社会労働委員会 第5号
- 発言数
- 249 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1987/08/25
会議録
○堀内委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
○村山(富)委員 限られた時間ですから、率直に御質問申し上げようと思うのです。 この勤労者財産形成貯蓄制度が発足しましてからようやく十五年になろうとしているわけですが、資産形成が促進され、老後生活を安定させるというためにつくられた制度としてだんだん定着をしつつあると思うのです。資料を見ますと、預金額も本当に伸びておりますね。こういうふうにこの制度が定着をし、大幅に伸長しておる最大の理由というのは、やはり非課税扱いにされておるという優遇があるからだと思うのですね。これは言うならば、この制度の根幹ではないかと思うのです。この非課税制度が取り除かれて普通の預貯金と変わらないような扱いになれば、この制度自体の根幹を崩すことになる。私はそういう意味で反対をしておるのですけれども、その立場に立って、基本的な問題について二、三、この際、大臣の見解を聞いておきたいと思うのです。 今回、マル優制度が廃止される一番大きな理由は、限度額以上に預貯金をして、この制度を悪用している者がおる。一般マル優です。脱税が大変大きい。それを排除するためには、もうマル優を廃止する以外にないということが一つの大きな理由になっておる。考えてみますと、例えば一般の預貯金は、今のマル優制度では三百万円が限度ですね。三百万円以上に預貯金を持っている者は、今の仕組みからしますと三五%の分離課税がかかるわけです。それが今度マル優制度が廃止されますと二〇%に下がるのです。先般調査した資料によりますと、今大体勤労者を中心として預貯金を持っておる額というのは、一番集まっている層が百九十三万円と言われています。平均しますとちょっと高くなりますけれども。そういうことから考えてまいりますと、大多数の勤労者はほとんど限度内の預貯金しか持っていない。言うならば三百万円以下の預貯金しか持っておらない。したがって、マル優の恩典を受けて今まで税金がかからなかったわけです。それが今度は二〇%かかる。本来三五%かからなきゃならぬ悪用しておる者が二〇%に下がって、そして限度内を守って、しかもそれしか預貯金を持っておらない層は、今まで税金がかからなかった、それが二〇%かかる。こういうことから考えてまいりますと、このマル優制度の廃止というのは、庶民にとっては大変大きな打撃を与えるというふうに思うのですが、こういう扱い方について労働大臣は、庶民に一番理解のある省ですから、ひとつマル優廃止についての見解を聞きたいと思うのです。
○平井国務大臣 御案内のように、この預貯金の利息に対する課税問題というのは、これは税制一般の中での根本的な選択の問題ではなかろうかと思うわけでございますが、今回の税制見直しによります貯蓄利子の非課税措置の廃止の理由は、委員が御指摘になりましたように、悪用があったということもございますけれども、むしろ基本的には、貯蓄資産から生ずる利子所得の相当部分が課税されないということが、他の所得に対する課税との関係で問題があるというとらえ方であると私は承知をいたしておるわけでございます。一般的に貯蓄利子の非課税措置を廃止いたしまして、これは御案内のとおりでございますが、老人等時に配慮を要する人たちにかかわる貯蓄や、また勤労者のニーズの特に強い年金資産、住宅取得という目的を持った貯蓄については、特に税制上の優遇措置を講ずることとしたものと私は理解しておりまして、一般財形に対して二〇%の課税が残るということは不都合でないかという御議論もございますけれども、私は税制全般の中から申し上げると、これはやむを得ないものでないかなという感触を持っております。
○村山(富)委員 一般的なマル優の問題は、これは大蔵省の関係ですからこれ以上申しませんけれども、ただ、私はマル優制度の廃止については断固反対という立場をとっておるわけです。特に、この財形貯蓄につきまして、今もちょっと説明がありましたけれども、財形法が創設されたときの法律の中身を見ますと、勤労者財産形成促進法の目的が次のように示されておるわけです。勤労者の自助努力により、計画的な財産形成を国の援助によってこれを促進させ、勤労者の生活安定と国民経済の健全な発展に寄与するために設けられた制度である。それで国が援助するのに、税額控除でやっていくかあるいは補助金をもっとふやしてやっていくか、当時いろいろ検討されたと思うのです。しかし、最終的には非課税制度が一番いいということで、そういう結論になったと思うのですね。言うならば、この財形貯蓄制度というのは、一つの政策目標を持ってつくられたものなんです。もっと言えば、労働福祉政策の一環として労働省がやられておるのですよ。それがもう現段階では、その必要がなくなったというならともかく、逆に必要度はもっと大きくなってきておるというふうな現状の中で、マル優制度が廃止をされたから横並びにこの非課税扱いを課税扱いにするというのは、ある意味では大きな政策の転換ではないか、変更ではないか。もっと言えば、そういう意味の労働福祉政策を労働省は放棄することになるのではないか、私はそこまで言いたいと思うのです。 しかも、審議会の建議などを見ましても、これは明確になっております。それから五十三年、五十七年に財形法の改正がされておりますけれども、その改正される際の衆参両院の附帯決議でも、特にこの点は強調して言われているわけです。これはやはり財形制度の根幹だからあくまでも守るべきだ。もっと言えば、限度額の枠をふやすべきだということまでつけ加えて述べられておるわけです。こういう審議会の建議や衆参両院の附帯決議等々に照らしても、今度一般財形の非課税制度を廃止するということは、そういう意味の附帯決議等が軽視されているのではないかと私は思うのです。 しかも、この財形貯蓄制度は、言われるような悪用はないわけです。これはもう厳正にその限度額が守られてきておるという性格のものですね。そういうことから考えて、マル優が廃止をされたからといって、この財形貯蓄制度の非課税制度が除かれるということについては、どう考えても私は納得ができない。その点についての大臣の見解を聞きたいと思うのです。
○平井国務大臣 財形貯蓄制度につきましては、御指摘のように、審議会での建議もございましたし、国会での附帯決議でも、税制上の優遇措置の維持。さらには税制、財政、金融面での援助の充実が強く要請されておることは十分承知をいたしております。それで今般の税制の見直しに際しましては、先ほども申し上げましたように、一般的な貯蓄利子非課税制度が廃止される中で、財形貯蓄については、年金貯蓄と住宅貯蓄に対し税制上の優遇を行うこととしておるわけでございますが、このことは勤労者の資産形成を促進しようという財形制度が評価されたものと私は考えておるわけでございます。このような経緯からして、一般財形貯蓄に対して税制上の優遇が行われないこととなったことは、一応やむを得ないものであるかなと私は考えております。この一般財形貯蓄も含めて財形貯蓄につきましては、今後も可能な限りの政策手段を用いまして、その充実を行って、審議会や国会を初め勤労者の期待にさらにこたえてまいらなければならぬと考えております。
○村山(富)委員 いや、私は今の答弁でちょっと納得できないのですけれども、やはりマル優制度と横並びに扱われるということについては、これは法律の建前からして、趣旨からして、あるいはこの持っておる性格からしておかしいのじゃないか。これはやはり今言いましたように、一つの政策目標を持ってやられておるわけですから、したがって、それが除かれるということは、政策の転換になるというように思いますので、後々影響が出てくると思いますよ。 これは住宅と年金に残したからという話ですけれども、この政府原案では五%かかってくるわけでしょう。しかも、今までの実績から見ますと、住宅やら――住宅というのは、今度初めてできるわけですね。今までの一般財形でも住宅に使われたというのはごくわずかなものなのですよ。この一般財形というのは、目的を限定されて使われるようなものではない。むしろ、言うなれば、例えば子供が進学すると金が要るから、それに蓄えておくとか、いろいろな目的のために使えるようにしてあるのが一般財形なのですよ。そういう性格を考えた場合に、私は住宅と年金を残したからいいではないかということだけでは問題があるのじゃないかと思うのですね。 特に、今申しましたように、十一兆六千億円、このうちの九二%というのは一般財形です。一般財形に入っているということは、目的を限定されるのでなくて、いろいろな用途に使わしてもらいたいという期待があるから一般財形に集中していると思うのですね。もしこの一般財形の非課税制度というものが除かれた場合に、例えば年金とか住宅の追徴課税制度が残ってきますね。一般財形に入っている者が年金や住宅の貯蓄にどの程度かわっていくかということが一つはありますね。同時に今各金融機関が自由化をめぐっていろいろな商品を工夫してやっています。そうしますと、今までは非課税制度があったからメリットがあったわけです。ところが非課税制度がなくなりますと、一般財形というのはメリットがなくなる。もっと新しい商品がどんどん出てまいりますと、そっちの方に流れていく。金利が高ければ、それだけ危険度もあると思いますけれども、しかし、やはり金利の高い方につられて引っ張られていくというので、一般財形というのは意味をなさなくなる、崩れていくのではないかということも心配されるわけですが、そういう年金貯蓄や住宅貯蓄にどの程度かわっていくか、あるいはそういう金融機関の働きかけによって、一般財形が次から次にもぎ取られていく、移っていく、こういうようなことになっていくのではないかという心配があるのですが、その点についてはどういうふうに判断されていますか。
○若林政府委員 ただいま先生御質問の、一般財形貯蓄というもののメリットがなくなるではないかという御指摘でございます。 先ほど先生おっしゃいましたように、この法律が制定されますときに、どういう形でいろいろと助成をしていくかというときに、いわゆるそれまでございましたマル優制度という税制上の優遇をとるか、助成という形での方法をとるか、そういった議論が審議会であったことは先生御指摘のとおりでございます。それは結局いろいろな御議論の末に、従来の少額貯蓄非課税制度というべースで財形制度をバックアップしていくということになったわけでございます。そういうことでございますから、財形貯蓄の援助の非常に大きな部分でございますけれども、しかし、何と申しましても、それは少額貯蓄非課税制度という政策手段の上に乗っかっているものでございますので、ただいま大臣がお答え申し上げましたように、その少額貯蓄非課税制度というものについて根本的な見直しが加えられるということになりますと、サラリーマンだけを別にして、確かに先生おっしゃいますように、一般財形もそれ自体が政策目的なんだということもございますけれども、しがしやはりサラリーマンだけを特別にということは、またバランスを欠くものではないかというふうに考えるわけでございます。そういう議論の中で、サラリーマンの一番大きな関心事でございます老後のための年金と住宅取得というものにつきましては、思い切った優遇措置が講じられるようになっておるわけでございます。 一般財形は、そういうことで優遇措置が講じられなくなるわけでございますけれども、一般財形につきましては、もとより事業主の協力によります計画的な天引きというものがございますし、さらに国の助成措置といたしましては、事業主が貯蓄を行っております労働者に対しまして財形給付金という一種の補助金を出します場合には、それは損金算入として税制上の優遇を受けられますし、それをもらう労働者につきましても、一時所得による優遇措置が受けられることになっておるわけでございます。さらにこれは中小企業だけに限るわけでございますけれども、そういったように事業主が貯蓄をしている労働者に対して補助金を出します場合には、国がそれに対して補助金を出すというような形で、いわば財政的な援助を行っておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、今後ともいろいろな形での私ども政策手段というものを考えまして、一般財形についても魅力のあるものにしていきたいというふうに思っておるわけでございます。 どのくらい一般財形が移っていくのかということにつきましては、これはなかなか難しい問題でございます。現在、先生おっしゃいますように、その九割ぐらいは一般財形でございます。しかし、一般財形の中にも相当部分は老後のために蓄えている、あるいは住宅のために蓄えているということでございますので、相当の部分が年金財形や住宅財形に移っていくというふうに思っておりますし、また私どもといたしましては、これはいろいろな方面、金融機関とか事業主とかいったような各方面の協力をいただきまして、皆さんに年金財形、住宅財形の有利さというものを大いにPRいたしまして、これを活用していただきたいというふうに思っておるわけでございます。
○村山(富)委員 今度は、一般財形、年金財形、それから住宅財形とできるわけだけれども、やはり一般財形が柱だと思うのです。一般財形が非課税制度がなくなれば、財形制度全体の根幹が崩れていくというふうに思うから、今そういう質問をしているわけです。 もう時間がありませんから言いませんけれども、私は、以上申し上げました理由で、非課税制度を廃止するということについては断固反対したいと思うのですね。しかし、どうしてもできないというのであれば、さっきから言っていますように、財形制度の趣旨、目的からして、やはり何らかの優遇措置を考えていく必要があるのではないか。例えばゼロが悪ければ、年金、住宅と同じように五%の率にするとか軽減税率を考えるとか、あるいは何らかほかの変わった方法を考えて助成をするとか、何とかやはり考えないと、財形制度をつくった趣旨が半減してしまうのではないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
○若林政府委員 ただいま申し上げましたように、一般財形につきましても、これまで税制上の優遇に加えまして、財政面での給付金、助成金制度というものはございます。特に中小企業におきまして財形制度を大いに活用していただきたいということを考えまして、今回は予算措置で、これまでの国によります事業主に対する助成制度というものを倍にいたしております。これまでは中小企業の場合に国が助成いたします率は一〇%、五%、三%でございましたけれども、その助成金の助成率を二〇%、一〇%、五%、こういうふうな格好で拡大することにいたしたわけでございます。今日におきましては、こういった形で充実を図っておるわけでございますけれども、今後ともいろいろな形で財形制度についての魅力を高めるように努力をしてまいりたいというように考えております。
○村山(富)委員 それは何度説則を聞いても、やはり納得できる答弁ではないと私は思います。そればかりにかかっても時間がありませんから、次に移りますけれども、いずれにしても、一般財形というものをせっかくつくって十五年経過してだんだん定着しつつある、しかもその必要度はますますふえてきておるというような現状を考えた場合に、何らかの優遇措置というものを検討していく必要があるのではないかと思いますから、その点は強く申し上げておきたいと思うのです。 ただ、今大蔵委員会やら地方行政委員会でこの所得税減税の問題やら特別措置の問題が議論されていますから、したがって、全体の中で労働省としては、この委員会の声も反映して修正をさせて、あくまでも財形のマル優制度は残すというくらいの強い決意でやっていただきたいということを私は申し上げておきます。 次に移りますけれども、例えば年金にしても住宅にしても五百万円が限度枠ですね。仮に住宅の方に二百五十万円、それから年金の方に二百五十万円、こうした場合に合計すれば五百万円ですから、それでもう帳消しになるわけです、もうだめですね。住宅の場合でも五百万円を限度にして頭金にするというようなことでは、今の実態、物価からして住宅を購入するということはなかなか難しいのではないか。そういう意味からしますと、この限度枠は倍にするとかもっとふやしてもいいのではないかと思うのです。 特に年金の場合は、労働省がつくっております勤労者の老後生活安定対策研究会というのがありますね。この研究会の報告を見ましても、これは労働省に対する報告でしょうけれども、「個人の老後の生活の資金作りを促進するための施策を進めていく必要があり、財形年金貯蓄制度の拡充を図り、退職一時金の財形年金への預入や、従業員持株制度をもとにして持株を退職時に現金化して財形年金に組入れることについて検討する必要がある。」こういう方向も出されています。特に勤労者の老後の生活を考えた場合に、今厚生年金が大体平均十四万程度ですが、二十五万円金が要るのです。そうしますと十一万円不足するわけです。この不足を何で賄うか。大企業の場合は、企業年金があったりしますからカバーできますよ。だけれども中小企業の場合は、そういうものがないわけですから、ほとんど十四万円の厚生年金しかない。こうした場合に、せめて財形年金で老後の生活を補てんしていこうというような期待を持って財形の年金貯蓄をする。こうした場合に五百万円という限度の枠があれば、それを充足させるものにならぬではないか、そういう意味ではもっと枠を広げる必要があるのではないかと私は思うのです。これは住宅も年金も同じですね。 それからもう一つは、この仕組みを見ますと、五百万円までは限度枠で非課税になっている。ところが五百万円を超しますと、例えば五百万円が五百五十万円になったとした場合には、五百万円の元本も含めて全部パーになるのですよ、非課税対象にならないわけです。これはやはりおかしいのではないか。五百万円は仮に限度枠とすれば、それを超した分に対して非課税扱いにしないというならともかく、超したらもう全部非課税扱いにならないというような仕組み、扱い方については、やはり問題があるのではないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
○平賀政府委員 勤労者の財産形成を促進するという見地からは、御指摘のように、優遇措置を講ずる限度枠を拡大すべきであるという御意見があることは私ども十分理解できるところでございます。ただ、税制上の優遇措置という観点からは、他の制度あるいは他の階層等とのバランス等も考慮する必要があり、現行制度上、これはやむを得ないものと考えております。 しかし、御指摘のように、今後の高齢化社会の進展に伴いまして、勤労者の自助努力を促進するという意味で、制度的な御提案などもいろいろとございます。財形制度がそういう高齢化社会における勤労者の将来の生活のために非常に重要な意義を有するものと私どもも考えております。労働省といたしましては、やはりその限度枠の拡大、その他いろいろな制度的な改善等の問題については、一層そういった問題を意識しながら検討し、またその問題について改善をするように努力いたしたいと考えております。
○若林政府委員 先生が後段で御質問になりました五百万円を超えた財形の扱いの問題でございますが、確かに先生御指摘のように、住宅貯蓄をずっとやってまいりまして五百万円たまったけれども、例えばそこで出物がなかった、さらに天引き貯蓄を続けてまいりまして、仮に六百万円になりますと、つまり五百万円を超えますと、今日の制度では全体が非課税の扱いから外れるということになっておるわけでございます。先生の御指摘は、少なくとも五百万までは税制上の優遇を認めるべきではないかという御指摘かと思いますが、私どもその点については十分に理解できるところでございます。この点につきましては、現行の制度の考え方というのは、五百万円を計画的に貯蓄をしていく、そのことを奨励するという考え方になっておるわけでございます。五百万円を目指して毎月毎月貯蓄をしていく、そのことを税制上優遇して奨励していく、しかし、それが五百万円という目標に達すれば、それはいわば計画的貯蓄という目標が達成したことではないか、こういうような考え方に立っておるわけでございますが、先生の御主張も私ども十分理解できることでございますし、このことにつきましては、今後さらに政府部内におきましても議論を深めていきたいと思っております。
○村山(富)委員 五百万円の目標を達成する貯蓄をすれば、目標が達成されたというような考え方ではなくて、やはり勤労者の財産、資産が形成されていくということがねらいですからね。その資産が形成されていくためには、今までの実績から見ても五百万円の限度枠というのは無理があるのではないか。だからもっとこれを広げるべきだ。 同時に、今言った後の方の五百万円を超した場合に、もうすぐに全部非課税の対象でなくなるというのもちょっと問題があるのではないか。これは工夫すればできることだから、そういう工夫も必要ではないかというふうに申し上げているわけですから、この点はひとつ誤解のないように御理解を願っておきたいと思うのです。 それから、もう時間がありませんから申し上げますけれども、財形持ち家融資制度の利用状況を見ますと、極めて低調なんですよ。財形貯蓄残高が十二兆円に達しようとしておる、一方、財形持ち家融資の実績は極めて低い。現状は単に金融機関に金を貯金して、金融機関が金を活用するだけであって、本来の意味におけるこの制度の目的が果たされておらない、効果が上がっておらないということを考えた場合に、どこに問題があるのか。これはやはり各金融機関がみずから住宅ローンを持っておる。そうしますと、この持ち家融資制度を使うよりも、自分のところの金融機関が持っておる住宅ローンを使わせようと思って誘導していく。こういうことになってまいりますと、これは単に金融機関を利するだけでして、それでは制度の目的が達せられないわけですから、そういう問題について今後何らかの工夫をしていく必要があるのではないか、方策を考えていく必要があるのではないかというように思うのですが、この点はどうでしょう。
○平井国務大臣 おっしゃいますように、財形貯蓄は制度発足以来順調に増加をいたしまして、現在、残高約十二兆と推定されておるわけでございます。これは全融機関の営業努力のみによって伸びたものではございませんで、やはり国が税制上これを優遇する、また全国二百万の事業場が労をいとわないで給与の天引きを行う、そういう結果こういう伸びがあったものと見ておるわけでございます。したがって、金融機関が蓄積されました貯蓄の勤労者への還元融資について積極的に協力をするということは至極当然でないかというふうに私は考えております。 さきの通常国会におきましては、財形持ち家融資につきましては、大幅な融資条件の改善を行っていただいたわけでございますが、貸出金利につきましても、金融機関の協力によりまして相当な引き下げを実施したわけでございます。また先般、各金融機関に対しましては、新しい持ち家融資制度についての積極的なPRについて協力の要請を行ったところでございます。そういう面では、御指摘の点理解ができるわけでございまして、新しい住宅融資制度は発足したばかりでございまして、御指摘の問題については、今後の住宅融資の推移等を見ながら検討してまいりたいと考えております。
○村山(富)委員 最後に、さっきも申しましたように、加入状況を見ますと、やはり中小企業が非常に少ないのですね。特に零細企業なんかはほとんどらち外になっておる。むしろ必要とするのは、中小企業、零細企業が必要とすると思うのです。それにはいろいろ理由があると思うのです。しかし、それでは本来の成果が達せられないわけですから、したがって、もっと中小企業、零細企業対策を検討し、考えていく必要があるのではないかと思うのですが、そういう点についての見解を伺いたいと思います。
○若林政府委員 財形の中小企業の加入状況を見ますと、百人以上ぐらいでございますと七、八割は入っておるわけでございますけれども、百人未満になりますと六〇%ぐらいということでございます。したがいまして、今後は中小企業の皆さん方に大いに財形を活用していただく、中小企業の方々に財形に入っていただくということが大きな課題であるというふうに考えております。 これまでは中小企業の皆さんの加入がなかなか少なかったわけでございますけれども、それは一つには、皆さんがいろいろ財形以外にある非課税制度などを活用しておる、手近なところを活用しておるといった点もあったと思います。事業場の理解が不十分であったという点もあろうかと思います。そのほかに、制度面では、中小企業は非常に離職が多いものでございますから計画的な貯蓄がしにくいという点もございました。 こういった点につきましては、今回改正をお願いいたしまして、離転職をいたしました場合に、ポータブルと申しますか、これまで財形制度をやっていた残高を、次の事業場が財形制度をやっている場合には、そっちへ持っていけるという制度をつくっていただくように改正をお願いしておるわけでございます。しかし、行った先が財形をやっていない場合はポータブルがきかないわけでございまして、何としても加入促進をしなければならないということでございます。 そこで、今年度は予算措置を講じまして、中小企業の協同組合のような中小企業の団体をベースにいたしまして、加入促進の事業をやっていただくということを予算措置を講じております。具体的には二百十団体の中小企業を指定いたしまして、ここに財形の利用促進活動をやっていただくというような制度を設けました。こういったことを通じまして、財形制度の中小企業への促進を図ってまいりたいと思いますが、今回法律の改正でお願いしております損保を加入させることにつきましても、損保が中小企業に非常に広いネットワークを持っておりますので、この損保の企業を大いに活用いたしまして、中小企業に対する財形の普及促進を図ってまいりたいと考えております。
○村山(富)委員 時間が参りましたから、これでやめますけれども、最後に重ねて申し上げておきたいと思うのですが、どう考えてみても財形制度というのは、一つには目的を持って政策的につくられているものなのですね。それがマル優制度が廃止になったから横並びでこれも廃止になるというのでは、余りにも大蔵省ペースにやられ過ぎたのではないか、もっと労働省は、勤労者の福祉を考えて、これは絶対守り抜くのだと言って抵抗してもよかったのではないか。まあ抵抗はしたのだろうけれども、押し切られてしまったと思うのですね。それではやはりいかぬと私は思うのです。 そこで、せっかく今与野党が話し合いをしましていろいろな修正について議論しておるわけです。話に聞きますと、年金財形やら住宅財形は政府原案は五%で出るけれども、ゼロにするとか、いろいろな話もあるわけです。したがって、この社労委員会の理事会で十分議論をして、そういう修正についても――やはり何といっても財形貯蓄制度というのは一般財形が柱ですからね。今までの実績から見ても、それは住宅なんかに使われていないのですよ。またこの程度のものでは使えないのですよ。だから進学に使うとかいろいろ多目的に使えるようなものであって初めて労働者は期待を持ってやっているわけですから、そういう仕組みになっておったわけですから、その仕組みの一番メリットは、やはり非課税にあったということを考えた場合に、この制度の根幹を崩すようになるというふうに私は思うのです。だから、その点はしっかり踏まえて頑張っていただきたいと私は思いますし、同時に、この理事会等でも十分検討を加えて、せっかく今修正の話があるわけですから、その修正の中に入れて財形制度は守っていく、こういう決意で頑張っていただきたいということを、特に最後にお願いをして、終わります。
○堀内委員長 大橋敏雄君。
○大橋委員 この財形法が制定されたのは昭和四十六年ですが、制定当時の委員会の私は理事といたしまして審議に参画したわけですが、いろいろと問題点はあるものの、勤労者のための資産の保有、財産形成のための初めての法律制度である、小さく産んで大きく育てようというようなことで賛成をして通したわけです。ところがそれからもう十五、六年が経過してきたわけでございますが、今回の趣旨説明の中には、その数も現在千九百万人に達した、貯蓄額も十一兆円を超えた、勤労者に深く定着してきている、こういうふうに述べられてはおりますものの、財形本来の趣旨、目的が貫かれてきているというふうに私は考えません。非常に伸び方が緩慢過ぎる、こういうふうに思うのであります。 実は、総務庁統計局がことしの三月二十日に発表いたしました「昭和六十一年貯蓄動向調査報告」というのがございます。その中にこういうことが述べられております。「貯蓄現在高のうち、勤労者財産形成貯蓄の貯蓄現在高は三十万円で、前年に比べ三万円、率にして九・一%増加した。この貯蓄現在高に占める割合は、昭和五十五年の三・〇%から上昇を続け、六十年は四・〇%、六十一年は四・一%と拡大した。」確かに年々多少なりとも拡大はしてきているけれども、まだ全体のわずか四・一%にしかすぎないわけですね。それから「また、財形貯蓄の保有率は、五十六年以降、二一%程度で推移し、六十一年は二五・二%となり、前年に比べ三・五ポイントの大幅な上昇となった。」このように言われておりましても、まだ財形貯蓄を保有しておる者は勤労者世帯の四分の一でしかない、こういうことでございまして、私は先ほど言いましたように、財形本来の目的が果たされていないと言ってもいいくらいに厳しく指摘したいところであります。 そこで、お願いしたいのでありますけれども、千九百万人の関係者の企業の規模別内容はどうなっているのか、述べていただきたいと思います。
○若林政府委員 先生ただいまのお尋ねの千九百万の契約労働者の規模別でございますけれども、勤労者の個人調査による規模別の調査というのは現在ないのでございます。ございますのは、労働省で出しております「労働者福祉施設制度等調査報告」というのがございまして、ここでは財形貯蓄を実施している企業の規模別の割合というのが出ておるのでございます。 これを申し上げますと、三十人から九十九人というところが五七・四%の導入率でございます。百人から二百九十九人が七一・七、三百人から九百九十九人が八〇・七、千人から四千九百九十九人が八四・〇、五千人以上が八五%というふうになっておりまして、いずれにいたしましても、企業規模が小さくなるに従って導入率が低くなっておるというのが現状でございます。
