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109回国会参議院1987/09/10

農林水産委員会 第7号

発言数
83
登壇者
12
会派数
6
開催日
1987/09/10

会議録

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る三日、永田良雄君が委員を辞任され、その補欠として大塚清次郎君が選任されました。  また、去る四日、鈴木和美君及び山本正和君が委員を辞任され、その補欠として八百板正君及び高杉廸忠君が選任されました。  また、昨日、高杉廸忠君が委員を辞任され、その補欠として及川一夫君が選任されました。     —————————————

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案の審査のため、本日の委員会に参考人として、お手元の名簿にございます財団法人食品産業センター理事長池田正範君、全日本食品労働組合連合会中央執行委員長田村憲一君、弁護士藤崎生夫君、弁護士柳原武男君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) 次に、流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案を議題といたします。  発議者衆議院議員宮崎茂一君から趣旨説明を聴取いたします。宮崎茂一君。

宮崎茂一自由民主党

○衆議院議員(宮崎茂一君) 流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案につきまして、提出者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  昭和五十九年三月、流通食品に毒物を混入することにより食品企業を恐喝した警察庁指定第百十四号事件が発生して以来、これを模倣した食品企業恐喝事件が頻発しております。  このような流通食品への毒物の混入は、消費者たる国民全体に対する挑戦であります。それゆえに、国民の生命または身体に対する危害の発生を防止し、国民生活の平穏と安定に資するため、特に、法的措置を講ずることといたした次第であります。  以下、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一に、国及び地方公共団体は、流通食品への毒物の混入等を防止するため、必要な施策を総合的に講ずるよう努めなければならないことといたしました。  第二に、製造業者等は、その営業に係る流通食品について、流通食品への毒物の混入等があったことを知ったときは、警察官等に届け出なければならないことといたしました。  第三に、主務大臣は、流通食品への毒物の混入等の防止等のため、製造業者等に対し、必要な指導、助言等を行うことができることといたしました。  なお、主務大臣は、流通食品の流通を所掌する大臣、すなわち飲食料品については農林水産大臣、酒類については大蔵大臣であります。  第四に、国または地方公共団体は、流通食品の適切かつ円滑な流通の維持または製造業者等の経営の安定のため、製造業者等に対し、必要な指導、助言、資金のあっせん等の措置を講ずるよう努めなければならないことといたしました。  第五に、流通食品への毒物の混入等を行った者を最高十年の懲役に、また、これによって人を死傷させた者を最高無期懲役に処する等の罰則を設けることといたしました。  以上が、流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案の趣旨であります。  なお、前述第二の届け出をしなければならない者を製造業者等に限定いたしました点及び届け出義務に係る罰則に両罰規定を追加いたしました点は、衆議院農林水産委員会における修正に基づく ものであることを申し添えます。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いをいたします。

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。     —————————————

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。  ただいま、八百板正君が委員を辞任され、その補欠として本岡昭次君が選任されました。     —————————————

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) それでは、先ほど決定されました参考人の方々の御出席を願っておりますので、御意見を承ることにいたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。  本日は、流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の本委員会の審査の参考にさせていただきたく存じております。よろしくお願いをいたします。  それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。  御意見をお述べいただく時間は、議事の都合上、お一人十五分以内とし、その順序は、池田参考人、田村参考人、藤崎参考人、柳原参考人の順といたします。参考人の方々の御意見の開陳が一応済みました後に、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、池田参考人からお願いいたします。池田参考人。

池田正範財団法人食品産業センター理事長

○参考人(池田正範君) それでは、委員長のお許しをいただきまして、参考人としての意見を述べさせていただきたいと存じます。私は財団法人食品産業センターの理事長をいたしております池田でございます。  結論から申し上げますと、流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法案に対しましては、私どもといたしましては、この法案に賛成をする立場にございます。  その理由を申し上げたいと存じますが、御案内のように、昭和五十九年三月に、俗に言われます怪人二十一面相なるもののいわゆるグリコ・森永事件が発生をいたしまして、それ以来警察庁の認知事件数だけ取り上げてみましても、この種類の犯罪が昭和五十九年に五十一件、六十年に百一件、六十一年には二百二十二件というふうに、年を追いまして倍増の非常に脅威的な発生件数を見ておるわけでございます。  翻って我が国の食品企業、これを国民経済計算ベースで国民全体が一年間で支払います飲食費、これは昭和六十一年ベースでおよそ五十兆円に達するわけでございますが、その約六〇%に相当する三十兆円前後のシェアを食品企業としては持っておるわけでございます。  食品産業と申しますと、俗に食品工業、食品卸売業、食品小売業、それから飲食店といったようなものが全部含まれまして食品産業と俗称しておりますけれども、この食品産業に就業しております就業者数は、農水産業が現在五百万人前後でございますけれども、この食品産業の就業者数は七百万人に達しておるわけでございます。  また全製造業に占めますところの食品工業の地位でございますが、これはいろいろの尺度があると思いますが、一つは、例えば事業所の数で申し上げますと、八万二千カ所、シェアにいたしまして一〇・九%のシェアを持っております。また従業者の数で申しますというと百二十万人、一〇・五%ということでございます。それから出荷額で申し上げますというと、ほぼ先ほど申し上げました三十兆弱でございますから、これも約一〇%余ということになるわけでございます。いわば全製造業に対してほぼ一〇%のウエートを持つ産業であるというふうにお考えをいただいてよろしいかと存じます。中でもこの出荷額につきましては日本で最大の業種部門を持ちます電機あるいは自動車といったようなものに次ぐ第三位のシェアを持つ大きな産業分野であるというふうに言うことができようかと思うわけでございます。  なお、これらの生産をいたしましたものはどういうルートで入ってくるかということになりますと、これは先ほど申し上げました食品卸売業、小売業といったようなところを通ずるわけでありますけれども、特に最近進出の著しいスーパーからほぼ四二%のものが買われておる、こういうことでございまして、これは後で申し上げますところの加工食品をスーパーを通じて買うということから、いろいろな問題を今回の事件と関連して発生しているわけでございます。  申し上げるまでもないわけではございますけれども、この安全性に疑問を持たれるようなものはもはや食品としては失格でございまして、まして加工食品というのは、一見しましていいか悪いかについてはなかなか消費者が見分けがたいという性格を持っておるわけでございます。したがって、食品工業サイドといたしましては、食品を製造し包装するというふうなことを含めまして、国民に提供する義務を負っているわけでございまして、食料の安定供給という社会的な使命の点からもどうしても安全性の確保ということが最大の使命であるというふうに考えられるわけでございます。  ところが、最近、御案内の製品に対するいたずら、あるいは異物、毒物の故意な混入というふうなことが、これは国際的に見ましてもそうなんでありますけれども、完全に安全に包装するという形で防御できないという実は問題があるわけでございます。飲食品の価格でほぼ包装用に使います包装費は約一〇%内外というのが限界費用というふうに一応考えられておりますけれども、その安全包装、これは俗にタンパー・レジスタント・パッケージというふうに国際的には言われておりますが、この安全包装というふうなことに対しまして、もう少しそれは金をかけるということで、やや安全性を増すということが技術的にないわけではありませんけれども、御案内のように、食品のコスト全体が過大になるということになりますから、したがって、法外なコストというものは商品の性格上かけにくいわけでございます。しかも完全でない、こういうことでございますので、ここの面からも非常に企業としては対策に苦慮をしておるというのが実情でございます。  それから、一番代表的な事例として挙げられますグリコ・森永事件等のこの種の犯罪発生の特徴について、業界側として見ておることを申し上げますというと、一つは、やはり包装の弱点をついてくる、包装が完全にいかないということを百も承知でついてくる。しかもセルフサービスという販売形態が近代の販売形態であるというこの弱点をついてくるというふうなことで、手っ取り早く企業をおどして金を強奪するというふうな短絡化の傾向というのが一番大きな特徴であろうかと思うわけでございます。二番目には、これは日本だけではございませんで、世界的な風潮というふうに考えてよかろうかと思いますが、いわば余り汗をかかず労せずして一獲千金をとるといったような傾向が最近非常に強く出てきている。三番目には、電話とか手紙あるいは最近のCDカードといったようなものを利用いたしまして、自分は全く表に姿をあらわさないで金銭を奪取するといういわば陰湿な性格を持っておる、こういうことがこの種犯罪の一つの形として見られるわけでございます。これらはいずれも最近の都市化現象あるいは情報化の社会を迎えました現代の社会病理現象の一つではないかというふうに考えられるわけでございます。  そこで、現行刑法の問題でございますが、殺意までは持たずに、俗に言う、いたずらに少し質的に毛の生えた程度の中毒などを起こさせるというふうなつもりで毒物を混入した場合に、そのことによって死傷の結果が生じなかったというふうな 場合もあるわけでございますが、現行刑法では傷害未遂の規定はございませんので犯人を処罰することができないわけでございます。また仮に結果的に処罰する法制要件が整った場合でございましても、毒物混入行為というもの、そのものに対する処罰規定が現行法ではございませんので、やはりその行為そのものを罰するという法的な体制がこの際どうしても必要なんではなかろうかと業界側では考えるわけでございます。  それからもう一つ、偽計業務妨害罪というような法定刑もございます。しかし、これもまた三年以下の懲役または二十万円以下の罰金というようなことでございまして、御案内のような国民を底知れないような恐怖に陥れ、大きな社会不安を引き起こすというふうなこの種の毒物混入行為に対する刑罰といたしましては、諸外国と比べましてもまことに軽過ぎるというふうに考えられるわけでございまして、この種の新型の悪質犯罪の再発防止のためにもどうしてもやはり規定の明確化、抑止効果のための罰則の強化ということをぜひ国会の御審議を通じてお決めいただけたらということが私ども切なる願いであるわけでございます。  他方、業界側といたしましては、自己の全く責任でないという体制のもとで、仮に毒物混入恐喝の対象になりますというと、当然これは新聞報道等を通じて一般に知られるわけでございますが、これを売ります企業サイドからいたしますと、当然そのような危険のあるものを店頭に置くわけにはいかないということになるわけでございまして、対象商品が一斉に店頭から全面撤去をされるというふうな形になるわけでございます。今、先ほど申し上げましたように、スーパー等いわゆる量販店の店頭の棚というものは食品メーカーにとりましては命綱でございまして、そこにどれだけ売りやすい地、場所にどれだけのシェアを占めて食品を置いてもらえるかということは年間の売り上げに非常に大きな影響力を持つわけでございます。  それが一転、この問題が起きますというと、全部棚おろしをされてしまうということでございまして、これがいつもとの棚に復帰できるかということについては全く見当がつかない。したがいまして、当然安全確認のために極めて長い間に多数の従業員や、またその従業員の家族というものが動員をされまして、非常に大きな努力と費用を莫大に使いまして、大きな損失のもとに原状回復に躍起となるわけでございます。  例えば、今問題になりました一番大きなM製菓の場合でございますけれども、これらは御案内のように五十九年の九月十二日にまず一億円要求の一通の脅迫状が当会社に舞い込んだわけでございます。翌々でしたか、二十日ですね。二十日に某新聞社がこれスクープをされまして、これが元で全国のマスコミに非常に大きく取り上げられた。これはもう最初のことでございましたので、マスコミのこれらに対する報道の形についても、何と申しますか、余り大きな形というものができ上がっていなかったせいもありますけれども、競って取り上げられたわけでございます。  十月の同社の売り上げは前年比で六〇%減ってしまうというふうなことでございまして、十一月の販売額は前年同月比で七十億円の減、返品の続出というような惨たんたるありさまになったわけでございます。スーパーやデパートの店頭から同社の製品が全面撤去を迫られまして、製品を回収するあるいは工場生産を半減するというふうなことで、パートの従業員四百五十人をとりあえず自宅待機をさせる、それからその後ついにその全員を解雇せざるを得なくなったというようなところまで追い込まれたわけでございまして、一カ月間だけの損失が既に十億円ということでございまして、年間、この事案に対します同社の全体の損失は百三十億円に上るというふうに言われておるわけでございますが、しかし、御案内のように同社を救えという民間の非常に大きな広範な援助運動が巻き起こりまして、例のお菓子の千円パックの袋詰めのお菓子を各職場でもさばいていただくというふうなことを、恐らく行政府では初めてでございましょうが、個人の、個別の私的な会社の応援に農水省を中心にして立ち上がってくれまして、従業員とその家族三千人がすべて街頭に出ましてこれを売り歩いたわけでございまして、小売店三千店に一軒一軒頭を下げて歩いたというふうな異常事態であったわけでございます。  また、従業員のボーナスは即日二割減というふうなことで、支給日も十日もおくらせるというふうなことで、まことに従業員にとりましても残念なことであったわけでありますが、現在に至りましてもなお同社のベースアップは業界で最低の状態にある。ちょうど三年たったわけでございますけれども、なお三年を経過した今日でも三年前の一〇〇%の水準にまで業績が戻っていないというのが現状でございます。  また、他の社におきましても、たまたま二番目、三番目になりますというと、報道の方と警察の方との間でもいろいろと影響度を考えられて一つのルールをだんだんつくってこられまして、なるべく会社側への影響力を少なく、かつ社会になるべく不安を起こさないようにというふうなことで、だんだんいわば利口なやり方を発見してくれたわけでございますけれども、そういうふうなことになってまいりますというと、百何十億という猛烈な損失が数十億とかあるいは数億とかいうところで食いとめられた会社もあるわけでございます。  したがいまして、食品会社といたしましては、極めて会社自体の損得のことから考えますれば、なるべくこの種のものは表に出ないということで対応できれば一番いいわけでございますが、しかし隠密裏に事を運ぶということが逆に犯人側に乗ぜられる一つのすきにもなるわけでございまして、したがって犯人だけでなくて、特にそういうものの製造に従事をいたしております職員、従業員も、うちの会社はどうなるんだろうかということでの不安、動揺が非常に出てくるわけでございまして、したがってこれらの情報につきましても、これをコントロールしていくことはなかなか容易ではないわけでございます。  また、企業自身の立場として、犯人からその種の要求が出てまいりますというと、会社全体がこうむるその後の何年かにわたるつらい損失と膨大な犠牲ということを考えまして、えてして犯人の要求に屈する方向への誘因が十分にあるわけでございまして、これをやはり断ち切らして、犯人と対決させていくというふうなきっかけというものをどうしても制度的に持っていくことが必要であろうと業界自体も考えるに至っておるわけでございます。したがいまして、残念ながら昨年の夏に某社が恐喝に対応いたしましたために、マスコミに報道されまして、恐喝成功事例として警察当局からも異例の協力要請を得た事案があるわけでございますが、この事案ができました後、同種の、いわばコピーキャットと申しますか、物まねの事件というものが続発をいたしまして、急激に昨年の七月以降事件がふえたわけでございますが、そのために当産業センターといたしましても、警察の強い協力要請を受けまして、食品業界全体に及ぼす悪影響を断ち切るためのいろいろと措置を会員の各会社にいたしたわけでございます。  既に御承知おきと思いますが、一九八二年にアメリカではタイレノールという鎮痛剤の中に青酸カリを混入するという事件が発生をいたしまして、七名の死者を出したわけでございますけれども、これは今もって解決を見ておりません。したがいまして、翌一九八三年にアメリカの議会は、アメリカでは州法とそれから中央の政府との持つ法律の体系が、それぞれ日本とはちょっと違った関係になっておりますけれども、刑法の一部を直して重罰規定の導入をするというような形をとっております。  申し上げますまでもないことでございますけれども、この種の恐喝事件というのは無差別に人命を危険にさらす極めて悪質な事件であるというふうに考えられるわけでございまして、特に一般消費者を人質にとるというところが極めて特異なことでございます。菓子とかアイスクリームというふうなことになりますというと、毒物が混入され た場合に、文字すら読めない子供が皆人質にとられるということになるわけでございまして、したがって、毒物混入恐喝の対象になりました企業の製品は、スーパーの店頭から先ほど申し上げましたように撤去をされまして、安全確認の日まで莫大な損失をこうむるというふうなことでございます。原状を回復するのに長年月を要するというふうなことでございますので、私どもといたしましては、ただいま提案を見ておりますところの毒物混入法案の一日も早い御審議と成立をお願い申し上げたいと、切にお願い申し上げる次第でございます。  ありがとうございました。

