法務委員会 第1号
- 発言数
- 171 件
- 登壇者
- 25 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1990/03/29
会議録
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 去る三月六日、山本富雄君が委員を辞任され、その補欠として山岡賢次君が選任されました。 ─────────────
○委員長(黒柳明君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。 本委員会は、今期国会におきましても、検察及び裁判の運営等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(黒柳明君) この際、長谷川法務大臣及び狩野法務政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。長谷川法務大臣。
○国務大臣(長谷川信君) 一言ごあいさつを申し上げます。 このたび、図らずも法務大臣に就任をいたしまして法務行政を担当いたすことになりました。内外にわたり極めて困難な問題が山積をいたしておりますこの時期に当たり、その職責の重大であることを痛感いたしております。 私は、法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあると考えております。国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るために、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく確立をされ、国民の権利がよく保全をされていることが極めて肝要であると存ずるのであります。私は、こうした認識のもとに、法務行政の各分野にわたり一層の充実を図り、時代の要請に応じた適切な施策を講じ、真に国民の期待する法務行政の遂行に万全を期してまいりたいと存じております。 もとより、これらのことは、委員長を初め各委員の御理解、御協力なくしては到底果たし得ないのでありますから、どうかよろしく御支援、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。 以上、簡単でございますが、所信の一端を申し上げまして就任のごあいさつといたします。
○委員長(黒柳明君) 狩野法務政務次官。
○政府委員(狩野明男君) このたび法務政務次官に就任いたしました狩野明男でございます。 時局柄大任でございますが、長谷川法務大臣のもと、よき補佐役として時代に即応した法務行政の推進のため、微力でありますが最善を尽くしてまいりたいと存じております。 よろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げ、簡単でありますが、ごあいさつといたします。 ─────────────
○委員長(黒柳明君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。長谷川法務大臣。
○国務大臣(長谷川信君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。 この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、簡易裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、簡易裁判所判事の員数を五人増加しようとするものであります。 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、一方において地方裁判所における民事訴訟事件、民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員を六十二人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化すること等に伴い、裁判官以外の裁判所の職員を三十七人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十五人増加しようとするものであります。 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願い申し上げます。
○委員長(黒柳明君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。 これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
○北村哲男君 北村でございます。 本題に入る前に、私は昨年十二月十六日午後二時五十二分に、北京発ニューヨーク行きの中国民航九八一便ジャンボ機がハイジャックされた件についてお伺いしたいと存じます。 なお、本件は現在東京高等裁判所で、逃亡犯罪人引き渡し審査請求事件として審理中でありますので、審査内容に立ち入ることはなるべく差し控えて、過去の政府当局及び警察当局のとった措置について聞いていきたいと存じます。 まず、内閣官房内閣安全保障室にお伺いしたいと存じますが、政府は十二月十六日、当日の午後三時に首相官邸に森山官房長官を長とする中国民航機ハイジャック事件対策本部を設置し、そこでは早々と政府はハイジャック防止条約すなわちハーグ条約に従って犯人の裁判権を放棄し、中国側に引き渡す方向で国内法の手続を開始すると決定して発表しております。また、翌十七日、事件の態様や日中間の関係などを総合判断した上で日中友好を優先することを石原官房副長官は述べております。 さらに、その後の調べで、犯人とされる張振海容疑者が犯行の動機について天安門事件などの政治的理由があったことを明らかにした段階の十八日に至っても、政府はなお中国側への早期引き渡しの方針に変更はないと繰り返しております。 そこで、我が国には逃亡犯罪人引渡法という法律があるということは御存じと思います。その二条では、「引渡犯罪が政治犯罪であるとき」あるいは「引渡の請求が、逃亡犯罪人の犯した政治犯罪について審判し、又は刑罰を執行する目的でなされたものと認められるとき」は「逃亡犯罪人を引き渡してはならない。」という政治犯不引き渡しの原則というものがございます。 本来政府は、相手国すなわち中国から犯人の引き渡し要求があっても、この逃亡犯罪人引渡法に基づいて東京高等裁判所が引き渡しができる場合に当たると決定した場合にのみ、引き渡しについて政府はさらに引き渡すことが相当であるかどうかの政治判断をした上で引き渡しを命ずることができるのであります。 そこで、これほど厳格な政治犯不引き渡しの原則と手続があるにもかかわらず、この司法判断が下る前に早々と速やかに返還するとの方針を発表したことは、司法権の独立あるいは東京高裁の審査に対する侵害のおそれがある行為であると思わざるを得ないのでありますけれども、内閣官房の御見解をお伺いしたいと存じます。
○政府委員(依田智治君) お答えいたします。 先生御指摘のように、当日十五時に政府に対策本部を設置いたしました。それで、犯人はその直後に身柄が確保されておったわけでございますが、こういう犯罪は慎重を期する必要があるということで私どもはその本部を設置した一時間半後の十六時半から関係各省各庁の課長レベルの会合を開きまして、これは私が主宰したわけでございますが早急に事実を究明するということを決定いたしました。さらにそれらの調査結果等に基づきまして、その日の十九時半から、今度は石原副長官主宰で官邸で幹事会、各局長レベルの会合を開いて、今後の身柄引き渡しをどうするか、身柄の処理を含めてどうするかということを審議したわけでございます。 その前に、既に中国側からはぜひ機体を返還していただくとともに犯人も引き渡してくれという要望が出ておりました。私どもとしては、今回の事件につきましてはあくまでも我が国に裁判権があることはもちろんでございますが、ヘーグ条約に基づいて登録国にも裁判権はあるわけでございまして、その判断は我が方にあるということでいろいろ検討しました結果、中国民航機で、しかも二百二十三人の乗員、乗客に日本人一人もおらず、ほとんどが中国人であるというような状況、それでしかも日本にはただ福岡空港におりただけである、こういうような状況もいろいろ勘案いたしまして、これは我が国で裁判権を行使するよりも中国側に引き渡して裁判していただいた方がより効率的であり、また中国の要望にも合致するということもございまして、私どもはこれは引き渡すということを決定したわけではございませんで、国内法の手続を進める、もちろん法務省等からの逃亡犯罪人引き渡しの手続はこうこうですよということも十分その幹事会等で審議した上で身柄は裁判にゆだねて引き渡す方向の手続を進めるということを決定して外に発表したということでございます。 その後も、現在審理が行われているわけでございますが、そういう手続を見守っておる、こんな経過でございますので、決して司法権を侵害するというような考えはございませんので、よろしく御理解のほどお願いしたいと思います。
○北村哲男君 御説明でありますけれども、速やかに返還するという方針を重ねて報道機関に発表されるということは、これから審理があるにもかかわらず政府は返すんだということで、その辺で相当国民に誤解を与えているということ、そして現在の東京高裁の裁判にも影響を与えていることについては明らかであると思います。 私は、この点について議論を進めるつもりはありませんけれども、日本の刑法体系には裁判の結論が出るまでは無罪の推定があるという原則があることは当然でありますけれども、それと同様に政治犯罪に関しては原則として引き渡さない、こういう原則から出発して、審理の結果引き渡すことができる場合にのみ引き渡すとの政治判断が可能であるという、そういう立場に立って、政府当局が公権的な立場で引き渡すことを初めから表明することはこの原則にもとり、司法の独立に対する影響が大きいというふうに考えます。そういうことで、次の質問に移りたいと思います。 次に、警察当局にお伺いしたいと存じます。 中国民航機が福岡空港に着陸した際に、我が国の捜査官が直ちに捜査を開始すべきであったのに、中国の福岡総領事と中国民航福岡支配人の二人を中国民航機に搭乗させ、日本の福岡県警が四時間半も機外で待っていたという事実が明らかにされておりますが、なぜ我が国の捜査が優先されなかったのか、この点について説明していただきたい。すなわち、だれがどのような権限により県警の捜査をおくらせ、中国の総領事らの調査を優先させたのかという点であります。この点について明らかにしていただきたいと存じます。
○説明員(石附弘君) 警察庁のこの事件に対する対応についてお答え申し上げます。 警察庁では、本件事件発生直後の十六日の十四時五十五分、中国民航機ハイジャック事件対策本部というものを警察庁に設置いたしました。そして情報の収集及び事件処理の指導に当たるとともに、全国の都道府県警察に対しましてハイジャック発生に伴う空港警戒を指示したわけでございます。また地元の福岡県警でございますが、十五時にハイジャック総合対策本部を設置いたしました。警察官約千名を動員して警戒に当たったほか、被疑者及び機関長等関係者からの事情聴取また機内の実況見分等を実施いたしました。午後十一時過ぎには当面の捜査を終了したという経過でございます。 警察といたしましては、所与の条件のもとで法により最大限の捜査を、また所要の措置をとったということでございます。
○北村哲男君 重ねてお伺いしますけれども、中国総領事あるいは中国民航の支配人が、犯罪が行われたことは明らかなのに警察よりも先に入って調べをしたということはどういうことなんでしょうか。
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。 警察といたしましては本件被疑者、張振海でございますが、航空機の強取等の処罰に関する法律違反の被疑者ということで所要の捜査を尽くしております。 先生お尋ねの点でございますけれども、その点につきましては、国と国との関係ということで、私どもは所与の条件のもとに最大限の捜査を尽くしたということでお答えをしたいと思います。
○北村哲男君 はっきりしないんですけれども、それでは同じことだと思いますので次に進みますが、新聞報道によりますと、県警本部は張容疑者の妻と子供は犯行と無関係と断定し、他の乗客と同行して帰国させることになったという報道が十七日、翌日の朝には報道されております。一方、同じ記事で、調べに対し張容疑者は三カ月前から妻と計画を立てたと供述しているということも同じ報道に載っておるわけです。これは一見共犯あるいは幇助犯、一緒にやったということは明らかであるにもかかわらず、警察、県警本部が妻と子供は犯行と無関係と断定して帰させることに決めたということは一体どういうことなのか、その点についてお伺いしたいと存じます。
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。 福岡県警察としては、犯罪捜査の立場から、被疑者張振海の妻がこの犯罪行為に加功していたか否か、また犯罪行為に対する認識等どういうものであったかということ等につきまして任意に事情聴取をいたしました。御指摘の報道等、私ども承知しておりますが、私どもの事情聴取の時間は約三十分間でございます。この時間の中で我々の捜査の関心事項ということにつきましては、要点は一通り聞き終えたものと承知しております。 なお、福岡県警といたしましては、先ほど申し上げましたように被疑者及び機関長等関係者からの事情聴取を行い、かつまた実況見分等所要の捜査を尽くしております。 この供述の内容等また捜査の内容等につきましては、現在、東京高等裁判所で審査中でございますので詳細を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、同人妻の本件犯罪行為に加功したと認定し得るに足る資料は得られなかったということで承知しております。
○北村哲男君 さらに十二月十八日、翌日の新聞によりますと、北京空港では張容疑者の妻と見られる女性が両手に手錠をかけられ連行されたという記事が載っております。これは中国公安当局としては当然共犯としてみなしているわけですけれども、日本の警察が無関係というふうにお考えになり、その判断でお返しになったという点についてはちょっと納得のいかない点があるという気がします。無関係と判断されたから送検とかそういう手続はしてないということなんですね。
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。 繰り返しになりますが、当方の捜査によれば、張振海の妻が犯罪行為に加功したと認定するに足りる証拠は得られなかったということでございます。現在なお捜査中でございます。
○北村哲男君 先ほど、約三十分間の事情聴取をされたということを聞きました。内容については結構でございますけれども、張振海氏が本国で政治活動をしていたかどうかという点について、現在その認否が東京高裁で争われているんですけれども、その点について警察当局は事情聴取をされたかどうか、この点についてお伺いしたいと存じます。
○説明員(石附弘君) 再三お答えしていますように、警察の関心事項は日本の国内法違反、つまり航空機の強取等の処罰に関する法律違反に張振海の妻が関与していたかどうかという点でございます。したがって、その点について所与の条件のもとで捜査を尽くしたということをお話し申し上げております。
○北村哲男君 ということは、張容疑者の本国における政治活動の点については興味がなかったというふうにお伺いしてよろしいわけですか。警察当局としては興味がなかった、調べていないというふうにお伺いしてよろしいでしょうか。
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。 所与の条件のもとで本人の、つまり張につきましては被疑者としての取り調べ、事情聴取を行っております。その過程でいろいろな話があったことはございますが、その内容については捜査の内容にわたりますので控えさせていただきます。
○北村哲男君 確かに審査内容に立ち入ることはできないのですけれども、しかし今まで明らかにされている点につきましては、第一回の審査期日は開かれておるわけですけれども、その中では検察官の御意見などでも、妻はハイジャックについて事前に振海氏から打ち明けられて事実を知っていたというふうにされております。そうするとこれは共同正犯あるいは幇助犯の疑いが強いものであることはもう今の段階では明らかなんですけれども、こういう状態が当時の状況でもわかっているにかかわらず、関係ないとして返されて、その後、返されたところ、やはり案の定といいますか、中国ではすぐにもう犯人扱いにされて調べを受けているのですけれども、そういう妻子の身体の安全などの点についての配慮はされてお返しになったのかどうか。 すなわち、先ほど私が一番最初に申し上げましたように、政治犯人不引き渡しの原則というのは、そういうふうな返された場合にどうなるかわからないという身の安全ということも配慮してつくられた法律だと思うのです。そういう点について警察はどういう御配慮をされたのか。すなわち、返された妻子の身の安全ということについてどういうふうにお考えになったのかについて伺いたいと存じます。
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。 先生御指摘の中国において張振海の妻がいかなる事情によりいかなる措置、処遇を受けているかということは、我々警察の立場からは承知をしておりません。 次に、我々としては、警察はあくまでも犯罪、国内法の捜査でございますので、その捜査のために全力を尽くすというのが責務でございます。以上でございます。
○北村哲男君 それでは、それ以上のお答えは得られないと思いますので、次に法務省当局にお伺いしたいと存じます。 それは先日、三月二十三日の東京高裁における審査期日の直後に、裁判所と検察官、そして補佐人の打ち合わせの中で、次回四月四日の審査期日に岳武という中国人の証人を在廷を条件に証人採用するという決定がなされております。 この岳武という人は天安門事件などで民主化運動に携わった労働者の連合体の副責任者で、張振海氏とともに中国において政治活動を行ったことを目撃あるいはともに行動したことを証言できるという重要な証人であるようです。 この岳武という人は今ニューヨークに在住し、在外中国人とともに中国民主化運動を行っておるということですが、この人が先般の証人決定後、補佐人である日本人弁護士がニューヨークに飛んで、証人として出廷することを要求したところ承諾された。そして三月二十七日に日本の領事館にビザの申請を行ったところ、日本の領事館は三月二十九日まで、すなわちきょうですね、待ってほしいということでビザの発給を留保しておるということが言われております。四月四日が迫っておりますけれども、これはいかなる理由でビザの発給が留保されているのか明らかにしていただきたいとともに、日本の裁判所が証人として調べたいとの決定を出している者に対して、万一ビザという手続のおくれで審査期日に間に合わないということになると重大な人権問題になると考えます。 そこで、その後のこのビザの発給に対する対応と経過について御説明をお願いしたいと存じます。
○政府委員(股野景親君) ただいま委員御指摘の外国人の方、岳武というお名前の方についての査証の点でございますが、私ども法務省としては、外務省を通じまして承知しておるところによりますと、三月の二十六日に査証の申請が行われたと承知いたしておりますところ、法務省といたしましては三月の二十八日に外務省を通じまして在日関係者等からの入国目的あるいは滞在予定期間等に関する資料の提出を受けましたので、これに基づきまして法務省当局で審査をした結果、この外国人の方の入国を認めることといたしまして、同日、二十八日中に、その旨外務省に既に通知をいたしております。したがって、それに基づいての査証の手続がなされる、私は発給の手続がなされると考えております。