○大橋委員 大まかに言って大企業と中小企業とに分けたら加入者はどのくらいの割になっておりますか。
○若林政府委員 千九百万人を大企業と中小企業に分けるのは難しいのでございますけれども、私どもいろいろアンケート調査、個票等を見ておりますと、大企業でも中小企業でも、制度が導入されますと、そこにおける労働者の財形の利用率と申しますか、これは大体同じであるという結果が出ております。
○大橋委員 実態はほとんど大企業で、中小企業はその一部だ、しかも零細企業などは財形法というのとは無縁だ。要するに、勤労者のための財形法でありながら非常に格差が出ておる、不公平が出ておるということであります。零細企業の勤労者でも加入できるような工夫を凝らしていかなければ、これは問題である、この格差是正こそが肝心だ。今回、非課税措置が年金と住宅の方にも措置がとられるような段階になってきましたけれども、私は、これは今も話が出ましたように、一般財形の方も当然非課税にすべきだという思いでございます。 そこで、勤労者の生活実態、私これから述べますが、大臣もよく聞いておいてくださいよ。私がなぜ一般財形も非課税扱いにしてほしいと言っておるかがわかってくると思うのです。 これは総務庁の統計局の調査内容ですけれども、勤労者の大半が非常に厳しい状況の中で生活を強いられておる、それが明確に示されております。この勤労者財形制度の役割というものは極めて大きくて、期待にこたえられる内容に脱皮しなければ、私は意味がないとつくづくこの調査内容を見て感じました。 最初に、勤労者世帯の貯蓄の状況でございますけれども、一世帯の平均貯蓄額は七百三十三万円となっておるわけですよ。私は本当だろうかというふうに思ったのですけれども、これは公式な調査機関の結果ですから一応認めざるを得ませんが、住宅ローンなどで負債の方も二百六十万円を抱えておるということですね。じっと中身を見てまいりますと、結局は平均以上にあるものは全体の三分の一です。あとの三分の二は全部平均以下。しかも中位数をとれば四百八十四万円、最頻値になりますと百九十三万円です。要するに、低い方に偏った分布になっているということがここではっきりするわけでございます。 特に注目したいところは、五十歳未満で住宅ローンを保有している世帯はほとんど負債超過、借金の方が多いわけです。五十歳以下ですよ。例えば三十歳未満の負債超過額は四百七十三万円と記されております。三十歳代で同じく三百十万円、四十歳代で同じく十九万円、五十歳以上になってやっとプラス二百九十三万円となっております。また土地、住宅のために借金を抱えているものを勤労者世帯だけで取り出してみますと、三十歳未満が八百四十六万円です。三十歳代では七百八十四万円、四十歳代でも七百一万円、五十歳代で五百八十七万円、六十歳代で三百八十六万円。また貯蓄残高と負債残高を差し引いた差額も、三十歳未満はマイナス四百七十三万円、三十歳代でマイナス三百十万円。要するに、借金と利払いにきゅうきゅう追われているというのが現状であります。 このような調査内容が出ておるわけでございますが、こういう現状を大臣は御承知と思いますけれども、どう受けとめておられるか。 また、勤労者の生活実態が非常に厳しいという実態に合わせて、先ほどの貯蓄利子非課税限度額、五百万円というのが限度額になっておりますけれども、これなどは極めて貧弱なものであると私は思うのでございますが、勤労者の財形促進のために本当に魅力ある適切な総合対策を推進してほしい、私はこう思うのでございますが、大臣のお気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
○平井国務大臣 我が国の勤労者の所得は、御案内のように、一応欧米諸国に劣らない水準に達してまいったということでございますが、おっしゃいますような勤労者の資産形成と申しましょうかストック面から見ると、極めて貧弱でございまして、非常に立ちおくれが見られる、さらに高齢化の進展が非常に急激に参っておるわけでございまして、こういういろいろな環境の変化に伴って、勤労者の福祉施策に対するニーズというのも、これまた大変多様化しておるわけでございます。 私としましては、勤労者生活の向上を図って安定した社会を築くことが、今後の労働行政の最も重要な課題の一つであろうかと認識いたしております。特に財形に対する加入問題について、今数字を挙げられてお述べになりましたが、なかんずく中小零細企業での勤労者の福祉対策を一層推進しなければならぬということを痛感いたしておるわけでございます。こういう認識に立って、来年度は特に労働省本省に新たに勤労者福祉部を設けまして、勤労者福祉につきましては総合的な検討を進めてまいりたいと考えております。 また、その中で御指摘がございましたように、この限度額についてどうかということでございますが、これは将来の展望に立ちましたとき、今後さらに拡充、拡大という面で我々一層努力してまいらなければならぬなということを痛感いたしております。
○大橋委員 財形制度も欧米諸国にそう劣るものではないけれども、内容については問題だというような御答弁だったと思いますが、私もまさにそのとおりだと思います。財形制度そのものは形の上では立派にでき上がっておるわけでございますが、中身は非常に貧弱であり、魅力がない。特に住宅取得政策についての欧米諸国の取り組みは非常に積極的です。日本の場合は極めて消極的と言わざるを得ないと私は思うのです。住宅財形が今度非課税措置になるということでございますけれども、これなどはイギリスも西ドイツもフランスもそれぞれ既に実施していることでありまして、決して新しい事柄じゃないわけですね。 私は、住宅取得に対する援助政策の違いを国際比較して、ここで簡単に述べてみたいと思うのです。 日本の住宅減税の規模は、主に公的ローンの場合は年末残高の五%、民間ローンの場合は同じく一%の税額控除が行われるわけでございます。二千万円を限度として五年間、したがいまして、最高二十万円掛ける五年、約百万円が税額控除されることになるわけでございますが、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス等は税額控除ではなくて支払い利子の所得控除ができ上がっているわけですね。これは労働省が六十二年の三月発表しました人生八十年時代の勤労者生活に関する調査研究会報告書、この中にははっきり述べているわけでございますが、アメリカの場合は、住宅の規模や所有者の所得の多寡にかかわらず適用される、また借り入れ元金や支払い利子の額についても制限もない、こういうことで所得控除がなされるわけですね。断然内容が違う。また西ドイツは持ち家の減価償却の所得控除制度をとっております。家というものは使用すると住宅の価値が減少していく。その分を所得計算上控除していくというものでございますが、この減価償却の方法につきましても幾つかのタイプをつくっておりまして、そして消費者が選択できる。日本の場合はアパートなど借家は減価償却を認めておりますけれども、持ち家の場合は認められない。これにも理由が述べられておりますけれども、時間の関係で申し上げませんが、イギリスはホームローン制度があるわけです。これは二年以上やはり指定金融機関に貯蓄をしまして、その指定金融機関から通常の融資が受けられるほか六百ポンドの無利子の特別融資があるわけです。さらに百十ポンドを上限に無税の特別報酬金が出るということです。これは労働省の調査結果で明らかになっているわけでございますが、このような欧米の政策と比較して、日本は余りにも劣っていると私は思うのでございますが、大臣、この点はどうお感じになっていますか。
○平井国務大臣 おっしゃいますように、勤労者の持ち家取得を促進する、このことは福祉向上の観点ということのみならず、やはり内需拡大に資するという点からも、言うなれば、御指摘のように、これは喫緊の課題であるというように私は考えております。このために財形持ち家融資制度につきましては、御案内のようにさきの国会でございますか、財形法改正を中心に今年度大幅な改善が行われたところであります。しかし、この勤労者の持ち家取得促進のためには、言うなれば、財形制度のみならず税制、金融、都市対策等々幅広い政策手段の有機的な活用と申しましょうか、それがなければ、急速に進展することは非常に難しいというのが現状であると私は認識いたしております。したがって、今後関係省庁とそういう面でも連携を図りながら、勤労者の持ち家取得促進策、この充実については、今後ともこれは全力を挙げて取り組まなければなかなか容易でないというのが私の実感でございます。
○大橋委員 とにかく勤労者の資産の保有、財産形成を行って、勤労者の生活の安定を図っていく、しかも国民経済の健全な発展に寄与していくんだという労働省、そして労働大臣の重要な責務がここにあるわけでございますので、ユニークで大胆な政策を、総合的な政策を打ち上げて実行していただきたい、つくづくそう思うわけでございます。 実は、六十一年度の税制改正を前にしまして、建設大臣は一兆円の住宅減税構想というものを発表され、六十年八月十七日の新聞にその内容が出ておりますけれども、思い切った内容で発表しております。これは内需拡大の柱に住宅建設を促進するのだというのがねらいのようでございましたけれども、住宅価格の一%を三年から五年にわたって税額控除をするという新制度でありました。また現行の住宅取得控除率も大幅に引き上げていこうというような内容をずっと並べていたわけでございますが、結果的には控除期間が三年が五年に延長された程度にとどまったものの、私はこれは大きな反響を呼んだと思うのであります。 労働大臣も負けずに勤労者財産形成法の改革についてその思いを打ち上げておられました。例えば非課税の限度額について財形年金単独ならば五百万円を一千万円まで引き上げたい、そのほかいろいろと発表なさっていたわけでございますが、結果的には大蔵省はこれを無視してしまって、逆に一般財形には二〇%、年金財形には一〇%の課税という形で法案が提出されてきた。これは売上税のあおりで廃案になって出直しという形になったわけですね。したがいまして、七月二十八日、この前ですが、私はこの委員会で財形貯蓄というものは非課税が妥当であるという旨を大臣とここで確認し合ったつもりでございます。しかし、再び大蔵省はこれを軽視して、一般財形はやはり二〇%、年金に新しく住宅財形は加えたものの、これは別々五百万じゃなくて合わせて五百万までを五%にいたしましょうという内容で出てきたわけですね。これは税制改革とマル優廃止の問題で与野党が大変もめまして空転した。そして与野党の幹事長・書記長会談の中で、結果的には一般財形はそのままになったけれども、年金と住宅の方はゼロにしようという話し合いが合意されたわけですね。 そういうことで、まあまあ思いは達せられてきたわけでございますけれども、結局大蔵省の判断と決定に従っていくような形では、一般勤労者の資産形成というものは非常に困難になっていく。だから、やはり大臣の立場は非常に重要な位置にあるわけでございますから、自分の主張は主張としてあくまでもそれが反映されるような努力をしていただきたいということです。決意を聞かしてください。
○平井国務大臣 まさしくそういう意味では御指摘のとおりでございまして、やはりこの課税、非課税の問題になりますと、基本的には税制のあり方また財政当局の物の考え方等々もございまして、今般のような形に相なったわけでございますが、いずれにしても、着実に効果的にこの資産形成というものを今後真剣に考えていかなければなりませんので、限度額の問題、課税のあり方の問題につきましても、今後さらに検討し、御趣旨の線に沿って努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
○大橋委員 住宅関係に非常に深いつながりがある法律でございまして、日本は住宅の購入価格が飛び抜けて高いわけです。六十一年国土白書の「戸建て住宅価格と年収との関係」というところで見ますと、東京は年収の六・一倍、大阪は年収の六・六倍、ニューヨークは都市部で同じく三・三倍、シカゴで都市部でやはり二・四倍、ロサンゼルスも同じく三・三倍、インディアナポリスが二・一倍。とにかく日本の土地価格は世界一。この合計額はアメリカ全土を二つ買ってもまだおつりが来るのだと言われるようなことでございますけれども、この土地、住宅を除いても、消費購買力平価といいますか、為替レートに比べて我が国は非常に安い。これも労働省の六十一年十一月発表の「日本・アメリカ消費購買力平価の推計」というのがございますが、昭和六十年一ドル二百三十一円だ。それから六十一年七月から十月、円高になって為替レートが一ドル百五十六円三十二銭にはなったものの、消費者物価水準がアメリカに比べて、アメリカを一〇〇として日本は一四八。そういうことで、同じ消費財を購入しようとすれば二百三十円程度、いわゆる五〇%近く割高になってくる。これを一時間当たりの賃金に当てはめましても、日本は千三百十五円、アメリカは二千四百九十八円、先ほどのレートの変化で千六百三十七円にまではなったのですけれども、結局これも購買力平価に換算しますと二千四百十九円に舞い戻ってしまう。これは土地対策も問題だし、物価対策も問題でありますが、賃上げと減税がいかに重要であるかということもここで教えているわけでございますので、労働者の賃金の問題あるいは減税の問題等もしっかりと腹に入れて、閣僚の一人としてリードしていっていただきたいことを強く要望しまして、時間が参りましたので、終わります。
○堀内委員長 田中慶秋君。
○田中(慶)委員 財形問題について大臣に伺いしたいと思います。 勤労者財形貯蓄等合わせて千四百五十万の非課税貯蓄を利用することができたわけでありますが、今回の税制改正において、少額貯蓄非課税制度は原則廃止ということで現在政府が打ち出しているわけであります。財形制度を主管する大臣として、この税制改正についての基本的な考え方を冒頭にお伺いしたいと思います。
○平井国務大臣 今般の税制の見直しは、我が国の経済社会の活力を今後とも維持していくということを目的として行われる改正でございまして、そういう意味で、当然のことではございますが、公平、公正等の観点に立って行われるものと私は理解をいたしております。このような観点から、貯蓄に対する一般的な優遇策は廃止するとされたところでございますが、勤労者の財産形成の中でも、特に必要性の高い年金と住宅につきましては、課税上の特例を設けるよう、これは従来から主張してまいったところでございますが、これが一応実現いたしておりますことは、それなりに評価をいたしておるわけでございます。 なお、先ほども当委員会でお話が出ましたけれども、年金、住宅貯蓄については、与野党の話し合いで非課税とする旨合意されたことも承知をいたしております。
○田中(慶)委員 今大臣からお話がありましたように、年金あるいはまた住宅の問題は、話し合いの中で非課税とするという形でありますけれども、しかし、全般的に見て、日本の住宅がウサギ小屋であるとか、あるいはまた賃金と比較して土地、住宅の比率が高いということを考えて、この財形というものが大変多くの期待あるいは成果をなし得るのだろうと思います。しかし、今回マル優が廃止される、こういう前提の中で一般財形の利子非課税制度まで廃止するというのは、先ほども質疑がされておりましたけれども、今日の日本の産業を支えている中小企業、特に零細企業等々を考えてみますと、ここに大変な不公平感があらわれるのではないか、こんなふうに考えるわけであります。 そういう前提に立ちますと、私どもはこの一般財形の問題、現在政府は一般財形二〇%の課税という形に考えられておりますけれども、これをこの年金や住宅並みにできないかどうか、あるいはまた、この一般財形そのもの、五百万から八百万円等々を含めたこの枠をふやすことができないかどうか。これは今日の勤労者や日本の産業に与えられていを縮図からしても大変重要なことと考えておりますけれども、大臣の考え方をお伺いしたいと思います。
○平井国務大臣 枠の拡大、さらには優遇措置をどこまで適用するか、優遇措置のさらに拡大充実ということは、今後の課題としては、当然実態また実績を見ながらそういう方向で努力をしてまいらなければならぬというふうに私は考えております。
○田中(慶)委員 いずれにしても、この一般財形というものは勤労者のライフサイクルにおいて、子弟の進学や結婚あるいは不慮の事故等々を含めて多目的に、さらには大変重要な生活設計の中に位置づけられていると思います。中期的な課題として、非課税貯蓄の項目という形の中で一般財形、大変しつこいようでありますけれども、大臣、今後ともぜひ労働者の主管大臣としてこの辺をさらに主張を続けていただきたい。これは要望しておきます。 そこで、今回のマル優の問題で、例えば六十五歳以上の人たちがマル優をそのまま継続といいますか適用できるということでありますけれども、マル優ができたという前提で考えますと、この六十五歳以上の人たちの一般財形の貯蓄はすべて払い出し、マル優の非課税口座の方に流れ込む、こういう予想を一部評論家の人たちが指摘をされたこともございます。六十五歳、一般財形の問題、あるいは財形の基本的な考え方等々を考えたときに、この辺についての割り切り方をどのように考えられているのか、お伺いしたいと思います。
○若林政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、一般財形が二〇%の課税になって、一般財形をずっと続けている方が六十五歳になったということになりますと、一般財形を続けている限りは六十五歳を過ぎましても二〇%課税でございます。 今回のマル優の優遇として、老人等ということで、六十五歳でございますと非課税になるということでございますから、理論的には先生おっしゃいますように、六十五歳までずっと一般財形をやっている方は、そこで一般財形をやめて非課税の方に移り変わるということは考えられると思うのであります。しかし、大体勤労者のリタイヤの年というのは六十五歳前後でございますから、一般的に考えますと、その年齢まで財形を続けておられるという方は、老後のための蓄え、特に今回のような形で財形年金制度が非常に優遇されるということでございますと、みんな財形年金制度を活用しているというのが恐らく実態になるのではないだろうかというふうに私どもは考えております。 また、私どもといたしましても、これだけ有利な制度でございますから、老後に向けて貯蓄をなさるという方は、できる限り財形年金というものを活用していただくようにいろいろな形でお勧めしていきたいというふうに思っておるところでございます。
○田中(慶)委員 ぜひその辺も検討されながら、この制度そのものについて効果があるような形でやっていただきたいと思うのです。 そこで実は、今回の財形法の改正案の中で、先ほども質疑をされておりましたけれども、転職時等の問題でございます。 従来、転職時における承継措置の拡充を盛り込まれておるわけでありますけれども、特に先ほど来議論をされております中小零細、この中において財形に具体的に取り組んでいない、こういうところについては、せっかくこの承継制度をつくられても、絵にかいたもちのような形になってしまうのではないか。仏つくって魂入れず。私は何かこの部分だけを考えますと、そんなような気がしてならないわけであります。 そこで、中小零細の人たちが財形を積極的に取り込むためには、財形としての理解と、さらに事務手続負担、これが大変であろうというふうに考えるわけであります。特に中小零細のところの人たちが事務の負担を、財形を取り込むための大きな負担増、こういうことから積極的な取り組みがされていないのではないか、こんな気がしてならないわけでありますが、この辺に対して労働省として中小零細のところに対する普及をどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。
○平賀政府委員 御指摘のように、財形制度が規模別に見ますと中小企業に普及がおくれている。特に零細規模の事業所に普及がおくれていることは事実でございます。しかし、勤労者の福祉政策という観点からしますと、中小企業において福祉関係の施策の充実が特に望まれており、現にその必要があるわけでございます。その意味で財形制度、老後に備えて住宅、年金などを自助努力で推進する、これは中小企業の勤労者にとっても非常に重要な意味を持っておると考えております。 したがって、私どもとしましては、中小企業、特に零細規模の事業所に普及を促進するため、私どもの出先機関を通じて積極的に財形制度の意義等をPRするばかりでなく、各都道府県ごとに中小企業の労務改善のための連合組織を設けて、ここに中小企業団体自体に普及を委託する。あるいは今度の法案の中身に入っております損害保険の改正案など、これは中小企業をお得意さんに持っておりまして、かなり影響力が高いと思いますので、こういう新しい制度などを生かして全力を尽くして中小、特に零細企業に財形制度の普及促進を図ってまいりたいと存じております。
○田中(慶)委員 せっかくつくられるものでありますから、今後ともこの辺については精力的に、特に中小零細のところに働きをかけて、この制度を活用できるようにお願いしたいと思います。 あわせて、今のお話にもありました金融機関ですね。これはそれぞれ商売していると金融機関との取引があるわけであります。そういう点では、この財形によって収益を上げられる金融機関というのが出てくるわけでありますから、現在の金融機関に対する協力要請というものをもっと徹底してやれば、零細企業であっても財形というものに対する取り組みがもっと促進されるのではなかろうかと思うのです。皆さんのPRも必要であります。出先と言ってもなかなか限られた中でできるわけはないのです。しかし、一番メリットといいますか、日常のデーリーワークの中で、この中小零細企業の人たちが金融機関との取り組みをしているわけでありますから、その辺をもっと積極的に労働省あるいはまた他の省庁との連携をとって、大蔵省でもいい、そういう点も含めて、この辺を積極的にしていただきたい、こんなふうに思いますけれども、その辺に対する考え方をお伺いしたいと思います。
○平井国務大臣 これはもう御案内のように、財形貯蓄が一部零細中小企業等に不十分な面もございますけれども、今日まで順調に一応活用されてまいったのは、まず企業の賃金天引き等の事務負担、また国の税制面からの援助等によるものでございまして、そういった観点から考えましても、これら制度的な裏づけに支えられて蓄積された資金でございますから、今後金融機関に対しましては、制度運営に関して引き続きさらに協力を求めていかなければならぬと考えております。
○田中(慶)委員 ぜひその辺も積極的にお願い申し上げたいと思います。特に今の財形法を改正した結果、持ち家融資の条件やあるいはまた大幅な改善が行われるわけでありますけれども、ここにもやはり一つの問題点があるわけであります。 それはどういうことかというと、手続の簡素化というものをもっとやらなければいけない。今このせっかくすばらしい制度があっても、手続がどうしても複雑であり、お役所の皆さんは利用者の立場で手続をやられていないような気がいたします。そういう点で、もっと事務の簡素化といいますか手続の簡素化ができるようにしていただきたいということを強く要請したいわけでありますけれども、いかがでしょう。
○渡邊説明員 財形の持ち家融資につきましては、さきの国会で融資条件の大幅な改善をしていただきましたが、財形融資については、従来からとかく手続が複雑であるというふうな指摘がなされておりました。この財形持ち家融資の原資は勤労者の貯蓄でございますから、それ相応に慎重な手続が必要かと思いますが、やはり使いやすいものにするということが重要であると思っておりまして、勤労者にとって身近で使いやすい制度になるように現在関係省庁とも協議を進めております。
○田中(慶)委員 これは今の時代ですから、手続の簡素化はある意味では事務の合理化ということにもつながると思いますので、この辺をぜひ推進をしていただきたい。 そこで、実は郵貯の問題で多目的利用あるいはまた年金の多目的利用ということが最近叫ばれているわけでありますけれども、今回この財形残高約十二兆円に達しようとしているわけであります。そういう中で財形の持ち家融資の実績から見ますと、この三分の一くらいはすぐに活用はしないという形になるのではないか、こんなふうに推察をするわけであります。今改めてこれからの福祉ニーズや日本の新しい福祉というものを模索するときに、この際、こういう前提を十分に把握しながら、この資金の新たな活用をすることによって、これは財形の資金の高度利用ということにもなるわけでありますので、この辺をどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
○若林政府委員 財形の資金は勤労者が積み立てた資金でございまして、ただいま先生が御指摘のように、三分の一までは還元融資ができることになっております。その還元融資の中心は住宅でございますけれども、これまた御指摘のように、住宅についての活用が十分に進んでいないという現状でございます。これは先ごろの国会で思い切った改正をしていただきましたので、住宅について大いにPRをいたして活用してもらおうと思っておりますけれども、今後財形は、年金、住宅につきまして大変優遇した税制をとっていただくことになりますと、相当の伸びを示すものと思われます。そうしますと、その三分の一は常に還元融資の対象になるということでございますので、これを勤労者の福祉目的のために使っていくということは、先生御指摘のように、大事だろうと思っております。それには、やはり勤労者のライフサイクルの中でどういうニードがあるんだろうかということ、これをきちっと把握していかなければならないというふうに思います。そういったニードを把握する中で、財形という制度はどんなふうに活用できるか、今後研究してまいりたいというふうに考えております。
○田中(慶)委員 日本は働きバチであるとか、あるいはバカンスが少ないとか、いろんなことを言われているわけであります。まして頭脳集約型産業が今盛んに進められているわけでありますから、そういう点では新たな発想をするために、労働者福祉というものに対する制度上の問題を含めて、この資金の活用というものをぜひやっていただきたい。 そこで、最後になろうかと思いますけれども、円高等によって事実上、賃金の中身は別にしても、日本の労働者の賃金そのものが世界的に高くなったと言われているわけであります。しかし中身はどうだろう。土地、住宅、例えば土地はアメリカの大体百倍とも言われております。住宅は十倍とも言われておる。あるいはまた生活関連物資は五倍から十倍とも言われているわけであります。こういう中で、これからの老後の不安等々高まっている今日でありますし、労働者の皆さんがやはり何としてでも住宅を取得をする、そういう点では、関係各省方面と土地や住宅の政策を含めて連携をとりながら、住宅が持ちやすいようにすることが、財形を運用する面で、あるいは財形の精神に立脚した場合において、これらの問題が、建設省、関係各省との連携をとりながら、土地政策、住宅政策、さらには物価の問題を含めて、住宅、年金の問題の基本的な問題につながっていくのではないかと思います。これに対する労働省としての取り組み等々を含めて大臣にお話をお伺いしたいと思います。
○平井国務大臣 今後我が国は豊かな勤労者生活を築いていかなければならぬわけでございまして、そのためには、やはり雇用の確保、さらには所得水準の向上、これは当然必要であることは御案内のとおりでございますが、さらには労働時間の短縮によるゆとりある生活の確保、さらには今御指摘のございましたような住宅の整備、老後生活を安心して送れる施策の確保など、勤労者生活の質を高めると申しましょうか、その努力が特に必要な時期に参っておると考えております。したがって、労働省といたしましても、勤労者の福祉の向上のために、総合的な面からもこの問題をとらえて、さらに検討、努力、推進してまいらなければならぬと思っております。 財形制度でございますが、これは当面、年金資産の保有や住宅取得を促進することが中心となっておりますが、中長期的な課題としては、勤労者の言うなればライフサイクルに応じたニーズを把握していく。これに基づいて必要な制度の充実に努力していかなければならない。 いずれにいたしましても、税制面、金融面、土地対策、これは各省とも十分連携をとりませんと、一省のみの政策によっては、実現、充実、拡充という点が非常に難しい点がございますので、そういう意味で十分なる連絡をとって、総合的な政策、対策に今後取り組んでまいりたいと考えております。
○田中(慶)委員 最後になりますけれども、要望しておきたいと思います。 実は、この財形というものに対する高度な利用というものを今大臣から述べられました。大臣、来年度は例えば固定資産の見直しがありますね。そしてまた国民健康保険やあるいは健康保険も全体的なウエートが大きくなってきております。等々を考えてみますと、現実に可処分所得というものが労働者の中で大変少なくなっていることは事実なんです。ベースアップもこういう状態であります。そういう中で円高による影響というものもまともに来ております。労働時間短縮を提唱しながら残業の問題を言うのもおかしいかもわかりません。しかし、結果として残業も少なくなっていることも事実であります。いろいろな形の中で労働環境というものは極めて悪い方向に来ているわけでありますから、せいぜい年金、財形等々を含めて、これを労働者の中において充実したものにしていくことが本来の財形の精神になるのではないかと私たちは考えております。そういう点を含めて、資源のない日本でありますし、労働者がもっともっと大切にされるような社会仕組みをこんな形でやっていただく、それが労働大臣としての大きな仕事だと思いますので、その辺をぜひ期待しておりますので、これは要望にしておきます。 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
○堀内委員長 児玉健次君。
