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109回国会衆議院1987/09/04

外務委員会 第4号

発言数
228
登壇者
21
会派数
5
開催日
1987/09/04

会議録

山口敏夫自由民主党

○山口委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村上誠一郎君。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 まず、今夏に私はイタリア、スペイン、ポルトガル、そしてアメリカ連邦政府の招聘を受けましてアメリカを回ってまいりまして、そのときに各国における日本の大使館、領事館にお邪魔いたしまして、皆様方の日ごろの御努力とまた御苦労に対し、深甚なる敬意と感謝の念を申し上げたいと思います。  それで、まず第一に御質問申し上げたいのは、政治の目的は国民の生活向上、安定にあることは言うまでもありませんが、日本が世界においてどのような役割と責任を果たすのか、それも大きな課題だと思うわけでございます。そういう面におきまして日本が世界に対してこれからどのような役割と責任を果たすのか、長期的、短期的な政府の方針について御意見をお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 御案内のとおり、日本は戦後の廃墟の中から立ち上がりまして、今日世界の一割国家と言われるまでに経済の面では成長してまいりました。しかしながら、日本は軍事大国にはならないという、憲法の精神に基づき、そういう決意をいたしておるわけでございますが、今まで日本が一割国家になるまでの過程においては、諸外国からいろいろな援助を受けたりあるいは支援を受けておるわけでございます。しかも、防衛小国また資源小国である日本が今日の繁栄をもたらしたのは、一方においては日本が戦後四十数年間安全であったということが一つ、もう一つは自由貿易体制の恩恵を一番多く日本が受けてきたということにあろうかと思うわけでございます。  そういう中で、世界経済が今非常に大きな構造変換に直面し、世界経済全体がいろいろな多くの問題を政治的、経済的にも抱えておることは御承知のとおりでございます。したがって、日本は国際国家として、卑俗な言葉を申しますとこれまで子供の切符を持って乗り物に乗っておったわけですけれども、大人になったわけでありますから、大人の切符を持って乗り物に乗る、やはり一割国家としてふさわしい行動をやっていく。どこかよその国から言われたということではなくして、やはり日本みずからが一割国家としての非軍事的な面での最大限の貢献を世界の国々に対してやるということが望まれていると思うわけでございます。  もちろん日本は日米を基軸として、アジア・太平洋国家の一員でありますけれども、この地域のみならず、ヨーロッパ、中東あるいは南米、アフリカ、世界のすべての地域に対してもきめ細かい配慮をしながらこれらの国々の抱えている諸問題をみずからの問題としてとらえていくことが大切ではないかということでございます。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 今日本で言われておりますのは日本版マーシャル・プランや二百億ドルの還流、いろいろ言われておるわけでございますが、今後そういうお金をどこから出すのか、税金でやるのか寄附でやるのか、いろいろ具体的な問題がありますが、やはりこれは国民のコンセンサスがどうしても必要なわけで、そのコンセンサスをつくっていくのは我々政治家の役目だということで頑張っていけたらなと思うわけでございます。  今、特に世界において重要な国家関係は日米関係であるわけでございますが、アメリカは今双子の赤字、貿易赤字と財政赤字で悩んでおるわけでございます。今、そういう日米貿易不均衡を背景に米国の議会で非常に保護主義的な傾向の動きが高まっておるわけでございます。特に、今度東芝機械事件において対日イメージに非常な打撃を与えたわけでございますが、この夏休み明けの来週議会が再開されまして、いよいよ貿易法案の審議が行われるわけでございます。  非常に重要な時期であると思うわけでございますが、今後の日米関係及び見通しに対して大臣の所見をお伺いしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 包括貿易法案につきましては、ただいま御指摘のとおり、休会明けのアメリカの国会におきまして、さらに両院議員協議会の議員の追加が行われ、そしてだんだんにこれらの問題についての検討が行われると思います。その間にいろいろ各議員がつけている条項等がございますから、それらの問題をめぐっていろいろな過程を経てこの法案の審議が行われると思いますけれども、日本といたしましては、保護貿易の色彩を持った包括貿易法案ということが成立しないように最大の努力を傾ける所存でございます。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 そして、私はアメリカへ行って特に感じたのですが、当初マスコミが報道していたようなアメリカの経済の落ち込みというよりは非常にまだまだアメリカは力があるなと思ったわけなのです。  特に、今貿易収支の赤字については、貿易上における赤字でございますが、例えば貿易外収支や資本収支をトータルしたらアメリカと日本の経済の差というものは逆転しているのじゃないかなという気さえしているのですが、そこら辺についての大臣の所見をお伺いしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 基本的に申しますと、今の村上先生のお話は正しいと思います。アメリカは広大な資源を持っておりますし、基礎的な研究、例えばノーベル賞の受賞者一つをとりましても、大きな可能性を持っておるわけでございます。  ただし、経済的に申しますと、双子の赤字は依然として続いておる。一九八一年に大減税をいたしました後、アメリカの消費はかなり大きく伸びてきておるということで財政赤字あるいは貿易赤字がずっと続いておるわけでございまして、アメリカも、一九八六年末まで大ざっぱに申しますと、約二千六百億ドルの債務国になってきておる。今世界の途上国の債務の累積が一兆ドルと言われておりますけれども、アメリカ自身が二千六百億ドルの債務国になってきておる。このままいくということになりますと、本当にアメリカ自身が大きな債務国に転落する可能性があるわけでございますので、そういう意味から申しまして、アメリカ経済は決して容易な状況にはないと思うわけでございます。  しかし、大きな将来の展望から考えてまいりますと、政策のよろしきを得れば、広大な土地と資源を持ち、そしてバイタリティーを持っておるアメリカ経済というのは大きな可能性を持っておるというふうに考える次第であります。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 それから、もう一点感じましたのは、やはり貿易赤字の根底にある要因は財政赤字であると思うわけでございます。そういう面で、日本が努力することは当然でありますが、やはり日本の努力というのにも限界があるんじゃないかなと思うのです。特に、この米国の中における問題点は、米議会とレーガン政権、それから行政府対連邦準備制度理事会、そしてまた、米国と黒字国との三つの問題点を抱えているわけでございますが、私が行った感じでは、レーガンの経済政策についてアメリカ国民並びに議会は、失敗であったと思うのですが、任期が一年半ありながら、なかなかそれに対して、日本の議会のように方向を変えることができないもどかしさがあるというのを実感したわけでございますが、そこら辺に対して、日本としてはアメルカに対して、どこまでアメリカの自国の努力を要求するのか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 他国の経済政策を批判するのは慎むべきであると思いますので、アメリカの経済政策が成功であったか失敗であったかということは、私の口から申し上げるわけにはまいりませんけれども、ただいまお話しの双子の赤字、財政赤字、貿易赤字、これらの問題につきましては、ベネチア・サミットの宣言の中において、アメリカ自身がこれについて努力するという項目を入れているということは評価したいと思うのでございます。  また、いろいろ今、日米関係につきましては貿易関係で緊張関係にあるわけでございます。これは御案内のとおり、アメリカは膨大な貿易赤字を抱えている。恐らくことしの貿易赤字はどのくらいになるか、まだ最終的な結論を見てみないとわかりませんが、四半期の統計で類推すると約千六百億ドル程度になる可能性がある。そして、その三分の一は日本がその原因をつくっておるということになると、よい物を安く売っているのがなぜ悪いかという論理が出てくるわけでございますけれども、やはり国と国との関係で余り大きな貿易のインバランスが出てくるということになると、大変なフラストレーションが出てくる。  日本の自動車が先方にどんどん輸出されて、先方の自動車工場がつぶれて失業者が出てくる。あるいは電気製品等につきましても、日本の輸出、よい品物であってもどんどん出ていって、向こうの企業がつぶれて失業者が出てくるということになると、やはりそこに摩擦が出てくるわけであります。  もしアメリカの市場は、金融にしてもあるいは製品にしてもどんどん自由に日本の企業が活躍できるのなら、どうして日本はもっとアメリカのものを買わないか。例えば、農産物等についても自由化しないかといういろいろな要求が先方としては出てくるわけでございまして、その間をどうハンドルしていくかということが非常に難しい問題ではないかと思っておるわけでございます。  一方的に黒字をずっと続けていくということは、何真ランスを完全にとるということが――私は世界貿易というのはグローバルに見るべきであると思いますけれども、余りに大きな黒字が一方的に出てくるということになると、やはりそこに大きな摩擦が起こる、日本がもしある国との関係で逆の立場にあったら、当然日本国民の中からそういう声が出てくるであろうということは予想されるわけでございまして、我々もそういうことを念頭に置きつつ対処していかなければならないと思う次第であります。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 私はやはり大統領と米議会がそれを縮小する方法に関する意見の相違を解決しない限り、難しいとは思うのです。やはり日本も個々的に対応策を立てていかなければいけないと思うのですが、牛肉やかんきつ類を含めた農産物、関西空港等の個別問題に対してどう考えているか。私なんかは工業製品の関税なんかは全廃しても構わないと思うのでございますが、そこら辺の大臣の所見をお伺いしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 今お話しのとおり、日米関係は非常に厳しい状況の中にございますけれども、農産物については日本自身もかなりセンシティブな問題を含んでおみわけでございます。したがいまして、牛肉、かんきつ類については、明年四月以降の取り扱いについて米国との間で協議していくという考え方を持って、そういう方向で進んでおるわけでございます。  また、これを含めまして農産物問題の対応に当たっては、米国との健全な貿易の発展、国内産業の現状に留意しながら適切に対処していくことが必要であろうかと思います。  なお、関西空港についてお話がございましたけれども、これは手続の透明性を確保することにより、外国企業に対しても公正かつ無差別の競争の機会を与えることとしており、米側に対して引き続き日米の協力の精神に基づく対応を求めていく所存でございます。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 それから次は、国防省、ペンタゴンに行ったときに、アメリカの担当者は、貿易摩擦と国防の問題については切り離して考えるべきだと、非常に冷静な御意見を言っていたわけでございます。  今そういういろいろな対日批判が高まる中で、特にペルシャ湾の問題がクローズアップされておるわけでございますが、特にペルシャ湾における安全航行の問題に関し、そのペルシャ湾から日本が六割の石油を輸入しておるという現状において、どういうふうに国力に見合った責任を果たしていったらいいか、私自身は公海における機雷の掃海船を出すということ自体、法律的に、また政治的にどういう問題点があるのか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 国際社会における日本の果たすべき役割というのは、ますます大きくなってまいってきておりますし、今お話しのように、ペルシャ湾の安全ということは、日本の石油の輸入量の約五五%がホルムズ海峡を通ってやってきております。最近は特にペルシャ湾の波が高いということは、我が国の石油の輸入にとって大変重要な関心を持っておるわけでございます。したがって、我が国として一義的になすべきことは、やはり外交努力によってこの問題に対応していくということではないかと思うわけであります。  イラン、イラク双方に対してパイプを持っておる唯一の先進国は日本であると申しても差し支えないわけでございまして、そういう意味で私自身、先般イランに参りまして先方の指導者ともいろいろ懇談をいたしました。その後、御案内のとおり国連安保理の決議が出ましたけれども、なお、この決議に対しましてイラク、イランそれぞれの反応が違っております。  しかし、いずれにいたしましても、国連の事務総長もこれに対応して行動しようということでございますので、国連の事務総長等の努力をできるだけ支援をしていく、そういう形で外交努力を中心にしてこれらの問題には対応すべきものであろうかと思うわけでございます。  なお、ペルシャ湾の安全について国際的な何らかのスキーム、これは何も日本の船だけではなくしてヨーロッパの船もあるいはアメリカの船も、世界じゅうの船がペルシャ湾を航行しておるわけでございますから、これの安全ということは世界的な意味で、国際的な意味で非常に大事なことでございますから、そういう国際的なスキームができましたときに、日本がどういう形での協力ができるかということは、そういうスキームを見た上で考えていくべきであろうかと思う次第でございます。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 あえてもう一回お伺いさせていただきますが、中曽根総理は非常に前向きな発言をなされたわけでございますが、外務大臣としては、例えばもし日本の自衛隊が掃海船を出すというような可能性を探るとした場合には、法律上いろいろな面でどういうネック並びに問題点があるか、御意見を例えたらと思います。

斉藤邦彦外務省条約局長

○斉藤(邦)政府委員 法律的な側面についてお答えいたします。  機雷という兵器は、設置の時期とそれが効果を発揮いたします時期との間に非常に時間的な差があり得るという面におきまして通常の兵器と性質が異なっておりますので、国際法上の評価もなかなか複雑な面がございます。  ただ、公海上に遺棄されておりましてどの国も既に権利を主張していないような機雷、これを航行安全の確保のために掃海することは国際法上全く問題がないということは疑いがない点でございまして、総理大臣の御答弁もこういう趣旨を答弁したものだろうと我々は考えておる次第でございます。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 それからもう一つアメリカへ行ったときに感じましたのは、アメリカがこの二百年であれだけ繁栄した原因には、多様性、個人主義、フリーダム、開拓者精神、そういう四つのポイントがあったと思うわけでございますが、今日本において文化的な面で問題になっているなと感じますのは、最近ユダヤ人の本が非常にセンセーショナルに扱われておるわけでございます。  特に、例えば東芝機械やいろいろな我が国に対する反発の根本には、ユダヤ人の世界的な意思疎通機関がありまして、それによって起こったのじゃないかというような本が出ておるわけでございますが、確かに思想と言論の自由は基本的人権で最大に尊重しなければいけない面でございますが、そういう面で興味本位な、一過性的なもので、悪意がなくとも人種差別や人種的偏見を助長しているようにとられるような危険性のある書籍の流布というものは非常に危険な風潮である。特にアメリカやヨーロッパから、日本人が本当にそう考えてないのにそう考えているふうに誤解されることは非常に危険だと思うのですが、そういう点に関して大臣の所見をお伺いしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 私も比較的本屋をよく回る一人でございますけれども、外務大臣になりましてなかなか時間がございませんが、御指摘のごとく、極めて一方的な物の見方に基づいた著作物が流布していることは望ましいこととは考えておりません。  思想、言論の自由が保障さるべきことはもとよりでございますが、例えば、現在日本が直面する諸問題はユダヤ人の世界的陰謀によるものであるというような見方は、全く事実に反し、無責任なものと言わざるを得ないと私は考えております。  また、政府としては、反ユダヤ主義を初めとして、いかなる人種的宗教的差別、偏見にも強く反対するものであることを明確に申し上げたいと思う次第でございます。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 今度はちょっと話題を転じまして、アジアの問題に目を向けたいと思うのです。  韓国は今非常にいろいろな面で自由化が起こっているわけでございますが、韓国の国内情勢と今後の日本の外交における方向づけについて大臣の所見をお伺いできたらと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 御案内のとおり、現在韓国では憲法改正を含め大統領直接選挙制度実現のため与野党の話し合いが行われ、来年二月の政権移譲までの間に憲法改正等の措置をとるべく努力が行われているものと承知いたしております。  他国の国内情勢に種々立ち入ったコメントをするのは差し控えるべきだと思っておりますが、我が国としては、重要な隣国である韓国の出来事に対しましてはその推移を注視しておりまして、韓国国民の総意たる明年の平和的政権移譲、またパルパル・ソウル・オリンピックの成功が実現することを心から期待しておる次第であります。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 それからもう一点、中国問題についてお聞きしたいわけでございますが、例の光華寮問題、それからその前にありました教科書問題等でございますけれども、その面で非常に御苦労なされていると思うのですが、両国のよりよい関係のためにはもっと率直にいろいろ意見を闘わすべきではないかという意見が日本国内にあるわけでございます。そこら辺について大臣の所見をお伺いしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 日本と中国との関係は、私は全般的に見て良好な関係にあると思っております。また、重要な隣国である中国と日本とは末永く仲よくしていかなければならないと考えておる次第でございまして、この点につきましては、日中共同声明、日中平和友好条約、また、その後日中間で交わされております日中の四原則、これを堅持しながら、いろいろなさざ波が若干ありましても、それを乗り越えて我々は永久の日中両国の平和のために最善の努力をしていかなければならないと思います。したがって、その過程において率直な意見の交換をすることは極めて有意義なことであると思っておる次第であります。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 最後に、日本の外交の姿勢というか方向について感じたことを率直に御質問したいと思うのです。  日本の外交は、非常に皆様方努力しておるわけでございますが、何と申しますか外交だけがちょっと孤立しているような感じがするわけでございます。特に民間企業にしても我々政治家にしても、もっと外務省と協力し合って日本の立場並びに意見を外国に理解してもらうように努力すべきではないかと思うわけでございます。  特に、外国に行って感じましたのは、民間の方々が恵まれない国々に対して手助けをするケースが非常に多いわけでございますが、日本においてはそういう方向というのがまだまだ弱いんじゃないかなと思うわけでございます。そういう面において、日本がこれから世界の中で生きていくためには、日本というもの、また日本人というものをもっと外国に理解していただくことが基本にあると思うのですが、今後、外務省がどういう方向でそういう問題に対処していくか、外務大臣の御意見を伺いたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 お話しのとおり、外交は政府だけでやるものではございません。やはり国民全体として相互の理解を深めていくということが大切であることは御指摘のとおりでございまして、政府、国会、また民間レベルでの交流が非常に大事でございます。  過去の日本の歴史を振り返ってみましても、民間人の果たした役割、もちろん遣唐使とか遣隋使というものもございますけれども、それ以外にもかなり民間の方々が冒険心を発揮して活躍された、それが一つの大きな契機になったということもございます。したがって、私はそういう意味で国民外交の展開が必要であろうかと思うわけでございますが、特に若人の交流が、これから二十一世紀を展望してまいりますと非常に大事なことではないかと思っております。  その一環としてはやはり留学生の問題等があろうかと思うわけでありまして、日本の一番近隣にありますASEANの諸国からの留学生にいたしましても、現在、インドネシア一つとりましてもアメリカが一番多い。これは五千名以上でしょう。西ドイツが二番目で、日本はずっとランクが下がりまして十番目で、けたが随分違う。  日本とは非常に密接な関係にあるべき国でさえそういう状況であるということは、いろいろな理由があろうかと思うわけでございますけれども、やはりそういうものを長期的な視点に立って考えていく必要があるのじゃなかろうかと思うわけでございまして、この点につきましては文部大臣とも協力いたしまして、留学生の問題等、根本的に改革をしていく必要があろうかと思っておる次第であります。

村上誠一郎自由民主党

○村上(誠)委員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。

甘利明自由民主党

○甘利委員長代理 次に、高沢寅男君。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 大臣、大変御苦労さまでございます。  私はきょう、初めに七十分時間をいただきまして質問申し上げ、あと六十分河上委員から引き続いて御質問をしたいと思います。  私の質問は、初めに東南アジアの熱帯雨林の木材問題について若干御質問をして、後、外交全般の問題に移ってまいりたいと考えております。  まず、我が国との関係における東南アジアの熱帯木材の供給国はどこどこの国であり、そういう木材を輸入している国はどこどこの国であり、また、その中で我が国がどのくらいのシェアを占めているか、そういう概況をお聞きしたいと思います。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 第一の点でございますが、東南アジアよりの熱帯木材の日本への主な供給国は、マレーシア、インドネシア及びフィリピンの三カ国でございまして、昨年、一九八六年の我が国の南洋材輸入に占めます各国のシェアは、マレーシアが八四・六%、インドネシアが三・七%、フィリピンが三・三%でございます。  第二の御質問の、これらの国の供給先でございますが、ただいま申し上げました三カ国におきまして東南アジアの全木材輸出の大部分を占めておりまして、最近の統計でございますが、一九八五年の統計におきましては九五%を占めております。このマレーシア、インドネシア及びフィリピン三カ国を合わせますと、輸出先の第一位は日本でございまして、同三カ国の全輸出量に占めるシェアは日本が五四%、第二位は中国でございまして一七%、第三位が韓国でございまして一二%でございます。  以上でございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 概況はわかりました。  それで、今おっしゃった中ではマレーシアが非常に大きな比重を占めておりますが、マレーシアの中のサラワク州、ここからの木材の輸出が本格的になった時期はいつごろか、それからまたマレーシアのサラワク州リンバン地区というところに我が国の援助で林道がつくられたということがございますが、この林道ができたタイミングとサラワク州の木材輸入が非常にふえたというその辺の因果関係はどういう状況があるでしょうか。

英正道外務省経済協力局長

○英政府委員 手元の資料によりますれば、昭和三十三年から昭和五十九年までサラワク州からの木材輸入の統計がございます。昭和六十年以降はマレーシア全体からの輸入統計しか手元にございません。  この林道建設との因果関係に関連して、お答えになるかちょっと自信がございませんけれども、本件関係の企業は従来ケーブルによる木材の渡河搬出を行っていた。企業採算からすればそれで十分だというところ、サラワク州の政府から、地域開発とか公共的ないろいろなサービスの向上ということから、奥地の部落への道路開設ということをやってほしいという強い希望があった。  それを受けてその企業としては、これは採算に乗らない話なので企業ベースにならない、しかし公共性という州政府から強い要請があったということで、こういう種類の関連投融資が行われる国際協力事業団、JICAに投融資を求めてきた。それで、JICAはリンバン地区に道路二十八・六キロ、橋梁一基の建設を含む事業を対象として、工事の期間は五十七年五月から六十年九月ということで融資を行った、こういうことでございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 今御説明のその道路が今現地の住民で封鎖されておる、こういうことを私も新聞の記事でも読みましたが、その現況はどうなのか、それからその封鎖している人たちはどういう目的で、あるいはどういうことを主張してやっているのか、この辺を説明してください。

英正道外務省経済協力局長

○英政府委員 情報によれば、現地住民の道路封鎖の主たる目的は、自己の生活環境保全のための保護林区の獲得ということであるよしてございます。  そして、この現地住民の座り込みをしている人々は、サラワク州政府を相手として交渉したい、こういうことで現在も座り込みをしているものと理解しております。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 すると、サラワク州政府は、こういう道路ができれば住民全体の福祉の向上になるからと言って依頼をして、道路をつくった。しかし、その地域にいる住民はそういう道路に対して反対だ、こんなようなことに現実にはなっているわけですね。この辺は、我が国の政府としての認識はどうでしょうか。

英正道外務省経済協力局長

○英政府委員 この事件はある意味では不幸なケースだろうかとは思います。サラワク州の政府がかなり広大な地域を木材伐採、輸出を認めるということで企業に与えた、そこでこの森林伐採事業が始まっておるわけでございますが、その中でこの三十キロ弱の道路が建設されたということでございますけれども、私どもの理解では、間違っているかもしれませんけれども、道路ができて、州政府としてはよかれと思ってやったのであろうと思うのです。  現実に私どもは幾らかの事例を持っておりますけれども、確かにお医者さんが奥地まで行けるようになったとか、そういうプラスの効果がもちろんかなり出ておるわけで、それを州政府としては期待してやったのだと思うのです。  ところが、この道路ができた周辺の住民というのではなくて、むしろ全体の開発が予定されている地域のさらに奥地の方に住む狩猟をしている少数民族がおられるわけですけれども、そういう人たちが自分たちの生活の場がなくなってしまうということで危機感を持って、その一つの具体的なシンボルといいますか、反対の意思を表示する行動として座り込みをしているというのが現実ではないかと思うのです。  やはりこのような方々は、自分たちの生活の場が守られるある地域を自分たちだけの地域にしてくれということを州政府に要求している。この問題は、やはり州政府が、こういう少数民族といいますか、そういう狩猟民族の生活権を守るためにどこまでのことをするかという点を決めていただかないといけない問題じゃないか。繰り言になりますけれども、そもそもそういう広大な地域でそういう狩猟民族がいるところを、開発の権利を企業に与えればこういう問題は起こってくるということも、州政府としては本来は考えるべきであったろうという気はいたします。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 私は、この問題は木材の伐採によって熱帯雨林が破壊されているというところが一番の大前提だと思います。サラワク州政府は、そういう木材を売却することでそれなりの州政府の収入が入るとか等々の観点はあろうと思います。しかし、そのサラワク州政府といえども、熱帯雨林が破壊されて木材供給の源泉がなくなってしまうということではいいはずがないわけで、まして森林地帯に生活の根拠を置いているそういう原住民の人たちにとっては熱帯雨林を破壊されることは絶対困る、こういう両面の立場があるかと思います。やはり我が国としては、そういう協力をするのに、そういう熱帯雨林を破壊しない、こういう観点が非常に大事じゃないか、こう思います。  サラワク州政府から木材伐採の権限を与えられている企業、現地企業でしょうが、しかし我が国から出資している企業も明らかにあるわけです。そういう意味において、聞いてみると千年、二千年というふうな樹齢を持ったラワンのような木を倒すと、その木とツタなどで絡み合っているその周辺の多くの木が一緒に倒れてしまう。それを今度は丸太にして道まで引っ張ってくる。ブルドーザーで引っ張る。そうすると、熱帯雨林の大事な土壌がみんなめくられてしまう。そこへ雨が降ればたちまち森林荒廃の原因になる。  そういうような伐採のあり方でいいのか、これは日本自体がやはりそういう問題を深刻に反省しなければいかぬじゃないか。同時にまた、そういう森林破壊に対しても植林をして森林を回復するということにも最大の努力をしなければいかぬということですが、局長、この辺のところはどういうふうな対策をとっておられるか、これからの対策も含めて聞かせてください。

