのときにこの外国人登録証における表記を改めさせていただく、しかし、表記がそのときに改められるというだけでありまして、この法律の施行と同時に新しい地位をもう既に持っておられるということになるわけでございます。
○小澤(克)委員 では、第五条に移りますけれども、第五条は、市町村ではなくて地方入管局にみずから出頭することが要求されているのですが、これは大変不便を強いるものではないかと思います。なぜこのようにしたのでしょうか。
○股野政府委員 この第五条の該当者の方々については、これは入管法上の在留期間というものをもって滞在をされる方々でいらっしゃいます。そこで、こういう方々については在留期間の一つの限定がございまして、その意味で、今度は新しい法的地位に移行されるについては、ひとつ御本人で入管局に御出頭願って、そして新しい手続をとっていただく。これは、そうでありませんと、今持っておられる在留資格というものは一般の入管法上の在留期限のある資格になっておりますので、その点をきちんとさせていただく必要があるということでございますので、その点でこれは入管局の方で、在留期限のある在留資格をこの新しい特例法上の地位に移行するための手続をお願いするということをさせていただいた次第でございます。
○小澤(克)委員 次に、強制退去でございますけれども、ここでいろいろ入管法一般法に比べれば相当程度強制退去事由が限定されているわけでございますが、しかし基本的には、我が国にとって好ましからざる人物は出ていっていただきましょう、こういう考え方に立っている。入管法一般法の基本的なスタンスは、それ自体としては変わっていないと思うわけですね。ただ、その事由を絞り込んだという考え方だろうと思います。 しかし、先ほどから繰り返して言っているような歴史的な経過に立つ方々、すなわち日本の植民地支配の結果として本邦に定住せざるを得なかった方々で、しかもその法的地位が、本人の意思とは無関係に、いわば翻弄される形である日日本国籍を押しつけられ、後に今度は日本国籍を剥奪された、こういった歴史的経過にかんがみれば、好ましからざる人だからといって強制退去にするということは、やはり基本的に間違いではないだろうかと思うわけでございます。 もちろん日本国の刑罰にきちんと服していただくわけでございますので、それでもって罪はもう償われた。したがいまして、好ましからざる人物は追放するということではなくて、日本国に居住することと基本的に相矛盾するような行動のあった者だけ、具体的に言えば内乱、外患というような極端なケースのみ強制退去はやむを得ないけれども、それ以外については強制退去としないとすべきではなかろうかと思うわけですが、この点、いかがでしょうか。
○股野政府委員 この退去強制の項につきましては、ただいま委員御指摘のように、内容的には大変な絞り込みを行っております。その発想法は、基本的に、ただいま委員もお述べになりましたような、これらの対象者の方々の日本における歴史的経緯と定住性というものを十分考えた内容でございますが、この問題について私どもも考えなきゃならないと思いました点は、それだけの特別な地位を持たれる方ではございますが、やはり最後のところ、日本人の方ではない。日本の国民とそこに一つのやはり線があるということになりますので、その点で考えましたときに、ただいまの内乱、外患という点、これが一つの判断の基準になっておりますが、もう一つ、日本の国家的な利益、単なる個人の犯罪とか社会的な問題を起こすというようなところにとどまらないで、日本の国そのものの利益というような観点でやはり大きな問題があるというようなときには、これはそこで、やはり日本人の方とは一つ違う線というものが、意味が出てくるところではなかろうかという観点で、しかし、さはさりながら、そういう観点でも特段の絞りをかけた内容ということで、内乱、外患以外に二つの項目を設けさせていただいている次第でございます。
○小澤(克)委員 その点については、やはり基本的な発想がまずいのではないだろうかというふうに思います。 それはともかくといたしまして、第一項の三号、四号で、「法務大臣においてその犯罪行為により日本国の重大な利益が害された」、三号については「外交上の」というのがありますが、この「重大な利益が害された」というのは具体的にどのような場合を考え、どのような基準で運用することになりましょうか。
○股野政府委員 まず、先ほど私、内乱、外患以外に二つの項目と申し上げましたが、国交に関する罪という規定も含めまして三つの条項が、この第九条の中には第一の内乱、外患以外に、二、三、四と三つ設けてありますので、合計で四項があるわけでございます。 その中で、今委員御指摘の日本国の重大な利益を害したものというのはどういうものかという点でございますが、これは先ほども申し上げましたように、犯罪というものが単なる個人犯罪とか社会的に見て重大であるというようなところでとどまらないで、もっと我が国の国家としての重大な利益が侵害される、こういうところまで考えなきゃいけない。 そうすると、ではそれは具体的にはどういうことになるだろうかというようなことで考えてまいりますと、例えば国の中枢機能を破壊するような目的で、例えば爆発物取締罰則に違反するとか交通機関である電車、汽車等の転覆を行うとか、殺人、放火というような罪をする、そして無期または七年を超える懲役または禁錮に処せられる、こういうような限定を付しているわけでございますので、通常テロリストと言われるような者の行動がこういうことに当たるというふうに考えております。