○北村哲男君 よくわかりました。法務省当局の御尽力に感謝したいと存じます。ありがとうございました。 それでは次に、この委員会の本題であります裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の内容についてお伺いしていきたいと思います。 最高裁判所にお伺いしたいと存じます。 今回の改正案では、簡易裁判所の判事を五人増員すること、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十五人増加することで法律改正を求めておられますが、最近の資料を見ただけでも六十三年すなわちおととしの三月に全く同じく簡易裁判所判事五人増、職員二十五人増の法改正を求め、六十四年すなわち昨年三月にも全く同じく簡易裁判所判事五人増、職員二十五人増の法改正を求めておられます。毎年同じ時期に全く同じ内容の法改正を求めざるを得ない法のシステムとその理由というか、なぜこういうことを毎年この時期にやっておられるのか、そういう点についてまず御説明をお願いいたしたいと存じます。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 委員御指摘のとおり、裁判所からの増員要求といたしましては、昭和六十三年から今年度まではおっしゃったような同じ形になっております。しかし、その前の六十二年あるいは六十一年ということになりますと、裁判官の方は地裁の判事を増員要求させていただいております。 六十三年以降の増員の柱は基本的に三、四本立てて、ほとんど似通っておるわけでございますが、例えば昭和六十三年には簡易裁判所の督促事件の処理というような柱を立てさせていただいております点は平成元年、今年度と違う点でございます。しかし、そうは申しましても大体同じパターンではないかと言われればそのとおりでこざいます。 基本的には、最近の事件の動向とかいろいろな部署の忙しさ、そういったものを一方ではにらみながら、また他方では裁判官等につきましては、定員の枠を広げた場合にそれが埋まるか埋まらないか、いい人で埋まるか、そういったことも見ながら、毎年毎年の増員要求を相当程度ずつ着実にさせていただいているというのが現在の増員要求の姿でございます。 ただ、こういう増員要求の仕方で毎年毎年、年中行事のように国会にお手数をおかけするということについては私どもも大変恐縮しておるのでございますし、また昨年、千葉委員の方からもそういう増員の形ではなくて、もう少し中長期的に見て必要な裁判官数等を設定して、そして上限を画するような数を増員として求め、毎年毎年するというような方法をとらないでもいいのではないかといった趣旨の御示唆をいただきまして、私どももできればそういった方法もとってみたいといったことで法務省の方とも協議させていただいて研究しているところでございます。 ただ、この前も申し上げたのでございますが、そういう裁判官がどのくらい必要かということを中期的長期的に立てますには、ある程度事件の動向が安定しているということが一つ必要でございますし、また裁判官一人がどのぐらいの事件を処理するのが適正であるかという数の見定め方につきましても、これは単に件数だけではまいりませんで、その事件の内容とかその他いろんな要素が絡んでまいりますのでなかなか双方に流動的な要素がございまして、しっかりしたそういう設定をするということが現時点ではなかなか難しい状況でございます。ただしかし、私どもの方もそういうことができればということで研究を続けさせていただきたい、こう思っております。
○北村哲男君 大体今のお答えのとおりだと思うんですけれども、行政機関の国家公務員などは総定員法ですか、もうちょっと大まかに決めて、その中である程度運用してやっていると思うんですけれども、裁判所の場合それができないのはどういうことなんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 行政官庁の場合は、さまざまございます各省庁、それを全体としてにらんでおるわけでございまして、そのときそのときの状況によって、ある省の方の人員需要の度はふえるけれども一方の方は下がる、そういった要素もにらんでのものだろうと思います。 しかし、裁判所という単一の官庁で考えます場合には少しその辺の事情が違いまして、こちらの方の需要が上がったけれどもこちらの需要は下がったといった要素が単一の官庁については比較的起こりにくい形でございます。ですから総定員法的な形として考えます場合には、先ほど申し上げましたように中期的あるいは長期的にこのくらいの数の裁判官がいるのが望ましいという計画目標人員を設定して、それを上限として定員法で規定していただき、そこに向かって毎年予算の方で取っていくというような形が考えられるわけでございますが、そういう方式の難しいところが先ほど申した点でございます。 その他、現在の定員法につきましては、裁判官につきましても裁判官ということではなくて、判事、判事補、簡裁判事、こう分かれておりますので、非常にそういったところも融通性に乏しいという難点もございます。そういったこともにらみながら、しかしまた一方では、そういう大きな枠だけで、あとは毎年は裁判所と財政当局の関係でとすることが国会の審議権等の関係で望ましいのかどうかといった問題もございまして、このあたり今後先生方の御理解も得られるなら、おっしゃったような方法もとれないかということを一生懸命考えてまいりたいと思っております。
○北村哲男君 ところで、このわずか三年間のことですが、簡易裁判所の判事だけを毎年増員し、地裁の判事あるいは地裁、高裁の判事あるいは判事補についてはここ数年据え置きになっておりますが、これはどういう理由かということになるんですけれども、現在の地裁、高裁の裁判実務は現在の判事、判事補の数で十分機能しているという御趣旨なのか、あるいは供給が足りないというか、先ほどちらっと言われましたけれども、いい人が十分見つかり得ないというふうなことなのか。その辺はどうなのか。特に裁判遅延とかいろんな問題も常時言われておるんですけれども、その辺の兼ね合いで御説明をお願いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 裁判官につきましては、やはりその供給源と申しますか、給源に限度がございます。弁護士から裁判官にという道もあいておりますし、最近は数人の方になっていただいているわけでございますが、基本的には司法修習生から判事補になる。そしてその判事補が十年たって判事になる、そういう形になるわけでございます。 判事補、判事につきましても全然増員要求をしていないということではございませんで、過去のことを申しますと、昭和四十五年から五十三年までの間はまず判事補を増員しようということで、判事補について七十六人の増員をお認めいただいたわけでございます。そしてその判事補の増加ということを基盤としまして今度は判事の増員を図るということで、五十四年から六十二年までに九十二人の判事を増員したわけでございます。そうして一応判事の充員の方はほぼ限界に近づいた。一方では簡易裁判所の適正配置を契機に簡裁の審理の方の充実を少しでも進めたいということがございまして、簡裁判事の方に切りかえさせていただいたということでございます。 最初に申し上げましたとおり、どうしても給源と申しますか、そちらの限度の問題がございますし、判事補の質、判事の質をできるだけ高いものに保つというような必要も考慮しますと、一挙に数をふやすということにも問題があると思います。また数だけふやしても実際が埋まらないということでも困る。そういった要素もございまして、その辺を見ながらここのところ三年は簡裁判事に重点を置いてということでさせていただいているわけでございます。
○北村哲男君 私ども、片や法律実務に携わっておる者でありますけれども、中堅の裁判官のお仕事はとても厳しいように見えるんです。それでもっとふやしていただきたいという気持ちもとても強いんですけれども、ただいまの御説明でもありましたが、さらに増員要求をしても人が来ないというふうな実情はあるんでしょうか。あるいは、もう一点続けてですけれども、今まで毎年修習生から判事補に採用されておりますが、例えば多過ぎてもうお断りするとかそういうふうな実情なのか、あるいは逆に足りないというふうな実情なのか、その辺についても、大まかで結構ですけれども御説明をお願いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 判事補について申し上げますと、判事補の定員は六百三名でございます。これを十年で割りますと六十一人ぐらいになるわけでございますので、一年間に六十一人程度の修習生を採用しなきゃいけないわけでございます。そのほかに判事補の間で退官がございます。これが年当たり六、七人ございます。したがいまして年間に平均六十七、八人の新しい判事補を修習生から採用していかなければならないわけでございますが、ここ十年のところ、残念ながら平均いたしますと年間六十二名程度の修習生から判事補への任官でございます。そういった面で十分には足りているということではございません。したがいまして定員の関係で任官をお断りするという状況にはございません。 しかしながら、幸いながらことしは現在のところ八十一名の任官希望者がございますので、そういった欠員はほぼ埋まるという状況にはございますけれども、長い目で見ますと、ことしのように八十一名のような多くの任官希望者がある年ばかりじゃございませんので、その点は私どもも十分充員するように心がけて努力していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
○北村哲男君 ここ三年ばかり増減の理由について法律案を比べてみますと、全く同じ理由が三年続いておるわけです。 一つは民事執行法に基づく執行事件がふえたということ、あるいは破産事件がふえたということ、これは職員の問題ですが、簡易裁判所の判事に関しては適正迅速な処理のためという三つの理由だけが挙げられております。 しかし、ここ一、二年の間で裁判所の組織に関し重大な変更が行われたことがございます。 その一つは、六十三年五月一日から実施されております簡易裁判所の統廃合の問題であります。二つは、ことし四月から実施される地裁、家裁の統廃合の問題であります。これらはいずれもかなり大きな話題を呼び、地域住民の裁判を受ける権利に影響を及ぼすとしてかなりの反対の声もあったにもかかわらず、これが実施されておるという、かなり裁判所としては重大な合理化というか組織変更であったと思います。この二つの統廃合によって人的組織というか、今の人員の配置とかその増減とかということについてはどのような影響を与えたのか、この辺を明らかにしていただきたいし、どのように効率化され、そしてその影響がこの定員法の改正にあらわれてこないのはなぜなのか、この辺についての説明をお願いしたいと存じます。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) あるいはお尋ねの趣旨に対するお答えになっていないのかとも思いますが、簡易裁判所の適正配置、地方裁判所、家庭裁判所支部の適正配置、いずれにつきましても裁判所の人員、トータルとしては減らすとかいうことにはなっておりません。もともと裁判所の適正配置は人員の削減等を目的としたものではございませんで、審理のあり方をより一層充実したいというところを目的とするものでございまして、適正配置したから裁判所の職員の数を減らしたという形ではございません。 全体としての数は同じでございますが、例えば簡易裁判所の適正配置について申し上げますと、廃止いたしました簡易裁判所におりました職員が約二百八十人ございます。その二百八十人を、廃止簡易裁判所の土地管轄を引き継ぎます受け入れ庁の方にほぼ百三十人持ってまいりました。そして受け入れ庁以外の簡易裁判所で忙しい簡易裁判所に約七十人を持ってまいったわけでございます。それで二百人でございますので、残りの八十人を地裁、家裁の忙しいところの方に回した、こういう形になっております。そういうことでは繁忙部門に対する手当てといたしましては相当の手当てにはなるわけでございます。人員をより効率的な形で使えるということでございます。 しかし、そういうことをした上でなおこれを契機に一層のということで、さらに増員の際に簡易裁判所の職員等について若干の手当てをしていただいた。こういう契機に審理の質の方の改善あるいは処理の質の改善をより一層進めたいといった点からなお増員させていただいた、こういうことでございます。
○北村哲男君 要するに、物的設備は統廃合したけれども、人的な問題は変わってないということと理解します。 関連して、地家裁支部の統廃合について若干お伺いしたいと存じますが、平成元年十二月十三日の最高裁裁判官会議で、検討対象となっていたいわば乙号支部五十八支部のうち四十一支部の廃止を決め平成二年の四月から実施するというふうに公表しておられます。これと同時に、廃止する支部のうち二十の家裁支部には事件受け付け事務を中心とした家裁出張所を設けることを決めておるというふうに言われております。また、一説によると十七の地裁支部ということもどこかで見たような気がするのですが、ちょっとその内容ははっきりしません。私が聞きたいのは、事件受け付け事務を中心とした家裁出張所というのは一体どういう機能をし、どういうことなのか。それから今までの場所について、統廃合したらもう場所は必要ないのに、またそこをそういうもので使うということはどこにどういう意味があるのか、その点について詳しい御説明をお願いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) まず、支部の方の適正配置でございますが、これは簡易裁判所の場合と違いまして、支部のあるところには必ず併設されている簡易裁判所がございます。それで、地裁、家裁の支部は廃止いたしますが、今回の適正配置は簡易裁判所の方はそのまま存続させるということでございます。したがいまして、もともと土地、建物につきましては支部を廃止したからそこを国の方へお返しできるというものではございません。その点が一点でございます。 今回の、お尋ねの後段の方から申しますと、その出張所といいますのは、家庭裁判所の支部を廃止して最寄りの本庁または支部の方に統合したいということが私どもの最初のねらいであったわけでございます。しかし、今回の作業をいたしております過程で、地裁の事件と違って簡易関係の事件につきましては、弁護士さんを代理人に頼まれるということなしに本人が直接申し立て書をその裁判所に持ってこられるというような事件も多い。そういう本人の便ということを考えれば、少し足を延ばすということは苦痛を与える面もあるのではないか、何とか家裁の方は支部を残せないかといった声も幾つかの方面から出てまいりました。 私ども、当初のねらいをある程度達成しながら、またそういった面にも配慮を加えるということで、それでは家事事件については廃止しようとする支部のあるところで申し立てを受け付けることができれば相当部分その分の手当てはできるのではないか。家事事件の中には難しい事件もございますが、非常に多くを占めておりますのは、わざわざ当事者が御出頭されなくても、書面審査あるいは書面による昭会、確認等をして、裁判所の方が決定をして送ればよいという事件も多うございますので、申し立てを受け付けるという機能を持った組織を設ければ相当お役に立つ面もある、そういったことを考えました。 その方法をいろいろ考えました結果、また新しい組織をつくるよりはということで、従来からあります出張所という名前の組織を置こう。しかし、従来の出張所はいわば小型支部でございまして、そこでそこの管内の事件を全件処理するという形になっておりました。それでは非常に運用の面においても硬直したところが出てまいりますので、そういうことではなくして、出張所ではあるけれども取り扱い事件を一部それぞれの家裁の裁判官会議で限定できるというふうに出張所設置規則を改正しまして、そしてそういう家事事件の申し立てを受け付けることができる、あわせて出張した方が適当な事件はそこへ出向いていって出張調停、出張して処理するといった場所として使うのがいいのではないかということで、今回のような出張所を二十カ所置かせていただいたわけでございます。
○北村哲男君 家裁の事件は、窓口というか、実際の調停あるいは審判に入る前の受け付け事務で、まさに裁判所が国民にサービスをして、よくわからない人が来たときにそこで親切に教えて解決するのが非常に多いのですね。その役割というのは、家裁の場合はまさに受け付け事務が単なる事務ではなくて、非常に内容になっているような気がするんですけれども、今回のこの受け付け事務というのはある程度そういう人員を配して、ベテランの書記官の人たちをそこに前に置いて直接来る人に対するいろんな指導とかそういうものをされるようなことになるのか、あるいは単に来た事件を受け付けるというふうな書面的なものになるのか。その辺のイメージはどういうことになるんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) おっしゃいますとおり、出張所にも家事事件に詳しいベテランの書記官を置いて、そして家裁の事件の手続等に関する相談に十分対応できるということが望ましい姿でございます。しかし、何しろ今回支部を廃止しようといたしましたところは非常に事件数の少ないところでございます。したがいまして置ける職員の数にも限度がございますし、また裁判所の場合は全国にたくさんの組織を抱えておりまして、直ちに全部のところにベテランの書記官を置くということは難しゅうございます。そういうことをやりました場合には忙しいところの家庭裁判所の方が手薄になるという面もございますので、そこのバランスを考えなければならないわけでございます。ですから、おいおい出張所に置く職員についても充実した形でやっていかなければならないと思っておりますが、当面する全部の出張所でそういうことができるということは難しい面があるわけでございます。 それから、先ほどの相談の関係でございますが、家庭裁判所の場合特にそうでございまして、家庭裁判所に限らず簡易裁判所におきましてもやはり法律に素人の方が来られまして、申し立てようかどうかとか、あるいはその場合どこへどんな形でやったらいいのかといういろいろな相談があるのは事実でございますし、それに対して私どもできるだけ限度を踏み外さないようにしながらも親切に対応しなければならないという姿勢でやってまいっておるわけでございます。 今回、支部を廃止いたします関係におきましても、先ほどの出張所でやはりそういう家事の手続関係の相談、案内ということを十分に行えるよう、また本人が申し立てようとされた場合に、申し立てていただきやすいように幾つかの事件の類型につきまして定型の申し立て書式を置いたり、その申し立て書の記載、記入方法の説明書を置くということにいたしました。そして、その申し立て書に基づいて御説明した方が住民の方にもわかっていただきやすいということで出張所にもそういうことをいたしますし、それから家事事件を取り扱わず出張所を置かれない簡易裁判所につきましても、やはり国民の方は家庭裁判所と簡易裁判所の区別、どこでどの事件を扱っているかということがわからないで家事の関係の相談が持ち込まれることもございますので、それにも十分とはいかなくても相当程度親切に対応できるようにということで同様の定型申し立て書式とか手続の説明書とかそういったものを置いて、窓口の職員がそれに基づいて御案内できるようにということでさせていただくつもりでおります。
○北村哲男君 次に、統廃合の問題についてもう一点お伺いしたいと存じますが、統廃合問題はつい昨年にいろいろと問題があったんですが、憲法に保障された国民の裁判を受ける権利を損なうとか、あるいは地元の関係自治体や住民の支部存続を求める真剣な声を無視して一方的になされたとかという批判がいろいろありました。その後、ことし四月から実施されるということになっておるんですけれども、このかつて起こっていた反対の意見などが現在どのように残っておるとか、あるいは聞くところによりますと、この決定の取り消しを求める裁判が福岡の甘木で起こされたということも聞いておりますが、その辺の経過、あるいは福岡以外のところでもそのような動きがあるかどうか、この辺についての御説明とその後の経過についてお願いしたいと思います。
