文教委員会 第11号
- 発言数
- 118 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1988/05/18
会議録
○中村委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北橋健治君。
○北橋委員 民社党・民主連合の北橋でございます。議題となっております著作権法の改正に入ります前に、これからしばらく質疑をさせていただく機会が余りないと思いますので、私の選挙区の問題でまことに恐縮でございますが、恐らく全国でもこういったケースが少なからずあらうかと思いますので、その点についての文部省の見解をお伺いしたいと思います。 それは学校の就学学校指定の問題でございまして、一例を挙げますと、福岡県飯塚市に鯰田という地域があるのですが、その地域におきましては、教育委員会の就学学校指定によりますと、道路一本隔てまして町が変わりますと通う学校も違ってくる。私もその現場に行ってみましたけれども、地元の生徒さんの御父兄の皆様方のお話も承りましたけれども、一キロから一・五キロぐらいのところに小学校があるわけです。ところが、道路一本隔てまして町名が変わることによりまして就学指定も変わってきますと、その一キロから一・五キロの近いところにある小学校に通えなくて、何と三・五キロから四キロも離れた学校に通わねばならない。そうしますと、起床時間が朝六時、自宅を出るのが朝七時前後、そういう時間帯になるわけでありまして、本人はもとより御父兄にとっても大変な負担であります。また、学校に通う通学路をとりましても、オートレース場がございまして、そのレースが開催されるときには帰宅途中の時間帯と重なるために車が大変混雑をしまして、交通安全の面でも御父兄の皆様は大変心配をされているわけです。 もちろん、就学学校指定につきましては法令に基づきまして適正に教育委員会が判断をされていると思いますが、そこに住んでおります父兄並びに生徒の感覚では、どうして近いところの学校に通えないのだろうかという疑問が強く渦巻いているわけであります。もちろんこの問題については地元でも鋭意検討されておりますので、ここで深く質疑に入る気持ちはございませんけれども、こういった問題に対しまして文部省は、ここ以外にもそういった事例があろうかと思うのですが、基本的にどういう姿勢で対応されてきたのでしょうか、お伺いをいたします。
○西崎政府委員 御指摘の通学区域の指定に関する問題でございます。 飯塚市の問題につきましては、県数委に若干照会いたしましたところ、先生御指摘のように、五十九年にできた団地の住民の方々が主としてでございますが、三・五キロから四キロある学校への通学について、その変更を求めるいろいろな訴えをしておられる。市教委の方でも通学区域の審議会等に付議はいたしておりますが、やはり指定どおりの考え方で父兄に納得していただくように、交通安全についてもいろいろ配慮したいというふうなことで、父兄とのお話をしている段階であると私ども聞いております。 先生お尋ねの基本的な考え方の問題でございますが、御案内のとおり臨時教育審議会で通学区域につきましても答申が出ているわけでございます。私どもは昨年の五月、文部省の四局長の連名で、臨教審の答申を受けての施行と申しますか、文部省の対処としての考え方を都道府県へ通知しておるわけでございますが、その中に通学区域についての基本的考え方を出しておるわけでございます。 これを二つ申し上げたいわけでございますが、一つは、通学区域の指定ということは、適正な規模の学校と教育内容を保障する、そして教育の機会均等と水準の維持向上を図るということからやはり必要である、これが一つでございます。しかし、第二点といたしまして、やはり具体的には地域の実情に即して、可能な限り、子供に通した教育を受けさせたいという保護者の希望もあることだから、例えば調整区域の設定の拡大とか学校指定の変更・区域外就学の一層の弾力的運用とか、親の意向の事前聴取・不服申し立ての仕組みの整備等、いろいろな方法で検討をする必要もあるのではないか。しかし、要はこの通学区域の指定ということは市町村数委の権限であり、責任である。これは地域に非常に密着した事柄でございますので、市町村教委の権限と責任において、地域の実情に即して制度の運用について十分検討してほしい。こういう考え方で昨年の五月に指導しておるところでございます。 全国的な状況を申しますと、私どもの調査、都道府県教育委員会の連合会との関係で六十一年の結果が出ておるわけでございますが、この通学区域の指定の変更とか調整につきましては全国でもかなりのケースが起きております。例えば地理的・身体的事由とか家庭環境、転居、またいじめによるもの、あるいは帰国子女の問題、それから学校への不適応とかいろいろな事情で、保護者の申し立てで市町村教委が通学区域の指定についていろいろ配慮しておるケースも出ておるわけでございますが、最終的には、学校規模の問題あるいはそれぞれ地域の社会教育との関連とかいろいろな課題がございますので、市町村教育委員会の判断にゆだねられておる事柄で、そういう点はぜひ昨年の通知をもととしてしかるべき責任ある御判断を願いたい、こんなところが基本でございます。
○北橋委員 この問題につきましては、もう一つの観点を申し上げますと、新しく団地ができたということが一つのきっかけになっているわけですが、校内暴力だとか非行の問題がある地域といいますのは、道路も一本通ったきれいな道路というのが余りないところ、つまりどんどん新興団地ができて開発が追いついていない地域が多いと言われています。そういった意味で、そういう地域ではコミュニティー、学校から帰った後の親と子を含めた地域のコミュニティーでの社会教育がまことに重要になっているわけでありますが、とにかく家に帰ってきましても、すぐ目と鼻の先に住んでいる近所の子供たちも学校が違いますし、御父兄のPTAの会合も違うわけであります。そういった意味で、子供たちの健全な育成という面から見ましても非常に弾力性を欠いている事例が、この飯塚の場合ではないかと私は推察をしております。 今局長の方から基本的な対処方針についてお伺いしたわけでありますが、臨教審におきましては、いわゆる教育の自由化論という言葉に見られますように、これまでの法令によるコントロールについて、いろいろな規制その他指導方針について全般的に弾力化をしていくという方針が明示されているわけで、この就学指定についてもその方針が出されてきているわけでございますので、その辺を十分踏まえられまして地元に対して通知をするなり、指導をするというのもおのずから限度があるということのようでございますが、善処をお願いしておきたいと思います。
○西崎政府委員 御指摘の通学区域に関しましては、私ども必ずしも自由化という考え方はとっておりませんし、答申自体も従来の通学区域の「制度の意義は認め」ということでございまして、全面的に自由化せよということではないという前提ではございます。 しかし、先生御指摘の点でございますので、私どもが飯塚市に対して県教委を通じてこうすべきだという指導はいたしかねますけれども、きょう先生からこの問題について御指摘があったことを県教委を通じて市教委にお話が伝わるように、何らかの連絡をさせていただきたいと思っておる次第でございます。
○北橋委員 どうかよろしくお願い申し上げます。 それでは、議題となっております著作権法の改正につきまして、順次政府の見解をただしてまいりたいと思います。 この法案の改正の第一点は、著作隣接権の保護期間を延長することでございますが、これを二十年から三十年に延長された背景についてお伺いします。といいますのは、これをもっと延長すべきではないかという根強い意見も関係団体から寄せられているわけでございますが、三十年にした理由につきましてお伺いいたします。
○横瀬政府委員 著作隣接権の保護期間を延長することにつきまして、これは法案全体でもございますけれども、御承知のように著作権審議会の第一小委員会の報告に基づいて法案を提出しているところでございますが、この第一小委員会の中での保護期間の延長についての議論は、主に二つございました。 一つは、著作隣接権の内容にかかわる問題でございますけれども、そもそも著作隣接権者が著作物の創作ではなくて著作物の公衆への伝達という役割を持っている、そのゆえに著作椎に隣接する権利が認められているというようなことから、著作物と同等の保護を認めるということには大変消極論が強うございまして、それで現行の二十年、著作権については五十年という制度の調和をとりまして三十年というのが適当である、そういう結論を得たということが一つでございます。 それからもう一つは、国際的な状況でございますけれども、著作権の保護期間につきましては、ベルヌ条約の義務に従いまして五十年と定めるのが国際的な大勢でございますけれども、著作隣接権の保護期間につきましては、各国とも年数において非常に区々でございまして、著作権と同様の保護期間を定めている国もございますけれども、それと異なる著作隣接権の方が短い保護期間を定めている国もかなりございまして、この辺は相半ばしているというようなことでございます。そういった状況の中でローマ条約が二十年という期間を決めている、この調和を考えて三十年というのが適当というようなことで、こういう国内あるいは国際的な状況を勘案いたしまして、我が国の場合三十年が適切であるというような結論に達したものでございます。 それで、先ほど御指摘がありました権利者側の御希望というものは、確かに五十年まで延長すべきだという声もございましたけれども、一方、これに対して消極的な立場にある放送事業者等につきましては、やはりそれだけの長さについてはいろいろ大きな抵抗を持っておりますので、そういった点も勘案する必要があるということで、三十年という結論を出したというふうに考えております。
○北橋委員 海外の事例も一つの理由に挙げられたわけでありますが、海外に追いつき追い越せという時代ではなくて、これから日本が率先して一つの理想的なモデルを日本みずからつくり上げていく時代でございますので、専ら国内における関係団体の意見調整と、あるべき著作権のあり方というところから審議を進めていくべきだと思っております。 それで、先ほどお話にもございましたように、日本芸能実演家団体協議会あるいは日本レコード協会からは五十年というお話があるわけでございますが、関係団体同士の間で意見が食い違うということで、とりあえずは三十年ということでありますが、私どもが実際にその創作に携わっていらっしゃる方々の御要望、実情を承りますと、二十年を五十年にすべきだという理由には合理的なものがあると考えられるわけであります。そういった意味で今回は三十年になったわけでありますけれども、今後、文化庁あるいは審議会の方におきまして、この問題についてさらに延長について踏み込んで議論をしていく考えがあるかどうか、お伺いします。
○横瀬政府委員 著作隣接権の現段階における保護期間の延長幅につきましては、私どもは三十年が最善であると考えております。ただ、この審議に当たりましては、第一小委員会の報告におきましても、「今後とも著作物等の利用手段の発達、利用実態の推移や著作権保護の国際的な状況の変化等、著作権制度をめぐる環境の変化が予測されるところであり、著作権制度の体系の中における実演、レコード等の保護期間の在り方については、これらの動向を踏まえ、必要に応じて検討を行うことが適当である」というような趣旨についても敷衍をしているところであります。したがいまして、私どもといたしましては、この部分の趣旨を踏まえまして、特に国際的な動向、それからこれからの実演、レコード等の利用実態の推移、関係者の動向というものに対して十分注意を払いまして、そうした動向に応じて必要があれば検討するということにしていきたいと考えております。
○北橋委員 今すぐに、さらにこの保護期間の延長について審議を進める御計画はないようでございますが、レコード業界あるいは芸団協の皆様方は現場では大変苦労されておられまして、自分たちの創作意欲を今後とも盛り、そして文化を発展させるためにはぜひとも必要であるというふうに考えておられますので、この辺についての御意見を十分参酌しながら審議を進めていっていただきたいと要望しておきます。 続きまして、隣接権条約の加入についてでありますけれども、これについては、著作権審議会は既にこの条約への加入を求める提言をされているわけでありますが、この審議会の提言にもありますように、どういうような条件整備をすれば条約加入ができると見ておられるのでしょうか、お伺いします。
○横瀬政府委員 ただいまお話がございましたように、著作権審議会の第一小委員会の審議結果は、我が国は隣接権条約に加入するような時期にもう来ているという判断を下しつつ、ただ、新たに保護が拡大されることになります外国の権利の利用について、円満な秩序が形成されることについて十分な見通しを立てておく必要があるということで、その見通しが得られれば速やかに条約に加入するべきである、こういうことでございます。 そこで、この円満な秩序形成というのが具体的にどうかということでございますが、主に三つの面がございます。一つは、日本の実演家団体と、この隣接権条約に加入することによりまして新たに保護が加わることとなります外国の隣接権締約国の実演家の団体との間で、相互に権利行使をするための委任に関する契約を締結しておくということが一つでございます。同じように二つ目といたしまして、外国のレコードの原盤供給契約の中に権利行使の委任に関する内容を盛り込んでおく必要があるということでございます。最後に、そうした上で、外国の権利団体から委任を受けております国内の実演家団体、それからレコード製作者の団体と、放送の二次使用料に関しまして国内の放送事業者との間で、その二次使用料の徴収額の取り決めをするというような協定をつくる必要がある。この三つの面について円満な秩序形成がなされる見通しを持つというのが、この環境整備の最も重要な中身であろうというふうに思っております。
○北橋委員 隣接権条約の加入につきましては、日本の国内におきましてもいまだ時期尚早であると考えている方々が少なくありません。例えば民放連でありますとか放送業界やレコードレンタル関係、幾つかのところがそういった時期尚早という判断を持っておられるようでありますが、そういった方々に対しまして、審議会でわざわざ御審議をいただいて加入の提言が出ているわけでございますから、文化庁もそれを受けていろいろと御苦労されていると思いますが、そういった国内の時期尚早と考えておられる団体の皆様方に対してどのような対応を今なさっているんでしょうか、お伺いします。
○横瀬政府委員 今御指摘がございましたように、第一小委員会の審議報告の中には、隣接権条約への加入に伴いまして、隣接権条約そのものではないのですけれども、それに関連することとして、外国の実演家及びレコード製作者に対してこの際しコードの貸与に関する権利も認めることが適当であるというふうに述べているわけでございます。したがいまして、そのレコード貸与権に関しましても、先ほど申しました放送の二次使用料に関する条件整備と同じような、内外の関係者におけるレコードの貸与に関する円満な秩序形成というものが必要でございまして、その点についても関係者で十分話を煮詰めておいていただく必要があるわけでございます。 そこで、文化庁といたしましては、そういうような関係者におきまして、隣接権条約に加入する趣旨、目的、それから我が国の置かれている状況というものを十分御理解の上で、まず利用者と権利者双方の間で話し合いを十分していただくようにお願いするというのが第一点でございます。それから、その両者の話し合いの中でいろいろな問題が起こった場合には、それを促進するように、これは私どもとして適切な形でやる必要があると考えられた場合には指導も行っていきたいということで、できるだけ早くそういった形成の見通しが立てられますように、文化庁としても積極的な努力をしていくつもりでございます。
