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108回国会衆議院1987/05/19

本会議 第18号

発言数
20
登壇者
8
会派数
5
開催日
1987/05/19

会議録

原健三郎無所属議長

○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案   (内閣提出)の趣旨説明

原健三郎無所属議長

○議長(原健三郎君) この際、内閣提出、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣稲村利幸君。     〔国務大臣稲村利幸君登壇〕

稲村利幸自由民主党環境庁長官

○国務大臣(稲村利幸君) 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  公害健康被害補償制度は、汚染原因者の負担に基づき、著しい大気の汚染等による公害健康被害者について、その迅速かつ公正な保護を図ってきたものであります。  我が国の大気汚染の状況は、近年全般的には改善の方向にあり、中央公害対策審議会において、三年にわたり検討が進められた結果、昨年十月、公害健康被害補償法の第一種地域のあり方について答申が取りまとめられたところであります。  この答申は、現在の大気汚染の状況のもとでは、原因者の負担に基づき個人に対する補償を行うことは、民事責任を踏まえた本制度の趣旨を逸脱することとなるため、現行の第一種地域の指定をすべて解除することが相当であり、今後は個人に対する補償を行うのではなく、総合的な環境保健施策を推進することが適当であるとしております。  今回の改正は、本制度をより公正で合理的なものとするため、中央公害対策審議会の答申を踏まえ、第一種地域の指定がすべて解除された場合に対応できるようにするものであります。  次に、法律案の主要事項について、その概略を御説明申し上げます。  第一は、法律の題名及び月内の改正であります。  今回の改正においては、新たに大気汚染の影響による健康被害の予防のために必要な事業を実施し、健康の確保を図ることとしているため、法律の題名を「公害健康被害の補償等に関する法律」に改め、あわせて目的について同様の趣旨をつけ加えております。  第二は、費用負担に関する規定の整備であります。  これは、第一種地域の指定がすべて解除された場合においても、解除前に認定を受けた患者に対する補償を継続することができるように、解除前のばい煙発生施設等設置者から賦課金を徴収することとする等、その費用負担の仕組みを原因者負担の観点から整備するものであります。  第三は、公害健康被害補償協会の業務等に関する改正であります。  総合的な環境保健施策を推進するため、協会の業務に、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究等の実施及び地方公共団体が行う健康相談等の事業に対する助成に関する業務を新たに加えております。あわせて、協会の名称も「公害健康被害補償予防協会」に改めることとしております。  また、これらの事業に必要な費用に関し、大気汚染の原因者等から拠出される拠出金を財源とする基金を設けることとしております。  この法律案の施行期日は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内の政令で定める日としております。  以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手)      ————◇—————  公害健康被害補償法の一部き改正する法律案   (内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