○最高裁判所長宮代理者(金谷利廣君) 御指摘のとおり、今回の支部の適正配置につきましては関係の地元におきまして相当強い反対の声が上がったのは事実でございます。それが規則の改正後におきましても尾を引いているというところはございます。 具体的に申し上げますと、福岡県の甘木市とそれから愛媛県の八幡浜市でございます。甘木は、福岡地家裁甘木支部を廃止したところでございますが、そこにおきましてはことしの一月十七日に管内の住民が甘木支部廃止の取り消しを求める行政訴訟を提起されました。これにつきましては、三月十六日に福岡地方裁判所におきましてその訴えを却下する判決が言い渡されております。 また、この甘木と八幡浜におきまして、これはマスコミの報道でございますが、支部統廃合反対ということで衆議院の選挙の際の最高裁裁判官の国民審査において、支部を廃止したという関係から裁判官にバツ印をつけようという働きかけないしは呼びかけといったものが行われたようでございまして、その結果甘木、八幡浜市におきましては全国平均よりも高い不信任率あるいは前回の選挙の際における国民審査よりも高い不信任率が示されたという報道でそういう事実を認識いたしております。 それ以外のところにつきましては、廃止支部四十一あるわけでございますが、特に目立った動きはございません。先ほどお話の出ました当初五十八検討対象支部を出して、廃止いたしましたところが四十一。なお、そのうちの二十について家庭裁判所出張所を設置する。少し控え目と申しますか、私どもとしては謙抑的にさせていただいたつもりでございますが、そういったこともありましてか、規則改正後におきましては、そういう趣旨を御理解いただいたと申しますか、あるいはやむを得ない、仕方ないということで御辛抱いただいていると申しますか、格段目立った動きなく比較的冷静に受けとめていただいているように感じております。 もちろん私どもといたしましては、支部はやっぱり残してほしかった、残してくれという住民の気持ち、非常によくわかる面もございますので、そういったことは重く受けとめまして、支部は廃止したけれども、少し足を伸ばして隣の支部、本庁に行くことになったけれどもやはり審理の形はよくなったというふうに思っていただけるように、受け入れ庁を含めまして全体の審理のあり方を一層いい形にするための努力を一生懸命にしなければいけない、こう思っておる次第でございます。
○北村哲男君 もう一点、この問題なんですが、簡裁の設置あるいは廃止が法律をもって定めなければならないのに対して、それより上級の地家裁の支部あるいは高裁の支部が最高裁規則をもってその統廃合が定められるということ、今までも相当問題にもされ指摘がされてきたと思うんですけれども、その点についてはどういうふうにお考えなんでしょうか。片や法律をもって法改正がなければできない。片やさらにそれよりも国民に対する影響が大きいと思われるのに最高裁規則をもって国民の民意を問わずにできる、最高裁の権限でできるという点についてどうお考えでしょうか。
○最高裁判所長宮代理者(金谷利廣君) 支部と簡易裁判所の違いといいますのは、これは私が御説明するよりも既に御案内のとおりだと思いますが、これまでの伝統的、一般的な考え方では簡易裁判所はそれぞれやはり一つの独立の裁判所である。支部というのは、地方裁判所、家庭裁判所というのが一つの組織でありまして、それのそれぞれの分子たる役所であるという観念でございます。そして支部でどういう事件を取り扱うかというのは、例えば地方裁判所について申し上げますれば、地方裁判所のゾーンでどの事件を担当させるのかといったことに似通う、本質は事務の分配の問題である。こう今まで実務家、学者等によって観念されてきたところでございます。 しかし、それぞれの部の事務分配を定めるにつきましては、そこの裁判官会議だけで決めればよろしいわけでございまして、規則という形をとる必要はないわけでございますが、支部は本質的には部の一つだと申し上げましても、ある場所が本庁とは違う別の場所にある、そういった面を考えまして、法律という一番強い形と、それぞれの裁判所の裁判官会議で臨機応変と申してはなんですが、柔軟に決められるという、その裁判官会議との間のちょうど中間の規則という形になっているものだろう、こういうふうに私ども認識いたしております。
○北村哲男君 確かに形式的な御説明はそのとおりだと思えるんですけれども、現実に地裁の支部、例えば東京の八王子支部というものができましたら、それはもう単なる事務分配というよりも独立の一個の裁判所として、その地域に機能し定着すると思うんです。これはもう簡裁以上の役割を果たすと思うんですけれども、その点について今のように法形式的な御説明だけではどうしても納得できないし、また特に裁判所は国民との接点がいろいろあるわけですから、その点での配慮をやっぱり欠いてはならないと思うんです。その点について、私が言ってもそれは今は法律どおりですけれども、ぜひこの点については改正をするなりあるいは別の観点で考え直す必要があると思いますので、その辺は私の意見として申し述べておきたいと思います。 ところで次の質問に移りますが、先ほども少し述べられましたけれども、最近の司法修習生から判事補に任官をする希望者の傾向というのはどういうことになっておりますか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) ことし司法修習生を終了する者の裁判官任官希望者は先ほど申しましたように八十一名ということで、きょうとあしたで採用面接をやっているところでございます。ことしは非常に多いわけでございますが、先ほど申しましたようにここ十年の平均をとりますと六十二名ということでございます。これは全修習終了者の中で占める割合は一三・三%というところにとどまっているわけでございます。したがいまして弁護士になられる方が大部分である、こういう状況でございます。
○北村哲男君 次に、法務省の方にお伺いしたいと思いますが、検察官の任官希望者が最近極めて少ないというふうに聞いております。ここ数年の傾向と、この理由といいますか、なぜだろうということ、そして、これに対してどうお考えになっておるのか、あるいはどういう対策をとっておられるのか、この点について御説明をお願いしたいと思います。 ただし、司法試験の改正問題については千葉議員が後に質問されますので、その辺は後にしていただきまして、それ以外のことについて御説明をいただきたいと存じます。
○政府委員(井嶋一友君) まず、最近三年ぐらいの間の検事任官者状況でございますが、昭和六十二年が三十七名でございます。六十三年が四十一名、平成元年が五十一名ということでございましたが、平成二年度、本年四月に任官を希望しております者は二十八名でございまして、昨日面接選考を終えたところでございます。 このように見てまいりますと、確かにでこぼこがあるわけでございますけれども、過去十年の平均が検事の場合は約四十六名が任官をしておりますので、その平均四十六名から見ますとことしの二十八名は非常に少ないということでございまして、ここ三年の数を見ましても、一部五十一名という年がございますけれども、やはり若干の減少傾向にあることは否めない事実かなと思っておるわけでございます。 そこで、私ども法務・検察といたしましては、検事の職務の重要性と申しますか、やりがいと申しますか、そういったものにつきまして修習生を中心といたしました関係の皆さんに十分理解をしてもらうための努力というものがまず必要であろうと思っておりますし、同時に、私ども部内におきましても、常に、またさらに活力ある検察体制あるいは検察の執務といったものを構築していくための不断の研究努力といったものも必要であろうということで、これはいろんな会同の場面、その他いろんな組織的な対応をしながらそういった問題の研究討議を続けておるところでございます。 また、若い人たちが検事の任官を希望しない理由というのはいろいろあるんだろうと思いますが、それを少しでも緩和する、あるいはそれを除去するといった努力ももちろん必要であると思っておるわけでございまして、そういったものとして、例えば待遇面におきまして弁護士のいわゆるいそ弁の初任給との差があるというような問題につきましてはいわゆる初任給調整手当の増額といったようなことで対応してまいっておるわけでございますし、また、さらに転勤に伴いますいろいろな負担を非常に本人のみならず家庭の人たちにも与えておるといったような事実もございますために、そういったことに対応して宿舎の整備でありますとかあるいは転勤回数の緩和を図るといったようなことも考えていかなきゃならないということで検討しておるところでございます。 そういったこととあわせまして、やっぱり一番大きな問題は、先ほど委員御指摘がございましたけれども司法試験合格者つまり修習生の高年齢化ということで、非常に検事を希望したいのだけれども年齢のゆえをもってちゅうちょするといった人たちが多いというのも事実でございますので、これは後ほどまた御質問があるそうでございますが、司法試験の改革を一日も早く実現したいということで努力をしておるということでございます。
○北村哲男君 それでは裁判所にお伺いするんですが、最近判事補の研修といいますか、裁判所以外の研修ということが話題になっております。商社に何年か出向というのですか、あるいは弁護士事務所とかあるいは海外研修とかさまざまあると思うんですが、この辺についてはどのくらいの数の人がどの程度の期間、どういうところに研修に行っておるのか。その目的あるいはその成果ということについてあわせて御説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 私ども、裁判官に多様な経験を積んでもらうためにいろんな研修を考えておるわけでございますが、その一つといたしまして報道機関に対する裁判官の派遣がございます。これは大体一つの報道機関に二人、これを三社派遣しておりまして合計六名の中堅の裁判官を派遣しております。それから民間企業に、これは二週間程度でございますけれども、ここにも八名の中堅裁判官を派遣しております。この二つは判事補から判事になる程度の中堅の裁判官に対しまして自己研さんといいますか、裁判官は御承知のように日ごろの事件に追われておりますので、一定の期間を中断をいたしまして他の機関に行って自分を見詰め直すといいますか、外の事象をよく見てくるという機会を与えるということでこういう研修を組んでいるわけでございます。 それから、六十二年から始めましたものの中に民間長期研修というのがございます。これは一社当たり一年間の期間で行ってまいるわけでございますが、これは三年間行っております。それから法律事務所に一年間行っております。これはどちらかといいますと若手の判事補を対象としたものでございまして、判事補となったなりたての裁判官、これから三十年なり四十年裁判所で裁判の事務に従事するわけでございますけれども、広い視野を持った裁判官をつくりたいというところで今言ったような研修を行っているわけでございます。 それから、もう一つは外務省等の行政官庁でございますが、これは二年ないし三年の間、行政官庁に派遣いたしまして、同じような趣旨をもちまして裁判官に広い知識、広い経験を積んでもらう、こういった趣旨で出しているわけでございます。 大体以上のとおりでございます。
○北村哲男君 大体わかりました。効果というのは直接ということもないと思いますし、結構です。 海外研修なんかはどうなっておりますでしょうか。他の役所では一定期間、二等書記官かなんかで外交官として研さんを積まれるということも多くあるようですけれども、裁判所はどういうふうにしておられるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 外務省に年間三人の判事補を受け入れていただいております。そのうちの一人は、まず本省でもって外務省の事務の勉強をさせていただいております。そうしまして二年目から外国の大使館に出させていただいております。ただいまのところフィリピン、それからオーストラリアに出させていただいております。これは二等書記官という身分で行っているわけでございます。こういった若手の判事補が三人、そういう外国の大使館で勉強する機会を与えていただいております。そのほかに、これは裁判官ではございませんが、裁判官から法務省の民事局に出向した判事、これが同じくアタッシェという形で大使館に出させていただいているわけでございます。
○北村哲男君 三人というお話を聞きました。日本は非常に国際化を迎えて、大変国際事件も多い。そして弁護士も外人弁護士を受け入れたり、特に最近の弁護士はいわゆる国際派の弁護士といいますか渉外弁護士というか、非常に多くの部分が外国事件をやっております。ところが裁判所は今聞きますと三人ぐらいの海外研修ということで、そうなりますと世の中の流れについていけないような気がするんですけれども、もう少し大量に海外研修、国際化に対応できるようなことはできないんでしょうか。その辺についてのお考えを聞きたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 先ほど北村委員のお尋ねが大使館ということでございましたので、そのほかの海外研修のことをちょっと言い落としました。それをつけ加えさせていただきます。 まず、判事補のクラスでございますけれども、一年間五名の判事補を判事補在外研究ということで外国の裁判所に派遣しております。これはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツでございます。それから、そのほかに二名の判事補をアメリカの大学に留学させております。これも一年でございます。それから一年半のコースでもって裁判官を二名派遣しております。 それから、これは人事院のお世話になっているわけでございますけれども、二年間の大学に対する留学、これを二名派遣しております。これが長期的な留学でございますけれども、そのほかに中堅裁判官を対象といたしまして、短期でございますけれども外国の司法事情視察、こういった機会を設けておりまして、できるだけ外国のいろんな司法事情も見まして、委員が御指摘のように国際化の進んでおります現代の社会に対応していくように頑張っているところでございます。
○北村哲男君 同じことを法務省にもお伺いしたいと存じます。 検察官の他部門への研修、特に国際犯罪あるいは国際経済犯罪なんかがふえておりますけれども、検察官の海外研修あるいはその用意といいますか、その辺はどうなっておりますでしょうか。
○政府委員(井嶋一友君) ちょっと手元に詳しい資料を持っておりませんけれども、国際化あるいは犯罪の国際化に対応いたしまして私ども検察官につきましても、やはり外国へ目を開くための国際研修を中心としたいろいろな施策を推進してまいっております。 先ほど裁判所からも御説明がございましたように、人事院の長期、短期の研修がまずございますが、それに数名を出します以外に、いわゆる若手在外研究といたしまして、ほとんど大半の者が一度は必ず外国の研修が受けられるというような機会を与えるように本年度から整備をしたわけでございます。さらに中堅になり幹部になりましても、いろいろな国際会議その他ございますので、そういった都度出ていただいておりまして、いわばほとんどの検事が一度は少なくともそういった機会に恵まれる、与えられるというような方向に持っていくべく努力をしておるところでございます。 さらに、アタッシェといたしましては、現在ヨーロッパ、アメリカ、中国を中心としまして計七名の検事がアタッシェとして在外の大使館に勤務をいたしております。それ以外に入管職員あるいは矯正職員等が法務省からも外務省の大使館に出向して勤務をしておりまして、法務省全体として国際化の波に対応できるように努力をしておるところでございます。
○北村哲男君 裁判所にお伺いしたいと思いますが、ここ二、三年弁護士、特に中堅の弁護士から判事に任命されるという例が話題になっておりますが、これは今までにどのくらいの数がどの部署に配属になって、どういうふうな評価といいますか、うまくいっているかどうかという点についての御説明をお願いしたいと思います。 また、今後の弁護士からの任官の予定といいますか、それについても御説明願いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) ただいま北村委員御指摘のとおり、私どものところでは昭和六十年の三月に、経験を積まれました弁護士から裁判官に来ていただくための判事採用選考要領というものをまとめたわけでございます。これは経験が十五年以上で年齢が五十五歳末満の方、こういう一応の線は引いてございます。これを日弁連にもお示ししまして、日弁連を通じまして豊富な経験を持った中堅の弁護士の方に裁判官に来ていただきたいという呼びかけを行ったわけでございます。現在までのところ、これに応じて来ていただきました弁護士の方は七名でございます。私ども、この数というものは決して満足いたしておりませんで、もっと来ていただきたい、こういうふうに希望しているわけでございます。 それから、この制度に対する評価ということでございますけれども、裁判所に新しい血を入れると申しますか、弁護士として豊富な経験、知識を持った、その知識、経験を裁判所に注入していただきたいというふうに思ってやっているわけでございますが、その効果は上がっていると思います。 この七名の方の中に私と同期同クラスの弁護士が一人おられます。法曹のスタートは私と同じでございますけれども、その方に来ていただいて大変よかったと思っております。それはなぜかと申しますと、スタートは同じでも、やはりその後の歩んだ世界、進んだ世界によりまして発想が違う、それから物の見方が違う、非常に別の見方、別の発想、我々ではできない発想、そういったものを持ち込んできてくれております。そういうことについて非常に我々は評価しておりますし、喜んでおります。そういった関係でぜひ中堅の弁護士さんの方に多数来ていただきたい、こういうふうに望んでいる次第でございます。
○北村哲男君 たしか最高裁の伊藤裁判官でしたか、ある新聞で、いろいろな同僚の裁判官、最高裁判官の時代を振り返って、弁護士出身の判事、最高裁判事と接触するのは非常に役に立ったと。特に、伊藤先生は学者である、象牙の塔、あるいは裁判官も一つのところからの出身で、その中で世の中でもまれてきた弁護士出身の人の話が非常に役に立ったという話もありました。法曹一元という理想もありますので、ぜひその辺についての御配慮をいただきたいと存じます。 最後になりますが、裁判所に速記官の問題について若干聞いていきたいと思うんですが、平成二年度の一般会計予算書を見ますと主任速記官の予算定員が二百十七人、速記官が七百十八人、合計九百三十五人というふうになっております。ところが、ある資料によりますと六十三年六月一日現在の速記官の配置は全国で八百二十三人。これを予算定員と比べますと百十二人の差があるわけです。これだけの欠員のある職種は裁判所の中で他に例を見ないと思われますが、これはどういうところに原因があるのか。すなわち志望者が少ないのか、あるいは適格者が少ないのか、あるいは何か一定の目的のもとに裁判所が自己規制をされてこういうものを減らそうとしておられるのか、その点についての御見解をお伺いしたいと存じます。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 速記官につきましては、相当数の欠員のあることは御指摘のとおりでございます。 これがなぜ欠員が生ずるかという理由でございますが、裁判所の速記は速タイプをたたいて行う速記でございます。非常に技術性の強いものでございます。そんなところからなかなか適性のある人、適格な人が得がたい。一言で申し上げればそういうことでございます。 それにつきまして、またいろんな理由があるのだろうと思いますが、最近の技術革新の時代でこういう逐語調書をとる方法というのが、今後速タイプをたたく速記というようなことからほかの方法に移っていくのではないかといったような不安が受験希望しようかどうかと考えられる方にあるいはあるのではないか、そういったこともございますし、またせっかく速記官の研修所に入る試験に受かられても途中辞退されるという方もあります。研修所に入って鍛えているうちにやはり適性がないということで脱落される方もあります。私どもの方としては毎年四十人程度の速記官の養成ということを目標にして、それを上回る合格者を出しもしておるわけですが、途中辞退だとか脱落とかいった形で結局速記官として巣立っていくのが二十数名といった形になっているのが現状でございます。
○北村哲男君 確かに裁判所の速記というのはとても過酷というか厳しいように私どもからは見えるのですけれども、何か別にかわる方法を模索しておられるということはあるのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) これは一般的なことでございますが、録音機が普及いたしました。そしてまた、それを字にするのにワープロが普及いたしました。そういったことから録音機とワープロを用いて相当程度の逐語調書というのができるのではないかとか、あるいはこれから例の音声入力によって書面化していくといった方法の進展等も見守ったり、一般的な形では将来の逐語調書の作成方法としてはどういう形がいいのか、私ども折々議論をし情報も集めておるところでございます。 しかし、何分これは職員制度にも影響いたすことでもございますし、十分な研究をしてからでということで、具体的に現時点でどういう方向でやるというような方針がまだ立てられないでいる状況でございます。
