法務委員会 第1号
- 発言数
- 38 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1988/10/18
会議録
○戸沢委員長 これより会議を開きます。 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政等の適正を期するため、本会期中 裁判所の司法行政に関する事項 法務行政及び検察行政に関する事項 並びに 国内治安及び人権擁護に関する事項 について、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。 ────◇─────
○戸沢委員長 内閣提出、刑事施設法案及び刑事施設法施行法案の両案を一括して議題といたします。 お諮りいたします。 ただいま議題といたしました両案につきましては、第百十二回国会におきまして既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。 ───────────── 刑事施設法案 刑事施設法施行法案 〔本号末尾に掲載〕 ─────────────
○戸沢委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、これを許します。保岡興治君。
○保岡委員 それでは質疑をさせていただきたいと思います。 刑事施設法案及び同法施行法案につきましては、昭和五十七年四月、第九十六回国会に提出されて、翌五十八年十一月、第百回国会まで継続審査扱いとされておりましたけれども、衆議院の解散によって廃案となり、昭和六十二年四月、第百八回国会に再提出されましたものの、実質的な審議に入れないままに経過して前国会に至って、本年の五月二十四日、ようやくにして本委員会において法務大臣から両法案の提案理由の説明がなされたのであります。 私は、刑事施設法案は、明治四十一年に制定され施行以来八十年を経過しております現行監獄法が、現代の刑務所や拘置所の運営制度の基本となる法律としては、形式、内容ともに余りにも古く不十分なものとなっているため、その大幅な運営の改善を図り、受刑者や未決の被勾留者その他の被収容者の取り扱いを国連の準則や世界の先進国の行刑の水準を十分に考慮した適切なものにしようとするものであると承知しているところであります。 しかも、同法案は、昭和五十一年から昭和五十五年まで法制審議会で十二分に審議され、しかも全会一致をもって答申された「監獄法改正の骨子となる要綱」に基づいて立案されたもので、廃案後の再提出に当たっては、二十数回も日本弁護士連合会と意見の交換を行い、異例とも言える二十項目を超える修正が加えられているとも聞いておるところであります。 刑事施設法案は、人を刑事施設に収容し、どのように処遇していくかということを定める法律でありますから、いわば行刑の基本法で、その形式、内容についてはいろいろな考え方があると思います。しかし、現実の行政は、限られた施設、限られた予算、限られた職員等の中で適正な運営がなされなければなりません。もちろん、せっかくの法改正の機会でありますので、現状追認にとどまることなく、可能な限り将来を展望した法改正を図る必要があります。しかし、どうも、これまでの法案に対する批判や反対意見は、行刑行政の現状からかけ離れているものもあるのではないかと考えるのであります。 昭和五十七年に法案が提出されてから既に六年余が経過しております。いろいろ障害はありましたものの、本日からようやく質疑に入ることができましたので、私は、まず行刑運営の現状を率直に御説明いただいて、それを踏まえて、全面改正の必要性がどこにあるのか、そして、刑事施設法案によって現行監獄法令の規定や現在の運用の実際をどのように変えようとしているのかをお答えいただいた上で、現実的で、かつ、よりよい改正法を一日も早く成立させる必要があるという観点から審議を進める必要があると考えているところであります。 それでは、具体的な質問をしてまいりたいと思います。 まず、我が国の行刑の現状はどのようになっているのかについて説明を求めます。つまり、刑務所や拘置所が全国に何カ所設置されており、そこに勤務する職員がどのくらいいて、ここ数年の一日の平均収容人員及び収容率がどの程度で、また、被収容者の処遇上どのような問題が生じてい るか、法務大臣に伺いたいと思います。
