農林水産委員会 第8号
- 発言数
- 319 件
- 登壇者
- 21 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 1987/09/17
会議録
○委員長(岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 去る十日、及川一夫君が委員を辞任され、その補欠として高杉廸忠君が選任されました。 また、去る十一日、本岡昭次君が委員を辞任され、その補欠として八百板正君が選任されました。 ―――――――――――――
○委員長(岡部三郎君) 流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案を議題といたします。 本案については、既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○菅野久光君 議員提案ということで、宮崎先生、白川先生、御苦労さまでございます。 つい二、三日前の新聞でも香川や徳島でまた毒を塗布したチョコレートがまかれたというような事件等もありまして、流通食品への毒物の混入によって食品企業を恐喝して社会不安を起こすというようなことで、警察庁指定の第百十四号事件、いわゆるグリコ・森永事件が発生して以来四年目に入った今も、これはもう完全解決をしていない。そういうことから、この種事件がまだまだ多発をしているような状況ではないかというふうに思うわけであります。今回のこの法案の中身を見ますと、刑法の一部改正というような中身ではないかというふうに見れば、これが農林水産委員会で審議をするというのはちょっと、まあ私どものような門外漢であるだけにどうかなというような感じはするわけでありますけれども、しかし、それはそれとして、私どもの委員会に法案が付託されたわけでありますから、私どもの責任でこれをしっかり審議をしていかなければならないと、このように思っております。 この種事件の解決に当たっては、警察には大変な御苦労もあるというふうには思いますけれども、国民の側から見れば警察は一体何をしているかというのが偽らざる気持ちではないかというふうに思うわけです。いまだにこの問題が解決しない、その原因は一体どこにあるのかということについて、まず最初にお尋ねをいたしたいと思います。
○説明員(古川定昭君) お答えいたします。 グリコ・森永事件につきましては、大阪、兵庫、京都及び滋賀の各府県警察を中心にいたしまして全国の警察を挙げて当面の最重要課題として似顔絵の男の割り出し、それから犯人が使用したタイプライターの特定、無線機等遺留品の捜査等鋭意推進中でありますが、本事件は犯行時間帯が夜間であることが多く、犯人が車両を使っていることなどもあって有効な目撃情報がないこと、遺留品につきましては大量生産、大量販売されているものでありまして、物からの捜査は極めて困難である、それから犯行に盗難車を使用している事情がある、また犯人特定の証拠を残していないということなどから、捜査は長期化しているところでございますが、警察といたしましては、現在におきましても本事件を解決するために日夜努力をしておる現状でございます。
○菅野久光君 消費者を人質にとるような、こういう悪質、そして卑劣な企業恐喝事件の再発を防止するためには法律の力をかりるよりは、まず、その犯人逮捕をすることがこの種事件の唯一といってもよい再発防止策ではないかというふうに思うんです。そんなことをすれば必ずつかまるぞと、こういうことがあれば再発を防ぐことができるのではないかというふうに思います。それだけにこのグリコ・森永事件は絶対に迷宮入りをさせてはならない。当然のことでありますけれども、警察は犯人逮捕に総力を挙げてもらいたいというふうに思います。 今若干のお話もございましたが、捜査の進展状況と犯人逮捕についての警察当局としてのぜひ自信のほどをひとつここでお聞かせいただきたいというふうに思います。
○説明員(古川定昭君) 見通し、決意ということでございますが、ただいま申しましたように、警察にとりまして、また現代の社会に対する最大の挑戦であるということに対しまして、当面の最重要課題として取り組んでいるところでありますが、必ず検挙するということで現在も引き続き約六百名の態勢をもって捜査に専従しておるという現状でございます。
○菅野久光君 国民のこの種再発防止にかける期待に必ずこたえてもらうように全力を挙げてひとつ頑張ってもらいたい、そのことをまず申し上げておきたいと思います。 次に、本事件が発生してからこれに便乗あるいは模倣した犯罪、いわゆる食品企業等の恐喝事件が多発しておりますが、現在までのこの種の犯罪の認知及び検挙件数等についてわかっていればひとつお聞かせいだだきたいと思います。
○説明員(古川定昭君) 毒物混入犯罪につきましては、発生、検挙状況ということでお尋ねでございますが、六十年四月からこの種の統計をとっておりますが、警察庁に報告のありました事件につきましては、現在までに百十二件ございまして、パラコートとか青酸カリ、殺虫剤その他を混入しておりまして、それぞれ件数はパラコートが一番多い件数を示しておりますが、現在までにこの事件につきましては残念ながら六件の検挙にとどまっておるという状況でございます。
○菅野久光君 事件が多発しているけれども、検挙件数は極めて少ない。それだけに非常に難しい面があるんだろうと思いますが、その検挙したものの中の対象業種だとか、あるいは手口あるいはこの種の犯罪の動機だとか、犯罪者の職業だとか、そういうことがわかっていればちょっとお話いただきたいと思いますが。
○説明員(古川定昭君) なかなか検挙してみませんといろいろ詳細なことは判明しないわけでございますが、これまでに検挙した事例で見てみますと、昭和六十年九月に東京都内で発生しておりました事件でありますが、ギャラリーの社長と女性店長の二人に青酸カリ入りコーヒーを飲ませて殺害しようとしたそのギャラリーの女店員を検挙した事例、あるいは同年十月に京都府で小学校に侵入しまして児童の水筒や職員室のやかんにパラコートを含有する除草剤を混入した女性を検挙した事例、同じく六十年十一月に香川県で発生しました内縁の夫にスミチオン入りコーヒーを飲ませて殺害しようとした女性等を検挙した事例がございます。 動機その他についてはいろいろそれぞれについて異なると思いますが、検挙事例が先ほど申しましたように、残念ながら少ないものですから、一般的にどうだということはなかなか申し上げにくいところでございます。
○菅野久光君 特定の何というか、類型というか、そういうことがなかなか検挙件数が少ないだけに特定できない。そこにまた難しさがあるのかもしれません。また、あれほど産業社会を不安に陥れましたグリコ・森永事件でありましたが、聞くところによると、この事件後も多くの企業は対応組織やマニュアルを持っていないということのように聞いておりますけれども、この種事件に対処するにはまず企業自身の努力も重要だというふうに思いますが、流通食品関係企業の自助努力について農林水産省はどう把握しておるのか、お伺いをいたしたいと思います。また、今後どう指導をするのかもあわせてお願いいたします。
○政府委員(谷野陽君) 農林水産省といたしましては、この種事件の食品流通秩序に及ぼします影響の重大性にかんがみまして、グリコ・森永事件発生以来、関係企業及び業界に対しまして食品製造業や流通業のいろいろなプロセスで外部から毒物が混入されることがないように、製品管理あるいは商品管理に万全の注意を払うように要請をしてきておるわけでございます。 ただいま先生御指摘のとおり、これらの企業におきましても、みずからこのような問題について対応するようにという意識は大変強く持っておるわけでございまして、例えばある菓子企業におきましては容器の開閉部に熱で縮むシュリンク包装というようなものを採用いたしましたり、あるいは飲料企業では開栓と同時にキャップが裂けまして復元不可能となるようなプルトップキャップに転換するような食品の包装の改善も行っておるわけでございます。また、このほかにいろいろなプロセス、つまり輸送の段階でございますとか、あるいは店頭に陳列をした段階でございますとか、そのような段階において巡回の回数なりあるいは受け渡しの適正化についての部内でのマニュアルを見直す、こういうようなことで個々の企業で努力をいたしております。これらはそれぞれ相応のコストがかかるわけでございますが、各企業におきましてみずからそのコストを吸収して、そのように今申し上げましたような対策に取り組んでおるというのが実態であるというふうに承知をいたしております。
○菅野久光君 昭和六十一年の十月号ですが、東洋経済の統計月報というのが出ておりまして、それで見ますと、対応組織の有無ということでいろいろな業種があるわけですけれども、五百六十四社のうち、対応組織があるというのは五十二社なんですね。これは昨年の十月号ですから、一年前ですから、その後においてもっとふえたのかもしれませんが、しかし、このグリコ・森永事件が出て一年たって対応組織の有無がこんなような状況です。食品の関係だけで見ますと、あるというのが六社で、ないというのが十社、検討中が六社、必要なしが一社で、全部で二十三社のうちそんなような状況になっております。そんなことなどを考えていきますと、この企業自体の対応組織といいますか、そういったようなものについてもまだまだその自助努力あるいは農林水産省としての指導といいますか、これは農林水産省だけでなくて、通産省もかかわる問題かと思いますけれども、そういうのが足りないのではないかというふうに、思います。 この調査の中に書いてあるので非常に参考になることが書いてありましたのでちょっと読み上げてみますが、四年前の、六十一年の四年前ですから五十七年ということになりますが、 米国はシカゴでその事件は起こった。J&J社の子会社で製造された解熱鎮痛剤「タイレノール」を飲んだ人びとが次々倒れ、一週間以内に同地区だけで七人もの死者を出した。何者かが青酸カリを混入したためである。脅迫もなければメッセージもないため、犯行の目的等はいまだにわからず、事件は迷宮入りとなった。 この際、J&J社側は生産を停止し、製品を全面回収した。社長以下七名で構成する「戦略対策委員会」を設けて連日対応策を協議するとともに、消費者や医師に対する積極的な呼びかけ等の”戦略広報”を実践した。これらの諸費用は一億ドルを優に超えたが、事件前の三五%から七%以下に落ち込んだタイレノールのシェアは、わずか半年で二九%にまで回復するにいだったのである。 J&Jのクレア社長は事件後「当社の経営理念”四つの責任”にもとづいて行動した結果だ」と繰り返した。四つの責任とは、まず①「消費者」に対するものであり、次で②「社員」に対するもの、三番目が「社会」に、そして四番目 が「株主」に対するものである。依るべき基準が あると強い。 それから二年後にこのグリコ・森永事件が起こったわけですね。ですから、企業自体の自主努力と同じように政府関係機関の指導ということも、こういったような例もあるわけですから、非常に大事ではないかというふうに思いますが、その点いかがでしょうか。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘のとおり、これらの行為というのは、企業の段階、つまり製造業者もしくは販売業者の段階にある商品というものに対してある種の行為が行われ、それが結果としては消費者の皆様の御不安あるいは安全に対する問題になる、こういうことでございますから、企業といたしましてもみずからの営業という観点からいたしまして、そのようなすきのないように、あるいは問題が発生いたしましたときに対応することについての検討というのは極めて重要であろうというふうに考えておるわけでございます。それに対する対応といたしまして、私ども従来から企業に対して申してまいりましたことは、日常業務の遂行の中でいろいろな問題を改善していくということを中心に申してきたわけでございます。これはこの種の問題を防止するという観点から行ってきたわけでございます。 ただいま御指摘の点は緊急事態が発生をした際の問題だろうというふうに考えておりますが、御指摘のように緊急事態に対する対応というものは我が国においては必ずしも進んでいなかった。それに伴いまして、過去において二、三連絡その他について十分でなかった事例がないわけではないというふうに私ども考えておるわけでございます。今後、今御指摘のような緊急事態の問題につきましても、従来から警察庁等からの話もございまして対応した例はあるわけでございますけれども、さらに検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
○委員長(岡部三郎君) 質疑の途中ですが、この際、委員の異動について御報告いたします。 ただいま高杉廸忠君が委員を辞任され、その補欠として山本正和君が選任されました。 ―――――――――――――
○菅野久光君 かつて流通食品への毒物の混入事件を防止することを目的とした立法化の動きが出てきたときに、グリコ・森永事件の犯人を逮捕できない警察の責任を法案ですりかえてはならない、そういう厳しい声があったことは御承知のとおりであります。これは時間がたつに従って犯人を逮捕できないことに対する国民のいら立ちから出てきたものというふうに思いますが、新しい法律を制定したからといって、既に発生したこのグリコ・森永事件の犯人を逮捕した上でこの法に従って厳罰に処することは、これは法の不遡及の大原則からいってできないわけです。したがって、本法案は今後のこの種事件の再発を防止することが目的なわけですが、警察庁としては経験則からいって本法案が成立した場合に、この種事件の防止にどの程度の効果を発揮するというふうにお考えか、その点をお伺いいたしたいと思います。
○説明員(古川定昭君) 本法案の内容を拝見いたしますと、製造業者等に対する捜査機関への協力の規定とか、あるいは警察官等への届け出等の規定が予定されておりまして、それらの規定に基づいて法案の予定されております効果が発揮されますと、警察といたしましてはこの法案の制定によりまして相当の意義を有するものではないか、またそれが検挙に結びつき、あるいは防犯的な、あるいは抑止的な効果が上がるのではないかというふうに理解しているところでございます。
○菅野久光君 直ちに効果が期待できるようなものでないことは、これは常識的にやっぱり考えられることではないかというふうに思うんですが、しかし一度この種の事件が発生すると、グリコ・森永事件でも明らかなように、関係企業のこうむる損失は莫大なものになって、原状回復は非常に困難なものであるというふうに言われております。特に中小下請企業への影響は大変大きくて、中には倒産する企業も出るほどの危険性もあるわけです。五十九年三月のあのグリコ・森永事件によって中小下請企業にどのような影響があったのか。また、その際中小企業庁がとった措置として、信用保険上の特例措置の適用と中小企業体質強化資金助成制度を発動したということを聞いておりますが、その内容を具体的にお伺いをいたしたいというふうに思います。さらにどのような措置をとったかもあわせてお答えいただきたいと思います。
○説明員(市川祐三君) お答え申し上げます。 通産省といたしましては、先生御指摘のように、森永製菓の問題につきまして関連中小企業者への影響を緩和するという観点からさまざまな施策を講じたところでございます。 まず一番問題となりますのは、仕事の減少ということに伴いまして資金繰りの問題において経営上の圧迫が起こるというようなことも考えられます。そういうような観点から、まず中小公庫、国民金融公庫、それから商工中金に対しまして個々の企業の実情に応じまして積極的に融資を対応するというようなことをまず指導したところでございます。それから、中小企業の場合で申し上げますと、必ずしも金融を受けるという場合におきましても物的担保能力、あるいは人的な担保能力におきまして十分ではございません。したがいまして、そのような措置を補完するという観点から信用保険法に基づきますところの特例措置を講じましたところでございます。 内容といたしましては二つございまして、まず森永関連の中小企業者に対しましての信用保険上の特例措置、さらにそのような関連中小企業以外でも例えばチョコレートあるいはビスケットなどをつくる、あるいはこれを販売するという事業に対しましても同じような影響が考えられるというところから、これらに対しましても信用補完上の措置を同様に講じたところでございます。さらに、特に経営安定上の問題がある場合におきましては、各県で行っております体質強化資金という制度がございます。その資金の制度の活用を各県にお願いしたところでございます。これによりまして低利融資を行うという制度を発動したわけでございます。さらに、関連中小企業者に対しまして、これは金融措置以外にも仕事をあっせんするというようなこともございます。 そういうような観点から関連中小企業者における下請取引のあっせんにつきまして各都道府県の下請企業振興協会を通じまして下請のあっせんを行ったというところでございます。
○菅野久光君 これはグリコ・森永事件に限って言えば、この種事件については特例的な取り扱いといいますか、そういうことを通常の貸し出しということじゃなくて、特例的な、どこか中小企業庁かどこかでそれを受けて、それを借りたいという金融機関に対して指示をするといいますか、そういうことをやったということでしょうか。
○説明員(市川祐三君) まず、中小公庫、国民金融公庫、さらに商工中金に対しましての指導でございますが、この指導を行いました結果、それぞれの金融機関の窓口におきましてそのグリコ・森永事件における被害ということを十分勘案した上で積極的な対応をしてもらったというふうに承知しているところでございます。 それから、信用保険上の措置でございますが、これにつきましては、まず森永関連の中小企業につきましては、親企業が何らかの理由によりましていろいろ経営上の問題が起きた場合におきまして、一定の要件を満たす場合におきましては信用保険上の特例措置の適用があるというのは一般的にございます。それから、同様にチョコレート、ビスケットなどの販売業につきましても、いわゆる不況業種というような観点からの指定をなされた場合におきましては信用保険上の措置が受けられるわけでございます。したがいまして、信用保険につきましては、既存の制度を活用して対応し たということであろうかと思います。
○菅野久光君 企業にとってはこの種のものがあって買われないということによって市場におけるシェアが低くなるわけですね。そうなりますと、そこに今度は他の企業の商品が入ってくるということになってそのシェアを回復するということはなかなか困難だ。先ほどのJ&J社の場合も大変な努力をしてややもとのシェアに近いぐらいやったわけですけれども、自由競争の世界でありますから、片方のシェアが落ち込めば当然ほかの社が入ってくる。しかし、このことがある程度その企業にとってはこれはもう大変なことになるわけですね。このシェアの確保という問題ですね。こういう被害を受けたところについて、そういうシェアがなくなった、しかしそれがある時点で解決、まあ解決をしたと言っていいかどうかは別にいたしましても、再びその販売競争の中に参入をしていくような場合に、一度失ったシェアはなかなか回復できないということがまたその企業にとって大変なダメージになっていくわけですね。このようなことについて、これは全く特殊な犯罪によってそういうことになっていくわけですが、このようなことについて何らかの措置が講じられないのかどうか、その辺についてはどうでしょうか。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘のように、グリコ・森永事件の場合には、特に森永の製品につきましては一時店頭から姿を消す、こういうような事態に立ち至ったわけでございまして、森永は経営上も大変苦しい立場に立ち至ったわけでございます。それで、その際に私どもといたしましては、このような事件に対応している森永に対しまして社会的な皆様方の御理解を得、かつその経営の立て直しの一助となるようにということで森永製品の販売、いわゆる袋詰め製品でございますけれども、等を行いまして、その操業の維持、雇用の確保等を図ったわけでございます。もちろん、これでは必ずしも十分なわけではございませんで、かなり操業度も低下をしたわけでございますが、このようなことにつきまして各方面から御支援をいただきましたことは当該会社にとりましても大変力強いものであったというふうに私どもは考えておるわけでございます。 その後の状況でございますけれども、当時、森永の製品が販売が減ったというだけではなくて、菓子業界全体としてお菓子に対する信頼性がなくなったのではないかと思われるくらい売り上げが伸び悩み、あるいは低下をいたしております。菓子業界は一社の問題と考えずに、全体の問題としてこの問題に取り組んで対応を検討をいたしておったような事態があったわけでございます。その後、事態が鎮静化をするにつれまして徐々に市場も回復をしてまいりました。森永製菓の場合にもようやく前期に復配をするに至ったわけでございます。お菓子は大変種類が多うございますものですから、一つ一つのシェアという問題を計数的に申し上げるのは大変困難でございますけれども、私どもの見るところ、おおむね事件前の状態に近づいてきておるのではないかというような印象を持っておるわけでございます。
○菅野久光君 特別立法をするという趣旨からいけば、その辺のこともいろいろ今後考えていかなければならないものではないかなということから質問したわけであります。 政府は、ここに提案されている法案の内容については、恐らく現行法に飲食物への毒物混入罪がないことから本法律を制定することには一定の評価をしているとは思いますけれども、そうであるとすれば、政府提案が非常に多い中でなぜこれほど重要な法律案を政府提案しなかったのかということについてお聞きをしたいというふうに思います。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 政府提案にしなかったのかというようなお話でございますが、御承知のように、あの当時のことを考えてみますというと、非常なセンセーショナルな事件でございまして、国民の生命を人質にして、そして社会不安を惹起するといったような問題でございましたので、やはり何といってもこれは我々国会におる者が率先して対抗策を講じなければならぬのじゃないかということで、皆さん各省の方々もお集まり願いまして、いろいろ協議をいたしました。そのうちに、自由民主党といたしましても、党内に委員会を設けましていろいろな議論をしたわけでございますが、とにかく刑法だけの改正ということじゃなしに、あらゆる政府の機能、そしてまた国民の協力も得まして、こういったものは絶滅しなきゃならぬだろうということで、総合的なこういう法律案をつくるということになったわけでございまして、政府の方としては、私どももよくはっきりしたことはわかりませんが、私の感じておりますところは、まあ党の方で一生懸命各省関係でやっておられるから不離不即で見守っておられたのではないか。これは私の推測でございますが、そのように考えておりますし、私どもとしてはやはり国民的な不安を除去するために、その点が現立法に欠けておりますので、どうしても総合的な立法をすべきだ、こういうことでやったわけでございます。
○菅野久光君 提案者であります宮崎先生からのお話は、議員立法という形で、これは立法府でありますから議員として必要だ、どうしてもこれは早急にやらねばならぬという御決意のもとにやられたことについては私もわからないわけではないんですが、日本の国は残念ながら我々立法府で議員提案という形が非常に少ないものですから、そういう意味でなぜ政府がこれほど重要なものを提案しなかったのかということで申し上げたわけですが、きょうは加藤大臣もちょっとお見えでございませんから、この点についてはよろしゅうございます。 それから次に、本法案の内容についてちょっとお伺いをいたしたいと思いますが、その前に毒物混入等によって一般市民が死亡等の被害を受けた場合の救済制度として、昭和五十六年一月一日施行の犯罪被害者等給付金支給法、これがありますが、「人の生命又は身体を害する犯罪行為により、不慮の死を遂げた者の遺族又は重障害を受けた者に対して、国が犯罪被害者等給付金を支給する」ということになっておりますが、これはいたずら半分の気持ちで食品に毒物混入等をして他人に障害を負わせた場合にも本法の適用はあり得るのかどうなのか。もしないとすると他の救済制度としてはどのようなものがあるのか。それをまずお伺しておきたいと思います。
○説明員(松田和雄君) お答えいたします。 この種の犯罪によりまして被害に遭い死亡した場合は犯給法の適用はあるのかという御質問でございますけれども、毒物あるいは劇物等を流通食品に故意に混入するなどいたしまして死亡または重度の障害を負う事案が発生した場合におきましては、通常その被害者の遺族または本人に遺族給付金または障害給付金、これが支給されることになります。
○菅野久光君 それでは、本法案の内容について二、三伺いたいというふうに思います。 まず通産省にお伺いをいたしますが、本案の第八条、これによりますと「国又は地方公共団体は、」こということで、最後の方に「製造業者等に対し、必要な指導、助言、資金のあっせんその他の措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうにありますが、通産省としてはこの規定によってどの程度の措置をとることができるのか、それをお伺いいたしたいと思います。
○説明員(市川祐三君) 通産省のこの法案の八条に基づく措置はいかなる措置があり得るかということでございますが、まず通産省の立場から申し上げますと、これは食品の流通及び製造、販売、そういう流通に関係したことは基本的には農水省さんの御所管でございますが、通産省の立場からは中小企業の経営安定という観点からの対応があろうかと思います。その限りにおきましてとり得る措置といたしましては、先ほど若干御説明申し上げましたが、グリコ・森永事件において講じました措置をもう一度繰り返しますと、中小公庫、国民金融公庫あるいは商工中金に対しまして、 個々の事情に応じまして積極的に金融措置を講ずるように指導したということ、それから中小企業者におきますところの信用能力を補完するという観点から、森永関連中小企業、それからチョコレート、ビスケット等の製造あるいはその卸業に対しますところの信用補完制度を発動したということ、さらには体質強化資金の制度の活用をした。仕事の面におきましては下請取引をあっせんすべく、都道府県の下請企業振興協会を通じまして所要の措置を講じたというところでございます。 これは森永事件のような非常に極めて重大な事案の場合に講じた措置でございますが、いずれにせよその個々のケースに応じまして対策を講じていくということになろうかと思いますが、このグリコ・森永事件におきまして講じました中小企業対策という観点からの対策は、今後この法律ができましたときにいかなる措置を講ずるかというときには十分参考になるのではないかというふうに考えております。
○菅野久光君 これは法律できちっとこういう形で出されているわけでありますから、通常の形での資金のあっせんだとか、そういったようなこと等とは対応はどのように違いますか。
○説明員(市川祐三君) 実際個々の案件に応じて判断しなくてはいかぬという問題であろうかと思いますが、今申し上げました金融上の措置あるいは信用補完上の措置、それから経営安定上の低利融資の問題、さらには取引あっせんの問題といいますのは、いわば今中小企業庁におきまして下請企業あるいはそれ以外の企業に対しましてとり得る経営安定上の措置といたしましては最大限の措置であろうかと思います。これは利用実績等を見ましても、グリコ・森永事件におきまして相当程度活用されたということもございまして、一応この措置のとりあえずは範囲の中でもって対応するということで、事案に応じてはまた別のことを考えなければいかぬということもあろうかと思いますが、とりあえずはこれで対応できるのではないだろうかというふうに考えております。
○菅野久光君 実際にこういったような状況に陥ったときに、経営者の方はいろいろな点でやはり何というんですか、困惑をして、どうしたらいいかわからないような部分が出てくるんじゃないか。そういうときに、やはり法律の条文にもきちっと書かれていることなだけに、指導をもっと懇切丁寧に、いわゆる言ってきたらやるということじゃなくて、むしろその企業、個々の関連する企業に対して、あなたのところはどうだというような、そういったようなことがあって、その相談にしっかり関係機関が乗っていくというようなことが必要ではないかという私は思いで言っているんですが、その辺はいかがですか。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘の点につきましては、グリコ・森永事件の際もそのようなお話がございました。グリコ・森永事件の際に内閣に関係政務次官によります会合が開かれて、対応策が検討されたわけでございますが、その際ただいまありましたような政府関係機関について中小企業庁の方で十分御手配をいただくということに加えまして、企業関係のいろいろな要望その他についての窓口は、これは食料品の問題でございますので私どもの方が担当いたしましてそのような施策があるということを、例えば菓子の関係団体等を通じまして関係者に周知徹底を図ったわけでございます。その結果、先ほど中小企業庁の方からお話がございましたように、相当額の融資が実際に行われたという例がございますので、今後この種の問題が起きましたときにも、そのような先例を十分踏まえまして対処してまいりたいというふうに考えております。
○菅野久光君 一度残念ながらこういったような経験があるわけですけれども、どうもお役所と言えばやっぱり座っていて来るのを待って、来たやつについてどうこうというのが役所に対する国民のイメージなんですね。やっぱりこの種の問題については役所の方が積極的に出かけていって相談に乗るというようなことがこの法案を出している私は趣旨ではないか、この条文の趣旨ではないかというふうに思うので、その点、今後あってはならないことですけれども、仮にあったとしたらぜひそういう態度でやってもらいたいということを要望しておきたいと思います。 次に、本法案の一条に「流通食品への毒物の混入等を防止するための措置等を定める」と、こうありますが、この「措置等」というのは具体的にはどういうことを考えておられるのか、それを伺いたいと思います。