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) どうもありがとうございました。  次に、田村参考人にお願いいたします。

田村憲一全日本食品労働組合連会中央執行委員長

○参考人(田村憲一君) 食品労連の中央執行委員長の田村であります。本委員会で意見を申し上げる機会を与えられたことにつきまして、大変光栄に存じておりますし、感謝をしております。  食品労連は食品関連の百三十五の労働組合で組織をしておりますが、食品産業で働いております労働者及び労働組合といたしましては、本案につきまして賛成の立場で意見を申し上げたいと思います。  食品産業には多くの労働者が従事しており、安全で質のよい製品を適正な価格で安定的に生産、販売するために努力しているところです。私たちは、食品産業が健全に発展し、企業経営が順調に推移することを通じて、雇用の安定と労働条件、福祉の向上を実現できるわけであります。労働組合も協力し、製品の安全衛生の確保、品質管理の徹底に努めているところであります。このような立場と努力が、いわれなき理由により、ある日突然脅迫状の一通あるいは電話の一本で脅かされ、不安な状態に陥れられ、生活基盤を失いかねない事態が現実に起きており、解決していない事例が多いわけで大変困っているわけであります。本法案の必要性の背景的な理由であるグリコ・森永事件はいまだ完全解決をしておらず、まことに悔しい思いでいっぱいであります。当時の状況は広くマスコミに報道され、世間からの同情も呼び、被害企業と労働者に対する激励と御支援を全国からちょうだいし、心から感謝をしているところですが、その影響は今日まで残っております。  事件発生によって受ける労働者、労働組合への影響やその後の問題点といたしまして、三つほど挙げたいと思いますが、第一に、労働組合は労働条件向上に向けた活動をしているわけでありますが、こういう事件が発生いたしますと、すべての活動が中断され、企業防衛に協力するというよりも、労働組合の組織を挙げて流通段階の製品の安全確認、製品の直販活動、さらには世間への状況説明と支援要請、あるいは犯人に関する情報収集などに取り組むことになるわけでありますが、事件が長期化いたしますと、業績の急激な悪化に伴いまして、賃金、一時金初め労働条件は大幅にダウンせざるを得ない状況に追い込まれるわけであります。  例えば森永の場合に、この三年間の平均賃上げは、定期昇給を含めまして年平均三%であり、食連の平均と比較いたしますと、毎年一%強低い水準であります。事件発生の直後は、ベースアップはゼロでした。一時金も年間で毎年、平均より〇・五カ月以上低く、事件の最中の年末一時金は二〇%カットされました。その結果、平均賃金、初任給も平均よりかなり低い水準となっておりまして、事件発生前はほぼ平均的な水準でありましたけれども、現在では平均賃金は、食連の平均よりも基準賃金でおよそ一万七千円低い水準でありますし、初任給は食連大手の中で最も低い水準ということになっているわけであります。  二番目の問題といたしましては、雇用不安の問題が生じるわけであります。先ほど池田参考人から御説明ありましたように、森永の場合、当時は工場の操業度がほぼゼロに近い状態になりまして、臨時従業員やパートの方が四百五十名、一時的に雇用を打ち切られるということにならざるを得なかったわけでありまして、その際は労働組合に対しても大変おしかりをいただいたというような経過がございます。また社員につきましても、当事者でなければわからない大きな不安が続いたわけでありまして、ある日刊新聞に連載で家族の不安な毎日が載せられたというような経過もあるわけであります。グリコにつきましても、関連下請企業の雇用調整が行われまして、本来は構造不況業種に限って適用される雇用保険法に基づく雇用調整助成金の支給対象に指定され、その給付を受けて雇用調整をせざるを得なかった企業もあったわけであります。  三番目には、事件発生によって大変な労働過重、労働強化が起きてくることであります。店頭での商品チェックや緊急時の対応のため長時間の勤務が続き、それも正規の勤務というよりも自発的、またサービス労働というような形で深夜まで、また休日も出勤せざるを得ないというような状態が続くわけであります。さらには、家族も含めて対応せざるを得ないということになりまして、職場だけでなくて家庭生活にも影響が及んでくるわけであります。  私どもといたしましても、流通食品に毒物を混入させるというような行為を世の中からなくす、防止するための法的、行政的措置を望み、今日までも政府、政党にも要請をしてきたところであります。流通食品に毒物を混入させて企業や消費者を脅迫し、社会不安を引き起こすような行為は社会悪であり、法律に違反するということを国、国民が決意を持って明確にしていただきたいと思いますし、またそのことを、法律が成立いたしましたならば国全体に徹底していただきたいというように思うわけであります。当然法律でありますから、違反に対してはやはり厳しい処置も必要ではないかというように思うわけであります。また、このような事件が発生した場合、関係者が協力し合い、犯人の不正な要求に応じない体制が大事であり、そのためには届け出義務は社会的な責任だと思います。  さらに、事件が発生した場合には適切な流通維持を図り、被害企業に対する援助と救済措置を講じていただかないと、私企業としては多くの従業員を抱えて長期間企業活動がストップし、倒産もしかねないという事態に追い込まれるわけでありまして、その補償はどこにも持っていけないのが現実であろうかと思います。本法案につきましては社会正義と善意の発想に基づく法案と理解しているわけであります。  グリコ・森永事件の際、大変気になることが一部でささやかれました。それは犯人が捕まっても人身を殺傷していないのであれば大した罪にはならないのではないかというようなこと、犯人はそれを承知でやっているのではないかというようなことだとか、また、被害の大きさから見て、社会正義に立ち向かうよりも経営の本音としては取引に応じた方が得策であるのではないか、現実的な選択をした方が企業として生き延び、従業員を守れるのではないかという声がかなりあったということであります。健全な社会秩序を維持し、公正な社会を築き上げていく上でこのようなことがあってはならないと思います。本法案によりそのような疑問や不正が起こらないようきちんとしていただきたいというように思うわけであります。  法律があっても犯罪は完全にはなくならないことも事実でしょうが、現状では決め手となる防止策もないのではないかと思いますし、私どもといたしましても本法案が成立しました場合、一つのよりどころとして大きな安心感を持つことができると思います。このような観点から見まして、本法案につきましてはほぼ私たちの考えにも沿った内容になっているのではないかというように思っているわけでありまして、本法案が成立されるよう強く望んでいるところであります。実は私どもの組合はけさから定期全国大会を開催しているわけでありますが、冒頭の委員長あいさつでもこの件につきまして改めて組織で確認をし、本委員会に臨んでいるところであります。  ありがとうございました。

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) どうもありがとうございました。  次に、藤崎参考人にお願いいたします。藤崎参考人。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 弁護士の藤崎生夫でございます。この法案に対して若干意見を申し述べさせていただきます。  結論を先に申し上げますと、問題なしとしない点もありますが、この法案におおむね賛成いたします。そこで問題なしとしない点を先に述べてみたいと思います。  まず、現行刑法の法条で現在の事案に対して賄えるのではないかという問題があるのではないかと思います。例えば現行刑法を見ますと、業務及び業務者を保護するものとして偽計による業務妨害罪、これは刑法二百三十三条ですが、この条文を見ますと「偽計ヲ用ヒ人ノ信用ヲ毀損シ若クハ其業務ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ二十万円以下ノ罰金ニ処ス」と規定しているわけです。業者の財産権を保護するものとしては恐喝罪、同未遂罪の規定があります。これは刑法二百四十九条以下の規定ですが、この条文も「人ヲ恐喝シテ財物ヲ交付セシメ」または「財産上不法ノ利益ヲ得」た場合は「十年以下ノ懲役ニ処ス」と規定しているわけです。他方、一般国民の健康を保護するものとしては、これは刑法二百四条ですが傷害罪の規定があり、「十年以下ノ懲役又八十万円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス」としているわけです。ですから、在来のこれらの規定を現状の事案に合わせて活用すれば、あるいは対処できる、このような問題として考えられるのではないかと思います。  次に、この法案の法定刑が重いのではないかという点です。さきに引用しました業務妨害罪の法定刑は、三年以下の懲役または二十万円以下の罰金もしくは科料と規定しているわけですが、この法案では第九条一号及び二号ですが、「流通食品に、毒物を混入し、添加し、又は塗布した者」及び「毒物が混入され、添加され、又は塗布された飲食物を流通食品と混在させた者」は「十年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」というかなり重罰規定を置いているわけです。さらにこれらの手段によって人を死傷させた場合ですが、刑法の傷害致死罪は二年以上の有期懲役ですが、これは刑法二百五条ですが、この法案では「よって人を死傷させた者は、無期又は一年以上の懲役に処する。」と、これまた極めて重罰規定を置いているわけです。これらの点から現行刑法の刑の均衡といいますか、バランスがとれているかという点が問題として考えられるわけです。  しかし、私としては右のような問題点もあるかと思いますが、飲食物に毒物を混入するという犯罪類型に対する法律というのは現行刑法は持っていないわけです。すなわち毒物を飲食物に混入し、あるいは混入するという、そしてそういう手段によって社会を恐怖させるというような犯罪類型は、スーパー等の量販店あるいはマスコミュニケーション、マスメディアの発達した現代社会において初めて発生した犯罪類型であると思っております。したがいまして、現行刑法、これは明治四十一年に施行せられた古い法律ですが、この現行刑法では全く考えていなかったというのが現実の問題であると思います。  法定刑の重いのではないかという問題ですが、現行刑法にも水道毒物混入罪というのがございまして、これは毒物を混入して公衆の健康を害する行為を処罰の対象としているわけですが、そういう観点からはこの法案と同じような性質を持っているわけです。この刑法百四十六条を見ますと「水道ニ由リ公衆ニ供給スル飲料ノ浄水又ハ其水源ニ毒物其他人ノ健康ヲ害ス可キ物ヲ混入シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス」と、これは全くの重罰規定を置いているわけで、この法案と水道毒物混入罪を比較しますと、必ずしもこの法案が均衡を逸しているというふうには言えないというふうに思うわけです。  また、この法案が対象としている飲食物に対する毒物混入という犯罪なんですが、この犯罪はその特質といいますか、極めて特異な現象なんですが、素早く他に模倣されるというそういう現実があると思うわけです。発生件数を参考にしてみますと、昭和五十九年五月から六十二年六月までで発生件数は四百十件でありましたが、さらにこの発生件数が年を追うごとに増加しているということが報道されておりますし、そういう模倣性が強いという特性があるかと思います。このような犯罪に対して、現在の状況では対処する方法、抑止する効果的な方法がないというわけですから、私はこの法案もやむを得ないというふうに考えます。  以上です。

