商工委員会 第5号
- 発言数
- 239 件
- 登壇者
- 25 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1987/05/21
会議録
○委員長(前田勲男君) ただいまから商工委員会を開会いたします。 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
○梶原敬義君 特許法の一部を改正する法律案につきましては原則賛成でございますので、そういう観点でございますが、以下質問をいたします。直接法案には関係ございませんが、特許行政全般にわたって質問を幾つかいたします。 最初に、我が国の工業所有権制度の歴史、またその変遷と今回の法律改正に至ったその必要性についてお尋ねをいたします。
○政府委員(黒田明雄君) 我が国の特許制度は百年を超えるわけでございますが、当然のこととはいえ、この工業所有権制度発展の歴史は、我が国の産業、経済の発展の歴史そのものであったというふうに考えてよろしいのではないかと思います。幸いにして工業所有権制度の働きもこれあったと思うのでございますが、我が国が現在経済の面であるいは産業の面で、とりわけ技術開発の面で先進国になっているかと思うのでございます。 最近特に目立つ問題としては、やはり我が国が技術開発の先進国としてそれなりの実績も上げ、また国際的にも期待を集める存在になってきていると思います。この技術開発の進展そのものと、また技術開発ないしはその成果の持つ国際的な性格から、工業所有権制度の国際的な観点から見た見直しの時期に来ているかというふうに考える次第でございます。 今回の改正でございますが、大きくはこの二つの流れに沿うものであるというふうに確信いたしております。 今回の改正の柱は、大きく申しまして四つございますが、第一には、やはり技術開発が相当に高度になり、内容的には複雑になってきている。こういった実態に即しましてこの開発成果を十分に保護していくためには、現在の出願制度、とりわけ多項制の面では現在のところ不十分であるというふうに考えられておりまして、成果の十分な保護のために多項制の改善を行わなければならない、これが第一点でございます。 また、国際化の観点から申しまして、我が国の制度については、我が国にあります外国系の企業、さらには外国の産業界から我が国制度について幾つかの批判、苦情が寄せられておりまして、こういったものの中には取り得るものと取り得ないものとあるわけでございますが、やはりこの制度の国際的な協調、調和の観点から取り入れるべきものは取り入れるべきであるというふうに考えておりまして、そのために幾つかの制度改正を行う必要があるわけでございます。 また最近、医薬品の分野に見られますように、この技術開発の進展とともに、やはりこの技術を実際に製品化していく場合に考えられます社会的な危険、例えば医薬品で申しますと、薬効とかあるいは副作用の問題、こういったものについては他の行政上の法律に基づきましていろんな許可等の処分が必要とされるわけでございますが、こういう処分に要する時間のゆえに、せっかく与えられております特許期間が十分にその権利内容として行使できない、いわば特許期間が実質的に空洞化するというような問題が生じておりますが、こういったものの延長措置を考えなければならないと思っております。 四番目には、私ども特許庁自身の問題でございますが、非常に技術開発が進む実態を反映して出願が急増いたしておりまして、これにこたえるためには、我が国の特許制度自体をもっと効率的なものにしなければならないとの観点のもとに、トータルコンピュータリゼーションと申しましょうか総合的な機械化政策を推進いたしているわけでございますが、これを中心に、法律的な特許制度の整備のために特別会計を設けて施策を推進中でございますけれども、その財源確保のために手数料等の値上げをお願いいたしたいということでございます。 以上の四点、いずれも初めに申し上げました大きな現在の流れの中で必要なものを行うというような観点から提案させていただいた次第でございます。
○梶原敬義君 ちょっと聞き方が悪かったかもわかりませんが、五十年に多項制への移行をいたしましたね、その前に単項制。だから、その制度の変遷についてちょっと年度を追ってお願いします。
○政府委員(黒田明雄君) この我が国の出願制度そのものにつきましては、大正十年に、現在の多項制とは違います単項制というものがとられました。ここでは、一つの出願については、その発明のために必要な事項のみを一つの項でもって表現して出願すべしということが定められたわけでございます。これは当時の技術的な発展段階と申しますか、研究開発の段階に即応して、その程度でいいという判断で生まれたものでございますが、これがずっと昭和三十四年の特許法大改正のときも継続されまして、昭和五十年に特許協力条約に日本が加盟することになったその機会に、やはり国際的な協調あるいは国際的な統一化の観点から、多項制に移行すべきではないかという議論が起こりました。 この五十年改正は、今、梶原委員御指摘の一つのターニングポイントであったわけでございますが、そのときは発明をいわば示すためにどうしても必要な事項のみ、いわゆる必須要件項だけではなくて、その実施の態様を示す実施態様項についてはこれを記載してよろしいという、いわば限定的な多項制がとられたわけでございます。その限定的にとどまった理由は、やはりそれまでの長い単項制の歴史のもとで、大勢の出願人、あるいは大勢の弁理士などの代理人、特許庁自身、こういったものの混乱を防止するためには、それほど徹底した多項制をとることはいかがなものか、混乱を来すのではないかという懸念のもとにとられたものでございます。 そうではございますが、その後、我が国のこういう限定的とはいえ、多項制の出願の経験、さらには特許協力条約に基づきます国際出願における多項制の経験、そして現在の技術開発の成果が非常に幅広いものになり内容が複雑になってきている。この開発成果を保護するためにはやはり現在の限定的なものでは十分でないという、そういう物の考え方に基づきまして今回踏み切って、欧米並みの多項制にこれを改めようというわけでございます。
○梶原敬義君 多項制移行後の改善の問題については彼ほど質問をいたしますが、昭和五十一年というと、今から大体十年ちょっと前でございますね。十年ちょっとの間に多項制の改正、もう一度改正するという、非常に短い間に同じようなところを二回もいじるということについては、どうもその辺の見通しの甘さというのがこの点については指摘をせざるを得ないと思います。 次に、最近における特許、実用新案、意匠、商標の出願状況、一応私はデータは持っておりますが、これを説明していただきたい。 次に、我が国の出願件数については、世界でどういうような位置を占めているのか。日本が非常に多いわけですけれども、これは一体なぜ多いのか、この点。 それから三番目に、我が国の特許出願件数については、新聞報道によりますと上位百社で六割に上っているようでございますが、いわば大企業中心に特許行政が動いていると言っても過言ではないと思うんです。こういう上位百社、いわゆる防衛出願の件数が非常に多い、三分の二は防衛出願ではないか、こう言われておりますが、これは問題であると思うんですが、どういうような見解をお持ちか、そしてどう指導しようとしているのか。この三点についてお伺いします。
○政府委員(照山正夫君) 三点につきまして御説明申し上げます。 第一の最近の出願状況でございますが、数字だけ取り上げて申し上げますと、昭和六十年度の工業所有権四法合計の出願件数は、年間で約七十二万件、六十一年度では約七十五万件の合計でございます。そのうち特許、実用新案の出願件数は、五十九年度が約四十九万件でございましたが、六十一年度には約五十三万件と増大をしておりまして、五十一年度から六十一年度までの十年間の平均をとりますと、特許で七・二%、実用新案では一・三%の年平均の伸び率になっているわけでございます。特にそういうことで特許の伸びが著しいわけでございます。 次に、意匠でございますが、五十九年度は約五万五千件でございますが、六十一年度は五万三千件と若干減少傾向でございます。過去十年の年平均伸び率をとりましても〇・二%でございますから、やや横ばいという現象でございます。 それから商標でございますが、五十九年度は約十六万件でございまして、六十一年度は約十七万件、これも横ばいであるというふうに考えます。 それから、こういった日本の出願状況が世界的にどういう状況にあるかという御指摘でございますが、一九八四年の数字で申し上げますと、全世界の出願合計は特許、実用新案で申し上げまして約百十一万件でございます。これは余りこの数年大きな変動はございません。 国別に申し上げますと、アメリカは一九八四年で約十一万件でございます。近年若干の増加傾向にございます。それからヨーロッパでございますが、ヨーロッパでは御承知のように欧州特許庁というものがございまして、そこに欧州特許庁加盟のヨーロッパ諸国に均てんするということで出願が行われますが、その出願は増加傾向にございまして、八四年で三万三千件でございます。この影響もあろうかと思いますが、ヨーロッパの主要各国それぞれの特許庁では、それぞれ出願件数は若干減少傾向にございます。一つだけ例を申しますと、イギリスが約三万三千件。なお西ドイツは八万一千件といったような状況でございます。 そこで、我が国でございますが、先ほど申し上げましたようなことで、一九八四年で申しますと、日本の特許、実用新案の出願は約四十九万件でございまして、これは全世界出願件数百十一万件の四四%に相当するものでございます。 なぜこのように出願件数が日本の場合は多いのかという点でございますけれども、これはいろんな見方が可能であろうかと思いますが、一般的に考えますと幾つかの要因があろうかと思いますが、我が国の企業の研究開発意欲が非常に高いということがまず基本にあろうかと思います。 それから二番目に、我が国では御承知のように、企業間の商品開発の面での競争が著しく激しいものがあるということでございまして、したがいまして一つの技術が開発されましてそれが特許になる、あるいは特許出願が行われるということになりますと、今度はその技術を改良するということでまた周辺の技術開発が進むということもあるわけでございます。また、ただいま先生が御指摘になりました防衛出願と申しまして、自分が権利を取るというための出願ということよりも、主たるねらいは他人が、他の企業が権利を取るのを防止する。自分が出願を先にすることによりまして、他企業が同じ技術を出願して権利化するということを防衛するというようなものもございます。そういった企業間の競争が非常に活発に行われているということで、これは日本産業全体の共通の特徴かと思いますが、これが特許出願面でもあらわれているのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。 それから、さらに三つ目に申しますと、我が国の企業は、世界的に見ましても、研究者からあるいは現場の技術者に至りますまで非常に教育水準といいますか、訓練水準も高い。それから意欲も非常に活発でございまして、そういう意味で発明者の層が厚いということも言えるのじゃなかろうかと思います。そういった面は技術開発を促進するという見地からは必ずしも悪いことではないわけでございまして、むしろ奨励されるべきことかもしれません。 他方、しかしながら、我が国企業におきましては、いわゆる特許管理というものが全般的に未発達であるということが言われておりまして、具体的に申しますと、例えば技術開発を行う、あるいは特許出願を行う、それに先立ちまして十分事前調査を行いまして、事前調査の結果、自分の出願なり技術開発に先行する他の企業の技術がもし存在すれば、もうそこで技術開発戦略あるいは特許出願を方向転換をするということが十分に行われますと、不必要な、重複した出願というものが行われないことになるわけでございますが、こういったこと、すなわちいわゆる特許管理というものが、まだまだ日本の企業の場合には諸外国に比べまして不十分ではないか、こういう点が指摘されておるわけでございまして、この点はむしろ非常に大きな問題ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。 それから、三番目の御質問でございますけれども、こういった出願が非常に多いわけでございますが、これは上位企業に集中しているのではないかという点でございます。確かに御指摘にもございましたが、出願の上位企業が全出願件数に占める割合というのは非常に大きいものがございます。その上位企業というのは、非常に大きな企業というのが中心でございますけれども、ではなぜそうなるかという点も、これもまたいろいろな見方があろうかと思うわけでございますが、一般的に申し上げますと、先ほど申し上げましたような企業間の競争であるとか、あるいは技術開発意欲であるとか、研究者、技術者の数をそろえているとか、そういった面が量的に大手企業は特に活発にあらわれるということで、出願件数が増大するということがまず一つ当然ながらあろうかと思います。 さらに、最近におきましては、日本経済全体の内外環境の変化が非常に激しい中で、大手企業におかれまして、そういう環境の変化に対応して新しい分野に参入する、あるいは経営の多角化を図るということで技術開発に非常に力を入れておられるということがあるわけでございます。それともう一つは、技術革新の時代である今日におきまして、ハイテク関連の技術開発の競争というものが非常に熾烈になっておるということもございます。そういった点が大手企業の出願に非常に色濃く反映をしているのではないかこのように考えるわけでございます。 そこで、ではそういうことでいいのかということでございますが、特許制度の本来の趣旨は、出願を盛んにいたしまして有用な発明を保護するということでございますけれども、先ほどもちょっと申しましたように、必ずしも出願が多ければそれでいいかと申しますと、中には不必要と申しますか重複した出願、不要な出願というものが実は含まれているのではないかという問題点がございます。現に、出願のうち実際に審査請求が行われまして権利化されるというものは、大ざっぱに申しますと全体の三分の一にすぎないというのが現状でございます。したがいまして、こういった全体の中での玉石混交と申しますとちょっと語弊があるかもしれませんが、必ずしも真に特許制度の目的からいって保護するに値しない、保護水準に達しない、そういったものについてはなるべく出願を避けていただくということが、特許制度全体の効率的な運営からいいまして必要になるわけでございます。 そこで、先ほど申しましたように、そういった出願というものの非常に大きな塊は、上位の出願は大手企業から出てくるわけでございますので、私どもといたしましては、出願の上位大手企業に対しまして、いわゆる出願適正化施策というものを実施しているわけでございます。これは具体的には事前調査を十分やっていただきまして、出願あるいは審査請求に当たっては、真に特許権の取得に将来つながるという確信のあるものを出していただく、つまり精選をしていただくということが中心でございまして、そういった施策をとることによりまして、いたずらに大手企業を中心に出願が増大し、全体としての効率が妨げられるということのないようにしたいというのが、私どもが現在実施している施策でございます。
○梶原敬義君 よくわかりました。 ただ、我が国で出願件数が多いということの理由に、研究開発あるいは企業間開発競争、こういう順番をずっと述べられましたけれども、私は多いということに対する答えとしては、何が多いのかというと、やっぱり順番からいきますと防衛出願が多いと。それは前はいろいろあるでしょうけれども。話は横に飛びますが、例えば碁を打つ場合にいろんな手がありますね。そこで一番大きくてしかも効果のある手は一体何かと、こういうことから判断するでしょう。そういうように答弁も、私は問題に対してはやっぱり問題の大きな順番から答えていただかなきゃ、聞いているうちに何かよくわからなくなったというふうになります。 私は、問題はこの大企業、しかも日立グループなんか、日立家電ですか、二万件ぐらい毎年やるんでしょう。要するに三分の二は防衛出願、こういうような状況で、結局困るのは中小あるいは個人の発明家、こういう人はもうその日その日で真剣に考えてやっているんです。後から質問いたしますが、期間の問題ですね、滞貨がたくさんあって、それが一体特許として認められるのか、認められないのか。これが重要な問題ですから、非常に時間がかかっている、こういう問題に通ずるわけですから、その点について今言われました指導方については、本気でやるか、何か手を打たなきゃいけないんじゃないか。以後、関連して後から質問いたします。 それから、発明者の層が非常に我が国は厚いということを言われましたけれども、私はこんなにたくさん、世界の四四%も出願件数があるなら、本当に世界の人類を豊かにするような創造的な発明が日本からぽんぽん飛び出していってもいいと思うんです。改造、物まね、そういうものが中心ではないですか。だから、余りその辺を、出願件数が多いということを手放しで評価をするんでなくて、本当の問題というのはよく見抜いていただきたいと思います。 次に、特許等の工業所有権の審査の処理状況について、滞貨、未処理件数、これはどのようになっているのか。しかも滞貨がもうどんどんふえておりますが、その原因ですね、これは一体何なのか。それから我が国の特許庁の審査官の処理能力は、国際的に比較して非常に能力があると。一日に大体三件ぐらい処理をしていくというんだから、あの難しいのを見て処理をして結論を出していくというんだから、神わざに近いと思うんですが、この処理能力の国際的な対比をしていただきたい。また処理能力がなぜ我が国は高いのか、この点についても言及をしていただきたいと思います。
○政府委員(照山正夫君) 最初の二つの点につきましてお答え申し上げます。 最初に、審査処理状況でございますが、これも特許、実用新案、それから意匠、商標とございますので、数字だけとりあえず申し上げますが、特許、実用新案の審査処理件数は、五十九年度が約十九万件でございましたが、六十年度は約二十万件、六十一年度は約二十二万件というふうに、年を追いまして審査処理の方も増加をしております。それから、意匠の審査処理件数でございますが、これは五十九年度五万五千件、六十年度五万四千件、六十一年度五万三千件と、やや減少ぎみでございます。それから商標でございますが、五十九年度が十七万件で、六十一年度も十七万件弱ということで、横ばいでございます。 それで、それが滞貨になっているわけでございますが、特許、実用新案の滞貨の件数でございますが、昭和六十一年度末で約六十二万件ということになっておりまして、また、意匠は約十二万件、商標は約三十五万件というふうに、大変残念でございますが、未処理の件数がたまっておるというのは偽らざる状況でございます。
○政府委員(小花弘路君) 第二点の御質問の点についてお答え申し上げたいと思います。 昭和六十年度における日本の審査官の年間の特実の処理件数は約二百三十件ほどでございます。これに対しましてアメリカでは約九十件ほど、西ドイツでは六十件ほどというのが現状でございます。先生御指摘のように、日本の特許庁の審査官は非常に効率的な審査をやっておることは事実でございます。このように非常に高いということにつきまして、基本的には私はやはり日本の審査官は非常に優秀な資質の人が多いということが基本にあるというふうには考えておりますが、審査官が非常に審査処理に工夫その他努力をしておるということも大きな理由であろうというふうに考えております。 ただ、要素はそれだけではございませんで、先ほど御説明申し上げた中にありましたように、非常に玉石混交の中に、何度も何度も同じような出願が出てまいりまして、出願人が十分調べてくだされば出願が出ないであろうような、簡単に拒絶理由が見つかってしまうようなものもまじっております。それからもう一つは、日本には実用新案制度というのがございまして、今の数は実用新案を含めた数でございますので、実用新案の方は比較的考案の程度が易しいということ、それから明細書のページ数も少ないというようなことも要素の一部かと思いますが、基本的にはやはり審査官が優秀であるということに尽きるのではないか、こういうふうに考えております。
○梶原敬義君 審査官の審査に当たる労働時間の国際的な対比、これはきのうは質問通告をしておりませんが、わかりましたらひとつ教えてください、
○政府委員(小花弘路君) 私どもも、正確には国際的な対比はつかまえておりませんけれども、日本の場合には約二千時間、一週間四十二時間というのが建前の時間でございます。これに対しまして米国では、週四十時間というふうに聞いております。それで、そういうふうな比較がありますけれども、現実には私ども特に長い労働時間を強いるようなことはすべきでないと考えておりますし、現在でも私どもはしていないつもりでおります。
○梶原敬義君 今、申しましたのは、それは確かに能力もあるかもわかりませんが、アメリカの特許庁の審査官と日本の審査官の労働時間は週に二時間の差があるということですが、そのくらいですかね。もっと多いんじゃないでしょうか。 私もこの前、アメリカに農畜産物問題で調査にちょっと行ってきまして、労働時間のことも日本の領事館の皆さんによく聞いたんですけれども、完全週休二日制ですね。ですから、単にそれだけから見ても、一週間にたった二時間だけの審査官の労働時間の差というのは、アメリカと対比してもちょっとぴんとこない。ヨーロッパの関係、西ドイツやイギリス、さっきイギリスの数字も出されましたが、この辺はいかがでしょうか。
○政府委員(小花弘路君) イギリスの状況についてはつまびらかでございませんので、また後ほど必要ならお答えさせていただきます。
○梶原敬義君 次に、ペーパーレス計画ですね。このペーパーレス計画の導入状況、進捗状況といいますかこれについて合いかになっておるか、いつまでに完了するのか、それから必要な資金ですね。それからもう一つは、果たしてこのペーパーレス計画によって審査期間がどれほど短縮できるのかどうなのか。この点について、いろんな議論のあるところでございますが、最初にお尋ねいたします。
○政府委員(黒田明雄君) ペーパーレス計画は、当委員会でも特別会計の設置とともにお認めいただきました特許行政の基本として現在進めているところでございます。 御承知のように、ペーパーレス計画は十カ年計画としてスタートしたわけでございますが、私どもこれを区分して三つに分けておりまして、第一期、第二期、第三期ということで、一応中締めをやりながら進めているわけでございます。おかげさまで第一期を終わりまして、第二期目に今年度から入るわけでございます。 進捗状況でございますけれども、一口に申し上げまして、予期あるいは予定したとおりの進捗になってございます。具体的に申し上げますと、一つは、このペーパーレス計画完成後の特許行政の本舞台になります新庁舎でございますが、昨年着工いたしまして、六十四年五月完成の予定で現在建築中でございます。計画それ自体は、初めのシステムの基本設計の段階を終わりまして、一部システム設計あるいはプログラミングの段階に進んでまいっております。一部につきましては、新庁舎完成後できるだけ早くこのペーパーレスの成果の一部を実用に供したいというふうに考えておりまして、電子出願なども六十五年には始めるようにこぎつけたいというふうに考えております。そのために現在種々準備を進めております。 また、データベースでございますが、総合データベースを構築してきておりまして、相当数の情報をインプットすることができましたので、まだ試みの段階でございますが、試行的にこのデータベースを使っていただくということで、東京及び大阪でこの電子化されたデータベースの公開を行っております。 財政的な資金の問題でございますが、これも当初特許特別会計スタートのときに、大体二回に分けて五割ずつ値上げをさせていただいて、その所要資金の範囲内で実現したいというふうに申し上げてきたわけでございますが、歳出要因に若干の増加は見られますけれども、今回の値上げをお認めいただきますれば、その資金の範囲内で、少なくとも現在予見し得る事情に変化がなければ達成が可能ではないかというふうに考えております。 審査期間の短縮の問題は、先ほど来いろいろ申し上げておりますように、私どもの非常に頭の痛い重大な問題でございますが、これは必ずしもペーパーレスそのものによってのみ短縮するというふうに私ども考えておりませんで、適正化施策——先ほど来の大企業を中心とした出願あるいは審査請求が非常に多いものを玉石ふるい分けてやっていただくための適正化施策、こういったものも前提になりますし、また陣容の強化なども図っていかなければならない。あるいは周辺業務で民間に委託できるようなものは外に出して、外注してやっていかなければならないというふうなことも考えておりますが、やはり何と申しましても、このペーパーレス計画は非常に期間短縮のために有効な基本的な施策でございます。 当初申し上げましたところでございますが、大体放置すると六十八年度には要処理期間が七年になるという見込みでございまして、何とかそういういわば特許行政の麻痺状態になることを防ぐためにペーパーレス計画を進めているわけでございますが、これも当初の目標に沿って短縮することができるものというふうに考えております。
○梶原敬義君 資金の関係、財政の関係ですが、ペーパーレス計画に要する総資金で約千五百億と言われているんですか、そのうちでソフトの関係、プログラマーやあるいはそのデータベースを打ち込む、そういう面で六百億ですか、そのようにちょっとこの前開きましたが、その点はいかがでしょうか。 それから、ペーパーレス計画によりまして審査期間をどれほど短縮できるのかということにつきまして、長官の今の御答弁では、最初はなかなかこれはこのことによって短縮はできない、しかし有効だと、最後に有効だということを言われまして、六十七年に要処理期間が七年になるから、これで縮めるような、そういうニュアンスに結論はなったんですけれども、最初言っていた、なかなかこれだけでは短縮できない、私も先般特許庁のペーパーレス計画をやっている現場に行かしていただきまして、見せていただきまして、やっぱり見て処理をするのは審査官でございますから、実質そう時間が短縮できるような内容にはなっていないと、こう判断をしたんですが、もう一度、くどいようですが、この二点についてはっきり、答弁をお願いします。
○政府委員(照山正夫君) ペーパーレス計画の所要の資金の問題でございますが、これは今後まだ六十八年度までの期間を通じまして歳入を立て、歳出をつくっていくわけでございますので、正確にこうだということはもちろん言えないわけでございますが、現時点におきまして私どもいろんなことを十分考えまして、現状ではこういう見通してはなかろうかということで申し上げますと、いわゆるペーパーレス計画に必要な資金は、先生も御指摘のように、五十九年度から六十八年度までの十年間で約千五百億円でございます。そのうちシステム開発が約二百億弱、それからデータの入力がございますが、これが五百億弱、それからハードの導入でございますけれども、これに相当する分が約七百億弱等々ではないかというふうに一応見通しているところでございます。
○政府委員(黒田明雄君) ペーパーレスシステムの審査期間短縮に対する効果でございますが、私、最初にほかの要因を申し上げましたのは、審査期間短縮のためには、要因に応じ、やるべきことを総合的に講じなければならないという意味で申し上げたのでございますけれども、ペーパーレスシステムはやはり非常に有効であるというふうに考えております。 内容的に申し上げますと、一つはやはり審査の効率化になるという点でございます。これはいろいろ文献のサーチなどに現在相当な手間暇、時間がかかっているわけでございますが、この点では相当に合理化ができると思っております。 またもう一つは、電子化されたいろんな検索可能なデータファイルにして対外的に公表する予定でございますが、この公表が行われますと、出願企業側におきまして、先行技術の調査が事前に容易に行うことができるようになるわけでございまして、その結果、私どもが進めております適正化指導の効果が大幅に上がるという側面がございます。両々相まちまして、このペーパーレスシステムは期間短縮に大幅な効果を発揮するものと考えております。
○梶原敬義君 私は、あなたの下におります皆さんともいろんなその辺の議論をしましてね、長官の言われるのと、実際に現場に携わっている人のニュアンスというのは、私はちょっと違うような感じがしたんですが、まあいいでしょう。 アメリカにおける特許商標庁の審査官の増員について、前の特許法の改正のときにも質問をしたと思うんですが、これは一体最近どうなっているのか、アメリカのペーパーレス計画との絡みで御説明をしてください。
○政府委員(照山正夫君) 御質問の米国の状況でございますが、アメリカにおきましてもペーパーレス計画と申しますか機械化を図っていくという計画を進めておりまして、その際あわせまして人員の増加も図るということを進めていると承知しております。 具体的に申し上げますと、一九八二年から一九八五年までの間に審査官の増員を約八百七十五名新規に採用するということでございまして、さらにその後も毎年八十名程度新規採用を予定すると、これは特許でございます。それから、ついでに商標でございますが、商標につきましても一九八一年から八三年までの間に毎年三十名程度を新規採用をし、その後も毎年二十名程度新規採用を予定するというふうに計画を出しているところでございます。実績を具体的に正確に承知しているというわけではございません。 私どもが承知しております数字で申し上げますと、特許の場合でございますと、一九八二年と八三年にそれぞれネットの増員で百九十名程度増員が行われております。また一九八四年と八五年につきましては、六十名程度同じようにネットの増員が行われているようでございます。また、商標につきましては、一九八一年から八四年にかけまして毎年ネットで約十名の増員が行われているということでございまして、その結果、特許の審査官の定員は一九八一年、九百八十五名でございましたが、一九八六年現在では千四百十五名になっているということでございます。