○衆議院議員(白川勝彦君) お答えいたしますと、流通食品への毒物の混入等を防止するための措置、まずこれがやはりできるだけ徹底されないことにはこういう犯罪を防止できないわけでございます。そういう意味では第一に毒物、劇物の管理体制、こういうようなものをどうしてもやっていただかなきゃならないわけでございます。ただ、この社会には毒物、薬物というものはいっぱいございまして、かつまた工業製品その他ではかなり幅広く使われておる。そういうケースもございますので、そういたしますと単に毒物、薬物だけの管理ではならないであろうと。そういたしますと、例えばグリコ・森永事件なんかでも相当強力な一つの資料は提供したようでございますが、防犯カメラの設置であるとかいうようなことも、大変犯人その他に対しては大きなプレッシャーになろうかと思います。 さらに申し上げたいことは、流通食品のこん包その他でいわゆる第三者が毒物等を混入するというようなことができにくい状態、もしそのような犯罪が行われたとしたならば直ちにわかりやすいような包装、こういうようなこともこの事件を機にいろいろと工夫されたり考え出されているようでございますが、こういうことに対するいろいろな基準を決めるとか、あるいは技術を開発するとか、二、三の例を申し上げたわけでございますが、これらのことは専門家がさらに検討したならばいろいろあるのではないだろうか。そういうことを含めて「措置等」と言わせていただいたわけでございます。
○菅野久光君 「措置等」という「等」は非常に範囲の広いものだということで、それで具体的にどのようなことを考えておられるのか伺ったわけですけれども、いずれにしろ今もお話がちょっとありましたが、例えば包装一つにしても、それが塗布あるいは混入されたというような状況ですね。こういったようなものがわかるような包装というようなお話などもありましたが、今後こういったような犯罪をなくしていくためにこの種のものをどういう措置をすることがいいのかというようなことについての、何というのでしょうか、研究会といいますか、指導といいますか、そういったようなことについてはお考えでしょうか。それをちょっとお伺いしたいと思います。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘がございましたように、毒物がある過程で混入をされるということと、包装なり監視体制ということは大変密接な関係があるわけでございます。先ほど御指摘がございましたアメリカの事故の後でも、アメリカにおきまして包装についてこういうようないろいろな方式をそれぞれの実態に応じて適用したらいいのではないかと、こういうようなことの検討などがなされて、私どももそれを手に入れまして参考にいたしておるわけでございます。 これは食べ物、いろいろな商品形態がございますので、それぞれの形態あるいは単価等によりまして対応の方法も違うわけでございますし、何分人間がやることでございますので、これを非常にコストをかけてまねをしようと思いますと、それは絶対というものはなかなか難しいような方式もあるわけでございますけれども、私どもも今までの過程におきましてそれぞれ発生した事態を見まして、そのときそのときに一つずつ新しい方式等を示唆いたしまして改善を加えてきておるわけでございます。今後におきましてもいろいろな包装技術の発展等もあるわけでございますので、さらにこのような方面につきましての研究開発あるいはそのような技術の普及について努めてまいりたいというふうに考えております。
○菅野久光君 措置等を定めるとともにこと、こうあるんですが、今の若干例示的に申されたようなことがいろいろあるんですが、それを関係法律だとか、あるいは条例だとか何か規則だとか、そういったようなことに、その「等」ということでいろいろ考えられるというようなことは盛られているものもあるのかもしれませんが、これから盛るという、そういったようなお考えで「定める」ということになるのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 第一条は目的でございますので、この法律にこれから追加するとか、そういった問題ではございません。要は現在各省庁が持っておられますあらゆる法律がございますが、その法律を運用してそしてこういったような事件の再発を防ぐためにあらゆる努力をしていただきたい、そういった意味を含めて目的として書いてあるわけでございます。
○菅野久光君 関係するそれぞれの法律の中で、この目的に沿うような形でそれが運用されるといいますか、そういったようなことになっていくんだろうということだと思いますが、それでは本法案の二条の一項におきまして「「流通食品」とは、公衆に販売される飲食物をいう。」と定義されておりますが、「公衆に販売される」とは具体的にどういう意味なのか、それをお伺いいたしたいというふうに思います。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 通常は、飲食物が公衆の販売の用に供するような状態になってから最終の消費者に渡るまでの間、あるいは保管とか輸送とか、そういった期間もあるかと思いますが、その間にある飲食物をいうものでございまして、不特定または多数の人に販売される、そういう形態のものを言うわけでありまして、例えば商品、商店に陳列されておりますお菓子とか、あるいはまた野菜とか、そういったものを考え、そういったものがこれに当たると思っております。
○菅野久光君 具体的に言いますと、製造業者から通常の場合、卸に行って、卸から小売と、こういったような形が一般的な形態ですが、どこからどこまでがその流通食品ということになるのか、その辺はいかがでしょうか。
○衆議院議員(白川勝彦君) お答えいたします。 流通食品の起点と終点ということでしょうが、終点のところはいわゆる消費者が購買したときということで、後は自分で消費するとかあるいは人に差し上げるとかという、いわゆる販売は予想してないいわゆる販売行為が終点だと思うわけでございますが、始点はどこから始まるかということでございますけれども、これは工場などでつくっているものはもう流通食品の製造過程であるということは明確になるわけでございますが、流通食品と言えるためには、やはりそれが売られる状態になったときからだと思います。それから、いわゆる自然界からとる野菜であるとか果物であるとか魚ということは、原則として採取とか、あるいは採取された時点というふうに考えるのが妥当ではないかと思っております。
○菅野久光君 そうすると、製造業者から卸に行くときには、もう製造業者の手を離れた段階から消費者の手に渡るまでというふうに理解してよろしいわけですね、一般的なものについては。
○衆議院議員(白川勝彦君) 製造業者の手を離れた時点で流通食品になるということは疑いがないところだと思います。むしろ製造業者が流通食品として売れるものをつくるという過程が、要するに流通食品の製造過程ということになるんじゃないだろうか。また毒物が混入されるというケース、しかも最も危険なケースでございますね。例えば大量の食品の中に大量の毒物が入るというのは、製造中の中に混入する場合が一番安易でございますし、かつ大量のものが出るわけでございますから、その辺あたりは十分この法律を解釈する場合に考えておかなきゃならないことであろうと思っております。ですから製造業者の手元にあるときも、もう販売されるためにつくっているわけでございますから流通食品と、こう言っていいと私は思います。
○菅野久光君 そうしますと、いわゆる製品になったその段階から流通食品ということで、まだ卸に入る手前でも、製品になった段階からが流通食品だというふうに解釈をしてよろしいですね。
○衆議院議員(白川勝彦君) 先生のおっしゃるとおりだと思います。
○菅野久光君 それじゃ、この法案の二条の二項で毒物の定義がなされておりますが、その三号では「その毒性又は劇性が前二号に掲げる物の毒性又は劇性に類似するもの」も毒物のカテゴリーに含まれることになるわけですが、この「類似するもの」という概念は非常に不明確であるというふうに思うんですね。罰則との関係で構成要件が不明確となると、罪刑法定主義に反していわゆる憲法三十一条違反になるのではないかというふうに、いろいろ刑法関係の方からお話を聞きますと言われておりますが、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 御承知のように、一号、二号は、毒物劇物取締法または薬事法によりまして名前がきちっと出ておりますので、これは問題ございませんが、今お尋ねの三号のいわゆる「類似」という問題でございまして、この点につきましては、この一号、二号に掲げられました毒物と同じ程度の毒性あるいは劇性の強いものと、こういうふうに理解をいたしておりまして、この三号を除きますというと、一号、二号以外の薬物の中間生成品でありますとか、いろいろなものがございますので、それを使った場合には何も犯罪要件にならないという、裏から申しますとそういうことになりますので、この点を特に挙げましてやったわけでございまして、聞くところによりますと、ほかの法律にも類似のものということを規定いたした法律はあるそうでございまして、ここでは一号、二号と同程度の毒性、劇性の強いものと、こういうふうに私ども理解をして挿入したわけでございます。
○菅野久光君 この第三号で予想される例としては、どんなものがあるというふうにお考えなのか、その点についてお考えがありましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) 三号で予想される毒性、劇性の強いものというものは、幾つかの類型に分けられるわけでございますけれども、一つは、製品の中間生成物としてできるイソシアン酸メチルですね、こういうものが考えられます。それからもう一つは、試験研究目的で製造使用されるものとしてのかび毒とかアフラトキシン、そういうものが一応考えられると思います。それからあと、天然に存在する鉱物、植物、動物の中に含まれている毒ですね。例えば鉱物としては硫黄鉱、これはセレンを含有しているということです。それから植物としては毒きのこですね。これはかなり致死性の強いものが現実にあるわけでございます。それから、その他動物の毒としても幾つかあるんじゃないかということです。それからあと、廃棄物ですね。廃棄物としていわゆる無機シアンなどを含んでいる廃シアンですね。それからその他、細菌、ウイルスのたぐいでいろいろ毒性、劇性の非常に強いものがある。 それで、こういう書き方になっておりますのは、一号、二号の劇物とか毒物ですね。これ劇物毒物法で規定しております。これは世の中の毒性、劇性の強いものを全部網羅しておるわけではないわけで、たまたま製品、商品として世の中に出回っているものだけを規定しておるものですから、結局三号で類似するものというのはかなり多いんじゃなかろうかということでございます。
○菅野久光君 ここのところがやはり何というんでしょうね。すっきりした形でないものですから、実際に犯人を捕まえたときにきちっとした形でやれるかどうか。あるいは拡大解釈ができるのではないかとか、いろいろなことで心配される部分で、そこの乱用がまたあってはならないのではないかというふうに思います。 次に、三条の一項で、「国は、流通食品に毒物が故意により混入され、」ことありますが、この文言は何か特別な意味があるようにも思えるのです けれども、どういうことなのかお伺いいたしたいと思います。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 「故意により」というのはいわゆる過失でないというわけでございまして、そういう毒を自分でそのものに混入をして、あるいは添付したということを自分で意識することができる状態、そういうことを指しているわけでございまして、特にその目的のために流通食品に毒物を混入する、何も知らずに過失でということではないと、こういうことでございます。
○菅野久光君 意図的にというような意味で「故意により」という文言でここのところは出された、こういうことですね。 では、この本法案の四条ですね。ここで警察官等への届け出義務が規定されております。これは十条によって罰則の担保でその実効性が確保されておりますが、まず四条で規定する「製造業者等」という文言が、三条の三項を受けているとはいえ、その範囲が何か広くとられはしないかというふうに思うんですが、いかがでしょう。また、「直ちに」というふうにありますが、それは具体的にどの程度のものを言われるのか。それをお答えいただきたいと思います。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 「製造業者等」というのは広くとられはしないかというお話でございますが、やはりこの第三条の三項に規定をいたします「採取及び加工」、「輸入又は販売」、これまで入れませんというと、「製造業者」だけではこれはとても当初の目的を達成できませんのでこのように入れたわけでございますが、故意に広くしようというような考えはございません。そして、なおまた、「知ったとき」というここも、知った者はというのが私ども大体毒物が入ったらしいぞとか、情報だけで知った者にはならないというふうに解釈しておりまして、例えば販売業者あるいは製造業者でありましても、そういった情報がございまして、実際に研究室がなんかでやってみて、なにが一つ入っておった、これは毒物が確かに混入されておった、そういうことを「毒物の混入等があったことを知った」、こういうふうに厳しく解釈すべきだと思っております。そういったようなことでございますので、この知った人、知った者というのはそう広く及ばないんじゃないか、かように考えております。 もちろん後の罰則はこの通報を担保するためのものでありますし、そういったようなことを知っている人でございますから、これはやはり国民の生命に関係する問題でございますから、「直ちに」というのは、普通言いますように、すぐひとつ届けてください、これは当然のことではないか、かように考えているわけでございます。
○菅野久光君 この第四条の「直ちに」ということがどの程度のものかというのは、これはとりようによっては、どのようにでもとれるんではないかというふうに思うんですね。ですから、これは警察官の判断、もう何時間か前にそのことがあって、そしてそれが本当に毒物かどうかということを問い合わせたりなんかいろいろやっていて、そして三時間なり四時間なりになって届け出たという場合もあるでしょうし、あるいは、しっかり確認しないけれども、そうではないかと思って届ける場合もあるでしょうし、その場合に警察官の主観あるいは警察官とその製造業者との人間関係だとか、何かそういうことの中でこれは「直ちに」ではないからということで十条の罰則ということが「二十万円以下の罰金に処する。」と、こうあるわけですね。ですから、この「直ちに」というこの言葉は非常にあいまいな言葉ではないかというふうに思うんですね。気持ちとしてはわかるんですよ。気持ちとしては、もうそれがわかったらすぐ届けてくれという気持ちはわかるんですけれども、実際に届け出を受ける側の警察官あるいは海上保安官ですね。それと製造業者と、何でもないときはいいんです。しかしもしも仮にその製造業者が何らかの事件とのかかわりで疑われるようなことがあった場合、このことを「直ちに」ではないということを理由にして罰則なり何なりということで取り調べとかなんとかというようなことがあり得るのではないかということも、これは一般国民の側から見れば心配なところの一つではないかというふうに思うんですよ。その辺はいかがでしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 「直ちに」ということはそのとおりの直ちにでございますが、今おっしゃったようにここで警察権限の拡大みたいなことは全然考えておりません。常識的な意味におきまして、国民の生命を守るためにひとつすぐお届け願いたい。なかなか試験してはっきりわかるまで時間がたっと思います。そしてまた、今どうも毒物が混入されたらしいというのは、第五条の方にいわゆる罰則のない規定もございますので、その辺のことは確定をしてから、きちっとしてからというくらいに第四条は解釈していただけば「直ちに」ということも現実的にすぐ、知ったらすぐ一時間以内にとかなんとか、そういうわけでもございませんので、その辺はやはり常識で解釈したらいかがなものかと思っております。決して今お話しのような警察権限の拡大を意図しているわけではございません。
○菅野久光君 今宮崎先生がおっしゃられたような、ごく常識的な形でやられればいいんですが、警察はもう時折別件逮捕ということでいろいろやられることがあるものですから、そういうことにこれがまた使われては大変だなと。これは逮捕じゃありませんけれども、罰金ですけれども、しかし罰金をやるからにはやはりとにかくとどめて、そういうことがあるかどうか調べなきゃいかぬわけですね。そのことが非常によく間々、あってはならないことなんですけれどもあるものですから、そういうことがないように特段にここの「直ちに」というところは注意をして運用していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
○稲村稔夫君 ただいま審議に入りました流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法というものについて、私もいろいろとわからない点が余りにもたくさんございますので、これからいろいろと御質問を申し上げていきたいと思います。 法案の内容に入ります前に、提案者に特に伺っておきたいと思うんでございますが、先ほども同僚の菅野議員から、なぜ議員立法になったんだろう、政府提案という形、内閣提出法案という形をなぜとらなかったんだろう、こういう疑問が出されておりましたが、私も同様の疑問を持つわけでございます。といいますのは、一つには私は農林水産委員会の委員なものですから、農業政策あるいは農林水産省にかかわる行政法的なものについては、それはそれなりに一生懸命今まで勉強もしてきた蓄積等もございます。しかし、これにはそういう行政法的な部分と、それからむしろ刑法的な部分と両面が含まれているという形に相なります。刑法的なものについては私にとっては全くの素人でございまして、それこそ今回法律が回ってまいりまして、もう私自身の全身に毒が回ったんじゃないだろうか、そんなふうに思うくらい苦しんでいかなければなりません。そういうところにもひとつ私は理解がなかなかいかないという問題点があるわけでございます。 そこで、先ほどのお話では総合的な対応策を考えなければならなかったからというお話でございましたけれども、もう私は、そういう行政法的なものを総合的にくみ上げていって、どこか主管省庁になるところを中心にして審議をする、これはそれで当然だと思うんです。なければならないことだと思うんです。しかし、その刑罰を中心にしました部分というのはむしろ刑法の一部改正という形で提起をされるのが私は常識的に至当だったんではないだろうか、こんなふうに思うわけでございますが、私の同郷の白川先生が提案者の一人としても御出席になっておりまして、それこそ地元でも法律の専門家として随分御活躍になっている法律の専門家に、ずぶの全くの素人がこれ伺いますので、まことに恐縮でございますが、宮崎先生の方もひとつ素人でもよく理解ができるようなひとつ御説明をいただきたいと思います。 今申し上げましたように、行政法的なものは総合的にとらえていくことがこれはいいけれども、刑罰を中心にした刑法的な部分というのは、これは刑法の一部改正ではいけなかったんだろうか、その辺のところをちょっとお聞かせいただきたい。
○衆議院議員(宮崎茂一君) この流通食品に毒物を混入するというグリコ・森永型の犯罪は非常な国民生活に不安を与えているわけでございまして、それによりまして国民の生命に関係するような非常に重要な問題でございます。したがいまして、私どもといたしましては、国民生活の不安と安定、そういったことを考えるのは、やはり政党としても、そういう立法機関でございますので、私どもとしてもこの立法の責任があるんじゃないかと思いまして、これはいろいろな各省が関係をしておりましたので、こういったような法律にしたわけでございます。ただ刑罰だけを規定いたしましても、それだけでなかなか防止できないんじゃないか。農林省も通産省も、あるいは厚生省も、全員がこの防止のためにひとつ立ち上がっていただかなければならないんじゃないかということでこのような立法をいたしたわけでございます。 総合的な行政法的な考え方、そしてまた、いわゆる司法、立法の方から、罰則が加えられるから、これはひとつこの委員会になじまないんじゃないかといった意味の御発言がございますが、特別立法はどこでも大体その主管的なところが中心になりまして、多少やっぱり罰則は加えられて、書き加えられております。私も実は純然たる法律専門家じゃございませんで、土木屋でございますが、法律の方は大体刑罰の量とか、それにつきましては白川君や法務省にお尋ねいたしまして、そんなに目立たない、突出しないような形で法律の条項を担保する程度のものにしていただきたいと、こういうことでつくってあるわけでございまして、やっぱり何といっても防止、あるいはまた事件があったときのその後の各省あたりの措置の問題、そういったことが中心になりますので、こういった立法の形にしたわけでございます。御理解を賜りたいと思います。
○稲村稔夫君 命のお話は、それはそれなりにわからぬわけではありませんが、しかし現行の刑法におきましても、例えばちょっと似たような対応の部分というのがございますね、水道に対する毒物混入とか汚穢の混入とかですね。ということがありますから、そうすると、確かにこの間も参考人の皆さんの御意見の中で、流通食品についてというのは今具体的にはないから、それを補完するものとしては何かなきゃいかぬのかもしれないいというような御意見等もございました。が、そうすると、刑法の中でその部分、例えば今もう既に水道というのがあるわけでありますから、そうすると、それに、こうした流通食品というようなものでほんの一部を改正していく、こういう提起というのも、方法も、道もあったのではないかと、こういうふうに思うんですけれども、その辺はいかがでしょう。
○衆議院議員(宮崎茂一君) これは罰則だけでどうも担保できないんじゃないか。それは刑法の上からいきましても、実はそういう毒物を混入することによります社会不安というものをどういうふうに立件したらいいのか。社会不安ということからいいますと、いわゆる騒乱罪的な社会不安という点をつかまえますと、騒擾の罪みたいな性格を持っておる。ですから、そういった面もこれはなかなか食品の、浄水に混入した場合三年以下の懲役でありますとか、水道の方は二年以上十五年以下の懲役とか、そのランクだけでとらえるというのも、これはやはり問題があるんじゃないかと思っておりますし、また罰則の量としては、今二つの、水道と浄水の場合の水道の方に近い方をとったと、こういうふうに言えるわけでございますが、そこを改正しただけでは、先ほどから申し上げますように、総合的な立法でございます、むしろそういうことのないように防止する、そしてそういう不安のないようにするというところに力点を置いたと、こういうふうに考えているわけでございます。
○稲村稔夫君 御主張の趣旨は伺いましたが、それでは法務省に伺いたいんですけれども、当然、法務省としてもこうした刑法の一部改正的な内容を一つの側面として持っておるというものについては、いろいろと事前の相談にもあるいは乗っておられるのかもしれませんが、与党さんの提案でありますから、しかし刑法の一部改正という形であれば、議員提案というよりはむしろ内閣提出法案のような形で提起をしてくるという格好になったんではなかろうか、そんなふうにも思うんですけれども、これはなぜ政府の方で刑法改正という方向でお考えにならなかったのかということが一つ。 それから、もし刑法の一部改正という道をとられるとしたならば、手続上いろいろな各界の意見聴取などということも一応はしてこられるのではないだろうか、こんなふうにも思うんでありますけれども、その辺のところ。それから――ちょっと待ってください。提案者の方には、それをどういうふうに聞いたかをまた後で伺わせていただきたいと思います。 それからもう一つ、刑法改正草案というのが前に発表になっておりますけれども、これが現在なぜ日の目を見ていないのか、こういう理由等も含めて政府としてのお考えを伺いたい。
○説明員(東條伸一郎君) お答え申し上げます。 第一点のなぜ刑法の一部改正で対処しなかったかという御質問でございますが、この点につきましては、先ほど来御提案者の方から御説明のございましたように、グリコ・森永事件を契機としまして流通食品の安全性というものに対する国民の一般の不安が非常に強まったという特殊な要素もございまして、その安全を総合的な観点から確保する、その一環として罰則を盛り込むという形の特別の法律体系を持った方がよろしいということから本法案が提出されたと聞いておりますので、罰則のみの刑法の一部改正ではこの際対処しなかったということでございます。 それから、仮に今刑法の一部改正で対処するものとすればどのような手続が考えられるかという御質問でございますが、御承知のように、刑法一部改正をいたします場合でも、基本的には法務省にございます法制審議会というところに諮問をいたしまして検討をいただくというのが、基本的にはそういうプロセスを経る、必ずしもすべてそのプロセスを経ているかどうか、私も一部改正の全部の歴史を当たっておりませんので自信ございませんが、通常の重要な改正でございましたら、そういう手続を経るということでございます。 それから第三点の刑法全面改正はどのように相なっているのかということでございますが、御承知のように、既に答申が出てから十数年を経ておりますが、各則あるいは総則いろいろな面で各界からいろいろな御意見もございまして、なかなか全面改正ということを行う時期に来ていない。むしろ部分改正といいますか、例えば前国会で御審議をいただきまして成立させていただきましたコンピューター関係の条項と、それからしばらく前には贈収賄罪の法定刑の引き上げというような形で、罰則のみで対処し得る事項につきましては、その都度その都度ニーズに応じて改正をしていこうということで当面臨んでおる。刑法全面改正につきましてはさらにいろいろの問題を検討いたしまして、しかるべき時期に何らかの形で決着をつけなければならないだろう、その時期はまだちょっと見えないということであろうかと思います。
○稲村稔夫君 今のお答えにもうちょっと伺わせでいただきたいと思います。私は、刑法改正草案というのが日の目を見ていない理由にはいろいろなことがあるだろうというふうに思います。が、いずれにしてもその審議会がまだ今のままだったら通過をしない、こういうことなんではないかとも思うんですけれども、そのことはそれといたしましても、審議会はどういう構成になっておりますか。
○説明員(東條伸一郎君) 先生、刑法改正の諮問 に対しては実はもう既に法制審の答申は得て一応の草案は得ております。ただ、それを政府提案できる時期になっていないということでございまして、審議会は既に十数年前に答申をいただいている古いうことで、そこは訂正させていただきたいと思います。 それから審議会の構成でございますが、これは私、審議会直接所管しておりませんので正確には申し上げかねますが、総会がございまして、総会は学者と、それから法曹実務家、それから各界の有識者という方から成っております。それから刑法の関係で申しますと、その下に刑法部会というのが設けられておりまして、ここには刑法関係の学者の方、それから裁判、検察、弁護の実務の方方、警察の方にも入っていただいておりますが、そういう方々に専門的な立場から検討していただくという構成になっております。そのほかにもいろいろ部会ございます。民事法部会とか商法の関係の部会等がございますが、私どもの関係しておりますのは刑事法部会、そういうことでございます。
○稲村稔夫君 そこで、提案者に伺いたいんでありますが、刑法の一部改正ということでいきますと、今のように、言ってみれば構成メンバーとして入っておられる各界の皆さん方の意見というものが一応聴取をされ、それを土台にしながらという作業がされるということに相なります。 今回の提起をされております法案の中には通報の義務違反ということに罰則を科しているという、これはちょっと現行刑法の中で、私はよくわからないのでお聞きするんですけれども、何か国民の、言ってみれば通報を積極的に自発的にやっていくという民主主義の原則ですね。そういうものと何かちょっとそぐわないようなものがあるということ、それから捜査への直接的な協力の義務づけなどというようなものがあるわけでありまして、これは運用次第によっては極めて重要な人権侵害も起こしかねないという、そういう内容を持っているものになると思うんです。それほど重要なものでありますだけに各界の意見というのがどのように聴取をされたかということがこれは非常に重大な関心事でありますので、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 当初、御存じかと思いますが、この通報義務は非常に厳しく限定したとはいえ、知った者はというふうにしておったわけでございますが、衆議院の方におきましてもいろいろ御議論がございまして、私どもはそんなに広がるものじゃない、非常に限定をしたものだからということでしたけれども、非常に少ないので製造業者等に実は絞ったわけでございまして、全般的な国民の権利義務というような、そういう非常に広い問題じゃなくて、製造業者等が、実際国民全体の生命やそういったものを考えますというと、その程度はひとつやっていただいていいんじゃないかということで通報義務をつけたわけでございまして、先ほど説明申し上げましたように、罰則のついた第四条の通報義務というのは非常に厳格に、毒物が入っているということを確認する、確認をした人に限ると、こういうふうに理解をしていただけば、あとの第五条によるいわゆる通報ということ、協力ということもございますので、大体解決できるんじゃないか、おっしゃるようなそういった国民全体に対する通報義務に対する罰則というものはそう御心配にはならなくてもいいんじゃないか、私自身そのように考えております。
