法務委員会 第5号
- 発言数
- 235 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1990/05/29
会議録
○小澤委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木喜久子君。
○鈴木(喜)委員 鈴木からお伺いいたします。 商法については、最近、昭和四十九年と五十六年の大きな改正があったわけですけれども、今回の改正というのは、この商法の改正の流れの中に位置づけるとするとどういうところに位置づけられることになりますのでしょうか。
○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。 御指摘のように、商法につきましては昭和四十九年に大改正が行われたわけでございます。この改正は、主として株式会社の監査制度の充実強化を図るという点に主眼がございまして、このときに公認会計士による一種の強制的な監査というのが大会社について導入されたということになったわけでございます。その際に、衆議院の法務委員会あるいは参議院の法務委員会におきまして、会社法を全面的に見直しをする必要があるのではないか、大会社については株主総会制度とかあるいは株式制度、あるいは小規模会社についてはそれにふさわしい法制の整備というようなことをすべきであるというような附帯決議がございまして、この附帯決議に基づきまして、法務省におきましては、直ちに法制審議会におきまして商法の改正作業に着手したわけでございます。この結果、昭和五十六年の大改正があるわけでございますが、これは主として大会社を対象といたしまして、株主総会制度の改善、株主総会の活性化あるいは総会荒らしに対する対応策等の制度の導入、あるいは株式制度を改善する、さらには四十九年に導入されました公認会計士、監査法人による会計監査人監査の拡大を図るというような、主として大会社向けの法改正がされたわけでございます。 そこで、今度は昭和五十七年以来残された小規模会社法制についての改正問題を検討を始めたわけでございまして、その後、小規模会社立法に関する問題点を公表し、各界の意見を問うなどの手続を経まして今回の改正案になったわけでございます。小規模会社についての法制を整備、合理化するということとともに、会社法長年の懸案でありました最低資本金制度を導入する等、主として 中小規模会社を対象とする法改正になっておるということが言えようかと思うわけでございます。
○鈴木(喜)委員 その小規模会社のことということで、最低資本金制度新設まではわかるのですけれども、この意図の中には会社債権者の保護という見地からの改正という部分はどの程度の比重を占めているものなんでしょうか。ちょっとお言葉がなかったものですから、そういう点は勘案されていないのでしょうか。
○清水(湛)政府委員 会社法制の整備ということは、さらにそれを具体的に細かく分析して申しますと、会社を構成する株主の保護の問題と、それから会社と取引関係に立つ会社債権者というものがあるわけでございます。この会社債権者の中には、会社と取引をする債権者のほかに、会社の従業員として会社に対して労務を提供し、その対価として報酬を受けるというような、労働者の債権の保護という問題も当然含まれるわけでございます。そういうような観点から、会社債権者を保護するということが実は会社法の一つの基本的な重要問題になっておるということでございます。最低資本金制度の導入も、言うならば、そういう会社債権者の保護の問題であり、その他設立手続における現物出資等の手続の合理化の問題も、これは手続を合理化するとともに、同時に資本充実の原則というものを貫き通すことができるような形で配慮をして、会社の資産を維持させて会社債権者の保護を図る、こういうような観点から種々の配慮がされておるというふうに私どもは考えておるところでございます。
○鈴木(喜)委員 わかりました。 それでは、現在の株式会社の実態についてちょっと伺うのですけれども、現在株式会社というのは我が国では約百三十万社ぐらいある、そして有限会社も同じぐらい、百四十万社ぐらいのものがあるというふうに聞いています。その中でも、確かに資本金が一千万円以下の株式会社というものの割合というのは全体の六〇ないし七〇%ぐらいを占めているというふうに聞いております。ところが、例えばドイツの場合なんかにいきますと、それが株式会社というのは二千社ぐらいしかないということですし、有限会社も三十万ぐらいだ。なぜ我が国だけがこんなに株式会社それから会社というものが多くなっているのか、その理由について私としても非常に考えるところがあるわけですけれども、きっと会社ということで我が国では何かいろいろなメリットがあるからこれだけのものができてしまったのじゃないかというふうに思うわけです。 まず、会社法上で株式会社とか有限会社そして合資会社、合名会社というものについて、どういうふうな違いが株式会社、有限会社というものにはあるのか、その特質を簡単にお聞かせいただければと思います。
○清水(湛)政府委員 お尋ねのように、ドイツの場合には株式会社の数が非常に少ないというふうに言われております。二千数百社、日本が百二十六万社、約百三十万社という数字と比較しますと非常に少ないということが言えようかと思います。しかしながら、一方では有限会社が三十万社程度あるとか、あるいは合資会社が非常に多くて、合資会社の無限責任社員に日本では法人がなることはできませんけれども、ドイツでは法人がなることができるということがございまして、有限会社と合資会社がミックスした有限合資会社とか、そういうようなものがたくさんありまして、自主的に会社活動をしておるということでございます。しかし、そうは申しましても、数的にかなり彼我の差があるのではないかというふうに私どもも見ているところでございます。 ところで、そういうようなことの理由はどこにあるかということにつきましては、いろいろ問題があるわけでございますけれども、我が国国法上、株式会社、有限会社がどういうふうに扱われておるかということにつきましては、株式会社、有限会社、いずれもこれは有限責任の会社であるということで、会社債権者に対しては会社財産のみが責任財産となるということになっているわけでございます。 これに対しまして、例えば合名会社、合資会社というのがあるわけでございますが、これらは会社として独立の法人格を有する、取引の主体となるという点においては株式会社、有限会社と全く同じでございますけれども、例えば合名会社については、合名会社の社員は個人としてすべて無限責任を負うというようなことになっておりますし、合資会社につきましては、有限責任社員と無限責任社員がございまして、無限責任社員につきましては、個人的にすべて無限責任を負うということになっているわけでございます。 そういうような法制上の違いがある上、さらに株式会社、有限会社につきましては、株式会社というのは多数の出資者から資本を募るというようなことで、大規模な経済活動に向いておるというようなことが言われております。しかしながら、有限会社は、有限責任という面では株式会社と共通でございますけれども、例えば社員の数が五十人を超えることができないとか、あるいは社員の地位を他に譲渡するには社員総会の承認が必要であるというような、非常に少人数の人たちが会社を経営するということに適した法制であるというようなことが言われているわけでございます。 いずれにいたしましても、株式会社、有限会社、あるいは合名会社、合資会社というような法人形態が我が国国法上認められているわけでございまして、それぞれの会社の特質に応じてそれが経済取引、経済活動の面で私どもは利用されておるのではないかというふうに考えるわけでございます。 ただ、これが非常に数が多いということは、いろんな法制度上の問題もありますとともに、我が国の経済活動の一種の特質面がこういうところにもあらわれておるのではないかというような気がいたしておるわけでございます。
○鈴木(喜)委員 こういう会社がそれぞれの中で、株式会社、有限会社というのが非常に多いということについては、税制にもいろいろな問題があるんじゃないか、そこのあたりに原因があるんじゃないかというふうに私は思うので、大蔵省にお尋ねしたいと思いますけれども、この場合、会社ということで事業を営む場合と個人ということで営む場合とでは、税制上に違いがあるのでしょうか。 また、有限会社と株式会社ということで企業を営んでいくという場合とでは、税制上の違いというものがあるのでしょうか。
○大武説明員 お答えさせていただきます。 まず、後者の有限会社と株式会社の取り扱いでございますが、これにつきましては基本的には税法上の取り扱いの差はございません。ただ、あえて申し上げますと、登録免許税の会社の設立登記の最低税額が、株式会社は十五万円であるのに対して、有限会社につきましては六万円ということで、会社の規模の大きさを考慮して最低税額に差を設けているということでございます。 あと、個人と法人の違いにつきましては、先生御存じのとおり、いわば所得税法と法人税法の適用が違っておる、あるいは事業承継に関しまして種々取り扱いの差があるということは事実でございます。
○鈴木(喜)委員 この点については税金の問題なのでここで細かく取り上げることはないと思いますけれども、やはり法人に課せられる税金と個人に課せられる税金、そしてそういったひずみ、それから相続税に関する不平等、そういった不公正、不平等感というものが会社の膨大な設立ということにつながってきているということは否めないことだと思います。これから先、税制の改革ということについて真剣に取り組んでいただきたいというふうに思います。これを改善しませんと、ただ単に現象的に会社の規模云々ということを商法上の問題として解決しようと思っても、できる問題ではないというふうに思います。 そしてもう一つ、個人と株式会社、有限会社ということの差の問題で、金融上の問題ですが、金融でも何かどの会社であれば有利な金融が受けら れるというような差があるのでしょうか。
○大久保説明員 お答え申し上げます。 お尋ねの金融機関から借り入れをするときに、株式会社や有限会社あるいは個人企業といった経営形態の違いによって有利か不利かということがあるかどうかという点でございますが、金融機関の融資条件は、御案内のように、基本的に金融機関が状況に応じまして自主的に決めておるという性格のものでございます。一般的に金融機関はその融資に当たりまして、資金需要者の返済能力等信用の状況によって判断をしておるということでございまして、経営形態の違いによりまして借り入れに有利や不利が生じるといったことはないものと認識しております。
○鈴木(喜)委員 では、中小企業庁にお尋ねいたしますけれども、商工組合中央金庫とか中小企業金融公庫などの融資について、株式会社、有限会社でもってやはり差があるものでございましょうか。
○藤原説明員 お答え申し上げます。 中小企業施策の体系で、商工中金あるいは中小企業金融公庫等を通じまして融資を行っているわけでございますが、あくまでも個人企業を含めました中小企業を対象にしてございまして、今おっしゃられました株式会社と有限会社でその取り扱いに差別はございません。
○鈴木(喜)委員 それでは、もう一度中小企業庁にお尋ねしたいのですけれども、株式会社と有限会社というのの違いというものをどのように認識しておられますでしょうか。
○藤原説明員 お答え申し上げます。 今の点を中小企業がどのように考えているかということについて、公的に調査取りまとめというものはございませんけれども、我々が中小企業団体なり中小企業者からヒアリングなどを行った結果を総合的に整理いたしますと、おおむね次のような考え方であるというふうに理解しております。 まず第一に、株式会社について言いますと、一般的に言えば、有限会社に比較して社会的に上位のものとして認識されておりまして、株式会社を選択した理由といたしましても、最も多いのが対外的信用を高めるため、次に経営の近代化、合理化を図るため、その次に法人成りということで、税制上個人企業より有利なためというようなことが多いと認識しております。 これに対しまして有限会社を選択した理由といたしましては、これは若干株式会社と異なるわけでございますが、まず第一に来るのが税制上個人企業より有利であるため、第二には同族または少人数で運営するには有限会社が適当であるためということなり、あるいは設立手続、機構が複雑でないためなど、有限会社が簡素な会社制度であるということに着目したものが多いと思います。次に、当然のことながら対外的信用を高めるためというのが並んでいますが、やはり有限会社の特徴を認識して設立されている。 それから、さっきございましたように、税制上、金融上の取り扱いには基本的には差はないということでございます。実際、法人成りする場合は、通常税理士なり金融機関と相談した上で、それぞれ個々の事業者が経営戦略を踏まえて自主的に選択されているというふうに理解しておりますけれども、おおむね申し上げますと、将来企業の拡大発展を図ろうとする企業は当初から株式会社を選択するという傾向が強い。これは現行法におきまして、有限会社から株式会社への組織変更というのは手続がそう簡単ではないという面もございます、今回改正があったかと思いますけれども。一方、有限会社も簡素、閉鎖的な会社制度として、最近においては見直されてきているというふうにも聞いてございます。 以上でございます。
○鈴木(喜)委員 ちょっと伺いますけれども、有限会社が見直されてきているというのは、数字的なもので、ここのところで設立が多くなっているとかいうことがあるのでしょうか。
○藤原説明員 お答え申し上げます。 最近の新設会社の状況を申し上げますと、六十年から六十二年、株式会社、大体四万から五万、それから有限会社、五万から六万ということでございましたけれども、六十三年、平成元年ということになりますと、株式会社は六十三年、大体五・四万、元年、六・三万ということでございますが、一方、有限会社はそれぞれ八・七万、十・四万というような状況になってございます。
○鈴木(喜)委員 こういう株式会社と有限会社というのが、我が方の法制上認められている物的会社の中で重要な役割を務めているわけですけれども、この二つの会社というものの関係を整理していって、その中で小規模会社というものはどういうふうな位置づけをするか、商法の体系上どのような形で、また実際上の会社の運営という実務上の問題も、この整理ということが大変重要なことじゃないかというふうに思っているわけです。今お聞きしたところでは、株式会社と有限会社というものについて、金融上、税制上ある程度の社会的な差異はあるにしても、ほとんどその差異がないということであるならば、株式会社と有限会社というものについては、二つの色分けというか、そういうものをはっきりさせていったらいいと思うのです。株式会社というものについては、冒頭のところでもお話がありました。会社というものの一つのイメージとして、株式会社は多数の出資者から資金を募って、そしてでき上がってみんなで危険も利益も分担しよう、そういう形のものであるわけでございますから、有限会社との差というのはそこのところにもあってもいいのではないかというふうに考えているわけです。ですから、多数の出資者という面から考えていきますと、会社らしい会社として株式会社はこれからも存続していくということになると思います。いわゆる大規模の会社がイメージの中にあるわけですけれども、今回の商法の改正の中では、こうした会社らしい会社というものの色分けということを考えておられるかどうか、ちょっと疑問の点もありますので、一応最も会社らしい会社というもののイメージを法務省はどのように考えておられるか、その点もう一度お聞きしたいと思います。
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。 先生御指摘のように、株式会社と有限会社についての法制のあり方というのは非常に重要な問題でございまして、いろいろな議論の中にも株式会社と有限会社、同じくこれが物的有限責任会社でございますので、法制度の簡素化のためにも株式会社と有限会社を一本にしたらどうかというような御意見も実はあるわけでございます。これに対しまして、しかしそうはいっても株式会社と有限会社というのはそれぞれ特色が、先生御指摘のとおりある。一方は、大規模、多数の人から資本を集めて大規模の経営をするというのに向いているし、有限会社は小規模な人数で経営をするという会社に向いておる、こういうようなことがあって、現実に存在する会社の数で比較いたしますと、有限会社の方が株式会社に比べて多いじゃないかというような社会的な実態もある。そういうような実態を踏まえて、株式会社は株式会社としてふさわしい法制を、有限会社はより簡素で、より合理的でというような形での法制を考えたらどうかというような意見もあるわけでございます。 法制審議会におきましては、そういうような議論を踏まえましていろいろな議論をしたわけでございますが、株式会社らしい株式会社あるいは有限会社らしい有限会社というものを念頭に置いて両者を考えるのか、あるいは大中小株式会社というような形で考えるのか、その議論はしばらくおきまして、当面今回の改正案におきましてはその問題はこれからの検討課題として、いずれにいたしましても、物的有限責任会社であるから最低資本金制度は導入せざるを得ないということになったわけでございます。 そこで、じゃ株式会社らしい株式会社というものをどう考えるのかということになりますと、実はこれは資本金何百億という会社もある反面、資本金一億円未満の会社が圧倒的に数としては多い、つまり有限会社とほとんど違わないような株 式会社もあるというような実情にあるわけでございます。きちんとした株主総会を開き、取締役会を法律の定めるとおり定期的に開き、きちんと議事録を設け、計算書類をきちんと整え、これを会社に備え置きというような商法の想定する株式会社というものをきちんと守っておる株式会社というのは、私どもそれほど多くはないのではないかというふうに実は考えているわけでございます。 今回最低資本金を一千万というふうにいたしましたけれども、じゃ一千万を超える株式会社がすべて株式会社らしい株式会社であるかというふうに問われますと、これは株式会社らしい株式会社というものをどう考えるかということにもよりますけれども、いろいろな御意見があるところではあろうかというふうに思います。しかし、いずれにいたしましても、有限責任ということからくる会社債権者の保護という観点から、今回ぎりぎりの線として株式会社については一千万、有限会社については三百万という最低資本金を導入するということにいたしたわけでございます。株式会社らしい株式会社のイメージを答えろと言われますと、ちょっと私も、余りにも大から小までございまして答えにくい面がございますので、この程度にさせていただきたいと思います。
○鈴木(喜)委員 株式会社らしい株式会社というもののイメージがまだ定まっていないような形で今回の商法の改正という中で、この小規模会社というものについての債権者ないし株主保護、従業員保護ということができるのかということになると、私は大変疑問に感ずるわけです。法務省のお立場として商法の改正にこの点で取り組むということであるならば、やはりどうしてもその理念、会社のあるべき姿というものに向かった形で法体系というものをつくっていかなければいけないのじゃないかというふうに思います。しかし、今のお話の中でも、商法の規定をすべて守り、その中で大勢の人の資本によって動く、その企業の形というものが真の意味での株式会社らしい株式会社のイメージであるということは言外にわかりますけれども、これはやはりもう少し明確な形で考えていっていただきたいと思うわけです。そして、このような会社らしい会社というものについては厳格ないろいろな規定というものがあってもいいと思うのですが、私は、有限会社というものについては、もう少し規制というものは緩和して、ここで三百万円というような最低資本金の制度をする必要もないのではないか、現行のままでもいいのではないかというふうに思っているわけですけれども、こういう資本金というものは設けずに、自由な形での運営というものを許す、しかしそのかわりに取締役の個人責任というようなもので債権者を担保していく、そのような形の方が株式会社と有限会社というものの形もすっきりといくのではないかというふうに思っているのですが、この点についてどのようにお考えかということをまずお聞きしたい。 それからもう一つ、現行法上有限会社については取締役の任期がない。これは、任期の定めがないということは、私が今申し上げましたように、これからもし取締役の個人責任もある程度認めていこうじゃないかというようなことになりますと、これが無限の任期ということはあり得ないし、やはり有限責任でもある以上、取締役の任期というものについても考えていかなければいけないのじゃないかと思うのですが、この二点、お考えを承りたいと思います。
○清水(湛)政府委員 株式会社については、きちっと最低資本金制度を定めて、手続も厳格にして、きちんとした会社運営ができるようなものにしなさい、それから有限会社については、簡素化して最低資本金の制度を設けないというような御意見でございますけれども、株式会社に比べまして有限会社は簡素な手続でその規制がされておるということでございましても、合名、合資に比べますと、これはやはり株式会社に近い物的有限責任会社でございます。取締役の個人責任と申しましても、合名会社、合資会社ではまさに株式会社、有限会社の取締役会に該当する無限責任社員というのが個人的に無限責任を負うという形になっているのでございますけれども、その点でもやはり有限会社は、有限責任という点において取締役の個人責任を一般化して考えるということはなかなか困難ではないかと思うわけでございます。 そういうような観点から、有限会社につきましては、委員御承知のとおり、実は既に昭和十三年の制定当時に有限会社につきましては最低資本金が一万円というふうに定められたわけでございまして、これは今日の貨幣価値で換算いたしますと一千五百万から二千万というような金額になるのではないかというふうに私ども考えております。昭和二十六年に当時の貨幣価値等を勘案いたしましてこれが十万円に引き上げられたままで現在に至っておるというのが有限会社でございます。そういうような、有限会社が物的な有限責任の会社である、会社債権者の方から見ますと、有限会社の財産だけが基本的には債権の担保であるというようなことを考えますと、やはり株式会社とは違いますけれども、有限会社につきましても最低資本金制度はもう導入せざるを得ないというふうに考えるところでございます。 それから、第二番目の質問でございますけれども、確かに有限会社につきましては取締役の任期制がございません。これは恐らく、有限会社は小人数の人たちによってつくられる会社であるから、特に取締役を解任する等の行為がない限り、そのまま取締役を続けさせても差し支えないというような考え方があったのではないかというような気がいたすわけでございますけれども、この点につきましては、委員御指摘のように、法制審議会におきましても取締役、監査役についてはやはり任期を設けるべきである、有限会社と申しましても、株式会社に比べてかなり規模の大きい会社も現実に存在するわけでございまして、そういうものについてやはり任期を設けて取締役なり監査役の責任というものをきちんとした形で明らかにすべきだというような議論があったわけでございます。この点につきましては、しかしながら今回の改正では見送られましたけれども、先ほど申し上げましたとおり、株式会社法、有限会社法あわせてこの両者の関係をどうするかというような抜本的な見直しというものがいずれ必要になるというふうに私ども実は考えているわけでございまして、その際には役員の任期制を含めてできるだけ速やかな改正を図りたいというふうに考えているところでございます。
○鈴木(喜)委員 今のお答えのとおり、ぜひともこの点、取締役の任期というものについては、まず有限会社については考えていただきたいと思います。 それから、有限会社について三百万円の最低資本金というのは、債権者保護の見地からもどうしても必要だとおっしゃいますけれども、これは後でも議論するところではございますけれども、三百万円の最低資本金でどれだけ会社債権者の保護になるか、従業員の保護にすらならないのではないかというふうに思われます。この点は、そういうことの見地から考えた最低資本金というものであれば、あってもなくても結局三百万円くらいのことで何か言うということにはならないのではないかというふうに考えられるのですが、この点はまた後ほど御質問いたします。 今回の改正の法案ということで考えますと、六十一年の五月に法務省民事局参事官室というところから公表されました「商法・有限会社法改正試案」というものがありまして、このときの改正試案と今回の改正案というのを比べてみた場合には、くしの歯が抜け落ちてしまっているといいますか、何のためにやったのかわからなくなるほど実にいろいろな部分が抜け落ちているわけでございます。 改正試案の中で盛り込まれていた改正事項として、例えば計算書類の登記所における公開の制度とか会計調査人による調査の制度、それから取締役の責任の強化、どれをとってもおっしゃるような会社債権者の保護という見地から見た場合には重要な部分であると思うのです。こういうものが 全くない。法制審議会というところはこういうものを簡単に審議されるところではなくて、本当に長い年月かけて慎重な御議論の末に出てきたものがこうした試案だと思うのですが、これがなくなって、熱心な討議を続けてこられたものがぱっとそこで抜け落ちてしまうというのは一体どういうことなのであろうか。今回こういった問題に手をつけないで改正するということでは、改正の意味がほとんどなくなってしまうのではないかと思われるのですが、この点はいかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、今回の商法改正案を作成する過程におきまして、法制審議会で発表いたしました試案と食い違う点もございますし、さらにその試案を踏まえまして法制審議会が最終答申をした法制審議会の答申と食い違う面もございます。 試案との食い違いということになりますと、これは法制審議会の審議の過程でいろいろな議論が出たものをいわば整理してまとめて、これを対外的に公表して御意見を伺うという趣旨のものでございますので、試案を公表した結果、それに対して各界から出てきた意見に基づきまして、法制審議会としてもそういう試案は適当ではないということで当面の問題から落とすというようなことも当然あるわけでございます。したがいまして、問題となりますのは、そういう試案に対する意見を踏まえて法制審議会で最終的に答申をしたその答申と今回の改正案の食い違い、こういうことになりますと、法制審議会の答申を法務省当局がいわば無視したような形になるわけでございまして、御指摘のようにいろいろな問題もあろうかと思うわけでございます。 この中で、御指摘の計算書額の登記所における公開、この制度は、法制審議会の答申にはございましたけれども、今回の改正案では盛り込まれておりません。計算書類の登記所における公開というのは、債権者保護等のためにも非常に重要な制度であってぜひとも実現すべき制度であるし、ヨーロッパ諸国の会社法についてはほとんどこのような制度を採用しておるということでもございますので、私どもぜひ実現したいと考えているところでございます。しかしながら、現実にこの計算書類を登記所に提出してこれを公開しなければならないのがいわゆる中小企業である、こういうことになるわけでございまして、中小企業の現在のあり方がいいか悪いかということは別といたしまして、現在の実態から考えますと、中小企業に新たな負担を課することになるというようなこともございまして、この点についての理解を深めることがなかなかできなかったというのが実情でございます。私どもとしては、こういう中小企業が具体的に行動しなければならないような法制度を導入するについては、これを守っていただく中小企業等の関係者が十分理解していただいて、そういう理解を深めて法改正をしていきませんと、これがまた守られないことになってしまうというようなこともございますので、今回はこの改正を見送ったわけでございますけれども、今後とも関係方面の理解ができるだけ深められるように努力いたしまして、速やかにこの実現を図りたいと考えております。 それから、二番目に御指摘の会計調査人による調査の制度でございますけれども、これは実は法制審議会の答申にも盛り込まれていない問題でございます。大規模会社については、冒頭申し上げましたように、公認会計士、監査法人による会計監査の制度が入っておるわけでございますけれども、中会社あるいは小会社については、そういうような会計専門家による監査が義務づけられてはいないというようなことから、会計調査人というような構想が出てまいったわけでございますけれども、公認会計士会あるいは税理士会等からいろいろな御意見が出まして、まだ具体案を策定するには時期尚早であるというようなことから、法制審議会の答申からも見送られたというふうに私ども承知いたしております。 それから三番目に、取締役の責任の強化というような問題も試案の段階では、例えば取締役が第三者に対してあるいは債権者に対して直接責任を負うというようなことをもっと強化すべきであるというような御意見もあったわけでございますけれども、いずれまた商法の見直し、今回中小会社を対象といたしましたけれども、会社の運営管理機構としての取締役あるいは取締役会、監査役制度等を改めて再検討をするというような機会にこの点について取りまとめたいというふうに考えて、この点も法制審議会の今回の答申からは見送られておるという結果になっておるところでございます。
