法務委員会 第2号
- 発言数
- 241 件
- 登壇者
- 27 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1987/08/27
会議録
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 初めに、委員の異動について御報告いたします。 昨八月二十六日、秋山長造君及び宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として一井淳治君及び神谷信之助君がそれぞれ選任されました。 —————————————
○委員長(三木忠雄君) 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。
○国務大臣(遠藤要君) 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。 この法律案は、簡易裁判所設立後の社会事情の変化にかんがみ、その配置を適正化し、その機能の充実強化を図るため簡易裁判所の新設、廃止及び管轄区域の変更を行うとともに、市町村の廃置分合等に伴い下級裁判所の設立及び管轄区域を定める法律の別表について必要とされる整理を行おうとするものであります。 以下、簡単にその要点を申し上げます。 第一は、社会事情の変化により事件数が著しく減少している小規模簡易裁判所については、その配置の適正化により簡易裁判所全体の充実強化を図るため、統合される簡易裁判所の事件数及び受け入れ序となるべき隣接の簡易裁判所までの所要時間を基本としつつ、各地域の個別事情を考慮して、三崎簡易裁判所ほか百庁の簡易裁判所を廃止し統合することとしております。 第二は、東京、大阪、名古屋及び北九州の大都市地域に存する簡易裁判所については、その配置の適正化により増大する住民の需要にこたえ、裁判所の人的、物的な執務態勢を強化するため、これらの各都市に所在する十七庁の簡易裁判所を廃止し統合することとしております。 第三は、裁判所法第三十八条に基づき、その事務のすべてを他の簡易裁判所に移転し、全く事務を取り扱っていない五日市簡易裁判所ほか二十庁の簡易裁判所について、その実情に合わせ法律上も廃止することとしております。 第四は、人口の増加等により相当数の事件が見込まれる町田市及び所沢市に簡易裁判所を新設することとしております。 第五は、行政区画の状況、交通の利便等にかんがみ、新島簡易裁判所ほか八庁の簡易裁判所の管轄区域の一部を他の簡易裁判所の管轄区域に変更することとしております。 以上の簡易裁判所の廃止、新設及び管轄区域の変更については、法制審議会の答申にのっとり、地元自治体を初め弁護士会等関係諸機関の意見を十分聴取し、各地の実情の把握に努めた上でこれを行うこととしたものであります。 第六は、市町村の廃置分合等に伴い、下級裁判所の設立及び管轄区域を定める法律の別表中の市 町村名の変更等所要の整理をすることとしております。 なお、この法律の施行の時期については、東京、大阪及び名古屋の各都市の簡易裁判所の統合並びに簡易裁判所の新設を実施するためには、別に予算を得て庁舎の整備をする必要がありますので、庁舎整備が完了し次第施行できるよう施行期日を政令に委任することとし、その他の簡易裁判所の統合、管轄区域の変更等は昭和六十三年五月一日から施行することとしております。 以上が下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○委員長(三木忠雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。 —————————————
○委員長(三木忠雄君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認めます。 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(三木忠雄君) 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察及び裁判の運営等に関する調査を便宜一括して議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○一井淳治君 法案の質疑に入る前に、一般の質疑の方からさせていただきたいと思います。 私、二十数年間弁護士をしておりましたけれども、以前はどの地方に行きましても地方検察庁の支部が各地にございまして、どの支部に行きましても有資格者といいましょうか、司法修習生の課程を終えた検察官が広く配置されておりまして、また地検本庁でも大部分の事務は有資格者の検察官がやっておられたように思います。ところが、最近の検察庁の様子を見ますと、地検本庁においてすら有資格者の検察官が非常に少なくなっておられまして、有資格者じゃない——有資格者という言葉は悪いかもしれませんが、修習生の課程を終えておられない検察官の方が広範に仕事をしておられるというふうにお見受けするわけでございます。これは外部から見た事情でございますけれども、その実情はどうなのかということをまずお尋ねしたいと思います。 そして、最近のように中小企業でも世界的な取引をやっているというふうな、経済も社会も非常に激動しているわけでございます。情報伝達の方法にとりましても非常な変化がございまして、妥当な検察行政が行われるためには有資格の立派な検察官が事に当たられる、特に事件の処理については、人間や企業の一生を左右するような大変な問題でございますから、資格のある、力のある検察官に処置をしていただきたいというふうに思うわけでございまして、有資格者の方がだんだん減っていくということは非常にゆゆしいことではないかというふうに思いますけれども、検察庁はその辺あたりのことについてどのような評価をなさっているのか。この二点についてまずお尋ねしたいと思います。
○政府委員(根來泰周君) ただいまのお尋ねでございますが、いわゆる検察官特別考試合格の検事というのはむしろ減少しておりまして、昭和五十二年には八十三人でございましたけれども、現在は五十四人に減少しております。これは大体、年齢が退職の年次に来ておるということでございますが、一方、合格者が極めて少ないために、年々退職してむしろ減っておるということでございます。 したがいまして、御案内のように、こういう検察官特別考試合格者は支部に配置されることも多かったわけでございますけれども、最近は支部に配置する人数も不足しておりまして、むしろ支部に配置する検事は修習生出身の検事をもって充てておるというのが実情でございます。
○一井淳治君 今のお話によりますと、有資格者の方が多いということでございますので安心したわけでございますけれども、しかし、検察官の定員との関係で相当な過不足が生じておるんではないか、有資格者の方を充てられてかなり無理をしておられるということはわかったんですけれども、全体として非常に有資格者の方が減っているんじゃないかというふうな気がいたしますけれども、検察官の定員とそれに対する過不足はどうなっておるのか。 それともう一つは、最近、司法修習を終えた方で検察官に採用されたいという希望者が非常に少ないといううわさも聞いておるわけでございますけれども、最近二年間、六十一、六十二年度において採用予定人員と実際に採用された人員は何名なのか。そのあたりについて御回答をお願いしたいと思います。
○政府委員(根來泰周君) まず、検事の定員でございますけれども千百七十三人でございます。検察官の中には副検事がございますが、副検事は九百十九人ということになっております。現在、検事の欠員は四十人前後でございまして、副検事の欠員はほとんどないという状況にございます。 それから、採用人員でございますが、御案内のように、昭和六十一年四月に検事として採用した数が三十四人でございまして、前年度を非常に下回っておるわけでございます。それから昭和六十二年度、本年四月には採用した数が三十七人でございました。ただいま御質問の採用予定数というのは特に定めておりませんで、欠員がありますれば採用するという方針で臨んでおります。
○一井淳治君 新聞記事等によりますと、採用予定者数というものが書かれておりまして、それに対してこんなに少ないんだというふうな書きようになっておりますけれども、これはどういうことなんでございましょうか。
○政府委員(根來泰周君) 客観的に申しまして、毎年大体五十人ぐらいの検事が採用できれば退職者に見合う数ということでございまして、まあ、定員を充足できるんじゃないかという見地から五十人ぐらい採用できればいいなという一つの目安があります。それに対しまして三十数人ということで若干少ないという印象でございます。
○一井淳治君 私どもは、検察官希望が増加して検察業務が充実するということを心から念願しているわけでございますけれども、修習生から検察官に採用される希望者をいかにふやしたらいいかという観点での質問でございます。私どもの体験では、修習の実務を現実に担当しておられます検察官、事務官の人柄といいますか、本当に修習生が心服するような方を充てるかどうかということが非常に大きなウエートを持っておるんじゃないかというふうに思います。 私は、広島で修習いたしましたけれども、十一名実務修習を一緒にいたしましたが、そのうち五人の方が検察官になったわけでございまして、これは修習担当当時の検察官や事務官の人柄のせいだということはみんな認めているわけでございます。そういったふうな御配慮をいただくとか、あるいはこれはそうしなさいという趣旨では決してございませんけれども、この間現場で働いておられます同期の検事からこうしたらどうかということを聞かされたわけでございます。第一線で働いている若い検事は薄給でかなり生活が楽でない状況があるにもかかわらず、例えば、警察とのいろんな交流の中で捜査費を自腹を切って払わにゃいかぬとかいうことでなかなか苦しい状況があるので、第一線で働いている若い検事にもある程度の捜査費の予算をつけてくれたら生き生きとしてき て、それを見た司法修習生も検事になりたいという希望を持つんじゃないかというふうな、これは思いつき的な話を聞いたわけでございますけれども、修習生から検察官希望をふやしていくようないろんな配慮についてはどのようになっておるのかということについて御質問申し上げたいと思います。
○政府委員(根來泰周君) 先ほど押しましたように、昭和六十一年に任官者が激減したのでございまして、その後六十二年にも余りふえないという状況でございました。それまで五十人ばかりの任官者を確保していたのが、どうしてこの二年度に減少したのかという理由につきましては判然としないわけでございまして、短期的にはそれの対策というのはなかなか講じがたいのでございますけれども、御承知のように、六十一年度から初任給調整手当を初年度二万三千円から七万三千六百円というふうに引き上げまして、新しい検事の待遇改善を図っていただいておるのでございます。また、部内に検察問題検討会を設けまして検察官のあり方、後継者の育成のあり方、執務環境の問題点改善の方策等を幅広く検討いたしまして、できるものから実行に移すことによりまして、ひいては任官者の確保を図っていくということを考えております。 しかし、正直に申しまして任官者の確保というのはなかなか難しい状況でございます。家族問題とか、経済問題とかいろいろ問題がございまして、任官者確保のための特効薬というのはなかなか見出しがたいのでございます。ただいま仰せのように、指導者に人を得るということも必要でございますし、基本的には検察修習を通じて修習生に検察の仕事のやりがいとか社会的意義を感得させて、みずから検察に身を投じて社会正義のために働こうとする意欲を植えつけることしかないんじゃないかというふうに考えております。いろいろ御示唆をいただきまして恐縮でございますが、そういう点も十分考えていきたいと思っております。
○一井淳治君 修習生からの任官者の増加ということでございますけれども、若い修習生は非常に人権感覚が鋭いわけでございまして、検察官への採用希望をふやすためにはやはり検察官業務の魅力といいますか、そういったことが非常に重要ではないか、感覚的な問題も重要ではないかというふうに思うわけでございます。そのために私ども非常に心配しておるのは、大先輩に当たられる検察官の身の処理といいますか、もう少し御配慮をいただかなくちゃいかぬのじゃないかというふうに思うわけでございます。 前の、百八国会の五月二十六日のこの法務委員会におきまして、猪熊先生の方から、再審請求が流行し過ぎだというふうな不穏当な高検検事長の発言について質問がございましたけれども、あんなふうなことを高官の方が発言されたり、あるいは田中元首相の弁護に同じように検察官の元高官の方がおられるというふうなことでは、若い純真な修習生は検察官の方に向いていかないということを感じるわけでございます。そういうあたりのことについて、もう少し根本的な御配慮が要るんじゃないかということを第一に御質問したいわけでございます。 それからもう一つは、五月二十六日の猪熊先生の質問の際には、何か調査する時間的余裕がなかったということで御回答がなかったわけでございますけれども、その後十分に時間があったわけでございますから御調査ができておるんじゃないかと思います。それで、それに対してどのようなことになっているのか。これは御回答される方が高検の検事長さんより地位が下の方でおれば非常に答えにくいことがあるかもしれませんけれども、思い切って御回答を願いたいというふうに思います。
○政府委員(根來泰周君) この前の国会で猪熊委員から御指摘を受けました件につきまして、私が調査いたしまして猪熊委員にも御報告申し上げました。 調査した結果をそのまま申し上げますと、五月二十五日に、広島高検から名古屋高検に着任いたしました豊島検事長が記者会見をいたしました際に、記者から抱負を尋ねられたわけでございますが、それに対して、交通事犯に対する厳正な処理、地域の実態に即した検察の実行を強調いたしました。その後、記者から、これは御承知だと思いますけれども、名張の毒ブドウ事件について質問があったので、検事長は、これからよく検討して適正に対処していく旨答えた上、ここからでございますが、「一般的に、昨今、明らかに再審理由がないと思われる事件についても、再審請求される例があり、検察の立場からみると、再審請求が多少流行している嫌いかないわけではない、戦前、戦後の混乱期の裁判だからといっても、裁判がそう間違っているとは思えない、名張毒ブドウ事件についても、間違いない事件と聞いているが、私自身で証拠を検討して慎重に対処していく」、と述べたのでございます。これに関しまして、「再審請求流行しすぎ」という見出しで新聞に報道されまして、当委員会におきましても、猪熊委員から御質疑があって、御注意を受けたところでございます。 これに関しまして、猪熊委員から御注意を受けた件につきまして豊島検事長にもお話ししましたが、その際、豊島検事長は、「理由のない再審請求が多いということを述べたものでありまして、もとより、相当の理由があって無罪判決を求めて再審請求に及んでいる人々を軽んじるつもりで言ったわけではないが、そのような受取方をされる方もいることは否定できず、その点で流行という言葉を使ったのは適切を欠いたと反省している」というふうに申し述べております。 また、この件に関しまして検事総長は、豊島検事長に対して、発言は真意を十分に伝えるよう言葉を選んで慎重に行うよう注意をしたという報告を受けております。
○一井淳治君 もう一つの、高官の方一般の身の処理の仕方、もう少し人権感覚を考えながら、若い人たちのあるいは国民一般の目をもう少し配慮しながら高官の方に言動について配慮をいただかなきゃいかぬのじゃないか。元高官でございますか、それに対する御回答はどうでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検事を退官されました方の多くは弁護士としてそれぞれの方面で活動しておられるところであります。これらの弁護士さんあるいは検事を退官された方々いずれも後輩のことをいろいろな面では考えていただいているところであろうかと思いますが、個々的な問題につきまして、御退官されました方々に対しまして法務省の立場でその是非等について申し上げることはどうも申し上げにくいことでございまして、その辺は御理解いただきたいと思います。
○一井淳治君 それから、新聞や週刊誌が多少興味本位で書いておるという点もあるかとも思いますけれども、最近、若い検察官あるいは働き盛りの検察官の中に中途退官者が多いという、私ども法曹の一員とすれば非常に残念な記事やニュースが載っておるわけでございますけれども、そのあたりの実情はどのようになっておるんでしょうか。
○政府委員(根來泰周君) 私もそういう報道を目にしておるのでございまして、いろいろ検討いたしました。この五十七年から六十一年までの間に何人退職しておるかというところから出発しましていろいろ検討いたしましたが、この五年間に修習生出身の検事が二百三十五人やめているのでございます。ところが、その二百三十五人の半数以上は勤続二十年以上勤務いたしましてやめている者でございまして、その余の者が途中でやめているという事情にございます。年間ならしまして四十人台から五十人台の退職者はございますけれども、このうちのやはり半数以上が定年近くなってやめているのでございまして、これを昭和四十六年時分のことと照らし合わせましても、決して若い者がやめているのが多くなっているという実情ではなくて、ずうっと長らくこういう傾向が続いているのではないか、こういうふうに推察いたしております。
○一井淳治君 特に、新聞や週刊誌が意図的に誤った記事を書いているというふうにも思えないわけでございまして、任官したての若い検察官あるいは働き盛りの検事の中途退官者がやや目立っているというふうな実情は否定できないんじゃないかと思いますが、いずれにしましても、定年直前の方以外の相当働く力のある検察官がやめておるということは残念なことではないかというふうに思います。 新聞記事で、元名古屋高検の検事長で最高裁の判事であられました横井太三氏の発言がございましたけれども、「仕事に魅力を見いだせば転勤や給料の多少は問題にならない。」というふうなことも発言としてあるわけでございます。そしてまた、最近の新聞記事を見ますと、法文全期会の調査結果というふうな問題も出ておりますが、検察官のなり手が少ないという問題については、最近は、司法試験の合格者の高齢化とかいろいろ原因について挙げておられまして、確かにそういうところもあるかもしれませんけれども、この法文全期会の調査結果に出ておるような、これはもちろん上層部の方も見ておられると思いますけれども、そういった点にも原因があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。 その内容についてここで一々申し上げませんけれども、内部の問題についてもう少し深刻に受けとめていただきまして、例えばこれはあくまで一例でございますけれども、弁護士から検察庁の上層部の方に登用するとか、その他相当思い切った対策をこの際立てていただいて、中途退官者が減るとか、修習生からの希望者がもっとふえるようにしていただかなければならないんじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりのことはいかがでございましょうか。
○政府委員(根來泰周君) 先ほども申しましたように、最近の検事の任官者が二年ばかり激減しておるということとか、御指摘の若い検事がいろいろ申してやめておるというようなこと、あるいは法友会の調査でございますが、これは私どもの方にはいただいていないので新聞報道で知る限りでございますけれども、これに対してはいろいろ申し上げたいことはいっぱいございますけれども、一々反論しても大人げないということでございますので、十分そういうことを踏まえまして、先ほど申し上げましたように検察問題検討会というものをつくりまして、内部のことについていろいろ洗い直しといいますか見直しといいますか、そういうことをいたしまして、検察長官会同あたりでもそういうことを深刻に討論しているのでございます。いろいろ御注意を受けた点については、またいろいろ検討したいと思います。 また、弁護士さんから検事に任官させるということもございますけれども、これは戦後一時期にそういう時期がございました。私個人の意見でございますけれども、必ずしも成功していなかったという点もございますので、そういう点はいろいろ多方面からの御意見をちょうだいして検討すべき問題だと考えております。
○国務大臣(遠藤要君) せっかくの、今、我々大変大きく考えなければならない御発言を先生からいただいておるのですが、私も法務省に参ってまだようやく一年に達したというような状態でございますので、おか目八目的な立場もあるわけでございますけれども、先生御指摘の点については、私自身としては一々うなずける点が多いんです。 一つは、試験制度の問題、高齢化しているという問題、さらに、正直に申し上げると、果たして今の待遇でいいかどうか、もっとやはり待遇の点も考えていかなければならぬのではないかということが一つ。それから、やはり研修を受けているときから検察に対する仕事のやりがいというものをもっと身につけて認識してもらう。そして社会意識を持って、検察というのが社会正義感に燃えてやっているんだ、欲得じゃない、そういうふうな植えつけをもっと積極的にやってもらわなければならぬということが一つ。それに、せっかく検事になっても二、三年ごとに転勤、転勤ということになりますると、両親なりお年寄りを抱えており子供を抱えているということになると、すべてをダンボールに詰め込んだままで仕事をしていなければならぬというようなことではなかなか大変なことだろう。こういうふうな点も検討していかなければならぬ問題でもあるし、それから上司からは厳しく、社会からも厳しく見られている若い人たちが、先生のことを指すわけではございませんけれども、弁護士稼業をされている方の方が大変気楽なので、こんなに窮屈で転勤、転勤ということならば弁護士さんになった方がいいのじゃないかというふうな気持ちにもなられるんじゃないか。 そういうふうな点を考えると、法務省自体としても安閑としているわけにもまいりませんので、今官房長が答えているように、真剣にこの問題の対策について検討してまいりたい、こう思っております。 どうぞ今後とも御鞭撻をちょうだいいたしておきたいと思います。
○一井淳治君 法曹三者の中で非常に重要な立場にございます検察官の充実ということは大切でございますので、どうか一段の御努力をお願いしたいというふうに思います。 特に、転勤というものが若い検察官にとっては非常に嫌のように聞いておりますけれども、私どもの考えでは立派な検察官ばかりですから、二年、三年おって、地元に情実ができて仕事の面でどうこうということはないんじゃないかというふうにも考えますし、どうか弁護士よりももっと魅力のある検察官の生活ができるように、いろいろと御配慮をお願いしたいというふうに思います。 それから、裁判所の方にお伺いしたいわけでございます。これは初めから答えがわかっておるような質問をするわけでございますけれども、田中元首相の弁護団に裁判所の元高官の方が入っておられます。もちろん弁護士としては依頼者から頼まれた以上は、自分一人の良心に従って全力投球する、これが弁護士の伝統の基本的なところでございまして、当然ということになるのかもしれませんけれども、しかし、裁判所の元高官の場合には世間の誤解、これは世間の誤解であると思いますけれども、これが発生することは否定できないのでございまして、裁判の公正というためにはやはり裁判官の人格が高潔で公正であるということ、これが現在の国民の司法の信頼の基本であるというふうに思うわけでございます。 私は、二十数年前司法修習を受けましたけれども、この指導官であった裁判官は後に高等裁判所の長官をおやりになりましたけれども、退官後も、例えば、暴力団の依頼がありましても、絶対にそういったものは自分でやらないで人に紹介をしたりしまして、本当に世間から立派だという評価を受けるような事件しか受任をされていないわけでございます。 また、前に、私が弁護士会の会長をやっておったときに、地方裁判所の所長からちょっと話がありましたけれども、ちょうど裁判官を退官して弁護士会に入ってくる人がおったわけでございますけれども、裁判所の顔に泥を塗るようなことは決してしてくれるなとよく説教をしておったということを聞いておるわけでございます。 そういうことで、元裁判官といえばこれは範囲が広過ぎますけれども、特に人それぞれの事情があることはよくわかりますけれども、高官の場合は退官後の活動ということが裁別所の信頼に本当に大きく影響するのじゃないかというふうに思います。 最近私は、外部から見ておりまして、最近の裁判官あるいは裁判所職員に対する教育といいますか管理というものは、締めつけ過ぎじゃないかと思うほどかなり厳しいような感じを受けておりますけれども、今後は世間に誤解を与えるような裁判所の高官の方は出てこられないと安心していいのかどうか、その辺のことについてお尋ねしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官で高官というお言葉でございましたが、相当の地位にあった者は、退官した後弁護士として登録を し、そして活動はすべきではないというような考え方もあるいはあり得ようかと思うわけであります。しかし、現行制度上は裁判官の経歴を有する者が弁護士の登録をし、そしてその活動をするということは許容され、また予定されているところであるというふうに考えられるわけであります。裁判官の人格の高潔、公正ということが国民の信頼を得る基本であるというのは、これはまことに御指摘のとおりであります。 ただ、申し上げるまでもないわけでありますが、裁判官は裁判所に来た事件を判断することが仕事でありますし、弁護士は当事者の立場に立って弁護をし、あるいは代理をするということが仕事であります。そういう意味で、弁護士の立場になりました場合には裁判官の場合と同じような意味での公正さというものを期待することは大変難しいことであろうと思います。そういう意味で、裁判官を退官した者が弁護士になった場合に、一体どういう事件を受任した場合にそれが公正を欠き、国民の信頼を失うことになり、また、どういう事件を受任すればそれは信頼を失わないことになるのかというのは大変デリケートで難しい、一概には線を引けないものではなかろうかと思うわけであります。 いずれにいたしましても、既に裁判所を離れた方の受任しておられる事件の当否につきまして私どもとしてどうこう申し上げるという立場にはないものというふうに考えております。 なお、締めつけ過ぎというお話がただいまございましたが、いろいろな意見が聞こえてこないわけではありませんが、私の理解では、一井議員御承知のように、以前の裁判所の執務条件は非常に整備がおくれていたと申しますか、裁判官が非開廷日に出勤いたしますと自分の机がないというような状況、そのような形でそれが当然のことのようにして執務が行われていたわけであります。したがって、自宅での執務と休暇といったようなものが混然として行われていたというような時期があったわけであります。しかし、現在そういった点はだんだん整備されてまいりました。執務室の面でも、あるいはその執務室で利用できる資料等の面でも随分整備されてまいりました。それに伴ってやはり自宅での仕事ということと休暇ということが分け得るような形になってきておるわけであります。そういったようなことに伴ってあるいはその執務あるいは服務ということについての考え方が何十年か前とは違ってきているという面があろうかと思います。 しかし、それは私は執務条件の変化に伴うある意味では当然の国家公務員としてのとっていただくべき措置であろうというふうに思うわけでありまして、それが締めつけというようなものにつながるものではないというふうに思っております。もちろん、締めつけあるいはそれにより裁判所の職員が萎縮することは避けなければならない、断じてあってはならないことであろうと思っております。そういったことはもちろんないように十分な注意はしているつもりでございます。