英正道外務省経済協力局長

○英政府委員 まさに高沢委員の御指摘の森林破壊を招かないように、さらには植林事業等に力を入れなければいけないという点については、政府としても全く同感でございまして、植林に関する援助のプロジェクトも幾つかございます。  それから、こういう環境を破壊するというような、これは特に林業のみに限りませんけれども、やはり開発援助を行うに当たって環境に影響を及ぼすという点についてもっと注意を払うべきであるという認識は、政府部内で強くなっております。現にそういう問題を検討する政府の委員会のようなものができておりまして、検討を進めております。やはり環境アセスメントというふうなものをちゃんとやって協力しなければいかぬ、今後はそういう方向で努力していかなければいけないだろうという気持ちは持っております。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 それじゃ、もう一問でこの問題は終わりますが、今政府としても検討していると言われた、その中にひとつぜひ入れてもらいたいことは、そのプロジェクトをやる、その事前の現地の調査をやる、そのときに向こうの政府の言い分を聞くのは当然必要でしょうが、同時にそのプロジェクトの周辺の現実の住民の意見をよく聞く、その住民がそういうものを本当に望んでいるのか、住民はそれは困ると言っているのか、ここを事前調査の段階ではひとつよく調べていただきたい。これが一つ。  それからもう一つは、そういう事前の調査の段階で、例えば生物の学者とか動植物の学者とか林業の専門家とか、そういう人たちも調査の中へ参加してもらって、環境保全と開発との矛盾が出ないような開発のやり方をしっかりと立てる。こういう二面をぜひ実現してもらいたいと思いますが、いかがでしょう。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 今先生の御提起がありました問題は、いわゆる環境アセスメントの問題であろうかと思いますが、私も実は熱帯林の問題については多少関心を持っております。  御案内のとおり、一九七〇年代の中ごろから、世界の森林、とりわけ開発途上国の森林の荒廃が目立ってまいりました。特に「二〇〇〇年の地球」という報告、世界環境保全戦略――一九八〇年の七月にアメリカで「二〇〇〇年の地球」という膨大なレポートが公表されたことは御承知のとおりでございまして、これには、いろいろな現象の原因は、開発途上国の人口の増大の問題であるとか、あるいは焼き畑をするとかいろいろな農業のあり方とか、すべての問題について書いてございます。その中に、熱帯林の生態系が極めて複雑で、先生御指摘のようにたくさんの貴重な生物種を持っている熱帯林が消滅する。地球上の種の一五ないし二〇%が失われる。絶対数でいうと大体五十万から六十万種に及ぶということでございます。  このほか、「二〇〇〇年の地球」のほかにも一九八〇年には非常に重要な報告が行われまして、IUCN、国際自然保護連合が公表した世界環境保全戦略がございます。いずれにしましても、人口爆発ということと、それから熱帯林での無秩序な薪炭林の伐採、それから貧しい農民の焼き畑移動耕作、耕作をして、焼いて、それから次に移動していく。そういういろいろな問題がございまして、結局こういう問題についてもっと積極的に考えていこうということで、環境庁内にも大来佐武郎氏を座長として地球的規模の環境問題に関する懇談会というものが設けられまして、その討議結果を一九八二年のケニアのナイロビで行われた会議で発表いたしたところでございます。  詳細については一々申し上げる時間がございませんけれども、御指摘のそういう環境アセスメントの問題については、現地の要望のみならず我々みずからがこれらの地域のそういう熱帯林の重要性にかんがみまして、特に広葉樹、我々が飛行機に乗っていくところは大体針葉樹地帯が非常に多いわけでございますが、こういう地域の、私は不幸にしてサラワク州の実態は現地に行っておりませんので余り責任あることを申し上げることはできませんけれども、要するに環境アセスメントの問題について最大の関心を払っていくべきだと考えております。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 大臣の大変勉強されているお立場からのお答えをいただいて、ありがとうございました。  一つ、具体的なお願いとして、我が国でこういう熱帯雨林の問題を非常に研究もし、あるいは雨林の保存をしなければいかぬという立場でボランティアで運動しているようなグループの人がおります。できますれば、私があっせんしますから、英局長なりしかるべき人と一度意見交換をするという場もぜひ持っていただきたい、こんなふうに思いますが、いかがでしょう。

英正道外務省経済協力局長

○英政府委員 この問題は大変重要でございますし、また複雑でございますので、いろいろな方々からお教えを受けながらやっていかなければいけないと思っております。そういう機会がございますれば喜んでお話を伺いたいと思います。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 それではこの問題は終わりまして、あと一般外交問題についてお尋ねをしたいと思います。  大臣、今度の国連総会、中曽根総理が行かれる御予定というふうなことは我々も新聞では拝見しておりますが、そういうふうになるのかどうか。それからもう一つは、当然大臣自体が国連総会に行かれると思います。そういう、総理が行かれるという関係、大臣が行かれる関係、この辺の関係はどういうふうになりましょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 中曽根総理の国連総会出席は検討事項ではございますけれども、まだ決定はいたしておりません。また、総理が仮に行かれるというようなことになりましても、私自身は当然シェワルナゼ外相との会談であるとか、あるいはその他多くの主要国の関係閣僚、外相との個別の会談等がございますので、当然、国連総会の機会に参る予定でございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 総理が行かれて、そしてレーガン大統領と会談されるとか、あるいは外務大臣も国連総会に行かれてシェワルナゼ外相あるいはその他シュルツ国務長官、そういういろいろな方との会談があろうと思います。その中で恐らく一番中心の話題になるのは、INF廃棄の合意が一体どうなるのか、こんなことをお話し合いの一番中心にされるのじゃないかと思いますが、その点いかがかということ。  それからまた、このINF廃棄の協定がいよいよまとまる方向で今情勢が非常に熟してきている、こういう感じがいたしますが、その辺の見通しはどんなふうにお持ちか、お尋ねしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 これはもうしばしばお答え申しておりますとおりに、最終的な決着まで注意深く見守る必要があろうかと思いますけれども、検証その他の問題がございますけれども、しかしいずれにしましても、ソビエト、アメリカ間におきましてINFについての合意ができ、そして決着までの道を歩んでいるということは、我々として非常に歓迎をするところでございますので、この交渉が最終的な決着に至ることを心から我々望んでおる次第でございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 私もINFの合意ができるだろう、こう実は考えておりますが、その一つの大きな根拠としては、最近、西ドイツのコール首相が西ドイツにあるパージングIaの廃棄ということについてはっきりした態度を表明された。このことは、この協定のできる大きな障害が幾つかあって、その障害のうちの一つがこれで取り除かれた、こういうことじゃないかと私は思いますが、大臣はどういうふうに評価されていますか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 今次コール首相の御発言は、現在米ソのINF交渉の主要な問題の一つとなっている西独保有のパージングIaの、核弾頭は米国が管理していることは御承知のとおりでございますが、ミサイルの取り扱いに関して米ソ交渉の対象にしないとの原則を維持しながら解決策を提示することによりINF協定の早期実現を促進しようとするものであると心得ておりまして、西ドイツ政府のINF協定の早期妥結への真摯な姿勢を示すものと考えるわけでございます。  このコール発言を受けてソ連側が建設的に対応することを強く望むものでありまして、我が国としては、効果的な検証措置を伴ったINF協定が早期に締結されることを心から期待する次第でございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 私は、このコール首相の決断の背景には一つはこういうことがあると思いますね。何といっても西ドイツの国民の反核の意識が非常に強い、これが一つ反映されていると思います。あるいはまたヨーロッパ、NATO諸国、これらの国々も当然反核、核軍縮を望む非常に強い要望があるわけですから、コール首相がそれをいわば代表している、こういうふうに見ていいのじゃないか。あるいは、東ドイツにも実はそうした西ドイツにあるミサイルに見合うソ連の核ミサイルがあるわけですね。  東ドイツもやはりそういうものは撤去してほしい、こういう気持ちがあることは間違いありませんから、その点においては、西ドイツのコール首相の決断ではあるが、実際上は東西ドイツの暗黙の合意というふうなものがこの辺にあるのじゃないか。今度ホーネッカー書記長が西ドイツを訪問されるというようなことで、東西ドイツの間にもそういう交流関係が前進しているというふうに私は見ます。そこら辺のコール首相の決断の評価、そういう背景があるのじゃないかと私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 コール首相のお気持ち、またホーネッカー議長のお考えが那辺にあるかということを私がそんたくするのはいかがかと思いますけれども、いずれにいたしましても東西ドイツの緊張がこれによって和らげられるということになれば非常に幸いなことだと思うわけでございます。同時に、東は東、西は西、それぞれやはり共通の民族でありますけれども、立場の相違というものが若干あろうかと思うわけでございますが、その詳細について私ども存じてないわけでございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 次に、INF協定の大きな障害の一つと見られていた、さっき大臣も言われましたが、いわゆる査察問題ですね。この査察問題の点では、ソビエト側も非常に譲歩して、今まで査察といえば頭からノー、こういうことであったのが、今度は査察も受け入れる。それから査察のためのアメリカのいろいろな探知の機械なんかありますね、機械装置、そういうものもソ連の中へ配置してよろしいとか、あるいは場合によればソ連の核実験の場所ヘアメリカの専門家が来てその現場を見るということもやってよろしいとか、そういう意味においては査察問題では非常にソ連も譲歩してきた。一方、アメリカ側もこの査察問題について非常に厳しい条件を出していたのが、最近かなり査察の条件を簡素化するというような形の米ソ両方における一種の譲歩というものがあって、協定成立の大きなネックがこれで一つ乗り越えられるということになるのじゃないかと期待をしております。  また、今言いましたコール首相のパージングIaを廃棄するということと見合って、今度はアメリカが、その核弾頭はアメリカが管理していた、今度はそれも撤去するというふうなアメリカの態度も出てきたというような点において非常にアメリカ側からも譲歩の姿が出てきておる。これは私はこの協定成立に向かって非常に希望を持たせる動きだ、こう思いますが、この辺の大臣の御評価をお聞きしたいと思います。

遠藤實外務省国際連合局長

○遠藤政府委員 今先生御指摘の検証問題でございますけれども、まずINFの検証問題について申し上げますと、八月二十五日にアメリカ側がジュネーブにおきましてINFのグローバル・ゼロ、グローバル・ダブル・ゼロを前提といたしました検証草案を提出しております。これはINF合意成立に向けての積極的な動きといたしまして我が国としても非常に評価をしております。この草案に対しましてソ連側が建設的な態度で臨みまして、効果的な検証措置を伴ったINF協定が早期に締結されることを期待しております。  現在、検証問題につきましては、このINFのみならずその他の分野でもいろいろ米ソ間の交渉が行われておりますけれども、大変技術的に難しい問題を含んでおりまして、全般的にまだ大きな隔たりがあるということは言えるかと思います。ただ、このINFにつきましては非常に具体的な提案を米側が提出しておるということでございまして、この今後の進展に期待をかけている次第でございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 もう一つINFの協定の成立に道を開いた譲歩としては、やはりソ連が今まではアジア部には百弾頭を置く、こう言ってきたのが、今度はアジア部もこの際ゼロにします、こういう態度を出してきたということは、これはこれで私はソ連の側からの非常に大きな譲歩であった、こういうふうに見るべきだと思いますが、これもINF合意の可能性を非常に大きく促進をしたと私は思いますが、大臣の御評価はいかがでしょうか。

遠藤實外務省国際連合局長

○遠藤政府委員 ソ連のアジア部に配備しておりますSS20を撤去する、これがまさにグローバル・ダブル・ゼロの実現に向けて一歩踏み出したわけでございますけれども、ただ、ソ連側の今回の声明につきましては、元来、我が国を初めといたしまして西側諸国が結束をいたしまして、そもそもこのINFというのが移動性の高いものである、そういう観点を含めましてグローバル・ゼロでなければならぬということで米国の立場を支持してきたわけでございます。レーガン大統領を初めといたしまして、米側が粘り強くこの立場をソ連側との交渉で維持したということがこのソ連側の決定になったというふうに評価しております。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 ソ連がアジア部の撤去を受け入れた、その際に一つ問題として、今までソ連はアジア部にSS20を置く一つの根拠として、例えば韓国にアメリカの核があるじゃないか、日本にもあるじゃないか、フィリピンにもあるじゃないか、こういう言い方をしていたわけですね。ところが、今度のアジア部の撤去のときには、ジエゴガルシアと韓国とフィリピンにアメリカの核はある、しかし、それとこのアジア部のSS20の撤去を絡ませることはしない、こう言って撤去することを出したわけですが、その際、日本ということは言わないわけですね。  この辺のところのソ連の一種の変化ですね、この変化は一体、どういう背景や根拠があるのか、その辺はどんなふうに認識されているでしょうか。

遠藤實外務省国際連合局長

○遠藤政府委員 実を申しますと、ソ連側の発言は、ずっとこのINFの交渉を通じましてそのときどきで非常に変わっております。また、内容もいろいろ変化をしておりまして、したがいまして、一つ一つの発言等につきまして従来どれほど特段の意味を持たせることが適当かどうか若干疑問があったわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、グローバル・ゼロ受け入れに関するゴルバチョフ書記長の発言につきましては、もともと我が国に核兵器が持ち込まれるということはあり得ないことでございまして、したがいまして、従来ソ連がアジア部のSS20の撤去と在日米軍の装備等を関連づけて論じていたこと自体が甚だ的を外れていたのではないかと考えております。  他方、いずれにいたしましても、INF交渉は地上配備であって中距離の射程距離を持つミサイルを対象とするということでもともと合意ができていたわけでございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 ここでちょっと視角を変えまして、まさに我が国外交の基本的あり方で大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。  つい最近、防衛白書が発表されたわけでありますが、その防衛白書の冒頭のところになりますけれども、「軍事力の意義」という項があって、そこでこういうふうな表現があるわけです。  「軍事力の役割ないし機能は、究極的には力によって相手に対する要求を充足させ、あるいは相手の軍事力の行使を直接阻止することにある。また、実際に軍事かが行使されなくても、強力な軍事力を背景として相手を威圧することなどにより政治的な影響力に転化したり、逆に相手の軍事力の存在が一方的にそのような政治的な影響力に転化することを防止するという側面がある。」ざっとこんなようなことをこの防衛白書は書いております。  これは要するに、軍事力というものが国際関係において相手の国の政府に対してこちらの言い分を聞かせる、あるいは相手の国からこちらにかかってくる圧力をはね返すというような場合にも一番これが大事な要素なんだということを、防衛白書だから当たり前と言えばそれまでですが、そういう立場を防衛白書は出しております。  私はこれを読んで考えたのですが、我が国の国の安全を守り、また国際平和を守っていく場合の重要な要素として、何といっても外交活動というものがあるわけですね。そこで、外交活動とこの防衛白書の言う軍事力の役割、この相互関係は一体どうなのか、どうあるべきか、こんなふうに実は考えたわけであります。  一つのあり方は、軍事力が先を進む、そしてその後を外交がついていくというような関係もあるいはあるかもしれません。しかし、私はそれは本当の外交の姿じゃないと思う。外交が先を進む、軍事力はどうしても必要なら後からついてくる、そして外交の立場から場合によれば軍事力に対して一歩下がれというようなことも当然出てくるでしょうし、そういう外交が軍事力を状況に応じてコントロールしていく。これが私はいわゆるシビリアンコントロールというものじゃないかと思います。  そこで、よくシビリアンコントロールというと、防衛庁の制服軍人と防衛庁の文官、シビリアンの関係で、防衛庁のシビリアンが言うならばもっと指導力を発揮するというふうにごく小さく我々は考えがちですが、そうじゃなくて、シビリアンコントロールというのはまさに外交が軍事力を統制する、これを動かす、場合によればそれに対して後ろへ下がれと命令するというようなあり方が本当のシビリアンコントロールじゃないかと私は思いますが、防衛白書のこういう表現を私読んで、こういうことを外務大臣は外交との関係で一体どうお考えかなと思ったわけですが、この際、お考えを聞かせていただきたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 仰せのとおり、外交と防衛は車の両輪だと思います。したがいまして、日本は少なくとも軍事力においては小規模な侵略に対する自衛力を持っておりまして、それ以上のものに対しましては日米安保条約によって補完されているというのが日本の防衛体制でございます。  また、後段のシビリアンコントロールについてのお尋ねでございますけれども、これは御案内のとおり、内閣総理大臣が全体の指揮をとっておるわけでございまして、外務大臣も安全保障会議のメンバーの一人でございますから、その面を通じて我々の外交努力を十分発揮して、そういう軍事的な問題に至らないで物事が解決できるということが最善の策であると思うわけでございまして、まさに日本は外交努力で最大の努力をしていくべきである。また、同時に国際国家として諸外国にいろいろな意味で貢献していく、日本がなくてはならない国であるというような認識を諸外国に植えつけていくということも日本の防衛の一環ではなかろうかと思うわけでございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 先ほどの防衛白書の表現によれば、結局、軍事力は多ければ多いほどよろしい、強ければ強いほどよろしいという結論になっていくわけですが、最近私たちが大変心配していることは、あの問題のGNP一%の枠も超えてきた、あるいは三木内閣のときのあの防衛計画大綱、大臣も先ほどおっしゃったいわゆる基盤的防衛力、この考え方をもう乗り越えていくというふうな段階に今どうも来ているのじゃないか。  そして、年々の予算編成で見ても、防衛予算だけは別枠で拡大している。外務省のODAの予算の拡大、これはこれでもちろん性格は違いますが、とにかくそういうふうな状況を見てみると、今大臣がお答えになったことと現実の日本の防衛力、軍事力のあり方は質的にどうも違うところへ今行こうとしておる、こんなふうに私は大変危惧するわけですが、その辺のところを一体どうやって歯どめをかけるかということを、私は今こそ、それこそ内閣総理大臣から始まって外務大臣、そういう皆様方のシビリアンコントロールの大きな力を発揮してもらうべきときじゃないのか、こんなふうに考えるわけですが、御所見はいかがでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 御案内のとおり、今日の世界の平和が、いろいろ議論はあろうかと思いますが、残念ながら力の均衡によって成り立っておるという考え方を私どもはとっておるわけでございまして、このバランスが崩れるといろいろな問題が起こり得るということでございまして、そういう意味におきまして、日米安保条約に依存している日本が、日本の防衛という見地から考えてその中で一体どの程度の役割を果たすかという問題があろうかと思うわけでございます。  私は今先生のお話を承っておりまして、外交的な努力にできるだけの重点を置いていく、日本の防衛については憲法の精神を十分遵守していく、軍事大国にはならない、他国に脅威を及ぼすようなことはしないという精神はあくまでも貫いていくべきであろうかと思うわけでございますが、現実的にどういう体制をとっていくかということは、国会の御審議を踏まえながら対応していくべきものと考えるわけでございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 先ほどINFの合意の可能性についていろいろお尋ねしましたが、その際も申し上げた、西ドイツのコール首相が自分の国にあるパージングIaの廃棄、これを出した。これは恐らく、西ドイツの軍部との関係で言えば、軍部というものは、さっきの防衛白書にあるように軍事力は強ければ強いほどいい、多ければ多いほどいいというのが軍部の考え、それをあえて抑えてコール首相のああいう態度が出されたと思いますし、恐らくアメリカもソ連も同じように、アメリカだって本当はINFを廃棄するのじゃなくてもっと強化しようというふうな考えが軍部の中にはあると思いますが、それはレーガン大統領があえて指導性を発揮して今度は廃棄する方向を今進めておる。ソ連のゴルバチョフ書記長も全く同じだと思います。  そういう意味においては、INFの廃棄の合意ができるということは、関係のそれぞれの国の政治的なリーダーがまさに自分の国の軍部を抑えながら軍縮の方向を決断して進めている、こういう姿のあらわれじゃないのか、これは我々日本といえどもそういう立場なりこれをはっきりと持つ必要があるのじゃないのか、私はこんなふうにも思います。  それで、最近、大臣も恐らくごらんになっていると思いますが、国際文化会館の理事長の松本重治さんが今朝日新聞でずっと連載されておる。あの第二次大戦に進む過程から戦後の自分の御経験を述べながら、その中で歴史の教訓ということを語っておられます。その中ではっきり言っておられますね。「戦争、敗戦から私たちが学ぶべきことは、軍部に力を持たせないようにすること、外国と真の相互理解をすること、国民に情報を公開し、批判の自由を保証することだと思う。」こう言っておられます。  この中の一番の柱に、軍部に力を持たせてはいかぬということを言っておられることは、これは松本さん自身の経験を踏まえた非常に深刻な教訓ではないか、こんなふうに思いますね。私は今、このまま進んでいくと、自衛隊の強化、防衛庁の強化というようなものの中から、これから五年、十年の先に一体何が出てくるか、大変心配する気持ちでいっぱいです。  そうなってくると、この第二次大戦の敗戦の中で得た貴重な教訓というものをまさに今こそ生かさなければいかぬ、こういう段階に来ているのじゃないのか、こんなふうに思いますが、大臣も非常に歴史の研究をされ、大きな識見を持っておられる方ですが、松本理事長のこういう御発言を大臣としてはどう受けとめていらっしゃるか、それをまた外務大臣としての御自分の行動にどういうふうに表現するお考えか、お尋ねしたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 松本先生の御発言は私も承知いたしております。御案内のとおり戦前と現在の状況、日本の置かれている自衛隊の状況というのは、組織的にも戦前の軍隊とは全然異なっておりますし、憲法上の問題、自衛隊法上の問題もございますし、国会のコントロールという点で考えましても、随分違うのではなかろうかと思います。  しかし、実際、自衛隊としては、やはり新しいいい兵器をたくさん持ちたいという気持ちを持つのは、当然そういう気持ちになる可能性はあろうかと思います。したがって、そういう点はやはり全体としてどうバランスをとっていくかということが大切ではないかと思いますが、私は、それと同時に必要にして最小限の自衛力というものは独立国家日本として持つべきである、そう思うわけでございまして、それがないということになりますと、ただアメリカにのみおんぶされて日本は守ってもらうということで、果たすべき役割を果たさないで、それで日本の安全が確保されるかというと、なかなかそれは難しい。  やはり日米の相互信頼のもとで、日本は最小限の責任を果たしていくということでなければならないと思うわけでございますので、松本先生の御意見は非常に貴重な教訓として我々も学んでいかなければならないと思いますけれども、同時に日本も日本の防衛のあり方ということ、国民的な見地からコンセンサスを得て、そしてこれからも考えていくべきものであろうかと思うわけでございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 先ほどの松本さんの御発言の中に、こういう言葉もあるんですね。「アメリカ人はだれも日本が軍事大国になってほしいとは思っていないはずだ。第一次世界大戦の時、アメリカがヨーロッパに気をとられている間に、日本がドイツ領の青島や南洋の島を取ってしまった。 日本の海軍が強くなっては困ると一九二一、二年のワシントン軍縮会議で日本の海軍力に枠をはめた。中国に関する九カ国条約は日本陸軍が中国をいじめないようにという趣旨だった。日本の軍事力が強くなれば、なんとかしてそれを抑えようというのがアメリカの伝統的考え方だ。」そして「近年、アメリカ側は自分の負担を軽くしたいと、日本の防衛力増強を要求してきているが、アメリカの考え方の大枠は、ワシントン軍縮会議の延長上に、いまもあると思う。だから日本としては、軍事費をふやす方向ではなく、対外援助でアメリカの肩代わりをする方向に向かうべきだ。それを、もっときちんとやっていれば、それほどアメリカも文句をいわないだろう。」一番よくアメリカを知っておる松本さんがこう言っておられる。私もこの点は全く同感です。  大臣が言われた日米関係の中で日本が果たすべき役割、確かにある。その果たすべき役割は軍事力で果たすというよりは、むしろ日本は対外経済協力、対外援助、こういう面において世界経済全体を活性化させる、そういう中で今落ち目のアメリカ経済もまた生きていく道をつくる、日本の経済も発展の道をつくる、こういう行き方が日本の貢献すべき一番の道筋じゃないか。  今度盛んに二百億ドルの途上国へのドルの還流とか、ODAをふやしていこうとか、この方向がやはり日本の果たすべき役割だ。ただその際、せっかく援助の金を出しながら、出したために現地で恨まれるようなことになってはいけませんから、この点はプロジェクトのつくり方は本当に現地の人に喜ばれるものであるべきだ、こういう前提はありますが、その行き方が本当に日米関係の中で、あるいは対EC諸国との関係でも、対発展途上国でもまさに日本のやるべき役割ではないか。  これをやれば世界じゅうで日本は本当に歓迎されるし、褒められる、そして世界の平和が非常に進む、こういうことになるのじゃないかと私は思いますが、大臣、この辺は、軍事もやります、援助もやります、これは実際上無理ですよ、大砲とバターの話じゃありませんが。軍事はできるだけ抑える、皆さんのお立場に立っても軍事力あるいは予算はなるべく抑えてその分は援助に向ける、こういう行き方をとるべきだと私は思いますが、どうでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 今先生からいろいろるるお話がございましたが、日本がODAをこれからもっとふやしていくべきである、世界に貢献する日本であるべきであるという点は全く先生御指摘のとおりでございます。今回のシーリングにおきましても、特にODAのみは八・六%、円レートで換算しますと実質二けたに上るシーリングが認められたわけでございますので、そういう意味からもこれからODAというものをもっとふやしていく、私自身はもっともっとこれからも画期的にふやしていくべきではなかろうかという感じを持っておりますので、この点については全く高沢先生の御指摘のとおりだと思います。  それと同時に、私は、さればといって今度は自衛力の方を全然なくしてよいかということになると、そこはちょっと難しい問題ではないかと思うわけです。仮に日本の国が侵されるとき、侵略を受けるときに、血を流して守るということを他国にのみ依存できるかということになると、やはり日本自身が必要にして最小限の自衛力、応分の分担をしていくということでなければ、それは外国の青年たちが日本の国土を守るために血を流すかどうかという点に私は疑問なしとしないわけでございますので、そういう極端なことを先生おっしゃっているわけではないと思いますけれども、やはりそこにおのずからバランスというものがあろうかと思います。いずれにしても日本は軍事大国にはならない、非核三原則は堅持する、また近隣諸国に脅威を与えるような軍事力は持たないというのが日本政府の基本的な方針でございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 今ここに中曽根総理がおられなくて総理のことを言うのは失礼かもしれませんが、外交政策の問題だからお許しいただきたいと思います。中曽根総理はかってこういうことを言われました。ソ連と渡り合うには、まず日米関係という軸をしっかりと安定させる、それから日韓関係も安定させる、日中も安定させる、さらに日本、ASEANの関係を安定させて、そして言うならば日本を取り巻くそういう外交環境をしっかりとつくっておいてそれでソ連と太刀打ちするんだ、こういうこと宣言われたことがあります。  私は、戦略と言っていいかな、この戦略の中に、では日本の主体性は一体何なんだということが大変疑問なんです。日米を安定させると言われていますが、実は今、日米関係はそれこそかつてないほどいろいろな摩擦や難しい状態が出ておるということはどうも中曽根総理が期待された姿とちょっと違うんじゃないか、こう思います。  それから日韓ですが、後でまた河上委員からお尋ねがあると思いますが、どうも今までの朴正煕、全斗煥の韓国と違う韓国に今やなりつつあるのじゃないか、これはまだ将来の問題だからわかりませんが、私はかなりそういう可能性があると思います。そうすると、今までの自民党政府が考えてこられた日韓関係と違う日韓関係が出てくる可能性がある。  日中はどうかといえば、これも昭和四十七年の日中国交回復以来日中関係は非常に安定してきました。ところがこれが最近非常に波立ってきておるということは一々申し上げる必要はないと思います。そういう状況があります。  ASEANはどうか。ASEANも今までいわゆるカンボジア問題があって、インドシナ、ベトナムとASEANの対立という状況があり、我が方はどちらかといえばASEANに肩入れということで来ましたが、これも私は近い将来、カンボジア問題が今何かカクテルパーティー方式で話し合いをやろうとかいろいろ進んでおりますが、ASEANとインドシナ三国の関係も今とは違った姿になってくるのではないか、こんなふうに思います。  中曽根総理がいろいろ数えられた要素がみんなそれぞれ状況が変わってきておるというふうになるときに、それでは日本の主体性は一体どうするんだという問題が当然問われると思います。ソ連と渡り合うということを言われたわけですが、対ソ連関係で日本の主体性を持って対応する、このあり方は一体どうか、これをひとつ大臣、今後のINF協定の成立の見通しとか、そんなことも含めながらお聞かせいただきたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 INF交渉はただいま米ソ間で真剣な討議が行われている段階でございますので、我々としましては、これが究極的に決着を見ることを心から期待しているというのが政府の立場でございます。  今、日韓、日中、日・ASEAN等の関係等々お話がございましたけれども、私は基本的にはこれらの国々と日本との関係は良好な関係にあると思います。隣国であれば幾つかの問題があることは事実でございます。しかし、それを乗り越えて、これらの近隣諸国と十分意思を疎通し合いながら、これから仲よく将来を長期展望しながらやっていく。そのためには若人の交流も必要であろうし、現時点だけではなくして十年、二十年、三十年あるいはもっと長期の展望に立って考えることが必要であろうかと考えて、留学生の問題等先般の御質問にお答えしたわけでございます。同時に私は、今先生お話しの地域のみならず、南西アジア、中東、アフリカあるいは中南米等々、またヨーロッパの諸国、北欧の諸国、こういう国々も十分頭に入れて、これからグローバルな視野で日本は外交を展開していくことが日本の外交の幅を広げるものであろうかと思うわけでございます。  中曽根総理がソ連に対する考え方を申されたということでございますけれども、私も直接その詳しい内容を承知しておりませんので、今先生から伺う限りにおきましては、私はそういう意味でやはり日本の足元をしっかりしておくということが日本の安全のために大切なことだという趣旨で総理は申されたものではなかろうかと考えるわけでございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 そろそろ時間が迫りましたので、次へ移ります。  INF協定がもし合意されれば、私は、これはまた一つのデタント時代が復活し、始まるのではないかという感じを実は持っています。一九七五年に、あの年はいろいろな意味で国際情勢の曲がり角であって、アジアで言えばベトナムの結局サイゴンまでの解放が行われたという年であったし、ヨーロッパではヘルシンキ協定が結ばれまして、それでワルシャワ体制の諸国とNATOの諸国の間の根本的なデタントの大きな橋がかけられた、こういう時代であって、そういう背景の中で当時アメリカのカーター大統領とソ連のブレジネフ書記長の間でSALTⅡも調印された。そういういろいろなデタントがあのころずっと動いたと思いますし、それは当然アジアにもそういうデタントの空気がずっと出てきた。それがあのカンボジア問題が起きる、あるいはアフガン問題が起きるという状況の中で、このデタントが一転してまた対立激化というふうになって今日まで来ていると思います。  今度このINF協定がもし米ソ間で結ばれると、これは米ソが結ぶわけですが、実際上はヨーロッパではワルシャワ同盟とNATOとの間で結ぶことにも通ずるし、アジアではそれをどう表現していいかよくわかりませんが、そういうふうなデタント時代がまた始まるのではないのか、また、ぜひそうさせなければいかぬ、私は実はこんな気持ちを持っております。この辺の大臣の御認識や見通し等はいかがでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 これは大変難しい問題でございまして、御専門の高沢先生から御所見を承りたいところでございますけれども、INF交渉はまだ妥結しているわけではございません。依然としてまだ多くの問題が残っておるけれども、真剣な交渉が行われている。したがって、私はまずその実現に努力すべきだと考えておるわけでございますが、INF交渉が関係国の満足する形で成立する場合には、お話しのように軍縮・軍備管理交渉全般に弾みをつけることになろうかと思います。もちろん、STARTの問題があり、通常兵器の問題があり、いろいろあろうかと思いますが、ABM条約の関連もあり、この問題になりますといろいろ難しい問題が横たわっているのじゃなかろうかと思います。  しかし、いずれにしましても、我が国としては、INF合意の成立後も、国際的な安全保障の維持に留意しながら、実効的かつ具体的な軍縮措置を進めるよう国連のジュネーブの軍縮会議等の場を通じて、まず地下核実験の制限あるいは化学兵器禁止条約の分野での国際的な協力――御案内のとおり、地下核実験に関しましては一九六三年に発効いたしておりますけれども、米、英、ソは加入しておりますけれども、フランス、中国は未加入でございます。また、化学兵器の問題も最近いろいろな形で難しい問題が出つつありますので、こういう具体的な問題で、我々ジュネーブの場を利用しまして日本としてやり得ることを最大限努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 今、デタントヘの希望も込めてそういう私なりの見通しを持っているということを申し上げましたが、その際、日本としてできる、またやるべきことで一番大きな問題は、私は日ソ問題だと思うのです。  今まで米ソの対立ということを背景として、さっきの防衛白書に見えるように、日本側の対応は専らソ連悪者、ソ連は危ない、こういう前提でもって対ソ対応してきたということが一つあるかと思います。もちろん、そこには領土問題という大変難しい、のどに刺さった骨のようなものがあることは確かです。しかし、そういうような状況の中でも対ソ関係というものを前へ進めるには、昨年盛んに言われたゴルバチョフ書記長が日本へ来るという問題、これがその後ずっと事実上凍結のような状態になっておりますが、INFが結ばれるという状況になってきたときに、私は、この問題はもう一度当然表面化してくることになろうかと思います。  それはまたこちらからも促進しなければいかぬということだと思いますが、その場合に一つ具体的な問題として、ソ連のそういう使節団が仮に来るというときに、よく言われる、これはかつて安倍前外務大臣も言われましたが、日本の右翼団体が、ソ連といえば宣伝カーで駆けつけて盛んにあの暴力的な音声を上げてどなりまくるというふうなあり方が、ウィーン条約というような立場から見て、日本政府のこれを放置している対応で一体いいのか。  私、実はかつてソ連へ行きましたときに、モスクワの我が大使館を訪問して我が方の大使、お名前はちょっと遠慮いたしますが、お会いしましたら、その大使が言われた。モスクワの日本大使館にソ連の人が押しかけてきて、日本帰れとか出ていけとか、そんなことを言う人は一人もいない、日本の狸穴のソ連大使館にはしょっちゅうそういうものが行っておるということは、これは外交官の立場で非常に恥ずかしいということを言われた大使がありました。まさに現状はそうだと思います。  こういうところのあり方を日本政府の責任として、本当に第一歩のことにすぎませんけれども、そういうところから日ソ関係を改善するという方向に向かってまた大いに努力をしていただきたい、こういうことをお願いしながら御質問する次第です。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 ただいまのお話は、ソ連のみならず、そのほかの大使館等の問題についても同じようなクレームがいろいろなところから聞かされております。  これをどういう形で解決していくかということは実は頭を悩ませているところでございますけれども、国会の皆様方にもいろいろお知恵をおかりしながら、節度のあるそういう態度が国民として望ましいと思っておりますので、この点についてはいろいろ真剣に考えてまいりたいと我々も思う次第でございます。     〔寸利委員長代理退席、中山(利)委員長代理着席〕