○北橋委員 隣接権条約に加入するに当たりましては、三つの要件について詳しく御説明いただいたわけでありますが、それにも関連するわけでありますが、例えばこういう問題についてどのようにお考えでしょうか。 外国には日本のレンタル業といった商売はないのだそうでありますが、今貸しレコード業界については、レンタル業の業界とレコード業界との間で係争中の裁判の事案が生じておるということでありますけれども、そういう状況の中で隣接権条約に加入するためには、外国にはありませんけれども、日本での係争中のこういった事案に対して一定のコンセンサスが必要になってくると思いますが、これについては文化庁は何らかの対応を行っているのでしょうか。
○横瀬政府委員 今御指摘の問題は、いわゆる特別許諾にかかわるレコードの問題であると思います。この問題は、レコード貸与権についての改正が行われました際に、権利者団体とレコードレンタル業団体との間で一度成立しました合意が、できましてから一年後の昭和六十一年四月ごろから、特別許諾についての契約更新をめぐって対立が起こりまして、それが今御指摘の、現在も訴訟の中で争っているというような状況になってきているわけでございます。これは仮処分という形で裁判所の決定が出された部分もございまして、それに従っている部分もあるわけでございますが、いろいろと訴訟が入り乱れておりまして、大部分の訴えはまだ係争中であるという状況になっております。したがいまして、これらにつきましての基本的な解決というのは裁判の決着を待つことしかないわけでございますが、当事者の間における解決の空気というものも徐々に動いているような気配も感ぜられる、そういう状況にあるということを聞いているところでもございますので、そういった状況の中で、文化庁の指導助言が効果を上げ得るような状況が出てくる場合には、ぜひ解決の促進に向けて私どももできるだけの努力をしていきたいというふうに考えております。 それで、こういうようなこととそれから先ほどの二次使用料に関する利用者及び権利者における話し合いの問題というようなものが、この隣接権条約加入に関しての非常に大きなかぎを握ることにもなるわけでございますので、そうしたいろいろな実態に即しまして、そういう場面場面に即しまして、文化庁としては必要な努力を積極的に講じていきたいというふうに考えているものでございます。
○北橋委員 文部大臣にお伺いします。 今文化庁の答弁にもありましたように、著作権審議会の隣接権条約への加入の提言を受けまして、その円満な秩序の形成に向けて鋭意文化庁としても努力をされている、その論点その他についてもお伺いしたわけでありますが、この問題につきまして、いつごろ日本として隣接権条約は加入していくのか、その見通しなんですけれども、この問題については、アメリカ、ソ連という大国はいまだこの条約に加入していないという状況にあります。ソ連はともかくといたしまして、自由主義圏のリーダーであるアメリカが入っていないわけでありますから、これは自由主義圏の間でも大変大きな幾つかの国内問題があるのだろうとは容易に察しがつくわけであります。しかし、日本の著作権審議会におきまして鋭意検討された結果が条約への加入という提言になってあらわれているわけでありまして、その辺を踏まえまして一つの見通しを教えていただけましたらありがたいのですが、大臣いかがでしょうか。
○中島国務大臣 おっしゃいますように、著作権というのは、著作者の権利を保護するということによりまして知的創作力を促進する、まさに我が国が文化国家を目指していくというその根底を支える重要なものであろうと思います。その中で特に今隣接権についてお尋ねでございましたけれども、隣接権の今の条件整備といいますか環境整備については、政府委員がお答えしましたように、国内の利用者と隣接権者、それから国内の隣接権者と相手国の隣接権者、その間の話し合いというか契約内容が調うということが先決でございまして、その話し合いは大分煮詰まっておるということでありますけれども、私どもとしては、できるだけ早くその条件整備ができまして、速やかにこの隣接権条約に加入できる、これは相手国でまだ加入していない国もおっしゃるようにアメリカなどございますが、少なくとも加入している同士が、一つの著作隣接権について、私は国際的なモラルの一環だと思いますので、できるだけ速やかに加入すべきである。そこで、いつということは言い切れませんけれども、その条件整備にもしも力をかすことが必要であるとすれば、私どもも積極的にその条件整備の促進に努力をしてまいりたい、こう思っております。できるだけ速やかにということだけ申し上げておきたいと思います。
○北橋委員 それ以上のことは今の段階では何とも言えないことのようでございますから、今の大臣の御答弁の御趣旨に沿って文化庁も鋭意御努力を続けていただきたいと思います。 さて、今回の法改正の第二点目の論点は、いわゆる海賊版についての規制が新たに加わったことであります。そもそも海賊版あるいは海賊行為というのはどういう定義が与えられているのでしょうか。そしてまた、ビデオ並びにレコードの世界においてその海賊版がどれくらいの数に上っているのか、それによって業界はどれくらいの被害をこうむっていると見込まれるか、その点について文化庁の見解を伺います。
○横瀬政府委員 まず海賊版の定義でございますが、これは法律用語ではございませんで俗称でございますので、明確な定義があるわけではございませんが、一般に、我が国の著作権法の第百十三条の第一項の第二号、これが今回改正をお願いしている条項でもございますが、その中に「著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為によって作成された物」の頒布を禁じているわけでございますが、この権利を侵害する行為によって作成されたもの、これを海賊版といってよろしいのではないかと思います。 それから次に、その流通量とかそれの被害の状況というようなものでございますが、まずビデオソフトにつきましては、昭和六十二年度における我が国の日本ビデオ協会加盟各社とそれからアメリカ映画協会関係会社の取り扱い量が圧倒的に多いわけでございますが、この両脇会の関係各社の売上高は千二百五十万本と推定されております。そのほかに市場に出回っておりますビデオ海賊版の数量が、やはり昭和六十二年四月の調査で推定されたものによりますと五百五十万本ということになりますので、六十二年度における全体の数量の推計は約千八百万本、その中における海賊版は約五百五十万本ということで、全体に占める海賊版の割合は約三〇%程度というふうに考えられております。被害額はこの五百五十万本の定価といいますか頒布価格ということになりまして、約六百億円という推定でございます。 それからレコードの関係でございますが、レコードの海賊版については、ディスクの形態のものはほとんどございませんで、ほとんどがミュージックテープの形でのものでございます。しかも、国内で作成されたものもございますことはございますが、大部分は東南アジアからの輸入物だというふうに言われておりまして、これらの六十二年度中の数は、日本音楽著作権協会の推計によりますと約七十方本だということでございます。六十二年度の我が国のミュージックテープの生産高の全体は約七千五百万本ということでございますので、この海賊版の割合というものは約一%というようなことでございます。 したがいまして、海賊版の問題、現在の状況ではやはりビデオに関する海賊版の問題が一番大きいということがこの上からもおわかりになると思います。
○北橋委員 一説によりますと、日本で海賊行為を行っている店というのはレンタル店の約半数くらいに上るのじゃないかという、こういう話も聞いております。それに比べまして、例えばアメリカを見ますと全体の五%程度くらい、極めて例外中の例外という実情というふうに聞いておるわけですが、日米間でこのように違法な海賊行為を行っている店が余りにもげた違いに違うということは、どういったところに背景があるとお考えでしょうか。
○横瀬政府委員 今我が国のビデオレンタル店の中で海賊版を扱っている店というのは、これも推定でございますけれども約五千店ということでございますので、全体を一万五千店といたしますと三割ちょっとというようなところであろうかとは思いますが、確かにアメリカ等に比べますとまだまだ多いというような実態になっております。 どうして多いのかという御質問でございますが、これはいろいろ原因はあると思います。そもそも国民の間における、あるいは関係者の間における著作椎の意識というものがまだ不十分であるというようなことも背景の一番基礎にはございましょうし、具体的な取り締まりの程度というものも違いがあると思います。それから、何といいましても関係者の監視をする機構がどのくらい整っているかというようなこともあると思います。そういったそれぞれの国の国情の中でのいろいろな総合的な違いというようなものが、この違いとなって出てきているのではないかというふうに思っております。
○北橋委員 警察当局も今まで違法業者については取り締まりの体制をとってきたと聞いておりますが、その実績、そして今裁判になっております告訴件数その他、訴訟状況につきましてどういう実態になっているのかお伺いします。そしてまた、今回の法改正によってこれがどの程度改善されていくと期待しているのかお伺いします。
○横瀬政府委員 六十二年度中のビデオ海賊版に係ります取り締まり実績等についてお答えいたしますと、権利者によります告訴件数は海賊版に関しまして八十八件でございます。それから、それに基づきましていろいろ強制捜査が行われておるわけでございますが、押収されたビデオの本数は七万六百余でございます。それから、その後六十二年度中の告訴にかかわりまして被告訴人が処分をされている、刑事罰を受けている状況でございますが、昭和六十三年四月下旬現在で申し上げますと、懲役刑が、これは全部執行猶予つきでございますが十人、罰金刑が十五人、その他の人たちは現在まだ裁判中などである、そういうような状況でございます。 それから、今回の法改正による効果でございますが、最も大きな効果と申しますのは、形態として、所持行為が違法行為となるということによりまして、刑事手続の上で犯罪の立証行為が非常に容易になったということだと思います。今までの頒布行為の立証につきましては、個々の行為について「頒布」という具体的な行為についてその場所とか時期の特定が必要だったわけでございますが、それが今度は「所持」ということでございますのでその点が非常に簡単になったということでございます。量としてどのくらいふえるかとかそういう効果を申し上げるわけにはなかなかまいりませんけれども、従来最も立証ができなくて取り締まりの上で支障になっていた部分がこの頒布の具体的な立証でございますので、その点が非常に容易になったということは、かなり飛躍的にこういう取り締まりの上での捜査は容易になる、取り締まりの強化が期待できるというふうに思います。こういうことによりまして、海賊版の流通量というものがぜひ激減することを期待しておるわけでございます。
○北橋委員 警察庁の方でも、六十一年四月に海賊版などの不正商品を取り締まるための不正商品取締官を設置されまして、全国の警察官と協力して取り締まり業務に当たっていると聞いておるのですけれども、本庁にいらっしゃるのは今一人だと聞いております。その方がいろいろとノーハウを勉強したりいろいろなケースを研究されて、現場の警察官の方々にいろいろと通知をされているのだろうと思いますけれども、今回の法改正によりまして、その取締官の業務というのはどのように変わっていくのでしょうか。
○横瀬政府委員 警察の方におかれましてこういう海賊版に関しての専属的な組織をつくっていただいたということは、ただいま非常に数が少ないというお話ではございましたが、非常によくやっていただいているというふうに思っている次第でございます。 それで、今後の問題でございますが、これは改正の内容が「所持」という形態になって、それを取り締まりの対象の形態にふやしていただくということでございますから、先ほども申しましたように、それによりましてかなり取り締まりのやり方の具体的な姿は変わってくるところもあると思います。この辺の詳細は、警察の方の御検討もおありだろうと思いますし、私どもとして詳細にそれを知る立場にはございませんけれども、もし御相談があれば、御協議があれば積極的に私どもも協力をして、ぜひその取り締まりの実が上がるようにお願いをしたいというふうに思っております。
○北橋委員 今回の法改正におきましては、「頒布のために店頭にビデオその他を陳列する等の行為」という著作権小委員会の提言よりもさらに一歩進めて、広義の「所持」という用語を使っていらっしゃるわけでありますが、これによってかなり摘発できる態様が変わってくるのではないかと思いますが、陳列を所持に変えた、それによって具体的にどのように変わってくるのかお伺いします。
○横瀬政府委員 お話しのとおり、昨年の十月に報告がありました著作権審議会第一小委員会の報告の中では、「所持」とはなっておりませんで「陳列等」、「等」と申しますと非常にあいまいになるみたいに見えますが、要するに陳列だけに限定をしないけれども、いろいろその辺の構成要件の文言については十分検討をする余地を残しておくようにというような意味で「陳列等」というふうになっていたわけでございます。そこでそれを受けまして私どもでいろいろ検討したわけでございますが、例えばビデオレンタル店では陳列しているものは化粧箱だけである、そして海賊版カセット本体については陳列しないのが通常であるというようなこともわかっておりますし、それから、これからは訪問販売とかあるいは通信販売といったような形態で店に陳列をしないようなそういう商売というものも出てくる、発展をする可能性を十分持っているというようなこともございまして、これでは「陳列」では十分ではないということから、海賊版をそれと知って「頒布の目的をもって所持する行為」というのを処罰の対象とするとしたものでございます。 したがいまして、そういったやり方で、店に海賊版の置き方を工夫することによって処罰を、取り締まりを免れるというようなことは非常にやりにくくなったと考えておりまして、「所持」とすることによって先ほど申し上げました立証をする方法というものが非常にやりやすくなったということから、取り締まりの効果が上がると期待しているところでございます。
○北橋委員 これまでの文化庁との質疑を通じまして、今回の法改正によっていわゆる海賊版に対する取り締まりの体制がよりきめ細かくなってくる、こういう印象を受けたわけであります。しかし現実を見てみますと、日本は相当違法行為、脱法行為が行われているようでありまして、著作権を保護する観点から見ますと、海賊行為の取り締まりということは今後さらにますます重要になってくると考えるわけです。前途はなかなか厳しいように思います。 そこで、外国の事例なのでございますが、イギリスに目を転じますと、FACT、ファクトと呼ばれておりますが、著作権侵害行為の監視機構というものが昭和五十七年に発足をした。それまでは海賊版を扱っていた店が全体の六五%だったらしいということであります。六五%というのは、文化庁次長の御説明でも、日本よりもさらに海賊行為が頻繁に行われている国だったわけであります。それが現時点で何と二五%までに減少させた実績があるわけであります。この短期間の間にイギリスにおいては見事、海賊行為を行っている店をかなりの程度駆逐してきたわけであります。そういった意味で日本としましても相当参考にし得るところがあると思うのでありますが、文化庁としては、イギリスのFACTの実践がどういう政策手段あるいは取り締まりの対策によってここまでその政策意図を実現したのか、そしてまたその政策手法の中で我が国でも有効と考えられるものがあるかどうか、それはどんなものかお伺いします。