○衆議院議員(白川勝彦君) 補足して説明さしていただきたいと思います。 先生方多くの点で今の点をおっしゃるんで、ちょっと長くなりますが経過を説明させていただきますと、この事件が起きたときに二つの物の考え方がございました。一つは、やはりこういう流通食品に毒物を混入するという法律がないという、こういう明らかに法の欠陥があるんだ、この際罰則を強化しようという、もうそれだけで足りるんだという、かなり有力な意見がございました。それに対して、やはりそれだけではいけないのではないだろうか、罰則を強化しただけでは直ちに犯罪がなくなるわけではない、むしろそのような犯罪に対してやはり社会全体で立ち向かっていく、負けない、そういうことがなかったならば、結果としてはこのような犯罪をたびたび犯して、そして全員を奪取しようという犯罪は絶えないのではないか、こういうような二つの意見がある中で、いろいろと議論した結果、やはりこれはこの際両方やった方がいいのではないかという考え方に我我至ったわけでございます。 それからもう一つ、政府提案にできなかった大きな理由の一つは、法務省といたしましては改正刑法草案というものがあるわけでございますので、これを余り構ってもらいたくない、こういう気持ちは潜在的にございます。ですから幾つかの刑法の一部改正案というものは出しておりますが、これは本当に緊急やむを得ない、まさに社会情勢としてそれらを今変えなければ明らかに社会的なあるいは国民的な常識から見たらおかしいというようなものについては、この十年近くの間でも何度がはやっておりますけれども、まあグリコ・森永事件というような一つの事件が起きたからといって直ちに大騒ぎをするようなことは必ずしも本意ではないというような、大体そんなような雰囲気が法務省にもございました。 そういうような中で、先生御案内のとおり、改正刑法草案にはまさに飲食物にも毒物を混入するという一つの規定があるわけでございます。こういうものを法務省としては当然のことながら想定しているわけでございますが、これらの規定の仕方はかなり一般的でございます。人の健康を害するものを入れるというような書き方でございます。そういう面では一般刑法でございますが、私どもは当座グリコ・森永事件のような流通食品に対して毒物を混入する、そして大きな社会不安を与えるというかなり限定したそういう犯罪に限ってこれはこの際罰則は新たに設けよう、ですから刑法というようなことになりますと、例えばこういうような書き方はいたしません。例えば人を害するものとか、人の健康を害するものとかという一般的な書き方をするわけでございますが、私どもはそれほど大それたものは考えてない。特殊こういう事件に対しても、やはり刑罰法規もあるんだということで、それはいささかいわゆる行政法規などにあるような罰則というふうになっても構わないのではないか。ですから、余り広く構成要件を該当して、あとは裁判官に任せをというような規定にしなくてもいいんじゃないか。 例えば刑法をつくる場合に、こういう毒物の規定を含めまして、全体で三条に及んで初めて毒物混入罪という一つの法定刑が構成されているわけでございますが、刑法で書く場合はこういうふうになりません。なりませんということは、我々は一般的に毒物混入罪というようなのを定めたのではなくて、かなり具体的な犯罪類型を定めてそれは罰するよというふうにしたわけでございます。そういう中で、刑法の一部改正案とはかなり色彩の異なるものになり、そういうことであるならば、法務省ができれば近いうちにというか、可能であれば刑法全体を整合性をもって改正をしたいという意向にも必ずしも反しない、そんなことで法務省の方からもこういうような規定の仕方であるならば強い異は唱えませんと、そういうようなことで、私どもとしてはこのような規定にしたわけでございます。 政府提案になぜできなかったのかというようなことについては私は知りませんが、党と政府の間にいろいろな意見があったのかもわかりませんが、最終的には党でやろうじゃないかというふうになったわけでございますが、その間におきまして政府と党との間にはそれほど大きな問題がなかったのは、我々の方もそういうふうな形で配慮すべき点は配慮さしていただいた。ですから、刑法全体を整合性をもって改正をする、この事件がけしからぬといってつまみ食い的にこいつは重くする、あいつも重くするというような形にはしなかったという点で、私は法務省の方も十分理解をしていただけたと思っておりますし、その辺のいる いろ煮詰める段階ではかなりいろいろなやりとりがあったということだけは御報告をさせていただきたいと思います。
○稲村稔夫君 何といいましょうか、皆さんの中で議論をされたことや、それから政府との関係の中でのことはそれでわかりました。 しかし、先ほど申し上げておりますように、例えば通報の義務違反に対して罰則を科するということであるとか、捜査への直接的な義務づけをするとか、そういう問題は、これは国民の立場からしていけばいろいろと人権侵害にも運用次第によってはなりかねないという重大な問題を含んでいるという受け取り方をする向きもかなり出てくるという、そういうものでありまして、私はこうしたものについて極めて重要な課題を持っているのでありますから、これは当然広く各界の意見というものが十分に聞かれて、そして今言われたような、それではその考え方に基づいて各界との間でコンセンサスを得た上で、そして提起をしてこられるというのが私は一番自然な姿ではないかというふうに思うんですよ。 そこで今、提案者の方では、今回のこの法案を作成するに当たって、どういう形でどういう人たちの御意見を聴取されたか、そのことをさらにお聞かせをいただきたいんです。
○衆議院議員(白川勝彦君) 先生の御質問の趣旨は、刑法の一部改正案ということであるならば、先ほど法務省からお答えがあったように、法制審というものを普通は通ってくるわけである、そこでは専門の学者や実務家やあるいは有識者の批判にさらされた上で一つの成案を得る。ところが、実際的には刑法の一部を改正するような内容にわたるにもかかわらず、そのようなものがないではないかということだろうと思うわけでございますが、その点につきましてはもちろんおっしゃるとおりでございまして、そのような審議会を経たものでないことはもちろんでございます。ただし、このような法定刑やら構成要件にするということにつきましては、私どもも重たいことをするんだということを十分認識しておりましたので、我々自由民主党の中の法律関係の専門家の中で相当議論いたしましたし、もちろん法務省ともいろいろと意見を交わさせていただきました。また、我々だけではこういうことでどうであろうかということに関しては、何人かの学者の方に相談をしたりして、そういう中で我々としてはこれならば決してそう突出したものではないであろう、こういうようなことにいたしたわけでございます。 また、届け出義務ということにつきましては、先生おっしゃいますとおり、全部の犯罪について届け出義務があるというものではございません。ですから、私どももこの届け出義務をどのような形で課すか、しかも罰則のある届け出義務をどうするかということに関しては最も意を尽くしたところでございますけれども、この届け出義務は裏取引の防止というようなものは一切含んでおりません。この届け義務の法益は何であるかというと、この構成要件を見ておわかりのとおり、製造業者等で毒物混入があったことを確実に知った者は、直ちに届け出てくださいというのは、大勢の人の生命、身体を守るということが法益である。ですから本当ならば捜査当局であるとか、あるいはこういう卑劣な事件を根絶するという意味では、そういう犯罪のおそれがあるという場合には届けていただく必要があるわけでございますが、そういうことにしますと、当事者としてもあるいは大勢の人をいろいろな意味で苦境に陥れることがあるんじゃないかということで、とにかくこれを食べたら大勢の人が死んだりあるいは身体に害を受けるということをわかっていたら、それは流通食品を売る製造業者としては、それらは届けていただくのは常識に属することでございますし、そんなものは売るわけがないですよ、何時にそこまできたらもうやみ取引をしようなどと考えませんよというような業界の強い意思もお聞きしました。 そういうようなことで、こういうことであるならばそういうような負担はもちろんないし、同時にハムレットのような心境に陥らせることもまずないだろう。そういうことで爆発物取締罰則であるとか、あるいは銃砲刀剣類所持等取締法というものがございますが、そういうところにはもっと要するに爆発物があることを知った者は一般人でも届けろ、こういうような規定があるわけでございますから、この程度は製造業者等に義務づけても、過重なもの、あるいは捜査に協力せよということを無理やり義務づけたものという、そういう人権抑圧的なものは一切ないだろう、そういう点で法定刑二十万円以下の罰金というようなことを含めて人権侵害というような問題はないであろう。これは我々がいろいろな世間の物の考え方を参酌しながら自信を持ってそう決めさしていただいたわけでございます。 確かに、手続的には先生おっしゃるとおり法制審議会というものを通ったものではございませんが、こういう法律の性格上やむを得ないことなんじゃないかなと思うんです。
○稲村稔夫君 私は、今提案者の主観的意図というのは、それぞれそれなりの理解をいたします。しかし、それはやはり国民全体の関心事であるわけでありますし、国民全体に影響を及ぼすものでもあります。こういうことでありますから、例えば刑法改正なら法制審議会を通す、しかしそれは議員立法だからそういう形はとらない、こうおっしゃるけれども、公式なものでない。そういう法制審議会に問うという形ではなかったにいたしましても、それは例えば同じような考え方に立つ人たちだけの意見ということではなしに、広くやはり法制審議会に匹敵をするような形で意見を聴取して、そしてそれを参考にして私は法案というものを立案をしていかれるというのが非常に重要な意味を持っているものだけに、今、例えば通報の義務違反にしても捜査への直接的協力の義務づけにいたしましても、人権侵害になるようなことはないというふうにおっしゃいましたけれども、しかし、人間の集団の中でありますからこれは絶対にということはないわけなんでありまして、それだけにもし不測の事態が起これば、それは担当した現場の人たちもそれは主観的にはよかれと思ってやったことということで大変に気の毒なところにもなるわけでありますから、その辺のところはもう十分な配慮をしていかなければならない問題じゃないだろうか、そんなふうに思うんです。 ここのところをどうも議論していますと、それでもう私、約三十分使ってしまっておりまして、とてもこれの議論だけでもまだ私なかなか納得し切れないものが残るのでありますけれども、あと、私の意見としてそこのところは申し上げます。 内容的に、通報の義務違反とか、捜査への直接協力とかということの内容は、これまた後ほど内容の問題として議論させていただくといたしまして、要するに、こうした法案を準備されたその経過に必ずしも十分に、政府とか発案者とかというその範囲の中で、すぐ手の届く範囲内での議論はいろいろと十分にされたでありましょうけれども、しかし、もっと広く意見を聞くという態度が望ましかった。そして、これからの法運用の中では、これはもう政府に対する要望にもなってまいりますけれども、法運用の中ではそうした議論を踏まえて不測の事態が起こらない、人権侵害などということが起こらないように特段の配慮をしていただき、そういう運用をしていただきたい、こういうことを要望しておきたいと存じます。 そこで、法案の内容に入らせていただきたいと存じますが、私、少し、この間、農林水産省の幹部の方にしかられまして、癖がございますので、まず定義からいろいろと伺うということがございまして、今回もやはりこの定義が相当気になっておりまして、先ほどの菅野委員とのやりとりを聞いておりましても、どうもまだよくわかりませんで、まず、流通食品というものの定義についてもう少し伺いたいんであります。 それは、ひとつ終点の話ございましたけれども、終点というのはどこをもって終点とするのか、これも少しく私も詳しく教えていただきたい んでありますが、要するに消費者が購入をしたらその時点から流通食品ではなくなる、こういうことに一般的に言えるのかもしれません。しかし、その購入をしたらということについては、例えば個人の購入について言えば、すぐそこの金銭のやりとりで品物とやりとりと、こういうことでありましょうが、少し大量な消費者になりますと、手形決済だとか、いろいろ伝票で処理をしている部分とか、そのほかいろいろとございます。そうすると、契約とのかかわりということになると、それは契約が成立をした時点なんでしょうか、その支払いが終わったという時点なんでしょうか。それとも、その品物が実際に問屋なりあるいは小売店なり、そういうところから消費者の方へ移動したという、動いたという、そういう時点なんでしょうか。いろいろなケースがその辺で考えられますけれども、その終点のけじめというのはどういうところへ引いたらいいんでしょうか。
○衆議院議員(白川勝彦君) この法律では、そこまで細かいことを議論したわけでもございませんけれども、この法律の考え方というか、特に刑法的な面を中心にして見た場合は、流通食品が移動するところが大事なんだと思うわけでございます。例えば現金は払ったけれどもまだ最終消費者のもとには届いていないというとき、民法的に言うならば、所有権はその時点で移ったとかいろいろなきっと問題があるのかもわかりませんが、これは最終消費者が実際に手にしたとき、そしてそれ以後はその最終消費者が販売という目的ではなくて、買った目的に従って使うとき、使おうとするとき、それから先の人に行く場合もあると思うんです。例えば、あるパーティーで配りたいと思ってそして百個買ったとします。普通百個買えば、小さな商店ならそれは買ってさらに再販売をするつもりであればそれはまだ最終消費者とは言えませんが、百個買ってきょう集まったパーティーの人たちにこれを差し上げたいんだという行為であるならば、それは百個買った時点で最終消費者が買って、後は流通食品ではなくて、あくまでも最終消費者の手に渡って最終消費者が自己の用に供して使ったということだけになるにすぎないのではないかと思います。
○稲村稔夫君 こういうことを伺いますのは、最近、毒物の混入等については学校給食とか、いろいろそういう大量消費をするところに犯罪が起こってくるということもありますので、この法律の適用がその辺がどうなるのかということをやっぱり判断するにも非常に大事なポイントにもなると思うんですの例えば学校給食会が、これは大変な大きな購入者ですね。学校給食会が例えば森永のカレールーを購入いたしましたと、こういうような場合がありますね。そうすると、それは学校給食会の手に渡ったときから流通食品でなくなるのですか。それとも学校給食会がさらにそれぞれのセンターに、給食センターなどというのがありますね。その給食センターに渡す。その給食センターとの間には金銭の支払いがあるんですから、そうすると、その学校給食センターに行くまではまだ流通なのか。それから今度は、給食センターにいたしましても、子供たちに給食をいたしますけれども、それは補助金があるかないかはこれは別にいたしまして、料金を取って給食をしている、販売をしているという形になると思うんですが、そうすると、この場合に先ほど言われた最終消費者というのは学校の子供たちになりますね。そういうふうにもなりますが、流通食品というのはどの段階までをこういう場合は言うんでしょうか。
○衆議院議員(白川勝彦君) ただいま先生が挙げました例で言うならば、私も給食関係の業務をよく知りませんが、ある程度大きな学校給食会というのがあって、それが幾つかの学校に卸すというような業務をやっておられる場合、それはやはり物品の販売というふうに考えざるを得ないのではないだろうかと私は思います。ただし、例えばたとえ千人であろうとも、いわゆる現実に牛乳を、牛乳というかいろいろな食品を学校の中で加工して、そしてそれから生徒さんに給食をするという、それは私は販売行為とは言えないと思うのでございます。そういう面では、学校の給食室の中に入って、そして現実にもう給食をするためにいろいろ加工され始めたものというのは、私は流通食品ではその時点でなくなるだろうと思います。
○稲村稔夫君 そうすると、食堂の場合も消費者に加工されたものが売られる形ですから、これは流通食品ではないと、こういうことになるわけですね。
○衆議院議員(白川勝彦君) そこが難しい問題でございまして、食堂で例えばカレーライス一杯頼むよというのはあくまでもカレーライスを売ってくれという注文のわけでございます。そして、そのとき食堂はお客の求めに応じてカレーライスをつくるわけでございます。それはまさに公衆の販売の用に供する食物をつくる行為であるわけでございますから、食堂で出されたカレーライスはそれは流通食品であると私は思います。
○稲村稔夫君 そうしますと、細かいことばかり聞いていて申しわけありませんが、学校給食は確かに選択権があるとしても子供たちにとってはごく狭い範囲の選択権しかございませんね。しかし、社員食堂なんというのはかなり普通の食堂と同じぐらいの選択権を持って、それぞれがお買いになるというような形になって、しかもその社員食堂の場合は営業という形でやっている場合が多うございますからね。この場合はどうなりますか。
○衆議院議員(白川勝彦君) その販売の形式とかその他にもよるのでしょうが、やっぱり社員食堂の場合は、何時になったらどれをあてがわれるとということではなくて、自分の目で見るなり、あるいはメニューを見たりして何々をくれということで、そこであくまでも一つの食物を買うわけでございますから、それは私は流通食品である、そういうふうに考えております。
○稲村稔夫君 今の御解釈でいきますと、私はやっぱりいろいろと妙なことが起こるのじゃないかなということがちょっと心配になってきているわけであります。単純な言い方をして恐縮でありますけれども、一般の食堂とか社員食堂で扱っているものは流通食品になる。しかし学校給食のようなものは流通食品にはならない。その学校給食会から給食センターなり何なりに行きます間はこれはなるんだけれども、こういうお話ですね。しかし犯罪の今まで発生をしている傾向の中からいけば、学校給食なんというのがねらわれたりしているわけでありますから、そうすると、やはり法律を立法されたという一つの動機を考えていきますと、その辺のところもやっぱり配慮されなければならない問題になるのではなかろうかというふうにも思うんですけれども、いかがでしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 今、流通している食品についての非常に細部の議論がございました。この法律の目的は、故意に流通食品に毒物を混入した者を罰する、こういうことになっておりますので、流通食品についての細かい議論その他は今後大いにやっていただいて、私どもはこの法律の主な目的をひとつ達成をすればいいんじゃないかと考えておるわけでございます。御存じのようなグリコ・森永事件に見られますように、店頭でああいう菓子類をいわゆる面接販売しない、特にまた子供たちが勝手に買い取っていく、それに毒物が入っておった、そういうことは社会正義に物すごく反することでございますので、流通食品に対するそういうものを、大きなやつをひとつ防止しよう、そういうことでございます。 なおまた、今、白川議員から、また後であるいは法制局の方からも答弁があるかもしれませんが、いろいろとその流通食品の定義の問題もございましょう。しかし、故意に毒物を混入するということもあるわけで、そっちの方が非常に重要な問題でもあります。まあ答弁になったかわかりませんけれども、そういう大きな目的、あるいはまた社会常識的に考えてこの流通食品というものも理解すべきじゃないか、かように考えております。
○稲村稔夫君 こういう細かい議論というのが出ますのも、今提案者からも御答弁がありましたよ うに、やはり非常に大事な問題なものですから、どの範囲がどうなるかということというのが非常に重要だと思いますので、私は、これは本法案が仮に成立をしたといたしましたときには、こうした流通食品についての範囲というものもある程度十分に細かく御検討をいただくような体制をつくっていただいて、まあこの法律が罰則が適用されるようじゃ困るわけなんでして、これが罰則が適用されないようにというふうにするためには、例えば今私は学校給食はどうだということを伺いましたが、例えば学校給食にしても毒物混入が起こらないようないろいろな配慮が、手だてというものがされなければならない。食堂に対してもそういうものがされていかなければならない。そのためには適切な指導がされていかなければならない。こういうことになると思うんですね。ですから範囲というものはやっぱりきめ細かく御検討いただくということが必要だと思いますけれども、その準備はございますか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) その点については、私ども立案の段階でかなり、特に飲食店で販売するもの、これについてはいろいろ検討いたしまして、今先生のお話、一つ学校給食が出たわけでございますけれども、こちらの方は学校に給食が着きましてから以後は販売ということにならないだろうということで、その販売ということでないから流通食品から外れるのでないかという問題が一つあります。 それから飲食店で提供される飲食物ですけれども、これはまだ流通段階にあるといいますか、提供する相手方が特定しない段階はこれは流通食品であると思います。ですから先ほどの例に挙げられましたカレーライスのような場合は、調理場にある段階、この場合はまだ流通食品だと思います。それがいわゆるお皿に盛られまして提供される人が決まった段階で流通食品から外れる、こういう解釈になるんじゃなかろうかと思っております。この点は法案の立案の段階でかなり細かく私どもの方で精査したつもりなんですけれども、法が成立した後は行政庁の方が一次的に解釈して運用されますし、最終的には裁判所の方で法律の解釈はいわゆる確定的におやりになると思いますけれども、立法段階でそういう解釈を一応私どもとしては検討いたしました。
○稲村稔夫君 次に、毒物、劇物及びその類似品についての定義について伺いたいと思います。 時間が随分なくなってしまったので、できるだけ聞くのも急ぐようにいたしますが、これはまず第一に厚生省に伺いたいんでありますけれども、現在の毒物劇物取締法で具体的に別表としてそれぞれずっと挙げられていますね。その別表に載っていないような毒物、劇物という毒性の物質、そういうものについては現在の取締法の中ではどういう対応をしておられますか。
○説明員(渡辺徹君) お答えいたします。 現行の毒物劇物取締法におきましては、一般社会に商品として流通している化学物質等につきまして、この一定のルールを決めまして、その安全性を確保するという趣旨から運営されておりまして、非常に広く産業界で使われております毒性のある物質、非常に数はたくさんあるわけでございますけれども、そのうち一定以上の毒性を有するものにつきまして毒物、劇物に指定をして、そして例えば製造段階あるいは卸等におきます保管あるいは一般消費者に対する販売、そういう流通段階に対する規定を設けている、こういう法令でございます。したがいまして、現行では一般社会に流通する可能性の非常に少ないものにつきましては、これを毒物劇物取締法として指定していないということでございまして、例えば先ほどの議論の中にもございましたけれども、化学物質の中間体というようなものは工場内で一たん製造されますけれども、それが工場内で消費されてしまう、最終製品としては社会に流通しない、そういうようなものにつきましては毒物劇物取締法の対象とは現在していない。そのほか天然物等につきましても、通常の取引においては一般社会に流通しないというようなものにつきましては対象としていないというのが実情でございます。
○稲村稔夫君 今、厚生省は盛んに流通という言葉を使われましたが、この流通は今の食品流通と同じような意味で使われますか。
○説明員(渡辺徹君) 毒物劇物取締法で申し上げますと、販売もしくは授与という言葉が使われておりますけれども、一般社会で販売、授与される可能性のある化学物質あるいは毒性物質ということになろうかと思います。
○稲村稔夫君 わかりました。そうすると、授与ということが入れば無料で供与されるものというものもそれに含まれると、こんなふうに理解をしていいと思います。 そこで、先ほど提案者の方から御説明の中で、幾つかの類似のものということで例示を挙げられました。これはそれなりにそれぞれわかりますが、例えば放射性物質とか、それから遺伝毒というようなものもございます。こういうものは、これは類似ということ、今のちょっと類似という表現ではなかなか面倒なような感じもするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) 今お尋ねのありました物質については、具体的に出てきたとき、これは検討して、毒性がどの程度かということによって決まる問題だと思いますので、ここではちょっと、なかなか抽象的にはお答えしにくいんじゃないかと思います。具体的な事例に応じて、その都度、ケース・バイ・ケース、世の中には毒性、劇性の強いものはいっぱいございますので、それは今毒劇法で行われている判定基準と同一の検査なり何なりをしまして、その結果、少なくとも現在の判定基準以上の毒性がある、あるいは劇性がある、こういうことになった段階で決まる問題じゃないかと思います。
○稲村稔夫君 これを適用されるかされないかということで、またいろいろと大事な境目になってくる場合が出てくるわけでありますから、どんなものが入ってくるかという、その範囲というのはやはり重要な問題なんだと思うんですね。 例えば毒物ということでいきましても、この別表に記載をされていないものについては、量によって毒になる場合とならないというようなものというのがたくさんあると思うんですね。一つの刑法の中に書かれているものとの具体例を言いますと、例えば水道水の中に消毒のために塩素を使うとか、あるいは歯医者さんが盛んに宣伝をしたりしておりますけれども、弗素を添加するとかいうようなこと。これは一定の何ppm以下というような基準値以下であれば、これは毒物、それこそそのあれではないわけであります。しかし、これが食品に混入をされるといたしますと、これはゆゆしき問題というような物質というのが結構そういうものがあるわけですね。そういたしますと、その毒物の範囲を決めるというのはなかなか面倒なんじゃないかと思いますけれども、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) まず一号、二号に掲げてある毒物、劇物は、これは別表に書かれている具体的なものですからこれははっきりしているわけです。それで三号に掲げられているものは、一、二号に掲げられているものと毒性、劇性が同等あるいは同等以上のものということでございまして、それによって三号の該当するものになるかどうかということでございまして、そういうものに該当するものを故意に流通食品に混入等をした場合は、これはこの法律の一般的には規制の対象になるということだと思います。
○稲村稔夫君 私は農政の関係だからやはり気になるんでありまして、我が国では今ありませんけれども、許されておりませんけれども、ポストハーベストといって例えば小麦とか何かそういうものを収穫した後に、害虫が発生しないようにとかなんとかという目的を持って農薬を混合するというようなことが行われます。そうすると、これはすぐにでも、あるいは発散してないうちにそれを食べたりすれば体に害が出るということにもなってまいります。一定の期間を置かれればそのかなりのものが飛んでしまって、そして検出されなく なるには相当かかりますけれども、直接被害などということにはならないというような格好のものなどもあります。 そういたしますと、混入をされる量によって毒にもなるし、そうでもない場合もある。こういうようなことが、こういうふうに物質が豊富になりいろいろなものが出てまいりますと、そういうようなケースというのがあり得るわけでありますけれども、例えばおどかしのために、化学的知識をよく持っていまして、おどかしのためにごく微量に混入をしたというような場合、それは毒性にはならない、こんな場合というのはどういうふうになりますか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) ただいま毒物の数量の問題が出ておりますが、この法律は数量の、何ミリグラム以上とか、そういう規定をしておりません。しかしながら、罰則のところで「十年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」ということになっておりますので、ケース・バイ・ケースで、そういったような、何というんですか、範囲が非常に少ないと申しますか、冗談半分でうんと大した毒でもないものを注入したというようなこともあろうかと思いまして、この九条で対応させる、そういうことになろうかと思っているわけでございます。
○稲村稔夫君 どうも不安になってきちゃうんです、お答えを聞いていると。ケース・バイ・ケースで措置をされるものがふえるということは、それだけいろいろと難しいんでありまして、やっぱり私の方は不安がふえてくるんです。 そのことでも議論、もう時間がなくなりましたから、それと関連をして厚生省の方にお伺いをしたいんですけれども、こういう毒物、劇物というもののたぐいというのは、ものによっては時代の変化、時代が変わることによって、今までは大した毒ではないと思われていたものが、やはりこれは毒であると。遺伝毒みたいなものはその代表的なものの一つだと思います。だから農薬等でも、今まで安全とされていたものが使用禁止などということになってくるということにもなります。そこで、こうした時代とともに変化をするという、そういうものに対しては何か対応をしておられるんでしょうか。