○児玉委員 今回の臨時国会で最大の焦点の一つになっているマル優制度の廃止の問題、現在これは他の委員会で並行して論議されておりますが、そのマル優制度の廃止との関連で一般財形貯蓄に課税が二〇%される。先ほどからの論議を聞いておりますと、労働省としてはまるでやむを得ないというふうな形で受けとめていらっしゃるようで、私は大いに驚いております。 先ほどこの制度の成立時の経過について若干の論議がありましたが、私はまず大臣に伺いたいのですが、この制度が社会労働委員会に提案されてかなりの論議がされましたが、昭和四十六年三月十六日、社会労働委員会で財形制度について、既に亡くなられた野原労働大臣と共産党の寺前巖議員との間で議論がありました。その中で、私は寺前議員の発言をここで紹介しようとは思わないのです。野原労働大臣の寺前質問に対する答えの一部を大臣に紹介したいのです。野原大臣はこう言われたのです。 いままでほとんど何もしていなかった勤労者の貯蓄に対して、できるだけひとつ手厚い助成を考えていこう、こう思っておったわけでありますが、遺憾ながら必ずしも出発点にあたっては十分ではない。実は、貯金の貯蓄総額に対してせめてこれを免税にしろというのがわれわれの要求だったわけです。ですからこれは、勤労者財産形成促進法が出発しましても、われわれの当初の願望であった税額控除――ちょっと飛ばしますが、とりあえず年間三十万円ぐらいまでは免税にするとか、将来は三十五万なり四十万、やがては五十万にもなると思います。そういうぐらいの免税もしてあげたい。これを単なる利子非課税というふうな、どうも中途半ぱなことで申しわけないとさえ思っておるわけです大臣のはるか先輩である野原元労働大臣がこのようにおっしゃっています。この点の努力について、その後労働省がどのようになさってきたのか、まず伺います。
○若林政府委員 確かに四十七年の法制定の議論におきましては、財形制度に対する優遇というものをどうするかということは、審議会等で大変な議論になったところでございます。これにっきましては、西ドイツのとっておりますようなプレミアム方式と申しますか助成制度という形をとるか、税制の形でとるかということで随分議論があったものでございます。これは結局税制上の優遇という形をとってまいったわけでございますけれども、その後の改正におきましては、事業主に対する給付金制度というものが取り入れられまして、さらにそれに対する国の助成制度というものも取り入れられております。
○児玉委員 大臣、野原元労働大臣は「どうも中途半ぱなことで申しわけない」という意思まで表明されたのです。ところが今のお答えを聞くと、その後実際にこれはなされていない。私は審議会のことを言っておるのじゃないのです。この社会労働委員会での野原元労働大臣の御答弁は単なるリップサービスだったのですか。
○平井国務大臣 先輩でございます当時の野原大臣がどういう御議論をなさったか詳細に承知しておりません。ただ、委員が今お述べになりました範囲で私が感じましたことは、やはりそれなりの御見識であろうかと考えております。
○児玉委員 まさしくそれなりの見識ないしはそれ以上のものだと思うのです。それに対して労働省がどれほどのことをやってきたか、やらなかったか、そこが今問題になります。 そこで、私は伺いたいのですが、六十二年三月の財形貯蓄のトータルは約十一兆六千億、このように承っております。この中から、従来からある財形年金貯蓄と今回新設される財移住宅貯蓄、それにどのくらいが移行するとお考えなのか、その点について伺います。
○渡邊説明員 本年の三月末で一般財形貯蓄の残高は十兆七千億になっています。この一般財形貯蓄はもともと目的を特定しない貯蓄ということになっておりまして、この貯蓄をしている勤労者の動機とか目的はいろいろなものがあるかと思っています。したがいまして、今回の改正によりまして、どのくらいこちらに移行するかということについては、現在私どもは確定的に申し上げる資料は持ち合わせておりません。
○児玉委員 それではどうも無責任だと思うのですけれども、私たちの方で若干の推計をしてみたのです。もし一般財形から年金、住宅に二〇%が移行する場合、一般財形貯蓄に二〇%の課税ということになれば、七百四十二億四千万円が財形貯蓄に参加されている方に新しい課税として付加されることになる。もし年金、住宅に五〇%が移行するとすれば、利率四%として一般財形の利子に対する二〇%の課税で四百六十四億になる。この推計について労働省はどうお考えですか。
○渡邊説明員 先ほど申し上げましたように、一般財形からどの程度移行するかというふうなことはよくわかりませんので、全く仮定のこととして試算をしてみますと、今先生おっしゃいましたが、住宅貯蓄、年金貯蓄も五%の課税になるという前提で私ども試算してみますと、二〇%が一般財形から住宅、年金貯蓄に移行しました場合には、およそ七百三十億程度の課税になるかと思います。また五〇%程度が移行した場合には、約五百四十億程度の課税になるのではないかというふうに試算をしております。
○児玉委員 住宅と年金の方は現在五%ということになっておりますが、それは他の委員会で今論議されているわけですが、その両方を合わせると、今課長がお答えになったことと私たちの推計は大きな違いがありません。 マル優廃止、これによって全国民に対して新しく一兆六千億円の課税が加わることになります。四人家族で約五万円ということになる。そういう中でのこの一般財形貯蓄に対する二〇%の課税なんですから、これは財形貯蓄制度の持っている制度としての根幹、それとの関連を深く考えてみなければならない、私たちはそう考えるわけです。 そこでお伺いしたいのですが、昨年十一月に出された勤労者財産形成審議会の建議の中で、財形貯蓄及び財形年金貯蓄の利子非課税制度は堅持すべきである、制度の根幹として堅持すべきである、このように建議されておりますが、労働省としては、この建議に同感されますか。
○若林政府委員 昨年の秋から十一月にかけまして財形審議会でもこの問題がたびたび議論になったわけでございます。そしてただいま先生御指摘のような建議をちょうだいいたしました。私どもは、その建議に従いまして、各方面と議論を重ねたわけでございます。最終的には、国の税制改正の中で、少額貯蓄非課税制度につきまして、全般的にこれを廃止していくという方針が出たわけでございます。これはいろいろ悪用の問題等もございますけれども、また大変大きい所得について現在非課税にある、これをどうするかという議論の中での結論でございますので、財形制度もやはり少額貯蓄非課税制度の枠内で構成されているものでございますから、勤労者の一番関心の深い住宅、年金について思い切った税制上の優遇が講じられるのであれば、これはやむを得ないと判断したわけでございます。
○児玉委員 労働省は長い間財形貯蓄制度についてさまざまな御努力をなさりながら発展させてこられたと思うのです。先ほども先輩議員の御質問の中で、今部長からお話があったマル優制度の廃止、そしてその理由の一つ、中曽根首相によれば不正利用をなくすためだ、こういうことが論議されました。 それではもう一つ、私は今の部長の御答弁との関連で聞きたいのです。 先ほど紹介した昨年十一月十一日の勤労者財産形成審議会の建議の一節でございます。「財形貯蓄及び財形年金貯蓄については、事業主による賃金天引、払込み代行等によりきわめて厳正に非課税限度額の管理が行われている」こう指摘しておりますね。そうなりますと、イエスかノーかで答えていただきたいのですが、財形貯蓄というのはいわゆる不正利用の余地があるのかないのか答えてください。
○渡邊説明員 財形貯蓄制度におきましては、事業主が限度額の管理を行うシステムになっておりますので、不正利用の余地はないと思っておりますし、また過去におきましても、不正利用の事実があったとは聞いておりません。
○児玉委員 大変明快な答弁ですよ。不正利用の余地はないですよ。そうしたらどうしてこのマル優制度の廃止のとばっちりというか、それが持ち出してきた新しい課税制度で、この財産形成貯蓄制度がスポイルされなければいけないのか、そこの点について明確なお答えをいただきたい。
○若林政府委員 先ほども御答弁申し上げましたけれども、この少額貯蓄非課税制度をどうするかという議論に当たりましては、これが悪用されているということがたびたび議論になりました。これも一つの理由であろうかと存じます。 さらに、もっと基本的なことは、大変に大きな利子所得というものが、十二、三兆というような大きな利子所得というものが非課税であるという問題でございます。これについて、今回少額貯蓄非課税制度につきましては、老人とか母子家庭、こういったようないわゆる社会的な弱者という方々を除いては廃止するという結論になったわけでございまして、そうなりますと、ではサラリーマンはどうするかということでございます。サラリーマンにつきましては、財形制度というものがございまして、サラリーマンはやはり資産の形成が立ちおくれている層でございますから、サラリーマンについては財形制度について優遇措置を講じてもらいたい。しかし、それもやはり国民の他の各層とのバランスが必要でございますので、サラリーマンの一番関心のある住宅と老後のための年金、これについては思い切った優遇措置を講じるという形でこの問題が整理されているということでございます。
○児玉委員 この点を私は明確に聞きたいのですが、労働省がこの財形貯蓄制度を育てようということで、さまざまな困難な条件、例えば行政改革その他、そういった中で、今回皆さんが提案されている転職前の金融機関から新勤務先での取り扱い機関への預けがえを認める制度、私たちはこれは改善だと思っております。皆さんの御努力がこういう形であらわれていると思うのです。そういう御努力をなさるのであれば、住宅、年金だけでなく、一般財形貯蓄も非課税にすべきだ、これがこの制度の根幹なんだと言ってなぜ大蔵省や首相に迫らないのですか。そのことについて答えてください。
○若林政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、こり問題につきましては、昨年の秋の段階で大いに議論を尽くしたところでございますし、私どもも主張すべきところは主張したわけでございます。そういった中で、中堅サラリーマンの大幅な所得減税というものも含めました全体の税制改革の中で、少額貯蓄非課税制度は廃止する、しかし勤労者については、その資産の形成の立ちおくれが見られるので、年金と住宅については優遇措置を講ずるという結論でございます。これは税制改革全体の中でやむを得ないというふうに判断したわけでございます。
○児玉委員 大臣、これはちょっと繰り返すようなのですが、大臣にお伺いしたいのです。 先ほど私が紹介した勤労者財産形成審議会の建議、去年の十一月十一日なのですよ。去年の十一月十一日といったらどんなことが起きていた時期であったか、これは御記憶だと思います。自民党の中で売上税の問題とマル優制度廃止の問題が自民党税調を中心にして非常な勢いで論議されていた時期なのですよ。そういった時期の中で、勤労者財産形成審議会があえて建議の中で、財形制度の根幹は財形貯蓄及び財形年金貯蓄の利子非課税制度である――当時は三つに分けてないのですよ、その二つしかなかったのだから。その根幹が利子非課税制度であると言って建議しているのに、なぜ労働省はこの建議を尊重する立場で、大臣を先頭として頑張らなかったのですか。聞かせてください。
○平井国務大臣 一般論で申し上げまして、この政策目的から考えましたら原則非課税である、この建議でお述べになるまでもなく、我々もそれはそのような形で理解しておりまして、昨年秋の、全般の議論が白熱いたしました税制改正の中でも、我々はその建議を踏まえて努力をいたさなかったのではなくて、それなりの主張をし、財政当局ともまた党部会等ともいろいろな折衝を重ねたわけでございますが、今政府委員からも答弁申し上げましたように、税制改正全般の中で、やはり少額貯蓄の非課税制度は廃止するという論議や、それは廃止されては困るという議論のやりとりはございましたけれども、先ほど来答弁申し上げておりますように、単に悪用というのみならず、やはり国民各層とのバランスという中での一つの選択であったかというふうに私は考えております。
○児玉委員 一方で労働省は、この制度を育てようとする努力が私には理解できます。そこで今大臣のお答えになったことについては、最後に触れたいのですが、先ほど同僚議員からお話のあった六十五歳以上の高齢者の問題、これは寡婦、身体障害者、この人たちも同様のことになりませんか。そうすると、さっき部長がおっしゃった六十五まで続けて職にあるということは少ないからという議論は、未亡人の方や身体障害者については適用されませんね。そうなってくると、これはせっかくの財形制度の制度上の瑕疵ということになりませんでしょうか。お答えいただきたいと思います。
○若林政府委員 先ほどは六十五歳の方のことを申し上げました。先生御指摘のように、母子家庭の母の方、障害者の方、この方々については非課税の優遇措置が講じられるわけでございます。したがいまして、まずこういう方々は非課税の枠を十分に使って貯蓄をなさるだろうと思います。こういう方々、高齢の方々や障害をお持ちの方々は、基本的な物の考え方としてやはり所得が少ない。したがって、そういう所得が少ない方の貯蓄を優遇するということでございまして、実態としては、こういう方々についてはこの制度が優先的に活用されるであろうというふうに思います。
○児玉委員 時間ですから――。 今おっしゃったのは説明にならないわけでして、一般財形貯蓄については、この人たちはやはり課税をされるのですよ。そこのところがどうなっていくかということは制度上としてもあると思うのです。 そこで私は、最後に大臣に心から要請したいのです。一般財形貯蓄への二〇%の課税、これはマル優廃止によって持ち出されたものです。ある意味では財形貯蓄がとばっちりを受けているのですよ。そうであれば、もし皆さん方が勤労者のためにこの制度が重要だと引き続きお考えになるのであれば、マル優制度を残すように、マル優制度の廃止を撤回するように中曽根首相、宮澤大蔵大臣に労働大臣として申し入れていただきたいのですよ。いかがですか。
○平井国務大臣 少額貯蓄非課税制度を廃止するかどうかというのは、一連の税制改革の中の非常に根幹に触れる部分でございまして、これは内閣として、また党として、このたびの一つの選択であろうかというふうに考えております。 では労働省としてはどうかということになりますと、やはり全般の改正の中で勤労者の立ちおくれております資産形成について、今後どれだけの優遇措置がとり得るかという、あくまでも枠内において今後の拡充、さらなる優遇措置を今後主張し努力してまいる、私はこのように考えております。
○児玉委員 それでは非常に不満で、この制度の将来のためにも惜しまれてならないということを述べて、私の質問を終わります。
○堀内委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。 この際、暫時休憩いたします。 午後零時一分休憩 ――――◇――――― 午後一時二十四分開議
○堀内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 第百八回国会内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。平井労働大臣。 ――――――――――――― 労働基準法の一部を改正する法律案 〔本号末尾に掲載〕 ―――――――――――――
○平井国務大臣 ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 労働基準法に定める労働時間に関する規定等は、昭和二十二年に制定されて以来改正されることなく今日に至っておりますが、この間、我が国の経済社会は未曾有の発展を遂げ、二十一世紀に向けてさらに大きな変化が予想されているところであります。 このような状況の中で、労働時間の短縮は、労働者の福祉の増進、長期的に見た雇用機会の確保等の観点から重要であるのみならず、特に最近においては、経済構造の調整、内需拡大等の観点からも、重要な課題となっており、国際社会における我が国の地位にふさわしい労働時間の水準とする必要性が高まっております。 労働時間の短縮は、労働生産性向上の成果を労働時間短縮にも適切に配分すること等により労使の自主的努力によって進められることが基本でありますが、我が国においては、労使の自主的努力のみに期待することは困難な事情もあり、あわせて適切な法的措置をとることによって労使の自主的努力を補完し、その促進に資することが必要であると考えられます。 また、労働基準法制定当時に比して第三次産業の占める比重の著しい増大等の社会経済情勢の変化に対応して、労働時間に関する法的規制をより弾力的なものとすること等も必要であると考えられます。 このため、政府としては、かねてから中央労働基準審議会において労働時間法制等の整備について検討をいただいておりましたが、昨年十二月、同審議会から建議をいただきましたので、この建議に沿って法律案を作成し、同審議会にお諮りした上、ここに労働基準法の一部を改正する法律案として提出した次第であります。 次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。 第一は、法定労働時間の短縮であり、欧米諸国において社会的実態として定着している週四十時間労働制を法定労働時間短縮の目標として明らかにするとともに、他方、我が国の労働時間の実態等を考慮し、当面の法定労働時間については、週四十時間労働制に向けて段階的に短縮されるよう命令で定めることといたしております。なお、中小企業等については、法定労働時間の短縮に当たって一定の猶予期間を設けることができることといたしております。 第二は、労働時間に関する法的規制の弾力化であり、第三次産業の占める比重の増大等の社会経済情勢の変化に対応し、また、労働時間の短縮に資するため、労使協定の締結等一定の要件のもとに、フレックスタイム制、三カ月単位の変形労働時間制、一週間単位の非定型的変形労働時間制を認めることといたしております。 第三は、年次有給休暇制度の改善であり、年次有給休暇の最低付与日数を六日から十日に引き上げるとともに、労使協定により計画的付与ができることといたしております。また、パートタイム労働者等所定労働日数が少ない労働者に対する年次有給休暇については、通常の労働者の所定労働日数との比率に応じた年次有給休暇を付与することといたしております。なお、年次有給休暇の最低付与日数の引き上げについても、中小企業については一定の猶予期間を設けることといたしております。 その他、労働者が事業場外で業務に従事する場合等における労働時間の算定について、合理的な算定方法を定めることといたしております。 また、賃金について、一定の確実な支払いの方法による場合には、通貨以外のもので支払うことができることとするほか、退職手当について、就業規則の記載事項の整備を図るとともに、退職手当請求権の時効の期間を延長することといたしております。 最後に、この法律の施行期日は、周知に必要な期間を考慮し、昭和六十三年四月一日といたしております。 以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。 何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○堀内委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 ―――――――――――――
○堀内委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤忠治君。
○伊藤(忠)委員 質問をさせていただきます。 新前川レポート、非常に注目を浴びた建議でございますが、この中身を読んでみますと、労働時間短縮の項がございまして、まず最初に、我が国の労働時間の実情がどうなのかということを手短に言っております。つまり、「我が国の年間総労働時間は二千百時間台となっており、フランス、西ドイツの千六百時間台、アメリカ、イギリスの千九百時間台を大きく上回っている。」このように現状を指摘しまして、三項で、したがって「政策目標としては、少なくとも一九九〇年度年間総労働時間二千時間を達成することが既に設定されているが、さらに、二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に、現在のアメリカ、イギリスの水準を下回る一千八百時間程度(例えば完全週休二日制実施、有給休暇二十日完全消化のケースにほぼ対応)を目指すことが必要である。」さらに項目が続いていまして、四項では「年次有給休暇日数の引上げ」、そうして「休日増を中心に進めていくこと」、さらに次の項では、「先進国としてふさわしい労働時間の水準を実現するためには、」「中小・零細企業への指導を積極的に進める」、「波及効果の大きい公務員、金融機関等の週休二日制をこれまで以上に積極的に進めていく必要がある。」こういう内容になっていることは大臣も既に御承知のとおりだと思います。 先日の衆議院本会議におきまして、我が党の永井議員が質問に立たれました。中曽根総理に対して党を代表して質問を行われたわけでございますが、それに対する総理の答弁は、新前川レポートに示された内容は政府の統一した考えである、このように回答をされているわけでございます。当然労働大臣としても、このような考え方、こうした政策のもとに、そういう考え方のもとに今回の法改正に臨まれていると考えるわけですが、大臣の所見をまず伺いたいと思います。
○平井国務大臣 その点につきましては、ただいま委員のおっしゃいましたとおりでございまして、新前川レポート等にございますように、順次労働時間を短縮していく、そしてまた、この労働時間の短縮だけが最終目標でございませんで、それを短縮することによって当然のことながら国民の生活パターンも大きく変えていかなければならぬ、その生活パターンを変えていくことによってさらに生活の質的な向上と申しましょうか、これを実現しなければならぬというふうにレポートは指摘しておるわけでございまして、私どももその方向に沿って最大限の努力をいたしたい。したがって、そういう一連の中で、当然労使間の今後の引き続いての自主的な努力もさることながら、なかなか進みにくい面もございますので、一部改正ということでこのたび提案をいたしたわけであります。
○伊藤(忠)委員 私は、国内外の情勢を大局的に見ますと、年間千八百時間程度というこの水準、これは例えば、既に御承知だと思いますが、労働団体が統一目標としております一九九三年度、来年から始まったとして五年後ということに相なりますが、一九九三年度までには何としても実現しなければならない、このように私自身は考えているわけであります。特にこの完全週休二日制というものを、千八百時間に近づけていく段階としてどうしてもそのことが必要なのでありますから、三年後には完全週休二日制、最低でもその実現を図ることが必要だと考えているわけであります。 今回の改正案では、一週四十時間にする、こういうことになっています。ところが、実際には附則で段階的に近づけるという抽象的な表現になっているわけでありますけれども、たしか法案が提出をされました時点、三月九日だったと思いますが、労働省としては、四十時間が目標なんだけれども、当面は四十六時間、これで出発をして、三年後には四十四時間制に移行をしていくということが現実的ではないかというような考え方をお持ちであったように私は聞いているわけですが、そういう考え方というのは、これは四十時間達成を目標に置きながら余りにも取り組み方としては緩慢ではないか。つまり、今回の法改正でも四十時間制はうたっているのですけれども、今申し上げましたような考え方が一方で出てくるということは、いつになったら四十時間制が我が国に施行されるのか、極めてこれは不明確であろうと思いますし、そういう法改正のやり方というのは、事実上四十時間制を文字づらはうたっていますけれども棚上げしている、こう言っても間違いじゃない、私はこう思っているわけであります。したがって、年休付与の項目を見ますと、これは現行は六日、それを十日に引き上げる、さらに一定の勤続年数がたてば一日ずつ積み上げていって二十日、中小の場合には一足飛びにいかないでしょうから少しくその達成の期間を緩和していこうというように、そのプロセスが具体的に法文化、明文化をされているわけですが、年休の項でそのようにやられておりながら、肝心の幹である労働時間そのものについて、四十時間という柱は打ち出しながら、その到達のプロセスは全然具体的なものが明らかにされていない。これは一体どういうことなのかという点についてお伺いをしたいと思います。
○平井国務大臣 おっしゃいますことは理解できないではございませんが、御案内のように、このたびの法案は、本則に四十時間と規定して、後、段階的にやっていく、当面四十六時間。ただ、今委員もおっしゃいました中小企業等の実態を見てみますと、やはりなかなか一瀉千里に四十時間到達というのはこれは決して適当でないと我々思うわけでございまして、これは御案内のように、労働基準法で定める法定労働時間というのは、すべての事業場に罰則つきで強制されるものでございまして、実態とかけ離れたものでございますことは適当でない、そういう意味で、例えば週四十時間制にいたしましても、相当程度普及した状態を前提にしなければならぬのでないかというふうに考えておりまするし、さらには、この労働時間そのものが賃金問題も含めまして言うなれば労働条件の非常に労使間で協議すべき重要な問題でございまするし、やはりそういう意味で、そこには労使の努力といいましょうか、これは当然必要でございますし、さらに経済情勢等も全く無視できないわけでございまして、そういうふうな経済情勢に左右されるものでもございますので、おっしゃいますことは私なりにある種は理解はできますものの、現時点において、労働時間短縮のプログラムと申しましょうか日程を明確にするということは、なかなかそれを見通すのは困難でないかなというふうに考えております。
○伊藤(忠)委員 どうも答弁を聞いておりまして納得できないのですが、私はこう思っているわけです。少なくとも四十時間を目標にして当面四十四時間制でスタートすることは可能でないかと思っているわけです。なぜか。実態を見ますと三百人以上は三十九時間五十分、五十人から三百人規模の会社で言えば小さいところだと思いますが、こういう規模のところでもお聞きしますと四十四時間制、大体その辺はいっている、こういう実態なんです。そうすると、この実態を踏まえてスタートするということになれば、四十四時間制でまずいって、三年後には四十時間制に移行することが可能ではないかと私は思っているわけです。反論が出てきそうな気がしますけれども、労働省の方針というのは大体私はわかりますので。しかし、我が国が置かれております内外の情勢からすれば、ある程度実態がそこまで来ておれば、これを牽引車の役割で国の政策として前に出るという、基準化を図るということは積極的にそのようにやらなければいけない立場に今の日本というのは置かれているんじゃないでしょうか。政府は、週所定労働時間の現状などを考えますと、今も大臣から御答弁いただきましたように、刑罰を伴います強制的な法規なものですから、あるいは中小企業の置かれた経営環境などを考えるとそうは一挙にいかぬということが必ず反論で出てくるわけですが、過去十数年の経過を見れば、程度はともかくとして、法律による強制をしなければ時間短縮が現実には進んでこなかったというのが日本の実態ではないかということを私は強調したいわけでございます。 御承知のように、一九七九年八月に閣議決定がなされました第四次雇用対策基本計画がございます。これと翌年の八〇年に労働省が決められました週休二日制等時間短縮五カ年計画というものがあります。これはセットであったと思うのですね。そして何とかそのように進めていこうということで御努力なさったわけですが、実際はそうはいかなかった。そうはいかなかったから、一九八五年六月に労働省が出されました「労働時間短縮の展望と指針」、こういうふうになっていったと思うのですね。思うようになかなか進まない。ですから、こういう一連の経過を見ましても、今回の法改正をやって法的に強制力をそこに持たせていってその実態をさらにレベルアップを図っていくという、言うならばそういう手法をとられたんだと私は思っておるわけですが、こういう私の認識が労働省と合うのかどうか、労働大臣、どうお考えでございましょうか。
○平賀政府委員 先生がただいま非常に明確に御説明された趣旨、私どもが今回労働基準法の改正に踏み切った趣旨と非常に合致していると存じております。
○伊藤(忠)委員 そこで、当たり前の質問なんですが、四十時間制を実現するということは完全週休二日制をまずやらなければいけない。それが前提になりませんと、最初に申し上げました新前川レポートで急いでやらなければいかぬと言われている年間一千八百時間程度という目標の達成は困難であろうと思うのですが、これについてどうお考えでありましょうか。
○平賀政府委員 新前川レポートで千八百時間という提言をされている基礎には、完全週休二日制の普及定着、言いかえれば週四十時間の労働、そういうものがその根拠でなければいけないというふうに理解をしております。
○伊藤(忠)委員 当然そういうことになるわけでして、ということであれば、それの実現の具体的なプロセスを示されて当然なのにどうして出てないのか、示されるべきではないか、こういうことを私は尋ねているわけなんです。
○平賀政府委員 先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、労働基準法はいわば一人でも人を雇う事業場に罰則つきで最低の労働基準を強制する、こういう性格のものでございます。そういう見地からしますと、現実に罰則を適用される対象等につきましては、中小企業、特に小さな規模の事業場の現実の労働慣行、現実の状況について考慮しなければいけない。そういう意味で、この提案をいたします前段階で、労使も入りました中央労働基準審議会でその問題について非常に濃密な御議論をいただき、その御建議を基礎にして御提案を申し上げた次第でございます。