○横瀬政府委員 ただいま御指摘のイギリスのFACTという組織でございますが、一九八二年にアメリカの映画会社及びイギリスの国内の映画会社によって設立された監視機構だということでございます。この機構は約二十人のスタッフを持っておりまして、警察当局と連携をして、海賊行為を行っているレンタル店の調査、警告、告訴というような活動を行うということを任務にしております。その結果として、ただいまお話しのとおり、設立当初の海賊版取扱店は全体の六五%ぐらいあったと言われておりますのが二五%に減少した、こういうような効果を上げていると聞いているところでございます。 こういったイギリスの事例等につきましては、我が国の権利者団体としても非常に参考にしているところでございまして、現に監視機構というものについて実施に移す際の大きな参考にしているわけでございます。我が国におきましても、昭和六十一年の二月にアメリカのメジャー系の映画会社の団体の支社としてアメリカ映画協会日本支社というものが設立されて、これも一つの監視機構の役割を果たしているわけでございますが、邦画関係につきましても、昭和五十九年の十月に、我が国のビデオソフトメーカーの五十八社、それとそのほかの著作権団体等も加わりまして、ビデオ著作権保護.監視機構という組織を設けて、アメリカ映画協会日本支社と連携をとりまして同じような監視の活動を行っているわけでございます。この団体の活動が行われましてから我が国の中でもかなりの効果を上げていると考えておりまして、例えば昭和六十一年度における市場に出回っている海賊版の数は七百万本を超えると言われていたものが、先ほど申しましたように昭和六十二年度には五百五十万本に減少しているというようなことで、これは一年度の変化でございますが、この両監視機構、ともに活動をさらに積極的に行いまして今回の法改正も成立をお願いしているわけでございますが、成立いたしました場合には、さらにそれらが相乗効果を上げて一層海賊版が排除されるという傾向が強まることを期待しているところでございます。
○北橋委員 今の御説明では具体的にどういう対策をとっているのか余り詳しく聞けなかったわけでありますが、いずれにいたしましても、海賊行為を取り締まるために、そういった外国のよき事例というものは十二分に調査はされているとは思いますが、さらに現地に行かれていろいろと詳しくデータをそろえられまして、日本のこれからの行政の推進に当たって参考にもしていただきたいと思うわけであります。 そこで、先ほど政府委員の御答弁で、アメリカと日本を比較した場合になぜ日本が海賊行為をする業者が多いのかという理由につきまして、その基礎は著作権思想の啓蒙が不十分である、そのほかにも取り締まりの体制あるいは刑罰、量刑についても触れられたわけであります。しかし、その基礎に著作権思想の啓蒙に問題があるということはわかるわけでありますが、これを今後是正をしていく、取り締まりをしていくという意味から見ますと、すぐに手がつけられるのは取り締まりの体制と量刑の問題であります。 アメリカにおきましては、海賊版ビデオを店に置いてあるだけで罰せられるようでありますし、その罰則というのが五年未満の禁錮刑及び二十五万ドルの罰金、日本円にしますと三千二百五十万円、大変な金額の罰金が科せられているわけであります。これは決してアメリカが重罰国家ということを意味するのではないと思います。むしろ、それによって守られるべき権利というものが高く評価されているからこそ、その点が量刑にあらわれているのだと私は理解をするわけであります。その意味におきまして、現在も、裁判になりまして判決が出ましても、十万円から二十万円程度の略式命令の罰金刑ぐらいで済まされているということでありますが、そういった日本の実例を聞いてまいりますと、量刑の点についてもかなり日本は今後考え直す必要があるのではないかと思うわけです。もちろん、刑罰を重くすることによって改善を図るという手法はそれ自体まことに遺憾な方法ではありますが、しかしそれも一つの重要な政策手段であると思います。その意味で、文化庁におきましても罰則を含めた規定についても十分検討されたと思いますが、今回はそれを改正されなかったわけであります。もちろん、量刑について改正する場合には、ほかの横並びの法令との関係がありますので、文化庁だけの政策的判断だけでは結論が得られないかと思います。 そこで、これは文部大臣にお伺いしますが、量刑を重くするということにつきましては幾つかのハードルはあると思います。しかしハードルはあるにせよ、日本は海賊行為、違反行為を行ったことに対する刑罰が余りにも軽過ぎる。ひいてはそのことが、著作権を侵害してもこの程度なのかということにもつながるのではないかと思うわけであります。大臣は、先般の参考人の言われたことを事務当局から聞いておられると思いますけれども、著作権思想の啓蒙普及は極めて大事だということは重々御承知だと思いますけれども、そのためにもやはりそれを侵害した者に対しては適正な刑罰が科せられるという体制を整えないと、取り締まりというのはうまくいかないのではないかと思うわけですが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
○中島国務大臣 北橋委員が御指摘の中で、やはりモラルの問題として著作権思想の徹底、普及を図るべきではないか、その一面で量刑のお話も出ているわけであります。他国と比較をいたしまして軽いというか、いろいろありましょうけれども、私も先ほどの隣接権のところで申し上げましたように、結局はこれ国際的な信義の問題というか、モラルの問題でありますので、量刑のこともその時点時点での見直しをしなければならぬ時点もありましょうけれども、むしろ今おっしゃった後半の著作権思想の普及、徹底ということであろうと思います。また文化庁そのものも、いろいろなことで、著作権というのは非常に身近なものであるにもかかわらず、いざ著作権の一条一条というのを、身近な割には理解している方の範囲はなかなか広くはないと思いますので、ある意味では、それをわかりやすい漫画にして普及、徹底を図りますとかいうこともしておるわけでありますし、学校の中でどのくらいしておるのかという御質疑もあったわけでありますけれども、これは小学校の時代から著作権という名前では徹底できませんでしょうけれども、少なくとも個人の尊重あるいは他の人の権利を尊重するというようなことでの普及、あるいは中学、高校に行きますと、高校の商業関係ではこの著作権も入ってまいりますけれども、なおその他の面でも著作権の思想の普及についてさらに努力をしていく、そういう面でカバーをしてまいりたい、このように考えます。
○北橋委員 文部大臣は量刑につきましては余り積極的でないようでありますが、ぜひ欧米の事例等も十分参酌されまして、こういった問題についても事務当局で詰めるように御指導をよろしくお願い申し上げたいと思います。 続きまして、映画の著作権の帰属の問題について政府の見解をただしたいと思います。 この問題については、国会の附帯決議でも指摘されておられます。そしてまた、先般の参考人の意見聴取におきましても、映画に関しまして監督並びに実演家の権利がもっと働くようにすべきではないかという御主張もございました。私どもも当然もっともなことだと思うわけでありますが、この点について今後どのように改善をされていく方針か、お伺いをします。
○横瀬政府委員 ただいまの御質問で映画の著作権問題でございますが、監督と実演家の権利というのは、二つおっしゃいましたけれども、監督は著作者でございますし、実演家は著作隣接権者でございますので、それぞれその点の取り扱いが若干異なりますので、それを分けて申し上げます。 まず監督についてでございますが、現行の著作権法では、プロデューサーとか監督というような著作物の全体的形成に創作的に寄与した者というのが映画の著作者になっているわけでございますが、ただ、第二十九条第一項という規定がございまして、そこで、映画は巨費を投じて製作されることが多いということ、それから著作者のすべてに著作権保護を認めますと映画の円滑な利用に支障を及ぼすというようなことから、映画の著作権につきましては映画製作者に権利としては帰属するということになっているわけでございます。 そこで、この帰属の問題につきまして御指摘の国会の附帯決議、これは昭和四十五年の現行法の制定時の附帯決議でございますが、そこで指摘をされておりますし、それから、最近では映画の利用が非常に多様化しているというようなことから、その見直しについて御要望があることは承知をしているわけでございまして、私どもも十分問題意織を持っているつもりでございます。ただ、現在の規定というものが映画の円滑な利用という趣旨に基づいて規定されておりまして、世界の各国におきましてもそういう規定をしている、映画製作者を著作者あるいは著作権者と規定している国が大勢であるというようなことがございます。これは、映画の全体の関係者との調整ということも十分必要でございますので、どうしてもその見直しについては慎重に対処しなければならないものでございまして、これも今後関係者の間で議論が積み重ねられていって、その動向を見ながら検討するということが必要ではないかというふうに考えているものでございます。 次に、実演家の問題でございますけれども、これも著作権法の第九十一条第二項の規定によりまして、俳優等の実演家が行った実演は、最初の出演料は当然受けるわけでございますが、その後の映画の利用につきましては実演家の権利が認められていないという問題があるわけでございます。ただ、これも世界各国において行われておりまして、また問題になっております先ほどお話のございました隣接権条約という、隣接権に関して世界的な基準をつくっている条約の中でも、実演家が行った実演が収録されている映画については、最初に収録を許諾した場合には実演家はその後の映画の利用について権利を有しないという基準を設けているわけでございます。これも、多数の権利者が関与した映画の著作物の円滑な流通という特殊性から、そういうことになっているのだと思います。 したがいまして、現在、映画のビデオソフト化というような非常に多様な利用形態が生じてきておる段階でございまして、映画の再利用ということに関して一つの大きな問題になっていることは十分わかるわけでございますけれども、一つの世界的なルールの中で行われている問題でもございまして、これも関係者の間で十分議論が積み重ねられるという時間がかかる問題ではないだろうかというふうに考えております。 したがいまして、制度的な検討ということにつきましては現在のところでは若干目途が立たないというような状況にございますけれども、ただ、例えば監督とその映画の製作者との間の契約、もう一つは実演家と映画製作者との契約というような契約面で解決を図るというのが、一つの現実的な方策であるというふうに考えているところでもございまして、例えば監督につきましては一定の団体間での契約が成立している状況もございます。それから、実演家の団体と映画製作者との間の話し合いというのも、映画のビデオディスク化についてのことに関連いたしまして、現在話し合いが行われているというようなことも聞いております。こういった面で現実的な解決をしていくのも一つの方法ではないかというふうに思っている次第でございます。
○北橋委員 時間が来たわけでありますけれども、最後に文部大臣の御所見を伺って終わりますが、実演家の人格権の保護という問題が、先般の委員会の参考人聴取でも実演家の代表の方から強く言われたわけであります。いろいろとお話を伺ってみますと、実演家の皆様方は大変御苦労されておられる、そしてまた、映画の世界一つとりましても、撮影、照明、録音などいろいろなスタッフの方が総合的につくり上げるのが映画でありますけれども、そういったところでもそういった方方の著作権というのは認められていない、そういった意味で、芸術、文化を今後ますます発展させるためにも、実演家の人格権でありますとか映画の創造スタッフの皆様方の著作権の問題について、事務当局に対しまして今後それを保護する見地から検討を進めていただくようにお願いをしたいわけでありますが、その点をお伺いしまして、私の質問を終わります。
○中島国務大臣 実演家の人格権、これは国際的にも論議が深められておるところと聞いております。また前段の映画の著作権、これまた製作者に帰属する、こういうことでありますけれども、これはやはり複数の集団の方々のそれぞれのお力を得てでき上がるものでありますし、今慣例としてそういうことにはなっておりますが、またそれとは別に、実演者の人格権、これについてやはり討議を深めるべきときであろう、このように思っておりますので、国際的な動向も踏まえまして、論議が必要な時期に来ておるかなと私も考えておりますが、これについては実務的に事務の方にもその研究を深めるようにさらに指導したいと思っております。
○北橋委員 終わります。ありがとうございました。
○中村委員長 石井郁子君。
○石井(郁)委員 著作権法の一部を改正する法律案につきまして、幾つかの点でお伺いをしたいと思っています。 著作隣接権の保護期間ですけれども、二十年から三十年に延長するということでは一歩前進だと思うわけですが、これでは十分とは言えないということはもう大方の御意見かというふうに思うわけです。言うまでもありませんけれども、アメリカでは七十五年、イギリス、フランスは五十年、また、隣接権条約加入の条件をつくるというならやはりここでもっと長くするということが必要だと思うのですが、なぜ三十年にとめ置いたのかという点で、この理由をお伺いしたいと思います。
○横瀬政府委員 隣接権の保護期間につきましては、著作権審議会の第一小委員会の報告を受けて今回の提案を申し上げているわけでございます。したがいまして、三十年という議論はこの第一小委員会の中でいろいろ行われたわけでございます。 一番大きな点といたしまして、著作隣接権者というものは、その権利を認められている理由といたしましては、著作物の公衆への伝達という役割、これによって著作権に隣接する権利を認める、こういう趣旨でございます。したがいまして、どうしても著作物そのものの創作ではないわけでございまして、そういった意味で、この第一小委員会、これは専門家から構成されている委員会でございますが、我が国の状況の中では、著作物と同程度の保護を認めることにつきましては消極論が非常に強かったということでございます。それで現在二十年でございますが、それを十年延長して、五十年にはしないけれども三十年まで延長する、こういうようなことでございました。それと、国際的な基準でございます著作権のベルヌ条約、これは最低は五十年ということになっておりますし、それから隣接権についてはローマ条約、これは最低が二十年ということになっております。というように、世界的な基準においても隣接権と著作権との間には保護期間に差がついているというようなことも一つの論拠になろうかと思います。 それから具対的な国際的な状況でございますが、先生も今一部触れられましたけれども、これは非常に区々でございまして、著作権の保護期間についてはベルヌ条約、ベルヌ同盟に加盟しております国々は当然五十年あるいはそれ以上ということになっておりますのに対しまして、隣接権に関しましては非常に区々でございます。例えば西ドイツとかフィンランド、ノルウェーというようなものは二十年、イタリアはレコードについて三十年、実演について二十年というような非常に短いものもございます。フランス、スウェーデン、イギリスといったもののように五十年、これはイギリスはレコードについてだけ五十年で、実演家は別の罰則によって対処しているわけで特殊なケースでございますが、こういった著作権の年数と同じにしているところもございます。それからアメリカは、今お挙げになりましたけれども、実は著作隣接権制度というものを認めておりません。したがいまして隣接権条約締約国でないわけでございます。ただレコードを著作物として認めておりまして、個人著作について死後五十年、法人著作について発行後七十五年というような保護期間を決めておりますけれども、これはあくまでも著作権として決めておるわけでございまして、著作隣接権制度は認めていないという状況になっております。 このように先進諸国においても非常にいろいろで、著作隣接権の決め方についてはいろいろ区々であるというようなことが一方の状況としてございます。それで、そういった国内、国際のいろいろな動向を踏まえた上で三十年と定めたわけでございますが、保護期間を長くしてほしいという御要望のございます権利者の団体と、反対にそれについて消極的な利用者の団体、こういうものの具対的な御主張の実態も十分考えて調整をするということも一方において考慮しなければならない問題である、こういうふうに考えてきたものであろうと思っております。