○説明員(渡辺徹君) 毒物、劇物の指定に当たりましては、私ども中央薬事審議会にお諮りをする。その際には、その時点で得られました毒性に関する知見、主としてこれは急性毒性値が中心になるわけでございますが、その他薬理作用の強弱でございますとか、その物質の本来持っております毒性を評価いたしまして、毒物、劇物に指定する必要があるかないか、こういう議論をするわけでございます。当初指定いたしましても、先生御指摘のように、その後にまた新しい知見が出てくるということは往々にしてあるわけでございまして、これまでは毒性が低いと思われていたものが、ある時点で新しい毒性試験手法、例えば動物をかえて試験をしたという場合に、意外に急性毒性値が強いというようなことがわかってくるということも当然あるわけでございます。あるいは逆に、製剤になりました場合に比較的毒性含量が少ないというようなことで毒性値が低いというような場合もあるわけでございまして、そういう知見が新たに見つかりました時点で私どもは再度中央薬事審議会に相談するというようなことも必要に応じて行っておりまして、改めて毒性指定をする、あるいは指定を除外するというような措置をとっているところでございます。
○稲村稔夫君 今、厚生省の御答弁を聞きましたが、今のケース・バイ・ケースというお話がありましたけれども、最終的には法律のあれですから、違反があれば裁判所の判断ということに最終的にはなるんでありましょう。しかし、裁判官もオールマイティーではないわけであります。それだけにケース・バイ・ケースということの難しさというのがあると思いますね。そうすると、今の例えば厚生省では中央薬事審議会なんかという形で専門家を集めて知見を聴取して、そしてその方向性を決めていく、こういうような手だてが講じられていきます。こういう何か仕組みというものがある程度担保されてきませんと、この辺のケース・バイ・ケースの御答弁では心配だけが残る、こういうことになるんですが、その辺はいかがでしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 毒物の定義は、御承知のように一号、二号は現在きちっとしておりますが、三号につきましても類似のものというのは、その毒性が一号、二号等に比してそれ以上のもの、同等のもの、こういうふうに考えているわけでございます。そしてまた、時代に応じて厚生省の方でだんだん変えていくということであれば、もちろんこの法律につきましてもそのとおりでございまして、それに準ずることになろうかと思うわけでございます。 なおまた、先ほど私が申し上げましたケース・バイ・ケースというのは、量の問題がございましたので量の少ないやつはそんなに毒物にならないんじゃないか、こういうような御意向かと思いましたから、それは一号、二号に掲げたものでも量によってこれは対象になるとかならないということではございませんと、こういう答弁をしたわけでございます。
○稲村稔夫君 それは申しわけありません。私の質問が十分に御理解いただけてなかったんだと思いますが、私は、要するに毒物、劇物というものをどう認定するかということの中に、時代とともに変化をするものがあるでしょう。量的な側面もあるでしょう。それから先ほどもちょっと言いましたが、遺伝毒とか放射性物質とか、そういういろいろな、何といいますか、今までは犯罪などに余り使われなかったものが今度使われるようになったとかなんとかという可能性を持つようなものも出てくるかもしれません。そういうものを、いろいろ時代が大きくなって流れが複雑になればなるほど、そういう我々の考えを、今ここの審議の中では考え及ばないようなことがいろいろと出てくる、そういう可能性を私は申し上げたんでして、ですからそういう可能性に対してどこかでやはり客観的に物差しになるものができてこなければいけないんではないだろうか、その辺のところを気にして私は申し上げているんです。その辺をお答えをいただいて、私の時間が参りましたので終わりたいと思います。
○衆議院議員(白川勝彦君) 第二条の一号、二号は明確に決まっているわけでございますし、これにまたいろいろと新しいものが出たりするならば、この別表そのものが変更されるわけでございますから明確になるわけでございます。そして、これを決めたりする場合には、厚生省などではラットとかマウスに対するいろいろな試験などを通じて、これは人体にも有害なのではないだろうかということを御判断をされるようであります。なかなか人体実験できるわけでございませんから、ストレートには、人間にこれだけやれば致死量というのは決まって、だからこれは危険だということにならないだろうと思う。しかし、この一号、二号というのは一定の基準のもとに決められるわけでございます。 さて、この一号、二号に掲げられないものを使った場合どうするかという問題であるわけでございますが、そういう事件が起きた場合に、それはもう明らかにそれで人が死んでしまうようであるならばあえて実験などをしてみなくてもいいと思うんでございますが、果たしてこれがどの程度害があるんだろうかということについては具体的にある事件が起きてからその毒性とかということを当然のことながらこれはやっぱり検査せざるを得ないのではないだろうかと思います。ですから、害がないとは言えないけれども、しかしその毒性、劇性はどう考えでもいろいろな実験をしてみても第一号、第二号に掲げているような実験結果が出てこないということになりますと、人体に無害であるとかあるいは有益であるということではないけれども、しかしここの毒物法に言う毒物には当たらないという形で、本罪の構成要件からは外れてしまうということは大いにあり得ることでございますし、例えばそういう場合にもし改正利 法草案のように、人の健康に害する物というような規定があればそっちで罰せられることになるでしょうが、現在はそういう法律がないわけでございますので、例えばある物質を入れた、しかしその毒性、劇性はここで言うような毒性、劇性がないということになれば本罪の構成要件からは外れている、本罪は成立しない、こういうふうに御理解いただいて結構だと思います。
○委員長(岡部三郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。 午後零時十六分休憩 ―――――・――――― 午後一時十五分開会
○委員長(岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○刈田貞子君 私も流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案について質疑をさせていただきます。 冒頭では、まずグリコ・森永事件及びその後の便乗模倣事件等がどんな実情になっているかをお尋ねしようと思ったんですけれども、それは午前中お話が出ましたので割愛させていただきます。それからまた、流通食品に毒物を混入するという、そうした事件に対してこの法案がどんな影響力を持つのかというようなことについても御質問をする予定でございましたが、午前中答弁がございましたのでこれは割愛させていただきますけれども、いささかお答えには不足を感じております。 それで、次に私がお伺いいたしますのは、この法律はまず九条の要件から考えて、流通食品に具体的に毒物を入れなければ罪が発生してこない法律でしょう。そうすると、入れるぞ入れるぞというPR、それによってかなりの社会的不安や、それから企業の損失というものがあるわけでございまして、この点のいわゆる宣伝効果をねらったいたずら、こういうものに対しては本法案ではどういう対処をするのでしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 現実に毒物を入れない、そして入れた入れたというその宣伝でございますか、恐喝でございますか、そういったものに対してはこの法律は対抗できるかどうか、こういうことでございますが、この法律は、第何条ですか、第九条でございますね。書いてございますように、罰則の対象に保なりますのは「毒物を混入し、添加し、又は塗布した者」あるいはまた第二号の「混在させた者」、そういうことになっておりますので、仰せのような事態にはこの法律は適用できないと考えています。
○刈田貞子君 趣旨説明でしたか、趣旨説明の中ではやっぱり社会的不安に対しての措置というような意味のことも、たしかったわれていたと思うのでございますけれども、実際に毒物は入らない。しかし、それに対する今度は逆に私どもが威嚇を受けるという、こういうこともやはり私は今回ねらわれている一つの犯罪行為の中に該当するんじゃないかと思うんですね。ここら辺のところがなぜフォローされなかったというふうに考えればよろしいのか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) お話のようにただいま答弁いたしましたのは罰則は適用できない、こういうことでございまして、お話のようなそういう社会的不安を増勢すること、そのことにつきましてはいろいろな行政指導その他はできる。この法律の前面にはそういったものを防止するための法律でございますので、そういう点は適用できる。こういうふうに考えております。
○刈田貞子君 法務省にお伺いいたしますけれども、偽計業務妨害罪の法律ございますね。これが適用されたことはありますか。
○説明員(東條伸一郎君) お答え申し上げます。 グリコ、森永あるいはその後の便乗事犯について、偽計業務妨害罪が適用された事例があるかどうかということでございましょうか。――私、捜査の状況をつまびらかにしておりませんが、御承知のようにグリコ・森永事件と言われる事件の犯人はまだつかまっておりませんので、適用ということは、私どもの意味では適用したことはない。その後の事犯も、多くの場合には、入れるぞ、あるいは入れたぞということで金品を詐取しようとする犯罪類型が多いように聞いておりまして、それらの者は多くの場合、恐喝あるいは恐喝未遂という形で処理されていると聞いております。
○刈田貞子君 先ほど午前中改正刑法草案の話が出ましたけれども、この改正刑法草案の中では同種の罰条が設けられております。そして、そこでは刑の量刑の問題から考えますと、今回のこの特別措置法とのアンバランスが大変言われておるわけでございますね。三年と片方は十年。このアンバランスについてはどういうふうにお考えになりますか。均衡を失しているというふうにはお思いになりませんか。
○衆議院議員(白川勝彦君) お答え申し上げます。 改正刑法草案につきましても、十分参考にはいたしましたが、これは何分にもまだ草案でございますから、私どもはあくまでも本罪は現行刑法の各種の罪とのそのバランスを失してはならない、これを一番研究したところでございます。 そのときに私どもが一番参考にいたしましたのは、流通食品と同時に、食品に関するものは現行刑法にはございませんが、我々が口にするという意味で、浄水に対して毒物を入れるという、これは現行刑法にございます。それからもう一つ、水道に毒物を入れるという、こういう罪もあるわけでございますが、例えば先生お考えいただきたいと思うのでございますが、水道に毒物を入れたりした場合、水道の及ぼす範囲、あるいは特にその速さ、それからその防止の対応などを考えますと、水道に強力な毒物を入れたりした場合の影響力というのは非常に強いのではないだろうか。範囲からいったならば、例えば全国に流通する食品に入れるとかというのは範囲が広いわけでございますが、それは水道が例えば流れていくスピードなんかに比べれば、まだまだ時間もあるわけでございます。そういうことを踏まえますと、上限には水道に対して毒物を混入するということ、そして下限は浄水、これはくみ水とかあるいは一家で飲むとが、あるいは一町内でも昔の井戸みたいなことを言うんだろうと思いますが、それよりは大であろう、こういうことで、十年以下の懲役ということにいたしたわけでございます。 改正刑法草案には、飲食物に対して毒物を混入するという条項に「多数人の飲食に供する物」というような形であるわけでございますが、これは例えば大勢が食べる宴会の席の何かの、例えばおわん物なんかに毒物を入れるというようなケースが考えられるわけでございますが、流通食品に毒を混入するというのは、これよりははるかに害が大きい。先ほど申し上げましたように、水道に対して毒物を入れるのと似ているのではないだろうか。しかし、それと同視はできない。それらのことを加味しながら、いろいろと法定刑その他を決めさせていただきました。 ですから、改正刑法草案では「多数人の飲食に供する物」に、例えば「毒物その他健康に害のある物を混入した者も」と書いてあるわけでございますが、「健康に害のある物を混入した」という程度の者は逆に含まないようにさせようというようなことで、逆に構成要件の上では縛りをかけたつもりでございます。そんな意味でこの改正刑法草案の二百五条の第二項よりも重くなっておりますが、毒物の点あるいは範囲の点、その他のいずれの面においても、これよりもきつい構成要件になっておりますので、アンバランスがあるとは思っておりません。
○刈田貞子君 私は、この法案はやっぱり第九条の重罰規定、この威嚇、これが目玉じゃなかろうかというふうに思うわけでございます。何か刑法万能主義の思想がまた顔を出してきているような感じがして、そこのところが非常に気になる部分 でございます。今、改正草案の方の二百五条の分と比較して言われましたけれども、「健康に害のある物を混入した」という程度の者というふうに言われまますけれども、後ほど触れますが、特別措置は、死ななくたっていいんでしょう。健康に害が発生するというような人も罪になるわけでしょう。ならないですか、これは。
○衆議院議員(白川勝彦君) 毒物の定義のところでまたお尋ねあろうかと思いますが、要するに有害であるというだけでは本罪の構成要件該当性はございません。やはりどういうものを入れたかというところで、第二条その他に細く規定しているところからよって来るわけでございますが、ただ害だというだけでは本罪の適用はないわけでございまして、それは第二条第二項の一号、二号に掲げているもの、これはだれが考えても法律上、体に大変毒性があるということで、各種の実験結果やあるいは経験則上知られているものが掲げられているわけでございます。これは量が例えば微量であって、実際は害は少なかったといっても、それはよほど専門家がこのぐらいなら実際は害がないのだというだけの話であって、そういう場合であっても、そういう非常に害のあるものを入れたという場合は本罪の適用がある。 ただし、専門的に見て、しかも本人が、これは非常に微量で害はないのだということを知っていたら、それは量刑で加味するという形になっているわけでございます。そこで、三号について言えるわけでございますが、今「健康に害のある物」というようなものは、一般的には三号の中でそのうちのかなり体にとって有毒なものというようなもののみがこの三号で拾えるわけでございまして「健康に害がある物」は全部三号で拾えるということにはならないわけでございます。
○刈田貞子君 漸次お伺いいたします。 まず、この特別措置法の「目的」です。一条で、「毒物の混入等を防止するための措置等を定める」ということでございますが、先ほど午前中にもちょっと話がございましたけれども、防止するための防止策、それは三条の国の施策、あるいは四条の警察への届け出、五条の捜査機関への協力、六条の関係行政機関への通報、あるいは七条の指導、助言、こういうものをくるめて防止策というふうに了解してよろしいでしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 今お話しのように、防止するというのがこの法律の一番の眼目でございまして、そのために第三条から第八条までいろいろ決めておるわけでございます。お話のとおり、防止するためということの方が重要な目的でありますし、そしてまた、先ほど第九条の問題が出ましたが、この罰則はその前の章を法律的に担保するためのものである、こういうようにお考えいただきたいと思います。
○刈田貞子君 それでは、三条の「国の施策等」についてお伺いしますけれども、このところで「防止するため必要な施策を総合的に講ずるよう努めなければならない。」ということになっておりますね。ここで言う「総合的」とはどういうことを言われるのか。それから「努めなければならない。」になっておるわけでありまして、これは努力義務と考えてよろしいのかどうなのか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) グリコ・森永事件に見られますように、この種の犯罪は社会的に非常に大きな影響がございますので、国の行政の力全体あるいはまた国民の御協力、そういったものを結集してこの犯罪を防止したい、そういうところから「総合的に」ということをうたったわけでございまして、具体的にはあるいは商品、商店の監視の問題、あるいは包装の問題、あるいはまた毒物の管理の問題、いろいろ各省でおやりになっている事項がたくさんございますので、それをこの規定でこういった反社会的な事件を防止するために使っていただきたい、そういう行政措置をしていただきたいと、こういうことでございます。
○刈田貞子君 五条の「捜査機関への協力」でございますけれども、この「協力」というのは、これはしなければならないという義務ですか。それから「必要な協力をしなければならない。」という、この「必要」はだれがどのように判断をするのですか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 「協力をしなければならない。」ということは、そういった反社会的な事件でございますから、それに「製造業者等は、」と書いてございますが、その人方がこれは協力しなければならぬといって通報をする、こういうことでございまして、必要と思うのは製造業者等、それに係ると、そういうふうに理解をしております。
○刈田貞子君 それから六条ですね。「警察官又は海上保安官は、流通食品への毒物の混入等があった場合」あるいは「おそれがある場合」、「必要があると認めるときは、その旨を関係行政機関に通報するものとする。」と、これはなぜここで「必要があると認めるとき」というふうに断られましたか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) いろいろな情報が入ってくるだろうと思います。私、捜査関係はやったことございませんけれども、しかしながらいろいろなデマとかなんとかが入りますから、何でもかんでも全部通報があったのは関係行政機関に通報するというんでは少し煩わしいのじゃないか。ですから、捜査機関が、うん、これはやっぱり厚生省の衛生研究所へ連絡して調べてもらいたい、そういうことの必要を感じた場合にはそういう行政機関に通報する、こういうことでございます。
○刈田貞子君 七条、これはいわゆる指導、助言ですけれども、ここでは、先ほど午前中にも質問が出たわけでございますが、「毒物の混入等の防止のためとるべき措置に関し必要な指導又は助言をすることができる。」ということですね。これは主務大臣の立場だと思いますが、個々のケースによって対策が出されるとか、あるいは個々の案件によってというふうなことでさっきこれ御答弁あったわけです。私、考えますに、その判断はやはり主務大臣に任されるのではなかろうかというふうに願いますけれども、ある一定のマニュアルがあってもいいのではないかというふうには思うんですけれども、この「措置に関し必要な指導又は助言」、この中身をどのように読んだらよろしいでしょう。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 法律に書いてございますように、主務大臣がこれは必要だと認めるときに助言をすることができるとなっておりまして、その必要な範囲とか、あるいはまたどの時点で指導、助言をするかということは主務大臣に任してあるわけであります。
○刈田貞子君 そうすると「主務大臣は、流通食品への毒物の混入等があった場合において特に必要があると認めるときは、製造業者等に対し、当該流通食品又は飲食物につき必要な措置をとることを求めることができる。」と、このようになっております。きょうは主務大臣見えておりませんけれども、この法案が通ったとしますね。そうすると、これは附則で、公布の日から起算して二十日を経過した日からの施行となるということになりますね。そういたしますと、今香川、徳島等で起きておりますチョコレートのパラコートの事件なんかに対しては、直ちにどのような手が打たれるのですか。
○政府委員(谷野陽君) 農林水産省はこの法案通過後は主務大臣の立場に立つわけでございますが、ただいまの御質問の中で徳島の案件を御引用になったわけでございますが、先ほど来御議論がございますように、本法は流通食品についての法律でございまして、要するに販売されておるものに毒が入る、あるいはそれが混在をしておるというケースに適用があるというふうに承知をいたしております。徳島の案件は、私ども捜査当局ではございませんので詳細に申し上げる立場にはないわけでございますが、新聞報道等を総合いたしますと、流通食品への毒物の混入という事態には該当しないのではないだろうかというふうに考えております。
○刈田貞子君 今度は流通食品の定義にまた入るわけですけれども、あのチョコレートは流通食品の部類に入らないでしょうか。どうなんでしょ う。ちょっとさっきの食堂の話とやら給食の話とやら、全部また流通食品の定義に差し戻しになってくるわけですけれどもね。
○衆議院議員(白川勝彦君) 私、徳島ですか、その事件のこと知らないのでございますが、要するに公衆に販売される飲食物が流通食品でございまして、それを買うてそこに毒を入れるというのは、例えばそれを食べる人が大体予想される場合に、その人を殺そうとかということで毒を入れるんだろうと思うわけでございます。それは流通食品の信頼を害するとかということではなくて、特定の人を殺害しよう、害しようという、まさにそれはナイフでやっても刀でやってもいいわけでございますが、たまたまチョコレートに毒を入れるという手段を使うわけでございますから、それはけしからないことではございますが、流通食品の信頼性を害するというようなことではないと思います。ただ、この法律に書いてありますとおり、一たん買った食品、それはその時点から一たん流通食品から落ちるわけでございますが、そこに毒を入れてまた他の流通食品に混在させる行為は、これは流通食品になるわけでございます。ですから、毒入りチョコレートを、ちらっと新聞で見た程度でございますが、路上に置いておくとかということは、流通食品に混在させたことではないわけでございますから、それはもとは流通食品であっても既に流通食品ではなくなったということであろうかと思います。
○刈田貞子君 そうすると、かなり範囲の狭まった話のことになってくるわけですね。それで、何かさっきの話では流通食品はすごく私広い話のことをしておられるなというふうに思っていたんですけれども、今の答弁だとかなり流通食品というのは狭い話のことになるわけですね。 それで、もう一つ伺います。流通食品の定義ではなくて、この法律がいわゆる食品に限ったという、その理由はそれでは何なのですかということなのね。国民の生命や身体を対象にする被害の発生を防止するということであれば、必ずしも食品に限らず、アメリカで起きている例のタイレノールの事件で、シアン化カリウムが混入されていたという事件がありましたでしょう。あれで七名死亡していますね。あの手の事件だって起こり得るわけで、薬品及び医薬部外品を除外するということで、私は自分の考え方ではこれは恐らく食品というものは食品衛生法から引っ張ってこられたから、食品衛生法でいうところの定義の食品というのは確かにこの手のものを抜いてあるわけですね。それを持ってこられたのではないかなというふうに解釈をしてはみたんでございますけれども、しかし事実犯罪は起こっておるし、起こり得るということを考えた場合に、この今回の特別措置を食品にだけ限った理由は何ですか。
○衆議院議員(白川勝彦君) 流通食品、今先生範囲が狭まるんじゃないかと言いましたが、決してそんなことはないのでございまして、統計によりますと、我々が通常食しているものの半分以上は流通食品として販売されて、流通経路を渡ってくるものを最終的に我々が食品として食べているということだそうでございまして、大変私は流通食品の範囲というのは広いだろうと思うわけでございます。ただ、流通食品の中にはきちんとこん包されたものもありますし、野菜とか魚とか、あるいはそれ以外にもいろいろあろうかと思いますが、きちんとこん包されていないものもいろいろあるわけでございます。それに比べますと医薬品であるとか医薬部外品というようなことになりますと、これは別の法律がございましてきちんと管理をされております。また、こん包その他も医薬品あるいは医薬部外品等にふさわしいようにいろいろな基準が定められているわけでございまして、いわゆるこれらの分野については既に別の法律がある程度きちんとカバーをいたしておる。そういう面ではあえて流通食品と同種にしなくてもいいのではないだろうか、こんなような観点からあえて医薬品と医薬部外品は除いたわけでございます。
○刈田貞子君 大変不勉強でなになんですけれども、私わからないものですから教えていただきたいんですが、たばこはどうなるんですか。
○衆議院議員(白川勝彦君) 公衆に販売されるという点では全く同じでございますが、飲でもないと思いますし、食でもないと思いますので、これは当たらないと思います。
○刈田貞子君 流通食品の方はそのぐらいにして、第二条の二項の毒物の定義のところに入りますけれども、今どうしてたばこのことをお伺いしたかといいますと、午前中からお話伺っておりますと、毒物の毒性についていろいろ同僚の委員からお話が出ておりました。それで毒物の毒性は急性毒性、それから慢性毒性、そして残留毒性ございますね。恐らく午前中の話を聞いておりますと、その中のこれが該当するのは急性毒性の分の話なんだろうかなというふうに思っているわけです。ところが、急性毒性もいわゆる経口の分、経皮の分、それから吸引の分、急性毒性でもそれぞれ基準評価をするときに毒、劇を分けるのにそういうふうに区別していきますね。そうすると、たばこなんかは一吸い吸ったとき吸気で全部入っちゃった、これ一番早くいく方法ですわ。私は、この毒性のことも考えながらさっきたばこの話を出したわけでございますけれども、今回のこの二項で定義される毒物は急性毒性を対象として考えているというふうに考えていいんですか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) 細かい御質問ですので私の方からちょっと御答弁させていただきますけれども、まず毒物劇物法の別表第一の毒物にニコチンが挙げられているわけです。ニコチンというのは、ニコチンの原体、これはもうごく少量で人が触れただけで死ぬというような大変なものでございまして、これがまず挙げられております。それから同じ別表の最後の二十八号にそれを含む製剤ということで、ニコチンを含む製剤、これがやはり毒物に該当するということでございまして、これは政令で指定するようになっておりまして、具体的には政令の一条二十号にニコチン含有製剤ということで、これはニコチンを含んでいる製剤があるわけです。これは実際ニコチンを含む製剤としてたばこを粉末にした、これはいわゆる殺菌とかそういうのに使う製剤があるわけです。これはやはり毒物になるわけです。だからたばこを粉末にしたものは非常に毒性が強いということです。それで一応これは劇物より強い毒物になっております。
○刈田貞子君 さっき午前中お話を伺っていて、一号、二号でなく三号の分についていろいろ類似品を挙げておられたわけですけれども、その中で天然物挙げられましたね。それともう一つはウイルス等も挙げられましたね。これは例えば考えられる犯罪というのですか、例というのですか、どんなふうなことが考えられるためにこの三号が生きてくるんですか。
○衆議院議員(白川勝彦君) むしろこういうふうにお考えいただいた方がよろしいのではないかと思うんですが、第一号、第二号というのは個別具体的に列挙しているわけでございます。もし三号がなければ有毒なものであっても、あるいは非常に危険なものであってもこれに該当しなければ、刑法でございますから構成要件に該当性がない、こういうことになってしまうわけでございます。 およそ考えられるときに、世の中に毒物取締法、薬事法以外に危険なものがないというようなことは、これは言えないわけでございまして、必ずあるわけでございます。そういうものをきちんとフォローをしておかなかったならば、この法律はだれが考えても片手落ちのもの、こう言われるのではないだろうかと思うわけでございます。ですから、そういうことを考えた場合にこんなややこしい言い方をしないで、こういう毒物、例えば人体に重大な危害を与える毒物、薬物というような形で書けばそれでいいんでしょうが、そうなりますと非常にそれこそ範囲の広いものになります。 それよりは私どもは、やっぱり現実に使われるのは一号、二号というふうに書かれているものが現実には使われるんじゃないだろうか。そして毒 性その他がそれと同じものというようなものは、午前中も申し上げましたが、具体的に事件が発生しまして、その毒性がどのくらいかというのは事後的にあったならばいろいろな実験で言えるわけでございます。そういう面で言うならば、そして毒性が今申し上げたように第一号、第二号の基準、これは厚生省にちゃんとした基準があるんだと思うのでございますが、それと大体同程度のものであるならば具体的なこの項目に掲げられていないものでもやはり毒物を混入したことになる、こういうふうに規定する方が不明確性を排することになるんではないかということでこういう書き方をいたしたわけでございます。逆に私どもに言わせますと、この第三号がなかったならば、かなり危険なものを使っても個別具体的に挙げられてなければこの犯罪を免れるということになって、かえって片手落ちの立法と言わざるを得ないのではないだろうかと思います。