○伊藤(忠)委員 どうも答弁がすれ違っていまして、私は千八百時間の具体的なプロセスを明らかにしてくれと言っているわけです。ですから、とは言われるけれども罰則云々と、横に行ってもらっては困るわけでして、あなたが今答弁なさった、法律で強制しなければ現実に時短が進まないというこれまでの一連の経過もこれは理解できるとおっしゃって、肝心なところへ来ますとなかなかうまくすり合わないわけです。いずれにしても私たちがここで強調をしていますのは、到達目標とそのプロセス、そのプロセスがないから問題にしているのですが、プロセスを法律で明確にすることの意義、これは言わんとするところは理解いただけると思うのです。現実にそれがどこまで盛り込めるかというところがやはり議論の焦点だろうと私は思っているのですが、そういうことを明らかにイニシアチブをとった格好で政府がやられないことには、実態論の積み上げで何か自然にそうなれば、それに乗っかって政府が一つの社会的な規範としてこういうものをつくっていくという消極的な姿勢では、結局時間短縮そのものが進んでいかないということははっきりしているわけです。とりわけ中小企業の場合には置かれている条件が大企業と比べて厳しいわけですからね。そこに、ここまで来なさいという行政指導、政府としての法律をきちっと決めて指導していくということが基本にないことには現状の問題解決にならない、私はこう思うわけであります。 御承知のように、中小企業が置かれている状態は非常に厳しいのですけれども、しかし日本の中小企業を見ていますと、あの円高不況の状況の中でもそれを乗り切ってきているじゃないですか。例のオイルショックだって見事に乗り切ってきているわけです。そうすると、乗り切ってはきたけれどもまた今日の円高不況で厳しいから、景気に対応する経営体質を絶えず改善合理化をしていかなければいかぬ、時短どころじゃない、こう言われますけれども、労働者の労働時間を中心にしました労働条件のレベルアップを図っていかないことには、結局競争力が強まって貿易摩擦が起きて円高不況という格好で自分がかぶるわけですから、私は悪循環だと思うのです。そこのところを断ち切っていくためには、政府がきちっとした方針のもとに、政策のもとにそれを引っ張って引き上げていってやるということが何としても必要なのではないか。つまり誘導効果、時短の促進効果というものをそこに求めなければいかぬという、今日非常に重要なところに来ているのじゃないか。だから私は、プロセスを明らかにしていただきたい、それが一番適切な方法ではないかとなお念を押して聞くのですけれども、どうでしょうか。
○平賀政府委員 我が国の労働時間の実態あるいは我が国の対外的あるいは国内的な労働条件の問題について、私ども率直に話させていただければ、非常に難しい問題についての御質問だと思います。 我が国の立場からしますと、完全週休二日制あるいは週四十時間労働制というのはもう少なくとも必要な条件になっている。しかし、現実に中小企業等の実態を見るとなかなかそういう状況になっていない。特にここ十数年来、そういった経済環境が悪かったこともあってなかなか労働時間の短縮が進んでいない。それに対してどういう対策をとるべきか。一つは、理想的な状態を実現するために、先生はそのプロセスをはっきりさせてそれの筋道を示せという御議論ですが、また一方では、現実に中小企業の実態から見て、最低基準という労働条件、労働基準法の労働時間の規定はどうするか。改正すべきではなくて、やはりそこはそのままにしておいてという御意見も一方にはございましたし、今でもあるかと思います。しかし、私どもとしますれば、先ほど私は罰則の適用される部分についてはやはり現実的な考慮が必要だと申し上げましたが、今回提案している労働基準法では、三十二条の原則を四十時間に改めました。言いかえれば、先生のおっしゃる誘導効果を、労働基準法の中に四十時間と書いたということは、やはり常識として、あるいは一人でも雇う事業所について、この四十時間労働というのは必要である、そういう見地から労働基準法の中にその規定を入れさせていただいたわけでございます。そして、ただ、それを適用する上においては、中小企業等の現実を考慮して段階的に引き上げよということで、それを政令にゆだねているわけでございます。 また一方で、先ほどから御議論になっております新前川レポートでは、やはり四十時間が必要だ、その時期は一九九〇年代のできるだけ早い時期にということで、これは一種の政策目標を明確にしている。その政策目標を実現するための手段として四十時間制を法律三十二条に書き込んで、段階的に最低基準を引き上げていくという形で今度の労働基準法を成立させていただき、それを運用することでその政策目標を達成し得ると私どもは考えておりますし、そういう見地からしますと、新前川レポート等にある程度の政策実現の目標というのが具体化されておりますので、先ほど総理大臣の御答弁を引用されましたけれども、それらは政府全般の統一的な政策目標と考えて、もちろん労働省ばかりでなくて、各省とも協調しながら、また労働省としては、その一つの重要な手段として労働基準法を運用するという形でこの政策目標を実現させたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○伊藤(忠)委員 御答弁を聞いていて、物事のとらえ方は何かそうすれ違っておるようには私は思わないわけですね。新前川レポートがああいう、私に言わせれば、これまでのあれからしますと画期的なものが出たわけですね。しかし、新前川レポートの土壌をつくったものは、労働省の中でも研究会があり、中央審議会が建議をされるという、そういうものの言うならばベースがあって、我が国が最近はっきり追い込まれているのですね。そういう状況に立たされて、さあ、どうこれをクリアしていくか、打開していくか、こういうことだったと思うのです。 新前川レポート、メンバーを見ますと、労働界から参加している方というのは一人か二人ぐらいですよね、分科会なんかに分かれていますが。あとは、学識経験者というのは大体四、五名か六、七名です。そのほかの皆さんというのは財界なんですな。財界の皆さんが圧倒的に多いのです。そういうメンバーの皆さんの議論の集約として、結論がこういう格好に出てくるという今日の実態なのですね。それを私は重く見たいと思っておるのです。 これが例えば十年前だったら、どうでしょう、こんな格好で出なかったでしょう。それはもう、どうにも立ち行かぬ、つまり我が国の労働基準というか労働条件、これが先進諸国と比べて余りにも立ちおくれ過ぎているということはだれが考えても明白なんです。 本来ならば、中曽根さんはベネチア・サミットに行かれてマル優なんか約束することはないのですな。マル優が今一番大事なんじゃなくて、一番大事なのは労働時間。日本の労働者の労働時間は四十時間を早急にやるように私は皆さんに約束いたします、と胸を張って帰られた方がよかった。そうしたら、これはこんな格好で出なかったでしょう。もっと進んだ格好で出たんじゃないですか。マル優なんか言って帰るものだから、今与野党でもめているのです。そういうことをやるよりも、総理としてはむしろ、外国に対して、貿易摩擦なり市場競争の問題の解決は労働者の労働時間をこのように短縮する、そのようにこれからはレベルアップを図っていきます、そういう国際的な公約を私はしてほしかった。ああいうやられ方というのは、問題のとらえ方が全く間違っているんじゃないかと私は自分で思っておるのですが、これは余談ですけれども、そういうことだと思うのです。 だから、そういう状況の中でこれが出てきたのですから、労働省としては、実態を見れば中小零細企業のことが頭に行くでしょうけれども、それにしても、当面四十六時間からというのはいただけないじゃないか。実態的に言うたって四十四時間から出発できる、大多数は今そういう労働時間の現状になっているのではないかと私は把握をしているわけです。実態的に見て多少無理があったにしても、そこのところを引っ張っていくというのは、いい方向に引っ張っていくのですから、それが労働行政としては今発揮をされなければいけない。また、労働者全体がそのことを何よりも今望んでいるときじゃないか、こう思うわけです。どうでしょう。
○平賀政府委員 一つは、今の労働時間の実態がどうなっておるかということで、非常に平均的な数字を見てみますとほぼ四十四時間ぐらいになっている。しかし、実際にその辺のところを見てみますと、日本の就業構造あるいは事業所構造と言うべきですか、それはほとんどが中小零細企業で占められておって、したがって事業所単位で見ますと、半分以上はまだ四十八時間に週所定労働時間がとどまっているという実態でございますし、平均して四十四時間弱になっているといっても、労働者の数で見てみましても、事業所で計算するともっと多いのですけれども、四十四時間に達しているところというのはまだ三〇%ぐらいしかなっていない、それ以下のところが七〇%ということでございます。したがって、強制的に罰則つきで適用するというレベルを四十四時間にするというのはなかなか難しい、こういうことで審議会等でも御判断いただいたというふうに考えております。
○伊藤(忠)委員 時間の関係もありますから次に移りますけれども、時間短縮を実施促進をするということがワークシェアリングに効果があるということは、これはもうだれもがそのことを認めているわけでございまして、そうでなくても今日失業が大変な問題になっています。減るというよりもどんどん今日までふえてきたわけですが、雇用機会の創出を図るためにも時間短縮を進めなければいけない、こういうことなんでありまして、我が国の雇用情勢というのは、戦後の混乱期を除いたら今最悪の事態でもあります。統計とか数はとり方によって多少違うにしましても、いわゆる公的な統計で三%、数にして百八十万を超える、こういう実態なんでありまして、だから政府としても、第五次雇用対策基本計画というのを閣議決定されて、六十五年度には失業率を二%程度を目安として、さらにそれよりも低い水準にこれから取り組んでいこうということを決められているわけですね。その点から考えても、時間短縮というのを、現状の一番底辺を見ておってそれに引きずられる格好で、現状固定のような対策ではこういう問題の解決はできないと私は思うのです。積極的にどう引っ張り上げていくかという、雇用対策の面から考えても、時間短縮の促進というのは何としても今必要なところにきている、こういうことをさらに強調したいわけであります。 我が党は、この三月に五十万人の雇用創出プランというものを発表したわけでございますが、これは御承知いただいていると思います。その中身というのは、時間短縮によって新たに雇い入れられた企業に対しては賃金の助成制度の創設、こういう発想でございますけれども、つまり時短をやった、人が要る、新たに労働者を雇われた、そうしたら一年目は三分の二の賃金補助、二年目は五〇%、三年目は三分の一、三〇%、逓減方式になりますけれども、そういうふうにして、国が雇用確保・拡大の面でも角度を変えた助成制度というのを並行してやっていくといういろいろな施策の手が打たれないことには、つまり一面的な対策で時短の促進を図るということじゃ不十分なんですから、そういうことも私たち主張しているわけでして、これからも取り組んでまいりたいと思いますが、これは御承知のように、フランスなんかのミッテラン政権のもとにおいては、保険料の免除制度、こういうものも時短と雇用促進をセットにした政策として実行に移されているわけでありますけれども、こういうことも含めて、政府としては、労働省としては考えていかれるということがこの時期において極めて必要なんじゃないか、重要なんじゃないか、私はこう思うわけですが、どうでございましょう。
○平賀政府委員 時間短縮につきまして、例えば一つの企業で今まで四十八時間の労働を四十時間にするということそれ自体、もし賃金が同じであるとするならば非常にコストの増大が伴うもの、あるいはそれだけの生産性の上昇が必要である、こういうことであろうかと思います。そういうミクロの立場からしますと、それをさらに雇用の拡大に結びつけるという意味ではもう一歩コストの上昇が必要だ、したがってそれに助成をしてはどうかというような御質問の趣旨かと思いますが、一般的に言って、時間短縮をするということが直ちに直接に雇用拡大の効果に結びつくかどうかについては、そういうことを考えますとなかなか難しい問題もございます。それから諸外国の経験などでも、現実にいろいろな措置をとっていることも御指摘のとおりでございますけれども、結果として失業問題の解決に結びついているというさしたる証拠というか、それはなかなか挙がらないというのが現実であろうかと思います。 しかし、御指摘のように直接的な補助をするかどうかは別にして、時間短縮を我が国で進める場合に一番難しいのはやはり中小企業、零細企業であろうかと思います。そういう企業ないしはその企業グループに対してできるだけ時間短縮を促進するように私どもとして指導、援助すること、これは現在も若干の規模でやっておりますけれども、今後それらの対策を大幅に拡充するとか、そういう問題についてさらに検討することは必要ではないかと考えております。 いずれにいたしましても、中小零細企業等について具体的に時間短縮を促進するための対策は、私どもとして積極的に検討していかなければならない課題と考えております。 〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
○伊藤(忠)委員 私が申し上げたのは、これは一つの助成制度の方法であります。それだけではなくて、幾つか多面的な政策が必要なことは言うまでもないと思っております。とりわけ、おっしゃる零細企業なんかは大企業の下請というのが非常に多いと思いまして、そういう厳しい状況で経営なり仕事を、生産活動をやるわけですが、それだけに一方で、時短だけ言うんじゃどうしようもないわけですから、保護措置について積極的な対策が必要であるということはもういつも言われていることなんです。そういう立場から、労働省としては主管庁でありますから、公取委が最近流通関係の企業に対して、これまでは時短を一斉にやる、休日を一斉にやる、そういう立場になかなか立たなかったわけですが、あの記事によりますと、それはよろしい、公取委としてはこのことについては時短を積極的に進めるという立場で方針を転換されたわけですね。というようなことがありますように、やはり公取委に対してもあるいはまた通産省に対しても、そういうものをあわせて積極的にひとつ取り組んでいただきたい、私はこのように思っているわけでして、特段答弁は要りませんけれども、そのようにお願いを申し上げたい、かように思っているわけであります。 次の時短促進のための大きな施策として、何としてもこれは、私たちとしても問題にしなければいけないのが金融、公務部門の役割の重要性であろうと思っているわけであります。お聞きしますところ、就業労働者が四千三百万、金融、公務部門に働く労働者の数が約一千万といいますか、こういう実態を見ますときに、金融、公務部門の皆さんの時短促進に果たす役割といいますか波及的効果というのは非常に大きい、私はこのように思うわけであります。 それで、先般総務庁がサミット参加六カ国を対象にされまして、諸外国の行政機関の開閉庁状況等調査結果、ここにございますが、これを発表されました。この中身を見まして思うのですが、総労働時間であれだけの開きのある日本ですから、何を比べても大変立ちおくれているということは想像していたわけですが、こんな実態になっているわけです。サミット参加六カ国を対象として在外公館に依頼をされて調査がまとまったわけですが、イタリア以外の五カ国はいずれも完全週休二日制を採用している。そして、五カ国においては閉庁方式の導入は週休二日制の導入と同時並行的に進められている。五カ国においては一部の例外、つまり小学校、中学校などがフランスやドイツにおいては例外に入っており、あと郵便局がアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツで入っておりますが、そういう一部の例外を除けばおおむね土曜日には閉庁をされている。民間についても各国ともおおむね、病院、銀行は土曜・日曜休業、デパートは日曜日のみ閉店という状況である。これを総務庁の人事局がまとめられているわけであります。 これがざっとサミット参加六カ国の現状なんでありまして、それと比べると日本の公務部門、金融部門も含めてそうなんですが、いかにもおくれているということを指摘せざるを得ません。公務員のこういう時短、閉庁そのものがこのようにおくれたというそのもとは何であったのかということですが、これは今日まで民間準拠方式がとられてきた、そこにあるのではないか、これも一つの大きな要因じゃないかと私は思っているわけですが、こういう物の考え方、民間に準拠して公務員の皆さんの時短やあるいは閉庁問題を考えていくというこの考え方の転換を図っていただきたい、こう思うわけであります。でなければ、民間の皆さん、とりわけ労働省が強調されます中小零細の皆さんの、言うならばそういう置かれた条件を克服しながら全体についていこうという、そういう周辺の条件を確立していくためにも絶対このことが必要だと私は思うのですが、労働省、どうでしょう。
○平賀政府委員 公務員等の週休二日制あるいは土曜閉庁の普及状況、最近総務庁が発表されました結果についてはそのとおりであろうかと存じております。このように日本の場合に公務員の週休二日がおくれているという原因につきましては、先ほど先生の御質問の中にありましたように、民間準拠によって賃金等の労働条件を人事院が勧告し、それを制度化するという方式をとっております。それのみならず、公務員について、いわゆる先憂後楽といいますかそういう考え方で、民間が全部済んだ後で公務員のことをやればいいではないかという思想的な背景もあったように存じておりますが、ただ週休二日制を促進する、定着させるということが政府の政策目標になっている、その観点からしますと、最近の新前川レポートの中でも、中小企業等に非常に波及効果の大きい公務員、金融機関等の週休二日制の推進については特に指摘をされていることもございますので、私どもといたしましては、この新前川レポートの趣旨にもかんがみ、また確かにその政策効果等も考え合わせまして、関係各省庁とも十分打ち合わせをしながら従来以上にこの辺の普及促進を図ってまいりたいと存じております。
○伊藤(忠)委員 総務庁、お見えですか。――総務庁にお伺いします。 実は私はここに八月二十二日の読売新聞を持っておるのですが、ここではこういう表現になっておりまして、「総務庁は二十一日、人事院勧告にともなう国家公務員の四週六休制について早ければ今年十二月に本格実施し、官庁の土曜閉庁についてもできれば同時実施するとの方針を固めた。」こうあります。これは時期を早めるわけですね。これまで私たちが仄聞をしているところでは、来年ではなかったのか。これを見ますと「今年十二月に本格実施」、こうなっていまして、そういう意味では、このように考えてやられていくというのだったら一歩前進だと思っておるのですが、このことも踏まえて、今私が前段で質問をしました公務員の皆さんの時短と閉庁問題にどういう姿勢で臨んでいくのか、こういうことをお聞きしておきたいと思うのです。
○河野説明員 先ほど来新前川レポートのお話が出ておるわけでございますが、政府といたしましては、この新前川レポートを受けまして緊急経済対策を取りまとめております。その中では、国家公務員の週休二日制につきましては、当面の課題として四週六休への円滑な移行を推進するということを決めておるわけでございます。そういうことで、政府としては、四週六休制の試行を昨年の十一月三十日からやっておるわけでございますが、去る八月六日には人事院勧告も出たわけでございますので、現在、本格実施へ向けて試行の状況を踏まえながら検討している、そういう段階でございます。 なお、先ほど先生から八月二十二日の読売新聞の記事の御指摘があったわけでございますが、私どもとしては十二月に四週六休の本格実施、閉庁を実施するという予定はございません。 といいますのは、一つには、四週六休制の本格実施でございますが、現在まだ試行に入れてない部門、国立病院等でございますが、全体の約一割程度ございます。この一割程度の方々が現在試行に入ろうということで鋭意検討しておられる。したがって、四週六休の本格実施をいつからできるかということにつきましては、現在試行に入ろうとしている方々の状況も踏まえて検討したいと考えておるわけでございます。 それから閉庁につきましては、これも緊急経済対策の中で閉庁方式導入の検討ということが決められておりまして、その後、総務庁を中心に、人事管理運営協議会幹事会という場があるのでございますが、そこに閉庁問題専門部会というものを置きまして検討を進めてまいっております。ただ、この閉庁問題というのは、公務能率とか勤労条件という面から好ましい面があるわけでございますが、片や行政サービスということも考えなければいけないということで、現在専門部会を中心に検討しているということでございます。 なお、仮に実施が決まりましても、実際は国民との接点も含まれているわけでございますから、その周知期間ということも相当考えなければいけないと思います。そういう意味で、先ほどの先生御指摘の新聞記事は私どもとしては承知しておらないということで御了解いただきたいと思います。
○伊藤(忠)委員 では、この新聞記事は偽りだということですな。そのことが一つです。 二つ目は、今聞いて私は初めて知った、というのは失礼ですが、四週六休制の試行が一〇%くらいしか進んでいないのですか。たしかそういうことじゃなかったですか。そうじゃないのですか。
○河野説明員 試行は昨年の十一月三十日から始めておるわけですが、現在九割試行に入っておりまして、九割はほぼ順調に行われておりますが、残り国立病院・療養所等の一割がまだ試行に入れてないということでございます。
○伊藤(忠)委員 いずれにしても、それでは、これを見た我々としては、これはなかなかいけるじゃないかというふうに見ていたら、あれはうそだ、これはあなた方もはっきりしておかなければいかぬですよ。新聞社が勝手に書いたのだと開き直ればそれまででしょうけれども、これは大変だと思いますよ。しかも、いずれにしてもこの新聞に書いてあることはいいことなのだ。あなたの方がどっちかといったら問題にされなければいかぬわけですよ、私に言わせれば。公務員の労働条件、これはどちらかといったらその国の中心になる、労働基準としての中心的な役割を果たすわけです、世界的に見ても。とりわけ先進国はそうですよ。そういう点で役割というか波及効果が大きいわけですから、それに取り組む肝心の総務庁の考え方がそういうことでは、とてもじゃないけれども、――労働省は労働省の立場で全体の労働行政、労働時間の関係をやられるのでしょうが、全然歯車がかみ合っていないじゃないですか。前川レポートが、四十時間を二〇〇〇年の早い時期にと言っています。ここで言っていることというのは十年先くらいかわかりませんけれども、そんな格好で進めていこうという到達目標に、どう総務庁として近づけていくプロセス、考え方をお持ちなのですか、聞かせてもらいましょう。
○河野説明員 四十時間ということになりますと、完全週休二日ということであろうかと思いますが、先生から先ほど御紹介いただきましたように、私どもも諸外国の実情も調査いたしまして、総務庁としましても、目標としては完全週休二日制に向けて努力していくべきだ、そういうふうに考えております。ただ、先ほど申しましたように、当面は一つのステップとして四週六休制というものを着実に進めていくということがまず必要ではないだろうか、そういう考え方でございます。
○伊藤(忠)委員 そうすると、四週七休制はいつごろからやっていくつもりですか。
○河野説明員 四週六休制の後、四週七休制になるのかあるいは一挙に完全週休二日制になるのか、そこはいろいろあると思います。ただ、先生からさっき先憂後楽ですか、そういう御指摘もあったわけでございますが、公務員の労働時間といいますのは、給与と同じ勤務条件の基本ということで人事院の勧告を受けて私ども実際に実施に移す、現状はそういう建前になっておりますので、先ほどの人事院の報告におきましては、四週六休制を完全週休二日制への一つの過程としてとらえる、そういう趣旨の報告が出ておりますが、今後人事院のお考えも聞きながら推進していきたい、そういうふうに考えております。
○伊藤(忠)委員 どうも時間ばかりたっていきますから、次に移ります。 いずれにしても一番問題の中心というのは、週四十時間制の確立の時期を実現する方法ですね。そのプロセスが具体的に明示されていないことは私は納得できないわけです。総理も労働大臣も、先般の本会議で永井議員の代表質問に対して、今回の法改正に対して関係委員会の論議や国民各層の意見を聞いて対処したい、委員会の論議に傾聴したい、こういう態度表明があったわけでありまして、私がるる質問申し上げてきましたように、私たちの主張に対して、それを十分傾聴して具体的な実現のためのプロセスについて前進的な立場で十分検討されるお考えがあるのかどうか、大臣にそのことをお伺い申し上げたいと思います。
○平井国務大臣 本会議でも御答弁申し上げましたように、今後の我が因の労働時間のあるべき姿というものを考えました場合には、十分に御意見を伺ってそして対処すべきであるということは、我々はかねがね申しておるわけでございます。 ただいま御指摘がございました労働時間の問題でございますが、委員が先ほど来お述べになっておりますことも、我々が段階的に時間短縮を図っていこうとすることも、要するに労働時間の短縮という面からとらえますと何ら意見のそごはないわけでございまして、問題は、四十時間を目指した場合、年間千八百時間でございますが、どのような手法でどういうふうなプロセスを設定していつごろ四十時間を実現するのか、そのあたりにつきましては委員と政府側の申しように若干差があるわけでございます。 一つには、政府としては余り無理のないように段階的にやっていきたいということ。いま一つは、くどくどしく申しませんが、この法律改正というのは時間短縮のための一つの補完的措置でございまして、その他労使間でこれも基本的な事項として十分に御論議、また今後話し合いをいただかなければなりませんし、また、ただいま御議論ございました、特に我が国におきましては公務員、さらには中小企業、さらには商店街等々の時間短縮という問題が、なかんずく中小企業に大きい影響を、波及効果等がございますので、そういう中で国民各層の方々のコンセンサスを得ながら、できるだけ早期にこれを実現していきたいというふうに政府側は考えておるわけでございます。 そういう意味では、十分に皆さん方の御意見をちょうだいした上で、これはどこそこという問題でございませんで、全般的な中でそれなりに対処してまいりたいと考えております。
○伊藤(忠)委員 四十時間制を目指そう、早期に達成しようという点では考え方は一緒だ、こう言われるわけですね。やり方の具体的な中身が違う、こういう言い方なのですが、これは明らかに私たちと意見が違います。そのことはここで時間をかけても煮詰まっていかないと思いますが、私たちとしてはあくまでも、実態的に見ても少し頑張れば当面四十四時間からスタートしてやっていける、また、そういう積極的なやり方をしない限り四十時間の目標をあるべき時期に達成しようと思ってもそれはできなくなるよということを主張しているわけでして、そういう立場でこれからも審議に臨んでいきたいと思います。 四十時間制の問題については時間の関係で一応ここで終わって次に移らせていただいて、変形労働時間制について、まず前提となる考え方について労働省に幾つか質問をいたしたいと思います。 これもまた新前川レポートが出てくるのですけれども、各般にわたって言及しているわけですね。その中身を見ますと、これまでの経済成長の成果が国民の質の向上に反映されているとは言いがたい状況がある、このように分析をしておるわけですね。したがって今後は生活の質の向上の観点に立って我が国の長い労働時間を改善しなければならない、このように言っているわけです。この指摘、認識には私も賛成です。 我が国が今日の経済力を持つに至ったことについては、これは勤労国民の皆さん方が非常に勤勉で、額に汗して働いて大きく寄与されたから、経済大国と言われる今日の状態をつくり出せたと思うのです。しかし、その結果、諸外国からどう言われているかといえば、働きバチだとかウサギ小屋に住んでいるだとかいうことで痛烈な批判をされている。労働者というのは立場がないと思うのですね。自分の生活水準がレベルアップしたかといいますと、振り返ってみますと余り生活は変わっていない、そういう状況に今置かれているわけです。しかし、職場での労働の形態だとか対応は随分変わりました。技術革新なりME化なり、随分変わっています。そういう日々の労働を通じて、ノルマというのは、労働の質というのは非常に過重になったと思う。ストレスはたまる、家に帰ろうと思っても残業だということでなかなか一家団らんが持てないという状況、子供の教育問題にも深刻な影響を及ぼしている、こういうようにさまざまな事件がこれを物語っているわけですが、それがひいては家庭の崩壊だとか離婚問題だとかいうことも社会問題として多発している昨今なのですが、したがって私が考えますのは、今日人間的な生活、ゆとりある生活の実現を目指していくということ、そのためには人間的な生活時間の確保、ゆとりの時間の確保が何としても必要である、これを強調したいわけです。それにはまず、昼間は働いて夜は家族が一家団らん、そういう楽しい時間を家庭で過ごせるということ、平日は働いても日曜日や土曜日には休めるということです。こういう条件が、一日の条件、一週間の条件として確立されているということがなければ、ゆとりあるといいますか人間的な生活と言われても、実際はそうなっていかない。それをつくっていくのが労働基準というか労働条件をつくっていく一番の基本じゃないか、このように思うわけですが、この物の考え方について労働省と合うのか合わないのか、御答弁をいただきたいと思う。
○平賀政府委員 人間としてあるいは労働者として標準的に生活パターンを考える場合には先生の御説のとおりでございますけれども、社会はだんだんと複雑化しておりまして、人が休んでいるときに働かなければならないという分野もございます、あるいは深夜、その社会を管理するといいますかそういう社会生活のために働かなければならないという部分もあります。そういう意味では、仮に労働基準法が施行された四十年前の当時と今の社会生活の状況を見てみますと、世の中の生活パターンというのはより複雑になっている。しかし、その複雑になっている中で、私どもとしては労働者の人間としての生活、あるいは先ほどからお話が出ている生活の質の向上、そのために努力しなければならない、こう考えております。 〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