○林田国務大臣 まず、刑事施設法案の御審議に入っていただきまして、心から感謝を申し上げます。 第一の問題でございまするが、現在、行刑施設は、全国に刑務所が五十八、少年刑務所が九、拘置所が七、刑務支所が九、拘置支所百八の合計しまして百九十一施設が設置をされておりまして、一万六千九百九十五人の職員が勤務をしております。このうち、日夜被収容者の処遇に当たっておりまする保安職員は一万一千四百八人でありまして、その他作業、教育、医務、分類などの業務に従事しております職員が五千五百八十七人でございます。 そこで、行刑施設の収容人員でありまするが、これは毎年増加をしておりまして、昭和六十年以降は一日の平均収容人員が五万五千人を超えまして、全施設の収容率の九〇%に近づいておるのであります。 また被収容者の保安上、処遇上の問題としましては、第一に暴力団の関係受刑者の収容人員が相変わらずふえ続けておりまして、六十二年十二月現在では受刑者全体の三〇%以上を占めておりまして、保安上いろいろな問題がございます。 次には、覚せい剤事犯の受刑者の収容人員も増加傾向にありまして、六十年にはついにそれまで最も多かった窃盗を抜きまして、新しい受刑者全体の二七%を超えております。特に女子につきましては、新しい受刑者の六〇%近くを占めている状態でありまして、保安上も処遇上も大きな問題となっております。 その他女子の被収容者は、この十年間で二倍に増加しておりまして、どの女子刑務所も一〇〇%をはるかに超える収容率となっておりまして、受刑者の高齢化とか犯罪の質的変化もありまして行刑行政を一層困難にしております。 一方、行刑施設の職員は余りふえておらず、職員一人当たりの被収容者の負担率は先進諸国の中で一、二位を争う高いものになっておるのであります。 現在、刑事施設の運営は円滑、適正に行われておりまして、規律及び秩序は良好に保たれております。刑務官が日夜過酷な勤務を黙々と行っているその努力に負うところが大きいわけでありまして、しかし、それも限界があるのでございまして、ぜひ法的根拠を示していただきまして刑事施設法案を一日も早く通過さしていただくようによろしくお願いを申し上げたいと存ずるところでございます。
○保岡委員 今いろいろ問題がある点について概括、大臣からお答えがありましたけれども、この法案が早期に成立しない場合、行刑運営にどのような支障が生ずるのか、さらに大臣の見解を承りたいと思います。
○林田国務大臣 現行の監獄法が改正されない場合には、次のような問題が解決されないのでございます。 一つは、現行監獄法は時代おくれの刑事政策思想、すなわち監獄の規律維持を何よりも優先させるという厳しいものでありまして、被収容者の権利義務の関係や受刑者の社会復帰の促進を目的とする定めが十分ではありません。そのために、人権の擁護や受刑者の改善更生及び社会復帰に役立つ教育を行う上で欠ける点が少なくないのであります。 第二には、刑事施設の運営を時代に応じたものにするために、これまで法務省令や膨大な訓令、通達を出すことによりまして法律の不備を補ってまいりましたが、それももう限界を超えておりまして、監獄法令の体系的理解の点で混乱が生じてきておるのであります。 三つ目には、最高裁判所が昭和五十八年六月二十二日に判決を出しておりまするが、それによりましても法令の不備が指摘をされておりまして、これ以上このままで放置することは、法治国家としましての我が国の矯正制度に対する内外の信頼が失われるばかりでなく、日々被収容者の監督指導に当たっている刑務官の職務執行にも混乱が生じかねない状態でございますし、また、近年、被収容者の権利意識が高まってきておりまして、不服や苦情が増加をしておりまするが、監獄法令の不備もありましてその対応に苦慮しておるところでございます。今後このような傾向がますます強まって、刑務所や拘置所において不測の事態が生じるというようなことも憂慮されておるところであります。 第四には、監獄法の条文が、御案内のように片仮名まじりの文語体でありまして、難解な言葉や、今は一般に用いられなくなった言葉が少なくなく、死文化した条文もありまして、もはや一般に理解されがたいものになっております。例えば、刑務所や拘置所も、この法律の上ではまだ監獄でありまして、職員は監獄官吏というように呼ばれておるところであります。 このような監獄法は、近代法治国家の法律というには余りに恥ずかしいわけでありまして、一日も早く改正する必要があると存じておるところでございます。
○保岡委員 次に、刑事施設法案の再提出に至るまでの経緯はどうであったかということについて伺いたいと思います。特に、日弁連とどのくらいの期間、どのくらいの回数話し合いの機会を持ったか、またその経緯及び主な論点、そしてそれを受けて再提出法案の、修正をされたようですが、その修正点について伺いたいと思います。
○河上政府委員 先ほど委員御指摘がございましたが、刑事施設法案は、昭和五十七年の四月、第九十六回国会に提出いたしました。日本弁護士連合会がこれに対して反対の決議をされましたので、日弁連の御理解を得るために、法務省から意見交換会を開こうというふうな申し入れをいたしました。それを受けていただきまして昭和五十八年の二月から昨昭和六十二年四月までの間、合計二十六回の話し合いの機会を持っていただきまして十分日弁連の意見を拝聴いたしました。 意見交換会で論議されました主な問題点は、未決と既決の規定を峻別するということ、着衣や携帯品の検査対象から弁護人などを除外するということ、被勾留者と弁護人等との面会に関する管理運営上の制限のあり方、さらには代用監獄問題などでございました。 意見交換の結果を参考としまして、再提出法案には二十一項目にわたる実質的修正を加えたわけでございますが、その主要な修正点を申し上げますと、一つには、法律の解釈、運用規定を新設するなど未決、既決の峻別をさらに明確にしたこと、二つ目には、弁護人等に対しては、その着衣及び携帯品の検査を行わない旨を明らかにしたこと、三つには、女子の被収容者等の身体等の検査は、女子の職員が行う旨を明らかにしたこと、四つ目には、拘束台、防声具の使用及び保護室への収容に関し、医師が関与する旨を明らかにしたこと、五つには、被勾留者の弁護人等との面会に関し、管理運営上の制限が必要最小限に限られることを法文上明確にしたことなどが主要な点でございます。