○梶原敬義君 日本の特許庁の審査官の定員は逆に減っていると思うんですが、その最近の状況ですね。
○政府委員(照山正夫君) お答えいたします。 特許庁の総定員は、最近の非常に厳しい行財政改革の環境の中で、大変遺憾ではございますが減少を余儀なくされておりまして、五十七年度から六十二年度、今年度、これは予定でございますが、それの推移で申しますと、五十七年度総定員は二千三百五十二名でございましたが、六十二年度は二千三百二十三名という予定でございます。ただ、審査官、審判官につきましては、五十七年度が千三百三十八名でございましたが、これが逐年減少はしてまいったわけでございます。六十年度に千三百三十名にまで減少いたしましたけれども、六十一年度は千三百三十一、六十二年度、今年度は千三百三十三と、わずかではございますけれども増員の傾向に現在はなっておるわけでございます。
○梶原敬義君 それから審査官の平均年齢、私も前に質問したことがあるので、三十九歳から四十二、三歳のところが非常にだんごになってどんどん進んでおりますが、もうあれから大分たっておりますが、いかがでしょうか。
○政府委員(照山正夫君) 職員の平均年齢で申しますと、現時点で三十九・七歳でございます。それから、審査官、審判官の平均年齢は三十八・六歳でございます。これは前に、昭和四十年代に非常に大量に新規採用を行った時期がございますが、その後、先ほど申し上げましたような定員状況のもとで新規採用が減少しておりますので、その結果職員の平均年齢が高まっていっているという状況でございます。
○梶原敬義君 日本の審査官は数が減って、一方では出願の数が非常にふえている、滞貨がたまっている。ペーパーレス計画を六十八年までやると、これもやったからといって滞貨がどんどんはけるという見通しはなかなかない。一方アメリカでは、処理能力は日本に比べて落ちる、そして労働時間も向こうは短い、こういうような状況です。そういうような状況の中で、私は審査官の増員問題について長官並びに大臣に真剣に考えていただきたいと思う。昭和六十年の四月九日の商工委員会におきまして、特許法改正に当たっての審議で、同僚の福間議員が出願件数の増加と逆に審査官の減少、未処理件数の増加、したがって審査期間の長期化の問題についてどう対処しようとしているのかという質問をいたしました。当時の志賀特許庁長官の答弁は、第一にはペーパーレス計画をとにかく早く実現すると。第二番目に、出願件数審査請求を合理的なものにしてもらうと。それから第三番目に、審査体制を効率化していく一方で、必要な人員の確保については最大限の努力を傾けていきたいと、こういう答弁を当時長官がしております。 一方、村田通産大臣も私の質問に対しまして、「機会をとらえて増員要求でございますとか、適切な処置をとってまいりたい」という答弁をしている。その前にも何回かこういうことをやりとりをしているんですが、一体特許庁としてあるいは通産省としては、どのような努力を真剣にしてきたのか、この点についてお伺いし、さらにさっきずっと言いましたように、どこから考えてもこれは私はおかしいんじゃないか。特許特別会計ですから、独立採算制で自分たちが働いて賄っているんですから、これは定員法や何かの制約をいろいろとここは受ける必要はない、特許特別会計ですから。この点について長官と大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
○政府委員(黒田明雄君) 志賀長官及び村田大臣が当委員会で御答弁申し上げて以来でございますけれども、現在に至るまで、私どもも全く同様の考えを持ち、また大いに努力をしてきているわけでございます。 具体的な努力としては、私どものいわば総定員管理の中で削減というものがかかってまいりますが、この削減に対しまして、一方増員要求というものを行うわけでございます。私どもこの増員要求を毎年積極的に行ってきておりまして、他の部局に比べまして特許庁の増員要求そのものは相当に高いものが認められてきていると思います。ただ、その要求の結果がどうなっているかという点については、私どもその努力にかんがみましてもまことに残念な結果になっております。 そうではございますが、先ほど総務部長が答弁申し上げましたとおり、幸いにして五十九年、六十年で底を打ち、六十一年、六十二年では、わずかではございますけれども、つまり一名あるいは二名といった小さい数ではございますけれども、厳しい総定員管理の中でネット増が認められてきておりまして、不十分ではございますけれども私どもの努力が少し芽を出しかけてきたのではないかというふうに思っておりまして、今後ともその努力を続ける覚悟でございます。 総定員法と特別会計の関係でございますが、梶原委員御指摘のような考え方は、私どもにとっては非常に励ましになるわけでございますけれども、政府全体としては、そういう会計の所属いかんにかかわらず、政府全体としての総定員をいわば削減するという方向で施策が講ぜられておのまして、行財政改革のいわば一つのシンボルともなっているわけでございます。その中で私どもいわば悪戦苦闘しているわけでございまして、政府の全体の施策について、特許庁の立場から、自分の立場からだけなかなかいろいろ申し上げることが難しいのでございますが、この総定員管理という枠内の中に入ってしまうのはしようがないかと思いますけれども、そういう枠内といえどもやはり必要な人員はつけていただきたいというふうに私ども考えております。 とりわけペーパレス、適正化その他の施策はございますけれども、やはり増加する出願、増加する審査請求の最後の判断業務というのは人間がやらなければならないわけでございまして、いろいろと文献サーチの関係では合理化はできますけれども、この不可欠の人間的要素を必要とする業務については、やはり人間をもって対処しなければならないので、ぜひともこの増員には最大限の努力をもって取り組んでいきたいというふうに考えております。
○国務大臣(田村元君) おっしゃるとおりだと思うんですが、ただ答弁書にはいろいろ書いてありますけれども、それはもう無視して、あえて申し上げますならば、私は三点に絞って意見を述べることになるかと思います。 その一つは、総定員法というものはもちろんあるわけですし、行政改革というものは非常に厳しく言われておるわけでありますから、そういう厳しい客観情勢は客観情勢として、特許庁が総務庁等を説得するに足る十分の説明をして要求すること、これがまず第一だと思います。そして、その十分の説得力ある説明を踏まえて、通産省が重点的に絞って要求をする、これが第二の問題だと思います。そして第三の問題は、与党、野党を問わず御理解をいただいておる国会議員各位の強い援護体制のもとに、担当大臣、つまり通産大臣が不退転の決意で交渉する、悪く言えば居直るというようなことで実現をしていくということになろうかと思います。 でありますから、結論的に言えば、特許庁が——もちろん特許庁のみならず、各局、各部、各課あるいは各省庁全部が、それなりに定員増を求めておるわけですけれども、いずれの要求にも劣らない堂々たるやはり要望の論理を明確にしていって、それが説得力あるものになるということだと思います。私はそういう意味において、この間実はあなたがいらっしゃるちょっと前に私も特許庁へ行って見てきたんですが、これはやはり大いにふやしてやらなきゃいけないなという感じを抱いたことはもう全く同感でございます。
○梶原敬義君 大臣の前向きなお考えはよく理解できました。 ただ、長官言われますように、行財政改革の路線の中だからというような、そういうことてくるなら、今度のいわば五兆円の補正予算を組む、組まぬという問題というのは全くおかしいわけでしてね。だから、だれかが言い出して、こういう方向だからその中で埋没してしまう、一名か二名ふえたからいいじゃないか。私は発想が貧困だと思うんですよ。特別会計で自分のところでみんなが働いて稼ぎ出してやっている、そしてしかも滞貨がどんどんふえている、こういう状況だから、思い切ってやっぱり事務当局というのが当たるべきじゃないか。それから後は大臣が言っているような形で通産大臣に頑張ってもらう。それはもうどこから考えても、国際的に見ても、現状から見ても、将来を見渡しても、もう何回もこんな議論をせぬでいいようにひとつ前向きに力を入れていただきたいと思います。 それから審査官の待遇の問題でございますが、通産省におられます技官の皆さんと特許庁の審査官との待遇というのは、どうも特許庁の方がおくれているようですね、何等級とかなんとかそういうような。その点についていかがでしょうか。そしてもしおくれているとすれば、どうお考えになっているのかお聞きいたします。
○政府委員(照山正夫君) 御指摘の昇格のおくれの点でございますが、特許庁も通産省の一員ではあるわけでございますけれども、通産省の本省の採用の技官とそれから特許庁の審査官、審判官、これを比較いたしますと、本省の場合は行政(一)という俸給表になるわけでございますが、それで申しますと、八級以下の課長補佐に相当するものが、私どもの特許庁の方では専門行政職の四級というクラスでございますけれども、それ以下同士を比べますと、審査官、審判官での昇格の期間については差はございません。 先生も御指摘の問題は、管理職相当、言いかえますと行政職の(一)で申しますと九級に相当するものでございますが、それが専門行政職俸給表では五級になるわけでございます。それぞれ九級あるいは私どもでいうと五級、これに昇格する時期につきましては確かに違いがございまして、当該クラスに昇格をする一番早い者同士を仮に比べますと、四年程度その間に差があるということは事実でございます。
○政府委員(黒田明雄君) 審査官の処遇の実態については、ただいま総務部長が御説明申し上げたとおりでございますが、私どもは、ほかの行政もそうかもしれませんが、特許行政は特に重要なコアの部分を人に依存しているわけでございまして、そういう意味では、我が庁で働く職員がいかに士気を高く維持してもらえるかというところが重要なポイントでございまして、そのためには職員の処遇というのを十分に考えなければならないというふうに考えております。審査、審判の職務の特殊性にかんがみまして現在専門行政職表に移っているわけでございますが、この特殊性につきましては、昭和三十五年以降俸給の調整額といったものを適用する官職として指定されてきておりまして、六十年七月には、先ほど申し上げました専門行政職俸給表に移ったのでございますけれども、この調整手当の方は維持されてまいっております。 問題は、職務の実態、人員構成に見合った定数改定が実現していないという点が問題だと思っておりまして、この点については大変に私ども努力しているつもりでございますが、そしてまた、ある程度数字の上では実績が出ているのでございますが、私どもが抱えておる人的構成の特殊性、先ほど総務部長が申し上げましたような、昭和四十年代の大量採用人員が多数いるというところで専門行政職五級への昇格問題というのが深刻になっております。この問題の所在については、我々の重ね重ねの説明によりまして人事院でも理解をされているというふうに私は考えておりますが、さらにこの理解を深めまして、必要な定数の確保については今後大いに努力をしていかなければならないというふうに考えております。
○梶原敬義君 次に、職務発明の件でちょっとお伺いをいたします。 特許法第三十五条、「従業者等は」職務発明については「相当の対価の支払を受ける権利を有する。」云々、こうなっておりますね。電機労連の調査時報、一九八四年の百八十九号によりますと、八十六社の調査のうちで出願登録時に従業員に支払われていないものは六組合、七%。払われているところは、額は二千七百円から八千二百円と非常に低い。一つの特許権を得た場合のそれを発明した従業員に対する額というのは非常に低いわけです。この点については、「相当の対価」という問題について一体どうお考えなのか、この「相当の対価」の実態についての調査を特許庁としてはやる気はないのか、西ドイツは一体どうしているのか、この辺の問題について若干お尋ねをしておきます。
○政府委員(照山正夫君) 職務発明の規定が特許法の三十五条にございまして、法律におきましては、職務発明が行われた場合には発明者たる従業員等が保護されるということが非常にはっきりと書いてございまして、他方、職務上のこれは発明であるということから、企業においても何らかの貢献がある。そこで企業との利害調整と申しますか、そういう調整規定もあわせて置かれているところでございます。私どもが承知しております限り、民間企業におきましては、この職務発明の法律の規定に基づきまして、職務発明の認定の方法あるいは職務発明についての保証金の支払い等を規定いたしました職務発明規定というものを整備する、その整備が相当に進んでいるというふうに思っております。 この規定は、昭和四十年代の高度成長期を契機といたしまして、急速に整備がかつて図られておりまして、私ども直接調査をしたものはないんでございますけれども、発明協会が昨年の十月に実施をいたしました調査によりますと、調査対象の企業のうち九六%はその規定を持っているという数字がございまして、調査対象に限るわけでございますから、もちろん日本じゅうの全企業というわけではないわけでございますが、これから推しはかりますに、民間企業におかれましては、相当程度職務発明規定の整備が進んでいるのではないかというふうに考えるわけでございます。 それで、その発明協会の資料、調査結果で申しますと、保証金額をいつ支払うかということで、出願時に支払うというのが一番多うございまして、九三%で、この数字では例えば平均四千五百三十三円というふうなことになっております。それから、もちろんその後、登録のときでありますとかあるいは実施のときでありますとか、そういった時点でも払っていくというのが調査結果として出ているわけでございます。
○梶原敬義君 しかし、職務発明の問題というのはこれからの問題でございますから、私も勉強してまいりたいと思うんですが、どうも日本の場合は、これからの雇用形態というのも終身雇用制から少し流動化するような状況になるでしょうから、問題はこれから出てくるんではないかと思うんですが、ぜひ検討を進めていただきたいと思います。 それでは、本法律案の改正の大きな柱であります多項制の改正問題について質問に入ります。 昭和五十年の二月十八日の商工委員会で、当時の河本通産大臣が、特許法の一部を改正する法律案に対し、提案趣旨の説明をしている会議録を私は持っております。ちょっとそれを読み上げてみますが、多項制に関係するところでございます。 わが国は、長年にわたり特許請求の範囲及び実用新案登録の請求の範囲について、いわゆる単項制を採用してきておりますが、工業所有権制度における国際的協調を図り、出願人及び第三者の便宜に資するという新しい時代の要請にこたえるため、多項制を採用する必要性が高まってまいりました。これらの事態に対処するため、昭和四十六年から工業所有権審議会において慎重な討議を重ねた結果、昨年九月に「物質特許制度及び多項制の採用に関する答申」が提出されたのであります。それからずっといきまして、 第二に、多項制を採用したことであります。従来、特許または実用新案登録の出願に当たって、出願人は、一つの発明または考案については単一の項目によってその請求の範囲を記蔵することとなっておりましたが、複数の項目によって請求の範囲を記載できる、いわゆる多項制によれば、特許権等の権利範囲を従来より明確にすることができ、また国際的にもほとんどの国が多項制を採用していること、現段階から多項制を採用しておけば近い将来発効すると見込まれる特許協力条約にも円滑に即応することができること等から、わが国においてもこれを採用することとしたものであります。云々と、こうなっております。 非常に今回の改正案の提案趣旨と似ているわけですね。したがって、今回これをまた改正ということになりますが、今回の改正でもう二度と改正をしなくていいのか、国際調和の問題を含めまして当分将来はこれはもう大丈夫、こういうことなのか。また近いうち改正をするようなことになるのか。この点について最初にお伺いをします。
○政府委員(黒田明雄君) 五十年の改正については、先ほど答弁申し上げましたとおり、現在から考えますと、今の複雑な技術開発に照らして不十分であるというふうに考えます。それで改めるわけでございますが、今度の改正内容につきましては、私ども特許庁がアメリカの特許庁及びヨーロッパの特許庁と持っております三極特許庁会合におきまして、クレーム制度のあり方について比較研究を行った結果、我が国の制度の改正のあり方としてこういうふうに改める必要があるという結論に達したものでございます。したがいまして、私どもは、今回の制度によりまして欧米並みの多項制が実現すると確信いたしております。 将来これでもう変える必要がないのかという点でございますが、今申し上げましたような意味で十分な制度であるというふうに考えておりますが、またこの多項制の問題について、世の中あるいは技術開発の発展いかんによりまして将来変わることがあり得るわけでございますから、そういったものについて余り硬直的に考えることはいかがかと思いますけれども、少なくとも現在の欧米の多項制、これは最も進んだ現在存在す谷多項制と思いますけれども、それに匹敵するものである、それに相当するものであるというふうに考えております。
○梶原敬義君 前回の改正においても、欧米のように特許請求の範囲には保護を求める事項を記載するかどうかが論点になりました。 今回の改正案の三十六条は、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載」するとの文言になっているようですね。PCT条約、特許協力条約六条では、「保護が求められている事項を明示する。」と、こうなっておりますね。表現形式の違いは別にいたしましても、この点は趣旨は全く同一なのか。違いがあるとすれば、これは将来の課題となるのかどうか、この点についていかがでしょうか。
○政府委員(黒田明雄君) 現在の多項制は、いわゆる必須要件項のほかに実施態様項と申しますか、本来の請求項の範囲内でそれを実施する場合のいわば姿を、二つ目あるいは複数の請求項として付加することを認めたという極めて限定的な多項制になっているわけでございますが、今後はこれを改めまして、そういう実施態様項にかかわらず、もっと自由な表現で権利範囲の請求ができるようにするという考えに基づいております。 今、梶原委員御質問の、特許協力条約とかあるいは欧州の特許条約などとの比較におきます現在の私どもの提案申し上げております多項制の規定のしぶりでございますが、抽象的になって恐縮でございますけれども、いわば特許協力条約とか欧州特許条約では、権利請求の範囲を示すという点に重点が置かれているわけでございますけれども、それとあわせて発明の構成要件、請求の構成要件を明示するということが同時に必要でございまして、私どもはその権利請求機能のほかに、構成要件的機能と呼んでおるわけでございますが、我が国の場合この二つを求めております。 その構成要件的機能を日本の新しい制度で設けること自体の是非あるいは海外のそういう制度との差異でございますが、実は海外におきましても、これはやはり規則とかガイドラインでその構成要件的機能が担保されておりまして、もしこれを欠くことになりますと、一つの発明が幾つかの請求項でばらばらになってしまうというような問題が起こってくるものですから、これを回避するための手当てが行われております。そういう構成要件的機能を今回の私どもの法制で盛り込んでおりますが、今申し上げました規則とかガイドラインとかというものを含めて考えますと、海外の特許協力条約あるいは欧州特許条約などと同等のものでございます。
○梶原敬義君 非常にややこしいんですが、さらに今回の改正で、一つの発明について複数の請求項により記載することができるようになるわけですね。別発明については併合要件を大幅に緩和することができるということでございますが、審議会の答申で指摘されております物と改良物の製法、いわゆるコンビネーションとサブコンビネーション、最終生成物と一定の範囲の中間体は同一願書で出願をすることができるのかどうなのか。この点はいかがでしょうか。
○説明員(渡辺秀夫君) 御質問の点でございますが、今回の改正によりまして、物と改良物及びそれらの製造方法、コンビネーションとサブコンビネーション、最終生成物と一定範囲の中間体、これらの発明につきましては、それぞれすべて同一の願書で出願できるわけでございます。コンビネーションとサブコンビネーションにつきましては、発明の産業上の利用分野が同一でございまして、解決する課題がまた同一でございますので、三十七条の一号の要件に合致しておるわけでございます。また、最終生成物と一定範囲の中間体につきましては、産業上の利用分野が同一でございまして、発明の構成に欠くことのできない主要部が一致しておりますので、これも三十七条の二号の規定によりまして一緒の願書で出願できるわけでございます。また、物と改良物及びそれぞれの製法、それらの製法につきましては三十七条の第五号におきまして政令で規定することを予定しておりまして、これも同一の願書で出願できるわけでございます。
○梶原敬義君 次に、一つの発明について複数の請求項を記載するということになるわけですから、審査は発明ごとに行うのか、請求項ごとに行うのか、これは微妙なところですが、この点いかがでしょう。
○政府委員(小花弘路君) 今の点に関しましては、請求された発明ごとに審査をするという考え方でございますから、請求項ごとに審査をさせていただくことになります。
○梶原敬義君 そうすれば、一つの願書に記載できる発明の範囲が広がって、一つの発明について複数の請求項が記載できるということですから、一出願ごとの負担は増加することになると思うし、審査の方もまた忙しくなるんじゃないかと思うんですが、この点はいかがですか。
○政府委員(小花弘路君) 基本的には先生御指摘のとおりでございまして、請求項がふえるということによりましてその分審査には負担がふえることは事実でございます。しかし一方、今御指摘がございましたように、幾つもの広い分野の技術内容が一つの出願にまとめることができるという集合効果がございますので、出願全体の数は減るんではないか。そうすると、今申し上げました一件当たりの審査負担の増大とそういう集合効果とがほぼ相殺するんではないか。そういう意味におきましては、全体としては変わらないんではないかというふうに考えております。
○梶原敬義君 次に、多項制の改正に当たりまして、出願人、特に個人の発明家とかあるいは中小企業の皆さんに対して周知徹底というのはうまくできるのかどうなのか。 私の地元に、中小企業の経営者の方で幾つか特許を持っている発明家がおるんですけれども、新幹線のパンタグラフというのですか、あれをつくったり……。今回の改正に当たりまして、多項制の改善や何かについていろいろと意見を聞きに行ったんですが、そんなところまで今改正の動きがあるということを知らないんですね、まさに状況というのは毎日忙しいわけですから。これは周知徹底をしなきゃ、弁理士任せというわけにはいきませんから、本人に周知徹底ができるのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
○政府委員(小花弘路君) 新しい多項制を審査するということにつきましては、今先生御指摘のとおり、出願人の方にも十分なれていただかなければならないという問題がございます。一方また、私ども審査官にもきちっとその点の考え方を統一させませんと、御迷惑をかけることになると思います。 そういう点で私どもはまず第一に、そういうガイドラインといいますか、審査の基準をこの法案を通過させていただきました暁には至急つくりたいと考えております。それにつきましては、基準という形でまず公開をさせていただきますし、それを関係団体等には御説明申し上げますし、関係雑誌その他、広く説明会等も行いますし、そういう雑誌等にも発表して周知徹底方は十分図りたい、そういうふうに考えております。
○梶原敬義君 上位百社のああいうところは、もうこれは関心を持っているからそんなに問題ないと思うんだけれども、個人の発明家とか出願者とかあるいは中小企業で毎日追われている皆さん方に、よっぽどよくこれが周知徹底するような、そういう努力をぜひしていただきたいと思います。 それから、今言われましたように、これの改正に当たって、審査官の審査基準とかあるいはいろんな出願者に対する基準等の通知、これは政令でこの審査基準なんかを定めるのですか、それとも内規でやるのか。審査官の職場の混乱が起きないようにするためには一体どうするのか、そういう問題。
○政府委員(小花弘路君) 現在まで私ども庁内の内規としまして六十四ほど審査基準というのを、持ってございます。これはいろいろな面、分野別のものもございますし、一般的な基準もございます。今回の多項制の問題につきましては、分野の特徴というよりは一般的な問題でございますので、一般的な形の考え方をまずそこへ例示し、そこにきちっと例をつけて混乱のないような基準をつくりたい、こういうふうに考えております。政令ではなく、内部基準という形でやらせていただきたいと思っております。
○梶原敬義君 次に、国際的な関係について一、二点質問をいたしますが、今回の改正の主要な柱の一つに知的所有権の国際調和が挙げられておりますが、知的所有権の国際調和は、レーガン大統領の年頭教書や包括貿易法案、産業競争力強化提案等でも重要な重点の一つになっておりますが、アメリカ、日本でこれが重要課題となってきたこの背景について説明をお願いをいたします。
○政府委員(黒田明雄君) 御承知のように、アメリカは長期にわたりかつ大幅な貿易赤字に苦しんでおりまして、そのためにアメリカ国内におきまして米国産業の国際競争力強化ということが強く叫ばれております。その一環といたしまして、この工業所有権制度問題というのがアメリカでも改めて取り上げられまして、アメリカ国内における制度の問題もさりながら、世界各国において、もっと工業所有権を含む知的所有権について保護制度が確立しなければ、せっかくアメリカが持っているそういった面における優位性が失われてしまう、それが貿易収支の赤字となってあらわれてくるというふうに認識をしておるようでございます。 私ども日本の立場から見ましても、やはり我が国も新しい技術開発の発展段階に入っておりますし、今後ともソフト化あるいはこういう知識中心の経済構造に移っていき、かつそうならねばならないわけでございますが、そのためには、やはり技術が持っている国際性、あるいは技術を化体した商品の国際性から考えまして、世界の工業所有権制度あるいは知的所有権制度の確立が必要であるというふうに考えておりまして、そういう意味では基本的に米国と同様の考えを我が国も持っているわけでございます。
○梶原敬義君 アメリカの特許商標庁と欧州特許庁、日本特許庁の三極特許庁首脳定期協議において、国際調和問題についてどのようなテーマが今取り上げられて議論されているのか、その点について。
○国務大臣(黒田明雄君) 三極特許庁会合は二つのテーマでやってまいりました。一つは、電子化された特許情報のデータファイルの交換でございますが、これは既にスタートいたしました。もう一つは、それぞれの先進地域でございます三地域の工業所有権制度の特に運用面における相違の研究、そしてその調和の具体策の研究を始めているわけでございます。これ自体は実は大変専門的なものになりますので、御要望がもし重ねてございましたら別途担当部長の方から御説明申し上げます。 その運用のハーモナイゼーションについては、各国とも協調してそれなりの研究成果を上げてまいっておりますが、実は今回一月にワシントンで開かれましたときに、その運用問題と離れて別途国際的な工業所有権制度の調和問題について話し合いました。そこでは、特に私どもは、かねてアメリカの特許制度が先発明主義に基づくものであり、そこから来る、これまた専門的になってしまうのでございますが、インターフエアランスという先発明の事実を争う訴訟手続の問題ですとか、あるいはその挙証を外国にどの程度まで認めるかという一〇四条の問題というようなものがございましたり、特許権の期間が日本のように出願から二十年というふうにかぶっておりませんで、権利付与から十七年になっているために、いつ新たな特許権が出現するかもわからないといったような外国、たとえば日本から見て問題と思われる点が多々ございまして、こういったものについての国際的な調和をかねて米国に求めてきていたわけでございます。 そうでございますが、これを受けまして米国内でもやはり先発明主義自体についての反省機運が生まれておりまして、そこでアメリカとしては、先発明主義から離脱し、先願主義の方向に進むという意図の表明がございます。これはその後WIPO、世界知的所有権機構におきましてもアメリカの代表からその意図表明が行われておりまして、私どもとしては、アメリカも国際調和のために歩み始めたものとして大いに評価し、その実現を歓迎したいと考えております。
○梶原敬義君 この種の会議におきまして一方的にアメリカから言われる、それに対応するようなことではなくて、今お話がありましたように、日本の立場から言うべきことは言って、そして相手も改善するところは改善する、そういう成果を得るようにひとつ頑張っていただきたいと思うんですが、大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(田村元君) 当然その方向で頑張りたいと思っております。