○小澤(克)委員 きょうは再入国許可を中心にお尋ねするつもりだったのですが、残り時間が少なくなりましたので、他の委員から主としてお尋ねがあろうかと思いますが、この再入国許可に関して、この特例法は第十条で極めてあっさりと、ただ最長期間を一年を四年と延ばしただけで、それ以外には何ら特例的な取り扱いになっていないわけでございます。これは私は、この政府案の決定的に不十分なところではないだろうか、むしろ欠陥法案ではないだろうかと思うわけでございます。 というのは、こういった方々にとって、まさに日本に定住しておられる方で、生活の本拠が日本にある、経済的基盤も含めて、あるいは社会的な地域とのつながりとか人とのつながり等々、すべて生活の本拠が日本にあるわけでございます。この方々が出国をして再入国をするという、法律構成としては確かに外国人でございますから、出国をしまた外国人として入国をしてくるということになるのですが、実質的にはこれは、一たん外国に出るけれどもまた生活の本拠に帰ってくるという、社会的な事実としてはそのような事態になるわけでございます。 そこで、再入国許可を得られないままに出国いたしますと、この特別永住権というものを放棄せざるを得ないことになるわけですね。ということは、この再入国許可というのは事実上、実際の機能としては出国許可にほかならないと思うわけでございます。まずその点について、そのような御認識があるかどうか。実際の機能において再入国許可というのは出国許可にほかならない、そのような御認識があるかどうか。大臣、いかがでしょうか。
○股野政府委員 再入国許可制度につきましては、これは日本で日本に在留しておられる場合の法的な地位というものを持っておられる方が外国にお出かけになる、そして外国からお帰りになるときに、新たな入国手続に関する法的手続をとることなく、もとの日本に在留しておられた法的な地位というものをそのまま継続することができる、この再入国許可の制度の趣旨はこういうことでございます。 したがって、もし再入国許可をおとりにならないで出国されてしまいますと、確かに今度は新たに日本へ入国される手続が必要になってくるという点があるわけでございますが、委員御指摘のとおり、この法律案そのものは、これらの対象となられる特別永住者の方々についての日本における生活の安定ということを促進する、そしてそれに役立つようにしようという趣旨でございますので、再入国許可につきましても、その運用に当たってはやはり十分その点を踏まえた内容にしていこうと思っておりますし、この法律案は、規定の上では確かに有効期間、再入国許可をもって出国しておられることのできる期間についての規定になっておりますが、そもそもそういう規定を設けました理由も、ただいま申し上げましたようなこれらの方々の日本における法的な地位を安定的なものにするという、この法律の趣旨を十分生かした運用にしていこうという考えでございます。したがって、そういう点で、規定は有効期間の内容の規定になっておりますが、その基礎に流れるものはそういう考え方でございます。
○小澤(克)委員 私は運用論をお尋ねしたのではなくて、この特別永住者にとって再入国の許可を得るということは、その事実上の機能は出国許可にほかならない。なぜかといいますと、外国人ですからもちろん出国はいずれにしろできるわけでございますが、再入国許可を得ないままに出国すれば、この特別永住権というものを放棄せざるを得ない。喪失せざるを得ない。その実態に着目すれば、再入国許可というのは出国許可にほかならない、機能としてはそのような機能を持つものだという御認識を持っておられるかどうかということをお尋ねしたのです。
○股野政府委員 先ほど申し上げましたように、この再入国許可を得られて国外に出られます場合には、それまで持っておられた法的地位というものは継続されるわけでございますので、再入国許可がその法的地位が継続されることの一つの担保の手段になるのは事実でございます。そういう意味で、海外へ渡航されるというときに、この再入国許可の制度が日本における法的地位の保障ということと裏腹の関係と言ってもいいぐらいに重要な意味を持つものであるというふうには、十分考えられるところでございます。
○小澤(克)委員 この点について詳しく過去の例なども引いてお尋ねしたかったのでございますが、時間が参りましたので他の委員に譲りたいと思います。終わらせていただきたいと思います。
○伊藤委員長 小森龍邦君。
