商工委員会 第8号
- 発言数
- 163 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1990/06/13
会議録
○浦野委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、不正競争防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。甘利明君。
○甘利委員 随分と久々にこの商工委員会で質問をさせていただきます。たまには質問しないと仕方も忘れそうでありますし、それ以上にこの不正競争防止法の一部改正、内外の情勢を踏まえると大変に重要な問題でありますので、質問をする光栄、機会を与えていただきました。決してだれもやり手がないから私が引き受けたということではありませんので、最初に申し添えておきます。 今国会の提出法案四本のうちのいよいよこれが最後の法案でございまして、これを仕上げるとようやくほっとする、与党理事の責任を何とか全うできるかなと思っておるところでございます。 それにいたしましても、この法案は会期の途中、半ばで急浮上をしてまいりましただけにちょっと慌てたところがありますけれども、しかし急浮上してきたからにはそれなりの緊急性と申しますか、国際情勢、国内調整、それなりの必要性があってのことであるわけでございまして、そこで商工委員会の一員として、急浮上してきた環境と申しますか理由づけについて基本的な認識を一にしておく必要があると思います。大臣より、この法案を今国会に提出することにどうして急になってきたか、その緊急性について伺っておきたいと思います。
○武藤国務大臣 いわゆる技術革新の時代と言われておりますように、どんどんすばらしい技術がつくられつつあるわけでございますし、一方は情報化時代と言ってすべての情報がいろいろのルートを通じて流れていくという時代になってまいりました。だれでも情報を知りたがる、また情報をできるだけ的確に流したがるといういわゆる情報化時代になってきたと思うのです。 そういう中で、いわゆる営業秘密、特許権の関係で、特許は得ていないけれども、実際問題、営業上これは大変大切なものであるということでその営業秘密が守られていかなければならない。もちろん現在でも民法や刑法でそれらについての担保はなされておりますけれども、たまたま差しとめ請求権というのが日本にはなかった。一方、ちょうどガット・ウルグアイ・ラウンドの体制を強化しようということでここ数年来努力をしてまいりまして、やっとことしの年末にはウルグアイ・ラウンドでやってまいりましたことをまとめようじゃないか、そして二十一世紀に向かってこれから新しい世界の貿易のルール、特に自由貿易体制を堅持するためのルールをしっかりつくろうじゃないかというのが今御承知のとおり大詰めに来ておるわけでございます。 その中に、いわゆる新しい分野としてサービス分野、投資分野それから知的所有権の分野、こういう新しい分野が入ってきて、それを何とかしなければいけないということでございますが、その知的所有権の関係のいろいろの分野の中で今のこの営業秘密に対する問題も提起されております。そうすると、ほかの先進諸国はみんなそれに対しての差しとめ請求権がある、どうも日本だけがそれがない、これはこれからウルグアイ・ラウンドの知的所有権関係のいわゆるTRIPをまとめていく上においてはぜひとも何とかしなければいけないということで、急に国会の途中にお出しをするというようなことでまことに恐縮でございましたけれども、そんなようなところから、これはそれをどこでやるかと言えばこの不正競争防止法でやるのがいいのじゃないか、たまたまそういうのがあるのだから、そこにたまたま差しとめ請求権がなかったのだからこれを加えさせていただいたらどうかというのが今度の法律を急にお出しさせていただいた理由でございます。
○甘利委員 自由貿易体制を堅持していく、そのためにはウルグアイ・ラウンドに率先をして我が国が積極的に対応していくことが必要だ、私もそのとおりだと思いますし、この商工委員会の委員の皆さん方のほとんどすべてが同じ認識であろうと思うわけであります。 今、世界は戦後最大の激動をしているわけであります。政治家はよく今は曲がり角だとか激動期だと毎年毎年演説で言っているわけでありますけれども、正真正銘今のこの時期というのは戦後最大の激動期だと思うわけであります。それは、御案内のとおり一九九二年にECが市場統合をする、経済の分野ではECには国境はなくなるというわけであります。これは我々の予想を超えて堅実なスピードで進んでおります。そして、これに時を同じゅうするようにして東西ドイツが名実ともに一つの国になる。これも私どもがそんなに速く進むものであろうかという、もう予想を超えるスピードで進んでいる。東ドイツの経済担当大臣に西ベルリンの経済担当者がいきなり就任をしたりするような、予想を超えるような思い切ったスピードで今進んでいるわけでありまして、やがて東ドイツを加えたECに東ヨーロッパ圏も加わるのではないだろうか。東ヨーロッパもかつての体制をかなぐり捨てて、経済で言えば自由経済体制、資本主義の原理を導入して、思い切った、それこそ相当な痛みを伴う改革を乗り越えて経済の活性化をしようと今取り組んでいるところであります。やがてそれがうまく軌道に乗ってくれば統一なったECに東ヨーロッパも合流をしてくるであろう、いわゆる大欧州構想というのがかなり現実味を帯びてきているわけであります。それを見越して、ソ連も大欧州圏の一角に何とか足を踏み入れたいというラブコールを送っているような節もあるわけでありまして、従来の東西関係、東対西側という関係がかなり変化をしてきている。 一方でアメリカはと見れば、もうカナダと自由貿易協定、経済の分野での壁を取っ払って一つになる。そして、これに将来はメキシコを加えるだとか、あるいは大洋州の英語圏を加えていって一大勢力に持っていく。我々の側から見るとそういう一つのブロック化というものが進んでいるわけでありまして、東西関係、冷戦構造がなくなっていくということは平和がそれだけ堅実になるということでありますから、これは歓迎をされることであると我々も思います。 思いますけれども、しかし経済の分野で特にあるいは通商の分野でいえば、今までのグループが言ってみれば解散をして、新しいグループづくりに走っている。日本とアメリカの関係、今大臣も構造協議で大変に御苦労をされておるところでありますけれども、日米関係一つとってみても、これが今まで東西関係を基調にした一つのグループであることは間違いない。ソ連を盟主とする東側に対峙する意味での西側圏ということで日本とアメリカのきずながあったとしたならば、その構造が崩れていってしまったときに果たして日米関係はどうなるのだろう、日米関係に新たな選択を迫られる時期が来るのではないか、そういうことも心配をしているわけでありまして、そういった意味で、まさに今は本当に戦後最大の激動を迎えているときでありまして、ここで政治が選択を誤ってしまうとこれは大変なことになる。一体全体日本というのはこれからどこへ、どういうふうに進んでいくのだろうか、国民の多くが心配をしているところであります。 もちろん、我々はあくまでもブロック経済には反対をしているところでありますし、何とかグローバルな関係をしっかりと維持できないものであろうか、そう考える私も一人でありますけれども、一体これから日本はどこへ行くのだろうか、大臣の御所見を伺っておきたいと思うわけでございます。
○武藤国務大臣 実は先日、国会のお許しをいただいて日本EC閣僚会議に出席をいたしました。私そのときにもドロール委員長あるいはアンドリーセン副委員長に強く申し上げましたことは、あなた方はEC統合を目指しておられるけれども、世間でよくフォートレス・オブ・ヨーロッパ、何かそこに城塞をつくるのではないかというようなことが言われることがあるのだけれども、少なくともEC統合が、そういう形でECのブロック化によってある程度その地域だけをよくするけれども、いわゆる第三者に対してはそこに一つの壁をつくるようなことだけは絶対反対だ、世界は今、今も御指摘のとおり世界の経済もすべてがグローバル化しようとしているときに、何事も地球全体の問題、世界全体の中で考えていこうではないか、こういう流れの中で、あなた方が一つのそういうブロックをつくってそこだけは特別だよというようなことだけは決してやってはいけませんよ、私は少なくとも反対だよ。それに対してアンドリーセンなんかは、いやそれは中世の話だ、これから二十一世紀に向かっているときに我々はそんな全然フォートレスなんて言葉も考えていないよ、こういうような表現もあったわけでございまして、決してそういうことを考えてないと思います。 あるいはこの間メキシコの貿易大臣が参りましたときにも、メキシコの貿易大臣から、カナダとアメリカとの自由貿易協定に続いて自分の国も何とかアメリカとそういう協定を結びたいという考え方を持っているという話がございました。そのときにも、それは大変結構なことだ、両国間のああいう地理的環境の中からそういうことが結ばれることは大変結構なことだけれども、しかし、何らかの形でそこに二国間だけがよくて、それは他国間を排除するというような協定が結ばれることはいけませんよということも申し上げたら、それもそのとおりだということでございました。世界のどの国も閉ざされたものをつくることが決してプラスではない、やはり開かれた世界、開かれた地球にしていかなければいけないのではないかとみんなが考えているのではないかと思いますし、OECD閣僚理事会においても大体そういう点は、私はコンセンサスが得られていると思うのでございます。 ですから、日本が、これから世界が日本の経済に大変期待をいたしておるわけでございますから、いわゆる地球規模のグローバルの中で世界のために日本の経済を役立たせていく、あるいはもちろん自由貿易体制、自由主義体制をとっていかなければならないけれども、その中に一つのハーモナイズされたものもある程度考えていかなければならない。そういうことさえ日本がやっていけば、決して日本は孤立するようなことにはならないと私は信じておりまして、これから日本どこへ行くのか、国民の皆さん心配されているかと思いますが、そういう世界のいろいろな問題は、何かそこに一つのグループができることは決して壁ができるわけじゃないのだ。そして、そのグループとも日本は堂々とおつき合いをしながら、またその人たちと一緒になって、恵まれない中南米諸国とか今の御指摘のございました市場経済原理の導入を目指して立ち上がろうとしておられる東ヨーロッパの国々とか、あるいはアジアやアフリカのまだまだ気の毒な生活をしておられる方々の生活水準の向上のためにとか、こういうことに日本のこの経済力を思い切って活用して協力をしていくというところに、日本のこれからの、決して世界から日本というものが孤立しなくとも、日本よ、よくやってくれるという信頼と尊敬のもとに私は日本は生きていける、こう考えておるわけでございます。そういう意味ではウルグアイ・ラウンドというのは、自由貿易ルールを確立していく上においてこのガットのウルグアイ・ラウンドを何とかまとめていくということは非常に大切だと私は思っておるわけでございます。 〔委員長退席、江口委員長代理着席〕
○甘利委員 私も以前に通産省政務次官をしておりました。そのときにECの関係者の表敬を受けまして、やはりECのブロック化、内なる壁はなくなっても外の壁は高くなるのじゃないか、そういう心配がありましたのでそこのところをまさに率直に聞いてみましたところが、やはり回答は、内に向かってと同時に外に向かっての壁もなくしていくのだ、そのための努力を一緒にしてやっていくのがECの統合だというお話がありました。 しかし、どうもそういう話を否定されればされるほど本当に大丈夫だろうかという心配が出てくる。大臣おっしゃるように、経済交流というのは小さいグループでやればやるほど小さくなっていくわけでありまして、ブロックごとにつき合っていた方がお互いに得なのだという話になりますと、やはり政治もそうですし、経済もだんだん萎縮する方向に向かっていく。経済、貿易というのは地球規模でグローバルにみんなが壁をなくして、できるだけ努力をして活発にとり行っていくのがどこの国のためにもいいことだということを定着させていかなければならないと思いますし、特に自由貿易体制の恩恵を最大に受けてきたのがこの日本でありますから、この堅持、そしてはぐくんでいくためには日本は最大の努力を払っていかなければならないと思うわけであります。 〔江口委員長代理退席、委員長着席〕 今、日米構造協議でいろいろ日米間のこともやっておりますけれども、中には国際ルールに関するようなこともあるわけでありまして、本当は国際ルールというのはバイの関係で構築するのじゃなくて多国間、つまりマルチの関係でつくっていかなければならない。しかし、いろいろ事情がありますから、それは一生懸命我が国が大臣を筆頭にとにかくマルチの場でいろいろ決めていこうとおっしゃってもそれには限界がありますから、やるべきことはバイの関係の交渉の場でもやっていかなくちゃいけないわけでありますけれども、基本的にはインターナショナルな関係で世界ルール、国際ルールはつくっていくというのが大原則であります。そのためには国際的なそういうことを検討する場の権威づけをしっかりするということ、力をしっかり持たせるということが大事でありまして、そのためには世界経済第二位の大国日本がリーダーシップを発揮して一つはマルチのそういう協議機関の権威づけをしっかりやっていく、そこで決めたことはみんなで守っていこうよというルールをしっかりと定着をさせること。その国際的な協議の場で日本がリーダーシップをとっていくということがこれから大変大切になってくると思うわけでありまして、日本が交渉のリーダーシップをとっていくためにやることが幾つかあると思います。 一つは、世界から国際的に見て日本はこういうところはこうした方がいいよと指摘されている点は思い切ってやっていくということ。これは大事なことでありますし、もちろん国内政策と絡んでくる部分が多いことであります。これは当然痛みを伴う問題でありますから、その国内リアクションに対してはちゃんとした対応をする、これも政治の責任であると思います。そういう前提をもって、国際的に指摘されている日本が変えなければならない部分、責務については思い切って前向きに誠意を持って取り組んでいくということが一つ必要である。 それからもう一点、そういうマルチの場の交渉に当たってのリーダーシップを発揮するためには、日本が持っている武器をうまく使うということが必要だと思う、武器というと穏やかじゃありませんけれども。その日本にしかない武器というのは、例えば一つには日本の資金力というものがあるわけであります。これから東欧が民主化していく、そして経済の立て直しをしなければいけない。その場合に日本の資金、資本力に寄せられている期待というのは非常に大きいし、また日本のそういう力なくしては東欧の経済復興というのは成り立たないと思います。また、アメリカの借金、債券を支えているのも御高承のとおり日本のそういった資本力、資金力でありますから、そういった武器は、ブラフとしてではなくて、いかに貢献しているかということをうまく訴えることによって交渉のリーダーシップをとっていく。 それから、日本にあるもう一つの武器というのは技術力であると思います。よく言われることでありますけれども、ほかのいかなる国も圧するような、例えば五年間絶対に追いつけないというような基本的技術を日本が持っていれば、どんなにグループ化が進む社会であっても日本をその枠から外すということは絶対にできないはずであります。日本の技術力なくして世界の発展はないということになれば、なるほど日本をその枠組みに入れていかなければいけない。日本は常にマルチの場で交渉事をやっていくべきだということを訴えていけばいいわけでありますから、そういった武器をしっかりとうまく国際交渉の場で使っていくということはこれからも大事になってくると思うわけであります。五年間しっかりと他国を引き離すだけの技術力を保持する、いろいろな環境整備、周辺整備があると思います。これについては予算も含めて日本は常に最大限の努力を続けていかなければいけない。 そしてこの周辺整備、法律で言えば今回かかわっている知的財産の保護というのもまさにこれにかかわってくる。だから、この法案が緊急に出てきたというのは、もちろん世界のためでもあると同時に、日本がこれから国際的なルールを決める機関の中でリーダーシップを発揮していくことについて非常に大事なかかわり合いを持ってくると思うわけであります。そういう観点から、今日までのこの特許制度あるいは新規技術の保護への対応等、これまで我が国における知的財産の保護に関する政策、どんな感じで推移してきたのか、まずその辺についても伺いたいと思います。
○棚橋政府委員 甘利先生御指摘のように、この日本の技術力が世界の技術の発展に大きく貢献していく、二十一世紀に向けてまさしくそういう時代に際会していると思うわけであります。我が国におきましては、特に技術革新の著しい進展と経済社会の情報化、これを反映しまして先生御指摘のように知的財産の重要性が大変高まっておりますが、これの健全な発展を図るためにはやはり適切な保護が重要であるわけでございます。 知的財産につきましては二面ありまして、一つはそういう知的創作物を開発した人の権利を正当に保護する面、それからそういうすばらしい知的創作物を利用、活用してその上に立って新しい知的創作物をさらに広げていくという利用面と、両面のバランスを考えて個別の分野ごとに、いろいろの問題がありますが、適切な保護を図っていく、こういうことが重要になってきておるわけでございます。 通産省といたしましても、かねてから特許法の整備についてはいろいろの努力をしてまいったつもりでございますが、昭和六十二年にいわゆる多項制、これは、一つの特許を単に製法だけじゃなくて物あるいは材料まで広げて表現をする、そういう特許法の改正でございますが、それを軸とする改正を行っておりますし、また今国会においても、ペーパーレスシステム等で特許制度の環境整備についていろいろ御審議をいただいておるわけでございます。また、昭和六十年には半導体集積回路、いわゆるチップの回路につきましての保護についての法律を新しくつくって、そうした知的財産権の保護にいろいろ努力をしてまいってきておるところでございます。 申し上げるまでもなく国際的にも、先ほど大臣がお話を申し上げましたガット・ウルグアイ・ラウンド、大詰めになっておりますが、そこで知的財産分野の保護の問題が一番大きな問題の一つになっておりますし、世界知的所有権機関、WIPOにおきましても国際的に特許制度のハーモナイゼーションが重要な課題になっておりまして、さらに特許につきましては、日米欧の三極特許庁の最高幹部の会合とか、それから主要国の特許の最高責任者の会合であるクラブ15においても、いろいろの協議が行われて積極的な活動が行われております。その中で日本も重要な役割を果たしておると考えております。
○甘利委員 技術立国日本にとって特許とかあるいは営業秘密にかかわる問題はまさに生命線になってくるということでありますけれども、実態は、企業に関して営業秘密というものがどのくらいの程度の重要性を有しているのか、営業秘密には技術上のノーハウ、例えば製造技術であるとか設計図とかあるいは実験データ、これ以外に営業上のノーハウ、例えば顧客名簿とか販売マニュアルとか仕入れ先のリスト等々まで含まれているわけでありまして、昨今は、太陽神戸三井銀行でありました、太神三井というのですか、その顧客に関する情報が名簿屋に流れて騒動があったとか週刊誌をにぎわせましたけれども、企業における営業秘密の重要性の実態というのはどんなものなのでしょうか。
○棚橋政府委員 近年、技術の高度化あるいは経済のソフト化、サービス化という面での大幅な進展に伴いまして、御指摘のように企業の営業活動、事業活動においてのいわゆる営業秘密の重要性が高まっておるわけでございます。 具体的に私どもは昨年十月に、財団法人で知的財産研究所というものがございますが、そこと経営法友会という団体とでアンケート調査を約千九百強の主要企業についていたしましたところ、産業界とサービス業界両面におきまして営業上の秘密についての関心が大変に高まっております。技術的ノーハウと営業上のノーハウと二つありますが、技術的なノーハウにつきましては、今後七割を超える企業の方々が、大変ふえていく、ノーハウ自体がふえていく。具体的には生産技術、設計技術、製品企画の情報等でございます。それから重要性も、全体の企業の八割程度の方々が今後極めて高くなると認識をされておりまして、特に化学・石油業、機械・電気機器産業においてその関心が深いわけでございます。それからもう一つの営業上のノーハウにつきましても、約六五%の企業の方々が今後ノーハウがふえていくと認識しておられまして、その重要性につきましてもやはり八割の企業の方々が極めて重要性が高くなると認識をいたしております。特にこの分野では、金融業、サービス業等においてその傾向が顕著でありまして、顧客リストあるいは新規事業情報、販売データ、財務データ、生産コスト、こういうようなものが営業上のノーハウの主要なものとしてふえていき、重要性も高まると認識をされておるわけでございます。
○甘利委員 我が国におきましては企業の終身雇用制というのが定着をしておりまして、一度会社に入ると退職するまでずっと勤め上げる。我が国の今日までの経済の発展というものがこの終身雇用制によってかなり支えられてきたのは事実だと思います。従業員にしてみればその企業、会社への帰属意識が強くなるし、抱える企業の側も、生涯運命をともにしていくパートナーという意識が強くなりますからそれなりの責任も出てくる。そして相互信頼関係も生まれてくるわけでありますから、会社の実績は、労使関係がうまくいって必ず上がってくるわけでありますし、それが集積をすれば、日本経済がいかなる国難をも乗り越えて今日まで来た、これはこの終身雇用制に負うところがかなり大きいと私は思うわけであります。 しかし最近は、雇用の流動性というのでしょうか、転職が昔みたいな抵抗感というのがなくなってきたわけでありまして、テレビコマーシャルのスポットで職業選択の自由というのが随分流れていまして、子供たちでもそのことをよく口にしているようでありますけれども、職業選択の自由というのは憲法に保障された権利であります。会社をかわろうが何しようが本人の自由意志でありますから、それはもちろん尊重されるべきであります。これからますます自分の才能を生かしてほかの——自分に才能があると思って転職する人で本当に才能がある人は少ないといいますけれども、才能があると信じて会社をかわっていくというのはもちろん何らかの制約も受けるべきではないわけであります。 ただ一方で、営業秘密というのは会社と従業員の関係、その会社にかかわってくれば必ず何らかの形で接触をしてくるわけでありまして、その守秘義務というか、その会社に一定期間でも帰属すればするだけの責任というものが出てくる。そうすると、憲法で保障されている職業選択の自由と、片や守秘義務が生じますから、なかなか職業選択が自由にいかない。いろいろ守らなくてはならない秘密を持って移動すること自体が制約になってくる。雇用の流動性の進展、つまり職業をいろいろかわる動きが出てくる、それと営業秘密の保護、この相反するような感じに映ることの整合性はどういうふうにしていくのか、その点について伺います。