○北村哲男君 民事裁判の方ですけれども、民間の速記業者に委託をしている制度がございますけれども、そういうふうにどんどん移行しようとするような政策的な観点とかそういうのはあるわけですか。そのために少ないということはないのですか。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) かつては一時期そういういわゆる外部速記というような方法を実験的に試みたこともあったわけでございます。しかし外部速記につきましてはそれでまたいろんな面で問題もございます。そんなところでむしろ最近は、それはなお相当数は行われておりますが、数としては減ってきている状況でございます。私どもの方、そちらに頼るから速記の採用を減らそうとかそういうことは全然考えておりませんで、できれば毎年四十人程度の充員を図っていきたいということで努力しているところでございます。
○北村哲男君 速記者の全国配置の問題で、非常に過酷であるところとそうでないというところがあるやに聞いております。そういうところの交渉といいますか、その辺の判定あるいは交渉などはどういうところでおやりになっているのか。適正配置を常に心がけておられるのでしょうけれども、配転とか忙しいところに持ってくるとかということはかなり自由にやっておられるのですか。あるいはかなり固定して、ある裁判所に、例えば静岡の裁判所に就職をするとそこだけでずっとやっておられるというふうな形になっておるのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 速記官の現在の業務の実態が過酷であるかどうかということは、それは場所場所によって少しは違うと思うんですが、一般的に申し上げれば決して労働過重という形ではございません。ただ、裁判所のことでございますし、たくさんの事件がありまして、また非常に逐語調査の必要な事件が偏ってある時期に集中するといったようなこともありまして、場所場所によってはあるいは少し立ち会い時間が多いなというようなことも起こっているのかもしれません。しかし全般的に申せば、速記官の立ち会い時間というのはむしろ私どもから見るともう少し立ち会っていただいた方がいいかなというぐらいの感じがするぐらいでございます。 私ども毎年、速記官に限らず、定員につきましてはきめ細かく、そこの裁判所の事件の状況あるいは数だけじゃなしに中身の方もきめ細かく見せていただきまして、そしてこちらの方が忙しい、こちらが暇だったら、こちらからこちらへ人を動かすというようなことを心がけておる次第でございます。 ただしかし、何分生身の人間でございますので、特に速記官等の場合には動かしたいということになりましてもなかなか個人的な事情等で動けないといったこともありまして、思うとおりにならないことも少なくございません。そういったところが現状でございます。
○北村哲男君 別の問題に移ります。 今、旧東京地裁のところにつくられておる合同庁舎の問題についてお伺いしたいと存じます。 最高裁判所はこの二月初旬に、新東京家庭裁判所及び簡易裁判所の合同庁舎建設計画で裁判所庁舎であるC棟と区検察庁等の庁舎であるB棟との間を地下三階から地上七階までの建物部分で結合させ、外観上、地上二十階建ての凸型一体建物を建設するという計画を発表されております。いまだ決定まではされず、三月末から四月、もうすぐですけれども四月中に決定するものと予測されておりますけれども、私は裁判所と検察という機能や使命が相反する機関は、その機能、使命遂行の物的基礎である庁舎の建物も別々であるのが当然だと思います。さらに、家庭裁判所には裁判機能のほかに福祉的あるいは後見的調査機能を果たすことが要請されておって、家事相談とか少年相談に訪れる人に対しては庁舎内の雰囲気づくりや秘密保持の措置など十分に配慮した対応が望まれているところであると思っております。それだけに役割の相反する検察庁と家裁を合同させることは後見的機能を有する家裁の設立の理念に全く反していると言わざるを得ないと思うわけです。 東京の弁護士会などでも既に昨年二月ごろから、東京家裁と簡易裁判所の庁舎が一つの出口を持つ庁舎になるということに対して、同じような趣旨で危惧の念を表明して再考を裁判所に求めてきたところであります。すなわち家庭裁判所の福祉的あるいは教育的機能や、少年事件あるいは家庭事件のプライバシー保護の観点から、簡易裁判所と同一の出入り口を持つ庁舎をつくることは少年あるいはごく普通の家庭人の秘密保護を全うすることができず、当事者の心理的不安や圧迫感に不当な影響を与えるというふうに思うわけです。 そこで、今の検察庁と家裁との合同庁舎問題は現段階ではどのようになっているのか。そして聞くところによると、このような例は日本ではまだ他に例を見ない、初めての例だというふうに聞いておりますけれども、弁護士会などの意見を聞いて後に決定するという態度をお持ちなのかどうか、この辺についてお伺いしたいと存じます。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) お答え申し上げます。 委員御指摘のような建物をB棟、C棟として建てる計画があることは事実でございます。 御承知のとおり、霞が関の現在大体検察庁が建っている部分にB棟とC棟と、そのほかに弁護士会の合同会館と三つの大きな建物を建てる予定にしているわけでございます。あの非常に限られた土地の中でそういった大きな建物を建てるということになりますと、大体B棟、C棟は二十階の建物を予定しておりますが、相当高層の建物にもなります。高層の建物になりますといわゆるビル風等の問題もございまして、余り建物と建物とを接近させて建てることもできないという事情にございます。そういった土地の状況あるいは建てるべき建物の状況等を検討いたしますと、有効面積の多い建物を建てるためには先ほど委員が述べられましたような構造の建物にせざるを得ない土地の状況、建物の状況にあるということが言えるのではなかろうかという判断を現在私どもいたしております。 ただ、御指摘のような御意見もございますし、建物の壁と壁は接しますけれども、その間は壁で完全に仕切られておりますので隣の建物と行き来できるわけではございません。その意味ではいわゆる同一庁舎ではないわけでございまして、ただ壁と壁が接しているというふうに御理解いただいた方が正確なのではなかろうかと思っております。現在の状況はそういうところでございます。
○北村哲男君 これは地下がつながっているのではないんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 実はこれは、何もああいう合同庁舎だからということだけではございませんけれども、かなりのところでエネルギーを共同にしたいという意向がございます。そういう意味でB棟とC棟のエネルギー源を同一にするという計画はございます。その意味では、一番地下三階の機械室は一体的なものとしてエネルギーを供給する場所になりますが、この場所は一般人の出入りを禁止しているところでございまして、そういった面を除きますと一般の人が入る地下二階から地上二十階までの間ではどこも行き来ができないようにすることにしております。
○北村哲男君 大変難しい問題と思いますけれども、市民あるいは国民の目から見ますと検察庁は犯罪を捜査する場所であり、裁判所は人権を守るとりでとしての印象を持っている。そこにこそ司法の独立の意味がある。これを外形的にあるいは形式的であっても一つにしたことが、一つであるという印象を国民の目に与え、裁判所の中立性とか公平性に対する国民の信頼を損なうことになるのではないかという危惧があります。だから、裁判所が常々言っておられるように、公正らしさということを外見で強調しておられることは裁判所の本当の前からの姿勢だと思いますので、壁が違うから違うんだというふうな形式論、形式論と言ったらおかしいんですけれども、違うから違うんだという理屈ではなくて、やはり国民の目から見て検察庁と裁判所は別なんだということを強調するようなものをつくっていただきたい。それがやっぱり弁護士会または我々在野の考え方であるわけですから、その辺をぜひ各界の意見を十分に聞いていただいて、実質はもちろんのこと、外見上、形式上の司法の独立にも気を使っていただきたいと存じます。 以上で終わります。
○千葉景子君 それでは、最初に警察庁の方に質問をさせていただきます。 もう御承知のとおりと思いまして繰り返すことはないんですけれども、いわゆる坂本弁護士が行方不明になった事件がございます。 事件は昨年十一月三日の晩から四日にかけて起きたのではないかと考えられている事件ですけれども、これはこれまでも何回か国会等でも取り上げられているかと思いますが、既に五カ月を経過しております。これは五カ月たった現在でも、関係者の皆さんが大変心配しておられる、あるいはさまざまな活動をしていらっしゃる、そして捜査当局としても最善の努力を重ねてこられているかと思いますけれども、依然として坂本弁護士とその家族の行方は判明をしていないというのが現状でございます。 そういうことを前提にいたしまして、警察庁も大変大きな関心を寄せて調査を続けられていると思いますが、まず、一体この事件についてはどんな位置づけで今捜査を続けられているのか、その点をお聞きしたいというふうに思います。 この間の弁護士会等の調査などを通じて考えられることは、これはどう考えても坂本弁護士とその御家族がみずからの意思によって失踪したということは到底考えられない。さまざまな状況などを総合して考えますと、第三者により居宅から何らかの有形力などを行使された形で連れ出された事件ではないか、今そういう考えが多くの方の中に積み重なってきているわけですけれども、警察庁としてはこの事件をどういう位置づけで今捜査を続けられているのか、その点についてまずお聞きしたいと思います。
○説明員(山本博一君) お答えいたします。 お尋ねの事件につきましては、弁護士という社会的に重要な責務を負っておられる方が家族ともども忽然と所在不明になっておるという事件でございまして、極めて特異、重要な事件と認識し、速やかに捜査本部を設置いたしまして強力な捜査を推進しておるところでございます。 神奈川県警におきましては、所在不明となった時点における何らかの目撃情報、不審情報ということにつきまして、これを求めるべく、所在不明者、居宅周辺に居住している人々、また所在不明となったと思われる時間帯にその付近を通行したと思われる人々、あるいはタクシー等に対しまして、発生直後から今日に至るまで再三にわたりまして徹底した聞き込みを行っておるところでございますが、現在までのところ誘拐あるいは拉致というようなことを明確に認識できるような情報の入手には至っておらないところでございます。 ただ、家出の動機、原因が全く見当たりません。また、外出するに際しまして常用すると認められる身の回り品等が室内に残されております。また所在不明後、現在まで全く音信がないわけでございまして、その動向が不明であるわけでございます。こういうことから、これらの犯罪に巻き込まれている可能性が極めて高いという認識を持っておりまして、現在鋭意捜査を進めておるところでございます。
○千葉景子君 今御答弁にもありましたように、みずから失踪する理由となるようなことはどうしてもないわけですね。そういう意味では、今おっしゃったように誘拐、拉致事件であるという根拠も、必ずしもそれが絶対だということはないかもしれませんけれども、むしろ誘拐、拉致事件だという可能性はかなり濃いわけですので、そこを明確にして捜査をしていただきたいというふうに思います。 特に、もしそういう事件であるとしましたらばこれは大変なことでございまして、弁護士という市民の人権を守る職務を負っている者が身の危険にさらされるということになりますと、これは弁護士だけではなくて、それによって一人一人の市民の人権あるいは安全ということに大変大きくかかわってくるわけです。もしこういうことが助長されるようなことがあれば、弁護士もなるべく危ないところには近寄らないという、同じ人間ですからそういうことにもなりかねない。こういうことを考えますと、やはり民主主義の国であり、市民の権利をきちっと守るということから考えますと、さらに力を入れて捜査を展開していただきたい、こういうふうに考えます。 その点の御認識を確認しておきたいことと、これだけの時間がたちまして捜査の体制を縮小なさるのではないかというような懸念もあちらこちらで聞いております。よもやそういうことはないだろうというふうに思いますけれども、これからも現状の体制で、あるいはさらに強化をして捜査をなさるのかどうか、その辺を確認させていただきたいと思います。
○説明員(山本博一君) お答えいたします。 本事件はまさしく先生御指摘のとおりでございまして、私どもそのような認識を十分に持って捜査に当たっておるところでございます。現在、全国警察に通達を発しまして協力を求めながら、坂本弁護士の取り扱い事件をめぐります紛議やこれらの関係者に対する捜査または公開捜査による関連情報の収集等の裏づけ捜査等を行う一方、引き続きまして全国の旅館とかホテル、また別荘等におきます不審居住者の有無についての調査、または現場付近の不審人物に対する聞き込みやタクシー、レンタカー等に対する聞き込み等の捜査を強力に推進しているところでございますが、今後におきましても、事件の重大性は十分認識しておるところでございますので引き続き同様の体制を維持いたしまして、全国警察の支援を得ながら強力な捜査を推進し、一日も早い無事発見、保護と本件の早期解決を図りたいというぐあいに考えておるところでございます。
○千葉景子君 ぜひ体制をきちっと組んで捜査をしていただきたいと思うのですが、その際に、弁護士会とか関係する方からかなり要望が出ている、いわゆる広域捜査の指定を明確にして捜査をすべきではないか、こういう要求、要請も大変声が大きく上がっているようですが、この広域捜査指定につきまして、これは警察としての法に基づいた仕組みなのか私もちょっとはっきり存じ上げませんけれども、そういうほかの事件でも広域捜査指定というのはなされているというふうに私も認識をするのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。広域捜査指定というのが一体どういうもので、その根拠とかあるいはどこがこれを決定なさるのか、どういうような基準でどういう事件について広域捜査というものはなさっているのか。そして、今回の坂本弁護士の事件についてもそれに該当するのであれば、そしてこれだけ非常に不明確な点や、あるいは現状では相当の広い範囲で対象にしなければまず材料すらなかなか集まらないというような状況の中では、ぜひ広域捜査できちっと位置づけて捜査を今後展開していただきたいというふうに思いますが、その点についてのお答えをお願いします。
○説明員(山本博一君) お答えいたします。 先生お尋ねの件は警察庁指定事件制度ということについてだと存じますので、これにつきまして御説明をさせていただきたいと思います。 私どもが指定事件と呼んでおりますものは、いわゆる重要事件のうち事件が複数の都道府県で発生いたしまして、その捜査活動が関係都道府県警察において競合する場合などにおきまして効率的な組織捜査を行うために事件指定ということを行いまして、警察庁が強力な指導、調整を行い、これに対処しようとするものでございます。 具体的に申しますと、例えば五十九年に発生いたしましたいわゆるグリコ・森永事件というものがあるわけでございますが、この事件は大阪、兵庫、京都、滋賀、愛知、警視庁の各都道府県警察の管内で発生したものでございまして、これらをそのままそれぞれの警察において所要の捜査をさせますと、その捜査が互いに競合いたしまして非常に非効率的になるということが十分に予想されるところでございます。これに対しまして警察庁といたしましては指定第百十四号事件という指定を行いまして、警察庁の指導、調整のもとにそれぞれ役割分担を定めまして所要の捜査を推進していたところでございます。 また昨年、埼玉、警視庁の管内において発生いたしました連続幼女誘拐殺人事件がございましたが、これにつきましてもそれぞれが全国の警察の協力を得ながら所要の捜査を行いました結果、最終段階ではございますが一連の事件が同一犯人のものであるということが明らかになりまして捜査活動が競合してまいりましたので、警察庁指定第百十七号事件という指定を行いまして調整を図ったところでございます。 この制度は、淵源的には警察法、それを受けました国家公安委員会規則である犯罪捜査共助規則を受けまして、通達ではございますが、広域重要事件捜査要綱というものをつくっておりまして、これに基づいてつくり、運用をしておるところでございます。事件指定は警察庁が事件の発生地を管轄する管区警察局及び都道府県警察と協議をして行うということになっておるところでございます。
○千葉景子君 本事件、坂本さんの件について。
○説明員(山本博一君) さらに、先ほど具体的にどんな事件かというお話がありましたが、過去のものを見てみますと、例えて申しましたグリコ・森永事件、それから埼玉、警視庁にまたがる連続幼女誘拐事件のほかにも、五十七年に静岡、岐阜、京都、愛知において発生し、検挙いたしましたけん銃強盗並びに同けん銃使用殺人事件というのがございました。これを百十三号事件として指定いたしております。また、これは未検挙ではございますが、六十二年から兵庫、愛知、静岡、警視庁において発生いたしております朝日新聞社等に対する襲撃事件、これは百十六号事件として指定をし、捜査いたしておるところでございます。いずれも数府県にわたり連続的に発生している凶悪事件がこの対象となっているものでございます。 問題の坂本事件についてでございますが、現在のところ、指定等の措置はとっておらないところでございます。先ほども申しましたように指定というものがそのような性質のものでございますので、現在のところ、各府県警察の捜査が競合し警察庁において捜査の競合を調整する必要があると認められる状況に至っておりませんので、指定事件としての措置はとっておらないところでございます。ひとつよろしく御理解いただきたいわけでございます。
○千葉景子君 今、指定をとっていらっしゃらないということなんですけれども、私どもからは捜査状況とか、一体どういうところまで資料とかあるいはさまざまな証拠とかが集まっているのかというのはわからないわけですね。そういう意味では各都道府県に競合しているかどうかというのはつぶさにわかりませんけれども、私が考えるところによりますと、何しろあちらこちらで資料収集とか、それから何か情報があればその当該警察が対応なさっているというように外側からは見えるわけですね。だとすれば、それを機能的に早く解決に向けてやるためにはやはり広域指定制度というものをぜひ活用いただいて指定をしていただいて、むしろ早急な、全国規模といいましょうか、一斉捜査みたいな形で展開をする必要があるんじゃないかと思います。そういう意味では、ぜひこの点について検討をいただきたいと思います、まだ今なっていないのであれば。いかがでしょうか。
○説明員(山本博一君) 本事件、今の時点においては指定をいたしておらないところでございますが、全国の警察に通達を発しまして、全国の警察の組織を挙げて捜査をしていることは間違いないところでございます。今後ともこのような形で捜査をしてまいりたいと、かように思っておるところでございます。捜査の中で、先ほど申しました指定の要件に合致するに至る点が出てまいりましたら即指定という行為を行い、また積極的な対応を進めてまいりたいと、かように思っておるところでございます。
○千葉景子君 それでは結構でございます。 法務省の方にお伺いしたいと思いますが、今回、裁判所職員定員法の法律がかかっております。それに関連いたしまして、これは今後の裁判所全体の、あるいは司法の運用にかかわる問題にもなってこようかと思うんですけれども、現在司法試験制度の改革問題、これが大変大きな論議になっているようでございます。私もその内容、法務省で考えられる構想などを読ませていただいているところでございますけれども、この司法試験制度の改革というのは、考えるところ、必ずしも司法試験制度だけで解決すべき問題ばかりではなくて、やはり今後、将来を踏まえて司法全体のあるべき姿とかそういうことも含めて検討を深められなければいけない部分がたくさんあろうかというふうに思うんです。そういう中で今回特に司法試験制度の改革というものを取り上げられた理由、趣旨、ここをまずお聞きしたいと思います。