○保岡委員 法務大臣は、さきに行われた国会での刑事施設法案の提案理由説明の中で、その改正の要点を四点挙げておられました。すなわち、第一点は、被収容者の権利及び義務の範囲を明らかにするとともに、被収容者の生活及び行動に対する制限の根拠及び限界を明らかにしていること、第二点として、被収容者の適正な生活条件の保障を図り、その健康の維持のために適切な措置を講じていること、第三点としては、受刑者の改善更生を図るための制度を整備していること、第四点は、いわゆる代用監獄制度について、制度的改善を加えていることであるということでございました。 法案の規定がそれらの要点をどのように具体化しているかにつきましては、今後の審議の中で明らかにされていくものと思いますけれども、総論的には、現行の監獄法令の規定から、あるいは行刑運営の現状から見て、格段の進歩であると考えるものでございます。しかし、法案は、法制審議会の答申と多くの点で異なっているという批判がいろいろ取りざたされておりますが、この点についてはどのように考えておられるでしょうか。
○河上政府委員 私どもといたしましては、刑事施設法案は、法制審議会の答申を忠実に法文化したものと考えております。確かに編別やその他の形式、表現において答申と若干異なる点がありますが、これは答申が、その名前に示されておりますように「改正の骨子」として作成されたものでございまして、答申の法文化に当たりまして立法技術的な観点からの整理と関係機関との意見調整の過程で必要とされました若干の整理を施したことによりましてこうなったものでございまして、実質においては答申を後退させた点はないと考えております。 例えば、法案の体系すなわち編別の条文の構成について申し上げますと、法制審議会の答申では、被収容者の種類ごとに、全く同一内容の項目であっても重複をいとわず別々に掲げられておりますが、立法技術上、同一法律中に同一の文言の条文を重複して規定することはいささか妥当ではないと思われましたので、法案におきましては、これらの共通の事項を取りまとめて法文化いたしております。この場合におきましても、受刑者と被勾留者の法的地位の違いがあるわけでございますから、それを明確にすべきことは当然でございまして、法案はこの観点から、遍を別にしてそれぞれの処遇の原則規定を別々に設けまして、それとともに被収容者の収容の性質を十分に考慮して法律の解釈、運用をなすべき旨を明らかにするなど、答申の趣旨を十分に配慮いたしているつもりでございます。 なお、法案には、答申よりも被収容者の権利利益の範囲を広げる方向で法文化された規定も少なからずあるわけでございまして、この意味におきましても、私どもとしては答申を後退させたという批判は当たらないと考えております。
○保岡委員 今の局長のお答えで、法制審議会の答申を忠実に法文化したものであって、実質的には十分それを尊重した内容になっている、こういうことでございますが、ちょっと具体的にもう少し伺わさせていただきたいと思います。 刑事施設法案は、随所に刑事施設の規律及び秩序の維持を理由とする制限規定があって、戒護万能主義への逆行である、こういう観点からも批判があるようでございますが、この点についてはどのように考えておられるでしょうか。
○河上政府委員 刑事施設は、申すまでもなく犯罪を犯したとされる被勾留者あるいは犯罪を犯したというふうに裁判で確定いたしました受刑者、そういった多数の被収容者の身柄を安全に確保することを重要な使命といたしております。これを全うするためには刑事施設の規律及び秩序は厳正的確に維持されなければならないわけでございまして、この観点から被収容者の生活及び行動についてある程度の制限を行わざるを得ないわけでございます。 刑事施設法案は、現行法では必ずしも明確でない国とこういった被収容者との法律関係を明らかにすることを重要な立法目的といたしております。その趣旨から、必要最小限の規律維持上の制限を明文で規定する一方、その要件と限度を明示することによりまして、不当な規制を防止しようといたしております。 すなわち、規律維持を理由として制限する場合には、各条項ごとにその旨を明確に規定いたしております。そして、その制限は、「被収容者の収容を確保し、並びにその処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならない。」とする大原則を宣明しているところでありまして、戒護万能主義というのは、私どもとしてはいわれのない批判であると考えております。