○棚橋政府委員 先ほどの知的財産研究所等の調査でも雇用の流動性が大変高まっているという数字が出ております。調査対象二千弱の企業のうちで半分以上の企業が、程度はありますけれども既に終身雇用制が変わりつつある、流動性が増加しておると見ておりまして、六五%の企業が将来、近いうちにさらにこれが高まるものと見ております。 そういう企業の対応といたしましては、既に企業内に管理規定を設けまして営業の秘密について明確化し、あるいは取扱者を限定する、保管方法を規定する、また場合によると廃棄方法等についても厳格な体制をとるということで、いろいろの制度を設けておられる企業が五〇%程度ございました。さらに、近々そういう整備を図るという企業が六五%でございます。それから、役員、従業員対策について現在七五%の企業の方々が就業規則でいろいろの手当てをして守秘義務とか競業制限契約を結んでいるケースでありまして、この分野は近いうちに八〇%を超える企業がそういう形の体制を整備する。さらに外部の対策につきましては、外部の方がこういう機密情報にアクセスする場合のいろいろのチェック体制、例えば見学場所の制限とか、そういうアクセス制限等について既に五〇%以上の企業が対応しておられますが、七〇%の企業の方が近々それをきちっとやっていきたいと答えておられます。 雇用の流動化の結果、もとの企業のノーハウを不正に持ち出してライバル企業に高く売りつけてポストにつくというケースとか、それから、ヘッドハンティング自体がもちろん悪いわけではありませんけれども、営業秘密の獲得をねらったヘッドハンティングによってトラブルが出てくるケースもありますし、これが今後かなり雇用の流動性によってふえていく、こういうことでございます。こうした現状及び近い将来それがふえていく傾向に対処いたしまして今回不正競争防止法に所要の規定をお願いするわけでございますが、これは求人あるいは転職活動をむしろ円滑に行う適正なルールづくりに寄与すると考えます。新しいところで働こうとする方々が懸念なく安心して、これは営業秘密だから守らなければいけない、この点については前の知識を十分に活用できるというような認識を深められて、ある意味では職業選択の円滑化についても寄与する面も出てくるかと思いまして、そういう点でむしろ整合性があり、また、我々の今回の法改正の案は整合性を十分認識してお出ししているつもりでございます。
○甘利委員 企業がこの情報は営業秘密ですというふうに特定するためには、企業側にそれなりの義務といいますか、内部の情報を秘密として管理することをちゃんとやっていかなければいけないという義務があるわけであります。そうすると、何もやらないと営業秘密がどんどん出てしまう、しっかり営業秘密として確定をさせてできることならできるだけ幅広く抑えたいということになりますと、従業員との関係があるから、従業員にしてみれば精神的な負担がそれだけ増大をしていく。ぱっとこの法律を読んでみますと、その辺のことが従業員の側からするとちょっと精神的なプレッシャーになりかねないと思うわけでございます。今も御説明がありましたけれども、その辺の具体的な方法等について周知徹底することが必要だと思いますし、特に中小企業、なかなかスタッフ、人材のいないところではその辺が難しい問題でしょうから、そこらのところの御指導はぜひ適切にお願いをしたいと思います。 それから、先般ペーパーレス、特許の制度にかかわる法律が成立をしたわけでありまして、今回は営業秘密にかかわる問題であります。この二つ、特許というのは基本的には公開を前提としているものでありまして、この営業秘密の保護法は秘密として保護をしていく、そこの点から見ると全く相反する部分があるわけでありますけれども、この営業秘密の中には特に技術上のノーハウ等があるわけでありますから、そこに特許性がある部分が含まれている場合がある。そうすると、特許は公開を前提とする、営業秘密は表に出さないで守っていくことが前提となる。公開すべきものが含まれているものが公開されないでずっと隠され続けていく、特許性のある発明の部分が抑えられていくという危険がないだろうか。その点についてはいかがでしょう。
○棚橋政府委員 先生つとに御承知のように、特許につきましては発明について公開という代償といいますか、そういう公開をさせるという前提で、しかしながら排他的な権利を付与して保護を図っておるわけでございます。確かに特許の対象になり得ても特許を何らかの事情で取っていない、あるいは特許の対象にならない分野等々があるわけでございますが、いずれにしましても特許制度も今回の営業秘密を守る制度も、技術開発の成果の保護という観点では両者共通の側面を有するわけであります。 ただ、特許の場合、例えば特許を取っていずに、ノーハウとして会社で所得をしてそれで持っておる、いろいろな事情で公開その他を当面しないというようなケースの場合には、仮にだれかが特許の申請をしてしまいますと、その前からそのノーハウを、特許を十分取れるノーハウを自分が使っておったという証明ができませんと、後から特許権を取得した人が絶対的な排他的権利を取ってしまいまして、自分がせっかく前に使っておった技術まで使えなくなってしまいますので、そういう点で、特許権の対象にするかどうかは企業の技術開発戦略としていろいろの判断でお決めになることではないかと思っております。 今回、特許の対象とならないノーハウ等についても保護するということは、しかしながら、また別の面で技術開発のインセンティブを付与する、差しとめ請求権を認めて、これを不正に使用することを防止するということでございまして、そういう意味で、特許の対象にはならないノーハウ等について、それを保護することによってその開発を促進する効果を持つという点で、特許制度と今回のノーハウ等についての保護制度は相互に補完的な役割を担っておるものと考えております。
○甘利委員 もう時間が来ましたのでこれで終わりにいたしますが、事ほどさように、今、国内法といえども国際関係との絡みが非常に強い時代でございまして、国際政治、国際経済のかかわり合いが国内政治、国内経済に非常に強い影響力を持っている。国際会議の重要性というのが国内政治経済に与える影響が物すごく大きくなっている今でありますし、ここでかじを誤ると日本が大変なことになるわけでありますから、重要な国際会議にはぜひ与野党気持ちよく大臣を送り出してやりたい、そういうことを最後に申し添えまして、質問を終わります。
○浦野委員長 大畠章宏君。
○大畠委員 日本社会党の大畠でございます。 私は、今回の不正競争防止法の一部改正案は、今甘利委員からも御指摘がありましたけれども、国際的な調和を図るためには大変重要な法案だと認識しているわけでございますけれども、この法案の施行によりまして、例えば情報に対する保護意識が過剰になって情報の流れが制約されたり、あるいは健全な取引や技術の発展が阻害されるなど、さらには憲法第二十二条の第一項で保障する職業選択の自由というものの基本的権利が阻害されるというようなことをぜひとも防止したい、そういう観点から幾つか御質問をしたいと思います。 まず最初に、この法案の背景と法理といいますか、そういうものについて大臣にお伺いしたいと思うのですが、私もこの議案の背景についていろいろ調べさせていただきました。それによりますと、日本は明治二十七年にパリ同盟条約に加入することを約束して、昭和九年には不正競争防止法というものを制定しました。ただ、パリ同盟条約の不正競争行為の禁止という項目では、「工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は、不正競争行為を構成する。」という形で規定されておるのですけれども、現在の日本の不正競争防止法というものには、この原則を示す一般条理を欠いているということ、また営業秘密の不正な侵害行為の差しとめ請求を欠いている、こういう二つがございまして、今回これを改正してそういうものに対応していこう、そして国際的に調和を図ろうとするものだ、そういうふうに私も理解するものであります。 しかしながら、先ほど言いましたように、行き過ぎた法規制というものは、今甘利委員からも御指摘ありましたけれども、職業選択の自由とか正常な企業競争に悪影響を与えることが考えられる。そういうことから、私は今回の法改正は、ちょうどアメリカもトレードシークレット法というものを制定しておりますが、その法的保護の根拠と言われております他人の努力の成果を不当な手段で入手して、それによって利益をおさめることは許されない、こういう不当行為禁止の法理に基づいた法規制でなければならないと考えておるのですけれども、今回の法規制というものは以上のような背景と内容と解釈してよろしいのかどうか、これを大臣にお伺いしたいと思います。
○武藤国務大臣 今御指摘のように、パリ条約あるいはアメリカのトレードシークレット法などをある程度参考にさせていただきながら今度の法改正に取り組んだことは事実でございますが、今御指摘のとおり、従来から、この不正競争防止法という法律が昭和九年という大変古いときに制定されまして、以後いろいろと不正競争を防止するという立場からやってきたわけでございますが、何か損害が起きたときには、どちらかというと、民法、刑法でそれを担保してきたというのが従来の方向ではなかったかと思うのでございます。 どうして差しとめ請求権がここになかったのか、私は過去の経緯はよくわかりませんけれども、現実にそういう差しとめ請求権がなかったという点において、今考えてみますと、特に先ほどからお答えいたしておりますように、ガット・ウルグアイ・ラウンドのルール確立というものを今まとめなければいけないときに、そして日本としては自由貿易体制を堅持していくということがやはり一番大切だと思いますし、新しい二十一世紀に向かっての自由貿易体制の確立をルール化しようということでございます。今知的財産関係のいわゆるTRIPと言われるものを新しい仕組みとしてガット・ウルグアイ・ラウンドの中へ入れていこうということの中で、そういう営業秘密に対する保護というものが日本の場合には十分なされてない、差しとめ請求もできない、これではやはりいけないのじゃないかということで、今回このような法律改正に踏み切らせていただいたというのが背景でございます。
○大畠委員 局長の方にお伺いしたいのですけれども、今私が申し上げました他人の努力の成果を不当な手段で入手して、それによって利益をおさめることは許されない、こういう法理論に基づいた法案というふうに解釈してよろしいのですね。
○棚橋政府委員 いわゆる法理といいますのは大臣が申し上げたとおりでございますが、先生御質問のとおりの考え方でよろしいと思います。
○大畠委員 わかりました。 あと何点か質問したいと私は思うのですが、まず法案の内容について少し討議をしたいと思います。 一つは、一番問題になっていますのは、第一条第三項の「営業秘密」の定義、これは今甘利委員からもいろいろありましたけれども、これを施行した場合は非常に困るのじゃないかなと思うほどあいまいなものになっているのじゃないかということで、まず秘密として管理されているというのがございます。この管理の程度は具体的にどの程度管理すればそういうことになるのか、これが余りあやふやだと、会社の中でみんないろいろな話をしているときに、これは秘密になるかな、じゃ話しちゃいけないかなとみんな貝のように黙ってしまう、あるいはお互いにコミュニケーションが図れなくなってしまう、そういうことも一つ懸念されますので、この秘密として管理されているというのは、どういう程度のことを考えているのか。 また、同じく第一条の第三項ですけれども、「営業上ノ」という表現がよく使われておりますけれども、これはちょっと広義過ぎるのじゃないか、広過ぎるのじゃないか。また、公然と知られていないものというのも非常にこれは漠然としたものでありますけれども、どういうものを考えているのか。 それから営業秘密というものが今三つの定義がされております。秘密として管理されていること、事業活動に有効な技術上、営業上の情報であること、公然と知られていないことという三つが挙げられているのですが、この三つのものはアンド条件なのかオア条件なのか、そこら辺を含めて答弁いただきたいと思います。
○棚橋政府委員 まず、この三つの要件を営業秘密の定義に挙げておりますが、最後の御質問からお答えしますが、この三つはすべてこれを充足していなければ営業秘密にならない、こういうふうに考えております。 まず、そのうちの秘密として管理せらるる形態、具体的な内容がどの程度のものであるかでございますけれども、今回営業秘密の対象としようとする技術上あるいは営業上の情報は、設計図その他有体物に化体されている場合もありますし、頭の中に入っているものもあって必ずしも有体物に化体されていないものもあります。有体物の場合は比較的金庫にきちっと保管をしたり、あるいはそのものにアクセスする人の範囲、責任者を決めるというようなことで相当程度秘密として管理されておる実態がビジブルなケースが多いと思いますが、しかしながら、そういう文書に化体されていない場合についてどうかということが特に問題になるかと思いますけれども、そのような場合でも、そういう情報を知り得る人を特定をする、この数の大小はありましょうけれども特定をする、あるいは特定をした人をきちっと上層部があるいは責任者が把握をしておる、あるいはそういう頭の中に入れるベースになる秘密に近寄る人を制限をする、そういうようないろいろの秘密管理の体制が一般的ではないかと思います。平たく言えば、単に極秘の判こを押しておって、それを一応極秘ではあるが机の上に置いておいて相当数の人が自由にといいますか、かなり見れるという、そういうような管理体制では必ずしも秘密として十分に管理せられていないというケースになるのではないかと思います。 それからもう一つ、事業活動に有用な営業上の情報であるというのが要件でございますが、企業の秘密であれば何でも保護されるのではなくて、保護されることに一定の社会的な意義と必要性が客観的に認められておるものでありまして、非常に程度の低い、その企業が主観的に秘密と言っても余り技術的に営業的に価値のない情報、こういうものはまず有用な情報ではないというケースにもなりましょうし、観点を変えて言いますと、いわゆるスキャンダル情報、脱税とか公害をたれ流しておるとか、それは企業にとって極秘かもしれませんが、それは公序良俗に反する行為でございますので、そういうものも保護の対象にはならないと普通は考えていいと思います。 それから、もう一つの要件の公然と知られていないということも要件になっておりますが、これは幾ら企業が秘密としてきちっと管理しておるつもりでも、既にある意味で公然と知られておる状況になっておる、例えば図書館に行って調べてみたら著作物にそのノーハウが書いてあったというのは不特定多数のだれでもがそれを閲覧できるわけでございまして、刊行物等に書いてある場合が典型でございますが、こういう場合には人数の多少にかかわらず公然と知られていない状態とは言えない。そういうような観点で非公知性というものももう一つの要件といたしたわけでございます。 営業秘密の定義につきましては、実は欧米においてもこの程度の定義が精いっぱいでございまして、先生御承知の米国統一トレードシークレット法も、これは州法のモデル法としてつくられた法律でございますが、やはり大体この三点を基準にいたしております。これをつくった背景は、コモンロー、長年のアメリカの営業秘密の保護にかかわる判例の積み重ね、判例法の積み重ねで州法で大体決めますので、こういうモデルがいいですよということでつくったモデル法でございます。 それからもう一つ、西ドイツの不正競争防止法はもっと漠然といたしておりまして、法文上の定義はありませんが、ただ、やはりドイツにおいても判例の積み重ねで大体この三つが事実上要件になっていると承知いたしております。
○大畠委員 営業秘密の定義というのは非常に難しいと思いますけれども、今後ともいろいろ努力していただいて、これを施行したときに混乱しないようにいろいろな措置をしていただきたいと思うのです。 もう一つ、営業秘密と個人の頭に入ってしまった知識、これをどう区別するのか、これは非常に難しいのです。いろいろ仕事をしますね。仕事をしているときには、個人的に知識も積みますし、経験も入ってきます。その営業秘密と個人の体験といいますか、経験といいますか、知識の積み上げといいますか、そういうものとの区分けというのはどういうふうにしたらいいか。これは個人のものなのか、会社で管理されている営業秘密に入るのか、非常に難しいと思うのですよ。そこら辺はどういうふうに解釈されるのでしょうか。
○棚橋政府委員 御指摘のように営業秘密の対象になり得るものとして有体物に化体されているケースと、それから働いている研究者あるいはセールスマン等の頭の中に入っておって、特に外から見て物に化体されていないケースと両方あると思います。しかしながら、その内容が先ほどの三つの要件に該当するものでありますれば、有体物に化体されているケースだけでなくて、研究者等の頭の中に入っておるノーハウ等の情報も営業秘密の対象になり得るというのが一般論でございます。 ただし、もう一つそこで営業秘密になるかどうかは、すべて例えば頭の中に入っておる情報がなるわけではなくて、そこで先ほどの会社がきちっとその人にこの情報はあなたの頭の中にあるけれども、あなただけあるいは極めて限定された人が知っておる営業秘密ですよ、きちっとそういう意味では管理されているものですよ、それからその当該企業にとって有用な技術上あるいはセールス等の営業上の情報でありますよとか、それから公知のものでないというようなものであれば、場合によると営業秘密になり、当該従業員、研究者等が転職をして不正な利益を得る目的でそれを次の会社で使えば差しとめの対象になる、こういうことかと思います。 それからもう一つ、今先生ちょっと別のことを御指摘になられましたが、頭の中に入っているノーハウが本来その研究者、例えば技術上の研究ですと、研究者が開発したものかあるいは会社が開発したものか、この観点からの区別があろうかと思いますが、原則として当該研究者が開発したノーハウは、通常特許権等の場合にも開発者に帰属するというのが一般でございます。その場合は、その開発者は例えば次の企業に移っても、自分の開発したのは、ここに言う仮に営業秘密の三つの要件であっても自分のものですから、そこでとがめ立てを受けて差しとめの対象になることはないと考えられます。 ただしもう一つ、例えばそこに開発者である研究者と雇っておる企業との間に雇用契約の中で、就業規則その他の中で契約がある場合もあります。これは特許権の場合もありますが、ノーハウの場合もありましょう。その場合、あなたが開発したノーハウは会社のいろいろな研究活動で行われたものである場合は会社に帰属をしますよ、その場合適正なロイヤリティーその他を払うということも多いと思いますが、いずれにしても、契約でその開発したノーハウが企業に帰属をするという場合、その研究者がA企業からB企業に移りまして、そういう契約が有効である場合は契約違反の問題になってまいるわけでございます。その場合、ややこしい話になりますが、原則としてそれは民法四百十四条に従来から、契約によって負わされた債務の不履行等については契約違反の問題として差しとめ請求あるいは損害賠償の対象になる規定がございまして、一般的には契約違反の場合には、被害を受けた企業がそちらで契約違反として訴えて、差しとめあるいは損害賠償の請求をするということがあろうかと思います。
○大畠委員 そこら辺が非常に難しいかなと思うのですが、この件については次の小岩井委員の方から職業選択の自由というものに関してまた議論していただきたいと思います。 次の質問ですが、いろいろありますけれども、法解釈についてです。ちょっと時間の関係もありますので、三つ続けて質問いたします。 今回の改正案による営業秘密の保護対象となる行為とは、不法行為法の特別法として商慣習にもとる悪性の高い行為に対する救済と理解していいのかというのが一つの質問ですね。 それからもう一つが、第一条第三項第一号に規定する「其ノ他ノ不正ナル手段」とは、窃盗、詐欺、強迫と同程度の刑事罰に該当する行為と理解していいのかどうか、これは二つ目の質問です。 それから三つ目は、第一条第三項第二号それから三号、五号、六号に記されておりますけれども、「知ラザリシコトニ付重大ナル過失アリテ」の「重大ナル過失」という意味についてでありますが、だれが見ても当然知っているはずだ、ちょっと気をつければわかるはずじゃないか、こういう程度の過失のことを指すと理解していいのかどうか。 この三つについて御質問したいと思います。