○政府委員(則定衛君) 現在私どもが進めております司法試験制度の改革の目的と申しましょうか、につきましてのお尋ねだと思いますけれども、法務省といたしましては法曹三者、判検弁それぞれの分野におきまして多数のすぐれた人材が十分に確保できる、そういう状況をつくりますことによりまして国民に対しましていろんな職分に応じます法的サービスを十二分に提供できるような法曹界をつくり出したい、こういうふうに考えているわけでございます。 ただ、現在この実務法曹界への登用ということになりますと、御案内のとおり、実質的には司法試験が唯一の道でございます。その司法試験の姿があるいは後の質問に答えさせていただくことになろうかと思いますが、大変難しく、かつまたリスキーな姿になっておりますので、これをできるだけ緩和してすぐれた人材を引きつけ、かつまたこれらの適性のある人たちができるだけ早期にかつ多数合格してそれぞれ法曹三界に進出していただけるような姿にもっていきたい、こう思っているわけでございます。
○千葉景子君 今おっしゃったように、司法試験そのものが大変難しい。内容が難しいのであるか、あるいは受験者などの数とのかかわりで大変難しいというふうに認識すればいいのか、その辺はまた難しいところかと思いますけれども、大変問題のある部分が出てきているということは私もよくわかるところでございます。 ただ、これを取り上げるに当たりましては、やはり相当長期的な展望に立った解決の仕方というのが基本になければいけないんではないかというふうに思うわけです。司法試験の制度というのがすぐれた法曹を生み出す、つくり出す。それによって国民の司法に対する信頼とかあるいは司法に対するアクセス、そういうことが確保されるということにもつながると思います。そして、その中で司法試験制度というのは、それに携わる者が知識を有するだけではなくて、あるいは理解力とか推理力とか判断力とかそういう形で総合的に能力を有する者をできるだけ多く登用する、こういう前提に立っているだろうというふうに思うんですね。 そうなりますと、現在非常に問題が出てきている、あるいは問題点はあるんだけれども、では一体いかにその中身を解決するかということになると大変難しい問題になろうかというふうに思うんです。数の問題もあり、あるいは試験そのものの内容とかあり方、あるいは受け入れ態勢、そういうことも含めて大変難しい点があろうかと思いますが、その点についてまずは一番のポイントは何であろうと今考えていらっしゃいますか。
○政府委員(則定衛君) この司法試験制度の改革を通しまして目指すべき姿は、まさに委員御指摘のようなイメージを私どもも頭に描いてこの作業を進めているわけでございます。当面解決すべき一番の問題点、こういうお尋ねですが、率直に申しまして、現在の司法試験はこのところおおむね五百人ぐらいの合格者で推移しているわけでございますが、その数に比べましてはるかに多数のすぐれた資質、能力を持っておられる受験生がおられまして、それらの方々が合格点直下に多数存在しておられるという姿がございます。 今、毎年五百名ずつぐらい、その中から特に点数の上で頭の出た方のみが合格されるわけでございますが、ここに達しますのに、今申しました多数の優秀な志願者がおられますので、相当の年限をかけて初めてそういう競争群に入られかつそれをクリアされてくる、こういう構造になっているわけでございます。 したがいまして、新規あるいは少数回受験者で相当の資質、能力を持っておられる方で、実務法曹教育を始めるに際して必要な知識、能力、あるいは推理力、判断力を持っておられるといたしましても、今申しましたような構造的な問題からなかなか合格者数の枠内に入らないということがございます。したがいまして、そういう合格点直下に資質、能力のすぐれた多数の方が言葉は悪いかもしれませんが滞留されている姿、これをどういう方法で解決するのがいいのか、その点をいろいろと模索いたしまして今回私どもがいわゆる基本構想の中で三つの考え方というものを示させていただいた、こういうことでございます。
○千葉景子君 私もその基本構想というものの中身を読ませていただいているわけですけれども、きょうはちょっと時間がありませんし、これは今法曹三者の間でも議論をされ、あるいは各大学などの御意見も聞かれたりしながら詰めていらっしゃる段階だと思いますので、細かい点はまた後日の機会にお尋ねしたいというふうに思うんですが、ただ一点だけ。 今回は増員といいますか、一応五百名を七百名程度にする問題。ただし、それとプラスして一定の回数制限というのでしょうか、受験回数の制限、こういうものを組み合わせて解決をしていくというような方向が御提起されている。この増員の方は七百でいいかどうかは別で、むしろもう少しふやして、受け入れの問題もありますけれども、ふやすのを目標として例えば一段階まず七百まで、こういうようなことは私もよくわかるんですけれども、回数制限等はこれが一体本当に今後の真の解決に役立つのかどうか、その辺がまだまだ私も疑問なところなんですね。じゃ、何がいいかという解決策を持っているわけではないのですが、回数を制限するということでどういうねらいを持っていらっしゃるのか。人数をもっとふやすようなやり方をとらずに、回数である程度制限しようということを組み合わせられる意図というのでしょうか趣旨、この辺をちょっとわかりやすく説明いただければと思います。
○政府委員(則定衛君) 今回、御案内のとおり、合格者を五百名から七百名程度にふやすということに加えまして、御指摘のようなシステムも一つの案として考えているわけでございますが、そういう案を考えなければならない理由と申しますのは、一口に申しますと、単に数を二、三百ふやすだけでは先ほど申しました司法試験が抱えております構造的な問題を解決するに至らないということなのでございます。数の問題、今御指摘のように将来的にもっとふやしてはどうなのかという点、確かに傾聴に値する御提言だと思いますが、現在のところ、司法試験の合格者はいずれも司法修習生に基本的には採用されるという点から、これまた御指摘のように今受け入れの問題とか、それからニーズの問題とか、指導体制の問題、その他等々ございますし、国費で二年間という財政負担の問題もございます。 したがいまして、短期的に急激にこれをふやすというわけにもまいらないわけでございますが、そういう制限の中で法曹三者のそれぞれのニーズ、特に最近は弁護士会でも勤務弁護士に対する求人というものが非常に高まっておりまして、そういったニーズを含めまして、さらにまた判事、検事に対する後継者確保のための何といいましょうか、年齢構成等の問題もございます、こういったものを考えまして、それぞれの後継者確保、事業強化につながるような合格者増というものを出現させるためにはどうしたらいいのか、こういうアプローチで考えられたものなのでございます。 人数をふやすだけでは、先ほど申しましたような構造的な問題から、比較的少数回で、あるいはまた各分野の社会経験を積まれた方が進出されるということは非常に困難な状況になっておりますので、それぞれ同じ資格で最初から五回なら五回まず受けていただく、いわば競争条件の平等化といいましょうか、そういった中で合格枠に達せられる者をまず通させていただく。なお、その段階で合格枠に入らなかった方は一たんほかの道に転身していただくなりしまして、なおかつ法曹界に再チャレンジしたいということになりますと、最後に受けられた年度から五年を経過して同じようにまた五回受けていただくというシステムにしてはどうかというふうに考えているわけでございます。 ただ、こういう日本の司法試験の場合かなり競争率が高うございますので、直ちに五回の回数制限プラス復活制という道に一気に進むというのもいろいろと御意見が分かれるところであろうということもございまして、もう少し現状に余り急激な変化を加えない姿で今申しました司法試験の構造的な問題をクリアできるシステムというようなことで、これまた基本構想に示させてもらっておりますけれども、五百人のほかに増加させる者について比較的少数回受験者を優遇する。五百人につきましてはこれまでと同じような選定方法をとるという道もあるのではないかというふうなことも考えておるところでございます。
○千葉景子君 もう時間が来ておりますので、またいろいろな議論が進む中で質問させていただきたいと思いますが、最後に大臣に。 この問題はこれからの国民の裁判を受ける権利を実質的にどう確保していくか、保障していくかというようなことにも大変かかわってくる問題です、資質のある法曹養成ということも含めて。そういう意味では、今後やはりそれにかかわる法曹三者であるとかあるいはさらにはもっと広く国民的な論議を含めて検討すべき問題であろうと思うんですね。余り急いでやってしまって、後からまた問題が出るということになっても困ります。かといって、やはり少しでも多くの法曹養成をという課題もあります。そういうことを含めまして、今後について大臣にぜひ指導力を発揮していただきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(長谷川信君) 今、千葉先生からの御提案並びに御質問、本当にまさに法務行政の根幹に触れる問題でございまして、拝聴いたしておったわけであります。 これは国民的な視野に立って今の現状を考えてみますと、今緊急にやらなければなりませんが、なおまた今先生がおっしゃいましたように慎重にもやらなきゃならないということでございまして、しかしできるだけ早く関係各位の合意を得て司法試験制度の改革を実現いたしたいと念願いたしております。 貴重な御意見でございますので、慎重になお緊急にひとつ考えまして、適切な方法を摸索いたしたいというふうに考えております。
○千葉景子君 終わります。
○委員長(黒柳明君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時半に再開することとし、休憩いたします。 午後零時五分休憩 ─────・───── 午後一時三十五分開会
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○矢原秀男君 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について質問をいたします。 午前中も法務大臣から趣旨の御説明をいただいたわけでございますが、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、こういう大きな項目の中で裁判官の員数の増加五名、そして民事訴訟事件、民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るために二十五名の職員の増加、こういうことでございます。 それで、私も昨日簡裁の方に視察をさせていただきました。その一つの大きな理由は、ちょうど昨年の七月から八月にベトナムの難民の問題がございまして黒柳委員長と私で政府に対しましても十二省庁に対して十数項目の政策的な要求と、そして現場に直行させていただいたわけでございます。しかし、そのときのことで私に悔いが残ったことの一つに、優秀なる職員の方が過労で亡くなられました。そのときに私も健康についての留意を強く主張しておけばよかったな、こういうふうに思ったわけでございます。 そういう観点から簡易裁判所におけるいわゆる事件数をいろいろと検討させていただいておりましても、非常に新受件数が多い。例えば民事で百三十九万二千五十三件、六十三年度の新受件数でございますが、刑事問題では百六十二万六千二百七十三件、合計三百一万八千三百二十六件でございます。 裁判所法の中でも簡裁の責任としては一人の判事と明確にされていらっしゃいますので、きのう視察をさせていただきました一つは、こういう過密な中で全国の裁判所で健康というものがどういうふうに留意をされているのか、私の反省からもそういうお伺いをしたわけでございます。非常に皆様方が元気で、明るい立場でお仕事が進んでいるということを見まして安心をしたわけでございますが、健康についてはもちろんそれぞれの一人一人が健康に留意すべきでありますけれども、特に過密でございますので、全国的に裁判官の皆さんに対し、また職員の皆さんに対してどういうふうに留意をされているのか、念のためにまずお伺いをしておきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 改めて申し上げるまでもないようなことでございますが、まずは適当な人員をきちっと確保、手当てをいたしまして、極端な労働過重にならないようにということで、今回お願いしております増員もそうでございますが、その他内部での比較的暇な部門から忙しい部門へ人員を回す、そういう手当てをきめ細かくやるとか、その他固有の健康管理の面では定期の健康診断をきちんとやる、そういったことに留意しております。
○矢原秀男君 その点、よくお互いに留意をしていただきたいと思います。 質問に入りますけれども、民事訴訟事件の新受件数につきまして最近十年間における変化の状況、そしてその背景というものを簡単にまず伺ってみたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 法務省の方からお手元に届けさせていただきました今回の法律案関係資料の二十四ページに事件の動向が出ておりますが、この一番上にございます二十四ページの簡易裁判所での民事訴訟事件、一般の民事訴訟事件を例にとって申し上げさせていただきますと、ここには昭和五十三年から六十三年までの事件数を挙げてございます。途中省略して、五十三、五十八、六十一、六十二、六十三と挙げてございますが、手元の資料に基づきまして全体的なことを申し上げますと、簡易裁判所の民事訴訟事件は昭和五十八年度ぐらいから急激な伸びを示しました。五十七年度には前年九万件程度でありましたものが十二万八千件ほどの事件が新しく参りました。そして五十八年にはさらにそれが十八万件弱という伸びを示しまして、五十七年、五十八年両年とも四〇%前後の伸びを示したのでございます。 そして、その傾向が続きまして昭和六十年がそのピークでございました。そのときには約二十三万件の新受件数が参りました。しかし、その後減少に転じまして六十三年度で十四万七千件、平成元年度が十一万件台とこういうふうに大幅な減少を示しているのでございます。しかし、最近減少していると申しましても十年前に比べますとまだ一・五倍、一・六倍といういわば高原状態にあるということでございます。 こういうふうに簡易裁判所の民事訴訟の事件数が急激に増減した原因でございますが、ふえた方の原因といたしましては、一つは昭和五十七年の九月一日から施行されました事物管轄の改正というのがございます。事物管轄と申しますのは、例えば民事訴訟事件で申し上げますと、事件の内容の方に着目しまして、どういう事件を簡易裁判所で扱い、どういう事件を地方裁判所で扱うかということを事物管轄と申すわけでございますが、それがそれまでは簡易裁判所の事物管轄は三十万円というところで線を引いていたわけです。三十万円から下の事件は簡易裁判所ということになっていたわけですが、それが五十七年九月の改正で九十万円に引き上げられたわけでございます。そんなことが簡易裁判所の方へ来る事件が一つふえる原因になっております。それから貸し金を返せという貸し金請求事件とか、あるいは立てかえ金、求償金等の請求事件、これはいわゆるクレジットあるいはサラリーマン金融等のいわゆる消費者信用関係事件、これが大幅に伸びたということが原因となっているのでございます。 その後、この簡易裁判所の事件が先ほど申し上げましたとおり減ってまいりましたのは、昭和五十八年の十一月にいわゆる貸金業規制二法、この法律が施行されました。また改正割賦販売法が五十九年の十二月から施行されました。そういったことなどによりまして悪質な業者への規制の効果が徐々にあらわれてまいって、そういう関係の事件が減り始めた。大きく申し上げますとそういうところでございます。
○矢原秀男君 そういう質的な変化、いろいろの時代的な対応、細かい問題が背景にあると思います。この簡裁判事の五名と一般職二十五名の増加の問題については、いろいろの質疑が午前中ございましたが、本当は私自身としてはもう少し多く増員をされた方がいいのかなとは思っておりますけれども、いろいろのお考えの中で五名と二十五名、こういうふうな増員、増加になったと思います。私もいろんな今までの経過を見ておりまして、やはり思い切って国民の立場でいろいろと努力をしていただいているわけですから、増加の件については今後やはり思い切ってされてもいいのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。 これに関連をいたしますけれども、先般の五百七十五庁の簡易裁判所、これが三月二十八日現在においては簡裁の庁数は四百五十二庁と伺っておるわけでございます。午前中もお話ございましたように、統廃合の問題の中でやはり地域では非常に廃止を残念がる、こういうふうな傾向が多くあるわけでございますが、この四百五十二庁で十分対応できるのかどうか、こういう問題でございますけれども、この点を伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 簡易裁判所の統廃合にいたしましても、地方裁判所、家庭裁判所の支部の統廃合にいたしましても、これをいたしました背景といたしましては、戦後できてから今日まで相当年数がたっている、あるいは地方裁判所、家庭裁判所の支部につきましては明治時代の配置を引き継いでおるわけでございます。そういったところ、できたときから今日までの間で比べますと交通事情が格段に進歩いたしております。そういったことで距離的には同じであっても時間的には近いという状況が大分出ております。 それからもう一つの要因といたしましては、産業構造の変化に伴いまして人口の過密過疎という傾向が一層進みまして、地方の方の事件が非常に減ってきたということでございます。そんなところから、裁判官も一人置けないというぐらいのごくわずかな事件しかない裁判所がなお裁判所という組織として残っておるという状況にあったものでございますので、その隣の裁判所まで行く時間とそこで扱っている事件数、そのほかいろんな個別の事情を考えさせていただきまして、それぞれいわば集約をさせていただいたわけでございます。 そういった面では住民の方に少し足を延ばしていただくということで御不便をおかげするわけでございますが、一方では人的な状況あるいは物的な設備等の整ったところでいい形で裁判をして、おくれた裁判という批判をできるだけ受けない形で充実して、かつ適時適切な解決のできるような裁判をする方がやはり裁判の形としては真の住民サービスなのではないかというようなことを考えまして統廃合させていただいたわけでございます。 しかし、今回の支部の統廃合の関係で申し上げますと、支部はなくしまして簡易裁判所は残るのでございますが、そこで午前中にも御説明させていただきました、例えば家事事件が受け入れ庁の方へ行ってやらなければならないというようなことになりますと少し御不便をかける面がございますので、それに対する手当てというようなことで出張所という形で二十カ所置かせていただいたり、あるいは法律のよくわからない素人の方が裁判所に来られて、家事事件と簡裁の事件の区別もつかないで御相談に来られる、そういうのに対して親切に対応させていただき、また、そこで申し立て書を書かれるというのであれば、素人の方でも書いていただきやすいような定型の申し立て書を用意いたしまして、そこへ備え置いてその御説明をして書いていただく、そういった方のサービスをしなければならない。それでもなお確かに御不便をかける度合いがふえる面はございますが、何とかその度合いを少なくしたいということで努力しておる次第でございます。