○刈田貞子君 また、逆のお考え方もありまして、懲役十年という大変厳しい重刑があるわけですから、逆にこの毒物とこの劇物を使った者に限るという考え方もあっていいと思うのね。白川先生は逆の立場を言われたんですけれども。
○衆議院議員(白川勝彦君) それはやっぱり私どもあらゆる立場から考えたわけでございますが、この世の中には現実に先ほど厚生省の方からもお答えがあったとおり、非常に人体に有害なもの、危険なものがいっぱいあるわけでございます。ただ、それは毒物及び劇物取締法あるいは薬事法の立法趣旨が違いますから、そういうものはそこに別表その他に掲げられないものはいっぱいあるわけでございます。そういうようなものを使って流通食品に混入させても、たまたまここに掲げられていないものだからいいじゃないかということは、私は常識的には大勢の人の納得するところではないのではないだろうかと思います。
○刈田貞子君 それから、先ほど毒物の量の問題が午前中論議になりましたし、先ほどの御答弁の中でもたばこのニコチンの話が出ていましたけれども、希釈されているからということですね。私は毒性の持つ威力というのか、タイムラグ、実はこれを考えるんです。そうしますと、例えば急性毒性の経口、それから経皮の基準判断をするときに検体を二週間の時間をとって実験することになっております。二週間検体に毒物を飲ませて、そしてその量と検体の死にぐあい、これを見てそれが毒か劇か、いわゆるLD50ですか、という形のものになっていくわけです。そういたしますと、その間の二週間というものが持つ意味を私は一生懸命考えたわけでございますけれども、急性毒性と申しましてもやはり二週間というようなタイムラグを考えなければいけない、こういう問題については検討なさいましたでしょうか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) 一応原案の立案の補助をした立場から御答弁申し上げますけれども、私どもは毒物の定義をしました場合、どういう範囲がよろしいかということについて厚生省の方と随分協議いたしまして、このような形で落ちついたわけです。できるだけ毒性、劇性の強いものだけに絞りたいということで、そういう刑法のような広い規定にしないということで、こういう規定になっております。
○刈田貞子君 できるだけ毒性、劇性の多いものだけに絞りたいというんなら、もう一号、二号で、それにまた省令がずっとついてあれだけ、別表一、二でしょう。そしてそれにさらに省令がずっとくっついて、あの数幾らか私勘定したことないからわかりませんけれども、あれだけあるわけですね。それにさらに三号をつくるということがかえってこの法律の毒とか劇とかいうものを希釈しちゃっているんじゃないかと私は思うのよ。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) 先ほども厚生省の方からお答えありましたように、一号と二号に掲げてある物質というのは製品化して一般的に商品として扱われているというものだけでございまして、そうでない試験研究室の中とかあるいは工場の中の生成過程で、毒性の強いもの、劇性の強いものというのは非常に多くあるということを私どもこれ勉強させられまして、それでそういうものは非常にいろいろな物質が世の中にあるものですから、とても全部リストアップされていないということですね。それからもう一つは、政令で定めたらどうかという御議論もあったんですけれども、これは研究段階なんかで生成されているものは名前のないものもたくさんあるわけなんです。こういうものは毒性はもう指定されている毒物、劇物よりももっと強くても名前がないなんというものもあるそうですので、やはりこういう形の規定しかとれないということですね。そういうことで御理解いただければと思います。
○刈田貞子君 法務省にお伺いいたしますけれども、その毒物ないしは劇物が類似品であるかないかによって犯罪性があるかないかが判断されていくわけですけれども、この手の、つまり第三号というものが入ってくることによって非常に犯罪性の判断ということについて難しいことが出てくるとはお思いになりませんか。法務省にお伺いします。
○説明員(東條伸一郎君) お答え申し上げます。 二条二項三号で「類似」という言葉を使った立法理由につきましてはただいま御説明があったとおりと私ども理解しておりまして、「類似」という言葉を使うがゆえにあいまいになるのではないかという御心配であろうかと思いますが、これは御承知のように、ある刑罰法規の中身があいまいで不明確だということになりますと、憲法三十一条違反の問題が生じてくるわけでございますが、この点につきましては通常の判断能力を有する一般人の理解で、自分がやっている行為が罰則に触れるかどうかということがわかればよろしいというのが最高裁の考え方でございます。 それで、ただいま御説明ございましたように、三号の「類似」というのは、一号、二号に列挙しております毒物、劇物とその毒性あるいは劇性が匹敵するようなものだという御説明でございまして、そういうものであるということは、もちろん最終的に個々のケースでは我々捜査機関が化学的な実験などを経た上で証拠を固めて、裁判に回して、最終的には判例という形で出てくるということではございましょうけれども、このような基準を法律に定めることによって、行為者がこれを見て何が何だかわからない、自分の行為が処罰されるかどうかわからないというおそれはないと私どもは考えております。
○刈田貞子君 それからもう一つ、この三号とそれから通報との絡みで、例の届け出でございますけれども、「毒物の混入等があったことを知ったとき」、先ほど直ちにということで大変御論議が出たわけですけれども、私はこの「知ったとき」というのは、今の毒性の関係のことを考えますと、今の法務省のお答えですと、非常にその毒物が判定される期間があるわけですね。そうすると、この届け出の義務がここにあるんだけれども、それが毒性であるかどうかということを判断するのは、その製造業者等が試験なり何なりして判断するんだろうと思うんですよ。思うんだけれども、それでもわからない毒性だって、名前のない毒まであるというんだから、あると思うんだけれども、この「知ったとき」というときはどういうときですか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) ただいま第何条ですか、「知ったとき」というのはどういうときかということでございますが、おっしゃるように毒物が入っておった、検査しましてね。それが長時間でないとわからないというようなおそれがあるのかどうかわかのませんけれども、実際にそういった毒物を検出したときには、すぐひとつ報告をしてくださいと、こういうことで常識的な時期ということでございまして、二日も三日も放置して、知らぬ顔して、黙っているというようなことではいけませんので、なるべく早くひとつ報告してもらいたい、こういうことでございます。
○刈田貞子君 へ理屈を申しますといろいろ出てくるわけでございますけれども、先へ進めます。 私は、これは食品流通局の方にお伺いすることになるんだと思うんですが、提案者かな、提案者 にお伺いすることになるんでしょうか。かねてから製造物責任法という法律がずっと懸案になってきております。これは答えは簡単なんで、これの場合は故意によって起きた課題であり、そして製造物責任法の場合は瑕疵による、こういうことで線引きできるわけです。だけど、その毒か劇かわかりませんけれども、たまたま混入してしまったということに意思があったのかなかったのかというようなことをやっぱり判断するのに非常に難しさがあろうと私は思うんですよ。製造物責任法は、これはこの間経済企画庁がおとりになったアンケートでございますけれども、業界等では大変に抵抗がおありになって、なかなか製造物責任法の制定というのは我が国にはなじんでおりません。それは私も長いこと消費者被害救済の立場の方から、このことをずっと研究しておりまして、わかっておりますけれども、この製造物責任法はしかし、今回の経済企画庁がおとりになりましたアンケートによりますと、積極的ではない、消極的ではあるけれども、容認をしていかなければならない時流が出てきておるというのが五八・二%出てきておるわけです。 これはもちろん製造物すべてですから、食品だけに限った話ではございませんけれども、ございませんけれども、もちろん食品に関して幾つかの判例があるというくらい、製造物責任法については、これはかなりこれから国際社会を踏まえて大きな課題になっていく一つのテーマなんです。今すぐ私はそういうものができるというふうには思っておりません。我が国では特になじまないであろうと思います。けれども、将来こういうふうな製造物責任法等ができてくるような土壌ができてきたとき、この特別措置法との絡みではどのようなことを考えればよろしいのですか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 私どもまだ全然知らないことでございますが、非常に貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。実はこの法律は製造業者ではなくて、悪意の第三者に対して、第三者が製造した者に毒物を混入する、こういうところで、製造業者の方でも間違って危険、身体に害のあるものを入れたというのと違うわけでございますが、先生今お話しのような、だんだんとそういったような条件になってくれば、またその時点で考えなきゃならないんじゃないか。非常に難しい問題ではございますけれども、私ども出しておりますこの法律は、第三者が悪意を持って故意に流通食品に毒物を混入した場合でございまして、製造業者の、あるいは現在の食品衛生法で取り締まるのかどうか、さしあたりはわかりませんけれども、これからやはり検討しなきゃならない問題じゃないかと思っております。
○刈田貞子君 食品流通局の方にお伺いいたしますけれども、製造業者等も毒物混入の防止のために努めていかなければならないということがうたってあります。それをまた指導、助言をしていかなければならないんだろうとは思うんですが、農水省としてどんなふうな指導をしてこれまでこられたのか。そして、今後これが、この法案が通った場合にしていくのか。いかがでございますか。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘のように、この法案成立後私どもは、各条項につきまして防止対策等に努めるべき立場にあるわけでございます。この法律が提案をされました経緯となりましたグリコ・森永事件の際におきましても、私どもといたしましては、この種の問題の発生を防止し、いろいろな過程での流通食品の安全を確保するように諸般の指導等を行ってきたわけでございます。 具体的に申しますと、関係の企業に対しまして、包装でございますとか、あるいは輸送でございますとか、そういう過程での安全管理あるいは包装の技術的なチェックを行う、こういうようなことがございますし、また流通の段階になりまして、小売段階、特に量販店のようなセルフサービス形式のところがこのような問題の発生の場所になる可能性が非常に強いわけでございまして、これらの団体に対しましてもいろいろと注意を促し、指導をしてきたわけでございます。一方、これらの指導の裏づけといたしまして、いろいろな制度融資等につきましても、私どもで所管をいたしておりますものにつきましては、安全装置、防犯装置等につきましてこれを融資の対象として、導入が容易になるような措置を講じたところでございます。 また一方、この法律でございますと、第八条のところに規定をされておるようなケースでございますが、グリコ・森永事件の際、特に森永につきまして流通ルートが混乱をいたしましたと申しますか、一時は森永の製品が店頭から姿を消す、こういうような事態になったわけでございまして、流通秩序も大変動揺いたしましたし、また製造業者の経営あるいは関係労働者の生活の面でも心配があったわけでございます。私どもといたしましては内閣に政務次官レベルの会議を開いていただいたわけでございますが、そのような場を通しまして各省等にもお願いをいたしまして、制度融資等の措置を講じていただいたわけでございますし、また販売面につきましても、いわゆる袋の販売というような、いろいろなルートでの販売の支援をいたしまして、これらの企業の立ち直りあるいは操業度の維持等に努めてきたわけでございます。 本法が制定をされました後のことでございますけれども、基本的にはグリコ・森永事件のときに経験を積みましたようなことにつきましてこれを一つのルートに乗せていく、こういうことになろうかというふうに考えておるわけでございまして、今までの経験を踏まえまして法の適正な施行に努力をしてまいりたいというふうに考えております。
○刈田貞子君 局長、今スーパー等の店舗の棚から品物がみんなおろされていくという話ありましたね。そのときに要する費用の話ですけれども、撤去及び廃棄にかかわる費用の問題ですけれども、これ私調べたら、皆さん認識違いしているみたいなのは、食品衛生法の雑則の二十六条の二分の一負担、これが適用されるのかと思ったら、これはもう死文化しているんですってね。違いますか。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘の食品衛生法の規定でございますが、これは私どもの所管ではございませんので、あるいはお答えを申し上げることが適当かどうかということはございますけれども、私どもの理解を申し上げさせていただきますと、食品衛生法では撤去について命令がかかることになっておりまして、それにつきまして負担の規定が先ほどお話がございましたような条文に国庫負担第二十六条ということであるわけでございます。 この規定は私どもが理解しているところによりますと、食品の廃棄命令をかけるに必要といたしました都道府県または保健所を設置する市の費用に対して補助金が出る、こういうことでございまして、この食品衛生法の場合には基本的に申しますと企業が安全な食品を供給するという、いわば通常の営業形態における企業の責任を前提としたものでございますから、そこで撤去されるものはそれの製造等を行った営業者の責任のもとに撤去されるというのが基本であるというふうに聞いておりまして、これは保健所等を設置している市あるいは都道府県がそういう指示をかけ執行させるのに必要な経費に関する規定であって、廃棄をした店でございますとか、その他に補償する規定ではないというふうに解されているというふうに私どもは聞いておるわけでございます。
○刈田貞子君 そうじゃなくて、この二十六条の責任そのものをすっぽり地方交付税でもって措置しているんですって、そうですか。地方交付税で措置しているんですか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) その件は先生の方から御質問あったとおりでございます。実は食品衛生法の地方自治体に対する負担の規定でございますけれども、その後は地方交付税法の改正がございまして、これは後法ということになりまして、こちらの方で新たに地方交付税の形で見る ということになりました結果、事実上前法である食品衛生法の費用負担の規定は今動いてないということです。そういうふうな御理解でよろしいと思います。
○刈田貞子君 衆議院ではあり得るというような御答弁があったり、昨日も質問のお方が見えられたときにもあり得るというお話があったものですから調べてみましたらそうでないんですね。今の言われたとおりですね。もう一度答弁してください。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) そのとおりでございます。 それで、食品衛生法の件につきましては、私どもも衆議院の委員会で御答弁申し上げていますけれども、これは費用の撤去の規定が適用になるというような言い方ではございませんで、食品衛生法の全般的な適用も全くあり得ないこともないという形のお話で、答弁でございます。ですから、食品衛生法はその他の有毒物質とかそういうものが入っている食品ですね。これについていろいろ撤去の命令とか、あるいは業者の規制とか、そういうことはできるわけなんです。そういう事柄は形式的には適用があるのじゃなかろうか。 ただ、本法案の立法の段階の、立案の初期の段階、この段階で私どもはいろいろ検討しまして、これは厚生省なども入って検討したわけでございますけれども、やはり食品衛生法サイドの問題は食品衛生法の方で措置されるということで、一般的には第三者のいわゆる犯罪行為に近いような形で有毒物質が入った場合は、食品衛生法のいわゆる所管官署は保健所ですけれども、保健所ではなかなか対応のし切れない問題も多いのじゃなかろうかというような形で、一応本法案の対象になっていますような第三者による故意の毒物混入ですね。これは一般的な撤去命令とかそういうものは、撤去のこれはこちらの要請ですけれども、本法案の七条の方が普通発動されるのじゃないかと、そういうお話をしたわけです。それで食品衛生法の方は形式的に適用除外にしていませんから、全く形式的に適用がないというわけにはいかないんですけれども、余り撤去命令なども発動される可能性は少ないんじゃなかろうかというように私どもは理解しております。
○刈田貞子君 時間がなくなりましたので、最後警察の方にお伺いするんですけれども、私たち一般的に考えて青酸カリ等を混入したぞと、こういうことになるわけで、なぜそんな毒物、劇物、こういうようなものが普通の人の手に入ってしまうんだろうかというのが素朴なみんな疑問なんですね。 そこでお伺いをいたしますが、毒物の管理の状況についてやっぱりこれ確認させていただかなきゃいけないと思います。グリコ・森永事件以降だけで、これは白書で調べさせていただいたんですが、青酸系で十八件、それから殺虫剤十九件、除草剤等で八件、それからその他が十四件というふうになっておりますけれども、少なくとも毒劇法あるいは農薬取締法等で、かなりの管理がされているはずなのに、なぜこういうものが出回るのかというふうにお思いになりますか。
○説明員(泉幸伸君) 御指摘のとおり毒物、劇物等につきましては、それぞれの法律でいろいろな販売等について規制が行われておりまして、それらの規制が確実に完全に守られておれば、不要なところには出回らない。また正当に入手した人が正当に使用している限りそのような事態がないということは当然でございます。警察といたしましては、毒物が不正に入手されこれが犯罪に使用されないよう関係省庁と密接な連携をとりつつ関係団体を通じたり、あるいは警察官が毒物取扱業者等を訪問するなどの方法によってこの間の指導を行っているところでございます。 具体的には毒劇法上の規定をこれらの人に遵守してもらうことはもとより、さらに安全対策上の見地から毒物、劇物はかぎのかかる保管庫に保管し、これを定期的に点検して窃盗、紛失の防止を図ること、すべての毒物、劇物の譲渡、交付に当たっては、運転免許証等確かな身分証明書によって譲り受け人の身元を確認すること、毒物、劇物の盗難または紛失事故が発生した場合には直ちに警察に届けること、不審な購入者等については警察に速やかに通報していただくことなどを中心に指導、要請を行っているところであります。今後ともこれらの活動を通じましてこの間における問題がなくなるよう努力してまいりたいと思います。
○刈田貞子君 時間でございますので、最後に私希望いたしますことは、罰則の九条が生きてくるような法案になるのではなくて、前半で言われているところのやはり防止策が見事に作動する、こういう形の法案として生きてくるならば、これもまたひとつ策かなというふうに思ったりもするところでございますので、どうぞいわゆる刑罰万能主義、罪人をつくれば事足りるという、そういう考えにだけはお立ちにならないでいっていただきたい。このことを希望いたしまして質問を終わります。 ありがとうございました。
○諫山博君 午前中からの質疑を聞きまして、この法案ぐらい問題の提起された法案は珍しい。賛成、反対にかかわらずさまざまな疑問が提起されております。そして、まだ十分解明されていないというのが私の感想です。 そこで、法務省に質問します。東條参事官は衆議院で、グリコ・森永事件は、「監禁致傷、強盗致傷、放火、恐喝未遂、殺人未遂、業務妨害などの罪名が想定される」と言われております。こういう罪名が適用されるとすれば、法定刑はどうなりましょうか。
○説明員(東條伸一郎君) お答え申し上げます。 グリコ・森永事件につきましては、まだ現在捜査中で犯人が検挙されておりませんので、確定的なことは申し上げることはできないわけでございますが、今御指摘のように、あの事件、いろいろな事実関係がございます。当初の江崎グリコ社長の誘拐、監禁、身の代金要求から始まりまして、工場に対する放火ですとか、青酸ソーダを入れた製品をばらまいた、あるいはそれをばらまくと言っておどかす、あるいは現に「どくいりきけん」というようなものをつけたチョコレートをスーパーの店頭に置くというような一連の事実があるわけでございまして、これらにつきましては、もちろん先生よく御承知のように、犯意でございますとか、いろいろな問題について事実関係が確定されなければ、最終的に適用法条というものは決まってまいりませんが、予想される犯罪といたしましては、先ほど先生御指摘のような各種の犯罪が想定されるわけでございまして、これらの法定刑の一番重いものは殺人未遂あるいは現住建造物放火、現在まだ死刑が残っておりますので、死刑という一番重い法定刑から適用は可能でございます。ただ、現実にどの程度の量刑を要求するかということは、具体的な事実関係が判明しませんと何とも申し上げようがないところでございます。
○諫山博君 これは死刑、無期懲役、有期懲役とすれば懲役二十年、こういう法定刑が可能ではないでしょうか。結論だけ答えてください。
○説明員(東條伸一郎君) 機械的に刑法を適用しますと、確かにそのような法定刑も可能ではございます。
○諫山博君 犯人が逮捕されないのは刑事罰の不備のためだと思われますか、法務省。
○説明員(東條伸一郎君) 刑事罰則が不備であるがゆえに犯人が検挙されないかというお尋ねでございますが、この事件につきましては、いずれにしても、今申し上げましたようないろいろな犯罪が成立するわけでございますので、必ずしも不備であるがゆえに検挙されないということではないかと思います。
○諫山博君 提案者に質問です。 第五条では、製造業者等に「捜査機関に対し、必要な協力をしなければならない。」と書いています。これは捜査機関に対する協力義務を法律で決めたものと理解してよろしいでしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) そのとおりでございます。製造業者等が必要だというふうに認識した場合には協力していただきたいと、こういうこと でございます。
○諫山博君 捜査機関に対する法律上の協力義務と確認してよろしいですね。
○衆議院議員(宮崎茂一君) そのとおりであります。
○諫山博君 白川議員にお聞きします。 衆議院で、あなたは、この規定によって相当の効果が上がるのではないかという期待を持って見ていますと、こう言われております。製造業者等に捜査に協力する法律義務を課することによってどのような効果を期待しておられますか。
○衆議院議員(白川勝彦君) 俗に言うプログラム規定、罰則がないわけでございますが、この法案を立法している当時では自分たちが最大の被害音なんである、その被害者であるところに罰則のある届け出義務が課せられるのはもちろんのことながら、こういうようなものを言われること自体が心外であるというような雰囲気もございました。しかしその後、いろいろな経過がありまして、現在、業界ではこのような犯人におどしを受けたということに対して、裏取引は結局犯人をのさばらせるだけであるということで、こういう事件が起きたならば、やはりこれは捜査当局と一緒になって犯人を確実に検挙していくということが、自分の企業の被害を防止する道でもあるし、業界全体のこういう犯罪に対する防止にもなるというような、そういう意識が大分醸成されてきたようであります。 そういうようなものを受けて、やはりいやしくも食品を販売して、そして利益を得ている製造業者等は、入ったかどうかはわからないけれども、そういう食品にターゲットを絞ったいろいろな脅迫まがいのこと、あるいはそういうことが言われているということはその可能性があるわけでございますから、いち早く警察機関、捜査当局に届け出て、そして犯人検挙のために協力してもらうというようなことを法律上も書いてあるんだ、そこには確かに刑事罰はないけれども、製造業者たるものは法律上そういう義務はあるんだということを明確にしておくということは、業界全体の中にこういう事件があったらやっぱりこれは全体で力を合わせながら屈服しないでやっていこう、こういうことが、今の現状もそうであるようでございますが、より以上期待されるものだと期待しておるわけでございます。私はまたそうなるだろうと確信をいたしております。
○諫山博君 製造業者等が被疑者もしくは参考人として警察から呼び出しを受けた場合には出頭しなければなりませんか。出頭しなくてもいいですか。
○衆議院議員(白川勝彦君) これはこの法律の関与するところでは私はないと思います。製造業者等が被疑者というのはちょっと私、解せませんが、参考人という場合はもともと参考人でございますから、この法律があるから出頭義務があるということにはならないだろうと思います。
○諫山博君 出頭義務がないとすれば、供述の義務もないというふうに聞いてよろしいでしょうか。
○衆議院議員(白川勝彦君) どなたもその意に反して供述をするということが義務づけられている法律はどこにもないわけでございますから、それは一般の刑訴法その他の規定するところであって、この法律が関与するところではないと存じます。
○諫山博君 私は、届け出義務じゃなくて捜査に協力する義務についてこれから質問します。 そうすると、犯罪捜査に対する協力を義務づけられながら警察に出頭する義務はない、警察に供述する義務もない。とすればどういう協力の仕方があるんでしょうか。これは犯罪捜査についてです。
○衆議院議員(白川勝彦君) 先生も法律の御専門家でございますから、義務というのは、御案内のとおり、義務に違反したらどういう罰則があるかというところで、法律的には意味があるわけでございます。そういう意味では、俗に言う協力してくださいという意味でございまして、その協力をすることは要請するけれども、その協力をしなかったらどういう効果が出てくるかという点に関しては、この法律は何も触れていない、こう御理解いただいて結構だと思います。
○諫山博君 警察の呼び出しに応じるかどうか、警察の質問に答えるかどうかというのは、刑事訴訟法上の問題であるだけではなくて、憲法上の問題ですね。だとすれば、出頭義務も否定しない、出頭義務も認めない、供述義務も認めないというのに、何で捜査に協力する法律上の義務を課する必要があるんでしょうか。
○衆議院議員(白川勝彦君) プログラム規定とお考えいただいて、そうしてくださいということであります。それに従わなかったらどうするかということに関しては、罰則その他の担保はないが、製造業者等は捜査が円満に行われるようにぜひとも協力をしていただきたいという法律に基づく要請とお考えいただいて結構なんではないでしょうか。
○諫山博君 裁判官の令状がなければ強制的に警察に連れていかれない、言いたくないことは言わなくてもいいということも憲法上の権利だと。そして、これは一般国民が尊重しなければならない権利です。もちろん警察も尊重しなければなりません。そうだとすれば、この憲法上の権利を脅かすような規定になっているのが、捜査に協力すべき法律上の義務ではないのか。どうして憲法上の規定を否定するような法律上の協力義務を課するんですか。
○衆議院議員(白川勝彦君) 私は、どうしてそこまでこの条文を悪意に満ちて御解釈をいただかなきゃならないのだろうかとむしろ理解に苦しむわけでございますが、製造業者等は、大量の流通食品を製造し、販売し、そしてまた直ちに国民の健康にも直結をいたしておるわけでございます。そういう流通食品全体の中に毒物を混入したりして企業から金を取るのはもちろんでございます。幸いにも、日本では流通食品に毒物が混入されて人が死傷したという結果が起きていないから、そういうふうなことをおっしゃられるのかもわかりませんけれども、現実に本当にアメリカのような事件が日本で起こり得なかったということを私はむしろ幸いとすべきだと思うわけでございます。 そういう意味では、そういう不特定かつ多数の方々に流通食品を供給している製造業者というのは、やっぱりもしそのような毒物の混入等が行われる犯罪があった場合は、そういうようなことが行われないようにするために、速やかに犯人を検挙するとか、そういうことについて義務づける。義務づけるといっても、それは基本的には罰則がないわけでございますから、国会あるいは国がと言ってもいい、あるいは社会全体と言ってもいいと思いますが、協力して捜査がスムーズに行われるようにしてくださいという要請だと思うわけでございます。そういうことをプログラム規定というわけでございますが、それをそれほど憲法を害するとかというふうにお考えになる必要はないのではないだろうかと私は存じます。
○諫山博君 法務省に質問します。 警察の捜査に法律上協力しなければならないという義務を課している規定がありますか。
○説明員(東條伸一郎君) お答え申し上げます。 当局所管の法令についてだけ調べでございますが、一般的な意味での捜査協力義務というものの明文を置いた規定は当局所管の法令にはございませんが、例えば刑事訴訟法二百三十九条の公務員に対して犯罪の告発義務を課した規定、あるいはやや特殊な法令でございますが、犯罪を認知した者にその告知義務を課しております爆発物取締罰則八条の規定などは、当局の所管の法令では広い意味での捜査に対する協力義務を課した規定であろうかと思います。そのほか若干調べましたところでは、例えば核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律六十三条、あるいは放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律三十二条、質屋営業法十三条、古物営業法十六条等は、それぞれの法律に規定しております特定の事業者等がその扱います物品等につきまして窃盗 の被害等に遭った場合などについて特に届け出ろということで、これも一種の捜査に対する協力義務を課した規定であろうと理解しております。