○石井(郁)委員 そういういろいろな背景や事情があるわけですけれども、演奏家の保護年限も三十年に延長されるということでは確かに前進ではあるわけです。しかし、音楽ということで考えてみますと、作詞・作曲家、それから演奏家の共同の営みですね。私は両者の権利というのは本来同等だというふうに考えるわけですけれども、そういう点で演奏家の保護年限を実演後五十年とすべきだというふうに思うわけです。この点はいかがでしょうか。
○横瀬政府委員 著作隣接権は御存じのとおり実演とレコードと放送事業者、それと有線放送事業者、この四つのものに認めているわけでございますが、それの認めている理由というものは、先ほどもちょっと触れましたように、著作物を公衆に伝達する、そういう役割において認めているわけでございます。したがいまして、そういった意味においては実演もレコードも放送も同じ役割であるということで、一応包括をして著作隣接権というものの保護期間を考えていく、こういうやり方が普通はとられているわけでございまして、先ほど申しました第一小委員会の審議におきましても、そういった認識のもとに審議が行われたと考えております。 したがいまして、実演家が行います創造的な行為というものは、やはりこれは著作物を演ずるあるいは演奏するあるいは解釈をする、そういうようなものにおける創造性ということであって、その著作者の創作行為と同じであるというわけにはなかなかいかないというのがこの専門家の認識でございました。 それで、国際的な状況を見ましても、実演とレコード放送とを区別して保護年数を決めているという国もあるわけでございますが、先ほどちょっと例に挙げましたイタリアなんかではレコードについて三十年、実演について二十年ということでむしろ実演の方が短くなっておりますし、先ほど触れましたイギリスとかあるいはアメリカにつきましてもレコードの保護は非常に厚いのでございますが、実演の保護は制度としてもないというような国もございまして、どちらかというと、区別している国でも実演について保護を厚くしているとは言えないようなところがございます。そういった状況もございまして、著作権審議会の審議の中では、実演家とレコード放送について区別をするということなく三十年という提案をしているということでございます。
○石井(郁)委員 最近の社会的な状況の変化というのが非常にいろいろな分野であるわけでして、録音の技術が大変変わってきていますね。長期に保存しても音質が低下しないという事情が一つありますね。それから、これは全般的な事情ですけれども、著作権者の平均寿命が大幅に延びているということがございまして、そういう点からも保護期間の延長ということをもっと真剣にこの時則に考えるべきだというふうに私は思うわけですけれども、その点で再度お伺いしたいと思います。
○横瀬政府委員 ただいまの問題につきましては、先ほど来触れてきておりますけれども、著作権審議会の第一小委員会では、今回この三十年というものを最も適切なものとして現状で提案いたしておりますけれども、なお言及をしておりまして、今後の状況の変化、利用実態であるとか、あるいは今もお触れになりました機器等の発達とかそういったこと、あるいは国際的な動向、そういったものを踏まえて、そうしたものについて変化があった場合にはそれに即して検討をする必要があるということを触れておるわけでございまして、私ども、そういった御提案、第一小委員会の報告の趣旨を踏まえまして、今後そういった動向については十分注目を払ってまいりまして、必要があれば検討していくというような体制をとっていきたいと考えております。 〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
○石井(郁)委員 ビートルズは今日でも大変人気のあるグループでございますけれども、一九六〇年に出されたビートルズのレコードが期限切れということでこういう問題が起こっているのですね。原盤提供を受けていない別の企業からCD、コンパクトディスク化するというような問題が起こっているというふうに聞いておりますけれども、この点で文化庁が把握していらっしゃることで御説明いただけないでしょうか。
○横瀬政府委員 ただいまの御指摘は実は著作権法の百二十一条の第二号の問題でございまして、ビートルズのレコードにつきましては、昭和四十三年以降に作製されたものにつきましては原盤が作製後二十年間この百二十一条二号の規定によりまして複製・頒布の禁止の対象になっているわけでございますが、その昭和四十二年以前に作製されたものにつきましては作製後の期間が二十年を経過しておりまして、それでこの規定によりますと、原盤に最初に固定した年の翌年から起算して二十年を経過するまでの間については、外国のレコードで原盤の供給、提供を受けて製作したレコードについては複製を禁止しているという規定になっておりますけれども、二十年を経過してしまいますと著作者の許諾さえ得れば複製ができるというような制度になっているわけでございまして、それに基づきまして実際に二十年が切れて複製されている例といたしましてはビートルズのレコードが最も多いわけでございますが、そのほかにもプレスリーのものであるとかそういったものがございまして、延べ数は五千曲以上に上っているというような調査もございます。ということで、この点につきまして、二十年が短過ぎるのではないかという外国の権利者の要望もございまして、それも一つの今回の延長に関する議論の中に入れているわけでございますが、今回の法改正の御提案の中に、この百二十一条の第二号の改正につきましても、隣接権の二十年を三十年に延長するということに合わせまして、この禁止期間も二十年を三十年に延ばしてそうした外国からの非難というものを解消しようというふうに考えているところでございます。
○石井(郁)委員 我が国の保護期間が短いということでいろいろな問題が生じているわけですね。国際摩擦も生みかねないというようなことがいろいろ出てくるというふうに思うわけです。文化庁の御答弁でも、延長についてやはり今後検討が必要であるというようなことをちょっとおっしゃったと思いますけれども、この保護期間のあり方についてやはり早期に検討を開始するという点で、大臣いかがでございましょうか。
○中島国務大臣 隣接権の保護期間を二十年から三十年と一応御提案をし、これでお願いをいたしたい、こう思っております。ただ、今例を引かれましたように、ビートルズのように息長く愛好されるというものにつきまして二十年というのは少な過ぎる、あるいはまた二十年を三十年にしてそのときまたどういう御論議があるか、その間でまた論議を深めるべきときもあろう、そういう意味ではそうお答えできるわけでありますが、現在はこの二十年を三十年ということでお願いを申し上げたい、このように思っております。
○石井(郁)委員 写真の著作権の保護期間についてお伺いをしたいと思います。 衆参の文教委員会でも既に昭和四十五年に附帯決議で述べられているところでありますけれども、この問題でほどのような検討が進められてきたでしょうか。
○横瀬政府委員 写真の著作権につきましては、現在の規定では公表後五十年という保護期間になっているわけでございまして、それが一般の著作権の保護期間でございます死後五十年というものと異なった取り扱いを受けているということから、通常の一般の著作物と同じように死後起算にすべきだというような御主張もございますし、ただいまの御指摘のように昭和四十五年の附帯決議でも指摘されているわけでございます。 この昭和四十五年に制定されましたときの公表後五十年と決めた理由について若干申し上げる必要があるわけでございますが、理由としては五つほどございまして、一つは、写真の著作物につきましては、単に芸術的な写真についてだけではなくて、いわゆる記録的な写真についても同じように著作物として保護しているわけでございますので、どうしても個々の著作物については著作者名の表示を欠く場合が多くて、したがってその著作者の特定が困難だという場合が多いということ。それから、早期に一般国民の利用に開放することが期待されるものが非常に多いということ。これは記録写真についてでございます。それから、旧著作権法では一般の著作物は死後三十八年であったわけでございますが、写真については発行後十三年というように非常に短かったという事情がございまして、これをともかくも五十年に、五十年というのは一般の著作物と同じ年数にはするというようなことで、非常に大幅な延長をこの際に考えたわけでございますが、さらに一般の著作物と同じように死後起算にするところまで大幅に延長することは、急激な変化過ぎていろいろな反対が出るというふうに判断されたということ。それから、これはベルヌ条約でも、写真の著作物については一般の五十年の原則と異なりまして創作後二十五年というふうにしているというようなこともございます。それから、外国の立法例でも、イギリス、西ドイツ、イタリア、スウェーデンといった国につきましては、写真の保護期間について一般の著作物とは異なる取り扱いをしているというような国が多いということ。そういうようなこと、ただいま五つほどの理由を申し上げましたが、そういった理由を勘案いたしまして公表後五十年という規定の仕方をしたわけでございます。 その後、現行法が施行されましてから二十年近くたっているわけでございますけれども、こうした現行法の制定時の事情というものがどうも基本的に変化したというようなところがちょっと言えないというふうに私どもは考えておりまして、この写真の著作権についての検討を具体的に始める時期にはなかなか至っていないんじゃないかというふうに考えておるところでございます。 この検討の方向といたしましては、この議論の中でいろいろあるわけでございますけれども、写真の中に美術の著作物とも言える芸術写真というのもございますし、それから、先ほど申し上げました記録的な性質の強い報道写真というようなものもございます。こういったものを現在はすべて同等に取り扱っているわけでございますが、これらを分けている国もあるわけでございますが、分けて考えていくことができるかどうか。しかし、無論分けるとなりますと、非常に関係者の間で意見の一致というものはなかなか難しいであろう。それから反対に、現行のように一括して保護期間を考えますと、どうしても報道機関といったものの利用については非常にその利用度が大きいものでございますから、それらとの間の調整の問題が非常に難しいというようなことがございまして、この写真の著作物の検討ということにつきましては、なかなかそれを調整できるめどが立たないというのが状況でございまして、どうしてもめどが立たない状況の中で検討を開始するということは非常に混乱するおそれもあるということで、現在そういうような認識をしているところでございます。
○石井(郁)委員 写真分野の著作権の保護年限が公表後五十年ということでありますが、文学や音楽などと同じく死後起算にしてほしいというのが写真分野の人たちの強い願いになっていると思うのですね。全日本写真著作者同盟などからもいろいろ御要望が出されていると思いますが、写真分野の方々がなぜ死後の五十年という保護年限にしてほしいという強い要望を出されているのかということについては、文化庁はどのようにお考えですか。
○横瀬政府委員 これは、ただいまお話がございましたように、例えば昭和五十八年に全日本写真著作者同盟及び日本写真著作権協会が、それから昭和六十二年の十一月に全日本写真著作者同盟から、文化庁に対して御要望がございまして、ただいまのようにその保護期間の延長について御要望があったわけでございます。その理由といたしましてこの団体が挙げておられますのは、一つは、写真の著作物に対する国内の認識状況、それからもう一つが、先進国の法改正例において写真の保護を死亡時起算とする動向、この二つを挙げていらっしゃるわけでございます。 それで、この写真の著作物に対する国内の認識状況というのは、これはいろいろあろうかと思いますが、先ほどのように美術の著作物に類するような写真というものと、報道等の記録性の非常に強い写真というものと、この区別というものをどういうふうに認識するかというのは非常に難しい問題がございますし、別にそれが一致しているわけでもないと思いますが、そういった認識の問題といたしましてもかなり難しい問題が一つはあるということ。それから、先進国の法改正例において死亡時起算としている動向があるというふうにおっしゃいますけれども、私ども把握しておりますところでは、国際的な主要先進国の中でフランス、アメリカ、イギリス、西ドイツ、イタリアというものは、それぞれ写真の著作物に関しての取り扱いはいろいろございますけれども、それらがここ二十年ぐらいの間に変更があったというようなことはちょっと認められないわけでもございます。それから、ベルヌ条約につきましても、先ほど申しましたように一般的な著作物については死後五十年に対して、写真については創作後二十五年、万国著作権条約の方も同じように二十五年に対して十年ということでございますが、これらを改めようとする動きも進展しているとは聞いていないわけでございまして、そういった意味で、挙げられておられます理由につきましては私どもとは認識がちょっと違っているところがございますということでございます。
○石井(郁)委員 写真の問題につきましては、文化庁の方は非常に記録の問題、そういう写真の例を特におっしゃっておられますけれども、やはり写真を芸術活動の一つとしてどう認識するかという問題があると思うのですね。そういう点で、二十代に創作された方々が、今日では寿命の延びで七十歳あるいはもっと御高齢に達していらっしゃるということで、そうしますと七十歳代に著作権を失う、つまり生きているうちに著作権が失われてしまう、こういうことが今起こっているわけですね。私はやはり、当然こういうような事態というものは改善すべきだというふうに思うわけです。この著作権にかかわっては、自由な創作活動あるいはそういう芸術家の権利を保護するということが根本的な理念だというふうに考えますと、こういう事態はほうっておけないというふうに思うわけですね。そういう点でどうですか。
○横瀬政府委員 写真の著作権についての問題は私ども重々認識しているつもりでございまして、先生の今お述べになりました点についてもそういう問題点の理解はしているわけでございますが、今までるる申し上げてきましたように、国内的な状況あるいは国際的な状況というものを見ますと、現在のところある方向を出すということについてはなかなか困難を感じているというのが現状でございますが、もう一つ、緊急性ということに若干触れて申し上げますと、これは少し具体的なことでございますけれども、昭和四十六年から現行法が施行されているわけでございますが、その以前は、先ほど申しましたように写真の著作物は十三年の保護期間でございましたから、制定時に著作権がまだ残っていたものというものは、昭和三十二年以降のものが残っているわけでございますが、それが制定時に公表後五十年ということになりましたから、三十二年から五十年で、昭和で言いまして八十二年まで一応効力が残っているわけでございます。したがいまして、現在保護されている写真というものは、およそ新法、現行法が施行されてから著作物の保護期間が切れたというものはまだないわけでございまして、そういった意味では八十二年まであと二十年ほどそういった期間が残されているということもございます。したがいまして、その間の、先ほど申しましたいろいろな国際的な状況でありますとか、あるいは国内のいろいろな意見というようなものの動向について十分これを見守って、議論を重ねつつ、新しい方向を出すということについては、そういったある程度の余裕というものはここにあるのではないかというふうにも考えておりまして、そういった中で解決できていけたらいいというふうに私どもは考えております。
○石井(郁)委員 文化庁の方は、横瀬次長は、ここ二十年の間、最初の国会附帯決議から余り事情が変わっていない、こういうような御答弁もございましたわけですけれども、しかし、四十五年のこの衆参の附帯決議は、「今後の新しい課題の検討」ということで、「時代の進展に伴う変化に即応して、写真の著作権および著作隣接権の保護期間、映画の著作権の帰属」問題等々につきまして「積極的に検討を加えるべきである。」というふうにあるわけですね。ですから、それから約二十年ということで、今日なおめども立っていないというような言い方では、この国会の附帯決議を本当にどう受けとめておられるのかという点でも私は大変問題を感ずるわけです。 そういう点で、写真家の著作権、また映画も同様ですけれども、映画の著作権の帰属問題等につきましても、この附帯決議に沿って早急に検討を開始するということに取り組むべきだと思うわけですが、この点で大臣の御所見を伺っておきたいというふうに思います。
