法務委員会 第3号
- 発言数
- 3 件
- 登壇者
- 2 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1989/05/19
会議録
○友納委員長 これより会議を開きます。 法務行政、検察行政、国内治安及び人権擁護に関する件について調査を進めます。 この際、法務行政等の当面する諸問題について、法務大臣から説明を聴取いたします。高辻法務大臣。
○高辻国務大臣 委員長を初め委員の皆様には、常日ごろ法務行政の適切な運営につきまして、格別の御支援と御鞭撻をいただき、厚く御礼を申し上げます。 法秩序の維持と国民の権利の保全を図ることを使命とする法務行政の運営に当たる私の基本的姿勢につきましては、過日の当委員会において就任のあいさつをいたしました際に申し述べたところでありますので、ここでは、当面する法務行政の重要施策につきまして所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。 第一は、最近の犯罪情勢と治安の確保及び法秩序の維持についてであります。最近における犯罪情勢を概観いたしますと、全般的にはおおむね平穏に推移していると認められるのでありますが、その内容を見ますと、身の代金目的の誘拐事件、幼児を対象とした殺傷事件、暴力団構成員による銃器を使用した殺傷事件等の凶悪事犯が多発するとともに、いわゆるリクルート事件等の公務員による汚職事犯、一般大衆を被害者とする経済取引を仮装した詐欺事犯等が後を絶たず、さらには、コンピューターによる情報処理システムを悪用した事件、多額の株式売買益の脱税事件等最近の社会経済情勢を反映した事犯も相次いで発生しておりますほか、来日外国人による犯罪や諸外国と捜査共助を要する事件の増加等犯罪の国際化の傾向が顕著となってきており、これら各種犯罪の趨勢には楽観を許さないものがあると言わなければなりません。また、覚せい剤を初めとする薬物事犯も依然として多発し、これが暴力団の重要な資金源となっているのみならず、一般国民の間にもその乱用が拡散浸透しており、その害悪は看過し得ない状況にあると申さねばなりません。さらに、過激派集団は、新東京国際空港第二期工事阻止等を最大の闘争課題とし、千葉県収用委員会会長襲撃事件のような個人を対象としたテロ型ゲリラ事件や空港建設工事請負業者に対する同時多発放火型ゲリラ事件等の悪質な不法事犯を敢行しておりますほか、昭和天皇の崩御に伴い反天皇闘争を一段と活発化させるなど、今後の過激各派の動向とこれらの集団に対する右翼の報復攻撃等には十分な警戒を要するところであります。加えて、次代を担うべき少年の非行件数は、引き続き高い水準を維持しているのみならず、その低年齢化傾向もうかがわれるのでありまして、今後におけるその動向には、引き続き厳戒を要するものがあると申さなければなりません。 私は、このような事態に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に配意するとともに、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいる所存であります。 第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と保護観察処遇についてであります。 犯罪者及び非行少年の社会復帰及び再犯防止につきましては、国民各層の幅広い参加、協力を求めながら、刑務所、少年院等における施設内処遇と更生保護機関による社会内処遇を一層充実強化し、相互の有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいる所存であります。 そのためには、まず施設内処遇につき、犯罪者の改善更生及び非行少年の健全育成の推進に効果的に寄与し、時代の要請にもこたえ得る適切な矯正処遇の実現に努めるとともに、関係機関・団体相互の緊密な連携のもとに適時適正に仮釈放を許して保護観察への円滑な移行を図り、また、保護観察等の社会内処遇におきましては、関係機関・団体・民間篤志家の御支援を得つつ、更生保護会の充実を期し、こうした体制のもとに保護観察官と保護司との緊密な協働により現下の社会情勢、犯罪情勢の変化に即応した有効適切な処遇及び措置のあり方を追求し、実施してまいりたいと考えております。 また、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、昭和六十二年四月三十日、第百八回国会に再提出されました後、昨年五月十七日、衆議院本会議において趣旨説明が、また、同月二十四日、衆議院法務委員会において提案理由説明が行われ、前国会において、十月十八日から実質審議が開始され、これまで法案審議二回及び参考人の意見聴取一回が行われ、現在継続審議の扱いとなっております。 刑事施設法案は、刑事施設の適正な管理運営を図り、被収容者の人権を尊重しつつ、収容の性質に応じた適切な処遇を行うことを目的として、被収容者の権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準の保障を図り、受刑者の改善更生に資する制度を整備するなどを改正の重点とするものであります。 同法案は、昭和五十七年四月、第九十六回国会に提出され、第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い審議未了のまま廃案となった経緯がありますが、法務省は、日本弁護士連合会と意見交換を行うなどして関係機関等との調整に努め、法案の内容につきましても、慎重に検討して所要の大幅な修正を加えて再提出されたものであります。 制定後約八十年を経た現行監獄法のもとでは、近代的な被収容者処遇を行うことがもはや困難となっておりますため、その全面改正は喫緊の課題でありますので、今国会において十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。 第三は、一般民事関係事務の処理、訟務事件の処理及び人権擁護活動についてであります。 一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大するとともに、社会経済生活の多様化を反映して複雑困難の度を強めてきております。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めますとともに、組織・機構の合理化、事務処理の能率化・省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいったところであります。特に、登記事件は、経済規模の拡大、公共事業の活発化等に伴い増加の一途をたどっておりますが、内需主導型経済及び多極分散型国土形成の進展に伴い、今後ともこの傾向はなお一層進むものと考えられるところであり、その適正迅速な事務処理体制を確保することが重要な課題であります。