○諫山博君 届け出ろという意味とは別に、警察の捜査に協力せよというような規定はありますか。
○説明員(東條伸一郎君) これはあくまでも私どもの刑事局の所管の法令に関して申し上げますと、一般的にそのような規定を、法律上明文を置いた規定はございません。見当たりません。
○諫山博君 爆発物取締罰則というのが出てきましたけれども、これは新憲法が生まれるはるか昔の罰則ですね。 そこでもう一遍、法務省に質問します。警察官の捜査、検察官の捜査に対する国民の協力といえば出頭をする、そして供述する、これが主な内容ではないでしょうか。
○説明員(東條伸一郎君) 必要な事情聴取に応じていただくというのが一つの協力の内容であろうかと思います。そのほかに証拠物の提出その他ございますけれども、犯罪事実に関し、必要な情報を持っている人が捜査当局に対して情報を提供してもらうということが協力の中身の主たるものであると理解しております。
○諫山博君 一般に国民は捜査に協力する法律上の義務を負っていますか。法務省の御説明を聞きたいと思います。
○説明員(東條伸一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、法律の明文上捜査に協力をしなければならないという規定は当局所管の法令にはございません。ただ、私ども広い意味での刑事司法に国民が協力するという義務はあろうかと思っております。その具体的なあらわれは、例えば証人になりますと出頭義務等は当然課せられますし、捜査段階でも例えば正当な理由がなく出頭等をいたしませんと、刑訴法の二百二十六条でございましたか、そういうような規定で起訴前の証人尋問というような規定の形で出頭して供述しなければならないという立場に置かれるわけでございまして、その意味では、刑事訴訟法という法律全体は国民が犯罪の防圧のために捜査に協力してもらえるということを前提としてつくった法律であるというふうに理解しております。
○諫山博君 要するに捜査に協力しなければならないという明文規定はないでしょう。あるとすれば、この法律ができ上がればそういう唯一の法律になるということではありませんか、法律の明文上はどうですか。
○説明員(東條伸一郎君) 私たびたびお答え申し上げておりますように、私全法令を見たわけではございませんので、当局所管の法令に関して明文でそのような規定を置いたものはないと申し上げております。
○諫山博君 極めて重大な法律が今つくられようとしているわけですけれども、次に厚生省に質問します。 何が毒物であり、何が劇物であるかということは毒劇物取締法に列挙されていますね。法律の別表あるいは政令で定めるところによるということになっていると思いますが、そうですか。
○説明員(渡辺徹君) 毒劇法ではそのように規定されております。
○諫山博君 薬事法に基づく事業、創業についても同じような規定の仕方をしていますか。
○説明員(渡辺徹君) 薬事法におきましても事業、創業の指定をするということになっております。
○諫山博君 麻薬取締法では、麻薬は「別表に掲げる物を言う。」、家庭麻薬についていうと「別表」「但書に規定する物をいう。」、こうなっていますね。
○説明員(渡辺徹君) そのような規定になっております。
○諫山博君 挙げれば切りがありませんけれども、覚せい剤取締法、これでは一号にいろいろな品物の名前が列挙されて、二号に「前号に掲げる物と同種の覚せい作用を有する物であって政令で指定するもの」となっていますね。そうですか。
○説明員(渡辺徹君) 覚せい剤取締法の場合、二条に覚せい剤が列挙されてございまして、その中に、法令で定めるもの以外に政令で定めるということになっております。
○諫山博君 有毒物質を含有する家庭用品の規制に関する法律というのがありますが、これは厚生省所管ですか。これでは、この法律において有害物質とは「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質をいう。」となっていますが、そのとおりですか。
○説明員(渡辺徹君) きょう担当がちょっと参っておりませんけれども、そのような規定になっているというふうに理解しております。
○諫山博君 毒物、劇物、事業、創業、あるいは覚せい剤、アヘン、いろいろなものについて今の法律の規定の仕方を列挙しましたけれども、これは抽象的に定義を書くのではなくて、特定の物の名前を決めてしまっている。法律で定めたり政令で定めたり、厚生大臣が指定したりというやり方をとっていると思いますが、そのとおりでしょうか。
○説明員(渡辺徹君) 私ども業務局所管いたします法令、毒物劇物取締法、薬事法関係等の法律につきましてはそのような規定になってございます。
○諫山博君 そういう場合に「類似するもの」という表現を使っているのがありますか。
○説明員(渡辺徹君) 私どもの所管する法令ではそのような規定はないというふうに理解しております。
○諫山博君 毒物とか劇物とか、さまざまな危険な物質を法律とか政令などで制限列挙している。これが現行法の常識だと思いますけれども、なぜこういうものを制限的に列挙することになったのか。理由を御説明ください。
○説明員(渡辺徹君) 毒物劇物取締法の場合でございますと、一般に産業界あるいは社会におきまして使われている化学物質類というものは非常にたくさんございます。で、毒物劇物取締法の場合には、そのような化学物質のうち毒性、劇性の強いものにつきましてこれを法令で指定をいたします。で、指定いたしました毒物、劇物につきましては、これを製造する音あるいはこれを販売する者、これを運搬する者、それを業務上取り扱う者、それぞれいろいろな禁止規定あるいは制限規定、義務規定がございます。例えば交付時の購入者の身元の記名、署名といったような文書をとるというような、いろいろな規定がございます。そのような規定を関係の方々に遵守していただく、そのためにはどういう化学物質がそういう毒劇法の対象になっているのかということを明らかにいたしまして、法の適用が円滑にいくようにということであるというふうに理解しております。
○諫山博君 そうすると、いかに毒性、劇性が強くても法律や政令で決められていなければ毒物や劇物ではない、薬事法について言うと、いかに毒性が強くても厚生大臣が指定していなければ事業でも創業でもない、こう聞いていいですか。
○説明員(渡辺徹君) 法律上の定義から申し上げますとそのような理解、解釈になるかと思います。
○諫山博君 覚せい剤を例にとりますと、「覚せい作用を有する物」であれば、すべて覚せい剤というのではなくて、その中で「政令で指定するもの」だけが覚せい剤という取り扱いになりますか。
○説明員(渡辺徹君) 現在の覚せい剤取締法ではそのように規定されております。
○諫山博君 新たに覚せい作用を有する物質が発見されたとすれば、これはどういう手続をとって覚せい剤として取り扱うことになりますか。
○説明員(渡辺徹君) そういう新しい物質が見つかった場合、あるいは新たに創出されたような場合には、私どもはその覚せい作用に関する文献、治験等を提出させまして、それらを審議の上覚せい剤として指定をするかどうかということを厚生省におきまして審査をするということになろうかと思います。その上で、従来の覚せい剤取締法に よりまして規定が必要であるということになれば、政令に従いましてこれを指定するということになろうかと思います。
○諫山博君 取り締まる必要のある「覚せい作用を有する物」は大体覚せい剤として現在指定されていると思っていますか。
○説明員(渡辺徹君) 少なくともそのようになっているのではないかというふうに理解しております。
○諫山博君 新たに毒性のある物、劇性のある物が発見されたとすれば厚生省はどうしますか。
○説明員(渡辺徹君) その毒物あるいは劇物に該当する可能性のある物質が販売もしくは授与の目的で社会一般に流通する可能性があるということであれば、私どもの毒物劇物指定の判定基準に照らしまして、その必要のあるものについては指定をするということになろうかと思います。
○諫山博君 その場合に、何らかの審議会を通すのではないでしょうか。さらに判定基準というのはどういうことになりますか、簡単に言うと。
○説明員(渡辺徹君) 毒物劇物取締法で申しますと、私ども毒物、劇物にある化学物質を指定する場合には、中央薬事審議会に毒物劇物調査会というのがございまして、そこにデータを添えましてお諮りをするということになります。その審議結果を得まして指定をするということになります。
○諫山博君 提案者に質問します。 この法案で毒劇物取締法の第三表に出ている特定毒物劇物、これを外しているのはどういう理由ですか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) これらの物は別表一に全部載っておるわけです。
○諫山博君 「類似するもの」というのがいろいろ衆議院で議論されているようですけれども、この議論を通じてみますと、毒物、劇物に毒性が等しいものと言うんですか、劣らないものと言うんですか、定義づければどういうことになりますか、「類似するもの」の定義。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) 同等あるいは同等以上のものと、こういうような意味合いになると思います。ただ、私ども法案立案の補助をした立場から同等とか同等以上のものという表現を避けましたのは、その判定基準が多様で、単なる量的なものだけで決めるのであれば、多分私どもは同等とか同等以上のものという表現を使ったと思いますけれども、いわゆる量的なもの以外にもいろいろな所見とか、量的な実験は動物実験しかいたしておりませんから、人が事故に遭った場合の所見とか、あるいは解毒剤がどの程度あるかとか、そういうことも判定の基準にどうもなっているようなものですから、これは厚生省の専門の方にいろいろお聞きしまして、それでやはり類似ということで、内容的には同等、同等以上のものということに解釈すべきじゃないかと思います。
○諫山博君 何と比べて同等もしくは同等以上ということになるんですか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) いわゆる毒物、劇物のどれという、一つずつ比較するというよりは、毒物、劇物の判定基準がございまして、それと照らしてということになります。類似というのはそういう毒性、劇性の類似性ということで判定するという形になるように理解しております。
○諫山博君 毒性、劇性の類似性と言いますけれども、それは量的な強さをあらわしますか。
○衆議院法制局参事(坂本一洋君) それはまず基本的には、量的なものが非常に判定の基準の一つになると思います。これはいわゆる半数致死量、経口あるいは吸引とか、そういうことによる半数致死量、動物実験で少量のもので半数以上の致死の状態があらわれるというようなものは、基本的に類似するものになるのじゃないかと思いますけれども、具体的には個々の物質が出てきた場合に、これはそういう専門のところで判定する、こういうことになるのじゃなかろうかと思います。
○諫山博君 厚生省にお聞きします。 厚生省所管の法律では、覚せい剤とか毒物、劇物とか事業、創業について、なぜ類似するものという観念を排除しているんですか。
○説明員(渡辺徹君) 毒物劇物取締法におきまして、私ども判定基準といたしまして、例えば急性毒性、ただいま議論がございましたように、経口の動物の半数致死量、例えばLD50値が非常に低いもの、つまり毒性の強いものについては毒物に指定をするというような幾つかの判定の基準を持っております。 私ども、先ほど申し上げましたように、毒物、劇物につきましては、非常に広く産業界あるいは日常社会におきまして使用されております化学物質のうち、そうした判定基準に照らしまして、毒性、劇性が強いもの、これを指定するということにいたしております。それは先ほど申し上げましたように、これを取り扱う人々、通常のお仕事、産業界でお使いになる人々あるいは試験研究機関でお使いになる方々が使うわけでございますけれども、そういう製造あるいは販売、運搬というような、そういう関係のお仕事に携わる人々にこの安全性確保という観点から、いろいろな交付の手続でございますとか、保管に関する問題でございますとか、いろいろな規定を設けてございます。そういう規定を遵守していただく。そのために化学物質を特定いたしまして、そしてそれを明らかにすることによりまして毒物、劇物の安全性を確保しよう、そういう趣旨からでございます。そのために毒物、劇物を指定しているということでございます。
○諫山博君 毒物、劇物に共通の基準的な作用というのがあるんですか。
○説明員(渡辺徹君) 化学物質の毒性につきましては、いろいろな形での毒性があるわけでございまして、例えば急性毒性、それから長期にわたって使用した場合の慢性毒性、あるいは発がん性に関する毒性とか、いろいろな毒性があるわけでございますが、急性毒性はそれぞれの化学物質につきまして、現在急性毒性が強いか弱いかという判定につきましては、一般にこれは医薬品の場合でも一般産業化学物質についても同様でございますけれども、例えばマウス、ラットというような動物を用いまして半数致死量、いわゆるLD50というような言い方をされてございますけれども、そういうLD50値がどの程度の数字を示すか、つまり、実験に用いたネズミのうち半数が致死に至るような、そういう化学物質の量はどのくらいであるのか、そういう数値をはじき出しまして、その数値によりましてこれは毒性が強い、あるいは劇物に該当する、あるいは普通物として差し支えないというような、一応の私どもの認定基準と申し上げましたのは、専門家に検討していただきましてその毒性の目安としましてLD50値を決めていただいた、そういうある程度一般的な物差しと申しますか、絶対値がございます。 そういうもので総体的に化学物質の毒性を比較して、そしてそれを必要なものについては指定をする。その際そのLD50値だけではございませんで、その物質の薬理作用の強さでございますとか、あるいは人体に対する影響でございますとか、もちろんそういう周辺のいろいろな毒性に関する治験データを採用するわけでございますけれども、基本的には急性毒性値というような一つの目安があるわけでございます。
○諫山博君 「類似するもの」というのがみんなから大変問題な規定だと指摘されているわけですね。これほど法律が整備しているわけで、毒物でも劇物でもない、いろいろな取締法にも規定されてない、そういうものをなぜ「類似するもの」というような形で取り入れなければならないのかという点が指摘されているんですけれども、これは新しい物質が出てきた場合に対応できないからだということですか。
○衆議院議員(白川勝彦君) 決してそういうことではございません。逆に、私ども三号がなかったとしたならば大変な劇性があったとしても、そしてそれで人が死んだとしても、この法律の適用がないという極めて常識に反する結果になるわけでございます。毒物、薬物すべて危険なものは列記をされているじゃないかと言いますが、これは立 法目的が違うわけでございますから、主にるる厚生省の方から説明があったように、商品として世の中に流通するもののうち、こういうものは厳格な基準が必要なのではないかということで、毒物及び劇物取締法や薬事法というものがあるわけでございます。 私たちがここで問題にしている毒物というのは、人の生命や身体に害を与えるもの、それは商品価値があろうがなかろうが、人の身体に害を与えるものを食品の中に入れてもらっては困るわけであって、それは先ほど午前中の質問でも申し上げたとおり、この世の中に毒物及び劇物取締法や薬事法に規定されたもの以外に、現にあるわけでございます。それを使ったらこの法律には値しないというのは、私はどう考えてもそれは常識に反するし、また国民感情にも反する。立法目的が違うわけでございますから、これはいたし方ないと思います。
○諫山博君 厚生省にもう一回質問します。毒性、劇性が非常に強くて、しかし法律にも政令にも定められていない、こういうもので国民が容易に手に入れることができるものがそんなにたくさんあるんですか。そういうのがあるんだったら何らかの指定をするはずだと思うんですが、いかがですか。
○説明員(渡辺徹君) 容易に手に入るかどうかは別といたしまして、この現行の毒物劇物取締法では、例えば毒物、劇物を販売、授与の目的で製造登録をしていなければ「販売又は授与の目的で製造してはならない。」、こういう規定がございます。したがいまして、現行の私ども運用しております毒物劇物取締法では、販売、授与を目的として製造される化学物質、毒性の強い化学物質につきまして、毒物、劇物に指定している。そういたしますと、先般来議論のございます、例えばある化学物質を製造するために、途中の段階で使用されます中間原料的なもの、これはその中間原料の形では社会には販売されない、あるいは社会に出ていかないというようなものは当然化学合成の過程でそういう中間原料というのはいろいろあると思います。そういうものにつきましては、仮に毒性、劇性が強いものであっても毒物劇物取締法の現行の法令では対象にしていないということでございます。
○諫山博君 私の質問時間が来ましたけれども、私はこの法律は本当にさまざまな問題を含んでいると思うんです。これは私だけの意見じゃなくて各委員共通の見解ではなかろうかと思うんです。どうするのかということをぜひこれからの委員会で、理事会で御協議いただきたいと思います。このままで法律が通ってしまえば、これはもう大変だという気がしてしようがありませんから、私の質問を終わるに当たってその点は委員長に要望いたします。
○下田京子君 グリコ・森永事件、これは憎むべき事件です。ただ、今諫山委員が質問で明らかにしましたけれども、犯人が捕まらないのは法律の責任じゃない。これは法務省もお認めですし、刑罰を重くするよりも犯人を捕まえるのが第一じゃないか。これは指摘しておきます。 それで、問題の多いこの法案、なぜに急いで今国会で成立させようとしているのか。これは二年前、六十年ですけれども、提案者の一人であります三塚議員がこう述べているんですね。政府でやると一条の刑法改正でも三年くらいかかるからそんなに待っておれないというふうなことで出されてきているわけでありますけれども、つまり今回のこの毒物の混入等の防止等に関する特別措置法というのは、刑法改正、政府に任せたら時間がかかるからというようなところに一つのねらいがあるという点でございますか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 三塚君の話は私も存じておりませんが、これは立法いたしましたのがもう六十年ですか、二年ぐらい前でございまして、衆議院の方には継続で二回継続になっておりますし、そういうことで決して急いでいるというわけでもございませんし、慎重に御審議願っていると私は考えているわけでございます。立法府にある者といたしましては、御存じのように、あのようなグリコ、森永の反社会的な事件が起きたわけでございますので、何とかこれをひとつ防止しようと、何も刑罰を科するということが目的じゃなくて、先ほど公明党の先生がお話しのように、そういったような事件がないように、あらゆるひとつ国民全体の力で行政府も入れて、そういった犯罪を防止しょう、そして国民の生命を守ろうというのが一番大きな趣旨でございますので、私どもといたしましては、急いでというわけじゃなくて、前々から一日も早くひとつこの法律案を通していただきたい、こういうような気持ちでおるわけでございます。
○下田京子君 六十年の二月三日付の東京新聞に三塚氏にインタビューをするということで記事が紹介されているんです。それで、提案者でございます宮崎議員も、これは同じく六十年の五月号「月刊自由民主」で今の趣旨のことをお述べになっているんですね。つまり「現行法の中には、浄水に毒物を入れた場合三年以下の懲役、水道に入れた場合二年以上十五年の懲役ということになっている。なお、今回のグリコ事件のように食品に毒物を入れた場合には規定がないので、毒物を入れるだけでは現行法では無罪ということになる。改正刑法草案では、三年以下の懲役」云々となっているけれども、三年と十五年の間とって十年だというふうなことを言われまして「現行の刑法は古い法律」だと、そして早く「改正しなければならない。」、ところが「なかなか国会の審議の場に乗らない。」、なぜかというと「各方面から反対があるからだ。」、こういうふうにお述べになっている。各方面から反対があるのを御承知で、改正刑法草案についてはなかなか国会に上らせることができないので、この種の法律を出してきたんだ、こういうふうにお述べになっているんですが、これはどうなんですか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) ただいま犯罪の罰則のところだけをお読みになっておりますが、多分それは新聞記者が罰則のところだけを引いたんだろうと、そういうふうに考えておりまして、先ほど申し上げましたように、防止するというところの方がこの法律案にも書いてございますように、第一条に書いてございますように、その方が主要な目的でございます。
○下田京子君 私は、宮崎議員御自身がこれは「自由民主」にお述べになっているやつを持ってきたんです。ですから現行刑法は古い、だから早く改正刑法草案を国会に上らせたいんだといみじくも言っているわけです。ですから、今回のこの立法作業というのは、そういうねらいであったんだと御自分がいみじくもお述べになっているのです。これは否定できないことだと思うんですよ。 そこで、法務省に聞きます。刑法について、現行刑法が宮崎さんに言わせれば古い、こういうふうに言われておりますけれども、現行刑法そのものがやはり現憲法に基づいて整合性を持って考えられるべきものだと思うんです。そうしますと、この現憲法で何をうたっているか。言うまでもありませんけれども、国民主権、平和主義、基本的人権尊重主義、これを柱にしていると思うんです。この憲法の理念を基本にされた上での現刑法の見直しということになるんじゃないか。あるいは国家の刑罰権の行使については個人の人権を尊重した上で治安を維持するための必要最小限度にとどめるべきだというような考え方がやはり今の刑法の中に生かされているんではないか、こう思いますが、法務省いかがですか。
○説明員(東條伸一郎君) 現在の刑法は我が国国民の倫理観あるいは道徳、風俗、慣習などの社会的文化的な規範に違反する一定の行為に対しまして一定の刑罰を科するということで、国民生活の基本的秩序といいますか、平穏というものを維持しながら個人の自由その他の権利を保護しようという法律であるというふうに理解しております。
○下田京子君 現憲法を基本としてという考え方でよろしいでしょう。
○説明員(東條伸一郎君) 私から申し上げるまでもなく、法律というのはすべて憲法のもとにつく られておりますので、憲法に違反する法律は存在を許されるわけはございません。
○下田京子君 だとすれば、刑罰を重くしてそしてやるというような今回の法律規定、これは罰則強化、捜査令状なしの検挙の強化、こういう点で非常に問題があるというようなことが質問でも明らかになっていると思うんですけれども、これは撤回すべきだと思う。 それで、法文上との関係で聞きたいわけですけれども、提案者、法第二条の一項の流通食品の定義の中に飲料水は含まれますか。
○衆議院議員(白川勝彦君) 飲料水でもいろいろあろうかと思いますが、例えば今私が飲んでいるようなものは、これは飲料ではありますが、我々がここで規定する流通食品の中には入りません。
○下田京子君 二百円とか百円で販売されているミネラルウォーター、あるいは名水と言われるものは含まれますね。
○衆議院議員(白川勝彦君) もちろん含まれます。
○下田京子君 そうしますと、「販売される飲食物」という、販売される、ミネラルウォーターにはこの法律が適用になる、こういうことだと思うんですけれども、現行刑法の百四十四条、これにはミネラルウォーターも当然販売されるとされないとにかかわらず含まれているというふうに私は思いますが、提案者どうですか。
○衆議院議員(白川勝彦君) 後段の質問だけ答えますと、浄水の中には瓶詰あるいは缶詰の飲料水は含まれません。
○下田京子君 法務省、今の答弁、どこにそういうことが書かれてありますか。刑法百四十四条の「浄水毒物混入」、ここの中の「浄水」、つまり飲料水には今問題になっているミネラルウォーターというのは含まれるというふうに私は理解できるわけなんですが、法務省、間違いないでしょう。
○説明員(東條伸一郎君) 刑法百四十四条の「人ノ飲料ニ供スル浄水」というものは、判例上は不特定または多数の人の飲料に供する浄水というふうに言われておりまして、ミネラルウォーターという名のついたもの、それはいろいろあろうかと思いますが、それがここに言う「浄水」に当たるという場合もあり得るだろうというふうに考えております。
○下田京子君 当然なんですよ。法規解説書にも書いてありますよ。「浄水」というのは何に入っているか云々じゃないんです。これは「人の飲料に供しうる程度の水」、それだけの規定なんです。しかも、刑法百四十四条の「浄水毒物混入」のその対象になり得るかどうかという構成要件の解釈については、今法務省お述べになりました「不特定または多数人の飲用に供せられる浄水でなければならない。」、「しかし、」ということでもって「多数人とは、ある程度の多数人であれば足り、単に数人であってもよいと解する。」、こう書いてあるんです。間違いないでしょう。
○説明員(東條伸一郎君) 厳密に何人以上というふうなことは言えませんが、抽象的には今先生がおっしゃったとおりだと思います。
○下田京子君 これは有償、無償を問わずということになるわけです。そうしますと、ミネラルウォーターに毒物混入されている場合、現行刑法では有償、無償を問わず浄水毒物混入罪に問われるということになるわけですね。法務省、間違いありませんね。
○説明員(東條伸一郎君) くどいようでございますが、ミネラルウォーターが「人ノ飲料ニ供スル浄水」に当たるような場面において毒物が混入されますと刑法百四十四条の問題になってくる。ただ、この法律は違う場面を想定して、それが流通食品という場に置かれた場合のことを想定した法律だと私どもは理解しております。
○下田京子君 流通に乗るということですが、流通に乗って無償の場合も有償の場合も刑法ではこれは対象にできるんですよ。ところが、今出されている法律では有償の場合だけになるんですね。ですから、毒物混入という行為自体全く同じであっても、本法案の対象になるのはこれは有償の場合のいわゆるミネラルウォーターだけ、こういうことになりまして、今度は同じ流通であっても、ミネラルウォーターが無償でいろいろな国際会議や何かでも出てきますね。そういうときに毒物等が混入をされたらばこの法の対象にはならない、こういうことになるわけでしょう。
○衆議院議員(白川勝彦君) 国際会議でミネラルウォーターが出る、例えば今この会議をしているときに配られる、あれがミネラルウォーターだとしたらそうだと思うんでございますが、封を切られてここに参会している皆さんに飲んでいただこうという、そのときの供し方は販売行為でないわけでございますから、その時点では流通食品とは我々は考えておりません。定義に書いてありますとおり「公衆に販売される飲食物」、しかし、そのもとの人がそれをどこかで買ってくるわけでございますが、買ってそのミネラルウォーターが置いてあるのは流通食品でございます。
○下田京子君 現行刑法では包括的に矛盾がないように、有償であろうと無償であろうと、いわゆる浄水に類するミネラルウォーターが毒物混入で人に害を与えたというときには、この刑罰の対象になるわけでしょう。ところが、今お話しのように、仮に故意に毒物混入したにもかかわらず無償であるがゆえに本法案の対象にならない。これはやっぱり明らかに矛盾だと思うんですよ。 法務省、現行刑法の浄水毒物混入罪、三年以下の懲役ですね。今出されている法案九条で十年以下の懲役、三倍以上の罰則ですよ、水に着目するという点では全く同じ行為ではないかと思うんです。非常に罰則がバランスがとれてない。しかし、どちらにしてもこの罰則が適用されるような場面が想定できるわけですが、その際にどちらの罰則規定が適用になるんでしょう。法務省。
○衆議院議員(白川勝彦君) これは提案者から答えたいと思います。 浄水というのは不特定多数人ということでござます。それよりももっと規模の大きなものは水道毒物混入罪というのがあるわけでございます。例えば何万本も売られるようなミネラルウォーターの製造工程のときに毒を入れてしまったならば、とても不特定多数という程度ではなくて、大変大勢の人に、時にはある一つの水道の水源地に毒を入れたよりも余計全国的に広がる場合もあるわけでございます。そういう意味で流通食品に毒物を混入するというのは浄水に毒物を入れる場合よりも社会に与える危害、不安感、そういうようなものが大きい場合があり得るということで、今回別の犯罪類型といたしたわけでございます。もちろんそれが水道ではないわけでございますから、浄水というふうに今でもこの法律で罰しようと思えば罰せられるわけでございますけれども、それ以上の一つの犯罪類型について刑罰を十年以下と定めた、こういうふうに御理解いただければ結構だと思います。
○下田京子君 水道水と浄水とを比較して水道水がいかに速やかに広域にわたるかということで、十五年最高刑との関係で中間をとったことがさも妥当のようなお話されておりますけれども、私たちは反対しておりますけれども、改正刑法草案の中でさえ第二百五条で飲食物混入罪規定、ここの点ではこれは現行刑法と同じような体系をとっているんです。私は水道水を言っているんじゃないんですよ。浄水という、いわゆるミネラルウォーター、これが有償か無償かで回しように毒物混入という行為についてきちっと包括的にフォローできるのは現行の百四十四条の刑法でやれるじゃないか。ところが、今出されている法律というのは、有償に限るというような形で言っている点からいっても、毒物混入というその行為自体からいって問題じゃないか、アンバランスじゃないか、こういうことを言ったんですよ。同時に、他の法律との整合性からいってもこれは重罰じゃないか、このことを言っているんですよ。法務省、どうですか。