○一井淳治君 刑事事件にも御指摘のとおり本当にいろいろ多様な事件がございまして、それに対する見方はいろんな見方が可能であるし、それが民主主義であるというふうに思います。 ただ、一般社会常識からしてこういうのは余りたちがよくない、表現が悪いかもしれませんけれども、そういうものもまた選ばれるわけでございます。例えば、選挙違反とか涜職事件であるとかあるいは暴力事件であるとか、そういったふうに世間の大勢から見てこれはちょっとどうだろうか、一〇〇%賛成しがたいというふうなものが自然とあるわけでございまして、これはもう世の中に社会常識というものがある以上そういったものが選び出されるということは否定できない事実であるというふうに思います。そして、裁判の信頼というものは、全国で何千という裁判官が本当にもう徹夜をしたり家族を犠牲にして正しい裁判をしようと日夜非常な努力をしているわけでございまして、その上に立って日本の裁判制度の信頼というものが保たれているわけでございます。それを裁判所の上に立つ人が一挙にしてイメージを崩すようなことをなさると、日夜苦労している個々の裁判官はどんな気持ちであろうかというふうに思うわけでございます。 今回の、元高官の弁護につきましても、第一審の時代にあの弁護料が幾らであるとか、相当際どい、余りすっきりしないような記事が重ねて出ておりまして、そういう記事を見ると、これは非常にマイナスの評価になっているということは当然わかるわけでございます。それをまた二審も続けて弁護されるということはどうも私どもは納得できないわけで、裁判所におかれても特にこういう場においてそういう先輩を弁護されるというようなことでは非常に私は残念なわけでございまして、やはり否定的な評価をされるのが当たり前だというふうな実情が裁判所内でも出てくるということが私は一番大事ではないかというふうに思うわけで、その点特に要望を申し上げたいというふうに思います。 それから次に、霊感商法についてお尋ねしたいわけでございます。 きょうは、経済企画庁の方がお見えだと思いますので、まず被害状況について。これは最近新聞紙上にもよく出ているわけでございまして、詳しくはもうよろしゅうございますから、簡単に被害状況について、そして特に新しい最近の動きはないかどうか、そのあたりについてお尋ねしたいと思います。
○説明員(吉田博君) 御説明申し上げます。 件数でございますが、本年度に入りまして四月が八百八十四件、それから五月が五百十五件、六月が三百五十二件、こういうふうになっております。金額でございますが、それぞれ十六億二千六百万円、八億五千万円、七億円、こういうふうになっております。これを一件当たりで見ますと、四月が二百三十四万円、五月が二百二万円、六月が二百七十七万円、こういうふうになっております。
○一井淳治君 霊感商法につきましては、国会のいろんな委員会で問題になっておりますが、ことしの六月四日の参議院の決算委員会におきまして法務大臣の方から厳正な処置をする、根を絶やすような方法も講じていかなければならない、そういうふうな御答弁もいただいておるわけでございますが、その後霊感商法に対してどのような処置がとられておるのか。あれから二カ月余りたっておりますので、御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(岡村泰孝君) いわゆる霊感商法という問題でございますが、この点につきましては捜査当局といたしましても国会その他でいろいろ御論議されていることは念頭に置きまして、そこに刑罰法令に触れるような行為、例えば詐欺とかあるいは恐喝罪に当たるようなそういう犯罪を構成するような事実があるならば、これに対しまして鋭意取り締まりを行うという方針で対処しているところであります。
○一井淳治君 同じ委員会におきまして、警察庁の方から消費者、弱者保護の立場から被害の未然防止、厳正な取り締まりに努める、関係行政機関と密接な連携をとり、拡大防止に努めていくという御説明をいただいておるわけでございますけれども、その後どのような御処置がなされておるのか、警察庁の方から説明をお願いしたいと思います。
○説明員(泉幸伸君) 警察といたしましては、霊感商法は人の不安をかき立て、その弱みにつけ込むという意味で大変悪質なものであると考えており、消費者保護、弱者保護の立場から被害の未然防止、拡大防止を最重点として取り組んでいるということは御指摘のとおりでございます。そのために、本年六月には霊感商法を含む悪質商法の被害防止を図るためのパンフレットを作成し、一般消費者の啓発に努めているとともに、警察への相談のみならず消費者センター等他機関への相談にも関心を持ちまして情報の入手に努め、違法行為に対しては厳正に対処することとしておるところでございます。 各都道府県警察に設置しております悪質商法一一〇番などに寄せられました霊感商法に関する苦情相談等から見ますと、その件数は五月以降順次減少しており、内容も購入前や契約前のものが多く、被害防止についての指導措置などで対応しているのがほとんどでございますが、今後とも消費者センター等関係機関との連携を密にいたしまして実態把握に努め、違法行為については厳正に対処することとしております。
○一井淳治君 霊感商法問題の最近の新しい特徴といたしまして、被害救済のために立ち上がった弁護士に対する非常に執拗な攻撃ということが起こっておるように思います。真夜中にタクシーが来てたたき起こされる、実際には頼んでもいないのにそういったふうなことが起こるとか、すしの出前が山のように来るとか、ひどい場合には霊枢車が来て、何かいろいろと嫌がらせが行われるということを聞いております。そして弁護士の家族までおびえている、そういうふうな状況が出てきておるようでございますけれども、弱者、消費者保護のために善意、献身的にやっている弁護士に対してこのような悪質な妨害が行われるということは許すことができないというふうに思います。 こういう事態につきまして、これは一個人ではございませんで、弁護士業務に対する非常に悪質な妨害であるというふうに思いますけれども、この点について法務省の方ではどのようにお考えで、どのように対処していただいているのか、まず御説明を願いたいと思います。
○政府委員(岡村泰孝君) 御指摘のありましたような弁護士に対しまする嫌がらせと申しますか、業務を妨害するような行為が行われているという報道も捜査当局といたしましては承知しているところでございます。また、現に、警察に対してではございますけれども、そういう形の告発がなされておるというふうにも承知いたしているところでございまして、告発事件につきましては現在警察におきまして捜査中と承知いたしておりますが、検察といたしましても事件送致を受けますれば、事案の内容に応じまして適正なる処分を行うものと思っております。
○一井淳治君 警察庁の方にお尋ねしたいわけでございますけれども、告訴、告発がそういった案件につきましてどの程度全国的に出ておるのか、これに対してぜひとも早急に摘発をして厳重に処罰をしてもらいたいというふうに思いますけれども、捜査の進展はどのようになっているのか、御説明をいただきたいと思います。
○説明員(広瀬権君) お答え申し上げます。 ただいま私ども警察庁捜査一課に来ておる事案につきましては、本年八月十日、岡山東警察署に対しまして、岡山弁護士会会長様から同人を告発人、被告発人不詳とする告発状が提出されておりまして、同日付で岡山東署が受理をいたしておるところでございます。 その告発の内容は、岡山弁護士会の会員の名前をかたりまして、本年七月三十日から八月六日の間にかけまして、岡山市内のすし店等に対しまして電話ですしの虚偽の注文をしましてこれを配達させる等したものでございます。この行為は同弁護士に対する信用棄損、業務妨害、さらには業者に対する業務妨害、これに当たりますことから、捜査の上犯人を処罰してくれという趣旨の告発でございます。 岡山県警といたしましては、この告発を受けまして、にせ注文等を受けました関係業者、これらの事情聴取あるいは各種の情報収集に現在鋭意努めておるところでございます。 なお、同種事件の再発防止を図りますために、防犯的見地から「にせ注文や予約申し込みに御用心」というチラシを三千枚作成いたしまして、にせ注文等を受けるおそれのある業者に配布するなど、防犯活動も実施中であるというふうに聞いておるところでございます。
○一井淳治君 この問題につきましては、関係官庁が協議をして横断的な対策をとっていくということが国会でも答弁されているわけでございますけれども、そのあたりのことがどのように進行しているのか、御説明をいただきたいと思います。これは経済企画庁の方が恐らく中心としてやってくださっているというふうに思いますが。
○説明員(吉田博君) 御説明申し上げます。 経済企画庁に関係官庁の課長を構成員といたします消費者行政担当課長会議というものがございます。この場を通じまして、悪質な消費者取引により生じます消費者問題につきましても情報交換等を行っております。
○一井淳治君 現在までに、相当大規模な被害が発生しておるわけでございまして、それからまた下火になっておるというふうな状況も余りうかがえないわけでございますので、行政指導に努めるとかいろいろな手段を講じまして、国民の被害が極力拡大しないように努力をいただきたいというふうに思います。 次に、国選弁護について質問をさしていただきたいというふうに思います。 現在の国選弁護料の計算基準はどのようになっておるのか、概略で結構でございますが、御説明をお願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 現在、国選弁護人の報酬支給基準は、三開廷の場合につきまして地裁では五万五千五百円、高裁では五万九千八百円、最高裁では六万四千六百円となっております。もちろんこれは標準的な一応の基準でございまして、実際には具体的な事件のない開廷数、弁護人の活動状況、これは法廷活動のみならずその準備活動も含むわけでございますが、それらを考慮して決定されることになります。
○一井淳治君 当然、日弁連の刑事事件の報酬基準も御存じだと思いますけれども、正規の報酬基準に比較して大体どの程度の割合になっておるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 日弁連の報酬基準額を地裁の単独事件について申しますと、着手金が二十万円以上、報酬金が無罪の場合三十万円以上、刑の執行猶予の場合二十万円以上というふうに定められております。国選弁護人の報酬支給基準との間にはかなり大きな格差があるということでございます。
○一井淳治君 刑事事件全体の中で、国選弁護の占める割合はどうなっておるでしょうか。現在ある一番古い統計では何%ぐらいになっておるのか。現在の統計で、十年間隔ぐらいの適当な統計で結構でございますから、割合について御説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 地裁における終局人員中、国選弁護人のついた被告人の割合について申し上げますと、統計上知り得る最も古い時点は昭和二十四年でございますが、この年は三五%ということになっております。その後昭和四十年は四五・九%、昭和五十年は四三・五%、昭和五十五年は五一・四%、昭和六十年は六二・四%ということになっております。
○一井淳治君 国選弁護料の負担でございますけれども、これを被告人負担としておる割合は、国選弁護事件の中で件数的にどれくらいの割合を占めておるんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 国選弁護人の報酬それ同体を被告人負担としている割合を直接示す統計はございませんが、国選弁護人がついた被告人が有罪となり、かつ訴訟費用がある場合につきまして、その訴訟費用の負担を命ぜられた割合は、昭和六十年の地方裁判所及び簡易裁判所の合計で見ますと三一・三%となっております。
○一井淳治君 それから、国選弁護料の回収は、後で訴訟費用と一緒に検察庁の方でなされるものというふうに心得ておりますけれども、この回収状況は最近どのようになっておるんでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検察庁におきます訴訟費用の徴収関係の数字でございますが、昭和六十一年度の訴訟費用の調定件数、これは要するに訴訟費用の負担を命ぜられまして、検察官といたしましてその命ぜられた訴訟費用の徴収を行うべき件数でございます。これが一万八千件でございます。これに前年度の繰り越し分を加えますと、昭和六十一年度に徴収すべき件数が約二万四千件でございます。これを金額にいたしますと十二億五千六百万円になっております。このうち、昭和六十一年度におきまして徴収済みの件数でございますが、これが約二万三千件、金額にいたしますと約八億七千九百六十万円でございまして、金額についての徴収率は約七〇%という数字になっております。
○一井淳治君 弁護士会の方では、国選弁護の充実確保ということは被告人の人権を守るために、これは憲法上の要請でございますが、極めて重要なことで、国選弁護を一層充実していくという方針がございますし、私も全く同感でございます。 そういう立場に立ちますと、国選弁護の充実、弁護士にもっと働けということになるわけでございますけれども、今のように非常に安い弁護料で弁護士に過度の犠牲を強いてはどうかというふうな問題が当然起こってまいりますから、国選弁護料に対する予算を惜しむようなことがあってはならない。国選弁護料の値上げをということが要求の中心になってくるのは当然でございまして、私もその点特にお願いしたいわけでございます。国選弁護料の値上げにつきましては、昨日の衆議院の法務委員会の方で遠藤法務大臣から非常に温かい御答弁をいただいているということでございますので本日はお聞きいたしませんけれども、私選弁護をふやしていくという観点の努力もやはりこれは必要ではないかというふうに思うわけでございます。 何といいましても、法曹の一員であります弁護士業務の経済的な基盤を守ることは弁護士も人間である以上必要であると思いますし、また、そのために国庫も多少とも助かるという効果もあるわけでございますので、国選弁護が安易に、先ほどの統計のように増加していく傾向は一〇〇%歓迎すべきではない。やはり私選弁護が増加する努力も、それが適正である限りなされるべきではないかというふうに思うわけでございます。特に、最近国選弁護は非常にふえまして、相当裕福で資力が十分にあるにもかかわらず、非常に安い弁護士費片で弁護士にだけ犠牲を強いるというのは矛盾ではないかというふうに思うわけでございます。 その具体的な問題でございますけれども、例えば、現在弁護人の選任の通知や照会回答は各裁判所で文案をつくっておられるようでございますけれども、名古屋や津の地方裁判所では、私選弁護人を選びたいけれども、弁護士を知らないような者には弁護士会の方で私選弁護人の推薦の依頼ができるということを照会回答書の中に記入するというふうな事例もあると聞いております。また、勾留質問の壁にそういったことを掲示するとか、あるいは同行室で、説明テープの中にそういったものを吹き込んでいるというところもあるというふうに思いますけれども、安易に国選がふえていくということが、少しでもこれが助長されないように適正な方法で、例えば、情報を提供するとかというふうなことで改善する必要があるんじゃないかというふうに思いますけれども、そのあたり最高裁判所の方ではどのようにお考えでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 委員御指摘のとおり、弁護人選任に関する通知照会書は、もともと訴訟法上の、裁判所が作成して被告人に送付する訴訟手続上の文書ということでございますので、その書式は高裁あるいは地裁において裁判官の協議等に基づいて定められているというのが実情でございます。そして最近、御指摘のような点と関連いたしまして、各地の地方裁判所の中には対応弁護士会からの提案を受けまして弁護人選任に関する通知照会書の様式を改定したところもございます。 名古屋の例を御紹介いただきましたが、例えば東京地裁では、昭和五十九年に東京三弁護士会の御提案を入れまして通知照会書の様式を手直しするとともに、先ほどお話がございましたとおり、勾留質問に当たって被疑者に対し、勾留中弁護人を選任しようとする場合、弁護士を知らない等のため弁護士を指定することができないときは、弁護士会を指定して選任の申し出ができる。これは刑訴法の七十八条にあるところでございますが、その旨を告知することといたしました。 以上のような点は裁判文書の書式等の問題でありまして、最終的には訴訟法上の裁判所の判断に係るところでございますが、私どもといたしましても、今後これを検討してまいりたいというふうに、考えております。
○一井淳治君 紙に書いただけ、あるいは形だけ掲示しているだけというのでは実効が上がりませんので、それに魂を入れていただくというか、それが本当に動いていくように一層の御努力をお願いしたいというふうに思います。 それから次に、入国管理行政についてお尋ねしたいと思うわけでございますが、現在、我が国で就労を目的として入国しようとする外国人についての入国はどの範囲で認められているのか、特に単純労働者についてどのようになっているのか、そのあたりのことをまずお尋ねしたいと思います。
○政府委員(小林俊二君) 昭和六十一年中における外国人の新規入国者は百七十一万余でございます。このうち、各種の就労を目的として入国を許可された者は合計五万五千七百五十人であります。その中で最も多いのは芸能人であります。 ただいま単純労働者という言葉がございましたが、外国人が単純労働を目的として入国することは、外交官の個人的使用人といった極めて特殊な例外を除いては現在認められておりません。
○一井淳治君 これは労働省の方にお尋ねしたいわけでございますけれども、最近入管法に、違反して入国した外国人が建設現場等で非常に安い賃金で働いているということが新聞紙上等で指摘されておりますが、建設現場とかあるいはどういうふうな現場でそういった労働者は働いておるのか、その他トラブルがどういうふうな状態なのか、トラブルが発生しているのかどうか、そのあたりの状況について労働省の方から回答をいただきたいと思います。
○説明員(奥津照嗣君) 建設業におきます不法な就労の外国人ということでございますけれども、賃金の不払いであるとかそういったトラブルが生じておることは事実でございます。例えば、賃金の額が非常に低いじゃないかというような問題もあるわけでございますけれども、私どもといたしましてはこういうような外国人の不法就労者でありましても労働基準法の保護を受けるということでございまして、私ども労働基準監督機関といたしましては、このような外国人の不法就労に関しまして強制労働であるとか中間搾取であるとか、そういった重大な法違反がありました場合、そういうものの情報収集に努めますとともに、このような法違反を犯しました使用者などに対しましては厳正に対処する、そういうようなことでトラブルの防止に努めておるところでございます。
○一井淳治君 大体、どういうふうな現場で働いておるのか、単純労働で問題のある労働者が何人ぐらいいるのか、そのあたりはいかがでございましょうか。
○政府委員(小林俊二君) 不法に就労している外国人の実数を把握することはもとより極めて困難でございますが、昭和六十一年中に不法就労を理由として退去強制の手続をとられた外国人の数は八千百三十一名に上るわけでございます。 これらの人々が稼働していた稼働の態様は、女性の場合にはホステスといった稼働が最も多くて女性違反者全体の八四%を占めております。男性の場合には土木作業員及び工員が極めてその多くの部分を占めておりまして、双方で七割近くを占めておるわけでございます。
○一井淳治君 現在、我が国は産業の空洞化ということが問題になっております。また、失業率が非常に急増しているということが社会問題となっておりますが、安い単純労働者の入国が容認されるということになりますと、我が国の労働者の生活が脅かされるということが第一に考えられるところでございます。また、外国から入国している人たちは、日本の社会風土は外国とかなり違うために、日本に期待して入国してもなかなかうまく 居つけない、非常に不幸な事態が起こっているわけでございます。また、そういった人たちを帰国させようと思いましてもなかなか帰国が大変でございまして、外国で大きな問題になっていることは公知のことでございます。そういったことがございますので、我が国では安い単純労働者の入国を認めるべきではないというふうに考えるわけでございますけれども、そのあたりのことはいかがでございましょうか。
○政府委員(小林俊二君) 私どもは、単純労働者の入国を認めるべきかどうかという問題と、不法就労者の取り締まりの問題は一応分けて考えております。 すなわち、不法就労者の取り締まりは単純労働者に関する政策のいかんにかかわらずこれを認める余地はないわけでございまして、これに関する取り締まりを強化していかざるを得ないわけでございます。単純労働の問題につきましては、御承知のように、今日まで我が国はこのカテゴリーに属する外国人の稼働のための入国は認めておりません。この問題の将来につきましては関係省庁の見解、国内各界の実情あるいは意向、さらには国内世論一般の動向によって左右されるところが極めて多いわけでございますが、これらの要因を念頭におきましても、現在、単純労働者の稼働のための入国は認めないという方針を変更するということは見込まれていない現状にございます。
○説明員(吉免光顕君) 労働省の方からお答え申し上げたいと思います。 単純労働力の受け入れのあり方についてでございますが、経済、社会面における国際化の進展を初めとして、環境変化等を踏まえて幅広く検討していく問題だというふうに考えております。 しかしながら、外国人の単純労働力については、先生御指摘のように、我が国の雇用情勢あるいは労働条件等に及ぼす影響があるというふうに考えられますので、これを受け入れることは適当でないというふうに考えております。
○一井淳治君 俗に言われるじゃぱゆきさんの問題でございますけれども、これが問題となりながらもなかなか解決されないようでございますが、どういうビザの種類で入国してきて、滞在期間はどういうふうになっているのか。それから日本での就労状況等の現状についてお尋ねしたいと思います。 それから、こういったものは早急に減少すべきではないかと思いますけれども、そのあたりの見通しについても回答いただきたいと思います。
○政府委員(小林俊二君) 明確な統計的な資料は、摘発されて退去強制の処分を受けた外国人についてに限られるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、昭和六十一年中にこのような理由を退去強制を受けた外国人の数が八千百三十一名に上るということでございます。これらの人々について分析いたしますと、そのほとんど大部分、九九%までが観光の資格で入国を認められた人々であります。稼働の期間につきましては、六カ月以上一年未満というカテゴリーが最も多うございまして、全体の約四分の一を占めております。稼働の職種は先ほど申し上げたようなことでございまして、女性の場合にはホステスが八割以上を占めております。男性の場合には土木作業員、工員といったようなことでございます。 以上が現況でございますが、この問題に対処していくためには防止及び摘発の双方において努力が必要なわけでございまして、防止につきましては、まず査証の発給の問題、さらに空港におきます上陸許可の問題、さらには在留中の資格の審査の問題、さらには稼働現場における摘発といったようなことに及ぶわけでございまして、そのいずれの分野にわたりましても、当省のみならず外務省、労働省、警察庁といった関係省庁の協力が不可欠でございます。このような観点から、私どもといたしましてはこれら関係省庁との協議あるいは協力関係の緊密化に日々努力をしている現状にございます。
○一井淳治君 同時に、暴力団の資金源になっているというふうなゆゆしい問題もあると思います。これに対する対策はどうなっているのか、そのあたりのことにつきまして警察庁の方から回答いただきたいと思います。
○説明員(上野治男君) お答えいたします。 昨年、昭和六十一年中警察が摘発いたしました外国人女性が介在する売春関係の事犯、暴力団関係者の検挙状況につきましては、百二十一件、四十七名を各種の法令を適用して検挙しているところでございます。本年もおおよそ同じような数字になってきております。 そういうようないろいろな事案を通じまして感じますのは、確かに最近東南アジア系の女性が風俗関係の営業に従事している、売春等に従事している者が多くなっている、またそういったような女性を使い、あるいは女性の弱い立場を利用して搾取している暴力団関係者その他の悪質なブローカーがふえているということは事実でございます。 そういう面で、警察といたしましては、そういうような売春をやっている女性を取り締まるということが第一番目、まず第一に必要なことでございますが、それにとどまらず、そういうような者を利用してぼろもうけをしている者、あるいはそういうような人たちを悪質な労働環境に置いているというような実態を解明し、あるいはそういうものをなくすという形の取り締まりを特にしていくように現在行っているところでございます。