○鈴木(喜)委員 会計調査人による調査の制度、それから取締役責任の強化というものもどうしても重要な問題でございます。今ここで答申から削られているからやらなくてもいいということではもちろんございませんので、これから後々十分に考えていただきたいし、私どもの方でもいろいろとこの点についてはどのようにすべきかということを具体的に今考えている最中でございます。 まず、最初にありました計算書類の登記所における公開ですけれども、これは確かに答申にもあったものを本案のときに削り取っている。これは大変重要なことじゃないかと思います。いい悪いは別にしましてというふうに今おっしゃいましたけれども、いい悪いを別にするのではなくて、ここで考えられるのは、要するにこういう形であってはいけない、あるべき姿はこうであるというふうに改正するのが法の改正という、正しく改めるということはそういうことでございまして、現状を認識するのが法制度のあり方ではないと思います。ただ、いたずらにやるとその場合に摩擦が大き過ぎて困るというようなお話がちらとありましたけれども、それにしましても何もない、何も削り取られてしまうということでは、この点も大変おかしなことだと思います。現状認識のようなことではなくて、この際、ここの部分だけでも復活させるとか、そういうようなお気持ちというものは、お気持ちの中にはないのでしょうか。
○清水(湛)政府委員 計算書類の登記所における公開の問題については、先ほども申し上げましたとおり、法制審議会の答申にありながら今回の改正案に盛り込まれていないという結果になっているわけでございます。 会社の計算の公開というのは、会社に有限責任が認められておるということのいわば前提でございまして、私どもは極めて重要な制度であるというふうに思っているわけでございます。そういうようなことから、株式会社につきましては、現在、計算の一般への公開の制度といたしまして決算公告という制度があるわけでございまして、定時総会の承認後遅滞なく貸借対照表またはその要旨を官報または新聞に公告すべきである、こういうことに実はなっているわけでございます。しかしながら、現実の問題としては、このようにきちんと決算公告を官報なり日刊新聞に公告をしているという会社は、株式会社百二十六万社のうちのごく一部の会社に限られておるというのが実情でございます。 そういうような実情を踏まえまして、また、中小会社が一々官報なり日刊新聞に公告するといっても、関係者もそれほどいるわけではないから、そういうような制度を維持するよりか、例えばこの官報、日刊新聞の公告にかえて登記所にそういう関係書類を出すというような形で公開をするということがいいのではないかというふうに私ども考えまして、こういうような答申をいただいたわけでございます。 しかしながら、現状の認識をどうするかということも、御指摘のようにそれ自体問題だと思いますけれども、現実の問題としては、今までそういう何もしなかった中小会社にとりまして、書類を登記所に出してだれでも見れるようにするということが、現状を前提としますと非常に大きな改革でございまして、そういうようなことになりますと、やはり直接そういう義務を負う中小企業の関係者にその趣旨を十分御理解をしていただいて、その実行に協力していただくということがどうしても必要になってくる。そういうことのために は、答申をいただいて私どもそういうような関係方面との話し合いで十分その理解を深めるように努力したわけでございますけれども、今なおまだ不十分であるという認識に到達いたしまして、今回は見送らせていただきました。 しかしながら、法制審議会の答申に盛り込まれている事項でございますし、冒頭申し上げましたように、有限責任会社であることの前提として計算の公開というのは極めて重要な問題だと思っておりますので、できるだけ速やかに適切な機会をとらえまして、その制度の実現に努力してまいりたい、そのために関係方面の理解が得られるようさらにそのための努力もしてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
○鈴木(喜)委員 今のお話を聞きますと、まず審議会の答申というものを重視すると言いながら、この場合には削られてしまった。中身についても大変重要で立派であると言いながら削られてしまった。一体だれがどのような形で法務省がそのようにお考えだったものを法務省を説得されたのですか。大体、答申で上がってきたものについて、法務省の方もこれでいいということで原案を考えられるわけですけれども、これに関して、いや、これは悪いのだ、こういう現状があるのだからまだ我々は納得してないとおっしゃったのかどうか、一体だれがどのような形でこの法務省のお考えというものに水を差すような説得をされたわけなのでしょうか。
○清水(湛)政府委員 法務省として法案を作成して国会の御審議を仰ぐという最終的な判断は、これは法務省みずからがするわけでございます。私どもそういう法案を出すに当たりましては、関係方面、関係省庁の御意見も伺うということは当然いたすわけでございますけれども、そういう意見を踏まえて最終的に法務省としての判断をするということでございまして、ある人に言われたからやむを得ずそういうふうにしたというようなことではございません。現時点における法務省としての判断としては、やはりこういうような制度を強行することについては、まだ問題がある、時期尚早である、もう少し時期を待って、関係方面の理解を得ながら、現実に登記所に提出するという義務を履行しなければならない中小企業の関係者が納得する、そういうような機会を十分に設けてこの制度の導入を図った方が将来とも円滑に運営されることになるのではないかというふうに、最終的に法務省としてそういう判断に到達したところでございます。
○鈴木(喜)委員 中小企業の本当に納得する、そしてその中で最も円滑ないい方法というものを考えていただくことは大変いいと思うのです。ただ、法制審議会で出た答申というものについて余りにも安易にそれを削り取るようなことは、やはり審議会制度というものについてそれを非常にないがしろにするものだというふうに思います。また、この問題に関して、これから先もずっと御検討いただくということですので、この点、真剣な御議論をこれから先もお願いしたいと思います。 次に、最低資本金の制度についてもちょっと伺うのですが、もともとこれは二千万円が株式会社、そして五百万円が有限会社というふうな最低資本金制度であったものが、今回これが千万円と三百万円という形になったというふうなことでございますけれども、この点はどういうことでございましょうか。
○清水(湛)政府委員 最低資本金につきましては、先ほどちょっと申し上げましたけれども、昭和十三年当時において有限会社の最低資本金が一万円とされていた、現在の価額にいたしますと一千五百万円以上ということでございますが、株式会社につきましては、これを上回る額、例えば一億円だとか五千万円だとか三千万円というような意見がこの法制審議会における審議の過程では各方面から寄せられたわけでございます。法制審議会といたしましては、これは各界の権威が集まっておられる審議会でございますけれども、こういうような各方面の意見を聞きまして、この中で適当な金額を選ぶということにならざるを得なかったわけでございますけれども、そういうような各方面の意見を踏まえた上で、しかも現実の株式会社なり有限会社の実態というものを考えますと、まあ株式会社については二千万円程度、これから新しく会社をつくるという場合には二千万、有限会社については五百万円程度が最も妥当ではないか。そうでなければならないというよりか、やはり現状を踏まえてそれが最も妥当ではないかということになったというように私どもは承知いたしております。 ただしかし、現実には、先ほど来問題になっておりますように、株式会社については百二十六万社、有限会社については約百四十万社という会社があるわけでございまして、そういうような会社に直ちに二千万円、五百万円というような数字を当てはめますと、またいろいろ問題が起こるというようなこともございまして、経過的に、既存会社については一千万円以上でよろしい、有限会社については三百万円以上でよろしいというような、いわば二つの、新設会社と既存会社という二つの類型をつくった上で答申がされたわけでございます。しかしながら、大多数を占める既存会社については一千万円でいいのならば、これから数としては少ないはずの新設会社についてなぜ二千万円を要求するのかというような議論も一部にはあったわけでございまして、これも答申を受けた後、私ども法案を作成する過程でいろいろな方の意見を聞いてまいりますうち、新設会社、既存会社を区別しないで両者とも一千万円、有限会社については三百万円とするのがやはり適当ではないかということで、こういう金額になったわけでございます。 もともと基本的に、先ほど来議論になりました株式会社らしい株式会社というようなことを申しますと、本当は資本金が一億だとか五千万だとかいう数字がたやすく口から出てまいるわけでございますけれども、しかしながら現実の株式会社の実情、有限会社の実情というものを考えますと、やはり当面の金額といたしましては、一千万円、三百万円が結局最も適当であるというふうに私ども最終的な結論に到達した次第でございます。
○鈴木(喜)委員 この程度の金額、千万円、二千万円も同じかもしれませんが、債権者保護の見地から見ますと、先ほども申し上げましたけれども、有限会社の三百万、そして株式会社の一千万ということでは、会社債権者の保護という見地からではほとんど意味がない。ここに決めるような意義もない。まして無理をさせる意義もないというふうに、会社側に無理させる意義もないのではないかというふうに思うのですが、この点はいかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 最低資本金と申しますか、あるいは資本金というのはいろいろな機能があるわけでございますけれども、非常に端的に申しますと、会社の総資産から総負債を差し引いた純資産、純資産というのは、これは金銭の形であってもよろしいでしょうし、原材料の形であってもよろしいでしょうし、あるいは受取手形の形であってもよろしいでしょうし、とにかくいろいろな形で存在し得るわけでございますけれども、そういう純資産というものが最低限、最低資本金の金額に見合うものは会社に存在しなければならない、こういう機能を資本金というのは持っているのだろうと思います。つまり、有限会社の三百万円というのは、会社の全財産から借金を差し引いた残りの純粋な資産が三百万円は常時会社になければならないという性格を持つものでございます。こういう金額、今の経済取引の実態というものから申しますと、三百万円なんというのはもう大した金額ではないというふうにもちろん私どもも考えられる場合があるわけでございますけれども、しかしそれでもやはり純資産として三百万円が常時保持されておるということになりますと、資本金三百万円程度の有限会社が取引をするという場合における取引の規模というものにもこれはもちろん関係することでございますけれども、やはり何も資本金としての制限がないという場合よりかはるかに第三者にとって債権者保護という面に資す るものではないかというふうに思われるわけでございます。少なくともその三百万円という最低資本金を要求することによって、もう一つの問題である会社制度の乱用を防止するという機能も期待し得るのではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。 こういう小さな会社でも大きな会社でも、倒産いたしますと、これはもうほとんど会社に財産がないわけですから、最低資本金制度を決めてもほとんど意味がないというような議論もございます。もちろんそういう場合も最低資本金というものが無意味になってしまう場合もございますけれども、一般的に、標準的に考えますと、不十分だという御指摘はもちろん私ども十分に理解できるわけでございますけれども、三百万円あるいは一千万円はそれなりの役割、機能と意味を持つというふうに考えていることでございます。
○鈴木(喜)委員 このことに関しまして中小企業庁の方では、この改正案についての最低資本金の額ということについてどのようにお考えでしょうか。
○藤原説明員 お答え申し上げます。 中小企業庁といたしましては、今回の商法等の改正につきまして、その検討段階から我が国経済の活力の源泉たる中小企業の活力をそぐことのないよう、中小企業の実態を十分踏まえた内容とするよう要請してまいったところでございます。 今回の最低資本金の導入、引き上げにつきましても、一方では債権者保護の観点からと先ほど法務省からございましたように、有限責任の基礎として株式会社または有限会社に、債権者のためにその債権の担保となるべき最低限の財産の提供を求めるという意義は認めつつも、しかし債権者保護の立場を重視して余りに高額の最低資本金を要求した場合には、物的会社の形で企業活動を行うことを阻害したり、結果、経済の活力をそぐおそれがあると考えまして、このため当庁といたしましては、中小企業の実態等を十分勘案した金額等になるように要請してきたところでございます。その結果、今回の株式会社一千万円、有限会社三百万円というのは、その債権者保護と企業活動の活性化、活発化の要請を調和した額として設けられたものであるというふうに理解してございます。 なお、中小企業庁の立場といたしましては、確かに既存の会社、相当数ございます。これについて今回の最低資本金額を下回る資本金の会社にとって増資または組織変更という負担を強いることになるのは事実でございまして、ここら辺も我々慎重に考えたわけでございますけれども、今回の改正案におきましては、まず猶予期間につきまして、既存会社に対する最低資本金の適用については十分な、猶予期間五年に救済措置三年間というのを加えまして実質八年というのが認められておりますし、また最低資本金の額につきましても、従来の主要中小企業団体等の意見を踏まえて設定されていることから、今回の改正案の内容については大数の中小企業に十分理解され得るものと考えておりますし、我々もそのように努力してまいりたいと思っております。
○鈴木(喜)委員 企業の活力というものをそいでしまう、多額の資本金を要求するということは活力をそぐことになるというふうなお話ですけれども、そもそも会社というものは大勢の人が集まったものでありますし、会社自身の問題というよりは、その出資者を募るというのが本来の資本金の制度というもの、たくさん上げたというのは、出資者を大勢呼んできて、そしてその人たちにそれだけのものを出してもらって、そしてみんなに企業の利益も分け与えましょうということでやるものでございますから、会社自体の損失ということに本来なるものではないということを考えていかなければならないと思うのです。そうなりますと、企業の活力をそぐかそがないかということについて、一概にこの資本金を上げたからということでそぐことになるというような御議論はちょっと納得がいかないところでございますけれども、時間の関係がありますので、この次に進みたいと思います。 こういうことで、会社というものについてはそもそもが物的会社であり、そしていろいろな出資者の集まりということからでき上がっているものだということをちょっと忘れたような形で、何か資本金を上げるとすぐに会社が損をする、そして活力がなくなるというような形の発想をしていきますと、その後のところで出てきますように、二千万円が一千万円に、または五百万が三百万にというような形で、ただ単にそのお金を減らせばそれで済むかというような問題につながってくるような気がいたします。この点ももう一度物的会社というものについての性格を根本的に考えていただいて、その上での改革というものをお考えいただきたい。今回の改正の中でもその点非常に混同している点があるのではないかというふうに私は考えています。 今回の法改正のまず第一番目のところにも、株式会社の設立については発起人の員数の下限というものは制限しない、一人でも結構だというふうになっております。これも、要するに本来は会社というものは大勢の人たちが集まってでき上がっているものだ、それが会社、社団というものであるというふうに考えているわけなのに、ここの部分についても一人会社を安易に認めてしまうということは、そこからこの資本金制度の引き上げがすぐに企業の損失、負担というふうな考えにつながっていくのではないか。この点私としては大変不満足な点があるのですけれども、一言だけその点について法務省、お答えいただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。 株式会社にせよ有限会社にせよ、その人数については規模の大小はございますけれども、多数の者から資本を集めて、それを利用して収益を上げて出資者に分配する、こういうような組織であるということは全く御指摘のとおりだと思います。しかるに一方、今回設立に例えば発起人が一人でいいというようなことになると、本来そういう多数人の集まり、つまり社団としての株式会社なり有限会社の性格というものを損なうことになるのではないかというような御意見、ある意味におきましてはまことにごもっともな御意見だというふうに思われるわけでございます。 しかしながら、現実に株式会社につきましては、例えば株主が一人しかいない会社というのは現に存在するわけでございます。大企業が出資していろいろな関連会社をつくるというような場合には、株主が実質的には一人であるというようなところが多数あるというふうに言われているわけでございます。そういうような実態があるわけでございますが、仮に発起人を複数要求するというようなことをいたしましても、そのために実質的な発起人は一人であるのに七人要求されております関係上、名目だけの発起人を利用するとかそういうようなことで発起人の数を潜脱するということも現に行われておりますし、非常に容易に可能であるということがあります。とともに、名目だけの発起人を利用するということから非常に法律関係が無益に混乱をするというような現象も実はあるわけでございます。知らないうちにということを後で言うわけでありますが、恐らく知ってはいたと思うのでありますが、発起人になって、後で第三者あるいは会社債権者から責任を追及されて非常に慌てるというような訴訟なんかも現にあるわけでございます。そういうようなことがございますので、そういう実態に照らして最低資本金制度を導入する反面において、会社を設立する場合に発起人一人だけでも会社としては成立させ得るというふうにいたしたわけでございます。 それが、株式会社が社団であるあるいは有限会社が社団であるということとどういうふうな関係になるのかということになるわけでございますけれども、結局株式会社の場合には株式という形でその持ち分が細分化されておる、有限会社の社員の場合にも持ち分という形でその単位があるわけでございますが、そういうものが他に譲渡されるということによって常に複数の社員になり得ると いう法律的な可能性を持っておるということでありますならば、これはやはり一種の社団としての法的な性格を失うものではないというふうに私どもは考えるわけでございます。そういうような観点からこの発起人の員数を一人であっても差し支えないというふうにしたわけでございまして、本来の株式会社、有限会社が多数人を集めて多数人の資本によって企業活動を活発に行うという面だけを想定しますとややそこから離れるという面もあろうかと思いますけれども、基本的にはやはり社団性を損なうものではないというふうに考えているところでございます。
○鈴木(喜)委員 今のお話でも、何か現状とかそういう面が非常に大きく働く。商法というのが生きた社会活動というものを基本にした法律である以上、現状というものを把握することは絶対必要なことだと思います。理念だけでいかない面が確かにあるというのはわかるのですけれども、やはりこの点も今回の改正の中の大きな論点ではあると思います。またどなたかほかの方も質問されるでしょうから、この程度にいたします。 先ほど、こういう最低資本金制度の導入に伴って、その猶予期間は五年ということにしたという話がちょっとありましたけれども、このほかに、五年の猶予期間内にどうしても増資をするということになったり、組織変更というものをしなければならない場面も、この会社自体には出てくる可能性があるわけですが、そういう場合に、まず増資をするという形を考えてみますと、新株の発行をしてそこで金銭出資をする、または現物の出資をするという形で考える増資がある、また法定準備金、資本準備金というものを資本の中に組み入れる場合もありますし、利益準備金の資本組み入れという場合もあると思います。また、今回の条文の中で見ますと、配当可能利益を資本金に組み入れるという形で増資が図られる可能性が出てきたわけでございますけれども、このそれぞれの中で、税金のかかる分でちょっとわからないところを伺いたいと思います。また、私の言っているところに間違いがあったら御指摘いただきたいのです。 金銭出資の場合には、税金というのは余り考えなくてもよい、そして現物出資の場合ですけれども、これは譲渡所得が出した方の側にかかる、それから資本準備金というのは資本だからかからない、利益準備金の資本組み入れに関しては配当課税として二〇%かかるということですが、ここまでのところで間違いがありますでしょうか。これは大蔵省の方に伺います。
○大武説明員 お答えさせていただきます。 確認いたしますが、先生言われましたとおり、増資をいたします形態としては三つございます。金銭による追加払い込みの方法、それから土地等の資産を現物出資によって行う方法、それから法人が留保しております利益準備金や当期の利益を株主に金銭配当しないで資本金に組み入れるという方法。このうち、まさに課税関係がございますのは、先生も言われましたとおり、その出資を行います個人株主につきまして税関係が生じるのは、現物出資による場合、その土地等に係る譲渡益が課税対象とされる、それからあと、利益準備金あるいは当期の利益を資本金に組み入れた場合には、配当がされたということで課税される、その二点でございます。
○鈴木(喜)委員 それから、今回の配当可能利益の資本組み入れということでも、これは税金の面ではどうなるのでしょうか。
○大武説明員 配当利益につきましても、資本に組み入れる場合には同様に資本金に組み入れるということでございますので、課税になります。
○鈴木(喜)委員 このいずれの方法もなんですけれども、今回このような形で最低資本金の引き上げということを余儀なくされる、無理にこういうことをやらされる会社の側にとって、こうした形での負担というものは——もちろん本来は会社負担ではないわけですね。例えば、利益準備金の資本組み入れというので、配当を課税されるというのは株主の側に課税されるわけですけれども、事実上そこでは会社側がその分も負担する形で配当する形をとることになるんじゃないかと思うのですね。そういう意味での会社の負担。また、同じようなことが配当可能利益の資本組み入れということにも行われるとしますと、そういう負担をこの際かけるということはいかがなものでしょうか。こういうものに関しては、猶予期間内に増資をして法律の規定を守るような形に会社をつくる場合には、どれについても税金をかけないという形は考えておられないでしょうか。
○大武説明員 お答えさせていただきます。 ただいま先生言われました法人に留保しております利益準備金等の資本組み入れというものも、法人の利益を処分するに当たって株主の意思により現金配当にかえて資本金に組み入れるということでございますので、これは実質的には配当として現金で受領して、直ちにその現金を増資のために払い込むということと同様の性格を持っているわけでございまして、これを非課税とするということは現金配当とのバランス上いかがなものだろうかという気がいたします。先生も先ほど申されましたように、商法改正に伴いまして必要となります増資というのは、確かに負担かもしれませんが、逆に言えば、それは経済的な効果を持つものでございまして、その意味では経済的効果は一般的に行われます増資等と変わりはないわけでございまして、今お話がありましたように、そうした減免措置を講ずることにつきましては、課税当局としては問題があるのではないだろうかと思います。 いずれにいたしましても、今回の商法改正に伴います税制上の諸問題につきましては、平成三年度の税制改正作業の中で検討されるべき課題だろうと理解しております。
○鈴木(喜)委員 これでは一体どういうことになるかといいますと、今そういうお答えを大蔵省が出されるということであれば、この問題についてはもともといたし方ない面もあるんじゃないかと思っているところでも反対の声が上がるのは当然ではないかと思います。せっかくここでできない我慢もいろいろ納得しながらやろうとしている中小の企業を考えた場合に、この点についてそういう木で鼻をくくったような返事をされたのでは、これについてはいつまでたっても法務省の言うところの納得や説得ができるものではないと考えますが、大蔵省としてはその点どういうふうにお考えでしょうか。
○大武説明員 ただいまお答えさせていただきましたように、やはり課税当局としましては、課税のバランスということも考えなければならない。ただ一方で、先生が言われましたように、商法改正に伴いどういう措置が必要になるかということ、両方あるんだろうと思います。ただ、私どもとしては、今御答弁申し上げましたとおり、課税の公平の観点からは、今の御提案についてはいかがなものだろうかという観点を持っているということでございます。
○鈴木(喜)委員 私、今まで大変おとなしく、紳士的にいろいろと伺ってきたと思うのですけれども、こういうお答えをいただきますと、ここで俄然旗色がいろいろと変わってまいります。こういう形で言われたのでは、この法案について、法務省と大蔵省の間でその点について非常にそごがおありになるのではないかと思います。 この税制に関して、法務省の方はどのような形で考えておられますでしょうか。
○清水(湛)政府委員 商法改正に伴う問題といたしまして、御指摘のような利益準備金の資本組み入れあるいは配当可能利益の資本組み入れに伴うみなし課税の問題がございます。あるいはまた、後ほど問題にされるかもしれませんが、増資の登記に伴う登録免許税の問題と、二つの問題があると私どもは承知いたしております。このことにつきましては、先ほど大蔵省から御答弁ございましたように、平成三年度税制をどうするかというようなことを御議論になる政府税調の御審議が本年末にあると私ども伺っているわけでございまして、そういう審議の過程で、できるだけそういう 中小企業団体の要望がかなえられますよう、私どもといたしましては、大蔵省にこれまでもお願いをしてまいりましたけれども、お願いしてまいりたいと思っているところでございます。今の段階で大蔵省当局が現在の取り扱いを直ちに変更するというようなお答えをすることは非常に無理かと思うわけでございますけれども、本年末の政府税調に向けて努力してまいりたいと考えているところでございます。