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) どうもありがとうございました。  次に、柳原参考人にお願いいたします。柳原参考人。

柳原武男弁護士

○参考人(柳原武男君) 柳原参考人でございます。東京弁護士会所属の弁護士でございます。座って述べさせていただきます。  私は反対の立場から意見を申し上げます。せっかく議員先生方が議員立法をなさることにつきましては私どもは非常にいいことだと、国民の側からこういう議員立法をなさるのが極めて適当であるというふうには考えておりますが、ただこの法案につきましては種々問題がございますし、私どもの立場もございますので反対の意見を述べる次第でございます。弁護士会と申しますと、特に東京弁護士会だとか日弁連だとかいうと、反対のための反対だとかいうようなうわさも出ておりますが、弁護士会も最近は反対のための反対なんていうようなことはだんだん旗をおろしております。我々弁護士は結局議員の皆様方と同じように国民の側に立ちまして、特に刑事被告人というような弱い者の立場に立って考えざるを得ないものですから、このような意見を申し上げる次第でございます。  まず、何で反対かと申しますと、泥縄的な急いだ立法ということに反対でございます。鉄は熱いうちに鍛えろというようなことわざもございますが、立法というものはその反対でなくちゃいかぬ。やっぱりゆっくりあらゆる分野の意見を聞いて、それで立法をなさるのがいい。そういう意味でこの法案につきましても、もう随分前に一度出まして、再提出ということで時間をおかけになったということは、これは非常にいい傾向だ、もう少しゆっくり慎重に立法していただきたいというふうにお願いする次第でございます。その場合に、私ども反対の意見を申し上げるわけでございますが、広く国民の声をお聞きになって、あらゆる立場の声を聞いた上でひとつ立法していただきたいというふうにお願いいたします。  次に、刑罰万能主義と申しますか、重い罰を科すれば犯罪が防止できるんじゃないかという考え方に反対いたします。グリコ・森永型の犯罪は、これは憎むべきものでございまして、再発は許されないということは当然でございますが、世の中と申しますものは重罰を科すれば再発が防げるというほど甘いものでないことは皆様方御存じのとおりでございます。やはり犯罪の防止の第一は犯人を検挙するということでなくちゃならないので、こういうことはもう子供にもわかることだと思います。したがいまして、このグリコ・森永型の犯罪につきましても、これを検挙するための、あるいはその他の施策を大いに検討さるべきでありまして、立法さえすればそれでこういう犯罪が防止できるということで安易に新立法に走られるということはよろしくないというふうに考えるわけでございます。  もう過去のこの委員会その他で御議論になっておりますように、グリコ・森永犯型のこの犯罪は、現行法でもこれを検挙さえできれば相当の重罰に処し得るということはもう明らかなことでございます。その後にたくさん出ました便乗犯でございますが、これはもう大部分検挙、処罰ができておるわけですね。このことによって便乗犯というのはもう大体おさまってきておる。こういうことか ら見ましても、新立法の厳罰主義を見てやめたわけじゃございませんので、そういう検挙をされるということの方が大事だというこの現実を直視していただきたい。  それから次に、この構成要件が不明確であるという点で反対いたします。この法案では、流通食品とそれから毒物につきまして詳細な規定を置いておられます。しかしながら「公衆に販売される飲食物」というものの範囲は、これは広くも狭くもいろいろ解釈がされて、これ非常に重い刑罰が科せられることから考えますと、もう少し明確な限定をしていただきたい。それから毒物につきましても、二条の二項三号でございますが、毒物または毒性が「前二号に掲げる物の毒性又は劇性に類似するもの」というような規定を置かれまして、これも毒物である、こういうふうに拡張しておられますが、これは非常に拡大されやすくてあいまいでございまして、こういう構成要件で処罰されるということは非常に危険であるというふうに考える次第でございます。  それから、刑罰の不均衡あるいは重罰化ということで反対いたします。この点につきましては、藤崎参考人からこの程度はやむを得ないというような御意見もございましたが、改正刑法草案に飲食物に対する毒物混入行為を罰する飲食物混入罪というものが二百五条に規定されておりますが、その刑は三年以下ということになっておるわけですね。そういうのから考えますと、この法案での飲食物の範囲だとか、それから飲食物の範囲が流通食品に限られておるということだとか、毒物が非常に毒性の強いものに限られたように見える、広げられておりますので、必ずしもそうも言えないと思うんですが、まあ限られておるということを考慮いたしましても、懲役十年の刑は均衡を失しているんじゃないかというふうに考えます。例えば業務上横領とそれから普通の横領というようなのがございますが、同じ横領でも業務上横領であれば、普通の横領が懲役五年以下ということになっておるのに、業務上横領であれば懲役十年以下というふうになりますが、これもせいぜい二倍ですね。そういうことから考えましても、この三年の懲役の三倍以上というのは少し不均衡ではないかというふうに考えております。  それから次に、通報協力を罰則で強要するという問題について反対いたします。これはこの犯罪の重大性から通報協力が必要なことはよくわかるわけです。しかしながら、その通報協力というものを罰則で強要するかどうかというところが問題なんであります。特にこの法案におきましては、主務官庁というものが決められておらないわけですね。やはりこういう法案の後のことを考えますと、主務官庁をはっきり決めておかれるということが大事ではないかと思うのでありますが、主務官庁もはっきりしておらないのに、警察への通報ということになっておるわけですね。こういうことを刑罰で、しかも強要するというのがどうかということを考えるわけです。ただ、法案では、前にこの法案が出ましたときには一般人への通報義務を規定されておりましたが、今回は製造業者に限られたということはまあ一歩前進であるというふうに評価いたします。しかしながら、もう一歩進んで、この刑罰による強制というのは削除さるべきではないかというふうに申し上げたいわけです。  結論的に申しますと、国民全体の声を冷静にお聞きになって、ぜひ後日に悔いを残さないような立法をやっていただきたい。今までに既に論ぜられたことと同じような意見にすぎませんが、特に弁護士の立場から一言申し上げた次第でございます。  終わります。

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) どうもありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。  それでは、これより参考人の方々に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。

稲村稔夫日本社会党・護憲共同

○稲村稔夫君 参考人の皆様方には大変貴重な御意見あるいは切実な御意見、いろいろとお聞かせをいただきまして大変ありがとうございました。  私はこれからそれぞれの参考人の皆さん方にお聞きをしたいと存じます。私の持ち時間といいますのは、私が質問いたしましてお答えをいただく、その時間全部、お答えいただく時間も含めて三十分という範囲でございますので、ひとつよろしくお願いをしたいと存じます。  まず最初に、池田参考人にお伺いをしたいのでございますが、いろいろとこの法案に期待を持っておられ、言ってみれば、成立のためにもいろいろと御要望をしてこられたという経過もあると思いますけれども、こうした中で特にこうした法律を例えば政府の側が積極的に提起をする、してほしいというようなことを今までおやりになったことがあるかどうか。つまり政府に対して強力なそういう体制づくりを御要望になってきたということがおありになるかどうか。あれば、どういう要望をしてこられたかということをお伺いしたいと存じます。政府というのもいろいろと関係省庁ございますけれども、具体的にもしございましたら、こういうところへこういう要望をしてきたということをお聞かせいただければ大変ありがたいと思います。  それから次に、今も特に最後の柳原参考人からも御意見ございました中を伺っておりまして、私も若干その辺が疑問が残るわけでありますけれども、この法案が成立をいたしましたということになりますと、裏取引というものはこれでかなり大きくチェックできるといいましょうか、セーブできる、こういうことになるのでありましょうか。特に、毒物の混入についてはおどかしの段階というよりも確認をしたときに通報義務とかなんとかというようなことがなってくる形になっておりますけれども、これは先ほど流通段階のお話を聞いていると、毒物がもし混入をされると、これ確認は大変なことなんだなと、こんなふうに思うんですね、先ほどのあれじゃありませんけれども。水道水あたりですと、もう水道水に入ったということで、その水全部だめと、こういうことでありましょうが、この間のグリコ、森永のときのことを考えましても、何か混入されたものを、そのものを見出すことというのもなかなか容易なことではないんではないだろうか。流通関係が広くなればなるほどその辺のところが大分心配になってくるわけでありまして、ということが逆に、やはり裏取引で何とかできればという気持ちというものを残してしまうのではないだろうか、そんなことも危惧をいたします。  それから三番目は、これ流通段階のことだけに限られているわけでありますけれども、事件はいろいろと流通段階だけでなく起こっているわけです。それから、食品だけではなくて、我が国では今まだ聞いておりませんけれども、先ほどお挙げになったアメリカの例などは医薬品ということになるわけでありますけれども、そういう意味でいきますと、何か食品の流通段階だけの対応ということで、この種の犯罪に対する対応というのがいいんだろうか、こういう率直な疑問もございます。その辺もお考えがお聞かせいただければと思います。  次に、田村参考人にお伺いをしたいわけでありますけれども、やはり労働者の立場として、もう政府に対してもいろいろなことを言ってこられたのではないかというふうに思います。政府にどういう対応を要望してこられたのかというようなことをお聞かせをいただきたいと思います。  それから次に、働く仲間の中にこういうことを、今度のこうした法律が必要だというような立場に立っておられるようでありますから、そのお話をどれだけ広げていく、要するに働く仲間の連帯感ということで、何も食品労働者だけではなしに、全体の中へ広げるという御努力をなさっていただろうかというようなことをお聞かせいただきたいと思います。  それからさらに、あの森永以降いろいろと大変だったとは思います。事件の起こったところ、脅 迫されたところは大変だったと思いますが、この法律で、私は、やはり監視体制とか雇用不安とかいろいろと言われたそれらのことがどれほど軽減できるのかなということも、ちょっと具体的にはよくわからないものですから、苦労しておられる立場から、こんなふうなことになるんじゃないかというのがあればお聞かせいただきたいと思います。  次に、藤崎参考人にお願いしたいんでありますけれども、これは問題なしとはしないけれどもということで、原則的にはやむを得ないのじゃないかという御意見でございました。しかし、その場合に、先ほどもちょっと柳原参考人からも出ておりましたが、刑法改正草案とのかかわりで整合性だとか何かいろいろと、法律の整合性だとかいうようなことがあるんだろうと思いますけれども、その辺、先ほど言われましたように、現行刑法は明治の産物である。しかし刑法改正草案というのは、時代は随分新しくなってきています。しかし、それがまた実際には提起をされる段階になっていないというのにはいろいろなまた理由があると思うんでありますが、そうした関係の絡みというものをどういうふうに考えておられるかということであります。  それからもう一つは、警察の捜査ということの中で主務大臣への報告が記載をされておりますけれども、これは捜査の秘密とかそういうものとの関係というのがどういうふうになるんであろうか。よく捜査の秘密上ということで、なかなか主務大臣のところもまだ明らかにできないというような、そういうようなことというのが起こるのではないだろうかということを気にするものですから、御見解が伺いたいわけであります。  それから、柳原参考人にお願いをしたいわけでありますけれども、今、現行刑法との整合性ということも問題がある、こういう御指摘をいただきました。特に、今のお話で大体わかったような気もいたしますけれども、なお刑の量によって犯罪が、何といいますか、抑止効果が、例えば重い刑罰になれば抑止効果が高い、こういうふうになかなかストレートにいかないというふうに私は受け取って伺ったんでありますけれども、その辺もう少し理論的にお教えをいただけたらありがたいと思います。  それから、この法案の中で、今五点ほどの批判点を挙げられましたけれども、その中でも特に問題であるというふうにお考えになっている部分というのをお聞かせをいただければありがたいと思います。  以上です。