○矢原秀男君 今御答弁ございました立場でよろしくお願いを申し上げたいと思います。 次に、陪審制度と参審制度についてちょっと伺いたいと思っております。 御承知のように陪審制というのは一般人から選ばれた人々が専門の裁判官とは独立に事実問題について評決を下す制度、英米法系とかいずれにしても国民参加方式という中でこういう問題が各国で論議をされております。日本におきましても前長官のお話等もございまして前向きにいっているようでございますが、またいろんな説を見ておりましても、我が国におきましてはいろんな経過の中で参審制度、陪審制度の合憲性の問題、これは憲法第七十六条の三項に基づいての問題、また三十二条、三十七条の関連におけるこういう賛否の問題の中で国民の参加ということが非常に主張されていることは、国際化、高度情報化、高齢化の中で私は新しい時代の対応としてはやはり考えていかなければいけない、そういう問題を抱えていると私は思うわけでございます。 そういう意味で、最高裁としては今具体的にどういうふうにこういう問題を考えていらっしゃるのか。そして二点目には、今後どのような作業というものが前向きで実施をされるのか、こういうふうな点をお伺いをしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) まず、陪審あるいは参審制度につきまして最高裁としてこれまで何をしてまいったかということでございますが、私どもといたしましては主として将来における刑事裁判への国民の参加という今委員御指摘のそのような観点からこの問題を検討する、そういう立場に立ちまして欧米諸国の陪審、参審制度について、その事実認定、制度運営上の諸問題、裁判手続との関係等を中心に、まず文献等をもとに基礎的な研究を行ってまいったところであります。 また、これとあわせまして、陪審、参審制度の研究に当たりましてはやはり欧米諸国における制度運営の現場でその実態を調査研究することが重要であろう。そのような観点から既に一昨年の秋に裁判官一名を約二カ月間アメリカの方に派遣しまして、陪審制度の調査研究を進めてまいりました。さらに昨年の十一月には約一年半という予定で裁判官一名をアメリカに、またことしの二月には約五カ月間という予定で裁判官一名を英国にそれぞれ派遣しまして、現在あちらの裁判所で陪審裁判を傍聴したり、あるいはまた裁判官や陪審員、弁護士、学者等からいろいろな意見を聞くというような現地調査を行っておるところでございます。 そこで、次に今後の作業予定でありますけれども、最高裁といたしましてはこれまで行ってまいりましたこのような基礎的な研究、それからまた派遣いたしました裁判官方からの報告等を踏まえまして、今後とも多角的な見地に立って陪審制度について検討していこうと考えております。何分、テーマが刑事司法の根幹にかかわる大きな問題でありますので、なお相当の日時をかけてじっくりと基礎的な研究検討を進めてまいる必要があると考えております。 さらに、委員が先ほど仰せのように、陪審制度のみならずヨーロッパ大陸諸国において広く行われております参審制度の方につきましても、陪審制度との比較において今後研究を進めてまいろうと思っております。
○矢原秀男君 イギリス、アメリカのほかに、フランスやドイツについてはどういうような研究対象とされていらっしゃるのか。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 今、研究の進み方について御説明いたしましたように、とりあえず英米から始めておるわけでありますが、今後フランスなりドイツ、そちらの方へもまたおいおい裁判官を派遣する等しまして、あちらの参審制度、あるいはまたあちらではもともとは陪審制度をとっていたのが歴史の過程においてだんだん参審制度の方へ移っていったというような経緯もあるようでございますので、そのあたりのことにつきまして現地調査も交え、また文献等による基本的な調査も進めてまいろうと思っております。
○矢原秀男君 この点も、国民参加方式という大きなテーマの中で努力をしていただきたいと思っております。 では、次に質問をいたします課題は在日韓国人の三世地位協定に関する件でございます。 これはまず法務省にお伺いしたいわけでございますが、韓国につきましては、朝鮮半島につきましては過去日本が不幸な一つ一つの事件というものの重ねがございまして、私もいまだに解決を急いでいかなければいけない、こういうふうに思っております。そういう意味でまず法務省にお願いをしたいわけでございますが、三世の法的な地位に関する韓国の民団からの要望事項というものが出ている中で、法務省の該当のものが一つは協定永住権の付与対象範囲、これが三項目あるかと思います。また、もう一つの外国人登録法の改正については四点の項目がございます。そして退去強制条項の削除、再入国許可制度の適用除外、これらが法務省の関係になろうかと思いますけれども、現在どういうふうな進展を見ているのか、まず伺いたいと思います。
○政府委員(股野景親君) ただいま委員から御指摘のありましたような民団からの要望事項等も踏まえまして、日韓の法的地位協定に基づく在日韓国人三世の法的地位の問題について、現在韓国側との間でも話し合いを続けてきております。昭和六十三年十二月以来、日韓の法的地位協定の二条に基づきまして日韓両政府間で三回正式の協議を行っておりますが、このほかにも実務者レベルの非公式協議というものも行われておりまして、これらの協議には法務省からも担当者が参加をいたしまして、法務省の関係の事項についての討議に出席をいたしております。
○国務大臣(長谷川信君) 矢原さんの御質問にお答え申し上げます。 在日韓国人子孫の法的地位、待遇に関しては、現在、日韓両国政府の間で協議が進められております。現段階において法務省としての見解を具体的に述べることは差し控えさせていただきたいのでありますが、韓国側の要望については、我が国の法制との関係、諸外国の立法等を考慮し、日韓法的地位協定の前文に示されておる精神及び目的を十分に尊重しつつ、両国政府間の協議を通じて可及的速やかに双方の満足し得る結論を見出すべく、最善の努力をいたす所存であります。
○矢原秀男君 法務大臣にもう一点伺いたいわけでございますが、その前に外務省に。 ちょっと大統領訪日の日にちだけ聞きたいんですが、盧泰愚大統領の正確な訪日の時期。
○政府委員(谷野作太郎君) お答え申し上げます。 いろいろな新聞報道が昨今ございますけれども、ただいまのところ、なるべく早く盧泰愚大統領を日本に正式な国賓としてお迎えしたいということで日程の最終的な詰めを急いでおる段階でございまして、近々両国政府の合意を得まして発表できるのではないかと期待しておりますが、具体的事実をこの場で申し上げるまでにはまだ成熟しておりません。
○矢原秀男君 法務大臣、この件で最後に伺いたいのでございますが、五月二十四日が盧泰愚大統領が来日をされる大体の予定のように私は聞いているわけでございます。今申し上げているような関係、外務省も窓口でやっていらっしゃると思いますけれども、やはりできるものとできないもの、こういうような仕分けになると思いますが、五月二十四日までにもし予定どおり盧泰愚大統領が来日をされるとなれば、やはり大きな課題は在日韓国人三世の法的な地位の問題だろうと思うんですね。そういう意味で法務大臣に、盧泰愚大統領が来日をされた時期に政治決着をきちっとしていくんだ、これが法務大臣を中心とする日本政府の私はやはり大切な姿勢ではないか、こう思うわけでございますが、そういう点はいかがでございますか。
○国務大臣(長谷川信君) 今事務当局からお話がございましたように、明確に何月何日においでになるという日取りの報告は受けておりません。おりませんが、最も近い将来において訪日をされるだろうということは話を聞いておるわけでございます。韓国の大統領がおいでになるということはもう二年か三年ぶりくらいでございます。この際いろいろ懸案について解決をいたしたいということは両国ともかなり強く念願をしておるところでありますので、問題の一つ一つを取り上げましてこれから詰めて、できるだけ両国の最大限度の要望の入った立派な成案をつくって、できれば大統領がおいでになるときまでには話を進めていきたいというふうに考えております。
○矢原秀男君 その点、ぜひ決着をよろしくお願いを申し上げたいと思います。 最後の質問でございますけれども、人権問題について一言質問したいと思います。 もう既に御承知でございますけれども、世界人権宣言が一九四八年、昭和二十三年の十二月十日に第三回の国際連合総会において採択をされております。三十条から成っておりますけれども、本年から見れば四十二周年になりますけれども、私もこの世界人権宣言はいつも読み返しておるわけでございます。 前文にも「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」、また「人権の無視及び軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、言論及び信仰の自由が受けられ、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望として宣言」される、そういう中で「人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権を保護することが肝要である」、こういうふうに述べられておりますし、第一条も「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」、こういう観点でございますけれども、これは我が国内のいろんな具体的な小さな問題にとっても大切な一つ一つであると思います。 そこで、まず法務大臣にお伺いしたいのでございますけれども、そういう人権尊重の立場から大臣としての趣旨、精神、そうしてまた、後から法務省にお伺いしますけれども人権週間の成果というものがこれらに対してどういう成果を上げているのか、こういう問題を伺いたいと思います。
○国務大臣(長谷川信君) 世界人権宣言は、第二次大戦の反省により、世界の恒久平和の達成のために国際的な人権保障が不可欠であるとして生み出されたものであります。人権及び基本的自由を遵守し確保するために、すべての人々とすべての国が達成すべき共通の目標ないし基準を定めたものとして、人権保障の国内的及び国際的な進展に大いに寄与してきております。 法務省の人権擁護機関は、人権週間を中心にその意義と重要性を人々に広く伝え、我が国における人権尊重の意識の定着を図ってきておりますが、今後とも一層の努力をして御期待に沿うように頑張るつもりであります。
○政府委員(篠田省二君) 十二月四日から世界人権宣言採択の日であります十二月十日までの一週間が人権週間でございますが、法務省及び全国人権擁護委員連合会では各関係機関及び諸団体の御協力をいただきまして、広く国民に呼びかけまして、人権思想の普及、高揚を図っている次第でございます。 ちなみに、平成元年度の人権週間におきましては、全国的に「国際化時代にふさわしい人権意識を育てよう」「いじめ、体罰の根を絶とう」「部落差別をなくそう」「女性の地位を高めよう」「障害者の完全参加と平等を実現しよう」という五つの項目を強調事項として掲げまして全国的に啓発活動を実施したわけでございます。 そのほか地方によりましては、例えば北海道におきましては、アイヌの人々の差別をなくそうというような事項をつけ加えて啓発活動を行っているわけでございます。 こういったような活動によりまして、我が国に起こります人権問題について人々の関心を高め、認識を深めるという点におきましては役立っているものと考えております。
○矢原秀男君 この人権擁護の問題の関連として、非嫡出子に対する相続差別等の問題、いろいろあるわけでございますが時間の関係がございますので簡単に伺いたいことは、非嫡出子は、氏、これは民法の七百九十条、親権は民法の八百十八条、七百七十五条、これを母親とし、相続分は嫡出子の二分の一、これは民法の九百条と定められております。 私は、このような不利益な取り扱いというのは憲法第十三条の個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉、または十四条の法のもとの平等、それから第二十四条の家族生活における個人の尊厳と両性の平等、それから女子に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約第十六条、また国際人権現約のB規約に抵触するものと思うわけでございますけれども、これらに対しては今後やはり検討していかなければならない、こういう問題が一つはあります。 この問題についてのお答えと、もう一つ最後になりますけれども、非嫡出子の差別解消の機会についてでございます。この差別解消の機会は、現行憲法下の民法制定の際、そして昭和五十五年の改正時と聞いておりますけれども、一部議事録をちょっと私読んでまいりましたけれども、当時どのような理由によって差別の解消案というものが受け入れられなかったのか。具体的にこの二点を伺いたいと思います。
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。 嫡出子がある場合におきまして、非嫡出子の相続分がその二分の一である等の区別が嫡出子と非嫡出子との間にされているわけでございます。このような違いがある趣旨につきましては、結局法律上の婚姻というものを保護しよう、多くの場合には正式に婚姻している妻が保護されるということになろうかと思うのでありますけれども、そういう人たちの利益を守ることに主眼があるというふうに理解されているわけでございます。御指摘の世界人権宣言あるいは国際人権規約B規約等にそれぞれの規定があるわけでございますけれども、そのような法律上の婚姻を保護しようとするためのものでございまして、一つの立法政策として合理性を有するものだというふうに私どもは考えているわけでございます。 しかしながら、このような嫡出あるいは非嫡出の差別と申しますか、区別が適当であるかどうかということは、これはもう従来から議論がされているところでございます。現在の民法が改正されました昭和二十二年あるいは二十三年当時においても既にその議論がされているわけでございます。そこでまた、これは先生御指摘のように昭和五十五年民法改正の際におきましてもこの問題が取り上げられまして、法制審議会においてもいろんな議論がされました。 この議論の過程で、法務省におきましては、その議論を踏まえまして民事局参事官室試案ということで、嫡出子も非嫡出子も相続分は平等である、こういう試案を実は発表いたしたわけでございます。それで各界の意見を求めたのでございます。とともに、それよりちょっと先に、五十四年でございますけれども総理府を通じまして世論調査をいたしましたところ、実はそういうふうな嫡出子と非嫡出子を平等にすることについては反対である、つまり正規の婚姻から生まれた子と正規でない婚姻あるいは婚姻関係がないまま生まれた子について相続分を平等にするということは反対であるという意見が約半数、正確に申しますと四七・八%の反対があったわけでございます。これに対しまして、やはり平等にすべきであるというような方が一五・六%ということでございました。 さらにまた、法務省民事局参事官室試案に対しまして寄せられた各界の意見の中にも、我が国の国民感情あるいは社会実態に照らして適当でないというような意見が多く占めるというような状況でございました。そこで法制審議会におきましては、この問題を取り上げて議論はいたしましたけれども、国民の十分な支持があるとは言えないのではないかということで結局これは取り上げないということにいたしたわけでございます。 この民法改正後、既に十年たっているわけでございまして、この間に国民の世論の動向がどういうふうに変わったのか、あるいは変わらないのか、この辺は私ども定かではございませんけれども、世論の動向、国民の法律意識に深くかかわる問題であるというふうに考えておりますので、そういうものに十分に配意していく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
○橋本敦君 私は、法律案の質問に入る前に一般国政調査案件として、午前中も同僚の北村委員から質問のありました中国民航機ハイジャック事件に関連してお尋ねをしたいと思います。 この事件は今東京高裁の審査に付されておりまして、前回第一回の審問が行われ、張振海容疑者側からの補佐人を通じてその主張が展開をされ、そして次回は四月二日本人質問、さらにその後の期日においては補佐人側が請求した証人としてパリ在住の岳武氏が証人として取り調べられることが決定されておる、そういう段階に今進んでいると承知しておりますが、このことは間違いございませんか。
○政府委員(根來泰周君) そのとおりでございます。
○橋本敦君 この事案は、非常に現在世界的にも国際的にも注目される重大な事案になっていると思います。 あの中国における天安門事件は、平和的な民主化を要求する学生、市民の運動に対して軍隊を動員しての、軍事力を使っての人民弾圧として世界から厳しい批判を受けました。私ども日本共産党も厳しく批判を一貫して強めてまいりました。しかし現在、中国政府はあの学生たちの運動や市民、労働者の運動を反革命的な暴乱という、こういう決めつけをして、その態度を変えずにこれに対する厳しい対処を続けている状態であるわけであります。 そうした中で、この張振海容疑者は補佐人を通じてその主張を既に明らかにしましたように、昨年六月の天安門デモ事件に対しては政府側軍隊からデモ隊を守るための自衛組織である工人糾察隊の隊長になって、三百五十人ほどの労働者隊員を指揮して軍用車や戦車に対抗する処置をとって活動した。そしてその後一時逮捕され、保釈をされたものの、中国政府の今日のそういった態度からしてさらに厳しい弾圧と取り締まりを受ける、そういう重要な危惧を感じて、海外に脱出するやむを得ない方法としてこの中国民航機ハイジャック事件を起こしたということを主張しているわけであります。 しかも、その乗っ取りの方法は、実際に爆薬や武器を用いることなしに、南朝鮮に連れていってくれということを申し出て、これを承知しないと爆破しますということを伝えただけで後はおとなしくしていたという状況が明らかなように、それ自体航空機の破壊を目的とすることでなかったことも行為態様として私は明らかになっていると思うわけであります。 そういう意味で、もしこれが政治犯罪だと認められれば、既に明らかなように逃亡犯罪人引渡法第二条に基づいて政治犯罪であるとすれば引き渡しができないことになるわけで、こういう場合に政治犯罪に当たるかどうかという点は、まさに自由と人権にかかわる重大な事案として慎重公正に判断されなければならないことは当然であります。 そこで、まず検察庁に私はお尋ねしたいことは、こういう張振海容疑者の主張に対して中国側は一貫して天安門事件とは関係がないという立場を主張し、そしてその引き渡しを要求してきておるわけですが、今度の裁判所での審査に立ち会う検察庁の立場としてはこの中国側の主張に沿った主張を維持するということで審問が続けられていくように見受けておりますが、それはそういう主張であっても、日本の検察庁の立場としては中国政府の主張をうのみにするのではなくて、まさにこの裁判所における審理が公正かつ慎重に行われるということ、これを確保するという立場から慎重に対処をしていくという姿勢でなくちゃならぬ、そういうふうに私は思っておるんですが、基本的な立場としてどうお考えでしょうか。
○政府委員(根來泰周君) ただいま御指摘のような経過になっておりまして、今審問手続といいますか、審査手続で張という、日本名で張と言うようですけれども、これがそういうような主張をしておるようでございまして、裁判所も慎重にその辺を判断するということでいろいろ手続を進めておるようでございます。 それで、私ども法務省あるいは検察庁の立場というのは、やはり基本的には中国政府からの引き渡し請求を受けて東京高裁にその是非の審判をお願いしておるわけでございます。中国政府の主張をよく検討いたしまして、その主張についていろいろ疑問がありましたらさらに中国政府に対していろいろ補充をお願いしておると、こういうことでございまして、決して中国政府の言い分をうのみにしているという状況ではないということを御理解いただきたいと思います。 ただ、逃亡犯罪人引渡法をごらんになっておわかりのように、私どもの方で調査ということについては若干規定がないものですから、やはり中国政府からのいろいろの資料を検討して、それをまた補充してもらうというようなことで公正な裁判を図っていくという立場であろうと思います。
○橋本敦君 例えば中国政府は、本人が天安門事件に関係していない一つの証拠として、日本政府が早々と送り返すことを認めた妻の供述調書で本人は天安門事件には参加していないと、こういう調書を、これを一つの根拠にしていると伝えられている。しかし、これが慎重に検討する必要がある重大な問題。なぜなら張容疑者の妻が、夫が処罰されることを恐れて天安門事件に加わっていないと言う、そういう可能性は十分ある。それからまた逆の立場で、中国政府が引き渡しを受けるそのために、政治犯罪ではないということを主張するために天安門に参加していないということを、あの中国政府の大きな権力体制の中で一人の妻であるこの本人に、参加していても言えないという雰囲気と状況の中で参加していないと言わせているということも状況的に可能であります。まさに、こういった問題は客観的に公正な日本の検察がどう判断するかが問われている。 そういう問題もありますから、慎重に配慮するという刑事局長の答弁ですが、同時に、独自の調査権を持たないから中国政府の資料も検討してというその立場で今おっしゃっているその問題について言うなら、私は数々の慎重な配慮が要るということを指摘しておきたいわけであります。 それで、裁判所は幸いにして今パリに在住する岳武氏の証人尋問を決めてくれました。それ以外にも、私がテレビその他で見たところではアメリカに在住する証人もある。そして、そういう人たちはこの張容疑者が具体的にあの天安門のときに腕章を締め、糾察隊の隊長として活動していたということを公然と語っている状況もある。 だから、したがって検察庁の立場は、中国政府のそういった資料を検討してその立場で物を言うという立場だけれども、一方、張容疑者側の主張についても十分それがこの審問で適正な手続で解明されることについては、これをいたずらに反対するとか、あるいは早期に結審するように証人調べの必要がないということを言うとか、そういうことでやるのではなくて、張容疑者の主張も十分にこの審問で裁判所の心証判断に供せられるように、公正な審理が進むように協力するという立場も私はあるのではないかというように考えて、単に攻撃防御のいわゆる刑事法における訴訟構造の対決者的立場ではあり得ない重大な責務が検察庁の立場にはあるというように私は考えているのですが、御見解はいかがですか。