○一井淳治君 法案について質問をさしていただきたいというふうに思います。 簡易裁判所は昭和二十二年に新設されたわけでございますけれども、簡易裁判所を戦後最初に設置したときの最初の簡易裁判所の理念、これについてお尋ねしたいわけでございます。 私、ちょっとこのたび資料を見たわけでございますけれども、最初、簡易裁判所判事を選任するに当たっては法律専門家でない素人の裁判官を予定したということもあるようでございますけれども、当初は国民に身近で親しみやすい駆け込み裁判所、少額、軽微な事件を簡易、迅速に処理する少額裁判所、そういったものを目指しておったというふうにうかがわれるわけでございますけれども、当初の簡易裁判所の理念というものについてまず説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 簡易裁判所の理念あるいは性格というものを一義的に規定いたしますのはなかなか難しいようでございます。裁判所法の制定過程でどんな議論がなされたか、その辺から考えていかなければならないわけでございまして、内閣の臨時法制調査会あるいは司法省の司法法制審議会等における議論をたどってみますと、当初は憲法で令状主義の建前がとられた。それから御承知の違警罪即決例が廃止される。こういう事態を迎えまして、令状を発行する裁判所、軽微な刑事事件を裁判する裁判所を数多く設置しなければならない、こういう論議がまず先行したわけでございます。 当時、千百ほどございました警察署に対応して置くとか、あるいは市町村ごとに置くとか、その当時一万ぐらいたしか市町村の数があったと思いますけれども、非常に数多くの裁判所を設けなければならないというふうに最初は考えたようでございます。そのように数多くの裁判所を設けるのであれば、民事につきましても少額な事件を処理するようにさせてはどうであろうか、アメリカの少額裁判所のような形の民事の裁判所をつくってはどうか、こういう議論がございました。アメリカの少額裁判所につきましては、御承知のように、手続はきちんと決まっておりませんで、裁判官の自由裁量によってやる、上訴も制限される、上訴審においてはもう一度改めて最初からやり直す、こういう構想でございました。そのような裁判所をつくるべきであるという議論は確かに強く主張されたわけでございます。しかし、そのような裁判所は通常の司法裁判所ではないんではないかというような反対論もございました。 結局、でき上がりましたのは、少額な民事事件あるいは軽微な刑事事件を比較的簡易な手続で迅速に処理するというような形の簡易裁判所として 発足したわけでございます。 裁判官につきましては、御指摘のとおり、相当数の法曹以外の者を迎えて、国民の親しみやすい裁判所というふうな形で発足したわけでございますが、大幅な手続の簡易、合理化というのは結局は実現するに至りませんで、基本的には地裁の訟訴手続を前提にいたしまして、若干の簡易化を図る特則が設けられるにとどまった。そういう意味合いにおきまして、簡裁設置に当たってモデルとされました民事の少額裁判所制度と申しますものは、調書の省略であるとかあるいは証人尋問にかえて書面の提出を求めるというようなところに若干ラフジャスティスの思想の反映はございますものの、全面的に見ますと結局は具体化するに至らなかった、こういうようなことでございます。 したがいまして、学者の方々は簡易裁判所の性格あるいは理念につきまして、少額裁判所的な面と従前の区裁判所的な面とをあわせ持ったものとして考えるべきではないかというような指摘をなさっているわけでございます。私どもといたしましては、簡易裁判所の理念あるいは性格と申しますのは発足当初から少額、軽微な事件を比較的簡易な手続で迅速に処理する裁判所、特に比較的国民の利用しやすい調停等を主に取り扱うという意味では、国民に親しみやすい性格も持った裁判所である、こういうふうに考えております。
○一井淳治君 ただいまも御説明があったわけでございますけれども、国民に親しみやすい少額、軽微な事件を簡易に処理する裁判所、こういう一つの理念があったこと、この理念の大きさといいますか、あるいは実地にどの程度生かされておったかについてはいろんな見方があるかもしれませんが、そういう大きな理念があったことは否定できないというふうに思いますけれども、この考え方は現在まで一貫しておるというふうにお聞きしていいのでしょうか。その辺はどうなんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) ただいま申しましたような簡裁の性格と申しますか、機能と申しますか、そういう意味合いは現在においても異なるところはないと考えております。
○一井淳治君 少額、軽微な裁判所ということになりますと、裁判所の方から地域に出ていかなくちゃならないということが何といいましても第一になるんじゃないかというふうに思います。そのためには、例えば庁舎を増設するとか、あるいは人員の確保をするとか、いろいろな施策が必要ではないかというふうに思いますけれども、当初の理念の実現ということが十分でなかったんではないか。かえって簡易裁判所の事物管轄を上げるとか、理念に反することがずっと行われてきたんではないかというふうな感想を私持っているわけでございますけれども、そのあたりについてはいかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 御承知のとおり、簡易裁判所が発足いたしましたのは昭和二十二年五月でございまして、発足当初は五百五十七の裁判所を新たに設置しなければならなかったわけでございます。その当時の状況でございますから、簡単に建物あるいは敷地を取得するわけにはまいりませんでした。したがいまして、当初発足いたしましたときには、例えば町村役場の一室を借りますとか、あるいは登記所の一室を借りますとか、中には病院の一室、倉庫を借りる、こういうような形で発足したわけでございます。 昭和二十年代あるいは三十年代にかけまして、相当の予算措置をとっていただきまして、多くは木造ではございましたけれども、逐次庁舎の整備を図ってきたわけでございます。その当時、木造ではありましたけれども立派な裁判所ができたということで、地域住民の方々に喜んでもらったというようなことを耳にいたしております。 裁判官の数につきましても、当初は六百数十でございましたが、逐次増加を図ってまいりまして、昭和三十年代には七百三十というふうな数になっているわけでございます。 他方、手続面におきましても、御承知のように、簡易裁判所の表看板は調停でございますけれども、従前はそれぞれ借地借家調停法、金銭債務臨時調停法というふうに法律が分かれておりました。それを一本化いたしまして民事調停法が装いを新たにして発足したわけでございます。その機会をとらえまして、例えば「調停いろはかるた」というようなものを日本調停協会連合会あたりでおつくりになりまして、この中には例えば「み」で申しますと、「民衆の信頼に答えるよい調停」、こういうふうなものがございますが、こういう「調停いろはかるた」のポスターをそれぞれの裁判所なり市町村なりに張り出しまして、大いに調停制度の利用を求めたわけでございます。 そのような努力の結果、昭和二十年代には五万件少々でございました事件が徐々にふえまして、昭和三十年には七万件近くにもなったわけでございます。その後、調停の事件数は、変動がございましたが、だんだん減ってまいりました。昭和四十七、八年ごろになりますと四万件を割るような状況が出てきたわけでございます。そこでまた、調停制度の改正、充実をお願いいたしまして、昭和四十九年には民事調停法の一部を改正する法律案を可決、成立させていただきました。その後また、調停制度の充実を図ってきたわけでございます。その後の経過は一井委員よく御存じのとおり、簡裁における調停事件はかなりふえてきたわけでございます。 そういうふうに、私どもといたしましては、不十分ではあるかもしれませんが、それ相応の努力は払ってきたつもりでございます。
○一井淳治君 裁判制度というものは、人が、裁判所の職員が、裁判官が扱うわけでございますから、人員の確保ということが非常に大事であるというふうに思いますけれども、簡易裁判所の制度が成功しなかったのは職員の確保ができていなかった。裁判所へ飛び込んでいっても期待する対応がなされずに、何週間か先の対応というふうなことで、打ては響くようなところがなかったという点に一つの大きな原因があったんじゃないかというふうに思いますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
○最高萩判所長官代理者(山口繁君) ただいまるる御説明いたしましたように、制度発足当初からそれなりの努力はしてきたつもりでございます。人によりましては、簡易裁判所制度につきましていろいろの御批判があることをも私ども承知いたしておりますけれども、私どもといたしましては簡易裁判所制度が失敗したとは考えていないわけでございまして、発足当時の機能というものは、不十分ながらも発揮させてきていただいておるというように考えております。 例えば、事件数につきましても、昭和三十年で見てみますと、民事訴訟、調停、刑事訴訟合わせて全国で二十四万件でございましたが、昭和六十年に至りますとこれが三十四万件というふうになっておりまして、制度自体はかなり利用されているんではないかというふうに考えております。 ただ、御指摘のように、簡易裁判所の運営そのものが一〇〇%充足できるような形でなされているとは私どもも考えておりません。やはり窓口における応対でありますとか、いろいろな場面で御不満をいただいている面もあろうかと思います。特に大都市におきましては事件が非常にふえているということで窓口の応対が悪かったという点もあろうかと思いますが、地方の簡易裁判所でございますと、これは何度も申し上げておりますように、非常に事件数が少なくなってきておりますので、窓口の応対その他につきましては地方に行けば行くほど懇切丁寧であるというのが通常の事態ではないかと思います。 ただ、トータルとして見ますと、必ずしも適切な対応がなされているとは言えない面もあろうかと思いまして、今回、簡易裁判所の適正配置に関する法律案の御審議をいただきまして、簡裁全体として充実した運営ができるように取り組んでいきたい、かように考えているわけでございます。
○一井淳治君 我が国では、一般の考え方として裁判所はどうも敷居が高いといいますか、一般の国民にとっては縁遠いということがございまし て、裁判所の方から積極的に国民を引き込むというふうな対応をしていかないと裁判制度が国民に密着するという方向にはなかなか向いていかないんじゃないかというふうに私は思うわけでございます。 そこで、簡易裁判所の職員に対して、そういった地域の人たちと親しみやすい裁判所になる方向でのいろんな指導とか教育とか、あるいは地元の住民が積極的に裁判所を活用しようという意欲を起こすような、事件の申し出を誘導するようなPRを努めるとか、そういったふうなことをこれまでどの程度なさっておるのか。そのあたりについての説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) 親しみやすい裁判所、あるいは身近な裁判所ということになりますと、これは刑事事件ということではなくてむしろ民事事件ということであろうかと存じますので、私の方から説明さしていただきたいと存じます。 親しみやすい身近な裁判所と申しましても、裁判所の場合にはその性質上直接地域の人々に積極的な利用を働きかけていくというか、いわば紛争を掘り起こすような形で呼びかけをするというのはいろいろ問題があろうかと思いますので、どちらかといえば私どものPRといたしましては、現に紛争を抱えて困っているとか、あるいはまた訴訟や調停等の申し立てをしたいと思っているがやり方がよくわからないという人がある場合に、その人が手続を容易に理解して簡便に申し立てをすることができるように裁判所の方の体制を整えますとともに、地域の人々のそういう正当なニーズを埋もれさせないように努めるということが大切だ、こういうふうな基本的な観点で対応しているわけでございます。 そういうふうなわけでございまして、裁判所のPRと申しましても、おのずと裁判所の仕事の紹介でございますとか、各種の手続を教示するなどといったものになってくるわけでございます。このようなPRといたしましては、これまでも私ども最高裁判所の方で直接広報の資料を発行したり、あるいは広報テーマを定めまして各裁判所にそれに即したPRをしてもらうようにお願いするほか、それぞれの裁判所から地方自治体の例えば広報誌、市町村の広報誌等に裁判所のPRを掲載していただくというふうなお願いもしてまいったわけでございます。そのほか、当事者が裁判所の窓口等に来れば手続等の説明をなるべく親切にするというふうな指導もしてまいりましたし、また当事者がその場で書き込みをすれば申し立て書ができるというふうな、いわゆる定型的な用紙記載例等も各裁判所に備えるというふうな努力をしてまいったわけでございます。 余り抽象的なことを申しましてもおわかりいただきにくいかと思いますので、最近の具体的な例を一つだけ御紹介したいと存じますが、昭和五十七年から八年、九年にかけましていわゆるサラ金調停が激増した時代がございました。このときは簡易裁判所の通常の民事訴訟事件が大体二十万件強でございましたが、それに対して調停事件が十五万件にもふえたことがございます。つまり、訴訟事件に比較しまして七割近い数が調停に持ち込まれたという時期がございました。このときの調停は、いわゆるサラ金から借り受けをいたしまして、高い利息を払えないために行き詰まった債務者側からサラ金業者を相手にして救済を求めるという形のサラ金調停が非常に多かったわけでございます。 例えば、このときの例を申しますと、私どもの方でそういう申し立てをしたいがどうしていいかわからないというふうな方々のために「調停のしおり」というふうな、これはごく薄いリーフレットでございますが、それから「民事調停の手引」、これは数ページにわたりまして調停をする際のいろんな手続あるいは準備していただくべきことなどを書いたものでございますが、そういうものを準備いたしました。先ほどのリーフレットの方が約四十万部、それから手引きの方が十万部作成いたしまして、各裁判所の窓口のほかに、例えば市町村の困り事相談所のようなものを扱っておられるところ、あるいはまた警察署等にもお配りいたしまして利用していただいたということがございます。そういうようなことがございまして、昭和五十八年、九年の例で見ますと、当事者本人からの調停の申し立てが非常にふえまして、例えば口頭でそれを受理し、あるいは備えつけの用紙を用いて申し立てをしていただいたという例が全体の事件の八〇%近くになっている、そういうふうな例がございます。 その後も、私どもの方もそのときどきの状況に応じましてパンフレットなどを作成する尊いたしましていろいろと簡易裁判所のPRに努力しているわけでございますが、必ずしもこれで十分というわけでは決してございません。今回の適正配置の法案が成立させていただけるならば、今後ともますます受け付け窓口の充実等を考えていかなければいけないと思っておりますし、それと同時に、簡易裁判所の民事事件について利用者の御理解を得るためのいろんなPRをしていきたいというふうに考えている次第でございます。
○一井淳治君 少額、軽微の事件を簡易、迅速に処理するという理想を掲げる限りは、地元の住民との交流ということが非常に大事ではないかというふうに思うわけでございます。 最近の様子を見ておりましても、例えば、何か市町村でおめでたごとがありましても、簡易裁判所の所長さんが祝辞などを言うために招待を受けるとかというようなことも余り見たことがございませんし、本当に民衆に溶け込んでいくならば、最近はカラオケ大会が随分多いですけれども、カラオケ大会の審査委員長ぐらいにはなってもいいんじゃないかというふうなことも考えるわけですけれども、そういったふうなはでやかなこともございませんし、職員の人が地元で長く勤務しておると、これはそこまで行くのがいいかどうかは別ですけれども、例えば、きょうはちょっと碁でも打とうかということで地元の人と交流ができるはずでございますけれども、そういうことはなくて、五時が来たらさっと帰ってしまうというようなことで、本当に少額、軽微な事件を簡易にやっていこうということであれば何か地元との人間的な交流が必要だと思うんですけれども、それがなくてどうも離れ離れになっている。これが事件も来ないし、何となく影が薄くなっていくという大きな原因ではないかというふうに思うわけで、その点を今お尋ねしたかったわけでございますけれども、そういった点も今後一層の御配慮をお願いしたいと思うわけでございます。 それから、庁舎、施設の改善でございますけれども、現在の簡易裁判所の庁舎は大部分木造で非常に古びております。もし仮に、本当に受件数をふやして地域の住民のために役立たせようというお考えであったならば、当然老朽庁舎の改善、未整備のいろんな施設の整備ということも行われていたんじゃないかと思いますけれども、残念ながら行われていないように思うわけでございます。現在この老朽庁舎、未整備の簡裁というものは何庁ぐらいあるのでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 現在の独立簡易裁判所の庁舎の数でございますが、二百六十二庁全部でございます。そのうち、整備済みと申しますのはいわゆる不燃化が完成しているものを私ども整備済みと呼んでいるわけでございますけれども、整備済みのものが百六十八庁、それから現在整備中のもの、つまり本年度中に工事を行い、工事を完成する予定のものが二十二庁ございまして、これが合わせて百九十庁でございます。したがいまして、残ります未整備庁、つまり不燃化ができておりません独立簡易裁判所は七十二庁ということになります。
○一井淳治君 整備されていない老朽化した庁舎が今度統廃合の対象になるんじゃないかという感じも非常に強いわけでございます。この法案の成り行きはまだ決まりませんけれども、今後、簡易裁判所の庁舎の整備拡充ということについては一層の努力をしていただかなくちゃならぬのじゃないかというふうに思います。そして、老朽化して おる庁舎がほとんど今回の整理統合の対象になっておるかどうか、そのあたりはいかがでございましょうか。もしそうだとすれば、どうも今回の統廃合は以前から計画的に予定されておったんじゃないかというふうに感ぜざるを得ないわけでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 先ほど未整備庁舎が七十二庁と申し上げたわけでございますけれども、御指摘のとおり、このうち今回の廃止予定庁が六十一庁でございます。したがいまして、存置庁で未整備のものは十一庁ということになっております。 こういうことになりました原因でございますが、確かにここ数年、簡易裁判所の適正配置の問題を私ども三者協議等に提起してきましてからはこの成り行きを見詰める必要があるだろう、その結果、廃止されることになる庁舎を新築するということになりますとそれは国費のむだでございますので、ここ数年間これらの成り行きを見守ってきたということがございます。 先ほど申し上げましたとおり、本年度で整備することになった庁が二十二庁とかなりの数あるわけでございますが、これは昨年来の法制審議会の答申あるいは法案の作成等を通しまして、存置庁と廃止の対象となる庁が法案の形ではっきりしてまいりましたのを受けまして、法案上存置することになっております庁につきましてはぜひ整備を進めたいということで、集中的に整備を図った結果が今申し上げたようなことになっているわけでございます。 何も昔から、今の問題が起こる前から考えていたというわけではございませんけれども、ここ数年の単位で見ますと、やはりそういうことを考慮しながら成り行きは見守っていたということはございます。
○一井淳治君 先ほども申し上げましたけれども、日本では国民と裁判所との間にどうも段がありまして、一般の国民の方では裁判所は縁遠い存在でございますので、裁判所の方から相当働きかけないと裁判制度の拡充ということ、あるいは憲法の予定している人権の擁護といいますか、これができないんじゃないかというふうに思うわけでございまして、物的、人的な拡充をもっと積極的にやる、そして地域での結びつきもどんどんやっていく、人員もふやしていくというふうなことがないと縮小再生産、そういうふうなことに陥っていくんじゃないかということを心配するわけでございます。そのあたりのこと、もう少し積極的にいろいろ業務の拡大をやっていただかないと、さらにさらに簡易裁判所の縮小縮小という方向にまた行きはしないかという心配が非常にあるわけでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 裁判所制度をどのように利用するかは、国によってかなり違うようでございます。アメリカあるいはヨーロッパでございますと、何かもめごとがありますとお互いに自主的に、任意的に話し合って解決するというのではなくて、いきなり裁判所に飛び込んで行く。例えば、少額裁判所の事件としてよく引き合いに出されますのは、クリーニング屋にワイシャツを洗濯に出したけれどもしみがついた場合、これはやはり少額裁判所へ行って幾ら払えというふうな裁判を求める。我が国の場合でございますと、クリーニング屋さんとかけ合いまして話がつくわけでございます。したがいまして、アメリカあるいは西ドイツあたりはかなり訴訟の件数は多うございます。アメリカの最高裁判所の前の長官は、訴訟好きのアメリカの国民の国民性を嘆いたりなさったこともあるわけでございます。そういう点で我が国におきましては比較的裁判を好まないという点はあろうかと思います。 ただ、それだからといって裁判所の利用度合いが少なくなったかと申しますと、先ほど申しましたように、昭和三十年と比較いたしましても、昭和三十年では民事訴訟は八万二千七百件ぐらいでございましたが、昭和六十年度になりますと民事訴訟の件数は二十三万二千五百件ぐらいにふえてきております。支払い命令につきましても現在は六十数万件台でございまして、過去に比べますとかなり利用されているわけでございます。そのような状況でございまして、必ずしも受件数の経緯だけを見ますと縮小再生産の形では動いていないというふうに私どもは考えております。 しかし、現在の裁判所の国民による利用がすべていいのかと申しますと決してそうでない面もあろうかと思います。事件数と申しますのは人口を初めといたしまして社会的、経済的な要因あるいは教育にまでさかのぼります心理的な要因あるいは制度的な要因、こういうものがいろいろ重なり合いまして事件数の増減を左右するんだろうと思います。地域によって減少しているところもございますけれども、そういうところでは人口の移動というのがやはり基本的に事件数減少の大きな原因であったのではないかというように考えております。 裁判所といたしまして、積極的に紛争を掘り起こして裁判所に持ち出すように勧めて回るという性格のものではないわけでございますが、裁判所を御利用なさる場合にはいつでも、それを受けて十分こたえられるように、例えば裁判所の受け付け体制でございますとか、そういう面の充実を図りまして、よりよく利用していただきたいという思いは痛切に持っているわけでございます。 先ほども申しましたように、今回の法律案の本当の目的と申しますのは、簡易裁判所全体を充実強化することによりましてもっとよりよく、従前よりよりよく利用するようにしていただきたい、こういうことで御審議をお願いしているわけでございます。決して縮小再生産をやっていこうというような考え方を持っているわけではございません。
○一井淳治君 今回の統廃合を行う基準として、時間の問題とそれから事件数、過去五年間の平均の事件数ということが最も重要な判断基準となっておるようでございます。 事件数については民事、刑事、調停、この三つの案件を取り上げておられるようでございますけれども、しかし、先ほど言われましたように、少額裁判所という理念があるんであれば督促事件とか略式とかあるいは窓口での相談、そういったものも評価して、こういうものも件数に含めて全体像を見て統廃合を決めていかなくちゃならない。三つの事件だけを合計して事件数の基準としてはいけない、このように思うわけでございますけれども、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) これは、法制審答申でも述べられておりますように、今回の簡易裁判所の適正配置は全国に共通する問題でございまして、統一的な基準を設けてその実現を図る必要があるわけでございまして、裁判所を利用する地域住民の利便にかかわる事柄でございますので、その基準につきましても、例えば、事務量といった組織運営上の尺度によるのではなくて、むしろ基本的には地域住民の総体としての利便、これを主要な考慮要素とすべきものというふうに思われるわけでございます。そういう意味合いで、集約の基準につきましては地域住民の簡易裁判所の利用度を示します事件数と、それから簡易裁判所に出向くための利用の便、この二つの要素を基本的指標とするのが合理的であるというふうに考えられたわけでございます。 事件数につきましては、御指摘のように民訴、民事調停それから刑訴の各事件数の合計につきまして五十五年から五十九年の五年間の平均新受件数を指標としたわけでございます。簡易裁判所では、今おっしゃいましたように督促、略式等多くの事務がございます。特に督促、略式の事件は件数としては少なくはございません。しかし、これらは、御承知のとおり、裁判所におきましていずれも書面で審理されるわけでございます。民訴、民事調停、刑訴の三事件は裁判所の取り扱う事件としまして特に重要でありますと同時に、督促事件などとは異なりまして原則として審理の上で当事者の出頭を要する。したがいまして、裁判所の 所在場所のいかんが当事者の利便と強いかかわりを持つわけでございます。そういう観点から民訴、刑訴、調停の三種の事件を事件数の基本にしましてそれを基準としたわけでございます。 督促事件につきましては、これも御承知のように、債権者はほとんどが管外の方でございまして、管内の住民の方が利用する度合いというのは非常に少のうございます。 略式事件につきましては、これは対応する区検察庁でいろいろ取り調べ等があるわけでございまして、トータルとして見ますと、裁判所利用の場面と同じように評価すべきじゃないかという点はございますけれども、ケースによりましてはいろいろございまして、かえって近間の検察庁ではなくて本庁の方あるいは支部の方の検察庁で取り調べるというケースもございますし、この多くの事件はいわゆる交通即日処理事件、交通切符の事件でございます。こういうような事件につきましては、御承知のとおり、週に一回流れ作業で数十件処理する、こういう体制がとられておりますので、これは基本的な事件数としてはカウントしない方がむしろいいのではないか、こういうような観点からこれを省いたわけでございます。
○委員長(三木忠雄君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後十三時二十分まで休憩いたします。 午前十一時五十六分休憩 —————・————— 午後一時二十二分開会
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察及び裁判の運営等に関する調査を便宜一括して議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○猪熊重二君 本日は、法案について二、三お伺いしたいと思います。 この法案を審議する前提として、最高裁判所が簡易裁判所についてどのように考えているか、このことについてお伺いすることが非常に重要だと思いますので、話は少し古いことになるんですけれども、二、三お伺いしたいと思います。 昭和二十二年の五月三日、新憲法施行と同時に裁判所法が新しくなりまして、現在の簡易裁判所が設置されたということでございます。この簡易裁判所は、旧裁判所構成法のもとにおいてはいわゆる区裁判所に対応するものと一応考えられます。そこで、旧法下において区裁判所が全国に何カ所設置されていたか、まずお伺いしたいと思います。