○棚橋政府委員 まず第一点の、今回の改正案による営業秘密の保護の対象となる行為とは、不法行為法の特別法として商慣習にもとる悪性の高い行為に対する救済と理解していいかという点でございますが、先生御指摘のとおりでございまして、我々もそのように考えております。つまり、窃盗等の公正な商慣習にもとる不正な行為に限定して、今回不法行為法の特別法として提出をさしていただいているわけでございます。 それから第二の御質問の、第一条第三項第一号に規定する「窃取、詐欺、強迫其ノ他ノ不正ナル手段」の「其ノ他ノ不正ナル手段」とはどういうものかという御質問の趣旨と解釈いたしますが、窃取、詐欺、強迫等の刑罰法規違反に準ずるような公序良俗に反する方法を指しておりまして、具体的には、不法に住居に侵入して営業秘密をカメラ等で複写する行為、それからハッカー行為あるいは盗聴等による行為、こういうようなものが具体例として挙がるかと思います。 先生も御承知のように、今の刑法では窃取といいますのは物を盗む、有体物を盗むということになっておりまして、これは昨今の経済技術が物すごく進歩した社会においては、刑法上として果たしてこの物を盗むことだけに限定していいかどうか、いろいろ難しい議論があるようですが、少なくとも現在の刑法はそういうふうに解釈しておりまして、したがって、営業秘密をカメラで写真に写してもとに戻しておくとか、それから最近ぼつぼつ出てきましたハッカー行為、オンラインを使ってコンピューターに侵入して情報をとるとか、盗聴をするとか、こういうのはいわゆる刑法上の窃取に入らないわけでございますが、やはり公序良俗に反する不正な行為であることはそういう場合も間違いないので、今回は差しとめ請求等の対象にそういう「不正ナル手段」も入れたわけでございます。 それからもう一つ、第三点の御質問の、「重大ナル過失」というのはどういう範囲、どういうものを考えておるのか、こういうことでございますが、重過失とは、当該営業秘密について不正取得行為や不正開示行為が介在したことを、通常の商取引上に要求される注意義務、通常の注意義務を尽くせば容易に判明しておったにもかかわらず、その注意義務に著しく反して当該営業秘密を取得する場合ということでございまして、御指摘のようにだれが見ても当然知っているはずという場合は、これはやはり通常の注意義務を超えておりますので重過失に当たるケースが多い、このように考えております。
○大畠委員 次に、中小企業の保護対策についてお伺いしたいと思うのです。 今回のこの法案が施行されますと、中小企業等もいろいろ大きな影響を受けると思うのですね。ちょっと時間が大分過ぎてきておりますので、これも三点質問したいと思うのでありますけれども、一つは、例えばその情報がその方が本来持っている人だということで善意で取得をした、そういう中小企業がその情報に基づいて大規模な施設をつくってしまった、そして生産を開始した、ところがその入手した相手がどうも不正に情報を入手していたというような場合に、正当だと思ってその情報をもとに施設をつくった中小企業は、相手が不正に入手したのだからといって差しとめ請求がそこに及んでしまうのかどうか、これを一つお伺いいたしたいと思います。 二つ目は、いろいろ大きな企業がありますが、中小企業も一生懸命この厳しい業界の中で生きようとしています。いろいろな情報をもとに活動していますが、あなたのところでやっている行為はいわゆる不正に入手した情報じゃないのかということで、例えば内容証明つきの通知なんかを受けた場合、いや、これは大変だ、こういうことになったら裁判になって企業イメージも落っこちちゃうから、いろいろ投資したけれどもあきらめるかというので、中小企業が新たに一生懸命やろうとしていたものを大企業からの通告だけでもう企業活動を一部ストップしちゃうというようなことまで追い込まれるのではないかという感じもするし、また、たとえ裁判になったとしても、もうダメージを受けちゃって、あそこでは不正な手段で情報を得てやったそうだよというような情報が流れて、その企業がもしも裁判に勝ったとしてもなかなか立ち上がれないのではないかというようなことも懸念されるわけでありますけれども、そこら辺についてどういう対応をしようとしているのか、質問したいと思います。
○棚橋政府委員 第一の、営業秘密を当初は正当な取引によってお金を払って契約によって取得したが、後で向こうの当事者が不正な手段でそれを取得したものである、そういうケース、善意であったけれども事後に不正を知ったという場合でも、また、かつそのときまでに相当の投資を契約に基づいてして生産が始まっておっても、悪意が介在しておったということを知った後の使用行為、開示行為はやはり差しとめの対象になるものと考えるわけでございます。ただし、この法律案の二条一項五号におきまして、取得時に不正行為があったことについて善意であり無重過失、善意で重過失がなかった場合には、その中小企業の方はその取得の際の取引によって得た権原内で当該営業秘密を使用、開示して、物を生産したり、販売したりすることができる、こういう救済の規定がございます。 例えば五年の期間で、ある中小企業の方がだれかと契約をした、その相手の方は不正な手段で取得して、しかしそのときは知らなかった、知らなかったことについて当該中小企業は当初善意であり、かつ重過失がなかったという場合は、五年の契約期間のそれが三年目であってあと二年ある場合には、その五年間の契約期間内は当該設備を運転して生産ができる。ただ、ロイヤリティー等の支払いの問題は当然ございますが、そういうふうに相手方が善意無重過失の場合は考えております。 それから、費用の問題につきましては、これは普通訴える方がいろいろの費用、訴額に応じた手数料は支払うわけですが、先生御指摘のように、弁護士費用は訴訟の費用に入らずに、仮に訴えられた方が勝っても、訴えられた方の弁護士費用は自分が払わなければいかぬという問題が我が国の訴訟制度全体の問題として確かにございます。これについては別途いろいろ法制全体の問題として御議論いただくべき問題かと思いますが、本人訴訟というのもございまして、弁護士を使わない訴訟のやり方もあるわけでございます。 それからもう一つ、信用失墜。確かに民事訴訟において被告になるとやや何か悪いことをしたんじゃないかという面で信用を損なわれるケースもありますが、その疑いを晴らして信用を回復する手段はいろいろあるわけでございますが、我が国の場合にはアメリカと一般的に違いまして、アメリカの場合はすぐ訴訟に訴えるというケースが多くて、それから考える。日本の場合にはやはりよく考えたり、先ほど内容証明とおっしゃいましたが、いろんな話し合いをして訴訟に応ずるというのがやや一般的なケースでございますので、そういうことで乱訴というようなことは我が国の今の風潮ではないのではないかな、このように考えております。
○大畠委員 いろいろ今お話を承りましたけれども、いずれにしても中小企業にとっては今回の法改正でどういうふうに対応したらいいのかな、どういうふうに準備したらいいのかなと非常に不安を募らせているんじゃないかと思いますので、今いろいろお話がありましたけれども、実務上の論点を明確にして、そして産業界に無用な混乱を生じさせないための例えばガイドライン的な解説書を作成すべきではないのかなと私は思うのですが、どのようなお考えを持っておられるでしょうか。
○棚橋政府委員 中小企業の方を中心に確かにそういう問題があり得ると思います。それで私どもとしましては、この法律が適切に運用されるためには産業構造審議会のいろいろな議論もございましたので、この立法の経緯、改正内容の本旨を周知徹底させるということで、これは産業界、法曹界にも十分この法律の趣旨、目的を理解していただくための努力をしてみたいと考えております。その意味で、先生御指摘のように、ガイドラインというのはいろいろまたこれからの問題でございますが、私どもはこの法律が幸い国会で成立すれば直ちにこの経緯、立法の趣旨あるいは逐条的にコンメンタール等でこの法律案の本旨を十分に、特に中小企業の方々等にはお話をし、また周知徹底をするような努力を重ねてまいりたいと思いますし、また全体的に中小企業対策の中でもそういう問題をやはり今後とも検討してまいりたい、このように思っております。 〔委員長退席、古賀(正)委員長代理着席〕
○大畠委員 あと具体的な問題の質問を三つほどしたいと思います。一つは、第一条第三項第四号の保有者に害を与える目的とは、例えば内部告発などを今社会的な道徳心から行う者もあるわけですが、こういうものもこの保有者に害を与える目的ということになってしまうのかどうか、これが一つ。 それからもう一つは、憲法第八十二条に規定する裁判公開の原則によって、例えば裁判になりますと営業秘密なんかでああだこうだと出るわけですけれども、そういうものがすべて明らかになっちゃうんじゃないか、こういうことになりますと、裁判に訴えることがどんなんだろうかということになってきますので、ここら辺、今回の改正案を施行するときに、こういう企業秘密の保護のための、裁判をするときの保護のための対策というのはどういうふうに考えておられるのか、この二つをお伺いしたいと思います。
○棚橋政府委員 まず、保有者に損害を与える目的について。社会的な道徳心等から内部告発的なものもあり得ると思いますが、本法案による差しとめの対象になる営業秘密につきましては、差しとめを請求できる保有者は当該不正行為によって営業上の利益を害され、または害されるおそれのある者に限られております。この場合の営業上の利益とは、正当な営業上の利益を指すことは当然でありまして、脱税とか公害とかそういうものについての企業の情報は、仮にその企業が秘密であるとして管理しておっても、その情報自体は事業活動に有用な情報ではありませんし、企業の公序良俗に反する行為でありますので、仮に当該情報が公表されましても、ここで言う企業の正当な営業上の利益が害されたということにはなり得ないと考えております。 それから、裁判のときに秘密保護対策がどうなっておるのか、むしろ訴訟に訴えるとそこで、裁判の過程において秘密が表に出てしまうんではないか、こういう御懸念かと思いますが、これについては私どもも、事柄の性質上、非公知性がこの秘密性の重要な要素になっておりますので深い関心を持っております。訴訟手続でその内容が公表されることのないような配慮が必要であると思っておりますけれども、現在、憲法で裁判の公開の原則が我が国においてはっきり保障されております。ただ、例えば民事訴訟法二百八十一条一項3号では、営業秘密についての証言拒絶の事由となる場合にはそれができるというような規定もございますので、現行手続の中で一定の工夫も凝らされていると思っております。 しかしながら、この問題全体につきまして民事訴訟手続全体のあり方の中で検討される問題であると考えておりまして、本法案が成立さしていただきました場合にはその運用状況も見た上で慎重に関係各省で検討されるべき問題ではないか、このように考えております。
○大畠委員 今お話がありましたけれども、この裁判のときの秘密対策、営業秘密対策といいますか、これはやはりぜひとも、日本国憲法がありますけれども、今局長がお話しになりましたとおり、十分に配慮してやらないと有名無実になっちゃう感じもするんですね。訴えたらもうみんなパアになるということでは前と同じだから黙っているかということになりますので、そうなったら今度は、先ほどのお話のこの法案を提出する国際的な協調といいますか、そういう調和を図るというような目的を阻害してしまいますので、ぜひとも裁判について秘密保護対策を十分に検討して対処していただきたいと思います。 それからもう一つ、例えばよくリバースエンジニアリングというのがあるんですが、市場から製品を購入して、製品を分析するなどをして、その製品を持つ情報を取り出す行為、すなわちリバースエンジニアリング行為と言っておりますけれども、こういう行為によって情報を取得をして使用したりあるいは開示する行為というものは欧米でも合法的と認められておるわけでありますが、今回の日本の改正案においてもこういうリバースエンジニアリングによる行為、情報取得後、使用したり開示する行為というものは差しとめの対象とならないと理解してよろしいでしょうか。
○棚橋政府委員 電子関係とか、電子関係に限らず工作機械その他一般的に特に機械の分野では製品を分解したりして解析する、評価するということがよく行われます。これがリバースエンジニアリングと言われているものでございますが、通常のリバースエンジニアリングが営業秘密にかかわる不正行為となることはないと思っております。諸外国におきましても、先生御指摘のように、この営業秘密の保護制度があっても通常のリバースエンジニアリングは営業秘密にかかわる不正行為には該当しないと言われております。ただ、通常のリバースエンジニアリングはそういうものでありますが、もちろん窃取、詐欺、強迫で物を得てきて分解するということになればまたこれは全く別な話でございます。通常の場合にはならないと考えております。
○大畠委員 いろいろ議論をしてきたところでありますけれども、もう一つ。今、差しとめ請求権の消滅時効については、差しとめ請求権が三年、それからその行為から十年で時効ということになっておるのですけれども、どうも少し長過ぎるんじゃないかという声もあるんですね。したがって、差しとめ請求権を三年としたこと、それから行為から十年が過ぎた場合は時効にしますよという根拠について伺いたいと思うのです。
○棚橋政府委員 私どもの今回の案では、その差しとめ請求権の行使に当たりましては、不正行為者を特定したり、その所在の把握をしたり、不正行為の特定をする、情報を収集する等の訴訟の事前準備のために具体的な事実関係の調査が不可欠であるということで、余りにも消滅時効の期間が短い場合には保有者の救済の道がかなり狭くなってしまうということで、先生御指摘の三年、十年にさせていただいたわけでございます。 もう一つ、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権が民法七百九条で認められておりますが、ここの短期消滅時効が民法七百二十四条で三年になっております。それからもう一つ、当事者間に契約によって守秘義務がある場合に、これは四百十四条の規定でございますが、それにかかわる時効の規定が民法百六十七条でございまして、これは契約責任に基づいて差しとめの請求をなすことができるわけですが、相手方が不履行のときから十年間で差しとめ請求権が時効で消滅する、こういう例もございます。こういうものを考えまして、民法の特別法である本法におきまして、民法上の取り扱いと著しく異なる時効期間を設定することは、民事法体系上のバランスを失するということで、今回の三年、十年の時効期間にさせていただいたわけでございます。我が国の場合には、欧米と比べて訴訟にかなり慎重であるという、そういう今までの社会的風潮等も考え、アメリカ等ではまず訴えてから考えるというようなことですぐ訴えてしまうケースが多いものですから、消滅時効の期間が短くても十分対応して相当の訴訟がある、こういうことでございます。
○大畠委員 時間が参ったようであります。以上いろいろ今回の法改正について質問してまいりましたけれども、基本は、先ほども言いましたように他人の努力の成果を不当な手段で入手し、それによって利益をおさめることは許されないという、こういうものであるということを本当に基本にしてこの法の施行をしていただきたいと思うのですが、したがってこういう施行によって、先ほど言いました過大な権利主張による産業界の混乱や、過剰な営業秘密の保護による従業員の過剰管理、そしてまた転職の自由を阻害することにならないように十分産業界を指導していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○古賀(正)委員長代理 小岩井清君。
○小岩井委員 引き続いて質問をいたしますが、この不正競争防止法の一部を改正する法律案については、本年三月十六日に建議された「財産的情報に関する不正競争行為についての救済制度のあり方について」という報告書がこのもとになっております。今、質疑の中でもまだ明確になっていない定義の問題でありますが、この定義によってこれをあいまいにしたままだとするならば、これは各企業によって営業秘密の範囲が決められるとすれば、安易に拡大できるということになるとすれば、正常な情報の取引だとか、あるいは転職活動だとか社会的に必要な情報の公開等に大きな影響があるというふうに思うのです。さらに守秘義務を負う企業に働く従業員にも大きな責任と重圧をかけることになるだろうというふうに思うのです。そして転職に不当な抑圧をする、こういうことになるだろうというふうに思うわけです。 この定義を明確にするということは、まずこの法律の基本だと私は思うのです。ところが、この「財産的情報に関する不正競争行為についての救済制度のあり方について」の建議の内容と、本法律案の営業秘密についての定義が違っているということはどういうことなのか。 ということは、この報告では四つあるのですね。まず一つは、公然と知られていないこと、二つは、秘密として管理していること、三つとしては、経済的価値ある技術上または営業上の情報であること、四つは、秘密として保護されていることに正当な利益があること、この四つ挙げているのですね。今この法律案の中で営業秘密として挙げられているのは、三つなんですよ。三つで、一つは公然と知られていること、これは出ています。二つ目は秘密として管理していること、これも出ています。三つ目は違うのですね。事業活動に有用な技術上、営業上の情報であるということになっていますね。ところが、この三月十六日に出された報告書では「経済的価値のある技術上又は営業上の情報であること」。事業活動に有用なというふうに直してあるけれども、事業活動に有用であっても経済的に価値あるものでない場合、どうなりますか。この点をあいまいにしたままやれば混乱が起こるのではないかと私は思うのでありますけれども、どうなりますか、答弁いただきたい。 それから四点目はばっさり削っちゃっているわけです。秘密として保護されることに正当な利益があること、この一番重要なことを削っちゃっているというのはどういうことですか、明確に答えてください。
○棚橋政府委員 まず第一の御指摘の、三つの要件のほかに第四の要件がこの審議会で確かに議論をされました。言うなれば、公序良俗に反するような反社会的なものでないことというようなことが必要であるという議論がされまして、この法案の審議で内閣法制局で随分いろいろ議論いたしましたが、いわゆる我が国の法体制全体の法理から、あえて第四の要件として反社会的な行為と公序良俗に反するものでないことを要件としなくても、解釈上、この三つの要件を充足しておってもこの法律で保護される営業秘密にはならないというのは当然の法理であるという内閣法制局の御意見がございまして、私どもはいろいろな角度から議論いたしましたが、第四の要件としてその要件を特定することをいたしませんでした。ただ、繰り返しますが、この法律の精神として、恐らく裁判所の裁判において当然その法理が実質的な第四の要件として取り入れられることになりまして、先ほど来申し上げておりますように、企業の反社会的な行動等についての情報は、仮に三つの要件を充足してもこれは対象にはならないということになろうかと思います。これは欧米の例でもあえてそういう要件を入れておらないわけでございますが、具体的な裁判のケースにおいては当然それが働いております。 それからもう一つ委員御指摘の、この産構審の答申の中で「具体的には、当該情報により財・サービスの生産・販売、研究開発、費用の節約、経営効率の改善等の現在又は将来の経済活動に役立てることができるものである」情報、経済的な有用な情報である、こういう表現になっておりますけれども、私どもの今回のこの事業活動に有用な技術上または営業上の情報もこれと同一の考えである、このように理解いたしております。
○小岩井委員 これは定義を明確にしておきませんと、先ほど大畠委員からも何遍も繰り返し繰り返し質疑をいたしておりますけれども、混乱が起こるのですよ。事業活動に有用な技術上、営業上の情報と、経済的に価値ある技術上または営業上の情報と、これは明らかに違うと思うのです。同じなんですか。要するに、こういうことになると、事業活動に有用な技術上、営業上の情報であるということであって、企業が無限大に拡大することができることになっちゃうじゃないですか。この点、答えてください。
○棚橋政府委員 ただいまも申し上げましたが、事業活動に有用な情報といいましても、それがその事業活動全般についての情報でないことは当然でありまして、かつまた反社会的な事業活動は対象にならない。したがって、いろいろ詰めてまいりますと、私どもの解釈では、先ほどこの審議会の答申にありました経済的な価値のある情報、これは技術的にも営業的にも事業活動に有用な情報と同意義に解釈して、その間に矛盾はないものと考えておるわけでございます。 〔古賀(正)委員長代理退席、井出委員長代理着席〕
○小岩井委員 後ほど質問いたしますけれども、このことが職業選択の自由に重大にかかわってくるのですよ。ですから聞いているのですけれども、大臣、これはどうお考えになりますか。
○棚橋政府委員 繰り返して大変恐縮でございますが、この産構審の答申の議論の過程におきましても、まさしく今私が申し上げました、事業活動に有用なという考え方と、経済的な価値のあるという考え方とは同意義に解釈してこの答申をいただいたものと理解いたしております。
○小岩井委員 大臣、よく読んで御答弁いただきたいと思いますけれども、経済的価値があるとい うことと事業活動に有用なというのは同意義なんですか。大分違うのじゃないのですか。
○棚橋政府委員 これはまた別のことを申し上げますけれども、いずれもこの保有者の主観的な尺度で決められるものではなくて客観的に判断されるわけでありまして、この事業活動に有用な技術上または営業上の情報も、その企業が単に自分のところで主観的にこれは重要だ、有用だと思っておっても、これは恐らく裁判所でいろいろの角度から検討するわけでございますが、やはり客観性が前提になるわけでございます。 もとよりこの客観性というのは、別の要件、秘密として管理されておる場合も、それから公然と知られているかいないかについても、やはり客観的にそう認定される場合でございます。 それから、欧米の例を申し上げて大変恐縮でございますが、この営業秘密についての定義はむしろ我が国において最もはっきり定義づけたつもりでございまして、これはアメリカの長年のコモンロー、判例法の積み重ねによって得てきたいろいろな事例、あるいは西ドイツ等を中心とするヨーロッパの判例の事例等を参考にいたしまして、むしろ我が国の今回の規定は一番進んでおるのではないかと考えておるわけでございます。
○小岩井委員 極めて重大な答弁がありました。主観的判断ではなくて客観的に判断をする、こういうことですけれども、これはだれが判断するのですか。ということは、判断するのは企業なんでしょう。裁判所とおっしゃったけれども、最初から裁判所が客観的判断で基準を決めるのですか。