池田正範財団法人食品産業センター理事長

○参考人(池田正範君) それでは稲村先生から御質問のございましたこと、私の分に関するところをお話し申し上げたいと思いますが、第一点は、法案をつくることについて政府側に要望したことがあるかというお話でございましたけれども、実は、御案内のように、先ほど申し上げましたが、この事件が起こりました五十九年の九月、非常に大きな影響力が出たもので、業界といたしましても早急にとにかくこれは対応を講じてもらわなきゃいかぬというふうなことで、直ちに内部にこの対応を検討する実は会議を持ったわけでございます。そういたしまして、数回の検討会を実施いたしておりました段階で、実は同年の十二月に自民党側でこれに対応するプロジェクトチームをつくるという機運が既に出てまいったわけでございます。たまたま私どもも、したがいましてそれではそういう機運というものに乗って早急にお手当てがいただけるのであれば、この際政府であろうと党側であろうと、まあちょっと失礼な言い方ですけれども、早くこの法律をつくっていただける体制ができるならば、その上に乗ってとにかく実現を早めたいというふうな気持ちから、実は同年の十二月に自民党側のそういった動きを拝見をいたしましてお願いをいたした経緯がございます。  自民党側は六十年の一月にはもうプロジェクトチームを先ほど御提案になった宮崎先生が中心になっておつくりになられたわけでございまして、以来、農水省とか通産省とかを宮崎先生はお呼びになられて、グリコ・森永事件の経緯について立法の前段階になる事実の確認をいろいろとされておったようでございます。したがって、私どもも漸次そういう体制で自民党の政調会の方へそういった話の中身が上がってまいります過程が外からうかがい知れたものでございますから、したがって、それではひとつそのような形での議員立法をお願いできればそれで結構ではなかろうか。  先ほどちょっと参考人の意見で申し上げましたように、アメリカでも大体この事案ができまして、ほぼ三カ月ぐらいの後には国会で、与野党で話し合って案をつくり上げて、翌年には成立をさせるというような非常に手早い対応をしておられましたので、やっぱり我が国におきましても同種の犯罪に対しては、まず何よりも早く対応する、そして抑止力を発揮する。アメリカの場合もこれができまして犯罪が非常に激減をいたしましたいきさつもございます。私自身も昨年アメリカへ参りまして、向こうの実態も見てきておりますので、したがっておくれてはやはり意味がなかろうというふうに考えまして、実はそのような形でお願いを申し上げてまいったわけでございます。  それから、この種の法律をつくることによって、例えば通報義務等を課することで裏取引のチェックになるのか、あるいは逆に誘因をつくってしまうのではないかといったような御意見であったかと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現在の段階でのいろいろな発生した事案を見てまいりますというと、どうしても最初に経営者側に対して、おまえの企業がこのままこの問題が表に出ることによって起きる非常に大きい損害、しかも長期にわたる苦痛ということを考えた場合に、裏取引に応ずることが一番安上がりで安全ではないかということを必ず言ってくるわけでございます。そうしますというと、森永製菓のごとき大企業になりますと簡単には動けないと思いますけれども、しかし一部には動いた事例があることからも察せられますように、もしそういうことが未然に防げて、かつわずかな金額で済むということであるならば、それで済ませれば経営者としては安全な道だなという感じを持ちがちであることは確かでございます。  そういうふうな雰囲気というものが一時森永事件以降方々にややびまんしかかった時期もございまして、こういう法律成立自体に対して企業サイドとして、個別の企業サイドとして果たして全部いいことずくめであろうかどうかということについての検討を内部でした時代もあったわけでございます。そういう時期を経まして現段階ではやはりこの種の通報義務というものを罰則つきでこうむっても、むしろ逆に犯人側がそういう罰則で縛られた企業の経営者に対して秘密裏に裏取引を強要するということが条件としては困難化させるというふうに私どもは考えまして、やはり法律をお決めいただくことの意味は十分あるというふうに現段階では考えておるようなわけでございます。  それから、当然この問題は薬品その他の問題が波及してまいりまするというと、そういう問題についての対応策ということにもなろうかと思うわけでございますが、これは私ども専門外でございますのでわかりませんが、まあ毒物、劇物のような形での取締法等も薬物の方にあるようでございますし、また特に問題は、この種の事件が主として小売店、まあ量販店でありましても、要するに小売店の店頭でこういう事件が起きますというと、日本の現在の法体系からいたしますと、一番末端の瑕疵のある商品を売った売り手側とそれを買って損害をこうむった買い手側との間の民法上の損害賠償の問題がまず発生するわけでございますが、現実にはこの手のものについては全く売り手側としての対応が、全然知らないで他人が入れたものを売ったわけでございますから、したがってどうしてもそこで問題が途中の一次卸あるいは二次卸等を通じてさかのぼって、最終的にはメーカーのところに参って、そしてメーカーが、そこで例えばメーカーの不注意なり不法行為を媒介にして起こったような場合には、そこでの不法行為を媒介とする事件ということで処理をされる。  これは他のいろいろな毒物事件でもそういうものはございましたけれども、そういうふうな形になろうかと思うんですけれども、そこでも実はメーカー自体は知らないうちに入れられておるわけで、特にメーカーが出荷をいたしました後の段階で入れられることが非常に多いわけでございますので、したがって、この手の縛り方としてはやはりそういう毒物を混入する行為そのものを、どの段階であろうと毒物混入をする行為そのものを縛る縛り方でないと効果はないのではなかろうかというふうに思うわけでございます。お答えになったかどうかわかりませんけれども、そういうふうな感じでおります。

田村憲一全日本食品労働組合連会中央執行委員長

○参考人(田村憲一君) 稲村先生からの御質問にお答えします。  まず第一に、政府に対する要望事項としては、食品労連及び中立労連といたしまして、森永事件が発生した直後にこの問題について関係省庁の一元的組織による対応をとっていただきたいということと、雇用対策を含めまして業界、企業への救済措置の早期実施をお願いいたしました。また、同年の暮れには毒物等の保存、使用についての管理を強化するための法的、行政的措置を強めていただきたいという要請もしてきたところであります。  次に、この取り組みにつきましては、食品労連だけでなくて上部団体である中立労連を通して、この法案の成立に向けて政党への要請等働きかけをしていくということを機関で決定しておりますし、また、全民労協の食料政策の中において流通段階の安全性確保の項にこの点を生かしているわけであります。森永支援のために、昭和五十九年の秋から六十年の初めにかけまして、千円パックの販売につきまして、労働四団体と全民労協、さらには地域の労働組合組織など全面的な御支援をいただいてきた経過にもあるわけであります。  三点目には、この法案の抑止効果に大いに期待をしているところであります。最近の傾向として、要求や目的のはっきりしない嫌がらせなども多発をしているわけであります。安易に食品に毒物を混入させる、そのことが大きな罪の意識になっていないのではないかなというような感じもするわけでありまして、そういう嫌がらせ、脅迫を受けた方は、そのことだけで大変な混乱状態に近い事態に迫い込まれまして、そこに働いている労働者が大変苦労しているという実態があるわけですが、この法案の成立によって軽減されるというように期待をし、また信じております。  以上です。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 稲村先生の第一の質問は、改正刑法草案との関係だと思うのですが、この改正刑法草案は昭和四十九年に公表されまして、今から十五年近く前というような古いものなんですね。それで、当時の起草者の考えていたのは、例えば当時事件がありました青酸カリを酒瓶に、振る舞い酒ですか、に入れて飲ますとかいうような事件がありましたので、それを念頭に置いていたんじゃないかと思うんです。この法案が対象としている事案というのは、グリコ、森永型の何といいますか、国民生活の流通過程が変わってきて、ほとんどの国民がスーパーから買い物をするというような現状のもとに発生した新しい犯罪である。その犯罪に対して対処するという目的がありますので、その改正刑法草案とはやはりかなり違っている面があると思います。したがいまして、改正刑法草案では飲食物毒物混入罪の刑は三年以下の懲役と軽いわけですが、現在の状況からいって、この法案との不均衡はやはり質的な違いがあるのじゃないかと、このように思います。  それから、先生が第二に問題にしました行政官庁の守秘義務との関係ですが、これは第七条三項に、主務大臣に各関係機関は協力する、このような規定をわざわざ置いた趣旨は、やはりその辺の考慮があるんではないかと思っております。ですから、余り問題はないんじゃないかというふうに考えますけれども。  終わります。

柳原武男弁護士

○参考人(柳原武男君) 柳原でございます。  ただいまの稲村先生からのお尋ねでございますが、私の刑罰万能主義に反対と申しますことにつきまして御質問があったように思いますが、この新しい立法によってグリコ、森永型の犯罪が防止できるかどうかということは、私どもは、そのこと自体は新しい犯罪ですから、これに対して新しい立法をもって臨むということは、これは必要なことだと考えております。しかしながら、刑が非常に重い、重い刑の犯罪で何かやればそういう犯罪が防止できるのじゃないかという考え方に反対ということでございます。何でも厳罰にさえ処すれば犯罪が防止できるというようなものじゃないということは、殺人罪について、これは死刑まであるような規定になっておりますが、やはり殺人は防止できないということでございまして、重く罰すれば必ずその犯罪が防止できるものじゃないということを申し上げたいわけです。  それから次に、特に何を言いたいのか、特に何が反対だと言われれば、これは構成要件が不明確になっておるということですね。これがもう第一。次には、その刑罰が余りにも不均衡であるということでございます。刑罰が不均衡だというのは、さっき業務上横領のことを申し上げましたが、ある犯罪型の中で一部の特に重い罪につきまして重い罰を現定するということはよく行われるのでございますが、その例などから見ても、この三倍以上というのは重過ぎないかと、こういうふうに申し上げるわけです。  それからひとつ、私の申し上げました通報義務を罰則で協力させる、罰則で強要するという点につきましてでございますが、この点につきまして、裏取引をこれによって防止するんだというふうにお考えだと少しこれはやぶにらみではないか、余りそれには関係がないんじゃないか。この第四条の規定は、これは毒物の混入があったときのことなんですね。裏取引をするのは、これはそういうことのない段階なんですね。おどしの段階で裏取引をやるというのが主でございまして、既に毒物を混入した段階で裏取引なんというのは余り考えられないことですね。ですから、そういうたびにこの通報義務を刑罰でもって強要するんだとおっしゃるんだとそれはちょっとおかしいのじゃないかというふうに申し上げたいのでございます。  以上でございます。

鈴木貞敏自由民主党

○鈴木貞敏君 いろいろそれぞれの立場で参考人の貴重な御意見をお伺いしまして大変ありがとうございました。  私、いろいろお伺いしまして、個人的な見解を含めましてこの立法、法案につきましての私の考えの一端を申し上げ、そしてまた御意見も聞きたいわけでございますけれども、日本は非常に治安がいいと、こういうふうに一般に言われるわけでございますが、今、国際的に見ましても、非常にやはり治安水準が高いことは事実でございます。しかし、世界各国、大変やはりいろいろ悩みを抱えておるわけでございまして、その例に漏れず、日本におきましても犯罪がどんどん毎年ふえておる。百六十万件というふうな認知件数になっておるわけでございます。幸いに検挙率は余りダウンしないで六〇%台を保っているようでございますけれども、とにかく年々ふえておる。  しかも、その中で、この立法に関連するような極めて社会的に関心の高い凶悪な事犯、あるいは現在の社会経済構造の変化に伴っての新しい型の犯罪が出ておるというのが一つの大きな特徴であろうと思います。そのほか、交通死者がどんどんふえていくとか、あるいは麻薬、覚せい剤事犯がふえていくとか、あるいはテロ、ゲリラの風潮が国際的にもふえておるとか、いろいろあるわけでございますけれども、何といいましても、犯罪がふえていくようなこういう傾向にある。その中で、いろいろ特異な犯罪がやはりこれからもふえていくというふうなことであろうと思います。  そういう中で、いろいろ反対の中でも、泥縄式じゃなくて、ひとつ慎重なる検討の上でやるべきだというふうな御意見もあったわけでございますけれども、つい最近の市場でもありましたが、投 資ジャーナル事件、ああいった株式市場を舞台にしたいわゆる大型詐欺というふうなことを契機にいたしまして、投資顧問業法というようなものが即刻制定をされるというふうな経緯もございました。とにかくこういった変化の激しい時代において、やはりこういったもろもろの事態にいろいろ早急に対処していかなくちゃならぬというのは、これからもいろいろ出てくるんではなかろうか、こういうふうに私は想像するわけでございますけれども、その中で毒物混入事犯、これはまことにもって非常に影響の大きい大変な事件であると思うわけでございます。  先ほど田村参考人がおっしゃいましたが、中には死者が出ないからいいんじゃないかとかというふうなことで甘い考えがあるというふうな仰せもございましたが、私も全くその点同感でございまして、一部愉快犯というようなことで、放火事件とか何かに関連しましても、何か非常に戯画化した観点から非常に悪質な犯罪を第三者的に見るというふうな、そういうふうなどうも空気もあるやに感ずるわけでございますけれども、このグリコ・森永事件等に象徴される、警察庁指定第百十四号事件に象徴される事件、これもまさに極めて悪質であるわけでございまして、池田参考人もるる申し述べましたように、全国民を人質にしておる、それとまた流通秩序というものを決定的に破壊する。  そして、先ほど来それぞれの関係者の本当に大きな苦労をそこにもたらしておるというふうなことでございまして、食品産業が七百何十万でございますか、全部入れると、そのくらいの人口になっておるというふうに聞いておりますし、先ほど、るるいろいろなシェアの問題、そういったいろいろな面で触れましたが、全く国民生活と密着した格好で、我々の身近に、生活に密着しているわけでございます。そういう中で、年齢を問わず生命に危険を及ぼすような毒物混入というふうなことによって、ひとつ不安を醸成するということ、これはまさに大変な凶悪なる犯罪であるという認識をまず我々は持たなくちゃならないんじゃないか、こう思うわけでございます。  そういう中で、水と治安はただじゃないわけでございまして、やはりこういったいろいろの特異な犯罪には全国民的にスクラムを組んで対処しなくちゃならぬということでございまして、この法案におきましても、国の立場、地方公共団体の立場あるいは製造業者の立場あるいは行政機関それぞれが力を合わせてひとつこういった凶悪犯に対処していこう、そして被害をなくしていこうというふうな非常に行政的な面を含めましていろいろ細かい配慮をされておる立法である、こういうふうに私も思っておるわけでございますけれども、そういう面で、先ほど来お話を伺っておって感ずるわけでございますが、戦後の日本の一つのこういった犯罪に対する考え方として、社会公共の維持とか社会秩序の維持というふうなものよりも、もとより基本的人権というのは、被疑者の人権、これはもとより大切、しかし被害者の人権というのもこれまた大切。基本的人権というのはすべて被害者も被疑者も含めたすべての人の基本的人権を大切にしなくてはならない、こういう立場であろうと思いますが、それとあわせてやはり社会秩序の維持というふうな観点から、これから国民的な関心を持ってやっていかなくちゃならぬと、こういうふうにも思うわけでございますけれども、この立法ができましても恐らくこういう犯罪はなくならぬだろうと私は思います。しかし、相当の抑止力があるだろうと思います。  そしてまた柳原参考人もおっしゃいましたように、検挙にまさる防犯なし、これはまさにそのとおりでございまして、やはりグリコ・森永事件も一日も早く検挙する、これがやはり国民の期待にこたえる警察の姿勢であろうと思いますけれども、残念ながらまだ検挙されておらない。しかもまだ現在のようなこういったいろいろ捜査の難しい状況、都市化は犯罪を誘発するというふうなこと、あるいはいろいろ証拠物というのが大量生産であり大量消費であるというふうなことで、いろいろな困難な状況がどんどん加重されておるわけでございまして、これからも決して一〇〇%の検挙というものはあり得ないだろうと、こういうふうにも想定されるわけでございます。  そういうことを考えますと、やはりこの機会にむしろ遅きに失したぐらいで、もっと早くこういうあれをしてもよかったんではないか、こういうふうにも思うわけでございますが、そういう点につきまして、将来のこの種事犯の発生の見通しというふうなものにつきまして、それぞれの参考人の方の御意見を聞かせていただければありがたいと思います。