○中島国務大臣 おっしゃるように写真、これは映画横並びでございますので、四十五年以降五十年という現行法になっておるわけでありますけれども、そういう面では、政府委員がお答えしましたように、多少の時間的なゆとりはあると申しますものの、確かにこういう著作物はお若いときに発表されるということも間々あるわけでございますし、また映画の方も、製作の形が草の根的な製作もどんどんふえておることでありましょうから、これは一度推移を見まして研究は進めてみたいと思っております。
○石井(郁)委員 この著作権法の審議に当たりましては、再々いろいろな方々がお触れになっていらっしゃいますけれども、我が国のこの著作権思想の浸透が非常に弱いということは、新聞等々でも指摘されているところであるわけです。私はその一つがこういう保護期間の問題にあらわれているというふうに思うのですね。そういう点でも、この精神的活動に対する権利を保障する、こういうことを思想としてもまた制度としても確立していくということにもっと真剣に取り組んでいくべきだ、こういうことを申し上げておきたいというふうに思います。 次に、家庭で録音・録画が大変気軽にできるようになりました。この私的録音・録画の普及の問題で、関係者から、この録音や録画の機器メーカー側に対して報酬請求権というものでしょうか、この確立を大変要望していらっしゃるというふうに思うのですね。この問題につきましてどのように対処されようとしているか、伺いたいと思います。
○横瀬政府委員 ただいま御指摘のように、録音・録画機器の著しい発達・普及に伴いまして、家庭内における録音・録画が非常に簡単に、しかも精巧にできるようになったということが、著作権者あるいは著作隣接権者の経済的な利益を脅かしているのではないかというような問題が起こっておるわけでございます。 それで、ただいまお挙げになりましたように、西ドイツとかフランス等でとっております録音・録画機器やテープの価格に一定の報酬を上乗せして、その部分を著作権者に還元するというような制度でございます報酬請求権制度というものも、我が国にも導入すべきだというような主張が起こってきております。そこで、これはまず文化庁におきましては、著作権審議会の第五小委員会というのを設けまして検討いたしたわけでございますが、昭和五十六年の六月にその小委員会の報告が出ましていろいろ議論をしたわけでございますけれども、結論としては、やはり権利者と利用者、特に録音・録画機器のメーカーといったような関係者との間で意見の一致というものを見出すことが不可能でございまして、特定の対応策をとるということについての方向は不可能であるというような結論になったわけでございます。ただ、今後とも関係者の間の合意形成に向けて努力をすべきだということでございまして、そこで、この努力をすべきだという提言を受けまして、昭和五十七年の二月から、これは審議会ベースではなくて民間ベースにいたしまして、社団法人著作権資料協会という公益法人の中に、権利者団体あるいは機器メーカーの関係者、それから学識経験者というものから成ります懇談会を設けまして、ここでさらにその合意形成に向けての話し合いが進められたわけでございます。これは昭和六十二年の四月に報告が出たわけでございますけれども、ここでもやはり、国民の理解という点についての一定の進展は見られるけれども、なお諸外国の状況あるいは報酬請求権の制度自体の検討についてもう少し十分に検討をすべきであって、この懇談会において制度的な対応を図ることについて合意を形成することは困難であるというような結論でございまして、さらにこれも引き分けになったわけでございます。ただ、この非公式の民間ベースでの懇談会におきましても、関係者はもう一度著作権審議会の場において議論すること自体については合意をするというようなことがございまして、その権利者、利用者、関係者全体の要請を受けまして、著作権審議会は再度、昨年の昭和六十二年八月から第十小委員会というのを設けまして、さらに制度的な検討についての集約をするための議論をしているところでございます。現在までに五回の審議を行っておりまして、いろいろと議論をしております。 報酬請求権制度を既に導入しております西欧諸国の状況についての検討、それから一番問題になりますのは、録音・録画を行う者でないメーカーが報酬を払うことになる理由というようなことが、最も理解のしにくい、共通理解に至る形成がしにくいものでございまして、そういった点とか、あるいは報酬の支払いの対象、例えば録音と録画のどちらにもするのかどうか、あるいは機器とテープ、これもどちらかにするかあるいはどちらにもするかというようなその具体的な内容、それから現在の三十条でございますが、私的複製に関する現行規定と報酬請求権制度との関係をどう考えるかというような、かなり具体的な、しかし制度的には非常に基本的な重要な部分について現在検討をしておりまして、これを大いに深めていきたい、そしてできるだけ早くこういうものがまとまってまいりますように私どもとしては大いに期待をしておるところでございます。
○石井(郁)委員 この問題は大変な社会問題でございまして、本当に一日も放置はできないと思うわけです。この私的録音・録画の普及で、いろいろと芸術家の方々、音楽家、映画関係者の方々、大変な権利侵害を受けているということも事実でありまして、早急に取り組まなければいけないと思うわけです。 西ドイツでは既に昭和四十一年にこの報酬請求権制度を導入、確立しているわけでありまして、続々各国がこういう動きをしているわけでありますから、文化国家の我が国はこういう点でもおくれをとらないようにしていただきたいと思うわけです。そういう点で、審議会のいろいろ結論等々もございますでしょうけれども、やはり文化庁がもっときちっとリーダーシップというか指導性を発揮しないと、なかなかこういうことは解決をしないのではないかというふうに思うわけです。そういう点で再度、文化庁のこの問題への強い対処、その御決意を伺いたいと思うわけです。
○横瀬政府委員 ただいま申し上げてまいりましたような経過をたどって、現在第十小委員会で議論をして審議をしているところでございますが、先ほどお挙げになりました西ドイツから賦課金制度というのが始まりまして、西ヨーロッパの国々を中心といたしまして次第にこの制度が普及してまいりました。ごく最近ではフランスもこれを実施するというふうなことになってまいりまして、全体で九ヵ国という国がこういう制度をとるようになったというような国際的な背景もございまして、私どもとしてはぜひなるべく速やかにこの制度を導入して解決ができますように、先ほど申しましたように第十小委員会の審議を促進しているところでございます。私どもとしてもぜひとも、長い間の懸案でございます、難しい問題もたくさん含まれているわけでございますけれども、関係者の御協力を得て、早く制度の姿がまとまりますように全力を挙げて努力をしていきたいと思っております。
○石井(郁)委員 次に、既に触れられておりますけれども、隣接権条約について、ローマ条約への加入の問題で一つ、二つお伺いしたいと思います。 結論から申しますと、先ほど来の御答弁で、速やかにこの加入を考えていきたいというようなことだったと思いますけれども、やはりいつごろまでなのかという点でも、加入のめどとされる時期をもう少し明確にしていただけないでしょうか。
○横瀬政府委員 隣接権条約の加入についての前提条件となります条件整備につきましては、先ほどるる申し上げましたとおり幾つかの面がございまして、それらは関係者間の話し合いというようなものが主体となって進められている事情にございます。したがいまして、これはどうしても関係者間の主体性というものが第一でございますので、文化庁としていついつまでにということはなかなか難しいものでございますが、しかし、せっかく第一小委員会の報告が出されたわけでございますので、私どもとしては、できるだけ早い時期にこの加入が実現されるように今申し上げた条件整備について促進をしてまいりたい、促進をするための努力を全力を挙げていってやってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
○石井(郁)委員 残された時間につきまして、私は再度ガンダーラ仏の真贋問題についてここで質問をさせていただきたいというふうに思うわけです。 この間、若干の進展がございました。文芸春秋の五月号には大臣あての公開質問状も掲載されまして、非常にいろいろな実情が改めて公のものにもされたわけですけれども、やはりこの問題は、国立の機関の中で起こっているという点で文部省も見過ごせないいろいろな点があるというふうに私は思うわけですね。最初に、大臣あての公開質問状につきまして大臣の御感想をちょっと伺いたいと思います。
○中島国務大臣 御指摘の点は、ある月刊雑誌の誌面を通じて、公開質問状というタイトルで、ガンダーラ仏に関します要点が幾つか書かれておった、こういう事実がございます。私もそれを目にいたしました。二つありまして、一つは、ガンダーラ仏の真贋についての御指摘であります。それからもう一つは、それの購入手続についての経過の記述がございました。とどまるところ、今訴訟をされておりますので、それを拝見しますとやはり真贋論争というものが主のように思われます。 これについては、四月にもたしか石井委員から御指摘を受けておりまして、その真贋につきましては、去る三月に予算委員会の分科会で、はっきり言ってどっちなのだ、真贋論争というものは第三者、国民から見てはっきりしないと非常に隔靴掻痒の感がある、こういう意味の御質疑がございまして、今までの経過を見てまいりますと、その経過上本物である、こういうふうにお答えをいたした記憶がございます。ただ、正式に言えば、昨年の七月でございますか、八人の専門家の方々でガンダーラ仏研究協議会というものを開いていただきまして、そのときに、後ほど速記録を公開させていただいたわけでありますが、その内容は、中には贋作であるとおっしゃる方がお一人、あとの七人の中には、これは贋作ではないとおっしゃる方並びに贋作とは言い切れないというような言葉で表現された方がおりますので、正しくはそういう三論併記の形で出されておりますから、そのままお伝えをするのがより正しいお答えであったかとは思います。しかし、現在奈良博の見解は、田辺さんというある専門家の数十項目にわたる指摘に対しましては、贋作ではないかということについては的確にそれに反論をしておるというふうに承知をいたしておりますし、現在はその奈良博の見解を覆す根拠はないという点で推移をいたしております。ただ、先ほど申したように訴訟をされておりますので、この訴訟の形態の中でより明らかにされていくことと思いますし、またその中で、知見を広めるためにいろいろなことが要求されるならば、そこで専門家の手によってさらにはっきりした検討が行われる機会はあるであろうと思っております。 御指摘の質問状について受け取った感じ、その後の経過は大体以上のとおりでございます。
○石井(郁)委員 四月十五日に奈良国立博物館の方が記者会見をされまして、この昨年の研究協議会の議事録を公開されました。そういう点では、私もこの議事録を全部拝見することができましたし、公にされたという点では大変よかったというふうに思うわけです。しかし、今大臣もおっしゃいましたように、やはり真贋の問題が主でありまして、どうなのかということになりましたら、この議事録を見た限りでも、私が質問のときに申し上げたようなこと以上にはやはり出ていませんし、それから、奈良国立博物館の方で「ガンダーラ仏に関する田辺氏の見解に対する本館の考え方」というのを発表されていますね。これを見ましても、率直に言って非常にわかりにくいわけですね。大臣も国会の中で三度にわたってこの問題を取り上げられまして、国民にわかりやすいものにする必要があるというふうにおっしゃっておられますが、率直に言ってこれではやはりわからない。そういう点で、国民が納得するとは到底思えないわけですね。その点で、文化庁としてこれで事足れりとするのか、この真贋問題について今後さらにどういうふうにされていくのか、わかりやすいというふうにしていくにはどのようにされるおつもりなのか、このことをお伺いしたいと思います。
○横瀬政府委員 ガンダーラ仏の真贋につきまして先生の御質問がございましてから、ただいま大臣が申しましたように、四月十五日に田辺さんが贋作説の根拠を三十項目に整理したものにつきまして、これは公に発表されたものでございましたので、それがちょうど田辺さんの贋作説の全体をまとめたものだというふうに考えまして、それの原文をそのままとりまして、それに対して奈良博物館がいろいろと調査をしてきた、研究をしてきたことをまとめまして、先生今お手元に持っておられます形で発表したということでございます。 これは、田辺さんの贋作説の根拠に対して反論をしているものでございますので、それはそれなりにかなり専門性を持った点もあると思いますが、私どもといたしましては、奈良博物館に、できるだけ一般的にわかるようにというようなことで指導をしてきたつもりでございますが、一応私どもとしては、奈良博物館の見解として、田辺さんの贋作説の根拠というものに対しては反論をし尽くしているというふうに考えているわけでございます。ただ一方において、この真贋につきましては、その所有者の方が訴訟を起こしているということがございまして、この訴訟に対して私どもとしては対応していかなければいけない立場にございますので、やはり基本的には、この問題はそうした訴訟の対応の中で明らかにしていくべきものだというふうに考えているところでございます。 ただ、さらに、このガンダーラ仏について別の面で新しい学問的知見が発表されたり、あるいは学会等において研究が続けられたりいたしまして、新しい展開があるということがございました場合には、私どもとしても、外部の有識者の意見を聞くということが有効であるというふうに認められる事態が生じた場合には、その時点で私どもも奈良博に対して研究するように指導するということもあろうかというふうに考えております。
○石井(郁)委員 贋作の根拠は反論し尽くされているという御答弁でしたけれども、そのことがイコールこれは真作であるという証明になるのでしょうか。
○横瀬政府委員 奈良博物館は、このガンダーラ仏を昨年の四月から五月にかけての「菩薩」という特別展に陳列をした、その際に、事前にも調査をした上で、このガンダーラ仏が当然真作であるということで、そういう前提でやっているわけでございます。そこへ田辺さんが、これは贋作ではないかという問題提起をなさった。それで、どうしてかという根拠をいろいろと挙げたというような経過をたどっているわけでございまして、どうしても、真贋問題の論争ということになりますと、先に贋作であるという御主張があって、それに対してそれを否定する形で、真作であるという主張の側はそういう論争になっていくわけでございますので、どうしても、反論一つ一つについては贋作に対する反論という形にならざるを得ないわけでございます。しかし、全体として言えば、これはやはり奈良博物館は真作であるという前提に立って陳列をした、そこでそれに対してそうでないという反論があった、そこでそれを否定をしたといいますか、否定できたというふうに考えているわけでございますから、それを総合すれば、ガンダーラ仏は真作であるということを覆すだけの根拠はないというふうに言っていることでございます。