○小森委員 今回のこの特例法の提案の基本的な趣旨は、先ほど大臣の提案説明なりあるいは先ほどの小澤委員の質問によって概略のところその傾向が理解をされるわけでありますが、この際、さらに突っ込んでお尋ねしておきたいと思いますのは、本年の一月、海部総理が韓国を訪れました。昨年の春は盧泰愚大統領が我が国を訪れました。そしていろいろと具体的な詰めが行われたわけでありますが、その基本的精神、盧泰愚大統領の方の基本的な気持ちというのは、国会演説を通じて私は理解することができました。それは、過去の不幸な歴史の事実を神様といえどももう一度繰り返してもとに戻すことはできない、要はこの真実をいかに認識をするかだ、人間は高度な頭脳を持った動物ですからこれを認識すれば過ちを繰り返さないように努めることができる、こういう意味で、被害者の側からすれば極めて包容力のある考え方の提示であったと思います。我が国はそういった状況に対してもう少し立ち入って、精神的基調といいますか、外交的姿勢というか、そういうものにつきまして外務省の方から簡単にお答えをいただければと思います。
○竹中政府委員 お答えいたします。 さきの総理の訪韓の際でございますが、総理より、盧泰愚大統領夫妻主催の晩さん会におきましてスピーチを行いました。そのスピーチを通じまして過去に関する政府の基本的な考え方をお述べになりましたので、そこにつき、若干そのテキストをここで読み上げたいと思います。 「私は、大統領閣下の御訪日の際、不幸な過去について反省とお詫びの気持を申し述べましたが、このような歴史認識は、我が国国民が等しくともにするところであります。過去を忘れず、その反省を現在に活かしてこそ、曇りのない未来への視野が開けてくるのであります。 このような視点から、私は、我が国の最も近い隣国である貴国の歴史や文化や社会について、また我が国と貴国との関係について、我が国国民の理解を一層深めるよう努力する決意であります。」 これが関係の部分でございます。 なお、総理は、韓国滞在中に、過去に対する率直な反省と正しい認識をみずから示そうとの思いから、一九一九年三月一日に起きました独立運動の記念地でございますパゴダ公園を歴代総理として初めて訪問され、独立運動に身をささげられた方々の御冥福を心から祈り、花輪をささげられました。
○小森委員 この点につきましては、そういったことによって我が国のかつての植民地支配に対する反省の気持ちというのが示されておると思いますが、この際大臣にそのことに関係してお尋ねをします。 日本の植民地支配というものは非常に過酷なものでございます。私は韓国も、そして通称北朝鮮と言われております朝鮮民主主義人民共和国もともに訪問をした経験がございますが、そこらの歴史館、歴史博物館のようなところに行きますと、かつての寺内正毅、ここは第三代目の統監でありますが、日韓の併合というか、これを完全に植民地化してしまったときのこの人の言葉の中に、朝鮮人は我が国の法規に屈服するか、あるいは屈服しなければ死を選ぶかいずれかだ、こういう、韓国、朝鮮人にとっては非常に屈辱的な言葉が吐かれておりまして、それが歴史館などに書かれておりますし、また日本の文献にもそれは明らかであります。 それから、寺内さんのことばかり言うようでありますが、韓国を我が国に完全に取り込んでしまった一九一〇年八月二十二日の夜の、日本の政府側から言えば祝宴の会でありましたが、そのときに次のような歌を彼が詠んでおります。小早川、これは小早川隆景のことでありますが、加藤、加藤清正のこと、小西行長のことも出まして、「小早川 加藤 小西が世にあらば 今宵の月をいかに見るらむ」。本当に胸の締めつけられるような過去の日本の歴史というものがあるわけであります。 そういうものの上に立って、先ほど我が党の小澤委員が質問をいたしました精神的基調というものが大事だということがあるわけでありますが、この際、閣僚の一員として、左藤法務大臣、こういった歴史の不幸なことが行われたということを、この法案提案に絡んでひとつ心境のほどを尋ねておきたいと思います。
○左藤国務大臣 私は、日韓のいろいろな過去の歴史の中におきまして、今お話がありましたような豊臣秀吉が二度にわたりまして朝鮮半島にいろいろ大きなつめ跡を残した問題、そのころから非常に、何といいますか、朝鮮支配というような、朝鮮の国民にとってはたまらないようなそういう考え方が日本のそうした一部の人たちの中に強くあって、そして明治になってからも同じようなそういった問題が残ってきたということから、今御指摘のようないろいろな問題が生じてきたのじゃなかろうか。 これまで日本政府としましては、何度も機会をとらえて明らかにしてまいりましたように、過去におきます我が国のそういった行為、これが朝鮮半島だけじゃなくて近隣諸国、国民に大きな苦痛と損害を与えてきたということについて深く自覚して、再びこのようなことが起こらないようにという反省と決意に立って我が国は平和国家としての道を今日歩んできたわけでございますが、そういったことにおきます、特に朝鮮半島におきます日本の植民地支配というものが三十六年間にも及んだことにつきまして、今申しましたような感を非常に深くするわけでございます。
○小森委員 本日の審議は、日本社会党・護憲共同の提出をいたしました案も同時に審議をいたしておるわけでありますので、この際、提案をしていただいた小澤委員の方から、政府の考え方をただいま聞き取った段階で、どの点がもう少しこの歴史的な事情にあった問題の解決を図りたいという、その社会党案の特徴的なところをひとつかいつまんでもう一度御説明をいただければと思います。
