本会議 第26号
- 発言数
- 18 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1988/05/24
会議録
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。 ────◇─────
○議長(原健三郎君) 御報告いたすことがあります。 議員森美秀君は、去る十五日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。 同君に対する弔詞は、議長において昨二十三日贈呈いたしました。これを朗読いたします。 〔総員起立〕 衆議院は 多年憲政のために尽力し さきに科 学技術委員長大蔵委員長の要職につき また国 務大臣の重任にあたられた議員従三位勲一等森 美秀君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささ げます ───────────── 故議員森美秀君に対する追悼演説
○議長(原健三郎君) この際、弔意を表するため、吉浦忠治君から発言を求められております。これを許します。吉浦忠治君。 〔吉浦忠治君登壇〕
○吉浦忠治君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員森美秀先生は、今月十五日入院先の関東逓信病院において、肝不全のため、逝去されました。 森先生は、昨年秋以来体調を崩され、療養に努めておられると伺っておりましたが、去る四月二十九日、宮中で催された祝宴に出席した私は、たまたま近くの席に先生をお見かけし、久方ぶりに言葉を交わす機会を得ました。その折、森先生は「もうこのとおり元気になったよ」と力強く私に話しかけられ、私が「これからも健康に十分気をつけて頑張ってください」と申しますと、満面に笑みを浮かべてうなずかれたのであります。その様子から、私は必ずや先生は健康を回復されて、これまで以上の御活躍ぶりを示されるものと確信しておりました。しかるに、その日からわずか半月余りしかたたないうちに、思いも寄らぬ先生の訃報に接し、私は茫然として我が耳を疑ったのであります。まことに人の世は無常であり、痛恨のきわみと申すほかはありません。 ここに、私は、諸君の御同意を得て、議員一同を代表して、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手) 森美秀先生は、大正八年八月、千葉県勝浦市にお生まれになりました。父君は、諸君も御承知のとおり、昭和電工、日本冶金工業を初め数多くの近代的企業を創設し、一代にして森コンツェルンを築き上げられ、また、かつて本院議員としても活躍された森矗昶氏であります。そのすぐれた資質を受け継がれた先生は、旧制成城高等学校を経て玉川学園を卒業された後、日本冶金工業に入社されましたが、この間、再度の召集を受け、五年余にわたり軍務につかれました。戦後は、東亜精機株式会社代表取締役、苫小牧ファーム社長、東亜道路工業株式会社副社長などを歴任され、産業界一筋に歩んでこられたのでありますが、やがて先生は、本院議員として活躍中の令兄森清氏の急逝に遭い、その後継者として政界に身を転ずることとなったのであります。 昭和四十四年の第三十二回総選挙に、勇躍立候補された先生は、「先を見越して、先手、先手を打つ政治」、「猛烈果敢に実行する政治」、「人の命と生活を大切にする母の心を心とした政治」をスローガンに初陣に臨まれました。当時、私もこの選挙に初名のりを上げて、ともに選挙戦を戦い抜いたのでありますが、先生の清新な主張と情熱とは、たちまちにして選挙民の心をとらえ、見事に初当選の栄冠をかち取られたのであります。 本院に議席を占められてからの先生の御活躍は、極めて広範囲にわたりました。卓越した識見と豊富な経験をお持ちの先生は、内閣、地方行政、逓信、予算等の各委員を初め、大蔵委員会、議院運営委員会等の理事として、各般にわたる国政の審議にすぐれた才幹を示されました。さらには、大蔵委員長、科学技術委員長の要職につかれ、よくその重責を果たされましたが、先生のお人柄そのままの誠実にして公正な委員会運営には、与野党委員ひとしく敬服するところでありました。 また、自由民主党にあっては、経理局次長、国会対策副委員長、副幹事長、広報委員長に就任されて、党務の処理にあるいは国会対策に尽力され、さらに政務調査会の臨時成田空港建設促進特別委員長、通信部会長、中小企業調査副会長、国土開発調査副会長、行財政調査副会長として、党の政策立案にも敏腕を遺憾なく発揮され、森先生の声望は年を追って一層高められたのであります。 この間に、大蔵政務次官、経済企画政務次官を歴任され、行政の分野にも着々と業績を積んでこられた先生は、昭和六十年、第二次中曽根内閣の国務大臣に任命され、環境庁長官に就任されました。 かねがね、もし入閣する機会があれば、教育か環境を担当してみたいと考えておられた先生にとって、これはまさに我が意を得たポストであったと申せましょう。産業公害に加えて、世界的な規模で広がりつつある自然破壊の現状に日ごろから心を痛めておられた先生は、就任早々、琵琶湖を初めとする湖沼等の水質汚濁対策に取り組まれ、精力的に現地を視察する一方、新たな水質規制の強化策を打ち出されたのであります。 ところが、これに対して、産業界を代表する経団連から、規制の重点は生活排水に置くべきで、産業排水に置くべきではないとの申し入れがなされたのであります。産業界には、企業経営の経験を持たれる先生に対して甘い期待があったものと想像されますが、先生は、この一方的な申し入れに怒りを示され、厳しくその要求を退けられました。この公正にして毅然たる先生の姿勢に、時の世論はこぞって拍手を惜しまなかったのであります。(拍手) 先生は、これに引き続き、スパイクタイヤ問題、野生生物保護問題、公害健康被害補償制度の改革問題等の懸案事項に積極的に立ち向かわれ、みずから率先して関係方面との折衝に当たられるなど、その行動力には目をみはるものがありました。また、先端技術産業による環境汚染という新しい事態に対しても適切な対応を指示されるなど、長期的展望に立った施策の推進に揮身の力を傾けられ、環境行政に大きな成果を残されたのであります。 かくして、森先生は、本院議員に連続して当選すること七回、在職十八年七カ月に及び、その間我が国政の進展に寄与された功績は、まことに偉大なものがあります。 森先生は、諸君もよく御記憶のように、温和な風貌と堂々たる体躯を持つ偉丈夫でありました。少年時代からラグビーと水泳を得意とするスポーツマンであった先生は、まさに、郷里外房の岸辺を洗う黒潮のような清冽さと、潮風に耐えて立つカシの木のような強靱さとを内に秘めた硬骨漢でもありました。同時に、いかにも育ちのよさを思わせるおおらかさを備え、明るく開放的でユーモアに富み、会う人のすべてに豊かな包容力を感じさせずにはおかぬ人格者でありました。 