○保岡委員 法案は、国際連合の被拘禁者処遇最低基準規則あるいは国際人権規約に抵触するという批判も出ているようでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
○河上政府委員 ただいま御指摘ございました国際連合の準則や人権規約等に抵触すると言われております点いろいろあるわけでございますが、主な点を申し上げますと、刑事施設法案が、一つには代用監獄制度の存続を規定しているということ、二つには、今委員の御質問ございました規律偏重であって人権を侵害するのではないかという御批判、三つには、接見交通の制限を厳しく定めていて弁護人の弁護権を侵害しているのではないかという、主として三点に絞られるのではないかと思います。 しかし、この第一の点でございますが、捜査官が、対立する立場にあります被勾留者の身柄を支配すべきではなく、代用監獄制度は外国には例がないという点にその批判の論拠があるわけでございますが、代用監獄制度の有無、代用監獄をとるかとらないかは、警察官による被勾留者の取り調べ権限の有無、取り調べ権限があるかどうか、被疑勾留期間、被疑者の勾留期間の長短、その他その国の刑事手続法の諸制度と密接に関連しているところでございまして、これらの諸制度と無関係に代用監獄の有無のみを単純に取り上げて比較することはやや妥当ではないのではないかと考えております。 法制審議会は、被勾留者について、勾留制度の目的を迅速適正に果たすためには、全国津々浦々にあまねくその収容施設が配置されなければならないが、これをすべて国の施設で賄おうとすれば極めて小規模で非効率な施設を多数設置することになり、合理的でないばかりでなく、財政上その他の面からも不可能に近いこと、他方、都道府県警察は全国の隅々にまで留置場を有していて、警察の任務から見ても、被勾留者の収容業務を国にかわって行うについて適合性があると思われること、さらに留置場は交通至便の地にありますため、被収容者やその家族、弁護人等関係者の利益にも資することなどから、制度的改善を加えて存続するということを答申しております。 刑事施設法案は、この法制審議会の答申に基づきまして、警察の留置施設に収容される者の権利義務に関することについては原則として刑事施設法の規定を適用するということにいたしまして、法務大臣の一定の関与を定めるなどいたしまして、本来の刑事施設に収容される者との処遇の斉一性を図っておりまして、また一方、留置施設法案、これは地方行政委員会の方に付託されていると思いますが、留置施設法案では、留置業務と捜査とを完全に分離いたしまして、また執務時間外においても管理運営の上で支障がない限り、弁護人面会権を保障するなどの配慮が法文上なされております。こういったことから、いわゆる代用監獄制度は国際人権規約の諸規定に抵触はしない、こう考えているわけでございます。 また、第二点でございますが、国際連合の最低基準規則においても、「規律及び秩序は、厳正に維持されなければならない」という規定がございます。法案においても、これを明示した上で、そのための措置は、収容の確保と被収容者に対する適正な処遇の実施のため必要な限界を超えてはならないとする一般的な抑制といいますか歯どめといいますか、そういった原理を明確にいたしております。さらに個々の規制措置につきましても、それぞれ要件と限界を明らかにいたしまして、不当な規制を防止しようとしているわけでございまして、これに対する御批判は私どもとしては当たらないと考えているわけでございます。 また三点目でございますが、弁護権が侵害されるという御批判でございますが、法案は、管理運営上支障のない限り、弁護人からの執務時間外における被勾留者との面会の申し出にも応じなければならないとしているわけでございまして、弁護人から被勾留者にあてた信書は内容の検査をしないことなどもその他規定しておりまして、弁護権の保障には十分配慮していると信じております。
○保岡委員 基本的な問題についてはさらにまた質疑をする機会もあろうかと思いますが、続いて刑事施設法案の具体的内容に関して質問を続けたいと思いますが、時間でございますので、休憩後の時間に譲りたいと思います。
○戸沢委員長 午後一時二十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時二十分休憩 ────◇───── 午後一時二十四分開議
○戸沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。保岡興治君。