○鈴木(喜)委員 この問題についてまだ法務省と大蔵省の間でお話し合いが続いている、意見の統一ができていない、その点ではいわば生煮えの法律が出ているということで、これ以上私どもが審議する意味がなくなってくるんじゃないかと考えるわけです。 もう一つだけ確認させてください。 先ほど法務省の局長がおっしゃいましたけれども、組織変更や増資の登記の登録免許税についてもやはり大蔵省と法務省の意見は食い違っているのでしょうか。 また、もう一つですが、増資、組織変更について官報へ公告をするという意味での公告費、これも結構ばかにならない金額でございますけれども、こういうものも今回の法改正の部分に関しては免除するというようなことは考えておられないのでしょうか。これはまず大蔵省の方に伺いたいと思います。
○大武説明員 お答えさせていただきます。 ただいま申しましたように、商法改正に伴います各種の措置、組織変更ですとか必要な増資、そういうものによって得られます経済的効果というものは、やはり一般的な増資等と変わりはないという点もございます。したがいまして、御提案のように登録免許税につきましてもそういう観点もあるということでございます。 ただ、いずれにしましても、ただいま法務省からお答えにもなりましたように、こうした問題については今後税制調査会その他を踏まえまして、平成三年度税制改正作業の中で検討される課題だというふうに理解しております。
○鈴木(喜)委員 いずれにせよ、平成三年度の税制改正で考えられる、それだけでもってここでこの法律案をそのとおりにこれから先も審議していくということは、どう考えてもできないことじゃないですか。私はそのように考えますけれども。ここら辺でこれ以上の質問の意義を認めたくないのですけれども。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、立案の過程でも税制の問題が中小企業団体等から私どもの方に出されまして、いろいろ御意見を伺ったわけでございますけれども、結局、今回御審議をお願いしております商法の一部改正法案、これが国会を通過、成立するということになりますと、「政令で定める日から施行する。」ということになっているわけでございまして、私どもは今のところ来年の四月一日というものを考えているわけでございます。 そういたしますと、平成三年度の税制というのは本年末に審議されるということになるわけでございますが、税の理論というのはいろいろあるわけでございますけれども、私どもとしては、今国会でこの商法が成立した暁には、この改正法の中身が円滑に推進されるよう税制の措置を何とか講じていただきたいということで大蔵省当局にこれまでもお願いしてきたところでございます。中小企業団体等からそういう要望がございましたので、そのことをもちろん踏まえながら大蔵省当局にもお願いしてまいりました。大蔵省当局といたしましては、先ほど来説明がございますように、平成三年度以降の税制の問題であるからこれは政府税調の問題として御議論していただくことになるだろうということで、積極的に税調で問題を取り上げて議論をするということにつきましては、大蔵省も御承知いただいていることであるというふうに私ども理解いたしまして、今回の改正案を政府案として提案させていただいたところでございます。
○鈴木(喜)委員 そういうことであると、今法務省が、大蔵省の方はこうであろうというような憶測だけでそうされたということであれば、まだ大蔵省の方ではそれが決定されていないということでは、これ以上の質問を続けるという意義がないと思いますので……。
○清水(湛)政府委員 結局、政府税調でそういう御審議をいただくためにも、改正商法の内容を確定しておく必要がある、つまり、理論的に、税制措置を講じなければ商法の改正ができないという法律的あるいは理論的な因果関係はないわけでございますので、私どもといたしましては、商法の中身は中身として確定させていただく。そして、政策的に理論的な因果関係とか引きかえ給付関係というのはないわけでございますけれども、そういう確定した内容の商法を円滑に実現していくために政策的な配慮としてそういう税制上の措置を講じてほしいということを、大蔵省に改正案を提案する前からお願いし、そのことについては平成三年度の税制改革の問題として取り上げましょう、こういうことになっているわけでございます。 ですから、この点は、私どもといたしましては鈴木委員の御指摘の点十分に踏まえておるところでございますので、本年末に向けまして法務省も、また恐らく直接に中小企業団体と深いかかわりを持っております中小企業庁の御協力もあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、真剣に全力を挙げて御質問の趣旨に沿うように努力してまいるつもりでございます。このことは最大限の努力をするということは、確実に私お約束できるのではないかと考えております。
○鈴木(喜)委員 私はなるべく審議拒否などということをしたくはない立場でございます。ここでは質問を続けたいのですが、やはりできないじゃないかと思うのです。というのは、これについては政府の考え方が一致していない。しかも、法務省の方がどうなるように努力いたしますというふうにおっしゃったところで、大蔵省の方がその点についてどのようにするかというふうな基本的な姿勢というものがなくて、いずれこれからの税調でというようなことだけを言われたのでは、これ以上質問をしたくてもさせてもらえない、できないということだと思います。私はそのように考えますので、この点本当に皆さんの、政府の方の御方針というものについて統一的な御見解をお願いいたします。
○大武説明員 お答えさせていただきます。 ただいまの御議論を伺っておりまして、私が御答弁申し上げているのは税の議論でお話しさせていただいているわけでございますが、ただ、商法改正に伴う諸措置についての御意見というのは十分法務省からも伺っているところでございまして、これから年末にかけましての政府税制調査会におきまして御趣旨も踏まえまして検討されていくものと思っております。
○小澤委員長 速記をとめて。 〔速記中止〕
○小澤委員長 速記を始めて。 鈴木君。
○鈴木(喜)委員 では、今の問題につきましては、委員長がおっしゃっていますように、これについて検討を進めていくということでよろしいのでしょうか。そういうことでよろしいですか。
○小澤委員長 そのようにいたさせます。
○鈴木(喜)委員 よろしくお願いします。 では、その次のところに進めさせていただきます。 組織変更についてでございますけれども、この改正案の中では、この五年の期間に限って株式会社とかから合名会社、合資会社に対する組織変更というものを認めるということになっておりますけれども、これは、今まで商法の中ではこういう物的会社から人的会社というような中身の違うものに組織変更するということは認められていなかったところだと思うのですけれども、この点について理論的にもちょっと疑問があるので、この点を伺いたい。 そして、もしこれが可能だということであるな らば、具体的にはどのような方法でこれがされるのかということについて伺いたいと思います。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、これは経過措置として特に認めておるということでございますけれども、株式会社、有限会社から合名会社、合資会社への組織変更というものを認めております。これは、結局五年間に資本金を三百万円にすることができなかった株式会社あるいは有限会社、株式会社の場合には一千万でございますけれども、そういう増資ができない会社が生き延びると申しますか、解散しないで生き延びるためには、人的会社への組織変更をせざるを得ない、こういうところからこの特例措置を設けたわけでございます。 ただ、御指摘のように、現在の商法ではそういうような組織変更は認められておりません。と申しますのは、これは申すまでもなく有限責任会社から人的会社に変わりますと、株主の地位が大きく変わりまして、合名会社に組織変更するということになりますと、社員は全員が無限責任社員となるというようなことでございますから、組織変更に反対の株主を強制的にこの人的会社の社員にするということはできないわけでございます。 そこで、この組織変更の手続につきましては、株式会社の場合には商法第三百四十八条の規定するような特別の決議要件、有限会社の場合には有限会社法第四十八条の定める決議というようなもの、そういうような特別の決議によってこの組織変更の決議をする必要があるということといたしますとともに、こういう決議に反対する株主につきましては、会社に対する株式の買い取り請求権を認めまして、そういう会社から退社するという手段を保障いたしておるところでございます。
○鈴木(喜)委員 まず、こういう例外的に非常に論理的には説明のつかないものを認めるということは、ちょうど発起人の人数を株式会社の場合に一人にするということと似ていると思うのですけれども、何か非常に便宜的にそのようにしてしまうというような感じが大変強い制度ではないかというふうに思います。 具体的な方法が過半数の議決ということで、たしか今そういうふうにおっしゃったと思うのですが、そういう場合、多数決で決めるということになりますと、買い取り請求があるとはいえ、株主の財産権というものについての侵害ということを助長するような形になるのではありませんか。
○清水(湛)政府委員 資本金が三百万円に満たない会社で株主というものが一体どういう状況にあるのかということになるわけでありますけれども、ほとんど会社の経営者と利害を共通するというようなことになるのではないか。したがって、組織変更をめぐって株主が会社と対立するというようなことは余りないと思いますけれども、しかし、あればという前提のお話だろうと思います。そういうようなものにつきましては、やはり最終的には買い取り請求権という形でその保護をするという制度によらざるを得ない、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。
○鈴木(喜)委員 この点についても、せっかく商法の改正ということで始められた大事業の中の一環であると思いますから、慎重な御審議をもう一度していただきたい部分でございます。 時間がありませんので、その次のところに参りますと、譲渡制限のある株式ですが、その譲渡制限株式についていろいろと今回の改正という問題があるのですが、その中で第三者発行というものを株主総会の特別決議によってなすことができるように、そういう改正があるのですが、こういうふうなことを決められた理由というのはどういうところにございますでしょうか。
○清水(湛)政府委員 これは、今回の改正におきまして、株式の譲渡制限をしている会社につきましては株主に新株引受権を認めるというふうに改めたわけでございます。つまり、譲渡制限をしている会社が株式を発行する場合に、第三者に一般の会社と同じように新株引受権を与えていいかどうかということがかつて問題にされていたわけでございますけれども、その問題というかあるいは疑問に答えるため、今回の改正におきまして株主に新株引受権を認める、これを原則にしたわけでございます。しかし、そうは申しましても、会社の資金調達上株主以外の第三者に株式の発行をしなければならないという必要もあるわけでございます。そういうような場合には、第三者に株式が発行されますと既存株主の持ち分比率が低下するというようなおそれも生じてまいりますので、特別の多数決の要件のもとに第三者への株式の発行もすることができるようにしたということでございます。したがいまして、あくまでも基本は、今回の改正法におきまして株主に新株引受権を認めたということとの関連でこのような特別決議に関する規定が必要になった、こういうふうに考えております。
○鈴木(喜)委員 この点では、譲渡制限のあるような閉鎖的な会社についてこういうふうなものを取り上げられたということについては、会社の乗っ取りに起因する問題とか、または税金逃れなどのそういう病理現象というものを把握された上でのこの改正でしょうか。
○清水(湛)政府委員 まず基本的に、前提となる株式譲渡制限のある会社におきまして新株引受権が当然には株主にないということ自体、改正前の商法の解釈ですけれども、学界におきましても、そのこと自体が非常に問題にされておった。つまり、株主の方からいたしますと、自分の株を自由に譲渡することができない状態で縛りつけられておりながら、会社が株を発行する場合には第三者に、つまり価額が公正でありさえすれば第三者に自由に発行することができるということでは、これは非常に片手落ちではないかという非常に理論的な面での御指摘、あるいは現実にそういうような会社があって、非常に事態が紛糾したことがあるというような御経験に基づいて、そういうような実際からの意見が出てきたということでもあろうかと思いますけれども、具体的な実情を私どもつぶさに調査してこういうような結論にいたした、必ずしもそういうわけではございません。ただ、理論的に考えてもおかしいし、実際からの要望の面から見ましても、それは確かに余り合理的ではないということで、譲渡制限のある株式会社の株主にまず新株引受権があるのだということを前提とした上で、これを奪うような形にするためにはやはり特別決議が必要であろうということでこういう立法措置を講じた、こういうことになっているわけでございます。
○鈴木(喜)委員 近ごろ話題になっているところだと思いますけれども、税金を逃れるために会社の持ち株についての自分の比率というものをわざわざ薄めて、そういう形で税金、主に相続税の対策ということでしょうけれども、そういう中で薄めた株ということで評価をするという形で相続税逃れというような現象があるように聞いておりますけれども、その点についても、そういう実態というものを把握しておられますでしょうか。
○清水(湛)政府委員 必ずしも、そういう相続税を逃れると申しますか相続税の負担を軽減するために株式を薄める、第三者に対して株式を発行いたしまして全体的な持ち分割合と申しますかシェアと申しますかそういうものを低めるというようなことをしている事実があるというような事実認識の上に立って今回の改正案が出されているわけではございません。ただ、観念論といたしまして、そういうようなことはあり得ないわけではないのかなというふうに私ども思いますけれども、実情がそうであるかどうかということについては、ちょっと承知いたしておらないところでございます。
○鈴木(喜)委員 あと、残った問題を少し伺いたいと思います。 商法の二百八十八条で利益準備金の積立基準というものがあるのですが、それの改正の中で、中小会社について積み立ての現行と改正で大分違った点が出てきているということでございます。この点について簡単に御説明ください。
○清水(湛)政府委員 先生御承知のとおり、利益準備金の制度というのは、これによって万一の場 合における損失のてん補に備えさせるということを目的としているものでございます。資本金あるいは資本準備金のほかに一定の金額を積み立てさせて、そして会社の資産の保全を図る、こういうことだろうと思います。基本的には会社債権者の保護を図るということを目的とする制度だというふうに承知いたしております。 現行の積立基準というのは専ら金銭による利益配当額を基準として、つまり利益配当とされるべき金銭を基準といたしまして、その十分の一を全体の四分の一に達するまで積み立てなさいということになっているわけでございますけれども、この点につきましては、同じ利益の社外流出である役員賞与の額等を含んでいないという点で不徹底である、こういうような指摘がございました。要するに、利益処分の対象となる金銭のうち利益配当の対象となる金銭だけを基準として利益準備金の積み立てをさせるということはちょっと狭過ぎるのではないか。つまり、そういうものだけに限定しないで、役員賞与等の利益処分による社外流出額全般に拡大するのが適当である。会社の財産的な基盤をより強固にするためにはそういうふうに広げた方が適当ではないか。こういうようなことから今回のような改正になったわけでございます。
○鈴木(喜)委員 今まで余り問題にされていない部分だろうと思います。ここの点についても、そこでの個人的な企業、中小的な企業として考えますと、この利益準備金の積み立てというものがまた大変大きな影響を持ってくる可能性がございます。この点についてはなお一層の検討というものが必要であろうという問題点の指摘にとどめたいと思いますが、よろしくもう一度御検討を願いたいと思います。 それからもう一つ、飛んで申しわけありませんけれども、今回の改正の中で、会社の設立その他について現物出資の場合に、その現物が価格として相当か否かということの証明を弁護士のみにさせるというような規定があります。この点について、なぜそうなったかということを伺いたいと思います。
○清水(湛)政府委員 現物出資の場合には、原則として検査役、裁判所の選任する検査役の調査が必要なわけでございますけれども、今回の改正案によりまして、弁護士の証明があればそういう検査役の調査を省略することができるという制度を一部導入したわけでございます。 その対象は、現物出資の目的物が不動産である場合に限られているわけでございます。不動産ということ、しかもこの不動産について弁護士が証明するにつきましては、その価格について不動産鑑定士の鑑定評価に基づくことを要するというふうに定めておるわけでございますが、そういう評価を前提として不動産について専門家が判断するということになりますと、その専門家の判断というのは、結局価格を除く当該不動産をめぐる法律関係に限られる、こういうことになってくるわけでございます。そうなってまいりますと、一般に法律問題の専門家としての社会的に承認された弁護士が適当であるということで、弁護士の証明というふうに弁護士だけに限定した改正案になっているわけでございます。
○鈴木(喜)委員 それで、最後になりますけれども、もう一度ここで伺いたいのですが、大臣、この法律案、今回のこの改正ということは、中小企業にいろいろな意味で大変重要な影響を及ぼすわけでございますけれども、この法律のこれからの施行ということについて、どのような形、どのような心構えでいらっしゃるかということをお伺いしたいのと、先ほどの点で、大蔵省と法務省との間の十分な意見調整というものをこれから先お願いしたいと思いますが、これについて一言御意見をお願いいたします。
○清水(湛)政府委員 先ほど大蔵省との話、税金の問題ございましたけれども、法律案作成審議の過程におきまして既にそういうような問題も出されたことでございまして、私どもといたしましては、本年末の税調に向けて、今委員会における御議論というものを十分に踏まえまして努力をいたしますことをまず最初に申し上げたいと思います。 それから、今回の法改正につきましては、中小企業に税金の問題のみならずいろいろな面で影響を与えるということは御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、法改正が成立した暁には、中小企業者について十分な、いろいろな周知、PRの措置等も考えまして、この法律が円滑に施行されるよう最大の努力を尽くしたいというふうに考えているところでございます。
○長谷川国務大臣 いろいろ委員からお話を承りまして、大変勉強になったと思います。 現在、我が国の経済取引は国際的な広がりを持つに至っており、その主体は主として株式会社を中心とする会社である。このため、我が国の会社制度が世界各国から信頼を受けることが重要であり、今後もこのような観点から、諸外国における立法例も参考にしつつ、会社制度の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。
○鈴木(喜)委員 ちょっと済みません、最後ですが一言だけ。さっきの問題ですけれども、ただ単にそこで十分に意見を尊重するからこれからの審議をするということではなくて、今会期中そして必ずこれを税調の中で審議するというお答えをいただきたいというふうに思っているのですが……。
○長谷川国務大臣 税調の問題でございますが、私の方からも関係の諸君によくお伝えを申し上げておきます。 なお、私も中小企業、零細企業をやっておる一人でございまして、今回の商法、いろいろ自分なりに読んでみますと、完全無欠とは申し上げませんが、かなり進歩したものであるということは何となくわかるような気もいたすわけでございます。 なお、いろいろ御要望等の点につきましては、先ほど大蔵省と法務省との関係その他等々につきましては、できる限り調整に努力をいたします。 以上であります。
○鈴木(喜)委員 終わります。
○小澤委員長 御苦労さまでした。 午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。 午前十一時五十四分休憩 ────◇───── 午後二時開議
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。冬柴鐵三君。
○冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。 本日は、私は、改正案のうち、株式会社の発起人及び有限会社の社員の下限の制限を廃止した部分、及び株式会社の設立手続を実務に即して合理化した部分を中心に質疑を行いたいと思います。 まず、なぜ大小会社の区分立法を今行うこととしたのか、その立法理由などを簡単に御説明いただきたい、このように思います。
○狩野政府委員 お答えいたします。 我が国における経済活動の主体というべき株式会社及び有限会社の大多数が小規模でしかも株式上場もしておらず、同族的、仲間的であります。そういう閉鎖的な会社である実情にかんがみまして、このような会社にも適合するように法制度を整備合理化するとともに、債権者保護のために最低資本金制度など必要な措置を講ずるなどして我が国における株式会社及び有限会社制度の充実強化を図り、国際化時代に向けての我が国の法制度の整備を図ることとしたものでございます。
○冬柴委員 聞くところによりますと、我が国には百二十六万社にも及ぶ株式会社、百四十万社にも及ぶ有限会社があって、その圧倒的部分は小規模で閉鎖的な運用が行われていると言われております。両者それぞれの社会的、経済的存在意義などどこに違いがあると認識していられるのか、実態に即しての説明をいただきたい、このように思います。
○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。 株式会社、有限会社とも、いわゆる物的有限責任会社というふうに言われております。各株主、社員はその引き受けた限度において会社に出資する義務を負うにとどまり、会社債権者に対しては原則として責任を負わない、これはもう先生に御説明するまでもない事柄でございます。そのために多数の出資者から広く資本を募りまして企業を営むことが容易となる、こういう共通の性格を持っているわけでございます。 このうち有限会社につきましては、その物的有限責任会社という面では株式会社と共通の面を有するわけでございますが、社員構成の点では、例えば社員の数は有限会社においては五十人に制限されておる、社員の地位の交代については社員総会の決議を必要とするというふうなところにも見られますように、小規模な人的会社に近い閉鎖性を有しておるというふうに言えようかと思います。そういう意味で、物的有限責任会社の典型としての株式会社が大資本を集めて大規模な経営をするのに適しているというのに対しまして、有限会社は比較的少人数による小規模の中小企業に適する企業形態ではないか、こういうようなことが言えようかと思います。実際問題として、このような有限会社の閉鎖性に対応しまして管理運営機構も簡素化され、貸借対照表の公告が必要とされてないなど、社員及び債権者保護のための法的規制も緩和されていると言っていいかと思います。 御指摘のように、我が国においては株式会社、有限会社の数が非常に多く、株式会社は現在約百二十六万社ございます。これは昨年の十二月に休眠会社整理をしてことしの五月の時点で整理されたものがございますので、やや減っていようかと思います。有限会社は約百四十万社でございます。有限会社についてはいわゆる休眠会社整理というのは全く行われておりませんので、この中には相当数の休眠会社があるというふうに言っていいと思いますが、それにしてもかなりの数の有限会社があるということが言えようかと思います。えてして取引上の信用や体裁というような点から株式会社形態をとるものが多いというふうに言われておりますものの、小規模の株式会社においては会社法の厳格な法規制は余り守っていない。これは訴訟等の実例においてもそういうようなことがよくあらわれているところであろうかと思います。
○冬柴委員 では、逐条、伺ってまいります。 商法百六十五条及び有限会社法六十九条の関係でお伺いをいたしたいと思います。 このたびの改正によりまして、株式会社は発起人、有限会社は社員のそれぞれの員数の下限を制限しないものとし、いわゆる一人会社の設立、存続を認めることとしていますけれども、これは会社の社団法人性を否定するものではないか、このようにも考えるわけであります。 では、なぜこの一人会社の設立や存続を許すこととするのか、その社会的な必要性、有用性、このような点はどのように考えていられるのか、その点について説明をいただきたい、このように思います。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように現行法におきましては、例えば株式会社を設立する場合には七人以上の発起人が必要であるということになっているわけでございます。で、七人が必ず一株以上引き受けますので、その時点では株主は最低七人いる、こういうことになるわけでございますが、今回、発起人は一人でいいということになりますと最初から株主は一人しかいないということもあり得る、こういうことになってくるわけでございます。しかしながら、こういう現象につきましては、設立の段階はともかくといたしまして、その後の経過等により企業の所有者が、株主が実質的に一人になるというような事例というのはかなり多くあるというふうに言われているわけでございます。取締役は三人以上必要でございますけれども、株主は実質的には一人しかいない、こういうような一人会社でもやはり株式という形でその地位が譲渡されるという法律的な可能性を持っているわけでございまして、瞬間的には構成員は株主一人ということでありましても、潜在的には直ちに多数の株主になり得るというような、いわば潜在的な社団というような考え方でございましょうか、そういうような見地から、そういう株主一人の会社でも適法であるということが一般的に認められている通説的な見解ではなかろうかというふうに思うわけでございます。 そういうような情勢を踏まえまして、形式的に七人以上の発起人が必要であるということからこれを要求いたしましても、一方では容易にこれを潜脱する、つまり形式的に七人の発起人を並べるけれども実質的には発起人は一人であるというようなことが数多く行われていたということ、これも現実に指摘されているところでございますけれども、そういうような潜脱が容易であるということと、それからもう一つは、いわば名前だけ連ねた発起人について、その後その責任を追及するというような事例もあらわれてまいりまして、法律関係が非常に混乱するというようなこともあるというふうに言われたわけでございます。そういうようないろいろな問題がございまして、第三者の利益の保護というようなことをもし問題とするならば、株主は複数であるということよりも、いろいろな財産的な基礎の確立とか会社財産の分別、管理というようなことの確保、そういうことにこそむしろ問題の本質があるというようなことから、この際、名目的に発起人の数をそろえるというような形式的な基準というようなものはやめてしまって、発起人が一人でも株式会社を設立することができるようにしよう、実態に着目してそういう簡素合理化を図った方がいいのではないかということでこのような改正案になったわけでございます。