先生は、学生時代を通じて、玉川学園の創始者である小原国芳先生の薫陶を受けられましたが、このすぐれた思想家であり、リベラルな全人教育の実践者として我が国の教育界に大きな足跡を残された恩師に対して、終生、敬愛の念を抱き続けておられました。先生は事あるごとに小原先生との触れ合いについて語り、恩師から深い愛情に根差した教育、心と心とが通い合う教育を授けられた幸せを、たびたびペンに乗せて書き残しておられます。この恩師に対する美しい追慕の思いは、そのまま、人と人との心のつながりを大切にする先生の生活信条となり、それはまた政治信条ともなって、先生と先生を取り巻く多くの人々との間にかたい結びつきを形づくってきていたのであります。 このような先生が郷土の人々にとってどれほどかけがえのない存在であったかは、改めて申すまでもありません。先生もまた、自分を生みはぐくんでくれた郷土に対して、熱い愛情を惜しみなく注いでこられたのであります。 「私は房総に生まれた人間。故郷の人々と房総の幸せのために働くことが、私の生涯かけての念願である。郷土を忘れた政治は、政治とは言えない」と断言してはばからなかった先生は、だれよりも郷土を愛し、郷土の発展のために日夜心を砕いてこられました。成田空港が開港し、千葉県が日本の表玄関となったことに伴い、これにふさわしい交通網の充実を図られ、房総一周縦横断道路の整備や東京湾横断道の建設促進に尽力される一方、これが山の緑や美しい海岸を損なうことのないよう、郷土の環境保全にも格段の意を払われました。また、漁業の振興にはとりわけ深い関心を抱かれ、いち早く増養殖漁業の重要性に注目をし、「これからの沿岸漁業は、とる漁業から育てる漁業へ」と提唱され、海洋牧場等の開発に力を注がれました。 このように、先生が郷土の上に残された業績は多大なものがありますが、それらは、先生を敬愛する多くの人々の心に強く刻み込まれ、またその御遺志は、その人々の手で力強く受け継がれ、永久に消え去ることはないでありましょう。(拍手) 私は、森先生こそは、まさに民主政治の担い手たるにふさわしい真の大衆政治家であったと信ずるものであります。先生は長い政治生活を通じて、いささかも右顧左べんすることなく、憲政の大道を正々堂々と濶歩されました。そこには、常に国民とともに歩み、ひたすら国民の幸福と国家の繁栄を願ってやまない純粋な政治家の姿がありました。(拍手)私は、このひたむきな政治姿勢と強い信念に貫かれた先生の御生涯に対して、改めて深く畏敬の念を覚えるものであります。 釣りざおを手にしては、「世界一のフィッシャーマンとはおれのことだ」と豪語され、四十代の半ばまで現役のラガーとしてグラウンドを駆けめぐったと言われる森先生も、ついに病魔には勝てず忽焉として世を去られました。御年六十八歳。政治家としてようやく円熟の時期を迎えられ、今後は練達の指導者として一層の御活躍が期待されていただけに、先生の突然の御逝去は、まことに惜しみても余りあるものがあります。 内外の情勢が激しく流動する今日、森先生のような卓抜した有為の政治家を失いましたことは、本院はもとより国家にとっても、はかり知れない大きな損失と申さなければなりません。 ここに、謹んで、尊敬してやまない森先生の御遺徳をしのび、生前の御功績をたたえ、心から御冥福をお祈りして、追悼の言葉といたします。(拍手) ────◇───── 国務大臣の発言(農業基本法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度農業施策、林業基本法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度林業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度沿岸漁業等の施策について)
○議長(原健三郎君) 農林水産大臣から、農業基本法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度農業施策、林業基本法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度林業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度沿岸漁業等の施策について発言を求められております。これを許します。農林水産大臣佐藤隆君。 〔国務大臣佐藤隆君登壇〕
○国務大臣(佐藤隆君) 農業、林業及び漁業の各昭和六十二年度年次報告並びに昭和六十三年度において講じようとするそれぞれの施策につきまして、概要を御説明申し上げます。 第一に、農業について申し上げます。 まず、現下の我が国農業を取り巻く内外の経済情勢について見ますと、我が国経済は内需を中心として安定成長を持続するとともに、経済構造調整が着実に進展しつつあります。しかしながら、主要国間にはなお大きな対外不均衡が存在するなどから、引き続き、国際協調型経済構造への変革の推進が求められております。 こうした中で、我が国農業は、経営規模拡大の停滞、生産性向上の立ちおくれ、農産物需給の不均衡などの諸問題に直面し、また、内外価格差の縮小、農業保護のあり方等につき内外から強い関心が寄せられるとともに、諸外国からの市場開放要求が高まるなど厳しい状況にあります。 このような状況のもとで、本年次報告は、OECD、ガット等の場で、農産物貿易をめぐる国際的な動きが活発化していることにかんがみ、主要国の農業政策の動向及び農産物の国際需給への影響を検討するとともに、農業生産の振興を図る観点から、農業生産の低コスト化、高付加価値化の現状と課題を各地の具体的な事例等も紹介しつつ整理し、さらに、農村社会の活性化に向けてのさまざまな取り組み状況を記述したところであります。 そして、今後の農政の重要課題として、産業として自立し得る農業の実現、生産流通体制の整備と合理的な農産物価格の形成、国内での基本的な食糧供給力の確保と農産物市場アクセスの改善、先端技術の開発普及と高度情報技術の活用、活力ある農村社会の建設を指摘しております。 以上の観点に立ち、昭和六十三年度には、農業の体質強化を目指した構造政策等を推進するとともに、需要の動向に応じた生産性の高い農業の展開、農山漁村の活性化、バイオテクノロジー等先端技術の開発普及、食品産業の振興と流通対策の推進など各般の施策を推進していく所存であります。 第二に、林業について申し上げます。 近年、森林に対する国民の要請は多様化、高度化し、また、潤いのある環境をつくる素材として木材が見直されつつあります。しかし、林業、林産業の現状について見ますと、住宅着工の増加等により木材需要が回復傾向にあるなど明るい一面も見られるものの、外材や代替材との競合、労働力の確保等の面で依然として厳しい状況にあります。 このような状況のもとで、今後の林政の重要課題は、林業、林産業の技術革新への取り組み、森林資源の適正な管理、国産材の加工流通体制の整備、林業経営の活性化、山村の振興及び国有林野事業の経営改善であります。 