○伊藤(忠)委員 物の考え方を聞いているので、部分をとらえて全体に対置するようなことで言われたって困るわけで、物の考え方としてはそういう考え方でいいのかどうか聞いておるのです。
○平賀政府委員 労働者としての生活を標準的に考えれば、御説のとおりだと思います。
○伊藤(忠)委員 ということだろうと思うのです。ですから、原則一日の労働時間を八時間ということで来ていて、これは完全週休二日制になって四十時間になっても、一日は八時間なのですからね。そういうことで行こうというのが政府の建前なのですから。八時間という原則を崩してしまったら生活のリズムが崩れる、こういうことになる。変形労働時間というのは、そういう労働の基本的なパターンというのですかリズムから考えますと、これは原則としてなくて済むならない方がいい、私はそう思っているのです。 そういう点から考えると、変形労働時間というのはノーマルな勤務形態ではない。当然そうだと思うのですが、私はそう思っているのですけれども、いや、これはノーマルだと言われるのか。今私が強調してきた点から言えばノーマルな勤務形態ではないと思うのですが、どうでしょう。
○平賀政府委員 変形という名前のとおり、それは、それが標準ということではありません。ただ、誤解のないように申しますと、例えば当面週休制をふやしていく、完全週休二日制になれば別ですけれども、例えば仮に週四十六時間という形態を考えますと、一週間の労働時間というのは、四週間に一回休日があるとすれば、普通はその週は四十八時間で、その四週間に一回、二日休みのときがあればその週は四十時間、そういう意味では、週の労働時間とすればある意味では変形、毎週の労働時間が完全に同じではないという状態はあろうかと思います。
○伊藤(忠)委員 だから、こういうことです。余りきちっと理屈づけられるといろいろ言い方はあると思うのですが、看護婦さんとかいろいろあるじゃないですか。宿直とか宿明け勤務だとか、タクシーの運転手さんの勤務だとか、ああいう勤務形態というのは変形の典型ですよ。ですから、それに象徴されるような変形労働時間というのは、これはノーマルじゃないですね、こう聞いているわけですから、ああ、それはそうですねと、こう答えていただければいいのです。難しいことを聞いておるのじゃないのですよ。
○平賀政府委員 一日八時間、昼間だけ働くというその形態がノーマルと考えれば、看護婦さんが夜働かなければいけない、あるいはタクシーの運転手さんが夜働かなければいけない、それはそういう一日八時間昼間働くという形態からすればあるいは例外的なものかもしれません。しかし、それは人々の解釈のしようだと思います。
○伊藤(忠)委員 ノーマルという言い方がひっかかるのだったら言い直しますけれども、一般的には昼働いている――(「異常だ」と呼ぶ者あり)異常だということは言ってないです。異常というのはアブノーマルだから、異常とは言ってない。とにかく昼働いて夕方一家団らんのそういう時間が家庭で持てるというのが一般的だろうという点からすれば、変形労働時間というのはそれとは違うのですね、ケースは少ない、こういうものですねということを聞いているわけです。
○平賀政府委員 一般的に変形労働時間というと、先ほど私が申しましたように、一日八時間の労働をするにしても、休日のとり方によってそれは変形ということにもなり得るということを申し上げただけで、それはノーマル、アブノーマルという議論ではありません。そういう意味では変形という形で働くというのがノーマルでないということではないと思います。あるいはその方が量が少ないという意味では、一般的には、標準的には先生のおっしゃるように昼間働いて、昼間八時間働くというのが一番多い人々の就労形態だ、こういうことは言えると思います。
○伊藤(忠)委員 次に行きますけれども、いずれにしても変形労働時間というのは一般的ではないのです。これははっきりしているわけで、そういう変形労働時間というのが今回とりわけ特徴的に提起をされてきているわけですが、これも実は回り回って日本が諸外国につくったみたいな話でして、これは御承知のとおりだと思いますけれども、日本が市場競争力が非常に強くなって、とりわけヨーロッパ市場にどっと攻め込んだ。そうしたら、それを迎え撃つということになれば、これまでのように言うならば一般的な変形労働時間を採用しなくてもやれておったところが、国際競争に打ちかっためには労働者の勤務形態を効率的に組みかえていってどう生産性を上げるかということで、実はヨーロッパ諸国の経営側の方から提案があった。もちろんこれは労働組合とぶつかったわけですけれども、そういうふうなやりとりの中で、一方ではワークシェアリングをそういう厳しい状況の中でも何とか確保しようという時間短縮の取り組みというものが進められているわけですが、一方ではそういうものも生かしながらどうして現実の競争に対応するかということで、労働形態の弾力的な形、つまり変形が出されてきたということは、これは広く言われていることでありまして、そういう意味では、日本は極めて劣悪な労働条件でもって競争力を強めて攻め込んでいった、そして向こうが弾力化をつくって今度は日本に逆輸入された。ですから、今回、弾力化の問題、変形労働時間の問題を議論するという立場に立っているというのは極めて皮肉ですな。そういう意味では我が国に責任の一端があったのではないか、私はこういうふうに思っているわけです。ずっと因果関係を見ればこれは否定できないだろうと私は思っているわけであります。 変形労働時間についてはそういう経過がございますが、いずれにしても、欧米諸国の場合には、一日の上限は八時間だとか一週四十時間以内でやるとか、いわゆる完全週休二日制が確立して、そのベースの上に弾力化が今やられているところもありますし、問題にもなっているという現状なんですな。これと比べると、我が国の状態というのはこれもまた極めて立ちおくれている、こういうことを言わなければいかぬと思うのです。そういう状況の中で今回変形が提起をされてきた。だから、私たちが変形の具体的な論議をする前提にどうしても押さえておかなければいけないのは、一日の上限をどうするか、一週間の上限規制をどうするか、一週間の間に最低二日は必ず休日を与えなければいかぬというふうに、こういう規制、ある意味では厳しい規制が私は必要不可欠だと思うのですが、この考え方についてどうでございましよう。
○平賀政府委員 今回、中央労働基準審議会の建議等に基づきまして、先ほど私が申し上げましたような最近における就業形態の多様化、特にサービス産業等の就業者がふえている、そういうことになりますと、季節的繁閑を調整しながら労働時間を現実に短くする手段はあるだろうか、そういった意味で三カ月単位のいわゆる変形労働時間制を導入して、この労働基準法の改正案の中に御提案申しているわけでございます。 このような形の変形制は従来からもありました。それは週四十八時間の中で調整をするという規定がございましたが、その規定の運用等において特に要件はございませんけれども、日本の労使の良識の中で大体問題なく運営されている。そういう経験の上で、新しい変形労働時間制度について、原則として週四十時間平均、あるいは小さな規模の事業所の場合には四十四時間平均、要するに通常の労働時間よりも低い労働時間で平均される。そして、労使協定でその具体的な内容というか導入を決めるということで、新しい変形制を規定したわけでございます。 そういう意味からしますと、従来の経験等に徴しまして格段の問題を生じないということで考えておりますが、ただ、今まで労働基準法の提案をいたしましてからその点についてのいろいろな御議論、御懸念があるように存じますし、先般の本会議におきましてもその点の御質問などがございました。私どもとしては、そういう御懸念には及ばないとは存じますけれども、十分御審議の経過などを考えて適切な対処をしたいと思います。
○伊藤(忠)委員 抽象的な答弁ですけれども、これは時間の関係でいかんともしがたいので、次に移ります。 三カ月の変形制の場合なんかでも、おっしゃるように一定の規制が加えられたとしても、乳幼児ですとか介護が必要なお年寄りを抱えた労働者がこれを適用された場合には、家族的な責任と職業生活との両立が極めて困難になると思うのです。こうした家族的な責任については我が国の実情ではほとんどが女子労働者の肩にかかっているわけでして、こうした女子労働者が変形制のもとで働かされるということになれば、事実上退職を強要されるというような事態に追い込まれる場合だってあります。そういう保障はない、こういうことでありますから、そういうことにならないような、それこそ適切な指導、方策というものが考えられているのかどうかお尋ねをしたいと思います。
○平賀政府委員 先ほど申し上げましたように、従来から労働時間制度、特に変形労働時間の運用について御指摘のような問題は生じておらない、こういう認識のもとに、新しい形のものをさらに厳しい要件のもとに導入をしておるのでございます。そういう意味で御懸念のような事態はないと私どもは確信しておりますけれども、御質問の中にありましたように女性の方々、特に家庭責任のある女性の方々等についての就労のやり方等についていろいろ御心配する向きが出ておることは承知をしております。そういう意味で、私どもとしては、もちろん具体的な新しい変形制の運用について十分指導をいたしたいと考えておりますけれども、その他適切な対処をいたしたいと思います。
○伊藤(忠)委員 例えばこれは労使協定が要件になっておりますが、そういう場合に、労働組合がない職場で実施をされるというケースのときには、言うならばみんなの意向が代表されるような職員代表を選んでいくような保障措置だとか、本人がなるべく早い事前に、個別勤務割が事前通知をされてどうしてもそれがノーということであれば、そのことがちゃんと解決をされるような一つの協議の場というのですか、個人のそういう主張を最大限組み入れて解決していくような、単なる労使間で一般的にやるということではなくて、そういう適切な解決の場というのをどう保障するだとか、それも、一つは許可制の問題だってあるでしょうし届け出の問題だってあるでしょう、さまざまあると思うのですが、こういうものを十分政府としては労働省の積極的な対処策というものを考えてしかるべきだ、こう私は思うのですが、どうでしょう。
○野崎政府委員 お尋ねの変形労働時間制につきましては労使協定の締結が要件になっているわけでございますが、その労働者代表につきまして、労働組合がない場合に適正に代表されないのではないかという御懸念のあることはよく承知しております。この点、審議会でも御議論がございまして、行政として適正に代表が選ばれるよう十分指導するようにという建議をいただいておりますので、その建議に従いまして指導に努めてまいりたいと思っております。 なお、変形労働時間制は通常の場合にはその期間内の日々の労働時間があらかじめ特定されますので、何日は何時間働くということが明らかになっているわけでございますが、今回導入が予定されております一週間単位の非定型的変形制につきましては、これが一週間ごとの勤務割で明らかにされることになっております。その場合に、業務の都合だけではなくて、本人の都合も十分尊重して決めるべきことは当然であると考えますので、そのように指導してまいりたいと思っております。
○伊藤(忠)委員 いずれにしても、これはかなり具体的に議論をしてそれの対処策というのを決めていくべき問題だと私は思っておりますが、時間の関係がありますからできませんけれども、引き続いてまたこれから議論をさせていただきたい、こう思っております。 最後になりますけれども、この変形制の労働時間というのは、一カ月の場合が上限は週四十八時間規制ですか、それから三カ月が四十四時間規制、一週の縛りはたしかこうなるのですかな。いずれにしても所定内労働時間を下回る、いい条件を労使間でつくられている場合というのが大きいところではありますね。そうしますと、この変形制を導入した場合に、自分たちの既得労働条件といいましょうか、それは所定労働条件よりも進んでいるわけです。しかし、経営側にしてみれば、それを所定労働時間を超えてうんと繁忙時には仕事ができる、比較的仕事が少ないときにはその分は少ない労働時間でやっていけるという自由が三カ月変形の場合はよりできるわけです。これは経営側にとって都合がいいと思うのです。そうすると、忙しいときではなくて暇なときには所定労働時間以内におさまるというケースが必ず出ますね、そうでないと所定労働時間を上回って忙しいときに働いてもらおうなんという変形は導入する必要はないのですから。そのときに既得労働条件を超えて時間外労働をやった、しかし所定労働時間以内であるからというので時間外労働とはみなさない、こういう考え方が経営側から出された場合にどういう見解に立ちますか。
○野崎政府委員 御承知のとおり、法律上の割り増し賃金は法定労働時間を超えた場合に支払いの義務が生ずるのが原則でございますが、まず今回の三カ月単位の変形制におきましては、その点、所定労働時間を四十時間以内にするということを要件にしておりますので、その法定労働時間、新しい制度は四十六時間を予定しておりますが、四十六時間を超えた時点からではなくて、四十時間を超えた時点から割り増し賃金を払っていただく、そういう改正の内容にいたしております。 そこで、先生のお尋ねは、さらにそれよりも短い所定労働時間、三十五時間なら三十五時間を設けている場合に、四十時間を超えなければ割り増し賃金は払えないのかという御指摘かと思いますが、その場合に、所定労働時間が三十五時間でありそれを超えたら通常割り増し賃金が払われているという状態の中で変形労働時間制をとりましたならば、やはり三十五時間を超えた時点から割り増し賃金を払うことが望ましいというふうに考えます。しかしながら、それを法律的に義務づけるかどうかということになりますと、三十五時間という所定労働時間自体が労使の合意で設けられたものでございますので、割り増し賃金の問題も労使の合意として払っていただくように処理されることが望ましいのではないか、そんなふうに考えます。
○伊藤(忠)委員 望ましいとお答えになったわけですが、そういう考え方で指導に当たられるということですか。労働省はこう考えるけれども、後は君たち労使でやっておけというのでは、もし紛争が起こったときに、問題の解決になりませんが、どうですか。
○野崎政府委員 所定労働時間を超えた場合に割り増し賃金、三十五時間なら三十五時間を超えた場合に割り増し賃金を払うべきだという御主張は合理的な御主張だと思いますので、私どもに意見を聞かれればそれは合理的な御主張ではないかというふうにお答えすると思いますし、何しろ法定基準を上回る問題でございますので強制はできませんけれども、私どもとしてはそういう考えで対応したいというふうに思います。
○伊藤(忠)委員 最後に一言、所定内労働時間であっても既得労働条件を超えて時間外労働をやらせたときには時間外労働は支払われるべきである、こういう見解を確認してよろしゅうございますか。
○野崎政府委員 法律上の割り増し賃金の支払い義務があるというお尋ねではないかと思いますが、法律上の問題については御承知のとおり法定労働時間を超えた場合に限られるわけでございます。 ただ、お尋ねのような場合、要するに所定労働時間が法定労働時間よりも短い場合で、その短い時間を超えたら割り増し賃金が払われている場合には、変形制をとった場合の割り増し賃金が払われる時限もやはりその短い所定労働時間から考えるべきだ、そういうふうに思っております。
○伊藤(忠)委員 終わります。
○堀内委員長 平石磨作太郎君。
○平石委員 今回の労基法の改正はまさに四十年ぶりの改正であり、したがって、現行法に基づいての今日までの労働環境、さらには経済環境が大きく発展する中で、労働環境がその経済にマッチしていない、あるいは世界の労働事情、労働環境等から考えたときに、さらにここで検討を加え、そして時間短縮、こういったことが今回の改正の趣旨として提案されておると思うのでありますが、この法文を見たときに、まず総括的な考え方を大臣にお聞きをしておきたいと思います。 御案内のとおり、私たちの生活というのは毎日毎日、日々の生活であります。そして働くことも日々働いて、そしてその日々の生活は人たるに値する生活を要望しているわけであります。したがって、そのことは当然国としても国民に対してこのことを享受させ、さらには保障をしていくという考え方、基点、これがまさに労基法の大きな基本的な性格であり、しかも、そのことを今後のこの改正においてもやはり労基法の性格をそのような観点に立って大臣はお考えであったのかどうか、そして、この日々の生活と人たるに値する生活を営むという我が国の今までの国民の考え方、そういったものをもこの原則の中に反映をしておるのかどうか、一言お伺いをしたい。
○平井国務大臣 労働時間に対する規制は、御案内のように、当初は御指摘のとおり一日の規制から始まったものと承知いたしております。一日八時間、一週四十八時間労働制から一週四十時間労働制へと移行するにつれまして、重点が一日の労働時間の規制から週単位での労働時間の短縮に移ってきておるものと承知いたしております。現にアメリカ等におきましては、一日の労働時間の規制はなくなっておるところでございます。しかし、今回の法改正におきましては、我が国の実情にかんがみまして一日八時間労働制の原則は崩しておらない、かように考えております。
○平石委員 そこで、この法文を通観するというか全体的に見たときに、今の労働事情が非常に多様化してきた、そして労働形態も多様化してきたというところから、二つの基点として労働時間の問題、さらに今回変形労働時間が長期のものとして取り入れられてきた。この二つを見たときに、果たして今回の改正の目的、趣旨、そういったものが日々のことを考えておるのか、あるいは変形労働としての長時間のことが立法の趣旨になってきておるのか、ここらあたりが、どっちに基点があるのかということが法文の上からはちょっとわかりにくい。したがって、立法形式からいったときに、本則と附則とをあわせて見なければこのことが明らかにならない。そして、あわせて見たときに果たしてどっちかな、こういうように感ずるわけです。したがって、この法規が少なくとも労働者を保護し、さらに労働条件の基本としての基準を決めたということであれば、今大臣のお答えにもございましたが、週当たりの時間、こういったことに考え方が移ってきた、このように今の御答弁で解釈できるのですが、今の状況から考えたときに、事情はよくわかりますけれども、法文の上でもその点は少なくとも明らかにしておかなければいけないのではないか、こう思うわけでありまして、その点について大臣にさらに、どちらにウエートがかかっておるのかということをお答えをいただきたい。
○平井国務大臣 今回の改正におきまして、法定労働時間短縮の目標として週四十時間労働制の原則を労働基準法本則に規定することといたしましたために、労働基準法の規定が若干わかりにくくなったかなというところは否定できないところであろうかと思います。しかしながら、労働基準法本則に週四十時間労働制の原則を定めることによりまして、その実現に向けての労使の自主的な努力が促進される、そして労働時間短縮がさらに促進される、ここのところを期待いたしておるわけであります。
○平石委員 今の御答弁でお聞きをいたしますと、基本的な性格はある程度変わってきつつある、このように理解をするわけです。このことが今の労働環境、労働事情からやむを得ない面があろうかとは思うけれども、明らかにしていきたい、このように思うわけです。しかも、この変形労働時間を取り入れたことによって部分的には青天井になる。そして先ほども論議がありましたが、この四十時間というもののプロセスのことが明らかになってない上に、変形労働時間によって部分的には非常な長時間の労働が行われる、こういう可能性が出てきておるわけです。したがって、そこには時間単位というものがあいまいになっておるということ等が法文の上から見えますので、この点についてはさらに申し上げはいたしませんけれども、そのようなあいまいな法の改正である、このように言わざるを得ないと私は思うわけです。 以上、御指摘を申し上げまして、具体的な質問に入ってまいります。 そこで、法定労働時間の問題でございます。これは今お話にありましたように、四十時間制が三十二条の一項に規定をされて、そして八時間という一日単位は週の各日に割り当てた、配分をしたということでの八時間ということに相なっておるわけでありますが、この点から見ますと、時間は別にして、現行法がむしろ忠実である、そのように私は思うわけです。したがって、現行法が八時間であり、四十八時間として労働基準の最低基準をぱしっとそこで原則をうたってあるということはむしろ忠実である、このように思うから最前の話が出たわけでございます。 そこで、先ほどの論議にもありましたが、この四十時間というのが、附則を見ますと、当分の間、四十時間を超えて四十八時間未満の範囲内において命令でこれを定める、こういうことに相なっておりますが、このプロセス論議が最前からも出ましたが、ここが不明確であります。ひとつどのようなプロセスを持っておられるのか、このことをひとつお答えいただきたい。
○平井国務大臣 先ほど来御議論をいただいたところでございますが、御案内のように、新前川レポートにおきましては二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に千八百時間程度とすることを目標に掲げておるわけでございまして、言うなれば、完全週休二日制の実施、また有給休暇二十日の完全消化などが行われることが必要であるとレポートでは指摘をいたしておるわけでございます。 一方、本法案は週四十時間制、これは完全週休二日制に相当するわけでございますが、この週四十時間制を目標に法定労働時間を段階的に短縮してまいる、さらには年次有給休暇の最高付与日数二十日はそのままといたしまして、最低付与日数を現行の六日から十日に引き上げる、さらに労使協定による計画的な付与を認めることによりその消化を促進すること、そのような内容となっておるわけでございまして、そういう意味で、その方向は新前川レポートと同じでございまして、新前川レポートを実現するためのこのたびの法改正はまさに一つの重要な手段であるというふうに理解いたしておるわけでございます。 ただいま御指摘ございましたこの週四十時間制への移行時期についてでございますが、この新前川レポートの目標の実現に資するという点に十分に留意をいたしまして、できるだけ早期に移行できるよう努力をするというふうに私は考えておるわけでございます。一九九〇年代の目標をどこらあたりに設定するかということでございますが、先ほど来政府側が答弁いたしておりますように、実態に即して考えました場合は、私は改めて労働基準法が最低基準であり罰則つき云々ということは重ねて申し上げませんけれども、やはり中小企業、さらには今まで我が国において労働時間短縮がなかなか進まなかったその理由等々を勘案いたしました場合は、やはり実態から大きくかけ離れたところですべてを設定するというのは余り適当ではないのではないかというふうに考えております。特に先ほど来御議論になっております中小規模の事業所の半数以上が週四十八時間制となっておるのが実態でございまして、こういう点を考慮いたしますれば、中央労働基準審議会の建議に沿って、当面は週四十六時間とすべきであると政府側は考えたわけでございまして、そういう意味でなるべく早く週四十四時間制に移行し、さらに四十時間制を目指すということで、先ほども御答弁申し上げましたように、最低基準を明示し、補完的な促進剤としてこの改正をお願いいたしておるわけでございまして、労働基準法の改正という強制力を持った法律によって時間短縮をすべて行うということは決して適当でない。先ほども御議論ござましたように、非常に中小企業に影響力の多い公務員の完全週休二日制を目指す、金融機関にもそれ相応の御協力をいただく、よってまた、商店街の方々にも御理解、御協力をいただくという中で、社会的、国民的なコンセンサスの中で着実にやっていくべきものというふうに私は理解をいたしております。
○平石委員 非常に懇切な答弁をいただきました。 そこで、今大臣がおっしゃったように、中小企業その他というお話がありました。したがって今日の状況から見たときに直ちに四十時間というのは無理である。だが、アメリカにしろイギリスにしろフランスにしろカナダにしろ、もう既に四十時間は定着をしておるという現状、さらに西ドイツあたりは四十八時間から四十七時間、そして二十一世紀の昭和七十五年ころには三十時間を目指す、こういったように先進国の中ではあるわけです。 しかも、サミット構成国の中においてそれだけのものが行われておるという中での経済大国としての日本が、もちろん中小企業等の問題もありますけれども、もっともっと行政の方で強い指導をもって、その指導はいわゆる法律に基づいて一つのプロセスをつくる。無理のかからないように、いつの時点においてはどうすると、今大臣のお答えの中で、四十六時間から出発をして、そして早期に、こういうお話でございました。私は、その点については労働団体その他が、日本の現在の経済状況から考えたときに、四十四時間から出発をしてもできないことはない、多少の無理はいくかもわからないけれども、という意見が非常に強いわけでありまして、このことは今大臣のお答えで大体はわかりましたが、もう一回簡単に、この要求についてどのようにお考えか、一言。
○平井国務大臣 四十時間を目標に時間短縮を図る場合に、どういう段階を選択するかという意味においては、委員御指摘の四十四時間というのも考え方として一つの選択ではあろうかと思いますけれども、やはり政府側が先ほど来申し上げておりますように、実態をよく勘案して配慮いたしました場合には、当面四十六時間が適当であるというように考えております。
○平石委員 もちろん日本の抱える状況は承知の上での論議でありますけれども、先ほどの答弁の中で、この四十四時間以下というのは全規模で三〇%、こういうお答えがございました。したがって四十四時間からの出発ということは実情に合わない、こういうようなお話を聞かせてもらったのですが、そういった状況にどうしてなったのか。私は、こういったことを考えてみますときに、労働条件をよくしていくためには、労働者だけの意見でもいけません。やはり経営陣の意見等と相まって労使協調して時間短縮を図っていく、こういうことが答弁にもありましたし、私もそのことを当然のことだと思うわけです。 そこで、今日までの状況を見たときに、新前川レポートが出なければならなかった背景は一体何なのかということを考えてみますと、そこにいろいろな事情はありましょうとも、経営者の理解と協力ということを十分私どもは考え、行政は指導をし、さらに先駆的にこの人たちの協力が得られるように持っていかねばならない、このように考えるわけです。 ここに日経連の今年一月二十一日の「労働問題研究委員会報告」がございます。この中で見てみましても、経営陣の方での理解ということにつきましてはいまいちというところがある、私はこれを読んだときにこのように思うわけです。そして、大企業はまあまあというところであろうと思うのでして、ここで、先ほどの答弁にありましたように、中小企業に限ってどういう御見解が、ここに出ておるものをちょっと参考までに見てみたいと思うわけです。 「労働時間短縮と中小企業」という項目の中で、「そもそも労働時間の短縮は、賃上げと同様、生産性向上の成果の配分なのであり、法律の強制によるのではなく、労使の自主交渉に任せるのが筋道である。 現在、政府の進めている労働基準法改正は週の法定労働時間を短縮することを眼目としているのであるが、労働時間を何時間にすればよいのかという点については、何らの客観的な目安もない。」「外国から非難されるから労働時間短縮を取り上げるというのであるが、法定労働時間を短縮すれば総労働時間が短縮されるという明瞭な因果関係は存在しない。」このように言っておるわけです。 〔委員長退席、長野委員長代理着席〕 そこで、変形労働時間制というものが入ってきた上にこういった考え方がある以上は、少なくともそれなりの理由はあろうと私は思うのです。もちろん中小企業にそのことを全面的に強制するということもなかなか困難であろうから、ただ労働の問題だけで中小企業に申し上げても、やはり政府として中小企業の方がそれだけの労働環境を持てるようなことにしていかねばならぬ、このことは当然のこととして努力はいただいておると思うのですけれども、総合的な立場で中小企業をアップしていけば日本の労働時間短縮もできる、国際水準に近づくことができる、このように私は思うのであります。 中小企業対策を考えておられる、やっておられる中小企業庁の方にお伺いをしたいのですが、どのようなお考え方、また今日まで中小企業の取り組みが非常におくれておる理由、そして何とかその理由を排除するためにはどうしたらいいか、あわせてお答えをいただきたい。
○瓦田説明員 お答え申し上げます。 中小企業におきまして従来労働時間の短縮がおくれている理由、これはやはり中小企業が労働集約的な分野にございまして、例えば資本装備率等で見ますと大企業と比べて四分の一程度の水準である、こうした結果、付加価値生産性も大企業の大体五割程度の水準にあるということから、労働に頼る部分が非常に多いわけでございますし、この時間の短縮が経営上非常に難しいという問題があるというふうに考えております。こうした中小企業につきまして今後労働時間の短縮を進めるためには、当然ながらその経営基盤の強化を図って生産性の向上を図るということが不可欠であると考えております。 かような観点から、中小企業庁といたしましては、中小企業の経営基盤の強化、設備投資の促進、技術力の向上あるいは情報化への対応等によりまして、中小企業の生産性の向上を図るということから、金融あるいは税制面での対策を総合的に講じている次第でございます。このような中小企業施策につきまして今後さらにその強化を図り、これを推進することによりまして、労働時間短縮を含め、中小企業におきます労働条件の向上を図ることができることを期待する次第でございます。
○平石委員 中小企業庁にさらにもう一言お聞きしておきたいのですが、今お話しいただいたのですが、やはりそういう指導も必要でありますけれども、税制の面あるいは金融の面で中小企業の方々が経営ができるような環境をつくってやる、このことが私は必要ではなかろうかと思うのです。そういった面での考え方がおありかどうか。しかも、時短を進めるということが、これは労働省の所管ではあっても経営と表裏一体にあるものでありまして、おたくの方でそういった行政的な手を打ってこそ一方で進んでくる、このように思うので、税制面、金融面でひとつお願いをしたいし、どういう考えか一言――。