○小澤(克)議員 社会党案について御説明申し上げるわけでございますが、便宜政府案との主な違いについて御説明するのが御理解が早いだろうと思います。 第一点は、一時帰国者も対象者として含めている点でございます。第二点は、本人の申請によって特別永住者たる地位を付与するという申請主義をとっている点でございます。それから第三点は、強制退去事由について、内乱、外患の罪を犯した者に限定している点でございます。それから第四点として、これが最大の問題点だろうと思いますが、再入国許可に関して特別再入国許可制度というものを新たにつくりまして、日本人における旅券発給とほぼ同じ要件で法務大臣が覊束的にこれを許可しなければならないとしている点でございます。 以上でございます。
○小森委員 一時帰国者の問題に関して、先ほどの社会党の答弁を得てさらに政府側にお尋ねをしますが、八月十五日に我が国がポツダム宣言を受諾した。このときはかなり情報が乱れ飛んでおりまして、ポツダム宣言そのものが何かということを私が生活してきておった周辺はよくわからなくて、中学へ行っておるのだから小森君に聞こうかということで、私は近所の人から聞かれたことがございました。私自身もよくはわからなかった。 そういう大変な混乱をしておる時期、当時の在日朝鮮人は、急ぎ祖国に帰ることが自分の幸せだ、こう思って移動した人もいると思います。しかしながら、それは十分に自分の祖国の社会的な状況なり日本のこれからの社会的な動きなりというものを理解せずに、いわば物がよくわからないがための冒険的な、衝動的な行動であったと思います。 しかし、考えてみると、植民地支配がもたらしたその後の状況というものが、そこからも実は植民地支配がもたらしたことの継続であります。要するに、一時帰国者の問題が私から見ると十分に細かく配慮されてない、こういうことを思うわけであります。そういった人たちの身になってというか、そのときの状況に深く思いをいたして考えねばならぬと思うのでありますが、いかがでしょうか。
○股野政府委員 一時帰国者の問題について、ただいま委員の御指摘のようないろいろな歴史的な経緯がございました。その問題について日本国政府としてどう対応するのがいいか、また韓国側との間でいろいろなお話し合いもございまして、この経緯についていろいろな考え方を従来検討した結果が、一つの考え方として、終戦前から引き続き居住するというところで特別な法的地位を認める。しかしながら、戦後のそういういろいろ難しい時期に一時帰国されてまた日本に戻ってこられた方々について、先ほど申し上げましたような昭和四十年当時の法務大臣声明等でできる限りの日本政府としての配慮をしよう、こういう考え方で臨んでおる次第でございますので、法的には、一つの従来からの考え方を踏まえた、終戦前から引き続き居住しているという点を基準にさせていただいております。 しかし、今の一時帰国者の問題につきましては、やはりこれは従来どおり十分の日本政府としての配慮は行っていくべきものと考えておるところでございます。
○小森委員 今私が心配しておりますようなケース、そういうケースにかかわる方の数字を政府は掌握されておるかどうか。数字を掌握されておられれば、そのケースに該当する人の数はおおよそどれくらいか、わかればひとつお知らせいただきたいと思います。
○股野政府委員 ただいま委員の御指摘にもございましたような、終戦後の大変難しい時期に日本と韓国との間での人の動きがあった状況でございまして、残念ながら我々もその具体的な数については統計を持っていないという状況でございます。
○小森委員 この際、これに関係をいたしまして人権擁護局長にお尋ねをしたいと思います。 人権行政というのは、これまでずっと議論をいたしまして、物を簡単に、単なる法制的な制度だけでなくて、人々のよって立つ社会的基盤とその人の歴史的な経過というようなものをよく考えた上で、手厚く判断をしなければならぬと私は思っています。仮に、先ほど来の話でありますが、このときに、祖国へ帰ることが幸せだ、今まではまことに不運なというか不幸な日本の植民地支配に翻弄されたということで帰ったが、中身は向こうも政情が余り安定していなかった。特に連合国アメリカのそのときの統治政策が、旧来の政治の枠組み、行政のシステムを最大限に使って政治を行うというような方針がありましたために、言うなれば戦争犯罪者、日本の戦争犯罪に協力したような者もちゃんとその地位が保障されるというような状況の中でありますから、戦争が終わって、祖国へ帰ったら幸せになると思って帰ったがうまくいかなかったという人がおることは想定されるのであります。 日本の植民地支配で以前私が人権擁護局長に質問したら、木で鼻をくくったような答弁がありまして、さらにどういう我が国の罪状が、罪状という言葉か、植民地支配のまことにむちゃなことが行われたかということの中に、一つは教育の問題、つまり文字が奪われるという過程の問題が出てきたと思いますが、文字を奪われていて、戦争に負けた当時の諸外国の事情なり自分の祖国の事情なり十分に判断できない者がそういう衝動的な行動に出て、またそこで運命に翻弄されるということがあり得たと思うのでありますが、人権擁護局長としてはそういう点をどういうふうに思われますか。