以上の観点に立ち、昭和六十三年度には、林業、林産業の体質強化等のための新たな技術体系の構築、二十一世紀の経済社会にふさわしい森林の整備、林業生産基盤の整備、川上から川下まで一体となった地域林業の形成等の施策を推進し、森林の持つ多面的な機能を高度に発揮させるとともに、活力ある林業、林産業の実現と山村の振興に努めることといたしております。 第三に、漁業について申し上げます。 現下の我が国漁業を取り巻く情勢は、二百海里体制の本格的定着のもとで国際規制が一段と強化されつつあり、経営環境についても、燃油価格の下落等の明るい一面が見られるものの、水産物需要の伸び悩み、円高を背景とした水産物輸入の増大など依然として厳しい状況が続いております。 このような状況のもとで、今後の水産行政の重要課題は、海外漁場における操業の確保、輸入水産物に対抗できる国内供給体制の整備、漁業経営の体質強化、漁村地域の活性化等であります。 以上の観点に立ち、昭和六十三年度には、粘り強い漁業交渉による海外漁場の確保に努めるとともに、漁港など漁業生産基盤の整備、つくり育てる漁業の推進と我が国周辺水域の漁業振興を図るほか、水産業経営対策の充実、水産物の流通加工、価格、消費対策の充実など各般の施策を推進していく所存であります。 以上をもちまして、農業、林業及び漁業の各年次報告並びに講じようとする施策の概要の説明を終わります。(拍手) ────◇───── 国務大臣の発言(農業基本法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度農業施策、林業基本法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度林業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和六十二年度年次報告及び昭和六十三年度沿岸漁業等の施策について)に対する質疑
○議長(原健三郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。衛藤征士郎君。 〔衛藤征士郎君登壇〕
○衛藤征士郎君 私は、ただいま農林水産大臣から御説明のありました農業、林業、漁業の三白書につきまして、自由民主党を代表して、竹下総理及び佐藤農林水産大臣に質問を行いたいと存じます。 初めに、質問に先立ち、農林水産業及び農山漁村に関する現状認識につき申し述べたいと思います。 戦後、我が国経済は、勤勉な国民のたゆまぬ努力により、歴史上例を見ない発展を遂げ、今や世界のGNPの一割を占める経済国家となり得たことは周知のとおりであります。このような発展を支えてきたものは、長い歴史の中で培われてきた農村社会の精神風土、すなわち、共同管理や相互扶助等に見られる連帯の精神あるいは社会への帰属意識の強さを基調とした経済活動面における企業内の協調と企業外の競争の重視にあったと認識しております。その意味で、農業、農村は、日本民族共通のふるさととして高く評価すべきものと考えている次第であります。 翻って現状を顧みますれば、経済界等を中心として効率のみを追求する観点から、比較劣位にあります農業への批判が野方図になされるというまことに憂慮すべき事態が生じております。国家の存亡に関する歴史の教訓に思いをいたせば、その経済社会における比較優位の産業が、強者の論理に基づき、バランスのとれた産業構造というものを考えず、経済的弱者の犠牲のもとにその伸長を図らんとするとき、国家そのものがその終えんを早めていることは歴然たる事実であります。古代フェニキアしかり、中世ベネチアまたしかりであります。このような事実に接するとき、私は、我が国経済運営のあり方として、農林水産業の役割や機能を十分評価し、各産業分野の調和が全体としてとれ、外部の環境変化に柔軟に対応し得る産業構造の構築がこれほど求められているときはないと考えておる次第であります。 申すまでもなく、食糧は国民生活上一日たりとも欠かすことのできないものであり、その安定供給は万難を排して確保すべき政治課題であります。今日、二十一世紀への入り口に立つとき、人口増加、砂漠化の進行等を初めとする地球的規模の食糧需給の不安定性や、急速に供給力を伸ばすことの困難な農業の特質を勘案すれば、安易に海外に食糧の供給を依存し、国内の自給力を低下させていくことは、国民生活安定上極めて問題があります。もとより、農業も産業である以上、基本的には効率を追求し、市場原理が働くようにすべきではありますが、地方における安定的雇用の確保や一大消費市場の提供といった面で大きな役割を果たしている農業について、生産性の低さ、国際競争力の乏しさなどといった面からのみ農業を律していくことは、健全な社会秩序の形成を大きく損なうものであると認識するところであります。 私は、以上申し上げました認識に立って、農、林、漁業の各白書について質問をいたします。 まず、食糧の自給に関してであります。 食糧の自給に関しては、昨今、我が国食料品が割高になっていることから、農産物市場を開放し、安価な農物産の輸入をふやすべきであるなどのマスコミ論調が強まっているように見えますが、本当に国民はそう考えておるのでありましょうか。 御承知のとおり、我が国は世界一の食糧純輸入国となっております。その結果、食糧の自給率もカロリーベースで約五割、穀物自給率に至っては三割強と、主要先進国中最低の自給率となっております。我が国にとって重要な農産物であります米などの国際市場の規模は小さく、また、最近の米の国際価格の急上昇に見られるように、極めて不安定な要素があります。こうした点を大多数の国民は見逃しておるのでありましょうか。答えは否であります。大多数の国民は、一部のマスコミの論調に沿うのではなく、正しい、健全な判断を行っておるのであります。本年二月に公表された総理府のアンケート調査結果がそのことを如実に物語っております。すなわち、七割を超える国民が、多少割高でも基本的な食糧はできるだけ国内で生産すべきであると答えているのであります。安ければ輸入する方がよいと答えた者はわずかに二割しかおりません。私は、コストを無視して何が何でも食糧すべてを自給せよと申しておるわけではありません。食糧のように国民の生活、生存に不可欠なものは、生産性の向上とコストダウンを図りつつ、可能な限り国内で安定的に供給するよう努力していくことが肝要であろうと考えております。国民の声を正しく聞き、それを的確に国政に反映することが真の政治であると考えておりますが、食糧の自給に関する竹下内閣総理大臣の信念と御決意のほどをまずお伺いいたしたいと存じます。(拍手) 次に、現下の緊要の課題であります牛肉・かんきつ問題を取り上げたいと思います。 本年三月末をもって期限切れとなった牛肉・かんきつの日米合意のその後の取り扱いについては、農林水産大臣の二度の訪米を初め、米国側との間で精力的な交渉が行われ、二国間で解決策を見出そうと懸命の努力が積み重ねられてまいりました。この間における佐藤農林水産大臣の不退転の決意と粘り強い交渉に対し、私は深甚の敬意を表するものであります。