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 ひとつ本当に真剣にお考えいただきたいと思います。  最後になりますが、ソ連の外務大臣と日本の外務大臣がお互いに行ったり来たりの一つの枠組みがあります。今度はシェワルナゼ大臣がこっちに来る番になっておりますが、それはそれとして、外務大臣が今度の国連総会に行かれてシェワルナゼ外相と会談される、こういうことは私は大変必要であり、また大変いいことだ、こう思います。  そういう意味において、これからも、例えば大臣がヨーロッパヘ出張されるというふうな場合にちょっとモスクワヘ立ち寄って、ソ連の外務大臣とそれこそ会談をする、意見交換する。何も外相定期協議という肩書のついた格式張ったものでなくていいから、そういうようなやり方で意見交換をするというようなやり方は非常に両者の理解を進めることになるのではないか。  例えばイギリスのサッチャー首相の場合も、ゴルバチョフさんがまだ最高指導者になる前にイギリスヘ来て話している、今度はサッチャーさんが自分がモスクワに行ってまたゴルバチョフ書記長と話をされている。こういうふうな形で、大体ヨーロッパなんかの人たちは余り形にとらわれずに、よし話をしてやろうといえばどっとすぐ行っていろいろ会談をする、その中でまたいろいろ得るものもある、相手に与えるものもある、こういうことがありますが、そういう積極的なイニシアチブを発揮する、活動力を発揮するということを大臣、また大臣の後継者にもそういうことをやっていただきたい、こう思いますが、いかがでしょう。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 日ソ間は、御承知のとおり安倍外務大臣がしばしば訪ソいたしておりますので、できれば定期閣僚会議では先方の外務大臣がこちらにおいでになるというのが順序ではなかろうかと思いますけれども、そう形式にこだわらないでやったらどうかという先生のお話でございます。とりあえずは、御案内のとおりニューヨークにおきまして二十五日の日にシェワルナゼ外相と会談する予定がございますので、その際、いろいろ世界の外交あるいは経済、日ソ間にある諸問題について十分率直にお話し合いをしてみたいと思っておる次第でございます。

高沢寅男日本社会党・護憲共同

○高沢委員 それでは終わります。河上さんに交代いたします。

中山利生自由民主党

○中山(利)委員長代理 次に、河上民雄君。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 外務大臣、大変御苦労さまでございます。  実は私、この八月にインドのニューデリーで開かれましたアパルトヘイト反対の国会議員による国際会議というものに日本社会党を代表して出席をいたして帰ってまいりました。そのことにつきましてはまた後ほど若干質問させていただきますが、その際、バングラデシュの国会議員の方が来ておられまして、大臣が先般バングラデシュを訪問されましたこと、また、その場で緊急援助を申し出られたこと、そして、その際行われました演説が大変すばらしかったと言って激賞しておられましたので、そのことをちょっとお伝えしておきたいと思います。  さて、きょうは約一時間与えられておるわけでございますけれども、まず朝鮮半島の情勢について外務大臣並びに政府のお考えをお聞かせ賜りたいと思います。  朝日新聞によりますと、去る四月二十七日、朝日新聞社がレーガン大統領との単独会見を行いまして、その際にレーガン大統領が次のように言われたと報道しておるのであります。「米国は、朝鮮半島の緊張を緩和する責任がある。」このように言明したというのでございますが、大臣、これは既に御承知と思いますが、それからもう既に約四カ月たっているわけでございますけれども、このレーガン大統領の言明につきましてどのように認識をしておられるか、まずお伺いしたいと思います。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 アメリカが朝鮮半島の緊張緩和を希望していることは、累次にわたり大統領を初め責任ある方々から発言がされておりますし、委員も御承知のとおり、先般三月には北朝鮮側との接触要領の改定という措置をとります等具体的な措置をとることによりまして、明年九月予定されておりますソウル・オリンピックの成功、それから全般的には朝鮮半島の緊張緩和というものを求める具体的な措置をとっておるということが申せるかと思います。  我が方としましてもこのようなアメリカの考え方には全く賛成でございまして、先般五月に倉成外務大臣は日韓外相会談が行われました際にも朝鮮半島の平和のための三原則というものを提唱されまして、南北双方の直接対話の促進、オリンピックの成功等を祈念して、そのために日本としては、南北と、それからその周辺の関係国、具体的には日本、中国、ソ連、アメリカ等々との関係がバランスをとって進められることによって、この南北の対話を通じての緊張緩和に少しでもお役に立つということを目指したいということを提唱された次第でございます。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 アメリカは「朝鮮半島の緊張を緩和する責任がある。」希望するだけではなくて「責任がある。」と言っておるのですが、それでは日本にその責任があるとお考えになっておられますか。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 アメリカが「責任がある。」と言っておられる意味とは、もう委員御承知のとおりの意味で言っておられるんだと思います。我が国は隣国としまして、朝鮮半島の平和というものがアジアのこの地域の平和に非常に大きな影響を持っておるという認識であることはたびたび対外的にも国会の場でも申し上げているとおりでございまして、そういう非常に大きな関係を持っている国として、朝鮮半島の緊張の緩和を希求し、そのために日本としてなし得る努力をしたいということは累次申し上げておりますが、責任の度合いというのはやはりアメリカとはかなり違ったものだと思います。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 今のお答えで政府の姿勢というものは何かある程度うかがうことができるように思うのでございますが、レーガン大統領は、さきの朝日新聞との単独会見では、さっき言いましたようなことを言明するとともに、これらを日本との密接な連絡のもとに進めている、こういうふうに述べておるのであります。  南北対話の奨励について日本との密接な連絡ということを言っておるのですが、その後の経緯の中で現実にアメリカ政府からその都度何らかの通報があり、または協議があったのかどうか、お伺いいたします。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 朝鮮半島の情勢につきましては、関係諸国、中国とかアメリカ、ソ連、ASEAN、韓国は当然でございますが、関係国との外交関係におきます協議ないしは首脳会談の場におきましては常に一番大きな討議の項目でございまして、ただいま委員からはアメリカということで特定しての御質問がございましたが、ただいまの件につきましても、例えば日米首脳会談をとってみますと、その都度、朝鮮半島の南北対話促進、平和と安定の維持について引き続き協力していくことで一致した。これは六十一年四月十四日のワシントンでの日米首脳会談後の発表でございますけれども、常に双方とも、例えば我が国が先ほどの倉成大臣の三原則の表明をしました際には、その真意を説明しますとか、アメリカが先般の接触の要領改定等を行いました際に、その具体的な内容等、それからその後の進展等の通報を受ける等密接に連絡を保っております。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 今お話しがありましたいわゆる北朝鮮外交官との実質的な会話解禁の措置について既に事前に連絡があったということでありますけれども、そういうふうに理解してよろしいわけでございますね。  そして、先ほどアジア局長は、レーガン大統領の言明について賛成である、このように言われたのでありますけれども、日本政府も朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮の外交官との実質的な会話解禁というアメリカの方針に賛同すると同時に、日本の場合はどうすべきであるというふうに考えられたのか。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 アメリカ側の改定をいたしました内容は、委員よく御承知のとおりでございますが、第三国の主催する社交の場において、先方、すなわち北側からアプローチがある場合には米国の外交官は会話を行って差し支えない、こういうふうに改定をいたしたわけでございますが、我が国の場合はもう既にそういう措置はとっておりまして、これは相手の立場もございますから、どこの場所でどんな話をしているということを申し上げるのは相手方の御迷惑にもなるかと思いますので差し控えさせてはいただきますけれども、こちら側から話しかけるということもございますし、アメリカよりははるかに進んだ状況であるということは申せると思います。  御承知のとおり、貿易、それから国会の先生方の御訪問ですとか、そういう点からいいましても、はるかにアメリカよりは接触の内容、量も質も密度の濃い接触をアメリカの措置の改定の以前からとっておりました。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 それでは、それはいつからそういう方針をとられたか、ここで言明できますか。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 御承知のとおり、ラングーン事件の後にちょっと変更を加えまして、その後また接触の態様を緩めたと申しますか、そういう措置をとっております。  具体的な日時は、今正確なところということでございましたら、きちんと調べまして御説明申し上げます。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 もう一度、それは言明できるならば教えていただきたい。後ほどで結構です。  今の外務省の御答弁でも明らかなように、朝鮮民主主義人民共和国と日本との関係は、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカとの関係といいますか接触よりも進んでいるというような御判断でございますが、確かに、国会議員レベルで言えば、日本の場合は与野党を問わずピョンヤンを訪問している方の数は非常に多いわけですが、アメリカの場合は、恐らくソラーズ下院アジア・太平洋問題小委員長が唯一の例外だと思います。それ以外は行っておられないと思います。  しかし、政府も御承知と思いますけれども、アメリカの極東政策に対する最高責任者でありますシグール氏の友人でありますジョージ・ワシントン大学の教授のヤン・キム氏がもう既に何回かピョンヤンを訪れているわけです。あるときは四週間も滞在したというふうにも伝えられておるわけでして、私は、これはなかなか微妙な問題ではないかと思っておるわけでございます。  そういう際でありますだけに、私はレーガン大統領が朝日新聞社との単独会見という形をかりてあそこまで言明されたという意味をもう少し日本政府は重視すべきではないかと思って、今御質問しておるわけであります。  朝鮮民主主義人民共和国。いわゆる北朝鮮が、この前、四年間で兵員を十万人縮小するという発表をいたしました。これに対して、中曽根総理は歓迎のコメントを出されたのでありますけれども、外務省の見解は必ずしもそうでなかったような気がするのでございます。私は、このこと自体よりも、これは一つの外交的なシグナルとして極めて重要な意味があると思っておるわけですが、外務省としてはどのようにお考えでいらっしやいますか。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 ただいま委員が言及されました十万人の兵力削減を含めまして、南北双方から朝鮮半島の緊張緩和ないしは南北対話の具体的な進め方ということにつきまして、昨年の末以来、現在御承知のとおりオリンピックを除いては途絶えております南北対話を復活しようという提案が行き交っております。  四月末くらいまでは相互の提案、再提案という形でかなり頻度の激しい提案が行われましたが、一時期双方とも若干相手方の態度に不満だということで二、三カ月ちょっと中止をしまして、また七月、御承知の、今御指摘のような軍縮提案が北から行われまして、それに対しまして韓国側からはすべての問題に対して南北の外相が、例えば国連の場で話し合おうじゃないかという反対提案をいたしまして、それに対して今度北側は、それにアメリカの国務長官も参加したらどうだというような提案が行われて、いまだに方式について決着をしておりません。  いずれにしましても、私どもとしましては南北の緊張緩和、朝鮮半島の緊張の緩和というものが南北両当事者間の直接対話によって平和的に解決されるべきだ、そのために私ども近隣国と申しますか関係国としては、その雰囲気の醸成等のお手伝いをすべきであるという立場をとっておりますので、まだ双方が合意はしておりませんけれども、対話を復活するためにいろいろな提案を行っているということ自体非常に歓迎すべきことだというふうに考えております。  先ほどの十万人の件につきましても、総理が結構なことだとおっしゃったというのはまさにそういうコンテクストで言われたものと存じておりますし、それに対する南、韓国側の反対提案と申しますか再提案も行われておりますし、何とか双方の間の話し合いの方式につきましての合意が見られて対話が復活するということが、まず何はともあれ南北間の緊張の緩和のために望ましいことだと考えております。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 今の外務省のお答えでもわかりますが、さきの朝鮮半島安定に関する三原則、倉成外務大臣が発表されましたけれども、それを読みましても一つ感ずることは、南北対話の促進、または環境の整備というようなことをしきりに言われますが、その中で、一方の当事者であります朝鮮民主主義人民共和国、今局長は北と言われましたが、そのいわば北を排除した形でこの話を進めていくような形になっておるのですね。朝鮮民主主義人民共和国に対して、では日本政府としてはどういうアプローチをするのかということは全く抜けているわけです。それは韓国への気兼ねとか外交的配慮とかいうようなことであろうかと私は思うのでありますけれども、ここで私どもは非常に大きな教訓を持っているわけであります。  米中接近の前に、日本政府は、中国へのアプローチについて政府それ自体は非常に憶病であった。ところが、アメリカ政府は再三の佐藤総理の要求にもかかわらず頭越しで米中接近を図った、こういう事実があるわけでございます。  私自身のことを言うのはいかがかと思いますけれども、私は、一九六九年の九月以来、アメリカは必ず日本の頭越しで米中接近をやるのではないかという意見を当時雑誌等にも発表いたしまして、約二年間それを言い続けたのですが、残念ながら、外務省の皆さんもこの意見を聞いてくれなかったのでございます。もちろん、社会党の中でもそういう意見に賛成する人は少なかったのでありますけれども……。  その二年間の経緯をずっと振り返ってみますると、アメリカ政府がとった対中改善の措置というのは、中国側が何の反応も示さないけれども、次々と積み重ねられておったのでございます。アメリカ人旅行者に対する中国への旅行の制限の緩和とか、アジアにおけるアメリカの軍事的過剰介入を整理する旨声明したグアム・ドクトリンとか、それからアメリカの第七艦隊の台湾海峡パトロールを常時から随時に切りかえるとか、そういう幾つかの措置に対して、中国側は何の反応も示さなかったけれども、言わず語らずのシグナルの交換というのは行われておったわけです。  そういう観点から見まして、レーガン大統領が政府間レベルではなく、朝日新聞との単独会見でこういうことを言ったということの意味を外務省はもう一度真剣にかみしめるべきだと私は思うのでございます。  頭越しの可能性について、あるというおそれを抱いておられるか、いや全くありませんとのんきに構えておられるか、外務大臣のお考えを承りたい。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 中国との関係につきましての、委員の、米中接近以前からの警鐘と申しますか、先見性のある御提言が行われたことはよく承知いたしております。  北と申しますか朝鮮民主主義人民共和国と米国との間の関係につきましては、先ほども申し上げましたとおり、接触要領の改定等種々の措置がとられます際には、我が方とも十分協議と申しますか、説明が行われておりますし、我が国も米国も、韓国すなわち友好国との関係に配慮をし、十分相談をしながら進めていかれるものというふうに考えております。  それから、ちょっと補足をさせていただきますが、先ほどの御質問で、後刻調べてと申し上げましたが、北朝鮮との接触措置につきましては、ラングーンにおきます爆弾テロ事件の後、すなわち昭和五十八年末でございますけれども、我が方は北朝鮮との接触制限措置というものをとっております。これは五十八年十一月七日に措置を講じておりまして、その際、種々の措置と並びまして、我が国外交官の北朝鮮職員との接触を厳しく制限するという措置をとりましたが、約一年後、昭和五十九年十月三十一日の官房長官談話によりまして、この措置は旧に復するということを発表いたしておりますので、その前どおりの接触ぶりに復したというのが事実関係でございます。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 それでは韓国の情勢につきまして若干御質問したいと思います。  御案内のとおり、韓国では春から夏にかけまして憲法改正を要求する民主化の波が高まり、韓国の現政権もこれにある程度譲歩するというような形になったわけでございます。最近の労働争議の動向から見まして、これがあのとき合意されたような形で進むかどうか、なお懸念する向きもあるわけであります。しかし、先ほど高沢委員から御指摘がありましたように、中曽根内閣が発足した当座、対韓政策を立てられたときの韓国とはかなり本質的に変わってきつつあるということは指摘できるのではないかと思います。  中曽根首相は、就任直後にまず韓国を訪問されまして、四十億ドルを約束して帰ってこられたのでございます。それは何といいましても、全斗煥政権に対する一つの支えという意味を持っていたと思うのでありますけれども、今外務大臣は韓国に起こっております民主化に対してどのような認識を持っておられるのか、それをお伺いしたい。