○棚橋政府委員 先生御指摘のように、確かにその企業が自分が三つの要件を充足している営業秘密を侵犯されたといって裁判所に差しとめ請求なり損害賠償を請求する場合に、その企業の主張はあるいは主観的な主張をベースにして彼らが客観的であると言っても結果的には主観的なものがあるかもしれませんが、やはりこれは裁判規範であるわけでございますので、この三つの要件を前提にそれが客観的に担保された内容であるかどうか最終的には当然裁判所が判断をされることになるわけでございます。
○小岩井委員 この問題は、裁判所に行くまでは判断がつかないということですね。
○棚橋政府委員 やはり裁判所における裁判規範でございますから、先生御指摘のように最終的には裁判所でございます。
○小岩井委員 ということは、定義が極めてあいまいだということをお答えになったというふうに理解していいですか。
○棚橋政府委員 大変先生に失礼でございますが、この定義は今まで各国の不正競争防止法あるいはコモンローにおいて営業秘密を保護しておるいろいろの判例の積み重ねを参考にしながら、我が国において今回営業秘密を定義づける要件として、必要にして最小限ではありますが、あるいは各国の法令等に照らしてもむしろ一番きちっと要件を決めた先例的なものではないかと理解いたしておりまして、大変お言葉ではございますが、あいまいなものであるという認識は私にはございません。
○小岩井委員 認識の違いだとおっしゃりたいわけですね。 それで、伺いますけれでも、先ほど四点目の「秘密として保護されることに正当な利益があること」を削ったことについて、精神として実質的要件が満たされているという答弁がありましたね。どこに精神として実質要件を満たされているのか、具体的に示してください。
○棚橋政府委員 そもそも保護されるべき保有者の「営業上ノ利益」という表現がございます。これは法律上保護されるに値する正当な利益と解されておるわけでございまして、民事法上の大原則であります権利乱用、公序良俗の法理が本法案にも当然適用があるものと理解しております。さらに、民事法規において正当な利益を規定したいろいろの立法例もないわけでございますので、私どもとしましては正当な利益についてはあえて今回その公序良俗に反するというのを要件として記載するまでもないと判断をいたし、内閣法制局の指摘を踏まえてあえてその要件を入れなかったわけでございます。営業上の利益に入っていると思います。 〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
○小岩井委員 時間が経過するばかりですので、私は定義が極めてあいまいだということを指摘をいたしておきます。 次に移ります。 産業構造審議会財産的情報部会の三月十六日に建議された報告書、先ほど申し上げましたけれども、「政策提言」の第一にこう書いてあるのですね。知的財産は適切な保護が必要であるとしております。反面、「知的創作活動等の増進のためには、過度な知的財産保護を行うと競争が阻害され、かえって経済全体の知的財産の開発活動等にマイナスの影響を与えかねないため、バランスのとれた保護とすることが必要である。このためにも知的財産の保護は個々の知的財産の性格や、それを取り巻く社会環境に留意しながら行う必要があり、」と指摘されております。最後にまた、「本部会での審議内容が考慮され、正常な情報取引、転職活動、社会的に必要な情報の公開等に悪影響がないよう、適切な運用が行われることを期待する」と念を押されています。これは相互に相反する記述があるというふうに理解するのです。この点について、この部会の審議経過について明らかにしていただきたいと思います。
○棚橋政府委員 先生御指摘のように、確かにこの産業構造審議会においていろいろの議論がございまして、やはり知的創作物についての権利の保護を十分考えなければいけない。特に我が国は先進諸国の中で差しとめ請求権がない唯一の国である、ウルグアイ・ラウンド等においてのいろいろの指摘もあるので、そういう保護を十分やらなければいけないが、他方余りにも過度な知的財産保護を行うと競争が阻害されるとか、それから先ほど先生も御指摘のように転職活動その他社会的にいろいろの問題がある、そういう別の理由も当然指摘をされておるわけでございます。 それで、私どもは、このバランスのとれた保護につきましては、そういう御指摘を十分に考えまして、例えば今回の営業秘密につきましては従来から既にこの点については民法七百九条あるいは約違反の場合には民法の四百十四条で損害賠償、あるいは契約違反は差しとめ請求権もあるわけですが、対象となるような窃取、詐欺等の不正行為によって侵害された場合にこの差しとめ請求を認めよう、そういうことにしたわけでございまして、公の審査を経ることなく、保有者が管理することによって経済的な価値を保持しておるという営業秘密の特性を踏まえた相対的な保護制度が提言されたものと承知いたしておりまして、本法案もそれを受けて条文整理をしたわけでございます。 それからもう一つ、今委員御指摘の産構審の建議で、適切な運用を期待する旨の記述につきましては、審議の過程におきまして、本法案の施行に伴いまして、転職者に対して公序良俗に反するような競業制限契約を行き過ぎて行う者が出てくることも懸念されるという指摘も確かにございました。こういうものについては、当然行き過ぎた場合には問題がある、私どももこのように考えておりますが、これから産業界、労働界ともにこの法律の趣旨を十分御理解いただき、私どももいろいろの機会を通じてお話し合いをし、かつ立法の趣旨、目的を十分に周知徹底させることによって、そういう懸念が生じないように、マイナスが生じないように対応していきたいというつもりでございます。
○小岩井委員 この相反する二つの記述があるということは、過度な財産的情報の保護にならないようにそれを戒めたというふうに理解していいですか。その辺のところ、企業秘密を過度にならないように、そういう指摘があったというふうに理解していいですか。
○棚橋政府委員 原則としては御指摘のとおりでございまして、先ほど委員とはちょっとこの見解が違いましたが、三つの要件も、客観的に認定される三つの要件を充足していなければいけない。それから、差しとめ請求権を追加をしたということで、そういう配慮を前提にした改正案だと承知をいたしております。
○小岩井委員 なぜ私がこれを聞くかというと、ここまで念を押されているのに、またもとに戻って恐縮だけれども、定義をあいまいにした、逆に四つ挙がっているのに三つにして、三つ目も「経済的な価値のある」というのを削ったというところに問題がないかというふうに、この建議された報告書と照らして聞いているのです。それとの関連はどうですか。
○棚橋政府委員 私どもとしましては、営業秘密の要件として三つの要件を定めたことによって、それが相当限定された、ある意味では定義になっていると思いますし、それから第四の産構審の提言の反社会的な行為等ではないことということにつきましては、先ほど申し上げましたようにそのような行為は営業上の保護されるべき利益ではないということで、その中に第四の要件も入っておる、こういうことで十分に営業秘密の定義づけに近いものをしたものと私どもは考えております。
○小岩井委員 これはのれんに腕押しのようなやりとりですから、ほかに移ります。 本法律案の最大の問題点について伺いたいと思うのですが、これは職業選択の自由を阻害するという内容を含んではいないかということなんです。憲法第二十二条第一項で「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と職業選択の自由についてうたわれております。ところが、営業秘密、財産的情報の保護の強化をするということ、これは企業に働く人たちの転業、職業選択の自由を奪うことにならないか。まず、一般論から伺っておきます。その後、具体的に伺いますから。
○棚橋政府委員 本法案の策定に当たりましては、労働者の転職の自由を阻害しないように十分な検討を行いまして、労働界の委員にも御参加をいただき、かつまた労働省とも十分に協議をいたしたわけでございます。 先ほど来申し上げておりますが、営業秘密については先ほどの三要件をすべて満たす、あるいは、委員御指摘の表現をかりれば第四の要件も事実上入っているわけでございますが、それを満たすことが必要とされておりまして、このような要件は欧米主要国では明言されてないケースが多いのですが、基本的に同じでございまして、長年にわたる欧米諸国におきます法制度の運用を見ましても、営業秘密の範囲が漠然、不明確なことによって職業選択、転職の自由等が侵されたというケースはないものと考えております。 なお、具体的に、本法案で退職後従業員の行為が不正な行為となるのは、保有者から示された営業秘密を不正の利益を図る目的または加害の目的をもって使用、開示する場合に限定されておるわけでございまして、通常の労働者の方の就職活動、転職活動が制約されることはない、このように考えております。
○小岩井委員 先ほど来何遍も申し上げておりますけれども、この報告書に、「同一業種の生産、営業活動において一般的な知識・技能までを含むものではない。」とされている。それから「一般的な職業上の知識やその従業員固有の知識を活用した転職に支障をきたすことはないと考えられる。」というふうに記述があります。これは、その従業員の持つ知識と企業秘密、これをどう区別するかという問題なんですよ。先ほどの解釈、定義があいまいな点からいけば、この辺の領域まで踏み込んで営業秘密とするのが出てくるのではないか。一般的な知識、技能までも含む、あるいは一般的職業上の知識やその従業員固有の知識を活用したもの、こういうところにまで拡大される危険はないのか。これは「含むものではない。」というふうになっておりますけれども、そういう危険はないのかということなんです。職業選択の自由を縛ることにならないかという懸念があるわけですけれども、その辺はどうですか。
○棚橋政府委員 委員御指摘の産構審答申で、「一般的な職業上の知識やその従業員固有の知識を活用した転職に支障をきたすことはないと考えられる。」まずこの前半の「一般的な職業上の知識」。営業上の秘密として保護の対象となる知識は、これは当該企業においてその従業員の方に、これは会社として営業上の秘密として、秘密であるからきちっと管理されておるということをよくわかるように管理体制を整備しておかなければいけないわけでございますし、それからまた、技術上の有用な情報または営業上の有用な情報であることが当然前提になるわけですし、非公知性が前提になるわけです。したがって、その従業員の方が一般的な知識で持っておられる知識は、通常の場合そういう営業秘密には入らないわけでございますから、転職されてそれをお使いになっても、別にこの法律の対象になって差しとめ請求等の対象になるわけではない、こう言えます。 それからもう一つ、この後段の「従業員固有の知識」。例えばその企業において御自分が開発した知識等は、先ほども申し上げましたが、これは当該従業員に帰属するケースが原則でございます。したがって、その方が別の企業に転職をして、その自分が開発した自分固有の知識を使ってもこの法律に違反するケースはないと考えられます。ただし、これは特許権等についても同じだと思いますが、就業規則その他でその企業において開発した技術、営業上のいろいろな知識、ノーハウは、契約によって当該企業に帰属する、当然当該企業は労働者の方に対価を払うというようなケースの契約がある場合には、転職をしましてその方が別のところでそれを使いますと、これは会社に帰属しておるノーハウになっておりますので、契約違反という問題になりまして、本法の対象ではなくて、従来からあります民法四百十四条の契約違反の問題になって争われるケースがあり得るかと思います。これはまた別の話でございます。
○小岩井委員 本法律案の中に、不正の競業その他不正の利益を図るための行為を行う目的ということがあります。会社の業務を通じてその従業員個人が蓄えた知識や技術を転職して生かそうとする場合、これは該当するのですか。
○棚橋政府委員 この不正の競争の目的あるいは不正の利益を図る目的とは具体的にどういうことかという御質問かと理解しますが、本法案において不正とは、営業秘密を示した保有者と従業員の方との信頼関係にかんがみまして、相手の利益を不当に害してはならない信義則上の守秘義務が認められる場合において、当該義務に違反して競業の目的あるいは利益を獲得する目的等を持ってそれを使用、開示することを指しておるわけでございます。 例えば我が国の判例では、これは七百九条の損害賠償だけの判例ですが、通信販売会社に在職中の取締役が顧客リストを持ち出して、別会社において当該名簿を使用して競業行為を行ったケース。コルム貿易事件というのが昭和五十八年にございますが、このケースでは千四百万円の損害賠償請求を認めた事例もあります。こういうケースについては不正の競業の目的ということで、今回法律が成立すれば本法案の差しとめ対象になる、こういうことでございます。
○小岩井委員 それでは違った観点から承りますけれども、研究開発等に従事している人が職務上開発した財産的情報、これはその従業員と企業のいずれに帰属しますか。これは、この報告書を引用しますけれども、4の(1)に「財産的情報と職業選択の自由」の項で指摘されておりますけれども、これは本法律案の中では明確になっていませんね。これは企業の営業秘密、財産的情報、職業選択の自由との関連で極めて大きな問題なのですけれども、この点どうお考えになりますか。
○棚橋政府委員 労働者が研究開発を行う場合、職務上開発したノーハウ等についてそれがどこに帰属するかということでございますが、これはほかの知的財産に関する法律の特許法とか著作権法等の権利の帰属が参考になると考えられます。例えば特許法の保護対象となる場合は、労働者が研究開発で開発したものは原則として労働者に帰属することになっておりますが、これは特許法の三十五条で職務発明という規定がありまして、使用者は、従業員が職務発明について特許を受けたときは通常実施権を有する。従業員がした職務発明については、あらかじめ使用者に特許権を承継させる契約、勤務規則等を設けることができる。従業員は、職務発明について使用者に特許権を渡すときは相当の対価の支払いを求める権利がある。こういうような規定がありまして、原則として発明者である労働者に帰属するが、就業規則、契約等によって対価をもらって会社に帰属をさせるというケースもございます。今回の営業秘密になるノーハウ等についても、原則として、研究者が開発したノーハウは研究者に帰属するであろうと思いますが、やはり契約によってそれが会社に帰属するケースもケース・バイ・ケースであり得ると思います。
○小岩井委員 ケース・バイ・ケースであり得る——随分あいまいですね。この報告書では研究開発者に帰属するとなっていますね。そういうふうに解釈していいのですか。これは問題が起こる、混乱が起こる原因、この辺に起こってくると思うのですよ。どうですか。
○棚橋政府委員 原則として研究開発者に帰属します。契約があれば別だという意味でケース・バイ・ケースと申し上げたわけでございます。
○小岩井委員 契約があればということですから契約の点について承りますけれども、財産的情報に関する競業制限契約等の留意点もこの報告書にあります。退職する労働者に対する守秘契約、競業制限契約については、その制限が合理的範囲を超える場合は公序良俗に反し無効にされるとされています。ということは、退職する労働者に対して守秘契約並びに競業制限契約について、これはこの契約をした場合に退職後は効力がないんだ、こういうふうに理解をしますけれども、そういうことでいいのですか。
○棚橋政府委員 労働者の方が退職する場合を考えまして、退職後直接競業する企業には何年間か行ってほしくない、こういう前提で雇用契約を結ぶというケースもございます。この競業禁止契約につきましては、制限の期間がやはり大きな問題になります。やはりこれが余りにも長期になりますと、転職の自由を制限するわけでございます。それから、場所的、期間的につき一定の範囲での競業を禁止する契約は原則的に有効であると見られておりますが、物すごく広範囲に、例えば全国一律どこへ行ってもだめだというようなケース、しかもその期間も長い、そういうような場合には労働者の生活を脅かし職業選択の自由を制限するというようなことで、公序良俗に反してその競業禁止契約が無効となるケースもございます。今までも差しとめ請求権の対象には根拠規定がなかったからならなかったのですが、民法四百十四条で債務不履行が問題となったケースにおいて幾つかの事例がありまして、ある事例については競業禁止契約が公序良俗に反して無効であると言われ、あるケースについては全面的、部分的に有効であると認定されたケースがありまして、それは今申し上げましたような期間とか場所とか労働者のいろいろな生活の状況とか、そういうことについて裁判所が総合的に、公序良俗に反するかどうか、契約が有効であるかどうか、それを認定することになっております。
○小岩井委員 裁判所が認定するということですね。となると、その退職時点で混乱並びにトラブルが十分起こり得ますね。ということは、本法律案でこの点明確になっていないのですね。これは労働省、どうお考えになりますか。
○木村説明員 まず、この法律案と職業選択の自由といった問題でございますが、職業選択の自由につきましては、先生御指摘のとおり、憲法で保障されている基本的権利ということで、我々としても非常に尊重すべき基本的権利であるというふうに考えております。 この法律案でまず問題になりますのは、最初に御議論ございましたが、一つは法律で定めております営業秘密の範囲につきまして、一般的な知識、技能といったものは含まれていない、あるいはまた秘密として管理されていることが要件になっておるということから、その対象が具体的な特定をされておるという点がございます。また、差しとめの対象となるような行為につきましては、不正の競業その他の不正の利益を得る目的あるいは保有者に損害を加える目的を持った行為に限定されておるということから、労働者の転職を阻害するようなことにはならないだろうというふうに理解しております。 ただ、いずれにいたしましても労働省としては、企業の営業秘密に関する不正な行為の防止が労働者の退職後の職業選択も含めて職業選択の自由を阻害することがないように十分に配慮されるべきであろうというふうに考えております。
○棚橋政府委員 委員御指摘の競業禁止契約について立法政策としてはいろいろな御議論があると思います。例えば西ドイツにおきましては商法の七十四条以降において基本的な基準、これは当事者について未成年であるかどうか、あるいは徒弟制度がドイツでは盛んですが、それは対象外にするかどうか、それから要式行為がきちっとしておって書面でそれがきちっとなっておるかどうか、それから代償が支払われることになっておるか、その代償についても最低限幾らであるかとか、それから今申し上げました期間が非常に重要で、ドイツでは原則二年が上限になっておるとか、そういうことで、競業禁止契約の有効性について基準が商法等である場合もございます。我が国においては契約として有効かどうか、そういう判断で裁判所がすることになっております。
○小岩井委員 一連の質疑の中で、きちんと問題点が整理されて解明されたというふうには言いがたいような内容のやりとりでありますけれども、時間があと残り少なくなりましたので伺いますけれども、この法律案が法律案じゃなくて法律になったとして、これは施行の段階で扱い方によっては非常に大きな問題が発生してくると思うのですよ。先ほども申し上げましたけれども、憲法第二十二条第一項の職業選択の自由に抵触する問題が随所に起こってくるという問題がなしとしないわけですね。これは一面的には知的財産、財産的情報である営業秘密の保護を進めるということも必要だと思います。しかし、それによって問題が起こってくる、これを進める中で問題が起こってくる。働く人たち、労働者の権利をどう守るのか、この点について極めて重要ですから、これは大臣から答弁を求めたいと思ったのですが、大臣はもう戻ってこないのですね。局長の方からお答えいただきたいと思います。
○棚橋政府委員 本問題の重要性にかんがみ、大臣が御答弁するわけでございますが、お許しを得て私から申し上げます。 委員御指摘のように、本法案の策定に当たりましては、労働者の権利の保護が極めて重要であるということは通産省としても十分認識をいたしております。このため、本法案の原案の作成段階から労働界の委員の方にも御参加をいただき、かつまた労働省の方とも十分に協議をして、労働界全体の意見も十分に踏まえて、本法案によって職業選択の自由等の労働者の権利に不当な影響を与えることのないように差しとめの対象を不正の競業その他の不正の利益を図る目的等で使用、開示する場合に限定をするという措置でお願いをしているわけでございます。通産省としましては、こうした本法案の委員御指摘のいろいろの議論を踏まえまして、立法経緯を踏まえまして、この内容、この法律の真意、趣旨の周知徹底を図り、産業界、労働界等にも十分本法案の目的とするところを御理解いただきまして、労働者の権利について不当な影響が出ることのないように解説書の作成や説明会の開催等、積極的な対応をこれから考えていきたいと思っております。
○小岩井委員 時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
○浦野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩をいたします。 午後零時四分休憩 ────◇───── 午後一時開議
○浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。森本晃司君。