○梶原敬義君 もうこれでやめますが、何回も先ほど言いましたが、私は選挙区においては大体中小企業の皆さんや個人で発明をするような皆さんとたくさんおつき合いがある、それしかないんですが。特許庁のあり方といたしましては、そういう方から見ますと、自分が特許を出願して結論が出るまで五年かかったなんやらというのは——それを頼りにもう必死で頑張っているわけですよ。そういう状況ですから、特許行政のあり方が、どっちかというとその百社、あるいは日立やなんかというのは二万件年間出す、そういうところを相手に特許庁が動くんじゃなくて、一般の大衆といいますか中小企業やあるいは個人の一生懸命考えて頑張っている皆さんのために、もう少し生きた行政であるように私は願うんですが、この点はいかがでしょうか。
○政府委員(黒田明雄君) 工業所有権制度は、制度本来のあり方としては一視同仁であろうかと思いますけれども、梶原委員御指摘のように、現在大企業からの出願、審査請求は極めて多いという状況にございます。それで結果としては、御指摘のような個人、中小企業がその多くの出願のあおりを受けて権利取得がおくれるという傾向にあることは、私どもとしても適当でないというふうに考えております。 そのため上位百社の、これは特にレベルの高い段階にアプローチを求めまして、私どもこの特許制度をうまく円滑に運用していくためには、非常に出願の多いこういう大企業からの出願あるいは審査請求はもっと適正に行われるべきであって、そのために必要な事前調査を大幅に強化してもらうように、そしてまた、今の玉石混交でいえば、石の多い比率を下げてもらいまして、実のある出願、量より質への転換をしてくださるように強く指導をいたしております。 他方、中小企業、個人等に対しましては、発明協会を通じまして指導相談事業を通じまして、できるだけそういった人々の出願について私どもとしても助力ができるように努めてまいっているわけでございますが、こういった二つの方向を今後とも強力に推進いたしたいと考えております。
○梶原敬義君 終わります。
○委員長(前田勲男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。 午前十一時四十三分休憩 —————・————— 午後一時二分開会
○委員長(前田勲男君) ただいまから商工委員会を再開いたします。 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 休憩前に引き続き、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○伏見康治君 初めに、通産大臣に御感想をまず伺っておきたいと思うんですが、先月から今月にかけてアメリカやヨーロッパに行かれまして、いろいろ貿易戦争のただ中で大変御苦労なことであったと思って、その御努力に対して深甚なる謝意を表したいと思います。 日本は戦争後、貧乏ではかなわないということで一生懸命働きまして、せっせと稼いでここまで来たと思うんですが、少し稼ぎ過ぎてしかられているというのは非常に残念なことだと思うんですが、稼ぐ際に幾つかのやり損ないがあったのかもしれないという感じもしないわけではないんです。 日本人の稼ぎ方は、例え話で申しますと、柳の木の下にはドジョウが二匹いるという稼ぎ方を大体してきたと思うんですね。つまり、どなたかが最初の一匹目のドジョウかウナギを見つけられますというと、そこにまたいるに相違ないというわけでまた行ってみると、案外そこにたくさんいるということでもうけてきた。つまり、技術にいたしましても、それから売れるか売れないかのマーケットの方にいたしましても、とにかく先達があるところの後からすぐくっついていきますというと大変利益が上がるという、そのやり方でもうけてきたのではないかと想像するわけでございまして、今とがめられるとすれば、いつもそういう二番手ばかりを担当してもうけるだけもうけてきたというところが、とがめられるところであろうかなとも思うのでございますが、そろそろ一番手になる時期ではないかと思うんです。つまり、物を売るのではなくして、知恵を売るという段階にだんだん入ってきているのではないかと思うのでございます。そういう観点を私は持っているのでございますが、田村大臣には、いろいろなところで貿易戦争の先端で戦ってこられて、どういう御方針で戦ってこられたかという点をちょっと伺わせていただきたいと思います。
○国務大臣(田村元君) 私は四月から五月にかけまして、四極貿易大臣会合、これはアメリカとカナダとEC、それに日本、これは日本であったわけですが、それからパリでIEAのエネルギー会議、それからOECDの閣僚理事会、そういうのに出席をいたしました。 非常にいい機会でございますので、先生の御質問のみならず、ちょっとあるいはつけ加えさせていただくことをお許し願いたいのですが、四極貿易大臣会議でもまたOECDでも、日本に対する各国の対応というものは非常に厳しいものがありますと同時に、また日本の果たす役割の重要性というものに対する認識というものは非常に大きいものがあったと思います。特にOECDにおきましては、いわゆる特掲といいますか、項目を立てて特に掲げる。アメリカと日本とドイツの果たす役割は特掲されました。アメリカは財政赤字の削減、日本と西ドイツは強力な内需拡大策の展開ということで特掲されたわけであります。多くの国々というか、ほとんどの国々が、自由社会においてはアメリカ、日本、ドイツの三大国がみずからの果たす役割を立派に果たしてくれなければ我々はどうなるんだ、自由社会はどうなるんだ、こういう厳しい指摘と同時に、また三つの経済大国に対する期待と、あるいは逆に言えば心配というものも吐露されたわけであります。 フリートーキングでは、日本に対しましては、アメリカに対してはもちろん財政赤字削減、西ドイツには、おまえは日本の陰に隠れていい格好しておったけれどもおまえも同罪だぞというので、今度は西ドイツは大分やられたわけですけれども、外国のことはさておきまして、我が国について世界各国からもう異口同音に厳しく責められましたのが日本の市場のさらなる開放ということでございました。 私はこれに対して私なりの反論を加えました。と申しますのは、ちょっと簡単に申し上げますと、我が国の最近の輸入実績というものは上がっております。我が国の一九八六年のドルベースの製品輸入は前年比で三一・四%増でございます。ちなみに本年の第一・四半期は二三・一%増になっております。また制度的にも我が国はアクションプログラムの実施等によりまして積極的に市場開放に努めておりまして、特に工業品市場におきましては既に諸外国以上に十分に開放された、制度的にはもう十分に開放されておるということが言えると思うのでございます。 我が国の鉱工業品の平均関税率は二・一%でございます。世界で一番安いのであります。平均関税率がECは四・六%でございます。アメリカは四・三%でございます。そのように低いし、また残存輸入制限品目も工業品についてはゼロでございます。それからもう一つは、その他の非関税措置につきましても、例えば今いろんな問題になっておる基準・認証の問題でございますが、これも諸外国からの要望を踏まえまして、これまで制度を再点検しまして、既に二年弱の間に七十四項目の改善を行っております。 例えば残存輸入制限品目でございますけれども、これでも日本は御承知のように二十三品目、石灰を除けばあとは全部農産物でございます。ところが、加盟国の中には、特にECでございますが、対日輸入制限措置というのがございます。対日輸入制限措置というのは、日本から見ればその相手国が残存輸入制限品目で残しておるということになるわけですね。ですから、これを合わせますと、日本の二十三品目に対してフランスは六十三品目、それからイタリーは四十四品目、さすがにドイツは、おれたちは完全開放しておると威張るだけあって、合わせましても六品目です。それからアメリカは七品目でございます。 ですから、このように考えますと、日本はうんと開放されたと。そこで、それじゃ何を彼らは言わんとしておるか。彼らは市場の開放ということを迫っておりますけれども、既に制度的には開放してある。問題は日本市場への参入の問題だと思うんですね。要するに日本は売るものはどんどん売るが、買わないということなんです。例えば西ドイツのバンゲマンという経済大臣が私にアドバイスしてくれた。売るのはいい、どんどん売れと。おまえのところの自動車なんというものは、去年から比べると、ことしこの第一・四半期七〇%近い増加になっているぞと、一七〇ぐらいになっている、一六〇幾つになっているぞと。しかし、それはいいものは売れるのは当たり前なんだから売ってこい、しかし買えよと、こう言うわけですよ。それに見合うものを買えよと、こういうことなんです。 ところが、イギリスが先頭に立って、だからといって日本の市場へは入りづらいと言うんですね、入りづらい。それは確かに入りづらいと思うんです、営業の仕方が違いますから。それともう一つは、日本の企業が外国へ進出していく、そうすると連れ子を連れていくわけですね、関連会社という。ですから、裸で来いやと言うわけですよ。そして、おれたちの部品をどんどん買ってくれやと。そして共存共栄を図ろうじゃないかと、こういうことなんです。今先生からお尋ねがありましたので、ちょっと長々したお話になりましたけれども、ちょうどいい機会でございましたので、予算委員会ではここまで具体的な答弁ができませんでしたので、御参考までに御披露申し上げた次第でございます。 要するに結論から申し上げますならば、世界各国、アメリカももちろんですけれども、ヨーロッパも決して日本に対して輸出制限というような措置で日本の貿易インバランスを改正、訂正しようとするようなことはしちゃいかぬよと、それより拡大均衡という形でこの改善をしよう、それでなければ日本のような経済大国が輸出制限をして世界を不況に追い込んだらえらいことになる、こういうことで拡大均衡をやろう、そのときに日本の輸入増進ということに対してうんと意を用いてもらいたい、これが大体向こうの言い分、こういうことでございます。
○伏見康治君 大臣から大変いいお話を承られたと思っております。 それで、日本が今買っているものの大宗は、工業所有権というものを相当買っているはずだと思うんですが、しかしこれもだんだん日本側が自分自身でそれを生産するようになっていって、いわばそういう日本人の知的活動が決して人まねばかりしているのではないということも示す必要が格式の上からいえばあるんではないかと思うんです。 例えば先年サッチャーさんが日本へ来たときに、テレビを見ておりましたら、日本に向かって言うことは、先端産業の最初のきっかけをつくったのはみんなイギリス人だと、日本人はその後をまねているだけであるということをさんざん言って、何か気分を大いに紛らわしていたようでございましたんですが、それをただおとなしく聞いているわけにも私は実はいかないはずだと思うんです。特に私のように大学に長くおりました人間にとりましては、日本人も知恵の方でもちゃんとやっていけるんだというところを見せないといけないと思っているんでございます。 アメリカがいろんな意味で経済競争で負け始めたために、アメリカの方々は特に工業所有権あるいは知的所有権といったようなものを後から追っかけてくる国が十分に守っていない、自分たちの発明したものをただで使っているという意識が非常に強くなってまいりまして、それに対するいろいろなあの手この手を言い出しているように私には思えるんでございますが、その辺のところの事情がどうなっているか、ちょっと聞かしていただきたい。
○政府委員(黒田明雄君) 伏見委員御指摘のように、アメリカでは国際競争力の低下を強く感じているように見受けられまして、レーガン大統領のもとに、例えばヤング委員会などが設けられるなどいたしまして、アメリカの産業の国際競争力回復の方途について幅広い検討が行われまして、その一環といたしまして、知的所有権の保護の国際的な強化ということをアメリカの国際競争力回復政策の重要な柱といたしておりまして、もちろんこの中には工業所有権制度自体が含まれているわけでございます。 アメリカは、この国際競争力強化のための知的所有権制度の世界的な確立のために、大きく言えば二つの方策をとっているのではないかと思われます。 一つは、自国におきます制度の強化でございます。これもまあ二つに分けて考えることができるかと思いますが、一つは波打ち際におきます関税法三三七条の改正問題でございます。もう一つはアメリカの知的所有権、とりわけ特許権を中心とする工業所有権制度の改善の問題でございまして、この中には先発明主義から先出願主義、先願主義への転換、そのほかにも種々細かい改正を行おうというふうにしております。 もう一つは、国際的にガットの場を利用した交渉を通じて、特に工業所有権制度の不備な諸国あるいは著作権制度の不備な諸国に対しましてその制度の確立を求めていく、最低限度の基準を満たすように強く交渉していくという態度を打ち出しておりまして、これはガットを中心にして行うわけではございますけれども、同時にパイの交渉、バイラテラルの交渉も強化しているという状況にございます。
○伏見康治君 そのアメリカとの関係につきましてはまた後で御質問申し上げたいと思うんですが、今さしあたって御質問申し上げたいのは、日本の特許の数がどんどんふえていることはいいんですが、同時に、それが日本の国内だけのひとりよがりのものでなくて、国際的にも価値を認められているものであるかどうかということは、結局はどれだけ外国に工業所有権が売れているかということで調べるほかはないと思うんでございますが、そういう意味での知的所有権の方の貿易、取引がどういう関係になっているか、どれだけ輸入されてどれだけ輸出されているかといったような数字を少し教えていただきたいと思うんですが。
○政府委員(照山正夫君) 工業所有権ほかのいわゆる技術貿易の収支の問題でございますが、手元に二つほど統計がございますので、それでちょっと御説明申し上げたいと思います。 一つは日銀でつくっております「国際収支統計」の中に数字がございまして、これは特許権の使用料の収支でございます。これで見ますと、恐らくは過去の特許導入の影響が続いているということではなかろうかと思いますが、特許権の輸出つまり特許料の収入よりも、特許権の輸入つまり特許料の支出の方がまだまだ累積ベースでははるかに多うございまして、大体輸出額は輸入額の三分の一程度ということになっております。 ただし、もう一つ統計がございまして、これは「科学技術研究調査」、総務庁の統計でございますが、これは工業所有権、特許権以外に、ノーハウでございますとかそういった技術料を含んでおるわけでございますけれども、これで見ます限りは、昭和五十年度ごろは輸入が一に対しまして輸出額が〇・三九程度でございましたが、昭和六十年度になりますと、輸入一に対し輸出は〇・八〇ということで、次第に差が接近しております。特に新規の契約分というのがございますので、それで見ますと、既に昭和五十年ごろに輸入一に対し輸出は一・四二であると。また、六十年には輸入一に対し輸出は二・二〇であるということで、新規について、かつパテント料だけでなくていわゆる技術料を広く含みますと、そういうことで輸出が輸入を大きく上回りつつある、こういう状況ではないかと思っております。
○伏見康治君 日銀の数字というのとそれから総務庁の方の数字というのが、受ける印象が非常に違うんですが、通産省としては、独自にそういう工業所有権の輸出と輸入というものがどういうことになっているかということを的確にみずからお調べになるといったような、そういうおつもりはないんでしょうか。
○政府委員(照山正夫君) ただいま申し上げました数字でございますけれども、この総務庁の「科学技術研究調査」の統計、実はこれを通産省の工業技術院などでも使わせていただいておりまして、これが一つの統計であるということでございます。 先ほど、それから印象が非常に違うということを御指摘でございますが、ちょっと舌足らずでございましたけれども、繰り返しますと、やはり特許料の方は、これは昔非常に特許を導入したということ、その特許料の支払いが続いている。他方、それを改良いたしまして、いわゆるノーハウ、技術料、技術指導、指導料、そういったものが日本の得意分野でございまして、そちらの方は最近非常に伸びているということで、詳細にはわかりません、推測ではございますが、そういった関係にあるのではなかろうかというふうに考えます。
○伏見康治君 その後者の総務庁の方の数字を主にして考えますと、日銀の方は今おっしゃったように、いわば過去のしっぽがまだ残っているからいわば古いデータである、総務庁の方がむしろ新しい感じのものであるというふうに理解させていただきましたんですが、総務庁の方の数字を採用いたしますというと、日本の知的活動というものも十分もう成長して対等になったというふうに理解してよろしいという、そういう感じだと思うのでございます。そうだとすれば、そういう立場に日本が成長したということを認識していろんなことを考えていくべきだと思います。 それで、今日は特許法の改正についての御議論を申し上げるわけですが、特許法は、時代が変わるとともにいろんな意味でどんどん変わっていくべきだと思うのでございます。 まず小さな話から先に始めますと、二年前にここの同じ席で、第百二国会で質問したことがあるんですが、特許法のいわば現代化という意味で申し上げたんですが、特許関係の弁理士の試験制度の試験の科目というものが非常に古典的であって、つまり今問題になっているような情報技術関係の言葉なんか一つも出てこないといったような状況はおかしいのではないかということを申し上げたのでございます。そのとき、そうだというふうにおっしゃっていただいたと思うんですが、その後その点がどうなったかということを、非常に小さな話ですけれどもお伺いしたいと思います。
○政府委員(照山正夫君) 確かに当委員会におきまして二年前にそういう御指摘があったところでございます。 私ども、その後検討を続けてまいったわけでございますが、確かに御指摘のように、これは弁理士試験の論文式の筆記試験の科目の問題でございますが、現在四十一の選択科目がございます。特許法等の必須科目のほかに、その中から三科目を選択するという科目として四十一科目あるわけでございますが、その中のまた理工系の科目につきましては、やはり現在の科学技術の進歩あるいは大学における教科、それの現状から見ますと、中には、非常にこれは古くなっている、科目のとり方といたしまして古いものがある、また、新しい技術動向に必ずしも適切に対応した科目となっていない、そういったようなものが幾つもあるということを私どもも痛感をしているところでございます。 それで、現在実はこの問題につきましては、最近のそういった技術進歩あるいは大学の教科のあり方、こういうことをただいま調査をしておりまして、こういうものに合致させまして、できるだけ選択科目の内容がそういう新しい状況に見合うようになるように検討をしているところでございます。特許庁におきまして検討をすると同時に、弁理士会でございますとかあるいは特許協会でございますとか、そういったところにも意見を聞いておりまして、まだ現在検討中で成案を得ているわけではございませんが、できれば来年度の試験にも間に合うようにというようなことで検討を続けているところでございます。
○伏見康治君 それは一つの小さな例にすぎないと思うのでございますが、制度は一遍でき上がりますというと固定してしまって、時代の流れに即応できないという面がいろいろ出てまいりますので、そういう点を政府としては絶えず見張っていていただきたいというふうに思うわけでございます。 それで、近ごろ特許の審査をペーパーレス計画というもので近代化しようというお話が進行中でございますが、時々伺うと、ペーパーレスにしても結局は余り効果が上がらないのではないかといったような懐疑的な御意見も御関係の方から伺うんですが、その点は今どういうふうにお考えになっているか伺いたい。
○政府委員(黒田明雄君) ペーパーレスは、私どもは、審査の効率化、それに特許情報の特許庁外におきます利用の促進という面から考えまして大変に有効なものであるというふうにこれは確信いたしております。 ペーパーレスによって必ずしも審査の効率が上がらないのではないかという御意見の根拠は、これはどうしてもやはり最終的には対比判断でありますとか、人間の判断が必要になるので、ペーパーレス計画、つまり機械化のみによってはすべての問題は解決するわけではないという意味合いというふうに私ども承知をいたしておりまして、その点は事実そうでございますので、人的要素の確保については依然重大な問題でございますけれども、そういったものを当然の前提といたしまして、ペーパーレス計画は審査の効率化あるいは情報公開によります産業界への情報の公開という面で相当に効果があるものと考えております。
○伏見康治君 私も長官と同じように、機械化すればその機械化されただけの効果は大いにあるはずだと思っております。ただ、審査員の最終判断というものは、結局その方の脳の働きで行われるものですから、その働きがペーパーレスの何か仕掛けで置きかえられるといったような錯覚を覚えないように、いろんな計画を立てていただきたいというのを重ねてお願いいたしておきたいと思います。 次に、特許法の国際的関係の問題について二、三お伺いいたしたいんですが、それぞれ国によって特許法の制度が違っている、歴史的なこともあるんだろうと思うんです。しかし違っておりますと、これだけ国際的におつき合いが激しくなってまいりますというと、制度の差のためにいろいろトラブルが起こっているということもまた事実でございます。たびたびその点をお伺いしていると思うんです。また国の発展段階が非常に違う、アメリカやEC諸国のように非常に進んでいる国もあれば、それからお隣の韓国、台湾といったような急速に追い上げてこられたところもあるし、それから依然としてもっと非常に低いところにおられる国々もおありになる。そういうもの全部と国際的に協調するというのは非常に難しいことだとは思うんですが、まずその点についての一般的なお考えをちょっと伺わさしていただきたい。 そして、先ほどもお話がございましたアメリカの先発明主義というのと、我々日本人の持っている先願主義との折り合いが一体どういうことになるのかという点について、具体的にまたお話を承りたいと思います。
○政府委員(黒田明雄君) 伏見委員御指摘のように、制度はそれぞれの国の経済の発展段階、それに歴史的な発展経緯によってそれぞれに特色を持ったものになっております。大きく分けますと、発展段階に即しまして先進国と発展途上国とに分けられると思います。 その先進国相互間におきましては、本来はやはり制度が完全に統一されるのが理想でございますけれども、これはいろいろ国境の問題とか種々困難な問題がございまして、望むべくしてそう簡単にはいかないと思いますが、ヨーロッパでは既に欧州特許庁というのが生まれまして、地域の特許はそれぞれの各国の特許制度を残しながらも統一的な制度の形成に向かって進んでおりまして、現にこれが実現されております。出願件数から見ましても、各国特許庁よりも欧州特許庁に対する出願件数が大きな勢いで伸びてきているという状況にございます。 一方アメリカは、やはりこれは発明大国でございますが、先発明主義というのを御指摘のようにとっておりまして、これは世界では、現在主要な国で先発明主義をとっているのはアメリカ、カナダ、フィリピンの三カ国でございまして、カナダは既に先願主義へ移行するために、その改正法案を国会に提出しているという状況にございますから、いわばアメリカが取り残されつつあるわけでございますが、この先発明主義のちょうどその転向につきましてはまた御説明申し上げたいと思いますけれども、さしあたり先発明主義が残っているといたしましても、先願主義との間に種々な調整が必要であるという点では米欧日三極で合意いたしておりまして、可能な範囲内で運用のハーモナイゼーションを今特許庁間の話し合いによって進めているところでございます。 他方、発展途上国との関係では、なかなかこれ同一、均質なレベルでの調整というのは、御指摘のとおり困難だと思います。インドでは出願件数が三千件しかないそうでございまして、そのうちの二千件が外国からの出願というわけでございますから、こういった国での特許制度というのは、やはり日本に比べてまだまだのものでございます。ですから、いわば先進国間におけるハーモナイゼーションとは切り離して、発展途上国にはその発展段階に即した工業所有権制度のあり方というものがあるはずで、その実現のために私どもは現にやっておりますけれども、いろいろ協力をしていくべきであるというふうに思います。 同時に、やはりこの同じ地球に存在する諸国間の、特に貿易とか、先ほどアメリカの言い分などを申し上げましたが、そういった経済の全体的な発展を考えますと、発展途上国においても工業所有権制度の確立が必要ではないか、それは単に先進国にとって必要であるのみならず、かつての日本がそうでありましたように、工業所有権制度の確立を図ることによって海外からの技術なりあるいは産業なりの誘致、そしてそれを踏み台にした自国の技術の開発なり発明の促進ということが行われていくわけで、日本はいい材料になるのではないかというふうに考えているわけでございます。 第二の御質問のアメリカにおける先発明主義と先願主義の問題でございますが、アメリカではやはり発明者、発明した者こそ保護されるべきであって、先に出願した者が保護されるという哲学はいかがなものかというような哲学的な問題が根っこにあるようでございますし、そのほかに中小企業とか、あるいは複雑な訴訟手続によってその手続を解決することを業としております強力な弁護士グループなどがございまして、先発明主義の方が今までは少なくとも支配的な思想であったわけでございます。 先ほど申しましたように、アメリカのみが孤立してくるという状況、そしてアメリカの産業界も外国との貿易あるいは技術についての契約取引、工業所有権の出願、こういった各国をにらんだグローバルな経済活動をするということになりますと、自国制度がやはりしがらみになるわけでございまして、今先願主義への転向の意図というものをアメリカの特許商標庁が表明している。ただし、これには条件がございまして、各国がアメリカの望むような特許制度の確立なり改正なりに応ずることが条件であるということを言っておるわけでございます。
○伏見康治君 ありがとうございました。 その先発明主義というのは、アメリカ人の私はサイコロジーに非常に根差している考え方だと思うんです。私はレオ・シラードという学者の伝記を訳したことがあるんですけれども、この人の伝記の材料は非常にそろっておりまして、この先生はドイツからというよりも、ハンガリーからアメリカへ流れていった方ですが、その方は異国で、要するに自分の立場を守るためには自分の知恵以外にはないわけですから、何か新しい知恵が出たときに、その知恵を必ず手紙に書いて、信頼のできる友人に必ずその手紙を送りつけるわけです。そしてそれを取っておいてもらう、そうするとそれには郵便局のスタンプの日付がついているわけでして、それが後で、どっちが先であるかというときの非常に大きな証拠になる。そういう手紙がたくさんあるものですから、その人の伝記は非常に正確なものができるわけなんです。レオ・シラードという学者の話を申しました。 それは、そういう人々が非常にたくさんアメリカの人口を占めているといたしますと、先発明主義的になるというのはある意味で当然のことだろうと思うのです。ベル電話研究所に日本のある学者が勤め始めたら、そのとき最初に言われたことが、何でも新しいことを思いついたらそれをそばにいる人に必ず話せ。話して、そしてそれを文書に仕立てて、その人に署名してもらえということを言われたそうでございまして、これもその先発明主義の一つの実際的なあらわれだと思うのですが、そういうことを伺いますと、アメリカの先発明主義というのは、アメリカ人のいわば特に科学者たちの頭の中にしみ込んでいる概念であって、たとえお役人が変えようと言ってもなかなか変えられないのではないかというひそかなる危惧を感ずるわけですが、しかし私は法的な措置としては、これはどうしても先願主義というのが当然だと思うのですね。それで頑張っていただきたいとは思うのですけれども、アメリカもなかなかそう簡単には動かないだろうというのが私の予想でございます。 アメリカさんのいろいろな手段で、後進国のいわば追い上げをいろいろな意味で守ろうとしている要素が幾つかあらわれておりますが、その中で関税法三百三十七条というものを変えて、何とかよそから来る品物を防ごうというお話があるようですが、それについてどういうことかちょっと説明してください。
○政府委員(黒田明雄君) 一九三〇年関税法の中に三三七条という規定がございまして、これはかねてから我が国あるいは欧州諸国から問題の規定というふうに見られておりました。これは工業所有権を侵害する貨物の輸入がございますと、その侵害されているという申し立てによりましてITCがこれを調査いたします。そして被害を与え、あるいはまたその与えるおそれがあると認められるときには、簡易な手続の審査でもってそういう答えを出しまして、一定の輸入制限措置を講ずるという規定でございますけれども、これは現行法では、例えば審査期日が短いために提訴を受けた輸出者の側において十分な反論ができない、そういう時間的余裕がないという問題、そしてまた被害があるということになりまして、仮排除命令が出されまして一時通関が停止されますと、後に疑いが晴れてもその間にこうむった損害を回復する道がないというような問題がございます。さらに悪いことには、そういう輸入者側において有利な規定でございますので、この規定の発動をほのめかすなどして和解を迫るとか、種々制度の乱用が行われるおそれがあるわけでございます。 したがいまして、私どもはかねて現行制度についても改善すべきであるということを申し立てておったわけでございますが、今回は我々の指摘している問題点に答えるのではなくて、逆に産業側における被害の要件などは要らないというようなことに象徴されますような幾つかの、私どもから見ると改悪をしようとしているわけでございます。これは上院、下院、さらには行政府案にも入っておりまして、非常に事態は楽観を許さないわけでございますが、私どもはやはり産業の被害要件が現在あるというのは、簡易な手続による輸入制限を仮に正当化できるとすれば、その正当化し得る唯一かずかずの要件ではないかというふうに思っているわけですが、これしも外すということは大変に問題があるというふうに考えておりまして、いろんな機会にこれに異論を唱えているわけでございます。