藤田公郎外務省アジア局長

○藤田(公)政府委員 委員御指摘のとおり、八三年一月、中曽根総理の御訪韓及び引き続きまして翌年の全斗換大統領の来日ということで、いわゆる日韓新時代というふうに形容されておりますけれども、国交正常化後二十年弱、その当時まで十八年ぐらいまでの第一段階から、日韓の間がより高次の協力、友好の関係に移行したという認識は、やはり日本、韓国双方において共有されていたのではないかと思います。  その後、御高承のとおり、明年の二月二十四日で現在の全大統領の任期が終了いたします。平和的な政権の移行ということを公約されておられ、その方向に進んでいたわけですが、昨年、種々の与野党間の折衝が実を結びませんままに、本年の初頭、改憲論議が延期という措置をとられました。  しかしながら、その後、与党の代表委員でございます盧泰愚氏の六月二十九日の談話によりまして、野党の主張しておりました大統領直接選挙制というものに与党も同意をするということを中心とする非常に大きな決断が発表されました。これが引き続きまして大統領によって確認をされるという措置を受けまして、与野党間の憲法改正につきましての最大の争点でございました大統領選挙の方法について与野党間の一致点が見られるということになりました。これを受けまして、与野党、特に与党と最大野党、統一民主党との間の改憲打ち合わせが、種々対立点はございましたけれども、結局八月三十一日をもって妥結をいたしまして、引き続き先般、御承知のとおり、両党総裁の会見で残された点も円満な妥結を見るということで非常に大きく改憲論議は進展をしたということが申せるのではないかと思います。  今後、この与党及び統一民主党との合意によりますと、十月初めに改憲を国会にかけまして通過させ、十月末には国民投票で改正憲法を採択いたしまして、年内、十二月二十日以前に大統領選挙をやるという合意を見たというふうに承知をいたしております。  そういう意味では、政界におきます国会レベル、政党レベルでの改憲論議というのは、一年前にはちょっと予想もできませんでしたような非常に大きな進展を見ているということが申せるのではないかと思います。  他方、冒頭お触れになりました労働問題等でございますが、ただいま申し上げました六月末の盧泰愚代表委員の発言によりまして政治犯の釈放等々の措置が政府によってもとられたことを反映いたしまして、非常に広範な民主化の雰囲気が高まってきております。  労働界におきましても、賃金の引き上げですとか労働組合の団体交渉権の確認ですとか、それから労働時間の短縮ですとか、いろいろ争点はございますけれども、労働者の権利拡充という形での要求と、それに対抗する使用者側のロックアウトと申しますか対抗措置でいろいろ労使紛争が頻発をいたしまして、御承知のとおり社会的な紛争ないしは経済面への影響というものがいろいろ出始めているのは事実でございます。本年に入ってから、現在二千件ぐらいの労使紛争があるというふうに発表されておりますけれども、そういう状況でございます。であるから、どうかというふうにコメントする立場にはございませんけれども、今までたまっていた労働者の側の不満等がこの機にいろいろ出てきているというのが今の状況だというふうに韓国のマスコミ等では分析をされております。  いずれにせよこういう問題も、順次改憲論議同様、韓国の方々の知恵で平穏な方向に進んでいくということを希望しているというのが、一般的に申しますと私どもの考え方かと思います。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 先ほど藤田局長は、中曽根内閣の登場とともに日韓関係が新時代を迎えたというように言われたのでありますけれども、しかし、むしろそれはある一つの時代の終わりであったのではないか。  今、民主化が高まってきて、その主体である民衆を基礎とした政権と日本との間に新たなる関係が生まれたときに本当の新時代が始まるのではないか、私はそう思うのでありますが、中曽根内閣の誇る日韓新時代の端緒を切り開いたというこの業績は、将来の歴史の中でむしろ大きなマイナスであったということにならないように希望せざるを得ないわけでございます。  そこで、今度は本当に大臣にお伺いしたいのです。今、民主化改革の約束の一つとして政治犯の釈放というのが韓国で行われておるわけでございますけれども、しかし、御案内のとおり、これは全面的な釈放ではなくていろいろ限定つきである。特に、我々としては在日韓国人政治犯が依然その対象外になっておる、こういう事実につきまして非常に胸を痛めておるわけでございます。  私どもの選挙区などには在日朝鮮・韓国人が非常に多いものですから、高校時代同級生であったような人がその釈放運動を一生懸命やっているわけでございます。先般外務大臣がそうした政治犯の家族の方とお会いになりまして、体を張ってと申しますか、泥をかぶってでもやろうというふうにおっしゃったわけでございますけれども、その後、徐兄弟を初め在日韓国人政治犯の釈放の見通しが立っておりません。この点につきまして、大臣としてどのように御努力いただけるか、またどういう姿勢で臨むかをこの議会の場で明らかにしていただきたい。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 今韓国で捕らえられている在日韓国人の政治犯の早期釈放の問題でございますが、この問題に入る前に一言……。  中曽根総理の韓国に対する政策についての先生の御意見をいろいろ伺いましたけれども、隣国である韓国の近代化、過去の歴史にかんがみまして、これが近代化し、そして韓国の経済が発展していくということがアジアの安定に資する、そういういろいろな意味で韓国に対する支援を行った。そして風通しが悪いところが風通しが多少よくなったということは、私はそれなりに意義があったと思うわけでございます。  今大統領直接選挙、憲法改正等を含めまして与野党間で話し合いが行われている。そして、夏休みの関係で下火になっております学生運動あるいは労働争議、そういう問題を含めて今ちょうど新しい時代が、韓国の中でもいろいろ動きがあるということもよく承知しておりますけれども、日本は、南北の対話はやはり南北同士で話し合うべきだ、またその一つのきっかけとしてソウル・オリンピックがある、こういう認識を持っているわけでございまして、中曽根総理のとりました施策はそれなりに、決して間違いであったとは私は思っていないわけでございます。  さて本題の今の政治犯の早期釈放の問題でございますけれども、本件は、基本的に申しますと韓国の国内問題でございますが、これらの方々が我が国に生活基盤を有しているなど我が国との関係が特に深いことにかんがみまして、政府といたしましては、韓国政府に対して従来からその処遇について関心を表明するとともに、人道的見地から好意的に配慮していただきたい、あなたの国の国内問題であるけれども、しかし、こういう立場からひとつ人道的配慮をしてほしいということを要請してまいったわけでございます。  政府としては、今般の放免、復権措置に際しても、国家保安法違反の在日韓国人の方々の取り扱いについて関心を有して関連情報の収集に努めてきたところでございますが、現在までのところは在日韓国人一名、鄭仁植さんが八月十五日に釈放されたものと承知しております。  なお、七月二十七日のジュネーブでの崔韓国外相との会談におきましても、国家保安法違反の在日韓国人問題は韓国の国内問題であることは十分承知しているが、これらの者は我が国と関係の深い外国人であり、人道的側面から配慮をお願いしたいということを私は強く要請したわけでございまして、今後ともしかるべく韓国側の配慮方を要請をいたす所存でございます。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 今大臣がジュネーブでもそういうふうに直接伝えられたことに対しまして敬意と感謝を述べたいと思うのでありますが、なおさらに現実に徐兄弟を初めすべての方が生活基盤である日本に帰ってきて家族あるいは友人とともに暮らすことができるようになりますまで御努力を願いたいと思います。  もう一つ、若干性質は違うのでありますけれども、今朝鮮民主主義人民共和国に抑留されまして三年半を超えております第十八富士山丸につきまして、大臣の格別な、少し踏み込んだ御尽力をいただきたい、このように希望をいたしております。  ところが、我が国におります北朝鮮兵士、朝鮮民主主義人民共和国の兵士が我が国に参りまして、今入管局の方の管理下に置かれておるわけでございますけれども、第十八富士山丸の船長並びに機関長のお二人の運命と非常に密接に結びついているわけでございまして、伝えられるところによりますと、十月には法務省はこのいわゆる亡命者を釈放するという方針に立っておるというようなことでございます。  しかし、私ども非常に心配いたしますのは、いわゆる亡命者が釈放された場合、法務省並びに外務省は従来のこの種の問題に関する基本方針を貫くことはできるかもしれませんが、二人の日本人はその際見捨てられるという結果になりはしないか。いわゆる棄民ということになってしまうおそれが非常にあるわけでございます。  もちろん、これは非常に複雑な問題でございます。私もいろいろ御家族から御相談を受けたりいたしておりますので、問題の難しさを承知をいたしておりますから、ここでいろいろのやりとりを御報告をいただくつもりは全くございません。ただ、この問題の解決のためには、もちろん日本の立場というか方針を貫くことも大事でありましょうけれども、やはり相手側の朝鮮民主主義人民共和国の立場をも十分尊重し、お二人が無事に家族のもとに帰ることができるようにすることを何よりも優先させて取り組んでいただきたい。  ここに日本の外交の力量が問われているという覚悟で臨んでいただきたいということをお願いいたしたいのでございますが、大臣、いかがでございましょう。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 ただいま河上委員の御指摘になりました第十八富士山丸の乗組員の釈放の問題でございますが、栗浦さん、紅粉さんの御家族にも何回かお目にかかりましたし、その御心情を察しますと、特に粟浦さんの方は御病気だというような情報も入っておりますので、私、就任以来このことが頭の中を離れたことがございません。何とかこのお二人に無事に故国の日本の土を元気で踏んでいただきたいということであらゆる方途を尽くしてまいったつもりでございます。  その詳細については残念ながら本席で申し上げることはできませんけれども、この紅粉、栗浦両氏の釈放のための努力について、私を初め関係の事務当局がいろいろな知恵を絞って努力をいたします。また私もいろいろな機会に、いろいろなルートを通じてお願いをしたり努力をいたしておりますけれども、残念ながら結果としてはそれが実っていないというのが現実の姿でございます。  しかし、これを一刻も早く実現するにはどうしたらよいかということで、ただいま具体的にはお話がございませんでしたけれども、日本に抑留されております兵士の身柄の問題等々の関連もあるわけでございまして、日本は国際国家として、国際法なりいろいろな立場を守らなければならないということがございますから、本当に苦慮いたしておるというのが今の実情でございます。しかし、そういう状況でございますけれども、私といたしましては最後まで最善を尽くしてひとつ努力をしていきたい、また事務当局にもそういう努力を要請をいたしておるところでございます。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 外務大臣、紅粉夫人、栗浦夫人からも、夫釈放までいわゆる北朝鮮兵士の仮放免につきましては待ってほしいという救済申し立てが出ておることもひとつ心に置いて当たっていただきたい、このように思います。  もう時間が余りありませんので、あと二つほど質問をしたいと思うのであります。  一つは、先ほど大臣も留学生の問題は非常に重要であるということを指摘されました。私どもも、実は日本におる留学生の問題につきましていろいろ御相談を受けておるのでありますけれども、特に円高に伴う経済問題、生活問題が緊急の対策を必要とする問題であります。  それ以外に、日本へ留学しても、帰ってきたときに日本の資格が全く評価されないという問題、あるいはまた、さらに深刻な、本質的な問題としては、どうも日本の大学の質の問題もあるわけでございまして、自然科学あるいは技術を学ぶにはよいけれども、将来その国に帰って指導者になるような幹部候補生的な人にとりましては、どうも日本の大学で勉強するよりはアメリカあたりへ行った方が結局は早いのじゃないかという一般的な認識があるというようなことも非常に重要であろうと思うのでございます。  道路をつくるために対外経済援助の金を向けることも大事かもしれませんけれども、道路一つつくるよりも人材一人の成長のためにお手伝いする方がはるかに意味があるという見地に立ちまして、ODAの資金量というものも、アジア留学生の問題は文部省に任せずに、外務省としてもこういう問題を十分考えるべき一つの場として再認識をすべきではないか、こんなふうに思うのでありますが、大臣、いかがでございますか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 今先生のお話しの点は、私も全く同じ意見を持っておる次第でございまして、大学側の受け入れの態勢にも問題があると思いますし、また、大学を卒業して帰ってからもっときめ細かく面倒を見てあげる、そういうことももっと積極的にやるべきじゃないか。率直に申しまして、日本の企業が一定の数を受け入れるというようなこともやったらどうかという私見を私持っております。  同時に、現在一番問題として留学生が困っておりますのは、やはり円高の関係での物価高、特に東京等におきましては、住宅事情を含めまして、下宿代を払い、また官費でありましても十分でないし、ましてや私費の留学生ということになりますととてもやっていけない。御承知のとおりアメリカ等は奨学資金等の制度がかなり発達しておりますので、そういう面では、留学生の受け入れというのは非常にうまくいっているという感じがするわけでございまして、細かい数字はもうここで申し上げませんけれども、ASEAN諸国においても圧倒的にアメリカ、ヨーロッパ、そしてオーストラリアが多いわけでございまして、日本に対する留学生の数は微々たるものであるということを考えると、これは根本的に考え直さなければいけないということで、在日留学生を援助するため来年度予算において一定の財政負担をODAとして計上し、これを文部省より要求することとなっておると承知しておるわけでございます。  ことしからやれないかどうかといういろいろな検討もいたしたわけでございますけれども、本年度の当初のODA予算はすべて割り振りをしてしまっておりますので、留学生救済に振り向けることができないのが非常に残念でございますけれども、来年度は積極的にこういう面で文部省と協力して多少とも役立つようにしていきたいと思いますが、私はこれでも不十分だ、留学生対策というものをもっと根本的に、百年の計として基本的に立てるべきではないかという感じがいたしておる次第でございます。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 今のような方向でぜひ取り組んでいただきたいのでありますが、こういう円高急騰の際でありますから、例えば留学生の授業料を免除するとか、何とかそういうかなり思い切った措置を講じなければいかぬと思います。  何より、これだけ日中関係が良好だと言われているときに、それでも中国人の日本に来ている留学生、技術研修生の数は一番多いわけですけれども、しかし、その中国ですらアメリカに行くのは日本の十倍くらいというようなことも聞いております。この前インドヘ参りましたが、インドの日本への留学生は十名くらいだそうですね。七億五千万の中からわずか十名しか日本へ来ていない、こういう状況では、これは容易ならぬことだな、こんなふうに思ったようなことでございます。ひとつ基本的に考え直していただきたい。  もう一つは、中国側でよく希望が出るのでありますが、日本の書籍が欲しい、こういうことであります。さあ、送るとなると個人ではなかなか送れないので、これをもう少し公的なレベルへ上げてほしいというようなお話もありますので、いずれまたそのことを事務当局とも御相談させていただきたいと思います。  最後に、もうあと五分しかないので、アパルトヘイトの問題について質問をさせていただきます。  日本はアパルトヘイトの問題については一般的に関心が薄いと言われておるわけでありますけれども、しかし、南ア共和国に対する貿易量ではアメリカに次いで世界で第二番目ということで、現実にはアパルトヘイトという醜悪な体制を支える上で大きな役割を果たしておるわけだと思うのであります。また、日本人はアジア人ではあるけれども名誉白人というような形であることもアパルトヘイトを支えていく一面であるというふうに我々は考えて、これを返上すべきだと主張しているわけでありますが、御承知のとおりナミビアも、本来は独立すべきでありますが、南ア共和国がこれを占領し、事実上管轄下に置き、アパルトヘイト制度をここへ導入しているわけでございます。  ところが、日本の商社その他が現実には相当の貿易をいたしておりまして、これは明らかに国連決議に違反しているわけですね。こういう問題について外務省はどういうふうに考えておられるか、伺いたいと思うのであります。  例えば大洋漁業の会社案内というような公然たるものにも、輸入業務ということで国の名前を挙げている中に、南アフリカというようなことで実際にはナミビアのものを相当輸入しているというようなことでありますので、こういう問題についても、それは会社がやっていることだというようなことではなく、きちんとしませんと、世界で日本はアパルトヘイトを事実上支持している国だ、イギリス、アメリカ、西ドイツに次いで日本だというふうに言われていくのではないかと思うのでありまして、国連では大変立派なことを言っているにもかかわらずという批判が高まっておりますだけに、ひとつここではっきりとした御答弁をいただきたいと思います。

恩田宗外務省中近東アフリカ局長

○恩田政府委員 先生の御質問は、ナミビア天然資源布告との関連での御質問だ、かように了解させていただいてよろしゅうございましょうか。(河上委員「もちろん南アフリカもありますけれども」と呼ぶ)はい。  まずナミビア天然資源布告の問題につきましては、私どもとしては、これは直ちに国家を拘束する性質のものではない、一般的な宣言の問題であるというふうに解釈しておりますが、国連加盟国の中でもこれをいろいろな受け取り方をしていて、その解釈についてはさまざまな状況であるというふうに承知しております。いずれにしても、我が国は、ナミビア天源布告はナミビアの領域にある天然資源を対象にしたものだ、かように考えております。  ただし、漁業の問題につきましては、大洋漁業等が南アの沖合で二百海里水域においてトロール漁業及びマグロはえ縄漁業を操業していると承知しております。それで、漁業操業につきましては、漁業自体を規制することが南ア政府に対する圧力にはならない、かようなことから、我が国としては、南ア沖の漁業を南アに対する我が国の経済的な規制の対象にいたしておりません。先生のおっしゃるとおり、南ア沖の漁業は、全体といたしますと十二億円程度の実績がございます。

河上民雄日本社会党・護憲共同

○河上委員 今の御答弁は、今の政府の対応、態度というふうに承るわけでございますけれども、しかし現実には、経済的な側面からどうも南ア共和国を日本が日本全体として支えているという非難に十分こたえるような状態にはなっていないと思うのであります。  今後こうした問題につきましてまた改めて私は御質問をさせていただきたいのでありますが、ひとつ大臣初め外務省としても、これこそまさに日本が世界に正しい外交の姿を鮮明にするある意味では格好の分野であると思うのでして、それは商売人がやっておるからしようがないというふうなことではなく、きちんとしていただきたい、このように思いますので、それを希望いたしまして、もう時間が来たようでございますので、きょうの質問を終わりたいと思います。

