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112回国会参議院1988/04/13

産業・資源エネルギーに関する調査会 第3号

発言数
55
登壇者
14
会派数
5
開催日
1988/04/13

会議録

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ただいまから産業・資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  産業・資源エネルギーに関する調査を議題といたします。  まず、派遣委員の報告を聴取いたします。沢田一精君。

沢田一精自由民主党

○沢田一精君 先般行いました委員派遣について、その概要を御報告いたします。  本調査会では、去る二月二十二日から二十四日までの三日間、愛知県、京都府、滋賀県及び兵庫県を訪れ、円高下の機械産業及び先端技術産業の実情と地域経済に及ぼす影響について実情調査するとともに、名古屋市においては、昨年の広島市に引き続き地方公聴会を開会いたしました。  派遣委員は、大木会長、添田理事、及川理事、馬場理事、神谷理事、橋本理事、山東委員、森山委員、吉川委員、それに私沢田の十名であります。なお、愛知県における調査には、高木健太郎議員が現地参加されました。  以下、日程に従って、その概要を御報告いたします。  まず、第一日目は、名古屋通商産業局において、管内の経済概況を聴取した後、財団法人ファインセラミックスセンター及びトヨタ自動車株式会社を視察いたしました。  名古屋通商産業局管内の経済動向については、輸出が停滞しているものの、個人消費を中心にした内需が順調に拡大していることにより、景気は総じて拡大傾向にあるとの説明を水野局長より聴取いたしました。  財団法人ファインセラミックスセンターでは、森田理事長よりセンターの概要について説明を聴取した後、試験研究の実情を視察いたしました。同センターの特徴は、国、自治体、関係業界の援助と学識経験者の協力のもとに民間が主体となって発足した民間活力のプロジェクトであり、中小企業の技術振興や国際的な標準化、規格化のための研究開発を進めるなど、新素材として脚光を浴びるファインセラミックスの将来に重要な役割を担うものと期待されます。  次に、トヨタ自動車株式会社では、事業活動の概要について豊田社長より説明を聴取した後、同社元町工場の乗用車組み立てラインを視察いたしました。同社は、円高の影響により輸出が減少する一方で、昨年半ばからの国内需要の堅調な伸びに支えられて業績を回復しつつあり、北米工場における本格生産開始による影響が多少懸念されるものの、現在までのところ、比較的順調に内需シフトが進展しているとのことであります。なお、派遣委員から、海外現地生産に伴う貿易摩擦解消への効果及び国内の地域経済に及ぼす影響等について質疑が行われました。  第二日目は、午前九時から名古屋市内のホテルにおきまして、「構造調整下の自動車産業の実情と中部経済圏への影響」というテーマで名古屋地方公聴会を開会いたしました。公述人は、甲斐一政愛知県副知事、大島彊トヨタ自動車株式会社取締役副社長、阿久津一中部経済連合会専務理事、相羽雅文愛知県中小企業団体中央会代表、河村松茂自動車総連愛知県連議長の五名で、一人十五分程度それぞれの立場から率直な意見が述べられました。  まず、甲斐公述人の意見の概要は次のとおりであります。  愛知県は、我が国の総生産の一割余りを担う非常に産業集積度の高い地域であり、とりわけ自動車産業への特化が著しく、愛知県の総生産の一〇%に及んでいる。また、自動車を初めとする愛知県の代表的産品はいずれも輸出依存度が高いことが特徴で、必然的に円高による構造調整を迫られ、昨年七月に実施したアンケート調査によれば、二百六企業、延べ七百八十二件が六十四カ国へ海外進出し、または計画中ということである。このような企業の海外進出による空洞化の懸念については、現時点では事業の成長拡大部分が海外進出するという健全な形であると考えている。ただ、自動車産業については、一九九〇年には北米で供給過剰の見通しがあり、その場合には輸出の減少、下請企業への発注減少、余剰人員の発生といったことが懸念される。しかし、国際化の進展から海外進出は避けて通れないので、技術振興対策等に積極的に取り組むとともに、各種試験研究機関の誘致、明年の世界デザイン博の開催など、愛知県の産業構造の一層の高度化を図っていきたいとのことでありました。  次に、大島公述人の意見の概要は次のとおりであります。  最近の自動車産業の動向は、円高に伴うたびたびの値上げによって輸出台数は前年を下回り、この結果、国内販売増をもってしても輸出減を補えず、生産は二年連続して微減を続けている。トヨタ自動車の場合も同様の傾向だが、国内販売へのシフトは他社以上に進展し、車両売上高に占める輸出依存度はピーク時の五七%から四二%にまで低下してきている。自動車メーカーの海外進出の状況については、近年貿易摩擦の回避等もあって、北米地域における大規模な計画が展開されつ つあり、このため、これらの生産が本格化する一九九〇年には供給過剰が生じると予想される。百五十万台とか二百万台という供給過剰論は現実的でないとしても、六十万台程度の過剰は生じ、結局のところ完成車輸出を調整して対応せざるを得ない。また、自動車産業の構造調整については、生産や技術の空洞化を防ぎ雇用を守らなければ、みずからの衰退につながるとの基本的認識のもとに、国内生産と海外生産とのバランスを経営の基本として対応している。いずれにしても、我が国の自動車産業がかつての戦略的輸出産業のポジションから国際協調型の産業にシフトし、しかも産業としての活力を維持していくためには、持続的な内需拡大が必要であるとのことでありました。  次に、阿久津公述人の意見の概要は次のとおりであります。  中部経済圏は、自動車を中心とする輸送機械の出荷額が全国の四二・六%を占めていることからもわかるように、我が国主力産業である機械工業の一大生産拠点を形成している。これら機械工業に加え、陶磁器、繊維等の当地域主力産業はいずれも輸出依存度が高く、近年の大幅、急激な円高の進行や国際的規模での構造調整の進展は中部経済圏に大きな影響をもたらしている。特に自動車産業の海外生産は、関連産業も含めると雇用、地方財政に大きな影響を及ぼし、これに工作機械、電気機械が加わると、地域経済にとっていわゆる産業の空洞化が懸念される。これらに対応するため、四全総にも位置づけられたように、国際産業・技術中枢圏域の形成を目指している。そのためには、中部圏の持つ大きな産業、技術の集積に加え、例えば航空宇宙研究施設の誘致など研究開発機能や情報機能、国際交流機能の強化を図り、既存産業の高度化、複合化を推進する必要がある。また、次世代を担うソフトウエア開発産業など新成長産業、都市型産業を育成して、産業の空洞化を未然に防止しつつ産業調整を進めなければならないとのことでありました。  次に、相羽公述人の意見の概要は次のとおりであります。  急激な円高の進行に対応して中小企業各社は懸命の努力をしてきたが、陶磁器、繊維、金属工作機械、食品加工、洋食器などの多くの企業で転廃業に悩んでいる窮状にある。各社の円高への対応の現状は、経営能力の向上、品質の向上、技術の振興、生産性の向上、人材の育成などであるが、六十一年下半期からの超円高現象にはそれでも追いつけず、原価低減の徹底や海外戦略の展開に取り組み始めている。そこで第一に、為替相場の安定、第二に、円高差益還元の指導、第三に、人材養成、技術開発に対する指導援助の三点を要望するとともに、種々の配慮をお願いしたいとのことでありました。  次に、河村公述人の意見の概要は次のとおりであります。  急激かつ大幅な円高は、各自動車メーカーの収益構造を悪化させ、定期採用者の手控え、季節従業員の採用中止等、雇用動向に影響を与えている。海外現地生産の拡大については、労働組合としても前向きに対応する方針で、企業の海外活動に対する対応三原則を打ち出している。現時点では海外生産規模も小さく具体的な影響は出ていないが、メーカーの主力工場が逐次本格生産に入る本年の年央以降、どのような展開となるか重大な関心を持っている。自動車総連としても独自のシミュレーション分析を実施したが、自動車の国内生産減が全産業に及ぼす影響は小さくない。そこで具体的な対応としては、第一に、ワークシェアリング的な視点を持った労働時間の短縮促進、第二に、生産量の減少に耐え得る企業基盤の整備、強化、第三に、経営の多角化や事業転換の推進の三点が挙げられる。行政に対する要望としては、第一に、所得税、住民税の大幅減税及び法人税減税と規制緩和、第二に、交通インフラの整備、自動車関連諸税の簡素合理化とユーザー負担の軽減、第三に、中小企業に対する新規事業投資への支援措置の三点をお願いしたいとのことでありました。  以上の公述人の意見陳述に対して派遣委員からは、中小企業の構造転換に当たっての問題点、今後の円高の進行状況と企業の対応、自動車の部品、完成車の逆輸入の影響、自動車の日米間の技術格差の実情、海外進出先における従業員の教育、医療等の問題点、海外進出先からの研修員の現状と対応策等について活発な質疑が行われました。  第二日目の午後は京都市へ移動し、株式会社島津製作所を視察するとともに、同市内のホテルにおきまして、大阪通商産業局から管内の経済概況について説明を聴取いたしました。  株式会社島津製作所は、売上高のほぼ半分近くを計測機器で占めるメーカーでありますが、ハイテクノロジーを活用した医用機器のメーカーとしても注目されております。事業活動の概要説明を西八條社長より聴取した後、X線コンピューター断層装置や磁気共鳴イメージングシステム診断装置などの最新医用機器の開発状況を中心に視察いたしました。  大阪通商産業局管内の経済動向については、内需の好調に支えられ、全体としては回復の基調がうかがわれるが、円相場や米国景気の先行きに不透明感が強く、今後とも為替相場の安定や内需拡大策の継続等を求める声が強いとの説明を関局長より聴取いたしました。  第三日目は、午前中に滋賀県草津市にある立石電機株式会社草津事業所を、午後には兵庫県伊丹市にある住友電気工業株式会社伊丹製作所をそれぞれ視察いたしました。  立石電機株式会社は、早くからオートメーション機器の開発に取り組み、また身障者雇用にも力を入れていることでも知られる先端技術メーカーであります。同社草津事業所は、主力商品である制御機器を初め、情報システム商品、交通システム商品などの開発、設計、製作を行う事業所であります。立石会長より事業活動の概要を聴取した後、制御機器や情報システム商品の製作状況などを視察いたしました。  住友電気工業株式会社は、電線、ケーブルのトップメーカーである一方、技術開発によって多くの新分野に事業活動を広げつつあるメーカーであります。同社伊丹製作所は、同社の非電線部門の中心として新素材の研究開発などを行っている事業所であります。事業活動の概要を聴取した後、合成ダイヤモンドや化合物半導体として注目されるガリウム砒素などの製造工程を視察いたしました。  以上、日程に従って御報告申し上げてまいりましたが、ここで今回の調査を通じて感じましたことを若干申し上げたいと思います。  一つは、内需の堅調な伸びに支えられて、ちょうど一年前の円高不況のときから見れば、今回調査を行った地域については順調に景気が回復しつつあるということであります。もう一つは、円高に苦しみながらも、先端技術の開発に積極的に取り組み、さらに発展しようとする我が国産業のたくましい姿についてであります。  このまま順調に推移すれば、内需主導型経済構造の実現に明るい展望を見出すことができると思われます。  ただ、今回の視察の対象といたしました地域及び企業は、我が国産業の中枢に位置するもので、それだけに頼もしさを感じる反面、これまで本調査会が発足以来視察してまいりました北海道、中国、九州など構造不況にあえいでいた地域との格差に思いが至るわけであります。これらの地域におきましても、諸条件が整備され、国土の均衡ある発展が図られていくことを願う次第であります。  最後に、今回の調査に当たり御協力をいただきました現地の関係各位に厚く御礼申し上げます。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ありがとうございました。  以上で派遣委員の報告は終わりました。     ─────────────

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) 次に、本調査会は去る三月九日に自由討議を行いましたが、本日も前回に引 き続き経済構造調整とその抱える問題につきまして自由討議を行いたいと存じます。  御意見のある方は順次御発言をお願いいたします。浜本万三君。

浜本万三日本社会党・護憲共同

○浜本万三君 先ほど会長からお話しございましたように、当調査会は三月から設定されました課題につきまして自由討論が行われました。その御意見を伺っておりますと、一々もっともなお話ばかりでございまして、これにさらにつけ加えてお話しすることは蛇足に等しいと思うんでございますが、御指名でございますので、私の意見を述べさせていただきたいと思います。  私は、論点第一の「国民生活の充実に結びつくような内需主導型経済構造への転換をどのように実現するか」という問題につきまして、補足意見を若干申し上げたいと思います。この方策につきましては各委員の御意見でほぼ尽きておるようには思うのでございますが、その中で私が特に補足して強調したい点が若干ございますので、ただいまから申し上げたいと思います。  その第一は、昭和六十二年で九百六十五億ドルにも上る我が国の大幅な貿易収支黒字を国民生活の改善を図る方向に役立てることが必要であるということでございます。  我が国の貿易収支黒字は、最近ようやく減少に転じつつありますが、六十年五百六十億ドル、六十一年は九百二十八億ドル、そして六十二年が九百六十五億ドルとなっております。このような巨額な貿易収支黒字の背景には、鉄鋼、自動車、半導体など、特定品目の輸出急増という実態があることは否定できません。しかも、我が国輸出総額の六割弱が輸出額上位三十社によって輸出されておるという状況でございます。  したがって、これらの大企業が輸出によって獲得したこれまでの膨大な蓄積資金を公的に吸い上げまして、これを財源として国民生活の改善が図られるような方向で内需拡大策を実施するなど、何らかの形でこれらの大幅な貿易黒字を国民生活の改善に役立てる必要があるものと考えております。  第二は、国民生活の質的充実を図るためには、可処分所得の拡大が必要であります。これは言うまでもないことでございます。  我が国の時間当たりの賃金水準は、最近の経企庁の試算によりますと、購買力平価換算で日本の一〇〇に対しましてアメリカが一六六、西ドイツが一四一となっております。我が国の一人当たりのGNPがアメリカを抜きまして二位になったにもかかわらず、その実感がないというように、成長と生活実感との乖離が見られるわけであります。また、六十二年の家計調査報告によりますと、消費支出の面で自営業や自由業など一般世帯の伸びが大きい反面、勤労者世帯は伸び悩んでおります。個人消費の二極化現象が見られるわけでございます。  個人消費の拡大は景気拡大の重要な柱であることは申し上げるまでもございません。また、内需主導型経済構造への転換を図る上で重要な問題であることは、各委員の御意見の中にも多々あった点でございます。したがいまして、個人消費の拡大を図るためには、可処分所得の拡大がまずもって必要であろうと思います。それには、所得減税は言うに及ばず、生活水準の質的向上を可能とするような賃金の上昇が必要であると思います。特に賃上げは貿易収支黒字を国民生活の改善に役立てるという点からも重要なことであろうと思います。  第三の点は、労働時間の短縮問題であります。  労働時間の短縮は、ゆとりと潤いのある生活の質的充実を図る上で重要であるだけでなく、消費支出の増加による内需拡大にも大きく寄与するものであります。我が国の年間総実労働時間は、昭和三十五年の二千四百三十二時間をピークに減少を続けてまいりました。そして、昭和四十五年には二千二百三十九時間、昭和五十年には二千六十四時間と低下してまいりましたが、五十一年以降はほぼ横ばいで推移しております。そして、昭和六十一年には二千百二時間と、十年前に比べ逆にふえておるわけでございます。これを欧米主要国と比べてみますと、フランス、西ドイツが千六百時間台、アメリカ、イギリスが千九百時間台となっており、我が国の労働時間は著しく長い実情にあることがうかがえます。  このように欧米諸国より著しく長い我が国の労働時間は、対外経済摩擦の一要因であるとして諸外国からも早急な改善を求められておるところでございます。したがいまして、完全週休二日制や週四十時間労働制の早期実現、それから有給休暇の完全消化、さらに所定外労働時間の削減などを実現することが必要であろうかと思います。なお、その際、経済基盤の弱い中小企業に対しましては、時短促進のための助成措置が必要であろうかと存じます。  第四は、円高差益還元の問題でございます。  ことし一月の経企庁の試算によりますと、円高が始まりました昭和六十年十—十二月から六十二年の同期までの円高差益還元状況は六九・六%、約七割が還元されているとのことでございます。しかし、実感として国民各層が十分に円高メリットを享受しているとは言いがたい状況にあると思います。円高差益還元の徹底を図るためには、市場開放による製品輸入の拡大、並行輸入、個人輸入、開発輸入等、多様な輸入ルートの開拓が必要でございましょう。また、複雑な流通機構の整備、輸入品に関する消費者への情報提供体制の整備等を図ることも重要であると思います。特に農産物等政府関与物資につきましては、円高差益還元の先導役としての役割を果たすべきであろうと思います。  最後に、我が国輸出関連大企業の行動のあり方について若干触れたいと思います。  最近の大幅な貿易黒字の背景には特定業種の輸出急増という実態があることは既に指摘いたしました。これらの輸出関連大企業は、過剰とも言える輸出競争力によって獲得した余裕資金を内外の金融資産に運用し、果ては海外有力企業の買収やビル、土地の買い占めに走るなど、いわゆるその財テク行為は目に余るものがあるわけでございます。一方、国内にありましては、大規模な生産縮小や人員整理などによって労働者や中小企業は大きな負担を強いられております。このような形で企業収益の維持を図ろうとする企業行動は、企業のモラルからいたしましても問題があるのではないかと思います。本来、企業のモラルからすれば、輸出や財テクのみならず、企業経営によって生じた収益は何らかの形で国民に還元するのが当然であります。例えば豊かな国民生活を築くため、教育とか文化などの社会資本の整備に積極的に貢献する道もあると思います。そのような形で国民生活が少しでもよくなるような方向をとるべきであろうと思います。  以上が私の皆様の御意見に対する補足意見でございます。終わります。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ありがとうございました。  次に、小野明君。

小野明日本社会党・護憲共同

○小野明君 私は、論点二の「産業は今後どのように推移していくと展望するか」というテーマについて、若干補足して申し上げたいと存じます。  戦後四十年を経まして、我が国の産業は今日大きな転換期に差しかかっていると思われます。国内にあっては、生活の真の豊かさを求めて国民のニーズは高度化、多様化し、またエレクトロニクス、新素材、バイオ等、先端的分野における技術革新の進展、通信の規制緩和等による情報化の進展、あるいは高齢化社会の到来、さらに人口、諸機能の東京圏への一極集中傾向といった諸問題が我が国産業を取り巻いております。一方、国外にありましては、昭和六十年秋以降の急激な円高や貿易摩擦、そしてアジアNICSの追い上げ等の問題が我が国産業を変化させる要因として働いております。  このような内外の要因を背景といたしまして、我が国産業は今日構造調整過程にあるわけでありますが、その方向として国際協調型産業構造への転換が図られねばならないことは言うまでもありません。この結果、海外現地生産化や製品輸入が 一層進むことも予想されます。しかし、資源のない我が国にありましては一億二千万人の国民を養っていかなければならず、産業の空洞化を避けなければなりません。  労働省の雇用問題政策会議が昨年十一月に発表をいたしました「海外直接投資の増大に伴う雇用問題への対応の在り方について」と題する報告におきましても、今後、海外生産はさらに拡大するとともに、海外直接投資に伴う国内雇用への影響が増大していくことが懸念されると指摘されております。したがいまして、今後産業調整の進展や海外直接投資の拡大が予想される中で、我が国産業の空洞化を防ぎ雇用の確保を図るためには、地域経済の活性化を図る必要がございます。  そこで第一に、海外進出に当たっては、国内での雇用に影響をもたらすことのないように、海外進出による雇用問題は労使協議事項として事前に労使が十分に話し合うことができる場を設けることが必要であります。  第二に、地域経済の活性化を図り、地域における雇用機会を確保するために、生活の質を高めるような生活関連社会資本の整備、地域産業への投資を優先させることであります。  第三に、今後我が国の産業構造が欧米並みのサービス社会への色合いを一段と強めると見られる中で、第三次産業の振興も重要でありますが、それは知的サービス、レジャーといった面だけでなく、高齢化社会が進む中で飛躍的に増大すると見られる医療、保健、福祉サービスや生活環境サービスの整備充実を産業構造政策の重要な柱の一つにしていくことが必要であると思います。  第四に、今後、我が国産業は貿易摩擦やNICSの追い上げによって高付加価値化や先端技術分野へとシフトしていかなければなりません。それには新しい産業分野を開拓するため、基礎的研究開発の充実強化を図ることが重要であります。  第五に、従来、地域振興としての工場誘致策は、特に加工組み立て型産業にあっては、海外現地生産との関係もこれあり、これまでのような効果が期待できるとは思えません。したがって、地域に立地する地場産業の活性化によって地域振興を図ることも重要であります。そのためには、特に中小企業が必要としている人材、技術、情報などの充実に重点を置いた政策を進める必要があると思います。  最後に、我が国産業が以上のような方向に円滑な構造転換を図るためには、為替相場の安定、持続的な内需拡大策が必要であることをつけ加えまして私の補足意見といたします。  以上であります。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ありがとうございました。  次に、及川一夫君。