○政府委員(根來泰周君) これについていろいろ御見解があろうかと思いますけれども、現在裁判所でそういう審査をされているわけでございます。 この審査手続というのは通常の刑事訴訟法による手続と違って、言うなれば職権的な色彩の強いものでございます。そういう裁判所の御審査に対しまして私どもは全面的な協力をする、そして公正な立場で協力をするということはもう当然の話でございます。ただ、この逃亡犯罪人引渡法では審査の期間というのが限られておるわでございます。これは訓示規定だとかいろいろ問題がございますけれども、そういう点でなるべく早期に結論を出していただきたいというのが私どもの希望でございます。
○橋本敦君 私は、法務大臣にも御所見を伺いたいと思うのでありますけれども、この逃亡犯罪人引渡法に基づいて、第四条の法務大臣の指示に基づいて審査請求がなされたわけでありますが、法務大臣としては日本政府は引き渡すという方針に基づいてこういった手続に進んできたことは、これはもう明らかです。その方針を早々と決めたことに問題があったのではないかという同僚の北村委員の指摘に私も全く同感ですが、その質問はもうありましたからあえて行いませんが、結論として、この審査請求で裁判所が今日の世界の自由と人権を守るという重大な国際社会の課題にも照らして、この日本でもそういう立場で公正かつ適正、慎重な判断を下されるということを法務大臣としても期待をしておられると思うんですが、間違いありませんか。
○国務大臣(長谷川信君) 今御案内のように、高裁で、いろいろ審査が進んでいるわけでございますが、今先生がおっしゃいますように、公平で最も妥当な結論が出るものと私どもも期待をいたしております。 なお細部にわたりましては、今係争中のことでございますので答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
○橋本敦君 私は、そういう姿勢であってほしいと思うんですが、これは毎日新聞ですけれども、この問題について大変適切な投書が出ております。 ある会社役員の方の投書でありますけれども、「この問題は日本政府の人権に対する基本姿勢を示すものとして世界の注目を集めているのではないか。とかく日本政府は経済的利害を主とした判断をしがちであるという疑惑が持たれてきたが、今回もその試金石になるのではないか。」。確かに、中国との経済問題を含めた正常化についてはヨーロッパの厳しい態勢と違って、日本は投資その他の関係で緩やかではないかという国際的批判もあったわけですから、こういう批判もなるほどあるわけですね。しかし人権という理念は、まさにそれと違って強大な国家権力からいかにして弱い個人の人権を守るかということ、この問題でこの審査というのはまさに現在中国に起こった重大な矛盾の中から悲劇の亡命者を見捨ててはならぬということをこれは訴えていると、こう言っているのでありますが、まさにそうだと思います。 中国政府はこの問題について、これは中国の刑法の百七条類推適用によって処罰をするという範囲にとどめると言っているようでありますが、しかし、あの上海の列車事件を見ても即刻直ちに死刑という、こういうことがなされた。そしてまた、この動乱に対する中国の今日の反革命的暴乱というあの強硬な姿勢からして、そうは言うもののどういった刑罰やあるいは残虐な調べが行われるかということは、これは容易にそういうことはないということは言えない状況にあるという意味において、ますますこの問題は慎重を期さなければならない重大な問題であります。 最後に、私はこの問題で法務大臣にお伺いしたいんですが、裁判所が政治犯罪であるというように認定をしたということになれば、政府の引き渡し方針というのは根本的に再検討しなきゃならないという状態になる。その場合にハイジャックそのものの裁判権がどうなるかということですが、これはハーグ条約によって中国と日本の双方に裁判権があり、そしてまた、現に起こった日本に優先的裁判権があるということで選択権もある問題ですが、これについては政府は中国側の裁判権を認めるという方向で来たけれども、この問題をもう一遍再考してすべて慎重な判断を根本的にやらねばならぬという事態になる、そういうことは当然だと思うんですが、いかがお考えですか。
○政府委員(根來泰周君) ただいまのお話はすべてごもっともでございます。 ただ、少し誤解といいますか、あるようでございますけれども、日本政府のとった方針というのは、あの時点で送り返すことも可能であったわけでございます。しかしながら、そういう行政手続で送り返すということは非常にやはり何といいますか、誤解を生むということで、司法手続にのせて裁判所の公正な審査を仰ぐという立場をとってきたわけでございまして、そういうことでは人権を最大限に尊重しているわけでございます。 さらに、おっしゃいました本人が天安門事件の関係者かどうかという点については、これは本人が現在そう言っておりますけれども、また違うという証拠もあるわけでございまして、それは全く断定できない話でございます。したがいまして、そういう点について東京高裁は現在審査をしておるわけでございますから、逃亡犯罪人引渡法の十条の規定に見られますように、いずれかの裁判が行われるわけでございます。もちろん、政治犯罪ということになりますれば、十条の二号でございますか、これは引き渡すことができないということになりましたら、当然大臣は引き渡すという決定はできないわけでございますから、そういうことが将来ありましたときにまたいろいろ方針を考えたい、こういうことでございます。
○橋本敦君 大臣、今のとおり、審査決定の出ぐあいによっては政府として改めて慎重な配慮が必要になるということは間違いございませんね。
○国務大臣(長谷川信君) 今何しろ係争中のことでございますので、詳細にわたりまして反論あるいは賛成の意見というものは差し控えさせていただきたいと思います。
○橋本敦君 いや、刑事局長の答弁したことは間違いないですね。
○国務大臣(長谷川信君) はい。
○橋本敦君 それじゃ、この問題はこれで終わります。刑事局長ありがとうございました。 次は、法案に関連して裁判所にお伺いします。 時間がもうありませんので簡単にお伺いいたしますけれども、きのうお願いをして大変御苦労いただきまして、平成元年度の四月から三月末までの間に予想される中途退官される裁判所の判事、判事補、簡裁判事の数をお調べいただきまして答えが出ているようでございます。大変な御苦労だったようですが、ちょっと数字をおっしゃってください。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 平成元年度におきます裁判官の中途退官者でございますが、判事が四十名、判事補が六名、合計四十六名でございます。
○橋本敦君 この一年間で裁判所の裁判官が六十四名おやめになる。これは大変な数なんですね。それで私ふっと考えたのは、この法案で裁判所が苦労して増員要求ということでやっと認められたというのが五名ですね。この一年で六十四名おやめになって、この法案でたった五名が認められたと。六十四名やめて、たった五名の補充だとなりますと、率直に言って、これは司法の国民へのサービスという点からいっても、各裁判官の負担の過重という点からいってもこれは大変じゃないか、とてもじゃないがこの五名程度では補充にもならないんじゃないかという感じを強くしたんですが、最高裁はどうお考えですか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 先ほど簡易裁判所判事のことを申し落としました。 簡易裁判所判事が十八名でございまして、それを加えまして今委員の御指摘の六十四名ということになるわけでございます。 今回、簡易裁判所判事の五名の増員をお願いしてございますけれども、この五名を含めまして現在の欠員、それから先ほど申しましたこれからの減、こういったものを合わせまして四十人ばかりの補充が必要になってまいりますけれども、この補充につきましては、十名ばかりは判事の定年退官者からなる者がおりますので、あと三十名が足りないわけでございますが、これにつきましては、ことしの八月一日を目指しまして簡易裁判所判事選考委員会の議を経まして選考採用で埋める、こういうことで、増員を含めましてお願いしました簡易裁判所につきましては充員の見込みを立てているところでございます。
○橋本敦君 そう言っても、八月一日までに二十五名を埋められるかどうかなかなか容易じゃないでしょう、実際は。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) この点は八月一日までにそれまでの減員も含めまして充員する見込みを立てております。
○橋本敦君 では、結果をまた見させていただきましょう。どちらにしてもとてもじゃないが足らないという感じがしますね。 それで、一般の職員につきましても、全司法の労働組合は毎年増員要求しておりますし、この数は一九八九年六月三十日現在で全国で千八十四名増員してほしいという要求のようですが、それは機械的にそのとおり申しませんけれども、裁判所の職員の増員も弁護士会を通じて家庭裁判所の調査官や速記官やそれから書記官を含めて随分いろいろと要求しているんですが、なかなかいかない。八二年度以降、増員要求は調べてみますと毎年四十九名しか要求なさってないというんですが、これじゃとても充足されないんじゃないんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 職員団体の方から千名を超えるそういう増員の要求があることは私どもも承知いたしております。どの程度の増員が必要かということにつきましては、職員団体の立場上ある程度我々の考えますところとずれが生ずるのは当然でございます。しかし、率直に申し上げまして、それにいたしましても千名以上とかあるいは千五百という数字はいかがなものかと私ども首をかしげているところでございます。 職員に過重な負担にならないようにということは私どもは常々心がけておりまして、そういう職員の声とかあるいは下級裁判所からの声、その他下級裁判所のどこが忙しいかといったことを相当程度きめ細かく見させていただいているつもりでございます。今回の増員要求で十分かと聞かれますと、これで十分でございますと断言するにはちゅうちょいたすわけでございますが、しかし、ことしだけではございませんで、過去ずっと増員をお認めいただきまして、そういう成果とあわせて、また他方ではその他いろいろな事務手続を上手にやる工夫だとかあるいはOA化だとか、そういったもろもろのこともあわせて考えますれば相当程度の改善ができると喜んでおる次第でございます。今後もなお、そういう職員団体の声等にも留意いたしまして、職員に過重な負担とならないようにということを心がけながら、事件数の動向などもよく見まして検討を続けてまいりたいと思っております。
○橋本敦君 積極的な努力を希望して、質問を終わります。
○山田耕三郎君 提出の法案の第一点は、簡易裁判所判事の定数を五人増加いたしますものと、第二点は、裁判官以外の裁判所職員の定数を二十五人増加をいたしますというものでありまして、極めて簡単なもののようではありますけれども、部外者であります私たちにとっては、これを審査する前提となります内容を熟知いたしておりますわけではありませんので提供される資料の説明によるよりほかはありませんけれども、この説明が極めて不親切だと思います。 例えば「司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員」とありますが、現状はどのようであって、何が簡素化され、何がどのように能率化されるのか。さらには「庁舎管理業務の合理化に伴う減員」とありますが、庁舎管理業務の何がどのように、あるいはどの程度に合理化をされますのか、さらには将来も継続されるものなのか、もう少し親切な説明があってもしかるべきだと考えます。 ちなみに、昨年の定員法改正案の中で、「技能労務職員」の定員の説明に「(印刷工)」とあるだけでこれは印刷業務を合理化されたのだなと理解ができ、無味乾燥な法律案も何か生きてきておるように思います上に素人の私たちに親切に語りかけておられるようで親しみを感じます。これに反し、今年の場合は「庁舎管理業務の合理化」との説明だけで十四名の減員がありますが、これではさっぱりわかりません。 今日、どんなお土産物屋へ行きましても親切な説明書がついております。私たちはそれを読むことを見過ごしておりますけれども、この人たちは理解をしてもらって何とか買ってほしいという努力であります。そういう結果、コピーライターを初めとしていろいろの職業が新しい社会の中で生まれてきておりますのですけれども、法律の提案者とされましては、この法律はやっぱり成立をさせたいと思っておいでになると思います。そういった面でもうちょっとやっぱり努力をされる必要があるのではないか。 先ほども御質問がありましたが、簡易裁判所の判事五名の増員は三年目であります。以外の二十五名の職員の増員も三年目であります。去年の法案の説明書も今回のも本筋においてはちょっとも変わっておりませんのですが、もうちょっとやっぱり、こんな何でもないようなところであればこそ努力の跡をあらわしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 大変貴重なアドバイスをちょうだいいたしまして、ありがたく存じております。今後の作業の際には十分きょうの御忠告を考慮させていただきまして考えさせていただきたいと思います。 それで、まことに舌足らずな資料ということで御理解が十分いただけなかった点は恐縮しておるのでございますが、少し口頭で申し上げさせていただきますと、今回の増員する方というのは事件の裁判に直接タッチする部門、これを通常裁判部門と申しておりますが、その方を増員したいということでございます。そして逆に減らそうという方は、むしろ事件の裁判に直接タッチしない事務局部門でございますね、給料の計算をしたりだとか、あるいは職員の配置を決めたりだとか、あるいは物品を調達したりとか、そういった事務局部門が裁判所にもございますが、いわゆる司法行政部門、そちらの方を政府の定員削減計画に御協力するということで減らそうということでございます。 そのうちで、合計三十七名減らすうちの高裁、地裁、家裁において司法行政事務の簡素化、能率化ということで二十人になっております。これは実はタイピストでございます。タイピストでございましていろいろな報告文書をタイプしたり、それからほかの裁判所との連絡をタイプいたすわけでございますが、そういった報告事項とか連絡事項を一つは整理する。それから御承知のように最近はむしろワープロが普及いたしておりますので、ワープロあるいはコピー機等を利用して行いますれば、従前のタイピストというのはそれほど要らなくなってまいっております。既に欠員という形も出ておりまして、そういった面でまずタイピストを二十人減らしたい、こういうことでございます。 それから、技能労務職員として三名と十四名、合計十七名減らすということになります。ことしのに印刷工と書いてなくて申しわけないんでございますが、最高裁における司法行政事務の簡素化、能率化というのはこれは印刷工三名でございます。印刷部門は活字印刷にしなくてもいいものがふえておりますので、その分三名減らしたいということでございます。 それから、地方裁判所における庁舎管理業務の合理化、非常に官庁用語で申しわけないんですが、これは実は清掃業務に携わる職員でございます。それにつきましては一部を民間に委託するとかそういったことで合理化できますので、それによって十四人減らす、こういう内容でございます。
○山田耕三郎君 次は簡裁の判事さんやその他の職員の定数についてお尋ねをいたします。 裁判所における判事、判事補、簡裁の判事及び事務官や書記官の定員の変化は、背景となりますその時代時代の社会現象が大きく影響するものであることは論をまたないと思います。すなわち昭和五十年代にはサラ金ですとかマルチ商法の横行で、これに対応するために地裁の判事や判事補の増員が続いておりましたように思いますが、ここ二、三年は簡裁の判事の増加が続いており、わけても裁判官以外の裁判所職員の増加が著しいようであります。これらに関連をして次の二点をお尋ねをいたします。 この裁判官以外の職員の増加が両三年特に多いことは、簡素化、能率化、合理化を進めると言われる説明とは裏腹の現象があらわれておるように思いまして、なかなかわかりにくい面がございます。ただいまの御答弁にも一部それらはありましたけれども、やっぱり同じ仕事をなさる職場でも合理化や能率化を進めていかなければならぬ分野とさらに強化拡充をしていかなければならぬ分野とが混在をしておるのだと思います。その辺の絡みをもうちょっとわかるように説明をしていただいた方が理解をしやすいのではないか。それがありませんから昨年の説明書とことしの説明書の内容が同じになってしまう、こういうように思います。 二つ目の問題は、簡易裁判所の統廃合は事件処理の機能充実強化のために行われたのでありますけれども、しかし恒常的に判事さんが五名増員の措置が今後も継続してとられていくとすれば、一体その理由は何なんだろう。さらにもまた簡易裁判所の統廃合とは何だったのかという疑問が残ります。午前中の質問にお答えをいただきましたのでありますけれども、ちょっとはっきりいたしませんので再度御説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) お尋ねの前段の点は、私どもも委員のお考えになっておられることと実は同じことを考えておりまして、それが資料へのあらわし方がまずいために御理解いただけなくて申しわけないと思いますが、要するに先ほども申し上げましたとおり、充実強化しなければならない部門といたしまして裁判に直接携わる方の部門、これはなお充実させていただきたい、こう考えておるわけでございます。 午前中にも申し上げましたとおり、簡易裁判所の事件等におきましては確かにピークは過ぎたのでございますが、十年前に比べますとなお高原状態にございますので、そういったところでいい形の裁判をするというために充実をしたい。その充実につきましても一挙にどっとということも考えられるわけでございますが、しかしまた一挙に多数の者をふやすということはいろんな面でまたマイナス面も生じてまいります。あるいは養成に時間のかかります裁判官だとか書記官等につきましては、きちんと枠だけふやしていただいても供給できるかという問題もございます。そんなところから何年かにわたりまして、今回の増員要求ですとここ三年間ほぼ似たような形で毎年毎年着実にと申しますか、その限度できせていただくという形でございます。 しかし、いろいろ合理化しなければならないことは仰せのとおりでございまして、それは裁判に直接関係しない一般の行政と同じようなところの部門については合理化を図ってまいりたいという精神でやっておりまして、それが説明が足りないために増員と減員とちょっと矛盾するではないかという誤解を招いたものだと反省しております。 それから、簡裁判事の増員をこれからも続けていくかという点でございますが、実は簡易裁判所の統廃合といいますのは、午前中申し上げましたとおり決して裁判所の人員を削減することを目的としたものではございませんで、たくさんあり過ぎ、しかし産業構造の変化等に伴いまして非常に事件数の少ない裁判所、そのために裁判官も置けないそういう裁判所がある。そういったところは少し整理統合させていただいて、その方が裁判官のいるところでいい形の裁判をさせていただけるんではないか。それを目的にしたものでございます。 その際にあわせて、それとともにさらに裁判部門をいい形で運用していくために、人の手当てを五名ずつではあるけれども少し続けさせていただいたというのが今日までの状況でございます。 今後どうするかということにつきましては、事件数が少し簡易裁判所等では減ってきておりますので、その辺のこともにらみ、またどこの部門のどのあたりが今忙しいのかといったことをよく見て、また来年以降のことを決めさせていただきたいと、現時点ではそう考えておるものでございます。