○冬柴委員 次に、百六十八条関係についてお伺いいたします。 設立費用中、定款認証の手数料及び株式の払い込み取り扱いにつき銀行等に支払うべき報酬は原始定款に記載していなくても会社に負担させ得る、このように改正されるようでありますけれども、本来、会社の設立に要する費用というものは共益費用であって、特定の発起人のみが負担するいわれはないというふうに私は考えるわけでありますが、そういうような立場から、この改正は当然のものだと私は考えます。 しかしながら、例えば改正される百七十三条三項では、今までの検査役の調査というものにかえまして、弁護士の証明、そして不動産鑑定士の鑑定評価をつけさせることによってその代替措置が、いわゆる今までの発起設立というものが非常に使われなかったというのは、そういう検査役の調査の期間が長いということから使われなかったわけでありますから、今回そのような弁護士の証明でそれにかえるという改正の方向はいいのですけれども、肝心の弁護士の費用をこの改正案の百六十八条では会社に負担させられないということになるのではないかと思うわけであります。そうすると、竿頭一歩を進めて、このようなものについてある一定限度で会社の負担に当然になるような改正が図られてもよかったのではないかというふうに思うわけでありますけれども、大変技術的な問題ですけれども、その点どのようなお考えなのか御説明をいただきたい、このように思います。
○清水(湛)政府委員 大変鋭い指摘でございまして、私どももその問題は考えてはいたわけでございますけれども、結論的に申しますと、商法百七十三条第三項の弁護士の証明を受けること等のために必要な費用は、これは設立費用の一つと考えざるを得ない。設立費用を会社に負担させるためには、原則としてこれを定款に記載して検査役の調査を受けなければならない、こういうことに相なろうかと思うわけでございます。 なぜそういうことになるかということでございますけれども、一方では不動産の現物出資につきまして難しい検査役の調査というものを省略する意味で弁護士の証明制度というものを導入いたしました。導入いたしましたけれども、その弁護士 の報酬については検査役の調査が必要である。結局裁判所に検査役の選任を請求するという点においては同じではないかという御疑問が恐らく委員の頭の中におありになるのだろうと思います。 形式論をいたしますと全くそのとおりでございますけれども、しかし、考えてみますと、不動産の現物出資についての調査というのは非常に手数のかかる面倒なものでございまして、そういうものにつきましては法律の専門家である弁護士、その前提として不動産鑑定士の鑑定評価というものは当然必要になるわけでございますが、そういうものをもとにして弁護士さんに証明していただくということで、実質的な手続の簡略化は大幅に図られるのではないか。 他方、弁護士の証明という制度は全く今回新しい制度でございまして、弁護士さんが不当に証明手数料を取るというようなことは私ども考えてはおりませんけれども、とりあえずはやはり設立費用ということで定款に記載していただいて、その部分について検査役の調査を受ける。恐らくはこれは非常に簡単な調査で済んでしまうのではないか、また簡単な費用で済んでしまうのではないかというようなことに相なるのではなかろうか。そういう意味で、今回の改正におきましては弁護士の証明費用を検査役調査の対象外にするということにはしなかった、こういうふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
○冬柴委員 不動産の鑑定評価というのは安くありません。弁護士の費用も安くありません。したがいまして、こういうものを調査するためにまた検査役を選任するというのは、そういうことをこの改正法が容認するとするならば、恐らくまたこのような方法はとられなくなってしまうということになると私は考えます。したがいまして、今回の改正法以降、流れを見て、私の指摘した部分について御再考をいただきたい、このような指摘にとどめておきたいと思います。 商法附則五条関係でお伺いいたしますが、最低資本金に満たない会社も五年間存続を認めるということでありまして、その間に資本の額を最低資本金以上に増額をする、あるいはそれが問題とならないような種類の会社に組織変更をする、そのようなことでこの問題をクリアする旨の改正がされるようでありますが、百二十六万社と言われる株式会社、百四十万社と言われる有限会社のうち、最低資本金に満たない会社は現に一体何社ぐらいになっているのか、そして、それは将来、このような膨大な変更登記がこの数年の間に法務局へ殺到することになると思うわけでありますけれども、法務省の商業登記部門というのはふだんでも忙しい部門です。それがこういう改正を行うのに相応する人的、物的準備というものを十分整えられる心づもりはきちっとしていられるのかどうか、その点についても伺っておきたいというふうに思います。
○清水(湛)政府委員 資本金一千万円未満の株式会社の数は約八十三万五千社でございます。それから、資本金三百万円未満の有限会社数については、直接にそういう形で実は統計はとっていないのでございますけれども、各種の資料から推計いたしますと、約七十万社程度であるというふうに私どもは考えております。 そこで、今回の商法改正法が通過成立して施行された場合、これらの会社がどういう形で登記所にあらわれるだろうかということになるわけでございますが、私どもといたしましては、ほとんど増資をするという形で登記の申請をしてくるだろう、有限会社、株式会社が組織変更をして合名、合資になる、あるいは株式会社が有限になるというようなことは余りないのではないかという、実は経験上の推測をいたしております。しかも、じゃ株式会社八十三万五千社あるいは有限会社七十万社のうち、全部が全部そうやってくるだろうかということでございますが、私どもの今までの休眠会社の整理等の経験から申しますと、株式会社のうち約二十万社近くはほとんどもう実体を失っているのではないかという推測もされるわけでございます。 それからまた、三百万円未満の有限会社七十万社のうち、この有限会社につきましては休眠会社の整理は全く行われておりませんので、先ほど申しましたように、株式会社よりか数が多いような結果になっておりますけれども、株式会社については相当数の休眠会社整理をしておりますので百二十六万社にとどまっているわけですが、そういうようなこともございまして、有限会社については三十万社ぐらいはほとんど休眠状態になっておるのではないか。そうすると、残り約百万社がほとんど増資をするという形で登記所にあらわれてくるのではないか、こういうような推測もいたしておるわけでございます。そして、じゃこの百万社が一挙にあらわれてくるかということになりますと、五年間でございますから、最初の一年、二年、三年、四年次あたりは恐らく一割から一割五分、一〇%から一五%程度で、最終年度五年目に四〇%ぐらいのものが一挙に登記所にあらわれてくるのではないかというような、今までのいろいろな事例の経験からそういうような予測も実はしております。そうなってきますと、例えば最終年次には四十万件の登記の申請があるというような状況が出てくるわけでございまして、これはかなりの事務量であるというふうに私どもは認識いたしております。そういうような認識に基づきまして、これはそういう事態に適切に対応することができるよう今からいろいろな対策を考えておるわけでございまして、これによって事務の渋滞なり不都合が生じないように努めてまいりたいというように考えておるところでございます。
○冬柴委員 政務次官来ていらっしゃいますから、今でも大変な事務量です、コンピューター化したりですね。ですから、この改正によってその事務が渋滞しないように、またそこに勤めておられる方々も、登記部門は朝八時半からやっているのですよ、ほかの役所は九時ですけれどもね。そういう実態にもかんがみ、人的、物的設備について十分配慮されることを要望しておきたい。ちょっと決意のほどをお願いしたい。
○狩野政府委員 お答えいたします。 ただいま民事局長の方からお答えも申し上げましたけれども、法務省といたしましては特別会計としてコンピューター化を今鋭意進めているところでございますし、特に今先生から法人関係の事務が大変多くなる予想であるということで御指摘がございましたけれども、現在もう既に各種の登記、そしてまたマンション等々の区分所有など非常に登記事務が煩雑、かつ人員も非常に少ない中で担当官が非常に懸命になってやっておるところでございますが、先生から御指摘いただいたように、これからも事務の能率化とそれからできるだけ早くコンピューターの導入によって五年先に向かってそういう問題を解決していきたい、そのように考えておる次第であります。
○冬柴委員 この五年の期間が満了した後の問題ですけれども、解散予告の官報公告が大臣によってやられますけれども、そうしますと、その予告期間が満了したときにいわゆる解散となる、こういうことになると思うのですけれども、じゃ五年以降予告された期間の満了までの期間、これは例えば商法百六十八条ノ四とか有限会社法第九条に「下ルコトヲ得ズ」こういうふうに書かれています。「下ルコトヲ得ズ」というのは、下っては存在を許さないという趣旨なのかどうか。その間の法人はいかなる理論的根拠のもとに存在を許すつもりなのか。若干理論的な問題ですけれども、その点にお答えをいただきたい。 それからもう一つは、解散した後にもまた三年間という猶予期間というものが許されます。この間に増資あるいは組織変更等要件を充足すれば会社存続が許されるわけですけれども、その間に、五年満了後に行われた法律行為というものは、これはどういうふうな理屈でその会社の行為として帰属さすことができるのか、その点についてもあわせて御説明をいただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 最低資本金に関する五年間の猶予期間の経過後においても最低資本金に満たない会社は、これは御指摘のように商法第百六十 八条ノ四または有限会社法第九条に違反するということになるわけでございます。 そうではありますけれども、会社がこれらの規定に違反したからといって直ちにその存在が許されなくなるというものではない。ある意味においては違法な株式会社、有限会社として存続するということを認めざるを得ない、こういうことになってくるわけでございます。これは、五年の猶予期間が経過いたしましたら、私どもの予定といたしましては、直ちに法務大臣の官報公告をしていただきまして、二カ月の期間内にさらにそういうことをしないと、そのときに解散したものとみなすということを予定しておりますので、この五年間の期間が満了した日の翌日に官報公告しようと思えば、これは不可能ではございません。そういうような形で、二カ月あるいは三カ月になるかわかりませんが、若干の期間そういう違法状態が続くということは、これはやむを得ないものと考えているところでございます。 そういうような会社が結局法務大臣の公告期間におきましてもいろいろな手続をしないということで解散したものとみなされるということになりますと、この会社は二カ月の期間経過のときに清算手続に入るということになるわけでございますが、その後三年内であれば商法第三百四十三条に定める決議をすることによって会社を継続することができるということになっております。 ただしかし、この継続決議による会社の継続につきましては、みなし解散後三年内に増資または組織変更しない場合にはその継続の決議は効力を失うこととされるとともに、継続決議をした後の会社の目的は最低資本金を満たすための増資または組織変更に限られまして、会社の代表者が増資または組織変更の目的の範囲外の行為を行ってもその効果は会社には帰属しない、こういうことが実は改正法の附則第六条第二項の後段に規定されているわけでございます。会社が法務大臣の公告した期間内に何らの手続を経ずして経過した場合には解散したものとみなされまして、その段階においては清算法人となりまして、清算の目的の範囲内で必要な行為をすることができるわけでございますが、継続の決議をいたしますと、今度は清算法人ではありませんで普通の会社になる、普通の会社になるんだけれども、その会社の目的は増資または組織変更に限られる、それ以外の法律行為をしてもその効果は会社には帰属しない、そして三年内に増資または組織変更しない場合には継続の決議自体が効力を失う、こういうことになっているわけでございます。
○冬柴委員 では、そういう流れの中で商法四百十七条以下に定める会社の清算手続、例えば債務超過になっておれば破産宣告の申し立て義務とかが発生いたしますし、そのような清算人の就任とかあるいは裁判所に対する財務諸表の届け出とか、そういう手続が順次予想されているわけでありますけれども、この五年、それから公告、そして三年という流れの中で、どの時点で会社清算の手続が開始すると考えておられるのか、その点についても明らかにしていただきたい。
○清水(湛)政府委員 最低資本金を満たすことができない会社が解散したものとみなされた場合には直ちに清算手続に入る。ですから、二カ月の期間が満了しますとその翌日から清算手続に入る、こういうことになるのではないかと思います。
○冬柴委員 それでは次に、百七十三条関係で伺いたいと思います。 株式会社の発起設立の場合におきまして、会社の発行価額の全額の払い込みがなされたかどうか、また現物出資の目的たる財産の全部の給付がなされたかどうかということにつき検査役の調査を不要とする改正がなされるようですけれども、この資本充実の担保というものはどのような代替手段によってなされるつもりなのか、その点について簡単で結構ですから御答弁願いたい。
○清水(湛)政府委員 発起設立にありましては発起人以外の第三者による出資がないため、現行法は出資の方法について当事者の自由にゆだねてはいますけれども、そのかわり出資の履行の確実を検証するため、裁判所の選任する検査役の調査を受ける、こういうことになっていることは御承知のとおりでございます。この点が実務上発起設立が敬遠される主な原因というふうに言われているわけでございますが、改正案では株式の払い込みについては、これは金銭払い込みでございますが、これは募集設立の場合と同じように金融機関に対して行っていただく、こういうことに改めております。つまり、払込取扱銀行というものを定めまして、その保管金証明書で登記をするという形、募集設立の場合と同じような手続に相なろうかと思います。とともに、取締役及び監査役に払い込みの有無についての調査義務を負わせる、そういうことを新たにいたしまして資本充実を一層確実にさせるとともに、もしその払い込みについて未済のものがありますと、会社成立当時の取締役にも資本充実責任を負わせる、こういうことにいたしておるわけでございます。 次に現物出資につきましては、改正案では現物出資の目的財産の給付の有無の確認につきましては、それが金銭の払い込みに比べまして不正な操作が行われる可能性が少なく、その確認も比較的容易であるということから、検査役の調査は不要とするとともに、そのかわりに取締役及び監査役に対しまして給付の有無の調査義務を負わせる、検査役のかわりに取締役及び監査役に調査義務を負わせまして、これは百七十三条ノ二第一項第三号でございますが、会社成立後におきましても給付がまだされておらないというような場合には、発起人及び会社成立当時の取締役に対して給付未済財産の価額支払い責任を負わせる、こういうようなことにより資本充実を担保しようということといたしておるわけでございます。
○冬柴委員 百七十三条二項で「財産ノ定款ニ定メタル価格ノ総額ガ資本ノ五分ノ一ヲ超エズ」という意義ですが、これは単体の財産の価格を指すのではなしに、もろもろの財産の評価の総額が今言う資本金の五分の一を超えないという要件だと理解するのですが、それでいいですか、一点だけ。
○清水(湛)政府委員 それぞれの価格を合計した価格が資本の五分の一以下で、かつ五百万円以下、仰せのとおりでございます。
○冬柴委員 次に、有価証券である場合においては「定款ニ定メタル価格ガ其ノ相場ヲ超エザルトキ」、「其ノ相場」の意義ですが、これはいつの時点の——これは「取引所ノ相場アル有価証券」に限られるわけですから新聞紙等で明確なわけでありますが、相場ですから動きます。たまたまどの日を選ぶかというのは非常に重要なことになりますので、「其ノ相場」というのはいつの時点のことを指すのか、そのことについてお伺いしておきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 これは理論的には定款作成時における相場である、こういうことに相なろうかと思います。 そこで問題は、じゃ定款作成時における相場とは何か、こういうことに実際問題としてはなってこようかと思います。この点につきましては、これは当然相場があるわけでございますから、株式市場に上場されておる、こういうことになるわけでございまして、例えば前日の取引相場の終わり値であるというようなことを言おうと思えば言えるわけでございます。しかしながら、そういう相場というようなものにつきまして、例えば法律で定款作成時からさかのぼって一カ月内なら一カ月内、あるいは一週間内なら一週間内、二週間内なら二週間内における取引所における平均価格であるというようなことを書いてありますと、それはそれでそういうような形式的な要件がきちっとするわけでございますけれども、この改正案には何も書いてございません。ですから、例えば前日の終わり値であるというふうに言おうと思えばそれは言えないわけではないと私ども思いますけれども、しかし相場という以上、ある程度瞬間風速的なその日の価格、これしか本当はないんだという考え方もあるわけでございますけれども、基本的には、普通の株式市場というものを考えますと、 前日の終わり値というふうにある一定の点をとらえた価格であってもその相場と言って多くの場合は間違いないんじゃないか、それで大体実態を反映するのではないかというふうに私ども思っております。 しかし、非常に相場が乱高下をしているというような、一日のうちでも乱高下をするし、一週間の初めと終わりでもかなり変わるというようなことがあるわけでございまして、そういうような乱高下があるような状況のもとにおいて有価証券を、株式を出資の対象とするということ自体が既にいいのかどうかという問題を別途はらんでいると思いますけれども、そういうような非常に特異な状況の場合には、やはり数日間の平均値みたいな考え方もとり得るのかなというふうに思ってはおります。 しかし、これは非常に登記手続にも関連する問題でございますので、理論的にはそうであっても登記手続上それをチェックするのがなかなか難しいというような面もございますので、実務の実情に適合したような形できちっとした処理方針を出したいというふうに目下考えているところでございます。
○冬柴委員 今答弁の中にあらわれましたけれども、私は、例えば過去三カ月の平均株価とか、そういうある程度の客観性とともに相当性というものをここに考えた通達なり、そのようなものを将来お考えいただきたいということを提案をいたしておきます。 それから、この「取引所ノ相場アル有価証券」につきましては、ここに言う資本の五分の一を超えず、かつ五百万円を超えない云々という部分はかぶってこないと私は読んでいるのですけれども、したがいまして、払込額総額が有価証券でありましてもそれでいいというふうに思うわけなんですが、念のためその点について確認をしておきたいと思います。
○小澤委員長 民事局長、答弁を簡略に願います。
○清水(湛)政府委員 これは仰せのとおり、取引所の相場ある有価証券による現物出資が例えば出資の全額を占めるというような場合、あるいは五百万円を超えても、その現物出資については検査役の調査を受ける必要はないというふうに考えております。
○冬柴委員 次に三項関係で、不動産である場合、この「弁護士ノ証明ヲ受ケタルトキ其ノ事項ニ付亦前項ニ同ジ」、これもなかなか読みにくい文章でして、前項のどの部分をかぶっているのかが非常にわかりにくいのです。私もこれはいろいろ読んでみたのですけれども、不動産の場合でも有価証券と同じように全部そうであってもいいという部分が「前項ニ同ジ」なのか、五百万円とか五分の一がかぶってくるのか、そこら辺の読み方がちょっと読みにくいので、その点につきましても不動産で現物出資する場合もこの五百万とかそれはかぶらないのかかぶるのか、その点についても御答弁をいただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 この点につきましても御意見のとおりでよろしいかと思います。
○冬柴委員 そこで一番問題なのは、期限を切って今最低資本金に達していない会社が増資をする場合に、現物出資というもので行われる場合、あるいは利益準備金、資本準備金というものを取り崩して、これを増資に充てる場合等々が考えられると思うわけであります。 その場合に、租税上の問題ですけれども、今まで準備金として積み立てていたものを資本金に組み入れるという場合には、配当課税がそこに生ずると思うわけであります。それからまた、今まで創業以来ずっと、法人成りをしたような場合、個人企業時代から使っていた土地や建物というものをこの際現物出資をして、その要件を満たそうとする考え方も多くとられるだろうと私は予想するわけでございますけれども、その場合にも不動産の譲渡所得というものがそこに発生するのではないかというふうに思います。それからまた、不動産を移転登記いたしますと、これは登録免許税が当然かかってまいります。それから、増資による変更登記をする場合には、その資本金の額に応じた登録免許税が今度は課税される。いずれにしましても、今回の商法改正は大変税がついて回るというふうに思うわけです。 そこで、今まではこういうふうに一定の低い資本金のもとに営業することが許されていたわけですけれども、商法がこのように改正されることによって、積み立てていた準備金を振りかえるとかあるいはもとから自分の会社のようなものとして使っていたものを資本金に現物出資するとかいうものについては、やはり租税上特別の措置を、この期間だけに限ってもいいですけれども、とるべきではないかというふうに思うわけです。 したがいまして、いろいろ言いましたけれども、項を分けて、まず準備金を資本に組み入れる場合の配当課税をどうするのか、それから不動産を現物出資する場合に、その出資者に課税されるべき不動産の譲渡所得課税をどうするのか、それから登録免許税をどうするのか、増資による商業登記の登録免許税をどう見るのか、そこら辺四つほどに分けられると思うのですけれども、法務及び大蔵の方からそれぞれお考えを聞かせていただきたいと思います。
○長野説明員 今回の商法改正案に関連いたしまして、もろもろ課税上の問題が出てくるのではなかろうかということで、法務省の方からも前広に御相談もございますし、いずれ平成三年度の税制改正の中で、しかるべき手順を踏まえた上で検討を進めなければならないと心得ております。 したがいまして、個別の問題につきましてはそのときにいろいろといろんな角度から検討になろうかと思いますけれども、ケースを分けて御指摘でございますので、若干敷衍させていただきますと、準備金を組み入れるというケースは、理論的に考えますと、現金配当をして、その現金をもってまた払い込んで増資をしたということと同じではないか。したがって、それは配当所得をいわばキャピタルゲイン化するような扱いになるので、税制上はなかなかそういう考え方はとりにくいという考え方で今までやってきております。しかし、会社の実体に余り変化がなくて、課税上の公平を害さないようなケースというものがあり得るかどうかということを私どもの方から法務省にも御検討いただいておるようなところでございまして、つまりそれによって株主の持ち株関係の比率が動くとかなんとかいうようなケースが当然想定されますが、それはいわば我々が最も気にする節税手段になりますので、そこらの心配がないのかどうかというふうな点が一番気になっているところでございます。 現物出資のケースでございますけれども、これは金銭出資とバランスをどう考えるか。不動産をお売りになって、お売りになった代金で出資されるというようなケースとのバランスを考える、あるいは新設のケース、新しく二千万、三千万の会社を設立されるとき、それは昔ならば五十万、百万で済んだのに、二千万、三千万だから新設も同じだとおっしゃられるのかどうか、そういった問題もございますし、そもそも不動産というものが現実に御本人の手から離れたときにそれにかわって株式を取得されるわけですから、それに対する課税を緩めるということにつきましては、企業経営者のお立場はそのお立場でございましょうけれども、サラリーマンとかほかの立場から見ると非常に不公平ではないかという感じが出てくるでございましょう。率直に申して、現物出資につきましては、課税上の公平とかほかとのバランスから考えまして、現行の取り扱いでいくのが適切ではないかと私自身は信じております。 登録免許税に関連いたしましては、これはもろもろのケースが出てくるであろうと思います。細かく申し上げますと時間をおとりいたしますので、そのもろもろのケースに応じて、課税上の公平を阻害しない範囲で、しかし何らかの措置をするべき分野があるのかどうかということを十分詰めたいと存じます。
○清水(湛)政府委員 今回の最低資本金制度を導 入するに当たりまして、とにかく法律施行後五年内に所要の増資をするか何らかの措置をとらないと、組織変更するかあるいは解散したものとみなされるという状況になるわけでございます。そういうような状況にかんがみまして、できるだけこれを円滑に施行することができるようにするため、税制上の何らかの措置、軽減措置あるいは免除措置を講じてほしいということは、実はもう私どもの方から大蔵省に大変強くお願いをいたしておるところでございます。 先ほど大蔵省からお答えがございましたように、これは平成三年度の税制改革の問題でございまして、ことしの年末に政府税調が開かれるというようなことも聞いておるわけでございますが、そういうもろもろの手続の中で大蔵省として最終的な態度を決定するということで、まだ回答は実はいただける状況にはなっておりませんけれども、大蔵省におきましてもこの問題の重要性というのはもう十分私どもは認識していただいておると、先ほどの答弁でもかなり突っ込んだいろんな研究、検討をされているというふうに私ども考えるわけでございまして、そういうような検討をいただいているところでございますので、なお私どももそういう面で中小企業のために適切な軽減措置あるいは何らかの措置が講じられるように努力してまいる所存でございます。
○冬柴委員 長野課長の答弁の中で大変前向きな気配が感じられるのですが、一点、不動産による現物出資については非常に消極的といいますか現状維持的なようなニュアンスを受けたわけですけれども、私は、百万社を超える株式会社とか有限会社がその存続を許されるためには、今現に使っている不動産、これはいろんな要件をつけなければいけないと思います。例えば、十年間その会社が使っているとか、いろんな要件をつけなければならないとは思うのですけれども、そしてまた時限的でいいと思うのですけれども、それは現実に使用し収益してきた不動産というものを出資する、これは会社として客観的には全然変わりはないわけで、その部分についてこれを免除ということはできないと思うわけでありますけれども、減額措置がとられないと、そういうもので増資をするということが非常に困難になってしまう。今まで使っていたものを会社の名義に切りかえるために、そこに大きな不動産譲渡所得税というものが課税されるということになりますれば、これはそういう形で増資を行うということが非常に困難になると思いますので、ぜひ前向きに検討してほしい、すなわち年末の税制調査会にその面についてもぜひ諮問をしてもらいたい、こういうふうに思うわけですが、その点について再度御答弁をいただきたいと思います。
○長野説明員 年末におきましてはさまざまな角度から検討が行われるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。 個々の事項につきましてこれ以上ここで御議論させていただくことは私の権限も逸脱するのかなという感じがいたしますが、重ねてでございますけれども、現物出資に関連いたしましては、やはり個人が持っておられる状態と法人が持っておられる状態はもろもろ様子が異なってまいりますし、また、法人が土地を持つ、個人がどんどん法人に土地を持たせるという形のことにつきましてはまた別な角度からの問題も提起されておるというようなことも、私どもの念頭からどうしても離れることはできないということでございます。