(拍手)しかし、それにもかかわらず、今日に至るまで米国側の理解と譲歩を得られず、ついに五月四日にはガットにパネルが設置されるという非常事態を迎えるに至っております。 世界の経済秩序に大きな責任を有し、国際国家を志向する我が国としては、国際的な孤立を避けるべきではありますが、他方、我が国の基幹的農業部門であり、地域経済の大きな支柱でもあります牛肉・かんきつ生産の存立を揺るがすことがあっては断じてなりません。牛肉・かんきつは我が国農業の根幹をなすものであり、その生産者は農村、集落の中核的な役割とその指導力を発揮してまいりました。農林水産大臣、率直に申し上げまして、現在非常に厳しい、苦しい御胸中ではないかと拝察いたしますが、今後この牛肉・かんきつ問題の解決に向けどのように取り組もうとしておられるか、そのお考えを率直にお聞かせいただきたいと思います。 次に、米の需要拡大対策についてお伺いいたします。 申すまでもなく、米は国民の総カロリー供給量の三割を占め、また、我が国農業生産額の三割を占める基幹的な農作物でもあります。その米の国民一人当たりの年間消費量は十年前に比べて一七%も減少しており、一年間七十三・四キログラムの消費となっております。このような消費量の減少傾向につきましては、一時緩まるかに見えましたが、最近またそのテンポが速まっており、特に家庭での消費量の減少が強まっております。豊葦原瑞穂の国たる我が国において、長い歴史の過程で文化の一部になっているとも言うべき米について、そのすぐれた栄養バランスなどに関して十分普及啓発に努めるとともに、米飯学校給食の拡大や日本型食生活のよさのPRを大胆にかつ積極的に行うといったことが必要であると考えます。同時に、近年、米の消費形態については包装米飯等のさまざまな加工食品が出回っておりまして、このような新規用途としての分野の開拓がなされなければ我が国の稲作農業の将来展望も開けないのではないかと心配をしておる次第であります。このように、米の需要拡大問題が極めて重要であると思われますが、その方策につきまして、佐藤農林水産大臣の見解を特にお伺いいたしたいと存じます。 さらに、食品の製造、流通の問題についてであります。 農林水産業、食品の製造業、流通業等を合わせた食料品供給産業は、国内総生産が約三十九兆円もあり、我が国国民総生産全体の一二%を占めておりますが、このうち食品の製造、流通等の部門はその四分の三を占め、国民の豊かな食生活を続ける上で極めて重要な役割を担っております。このような状況のもとで、食料品の内外価格差の縮小という農政の当面する重要課題の実現を図る上で、食品の製造、流通部門の合理化を抜きにして論ずることはできないのであります。加工食品の輸入の増大、企業の海外立地等、国際化が進展する中にありまして、また、国民経済のソフト化、サービス化の時代を迎えるに当たりまして、我が国の食品の製造、流通の合理化に関して今後どのような施策を展開していくつもりか、佐藤農水大臣の御所見を賜りたいと存じます。 次に、森林・林業であります。 我が国の国土の約七割を占める森林は、木材の供給のみならず、国土の保全、水資源の涵養等、国民経済の安定、国民生活の向上を図る上で重要な役割を果たしてまいりました。しかしながら、昨今の林業を取り巻く情勢を見ると、住宅着工の増加により木材需要が回復傾向にあるなど明るい一面も見られるものの、円高の進行による外材や代替材の進出などなお厳しい状況にあります。我々の祖先から引き継いだこの森林という貴重な財産を将来にわたり守り育てていくことば、我々に課せられた重大な使命であります。そのためには林業の活性化を図り、外材や代替材に対抗し得る国産材を生産していくことが喫緊の課題であると考えております。また、森林をスポーツ、文化活動の場として利用する等国民の森林に対する要請は多様化、高度化しており、これらにこたえていくためには、多面的な機能を発揮し得る森林の整備が重要であります。 今回提出された林業白書におきましては、多様な森林の整備や低コスト化を通じた林業の活性化を図る上での技術開発の重要性が位置づけられておりまして、まさに時宜を得たものであると考えるところであります。今後は、多様な森林の整備と林業の活性化に向けて技術開発を含め、積極的な施策の展開が求められているところでありますが、この点につきまして佐藤農林水産大臣の御見解をただしたいと思います。 最後に、漁業についてお尋ねをいたします。 我が国漁業は、かつて広い公海、安価な燃油、魚価の持続的上昇という比較的好条件のもとに、沿岸、沖合から遠洋漁場へと漁場の外延的な拡大を図りつつ発展を遂げてまいりました。しかしながら、二度にわたるオイルショック、二百海里時代への突入、経済の安定成長への移行等を契機としてこのような諸条件は失われ、我が国漁業をめぐる状況は大きく変化しております。漁業白書によって最近の我が国漁業をめぐる状況を見ますと、国際的な二百海里体制の定着に伴い沿岸国の漁業規制が一層強化されてきており、例えば米国水域におきましては、本年当初の対日漁獲割り当てがゼロにされるなど極めて厳しい状況になっております。また一方で、水産物の輸入量は年々増加してきており、特に最近の円高傾向がこれに拍車をかけ、食用の水産物国内仕向け量の四分の一を輸入が占めるようになっておるのであります。さらに、漁業経営は、以上のような厳しい経営環境のもとで、中小漁業を中心に負債が累積している経営が多く、その経営体質がますます脆弱化してきております。このほか、漁村においては、漁業就業人口の減少や高齢化が進行しているなど、その活力が低下しております。 以上のように状況の中で、我が国漁業は大きな転機を迎えていると考えますが、今後の漁業政策の展開方向につきまして、佐藤農林水産大臣の御見解を賜りたいと存じます。 以上をもちまして、本年度の農業、林業、漁業白書についての私の質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) 御指摘なさいましたとおり、本年二月に公表されました総理府の世論調査におきまして、少なくとも米などの基本食糧については、生産コストを引き下げながら国内でつくる方がよいという考え方の強さがうかがえる、そういう結果になっておるものと私も認識をいたしておるところであります。農産物貿易問題につきましては、国際的な経済関係、多様な消費者ニーズへの対応といった観点を踏まえながら、我が国農業の健全な発展との調和を図りながら、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおける交渉との関連を十分考慮して対処すべきものである、このように考えております。 また、いつの世も、食糧は国民生活にとって最も基礎的な物資であります。したがって、その安定供給の確保は国政の重要課題であるというふうに感じております。一昨年暮れ、農政審議会の報告がございました。国民の納得し得る価格での供給を念頭に置きつつ、国土条件の制約のもとで最大限の生産性向上を図り、国内での基本的な食糧供給力の確保に努めることが必要である、このように考えます。また、米など国内で自給する体制が確立されているものにつきましては、需給の均衡を図りながら国内自給を維持してまいる、これが基本方針であると考えております。(拍手) 〔国務大臣佐藤隆君登壇〕