○保岡委員 大臣がちょっと御予定がおありで席を立たれる御予定がおありだということですので、大臣に予定していた質問を繰り上げて先にさせていただきたいと思います。 いわゆる代用監獄制度や弁護人接見について、かねて日弁連などからいろいろな批判的意見が出されていることは既に御承知のとおりでありますが、代用監獄制度については、法制審議会の答申にある漸減条項が法文化されていないことが問題とされ、また、弁護人接見については、管理運営上の制限が規定されているが、どのような場合に制限されるのかが法文上必ずしも明らかでなく、その運用が適正に行われるかどうか心配する向きがあるわけであります。これらの問題は、まさにいわゆる拘禁二法と言われるこの法案の最も重要な点であることは、これはだれも否定しないところであって、私も十分な関心を持っているところでもありますし、与野党を通じて国会にもまたいろいろ意見のあるところであります。 そういうことで、我々はこの法案を一日も早く十分審議して、そして国会がまた主体的にその審議を通じてよき実りを上げることができればと期待もいたしているところでありますけれども、この点について、法務大臣は今後どのように対応を考えておられるのか、その見解を伺いたいと思います。
○林田国務大臣 御指摘の代用監獄制度についてでございまするが、法制審議会の要綱の110項の(二)におきまして、「関係当局は、将来、できる限り被勾留者の収容の必要に応じることができるよう、刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて、被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること。」というように答申をされておりますることは御案内のとおりでございます。この答申は、改正法の実施に当たっての運用上の配慮事項としてなされたものでありましたので、法文として明らかにしなかったのでございます。ただ、法案提出後、その漸減条項の趣旨を何らかの形で明らかにするように求める意見が各方面から出されていることは承知をしており、事務当局に対しても検討するよう指示をしておるところでございます。 私といたしましては、この答申の趣旨は十分尊重してまいる所存であり、今後、委員会における法案審議の中で、この問題について十分な論議がなされることと期待し、柔軟に対応してまいりたいと考えております。 次に、弁護人接見に関する管理運営上の制限についての御指摘でございまするが、法制審議会の答申は、その具体的な内容をすべて法務省令にゆだねる形となっておりましたが、昭和五十七年四月の法案提出後になりまして、その問題の性質上法文で法律上明らかにする必要があるとの意見が日弁連などから強く出されたこともありまして、昨年四月再提出するに当たって、現在の第百十条の第一項から第三項までの規定が具体化されたものでありまして、その運用につきましては、法律の趣旨を踏まえて、適正を担保する方策を事務当局に指示して検討を行わせているところであります。この点につきましても、委員会の御審議の中での論議の結果を十分に尊重してまいりたいと考えておりまするので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
○保岡委員 今私が指摘した問題について、大臣から極めて政府としての強い決意も述べられました。私どもも、国会の審議が十分行われて、ある一定の成果が得られることを期待して、今後審議が促進されることを心から望むものでございます。 それでは続いて、具体的に法案について伺ってまいりたいと思います。 第一条の目的規定において、被収容者の「収容の性質に応じた適切な処遇を行うこと」を目的の一つとして掲げておるところでありますけれども、受刑者と被勾留者はその収容の性質に応じて十分配慮するという答弁も先ほどありましたが、一体どのような点に具体的に処遇の差があるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
○山岡政府委員 刑事施設法案第一条に言う「収容の性質に応じた適切な処遇を行う」ということは、当該収容の根拠となった法的処分のそれぞれの特性に応じまして適切な取り扱いをするということでありまして、受刑者の処遇については四十八条第一項、また被勾留者の処遇につきましては百六条がそれぞれ明らかにしているところであります。 なお、受刑者と被勾留者との具体的な処遇差につきましては矯正局長から答弁をいたさせます。
○河上政府委員 非常に具体的な問題でございますので、私の方から補足させていただきます。 受刑者の処遇は、法案の第四十八条第一項に明らかなように「改善更正の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ること」、こういうことを旨として行われるのでありまして、矯正処遇が義務づけられていますほか、矯正処遇の適切な実施に支障が生ずる場合には、第三十三条の第二号、第九十四条第一項第五号及び第九十九条第一項第七号に明らかなように、受刑者に権利として保障される書籍等の閲覧や面会、信書の発受についても一定の制限が加えられることとなっております。これに対しまして、被勾留者の処遇につきましては、このような観点からの義務づけや制限はその地位にかんがみてないわけでございます。 