○篠田政府委員 先ほど来問題となっております我が国の韓国、朝鮮に対する植民地支配時代において、いろいろな御不幸な出来事があったわけでございますけれども、ただいまの御質問の、昭和二十年八月十五日から九月二日まで、そういう混乱した時期において、判断することがなかなか難しかった、そういうために、一たん帰ったけれどもまた戻らざるを得なかったという方々については、人権の立場からは大変お気の毒と申しますか、そういう感じを深くいたしますけれども、ただ、具体的な事実関係について私ども承知しておりませんので、具体的な答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○小森委員 私が法務省人権擁護局に強く期待するところは、各省庁間の問題については大臣を通していかなる政策も人権ということのかかわりにおいてそれがうまく充足されているかどうかという、行政的な細かい詰めというふうなことが行われなければならぬと思うし、特に法務省にあっては、同じ法務省の横並びの局でありますから、法務省が提案する法案等については、特にそういうことについて他の局に人権という角度で、ここのところはどうだろうかというようなことがあってしかるべきだと私は思うのですが、その基本的な人権擁護局の態度というものについて伺っておきたいと思います。
○篠田政府委員 委員御承知のように、各局にはそれぞれの所管がございますけれども、法務省全体としてはやはり法務省としてまとまっていかなければならないわけでございますので、私どもの立場からは、人権ということも十分に配慮していただくように、他の局へ常に連絡をとっているところでございます。
○小森委員 もう一度入管局長にお尋ねをいたしますが、先ほど来問題にしておるようなことに対して、今提案をなさっておる法律の枠組みの中で救済の余地が何らかの形でありましょうか。
○股野政府委員 提案申し上げております政府案は、一般人管法のもとでの特例を定めた特例法になっております。その内容上、その点についての一つの基準というものは設けさせていただいているわけでございますが、この基礎になりますものは入管法でございます。入管法をあわせて運用していく中で、ただいま申し上げましたような、いろいろ御苦労がおありであった方々についての法務省としての最大限の配慮をしていくということであろうかと存じます。
○小森委員 この法案の審議の議論の中でこのようなことが議論されて、しかも社会党の方から対案ともいうべき、この点に対する大変な配慮をしたものが出ておるというこの経過、こういうものをひとつよく考えていただきまして、先ほどの答弁にありますように、最大限ひとつ歴史的なつめ跡というものを早く治癒させるように、そういう努力をされることを強く要請しておきたいと思います。 そこで、在日韓国・朝鮮人に対して、これまた人権擁護局長にお尋ねしておきたいと思います。在日韓国・朝鮮人の植民地支配による苦しみというものは例えようもないものでありまして、以前部落差別の問題についても若干の議論をいたしましたが、その歴史的経過というものが非常に似通っております。 例えば一九一〇年の韓国皇帝陛下と日本の帝国皇帝陛下との間に一切の権限が譲り渡されるというあの調印が行われた後に、国王とか、それにまつわる王族に対してはかなりの国費を支出してこれを待遇する、皇室典範に列するというような行為が行われ、当時の総理大臣の李完用など六名は侯爵に列せられた。伯爵、男爵等を含めますと七十六名、つまり貴族に組み込まれております。だから、上層部をなでて下層部を徹底的に収奪していく、こういうやり方でございます。これは、日本の明治の初期にも、圧迫をされた低い身分の者と江戸時代の上層部との関係においてこのような構図が成り立っておるわけであります。しかし、余計に、朝鮮半島における日本の収奪というのは、きょうは余り詳しく説明できませんけれども土地政策というものを植民地支配で徹底的に行いまして、前近代的な不安定な所有関係というか、そういうものの間につけ込んでどんどん土地を取り上げていった、だから食えなくなって日本に来る、また日本の労働力のために強制的に権力がこっちへ連れてくる、こういうふうな関係になったわけであります。 そういうことからすると、今日の部落差別の場合も、政府は余り慎重に考えていないようでありますけれども、部落差別の場合だって非識字者が多いのであります。ところが、在日韓国・朝鮮人の中にも、この歴史的経過からいえば相当の非識字者がいると私は思います。だから、みずからが文字を見て物事を判断するということのできない人もいるわけであります。そういう人たちの人権を我が国人権擁護行政の中で守るということについては、相当の突っ込んだ配慮がなければできないと思います。この点については今どういうふうにお考えでしょうか。
○篠田政府委員 私どもといたしましては、我が国との関係で不幸な歴史があって、韓国、朝鮮の方々が日本語の使用を強制されたり、小学校の児童が日本名を使わされたりというような、非常に耐えがたい苦しみを体験されたという歴史的事実を踏まえて、そういった上でより積極的な啓発活動に取り組んでまいりたいと思っております。例えば、具体的には人権相談とか人権侵犯の申し立てがあればそれに対して対処してまいりますし、それから一般啓発の関係におきましても、昭和六十三年以来国際化社会と人権というテーマを掲げて講演会とかそういったことをやっておりまして、その中でやはり在日韓国・朝鮮人の方々についての問題も取り上げているところでございます。