○国務大臣(佐藤隆君) まず、牛肉・かんきつについてであります。 私としましては、今後の対応につきましては、我が国牛肉・かんきつ生産の存立を守るとの基本的立場に立って、生産、流通、消費の各般にわたり私の責任を果たしてまいりたいと考えております。なお、本件については、二国間で努力を続けるということは日米双方とも一致しており、私としては、一日も早い決着を目指し、事務レベルの話し合いを積み上げ、二国間解決に努力してまいりたいと考えております。 米の消費拡大につきましては、米の需給均衡に資するとともに、我が国の風土、資源に適した日本型食生活を広く維持定着させていくことを基本として、米についての正しい知識の普及啓発、地域の実態に即した米消費の拡大対策、米飯学校給食の計画的推進、米新加工食品の開発普及の四つの施策を積極的に推進しているところであります。特に、六十三年度におきましては、米需給均衡化緊急対策の中で、米飯学校給食の拡大、他用途利用米の拡大、生産者団体等による消費純増策等を推進することとしております。このような取り組み等を通じて、米の消費拡大の一層の推進を図ってまいる所存であります。 次に、食品の加工、流通の合理化についてであります。 食品の製造、流通部門等から構成される食品産業は、国民に対し食糧を安定的に供給する上で農業と並んで車の両輪にも例えられるべき地位にあり、今後多様化する消費者ニーズにこたえるとともに、農業について生産性の向上を図り、その効果をできる限り消費者に及ぼしていくためには、食品産業の合理化、効率化の一層の推進を図ることが重要と考えております。このため、従来から、食品の製造部門について、原料農産物の安定供給の確保、先端技術の開発導入など食品産業の特質を踏まえた技術開発の推進、国内農産物との結びつきの高い地域食品産業の振興、食品の流通部門について、産地出荷体制の整備、卸売市場の整備、卸、小売業の近代化などの施策を講じているところであります。今後とも、食品の生産、流通、消費の実態等を踏まえつつ、食品の製造、流通部門の合理化、効率化に取り組んでまいりたいと考えております。 次に、森林・林業の活性化方策についてお答えをいたします。 森林は、木材の供給のみならず、各種の公益的機能を有しており、林業の活性化を通ずる森林の健全な育成は国政上の重要な課題と認識いたしております。また、多様化する国民のニーズにこたえた森林の整備も必要となっております。このため、技術開発はもとより、木材需要の拡大、林業生産基盤の整備、森林の総合的利用の促進など各般の施策を推進し、森林・林業の活性化に鋭意努力してまいる所存であります。 最後に、今後の漁業政策の展開方向についてお答えいたします。 水産物は国民の食生活に欠かすことのできない重要な食糧であり、その安定的な供給を図るためには、我が国漁業が産業として健全な発展を遂げていくことが不可欠であります。このため、第一に、我が国二百海里水域を高度に利用するため、漁場の整備開発、栽培漁業の振興等により、つくり育てる漁業を推進するとともに、漁港を初め生産流通基盤等の整備を推進してまいります。第二に、我が国漁業を取り巻く環境の変化に対処するため、粘り強い漁業交渉の展開による海外漁場の確保に努めるとともに、漁業の再編整備を推進してまいります。第三に、近年における消費者ニーズの動向を踏まえ、生産はもより、流通、加工、消費の段階までを含めた総合的な体制を整備し、消費者ニーズに適合した効率的な水産物の供給を図ってまいる所存であります。(拍手) ────────────
○議長(原健三郎君) 前島秀行君。 〔前島秀行君登壇〕
○前島秀行君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、昭和六十二年度農業白書、林業白書、漁業白書について質問をいたします。 まず、農産物自由化問題について政府の所見を伺いたいと存じます。 周知のとおり、佐藤農相の二度にわたる訪米にもかかわらず、日米牛肉・オレンジ交渉は決裂をいたしました。この間の交渉過程は、日本側の一方的な譲歩の連続としか言いようがありません。そして、来月十九日からのトロント・サミット、来月三日のロンドンでの日米首脳会談を控え、二国間で性急に問題解決を図ろうとする余り、課徴金導入さえあきらめて、関税のみの丸裸同然の形で自由化に応じようとする動きが政府にあります。これは国会決議を無視するだけではなくして、我が国農業に決定的な打撃を与えるものであり、断じて許すわけにはいきません。(拍手)この際、原則に返り、竹下総理自身が先頭に立って、我が国の地域経済、文化、国土保全に対する農業の重要な役割や狭い国土の制約からくるところの競争力の限界について関係諸国に説明し、牛肉・オレンジ等の輸入割り当て制度の継続について理解を求めていくべきと考えます。竹下総理の所見を伺いたいと存じます。 また、外務大臣に伺います。 米国、オーストラリアのガット提訴を受け、ガット加盟国に対しいかなる方針で臨もうとしているのか、その決意を伺いたいと存じます。 さらに、農林水産大臣に伺います。 二度にわたる日米交渉で行き詰まったとされている課徴金について、あなたの言葉をかりれば、譲り得ないものとして今後の交渉に臨まれるかどうか、所信のほどを伺いたいと存じます。 この日米交渉に見られるように、我が国農業をめぐる国際環境には厳しいものがあります。今年の農業白書は、こうした国際化の進展する中で、我が国農業のあり方を模索し、その課題をガット・ニュー・ラウンドの場における新たな農産物貿易秩序の形成を踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、市場アクセスの一層の改善に取り組むとしております。しかし、国際化への対応を急ぐ余り、言葉では国内農業の健全な発展を言っておりますが、我が国農業の将来ビジョンを必ずしも明確にせず、一方では食糧輸入数量を年々増加させ、他方では農業の体質強化と称して構造政策の推進、とりわけ農地の流動化等による規模拡大と生産コストの低減等を提唱しているにすぎません。こうした政府の安易な農政推進が、今日多くの農業者に困惑と将来の不安を与えている責任は極めて大きいと言わざるを得ません。政府は、生ぎ延びるかどうかの瀬戸際に立つ我が国農業を一体どう立て直していくのか、何を、どれほど、どうしてつくるのか、さらに流通や消費にまでわたる農政の具体策を国民の前に明らかにする責任があると思うのであります。 また、今年の白書が食糧の自給方針を後退させ、これを食糧の安定供給に置きかえていることも見逃すわけにはいかないのであります。これ以上の食糧政策の後退は、国の安全を守る上で極めて危険であると言わざるを得ません。世界の主要国が、近年、食糧の自給率向上に懸命の努力を続けている中で、ひとり我が国のみがこれを後退させる食糧政策をどうして展開するのか、理解に苦しむところであります。