○伏見康治君 アメリカさんは上院、下院といったような議員さんがいわば思いついたことをいろいろと言い出されて、必要以上に心配させられる面もなきにしもあらずなんですが、今のお話だと政府側もだということでちょっと心配になるわけです。 何か新聞によりますというと、韓国に対してアメリカは、バイラテラル交渉でいろんな意味でいじめているというか、そういうことをしているように伺っているんですが、具体的には例えばどんなことが行われているんですか。
○政府委員(黒田明雄君) 御承知のように、米国と韓国の間は米国の貿易赤字でございますが、米国は通商法三〇一条による対韓国貿易の調査を行いまして、それに基づいて二国間協議を申し込み、そして一定の同意に到達したというふうに言われております。 言われておりますと申し上げますのは、私どもが関係いたします工業所有権制度の関係では、その協定がまだ秘密協定になっておりまして、必ずしも公式にこれを肯定するわけにはいかないのでございますが、その両側、アメリカ及び韓国から部分的には公表され、あるいは交渉を通じて明らかになってきておりますところを申し上げますと、アメリカは韓国との交渉の結果、韓国側が物質特許制度の導入に踏み切ることに同意いたしましたけれども、この物質特許制度の導入に絡みまして、米国関係者と申しますのは、実は出願人が米国籍であればいいのか、あるいは米国の特許権を持っていればいいのかというような点が必ずしも定かではないのでありますが、そういった特許権について法律の改正法の施行日から九十日以内に補正申請をすれば、出願は製法特許という形で行われていたものであっても物質特許の出願として受けつけるというようなことを、この限りにおいて、例えば日本などヨーロッパなどには均てんさせないという形で取り決められたというふうに言われているわけでございます。 もう一つは、やはり米国において取得された物質特許であってアメリカ及び韓国両国においてまだ製造販売されていないようなものについては、韓国政府が行政指導でこのアメリカの物質特許について格別の保護を与えるというような内容が協定されたというふうに言われております。
○伏見康治君 大分激しい感じがいたしますが、実は時間が限られておりますので少し飛ばしまして、単項制、多項制の、今までも多項制になっていたのかと思うんですが、その歴史的経緯を伺って、一体何が問題点であるのかを教えていただきたいと思います。
○政府委員(黒田明雄君) 単項制は、我が国においては大正十年に初めて明確に単項制として規定されまして、これは一発明一出願で、その出願内容は単項をもってする、一つの項でもって表現しなければならないということでございます。 それが長く続いてまいりまして、戦後特許法大改正の際もなお引き継がれまして、昭和五十年に至って初めてこの原則に修正が加えられました。その修正はいわば本来の請求の実施態様、その本来の請求の範囲内でそれを実施する場合にどのようなものになるのかということを具体的に記述する、そういう実施態様項というものを付加することを認めたわけでございますが、これは当時特許協力条約に我が国が加入することに伴いますいわば一つの必要な制度の手直しとして行われました。その背景には、それまでの我が国の技術開発の状況から見て、単項制あるいは不十分な多項制によって必要な権利保護が与えられるという考えに基づいていたものと考えられますが、その後我が国の技術開発の内容が非常に高度化、複雑化してきたこと、そして多項制にはある程度習熟してきたことによりまして今回欧米並みの多項制に踏み切ろう、そのことによって現在の技術開発及びその成果が十分に権利保護を受けることができるようになると、かように考えております。
○伏見康治君 国際性ということを守るために、よその国が多項制という制度をとっておるからそれに倣おうということなんでしょうな。 それ以外に、純論理的に考えて多項制の方がいいという理由をもうちょっと説明してください。
○政府委員(黒田明雄君) 国際的な関係からも十分多項制に進むべき理由があるというふうに考えておりますが、同時に国内の関係方面、研究従事者、産業界などからも多項制の採用についての御要望がございます。 私ども考えまするに、現在の発明は昔のような単発的で内容がシンプルというものではなくて、やはり一部の研究開発の成果として、一部の発明と称すべきものが生まれてまいります。そして、それに過不足なく権利保護を与えるためには、やはり現在の不十分な多項制ではカバーすることが困難だし、併合出願も制限があるためにこれを十分に保護することができない。やはりこれはもう少し十分権利保護が与えられるような、記載が自由にできるような、そういう幅広い出願を認めるべきであるというふうに考えた次第でございます。
○伏見康治君 残念ながら時間がもうありませんので、最後に大臣に、いろいろな国際的な関係の中での特許法の改正というものがをされようとしているわけですが、過去においても特許法というのが、いろいろやってみては経験上まずいことがあって直すというようなことがあったのかとも思うんです。今後とも、私は実施の上で悪いことがあればまた直すというような気持ちでなすったらいかがかなとも思うんですが、そんな私の考えよりも、大臣はどうお考えになるか。
○国務大臣(田村元君) 一応こうしてお出しして御審議を願っております以上は、事務方も現時点では最善のものと考えておるでございましょうし、私もまた説明を受けて、まあこういうところだろうというふうに判断をいたしました。しかし、政治でもそうでございますけれども、行政もまた時に試行錯誤の繰り返してございます。これはもう当然のことだと思います。でございますから、これはもちろんそういうふうにいたしますということでなく、仮定の問題として当然また直さなきゃならぬ問題が出てまいりましたら、それはそのときにまたそのように対応する、これはもう行政の当然の義務だと思っております。
○伏見康治君 終わります。
○市川正一君 申すまでもなく、特許法を初めとする工業所有権制度は、人間の知的生産物である発明を公表するかわりに、一定期間発明の実施について独占権を認めることによって発明を保護し、新技術の開発を促進し、それによって産業の発展に寄与することを目的としています。したがって、工業所有権制度の国際的で適切な保護は、今日の経済社会の重要な課題の一つであると我が党も認識しているところであります。私はこうした立場から、今回の法改正がその目的にふさわしいものであるかどうかについてただしたいと存じます。 まず、今回の改正で欧米諸国と整合性のとれた多項制になるのかどうか。この点最初に明確にしていただきたい。
○政府委員(黒田明雄君) 欧米と整合性のとれた多項制に変わります。
○市川正一君 あえて、と申しますのは、PCT加盟のために多項制を導入した一九七五年の法改正のときに、我が党は拙速なやり方では必ず行き詰まるであろうということを当時指摘いたしました。その後、御承知のように、昨年十月十五日の東京高裁の判例にも見られるように、明らかに破綻をし、そして今回の改正に至ったという経緯があるからであります。黒田長官は、習熟してきたので機が熟したというようなことを先ほどおっしゃったけれども、歴史的に見るとそういう経過があるという上に立ってのことであります。 そこで、具体的に伺いたいのでありますが、ある送信機とある受信機が一体となって特別の効果を持つ通信システムというような発明の場合、現行法では一出願にはできませんでした。今度改正されれば、それは一出願で、併合出願できると考えられますが、いかがでございましょう。
○説明員(渡辺秀夫君) 今御指摘の点でございますが、御指摘どおり、現行法におきましては、特殊な送信機、受信機及びそれらを組み合わせました組み合わせ、これについては同一の願書で出願をすることはできません。 ただ、今回の改正によりますと、この三つのものがいずれも同一の願書で出願できるわけでございます。
○市川正一君 少し立ち入ってお伺いしたいんですけれども、具体的なクレームの仕方の例なんですが、特許請求の範囲の末尾の記載で、例えば第一項が送信機、第二項が受信機と、こういう場合に、これは通産省の事前に御説明を受けた場合でも、これはできるんだと、今お答えになったとおりです。 そこで伺いたいのは、末尾記載が第一項が通信装置、第二項が送信機、第三項が受信機というケース、こういう場合はどうなのかということ。そしてまた、第一項が通信方法、先ほどは通信装置と申しました。もう一度繰り返しますと、今度の場合は、第一項が通信方法、第二項が送信機、第三項が受信機という場合はどうなのか。いずれの場合も私はこれは認めることになると思うんでありますが、念のために確認させていただきたい。
○説明員(渡辺秀夫君) 今御指摘の設例でございますと、いずれの場合でも同一の願書で出願できることになります。
○市川正一君 よくわかりました。 それでは、法第三十六条の第三項、「発明の詳細な説明」について確認をいたしたいんでありますが、この第三項は、七五年のあの多項制制度を導入しましたときにも、また今回の改正の場合にも手がつけられておりません、そのままになっております。「発明の詳細な説明には、」中略ですが、「その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない。」、こう規定されております。そこで今例を引いたようなクレームの場合、送信機、発信機をめぐる問題ですが、つまりクレームが、一、通信装置または方法、二が送信機、三が受信機というような場合、それぞれのクレームごとに第二十六条第三項の記載が求められるのかどうかということを伺いたいんです。これが一つです。 そこでもう一つ、仮に求められるとすれば、クレームに対応した詳細な説明がない場合には、それは拒絶されるということに相なるんですかというのが二間目です。 それから三間目は、第三十六条の第三項の記載が各クレーム共通にしておいてもよろしいのかどうかというのが三つ目の問いです。 それから四つ目は、もし認められる場合と認められない場合があるとするならば、審査基準や出願人のためのガイドラインなども整備する必要があると思いますが、その対策がおありなのかどうか。 これは関係者の方が非常に皆関心を持っているところなので、時間がございませんために取りまとめて四つを連動した形で御質問いたしましたけれども、確認をいただきたい。
○説明員(渡辺秀夫君) 御質問の点でございますが、一点ずつ御説明いたします。 まず第一の点でございますが、原則的には二以上の請求項を記載する場合につきましては、基本的には各請求項のそれぞれに関しまして発明の詳細な説明について記載があることが必要でございます。このことはもう少し詳しく申し上げますと、やはり発明を公開した代償に一定の期間独占権を付与するという制度になっておりますので、請求項に記載されていても詳細な説明に全く開示がないということであってはこれは非常にぐあいの悪いことでございますので、今申し上げましたように、各請求項に記載された発明について詳細な説明についてそれを開示する、裏づけるということが必要でございます。これは第一点の御質問でございます。 第二点でございますが、したがいまして、詳細な説明についてその裏づけ、その開示がございません場合については拒絶理由通知が出されることになるわけでございます。そしてそれが解消されない場合には拒絶査定に結びつく、こういうことになるわけでございます。 第三点でございますが、このように各請求項に記載されました特許を受けようとする発明につきまして、詳細な説明の中にその裏づけである開示があるわけでございますが、一つの発明につきまして幾つかの多面的な請求項が書けるわけでございますので、先ほどの御質問のように、一つの説明で二つあるいは三つの請求項が十分に説明される、裏づけられるという場合については、その個々について同じような記載をする必要はございません。実質的に十分裏づけられていれば十分でございます。 それから第四点でございます。このたびの改正法に基づきます一発明を多面的に複数の請求項で記載するという新しい制度でございますので、制度を利用する方が十分その内容を理解し、手続できますように、審査基準等々につきましては十分これを整備いたしまして、その周知徹底に努めていく所存でございます。
○市川正一君 これは関係者の間で非常に関心が持たれ、かつまたいろいろ疑問や質問も出ている一つの焦点になっていると思うんですね。第二項の場合、ちょっと全体との整合性についてなおやはり研究し改善する必要があると思いますけれども、この点は、一番最後に適切なガイドラインなどの解明をしていくという作業と相まって、ひとつ明確にされるように期待しておきます。 次に、審査体制の問題でありますけれども、出願件数がこの多項制によって若干減少すると考えられる一方で、審査しなければならないクレームの数が多くなるということ、そこから審査官の仕事量が相当ふえるということも予想されます。ペーパーレス計画も提起されておりますが、まだその途上にあります。そこでそういう事態に対応するためには、どうしても審査官の増員が必要になってきている、こう思います。こうしたことに対応しなければ未処理の出願がふえることになると思うんですが、特許庁としては、審査官の増員を図る必要があると思いますが、所見を承りたい。
○政府委員(黒田明雄君) 多項制の改善に伴いましてどれくらいの問題が生ずるかという点については、プラス要因、マイナス要因あるわけでございますが、特許庁はこの多項制の改善問題も含めまして現在大変多量の出願滞貨を抱えております。したがいまして、制度の改正があればなお当然のことでございますけれども、私どもとしてはやはり最終的に審査、判断をしなければならない人員の確保ということは極めて重要な問題でございます。かねがね増員の要求をやってきているわけでございますけれども、今後とも格別の努力をしなければならないと考えております。
○市川正一君 特別の努力というふうに非常に積極的に受けとめていただいたんですが、その実が上がることを強く要望したいんです。 というのは、今回の改正によって医薬品の特許期間の延長が行われます。本来ならばこれについても私質問を用意しておりましたのですが、時間が限られておりますので、時間がなければ割愛いたしますが、そのことよりももっと重大なのは、今申し上げた出願の審査が全体として、努力にもかかわらずおくれているという問題なんです。 例えば、本年三月じゅうに発行された第一部門第一区分の公告公報の出願年別分布を見ますと、特許の六〇%以上、実用新案の八〇%が出願後五年以上経過しております。そして結果として権利期間が削られることに相なっている。したがって権利期間を全面的に享受できるのは、登録件数の大体二割から三割前後というのが残念ながら実態なんです。例を引きました第一部門第一区分というのは御承知のように農水産、食品、発酵関係です。言うならば着手期間が平均よりも早目の部門でさえそうであります。こういう権利期間の短縮を是正するためには、機械化はもちろん必要ですが、同時に今長官も言われた決定的に少ない審査官を大幅にふやすべきであるというふうに思いますが、重ねて長官、こういう具体的事実とデータの上に立って決意をお聞かせ願いたい。
○政府委員(黒田明雄君) 審査期間を短縮しなければならないということは私ども痛切に感じております。これは幾つかの原因がございますので、その原因に対応して私ども総合的な施策をとらなければならないというふうに考えております。 第一に、出願が極めて多いわけでございますけれども、午前中もほかの委員からも御指摘を受けたところでございますが、やはり出願の多い大企業に対しまして、現在もやっているのでありますが、出願審査の適正化指導というのを強化して、量より質への出願の切りかえというものを強く指導してまいりたいと思います。それからまた、特許庁全体の効率化ということもやはり国民の期待に沿うためには考えなければならないと考えておりまして、そのためにペーパーレスのほか、また、例えば外注ができるような周辺業務につきましてはこれを外注していくというようなことによりまして、効率的な行政をしなければならないと思っております。 それで、こういった施策と相まちまして、必要な審査官等の定員の確保、最終的にはやはり人間が判断せざるを得ない業務、これはペーパーレスあるいは今申し上げましたようなその他の施策によってはカバーできない部分でございますので、この人員の確保には大いに努力をしてまいるつもりでございます。
○市川正一君 格段の御努力を期待して、最後の質問に入ります。 工業技術院の所管する国有特許権等のアメリカのIBM社に対する包括ライセンス契約の問題でございます。これは、最後に田村通産大臣にお伺いすることに相なっておりますので、ぜひともよくお聞きいただくことをお願いいたします。一番最後の真打ちのところになりますから。 この問題に入ります際に、我が党はどう考えるかという問題でありますが、冒頭申しましたように、国民共有の財産である特許が、適切なルールのもとに国の内外を問わず広く活用され、産業技術の発展に役立てられることは歓迎すべきである。そして、IBMのような外国の企業といえども、技術の国際交流を促進するためのルールに基づいて大いに国有特許を利用することについて何ら異議を挟むものではありません。 そういう前提に立ってこのIBMの問題をいろいろ研究いたしたのですが、国有特許を実施させる場合に、特許庁の長官通牒による実施契約書のひな形、その写しをここに持ってまいりましたが、これで行われておりますが、これによりますと、国有特許を特許番号や名称で特定し、実施権の内容を定め、第五条で実施料支払いの基準を決めることになっております。ところが、IBM社の場合、通産省から事前に伺った説明では、供与すべき特許についてはリストアップしているけれども、実施料については、約七百件の特許が包括契約なので、この基準を使わず特別に計算したということになっております。 その額はというふうに聞きますと、具体的なお答えがなくて、そしてここにその実施状況をいただきました。これによりますと、ひな形に出ている最低ランクの二%よりも低いということになっております。これは、IBMだけ特別に優遇する極めて不公正、不適切きわまる契約ではないかと考えるんですが、いかがでしょうか。
○政府委員(飯塚幸三君) 先生御理解いただいているところでございますが、私企業との契約内容にわたりますことなので、算定の内容についてはお答えをしかねるわけでございますが、先生の御推察のような低い料率ではございませんで、私どもは国有財産の適正な管理の観点から適正と見られる料率を算定しておるところでございます。
○市川正一君 先生御推察のような低いと言っても、まだ私は数字は言っていないんですよ。これから言うんですが。 それで、このデータに基づいて試算をしますと、こういうことになるんですよ。工技院からちょうだいしたこのデータから試算しますと、日本の民間企業などの実施料は、十年来のデータを計算すると、平均して一権利当たり一年分約四十五万円に当たります。これは当たりでしょう。そうなりますよ。ところが、あなた方の御説明によって、それでは残るIBMは一権利当たり何ぼになるかというと、大体二千円です。そうすると、日本の民間企業の約二百分の一以下の大サービスです。これは極めて不当な契約と言わざるを得ぬと思うんですが、そう思いませんか。
○政府委員(飯塚幸三君) 包括ライセンスの場合には、多数の特許を一括してライセンスするものでございまして、その中には使わない特許も含まれておるわけでございまして、先生の御示唆になられたものは個別の特許の平均の何かと存じますけれども、それと直接比較することは適当でないというふうに考えております。
○市川正一君 比較するのは適当でないと言うんやったら、そのIBMは一体何ぼですねん。それを言いなはれ。教えておくんなはれ。それなら適当か適当でないか判断できるじゃないですか。
○政府委員(飯塚幸三君) 最初にお答え申し上げましたとおり、私企業との契約内容にわたりますことでございますので、実施料率についてはお答えを差し控えさせていただきます。
○市川正一君 それだけじゃないんです。さらに問題なのは、特許権や実用新案、それらの出願中のものに加えて、これから発生する特許権等についてもこの包括契約で供与することになっているわけですね。これは間違いないですか。
○政府委員(飯塚幸三君) 将来の特許が発生した場合の追加の方法については、契約内容にわたりますのでお答えをいたしかねますが、そのような包括特許の中に追加があり得るということは事実でございます。
○市川正一君 今でも約七百件ですよ。だから、あり得ると言うんだったら、これからもどんどんその包括契約の中で追加されてくるわけです。それをあなたは今お認めになった。ということは、この実施料は固定されたままで変更しない、そして将来どれほど有用な発明があっても十把一からげでこれを供与するというのは、まさに国有財産の管理という面から見ても許されぬと思うんです。私は、工技院は日ごろから内外無差別の原則ということをうたっておられるんですが、これにも反すると思うんですが、いかがですか。
○政府委員(飯塚幸三君) 包括ライセンス契約におきましては、先ほども申しましたように、特許の使用の有無にかかわらず、一定分野の製品売上高をベースとして実施料を定めておるものでございまして、将来特許の追加があり得るといたしましても、それを考慮して実施料率を変更するということは必ずしも適切でないというふうに考えております。
○市川正一君 時間が迫ってまいりましたので、重大な問題がそういう形で今提起されているということを私は指摘し、最後に、通産大臣は、本日は各方面引っ張りだこで何かと御多忙のところをここに御出席いただいておるんですが、今伺われたように、IBM社とのこの契約期間が一九九〇年末までの五年二カ月ということになっておる、そして毎年この共用特許のリストを改定するために契約書を見直すことになっております。だとすれば、私はこの機会に、言うならば特許摩擦の解消のためにも、いたずらに譲歩するんじゃなしに、当然日本の主張すべきことは主張するということで、特に実施料について言えば、国の特許、国有の特許のコストも配慮して、そしてルールにのっとった契約に改定すべきであると思いますが、大臣の御答弁を承って質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(田村元君) 一度、工業技術院長によく説明を聞いてみようと思います。
○市川正一君 よろしくお願いいたします。 終わります。
○委員長(前田勲男君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(前田勲男君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。 特許法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(前田勲男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 この際、福間君から発言を求められておりますので、これを許します。福間君。
○福間知之君 私は、ただいま可決されました特許法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、サラリーマン新党・参議院の会、各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読します。 特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。 一、特許及び実用新案の出願につき多項制の改善を行うにあたり、出願人等関係者にその周知徹底を図るとともに、特許審査の処理が円滑に行われるよう審査基準等運用方針を明確にすること。 二、最近の出願件数の急増等もあって滞積している未処理の出願を極力迅速に処理するため、審査官・審判官等の必要な人員の確保及び待遇改善等に努めるとともにペーパーレス計画を着実に推進すること。 三、工業所有権制度に関して今後開催が予想される国際会議等の場においては、工業所有権制度の国際的調和の進展に積極的に協力しつつもわが国の主張がその成果に十分反映されるよう努めること。 右決議する。 以上でございます。 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(前田勲男君) ただいま福間君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(前田勲男君) 全会一致と認めます。よって、福間君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、田村通産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田村通産大臣。
○国務大臣(田村元君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重いたしまして、今後行政を進めてまいる所存でございます。
○委員長(前田勲男君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(前田勲男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(前田勲男君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。 昨日の委員会において聴取いたしました所信等に対し、これより質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○福間知之君 所信表明に対する一般質疑に入る前に、私から一つただしておきたいことがございます。 それは、いわゆる売上税法案が今国会で審議未了、そして廃案になったことに伴いまして、さきに成立を見た産業構造転換円滑化臨時措置法など、通産省所管の法律の条文中に売上税に関する部分が含まれておりましたが、それは当然のこととして効力を持たないものになると考えるわけでございますが、その条文と取り扱いに関して当局の見解をただしたいと思います。
○国務大臣(田村元君) 産業構造転換円滑化臨時措置法におきましては、売上税と関連する規定につきましては、去る五月十二日の与野党国対委員長会談のとおりでございます。
○福間知之君 要するに、条文によって売上税の導入に伴い一定の財源を確保するという趣旨の事柄が不可能になるわけですね。その部分を、その財源をどうするかということは、いわゆる与野党国対委員長会談にゆだねられたと、そう解釈していいわけですか。
○国務大臣(田村元君) いずれにいたしましても、与野党国対委員長会談で合意されましたことを尊重して、我々は作業の方向づけをしていくということになるかと思います。
○福間知之君 はい、了承しました。
○本岡昭次君 通産大臣に伺ってまいりたいと思います。 通産大臣は所信表明の中で、急激かつ大幅な円高が地域経済を疲弊させ、雇用問題の発生など円高デフレを一段と深刻化させるおそれがあるばかりでなく、産業構造転換を円滑に進める上でも大きな支障になっていると述べておられます。 そこで、為替レートの安定ということが極めて大事だということになるわけでありますが、大臣が所信表明の中で述べておられる「為替レートの安定」ということは、一体どういう意味を持ち、どういう中身をお考えなのか、御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(田村元君) 我が国の経済実態から見まして、円レートが幾らが妥当か、これは本来、業種業態等によりましてざまざまでございますから、一概には言えない性格のものではございます。しかしながら、私といたしましては、我が国経済の基礎的諸条件を反映して、かつ産業界の合理化努力というものが真摯に行われることを前提といたしましてその健全な発展を可能とするようなレート、それで安定をしてもらいたいと、こういうふうに望んでおります。
○本岡昭次君 今おっしゃるように、合理化努力なりあるいはまた産業構造転換が円滑に行われていくという状態というのは、現在のような百三十円台に入るというふうな形でいくというふうに考えておられるのか。それは円高デフレを一層深刻化させて、通産省がいろいろ考えておられることができなくなる状態だと。現在の百三十九円あるいは百四十円ぎりぎりといったものについての認識はどうなんですか。
○国務大臣(田村元君) 先ほどの御質問で、為替レートの安定ということの御質問だと私は思ったものですから、まあそういうことが望ましいという言い方をしたわけですけれども、もちろん申すまでもなく、今の百三十九円、百四十円がらみというものは、輸出型産業、とりわけ関連中小企業、特に下請の中小企業あるいは輸出型の地域産業等にとりまして極めて厳しいものでございまして、常識的に言えば到底耐えられない姿と言っても過言ではないと思っております。