○石井(郁)委員 奈良博がそういう対応をしているというのはそうなのですけれども、というよりか、そのこと自身に一つはずっと問題があるというのは、私が前回質問も申し上げたとおりなのですね。入手の経路やそれからこの菩薩像についてどのように研究されたのかということでも、積極的な根拠は示されないままに陳列をされたわけですね。そこが問題だというふうにいろいろな方々がおっしゃっているのじゃないでしょうか。ですから、贋作を主張された田辺さんの説がこれこれ反論されたということで事は終わるのではなくて、このお像が本当に真作なのかどうかということをやはり学術的にあるいは専門的に真剣に検討する、このことが今求められているのじゃないでしょうか。こういう形式論だとか様式論だとか専門的なことは私はとても本当に一般の国民にはわかりません。ですけれども、単純に申し上げましても、例えばあのガンダーラ仏がどこで出土したのか、このことさえ確定できない。千数百年前のものなのですから、やはり出土地とか出土状況の確認というのは古美術の問題では最も決定的な意味を持つと思うのですね。しかし、そのことはどうなんですか、国立博物館は提示していないのではありませんか。どうしてそういうことを文化庁が指導されないのでしょうか。そこが私はとても納得できないわけですね。奈良博物館のこの反論をもってもう事はよろしいというふうに文化庁は御判断なのでしょうか。
○横瀬政府委員 先ほど申しましたように、奈良博の今回の特別展というものは、仏像の由来といいますか渡来してきた跡を追いかけて、その原点に迫ろうという意図、方向を持って企画をいたしまして、それで、この問題になっているガンダーラ仏、それから、これは問題になっておりませんけれども別にあと二体ガンダーラ仏がございまして、アメリカから借りてきた仏像がございますが、そういったことで、この展覧会にふさわしい仏像を探しまして、そしてアメリカから送ってもらったものについて展示をする、そういうことをやったわけでございます。 そういうような展覧会の際に、海外のものを展示する場合の事前の調査についての手続というものは、国立博物館でございますのである程度定型化されたものがございまして、たびたび御説明を申し上げてきておりますように、この場合にはアメリカのクリーブランド美術館等でクシャーン美術展というものが開催されたときに既に出陳されているもので、アメリカの東洋美術史家の調査によって十分高い評価を受けたというようなものについて、そういう展覧会の中からまずカタログ等で探しまして、その上である程度の目安がついたものについて実査の確認をするというようなやり方をしているわけでございまして、この問題のガンダーラ仏につきましても、奈良博物館の職員がもう一回渡米をいたしまして実査の確認をしておるわけでございます。 したがいまして、一般に国立博物館が海外の展示物を陳列する際の手続としては、この場合についても一応そういう要件を満たしていた、いわゆる通常必要な注意は払われていたというふうに私は考える次第でございます。 ただ、それで十分であったかどうかという問題は、全体のマニュアルそのものにももう少し検討するべき点があるのではないかという御指摘になるわけでございますので、私どもとしてもそういう通常行われている手続についての具体的な適用というものについてはそれはそれなりによかったというふうに思っておりますけれども、その手続自体がもっと念を入れるべきものであるかどうかにつきましては、私ももう少し検討してもいいのではないかというようなことを考えておりまして、そういう方向でまた部内で検討をさせてみたいというふうにも思っております。
○石井(郁)委員 大変残念ですが時間が参りましたので、最後に大臣にお伺いして終わりたいと思います。 本当に国民に問題が投げかけられておりまして、みんながやはりこれを知りたい、本当に真贋を明らかにしてほしいということでありますし、私は、我が国の文化水準や美術やいろいろな専門家の知識をもってしてこれがわからないはずはないというふうに思うわけです。そういう意味でも、ぜひ文化庁、文部省がこの問題でもっと本当に真実の究明というかそういう立場に立ちましてはっきりとした対応をしていただきたいということで、いろいろな公開の場での検討ですとかいろいろなことができると思うのですね。そういう点で、本当に国民にわかりやすいようにということを再度申し上げまして、大臣の御見解をちょっと伺いたいと思います。
○中島国務大臣 まさに、文化国家を目指しております我が国でこういう一つの文化的な仏像の真贋そのものがはっきりできないというのは、私自身、愛好家ではありますけれども、審美眼的には素人としても、もうちょっと早くはっきりできるものではないか、わかりやすく御報告できるものであろうと思っておりました。しかし、文化庁の方でも非常に細かく調べ、そして専門家の知識を得て続けてまいった結果、公表したりしておるわけでございまして、その点、紀元二世紀のものでありますのでなかなか難しい面は確かにあると思いますが、その御報告の点、あるいは公表の点で一般の方々にもう少しわかりやすく御報告できないものであろうかということは、私の心にもあるわけでございますので、さらにそれを研究させまして勉強させてみたいと思っております。
○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。終わります。
○岸田委員長代理 馬場昇君。
○馬場委員 私は、まず、障害者と著作権の関係について、特に本日は聴覚障害者と著作権の関係についてお尋ねしておきたいと思います。 この前、初任研を審議しますときに教育論争を大臣としようと思ったのですけれども、なかなかの強行で先を急ぐような気持ちで十分できなかったのですが、教育の目的というのははっきりしているわけです。憲法、教育基本法に基づきまして人格の形成を目指す営みですから、これはこの前も言いましたように最高裁判所の大法廷の判例の中にも、判決にこういう言葉を使っています。一人一人の可能性というのを引き出してそれを豊かに開花させる文化的な営みだ、これが教育だ、こういうことを大法廷も言っているわけです。そこで、この障害者の人間形成というのは健常者に比べて非常に幾多の困難があるわけです。 そこで、まず大臣に聞いておきたいのは、障害者の人間形成について行政はどうあるべきか、あるいは教育はどうあるべきか、こういう点について大臣の基本姿勢というのを示していただきたいと思います。
○中島国務大臣 おっしゃいますように、やはり障害者の方々といえども教育の機会均等の中にいていただかなければならないものと思います。 そこで二つ申し上げたいのですが、障害者にはその種類あるいは重度の段階がございましょうから、その方々の重度の段階あるいは適性に応じて、その中でできるだけその方々にどのような方法で教育をし学んでいただくのが一番適切であるかということをみんなが考えて、その進路を過ちないようにするということが一つでありましょう。もう一つは、またよく言われる中で、障害があるから障害者なのではない、障害者なるがゆえに一般の方々と同じ生活ができないからこそ障害者と言われる。となれば、障害があるために御不便をかける範囲を私どもがみんなで除去していく、障害があっても、それを私どもの努力で除去することができれば健常な方々に近い教育の場あるいは生活の場を得ていただくことができる、それはそういう意味では我々全体の責任と努力目標の中にある。このように考えておるわけでございまして、いろいろな対応の方法があろうと思いますが、ごく基本的にお尋ねいただきますと以上のように考えるところでございます。
○馬場委員 基本的といいますか、今聞いておりますと技術的というように聞こえもしたわけでございますけれども、通常の考え方で言うと、やはり障害者の人間としての可能性を引き出すわけですから、障害者の可能性を引き出すわけですから、それを豊かに人間として開花させていくわけですから、健常者に対する引き出し方あるいは開かせ方に比べて、何十倍もあるいは何百倍もという力というものを行政は注ぐべきではないか、こういうぐあいに私は思うのですけれども、そういうような見方からいって何十倍、何百倍、それぐらい努力をすべきだ、行政はそういう対応をすべきだ、こういう点についていかがですか。
○中島国務大臣 基本的には全くそのとおりだと思います。
○馬場委員 一九八一年、昭和五十六年、七年前ですが、国際障害者年でございましたね。この国際障害者年で世界の人々が掲げた目標というのは、障害者の社会における平等の問題、そして完全な参加の問題、これを掲げて国際障害者年があったわけでございます。この国際障害者年において、我が国の政治、行政、あるいは文部省も含まれるわけですけれども、この国際障害者年を機会にして、さっき言った障害者の人格形成に向かって施策が前進をしたのかどうか、どういう点がこの機会に前進したか、こういうことをやりましたという点が何かありますか。
○中島国務大臣 一九八一年の障害者年を境にして特に始まったということ、今挙げることははっきり手元にございませんけれども、しかし、この一九八一年の障害者年は、世界的に障害者に目を向け、そして障害者に対しまして、私たち全体のことでありましょうが特に私ども行政にあります者は、それに対して心していかなければならないという、世界的な啓蒙の年というふうに受けとらさせていただければ、その年を境にしてというはっきりしたことはありませんでも、以後継続的に、障害者の方々に対してより行政を厚くという点では、年を追うてそれはいたしてきておることと思います。御指摘いただければまた具体にお答えすることもできると思いますが。 〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕
○馬場委員 具体的に大臣の頭にないわけですが、実は、実際に何もないから具体的に答えられないのではないかと思うのです。私どもが見て、障害者年といって平等と完全参加を目標にスローガンはあったけれども、これに対する実際の施策とかそれに伴う予算がこうふえたとか、ほとんど見るべきものはなかったと言っていいのではないかと私は思うのです。 そこで、この文教委員会でも大いにその点を議論いたしました。そして、文部省が動かないものですから、実は私どもが、今からさかのぼりますともう十二年前になるのですけれども、障害者の学校、これを障害者は幼稚部から、生まれたときからと言わなければならないと思いますけれども、学校で言いますと、幼稚部から高等部まで一貫した教育を施さなければ成果が上がらない、これははっきりしているわけです。ところが、今教員定数法を見てみましても、幼稚部には定数法がない。小学部、中学部は義務教育の定数法の中に入っている。高等部は高等学校の定数法の中に入っている。そうではなしに、これを全部抜き出して、幼稚部から高等部まで一貫した教育を行える定数法をつくろうじゃないか、そういう問題。そしてその中身は、本当に障害者なるがゆえにさっき言いましたように何十倍、何百倍も力を注がなければならないわけですから、行き届いた教育をするような中身にしようじゃないか、こういうことで障害児学校の定数法を実は十二年前に出した。そうして、審議はしたけれども実現しなかった。そこで、この障害者年一九八一年に、この年こそひとつこの法律を成立させようじゃないかということで、この文教委員会でも審議をいたしました。しかし、審議はしたけれども、何ら政府・自民党はこれに対する理解と誠意を示さず、そのまま棚ざらしになって今日に至っておるわけでございます。このたった一つの例を挙げたわけですけれども、そのように、実は国際障害者年を機会にといっても何ら障害者に対する施策というのが行われなかった、これははっきり言えると私は思います。 そこで、少し観点を変えて、人間を形成する場合、物を知るということが一番大切です。だからこそ知る権利というのが非常に強く言われておるわけでございます。この障害者の知る権利というものが、特に私はきょうは聴覚障害者のことを重点に言っておるんですけれども、この国際障害者年に、ずっといろいろ施策を言われましたけれども、絞って例えば知る権利について何か前進した施策が行われましたか。
○中島国務大臣 先ほどは一九八一年を境にして何か目立ったものはあるか、こういうことでございました。その後、臨教審の第三次答申におきましてもこの障害者教育の振興について触れられておりまして、特に教育は家庭、地域社会から孤立せず、種類、程度に応じて適切な教育が行われるように、そして小さいときから本人の能力を最大限に伸ばすべきだ、こういうことがございまして、実は文部省としては昨年五月八日に障害者教育につきまして通知をいたしまして、地域センターの設置あるいは小中高における障害児に対する理解、認識を深める教育、そしてもう一つは知る権利と同時に就学それから就職の指導の充実、それから同時に教員の方々の資質の向上、この四点について都道府県教育委員会に御通知を申し上げたところでございまして、六十三年度の予算につきましては、少なくとも、職業的自立推進のために調査研究を行う、それから巡回就学相談活動の拡充をする、それからもう一つ、今申された三点目が聾、盲、養の教育課程基準改善をいたすという点につきまして、本年度予算にその拡充を盛り、そして御承認をいただいたところでございます。 前段の前半について、文部省は何もしていないのではないかという点については、今申し上げたとおりでございます。特に御指摘の障害の種類によってどのようなことをしておるかということにつきましては、政府委員から具体にお答えをさせます。
○馬場委員 臨教審で障害者問題について答申があったということですが、この国会を教育国会としてあなた方は臨教審関係の六つの法律を出した。ところが、今障害者については何かちょぼっとした通知を出した。後で言いますけれども、本当なら障害者関係の、例えば教育を充実するという法律を何本でも出してもいいはずじゃないですか。教員を統制するとか管理するとか、そういうものはどんどん五本も六本も出しておる、障害者の本当の教育の振興については全然出さない、通知一本出した、こういう姿勢ではだめだということを申し上げて、次はもう一つ大臣に聞きたいと思うのです。 大臣も文化大臣とかなんとか言われましたけれども、なかなかこのごろ国会では強行することばかりやっているけれども、言葉ですね。人間の生存で言葉が非常に大切だということは、これはもう言わないでも当然わかっていることですが、言葉というのはお互いのコミュニケーションをするだけでなしに、言葉によって物を思考するわけです。そして言葉で人格をつくっていく。はっきり言えば、言葉で文化をつくるという営みをするわけでございます。このことはもう大臣も異論はないと思う。ところが、聴覚障害者というのはこの言葉の習得が非常に困難。言葉の習得、言葉で思考をし、そして人格をつくり、文化をつくり、コミュニケーションをやる、そういう大切な言葉の習得が聴覚障害者は困難。だから、言葉の習得ということに対して臨教審答申は書いていないと思うのですけれども、例えば障害児の教育とかでやろうと思う場合に、言葉の習得について何か改善をしたとかするとかいうものはありますか。考えはありますか。
○中島国務大臣 私は専門家でございませんので、聴覚御不自由の方々が言葉の習得をどのようになさるかということについて、具体に的確にお答えできる資格がないかもしれません。ただ、聴覚が不自由であるという点について、知らしめる方法を私どもが補足し、提供することはできる。例えばその方々が日常あるいは教育の場を得るために入試の場に行かれても、補足的にマン・ツー・マンで手話でお伝えを、補足をすることがありましょうし、あるいはビデオ、テレビにおいてスーパーを入れまして、聴覚不自由な方の分を視覚から補うというような努力を私どもがすることによって、その方々の障害者としてのマイナス面をみんなで補う、そういうことは十分できていくであろう、このように考えます。
○馬場委員 今の大臣の答弁は私もそのとおりだと思うし、せっかく答弁がありましたからそのことについて質問を続けますけれども、日常生活を送る上で必要な情報の九割は耳から入ると言われておるわけです。ところが聴覚障害者はそれが入ってこない。そうすると、日常生活に必要な情報が耳から入ってこなければ目から入れればいいわけですから、今それを大臣が言われたのですが、それはそのとおりだと私も思うのです。 そういう意味で、具体的な日常生活のことについてお尋ねをしたいと思いますが、大臣、まずテレビですね。テレビで大体私たちは必要な情報を今受けていますね。そして娯楽にそれを使っておるし、さらに言えば、人間の形成にもテレビは使うし、あるいは教養、文化を高める上でも、ある意味では相当悪いところもありますけれども、そういういい面もテレビにはあるわけです。ところで大臣、これはまあ言わなくてもいいことですけれども、大臣は音声を消してテレビを見たことがありますか、どうですか。