原健三郎無所属議長

○議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。沢藤礼次郎君。     〔沢藤礼次郎君登壇〕

沢藤礼次郎日本社会党・護憲共同

○沢藤礼次郎君 私は、ただいま提案理由の説明がありました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党・護憲共同を代表して、中曽根総理大臣並びに稲村環境庁長官に質問いたします。  気管支ぜんそくなど大気汚染による公害病認定患者の数は、全国四十一地域に九万六千人余と言われております。今もなお毎年約九千人ずつ増加しているのであります。いわば現在進行形の実態が厳然として存在しているにもかかわらず、四十一指定地域をすべて解除し、今後、公害病患者を新しく認定しないという公害行政の後退に直結する法の改悪がなされようとしていることは、まことに遺憾であります。今なぜ法改正を急ぐのですか。その必要性は何か、まずお伺いします。  公害は、十九世紀、イギリスの産業革命とともに発生し、それ以降、産業の発展と表裏しながら公害は発生してまいりました。公害の歴史は、公害発生源、加害者である企業の側と被害者である住民との対立の歴史でもあると言えましょう。  今回の法改正については、経団連初め産業界挙げて運動をしてきたことは周知の事実であります。一九七八年、窒素酸化物の環境基準が大幅に緩和され、八〇年暮れには、経団連が公害健康被害補償制度の改正についての意見書を、さらに八五年には、規制緩和についての意見を発表し、地域指定解除を強く求めてまいりました。今回の法改正は、その産業界への迎合であると見られてもいたし方ありますまい。  総理、あなたの私的な諮問機関である経済研究会は、四年前「これからの経済政策と民間活力の培養」と題する報告書をまとめ、その中で各種の規制緩和を強調し、これと前後して、環境アセスメントの法制化を挫折させ、大気、水などの環境基準の未達成状況を放置し、さらに今回は公健法の改悪を囲みなど、環境行政の三本柱であります、一、環境破壊の未然防止、二、公害の規制、三、被害者救済のことごとくを骨抜きにしようとしているのであります。これは国民ひとしく、厳しく批判しているのですが、総理、あなたは、この国民の批判の声に対しどのようにこたえられるのか。企業の要求と住民の願いが対立し、二者択一を迫られた場合、どちらの立場を大切にされるのか、率直にお聞かせいただきたいのであります。(拍手)  稲村環境庁長官、あなたにも同じ質問を呈します。このようなときに、国民の健康と生命を守るためにこそ、環境庁の存在意義、存在価値があるのではありませんか。御所見をお伺いいたします。  さて、今回の法改正の骨子は、次の二点に集約することができます。  まず第一は、大気の汚染による健康被害の著しい一都一府八県二十一市一町十九特別区に及ぶ全国四十一の第一種地域の指定を全面解除し、新たな患者の認定を一切行わないという点であり、第二は、個人を対象にして被害を認定したやり方を変更し、集団を対象に汚染地域の環境を改善する事業や地域住民全体を対象とする予防、健康の回復など、地域保健事業への転換を打ち出している点であります。  現行法は、制定以来十三年間にわたり、大気の汚染による被害者の救済を図る上で一定の重要な役割を果たしてまいりました。そのことを評価しつつも、一方では、この法律が定める第一種地域指定の要件である大気汚染の指標としては、これまで専ら硫黄酸化物、二酸化硫黄を用い、自動車の排気ガスがもたらす窒素酸化物が指標とされてこなかったこと、障害補償費の算定にさまざまな不備があることなどが早くから指摘されていました。  私たちは、特に自動車の排気ガスによって生ずる大気汚染の深刻化にかんがみ、窒素酸化物を指標に加えて指定地域を拡大し、とりわけ主要幹線道路沿道の地域指定に道を開き、早急に多くの患者の救済が図られなければならないことを主張してまいりました。このことは、全党一致で再三にわたって国会決議がなされてきたところであります。稲村環境庁長官、あなたは、この全党一致の国会決議をいかなるお考えで無視をされ、決議の趣旨と全く異なる今回の改正案を提出されたのでしょうか、その経過の詳細を明らかにしていただきたいのであります。  自動車の排気ガスがもたらす大気汚染は、危機的状況にあります。沿道の窒素酸化物の環境基準達成率は、三大都市では三〇%にも満たず、その一方で、自動車の走行量は年々増加し、特に普通乗用車の十ないし二十倍もの窒素酸化物を排出する大型車の増加は著しく、昼夜を分かたない走行による沿道住民の健康被害は、騒音公害を伴って激増しております。  東京都衛生局がここ六年間にわたって行った沿道住民の健康影響調査では、女性の肺がんによる死亡と窒素酸化物の量とには明らかな相関関係が認められたこと、また、沿道の学童に肺機能の低下が、さらには、乳幼児に呼吸器疾患症状が多発していることなど、まことに衝撃的な報告がなされたことは、憂慮すべき事実を雄弁に物語っているのであります。しかし、今回の改正案によって、環境庁は、主要幹線道路沿道の地域指定は住民の被害の実態には目をつぶって何ら顧みないというのでありましょうか。自動車公害の深刻化している状況とその健康被害の実態について、環境庁長官の御認識と改善の方策並びに現実に生じている被害の救済の対応策を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  今回の改正案は、昨年十月の中央公害対策審議会の答申の内容を具現化した内容になっております。この答申では、幹線道路沿道の疾病調査を行わず、局地的汚染の健康への影響について評価を行うには、科学的知見が十分ではないと結論づけております。もし現状で科学的知見を得るために十分でないならば、実態を明らかにする科学的知見を積み重ねる措置をどうしてとらないのですか。その作業、その努力なしに環境行政の一大転換が行われてよいのでしょうか。納得のいく御説明を承りたいのであります。(拍手)  長官、今回の法改正に当たり、関係自治体の首長に意見を求められましたが、その回答の九割もが地域指定解除反対を回答しているではありませんか。疑わしきは救済する、これが公害対策の基本ではありませんか。環境庁は今その存在価値を問われていることを強く指摘せざるを得ません。私は、法改正に強く反対し、二十一世紀を展望した環境行政の確立を強く要望し、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕

中曽根康弘自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 沢藤議員にお答えをいたします。  まず、法改正の必要性でございますが、今回の改正は、現在の大気汚染の状況やその健康への影響についての論議を踏まえまして慎重に御審議をしていただいていた中央公害対策審議会答申に基づき、公害健康被害補償制度をより公正で合理的なものにするために行っているものでございます。最近の改善の実績の状況及び将来に向かって予防行政への重点移行、そういうような観点に立ちまして法改正というものを考えているわけであります。  次には、環境行政への批判に対するお答えでございますが、環境行政については、公害の防止とそのための規制に意を用い、被害救済についてもその適正を期することとして、あくまでも国民の健康と生活を守る観点から政府の重要施策として位置づけてきておるところであり、今後もそのように取り扱う考えております。  さらに、今後の展望でございますが、今後とも、二十一世紀を展望しつつ健全で恵み豊かな環境を国民の共有財産として引き継いでいけるよう、環境行政の積極的な推進に努めてまいる所存でおります。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣稲村利幸君登壇〕

稲村利幸自由民主党環境庁長官

○国務大臣(稲村利幸君) 沢藤議員にお答え申し上げます。  公害行政の基本姿勢についてでありますが、環境行政は、国民の健康の保護を使命とするものであり、あくまでも国民の立場に立って公正かつ合理的に対処すべきものと認識しております。  次に、今回の改正案と御指摘の国会決議についてでありますが、今回の公健法の改正案は、昨年十月に取りまとめられた中央公害対策審議会の答申を踏まえ、提案しているものであります。中公審においては、国会決議にあった窒素酸化物等の問題についても十分御審議をいただいた上で、窒素酸化物を含めた総体としての現在の大気汚染の状況のもとでは、新規に患者を認定し、大気汚染の原因者の負担に基づき個人に対する補償を行うことは、民事責任を踏まえた本制度の趣旨を逸脱することとなるため、現行の第一種地域をすべて解除することが相当であるとの結論を導いたものであります。  次に、自動車公害の状況と健康影響をめぐってのお尋ねでありますが、現在、大都市地域の道路周辺を中心として、二酸化窒素に係る環境基準の達成になお努力を要する状況にあるなどの問題があることは十分認識しております。これにつきましては、発生源規制の一層の強化を図るとともに、交通量の抑制、分散、円滑化や低公害車の普及等の諸対策を関係省庁と連携を図りつつ、総合的かつ計画的に推進してまいる所存であります。また、後に述べます健康被害の予防に重点を置いた総合的な環境保健施策につきましても、沿道地域を含め積極的に推進してまいる所存であります。  次に、局地的汚染に関する科学的知見と指定解除の考え方についてであります。御指摘の幹線道路沿道等の局地的汚染の問題につきましては、現時点における科学的知見によっても、こうした地域を指定地域として指定し補償給付を行うまでの合理性があるとは判断できないところから、現行指定地域のすべてを解除することが相当であるとの中公審答申の結論に従ったものでございます。  次に、関係地方公共団体の長の意見についてでありますが、今回の改正につきましては、関係地方公共団体から広範な意見が寄せられ、特に大都市の地方公共団体からは、幹線道路沿道を中心とした窒素酸化物等による汚染がなお改善されていないことについて強い懸念が示されておりますが、これに対しては、今後、大気汚染防止対策を一層推進するほか、本法律案にも盛り込まれております健康被害の予防に重点を置いた総合的な環境保健施策を積極的に推進することで対処してまいりたいと思います。  最後に、疑わしきは救済という点についてでありますが、公害健康被害補償制度は、民事責任を踏まえて、原因者に負担を課して個別の補償を行うという制度であり、救済の対象とすることについては、あくまで公正かつ合理的な理由が必要であるということが基本であると考えます。  以上でございます。(拍手)     —————————————