○最高萩判所長官代理者(山口繁君) 昭和二十一年十一月時点でございますが、その当時全国で二百八十三庁ございました。
○猪熊重二君 それに対して、新しく簡易裁判所は裁判所法の上では何庁設置されることになっておりましたか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 五百五十七庁でございます。
○猪熊重二君 二倍まではいきませんが、ほとんど二倍に近い数の簡易裁判所が設置されることになったわけですが、このように区裁判所に対して簡易裁判所が二倍近い数字設置されることになったということについて、数が二倍になったということだけではなくして、どのような趣旨で簡易裁判所がこれほど多く設置されるようになったか、お伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 裁判所法制定の過程における論議等から考えますと、憲法で令状主義の建前がとられたことによりまして令状を発行する簡易裁判所を数多く置かなければならない、したがいまして当初の段階では警察署に対応しまして、当時千百ほどございましたが、千百ほどの裁判所を設けるべきではないかというふうな論議がされたわけでございます。他方、違警罪即決例が廃止されることによりまして、刑事の軽微な事件が数多く裁判所で審理、裁判しなければならない、そういう点からも数多く設けるべきであるというふうな議論が出てまいりまして、当時、市町村の数が一万数千ございましたけれども、市町村ごとに置くべきではないかという議論すらあったわけでございます。そういうふうに数多く裁判所を設置するということになりますと、勢い少額な民事事件も非常に簡略な手続で処理する裁判所というものを考えてはどうであろうか、このような論議もなされたようでございます。 結果的には、当時の財政状況ということもあったのではないかと思いますが、二つの警察署に一つの割合ということで五百五十七の裁判所を設置をするということになったようでございます。そういうふうないきさつからいたしまして、少額、軽微な事件を簡易な手続で迅速処理するという趣旨で簡易裁判所が設置されたものと考えております。
○猪熊重二君 今おっしゃられたようなことのほかに、簡易裁判所が従前の区裁判所と異なるような点はほかにはございませんか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) その点はかなり多くございます。例えば、民事の場合で申しますと、当時、区裁判所は二千円を超えない請求について管轄いたしておりました。ところが刑事で申しますと、これは現在はいわゆる法定合議事件でございますね。短期一年以上の懲役または禁錮に当たる罪を除くほか、有期の懲役もしくは禁錮または罰金に当たる罪、それから拘留または科料に当たる罪ももちろん管轄いたしますけれども、そういう点がございました。当時、地方裁判所は御承知のとおり合議の裁判所でございました。そういう意味合いからいたしますと、区裁判所はそういう訴訟の第一審事件につきましてはかなり多くの部分を担当する裁判所でございました。そのほかにも仮差し押さえ、仮処分、それから執行事件、破産事件、大部分の非訟事件、それから督促、公示催告、略式等は担当しておりましたけれども、第一審の裁判所といたしましては地方裁判所に比較しまして区裁判所の占める割合が非常に大きかったわけでございます。 ところが、戦後発足いたしました簡易裁判所におきましては事物管轄の制限がございまして、民事につきましては地方裁判所と第一審の事件を分かち合うという性格がございましたけれども、破産事件あるいは和議事件、それから執行事件、こういうようなものは管轄しないことになりました。それから、民事訴訟事件につきましても、戦前の区裁判所でございますと、価額にかかわらず建物の賃貸借訴訟とか不動産境界訴訟あるいは占有訴訟等は区裁判所に管轄があったわけでございますが、こういう点は一切なくなりました。事物管轄の制限下でこういう事件を処理する、こういうふうになったわけでございます。そういう点からいたしますと、簡易裁判所は区裁判所とは異なりまして、事物管轄につきましてもかなり制限を受ける形で発足しているわけでございます。
○猪熊重二君 今のお話を伺いまして、結局、裁判所制度の中で、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所というこの系列がいわゆる法規を適用して紛争を裁判によって解決するという系列の三つの裁判所であるのに対して、簡易裁判所は、もちろんそのような系列に属する部分の事件も持っておりますけれども、それ以上に地域に密着した、実情に合った早期迅速な紛争解決を主たる目的とする裁判所ということで、この最高裁、高裁、地裁という系列とはやや別個な、ある意味においては地域裁判所であるとか、あるいは人の呼び方によっては民衆裁判所であるとか少額裁判所であるとかというふうに呼ぶ人もおりますが、このような裁判所というふうに考えてよろしいでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 御指摘のとおり、例えば、簡易裁判所の民事事件につきましても、民事訴訟法で簡易裁判所の特則という規定が設けられました。昭和二十二年発足いたします当時、例えば、証人尋問にかえて書面の提出を求めることができるとか、あるいは証人本人の尋問をした場合には調書の省略をすることができるとか、戦前の区裁判所の特則に加えましてそういうふうな規定が設けられたわけでございます。これ は、地裁における訴訟手続のような厳正な手続ではなくて、簡易裁判所にふさわしい簡略な手続で訴訟を処理する、こういう意味合いで設けられた規定であろうかと思います。 それから、いま一つの特色といたしましては司法委員の参与を求める、こういう規定も設けられたわけでございまして、国民の司法参加と申しますか、そういう道を開きました。 それから、いま一つは、区裁判所の裁判官の場合でございますといわゆる法曹有資格者に限られていたわけでございますが、簡易裁判所の判事はそれだけではなくて、多年司法事務に携わり、その他その職務に必要な学識経験のある者で選考を経た者ということで、法曹有資格者以外の方々の簡易裁判所判事登用の道を開かれた、こういう意味合いからいたしますと、国民に親しみやすいといいますか、よりよく利用してもらう裁判所という性格を持って発足したのではないかというふうに考えております。
○猪熊重二君 今、総務局長からいろいろお話しいただいて、まことにそのとおりでございますが、そのような裁判所が果たして裁判所の体系というか、系列の中でどれだけ大切にされてきたか、それともじゃけんにされてきたか、これについてお伺いしたい。 新しい法律によって簡易裁判所が設置されることになったということで、当初五百五十七カ所設置が法律に規定されていた。ところが、最初から全然影も形もない、いわゆる未開庁が八庁もあったということですが、八庁あったことは間違いありませんか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 間違いございません。
○猪熊重二君 今、いろいろ総務局長おっしゃったような重要な簡易裁判所、民衆のための簡易裁判所、これが八庁も全然開庁されなかったことの原因及びこれを開庁するためにどれだけの努力をされたか、お伺いしたい。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) これらの庁につきましては、開設と同時に裁判所法三十八条によります事務移転がなされているわけでございます。これらの庁につきまして事務移転がなされた理由につきましては、古いことでございまして必ずしも正確なことはつまびらかになし得ないわけでございますが、記録等を通じて認識しておりますところでは、庁ごとに若干の差異はございますけれども、一言で申し上げますと、敷地及び庁舎の確保が困難であったということにあるようでございます。これらの庁の開設につきましては、これも庁によりまして差異はございますけれども、おおむね昭和二十年代から三十年代前半ころまで用地取得等のための努力は重ねられてきたようでございます。 例えば、大阪の西成簡易裁判所につきましては昭和二十五年に建設用地を取得したわけでございます。ところが、その後三十年になりまして、大阪の地下鉄工事の一環としまして駅舎建設の必要からこれがそちらの方に振り向けられた。あるいは都島簡裁につきましても用地の手当てはしたわけでございますが、予定地が交通量が激しくて騒音のため裁判所用地としては必ずしも適当ではなくなってきた、こういうような事情もあったようでございます。そのように、昭和二十年代後半から三十年代前半にかけましてはいわばゼロからスタートしてまいりました簡裁の庁舎の整備、確保のためそれぞれ各地で努力はなされてきたわけでございますが、このような中でそのような条件の悪いところについては事実上庁舎の整備が行われないまま推移してきたものではないかと考えております。例えば、甲府の韮崎につきましても、地元の方から候補地のお申し出等がございましていろいろ物色しては回ったわけでございますが、結果的には適当な候補地がなかなか得られないで推移してきた、こういう状況でございます。
○猪熊重二君 今、総務局長は未開庁八庁の開庁に非常に努力されたというお話なんですが、この未開庁八庁の開庁とは別個に、せっかく開庁したにもかかわらず、その後事務移転して実質的に閉庁状況に陥ってしまったという裁判所があるわけです。簡単で結構ですから、いつからいつまでの間に何庁、それがどういう理由で事務移転して閉庁に至らざるを得なかったかについて、簡単にお答えください。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 簡単に申し上げますと、二十四年四月十一日から五十七年十二月一日までの間に十三庁につきまして事務移転が行われております。 その理由につきましてはさまざまでございますが、借り上げ庁舎が狭隘であるとか、あるいは庁舎が類焼して急速な復旧が困難でございますとか、あるいは借り上げ庁舎の返還請求を受けて直ちに庁舎を設置する見通しかないとか、あるいは庁舎が老朽化いたしまして、その場で執務することはできなくなったけれども新設のめどがなかなか立たない、こういうような理由で事務移転がそれぞれ行われたわけでございます。
○猪熊重二君 そうすると、せっかく法律でつくろうというのが最初から八庁が全然店開きもできなかった。ようやく設置した裁判所も今おっしゃった期間の間に十三庁閉庁してしまっている。結局二十一の裁判所が法律上あることになっていながら全国から影を消している。こういう状況について、それが裁判官がどうしてもいないとか、ほかの理由ならばともかく、土地がない、あるいは建物がない、こういう予算的な理由で閉庁に追い込まれるということは非常に問題だろうと思うんです。これをこういう事態に立ち至らなくも済むように、裁判所としては予算上どの程度努力されたんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 未開庁八庁につきましては、先ほど申しましたように、敷地取得等で予算上の措置をいろいろ講じていただいたりしてきたわけでございます。未開庁八庁につきましては、実は昭和二十年代の後半から、例えば、大阪の近畿弁護士会連合会におかれまして「簡易裁判所整理統合に関する意見書」というものをお出しになりました。簡易裁判所が少し多いんではないか、廃止統合によって住民の不便を感ぜしめることもない。あるいは簡易裁判所の整理統合の結果著しく国の負担軽減となる。簡易裁判所の統合によって裁判官の執務に便ならしめることになる、そういうふうな理由で簡易裁判所の整理統合を図るべきではないだろうか。特に、大阪にその当時ございました未開庁につきましては、大阪にその当時開庁しておりました庁も含めまして大阪簡裁と統合してはどうだろうか、そういうふうな御意見が出てまいったわけでございます。 三十年代の当法務委員会の御審議におきましても、ただいま申し上げました未開庁問題につきましてこれまで鋭く御指摘があったわけでございます。その論議の過程等を拝見いたしておりますと、そこでも整理統合をすべきかどうかということについていろんな御意見があったようでございます。整理統合をなすべしという御意見と、整理統合してはいけないという御意見等々があったわけでございます。そういうような状況変化が生じてまいったものでございますから、未開庁の設置につきましてはそういう経過を踏まえていろいろ検討を重ねてきていた、こういう状況でございます。 その後の、新たに事務移転をしてまいりました十三庁につきましては、確かに庁舎新営のための予算措置は講じておりません。その当時、それぞれの状況におきまして、簡易裁判所のみならず地裁の本庁、支部あるいは家裁、高裁を含めまして、裁判所全体の営繕計画の中でより緊急度合いの高いものが多々ございましたものでございますから、比較的事件数の少ない簡易裁判所の新営まで早急に実現することは困難な状況にあったということを御理解賜りたいと思います。
○猪熊重二君 結局、最高裁、高裁、地裁、大きな立派な裁判所の方の金の手だての方が大変で、こういう地域の簡易裁判所の方には手が回らなかったということのように伺います。 ちょっと意地の悪いような質問ですけれども、未開庁もしくは事務移転庁二十一庁の建設に関し て、予算上明確にこういうことで予算が必要なんだというふうなことをされたのかどうか。私が申し上げるまでもなく、裁判所からの予算要求があって、内閣としては国会に対して、裁判所から当初要求があった予算はこういう予算です、しかし内閣としてはこういうふうに削りました。しかし、裁判所の当初要求のとおりであればこれだけのお金が必要で、この財源としてはこういうものを考えられますと、これだけのことを財政法上も手だてしてあるわけなんです。 それだけのことを手だてしてあるのに、果たしてこの未開庁あるいは事務移転庁二十一庁について、実現のための予算措置を講じたのか講じないのか、結論だけを伺いたい。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 委員御指摘の二重予算権の行使を最高裁判所がしたことがあるかということかと存じますが、実は、これまでの記録を見てまいりますと、昭和二十七年度予算におきまして、営繕費につきまして内閣と最高裁判所と意見が食い違いました。このときにいわゆる二重予算権の行使に当たります予算決算及び会計令の十一条の二に基づきます予定経費増額要求明細書を最高裁判所長官が大蔵大臣に送付したということがあるわけでございます。ただ、これが営繕費でやりましたことははっきりいたしておりますが、今委員御指摘の未開庁の簡易裁判所のための営繕費であったかという点につきましては、何せ古いことでございますのではっきりはいたしません。 先ほど来、総務局長が説明しておりますとおり、むしろ適地がなかったということの方が重点でございましたようでございますから、当時適地が見つかっていたとは思いませんので、恐らく未開庁の分は入っていなかったのではなかろうかというふうに想像はしておりますけれども、これが未開庁分であったかどうかというのは、残念ながら現在ではもうはっきりできないということでございます。
○猪熊重二君 ちょっと話を変えまして、簡易裁判所の地域との密着性ということに関連して、簡易裁判所における住民に対する法律相談についてお伺いします。 最高裁判所としては、簡易裁判所において簡易裁判所裁判官もしくは書記官等が、地域住民からのいろんな法律相談に応対することについてどのようにお考えでしょうか。
○最高裁判所長音代理者(上谷清君) 裁判所を利用したいという当事者から裁判所に対していわゆる手続等について相談があれば、できるだけ親切に相談に応じ対応するようにというのは基本的な考え方でございます。 ただ、委員も十分御承知と存じますが、裁判所に相談に来ます当事者というのは、実は、裁判所にどのような手続をすればいいかということを相談するよりも、果たして自分の言い分が通るであろうかどうか。つまり、こういうふうなことでもめごとがあるんだけれども、私の言い分が裁判所へ出たら勝てますか、結論としてはどうですかということに関心を持って来る方が多いわけでございます。そういうふうなことになりますと、裁判所の立場上、この事件についてはどういうふうな見通しになるというふうなことを答えるわけにはまいりませんので、その辺のところが実は窓口の相談を担当する職員にとっても一つの大きな悩みと言っていいかと思います。 それから、具体例を申しますと、そういうふうなことになりますと、例えば、弁護士をお願いしてするような形に持っていくより仕方がないでしょうと言いましても、そのときに当事者の方が、弁護士さんはどなたにお願いすればいいでしょうかと、そういうようなことを尋ねられることが非常に多い。これが実情でございます。そういうような場合にも、裁判所の職員として具体的な弁護士を挙げて推薦するというわけにはまいりませんので、結局は弁護士会へ御相談になって適当な方を紹介していただくというようなことになりましょうと、そういうふうな形でお答えするしかないわけでございます。 結局、当事者の方が知りたいのは、本当にこの事件で私の言い分があるのかどうか、勝てるのかどうか、あるいは弁護士さんはどういう方をお願いしたらいいのかというふうなことなんですが、そこが裁判所としては答えるわけにはまいりませんので、手続をどういうふうにすればいいか、申し立て書のひな形はどうなっておるかというふうな、いわゆる受け付け相談ということにならざるを得ないわけでございますが、できるだけそういう点については親切に相談に乗るように努力いたしております。大都市の非常に繁忙庁でございますと、必ずしも十分な手が回りかねるというところがあるのが実情でございますけれども、地方等の比較的ゆとりのある裁判所では、かなり親切に対応しておると思います。
○猪熊重二君 今、民事局長おっしゃったように、確かに私の権利はあるか、裁判したら勝つか負けるかというふうなことを聞きに行く人もいるけれども、それ以外に、こういう問題についてどうしたらいいだろうかというふうに困って相談に行く。ところが、簡易裁判所では、窓口の書記官なりあるいは事務官が、裁判所では一切法律相談は受けない。大体、まだ聞いてみなきゃ何しに来たんだかわかりもせぬうちに法律相談は一切受けない、法律相談は弁護士会なり区役所なり、そこへ行って聞きなさいと。 結局、今、民事局長おっしゃったような意味で、自分の法律上の問題の勝ち負けを聞きに行くような人もいるだろうけれども、そうでなくして、どうも家賃を払わぬたな子はどうしたらいいだろうかというふうな相談に行く人もいるわけです。それじゃ調停の申し立てをしなさいと。口頭の調停申し立てということがあるわけなんです。あるいは訴え提起にしても、口頭で申し立てをしたら書記官が調書をつくって訴え提起があったことにしてあげればいい。あるいは貸した金を十八万返さぬ、困るという人がいたら、じゃ、とりあえず支払い命令申し立てということで受け付けましょうと、もう少し親身に受け付けてやればもっと簡易裁判所の利用というか、国民の便宜ということにもなる。 私も二十年以上法律相談をやっていて、家裁に行くといろいろ親切に教えてくれるけれども、相談に乗ってくれるけれども、簡裁に行ったんじゃけんもほろろで、あっちへ行け、こっちへ行けと言うだけで全然だめだという事例を幾つも知っているわけなんです。ですから、民事局長がおっしゃったように、言ってみればそういう問題を相談に来られても困るというのもわかるけれども、相談に乗って何とか解決するために努力してあげましょうという姿勢がまことに見られないと私は思うんです。 この点については、そうだ、そうじゃないということを言い合っていても仕方がありませんが、今後簡裁における相談というものについてもいろいろ配慮していただきたいと思います。 次に、法案に直接関連しまして、今回の簡裁統廃合問題を審議していただいた法制審議会司法制度部会について若干お伺いします。 以下、単に法制審と言いますが、法制審は総数何名ぐらいで構成され、いわゆる官庁関係の人とそれ以外の人とどのような比率で構成されたでしょうか。
○政府委員(清水湛君) お答え申し上げます。 この問題は、法制審議会の司法制度部会で審議されたわけでございますけれども、司法制度部会は問題の性質にかんがみまして、裁判所、法務省、弁護士会等の法曹三者のほか法律学者、関係官庁の各代表、言論界、実業界からの有識者、さらにはいわゆる地方六団体といわれております地方公共団体の代表、これは全国知事会、全国市長会、全国町村会、全国都道府県議会議長会、全国市議会議会議長会及び全国町村議会議長会からの推薦を受けた方々から構成されているわけでございます。その数を申し上げますと、学者、言論界、実業界から合計六名、それから、先ほどの地方公共団体の代表者が合計六名、それから弁護士会から四名、裁判所関係が五名、法務省関係、こ れは検察庁関係がございますので合計で五名、それから関係官庁といたしまして内閣法制局、警察庁、大蔵省、これはそれぞれお一人、合計三名ということでございます。委員の合計は二十九名でございます。
○猪熊重二君 今の法制審の委員の中で、地方公共団体もしくは議会の代表ということでの方々の立場はわかるのですが、一般的な地方公共団体云云という立場でなくして、直接自分のところにある簡裁がなくなるんだという管轄区域内の市町村の代表というふうな方に委員に入っていただくということは全然考えられませんでしたか。
○政府委員(清水湛君) 簡裁の統廃合の問題は、地域住民の生活に非常に関係があるということから、地方の実情に明るい方にこの審議に御参加願うということがどうしても必要なことであったわけでございます。 そこで、先ほど申し上げましたように、いわゆる地方自治六団体に委員の推薦をお願いしたわけでございますが、法制審議会というのはもともと簡裁の統合の可否と申しますか、簡裁を統合するかしないかというようなことを個別に議論するというところではございませんで、全国的な立場から簡裁の適正な配置のあり方というような一般的な抽象的な基準を議論するということでございますので、そういうような観点から、地域の実情というものを踏まえて適切な御意見をいただける方というふうに考えたわけでございます。現実に、地方自治六団体の御推薦によりまして委員に御就任になった方々からは、この問題について地方行政のエキスパートとしてそれぞれ非常に貴重な御意見をいただいたものと私どもは理解いたしているところでございます。
○猪熊重二君 委員選任当時、簡裁統廃合について、一口に言って反対であるというふうな意見が世の中に出ていたのかどうなのか、もし出ていたとすれば、学者であるとか弁護士会であるとか地方公共団体とか、反対の意見を表明しているをのような団体あるいは人々に対して委員を委嘱するというふうなことはお考えになりませんでしたか。
○政府委員(清水湛君) この問題は非常に重要な問題でございますので、幅広い立場から、また公正公平な立場から自由に意見を述べていただく、こういうことが必要でございます。具体的な人選に当たりましては、そういう観点からこの問題を審議するのに最もふさわしい方に委員になっていただくということで就任をお願いしたところでございます。 その際、この問題についてまだ具体的に審議をしていないわけでございますので、賛成であるとか反対であるとかというようなことは必ずしも明確ではございませんけれども、私どもといたしましては、お願いした委員の方がこの問題につきましてどのような考えを持っておるかというようなことは一切がかわりなく委員の御就任をお願いいたしたということでございます。 もちろん、この問題につきましては、法制審議会で審議が始まる前に最高裁判所の方からいわゆる法曹三者の協議会にこの問題が提起されるというようなこともございましたので、世間的に簡裁の適正配置の問題というのは議論として取り上げられておりましたので、中にはこれに対して消極的な意見を述べておられる方というようなこともあったわけでございます。ただ、一庁たりとも統合するのは反対であるというような御意見ではございませんで、結局どのような基準で、どのような規模でやるかということについての見解の相違と申しますか、そこにいろんな幅があった、こういうふうに私どもは理解いたしておるところでございます。
○猪熊重二君 ちょっと嫌みに聞こえるかもしれませんが、私が申し上げたいのは、結局、当初から賛成の人を集めて審議して賛成と、これはもう最初から結論がわかっているわけなんです。要するに、真に民主的な審議というんだったら、少数者の反対の意見をお持ちの方にも入っていただいて、その上で双方よく協議し合って結論を導いていく、そこに重要な問題処理の方法があると思うんです。何か私から見ると、もともと賛成の方が集まってそれで賛成という結論を出したというふうに思えるものですから質問させていただいたわけです。 ところで、先ほど一井委員の方からも話がありましたが、今回の統廃合の基準として裁判所では民事訴訟事件、刑事訴訟事件及び調停事件の三種事件について法制審に資料を提出したらしいですが、右資料以外にも法制審に提出した資料がございましょうか。
○最高萩判所長官代理者(山口繁君) 法制審議会に提出いたしました資料といたしましては、御指摘の民訴、調停、刑訴の事件数の推移のほかに、独立簡裁別に年間事件数の推移、これは民訴、刑訴、調停の三種でございます。そのほかに各独立簡裁別に督促それから略式の件数も出しております。さらに、家裁出張所の年間事件数の推移ということで各出張所ごとに甲類審判、乙類審判、家事調停ということで資料を出しております。