○小森委員 国際化社会との関係において法務省は啓発をやっておる、こういうふうに言われるわけでありますが、しかし、そういう中にあって前の法務大臣がああいう事件を起こしたのであります。そして私の見るところ、自分のところの大臣に対してその省内にある人権擁護局が果たしてどれだけのことの取り組みをしたか。それはわからぬことであります、大臣と局長の間で、大臣これはいけませんよ、あなたの考え間違っていますよと言うたか言わぬか、それはわからぬですけれども、外にあらわれたものは、人権擁護局から各地方法務局に通達のようなものが出て、国際化社会だからええようにやりましょうというぐらいの程度でありまして、今回の自分たちの、自分たちというか政府の閣僚の一員が起こした事件でありますから、今回の事件を踏まえてということがやはりないのですね。 その点については、今回の法案審議に当たって入管局がつくったものについては幾らか出ておるのであります。しかし、そういうことこそ一番に人権擁護局が先頭を切らねばならぬ。その人権擁護局の所管に関して、この前のそういう通達を見ても、ただだれかがどこかで差別事件を起こしたことについてみんなええようにやりましょうという程度の啓発の姿勢、そういう程度の姿勢しか出ていないのであります。これは非常に問題だと私は思います。 つまり、文字を日本の植民地支配で取り上げたということについては、例えば朝鮮語の新聞、出版物の刊行を禁止したという事実もあるのです。そういった者がだんだん文字を奪われるのは当たり前なんです。だから、その文字のよくわからない者が、例えば在日朝鮮人、今日日本に住んでいて、家を借りようと思ってもうまく断られる。それは違うじゃありませんか、それはちょっと不当じゃありませんかとなかなか対抗できない。入居条件に合いませんと言われても十分に対抗できない。そういうことが一つ一つの人権侵害の事実となって出ておるわけでありますから、格段の精神的構えというものを持って取り組んでもらわなければならぬ。 盧泰愚大統領が言った歴史の事実を正しく知ってこそ、初めて乗り切れる、これは、被害を受けた側からすればもう最大限の包容力のある物の言い方だと私は思う。あの話は、本会議場で私はちょっと涙を浮かべながら聞いたのです。差別を事実受けておる者は、それがぴんぴんくるのです。ぜひひとつ人権擁護局の方で、私は毎たび人権擁護局に物を言うようですけれども、ぜひそういう考え方で人権擁護の任務に当たっていただきたいと思います。答弁はもうよろしいですから。 そこで、先ほど社会党の小澤委員の方から、政府案と社会党案のことについての多少の違いというものについて出てまいりました。強制退去事由それから特別再入国の許可等について、大臣の、どういいますか恣意的な権力行使を最大限抑えてあるとは思いますが、我々の方は、この点を可能な限り客観的に、在日朝鮮・韓国人あるいは台湾人の生活の安定ということを考えますので、心配をしております。もう一度その点についての、客観的に公正を期すという決意のほどを伺いたいと思います。
○左藤国務大臣 お尋ねの点は、特例法案におきまして、その再入国の許可について従来の取り扱いに比べて緩和されているということで、しかし再入国を許可するに当たって法務大臣の裁量の範囲というものがあるわけですが、それをどういうふうに考えているのか、こういうお尋ねだろうと思います。 再入国許可は、法務大臣が、申請者の我が国におきます在留状況、渡航目的、渡航の必要性及び渡航先の国、それから申請者の国籍国及び渡航先国と我が国との関係、それから内外の諸情勢、そういった事情を総合的に勘案いたしまして、その裁量によって与えられるものであります。特別永住者につきましても、外国人である以上、今申しました再入国許可の裁量性ということにつきましては変わるものではありませんけれども、特別永住者につきましては、今先生もお話しになりました歴史的経緯及び定住性を有する外国人でございますので、そうしたことにかんがみまして、当初四年を超えない範囲内で許可するということができるようにいたしておりまして、その運用に当たりましては、今申しました特例法の趣旨を踏まえて再入国の可否を決定させていただきたい、このように願っておるものでございます。
○小森委員 こういった法案は国際的な関係というものが重視されなければなりませんので、可能な限り各党が一致をして最終的な結論を見出さねばならない。しかしながら審議の過程においてはそれぞれの党の思いというものが最大限に表に出されて、そして最後にそういう思いをお互いが尊重してやるということで一つの結論が見出されるものと思います。 そこで、改めてまたもう一度社会党の小澤委員の方に答弁に立っていただきたいと思いますが、強制退去事由のところで、政府案と提案をされた社会党・護憲共同の案との違い、そしてその基本的な思想というようなものについてお尋ねをしておきたいと思います。