○冬柴委員 法務省、その点について問題の所在を、私が指摘した部分は中小企業経営者にとっては大変重大な関心事だと思いますので、ぜひ法務省の方から大蔵の方にその旨を交渉していただいて、今の点につきましても、時限的でも結構だけれども、いつまでにこういうふうにすればこうだということになれば、現物出資による増資ということが促進されるという効果もあると思われますので、その点についてもぜひ問題意識を持っていただきたい、このように思うわけでありますが、一言で結構ですが、その点について御答弁をいただきたい。
○清水(湛)政府委員 税制の専門家ではございませんので、税制当局が全体の公平という観点からいろいろお考えになっているということも、私ども理解できるところでございます。しかし、冬柴委員の御指摘でございますので、そのことはよく理解して、私どもも伝えたいというふうに思っております。
○冬柴委員 さて、そこで現物につきもう少し検討してみたいと思うわけでありますが、不動産と言われる中に、土地建物のほか工場財団が含まれるのかどうか、それからまた立木法による立木、これも一個の不動産でありますが含めていいのかどうか、もし含められないとすればそれはどういう理由によるのか、そこら辺について御説明をいただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 百七十三条第三項の不動産は、結論的に申しますと、これは土地建物というふうに考えられるところでございます。不動産鑑定士の鑑定が前提要件になっているわけでございますが、不動産鑑定士の鑑定評価は「土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、」ということになっておるわけでございまして、いわゆるみなし不動産と言われる工場財団とか各種の財団あるいは立木法による立木等は、これは含まれないのではないかというふうに考えております。
○冬柴委員 次に、同項に「弁護士ノ証明」ということがあるわけですが、弁護士はどのような証明を行ったらいいのか、そして結果、会社に対してどのような責任を負うことになるのか、それから同項に不動産鑑定士の鑑定評価を受けることを必要とするというふうになっていますが、その主体は弁護士なのか会社なのか、費用はどういうふうにすれば会社に負担させ得るのか、そこら辺について順次お伺いをしていきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 弁護士の証明書にどういうことを記載したらよろしいかということを具体的な形式まで実はまだ考えていないわけでございますが、現に行われております検査役による調査報告書の実例等に照らしますと、設立中の会社になりますが、会社を特定する商号とか発起人、取締役の氏名あるいは証明を行う弁護士の氏名、証明の対象となる事項、これは具体的には定款に記載された商法第百六十八条第一項第五号または第六号所定の各事項ということになりますが、そういう事項、それから証明の対象となる事項の相当性に関する調査の方法、経過、これが一番大事だと思いますけれども、どういう方法で調査をしてどういう経過でそういう結論を導いたかということを書いていただく、その結果結論はどうであるかということに相なろうかと思います。 この弁護士さんが間違った証明をしたらどうなるのかということでございますけれども、基本的には弁護士と会社との間に契約関係がまず存在する、こういうことであろうかと思います。この契約関係は委任なのか準委任なのかというような問題はあろうかと思いますけれども、契約関係が生ずる。したがって、これによって会社に損害を与えたということになりますと、契約上の責任つまり債務不履行責任を会社に対して負うことになるのではないかというふうに思います。 ただ、今度はその弁護士さんが不適切な証明を行いまして会社以外の第三者に損害を与えたということになりますと、これは、弁護士さんは会社の機関ではございませんので、弁護士の行為が第三者に対して不法行為になるということでありますと、当該第三者に対して直接不法行為責任を負うということになるわけでございます。第三者の方から会社に対して、会社の機関の行為であるからということで損害賠償請求をするということはちょっと難しいのではないのかなというふうな感じがいたします。また、そういう刑事制裁等の問題につきましては、これは会社の機関ではございませんので、弁護士法上の懲戒処分が行われるということにとどまるのではないかというような気がいたします。 それから、最後の御質問である弁護士がそういう証明をするにはその前提として不動産鑑定士の 鑑定評価を受けることを必要としているということでございます。その不動産鑑定士と会社との法律関係は一体どういう法律関係なのか、あるいは弁護士と不動産鑑定士だけの法律関係なのかという御質問であろうかと思います。 この点、規定上は必ずしもはっきりしないわけでございますけれども、会社の方で不動産鑑定士を依頼して鑑定させてそれを弁護士に利用させるというやり方でもよいし、あるいは会社から依頼された弁護士が直接鑑定人に依頼して鑑定評価をさせるということでもいいのではないかというふうに思います。そういう形態に応じて報酬の支払い義務が弁護士なのか会社なのか、会社というか、まだ設立中の会社でございますので具体的には発起人とか取締役というようなことになるのかもしれませんが、そういうことでもよろしいのではないかというふうに考えております。
○冬柴委員 百七十三条ノ二に関してお尋ねしますが、三号で「給付アリタルヤ否ヤ」ということの調査をせよということになっておりますが、この「現物出資ノ給付アリタルヤ否ヤ」というのはどんな状況を指すのか、具体的に説明をしていただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 これは、例えばそれが動産でありますと、現実に会社に交付されているかどうかを調査する。現実に会社に占有が移転することが必要であるというふうに考えられます。不動産でありますと、その引き渡しがされているということと、つまり占有が移転しているということと対抗要件の具備に必要な書類が交付されているかどうかということを調査することになろうかと思います。と申しますのは、会社はまだ法人格を取得しておりませんので、会社に移転登記あるいは場合によって必要な移転登録をするということができませんから、占有の移転と対抗要件を具備するのに必要な書類が交付されているかどうかということを調べるということではないかというように理解いたしております。
○冬柴委員 時間が押してきましたので飛ばしますが、百九十二条関係でお尋ねいたします。 第三項「自己ニ売渡スベキ旨ヲ請求スルコトヲ得」。この「請求」というのは実体上の形成権と私は考えるわけですけれども、裁判所に請求する場合の訴状の請求の趣旨の書き方それから判決主文、こういうことはどういうふうになると予想されているのか、その点についてお伺いしておきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 簡単にお答えいたします。 この売り渡し請求権というのは、これはいわゆる実体上の形成権というふうに解されるところでございます。その意思表示があれば、直ちに売り渡しの法律関係が形成されるということでございます。売り渡し請求権を行使した結果生じた株主としての地位に基づく法律効果を訴訟上請求するということになるわけでございまして、訴状における請求の趣旨あるいは判決主文をどう書くかということでございますけれども、通常は、株券が発行されていれば株券を引き渡せということになり、株券が発行されていなければ株主の地位にあることを確認するというような記載になるというのではないかと思います。 もっとも、会社関係の訴訟のこの辺の主文につきましてはいろいろな考え方がありますので、もっとあるいはほかの書き方があるのかもしれません。
○冬柴委員 最後に、会社の設立時または増資時に発起人または取締役が第三者から金を一時借りてきて、そしてそれを払い込みをして、会社の設立登記が済むあるいは増資登記が済むというふうな後に直ちに資本金なり増資金相当額を借入先に返してしまう、いわゆる見せ金という方法が往々にして行われているわけで、今回このような改正が行われますと、こういうものが随分たくさん行われるのではないかというふうに予想するわけです。しかしこれは、冒頭政務次官から説明されたように、この改正法は資本充実を図るためにやるんだ、こうおっしゃるわけで、この見せ金というものをもう少しきちっとしてもらわないと資本充実にはならないと思います。私は処罰規定を探しましたけれども、商法にはそのような処罰規定はありません。あえて言えば公正証書の原本不実記載罪でということになろうかと思いますけれども、今回の改正が資本充実を図るということを高らかにうたい上げる以上は、実際世上間々行われていることがはっきりしているこの見せ金の増資払い込みというものを禁圧する一つの処罰規定というものを欠くというのは片手落ちではないかというふうに思うわけです。 私の考えですけれども、事後設立という方法があります。これは、会社を設立してから、資本金との関係もありますけれども、不動産を一定の期間に買うという場合に検査役の検査というものがすっぽ抜けるわけですから、このようなものをしてはいけない、あるいは、する場合には一つの厳格な規定がある、こういうものがありますから、それと同じように考えれば、この見せ金というものも、一定期間内に返済をするという約束をするということ自体で処罰規定は案外簡単に構成要件化できるのではないかというふうに思うわけです。今後の課題になるのかもわかりませんけれども、時間も来ました。その点について一言答弁をいただきたいというふうに思います。
○清水(湛)政府委員 先生も既によく御存じのことでございますが、見せ金による会社の設立というのはかなり行われておるという御指摘は確かにあるわけでございます。一方、商法では預け合いの罪というのが定められております。見せ金と預け合いの違いがどこにあるかということも一つの論点ではございますけれども、預け合いの場合には、払込取扱銀行と払込人との間でいわば一種の共謀が行われるという点に大きな特色がある。それがいわゆる見せ金との基本的な食い違いだというようなことが言われているわけでございます。 今回の商法の改正に当たって、法制審議会におきましても、預け合いの罪とは別に見せ金を処罰の対象にすべきではないかというような議論がございまして、実はかなり検討したわけでございます。しかし、そういう議論の過程の中で、いわゆる見せ金も、もしそれが本当に見せ金だということが証明されるならば、見せ金による払い込みをした者も、これは公正証書原本不実記載に該当する、これはもうそういう考え方は実務上確立されておるというような御指摘がございました。見せ金を犯罪類型といたしますと、公正証書原本不実記載よりかあるいは犯罪の既遂時期が若干早くなるというような点はあるといたしましても、法定刑の範囲なんというものは大体これと同じようにならざるを得ないということになりますと、特に見せ金についてこれを刑罰の対象とする必要があるかないかというような議論も実は出てまいりました。そこで、今回の改正案におきましては、そういうようないろいろな問題も指摘されたこともありまして、見せ金による会社設立行為を独自の刑法犯罪とするということは見送らせていただいたわけでございます。ただしかし、委員御指摘のような問題があるということは私ども十分承知しておりますので、何かいい方法があればということで今後の検討課題にさせていただきたいというふうに思う次第でございます。
○冬柴委員 時間が参りましたので、法務大臣お見えになりましたけれども、私の質問は終わらせていただきます。
○小澤委員長 宇都宮真由美君。
○宇都宮委員 日本社会党の宇都宮真由美でございます。よろしくお願いいたします。 まず、法務大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、今回出されましたこの商法の改正案でございますね、試案から要綱へ、そして要綱から今回の改正案へといろいろ変わってきておりますけれども、その過程を含めまして、今回の改正案につきましてどのような評価をなさっていますでしょうか。まずそれについてお尋ねいたします。
○長谷川国務大臣 私もそれほど詳しくはないのでございますが、ただ、自分で中小企業をやっております。したがって、若干いろいろそういう面からはわかるつもりでおりますが、改正前と今と 比べますと、この改正案が完全無欠の立派なものだというほどの評価はできないにしても、前からのものに比べればかなり長足の進歩の跡が見られる。まあしかし、いろいろページをめくってみれば、若干疑問の点もなきにしもあらずでございますが、法律というものは、御案内のとおり、長い間に直したり、また是正したりする場合もなきにしもあらずでございますので、これからも十分検討しまして、最善、最良のものをつくっていきたいというふうに考えております。 以上であります。
○宇都宮委員 まず、我が国におきます株式会社、有限会社、この存在の実態を見ますと、法律の理想とは異なりましてほとんど小規模かつ閉鎖的なものが大部分を占めております。株式会社で五億円未満のものが九七%を占める、このような状況にございます。したがって、大会社を前提としました法の規制は現在形骸化している事情にございます。この点にはまず異論がないかとは思うのですけれども、こういう事実によって一番不利益をこうむっているのは、こういう会社と取引関係に立つ債権者ではないかと思います。そういう意味からすれば、昭和五十六年に大規模な商法改正が行われましたけれども、その後続けられてきた商法改正の作業、この大きな目的の一つには債権者の保護ということが掲げられていたのではないかと思います。 したがって、今回の改正作業の中では債権者の保護という視点が大きかったのではないかと思うのですけれども、その点どうなのでしょうか。改正作業に携わってきた方に御意見を伺いたいと思います。
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。 委員仰せのとおり、昭和五十六年の法改正は、主として大規模な会社を念頭に置きまして、株主総会制度だとか株式制度、いわゆる単位株制度の導入とか、あるいは会計監査人制度の拡大というような点に重点を置いて行われたわけでございます。その後、中小の株式会社を念頭に置いて中小の株式会社にふさわしい法的な整備を図る、合理化を図る、こういうこと、同時に会社法の一つの中心点は債権者保護でございますから、そういう債権者保護が徹底されるように、より強化されるように、最低資本金制度の導入等を一つの重点の柱として論議が重ねられてきた、こういうふうに私どもは考えております。
○宇都宮委員 この最低資本金の制度というものが債権者の保護のためである、債権者保護に資するものであると言われますけれども、一面では理解できないこともないのですけれども、ただ、幾ら最低資本金というものを定めましても、会社の成立後はこの資本金に相当する財産が会社に存在するということを保証するものではございません。この最低資本金の制度が本当に債権者の保護に資するためには、やはり会社の計算が適正に行われ、かつ、そのための計算が公開されるということ、この点が必要ではないかと思うのですけれども、この点、今回の改正案には計算の公開の制度はのけられております。この点いかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、最低資本金制度を導入いたしましても、会社の計算を操作させることによって中身が空洞化するということがありますと、全く無意味になるわけでございます。そういうことから、商法におきましては、資本充実の原則ということで、少なくとも最低資本金に見合った純資産は会社内に常時保持されていなければならないということでいろいろな手当てをしているわけでございます。監査制度を充実強化するということもその一つでございます。さらには、そういう監査制度の結果を対外的に明らかにする、こういうこともその真実性を担保する手段として重要な事柄だというふうに思われるわけでございます。 そういうような観点から、今回の商法の改正の前提となります法制審議会の答申におきましては、計算書類の商業登記所における公開について制度を定めておったところでございますけれども、その後、法案作成をし、国会に提案するに至るまでの過程の中で関係方面との意見調整をした結果、現状では時期尚早であるということで、この部分は見送りになった、こういう経過になるわけでございます。
○宇都宮委員 やはりこの最低資本金の制度を導入するだけでは債権者の保護にはならないということだと思うのですけれども、試案から、そして要綱を作成するまでずっと各界の意見もお聞きになって、その上で要綱をつくられたと思うのですけれども、どういう方面からどういう意見が出て、今回この計算の公開が見送りになったのか、もう少し具体的に教えていただきたいと思いますが。
○清水(湛)政府委員 法制審議会における答申の内容は、株式会社は貸借対照表、損益計算書及び監査報告書を登記所で公開しなければならないというものでございました。しかし、この原則に対する例外として、商法特例法上の大会社以外の株式会社は、当分の間、貸借対照表のみを提出すれば足りる、こういうことにし、かつ資本金三千万円未満で負債総額五億円未満の株式会社は、当分の間、この計算書類を登記所に提出することを要しない、こういたしておりました。つまり、資本金三千万円以上で負債総額五億円以上の会社で、かつ会計監査人、つまり公認会計士等の監査の対象となっている以外の会社、つまり大会社以外の会社ですね、そういう会社は、貸借対照表を登記所に提出して、そこで公開するということになっていたわけでございます。 こういうような、少なくとも資本金三千万円以上の会社を対象とするという商業登記所における公開制度であったわけでございますが、法制審議会の審議の過程でも、実はいろいろな意見がございまして、大体、法曹界出身者、弁護士会の代表者でございますが、あるいは大学の関係者はほぼ一致してこういうことに賛成だったと言っていいと思うのでありますが、経済界では、中小企業団体の代表者、これも当然法制審議会の委員になっているわけでございますが、そういう方を中心に非常に消極意見が多かったというのが実情でございます。しかしながら、法制審議会の多数は、やはりこの際、こういう制度を採用すべきであるということで答申に踏み切ったわけでございます。 私ども、そういう答申を受けまして、法案を作成するに当たり、いろいろな方々等の御意見も伺ったわけでございます。中小企業団体等から私どもにいろいろな意見書を寄せられるというようなこともございました。 まず第一に、例えば中小企業に、登記所に提出をするというようなことについて新たな負担を課すことになる、あるいはまた、中小会社ではこういうような計算書類、貸借対照表でございますけれども、そういうものを登記所に出すということになりますと、取引先等からいろいろなことを言われて非常に商売をやりにくくなるというような意見を述べる方もありましたし、あるいは企業のプライバシーが侵害されるのだというようなことをおっしゃる方もおりました。 そういうようないろいろな意見があったわけでございますけれども、しかし基本的にそういう計算書類を登記所に提出しなければならない中小企業自体が反対だということになりますと、こういう制度をつくっても、これがまたうまく作用しないという心配もあるわけでございまして、私ども、制度は非常に理論的には正しいと今も考えているわけですが、現実の問題として、これが十分にまだ中小企業団体に理解されていないということもありまして、こういう制度、現実に中小企業に負担をかけるような制度を導入するに当たりましては、やはりそういう方面の理解を十分に得た上で円滑な導入を図る必要があるのではないかということから、今回はこれを見送らしていただく、こういうことになったわけでございます。
○宇都宮委員 日本では、どうも情報の公開ということに対して何か拒否反応があるような気がするのですけれども、現在、日米構造協議でも、企業間の取引の情報公開を要請されております。そ ういう意味で、企業を企業として社会的存在としてやっていく以上、情報の公開ということはある程度企業としてのうまみを利用するものとして、むしろ当然だと思うのですけれども、その中小企業の方で今回反対するという理由は、先ほどプライバシーの侵害になるとかいう意見も出されたかに聞きましたけれども、どうもそれは説得力ある意見ではないと思うのです。説得力ある意見としてはどのようなものが出されたのでしょうか。そして、どういうことに説得されて今回見送ったのでしょうか。
○清水(湛)政府委員 いろいろな理由は挙げられているわけでございますけれども、やはり結論といたしましては、例えば今まで税務申告の関係では税務署にこの種の書類を出しているはずですし、銀行取引の関係では銀行にこの種の書類を必要に応じて提出しているはずでございますが、それ以外の第三者に、しかも第三者が自由に見られる、貸借対照表だけでございますけれども。そういうようなことに対する一種の非常に抵抗感というか、そういうものがあったのではないか。もちろん株式会社でございます以上、官報あるいは日刊新聞に貸借対照表等を公告しなければならない義務が現在あるわけでございまして、これを怠りますと百万円以下の過料に処せられることになっているわけですが、現実の問題として、官報公告等をきちんとやっている会社は全株式会社のうちせいぜい一万数千社、二万社程度しかないというのが実情でございます。そういう実情を踏まえて考えますと、多くの中小企業の方々が全く新しいことをやらされるということになり、それに対して非常に大きな抵抗感を持った。そういう抵抗感というのは時間をかけてほぐしていく必要がある、こういうふうに言わざるを得ないのではないか。 ということで、私先ほど申し上げましたように、実はこの問題は昭和三十七年の法制審議会の答申にも一部盛られた事柄でございまして、戦後の商法の歴史の中で長年議論されている問題でございます。やっとこういう形できちんとした案が出てきたということだけでも大きな進歩だと思いますが、さらに関係方面の理解を深める努力をした上でやるのが適当である、こういう結論になったわけでございます。
○宇都宮委員 三十七年からこういう公開の意見はあったということで、それまでにも随分御努力をなされてきたと思うのですけれども、それでも今まだ時期尚早だ。したがって、将来としては、この公開の制度を導入なさるおつもりがあるかというか、されたいと思うのですけれども、そのためには日本人の感覚みたいなものも多分に影響しているような気がするのです。どういう方面からどういう努力をしてどの程度の時期にこれを実現したいと思っていらっしゃるか、ちょっと教えていただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 この改正案を出すにつきましても、中小企業団体等の代表者といろいろな話をする機会を法務省の関係者は持ったわけでございます。もちろん法制審議会の議論の過程でそういう方面からの代表者も来ておられるわけでございますが、さらに法制審議会の商法部会で今後商法改正問題を引き続き検討していく審議の過程におきましても、あるいはその他いろいろな機会におきましても、そういう関係者との接触を密にして、できるだけ速やかに実現を図りたい。法制審議会の貴重な答申をいただいておるところでございますので、できるだけ早くこの実現ができるようにいたしたいと考えております。
○宇都宮委員 そういうふうにいつまでも時期が来るのを待っていてはこの公開の制度の導入というのはなかなかできないような気がしております。思い切っていつかの段階で導入しなければ、これからの本当の意味での企業の発展というものはないのではないかと思っております。 現在、会社制度を利用する者に、どうもその制度のうまみだけを利用しようとしている傾向があるような気がするのですけれども、例えば資本金の制度でも、要綱ではたしか株式会社の最低資本金が二千万で有限会社が五百万円であった。それが今回の改正では一千万円と三百万になった。これも中小企業等の意見をお聞きになってのことだと思うのですけれども、あっという間に金額が下がったわけをちょっとお聞きしたいと思います。
○清水(湛)政府委員 最低資本金につきましては、法制審議会の答申は二つにグルーピングをしておりまして、新設会社、つもりこの法律が施行後新たに設立する会社につきましては、株式会社は二千万円、有限会社は五百万円といたしておりました。そしてもう既に設立されている既存会社につきましては、「当分の間」という表現がございましたけれども、いついつまでという限定なしに当分の間、株式会社は一千万円、有限会社は三百万円、こういうことにいたしたわけでございます。 最低資本金の金額につきましては、例えば、株式会社については一億円が適当であるとか五千万円が適当であるとか少なくとも三千万円以上であるべきであるというようないろいろな意見が寄せられまして、議論が重ねられたところでございますけれども、一つの線として、二千万円程度が適当ではないかということで、多数がそういうところに落ちついた経緯があるわけでございます。しかしながら、法案作成の過程でさらに各方面からの意見を聞いてまいりますと、結局、当分の間、圧倒的多数を占めるはずである既存会社は資本金一千万円であるのに、数量的にはそれほどの数には当分の間はならない新設会社が二千万円というのは、新設会社、既存会社という違いはあるにせよ、必ずしも合理的ではないのではないかというような意見もあったわけでございます。別に私どもはそういう意見に賛成したというわけではございませんけれども、二千万・五百万、一千万・三百万という選択肢があるわけでございますので、諸事情を考慮いたしまして、一千万円・三百万円ならば大方の賛同は得られる、それに対して特に強い異論は余りないのではないかということから、最終的には一千万・三百万という既存会社の基準に依拠することにいたしたという経過でございます。確かに法制審議会の答申には反しているわけでございますが、最終的にはそういうことにさせていただきましたということでございます。
○宇都宮委員 確かに既存会社のことも考えなければならないとは思いますけれども、そもそも会社というのは社団であり、資本金というものは一人が出すことを予定されているわけではないと思います。そうだとすれば、既存会社にしましても二千万に縛られて資本金を上げなければならない、そういう義務を、負担をかけさせることになっても、会社制度というものを利用する以上は、その二千万を一人で出すのではなくて集めるとすれば、二千万を集める能力がない者はそもそも会社制度を利用する資格がないと言ってもいいのではないかと思うのです。この一千万と三百万という金額は、どうも一人が出すのには負担が重過ぎる、そういうふうな観点から言われているような気がするのですけれども、その点はどうでしょうか。
○清水(湛)政府委員 一千万円を一人でぽんと出せるという方もおるかもしれません。特に今度の会社法では発起人は一人でいいという制度にもなっているわけでございますから、そういうこともあろうかと思います。しかしながら、やはり株式会社はできるだけ多くの人の出資を募って、責任をお互いに出資の限度で負うとともに、危険も分散させるという制度でございますので、多くの人たちが参加するということを当然のことながら考えているわけでございます。有限会社についても、閉鎖的な会社である、社員の数は五十人に制限されているというようなことがございましても、一人だけを当然のこととして最低資本金を決めておるというわけではございません。
○宇都宮委員 今回の改正案を見ますと、そして先ほどからのお話をお聞きしますと、私から見ますと余り説得力がないように思われるのですけれども、そういう経済界、中小企業界の意見によって多分に押し込められてしまったというふうに感 じられるのです。その点どのようにお考えですか。