及川一夫日本社会党・護憲共同

○及川一夫君 前回意見を表明いたしました立場に立ちまして、さらには各委員の方々の御意見が調査室を通しまして問題が整理をされているものを拝見をしながら、これからどうこの問題が発展をしていくかという点で考えますと、これまでの議論に対する認識の一致というのが重要ではなかろうかというふうに考えまして、若干補足意見を含めまして私の認識について申し上げてみたいというふうに思います。  まず、論点一の問題について各意見の共通している点というのは何だろうかなということを整理をいたしてみました。  その一つは、まずもって国民生活に豊かさの実感がないという点が共通しているというふうに言えますし、二つ目としては、内需主導型経済への転換が大前提である、こうおっしゃっている点が共通点であろうというふうに思うのであります。とりわけこの問題については、これからの日本の経済にとって安定成長のためにも、さらには国民生活充実のためにも必要であるということが各論者から強調されているというふうに私は認識をいたしました。  三番目には、その手段ということを意識いたしまして言われている点が社会資本の充実ということを強調されているのであります。もちろん事業内容とかあるいはそのアクセントの置き方については、論者によってやや異なるものもないとは言いませんけれども、おおむね全体的に社会資本の充実ということを強調されているように思うのであります。そして、その具体的な内容として指摘されているのが住宅建設の問題、リゾート開発の問題、交通体系の整備の問題、情報ネットワークの整備にかかわる問題、下水道、道路整備などについて共通した政治課題として受けとめているというふうに私は認識をいたしました。  さらに第四点目としては、円高差益の還元を徹底させるということについても共通しているというふうに認識をいたしているところであります。もちろんこの円高差益の問題については、御意見を伺っておりますと、効果が上がっているということをずばり認める意見と、効果が上がりつつあるということを肯定しながらも不十分と、こういうふうに断定されている御意見もありまして、共通して言えることは、いずれにしても差益の還元については一層促進を図っていかなければいけないという点は確実に共通した認識として主張されているというふうに受けとめたところでございます。  さらに五点目としては、経済転換のためには、国民生活の不安解消、環境整備、こういったものを意識しなければならない。とりわけ制度的な措置が必要であるということで、土地対策の問題などを例に出しながら問題の指摘をされているということと、法改正あるいは法律の新設などには関係はございませんが、国民運動的なものといいましょうか、政治の具体的な展開という点で出ているのが、一つには生活に対する国民の意識の改革という運動を起こしていく必要があるのではないか、あるいはまた研究機関の地方分散なども指摘をされておりますし、さらには国内での需要があると思われる物財について生産の促進というものを図っていくべきではないか、こういったことも経済転換のための具体的な解消策として提起されている点も違和感なく共通認識として受けとめることができるなというふうに思いました。  論点一の最後として、消費拡大策のためにということで、一つには時間短縮の問題とか、減税とか、あるいは高齢者の雇用問題、不況業種対策というものについてきめ細かな対策が必要であるというふうに言われているように認識しているところであります。  さらに論点二について見ますと、ほとんどの方方が産業の空洞化というものを指摘をされて、また懸念をしておられるというふうに受けとめているところであります。この問題については、先ほどからも御意見が出ておりますように、国際収支の問題、貿易収支の不均衡、こういった例を挙げながら御発表されておりますし、結論として、空洞化という意味じゃなしに、産業の外国への移動、この問題についてはある程度やむを得ないという点についてはどうも共通認識があるようですが、今後ということになりますと、一層進展さしていいのかどうか、あるいは進展するのかどうかという点では、進展をするであろうという物の見方と、そろそろ歯どめがかかるのではないか、かかってきたのではないか、こういう御意見が出ているわけでありまして、この点はもう少し突っ込んだ論議というものが必要ではないのかなというふうに感じたところであります。  とりわけ空洞化の問題では、現実の問題としてアメリカにおいて空洞化が起きている。その結果はいかにということになると、言わずとももう明確なように、アメリカの経済、産業に大変大きな影響をもたらしているわけですから、あのような実態にしてはいけないということはどなたでも共通認識として持つことができるだろう。こう考えますと、空洞化という問題に対しては、その限界値というものをはかりながら、やはり政治的な面で一定の歯どめ策というか、あるいは企業の外国への進出の問題に対する政策というか、そういうものを樹立をしていかないと、振り返ってみたら大変な事態になっている。とりわけ空洞化問題は中小企業の仕事というもの、産業というものを直撃すると、こう考えれば考えるほど、この辺の問題 に対する対応というのが必要ではないのだろうかというふうに受けとめたところであります。  さらに二番目としては、海外進出、それによってもたらされる空洞化、大中企業にかかわらず、雇用問題ということでは共通した認識として指摘をされておりますし、そのために不況業種あるいは海外進出産業分野、特定地域への政策的な配慮、中高年に対する雇用、職転等に伴う能力開発政策の促進という点が共通して政策的な面として提案をされていることを興味深く私は受けとめたところでございます。  さらに三点目として、我が国経済の転換に伴うアジア諸国との関係、国際関係というふうに受けとめてもよろしいかと存じますが、すべての方々が言及されているというふうに思います。ただ、それぞれニュアンスの差があることは立っている立場の問題もありやむを得ないというふうに思うわけでありますが、いずれにしても、アジアを含めた日本の産業、経済、こういう視点から、例えば高付加価値産業については我が国が受け持ち、従来の工業生産、第一次産業に依存する問題についてはアジアでの水平分業ということを意識されながらの見解の表明もありましたし、同時にまた、食糧、生活必需品の自給率を高めることによって、国際的な立場での日本の役割、アジア地域の諸国の役割というものを位置づけていくような発想で物を考えるべきではないかという問題の提起もあったわけですが、この辺に対する論議はやや少し不足をしているのじゃないか、もう少し突っ込んだ論議が必要ではなかろうかというような気持ちで受けとめたところでございます。  大体こういった内容がそれぞれ提起されているわけでありまして、こういう認識に立って、しからばどのように議論を発展さしてまとめていくかというのが今後の課題になるのではないかという立場から、この調査会の議題の設け方についてさらに一考すべきではなかろうかということを意識していることを補足して申し上げまして、私の意見にかえるところであります。  以上でございます。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) どうもありがとうございました。  山東昭子君。

山東昭子自由民主党

○山東昭子君 私は、これからの婦人労働のあり方についてちょっと意見を申し述べさせていただきたいと思います。  最近の我が国経済の構造変化に伴いまして、女子の労働者は増加の一途をたどっております。総務庁の「雇用者数の推移」、この調査によりますと、昭和五十年から六十二年までの間に男子が年率一・一%の三百三十四万人という、こういうふうな数で上昇したのに比較いたしまして、女子は四百四十八万人と二・七%も上昇しているわけでございます。今後においても、就業形態の多様化、就業意欲の増大等に加えまして、昭和六十一年四月に施行されました男女雇用機会均等法の浸透に伴って、女子の職場進出はサービス産業、情報産業あるいは専門的、技術的職業分野で一段と活発化していくものと見られるわけでございます。  ちなみに女子雇用者の多い産業を見てみますと、昨年度なども卸売・小売業、飲食店、金融保険業、不動産業では五百三十九万人、サービス業では四百九十三万人、合計いたしますと一千三十二万人ということで、女子雇用者のうち六三・九%にも上っております。こういう産業がどんどんふえてまいりました。また、専門的、技術的職種で女子の雇用者の増加が非常に著しいということ、特に情報処理技術者、電算機等操作員あるいは職業スポーツ家などが目立ちまして、ME化の進展に伴う女子の進出、また健康ブームによるスポーツ熱の興隆の反映というものがうかがえるわけでございます。  男女雇用機会均等法の施行を契機といたしまして、大企業を中心に数多くの企業において法の要請に沿った形で女子雇用管理の改善が進んできておりますけれども、会社の規模によって難しい問題もいろいろあるようでございます。今後ともなお一層法の趣旨の浸透を図り、雇用の各段階において名実ともに男女の均等な機会と待遇の確保を図ることにより、女子の労働者がその能力を有効に発揮し、充実した職業生活を営むことができるようにしていくことが重要な課題となっていくわけでございます。  これまでのところ、募集、定年など制度面を中心に改善が進んではきましたが、今後次第に配置、昇進、教育訓練など在職者の処遇面が最大の課題となるものと考えられ、企業の対応もいろいろ工夫を要するようになってくるのではないかと思います。このため、企業に対しては女子の意欲と能力を十分に発揮できるような環境づくりを促し、行政も必要な指導、援助を行っていく必要があると思います。さらに女子の就業に対する社会一般の意識、特に男性の意識を変えていく必要があると思います。  女性のライフサイクルの変化に伴いまして、女性の生涯における職業生活の重要性が高まってきております。女性の働き方も多様化してきており、出産・育児期においても職業生活を継続することを希望する者、育児期には職業生活を中断して子供の成長の段階に応じて再就業を望む者などが増加しております。こうした女子の育児期におけるそれぞれの就業ニーズに対応し得るよう多様な保育需要に応じた施策の推進とともに、育児休業制度あるいは女子再雇用制度の普及促進など、育児期における条件整備の充実が必要となってくるのではないかと思います。  そして私は、これからは企業内で女子社員と企業の幹部というものがもっと本当に胸襟を開いて話し合って、一体どのような形で仕事を続けていくのかという、そうした姿勢というものをもっとフランクに話し合う必要があるのではないかと思います。私はとにかく残業があっても、あるいはどこに地方転勤になってもいいんだという女性と、私自身は夕方五時まで働いてそれ以後は自分たちの時間を大切にしたいと考えている女性というもの、そういうものを女子の労働者というような同じ形でとらえることはちょっと私は疑問視しております。これは男性でも最近はいろいろな企業によって、それほど出世をしなくてもいいから家庭生活を大切にしたい、単身赴任などはしたくないというような人たちがむしろ好んで同じポストにずっといるというようなケースもあるようでございますし、特に女性の場合には、企業側も大体このくらいでやめていくんだろうというようなあいまいな基準ですべて判断をしているということ、女性側もどうせ私たちは一生懸命やっても昇進できないんじゃないかというような形で、何となくお互いに探り合いというようなケースが余りにも多いような気がいたします。これからは、そういう意味で、本当に意欲のある人にはそうした就業意欲というものを高めるための研修であるとか、そういったものをもっともっと増大をさせていく必要があろうかと思います。  また、我々女性にとって外国の女性の職場環境というものが大変興味深いわけでございますけれども、特にアメリカなどに参りまして、私が昭和五十九年に男女雇用平等委員会の幹部の人たちと懇談をしたときでございますけれども、我々はとにかく子供を産んでも二週間で職場に復帰しなければならない。なかなか厳しいけれども、非常にやりがいがあるから頑張っている。しかし最近は、いわゆる企業でもパイが一つだから男性の給料も女性の職場進出によって頭打ちになってきている。ですから、夫婦がともに働いても家庭内における収入が倍になるということはなくなってきていると、そういうことを言っておりました。それからアメリカでは、御承知のように、非常に離婚が多いというような関係から、我々はばりばり仕事をしてきたために非常に女性がマイペースになってきている。そのために何か夫との間に摩擦が起きたときにはもうすぐ夫と別れるというようなことで、家庭ということあるいは子供ということ、そういうことを余り今まで考えずに過ごしてきたように思う。今私たちは非常にその点を反省しているところである。やはり本当に子供たちの 教育あるいは夫との間、そういうものをもう少し我々は大切にしていくべきではないか。そういうことで、日本の女性は大変貞淑でいろんな意味ですばらしい人が多いと聞いているので、やはり我我の生き方というものを余り見習わずに大切に生きていってほしいというようなことを言われました。  最近では女性の持ち味を尊重するいろいろな企業がふえてまいりました。そういう意味では女性にとってすばらしい環境にはなってまいりました。しかし、企業と労働者というもの、これはあくまでも人と人とのつながりであるわけですから、やはり本当の意味で思いやりとか、あるいはまたその背景には家庭というものがあるわけでございます。本当に婦人労働者というものが自分自身に意欲を持って、張りを持って仕事をしていく。そして、それと同時にやはり安らぎのある社会環境あるいは家庭環境というものをつくっていくために、これは女性自身はもちろんでございますけれども、男性も一緒にこうしたいろんな婦人労働についてのあり方というものもなお一層御研究いただいて、また思いやりを持ってお考えをいただくことを期待をいたしまして、この辺で私の意見を終わらせていただきたいと思います。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ありがとうございました。  次に、沢田一精君。

沢田一精自由民主党

○沢田一精君 お許しをいただきまして、若干私の意見を述べさせていただきたいと思います。  できるだけ具体的に問題を提起いたしたいと思いますので、よろしく御理解のほどをいただきたいと思います。  御承知のように、我が国経済は内需主導型のもとに順調な発展を続けておりますことはまことに喜ばしいことであると存じます。六十二年度の経済成長率も三・七%の予測を突破することは確実であろうと思われますが、当分の間引き続き公共投資を中心とした内需主導型の積極予算を組むことが絶対に必要であるというふうに考えるわけであります。  ただしかし、さきの派遣委員の報告でも最後に触れましたように、国土の均衡ある発展を唱えながら、地域によって極めて大きなアンバランスが進行しつつあることはまことに遺憾でございまして、急速に発展しつつある地域がある反面、北海道、九州等ますます格差が増大する傾向にあることを指摘しなければならぬと思うわけであります。そこで、公共投資の配分、新規プロジェクトの採択に当たっては十二分にこの点を配慮し、おくれている地域についても傾斜配分を図るなど、十分留意すべきであろうと存じます。  新しい経済五カ年計画、これは六十三年度から六十七年度についての経済五カ年計画を審議しておる経済審議会の地域・産業部会報告というのが四月六日に新聞等で明らかになったようでございますが、その大きな柱は、東京一極集中を排除して関西、中京圏を充実させ、東京への対抗圏として育成していく必要があるというふうに触れられておるわけでございます。そのことは十分わかるわけでございますが、単に関西、中京圏を充実、発展させて東京一極集中を排除するという考え方でなしに、あくまでも国土の均衡ある発展ということにこの際留意すべきであろうと、私はこう考えるわけでございます。  今申し上げましたように、これから当分の間公共投資を中心とした内需主導型でいくといたしまして、その予算の傾斜的な配分をおくれておる地域に図ると同時に、例えば先端技術産業に関する各種の試験研究機関等も適当に地方への分散を図るべきではなかろうかと考える次第であります。  そのような観点から、特に次の三点について具体的に提案をいたしたいと存じます。  その第一は、四全総を初め各種の地方分散のための地域活性化のための法律がメジロ押しに存在いたしておりますが、各省ばらばらで、地方はそれらの対応に振り回され、その割には今日まで一向に実効が伴っていないという感が否めないわけでございます。政府は国土の均衡ある発展を図るために、これらの地方活性化のための、地方分散のためのいろいろな地域立法というものを総合的に整理をして強力に推進していただきたいと思います。  その二は、地方の活性化を図るためには、何と申しましても地方財政の確立を図るべきであることはもちろんでございますが、現在の地方自治体の財政状況を見てみますると、非常なアンバランスが現出いたしておるようであります。地方財政の健全化、地方財政の確立という言葉を言われて久しいわけでございますが、現行は富裕団体とそうでない団体との格差がますます開きつつあるという感じがいたします。そういう点を是正するために、単に現行の地方交付税制度に基づく交付団体と不交付団体という概念を超えて、各自治体の財政の一層の健全化、均衡化を図る方策を検討すべきであろうと存じます。  第三番目は、せっかく内需拡大のための公共投資主導型の予算が継続するとされましても、地方における主要な事業の執行がほとんど一部大企業の手によって執行される状況にあることは遺憾であります。地方の経済の刺激となり、雇用の確保に役立つために、各省が実施する主要な事業の実施に当たっては、可能な限り、それぞれの地方の地元業者に任せ、地方に住む人々がみんなそのプロジェクトの実現に参画するという方策を講ずべきであろうと存じます。このことによってぜひ地方の活性化を図りたいと考える次第であります。  次に、産業構造の変化を予測いたします場合、また高齢化社会への推移等日本社会の変化と人々の欲求の変化を考えます場合に、生活環境の良好な保全及びレジャーやレクリエーション等の需要が必ず増大すると思われるわけでございますが、そのためには、まず何よりも我が国の豊かな自然環境を保全することが大切であろうと存じます。  そのための一つの提言でありますが、私は現行国有林行政の変革が必要であると考えます。現在までもそのためにいろいろな努力が払われておるようでございますが、要は今まで続いております国有林特別会計制度を改めて、会計の赤字を埋めるために国民の貴重な財産である国有林を切らねばならないということでなしに、国有林経営についての必要予算は一般会計で賄い、当分の間国有林の伐採は中止するという方向転換が必要であると提言をいたしたいと思うわけであります。木を切り、山を荒らすことが災害の原因となることを銘記すべきであろうと存じます。  以上、幾つかの具体的な御提案を申し上げましたが、ぜひひとつ今後の課題として御検討いただきたい、お願いをいたします。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ありがとうございました。  次に、馬場富君。