○森本委員 大臣にお尋ね申し上げたいわけでございますが、今国会の商工委員会での法案審議はいよいよきょうのこれのみとなってまいりまして、委員会の審議は名委員長のもとでいろいろと議論をさせていただいておるところでございます。 ところで、今国会の大臣の当初の所信表明には、トレードシークレットに関する改正法案を提出することについては触れてはいらっしゃらなかったわけでございます。そこで、もうあとわずかで会期末というときにこのトレードシークレット法が急遽浮かび上がってき、そしてきょう審議をしているわけでございますけれども、私も情報化社会の中でこのトレードシークレットの保護ルール、これは確立をしなければならない、またその必要性も十分感じておるわけでございますが、急遽こうして出てきた背景は一体どういうところにあったのか、またその必要性は何なのか、それからこの目的は一体どういうものなのか。さらにはまたこの改正案が今国会で成立することの意義、これは一つは国際的にウルグアイ・ラウンドにおける知的所有権の交渉のTRIPのところで大変な役割を果たすのではないかというふうに思いますが、国際的な役割、我が国の置かれている立場等々を考えてどうなのか、さらに国内における企業のノーハウの保護という点でどういう影響を与えてくるのか、この法案の重要性についてお聞きしたいと思います。
○武藤国務大臣 まずもって本当に委員長以下、各党理事の皆さんを初め、委員の皆様方、大変スムーズな審議を進めていただいておりまして、心から感謝申し上げる次第でございます。 また、今御審議をお願いをいたしております不正競争防止法の改正案というのは、御指摘のとおりで、最初この特別国会の始まる前に、通産省としてもまだお願いをするというところまでは実は至っていなかったものでございますから、私の所信表明の中にも入っていなかったわけでございます。たまたま産構審からの答申が三月に行われましたこともございますが、それよりも今たまたま御指摘ございましたように、これから二十一世紀に向けて世界の自由貿易体制をしっかり確立しようということで、現在のガットのいわゆる多国間協定は、仕組みにおいてもまた中身においてもいま一つもっと充実をしなければいけないんじゃないかということが言われまして、ウルグアイで行われた会議でそういうことが指摘をされまして、それ以降いわゆるウルグアイ・ラウンドという形で、ガットのルールの強化に向けて、世界それぞれガットに加盟しておる国によって審議が今日まで進められてまいりまして、何とかこの年末にはそれをまとめ上げようという今最終段階にやっと来ておるところでございます。 私も四極通商会議あるいはOECD閣僚理事会に出席をいたしましても、当然この問題が大きなテーマになっておったことをみずからよく承知をいたしておるわけでございますが、その中でTRIP、知的財産分野と申しますか、この分野の交渉の中で、現在ちょうどお願いをいたしておりますいわゆる知的財産をめぐって、その営業秘密に対する保護というものが、保護というか対抗措置と申しますか、そういうことが交渉の項目の中に入っております。ところが、ほかの主要先進国はこの営業秘密に対する差しとめ請求権というのが全部あるわけでございますけれども、どうも日本の場合にはどういうことでそういうことであったのか、私は過去の経緯をよく存じませんけれども、差しとめ請求権というものがないままに今日まで至っておりまして、このTRIPの問題をいろいろ議論する上においても、やはり日本としてはぜひとも差しとめ請求権をほかの国々と同じようにお願いをすべきではないだろうかということで、急遽このような法律改正をお願いをいたしておるようなことでございます。 それでは、これがもし本当に成立しなかったときは、そういう影響はどういうことかとおっしゃれば、そういう国際的な、今特に日本という国は一番自由貿易を享受している国ではなかろうかと思うのでございます。そういう面においては、より自由な貿易体制を確立するという方向でガットのルールを強化するという点については日本は積極的に、また率先して努力をしなければならない立場でございますので、そういう意味合いにおいても、その辺の法の今まで多少不備であったところをぜひこの機会に整備をしていただいて、その知的所有権、知的財産分野のいろいろの交渉においても堂々と交渉させていただけるようにお願いをしたいというのが、今度のこの緊急にお願いをいたしました趣旨でございます。
○森本委員 この委員会でさきに上がりました特許庁のペーパーレス計画、これもやはり国際的な流れの中で我が国の果たす役割は極めて重要だということで、あの場合も長官が会議に出られる前に極めて慌てて仕上げたという感もなきにしもあらずのところだと思うのです。この法案も今国会で上げておかなければウルグアイ・ラウンドのときまでにはなかなか間に合わない、何とかというその気持ちはわかります。しかしながら、この法案に関して、今大臣から御答弁いただきました中で、先進諸国が既に決めているのに日本だけが差しとめ請求権がなかったというのが現状でございます。 このことについては明治の時代から議論をされてまいりましたし、さらに一九六〇年、特許協会等から不正競争防止法改正についてのノーハウの保護を行うべきであるという話がございました。さらに、国際的には一九八六年のウルグアイ・ラウンド、さらに一九八八年六月に取りまとめた日米欧の民間三極合意においても財産的情報の問題が盛り込まれておりました。私は、むしろこれは遅きに失したのではないだろうかという感を持っておるわけでございますが、今日まで日本だけがこの差しとめ請求権という問題が取り上げられていなかった、また今日まで至った経緯は、どういったものが原因となっているのでしょうか。
○棚橋政府委員 緊急にこの法案を御審議いただくことになりました点につきましては、大臣がただいま申されたとおりでございますが、委員御指摘のように、確かに以前にも特許協会からそういう案が出されたこともございますし、それから八六年から行われておりますウルグアイ・ラウンドにおいてこの議論が出てまいりまして、八八年六月には日米欧の民間三極合意においてこの問題が大きくクローズアップされてきたことも御指摘のとおりでございます。私どももかねてからこの問題についてはいろいろ研究をいたしておりましたけれども、何といいましても営業秘密の実態、技術上あるいは営業上のノーハウが大変ふえてきたのはここ数年来のことであります。 それからもう一つは、やはり各方面にいろいろまたがる問題でありまして、営業秘密の定義あるいは不法行為の要件、こういうものについても、産業界はもちろんですが、労働界、マスコミ界、それから弁護士界、学界等各界の意見を広く伺って慎重に議論をするという必要性がありまして、そのいろいろの準備段階を経て昨年十月に産業構造審議会に財産的情報部会を設置しまして、東大元教授の加藤先生に座長になっていただきまして、ここで相当の議論をしていただいたのが三月に建議になったわけでございます。 他方、ウルグアイ・ラウンドにおきましても、この営業秘密の保護にかかわる法的体制の整備について発展途上国、それから先進国との間でいろいろ微妙な対立的なものもありまして、これらの議論がどういうふうに進捗するかという国際的な動きにも深く関連をいたしたわけでございます。 今年の三月に各界のコンセンサスを大体いただいて御提言をいただき、かつ最近急速にウルグア イ・ラウンドの最終段階に入って、やはりトレードシークレット、物だけではない・サービスその他のいろいろの分野の権利の保護がより一段と叫ばれるようになりましたので、大変国会日程が窮屈な折からで御迷惑をおかけするわけでございますが、急遽今国会において成立をお願いし、できればウルグアイ・ラウンドにおいて我が国が発展途上国、先進国との間の調整弁として十分に貢献できるように、我が国の法体制も差しとめ請求権を中心にきちっとしたものにして先進国並みの法体制を行っておきたい、こういう緊急性によって、そういう経緯によって今回急遽お願いをすることになった次第でございます。
○森本委員 TRIP交渉で知的所有権の保護ルールが確立されますと、これは我が国の企業においても国際的にもどういう影響を与えることになりますでしょうか。
○棚橋政府委員 まず先進国の中で残念ながら、今委員遅きに失したという御指摘がありましたが、私どもの今までの日本の法制では、民法七百九条を中心とする規定の中で営業秘密についても保護はなされておりましたが、差しとめ請求権はなくて損害賠償しか判例上認められておりません。そういうことで、先進国の中で営業秘密の保護の法体制に大きな欠缺があるという点において大きな問題があったわけでございますが、それがきちっと整備をされるということが一つ。 それによって、ただいま申し上げましたインド、ブラジル等、この営業秘密の保護等知的財産権、所有権の保護にいろいろ警戒心を抱いている国もたくさんあるわけでございまして、そういう国々と先進国との間の調整について日本が大きな役割を期待されておるわけでございますので、その役割を果たすべき環境を整備するという点において大きなメリットがあるものと思います。 それから、これがTRIPあるいはウルグアイ・ラウンドにおいて幸いにして一つのルールができますれば——どうしても先進国の技術移転が発展途上国において十分な法的保護がないことによって円滑な移転がむしろ阻害されており、例えばある国に技術を移転してもそこにおいて全く保護されなければ権利が守られないということで技術移転をちゅうちょするということが多々ありますので、そういう点においてむしろ発展途上国において技術の移転等が容易に行われる環境が整備されるということで、国際的にも非常に有意義なものになると考えております。
○森本委員 四十八年のアテナ事件を初めとして今日まで営業秘密に関するトラブルがいろいろ起きてきたわけでございますが、どんな事例があり、どんな処理がされてきたのか、さらにまた諸外国にはどのような法制度があるのか、お尋ねしたいと思います。
○棚橋政府委員 我が国におきましては、まず営業秘密にかかる不正行為について民法、商法、刑法等によって保護が行われてきておりまして、営業秘密にかかわる具体的なトラブルについては、不法行為に基づく損害賠償請求、差しとめ請求はありませんが損害賠償請求あるいは窃盗罪、業務上横領罪等について当然刑事的な制裁が科されておるわけでございます。また契約に基づきまして、契約違反の場合には民法四百十四条で差しとめ請求権あるいは損害賠償が認められておるわけでございますが、これは契約がない場合には当然適用になっておりません。 具体的に、主なケースとしましては、不法行為法に基づきまして損害賠償請求が認められた事件としては、大阪高裁五十八年のコルム貿易事件、東京地裁六十二年のアイ・シー・エス事件、東京地裁六十三年のチェストロン事件等、いずれも損害賠償が認められた判例がございます。 それから営業秘密にかかわる不正行為で刑事的な制裁が適用された事例としては、窃盗罪を認めたものとして大日本印刷事件・昭和四十年東京地裁、建設調査会事件・東京地裁五十五年、新薬スパイ事件・東京地裁五十九年、京王百貨店事件・東京地裁六十二年等の事例もございます。 また、業務上横領罪を認めた事例としては、鐘淵化学事件・大阪地裁四十二年、東洋レーヨン事件・神戸地裁五十六年、新潟鉄工事件・東京地裁六十年等が主な例であります。 このほかにも、背任罪や贓物収受罪が認められた事例もあります。 もう一つのお尋ねの営業秘密の保護に関する諸外国の法制度でございますが、米国では、州ごとに営業秘密を保護しておりまして、長いコモンローの歴史がございます。判例法の積み重ねでございます。それをベースにしてモデル的にトレードシークレット法がございまして、これをモデルにして現在アメリカでは三十二の州でトレードシークレット法が設けられておりまして、残る十八州につきましても、判例法においてトレードシークレットに関する不正行為について差しとめ請求権、損害賠償請求権が認められております。 西独、スイス等では不正競争防止法がございまして、営業秘密に関する不正行為について差しとめ請求権、損害賠償請求権、刑事罰も認めております。これは、不正競争防止法の中で刑事罰を認めております。そのほかフランスでは、民法を根拠に判例によって同様の規制が行われておりますし、英国、カナダ等でも判例法により差しとめ請求とか損害賠償請求が行われておりまして、我が国以外の主要先進国においては、営業秘密に関する不正行為について民事的救済措置としていずれも差しとめ請求権、損害賠償請求権がきちっと認められております。
○森本委員 いろいろとトラブルはあったわけでございますけれども、その営業秘密とされる情報とは一体どんなものなのか、それから今までトラブルのあった件については今御回答をいただいたわけでございますが、今日まで差しとめ請求権が我が国にはなかったわけでございます。しかしながら企業は、それなりに自分たちのそういったノーハウを保護しなければならないということで、その流出や防止について独自の管理を今日まで行ってきたかと思えるわけでありますけれども、そういう努力がどんな形で行われていたのか、通産省としてどういう認識を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
○棚橋政府委員 本法案におきまして営業秘密として対象になりますのは三つの要件、秘密として管理されていること、事業活動に有用な技術上、営業上の情報であること、それから公然と知られていないもの、この三つの要件をすべて充足する場合でございまして、具体的な事例としては、製造方法とか設計図とか研究データ、こういった技術上の情報と、それから顧客名簿、販売のマニュアル等の営業上のノーハウ等の情報がございます。 それから今御指摘のように、企業は法律上では差しとめ請求が認められておりませんでしたけれども、企業の自衛策としていろいろの対策を講じておりまして、企業の内部においてまず雇用契約等により使用者と被使用者との間で守秘義務を課する方法、あるいは文書管理規程等により営業秘密の化体した媒体を、ドキュメント等を管理する方法、それから外部者の見学箇所など外部からいろいろアクセスする場合を制限する方法、こうしたことが主な方法でございます。 知的財産研究所が昨年十月に二千社近くについてアンケート調査を行いましたところ、雇用契約等に営業秘密の管理規定を定めておる企業のうちで、九六%の企業が従業員の方々に一定の守秘義務を課しております。また、四六%の企業が文書管理規程に基づいて営業秘密の管理を行っております。さらに、外部の方々に対して情報管理対策を行っておる企業は五三%でありまして、特に、企業へ出入りする人間のアクセスチェックを行っておる企業は七四%、見学箇所の制限を行っている企業が六九%というように非常に高い率になって、それぞれの企業が工夫を凝らして営業秘密の管理を行っておるという情報があります。
○森本委員 今の御答弁の中にも、秘密として管理されていること、事業活動に有効な技術上、営業上の情報であること、公然と知られていないことを営業の秘密とするというふうに、顧客名簿等々の、設計図等々の事例を挙げていただきましたけれども、ここで、秘密として管理されていること、この管理の範囲が非常にわかりにくいのではないだろうか。その事務所にあるもの、事務所にあればそれは私どもとして管理しているんだという言い方もありますし、じゃどこまでを企業秘密としてどういう形で管理されているのか。秘密だから、社内秘密ということをどの書類にも全部押してあればそれは管理されていることになるのか。一体ここで言う管理とはどのような管理を考えておられるのか。
○棚橋政府委員 営業秘密の要件として、秘密として管理されているということが当然入るわけですが、ノーハウは情報でありまして、有体物に化体されているケースもございますけれども、化体されていないケースも当然あるわけでございます。そこで、有体物になっていない場合は特にそうですが、保有者がだれであるか、秘密かどうか、そういう点で不明確になりがちでありますので、当該営業秘密が客観的に認識できるような状態に、つまり秘密として客観的に認識できる状態に管理されていることが必要であるというのがまず大前提でございます。 具体的にどういうふうに考えるのか。まず、当該情報にアクセスをすることができる人が限定されておる。これは限定される数についてはいろいろございましょうが、いずれにしても、きちっと責任者を決めて管理をしており、かつその情報に接する人が何らかの形で制限されておるというようなケースは、きちっと管理されておるケースの一例であると思います。また、当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしておるということも一つの管理の方法であると思います。 単にマル秘の判こ、極秘の判こを押してそれが机の上に放置してあるとか、アクセスできる人たちが相当の数に上るとか、そういうような状況では、果して営業秘密としてきちっと管理されているかどうかは疑問なケースもあると思います。マル秘の印を押すということももちろん営業秘密の管理の一つの形態でありますけれども、マル秘の判こを押しただけでは十分ではないというケースが多いのではないかと考えております。
○森本委員 管理という問題について、恐らくこれは最終的には裁判所が起きた事件で一つ一つ判決を下し、それが判例となっていくわけでございますけれども、管理という形だけでは非常に漠然としている。事務所へ入った、管理といいながら奥の金庫にあるのではなしに、すぐだれでも手につくところのロッカーの中に保管されていた場合はどうかという問題も出てくる。そういう状況の中で知り得た情報の、その営業秘密の範囲や管理の方法がいかにあるかによって守秘義務を負うことになる従業員の、先ほど来いろいろの議論になっておりますが、転職、憲法第二十二条の第一項、職業選択の自由という面を不当に抑制するのではないかと思われる点が多々あるわけでございます。 これは先ほど、企業は雇用契約を結んで、その雇用契約の中でいろいろと守秘義務等々をうたっていると答弁がございました。大企業あるいは中堅企業の場合にはそういった形態がとられていることが非常に多いわけでございますが、この範囲が非常にわかりにくいのは、むしろ私は中小企業の経営者の皆さんあるいはそこに勤めておられた従業員の皆さん方のところが、退職して自分で商店を構えるという例も多いわけでございまして、そういったところが非常に難しいのではないかなと思われます。 例えば具体的に例を上げて申し上げますと、我が国の伝統工芸品を何かやっておられる、そういったところはどちらかというと昔ながらの、徒弟的にいろいろと訓練を受けていくわけでございなす。師弟の関係でその技術等々を教わった。たまたま師弟の関係が壊れて、その人がほかへ行ってて、そしてその師匠から教わった技法なりを使って自分が伝統工芸品をやるようになった場合には、これは営業秘密の範囲を侵したことになるのか。 あるいはまた、フランチャイズの店がございまして、そういったフランチャイズの店では、いろいろと客の接待の仕方のノーハウ等々を教えている場合も多いかと思うのですね。お客様に対する頭の下げる角度はこれぐらいですと。さらにまた、いらっしゃいませと言うときには手をこう差し出しながらやりなさいとか、そういったフォームを決めているところがある。そこで訓練を体で受けた人が今度は自分で店を持った場合に、決しつそれを侵すわけではないけれども、そこで体得したことが営業をやっていく場合に非常にいいという形で店員の皆さんにそういうことを教えるというケースもあります。 あるいは、商店に勤めていた人が会社をやめて近くで商売をした場合に、頭の中に得意先名簿が全部入っているわけでございまして、決して侵すわけではないけれども、その得意先へ自分が訪ねていって、そして今度独立いたしました、前の会社ではいろいろお世話になりましたといった場合には、果たしてこういったケースはどうなるのだろうかという点が非常に私は問題になってくるのではないかと思いますが、その辺についてはどのように考えておられるのか、お尋ねを申し上げます。
○棚橋政府委員 先生御指摘のいろいろの具体的ケースについて、これはなかなか、いろいろな前提があるわけでございます。 例えば伝統工芸の店で、すばらしい職人といいますか技能を持った方にお弟子入りをしてそこで教わっておって、その秘伝というかそういうものを身につけて、のれん分けをして円満に分かれていけばそういう問題にはならないのでしょうが、そこでいろいろの事情があって飛び出して、その身につけた技能を使って似たようなものをつくるという場合について、いろいろなケースが考えられますが、まず一つ、前の教えていただいた職人、師匠が独特の技術を持っておって、それが言うなれば先ほどの、師匠としては秘密として管理をしておる、営業秘密の要件に該当するという場合に、まず契約があれば契約違反、民法四百十四条の対象となりましょうし、それを競業の目的で、前のお師匠の会社に損害を与える目的で開業した場合には今回のこの法律一条三項四号の規定によって差しとめ請求の対象になることもあり得ると思います。 ただ、一つバリエーションを考えまして、お弟子さんがそれに自分の独特の技術をまぜまして、オリジンは前の師匠の技術があるが、創意工夫を凝らしてある程度自分の独自の分野を開発したというようなケース、この度合いが非常に高くなれば、自分で開発した技術については法律一条三項四号の対象にはならないわけでございますので、自分で創業をしてその地域で商売をしてもこの法律によって差しとめ請求の対象にならないケースもございます。したがいまして、どの程度前に秘密として管理され、営業秘密の要件を充足しておった秘伝を自分が丸々まねてしまってやっておるのか、あるいはそうじゃないのか、その辺の具体的なケースについていろいろな角度から裁判所が判断をすることになろうと思います。 これについては、転職した後の当該お弟子さんである職人の生活状況、そういうことをしなければ生活できないというような状況、あるいは極めて接近しておる地域でやっておるかどうか、相当離れたところでやっておるかどうか、それによって前のお師匠さんにもそんなに商売上のマイナスを与えていないのかどうか、そういうようなことも裁判所の一つの判断基準になろうかと思います。 それから、フランチャイジーが契約によって得たいろいろのノーハウについても営業秘密に入るのかということにつきましては、先ほど例を挙げられました従業員の頭の下げ方その他についてのいろいろの教育のノーハウも含めまして、三つの条件を満たしておるならばこれは当然営業秘密に該当し、保護の対象になるのではないかと思います。単に例示としてお挙げになったことをあげつらうわけではありませんが、おじぎの仕方というようなケースについては公知のものでございましょうから果たしてそういうケースになるかどうか。しかし、ほかに知られてなくて独自のものがあれば対象になり得ると思います。 それからもう一つ、頭の中に顧客リストが入っておって、転職をして前の企業で得た顧客を自分が活用して商売をするというケース。これは西ドイツの判例でブドウ園の事件という有名な事件がありまして、ブドウ園で働いていたセールスマンが次の農園に移って前の顧客リストで商売をしたケースについて、これは原告が差しとめ請求を求めたケースを否認したケースがあります。前の企業で得た顧客リストについて、例えばその従業員が足で稼いで自分で顧客をいろいろ集めましてつくり上げた顧客リストであるような場合には自分で開発したノーハウではないかというような意見もありまして、これもケースによりますけれども、西ドイツの判例では顧客リストについて差しとめ請求が認められなかったケースもあります。 しかし、いずれにしてもそういうケースについても前の企業において独自に金をかけて集められたリストをそのまま使って近くの地域においてやって、前の企業に損害を与える目的があるというようなケースについては、営業秘密の条件を充足する限り、また差しとめの対象になることもあり得ると思います。