○清水(湛)政府委員 先ほど来議論に出ておりますように、私ども、理論の上と申しますかあるいは教科書の上で、株式会社らしい株式会社とかあるいは有限会社のあるべき姿というような議論は読み、あるいは学校でも教わったわけでございます。しかしながら、我が国の中小企業、株式会社、有限会社の実態というのは大部分が資本金一億円未満であり、資本金一千万円以下の会社もかなり存在する。株式会社のうちの八十万社が資本金一千万円以下である、あるいは有限会社のうちの七十万社あるいは八十万社が資本金三百万円以下であるという状況でございまして、やはりそういうような我が国企業の実情というものを踏まえて法律制度というものを考えていきませんと、また法律と現実が乖離してしまう。我が国の株式会社の一つの大きな問題点は、法律はきちんとかなり詳しく出ているのだけれども、大部分の企業は守らないという一つの法制と現実の乖離ということが指摘されているわけでございます。やはりそういう実情にあるということを踏まえ、中小企業なりあるいは小規模の株式会社、有限会社の実情というものを踏まえて、そういう企業ができるだけ法律、商法なり会社法の規定を守ることができるように少しずつ少しずつ改善をしていくということも必要なのではないか。こういう観点から、例えば最低資本金の額につきましても、理論的にはもっと高い額の数字を提唱する大学の先生方もあったわけでございますけれども、やはり最終的にはかなり低い金額に落ちついた、そういう一つの現実を踏まえた議論ではなかったかというふうに私自身は考えているところでございます。
○宇都宮委員 確かに現実と法の理想とが離れてしまっているという状況があることは認めます。それを現実と法を一致するようにするには、まず現実を法に合ったものにするのかあるいは法を現実を前提としてつくりかえるか、その両方があると思うのです。やはり株式会社というものが多分に技術的な制度である以上、法を前提にして、これは人間がつくった制度ですから、ある意味ではできてしまった現実に法を合わすのではなくて、法に現実を合わすよう、そういう方向で持っていくのが筋ではないかと私としては思っております。 それで、今回その最低資本金を定めると同時に、発起人を一人でもいいというふうになさいましたね。それは、どちらかといえば最低資本金の制度を決めるというのは、ある意味ではなるべく小さな会社というものは成立しにくくさせて、できるだけ法が適用されるような、少しでも大きな会社、法に見合った会社を多くしよう、その趣旨ではないかと思うのです。それから考えますと、発起人は一人でも設立できるというのは、どうもむしろ今の実情に合わせて法を直すような気がしてちょっと相反する点があるのじゃないかと思うのですけれども、その点いかがお考えでしょうか。
○清水(湛)政府委員 一方では最低資本金制度を導入して債権者の保護ということを言いながら、一方では発起人が一人で会社はつくれるということでありますから、第三者が例えば責任を追及しようとしても、その発起人は一人しかいない。もちろん設立後は取締役は所定の数の三人以上いなければならないわけでございますけれども、発起人の責任を追及しようと思うと一人しかいない。一人じゃその責任を追及しようとしても十分ではないのではないか、七人いれば七人にかかっていけるけれども、一人ならどうしようもないということも起こるのじゃないか、恐らくこういうような御疑問だろうと思います。一理はあると思います。しかし、現実の問題として、そういう小規模の会社、もちろん新しい最低資本金を満たした上での設立ということになるわけでございますが、そういう程度の会社でございましても、七人の発起人をそろえるということになりますと、例えば同族会社であれば自分の奥さんを発起人にしたり奥さんのお父さんを発起人にしたりというような、非常に不自然な形で発起人の数をそろえるというようなことが現実にはかなり行われておるというような実情が指摘されております。また、後でいろいろな会社設立をめぐるトラブルが発生しました場合に、いわば名板貸し的発起人の責任を追及されるというようなこともないわけではないし、そのために法律関係が混乱するというような実情があるわけでございます。 では、なぜ七人どうしても要求しなければならないかというようなことをつらつら考えてみますと、債権者の保護という観点に立つならば、それはむしろ会社の財産的基礎というものをきちんとさせる、こういうことの方がむしろ先決ではないのか、発起人の頭数をそろえるということよりか、やはり財産的基礎の確立を図るとかあるいは会社財産と個人財産というものをきちんと分けて分別管理を確保させる、こういうようなことに本来の債権者保護のポイントがあるのではないかというようなことが指摘されまして、形式的に七人を要求するというような制度はこの際やめてしまってもいいのではないか。現実に株主が一人しかいないというような株式会社、結果的に株主が一人になっておるというような株式会社もかなりあるというような指摘がされ、また株主が一人、つまり会社の所有者が一人であるというようないわゆる一人会社も適法な存在であるというふうに言われておりますようなことも背景にございまして、この際、発起人につきましても一人でよろしいというふうにさっぱりと簡明化したというところでございまして、債権者保護という観点と矛盾するものではないというふうに私どもは考えております。
○宇都宮委員 先ほど会社の計算の公開の制度についてちょっとお聞きしましたけれども、会社の計算が公開される以上、それによって提供される情報というものは正確でかつわかりやすいものでなければならない。そして、簡単に情報を入手できるようにしなければならないと思います。その意味で、今回の試案にはその会計計算が正確であることを担保するために会計調査人の制度というものがあったと思うのですけれども、この制度が提案されるに至りました経緯をちょっと少し教えていただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 会計調査人の制度は、今回の法制審議会の最終答申がされる前の法制審議会審議の過程において法務省の事務当局が作成した試案の中に含まれていたものでございます。しかしながら、試案を公表しまして各方面からいろいろな意見をお伺いした結果、時期尚早ということで法制審議会の答申には盛り込まれなかった、こういう経過をたどったものでございます。こういう会計調査人の制度というか、そういう発想が出てきましたのは、先ほども御説明申し上げたかと思いますが、昭和四十九年改正で、いわゆる大会社につきましては公認会計士あるいは監査法人による会計監査という制度が導入されたわけでございます。つまり、会計専門家による会社財産の状況あるいは損益の状況が会社の計算書類に正確に反映されているかどうかということをチェックする、こういうシステムが導入されたわけでございます。しかしながら、それ以外の会社につきまては、そういう会計専門家のチェックというようなものが取り入れられていないということになるわけでございます。まず、会社は申すまでもなく有限責任を前提としまして相当の責任財産を確保していなければならぬ、そういうことのためには、先ほど冒頭に先生御指摘のとおり、計算の適正を確保する必要がある、これは確かにまことに重要な点だと思います。計算の適正の確保というのは取締役の責任でございますとともに、監査役の監査の対象にもなるわけでございますが、さらにそれ以外に会計専門家によるチェックということが非常に有効な方策だというふうに言われているわけでございます。そういうことから、本来なら例えば公認会計士あるいは監査法人の会計監査人による監査というようなものが拡大されることが望ましいわけでございますが、御承知のように、公認会計士の数は約一万人しかいないという ような問題がございまして、これを現在の大会社以外の中小会社に公認会計士監査を拡大するということになりますと、とても人数が足りないという問題がありますとともに、公認会計士による監査ほどの厳格なものでなくても、監査とは違う調査というようなものであっても、ないよりましだ、ないよりましだというのはちょっと語弊のある表現でございますが、それでも非常に有益であるということで、会計監査人とは別に会計調査人という制度を導入しようということで、この制度が試案として提案されたわけでございます。
○宇都宮委員 この会計調査人の調査ということは、本来ならば監査が望ましいけれども、公認会計士の不足等の理由で調査でもいいというふうになさったのか、それとも、監査で要求されるほどのチェックは現実的に必要ないだろうということで調査を導入しようとなさったのか、どちらの方に。公認会計士が足りない、そういう事実の方から来ているのですか。
○清水(湛)政府委員 これは試案の段階でございまして、考え方としてはいろいろな考え方があり得たものだというふうに私ども理解しております。つまり、本来公認会計士による会計専門家の監査が望ましいんだという前提から、しかしそれは数の上で足りないから補充的に別なものを持ってこようというふうに考えた、そういう見地から会計調査人という制度を推進されたという方も中にはおられますし、そうではなくて、そういう大規模な会社については本当に資格のある会計専門家の監査が必要なんだけれども、まあ小さな会社についてはそれほど厳しい監査は要らないのじゃないか、それは監査役の監査で本来十分なんだけれども、それとは別にもう少し程度の高い専門家による会計調査というものがあってもいいのではないか、こういうような考え方から会計調査人の制度の必要性を説かれた方と、そういうことを念頭に御議論なされた方と二色あるのじゃないか、あるいは、両方の考え方に基づいて会計監査人とは違う会計調査人というような制度を考えられた方も私はあると思います。 ただしかし、これはいわば途中で議論がやんでしまいましたので、最終的な性格づけ、これをどういうようなものとして制度化するかというような議論は結論を得ないまま法制審議会においては棚上げになってしまった、こういうことでございます。
○宇都宮委員 公認会計士による監査と会計調査人の調査の具体的な違いというものはどのようにお考えだったわけですか。
○清水(湛)政府委員 これも実は非常に難しい問題でございまして、公認会計士の監査というのは、一言で申しますと、会社の財産の状況と会社の損益の状況が会社の作成した計算書類に正確に反映しているかどうかということをチェックするのが監査だというふうに言われていると私は理解しております。では、調査というのは何なのか。これがまた実は一つ大変な議論の対象でございまして、例えば公認会計士の皆様方は、およそ計算書類について調査をするという以上、それは公認会計士のする監査以外にない、調査なんというのはまやかしであるというような議論も実は極論すればあったわけでございまして、調査をどういうふうに性格づけるのか。調査というのは監査とは違うわけでございますから、財産の状況とか損益の状況が正確に計算書類に反映されているかどうかということではなくて、むしろ会社の各種計算書類あるいは各種帳簿が適正に調製されているかどうかというようなことを調査するのが調査だというような定義づけも実はあるわけでございます。その辺、まさに監査と調査を法律的にどう位置づけるかということ、この理念的な対立が根本にあるわけでございまして、結局この問題については、そういうものについての関係者の意見の一致が得られなかったということになるのではないのかなと私は考えているところでございます。
○宇都宮委員 では、将来やはり監査と調査の二本立てでいくのがよいと考えていらっしゃるのか、それとも将来はできれば調査よりも本来の監査をするようにしたい、そのようにお考えなのか。方向づけとしてはどちらがよいとお考えになられますか。
○清水(湛)政府委員 試案の段階におきましては、監査はもちろん公認会計士あるいは監査法人ということになるわけでございますが、会計調査につきましては税理士さん、これは人数が約五万人おられるということで税理士さんなどが中心的な存在として考えられていたように思います。しかし将来どうするか。これは、人数の問題ということになりますと、監査対象となる会社の範囲をどうするかという問題と絡んでくるわけです。最低資本金をもっと高くしてしまうことにいたしますと、そんなに人数は多く要らないということになってまいりますし、資本金の額を基準をぐっと下に下げますと、とても公認会計士では足りないということになるわけでございまして、そもそも、そういう会計調査の対象会社をどういうふうにグルーピングするかも大変な問題ですし、それからそういうこととの絡みで会計調査人というのはどういう方になってもらうかが必然的にまた影響されてくるし、さらにまたぐるぐる回りしてまいりますと、監査と調査はどこが違うのかという三つどもえの議論が出てくるわけでございます。 私ども、今の段階で基本的にどちらの方向でどういう制度にしていくかということはまだ成案を持ち合わせておりませんで、試案として発表したものについていろいろな意見が出てきて、まだそれが十分に調整されるような状況になっていない、こういうのがはっきり申し上げてただいまの状況でございます。委員最初に御指摘のように、例えばせっかく登記所に計算書類を公開するというのであるならば、そういう専門家のチェックを経たものを公開するのが望ましいのではないかという御指摘はまことにもっともでございまして、そういうことを今も述べておられる方もおるわけでございますが、しかし、実は法制審議会の答申は会計調査の制度が決着がつかないと登記所公開はできないということではございませんで、結局その問題は棚上げしつつも登記所公開はやるべきだというのが今回の法制審議会の答申でございます。 そういうことでございますけれども、登記所公開の問題が先送りになりました上に、この会計調査制度というものがまだ決着がつかない状況で残っているということでございますので、こういう問題につきましても、今後とも何かいい知恵があるなら知恵を絞ってつくり上げていきたいものと考えているところでございます。
○宇都宮委員 ちょっとお聞きしたいのですけれども、税理士の場合はすべての税理士が調査人になり得るというふうにお考えだったのでしょうか。それともう一つは、例えば会社の経理を預かっている税理士が調査人となるというのでは意味がないと思うのですけれども、そのあたりはどういうふうにお考えだったわけですか。
○清水(湛)政府委員 税理士会の御意見は、税理士だけがこういう調査人になり得るものとすべきであるというような御意見だったかと今記憶いたしております。 ただしかし、税理士さんは監査の専門家ではございません。税務の専門家であることは当然のことでございますけれども、監査の専門家ではないというようなことも指摘されているわけでございまして、調査人の仕事が税務そのものではないということから、調査人としての能力を検証する何らかの手続が必要ではないのか、税理士だから当然にということにならないのではないかという御意見も実はあったわけでございまして、そういう問題も未決着のままに現在なっておるという状況でございます。
○宇都宮委員 税理士会の意見は大体わかるのですけれども、この会計調査人の制度を導入するに当たって、ほかの関係各界の対応はどうであったのか。また、今回の改正からは見送られた理由について簡単に教えていただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 失礼いたしました。前の答弁で、税理士会の御意見は、監査法人は会計調査 人として認めるべきではないけれども、公認会計士は調査人として認めていいのではないか、こういう御意見だったようでございますので、訂正させていただきます。 結局、会計調査人制度が導入されなかった背景というのは、端的に申しますと、公認会計士団体の方の主張と税理士団体の主張とがお互いに非常にかけ離れていたということではないか、そういうことに帰着するのではないかということでございます。結局、正規の監査と異なる程度の低い調査というものが一体あるのかないのかという、大変高級といいますか、本質的な議論、あるいは仮にそういうものがあるといたしましても、本当にこれは有効な制度たり得るのかどうかというような議論、それに加えまして、あるいは調査対象会社の範囲をどうするかとか、調査人にはどういう人を選び、あるいは資格の検証はどういう手続でやるのかというようなさまざまな問題があるわけでございます。これは、実施しますと、この対象会社というのは恐らく二十万前後の数が想定されるわけでございますが、そういう極めて多くの会社に一斉に会計調査人という者が参りまして調査するということになるわけでございますので、実際の運用上にも非常に大きな問題がある。これを受けなければならない企業側からもまだいろいろ言わなければならないような問題が出てくるということもございまして、結局見送らざるを得なかったというふうに理解いたしております。 そういう意味では、理念的にはぜひ実現すべき制度だと言われながら、現実にこれをどういう形で、どういう方法で導入するかということになりますと、まだまだ十分議論をし尽くさなければならない問題が多々あるように思う次第でございます。
○宇都宮委員 調査と監査についての本質的な議論もわからないではないのですけれども、現実に債権者保護のために必要であれば、今よりも少しでもよくなるのであれば調査制度を少しでも早く導入していただきたいと思うし、その際に税理士会と公認会計士の職場の争いのようなものは、この制度を導入するに当たってはむしろ本質的なものではないと考えるのですけれども、その点、いかがでしょうか。
○清水(湛)政府委員 やはり現実に制度を運用していく、あるいはその制度を担っていただく方々の御意見でございますので、私どもとしては御意見を十分に拝聴してまいりたいと考えております。
○宇都宮委員 それから、試案では、会計監査人による監査につきましても、ちょっと正確ではないかもしれませんけれども商法の特例法で、二条の一号ですか、言われているような大きな有限会社についても、株式会社だけではなくて有限会社についても導入しようというような案が出されていたということ。あるいは任意監査ですか、そのような制度の導入が考えられていたと思っているのですけれども、その点について少し教えていただきたいと思うのです。
○清水(湛)政府委員 これは試案でございますけれども、商法特例法二条の基準に該当する株式会社及び有限会社は、会計監査人の監査を受けなければならないということで、要するに会計監査の範囲をさらに拡大しようという案でございました。 しかしながら、会計監査の範囲の拡大の問題は、会計調査人の制度が見送りになったと軌を一にして、あるいはそれとの並びで監査役制度についての検討というようなものをも含めまして、次回に監査制度全般の問題として、この会計監査人の監査の拡大の問題はそういう扱いをされることになった、こういうふうに理解いたしております。
○宇都宮委員 特例法二条で言うような大きな有限会社がどの程度あるのかはちょっとわからないのですけれども、これは有限会社と株式会社で特に差異を設ける必要はないような気がするのです。そして、このくらいの制度の導入であればそれほど問題はないかと思うのですけれども、今回見送られた理由は何ですか。
○清水(湛)政府委員 先ほどもちょっと申し上げたかもしれませんが、要するに監査制度の問題が今回の改正法では全部見送りになりました。経営管理機構の問題として監査制度についてさらにこれを改善するかどうかというような問題が実は指摘されていたわけでございますけれども、いわばそれとワンセットという形で大会社についての監査制度あるいは会計監査人による監査の対象の拡大というものが次回の検討事項として一括見送られた、こういう経緯だというふうに申し上げてよいかと思います。
○宇都宮委員 一括にしなければならない理由はないと思うのです。少しでも現在の債権者保護に役立つならば、一つずつからでもしていけばいいのじゃないかと思いますけれども、それはおいておきまして、もう一つ、任意監査の制度が試案では考えられていたということなんですが、この任意監査についてはどのような制度をお考えになっていたのでしょうか。
○大谷説明員 お答え申し上げます。 試案の中には、先生御指摘の任意監査の構想が盛り込まれておりました。それについて申し上げますと、一定の基準というのは、当時具体的には資本金が一億円未満かつ負債総額十億円未満というような会社でございますが、相当規模の大きい会社については任意に定款で会計監査人の監査を受ける旨を定めることができるというような構想を打ち出していたわけでございます。この任意監査というのは、会社が進んで受ける事柄であるから会社の自由にゆだねておけば構わないではないか、何で法律にこのような規定をわざわざ置くのかというような疑念も若干抱かれる方があるわけでありますけれども、公認会計士の監査には一定の法律上の効果が付与されております。すなわち、公認会計士たる会計監査人の監査を受け、その適法意見を受けますと同時に、会社の監査役の適法意見を受けますと、計算書類の確定について株主総会の承認決議を受けることを要しないということになっております。すなわち、株主総会では貸借対照表と損益計算につきましてその内容を株主に報告をするだけでよい、それだけで計算の確定ができるという大変大きなメリットがあるわけでございます。こういう法律上のメリットというのは、会計監査人の監査を受け得るという法律上の受け皿がないと難しい。そういう受け皿がないところで会社が任意に公認会計士の監査を受けても、それは事実上そういう監査を受けたということだけである。そういう観点から、そういう根拠規定をはっきりと置いて、会社が進んで公認会計士の監査を受けるということを慫慂したいという発想であったわけでございます。
○宇都宮委員 それが今回見送られたというのは、監査に関する制度は一括でということになるのかもしれませんけれども、今回見送られた理由と、そしてこの任意監査、先ほど法律上のメリットがあるということを教えていただいたのですけれども、現実にどの程度——ある意味では余り利用されないのじゃないかなという気がしますけれども、そのあたりの見通しはどういうふうな議論がなされたのでしょうか。
○大谷説明員 お答え申し上げます。 これは株主総会の運営の実態とかなり密接な関連があるわけでございます。世上、いわゆる総会屋というような特殊株主がばっこいたしまして、会社に対する嫌がらせを行うというようなことについて会社の経営者が非常に神経をとがらせているというようなことを言われているわけでありますが、そういう会社の株主総会を運営する立場の者からいたしますと、計算書類を総会の承認決議を受ける必要なく確定できるということは非常にありがたいということになるわけであります。したがいまして、株主総会におけるそういういろいろな危険あるいは心理的な負担、そういうものを回避したいというふうに考える向きがあれば、そういうことからもこういう制度を利用しようという現象はあり得るかと思いますけれども、それはそれほど本来的な目的ではない。やはり会社が自 己の会社の計算の適正をしっかり確保していきたい、そのためには専門家のチェックというものを受ける、それによってみずからの経済基盤を確立していきたい、そういう認識が一層深まるということは望ましいわけでございまして、こういう制度が法定されて受け皿ができますと、そういう認識が徐々に経済界に広まり、中小会社の間にも監査の重要性ということについての評価が高まるのではないかというふうに期待しているわけでございます。
○宇都宮委員 現在、会社の監査については、内部による監査だけではなくて外部監査の必要があるということは世界的な傾向でもあるかのように聞いております。 そこで、現在あります内部監査ですけれども、監査役の制度について、今回の試案から改正案を作成するについて検討されていた事柄について少し教えていただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 監査役制度については、昭和四十九年改正等でかなり大幅な改正がされ、五十六年改正におきましても、さらにその充実強化が図られたという経緯がございます。しかしながら、会社の会計あるいは業務というものを適正に遂行するということのためには、やはり監査役制度をもっと充実強化する必要があるのじゃないかということは、もう四十九年改正あるいは五十六年改正後におきましても各方面から強く指摘されていたところでございます。そこで、今回の商法改正に当たりまして、法制審議会の議論におきましても、例えばすべての監査役に業務監査権を認める。これは現行法では、商法特例法上の小会社の監査役は業務監査権は持たない、会計監査権だけである、こういうことになっているわけでございます。そういうようなことでございますけれども、すべての監査役に業務監査権を認めるということにしたらどうかというような御意見だとか、監査役の資格と申しますか、取締役の直系血族とかあるいは取締役と生計を一にする者は監査役になれないようにしたらどうかとか、これは必ずしも多くの人の意見ではございませんでしたけれども、大会社に監査役会の制度を導入するというようなことを考えたらどうかというようないろいろな御意見がございました。 これらの問題、いずれも監査制度の問題として、先ほども申し上げました有限会社に公認会計士等の監査を導入するというような制度とともに、監査制度をどうするかということの絡みで、これは主として大会社を念頭に置いた議論が多かったわけでございますけれども、次回の検討事項とされたという経緯でございます。
○宇都宮委員 この監査役制度につきまして、これは外部監査ではないのですけれども、少しでも外部の風を入れるといいますかそういう角度から、大会社につきましては、複数監査役のうちの一名は従業員の過半数で組織する労働組合などの同意を得なければならないとするような、そういうことも考えられるかとは思うのですけれども、これにつきましてはどのようにお考えでしょうか。
○清水(湛)政府委員 監査役の選任は、会社の最高の意思決定機関である株主総会の専権事項ということになっているわけでございまして、株主の意思とはまた別に一名は従業員の過半数で組織する労働組合などの同意を得なければならないというようなことを定めるのは適当かどうか、これは非常に慎重な検討を要すると思いますけれども、いずれにいたしましても、監査役制度のあり方の問題は、先ほど来申し上げましたように、今後の検討課題として一括して見送られておりますので、その中で一つの意見として検討されることになるのではないかというふうに考えております。
○宇都宮委員 もちろん、株式会社の最高意思決定機関である株主総会の意向を無視してするわけにはいかないと思いますけれども、そこのチェックができれば、それこそ今まで取締役の配偶者とかそういう者を排除すると同じような視点で、会社を経営する者より少しでも遠い者の意見を入れるという意味で十分考え得る案ではないかと思うのですけれども、どうでしょうか。
○清水(湛)政府委員 監査役の問題ではございませんけれども、例えば労働者の経営参加の問題等、ヨーロッパ諸国の一部の国でそういうようなことが実践されているというような話も私ども聞くわけでございます。監査役につきましても、労働組合の意思を反映させるというような御意見もあるいはそういう流れの中の一つの考え方なのかなというふうに私思うわけでございます。そういう労働者の経営参加的な発想というものが一つの流れとしてあるということは、私ども十分承知しておるところでございます。そういうことが日本の会社法の中でどういうふうに取り入れられるのかということにつきましては、これは今後法制審議会であるいはいろいろな角度から検討されることと思いますけれども、さてそれがどういう方向に行くのかということにつきましては、私自身まだこのことについて定見を持ち合わせておりませんので、今ここで直ちに申し上げることはちょっとできかねるというところでございます。