馬場富公明党・国民会議

○馬場富君 先般もこれにつきましては二点についての意味を述べましたけれども、補足の意味で一、二点申し上げておきたいと思います。  特に内需型経済構造の転換の第一点の論議の問題でございますが、この前の視察を通しましても、また現状から推しましても、異常な円高下にあって大きい貿易赤字に悩むアメリカと貿易黒字に悩む日本とのこういう関係、そしてこれを取り巻くECやあるいは諸外国との関係等を推しましても、今世界の経済というのは日本とアメリカを中心に大きく動きつつあるし、変化しつつある、他はこれを見ておるというような感じの実は流れになってきております。  そういう中で、先般私アメリカを視察いたしまして、アメリカから見た日本というものをずっと考えてみたときに、貿易黒字で非常に豊かで今までにないようなすばらしい日本だという総理の言葉も出ていましたけれども、アメリカに行って日本を眺めてみますと、大変それは実感的に違いまして、黒字はあるけれども、国民生活のいずれの場所にその豊かさが増しておるかという問題点、そして赤字は重なっておるけれども、国民生活の中に豊かさを持っておるアメリカの生活とあわせて見て、さきにもちょっと申しましたが、アメリカと日本を取り巻く経済状況を眺めてみたときに、損益計算書では明らかに日本は黒字である。豊かそうに見えます。だが、貸借対照表の財産価 値からいきますと、もう莫大な資産と現在あの赤字の中でなお備蓄を行いつつも維持しておるあの国民生活のすごさというものを考えてみたときに、やはり日本は貧乏だなということをしみじみ感ずるわけです。だから、これはいずこに問題があるかというところに私たちは着目しながら、この内需主導型構造転換が国民生活にもたらす影響というもの、そこらあたりからじっと見詰めて私たちは政策転換を考えていかなきゃ大きい誤りを犯すんではないかということです。円高については、先般予算委員会で私は総理や外務大臣にお尋ねをいたしましたが、日銀総裁も非常に強気のことをおっしゃっていましたが、専門家から言わせれば、円高については真っ暗な前途だというのがほとんどの意見であります。また、アメリカに行ってみましても実感でそういうものを感じます。  その要点はどういうところにあるかと申しますと、十年前にアメリカに行ったときには、アメリカの人たちは日本の品物を安いから買うという傾向でした。ところが、昨年私が円高調査に行きましたときに、今の品物はいいから買うという、十年の間にこれほど大きく変わってきております。そういう状況からしますと、それと対抗してアメリカ人の中にかつての開拓精神のように、日本経済に対抗して頑張ろうという、そういう競争意識が非常に薄らいできておる。そういう点で、この円高はなお百円以下を割るような状況まで突っ込んでくるんではないかというような長期化のことが予想されますけれども、そういう長期化を私たちは考えに置きながら、実際内需主導型というのは、一時公共事業をふやす、そういうことによって景気をあおっていくというだけの問題ではなくて、やはり本質からこの円高の問題は将来とも続く。こういう中で日本の経済にあるいは国民生活にこの問題をどう結びつけていくかということを基本的に考えていかなきゃいかぬ問題である。ヨーロッパ諸国は大変悪いような状況に見えますけれども、彼らは彼らなりに自立経済ということを中心にした大変強い基盤に乗った経済情勢を持っています。だが、日本はどういったって資源のない国ですから、輸入して物をつくって輸出していくという、そういう依存型のどうしても経済基盤に立たざるを得ぬ宿命を持っています。ここにこれからの国民生活にもたらす内需主導型の経済のあり方というものを私たちは真剣に考えていかなきゃいかぬ。またそういう論点から、国民生活はどうとらえるべきか、また内需主導にどう転換していくべきかということは、そういう物の考え方を基本にした取り組み方でなければならない。具体的な問題についてはこの前言い尽くしましたから申し上げませんが、以上のような状況を一つは基本的な認識として強く持って政策転換に当たっていかなきゃならぬといったことを現在強く自覚するものであります。  それから、産業は今後どのような転換をするかというこの意見の中で、一つは先回自民党の福田先生も御紹介されましたいわゆる新前川レポートが示しております将来ビジョンでございますけれども、レポートでは近年の産業構造の変化に対応して、従来の一次産業、二次産業、三次産業という分類にかえて物財生産部門、ネットワーク部門、知識・サービス生産部門という三分類による産業構造の変化をとらえていこうというところが一つは提起されておるわけでありますが、物財生産部門とは従来の一次産業と第二次産業とを統合したものだ、こういうふうに考えていいんじゃないか。それから、ネットワーク部門と知識・サービス生産部門については三次産業を分割したものである、このように私は分類していいんじゃないか。それから、新前川レポートでは西暦二〇〇〇年の我が国の産業構造の姿を描いておりますけれども、それによりますと、名目GDP構成比が物財生産部門では一九八五年の四一・四%から二〇〇〇年には三六・七%へと低下し、ネットワーク部門では三三・二%から三一・七%へとほぼ横ばい、知識・サービス生産部門については二六・四%から三一・五%へと上昇すると推定されておりますが、すなわち二〇〇〇年時点での付加価値生産額を見ると、三部門がおおむね三分の一ずつ占めるものと見込まれるわけであります。  この新前川レポートが示されておる将来ビジョンについては幾つかの私は留意すべき点があると考えております。確かに産業構造の成熟しておる第一次産業のウエートが小さくなり、他方第三次産業が拡大していく傾向にあることはこれは否定できませんが、この将来ビジョンで示される数字そのものの妥当性については、ここでいろんな懸念があるんではないか。  その主なものは、次に申しますように、経済がソフト化、サービス化する中で知識・サービス生産部門は自然に拡大していくと考えられます。だが、ネットワーク部門についても、シェアが多少減少することはあっても、確実に成長が期待できる部門であります。だから、この両部門については政策的配慮はそれほど要らないと思いますが、問題は物財生産部門であります。これについては、ほうっておくと、将来ビジョンで示されたよりももっともっと急激に縮小していく危険性があることを考えなければなりません。  我が国は、一九八五年九月のプラザ合意以来、わずか二年間の間に二倍近い水準の円高になるという未曾有の経験をしております。そして、基軸通貨であるドルに対してこれだけ短期間にかつ急激に円が切り上がったことは、国内の既存の価格体系を根底から覆す実は大きな問題であるというふうに私たちは見なきゃなりませんし、またこれが長期化すると見なきゃならぬと思います。単純計算でも従来の価格の半値で外国から物が買えることになったわけでありますから、外国産品の価格との比較から、国内産品に対して厳しい目が向けられることもある意味で当然のことである、こう考えます。円高基調が逆転するということが想像しにくい現在、いわゆる我が国の物財生産部門は円高というハンディキャップをずっと背負って立っていかなきゃならぬという、そういう窮地に落とし込まれるわけでありますし、またこれは長期化すると考えるわけであります。  物財生産部門のうちでも、製造業については前回私は指摘しましたが、海外直接投資や製品輸入の拡大によって産業の空洞化が懸念されますが、現在までのところ内需の拡大、伸びによってこれは補われておりますし、円高不況を克服していっておるというふうに私たちは見ていいと思います。問題は、これからこの物財生産部門の中でも、特に私たちが製造業以上に深刻に問題を考えていかなきゃならないのは我が国農業の問題であります。円高下において最も厳しい環境に置かれているのが農業だと考えなきゃならぬと思います。現在、アメリカから牛肉、オレンジが開放を強く迫られて大きな問題となってきておりますが、我が国農業の基幹である米の問題も含めて、我が国農業のあり方を早急に検討すべきときが来ておるというふうに考えるわけであります。土地の高騰等の影響によって補われたりしておりますけれども、本業の農業そのものについては、甚だ将来的には寂しい状況にあるというのが我が国農業のあり方ではないかと思います。そういう点で、国際価格の比較から論じまして大変危険性を持つこの農業についても特に視点を置かなきゃなりませんし、我が国の産業構造においてのこの物財生産部門に占めるウエートが急激に縮小するというおそれがこれから起こってくるのでありますので、こういう点についてもやはり目を向けた考え方を持たなきゃならぬという意見をつけ加えさせていただきます。  以上です。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ありがとうございました。  神谷信之助君。

神谷信之助日本共産党

○神谷信之助君 前回の見解表明における皆さんの御意見を興味深く聞き、教えられる点が非常に多くありました。その上で若干の私見を述べたいと思います。  今、国際化日本が喧伝をされています。確かに円高ドル安は日本経済に深刻な影響をもたらしていますし、また日本経済の動向は世界経済に大きな影響を与えます。そして、何よりも国民生活の 向上を目指す上で等閑視できない問題であります。したがって、国際収支の不均衡は是正されるのか、ドル不安はなくなったのかという問題は重要であります。したがって、まずその点を取り上げたいと思うのです。  ある委員は、貿易黒字の解消のためには為替レートの調整のみでは限界があるとして、アメリカ経済の構造調整の問題を挙げておられます。また、ある委員は、為替の安定問題について、原因である双子の赤字の是正をアメリカに真剣に対応させるよう要請すべきであると述べておられます。これらの意見は私の主張と同じであります。  そこで、この問題について若干掘り下げて私見を述べたいと思います。  一つは、アメリカの財政政策についてであります。一般に、基軸通貨国でなければ、国際収支の赤字が生ずれば、その解消は至上命令となり、いや応なしに経済の引き締め政策をとらざるを得ません。ところが、赤字になっても借り入れを必要としない基軸通貨国の特権を利用して、七九年から八二年にかけてのインフレ対策を強化した一時期を除いては、アメリカは緊縮政策をとりませんでした。逆にドル高、高金利政策をとり、膨大な双子の赤字を出しながら放漫政策を改めず、そして日本あるいは西独への協力を強要することで貿易収支の改善を図ろうとしたのが八五年秋のG5であったと言えます。  今、アメリカは、インフレの阻止と国債投資確保のための引き締め政策と、それから株価対策としての緩和政策とのバランスをとるという綱渡りを演じざるを得ません。この政策の不安定性がドル不安の温床となり、ドル不安と株暴落の悪循環の再燃の火種となっていると言えます。  もしアメリカが膨大な軍事費を中心に財政支出の削減を図るなら、それは日米経済にどんな影響をもたらすでしょうか。経企庁経済研究所が先般、三月十五日から十七日まで開催した第四回国際シンポジウムのまとめは次のように指摘をしています。  アメリカが財政赤字を九二年までに七百五十億ドル減らすと、米国の経常赤字は四百六十億ドル縮小し、日本の経常黒字も二百九十億ドル減るという大きな不均衡是正効果があり、この間円高ドル安の進行はわずかにとどまり、経企庁は、不均衡是正は為替レート調整ではなく、アメリカの財政赤字削減によるべきだと見ています。  もう一つは、世界経済の不安定性の問題です。  世界の中の日米関係という場合の世界というのはパクスアメリカーナということですが、それは七〇年代に破綻をし、いろいろ立て直しの手を尽くしましたが、基本的には変わらず、だんだん悪くなってきています。そして、その新しい局面の一つとして基軸通貨ドルの信認が問われるに至ったという問題、もう一つは、世界経済の不安定性の拡大、すなわちアメリカが最大の債務国となった今、一兆ドルの累積債務を抱えるラテンアメリカあるいは一部のアジアNICSへの救援問題一つをとってみても、日本はアメリカの要求に進んで協力はいたしますが、EC諸国は独自性を保とうとし、必ずしも全面協力に応じないという状況が生まれていることに世界経済の不安定化があらわれています。  以上、二つの側面から検討いたしましたが、ドル安円高不安は依然続くし、国際収支の不均衡の是正というものはアメリカの財政経済政策の転換以外にはないと言うことができると思います。  次の問題は、皆さんが率直に指摘されなかった対米交渉における政府の姿勢の問題であります。  日本の常識では考えられない民間事業へのアメリカ企業参入の保証まで米政府に強要されて受け入れるという建設交渉。また、みずからはさまざまな農産物の輸入制限をしながら、世界一の食糧輸入国日本に対して市場閉鎖的などというアメリカの攻撃に屈服をして、さきには十品目の自由化を受け入れ、今度の牛肉、オレンジについても基本的には自由化を容認するという農産物交渉。あるいは田村通産大臣も、このような制裁条項の挿入は他国の主体性を無視し、極めて遺憾である、親会社をも制裁の対象とするのは法律秩序にもとるという談話を発表せざるを得ない東芝制裁問題。さらには、自由な交流によってこそ発展が保障される科学技術について、米側主導、軍事優先及びアメリカの要求で「安全保障」の字句を入れた秘密主義の持ち込み、そして、費用は日本持ち、成果はアメリカになりかねない日米科学技術協力協定改定問題など、挙げれば枚挙にいとまがないのであります。すなわち、アメリカはみずからの意思と要求を日本に押しつけるためには、日本の主権のじゅうりんも内政干渉もいとわない、五十一番目の州とみなしていると言わざるを得ません。  アメリカのこうした傍若無人とも言うべき態度は、歴代自民党政府が日米安保条約、日米軍事同盟のもとでアメリカに屈服してきた政治姿勢にこそその根源があります。事実、竹下首相も一月の日米首脳会談で、西側の一員としてレーガン大統領を強力に支援する決意を公式に表明し、農産物、建設市場の開放、日米科学技術協力協定改定など懸案事項についてアメリカの要求にこたえることを約束しています。これは単に私だけが言っているのではありません。三月十八日付の朝日新聞によりますと、「建設交渉で米側が強気に転じたのは昨春の首脳会談での中曽根前首相の譲歩がきっかけだし、牛肉・オレンジ輸入自由化で米側が強硬なのは一月の首脳会談での竹下首相の妥協的態度が原因、と政府部内では受け取られている。」と報道しています。また、先般の国会論戦でも自民党のある議員は、おどかせば幾らでも言うことを聞くと思われる態度はよくないと批判せざるを得なかったこともつけ加えておきたいと思います。  次に、経済は国民生活の水準を高めるためにある、世界最大の債権国、この経済力で国民生活に豊かさを、そして、国民生活水準向上の第一は住宅と生活環境と主張され、いわゆる社会資本の充実とか国民生活密着型公共投資が必要と語られた委員も何人かおられました。そして、個人消費の拡大、可処分所得の増加、人間らしい生活へ労働時間の短縮と余暇時間の拡大、これらが述べられ、空洞化の懸念と雇用政策の重要性など、ほとんどの委員が指摘をされております。  これらの意見について私も全く同感であります。問題は、これらがなぜできないのか、どうすれば実現できるのかという問題であります。私は基本的に次の二点を提起をいたします。  第一に、対米従属の関係を断ち切ること、日米軍事同盟をやめて、非核、非同盟、中立の日本として経済的自立を打ち立てることであります。このことは前回の見解でも、また今回もさきに触れましたので省略をいたします。  第二は、円高と構造調整をてこに大企業の本格的な多国籍企業化が進行しておりますが、これに対して民主的規制を行うことであります。これについても前回の見解で触れましたが、若干の補足を行いたいと思います。  この見地は、今や大企業は、国民生活や世界経済を左右する社会的存在となっているときに、世の中がどうなろうと企業利益さえ上げればよいということは許されない社会的責任が問われているという点であります。  三月一日付日経は、海外直接投資が、不動産、現地法人向けが急増し、一月には三十億ドルを超え、二月もこの動きが続くと報道しています。そして本格的な多国籍企業化の進行を伝えています。テレビでもホンダ車の製品逆輸入の開始を放映いたしましたが、アメリカからの自動車、家電など、あるいはNICS、ASEANなどアジア諸国の逆輸入の急増も報道されています。また、日本機械輸入協会によりますと、八七年の機械製品の輸入は前年比三割増の百九十一億ドル強と過去最高の前年を大幅に更新しています。特にNICS製品は五割以上の高い伸びと言われています。  その一方で、産業の空洞化現象は着実に進行し、生活不安は徐々に厳しくなっています。前回私が引用いたしました労働省の雇用動向調査の八 七年十二月発表では、経営上の都合、すなわち事実上の解雇が八七年一月から六月期の半年で二十一万三千百人、前年比三一・二%増とさらに急増しております。  また、最近の経企庁が試算した賃金水準では、韓国は日本の七分の一、台湾は四分の一と言います。先ほども引用されましたが、購買力平価で比較をいたしますと、八七年換算で日本の賃金を一〇〇といたしますと、アメリカは一六六、西独一四一、イギリス一一六となり、世界一の債権国となっても、国民の生活水準は依然として欧米諸国より低いのであります。にもかかわらず、アジア諸国の低賃金コストを目標とした大企業の人減らし合理化、下請企業への犠牲の強制は強まっています。この点については、前回、鉄鋼の例や中小企業の現状に触れましたので省略をいたします。  このような現状から、各委員が、そして本日も先ほどお述べになりましたが、生活水準の向上やあるいは可処分所得の拡大などを指摘されたのは当然であります。この各委員の指摘された課題を実現していく上で、私は、大企業の海外進出の現状から見て、本日も先ほど同僚委員が雇用問題について触れられましたところですが、民主的規制が必要だと考えます。この内容につきましては、前回述べましたので省略をいたします。  ここで一言触れておきたいのは、我が国の景気回復は果たして堅調かという問題であります。緊急経済政策の実施により景気回復に向かっていると指摘する意見も多くの委員から述べられたからであります。  労働省の六十二年度賃金構造基本統計調査結果速報が三月二十九日に発表されましたが、それによりますと、男子労働者の月額平均賃金は前年比一・八%の伸び、女子も前年比二・七%の伸びにすぎず、過去最低となっています。  また、所得と消費の格差が拡大していることを示しているのに総務庁の八七年の家計調査報告があります。それによりますと、所得の低い第一分位と高い第五分位の比率は、六十一年の二・八七倍から二・八九倍と拡大、また、消費支出の第一分位と第五分位の比率も六十一年の二・二〇倍から二・二四倍へと拡大しています。そして第五分位の消費支出は実収入の伸びを上回ってふえています。一方、勤労者世帯、とりわけ第一、第二分位では、住居費、教育費、家賃地代、ローン返済などの負担が重くのしかかっていることを示しています。  今日の景気回復を進めた大企業の急回復は、このような低賃金構造と所得・消費の格差の拡大、さらに下請中小企業の倒産、休廃業などに支えられているのであります。したがって、これらの状況は景気の先行きに大きな不安を示すものではないでしょうか。  次に、生活密着型公共事業の推進の問題であります。  今日、公共事業は、東京湾横断道路や関西国際空港、伊勢湾岸道路等の大型プロジェクト事業が優先されており、米企業の参入によりこれが一層促進されるでありましょう。このため、生活密着型公共事業は後景に追いやられるであろうことは、数次の道路建設計画で生活道路が軽視されてきた歴史的事実からも明らかでありましょう。ここに大企業優先の政策の転換の必要性があります。  また、内需拡大の柱として多くの委員が指摘された住宅問題であります。異常な土地高騰を許した根源にメスを入れることが何よりも必要であります。中曽根前総理の東京西戸山再開発や、元国鉄の用地売却、国際情報都市とか金融都市とかいう仮需要宣伝と土地投機の野放しなど、政府の責任に帰する点が大きいことを指摘しなければなりません。  これらの点を考えれば、金融、不動産業界などへの民主的規制が必要であると同時に、寄生的利益に対する課税の強化や大企業優遇税制の廃止で大企業に蓄積された膨大な利益を国民生活の安定、真の内需拡大に振り向けることが極めて重要であると言わなければなりません。また、低家賃・優良の公共住宅の提供を思い切ってふやすことであります。  なお、我が党の機関紙赤旗の調査によれば、大企業の内部留保は、自動車九社五兆五千億円、電機十五社六兆九千億円、鉄鋼大手五社一兆七千億円、四大証券二兆四千億円に上ることをつけ加えておきます。  最後に、国民生活の水準向上の観点から新大型間接税導入問題に触れます。  周知のごとく、政府税調は三つのタイプの新大型間接税を素案の中に含めて公表いたしました。しかし、いずれも既に国民と国会が否定したものであります。そもそも大型間接税そのものが逆進性の強い税で、所得の少ない層の負担率が重くなるものであることは、竹下総理が六つの懸念の最初に挙げていることからも明らかであります。最悪の不公平税制であります。  今まで見てきたように、産業空洞化が進む中で雇用不安が広がり、景気が回復基調だといっても地域格差はひどく、所得と消費の格差もまた拡大傾向にある。金持ち国日本といっても、国民の多くが豊かささえ実感できない今こそ、高額所得者への大幅減税でなく、低所得者層への減税を保障する課税最低限を思い切って引き上げ、法人税にしても、優遇税制の見直しとともに中小企業への減税を重視するなど、税の再配分機能を最大限に発揮してこそ購買力を高め、内需を刺激することになります。まして、新大型間接税の導入などもってのほかと言うべきであります。  要するに、賃上げ、労働時間短縮、大幅減税、社会保障や教育の国庫負担をふやし、生活密着型公共投資で地元中小業者に仕事を保障するなど、国民の購買力をまず高めることを重視し、軍事費の拡大や対米従属、大企業奉仕の政策から国民本位の自主的経済政策へ転換することこそ生活水準を向上させる唯一の転換の道であるということを強調して私の見解を終わります。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ありがとうございました。  以上で意見の開陳は終わりました。貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。  午前の調査はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし、休憩いたします。    午前十一時三十五分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) ただいまから産業・資源エネルギーに関する調査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、産業・資源エネルギーに関する調査を議題といたします。  本日は、構造調整下の我が国経済の現状と問題点につきまして、経済企画庁経済研究所所長吉冨勝君の御出席をいただいております。  この際、吉冨参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ、本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。吉冨参考人から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず御意見を十五分程度お述べいただきまして、その後四十五分程度委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、吉冨参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) 早速、構造調整下の我が国経済の現状と問題点というテーマでお話を簡単に申し上げてみたいと思います。  今回の構造調整というのは、基本的には二年ほど前に出ました前川レポートの線に沿って我が国の経済が対外経済黒字の縮小の方向で構造調整が行われているかどうかという問題だと思います。実際に一九八七年の下半期から、GNP統計で見ましても、それから工業生産指数などの統計で見ましても、はっきりと我が国の経済は円高不況のもとから回復してきている。結局、八七年の下期 をとりますと、前年の同じ下期に比べまして経常収支の改善の大きさというのが、特殊な要因、金貨を鋳造するために輸入しました金と、それから石油価格の下落のために経常収支の黒字が膨らんだ分というのを除きますと、ちょうど百五十億ドル改善したということになります。  この百五十億ドルの改善に対応するような形で八七年の下期には、先ほど申し上げましたように、内需がGNPよりもかなり早く拡大した。内需の数字は、その下期をとりますと、年率で七・七%、それからGNPの伸び率は六%弱というわけで、国内の需要の伸び率の方が国内の生産よりも高かったために、その分だけより多く輸入をする。その輸入が大変なまたテンポで伸びております。  製品輸入に限りますと、製品輸入の数量の伸び率というのは、八七年いっぱいをとりましても二〇%伸びるというわけです。輸入が二〇%も伸びながら、そして他方で、御存じのように、輸出の伸び率というのはほとんど横ばいであります。ということは、我が国の工業生産者の立場の方から見ますと、輸出はほとんど伸びていない。輸入がそれだけふえているために、我が国の工業生産にかわって輸入品がどんどんふえてきている。そうしますと、そこから我が国の工業生産の伸び率は大きく鈍化するのではないかというふうに予想されますけれども、予想に反しまして工業生産が、前年同期比で見ますと、この半年ぐらいは一〇%で伸びているというわけです。したがって、一〇%も伸びている工業生産のもとで我が国の円高による産業の空洞化というのは当面生じていないということが言えます。  ということは、まず黒字減らしのために必要な内需の拡大というのが順調に進んでいるということであると同時に、その内需の拡大ということが輸入の増大を通して基本的には行われているときに、そのことが我が国の工業生産を空洞化しているわけでもないというわけですから、この半年から九カ月ぐらいの我が国経済のパフォーマンスというのは、今申し上げましたような意味での構造調整、それから国全体の内需、GNPの伸びあるいは工業生産指数の伸びから見てかなり良好な成績であるというふうに言うことができます。やや俗っぽい話になりますけれども、こういう円高不況を予想されているよりも非常に早く、かつ、今申し上げましたように、着実に克服しているということから第三の奇跡とさえ呼ばれるわけであります。第一の奇跡は、戦争の荒廃の中からの高度成長期、それから石油危機で最も弱いと思われていた日本経済が石油危機を最もうまく克服したというのが第二の奇跡で、それに続いて第三の奇跡という意味であります。  じゃ、どうしてそのような順調な回復が今続いているのかという点を簡単に整理してみますと、まず、昨年中の景気回復というのは政策に助けられた面が強かったと言ってよろしいかと思います。政策といいましても、大きく言って三つの分野がありまして、為替レート、金融、財政であります。  為替レートにつきましては、それ以前に議論がありましたように、幾ら構造調整が順調に行われるとしても、円高が余りにも急激にかつ深く進み過ぎますと、製造業の売り上げ、生産、したがって設備投資が落ち込み、それが波及効果を持って内需そのものをも落とし込んでしまうのではないだろうか。そのことは内需の拡大による黒字の減少ということ自体にもとるというわけで、為替レートというのは調整が必要であるけれども、それにはおのずとある期間をとると限界があるということで、ルーブル合意というのが昨年の二月末に取り決められたわけですけれども、そういうルーブル合意も一つの助けとなって、昨年の十月の株価暴落のころまでをとりますと、百四十円台から百五十円台の初めごろまでの姿が一年余にわたって比較的安定した形で続いていた。これが製造業については設備投資を底打ちさせ、やがて昨年の後半には上昇に転じさせてくる一つの要因になったものと解釈できるわけです。  それから金融政策は、低金利政策によって大変な住宅ブームが発生しているということです。この住宅ブームは、戸数の面から見ますと、戸数の伸び率はいわゆる貸し家が多いんですけれども、この貸し家の建設の中には節税のために行われているようなものもあるというのは多くの人々が指摘するとおりだと思いますが、しかし、そのもとに大変な低金利で融資を受け得るという大前提の金融環境があったために、そういった節税もまた可能な手段として住宅ブームが出てきている面があるわけです。  しかし、その側面に加えまして、持ち家の住宅もまた昨年の春ごろから強くなってきておりまして、したがって、全体としまして八七年の下期だけをとりますと、これも年率で住宅建設だけで二〇%も伸びるということになっております。住宅建設のウエートはGNPの中で五、六%でありますから、これが二〇%も伸びるということは、それだけでGNPを一%押し上げているということです。  それからもう一つ、財政政策が、昨年五月の六兆円、その後六・五兆円となった財政政策によって明らかに公共投資が再び昨年の下期にこれも一五%の年率で伸びるということで、GNPを恐らく一%近く上げる方向で働いている。したがって、昨年の初めのちょうど今から一年ぐらい前というのは、多くの民間の予測も、それから私も、たまたま働いておりましたOECDの予測も、こういった経済対策がとられる前の予測としましては、せいぜいGNPが二%台のごく若いところで成長するにすぎないのではないかと思われていたのが、八七年暦年全体のふたをあけてみると、先日発表になりましたように四・二%というわけで、二%は上積みされたわけですけれども、それには今申し上げましたような政策要因が力があったというふうに整理してよろしいのではないかと思います。  しかし、単にそういう政策要因だけではないところに今日の円高不況からの日本の回復のいわば第三の奇跡と呼ばれているところがありまして、それはこういった政策要因の力が衰えてきたとしても、民需によって支えられている景気の拡大が続くのではないかというふうに見られているからです。  その民需の内容というのは大きく言って二つありまして、一つは、製造業の設備投資というのが、先ほど申し上げましたように、昨年の夏場に底を打って、円高不況のもとで一〇%以上も低下してきていたのが、昨年の後半からはプラスに転じてくると。これも中小企業、中堅企業に引っ張られて設備投資が出てくる。日本の設備投資の動きというのは、まず中小、中堅企業が出てきますと、それから一年ぐらいおくれまして大企業の設備投資もふえてくるというパターンを戦後繰り返しております。したがって、今回も恐らくそういう動きが見られるとするならば、八八年には大企業の設備投資も製造業についてふえてくるのではないか。もともと非製造業の設備投資の方は、円高不況のもとでむしろ円高の利益を受ける産業がたくさん含まれておりますから、設備投資というのは堅調に推移してきたわけですけれども、この非製造業の堅調な設備投資の上にさらにこの製造業の設備投資の拡大が加わってくるというわけで、ことしは民間設備投資全体が一〇%以上に伸びるのではないかというふうに見る人々が民間の中でも強くなってきております。政府の見通しよりも強く見ているという点がこの面で強まってきています。  もう一つ、民需拡大の基礎をつくっているものは消費の動きであります。個人消費の全体をとりますと、GNP統計などで見る限りには、まだ年率四%にも満たない程度のそれほど強い成長だとは思えませんけれども、この消費の中身がこの半年から九カ月にかけては耐久消費財中心になってきているというところに大変な特徴があります。これは伝統的な耐久消費財に加えまして、新しい液晶テレビであるとか、あるいは新しいVTRであるとか、それからさらには日本語を操作できる ワープロが売れているとかという点が大変消費が華々しく伸びているような印象を与える大きな理由でありますし、それからまた、家電関係が電子化されてくることによって今日の技術革新と潮流がうまく合っている。それにまたさらに加えまして、こういった家電、電子関係のところは円高によって大変な輸出の面から不況をこうむるかと思われたときに、国内の消費がそこを目がけて増大してきたというために、産業の転換、ここにあります構造調整が非常に順調に進んだということです。  一つの例を申し上げますと、せんだって企画庁の幹部が地方に散って、私は北海道の経済のヒアリングを担当させられたわけですけれども、そのときに、あそこにありますある電気メーカーのお話ですと、ブラウン管をつくっているところですが、輸出比率が八五年九月のプラザ合意のときには七八%もあった。今はこれが三五%である。その間売上高というのはほとんど変わっていない。もちろん、途中では解雇しなくてはいけないというような局面にも追いやられたけれども、そこは何とか乗り越えてきた。どうしてかということに対しまして二つの答えが返ってまいりました。  一つは、今や価格だけで競争するあるいは価格志向の余りにも強過ぎるアメリカの市場は、どちらかとすれば、そこから撤退して質の高さを評価し得る市場、ヨーロッパ中心の市場に電子製品、電子部品の売り上げ、マーケットの開拓を改めていった。そのためには、当然のことながら、高付加価値化、それから不良品をなくすことによる良質化ということを技術革新を通して絶えず続けていった。  第二の答えは、それにしても輸出比率がそれだけ短期間に急増したのであれば、内需が拡大しない限りうまくいかないのではないかということに対しましては、幸いにして日本語のワープロが大変な勢いでこの二年間に売れ出した。近い将来に日本の世帯の四世帯に一世帯がワープロを持つようになるであろう。御存じのように、アルファべットのワープロは昔からあるわけですけれども、日本語をワープロにするというのは、技術的な面でも、それからそういう半導体とかICにしても、そういうものが大量に廉価にできるというところが大前提であったわけですが、そういう意味でのすそ野の広い技術革新に支えられて、日本語のワープロが二、三年前から十万円台あるいは二十万円を切るようになって家庭に普及してきている。これが新しい耐久消費財の一つの例でありますけれども、そういう技術革新に支えられているがために、現在の民需主導の回復は長続きするんではないかということから第三の奇跡というふうに呼ばれているわけです。  こういったことはすべて、構造調整というふうにここにタイトルがありますけれども、大きく分けて我々が今目の前にしております構造調整というのは、実はこれまで輸出に力を注いできた製造業がうまく内需に転換しているという意味での構造調整が目立っているわけです。しかし、前川レポートあるいは政府が考えている構造調整というのは、むしろ製造業以外のところ、非製造業のところの構造改革というのを頭に置かざるを得ないわけです。この非製造業というのは、製造業に比べますと、相対的に国内でも国際的にも競争にさらされる度合いが小さかったわけでありますし、それからまたいろんな規制、自由化されていない側面を製造業よりも持っている。御存じのように、製造業は今のような円高でもそれなりにやっていける力を持っておりますけれども、国全体の購買力平価というのは、OECDの計算によりますと二百二十円であります。製造業が百五、六十円でやっていけるかもしれないときに国全体は二百二十円であるということは、非製造業の生産性が低いということであり、したがって、非製造業の価格やいろんなサービスチャージが高いということです。  したがって、今円高のもとで国民生活が円高ほどに充実したとは考えられないというふうに感ずる一つの理由は、非製造業の生産性が低いために、そこでの価格が高く、したがって、それを購入する物資が高いということが国民生活を豊かに感じさせない大きな理由であります。製造業がGNPに占める比率は三分の一、非製造業が占める比率は三分の二であります。したがって、政府としてやるべき構造改革というのは、基本的にはこの非製造業の分野にあるというのが私の前川レポートの解釈の仕方であります。  そういうことを申し上げまして、時間が参りましたので、ここで一応終わらせていただきます。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) どうもありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は会長の許可を得て順次御発言をお願いいたします。