○瓦田説明員 お答えいたします。 労働時間短縮を図るために直接的に金融とか税制面での支援を行うということにつきましては、財源の問題もございますし、運用のコストの問題であるとか総労働時間の短縮にどのように結びつくかという問題がありますし、そもそも国民の税金で個々の企業の労働時間短縮を賄うということが妥当であるかという基本的な問題もございますので、これは非常に慎重に検討すべきではないかと考えておりますが、むしろ恒久的に中小企業がそうした環境の中でも力強く生き抜いていく、あるいは発展するための経営基盤の強化を図る必要があるのではないかと考えておりまして、そうした方向で今後政策の充実あるいはその推進に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
○平石委員 今の点は強く要求をしまして、これで終わらせてもらいます。 ここで、なぜ時短ができなかったかということについて、先ほど労働問題研究委員会の報告等も使わせてもらいました。今までの生産性の配分について経済企画庁が出しておりますものを見ますと、従来、生産性の向上を分配するのに賃金と労働時間に分配をしていくわけでありますが、その率をずっと資料の中でまとめてございます。大体賃金に配分するものが九割、時間短縮に配分するのが一割、こういうことでございます。したがって経済企画庁は、そういったいわゆる労働生産性が上がってもそのような労働分配しかない。しかも、国民所得から労働分配率がどのようになっておるのかといったことを見てみましても、非常に厳しい状況が数字の上でうかがわれております。したがって、今回の時短について、先ほど大臣から四十六時間から四十四時間、そしてさらに早期に、こういうことが御答弁がございました。ところで、このことをこの経済企画庁が出しておりますものから見たときに、果たして五十年以降、低成長に入ってから以降、そういった分配率が非常に下がっております。今大体二千百から二百の状況でありますが、この総労働時間を少なくとも千八百時間台にと新前川レポートが言っておるということでありますが、果たしてそれが現在の状況でできるのかどうなのか。六十五年には少なくとも二千時間を達成するというあの「労働時間短縮の展望と指針」がございますが、これは今言う賃金への配分を九、時間短縮への配分を一ということになってこれがそのまま推移するとしたならば、二千時間の達成というのは昭和七十五年ごろになる、このように言っておるわけです。そうなりますと、私は少なくとも早期に、そして「展望と指針」にありますように、六十五年には二千時間にこぎつけようという努力は、今のままの推移でいけば七十五年、二十一世紀になってようやく達成するであろう、こういうことが出ておるわけです。これから考えてみても、もっともっと政府全体が力を入れて、今までの九対一という考え方でなしに、使用者側に対する指導を強化してほしい、私はこのように思うわけです。この点、大臣のお答えをいただきたいのです。
○平井国務大臣 生産性の向上分を配分いたしますときに、先生御指摘のように、従来我が国においては圧倒的に賃金の方を選択してまいったという過去の経過は否定できないわけでございまして、私が先ほどから申し上げておりますように、今後基本的に労使の自主的な話し合いによって決めていただくというのが、労働条件の一つとしての基本でございます。しかしながら、御指摘のように、この十年間の実績を見てみますると、中小企業を中心に時間短縮が遅々として進んでおらない、これもまた事実でございまして、そういう意味では、今お願いしております基準法の改正は一つの誘引策でございまして、この法律改正をお願いすることによって今後さらに促進されるものと思います。 いま一つは、先ほど来申し上げておりますように、我が国の実態から申し上げますと、どうしても公務員の人たち、また金融機関等も含めて国民の方々の御理解等々も得なければいかぬ、そういうふうな総合的な政策を持ってやりませんと、これはなかなか、今の御指摘をまつまでもなく、実態に照らした労働時間の短縮というのは極めて難しい。それだけに、今後、我々はあらゆる総合政策をもって全力を挙げてこの問題に取り組んでまいらなければならぬというふうに考えております。
○平石委員 そこで、私は先ほど来ちょっと触れましたが、いわゆる使用者側、経営者側の指導というものは、実態がだんだんと動くから改善されていくんだ、そういうことだけでは私はだめだと思う。四十年たって振り返ってみたときに、これだけの経済大国になって、労働のところだけが非常な落ち込みをしておるというのでは、経済大国としての国際的な面から見たときにまことに恥ずかしい限りだ。そうすると、もっともっと積極的に力を入れなければならぬ、こういう立場から申し上げておるわけです。 中央労働基準審議会での審議の状況の中をちょっと私、見てみますと、このときの使用者側の御意見に、労働条件、特に労働時間については、生産性向上の成果を配分する方法の一つとして労使協議で自主決定されるべきである、これも当然。しかし、法定労働時間の短縮、年次有給休暇の最低付与日数の引き上げ等は実質賃上げである、企業の生産性向上の度合い、経済原則を無視するものであり、一律に法定で規定すべきではない、こういうことがあるわけであります。だから私は、今回の法改正の一つのよりどころが法文から見るとあいまいであるということを先ほどから申し上げたのは、まさにここらあたりからもそのことが出てきておるのではなかろうか、このように感ずるわけです。したがって、そういう中で新前川レポートはどんなことを言っておるかを申し上げてみますと、御案内のことだとは思いますけれども、 経済成長の成果を賃金にも適切に配分するとともに、所得税減税により可処分所得の増加を図ることが個人消費の増加に有効である。また、労働時間の短縮により自由時間の増加を図るとともに有給休暇の集中的活用を促進する。労働時間については、公務・金融等の部門における速やかな実施を図りつつ、欧米先進国なみの年間総労働時間の実現と週休二日制の早期完全実施を図る。 こう言っておるわけです。そして、労働時間の短縮については、先ほど大臣もおっしゃっておりましたように、少なくともアメリカ、イギリスの千九百台を大きく上回る、長期にわたって労働時間を着実に短縮し、経済力にふさわしいものとするということで、 二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に、現在のアメリカ、イギリスの水準を下回る千八百時間程度(例えば完全週休二日制実施、有給休暇二十日完全消化のケースにほぼ対応)を目指すことが必要である。 このように、経営陣が集まってつくったこの前川第二レポート、少なくとも大臣の答弁にこれが出てきたように、私はこれをこれからの使用者側の、また労働側の一つの視点とし、よりどころとして、先ほど中小企業庁にも申し上げましたが、労働省がこれを一つのよりどころとして強力に指導し理解を求めていく必要がある、このように思うのですが、大臣のお言葉をいただきたい。
○平井国務大臣 ただいまの御指摘はまさしくおっしゃるとおりでございまして、その方向で私ども最大限の努力をいたしたいと考えております。
○平石委員 そこで、変形労働時間に入ってまいります。 先ほど総論でちょっと触れましたけれども、この変形労働時間というのは、長期の三カ月のことにつきましては、三カ月間働いて計算上で所定の法定のものに云々ということに相なるわけでして、そうしますと特定の週、特定の日においては現状のままでは青天井になるというおそれがありますが、お答えをいただきたい。
○野崎政府委員 御承知のとおり、変形労働時間制は、その定められた期間内の各目の労働時間をあらかじめ決めて、平均が三カ月の変形制で申し上げますと四十時間以内におさまるという制度でございます。そのように全体の総枠が四十時間なら四十時間というように法定労働時間よりも短く決められておりますので、ある日を非常に長くしますと別の日は当然非常に短くしなければいけないというようなことになりまして、御指摘のような極端な時間の配分というのは実際には余り起こり得ないのではないか、そんなふうに思っております。
○平石委員 そういうことですから、当然ここには、継続して日曜がない、長時間労働が連続的に行われるという可能性もあります。それから一日当たりの、法条に決められておるいわゆる週を各日に配分した八時間、こういったものも空洞化することが考えられるわけです。少なくとも全体の中での計算値ではそういうことになりますが、日々働いていくという私が当初に申し上げたことから見てみますと、労働条件の基本とも言うべき時間が空洞化してくる。そして、一体労働基準法は何を目指しておるのだろうかという疑問がこの点で出てくるわけです。 そういう長期に引き続き行われる可能性ということから考えたときに、私は、少なくともこれに上限をつけて、先進諸国はアメリカにしろイギリスにしろフランスにしろ一日当たりの上限が決められておるのでございます、そういうことがあってはならないから。だから、アメリカも半年なり一年なりで変形労働時間を採用しておるけれども、この採用した基底には、四十時間というものが既に定着をした、そしてさらに三十七、三十八といったような形になった上にこのことが採用されておるわけですし、そしてその採用されたものには一日当たりの上限がある。こういうことを考えたときに、日本ではそういうようなことのお考えがありますかどうか、そして一日について、さらに一週間について、それから連続就業させる日数についての上限規制を行うかどうか、お答えを賜りたい。
○平賀政府委員 新しく取り入れられる、三カ月単位の長期の期間を見て平均して労働時間を考えるという制度でございますが、先ほどお答え申し上げましたように、現在の四週間単位の平均四十八時間で取り扱う変形制の実績等に比しまして、一つは、平均する労働時間を大幅に短縮をしている、いわば四十時間制を原則として先取りする形の制度でございます。それからあわせて、労使の協定によって導入をする等の要件を付加しております。現在の変形時間の運用に照らしまして、懸念されるような問題点等はないものと私どもは確信しております。また、確信した上でこの制度を導入したわけでございます。御議論の過程でいろいろとございます、またそういった御議論の状況等を踏まえつつ、運用面等で適切な対応をしたいと思っております。
○平石委員 今、四十時間の先取りというお答えがございました。ここで私は、労働基準法研究会報告の中にこういうことがございます。「時間外・休日労働の上限規制を設けたとしても総労働時間の短縮に直接的な効果を有するものとは必ずしも認め難く、それよりは、労働時間の基本的部分である所定労働時間の短縮を、法定労働時間の短縮により進める方が総労働時間の短縮の効果がより大きく、かつ適切であると考えられる。」こういうことを書いてあるわけです。したがって私は、少なくとも、ここに上限を予定していないということであるならば、当然のこととして、そこには労働過長の、しかも八時間を超え十時間、十二時間といったものが行われる可能性を持っておる。私は、この可能性に対しては、この一日当たりのもの、週当たりのもの、連続の労働日数について上限を設くべきであるということを強く要求したい。お聞き届けいただけますか。
○平井国務大臣 まず、先ほど来基準局長がお答えいたしておりますように、変形制導入についての一日当たり、また一週単位の労働時間に上限を設けるべきでないかということについて、政府側としましては、現行の四週間単位の変形労働におきましても過去の経過の中で悪用された経過はない、そういう意味でそう大きい懸念はないんだ、さらに、そういう御懸念がございましたらそういうことのないように事業所も十分指導してまいらねばならぬ、こういう御答弁を申し上げておるわけでございまして、私もさように考えておりますが、さらに、この上限を規制する、言葉をかえれば法的措置をもってその上限規制を行わないかという御質問であろうかと思うわけでございますが、政府側の従来御答弁申し上げました指導ということで十分でないかと私は思いますけれども、さらに進んでということになりますと、これは私、かたくなに考えておるわけではございませんが、当委員会における御議論を十分拝聴した上で対処してまいりたい、かように考えております。 〔長野委員長代理退席、委員長着席〕
○平石委員 それでは、ひとつ次へ進ませていただきます。よろしくお願いをしたいと思います。 次に有給休暇についてでございますが、この有給休暇の消化状況、これは我が国では非常に悪い、悪いといったら語弊がありますが、少ないわけでございます。 ILOに加盟しておる百五十カ国、これの年休の最低付与日数が、二週間与えておるものが一〇%、それから二週間から三週間が百五十カ国の中で四五%、それから三週間から四週間が二五%。世界の常識というのは我が国とは非常に違って、大体四週から六週あるいは三週から四週、もう目標は四週から六週へ持っていく。こういう状況の中で、今回十日への引き上げが提案されているわけであります。これはひとつもっと消化するように、そのことが総労働時間を短縮する大きな手だてになるわけです。したがって、日々で短縮をしなさい、こう言ってもなかなか困難でしょう。したがって、それだからこそ週を決めて、このようなことをして短縮を図ろう、こういうことですから、この年次有給休暇についてはもっともっとひとつとってもらうように御指導を賜りたいのですが、どうですか。ひとつこの点についてお答えをいただきたい。
○野崎政府委員 先生御指摘のとおり、我が国の年次有給休暇につきましては消化状況が非常に悪いわけでございまして、五〇%を少し上回る程度の消化にとどまっておるわけでございます。したがいまして、この消化を促進するということが非常に重要な課題でございまして、労働省といたしましては、かねがね、四季折々に連続した休暇をとっていただくというようなことを提唱いたしまして、特に夏休み、ゴールデンウイーク等に年次有給休暇の消化の促進に努めているところでございます。また、今回の改正法案におきましては、年次有給休暇を計画的にとっていただく、これがまた消化促進の一つの有力な手段であるというふうに考えますので、そういうことが可能になるような規定も設けさせていただいているところでございます。
○平石委員 変形のところでもう一つお願いをしておきたいのですが、妊産婦です。これは先ほどの論議の中にも出ておりましたが、変形労働時間の中で時間数を大きくやっていくというような場合は、非常に婦人労働者に対してのしわ寄せといいますか、人たるに値する基準である労働法がまさにこういった方々にしわ寄せがかかるということでは、これは何のための改正か、こういったことにも相なろうかと思いますので、少なくともこの妊産婦については、前回の法改正の際に、男女雇用均等法の制定の際に労基法の改正がなされて、妊産婦については適用除外、こういったことがありましたけれども、今回の変形労働時間制では適用の除外になっておりません。こういうことから非常な不安が危惧されますし、また、こういうことでは今婦人労働に対する社会進出の多い状況の中でまさにさきの改定のことが空文化してくる、こういうおそれもありますので、これに対してはどのようにするつもりなのか、お答えを賜りたい。
○野崎政府委員 先生御指摘のとおり、妊産婦の方につきましては、先回の男女雇用機会均等法の制定に伴います労働基準法の改正の際に、妊産婦の方が請求をされました場合には時間外・休日労働、それから深夜業については適用除外するということに規定が設けられたところでございます。しかしその際にも、当時から存在しております四週間の範囲内での変形労働時間制を適用する規定、この規定については適用除外をされておりません。したがいまして、現在でもその変形制の規定は妊産婦の方にも適用になっているというのが実態でございます。そして、今回新たに設けることになっております変形労働時間制につきましては、その従来からございます変形労働時間制よりも所定労働時間を短くするとか労使協定を締結するとか、一層厳しい要件で認めるということになっておりますので、母性保護というのは非常に重要な問題であるということは十分認識しておりますけれども、そういったことをする必要があるかどうかという点については十分検討させていただく必要があるというふうに思っております。
○平石委員 これはひとつ十分検討していただかないと、婦人労働の方が大変困るという状況が出てまいります。 それからもう一つ、三カ月単位の変形労働制について労使協定ということが要件になっております。要件になっておりますが、この届け出の義務がないということで、現実の場合に果たして適用がうまくいけるかどうか、こういった不安もございますし心配もあるわけですが、これは届け出にして、そして労働省の方で行政的にチェックをする、そして、変形労働時間が本当に労働者とそして使用者側の間でトラブルの起きないように、ちゃんと行政当局において届け出制をしいて指導すべきであると思うが、どうでしょうか。
○平賀政府委員 新しく導入する変形労働時間制について、労使協定の締結を要件としておるわけでございます。こうした変形制を採用する場合に、労使協定を締結した上で、さらに就業規則の改定が通常の場合は必要である、こう考えております。その場合に、通常就業規則については改定の場合に届け出が必要でございます。したがって私どもとしますれば、その際に、変形労働時間制の採用についての就業規則の改定の届け出の場合に労使協定を提示させるということで、十分指導が可能であると考えております。
○平石委員 それから一週間単位の非定型的な変形制について、使用者だけの都合でやられるということでも困りますので、本人の同意、少なくとも本人の意思の尊重ということを要件にすべきである、このように思うわけですが、お答えを賜りたい。
○野崎政府委員 お尋ねのとおり、一週単位の非定型的変形制につきましては、毎週毎週勤務割をつくっていくという形をとることになっております。その際には、業務の都合とそれから、いずれにせよ対象は小規模の事業場を予定しておりますので、そこでの従業員の方のいろいろな御都合、そういうものを総合勘案して勤務割がつくられていくものというふうに思っておりまして、御趣旨のようなことで制度が運用されますよう私どもとしても対応してまいりたい、そういうふうに思っております。
○平石委員 パートタイムについてでございますが、今回の改正でパートタイム労働者に対する年次有給休暇、これは比例付与制度が設けられる、こういうことのようでありますが、これは一つの前進だとは思うわけですけれども、具体的にはすべて命令にゆだねられておるという部分が多いわけでございまして、こういった立場が果たしてどうかというような懸念がございます。したがって、このことについては具体的にどのように命令で対処するのか。 さらに、これからパートタイムというものが非常に多くなってまいります。そういうパートタイム労働者に対する対策と考え方、こういうことについてひとつお答えを賜りたい。特に対策については大臣の方からお答えをいただきたいと思います。
○平井国務大臣 このパートタイム労働者の労働条件の改善、また雇用の安定を図るわけでございますが、そのために、労働省としましては、労働基準法等の法令の履行確保、これに努めてまいらなければならぬ。また、昭和五十九年十二月にパートタイム労働対策要綱を策定いたしまして、これに基づきまして労使に対し啓発活動を進めているところでございます。今後ともこれらの施策の充実に努めてまいりたい。 さらに、昭和六十二年度からは、この啓発活動の一環として、パートタイム労働者を多数雇用しておる企業の人事または労務管理担当者、関係機関等を構成員とするパートタイム雇用・労務管理改善研究会を都道府県婦人少年室に設置いたしまして、パートタイム労働者の雇用・労務管理の適正化、また改善のための研究を行っておりまして、これを通じてその労働条件の改善を図ってまいりたい、かように考えております。
○松原説明員 パートタイム労働者など、週の所定労働日数が少ない者に対します年次有給休暇の比例付与の関係について御説明をさせていただきます。 従来、このようなパートタイム労働者など、一週間の所定労働日数が通常の労働者の所定労働日数、六日でございますが、それに比べまして相当程度少ない者、具体的に申しますと週の所定労働日数が四日以下の者につきましては、労働基準法に定めます年次有給休暇を付与する義務はない、こういうふうに解釈、運用してまいったところでございます。 今回の改正法案におきまして、これらの方につきましても、週所定労働日数が六日であります通常の労働者を基準といたしまして、それとの割合で比例計算された日数、例えば週の所定労働日数が四日のパートタイム労働者の方につきましては、通常の労働者六日に対します割合、つまり六分の四の割合でそれらの方にも年次有給休暇を付与すべきだ、こういう改正にいたしておるところでございます。 なお、その他勤続年数あるいは出勤割合等の要件は、通常の労働者に対しますものと同じでございます。
○平石委員 以上で終わらせてもらいます。
○堀内委員長 田中慶秋君。
○田中(慶)委員 労基法の一部改正問題について質問をいたします。 まず冒頭に、政府は昭和五十五年、週休二日制等労働時間対策推進計画を策定され、この中で、年間総実労働時間を昭和六十年までに二千時間とするということを打ち出しました。しかし、この計画も思うように進まなかったわけてあります。その後六十年六月、「労働時間短縮の展望と指針」を改めて策定をされ、六十五年までに二千時間にするということを打ち出したのであります。あわせて、昭和六十年十月十五日に経済対策閣僚会議で決定しました「内需拡大に関する対策」として、週休日等の年間休日日数を今後五年間で十日程度ふやし、欧米主要先進国並みに近づける等々、具体的な労働政策を打ち出したわけでありますが、現実問題として、これらに対して時短や休日の問題は遅々として進まなかったわけであります。そういう一連の労働環境を含めて本年の四月二十三日、いわゆる新前川レポートが、西暦二〇〇〇年に向けてできるだけ早い時期に年間総労働時間千八百時間に短縮を進めるべきだ、こういうことを打ち出されました。そのことは、いわゆる今日の国際社会における日本の国際的公約として受けとめられておりますし、私はまたそれをそのように感じているわけであります。 冒頭に、大臣にこれらに対する考え方をお伺いしたいと思います。
○平井国務大臣 先ほど来御議論をいただいておる中で出ております新前川レポートでございますが、この要点は、「二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に、」実現するということで提言をされておるわけでございます。年間総労働時間千八百時間程度の目標につきまして、労働時間短縮の重要性、緊急性にかんがみて、目標達成までの期間を二〇〇〇年よりも早く「できるだけ早期に、」としながらも、具体的な年限についてあえて明らかにしなかったものと私は考えるわけでございますが、関係者の間では一応一九九〇年代半ばが念頭に置かれておったと私は理解いたしております。したがって、労働省といたしましても、その趣旨を体して、できるだけ早期にこの目標を達成できるように努力してまいりたいと考えております。
○田中(慶)委員 大臣、私が申し上げた国際公約の面はどうでしょう。
○平井国務大臣 そういう国際公約という意味から申しましても、できるだけ早期に実現するのが至極当然のことである、また、ぜひとも関係者の御努力、国民の御理解をいただいて達成しなければならぬと考えております。
○田中(慶)委員 新前川レポートでも具体的なプログラムが発表はされてなかった、そして今大臣は、一九九〇年代のできるだけ早い時期にということが、その経過として審議され、その精神が生かされているというふうに承ってよろしいですか。
○平賀政府委員 四十時間、完全週休二日制を達成する一つの努力目標について、新前川レポートに書いてあります一九九〇年代のできるだけ早い時期にというのを仕切るためには、今大臣が言ったような関係者の考え方も十分参照しつつ考慮すべきだと思います。
○田中(慶)委員 千八百時間、できるだけ早い時期に、こうしてまいりますと、この週休二日あるいは週四十時間というものはいつからやれば実現できるのですか。
○平賀政府委員 ただいまの新前川レポートの趣旨を達成するために、制度的な問題等も考慮すべきだと存じます。
○田中(慶)委員 だめだね、そんな抽象的なことを私は聞いているのではないのです。私は具体的に、新前川レポートで千八百時間ということを打ち出され、週休二日制、週四十時間、こういう形でなっていくと、いつからすればこれが実現できるのか。まして、一九九〇年代の早い時期にということになりますと、だれしもが一九九五年以前ということになるわけであります。そんなことを考えてみますと、その時点に千八百時間に到達するためにはどのようにすればできるかということを明確に答えていただきたい。
○平賀政府委員 大臣も、一九九〇年代半ばに関係者がいろいろなことを想定している。したがって、その時期までに到達するということになろうかと思います。
○田中(慶)委員 何か知らないけれども、あなたとしゃべっていると精神状態がおかしくなるね。私は今具体的に申し上げているのです。はっきり申し上げている。ですから、少なくとも四十時間、週休二日制というものが一九九〇年代前半、こういうことであるならばもっと明確にするべきだろう。まして、これが国際公約だということも大臣が認めている。具体的には、今労働環境その他のことを考え、貿易摩擦のことも考え、これから日本が生きていく道としてこのことをちゃんとしておかなければ、私はまた日本があらゆる面で、今度は労働環境の問題を含めて袋たたきに遭う、このことを憂えているのです。ですから、こういう問題を含めて明確にすべきであろう、こういうことを申し上げているので、その辺をはっきりしてください。
○平賀政府委員 新前川レポートでは、一九九〇年代のできるだけ早い時期にということを言っております。それをさらに明確に仕切るとすれば、先生ただいまおっしゃった一九九〇年代前半というのは努力目標として適当な考え方だと存じます。
○田中(慶)委員 局長が「適当な考え方」ということで、さらに念を押してみたいと思います。 早い時期にということでありますから、できるだけ早い時期に、これはそれぞれ政府と我々の見解があろうかと思います。三年も早いことは早い、五年も早いことは早い、こんなふうに理解するわけでありますけれども、いずれにしても、一九九〇年代の早い時期ということは、少なくとも一九九五年以前、こういう理解を私はしたいと思うのです。そういう点では一九九三年とか二年とか、こういう形になろうかと思いますけれども、この辺を私どもの理解という形で受けとめてよろしいですか。
○平賀政府委員 できるだけ早い時期にということでございますので、努力目標としてはやはり早い方が望ましいと考えております。
○田中(慶)委員 何か先ほどよりも答弁が逆戻りしたようでございまして、今前向きに進める、――いずれにしても局長、これは四十年ぶりでやるんだし、世界的にもいろいろな形で注目を浴びているわけですから、その辺はやはりあなたも局長として、このことをやってよかったと自信を持って、後世から評価をされる意味で、その辺は明確にしておく必要があるだろう。私は少なくとも、今具体的に早い時期というのは一九九〇年代のその中でも九二年とか九三年とか、こんな形も一つの早い時期ということはとれるのではないかということで、そのように理解してよろしいかということを申し上げたわけですから、その辺をもう一度答弁としてお願いしたいと思います。
○平井国務大臣 大変厳しい御質問でございまして、確かに一九九〇年代半ばごろというのを念頭に置いて関係者がやられたものと私、先ほど御答弁申し上げた、事実そうであろうかと思うわけでございます。そういう早い時期に、委員のおっしゃるのは、千八百時間を達成するというのにはいつから四十時間ということを想定すればいいんだという御質問でございますが、これは委員も御案内のように、なかなか過去十年間進まなかったこの時間短縮の実態に照らして考えましても、今後の経済情勢、さらには公務員等の完全週休二日制の進行、さらには金融機関、国民的合意等々、総合的な判断に立たなければなりませんので、いつからこういう体制に入るというふうな具体的なプログラム、スケジュールというのが、明確に非常に申し上げにくいのがこの時短の実態ではなかろうかというふうに、これは正直なところ申し上げたところでございまして、いずれにいたしましても、一九九〇年代の半ばを想定いたしました場合には、これは一九九〇年代に入りました段階でできるだけ早い時期にそうありたいものと考えております。
○田中(慶)委員 いずれにしても、この辺は、これからの労働時間千八百時間という問題やこの国際公約の問題あるいは貿易摩擦等々を含めて、それなりの少なくとも労働環境にあろうというふうに理解をしておりますし、また、そうすることがこれからの日本が生きていく道だ、こんなふうに思っております。 例えば、大臣、フランス、西ドイツ等で失業率の問題を含めながら厳しい環境にあったわけであります。そういうときにワークシェアリングを導入しながら、時間短縮、雇用という問題について拡大をされたわけであります。こういうことを考えてみますと、我が国ももう既に失業率三・二%に達するという厳しい環境であります。こんなことを含めて考えてみますと、時短もその一つであろうし、さらにはまたワークシェアリングの必要性というものが今日高まっている。それは雇用の創出ということから考えても、このような問題だと思います。 そこで、大臣に具体的にお伺いしたいのは、ワークシェアリングをどのような形で導入をされ、具体的に雇用の拡大という問題についてこの辺を検討されているかどうか、この辺を明確に答弁をしていただきたいと思います。