また、受刑者は、罪責が確定し、刑執行のために刑事施設に収容されているものでございます。これに対して被勾留者の方は、いまだ罪責が確定していないものでございますから、おのずからその処遇は受刑者と異なるところがあるのでありまして、例えば原則として、第十四条第二項で自弁の物品の使用が許されますし、第十九条第二項で調髪あるいはひげそりなどは強制されません。また第三編第二章では面会、信書の発受の相手方についても特段の制限が設けられていないわけでございます。 他方、被勾留者は、刑事訴訟法上の強制処分である勾留の執行として収容されている者でありますから、その処遇は、第百六条に明らかなように、勾留の目的である「逃走及び罪証の隠滅の防止」、これに留意して行う必要がございます。こういう観点から、第三十一条第二項及び第三十三条第三号に定めがありますように、宗教上の行為や書籍等の閲覧などについて一定の制限が加えられているわけでございます。 さらに、被勾留者は、訴訟における当事者的地位が認められ、訴訟上の防御権が保障されておりますので、弁護人等との面会、信書の発受等を初め、その処遇に当たっては防御権をも十分に尊重することとされております。例えば、第百十三条第一項では、弁護人等との信書の発受に関する管理運営上の制限は、その被勾留者の防御権の準備に支障を生じないよう、やむを得ない限度にとどめなければならない旨、また第百十四条第二項で、弁護人等から受ける信書は内容の検査を行わないこと、第百十五条第一項で、被勾留者が弁護人等に対して発する信書について、一般の信書よりも内容による制限事由を限定していること、第百三十七条の閉居罰の内容に関する規定では、閉居罰の執行に伴い、被勾留者についても面会及び信書の発受が当然停止されることになりますが、同条第三項において、被勾留者の弁護人等との面会及び信書の発受は停止しない旨規定している、こういったようなことがございまして、これらの配慮を加えているわけでございます。 受刑者の処遇については、当然こういった観点からの問題がないわけでございます。
○保岡委員 刑事施設法案の第七条、これは刑事施設の適正な運営に資するため、学識経験者などから必要な意見を聞く旨を定めているわけでございますが、その趣旨及び予定される運用はどのようなものか、伺いたいと思います。
○河上政府委員 刑事施設は、被収容者を社会から隔離してその身柄を確保し、また、施設内における規律や秩序を維持しまして、被収容者の名誉を保護しなければならないなど、その業務の特殊性から、本来的に非公開なものであることが要請されております。このため、ともすると施設運営が閉鎖的になりがちであって、いたずらに外部に対して門戸を閉ざす、そういったことのみに終始する弊がもし起こるとすると、当然独善に陥りまして、一般社会の進歩から取り残される危険があるわけでございます。こういった弊害を避けて刑事施設の適正な運営を図るためには、広く社会の各方面の有識者等から有益な御意見を伺って施設運営の参考に資することが必要ではないかと考えられるわけでございます。刑事施設法案の第七条は、こういった趣旨から、刑事施設の長に対し、部外の有識者等から意見を聴取する努力義務を規定したわけでございます。 実際の運用といたしましては、各刑事施設ごとに定期的に部外の有識者等により構成される会議を開催するとともに、これらの人々に対して刑事施設を視察する機会をいろいろ設けるなどして便宜の供与を行いまして、有益な御意見を活発にお聞きしたい、そういうことを予定いたしております。 なお、これは、法制審議会の答申の要綱の4の(三)及び110の(一)、これを充足するものであると私どもは考えております。
○保岡委員 非常にいい制度で、その運用が期待されているので、ぜひこの法案が一日も早く通過することを期待する一つの大きな理由でもあろうかと思います。次に、昭和五十八年六月二十二日の最高裁判決は、被収容者に対する文書、図画の閲覧の自由の制限について、現行監獄法令が「その文言上かなりゆるやかな要件のもとで制限を可能にしているようにみられる」と述べてその不備を指摘していると見られますが、この点については、先ほど大臣も、そういう指摘があることを、現状にかんがみて懸念をされている旨お話もありましたが、刑事施設法案がこの点についてどのように対応したのか、その点を伺いたいと思います。
○河上政府委員 確かに御指摘のように、昭和五十八年六月二十二日の最高裁の大法廷判決は、現在の監獄法の下位の法令につきまして御指摘のようなことを述べております。 現行法では、被収容者に対する文書、図画の閲覧の制限に関しましては、第三十一条の第二項で抽象的かつ包括的に命令に委任しております。その制限の具体的な範囲、方法については、いわゆる行政規則にすぎない訓令や通達で定めているわけでございます。これについての最高裁の判断であったわけでございます。 これに対しまして、今回の法案では、第三十二条において被収容者がその自弁に係る書籍等を閲覧することの権利的性格を明らかにいたしまして、その上で第三十三条において閲覧の制限事由を法律上具体的に明示いたしまして、最高裁判決が御指摘された不備の解消を図っているわけでございます。