中山利生自由民主党

○中山(利)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時二分開議

甘利明自由民主党

○甘利委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 私は、最近のフィリピン情勢並びにフィリピンに対する経済協力についてお尋ねしたいと存じます。  アキノ新政権によります国家再建と民主化への努力が進行中、最近におきまして反乱事件を生じ、甚だ動揺しているやに伺っているわけでございます。この事件を通しまして、現在のフィリピンの状況をどのように外務省としては認識しておられるのか。そして、そのような反乱の多発の要因と申しますか、騒動の原因についての基本的な分析及び認識が必要ではないかと私は考えておるわけでございます。そうでありませんと、政府がさきにお決めになりました、特別円借款四百四億円をこのたび八百億円弱というふうに急上昇させられたという日本政府の好意あふれる計らいというものに対しても決して効果が出ないということになるのではないかと思うのであります。  私どもは、既にベトナムに対する経済援助において、ベトナムをめぐる諸情勢の中で、これを見誤ることによりまして多額の経済協力、援助というものがマイナスとなるばかりか、新しいベトナムの目から見れば、かえって敵対国日本としての印象を印象づけるだけでさっぱり効果が上がらなかった実績を持ち合わせているのであります。改めてここで申し述べるまでもなく、国家は安定的に何千年も何百年も推移するものではなく、政権が交代するのは世の常ではございますけれども、余りにも近視眼的に問題を処理いたしますと、対立抗争する二つの政権の中の一方に加担したという印象を持たれるのみで、後の安定的な日本外交の上からはマイナスになるという反省もまた胸の中に持ち合わせていかなければならないものではないか、こう思っているわけでございます。  そこで、あえて問題を提起してお尋ねするわけでございますが、今回のクーデター事件は一つの原因ではなく、このように国家の中におきましてさまざまな武力衝突が繰り返し繰り返し起きてくる、そしてその中で極めて不安定な状況が推移してくる、そして経済的にも安定しかねる状況が生まれてくる、こうしたことの原因についての分析及び認識についてお伺いできればありがたいと思うわけでありまして、よろしくお願いいたします。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 フィリピンの国内情勢についてお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、フィリピンでは、昨年の二月アキノ政権が成立以来、アキノ大統領に対するフィリピン国民の圧倒的な支持のもとに新たな国づくりの努力が進められてきておりまして、特に本年二月の新憲法に対する国民投票、また五月の議会選挙を通じて新たな政治的枠組みもほぼ固まりつつあることは御承知のとおりでございます。  他方、今回、不幸な出来事でございましたけれども、軍の一部将兵によるクーデター未遂事件を初め、アキノ政権に対しては左右の政治勢力から揺さぶりも見受けられることも事実でございます。今後やはりフィリピンの経済再建等の諸施策が着実に実施されていけば、私はフィリピンの政治経済情勢は安定していくものと期待をしておる次第でございます。  いずれにしましても、政府としては、今後隣国たるフィリピンの国家建設が民主的に選ばれたアキノ大統領のもとで民主的かつ平和裏に進められていくよう期待するとともに、アキノ政権に対しては経済協力を中心に我が国としてできる限りの支援を指しまないというのが我々の基本的な姿勢でございます。  なお、内部の諸問題についての御質問でございますが、余り立ち入った分析をここでするのはいかがかと思いますが、経済問題としては、農地改革その他の問題、また一次産品の価格の下落等がございますし、また雇用問題が非常に真剣に検討さるべき問題でございまして、アキノ大統領にお目にかかったときに、ジャパゆきさんのお話を私からいたしました。したがってこれは双方で努力しなければならない問題であるけれども、やはりフィリピンの経済、雇用が安定すればこういう問題についてはある程度の前進が見られるものであるということを私から意見として申し上げまして、アキノ大統領もそうだということで意見の一致を見たところでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 昨年の十三次借款におきましては政府は四百九十五億円を供与し、今年の十四次借款はこの騒動の直後にほとんど先方政府の言い値とおり七百九十億円を拠出されたと承っているわけであります。このような多額な拠出というものについて先方政府の意向に任せてお金を出すというのも日本国としての見識ではございますけれども、ただいま大臣もお述べになりましたような主たる問題点について、日本の知恵もかすし、また助言もするし、忠告もするという態度もあわせてこのような借款を供与するならば、さらに有効適切な効果が発揮されるのではなかろうかと私は思うわけであります。  私は、本日、その中でもひとつ農地の解放の問題についてお尋ねしておきたいと思うのでございます。  と申しますのは、いわゆるNPA、共産ゲリラ新人民軍と称せられるグループとの政府の交渉、休戦協定につきましては、その協定が不調に終わった主たる原因は農地解放の問題であったと聞いているわけであります。同国において大規模農家、大規模地主がどのくらいのパーセンテージを持っているかについては、私は細かくは承っておりませんし、現統計では信用できぬところも多いように思いますけれども、恐らく全農地の六割ないし八割というような巨大な数字が一部少数の地主によって占有されており、それに対して小作人、あるいは小作人のもう一つ下の日雇い耕作人、あるいはもっと不定期な日雇い耕作人のもう一つ下の段階の農業請負人、あるいはそのときどき雇用される人々というようなもので同国の農業は形成されているという認識を持っているわけであります。  そういたしますと、この七月下旬にアキノ大統領が農地改革のための大統領令を公布され、焦点の地主の土地保有限度や改革の手順については新国会にゆだねられ、目下審議中とも聞いているわけでございますけれども、この行方については多大の関心を持たざるを得ないのであります。  特に、現在NICSと言われている新興国家につきましては、日本が第二次大戦において敗戦した直後、日本はアメリカ占領軍の命令によって強制的に農地解放が行われ、小作人は小作人の立場から、多年の農地解放運動の成果ともいうべき土地保有自立農家への道を歩んだわけでありまして、第二次大戦後の日本経済の爆発の主たる原因と今言われているわけであります。また、韓国あるいは台湾におきましては、それとタイプは異にいたしておりますけれども、同じような農地解放とそれに伴うところの社会改革というものが画期的な成功をおさめ、そしてまた新中国におきましても、中国人民解放の立場をとった中国共産党のリーダーシップのもとに農地解放が全国的に行き渡り、そして大きな発展へのスタートを切ったと聞いているわけであります。  こういうのを見ておりますと、農地改革の行方が今後のアキノ政権の安定にとっては極めて重大であって、これを失敗するならば、まず我が方がいかに多額の金銭を積み、援助をしたとしても、無償、有償の別を問わず、その援助というものがむだになってしまうということを深刻に私どもは指摘せざるを得ないのであります。  言ってみれば、お金を出して立派にやってくださいよという態度から、一歩進んで、これだけはやらないと後スタートしませんよという姿勢が日本側にはなければならないのではないか。内政干渉ではなく、適切な助言を行ってお金を投与しなければそれがかえってその国の恨みとなる例を、マルコス政権下において日本の経済協力がしばしば国民の怨嗟の的になっているのを私どもはかいま見るにつけまして、深刻に考えなければいけないのではないかと思っているわけであります。  したがって、経済協力、そして有償、無償援助の方向づけの基礎の一つとして、重要な柱としてこの農地解放というテーマについて日本側が必要な手だてを、必要な助言を、必要な忠告を、あるいはノーハウの提供、技術的な提供、あるいは世界的な各国の施策の概要を我が国においては取りまとめることができるわけでありますから、そういうものを、またそれに伴う技術者の供給を、あるいは技術者のみならず、そうした際に生ずるところの権利関係あるいは金融関係に伴うさまざまな保証的施策の概要を提供するということがこの援助に対してもっと必要なのではないか、そういう戦略的視点があっていいのではないか、こう思われるわけでございます。  と申しますのは、南洋群島あるいはそのほかの国におきましてもしばしばあるのでありますが、先進国が発展途上国に対して缶詰だけを送る、食糧は大丈夫になった、そして缶詰だけ食っておけばいい、そのかわり働く意欲を奪ってしまう。奪ってしまったあげく、生産力、再生産というものを全部奪ってしまう。結局そこの方々は来る缶詰と小麦の袋だけを持って経済協力を必須とするグループとして存在することは事実だが、自分として立ち上がることができないグループとして今なお問題化してしまうというようなケースを世界的にはしばしば見るわけであります。  我が国はフィリピンをそういうことにしてはならないのであって、自立したフィリピン国民を養成していく、それは政権がどこになろうとも日本の経済協力のスタンスとして最も大事なことではないか、そんなことをしみじみ痛感しているものでございますから、大臣の御見識を承り、この問題についての特別な御配慮をお願いしたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  ただいまのお話は大体二つに論点を整理することができると思います。全体として対比の援助をどうするのか、それから、その中でも、わけても農地改革の問題をどうするかという問題だと思います。  我が国は、アキノ政権下で進められているフィリピンの新しい国づくり、同国の経済再建に対して積極的に支援してきた、そういう観点から従来にも増した協力を行う方針でございます。このため、昨年十一月のアキノ大統領訪日の際に、我が方からカラカ石炭火力発電所に対する特別の円借款の供与などについて意図表明をしたところでございますし、また、本年六月大来佐武郎元外務大臣を団長とする対比経済協力総合調査団を派遣し、ただいま先生お話しのような今後の協力のあり方に関する諸問題の方向づけにつき検討を行ったところでございまして、第十四次円借款については前回の実績、第十三次円借款はちなみに四百九十五億円でございますが、これを上回る額を供与する方向で検討中でございます。  後段の農地改革の問題でございますけれども、フィリピンの農地の状況は、大体二ヘクタール以下の農地が農家の数の中で五〇・九%、それから二ヘクタールから七ヘクタールに至る農家の数が四三・五%、七ヘクタールから二十五ヘクタールに至る農家の数が五・二%、二十五ヘクタール以上の農家が〇・四%、大体こういうことになっておりまして、またそれが土地の広さの中でどういうシェアを占めているかという細かい数字がございますが、後で資料として差し上げたいと思います。  しかし、いずれにしましても、今お話しのように、フィリピンの農地改革は所得配分の公平化、また農村開発を図る上で重要な課題であると心得ております。我が国としても、農地改革の重要性は十分理解しておるわけでございますが、本件につきましては、フィリピン側から、やはり土地問題の改革というのは非常に社会的な問題を含んでおるわけでございますから、フィリピンのイニシアチブによる資金面、制度面、両面に具体的な計画が提示されるのを待って国際的な枠組みの中で農地改革に対する具体的協力のあり方について検討することをいたしたいと思っております。  しかし、いずれにしましても、今いろいろお話がございましたように、農地改革の実施及びその定着にも資するとの観点から先般経済協力総合ミッションが訪比した際に合意を見ました農業、農村開発全般に対する協力、いろいろなノーハウについて今後重点的に専門家を送るなど実施をいたしたいと考えておる次第でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 国際協力事業団は、今年初め外部の専門家、有識者による国別援助研究会を発足され、フィリピンでの現地調査に基づく報告を取りまとめておられるようでありますが、それによりますと、今後の対比援助への取り組みについては社会的公正と政治的安定を実現していくために農地改革が最重要課題と既に指摘せられておりますし、こうした点についての御認識は政府も同じくお持ちだろうとただいまのお話を聞いて承っているわけであります。  フィリピンにおける農地解放のやり方につきましては、我が国の農地解放の歴史的経緯は既に歴史のとばりのかなたにあるほど過去の話になっているわけでありますが、韓国のセマウル運動におけるところのさまざまな経験は現実の問題としてまだ新しいホットなニュースでございますし、日本一国で農業開発、農地解放に対する問題をするだけではなく、関連諸国、周辺諸国の衆知を集めて供与することが必要なのではないか。これは一つ御提案していいテーマでないかと私は思っております。  それからもう一つ、フィリピンの援助は従来いつでもそうなのですけれども、道路とか発電所とか造船所をどこにつくろうというのを日本の商社が全部情報を集めてくる。逆に言うと、日本の商社が材料を向こうへ持ち込んでこれでやりたいと思うかどうか、判こ押せといって書類を集めてくる、それを日本の国へ先方政府の名前で持ち込んでくる、そしてそれに対して援助をつけていくというような商社の活動あるいは日本側の企業の活動が主たる原因となって行われた歴史的経緯があり、しばしばそれは災害を招く、災害を招くという言い方は適切でありませんが、しばしば失敗を招く原因にもなった。  その企業にはもうけになるけれども、当地においては全く関係のない高速道路が堂々と建設され、その高速道路がひび割れをして、そしてパイナップルの幹がその道路の表面に出ているなどという悲惨な状況が何回も報告されている。これは全部地元民の本当に必要なニーズよりも貿易的必要から行われたものであるからこんなことになったのではないかと思うわけであります。今大臣が地元の本当のニーズに合わせてやっていくとおっしゃった方針はまことに立派なものであって敬服に値すると私は思うのでございますが、先方政府の意見がこうした金もうけ主義のグループの背後関係を持って出てくるようなことがないように今後とも警戒的に十分の御審査をお願いしたい。  そして、農地解放の問題については、ぜひともフィリピンのアイデアも、あるいはマレーシアのアイデアも、周辺の諸国のアイデアも一緒になって持ち込んでやってみる。そして今までの疲弊した、そして人民収奪型の政治の後に豊かな農村を建設する一つのノーハウをつくることができないか。もしこれが成功するならば東南アジアにおける一つの大勝利であると同時に、それは発展途上国に対する一つの光のあるプロジェクトになるだろう、そしてそれはそれを背後で応援した日本国外交、特に倉成外交の大成果として記録されるに違いなかろうと私は思うわけでございまして、その辺いかがでございましょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 農地改革に関する基本的な考え方は先生と全く同じでございます。  ちょうど太平洋の中にありますフィジーにおきましても、御案内のとおり原住民が土地を持っておりまして、インド系の移民の方々は土地の所有権が認められていないというような問題がございまして、今いろいろなトラブルがそういうことを背景にしながらあるわけでございます。  したがって、農地改革というのは非常に難しい問題であるけれども、やはり基本的な問題である。しかし、フィリピンでどういう形の農地改革をやっていくかということになると、やはり社会、経済、政治、あらゆる面でその土地に合った条件、またその時期に合った体制というのが非常に必要でございますから、なかなかすぐ他国の例が参考になるかどうかということについてはいささか私は疑問に思っておるわけでございますけれども、今お話しのようにできるだけの知恵を絞って実情に合うような形で農地改革が行われるように、またそれに対して我々がもし多少でもお役に立つようであれば、できるだけの御協力を申し上げるにやぶさかでないということでございます。  また、先ほどお話がございましたいろいろな途上国に対する援助がややもすれば、途上国の指導者の性格にもよりますけれども、大きな製鉄所をつくるとか大きな高速道路をつくるとか、何か国家のプレステージを示すようなものをやりたいという意欲があることも事実でございます。また、それが成功した例もあれば必ずしもうまくいかなかった例もあるわけでございますから、そういう問題については今後とも慎重に、何が現地の本当のニーズに合って、どれが一番プライオリティーを持つか、またそれが現地の住民の方々にどういう福祉を、貢献をもたらすかという観点から助言をしていくということが必要であろうかと思いますけれども、基本的には独立国である相手国に対する援助でございますから、やはりその国のイニシアチブというのを尊重しながらやっていくということでなければ、我々の考えを押しつけるということであってはならないと思いますので、その間の兼ね合いが非常に難しい問題ではなかろうかと思う次第でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 私の手に持っておりますのは「フィリピン 国別援助研究会報告書 一九八七年五月 国際協力事業団」でありまして、もちろんごらんになっておられると思います。これを拝見しておりまして非常に僕はホープフルだなと思っておるわけであります。というのは、我が国が手を出す可能性がある話がたくさん書いてあるわけであります。  フィリピンの農地改革は対象農家を作目等により限定しているにもかかわらず、実質的改革が進んでいない理由として四項目挙げられております。  第一の項目には、農地改革受益農民の地価償還金支払いが非常に困難だということ。要するに低所得者が多いのに地価が高いというわけであります。そして、移転証書を受け取って自作農になったために小作のときには徴収されなかった所得税等のさまざまな賦課がいきなり課税されるために、この高額な支出にたえられないということであります。  第二には、地主の抵抗であります。これはもう消極的、積極的にある。  第三には、政府財源が不足しておりまして、小農自立化のための農業基盤整備投資の信用供与資金及び実施に当たる政府職員の質的量的確保及び関係機関の活動のための財源が全く不足しておる。  第四には、制度的機能の不備である。  これを見ておりますと、我が方からしては、適切な資金を供与することによりまして、地主への代償資金であるとか農民が自立するまでの間の土地耕作に要する資金の貸し付けであるとかを我が国が用意いたしますならばかなりの問題が整理されるのではないか。また、日本において比較的多数でございますところの農協の農業指導員たちをこの際現地に派遣して技術協力の立場で支援せしむるならばさらに大きな効果が上がるのではないか。これは全部我が国の手の届く範囲内のテーマではなかろうか。そうすると、そういうテーマをつけた上で援助、協力というならすごくうまくいくと思うのですけれども、そういうアイテムなしに、ただお金を渡して発電所から始めるというのでは、問題は深刻な様相を一向に変えないのではないか。  私は、農業改革というのは当該国にとって一番やりにくいテーマだと実は思っております。発電所をつくるなんかはもう問題外である。このようなテーマにこそ我が国が手を差し伸べて協力していくということが非常に重要なのではないか。大臣もほとんど同意見だとおっしゃっていただきましたので、大いに意を強うしておるわけでございますが、重ねてこれらの問題につきまして、援助、協力についての政府の姿勢を承りたい。特に大臣の御決意を伺いたいと思っておるわけであります。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 農地改革については、先ほどもお答え申し上げましたとおりに、フィリピン政府がどのような形で農地改革を行っていくのか、そういう具体的なスキームが示された段階で日本がそれに対してどういう協力ができるかということを、やはりこれは日本だけでやれる問題ではございませんので、アメリカその他フィリピンに対する援助をやっておる国々とも協力しながら考えていく必要があろうかと思うわけでございますが、日本としては、できるだけノーハウの面を中心にして、また協力できる範囲のことはできるだけやってまいりたいと考えておる次第でございます。  ただ、農地改革の問題というのは、今先生もお話しになりましたように、またその報告書にも書いてございますけれども、実は私も多少経験があるわけでございまして、なかなか難しい問題でございますので、現実にやろうとするとこれは本当に大変なことであるという感じがいたしております。しかし、この問題がぜひアキノ政権のもとで成功することを心から期待し、我々も協力にやぶさかではないということでございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 経協局長お座りでございますが、この問題について定めし御見識がたくさんおありだろうと思いますから、ぜひどうぞ。

英正道外務省経済協力局長

○英政府委員 渡部委員の御質問と大臣の御答弁でもう全く尽きておりますので、私からあえてつけ加えることはないというような気持ちがいたしております。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 では、ひとつ頑張っていただきたいと存じます。  さて、次のテーマに移りたいと存じます。  一時帰国中の松永駐米大使が中曽根総理に訪米を進言された、そして国際公約であります二百億ドル以上の黒字還流計画の具体的内容を米側に示すように求めておられますが、外務省としては、まず総理訪米を決定されたのか否か、今、間接的報道では承っておりますが、それを明らかにしていただきたい。第二に、その二百億ドル分の黒字還流計画について、どこまで進行中であってどうなっておるのか、お示しをいただきたい。  私は余り政府のやることを途中で聞くつもりは実はないのです。ないのですけれども、最近に至って対米関係の摩擦状態の一番の問題は、日本側が何かを約束するのに対して、アメリカ側は極端に、約束を守らぬ日本、いつでも遅い、いつでもちょっぴり、いつでもけちけちだ、口ばかりだというニュアンスが濃いのであります。特にこの二百億ドル還流計画のごときは、大変ありがたいにもかかわらず、私が先日ちょっとのぞいてまいりましたところでは、大きな期待がある反面、裏切られるのではないかという不信とも冷笑とも、シニカルなる笑いで迎えられるというような感じがすごくするわけでございまして、ここをしくじったらもう全減してしまうなという感じが特に強くするわけであります。  したがって、お仕事の途中まことに恐縮ではございますけれども、意欲あふるる実施計画の現在までの進行状況についてある程度お話しいただくということは大変プラスではなかろうか、こんな感じがしておるわけでございますし、当委員会でお述べになるだけではなく、先方政府にも中間で言いながら固めていくスタンスが要るのではないかとも思っておるわけでありまして、あえて伺うわけでございます。よろしくお願いいたします。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 中曽根総理の訪米につきましては、現在検討はいたしておりますけれども、最終的にはまだ未決定というのが現状でございます。  なお、二百億ドルの資金還流計画につきましては、おおむね目途として世銀特別ファンド方式による国際開発金融機関を通じた官民の協力として八十億ドル程度、それから海外経済協力基金、輸銀、民間銀行による国際開発金融機関との協調融資及び途上国の経済政策支援のための海外経済協力基金の直接融資の計として九十億ドル以上、それから輸銀のアンタイドの直接融資三十億ドル程度を考えておるわけでございますが、そのうち既に国際開発機関を通ずるものについては、アジア開発銀行及び米州開発銀行と拠出金の使途や市場調達資金の需要見込み等につき協議中でございます。また、海外経済協力基金及び輸銀による世銀との協調融資または二国間の融資については、インドネシア、フィリピン、アルゼンチン、ボリビア及びトルコに対する資金協力が既に具体化いたしております。  今後とも国際開発金融機関との話し合いや二国間ペースでの要請を踏まえつつ、本措置の円滑な実施に努めてまいりたいと考えておるわけでございます。二百億ドルの資金還流計画に対する期待が大きいだけに、やはりしっかりしたものをつくってその期待にこたえるようにいたしたいと思います。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 この問題につきましては、九月二十日ごろと報道されておる外務大臣あるいは総理大臣の国連総会訪問等々、総理はまだ確定していないとおっしゃいましたけれども、総理か外務大臣が行かれるだろうというのは私はもうある程度の既定事実ではなかろうかと観測しているわけでございますが、大体そのあたりで確たるお話をアメリカ政府あるいは各国政府に対しても説明するというふうに思ってよろしいのでございますか。

池田廸彦外務省経済局次長

○池田説明員 さらに詳細について御説明申し上げます。  ただいまから大臣からも答弁がございましたが、このいわゆる資金還流計画のうち、例えば直接の財政措置を伴うものといたしましては、国際開発金融機関、すなわちアジア開銀でございますとか米州開発銀行等でございまして、これらに対する直接拠出、これが直接の財政措置を伴うものでございます。現在、これらにつきましてはそれぞれの機関との間で協議、調整中でございます。それを踏まえました上で今後三年間に必要な予算措置を講じていく。例えば一つの側面をとらえてみましてもそういう状況でございます。  したがいまして、特定の極めて短いタイムフレームの中で全体像が浮かび上がるという性格のものではございません。三年間にわたりまして先方のニーズあるいは関係の国際開発金融機関の考え方というものも踏まえながら還流計画の実現を図っていく、こういう考え方でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 ただいまのお話を承っておりまして、一面では安心をすると同時に、一面ではちょっと冷やっとしているわけであります。  それは何を言うかと申しますと、日本側の経済協力や経済援助が相手国政府と慎重な打ち合わせをして慎重に取り組むことは当然なんですけれども、その時点で見ますと、意外や意外、さっぱりお金が出てないではないかとか、数年後にわたる経済協力の案件を持ってきて大げさに言ったじゃないかとか、上側に大きなレッテルを張っているけれども中身はちょっぴりしかないじゃないかとか、官民共同で出すと言ったのに官の方はほとんど出してないじゃないかとか、金利の高い金が入っていてあれは商売だとか、後から罵倒されるケースが今までも御承知のとおり何回もあったわけでございますね。私はそれをちょっと恐れているわけであります。というのは、今の御説明は正確無比な御説明と私は思いますが、その辺を配慮していかないと、総理、外務大臣がお話しになるときにまた泥をかぶるのではないかな。  例えばアメリカで私が聞いているところでは、アメリカの家具とかテキスタイルが売れないよ、どうして日本に輸出しないのと言うと、そうじゃない、我々の品物はメキシコ、ブラジルが買う、そういうところなんだ、ところがそこは今経済的に大赤字で困っているんだ、そこへ、日本が今度大変たくさんのお金を中南米にやってくれるそうでありがたい、どれくらい金をやってくれるんだ、そうすると、そのお金はうちの輸出業者にとって大変プラスだね、こういうふうに向こうは受け取るわけでございますね。そのときに今のような複雑な説明をいたしますと、さて繊維の持ち分は一体何ドルなのか、それはほとんどないではないかという話にすぐなってしまう。  要するに、この場合に、まじめにプランが樹立されているのでございますけれども、先方政府に与える印象、先方国民に与えるPR効果を十分考えた上でやっていただかなければならない。つまり、こういういろいろな項目で出しますけれども、メキシコ相手には二百億ドルのうち実は七十億ドル分差し上げるようになっております、有償、無償含めてですが、これから二年間にどんと行きますというふうに、あっさり説明できるようにしていただくことが大事なのではないか。  また、ゆっくり、ちょっぽり、じみじみ、点々と出てくるのではなくて、どかんと、フランクに、有効的に、すぱっと出るんだぞというニュアンスを与えるようにやっていただけないかなと私は思っておるのでございますが、これは政治判断の問題でもございますし、それこそ態度の問題でもあるのですけれども、そういう点、御配慮をお願いできないのかと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 まさに気持ちとしては先生のおっしゃるような形でやれたらいいなと思うわけでございます。しかし、現実の問題として考えてまいりますと、例えば、ちょうどASEANの拡大外相会議へ出ました際に、日本に対するASEAN基金という御要望がございました。それでは具体的にどういうニーズについて、どういうことをお考えでしょうかということになりますと、やはりASEANの諸国がかなり相談をしなければならないということで、今いろいろ御相談をいただいているわけでございます。  また、バイの、いろいろな二国間の関係になりますと、やはり二国間の関係でそれぞれ御相談しなければいけない。国際機関を通ずる協調融資ということになりますと、やはり国際機関がかんできて日本の金融機関ともいろいろやるということになるものですから、現実には、先生のおっしゃるようにすぱっとわかりやすく資金の援助ができればいいわけですけれども、国際機関を通じ、バイラテラルの関係での援助をそれぞれの国あるいは地域のニーズに応じてやっていくということになりますとやはり若干時間がかかる。  もどかしい面があるかもしれませんけれども、やむを得ないし、先ほど先生からお話のありましたように、これが本当に有効に使われるという意味から申しますと、フィージビリティースタディーをしっかりやることは、非常に回りくどいようでありますが、大事なことではないかと思うわけでございます。その辺のところを緩急非常によく調和を保ってやることが大事じゃないか。しかし、ツーレート、ツーリトル、アンフェアということは言われないように最善の努力をしたいと思います。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 ツーレート、ツーリトル、アンフェアとはすごいことを言われたものでございますが、本当にその三つに先方政府の攻撃も集中しているように思います。  私はもう一つ提案したいのは、資金還流計画、これは英語で何と言うのか存じませんが、私はこの名称は甚だ不本意であります。還流というのは、こっちへ来過ぎたのを向こうに返してやるということであります。還流して戻すというのは、こちらに何か流れが寄ってきてそれから還流するのでございまして、たまり過ぎたという意味でございましょう。  しかし、日本政府は別にたまっておるわけでも何でもないのであって、日本の企業の一部に資金がたまっているだけの話、しかもその資金の流れを見れば、現在アメリカに対する債券や何かになって米国の中に貯留している資金というのは大量でありますのに、日本に戻ってきている資金というのは少ないのは経済指標を見れば明らかなとおりであります。  それを還流などという名前をつけますと、これまた誤解を招くひどい名前なのではなかろうか。この辺、ネーミングの問題もございまして、倉成大臣はネーミングの名手と承っておりますのにこれはまた変な名前であるな、きっと大臣がつける前にだれかがつまらぬ名前をつけたのだろうと思いますから、アメリカ人が見てぴたっとくる、そして何とも言えないほのかな感じのするような名前を考えていただきたい。政府外交というのは今や中身の問題と同時に^先方国民に与える印象は極めて重大でありますから、これも直るのだったら直していただきたいと思うのでございますが、いかがでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 残念ながら余りいい知恵はございませんが、もし渡部委員からいいお知恵があれば承らせていただきまして、それが本当によければそういう名前をつけさせていただくにやぶさかでございません。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 では、私の方も考えてみたいと思います。  次のテーマに移りまして、三十一日からハワイで日米貿易委員会が九月三日まで四日間、徹底的に議論されたと承っております。当面の諸問題、日米間の貿易問題について相当熱心な御討議が続けられたと承っておりまして、まさに国民の注目もここに集まっているわけでありますが、遺憾なことに、何が行われてどうなっているのか、私たちの心配をよそに情報は不足いたしております。どうせ数日後ある意味での両方の政府から御発表も正確にあるかとは思いますけれども、包括貿易法案に対する前途の問題も含めまして大変憂慮しているところでございます。  この日米貿易委員会、ある意味でこうした委員会の交渉それ自体が日米の安全保障の問題、日米両国の友好と連帯をこれからどう維持するかという問題、また太平洋の平和の問題にも密接に絡む重大交渉であったと私は見ているわけでございますが、どんな問題がございましたでしょうか。

池田廸彦外務省経済局次長

○池田説明員 御指摘のように、第十三回の日米貿易委員会が先般行われたわけでございます。  基本的なトーンといたしましては、アメリカ側は、米国内の状況はいかにも厳しい、日本に努力してもらっていることはよくわかるけれども、さらに努力してほしい、こういうことを申しました。我が方からは、これまで日本とアメリカと両国が一緒になって協力して多くの問題を解決してきている、この実績を踏まえて今後とも日米それぞれなすべきことをなすという形で協力して問題解決に当たるべきであるという点を強調いたしました。これが基調でございます。  それから、個別につきましては、多くの議題がございますので、全部御披露するのは差し控えますが、例えば先生御指摘の包括貿易法案につきましては、我が方から、いわゆるゲップハート条項でございますとかスーパー三〇一条でございますとか、それぞれの問題点を具体的に指摘いたしまして、こういうものは我が国として困るというのみならず、今後の世界の貿易体制というものに対して非常に困った考え方であるということをるる述べたわけでございます。そのほか、半導体問題につきましても、アメリカ側の一方的関税引き上げ措置を早期に撤廃してしかるべきであるというようなことを申し述べました。  これに対しまして、アメリカ側から、例えば関西空港問題でございますとか自動車部品問題でございますとか、アメリカの関心を持っております個別問題、かなり多数に上りますが、これらのそれぞれにつきましてアメリカ側の考え方を述べた、これが概要でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 外務大臣、何かお答えはございますか。――この問題に対するか書詳しいコメント、御説明はいつなさるおつもりですか。