○平井国務大臣 時間短縮を行うことによって、長期的に見た場合、雇用の拡大効果につながるということはかねて言われておるところでございますが、その中で、さらに今後取り組むべきワークシェアリングということになりますと、なかなか現在のところ我が国に余りなじみがないところでございまして、一見、時間短縮すれば雇用がふえるかなというふうなことでございますけれども、これは今申し上げましたように、かなり長期に見ませんと、他のヨーロッパ諸国等々で相当切り込んだ時間短縮が行われておる中で、ではワークシェアリングと称する実態はどうか、どのような具体的な姿で、どの分野でどう進んでおるかというふうなことまでに切り込んでまいりますと、これはなかなか御答弁いたしにくい問題でございまして、今後取り組むべき、私は労働省としてはこのワークシェアリングの問題は極めて重要な、目を外せない問題であるというふうに考えております。
○田中(慶)委員 実例として、もう既にドイツもあるいはフランスでもこういう問題に積極的に取り組んでおります。また先般、たまたま社労の中でヨーロッパ視察の機会をいただきました。そういうときに、労働時間の短縮、もう既に過労働時間三十時間台を検討されているわけでありますから、そういう点を含めて、日本は必ずこれからの世界から、労働時間あるいはまた賃金、こういう問題を含めて、今回の労基法の問題というものが相当注目をされてくると思います。いずれにしても、こういう一連の問題を含めて労働省が積極的に取り組んでいただく、またそうしなければ今後日本が生きていけないであろう、こんなふうに思うわけであります。 そこで、実は、中央労働基準審議会の建議で、週四十時間を今回の労基法の入り口にするように、こんな形で明記をされ、なるべく早い時期に四十時間移行を、こういうことを明記をされたわけでありますが、政府として、これらについて当面どのような形でこれに取り組んでいくのか、お考えを聞かせていただきたい。
○野崎政府委員 当面の法定労働時間につきましては、先生御承知のとおり、中央労働基準審議会の建議におきまして、当面四十六時間からスタートし、なるべく早い時期に四十四時間に移行するというふうにされているところでございます。この点につきましては、四十四時間からスタートすることはできないかという御意見がございますことは十分承知しておりますけれども、中小企業の実態等を考えますと、やはり四十六時間からスタートをさせていただきたいというふうに思っております。しかしながら、これも建議の趣旨に即しましてなるべく早い時期に四十四時間に移行する、そういうことで努力してまいりたいと思います。
○田中(慶)委員 これは、あなたはそういうふうにおっしゃいますけれども、週四十六時間制に実施される場合、年間労働時間の短縮時間数をまず幾つとして前提を置いているのか。現在二千百六十八時間、こういうことですね。これを前提として具体的に取り組んでいくならば、すぐ四十時間という問題あるいは四十四時間という問題に取り組んでいかなければ、少なくとも今の千八百時間、ここに達するためには、今の年間労働時間の二千百六十八時間を前提とすれば、来年から実施してもそういう点では四十六時間を実施するならば二一〇〇年を超えても千八百時間にならないんじゃないでしょうか。審議官、どんな計算をされているのですか。
○野崎政府委員 ただいまの先生のお尋ねは、当面昭和六十五年度、今から三年後に二千時間にするという「展望と指針」の目標のことを御指摘されているのかと思います。そして、現時点での全産業の平均の年間の総労働時間は二千百時間でございます。先生の御指摘の二千百六十時間程度というのはその中の製造業の労働時間でございます。したがいまして、全産業平均でございますと二千百時間である。したがって、これを三年間で百時間短縮するというのが当面の課題ということになるわけでございます。そして、この法改正によって直接短縮される時間というのは、これも先生御指摘のとおりいろいろな計算の仕方はございますけれども、比較的少な目に計算しましても、五十五時間程度は直接的に短縮されるのではないかというふうに思っております。そして、法律による直接効果だけではなくて、先ほど来お答え申し上げておりますように、週四十時間労働制というのが労働基準法に明記され、政府全体の目標としてもそれがなるということに伴う自主的な努力の効果ということもかなり計算できるのではないか。さらにもう一つ、時間外労働の問題につきましても、最近の経済情勢から勘案いたしますと、将来的にはやはり減少傾向で推移するのではないか。 それやこれや考え合わせますと、六十五年度二千時間という目標は十分達成可能であるというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、この目標を達成することが、先生御指摘のとおり、その次の目標である千八百時間への大事な第一歩でございますので、当面の目標の達成に全力を挙げてまいる所存でございます。
○田中(慶)委員 いずれにしてもこれはそれぞれの積み重ねによってできるわけでありますから、例えば四十八時間を四十六時間にするという入り口の問題、そして具体的には四十四時間、四十時間、こういう形のものが想像できるわけであります。そういう点では、この四十四時間、私どもが入り口論として少なくとも四十四時間を今日まで主張してきたことが、やがて千八百時間台に達する、いわゆるこの新前川レポートと同じ一九九〇年代の早期にこれが実現をするようにという、その早期ということは四十四時間から入っていかなければできないんじゃないか、こんなふうに思うのですけれども、その辺はどのように具体的に考えられているのか、お伺いしたいと思います。
○野崎政府委員 この法案につきまして労働側等からいろいろ御意見をいただきました中で、四十四時間からスタートできないかという非常に強い御指摘があったことは十分承知しているわけでございます。私どもとしましても、審議会で十分検討したことではございますが、そういった新しい見地に立ってもう一度四十四時間スタートの可能性についても検討してみたわけでございますが、結局先ほど来申し上げておりますように、中小企業の労働時間の実態というのが、四十四時間スタートということになりますと、実態が非常におくれておりますために、大きな例外規定をつくらざるを得ない。そういたしますと、これも先ほど来申し上げておりますように、労働基準法は最低基準を定めた法律でございまして、その基準に対する例外というのが非常に多いというのはどうか、そういったことを考えますと、例外をある程度の数以下に抑えるためにも、やはりスタートは四十六時間でさせていただきたい、しかしながら、次のステップの四十四時間の移行については、環境整備その他について努力をさせていただきまして、なるべく早い時期に移行させていただくようにしたい、そう思っております。
○田中(慶)委員 四十四時間もなるべく早い時期に、四十時間についてもなるべく早い時期に、「なるべく」という日本語、それぞれの解釈によって非常に便利に解釈できるわけでありますけれども、私どもは少なくとも入り口論を四十四時間を主張してきょうまでまいりましたし、また労働団体もそのように考えておりますし、アンケートあるいはまたそれぞれの今日の実労働時間の実態からしても、もう既に四十四時間台になってきているわけでありますから、それは平均値でありますから、中小企業の問題もあろうかと思いますが、そういうことを含めてもっとこの辺は積極的に進んでいかないと、なかなかその千八百時間というものに対する道のりというのは非常に遠くなってくる。こういうことを含めて、ぜひこの辺ももっと具体的な取り組みをしていただきたい、こんなふうに思います。 ところで、中小企業という定めを労働省は三百人の事業所という規模でされていますね。これは業種別によって三百人というのは大変な大きなファクターがあるのではないかと思うのです。例えば商店で三百人といったらどうでしょう、大企業じゃないでしょうか。製造業の三百人というのは確かに中小企業かもしれない。ところがお店で三百人といったら大手じゃないでしょうか。事業所で三百人といったらどうなんでしょう。そういうことも含めて考えていくと、ただここで事業規模三百人というのは余りにも乱暴じゃないかと思うのですが、その辺どうですか。
○野崎政府委員 先生御指摘のとおり、当面の法定労働時間の適用を猶予する企業としてどのような範囲のものを考えるかということが審議会で議論されました場合に、規模三百人以下というのが一つの目安になったことは事実でございます。しかしながら、その時点ではまだ業種別に細かく詰めた議論はいたしておりませんで、あくまでもこの三百人というのは、その規模のところで所定労働時間が非常に大きく差異がございますので、この辺が一つの目安になるだろうという議論があったというふうに理解しております。したがいまして、具体的に猶予期間を定めます場合には、御指摘のような点を考慮いたしまして、規模別、業種別に労働時間の実態を調べまして、その実態に即しまして規模、業種ごとに猶予期間を設ける必要があるかどうかということを判断してまいる必要がある、そういうふうに思っております。
○田中(慶)委員 猶予期間を設けることを検討するということでありますけれども、私は、はっきり申し上げて、少なくとも業種別、規模別にこういうことを含めて検討されて当たり前だと思うのです。製造業であれば三百人というのは決して多い規模じゃないと思いますけれども、それぞれ商業であるとか営業所の事業所であるとか、いろいろなことを考えてみますと、一つの事業所単位で考えていくならば三百人というのはそういう点では非常に多い方に入るのではなかろうか。ですから、経過措置云々の問題の中でもこういうことを含めてもっときめの細かい形にしていく必要があるだろう、こういうふうに思いますけれども、その辺をもう一度考え方を明確に詰めておきたいと思います。
○野崎政府委員 御指摘のとおり業種別、規模別にきめ細かく検討いたしまして、かつ、例外でございますので、なるべく限定的にその範囲を定めるように検討してまいりたいと思います。
○田中(慶)委員 特に中小零細企業という問題を含めて、例えばイタリーはどうだったでしょう。イタリーは日本と大体同じなのですね。中小企業が非常に多いわけなのです。ああいうところで考えてみますと、三百人なんて企業はありませんね。中小になるとほとんど三十人とか二十人を指して中小と言っております。日本の場合においてもやはりそういうことを含めて中小零細という規定をもっと明確にする必要がある、私はそんなふうに思いますので、そういうことの一考をぜひ含めて、例外ですから、例外規定というものはもっとその辺を含めてやっておく必要があろう、こんなふうに思いますので、ぜひこの辺も含めてちゃんとしておく必要があるだろう、こういうふうに思います。ですから、あくまでもこれは例外規定という問題が関連してきますから、その辺を含めてぜひこれをもう一度明確にする必要があるだろうと私は思いますので、その辺を含めて再度答弁をいただきたい。
○野崎政府委員 この具体的な取り扱いは、法案が成立いたしました後、政令で定めることにいたしております。そして、政令の案を審議会にお諮りいたしまして御意見を承った上で決めてまいるわけでございますが、その政令の案をつくります場合には、先ほど来お答え申し上げておりますような先生御指摘のような点を十分念頭に置いて対処してまいりたいというふうに思います。
○田中(慶)委員 政令、省令というものは一番目の届かないところになってまいりますから、その辺をちゃんとしていただきたいということを重ねて要望しておきます。 そこで、実は、労働時間短縮が今日までなぜできなかったのだろう、こういうことを考えたときに、日本の時間外労働というところに触れてみなければいけないのではないかと思います。日本の時間外労働というのは、少なくともアメリカやイギリス、フランス等々を含めて考えても、先進国の方はむしろこの十年来時間外というのは非常に低下の一途をたどっているのですけれども、日本は時短をしなければいけないという環境にあるにもかかわらず、時間外は逆にふえているというような実態、こういうことではないかと思います。これらについてどのように認識して、今後どのように指導されるつもりなのか、お考えをいただきたいと思います。
○野崎政府委員 我が国の時間外労働の時間は欧米諸国に比べまして長目であることは御指摘のとおりでございますが、これにつきましては、我が国におきましては時間外労働というのが雇用調整の重要な手段となっておりまして、そのことがまた雇用の安定に役立っているという面もあるわけでございます。そういった特別の要素はございますが、いずれにいたしましてもこの時間外労働時間数につきましても減少を図っていく必要がある。確かに景気の変動によりまして長目になる時期もございますし、また最近は、円高というような問題もございまして、一時期よりずっと減少してきております。将来につきましても、やはり今後は少な目に減少傾向で推移するのではないかというふうに期待をいたしております。 しかし、いずれにいたしましても、行政といたしましては、特にそういう景気変動の必要性に基づくものでない恒常的な時間外労働というものについてはぜひやめていただきたいということで、行政指導に努めておるところでございます。
○田中(慶)委員 時間外等の問題で、例えば三六協定というものがありますね。こういう三六協定を結んでいる率、今おわかりでしょうか、大体どのぐらいになっているのでしょう。
○野崎政府委員 御承知のとおり、時間外労働をいたします場合には当然三六協定を結ばなければならないわけでございます。その三六協定は監督署に届け出をしていただくことになっておりますので、その件数については今調べましてお答え申し上げたいと思いますが、残業をしないということを前提にいたしまして三六協定を締結していない事業場も相当数あるのではないかと承知しております。
○田中(慶)委員 例えば変形労働時間等の問題が今度の法案でも提案をされているわけであります。そういう点では、届け出の義務とかこういう問題を含めて考えてみますと、三六協定等々を含めながら全体的に労働時間の短縮、あるいは労働時間を今議論されている労基法の改正に伴って縮小する、こういうことの努力が必要だ、こんなふうに思っておりますので、三六協定の問題を申し上げたわけでありますけれども、今すぐわからなければ結構です。いずれにしても、これからそういうことを含めて時代とともに変わっていかなければいけないであろう、こんなふうに思っているわけであります。 そこで、実は、変形労働時間の問題についてお伺いをしたいと思います。現在、四週間単位の変形労働時間に関しては就業規則等に定めることを要件としておりますけれども、新しい変形労働時間を導入するという際に、労使協定に基づくもので使用者が一方的に就業規則を変更する場合もあるので、これらについて、一日単位、一週単位、あるいはまた一カ月単位の原則的な変形労働時間についても労使協定の締結、労使協定の経過、就業規則の変更届け出を定めるべきであろう、こんなふうに考えておりますけれども、いわゆる労使協定の締結を要件として定める方がよりベターだと思いますけれども、この辺はどのように指導される御予定ですか。
○野崎政府委員 お尋ねの点は、原則的な現在ございます変形制についても労使協定の締結を要件とすべきではないかということではないかというふうに考えますが、この点につきましてはこれまでのところ労使協定の締結を要件としてきておりませんけれども、それによって格別問題が生じているということはないというふうに承知しております。また、もう一つ理由がございまして、原則的な変形労働時間制というのは、これまでは例えば二十四時間連続操業の化学、電力というような職場でございますとか交通・運輸業とか、非常に限られた職場だけで利用されていたわけでございますけれども、今後は四十六時間制のもとで四週五休制をとることにいたしますと、これは第一週目が四十八時間、次の週も四十八時間、三週目も四十八時間、最後の週が四十時間ということになりまして、法定労働時間の四十六時間を超える週が出ますので、これも変形労働時間制ということになるわけでございます。こういうことで、今後はこの変形労働時間制を使う事業場が非常にふえるというふうに考えますし、またそういう形で週休二日制が進んでいくということが望ましいというふうに考えますので、この点につきましては今以上に厳しい要件をつけるということはいかがかというふうに思っております。
○田中(慶)委員 そこでお伺いしたいのは、今回の新しい変形労働時間といいますか、三カ月単位の変形労働時間、そこで明確にしておかなければいけないのは一日単位の労働時間の上限をどうすべきか、一週間単位はどうあるべきか、一カ月の上限をどうすべきか、この辺を明確にして労使協定の中で届け出の義務を課す、こういうことをする必要があろうと思いますし、またそれをしない限りはこの変形労働時間がやがてひとり歩きをする等々を含めて、使用者の一方的な考え方によってこの変形労働時間三カ月というものがそんな形でとらえられていくとこの乱用につながる、こういうふうにも心配されるわけでありますけれども、この辺はどのようにお考えになっておりますか。
○平井国務大臣 今般の労基法改正の中で、この三カ月単位の変形労働時間制、これについての御議論が大変あるわけでございますが、一つには御指摘のように先ほど来出ました上限規制という問題、これは政府側としては、私が先ほど申し上げましたように従来よりも要件が非常に厳しくなっておる。労働協約の締結もさることながら、週四十時間という縛りもございますし、現行法でやっております四週単位の変形労働時間制の導入、過去の経過を見まして決して乱用されたというふうなことはございませんし、御懸念の向きにつきましては各事業所をさらに厳しく指導するということで御答弁申し上げておるわけでございますが、それでもやはり懸念されるというふうな御議論もございまして、そういう意味では、当委員会において十分に御主張をお聞きした上で、なおかつ法的措置が必要かどうかという判断をいたしたいと考えております。
○田中(慶)委員 いろいろな議論をされていろいろなことが想像され、その結果による法的措置というものであろう、こんなふうに答弁をいただいたわけでありますが、この辺は今明確にしておく必要があろうと思うのですよ、大臣。 ということは、今いろいろな団体を含めて、新しいこの三カ月単位の変形労働時間制というものに対していろいろな心配、極端なことを言えばこんなことまで心配されているわけですよ。例えば残業の問題。こんなことは私はないと思いますけれども、この残業そのものが一日二時間とか一週何時間、しかし変形労働時間が施行されて三カ月目で結果的に週四十時間、こんな形でトータルして平均されて残業手当がつかなかった、こんなことも、取り越し苦労かもわかりませんけれども、心配されていることもはっきり申し上げて現実なのです。労働環境が今いろいろな形で変わってきている。時短もしなければいけない、こういうことになってくると、少なくともこの変形労働時間というのは使用者にとりましてはいろいろな角度で魅力あるものだろうし、また使いようによっては今のような心配の出てくることも事実だと思います。そういう点では、三カ月変形労働時間といっても、一日の問題、一週の問題、一カ月の問題を必ず上限を明確にして、労使協定の中で届け出の義務を課すことによって、今後この変形労働時間というのが日本の中に大変うまく定着するのじゃないか、こんなふうに思うのですけれども、大臣、あなたが今我々の審議あるいは我々のいろいろな話を聞いて何とかしたいという意欲ある答弁をされたわけですから、もう一度突っ込んで、わかりましたと言えるぐらいに答弁をしてください。
○平井国務大臣 当委員会における御審議の実態に即して判断をいたしたい、かように考えております。
○田中(慶)委員 その辺は審議の実態、きょうだけでなくということであろうかと思いますが、いずれにしてもこういう変形労働時間についてはあらゆるところから心配をされているわけであります。特に婦人労働者の皆さんは大変な心配をされておりますね。 例えば、今八時間労働が二時間で上限十時間になる等々を含めて、朝の八時から十時間であればともかくも、変形によって大きく時間が左右される。それが一日の上限を明確にしていれば、そういう問題についても多少不安が解消できると思います。一週間の問題も全くそうであります。やがては自分たちがその職場を離れなければいけないのじゃないか、こういう問題も心配の一つにあるわけであります。この変形労働時間はそういう点ではいま少し法的な規制というものが特に中小企業等においては必要ではないか、こんなふうに考えております。 例えばこの協定を結ぶに当たっても、それぞれの労働者の代表ということにはなっております。しかし、労働組合がなかったらその辺は一体どうなるのでしょう。そういう点で、この辺がもっと具体的に例えばルールの確立も必要であろう。例えば使用者あるいはまた労働者の中における協定を結ぶための人格的なものを考えても、代表ということでありますから、使用者が一方的に自分の意の通る人をこれが代表だと言って届け出をされる。そういうことが明確になっていない時点ではこういう不安もあるのじゃないかと思いますが、この辺はどうですか。 〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
○野崎政府委員 三カ月単位の変形労働時間制等の労使協定の締結当事者となります労働者代表につきましては、御指摘のように、労働組合のない事業所の場合に適正に選ばれるようにすることは大変重要なことであると思っております。この点につきましては、今同建議をいただきました中央労働審議会でも、十分指導するようにという建議になっております。具体的に、これはそれほどないと思いますけれども、例えば使用者の側に立つような方が代表に選ばれることがないように、あるいは必ず選挙とまでは言えませんけれども何らかの形で労働者全員の意思がその代表の選出に反映されているというような方法をとる、そういったような点につきまして私ども行政指導に努めてまいりたいと思っております。
○田中(慶)委員 今審議官から御答弁をいただきましたけれども、この問題はもっと法的に位置づけておく必要があるであろう。例えば一週間単位の問題についても、本人の意思尊重という問題もあろうと思います。こういう一連の問題は労使協定によって届け出を明確にする必要がある、こういうふうに思うわけであります。例えば繁忙期でこの変形労働時間導入に対して、忙しい時期に朝の九時から夜の八時まで働いておる人は十一時間になりますね。ところが三カ月トータルしてそれが四十時間の中におさまっていた、こんなことも具体的には一つの想像としてできるわけであります。こういう一連の問題を考えてみますと、一日、一週、一カ月というものをもっと明確にして法的根拠をここに定めておいた方がよかろう、こんなふうに私は思います。大臣、そういう点を含めて本当によろしいですね。これは届け出の義務というものを付加するようにちゃんとしておいていただきたい。特に妊産婦の問題も、今日本は出生率がだんだん落ちていますね。そんなことを考えても、もっともっと妊産婦を初めとするこういう一連の労働環境や、あるいはまたこの人たちの社会における労働参加等々を考えても、変形労働時間においては妊産婦の適用除外というものをひとつ明確にすべきだ、こんなふうに思います。この辺を含めて、大臣、聞いているのかな、ちゃんと答弁をしていただきたい。
○平井国務大臣 大変いろいろ御心配いただきまして、また厳しい御指摘があったわけでございますが、先ほど来答弁申し上げておりますように、まず一般論として申し上げますと、政府側としては、本委員会で申し上げておりますようにそう御懸念なさることはないのではないか。これは決して当てずっぽうで申し上げておるのではございませんで、やはり過去の実績、経過等を見てみまするとそういうことはない、さらに御懸念の向きについては各事業所に対して十分に指導してまいる、こういう答弁で申し上げておるわけでございますが、なおかつ、それでも、おっしゃいますように理論上はかくかくすれば一日十一時間というふうなことにもなるのではないかという御懸念、御指摘があったわけでございますが、そういう点につきましては、先ほども申し上げましたように、委員の御趣旨を踏まえた上で、本委員会の審議の実態に照らして、それなりの判断をいたしたいということで御理解をいただきたいと思います。
○田中(慶)委員 こればかりをやっていてもあれですけれども、今の大臣の答弁でこれからの質疑をまたさせていただくわけでありますから、そういう点では今後とも前向きに検討していただきたいし、特に妊産婦の変形労働時間からの適用除外というものは今の時点でちゃんとしておいた方がいいと私は思うのです。というのは、先ほど出生率のことも申し上げましたが、それからまた、――それは今まで四週間の時点においてはそういう一連の問題が言われたわけでありますけれども、そういう心配はなかったということでありますけれども、そういう一連の問題を含めて考えてみますと、三カ月の変形労働時間ということを今回新しく提案されるわけですから、そういう妊産婦の心配というものについては、初めの時点から適用除外をしていた方が、これからの変形労働時間というものが社会において認知をされる意味からも、そういう点では今の時点で明確にしておいた方がいい、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。
○平井国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますが、これは実際の運用ということになりますと、やはり御趣旨の方向で配慮すべき問題もございます。したがって、一連の関係省令の制定に当たりましては、中央労働基準審議会の御意見もお聞きしながら、そういう方向で考えてまいりたいと考えております。
○田中(慶)委員 恐らく適用除外の方向でということで、適用除外されるものと受けとめて、大臣の答弁を了としたいと思います。 そこで次は、年次有給休暇の問題に若干触れてみたいと思います。 時間が余りありませんが、しかし、今のILO条約の批准を見てみますと、日本が先進国の中で一番悪い。百六十二のうち、現在三十九しか批准をされておりません。そういう点を含めて私は、年次有給休暇そのものが六日から十日に引き上げられたという点は評価をいたしますけれども、しかしILOでは明確に最低基準を三労働週としている、それに現在は及んでいないわけでありますから、そういう点を含めて、全体の千八百時間等にできるだけ早い時期に到達させる、そしてまた、日本のこれからの労働福祉の面や高齢化社会の問題等々含めても、また外国に比較するとレジャーやバカンスというものが非常に少ない、こういう一連のことを考えてみても、有給休暇というものを国際的な日本としてもっと、十日ということではなくして十五日、あるいはILO基準に近づけるように具体的な努力と計画を示してほしいものだと思いますが、いかがでしょう。
○野崎政府委員 年次有給休暇につきましては、今回の中央労働基準審議会におきましても非常に議論になりました焦点の一つでございます。結局六日から十日に引き上げるという結論になったわけでございますが、そういうことになりましたのは、やはりこれも中小企業の実態の問題がございまして、御承知と思いますが、最低付与日数である六日にとどまっている労働者というのが現在六一%ございます。特に中小規模の事業場では、百人未満のところでございますと七、八割が六日でございます。百人から二百九十九人のところでも約半数が六日であるということでございます。なお、平均の取得日数は七・五日、取得率は五〇%という実態でございます。このような実態でございますので、当面は六日から十日の引き上げでやむを得ないという御建議をいただいているところでございます。 しかしながら、これも先ほど来御指摘がございますように、新前川レポートでは年間二十日の年次有給休暇を消化するということが基礎にございますので、そういった新前川レポートの目標が実現されますよう、年休の問題につきましても、将来の問題としてはいろいろな角度から検討してまいる必要があるというふうに思っております。 〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
○田中(慶)委員 時間が参りましたから終わりますけれども、いずれにしても、時間短縮なりあるいはまた年次有給休暇等も、新前川レポートと今回の考え方には若干隔たりがありますね。時短についてはそちらの方を進んでとられていく、こういうことを考えてみますと、年次有給休暇というものをいま少し突っ込んでやる必要があると思うのです。だから、ここでは大変難しいかもわからないけれども、五月一日のメーデーの問題とか五月二日とか、太陽と緑の週間をここにがっちりとつくるのだとか、その辺、労働省が発想をそういう点に持っていって、全体的な休日・休暇をつくられるように努力していただきたいと思いますし、例えば銀行等への働きかけ、まさしく私は、時短や休日という問題は銀行、金融機関と官庁にあると思うのです、はっきり申し上げて。ですから、金融機関をちゃんとそういう形にさせる。四週六休、あるいはまた土曜閉庁、こういう問題をそれぞれ人事院勧告で具体的にされてまいりましたし、そういう方向が恐らくむしろ早目になってくると思いますから、労働省としてこの問題についても前向きに検討していただきたい。そしてまた、そのことが今回の労基法の改正に大きな目標となって成果が上げられる、こんなふうに思っておりますので、そういうことを含めて、皆さんの見解を述べていただきたい。
○平井国務大臣 いずれにいたしましても委員のおっしゃるところ、政府側が考えておるところ、時間短縮をすることにおいてやはり国民の生活の質の向上というところが目標でございますので、公務員関係、当然でございますが、総務庁さらに中小企業庁等々関係省庁とも十分に協議を重ねまして、実態に即して有効に時間短縮が図れますように努力を重ねていく決意であります。
○田中(慶)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
○堀内委員長 児玉健次君。