○本岡昭次君 その極めて厳しく常識的に考えられて耐えられない状態の中で、現在中小企業なりさまざまな輸出型産業が今頑張っている。しかし、頑張り切れなくて倒産し、あるいはまた合理化によって多くの労働者を路頭に迷わす等、首を切られるという状態が起こっているんですね。しかし、その問題にこれは通産省として直接、それでは百六十円がいいからと言って百六十円に通産省がするわけにいかない。とすれば、別の方法でもって、極めて厳しい状態に追い込まれ、また常識では考えられないような立場にある各産業のありように対してかなり思い切った手を打たなければ、この大臣が所信で述べられておるような産業構造の転換なんというものは不可能だと思うんです。それは後ほど細かく聞いてまいりたい、こう思うんですね。 そこで、もう一方で差益還元という問題も、これはメリットの分として通産大臣も述べておられます。そして、そのメリットが国民経済に十分浸透するように努めたい。またそのことが内需拡大について必要であるとも主張されているんですが、それでは現在プラスとマイナスがあると言われているこの円高の中で、プラスの面に働くであろうと言われる円高のメリットです。これがそれでは国民経済にどのように具体的に浸透しているのか、これは通産省の立場から示していただきたいと思います。
○国務大臣(田村元君) 円高差益の還元は、全体的には在庫期間等のタイムラグを置きつつ進んできていると考えられます。 そこでまず、輸入消費財にかかわる円高差益につきましては、通産省が二月末に発表しました輸入消費財価格動向などの調査におきまして、円高還元が引き続き進んでいるとの結果を得たところであります。アジア製の繊維製品やヨーロッパ製の乗用車など、差益額以上に小売価格が下がっているものもかなりございます。また、輸入原材料にかかわる円高差益につきましても、電力、ガスにつきましては、もう既に私が口を酸っぱくして申し上げましたとおり、本年から料金再引き下げによりまして年間約二兆円が還元される見込みであること。全く標準的な一般家庭、夫婦に子供二人ぐらいの家庭で年間約二万五千円ぐらいの還元になるであろうと思いますが、この見込みであること。石油製品につきましても、原油価格低下に見合った製品価格の低下が見られることなどから、還元がかなり進んでいると考えられます。 いずれにいたしましても、今後とも差益の還元が適切に行われますように努めてまいりたいと思っております。ただ、この差益還元というのは、自主的にうまくやってくれよと言って激励するだけではなかなか難しい問題でありますから、やはり我々が目を光らして、差益還元をどんどんしてもらうような方向に進めていただくように、我々こそ努力をしなければならぬというふうに思っておるところであります。
○本岡昭次君 後ほど経済企画庁長官がお見えになるということなので、その時点で差益還元問題はあわせてもう少し細かく質疑をさしていただきたいと思います。後ほどにその問題譲ります。 それで、話は飛びますが、大臣、アメリカによる半導体の制裁措置の解除問題でありますが、その後どのように推移しているのか今の時点で一番新しい状況というのはどういう状況ですか。
○国務大臣(田村元君) あすから専門家による協議を再度行います。来週、次官レベルによりまして四月の第三国市場でのダンピング問題及びマーケットアクセスに関する双方のデータの突き合わせのための協議を行うこととしております。既に機情局次長の山本君が先行しております。出発いたしました。こうした協議を通じまして、米側ができる限り早く措置を撤回することを期待いたしております。 なお、先般の日米首脳会談後、レーガン大統領のプレスリマークスにおきまして、措置の可及的速やかな解除が可能となることを希望していると述べられたところでございます。
○本岡昭次君 今も日米首脳会談の問題が出ましたが、中曽根総理が日米首脳会談の中で、何とか半導体の制裁措置の解除問題を具体的な答えとしてもらいたいということで執拗に迫ったということが報道されております。そして、その結果として、表面は出ていないけれども、ベネチア・サミットまでにこの問題は何とか解決できるんではないかそのことが総理の最大の日本に対する土産になったというふうなことも言われているわけであります。 そこで、このベネチア・サミットも六月の八日からということで真近に迫っているんですが、そうした問題について、通産省の立場から、大体そういう方向に現在進みつつあるのかどうかという、一つの判断というふうなものはいかがですか。
○国務大臣(田村元君) 実は、ヤイター代表とこの問題で二日間にわたって私はいろいろと協議をしたわけでございますが、中曽根総理の訪米には村岡通政局長が随行をいたしました。そして、つぶさにこの問題についてのやりとりを見聞してきたと思います。でございますから、村岡通政局長からこの件につきましてはお答えをさした方がより現実的だと思いますので、どうぞその点御了承を願いたいと思います。
○政府委員(村岡茂生君) 過日の総理訪米の際、レーガン大統領との間の会談におきまして、先生御質問のとおり非常にやりとりがございました。 実は、ベニス・サミットの前にぜひ撤回をしてもらうという言質を得たかったというのは、正直なところおっしゃるとおりでございますが、いろいろ議論いたしましたところ、先方にも先方の事情があると。特に先方が強く申しておられましたのは、議会と行政府との関係でございます。 御存じのとおり、議会には貿易法案ということでかなり保護主義的色彩の強いものがたくさんかかっている。これが一体ベニス・サミットの時期にどうなっているんだろうかということ、まだ予断を許す状態にはない。最終的には、大統領としては拒否権を発動せざるを得ない状況になると思われるが、その議会をして余り燃え立たせないようにするためにいろいろなことを考えているんだけれども、日本の半導体問題というのが、一体これを解除しておいた方がいいのか、あるいは解除しておくと著しくこれを刺激するということになり得るのかということについて慎重な検討を要するというよう省背景もございまして、結論的に申し上げますと、ベニス・サミットを控えて現在進行中のレビュー、再評価というものが、アメリカ側の報復関税というものを撤回できるようになることを望むと、こういうようなプレスリマークスの趣旨に落ちついたわけでございます。 現在我々といたしましても、鋭意この四月のデータというものを収集し、かつそれを解析しているところでございます。我々としては、かなりいい数字が出たと内心考えておるわけでございますが、いろいろ日米の間にはアグリーメントの解釈をめぐっての相違、何が義務であるかというような問題、あるいはダンピングの基準になりますマーケットバリューというものの解釈、内容につきましていろいろ開きがありまして、果たしてこれで完全に米側が撤回できる状態になっているかどうかということについては、我々は慎重の見方をしていると、こういう状態にございます。
○本岡昭次君 それでは、内需拡大問題について通産大臣にお伺いいたします。 内需拡大について、通産大臣は、五兆円規模の総合経済対策について、これは濃厚なものでなければならない、濃密なものでなければならない、また真水でなければならないというふうに主張され、新聞にも報道されております。しかし、中曽根総理は、参議院の予算委員会で、減税を含めた五兆円ということで、五兆円の中に減税も含めるんだというふうな発言が見られているわけで、こうしたことが国際的に一体どういうふうな反響を呼ぶのかと思うんですが、通産大臣が濃密で真水でとおっしゃっていることと総理大臣がおっしゃっているこのことの食い違い、ここはどういうことなんですか。
○国務大臣(田村元君) 実は濃密なもの、つまり真水といいますか、リアルマネー、これについての考え方はどうかはとにかく、表現というものは私と総理と余り変わっていないと思うんです。 そこで、財政措置という趣旨なんですけれど、財政措置という言葉の意味というのは非常にあいまいでありますので、それを厳格に、狭義に解釈してくれと、こういって責め上げておるわけです。このごろはほとんど毎回のように、閣議で私と天野建設大臣と二人で、タッグマッチのようにやっておるわけですけれども、私どもとしては、とにかく先般アメリカのベーカー財務長官と私はパリで会談をしましたが、アメリカの言う中央政府による追加的支出そのものが真水であると、リアルマネーであるという考え方は、それはアメリカが日本に期待することは当然としても、我々としては、いかに素直に経済波及効果が国の主導のもとに展開されるかということだろうと思うんです。 例えば、昨年秋の三兆六千億の場合は、電力会社の設備投資から、あるいは俗に言うゼロ国債のようなものまで入っておりましたから、そういうことでは困ります。絶対困ります。やはり現実にいわゆる真水でないとそれは困るということでございまして、しかも、もちろんこういうことは、内需の拡大は日本の国のためにするんですけれども、それにしても政策協調を国際会議でうたいとげて、そしてまた恐らくベネチア・サミットでもそれが再確認されるんでしょうが、日本に対しては非常に大きな期待があると同時に、非常に深い不信感があるんですから、信頼を失わないラストチャンスだというくらいの気持ちで真剣にこの問題と取り組むべきというのが私の持論でございます。
○本岡昭次君 私どもの関心が非常に強いのは、国際協調ということの中で、国際的な約束事とか期待はともかくとして、現にもう通産大臣の所信にも書いてあるように、国内経済そのものが都市ごと崩壊してしまうかもしれない、村ごと消えてしまうかもしれないとか、大量の失業者がこれからどんどん出るかもしれない、三%から約四%と。ヨーロッパやアメリカの一〇%失業時代というものを我々は考えていかなければならないんではないかという国内経済の問題を前提にして、やはり五兆円の内需拡大という問題にいろんな人が大きな期待を持っております。 そこでね、その具体的な問題に入る前に、現に起こっている雇用問題とか地域経済の疲弊の中で起こって出てくる失業者に対して、結局言葉で言えば雇用創出と言えば済むわけであります。しかし、一言で雇用創出と言っても、そう簡単にできるものでないわけでありますが、私はこの内需拡大、五兆円規模、そして総合経済対策といったことの中で、通産省が通産省として一体国内経済の問題に責任を持つ立場から、それじゃそういうことの中で新しい雇用を吸収するような産業をどうつくっていくのかということでなければいかぬのじゃないか。私は商工問題は素人ですので、余り専門的に見る力はありません。しかし、今私たちの住んでいる地域から見る限り、通産省の迫ってくる立場というのはそういう方向でなければならないんじゃないかということを強く思うんですね。 それで、通産大臣として、内需拡大問題、国際的に約束したとかいうこととは別に、現在円滑に産業構造の転換をしなければならないとか、あるいは不況対策、特定地域を指定したとか、あるいはさまざまな政策を出しているんだけれども、こんなことを言ったら怒られるかしらぬけれども、後追い、絵にかいたもちと言われるに等しい状況にあることは事実なんですね。だから、通産省としてそれでは一体どういう内需拡大を期待しているのか。雇用の創出という問題に焦点を合わせて、どういうことをこの五兆円の中で持ち出したいと思っているのか。そうしたことを具体的に私は聞かしていただきたいなと、こう思うんです。
○政府委員(杉山弘君) お尋ねのございました当面の総合経済対策の中で、雇用創出等に関してどんなものを考えているかということでございますが、それをお答えする前に、雇用創出といいますのは、短期的な対策ではなくて、むしろもっとより長期的な対策の中で考えていくべきではないかと思います。そういう観点から、さきに産業構造転換円滑化臨時措置法の御審議等もお願いをしておりまして、雇用問題、地域問題について、通産省なりに長期的な観点からの対策を講ずるということて御了解をいただいたところでございます。 ただ、おっしゃるような短期的な対策の面でもそういう点について重点を置いていくべきだということにつきましては、おっしゃるとおりでございまして、例えば先ほど来大臣のお話の中にも出てまいります今回の経済対策の中で、やっぱり公共事業というものがかなり大きな柱になってまいると思いますけれども、こういったものの配分につきましても、やはり不況地域、不況業種といったものに重点的に実情に応じて配分をしていただきたいということはお願いをいたしました。そういう意味で、短期的に不況業種、不況地域に対する影響緩和という観点からこの総合経済対策を実施するということが一つかと思います。 また、公共事業だけではなくて、例えば研究開発用の施設等についても国費を投じてその更新等を図ってもらいたいということを考えております。これは長期的に考えますと、その研究開発の成果を通じて新しい産業分野の開拓にも資してくることになると思われるわけでございます。またさらに、中小企業対策というのは、今回の総合経済対策の中の一つの大きな柱になってまいります。その中では各種の政策金利の引き下げという問題とか、中小企業の地域対策法の対象地域の追加といったようなものも当然財政当局との間で相談をしてまいらなければならないものというふうに考えられるわけでございます。 以上、若干の例について御説明申し上げましたように、短期的な総合経済対策の中でも、雇用問題、地域問題については、通産省としては十分配慮をしたものに仕上げるべく努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
○本岡昭次君 雇用問題は長期的対策である、新しい雇用を創出する産業をそれではどうするかというのは短期でできない、そのとおりでありますが、しかしその一方で、雇用問題というのは、会社がつぶれる、倒産する、企業の合理化によって人員整理する、しかしその人は長期も短期もないわけで、その時点で職がなくなるわけですよね。鉱山が閉山してその町全体が経済の中心を失う。それはもうあすからどうするかということになる。それでは、具体的にそういうものに対応できるような通産省の状態がというと、私は先ほど短期的とおっしゃったようなものではとても対応できないのが現にあるではないかという、そういう立場で、石炭の問題と非鉄金属鉱山問題を一、二取り上げてお伺いしたいわけなんです。これはあすを待てない問題、長期的だからなんて言って、その間どうするかという問題であります。 石炭の問題で、昨年十一月に閉山した三菱の高島鉱山でありますが、この離職者問題、かなりいろいろな問題があります。その中で私が非常に注目しましたのは、要するに閉山時の人員が千六百八十一人おります。そして、雇用という問題で、会社あっせんあるいは職安あっせんということで、県内、県外にそれぞれあっせんによって就職した人がその中の三百二十七人、そのほかの七百八十五人というのが自己あっせんということで、自分で仕事を見つけてそして去っていったということなんです。雇用問題というものが重視されながら、会社とか職安があっせんしたのがわずか三百二十七人で、自分で職を探して行ったのが七百八十五人、そしてまた残っているのが六百三十一人、こういう状況がこの高島炭鉱にあるわけなんですね。 結局みずからの生活はみずからが求めなければならないという状態に追い込まれたと私は見ます。政府の離職者対策というものは一体何であるのかということを私はお伺いしたい。あるいはまた、この高島というところに対して、三菱グループあるいは国、県などがどのような、地域経済を立て直すための企業誘致であるとか、新しい産業立地の問題とかいうのは、一体何を今やろうとしているのかという問題を、それでは具体的なものをひとつ例として説明をしていただきたいと思います。
○政府委員(高橋達直君) 高島炭鉱の離職者対策の状況でございますが、ただいま先生の御指摘になられたデータと私ども労働省から入手している数字とが若干食い違うわけでございます。おおよその状況はほぼ同じでございますが、全体の離職者が千六百九十三人おりまして、現在就職をいたしましたのが、四月二十五日現在でございますが、二百七十人というような状況でございまして、この二百七十人のうち紹介を得て就職をした者が二百六十人、ほとんどでございます。自己紹介は八人ということでございまして、そのほかに内定した者も少しございます。あるいは職業訓練を労働省のあっせんで行っておる者が百四十人程度ございまして、いずれにいたしましても、千六百人のうちまだ半数ぐらいが要対策という状況にあるところは先生御指摘のとおりでございます。しかしながら、なかなか自己あっせんということで自分で探すのは難しいわけでございまして、当然本人の希望を聞きながら、会社のあっせん努力あるいは労働省職安のあっせんによりまして今申し上げたような状況になっております。現在は雇用保険の期間でもございますので、本人がいろいろと今後の希望なども考えながら将来の道を探しているわけでございますので、今後雇用保険の期間が切れるような状況になりますと、秋以降でございますが、本格的に残りの部分についての皆さん方の就職あっせんを会社及び労働省、私どもも一緒になりましてやってまいらなければいけないということでございまして、会社の就職あっせん努力につきましても、労働省と私どもで指導しておりますし、また国におきましても精いっぱい努力をしているということを御理解いただきたいと思うわけでございます。 また、地域の活性化あるいは企業誘致の問題でございますが、私ども基本的にはやはり三菱グループの責務というものも当然にあるというふうに考えておりまして、その上に立って県の努力、さらに国の支援というようなことになろうかと思っておりますけれども、三菱グループにつきましてはかねてから指導もしてまいりましたが、現在のところセメントの二次製品の製造、販売をする会社、それからヒラメなどの魚介類の養殖をする会社、それから農水省の所管でございます生物系技術研究推進機構の出資もいただきまして、高級魚養殖システムの開発などもする会社も設立しております。 さらに中長期的な方向といたしまして、海洋開発の方向で物事を考えていくということで、私どもも補助金を出しましてこのビジョンを作成し終わったところでございまして、さらにその可能性について今後私どもからも支援をしながら研究を進めていくという現状にあるわけでございます。
○本岡昭次君 限られた時間ですから、この問題についてもっと深く追及したいんですけれども、また次の機会に譲りますが、精いっぱい努力をしていることを認めると言っても、実態の問題として認めるわけにいかないという現地の人たちあるいは関係者の声であります。もっと頑張ってもらわにゃいかぬということではないかと思います。 そういう中で、再びまた三井砂川炭鉱の閉山提案が行われるということになっているんです。一体こういう場合、会社側から政府に対して何か事前の報告あるいは相談があるんですか。
○政府委員(高橋達直君) 実は三井石炭鉱業の砂川炭鉱につきましては、去る十八日に会社側から労働組合に対しまして閉山の提案があったわけでございますが、私ども役所の立場でも事前に会社側から説明を受けておるわけでございますが、会社側からの説明によりますと、現在直面しております経営の深刻な状態、そういう状態から見て、砂川炭鉱の操業を継続することは極めて困難であるということでございまして、基本的には個々の山をどうするかということにつきましては経営判断に属することでもあり、私どもとしても、かかる事態において会社側の閉山提案はやむを得ないというふうに考えたところでございます。 しかしながら、今後労使間で十分なる協議も必要でございますし、また地元自治体とも十分に相談する必要もあると考えますので、私どもとしてもそれらの十分なる協議によりまして結論が見出せるように注目をしてまいりたいと思います。
○本岡昭次君 第八次石炭政策は、六十六年度までに一千万トンにするということで、なだらかに縮小するということが言われております。しかし、各鉱山が合理化をしていく、そして鉱山が次々と閉山になってつぶれていくという状況で、一体今年度はどの程度年間縮小するようになると見ておられますか。
○政府委員(高橋達直君) 御指摘のとおり、昨年十一月に出されました第八次石炭答申におきまして、今後五年間段階的な縮小はやむを得ない、五年後にはおおむね一千万トンという目標が出されたわけでございまして、今年度の四月よりその計画の実施期間に入っておるわけでございます。各社はこれをにらみまして合理化計画を出しておりまして、三井石炭鉱業における砂川の閉山提案もその一環でございます。それによりまして雇用、地域に相当程度の影響が出ることが考えられるわけでございますが、何とか関係者の力を合わせて対策を講ずることといたしまして、雪崩的な閉山は避けるように、私どもとしても目配りをしていかなければいけないと思っているわけでございます。 数字のお尋ねでございますが、六十一年度の供給規模が千七百万トンでございまして、これをおおむね一千万トンに六十六年までにするということになりますと、四年間で七百万トンの縮小を行わなければいけないということに相なりまして、一年間の量がおおむね二百万トン前後という数字になるわけでございます。現在のところ、各社の合理化計画の状況を見ますると、おおむねその線に沿った数字になっているというふうに理解をしております。
○本岡昭次君 そうすると、今年度は大体そういうことで二百万トンの大台を超すようなことにはならない、大体計画どおりの縮小におさまるという判断ですか。
○政府委員(高橋達直君) 実は、まだ一部企業につきまして今年度の合理化計画が出ていないところがございますので、最終的にどの程度になるかは現段階では申し上げられる状況にはございませんが、今までの各社の計画などを拝見してまいりますと、おおむね第八次石炭政策をつくりましたときの数字のペースにあるというふうに御理解いただいて差し支えないかと思います。
○本岡昭次君 そして、あなたもおっしゃったけれども、雪崩閉山になるということもないというふうに判断されているんですね。
○政府委員(高橋達直君) 雪崩閉山の定義がなかなか難しいわけでございますが、仮に、次から次へと閉山が起こるということをもって雪崩閉山とすれば、そういう事態はないというふうに考えております。
○本岡昭次君 万一雪崩閉山的なことが次から次へと起こり、そして全体として、縮小も年二百万トン前後というのをオーバーするというふうな事態に結果としてなった場合、第八次石炭政策を見直さなきゃいかぬということになる、あるいはまたその補完措置を講じなきゃいかぬということになると思いますが、どうですか。
○政府委員(高橋達直君) 第八次石炭政策は今年度から始まったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、段階的縮小で、一千万トンに向けて各社が努力をしていくという目標のおおよその数字の中にあるものと私どもは考えておりまして、おかげをもちまして、今年度の予算及び法律的手当てによりまして、稼行炭鉱の対策あるいは閉山対策、その他地域対策につきましても一定の拡充ができたものと考えておりまして、これをベースにその運用の的確性を確保していくことで、何とか今年度を乗り切ってまいれると思っておりますが、雇用の問題、地域の問題につきましては、これからさらに拡充を積極的に考えていかなければいけないと思っております。
○本岡昭次君 後でまたまとめて通産大臣に伺うことにしまして、具体的な問題を先に進めます。 それでは、もう一つの非鉄金属鉱山関係の問題を一、二伺います。 ことしの三月に完全に閉山になった兵庫県大屋町の明延鉱山は、閉山後どのような雇用問題地域活性化対策が進められておりますか。簡潔にお願いいたします。
○政府委員(野々内隆君) 大屋町の明延は、企業は非常に自力努力もなさいましたし、私どももできるだけ支援をしたつもりではございますが、残念ながら御指摘のとおり三月に閉山ということになったわけでございます。この地域の経済は非常に明延に依存をいたしておりまして、工業出荷額の半分ぐらいをこの鉱山に依存しているという状態でございますので、大変大きな影響を受けております。 そこで、特定地域中小企業対策臨時措置法、それから産業構造転換円滑化臨時措置法、これの地域指定を行いまして、雇用関係では、地域雇用開発等促進法の緊急雇用安定地域、これに指定をいたしておりまして、中小企業とかあるいは工場の新増設に対する低利融資あるいは地域活性化プロジェクトへの出資、失業給付の延長というような措置を講じております。また、六十一年度の公共事業の関係補正予算の配分に当たりましても、特に金属鉱山への依存度の高い部分につきましては予算の重点的な配分をするという形で、地域に配慮もいたしているつもりでございますが、今後ともこうした鉱山地域への重点配分というものについてもできるだけの配慮をいたしていきたいというふうに考えております。 明延の離職者は、閉山時で三百五十九人ございまして、そのうち再就職が決まっております者が百四十八人、半分弱でございますが、まだはっきりしていない方たちあるいは決まっていないという者が二百名以上いらっしゃるわけでございまして、何とかこうした人たちにつきましてもできるだけ雇用あっせんというようなことをしていきたいというふうに考えております。 現在、明延鉱山そのものは、十六人を明延の職員とし、二十二人を三菱の職員としまして再雇用して、合計三十八人で残務処理とか坑廃水の処理ということを行っているというのが実情でございます。
○本岡昭次君 非鉄金属鉱山も、石炭問題と同様に深刻になってきておるんですね。六十年の四月に五十九鉱山で八千九百五十人働いていたのが、この六十二年の三月には三十六鉱山、三千八百人というふうな大変な激減になっておりまして、通産大臣が文字どおり所信表明の中に書いてあるような状態になっているわけなんですね。いわゆる地域経済の疲弊、そして雇用問題が発生をしております。 そこで、こうした非鉄金属鉱山の問題を論議していく鉱業審議会鉱山部会というのがございますね。そこが昨年八月に「今後の我が国非鉄金属産業のあり方と鉱業政策の方向」という建議を行っています。しかし、この建議を行ったときの為替レートというのは、一ドル百六十円程度というものを前提にして立てたと私どもは聞いております。したがって、その一ドル百六十円ということを前提にして立てた場合でも、A、B、Cというふうに鉱山を種類分けして、Cはもう休閉山をせざるを得ない鉱山、Bは一層の合理化によって成り立ち得る鉱山、Aは成り立ち得る鉱山というように、A、B、Cとランクづけした。百六十円でこういうランクづけをした。これが百四十円台を割るという事態になったときには、恐らくこのBランクのところも、幾ら合理化をしても、通産大臣がおっしゃったように常識外の状態になったという中では、これはもう建議そのものが破綻をしてしまうんじゃないかと私は思います。 そこでお尋ねしたいのは、この建議が想定した以上のことが今円相場の急騰によって起こり、これが百六十円に戻る可能性はほとんどないとすれば、早急にこの鉱業審議会を再開して、建議を見直して、それでは具体的にどうするんだという緊急対策と将来の抜本対策というふうなことをやらなければいけない事態ではないかと私は認識するんですが、いかがですか。
○政府委員(野々内隆君) 鉱山は御承知のように、国際的な相場の低迷と円高というダブルパンチで大変苦労いたしております。私も四月に神岡鉱山に参りまして、経営者、労働組合の方といろんなことをお話しいたしました。百五十円になっても生きられるようにというので合理化をやって、やっとめどがついたら百四十円になったと、これではたまらぬというのが経営者、労働組合双方の御意見でございまして、私どもも非常に身につまされたわけでございます。 そのときに要望がありましたのは、まず一つは何とか相場の安定をしてくれと、そうでないと合理化のめどがつかないということ。それから、いろいろ政府にやってほしいけれども、金もないんであんまり言えないけれども、ぜひやってほしいことは、安定化融資の拡充と中小鉱山の炭鉱補助金の拡充、少なくともここはやってくれと、それから新しい仕事をやるための何か制度をやってくれと、このあたりの御要望がございまして、私も至極もっともという感じがいたしました。鉱業審議会をもう一度開くかどうかというのとは別にしまして、何とか追加的な金属鉱業対策というものについて検討いたしたいというふうに考えております。
○本岡昭次君 そこで、通産大臣にお伺いするんですが、私は今石炭と非鉄金属鉱山の問題を取り上げました。こういうふうに個別に取り上げると、それぞれ大変な事態なんでありますね。それで、一体こうした各産業の現状をどう立て直すのか。立て直そうとしても立て直せない問題がある。また、国際分業時代に入った場合、やはり新しい視点に立って考えなきゃいかぬという場合もありますが、しかしもう自然体に、なるようになるしかないというふうなことではいけないわけでありまして、少なくともそこには政策があり、そして対策がなければならぬと思うんです。 そこで、今度は五兆円の内需拡大という形で打ち出されていくそうした総合経済対策の中に、先ほどもいろいろとおっしゃいましたけれども、もっと私は積極的に、石炭で高島という一つの町が、あるいは砂川という町が、また非鉄金属鉱山関係で明延というところが、またそのほかのところがという、文字どおりこの所信表明の言葉にある地域経済が疲弊というよりも、地域経済が崩壊しかねないような状態のところに対して、総合経済対策的なものを何をそこにぶち込むのかと、事業をそこに持ち込んだらいいということじゃなくて、やはり通産省として一体その地域をどう新しく掘り起こしていくのかという問題が個別対策の問題として打ち出されなくては、私は国民の期待というんですか、円高の中で最も苦しい立場に置かれている人は、それでも必死に頑張っている人たちに対して、将来の勇気、自信、あるいは展望を切り開くというようなことにはなっていかないと思います。 そういう意味で、重大な決意を持ってこの総合経済対策の中で、もちろん全体の問題を考えていただかなければなりませんが、通産省として今やらなければならない問題というところに焦点を合わした具体的な取り組みをやっていただきたいということを強く要望するわけであります。通産大臣のまとめとしてのお考えをひとつ聞かせていただきたいと思います。