池田廸彦外務省経済局次長

○池田説明員 実は本日の午後に代表団が東京に戻ってまいりまして、私ども詳しい報告を聞こうと思っております。もちろん大臣にもまだ詳しい報告は上がっておりませんので、それらを全部踏まえました上で、しかるべき機会をとらえまして御指摘があれば御報告したいと思います。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 この御報告を聞いた上でのことでございましょうけれども、七月二十九日の当委員会におきまして、我が党の神崎委員がアメリカ両院の包括貿易法案の成り行きにつきましていろいろ御質問を申し上げたと思っておるわけであります。この包括法案が上院で成立した後、松永大使から文書でアメリカの上下両院議員に対して意のあるところをお伝えし、こうしたことを行うのは甚だ遺憾だという旨の再考方を促す文書を送られたと聞いているわけでございますが、具体的にはこの両院の包括法案中疑念のある点あるいはぐあいの悪い点、どういう点を指摘されたのか、またそれに対してどういう反応が起こっているのか、詳しく承りたいと思っているわけでありますが、途中経過でありますから一々伺うのもなんでございますので、この包括法案についての見通してございますね、我が方としてどういう努力をし、この結論はどうなろうとしておるのか、承りたいと思っておるわけであります。  私のスタンスを申し上げるならば、この法案の行方というものに対して私はひどく心配をいたしております。と申しますのは、アメリカ側は数次にわたって自国産業の問題点について、それこそなりふり構わず悲鳴を上げ、赤信号を送り、日本側にSOSを求めて信号を発していると私は思うわけでありまして、それは既存のルールや既存の貿易慣行や法律的な諸取り決めによって救済されるような筋のものではないということを陰に陽に言おうとしているのではないかと私は感じておるわけであります。  言ってみれば、アメリカはある意味で、先ほど申しましたようにSOSを発しているのだと思っているわけでございまして、それに対して我が国がそのSOSを従来の慣行、ルールに従って処理しようとするならば、反発的な悲劇の状態をみずからつくり出すことになりかねないと思うわけであります。  したがって私どもは、ここで日米関係というものに対して、相互の権利関係を争うというのではなく、相互の友情を培い、両国関係の発展と安定のためにこれらの諸問題を急速に解決する必要がある、証文の出しおくれのような、先ほどおっしゃったようなツーリトル、ツースモール、ツーレートというようなやり方では一番いけないのではないかと思っておるわけであります。この問題について外務大臣はどう御認識になっておられ、対応策をとろうとされておるのか、まことに日本にとっては大変なときだと私は思うわけであります。  というのは、自由民主党という政権政党が総裁選挙という難物を抱えておって、本来で言えば執行能力を失っているべきときなのに、そこに最も執行能力を要する問題が降りかかってくる、そして御担当の大臣にあらしのようにひたすらテーマが押し寄せてくるという最悪の状況にあるわけでありますから、定めて御苦心もあるかと思うわけでございますので、非常に同情して承っているわけでございますが、この点のお取り組みをお話しいただきたいと存じます。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 外交は一日も休むことができません。したがいまして、我々、現時点において最善を尽くしておるわけでございますけれども、今先生お話しの包括貿易法案につきましては、米議会が再開後、両院協議会で法案の一本化のための調整がいろいろ行われるものと承知しておるわけでございます。また、これがどういう形で行われるかということは、他国の議会の審議状況についてコメントするのは差し控えたいと思いますが、いずれにしましても若干両院協議会の人員がふえていくのじゃなかろうかと私は思います。  そういうことが行われまして、貿易法案の内容は非常に多岐にわたって、今お話しのようにいろいろな条項があるわけでございますが、それに、両院協議会の構成が相当大規模なものになってくるということになりますと、協議会の作業はかなり時間がかかるのじゃなかろうかという感じがいたしておるわけでございまして、それではいつ結論が出て、いつこの法案がどういう見通しかということになりますと、なかなか私はここで申し上げることができませんけれども、いずれにしましても、我が国といたしましては松永大使ほか関係の総領事に一時帰国を命じていろいろ米国内の事情等も詳しく聞いておりますけれども、この法案が成立しないようにあらゆる面におきまして努力をいたしたいと思っておる次第でございます。     〔甘利委員長代理退席、浦野委員長代理着席〕

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 包括法案の前途というものに対して大統領の拒否権が執行されるかどうか、あるいは拒否権といかないまでも交渉中に後に問題の起こりそうな条項が巧みに削り落とされてくるかどうか、ここのところに私どもは大きな関心を持って見守っているわけでございますが、最近におけるアメリカの上下院の審議を見ておりますと、削り落とすどころか、逆にアメリカの某議員は、大統領はこの法案を丸々認めなければならなくなるだろう、我々はもう自信を持っていると公言されておられますし、この法案をめぐる状況というのは日に日に悪くなっているのではなかろうかと思うわけでございます。  我が国のいつもの対応でございますけれども、よくよく考えてはいたとしても、問題が本当に深刻になって破局になるまで腰を上げないという日本民族の悪い点があるわけでありまして、公正と真実と友好を期待するなどということをこの間の本会議の席上でも言っておられた某大臣がおられるわけでございますが、公正と真実と友好などを期待すればするほど事態がどんどん悪くなっていって、待ちぼうけといって株のそばに座っていた人がいつになっても待ちぼうけの効果があらわれなかった童謡にもありますように、最悪の事態を迎えるという可能性が高いのではないか。  したがって、待っているのではなく大量にしかける必要があり、対抗策を進んでする必要がある。これは企業の利害と甚だ強力に結びつくため、政治がリーダーシップをとらなければならないテーマであり、政府が企業の幹部も呼び、業界とも協議し、早急に詰めるべきを詰め、決断すべきを詰めなければならないテーマであると思うわけであります。ある意味で、今、我が国の政治はそうした意味で重要な決断のポイントに立っていると思いますけれども、その行うべき決断を一寸延ばしにしているのではないかという国民の不信に取り囲まれている状況ではなかろうかと私どもは思っているわけであります。  外務省としてはしっかりと御勉強になり、対抗策もおとりになっているだろうと私は推測もし、信頼もしておりますけれども、これは一外務省だけで決断のできるテーマでなかろうと思います。松永大使の進言にもありますように、MOSS協議で積み上げられたのは強烈な不信感であり、このMOSS協議があっさり片づくならともかく、あっさり片づかないテーマが続々積み上がっておる。そしてその上に包括貿易法案で威嚇されていると、我が国民がナショナリズムの立場から怒り始めたとしたら日米関係の将来は甚だ危ういものにならざるを得ないと思うわけであります。  この点、大臣には特段の御配慮をもちまして、外務省を指揮するだけでなく日本政府としてこれに対する大胆かつ根本的な解決のためのお取り組みをお願いしたい、こう思っているわけでございますが、いかがでございますか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 よく言われることでございますけれども、日本は外圧によっていろいろ動いていくということが言われるわけでございますけれども、私はやはり日本がよそから言われたからやるというのではなくて、少なくとも一割国家として、ここまで成長してまいった国際国家日本として、みずからのイニシアチブによって世界に貢献する、そういう立場をとっていかなければならないと思っておるわけでございまして、外交の衝に当たる者といたしまして、もろもろの官庁がそれぞれの所管事項を持っておりますけれども、私は関係各閣僚の諸君とも十分御相談し合って、日本の外交、日本の経済の運営に誤りなきを期すべく最善の努力をいたしたいと思っておる次第でございます。

渡部一郎公明党・国民会議

○渡部(一)委員 私は我が国のアメリカとの対応において、外圧がかけられたからどうしようもなく態度を変更していくというのではなく、比較的先手先手と物事をやっていくということが極めて重要だと思います。  各省庁の対応を見ておりましても、私のやぶにらみで見ておりますと、大蔵省の対応は常に、金融の自由化の問題等を中心といたしまして極めて早目早目に対応が行われている。それに対して、通産省の対応はいつも週目週目に出てくる、農林省の対応はもっともっと遅く出てくる。外務省はいつまでも真ん中でうろうろしておる。何だか知らないけれども奇妙な感じがするわけであります。  今回の場合は、このさまざまな個別アイテムというものがそののろい対応の見本となるようなテーマでございまして、我が国側の言い分ももちろんあることではありますけれども、先方の追い詰められた事情というのを考えますならば、これ以上放置することは将来の火の粉の大きさを考えると耐えがたいものであります。私は日本外交として言うべきことを言えという立場でございますけれども、交渉というのはどちらか一方に正義があって交渉するものではなくて、両方の中間点に最後の問題は何となくおさまるものであって、相互に不満足が残るのが最良の外交だと言った有名な方がおられますけれども、その言葉が当たっているのではなかろうかと思います。  今、日本とアメリカが交渉するに当たって最悪のケースに突き進もうとしているのは、両方の立場を両方が動かさないからであって、両者ともに不満足な結果を甘受しなければならぬ状況が一刻一刻近づいていると考えるわけであります。その意味におきまして、なるべく早くこうした両国間に関する諸問題について満足な回答を一刻も早く出されるように私は希望したいと思います。  そして、それは当委員会においても決して賛同の声の上がるような結果ではないということを覚悟した上で、これが外交の宿命であるということを理解していただいて進めていただかなければならぬ。それが後世に日本国を安定ならしめ、太平洋を平和にする唯一の道ではなかろうかと思うものでございますから、あえてくどくど申し上げて恐縮ではございますけれども、政府の御努力をぜひともお願いしたいと思いまして、私の質問とさせていただきます。

浦野烋興自由民主党

○浦野委員長代理 次に、永末英一君。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 ペルシャ湾で日本船が銃撃を受けました。これは最近引き続いて二回にわたって銃撃を受けたのでございまして、最後の日信丸のごときは、時刻は夜でございましたが、イラン側の船から誰何を受けて十分後には銃撃を受けておるのでございまして、こういうことが行われたということは今後も行われる、こういうぐあいに見ざるを得ません。  そういたしますと、我が方が国籍を明らかにし、積み荷を明らかにし、そして仕向け先を明らかにしているにかかわらず銃撃をされた。誰何した船が銃撃したかどうかわかりません。しかも、それに乗っておるのは日本人である、日本国籍の人間であるということを言っておるにかかわらず銃撃をされたということは極めて重大な事件だと思います。  船員側と船主とは一両日ペルシャ湾に入るのを見合わせるということを決めたようでございますが、外務省は一体どうするつもりですか。

恩田宗外務省中近東アフリカ局長

○恩田政府委員 ペルシャ湾においては七月の半ばから船舶に対する直接攻撃というのは行われておりませんでした。八月二十九日にイラクが湾内のイラン側の船舶を攻撃した。それに引き続きまして国籍不明の小艦艇によるタンカー攻撃というのが先生御指摘のとおり行われております。その中には日本船員の乗った船、それから日本国籍の船もございます。  私どもは、かねてからイラン、イラク双方に対して、湾内における安全航行の問題を十分考えて攻撃を自制するように申し入れでございます。特に最近米国を初めとする諸外国の艦艇も数多く入っております。したがいまして、このような事件が続きますと不測の事態に立ち至るおそれもございますし、私どもはこの点については再度両側に対して自制を申し入れたいと考えております。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 経過報告はよろしいですから、どうするのか。つまり双方に対して自制するように申し入れると言いますが、申し入れたら自制するのですか。

恩田宗外務省中近東アフリカ局長

○恩田政府委員 これはかねてから大臣からもお答えしておりますように、湾内の船舶攻撃というのは紛争が終わらない限りなかなか完全には終わり得ないものでございます。したがいまして、まず国際的な努力としては紛争をやめさせるということが第一でございまして、現在、国連を中心としてその努力が行われておる最中でございます。特に、現在七月二十日に採択されました安保理決議を受けまして国連事務総長がイランを訪問し、その協議を始めんとしている段階でございます。  したがいまして、私どもとしては、このような国連を中心とする平和努力を側面から支持することによって紛争自体をやめさせるということによって湾内のこのような攻撃を根底からなくすということに努力したいと思っております。もちろん、その間においてこのような事件が起こると大変でございますから、日本としてできることは、両国と日本との友好関係を考慮して両国に対する働きかけをさらに行うということだと思います。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 紛争が終わらなければこういう事件は終わらない、そして両国に対して何か言っておる、こういう努力をしたにかかわらず事件が起こった。  そうしますと、これからは、それに乗っておる労働者の責任において、あるいは船主の責任において勝手に行け、こういうことですか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 御案内のとおり、ペルシャ湾の情勢というのは本当に憂うべき状況でございまして、実は、国連の安保理の決議が出ましてしばらくペルシャ湾の状況は安定しておったわけでございますけれども、八月二十九日からずっと次々に武装ポートあるいはイラク軍機等で攻撃が行われるようになりまして、日本国籍の船に関する限り申しますと、御案内のとおり、ことしの一月のコスモジュビター、それから五月の秀邦丸、そしてただいまお話しのありました日正汽船の日信丸ということでございまして、日本の国籍はないけれども、例えば九月二日に受けましたダイヤモンド・マリーン、これは日本郵船のリベリアに船籍を借りていて日本の船員、韓国の方が乗っておる船でございます。  したがって、局長が申しましたのは、いずれにしましても、陸上の戦闘と海上の戦闘というのがどうしてもリンクする、イラクの方は御案内のとおりパイプラインで石油を外に出している、しかし、イランはどうしてもペルシャ湾を通らなければいけないということもこれありまして、どうしてもその辺のところが難しい状況になるということで、我々としては、私自身もテヘランに参りまして、イランの指導者の方々に会いまして極力自制を要請いたしたわけでございまして、イランとしては、イラク側が攻撃しない限りはやらない、また秀邦丸について、もしこれがイランの攻撃であるなら、どうしてそういうことになったのか実情をよく知らせていただきたいし、万一、そういうことなら遺憾の意を正式に表明していただきたいということを私から申しましたら、これはイランがやったものではない、それを公式に発表していただいても結構ですというのが向こうの答えでございました。それで、それ以上私の方で追及するには材料を持ち合わせていない。  なお、ただいま答弁しました恩田局長も実はきょう帰ったばかりでございまして、イランの方に参りまして、先方に対するいろいろな接触、関係方面に対する接触をして、このペルシャ湾の安全航行という問題について交渉している。そして、国連の事務総長に一つの期待がかけられているわけでございますけれども、とにかく米ソが入り、英仏が入り、各国が入った中で双方が非常に緊張した状態にあるわけでございまして、決してこれを日本は傍観しているということではございませんけれども、日本としては国連を通じ外交努力を最大限に活用して、このイラン・イラク戦争が終わるように、またペルシャ湾の安全航行ができるようにということに最善を尽くすというのが現在我々のとり得る唯一の道であると考えておる次第でございます。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 大臣、経過とかなんとか要らぬと言っているのです、イラン・イラクじゃありませんが。ペルシャ湾の外に、入ろうと思っている我が国の船がおる。既にペルシャ湾に入っておって出ようと思う船が四隻おるではありませんか。それを今のようにあなた、戦争が終わるのを待っているというのだったら、国連が何とかしてくれるだろう、アメリカの艦船が行っている、ソ連も行っていますよ、それからイギリスやフランスもペルシャ湾の外まで行っていますね。しかし、我が国は一体我が国の責任において安全保障をしますから入ってくれと言えるのですか、出す方法を持っているのですか。  持っていなければ、傍観しているんじゃないと言うけれども、傍観しているんじゃありませんか。犯人すらわからない、だれが銃撃したかわからない。そんな状態で――日本人の生命の安全については日本政府は責任があるはずだ。日本国籍の船については同じような責任があるはずではありませんか。そういうことについては国連が努力をしておる、おれもイランヘ行った、そんなこと言っていたって――それならどうせいというのですか。  わかるまでは黙っておれというのですか、じっとしておれというのですか、それとも自分の責任において動けというのですか、そこをはっきりしていただきたい。経過はよろしいですよ、聞きたいのはそこなんだから。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 我々は外交努力によって最善を尽くしておるということでございます。したがいまして、今我々がとり得る道はこれ以外にないということを申し上げておるわけでございます。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 あなたは一生懸命努力しておられる、それは認めます。ならば、一体、それまでの間は自己責任においてやれということですか、やるなということですか、そこだけお答え願いたい。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 私もいろいろ、この被弾事件がありました際には直ちに関係方面と連絡をとり、それぞれの船主その他と連絡をとり、また私も先般組合の方ともお目にかかりました。そういうことで、これをこのままやれとかやるなとを言う立場にはございませんけれども、我々としては最善を尽くしている。したがって、皆さん方についても最大の注意を払ってやっていただきたいということで今御懇談しております。  しかし、残念ながら、日本のやり得ることに限界があるというところに隔靴掻痒の感があるわけでございまして、先生の御指摘は、私、胸にこたえますけれども、しかし今日本がやり得ることは我々の外交努力で最善を尽くす、そして情報の的確な収集を図るということ以上のことは今のところできない。したがって、国連その他の力、超大国初め国連事務総長の努力を特に要請をしておるということでございます。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 私は、あなたに政府がこれらの船の安全とその乗組員の安全について責任があるのだということをはっきりしておいていただきたい。  最善を尽くしておられると思います。しかし、最善というのは今与えられた条件、また与えられたと思っている条件の範囲内における最善なんだから、その条件をもっと直視していけば次のよりよい安全があるかもしれませんね。そのことをしっかりやっていただかなければ、破壊されたり命を失うのは我々日本でございますから、これは真剣な問題としてお取り組みを願いたい。  次に、外務大臣は九月五日、六日に土曜、日曜を利用して北方領土の視察をされる御予定だと承っておりましたが、やめたという報道がございました。やめられたのですか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 私の北方領土の視察につきましては、今までも検討してまいりましたし、現在も検討中でございますけれども、御案内のとおり、私の日程の関係上、残念ながら現在まで視察を実施するに至っていないわけでございます。  いろいろ本邦紙の一部に最近の日ソ間の国外退去事件に関連して私が北方領土視察を中止したとの報道が見られておりますが、かかる事件と国の基本問題である領土問題は性質を異にすると私は考えておる次第でございまして、これは根拠がないことでございます。推測に基づくものと考えておる次第でございまして、私自身極めてタイトな日程でございますが、現在検討中というのが実情でございます。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 中曽根内閣の命運もだんだん尽きつつあるように思いまして、外務大臣もまた立派にお務めでございますが、今のお話を伺いますと、やめたのではない、なお検討中である、時間は短いかもしれぬが、必ず大臣任期中には北方領土の視察を行う。あなたは外務大臣になられてから行かれたことはございませんわね。そういう御決意でございますか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 御案内のとおり、私も土曜、日曜なく努力しているつもりでございます。最善を尽くして検討したいと思っておる次第でございます。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 外交案件というのは、粘り強く、辛抱強くやっていかなければなかなか実現し得ない種類の問題でございまして、特に北方領土の問題はその粘り強さを極めて強く要求せられている問題だと思います。したがって、あなたが、外務大臣として北方領土に対する視察を行うべきだ、それは日ソ交渉をするについても極めて重要なベースになる案件だとお考えになるならば、万難を排して視察さるべきことは当たり前である。  もしあなたの任期中に視察をしなかった外務大臣ができたということになりますと、それは相手方に、日本政府の中曽根内閣時代の日ソ関係に対する、特に北方領土の問題に対する考えを変えたのではないか、こう疑われることにもなります。この点は、しっかりやっていただかなければ、粘り強い交渉として、長い歴史の問題でございますから、その意味合いで御決心をいただかなければならぬ問題だと思います。重ねてお答えを願いたい。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 先生の御意見、貴重な御意見として承りました。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 国連総会がございまして、その国連総会では、歴代外務大臣は北方領土問題で国連総会の演説の機会があるたびごとに世界世論に訴えておられます。倉成外相も昨年そうされました。当然のこととはいえなすべきことであろうかと存じます。  さて、我が国の総理大臣は、一九七〇年、佐藤総理が総会で演説をする機会にこれに言及をいたしました。中曽根総理はおととし総会に臨みましたが、言及しなかった。総理がもしことし、任期の最終盤でございますが、国連総会に臨まれたら北方領土に言及せられるべきものだと我々民社党は考えておりますが、いかがですか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 中曽根総理の国連総会出席は検討中でございますけれども、まだ最終的には未決定の問題でございます。なお、いずれにせよ、今次の国連総会における政府代表の演説の中身はただいま検討をいたしているところでございます。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 検討中ですから申し上げておるのであって、検討中であるから、あなたはそういう御意思で運ばれますかどうか。  あなたがおやりになるか中曽根総理がおやりになるかわからぬが、中曽根内閣としては最後の国連総会における世界世論に対するアピールでございますから、我々は北方領土の問題についてはこのような主張点を持っておるということを明らかにするのは当然だと私は思います。検討中であるから、そういう御意思があるかどうか。決まっていないことは承知しております。だから御意思を聞いております。お答え願いたい。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 先生の御意見は十分承りましたが、今演説の中身については検討中でございますので、その中身をどういうことにするかということをここで申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 国会の質疑でございますから、逃げたり走ったりいろいろなことございますが、ここで御意思を明らかにせられることも重要な外交の行動である、こう私は考えておりまして、十分ひとつこの歴史的問題の性格にかんがみて御処置をされるように強く強く期待をいたしておきます。  さて、中曽根総理は四月、五月の訪米のときに、いわゆる黒字還流計画として三年間に二百億ドルの還流をすると申しました。それについて記者に対する新聞発表すら行っております。このポイントがよくわからぬのでございます。  さて、それに関係いたしまして、国連大学に設置せられております世界開発経済研究所なるものが貿易黒字国剰余金の世界経済発展への活用計画と称しまして、考え方をその当時明らかにいたしました。その考え方によりますと、日本の経常収支の黒字が六百億から八百億ドル程度あるといたしまして、ならばその三分の一、二百五十億ドルを毎年ひとつ拠出して、五年間千二百五十億ドル、この程度を発展途上国に還流したらどうか、こういう意見を発表いたしておりまして、我が方は三年間に二百億ドル、既に百億ドル済んでおりますから、計画は立ててほとんど実行されておると思います。  さて質問といたしましては、第一に、この黒字を今のような発展途上国、いろいろな種類ございますが、これに還流するということと、それから黒字を内需拡大に使って、そして内需拡大によって貿易摩擦を少なくしようということは目的が違うわけでございまして、ただ最終的目的はいずれも貿易摩擦をなくしよう、そのために日本政府は努力をしようということであります。  その点で外務省に絡むのは内需拡大そのものではなくて、まさにこの黒字還流計画は関係がございまして、そういう意味合いで外務大臣はこの世界開発経済研究所案なるものについて賛成かどうかお伺いいたしたい。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 私もその計画の詳細については存じませんけれども、基本的に、日本が世界の一割国家として特に膨大な貿易の黒字また経常収支の黒字を出している国といたしまして、世界の繁栄と平和のためにできるだけの貢献をする、資金面においての協力をするということは国際国家日本としての当然の役割であると考えておる次第でございます。ODAの問題につきましては、御案内のとおり他の項目の非常に削られている中で毎年伸ばしてまいりましたけれども、私自身、これでも不十分である、もっと思い切った対策を講ずべきであると考えておるわけでございます。  ただ、今先生のお話しのような、もっと思い切ってやれ、例えば今のお話によりますと、恐らくGNPの一%を超す数字に毎年なろうかと思います。そういうものを還流していくというか援助していくとかそういうことになってまいりますと、それは相当な財源を要することでございますので、そういうものについて国民的なコンセンサスあるいは国会の御意思あるいはその他すべての面を考慮して最終的な日本の立場というものをちゃんと決めて、そしてそれにかかる必要があるのではなかろうかと思うわけでありまして、一時的に線香花火的に何かやりましてもこれはなかなかうまくいかない。やはりちゃんとした日本のスタンスを決めてそういう問題には取り組むべきものだと思っておりまして、私自身としてはいろいろ勉強させていただいておりますけれども、今ここで責任を持ってこうすべきだということをお答えする用意はないことを残念でございますけれども申し上げざるを得ません。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 今大臣が言われましたように、我が国のODAにつきましてはいろいろな意見があるわけでございまして、問題は総理がアメリカの大統領に申し、そうしてそれをその後のサミットで、ベネチアでも言っておる。しかし、内容はODAに一体どの程度関係しているものかよくわからない。それを解きほぐすために、この三年間二百億ドル黒字還流の中で政府が出す資金というのは一体合計幾らに見積もっておられるのか、お答え願いたい。

内海孚大蔵省国際金融局長

○内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど委員御指摘のように、我が国の経常収支黒字のどの程度を還流するかという場合に、その還流の仕方についてでございますが、端的に申しまして、昭和六十一年度について申し上げますと、八百五十八億ドルの経常収支黒字があったわけでございます。ところが、これに対しまして我が国からの長期資本の流出は約千三百億ドル、つまり、言ってみれば経常収支の黒字以上、千三百億ドルのいわゆる広い意味での還流はあるわけでございます。  これをどうやってできるだけLDCの方に振り向けるかというところが二百億ドルのいわばポイントでございますので、その中でODAという考え方とはちょっと異質になるわけでございます。もちろん、この中にはODAに属するものはあるわけでございまして、二百億ドルは大体三つのグループに分かれます。  第一のグループは、これは約八十億ドルと考えておりますが、世界銀行とか、それからアジア開発銀行、それから米州開発銀行、これらに予算上グラントとしての資金を出します。これは、実は狭い意味での二百億ドルの前に百億ドルというのが三年間の計画としてありまして、そこであった計画で世銀には三年間三百億円支出するということになっておりますが、今度の二百億ドルの中では、これに加えてアジア開銀あるいは米州開銀等に支出する……(永末委員「済みませんが、ちょっと簡単に言ってもらえませんか」と呼ぶ)それは現在予算要求中でございますので、どのぐらいになるかということは、わずかでございますが、これはわずかな金額だけれども、いわばそれが触媒になって資本市場からの大きな資金調達を呼ぶという形になっております。  それから、第二のグループが、輸出入銀行、それから……(永末委員「そういう事実は知っておるのだから。政府が何ぼ金を出すのだということを言ってください」と呼ぶ)ですから、それはこれからのまさに積み上げになるわけでして、政府が最初の八十億ドルの中の国際機関への交付金、これは三年間で今後予算要求の項目になります。額としては、ドルで言いますと恐らく二億ドル、その程度になると思います。  それから、その次のグループの九十億ドルのうち、輸銀とそれから海外経済協力基金が入ります。基金の分についてはODAのファクターがあります。  それから、第三の三十億ドルのものは輸出入銀行でございますので、これはODAの要素はほとんどございません。  以上でございます。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 内閣総理大臣がよその国へ向けて二百億ドル黒字還流だと言うと、そうだ、賛成だと言いますよね。  ところが、詰めてみると、今の話にも出ているように、例えば世銀関係のいわゆる第一グループといったって、ならばそれの起債を持ってきて日本の民間で受けてもらおうなどということを考えたり、あるいは民間銀行から協調融資をひとつ輸銀や海外経済協力基金とやろう、民間の資金を当て込んでおる。民間は、今御報告がございましたように、黒字には違いないが、それ以上の資本輸出をやっておるというような話でございまして、民間の金を当て込み過ぎておる。政府は幾らで民間は幾らと金額は言われない。これから積んでやるのだ、こういうお話でございました。  この辺がはっきりしませんと、一体これ、やれるのかやれないのかよくわからない。金額を出せば必ずやるんだと外国は受け取る。我が国は約束をして何もやらぬじゃないか、こういう非難を受けておりますから、早く計画を立てて、こういう段取りでやります、やれるんだという信用を相手方に与えないといけない。  そこで、政府が一体幾ら金を出すんだと私は聞いたが、確たるお答えがございません。お答えありませんか。