池田正範財団法人食品産業センター理事長

○参考人(池田正範君) 今、鈴木先生からお話がございましたこの法律ができてもこの種の犯罪というものがなかなか根絶するということは難しいのではないかと、これは正直言って私もそう思います。問題は、起きてしまった後の検挙の問題が次を防止するという機能もさることながら、やはりこれから犯罪に入ろうとする前に、それを何らかの形で入らずに食いとめることができれば社会の秩序維持には一番大きな貢献ができるわけでございますので、私も先ほど来るる申し上げておりますように、一〇〇%にこれを食いとめることができることではないにしても、特に社会の病理現象というふうな形で起きてきたいたずら犯罪なるものを一般的に防止するというふうなことから、この法律の持つ抑止力というものをやはり期待していきたいと思うわけでございます。  それから問題は、あとは先ほど申し上げましたが、食品業界で年間新しい製品として出てまいっております数字は三千種類から多いときは五千種類ございます。従来はこれらのたくさんの新品種というものが主に夏から秋にかけまして集中的に出てくるわけでございます。その中で一番品種の多いのはお菓子類でございまして、チョコレートを中心とするようなお菓子類の製品、これをいろいろな形で加工した商品が出てまいってくるわけでございますが、ところが最近はだんだんに季節性がなくなってまいりまして、新しい商品が春先から暮れまで間断なく出される。それからもう一つは、本来の菓子メーカーあるいは食品メーカーでない新しいメーカーの新規参入が非常に多くなってきているわけでございます。特に最近、円高で輸出依存型の産業というものが製造業の中では思わしくない分野もたくさん出てきているわけでございます。したがって、これらの業態の方々がいわば手っ取り早く食品製造業に形を変えていく、あるいはやっている仕事の片手間で食品の製造もしていく、こういうふうな形が非常に多く出てきているわけでございます。  そういうことを考えますというと、やはり食品製造業者としての国民食生活あるいは国民の生命に対する安全度の保持というものは、従来の業者だけでなくて、新しく出入りし、入ってくる業者に対しても、常に製造を開始しようとする日から同じ気持ちのレベルに立って心を引き締めてやってもらわなければならないというふうに私どもも考えるわけでございますが、これらの問題が、いわゆるいたずらの風潮というふうなものを片一方に持ちながら常に新規参入、ニューエントリーを迎えるという業界の立場から考えますと、一にも二にもとにかくこの抑止力を法律に期待して、この種の形での案件が繰り返されないように、私どもとしては深く希望をしているわけでございます。

田村憲一全日本食品労働組合連会中央執行委員長

○参考人(田村憲一君) 私どもといたしましては、この法案の成立、施行によってこの種犯罪がゼロになるだろうということはないというように思いますけれども、このことによって大きな抑止効果に期待をしているわけであります。この法案が成立した場合には、当然広く国民に周知徹底されるような努力がされるだろうというように思います。そのことによって食品に毒物を混入させる、あるいは脅迫するというようなことが大きな社会悪であるということを通じて犯罪の予防につながっていくのではないかというように思うわけであります。グリコ・森永事件という大きな教訓をもとにこの法案が検討されたわけであり、ぜひ それを具体的に法制化していただくということがよりよい社会の建設のために必要ではないかというように思っております。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 私も、いたずら事犯を含めて、こういう事犯というのはなかなかなくならないと、そのように思います。しかし、この法律ができれば新聞等も報道すると思いますし、かなりの抑止力になることは間違いないと思っております。

柳原武男弁護士

○参考人(柳原武男君) 柳原でございます。  抑止力になるかどうかの点につきましては、やはりこれはこういう規定が刑法上抜けておりますので何らかの措置は必要だろうということは考えております。で、この規定を置けば、しからばこの犯罪が防止できるかということになりますと、単に重い刑罰でおどしただけではそれほどの効果があるものじゃないということを申し上げたいだけで、全然立法がむだであるというふうに申し上げているわけではございません。

鈴木貞敏自由民主党

○鈴木貞敏君 私も、こういった本当に変化の激しい時代でございますので、社会秩序の維持という観点から絶えず法律制度というものを見直しというか、見直しながら必要とあればこれを改善するということについては、それぞれの分野で勇気を持ってやっていかなくちゃならぬ時代ではないか、こういうことを感じておるわけでございます。その一つの一端が今回の立法でもあろう、こういうふうに理解しておる者の一人でございます。  池田参考人にお伺いしたいんですが、いろいろ先ほど包装の効率、何といいますか、限界の問題、包装の問題もちょっとお話ございましたが、この事件を契機にしていろいろ業界で工夫されて、いわば毒物を混入されないようないろいろの手だてをやられたような当時報道その他であったわけでございますが、相当研究開発、そういったあれでいろいろやられたようですが、その辺もし御紹介、お聞かせいただける点があればひとつお願いしたいと思います。

池田正範財団法人食品産業センター理事長

○参考人(池田正範君) 安全包装につきましては、既にもうコストの余りかからない形で比較的効果があると思われるものにつきましては各メーカーはそれぞれかなり実施をいたしておるわけでございます。あるいは先生方もお気づきになった向きもあろうかとも思うわけでございますが、例えば一番簡単なのは、包装の箱をのりづけして簡単にはがれないようにする、はがれると必ずはがれた跡が後へ残るといったような形を発想の原点にいたしましていろいろのパックが出回っておるわけでございます。  幾つかお話を申し上げますと、一つはフィルムを上にかぶせまして、これをオーバーラップすることによって、フィルムが破けますというと二度と同じフィルムが上からかぶったような形にはならないような、そういうフィルムパックによるオーバーラップシールというやり方も一つございます。また、破らないと中身が出せないという形でのブリスター・ストリップ・パックというような考え方もございます。それから、商品が台紙とプラスチックの容器で固定しちゃっているものがございます。したがって、容器を台紙からはがしませんというと取り出せない、そういうふうなことで、一度いたずらをいたしますというと、何とかそこで後復元するのに手間がかかるというような形でのバッフルパックというような形のものもございます。  それから、俗に言うシュリンクというか、しわの寄ります紙をシールの上に張りまして、ちょっと例えば針でつついたようなことをいたしましても、そこがばっと縮んで切れてしまうというようなシュリンク・シール・バンドというようなものをバンドとして製品の上から張られているものもございます。それからまた、プラスチックとかホイル、薄い銀紙ですね、ホイルとかそういうふうなものでシールをする。で、破らないと開封ができないというふうな袋詰めにしているものもございます。それからもう少し厳重なものでは、例えばプラスチックとか、あるいは金属製のものを上からブレーカブルキャップとしてかぶしてしまっているものもございます。これらはかなり金がかかるわけでございまして、売る中身が百円の物に百円の包装をいたしましては売れないものですから、これはそれぞれの品物の値段によって使い分けているわけでございます。  それから、例えば歯磨きのような形のものにつきましては、ちょうどチューブの先に穴をあけて、そして開封しないと開封できないようになっているような工夫をしたものもあるようでございます。その他液状のようなものにつきましては、エアゾールを使ったコンテナを使っているようなものとか、種類は数十種類いろいろと考えられておるわけでございますけれども、しかしいずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、これならばいかなる形で犯人が対応しようとしても絶対に復元できないというようなものは実はないわけでございまして、したがって手を加えますとコストは急激に上がってまいりますけれども、それによる安全度の向上というのはだんだん見合わなくなってくるということで、大体の全体としての水準としては飲食品価格のほぼ一割程度をめどにしてかけるけれども、その程度の段階で完全なものはとても技術的にできないというのが現状でございます。  以上でございます。

鈴木貞敏自由民主党

○鈴木貞敏君 田村参考人にお伺いしたいわけでございますが、先ほどの御意見の中で、届け出義務、これは会社として当然の責任だと、こういう趣旨の御意見があったわけでございますが、組合の方としてやはりこういった表に出るということによってのダメージということを考えた場合、いろいろのやっぱり率直に言って御意見があるんじゃないかと思います。それはケースケースにもよろうと思いますが、そういう中で、今先ほどの御意見のような結論で、非常に私は正論としてそういう意見が出てこられたということですが、実際やはり論議の中ではいろいろの御意見も社員の中、組合員の方にもあろうかと思いますけれども、その辺何かお伺いできる点があればひとつお知らせ願いたいと思います。

田村憲一全日本食品労働組合連会中央執行委員長

○参考人(田村憲一君) グリコ・森永事件以降、多くの食品企業でこういう事件に直面しているわけでありますが、やはりこの種の問題につきましては、最初からすべて社員に連絡されるというよりも、やはり最初はトップシークレットということで対策が講じられるのではないかなというように思っています。で、事件が明るみに出た場合に、余りにもグリコ・森永事件の深刻な事態というものがどうしても食品関係に働いている者の頭の中にあるわけでありまして、そういう問題があるわけですから、こういう届け出義務につきましても確かにいろいろな考え方、見方があろうかと思いますけれども、それをしていたのではこういう事件の再発は防止できない。やはりこういう法律を制定していただくということでは、製造業者自体もこの点に対する強い決意がなければならないのではないか、そのことによって初めて社会に受け入れられ、こういったことの防止に向けた国民的な合意というものが得られるのではないかというように思うわけでありまして、そういう面からも、これはやはり届け出義務がないと、単に刑罰を強化するというような法律にもなりかねないのではないかなというように思ったりするわけでございます。