本年二月総理府が集約した世論調査結果を見ましても、自国民の食糧はできるだけ自国で生産していくことに多くの国民の支持がなされております。その点は国民の合意が形成されていると思うのであります。政府に、食糧輸入政策を見直し、自給方針を明確にした政策転換を求める次第でありますが、総理、農水大臣の答弁を求めます。 また、米価をめぐる動きも見逃せません。今、米価審議会の小委員会で生産者米価の新しい算定方式を検討されているようでありますが、それによりますと、生産費対象農家を当面一・五ヘクタール以上とし、約三年後には五ヘクタールの農家を対象とするということであります。ところが、今回の農業白書の農業経済分析を見ましても、ここ三、四年の農産物価格の据え置きと引き下げに伴い、三ヘクタール以上の大規模農家戸数の増加のペースが鈍り、二・五以上三ヘクタール未満の層について見れば増加から減少に転じています。実際には少数しか存在しない層の農家を基準に価格を決定することは、食管制度の重要な柱をなし崩しすることになるのであります。また、価格を引き下げれば小規模農家が耕作を放棄し、その農地が中核農家に集まり、大規模化が進むという仮説が政府の側にあったはずであります。ところが、価格の据え置き、引き下げによって、逆に規模拡大が進まなくなっていることが、ほかならぬ政府の農業白書によって証明されているわけであります。規模拡大を阻む決定的な要因は、農業、工業間の所得格差にあります。製造業賃金に対する農業所得の割合を見ましても、農家平均で製造業の三六%、三ヘクタール以上の大規模農家でも製造業の六三%の収入しかありません。この現実をどのようにお考えでしょうか。また、これで規模拡大が進むとお考えでしょうか。 以上の諸点を総合するならば、日本農業の体質強化のためには、米価を初めとする農産物価格を、農家の再生産を保障する適正な水準で決定すべきであります。農林水産大臣の所見を伺いたいと思います。あわせて、全量管理などの食管制度の根幹は今後とも堅持すべきであると考えますが、農水大臣の見解を求めるものであります。 次に、林業白書について質問をいたします。 「林業技術のルネサンスを目指して」との副題が示すように、今回の林業白書が、機械化による省力化、国民生活に潤いを与えるための都市近郊林の管理のあり方、森林バイオマスの有効利用など新しい技術開発を重点的に取り上げていることは、森林・林業の新しい発展を期そうとする積極姿勢として注目できるし、従来の白書と比較するならば、ロマンを語る白書という評価ができるでありましょう。しかし、将来の可能性を厳しい現状と混同することは許されるものではありません。住宅建設の促進によって木材需要の若干の増加傾向はあるものの、国産材の割合は三四%に下がっており、さらに間伐の実行率の低さ、労働力の不足と高齢化、認定も厳しく治療打ち切りなどが表面化した振動病など、我が国の林業、林産業を取り巻く環境は依然として厳しいものがあります。昨年末策定された全国森林計画の着実な実行も、我が国の林業、林産業が外材や代替材との競合に生き残るための必須条件と考えるべきでありますが、ロマンと現実の落差を埋める努力が百年河清を待つものであってはならないと考えるものであります。森林資源を充実する技術を含めた林業技術のルネッサンスをやり抜く自信があるのかどうか、その決意を農林大臣にお聞きしたいのであります。(拍手) 我が国の森林の三割を占める国有林は、昭和五十三年以来の改善計画によって、要員や機構の縮減など一連の自助努力を計画どおり実施し、再建の道を歩んでいますが、国有林事業をめぐる財務状況については依然厳しいものがあります。自助努力のみの再建は容易ではありませんが、国内の森林・林業の中核として、国民の共有の財産として、国有林の真の役割を果たせるよう、白書はもっと率直な指摘と提起を行うべきだと考えますが、いかがでありましょう。 次に、漁業白書についてお尋ねをいたします。 漁業もまた多くの困難な問題を抱えております。二百海里十年目を迎えて国際規制はますます強くなり、撤退に次ぐ撤退を繰り返しているのが我が国の遠洋漁業の現実の姿であります。殊に米国の理不尽な圧力によって、我が国の伝統的な漁業ともいうべき商業捕鯨が既に中止を余儀なくされ、一九九〇年モラトリアム見直しに向けて実施されている鯨類の調査捕獲も、米国など反捕鯨国の圧力のもとにその資源調査の継続すらもが危惧されております。そればかりではありません。日米加漁業条約によってその操業が保障されているはずのベーリング海における母船式サケ・マス漁業も、また米国の自然保護団体による不当な圧力によって中止を余儀なくされようとしております。鯨類の調査捕獲にせよ、北洋母船式サケ・マス漁業にせよ、国際条約上の権利として行われているものであります。政府は対抗措置を講ずるなど米国による根拠のない不当な圧力をはね返し、北洋漁業など我が国漁業を守り、維持していくべきだと考えますが、総理大臣並びに外務大臣、農林水産大臣の御見解を伺いたいと思います。 また、万一、当該水域からの撤退、減船あるいは休漁という事態に立ち至った場合は、減船補償、休漁補償など経営者と乗組員に対する補償措置、さらには離職乗組員に対する雇用の確保など、政府の責任において万全の措置を講ずべきであると考えますが、農林水産大臣、大蔵大臣にそのようなお考えがあるかどうか、明確にお答えをいただきたいと思っています。(拍手) 二百海里体制の定着によって、我が国周辺水域における沿岸・沖合漁業の振興が重要な政治課題となっておりますが、経営的にも資源的にも多くの問題を抱えています。殊に政府が、つくり育てる漁業の施策の中心として展開している栽培漁業あるいは資源管理型漁業の確立もいまだ定着せず、日暮れて道遠しの観なきにしもあらずの状態でありますが、政府は今後こうした我が国周辺水域における沿岸・沖合漁業の振興をどのように図ろうとしているのか。 また、最近の円高は海外からの水産物の輸入を急増させ、魚の生産者価格を圧迫し、勤労漁民の生産意欲を減退させるなど重大な悪影響を及ぼしており、秩序ある輸入の実現もまた緊急を要する課題であると考えますが、政府にその意思があるのかどうか。 さらに、漁業経営の現状は、沿岸漁船漁業の場合、他産業との所得格差が一層拡大し、中小漁業の経営は依然として脆弱であると白書は指摘しているのであります。資源の枯渇、魚価の低迷の中で足腰の強い漁業経営をいかにして構築していく考えか、農林水産大臣の答弁を求めます。 以上申し述べましたように、農林水産業をめぐる諸事情はまことに厳しいものがありますが、農林水産業の果たす役割、使命は極めて重要であり、その活性化が今日最も大きな政治課題であると思います。また同時に、疲弊しつつある農山漁村を活性化させる地域政策としての側面が、農林水産行政に強く求められていると思いますが、総理、農林水産大臣の答弁を求めて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手) 〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) まず最初に、地域経済における農業の役割、そして国土の制約、これらのことをきちんと踏まえた上ですべてのことに対応すべきである、こういう御趣旨でございました。