○保岡委員 次に、刑事施設法案は、受刑者の改善更生及び社会復帰のための施策として、矯正処遇のほかにどのようなものを予定しておって、それはどのような効果をねらっているのか、その点について伺いたいと思います。
○山岡政府委員 矯正処遇以外の主な施策といたしましては、外出、外泊の制度を新設いたしまして、また、刑の執行開始後間もなくの受刑者及び釈放間近の受刑者に対しましては、それぞれ必要な指導を行うほか、受刑者の余暇活動に対しましてその改善更生に資するような援助を行うことを予定しております。 これらの施策のねらいにつきましては矯正局長から説明をいたさせます。
○河上政府委員 私の方から補足させていただきます。 幾つか問題があるわけでございますが、まず一つには、法案の第二編第五章に規定する外出、外泊は、当該受刑者の家族などとの関係を維持しあるいは復活させ、釈放後の生活設計に重要な関係を有する人たちと接触して社会復帰に必要な条件の整備を図るなど、みずから社会復帰を図るための主体的な努力を受刑者がする機会を与えまして、この機会を通じてその自律心と責任感に基づく自主的な行動規制を行わせることによって受刑者の改善更生及び社会復帰の効果を期待したい、そういうことをねらいとする制度でございます。 二つ目は、第五十一条に規定する刑執行開始時の指導などの規定でございますが、矯正処遇に入る前のいわゆるオリエンテーションとして、新しく入ってきた受刑者に指導及び訓練を行うものでございます。また、第五十二条に規定する釈放前の指導などは、保護関係者、保護司さんその他の保護関係者等の協力を得ながら、受刑者が釈放された後の社会生活において直ちに必要とするような知識を授けたり、それから帰住しあるいは生計を保ついろいろな方途に関しまして必要な指導並びに援助を行うなどして、当該受刑者の円滑な社会復帰を図ろうとする制度でございます。 また三つには、第五十四条第一項に規定する余暇に充てられるべき時限というのがございますが、受刑者にしてみますと、生活、行動に一定の義務づけを伴わない時限でございます。余暇時限を有意義に過ごさせる観点から、第五十五条によりできる限りこれを改善更生及び社会復帰に資するように配慮して援助したい、こういうふうに考えてつくった制度でございます。
○保岡委員 今局長が御説明されたとおり、受刑者の改善更生及び社会復帰のための施策というものは行刑上非常に重要な柱であって、近代行刑法にとっては非常に大事な点で、さればこそこの法案が一日も早く通過、成立することを関係者は期待している最大の理由の一つでもあろうかと思います。 続いて、現行監獄法の作業賞与金というのがありますが、刑事施設法案では作業報奨金制度を設けている。これは一体、現行の作業賞与金とどのように違うのか、そしてまた、賃金制を採用しないということについては一部批判もあるようですが、この点についてはどのように考えておられるか、あわせてお伺いしたいと思います。
○河上政府委員 三つの観点からお答えを申し上げたいと思います。 一つは、現行法の第二十七条の作業賞与金は実は専ら恩恵的なものとして規定されております。これに対しまして今回の法案では、第七十二条の第一項におきまして、作業を行った場合には必ず作業報奨金を支給することといたしまして、作業を行うことと作業報奨金との結びつきをより明確にするとともに、第七十五条におきまして、受刑者が死亡した場合にはその受刑者に支給すべき作業報奨金を必ずその遺族に支給することとするなどいたしまして、報酬としての性格を持たせているわけでございます。 二つには、刑務作業と申しますのは、自由刑の中心であります懲役刑の本質的要素である刑法の定める定役、これを具体化するものでございますが、同時に、受刑者の改善更生の上で重要な機能を有する処遇方策でもございます。このように、刑務作業は、その基本的性格からいわゆる一般社会における自由な労働とは本質的に異なるものと考えております。また、受刑者の就業に対する給付を純然たる賃金として構成するといたしますと、一般社会における賃金支給の原則に従うことがこれは当然要請されるわけでございまして、そうなりますと、その結果、就業した業種の収益性あるいは技能の程度、仕上げ高等によりまして各人の報酬額に顕著な差が生ずることになるだろうと思います。また、報酬を受ける者につきましても、国が給貸与する衣食に要する費用、そういったものの自己負担の問題も生じかねないことでございますし、職業訓練あるいは治療的作業のように本来収益を目的としないものについては報酬を支払い得ないといったような問題も出てくるのではないかと存じます。 さらにまた、現実の問題としまして、常に望ましい収益性を有する作業がどの刑務所でも、いつどこでも得られるとは限りません。少なからず作業の種類が一般的には低収益のものとなりますし、受刑者に適当な収入を確保するに至らない場合というのが相当程度予想されるわけでございます。 それから三つには、刑務作業制度の機能及び作業についた受刑者に対する給付の法的性格というものから考えますと、単に技能の程度とか仕上げ高とか収益性の観点のみに基礎を置くべきではなくて、むしろそれ以上に、作業報奨金のように、受刑者の勤労に対する意欲、作業の遂行または技能の習得についての本人自身の努力と責任感等に基づきまして、これに対する受刑者の努力、改善更生へのそういった意欲を奨励するとともに、釈放後の更生資金としても役立たせることを考慮して支給したい、こういうふうな考え方からこういう構成をとったわけでございます。