○宇都宮委員 先ほどから出ております計算書類を、要するに会社が情報として提供するその計算の正確性を担保する意味で、もし虚偽の計算書類を作成したりそれを提出した場合について、その取締役に対する刑罰を科するとかそういうことが法制審議会ではどのように検討されてきたのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 現行法上、会社が虚偽の貸借対照表とか損益計算書を作成するというようなことをいたしますと、現在の商法四百九十八条の第十九号という規定がございまして、これによりまして、作成をした取締役などは百万円以下の過料に処せられるという規定がございます。あるいはこのような計算書類を公告いたしますと、また百万円以下の過料に処せられるというようなこともございます。それから、このような規定は監査役にも準用されまして、監査役が虚偽の監査報告書を策定いたしますと、監査役はまた別か——いずれにいたしましても、そういう過料の制裁があるということと、それからもちろん二百六十六条ノ三の民事責任が取締役に生ずるということがあるわけでございます。 それに加えて、御質問の趣旨は、現行法にはない刑事罰を科すことにしたらどうかということではないかと思いますが、例えば法制審議会の中では、会社が虚偽の貸借対照表等を作成し、あるいは登記所に提出するというようなことがされた場合には、三年以下の懲役あるいは百万円以下の罰金に処するというような刑事罰を設けたらどうかとか、あるいは監査役あるいは会計監査人が監査報告書に不実の記載をするあるいは虚偽の記載をするというようなことについても同じような刑事罰を科すとか、そういうような計算書類に不実記載をするというようなことについての刑事罰を新たに設けたらどうかというような議論がされた経緯はございますけれども、最終的には今回の答申には盛り込まれなかったわけでございます。これは、基本的には監査制度の問題その他の問題として今後改めて議論されることになるだろうというふうに私どもは考えております。
○宇都宮委員 そして、この計算の公開がもし盛り込まれた場合には、そういう制度が導入された場合には、虚偽の計算書類を提出したとか記載したとかじゃなくて、不作為、書類を提出しない取締役に対する罰則等も検討されたのでしょうか。
○清水(湛)政府委員 不提出については、罰則は設けるということにはなっておりませんでした。
○宇都宮委員 現在、会社制度の乱用が阻止できず、ほとんどが小規模、閉鎖的な会社である。それで、一方では会社制度を利用しながら、一方では株主の有限責任の結果債権者が不利益をこうむっている、こういう現実がございますね。こういう現実のもとでは、株主の有限責任の原則、この原則を部分的に修正することにはなるかとは思うのですけれども、一定の場合に株主の責任を認める、こういうことが検討されていいのではないかと思うのですけれども、改正試案におかれて検討されました支配株主の賠償責任の制度、このこ とについて内容を少し教えてください。
○清水(湛)政府委員 これも実は、試案の中には一つの提案として示されておりましたけれども、最終的には法制審議会の答申には盛り込まれなかった、こういう経緯をたどった問題でございます。 これは、資本金が一定の金額、例えば五千万円というふうになっておりますけれども、に満たないそういう株式会社、有限会社において、発行済み株式総数または資本の二分の一以上の株式、持ち分を有する株主、社員は、その者が取締役または取締役の職務執行に重要な影響力を行使する者であるときは、その地位にある間に発生した労働債権または不法行為債権につき、会社が弁済することができない場合に直接の責任を負う、こういった趣旨の規定でございます。 つまり、会社を事実上支配している株主、これは事実上支配という基準を二分の一以上の株式を持っておるという形で要件を定めているわけでございます。そういう株主がいわば会社経営に直接介入をしておる、みずから取締役で業務を執行しておるということであれば、取締役の責任として当然負うわけでございますが、そういう取締役でなくても、あるいは取締役の職務執行に重要な影響力を行使する者であれば、直接不法行為債権あるいは労働者の債権について弁済責任を負うという、非常に進んだと申しますか、今まで例にないような規定を試案として盛り込んだものでございます。貸付金についても同じような責任規定を置いているわけでございます。しかしながら、最終的にはこのような内容は採用されるには至らなかったというものでございます。
○宇都宮委員 私はこの制度を非常に評価しております。ただ、取締役の職務執行に重要な影響力を行使する者であるときというのが少し抽象的といいますか、な表現になっていると思うのですけれども、この点は問題がなかったかという点。そして、やはり株主の有限責任の大原則からいえば例外的になるわけなのですけれども、その点どのような議論がなされましたでしょうか。
○清水(湛)政府委員 非常に新しいと言えば新しい案でございますし、いろいろ反響を呼んだ案でございますけれども、弁護士さんとか大学関係者の中には賛成する方も多かったのでありますけれども、経済界とかその他の関係団体では消極意見が圧倒的に多かったという実情でございます。 もちろん、おっしゃるとおり有限責任原則を崩すと、本来株式会社というのは出資の限度で責任を負うという有限責任という大鉄則があるわけですから、それを単に株主ということだけで第三者に直接責任を負うというのは、これは合名、合資の無限責任社員と同じじゃないかというような議論でございます。 それから、何よりまことに正当に御指摘のように、支配株主等の要件、これは二分の一という数の面ではそれほど問題ではございませんけれども、取締役に影響を及ぼす、あるいは取締役の職務執行に重大な影響を及ぼすというような要件の判断が非常に困難だし、あるいは資本金五千万円以下の会社について適用するというのもどうもはっきり理由に乏しい。そういうことをすれば結局中小会社の経営者の責任が非常に過大になるじゃないか、こういう制度を導入しなくても中小会社の取締役は個人の連帯保証人になっておるというようなケースがあるんだから、そういうことで賄えばいいじゃないか等々いろいろな反論がございまして、さらには、いわば法人格否認の法理で追及をするということも不可能ではないのじゃないかというようないろいろな意見が出てまいりまして、この問題ははっきり申し上げて消極説が圧倒的であったという結果になりました。 したがいまして、今後の問題といたしましても、そう簡単にこういうような考え方が再浮上してくるというのはちょっと難しいかなという印象を率直に言って持っているところでございます。
○宇都宮委員 先ほどちょっと出ましたけれども、この場合、資本金が五千万ですか、これを五千万という限定をつけた理由はどういうところにあるわけですか。支配株主であるという要件を満たせば、むしろ資本金の額で限定をする必要もないのではないかというふうな気もするのですけれども。
○清水(湛)政府委員 例えば、五千万円ということで括弧の中に入っている数字でございますけれども、おっしゃるとおり五千万円以下の会社について支配株主という概念があり、五千万円を超える会社についてはそういう概念がないということ自体が既に非常に不自然ではないかということで、強い反対論の一つの根拠になったんだろうと思います。この考え方の基本には、恐らく当時の試案の作成者の考え方の背景には、やはりある程度の規模を持った企業ですと、株式を過半数持っているような人がいましても、経営管理機構という取締役制度とか、あるいは金融機関とかその他もろもろのチェックシステムが働いて、支配株主の恣意的な行動というものはそう簡単にできるものではないというような認識があり、しかしこの資本金五千万円程度以下の会社では、やはり金も出すけれども口も出すというような形での、かなり個人企業的な経営が行われるのではないかというような認識が恐らくあって、このような一つの試案がつくられたのではないかというふうに私は考えております。しかし、まさにそういうことがこの案についての一つの問題点でもあったわけでございまして、そういうことの合理性を十分に説明できるまでに至らなかった。したがって、法制審議会においても採用されなかった、最終的には採用される案とはならなかった、こういうことではないかというふうに考えております。
○宇都宮委員 それで、もう一つ、この責任を負うべき債権は労働債権と不法行為債権に限定されるということで、不法行為債権でも取引によって生じたものは除かれる。要するに、債務不履行による損害賠償請求権と競合するものは除かれるということなんですけれども、取引上の債権を除いた理由というのはどういうところにあるのでしょうか。
○永井政府委員 当時、試案の段階では、責任を負うべき債権は労働債権と不法行為債権に限定したという理由は、債権者、すなわち労働者または不法行為の被害者におきましては、債務者、すなわち使用者または加害者を選択して自衛する余地が極めて乏しい。取引ですと、それを選択する余地はあるけれども、労働債権と不法行為債権にはそういうものがないか、極めて乏しい。したがいまして、そういうものについては特に保護するべきだという観点から、こういう試案が出されたわけでございます。
○宇都宮委員 ただ、選択できるのだから取引する者もその選択をした以上そこに責任を持てということかもしれないのですけれども、現実に、こういう取引する者が不利益をこうむっているという事実があって、そして一方では、株主かもしれないけれども、支配株主として会社を支配して動かしている状況がある。そういう中で、特に取引によるものを除く必要はないのではないかとも考えられるのですけれども、どうでしょうか。
○永井政府委員 確かにその点は御指摘のとおりでございまして、責任を負う債務の範囲がこれでいいのかということは、まさに理論的にも問題になっていたわけです。ただ、類似の立法例といたしまして、ニューヨーク事業会社法等には、要するに閉鎖的な会社の上位十人の大株主に労働債権について特別の責任を認めるというような、そういった立法例があることも一つの参考になっていたのではないか、かように思っております。
○宇都宮委員 そうしましたら、今回は見送られた、各界のほとんど少数意見であった、賛成したのは法曹界とか学者、そのあたりからということなんですけれども、各界の意見は、具体的に少し細かくどうであったのかという点と、今後この制度、株主の有限責任、その原則を真っ向から少し修正しようとするこの制度について、まだこれから検討しようとしていこうというお気持ちがあるのかどうか、その見通しについて少し教えてください。
○大谷説明員 お答え申し上げます。 これまでの局長、審議官の答弁と重複するところがあるわけでございますけれども、この制度は、基本的には有限責任原則の補完条件としての制度だというふうに位置づけていたわけでございます。 すなわち、一方で最低資本金制度の導入を図りまして資本会社としての財産の基礎を確立するということを考えていたわけでございますが、その金額は、理念的には従来議論されておりますとおり、高ければ高いほどよいということが言えるわけでございます。しかし一方で、現実との妥協という余地も避けられない。そういうことから、当時は二千万円というような程度の金額が株式会社については資本金額として適当ではないかというようなことは検討されておりました。しかし、この二千万円、これは最終的に一千万円となりましたけれども、いずれにしても、その程度の金額というのは、要するにいろんな諸要素の妥協としての金額ということでありまして、有限責任の原則の前提条件たる資本金としては余りにも不十分であるというのが当時の一般的な認識であったわけでございます。 要するに、そういう資本金額さえ備えれば、それで有限責任の利益を一〇〇%主張するということを認めるわけにはまいらないのではないか。本来の資本会社としてのあるべき資本金というのは、もう少し高次の金額であるべきであろう。それについては、もちろん理論的に幾らが正当ということは言えないわけでございますけれども、一般的な認識としては、株式会社として存続する以上は五千万円程度の資本規模は要るのではないか。その程度の最低資本金を備えた会社でなければ有限責任の利益を享受させるわけにはいかない、そういう発想でございます。 したがいまして、そういう資本基礎を備えない会社、すなわち基礎の脆弱な会社につきましては、そういう会社制度を利用し、出資をし、そして企業活動をみずから行う、そういうものは本当はもう少したくさん資本として出資すべきである、それが不十分であるというわけでございますから、そういう制度によって企業活動を行い、そして先ほど来話がありますように、債権者において自衛の手段に乏しい者に対して損害を加えたという場合には、それは個人として責任を負うべきではないか、こういう発想でございます。こういう意見につきましては、各界意見について先ほど来御紹介申し上げているところでありますけれども、有限会社が有限責任の会社であると位置づけられていることに対する重大な例外になるわけでありますから、そういう根本原則との関係をどういうふうに理解するのかというのが理論的には非常に大きな問題でございます。それからまた、要件の設定というのが非常に難しい。重要な影響力を行使する者というようなことについて先ほどお尋ねがございましたけれども、そういう問題も含んでいる。さらには、責任を負うべき債権の範囲ということも問題であるということ。そういうことがそのまま各界意見の消極意見の基礎にあったわけでございます。 この問題は、結局株式会社の資本金の基礎として望ましい基準が法律上もきっちり設定できるということになった場合には、私どもの問題意識からは解消する問題であろうかと考えております。しかし、例えばこれを会社の基礎を問わないで、およそ支配株主として企業活動を行う限りはいかなる規模であれ個人として責任を負うべきであるということになりますと、これは従来の試案の発想からは大分離れてくる問題でございまして、これについては有限責任原則との調整関係をどう考えるかということがますます大きな問題になろうかと思います。それは立法政策として十分成り立ち得るものではあると私も考えておりますけれども、その前提としてはさらに十分な議論と検討が必要とされるのではないかと考えております。
○宇都宮委員 この支配株主の責任制度と並んで、一定の場合に、五千万円と例示されておりましたけれども、そういう貸付金につきまして出資とみなすべきだという意見も試案には盛り込まれていたと思うのです。この場合は確かに無限定ではいけないので、何か限定する必要があるのではないかという気もしないではないのですけれども、この出資金とみなすべき貸付金に関する審議会の中における議論あるいは意見等を少し教えていただきたいと思います。
○大谷説明員 お答え申し上げます。 ただいま御指摘の制度は、くどいようでございますが概要を申し上げますと、今お話ししましたのと全く同じ規模の会社でかつ全く同じ立場にある支配株主、こういうものが会社に対して貸付金を有しているという場合を想定しているわけでございます。先ほど来のお話から御理解いただけるかと思いますけれども、会社に対してそのような金を貸し付けているという場合に、本来それは貸し付けという形ではなくて出資という形できちんと会社の財産として移すべきである、そういうことが言えるわけであります。それにもかかわらず、出資という形にしないで貸し付けという形で処理をしている。そして会社が行き詰まって例えば倒産をしたという場合に、その支配株主の会社に対する貸付金を他の債権者の会社に対する貸付金と全く同じ取り扱いをして弁済の上で平等に取り扱うというのは、まさしく不公平ではないか。そういう立場の者の貸付金は、ほかの債務よりはある程度劣後する取り扱いをすべきではないかという問題意識でございまして、この問題意識そのものは非常に正当なものであろうかと思われます。こういう案につきましても、法曹界あるいは学者等々からはかなりの支持の御意見をいただいたわけでございます。 しかし、この問題につきましては、むしろ理論的な困難な問題が内在しているわけであります。一般債権よりは劣後させるということになるわけでありますけれども、こういうことが問題となります場面というのは、結局破産手続とか会社更生あるいは和議とかいうような場面でございまして、こういう法律におきましては、それぞれの中で、いろいろな債権について順位をつけて優劣関係を規定しております。そういうもろもろの債権の中で、この場合の貸付金というのはどこに位置づけられるかというのはしかく簡単ではない。これは倒産処理法の抜本的な見直しを要することになる、それとの調整を図らないではこの制度の実現というのは難しいであろう、そういう理屈の問題が一つございます。 もう一つは、事実上の問題にわたると言えようかと思いますけれども、裁判所の破産手続あるいは更生手続というような場面では、裁判所の運用のよろしきを得まして、こういう立場にある支配株主に対しては、実はこれ以上の責任を負わせているというようなことも非常に多いわけでございます。つまり、法律に根拠はありませんけれども、この際自己の利益をそのように主張してはいけないという裁判所の説得を通じて適切な処理をしているということがあるわけでございます。そういう柔軟な裁判所の処理手続をこういう制度を置くことによってかえって阻害することになるのではないか。すなわち、こういう規定を置くことになりますと、それは支配株主の責任の根拠規定であると同時に責任の限度規定ということにもなりかねないというような問題点が指摘されまして、そういう技術的な問題ないし事実上の問題点というようなことをいろいろ御検討いただきました結果、どうもこの改正はやらない方がよいのではないかというふうに法制審議会で判断されたという経過でございます。
○宇都宮委員 今までいろいろ試案についてお聞きしました。そして、私などが判断いたしまして、試案には債権者保護のためにも、そして会社制度を少しでも理想に近づけるためにも非常にいい案がたくさん盛り込まれていた。それが今回の改正案の段階ではほとんどのものがなくなっている。それはどうしてかといいますと、現実との妥協でこのようになった、大まかに言ってそういうふうな一般論が言えるのではないかと思うのです。 会社制度を考える場合に、その制度を利用する者はほとんど経済界でございますね。そういう意味で、現実との妥協ということを余りに重視するならば、それは結局経済界との妥協ということになってしまうのではないかと思います。法曹界とか学者は計算の問題とか取締役の責任の問題につきましても賛意を表したということを言われましたけれども、そういう意味で、会社制度というものを法が求めている理想に少しでも近づけるためにも、経済界だけではなくて、法曹界あるいは学者などの意見も十分に尊重していっていただきたいと思いますけれども、その点、今後どのようにお考えでしょうか。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、会社というのは経済取引社会の中の取引主体として非常に重要な機能を果たしているわけでございます。こういう観点から会社法は、株主の権利義務を明確にしているとともに、会社と取引をする第三者、債権者の保護ということを非常に重要な基本的な原則として、これが組み立てられているわけでございます。 そういう状況でございますので、会社の経営がその経営者の恣意的な形で運営されていくということになりますと、これは株主の利益も害されますし、債権者の利益も害される。そういうことでございますから、単純に会社の経営に当たる人たちの意見を聞いて、それだけで会社法を改正していくというようなことは当を得たものではないと私どもも考えているわけでございます。 しかしながら、一方で現実に会社法という法律がございまして、これを利用していく人たちもそういう経済界の方々でございまして、一方ではきちんと会社法を守っていただくということがどうしても必要になるわけでございます。その形骸化の最たる例として、決算書類を官報あるいは日刊新聞に公告するということになっているわけでございますが、これを現実に守っている株式会社というのは、全株式会社の一%ないしは二%程度しかない、あとの株式会社は全然これを守っていないというような現実の実情があるわけでございまして、そういう意味では法と現実が乖離しておるということになるわけでございます。そういうものを少しでも是正して、あるべき会社の姿に近づけていくということで、昭和四十九年改正あるいは五十六年改正あるいは今回の改正もそういう見地からなされているわけでございます。 私どもといたしましては、今回の商法改正は、試案に比べますと大幅に後退をしている、あるいは御指摘のように、法制審議会の答申から見ましても後退をしているというような印象を与えておるわけでございます。確かにそれはそのとおりでございますが、翻って、今回の会社法改正案の内容を見ますと、長年の懸案であった最低資本金制度を導入する。これは一千万、三百万という低い金額でございますけれども、こういう基本的な制度を導入し、今後の会社法の改善とか会社法に関する議論の出発点としたということは大変大きな意義がある。これだけでも、今後の会社法の充実強化ということを考えますと、大変大きな出発点ができたというふうに私ども実は考えているわけでございます。 そういう意味におきまして、現実と妥協するという言葉は私は必ずしもそのままいただけないわけでございますけれども、現実というものを離れて、理想的な会社法論だけをするわけにもまいらぬという面がございまして、そういうものを踏まえながら、着実に一歩一歩この改善を図っていく、国際的にも通用する我が国の株式会社制度、有限会社制度に持っていく必要があるのではないか、そういう気持ちでやっております。その点、委員の方から見ますと、まことにまどろっこいという御印象かもしれませんが、一気に十歩というわけにはまいりませんけれども、一歩二歩三歩、そういう形で前進を図っていくのが私どもに課せられた責務ではないか、こういうふうに思っておりますので、よろしくお願いする次第でございます。
○宇都宮委員 最後に、大臣にお伺いしたいと思います。 今回の改正案は、六十一年の五月十五日に出されました試案、それから平成二年三月十四日に要綱として出されまして、そして今回の改正案と来たわけですけれども、その試案に盛り込まれた事柄、計算の公開等の事柄、それはもうだめな制度というあれではなくて、ただ単に先送りになったのだ、今の時期では時期尚早のために先送りになったんだ、そのようにお聞きしておりますけれども、今後試案を実現していきたいというお気持ちはおありでしょうか。それから、もしあるとすれば、いつごろまでに実現したいとお思いでしょうか。
○長谷川国務大臣 御質問をいろいろ拝聴いたしておりまして、今の件でございますが、いつまでというわけにはいきませんが、十分勉強させていただきたいと思っております。 ただ、いろいろお話を聞いておりまして、先ほどお話し申し上げたように、私も大臣になる前の日まで中小企業の経営者の一人であったのです。今回の案をこう見てみますと、それほど完璧なものだとは思いませんが、しかし前から見ればかなりいろいろ改善、改良、進歩された点が多々見られるわけでございまして、いい面を伸ばして、悪い面はまたいろいろな機会に直すというか改正しまして、一番弱いと言われておる中小零細企業の本当にためになるというか、助けになる商法の設立に今後とも努力をするつもりであります。なお、御注意いただきました幾つかの点については十分留意をいたします。 以上です。
○宇都宮委員 どうもありがとうございました。
○小澤委員長 御苦労さまでした。 木島日出夫君。
○木島委員 今回の商法改正の一つの大きな眼目に、明治三十二年以来初めての株式会社についての最低資本金制度の導入というのがあるわけでありますので、きょうはその問題に絞ってお尋ねをいたします。 株式会社について一千万円の資本金を導入する、あわせて有限会社に対して三百万円に資本金を引き上げさせる、五年以内にやらなければみなし解散をさせる、要するに法人格を否認するという日本の商法始まって以来の改正案なわけですが、この問題については二つの側面から物を見なければならぬ。一つは、これによってどういうメリットがあるんだということだと思います。提案趣旨から判断いたしますと、その最大の目的は債権者保護にあるということのようであります。この問題については追って質問いたします。デメリットは何か。最大のデメリットは、こうした中小零細法人が五年以内に増資をできなければ法人格を否定される、そういう負担、義務を押しつけられるということだと私は思うのです。どちらの方が大きいかというのがまさに判断の分かれ道になろうかと思うわけでありまして、そこで最初に、現在の日本の法人の実態の中でこの制度が導入されることによって増資を義務づけられる法人数が一体何社あるのか、お尋ねをします。 と申しますのは、当法務委員会に出された法務省の資料によりますと、株式会社については一千万未満が八十三万五千社あるということが記載されておるだけであります。また、国税庁の平成元年十二月の「昭和六十三年分 税務統計から見た法人企業の実態」というのを見ますと、同じ時期の統計でありながら一千万以下の株式会社数は六十三万二千七百三十三社しかないわけであります。また有限会社については、法務省の資料を見ましても三百万以下の有限会社数が一体幾つあるのか数字が出てない。国税庁からの資料によっても出てないということなので、現実にこの法改正によって何社が影響を受けるのかについて答弁を願いたいと思います。
○永井政府委員 委員御指摘のとおり、この改正法律案関係資料の参考資料のところには法務省の資料として一千万円未満の会社が八十三万五千という数字がございます。それから税務統計では六十数万という数字になっております。私どもの統 計では登記簿をもとにしておりますので、税務関係の数字が私どもではよく把握をし切れておりませんが、ただ、この一千万未満の八十三万五千の中には事実上の休眠会社が相当入っているものと思っております。 それから、三百万未満の有限会社の数につきましては、私どもの統計では把握しておりません。ただ、税務統計あるいはほかの興信所等のそういういろいろな数値から推定いたしますと、三百万未満の有限会社が約七十万社ぐらいであろうかと思っております。ただ、この七十万の有限会社の中にも相当程度休眠会社があるものと推定しております。 以上でございます。
○木島委員 国税庁にお尋ねしますが、法務省の統計と国税庁の統計の差、それは今法務省が述べたとおりだと伺ってよろしいのですか。
○増原説明員 お答え申し上げます。 今の御指摘の点でございますが、二点あろうかと思われます。 まず第一点は時期の問題でございまして、法務省の資料は平成元年十二月末の登記済み会社数となっております。当方の方は六十三年分となっておりますが、具体的に申し上げますと、昭和六十三年二月一日から平成元年の一月末までの一年間に事業年度が終了した法人を対象にしております。したがいまして、平成元年一月末でございますので、それから十二月までの間に新規に登記された会社は含まれていない。毎年私どもの統計ベースで一年間に七万社前後が新設されているものですから、そういった誤差がございます。そういう意味で少な目に出ておりますということが第一点。 それから第二点はいわゆる範囲の問題でございますけれども、私どものところでは、統計の目的が税務行政の観点あるいは税制改正等の基礎資料とするという観点から、正常な企業活動を行っている国内の法人を対象にしております。言うなれば稼働中の国内法人でございまして、具体的に申し上げますといわゆる休業中の会社が除外されている。私どもの統計によりますと約八十一万件くらいが休業法人ということでございまして、私どもの統計からは除外されております。 具体的にその統計を見ていただきますと、法務省の統計でございますとトータルで約二百七十五万社くらいございます。私どもので百八十四万社でございまして、約九十万社差がございますが、おおむねこれで、時期のずれで七、八万社、あと、いわゆる休業の会社が八十万社余りございますものですから、両者合わせれば、おおむね一致した数字になるのではないかと思っております。 〔委員長退席、小澤(克)委員長代理着席〕
○木島委員 今回の法改正がもし成立しますと、例えば百万円の資本金の株式会社にとってはこれから五年間にあと九百万の出資をしなければいかぬ、九百万円の法人だとすればあと百万だけ増資すればいいということで、負担が全然違うわけです。そこで、本法務省から出された資料には千万未満の数のトータルの数字しか出ていないので、これではどのくらいの法人がどのくらいの犠牲、負担をこうむるのかわからないと思うわけでありますので、一千万以下の現存する株式会社の資本金別階級別法人数、それから三百万以下の有限会社の資本金別階級別法人数、それを出していただきたいと思います。出せますか。