○小澤(克)議員 お答えいたします。 政府案は、先ほど私の質問のところでも申し上げたとおり、強制退去事由についてかなりの絞りをかけておりますが、その発想といいますか、基本的なスタンスとしては、やはり日本にとって好ましからざる外国人には出ていっていただきましょう、これが基本的なスタンスになっております。入管法本法はまさにそのような考え方に立っておるわけでございまして、この特例法は、日韓の交渉等の経過を踏まえ、かなり限定を加えていることは事実でございますが、発想そのものは同じ発想に立つものだというふうに私は理解しております。 これに対して我が社会党の案は、先ほど申し上げたとおり、内乱、外患罪についてのみ強制退去事由としたわけでございます。これは党内でいろいろ検討していた過程でも、強制退去は一切行わないようにすべきだという意見もございましたし、またいろいろ運動をしておられる方等の御意見も、そのような意見が強いことも承知しております。そのような方々からは、この社会党案についてもなお不十分であるという、かなり強い御批判もあることも承知しております。 しかしながら、やはり基本的に外国人であるということは厳然たる事実でございまして、これを全く日本人と同様に扱うということは、かえって外国人であるという本質、この方々は自分たちは外国人であるということを十分意識をしておられて、そのことをまた自己のアイデンティティーの一つの要素というふうにとらまえておられるわけでございますので、この方々を余りにも日本人と同様に扱うということは、逆に外国人を外国人として尊重すべきであるということからすればいかがかなというような考え方も、一方ございます。 それらをいろいろ勘案いたしまして、やはり日本国に在住することと本質的に相入れないような行動をとった方、すなわち内乱、外患というような日本国そのものに敵対するような行動をとった方については、これは強制退去事由として残すことがむしろ妥当ではないだろうかという判断からそのようにしたわけでございます。 以上です。
○小森委員 歴史的経過からいうと、なるべく日本国籍を持つ我々と同じような処遇をしなければならぬし、さりとて民族の自尊心、民族のアイデンティティーというものも尊重しなければならぬ、そういうことから社会党案が具体的にはあのように配慮されておるということはよくわかりました。政府にあっても、いずれしかるべき一つの案にまとまるわけでありますので、十分にその辺は具体的な行政実務の中で生かしていただくようにお願いをしておきたいと思います。 さて次に、民事局の方へお尋ねをいたします。 国籍欄、俗に言われる国籍の書き込みの問題でございますが、そのことについて、事務的にどういう経緯を経てやられるのか。日韓条約第三条あるいは国連決議百九十五号などいろいろな関連したものがございますが、簡単にその手順を御説明をいただきたい。私が聞きたい中身は、その手順と同時に、えてして国交のある韓国と国交のない朝鮮民主主義人民共和国との間の、そういう国籍関係の違いによって差別的な扱いが行われるのではないか、今までそうであったのではないかという心配がございますので、その点、私の気持ちはそういう意味からの質問でございますので、それを踏まえてひとつ御説明いただきたい。
○清水(湛)政府委員 まず、戸籍上の表示の問題でございますけれども、昭和四十一年の一月十七日に日韓条約が発効する前におきましては、朝鮮人に関しまして、戸籍法に基づく届け出がされた場合における国籍の表示に関する戸籍の記載については、在日の朝鮮人が平和条約の発効と同時に日本国籍を喪失して外国人となったという事情にかんがみまして、一律に朝鮮という名称を使用していたところでございます。しかしながら、昭和四十一年の一月十七日に日韓条約が発効いたしましたので、その後におきましては、戸籍の届け出書に国籍を韓国とかあるいは大韓民国と記載し、しかもその届け出書に韓国官憲の発給の証明書がついておるというような形で戸籍の届け出がされた場合には、戸籍の記載は韓国として記載して差し支えない、こういうような扱いをしておるところでございます。 お尋ねの、韓国の国籍を持つ方とそれ以外の朝鮮半島出身者について何らかの差別をしておるのではないかというようなことでございますけれども、例えば私どもが所管しております帰化の問題につきましても、御案内のように我が国には多数の朝鮮半島出身者が生活をしておりまして、もうその生活の基盤も完全に日本にある、しかもその多くの人たちは日本人と身分関係をも持っておるというような方が多うございまして、帰化を希望される方も非常に多数あるわけでございます。そういうような方が帰化を申請された場合には、私どもは、それが韓国の国籍であるか、あるいはそれ以外の朝鮮半島出身者、つまり北朝鮮の方々であるかというようなことには一切かかわりなく、我が国の国籍法の定めるところに従って、帰化を許可すべきかどうかということを判断していくわけでございまして、一例はこの帰化の問題でございますけれども、そのような国籍と申しますか、出身地の違いによる差別というものは一切私どもはしない、こういう考え方で臨んでいるところでございます。