○森本委員 今ほんの一例を挙げさせていただきましたけれども、一つ一つケースが異なってくる。そして、この判定を裁判所にゆだねなければならない。また、もう少し時間があればお伺いしたいと思っていたのですが、営業上の利益を害せられるところあるものとは一体具体的にはどういうものなのか、差しとめの請求の対象となる不正行為は一体具体的にはどういうものなのかということは、この法律がきょうの委員会を通り、さらに参議院へ回り成立した場合に、来春施行されるまでの間、企業の方も相当悩むでありましょうし、転職を希望されている方、殊にまだその企業にいる場合に不正に取得した場合には民法上も影響がありますから、不正に取得した場合等とは別に、これは当然悪いことでありますけれども、不正に取得をしていなくとも自分が知り得た知識をもって次の職場でどうしていこうかということで、これは非常にわかりにくい問題が多々あるのではないだろうか。 そこで大臣にお伺いしたいわけでございますが、けさからもずっと議論になっておりました職業選択の自由等と兼ね合わせてそういった人たちの権利をも同時に守っていかなければならないわけでございますが、何分そういった判例も数少ないわけでございます、差しとめ請求というのは今日までなかったわけでございますから、これがスタートしていくだけに、先ほども提案がございましたが、ガイドラインなるものを周知徹底していかなければならないと思うのです。これを事欠いてしまいますと、まさに今度は職業選択の自由を侵していくことになってしまうのではないか。一方、保護ルールを確立したために憲法上の問題を侵してしまっては大変だ。ぜひこのことについてはガイドラインをつくり周知徹底をしていただきたいと思うと同時に、どんな形で企業や社員を皆さんに周知徹底しようとされるのか、お伺いしたいと思うのです。
○武藤国務大臣 先ほども産構審の答申との関係で御質問がございまして、また今同じような御指摘でございます。 確かに企業の情報管理が今度は行き過ぎてしまいまして、何でもかんでもこれは営業秘密だということで保護され過ぎてしまって、商法とか証券取引法等の企業の情報公開、このごろよく言われておりますディスクロージャーを逆に阻害するようなことがあったり、あるいは先ほども御指摘のございました労働者の皆さんが、あくまで職業の選択は自由でございますから、そういう職業選択の自由からいって転職しようというときの自由も阻害をされるというようなことがあってはいけないと思います。そういう意味において、今御指摘ございましたが、ガイドラインというのが出せるかどうか、私もちょっとその辺は危惧をいたします。例えば先ほどもお話がございましたが、詳しい解説書を役所がつくったり、あるいは各地区で、通産局がございますからその辺が中心となって講習会というか説明会というかそんなものを開いて、より多くの方にこの法律の施行に当たっては十分理解をしていただくとか、こんなような努力をさせていただいて、そしてどこまでが、先ほども私お答えできなくてまことに申しわけなかったのですが、産構審の答申を読ましていただいていても、客観的な物差しがどこにあるのか、どこまで企業の主観的な思惑が入るのか非常に難しいと思うのでございます。この法律もその辺は確かに完全だとは言えないと私は思うのです。 ただ、今議論いただいております、今度は差しとめ請求を裁判所に対して出したときに、裁判所がそれに対して、いやこれは無理だよと言うのか、最終的にはその辺の判断だと私は思うのでございます。しかし、企業としてはできるだけ客観的な形で物差しを考えていただいてやっていただかなければならないのは当然でございまして、そういうものをお手伝いするという意味におけるそういう解説書を出したり、あるいは説明会を催させていただくというのは、きょうの御議論を承っておりましても、私どもがこの法律の施行に当たって本当に混乱が起きないようにするためには当然十分な措置をしていかなければならない、こう思っておるわけでございます。そのようなことはぜひやらせていただきたいと思っております。
○森本委員 最後に申し上げましたこの点が、今回の法律の中で一番重要なところかと思います。どうぞ通産省、これは同時に労働省も、きょうは私の方は呼んでおりませんが、あわせて通産省から労働省にその旨もよく徹底していただきまして、仕事を独立しようとする人あるいはトラバーユしようとする人、あるいはスカウトする人たちにとってもこれは大変な問題ですから、ぜひガイドラインを示していただきまして、スムーズなる職業選択ができることが最も大事なことであると申し上げて、私の質問を終えさせていただきます。
○浦野委員長 小沢和秋君。
○小沢(和)委員 先ほども問題になったことですけれども、今回の改正案は当初の提出予定にはなかったものが急に国会に出されたわけでありまして、大変唐突な感じを受けます。日弁連への意見照会にしても、一月十九日に依頼し、二月七日までに回答を求めるという急ぎ方で、日弁連は、このような短時間ではこの重要問題について日弁連が内部討議を進めることさえ不可能であり、本件照会のあり方自体がまことに遺憾であると通産省のやり方を厳しく批判をしております。 大臣にまずお尋ねしたいのですが、なぜこのように急いでこの法案を出さねばならなかったのでしょうか。
○武藤国務大臣 最近の日本経済だけではございません、世界的にも技術革新の時代になってまいりました。それから、世界的にあらゆる情報をできる限りみんなキャッチしよう、またできる限り情報を流そうといういわゆる情報化時代になってまいりました。そういう面において、技術上、営業上のいろいろのノーハウ、いわゆる営業秘密についてこれをやはり守っていかなければならないのではないかという空気は以前からあったと私は思うわけでございます。ですから、産構審でいろいろ議論がなされたと思うのでございますが、たまたま産構審の答申がこの問題については三月になってからであったということもございまして、この国会が始まります前には、通産省としてもこの法案をお願いをするということは正直予定を余りしていなかったことは事実でございます。 そういう点は確かに非常に唐突ではないかとおしかりをいただくのは一面においてはもっともなお話だと思うのでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、しかし三年か四年前でございましたか、ウルグアイで行われました会議におきまして、今のガットのルールをより一層強化をしていかなければいけないんじゃないかということから始まりまして、いわゆるガット・ウルグアイ・ラウンドという形で今通称言われておりますけれども、いわゆるガット・ウルグアイ・ラウンドルールの確立といいますか、まとめをこの十二月いっぱいでやろうじゃないかという合意が今ガット加盟国によってなされているわけでございます。 その中で、知的財産分野において営業秘密に関する問題が一つの交渉項目として挙がってきているわけでございまして、それをどう保護していくかというときにおいて、ほかの先進国はみんないわゆる差しとめ請求権があるのに、日本は今まで損害賠償その他は民法その他でやってきたわけでございますけれども、差しとめ請求権がなかった。これはやはりほかの国とある程度整合性を保つ必要があるのじゃないかということから、今回急遽このような不正競争防止法の改正案の中でひとつぜひお願いをしたいということでお願いをしたということでございます。
○小沢(和)委員 私も若干この問題で勉強してみたのですけれども、今大臣御自身も国際的な要因について大部分の内容だったと思うのですけれども、国内的にはいわゆるトレードシークレットを守る第一線で活動しているような方々も含めて、こういうような法案を急いでもらいたいという意見は私、ほとんど見当たらなかったんですけれども、通産省などにはそういうような強力な意見が寄せられておったんでしょうか。
○棚橋政府委員 まず、先ほど委員御質問の弁護士連合会の意見との関係でございますが、日本弁護士連合会は会長名でかねてから昨年七月に不正競争防止法改正について積極的な御意見を出しておられました。それから、私どもが照会いたしました件につきましても、二月七日に弁護士連合会会長名で御意見をちょうだいいたしております。 その御意見によりますと、おおむね私どもの考え方と基本的な点は合致しておりまして、日弁連がお出しになった案と私どもが国会に今提出しております案の主要相違点は、第一は、日弁連の要綱では不正な使用行為しか差しとめの対象になっていないわけでございます。しかしながら、国際的にも単に不正な使用だけじゃなくて不正な取得、取得によって外へ出てしまえばもう非公知性が失われてしまいますので、やはり不正な取得、それから使用、開示を差しとめの対象としたわけでございますが、日弁連自身も使用行為については差しとめをぜひ認めるべきであるという点において一致しております。 それで、産業界等の意見は、これは確かにいろいろな御意見がございましたが、私どもの産業構造審議会の中にはエレクトロニクス等の電気業界、それから化学業界等々各界の産業界の代表の方々に入っていただきましたが、それぞれ若干の御意見はございましたが、全体的には企業におきます営業秘密の重要性の増大に対処してぜひ何らかの差しとめ請求を含む法律の改正をしていただきたいということで御意見をちょうだいしたつもりでおります。
○小沢(和)委員 私がいろいろ読んでみたのでは、むしろ法律の救済を待っておったのでは第一遅くなるし、もう秘密がそういう形で外に出たりしないことに我々は全力を挙げているんだ、こういうような意見が多かった。だから、私はこういうような差しとめ請求権など早く認めてもらいたいというのにはほとんどお目にかからなかったということは一言申し上げておきたいと思うのです。 それで、今までの御説明などでも、いわゆるガットのウルグアイ・ラウンドでこの営業秘密にかかわる不正行為についての差しとめ請求権がないのが日本だけだということで、早くつくらなくちゃいかぬということは盛んに言われるわけであります。確かにウルグアイ・ラウンドでそういうことが主に言われているということはわかっておりますけれども、その中でもそのことを日本に対して積極的に要求してきているのは結局アメリカではないんでしょうか。
○棚橋政府委員 この問題について先進国全体が、やはりウルグアイ・ラウンドにおいて国際的なルールをつくって営業秘密の保護を図るべきであるという点については完全に足並みが一致しておりまして、アメリカ、EC等もウルグアイ・ラウンドにおいてそういう意見書を出しておるわけでございます。日本も基本的にはそういう考え方でございますが、今まで肝心の差しとめ請求権がない形で、ある意味ではこの体制に欠缺があったものですから、いまだ意見を差し控えておりますが、そういう基本的な考え方であります。 しかしながら、こういう点についてはアメリカだけが言っているわけじゃなくて、日米欧大体共通の認識を持ってウルグアイ・ラウンド、TRIPの場においていろいろ議論をしておるところでありまして、そういう点についてこれは我が国の積極的な意見でもあるわけでございます。 〔委員長退席、江口委員長代理着席〕
○小沢(和)委員 私が特にそう言うのは、今までの経過があるからですね。一九八七年一月にレーガン大統領教書に、アメリカ企業の国際競争力強化策として知的財産権保護ということが公式に打ち出され、翌年八八年八月にハワイで開かれた私的財産権に関する日米協議では、四分野十二項目の要求が突きつけられたわけですが、その中にトレードシークレットが一つの分野として立てられ、効果的な保護策を採用するということが要求されたのではありませんか。だからこの法案を急ぐというのは、年末のウルグアイ・ラウンドも確かに一つの要因でしょうけれども、今月の末に行われる日米構造協議の最終報告もにらんで、この時期にできるだけ間に合わせたいということになったのではないかと私は思いますが、その点はどうでしょうか。
○棚橋政府委員 基本的には、大臣も申し上げましたように、ウルグアイ・ラウンドにおいて、先進国として唯一こうした措置が欠けておる我が国において環境の整備を完全に図りたいということでございますが、それによって先進国と発展途上国間の調整を容易ならしめるための我が国の重要な役割を認識しておる点もまた申し上げておきたいと思います。 構造協議のお話が出ましたが、日米構造協議においてこのような議論が出たことはあったかもしれませんけれども、構造協議の協議の対象に本件が積極的な事由でなっておるとは承知いたしておりません。
○小沢(和)委員 いや、だから私は、ちゃんといつどういう会議で出たと言ったでしょう。日米構造協議の席上で出たというふうにさっき言ったわけじゃないのですよ。その点はおいて。 それで、先ほど来日本が国際的に孤立しないためにもこの法案の成立を急がなければならないというようなお話がありましたけれども、真に国際的な友好を広めようと思うならば、私は日本も言うべきことは言わなければ本当の信頼と尊敬をかち得られないのではないかと思うのです。 そういう点で、ひとつお尋ねしてみたいと思いますけれども、例えばアメリカにしても、いわゆる国法というのでしょうか、連邦法としてのこのトレードシークレット法というのはないのじゃないですか。いわゆる判例の積み重ねが国政の段階では事実上の規範力として生きておる。それで今州法でそれをずっとつくらせていこうというので、いわゆる標準的なトレードシークレットについての標準案というのを提示して、各州でそれをやりなさいといって進めて、過半数の州ではようやくそれができてきた、こういうふうに聞いているのですけれども、それだったら、日本もこういうような法律をつくれと言われるのだったら、アメリカも国の段階でそういうきちっとした法律をつくるべきだというような主張は、私は日本としてもしなければならないんじゃなかろうかというように思いますが、その辺はどうでしょうか。
○棚橋政府委員 御承知のように、アメリカと我が国とでは法律の全体の体系がかなり違っておりまして、いろいろな分野において州法が極めて重要な役割を果たしておるわけでございます。アメリカは長いことコモンローという形で、判例法でアメリカ全体においていろいろな判例が営業秘密のケースについても差しとめ請求、損害賠償について累積がされておりまして、それをもとにアメリカの全国の法律家が集まりまして、今委員御指摘のモデル法としてのトレードシークレット法をつくりました。それを参考にして、州ごとに若干の事情の違いがあるようですが、三十二の州がトレードシークレット法を整備しておりまして、十八の州においては従来からのコモンローの形で判例法としてこの対策を講じておるわけでございます。 したがいまして、アメリカにおいては、もうかねてから長い歴史の積み重ねで全国的に少なくともコモンローの形で営業秘密について差しとめ請求を含む対応がきちっとできているわけでございます。そういうアメリカの法律の秩序というか体系の違いもあろうかと思います。
○小沢(和)委員 総論的なお尋ねにもう一つつけ加えてお尋ねしたいのですが、今ガットのウルグアイ・ラウンドでトレードシークレットを含む知的所有権の国際ルールづくりの協議がなされているわけでありますけれども、しかしこの国際ルールづくりに対して発展途上国は極めて消極的であると聞いております。その理由は、先進国がみずから技術、情報を独占し、途上国の発展が阻害されることになる懸念があるからだというふうに聞いておりますけれども、そういうような心配は一切ないのか、これらの国々が年末の交渉期限までにすべて了解するという見通しがあるのか、政府としての態度、見解をこの機会にお尋ねしておきたいと思います。
○棚橋政府委員 委員御指摘のように、確かに発展途上国の中では、先進国が営業秘密の保護について法的整備を積極的に行うことについて懸念を示しておる国もございます。インド、ブラジル、ペルーというような国は、いずれも営業秘密については登録等が行われないから伝統的な意味での知的財産に該当しないという理由によりまして、営業秘密に関することはガット・ウルグアイ・ラウンドの本交渉の枠外にしてほしいということで反対をしております。 他方、同じ発展途上国の中でもメキシコ、それから香港が発展途上国と言えるかどうかあれですが、香港はむしろ積極的に技術移転を自国に促進してもらうために営業秘密の保護について先進国が提案しておる案について賛成をいたしておりまして、途上国の中でも国によってこのようにいろいろでございます。 それからもう一つ、今発展途上国が反対しておりますのは、当然そういうものが権利の主張、先進国の営業上の秘密、ノーハウ等が強く権利主張されて非常に困るということでございますが、他方、今メキシコ等の見解にもございますように、むしろそういうものが整備された方が先進国が安心して技術移転を行なってくれるから整備すべきだという意見もあるわけでございまして、例えばノーハウを守秘義務つきで発展途上国に供与した場合に、そのライセンシー、つまり発展途上国のライセンシーが契約に違反してそれを不正開示し、かつそのことを知りながら当該営業秘密を取得して使用する第三者がいる場合には、営業秘密の保有者は差しとめ請求を含む適切な法的救済措置が行われないということで、安心してノーハウを発展途上国に対してライセンスできないということで、ライセンスの取引が阻害されるケースもかなりあると聞いております。 こういうことから、先進国から途上国に対する技術移転を促進するという観点からも、むしろ特許制度等の工業所有権の整備は当然でありますが、営業秘密についても適切な法制度を整備することがかえって発展途上国に有益になるケースも多いのではないかということで、先進国は発展途上国を説得しているわけでございます。 今後どうなるかということでございますが、率直に言って発展途上国の反対もかなり強いものでございますので、これから先進国と発展途上国との間での調整が行われるべきでありますが、私どもの見方では、こうした点が理解されれば意見の相違も漸次小さくなっていくものと期待いたしておるわけでございます。
○小沢(和)委員 それでは、法案の問題点について若干お尋ねをしたいと思います。 先ほど来しばしば問題になっておりますように、今回の改正案で保護しようとしているいわゆる営業秘密は、その範囲が極めてあいまいであり、これならば企業は何でも企業秘密にできるのではないかという疑念を私も持たざるを得ないわけであります。日弁連もこれでは営業秘密は無限定だというふうに批判しておるようであります。企業はこの法律を有利に活用しようとするならば、できるだけ秘密の範囲を広げ、またできるだけ日常から厳重に管理しようとする。そうすると、そこで働いている人々に対しては守秘義務を課したり、あるいは立入禁止区域をつくったり、労働者の職場における人権や自由を拘束する厳しい労務管理になっていくのではないか、この点私は非常に懸念するのでありますが、いかがでしょうか。
○棚橋政府委員 保護される営業秘密の要件として三点、秘密として管理されておること、それから事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること、それから公然と知られていないこと、それから先ほど第四の要件といいますか、事実上法の摂理として公序良俗に反するようなものは営業秘密として保護されないことというようなことを申し上げております。これにつきましては日弁連のお話がございましたが、私どもが了知する限り、日弁連の全体の御意見として、この要件で営業秘密を相当明確に定義しておるという御意見であると理解をいたしております。欧米等の判例の積み重ねあるいは西ドイツの不正競争防止法の規定も、むしろ我が国の規定以上のものを出ておりません。我が国は、欧米のいろいろな判例の積み重ねを見て、こういうふうに思い切って明確にむしろしたつもりでおるわけでございます。 それからもう一つの、このことにより職場での労務管理規定が厳しくなって労働者の方々の就業活動に支障を来すことになるのではないかということにつきましても、この三点がきちっとした基準でございますし、不正行為によって差しとめられるというだけでございますので、通常の労働者の方々の就職活動にこれが悪影響を及ぼすものとは考えておりません。
○小沢(和)委員 今三つの基準があるから安心だというふうに言われましたけれども、それは裁判になって裁判所がそういう基準で判断をするということでしょう。まずこういう法律ができた場合どこから話が出発するかといったら、企業が自分のところのどのことを営業秘密だというふうに考えて保護しようかというところから始まっていくわけですから、企業がまずどれを秘密だというふうに考えるか、そうしたら企業はできるだけ有利にするためにはどれもこれもみんな秘密だというふうに範囲を広げ、また日常から、後で争いになったときにこんなに保護していましたと言えるように保護をするということになっていくのではないのですか。だから私は、そういうことが労働者に対して非常に厳しい労務管理になってはね返ってくるだろうということを指摘しているわけであります。 次の点も含めてお尋ねしたいのですが、そういうことになると、このことが労働組合の活動などに大きな制約となってはね返ってくる危険があるのではないか。例えば企業秘密を口実にして労働組合の役員が、問題が起こった職場などに行こうとしてもその職場が秘密工場だというようなことで立ち入れないとかこういうようなことだって起こってくる。現に、私はそういうことが起こったことを承知しているわけでありますけれども、そういうふうな企業の秘密を口実にして労働組合の活動に制約などを引き起こすというようなことも私は許されないのではないかと思いますが、いかがですか。