鈴木貞敏自由民主党

○鈴木貞敏君 どうもありがとうございました。結構でございます。

刈田貞子公明党・国民会議

○刈田貞子君 参考人の皆様、きょうは大変御苦労さまでございます。最初に質問だけを順次お伺いしてしまいますので、後ほどお一人お一人お答えいただきたいと思います。  まず池田参考人にお伺いをいたしますが、私も先ほど包装等の弱点あるいはセルフサービス販売方法等の弱点というようなことを言われましたので、包装の分についてもお伺いをいたしたいと思いましたけれども、ただいまお答えがありましたのでそれは割愛いたしまして、販売方法の方のセルフサービスの弱点というようなことについて、 何らかの検討がなされたかどうか、まず一点お伺いします。  それから二番目は、先ほど来この法案が成立することによってかなりの抑止力を期待できるということを言われておるわけでございますが、私はこの法案そのものを見せていただいて思うのに、まず目的から「流通食品への毒物の混入等を防止するための措置等を定める」ものとしというところから始まるんですが、その「措置」なるものを一生懸命この中で探そうと思うんだけれども、さした措置もないわけですね。これが全体を通じての話だろうと思いますけれども、今後かなりの抑止力になるということを言われるからには、その一番眼目になるもの、基本になるものとするものがあるんだろうと思うんですが、一体この法案のどこが最大の抑止力になるのか例えれば、何条のどれがそうなのかということについてお伺いし、教えていただければ大変ありがたいと思います。  それから、田村参考人にお伺いをいたしますが、これもまた今の鈴木委員のお話と同じことなんでございますけれども、先ほど意見開陳のときに、届け出義務は当然の社会的義務であるということをおっしゃられて、大変貴重な発言でございます。しかし、この当然の社会的義務であると思われているはずのものに対して、それをなさない者については罰則があるわけですね。そういう問題について、私は先ほど来、この後もお伺いするわけですが、柳原参考人のお話等も伺いながら、いわゆる刑罰主義というのがいいのかどうなのかということで、この届け出義務に対する罰則というものにいささか疑問を持っておるものでございまして、これは後ほど柳原参考人の方にも伺うのですが、もしそれは当然の義務なんだというふうにお思いになるのならば、この条項は外しても大丈夫かどうかということ。これを一つ伺います。  それから次は、先ほどこれができ上がることによって、大変に一つの自分たちが勤労していく上でのよりどころになるという御発言をなさいました。私はこれはかなりの中身の法案だと思っているんです。それが働く方にとってはよりどころだというものであるのならば、よりどころというのなら、もっとほかのところによりどころの求め方がないのだろうか。ガードマンをいっぱいつけるとか警察の人にもっと見回ってもらうとか、よりどころという考え方なのならば、もっと違う考え方があるのじゃないかなと私は思うものですから、そのお考えの一端を。  しかし、過去の事件等を通じて、勤労者の皆様、そして会社の皆さん、そしてその御家族の皆様が大変に御苦労をなさってこられた経過はよく存じております。それで、その経験等も通して、そうした不慮の事件に遭ったとき、皆様方がいろいろ手だてもいただいた、しかし、この点のことがまだ不備であったという、救済の方法についての御要望があればあわせて伺わせていただきます。  それから、藤崎参考人にお伺いをいたしますが、私はこの法案を見て、率直な感想として思いますことは、製造者の皆様、そしてまた今言われた勤労者の方、そしてその御家族の方々の被害救済ということにつながる法案であることはよくわかりますけれども、抑止力ということで効果があるのであろうかというふうに思うわけですけれども、この被害に遭った人、不幸にもその毒物に触れて被害を受けた人、その被害者のことは何にも触れてないわけですけれども、私法律のことはよくわかりませんので、その手の方々に対してはどういう救済方法があるのか。つまり、ドリンク剤にパラコート等が混入されて、そしてそれがもとで亡くなられた方の事件なんかもたくさん続発しておったわけでございますから、こういう種類の人たちへの救済という問題はどのように考えればよろしいのか、この問題を一つお伺いいたします。  それから柳原参考人には、先ほど構成要件が明確でないということをおっしゃられて、特に流通食品というような問題に触れられて、その辺のところが非常に不明確である、明確性を欠くというようなことをおっしゃっておられましたが、私も大変同感なんです。それで、もしこの法案をまともに生かすとすれば、それはどんな形の補整の仕方をすればよろしいのかというふうに私は考えておりますのでお教えいただければと思います。それから、主務官庁が非常に広がっておるわけでございますけれども、その辺のところでこの法案を使って事件処理等をするときに不都合が起きてこないのかどうなのかという問題も含めてお伺いをいたします。  以上でございます。

池田正範財団法人食品産業センター理事長

○参考人(池田正範君) 包装とともにセルフサービスの弱点ということを最初の説明の際に申し上げたわけでございますが、これは申し上げるまでもなく、セルフサービスというのは、売る現場に職員が立ち会っていない、売り子が立ち会っていない販売形態でございます。したがいまして、当然そこで置かれた商品に何らかの手を加えられましても、それを直ちに発見するということが非常に難しい条件下にあるわけでございますが、ああいうふうな問題が起きましてから、ほかのいろいろな危害の問題も含めまして、例えば監視カメラを中に据えるとか、あるいは監視員を適当な間隔で回らせるとかいうふうなことをやっている店もございます。  しかし、御案内のように最近は大型のスーパー以外にもコンビニエンスストアといったような形での小型の店もたくさん出ておりまして、そこいらはほとんど一人の人が店を常時管理しているというような場合もあるようでございますから、したがって、これらの店舗で常時各商品にいたずらが加えられるかどうかを見続けるということは、物理的にはちょっと不可能ではなかろうか。したがって、むしろそれらの穴の多い販売の現在の方式に対して、犯人側は非常に犯罪の場を拡張しやすいというのが現状であろうと思うわけでございます。  森永の問題が起こりました後は、担当の官庁等から、品質管理の徹底とか、あるいはなるべく包装を厳重にするとか、ちょっと簡単にはいたずらができにくいような体制をしくことについて、いろいろ行政指導もあったようでございますけれども、何しろメーカーサイドといたしますと、それが卸段階を何段階か経まして小売段階に参りますので、どの段階についてもメーカーから直接の手を離れております。したがいまして、セルフサービスという形で最後売られるまでの過程におきましても、なお必ずしも完全に常に監視をし続けるという形にはなりませんし、またストックが最近減ってはきておりますが、ストックも例えば自動倉庫のような形で、だんだんに人手にかわる機械ということになりますので、結局はコストとの関連もございますけれども、人命に関することなので、問題が起きてからでは間に合いませんので、センサー等を使ったいろいろな方式というものを今後技術的には発達させていくというふうなことも一つの技術的な方法ではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。  それから、この法律について、毒物混入を防止するためのいろいろな措置を定めるのだということであるけれども、罰則を高めて処罰を重くするということ以外に何の措置が主体としてはあるのかと。よく御承知の先生なので私もそう言われますというと非常に何と申しますか、お答えしにくい面もございますけれども、この法律をよくごらんいただきますというと、確かに毒物混入を未然に防止するための抑止措置としての罰則の強化ということもあるわけでございますが、第三条に国の施策とか、あるいはそれに同じ水準で地方公共団体も施策を講ずるとかいうふうなことで防止措置を総合的に講ずるというふうなことが書いてあるわけでございます。無論これは国なり地方公共団体がなさることでありますので、この中身が何であるかを業界として今から見通すことは難しいわけでございますけれども、しかし、何と申しますか、今申し上げましたようなこれから考え得るいろいろな手だてというものを国も行政機関も業界も全部合わせまして、この種のものを追い出すために総合的に連携を取り合ってやるという、そ ういう雰囲気づくりというものがこの法案から出てくれば、これは一つの進歩ではなかろうかというふうに私も考えておるようなわけでございます。ただ、具体的にそれではどんな措置があるのだというふうに詰められますと、今の段階ではさっき申し上げましたようなことも業界の中では一部考えつつあるというふうなことを申し上げたいわけでございます。  それから、あとは今の、ちょっとおかしいことがあったと。これは「毒物の混入等があったことを知ったときは、」と書いてございますけれども、当然業界といたしましては毒物の混入があったかもしれないという疑いを持ちましたときには、直ちに捜査当局と連絡をとってそして未然にそのような形が出ないように防ぐというふうなことを一般的な指導要綱を背景に置いて、ぎりぎり処罰を受ける際の構成要件は知ったとき後というふうなことであろうと実は解釈をしておるわけでございまして、いろいろ御立法いただいた自民党御当局の立法過程での御議論等を外から聞いておりますというと、私どももそういうことではなかろうかということで実は了解をしているようなわけでございます。

田村憲一全日本食品労働組合連会中央執行委員長

○参考人(田村憲一君) 届け出義務につきましては、これは脅迫された企業に裏取引をさせないということ、と同時に犯人にもそういう裏取引が法律でできないんだということによって両面から犯罪を防止する効果が出てくるのではないかなというように思っているわけであります。  それで、実際にそういう脅迫がされた場合に、それが単なるいたずらなのか、あるいは実際に毒物が混入されているのか、その辺の判断も難しい状況もあろうかと思いますけれども、万が一にでも毒物が混入されているかもしれない。そういう場合に製品の回収等をやはり企業としてはやっていかなければならないわけですね。それで、そういったことだとか、あるいは良識ある人は法律違反をしないように社会生活を送っているわけですが、法律としては罰則のない法律というのは単に努力義務ということにもなるのかなというような感じもするわけで、罰則を強化するということを私たちが言っているわけではありませんが、そういったことについてはやはり法律上明確にしておくということが一番大切なんで、その辺については先生方の御議論、御審議の中で判断していただいたらいいのではないかなというように思っているわけです。  それから二点目に、この法律が成立した場合に、私たちとしては流通食品に毒物を入れるということが法律違反なんだと、そのことによって抑止効果を期待しているわけでありますけれども、日常的にいつ脅迫されるかわからない、いつ毒物を混入されるかわからない、そういう不安定な状態で仕事をするということは耐えられないわけでありまして、少なくともこういう法律が成立いたしますと、そういうことはゼロになるかどうかわかりませんけれども、少なくなるのじゃないかな、そういうことで一つのよりどころにしたいという期待を込めての気持ちを申し上げたわけでありまして、それ以上にもし事件が起きた場合等につきましては、警察への全面的な協力、そのほかの当然協力はしていかなければならないと思っております。  それから、森永事件のときに千円パックの販売につきましてお聞きしたところでは、およそ六十億円の製品が通常の流通ルート以外のチャンネルで販売されたわけで、そのことによって当該の企業、従業員は大きく勇気づけられたという経過にありますが、これは当時政府に対する要請事項をした際にも感じたわけですが、やはりこういう問題が起きたとしても私企業に対して政府としてはどこまで救済ができるのかどうかという現実の問題がやはりあるわけでありまして、たまたま森永千円パックの販売につきましては農水省を窓口にして全面的な御協力をいただきましたけれども、こういうことがしょっちゅうかつ長期間にわたって行われるとも思わないわけですね。そういう面からこういう事件がもし起きた場合には、やはり現行法あるいは制度を総動員して救済ができるようにお願いをしたいというように思います。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 御質問は被害者の救済の点だと思うんですが、現行法の建前としてはやはり民事訴訟あるいは何か民事的な方法によって被害の救済を図るというのが建前だと思うんです。ただし、損害賠償を受けられない場合については、現行法でも犯罪被害者等給付金支給法という法律がございまして、この条文を見ますと「犯罪行為により、不慮の死を遂げた者の遺族又は重障害を受けた者に対し、国が犯罪被害者等給付金を支給することについて規定する」ということになっておりまして、遺族給付金と障害給付金、これは両方とも一時金ですが、そういうものは出ることになっております。ですから、一応これでカバーするということになると思いますけれども。  以上です。

柳原武男弁護士

○参考人(柳原武男君) 柳原でございます。  私に対しましては構成要件の問題で明確にするにはどうしたらいいかということで、私も余り立法の方が専門でございませんので私の感想だけ申し上げますと、法案では「「流通食品」とは、公衆に販売される飲食物をいう。」というふうに規定されておりますが、この流通食品といいますと、何だかスーパーだ何だで売られるような商品というイメージでございますが、今度はその定義規定を見ますと「公衆に販売される飲食物」ということになりますと、飲食店で供されるような飲食物、その他販売機で販売される飲食物、こういういろいろなものがこの定義規定によって含まれるように規定されておるわけですね。ですから、流通食品という最初のイメージと少し違ったものに実際はなっておるというようなことで、しかもそれが極めて広範な範囲の飲食物をとらえておるということで、これが不明確な一つの原因なんですね。もう少し何か流通食品らしいものに限定していただくべきじゃないかということでございます。  それから、毒物につきましても、この第三号を削除されるとかいうように、これこれに掲げるものというようにもうはっきりなさったらどうか、それだから重いんだ、こういうふうにされればそれは重い原因もわかるわけですね。ところが、その他これに「類似するもの」というように広げておいて、それでもって重い刑罰で処するんだ、こういうのはちょっとおかしいのじゃないかということでございます。  それから、次に主務官庁のことでございますが、これ考えられますのはまず厚生省だとか、それから農水省、それから通産省というように幾つも考えられるわけですね。主務官庁がたくさんあるということがいいことかどうかということになりますと、それはいい場合もあるかもしれませんが、こういう犯罪的なことになりますと責任のなすり合わせというようなことになりまして、極めて責任関係が不明確になるのじゃないか。ですから、せっかくこういう法律をおつくりになるのだったら、何か主務官庁を一つにお絞りになるとか、あるいは一つか二つにせめて絞られたらどうかというふうに考えております。