及川一夫日本社会党・護憲共同

○及川一夫君 二点お伺いしたいと思います。  その一つは、お話を伺っていてそれなりの実感を感じながら受けとめたわけなんですが、二、三年前から見れば大変すばらしい経済の状況、恐らく予想外という言葉を当てはめてもいい実態にあるんじゃないかというふうにお話を受けとめました。  そうしますと、こういった日本の経済は一体これから先どのぐらい続くのだろうか。日本の国の外回りを見ますと、俗に言われている経済摩擦とか貿易摩擦という問題がはんらんしていまして、一体それとの関係なども含めてどのぐらい今のような状況が続くことができるのか、続けるためには何が必要なのか。最後の方で非製造業というか、そういったところの構造改革が必要なんだというふうに言われましたので、それもその一つかと思いますけれども、そのほかに具体的にどういうことをやらねば、この持続はそうは続かないぞという受けとめ方が何かありましたら教えていただきたいというのが一つ。  それから、二つ目には空洞化の問題なんですが、これも私は地方というものを国政調査に行って理解はできるんですけれども、ただ、この空洞化の問題にも俗に言われる過密過疎という意味の日本の国自体が持っている空洞化の問題と、それから国際競争の熾烈さの中で、円高問題を含めて、いかに生産性を維持しながら低廉でいいものを提供しようか、その工夫の仕方として海外進出をしているという、その結果として我が国の中に空洞化が起きるんじゃないか、あるいは起きているんじゃないか、こういう議論があったわけなんですけれども、大企業を中心にして見ますと、海外進出をしておっても、それ自体で国内に今のところ確かに空洞化が起きているようなふうには見えないんだけれども、本当にそうなんだろうかということについてはもう少し私自身は疑問を持っていまして、しかも高付加価値製品は我が国で、それ以外はアジアとか他国に進出していってその国で生産をして日本にバックさせるとか、そういう発想もあるんですけれども、実際海外進出というものをそう位置づけていきますと、打撃を受けるのはどっちにしても中小企業であり地域産業ではないか。こう考えますと、海外進出をするにしても一定の条件と一定の限界が必ず起きてくるんじゃないか、こんなふうに私は受けとめているんです。空洞化が起きていないということはよろしいんですけれども、じゃこの先これ以上我が国に空洞化が起きるようなことはないのかどうか、海外進出が進んでも、そのことについて一つお伺いしたしというふうに思います。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) 第一の、今後、先はどのようになるのだろうかということですけれども、製造業の設備投資が恐らくことしは十数%で伸びるでしょう。それから、耐久消費財の伸び率も今のところ十数%から二〇%伸びているわけです。GNPの伸び率が四%とかあるいは五%というときに、その三倍のスピードで伸びているということは、これが永遠に続くわけではないということを逆に意味しているわけだと思います。  したがって、そういう意味で循環的な要因が強い需要が耐久消費財と製造業の設備投資で今盛り上がっているために、その上り坂のために我々は予想外の好況を経験しているという面が濃厚だと いうことは、やがてそういったものが弱まってくる可能性に我々は準備しておかなくちゃいけないということだと思います。  そういうものに対する準備というのは、基本的には財政金融政策しかないわけでして、それで我が国の場合には恐らく財政政策がそれの下支えに、もし必要とすれば、登場せざるを得ない。このとき非常に重要なのは、財政政策というのをいつもかもカンフル注射剤として使っていったのでは財政そのものが破綻しがちだということですので、昨年やった後、ことしのような景気の好調あるいはこれが来年まで続いた場合には、税収入が潤沢に上がってきて税収のバランスが相当改善してきておりますから、そういうときにむしろ財政を健全にしておいて、先ほどのような循環的な要因が弱まったときに、必要とあらば登場し得るという準備をしておくということが非常に重要だというふうに私は思います。  それと並んでやはり内需の伸び率を堅調に維持するということと前川レポートに沿った構造改善というのは裏腹の関係にありますから、それは財政の出動と同じウエートでもって考えておく必要があるのじゃないかと思います。  外から来る問題で我が国の先行きが危ぶまれることがあるとするならば、私、今一番大きな問題として出てくるのはやはりドル問題ではないかというふうに思います。ドルが下がろうとするとどうしてもアメリカの金利が上昇し、したがって株価が下落するという傾向を持っています。これは三つともに安くなる傾向ですから、ドルも債券価格も株価も、いわゆるトリプル安と読めば非常にわかりやすいことなんですけれども、トリプル安というのは、アメリカの経済は今日完全雇用であります。したがって、国際的な商品市況が上昇傾向にでもあるときには、最近のように石油の価格が弱いときにはドルが弱くなってもアメリカの金融は余り混乱を起こさないのですけれども、一次産品価格が上昇しつつあるようなとき、あるいは石油価格が下がりそうにもないときにドルが下がりますと、先ほどのトリプル安から株価の下落が起こる可能性があります。  したがって、問題はこのドル問題をどのようにして処理していくかということで、かいつまんで申し上げますと、今アメリカの輸出は年二〇%のスピードで伸びているんです。それにもかかわらず、経常収支の改善があったとしても非常にわずかであります。それは輸入をやはり少し抑えないといけないということに尽きます。これを貿易制限で抑えるのではなくて、保護主義で抑えるのではなくて、マクロ経済政策で抑える。したがって、それはアメリカにおける財政再建であり、あるいは今回の株価の下落からアメリカの消費が一%ぐらい落ちるだろうというふうに多くの人が予測しておりますけれども、そういう消費の落ち込みを恐れて金融を緩和しないことというのが非常に重要です。金融をこの段階で緩和しますと、既に完全雇用で物価は四%台まで来ておりますから、インフレの加速が明らかになってまいります。そうすると、ドルは急落する可能性を持ってきますので、このドル問題というのが株の下落を通して我が国に波及してくるという側面の方が先を見る上では非常に重要ではないかと思います。そういう意味では、今週行われているIMFの暫定委員会であるとか、あるいはG5、G7の会議というのは非常に重要だということは改めて申し上げる必要があるかと思います。  次の空洞化の問題というのは、空洞化の定義がいろいろございまして、先ほどのように生産が一〇%も伸びているときには、これは全体として見れば、空洞化が起こるどころか、むしろその反対だと言ってよろしいわけでしょうけれども、当然これは構造調整ということですから、産業間、地域間、それから職種間というものの構造が変化することを通してのみ今のような成長が可能になってくるわけです。したがって、そういう構造調整に伴う過疎過密の問題というのは、ある意味じゃ避けて通れない問題ではないかというふうに私は思います。  ただ、過疎過密だけに限ります限りにおいては、何も円高のもとで起こっている問題というよりも、既に高度成長期のころから問題がありますから、今度の新しい五カ年計画でも述べますように、地域及び産業政策というのはどうあるべきか。よく言われる地方に中核都市をつくってその中核都市を中心に金融化された、国際化された日本経済と、あるいは東京と密接な関連を持ち得るようなそういう発展を考えるしかないのではないかということしか申し上げられないかと思います。  したがって、全体として生産が伸びていく方向にあるというのは、先ほどの第一の、日本経済は先をとっても順調に成長していくかどうかということに恐らく翻訳され直していくだろうと思いますので、残りはあと産業間の調整であり地域間の調整だと。したがって、産業政策及び地域政策がそこで出てくる。これは何も円高に特有な問題では必ずしもないということかと思います。  それから、最近の直接投資の動きは、昨年の秋ごろまでは大企業がどんどんと出ていっておりましたけれども、最近はヨーロッパでさえも日本の中小企業の海外進出が目覚ましいわけであります。これも先ほどの技術力を持っている中小企業の進出が活発だということで、恐らく企業を通した国際化あるいは地球化というんでしょうか、グローバライゼーションというのは進んでいくんではないでしょうか。  直接投資とそういうグローバライゼーション、どこが違うかというと、日本の企業というのは今からだんだんと国籍を忘れていかざるを得なくなっていくんじゃないかと思うんです。つまり、開発をするときに日本で開発をする。RアンドDを日本で投資する。そういう開発段階をより有利にできる海外に移すことをもう企業は考えております、あるいは大企業の一部は考えております。それは国籍を忘れた動きであります。今国籍を忘れたというのは、生産の拠点を日本から外国に移すという意味で国籍を忘れつつあるわけですけれども、今度はマネジメントのヘッドクォーターを何も東京に置く必要はないという意味で国籍を忘れつつあります。  それからマーケティングにしましても、今までは日本が輸出していっているけれども、輸出先で保護貿易主義などがあるために、そこへ売り込むために日本は直接投資をするという意味で、まだそういうマーケットについて日本の国籍から出発した考え方が残っておりますけれども、売り込み先はどこでもいい。逆に言うと、海外でつくって日本へも輸出するということが出てくるというのも国籍を忘れた方向ではないかと思います。  したがって、こういう企業行動の国際化、地球規模大のグローバライゼーションというのは避けて通れない道だと思いますので、そういったことが国の利害にえらく大きく反する結果をもたらすのはどういう場合かというのを考えてみますと、基本的には為替レートが余りにも大きく振れるということです。これはG10の通貨改革でG10が承認したように、為替レートというのは一週間や一月の間に激しく揺れ動くということ自体は問題ではない。今金融手段が発達して為替リスクをヘッジする手段がたくさんございます。これはコストがかかるだろうけれども、このこと自体が長期的に見て国際投資や国際貿易をゆがめるものではない。ところが、三年、四年にわたって大変なドル高が来る。つまりその裏側で円安が来てほとんどだれもが輸出をできるようになってしまう。今度はその反対に日本の実力以上の円高の期間が長く続き過ぎて、そのために、国内で本来は生産をした方が得な企業までもが海外へ行かざるを得なくなるというのは、どうも為替レートそのものに問題があるんではないか。そういう為替レートを動かすのは、これまでのところは、アメリカの財政政策が規律を失い過ぎたために赤字が大きくなって、貯蓄の少ないアメリカで金利が上がってドル高になってしまったというのが基本的な考えで正しいと思いますけれども、そういう意味で企業の国際化に対応した通貨制度のあり方というのを考 えていくことが私は重要だと思うんです。  ちょっと長くなりますけれども、最後に、日本が大国になったというときに、二百四十円、五十円のときには通貨改革案を日本の国内で唱える人はだれもいない。というのはみんながもうけていたから。しかし、百二、三十円になって初めて通貨改革が必要だと言うのは、これは大国のビヘービアではないということなんです。しかし、そうはいっても今アメリカはドル安を必要としていますから、この経常収支の不均衡問題が数年で何とかなったときには、日本がリーダーシップをとってそういう通貨改革を提唱する必要があるのかもしれません。実は、そういうことが先ほどの行き過ぎた産業の空洞化を防ぐ一つの大きな手段になるかというふうに私は常々考えております。