○小森委員 現実は、どちらの国に国籍を持っておるかということで、日本政府の扱いというものが不平等な扱いをしておるという不満の気持ちを持っておるということも、これは事実なんでありまして、そこを一々きょう一つずつ詰めるというわけにいきませんから、そういう危惧を持っておる、なお一層それはひとつ気をつけてやる、こういうことでお願いをしたいと思います。 さて、先般毎日新聞に、これは四月四日の新聞であったと思いますが、大きな見出しで「外国人登録原票に「犯歴」 法務省、記入を指示 刑務所在監歴など「人権無視」 の声も」という五段抜きの大きな記事が出ております。ここで法務省入国管理局山崎哲夫登録課長の話として出ておるこのコメントは、このままのコメントとして、文章は略してあるから一〇〇%ではないにしても、趣旨はこういうことなのかということを尋ねておきたいと思います。
○股野政府委員 この報道につきまして、その基礎にあります事実関係をひとつ御説明しながら、今のこの報道についての中で書かれております、その担当課長の話なるものについての事実関係も申し上げたいと思うのでございますが、この問題は、そもそも外国人登録法が、その一条にある目的の中に、外国人の居住関係と身分関係を明確にするということが記されておりまして、そこでその外国人登録の目的を達成するために、外国人がどこに居住しているかという居住関係を正確に把握する必要があるということが基礎にあるわけでございます。 したがって、もし確定判決等で矯正施設に収容された外国人がいる場合には、その点についての事実関係を把握する上で、矯正施設の長から通知をいただいておるということでございまして、その通知を受けたときに、登録原票の備考欄に、例えば人監あるいは移監あるいは出監といった事実だけを記載するということを行っているという事実はございます。これはそもそも、ただいま申し上げました外国人登録法の趣旨が外国人の居住関係を明確にするということに沿って行われたということでございます。 新聞報道に出ておりますこの担当課長の発言なるものは、これは非常に不正確な表現でございまして、基本的に今のような居住関係を把握するということ、それから外国人登録というものは、今一般の行政あるいは地方自治体の行政その他において、幅広く外国人の居住関係と身分関係が明らかになるデータとして活用されているんだという趣旨を言ったわけでございますが、それがこういうふうに非常にゆがんだ形で報道されたということでございまして、決して担当課長はここに表現されているようなことを申したことはございません。
○小森委員 矯正局長にお尋ねをしますが、矯正局は、先ほど入管局長が言われたようなことで、矯正施設から人監の通知を市町村に出すということなのか。私の考えは、そんなことをなぜ市町村がデータとして持っておらなければならぬか、これをまず疑問に思うのであります。したがって、その辺のところをちょっとお答えいただきたいと思います。
○今岡政府委員 お尋ねの、矯正施設から市町村に対して通報という形で外国人受刑者と確定者についてお知らせをしているわけでございますが、これは、やはり先ほどの入国管理局長の答弁にもありましたように、外国人の居住関係を明らかにするという法律の趣旨に沿った措置というふうに私どもは理解しておりまして、特に刑務所等に入ります外国人受刑者は、必ずしも居住地に近いところの施設に入るわけではございませんので、そういう意味合いから、入所した、あるいは出所したという事実をそれぞれ当該市町村にお知らせしているというにとどまるわけでございます。それ以上に矯正としては何らの措置もとる立場にはございませんし、行っているわけではございません。
○小森委員 法務省入国管理局から出ておる書物というか、市町村行政の実務の手引のようなものの中に、外国人登録事務取扱要領というものがございます。その要領の中の、これは六十三年に出ておる書物ですけれども、百八十ページに次のような文章があります。「市区町村において、その在監者に係る原票を保管している場合に限り、これを受理するものとする。」次のところからが私の言いたいところなのですね。「また、収容に係る居住地変更登録申請は、収容によって居住地が変更したと認められないので、これを受理してはならない。」つまり、居住地は変更したという考え方を持ってはいかぬということを書いてあるのです。 しかるに、その市区町村よりも遠いところへ行くから、居住地が変更したんだから、そこをちゃんとしておかなければいかぬ。それはしかし、法務省の矯正局なり入管局サイドでそういう記録は持っておけばよいことであって、市町村に何の必要がありましょうか。こういう、居住地が変更したとは考えなくてもよいということを言うておるのです。 時間がなくなりました。これはまた別の機会に、こういう場でなくても、私いろいろ聞かせてもらいたいと思っていますが、このことについてもちょっと一言だけ答えてください。
○今岡政府委員 やはり外国人につきましては、在留関係等を明らかにするもとの資料は、外国人登録原票に基づくいろいろな諸手続だろうと思いますが、そういう意味合いで、いろいろ、刑を受けて刑務所等に収容されている者につきまして、場所が移動したというときに、これを当該市町村に通報するということは、外国人登録法の趣旨からして十分かなったことだというふうに考えております。
○小森委員 時間が来ましたので、これで終わります。
○伊藤委員長 御苦労さまでした。 次回は、来る十二日金曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時三十五分散会