刈田貞子公明党・国民会議

○刈田貞子君 ありがとうございました。

諫山博日本共産党

○諫山博君 グリコ・森永事件というのは絶対に許すことのできない卑劣な事件です。反社会的だし、再びこれが繰り返されるようなことがあってはなりません。しかし、この事件に便乗してこういう形の法律をつくろうとしていることに私は反対です。そこで、幾つかの問題について一問一答の形で御質問いたします、  まず、池田参考人に聞きたいんですけれども、スーパーなどでお金を取って売っている食品に毒物を混入する、これが処罰の対象であることは議論の余地がないと思います。ただ、無償で配っている食品に毒物を混入した場合はこの法律は適用されるとお考えですか、それとも適用されませんか、これが第一。  もう一つは、第五条に「捜査機関への協力」義務が規定されています。「製造業者等は、」「犯罪の捜査が円滑に行われるよう、捜査機関に対し、必 要な協力をしなければならない。」、これは義務規定です。そうすると、警察が被疑者もしくは参考人として警察まで来てくれ、あるいは事情を説明してくれ、こういう要求をした場合に警察に行く義務が生じてくるのか、説明をする義務が生じてくるのか、この点はどうお考えでしょうか。

池田正範財団法人食品産業センター理事長

○参考人(池田正範君) 流通食品の定義というのが今さっきから問題になっているわけですけれども、一般的に解釈としては「公衆に販売される飲食物」ということから、小売の店頭に陳列してあったり、あるいは不特定多数の人たちに売られるという状態に置かれている商品ということでありますから、当然無償ということが前提にはならずに売られるという目的で置かれている商品ということに通常はなるとは思いますが、しかし例えば付録といいますか、あるいはお客を誘引するための条件と申しますか、そういうふうな形で同時に同じ店で、あるいは同じ売り場の棚にあったものがそのままそういう形で専用されるというような場合はやはりこの範囲の中に入ってくるのではなかろうか。ただ、全然売り場とは別の場所、例えば更衣室のロッカーだとか、あるいは単なる路上で配るとかいったような形のものは、この流通食品の中には入ってこないのではなかろうかというふうに私自身は考えておるわけでございますが、先生はどうお考えになりますか。  それから、二番目の被疑者、参考人の件でございますけれども、被疑者の問題ということになれば、これはこの法律ということよりは本来の刑法上の問題で、出頭して説明をするという義務は当然生じてくると思いますが、一般的に参考人としての協力義務というふうなものもこの法律がなくてもある程度対応はしなければいけないというふうに私どもは思っております。ただ問題は、この種の行為自体を処罰するという法律ができたわけでありますので、捜査機関に対する協力義務というものは一段とやはり通常の義務よりも強められたというふうに私どもは考えております。

諫山博日本共産党

○諫山博君 今の二番目の問題ですけれども、参考人として警察に呼ばれた場合には供述をする義務が生じてくるという御理解でしょうか。

池田正範財団法人食品産業センター理事長

○参考人(池田正範君) 必要な事実関係について知っていることについての説明というものは、例えば黙秘をするとか、その他の形で非協力の態度をとるということはよろしくないので、当然協力義務の中にはそういう説明義務も入ってくるというふうに考えております。

諫山博日本共産党

○諫山博君 今の点について専門家である藤崎参考人にお聞きしますけれども、この法案の第二条には「「流通食品」とは、公衆に販売される飲食物をいう。」ということになっています。これは有償の譲渡の場合だけを含む趣旨なのか、それとも無償譲渡も含む趣旨なのか、どちらに御理解ですか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) この条文では「販売」という法律用語とは違った用語を使っておりますので、いささか売買とは異なり少し広いのじゃないか、かように考えます。

諫山博日本共産党

○諫山博君 結局、有償譲渡、無償譲渡両方を含むのか、有償譲渡だけしか含まないのか。これがさっきから問題になっている構成要件の一つだと思いますけれども、いかが御理解ですか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) やはり売買という法律行為が基本になって、それに付随して商人の売買行為にはどういうものが含まれるかということだと思うわけですね。ですから、有償無償という二つに分けるのじゃなくて、商人の売買についてはどういうものが含まれているのかという、そういう吟味がされなくちゃいけないと思います。

諫山博日本共産党

○諫山博君 販売というのは極めて法律的な用語です。これは食品衛生法の中に出てきます。薬事法にも出てきます。毒物及び劇物取締法の中にも出てきます。そして、もし本法案の販売というのが無償譲渡を含まないとすればそのことは法律に明記しないと誤りを生ずると思います。例えば食品衛生法第三条の中では販売という定義をこう書いております。「不特定又は多数の者に対する販売以外の授与を含む。」、つまり食品衛生法の販売というのは「不特定又は多数の者に対する販売以外の授与」、この「授与」というのは無償譲渡なわけです。そうすると、もし有償譲渡だけをこれで取り締まろうとするのであれば、この条文は少なくとも食品衛生法のように書き改めなければならないのではないかという当然の疑問が出てきますけれども、専門家としていかがでしょう。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 私は先ほどの商人の売買に付随するものまでは含まれるというふうに考えて、それが私のお答えです。

諫山博日本共産党

○諫山博君 これはいずれ後で議論になると思いますけれども、結局藤崎参考人の御意見は無償譲渡は含まないという趣旨ですか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 私が言いたいのは、そういうふうに有償、無償で割り切るのではなくて、商人ですから、やはり売買が金を要するにもうけるという営利行為が基本ですから、それには多少のサービスとか、先ほど池田参考人が申し上げておりましたけれども、景品だとかあるいはお客を誘引する何らかのサービス、よくスーパーなどで見かけますが、何か配っておりますけれども、そういうことも含まれるのじゃないかというふうに理解しております。

諫山博日本共産党

○諫山博君 この点は見解を異にしますけれども、次の問題に入ります。  法案の第二条二項三号、「物の毒性又は劇性に類似するもの」、これがさっきから構成要件の不明確な点として批判されておりますけれども、類似するものであるかどうかというのはだれがどういう基準で判断することになると思いますか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 最終的には司法機関だと思います。裁判所ですね。

諫山博日本共産党

○諫山博君 第一次的には警察官ということになりますか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) それは警察官である場合もあるし、ほかの行政機関である場合もあると思いますけれども。

諫山博日本共産党

○諫山博君 そうだとすれば極めて重大だと思うんです。日本の法律体系では毒物及び劇物取締法というのがあります。この法律では何が毒物であり何が劇物であるかということを抽象的には書いていないんです。全部品物を列挙しております、これは御存じだと思いますけれども。そして、列挙されてないものについては「前各号に掲げる物を含有する製剤その他の毒性を有する物であって政令で定めるもの」という規定になっております。劇物についても同様です。つまり、ある品物が劇物であるのか毒物であるのかというのは判定が非常に難しいわけです。警察官にはそんな判定はできません。一般国民にもできません。そこで今の法律は、これとこれとこれは毒物ですよ、これとこれとこれは劇物ですよということを制限的に列挙しているわけです。  そうすると、そういう方式はとらずに、政令でも決めずに、第一線の捜査官なり行政官が毒物、劇物の判定を下すというふうに御理解でしょうか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 最終的には裁判所の判断がありますから、そこで公正というか正確な解釈は担保されるというふうに考えます。

諫山博日本共産党

○諫山博君 毒物及び劇物取締法が抽象的な定義規定を設けずに、何が毒物であり何が劇物であるかということを列挙する趣旨をとっている、それとのバランスはどう考えられますか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 私も立法者じゃございませんので何ともその辺の技術的な問題はお答えできないのですが、こういう抽象的な規定の仕方はそれは多少問題は含むものであるということは私もわかります。

諫山博日本共産党

○諫山博君 これは論争になってはいけませんけれども、多少問題があるというんじゃなくて、今の法律は劇物、毒物について制限列挙主義をとっている。もしこの法案がその制限列挙主義を破ろうとするのであれば極めて重大だというふうに私は考えます。  そこで、警察に対する協力義務との関係です。今、池田参考人に御意見をお聞きしましたけれども、一般に国民は警察の呼び出しに応じない自由 がある、供述を拒否する権利がある。これとの関係はどうなるのだろうか。池田参考人の御説明では、供述拒否というようなことはなかなか難しくなるんじゃなかろうかという御意見のようでしたけれども、確かに法律を読むとそう受け取られる余地があります。「捜査機関に対し、必要な協力をしなければならない。」、しかし捜査機関の取り調べに対して協力をする義務はないというのは憲法上の原則です。刑事訴訟法でも同じようなことを書いております。この関係は、藤崎参考人どのように御理解ですか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 申しわけないんですが、先生御指摘の条文は法案何条でございましょうか。

諫山博日本共産党

○諫山博君 第五条。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) これは製造業者という団体に対して協力義務を規定したというふうに理解できますけれども、個々具体的な個人について供述義務を課しているわけではないわけでありますから、憲法上の原則は個人については依然として保障されるというふうに考えております。

諫山博日本共産党

○諫山博君 これも見解を異にします。警察が取り調べるのは団体を調べるわけじゃないですよ。団体の中のだれかの個人を調べるわけですよ。団体を主体にしているから憲法上の原則が生じないというのは私はいただけません。  次に、第十条の二項。例えばある人の従業員が雇い主に恨みを持って業務上食品に毒物を混入したとします。そうすると、毒物を混入した本人が処罰されるだけではなくて、恨みを持たれて毒物を混入された雇い主までも処罰されるというふうに理解されますけれども、そういう趣旨だと思われますか。そういう趣旨だとすればこれは極めて不可思議な法文ではなかろうかということになりますが、御意見聞きたいと思います。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) これは両罰規定を規定したものですが、一方ではその従業員も「使用人その他の従業者」というふうに両罰の一方の当事者になるというふうに規定しておりますので、処罰の対象になるというふうに理解いたします。

諫山博日本共産党

○諫山博君 私は両罰規定が必要な場合があることは否定しません。ただ本件に両罰規定をつくるというのはいかがだろうかと考えたわけです。今典型的な事例は、従業員が雇い主に恨みを持って食品に毒物を混入した、そうすると雇い主はまさに被害者なはずですけれども、それでも処罰されなければならないのかということです。

柳原武男弁護士

○参考人(柳原武男君) ちょっとよろしゅうございますか。今の両罰規定につきましてはちょっと誤解がおありじゃないかと思いますが、この今の両罰規定は虚偽の届け出をした場合とか届け出をしない場合についてだけしか規定しておられないわけですね。ですから、毒物を混入した場合というのは入らないわけです。

諫山博日本共産党

○諫山博君 了解いたしました。  それから第九条の関係ですけれども、流通食品に毒物を混入して人を死亡させた場合は、この法定刑よりかもっと重いことになると思いますけれども、いかがでしょうか。流通食品に毒物を混入して、その結果だれかが死亡したという場合はまさに殺人罪であって、死刑、無期もしくは三年以上の懲役ということになると思いますけれども。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) それは刑法上で一所為数法に該当するといういわゆる観念競合の関係に立ちますので、別にそれは両方、法上適用されるわけですね。

諫山博日本共産党

○諫山博君 それならわざわざ何でこんな規定を設けるのかという疑問が出てくるわけなんです。立法者の立場を貫けば、毒物を混入して人に傷害を与えた者は無期または一年以上の懲役というのであれば、賛成はできませんけれども筋は通ると思います。しかし、毒物を混入して人を死亡させた場合はまさにこれは殺人罪ですから、この場合に「死傷させた者」という言葉ではなくて、傷害を与えた者というふうにするのが正確な表現ではなかろうかと思ったんです。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 私の理解ではこれは要するに結果的加重犯ですから、こういう死傷、傷害致死と同じような条文の文字ですね。よって人を死傷させた場合と、これは刑法の一般的な用法だと思うんです。

諫山博日本共産党

○諫山博君 そうすると、第九条の趣旨は毒物を混入するときに殺意はなかった、しかし結果的に死亡した場合にのみ適用されるものだという解釈ですか。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) 結果的加重犯を規定しつつ、さらに故意犯も規定しているわけですね。殺意がある場合と、それから結果的加重によって死傷を起こした場合、ですからそういう趣旨だと思います。