○国務大臣(田村元君) 通産省の果たします内需拡大策に対する役割、これは通産省の予算だけではないと思うんです。 実は、先般、つい最近ですが、私は産政局長、官房長を連れて建設省へ行きました。建設大臣、事務次官以下に会って、そして今度の緊急経済対策の中身、国会での答弁は私もやわらかく物を申しておりますけれども、中身について、端的に言いまして、財政当局から見れば必死の防戦でしょうし、我々から見れば必死の攻撃でございますから、だから通産、建設がまず意思統一を図って共闘の態勢を組んだわけです。そして、その合意した事項で、私から、昨日でしたか運輸、農水、厚生各大臣等に、こういうふうに建設省と意思統一を図ったのでこれに御協力を願いたいと、こう言って了承を得て、まずこれが大きな問題の一つです。つまり、通産省という役所は、自分のところの予算以外にあらゆる面で、他省の問題であろうと、それが景気刺激策になるものならそれのお手伝いをし、激励をし、あるいはごあっせん申し上げる、これは当然のことだと思います。と同時に、通産省自体の問題がございます。今お話があったのは通産省自体の問題をお話しになったと思うんです。それは今各局長、長官等がそれぞれに出し合って福川君のところで調整をしております。そうしてそれがまとまり次第、もうきょうあすにでもこの作業がどんどん進みますから、閣議へ出てまいりますまでに事務的に十分の詰めをし、そうしてそれを盾にとって私がまた閣議で頑張るというようなことであろうと思います。今これだけがどうの、あれだけがどうのということじゃなく、通産省はたくさんの問題を抱えておりますから、一つだけをあげつらうわけにはまいりませんけれども、そういうことで大いに頑張っておるということでございます。私も率直に言ってもう目の色が変わっております。そのようにして頑張っておるというところでございます。
○本岡昭次君 お互いにこれにかかわる者は目の色を変えてやらなきゃいかぬときだと私は思うんであります。それで、まあ絵にかいたもちというような失礼な言い方も私しました。しかし、中小企業対策の不況に立ち向かっていくためにといって特別地域をつくります。また、産業構造転換を円滑に進めるためにといってまた特定地域をつくります。しかし、特定地域をつくったからといって、黙って寝ていていいことができるわけでなくて、それはそこの地域の人が、それこそ目の色を変えてどうするかということをやらなきゃいかぬということは基本であります。しかし、国が法律でもって一定の地域を指定してきたときには、それなりに具体的にこの手にずっしりと重みを感ずるようなものを、また物として、実体として目に見えるもの、そういうものでなければ、法律だけを幾らつくっても私は今の事態は役に立たない。だから、そういう意味で特定地域に指定されたその人たちが、今の総合経済対策というものに対してかなり大きな期待をやっぱり持っていると、こう思うんであります。 でなければ、私が初めに高島炭鉱の例を出したように、最後は自助努力で、結局おれのことはおれがやらなきゃ仕方ないじゃないかといって、自分で自分の身の振り方をみんな決めて散っていかなければならぬ。しかし、人のうわさも七十五日、済んでしまったら、ああそんなことがあったんかなと、忙しいからみんな忘れてしまう。そんなことの積み重ねでは、私は政治に対する信頼なんというのはもう一かけらもなくなってしまうと思います。だから、不況対策のために、円高のために地域を指定したのなら、したことに対して実効あることを一つ一つ通産省がやっていただかなけりゃならぬと思うんですよ。そのことによって地元も目の色を変える。 そういう意味で今度の総合経済対策の中に、通産省として、石炭の問題でもいい、非鉄金属の問題でもいい、輸出型不況産業のところでもいい、さまざまなやらなければならぬことがいっぱいあるんですから、そこに具体的実効あるものを必ず打ち出していただきたい。そして必要があれば石炭政策も見直し、あるいはまた非鉄金属鉱山の問題についても大胆に、この際建議を見直さなきゃいかぬのだったら見直して、事態が進んで後追い後追いにならないように積極的にやっていただきたいということを強く要望をしておきたいと思います。 それで、今言いましたことに関連しまして一つちょっと質問しておきますが、産業構造転換円滑化法を審議したときに、私はその特定地域の指定の仕方の問題について、従来のように企業城下町である、あるいはまた輸出型産業の地場産業的な地域であるというその条件をもう少し弾力的に運用をしていかないと、鉄鋼とか造船とかいった、あるいは機械金属関係という大都市型の産業問題に適応できないではありませんかということで、姫路市の新日鉄広畑工場の問題を取り上げて質問いたしました。最後に通産大臣から検討してみましょうという答弁をいただいておりますが、第一次指定が行われて、今第二次指定の問題も検討されているやに伺っております。 それで、第二次指定問題が今どのように作業が進んでいるのかという問題についてお伺いしたいのと、その特定地域を指定するという問題について弾力的な通産省の考え、そういうようなものが今まとまりつつあるのかどうか、お伺いをしておきたいと思います。
○国務大臣(田村元君) 御承知のように、特定地域として百七十五市町村を指定いたしました。たしか四月の二十八日だったと思います。 ところが、今おっしゃったように非常に厳しい状況でございます。私は確かに検討をお約束申し上げました。幸い緊急経済対策というものが出てくるのですから、これを当然受けて、この中に恩恵に浴せしめるようにうまく入れていかなきゃならぬ。そこで、この緊急経済対策を受けて追加をしたいということで、これを今、鋭意検討中でございます。特定地域にどこを追加するかということを今申し上げる段階でもないし、検討中でございますが、姫路市も含めて検討をいたしております。
○本岡昭次君 大変なサービスをいただきました。ぜひとも弾力的に、ひとつ幅を広げていただきたいと思います。 それで、次の問題に入っていきたいわけですが、先ほども円高差益のメリットの問題の中で、韓国、台湾あたりから繊維の製品が非常に低い価格で入ってくる。そのことが円高メリットの一つになる。それは消費者にとって喜ばしいことであろうと思いますが、しかし一方、繊維とかあるいはまた雑貨とかいうふうなものは、ある意味では日本の中小企業、また輸出型産業の一つの分野であるわけでありまして、それが輸出の分野では道を閉ざされる。今度はまた、NICSというふうな関係の地域からは安いものが入ってくるということで、中小企業の競争力というものが非常にそこで問題になってくるわけでありますが、通産省としまして、一方は値段が下がるから結構だ。しかし、国内の中小企業の競争力がそれに立ちいかない場合は、これは大変だと、文字どおり痛しかゆしという言葉がありますが、それに似たような状態になるものであります。 しかし、いずれの産業もこうした問題に立ち向かっていかなければならぬわけでありますが、通産大臣として、こうした中小企業がこれから置かれるであろう立場について、どのような対策を講じようとされているか、お考えがあればひとつお聞かせをいただきたいと思います。
○政府委員(浜岡平一君) 御指摘のとおり、繊維製品あるいは雑貨の輸入が大変な勢いで増加していることは事実でございまして、関係の中小企業からは大きな悲鳴が上がっております。片一方では、製品輸入促進という課題があるわけでございまして、まさに御指摘のとおりまた裂きの刑に遭っているような心境にあるわけでございます、 昨年の繊維で、ドルベースで見ますと約三〇%の増加でございましたけれども、ことしの一−三月ですと五〇%ぐらいの増加になっております。また雑貨で見ますと、昨年は四〇%ぐらいの増加でございましたけれども、ことしの一−三月は六割を超える増加というようなことでございまして、増加のスピードが上がってきております。 特に繊維につきましては、今までも何回か輸入増加の波がございました。従来は、どちらかといいますと、綿糸とか綿布とかそういう糸織物の分野でございましたけれども、最近の輸入増加の焦点は、御承知かと思いますが、ニット製品でございます。特にある程度ファッション性のございます外衣の分野で輸入がふえてきているということでございまして、いわば加工度の高い分野にもある程度輸入の波が広がってきたということで、相当ショックを受けております。繊維につきましては、御指摘のとおり、輸入の大宗は中国、韓国、台湾、それからパキスタン等でございます。 雑貨につきましても輸入はふえておりますけれども、あらゆる分野で輸入がふえているというような状況でございます。特に繊維と違いまして、米国あるいはEC等からの輸入も相当な勢いでふえておりまして、これはマーケットの多様性というものをある程度反映をしているんではないかと思います。しかし従来、高級化、ファッション化というような道で生きていこうと考えていたわけでございますが、そういう分野はもう油断ができないというような状況でございまして、一段と高級化、ファッション化といったような方向を目指しまして、昨年来御整備をいただいております中小企業関係施策を総動員をいたしまして対応を図っていくというのが基本かと思っております。 特に産地ごとに商品開発センターでございますとか、デザインセンターでございますとか、そういったものをつくってほしいというような前向きの声も出てきておりますので、こういったものには最近の仕組みを積極的に活用しまして、何とか対応していきたいというぐあいに思っております。余りにも急激に輸入がふえるということですと、こうした対応も難しいわけでございます。 機会があることに特定の品目に集中するのはできるだけ避けていただきたい、そのかわり多様化をするということについて日本の協力が必要なら協力は惜しみませんということで、輸入のインパクトがあるにいたしましても、できるだけ幅広い分野に、広く薄くインパクトが及んでいくというような理解を輸出国側にも求めていくというようなことも必要不可欠かと考えておりまして、機会をとらえてはそういう面での努力もいたしているつもりでございます。
○本岡昭次君 時間もなくなってきましたので、あと一、二で終わります、 大臣にお伺いします。所信表明の中に新しいものがございました。発展途上国の経済自立を図るためとして「新アジア工業化総合協力プラン」というものを実施するということが打ち出されております。具体的にこれどのようなプランになるのか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(田村元君) 詳しいことはまた担当局長から説明があろうと思いますが、極めて概略でございますが御説明申し上げますと、ニューAIDプランと申しまして、ASEAN諸国に対して従来的な援助、協力というものから一歩踏み込んで、ASEAN諸国の中に輸出型産業をひとつ植えつけて繁栄してもらおうじゃないか。そのためには、お金のみならず、技術もあるいは産業基盤もあるいは営業に対するノーハウも、いろいろなものを日本から供与して、そして非オイルの輸出型の産業をそこで繁栄さしていただく。もちろん日本に対してどういうものを売ったら売れるのだ、あるいはどういうような色彩やら、どういうような柄がいいのかどういうような形がいいのか。アメリカにはどうか、ヨーロッパにはどうか。そういうようなノーハウまで提供して、そこでできたものはまた逆に日本がお買いもしようし、また世界じゅうの先進国にも買っていただこう。非常に簡単に申せばこういうような構想でございます。 もしなんでございましたら、村岡君あたりから詳しく説明をさせますけれども。
○本岡昭次君 経済企画庁長官が今やっとお見えになりましたので、質問を保留しておるのがございますので、また改めてこの問題については御説明をいただき、また私も意見を申し上げたいと思います。きょうは考え方だけお聞きしておくことにいたします。 経済企画庁長官に残された時間でお伺いをいたしますが、長官は参議院の予算委員会で、六十年の十月から六十二年の三月末まで約十八兆円の差益が発生して、差益の還元は六十二年の一月期から三月期で約七八%、六十二年三月末で累計十兆八千億、五九%に上るというふうにおっしゃっておられたんですが、これは間違いございませんか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生からお話ございましたように、経済企画庁が昭和六十年十月から本年三月まで、いわゆる水際で発生しました円高差益と同時に原油価格の低下からくる差益、これを合計いたしますと約十八兆円ございます。そのうち、この三月までにどの程度還元をされたかということをずっとこれまた計算して累積をいたしますと、御指摘ございましたように五九・四%、約六割程度、すなわち十兆八千億円程度が経済全体に還元されたと、こういう計算になってございます。
○本岡昭次君 それで、長官はその還元で十分だとお考えですか、不十分だとお考えですか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 六割でございますから、あと四割ちょっとあるわけでございますので、この四割の円高差益分が水際から消費者までの間のいわばパイプラインです。まだ残っていると、こういうふうに考えておりますので、このパイプラインに残っている円高差益分をさらに消費者に還元するように、いろいろ例えば競争条件をさらに整備するだとか、またこれ通産大臣が中心になってやっていますが、例えばインポートフェアだとか、いろんな消費、輸入の促進、輸入物品のセールス促進と、いろんな形でさらに進めていかなければならない、かように考えている次第でございます。
○本岡昭次君 だから、結論として不十分な状態であるとお考えだということですか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) こういうものは、最初はわっと出るわけでございますので、現在パイプラインに残っているのが末端に浸透するためには多少時間がかかりますが、現在で十分だという認識は持っておりませんけれども、しかし相当程度の円高差益の還元はなされたがために、例えば消費者物価におきましても、過去二十八年ぶりに対前年度の消費者物価はむしろゼロ、月によってはマイナスであったと。これだけのことができたのも円高差益還元が進んだからであると、かように理解している次第でございます。
○本岡昭次君 しかし、一般の国民は、長官のような認識は持っておりません。また生活実感として、もう東京は世界一物価の高い土地であるということが政府の総務庁の統計の中にも出てきているのですね。円高で、そして日本のGNPが世界の一位であるとか二位であるとか国民所得がGNPでドルで見たらどうであるとかあるいは労働者の賃金をドル建てにしたら世界でどうであるとかといろいろ言われます、円高のおかげで。しかし実態としてあなたがおっしゃるように、この円高のメリットの面がそれでは生活の中に出てきたか。私たちが使う一万円が、それでは今まで一万円であったものが一万四千円分使えるかといったらそうじゃないわけなんですよ。だからそういうことで、長官の考えるような話ではやっぱり国民は納得しないんであります。 そういう意味で、残りの四〇%の差益還元はもちろんのこと、円高というものが日本の経済力を本当に反映しておるというならば、やっぱり国民生活の台所のところの暮らしのところが具体的に変わってこなきゃいかぬわけです。そのために、一体経企庁は何をやらなければならないか。残っておる四〇%というのは、どこにそれでは残留しているのか。さらに、本当に国民が、円高というものが物価ということのかかわりの中でなるほどと納得するようになるためには一体どうしたらいいか。このことを経企庁は、先ほど田村通産大臣は目の色を変えてとおっしゃったが、文字どおり目の色を変えてやらなきゃいかぬところじゃないかと思うんですが、一体どういうふうにやろうとしてお考えになっているのか聞かせてください。
○国務大臣(近藤鉄雄君) おっしゃるように、日本のGNP一人当たり現在の為替レートに換算をいたしますと一万八千ドルを超えて、アメリカを超えて世界最高になっているわけでありますが、為替レートは為替レートとして、まさに国際経済関係で決まるだけでありますので、必ずしも正確にその購買力の力を平価であらわしているわけではございませんので、為替レートが百四十円としても、購買力平価で考えますと大体一ドル二百二、三十円ではないかと、こういう計算もあるわけでございますので、これで換算いたしますとまた違ったものが出てくる。 ただ、そうは言っても、現実に日本の名目的な所得が、その所得の数字が示すほどの使いでがないのはなぜかという御指摘でございますけれども、先般いわゆる新前川レポートをつくるに当たりまして、経済審議会の事務局として経済企画庁が計算をいたしました。例えば今日本人の食生活を、この同じ食生活をアメリカの物価でやったとすると半分の支出で済む。それから光熱費、エネルギー費もこれも半分ぐらいで済む。住宅も大体七割ぐらいで済む、住宅というものは質の問題考えますと、もっともっと違うと思うんでありますが。そういうことで私たち日本人は帳簿上数字の上では経済大国ということになっているわけでありますが、実感としてなかなかそんなところじゃない。 そういうことでございますので、実は新前川レポートに書いてございますが、私ども今後関係各省の御協力を得ながら、そうした食料品価格を国際的な水準にどうしたら低めることができるか。そのためにはまさに農業の生産性を上げる、また流通を合理化する。土地についてもその他についても、各消費者の項目ごとにもっともっと生産の生産性を上げ、流通の生産性を上げて、安くすることによって値打ちのある円に、国際的に値打ちがあっても国内的には値打ちの薄い円の場合もあるわけでございますので、国内的に値打ちがあるようにするための努力をひとつ、これはもう経済企画庁というよりはまさに役所挙げて取り組んでいかなければならない、かように考える次第でございます。
○本岡昭次君 時間がなくなりましたので、あとは梶原委員の方から同様のものでさらに質問があると思いますので、これで終わりますが、両大臣、大変な事態でありますので、文字どおり本当に目の色を変えてひとつ頑張っていただきますようお願いしまして、私の質問を終わります。
○梶原敬義君 田村通産大臣、本当に厳しい経済情勢の中で大変御苦労さまでございます。 私は、今円高不況で、本当に通産大臣も海外に行ったり、国内で多忙な時期で、国民を代表して頑張っていただいていることについて心から敬意を表しているんです。 けさの新聞で見ますと、朝日、毎日、読売等の切り抜きがあるんですが、「田村氏に協力要請 田中派内紛 竹下氏、隠密に会談」、こういうのが載っているんですよね、中身読んだらいろいろ書いておりますが。竹下派や田中派の大臣じゃなくて、日本を代表する通産大臣だから、こんなことに巻き込まれてもらいたくない、私はそんな気持ちでございます。「会談」云々とかいう記事が載っておりますが、私の気持ちはおわかりだと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(田村元君) 私にとっては国務優先でございます。一番大切なのは国家国民でありますが、その次は、お互い政党人でありますから、党というものは大事でございましょう。 しかし、あなたの方もそうだと思いますが、私の方も派閥ぐらいくだらぬものはありません、はっきり言って。その中でけんかをしたって、これは鶏と卵みたいなもので、両方の言い分をたんたんと掘り下げていけば、結局両方ともに傷だらけということなんですから、けんかはするよりしない方がいいということで、私は国務優先、派閥のけんかは等距離で、場合によったら、暇があったらおさめに出てもいいけれども。ということで、今の厳しい日本の経済に取り組んでおるという次第でございます。
○梶原敬義君 ゆうべ会ったとか合わぬとかというのもコメントをいただけるのかと思ったけれども……
○国務大臣(田村元君) ゆうべは、実は会う予定だったのが、だれにも会わなかった。といいますのは、副総理と会う予定だったんです。予定だったのですけれども、会う場所へ私が行ったら、電話がかかってきて、表口も裏口も新聞記者で固められておるので、行くわけにいかぬ、あしからず、いずれまたと。それで、私もすく帰ってきたということでございまして、何人ともゆうべは会っておりません。
○梶原敬義君 どうも失礼しました。 労働省は何か後で用事があるようでありますから、両大臣の所信表明演説に対する質問をする前に、最近の雇用失業情勢、そして、さらに今百三十円台の円高のもとで一体これから雇用情勢の見通し、見込みはどうなるのか、この点について労働省に最初にお伺いをいたします。
○説明員(廣見和夫君) お答えいたします。 最近の雇用失業情勢でございますが、基本的には大変厳しい状況が続いている、このように私どもは考えております。 若干具体的に申し上げますと、依然製造業を中心といたしまして雇用調整を実施する事業所が多うございます。現時点で大体四二%の製造業の事業所が何らかの形で雇用調整を実施している、私どもこのように状況を把握いたしておりますが、このように大変多い事業所で雇用調整が行われている。 それからまた、求人が引き続き冷え込んでいる。対前年で比較いたしましても、求人は依然製造業を中心といたしましてマイナスを示しております。もっともこのマイナスの示し方は若干最近は少なくなっているようではございますが、例えば製造業三月ということで対前年を比べてみますと、六・一%の新規求人のマイナスでございますので、それまでの二けたのマイナスから比べれば若干低いということではございますが、依然求人が冷え込んでいるという状況にございます。 それからまた、こういう状況を反映いたしまして、有効求人倍率を見てみましても、三月で〇・六三倍ということで、やはり依然低い水準にございます。また失業状況を見てみましても、完全失業率は三月二・九%ということでございますし、失業者数で見てみますと百九十四万人というふうに大変高い水準でございます。このように、依然基本的には私ども大変厳しい状況が続いておる、このように思っておるわけでございます。 もう一点、今、先生の後の方でお話しのございました円高との関係でございますが、円高がどのような形で推移するか、労働省の方といたしましては、私ども自体ではなかなか予想することが難しいわけでございますが、仮に円高がさらに進むというようなことになるといたしますれば、やはり製造業を中心に雇用に与える影響というものは厳しいものがあろうかと思いますので、さらに一層厳しくなることも私たちとしては覚悟はしておかなきゃならない、このように考えておるところでございます。
○梶原敬義君 有効求人倍率について、トータルで〇・六三倍というようなその数字は、聞きようによると、私は九州ですが、九州とか北海道とか厳しいところの実感と相当離れているんですよね。この地域性の問題の厳しい状況というものについて、求人倍率等、そういう状況について少し補足をしていただきたい。
○説明員(廣見和夫君) その点は、私ども全く先生の御指摘のとおりではなかろうかと思っております。 と申しますのは、平均的に見ますと〇・六三あるいは〇・六二、最近そういう状況でございますが、地域別に見ますと大変差が大きなものがございます。例えば北海道。ことしの一月から三月まで平均してみますと、北海道では〇・三八倍ということでございます。それからもう一つ厳しい地域といたしましては九州がございます。ここでは、同じくことしの一月から三月で見ますと〇・三七倍ということでございます。東北も〇・四一倍というふうに大変厳しくなっております。 これに対しまして情勢が比較的よろしいのは北関東あるいは甲信。例えば北関東、甲信地区で見ますと、一・〇三倍ということで一倍を超えておりますし、東海地方では一・〇四ということで、これまた一倍を超えておるわけでございまして、平均的な〇・六三というのも、今申し上げましたように北海道、東北あるいは九州といったように大変厳しいところがある、こういうところをならしてでございますので、地域によっては一段と情勢は厳しいし、私たちといたしましては、そういうところに特に着目しての地域別の対策ということも、そういう意味では大変重要であろうというふうに思っておるところでございます。
○梶原敬義君 ありがとうございました。 経済企画庁長官、きのう所信表明あいさつですか演説ですかをいただきまして、何回か読み直しました。通産大臣の所信表明演説にも目を通しましたが、ただいまから、最初に経済企画庁長官にお尋ねをいたします。 昭和六十二年度の経済見通しが三・五%の見込みになっていると、こういうことでございますが、やはりこれを判断するためにも、昭和六十一年度の経済見通しが当初四%が三%に、そして三月末で一体どういうようになったのか。なぜ見通しを四%から三%にしてずるずると下がってきたのか、その点もあわせてお願いします。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生御指摘ございましたように、六十一年度は私ども当初四%経済成長を見込んでおったわけでございますが、年末までのデータで分析をいたしますと、実は内需においては、私ども予想したよりも民間の設備投資は伸びなかったわけでございますが、昨年の九月以来のいわゆる総合経済対策で、相当財政によって景気支えをいたしましたので、結果的に内需だけでは四%前後の成長を達成することができた。ただ、急激な円高に基づいて輸出が数量では減り、さらに輸入がふえる。これは国際収支改善の点からプラスでございますが、しかし、GNPに対してはマイナスな効果を持つわけでございますので、この内需要因から一・五%前後のGNPのダウンが行われた。したがって、年度の数字はまだ出ておりませんが、六十一年で申しますと二・五%、残念ながら私どもの見通しから大きくダウンしたわけでございます。 繰り返し申しますけれども、これは内需は何とか支えたけれども、外需要因で一・五%ダウンしてしまった、こういうことでございます。年度についてはあと一−三月の数字がどうなるかでございますが、これについても残念なことでございますが、三・〇%の実績見込みよりもさらに落ち込むのではないか、かように懸念をしております、
○梶原敬義君 大臣、ずっと企画庁長官ではないから、なかなか数字はそう簡単に予測しにくいと思うのですが、三月三十一日に締めてもう六月になろうとしていますから、三月三十一日現在における実績というのは経企庁では相当予測がつくと思うんです。今三%が下がると言われておりますが、大体どの辺までと見込んでいいわけですか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私どもいわゆる四半期別の国民所得の速報値をずっと出しておりますけれども、大体三月の場合は六月十日過ぎ、これが最新データを集めて最も早く作業して、ぎりぎり出てくる数字でございますので、今、正確なことを残念ながら申し上げられませんが、しかし先ほど言いましたように、年末の傾向から一−三月の間を類推してまいりますと、実は昨年度の十−十二月期は特にいろんな理由から消費が伸び悩んで、これが四半期のQE、国民所得を下げた大きな要素になっておりますけれども、この点は一−三月はどうも回復をしているようでございます。しかし、そうはいっても、年で二・五%の実績が、これが一−三月期で急にぽっともとへ戻って三になるということは率直に言って考えられないので、やはり三%から相当落ち込むのではないか、かように危惧している次第でございます。
○梶原敬義君 事務局の方での見通しもわからないわけですね。
○政府委員(田中努君) 今、大臣から申し上げたとおりでございますが、十−十二月までしかわかっておりませんで、仮にそこまでで締めて成長率を計算いたしますと、二・二%ということになります。同じ前の年の四月から十二月に対して二・二%ということになるわけでございますが、何分にも一−三月の数字というのが、これは毎月の統計数値はおおむね三月までわかっておりますけれども、特に投資関係の数字は法人企業統計によりまして推計をいたさなければならないわけでございまして、これの集計にやや時間がかかるわけでございまして、これを見ました上で計数を確定して、速報という形で発表さしていただくという段取りにしておるわけでございます。