そのとおりであると思います。 そこで、牛肉・かんきつ問題につきましては、去る四月二十六日、佐藤農林水産大臣が訪米をして、我が国農業に不測の悪影響を及ぼさないよう配慮いたしますと同時に、国際的要請をも踏まえ、ぎりぎりの努力を行ってきたところでございますが、理解、合意に至らなかった。そこで、今後、具体的対応につきましては、それこそ、先ほども農林水産大臣がお答えを申し上げておりましたとおり、我が国牛肉・かんきつ生産の存立を守るという基本的立場に立って、そしてまた一方、我が国の置かれた国際的立場に配慮しながら最大限の努力を払ってまいる、こういう考え方でございます。 次の問題は、世論調査等にお触れになりまして、食糧輸入政策の見直しについての考え方をお述べになりました。 農産物の輸入政策につきましては、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉との関連を十分に考慮し、関係国との友好関係にも留意しながら、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、国内の需給動向等を踏まえて対処すべきものである、このように考えます。 そこで食糧自給、こういうことになるわけでございますが、食糧は国民生活にとって最も基礎的な物資であり、その安定供給確保は、これは国政の重要課題であるという認識の上に立っております。したがって、農政審議会からの答申にも記されておりますように、今お述べになりました国土条件の制約のもとで最大限の生産性向上を図っていく、そして、国内での基本的な食糧供給力の確保に努めることが必要であるというふうに考えておるところであります。 次に、調査捕鯨、母船式サケ・マス漁業についてもお触れになりました。 いずれも御説のとおり、国際条約上認められているものでございます。しかしながら、これらを取り巻きます国際情勢は、確かに厳しいところがございます。これからも我が国の立場や主張について関係国の理解を得るための積極的な努力を続けてまいりたい、このように考えます。 最後に、農山漁村の活性化にお触れになりました。 御説のとおり、農林水産業は、食糧の安定供給、これを初めとして、なお国土、自然環境の保全、こういう重要な役割を担っております。したがって、その役割は今後ともますます重要になる、このように考えております。さらにまた、国土の均衡ある発展を図るという考え方を貫くために、豊山漁村の活性化は必ずしなければならないところであります。したがって、地域の創意と工夫のもとに地域内の資源を活用いたしますとともに、また一方、他産業への就業機会の創出、そういうことも考えながら、総合的に基盤を整備することによって、おっしゃる農山漁村の活性化ということはやはり重要な課題として取り組むべきである、このように意識いたしております。(拍手) 〔国務大臣宇野宗佑君登壇〕
○国務大臣(宇野宗佑君) 牛肉・オレンジ問題は、ガット・パネル設置によっていろいろと議論されることになる予定になっておりますが、我々といたしましては、その間におきましても、当然この問題が我が国農業に及ぼす影響重大なりということを関係諸国に申し述べる所存でございます。 なお、パネルの設置は、御承知のとおりにパネリストの選定並びに付託事項の決定、そういうふうな手順を踏まえてやってまいります。恐らく六月の中旬の次回理事会までに諸準備が調整される、こういうふうな段取りになるのではないかと考えております。しかし、外務省といたしましては、農林水産省と十分に連絡をとりまして、二国間で起こった問題は二国間で処理すべく最善の努力をしていく所存でございます。 我が国を取り巻く漁業の環境は極めて厳しいということも、お説のとおりでございます。政府といたしましても、もちろん深刻に受けとめております。 サケ・マス母船方式漁業に関しましては、ただいま総理もおっしゃいましたとおり、立派な条約があるわけでございますから、この条約の線に沿いまして、私たちは我々の主張を今後も続け、なおかつ、この漁業が持続できるように最大の努力をする所存でございます。 同時に、捕鯨問題に関してでございますが、私も、事あるたびに関係国に対しましては我が国の捕鯨の事情をお話し申し上げ、すべてIWCの枠内においてそうした問題を我々としても十二分に認識しつつやっておるのであるということを主張しておりますので、今後もその主張実現に努力をしてまいる所存でございます。なおかつ、何らかの対抗措置をとれというお考え方がございますが、現在といたしましては、外交全般に及ぶ問題でもございますので、政府といたしましては慎重に対処したい、かように考えておる次第であります。(拍手) 〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) ベーリング海におけるサケ・マス操業の確保の問題でございますが、ただいま米国政府並びにソ連政府と外交交渉が行われております。その事態の推移をしばらく見てまいる必要があると存じますが、万一、交渉の結果、本年度の操業が困難となりますようなことになりますと、恐らく農林水産大臣から所要の措置につきまして御相談があるものと考えております。その場合には、財政当局といたしましても、実態等を十分踏まえまして検討をしてまいることにいたしたいと思っております。(拍手) 〔国務大臣佐藤隆君登壇〕
○国務大臣(佐藤隆君) 前島議員の御質問にお答え申し上げます。 まず、牛肉をめぐる日米貿易交渉問題につきましては、既にガットにおけるパネル設置が決定されておりますが、引き続き二国間の話し合いによるできる限り早い解決のために努力を続けることが必要と考えております。私といたしましては、今後とも、国境措置問題を含め我が国牛肉生産の存立を守るとの基本的立場に立って、その生産、流通、消費の各般にわたり遺憾のないよう対処をしてまいる所存であります。 次に、今後の農政のあり方でございますが、農政の推進に当たっては、生産性の高い農業構造を確立するための諸施策等を推進するほか、消費者ニーズの変化に的確に対応できる柔軟で効率的な生産流通体制の整備等を図る所存であります。また、今後の農業生産のあり方につきましては、最近の需給動向の変化等も踏まえ、現行六十五年見通しの見直しにも着手したいと考えております。 次に、農産物の輸入政策につきましては、農政審議会報告を尊重して対処してまいる所存であります。すなわち、ウルグアイ・ラウンドにおける新しい農産物貿易ルールづくりの交渉に積極的に参加、貢献するとともに、その状況をも踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図ることを基本に、適切に対処してまいる考えであります。 次に、食糧自給についての御質問についてであります。 