○児玉委員 私は、この審議を始めるに当たりまして、労働基準法の改正案、非常に重要な内容を持っておりますし、日本の労働者に及ぼす影響も極めて大きい。それだけに今回の審議は、十分な時間をかけて審議を尽くすことを冒頭に強く望みたいと思います。日本の労働者の労働時間短縮を速やかに実現したい。誤りなくそれをやるために、間違っても審議時間の短縮をやってはならない。このことを私は強く言いたいのです。 そこでまず、多岐にわたるこの問題の中で、私は第一回の質問として二、三のことをきょうは取り上げたいと思います。そして、その質問に入るに当たって、私は、こういう重要な問題を論議するときに私たちの先輩がどういう努力をされたのか、その点について少し当たってみました。 昭和二十二年の三月に、社会労働委員会ではなくて労働基準法案委員会というのがつくられました。これは皆さん御存じのとおりです。そこでは厚生大臣河合良成さん、司法大臣木村篤太郎さん、商工大臣石井光次郎さん、皆さん御存じの名前がありますし、この審議には今も議員として大いに活動されている江崎真澄さんのお名前も見ることができます。そして、この会議録を読んでみると、随分詰めた論議をしております。例えば一日八時間労働制について、それが実働八時間なのか休憩を含んだ八時間なのか、どちらが好ましいかということについて真剣な論議がなされております。私は、この会議録で一番深い感銘を受けたのは椎熊三郎委員、年配の方々は御存じの方です。私は、札幌に住んでおりますが、この方はたしか小樽の方です。椎熊三郎委員が委員会の終わりに臨んでこのように述べられております。「われわれ新憲法をつくったこの議員によって、この法案を審議決定することのできることを、私は非常に光榮と思ふ」、新しい憲法をつくった我々が労働基準法をつくることができる、非常に光栄だと言っている。それから四十年たちました。そういった先輩議員に対する私たち後輩議員の責任は非常に重要だと思うし、当時労働省はございませんでしたが、司法省、厚生省、通産省、そういったものに対する現在の労働省の負っている責任は大きいと思います。そのことについてまず私は大臣の所見を伺いたいと思います。
○平井国務大臣 労働基準法という法律、各国さまざまではございますが、今委員がお述べになりましたように、先輩諸公が大変な御熱意でやられましたことについてはそれなりの御見識と敬意を表する次第であります。
○児玉委員 そこで私は、まずこの労働時間の短縮を考えるときに、一日の労働時間の問題を考えるのが何よりもの原則になる、この点から御質問をいたしたいと思います。 言うまでもなく、私たちの労働力は日々再生産されます。私たちは寝だめもできませんし、休みだめもできません。これは単純なことですが、一つの真理だ、私たちはそう考えます。したがって、世界の大きな流れでも日本の流れでも、労働時間の短縮は一日の拘束労働時間をいかに短くしていくか、そこが原則になっております。 ちょっとこういう場でなんですが、一つの歌を皆さんに紹介したい。「おれたちは太陽の光を浴びたい おれたちは花の香りをかぎたい 神様だってきっとそうおっしゃっている 仕事に八時間を 眠りに八時間を おれたちがやりたいことに八時間を」御存じの方も多いと思いますが、これはメーデーの出発点になったときのアメリカの労働者の「八時間ソング」の一節です。「仕事に八時間を 眠りに八時間を おれたちがやりたいことに八時間を」そうやって、今日の八時間労働制が一つの歴史的な到達点として現存しております。私たちは、もちろん七時間、六時間労働制に向けて歴史を進めていかなければならないと思いますが、一日八時間労働制が世界と日本の労働者の努力の歴史的な到達点である、この点について労働省の基本的なお考えを伺います。
○野崎政府委員 先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、確かに歴史的には労働時間の規制は一日の労働時間の規制から始まったわけでございますけれども、週四十時間労働制が一般化するにつれまして、一日の労働時間と一週の労働時間とのウエートという問題になりますと、今や一週の労働時間を短縮する。一日については否定をするわけではございませんけれども、ウェートは一週の労働時間短縮よりも低くなっている。そういうふうに見てよろしいのではないかと思います。現実にも、欧米諸国で一日の労働時間の規制がなくなった国、あるいはそれを八時間ではなくて十時間というようにしている国等、フランスでございますけれども、たくさんございます。 そういうことではございますけれども、今回の改正におきましては、我が国においてはやはり一日八時間も一つの基本原則とすべきだという強い御意見がございましたので、今回の法案におきましても一日八時間の原則は厳然として残されているわけでございます。しかしながら、労働時間短縮をさらに進めていくという見地に立ちますと、一日八時間の原則だけにこだわっておりますと労働時間短縮が難しくなる。もっと圧縮された労働時間というような考え方もあっていいのではないか。そういう幅広い見地の中で検討すべき問題だと思っております。
○児玉委員 十分時間をかけて審議しますから懇篤な御答弁大歓迎ですが、なるべく簡潔にお願いしたいと思います。 先ほどの同僚議員に対する大臣のお答えの中でアメリカのことが出てきて、今も審議官がおっしゃいましたけれども、そのことを一つはっきりさせておきましょう。 アメリカでは今一週間の労働時間は何時間ですか。既に一週四十時間ですよ。これは立法によって既にそのようになっております。そして年間の労働時間は、先ほども議論があったけれども、千九百二十四時間。そして一週という場合も一日の上限というのは日本みたいに青天井で十四時間、十五時間なんというとんでもないことは全くありません。それを引き合いに出すのだったら、あなた、すぐ日本の労働時間を週四十時間にしたらどうですか。それを言わずにそんなことを言うのは、これはすりかえですよ。その点をまず一つ、はっきり言っておきます。 そこで、審議官のお話は後段の部分は非常に率直で明快なんです。一日八時間労働制、それが原則だと私たちは考えておりますが、現行の労働基準法ももちろんその立場に立っております。 そこでお聞きしたいのですが、第三十二条の一項で、現行の労働基準法は「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間、一週間について四十八時間を超えて、労働させてはならない。」こうなっております。皆さんが提案された今回の改正案、まず週の労働時間を出して、その次に「一週間の各日については」「八時間を超えて、労働させてはならない。」こういうふうに言っている。これは審議官もよく御存じの労働基準法研究会報告の、「今後の労働時間法制の基本的方向としては、労働時間の規制は一週間単位の規制を基本として一週の労働時間を短縮し、一日の労働時間は一週の労働時間を各日に割り振る場合の基準として」考える。言ってみれば、労基法の立法体系の大きな転換をあなたたちは今なさろうとしていますね。その点について明快に答えてください。
○野崎政府委員 先ほど来申しておりますような労働時間短縮に伴う重点の推移ということを念頭に置き、また、具体的にはただいま先生御指摘のとおり、労働基準法研究会の報告あるいは中央労働基準審議会の審議結果等を踏まえまして、現在の法案のような形にさせていただいたわけでございます。
○児玉委員 そこに今回の労働基準法改正案の最大の問題点があり、改正案の一番本質的な部分が潜んでいると私は考えます。なぜ、そうまでして、一日の労働時間は一週の労働時間を各日に割り振るための基準でしかない、こういうふうに立法思想を転換したのか。それは労働時間の弾力化、一カ月、三カ月の変形労働時間制を導入するために皆さんはそれをなさった。 そこで、時間もないから、まず三カ月単位の変形労働時間について私は御質問したいと思います。 念のために伺いますが、これは企業にとって最も魅力的な労働時間制ですよ。労働者にとって最も厳しい犠牲を強いる制度ですよ。この制度について、私はある研究者から、ある経済団体は三カ月でなくて一年の変形労働制を要望しているという話も聞いたと私は伺ったのですが、労働省、この審議の過程でそういう要望が出たことはありますか。
○野崎政府委員 議論の過程での個人的な御発言としてどのようなことがあったかまでは正確に記憶しておりませんが、正規の御提案としてはそういうものは承知しておりません。
○児玉委員 さて、三カ月単位の変形労働時間制、それが労働時間の割り振りをどのようにするかということについて、きょうの午後来さまざまな議論がありました。 私は、時間がないから、一つの事例として三カ月単位の変形労働時間制で休日の問題がどうなるのか、この点について取り上げてみたいのです。それらが婦人の労働者の生活をどのように困難にし、家庭や教育をどうするか、この点については次の機会に十分時間をいただいて、田中委員が質問いたします。 労働省にお伺いしたいのですが、現行の労基法の三十五条、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」こう書いてございますね。そして、皆さん方のコメンタールではそれを変形休日制とお呼びになっております。この変形休日制は三カ月の変形労働時間制でも適用されるのですか。いかがですか。
○野崎政府委員 労働時間制度と休日制度はそれぞれ別な制度でございますので、両方が適用になる余地はあると思います。
○児玉委員 そうだとすると、三カ月の変形労働時間制が引き出す一つの可能性として私がここに持ってきたのは、ジュリストの一九八七年二月十五日号でございます。論文をお書きになったのは東京学芸大学教授渡辺章先生です。 この先生は、三カ月の変形労働時間制に限らず変形労働時間制全体がそうだが、労働時間の集中と分散をもたらす、これは同時に休日の集中と分散をもたらす、こういうふうにお述べになって、具体的な三カ月の変形労働時間制、それを週四十時間の場合と四十四時間の場合にお分けになって、変形休日制で最長期間の連続労働日を確保する場合として、ことしの二月一日から五月一日の三カ月を例におとりになって、四十時間変形制の場合四十二日間の連続労働日が可能になる、週四十四時間の変形制の場合は四十五日の連続労働が可能になる。しかも、もしその間に設定されている休日に休日出勤をさせるとすれば、週四十時間変形制の場合は実に六十四日、二カ月以上にわたって一日も休みがない。四十四時間の場合は七十日の連続労働日が可能になる。このようにこの中で具体的に指摘されております。 そこでお伺いしたいのですが、改正案はこういう連日労働日に道をあけるものであることをお認めになりますね。
○野崎政府委員 御指摘のジュリストについては私も拝見いたしましたけれども、変形労働時間制は今回初めて導入されるものではなくて、現在も四週間の変形労働時間制がございます。そして四週四休制ももちろんございます。その両方を組み合わせれば御指摘に近いような事態が生じ得るのではないかというふうに思いますけれども、そのような事態は私ども寡聞にしてほとんど聞いたことがございません。 それに加えまして、今回は、その三カ月単位の変形労働時間制は労使協定の締結というような一層厳しい要件のもとに認められておりますので、御指摘のようなことは机の上での議論としては成り立つかもしれませんけれども、現実には起こり得ないことだと思っております。
○児玉委員 机の上では成り立つことだけれども現実には成り立たないとおっしゃる。それでは私は一つの事例をお示ししたいのです。 大阪の荏原建設大阪支店の社員の方、二十七歳の方です。この方は、昭和五十七年十一月から五十八年四月まで、荏原建設ですから建設業務に参加されたのですが、この間とられた休日は年末年始のわずか五日間ですよ。まさしく連日労働をずっとやって、その結果どうなったか。二十七歳のこの前途有為の青年労働者が、過労のために右の目は失明、左の目は〇・〇二になった。これは皆さんが扱われたお仕事で、そして、これについてはこの七月二十二日、大阪労働者災害補償保険審査官がこういう判定を下された。それを私、いただいたのですが、「請求人の工事期間中における労働内容は、過酷な労働であったと認めざるを得ず、業務の過重性及び過激性を認める。」労災を適用されているのです。机の上だけであることじゃないじゃないですか。現実に起きているじゃないですか。どうですか。
○野崎政府委員 三カ月単位の変形労働時間制が導入されますと、今先生が挙げられましたような例がたくさん起こるというようなことはあり得ないというふうに申し上げているわけでございます。
○児玉委員 大臣、これはちょっと真剣に、もちろんかみ合わせて議論をしたいのですが、一つのあり得べき可能性としてそういう極端な道を開くような改正はすべきではないのじゃないですか。そこに道を開いていて、現実にあり得ないと。現にこれまでの労働省の態度がどうだったのか。 その点、私は多少皆さんのお出しになったものに即して調べてみました。「労働基準法上 三訂新版 労働省労働基準局編著」ですが、この中で今の変形労働時間制の周期といいますか、スパンですね。三百四十一ページにこう書いてある。審議官がさっきおっしゃったように、現行も四週間の変形労働時間制を持っています。それは私たち大変不十分なことだと思っているけれども、承知しております。その四週間の変形労働時間制の周期について述べた三百四十一ページで、こう言っているじゃありませんか。「本条第二項が四週間としている立法趣旨は、変形労働時間制の一周期をなるべく短いものに限定し、最高期間を抑える趣旨」、そういうふうに皆さんは理解されている。四週間でさえそれが二週間、一週間の方が好ましいという趣旨のことをここで言われている。ところが、あなたたちは今度の改正案でこの見解を投げ捨てて、一カ月、三カ月に大きく延ばす。労働省、態度が根っこから変わったのですか、どうですか。
○野崎政府委員 今回の三カ月単位の変形労働時間制につきましては、四週間の変形労働時間制では対応できないようなケース、すなわち季節的な業務の変動がある場合に、その変動の波に合わせまして労働時間を設定することを認めますと、それによって時間の配分が合理的にできまして、全体の労働時間が短縮されることになる、そういうことから導入されることになっているものでございます。 御指摘の解説書の説明は、いずれにせよ上限は設けなければならないわけでございますけれども、その四週間というのが上限であるという趣旨を述べたものだと思っております。その意味では、今回の三カ月の変形労働時間制の上限が三カ月であるというのと同じ意味だというふうに思っております。
○児玉委員 論議を正直で真摯なものにするために、私は素直にこの文章を読みたいと思うのですよ。 このコンメンタールの中で、今審議官がおっしゃったようなことを言っておりませんよ。変形労働時間制の周期はなるべく短いものに限定する、そして四週間を最高期間として抑える、そういう趣旨だと皆さんは解していらっしゃる。それを今前段でいろいろおっしゃいましたけれども、結局一カ月、三カ月に広げたのじゃないですか。態度が変わったのですか。
○野崎政府委員 若干言葉が足りなかったように思いますが、四週間の変形労働時間制では対応できないような必要性のあるケースがございますので、そういうケースに対応するために三カ月の変形労働時間制、三カ月以下の変形労働時間制も認めることにしたということでございます。
○児玉委員 ますます率直なお話なんですが、仮にある社会的な必要性が生まれるとしますよ。そのときに、人が人たるに値する労働条件を確保しようとする労働基準法はどのような機能を果たさなければならないのでしょうか。そのときに、日本の労働者の労働条件を社会的な状況の変化が低下させようと機能しようとするとき、それに対して立ちはだからなければいけないのが労働基準法の役割じゃないですか。それをあなたたちはそっちの方に追随させようとしている。明らかにこれは労働基準法に対する皆さん方のスタンスが以前とは大きく変わったということを示しているのじゃないですか。その点について答えてください。
○平賀政府委員 労働保護行政の務めというのは、やはり社会的変化に適応しつつ労働者の保護を適切に図ることが使命だと考えております。今回の法改正もそのような考え方から御提案申し上げております。
○児玉委員 その考えについて議論しているのです。そして、その結果さっき言った極端な連続の労働日が生まれてくるし、そしてこの後私は議論したいわけですが、所定労働時間の中にこれまで超過勤務として扱われた部分がすっぽりはまってしまう。そういうものがはめ込まれていくのですから、それに対してあなたたちは防波堤になるのか、それともそこに道をあける役割を果たすのか。どっちかはっきりさせろと言っているのです。
○野崎政府委員 その点につきましても既にいろいろなところで御議論いただいている問題でございますけれども、変形労働時間制と申しますのは、結局のところ業務の波に合わせまして労働時間を設定する、その結果、むだな労働時間がなくなりますので、全体としての労働時間の短縮になるということでございます。 そこで問題になりますのは、御指摘のように、全体としての労働時間が短くなる関係上時間外労働というのがなくなるわけでございます。時間外労働がなくなるということは、また時間外労働手当がなくなるということで、結局短縮された時間をとるのか、あるいは時間外労働手当というのをとるのか、その選択が労使にゆだねられているということでございます。その選択は労働者代表の方が決せられる問題でございますので、その場合に、短縮された時間をとりたいという御判断がある場合には、それはそれで一つの御判断でございますし、労働時間短縮の見地から望ましいことでございますので、そういう道も開く必要があるというふうに考えておるところでございます。
○児玉委員 皆さんがこれまで審議されたさまざまなレポートを私は批判的に読んでおりますし、これからもそうしますが、今審議官がおっしゃったこと、労使協約云々、それについて言えば、六十年十二月十九日の労働基準法研究会報告、あえてこの報告でさえと私は言いたいけれども、この報告でさえこう言っているじゃありませんか。「①労働組合の組織形態が企業別組合主体であるところから、労働協約の規制力が弱く、また適用範囲についても自ずから限界があること、②また、労働組合の組織率は、民間部門においては二三・六%(昭和五十九年推計)であるが、これを企業規模別にみると、大企業と比べて中小零細企業においては極めて低いこと、③さらに、同業他社との競争関係、経営者の横並び意識等から労働時間の実態の変動については法制の果たす役割が大きいこと」と言っているのですよ。このレポート自身があなたが金科玉条のようにしておっしゃる労使協定の無力さを指摘しているのです。 そこで、私はあえてそれでは一カ月の変形労働時間制について触れてみましょう。これは就業規則その他によって可能ですね。私はさっきも申しましたように札幌に住んでおります。札幌の民間の病院の多くは、その月の大体上旬、八日とか九日、多少月によって変動しますが、医療保険の請求事務の締め切りが来ますから、月初めから大体十日ぐらいは十時間、十二時間という時間外勤務をやっております。それに対して、多くの病院では、大変不十分な率ではありますが、正規のわずか二五%、国際的に見れば極端に低いけれども、その手当を払っております。 今、この労働基準法のいわゆる改正案に触発されて、札幌の民間病院の経営者でどのような動きが出ているか。先ほどいみじくも同僚議員の質問に対して、審議官、労働省は、変形労働時間制はふえるとおっしゃったけれども、この改正案に触発されて、平たくわかりやすく言えば、上旬については十時間、十二時間の勤務時間を所定内労働時間として定める、その分を中旬、下旬で調整するということの準備を始めています。今度の改正案の指示している労働時間を守るとすれば、労働省、そういう場合に、これまで払われていた月初めの医療請求事務のための超過勤務手当はこの後払われますか、それとも払われませんか、お答えください。
○野崎政府委員 御指摘のケースについて必ずしも十分理解ができているわけではございませんが、一般論といたしまして、変形労働時間制をとり、今まで時間外労働で行われていた時間が所定内労働時間になるということは、その時間分だけ全体の労働時間が短縮されているわけでございます。短縮された時間について賃金が減少するというのは、そういう選択をする以上はやむを得ないものだと思います。
○児玉委員 あなたは答えてくださらずに、弁解し説明されるからちょっとやりにくいのですよ。 例えば九月の三日、今までであれば、ある婦人労働者は、その日、医療請求事務で十二時間働くとすれば四時間分の時間外勤務手当をもらっていたのです。変形労働時間制が実施されたら、その日について言えば同じように十二時間働いても手当がもらえないのでしょう、そうでしょう。
○野崎政府委員 二日だけで考えてみますと、十二時間働いた日を変形制で行いますと、八時間に対して六時間オーバーしておりますので、次の日の八時間からその六時間を引かなければならないわけでございます。その二日が、これが四週間なら四週間がワンセットになっているわけでございまして、先生は十二時間、すなわち八時間プラス――失礼しました。六時間でなく、四時間でございますか、要するに四時間の残業の部分のみをおっしゃいますけれども、その四時間は次の日で必ず減っているわけでございます。減った日の労働時間が減った以上は、その賃金が減るのはそれ自体はやむを得ないことではないかというふうに思うわけでございます。
○児玉委員 その日のいわゆる残業手当が減るということはお認めになりましたね。きょう、私はここに八月九日付の朝日新聞を持ってきたのですよ。この中で「こりゃ手品だ 残業代減らし」、あなたが今いろいろと言われたことをこの新聞は手品だと言っています。そうなんですよ。こういうやり方で皆さん方が、変形労働時間制で労働者のこれまでの既得の残業手当まで取り上げる。 私は、いろいろおっしゃいますから、大臣、経営者がこの点についてどう考えているか。経営者は、ある人たちはなかなか率直ですから、名前をはっきり言って申しましょう、日経連の増田雅一法制部長。この方が先日こうおっしゃっている。「残業手当の減少は当然である。暇なときのむだな拘束時間を繁忙期に回すことによって時間外労働時間を減らすという点で、変形労働時間制やフレックスタイム制は非常に合理的な制度である。」極めてあけすけじゃないですか。これが経営者の考えです。 大臣、先日この委員会でかんばん方式について同僚議員が御質問になりました。そしてそのとき大臣は率直に、まだ聞いたことはない。そして、あの質問で御理解になったと思うのです。大手の自動車メーカーなどが下請に対して、その生産ラインが必要とする時間に必要とする量の部品を持ってこさせるのを今、日本では新しい言葉でかんばん方式と言っております。この増田さんの言葉は、今度の変形労働時間制が労働力のかんばん方式であることを非常に率直に、雄弁に物語っているのじゃありませんか。暇なときのむだな拘束時間、そこは繁忙期に回してしまう。我々生身の人間はそんなことはできませんよ、寝ため、休みだめはできないのですから。こういうものを皆さん方が導入されようとしているところに今度の改正案の問題があります。 そこでお尋ねしたいのですが、本会議の御答弁の中でも、この制度の導入によっていわゆる残業手当が減るだろうという見通しを皆さんはお述べになりました。今、一年間で日本の労働者に支払われている残業手当の総額は幾らでしょうか、推計でいいからお示しください。
○小島説明員 お答えいたします。 毎月勤労統計調査というのがございます。これは三十人以上でないと時間外労働の手当が出てまいりません。それで、それの月間の所定外給与が二万二千三百三十二円ということになっておりますが、それを十二カ月にいたしまして、それで労働力調査によります常用雇用者数を掛けますと約四千万円、三千九百四十九万円でございますが、そうしますと、掛けますと十兆六千億というふうになります。ただ、これは一つの試算でございますが、これにつきましては毎勤統計の三十人以上でございますが、そうしますと、三十人未満で考えますと給与水準が低くなっておりますし、また小規模の方が時間外労働の時間数は少ないわけでございます。ですから、ただ数字がございませんので、一応の試算といたしますと十兆六千億という数字が出てまいります。
○児玉委員 その数字を皆さんが出してくださったことについては、私は一つの見識として評価いたします。 これは畑中郁一さんという研究者が同様の研究を子細になさいまして、そして一年間の残業手当の総額は十兆五千八百二十七億。今おっしゃった三十人未満のところの給与の低さの問題、それをカバーする分として実際に残業しても払われていない部分、サービス残業の部分が相当ありますから、一つの根拠としてこれは成り立つだろう。その二分の一が仮に今度の変形労働時間制によって失われたとしても、これは約五兆円なんですから売上税に匹敵する金額ですよ。なぜこんなことをこの際皆さん方が無理やりしなければならないのか、ここのところを私はひとつ見てみたいと思うのです。 大臣、対外貿易摩擦のことがさまざまに論議もされました。そして、新前川レポートについて言及なさる同僚議員も多くいらっしゃいます。私は、去年四月七日に出された前川レポート、これが産業構造調整と称して空洞化をつくり、石炭つぶし、農業つぶしに道を開いていった、この点について石炭委員会で大臣とも議論したことがございますが、そういう意味で、この前川レポートの持っている役割というものは非常に反国民的だと考えています。そして、これが発表された直後に中曽根首相は、全くみずからの一存でこれを対外公約になさった。その中に何と書いてあるか。「労働時間の短縮により自由時間の増加を図る」、これを中曽根さんは一応対外公約になさった。しかし、本音はこれをやるつもりがない。そこでどういうことになるか。本則では週四十時間を掲げてあたかも公約を実施に移したかのように見せかけて、内実は日本の労働者を変形労働時間制によってさらに大規模な長時間過密労働に駆り立てる。こういうやり方は日本の対外信用を失墜させるだけだと考えるのです。これはやめた方がいいと思うのですが、いかがでしょうか。
○平井国務大臣 ただいま委員は委員なりの御見識を持って、新前川レポートは反国民的なものだ、かような御指摘でございますが、現在、内閣は新前川レポートのもとにやっておりまするし、また我が党もこの新前川レポートの線を容認しておりまするし、ここはちょっと考えの基盤が違うんではないかというふうに考えております。 いま一つは、残業料が十兆円、一つの推計ではございましょうが、それが五兆円に減るではないか、ゆゆしき問題だという御指摘でございますが、そのことから入りますよりも、私どもが今回お願いしております時間短縮、新前川レポートで指摘しております時間短縮というのは、所定内労働、これも無論のことでございますが、言葉をかえれば総実労働時間を年間において短縮していくということでございますから、当然そういう中では所定内労働時間も切り詰めていかなければならぬし、また所定外労働時間というのも切り詰めていかなければならぬ。また、そうでないと、この労働時間の短縮というのは、実態を見ながら考えまするときに、なかなか難しい問題であるというふうに考えております。
○児玉委員 今私が申しましたのは、私の独自の見解ではありませんよ。例えば、ことしの五月二十七日に労働時間短縮についての国際シンポジウムというのがありました。西ドイツのエルヴィン・フェルレマンという方がお見えになって、これは公刊された雑誌ですから後からお読みください。その中で、フェルレマンさんはこう言っていますね。今日本は国際的に「週労働四〇時間になった、と報じています。」「私は、ドイツに戻ったら、次のことをはっきりと言うつもりです。この改正は表看板とは違うのだ、なぜなら、実際には〇・八%の人々しか時短に該当しない。それも週四八時間から週四六時間になるにすぎないのだ、と。」そう言われているのです。 そこで、私は、とりあえずきょうは時間が参りそうですから、最後に述べたいのです。 こういった中で、本当の意味での労働時間の短縮を進めるために何が必要か。私たち日本共産党・革新共同は、このたび、「八時間労働制を破壊する労基法大改悪を許さず、ただちに週四十時間制の実現を」、こういうものを発表いたしました。その中に「真の時短のための緊急対案」を盛り込んで、この委員会の慎重な審議の中で、適当な機会を得て、これを修正案として本委員会に提出したいと考えております。 私たちは、その中で、まず第一に、現行の一日八時間労働制を厳守し、これを破壊する変形労働時間、みなし労働の導入を削除する。二つ目は、週の所定労働時間を四十時間とし、週休二日制を実現する。時間外労働については一日二時間、年間百二十時間を上限とする。そして深夜交代制労働の問題、そして最近問題になっているVDT、コンベア作業など職業病が多発する過密労働の問題等々について提起しております。そしてその中で、中小企業についても猶予措置でなく助成措置によって同時に時間短縮を出発させる。これらの内容の実現こそ、全国の労働者が人たるに値する生活を営む上で確実な前進になる、こう考えるのです。 先ほどの議論の中からも、私たちのこの提案と文字どおり重なっている部分もかなりあります。そうでないところもあります。私たちは、この案について政府が真剣に検討されて、これを実現させることが労働時間短縮への歴史的一歩を進めるものになると確信するものですが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○平井国務大臣 今回お願いしております改正法案は、御案内のように公労使三者構成の中央労働基準審議会の建議を踏まえたものでございまして、その線を尊重してお願いしておる今の改正案が妥当なものと私どもは考えております。 ただ、今委員がお述べになりました問題でございますが、これは私なりにまた研究をさせていただく、かように思っております。
○児玉委員 冒頭にも申しましたが、こういうある意味では歴史的とも言える四十年ぶりの労働基準法の改正について審議をするとき、私は、四十年前の先輩の先見の明を思い起こすことが随分多いのですよ。保守の立場に属する方が、労働基準法は使用者にとっては最高基準であり、そして労働者にとっては最低基準である、そのように受けとめられているがどうか、こういう議論が四十年前に既に行われているのです。私は、この後十分な審議を尽くしていけば先輩議員の努力にこたえることができるだろう、そのためにも、今政府が提案されている改正案については撤回されることを求めて、私の質疑を終わります。
○堀内委員長 次回は、明二十六日水曜日午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時三十七分散会 ――――◇―――――