○山田耕三郎君 次の質問は、ただいまも御答弁がありましたが若干観点を変えてお尋ねをさせていただきます。 下級裁判所の裁判官の定員、現員を調べておりますと、各年次とも簡易裁判所の判事の欠員が恒常的に二けた台で推移をいたしております。しかも、特に近年その欠員の数が多くなりつつあります。例えば昭和六十二年が二十七名、昭和六十三年が三十二名。この現象は何を物語っておりますのか。さらには、五名くらいの増員では意味をなさないことになりますが、簡裁判事には特任だとか再任用が多いことも一つの原因と思いますが、この現状を是正されまして安定した定数管理を心がけられるべきだと思います。そうでなかったら五名の増員などは意味をなさない、こう思いますが、御所見を改めてお願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 先ほども人事局長が御説明いたしましたように、簡易裁判所の判事の欠員を埋める一つの方法は、判事を定年退官された方を今度は簡裁判事として再任用するという方法がございます。その方の場合は定年退官日等がそれぞれまちまちでございますので時期時期で埋められるわけでございます。しかし、基本的には選考によって充員を図るわけでございます。こちらの方は、やはり人権に携わる裁判官を採用いたしますので相当きちんとした厳しい試験を行わなければならない。そういう試験制度を行い、そしてまた裁判官になられて実務につかれる前に十分な研修を行う、そういった面もございまして一年間のいろんなところでぱらぱらぱらと採用するわけにはいかないわけでございます。そんなところから、選考による場合には八月一日付で欠員を任用するという形になっておるわけでございます。 ですから、一応時点時点では欠員はございますが、それが八月一日の時点ではほぼ埋まるという形になるわけでございます。それが五名増員してもらいますと、八月時点で埋まる数が、現在する数が五名ふえる。そして裁判官には定年がございますもので、定年が来られてやめられる、あるいは亡くなられる、そういう形でそこからまた減ってまいりますので、現在の採用には試験が必要であり、さらに研修が必要であるということを考えますと、確かにおっしゃることもよくわかるのでございますが、いつも予備軍を抱えていて、そしてそれを随時あいたときに登用するという形は運用するのになかなか難しい、こういうことを御理解願いたいと思います。
○山田耕三郎君 最後に、裁判の迅速化についてお尋ねをいたします。 裁判の迅速化が叫ばれてから久しいものがございます。国民の願いでもありますのにかかわりませず、なかなか改善をされません。一体その原因はどこにありますのか。返ってくるお答えは事件の複雑化やあるいは大型化等々だと思われますけれども、当局はその原因は何だと思っておいでになりますのか。さらに、その解決策についてはどのように考えておられますのか。 もう一つの問題は、この問題に関連をしまして東京第二弁護士会が裁判の遅延を防ぐ対策として仲裁センターを設置され、小さな紛争をより安く、より早くを目指して解決に乗り出されておられます。賛意を表しながらも裁判の長期化の現状を認めるわけにはまいりません。設置をされ運用されてからまだ日が浅いので早急な結論は困難ではあろうと思いますが、わかる範囲内で現況をお知らせいただきたいと思いますのと、さらに、もしこのような施設が機能するようなことになりましたら司法の使命は一体どうなりますのか、所見をあわせてお願いをいたします。
○最高裁判所長官代理者(今井功君) お答えを申し上げます。 裁判の遅延の問題でございますが、最近におきます平均審理期間でございますが、資料を差し上げてございますが二十五ページにございます。例えば地方裁判所で見てまいりますと、十年前の昭和五十三年には十三・九カ月ということであったのでありますけれども、六十三年には十一・九カ月ということで、二カ月ということでございますが徐々に改善はされてきているというふうに考えております。 ただ、そうは申しましても公害事件あるいは医療過誤事件というような複雑、困難な事件におきましては最終的な解決が図られるまでには相当な時間がかかっておるということは御指摘のとおりでございます。 その遅延、長期化の原因でございますが、今御指摘ございましたとおりでございまして、いろいろございますけれども、一つというわけにはいかないと思います。 一つの理由としましては、事件が御指摘のように複雑、困難化しておるということが一つの理由として挙げられようかと思います。また、これは民事訴訟でございますので、原告、被告双方の主張、立証活動によって訴訟が進むものでございます。当事者、原告、被告双方の準備という点にも一つの原因があろうかと思います。また、裁判所におきましても訴訟の旧来の慣行というものがございまして、それが果たして現在の時勢に合っておるのかどうか、そういうような問題等が挙げられようかと思います。 そこで、それに対する対策はどうか、こういうことでございます。率直に申し上げまして、こういうことをやれば解決するというような即効薬というものはないだろうというふうに思います。今申し上げました遅延の原因それぞれに対しまして、きめ細かな対応をしなければいけないだろうというふうに考えております。この点で最近、各地の弁護士会におきましても民事訴訟の促進のためにいろいろな方策を積極的に提言をしていただいております。これは迅速な裁判を求める国民の要求が強まっておる、こういうことであろうかと思います。 裁判所におきましても、民事の事件を担当する裁判官の間におきまして、いわゆる口頭弁論というものが形骸化しておるのではないかということでございまして、そういうことがないように裁判所において審理のむだを省きまして、本当に必要なところだけを十分調べよう、こういうようなために具体的な方策がいろいろ提案されております。既に一部ではその方策に従った運用もされておるということでございます。このような方策を一つ一つ積み上げることによりまして訴訟を適正迅速に解決していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。 それから最後に、第二弁護士会の仲裁センターの問題でございます。 この問題につきましては過日、報道機関、新聞記事等でこういうことができたんだということは承知しておりますけれども、具体的な内容についてはまだ十分承知をしておりませんので、その点につきましては答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思います。 それに関連しまして裁判の長期化の問題でございますけれども、先ほど言われましたように、古くから裁判の遅延というのは裁判の拒否に等しいんだという格言がございます。このように民事裁判の促進ということはもう古くからの問題でございますけれども、やはり私どもとしてはこの点についているんな対策を講じていかなければいけないだろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
○山田耕三郎君 終わります。
○紀平悌子君 初めに内閣官房、そして法務省にお伺いをいたしたいと思います。本日の議案と離れて恐縮でございますけれども、大変昨年来気になっておりますことを一つ、初めに伺わせていただきます。 平成二年度の予算案というものが一応提示されておりますけれども、その中で難民対策予算の規模拡大というのが非常に目立って見られました。このことは昨年来の難民等の日本への漂着というか、あるいはおいでになるというか、そのことに対する早速の御対策であるかのように伺いましたけれども、難民等と申し上げていいのか、難民対策と申し上げていいのかわかりませんけれども、その予算の内訳、そして特に配慮されている点について御説明をいただけますでしょうか。
○政府委員(菊地康典君) 委員御指摘のように、平成二年度の難民対策関係の予算案に計上されております額は、平成元年の予算に比べますと二六%の増加になっております。絶対額で申しますと平成元年の難民関係五省、法務省、外務省、文部省、厚生省、労働省、これら五省の予算総額が十六億円、これに対しまして平成二年度の予算案に計上されております額は二十億円になっております。 このような増加が生じました要因は二つあると言えると思います。一つは去年ボートピープルの数が非常にふえたこと。もう一つは、これは昨年の六月にジュネーブで難民関係の国際会議が開かれまして、この会議におきまして日本は今後三年間にわたって一千人の定住難民を受け入れるという、こういう約束をしてまいりました。この二つが重なりまして難民関係の予算がこのようにふえたというふうに御理解願いたいと思います。
○紀平悌子君 そう細かくでなくて結構でございますが、内訳を少し教えていただけますでしょうか。
○政府委員(菊地康典君) 今申し上げました五省の中の大きなところから申し上げますと、外務省、これが一番大きい予算を持っておりますけれども、外務省は平成初年度において十億円強の予算額が、二年度の予算案におきましては十一億円強計上されております。これはアジア福祉教育財団及び難民関係の三つのセンターに対する運営の委託費でございます。二番目に大きいのは労働省でございまして、これが二億八千万円。これは難民の職業訓練、職業あっせんなどを行っております。三番目は文部省。文部省の額は二億六千万円。これは日本語教育の委託費。あとの二つは省略いたしますけれども、上から三つとりますとこういう額になっております。
○紀平悌子君 昨年難民等が上陸しました地点、九州の沿岸が多うございますけれども、その各地方自治体が負担いたしました難民等の救済というか、あるいは受け入れというか、急遽受け入れに要しました費用につきまして国連難民高等弁務官事務所による支弁がされつつあるということを承っております。一部は支弁をされたところも承知しておりますけれども、その現状は現時点でどうなっておりますでしょうか。
○政府委員(菊地康典君) 委員御指摘の地方自治体が負担しました額は、請求額によって申し上げますと一億円強、このうち補てんいたしました額が五千七百万円。したがって、まだ補てんされてない部分は四千四百万円。丸い数字で申し上げますとこういうことでございます。
○紀平悌子君 今後はどのような手順でというか、あるいはテンポでそれが完済されるのでしょうか。
○政府委員(菊地康典君) 紀平委員が関心を持っておられます牛深市及び熊本県を含めまして、先ほど申しました未補てんの四千四百万円につきましては関係省庁とずっと協議をやってまいりまして、全額地方に御迷惑をかけないような形で払えるという見通しがついております。いつということについてはまだちょっと差し控えさせていただきたいんですけれども、非常に近い将来ということは申し上げられます。
○紀平悌子君 ありがとうございました。 さらに昨年、この難民等の問題がこの委員会で議題になりましたときに、難民対策の基本的なマニュアルをおつくりになるという御答弁がたしかあったと思います。多分これはインドシナ難民対策連絡調整会議でございますか、こちらの方が中心となって関係各省とのすり合わせをお始めになるということでございました。なるべく早い機会にこの結果を出したいというふうな前大臣の御答弁もございましたので、この経過はいかがなっておりましょうか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(菊地康典君) 御指摘のマニュアルにつきましては、昨年九月の本委員会において下稲葉先生からも御指摘がございました。その後、我々鋭意作成に努力してまいりましたけれども、先ほども申し上げた地方自治体に対する負担の問題が相当引っかかりまして、実はつい最近やっとできかかってきた、こういう状況でございます。我々といたしましては、難民の来ることが予想される前にこのマニュアルを必要とする地方自治体の方に配りたいというふうに考えております。
○紀平悌子君 できるだけ早くマニュアルを御策定いただきたいということをお願いをいたしまして、次の質問に移らせていただきます。 本議題に関してでございますけれども、さまざま各委員から御質問がございまして、ほぼ私が疑問といたしますところのお答えは既にこもごも述べられておるように承知いたしました。私も国民が裁判を受ける権利を十二分に保障されるためには、裁判官はもちろんでございますけれども、事務局、いわゆる司法行政事務官の存在というものが非常に大事だというふうに思っております。 その点で、今回この定員法の改正による裁判官以外の増員の実質的な数というものは一体どうなんだろうということが、今山田委員の御質問と同じく、どうも資料を拝見した限りでは頭が悪いせいか十分にのみ込めませんでした。それできょう、大分それがわかってはまいりましたんですけれども、裁判官以外の増員の実質的な数、どの部分でどのような効果を上げるためにという、その実質的な数をもう一回教えていただけませんでしょうか、書いてございますけれども。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) お答えさせていただく前に一言申し上げさせていただきたいんですが、今回増員しようという部門は司法行政部門ではございませんで、裁判官以外の職員でも書記官、事務官、そういう人たちでも裁判に携わっている方の場合は裁判部門の職員でございます。そちらの方を増員いたしまして、そうでない、給与の計算だとか物品の調達だとか、どこの官庁にでもあるいわゆる事務局部門、それを司法行政部門と申しておるわけでございますが、そちらの方は減員するということでございます。 まず、それを前提にいたしまして、今回増員をお認めいただきたいということでお願いしております裁判官以外の職員の数は六十二でございます。それは裁判部門の方で増員したいということでございます。逆に、事務局部門の方でいろんな合理化等によりまして三十七減員を立てた、差し引き二十五の純増、こういうことになるわけでございます。
○紀平悌子君 念のために本当にしつこく、伺いますことがまた重なりますけれども、その増員についての仕方というか、方法、どんなふうなプロセスで増員をなさるということでしょうか。例えば採用についてですね。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) ただいま御指摘の裁判官以外の裁判所職員につきまして、先ほどからの御説明がありますとおり、全体で差し引き二十五名の増員が必要になります。現在、お手元に差し上げてございます法律案関係資料をごらんいただきますと裁判官以外の裁判所職員で欠員が百七名あるかと思います。これに増員分の二十五名を加えまして、さらに、先ほどの欠員は昨年の十二月一日でございますけれども、その後の退職がございます。それらを合わせまして、ことし四月一日を目指しまして外部からの新規採用で大部分を埋めたいと思っております。 それから、数は少のうございますけれども再採用制度というのがございまして、裁判所書記官あるいは家庭裁判所調査官につきましては、一応六十の定年で退職した人をその能力を生かす意味におきまして再採用する者が若干ございます。その再採用と大部分の新規採用で埋めていくつもりでございます。
○紀平悌子君 時間も迫ってまいりましたので幾つか飛ばさせていただきまして、家裁の問題でございます。 先ほども御質問が一部出たと思いますけれども、悪質なと言われる少年事件が増加しているというふうに聞いております。それについて裁判所としてはどのようにお考えでございましょうか。具体的にどう対処しておられるか。 また、今回の改正で家裁の調査官の増員などはありませんでしたけれども、事件の背景をいろいろ調べるという大変重い責任があると思いますけれども、調査官の増員などは非常に必要なことではないかというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 確かに一時期悪質な少年の事件というのは目立ちましてふえたわけでございますが、しかし最近で申し上げますと強盗とか殺人とかそういう凶悪犯につきましては、家庭裁判所に参ります新受事件の数といたしましては昭和五十五、六年をピークに少しずつ減少の傾向でございます。そして昭和六十三年、平成元年と戦後最低の水準となっておるのでございます。 少年事件の全体の数も昭和六十一年ぐらいから減少傾向となっておりまして、現在時点では悪質な少年事件が増加しているということは統計的な数字からでは必ずしも言えないのでございます。しかし、もちろん起こっているものは起こっているわけでございまして、裁判所に来る事件の数としてはそういう状況でございます。 こういう悪質な少年事件と申しますか、重い罪を犯した少年事件が裁判所に参りました場合に、家庭裁判所におきましては特に少年の健全な育成のために少年の保護事件の調査というのは念入りにいたしておりますが、とりわけこういう強盗殺人だとかそういう重いあるいは凶悪な事件につきましては綿密な上にも綿密な調査をいたしまして、あるいは身柄につきまして観護措置と申しまして少年鑑別所へ入れまして、そこで心身の鑑別を行ってもらい、あるいはその調査に当たります調査官につきましても一人じゃなくて複数の調査官による共同調査という方法を用いるなどいたしまして、入念な上にも入念な調査を遂げているのが現実の姿でございます。
○紀平悌子君 最後に、いろいろございますが一点だけお伺いしたいと思います。 六十三年以降、簡易裁判所の適正配置なるものが行われてきたわけですけれども、それのもたらした各種の影響についてお伺いをしたいと思います。できれば新受件数の増減、それから事件の処理状況。最後にどうしても伺いたいのは地域住民の反応でございます。どういうふうにそれを受けとめ、住民の方でそれに対してどういう意見を持っているか、お調べになったようなことがあればぜひ伺わせていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 先ほどの御質問で一点落としまして申しわけございませんでした。家裁調査官の増員をどうするのかということでございます。 家裁調査官の増員につきましては、家事事件の中で遺産分割等難しい事件があることも事実でございまして、手間のかかる事件もふえておることは確かでございます。しかし反面、道路交通法違反事件等は法律の改正等によって減りまして、全体として見れば内部の適正な定員の配置ということで対応できる、こう考えておる次第でございます。 それから、ただいまのお尋ねの簡裁の適正配置がもたらした影響ということでございますが、簡易裁判所の適正配置の施行が昭和六十三年の春でございますが、それで行いまして、事件としては、廃止いたしました簡裁の管内の事件は一二%程度その前に比べまして減っております。しかし、けさほど来何度も申し上げておりますとおり、簡裁の事件全体が現在減っておりますので、その数字は全簡裁の事件数にしますと約一八%。むしろ廃止した簡裁の管内の事件の方が減少傾向は少ない。一時点で見るとそういうことでございます。 それから、事件の処理状況等では現在格別の問題を生じておりません。簡裁の適正配置を実施いたしました際にお約束したことでございますが、簡裁を廃止いたしましても、その廃止簡裁の六〇%程度の地域については、裁判所から裁判官、書記官が出張して公共施設で調停等の事件処理を行うあるいは受け付けのための相談を行うといった体制をとらせていただいた次第でございます。そういったことで、現在格段の声は上がっていないところでございます。 何しろこの簡裁の適正配置も、一部の簡易裁判所はなくするけれども、残った簡易裁判所でいい形の審理をして、そして少し足を伸ばしていただいても充実した裁判を受けていただきたいということで私ども心がけておりまして、先ほどの出張事件処理とあわせまして努力しておるところでございまして、現時点で上がっております声といたしましては、私ども職員団体の方が一時期、この廃止後事件の減ったのはやはり住民が利用を差し控えるようになったからではないかといった声が聞かれましたが、それにつきましては、先ほど言ったように、よく調べましたところそういう結果でございましたので、その他には格段の目立った反応というものはないと私ども理解しております。
○紀平悌子君 終わります。
○委員長(黒柳明君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(黒柳明君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(黒柳明君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時二十一分散会