沓掛哲男自由民主党

○沓掛哲男君 四つほど質問さしていただきたいんです。  日本で行ういろいろの政策またはその労働、それはすべて国民の豊かさ、幸せさに結びついたものでなければならない、それが基本だと思いますが、我が国は随分GNPも伸び、経済的な大きな成長をしたわけですけれども、また貿易的にも大変な黒字なんですけれども、その貿易黒字的なものが国民生活に余り生かされていないんじゃないか。アメリカの国債を買ったりなんなりして金庫にしまってあるというような形で、どうも生かされていないというふうに今まで感じてまいりました。  さてこれからは、今のお話のように、海外直接投資ということが当然起こってくるわけですが、今の同僚の方は、この海外直接投資を雇用問題としていろいろお取り上げになりましたけれども、海外に直接投資をし、表現が適切でないかもしれませんが、そこで金持ちになっていく、そういうことができるためにはやはり強い外交と強い軍事力というアメリカのようなものがなければ、なかなか成り立たないんじゃないか。昨年もアルゼンチンやブラジル等は、いわゆる借金で苦しくなるとちょっと返すのはストップするとか、そういう問題がいろいろ出てくるんで、やはり過度に海外直接投資をすることは、経済的な面からだけではなくて、投資の安全性、そういう保障、そしてそれが日本の国民の幸せに還元される、そういう点に重点を置いていただけないのか。  そして、そういうことかどうかわかりませんが、土地がもう高騰いたしまして、日本列島を買うには百四十兆円、アメリカを全部買うには七十兆円でいいというような、そういうばかげたことが起こるから、資産所得的にある人はすごく金を持っているのかもしれないけれども、大部分の人は、こういう経済大国になった、そして貿易も黒字だといいながら、余りそういうことを実感できないのではないか。そういう面に対して、一体そういう大きな経済を国民生活の豊かさにつなげるにはどうしたらよいのか、そういう点をOECDで長くいろいろ指導された吉冨さんにお伺いしたいと思います。  それから二番目は、今のお話ですと、製造業的なものをどんどんやっていく、そして技術革新をやっていくとその国のGNPは確かに伸びるんでしょう。そして、比較生産費説的に日本は工業製品に特化する、そして欧州の国は一次産業に特化していくというような、そういうことは間違いじゃないかというふうに私は最近思えてならないんです。日本人の中にはそういうハイテクに、非常にトップに向いた人もいます。しかし、一次産業に向いた人もいます。仮に東南アジアの国におきましても、やはりトップの人たちはすばらしい人ですから、ハイテクとかいろんなことにも当然やられるし、また農業に向いた方もおられます。ただ、その比率が日本の場合はやはり工業的に、製造業的に向いた人が多く、東南アジアの人は一次産業に向いた人が多いのかなというふうに思いますが、余りにも経済の合理性を追求していくと、この一次、二次、三次のバランスが大きく崩れてきて、何か経済的には大きく膨れ上がっているけれども、その国民全体として見た場合必ずしも幸せではない。そういうことがこれから余りにも過激な、こういう生産性が高ければそこの国に特化していくというような、そういうやり方に対しての反省なりというようなものがあってしかるべきではないかなということを思うことが一つでございます。  さらに、吉冨さんOECDにおられたので特にお聞きしたいんですけれども、ODA等の我が国の額は、円高にもよりましてもう世界的にも大変な大きな金額になり、東南アジア等ではその施策は大変喜ばれているということなんですが、さあ一方、我が方で農産物の自由化や建設市場の自由化、その他のいろいろな国際的な問題になると、必ずしも適切な表明ではありませんが、国際的に袋だたきに遭うというような状態が去年から続いているように思えてならないわけです。やはりODAというのも国民の税金を使うわけですから、究極的には日本人の幸せなり日本の国の成長発展に貢献してくれるものでなければならないのではないか。今のODAを見てみますと、各省庁、十数省庁ぐらいが関係するのかと思いますが、自民党の部会へ出ていくと、各省庁からわあわあといういろいろ説明がございまして、それぞれのセクションでの、省での目的はあるんでしょうが、日本全体としての一体これに対する基本理念は何なんだろうか、どこでそういうことがなされていくのであろうか、そういうことが思えてならないんです。こういうODAを通じて近隣諸国に大きく貢献することは必要ですが、それにやはり我が国をも理解してもらって、我が国の農民やいろいろな部面で非常な苦しみを抱いているんですが、そういう面への理解もいただけないかというふうに思うのが三番目でございます。もちろん、日本の一次産業はもっと合理化し経済性も取り入れていかなければならないのは私も当然だと思いますが、そういう努力の上に一次、二次、三次のバランス、それからODA関係のことをひとつお聞きしたい。  それから最後には、いわゆる外国人労働者の問題が今いろんなところで顕在化されております。これはまず日本人の精神面のもう一回見直しというのが必要ではないか。今日本人というのは企業を重視し、そして国という意識は大変薄い。それからまた、一言で言えば友愛という精神に欠けている。若い人たちはぜいたくをして格好よければいい。だから、汚い職場とは申しません、私は建設省からの出身者ですが、例えば土木現場などは余り好まれない現場でございますが、ほかにもいろいろあるわけですけれども、ほかを言うと差しさわりがありますので私のところだけにしておけば、土木の現場というのはみんな若い人は好まないから、そういうところへ外国人労働者を入れるとか、そういう話ですが、仕事にはそういう貴せんもないし、どこもかもみんな日本の国家のために大切なんですから、それぞれの職場で大いに誇りを持ってやっていけるような、そういう精神面の教育ということがこれからは大切じゃないか。その上に立って外国人の労働者の話をすべきであって、自国民が、日本人が嫌がる職場だから東南アジアの人に来てもらうなんというのは、私はもう断固反対だというふうに思うんですが、その四点について吉冨先生のお話をいただきたいと思います。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) 御意見の部分がかなり多かったと思いますけれども、御質問のようなところをちょっと私なりに取り上げますと、円高との関係でどの程度国民生活を豊かにすべきかというときに、先ほど申し上げましたように、国全体の購買力が二百二十円で、製造業はもっと強い円でもやっていけるということは、非製造業が生産性が低い、したがって非製造業の価格が高いということになるわけで、そういった非製造業のものを三分の二我々は購入しておりますから、そのために生活がよくならないというふうに考えてよろしいかと思うんですけれども、そのことと今おっしゃられました一次産業、二次産業、三次産業の関係というのは非常に密接な関係に実はあると思うんです。といいますのは、二次産業は基本的には製造業でございますから、一次産業あるいは三次産 業の生産性をどうやって上げていくかというお話と、それと同時に、国全体がバランスのとれた一次産業、二次産業、三次産業でなくてはいけないというところに、私は、結局そういった矛盾をある程度緩和していくものがあるとするならば、技術力の向上しかないと思うんですね。製造業が技術立国の柱になっているように、今新しいサービス産業でそのようになってきておりますし、それから農業においてもまたそのような方向で一次産業自体を強く育てていくしかないのではないかというふうに思います。  ただ、そのときに第三番目のODAなどの関係になってまいりますと、一次産業が強い途上国を相手に問題を考えているときに、我が国が勝手に一次産業だけを強くしますと、これはまたODAで助けておきながら、他方では相手の足をすくっていることになりますので、国際的な分業が相手も発展させるようなものでなくてはいけないというところはやはり全体として考えていかなくちゃいけないということかと思います。  それから、最後の外国人労働者の問題というのは非常に感ずるんですけれども、日本人になかなかできないなと思われるのは、外国の人々を養子にとるあの精神ですね、外国人が。あの外国の人を自分の娘や息子と同じように取り扱う度量の大きさみたいなものがまずないと、今の学校でも幾つか起こっておりますように、顔色が違うというだけで何か差別的な行動を子供がする。子供がそういうことをするのは、親が日ごろ教育の面であるいは会話を通してそういう大きな度量を教えていっていない成果のあらわれではないかというふうに私見ておりますものですから、外国人労働者を受け入れるか受け入れないかということは、まさにおっしゃられましたように、そういう職業の貴せんも踏まえまして、人類に対する平等な見方というのを家庭教育及び学校を通して教えていくということが基本ではないかといういうふうにただいまお話を聞いて感じました。

福田幸弘自由民主党

○福田幸弘君 時間がないので一問だけ。  GNPの伸びでございますが、適正な成長率はどのくらいとお考えになるか。構造改善政策を進めるには成長率が必要でございますが、その大体のめど、また、どうせこうカーブを描く、波を描くでしょうから、どのくらいの期間、五、六年というふうに見込まれるのか。今は内需で景気がいいわけですから、こういう際には財政の下支えは当面公共事業的なものは後退していいのかという問題、ちょっとこれ第二問に近いんですが、それだけお伺いします。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) 潜在成長率がどのくらいかというのは、実はOECDなどでも相当研究しているんですけれども、なかなかわからない。しかし、IMF、OECDの研究を通して大体共通な認識は、やはり四%ぐらいじゃないだろうかというところがコンセンサスだと思っていいと思います。ただ、製造業とか非製造業の設備投資がどんどんと強くなってくるときには、そこで生産能力が新たに出てまいりますので、その動きが強いということが向こう三、四年読み取れますと、その結果によって潜在成長率が高まっていく可能性はございます。それでまた、その反対のこともあり得るということです。  したがって、余りリジッドに四%を少しでも超えたら大変であるとか、あるいはその反対も大変だということではなくて、政策の方向としては潜在成長率は高める方向の政策が望ましい、あるいはそうでないかというところではないかと思います。そこは結局、技術、RアンドDをどうしていくのか、設備投資をどう育てていくのかというような政策論争になるのではないかというふうに思います。  確かに、先ほど申しましたように、今回住宅ブームが相当進んでいるところに公共投資が乗っかりましたから、建設関係を中心に非常に需要が集中したということは否めません。したがって、建材のところだけがいわばインフレになって、あとのところは安定しているわけですから、先ほどのように民間主導の需要が強ければ、むしろ前倒しの反対ぐらいのようなことを公共投資については考えていた方が景気の息を長くすることにはプラスになるだろうというふうに思います。

馬場富公明党・国民会議

○馬場富君 吉冨参考人にお尋ねいたしますが、特に円高を中心とした日米関係の問題で、三年間で半分になってしまったということですね。いわば、輸出も輸入もそうですけれども、半分の価格になってきたというふうにとっていいんじゃないか。そういう関係で、先生先ほどおっしゃった第一、第二、第三の奇跡を乗り切ったと。やはりこれは円高に対する日本の経済が鍛え上げられたという意見のこともおっしゃいましたが、その点は私も同感ですし、そのために日本の企業やあるいは働く労働者の方々も、そういう急激な円高に対して普通は不可能だと思ったけれども、対応、適応能力が非常に進んできたということは、第一、第二、第三の奇跡とともに、そういうことで、その苦しさの中から鍛われた力が企業にもできて、また働く人たちにも適応能力ができたということは私もここで認めるわけでありますが、ここでもう一点は、それはいずこに原因があるかということなんですけれども、結局、この前の総理の演説の中にもありましたように、日本人は勤勉で優秀だというようなとり方で、これが一つの支えとなっていくというような認識があるわけですけれども、私は名古屋大学の飯田先生あたりとよく意見交流しておるんですけれども、先生側から言わせると、そういう見方というのはナンセンスだと。それよりも日本は時の勢いに乗っているというふうに見た方がいいんじゃないか。余り日本の見方というものを勤勉や日本人が優秀だからそうなったととっては、これは失敗の原因にもなるんじゃないか。だから、時に乗っておるんじゃないかと。一つは、一八〇〇年代はイギリスが非常に栄えた。それから一九〇〇年代の前半はアメリカが栄えた。その後をバトンタッチ受けて日本が栄えておるというような、時に乗っておる状況だというふうに見た方がいいんじゃないかと、この安定さというのは。  そういう見方も私は思えるわけでありますが、その中で先生が先ほどおっしゃった、かつては物すごいハードの時代からソフトの時代へと、こういう一つの変わり方を皆さんがとられておったわけですけれども、最近では先ほど先生のおっしゃったニューハードの時代だと。ニューハードにおいては圧倒的に世界を圧してしまったと、日本の力というのは。これはこれで一つは支えていくでしょうけれども、日本にもやはりそれが絶対的な要素ではない。やがて後落の傾向が二〇〇〇年代からは来るんじゃないかというような見方が一つ強いわけですけれども、これと円高等の貿易黒字、赤字の問題で日本と絡み合った問題でこれは離れられないいわゆる相互関係になっちゃったということで、ことに日本の弱さもあるし、また強さもあるということがあるわけですけれども、一つは、日米がそこら辺で経済協調、通貨の問題等について相互間に理解ができればいいけれども、もしできなかったとしたら大変な問題になるんじゃないか。ここらあたりについて御意見賜りたいと思います。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) 最初の日本人が勤勉だからうまくいっているというのは、一般論過ぎて私も余り意味がある説明じゃないと思います。ただ、一国をとって、その一国が人間と同じように栄えるときと衰えていくときとがあるだろうというふうに思いますけれども、あらゆる国が世界の中心に躍り出るわけではないわけで、これまでもせいぜいイギリスでありアメリカぐらいに限られていたわけですから、そういう意味では、百何カ国ある中から我が国が、ある時代をとったとしても、その中心舞台に躍り出得るというだけのことはあるという特殊性を一方でやはり考えておいた方がよろしいかと思うわけです。どこの国でもできる仕事ではないのかもしれない。ただ、それはあらゆる時代を通していつも日本人がそういうことばかりをやってのけるだけの勤勉性を持っているというふうに言うと明らかに言い過ぎであって、今の時代に合った技術、産業、商業、金融を伸ばす のに日本国がマッチしていた、ちょうど適合していたというふうに考えた方がよろしいのではないかというふうに思います。  ということは、逆に言いますと、ちょうど個人が老後を考えなくてはいけないように、国も老後を考えておいた方がよろしいということに私はなるかと思います。そのあり方というのがODAであったり、その他であったりするだろうと、国内についてのODAであったりあるいはいろんなインフラストラクチャーの整備であったりするかと思います。これはまた話が別のことかと思います。  今共通されている考えというのは、経常収支の不均衡につきましては、この一、二年の赤字、黒字の大きさは大き過ぎると。しかし、日本の黒字がゼロになればいいという話をする人は非常に少ないんです。ただ、これまでGNPの四%台にあったのが大き過ぎるというのはわかりましたけれども、じゃ、一%なのか二%なのかということになると、まだ議論が分かれているところです。したがって、GNP比で日本の黒字が例えば一・五%から二%以内におさまるようになるとか、アメリカも赤字がほとんどなくなってくるようになるとかということになれば、経常収支の不均衡を調整するに必要な為替レートの変更というのは必要としなくなりますので、そうすると、そういう時期を選ぶことによって、あの八〇年代に繰り返した為替レートの無用な変動というのはなくすべきではないだろうかということを提案する、そういうタイミングが恐らく今から数年後に来るのではないかというふうに思います。今はタイムリーではありません。ちょうど我が国が二百四、五十円のときに黙っていたように、アメリカは今ドル安のときに必ず黙り続けていきますので、経常収支の不均衡がある程度正常化したときにのみそのことは可能だというふうに思います。また、それしかもうあり得ないのではないかと思います。今ドル安を抜きにして日本の黒字も減りにくい、つまり円高を抜きにして日本の黒字も減りにくいというのは現実でありますから、数年先のお話ではないかと思います。

神谷信之助日本共産党

○神谷信之助君 参考人の先ほどのお話を承りまして、今の国際収支の不均衡問題の解決について、参考人の研究施設で主催された先般の国際シンポジウムのまとめでも、為替レートの調整といいますか、それだけではなしに、アメリカの財政政策の改善というのですか、それが非常に不均衡是正には力があるということは午前中の私の見解でも引用させてもらったんですけれども、さてアメリカの財政政策を緊縮の方向に持っていくといいますか、そういう状況に持っていくにしても、今は当面大統領選挙を前にしています。そういう状況の中でなかなかこれはとりにくい問題が出てくるんではないか、この辺についての見通しをひとつ聞きたい。  それからもう一つは、今お話しになった中で、先ほども同僚議員の方からありましたように、産業空洞化の我が国経済に対する影響の問題、楽観的に見ておられるようにお聞きしたんですけれども、これから本格的に進むのではないかと思いますが、しかし現在までの段階でも、先般の労働省の雇用動向調査とか経済企画庁の消費動向調査などを見ますと、賃金の伸びはもう大体横ばいになってきておりますし、それから雇用状況も常用雇用の方は減ってきていますね。不安定雇用といいますか、この労働者の方がうんとふえてきているんです。それから、所得と消費の格差もどんどん拡大してきているし、いわゆる所得の高い層は所得の伸びよりも消費が上回る。こういう点で、先ほど言われた新しい耐久消費財を含めて高級品志向とかいうような消費の状況は出ているけれども、しかし、本当の底辺の水面にあらわれていないそういう大多数、六割から占めるそういう第一分位、第二分位あるいは第三分位ぐらいまでのところの消費は逆に抑えられてきておるという状況を見ると、今の景気の動向、少し上向きになって回復しているが、それは結局大企業のそういう急激な回復といいますか、人減らしや合理化いろいろやりましたから、そういう中で来ているけれども、それは長続きをするというようには考えられない、非常に危険な綱渡りの状態ではないかというように思うんですが、この二つの点ちょっと見解を聞きたいんです。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) アメリカの財政政策で今増税に反対しているというのはレーガン大統領とケンプ議員の二人なんですね。これはやや行き過ぎたサプライサイダーと言われているわけで、共和党自身も赤字が大きいことに対しては危惧を表明しているわけですから、選挙期間中は無理ですけれども、選挙が終わりました後はそういう可能性が開けてくると見てよろしいんじゃないでしょうか。  先ほどお触れになられました私たちの国際シンポジウムでの計算も、そんなべらぼうな財政再建の規模を考えているんじゃなくて、せいぜい年間百五十億ドル。ところが、アメリカは八七年度に何と七百億ドル切ってみせたわけですね。その後八八、八九年度は横ばいですから、三年間で七百億ドルを切りたというふうに考えることもできるわけであります。そうすると、一年間に二百億ドルは切ったという、その程度のテンポで今後やってもらえれば、かなりアメリカの対外赤字も改善するというのが私どもの試算であります。したがって、その程度の支出の削減と増税であれば可能ではないかなというふうに見ております。  それから、空洞化というのは確かに今から発生することであるということはそのとおりだというふうに思います。例えば日本の車が二百万台以上もアメリカでできたときに、今日本の経営者の方方は、アメリカへ輸出している二百三十万台の車がストップするというふうには考えていらっしゃいませんけれども、その可能性はあるわけです。しかし、逆に見ますと、これは盛田ソニー会長がおっしゃっていたんだけれども、日本の企業がアメリカでどんどん生産をしようとしているときに、フォルクスワーゲンは撤退しているんだそうです。そういうことが起きますと、日本の企業は輸出も続けることができるし、アメリカの国内での生産も伸ばしていくことができるということになるわけで、そういうことができるのは、やはり日本の経営のあり方、技術革新のあり方にドイツと比べて力強さがあるからだという説明なわけでしょうけれども。したがって、そういうことになりますと、空洞化は日本には起きにくいんでしょうけれども、他の国の空洞化を起こして問題を起こしやすいという問題は新たに出てくるんじゃないかと思います。  そういうやや極端なことを別にしましても、やはり直接投資を通した空洞化の問題というのは今後出てくるわけですが、その直接投資がアメリカのように進んだ場合でも、今日のアメリカの完全雇用は見られるように、そのこと自体がすぐ雇用問題になるというわけでは必ずしもないということと、それから先ほど申し上げましたように、直接投資が行き過ぎる一つの理由というのは円高が行き過ぎる理由にありますので、先ほどのような通貨改革の必要性というのがやっぱり出てくるんじゃないかということかと思います。しかし、企業のグローバライゼーションというのはもう時の流れではないかと思いますので、それを防ぐことはできない。そのときの企業のグローバライゼーションと国の政策が矛盾するようなことが起きないようにする政策というのが通貨改革の面で一つ考えられるという意味でございます。しかし、これは大変大きな問題で、私の能力を超えているかと思いますけれども、そういうふうに私は考えておるところでございます。