○永井政府委員 現在登記されております株式会社について、資本金百万円単位でのこういう会社数に関する統計資料はございません。ただ、一千万未満の会社が、法務省の統計でそちらに出ておりますとおり八十三万五千社ございます。五百万以上という単位ですと、私どもは大体設立登記のときの統計では五百万以上と五百万以下は分かれておりますが、五百万以上の現在の会社は八十三万五千のうちの二十八万六千社くらいでございます。そこで、あと各種の私ども法務省で持っておりません数値でいろいろ推計いたしますと、百万未満の会社は多分五万社くらいであろうというふうに推計しております。それから百万から二百万の会社が十六万くらいであろう、それから二百万から五百万が三十四万社くらいであろう、かような推計をしております。ただ、この中にも、先ほど申し上げましたとおり、いわゆる休眠会社あるいは事実上の休眠会社が相当多数含まれているものと思われます。 なお、有限会社につきましても、実は私どもこれを把握しておりません。私どもの一応の推計でございますが、約七十万社が三百万未満であろう。そのうち百万未満が二十万社くらいであろうと推計しております。ただ、この有限会社につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、休眠会社の整理の立法をしておりませんものですから、約三分の一くらいは休眠会社として登記簿上残っておるのではないかというような推計をしているところでございます。
○木島委員 国税庁はそこはわかりますか。
○増原説明員 お答え申し上げます。 今のところ、そういう具体的データを手元に持ち合わせておりません。 〔小澤(克)委員長代理退席、委員長着席〕
○木島委員 国税庁で出しているデータは「税務統計から見た法人企業の実態」というものだけでしょうか。
○増原説明員 お答え申し上げます。 先生御指摘のとおりでございます。
○木島委員 本法改正で現実に存在する法人がどのくらいの負担をこうむるのか、法務省が正式に数を出せないというのはまことに遺憾であると思うわけであります。 もう一つ、次の質問に移りますが、現実に五年以内に一千万円に増資する力が現存法人にどのくらいありや否や、それについて法務省はどう考えていますか。具体的な客観的な資料はありますか。
○永井政府委員 特に客観的な資料を持っているわけではございません。ただ、私ども法制審議会の内部でいろいろな関係団体等からもヒアリングを行い、また御意見もお伺いいたしまして、まず五年以内であればあるいは猶予期間をさらに過ぎて実質八年以内であれば、何とか有限会社三百万あるいは株式会社一千万のバーをいわばクリアすることができるであろうという大方の御意見をお伺いしているところでございます。
○木島委員 国税庁にお伺いしますが、「税務統計から見た法人企業の実態」で、一千万円以下の株式会社あるいは有限会社の実態は、欠損企業なのか利益を上げている企業なのか、数字を言えるでしょうか、言っていただけますでしょうか。
○増原説明員 お答え申し上げます。 先ほど先生の御質問に対しまして、私ども休業中の会社が約八十万社余りあると申し上げましたけれども、実は、その八十万社が一体どういう資本金別に分布しているかということにつきましては、私どもその統計を持ち合わせておりませんものですから、ちょっとお答えできない状況でございます。
○木島委員 欠損法人かどうかは言えますか。現在ある一千万以下の株式会社が現実に利益を出している法人なのか欠損法人なのか、数字を言えますか。
○増原説明員 お答え申し上げます。 欠損法人でございますけれども、全体で申し上げますと約五割、五十数%が欠損法人でございまして、五割弱が利益を計上している黒字法人となっております。
○木島委員 一番最新の平成元年十二月の実態によりますと、百万円未満の法人では六四・三%が欠損法人。百万以上二百万までは五九・八%、二百万以上五百万までは五三・九%、五百万から一千万までは四八・六%が欠損法人であるという国税庁からの実態があるわけです。これを見ますと、非常にまじめに頑張って中小企業を経営しているけれどもなかなか利益が上がらない、そういう法人が半分あるということを示しているのじゃなかろうかと思うのです。こういう中小零細法人に対して、五年以内に一千万円に増資しなければ法人格を否認するぞ、みなし解散にするぞという のは、今回大変過酷な法改正案ではないかと思いますので、指摘しておきたいと思います。 他方、今回の法改正によって債権者保護だと再三おっしゃるわけでありますが、既に他の委員からも指摘されましたように、法人設立のときに資本金が一千万で設立したからといって、その一千万円がずっと存在しているわけではないことは御承知のとおりであります。法人企業は生まれた翌日から事業活動をやるわけでありまして、今日労働者一人を雇っても、一年間約五百万円ぐらいの給与は支払わなくちゃいかぬ。労働者二人雇えば、一年間に一千万円ぐらい給与だけでも支出として出ていってしまうわけであります。それに見合う売り上げがなければ赤字になってしまうわけでありまして、まさに会社は生きているわけであります。一体、最低資本金を一千万円にすることによってどうして債権者保護になるのか、説明をしていただきたい。
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、設立のときに一千万の資本金で設立しましても、債務が超過してその会社が倒産すれば一銭も配当を受けられない、こういうことになるということは間々あることでございます。しかし、このことは資本金十億で会社を設立いたしましても、商取引の状況がまずくなりまして、債務が超過で結局第三者に債務を支払えない、こういうような会社になるということがまた事実としてあるわけでございます。したがいまして、最低資本金制度を導入したから直ちにすべて債権者保護になるということを私ども、それが絶対の決め手であるということを申し上げているわけではございません。 最低資本金あるいは資本金の一般的な機能というのは、要するに純資産の維持基準である、簡単に言えばこういうふうに申し上げることができようかと思います。会社の総資産から総負債を差し引いたものが純資産であって、純資産というものの形としては、金銭、現金でもよろしいでしょうし、受取手形でもいいでしょうし、原材料でもいいでしょうし、土地でもいいし建物でもいい、いろいろ変えられた形で財産が存在していいわけでございますが、要するにその評価額が純資産として少なくとも資本金の金額に相当する以上のものが会社に常時保持されていなければならない、こういうことでございます。純資産の額が資本金を割るということになりますと、資本の欠損ということになるわけでございますけれども、そういうような形で、少なくとも会社に常時維持されるべき資産が株式会社については一千万円なければならない、しかも、その一千万円は資本充実の原則のもとに常時維持されるようにしていかなければならない、こういうことになるわけでございます。 そういう意味におきまして、一千万円が多いか少ないかということは前から議論があるわけでございまして、株式会社らしい株式会社であるためには五千万だとか一億だという議論があるわけでございますが、少なくとも一千万円程度は現時点においてはどうしても必要ではないか。こういうことで、そういうような制度を導入することによって多くの場合債権者の保護が図られる。一〇〇%と言われますと、私はやはり多くの場合と言わざるを得ないわけでありますけれども、一〇〇%というわけではございませんが、債権者保護がそれによって図られると思います。
○木島委員 会社経営が破綻したときに貸借対照表を組んだ場合に、純資産額が資本金額よりたくさんあるというのは理想ではあるけれども、なければいかぬという法律的な義務は何にもないのでしょう。現実的に会社の実態というものはそんなものじゃないわけでしょう。それはどうですか。理想にすぎないのじゃないですか。
○清水(湛)政府委員 私が申し上げたのは、いわば一種の計算基準でございますけれども、例えば会社の創業の時点で考えますと、一千万の現金があるわけですが、その一千万はいろいろ形を変えていくわけですね。仕入れ商品になったり在庫商品になったり、いろいろな形に変えていきます。そういうものの評価額と差し引きで、総資産から総負債を差し引いた形のものが純資産という計算上の数字になるわけでありますけれども、少なくともその純資産の価額が資本金を上回るように商法はいろいろな規制をしいておるということを申し上げたわけでございます。そういうある一定額の資産を会社債権者のいわば担保として会社内に常に保持していなければならないという意味で最低資本金制度は意味があるわけであります。それは資本金そのものの機能を私は述べているわけですが、そういうものにさらに一定額以上のものでなければならないという形で最低資本金制度を導入する、それによって会社債権者の担保となるべき財産を少なくともこれだけは会社は維持していただきたい、こういう意味で債権者保護の制度である、こう申し上げたわけでございます。
○木島委員 商法のどこにそんな規定がありますか。資本金以上に純資産がなければいかぬという規定はどこにありますか。
○清水(湛)政府委員 ちょっと正確なことを申し上げることができないかもしれませんけれども、例えば配当をする場合には、純資産から資本金あるいは資本準備金を差し引いた額でプラスでないとこれは配当ができない、こういうことになっているわけでございます。そのことは要するにタコ配を許さないという意味で、少なくとも会社にはそれだけの資産は保持していなければならない、こういうことで私は申し上げているつもりでございます。
○木島委員 それは業績がよくて利益が上がっている、そういう会社について、利益を全部株主にばらまいてはいかぬぞ、資本を充実、維持しなければいかぬぞという意味であって、今問題になっている、私が指摘しているのは欠損法人ですよ。一千万の資本金にするのになかなか苦労している数十万社の株式会社、有限会社について、破産時に、会社の経営が厳しくなっているときに、純資産が資本金を上回らなければいかぬなんという商法上の規定はないでしょう。ありますか。ないでしょう。破産までいかなくてもいいですよ、経営がなかなか苦しくなってきたときに、常に純資産が資本金より上回らなければいかぬという商法上の規制はありますか。
○清水(湛)政府委員 上回らなければならないというふうに言っているわけではございませんで、要するに常時少なくとも資本金に相当する純資産は会社内に留保されているように商法は種々の法規制をしておる、こういう意味で申し上げているわけでございます。
○木島委員 それはあくまでも会社が利益が上がったときの話であって、欠損が生まれた法人について法の規制は何もないわけですね。ですから、資本金が幾らであるかということと債権者保護とは法律上も経済上も社会常識上も全く関係ないということを指摘しておきたいと思います。 最後に、法務大臣にお伺いしますが、今ほんのわずかな議論の中でも、今回最低資本金制度を導入して現存株式会社についてまで五年以内に一千万円増資しなければ株式会社制度は使わせないというのは、現在の日本の中小零細法人の経営の実態から見てまことに過酷なことであるのではないかと思うのですが、法務大臣、いかがでしょう。
○長谷川国務大臣 先ほどからいろいろお話を聞いておりまして、一千万円が過酷であるという場合もないとは申し上げませんが、そうかといって三十万、四十万の会社だと——そういうのがありましたね。僕らの友達でも資本金が十八万しかなかったなんというのは幾らでもありました。だから、そういうことでは商売もできないし何もできないので、その辺一千万くらいがまあまあ努力をすれば何とかやっていけるんじゃないかなというふうな観点でこの法案をつくった。だから、先ほどから申し上げますように、この今回出したものは、完璧なものであるとは申し上げませんが、前のものと比べればかなりいろいろな進歩、改善、改良の跡が見えておりますということを申し上げておきたいと思います。
○木島委員 時間がないから終わりますが、中小企業庁をお呼びしながら質問できなかったことを おわびいたします。
○小澤委員長 中野寛成君。
○中野委員 今回の商法改正は、それぞれ利害関係がふくそうし、また一企業、一株式会社の立場からいたしましてもジレンマの多い内容であろうと思うのです。例えば、ある企業、これは債権者であると同時に債務者であるということも多いと思うのです。債権者保護という立場が今回の法改正の一番大きな眼目になっておりますけれども、人情からいいますと、よその会社の経理は見たい、しかし自分の会社の経理は見せたくない、これは人間だれしも人情としてそう思うと思うのです。ですから、そういう多くの矛盾やジレンマを一方で抱えながら、しかし会社のあるべき姿を目指していこう、債権者保護も図っていこう、そういう一つの理念、目的があると思うのです。 そういう中で、今回この商法改正については、ある人は、この程度の改正では改正したことに入らぬ、何のためにやったのだ、全く骨抜きじゃないかという批判をする方もいらっしゃいますし、また一方では、最低資本金をここまで上げられたのでは、うちはとてもじゃないけれども成り立っていかない、こういう改悪はけしからぬとおっしゃる方もいらっしゃいます。それぞれの立場に立てばその言い分はそれぞれもっともということがあろうと思います。 そういうときに、政府として、とりわけ法務省として、改正するには改正するなりの目的だけではなくて、目的よりもより高い理念がそこにはなければならないと思うのです。そして、その理念を実現するためにはいかにあるべきかということを法制審議会等でも御論議をいただいたはずでありますし、それが正しいとするならば、それは利害関係を超えて関係者の皆様方に御理解をいただき、御納得をいただいてその理念を完遂するということでなければ目的は達成されないはずでございます。もちろん、そこには痛みを伴うこともあるでしょう。しかし、そういう中で私は、法務省がいかなる努力をしてこられたのかということを、実を言いますと疑問に思っております。法制審議会の答申や、その前の試案等々から考えますと、内容的には随分希薄なものになってしまいました。なぜそうなったのか。それは結局、理念が明確でない、ゆえに説得力を欠いたということではないのか。もし、説得力があったにもかかわらずこういうふうになったとすれば、努力が足りなかったと批判されることになってしまうであろうと思います。その理念、目的について、まず法務大臣からお伺いいたしたいと思います。
○長谷川国務大臣 いろいろお話を承りましたが、中小企業、零細企業というのは物すごい数があるわけでございまして、その幅の広い、厚さの厚い方々に一人一人御満足いただくなんというのは、できないことはないでしょうが、なかなか簡単ではないということも言えるかもわかりません。そういう意味で、法務省、何をやっているんだというお話でございますが、職員諸君も含めていろいろと力をしたことは、ひとつまた御認識をいただかなければならないと思っておるわけであります。 我が国における経済活動の主体というべき株式会社及び有限会社の大多数が小規模で閉鎖的な会社であるという実情にかんがみ、このような会社にも適合するような法制度を整備、合理化するとともに、債権者保護のため必要な措置を講ずるなどして、我が国における株式会社及び有限会社制度の充実強化を図るものであります。 何しろ私も、中小企業、零細企業を自分でもずっとやっておった一人でございますが、千差万別であると同時に数が何百万もありまして、その最大公約数というと、どうしても事のよしあしにかかわらずある程度規制される、規制というか理想案と若干違う形になる場合があると思います。そういう面で、御指摘の点拝聴いたしておったわけでございます。 しかし、前のものと比べてみれば、いろいろ見方はございますが、かなり改善、改良されておった。一千万ということが高いとかいろいろ議論がございますが、そうかといって安過ぎても、これはもう会社の価値がないくらい、そういうものは物すごく多かったのですから、そういう面でいろいろ御満足いただくような形でないということは私どもも認識をしておりますが、なおこれからも最善の努力を払って勉強させていただきたいというふうに考えております。
○中野委員 先ほど同僚委員の質問に対する御答弁をお聞きいたしておりますと、なぜ株式会社にしたかという理由の第一に、社会的信用を確立したいということが株式会社の場合は第一位であったという御答弁がございました。例えば株式会社の構成要件を低くし過ぎますと、逆に社会的信用はそれだけそんなに高いものではなくなってしまいます。株式会社としての権威は失墜してしまいます。そうすると、株式会社にすることの意味がなくなってしまいます。どのレベルが一番ふさわしいのか。これは法の目的と同時に、確かに現実に立脚しなければならないだろうと思います。しかし、現実にスポイルされてしまって法の目的を忘れてはもちろんなりません。そういう意味で、今回の改正はある意味では極めて矛盾とジレンマの中でつくられたことは理解できます。 しかし、今法務大臣は今回の商法改正の範囲の中での目的をおっしゃられたと私は思いますが、法制審議会の答申もしくは法務省の当初考えた目的の理念というのはより高いところにあったのではないだろうかというふうにも思うわけでありまして、法制審議会の答申に盛り込まれた事項で今回の法案では見送られた部分が多い、むしろその方が多いと言っても過言ではないかもしれません。その経緯と、それに対する法務省の考え方とをお聞かせいただきたいと思います。
○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。 法制審議会の答申と法案の食い違いでございますけれども、大きく分けて申し上げますと二点ございます。 第一点は、最低資本金の額でございます。法制審議会の答申におきましては、この法律改正法施行後の新設会社については、株式会社は二千万円、有限会社は五百万円ということでございました。そして既存会社、既にもう設立されておる会社につきましては、株式会社は一千万円、有限会社は三百万円ということになっていたわけでございます。これが法律案では、新設、既存を問わず、株式会社は一千万円、有限会社は三百万円となっております。 それから第二点は、いわゆる貸借対照表等の計算書類を登記所に提出していただき、これを登記所で一般公開をする、俗に計算書類の登記所公開というふうに私ども呼んでいるわけでございますが、こういう制度を採用せよ、これは資本金三千万円以上の会社を原則として、それ以上の会社についてそういう制度を適用するということでございましたが、これにつきましては全面的に見送りをするということになっているわけでございます。 最低資本金の金額につきましては、先ほども御質問の中にもございましたように、中小企業に負担をかけるというような面の御指摘もあり、それからまた、既存会社と新設会社を二千万と一千万というふうに分けることについて必ずしも合理性はないのではないか、さしあたっては、既存会社が圧倒的な数を占めるわけでありますから、その圧倒的な数が一千万円ということであれば、新設会社についても一千万円ということでいいのではないかというような御意見もございまして、法制審議会としては、できるだけ高く設定したいという観点から、新設会社についてはせめて二千万という数字を出したわけでございますけれども、そういうような関係方面の御意見もいろいろございまして、最終的に、新設、既存を問わず、株式会社は一千万円、有限会社は三百万円というふうにいたしたわけでございます。 次に、計算書類の登記所における公開につきましては、現行法上そもそもそういう貸借対照表等につきましては官報あるいは新聞に公告をしなければならないということになっているわけでござ いますけれども、これをしているのは全株式会社中本当に一%か二%であるというような結果になっております。大部分の株式会社はこれを履行していない、つまり現在の商法の形骸化の最たるものである、こういうふうに言われているわけでございますが、そういうようなものにつきまして新聞、官報に公告するかわりに登記所に提出して登記所で公開をすることにしたらどうかというのが法制審議会のお考えだったというふうに私ども理解しているわけでございます。 しかしながら、このことにつきましては新聞、官報に公告するかわりに登記所ということであれば、それはそれなりに意味があるわけでございますが、現実には計算書類の対外的な公開というのはやっていないという前提で考えますと、中小企業等に特に新たに負担をかけることになる。業務の必要上税務署あるいは金融機関にこういう計算書類を提出するということはあるにいたしましても、登記所で一般の第三者が、中小企業については貸借対照表だけでございますが、貸借対照表が見られるということの抵抗感というようなものもございまして、計算書類の登記所公開はまだ時期尚早ではないかというような御意見がございました。私ども、現実に登記所公開の中心となる中小企業についてこれを履行していただくためには、中小企業の十分な理解を得た上で法律を制定施行する必要があるというふうに考えていたわけでございますが、どうも現状ではまだまだそのような理解が行き渡っていない、深まっていないという状況であるというふうに認識した次第でございます。 そういうようなことから、法制審議会の答申に盛り込まれていることではございますけれども、今回の改正案には盛り込むことを断念し、他日を期すということにいたした次第でございます。 今後とも中小企業団体初め関係方面の理解を深めまして、できるだけ早い機会にこういった制度の導入を図りたいと私ども考えているところでございます。
○中野委員 今回見送られた部分については、あきらめたということではなくて時期尚早だとか、ほかの理由をもって今回は見送って次の機会を待つ、こういうことのようでございますが、そのためには関係者の理解を深めるだけで足りるのでしょうか。それとも、それを実現させるための何か助成措置を講じたり育成をしたり、いろいろな方法が必要だとお考えなのでしょうか。今後の対策はいかがお考えですか。
○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。 最低資本金の額につきましては、一千万、三百万ということで、ちょっと内容は違いますけれども制度が導入されまして、増資等に伴う税の軽減措置というようなことが問題として取り上げられているわけでございます。 これとは別に、計算書類の登記所公開ということにつきましては、毎決算期に作成した貸借対照表を登記所に提出していただくということでございまして、そのために特別の費用というようなものが特に中小企業負担という形でかかるのかという問題も実はあるわけでございます。 したがいまして、私どもといたしましては、登記所においていわば第三者に自由に見られるということについての中小企業の一種の抵抗感、そういうものをやはりなくすために今後努力する必要がある、またそういうことの過程の中で、例えばこういう具体的な措置を講じてくれればそういう制度を円滑、スムーズに実行することができるというような具体的な御提案がございましたならばそういうものについても検討をするということで、今後その理解を深めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○中野委員 それでは、今ちょっと御答弁の中でありましたけれども、大蔵省からもお見えいただいていると思いますから、税制上の問題を二点お聞きいたします。 商法等の改正に合わせて増資をせざるを得ない会社の方が多いわけでありますが、増資をするとなると登録免許税を払わなくてはなりません。増資そのもので負担がかかる上に税金がもう一つかかるということになるわけでありまして、これはこの制度改革に伴うものでありますから、当然国家としては登録免許税に関して、この商法に関連しては増資に当たっては軽減をしてほしいという声があるわけであります。他とのバランスのこと等も言いわけで使われますが、これらのことについてはいかがお考えか。 もう一つ、増資に際して、資本準備金は会社、株主双方とも課税されない。しかし、利益準備金により資本組み入れを行った場合には、法人税の課税はないけれども、株主に対しみなし配当課税が行われる。したがって、利益準備金につきましては、今回の商法改正に伴う資本金への組み入れに対しましてみなし課税の減免をすべきではないか。言うならば、この商法改正に基づいて増資をする場合の具体的な措置としてそういう要望が出ておりますが、これについていかがお考えですか。
○長野説明員 お答えを申し上げます。 商法改正に伴いまして税制上の問題が幾つか指摘されておりますが、この点につきましては今後法務省とよく御相談しながら、平成三年の税制改正の中で結論を得ていかなければいけないことであると考えております。 幾つか個別に御指摘がございました。登録免許税、理屈だけを申し上げて恐縮でございますけれども、増資といったことは常に行われることでございますし、そしてまた登記、登録がなされるということは、それ自体のメリットを前提といたしましてそれに対する御負担をいただいておるわけでございますから、その登記に至る背景にどのような事情があれ、ほかのと差別するのは難しいのではなかろうかというふうに考えておりますけれども、十分に議論を詰めたいと思います。 それから、増資でございます。これも理屈だけを申させていただきますと、留保金を資本組み入れした場合、それは言ってみれば、留保金を配当し、その配当で得た資金を株主がまた払い込んで増資をしたケースと実態的には同じでございますから、その税務上の取り扱いで殊さら違う仕組みを設けますと、いわば配当課税からキャピタルゲイン化する形によって課税の時期を操作することができるといったような問題がございます。 率直に申しまして、この増資とか、それが特に土地に絡みますようなケースというのは、税務上の観点から見ますといろいろ難しいところがございまして、企業経営者の方からの御意見と、また、それを外からごらんになる給与所得者あるいは個人事業者の方からごらんになる景色がかなり違うように思いますので、いずれにしましても、課税の公平ということは非常に慎重に考えておかなければいけない点だけを申し述べさせていただきます。
○中野委員 理論的な面はよくわかります。ただ、みずからの意思で増資をするというのではなくて、商法改正、制度改正に伴う増資をいやが応でもしなければならなくなるわけであります。これにつきましては、言うならば一回だけの話でございますね。そういう目的に合わせた措置というのは、この法律が成立をした場合にそれをスムーズに実行あらしめるためにはそれなりの措置というものも考慮されなければならないであろうというふうにも思うわけであります。もう時間もありませんのでこれ以上の議論はいたしませんが、これは法務省、大蔵省、十分に詰めて御論議をいただきたいと思います。このことについて一番憂慮をしている、誹謗している方々が多いことも事実でありまして、法律上の矛盾点の問題との調整をいかに図るか、大切なことでありますからぜひとも前向きの御論議をいただきたい、こう思います。本当は、それが解決しませんと実はこの法案の賛否を決めにくいということもあるのでありますけれども、これらのことにつきましては、また改めて各党間で論議をいたしたいと思います。 いずれにいたしましても、今回のこの法案、検討すればするほど、積極的にああそうか、それならばこの法案ぜひとも必要だな、だから賛成して 何としてでも通そうかという意欲も生まれませんし、それから、いやけしからぬな、こんなにしたらたくさんの企業がつぶれてしまうぞ、または言うならば組織変更させられちゃうぞということで、これはけしからぬと言って何としてでもつぶさなきゃという抵抗感もそれほど強く生まれないというふうな中で、結局一体何のためにやるのだということがもう一つはっきりしないという御批判の方がむしろ強い。積極的な賛成とか反対ではなくて、なぜ今これをやらなければいけないのかもう一つはっきりしないなということの方の不満がむしろ強い、こういうふうに御指摘を申し上げざるを得ないと思います。冒頭申し上げましたように、法改正には法改正の理念と目的が明確にあるはずでありまして、冒頭大臣から御答弁をいただきましたけれども、しかしながら、多くの国民、多くの事業者等々、それから関係者の皆さん方の前向きの積極的な理解というものがまだ乏しいと思うわけでございまして、そのことについてのせっかくの御努力を要請して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○小澤委員長 御苦労さまでした。 次回は、明三十日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時三十二分散会