○説明員(東條伸一郎君) この法案における九条の法定刑の問題についてはただいま御提案者の方から御説明があったとおりで、私どもも特に重い という理解はいたしておりません。この法案は、私どもの理解では、グリコ・森永事件を契機といたしまして国民が非常に日常の生活上不可欠な流通食品に毒物を混入される、そのこと自体不特定多数人の生命、身体の安全を害する行為でございますが、さらに進んで一種の社会不安を引き起こすというような観点も加えて、そのような行為を防圧するための総合的施策の一環として罰則を含めた法律がつくられたというふうに理解しておりまして、刑法典とは若干物の見方を異にした法律であるというふうな理解に立っておりますので、罰則その他もそれぞれその特別法の趣旨等を踏まえ、さらに先ほど来御説明がありましたように、その危険性の範囲等を考えまして、刑法典の罰則をも参照されながら法定刑をお定めになったということでございますので、特に重いというような理解はしておりません。
○下田京子君 しかし、政党と政府が協議して出してきたんですから、今のような答弁も出てくるでしょう。ただ、これは弁護士会等がお述べになっているんですね、改正刑法草案の第二百五条との関係から見ても問題があるというふうなこと。そして、四十九年に改正刑法草案を法制審議会が答申したにもかかわらず、なぜいまだに国会の審議に上っていないか。最大の理由は重罰主義でしょう。そのことにやはりいろいろな意見が出まして、社会の進歩発展と逆行するような取り締まり中心の厳罰主義や威嚇主義や刑罰万能主義ということについての大変な意見だと思うんですよ。これは日本弁護士会と、国民の意見を代表する弁護士の言ってみれば中心の方々が問題を投げかけていると思うんです。そういう点から見ましても、今回の法律が非常に重罰主義である、法万能主義であるということが大変問題であるということを私は指摘します。 次に、法二条二項三号、類似物規定との関係で聞きます。厚生省並びに農水省、この二条二項三号の類似物とは何でしょうか。具体的に名前挙げられますか。
○説明員(渡辺徹君) 先ほど申し上げましたように、毒物劇物取締法におきましては、基本的に販売、授与を目的とするとされる物質ということでございまして、製造から流通段階までのいろいろな諸規定を設けるという意味で物質を特定いたしまして指定をしているわけでございます。したがいまして、そのような目的にかからないものにつきまして、例えば中間体でございますとか、あるいは天然物等に毒劇法の対象にならない毒性、激性の強いものがあり得るというふうに考えております。
○下田京子君 私は具体的に名前を挙げてくれ、こう言ったんですが、お名前挙げてない。 提案者、衆議院等の議事録を見ますと、アフラトキシン、イソシアン酸メチルを挙げております。アフラトキシンというのはどんな毒性を持っていますか。簡単に御説明ください、提案者。
○衆議院議員(白川勝彦君) 私どもも薬物の専門家ではございませんので、厚生省にお答えいただいた方が妥当かと思います。
○下田京子君 あなた方、具体的にお名前を挙げているんですよ。法を提案する際にあって各省と議論されたとおっしゃっているじゃないですか。 厚生省、それでは私の方から聞きます。このアフラトキシンというのは化学構造の違いによって幾つかのタイプに分かれていると思うんですけれども、B1、B2、G1,G2とありますけれども、B1、これが最も発がん性が高いものというふうに言われ、マイコトキシン、つまりカビ毒の一種であって、日本国内ではこのアフラトキシンについては検出されていない、そういうものであると理解していますが、よろしいですね。いいか悪いかだけ。
○説明員(大澤進君) 今の御指摘のとおりでございます。
○下田京子君 そうしますと、厚生省そこにいてください。こういうアフラトキシンは国内でないんです。輸入されてきたものです。これを人為的に抽出し、培養し、毒物として添付したりなんかということが一般的に可能ですか。
○説明員(大澤進君) 確かに一般にこのアフラトキシンは日本で産生されないと言われております。ただし、試験研究用として一部の試験分析機関で一部保管しているということはあり得るわけでございますが、しかし本品そのものを入手するということは非常に困難である、かように考えております。
○下田京子君 そのように非常に困難なものである、まさに特定されたものでしかないんですね。しかも、厚生省に聞きますが、このアフラトキシン等は現在食品衛生法に基づいて厳重に輸入する際にチェック等もなされていると思います。これらに違反した場合には四条違反ということで罰則がありまして、二十二条に基づいてこれら食品は廃棄などの処分を命じられていると思います。そしてさらに、それにも応じない場合には食品衛生法三十条で三年以下の懲役、二十万円以下の罰金というような体系になっていると思いますが、間違いないですね。
○説明員(大澤進君) 御指摘のとおりでございます。
○下田京子君 これ具体的にアフラトキシンをお名前挙げて言われたんですよ。現行法の中でもこういう形できちっと対応できるんです。しかも、これらの食品衛生法に違反した場合には「三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金」、こういうことから見ましても、今のこの法律から見まして罰則規定が十年、こういうのはとんでもないことだと思うんです。提案者、具体的にアフラトキシンまで挙げておいて、一体今のような事実関係をお知りになっていたんでしょう。いかがなんですか。
○衆議院議員(白川勝彦君) そのようなもの、管理が厳重かもわかりませんが、そういうものを取り扱う人が、もしこのような犯罪を思い立ては本人にとってはいとも簡単なわけでございます。 それから先生は特殊な例を挙げて、要するに毒性や劇性が少ないものは全部掲げられているじゃないかと言いますが、それはまさにだれが常識的に考えてもおかしいわけでございまして、例えば廃棄物等の中には大変な毒性が強いものがあることは、もうまさに我々は社会経験上も幾らでもわかるわけでございます。そんなものは商品名ついておりません。そういうものを食品の中に入れてもそれは全然、販売の流通管理をしようという、ですから販売されないわけでございますから、毒物劇物取締法の中にはそれは当たらないわけでございます。そういうものを入れてもこの罪に当たらないというのは、それは私はかなり特殊な考え方でなかったならば、むしろそういうような考え方をするのが私自身は逆に理解できないのであります。
○委員長(岡部三郎君) 下田君、時間ですので、簡単に願います。
○下田京子君 時間が足りないんですよ大体、本当ですよ、このわずかの時間で。 アフラトキシンが特別な例だとおっしゃいましたけれども、この「類似するもの」に挙げたのはあなた方の方なんですよ。そのアフラトキシンがどういうものなのか。しかも現行食品衛生法できちっとこうやれる。問題は非常にその保管とか取り締まりの体制の問題、こんな法律つくらなくたってちゃんとやれるじゃないですか。私は現行の法律体系の中できちっとできる。本来なら今回出された法案の三条、七条あるいは八条、こうした防止策、救済策その他もろもろのことが現行法の中でできないのか。これは全部できるということが今までのいろいろな調査の中でも明らかになっているわけでして、こんなとんでもない法律、やはりこれはもう出し直しなさいよ。もう一回関係者よく詰めて、そしてお出しなさいよということを申し上げて、質問を終わります。
○三治重信君 最初に警察庁の方にお尋ねしますが、けさ同僚委員の方から警察庁の方へは大体の御質問があって、それを聞いたものだから、それとの重複を避けて、ちょっとそのお答えになった中で疑問を持ったのを大きくちょっと御質問をしてみたいと思うんですが、午前中の、事件で百十二件あったと。しかしそのうちの解決数のところの説明では何か殺人事件みたいなので、流通食品への混入事件の解決ではないような気がしたんですが、それは普通の毒物で相手を殺すとか何かするために、それは一般の流通食品を買ってその中へ入れたということであって、流通食品の流通を妨害するためにやった事件ではない。この法案は流通食品を流通させないために流通業者をえらい何というんだろうか、損害を及ぼすためにやるやつなんで、おたくの解決した六件とかなんとかいうのはどうもそういう流通を妨げるのじゃなくて、特定の人を殺すとか特定の人を傷害させるための事件だったような気がするんだが、その点ちょっともう一遍、本当にそういう事件はみんな流通食品のその店の販売をとめ、悪さをするために、グリコ、森永みたいにそのところの製品を売れないようにしてやるというものにかかわる問題ではないんじゃないかというふうな気がしたんですが、その点はどうなんですか。
○説明員(古川定昭君) ただいまお尋ねがありました件でございますが、先ほどちょっと私の方の説明の仕方が舌足らずであったんじゃないかというふうに思いますので申し上げますが、今お尋ねのように百十二件発生してそのうちで六件検挙という御説明を申し上げましたその百十二件といいますのは、毒物を混入したものを放置した、ですから流通食品にそれを混入したとか流通の経路に置いたというものではなくて、その毒物が混入されたものを放置したというような、そういうものの件数でございまして、確かにお答えの趣旨がちょっとずれていたのではないかと思います。 今お尋ねの毒物を混入させた食品を流通経路に置いたというような事件というふうにその状況を絞ってみますと、これは九件発生しておりまして、そのうち四件を検挙しておるということでありまして、例えば形態としましてはことしの一月の二十四日に横浜市内でありました事件でございますが、スーパー等十カ所にスミチオン入りチョコレートを十数個ばらまいた、そして製菓会社に数千万円を要求した、こういうような事件がありまして、これは検挙になっておりますが、このような事件は九件発生し四件検挙と、こういうことでございますのでちょっと説明の舌足らずということで御承知お願いいたします。
○三治重信君 それでわかりました。どうも少しえらい事件が多いのと、それから解決した事件の中身の説明がちょっと腑に落ちなかったから改めて御質問したわけなんですが、それで、流通食品のこの法律では確かに流通食品に毒物を入れたことについての罰則がないということなんだけれども、実際はどっちかというと毒物を入れるとか脅迫したとかなんとかいうのは、刑法やほかの法律で罰則ができるということで、むしろそちらの方が販売妨害の方が多いんじゃないかというふうに考えられるんですが、そういう販売妨害、入れるぞというおどかしだけの販売妨害のやつはこの法律の対象にはならぬわけですね。
○説明員(古川定昭君) 私どもの理解するところでは流通食品に毒物等を混入したというような事案でございますので、一種の威嚇といいますか、おどかしという形態のものであれば、これに当たらないのではないかというふうに理解しております。
○三治重信君 それからもう一つお尋ねしますが、これはちょっと聞いていいものかどうかわからぬですが、あの当時裏取引が相当あったと。そして結局警察へ頼んでも実際犯人は挙がらぬし、商売は上がったりだし、結局おどかしやなんかに対して裏である程度応じたんじゃないかと。むしろその方が食品の製造業者としては賢明だと。森永みたいに外へばかり威張って絶対やらぬとかいうようなことをやっているのは、あれは少しあほじゃないかというようなのが当時一これは本当に速記していいか悪いかわからぬくらいなことなんですが、うわさもちょっとあったわけなんですが、今度の法律でそういう裏取引的なものは、やはり警察としてこの法律の取り締まりの、通報義務との関連で裏取引の防止には役立つものかどうか。
○説明員(古川定昭君) 確かにこれまでの事件の経験からかんがみまして、おっしゃるようなことが幾つか私どもとしては経験しておるわけでございますが、今度のこの法律によりますと、製造業者等の届け出の規定等が予定されておりますので、そういう意味ではそういう裏取引といいますか、それを知ったにもかかわらず届け出がないという行為はやはりこの法律に反するといいますか、そういう行為はきちんとした法的評価をここで与えておるわけでありますので、そういう行為は抑止されるといいますか、なくなるのではないかという期待を持っております。
○三治重信君 この法案そのものについての質問は以上で、ほかの委員からの質問で大体私も了承して、ちょっと農水省に流通食品業界のあり方というのですか、の問題についてちょっと質問してみたいと思うんですが、日本における高度の経済成長と高い国民生活の裏づけとして、流通食品業界は、先日の参考人の聴取で、製造業者の団体からも非常に重要な何兆円という生産高を誇っている産業である、こういうような説明があったんですが、またそれが人の食生活に関係するということで、それが毒物というようなことになってくるものだからこういう特別立法をぜひつくってほしい、こういうような要望になってきたんだろうと思うんですけれども、そういう問題と、もう一つは私は流通食品業界がいわゆる市場開放、自由貿易ということから、農水省の方でいわゆる農産物を非常に支持価格をし、また農産物の輸入制限、割り当てというようなことをやっているために、流通食品業界が使う原材料が非常に国際価格と比べて高い。そのために自由貿易にしているけれども、とてもじゃないが原材料だけでもとても国際的な競争にならぬじゃないか、こういう問題が今出てきていると思うんです。 それは米については米菓子、あられやなんかも、そういうことですし、それからあらゆる菓子の原料になる砂糖、それから小麦粉、こういうものもみんな非常に農水省は価格統制をやり、国際価格から見ると何倍かに高いような状態になっている。その農業保護のためにその制度は変えないにしても、こういう流通食品業界で使用する原材料は全体の統制物資から見るとその使用割合というのは非常に少ないんじゃないかと思うんですが、そういうような米とか砂糖とか小麦粉のそういう流通食品業界で風料として使う問題の量と、そういうものを国際価格でやる、例えば砂糖なら輸入の砂糖をそのまま食品業界へ払い下げてやらせれば砂糖の価格は国際価格と同じようになる。 それは全体の砂糖の消費から見ると一部じゃないか、こういうふうなことが考えられるんですが、食品業界が市場開放で国際競争になって食品の加工品が自由な貿易になる、それは非常にいいことだと思うんですよ。そのときに外国と同じような競争条件をしてやらなければ、円高で輸出企業が耐えられなくて、みんな空洞化していく。外地へ生産拠点を設けていると同じように、食品業界は円高プラスそういう原材料が特別に高いために、こういう毒物の混入で売れなくなるにプラスそういう原材料に非常に困る。こういうようなことが考えられるんですが、こういうものに対する対策というものをどういうふうにお考えになっていますか。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘のように、我が国の食生活の中で、いわゆる流通を通じて購入をするという食品が大部分を占めるようになってまいっておりますし、またその中でもいわゆる食品製造業、別の言葉で申しますと加工食品の率というものが近年大変高い比率になってきておるわけでございます。これら食品製造業が使用いたします原料は、ただいま御指摘のように輸入もございますし国産もございます。また国産の農産物の仕向け先という点から見ましても、四割程度が加工企業を通じまして消費者の手元に届けられておる、こういうことになっておるわけでございます。このような事情から、原材料としての農産物の価格は国産のもの、輸入のものを通じまし て食品企業の大変重要な関心事項になっておるということは御指摘のとおりでございます。 現在の食品企業各社の経営の状況を見ますと、輸入の原材料のうち、かなりのものが円高のメリット等を得まして入ってきておりまして、全般的には経営の収支は全体の産業の中では総体的に決して悪くないわけでございますけれども、ただ、ただいま御指摘のような国産と輸入との関係につきまして問題を抱えておる産業もあるわけでございます。このような問題は、食品産業、製造業のサイドからばかりではなく、国内で食品産業向けの原料を生産いたしております農業のサイドにとりましても、我が国における食品製造業が立派に立地し維持されていくということは大変関心事でございまして、私どもといたしましては、最近におけるいろいろな為替の動向その他の中でこれから取り組んでまいらなければならない大変重要な課題であるというふうに考えております。 ただ、ただいま御指摘がございました例えば砂糖でございますが、砂糖の場合には大体国産率が三分の一、輸入が三分の二でございますけれども、仕向け先といたしましては、家庭用は二〇%ぐらいでございまして、八割ぐらいがいろいろな形でいわゆる原料として用いられておるわけでございまして、原料として用いられているものを別扱いをするということができるかどうかという点につきましては、物によりましてそれぞれの事情がございまして、大変難しい問題もあるわけでございます。砂糖のようなケースではむしろ家庭用、いわゆる小袋詰めというような、まあ小袋と申しましても一キロとかいうのを含めてでございますが、そういうものの比率がかなり低くなっておる、こういうことでございますから、問題を食品産業への原料供給の問題だけとして切り離して考えることがなかなか難しいことになっておるわけでございます。 〔委員長退席、理事高木正明君着席〕 そういう中で、私どもといたしましても国内の生産者、農業サイドにもいろいろと合理化をしていただくということを含め、食品産業しそれぞれの品日に応じて配慮をこれからしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。 ただいま御指摘のございましたもののうち、砂糖について申し上げますと、砂糖につきましては現在北海道及び沖縄等々で生産が行われておるわけでございまして、大変地域の重要な産業としてその価格支持を図っておるわけでございますが、これにつきましては輸入糖から徴収いたします調整金と、それから一定のところで国内の合理化目標を決めておりまして、それを上回るものについては、これは財政資金をもって充当する、こういう制度で運用をいたしておるわけでございます。そういう中で、最近における為替の状況あるいは国際糖価の状況等を勘案いたしまして、昭和五十八年に卸売価格でいわゆる指標となります形成糖価が、キログラム二百二十四円でございましたものを、この十月からは百八十一円ということで、四年間で四十三円、二〇%近くの引き下げを行ってきておるわけでございます。 こういう状況でございまして、なかなか各方面難しい問題もございますけれども、私どもといたしましては国内の砂糖の原料生産の合理化、精製糖企業の合理化に努めまして、食品産業初め、ユーザーの皆様方に国内でそういうものを使っていただけるようにするように、さらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
○三治重信君 砂糖ではえらい、そうか、八割も原料用がね。それじゃ、どうにもならぬな。米はどうなんだ。米の他用途米。小麦粉なんかどうかね。八割じゃどうにもならぬな。
○政府委員(山田岸雄君) お答えいたします。 米及び麦類についてお答えいたしますが、まず米につきましては、御案内のように国民の主食でございますし、我が国農業の基幹作物でもございまして、国会における米の自給安定に関する決議等の趣旨を体しまして、私ども自給方針を堅持しておるところでございます。したがいまして、主食用のみならず加工原材料用等につきましても国内産米を充てることとしております。中でも加工原材料用といたしまして、みそだとかせんべい等につきましては、主食用の値段の約二分の一、これは農家手取り価格でございますが、で供給するといった他用途利用米制度を現在持っておりまして、昨年、六十一年産米までは二十七万トン程度をこれで供給するということにしておったわけでございますが、本年から用途等も新たに酒造用だとか、あられ用、こういったものも用途を拡大いたしまして、数量といたしましては三十四万八千トンを安い価格で供給していこう、こういう体制をとっておるわけでございます。 また、麦につきましては、国民の食生活におきまして米と並んで重要な主食の地位を占めておるものでございまして、農業生産におきましても代表的な土地利用型の作物の一つでございますし、水田農業の確立を図る上での有力な転作作物だとか、裏作物としての重要な地位を占めておることから、食管制度の対象に位置づけておるわけでございまして、 〔理事高木正明君退席、委員長着席〕 これは一応麦そのものではちょっと食べられませんので、一次加工としてまず全量が製粉される。その製粉されたものが二次加工としてパンなりめん類なりに向けられる、こういうふうなことに相なっておるわけでございます。麦の政府の売り渡し価格につきましては、五十五年以来、国内産麦と海外から輸入される麦とのコストをプールして決めるように、いわゆる内外麦のコストプール方式の考え方をとって決定しておるわけでございます。この点につきましては、臨調だとか行革審等におきましてもコストプール方式をとるべしと、こういう御指摘もいただいておるわけでございます。 仮に、食品業界に対しまして麦を輸入価格水準で売り渡すことといたしますと巨額な財政負担を要することとなりますし、現在のような厳しい財政事情のもとでは困難ではなかろうかと、このように考えている次第でございます。輸入増加といったものの基本的な要因が内外価格差の拡大、これは円高の要因が主でございますけれども、そういったものから拡大する方向にあるわけでございますが、基本的には内外価格差の縮小に努めていくことが必要であると、このようにも考えておりますし、こうした観点から、本年の二月にも麦の政府売り渡し価格の引き下げ、平均で五%程度でございますが、そういったことをやってまいったわけでございます。国内産の米麦につきましては、機械的に国内価格を国際価格に一致させるということはなかなか困難ではないかと、このようにも思いまして、生産条件の違い等からすぐにはそのようなことはできないんじゃないかと、こう考えておる次第でございます。 いずれにいたしましても、国内産の米麦の生産性の向上を一層図りながら、これを政府の買い入れ価格に的確に反映し、さらには内外価格差を極力縮小する、こういった過程がとられるべきじゃないかと、このように考えておる次第でございます。
○三治重信君 そういう大きな長い考え方のやつは前の審議で一応了承しているんだけれども、その長い間の途中、今から三年、五年という短距離のやつにもう少し何か対策はとれぬかと、こういうことなんです。だから、農水省が非常な、何というのか、内外価格差を縮めようという努力、そのために生産条件を含める改正法案を出して、生産費を含めて、そして価格低下に順応しようということについて、まあ僕は非常に多とするところなんだけれども、そういうことにしても、どうも食品産業が円高で、農水省の方も食糧、原材料、若干ずつ安くしても、ちょっと価格幅が三倍も五倍もということになりてくると国際競争にはとても耐えられぬじゃないか。 重厚長大の重工業の空洞化と同じようなことになりはせぬかというふうな感じを持って、しかも、それが単に為替だけじゃなくて、農産物の原料価格が国際競争ができないためにそういうこと になるということになってくると、何かひとつ考えてやってもらわぬと製粉の流通の業界では太刀打ちできぬじゃないかというふうな感じを持つわけなんで、今度いわゆるOECDやIMFなんかで国際的に農産物の補助金行政をやめるとか、補助金を下げるようなやつを国際的、殊に輸出補助金を対象にしてやる。それから、いろいろの対策は国際的にとられていくわけなんだが、そういう中で、何というのかな、国際価格の中で食品製品について少しこの輸入のものについて自主規制なり何なりの交渉にのせるとか、あるいはもう少しできるだけ食品業界に補助金が回るように、補助金なり何なりが回るように格好を考えてもらわないと、これじゃ、これを裸にしちゃうと、これは重厚長大の産業の輸出産業は空洞化すると同じように、食品産業は全部もろにこれはもう空洞化せざるを得ぬことになるわけですから、もちろん新鮮度や味そのものが日本の業者がつくるのは日本人の味に合っている。外国の方で日本の味をまねしてみてもなかなかまねできないという、そういう味づけや形というものでいろいろ若干の価格差というものは耐えられるにしても、少し幅が大き過ぎると価格の競争上参ってしまうというふうな感じを持って、ひとつそういう全体の農業の合理化を図ると同じように、食品産業のこの原材料価格について、まあ米で先ほどあったような多用途米というようなことで主食の半分ぐらいの値段を決めるというようなこともひとつ考えてほしいと思う。 これをさらにもう一歩小麦粉についても、うどんだけは少し変えるとか、何かもう少し価格政策を、農民から買い上げる価格だけやっているんじゃなくて、食品業界が買い入れる農産物の価格についてもどの辺が適当かというふうな政策をやってもらわぬと、これは全然、食品産業はおれの管轄だと言いながら、これはもうおまえら自由にやってくれ、政府の農民保護の価格でおまえら管理せいと。これだけではちょっと一方的だと思うんだが、そこをひとつぜひ考えて、これは長い目で見て将来国際的にだんだんなるはずだと言うんだけれども、これは競争、何というのかな、実際のやつは毎年毎年が勝負になってくるわけだから、その間の途中の支持体制をひとつぜひ考えてもらいたいと思うんですが、その点どうですか。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘がございましたように、先行きのことを考えてまいりますと、我が国で食品産業が国際的に競争力を持って立地をしてまいりますためには、原料問題大変重要な課題だということは私ども十分認識をいたしております。 先ほど来御説明をいたしましたように、物によりまして技術も違いますし、手先も違いますし、いろいろあるわけでございますけれども、私どもの行政の考え方の中にそういう視点を近年入れて努力をしてきておるつもりでございます。全体として砂糖のように加工度の高いものについては下限価格を下げることにより値段をできるだけ下げる。あるいは米のように粒で食べるもののほかに加工用のあるものについては、それについて特別の措置を講ずる。それぞれ品物の性質によって異なるわけでございますが、それなりに努力はしてきておるつもりでございますが、やはり国内で買っていただくということは農業のサイドにとりましても大変重要な課題でございます。一層努力してまいりたいというふうに考えております。
○三治重信君 それからもう一つは、品種改良をやはりうんと農林省もっと力を入れてもらわぬと、この間の食管法の改正のときに小麦粉の質問ができなかったものだから今ちょっとやっておきますが、これは要望だけ、答えはもういいが、豪州産の小麦で日本のめん類に合うような小麦をどんどん品種改良しちゃってつくって買ってくる。日本のめん類業者が豪州産の小麦粉の方がいい、日本産のやつはだめだと。僕は日本産の小麦こそがめん類の需要に合ったやつだと、こう思っていたら、豪州産の小麦の方がいいということになったら何のために品種改良やっているのかということになる。それから、最近のカリフォルニア米にしても非常に日本にとって、実際すしにすると一番うまいなんていうような宣伝をやられているわけなんだ。 農水省の方はそういうふうなことでただ食糧、主食だけの米つくって、これでいいんだいいんだと言っているけれども、やはりすしの米がどうだ、酒蔵米がどうの、それからさらに飼料としてのやつなら多収穫で、もう雑な耕作で幾らでもとれるというふうに、ずっと品種改良をよほどやらぬと、世界から品種を集めてやらぬと、これは保護は幾らしていても生産の進歩が全然できない。殊に農産物なんというのは品種改良がおくれたら致命的な、国際競争にならぬと思うから。きょうは時間がないから答弁はいいけれども、ひとつこういう全体を考えて品種改良の目標を定めて短距離に、豪州なんというのはもう物すごく早いときに輸出のためだけに品種改良ぽんとやっちゃっているでしょう。そういうことをひとつぜひ農水省にお願いして、終わります。
○喜屋武眞榮君 私、これから幾つかの質問をいたすわけでありますが、今立っております私の気持ちは次のことであります。この立法に当たって、そしてこの立法の執行に当たって国民の人権が必要以上に侵犯されないだろうか、その執行に当たっては角を矯めて牛を殺すという愚かなことになっては大変だ、こういう気持ちを持って二、三の質問をいたしたいと思います。 最初に素朴な質問かと思いますが、疑問に思っておりますので率直にお尋ねいたします。この特別措置法の説明の中に、「流通食品に毒物を混入することに」よって云々ということがあります。その流通食品に毒物を混入するということについて、私、一体どの時点で、どの過程でそれが混入されるのだろうか。例えば製造元があるし、あるいは販売元があるわけなんですが、その過程の中でということは、過程というよりも、これから質問しますこのグリコ事件初め幾多の事件が発生しております。その中からこの立法のことも生まれてきたと思うのでありますが、それで、この「流通食品に毒物を混入する」という場合、実際問題としてどういう過程があったのか、まずそのことについて伺いたい。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 初めの人権問題、そういったことにつきましては私も同じような考え方を持っております。 今お尋ねの点は、この流通食品にどの段階で毒物が混入されたのかということでございますが、私どもが聞いておりますのは、この前のグリコ、森永の場合は、いわゆる店頭から犯人が購入して、自宅かどこかで毒物を入れてそれを混在した、またもとのところへ返してあった、こういうような事例が多いんじゃないかと思います。あるいは製造段階での混入もあり得ると思いますが、あらゆる段階でそういった混入があろうと思うわけでございます。この場合、やはり故意にそういう有害なものを、毒物を混入しよう、そういう意思があるということと、そしてまた、流通食品の段階でそれを混入した、こういう二つの要件が構成要件となるわけであります。