諫山博日本共産党

○諫山博君 いろいろ法律的に問題があることはわかりましたけれども、私の質問は終わります。

三治重信民社党・国民連合

○三治重信君 参考人の方、御苦労さまでございますが、ひとつ池田参考人に、こういう犯罪が食品に特殊な現象として出てきたんで、業界として大変対応策をとられることが必要であると思うんですが、そこでちょっと失礼な質問なんですが、この財団法人食品産業センターというのは業界の団体とは違うんじゃないかと思うんですが、これはそういう業界の団体としてならその業界としての対応策について非常に要望したいことがあるんだが、そうでなくて何か特別な財団法人の食品センターというのは中身が、実際はどういうことでこういうふうな食品センターというものができたのか、それをちょっと御説明願いたいと思うんです。  それから、この法律もさることながら、結局いろいろ森永・グリコ事件のような大問題のやつは世間が騒ぐけれども、実際は嫌がらせというのか、ゆすり、たかりの部面が、この法律の対象にならぬようなものが随分あるんじゃないかと思うんだけれども、そういうようなものに対する対応策というものが何か行われておられるのかどうかということをひとつお願いを申し上げたいと思います。  それから田村参考人は、森永さんでは大変苦労されたわけなんですけれども、何としても自分たちの組合員の雇用の安定、それから賃金その他労働条件の維持というものについて大変な苦労をされたわけなんですけれども、やはりそういうことについて何と申しますか、今までとってこられた苦労というものが大体正しいものか、もう少し何かほかの、こういうふうな協力を得たならばこんな苦労せぬでも済むんじゃないかというふうな、何というんですか、自分たちだけ一生懸命、従業員が勤務外にもいろいろ販売やったりなんかしてえらい苦労するんだけれども、こんな苦労はごめんなんで、もう少し何かほかの、まあこの法律も一つの対応策なんでしょうけれども、何かもう少しほかに組合としてこういうような線があってしかるべきじゃないかというような、何か希望があるかどうか。  それからお二人の弁護士さんに、賛成、反対の立場でお話しされておるんですが、私もどうもこの事件に対して柳原さんのおっしゃるように刑罰第一主義で対応するということについては非常に疑問がある。むしろこういうような対応策でやるならば刑罰なんというのはそう特別重罰を課さぬでも、むしろ行政措置なり、刑罰を若干入れてもいいんだけれども、もう少しきめ細かな対応策的な立法の方がよかったんじゃないか、こういうふうな感じを持つ。殊にこれは混入した場合ということになっているような気がするんですけれども、混入前のおどかし、ゆすり、たかりの部面なんかというのはそれはほかの刑法なり何なり幾らでもあるんじゃないかということなんだけれども、何かこういう立法で特別こういうようなものに対して対応するというのだったら、そういう予備的な行為も含めて、何か行政的な措置も含めて立法した方がより効果があるんじゃないかというような感じを持つんですが、そういう混入予告とかおどかしというような問題についてはどういうふうなお考えをお持ちになるかお聞かせ願いたいと思います。

池田正範財団法人食品産業センター理事長

○参考人(池田正範君) 食品産業センターの性格をお伺いをいただいたわけでございますが、この 団体は財団法人でございまして、したがって会員制はとっておりませんけれども、現在日本全体の食品関係の中小企業を含めた組合がございますが、その約二百二十の組合が全部参加をしておるわけでございます。そのほかに大きい企業約二百四十社程度のものが同時に賛助会員として入っておりまして、これらから拠出されます賛助金と、それから別に政府からいろいろと調査等の委託がございますものですから、こういう委託事業も同時にこなしておりまして、それらを含めてやっておるわけでございます。したがって、今回のようなこういう業界を横割りにした事案が出てまいりますと、当然センターの会議の場でそれらの問題点を持ち寄って議論をして業界としての対応策を決めて、行政庁の場合には農林水産省に、あるいは必要がある場合にはその他の方面にそれぞれセンターが中心になって活動をするというふうな形に一応なっておるわけでございます。ただ問題は、拠出金が必ずしも十分でないために十分な活動ができない面もございますけれども、だんだんにやはりこういう問題が出てまいりますというと、共通の動きということをしなければならない面が多くなってまいりますので、機能的には最近はむしろこういうセンターのような機能を活用して積極的に業界一本の対応をしていこうというような雰囲気が強まっている際ではございます。  それから、いろいろと模倣犯がたくさん出てくるが、個別に一体対応策を業界として考えているのかというような御質問でございまして、当然のことと思いますが、実は幾つかございますけれども、一つは先ほど御質問がございましたので鈴木先生にお答えしたような、ああいうレジスタントパックといいますか、ああいういたずら防犯のための商品のパックですね。これをいろいろと工夫をして、簡単ないたずらにはひっかからない程度のものにはしていくということは、完全ではないけれども日夜実は研さんしております。研究所でも非常に大きな研究テーマの一つになっておりまして、食品の場合には内容のよいもの、新しいものをつくり出していくことも研究の一つだけれども、それを安全に食品として消費者の手元に届けるためのパックの機能というものは商品と一体不可分のものであるというふうな考え方から、最近では特にこれに力を入れていろいろと研究所等でも技術的な検討をいたしております。  それから、やはり何よりもそういう問題が起こる前に、そういう問題が起こった際に断固としてそういう悪に対して対決するのだという勇気のある姿勢を経営者自身が平生から持って、職員その他の部内にその決意を到達しておく必要が一番あろうかと思うわけでございまして、この点につきましては最近では事あるごとに経営者の会議を開いて、その後、そういうふうな感じのものを各社の方へ伝達するというようなことは心がけておるつもりでございます。  それからもう一つは、やはりいろいろな問題点が日常茶飯事のごとく仮に起こってくるといたしますというと、何かやはり個々の会社の対応とか、それから森永さんが問題が起こったときに百円パックのお菓子を売ったとかいうようなテンポラリーな話だけでは対応できませんので、中長期的に見ますと、やはり経営を危殆に瀕させないための保険制度その他が、実は残念ながら現在日本ではこの種の危険保険というものについては何ら対応策ができておりませんし、法律的な裏づけも実は欠いておるわけでございますが、世界的に見ますというと、この種の保険というものはあるわけでございます。ただ問題は、こういう保険があることがわかり、その保険に入っていることがわかりますと、犯人側は安心して攻めてくるというのではないかということが一つやはり特に取締当局等の懸念の材料になっているようでございます。  そこで、そこらの点も含めまして、実は保険制度として何らか共通の防御体制がとり得る方法がないものかどうか。それは一体我々の中だけで共済的な形でやり得るのか、あるいは若干の制度的な裏打ちを得てやらなければならないものか、そこらを含めまして実は内部では検討いたしておりまして、実はこの中で八条でございますか、八条の施策を講じていただく面もございますので、国の金を使う使わないということは別にいたしましても、少なくとも国の施策の中で、そういったことについての協力体制をおとりいただければ業界としてはありがたい、そういうようなことを考えております。

田村憲一全日本食品労働組合連会中央執行委員長

○参考人(田村憲一君) この種の事件の発生に対しての考えられる措置については、ただいま池田参考人も御説明されましたけれども、決め手となるものはなかなか見当たらないというのが現実がというように思います。私どもといたしましても、食品に毒物を混入させて脅迫したり、あるいは嫌がらせを行うということが社会悪であり、法律違反だと、そういうことを明確にすることによって根っこの部分をぜひ断ってほしい、そういう観点からこの法案の成立を望んでいるわけです。

三治重信民社党・国民連合

○三治重信君 藤崎さんと柳原さんのお二人に質問してある。混入ということでなくて、そういう前の段階のおどし、たかりや何かという問題でたくさんあるんじゃないか、そういうような問題も、こういうような防止策といったらこういうような法案の中に入れてやった方がいいんじゃないのか。それはむだなことかと。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) それは予備罪あるいは準備罪の規定を設けるかどうかという問題かと思うんですが、この法案ではそこまで、予備罪を設けるというのはなかなか問題なわけですね。要するにはっきりした証拠がないと予備罪というのはなかなか問題をはらむ性質を持っていますので、ですからその辺の問題があったんだと思うんですが、ですから普通は一般刑法の恐喝罪ということになると思います。

柳原武男弁護士

○参考人(柳原武男君) 柳原でございます。  何かほかにも対応策があるんではないかという御質問だったと思いますけれども、この法案で国の施策だとか地方公共団体の施策だとかいうようなことが抽象的に決められておりますが、こういう抽象的なことだけじゃなしに、何か具体的なものでも打ち出されれば刑罰だけでなしに犯罪が防止できるんじゃないか。特に裏取引をやらせまいというのであれば、損失についての補償的なものがある程度なくちゃ断固として悪の要求を拒否するということはなかなか難しいのじゃないかと思うんですね。ですから、それを拒否すれば、その拒否しただけのことは面倒見てあげますよということがあれば、これはある程度そういう要求に屈しないということが可能になるんじゃないかなと。これは私ども素人考えでございますから御参考にもならないかと思いますが、何かそういうことをお考えいただけた方が罰則だけよりもいいんじゃないかというふうに考えております。

山田耕三郎各派に属しない議員

○山田耕三郎君 池田参考人と田村参考人のお二人に同じ立場でお尋ねをいたします。  私がお尋ねしようと思っておりましたのは、この法律が決められましてどれくらいの効果が期待されると思っておいでになりますかということ、これは既に質問をされて答弁もありました。もう一つの問題は、この種犯罪が防止をできるためにはほかに何らかの有効な手段を、もっときめの細かいものをお持ちですかということをお尋ねしたいと思っておりましたが、それもただいまお答えになりました。そういったことで、質問というより、お答えは要りませんので、私の意見を要望として申し上げておきたいと思います。  本日の意見陳述の中で池田参考人は、我が国における食料企業の大きさをお話いただきました。それは、やはり大きさと同時にその多様性も御表明になりましたが、これは消費者のニーズにこたえるという立場からはそれなりに社会的意義も大きいと思います。ただ、私が聞いておりまして救いと思いましたのは、今回のこの事件に対しまして、一般消費者から協力や激励の大きいものが寄せられたということであります。それは企業がいわれなき犯罪の攻撃にさらされて大変困っておいでになりますことに対する社会正義の立場からの協力であったと思います。だから、私はこのこと は大変大切なことであると思いますし、こういったことを助長さすためにも企業の立場はまたより大事だと思うのでございます。  つい先日も、参議院に公害健康被害補償法というのが提案をされました。簡単に申しまして、企業が健康を失われた方々に方する補償のために財政負担をして対応をしていただくということでありますから、これを負担なさる企業にしたら大変だ、このようには思います。けれども、その翌日のテレビに「住宅と健康」というのが放映されまして、ぜんそくに悩んでおりますおじいさんを看護しておいでになりますこれまた年配のおばあさんが、だんだんと病気が進行をして、夫婦して点滴を受けなければならないというのが茶の間に映し出されましたのでありますけれども、やっぱりこういう実態があります以上、企業ももう少し社会的責任を考えてもらわなければならないのではないか。素朴にそんな感じをいたしましたのでございますけれども、きょうは特定してお尋ねをしておるわけでもございません。一般論として申し上げましたので、またそのような立場でも御協力をいただくようにお願いをいたします。  二番目の問題は藤崎参考人にお尋ねをいたします。  先日、内閣広報室がマスコミを通じまして、極左暴力防止に関連をいたしまして、国民の通報を要請した意味の広告がありました。今回のこの法律に、先ほどからの陳述の中にもございましたように、通報が強要をされる条項が入っております。これは結果的には国民同士が監視をし合うということになりますのでございますけれども、この通報に罰則がなかった場合には全然効果のないものだと、こういう御判断をなさいますかどうか、このことについてお尋ねをいたします。  柳原参考人には次のことをお尋ねいたします。東京弁護士会が発表をしておいでになります意見の中に、本法律の制定についていろいろ問題を指摘しておいでになりますが、その中の一つ、特別措置法案成立の経過を見ると、犯人がつかまらないという懸念が先に出、一罰百戒ということで、罪刑法定主義については全く考慮することなく、常に罰則が優先をしており、国民的論議どころか、通常の法案作成過程、立法過程すら無視しているとありますが、その中の通常の法案作成過程、立法過程すら無視しておる、これのあるべき姿について教えていただきたい。  以上です。

藤崎生夫弁護士

○参考人(藤崎生夫君) ただいま先生のおっしゃった通報義務というのは第四条のことをおっしゃっているわけですね。第四条は、当初、原案ではこれ一般人に対する通報義務を規定していたと思うんですが、その場合かなりやはり問題があったと思います。私もそれについてはかなり批判を持っていたんですが、その後製造業者だけに通報義務、届け出義務が限定されましたので、一般人に対するおそれといいますか、一般の人が何か巻き込まれて処罰を受けるというふうなことはなくなったと思います。  それから、製造業者は自分の会社の利益を守るということですから、基本的には協力すべきだというふうに思います。ただ、その実効性を担保する刑罰、罰則ですね。やはりだれがそういう義務を負うかという関連で罰則というのは考えなくちゃいけないんですが、この場合、製造業者がそういう義務を負担して、しかも罰則を受けるということであれば問題は比較的ないというふうに考えます。

柳原武男弁護士

○参考人(柳原武男君) 柳原でございます。ただいまの御質問にお答えいたします。  東京弁護士会の意見書で、一罰百戒ということで罪刑法定主義については全く考慮することなくと言っておりますが、この点は筆の走りでございまして、こうやって法律で決めておられるわけですから、全く考慮してないというのはまあ言い過ぎだというふうに考えます。  ただ、通常の法案作成過程と申しておりますのは、特に刑罰の場合には法務省の刑法関係の審議会でいろいろの意見をまとめた上でやるというのが原則になっておりますので、そこのところを言っておるんだと思います。やはりある程度年数をかけて刑罰的なものは練った上でやっていくのが原則だということを言っておるんだと思います。

山田耕三郎各派に属しない議員

○山田耕三郎君 終わります。

岡部三郎自由民主党

○委員長(岡部三郎君) 以上をもちまして参考人の方々に対する質疑は終わりました。  参考人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただき、有意義な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。本委員会を代表しまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十五分散会      —————・—————

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