食糧は国民生活にとって最も基礎的な物資であり、国民に食糧の安定供給を図っていくことは農政の基本的役割であると考えております。政府といたしましては、農政審議会報告を踏まえ、国民の納得し得る価格での食糧の安定供給に努めることを基本として、国土条件の制約のもとで可能な限り生産性の向上を図りながら、国内での基本的な食糧供給力の確保に努める所存であります。また、米など現に国内で自給する体制が確立しているものについては、需給の均衡を図りつつ国内自給を図ることが必要であると考えております。国内での食糧供給力の確保のため、すぐれた担い手、優良農地等の確保を図るとともに、農業技術の向上等のための諸施策の展開を図ってまいりたいと考えております。 次に、今後の米価政策につきましては、農政審報告の方向に従い、需給の趨勢をより的確に反映させるとともに、今後の我が国稲作の担い手の育成と生産性向上を的確に反映した生産者米価水準の実現を目指した新しい運用方向を志向すべきであると考えております。具体的な米価算定方式のあり方につきましては、昨年九月に米価審議会の米価算定小委員会が設置され、現在検討が進められているところでありまして、近く取りまとめられる検討結果を踏まえ適切に対処してまいりたいと考えております。 次に、価格政策についてでありますが、価格政策の運用に当たっては、構造政策を助長し、農業の生産性向上の促進に資するとともに、対象とする農産物の需給均衡の確保に資するといった観点も踏まえ、国民の理解と納得が得られるよう適正な運用に努めることを基本としております。このため、生産性向上の成果を可能な限り価格に反映することが重要でありますが、土地条件等の制約から生産性向上が必ずしも直線的に進みがたいような状況にかんがみ、今後育成すべき担い手の生産性向上意欲にも配慮して価格政策の適正な運用に努めてまいる所存であります。なお、規模拡大と農工間所得格差についてでありますが、中核的農家の経営規模の拡大、生産組織の育成を図るとともに、農業基盤の整備等各般にわたる構造政策を推進し、農業生産性の向上を通じて農業所得の確保に努めてまいる所存であります。 次に、食管制度についてでありますが、今後とも国民の主食である米を政府が責任を持って管理することにより、生産者に対してはその再生産を確保し、また、消費者に対しては安定的にその供給責任を果たすことという制度の基本は維持しつつ、広く国民各界各層の理解と協力が得られるよう適切な運営改善を図ってまいりたいと考えております。 次に、林業技術についてであります。 林業の活性化を通じた森林の健全な育成と国民のニーズにこたえた多様な森林の整備を図るためには、低コストを目指した林業技術、森林の多面的機能の維持増進のための管理技術など新たな林業技術への取り組みが不可欠であり、今後とも林業白書で明らかにした方向に沿った施策に鋭意取り組んでまいる所存であります。 振動障害対策についてもちょっと触れられたのでありますけれども、チェーンソー等の使用による振動障害につきましては、農林水産省といたしましても、その重要性にかんがみ、関係省庁とも連携を図りつつ、振動障害防止のための啓蒙普及、振動の少ない機械の開発など各般の施策を講じてきたところであり、今後とも振動障害の予防のための施策の推進に努めてまいる所存であります。 次に、国有林野事業についてであります。 国有林野事業の使命を十全に果たしていくためには、白書においても、厳しい財務状況を踏まえ、昨年七月に改定した経営改善計画に基づき、最大限の自主的改善努力を尽くすとともに、所要の財政措置を講ずることにより経営の健全化に鋭意努力する必要がある旨記述しているところであります。 調査捕鯨につきましては、国際捕鯨取締条約上、各締結国の責任において実施できると規定されていることを踏まえ、昨年度調査を実施したところでありますが、今後とも引き続き国際的理解を求めつつ取り組んでまいりたいと思っております。 また、母船式サケ・マス漁業につきましては、日米加漁業条約において米国二百海里水域を含め操業が認められております。その操業の確保のため、私も先日、在日米国公使に対し、条約上の義務を果たすよう申し入れましたが、引き続き米国政府に対し、強くその実現を働きかけていくなど、対策に万全を期してまいる所存であります。 なお、母船式サケ・マス漁業につきましては、米国二百海里水域での操業が極めて困難な情勢にあり、関係漁業者は同水域での操業ができない場合を想定して、母船四十三独航船の体制での操業を予定しております。この場合には、当面休漁を余儀なくされる独航船等が生じることとなり、これらの方々に対しては、今後の動向を見きわめ、関係省庁と密接な連絡をとり、必要な措置を講ずることを検討してまいりたいと思っております。 次に、沿岸・沖合漁業の振興についてであります。 二百海里体制の定着に伴い国際規制が一層強化される中で、我が国二百海里内を主な漁場とする沿岸・沖合漁業の振興を図ることがますます重要となってきております。このため、漁業を取り巻く厳しい状況を踏まえ、漁港を初めとする生産流通基盤等の整備とつくり育てる漁業の推進、資源水準に見合った漁業生産体制への再編整備、消費者ニーズに適合した水産物の供給体制の整備等に努めてまいる所存であります。 次に、水産物輸入についてであります。 水産物の無秩序な輸入が我が国の沿岸・沖合漁業者に悪影響を与えないよう、サバ、イワシ、イカ等を輸入割り当て制度の対象としており、また、近年経営環境が厳しさを増しているマグロ及びワカメについては、輸入事前確認制の対象としているところであります。今後とも現行制度の適切な運用を図ることといたしております。 次に、漁業経営につきましては、水産業を取り巻く状況が厳しさを増す中で、足腰の強い漁業経営を育成していくため、金融、税制措置を通じた経営の近代化、合理化によるコスト低減、消費者ニーズの変化を踏まえた効率的な供給体制の整備による高鮮度、高品質の漁獲物の供給等に努めてまいる所存であります。 最後に、農山漁村の活性化についてであります。 農山漁村は、食糧の安定供給を初め国土、自然環境の保全等の重要な役割と機能を担っており、活力ある地域社会の形成、国土の均衡ある発展を図るためには、農林水産業の振興はもとより、農山漁村の有する多面的機能を十全に発揮させていくことが重要であると考えております。このため、地域資源を活用した特産物の生産等高所得を得られる農林漁業の振興、さらに企業の誘致、リゾート地域の整備、地場産業の振興等による就業機会の確保、また集落道、集落排水等生活環境の総合的な整備、また都市と農山漁村との交流の促進等を通じて定住条件の整備を図りつつ、活力ある農山漁村の形成を図ってまいる所存であります。(拍手)
○議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。 ────◇─────
○議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。 午後一時二十三分散会