○喜屋武眞榮君 どうもまだ私としては納得はいたしませんが、ところがそのことで時間をとる必要もないと思いますので次へ移りたいと思いますが、次に警察庁に尋ねますが、この江崎グリコ社長の問題とか、あるいは丸大食品会社の問題とか、森永製菓の問題、ハウス食品、不二家などなど、こういった事件が次々続出したわけでありますが、このような事件が発生した原因をどのように分析しておられるのであるか、警察庁にお尋ねします。
○説明員(古川定昭君) お尋ねの食品企業等の企業を対象とします恐喝事件が最近多発する傾向にありますが、特に昨年、大手食品企業が裏取引によりまして多額の現金を犯人におどし取られたということが明るみに出て以来、この種事件が大変ふえたわけであります。しかし、昨年の八月をピークとしまして徐々に減少し、ことしに入ってからはかなり鎮静化しておるという傾向であります。 この種事件の発生原因でございますが、私どもの見ておる見方といいますか、あれでございますが、この食品企業の製品につきまして、製品の安全性を重視する食品企業といたしましては、自社製品の毒物混入といった事態に対して、自社の、自分の社のイメージダウンになるということで大変気を使っておる。それだけに毒物の混入を手段とする犯人の脅迫に対しまして、イメージダウンを恐れるばかりに弱気になるという側面もあるというのが一つ。また、この種事件は元来模倣性が非常に強く、ひとたびそれが成功したことが世間に伝わりますと類似手口による犯罪を誘発するというようなことで、この事件の発生傾向がうかがわれるところであります。
○喜屋武眞榮君 もう一つお尋ねしますが、あの事件の経過から、犯人が数々の証拠品を残しておりますね。警察もある時期は犯人逮捕寸前まで追い込んでおられた時点がありますね。ところが取り逃して今日に至っている。そこで捜査に支障のない範囲で、まだ未解決でありますから、その後の捜査状況あるいは犯人の正体などについて聞かしてもらいたい。
○説明員(古川定昭君) グリコ・森永事件の捜査状況等につきましてはこれまでもたびたびといいますか何回か御説明申し上げておりますので、あるいは重複する点があろうかと思いますが申し上げますと、いわゆるグリコ・森永事件は五十九年三月十八日にグリコの江崎社長に対する誘拐事件を発端にしまして、御案内のとおり一連の食品企業が恐喝されたものであります。一昨年の八月に、犯人グループがマスコミに対し犯行中止を示唆する内容の挑戦状を郵送してきたのを最後に、その後具体的な動きは現在まで出てきておりません。犯人はこれまでの犯行の過程におきまして無線機を初め多くの証拠品を残しており、これらの証拠品から犯人に到達すべく鋭意捜査を進めているところであります。また、これまで数回現場設定がなされましたものの、犯人が現場にあらわれなかったり、また不審な挙動を示す者を認めながらもその時点では本件の容疑者と認め得るだけの資料がないなどの理由で、現場において犯人を捕捉するには至っておらない状況であります。 これまでの捜査状況でありますけれども、大阪、兵庫、京都それに滋賀の各府県警察を中心にしまして、全国の警察を挙げて、当面の最重要課題として、似顔絵の男の割り出し、犯人が使用いたしましたタイプライターの特定、無線機等遺留品の捜査等を全力を尽くして捜査しておるところでありますが、今後ともその既定の捜査方針に基づいて粘り強く捜査を進めてまいりたいと考えております。 また、犯人像についてでありますが、これまでの犯行形態から見まして、犯人は女性を含む四、五人から成っており、比較的統制がとれ、団結心の強いグループであるというふうに見ておるほかはなかなか犯人像については申し上げる点がございません。
○喜屋武眞榮君 今、報告された過程においても不当な人権侵害、そして大変迷惑をしておる方々が多かったということも聞いておりますが、いかがですか。
○説明員(古川定昭君) 大変社会的に影響の大きい事件であっただけに、全国の警察挙げてこの捜査については取り組んできておりますし、現在も捜査続行中でありますが、その過程で国民の皆様方からの御協力がありませんと、まあこの事件に限りませんが、事件の解決はできないというのが私どもの立場でありますので、国民の皆様方に対して迷惑をかけたりあるいは人権侵害になるようなことがありますと、私どもの責務である犯人の検挙にも全くプラスにならないということから考えまして、そのようなことがないというふうに私は信じておりますが、またそのようなことがあったという報告もありませんので承知しておりませんが、今後も事件捜査の過程ではそういうことのないように私どもとしては指導してまいるつもりでおります。
○喜屋武眞榮君 そこで提案者にお聞きしますが、刑法を改正する方法には現行法を改正していくのか、それとも新法を制定する、こういう二つの方法があるわけでありますが、今回は新法を制定する方法をとってこられたということなんですが、その理由は何でしょうか。
○衆議院議員(宮崎茂一君) ただいま御提案申し上げておりますこの法律の内容から明らかなように、いわゆる流通食品への毒物混入等に関しまして総合的な観点からそれを防止しようというところに力点がありまして、その一環として罰則を盛り込もうとしているものでございますので、こういった立法の趣旨からいたしますと、やはり特別立法の形式によらざるを得ない、かように考えておるわけでございます。
○喜屋武眞榮君 もう一つお尋ねしますが、製造業者の告知義務のところで、企業の裏取引を抑制する効果があるという意図のもとにこれが掲げられたと思うんですが、いかがでしょうか。企業の裏取引を抑制する効果がどの程度あると見ておられるのであるか、お聞きしたいんです。
○衆議院議員(宮崎茂一君) この法律は、御承知のように毒物の混入がなされますというと、生命に非常な危害が発生するかもしれない、そういったような社会不安がございますので、その流通食品に毒物が混入されたという事実を知った製造業者等に対しまして届け出の義務を課することといたしました。そしてまた、そういったようなおそれのある場合等警察の捜査に協力するように規定をしているわけでございますが、ただいま御質問の裏取引の問題でございますが、本法の趣旨としてはそういったこの裏取引防止のための条項では実はございませんが、そういった毒物混入がされないように阻止しようということでございますけれども、やはり私どもといたしましては、今お尋ねの裏取引につきましてはこの四条、五条で、ある程度裏取引の防止に効果があるんじゃないか、かように評価している次第でございます。
○喜屋武眞榮君 次に、もう一つ提案者にお聞きしたいんですが、この問題は国会の議運委員会によるところのことでありますけれども、便宜上提案者にお伺いしたいんですが、この法案が法務委員会ではなく農林水産委員会に付託されたこの理由をどのように見ておられるのか、改めて確認いたしたいと思いますので、ひとつお尋ねします。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 御承知のとおり、国会におきます議案の付託は議長あるいはまたこれを補佐する議運の委員会でお決めになるわけでございまして、私どもの方からとやかく言う立場ではございません。しかしながら、この法律は流通食品に対する毒物の混入等の防止を図るための施策を総合的に決めたものでございますので、そういった立場から食品流通の問題を主にお取り扱いいただいております農林水産委員会で御論議いただくことが妥当ではないかなと、かように考えておるわけでございます。
○喜屋武眞榮君 次に農水省にお尋ねいたしますが、この質問の関連でありますから、企業の恐喝事件の影響について農水省にお尋ねしたいんですが、この一連の事件の後、グリコあるいは森永製菓の製品がスーパーなどの店頭から撤去されたり、あるいは被害企業が操業短縮に追い込まれたと聞いております。商品チェックのため、多数の従業員を派遣するために多大な費用と労力を要し、そのために従業員の労働条件にも大変悪い影響を与えておる、こう聞いております。そこで、この五十九年三月以降の一年間の菓子業界全体の売上額がおよそ八百億円減少した、特に森永製菓の場合大幅な赤字を出しておる、こう聞いておりますが、ところで時の流れがありますので、その後徐々に回復しつつあるとも聞いております。従業員の中には既に離職者も多く出ておる、こういう厳しい窮苦の状況の中で今日に至っておると聞いております。 そこで、この事件の発生前と発生後の状況、さらに今日に至る回復の状況、いわゆる現状どういう状態になっておるでしょうか、お聞きしたい。
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘のように、グリコ・森永事件の当時につきましては森永 の製品が一時スーパーから撤去される、こういう事態が生じました。また、それとある程度の関連をもちまして、菓子業界全体が売上不振に陥るという事態があったわけでございます。しかしながら、その後、各方面の御協力もございまして、徐徐に回復をいたしてきております。 森永製菓について申し上げますと、五十八年には売上高が千二百二十億ございましたものが、五十九年には九百九十億円に減少をいたしておりまして、黒字決算が、四十二億の税引き後利益が一転して三十億の赤字に転落をしたわけでございます。しかしながら、その後、売り上げも徐々に回復をいたしておりますが、昭和六十一年度におきましてもなお昭和五十八年の売り上げには多少及んでいないというのが実態でございます。グリコにおきましても、おおむね売り上げについてはほぼ同じような経過をたどっておりまして、両社とも昭和六十一年にはようやく配当をいたしておりますが、森永の場合には、なお経常利益はかなり低い水準にあるというふうに私どもは聞いておるわけでございます。
○喜屋武眞榮君 次に、本法案の第五条で、捜査機関に対する協力義務の規定がございますね。これは国民としては協力するわけですが、しかし仮に国民がこの規定に反しても罰則の対象とはならないということもはっきりいたしました。ところで、この法文で言うところの「必要な協力」の範囲、内容の程度がいま一つ漠然として十分理解しかねるところがありますが、例えば、国民が捜査機関に協力する場合、多額の出費を要するような場合でも一応は協力しなければならないわけであります。ところがその反面、多額の出費を求められる場合に、人によっては協力をためらう者や協力をしない者も出ないとは限らない。 そこで、お尋ねしたいことは、この場合、国として協力した者に対して実費を弁済することを、費用弁償ですか、運用の中で考えておられるかいかがでしょうかということをお尋ねしたい。
○衆議院議員(宮崎茂一君) この第五条は「製造業者等は、」「必要な協力をしなければならない。」と、こういうふうになっているわけでございまして、しかも、その協力はあくまでも任意的な協力でございます。したがいまして、国が今のお話のような実費弁償をするかどうか、今の段階では考えておりません。
○喜屋武眞榮君 今の段階ではお考えでないということですが、もし実際の問題に直面してそれを求められた場合にどういうことになりますか。
○衆議院議員(白川勝彦君) 先生のおっしゃられるちょっと質問の御趣旨よくわからないところあるわけでございますけれども、この法律ではなくてほかに実費弁償というようなことがあるだろうかという、こういう御質問でよろしいんでしょうか。――それにつきましては、私どもも全部承知しておるわけではございませんが、何らかの意味で捜査に協力をしたというようなことで実費弁償ということは、任意の協力の場合はないと思います。差し押さえであるとか、いわゆる強制力によって例えばあるものを保管したとかというような、そういうような場合は多分実費弁償というような概念が出てくるんでしょうが、任意の協力に対しては、してもしなくても自由なわけでございますから、逆に実費弁償という考えは、普通この種のたぐいのものでは、ほかの法律でもないのではないだろうかという気がいたしております。 なお、お尋ねの点でございますが、第五条というよりも、むしろ私どもが議論をいたしましたのは次の第七条で、もう少し具体的になったとき、実は先生が問題のようなことについて実は議論した経過があるので念のため御報告させていただきたいと思うんですが、第七条の第二項に「主務大臣は、流通食品への毒物の混入等があった場合において特に必要があると認めるときは、製造業者等に対し、当該流通食品又は飲食物につき必要な措置をとることを求めることができる。」と、この中には販売中止であるとか、一時的には撤去命令、中には廃棄を求めるというようなこともあろうかと思いますが、これはあくまでも命令ではございません。主務大臣が求めるという形にしております。ですから、結果といたしましては、あくまでも従うか従わないかは製造業者等の裁量に任せられるわけでございますので、この点についても補償という観念が出てこないわけでございます。 議論の過程の中では、命令にして、そのかわり場合によったら補償というような議論もあったわけでございますが、当時、製造業者等からいろいろヒアリングした段階では、いやしくも入れられたかもしれないというだけでも我々はこのように現実に売らないし、また売れなくなるんだ、ましてやもう入っていることがはっきりしているものについて、それでもなおかつ売るなどということはするつもりもないし、できるものではない。ですから命令などというとげとげしいものにしないでもらいたいと、こういうような強い御要望も業界からも出されましたので、そのようないわゆる命令と補償というような考え方はこの法律のどこにも出てこないわけでございます。その点をまた御理解いただければ幸いでございます。
○喜屋武眞榮君 次に、第三条についてでありますが、「必要な施策を総合的に講ずる」ということについて、例えばグリコや森永事件のときには、国は政務次官クラスの連絡会議を設置して対処しておられますね。中でも農水省の場合には職域注文販売に協力して、中小企業庁では森永製菓と取引のある中小企業に通常より有利な信用保証や低利の企業体質強化資金を適用している。労働省も雇用調整助成制度によって、給料や教育訓練に助成金を支給する措置を講じたことはそれなりに評価ができると思うわけですが、ところで本法案では、これまでの施策のほかに、警察官への届け出、捜査機関への協力、通報などの条文が明示されておりますね。したがいまして、この具体的な内容や今後の対策として必要と思われる力とをどのように想定しておるのか、提案者にお聞きいたしたいと思います。
○衆議院議員(宮崎茂一君) この必要な措置でございますが、例えて具体的に申し上げますと、厚生省に対しましては薬物、毒物の取り締まりを厳重にしてもらいたいとか、あるいはまた農林水産省を通じまして製品の安全包装でありますとか、あるいはまた店内の防犯設備を厳重にするとか、そういういろいろなことがあろうと思います。先ほど来お話しのように、この前、グリコ・森永事件の際は行政措置でもって政務次官会議を開きましてやりましたのですが、今回この審議中の法律案が通りますというと、この法案に基づきまして各行政機関全部協力してやらなきゃならぬということになりますのでしっかりした協力の柱ができる、こういうふうに考えておる次第でございます。
○喜屋武眞榮君 じゃ、時間も迫ってまいりましたので、幾つか私が疑問とするところをお尋ねいたしましたが、最後に警察当局に伺いたいんですが、まだ未逮捕の犯人、いわゆる犯人逮捕に対する姿勢といいますか、決意といいますか、どのように今持っておられるのか、警察当局にお尋ねをいたしまして、質問を終わります。
○説明員(古川定昭君) このグリコ・森永事件の性質といいますか、その悪質性、反社会性にかんがみまして、警察といたしましては当面の最重要課題をこの検挙に置きまして、全国的な警察の協力のもとに現在なお捜査を遂行中でございます。幾つかの大きな事件の解決を要するものもありますが、その中でも特にこの事件については重大な位置づけをして取り組んでいるところでありまして、あらゆる機会を通じ、またあらゆる場合に全国の警察がこの問題意識を忘れないように常にこの原点といいますか、この検挙に向けて努力をさらに尽くしていくということで取り組んでおるところでございます。
○山田耕三郎君 飲食物に毒物を混入し、あるいは混入するとして社会を不安に陥れるというこの種犯罪は極めて卑劣であると思いますし、人間の生命を奪う可能性を秘めた極めて残忍な犯罪であります。しかも、この種犯罪は極めて容易にかつ 隠密裏に実行できます点から模倣性も強い犯罪と言われ、現にグリコ・森永事件以降の現実がそのことを実証いたしております。この種犯罪を抑止することのできる効果的な措置を必要とすることはもう言を待ちません。その対応として提案をされたのがただいま審議中の特別措置法案であると思っております。しかし本法案については、今日までの国会審議や参考人からの意見聴取を通じ問題点も明らかにされつつあります。 すなわち、まず刑罰法規制定上の問題として、一つは、本法案は刑罰万能主義である上に国民の人権を不当に侵害しかねない危険性を有している。二つは、本法案の構成要件は明確性を欠き、作成過程にも問題がある。さらに、犯罪に対する抑止力や対応について、一つは、法制定だけで果たして犯罪に対する抑止効果が期待できるのかどうか。二つは、主官庁は農林水産省でありますが、政府全体に深くかかわります上に民間団体も絡む場合が予測をされることから、適宜連絡を取り合ってと答弁にもありましたが、そのような悠長なことで実際問題として機動的な対応が可能なのか等々であり、解明されておらない問題もありますが、一応答弁もありましたので重複を避けまして次の点についてだけお尋ねをいたします。私は本法案によります抑止効果は少ないと思いますが、次の二点を強調して所見を求めます。 第一点は、今日の社会のように人の命がこうも簡単に犯罪の具に供されることは全く異常であります。それは人権や人命が軽視されております証左であり、このような社会風潮を醸成してきた政治の責任も大きいと痛感をいたしておるものでございます。なぜそのようになってきたのか。この種法律には人命の方が中心に据えられなければならないはずでありますのに他の法律にゆだねられましたのか、消費者の被害救済は不明確であるように思いますし、企業側を代表されました参考人の意見にも、現実に莫大な企業被害を受けられました結果からだと理解はいたしますが、被害企業の救済については熱心な発言がありましたが、被害者のそれについては何もありませんでした。製造業者としては何をおいてもまず消費者の人命の安全を守るという気概を持ってもらわなければならないと思いますが、そういったものが感じられませんでした。消費者の命の危険を伴うなればこそ犯罪者の企業に対する恐喝効果があるのではありませんか。参考人の意見の中にグリコ・森永事件に際し消費者からの激励や販売事業に対する協力もありましたようですが、今日のこの殺伐な世相の中にありましてこの消費者の善意は聞いておりまして私は救いでありました。 先日、敬老の日に知人が少しでも協力をとの意味を込めましてと言ってグリコ商品を携えて訪ねてきてくれました。そのときの話に、企業業績は回復してきておりますようですね、しかし亡くなられました山本本部長は帰られませんね、こういうことでございました。このような善良な消費者が、利用されるときだけは利用されて、肝心なところで欠落されてしまうようでありますからこそ人権や人命軽視が助長されるのではありませんでしょうか。本法案の制定についても、企業側の意見は十分徴されておられるように参考人の意見から察せられました。しかし広く消費者の意見はどのようになさったのでございますか。確かに法案の中では「国民の生命又は身体に対する危害の発生を防止」という文言こそございますけれども、この種犯罪から国民を守る不退転の決意が私としてはいま少し感じ取れないのが残念に思っております。 各機関が国民の安全を守るという一点に結集されてこそこの種犯罪の抑止力になると思うのでございますけれども、ただ私の言っておるような理念だけではなかなか困難な問題もあることはわかります。そして即効薬にはならないと思います。けれども、昨日の誘拐された子供さんが投げ捨てられるというような痛ましい事件は、やっぱり人命軽視がそうさせると私は思いますので、そういった点から、提案者の御所見とあわせて、犯罪を取り扱われます警察庁としても見解をお示しをいただきたい。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 先生の御指摘のとおり、戦後、みずからの人権とみずからの権利は非常に主張いたしますが、他人の権利、他人の人権というものはお話のように軽んじられる風潮があるということは私もよくわかり、理解できるわけでございまして、そのように考えております。したがいまして、この法律案は、そういう毒物混入によりまして生命の不安を感ずる一般の国民、そういった人力を守ろうというのが第一の目的でございます。それを中心に据えているつもりでございます。そのほか、これを実行するために、いろいろな各官庁あるいはまた国民の皆さん方と協力してこの犯罪を抑止していこう、こういう中心的な気持ちでございますが、一部に犯人に対しまして、あるいはまたその犯人を知っている人に対しましての罰則と申しますか、そういうものを設けてこれは担保したわけでございまして、そっちの方は、こういった生命を尊重されないような現代社会の風潮に対して、何とかお話のようにこれからそういう人命を守っていこう、こういう気持ちでつくったわけでございます。なおまた、一般の人力の保護と申しますか、それが少し足りないんじゃないか、こういうお話でございまして、なかなかそこまでいかなかったのかもしれませんけれども、要はやはり国民全体の生命を守っていこうという先生御指摘の趣旨だと私は理解をしております。 基本的なことは大体そういうことでございますが、そのほかにもし何かございましたら、また答弁させます。
○説明員(古川定昭君) 国民あるいは大量消費者の命を人質にとるという、この種犯罪の悪質でかつ計画的な態様といいますか、こういう事犯を検挙する責任のある警察といたしましては、本来の警察の責務として国民の生命、身体、財産を保護するといいますか守るという責任があるわけでありますが、この責任を果たす上で事件の検挙が最大の抑止策であるというふうに認識しておりまして、被害企業その他の関係者の方に対しても必要に応じて協力をお願いするなど、細心の注意を払いながら捜査を行ってまいりたいというふうに考えておるところであります。
○山田耕三郎君 第二点は、凶悪犯に対する最大の抑止力は犯罪者の検挙にあると思います。グリコ・森永犯は今日の交通の発達、情報化の社会現象が生み出した犯罪で、明治時代の現行刑法では対応できないとの意見もあり、さらに、この種犯罪の特質として、極めて容易かつ隠密裏に実行できる点から、模倣性が強く、阻止するための効果的措置が難しいとの議論もあります。そこで効果的な措置として本法案が浮上してきたのでありますが、たとえこの法律がもっと早くに施行されてあったといたしましても、グリコ・森永犯の検挙ということに対してはさきほど貢献をしておらなかったのではないかとさえ私は感じます。しかし、もし検挙されておったとすれば、この種犯罪、類似犯罪をも含めて今ごろではちゃんと鎮静化をしておったのではないかと思います。 午前中の質問や、ただいまの質問にも、グリコ・森永事件の解決のおくれに対する質問があり、警察庁からもこれらに対する答弁がありました。私の地元では、本件に対する責任をとって警察本部長が命を詰めておられます痛ましい事実もございます。前線ではそれぞれこのような旺盛な責任感を持って対応をしてこられたけれども、現実いまだに検挙ができない、こういうことであります。そして、それどころか、そのほかにも、例えば朝日新聞支局襲撃事件で記者が射殺をされました件、あるいは広島大学の教授を殺人された事件、あるいはたび重なる現金輸送車襲撃事件、しかもその多くが成功をしておりますのですけれども、こういった事件が未解決のままでありますことは大変なことだと思います。 最近出版の書籍の中にもこれらのことに言及をしておいでになるものも幾つかございます。警察庁としてもまた反論をいたしたい面も確かに持っておいでになりますと思います。しかし、多くの 識者はこのような現象をひそかに心配をしておいでになります。お互いが考えていかなければならない問題だと思いますのですけれども、そういったことがこの委員会の短い時間で論議を尽くせるとは私は思いません。けれども、簡単に申し上げまして、このままでよいとは言えませんのです。警察庁とされましては、決意でも結構でございますから、こういったことに対する今後の対応を承れば大変幸いと存じます。
○説明員(古川定昭君) ただいま御指摘のありましたいろいろな事件について、現在なお検挙されてないということで大変警察としては責任を感じておるところでありますが、そのようないわば都市社会において発生する、いわゆる都市型犯罪とでも言うような犯罪が非常に現在検挙が難しくなってきておるというのが現状であります。それに対しまして、警察といたしましていろいろな対応について努力はしておるわけでありますが、事件の初期的な段階におきまして機動力を駆使して速やかに集中的な捜査を展開するということがこの種の犯罪については必要である。そのためにさらに、初動捜査態勢と私どもは言っておりますが、そういうものを強化していこうというようなこと、あるいは、犯罪は常に現場があるわけですが、その現場における資料を細大漏らさず採取するということについての技能なり、あるいはそれを分析する資機材の整備なりということをさらに徹底する必要がある。あるいはコンピューターを最大限この捜査活動に導入するという方法の開発というようなことなどを通じまして、警察組織の総合力を発揮しながら事件を早期に解決するということで努力してまいりたい。また現実にもそのような努力を進めているところでございます。 また、この種の事件の捜査につきましては、最も私どもとして大切に感じておりますことは、たくさんの情報が警察に寄せられることであるということでございまして、国民の皆様方に情報の提供をぜひひとつお願いしたいというふうに考えておるところでございます。そういうことで、今後とも幅広い捜査活動への御協力をお願いしつつ、警察の立場で最善の努力を尽くしていきたい、このように考えておるところでございます。
○山田耕三郎君 最後に、特別措置法案の作成過程について提案者にお尋ねをいたします。 東京弁護士会の意見書を見ますと、特別措置法案の生成過程を見ると、「犯人が捕まらないという懸念が先に出、」、「常に罰則が優先をしており、国民的論議どころか、通常の法案作成過程、立法過程すら無視している。」との批判がありました。その関係者に、特に通常の法案作成過程、立法過程すら無視しておるとの部分について、そのあるべき姿をただしました。そうしたら、その回答として、通常法務省において法制審議会を設置し広く意見を求め、時間をかけて法案作成の手順を進めていくことでありますと、こういうことでありました。そうしたら、本法案についてはどうしてそのような手順を経ることなく本案の法案作成を進めていく道を選択されましたのかということを法務省に聞いてみました。法務省のお答えは、刑罰に関係をする条項がございますので、一般的には法務省の所管と誤解をしておいでになるのかと思います、本件のごとき法案は主管官庁が農林水産省でありますから、むしろそこで適当な審議の機関を設けて対応をしていただくのが本当の姿でありまして、刑法ごときものについては当然法務省が主管官庁になりますのですけれども、本法案については法務省としてはその対応ができませんということであり、そしていずれにしても議員立法になっております以上は、政府機関でこの審議を進めていくということはできないことだと思います、こういうことでありました。 けさからの質問に対しましても、提案者や関係の皆さんからの答弁がありまして、その善悪は別といたしまして、おおむね議員立法がなぜとられたかということについては理解をいたしました。けれども、今の法務省の御意見にもありましたように、やっぱり議員立法で対応なさるということは、ある意味では広く意見を聴取するということを封殺なされかねない点も存在をすると思います。だから、そういう欠陥を是正することのために提案者はどのような措置をとってきてくださったのか、第一問の中でお答えが欠落をいたしておりました。業界を代表なさった製造業者の方々はたびたび意見を申し述べておりますということであったから、その方々の意見は聴取をしておいでになることがそのことで類推をされましたけれども、消費者の意見はどこでお聞きになったのか、そういったことをもあわせて御回答をいただきたいと思います。
○衆議院議員(宮崎茂一君) 御指摘のように、この法律は議員立法でございますが、私ども国会議員の考えだけではございませんので、与党でございますので、各省庁の持っておりますいろいろなお知恵を拝借しながら作成をいたしたわけでございまして、その過程におきましては関係の各省庁を通じましてその関係の各省庁から業界の方々の御意見等が、この立法についてどういうふうに思っておられるか、そういう点につきまして相当な時間をかけて審議をいたしたわけでございます。 後段の消費者につきましては、先ほど申し上げましたように、消費者の生命を守ろうというのが第一の目的でございましたので、一般的にその関係各省全体での御意見を聞くということで一応御了承、御理解賜りたいと思っているわけでございます。
○山田耕三郎君 ただいまの御回答でございますけれども、自民党が長年政権を担当しておいでになります。各省庁とてもこれは内輪のおつき合いだと私は思います。そういったときにこそやっぱり広く消費者等の意見が組織的に求められていかなければならないと思うのでございますけれども、そういった点を要望をいたしておきまして、これで私の質問を終わります。
○委員長(岡部三郎君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十六分散会 ―――――・―――――