内海孚大蔵省国際金融局長

○内海(孚)政府委員 永末委員のお話で感じますのは、資金還流という場合の基本的な観念の問題ではないかと思います。  かつてOPECの国々に黒字が非常にできましたときに、OPECはかなりの部分をアメリカの市場とか英国の市場を通じて還流していったわけでございます。我が国の場合も、通常であればそういう還流があるわけですが、それをどうやってLDCの方に向けるかということを今やっているわけです。基本的には、我が国の貿易黒字というのは民間部門に帰属しているわけですから、こういう金を国の資金等を触媒として、あるいは世界銀行等の国際機関を触媒としながらどうやって流すかという計画を立てているわけでして、これ自体は大変順調に進んでいると思います。  私は、結果から見まして、そのような目標が達成できないということはないというふうに思っております。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 もう時間がございません。  この還流をする場合に、発展途上国の収支は悪いわけでございますから、一時的にその収支不均衡の補助金というような形にならぬように、世界の貿易構造に対してバランスがとれるように我が国が努力していくのでございますから、そういう方向にこれが使われるように方向づけをはっきりしていただきたいと思います。  最後に一つ伺いたいのは、累積債務国がございまして、主としてこの累積債務国に対してやろうとするのか。例えば、アフリカのいわゆる発展途上国に対する方面が対象になるのか。我々といたしましては太平洋諸国にもたくさんの対象国を持っておるわけで、外務大臣はみずからその国々を訪問されまして事情はよく御存じだと思うのですが、どの地域にということはございますか、最後にこれを承りたい。

池田廸彦外務省経済局次長

○池田説明員 基本的には中南米、アジアを中心とします途上国、特に債務国を念頭に置いた構想でございます。  この措置はグローバルな観点から途上国に還流を図るわけでございまして、したがって具体的にどの地域・どの国というようなことをあらかじめ決めてはおりません。ただし、一般論として申し上げれば、債務問題等の困難に直面している諸国、こういう諸国に対して十分な配慮がなされるべきであるという認識を持っております。

永末英一民社党・国民連合

○永末委員 計画が具体化すれば外務委員会に御報告を願いたいと思います。  質問を終わります。

浦野烋興自由民主党

○浦野委員長代理 次に、楢崎弥之助君。

楢崎弥之助民社党・国民連合

○楢崎委員 五十八年十一月十五日に朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮の南浦港に入港した第十八富士山丸、この船が拿捕されて、それに乗っていた紅粉船長及び栗浦機関長のお二人がスパイ容疑で逮捕抑留されたまま、今日まで三年十カ月にわたってそのままの状態になっておる。特に機関長の栗浦さんは私のふるさとの博多に留守家族がおられまして、この機関長の出身地は長崎で外務大臣と同郷であります。  今まで外務省なり法務省がそれなりに努力をされた足跡は私よく存じ上げております。それを承知しながらも、なお厳しくその解決について政府の対応を追及せざるを得ないのであります。  時間が限られておりますから、おととい、九月二日の日、これは二度目になるわけですけれども、留守家族の方が日弁連に上申書を送付されております。これを読ませていただければ、大体御家族がどういう気持ちでおられるか、問題はどこにあるかがおわかりになると思うのであります。     上申書   朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による第十八富士山丸抑留事件につきまして、留守家族として昭和六十二年八月十九日付上申書に付言してお願い申し上げます。   事件の発端になりました北朝鮮の元兵士閔洪丸氏につきまして、かねてから仮放免を主張していた法務省の意向を受け入れて、外務省も同調する判断を固めたと報道されています。   法務省の主張は、要約すると次の三点に絞られます。  ①閔氏が国外退去と決定してから、三年八カ月も経過しながら執行されないという前例はなく、閔氏が執行を求めて仮処分申請等に及べば、法を遵守すべき立場にある法務省が敗訴する恐れが明白なこと。  ②長期間、横浜入国者収容所に収容されているのは、人道上、問題があること。  ③北朝鮮に送還すれば、脱走兵、密出国等の理由で、極刑に処せられる可能性があり、迫害国不送還の国際慣例上、本国送還は出来ないというものです。   留守家族として、法務省の主張に対し、意見を申し上げます。   まず、閔氏は、昭和五十九年三月十四日付で法務省から難民としての認定申請を棄却されています。   更に、閔氏は、強制退去執行停止の申立も昭和五十九年五月七日付、東京高等裁判所の棄却判決が、本人の上告取り下げで確定しています。   つまり、閔氏は北朝鮮で政治的迫害を受けていたとは認定されておらず、単なる密入国者として送還先の決定を待っていただけなのです。   送還先を、これまでの間、決定出来なかった政府の外交努力の不足は後記しますが、南北朝鮮からの密入国者が、日本国内で生活も積まず、特別在留許可も受けずに、仮放免された例を聞いた事がありません。   仮放免先として、北朝鮮を刺激しない為、韓国の在外公館がない日本の都市でキリスト教関係者の身元引受人が居住する所と聞いています。   しかし、昭和六十二年一月から二月にかけてのいわゆるズ・ダン号騒動の経過から言って、韓国居留民団、朝鮮総連が閔氏の争奪戦を演じるのは火を見るより明らかです。   ズ・ダン号の舞台になった福井県の近くには韓国の在外公館がありません。身元引受人が閔氏の生命、身体の安全を保障出来るのでしょうか。要塞なみの居住施設が肝要と考えられます。   ところで、閔氏については、韓国大使館、領事館職員が、現在、横浜入国者収容所で、定期的に面会している様です。   閔氏の意思は、密入国以来、揺れ続けました。当初、日本への亡命を希望し、これが認められなかった為、アメリカ、カナダ等……。そして、現在は、韓国渡航を希望している様です。韓国政府も閔氏の受け入れを表明しています。言葉も違い、社会体制も全く異なる日本で収容所に一人置かれた閔氏は、不安な毎日と思います。   韓国、北朝鮮双方の思惑を秘めた接触だけでなく閔氏の当初の意思、つまり、自由な国に行きたいという気持を尊重してボランティアの様な方違が閔氏に接触して来た事も、留守家族は知っています。   彼等は聞氏に、スイスでの生活を勧めました。北朝鮮とも交流が深いスイスで、彼が自立する為の身元引受人、そして英語、仏語等の修得を親身になって助言しました。   ですが、閔氏は、現在、韓国渡航に気持を固めている様です。一時は、自分の密出国と引き換えに、祖国で抑留されている二人の日本人船員の身の上や、私達家族の事も思いやって硬いた様ですが、彼は、そうした気持を振り切っているかの様です。   私達、留守家族は疑念を持たざるを得ません。つまり、ズ・ダン号事件の処理を見る様に、関氏は、日本で仮放免された後、直ちに韓国大使館等に亡命するのではないかという点です。   次に、人道上の問題について意見を述べさせて頂きます。   閔氏は、長期間の拘留で、拘禁性ノイローゼに陥入っているとも聞きます。しかし、事態は切迫しているのでしょうか。仮に精神に異常を来す危険があるとしても、秘密裡の一時的な外出などを含めて治療法はある筈です。彼は、二十四才と若いのです。   これに対して、抑留中の二人の船員は一人が重体とも伝えられる五十七才と五十六才。面会の為の入国も許可されていませんし、この三年九カ月、本人から直接の音信は一切ありません。   北朝鮮が主張しているスパイ罪で裁判にかけられ、長期刑を受けなくても留守家族としては「骨」にならなければ帰国出来ないのかと思い込んでしまいます。法務省が閔氏の人権を守ったとしても、日本人船員二人の船員の人権を守るのは、一体、話なのでしょうか。   次に、政府の外交努力について申し述べます。   昭和六十二年七月八日、衆議院本会議で社会党、公明党が代表質問をし、この事件を取り挙げましたが、中曽根総理大臣の答弁は「最大限の努力をします……」と僅か三十秒でした。   私共は、これまで、日本赤十字社や北朝鮮を訪れる国、地方の与野党関係者に身の回りの品や手紙を幾度も託し、北朝鮮の金日成主席にも早期釈放を求める嘆願書を繰り返し出しました。しかし、最近では、嘆願者は無駄だという返事が届く始末です。署名運動や歴代外務大臣にも陳情しました。   船会社は倒産状態で、給料は遅配のまま、紅粉家には神戸市から生活費の極く一部が支給されていますが、連絡の為の電話代にも事欠き、栗浦は、弱い身体ですが、ラヴ・ホテルで二十四時間勤務をして生活を支えています。こうした生活苦はともかく、政府の外交努力に対する留守家族の苛立ちは限界に達しています。   在外公館で、外交官が北朝鮮側と非公式の折衝を続けている様ですが、見るべき成果はありません。   ここで、関氏の北朝鮮送還、極刑説について付言します。一見、尤もな説かも知れません。しかし、留守家族としては北朝鮮が送還を要求し、交換条件を出している以上、これに答えなければ事件の解決はないと考えます。   真実、極刑があり得るのか、北朝鮮が再三、表明している様に、ないのか。事件解決に本当に取り組む気持があるなら、政府特使を派遣しででも交渉すべきです。本国送還が無理であれば、北朝鮮が事務レベルの折衝で示唆した第三国、中立国での釈放も検討すべきです。この場合、政府特使は、北朝鮮を納得させる事が必要ですし、閔氏の身柄を引受ける第三国には、閔氏の生命の安全を保障してもらう協力が不可欠です。   こうした外交努力は、外交官レベルでは無理と思われます。国交の有無を問わず政府特使が身代りになる覚悟で交渉しなければ、前進はありません。 こういう上申書を、二回目ですけれども、留守家族の船長、機関長の奥さんが日弁連に出されております。  それで、本質は大体わかっておるわけで、非常に難しい問題ということもわかっておるのです。七月八日の本会議の中曽根総理の答弁も、最大限の努力をする、それから外務大臣は、泥をかぶってでも解決するということを言われたことがあります。もしここで関氏を仮に放免して韓国にでも入るような事態になれば、あるいはまた、この上申書にあるように韓国大使館に亡命しに行くというような事態になれば、もうこれはとてもじゃございませんが二人の日本人船員の帰国はほとんど絶望になる、このように私は思わざるを得ません。  そこで、時間が限られておりますからポイントだけお伺いいたしますけれども、政府は今月中をめどに閔氏を仮放免する、いずれ韓国に送還するという話や、仮放免後に、さっきの上申書にもありましたとおり、韓国大使館に亡命を求めるというような話、こういう話が伝わってまいります。それはまことなのかという点であります。  もしそうであれば、先ほど言ったとおり、日本人船員二人の生命はまさに風前のともしびになります。一体、その点、どういうふうになっておるのでしょうか。例えば仮放免をするとすれば、当然身元引受人が要ると思います。そういう身元引受人についてはどのようなお考えを持たれるか。非常にデリケートですから言いにくい点もありましょうが、何かヒントになるぎりぎりのお考えを、ひとつはっきりさせていただきたい。そして、仮放免するときに、日本に在留する期間は一体どのくらいの期間を考えておられるのか。  それから、これも上申書にありましたとおり、外務省も努力されたそうですけれども、北朝鮮が納得するような第三国、これが探し得るのか。これは一度失敗されたという話でございますけれどもどうなのか。  もう一遍に質問しますけれども、私は解決する方法でもう一つあるのではないかという感じがするのです。それは閔氏を向こう側は犯罪人として見ておったり、密出国者ですから、脱走兵だから、だから本国へ返せという主張をしたこともあるし、あるいは無理やり連れていかれたのだという主張に変わったこともあります。いずれにしても、それは別として、向こうに返せば極刑にされるのではないかという心配が日本側におありのようであります。もし、極刑にはされないのだ、つま旦言葉としては双方人権を保障する、擁護するというような約束のもとでこの交換ができないものか。これは一番可能性のある問題ですが、国際法上の問題もありましょう。  しかし、もし日本政府が閔氏を例えば韓国に帰した、そして国際法も遵守した、人道にも背かず、日本の国際的信用は保たれたというようなことになるかもしれませんが、一方において、守ってやらなければならない罪なき日本国民の人権を無視して見殺しにした、こういう歴史的事実は一大汚点としてずっと残る。  今、お一人は心臓も悪いし、お一人は胃潰瘍の手術をされて、重病説が向こうの中央通信で報道されておる。重病ですから、もしものことがあったら、一体その責任はだれが負うのでありましょうか。だから、ここはいろいろ理屈はあろうけれども、重病だから、このお二人を帰すために最大限の、それは「よど号」事件のときのような超法規的なあれもやったこともあるのだから、解決するまで体がもたぬというような状態であれば、だれかが身がわりに行ってもいいし、不肖楢崎弥之助が行ってもよろしゅうございますよ、それは。もうそういう段階に来ている。何とかひとつ、外務大臣、その辺を考えていただきたい。  それでまず、当初の法務省に仮放免の点について御答弁いただきたい。

書上由紀夫法務省入国管理局警備課長

○書上説明員 御説明申し上げます。  ただいまお尋ねがございました閔洪九という者でございますが、この閔洪丸氏の処遇に関する最終的な結論がいまだ出ていないのが実情でございます。このような段階におきまして、仮定の話とは申しましても、身元保証人等詳細にわたって確定していないことを申し上げることは、この席上は差し控えさせていただきたいと考えております。  また、万一将来仮放免が成った場合という御前提のもとに、その場合にどの程度の期間かというお尋ねもあったわけでございますが、この点についても同じようになかなか御説明はできないわけでございますが、一つ御理解をいただきたいと思いますのは、仮放免と申しますのは、いずれにいたしましても退去強制手続の一環でございます。したがいまして、これは日本政府の管理下にあるわけでございまして、即国外へ出国するというものを認めるという趣旨ではございません。この点はひとつ十分に御理解をしていただきたいと思います。

楢崎弥之助民社党・国民連合

○楢崎委員 日本在住の期間はどのくらいを考えていらっしゃるのですか。

書上由紀夫法務省入国管理局警備課長

○書上説明員 ただいまも御説明いたしましたように、まだ仮放免自体が最終的に決まっておりません。したがいまして、その期間についても未定ではございますが、当然御懸念がございますような各般にわたるいろいろな問題もございます。そういうことを私どもでは十分考慮いたしておりますので、どれくらいの期間と確定的に申し上げることはできないわけでございますが、少なくとも悪い影響の生じるようなことがないような最善の努力は尽くし得る態勢のもとに、将来仮放免を行うのであれば行いたい、かように考えている次第でございます。

楢崎弥之助民社党・国民連合

○楢崎委員 例えば身元引受人をお探しになるときにやはりいろいろな点から批判の出るような人は避ける、これは原則でしょうね。わかりますか、批判の出るような人というのは。

書上由紀夫法務省入国管理局警備課長

○書上説明員 おっしゃられたような考えは十分理解しておりますし、当然そういうことは念頭に置いて最終的な問題は詰めていかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。

楢崎弥之助民社党・国民連合

○楢崎委員 先ほど申し上げたとおり、もしも仮に韓国にでも行かれるようなことになったら、二人の日本船員の帰国はもう絶望になる、そういう認識はお持ちでしょうね。

書上由紀夫法務省入国管理局警備課長

○書上説明員 御懸念のようなことが生じないよう最善の努力を尽くすつもりでございますし、十分な手当てもなし得る、かように考えておる次第でございます。

楢崎弥之助民社党・国民連合

○楢崎委員 時間が来たそうですから、最後に一つだけ外務大臣にお願いをしておきます。  今法務省の方からも、これは外務省からも意見が出されたためだと思うのです。韓国に閔氏が行くようなことになれば、これはもう絶望的です。それの認識も持っておられるようですから、私が冒頭に言った幾つかの選択肢のうち、二人を帰すのに一番可能なのは、何か特使かだれかを派遣されて、双方の人権を尊重するというような文言のもとに交換する、そういうことを選択肢の一つとしてぜひ検討をしていただきたい。  そしてそのために、つまり、それは言われておる極刑というのはないんだということなんですよ、平たく言えば。そうすれば、国際的な非難は起こらない。むしろ日本国民の生命を守るのは日本政府しかないのです。だれが守ってやれますか。それは閔氏の人権もちろん大事ですけれども、二十四歳です。日本国民の方は五十六歳と五十七歳で、今まさに病気している。そういう情状を酌量すれば、超法規的な考えも含めてそのくらいのことをやられても国際的な非難は浴びない、私はそう思います。ぜひその点を検討の一つに加えていただきたい。  最後に、外務大臣のお考えを聞いておきたいと思います。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 今、栗浦、紅粉両御家族の切々たる上申書を伺いました。私、お二人の家族のお気持ちは全くよく承知しておるつもりでございますし、私も外務大臣就任以来、本当に頭の中を離れないことの一つでございます。  それからまた、政府もいろいろなことをやりました。また、やりつつあります。これはただ、この席で申し上げることはできないのが非常に残念でございますけれども、本当にあらゆることを考えて努力をしましたけれども、残念ながら、結果的には実を結んでいないというのが実情でございます。  最後に、先生がお話しになりました閔洪九の北朝鮮への送還という問題でございますが、これは本人が北朝鮮への帰国を拒否しているということから、国際法上及び人道上の見地からあり得ない。また、第三国への送還は受け入れ国の同意等の面から事実上困難というのが、残念ながら実情でございます。  しかし、今法務当局もいろいろ申しましたけれども、政府としては、御家族及び関係者の方々の御心労とお二人の早期釈放、帰国を踏まえ、切なる思いを一刻も忘れることなく、本問題が最大の問題であるという気持ちで、これからも最大限の努力を続けてまいりたいと思う次第でございます。

楢崎弥之助民社党・国民連合

○楢崎委員 時間が来ましたから、これで終わりますが、これは中曽根総理の最終的な決断が必要じゃないか、このように私は思います。終わります。

浦野烋興自由民主党

○浦野委員長代理 次に、岡崎万寿秀君。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 私は、三宅島NLP基地化の問題について最初にお伺いをいたします。  まず、外務大臣の所見をお伺いしたいのでございます。  七月二十三日の参議院の予算委員会におきまして、栗原防衛庁長官は、安保は国是だ、生活の方が安保よりも大切だというのはどうかしているという発言をされました。島民の暮らしよりか安保優先、国策優先の考えであったというふうに思います。  日米安保条約の担当大臣として、外相はこれについてどうお考えなのか、よもや防衛庁長官と同じ考えではないと思いますけれども、いかがでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 栗原防衛庁長官のお答えは、安保が大事であって、国民生活はどうでもいいというお答えではなくして、やはり国の安全保障があって初めて国民の生活が安定するという意味のことをお話しになったと私は理解をいたした次第でございます。  したがいまして、日米安保条約というのが我が国の安全を保障している大きな柱であることは動かすことのできない事実だと私どもは考えておる次第でございまして、日米安保条約の運用と国民生活の安定ということとどう調和させるかということが、非常に難しい演習場の問題をめぐって、また三宅島をめぐって起こっておることだと思うわけでございますので、何とかして住民の方々の御理解を得て、この問題が円満に解決することを心から期待いたしている次第でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 そのように言われますけれども、実際会議録を読みますと、おっしゃるようにはなってないのです。これはやりとりでございますから、はっきりと活字にもなっているわけです。  栗原防衛庁長官が、「これは」つまり日米安保条約は「日本の国の国是じゃないか、その国是を、それよりも」というのは安保よりもということです。「生活の方が大切だという言い方の方がどうかしている。」このようにはっきりと、安保は国是だ、生活の方が国是である安保よりか大切だというのはどうかしていると言われているのですね。安保と生活の調和とか、生活を重視しているという言葉は、それはその後の弁解でございまして、実際、こういうふうに言われているのです。  こういう見解は正しくないと思いますけれども、再度そのことについてお尋ねします。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 栗原長官のお言葉を一つ一つ私が解説する立場にはございませんけれども、私自身は、栗原長官は私がただいま申しましたような意味で申したのである、そう考えております。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 それではお聞きしますけれども、日米安保条約は、栗原長官が言ったように国是というふうにお考えですか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 国是という言葉を厳密にどう解釈するか、法律用語にはないようでございますけれども、いずれにしましても、日米安保条約というのが日本の安全にとっての大きな柱であるというのは現実の姿でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 大きな柱というのはいいのです、そういうお考えでしょう。私たち、国是と言っているのは、例えば非核三原則ですね。これは倉成外相も長崎出身でありますし、非核三原則については非常に強調されておりますので、国民が一致して、国論が一致してそうなっているのを国是といいまして、こういう非核三原則のようなものであるかどうか、このことを聞いているのですよ。安保条約についてはまだいろんな意見がございますね、国論が一致していないのです。それを国是というのは言い過ぎだと思いますけれども、どうでしょうか。