○猪熊重二君 今お話しの資料のうち、督促事件についてお伺いしますが、私が最高裁からいただいた資料によれば、廃止予定の各種独立簡裁においては督促事件はいわゆる三種事件に対してそれこそ三倍、五倍、十倍というふうな件数が記載されております。督促事件は直接当事者が裁判所に出頭しなくてもよい側面もありますが、あるいは出頭する人もいるだろうということになると、三種事件だけで、例えば、廃止予定の大原簡裁の場合に、百件以下ですよと言ってみたところで、督促事件だけでも年平均三百一件ある。こういうことになってくると、督促事件の事件数というものを全然考慮に入れないとしたら、地域の住民にとっての裁判所の利用ということについて非常に不公平だと思いますが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 一応、簡易裁判所の利用度合いを示す事件数といたしまして民事訴訟、刑事訴訟、調停を取り上げましたのは、地域住民がそこに置かれている簡易裁判所をどのように利用されているか、これを見る指標としては、住民の方々が裁判所に出向かなければ事件が処理できない民事訴訟、刑事訴訟、調停というものを取り上げてしかるべきであるというふうに考えたからでございます。 支払い命令は、今おっしゃいましたように、出向かなくともいいわけでございます。中には出向く方もおられるかもしれません。しかしながら、出向かなくてもいい、債務者の審尋も要しない、こういう建前でございますので一応除外したわけでございます。ただ、猪熊委員御指摘のとおり、かなり件数は多うございます。そこで私ども、支払い命令の実態もちょっと調査したわけでございます。そういたしますと、督促事件のうち、管内住民の債権者の割合というものは七%ぐらいでございまして、あとの九三%は管外の方々が債権者として申し立てられておる。そういたしますと、先ほど申しましたように、裁判所に出向かなくてもいい種類の事件でございますから、七%ほど管内の地域住民がおられますけれども、全体的には民訴、刑訴、調停に対応して基本的な事件の中に特に加えなくてもいいのではないか、こういうふうに考えて除外したわけでございます。
○猪熊重二君 督促手続についてはそのように一応お伺いします。 略式手続についても資料をお出したそうですが、この略式についても、私が最高裁の方からいただいた資料によれば、事件数だけ申し上げれば、例えば大原——私はこの大原簡裁に特別のことがあるわけじゃなくて、表の上の方にあったから取り上げただけのことなんです。この大原簡裁の場合には、三種事件だったら年間九十一件から百件だと言うけれども、千三百三十八件も略式命令の事件があるわけなんです。結局、大原簡裁の管内の人間が年平均で千三百三十八人も裁判所から罰金を払えという命令をもらっているわけなんです。この略式についても、略式の人教について考慮しないことはやはり片手落ちじゃないかと思いますが、この点についてはいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 猪熊委員先刻御承知のとおり、裁判所といたしましては、略式命令の請求を受けまして書面審理をした上で略式命令を発行するだけでございまして、裁判所に略式命令の被告人が出頭を要するわけではございません。そういう観点から、略式命令につきましても基本的な事件数の中には加えなかったわけでございます。また略式命令につきましては、その大部分がいわゆる交通切符の事件でございまして、このような事件につきましては、警察、検察、それから裁判所が一堂に会しまして流れ作業的に半日で数十件を処理する、こういうふうな執務の形態になっておりまして、必要がございます場合には出張して処理することも可能である、こういうふうな観点から基本的な事件数の指標には入れませんで、個別に検討していくということでいいのではないかということで除外したわけでございます。
○猪熊重二君 なお、いわゆる廃止の基準の相関表を作成するための資料として、管内市町村の人口についても考慮されたようなことを記載してありますけれども、やはり最高裁からいただいた資料によれば、廃止予定簡裁のうち昭和二十二年の人口と比較して昭和六十一年の人口がふえたところ、例えば、西尾簡裁三万五千人、近江八幡簡裁二万三千人、神奈川の三崎簡裁二万人、相生簡裁一万四千人、そのほか今市、因島、須賀川各一万人ぐらい人口はふえているんです。例えば、西尾簡裁の場合三万五千人、一つの市に近いくらいの人口がふえているんですが、それでも簡裁をなくすということになってくると、人口の増減というふうなことをどの程度考慮されたのか、それについてもお伺いしたい。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 法制審の答申にもございますように、一応相関表における位置というものを基本としながら、地域の諸事情を考慮してやれと、こういう御指摘でございました。その地域の諸事情の中に、管内人口、その動態というのがございます。私ども基準を考えます際に、何を基準にすべきであるかということも種種いろんな面から検討したわけでございます。人口数というものを一つの基準として考えるのも一つの考え方ではございますが、いろいろ検討しておりますと、人口は事件数の増減を規定するかなり重要なモメントであるとは思われます。例えば、事件数百件を超える庁につきまして見てみますと、やはり人口増の傾向がございますと事件増の傾向もある。逆に、人口が減りますと事件が減る、こういう傾向がございます。しかしながら、これには例外もございまして、人口はふえているけれども事件数はふえない、こういうところもございましたものですから、人口数を基本的な指標とは考えなかったわけでございます。 今回の対象庁を確定する作業の過程におきましても、百件を超える庁につきましてはぼ人口が増加する傾向があり、かつ、事件数が増加する傾向がございますので、今回統合を見合わせたわけでございます。ところが、今御指摘の庁につきましては、人口は増加しておりますけれども、事件数そのものは長期的に見ましても、また、最近の動向を見ましても特に増加していないわけでございます。これらの庁につきましては、その人口増が事件増に結びつかない理由は何であろうかというふうに考えてみたわけでございますが、いろいろなものがあると思われます。 例えば、三崎あるいは須賀川、前原等について申しますと、近接の大都市部のベッドタウン的な性格がある。こういうところは産業活動、経済活動というものはそんなに活発じゃございませんので、事件増に結びつかないのではないかというふうに考えられるわけであります。そのほかにもいろいろ地域の社会的、経済的な要因によって必ずしも人口増が事件増に結びつかない、こういうのではないかと思っております。 事件数の動向、あるいは人口の増加というものを長期的にも検討しました上で、ただいま御指摘のような庁につきましては今後もある程度の人口増は予想されると思いますけれども、必ずしも事件増には結びつかないというふうに考えまして、今回統合対象にしたわけでございます。
○猪熊重二君 簡易裁判所の廃止の問題は、それ自体は今お伺いしたところで一応終わりまして、結局簡易裁判所が廃止されるということになると、その簡易裁判所に対応して設置されている区検察庁が廃止されることになるわけです。審議する法律の名前は裁判所の管轄あるいは統廃合ということですけれども、国民の立場から見れば、簡易裁判所がなくなることは、それにくっついてつくられている検察庁もなくなること。それから後でまた申し上げたいと思いますけれども、そこの幾つかに設置されている家庭裁判所の出張所もなくなることに通ずるわけなんです。ですから、簡易裁判所だけがなくなってしまうわけじゃない、区検察庁もなくなってしまう。 そこで法務省にお伺いしたい。この廃止予定の百一簡易裁判所に対応している区検察庁の昭和五十五年から五十九年度ぐらいの検察庁での捜査事件数とか、あるいは処理内容及び事件数、これを簡単にお答えいただきたい。
○政府委員(岡村泰孝君) これは委員の御要求によりまして資料として提出いたしたわけでございますが、個々的に申し上げますと全体的に申し上げなければいけませんので非常に時間がかかるのでございますが、いかがいたしますか。代表的な、例えば大原だけを例にとりまして……
○猪熊重二君 二つ三つ挙げてみてください。
○政府委員(岡村泰孝君) それでは大原区検でございますが、昭和五十五年から五十九年の間の平均の受理人員でございます。受理人員が千九百十二名、そのうち公判請求が二十八、略式請求が一千三百三十四。不起訴でございますが起訴猶予が九十八、その他の不起訴が十二という数字になっております。 なお、略式命令の点でございますが、裁判所の資料では略式命令発付時をとらえておりますが、検察庁の方では請求時をとらえておりますので、若干の数字の違いがあろうかと思います。
○猪熊重二君 質問が莫然としていて申しわけありません。お答えに困ったかもしれませんけれども、今おっしゃられた大原区検なら大原区検についてお伺いずれは、年間平均千九百十二人の人間がこの区検察庁に呼び出されて取り調べを受けているわけなんです。取り調べを受けている人は大原区検の管内の人間だけに限るわけじゃありませんけれども、原則的にはこの管内の人間がここへ呼び出されて取り調べを受けているわけです。一度で取り調べが済めば千九百十二人が一回区検に行くだけで済みますけれども、取り調べの成り行きによってはあしたまた来い、あさってまた来いということになれば二回三回行く人もいる。難しい事件になれば十回ぐらい呼び出される人もいるかもしれぬ。 そうすると、大原区検に行く人が年間千九百人いる。これが仮に二回行けば四千人になる。これだけの人間がここの区検を利用——利用というわけじゃございませんけれども、利用させられているわけですが、ともかくこの区検に出頭しているわけです。これがなくなって今度は隣まで引っ張り出されるというか、出向かなきゃならぬということの不便というものは大きなものだろうと思う。簡裁がなくなる、区検は全然話に出ていないとしても、国民にとってはえらい大変な問題です。 法務大臣は、こういうふうに区検がなくなって、国民が今までの区検と違って隣の町だとかそのもう一つ先の市の区検に行かにゃならぬということについての住民の便、不便についてどうお考えでしょうか。そして、法務省としては裁判所の統廃合についてどういうふうな御見解だったんでしょうか、お伺いしたいと思います。
○政府委員(岡村泰孝君) まず、大原の関係でもう少し補足して御説明申し上げますと、公判請求いたしておりますのが二十八名でございまして、これは身柄事件の場合もあろうかと思いますが、関係人あるいは在宅の場合は被疑者、ある程度の者を呼び出して取り調べということになろうかと 思います。残りの大部分を占めますのが略式請求の一千三百三十四名でございますが、これは検察の統計によりますと、全国平均いたしまして大体八四%程度が道交法違反でございます。恐らくこの千三百三十四件の相当部分、一千件を超える程度のものは道交法違反事件でございます。これは先ほど最高裁からも御説明のありましたように、交通切符で三者即日処理という方式で行われているものが多いであろうと思われるわけであります。 こういったものにつきましては、被疑者、違反者を一回呼び出して、しかも極めて短時間の間に裁判まで、あるいは場合によっては罰金の納付まで終わるというような状況にあるわけでございます。その他起訴猶予とか、その他の不起訴の人員も合わせて百名少々ということであるわけでございます。 ところで、こういうふうに簡易裁判所が廃止になりますと、対応する区検察庁も当然に廃止ということになるわけでございますが、法制審議会等におきましては最高裁判所の方からも略式命令に関します資料は御提出になりましたし、またそのうち八十数%が三者即日処理で行われているいわゆる道交法違反事件であること。この三者即日処理方式につきましては、必要に応じまして廃止後も出張処理ということも考えられる。こういうような事情が説明されたわけでございます。 そういった事情の説明を踏まえまして、簡易裁判所、法務省では区検察庁でございますが、設置後の人口の移動と申しますか都市部への大幅な集中、あるいは事件数の増減、交通機関の発達やそれに伴います住民の生活圏の拡大、こういったいろんな事情を考慮いたしますれば、簡易裁判所の取扱件数と関係人が簡易裁判所に出頭するための所要時間、こういったものを基礎といたしまして、ほかの個別事情も加味しながら小規模独立簡裁の集約を実施することには基本的に賛成であるという意見を申し述べた次第であります。
○国務大臣(遠藤要君) 今回の廃止統合の問題については、さきに趣旨説明でも申し上げ、最高裁のそれぞれからも既にお話がございましたのでございますけれども、改めて私から申し上げると、先生御承知のとおり簡裁が立案されてから四十年を経過しております。その中において、社会の事情も大きく変わっておる。そういうような点で社会の現状にいわば合わせた、こう申し上げたらいいかと。 一つの例を申し上げますると、交通網やなんかについても、二十二年というとちょうど自分が県会最初の年でございますが、当時、簡裁、区検のあった地域やなんかはほとんど砂利道であった。それがほとんど整備されて交通の便もすばらしくよくなっている。そういうふうな点を考えますると、簡裁なり区検の機能をもっと充実強化せしむべきである。 先生御指摘のとおり、先ほど家裁の方が親切だとか、いろいろ相談に乗ってくれるというようなお話もございましたけれども、やはり簡裁、区検ともに充実強化をして利便を与えるということが効率的ではないか。例えば、大原が千九百人だというと、これが二回通えば約四千人ということになるわけですが、さような点で充実強化していけば人的、物的にも充実してまいります。そういうような点で、三度行くのが二度で済み、二度行くのが一度で済むということになり、時間的にも、距離の問題についても、先生御承知のとおり、そう半日も二時間もかかるという地域じゃございません。そういうような点で私どもとして住民のもろもろの問題等をにらみ合わせて適切ではないかというような点で賛同いたした。賛同いたしたから私が提案理由の趣旨説明を申し上げているということで御理解をちょうだいいたしたいと思います。
○猪熊重二君 区検の点はそのくらいにしまして、あと家裁の出張所の廃止についてお伺いします。 私が最高裁からいただいた資料によれば、家裁の出張所での審判事件の五十五年から五十九年までの年間の平均数は、審判事件が九十二件、調停事件が二十件というふうになっております。このほかに、家裁では先ほど申し上げましたように甚だ懇切丁寧に法律相談をやっております。この法律相談の表は先ほどいただいたので、法律相談というか家事相談の表は先ほどいただいたのでよくわかりませんけれども、それにしても年間平均各廃止庁とも百数十件近くあるんじゃないかと思います。これだけの方々が家裁の出張所を利用していたわけです。今度簡裁がなくなるとこれだけの人もまた違うところの家裁に行かなきゃならぬということになる。この家裁の利用についての不便ということについても最高裁としてはどの程度お考えになったんでしょうか、簡単にお答えください。
○最高裁判所長官代理者(早川義郎君) 今回の法案で、統廃合の予定されております百一庁の簡裁で家庭裁判所出張所の併置されておりますところは三十七庁でございます。三十七庁の平均の事件数というものは先ほど先生おっしゃられましたように審判事件が九十二件、それから調停事件が約二十件、合わせて百十二件ということになっております。ところが、この九十二件の審判事件のうち九十件は甲類審判事項でございます。御承知のように甲類審判事件の場合には相続放棄の申述の受理であるとかあるいは保護義務者選任、それから子の氏変更であるとか名の変更、こういったものは申立人が提出いたします添付書類であるとか、あるいは裁判所の方から各当事者に照会書を発送する、そうした書面審理でほとんど片づく事件でございます。そういう意味では出頭ということを必ずしも要さないわけでございますので、今回の統廃合によりまして多少地理的な不便が生ずるにしましても、こういった事件についてはそう影響がない、そういった点がございます。 それから、調停事件につきましては、家事調停の特殊性と申しましょうか、家庭裁判所に出かけましていろいろと調停をやっているということを余り近隣に知られたくないというふうな心理もございます。それから、調停委員にしても地元の人ですと知っていて間が悪いとか、かえって少し遠隔地で知らぬ人にやってもらった方がいい、そういった場合もございます。 そういった種々の事情もございますが、何分にも利用者に不便を与える、そういう可能性は否定できません。そういう意味では今後とも統廃合された出張所につきましては出張調停、出張審判、そういったことも地元の要望等を聞きつつ検討していきたい、かように考えております。
○猪熊重二君 いろいろ御努力されて、いろいろな基準を設けて統廃合について合理的な結論を導き出そうというふうに努力されたこと自体はわかるんですけれども、ただどうしても裁判所のお考えとして、事件数が少ないからやめるという考え方が非常に強いと思います。しかし、私は裁判所というのは、事件数が少なくなったからなくしちゃっていい、あるいは事件がないからやめちゃっていいという役所じゃないと思うんです。憲法上国民に裁判を受ける権利があるとすれば、その国民の裁判を受ける権利を実現する場というものを設置するのは国家の義務なんです。それを、使う人が少ないから、事件数が少ないからということでどんどん小さくしていく。それも大蔵省から言われてやむを得ず小さくするんならまた別だけれども、裁判所自身が小さくしようと考えていることはどういうことなんだろうか。私としては非常に納得しがたい面があるんです。 要するに、地方切り捨て、言葉はいいか悪いか知りませんが、過疎地切り捨て僻地切り捨てということになったら、国民の裁判を受ける権利は実質が伴わなくなっていく。裁判所は、事件が一つもなくても、裁判所があるということだけで国民の納得、安心というものがあるはずだと思うんです。警察と比較するのはまずいですけれども、この町には泥棒が一人もいないから警察をやめちまおうとか、この村には盗人が一人もいない、事故も何もないから警察も駐在所もやめちまおうというわけにはいかぬ。それは国家の必要があるから なんです。国民の必要がある裁判所が、人数が少ないから減らしちまおう、なくしちまおうという発想は、非常に現在の憲法の精神と矛盾するように私は思うんです。 いずれにせよ、そうかといって裁判制度全体をいかに効率的に有効に、都市住民の便宜のためにもう少しこういうふうにいじらなきゃならぬ、ああいうふうにいじらなきゃならぬということで今回の改正案というものが出てきた。その理由もわかります。今後とも、やめる方をやめて、残った方をいいかけんにするんじゃなくて、残った方を精いっぱい国民のために奉仕するような方向でやっていただきたい。そのように要望して、なお、この法案ができた後の問題について二、三お伺いしたいんですけれども、時間が中途半端になりますので、これは次回に。 要するに、廃止した後の土地建物の問題だとか、廃止してしまったところに対するその後の手だてをどうするのかとか、その点についてはまだ次回の委員会でお伺いしたいと思います。 以上、どうもありがとう。ございました。
○橋本敦君 私も、まず法案に即して質問をしたいと思います。 簡易裁判所の理念が改めて見直され、かつ、論ぜられなければならぬなということを痛感するわけですが、四十年前に新しい憲法のもとで簡易裁判所が発足いたしました。その理念が本当に生かされてきたかどうかということが一つは問題であります。もう一つは、生かされるように司法行政を本当にやってきたのかどうかということも問題であると思います。 まず第一の、理念について言えば、最高裁判所も簡易裁判所を発足せしめたとぎの持っていた理念は理念として今も変わりなく同じような理念であるべきだとお考えだと思うんですが、まずその点はいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 簡易裁判所発足当時の理念と申しますか、性格と申しますか、期待されていた機能と申しますか、そういうようなものは発足当初も今日も変わっていないというふうに考えております。
○橋本敦君 例えば、第九十二回帝国議会、ここで簡易裁判所問題が審議されたわけでありますが、その衆議院本会議における当時の木村篤太郎司法大臣の政府提案理由説明、その一節にこうあります。 簡易裁判所は、軽微な民事、刑事の事件を扱い、全国数百箇所にこれを設け、簡易な手続によって、争議の実情に即した裁判をするよう工失いたしておるのでありまして、司法の民衆化に貢献するところ少なからざるものがあろうと期待いたしておるのであります。つまり、司法の民衆化、地域住民に密着した国民の裁判を受ける権利あるいは紛争を解決する、そういう利益に奉仕する、このことははっきりうたわれているわけですね。 さらにまた、衆議院の法務委員会における同木村司法大臣の説明を重ねて読んでみますと、 簡易裁判所、これは直接民衆に接触する第一線に立っていく裁判所であります。本法の実施後には、五、六百の簡易裁判所ができるのですが、裁判の民主化がほんとうに実現できるかできないかということは、この運用いかんによっておると思うのであります。これらの判事になる人によろしきを得まして、そしてこの制度の完璧を期したいと考えておる次第であります。こうおっしゃっておられる。つまり、この簡易裁判所が本当に理念どおり機能し、そしてまた、そのように進められていくということが裁判の民主化が本当に実現できるかどうかにかかっている大事な課題だということを当時大臣も言明しているわけであります。 最高裁は、こうした簡裁の理念そのものは今も変わっていないんだという御認識でございますが、法務大臣も同じような御見解がどうか、まず伺わしていただきたいのであります。
○国務大臣(遠藤要君) 全くそのとおりでございます。
○橋本敦君 そこで、これを本当に生かさなくちゃならぬということでありますが、地域住民に密着してその利益に奉仕する、こうなりますと、全国で数がたくさんあって、管轄区域も適正な決め方は必要だけれども、過大にならないように定めて、数が多ければ多いほど地域住民が利用しやすいということはもう言うまでもない。その当時、全国で五百七十五庁が開設されるという、裁判所に比べて大変な数を開設したというそのことは、地域に密着した、実情に合った地域住民への奉仕という観点が国としても貫かれたはずだということがわかるわけですね。だから、こういう簡裁の適正配置ということは、その簡裁における事務の効率化や、あるいは職員の整理統合や、あるいは一面で言えば経費だ。こういったことを重点に考えるのではなくて、むしろその簡裁を充実して維持していく。そして、ますます利用しやすいように簡裁の職員の配置もふやし、そしてまた機能するようにしていくということが基本でなくちゃならないんだというふうに一つは思うわけです。 そこで、結論的に言えば、今全国で独立簡裁というのが幾らあって、今度の法案によって幾らに減らされるか、まず結論だけ伺いたいと思うのですが、どうですか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 現在、全国に独立簡裁が二百六十二ございます。今回の法案が可決、成立されました暁には百三十七が減るわけでございます。新設が二ございます。廃止が百三十九でございまして、差し引きいたしますと百三十七が減る、こういうことでございます。
○橋本敦君 つまり、四つや五つや十が減るんじゃなくて、独立簡裁のうち百三十幾つがぼっと減っちまうわけですから、これはもう大変な廃止なんです。適正配置よりも廃止なんですよ。だから、それが本当に、先ほど大臣も局長もお認めになった簡裁の理念を実際に生かすことになるのかどうか、ここが問われている法案だと思うんですね。結論的に見て、簡裁は十分に育てられてこなかった上に、今度思い切ってそれだけ激減するわけですから、これは簡裁の理念そのものが危うくなる危険を持つという重大な事態だと、私はこう言わざるを得ないと思うわけであります。 そこで、最高裁にお伺いしますけれども、法制審にかけて、その答申を得てとこういうことですが、基本的には最高裁の考え方が貫かれていくわけで、廃止の基準として、刑訴、民訴、調停も含めて年間百二十件以下のところ、そして統合庁への距離が、移動時間が大体一時間で行けるところ、これを基本的なガイドラインにして減らしていく、こういうことが基本になっていますね。これは間違いないでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 御質問にお答えいたします前に、先ほど独立簡裁二百六十二と申しましたが、事務移転庁二十一がなお法律上存在してございますので、独立簡裁は総計二百八十三でございます。 ただいまの御質問でございますが、法制審議会で御審議いただきます前に、三者協議会で御議論をいただいたわけでございます。全国的な問題でございますので、やはり何らかの基準を設けて考えていかなければならないであろう。そのときに基準として考えるべきものは、簡易裁判所の利用度を示すものと、統合された場合に住民に御不便を与えるわけでございますから、それを示すものとして隣接の統合庁へ参ります所要時間、アクセスのための時間というものを尺度にして考えていったらいいんではないだろうか。そういうふうにいたしまして、この法律案関係資料にもございますように、相関表というものをつくったわけでございます。そこへ全国の独立簡易裁判所をばらまいてみたわけでございます。 その中で、一体どういうふうな基準で考えればいいかということで種々検討してみたわけです。そういたしますと、例えば、人口が減少傾向にあり、事件数も減少傾向にある庁、あるいは裁判官が非常駐でありまして住民の方々に御不便をおかけしている庁、あるいは二人庁、三人庁という職員の少ない庁、こういうものが固まっております ところが大体百二十件以下のところへ固まるような形になってくる。百二十件と申しますと、簡易裁判所の裁判官一人当たりの負担量からいたしますと三分の一ぐらいでございます。そういたしますと、百二十件以下の庁につきましては隣接庁まで大体一時間ぐらいの範囲を統合検討の対象にする。事件数が半減いたしまして六十件になりますと利用度合いがさらに低くなっているわけでございますから、多少とも足を伸ばしていただくということでも御納得いただけるのではないかということで六十件につきましては二時間。こういうような線を引いてみたわけでございます。 これにつきましては、すべてこの枠内にあるものを統合の対象とするわけじゃございませんで、あわせて弁護士会の御意見等も加味しまして、地域の諸事情を十分考慮して、この中から統合対象庁を確定していこう、こういうふうな考え方で私どもの基準案もお示しいたしましたし、三者協議会では日弁連の方も意見はないということで、特に御異論は述べられなかったわけです。法制審議会でも同じように御説明申し上げまして、御賛同いただいたわけでございます。
○橋本敦君 最高裁の説明はそういうことだということは資料を見てもよくわかっておったんですが、私が局長に聞きたいのは、ある国民は裁判所へのアクセス一時間辛抱しなさい、同じように裁判所へ調停の申し立てをするとして。ある国民は同じような調停申し立てをするんだけれども、二時間の不便は辛抱しなさい。国民にとっては、そこのところの差別は合理的理由がありませんよと、私はこう言っているんですよ。この私の考えは間違っていますか。なぜ私は二時間辛抱させられるのか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) それは、やはりいろいろなお考え方があろうかと思います。橋本委員御指摘のように、そのような考え方の方が間違っているんだというふうにあるいはおっしゃられるかもしれません。しかし、こういう問題につきましては、裁判所といたしましては、全国に簡易裁判所をそれぞれ設置して運営していかなければならないわけでございますから、利用度が非常に低い地域、そこでは事件数も非常に少ないわけでございますから、そういうところでは多少の御不便をしのんでいただくというのも全国民的なコンセンサスを得るためには必要なことではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。