そこで、昭和六十年度に創設された登記特別会計の趣旨に即して、コンピューター化を中心とする登記事務処理体制の抜本的な改善を行うため、昨年、第百十二回通常国会において、不動産登記法及び商業登記法の改正をしていただきました。 これにより、昨年十月には、東京法務局板橋出張所において、コンピューターによる登記事務処理を開始したところであり、順次全国に展開を図り、二十一世紀に向けて、コンピューター化を推進してまいりたいと存じます。 しかし、コンピューター化を円滑に推進するためには、移行作業要員の確保が必要不可欠でありますし、またコンピューター化の推進には相当期間を要すると考えられますので、その間、増加する登記事件を適正迅速に処理するための要員が必要であり、職員の増員を図ることが緊急の課題となっております。 民事関係の立法につきましては、法制審議会の各部会において調査検討を進めているところでありますが、民事訴訟法部会における「仮差押及び仮処分制度の改正」と国際私法部会における「法例の改正」につきまして、本年一月に法制審議会の答申が得られましたので、これを踏まえ、民事保全法案と法例の一部を改正する法律案を今国会に提出しているところであります。 民事保全法案は、審理及び裁判の迅速化と仮処分の執行方法及び効力の明確化を図るとともに、仮差し押さえ及び仮処分の命令及び執行手続の全面的な整理と合理化をすることをその趣旨とするものであります。 また、法例の一部を改正する法律案は、近時の世界各国の国際私法・国籍法の改正の実情及び我が国における国際結婚等渉外身分関係事件の増加にかんがみまして、親族関係における準拠法の指定に関する規定等について所要の改正を行い、世界各国の国際私法に関する規定との国際的調和を図りますとともに、準拠法の指定の面での両性平等及び子の福祉の理念を一層推進しようとするものであります。何とぞ十分な御審議をいただき、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。 次に、訟務事務の処理についてでありますが、訟務事件は、近年の社会経済情勢と国民の権利意識の変化等を反映して、例えば、環境関係訴訟、原子力関係訴訟あるいは薬害訴訟等の例に見られますように、自然科学の分野と密接な関係を有する複雑困難な事件が集団的に提起される傾向にあるばかりでなく、その結果いかんが政治、行政、経済、社会等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくない状況にありますので、今後ともこれらの事件の適正、妥当な処理に万全を期し、個人の権利・利益と国民全体の利益との間の正しい調和が図られるように努めてまいりたいと存じます。 また、人権擁護行政につきましては、国民の基本的人権の保障をより一層確かなものとするため、各種の広報活動によって国民の間に広く人権尊重の思想が普及徹底するように努めますとともに、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件の調査処理を通じて関係者に人権思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいる所存であります。 中でも、社会の国際化に伴う外国人の人権問題、さらには部落差別を初めとするもろもろの差別事象の問題につきましては、それぞれの所管分野における施策を通じてその根絶を図るべきものでありますが、法務省といたしましても、関係各省と緊密な連絡をとりながら、国民の人権意識を高め、その根絶を図ってまいりたいと考えております。 第四は、出入国管理事務の処理についてであります。 近年、国際間の人の移動はますます活発化しております。我が国社会の随所におきまして国際化が進行し、これまで経験したことのないさまざまな変化があらわれております。こうした我が国社会の各般における国際化の進展の中で、これに対応する出入国管理行政の体制整備が重要となっております。出入国管理行政につきましては、大量出入国時代を迎えて、外国人労働者問題、不法就労問題、就学・研修生問題等々各種の問題が急速に顕在化しております。 このような状況を踏まえ、我が国が国際間の人的交流をより円滑にするため、入国・在留手続等の適正合理化を図りますとともに、他方、外国人の不法就労をより一層的確に防止し得るよう、在留資格制度を中心に出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。何とぞ十分な御審議をいただき、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。 また、出入国管理業務は、本邦に入国し、または本邦から出国するすべての人の出入国について適切に対応し、適正な処理を期するとともに、国際協調の一層の進展に即応する責務を担っております。 この責務を果たすため、今後とも引き続き出入国管理事務の迅速適正な処理及びそのための要員の確保や組織・体制の充実強化に努めてまいりたいと存じます。 最後に、第五は、司法試験制度の改革についてであります。 司法試験制度については、近年、合格までに平均六回余の受験を要し、合格者の平均年齢が二十八歳を超えるなど、合格が余りにも困難になって合格までの受験勉強の期間が非常に長期化するに至っております。その結果、大学在学生に司法試験を敬遠する傾向が生じ、また、法曹の後継者が実務家としての修練を積み始める時期が相当遅くなっている上、合格者の多くが司法修習終了後弁護士になる一方、裁判官、検察官の任官者が減少するなど、裁判、検察、弁護の法曹三者それぞれが後継者を十分かつ適切に確保するという司法試験制度の目的からはほど遠い状況にあり、多くの深刻な弊害を生じております。 法務省では、この現状を改めるため種々の検討を続けてまいりましたが、先般、最高裁、日弁連及び法務省の三者が司法試験制度の改革について協議検討を行うことで三者の合意が得られ、昭和六十三年十二月十九日から法曹三者による協議が始まったところであります。 司法試験の深刻な現状にかんがみ、司法試験制度改革について法曹三者が真剣に検討を行い、早急に国民の期待にこたえる改革案を策定して、改革を実現したいと考えております。 以上、五項目にわたり法務行政の重要施策につきまして所信の一端を申し述べましたが、委員長を初め委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
○友納委員長 この際、委員長から申し上げますが、平成元年度法務省関係予算及び平成元年度裁判所関係予算につきましては、お手元に配付してあります関係資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承をお願いします。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時十九分散会