○中島国務大臣 通常、ほとんどございません。
○馬場委員 聴覚障害者のことを考える場合に、音を消してテレビを見てみる。そのことで聴覚障害者の、例えば教育はどうするかとか情報はどう与えるかとかいうことが、そこから一つは出てくるんじゃないか。簡単なことですよ。だから、ぜひ帰ってからそれをやっていただきたいと思うのです。これはわからないのですよ。私もやってみましたけれども、全然全然わからない。そういう点で、聴覚障害者がテレビを見るのは私たちが音声を消して見るのと同じです。そこで、幾分か実は文部省でもあるいは政府全体でも行われておりますが、それは、数年前から画面に文字を入れて放送する文字放送が行われておるのですけれども、この番組と時間が非常に限られておるのです。これは関東、関西では週に七時間と私は聞いておるのですが、私の九州では再放送を含めて五時間ぐらいなんです。週にわずか七時間、私どもの九州では五時間、これで健聴者に比べて、情報とか娯楽とか教養とか文化創造とか、こういうものの営みが享受できるとは思いませんね。この点についてはいかがでございますか。
○中島国務大臣 私も、それは週に五時間程度かな、そう思いながら拝聴いたしました。確かにこれは、文化あるいは芸能、娯楽いろいろありましょうけれども、特にその日に起こったニュース報道面が聴覚の御不自由な方々にも正確に伝わるとなると、やはり文字多重放送などもございましょうが、これが現在どのように行われておるか。先生のところで週五時間と申されますと、私のところも時間的にどのぐらいの時間か、的確に把握しておらなくて申しわけないのですが、そういうものが、正確を期するものであればあるほど、やはり文字で正確に伝えるという画面がさらに多く必要であろうなという気持ちは強くいたします。これはさらに調べてみたいとは思います。
○馬場委員 やはり多くすべきです。だから、そういう点で多くすべきだという大臣のお話ですが、私が調べたところでも全国まちまちでというところもあるようでございますから、よく調査をされて、そしてぜひふやすようにひとつ努力していただきたいと思います。 そこでもう一つ。だんだん著作権に近づいていくのですけれども、私の熊本県に「ろう者福祉協会」情報文化センターというところがございます。そこでテレビ等を録画して、そしてそれに字幕を入れて、あるいは手話を挿入して聴覚情報を視覚情報に変えて、いわゆる字幕と手話に変換して、それを聴覚障害者に提供する事業を実は行っておられるのです。このようなことを行っておられる全国状況というのは何か文部省で把握しておられますか。
○横瀬政府委員 これは情報文化センターというところで行っているものでございます。ただいま手元にあります資料は恐らく厚生関係の方からの資料だと思いますが、この資料によりますと、六つの府県市のライブラリーでそういうことをしているというような資料になっております。
○馬場委員 大臣、私が調べたところでも非常に少ないのです。これをやりますと、さっき言った聴覚障害者の情報、いわゆる平等、完全社会復帰というものに益しておるわけですが、ぜひ全国にこれを広げるようなことを考えてもらいたいと思うのです。 そこで、実はこれをやるのに著作権が非常に問題になっておるのです、銀画をしてそれに字幕を入れ手話を入れるわけですから。そうする場合、著作者の許諾が要るわけです。これは専門家の文化庁次長、テレビで放送する、それを録画して字幕を入れ手話を入れる、こういうとき、著作権でどのくらい、どことどこに許諾をとらなければいけませんか。
○横瀬政府委員 放送番組の中で劇映画が放送されたというような場合を想定いたしますと、映画の著作者ということになりますので、監督、制作、それからそういった映画の製作に関与した著作者、それからその前のシナリオとか原作を書いた著作権者、それから今度は音楽の著作権者、演奏者ということになりましょうか。それから、その上に今度は放送をするわけでございますので放送局ということになりますか、放送事業者でございますね。そういうものの許諾が必要になってくると考えております。
○馬場委員 全く今言われたとおりでして、聞いてみますと、著作権による許諾を受けるという手続が物すごく煩雑でございます。そして、全部許諾が得られるとは限らないわけでございます。こういうことが隘路になりまして、字幕を入れて手話を入れて、そしてビデオをつくったり貸し出したりするというこの事業が余り進展しない、こういう現状に今なっておるわけでございます。 そこで、著作権法の三十七条について申し上げますが、これは視覚障害者のために設けられた点字による複製のための条文でございます。これは御存じのとおりでございまして、「公表された著作物は、盲人用の点字により複製することができる。」二項に、「点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、もっぱら盲人向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる。」こういうことで、複製ができる、録音ができるということが三十七条に規定されておるわけでございます。この三十七条というのはどういう目的で、どういう経緯でつくられたのですか。
○横瀬政府委員 この三十七条の規定というのは、御承知のように、第三十条から始まっております「著作権の制限」というところに規定されておるわけでございます。したがいまして、著作権者は自分の権利を通常、原則としてもちろん主張できるわけでございますけれども、一定の、公共といいますかそのための制限は受けるということで、種々の制限規定があるわけでございますが、この三十七条の規定につきましては、やはり盲人という方々の福祉の増進というために使われる場合には、複製の程度がそれほど権利を侵していない、侵害していないというような形態のものであるということもあってだと思いますが、著作権者はその点について我慢をしなきゃいけないというような趣旨であろうかと思います。
○馬場委員 これは、今言われたように視覚障害者の福祉の増進のために設けられた規定であると私は思います。視覚障害者には、福祉の増進という目的でもって三十七条という著作権を制限する規定がある。ところが聴覚障害者には、著作権の法律上、このようないわゆる聴覚障害者を保護する、あるいは著作権を少し制限する、こういう規定がないのですね。視覚障害者にはあって聴覚障害者にはこういう保護規定がない。これは、視覚障害者が文字が見えないということと聴覚障害者が音が聞こえないというのは、まさに同列に考えなきゃならない障害であろうと私は思うのです。だから、私は、こういう点についてこの著作権法は聴覚障害者を見逃しておる、見捨てておる、こういうことだと思うのです。 そこで、全国の聴覚の障害者団体から、視覚障害者にはこういう保護規定があるじゃないか、福祉増進の目的であるではないか、聴覚障害者にはない、そういう意味で要請、陳情が数多く来ておるわけでございます。そういう私に参りました要請を読んでみますと、「聴覚障害者の学校及び聴覚障害者の福祉増進を目的として設置された公共・公益法人施設においては、もっぱら聴覚障害者向けの字幕または手話つきビデオカセットを無料で貸し出しの用に供するために、公表された著作物の録音、銀画を行うことができる。」こういうようなことを三十七条であれば三十七条に加えるのか、あるいは三十八条に入れるのか、こういうことをやっていただきたいという全国の聴覚障害者の切なる願いがあるわけでございまして、この点について大臣、検討してみる必要があるのじゃないか、そして一日も早く実現する必要があると私は思うのです。この三十七条、いわゆる視覚障害者の保護規定はある、聴覚障害者の保護規定がない、だから、これと対応しながら聴覚障害者の要望というものは検討して、一日も早く実現する必要があるのじゃないかと思うのですが、大臣いかがでございますか。
○中島国務大臣 おっしゃいますように、三十七条に定められました視覚障害者に対する優遇措置、これと視覚、聴覚比べましてそういう障害のある方々に対しまして優遇措置は対等に行われるべきではないか、こういう御趣旨は私は基本的には理解できます。 ただ、具体なことになりますといろいろな隘路があることは確かであろうと思うのですね。例えば三つございまして、それはそれだけ差があるかどうかということは研究しなければいけませんが、視覚障害者のためにつくられましたテープはそれほどこれが一般に流用されるべきものとはならない、一方、聴覚障害者用につくられましたビデオは一般健常者にも流用できるものが中にあるではないか、例えば外国の映画の翻訳、スーパーインポーズ、こういうものは聴覚障害者以外、通常の方々にも利用される範囲のものであるということがありますし、それからまた、聴覚障害者の方々にそれ以外のもので的確に翻案をして日本語にする場合に、やはり翻案権との関連ということが出てまいるようでありますので、理念としては私ども賛成なんでございますが、具体に進めるについてはいろいろなことを考えなければならぬ。となれば、むしろ、さっきおっしゃったようにそれを著作権者の了解をとるのに複雑な手段が必要でございますので、それを簡便にするということをもってできるだけ利活用範囲を広めていただくというのも一つの方法であろう。その点で各関係者の御協力を得る。こういう言葉が当てはまるかどうか、よく言われます著作権の集中的処理体制の確立と申しますか、そういうことで、例えば著作者、著作権、隣接権をそれぞれ当たるということを一つの処理機関にして、そういう聴覚障害者に関しますビデオをつくる場合には、一ヵ所で了解をとればそれができるというようなことも考えていける範囲ではなかろうかな、そういう範囲で研究してみたらどうであろうか、率直にそういうふうに思いました。
○馬場委員 私は今の答弁は不満です。例えば著作権法上、視覚の障害者、聴覚の障害者、これはどちらがどうということは言えないし、また、例えばへレンケラー女史が、どちらかと言ったらこちらだと言ったというようなこともよく言われますけれども、私はどちらがどうというのじゃなしに、これは同列に考える。一つは、例えば目は見えるので、そうすると、何かそういうものに保護規定を求めてやれば、悪者がおってそれを悪用する、そういうのは悪者が悪いんであって、それを理由にして、聴覚障害者の人格形成とか社会に参加するのをそれゆえによって抑えるというのは筋違いであるということで、大臣も、著作権法三十七条みたいなのを聴覚障害者にも必要だということで検討してみるということが前提ではありますが、——第二点のさっき言われた点、後段はいいんですよ。許諾を複雑にしないようにするということは、現実問題としてぜひ直ちにやってくれということでございますが、やはり問題は、基本的に私が大臣に申し上げておきたいのは、聴覚障害者の情報の必要性に対する認識というものをこの際深く深く深めてもらいたいということで、大臣に特にこの点を申し上げておくわけでございます。点字図書館なんかが開設されましたのは今から五十年ぐらい前ですね。聴覚障害者に対して情報文化センターなんかで先ほど言いましたような事業をし始めたのは、まだ十年足らずの歴史しかないのですね。私は、この歴史の差というのが法律の差になってあらわれておるのじゃないか、実はこういうぐあいにも思うわけでございますので、ぜひこれについては、著作権法上の保護規定とともに現在の許諾を簡便にする、両面ともに努力をしてもらいたいと思いますが、大臣どうですか。
○中島国務大臣 おっしゃる意味はよくわかります。私もまだ知識がこれからでございますが、例えばその視覚障害者の著作権について行われましたュネスコの作業部会におきましても、視覚障害者に対します対策、それから聴覚障害者に対します対策、これは多少分けて考えなければいかぬという点も指摘されておるようでございますので、そのほかのいろいろな方策、対策を勉強してみまして、両者が全く一致するかどうかは別といたしまして、少なくとも聴覚障害者の方々によかれと思われるような方策を編み出すために勉強してみたい、このように考えます。
○馬場委員 文教委員長に、時々はいいことをやってもらいたいからちょっと注文しておきますけれども、今著作権法を審議しているのだから、附帯決議なんかに、今言ったような聴覚障害者の三十七条的な保護規定、こういうものはやはり設けるべきだ、検討すべきだというようなことを、附帯決議にぜひ盛っていただきたいということを委員長に要請しておきたいと思いますが、委員長いかがですか。
○中村委員長 わかりました。各党で相談させていただきたいと思います。
○馬場委員 大臣、この点であと一つ。文部省が、今度は、字幕とか手話の入ったビデオなんかをどんどんつくって、あるいは関係団体なんかでも援助してつくらせて、こういうものを製作して提供すべきじゃないか。あるいは逆に、聴覚障害者に対する社会一般の理解がまだ十分ないわけです。そういうことで、聴覚障害者に対する社会の理解を促すためのビデオなんかをつくって、それで理解を促していくとか、それから、聴覚障害者の教育とか文化の向上に資するようなビデオなんかを文部省とか関係者がつくって、こういうことでやはり聴覚障害者の人間形成とか社会復帰とかこういうものに供する、そういう具体的なビデオなんかをつくってぜひ頑張っていただきたい、こう思いますが、大臣どうですか。
○中島国務大臣 先ほど申した臨教審答申の中にも障害者理解の教育の推進ということがうたわれておるわけでございますので、あらゆる教育の機関を通じまして、障害者の方々に対します理解の普及教育、これは徹底してまいりたい、こう思っております。それは社会からの面であります。 一方、障害者の方々に対して直接文部省でそういうものをつくって出したらどうか、この点は私は心の問題としてはもちろん理解できます。しかし具体にどのようにできるのか、この点は心だけ私お答えをしておきまして、文部省で障害者の方方にどのようなことができるか、これはちょっと専門家の政府委員にお答えさせます。
○西崎政府委員 ただいま大臣からお答えいたしましたように、教育上の問題としては、盲・聾・養護学校特殊教育の中で、私どもが、社会の理解ということを前提として、特殊教育についての一般の先生方、それから一般の父兄、それから一般の児童生徒が障害を持つ生徒とのかかわりにおいて、それを十分理解し、そして相交流を図るというふうなことでの努力をしておるわけでございます。 それから、もう一つの社会一般の問題につきましては、これは私どもの担当が教育でございまして、社会教育にも若干相わたる面がございますけれども、主として厚生省所管という問題にもなろうかと思うものでございますから、先生御指摘の趣旨につきましては、今後いろいろな機会に私ども厚生省とのかかわりもあるわけでございますので、社会人一般に対する障害者についての理解という問題については、政府、関係各省の問題としての御指摘としていただいておきたいというふうに思う次第でございます。
○馬場委員 私が要請したのは、従来ベースの上に乗ってということじゃなしに、ここで飛躍的にそういうことをやってくれということを言ったわけでございますので、ぜひ努力していただきたいと思います。 そこにかかわってくるのですが、次は文化庁の予算について尋ねたいと思います。 文化庁全体の予算というのが六十三年度で三百七十八億二千三百万程度でございますが、これは文部省予算の四兆五千七百六十五億の中でわずかに〇・八三%ですね。国家予算の五十六兆六千九百九十七億に比べますと〇・〇七%。大臣、これが文化国家を標榜する国の文化予算ですか。これは憲法二十五条によりますと、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とありますね。教育基本法の前文には「民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする」、こういうことで、この理想を実現するためには根本において教育の力にまつべきものであるということが憲法、教育基本法にきちんとあるわけでございますけれども、少なくとも文化国家を標榜する予算がこれでいいのか。憲法、教育基本法の精神を実現するための文化予算がこれでいいのか。大臣どうですか。