橋本孝一郎民社党・国民連合

○橋本孝一郎君 ちょっと時間が超過しておりますけれども、一点だけお尋ねしたいと思います。  今G7が行われておりますが、その中で、きのうの新聞報道で、これはアメリカのベーカー長官だと思うんですけれども、商品バスケットの導入を持ち込んで、合意したとかしないとかいう報道があるわけなんですけれども、それに対する先生の御見解、日本の影響、対策についてお尋ねしたいと思います。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) ベーカー財務長官がIMF総会で去年提唱したときに、こういうふうにベーカーさんが言っておるわけです。為替レートの安定は必要である。しかし、これは多くの国が一斉にインフレになることによっても安定するんだ、あるいは多くの国が同時にデフレになることによっても安定するんだ。したがって、これは相対的な関係である。しかし、デフレもインフレも望ましくない。それを判断する指標は何であろうか、インジケーターですね、サーベイランスの中の、それが国際商品市況ではないだろうかというのが基本的な考えだと思います。  じゃ、それが出てきたときにどういうふうに使うのかと私が想像いたしますに、その商品市況がえらい弱いときには黒字国が金融を緩和したらどうだろうか。そうすると、黒字国の金利は下がって、デフレ効果も抑えながら今の赤字国アメリカのドルを助けることにもなる。そうすると、今度、国際商品市況がインフレになり過ぎていると判断するときには、赤字国が金融を引き締めるべきではないだろうか。したがって、金融政策がどちらの国によって行われるかということを判断するときの材料に本来これは使われるべきインジケーターであります。  ただ、その商品バスケットの中にどういうものを入れるかという話になりますと、国によって影響が相当違う。それから、ドルではかったのでは意味がないので、SDRではかるか等々という、かなり技術的な問題が残されているかと思いますけれども、哲学的なアイデアは正しいと思いますし、恐らくそういう方向で議論がだんだん煮詰まっていくのじゃないかというふうに思います。

橋本孝一郎民社党・国民連合

○橋本孝一郎君 ありがとうございました。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) 時間も少し超過いたしましたが、田辺さんに特に質問を許します。どうぞ。

田辺哲夫自由民主党

○田辺哲夫君 済みません。時間がオーバーしているんですが、お許しいただきまして簡単に一点だけお伺いします。  六十二年度の自然増収というものがだれも予期しなかったほど多額に見込まれております。六月にならないと結論は出ませんが、数兆、また経済の中心でございます東京におきましても八千億と、これ大変な自然増収がある。六十二年度の予算を編成するときに、そういたしますと、六十一年の秋から暮れにかけてこれだれも予測できなかったのか。大蔵省も経済企画庁も予測できなかったのか、また民間の専門家の方々も予測できなかったのか。これは不可能であったのか。そして、昨年度、夏に補正予算が組まれましたな、経済活性化の、その効果があったことは間違いないでしょうが、経済というものはそう一朝一夕にすぐ効果は出ません。六十一年度に既に六十二年度の経済はよくなるという何か芽があったんじゃないか。それが六十二年度に出てきたのじゃないか。もちろん六十二年度の補正予算ですか、あれももう効果ありますが、六十一年度に既に芽があったんじゃないか、こういうように考えるわけでございますが、この自然増収が多いために、国会でも減税の問題でいろいろ論議があるところでございまして、非常に大きな問題だと思いますが、そこら辺の先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) その予想外の成長だということで、結局予想外の収入があったということに尽きるんだろうと思いますけれども、じゃ、昨年の景気対策をとる前から回復の芽があって、それを十分に読み切れていなかったんじゃないか。恐らく結果論としてはそうなんではないんでしょうか。と申しますのは、財政政策だけであれだけの税収入が上がる、好況をつくり出すことは不可能であります。財政政策をとればいつもあれだけ税収入が上がるのであれば、大蔵省はちっとも景気対策のときにびびる必要はないわけであります、余計収入がふえるわけですから。ということは、必ず外の面からきているというふうに考えざるを得ないと思います。  先ほども実は申し上げたんですけれども、統計が固まっているのは昨年のまだ後半でございますから、後半だけを見ますと、そういう政策によって助けられた需要の伸びと、それから民間自体が伸ばしている需要の伸びとが重なったあの半年とかことしの前半だと思うんですね。金融政策によって住宅建設が年率で二〇%もふえると言っているところに公共投資が一五%ふえる。だから、公共投資が一五%ふえるときの一つの考え方は、住宅投資というのはもうあんなに続かないのじゃないかという前提でした。それから、製造業の設備投資が昨年の後半になって盛り上がってくるとは思っておりませんでした。これだけの円高が続けばしばらくだめなんじゃないかと。しかし、盛り上がってきた。それから、消費が、耐久消費財だけを見ますと、十数%も伸びるということも考えていなかった。自動車が去年の秋口から前年に比べて一〇%以上ふえてきたけれども、そんなに売れるのか。トヨタの人に去年の夏場会いましたら、予測が狂ってしょうがない。売れなくて大変ですかと言ったら、そうじゃない、内需が伸び過ぎて予測が狂ってしょうがないと。したがって、企業も間違えましたし、我々も当然間違ったということじゃないかと思います。  そういう変わりばなのときに景気の予測を今回のように大きく間違ったのは、やはり住宅の読みでございます。それから、先ほどのような製造業の設備投資の読みです。それから、自動車を中心とした耐久消費財の読みでございます。恐らく政策論争としては、これだけ今度自然増収が予想以上に大きかった場合にはそれをどう使うべきかというようになるのだろうと私は思いますけれども、御質問の趣旨は、どちらかというと、そういう予想されなかった要因というのがどういうものであったんだろうかというふうにとりましたので、そういうふうにお答え申し上げておきます。

田辺哲夫自由民主党

○田辺哲夫君 ちょっと一点だけですが、六十二年度の前半から税収は上がっているんです。六十二年度の秋からが今のお話ですが、その前から上がっているんです。そうしますと、私は六十一年度に既にそういう芽があったんじゃないか、そこで読み違いがあったんじゃないかと思うのです。

吉冨勝経済企画庁経済研究所所長

○参考人(吉冨勝君) 六十一年の七—九月期から先ほどの住宅ブームが起こっておりまして、ただ、景気そのものが底を打ったのは六十一年の終わりの方でございます、あるいは六十二年のごく初めでございますから、昨年のごく初めでございますから、景気が底を打つということは景気が一番悪いということであり、それから、よく私たちの分野で言うんですけれども、景気対策というのは、景気が悪いということを国全体が認識して対策をとったときにはおくれが必ず発生するので、政策はとらない方が望ましいという学説があるぐらいであります。認知ラグ、それから実際に施行ラグと我々は呼んでいるんですけれども。そうしますと、景気対策をとったときには、今回はインフレにならなくてよかったわけですけれども、一時的に問題になりましたように、建設資材が非常に上がり過ぎて、これがボトルネックインフレーションになるかもしれないというような問題を起こしたわけであります。そういうわけで、その読みを誤るというのがいわば通常な状態の中で、政策はどう展開すべきかというふうに普通は考えていくのではないかというふうに思います。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) 以上で吉冨参考人に対する質疑は終わりました。  吉冨参考人には、お忙しい中を本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。  ただいまお述べいただきました貴重な御意見につきましては、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)     ─────────────

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) 次に、構造調整下の我が国製造業の抱える問題点につきまして、日本輸出入銀行海外投資研究所主任研究員櫻井眞君の御出席をいただいております。  この際、櫻井参考人に一言ごあいさつを申し上 げます。  本日は、御多忙のところ、本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。櫻井参考人から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず御意見を十五分程度お述べいただきまして、その後四十五分程度委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。  それでは、櫻井参考人どうぞよろしくお願いいたします。

櫻井眞日本輸出入銀行海外投資研究所主任研究員

○参考人(櫻井眞君) 御紹介いただきました櫻井でございます。  本日与えられました私のテーマは、「経済構造調整とその抱える問題——製造業を中心として」ということでございます。私、専門としております分野が主に海外直接投資ないしは日本の貿易の問題ということでございますので、その問題との関連で経済構造調整の問題を述べさせていただきたいと思います。  まず、一九八五年以降の経済構造の変化、これは非常に速いものでございまして、そのレベルは大体三つぐらいに分かれるのではないかというふうに思います。まず第一に、国内経済構造がどういうふうに変わってきたかということであります。それから第二のレベルが、貿易構造にそれがどのように反映してきているか、それから第三が、極めて新しい問題として海外直接投資が非常に急増しておるという、この三つのレベルで大きく構造が変わりつつある。中でも国内の経済構造は、日本経済の規模が大きいということがございますので、貿易構造とか海外直接投資に比べますと、その動きがややラグがあるということになると思います。しかし、貿易構造、海外直接投資というところは、円高等の影響を受けまして、非常に速い動きを示しておるというのが実情ではないかと思います。  その前に、経済構造全体の構造変化を及ぼした大きな要因というものは、やはり一九八〇年代に入りまして、これは既に経済企画庁の吉冨所長がお述べになったことと思いますが、米国を中心とする対外経済摩擦、日米間の経済摩擦というのが一つの大きなやはりきっかけになって、日本の大きな経常収支黒字というものが累積をしてきたということによって、一九八五年の円高ということで急激に構造の変化のきっかけがあらわれてきたというふうに考えるべきものではないかというふうに思います。  もちろん、その原因といたしましては、米国自身のレーガン政権下の経済政策が財政の赤字を非常に大きくした。それがアメリカの経常赤字を大きくするというようなことがその背景には当然あったわけでございますが、そのような大きな背景が一つあった。  そのほかに、やはりここへ来まして日本の企業自身が国際的な展開を積極的に八〇年代に入りましてからするようになってきたという背景があると思います。日本の海外直接投資は一九六〇年代ぐらいから実は行っておるわけですけれども、七〇年代の後半ぐらいからいろいろと国際的な経験を積んでくるということで、日本の企業の国際的展開が、海外直接投資だけに限らず、技術移転でありますとか、いろいろな側面で八〇年代に入って花開くような背景がそこにはあったということではないかと思います。  さて、現在の貿易構造の変化と海外直接投資の増大ということの大きな要因を幾つか考えてみたいと思うんですが、背後には大体八点ぐらいの問題があるのではないかというふうに思います。  まず第一には、マクロ経済的な要因でございまして、これは言うまでもなく経常収支の黒字でございます。日本の経常収支黒字が大きくなるということは、やはりそれだけ海外への資本移動ということを引き起こすということになりまして、プッシュ要因としてそれが働いてくるということではないかと思います。それから、当然それは円高という方向に為替レートを調整させるということになると思います。  それから、第二点といたしまして、為替レートが特に八五年の九月以降急激かつ大幅に変化したわけでございまして、この為替レートの変化が生産面での比較優位構造というのを急激に変化させるということになったわけであります。これは具体的には三点ほど要因がございまして、実質の為替レート、それから生産性の伸び、それと名目賃金というこの三者が絡まりましてその比較優位構造を決めていくということでございます。その意味で申しますと、日本は実質の面での生産性の伸びというのは、資本の生産性、労働の生産性、どちらをとりましても極めて高い伸びを示しておりまして、極めていいパフォーマンスを示しておるわけです。しかしながら、実質為替レートの方が、やはり名目の為替レートが大きく変わってしまうということで、切り上がりが激しいということで、比較優位というものを失ってくる産業が多くなったというのが実態ではないかと思います。  また、その背景といたしまして第三の要因に、このような条件のもとで製品輸入が急増をしている、これも非常に大きな要因だろうと思います。例えば一九八五年—八七年の過去三年の間に日本の製品輸入というのは、大体八四年には二五%とか二八%ぐらいでございましたが、八七年にはそれが何と四〇%台にはね上がる。現時点では五〇%近いところぐらいまで製品輸入の全体の輸入額の中に占める割合が上がってきている。これはもちろん油価が下がってきているという面もございますが、やはり非常に大きな輸入構造の変化が現在起こりつつあるということではないかと思います。  この製品輸入の増大は二つの側面がございまして、一つには部品の輸入、これは工業製品、主に重化学工業製品なんかも含むわけですが、そういう部品の輸入というのが一つの側面。それから第二の側面といたしましては、一部の耐久消費財を含む消費財の部門での製品輸入というのがやはり拡大している。この二つの側面が製品輸入の現在の状況ということであろうかと思います。  また、もう一つの第四の要因といたしまして、これは海外直接投資とも関連いたしますが、いわゆる産業内分業ないしは企業内分業と言われている貿易を通ずる分業関係というのがやはり八五年以降非常に進行している。これは八五年以降特に円高に伴いまして進んできているわけでございますが、八〇年代に入りましてから徐々にそういうことは進みつつあったというふうに思います。現在のところ特にアジアNICSと言われております国々との間にはかなり水平分業が進みつつあるというのが実情でございまして、今後この動きはASEAN諸国にもかなり拡大化されるのではないか。ASEAN諸国の場合、すべてのASEAN諸国というわけではございませんけれども、一部の、タイでございますとかマレーシアといったような比較的経済発展が進みつつあるような国との間では水平分業の進展というのが我々が考える以上に進むのではないかというふうに考えております。  第五の点といたしましては、技術移転の進展というのが考えられるのではないか。これは技術の移転が一九六〇年代とか七〇年代の前半に比べますと、一九八〇年代に入りましてから非常に技術の移転が速くなってきている。これは先進国間もそうでありますし、先進国と一部の開発途上国との間にもかなり技術の移転が速くなってくる。これは開発途上国自身の方で、NICSに見られるように、非常に技術をこなす力がついてきているというものもあると思いますが、そういう技術の移転が非常に速くなっているということが挙げられるのではないかと思います。  それから第六の点でありますが、ここでは貿易摩擦と海外直接投資の関係がやはりあると思うんですね。先ほど吉冨参考人の方からも御指摘ありましたように、海外直接投資というのは、生産の比較優位構造によって、生産するのがあるところで非常に不利になったので、最も有利なところで生産をしようということで出ていくということだ けで決まるわけではございません。例えば貿易摩擦のように、貿易障害があらわれまして輸出が非常に困難になっていったというようなケースが出てまいりますと、輸出が難しくなったがゆえに、それでは海外に直接投資をして生産する場所を変えようかという点もあるわけでございます。例えば日米間の貿易摩擦によって日本からアメリカへの直接投資が進むというような場合には、これはまさに貿易摩擦が原因で海外直接投資がなされるということでございます。このような場合にはある程度いろいろな問題が起こってくる可能性が強いと思われます。その理由は、いわゆる非常に強い比較優位を持っていたとしても、輸出ができなくなったということのために海外直接投資を進めてしまうということが起こるということでございます。そのような場合ですと、やはり比較劣位産業が海外投資をしていくということの場合には、割と国際貿易上どこが有利な生産拠点かということで決めるわけですが、比較優位があるにもかかわらず投資をしていくということになりますと、いろいろな問題、雇用の問題でありますとか、そういうようなことに影響が来るという可能性があるのではないかというふうに思います。  それからその次の要因としては、日本企業自身がやはり積極的な国際展開を現在行っている。これはただ単に生産拠点を移していくという今までの動きだけでなくて、一部のヘッドクォーターを積極的に海外に移転させていくという動きがもう既に出始めておる。このヘッドクォーターを移す動きというのはどういうものでありますかというと、これほどまでに円高が進みますと、大体ヘッドクォーターとして一般の製造業の方は、世界企業と言われているような大きな企業の方ですと四つぐらいの生産拠点、それから四つぐらいのヘッドクォーターを考える。これは日本、米国、ヨーロッパ、アジアというこの四極の体制をつくるというようなことになってまいります。そうなりますと、そのヘッドクォーターの中で生産を移すだけでなくて、マネジメントもある程度移していく。それからもう一つ大事なことは、RアンドD、研究開発も、基礎研究は例えば日本でやるけれども、生産する拠点がそれだけ広がりますと、応用技術の部分はやはり生産する拠点の方が有利になってくるというような可能性もございまして、RアンドDの一部もだんだんと世界の他の地域の各ヘッドクォーターに移転していくというような傾向が徐々に出てくるというようなことになっております。  それから最後の要因といたしまして、アジアNICSとASEAN諸国、これらの国々の経済発展が非常に好調である。これはやはり日本の経済構造調整にも大きな影響を与えているというふうに考えられます。しかも、これらのアジアNICS、ASEAN諸国いずれをとりましても、かなり積極的な輸出志向型の経済開発戦略を採用してきて、かつそのパフォーマンスもかなりよろしい。これがやはり日本の貿易構造とか海外直接投資にも大きな影響を現在与えているというふうに考えられます。  さて、今後の問題なんでございますが、このように製品輸入、それから海外直接投資というのが進んでくると、産業構造とどういう関係になるだろうかということなんですが、これまで日本の海外直接投資というのは日本の設備投資と比べましても極めて小さな規模で、例えば日本の設備投資の十五分の一でありますとか十七分の一という程度でございました。それがだんだんと規模が大きくなるに従って、今度は日本の産業構造との関係というのが明らかにここで考えておかなければならない問題になってきたことは言うまでもありません。  特に、先ほど申し上げましたが、現在NICSとの間では既に水平分業が進んでいて、二、三年後からこれはASEAN諸国等を中心として製品輸入がさらに大きくなってくるということが予想されます。  このような状態において日本の企業なりあるいは産業といったところがどのような対応をしておるかということでございますが、日本の企業の皆さんにヒアリングいたしますと、やはり積極的な企業内の分業を行っている。これが第一。その場合に、日本の工場における雇用の問題というのは皆さん割と真剣に考えておられまして、急激に雇用問題を起こすようなことはなるべく避けたいということで、なるべく高付加価値部分のところは日本に残して、単純な部品のところとかそういうところを移していくというような考え方で現在進められております。  それからもう一つの方向は、積極的な事業転換をしていこうという傾向が非常に強い。事業転換もいわゆる関連事業だけではなくて、今までは余り考えられなかったような異なる分野の事業へと移っていくというような面が考えられております。これは大企業もそうでありますけれども、中小企業の中にも非常に積極的にそういう方向を進めておられるというところが数多くございまして、非常に積極的な事業転換が図られている。  それからもう一つは、いわゆるソフト化と申しましょうか、経済全体のサービス化ないしは消費に関連するようなもので事業の転換を図っていくというような、内需型の方に事業を転換していこうというような傾向が非常に強いということが言えるかと思います。  最後に、産業の空洞化の問題にちょっと触れてみたいと思うんですが、現在までのところ産業の空洞化というのは、現時点で考えますと、短期的にはその可能性というのは今のところ低いのではないか。これは日本のマクロの経済指標が皆非常に現在よろしいということで、内需に大分支えられている部分というのがございまして、その意味で産業の空洞化が顕在化するということは当面ないというふうに思います。これはもちろん内需拡大ということに並んで、日本企業の高い調整能力とか、RアンドDを積極的に進めているということ、それから技術水準などを非常に積極的に高めていくという努力ということが十分評価されていいのではないかというふうに思います。  ただし、やはり雇用問題というのは、長期の問題として見ますと、そういう産業空洞化との関連で重要性が高まるのではないか、こう思います。というのは、現在のところ、やはり日本の雇用の問題として全体に人口の高齢化がございまして、積極的に産業調整なり経済調整をやっていく場合に、高齢化してきた雇用ということをどのように考えるか。つまり、積極的に産業構造を変えていくためには技術進歩が当然必要です。そうなりますと、その技術の進歩に合うように雇用の構造も変えていかなきゃいけない。それは高齢化になればなるほどそのコストが高くなってくるのではないかというふうに考えられますので、今後、その高齢化、技術の進歩、産業構造の転換というこの三者のバランスをどのように図っていくのかというのが非常に重要であろうと思います。  それからもう一つは、生活様式が大分変わりつつあるのではないかというふうに思います。その面では、そういう生活様式の変化みたいなものが新しい労働力の需要をいかに生み出していくのかということではないかと思います。  最後に、全体といたしまして最も重要なことは、産業の空洞化なんかの可能性はないというわけではないわけで、十分配慮しなければいけないということでありますから、最も重要なことはマクロの経済政策をいかに適切なものとして維持していくか。これはまず第一に言えることは、適切な為替レートの維持ということでございます。急激な為替レートの変化というものが起こりますと、やはり非常にその構造調整をしにくくするという面があるのではないか。それからもう一つの点は、適切な経済成長の維持ということでございまして、これは財政金融政策を適切に維持していただいて雇用の確保をしていただきたいということに尽きるのではないかと思います。  簡単でございますけれども、以上で終わります。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) どうもありがとうございま した。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は会長の許可を得て順次御発言をお願いいたします。