斉藤邦彦外務省条約局長

○斉藤(邦)政府委員 何が国是であって、何がそうでないかという議論は、国是の定義をはっきりした上でないと余り意味がない議論だと存じますけれども、政府が申し上げておりますのは、安保条約というものは日本の安全保障の根幹をなすものであって、その堅持が我が国の存立にとって必要不可欠であるということを申し上げておる次第でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 国是といった言葉について否定なさらない。つまり、国是というのはいろんな理解があるからだとおっしゃいますけれども、一般的には安保を国是というのは、これは大変な言い過ぎでありまして、しかし、そのような理解のもとに三宅島に米軍基地をつくる、こういうことだとするならば許せないというふうに考えます。まさに安保優先であり、国策優先の考えですね。  さて、きょうは友藤施設庁長官においでを願ったのですけれども、どうしても都合がつかないということでしたので、鈴木さん、お見えになっていますね。NLP対策本部長ですか、九月一日の観測柱建設をめぐっての問題についてお尋ねしたいと思います。  御承知のように、三宅島四千三百の島民のうち圧倒的多数が反対していまして、これは自分たちの暮らしや平和を守りたい、本当にひたむきな気持ちで反対しているわけで、当日も素手で皆さん行っているわけですね。島外の応援も求めない。多くはお年寄りであるし、婦人であるわけです。こういうときに機動隊を二百七十名も動員して、力ずくで三番目の観測柱を建設した。  私、昨日、一昨日、具体的に調査をしてまいりましたけれども、本当に暴力団まがいだったという声を一様に聞いてまいりました。多くの負傷者が出ています。おじいちゃんもおばあちゃんも嫁さんも、みんな行って、みんなけがしているのですね。また、十四人の逮捕者も出しているわけです。私はこういう強権発動について、問答無用の施設庁、警察の暴挙について、厳しく抗議の言葉を最初に言いたいと思います。  そこで、この事態については国民の世論もマスコミも、施設庁について極めて批判的です。皆さん御存じでしょうけれども、幾つかの新聞を持ってまいりました。  例えば九月三日の朝日でございますけれども、「どこへゆく「鉄柱」後の三宅島 こじれた島民感情 平和な島「逮捕は意外」」、九月二日の東京新聞でございますが、「国に対する不信感決定的に」、そして、こう書いています。「非暴力抵抗の基本線を守りつつ、ことあるごとに座り込みなどでNLP阻止行動を続けるとみられ、防衛施設庁はそのたびに機動隊を導入し、力で押し切らざるを得なくなりそうだ。」それから、これは毎日でございますけれども、「島民の多数を占める反対派の結束は強まっており、施設庁が目的とする飛行場建設への道は一層険しくなった。」  あらゆる新聞が同じように評価をしているわけです。つまり、ああいうことをやってもかえって島民は団結を強めたんだ、そして政府や施設庁に対する不信感は決定的になった、今後の工事はかえって困難になっている、こういう評価が一様でございます。  私、聞きたいのですけれども、これはまさに序の口の、調査のための観測柱の建設ですね。これ自身はNLP基地建設の第一歩でありますので、当然反対するわけですが、しかし、入り口からこんなことをやっておいて、このNLP基地ができるとお考えなんですか。かえって困難になったと思いませんか。まずそのことからお聞きしたい。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 私ども、従来から三宅島のNLP訓練場建設問題につきましては、村の当局、それから住民の皆様方に説明をいたしたい、話し合いをいたしたいということをお願いしてきたわけでございます。  今回、観測柱の設置に当たりまして混乱が生じましたことは甚だ残念でございますけれども、今後も粘り強く話し合いを続けていきたいと考えている次第でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 そんなこと聞いてないですよ。かえって困難になったと思わないかということを聞いているのです。どうですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 三宅島の情勢につきましては、私どもいろいろ考えております。この九月一日の混乱の状況が事態を一時的に困難にさせたという見方は成り立つと思います。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 残念だと言ったり、一時的と言ったり、一時的だという論拠、何かありますか。新聞でさえも決定的になったと言っているのです。こういうことをやって、これからどうするか。多くの新聞あるいは世論が批判しているところです。  また、やり方がひどいのです。全く石ころ一つ持たない、棒切れ一つ持たない島民に対して殴る、けるですね。ちょうど西南戦争のときに、賊軍と言われた人々を城山に包囲してやったのと同じように、三万からおじいちゃん、おばあちゃんのところへ襲いかかってくる。そのために、そこにいた人たちがほとんどけがをしている状況ですね。こういう敵扱いの暴挙を向こうの島民に対してやるということは、憲法のもと、本当に許されるかどうか、私は憤りさえ覚えているわけです。  私が行ったところ、何人もの人たちが診断書を持ってきました。ほとんどの人がけがをしていますので、もっともっとたくさんありますけれども、ただ持ってきた人だけのことを紹介しますと、お年寄りが多いです。坪田の小林孝三さん、胸部打撲で一週間、大正九年生まれです。同じく坪田の寺澤鎮男さん、大正九年生まれですが、胸部打撲、一週間。それから、阿古の村上知偉さんですけれども、同じく胸部打撲、一週間ですね。それから、坪田の曽我部和美さんという方ですけれども、これは口を切っているのです。御婦人ですから背が低いのでそうなったのですけれども、上口唇挫傷です。どうして起こったかというと、全部ひじ突きですね。ひじで、凶器みたいなものです。これで胸を突きあるいは顔を突いてけがをさせている。こういうむちゃくちゃな暴挙を働いてまでもつくる観測柱であったのかどうか。  あなた方は今、話し合いとか一時的とか言いましたね。何が話し合いです。これが防衛施設庁の言う話し合いですか、対話の姿勢ですか、どうです。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 防衛施設庁はこの七月十五日に三宅島の阿古地区の三つの地点におきまして、関係土地所有者の承諾も得まして、所要の手続もとりました上でこの観測柱の工事を実施したわけでございます。  この二つの地点につきましては工事が終わっておりますけれども、下鏡地区の地点では反対派の方々が当庁の管理地に座り込む、そういうふうな事態が生じたために工事を七月いっぱいは見合わせていたわけでございます。東京都の仲介がございまして、八月中の観光シーズンは工事を見合わせる、この間に話し合いをするということでございまして、私自身も島へ参りましたけれども、話し合いを続けてきたわけでございます。  この話し合いが村長の理解を得るに至らなかったということで、この八月いっぱいの中止期間が過ぎた九月一日からまた工事を始めさせていただいたという状況でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 それが話し合いの姿勢かというふうに聞いているのですよ。あなた方の言う話し合いというのはこういうことなんですか。あれやこれやの経過は全部知っていますよ。そんなことが話し合いだと言えますか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 八月中の話し合いは……(岡崎委員「九月一日のことです」と呼ぶ)九月一日に工事を再開するに当たりまして、これは不測の事態が生ずることも予想されましたので、警察に警備をお願いしたということは事実でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 警備を依頼したことと不測の事態はどうなりますか。不測の事態をつくったのはそっちじゃありませんか。島の人たちを人間だと思っているのですか。まことにけしからぬと思います。  これはマスコミも書いているようにまことに愚行。物理的には観測柱は立ったかもしれませんけれども、政治的には敗北です。あなた方の先を見ない戦略的な負けたと、きのう同行した新聞記者も言っていました。こういうことをやる。道理も民主主義もあったものではない。憤りをもって抗議をいたしますし、そしてこの責任はどうするのですか。  負傷者がたくさん出ていますよ。今警備を依頼したと言いましたね。どっちの責任なんですか。施設庁ですか警察ですか、どうです。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 警察が警備を実施されましたことに伴って起こったことに防衛施設庁として見解を申し上げることは差し控えたいと思います。  ただ、防衛施設庁として警察に警備を依頼したという限りにおきまして、防衛施設庁としての立場はあると思います。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 警備を依頼したということと機動隊の出動とはちょっと違いますね。外部の、例えば過激派は一人も入っていないのです。応援部隊は一人もいないのですよ。非暴力の方針を持っていることはわかってのことなんですよ。どうして機動隊を二百七十名も動員する必要があったのですか。  これについて三宅島の警察署長は、施設庁と警視庁とが調整の上でやったというふうに言っています。相談の上やったのでしょう。単に警備の依頼でなくて、機動隊導入というのをはっきり知った上でやったのでしょう。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 この工事を実施いたします工事の発注者であり、また設置予定地の管理者である東京防衛施設局長が三宅警察署長に警備を依頼したということでございます。警察側がどういう形の対処をされるかということについては、私どもは存じないところでございます。  ただ、警備をお願いしました以上、私どもの実施します工事の計画、そういうことについて警察に御説明したということは当然でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 あなた方が依頼し、そしてまた責任を持ったというその三宅島の警察署長自身が、防衛施設庁と警察庁の上の方で決まったと言っているのですよ。  決まったときにあなたがいたかどうか知りませんけれども、その相談にはあずかっているでしょう、今回は機動隊を導入しましょうということを。全く知らなかったとは言わせませんよ。どうですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 警備の体制は警察側がお決めになることで、機動隊が出るかどうか、人数がどのくらい出るかどうかということは事前には承知いたしておりませんでした。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 まことに無責任な言い方ですね。警察に任せていたから承知していなかったと言っていますけれども、知った上でやったことだというのは諸般の情勢から見てもはっきりしていると思うのです。そしてああいう事態になりました。第三の鉄柱は立ちましたけれども、政治的には負け、これから何をやっていいのかわからない状況をつくっているじゃありませんか。こういうことについて防衛施設庁は是とされますか。  こういうふうに事あるごとに今後も力ずくで島民の意思を踏みにじっていかざるを得ない。それで、果たして建設できるかどうかもわからぬような状況になっているでしょう。それともああいう事態は遺憾であったと反省し、陳謝されますか。どうですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 気象観測施設の設置工事に当たりましてこのような混乱が生じたということは大変残念に思っております。今後はなるべく平穏裏に話し合いによって進めていきたいというのが私どもの考えでございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 では、なぜそのときも平穏に話し合いでやらなかったのですか。話し合いはあきらめたかもしれませんけれども、話し合いの精神、対話の精神じゃないでしょう。島の警察署にお願いするぐらいだったらいいですけれども、機動隊をもって三万から挟み打ちするような形で乱闘服を着てやったでしょう。こういうことを足とされるのですか。なるべくじゃなくて、今後もこういうことをやるつもりですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 昭和六十二年度におきまして、観測機器の設置のほかにポーリング工事というものが計画されているわけでございます。今後の調査工事を実施する時期、方法等については、これからよく検討してまいりたいというふうに考えております。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 聞いていることにちゃんと答えてくださいよ。こういう行動を是認されるのか、よいと思われるのかということです。どうですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 八月中に東京防衛施設局長が二回、それから私自身も一回、村長さんとの話し合いに伺ったわけでございます。八月二十八日の話し合いの中で三宅村長が、何遍来られても同じですよということを言われたことで、私どもは九月一日の休止期間が明けた日から工事を始めたということでございます。  その結果、あのような混乱が生じたということは大変残念に思っております。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 何回来られても結果は違いませんよと言われたからあの結果が生じたと言う。そうすると、不信感は一層決定的になっているのですよ。今後はなるべく話し合いでいきたいと言ったのですが、殴っておいて話し合いとは何事です。  ああいう行動を続けられるかどうかという前提に、ああいう行動をよいと思われるかどうか、足とされるか、それを聞いているのです。答えを避けないでください。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたけれども、警察側が実施された警備の方法について私どもがとやかく言うことは差し控えたいと思います。  ただ、先生御指摘のように、結果としてあのような混乱になったということは大変残念でございますし、このような事態がまた起こるということはできるだけ避けたいと考えておるわけでございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 残念であるし、また起こることを避けたいというのは、何をもって避けたいのですか。これはもうやらないということですか。島の人たちは本当に怒っているし、不信感は一層決定的になっているのですよ。話し合いをしようといったってもうできないかもしれませんね。  そうすると、次から次に、ボーリングをやる場合でもその他のいろいろな本格工事をやる場合でも、機動隊を導入せざるを得ないのじゃありませんか。なるべく避けたいといったってそれは主観的な願望でしょう。人間ですよ、それを殴る、けるしておいて、どういう方法をとりますか。それよりまず、ああいうことは遺憾であった、やるべきじゃなかったということをはっきりしたらどうですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 先ほど来御答弁申し上げているとおりでございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 答弁になっていないよ。あれだけのことをしておいて、ろくな答弁もできない。まことにけしからぬと思います。  そこで、あなた方は三億二千万円の予算をとっている。また今度概算要求では三億三千万円を要求されているのですね。観測柱を三本建てました。これから何に使うのですか、使い道がありますか。具体的に言ってください。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 昭和六十二年度の予算は、一つは、現地に連絡所を置いております現地事務所の費用、もう一つは、気象調査その他の事前予備調査の費用ということでございます。昭和六十三年度も引き続き事前予備調査を実施する、それから現地事務所費用というのは同じでございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 わかり切ったことを言わないでください。ポーリングを幾つやるのですか。予算上幾つ計上しているのですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 昭和六十二年度予算でお願いしておりますのはポーリング約二十カ所ということでございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 六十三年度はどうですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 予算上、昭和六十二年度予算にはボーリングは計上してございません。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 少なくとも六十二年度二十カ所やられる予定ですが、その半分にしたって、こんなことをしておいてどうしてやっていけますか。なるべく話し合いでいきたいと言いながら、それができない状況をつくったのはおたくじゃありませんか。それをあたかも警察がやったかのように、残念であったかのように、自分たちは責任がないかのように言っていますけれども、そういうことで予算のむだ遣い――これ以上作業は進まないと私は思っています。  そこで聞きますけれども、本格建設までどういうことをやられるのですか。これからいろいろなことをやっていくわけでしょう。どういう段取り、どういう進行をお考えになっているのですか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 昭和六十二年度と六十三年度におきまして気象調査、ポーリング等、これは適地選定に係る事前予備調査ということで実施したいと考えているわけでございます。その間、現地の行政当局、それから住民の皆様方と話し合いをいたしまして、この本格建設について御理解をいただくという手順が何よりも大事だと思っております。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 こんなことをしておいて理解も納得もあったものじゃないと思いますよ。  時間もどんどんたっていきますので、外相にお聞きしますけれども、今お聞きになったとおりなんです。国策であったにしても、自分たちのふるさとを守りたい、暮らしを守りたい一心で反対している島民なんです。話し合いをしないしないと言いますけれども、施設庁がおっしゃるのはノーがないのですよ。私たちの言う常識的な話し合い、対話というのはイエスもありノーもあるのですけれども、ノーがない、イエスの押しつけなんですね。そんなのに対して聞いても仕方がない、もしノーをはっきりと保障してくれるのだったら聞きましょう、これが村民の態度です。どちらが民主主義がはっきりしていると思うのです。私は国策についてもやはり住民自治、住民自身がノーと言う権利、拒否する権利を持っていると思いますけれども、外相、どうお考えでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 ただいま先生と施設庁とのやりとりを伺っておりまして、いろいろな混乱が起こったことは極めて残念なことに思っておる次第でございます。  同時に、御案内のとおり、空母艦載機のパイロットの夜間着陸訓練の練度の向上、維持ということは、やはり日米安保条約を有効にするためにも非常に必要なことでありますし、厚木が御承知のとおり大変な騒音の問題が出てきておる。したがって、これにかわる適切な場所がないということで、三宅島がこの候補地になっておるわけでございます。旋回コースを海上に設定するというようなことから、海上でございますので三宅島がその候補地になったと思うわけでございますが、今後とも住民の方々によく納得をしていただいて、この工事が円滑に進みますように我々期待をいたしておる次第でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 ノーと言う権利はないのかということを聞いたんです。答えられないので、そういうことを言われたと思いますが、次の質問とあわせて御答弁願いたいと思うのです。  平和な暮らしを送りたい、緑の自然環境を守りたい、これは人間ならばだれでも考える、また願う生き方だというふうに思うのです。また、これに対しては何人も侵すことのできない権利だというふうに思います。目的もそうだし、それから手段においても非暴力でやっていきたい、いわゆる過激派は入れない、そういう立場を貫いているわけですね。そして三年九カ月間、圧倒的な、八五%を超える人々が反対しているし、村議会も村長も反対している。地方自治はどこへ行ったんでしょうね。  私は行きまして、そして機動隊に対する村民の人たちの態度を聞いて涙が出ました。そのことはきょうの朝日の天声人語に載っていますので、外相お読みになっているかもしれませんけれども、ちょっと紹介さしてもらいたいと思います。   三宅島の事件を目撃した記者の話では、重装備の機動隊員は脱水症状になって次々に倒れたという。七転八倒の同僚をみて、隊員たちは「このままじゃ死んじゃう。水を下さい」と座り込みを続ける反対派のおばさんたちに頼んだ。手をあわせ、涙を流して頼む隊員もいた。   息子の年のような機動隊員をみると、にらみ合う相手ではあっても、水をあげないではいられなかった。モンペ姿のおばさんたちは、飲み水用の六個のバケツの水のほとんどを、隊員たちの水筒にいれてやり、体にもかけてやった。 私も聞いてきました。これだけしてやったのに、これが三宅の人情だ、人の心だと言っておりましたけれども、人の心を持った人たちがふるさとを守るために座り込んだんですよ。  そこで、こういう人たちに対して、安保の効果的な運用とはいっても機動隊まで動員してああいう乱暴を働く、村民を痛めつける、そうして話し合いとか対話とかと言う、こういうことが許されるでしょうか。  先ほどまことに残念だとおっしゃいましたけれども、再度大臣、こんなことが許されて安保がまかり通る、これこそまさに安保優先の、国策優先のそういう御発言の具体化じゃありませんか。どうでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 私の郷里も島がたくさんございますので、島の方々の人情というのは本当に温かい気持ちを持っておられるということ、よく承知をしております。そして今回の事件が非常に残念なことであったと思います。  できるだけ、日本の安全を守るといういわゆる国策と住民のそういうお気持ちと調和を図って、いかにして混乱を少なくしていくかということが政治の役割だと思います。したがって、今回のような事件が起こらないように心から期待いたしておる次第でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 政治の役割を果たさなかったんですね。混乱を起こしたのは機動隊を動員したことなんですよ。そうしなくたって幾らでも道があったんじゃないかというふうに新聞記者たちも言っていました。それを一気にメンツにかけてもやってのけるということからああいうことを強行したわけですね。  それで聞きますけれども、住民たちが暮らしを守るために、たとえ国策であってもノーと言う権利はないんでしょうか。前の質問でございますけれども、大臣どうでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 そこは話し合いでよくやるべきことだろうと思います。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 話し合いでノーと言ってもいいわけですね。ノーと言えない立場を押しつけるからこそ話し合いもできないわけなんですね。そういうことをやってきているのが防衛施設庁、政府なんです。  時間も来ましたので、私は今回の暴挙についても厳しく抗議いたします。きょう鈴木さんが見えているので、本当は謝罪してもらいたいのですよ。できませんか。ああいうことをやってよかったと思いますか。もう一回言ってください。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 九月一日の工事の実施につきましてあのような事態が生じたことは、まことに残念に思っております。今後はあのような混乱が起こることをできるだけ避けたいと考えておるわけでございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 謝罪しませんか。謝罪を聞いているのですよ。謝罪なさいませんか。

鈴木杲防衛施設庁施設部長

○鈴木(杲)政府委員 今先生がいろいろおっしゃいましたように、方法が悪かったとかいろいろ問題が起きたという御批判があることはよく承知しております。ただ、防衛施設庁としましてあるいは私自身としまして、これに対して謝罪するという立場ではございません。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 ああいうことをやっておきながら、謝罪しないと言うのですね。それでうまくいくと思いますか。  これも結局、レーガン政権の要請にこたえてこの首都圏の中に無理難題のNLP基地をつくろうとするところから来ておるわけです。これを断念することを強く要求しておきます。  さて、もう一つ聞こうと思っていましたが、かなり時間がたってしまいました。先ほども質問がありましたけれども、INFのグローバル・ゼロに向けて世界の大勢は大きく動き始めています。被爆国日本国民の願いでありますので、何としても核のないアジア・太平洋地域を実現していきたいというふうに考えています。  そこで、外務大臣にお聞きしますけれども、今東南アジアや南太平洋地域で非核化構想が進んでいますね。これは世界の大勢から見ても、被爆国日本国民の願いから見ましても、各国の努力で実現することは望ましいとお思いでしょうか、どうでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 南太平洋地域あるいは東南アジアの非核地帯構想、これは、我が国は当事国ではございませんので、コメントする立場にないということが基本的な我々の考えでございます。  ただ、一般論として申し上げますと、これらの非核地帯構想が効果的、現実的になるために、次の条件が満たされなければならないと思っております。  第一は、核兵器国を含むすべての関係国の同意があること。やはり核兵器を持っている国が同意しないとなかなか実効が上がらないというのが第一でございます。  第二は、当該地域のみならず世界全体の平和と安全に悪影響が及ばないこと。ある地域だけが平和で、もうここには一切立入禁止としましても、他の地域にいろいろ騒がしい状況があるとなかなか実効が上がらないということでございます。  第三番目は、査察、検証を含む適切な保証措置を伴うこと。幾ら宣言しましても、それが査察、検証ということで十分な保証がされることが必要である。  第四番目には、公海における航行の自由を含む国際法の諸原則に合致したものであること。  こういうことが一般的に申せば非核地帯構想の現実性を持つために必要であるというのが私の基本的な考え方でございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 たしか七月十四日の衆議院予算委員会でそういうことをおっしゃいましたし、私もよく記憶しています。その四つの条件から見まして、今進んでいる東南アジアや南太平洋地域の非核化構想は現実的なものだとお思いになりますか。そのことを聞いているのです。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 これはこの地域の方々がお考えになることでございますから、コメントする立場にないということを最初から申し上げているとおりでございます。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 被爆国日本でしょう。非核三原則、つまり日本は非核地帯なんですよ。それを広げるというのが外務大臣の姿勢じゃないでしょうか。コメントする立場にない、何か四つぐらいの条件を挙げられますけれども、これでは非核三原則を国是とする国の外相としては何か物足らないものを強く感じるわけです。  私はここに南太平洋非核地帯条約を持ってまいりました。この地帯のオーストラリアやニュージーランドやフィジーなど十四カ国が署名し、うち九カ国が批准しています。八六年十二月発効ですね。これについても先ほどおっしゃったとおりでございますね。コメントする立場にないとおっしゃるわけですね。まことに残念でございますけれども、時間がもう来つつありますので、端的に聞きましょう。  今挙げられた四つの条件、同意するのは当然でございますね。それから第二が問題で、第三は査察、検証を含む適切な保証措置ですね。第四は国際法、これは言わずもがなの問題です。問題はこの二つ目、当該地域のみならず世界全体の平和と安全に悪影響が及ばないこと。このことに触れて、六月二十日のASEAN拡大外相会議で倉成外務大臣は発言をされていますけれども、私が質問したのは実はこのことだったんですね。  何か片言隻句をとらえて言ったようにおっしゃいますけれども、実はここが一番大事なんで、このことを別の表現で「いま世界の平和が保たれているのは、超大国を含めた核のバランス、恐怖の均衡による、という現実もみなくてはならない。」「ただセンチメンタルな意味での構想であってはならない。」こういう表現がされているわけなんです。  ですから、ここのところで、結局は核の均衡論に立って、こういうことは余り望ましくないかのような表現になっているわけです。こういう四つの条件を並べて、特に第二のところはこういうふうな表現で説明されているわけです。だから反対だというわけでもないのですか。どうもここのところが核の均衡論をおっしゃっていまして、そしてセンチメンタルな構想であってはいけないと言われている。私がこの点を指摘して何で水を差すのだと言ったら、片言隻句をとらえて言われるのは残念だと言われたのですが、まさにこれが四つの条件の中の中心問題なんですね。  そこで、この条件を満たしていないのだったら反対だというわけですか、東南アジアや南太平洋地域の非核化について。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 私はしばしば申し上げておりますように、この問題はこの地域の方がみずからイニシアチブをとって決められることであるから、これをコメントする立場にないということを申し上げながら一般論として申すならばこういうことである、私自身長崎の出身であり、私の住んでいる場所も、原爆のときも原爆の中心地でありましたし、現在もそこに住んでおるわけでございます。したがって、核については人以上に大変な関心を持っておるわけでございますけれども、また、平和を願う人の心は大変貴重なものであるということを考えておる政治家の一人でございますが、やはり現実にこれが本当の核をなくしていくためには一つ一つ忍耐強く積み重ねをしていかなければ現実の問題にならない、そういう私の考え方を率直に申し上げたわけでございます。  決してそういうところの方々の気持ちに水を差そうとかいう気持ちでない。非常に残念なことであるけれども、核の均衡ということで今世界の平和が成り立っている。INFの交渉にいたしましてもいろいろな過程を経て今実現の見込みが出てきたということで我々はそれを歓迎しているわけでございますけれども、まだ戦略核の問題もございますし、あるいは戦術核の問題もございますし、いろいろな点で難しい問題がある。したがって、一つ一つを積み重ねていかなければならない。それが私は本当の平和に通ずる道であるという意味で申し上げておるわけでございますので、その点は、もし私の言葉が足らない点がございましたらひとつ誤解のないようにお願い申し上げたいと思います。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 予算委員会で時間が短かったので何をおっしゃっているのかよくわからなかったのです。今よく聞いてみました。しかし、よく聞いてもなおかつ問題があると思います。  外相、お聞きになったように、このASEAN拡大外相会議でインドネシア外相やニュージーランド外務次官が、外相の発言をとらえて核兵器の犠牲はごめんだとか非核は安全を損なわないとか、そういうことで批判をしているところを見てもわかると思います。関係国で決めるのは当然でございます。関係国で決めなくてだれが決めるのですか。コメントする立場でないと言いながら、結局、核のバランス、恐怖の均衡によって世界の平和が保たれるのだからそのことをよく考えるというのは、非核化構想についてやはり水を差すものになっていると私は思うのです。コメントしないと言いながら核抑止力論を話して、そのことをよく考えなければいけませんよという形になっているわけです。  それは長崎出身で被爆国日本の外相としては言うべきではなかった、私はそう考えるのです。むしろ積極的に日本は非核三原則を守っている国なんだ、そうやりたい、そういう立場をとられる非核化構想については賛成なんだ、広げたい、こう言うのが日本の外相の姿勢ではないでしょうか。そこであえて核の抑止によって世界の平和が保たれるのだからよくお考えなさいと言うのは、ちょっとこれは水を差お言葉じゃないか、私はそう思いますけれども、どうでしょうか。

倉成正自由民主党外務大臣

○倉成国務大臣 委員の私に対する御批判は甘んじてお受けいたしますけれども、私は、今日の世界の現実から考えてやはり現実的に物事を考えていかなければならないということを、核をこの地球上からなくしたいという願いを持っている政治家の一人として真剣に考えて申したものでございまして、いろいろな会議においてただきれいごとを並べておけばよいというものではなくて、率直に意見を述べるというのも一つのあり方ではないかと思って、私があえてコメントする立場にないけれども、一般論としていえばこういう問題がありますよということを率直にその会議で申し上げたわけでございます。  これに対していろいろ関係国が自主的に決めるべき問題であるというようにニュージーランドのオフリン副外相が言われたり、あるいはインドネシアのモフタル外相は、潜在的な核兵器の犠牲者としての立場から非核地帯構想を議論することが必要であるということで率直に意見の交換をしたわけでございまして、決して私とASEANの外相との間でそういう変なやりとりはなかった、率直な意見の交換を真剣にしたということでございますので、これは機会がございますれば、どうぞモフタルさんや関係の方に直接お聞きになる機会に、私がどういう雰囲気の中でどういう発言をしたか、どういうふうに受け取ったかということをお聞きになればおわかりになることだと思います。

岡崎万寿秀日本共産党・革新共同

○岡崎委員 これで終わりますけれども、よく聞いていても、コメントする立場にないと言いながら、一般論と言いながら核抑止力論を押しつけて、やはりこれは干渉的な発言であったというふうに遺憾ながら言わざるを得ないと思います。これは、日本の国が非核三原則と言いながら現実にアメリカの核艦船が寄港するなど、これが侵されている実態を反映していると思うのです。そのことを指摘して、発言を終わります。

浦野烋興自由民主党

○浦野委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十分散会

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