○中島国務大臣 確かに教育基本法におきましても「個性ゆたかな文化」国家の形成という文字があったと記憶いたしております。特に今の日本の置かれた立場は、世界的には経済大国と言われている中で文化国家を目指していくという点につきまして、その目指すところはおっしゃることと同じでございます。ただ、六十三年度予算が国家予算一・二%アップという中で文化庁予算は四%アップした、こうは言いますが、全体ではおっしゃるように三百七十八億円でございます。これは欧米と比べて胸を張れる額かと申されますと、決して胸を脹れる額とは思っておりません。今後も努力をいたさなければならぬと思いますが、せめて文化庁の予算の中で、今御審議をいただいておるような著作権法という、少なくとも著作者の権利を保護することによって創作的な文化活動を推進する、そういうものに資することができるという法案を御審議いただき、成立さしていただくことによって、限られた予算の中で最大限文化の促進に寄与できることに心してまいりたい、こう考えておるところでございます。
○馬場委員 今の答弁を聞いておっても、全然ふえそうな感じがしない。大臣、大体文化国家というのは何ですか。これも聞いて議論すると時間がありませんけれども、少なくとも国家の理想というのを文化の発展に置く、それが文化国家だ。国家的活動を文化的理想の実現のために寄与させる、こういう国家を文化国家というわけですから、文化国家という言葉はあるけれども、今言ったような内容の予算なんかは全然、全然というわけじゃありませんけれども少ない。こういう中で、努力するとおっしゃいましたけれども、じゃ具体的に聞きますけれども、文部省の予算の中で今投資的経費がどんどん減っている。人件費の枠がどんどんふえて投資的経費が減少しているでしょう。これはここでいつも議論します。例えば人件費が文教予算に占める比率をとってみますと、昭和六十年度は七二・八%、六十一年度が七二・八五%、六十二年度が七五・八%、六十三年度は何と七六・五%ですよ。それに比例して結局下がっているのは、投資的経費が六十年が二三・六%、六十一年が二二・九%、六十二年が二二・三%、六十三年は二二・一%ですよ。こういうような状況の中で、文化庁の予算がふえるという可能性は、私はこの惰性でいったならば、延長でいったならば、ふえるという状況は全然見出すことができない。だから大臣、文部省全体の予算の組み方というのを検討してくれと私はいつも主張しておるのですが、ここで文化庁の制度とかあるいはその機構とか予算のあり方というものを再検討すべきではないか。さらに進めて言うならば、文化省というものに昇格させるというようなことがあっていいのではないか。そうしなければ、憲法で言う文化国家というのにはならぬのじゃないか。そういうことで、文化庁予算をふやす、努力するとおっしゃったが、その文化庁予算とか機構とかのあり方、さらに含めて文化省というものに昇格させるということが必要じゃないかと思うのですが、どうですか。
○中島国務大臣 お言葉としては、確かに文化国家を目指すという点ではその心意気は私どもも持つべきであろうと思っております。ただ、私ども文教行政にある者は、例えば文化、学術、教育、スポーツ、この四本柱をつかさどっているというふうに私どもは思っておりますので、したがって、文部省の予算あるいは文部省の所管行政の中には、やはり文化、学術、教育、スポーツ、この四本柱をそれぞれ高めていくということに私どもの義務がある、このように考えます。 したがって、その中で文化庁予算をお取り上げでございますけれども、文化庁予算の中には、もちろん今まで古くから来ました史跡の保存、こういうものに百十二億を使う、古きものを知り、そして新しいものを培っていくという使命がございますし、また、その文化を高めるための教育というものは、それぞれ文化、教育、学術、これは切り離せるものではございませんので、したがって、文化を高めるための教育は一般の教育予算の中にも含まれておるわけでございますし、それを含めて文化国家と称していく、こういうことでございます。 したがって、文化庁予算だけを取り上げて、それが全体の〇・〇七でございますか、ですから文化国家とは言えまい、こうおっしゃることについては、これはちょっと私は比較のとり方の問題であって、全体を含めて文教行政として、文化国家としてのものを培っていくという努力はもちろん私どもはしていくつもりでございます。
○馬場委員 だんだん話を聞いておると、中島文部大臣の顔から文化の薫りというのは全然消えていってしまうじゃないですか。あなたは文化に非常に理解がある、あなたが大臣になったら文化省くらいやれと言うのか、あるいは文化庁の予算はこういうぐあいにして予算の編成の仕組みを変えてふやしましょうとか、そういう積極的な施策が出るんじゃないかと思っていましたけれども、今の答弁を聞いておりますと、総合的にどうだとか何だとかいうのは、これは基盤がなしに、しんがなしに総合というふうにはいかないのですよ。それはごまかしにしか聞こえません。 ただ一つだけ言ぅておきますと、これなんかはだんだん後退じゃないですか。例えば今度の文化庁予算の中に芸術活動の特別推進というのを新しくやっているでしょう。それで、民間芸術活動費補助というのは毎年七千万から一億円くらいずっと減っていっていますね。昭和五十七年に民間芸術活動費補助というのが十一億二千五百万あった。それが六十一年には七億に減っている。これがどんどん減ってきているものだから、今度こういう芸術活動の特別推進というのをつくった。これは、国がオペラとかバレエとかオーケストラ等の舞台芸術の援助費を減らすために、今度は逆に、文化庁とか民間企業とか公演団体の三者による、いわゆるスポンサーを導入してきて、これで民間企業の冠をつけて公演をするというもので、そうなってきたら文化庁は民間企業のPRをするようなものじゃないですか。こういうことなんかをやっている。こういうことを見てみますと、完全に全体が後退している。だから、どんどん文化庁の予算が薄くなってくる。民間の金を入れて、民間企業の冠を掲げて、PRでもしているような芸術活動をやる、それを共催するなんというのは、スポンサーの役に成り下がったような格好じゃないですか。こういうことになっていくんです。だから、基本的にもう少し頑張ってもらいたいということを申し上げておきます。 それから、著作権の普及の問題、先ほどから出ておりますけれども、これが文化のバロメーターともまた言われておるわけでございますから、著作権の普及の推進費が二千七百万円ございますが、これも、これくらいで何が普及ができるのか。そして、著作権に対する国民の理解が不十分だからこそ海賊版なんかが出てくるので、こんな予算ではまたこういう法律の改正なんかをせにゃならぬということになってくるわけでございます。これは啓蒙とか宣伝とか教育活動をやらぬから海賊版なんかも出るのですよ。しかし、やれといったって二千七百万じゃないですか。こういう点もやはり、ぜひ普及しなければならぬということは、文化のバロメーターとも言っているんだから、大いにやらなきゃならぬと思います。この点も強く要請しておきたいと思います。 そこで、時間が余りございませんが、先ほど出ました奈良博物館がやりました石造の弥勒菩薩立像の問題、ガンダーラ仏の問題について、これはたくさんの人がやっておりますから、私は一、二点端的に質問しておきたいと思うのです。 あなたは、先ほどもちょっと言われましたが、三月九日の予算委員会の第三分科会で、「今の経過では、これは本物である」という答弁をなさっておりまして、先ほどちょっと何かあやふやでよくわからなかったんですが、今でもこのガンダーラ仏は大臣は本物と思っておられるんですか、どうですか。
○中島国務大臣 おっしゃるように三月九日にこういう御質疑がございまして、それは、やはり真贋というものが国民の関心の的である、したがって真贋というのは、真作か贋作かということを端的にはっきりさせるべきであるという意味の御質疑がございましたので、そこで私は、端的に申せば、今までの経過から見て真作である、当時本物であるというふうにお答えをした記憶がございます。 これは、奈良博物館がガンダーラ仏を展示するについて、当然これは真作という、つまりいろいろな専門家の鑑識あるいは展示の手続上、そういうものを踏んでこれを展示をするという段階を経たわけでございますので、それはそのとおりであると私は思います。ただ、その展示をする直前に、田辺さんという専門の方が……(馬場委員「経過は知っていますから……」と呼ぶ)はい。私は端的に言えば、それで間違いがないと思うのです。ただ、より正しくは、それでいいかと言われますと、なるほどその経過の中で八人の委員会を持ちまして、ガンダーラ仏研究協議会という専門家八人のお考えが議事録に残っておりますのを拝見をいたしますと、三論併記と申しますか、その中のお一人は贋作であるとおっしゃっておりますし、あとの七人の方は贋作でないという方と贋作とは断じがたいとおっしゃる方がありますので、より正しく表現しろと言われれば、私は、八人の専門家の方が御専門でございますから、御専門家の方方にはそういう三論がある状態であるというのが正しかろうと思うのです。それじゃ奈良博はどう言っているかというと、奈良博は、贋作ではないかという御質問の数十項目に対してそれぞれ、贋作ではない、こういう反論をしております。したがって、現在は贋作と断じられる根拠はないという状態と申し上げるのがより正しいのではないか、このように考えております。
○馬場委員 僕は奈良博のことを聞いているのじゃない、大臣の考え方を聞いているのです。だから、今おっしゃったのを整理しますと、三月九日の段階では経過からいって本物であるという答弁をしたが、ガンダーラ仏研究協議会をつくっていろいろ議論があった、そういう議論の速記録も見てみた、——実際に協議会の樋口座長も記者会見でこう言っているのですよ。本物であるかにせものであるか断定できない、だから疑問は残る、これから明確にしていかなければならない、ということを樋口座長が記者会見で言われておるのを私も読んだのですけれども、だから正確に言うと、あのときは経過的にいって本物と思っていたけれども、研究協議会なんかやってみても、座長なんかも、疑問が残る、これから明確にしていかなければならぬという態度であるから、大臣も、現在は大体そう思っておるのだ、こう理解していいですか。
○中島国務大臣 より正しくは、専門家でない言葉で真贋のどちらかはっきり言えといえば、私は本物と言って間違いないと思うのですが、こういうものは専門家のお言葉をかりる方がより正確であろうということから、現在贋作とは断じる根拠はないと言う方が正しいのであろう、こう思っておるわけであります。
○馬場委員 そこで大臣、今お聞きしますと、専門家でない大臣は本物と思っている、専門家でない者が本物と思っているということは、これは私は理解に苦しむのですが、何でそういうことをおっしゃるかということもよくわからないのですが、専門家でないからわからないと言うのが、それが通常じゃないか。専門家はこういうぐあいに言っておられる、しかし私は専門家でないからわからない、これが本当じゃないですか。どうですか。
○中島国務大臣 正しくはそう言うのが正しいのかもしれませんが、専門家でない者の立場として、専門家の方々が、それは専門家八人の中に贋作であろうと提起なさった方もいらっしゃるが、あとの七人、これは贋作でないと言い切っている方がお二人いらっしゃる、それから贋作とは断じがたいとおっしゃっている方が五人いらっしゃるという、昨年七月時点の議事録があることは承知をいたしておるわけでございます。したがって、専門家の御意見はそうである、だから素人としてはよくわかりませんと申し上げることが本当かもしれませんし、あるいはその八人のうち七人の贋作とは断じがたいという言葉を引き取り、なおかつ、展示の経過を見ますと、専門家の文言を使わない場合でどちらかに断定するとすれば、これはにせものか本物かといった場合、私が三月九日に、経過的に本物と思う、こう申し上げたのもそう誤りではない、こう考えておるわけでございます。
○馬場委員 これは大変な問題を含んでおると思いますよ、大臣。文化遺産というものがここにある。これが本物であるかにせものであるか、国民が非常に心配しながら見守っておる争いがある。そういうときには学術的な研究をぴしゃっとやって、そして、これが本物であるかにせものであるかということを明らかにすることも文化庁の仕事ではないかと私は思うのですよ。そういう意味で、今両方あるわけだから、今本物だとおっしゃって、文化庁で本物かにせものかを積極的に学術的に調べてみてこれがにせものだとわかったら、そういう答弁をしていたら困るでしょう。だから私は、大臣としては、文化庁の仕事として本物であるかにせものであるかをはっきりさせます、本来の文化庁の仕事を推進していきます、こういう態度をとっていただきたいと思うのですが、それはどうですか。
○中島国務大臣 私は、そういう面では、国民の関心も高いことであるから、できるだけ国民にわかりやすく、そして発表できるような結果をはっきり出してもらいたい、そのために具体に、専門家に積極的にお願いをいたしますという意味のことを前にも申し上げたつもりでございます。 今どうかと申しますと、それはもちろん変わりありません。しかし、専門家の方々の分析その他はなかなか難しいこともございましょうし、もう一つは、今訴訟の中の対策としてそれが明らかになっていくであろうと思いますので、その両面あわせまして、真贋がよりはっきりしてくることを期待いたしているところでございます。
○馬場委員 今訴訟になっていますけれども、奈良博ですから訴訟は国が相手でしょう。そうした場合、国は訴訟の場において本物であると主張するのですか、どうするのですか。
○横瀬政府委員 奈良博物館の立場は、贋作に対して、その根拠についてすべて反論しているわけでございます。それから、訴訟の上では真贋ということから結論に及んでいくわけでございますから、私どもとしてはそういう両方の意味におきまして、国としては贋作ではないという主張をすることになっていくということでございます。
○馬場委員 時間があとわずかでございますので、この著作権法の内容については各委員がずっと質問されましたので質問をいたしませんが、ぜひ要求をしておきたいと思います。 これは附帯決議でもたびたび私たちが意思を表明しておるわけですけれども、著作隣接権保護の徹底を図るために、実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する条約への加入をぜひ急ぐべきであるということを申し上げておきたいと思います。そして、保護期間の延長が出ておりますけれども、これは日本芸能実演家団体協議会とかレコード協会とかが五十年にしてくれと言っておる事実もあるわけですから、これは一日も早く五十年にするべきであるということを申し上げておきたいと思います。 それから、これは質問したかったのですが、時間がありませんけれども、例えば警察が職務質問してそこで押収する権限があるのかどうか。これは質問があったかもしれませんけれども、この取り締まりについて、これはかえって海賊版が地下に潜ってしまうおそれがあるわけですから、地下に潜らないような対策は十分考えておく必要があろう、こういうぐあいに思います。 そして、これはいろいろ要求があっておりますけれども、映画の複製物の利用における許諾権は俳優などにはございません。このために俳優連合等が、出演者に対して補償金を払うなど何らかの保護策をと要望しておられます。そして、今このことを映画会社とも交渉なさっているようでございますけれども、こういう問題等についても解決を急ぐべきである。それから、著作権法二十九条の監督、撮影、照明、録音など映画の創造スタッフの著作権を認めず、映画製作会社に帰属しておりますけれども、この辺についてもさらに検討を加える必要があるのじゃないか、こういうことを申し上げておきたいと思います。 時間が参りましたので、これで終わります。
○中村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時二十分散会