及川一夫日本社会党・護憲共同

○及川一夫君 二点お伺いいたします。  我が国の産業構造の変化という面で、一時は一体どうなるものやらという大変迷いを含めた論議が非常に多かったと思うんですね。その象徴として鉄とか造船産業、一次産業がとらえられて、日本経済はどんなぐあいに進展をするのかということが非常に心配だったんですが、しかし、だからといって日本の産業、企業が海外に進出することがその道であるというふうには思いたくないし、また正しくないんじゃないか。やはり国内産業というものをきちっと維持していて初めて海外進出という問題も成り立っていくものだと私は思っているわけなんです。  そういう前提に立ちますと、今でも余り安心ができないと言われている鉄鋼とか造船産業、この一次産業と言われるものが日本の産業経済の中でどこまで維持しなければならないのか。仮に一〇〇という数字があるとすれば、その四〇%は一次産業で維持しなきゃならない、あるいは二〇%でいいんだと、そういう議論は余りお聞きしたことがないんだけれども、この鉄とか造船というのはゼロになるわけは絶対ないというふうに思うし、とりわけ鉄なんかはむしろ上向いている。造船の場合には、これは韓国との競争ということがどうも根っこにあるようで、しかし、韓国も民主化されて、そして労働者の賃金も上がってくると、技術力では何といっても日本の方が上だという自信を造船業界は持っているようですから、やがてはもう一度世界の造船業界に乗り出していくことができるという、そういうことを聞いたりなんかするものですから、したがって、この一次産業の日本産業経済における位置づけ、割合といいますか、どの辺まで確保すれば軸となり得るのかという、そういったことをひとつお聞きしたいというのが一つであります。  それから二つ目には、海外進出の企業もそうなんですが、日本の今の企業の場合に一つの企業が幾つもの産業を起こしていく。これは中小企業なんかでも、多種目事業と言うんですか、そういうものを抱え込みながらやっていっているんですが、これがそのまま成長していくと、商店とか、あるいは、いいか悪いか別なんですが、俗に言う零細企業と言われる人たちの生きる道ですね、一時はスーパー問題なんかでも大変騒がれた問題なんですけれども、こういったことについて産業構造の転換との関係でいいのか悪いのかという問題と、それらをどういうふうに位置づけて産業の面で、経済の面でリードしなければいけないのかというようなことについて、ございましたらひとつ教えていただきたいと思います。  以上です。

櫻井眞日本輸出入銀行海外投資研究所主任研究員

○参考人(櫻井眞君) まず、第一の御質問からお答えいたしたいと思います。  いわゆる構造不況業種と言われておりますような鉄、造船といった産業でどこまで日本の国内経済というものを維持していくべきかという御質問かと思いますが、まず第一に、鉄、造船といったところの国内需要が非常に大きいということだろうと思うんです。したがって、当然鉄の場合は韓国等の追い上げがあるということは事実でございますけれども、やはりここへ参りまして住宅関連投資なんかが出てまいりまして、それに続く国内の設備投資が非常にことし好調だと。稼働率も随分上がりまして、やはり稼働率を維持するということは非常に私は重要だろうと思うんです。というのは、こういう装置産業の場合、稼働率が上がればそれだけコストダウンに相当つながる、なおさら競争力も出てくるという面がございまして、鉄鋼産業は長期的に何らかの調整を当然御自身の努力で図っていっているわけですけれども、それがしやすくなるということがございますから、やはり内需をどういうふうにきちっと維持していただくか、そういう努力をされる中で調整の余裕が出てくるんではないかということではないかと思います。  それから、造船産業の問題でございますが、労働省がお調べになった例の名目賃金の比較が八六年ぐらいまで利用可能なんですが、それを見ますと、日本の製造業の平均賃金、これを指数として一〇〇といたしますと、韓国それからその他のNICSぐらいですけれども、この辺で大体二五から二〇ぐらい、シンガポールなんかになりますと、賃金を凍結しておりましたので一八ぐらいの指数になるかと思うんですが、日本の大体四分の一から五分の一程度でございます。ところが、日本の場合現在でもなお規模別の賃金の差というのがございますから、いわゆる大企業と言われているような一部上場企業なんかだけをとりますと、製造業の平均賃金の大体一・五倍ぐらいはあるだろうというふうに思います。また、一部の産業では、かなり賃金支払い能力の高いところですと製造業の平均賃金の二倍ぐらいまでいっているのがある。そうしますと、韓国と日本の間で、造船業なんかで韓国が日本の大体十分の一の名目賃金というふうなことになってきているわけでございます。したがいまして、賃金面という点から、幾ら生産性が高いとは申せ、当然競争力がなくなってきているということは事実でございます。  このような状況でどのように対応するかということなんですが、やはり造船業界等の動きを見ますと、大体三つぐらいの方向で進んでいるのではないか。  一つは、産業の再編成という方向が大分進んできている。これはキャパシティーをどのように適切なキャパシティーまで落としていくかということだろうと思います。  それからもう一つは、全国に工場を持っておりますから、大分皆さん資産をお持ちなんですね。そうしまして、その資産を積極的にうまく利用していこう、再活用していこうというような動きが一つございます。  それからもう一つの動きとしては、やはり技術の水準だけは維持すべきだということで、生産がなくなってしまうということは私は技術のレベルがなくなってくるということに等しいと思いますので、技術の水準を維持ないしはそれ以上に開発できるだけのキャパシティーというものの確保が非常に必要だろうというふうに思います。例えば造船業の場合、現在、造船だけでなくて、機械工業としての役割が非常に大きいという面がございますし、それから航空機のエンジンとかそういうようなものまでかなり最近つくっておるわけで、そういう意味では技術の維持ということが非常に重要ではないか。また、そういうふうに時間をかけてある程度シフトしていくだろうというふうに思います。  したがって、ある程度の国内の需要の維持ということと、それからやはり一九八五年以降のこれほど急激な円高でなければ、問題はどの程度の期間内でどの程度円が切り上がるかということが非常に問題だと思いますので、やはり今後円高の傾向が続くとしてもこれほど急激でない、ある程度時間をかけてなだらかに上がっていくというふうなことであれば、それなりに調整能力が備わってくるのではないかというふうに考えます。  第二の点でございますが、いわゆる多種目にわたって事業を展開されているような企業が最近非常に多い。そういうものに対していわゆる既存の個人商店でございますとか零細企業等がなかなか調整が難しいのではないかという御質問かと思います。  これは確かに最近いわゆるソフト化と言われているような現象というのは、単一の事業にとどまるということが非常に少なくなってきて、産業としてもどこに分類していいかわからないというようなものが大分出てきていることは御指摘のとおりでございまして、非常に我々も頭を悩ませるところなんでございますが、確かにこういう事業がふえてきて、既存の産業ないしは既存の事業分野に多大な影響を与えているということは事実かと思います。このようなケースの場合、やはりある程度の調整ということが行われざるを得ないとい うことにはなるかと思うんですが、やはり問題はそのスピードではないか。どの程度の速度でそれが行われるかということではないかと思うんですね。そうしますと、特にそういうふうな分野に関しては外国からの例えば圧力とかそういうようなものも、流通部門とかなんかに関してはかなり不平不満も我々諸外国に行くとしょっちゅう聞かされるわけです。したがって、当然ある程度の近代化をしていくということは、現在の日本の置かれた立場としてマクロ経済的にはやはりやっていかなければいけない方向ではないか。そうなると、ある程度そういう方向は進めるにしても、どのような形でそれを進めるかという進め方の問題だろうというふうに思います。したがって、基本の方向をきちっと誤らないである程度決めておく、それに対してどの程度の、どういうスケジュールでやっていくかというスケジュールをきちっと何らかの形でプランを立てておくということが無用な摩擦を防ぐ一つの手だてではないかというふうに思います。  それからまた、こういう個人の商店なりそういうところでも非常にサービスの質が高いというのがあるわけですね。そうすると、そういうサービスの質の高いところ、例えばしにせでありますとかそういうところはかなり残っているわけですね。だから、そういうふうな転換というのがやはりおのずから可能になってくる面もあるのではないかというふうに思います。

福田幸弘自由民主党

○福田幸弘君 最初に、海外投資をどの辺まで拡大していくかということのめどでございますね、それほど大きくならぬという話もあるようですけれども。  それから、海外投資が大きくなれば今度は海外投資による収入がふえるわけですから、経常の方は改善されても全体総合収支で見ればこれは改善されないというか、そういう問題になると思うんですね。その辺の投資から今度は収入が入るところのまた考え方をどういうふうにしたらいいかということですね。  それから、自由化の前提でグローバルに資金が動くでしょうが、やはり政策はあるべきだという考えを私持っていますけれども、というのは、国内で基本的なところ、雇用を大きく抱えておるような部門、これは失業問題に絡みますから、そういうところを手放してもらって外国にすぐ行くという点を、これは規制はできませんけれども、やはり政策も何らかの形がないと、経済合理性だけで移動されちゃ困る、雇用問題をやはり国益に考えてもらわにゃいかぬわけですから。  それから、おっしゃっていました先端技術部門は、これ国内RアンドDは持ってないと国力がだめになりますから、技術部門が外国に移ることを容易に許していいのかどうか。これは国の存立の関係ですから、その辺の問題が単なる経済合理性でいいかなという気が一つあります。  それから、外国の方から見ても、入ってきて歓迎している時期と、今度は歓迎しない時期が出てくるんですね。今は勝手に出て自由になっておると思いますけれども、国際情勢が変われば追い出されるんです。その辺のやはり向こう側としても政策は持っているわけで、だから、今は歓迎していましてもその辺が変化するという、その辺は外交問題かもしれませんが、外国ではやはりガイドラインを持っているわけです。主要な資源については資本の持ち分を自国は五一%とか、そういうやはり政策を持っているわけですね、自由化といえども。だから、日本もやはりそういうガイドラインを国内で持つべきと同時に、海外投資を自由にするにしましても、やはりその辺についての海外でのいろいろな諸問題を今からいろいろ予想しながらの外国でのまたあるべき姿ですか、そういうことも、何か自由に動くだけではどうも問題があるという気がします。これはガイドラインが出るかどうか知りませんが、国内、国外ともにそういう問題があるということです。  それから、企業家が海外に投資することを決めるときの決定要因といいますか、企業家の判断するところのファクターは何かということですが、それは地域によって違いますし、産業また製造の内容によって違うでしょうけれども、決め手になっているのは何か。これはNICSと先進国では違うでしょうが、賃金なのか、それとも商品の摩擦から生じたトラブルを避けるためのマーケットを向こうで確保しようというのか、それとも原材料が向こうで手軽に入るのか、その辺の問題。それから、土地が日本ではなかなか確保できないからということなのか。それとも、最後の問題点ですが、税金なのか。日本の税金が高いからと、こういうわけですね。しかし、外国に行っても外国税額控除できますから、その辺は調整はできるにしましても、どうも日本の税金が高いというのを理由に出ていくわけですね。その辺が、特にNICSの場合、これは台湾が法人税二五%ですね。日本は地方税入れて約五〇%今出ていますから、その半分ぐらいの法人税負担。香港なんか一八%ですね。シンガポールは三三%というわけですから、この辺が出ていくときの決め手になっておるかどうか。ちょっとその辺の、外国に出ていくときにどういうところで企業家が決めるのか。それを出ないようにするには日本でどうしたらいいか。日本が減税すれば、それは動かなくなるのかどうか。個人の所得税も含めましてその辺の、ただ自由に出していいというよりも、日本におってもらいたいわけですから、それに対する対応策はどこに問題があるか。税の問題を今申し上げましたが、それは決定要因になっておるかどうか。そういう点について、できる範囲でお話ししてください。

櫻井眞日本輸出入銀行海外投資研究所主任研究員

○参考人(櫻井眞君) まず第一の御質問でございますが、海外投資額が今後どの程度で伸びていくだろうか、またどの程度収入が入ってくるだろうかということでございますが、一九八五年度の日本の海外直接投資額は百二十二億ドルでございました。それが一九八六年度に二百二十二億ドルと、ちょうど百億ドル程度ふえているわけです。そして昨年度、一九八七年度でございますが、これはまだ数字は発表されておりませんが、多分三百三十億ドルぐらいになっているのではないか。ただ、先ほど冒頭でも私述べましたけれども、大きなマクロの要因として、これ以上円高が過去の二年に比べて急激に進むかどうかということがまずございますし、それから日本の経常収支黒字もどうもこれ以上大きくなるかどうかというのはある程度疑問ではないかという時期に来て、徐々に減り始めるのではないか。そうなりますと、それほど高い成長をこれからするということは余りないだろう。そうしますと、海外直接投資というのは設備投資に近い面がございますので、ある程度当年度として伸びていくということはあるかと思うんですけれども、大きく伸びましてもせいぜい一年度で四百億ドルとか四百五十億ドルぐらいのところが上限になるのではないか。  ただ、現在三百三十億ドルぐらいまで昨年度は来ているんではないかと思うんですが、その中でもいわゆる製造業投資というのはそれほど高くなくて、製造業投資は大体その三分の一と考えていただければいいと思うんですね。だから、大体百億ドル前後。その中に日本の海外直接投資の統計の中にはいわゆる不動産投資と言われているものも含まれておりまして、これは日本の産業構造なんかに与える影響というのは当然割り引いて考える必要がある。アメリカのマンハッタンのビルを買うとか、そういうようなことは日本の製造業に直接影響が来るということではございません。したがいまして、今後伸びは鈍るのではないかというふうに思います。  ただ、やはり百二十円台というレート自体が非常に高い円高のレートでございますから、当然今後もある程度海外直接投資は続いていくと思いますし、また新規の投資だけでなくて、増設等の投資も当然時間がたてばふえてくるということになりますので、大体四百億ドルから四百五十億ドルぐらいのところまではいく可能性があるのではないか。また、経常収支の動向いかんでは少し下がってくるという可能性もあるかもしれないと思います。ただ、現在のところ日本の海外投資と一般 に言われたときには間接投資が非常に大きなウエートでございまして、間接投資に比べますと直接投資はまだまだ低いということではないかと思います。したがって、その傾向はそれほど大きくは変わらないだろうというふうに思いますので、直接投資に関しては、せいぜい四百から四百五十ぐらいではないか。  それから、収入の点でございますが、この収入は比較的その予測が難しいのではないかと思います。と申しますのは、どういう収益率を上げておるかということが問題でございまして、その収益率の統計もなかなかきちっとしたものがないということでありますので、なかなか予測は難しいんですが、一つの問題といたしましては、現時点でここ二、三年百億ドルずつぐらいふえておりますが、これはやはり立ち上がりの部分、立ち上がりの時期に当たっておりますので、まだ収益がなかなか出てきてないという面が一つあるだろう。ところが、中期的に見ますと、当然ある程度収益を上げてくるということになりますので、海外直接投資の残高ないしはストックですね、それに対してどのぐらいの収益が上がってくるかということになる。そうなると、やはりこの面からも百億ドル近い収入は上がってくるという可能性は十分出てくるのではないかというような気がいたします。  したがって、今後、経常収支の黒字を減らしていくというのは非常に重要な課題だと思いますけれども、直接投資からの収入がやはりふえてくるということと、それから間接投資の収入はもっとふえておりますから、こういう経常収支の黒字を増大させる要因というのが収入面から出てくるということで、なかなか経常収支の問題は難しいのではないかというふうに思います。  それから第二の、いわゆる経済合理性だけで動いていったときに、雇用の問題とかなんかがどうなるかという御指摘、これは非常に難しい御質問でして、なかなかお答えしにくい、ないしはいずれにしても見通しが立たないという面が一つあるんですが、確かに、経済合理性だけで動いていくということがそれでいいかどうかというのは一つの大きな課題だろうと思うんですね。海外直接投資というのは、民間の企業の行動様式だということですから、当然、経済合理性だけで動いていくということは間違いないと思うんですね。したがって、それが国民経済とどういうかかわりを持つかということ、これはやはり今後の大きな政策課題として何らかの政策を考えてもいいかもしれないというふうに思います。例えば西ドイツの例で申しますと、西ドイツでは一九六〇年代に既に海外投資がかなり盛んだったんですけれども、その当時から、例えば西ドイツの労働組合なんかは海外投資に対してのいろんな意見を出しておるということをやっていたと思いますし、そういう面での政策論議がもっと行われてもいいのではないかということではないかと思います。  それから、第三の問題でございますが、第三の御質問は、海外投資をしていった場合に、日本だけの要因ではなくて、受け入れ国側がどのような受け入れ態勢ないしは歓迎をするのか、あるいは拒否的なことをするのかということだと思うんですが、現在のところ、日本の海外直接投資に関して申し上げますと、資源の場合には世界各国とも、これは先進国も含めてでございますが、割と資源ナショナリズムというのがやはり一九七〇年代にありまして、この影響が非常に強く残っておりまして、例えばオーストラリアとかカナダといったようなところでも、資源に関しては一定の基準なりを設けて海外投資の受け入れを行っている。これは日本の海外投資もそれを守るということで当然出ていっておるということでございます。  それから、問題は製造業の投資なんでございますが、まず製造業の投資で一つ大きな日本の海外直接投資の特徴は、大部分の日本の製造業投資が、特に開発途上国におきましてはジョイントベンチャーで行われている、合弁企業として行われている。かつ、その合弁企業の場合に、ほとんどの国で原則五一%以上の株を開発途上国側に持たせるということになっております。したがって、そういう海外直接投資受け入れ政策をとっている国が大部分でございますので、そういう意味でのチェック・アンド・バランスというのがある程度そこで効いているという面があると思います。  ただ、最近になりまして、多くの開発途上国が国際収支の改善といったようなことを目指しまして、輸出志向型ないしは輸出促進型の海外直接投資の受け入れに非常に積極的なわけです。そのような場合には、輸出産業の場合には、一〇〇%資本供給国側の株主が株を保有してもいいというようなケースが大分ふえてきているということでございまして、若干その開発政策とかそういうようなものによって変わってきているというのが現状です。  その面で申しますと、一九七〇年代の特に初めにございました、東南アジアなんかで強かった日本の海外直接投資に対する批判というのは、一九八〇年代に入りまして、現在非常に投資がラッシュしておるにもかかわらず、現在は非常にそれが鎮静化しておる。これはやはり日本の海外直接投資も何十年来の経験を踏まえてかなり慎重に行動するようになってきているという面が一つあると思うんですね。  それからもう一つの重要な側面といたしまして、先進国に対する投資、製造業の投資なんですが、この面で、若干アメリカなんかに対する製造業投資の中に少しずつ海外投資に対しての問題点を指摘するという向きが出てきております。これは例えば日本の企業がアメリカへ進出した場合に、部品を日本の企業からしか買わないというような問題なんかでございます。これは例えば日本は日米間の経済摩擦、日本の市場のクローズネスということを全く同じようにアメリカに持ち込んでおるというような問題の指摘というのが一部の産業では出てきている。それに対して、日本の企業がかなり現地での調達比率を最近上げるように努力をしてきておるというのが実情ではないかと思います。  で、ガイドラインが果たして必要であるかどうかという御質問ですけれども、これはなかなかちょっと難しい問題で、果たしてそのガイドラインをつくって強制力を持たせるのかどうかということが一つの問題だと思うんですね。一つの問題としまして、先ほど申し上げましたが、日本のこれまでの企業が比較的ジョイントベンチャーとして出ていったという面が、過去のアメリカとかヨーロッパの海外直接投資が一〇〇%保有で割と出ていったというのに比べて比較的摩擦を少なくしていた面というものもあるのではないか。コード・オブ・コンダクトなんかがそれほど日本では問題に過去にならなかったという面があるのではないかというふうに思います。  それから、第四の御質問でございますが、企業の直接投資の決定要因は何かということでございます。これはNICSの場合、それから先進国ないしはASEANの場合といったようないろいろと異なる要因が効いてきているということは間違いございません。やはり生産の面ですと非常に土地というのが効くということも一般的には事実だと思います。しかし、NICSの場合ですと、為替レートというのが非常に効いている。これは当然名目賃金との関係——生産性、名目賃金、為替レート、この三者が一体となって効いてきているということは間違いないと思います。この点に関しましては、最近NICSからさらにASEAN諸国へという日本の海外直接投資のシフトが少しずつ出てきている。これは御承知のとおり、台湾などは現在アメリカから大分台湾元の切り上げの圧力が強くなってきて、過去二年間に三〇%以上の台湾元の切り上げを行ったわけですね。したがいまして、だんだん台湾なんかで生産することが決して有利ではないというふうになってきているというようなことから動きが少しとまっている。こういうことを見ても、やはりNICSはかなり賃金、為替レートというところが効いているのではないかというふうに思います。  それから、先進国の場合でございますが、先進国の場合は、一九八〇年代の前半ぐらいまでかなり貿易摩擦ということが一つの大きなきっかけになっていたということは間違いないと思います。これは現在でも続いておりまして、その貿易摩擦がやはり大きな要因であることは円高以降もそう大きく変わらないと思います。  ただ、御指摘の点の税金でございますが、この税金は非常に最近重要なテーマになってきているかと思うんですね。特に第一次レーガン政権下で一九八一年以降いわゆる設備投資減税と加速償却制度をとった。これによって、これは大阪大学の中谷教授が計算されたところによると、日本の法人の法人税の実質負担が六〇%、結果から見ると、それがアメリカでは三〇%だということでございまして、日本の半分だと。これがかなり日本の海外直接投資を促進した要因だろうということでございますが、これが第一の要因であったかどうかは必ずしもわかりません。しかし、これが一つのプラスの促進要因として働いたことは私も事実だろうというふうに思います。  したがって、今後経済が非常に国際化していくという中で、タックスのシステムを国際間でどう調整するかというのは、やはり非常に大きな今後の課題になっていくのではないかというふうに思います。現時点でのシステムのもとですと、やはり世界じゅうタックスヘーブンをつくって、いかに投資を利用するかということにどんどんシフトしていくという可能性が強いので、その辺は十分今後の課題として考えておく必要があるのではないかというふうに思います。