○梶原敬義君 先ほど経企庁長官は、内需はしかし我々が思ったより伸びたんだ、こういうことで何か非常にその辺を誇張されましたけれども、私は今ここに下村治さんが書いた「日本は悪くない」という本を持っているんです。この前ちょっと、ぽっと目に入ったものですから買って読んでみたわけです。ここで経済企画庁の「早とちり」という表現が出てくるわけであります。これはこの本の八十ページをちょっと読んでみますと、日本経済は、昭和五十八年から六十年の過去三年間で一三パーセントの伸びを示したが、その牽引車になったのは輸出と設備投資と消費の増加であった。とくに五十八年と五十九年の二年間は、輸出の激増によるもので、輸出主導の経済拡大と言える。 ところが、六十年になると、この状況に変化があらわれて輸出の増加は止まり、その代わりに設備投資が活発に伸び、それにつられて消費も伸びるという状態になった。 ついでながら、この状況をみて早とちりしたのが経済企画庁である。こういうことですね。すなわちどういうことかというと、日本の経済はもはや輸出主導から内需主導型になり、設備投資が自律的に増加するようになった、したがって日本経済は輸出が増加しなくとも、設備投資の伸びによって今後も成長する、という楽観的な見方をするようになったのだ。と、こう言っている。 これが、六十一年度は四パーセント成長するという政府予測の背景であったろう。 しかし、これは単純な思い違いである。そして結局、要するに内需というのはやっぱり輸出につられて関連して伸びてきたんだ。それを早とちりして四%いけるとか、どんどんやったけれどもやっぱりいけぬじゃないかというような、そういう意味のことをずっと書いているんです。この点については大臣いかに思われるか、感想を求めたいと思うんです。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生も御指摘のとおり、また下村さんもおっしゃっているようでございますが、例えば五十九年GNP五・一%成長をしたわけでありますが、いわゆる輸出を中心にした経常海外余剰が一・三ポイント。ですから内需だけは三・七、同じく六十年も内需だけは三・七に経常海外余剰、輸出が一・〇オンして四・七、こういうことでございますので、最近の日本の経済は、内需だけでは四%いってないんです。四%切っている。それに一%プラスアルファを外需でオンして、結果的には五%の経済成長を達成した。まさにそのとおりでございますので、六十一年はそのオンするはずの輸出、経常海外余剰が逆にマイナスの一・四と聞いたわけでありますが、これはプラス・マイナス大変な違いなわけであります。 ただ、先生一つだけ御理解いただきたいのは、そういう輸出がオンをしてきた中で、むしろ日本の財政は財政再建というものを軸に運営してまいったものですから、いわゆる政府の固定資本形成が常に〇・二、〇・三、〇・五と、むしろ政府はGNPの足を引っ張ってきたんですね。それを外需が支えてきた。そこで六十一年からの大きな違いは、外需はマイナスへ働きました。しかし、政府の支出はふやして、公的需要で、例えば六十年はマイナスの〇・三ポイントであったものを六十一年はプラスの一・一ポイントにした。ですから、輸出入はプラマイ逆になったけれども、政府主導で内部で内需を押し上げている、こういうことでございますが、ただそれにしてみても、急激な円高から来る設備投資に対するマイナスの効果と、そして大きな外需要因をカバーし切れなかったというのが現状でございます。実情でございます。
○梶原敬義君 僕は経済企画庁長官とこうして話しておりますと、途中でわからなくなるんですよ、私の方が。聞いていることがもうわからなくなる。だからそれはそれで、後で会議録をよく読まさしていただきたいと思います。 問題は、要するに見通しがこんなに、今までもそうなんですよ、ずっと狂ってきているんですよ。もう毎回私もこれはずっとやっておりますけれども、この点はたから幾ら口でこう言われても、過去の実績から見でなかなか信頼ができないわけであります。これ以上言ったってしようがないでしょう。本当にあきらめの心境ですがね。 ただ、六十二年度の三・五%成長というところなんですが、ここで長官がさっき読み上げられた文書を見ますと、これまたちょっと文脈が、私の頭が悪いのかわからぬが、つながらぬのですけれども、これは三ページですが、「実質経済成長率三・五%程度を見込んでいるところでありますが、」と、こうなっているんです。「為替レートの変動を初めとする現下の厳しい内外経済情勢のもとにおいては、官民を挙げて、可及的速やかに内需拡大対策に取り組んでいく必要があります。」したがって、三・五%は厳しいが、それを達成するというのかせぬというのか、ここのところが、もうできぬというのか、どうも難しいんじゃないかというようなニュアンスになっていて、どうも読み取れないわけであります。その辺はどういうことですか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 三・五%の見通しを私どもは一月にしたわけでございますが、ざっくばらんに申して、そのときの為替レートは一ドル百六十三円を一つのめどとしていろいろ計算をしておったわけでございますが、御案内のように、現状はそれからさらに進みまして百五十円、百四十円になった、こういうことでございますので、この為替レートの一月以来の高騰が直接影響をいたしますのは民間の設備投資でございますから、私どもは当初百六十円でずっとことし推移するならば、プラザ合意以後一年有余、もう二年近くになりますので、そろそろ民間の設備投資も動意を示して出てくるであろう、こういうことで予測をしておったわけでございますが、最近の円高基調では設備投資がさらに水をかけられてすぐ落ち込んでくる危険もある、こう考えますと、プラス円高による外需のマイナス要素がオンしてまいりますと、自然体でずっといきますと、当初私どもの見込みの三・五%のGNP成長率は達成が難しくなるのではないか、かように考えているわけでございます。 だからこそ、昨日予算を通していただいたわけでございますが、かねてから総理からのお話がございまして、予算の成立を待って予算の速やかな大幅な前倒しを軸にそして財政主導による積極的な緊急対策を考えて、そういうことによって三・五%の経済成長率を何とか達成するように取り組んでまいりたいというのが本音でございます。
○梶原敬義君 本音はよくわかりました。要するに三・五%はなかなか厳しいという、だから緊急経済対策をやるということのようでありますが、雇用情勢にこれはパーセントが一%も狂ってくると、労働省ちょっと帰りましたが、相当これは響いてきますよね。だから国民に対しては早目に本音をある程度言わなきゃ、私はもしそこに本音があるとすれば大変なことになりますから、ぜひもっと本音でこれから各大臣頑張っていただきたいと思うんです。 通産大臣、大臣の所信表明演説の二ページに、経済見通しの問題でございますが、「円高デフレを克服し六十二年度政府経済見通しである三・五%成長の達成を図るため、早急に実効ある緊急経済対策」、ここは「緊急経済対策」というのが入っておるんですが、これは目標で、大臣の強い決意というのは、これで何が何でもやるということですかいかがですか。
○国務大臣(田村元君) 既に新聞等でごらんいただいておると思いますが、新聞は必ずしも極めて正確であるかどうかというのはこれは別問題として、閣議の席なんかで私は相当激しいことを申しております。何といっても、もう一言で申せばこの緊急経済対策というものは、現実に相当幅のGNPを押し上げるものでなければならぬわけです。でございますから、それには中身の濃いものをということでございまして、とにかくもう小出しはいかぬということだと思うんですよ。よく料理で言うじゃありませんか。私の母なんかよく昔言っておりましたが、後塩は効かぬと言って、後から塩を入れたって余り効くものじゃない、塩は最初に効かすものだとよく申しておりましたが、私自身は不退転の決意で臨みたい、このように思っております。
○梶原敬義君 本当に後塩は効かぬと思いますね。問題は、私はやっぱり遅かったんじゃないかと思うんです。今五兆円投入するなら、もう二、三年前にどうして——三年前の一兆円なら二兆円ぐらいの価値があったかもしらぬ。今になって、増税なき財政再建、行革路線でやるやるとずっと言ってきて、そして今アメリカや貿易摩擦でやるという。なぜもっと前に何回も議論する中でやらなかったのか。どうもこの辺が納得できないんですよ。せっぱ詰まって今ごろ言うということは。この点はいかがですか、経企庁長官。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生の御指摘の点は御理解するものでございますが、この六十一年度について申しますと、先ほど申しましたように、この一年間の円高の推移が、率直に申しまして私どもの予想を超えたものでございまして、それが再三申し上げておりますように、企業の心理に相当なマイナスの効果を与えたし、また経常収支のバランスから考えて、いわゆる外需要素が大きくマイナスに効いてきた、こういうことでございますので、このような円高がなかりせば、六十一年度GNPについても相当のいい線をいったんではないか。少なくとも昨年の九月からの総合経済対策、内需面においては相当の効果をもたらしたと判断しているわけであります。 ただ、先般のパリにおけるOECD閣僚理事会におきましても、田村通産大臣お見えになって、いろいろ向こうの経済閣僚とお話ししていただいたわけでございますけれども、やはり世界が求めている国際通貨の安定というものが、ドルの安定、円の安定が達成できるためには、国内もさることながら、国際的に見て日本はいよいよ本格的な内需拡大政策に財政主導で乗り出したと、こういう信頼を国際的な市場筋が持たなければ円ドルの安定もない、こういうことというふうに私、田村大臣から承りました。そういうことを考えますと、やはりここはひとつ正念場であって、単に国内の内需だけでなしに、為替安定のためにも、国外に対しては相当積極性、説得力のある内需拡大政策に、少なくとも緊急臨時的な措置として取り組む必要がある、こういうことで今いろいろ各省の御協力を得ながら対策を作成中でございます。
○梶原敬義君 経企庁長官、円高がもしここまでいかなかったらよかったと言われる。しかし、私も民間の出身ですが、目の前で企業の社長が何人も更迭されるのに立ち会ってきました。いろいろなそういう倒産の例も、更生会社も立ち会っていろいろやってきましたが、国の大臣なら見通しがちょっと違ったから、だからこうだったということが許されるのか一般社会通念上。私はもうずっとお話を聞いておると、それはまずどうにもならなかったということに対してはちゃんと認めて、そこから、じゃどうすべきだったのか、どうするかというところへいかないと、あなたのお話を聞いておりますと、それはもう本当に質問したくなくなるんですよ。 何も、見通しが狂ったことに対してもああじゃない、こうじゃない。経済成長率がこのくらい下がってきたことにしても、これもああじゃない、こうじゃない。あるいは五兆円を、今ごろ五兆円お金かけるなら、もっと前にかけたらどうかということに対しても、見通しの問題で違うと言う。これは僕の常識が間違っておるのか、社会的な通念が間違っているのか。あなたが正しいのか、ちょっとどうなんですか、長官。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 大変厳しい御指摘でございますが、私どもは、昨年の経済におきましても、確かに先生御指摘のような輸出関係企業または輸出関連地域において、大変厳しい深刻な状況が雇用問題を含んで発生していることは十分理解をしてまいったわけでございますが、しかし、片っ方で円高によって裨益を受けた分野もあるわけでございまして、その景気の二面性が同時進行に進んでおった、こういうことでございます。ただ、そういう形で一年推移してみて、ここに至ってやはり相当大幅な財政主導による対策を講じていかなければ、先ほど言いましたように、円の価値を安定させるためにもどうしても必要である、こういう認識に立ったわけでございますので、ひとつ通産大臣からもいろいろ御指導を受けながら、有効、実効のある対策を早急に作成して実行に移すべきである、かように考えている次第でございます。
○梶原敬義君 長官のきのうの所信表明の一ページに書かれておるんですが、ここにやっぱりいみじくも物の見方の差があると思うんです。 ちょっと読んでみますと、「我が国経済は、現在、個人消費、住宅投資を中心に国内需要は緩やかに増加する一方、輸出が弱含みであること等から景気は底固さはあるもののその足取りは緩やかなものとなっており、このところの円高の進展等から景気の先行きには不透明感が生じております。」と、今はいいが、先が悪くなるというような表現になっております。これはいかがですか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 円レートが不安定であり、そしてさらに円高が進むような状況にあれば、先ほど来申しておりますように、輸出関連の民間企業を中心として設備投資の減退がさらに進み、そしてそこから景気が一段と悪化をしてくる懸念がある、こういうことでございますので、やはり一つの今後の経済運営の大きなポイントは、いかにして円を国際的に安定させるかである、こういうことであります。そのためには、先ほど来申しておりますように、日本の内需拡大政策に対して、世界の市場筋が信頼を持つということがなければいけないということでありますので、内需拡大は内需拡大であると同時に、円レートの安定のためにもこの際思い切ってやる必要がある、こういう認識でございます。
○梶原敬義君 円レートの問題に移りましたから、質問する予定でしたので今から質問します。 これは二ページにこう書いているんですね。「今後とも各国との政策協調に努めつつ円レートの安定化を図る一方、急速な円高の進展等により影響を受けた地域等に十分配慮しつつ、以下」云々、こうなっている。「円レートの安定化を図る」という表現は非常にあいまいですね。ということは、百三十円台の現在で安定していいというのか。いや百六十円台というのか。私はもっと、百七十円台、百八十円台で安定してもらわなきゃ困ると思うんですけれども、一体その安定というのは何をして円レートの安定か。百三十円台のことを指しているんですか、どこを指して安定と言っているんですか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 適正なレートがどの辺だということについては、これはいろいろ議論があるところでございますが、私どもは、少なくともこれ以上の円高を防ぐべきである。ですから決して百四十円の今のレートがいいということではないんでして、これ以上円高になるようなことは絶対に防ぐべきである、こういう基本的な考え方でございます。
○梶原敬義君 私は、今の百三十円台、百四十円前後、この辺の円高の今の状況が推移をしたら、それは大変な状況、雇用状況もそうですが、これで生き延びていける企業はどことどこがあるんですか。そして、東京周辺というのはいろいろあるでしょう、しかし地方は一体どうなるんですか、この点どうお考えですか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) かつて百七十円のときにもこれはもう高過ぎる、こういうことで議論がございましたのが、さらに六十円、五十円、こうなってきているわけでありますので、これがもう日本のほとんどの産業に大変深刻な影響を与えていることを私どもは理解をしております。 経済企画庁で、実はどの程度の円でどの程度の企業が影響を受けたかということについて分析をしたものがあったと思いますが、各企業にアンケートをいたしまして、アンケートで調べたところが、平均で百七十五円がもうぎりぎりの線だと、こういう回答を受けております。
○梶原敬義君 通産大臣、場合によれば、今の企画庁長官の答弁は、今のような状況で安定すればまあ何とかなるんじゃないかというニュアンスであったけれども、大臣もそういうお考えですか。
○国務大臣(田村元君) 今のままで安定されたらそれは大変なことなんで、それは安定じゃなくて、日本にとっては不安定なままで固まってしまうということですから、これは大変なことでございます。 やはり経済の基礎的諸条件が満たされる形でのレートで安定してもらわなければいけない。もちろん業種、業態によって、幾らがいいかどうかということは、それは違うかもしれません。一概に言えないかもしれませんが、私は今アンケートのお話を聞いておりまして、私はこのアンケートの話は初めて聞いたのですが、私はかつて百七十円プラス・マイナス十円ということを、閣僚として言っちゃいかぬことを言ったんですが、それが間違っていなかったということを何か立証されたような感じでございますけれども、まずこれ以上の円高を防ぐことが第一のことでございます。同時に、企業がうんと合理化をしても、なおかつ持ち切れないというような姿だけは何としても避けなきゃならないというふうに思っております。
○梶原敬義君 私もそうだろうと思います。 ある電気部品の下請メーカーでございますが、大手の下請をやっているんですけれども、だんだんやっぱりたたかれて、それで農家の婦人労働力を使っておるんですが、もうどこをどうしようとしても最初から採算割れだというわけですよ。もう手がない。取引もこっちからお断わりしたという話もあるんです。それは一つの例ですけれども、今、大手の企業でも百四十円台でやれるところはないでしょう。 そこで、合理化をする場合に何をやる、結局人を減らすことでしょう、一番大きいのは。そしてどこかに失業者がまた出る。それじゃどこか三次産業へ行ったら、またそこでだれかを押しのけていく、そういうような悪循環の繰り返しが今進んでいるわけです。 私は、今の円高がファンダメンタルズの反映だとよく皆さん言われますけれども、実際には労働時間だって非常に日本は長いし、それから、もう中小企業やあるいは中小零細あるいは大手の企業でも輸出関連の企業というのは非常にもう厳しいし、合理化ももうやれるだけやっている、こういう状況なんでしょう。だから、今まさに必要なのは、一体円はどこ辺で持ちこたえなきゃならないのか。下がって安定すればそれでいいというものではなくて、日本の経済のためどこ辺で円はとめなきゃならないかということを本当に読んだ立場に立って政策を打たなきゃならぬのじゃないかと思うんですが、どうもこの辺がぼやっとして、ああああ言っている間に結局しわ寄せは国民にきているわけですよ。円高のメリットの問題について後でもう一度私は聞きますけれども、この点についていかがですか、長官。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 再三申しておりますように、これ以上の円高は絶対に許すべきではないと、こういうことでございますが、それは可能かどうかということでありますけれども、私は、日本は確かに国際収支、貿易収支で一千億を超えるような黒字を昨年記録したわけでございますが、一方、日本からの長期資金の流れが一千四、五百億ドルにもうなっているわけでございます。したがって、一千億ドルのドルを稼いで、さらに四、五百億上回るほど長期資金として投資をしているわけでありますから、それだけの関係を見ますと、むしろ本来なら円安要因なわけであります。 それがなぜ円高になるかといったら、短期資金が逆に来ているわけですね。短期資金がなぜこっちへ入るかといったら、それは大幅な経常収支の黒字が続く限り基本的に円高傾向であろうというから短期のところへ流れるのであって、そこでもしもこれから内需拡大政策によって今年度の経常収支の黒字が、一千億ドル、九百億ドルの黒字が一挙になくなることはないと思うんですけれども、これが百億ドルであれ百五十億ドルであれ減り始めた、日本の貿易収支、これが減り始めたということになれば、この資金の流れは変わってくると。変わってまいりまして、そして私は、円高に歯どめがかかるだけではなしに、円レートのいわば調整が進む、いわゆるファンダメンタルズを反映する形の調整が進むものと確信をしておりますので、そういう意味で円レートを安定し、そしてもとへ戻すためにも、何としても内需を拡大し、そして国際収支の黒字を減らす方向で経済運営をしなければならない、かように考えておる次第であります。
○梶原敬義君 僕は考え方が間違っていると思うんですよ。どこにポイントを置いて判断して対応していくかという観点が違う。国民の立場やあるいは中小企業や、あるいは輸出関連座菜や下請の企業や、倒産するところや、そこに観点を置いて判断するかどうか。それはだから、ポイントが違うから、あなたここの中に、いいですか、一ページに、「先般の総理訪米における為替安定のための日米合意等一運の各国との政策協調の努力は、為替相場の安定をもたらし、内需拡大」云々と、こう書いてある。総理が行ったぐらいで——これあなた、今どんどん逆に下がりよるじゃないですか、ドルは。だから、やっぱり何でも安く安定すればいいというものじゃないですよ。 次に移りますけれども、今の厳しい状況を言います。 私、今度、セメントの関係で九州の地域を二カ所ほど、私の地元も見てまいるんですけれども、これは逆にNICSからの追い上げも、韓国と台湾からの追い上げもありまして、小野田セメントでも千三百人おる工場労働者を今度六百五十名にするという提案をして、六月一日からそれをやろうというのです。半分ですよ。大分にある工場が四百人ぐらいを百七十名ぐらいに強引にこれを下げていく、何年かの間に。こういう状況なんです。それは親会社です。そうすると、その下の関連のところには、親会社から今度は出向とかなんかでまた行って、下を今度またもう玉突きみたいに恐らくなるでしょう、これはセメント。 鉄鋼の方も大変な状況ですね。下請入れまして大変な状況。半導体も大変。そういう状況はもうどうしようもなく出てくる。造船については、これはもう円高の関係やなんかで競争に勝てない。私のところの地元はもう早々と和議申請して倒産をいたしました。大変な雇用不安なんですね。特に関連する中小企業がいっぱいありますから、そこはもう大変な打撃。これは和議の方向でいっておりますが、親会社はいいとしても、関連とそこの労働者というのは大変な状況ですよ。 また、全く直接関係ない印刷業者の人が、この前ちょうど帰っておりましたら、月曜日でしたか、国民金融公庫に金を借りたいんだがと言ってきた。よく聞いてみますと、四千万円ぐらい借金があって、土地とビルを買って、そして印刷業を細々始めてやっている。これは円高と直接関係ないですよ、今の不況局面の話ですが。そのうち四千万借りている。五百万の国民金融公庫から借りた金が、もう今百万ぐらいに減っている。あともう一度五百万に借りかえたいんだと、五百万にしてもらいたい、月十万円ぐらいの返済で。金融公庫に行ったけれども、うまくいかぬということで、私も金融公庫の支店長に、何とかなるものなら検討してほしいということでお願いをしたんですけれどもね。そこで、この四千万の設備資金やあるいは建物を買ったときに借りておる金というのは、地元の信用金庫から借りている金利が何と九・八%です、九・八%。そういう高い金利を背負って、何とか一切借りかえてやりたいんだけれども、それはできませんと、こういうことでふうふう言って今やっているんです。こんなところが多いんです。最近、土木関係が少しはよくなりましたけれども。 さっき労働省が言いましたように、有効求人倍率は〇・四前後ですね。非常に厳しいんですよ、状況は。そういう状況がずうっと前々からいっぱい出てきておる状況の中で、これ円が百四十円台で安定をすればいいというものじゃ私はないと思うんです。少なくとも企業のアンケートの百七十五円かそこら辺までやっぱり戻す腹を一体どうするかという、大臣、そういう決意を固めていただかなきゃいけないと思うんです。長官、少しは理解していただいたと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生、私最初に申し上げておきたいのは、これの御説明をしてまいったのは、マクロとしての対策のお話をさせていただくわけでございますので、各地域地域の問題につきましては、今度の予算の前倒しの場合もそうでございますし、当然引き続いて緊急経済対策で大型補正予算を組んで対策をさらにプラスするという中でも、当然これは不況地域、企業城下町、そういった地域地域の実情に応じながら、そちらに重点的な予算の配分をさせていただこうと、こういうことで考えておりますし、また通産大臣にお願いをして、そうした地域の中小企業のためのいろいろな諸施策についても十分のことをさせていただこうと、こういうことで考えている次第でございます。 そうした対策を十分踏まえながら、私も先ほど申しましたように、どうしたら円が安定し、そしてできればもとに戻すことができるかということは、結局は日本が国際収支の改善に具体的に入って、実績が出たということが、円やドルに対するいわば市場筋が、改めて今のレートに対し見直しをしてくれることになると思いますので、要は内需拡大とそれに基づく経常収支黒字幅の改善、これが円レートを安定化させ、そしてもとへ戻すための基本的な条件である。そのためのことをしていきたい、こういうことでございます。
○梶原敬義君 時間がありましたち、黒字幅の改善のやり方等についても、私意見があるんですが、後でお聞きをしたいと思うんです、どういうようにやっていくか議論をしたいと思うんです。 ちょっとその前に、円高差益の還元の問題につきまして、先ほど差益が十八兆幾らと、それで十兆八千億ですか、還元ができた、約六〇%と、こういうお話がありましたが、デメリットですか、円高による打撃は、逆に言うと、お金で言いますと今何兆、何兆というような、想像するような項目で言いますと、一体どうなっているんですか。
○政府委員(勝村坦郎君) 一応お答え申し上げます。ちょっとただいま正確な数字は手元に持ってございませんが、ただいまのお尋ねは円高のメリットに対してデメリットをどう評価するか。 デメリットと申します場合に、GNPに対しますデメリットという問題が一つございます。それからもう一つは、対外資産に対する差損をどう評価するかという問題がございますが、前者について申しますと、一般的に、理論的に申しますと、円高に伴いましてのメリットよりも、GNPに対しましてはデメリットの方が大きいのが通常の場合ではないかというふうに言えるわけでございまして、円高差益が十四兆円というようなことをたびたび物価関係の計算で申し上げておりますが、GNPのマイナスがどの程度だったかというのは、これはちょっとモデル上の計算しか出ませんので、何とも申せませんが、実際は輸出が数量ベースでほぼ横ばいになってしまった。六十一年中はやや減少いたしまして、その後、現在弱含み、横ばいという状況でございます。 それからもう一つは、輸入が数量的に増加をいたしまして、これは国内生産に対してそれだけマイナスの影響を与える。もちろん消費者はこの安い輸入品が入ってくるということでメリットを受けるわけですが、国内の生産者といたしましては、やはりそれだけ競合の度が強くなるということがございまして、ちょっとモデル上の数字がどうなっているか、ただいま正確に記憶いたしておりませんけれども、理論的に申しますと、GNP上への影響としては、デメリットの額の方が大きいのが通常の形ではないだろうかというふうに考えます。
○梶原敬義君 私もそう思います。また、失業問題なんというのは計算できない問題がありますよね。 外債のお話しがありましたけれども、生命保険会社が七社で一兆四千億円の差損ですか、出しているというのが新聞に出ておりました。いろいろ聞いておりますと、約二兆円為替差損が生保で出たと。合計しますと、いろんな人がいろんな言い方をしますが、十兆円近く出ていると言うような人もありますね、この円高によって。その辺についてどのような見方をされておるんですか。
○政府委員(勝村坦郎君) お答えを申し上げますが、いろいろな試算があることは私どもも承知をいたしております。ただ、先生御承知のとおり、六十年末で日本の対外純資産というのは千三百億ドルというふうに言われておりますが、これは対外資産が、ただいま正確な数字を覚えておりません、大体資産が四千五百億ドルぐらい、負債が三千億ドルぐらい、その差し引きといたしまして大体千三百億ドルという状態でございましたけれども、昨年一年中に経常収支の黒字が八百六十億ドルありましたので、対外純資産は現在では二千億ドルをあるいはやや超えるかというような状態ではないだろうかと思うわけであります。 これは、純資産だけを対象にいたして計算するということはちょっと無理がございまして、対外グロスの対外資産がドル建てであるか、あるいは円建て、その他の通貨建てであるか、あるいは購入時どういう条件で、どのレートのときに購入をして、またそれをそのまま持ち続けているのか、途中でそれを流通市場に放出をして資産の買いかえをしたのかどうかでございますね。それから、負債の方も同様なことを考えまして推計をいたしませんと、正確な差損、差益というのは出てまいりません。 そういうことで、私どももちょっとその正確な数字をつかみかねているわけでございます。これは大蔵省の国際金融局でも、ちょっと正確な推計はとても無理であるという御答弁を従来からしていると思います。 ただ、一例を申し上げますと、あれは日本興業銀行の推計だったと思いますが、八二年から八六年までを通して見ますと、必ずしも差損は生じていない。むしろ差益が生じているという計算をいたしております。 それはなぜかと申しますと、為替レート上ではマイナスの差損をこうむっておりますが、債券価格が相当な上昇をいたしておりますのと、内外金利差が、これは時期によって違いますが、かなりのものがあったということで、八二年に買ったものを通しで持っておればむしろ差益が生じている。ただ、計算をいたしてみますと、六十年の年末に急速に円高になりましたが、その直前、五十九年、六十年あたりに買った国債を、アメリカの国債でございますが、そのまま持ち続けたとするとこれは明らかに差損を生じている。これは仮定の計算でありますが、こういうような計算ができるわけであります。いろいろな問題がございまして、一概に対外資産に対する差損がどれだけ生じたかというのは、簡単にはちょっとお答えいたしかねる状況でございます。
○梶原敬義君 大蔵省いらっしゃいますか。 そちらからいただいた数字でございますが、「生命保険会社の特別損失等」という題目になっておりますが、昭和六十年度における財産売却損と財産評価損と為替差損を入れまして、九千四百四十三億円、約一兆円近い。それから、六十一年度の見込みとしては約二兆円ぐらいになるのではないだろうかというお話でございます。これは間違いございませんか。
○説明員(谷口孝君) 先生ただいまお尋ねございました生保会社の為替変動による損失の金額でございますけれども、まず為替変動のみによる損失金額だけを取り出すということはできないわけなんですけれども、内外投資合計で見ました財産の売却損、評価損、為替差損、これの合計が、昭和六十年度につきまして、先生おっしゃいました九千四百四十三億円ということになっております。 昭和六十一年度につきましては、また決算は確定しておりませんので、確定した数字は申し上げられませんが、おおむね二兆円程度と予想いたしております。