○橋本敦君 裁判所を減らさなければ受忍しなくていいわけですからね。だから、裁判所が当初の理念どおり本当に全国民に密着して奉仕する建前を貫くなら、多少事件数が少なくても存置しておくということによって国民の不公平は生ぜずに済むわけですね。 それからもう一つですが、大体百十件、刑訴、民訴、調停でおとりになったが、その他督促事件や家裁出張所が併設されておればもっとふえるわけですが、一応それを除外した問題はもう議論されていますから私もあえてここで繰り返しませんが、民訴、刑訴、調停の三事件をとるとして、統廃合の一応の判断基準を百二十までは統廃合の対象にするということですが、それはやめて、例えば石あるいは八十、そういう線にすることだって線の引き方は考えられる。百二十でなきゃならぬのは一体どこから来るんでしょうか。百二十五とか百三十は残される、しかし、百二十以下は適正配置という名の統廃合の対象になる。ここのところの決め方に何か合理的理由があるんだろうか、これはどうですか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 先ほども申しましたように、統合を検討する対象の枠といたしましては、百二十件のところに実は問題がある庁が存在しておりましたからそこに線を引いたわけでございます。しかし、管内人口であるとかその動態、事件数の動向、家裁出張の件数、あるいは管内の全般の交通事情という地域の諸事情を十分勘案した上で統合庁を決めなさいと、こういう答申の御趣旨でございました。 その後、私どもそれぞれ地元の自治体なりあるいは地元の弁護士会、司法書士会等関係機関と十分意見の交換をいたしました。現在統合庁とされておりますのは実は百件以下のところでございます。それから、時間数にいたしましても事件数が二十件以下のところは二時間近くまでかかるところまで入っております。例えば、二十一件以上のところでは七十六分から百二十分のところの枠内にある庁は統合庁とはされていないわけで、除外したわけでございます。そういうふうに一応の大枠は決めておりますけれども、その中で、それぞれ人口の動態であるとか、事件数の動向であるとか、地域の全般の交通事情であるとか、いろんな点を総合勘案いたしまして、この枠の中には百四十九ございましたけれども、百一に絞り込んだわけでございます。
○橋本敦君 だから、その絞り方はもっともっと絞り込んで、百以下を残したとおっしゃるが、適正配置、統合廃止の対象になるのを年間平均八十以下という絞り方だってできるというんですよ。それをここに絞ったというのは、おっしゃるように百一に絞ったというけれども、考え方として簡裁は独立簡裁を中心に大幅に適正配置という名で減らしますよという、減らすという基本方針、つまり、初めに簡裁の大幅な廃止ありきという、そこのところからきている、そういう問題がこの問題の根底にあるのではないかという指摘を私はしたい、こういう意味なんですよ。何とかして残そうというんじゃなくて、初めに大幅に減らしますよと、その減らすガイドラインをつくって、その中でおっしゃるように差し引き残っていくものも出てきたということなんであって、私が言うのは、そういうふうに大幅に減らしますよという、そういう方針が出てきたのは、これはかつての臨同意見書あるいは政治全体の中でのいわゆる臨調、行革路線、これとも見合ったそういう意味の合理化ということと即応しているのではないかと思いますが、どうお考えですか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 実は、この簡易裁判所の再配置の問題は近年起こった問題ではございませんで、これはもう橋本委員先刻御承知のことだろうと思いますが、発足後ほとなくして簡易裁判所が多過ぎるんじゃないか、もう一度見直して配置を考えるべきではないかという議論が既に二十年代に起こったわけでございます。
○橋本敦君 逆の意見もあったでしょう。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 逆の意見ももちろん承知いたしております。二十九年にはたしか大阪の近畿弁護士会連合会におかれまして簡易裁判所、区検の整理統合の意見を出されております。三十年代に入りましても弁護士会の各ブロック弁護士会連合会におかれまして、簡易裁判所の整理統合をなすべしと、日弁連におかれましても三十六年九月に簡裁、区検の整理統合に関する小委員会を設置されまして数年検討を続けられまして、三十九年三月には百三十三の簡易裁判所について整理統合をなすべしということで法務大臣、最高裁判所長官に上申書を出されたわけでございます。その当時、御指摘の臨時司法制度調査会がございまして、三十九年七月に発表されました意見書では、簡易裁判所の整理統合を検討すること、こういうふうな御指摘もあったわけでございます。 その三十年代から四十年代にかけまして、政府におかれましても、最高裁判所におきましても、簡易裁判所の再配置問題については内部的に検討作業を進めてきたわけでございます。ところが、四十年代になりましていろんな動きがございまして、なかなか法案提出までに至らないできていた。日弁連におかれましても、昭和五十八年ごろからの段階で三者協議会にそろそろ議論していただきたいと思っているんだけれどもというふうに申し上げまして、ようやく五十九年一月から三者協議会で議論していただくようになった、こういう経過がございます。 したがいまして、私どもといたしましては三十年代から抱えておりました問題でございまして、必ずしも臨調、行革という形で考えてきた問題ではないということをひとつ御理解賜りたいと思い ます。
○橋本敦君 長い経過はありますが、むしろ簡裁の充実強化という議論が議論としてありながら、そこのところが十分手をつけられないできたという片手落ちがあるということも、今のような議論をなさるならやっぱり指摘せざるを得ない。 先ほども、猪熊委員からも指摘されたが、未開設庁が八庁もあり、それから十分の予算手当て、土地取得、建物取得ということで予算化しないまま事務移転庁等で十三ないし十四庁が廃止されていくということでずっと進んでくる。そして裁判官不在庁も現在がなりありますが、それへの手当ても十分なされていないということで、機能的に十分機能しないまま来た側面があって、そこのところの手当でなしに、今局長が言われたような議論だけが先行するというのはこれは問題だということを指摘したいわけであります。 一般的な議論はさらにまたいろいろありますけれども、具体的に問題を抱えている裁判所もたくさんあるわけでありまして、幾つかの裁判所の例を指摘したいんですが、例えば、私はついこの間岡山の備前市の簡裁の調査に行ってまいりました。そこで一定の資料もいただいてまいりました。それによりますと、術前市の簡裁では五十五年から五十九年まで五カ年平均で事件数は合計七十六という平均値が出ております。しかし、昭和六十年、昭和六十一年、これの実数をとってみますと、昭和六十年が九十一、昭和六十一年が八十一ですから、平均五カ年の少ない部分をとって年間七十六件だという指摘は現在の実情に合うかどうか、これは問題がある、まずこう思いますが、どう認識されておられますか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 事件数につきましては、五年平均は御指摘のとおりでございます。その後五十九年、六十年と事物管轄改正の影響もございまして、一時的に平均値を上回る数を示しております。しかし、六十一年には八十一件というふうに減っておりますし、今年上半期の動向を見ましても、八十件に達するか達しないかというような状況があるわけでございます。人口動態を反映しておりまして、長期的に時系列的に事件数を見てまいりますと減少の傾向にございますので、今後も、大幅に事件の増加を予測することはできないであろうというふうに考えております。
○橋本敦君 そこで局長、これに関連してですが、簡裁の事物管轄が訴額三十万から九十万にふえた、当然事件数がふえますね。今度統廃合、適正配置で廃止をして、これから将来、簡裁の事物管轄を今の九十万から例えば百二十万、百三十万に上げるようなことをしますと、簡裁をなくしておいて事物管轄だけ上げて、少なくなった裁判所で事件を集約する、これはおかしいわけですね。だから、このような統廃合をなさるとすれば、今後事物管轄の拡張、これをやらないということを本当に言明されるかどうか聞いておきたいんです。どうですか。これは大変難しいけれども、国民から見れば聞きたいところです。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 事物管轄につきましては、簡易裁判所が第一審訴訟事件を地方裁判所と訴額によりまして分担する、こういう性格を持っているわけでございます。これまで数次にわたりまして事物管轄の改定をお願いしてきてまいったわけでございますが、これは、いずれも経済事情の変動に伴いましてお願いしてきたわけでございます。現在は、幸い経済事情は安定しておりまして、消費者物価指数もほとんど変化がないわけでございます。この状況が当面続きます限り、事物管轄改定の必要はないだろうと思いますが、将来また、非常に消費者物価指数等が上がってまいりまして、経済事情が変動いたしますればそれに相応して事物管轄の改定はお願いしなければならない、かように考えております。
○橋本敦君 そう言うだろうと思うんですよ。だから、経済事筒がどう変動しようとも、地域に密着して利用できる裁判所を置いておいてやらなきゃいかぬのですね。将来、経済事情が変動して、事物管轄が変わったから事件はふえているとおっしゃったんですが、もっとふえればもっとふえるんですから、そういうことも考えますとみだりに廃止をしちゃならぬということが一つあるんです。 それから、岡山の備前市で、具体的に調べますと、家庭裁判所の出張所がございますね。したがって、この家庭裁判所の出張所の事件を見ますと、五十五年−五十九年、五カ年平均で百二十三になっています。そして六十年が百五十九とふえておりますね。こういうことで家庭裁判所の出張事件というのはかなりの数ですから、これを合わせますと二百ぐらいになるんですよ、年間二百ぐらいに。ですから、家庭裁判所の出張所があるところは出張所の事件も、これは住民の利用事件ですから利用度数が高いわけですから、これは入れて考慮する必要があると私は思うんですが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 家庭裁判所の出張所の件数につきましては……
○橋本敦君 結論だけでいいです、これを入れて考慮する必要がある。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 実は、独立簡裁のすべてに家庭裁判所が併設されておりますと、カウントしてしかるべきであろうという御指摘はまことにごもっともでございます。しかし、独立簡裁二百六十二現在動いております中で出張所が設けられておりますのは、全部じゃございませんで九十六庁でございます。そういうものでございますから、それを併設されているところだけカウントいたしますと、全国的に見ますといささかアンバラな面が出てまいります。したがいまして、家庭裁判所の出張件数というものは、いわゆる地域の諸事情の中で考慮してしかるべきではないかということで、答申にもそのようにうたわれているわけでございます。
○橋本敦君 そこで、具体的に備前市の諸事情として検討する。おっしゃったように、答申の中でも、家庭裁判所出張所の事件数は具体的な状況の一つとして検討するように言っていますから、備前市でこれを検討するということになれば、これはかなりの数だということが明らかになる。 そこで、今度は備前の簡裁の場合、統合庁への移動時間を考えてみましょう。これは一時間というガイドラインのところですね。そして、裁判所からいただきました備前市の自動車による所要時間を見ますと、備前市から統合される岡山簡裁、岡山市内の簡裁まで四十四分と書いてあるんです。私、岡山駅でおりまして、車に乗りまして備前市の簡裁まで行くのに六十分かかっているんですよ。地裁の事務局長も私に事情説明に来てくださいましたので、事務局長、四十四分で来られましたかと言うと、頭をひねられまして、いや、やっぱり五十分ちょっとかかりましたと、こう言うんですよ。そうなんです。これ四十四分で走ったら、それこそ簡裁へ行って罰金を払わなければいかぬということになりかねぬのです。 そういうわけで、今度は和気郡の日生という、これは岡山の東の端ですが、ここから岡山簡裁まで自動車で五十七分と書いていますが、地場の人に聞いてみますと、いや、それはとてもじゃありません、九十分ぐらいかかりますよと。もう三石に近い方ですからね。今度は吉永町、これは六十二分と書いていますが、これも八十分。もう三石なんかですと九十分かかる。こういうわけですから、この備前市の場合は、あなたたちがおっしゃる基準からいっても廃止することはできないはずの状況だと言わなくちゃならぬと思うんですね。しかも、関係住民の皆さんは、備前市長を初めとして皆さん方は、本当にこの簡裁を残してほしいということで要望を出されておりまして、これは六十一年四月ですが、備前市長、市議会議長、日生町長、日生町議会議長、吉永町長、議長、佐伯町もそう、和気町もそう、こうなっております。これは最高裁あてに送られておりますから御存じと思うんですね。 この実情を聞いてみますと、この東備地域というのは、東備地方振興局が置かれ、備前警察、東備環境保健所、それから職業安定所その他独立し た官庁を集めた地域になっておりまして、備前市というのは備前焼の中心でもありますが、地場産業だけではなくて東備地区の中心都市として機能しているわけですね。ですから、ここでは振興計画を町全体が地域でつくって努力しているところです。しかも、筒内裁判所の存置というのは、老人が多くてじん肺患者が多いため、遠くへこういうお年寄りが行くというのは大変だからぜひともここに置いておいてほしい、そういう切実な要望が出されていることが、備前市の助役にもお会いしましたし、関係者から聞いて非常によくわかりました。これは、備前の簡裁がなくなり、美作の簡裁がなくなり津山に統合される、こうなりますと、岡山の東の部分はまさに司法空白地帯になりかねぬ、こういうことになるんですね。 だから、この法制審の答申の中でも、地域の開発計画その他簡裁の存置の必要性に影響すると思われる事項はよく考慮せよということを言っておりますし、今言った自動車によるアクセスの問題での時間、この問題にも慎重を期せと言っておりますし、家庭裁判所の出張所の併設の場合はその事件数も考えると、こう言っておりますから、岡山の備前市の場合は、地域の皆さんの、市長を初め皆さんの切実な要望にこたえて、今度の法案の一般的基準から見てもこれは残すべきところであろうと、私はこう思って質問しておるんですが、御検討をしていただいた結果、いろいろあると思うんですか、どうお考えですか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) ただいま種種御指摘の点は、私どもも十分踏まえましていろいろ多角的に検討したわけでございます。 人口につきましては、設立以来一貫して減少の傾向にございます。子細に見ますと、岡山市寄りの和気、吉永両町につきましては、近年開発が進んでおりまして人口もやや増加傾向が見られますが、全般的にはやはり人口の減少の傾向があるようでございます。 事件数は、先ほども申しましたように、このような人口動態を反映して長期的に見ますと減少の傾向にございます。先ほどの御指摘の家裁出張所の件数でございますが、家裁出張所の件数の中には、御存じのとおり、甲類審判も含まれております。当事者が出頭を要する乙類審判、調停に限って見ますと、これが五カ年平均は三十件ということになっております。これは同じ枠内ではございませんが、同じ時間的距離の中にございます例えば、今回統合を見送っております中津川あるいは岡山の玉野、さらには宮崎の西都、こういうところと比較してみますと、玉野は乙類、調停を合わせまして四十六件でございますし、中津川は乙類、調停合わせて八十五件もございます。この乙類と調停を合わせました備前の傾向、例えば六十一年で見ますと、今度は逆に二十一件というふうにまた減ってきているわけでございます。そういう点からいたしますと、どうも長期的に見ます限り余り事件は伸びないのではないか、こう考えざるを得ないわけでございます。 それから、先ほど御指摘の所要時間でございますが、私どもは公共交通機関、これによって所要時間を考えているわけでございます。国道が渋滞したりいたしまして、車によって参ります場合には多少時間がかかるかもしれませんが、公共交通機関による限りは、岡山の場合でございますと著しく改善されておりまして、備前から岡山までの所要時間と申しますのは実質乗車時間はおおむね四十ないし五十五分、便数も一日に十九便というふうになっております。そういうふうな点からいたしますと、二十二年当時に比較しますと非常に交通の便はよくなっている。これはやはり重く見なければならないと思います。 先ほどの、地元の御意向等につきましても十分お伺いしたわけでございます。地域の開発計画につきましても、詳しい資料をいただいて十分検討いたしました。その結果も十分踏まえました上で、将来、事件がそんなに多く伸びるとは考えられないという観点から今回統合ということに決めさせていただいているわけでございます。備前その他の地元の御意向につきましても、十分承知いたしております。私どもの方からも十分御説明申し上げまして、結果的には、できれば存続してもらいたいけれども、統合されるということであればやむを得ないというふうに御理解いただいているものというふうに考えております。
○橋本敦君 それは局長、残してほしいけれどもやむを得ぬというのは、理解じゃなくてやっぱり残してほしいんですよ。それはもう間違いないんですよ。 列車で行かれて五十何分、こういうことですが、備前の駅に住民は住んでいないんでね。備前の駅まで乗るために行かなきゃならないんですよ。備前の駅から乗って五十何分かかって岡山に着いて、岡山駅から裁判所へ歩かなきゃなりません。局長は岡山にいらっしゃったから皆よく御存じですよ。公共交通機関を使っても六十分を超えるところはいっぱい出てくるんですよ。 もう一つ、私がここへ調査に行って問題だろうと思ったのは、相談件数をリストアップしていないんですね。年間に簡裁で相談件数はどのくらいありましたか、職員の皆さんがこの法律相談に乗ってあげるのはどのくらいありましたかというと、これは統計をとっていないんですね。全国的にそうですか。それは問題じゃないですか。いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 簡裁における相談と申しますのは、先ほども猪熊委員から御質問のございましたように、いろんな形の相談がございました。私どもといたしましては、その手続教示の相談をしているわけでございまして、これはいわば事件の受け付けの一貫としてやっているものでございますから、特に相談だけを取り上げてカウントすることはいたしておりません。
○橋本敦君 それも簡裁の機能としては、身近に相談に乗ってあげるというような地域では、残念ながら弁護士もいないところいっぱいありますから、本当に地域では簡裁の職員の皆さんは法律の権威者なんですよ。よき相談相手なんです。その相談がカウントされていないというのがこれは私問題だと思いますね。 そこで、この備前の問題に限らず、その他裁判所で指摘したいところは幾つもあります。例えば、島根県は東西広いところでございまして、大田裁判所の簡裁の廃止の問題、今度は山奥の場合でいきますと、私も足を運びましたが、大分の山奥に入りまして、もう宮崎県との国境に近い矢部というところがございます。ここの問題があります。その問題は御質問したい点がありますが、次の機会に譲らしていただきまして、岡山の問題については重ねて御検討をしていただくように切に希望いたしておいて、法案に則してはきょうはこれで終わっておきます。 一般の方に入らしていただきます。 まず、警察庁にお伺いしたいのでありますが、新聞にも既に報道されておりますけれども、去る八月十二日午前十時ごろ、現場は奈良県の吉野郡十津川村杉清の出谷郷という谷でございますが、ここで米軍EA6Bグラマン、この飛行機が超低空飛行で航法訓練をやっておるということで、木材切り出し用のワイヤーロープを切断するという事故が起こったわけであります。 現場は、紀伊半島のほぼ中央、まあ言ってみれば杉、ヒノキの秘境とも言っていいようなところで、高野山を越えてまだはるか南へ下らなくちゃなりませんが、千メートル級の尾根が連なっておりまして、V字型の深さ五百メートルぐらいの深い谷がありますが、これが大台ケ原山の南の方へずっと突き抜けるというような状況のところなので、通常は人もよく入らない秘境だと言われておりますが、こういうところに米軍機が訓練に入りましてワイヤを切断したという事故が起こりました。墜落とかあるいはワイヤが切れて山林労働者が死亡するとかといった悲惨な惨事にならなかったということではもう本当に胸をなでおろすようなことでございますが、そういう惨事になる重大な危険性があるわけであります。 このことで奈良県警は現在捜査中だというように報道されておりますが、具体的な事実、どうい う捜査状況であるか、お話をいただきたいと思います。
○説明員(兼元俊徳君) お答えします。 事故の概要でございますが、橋本委員ただいまおっしゃいましたように、八月の十二日の午前十時十五分ごろ、アメリカ海軍の空母ミッドウェー所属の艦載機EA6Bプラウラーという飛行機でございますが、奈良県の吉野郡十津川村の山岳地帯を飛行中に、伐採をした木材運搬用のテール線に接触してこれを切断したものでございます。 奈良県警の方では、現在までのところ事案の調査、事案の内容を正確に把握するため、目撃者等からの事情聴取、現場の検分、関係機関、特に米軍に対する照会等の所要の調査を行っているところでございます。
○橋本敦君 米軍に対する照会は、外務省を通じてですか。
○説明員(兼元俊徳君) これは、直接奈良県警から米軍の方に行っております。
○橋本敦君 回答はもう来ましたですか。
○説明員(兼元俊徳君) まだ回答には接しておりません。
○橋本敦君 外務省に伺いますが、外務省もこの事件については情報収集ないし調査をなさっていると思いますが、いかがですか。
○説明員(岡本行夫君) 私どもも今回の事件を深刻に受けとめまして、米軍に照会中でございます。 事実関係といたしましては、ただいま警察庁の方から御答弁がありましたようなことと理解しております。 米軍の調査はまだ継続中でございます。米軍は事故調査委員会を設置いたしまして、ただいまその原因等について鋭意調査中と理解しております。また、米軍としては、当面、その調査結果が出るまでは事故発生地域において同じような低空飛行は行わないということを言明しております。
○橋本敦君 引き続いて外務省に伺いますが、これは何の目的の訓練をやっておったんですか。それからパイロットは一人なのか、二人なのか、その氏名をアメリカは言ってきましたか、どうですか。
○説明員(岡本行夫君) パイロットは四名であったと承知しております。氏名等は私どもは把握しておりません。 この訓練は航法訓練と申しまして、ある地点から他の地点まで地図などに基づきまして低空で飛行いたしまして、パイロットの飛行の練度の向上を図る訓練であると承知しております。
○橋本敦君 こういう訓練は、紀州の山奥以外に日本のどこかの山でやっておるんですか。外務省は知っておりますか。
○説明員(岡本行夫君) 御承知のとおり、米軍は、安全保障条約の第六条に基づきまして我が国の安全そして極東の平和と安全に寄与する目的で我が国に駐留が認められております。そして、その目的を全うするために必要な軍隊の通常の属性にかかわるような訓練というのは日本国で行われることが当然の前提とされておりまして、私ども米軍の訓練の実態については詳細を承知しておりませんが、米軍としては地位協定に別段の定めがあるほかは私どもに通報の義務もないわけでございまして、日本の他の地域で行われている可能性はもちろんあるわけでございます。
○橋本敦君 大変なことをお認めになりましたね。和歌山の南の方でも一年前から同じような超低空爆音を聞いているという話もある。今のようなお話だったら、何のためにわざわざ日米地位協定に基づく合同委員会で訓練空域をきちっと決めておくのか。決めておかぬでもどこだってできるとなったらこれは大変ですよ。そこで、その問題は後で議論します。 運輸省に聞きますが、この飛行機はあの十津川の谷の奥を飛ぶというようなフライトプランは出しておったんですか、どうですか、管制の関係で。
○説明員(増子泰規君) お答えします。 当該機の飛行計画につきましては、出発空港でございます海上自衛隊の厚木基地に出されておりまして、私ども運輸省としてもその内容は承知しております。ただし、その飛行計画の内容につきましては、米軍の運用にかかわる事項でございますので明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。
○橋本敦君 そうすると、その飛行計画の中に、厚木を出発して岩国に行き、岩国から厚木へ帰るという航路だったらしいんですが、その途中でこういう和歌山の山の中で訓練をやるという飛行計画、フライトプランが出ているということになれば、こういう訓練があることを運輸省も承知をしておったということになりますな。そうですね。言わないけれども知っておったわけでしょう。この十津川の奥でこういうことをやることは知っておったんですね。
○説明員(増子泰規君) ただ、当該地域におけるこのような低空飛行の場合は、管制の指示を必要としない飛行の方式をとっていたということで承知しております。
○橋本敦君 ちょっと意味がわからなかったんだけれども、こういう超低空飛行をやるときは管制官の管制指示に、つまりIFRに従わなくて、あなたのおっしゃるVFRの方式で、管制官の指示とは別に自分の責任で飛行をするということだからということですね。こういうような航法訓練をあの場所でやるという計画であったことは知っていると、こういう意味ですか。どういう意味ですか、今の答弁。
○説明員(増子泰規君) お答えします。 具体的な場所、VFR飛行中間における具体的な経路は、具体的にはわかっておりません。
○橋本敦君 わかっておらなければ、米軍機は日本の空の上、超低空をいつ、どこでやろうとも、外務省の答弁だったら、それはできるんだということになったら、ニアミスどころか危なくてしようがないじゃないですか。何のためにフライトプランを出させるんですか。こんなことがはっきりとできないようでは、まさに日本の空は米軍勝手気まま、米軍優先ということになりますよ。とんでもない話になります。 今度の場合、あの事故について、運輸省はそのフライトプランの関係で知っておったのかどうなのか。もう一回はっきり言ってください。知らなかったんですか。知らなかったら知らなかったでいいです。