○棚橋政府委員 本法案において、営業秘密の保有者から示された営業秘密を不正の競業その他の不正の利益を得る目的、または保有者に損害を加える目的をもって使用したり開示したりする行為がこの法律によって差しとめの対象になるわけでございます。したがいまして、企業から打ち明けられた事業計画を労働組合の活動を行う上で組合員に知らせるということは、通常は差しとめの対象にならないと考えております。ただし、この労働組合の活動を行うために開示された営業秘密を、先ほど申し上げましたように競合する競争企業に不正の利益を得る目的で開示するような行為については差しとめの対象になることは当然あり得ると考えます。
○小沢(和)委員 いや、私はそういうことはお尋ねしなかったのです。企業がここは秘密工場だというようなことで労働組合の役員なども立ち入らせないというような形で、さっき言いましたように、この秘密の管理というのを強めていくという中で問題が起こってくるのじゃないか。私はその例を挙げたのですけれども、実は私自身がかつて労働組合の役員として新日鉄でそういうことを経験しているから私の経験でそれを言っているのです。そういう点は不当なことで許されないのじゃないですか。
○棚橋政府委員 こういうケースはむしろこの法律の問題というよりも、どちらかといえば組合と経営者側とのお話し合いの内容になるわけではないでしょうか。どの程度の分野で組合の方々が企業の秘密を知り得るか知り得ないか、そういうことについてはむしろ労使間のお話し合いでそれぞれの企業においてお決めになる問題ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○小沢(和)委員 いや、そういうお答えではちょっと納得できませんけれども、時間も迫ってきたから次の問題を伺いたいと思います。 これもさっきから問題になっておりますけれども、最近日本でも同業他社の優秀な社員を引き抜く、いわゆるヘッドハンティングが盛んになってきております。これを阻止しようとして就業規則で競業避止義務を課している会社がふえておるようです。しかし、このような就業規則は憲法で保障されている職業選択の自由を踏みにじるものでそもそも無効ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○棚橋政府委員 競業禁止契約、これは先ほどもいろいろ議論になりましたが、一般的にどの程度の競業禁止契約が認められるか、有効であるかという点につきましては、これは民法の契約法上の問題として、例えば転職後五年あるいは十年も競業他社に行ってはいけない、あるいはごく近くの企業は一切だめだというようないろいろな契約の内容によって、これが言うなれば労働者の転職の自由を不当に束縛をする、言うなれば公序良俗に反するようなきつい規制である、こういうようなときには、今までの裁判所の判決の例でもそうした契約は無効である、つまり、原告が損害賠償を求めてもそれは認められない、このように否認をした判例もございますし、しかしながら、例えば競業禁止契約の中で適正な代償をもらって常識的な年限、期間の間競業他社に転職をしてはいけないという契約についてはそれはやはり契約違反であるということで原告のこの主張を認めたケースもありまして、契約の内容いかんによってそれが認められるかどうかという問題になろうかと思います。
○小沢(和)委員 現在でも実際にありますが、企業が従業員に就業規則などで競業避止義務を課し、違反した場合退職金を減額するとか賠償を約束させるといったような契約を行っている例があります。今回の法改正でこれらのことがもっとふえることになりかねないと思いますが、このような賠償予定の契約は労働基準法第十六条に反するものではないか。今回の法改正に当たって労働省とこういうような点についても打ち合わせをしたのではないかと思いますけれども、どういう見解か、お尋ねをいたします。
○棚橋政府委員 この競業禁止契約の内容いかんだと思いますけれども、その中で不当に契約に反する場合には賠償金を取るというような契約が果たして有効かどうか、あるいは労働関係法に抵触をするかどうか。これについてはケース・バイ・ケースで裁判の場合に判断していただくほかはないと思います。今までのケースでも幾つかの判例がございますけれども、先ほど申し上げましたように、例えば従業員が代償を受け取って、リーズナブルな妥当な期間転職をしないという約束をしておったにもかかわらず、転職をして営業秘密を不正に開示したというときには、これは競業禁止契約が有効であって、別に労働関係法にも抵触をしないということで原告の主張を認めたケースもございますし、逆のケースもございます。
○小沢(和)委員 労働者がその企業の仕事を通じて身につけた技術や専門的な知識を転職先の企業で使い、生かすのは自由なはずだと私は思うのです。極端な場合、ライバル会社に引き抜かれてそこで今までのハイテクの先端を行くような研究をそのまま続けるというようなケースがあっても、これに対してもとの会社が差しとめ請求などを行うということは許されないと思いますけれども、そのとおり理解してよろしいでしょうか。
○棚橋政府委員 従業員の身についているノーハウであっても差しとめの対象とされるケースもあると思います。それは、もとの企業において秘密として管理されておる営業秘密である場合であって、その従業員が不正の利益を図る目的等を持って使用、開示する場合にはそういうケースがあります。しかしまた他方、それに限定をされておりますので、通常の転職には支障はないと考えております。
○小沢(和)委員 最後に大臣にお尋ねをしたいのですが、先ほど来申し上げておりますように、営業秘密ということでそこで働く人々への労務管理が非常に厳しくなったりあるいは退職後の制約まで受けるというようなことがあってはならないのではないかと私は思いますけれども、大臣の見解を最後にお尋ねをいたします。
○武藤国務大臣 先ほどから御答弁いたしておりますように、やはり働く方の職業の選択の自由というのは憲法で保障されているわけでございますから、それを阻害するようなことがあってはいけない。ですから、営業秘密の関係につきましても非常に狭められた形で、今回はあくまで不正なもので、不正な利益を図ってやるというような形で一つ枠をはめているわけでございますから、またそういうことで何とか職業の選択等の自由とは整合性を保ち得ると思っております。しかし、きょうはいろいろと御心配をいただいておりますので、先ほども申し上げておりますが、できるだけわかりやすい、こういうケースはこうである、こうであるとかいうような説明書でもつくって、これをなるべく多くの方の目に触れるようにしなければいけないのじゃないかと思っているわけでございます。
○小沢(和)委員 終わります。
○江口委員長代理 川端達夫君。
○川端委員 大臣、御苦労さまでございます。よろしくお願いします。 きょうずっと一日の議論を伺っておりまして、何回もの繰り返しで恐縮でございますが、前提として確認をしておきたいのです。今回のこの法案が、後から出てきたと申しますか、当初の予定に追加をされて出てきた背景でありますけれども、ウルグアイ・ラウンドでこの知的所有権の保護ということについて議論をされているというふうに伺っておるのですが、その内容について簡単にお触れをいただきたいと思います。
○堤政府委員 お答え申し上げます。 ウルグアイ・ラウンドの中で、特に新しい品目ということでTRIP、知的財産権の問題あるいはサービスの問題あるいは投資の問題というのを取り上げておるわけでございますが、その中でも、この知的財産権の問題につきましては大変重要な問題として位置づけられております。 具体的に申しますと、貿易に関連する知的財産権につきまして重要な項目について国際ルールをつくろう、これは初めてつくろうという考え方でございます。TRIPの交渉の現状を見ますと、これまでに先進国の中ではおおよその意見の一致は見られるわけでございますが、発展途上国との関係におきましては、一部の発展途上国がこういうことをやりますといろいろ問題が生じるのではないかという問題提起をしておりまして、全体としては本年十二月を目指しての、もう少し具体的に申し上げますと七月の貿易交渉委員会を目指しての、今交渉の真っただ中でございまして、貿易立国を標傍いたします日本といたしましてはこのウルグアイ・ラウンドをぜひ成功させなければいけないという観点から申し上げますと、この知的財産権問題を議論しておりますTRIP交渉というものをぜひ成功させなければいけないということでございます。そのためにいろいろの努力を現在続けておるという段階でございます。
○川端委員 関連しまして、この問題、いわゆる知的所有権の保護という問題に関して日米間での議論についてどういう状況になっておるのかも確認をしておきたいと思います。
○堤政府委員 お答え申し上げます。 日米間におきましても、知的所有権あるいは知的財産権の問題というものがいろいろなところで議論をされておるわけでございます。やや場所を分けて議論申し上げますと、まず日米貿易委員会というものがございますが、その下に知的所有権作業部会というものが設置されておりまして、そこで既に二回の議論が行われております。それからもう一つは、日米構造協議の場におきましても特許についての議論が行われております。そういう実際の議論の場というところとは関係なく、USTRのレポート等におきまして、我が国の特許の問題あるいはレコードの制作者に対する保護の問題というものが議論されております。 具体的には、こういう部会におきまして日本側に対する特許の考え方に対する誤解等の解消に努めるという努力をしておりますし、一方アメリカの持っております特許制度等につきましても、内外でやや差別しているというようなこともございますので、米側にその改善を求めているというようなこともございます。 それからSIIの中でも、先般中間報告が出ましたけれども、その中では日本側としましては、特許の審査遅延がなかなか問題になっておったわけでございますが、五年以内に国際的に遜色のないものにするというような話ですとか、あるいはそのほかの場でございますけれども、レコード制作者の保護の問題について著作権法の改正をするというようなことを言っておりまして、日米間におきましても知的所有権の問題は非常に重要な問題であり、今後とも相互の理解を求めていく必要がある項目だと思っております。
○川端委員 そういう背景の中で不正競争防止の改正というものが出てきたというのは理解をするわけですけれども、先ほどの御論議でもありましたけれども、やはりASE AN諸国、NIES諸国がこの分では非常に抵抗するというか、影響を受けるということがよく言われております。実際にはそういう技術開発に手かせ足かせをはめるのではないかという懸念も十分に考えられております。特にアジアにおいて日本が占める役割というのですか、責任ある立場という分で言いますと、やはり国際的にやらなければいけないというものと同時に、アジアの一員として開発途上にあるところに対してとる日本の態度というものは非常にデリケートなものを持っておるというふうに思います。 そういうことで、この一連の知的所有権に関する日本政府の対応の中で特にそういうアジア諸国に対しての配慮をされている点、それから配慮されようとしている点についてお尋ねをしたいと思います。
○堤政府委員 お答え申し上げます。 大変重要な問題でございまして、我々も日々問題に頭を悩ませておるポイントでございます。ただ、この知的所有権問題といいますのは、日本も過去大変いろいろな問題を持っていたわけでございます。よく言われることでございますけれども、日本の知的財産保護制度といいますのは、明治憲法よりも前につくってありまして、そういう制度をしっかりした上に今日の日本の技術開発あるいは技術の花が咲いたのではないかという、我々も歴史の中で多くを学んでおるわけでございます。したがいまして、発展途上国の国々の皆様方にも、この制度はないとか、あるいはその制度をごまかして技術開発をするというようなことは必ずしも王道ではない、我々の経験からもそういうことが言えるわけでございます。 それは基本論でございますが、もちろん途上国の現状を考えますと、その規則の厳格さの問題ですとか、あるいは現在そういう制度に十分習熟していない、あるいはそういう制度が実際にうまく運用されていないというような問題があるわけでございます。こういう問題につきましては、今後このTRIPの交渉の中で、発展途上国にいかにそういう問題に配慮していくか、しかもそういうことを必要であると説くのも日本であると私たちは思っておりまして、日本はTRIP交渉の中では、そういう意味では先進国であると同時にアジアの各国の考え方を酌んでやる役割を負っておるということは御指摘のとおりであると私たちも思っております。したがいまして、今後TRIP交渉の中ではASEANそのほかの発展途上国の意見もよく伺いまして、いかなる配慮をしていくかということを我々として具体的な提案を出していく必要があろうかと思っております。もちろん、今後のTRIP交渉の中でどういう交渉が成るかというのはこれからの問題でございますが、そういう気持ちでおります。
○川端委員 日本が今先進国の一員として非常に大きな役割を持っているとはいえ、この知的所有権について考えますと、そういう部分では今やっと世界の仲間入りをするというレベルになってきた。そして、これから発展するところから見れば何かいいところ取りして、よくなったら我々にそれを締めつけるのかという思いがどうしても出てしまうと思いますので、非常に難しい立場でありますけれども、リーダー的な役割をぜひともにお願いをしたいということを申し上げておきたいと思います。 さて、具体的な中身に関して若干お伺いしたいのですが、いわゆる営業上の秘密という部分に関しても、どうしても通常の商習慣あるいは働く人たちの立場からも、日本では比較的なれていない概念であるというのは、そういう歴史的な背景からも事実だと思います。そういう部分でちょっとお尋ねしたいのですが、ごく最近、六月の初めに一部の銀行で顧客名簿が流出をしたという事件が報じられました。かなり詳細な、カスタマーカードというのですか、生年月日から定期預金、普通預金、ローンが幾らで何かということまで全部載っている。当初は銀行側はそういうものの存在すら、あるともないとも言えないということのようだったですが、結果的には、やはりそれは銀行から流出をした部分であるというふうに報じられておりまして、銀行側も認めたようであります。 この問題は、一つには民間におけるいわゆる情報の保護、個人情報の保護という部分では若干今回の法律とは違う御担当の部分だというふうに思うのですけれども、一方で、今回の法律の立場でこの事件を見ますと、やはり顧客リストというもの、預金者リストというのは間違いなく営業上の秘密であり、秘密にされていたものだというふうに思います。そういう部分に関して、概念的にはそれが対象というのはよく理解をするのですけれども、こういう名簿類、今度の法律でもはっきり書いているわけです。こういうものが流出したときに差しとめ——これは間違いなく管理していたわけですから、恐らく不正に入手をしていたというふうに思います。この場合にそういうたぐいのもの、この人は幾らぐらい貯金をして、幾らぐらいローンがある、どういう生活をしているかという、かなりプライバシーに関する部分を商売に使うということはたくさんあると思うのです。そういう部分に関して、差しとめ請求という部分に関しての実例を、実際に規定することは非常に難しいのかなという感触を持っているのですけれども、まさにこの法律そのものの対象になるような事件が起こったという部分で、担当の省庁としてどのような御認識をお持ちかをお聞かせいただきたいと思います。 〔江口委員長代理退席、委員長着席〕
○棚橋政府委員 今、委員御指摘の二行の有力銀行から名簿など顧客の情報が漏えいしたという事件については、私は新聞等で知る以上のことを了知しておりませんので、内容がどの程度の価値のあるものであるのかどうか、よくわかりませんが、一般的に銀行にしろ、顧客リストについて相当のお金をかけ、その顧客リストが営業上非常に大きな価値を持つ、営業上有用な価値を持つものであれば、それが秘密として管理され公知のものでなければ、営業秘密として保護される。つまり、法律が成立すれば差しとめの対象になり得るものだと思います。 ただ、今漏れた情報が個人のプライバシーに係る情報であって、それを銀行がどういう手段によって集め、蓄積しておるかという問題については、これについての評価はまた別のプライバシー保護の観点での問題で、別個の問題かと思います。
○川端委員 おっしゃるとおり、プライバシーの部分ということで、個人の情報がまさに保護されなければならない、そういうことを示唆する事件だと思うのです。 一方、営業上で言えば、これは本当に基本的な営業秘密ということで、当初はその存在すらお認めにならないぐらい秘密性の高い情報であったわけですけれども、これが当然差しとめ請求という部分の対象になるわけですが、現実にそれをどういう形でどこに使われたかという部分が非常に難しいなということを感じるわけです。 そういう部分で、営業秘密に係る不正行為が行われることによる挙証責任というのが原告にあるのか被告にあるのか。原告が行う場合に、窃盗とか詐欺というのはまだ立証が可能だというふうに思うのですけれども、相手が不正開示を行っていることを知っていたかどうかまでどういうふうに立証するのかなということに関して非常に疑問を持つわけです。そういう部分で、この挙証責任というものをどのように認識されているか、お尋ねしたいと思います。
○棚橋政府委員 営業秘密に係る不正行為が行われた事実については、民法上の不法行為の一般的な場合と同じように、当該行為に係る差しとめの請求とか損害賠償請求によって利益を受ける原告が挙証責任を負うことになっております。 従来の裁判運営の実態を見ますと、不正開示についての悪意の有無のような主観的要件については、直接相手方がこれを否定したりするケースが多いと思いますので、証言だけではなかなか導き出すことが困難でありますので、通常の場合には、その行為時のいろいろの情況証拠、間接事実からこの悪意を有無を推定しておるようでありまして、本法案の悪意の立証についてもそこは同様だと思います。 ただ一つ、二条の五号で、善意取得者の場合は、その取引の安定性のために契約などで決められておる一定の範囲内の権原の行使は認められておりますが、その場合の自分が善意であったという場合の主張は、これは例外的に被告が挙証責任を負うというように考えております。
○川端委員 そういう意味で、いわゆる差しとめ請求をする部分で保護をするという趣旨は非常によく理解するのですけれども、実際の立証ということが非常に難しい部分がある。民法上の規定という部分で法体系上はやむを得ない部分なんですが、これはもろ刃のやいばの部分で、いわゆる刑事罰というものをどう考えるかということが当然議論になってくると思うのです。刑事罰を入れるということになると、また逆の部分の非常に難しい問題もあるということでの指摘も事実あります。そういう部分でこの点に関してはどういうような御議論と見解をお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
○棚橋政府委員 現行刑法におきましても、不正取得や不正開示が窃盗とか強盗とか横領とか背任罪等に該当する場合には当然刑事罰の対象になっておるわけでございまして、そういう判例もたくさんあるわけでございますが、そういう刑法上のいろいろな規定によって営業秘密のこうした形態での侵害行為への抑止効果は十分にあるものと考えております。したがって、現在のところ新たにこの法律の中で刑事罰を設けることは考えておりません。
○川端委員 それから、きょうの議論でもあったのですが、いわゆる営業秘密というものがそういう書類とか物品というふうなもので具体的に成っている、いわゆる化体した資料というものである場合ははっきりしているのですけれども、どうも頭の中に入ったものというのが非常に難しいという御議論であります。私も民間の企業におりまして物をつくることにかかわっておりましたけれども、いわゆる観光のための航空写真に競合する某企業の一部が写っている。数年前に比べてその場所に工場が立っている。いろいろな情報からするとそこに、ある製品の新工場をつくったことがわかる。縮尺をはかってみるとこれぐらいの大きさだからこれぐらいの規模だろう、人の大きさからいうとこの煙突の高さはこれぐらいだからこの装置はこういう方式を採用しているんだなということがわかる、そういうレベルでも非常に日本の企業の秘密というものは多岐にわたっていると思います。 それで、先ほどからの御議論の中でも、いわゆる秘密性という部分で工場に対するアクセスを管理している。そういう部分で建物一つの大きさから重大な企業の商品開発の戦略というのが読めてくるという部分まで現実には動いているということだというふうに思います。そういう中で、どこまでが秘密なのか、それを参考にするということに関して法律的に線を引くというのは非常に難しい。逆に言いますと、最近テレビのコマーシャルで、恐らく去年、ことしのはやり言葉みたいに職業選択の自由というコピーが流れておりますけれども、そういう状態で仕事を変わっていくという部分に、いわゆる仕事の経験としての頭に入った部分と、それから企業が秘密にしている、工場内は立ち入りを制限をしているんだということの中で、しかし実際にそんなに秘密だと思わずに工場の設備の大きさであるとか速度であるとか雰囲気、条件というものは知っているという部分に関してそれがどういうふうなものを秘密とするのかということに関していろいろな混乱も起こってくるのではないかというふうに思います。 そういう部分で、具体的な例で一、二お尋ねをしたいのですが、例えばノーハウというものがある、そうすると、いかに製造のコストを下げるかというのは当然ながらノーハウである。ある自動車メーカーにかんばん方式というのがあります。これはほかもいろいろやり出しまして本もお出しになったので秘密ではないのでしょうけれども、例えば、そういう部分に関しても、あるいはフランチャイズ制における外食産業、先ほども御議論ありましたけれども、日本にもいろいろな形の外食産業ができたのを人脈をたどっていくとすべてある一社に収れんしてしまうんだと言われるくらい、人材がヘッドハンティングによって新しい会社に移り同じような仕事を始めていくという場合に、果たしてそういういわゆる経営方式とかいう部分に関して、外目に大宣伝するわけでない部分の秘密というのをどういうふうに考えておられるかという、いわゆる頭の中に入った部分というのをどういう概念で整理をされようとしておるのかという点について、先ほど三つの条件とおっしゃいましたけれども、なかなかそれでは難しいのではないかなというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