○保岡委員 それから、この法案の規定する審査の申請でございますけれども、現行監獄法の情顔とどのように違うのか。被収容者の不服救済制度として不十分ではないかという批判もあるかのように聞いておりますが、この点についての見解を明確にしていただきたいと思います。
○河上政府委員 確かに御指摘のように、現行監獄法第七条の情願、これは請願の一種というふうに講学上考えられておりまして、申し出人に裁決の請求権は認められておりません。また、裁決にも直接権利利益を救済するような効力がございませんで、主としていわば行政内部における改善を図るためのものでありまして、そういったことから権利利益の救済制度としては必ずしも十分なものではございません。 これに対しまして、今回の法案の第百四十三条から第百四十八条までに定める審査の申請は、行政不服審査法に定める不服申し立て制度の特例でございまして、刑事施設の長の措置を違法または不当であるとする被収容者がその措置の取り消しまたは変更を求めるために法務大臣に対して審査を求めるものでございまして、裁決による不服の解決が法的に義務づけられております。また、制度を実効あらしめるため明文で秘密申し立て権を保障いたしておりますし、また、不利益な取り扱いを禁止するなど権利利益の救済制度の充実を図ろうとするものでございます。 審査の申請制度は、行政不服審査法上の審査請求に今申し上げたように対応するものでございますが、一つには、審査の対象となり得る事項を限定列挙しております。第百四十三条第一項でございます。二つには、代理人による申請を認めないこと。これは第百四十三条第二項でございます。それから三つには、行政不服審査法上の教示制度にかわるものとして、収容開始時の告知事項に含めて一般的に受刑者に告知する方法をとっております。これは第十条第一項八号でございまして、若干の点で行政不服審査と異なるわけでございます。 これはどういうことかと申しますと、まず一つには、刑事施設の長の措置の多くが一過性の事実行為的な性質のものが多いわけでございまして、審査の申請手続による救済の実現可能性の面から検討された結果、申請の対象となり得る事項は、措置の効力、執行等が継続性のある権利的性格を有する行為に対する制限措置及び生命、身体、財産に対して重大な不利益を生ずると見られる措置とされたことでございます。 それから二つには、申請を受理した法務大臣の職権審理の方式によるので代理申請は認める実益が少ないことなど刑事施設の特殊性が配慮されたことによるものでございまして、この点について不服救済制度として不十分であるという御批判もあるようでございますが、そういう御批判は必ずしも当たらないものだというふうに考えております。
○保岡委員 きょうの私が予定した質問は、ちょっと早いようですけれども、これぐらいにして終わりたいと思います。 刑事施設法は、非常に行刑の基本法ということで、八十年来の改正ということで、その間いろいろ時代も変遷して、世界の行刑のあり方もいろいろ変わってきておる、そういうようなことで、基本的なことについてもいろいろ意見の分かれるところでありますけれども、きょうはこの法案の基本的な点において、いろいろこれが非常に大事な法案であるということを説明していただいたと思います。しかしながら、先ほどお話ししたように、非常に大事な法案であるだけに、内容についてもさらに具体的にいろいろ吟味をしたり、どのように運用されるのかということについても、いろいろ人権保障の点や行刑の理想を実現するためにどのような形としてそれをあらわしておいたらいいかということについても、やはり国会が主体的にそういうことについてきちっとした答えを出していく、審議を通じてそういうものをはっきりさせていくということがこの法案を成立させることに極めて重要である、こういうふうに考えるものであります。 したがって、本当にきょうはそういう意味で審議が始まったことは大変意義のあることだと思いますが、与野党を通じて今後審議が十分にされ、また一日も早い成立を期していくということで努力をしていくべきだ、こういうふうに考えるものでございます。 以上をもって私のきょうの質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○戸沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時五十四分散会