○説明員(増子泰規君) 先ほどお答えいたしましたように、飛行計画書は知っております。
○橋本敦君 だから、その飛行計画書の中にあの十津川航法訓練は入っておったのかと、こう聞いている。そうすると、後がちょっと答弁あいまいになったからもう一遍確認するんですが、入っておったんですね。
○説明員(増子泰規君) 先ほどお答えいたしましたように、再度申し上げますが、この飛行計画の内容につきましては米軍の運用にかかわる事項でございますので明らかにすることは差し控えさしていただきたいと思います。
○橋本敦君 アメリカの軍用機のことでとあなた言ったって、飛んで事故を起こしたわけですから、何でそれが言えぬのですか。それほどアメリカの飛行機をかばうんですか、おかしいですよ。これは日本の国ですよ。あの十津川村は日本の領土ですよ、日本の空ですよ。そして、こういう日本の空を超低空で飛ぶということなら、普通は航空法の規定によって、皆さんも御存じのように、最低安全高度の指定があり、乱暴な操縦飛行は禁止されておるという第六章の八十一条その他の規定がありますから普通は航空法で禁止されていますね。だから、そんなことは起こるはずがないわけです、日本の空で。 ところが、アメリカの軍用機については、地位協定に基づいて、そして地位協定に基づく特例法によって航空法の適用が除外されていますからこういう得手勝手な飛行がやられる。飛行がやられたらフライトプランはどうなっていたかと言うと、それは言わないことになっている、国民に知らせない。こんな勝手なことで日本の空を縦断さ れるのを許せますか。 外務省に伺いますが、米軍は、日本の空を地位協定で特別の合意で定める以外はどこでも使って、どんな訓練でもできるんですか、はっきり答弁してください。
○説明員(岡本行夫君) 安保条約及び地位協定は、一々訓練、演習といったものの態様を定義して規定している格好にはなっておりません。したがいまして、地位協定に基づいて提供しております施設区域で当然にすることが予想されるような演習、訓練、例えば、実弾の射撃といったようなものは当然公共の安全との衝突がございますから、その施設区域内に限られるべきものでございます。他方、今般の航法訓練といった上空を飛行する行為、これは軍隊の訓練であるという名前をかせられるからといって、つまり、米軍機であるからといって差別的に制限されるべき理由はないというのが私どもの立場でございます。 もちろん、先生御指摘のように、米軍は地位協定の定めに基づきまして航空法の一部の適用を除外されておりますが、我が国の公共の安全に十分な注意を払ってそのような訓練、行為を行うべきは当然でございまして、今回の飛行の具体的な形態につきましては、先ほど申し上げましたようにただいま調査中でございますので申し上げませんが、一般的には米軍は我が国の航空法で定められている最低高度を十分尊重して飛んでいるものと説明を受けております。
○橋本敦君 具体的に、この谷で起こったワイヤローブ事件、高度何ぼだったというんですか。そして航空法で定める最低安全高度、これを守っていると本当に言えるんですか。あなた、確信持って言えるんですか。
○説明員(岡本行夫君) 繰り返しになりまして恐縮でございますが、今回の事件についてはただいま調査が続行中でございますので、具体的な高度についてはお答えすることは適当でないと存じます。 先ほど申し上げましたのは、あくまでも一般的な意味で米軍は通常最低高度を守って飛行している、こういう説明を受けておるということでございます。
○橋本敦君 だから、そんな一般論じゃここでは通用しないんです。現にあの谷へ私行ってきましたよ。あのメーンロープ、下をかいくぐって補助ロープを突き破っているんです。メーンロープまで高さ二百メートルほどしかない。まさに安全高度どころの騒ぎじゃなくて、もうすれすれの超低空、しかも、粗暴な操縦だということですから、航空法の適用があれば当然それで違反という状況をつくり出している。しかも、先ほどあなたに言いましたが、米軍は地位協定第五条の二項に基づきまして、米軍の使用を許された施設と施設の間の移動、区域と区域の移動、こういったことは当然できるということは決めていますね。これはそうでしょう、施設を認めた限り移動はできる。しかし、どこででも訓練をやってよろしいという明白な文言の地位協定はありませんよ。どうですか、ありませんね。これまず認めてください。明白な文言規定はないでしょう。
○説明員(岡本行夫君) 先ほどお答えいたしましたとおり、安保条約及び地位協定は、訓練あるいは演習といったものの形態を取り出して規定する形にはなっておりません。
○橋本敦君 ないんです。だから、ないことを理由にして、どこででもやれるなんというのはとんでもない法解釈ですよ。今度の事件から改めてこの問題は明確になりました。 一つ大事なことは、この航空法の適用、これはやっぱりやらせなくちゃならぬ、こういうことですよ。そのためには、法改正も含めて外務省及び政府は、今度の再発をさせないための処置について、慎重な検討をまずお願いしたい。これは大臣にお願いしたいと思うのですが、いかがですか。再発防止について厳しい処置をお願いしたい。
○国務大臣(遠藤要君) 十分検討したいと思います。
○橋本敦君 それから、さらに外務省に、この事故原因がわかるまで、米軍はこのような訓練をその場でやらない、こう言っておりますが、訓練空域以外で、日本の空で米軍が航法訓練も含めて演習をやるということについてはやめなさい、厳しく制限する、禁止する、これは当然です。そのために訓練空域を認めているんですから。こういう処置を外務省はとるべきだということが一つ。もう一つは、この事件についてパイロットの氏名及びその原因、これを含めて米軍に厳しく照会をして、それを国会にきちっと報告する。これだけのことは外務省の責任でやってもらいたいと思いますが、いかがですか。
○説明員(岡本行夫君) 同じ答弁の繰り返しになりますが、訓練、演習といいましても、一義的にこのようなものであると規定することはできません。例えば、ただ単に飛行するということ自体が訓練になる場合もございます。そのような場合には、他の航空機と区別して、米軍機であるからという理由で飛行を制限することは適当でないと考えるわけでございます。したがいまして、米軍が行います訓練、演習といったものは、その個別一一の具体的な事例に即してでなければ判断できないというのが我々の立場でございます。 それから、御照会の米軍の乗員の氏名等につきましては、これは米軍の運用上の問題でございまして、私ども必ずしも明らかにできる立場にはないわけでございます。御理解いただきたいと思います。
○橋本敦君 一般論的に、すべての訓練を禁止せよと言えないというのは、これは私は納得できないんですよ。それほど日本の主権というものは軽軽しいものじゃないです。しかし、それはもう議論になりますから。 具体的にこの事件について、あの十津川村で超低空でワイヤロープを切るほどの航法訓練という名の訓練を行ったというこういう訓練は、この具体的ケースに照らして、今後絶対やるなと言うべきじゃないですか。どうですか。
○説明員(岡本行夫君) 私ども今回の事件は深刻に受けとめておりまして、このような事故の再発があってはならないとの立場から、米側にも強い申し入れを行っているところでございます。米側は現在、事故の原因を究明中でございますが、再発防止についてはもちろんのこと、米側としても強い決意をもって当たる姿勢であると理解しております。 したがいまして、私ども個別、具体的にどこどこの訓練ないしは飛行をやめてくれという立場にはございませんが、私どもの趣旨すなわちこのような事故の起こることがないようにという趣旨は十分米側に伝わっており、米側の運用もそれに沿って将来行われていくものと信じております。
○橋本敦君 どうも歯がゆいんだな。なぜアメリカにこの飛行機を飛ばした四人のパイロットの名前を言えとよう言わぬのですか。県警はこの事件を刑事事件として捜査を開始しているんですよ。また、現にその必要があります。照会もしている。外務省がもっとしっかりとこのパイロットの名前ぐらい言いなさいと言わなかったら、警察の捜査を外務省が助けないところか妨害することにもなりかねませんよ。 刑事局長に伺いますが、県警はこの事件を航空危険罪で捜査をしあるいは器物損壊罪で捜査をしておる、こういうことでありますけれども、法律の適用について、それは可能ですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 航空危険法によりますと、「過失により、航空の危険を生じさせ、」という処罰類型があるわけでございます。この事実関係からして、これに当たれば航空危険罪が成立するということになります。また、器物損壊につきましては、刑法上器物を損壊したということが処罰の類型でございます。 ただ、これは故意犯でございますので、故意があるかどうかということが問題になろうかと思います。
○橋本敦君 警察は、今航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律違反、第一条違反及び器物損壊罪、刑法二百六十一条、この容疑で捜査 しておられるんですか。確認します。
○説明員(兼元俊徳君) 冒頭にお答えいたしましたとおり、現在は事案の内容を正確に把握するために所要の調査を行っている段階でございます。したがって、橋本委員お尋ねのように、現在この事案が犯罪となるかどうか、それから犯罪となった場合、仮になるとした場合にどういう罰条に該当するかについては、まだ事実関係が不十分でございますので、御答弁できる段階にはございません。
○橋本敦君 しかし、捜査をするということでは法律判断も必要ですから、捜査の結果によっては今私が指摘した航空危険罪、これの可能性があるという法律判断は一応やりながら事実関係を詰めている、こういうことでいいんじゃないですか。
○説明員(兼元俊徳君) 事実関係の調査がまだ不十分でございます。先ほどお答えしましたように、米軍からの回答には接しておりませんので、こういう罰条で捜査をしているとか、法律の適用についてはまだお答えできない段階でございます。
○橋本敦君 これまたけったいな話ですね。 刑事局長、その事件は超低空で飛んできた米軍機がワイヤロープを切った。これは航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律の「航空の危険を生じさせる罪」、これは過失犯もあるわけですが、これの一般論としてもその法律を適用できる可能性があることは明白じゃありませんか。
○政府委員(岡村泰孝君) 要するに、航空の危険が生じたかどうかということであろうかと思います。
○橋本敦君 事実として超低空でワイヤロープを切って、事故を起こし。たんですから、危険を生じたわけですね。どうですか。
○政府委員(岡村泰孝君) どういう形でワイヤロープが切れたのか私も詳細はわからないわけでございますが、ともかく飛行機は墜落することもなく飛び去ったわけでございまして、そういうような事実関係のもとで航空の危険が生じたのかどうかという判断だろうと思います。
○橋本敦君 漫才やっているつもりはないんでね……。 そこで、仮に捜査を遂げても、県警が捜査を遂げ、検察庁が捜査を遂げても、この問題についてはさらにもう一つ第一次裁判権という大きな壁がありますね。だから、公務中の事故だということになれば、アメリカが裁判権を持つ。しかし、アメリカが裁判権を持つ場合であっても、これは日本の方から裁判権に関する地位協定に基づく日米合意事項がありますから、この合意事項の十一の三という部分によって、法務省から日本で裁判権を行使したいということを通告し、申し入れることができる。この事件についてこの裁判権を日本によこしなさいということを含めて強く主張をして、日本の主権と国民の利益をしっかり守るということでこの事件を徹底的に明らかにする必要がある、私はこう考えております。今すぐ結論は出ないかもしれませんが、このことを捜査の経過によっては厳しく適用することも含めて検討していただきたいということを大臣に申し上げて、所見を承って質問を終わります。
○国務大臣(遠藤要君) 先生のお尋ねでございますけれども、法務大臣も今ここでなかなか明快なお答えができないことが残念ですけれども、現状の状態においてお答え申し上げておきたいと思いますが、我が国が米軍側に第一次裁判権を放棄せいというような要請をするには、我が国の捜査機関の捜査の結果、犯罪嫌疑が認められるということが前提となることは先生もよく御承知のとおりでございます。そのような点で、今それぞれの答弁にもあるように、今の現状のままで捜査権を日本によこせということにはならない、こういうふうなお答えを申し上げておきたいと思います。
○橋本敦君 終わります。
○関嘉彦君 上程されております下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部改正案につきましては、簡易裁判所の性格、機能、歴史というふうなものについて質問することを通告しておいたんですけれども、先ほど来一井委員あるいは猪熊委員から詳しい質問がございましたので、同じことを質問するのも時間の浪費ですから、本日はその問題についての質問は取りやめますので、私に関する限りはお引き取りいただいて結構でございます。 それで、きょうは前国会の一番最後に質問を通告しておいて急に体調を崩しまして質問できなかった入国管理の問題、この問題だけを質問したいと思っております。 最近、国際交流がだんだんふえてくるにしたがいまして出入国管理法、出入国管理令に違反して入国してくる者、あるいは不法就労している者、そういった者もだんだん増加してきているように思います。中にはだまされて来ているのもあるし、あるいはみずから進んで来ているのもあるし、個々のケースを見てみますとかなり気の毒な事情があるように思います。ちょうどたまたま配っていただいた「フォト」という広報誌があるんですけれども、その九月一日号を読んでおりましたら、「東京入国管理局」というタイトルでドキュメント、写真のドキュメントですけれども、いわゆるじゃぱゆきさん、あるいはそれ以外の単純労働者の人たちが不法入国して、そして警備官に逮捕されて本国送還、国外強制退去されているそのドキュメントが載っておりますが、読んでみますと、ワタシ、ワカラナイ、ワカラナイと叫びつつ退去させられたタイの女性の話なんかも載っております。気の毒な感じもいたします。 あるいは、別の新聞に載っておりましたけれども、バングラデシュから来た単純労働者が、三カ月働いて送金をすると自分の国では家族が一年間食っていけるんだと。そういうふうな話を聞きますと人道的に極めて気の毒な感じもいたしますけれども、しかし、この入国管理の問題を野方図にしておきますと、日本の国内における人種的な対立の問題でありますとか、あるいは労働条件の切り下げ、失業、そういったふうな問題も起こる可能性が極めて多いわけでありまして、将来の問題としてはこれをどうするか大いに考えなければならない問題ですけれども、しかし、やはり少なくとも当分の間は厳重に入国を取り締まっていくべきではないかというふうに考えております。それで、そういった不法入国を抑制する立場から若干その現状及び取り締まりについて質問をしたいと思うんです。 最初に、事実関係をお伺いしたいんですけれども、外国人の入国者数は過去十年間、五十一年と一番最新の統計十年間にどの程度ふえているか、実数をお知らせ願いたいと思います。
○政府委員(小林俊二君) 昭和五十一年の入国者数は八十八万一千二百三名であります。これに対しまして十年後の昭和六十一年、昨年一年間の外国人入国者数は二百二万一千四百五十名でありまして一二九・四%増、言いかえれば約二・三倍に増加しているということでございます。
○関嘉彦君 最近五年間で入国管理法の違反件数、この中には内訳としまして不法入国でありますとか、不法上陸でありますとか、資格外活動とか等々あるようですけれども、その総数、総違反件数はどうなっておりますか。
○政府委員(小林俊二君) 総違反件数は、昭和五十七年、五年前には三千八百十四件でございました。これが昨年一年間には一万五百七十三件となっております。約三倍の増加を見ているということでございます。
○関嘉彦君 ただいま御説明いただきました過去五年間の入管法違反事件の増加の中で、資格外活動に関するものがどの程度ふえているか、また、男女別に見た場合、それからどこの国からの入国者の違反が目立っているか、お伺いしたいと思います。
○政府委員(小林俊二君) ただいま申し上げました違反事件のうち、資格外活動に絡む違反事件、すなわち資格外活動そのもの、あるいは資格外活動絡みの不法残留という案件が少なくとも現在においてはその大半を占めているということが言えるわけでございます。すなわち、先ほど申しまし た六十一年一年間の一万件余りの違反件数のうち、八千件以上がこの資格外活動及び資格外活動が絡みました不法残留案件によって占められているわけでございます。 それで、こうした案件に関与しております国籍を見ますと、最も多いのがフィリピンでございます。次がタイ、さらに台湾という順になっておりますが、これはいずれも女性がほとんどでございます。男性の場合には、いまだ絶対数は小さくなりますけれども、バングラデシュ、パキスタンといったところが最近極めて日につく事例でございます。これらの人々はいずれも観光を表向きの目的として上陸を許可され、そのような違法活動に従事しているというのが現況でございます。
○関嘉彦君 入国以前のいわゆる水際でのチェックと申しますか、すなわち空港でありますとか漁港での入国審査で入国を拒否された人の数、その傾向があればそれを知らせていただきたいと思います。
○政府委員(小林俊二君) 水際で上陸を拒否された件数、すなわち上陸審査の結果上陸を拒否されて退去となった人々の数は、昭和五十六年が五百六十九件、五十七年が六百九十件でございましたが、これが五十八年以降急増いたしまして、五十八年には千三百七十七件、五十九年には千三百十四件、六十年は千三百四十件、そして六十一年には二千六百六十五件に達しております。こうした傾向は主としてフィリピン、タイ、パキスタン、バングラデシュ等東南アジア諸国から我が国に不法就労を目的として入国する者が急増しているということでございまして、それを背景にして審査を厳格化した結果でございます。
○関嘉彦君 ビザ、査証を必要とする国、例えばフィリピンなんかそうだと思いますけれども、そういう国からの不法入国に対しては大使館の方でビザを発行するときに十分にチェックしてもらうことが必要だと思いますけれども、ビザを相互免除している国、これはいわゆる水際でチェックする以外に方法はないと思うんですが、そういったビザの相互免除国からの入国者に対して入国を拒否した数、それはどうなっておりますか。
○政府委員(小林俊二君) 不法就労の関係におきまして問題となっております査証免除国といたしましては、主としてパキスタン及びバングラデシュがございます。また、数は若干減りますけれども、イランもその一つであります。昨年一年間で空港等で入国を拒否した者の総数が二千六百六十五名でございます。このうち査証免除取り決め国からの上陸申請者で入国を拒否された者は八百二名であります。この八百二名のうちパキスタンが五百七十七名、バングラデシュが百四十三名、イランが十五名となっております。
○関嘉彦君 そういう違反件数に対して、入国を管理している、取り締まりをしている、そういった人たちの人員、つまり、入国審査官及び入国警備官、その数及び入国管理行政に関する予算、それはどの程度ふえておりますか。
○政府委員(小林俊二君) 入国審査官及び入国警備官の定員は、過去五年間すなわち昭和五十七年度に比しまして昭和六十二年度におきましては十二名の増となっているにすぎないと申し上げた方がよろしいかと存じますが、現在の二つのカテゴリーに属する職員の定数は千三百六十八名でございます。また一方、予算額は地方入国管理官署に関するものだけ、すなわち本省の関係を除きますと、昭和五十七年度を一〇〇といたしますと昭和六十二年度は一一五、一五%の増でございまして、その絶対額は九十七億五百万円でございます。
○関嘉彦君 入国者数、それから入国違反の数が非常に急速にふえているのに対して、その担当の人員が十二人ふえて千三百六十八人、ほとんどふえないのと同じと言ってもいいと思いますし、予算の方でも一五%の増加にしかすぎないということをまず確認しておきたいと思います。 こういった不法入国した者を取り締まる警備官がいるわけですけれども、その警備官の取り締まりの対象は外国人だけであって、日本人に対してはどうすることもできない。ところが、実際には雇っている方が違法であるということを知りながら雇っているケースもかなりあるんではないかと思いますし、あるいはそういった不法入国をあっせんしているブローカー、特に暴力団なんかはそれに関連して組織的に不法入国をやっているというふうなことも新聞にしばしば報道されておりますし、そういったふうな取り締まりは警察でありますとかあるいは労働省の担当であって、入国管理局だけがいかに頑張ってもこれを根絶せしめることはできないわけです。したがって、そういう警察なり労働省なりとの協力を一層推し進めていただきたい。政府が一体となってこの問題に取り組むことが必要であるということを考えるわけです。 それに関連しまして、つまり、法律そのものは問題ないかどうか。参議院の六十二年七月二日の決算委員会で、社会党の久保田真苗議員から、単純労働者の不法入国と取り締まりのために入国管理法の改善をする必要があるんではないか、そういう質問がなされております。それに対して入管局長の方から、目下検討中であるということを答弁されておりますけれども、現在まで検討の結果どういうふうな結論を得ておられるか、それをお聞きしたいと思います。
○政府委員(小林俊二君) 御指摘のとおり、決算委員会におきます答弁におきまして検討の過程であるという御説明を申し上げました。しかしながら、現在におきましての取り締まり上の主眼は、現在既に規定されている法律上の諸条項を駆使して有効な取り締まりができないものだろうかということでございまして、もし現在の取り締まりが十分ではないとするならば、その十分でない理由は果たして法の不備によるものであろうかという点についての検討が必要だろうと考えております。私どもといたしましては、いまだそういう明確な結論に達しているわけではございません。 将来とも、この入管法に基づく罰則の強化、すなわち不法就労外国人を雇用することそのものを可罰行為とする法改正というものは、将来の検討課題としては検討の対象とする必要があるというふうには考えておりますけれども、現在は、現在の法制のもとにおいてなお各省庁の協力を緊密化して、なすべきあるいはなし得る余地が大きいのではないかという観点から種々努力を重ねておるところでございまして、このため関係省庁すなわち外務省、警察庁、労働省等との連携を密にして、幾つかのレベルでほとんど定期的に会合、協議を重ねながら全国的な取り締まりの体制の強化に努めているというのが現況でございまして、先生御質問の法改正の問題は、なお将来の問題として念頭にあるというふうにお答え申し上げました決算委員会での御説明をした状況は今も変わっておらないわけでございます。
○関嘉彦君 ほかの省庁との協力の問題は前から言われていた問題ですけれども、にもかかわらず違反件数が先ほどの数字のように非常にふえている。今、例として挙げられましたような不法入国した労働者を雇用する雇用主に対する罰則問題なんかを含めて、もう少し法改正の問題を真剣に検討していただきたいというふうに考えております。やはり一番の担当は法務省入国管理局でございますので、どうしてもほかの官庁というのは、協力はするでしょうけれども自分の省庁の問題としては考えないわけであって、その点の検討をぜひお願いしたいと思います。 最後に、以上のような質問を踏まえまして法務大臣にお伺いしたいんですけれども、国際化の時代を迎えまして、専門技術者なんかの交流、これは大いに奨励していかなくちゃいけない。そのことは当然でございますし、あるいはまた、気の毒な難民に対して人道的見地からの受け入れの枠を拡大することは必要でございます。しかし、単純労働者の不法入国をルーズにしておくと、西ドイツを初めとしまして諸外国におけるいわゆるガストアルバイターの、外人労働者の紛争のような問題を招くおそれがありますので、したがいまして、一方においてはそういう貧しい国に対する経 済協力をふやしていく。これは主として外務省の問題でございますけれども、国全体としてそういう人たちが外国で働かなくても済むように経済状態を改善してやる。それに対して協力していく。これを一方においては続けながら、同時に、やはりこういった不法入国の取り締まりを強化していく必要があるだろうと思うんです。 ところが、今お答えがありましたように、人員の点でも予算の点でもほとんどふえていない。これ、ぜひ大臣としまして、私はほかの面でも、裁判官それからけさ取り上げられました検事の問題なんかにつきましてもそうですけれども、どうも法務省の予算要求なんか非常につつましやかと申しますか遠慮されているような印象を受ける。私は、一般的な行政改革の問題とは別個に大いに増員しなくてはならない問題だと思います。入国管理の問題につきましても同じように、国際交流がふえていけばふえていくほどそれは必要になってくると思いますので、格段の努力をお願いしたいと思うんですけれども、大臣の所見をお伺いして私の質問を終わります。