馬場富公明党・国民会議

○馬場富君 参考人にお尋ねします。  特に直接投資の問題につきまして、七〇年代には十億ドル、八〇年代には百億ドルという十倍の伸び方。それに、先日もこの委員会で愛知県等に視察に行きましても、トヨタを中心といたしまして関連企業の海外移転というのは急速に進んでおります。    〔会長退席、理事沢田一精君着席〕 だから、今後これはどんどんどんどん進むと、特に摩擦の激しい円高関係の影響力のあるドル圏域にということになってくると思いますが、これがどんどん急速に進んでくると。  そういうことを考えていきますと、先生のお説の中に直接投資のマイナス効果というのが言われておりますけれども、一点はやっぱり産業の空洞化だと思うが、まだそういうことについての問題が起こっておりませんけれども、産業空洞化はこれからだと見た方がいいと思うんですね。その点で先生のお考えと、それからもう一つ、先生のおっしゃっています直接投資のマイナス効果の中でブーメランの効果の問題ですね。それからもう一つは、海外投資摩擦が将来起こるんじゃないかという点ですね。  それから、アメリカが今双子の赤字と日本は黒字の間の中で、向こうは赤字を承知で買っておってくれるという現状ですね。これは長期的に続くわけはない状況だと、異常状況だと見た方がいいと思うんです。そういう点で、将来的には今後大統領選後に大きい経済政策が打ち出されてくると、こう思ったときに、直接投資のマイナス効果とあわせてやはり日本がここで強力に考えなけりゃならぬのは内需拡大政策ではないかという点で御意見賜りたいと思います。

櫻井眞日本輸出入銀行海外投資研究所主任研究員

○参考人(櫻井眞君) 直接投資の効果もいろいろな効果があるんですけれども、一般にマイナス効果と言われているものにブーメラン効果とかいろんなことが指摘されているわけです。    〔理事沢田一精君退席、会長着席〕 御指摘のとおり、むしろこれからマイナスの効果が出てくるのではないかという御指摘で、これはやはり今後の問題として当然ある程度出てくる可能性があることは事実だと思います。ただ、それはいろんな条件がついてくるのではないか。やはり日本の産業構造の転換というのがうまくいかないということになると、この効果が非常に目立ってくるということだろうと思うんですね。これはやはりRアンドDであるとか、事業転換とか、技術水準を高めるということによって産業構造をどういうふうに変えるかということに成功しない場合には非常にそれが目立つ。我々としては、今まで海外直接投資の効果を見る場合に、どうしてもイギリスとアメリカの例というのが先例として挙がってくるわけです。この両国の場合にやはり非常にマイナスの効果が大きかったということだろうと思うんですね。これは例えばイギリスの場合ですと、もう既に一九二〇年代に当時のイギリスの代表的な経済学者でありますJ・M・ケインズという人が、当時のイギリスは国内の設備投資を怠っていると、どんどん海外に直接投資をするので、海外直接投資を禁止しろというような非常にきつい表現のことを言っているわけです。これはやはりイギリスがその後のイギリスの展開、ここ数年イギリスは大分調子がいいんですけれども、その後のイギリスの展開を見ますと、一九三〇年代以降の国内の設備投資を怠ったということが非常に大きな影響を持って、産業構造の近代化がおくれたということがマイナスの効果をすごく大きくしているという面があると思うんですね。  そういう点から申し上げますと、日本の設備投資というのが、これは先ほど企画庁の吉冨所長がおっしゃっておりましたとおり、非常に底がたくて、日本の場合は設備投資がかなり今のところ積極的に伸びている。日本の設備投資が非常に伸びているということは、資本の年齢が非常に若いということです。それから、技術水準が一番新しい技術水準を持って設備投資はされるというのが通常でございますから、そういう意味で非常にプラスの効果は大きいわけですね。したがって、海外直接投資だけだとマイナスの効果が出てくる可能性が強い。ところが、それに伴って企業が同じように国内の設備投資も分野を新しく見つけてしていくということが非常に重要だろう。その意味で言えば、やはり設備投資に対するいろんな税制の問題とか、そういうことも非常に今後海外投資を進めていく中でいろんな点を考えていく必要があるのではないかというふうに思います。  それから、ブーメラン効果でございますが、ブーメラン効果には大体大きく分けて二つの効果があるかと思います。  これは一つには、海外直接投資をしまして、その直接投資したプロジェクトから日本へ製品輸入されて入ってくるという効果、これは割とダイレクトなブーメラン効果と思います。ところが、もう一つのブーメラン効果は、日本から海外直接投資をしまして、そのプロジェクトから例えば第三国に輸出が伸びていく、その輸出が伸びたことによって日本からの輸出が減っていくというような効果、これは非常に間接的でございますけれども、そういう二つのブーメラン効果が考えられるわけです。これはいずれも日本の輸出でありますとか日本の需要という点から見ればマイナスの効果でありますけれども、最近私どもでいろいろとヒアリングをしますと、そういうマイナスの効果だけでないブーメラン効果というのがかなり見受けられるというのが非常に興味ある点だと思うんですね。  これはどういうことかと申し上げますと、例えば日本から海外投資が出ていって、NICS諸国が非常に経済発展をしていく。そうすると、これは日本の海外投資だけの問題じゃありませんけれども、NICS諸国自身が経済発展をしたことによって新しい日本の輸出機会とか、それから日本の企業の国際的な展開の機会というのが出てきて、そこからの収益が非常によくなっていくというようなケースが非常にあるんですね。  例えば一つおもしろい例なんですが、カナダのバンクーバーに大きな自動車の荷揚げのボートがありますが、これは日本の企業が海外投資をしたものなんですね。当初その港をつくった当時は、日本はまた貿易摩擦を拡大するのかという批判が非常に八〇年代の初め強かったんですが、現在そのプロジェクトから非常に収益を上げているわけです。それはどういうことかというと、韓国の自動車産業が非常に発達してカナダ、アメリカに輸出が伸びていく。そのことによって日本がカナダ へ投資して行った港のプロジェクトが非常に収益がよくなってきているというような面がありまして、最近の国際展開というのがプラス・マイナス非常に複雑に絡み合ってきているというのが実情ではないかというふうに思います。したがって、一概にマイナスの効果だけがこれから大きいということは必ずしも即断はできない。ただ、十分我我はそういうものに備えておく必要があるだろう。その意味では御指摘の内需の拡大ということを適切に図るということが非常に重要ではないかというふうに思います。  それから最後に、投資摩擦の点でございますが、私は投資摩擦というのは、程度の問題ではありますけれども、これだけ海外投資が大きくなってくるということになりますと、ある程度の投資摩擦というのは当然出てくるということを覚悟しなければいけないというふうに思います。例えば、先ほど現地での調達比率が非常に低いというような不満があるということ、これは当然不満が出てくるわけで、不満が出てくれば、その不満が出てきたことによってどのように調整していくかということが当然行われるということになりますし、それからまた、現在不動産投資なんか米国なんかに対して非常に巨額の不動産投資が行われているわけですが、不動産投資の場合ですと、それが米国の雇用につながらないというような批判が非常に強いわけですね。それもやはりそのとおりでございます。その意味で言いますと、不動産投資なんかの場合はむしろ直接投資の範疇に入れて考えるということがある意味では問題ではないか。これはむしろポートフォリオの投資に近い側面を持っているということで、海外直接投資とは少し違う形での政策対応があってもいいのかなというふうな感じを持っております。

神谷信之助日本共産党

○神谷信之助君 一つだけ、時間の関係もありますから、お聞きしたいんですけれども、海外への直接投資あるいは生産拠点を海外に移していくというそういう状況について、過去の外国の経験やあるいは予想される矛盾をどう、あるいは摩擦をどう解決していくかという角度から今いろいろお話しになったんですけれども、もう一つ大事なのは、国内の経済に一体どういう影響をそれが与えるのか、そういう点で参考人は雇用対策の問題について提起をされております。  私はずっと見てみますと、例えば鉄鋼にしても、石炭にしても、あるいは造船にしても大量の合理化、人減らしがやられている。それから、今度は常用労働者が減って、臨時労働者がずっとふえてくる、あるいはパート労働者がふえてくる。これは最近の労働省の雇用動向調査の結果でも明らかになってきていますね。一方、賃金はずっとそういう関係もあってほとんど伸びない。最低の伸び率になっていますね、最近。そういう状況が一方で起こっているし、それから中小企業あるいはとりわけ企業城下町なんかでは大変な状況が起こってきているというように思うんですね。  その場合問題は、鉄鋼の場合もそれから石炭なんかも特に典型的だと思いますが、それぞれの弱い部分、悪い部分を切り捨てて、そして外へ出ていくという、そういう状況になっている。しかし、三井なら三井、三菱なら三菱の全系列でその問題を解決するというのじゃなしに、そこは切り捨ててしまって、健全な部分は外国へ行ってさらに一層利潤を上げるという、そういう状況になっているわけでしょう。これですと、外へどんどん出ていったそういうところは栄えていくけれども、取り残されて日本の国内に残っているものはどんどん切り捨てられて衰退をする、そういう状況になるわけです。  それをなくしていくために今とっているのは、例えば雇用調整金やその他のいろんな制度をやって離職者に対する手を政府が打っているんですけれども、そうじゃなしに、その系列全体でもっとやらにゃいかぬ。そういう意味では、企業の社会的責任を果たさなきゃならぬ。こういったことが、これから日本の経済が国際的にも他国と協調をしながら、しかも経済の基本は国民の暮らし、国民生活の向上、これを目指していくんだということをこの間自由討論の中でもある委員さんもおっしゃったんですけれども、まさにそれを目指すものとしたら、そこを抜きにして、一部の海外進出ができるそういう力量を持っている企業、栄えるところだけに目を向けておったんでは大変なことになるんじゃないかというふうに私は思っているんですが、この辺についての日本の経済の発展をどういう物差しで見るのかという点での参考人の御見解を聞きたい、こう思います。

櫻井眞日本輸出入銀行海外投資研究所主任研究員

○参考人(櫻井眞君) 大変難しい御質問だと思うんですが、確かに現在すべての部門で国際化が図られているわけではございませんし、当然そこにはある程度ラグがございますから、いろいろな部門があってそのベネフィットを受けないというような部門がかなり出てくることは事実でございます。御指摘のとおり、企業の社会的責任といいますか、これは当然こういう時代になってくるとある程度考えていかなきゃいけないということは御指摘のとおりかと思いますが、例えば欧米の企業と日本の企業というのを考えたときに、これまで私がヒアリングした経験でいきますと、欧米の企業に比べると、日本の企業はかなり国内に気を使って、まだそう経済合理性だけでの判断で行っていない。というのは、これは非常におもしろい点は、日本で企業にヒアリングに参りますと、本社の方に聞いた場合と、それから工場の方に聞いた場合とで答えがかなり違うという面が非常にあるんですね。これは、本社の場合ですとヘッドクォーターですから、こういう状況下でどんどん海外投資なりそういうものをしていかなきゃいけないということをおっしゃるわけです。ところが、現場の工場へ参りますと、やはり雇用問題が大変だから非常に抵抗が強いということです。したがって、そのバランスをかなり見ながら、次はどういう部門を移していくか、それでどこを残して、さらにはどこを国内で伸ばしていくかということを企業戦略として考えるというような面が非常に強いということで、その意味で言うと、欧米の企業に比べると、日本の企業はもともと体質的にそういうものが少しはあるのではないかという気がいたします。ただ、今後海外投資が大きくなってくればくるほどそういう問題がますますセンシティブな問題になってくるということは御指摘のとおりかと思います。  ただ、もう一つの問題といたしまして、現在の海外投資が進むということと同時に、海外直接投資がこれだけの円高によって進んだという側面が強いわけですから、問題はその円高のメリットをもっといかに日本の国内にベネフィットが来るように制度を変えていくか、あるいはその効果が出るようなシステムをどうつくっていくかということが非常に重要なのではないか。これは賃金が上がっていっていないという面は確かにございますし、そうしましたら、物価がもっと下がっていいという面があってもいいわけでございます。したがって、そういう制度を、これからこういう国際的な社会の中で生きていかなければいけないという日本経済の中でどう工夫してもっとそれを促進していくかということが非常に大きな課題ではないかというふうに思います。そういうことをやりませんと、海外直接投資でマイナスの効果だけが目立つというようなことになる可能性があるということで、そういういろいろなマクロの経済とか制度を変えるということが伴って初めて海外直接投資も順調に伸びていけるんではないかというふうに思います。

橋本孝一郎民社党・国民連合

○橋本孝一郎君 一点だけお尋ねしたいと思います。  景気は確実にというんですか、順調に拡大しておりまするし、為替レートも比較的安定しておる、こう見れると思います。問題は米国の景気だろうと思うんです。大統領選が終われば当然新しい方針を打ち立てるわけなんで、容易に想像できませんけれども、今の貿易収支状況からいけば、恐らく強力な貿易収支解消策というものがとられて、いわゆる経済縮小というんですか、方向が世界的に見てこれは一般的には考えられる方策だと思うんですけれども、先生の御見解をお聞きした いと思います。

櫻井眞日本輸出入銀行海外投資研究所主任研究員

○参考人(櫻井眞君) 大変難しい質問でちょっとにわかには答えにくいんでありますけれども、確かに現在アメリカの景気の判断というのは大きく二つに分かれているというふうに言ってよろしいかと思うんですね。つい二週間ほど前ちょうどワシントンからニューヨークあたりに二週間程度いたんですが、アメリカの金融関係の方に聞きましても意見が比較的分かれております。  ただ、現在の世界の経済のためにアメリカがどういうふうな経済政策をとるべきかということからいえば、これ以上景気を過熱させないということの方がむしろ大事であろうと。そして、アメリカ自身の経済構造を変えるということがやっぱり非常に重要な課題だと思うんですね。これは当然のことながら世界の有効需要という面からいえばマイナスの効果がございますし、アメリカ経済が若干伸びが鈍るということは、ただ単に日本経済だけでなくて、特に開発途上国の債務問題、そういうものに与える影響も非常に大きいわけでございます。したがって、アメリカ経済はこれ以上景気が拡大するということは余りないのではないか。むしろ引き締めぎみで、新しい大統領になってから本格的な経済構造の調整をむしろしていかなければいけないということになるかと思います。  そうなりますと、当然のことですが、いろいろな形で日本に対する経済的な応分の負担といいますか、そういうようなものも要求が強くなってくるということは十分に考えられるということで、その意味では、海外直接投資の問題にとどまらないで、むしろ経済援助でありますとか資金還流の問題とか、そういうことがかなり大きな問題になってくるのではないか。その意味では、現在の資金還流の問題やなんかが向こう三年間というようなことでやっておりますけれども、その三年間にはとどまらない、むしろ長期化していくんではないかというふうに考えております。

橋本孝一郎民社党・国民連合

○橋本孝一郎君 ありがとうございました。

大木正吾日本社会党・護憲共同

○会長(大木正吾君) 以上で櫻井参考人に対する質疑は終わりました。  櫻井参考人には、お忙しい中を本調査会に御出席いただきましてありがとうございました。  ただいまお述べいただきました貴重な御意見等につきましては、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時二十二分散会

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