○棚橋政府委員 裁判規範であるこの不正競争防止法の営業秘密の要件として先ほど来三つの要件を申し上げておりますのは、いろいろの諸外国の先例、判例あるいはドイツの不正競争防止法の規定ないしはその運用を見て、私どもとしてはむしろそういう点では営業秘密の定義を三つの要件によって絞っておるという点について一番進んでおるのではないかと考えますが、他方、委員御指摘のように具体的に差しとめ請求がなされた場合においてどうなるのかということにつきましては、具体的ケースにおいて裁判所で御判断をいただくしかないわけでございます。 ただ、例えばフランチャイズ制におきますいろいろのノーハウ、物流あるいは顧客がある季節には例えばおにぎりでも梅干し入りのおにぎりが売れるのか、サケ入りのおにぎりが売れるのか、そういうような情報などもいろいろな調査で消費者のニーズ、その地域における特性等を考えて、ライセンサーがライセンシーに与えておる、そういうノーハウがたくさんあるわけでございますが、こういうものも先ほど来のこの三つの条件できちっとこの要件を満たしており、かつそれを不正の目的で開示、使用しようとするケースについては差しとめの対象になるのではないか、このように考えております。
○川端委員 そういう部分で企業がガードを強くしようと思えばどんどん従業員をいろいろな形で拘束をしていくということにならざるを得ないというのが実情だというふうに思います。そういう部分で、先ほどから職業選択というもの、どこでそれを保障するのかということが議論になっております。現実にそこの例えばコンピューターのプログラマー、いろいろなもののソフトを開発するという、その開発の手法とかいうようなものに関してはやはりその企業独特のいろいろな知恵があり、経験があり、ノーハウがあるというものですけれども、プログラマーというのは転職をしてもプログラムをするということがメインの仕事でありますから、転職をしても一切プログラムをつくってはならないというわけにはいかないわけですし、そのつくり方というのは頭の中で考えるわけですから、それがどういう発想でやったかどうかというのは具現化されない中でプログラムとしてはでき上がってくるという部分では、それを本当に阻止しようと思ったら絶対プログラムの仕事はよそへ行ってやりませんという契約の中でしか仕事につけないのかというふうな部分で、非常に難しい議論がこれから起こってくるということは事実だと思います。そういう部分で、先ほど来いろいろな議論な中でもそのことに集中をしていたわけですけれども、整理をする意味でまとめてちょっと文章を読み上げますので、大臣の御見解をお伺いをしたいというふうに思います。 この法律の施行に当たって、営業秘密の保有者が、営業にかかわる情報の適切な管理を行い、もって社会的に必要な情報の公開及び正当に営業秘密に接する者の職業選択が不当に制限されることにならないよう、本法に関する解説書の作成等により本法の趣旨について関係者に対し的確に周知する等無用な混乱を防止するための所要の措置を講ずるべきであると考えるわけですが、いかがでございましょうか。大臣の所見を伺いたいと思います。
○武藤国務大臣 今いろいろ御議論いただいておりましたように、この法律が成立をして施行に当たりまして、企業の情報管理が行き過ぎまして、もう本当に、営業秘密だ営業秘密だということで過剰な保護がなされますと、企業の情報公開、ディスクロージャーの関係とか先ほど来特に御指摘のございます労働者の皆さんのいわゆる職業選択の自由という問題に支障が生ずるのではないか、大変懸念されるわけでございまして、ぜひその意味においては、この法律が成立をいたしまして施行に当たりましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、労働者の転職などに悪影響があってはならないことは当然でありまして、通産省といたしましても、本法に関する解説書をつくったり、その中にいろいろのケースを説明させていただいてよくわかりやすい解説書をつくらしていただいたりあるいは各局それぞれ説明会を催すなどいたしまして、この法案の内容あるいは立法の経緯等を関係者に周知徹底をさせていただきまして、少なくとも今御心配になっているようなことにおいて混乱の起きないような措置をしっかりとやっていきたい、こう考えておるわけでございます。
○川端委員 大変ありがとうございました。 最後に、この問題で、差しとめ請求、当然裁判で争われることになるわけですけれども、先ほどは挙証責任ということをお尋ねしたのですけれども、裁判で争われた場合に、その部分の情報というものが公になるという部分が懸念をされます。もともとノーハウであり秘密にしているという部分にどうも別の企業がそれを使っているのではないかということでやめてほしいという訴えを起こす、そうすると、その部分でこういうやり方である、いやうちはこういうやり方なんだという部分でいうと、まさに秘密にしていることが裁判の席で公に争わなければいけないという部分、これは特許の場合も同じようなことがあるわけですけれども、そういう部分に関してはその秘密性の確保と、いかに争われてもそれが第三者的にオープンになってしまったらそれでもう秘密でなくなってしまうということでまた重大な影響を受けるわけですが、この点に関してはどういう対応をお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○棚橋政府委員 御案内のように、我が国憲法では裁判の公開、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」というきちっとした憲法上の規定がございます。これは欧米では刑事上はともかく民事上では場合によると非公開がかなり訴訟手続において認められておるケースがございます。我が国の場合にはこういう原則があるわけでございます。 今委員御指摘のように、営業秘密はその非公知性、秘密性に最大の価値があるわけでございまして、訴訟手続でその内容が公開されてしまうという懸念全くなしとはいたしません。確かに御指摘のとおりでございます。それについての配慮が重要であるとは考えます。現行法におきましても営業秘密については民事訴訟法二百八十一条一項三号で証言拒絶の事由となるという道もございますし、またいろいろの訴訟手続において一定の工夫が凝らされていく道もあると考えております。ただ、この営業秘密に関する訴訟に固有の問題ではなくて、民事訴訟手続全体のあり方の中で、先ほどの憲法の大原則もありますので検討されるべき問題でありまして、本法案が成立した場合には、その運用状況もよく見まして関係各省とも協議して慎重に検討をしていきたい、このように考えております。
○川端委員 まさに秘密であることを争うというか保護するということがこの法律の趣旨でございますので、そういう部分では一般的な裁判での法体制、そしてもちろん憲法上の制約というか憲法上の規定は当然なんですけれども、そこにやはりこの法律の持つ特殊な位置づけという部分での御検討をぜひともにお願いをしておきたいというふうに思います。 終わります。
○浦野委員長 江田五月君。
○江田委員 先ほどの川端委員の質疑の際に、国民あるいは関係者に本法の趣旨について的確に周知させる等の措置を講じなければならぬ画期的な法律ではありますが、この法律、運用いかんで職業選択が不当に制限されることもあったり、あるいは営業秘密、本来保護され得るのに十分な管理をなされていなかったというようなことがあって、保護されるべき営業秘密であっても保護されないようなことも起きたりというようなこともあり、周知徹底ということが言われまして、局長の方でそういう解説書等をつくって適切な措置を講ずるのだ、こういう答弁があったわけですが、この法律、やはり国民に本当によく知ってもらわなければいけないと思います。 しかし、どうも日本の法律というのは何か国民から遠いという感じがいつもあるのですね。法律自体が非常に持って回ったような言い方をする、法律独特の言い回しをするということもあるけれども、同時に日本の法律のかなりのものがいまだに片仮名表記であるということがあると思うのですが、せっかく分量にして恐らく三分の一からの改正ということになるのでしょうか、従来の不正競争防止法に考えようによっては全く新しいものをつけ加えるわけですね、手法としては従来のものを使うにしても。そこでこの機会に、ひとつこういう法律については平仮名表記に改めて国民の皆さんに親しんでもらえると言ったらちょっと、それなら法律全体の書き方ももっとわかりやすくすればいいじゃないかということになるかもしれませんが、せめて平仮名表記にするぐらいのことはこの際した方がよかったのじゃないかと思いますが、いかがですか。
○武藤国務大臣 法律というのは国民のためにあるはずでありまして、わかりにくいものは決して私は国民のためでないわけでございますから、できるだけ法律というのは国民にわかりやすく書かれるというのは当然のことだと思います。とりわけ今御指摘のように、今度のこの不正競争防止法のように、従来、たしか昭和九年に制定されたものでございますから、その関係で片仮名でずっと来ちゃった、しかしもう現実に今ほとんど日本人というのは片仮名になじみがないわけでありまして、やはり平仮名になじんでいるわけでございますから、この機会に平仮名にしてしまった方がいいのではないかという声は、正直私どもの党の方にもそういう声が非常に強かったことは事実でございまして、ぜひ片仮名を平仮名に改めろという強い要請もございました。早速内閣法制局と相談をいたしたのでございますが、内閣法制局というのは役所の中でも特にかたい役所でございますから、なかなかその辺のところが、従来の一つの法律改正に当たりましての考え方としてのルールを持っているようでございまして、この間の民法第四編のように編から章から款からすべて変えてしまうというようなときにはこれは別といたしまして、確かにボリュームといたしましては相当今度もあるわけでございますが、内容的にそういうつけ加えるものが全体から見ればある程度少ない部分だというものについては片仮名だというのが従来のルールになっているようでございまして、今回のこの特別国会に出されました例えば商法の改正案、これなども片仮名にそのままになっておるわけでございます。 私どもといたしましては、しかし、先ほど来緊急性という形でお願いをいたしておりますけれども、将来においてはやはり法律というものはできるだけ平仮名にしていくというのが私は当然の方向ではなかろうか、ただ時間的にも今間に合わないものでございますから、その点は御理解をいただきたいと思います。
○江田委員 そのことですぐにこの法律に反対だとか賛成だとかということではありませんけれども、やはりいただいた資料を見たりしましても、法律案要綱、第一と、こうすっと頭に入ってきますね。それで法律、こうなりますと、たちまち片仮名で、しかも文章も、何々することができるというやつがスルコトヲ得とか、わからなくなってしまうわけで、これは通商産業省に責任を負う通産大臣ということを離れて、閣僚の一員として、そして政治家として、今片仮名の表記の法律を平仮名に改めようというような機運も多少盛り上がってきているやに聞いておりますので、ぜひこれはそういう方向で大臣にイニシアチブをとっていただきたいと思いますが、いかがですか。
○武藤国務大臣 私はその相談を受けましたときにできるだけ平仮名の方がいいのじゃないかという主張をしたわけでございまして、先ほど来の、物理的に今回の場合はそういうことでやむを得なかったと思うのでございますが、やはり内閣法制局の考え方を少し改めさせていかなければいけないと思うのでございます。 そういう点では、幸い私の方の党もそういう方向で今努力をいたしておりますので、これについては多分与野党で意見の違いはないと思いますから、ぜひひとつ与野党一致して——法律をつくるのは立法府の国会なんでございます。内閣法制局は、あくまで法案をつくる意味においては責任を持っておりますけれども、法案を決定するのは立法府でございますから、その立法府の方から内閣法制局に対してそういう声を強く出していくということは大変いいことではないかと私は思っております。自民党の方はそういう方向を強めていくようでございますから、ぜひ野党の皆様方にも御協力をいただいて、何とかこの機会にそういう方向が確立されれば大変結構なことだと私は思っております。
○江田委員 野党の方も昨今とかく足並みの乱れとかすき間風とかいろいろ言われますが、こういうことでは各党全部一致できると思いますので、ぜひひとつやりたいと思います。不正競争防止法は「ぶどう」という字だけが平仮名なんですね。おもしろいことです。 それから、先ほどからの質疑を聞いておりまして局長の先ほどの答弁でいいのかなということがちょっとあったのです。善意者に関する特例です。質問通告していないのですが、善意者に関する特例については、知らないあるいは知らないことについて重大な過失がないということを取得者側が立証しなければならないという趣旨の答弁をされたのです。しかし民法百九十二条には善意、無過失、平穏、公然に占有を取得した者は権利を取得するんだという規定がございます。これは占有の規定ですが。その百九十二条の善意、無過失、平穏、公然中、善意、平穏、公然については民法百八十六条一項で推定されているわけですね。過失については立証しなければならぬのですが、この善意者の特例は重過失ですからね。ですから、今のところはもしそういうケースが出たときの裁判所の判断におゆだねになっておいた方がいいのではないかという気がいたしますが、どうですか。
○棚橋政府委員 原則として、不法行為の場合の挙証責任が原告にあり、かつ二条の今の救済規定については挙証責任がむしろ善意者の方にあると申し上げましたが、具体的には、委員御指摘のように、確かに裁判所において今後いろいろのケースにおいて御判断されるべき問題だということで申し上げておきたいと思います。
○江田委員 立法の際の挙証責任のあり方などについての議論が訴訟実態と余り離れてしまってもちょっとまずいので、念のために質問させていただきました。 それから、秘密の関係のことについての訴訟ということになりますと、これは訴訟としてはなかなか厄介な訴訟で、もう同僚委員からいろいろな質問もございましたが、司法上いろいろな配慮が必要だ。立証について細かな立証まで求めていると秘密が秘密でなくなる。あるいは訴訟手続の中ですべて記録に残してそれを訴訟記録の公開という形で公開してしまうとこれまた秘密でなくなる。そこで訴訟手続と離れたところでの審理にゆだねて、その結果をうまく工夫をして訴訟手続に乗せて処理をするとかいろいろな方法があるわけでしょうが、そうしたことについて司法上の配慮というのは、これは現実的に何とかやってくださいよということなのか、あるいは最高裁判所規則といったようなことをお考えになっているのか、そういう点はいかがですか。
○棚橋政府委員 この点は率直に申し上げまして、私どもの立場としては大変難しい問題であるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、営業秘密を守ろうとして、それが公知になってかえって困るということになれば、本来の権利保護の建前が貫かれないわけでございます。 委員つとに御承知のように民事訴訟法二百八十一条一項三号などの証言拒絶の事由となる場合である程度保護される場合もございましょうし、あるいは場合によると、民事訴訟法の二百六十五条の裁判所外での証拠調べ等においても工夫をして、具体的な訴訟手続上そういう配慮が図られていけばいいがなという期待は持っております。 ただ、この問題は通産省の立場で軽々に申し上げられる問題ではなくて、民事訴訟手続全体、憲法上の原則との兼ね合いでどのようにお考えになるか、いろいろ難しい問題でございますが、私どもとしましてはこの法案が成立をして、その運用状況を見た上でその必要があると判断した場合に は、関係方面に場合によるとお願いをする必要性もあるか、このように考えております。
○江田委員 これは将来の検討課題ということですね。 こういう営業秘密ということもあるし、あるいは特許の関係のことなどもあったり、同様の問題で例えば報道の自由と取材源の秘匿といった関係もあったり、裁判は公開ということだけで一本調子で済むかという現代社会に特有の新しい問題が出てきている。個人の権利を守るということと、裁判の公正の担保のための公開との接点。例えばエイズに関するいろいろな訴訟など、これもなかなか難しい問題で新しい問題ですので、これもまたみんなで検討しなければいけません。 それから、この法律で営業秘密について差しとめということをかぶせたわけで、不法行為の救済としては一般には損害賠償、そして特殊に謝罪広告であるとかがあるわけです。それから、例えば人格権とかは差しとめということが不法行為の場合でも許されるのではないかといった議論があって、差しとめということも認められるケースもあるわけですが、この法律で差しとめという規定をつくったから、その反面として、そういう具体的な法規範がないときには不法行為の差しとめによる権利の回復ということは認められないんだ、こういうようなことになると、これはこの法律が本来予想しているところを超えて効果を持ってしまうということになりかねないのですが、そうしたお考えはないんでしょうね。これは念のために伺っておきます。
○棚橋政府委員 御指摘のようなそういう考えは我々の方にはございません。民法七百九条に基づく損害賠償請求権に加えて差しとめ請求権を本法で認めるところにこの法案の骨子があるわけでございまして、不法行為に係る民事的救済の観点からは、基本的には従来の不正競争防止法と民法の関係と全く同様に、民法の不法行為法の特別法として位置づけられているものだと思います。 今委員御指摘のように、不法行為法の中で公害関係だとか人格権の問題だとかで差しとめ請求が認められたケースも従来はあるわけでございますが、そういうものを制約するものであるとは考えておりません。
○江田委員 司法上請求するその内容ですが、不正行為の停止または予防、これが一条の三項関係ですか。それから一条の四項の関係で停止または予防に必要な措置、そういう二つの立て方になっているのですが、これはどういう関係になるのですか。できれば具体的にお示しいただきたいと思います。
○棚橋政府委員 お答えいたします。 不正行為の停止、予防を行う場合の具体的な執行方法につきましてはむしろ委員が一番お詳しいかと存じますけれども、管轄の地方裁判所に対し不正行為の差しとめを求める訴えを提起いたします。裁判所においては、一般的な訴訟手続に従い口頭弁論を行った後に、例えば「原告は別紙目録記載の製造方法を用いた生産を行ってはならない。」等の判決を下すケースがあると思います。また、被告が生産設備等の不正行為の用に供する設備等を有する場合には、使用の停止に附帯して、その設備の廃棄請求を行うこともできるわけであります。 なお、この判決が確定した後に被告がなお判決を無視して生産活動を継続する場合には、民事執行法で定める間接強制あるいは代替執行によって、強制執行の方法によってその履行を確保することとなろうかと思います。 また、取得行為や開示行為が一回的なものであっても、そのような行為の生ずるおそれがある場合には予防的請求が可能であると考えておりまして、この請求が認められた後に被告が不作為を命じた判決を無視して所得や開示を行ってしまった場合には、行為が終了しているため、もはや強制執行はできませんが、損害賠償請求を新たに起こすとともに、その使用や再開示の差しとめを図ることができると考えます。 また、予防請求に附帯いたしまして当該営業秘密が化体した媒体、これはフロッピー等でございますが、それらの廃棄請求を行うこともできますけれども、この場合には代替執行で履行の確保が可能なケースもあると思います。 また、反復継続的な取得、開示行為の場合には、間接強制を行うことも可能と考えます。 それから、不正行為の停止、予防に必要な措置の具体的な例でございますが、具体的には不正行為の組成物とは営業秘密を化体した媒体等でありますが、不正行為により生じたものとは営業秘密を用いて製造された製品等でありまして、不正行為に供した設備とは営業秘密を使用するための製造装置等であります。 営業秘密については、その特質から予防請求のウエートがかなり大きく、かつ予防請求に伴う廃棄・除却請求権が中心的手段になることが予想されますことと、特に営業秘密が固定された媒体により取得、開示されることが多いという特殊性を有しておりますので、不正行為の予防に際し媒体自体の廃棄の必要性が高いこと等の理由から、廃棄・除却請求権の規定を設けておるわけでございます。
○江田委員 教科書的にはそういうことになるのですが、実際にはなかなか難しくていろいろな技術的な考慮が必要、強制執行をするということのためには相当内容が特定してないといけませんので、いろいろ困難だとは思いますが、いずれにしても時間が参りました。終わります。
○浦野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。 ─────────────
○浦野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 不正競争防止法の一部を改正する法律案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○浦野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。 ───────────── 〔報告書は附録に掲載〕 ─────────────
○浦野委員長 次回は、来る二十日水曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時五分散会