○国務大臣(遠藤要君) 先生御指摘の点については、全く同感というよりも感謝を申し上げたい、こういうふうな感じでいっぱいでございます。 国際交流の活発化を求め、そして対応していかなければならぬということは当然なことでございまして、それに対応できるだけの入管行政が遂行されるような予算面なり増員なりで所要の措置をとっていかなければならぬ。そのような点では私自身最大限の努力をいたしたい、こう思っております。 さらに私は、この問題については大臣就任当初から閣議においても要請をいたし、さらにまた、労働省なり総務庁で失業等について発表されるごとにもこの問題に触れておるわけでありまして、労働市場にも大きな影響がある。さらにまた、社会、風俗各般の分野に及ぼす悪影響がまた大変だ。さらにまた、その監督官庁に絡んで、国際的に日本の国に対する非常に不名誉な点が出てくる、国の威信にも関する、名誉にも関する、こういうふうな点がございます。 先生御指摘のとおり、不法入国されて稼働する、それが低賃金で、実際働いた者がある程度の所得を取っておるというならばこれまた別がと思いますけれども、中間でほとんど搾取されている。そういうふうな状態がいずれ各国から批判を受けるという懸念も私自身持っております。さような点で、いろいろ立法措置をとるなり入管局として努力をすることも大切だけれども、向こうから入国してきて働く分野がそれを待っているような状態であってはいかぬ。そういうふうな点で建設省、農林水産省、労働省、総理府、そして国家公安委員長にも、閣議の中でぜひこれは協力を願って対応してほしいというようなお話をしばしば何度か繰り返して要請をいたし、今入管局長がお話しのとおり、それに対応しようということで今協議をしていただいておるわけであります。 その会議では、御承知のとおり円高とか世界の不況のしわ寄せが日本に来ているという点もなきにしもあらずだと。また、日本の商工業者がよその国に輸出するにも円高に対応するには低賃金の者を使ってということもあるいはあるかもしれませんけれども、そういうような点で国の信用を失墜せしめるようなことであってはならぬ、こういうような点を考え、私自身としてもそのような気持ちで何回か提言しておるわけでございまして、ぜひ皆さん方にも御協力をちょうだいいたして入管行政の完璧を期し、国際信用の保持のために努力してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○西川潔君 長時間本当に御苦労さまでございます。 我々の世界とかお相撲さんの世界は、大概は一番偉い人がトリをとるんですが、委員会の方は一年生のふんどし担ぎの僕が最後をやらせていただくということで、本当に長時間にわたって大変気まずい思いをするわけなんですけれども、法律の専門家でもありませんし、全くの素人ですが、ひとつ素朴な質問でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。 朝から諸先生方ほとんど僕が質問させていただこうと思うことのお話が出ております。にもかかわらず、自分自身でもう一度お伺いして、毎週一度大阪の方でラジオで法務委員会の報告などをさせていただいておりますので、我々の生活、日々の暮らしを直視した面からいろいろ御質問をさせていただきまして、また皆さん方に御報告をさせていただきたいものですから、どうぞ平にお許しをいただきましてよろしくお願いいたします。 生まれまして四十一年になりまして、裁判所というところに余りお世話になったことがないものですから、相棒のことで二度ほど行ったことがあるんですけれども、簡易裁判所がどうだったか忘れたんですけれども、一般に簡易裁判所というところはどういう裁判所なのか。我々の生活の中でどういう事件が一番多いのか、そういうところをお伺いしたいんですが、お願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 簡易裁判所ではいろんな事件を扱っておりまして、民事の訴訟事件でございますと、例えば、金額が九十万円以下の貸し金でございますとか売掛代金でございますとか立てかえ金でございますとか、そういうふうな事件の裁判手続を行います。それから、刑事で申しますと、比較的軽微な事件、例えば窃盗でございますとか横領罪でございますとか、あるいは罰金刑に服しますところの道路交通法違反の事件であるとか、そういう比較的軽微な事件について刑事裁判手続を行います。そのほかに、例えばサラ金で非常にお困りの方が、債務の分割弁済を申し立てるためにサラ金に関する調停の申し立てをいたします。 調停の申し立てと申しますのはこれは裁判ではございませんで、裁判官と調停委員で構成いたします調停委員会が当事者の仲立ちをいたしまして、お互いに和解のあっせんをするわけでございます。そこでまとまりますと、例えばサラ金でございますと月々幾らずつ返していくというようなことで紛争の解決を図る。 そのほかに、支払い命令というのがございまして、例えば五十万貸しておる、なかなか返してくれないというような場合に、これは裁判を起こすことも可能でございますし調停に申し立てることも可能でございますが、一番簡単な方法としては支払い命令というものを裁判所から出していただく。これは債権者の一方的な言い分に基づきまして六十万なら六十万支払いなさいという支払い命令というのを出します。それに対しまして債務者の方が文句を言わないでそのまま期間が経過いたしますと、今度は仮執行宣言の申し立てというのをいたします。これは仮に執行することができるというものでございまして、これもその仮執行宣言がつきました支払い命令を債務者の方へお送りいたします。その後一定の期間経過しまして文句が出ない場合には、それを判決とかあるいは調停調書にかわるものとしてそれに基づいて強制執行もできる、こういう制度でございますが、そういう支払い命令の制度というのもございます。 そういうようないろんな制度がございまして、それぞれ相応に御利用いただいているわけでございます。
○西川潔君 午前中にも先生方おっしゃっておったんですけれども、法律相談にも応じていただきたいと思うんですが、応じられないというようなことだったんですけれども、できればそういう制度も少しは考えていただきたい、制度を変えていただきたいというような気持ちも我々としてはあるんですが、これは検討していただけないものでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) 法律相談ということになりますと、普通は、私の言い分が通るでしょうかとか、あるいは裁判で勝てるだろうかとか、そういうふうなことを聞いてくるということを考えるわけでございまして、裁判所の方で相手方の言い分を聞かずにあなたの言い分が正しいとか、あるいは勝てるでしょうというふうな相談に応ずることは、これはちょっと裁判所の性質 上非常にできにくいわけでございます。そういうふうなことになりますと、例えば、弁護士会で行っておられますような法律相談とか、あるいは市町村等が弁護士をお願いしてやっております法律相談というようなところへ行っていただくより仕方がないということでございます。 ただ、裁判所の方もそういうふうな事柄の中身に立ち入ったことではなくて、こういう人に金を貸したんだけれども返してくれなくて困っている、裁判所にどのようにすれば手続をとってもらえるのかということでございますと、これはもちろん裁判所の方でも相談に乗っておるわけでございます。これは大都市の裁判所でございますとどうしても非常に事件が多うございますので、余り十分な御説明もできないということもございますけれども、できるだけその辺のところは親切に説明するようにはいたしております。 例えば、裁判所の窓口に、素人の方でも比較的利用しやすいような印刷した訴状のひな形でございますとか、一定の事項を書き込めばそのまま調停の申し立て書になるというふうな用紙、定型用紙と私ども申しておりますが、そういうようなものを備えて、また、記載例等も置いておきまして、それをごらんいただければ一応の手続はできるというようなこともいたしておりますし、それもできないという方のためには裁判所の職員が、これは法律の定めがございますが、当事者の申し立てを聞いてそれを調書にとって、それで訴訟の訴え、訴状にかわるというようなものにする、あるいはまた調停の申し立て書にかわるというふうなものにするという制度がございます。 これは、裁判を起こすということになりますと、実はそうは申しましても、実際に当事者が主張しなければならない事柄をいろいろと整理して書かなければいけないという面がございまして、ある程度紛争の中身に立ち入ったことになりますので、実際問題としては裁判所の職員がそれを整理するというのは非常に難しい面がございます。ところが、調停でございますと、今までの紛争のいきさつをそのまま書いていただければいいわけですし、裁判所の方も聞いたままを書けばそれで申し立て書ということになりますので、それはかなり多く利用していただいております。 具体的な例を申し上げますと、数年前からサラ金で高い利息を払わされて、どうしても支払いができなくなったという消費者の方から、債権者であるサラ金を相手に、むだな弁済をさせられないようにしてほしいとか、あるいは法律の定めを越えるようなむちゃな制限利息を払わなくていいようにしてほしいという趣旨の調停申し立てが非常にふえました。そういうふうな事件に関しましては、裁判所の方でかなり積極的にそういう債務者の申し立てを調書にとりますとか、あるいは定型的な用紙に書きやすいように説明をして差し上げるということをいたしまして、具体的に申しますとそういう事件の二割ぐらいは裁判所の職員の方で当事者の言い分を聞いて申し立て書をつくって差し上げております。それから、説明をして、置いてある用紙にそのまま書き込んでいただくというふうなものも六〇%ぐらいは利用していただいております。全体から言いますと七割から八割ぐらいはそういうふうな裁判所の方の協力あるいは説明ということで、当事者に書面をつくっていただかなくても済むような手当てをいたしておりますので、できる限りそういうふうなことで努力はしておるわけでございます。 必ずしもこれで十分というわけにはまいらないところはあると思いますし、特に忙しい裁判所等ではどうしても若干つつけんどんになるというふうなことも、おしかりを受けることもあるわけでございますけれども、今回この法律を成立させていただきますと、そういうふうな窓口の相談事務についてもできるだけ充実していこうというふうな計画を持っているところでございます。
○西川潔君 我々の人情といたしましては、負ける裁判はやらない方がいいということなんですけれども、そこを何とか教えていただきたいのが本当に人情でございまして、人情紙のごとくなんて言われるんですが、少し御配慮いただきまして、特にお年寄りなんかの場合は遠くになりますと、そういうこともあると思います。昨日の新聞に、一番サービスのいい順番が出ておりましたが、人気ナンバーワンはやはりうれしいことに福祉事務所であるというので、僕ら老人のことを勉強しておりまして喜んでおりますが、サービスが悪いのは警察であると新聞に載っておったんですけれども、警察がもみ手をしていらっしゃいというのもおかしいんですけれども、どうぞ裁判所も人気のいい方では上位の方へ持っていっていただきますように、よろしくお願いします。 それに、統廃合してしまうと、今まであったものがなくなるということで地域の方々は一抹の寂しさもあると思うんです。そこで、なぜだろうと素朴に思うんですけれども、国にとってのメリットは午前中からずっとお伺いしたんですが、我々国民側にとっては、例えばこういうメリットがあるじゃないかというようなところをひとつお伺いしたいんです。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 裁判所を御利用いただきます地域住民のサイドで考えましても、現在統合の対象になっております裁判所におきましては、事件数が非常に少のうございますので裁判官を実は配置していない庁がほとんどでございます。そういうところでは月に一回あるいは二回、週に一回、二回の裁判官が出向くのをお待ちいただかなげればならないわけでございます。そういたしますと、特定の曜日を決めて参りますから次回期日の入れ方というのも次々先になってしまうわけでございます。 ところが、少し足を伸ばしていただきますと、裁判官が常時駐在しておりますし、職員もかなりございますし、施設も整っております。そういうところへ足を運んでいただきますと、期日もそう先には伸びませんし、回数というのも勢い、今度の法改正によりましてある程度の人的余裕が生じますから、それを受け入れ庁の方に回したりいたしますので人的体制も整います。そういたしますと、従来二回、三回とかかっていたのを一回、二回で済ませていただくというふうにもなりましょうし、先ほど申しました支払い命令につきましても、申し立ててから支払い命令が出るのに一週間、十日かかっておりましたのが一、二日で済むとか、そういう面も出てまいりますので、住民サイドから見ましても今回の統廃合によりますメリットというのが出てこようかというふうに考えております。
○西川潔君 よくわかりました。 しかし、年とってきて、今まで草履履きで、げた履きで行けたものが、着がえて、何年に一回かしょうのう臭い着物を出して、きれいにして行くというのも御年配の方にとってはなかなかかわいそうだとも思うんです。 僕が心配するのは、例えば、遠くなりますと裁判に欠席したり、裁判所以外、特に田舎の方の人たちというのは町の有力者だとか実力者だとか、あんなに遠いところへ行くねんやったら顔役にでも頼んでひとつ話してもらおうとか、九十万円までのことだったら、五十万円までのことだったらというようなことになって、かえって悪い影響などは出ないかなと素朴に思うんですが、このあたりはいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 確かに、現在ございます簡易裁判所がなくなるとなりますと、御不便をおかけするわけでございます。紛争がございます場合に、裁判所のみが紛争解決機関ではございませんでして、例えば、西川委員もよく御承知のように、市町村あたりでもいろいろ相談事業を行っておられます。警察におかれましても相談をやっておられます。そういうところである程度解決するというものもあるわけでございます。 ただ、やはり裁判所があったのがなくなることによって、地方のいわゆる顔役でございますか、名士でございますか、そういう方のあっせんで解決する場合も出てこようかと思います。それが法規に従った、条理にかなった解決であればそれは それで妨げはないわけでございますが、一番弊害はそういう法規にかなわない、条理にかなわない解決がなされるというところに問題があるわけでございます。 私どもといたしましては、そういう点もあろうかと思われますので、必要がございます場合には定期的に、月に一回あるいは二月に一回というように、もとございましたところへ裁判官、書記官が出向きまして、出張いたしまして調停をやる。あるいは審判をやる。あるいはその際に受け付け相談もあわせて行わせていただく。定期的に参りません場合には随時必要に応じて出向いていろいろな仕事をさせていただく。そういうようなことによりまして、御懸念のような事態はできる限り防いでいきたいというふうに考えております。
○西川潔君 ぜひ、よろしくお願いいたします。 僕ら田舎育ちなものですから、例えば、物事、事件が起きましてから駐在所へ参りましても、その駐在所の駐在員に、警察官に好かれる人と好かれない人といるんですね。何を言いに行ってもお願いしに行っても、こちらサイドの言うことは聞いてくれないけれども、実力者の方の言うことはよく聞いて処理も早いというようなことの話も何回かお伺いしたこともありますので、そういうこともひとつ含めまして、今心強い御答弁をいただいたんで、よろしくお願いします。 次に、統合に伴って調停事件を担当する調停委員の配置なんかはどういうふうな影響が出てくるか。というのは、僕もお二人ほどいいおつき合いをさせてもらっている調停委員の方がいるもんですから、そこらあたりもお伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) 調停委員といいますのは、民事の事件を扱います民事調停委員と、それから家庭裁判所の家事事件を扱います家事調停委員と二つございます。実際には、両方兼務していただいている方もございますが、そういうふうに両方あるわけでございますが、便宜あわせて御説明させていただこうと思います。 簡易裁判所が今回統廃合されることによりまして簡易裁判所がなくなる、あるいはその簡易裁判所にたまたま一緒に置かれております家庭裁判所の出張所が廃止されるということが出てくるわけでございますが、調停委員と申しますのは裁判所の非常勤の職員ということにはなっておりますが、これはもともと民間人の良識あるいは専門的知識、経験を紛争解決の手続の中に反映させるということが一番の目的でございます。したがいまして、調停委員は職業とか経験だけではなくて、地域的にもできもだけバラエティーがある方がいいと。いろんな地域の実情を知っていらっしゃる方が、その地域の事件を担当していただくということが一番望ましいわけでございます。そういうふうな点から考えまして、裁判所といたしましては、今までもそういうふうな観点からできるだけ地域的なバランスのとれたような形で調停委員をお願いしてきたわけでございます。 今度、仮に裁判所が廃止されるということを前提といたしましても、調停委員は各地域から選出された方がおいでいただいているということは同じように必要なことでございますので、今度この法案が成立いたしました後にも、現在調停委員をお願いしている方々にやめていただくとかいうようなことは全く考えておりません。今までどおりお仕事をしていただくということを前提に考えておりますし、将来的にも地域のバランスを同じように考えながら調停委員をお願いしていくというふうに考えております。ただ、現実には裁判所がなくなりますので、そこの裁判所で仕事をしていただくというわけにはまいりません。したがいまして、統合されます最寄りの簡易裁判所の調停委員あるいは家庭裁判所の調停委員ということで勤務先を変更するというふうな形になるわけでございます。 ただ、そうは申しましても、先ほどからちょっと総務局長からも話が出ておりますとおり、例えば、廃止されました簡易裁判所あるいはまた家庭裁判所の出張所の地域に随時出張して調停事件を取り扱うということも私ども考えておるわけでございまして、そういうふうな場合にはその地元におられる調停委員にできるだけ御活躍いただきたいというふうに考えておるわけでございまして、今までどおり御活躍いただきたい、そういうふうなのが私どもの考えでございます。 そういうふうに、廃止される裁判所の地元におられる調停委員にとりましては、確かに隣の裁判所まで事件担当のために出かけていかなければならないというある意味では不便をおかけせざるを得ないわけでございますが、一面、統廃合の対象になる裁判所では調停事件も非常に少ないわけでございますが、今度統合される新しい裁判所へ所属がえということになりますと、そちらの比較的大きな裁判所で事件を担当していただくということになりますので、今まで以上に担当する事件の割り当てがむしろふえるのではないかと私ども考えておりますし、あるいはまたほかの調停委員といろんな知識、経験を交換し合っていただくということを考えますと、調停委員の側から見ましてもある程度メリットはあるわけでございまして、通勤のために不便になるというデメリットをその点でできるだけ補っていただきたいということを御説明しております。その点については各地の調停委員も大変よく御理解していただいておりまして、今後ともそういうふうな裁判所の扱いに協力していただけるというふうな見通してございます。
○西川潔君 最後に、もう一つお伺いしたいんですが、もう一度改めましてアフターケアの問題なんですが、定期的に巡回していただくということですが、それはずっと続けていただけるものなんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) アフターケアの問題といたしまして、全般的に御説明申し上げますと、これは民事、家事が中心になりますが、私どもとしては、一番大きなものとしては先ほどから申し上げておりますいわゆる出張による民事調停事件の処理、それから家事でございますと審判事件とかあるいは家事調停事件の処理ということを考えております。これはやはり地方公共団体の方からも、今度廃止されるような場合にはぜひとも自分ところで提供する施設に定期的に出張してほしいというふうな申し出をしているところがかなり多うございます。これは調停をやります際にはやはり地方公共団体の公の施設をお借りするというようなことになろうかと思います。 例えば、市民会館の一室をお借りするとか、公民館といいますか、そういうふうな施設をお借りするとか、あるいはまた区役所、市役所ですか、そういうふうなところをお借りしなければならないということもございますので、地方自治体の御協力を得ないとできないわけでございますが、そういうふうな御希望をいただいているところではいろいろと御協力いただけると思いますので、この法律が成立いたしました後に、私どもの方としては各地方裁判所、家庭裁判所ごとにそれぞれの地方自治体と相談いたしまして、具体的な出張の計画等を定めていきたいと思います。 これは事件の多い少ない等がございますので、あるところでは毎週一度というふうにセットできると思いますが、非常に事件の少ないところでございますと、例えば月に一度ということにならざるを得ないところもありましょうし、特に事件が少なければ随時というような形にならざるを得ないというふうなところがあろうかと思いますが、それは裁判所の事件量の見通しとか実績を見ながら一つ一つきめ細かに決めさせていただきたい、そういうふうに考えておるわけです。 それから、ついででございますので、それ以外のアフターサービスというものにもちょっと触れさせていただきますと、今のように裁判所から出向いていくというのが一番いいわけでございまして、その機会に受け付け相談等のサービスもしたいと思っておりますが、そのほかに、常時おるわけではございませんので、例えば、市町村の方で希望等がございますれば市町村役場でありますとか、あるいは警察署の相談窓口に裁判所からの、 素人の方でも比較的記入しやすいような申し立ての用紙でありますとか、その記載例等を備えつけておくというようなことも考えております。 それから、民事の訴訟事件については今まで説明いたしておりませんでしたが、司法委員といいまして、裁判官を補助して和解等を進めていただく、やはり民間の方からお願いした委員というのがございます。そういう方々に訴訟事件について、例えば現地で和解をしていただくためのいろんな仕事をしていただくとか、そういうようなこともできるだけ行っていきたいというふうに考えておりますし、それから、現在もこれはやっておることでございますが、遠隔の方々からは電話でいろんな相談があるということもございますので、そういうようなことについてもできるだけ窓口を充実しまして、当事者の方からの相談に応ずるような体制をつくり上げていきたい、そういうふうに考えております。 そういうふうなことが一応アフターケアの全般として御説明申し上げることができるかと思います。
○西川潔君 どうもありがとうございました。 それでは次に、一般質問に移ります。 いつもはお便りをいただきましたら必ずお返事を出さしていただいているんですけれども、今回も僕みたいな者ですが、親しみを持って送ってくださったんですけれども、遺言書のことなんです。島根県の方からいただいておるんですが、実は、遺言で農地を三人の兄弟が相続したけれども、遺言書の文言でどこそこの土地を遺贈すると記載されており、農業委員会の許可がもらえずに登記ができなくて困っている。 まず、この場合に、登記が受けられない理由を説明していただきたいんですが、よろしくお願いします。
○政府委員(千種秀夫君) 農地が絡んでおりますために若干複雑になっておりますけれども、相続の遺贈につきましては農地でなければそんなに難しい問題はないわけでございます。相続の場合に、個別の財産をだれだれに遺贈すると具体的に遺言の中で指定をする場合と、ただ相続でどういうふうに分けるという分け方を指定する場合と両方あるわけでございますが、具体的な物件をだれだれにやるというのは個別の物件の移動なんでございまして、相続は意思表示がなくても、死んだことによって後は法律の手続で財産が承継される、そういうふうな区別がございます。これは民法の問題でございますね。それで、農地法に絡んでまいりますと、実はこういう問題がございます。 農地法は、耕作者の地位を安定させるという目的で、農地委員会というものが許可を与えるような手続になっておりまして、どういう場合にその許可が必要かということは、一般の相続の場合は許可は要らないんでございます。特定の物件を、所有権を移転する場合には農地法の三条というところで、果たしてこの人が適格な耕作者であるかどうかというようなことを審査するために許可が要ることになっております。そこで、遺言の中にある農地を遺贈するというふうに書きますと農地委員会の許可が要るということになってきてしまいます。 ところが、遺言をよく読んでみますと、実は具体的には書いてありますけれども、これは相続のやり方を指定したものだというふうに読める場合もあるわけでございます。特に、相続人に対して遺贈するという場合には大体そういう場合が多いんでございます。ところが、相続人でない人に、例えば子供は全部都会に行ってしまっておるから耕作する人がない。相続人ではないがおじとかおいとか、そういう人が村におるからそれにやろう、こういうことになりますと、これは本当に文字どおり遺贈なんでございますけれども、相続人の中に三つに分けろと、この土地はおまえ、この土地は次男にやる、こういうのはどっちかというと遺贈というよりは相続財産の分割の方法を指定したというふうに理解できるわけでございます。そういうふうに理解される場合は、遺言の指定した方式に従って相続人が遺産分割の協議書というものをつくりまして、それで相続の登記をすれば農地法の許可は要らないわけなんでございます。 そこで、ひとつ登記手続のことが絡んでくるわけでございますが、登記所というのは、これは形式審査主義といいまして、申し立てた方々の形式に従って審査をしておりまして、本当にこの人が権利者であるかどうかというようなことは決められた文書以外には審査をしないことになっております。そうしないと、登記所は一々裁判所のような審査をしておりますと毎日登記所の事件が山になってしまいまして進みませんものですから、そういう形式審査の原則からいたしますと、申請書に遺贈と書いてありますと遺贈の手続によらないと登記を受け付けないんでございますね、仮に遺言によって遺贈と書いてありましても。遺贈の手続によりますと、さっき申しましたように農地法の手続によって許可が要ることになっておりますから、それで許可書を持ってこないと登記ができない、こういうことになってしまいます。
○西川潔君 じゃ、これ無効ですね。
○政府委員(千種秀夫君) はい。ですから、そういう場合には実態に即して改めて協議書をつくっていただいて相続の手続をしていただけば、農地法の手続なしでも登記ができるはずだと私は考えております。
○西川潔君 この三人の息子さんにということなんですけれども、この場合、二人が農業をやる、お父さんの跡を継いで農業をやりますが、一人がどうしてもサラリーマンをやりたいということで、ばらばらになった場合はこれはどうなるんでしょうか。
○政府委員(千種秀夫君) 御質問の前提に、三人に農地をそれぞれやるという遺言があったという前提だと思いますけれども、そのお一人がいやだという場合には改めて協議をし直して、分割をし直しまして、二人が農地をもらい、ほかの人は放棄するなり別なものをもらうなり、そういうことによって登記することもできます。また、一人は放棄をするということもできます。また、遺贈は放棄することもできますので、遺贈に従いましても、その人はもう自分は農家ではないから遺贈は放棄いたしますと言えばその分はなくなるわけでございまして、あとの二人が登記を申請すれば遺贈でも登記ができるはずでございます。
○西川潔君 はい、わかりました。 よくわかるように説明していただきましてありがとうございました。早速お答えにして送ってあげたいと思います。 本日はこれで終わらしていただきます。ありがとうございました。
○委員長(三木忠雄君) 本案に対する審査は、本日はこの程度にとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時二十九分散会 —————・—————