○梶原敬義君 今の断面を輪切りにしてみますと、まあ差益云々の話はありますよね。生保やその他損保も、あるいは証券会社も金融機関も、外債やなんか買っておるでしょうが、そういう面の差損、あるいは売却損、そんなものを見ますと、それは大変な金額に、人によりますと十兆円ぐらいあるんじゃないかと、こう言う人もおるわけです。だから、そっくりもうかったわけじゃないんですよ。日本はもうかったというんじゃなくて、入ったドルの大半というのは、今の断面を見ると、そっくりまた向こうに取り返されているような形になっているんじゃないんでしょうか、大臣。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 今調査局長の話もございましたけれども、この資産価値の場合は、計算でそうなっているわけでございますが、輸出代金が十分にドルに転嫁されないで、円として受け取りの減、これは現実にもう輸出関連企業の収入減という形で円高デメリットがもろに効いてくるわけであります。したがって、そういう現実の円高デメリットと、それから私が最初申しました円高のメリットがそれぞれ経済に浸透していきます経路が異なっておりますので、それがいわゆる私どもの言っております景気の二面性という形であらわれている、こういうことだと思います。しかし全体として、日本の経済が当初予定したような成長率で成長し得ない、こういうことはやはり円高の影響の強さを指示するものである、かように理解をいたします。
○梶原敬義君 生保の関係で、六十一年度が約二兆円強、あるいは六十年度の九千四百四十三億円というのは、大蔵省にお尋ねしますが、これはもう損金勘定に、各生保は税金の対象にならない特別損益、損失として、経費としてこれは落とせる内容のものですね。
○説明員(谷口孝君) 先生ただいま御指摘のとおりでございまして、これは損益計算上の損失になる金額でございます。
○梶原敬義君 ですから、先で利ざやが幾らになるとかなんとかという問題より、生保とすれば、これは年々処理してしまった問題になるわけですね、この問題は。 だから、私はいろいろなことを言いましたが、今は財産を売却をして何とかつじつまを合わしておりますけれども、こういう状況がずっと続いていけば、結局は最終的には、生命保険会社でも、保険を掛けている国民にやっぱり配当や何かでしわ寄せが来るようになる、どんどん円高がさらに進んでいけば。だから私は望ましい円の相場というものをやっぱりもっと真剣に考えて、それを維持するために一体どうするのか。逆にそういうふうな観点から政策を力強く立てていただかないと、あれを見てもこれを見ても、あなた方はいいことばっかり先に言いますけれども、もっともっといろんな悪いことがたくさんあるわけですが、どうも私は納得ができないんです。 それで、経企庁長官にお尋ねしますけれども、こういうような状況の中で、今、日本にあるお金というのは、アメリカを中心に海外に出ておりますが、今東京は物すごく土地の暴騰でございます。しかし、地方都市はそんなにまだ上がっていないんですけれども、将来今度は金が日本に返ってくるようなことになれば、こういう状況なら地方都市もこれまたずっと暴騰するようなことになりかねない。早目に対策を打たなければならないんではないかと思うんですが、いかがですか、地価問題。
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生の御指摘のとおりでございまして、私どもはこの金余り現象というものをいつまでもこの状況で続けることが、やはり株であれ為替であれ土地であれ、そんなに天井知らずに上がるはずはないではないか。したがって適当な形で、こうしたマネーゲームに回っている金を、もっと具体的な国内の建設や住宅の建設や、そういったことに回すための努力をしなければならないのじゃないか。 実は、今準備中の緊急経済対策の中においても、補正予算によっていろいろ地方の社会公共基盤の整備を図るわけでございますが、それに際しても、総理からも御指示がございますが、できるだけ土地代金で取られないように、実際お金の実効のあるような公共事業にそれを有効に使うことを十分に考えてほしい、こういうことでございますし、また、住宅なんかにも積極的にお金が回るように、いろいろな住宅建設優遇措置についても今検討中でございます。
○梶原敬義君 時間が来ましたのでこれでやめますが、通産大臣、この大臣の所信表明演説の中には、中小企業問題が随分ページを割かれて書いておられます。毎回でございますが、やはり輸出関連産業の下請にしても、あるいは中小企業全般にとっても、いろいろ政策を、いろんなことを手を打つということも確かに必要なことでしょう。しかし、それよりも何よりも大事なことは、やっぱり内需を拡大し、拡大した内需が中小企業に波及するように、そしてさらに今の円相場の問題、もっと円を下げる、このような形で大きいところを抑えなきゃ、幾つか中小企業に対する手当ての問題を挙げても、なかなかそれは効果を発揮しないと思うんです。そういう点でひとつ頑張っていただきたいと思います。それが第一点。 それからもう一つは、地方の問題ですけれども、先ほど地方の公共事業の配分の問題なんかもいろいろお話がありましたが、私のところなんかは、大分から鹿児島に行くのに、汽車は単線ですよね。だから、上りの汽車が途中で時間がうまくいかなきゃ下りの汽車を待ったり、下りが上りを待ったりしてずっと下っていく。それから大分から宮崎、鹿児島に抜ける道というのは一車線ですよね。上り下り一車線で、片道一車線、そういう状況なんですよ。これはまあ大分とか宮崎だけじゃなくて、北海道だってそういう状況、東北だってそういうところはたくさんあると思う。もし緊急経済対策でやるならば、この際ですから将来のためを考えて、こういうところを一体どうするのかこことこことここは、この際緊急対策でやろうじゃないか、こういうように少し骨組みを大きく決めていただいて対処していただきたい。要望ですが、通産大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(田村元君) 私は、今は運輸大臣じゃないものですから、ちょっとこういうことで具体的なことを申し上げることは、はばからねばなりませんが、日豊本線なんというのは、幹線だけに外すに外すことができず、しかもあれぐらい不便な線はないという典型的なものだと思います。ですから、当然何らかのことはしなきゃならないんだろうと思いますが、ただ、この緊急経済対策というものと、後々営業としてペイするかどうかということが絡む問題とを直に結びつけることがどうであろうかという問題は、あるいは残るかもしれません。けれども、いずれにいたしましても、幅広く、いかに経済波及効果を上げて国民の懐をよくして、つまり内需を拡大する。平たく言えば、景気をよくして、そして外為市場へ強い影響を与えるような、外為市場が敏感にそれに対応してくるような、そういう内需拡大策というものはぜひ必要だと思います。 内需拡大策というもので一石何鳥もねらわなきゃならない。国内の景気はよくする、外国もそれで喜ぶ、しかも為替レートは適正な方向へ向いていく、こういうような一石何鳥もねらう。そのためには、より濃密なより大型のものでなければならぬ、内外を問わず、すべての人々、国々から評価されるものでなければならぬ、このように考えております。でありますから、そういう点で近藤君も非常に熱心でございますし、建設大臣なんかもこれにかけておるような感じがいたしますが、経済閣僚、特に経済閣僚が互いに手を携えて大いに頑張りたいと思っております。
○梶原敬義君 委員長、ちょっといいですか、一つだけ。
○委員長(前田勲男君) 梶原君、短くひとつ。
○梶原敬義君 労働時間の問題です。労働省お見えですが、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、カナダの労働時間の日本との最近の比較だけちょっとお願いしたいんです。 それで、長官、通産大臣、お願いしたいんですが、この際労働時間は抜本的にやっぱり短くするような、法律か何かで規制をかけるような方向をとるべきだと思うんですが、それだけ私も意見を申し上げまして終わりたいと思うんです。
○説明員(小島迪彦君) 労働時間の国際比較でございますが、これは各国の統計がかなりまちまちでございまして、完全に比較するというのは難しいんですが、その辺データの基準をそろえまして推計ということでやってみた数字を申し上げたいと思います。 推計でございますが、これも製造業の生産労働者ということで、代表的な職種をとりまして申し上げます。 一九八五年の段階ですが、日本が二千百六十八時間、これは年間でございます。年間の実労働時間ですが、二千百六十八時間でございました。それからアメリカが千九百二十四時間、それからイギリスが千九百五十二時間、それから西ドイツが千六百五十九時間、それからフランスが千六百四十三時間、それからカナダでございますが、カナダが千七百五十時間でございます。
○向山一人君 私の持ち時間は三十分でございますけれども、最初に御了解を願っておきたいことは、ちょっと風邪を引きまして、途中でせき込んだりする場面があるかもしれませんが、大変失礼になりますけれども、あらかじめ御了承をいただいておきたいと思います。 さて、G5前の、数年前の私ども日本の経済情勢は、当時私も産業界の一員としてやってまいりました経験から見まして、先進諸外国は非常に失業者も多く、また物価も不安定でありインフレに苦しんでいましたが、我が日本は本当に、物価も安定し、失業率も二%以下であり、経済が安定しているということで、私ども経済界でも、日本は、全く日本だけは極めて優良児だ、優秀な成績だ、こういうようなことを、実は自分たちもそんなことを考えながらまいったわけでございますが、そんなことから、いろいろな経過を反省しながら今日の状況を見ると、全くその当時こそ今日あるを知って行動しなきゃいけなかったなということを、今日しみじみと痛感している次第でございます。 そこで、私は昨日の田村通産大臣の通商産業行政に関する所見の発表を承りまして、まさに今日の日本はこのとおりである。このとおりであるけれども、さてこれをどう政策の上で実行できるか、またしていくか。これは大変な至難のわざであるわけでございまして、私は今日本の置かれている状態また通産行政の置かれている状態も、本当にこれはもうこの説明にありますように創造的、いわゆるクリエートする創造的な時期へ来てしまったと、革命的な時期を迎えたと言っても過言ではないだろうとこんなふうに思います。 そこで私は、自分の歩いた道を振り返りながら、二、三の問題を先にお尋ねいたします。 私は、五年ほど前から盛んに、経済団体の中で会議がありますと通産省からも係官がお見えになりますものですから、日本とアメリカとの貿易のアンバランス、いわゆる日本の貿易黒字を何とかして減らさなければ将来これは大変な問題になる、どうにもならない問題になるという予想から、ほとんど通産省の方には、私はもう決まって、この方法としていろいろ研究しましたけれどもうまい方法がないので、ただ一つ、アメリカとの貿易のバランスをとるために、当時日本の輸入額の約四分の一から三分の一は石油を中心にしたエネルギー源の代金の支払いでございます。だからこのエネルギー源が非常な大きな金額でございますから、アメリカと話をして、日米間の貿易のバランスを改善するためにも、何とかしてアメリカのアラスカの石油を日本へ輸入できるような方法を全力を挙げておとりになったらいかがですかということを、もういつの会議でも申し上げてまいりました。 これはもちろんアメリカ政府の方も立法措置を講じなきゃならぬ問題でもあるし、大変難しい問題でございますが、当時は石油の代金が非常に高かったわけです、今は下がってまいりましたけれども。しかしこういうことを実行していって、こういう積み重ねがやはり日米間の貿易収支を改善する道だと考えておりますけれども、これに対して通産大臣並びに、ちょうどエネルギー庁もお見えになっているでしょうから、私は五年間このことをいつも口にしてきましたけれども、お聞きになっておりますか。また私の考えているようなことに対する御意見を承りたいと思います。
○政府委員(野々内隆君) アラスカから油を輸入するという考え方は、日本にとりまして二つの意味があると思います。一つは今現在日本の石油の輸入は七割が中東に依存いたしておりまして、六〇%がホルムズ海峡を通っているという安全保障上非常に問題のある地域分布になっておりますので、アメリカという安定した地域をこれに加えるというのは、大変日本の安全保障上いい意味があるというのが一つと、もう一つは、御指摘のように、日米の貿易インバランス上意味があるというこの二つの意味がございますので、私どもとしましても、機会あるごとにアメリカ政府に対しまして、ぜひ現在の輸出禁止を解除するように働きかけております。 クックインレットにつきましては、非常にごく少量ではございますが輸出が認められまして、これは国際入札にかけられまして、たしか台湾でございましたかが落札をいたしました。これは少し高かったものですから日本に入りませんでしたが、総理あるいは各大臣がアメリカに参りますといつもこの問題を取り上げています。またエネルギー問題では、日米エネルギーワーキンググループという事務レベルの会合がございまして、この場合にも常にそういう問題を取り上げております。アメリカの行政府といたしましては、日本の言うことはもっともであると、したがってぜひ現在の輸出禁止というものを解除するような形で持っていきたいということを言っておりますが、何分まだ議会がそれに賛同いたしておりませんので、残念ながら輸出という状態に至っておりませんが、アラスカの州議会もぜひ輸出を認めるようにということを言っておりますし、いずれアメリカの議会もそういう方向に行くんではないかというふうに考えております。 ただ海運業者、労働組合が、自分たちが仕事をなくすおそれがあるということで反対いたしておりまして、安全保障上の問題その他いろんな問題がございますので、今直ちに輸出禁止が解除されるということにいくのは難しいかと思っておりますが、私どもとしてもあらゆる機会をつかまえて輸出解禁になるように働きかけしたいと思っております。
○向山一人君 大変明快に御答弁をいただきましたが、今まで機会があることに通産当局者に私はそういう御意見を申し上げましたけれども、そういう御返事は得られなかった。そこでその後に、ちょうど元駐米大使の大河原さんを講師に日経連のトップセミナーで頼みまして、大河原さんにやはり同じようにこの問題を、当時日米間の貿易関係は大体年額日本が三百億ドルぐらいの黒字の時代でしたから、何とかすぐアラスカの石油をいただくというわけにはいかなくても、そういう方針を立てて努力すれば相当程度、日本が仮に投資をしてそして精製をして売ってもらうというような方法をとればメリットも出るだろうし、そういうようなことはいかがなものですかと言ったところが、大河原さんは、いや実はその問題はレーガン大統領は賛成しているんだと、レーガン大統領は賛成しているけれども、アメリカの議会が反対が強くてまだ実現ができないというお話を聞いて、そんならこれはもう日本政府も本気になって、こうした問題を進めながらアメリカとの間の貿易収支の改善をやるべきではないか。 そうでなくても、何十年も前からソ連はチュメニの油田を日本に、パイプラインをウラジオストックまでつくってやるために借款を申し込んできたり、いろいろしてやってきているわけですが、そんなことを考えるよりも、アラスカの石油を日本が買うことによって、イランやイラクやサウジアラビアや産油国にはいろいろ影響もあるでしょうけれども、少なくとも一番大事な日本とアメリカとの貿易の改善に役立つものならばそういう方法をとるべきではなかろうか、こんなふうに常に考えて主張してきたわけです。 ただいまの御意見のように、今後何といってもこれはこちらから提案をして、そして相手の方がだんだんそういう方向へ向いてくるという形でないと、ただG5によって円が今のように上がって、そして貿易の黒字はずっと改善されるのじゃないかと私どもも思っておった。ところがその結果はなかなかいろんなファクターがあって改善されませんので、そんな意味からも、今後この問題を通産省としてもぜひひとつ実力大臣の田村大臣、実現できるように御努力を願いたい。こんなことを思いますけれども、大臣の御所見を承りたいと思います。
○政府委員(野々内隆君) この問題非常に歴史のある問題でございまして、一九七七年にアラスカのパイプラインが完成いたしまして、それでアラスカ原油の生産が本格化したわけでございますが、一九七八年に福田総理がアメリカにいらっしゃったときにこの問題が持ち上がりまして、それ以来日本政府としては常にアメリカに対して、日本向けに輸出を解禁してはどうかということを申し入れております。それで、アメリカの行政府並びにアラスカはそういう気持ちになっているわけでございますが、どうも議会そのものがなかなか動きませんで、レーガン大統領も中曽根総理に対して、ぜひそういう方向に持っていきたいけれどもなかなか議会が言うことを聞かないんだと、こういうことを言っておられたようでございます。これは基本的にはコマーシャルの問題ではございますけれども、私どもは安全保障あるいは日米の貿易インバランスという観点から、大変いいプロジェクトであると思っておりますので、ぜひ今後ともそういう方向でアメリカ政府に働きかけたいと思っております。 なお、石油製品につきましては、既に昨年輸入が自由化されまして、例えばガソリンにつきましては、日本のガソリン輸入の二六%がアメリカから入っておりまして、かなりアメリカも日本向けに輸出をしている状態でございますが、やはり量から言いまして原油が多うございますので、今後ともアメリカの行政府あるいは議会に対して働きかけをしていきたいというふうに考えております。
○向山一人君 次に、今日の日本経済の状況は、まさに大臣のおっしゃったように、大変な困難な状況に逢着していると思います。世界のGNPの一〇%を占める我が国の産業界、この日本の産業界の生産額の大体、もし通産以外の方が入ればわからぬとすれば、通産関係の数字でも結構ですから、生産額の何%ぐらいが従来輸出に向けられているか、お伺いしたいと思います。
○政府委員(杉山弘君) 突然のお尋ねでございますので、今手元に数字がございませんので、申しわけございませんが、後刻調査の上、御連絡させていただくということでお許しをいただけませんでしょうか。
○向山一人君 そういう細かいところまでは申し上げておかなかったわけですが。 そこで、どうしてそんなことをお聞きするかというと、世界のGNPの一〇%を占める我が国の産業が、仮に輸出関係が二〇%あるか三〇%あるかそれを今度は内需型に転換をしなきゃならぬ。これは言葉の上では言うことは楽だけれども、大体輸出している商品は、国内にはみんないっぱいになっていて、もう国内では消費できない。そうすると、輸出していた分だけは内需型に向けなきゃならぬ。内需型に向けるといっても、実は私ども産業界では何をやったらいいのかという問題で一番問題があります。 政府の六十二年度の予算が成立しましたので、通商産業政策も目を通して見ましたけれども、一番手っ取り早いのは住宅産業であろうと、こんなふうに思いますけれども、住宅産業で仮にやるとしても、住宅で一番困っているのは、例えば国民の中流以下の方々の住宅だと。中流以下の方々は、とても今の高い土地を買って何千万もする住宅を建てられるなんという状態じゃない。これは、日本のように自分でうちを建てて入るというような、こういう国でなくて、県や国が住宅を建てて、そして次から次にいい住宅を建てて入れてくるということで建築をずっとたくさんしていくならいざ知らず、唯一の目玉である住宅もなかなか実際問題として成果が上がるかどうか、多少の減税とかあるいは住宅の建築に優遇策をとってみてもなかなかこれは容易ではない、こんなふうにも考えますけれども、これに対して、予算も通過しましたので、六十二年度の大臣の演説にもございました通産政策に対するお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(杉山弘君) おっしゃいますように、内需中心の成長に移行すると申しましても、非常に難しい面が多々ございます。産業サイドだけで申しますと、最近までの急速な円高によりまして、輸出型産業、それから輸入の影響を受けます産業におきまして、輸出量の減少でございますとか、輸入量の増加、さらには安い輸入品の輸入によります国内市況の低落等々でいろいろな変化が出ております。これが内需型に転換するためには、そういった産業サイドの動きだけではなくて、今度は需要サイドにおきましてどうやって内需を喚起をしていくかということが問題でございまして、おっしゃいましたような住宅というのは、その有力な手段でございます。この関係では、私どもむしろ住宅関連機器の導入、あるいは住宅のリフォームといったようなものを中心にして、限られた土地問題の中で住宅投資というものがもう少しふえないかというようなこともいろいろ勉強いたしております。 それからまた、内需の中心は、何と申しましても消費でございまして、この消費を拡大をする、そのためにはどういうことが必要かということになってまいりますと、これは通産政策のあるいはらち外に出る問題かもしれませんけれども、週休二日制の普及でございますとか、先ほど来お話のございました労働時間の短縮といったような問題もあろうかと思います。また一方では、御案内のように、日本は社会資本の整備が非常に立ちおくれておりまして、こういった面に対して財政に期待するところも大きいわけでございますが、それだけでは十分でないということになりますと、民間事業者の能力活用といったようなこともこれから力を入れていかなければならない。 そういった需要面におきます内需拡大対策というものがありませんと、産業サイドにおきます供給構造の変化とマッチをしてまいりませんので、この点につきましては、通産省の独自の政策としてやり得るものというのは、需要サイドにおきましては、あるいは限られたものになるおそれもございますが、関係省庁の御協力等も得まして、需要サイドにおきます内需中心の成長という問題についてはこれからも力を入れていきたいというふうに考えております。
○国務大臣(田村元君) 今、産政局長がやや遠慮ぎみに物を申しましたけれども、私は内需拡大策等を策定していく場合には、むしろ通産省が牽引車にならなきゃいけないと思うんです。これはどの省の仕事である、これはどの省の仕事である、そういうふうに遠慮する前に、これはあなたの省の仕事だから、我々も大いに協力をするから頑張ってもらいたいと。例えば、一番手っ取り早い内需拡大策は、おっしゃるとおり住宅だと思うんです、建築だと思うんですよ。また社会資本投資だと思うんです。でございますから、そういう点で通産省は政府全体にかかわりのある景気担当省だという気位を持って、同時に義務感を持ってやるべきだと、このように思うのであります。 例えば、これは簡単な話で難しい問題は、内需拡大をよほどやりませんと、輸入促進をうんとやったときに日本の企業がどえらい影響を受けるんですよ。そういう問題がございます。でございますから、輸入を促進するのにまず内需を拡大して、需給のバランスを十分にとって、そして進めていかなきゃならぬというような問題も例えて言うなればございます。まさにおっしゃるとおのでありまして、我々も大いに頑張らねばと、今思いを新たにしておるところでございます。
○向山一人君 大臣から大変力強い御答弁をいただきまして、全く私も内需拡大はしなければならぬと、通産がリーダー役になってこの問題と取り組んでいただけるということに対しては、非常に大きな期待をかけております。 そこで、予算が通過しましたので、今度は補正予算の関係で、五兆円以上の補正予算で景気浮揚策を図ろうというふうな関係でもあり、また通産の計画でも、経済成長率は三・五%程度を年々維持したいと。これは私の要望ですけれども、今のような、受注が非常に少なくて、そして雇用の問題が大変悪化している、こういう状態の中で三・五%の経済成長率を掲げてもなかなか容易じゃないと。 これは経済企画庁のいわゆる新しく出た前川レポートでいきますと、一九九〇年の前半を目途として一応計画を立てたと、こういうことでございますから、大体通産の方では、六十二年から四年か五年ぐらいずつに区切って、最初の四年か五年は私は無理をしてみてもこれはなかなか難しい。今言うように、内需と言ったところで何をやればいいかということも正直わからずに、それに先行きの景気の不透明な状態も加わって、全く暗中模索的な状態で、今一生懸命民間は悩み続けております。そんな状態ですので、いろいろ申し上げたいけれども、この計画をもう少し四年ぐらいに区切って、経済成長率も出して、そしてもう少し具体的な計画をお立てになられたらいかがなものでしょうかと、こんなふうに考えております。 時間がありませんので、大臣、中小企業の振興を図らなきゃならぬということで、中小企業については予算の上からも大変金額的にも多く計上していただいてございます。ただ、中小企業が一番困っているのは、時間もあと数分しかございませんが、公正取引委員会の方に、下請をやっている企業に対する支払い遅延防止法というのが昔からあるけれども、なかなかあれが法律はあるけれども実施されない。親企業の方で物を買う場合、下請の関係にああいうことは指導してやらないから、下請の関係にもっと徹底をしてもらいたいということ、支払い遅延防止法には相当なきつい、物を買ったら三カ月以内にちゃんと支払いをしなきゃいかぬとか、それ以上おくれた場合には公正取引委員会の決めた金利をつけて支払いをしろとか、あるいはこれに違反した者は公正取引委員会へ申し出ろとか、いろいろ決まっているけれども、実際には実施されていない。 これをもっと市町村やその他行政範囲や諸団体を加えて徹底するようにして、そして今非常に困っている中小企業、本当にもうあすどうしたらいいかと言って、本当に首つりしなきゃならぬほど困っている中小企業のために、せめて今ある法律を活用できるようにぜひひとつやってもらいたいと、こんなことを強く要望しますが、公取の関係でひとつ御返答を願いたいと思います。
○国務大臣(田村元君) まず第一問の方でございますけれども、四年間と今おっしゃったわけですが、率直に言ってここ三、四年が一番大変だと思うんです。 今、局長から答弁させようと思わぬでもなかったのですが、どうしても遠慮も出ましょうし、事務的にもなりましょう。でございますから、私からあえて申しますならば、まず我々が、これは閣僚としてこういうことを言うのは無責任かもしれませんけれども、それが今の実際の世の常でございますのであえて申し上げるならば、まず第一は、今度の内需拡大策が、特に補正予算がどこまで真摯なものであるか真剣なものであるかということを見きわめることがまず第一だと思うんですね。そのためには我々頑張らなきゃならぬのですが、それを見きわめて、それをたたき台にして、そして一年一年を繰っていくということだろうと思うんです。 ここ三、四年が正念場ということでやっていかなきゃならぬ。時々新聞ざたになります閣議での私の激しい発言というのは、もうその初年度の、今度の日本じゅうというより世界じゅうが注目しておる内需拡大策というものを本当に胸張って示せるようなものをつくりたいという一念なんですよ。まずこれを立派なものにして、それをたたき台にして将来を展望したい、このように思います。
○政府委員(柴田章平君) 今、先生から厳しい御批判をいただいたわけでございますが、私どもも下請法の運用に当たりましては、年々親事業者に対して一万社、それから下請事業者に対しては五万二千社、定例的に調査をして、何とかその中から違反事実がないかどうか懸命に努力をして、その対応をしております。 ただ、そういった実態調査と同時に、私どもやはり下請法を皆さんによく知っていただいて、未然防止に努めていくということを非常に大事だというふうにかねがね考えておりまして、そういう意味でも、下請法がどういうふうに運用されなければいけないのか、親事業者がどういう行為をしたらいけないのかということをかねがねはっきりさせたいということであったものでございましたけれども、このたび新しく下請代金支払遅延等防止法第四条第一項に関する運用基準というものをつくりました。 つくりましたというか、改定をいたしたわけでございますけれども、その中で、なるべく具体的に、こういう行為は下請法に違反するんですよということがわかりやすいようにということに配慮をし、かつまた最近の経済情勢の変動あるいは下請企業の実態というようなものを十分踏まえながら、新しいそういった運用基準をつくって、その普及活動に今努めているわけでございます。 そのほか、今先生からもお話ございました下請企業、全国に散在をしておりますので、やはり都道府県のお力もかりなければいけないということは私どもも痛切に感じておりまして、六十年の四月から都道府県との相互協力体制を発足させておりまして、下請法の普及啓発等の業務についての協力をいただいているところでございます。 そのほか、協力員というふうな方々にもお願いをし、あるいは中小企業庁にも御協力をいただきまして、下請取引適正化月間というふうなものもつくって、普及活動には万全を期すように努力はしているつもりでございますけれども、きょう御叱正をいただきましたので、改めて気を取り直し、気を引き締めて下請法の適正な運用に努めてまいりたい、こういうふうに思っております。
○向山一人君 時間が参りましたので、以上で終わります。
○委員長(前田勲男君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は二十五日月曜日午後一時より開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時二十八分散会 —————・—————