原健三郎無所属議長

○議長(原健三郎君) 斉藤節君。     〔斉藤節君登壇〕

斉藤節公明党・国民会議

○斉藤節君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対して、反対の立場から中曽根総理大臣並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)  今回の本法案の骨子は、近年における我が国の大気汚染の態様の変化を踏まえ、昨年十月に出された中央公害対策審議会、以下中公審と言います、の答申「公害健康被害補償法第一種地域のあり方等について」に基づき、第一種地域の指定がすべて解除された場合に対応できるよう所要の改正を行うものであるというものであります。すなわち、本法案は、第一種地域の指定をすべて解除した場合、既認定患者に対する補償給付は行うが、新規患者については一切認定補償は行わないというものであります。  私は、昨年十月の中公審答申がなされたときのこの問題に対するマスコミを初め各界の厳しい反応を思い起こしていただきたいのであります。すなわち、「これは、公害被害者の願いと要求を全く無視したものである。」「これは制度上、もはや大気汚染による公害病患者は出ないと決めつけたも同然で、現状認識を大きく欠いた答申と言わざるを得ない。」「環境行政は、原点を見失うな。」「硫黄酸化物による汚染の改善だけに着目して一気に制度の廃止に近い変更をするもの」とか「指定地域の解除については、あくまでも地域ごとの実態を配慮しつつ、段階的に行うべきである。」また、「新しい環境保健事業・環境改善事業は、地域における保健医療計画の一環として行われるべきものであって、健康被害補償の代替措置ではあり得ない」さらに、「二酸化窒素を地域指定の指標に追加し、幹線道路を地域指定すべきである。」など、極めて厳しい批判がなされているのであります。  指定地域の全面解除に対して、公害被害者団体は当然のように強く反発し、激しい反対運動を展開しております。このことは、周知のように、こうした改革方針の決定過程において、被害者は全く蚊帳の外に置かれてきたのであります。深刻な状況にある被害者を全く度外視してこのような決定がなされることが果たして公正かどうか、大いに疑問とするところであります。  かつまた、公害健康被害補償にかかわる四十一地域の関係地方公共五十一団体の意見は、明確な反対が二十一団体、慎重論及び時期尚早論は二十四団体、それに対して賛成表明はたったの六団体であります。しかも、この中には、やむを得ないとか条件つきやむを得ないというものを含んでいるのであります。このようなことからわかるように、地方公共団体はこの改革に対して明確に反対の態度をとっていると言っても過言ではありません。このような状況にもかかわらず、政府は本法案を強硬に提案してきたことは、民主的な法治国家において重大なる問題であると言わなければならないと思います。(拍手)これについて総理の御所見をお尋ねいたします。  次に、公害事件においては、疑わしきは罰す、あるいは疑わしきは救済が大原則であります。しかるに、今回の方針は、中公審専門委員会において大気汚染による健康影響を明らかに認めており、しかも、道路等局地汚染による健康影響、また、老人、子供等弱者への特段の配慮が特に求められておりながら指定地域の全面解除を打ち出したことは、まさに公害行政らしからぬ非人道的な偏った政治判断と言わざるを得ないのであります。政府は、疑わしきは救済という大原則からこれをどう判断するのか、お伺いしたいのであります。もちろん、私どもも、現在の公害健康被害補償制度の問題点や矛盾点を承知していないわけではありません。それらの点については、順次改善していけばよいのでありまして、今回のような全面解除は余りにも乱暴であり、拙速であると言わざるを得ません。  そこで、私は、次のような提案をするものでありますが、御答弁をお願いいたします。  第一に、大気汚染に関しては、三ないし五年間の観察期間を置いて、その間に、すべての公害病指定地域における大気汚染と健康影響の因果関係について、公正で科学的な総合的調査を実施し、その結果に基づいて改善すべきと思うのでありますが、いかがでありましょうか。  次に、第二に、補償費の財源措置についてでありますが、現在は、企業から八〇%と自動車重量税から二〇%で賄われております。この八対二という負担割合は、昭和四十七年当時の固定発生源と移動発生源における硫黄酸化物の汚染負担割合に基づいて決められたものであります。しかし、現在は、このような実態にはなっていないと言われております。それゆえ固定発生源と移動発生源とにおける大気汚染負荷状況を調査し、その正確な負荷実態に応じた費用の負担割合に是正すべきと思います。また、あるいはNO、すなわち二酸化窒素を地域指定の要件に加え、その汚染負荷実態に応じた費用負担制度を確立するなどしてはどうかと思います。このようにすることによって、年間約九千人とも言われている新規公害患者を切り捨てることもなく、思いやりある行政が可能になると考えますが、お答え願いたいのであります。  次に、特に大気汚染物質として現在問題になっているNO、すなわち窒素酸化物、浮遊粒子状物質による健康影響とか、あるいはこれらの物質にSO、すなわち硫黄酸化物を加えたいわゆる複合汚染による健康影響並びに沿道等の局地汚染における健康影響など、現在なお未解明な分野について今まで以上に充実した調査研究を実施すべきと思いますが、御答弁をお願いしたいのであります。  また、本制度の改革に当たっては、幅広く国民の意見を聞き、開かれた論議を展開すべきと考えます。そのためには、中公審を改組し、公害被害者や一般国民も加え、産業界寄りと見られている姿勢を改めてはどうかと考えますが、これらについての御所見をお聞かせ願いたいのであります。  以上で私の質問は終わりますが、総理並びに関係大臣の誠意ある、前向きの御答弁をお願いいたします。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕

中曽根康弘自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 斉藤議員にお答えをいたします。  まず、公健法改正に対する政治姿勢の問題でございますが、今回の改正案は、最近の大気汚染の状況やその健康への影響について慎重に御審議をいただきました中央公害対策審議会の答申に基づいて立案したものでございます。関係地方公共団体から寄せられた広範な御意見についても、今回の改正は、これを十分踏まえて検討されたものであり、公害健康被害補償制度をより公正で合理的なものにするためのものであると考えております。  疑わしきは救済するという原則の問題でございますが、先ほど環境庁長官から御答弁申し上げたとおりであります。公害健康被害補償制度は、民事責任を踏まえて、原因者に負担を課して個別の補償を行っている制度でございますが、救済の対象とすることについては、あくまでも公正かつ合理的な、科学的な理由が必要であるという、それが基本になっておるのでございます。  次に、指定地域の解除の問題でございますが、現在の大気汚染の状況のもとでは、新規に患者を認定し、大気汚染の原因者の負担に基づいて個人に対する補償を行うことは、民事責任を踏まえた本制度の趣旨に合致せず、指定地域の解除が相当であると考えておりまして、御意見には賛同しかねるところでございます。  なお、中公審の委員は、いずれも立派な学識と経験をお持ちの方々でございまして、公正な審議が行われており、現状を変更する考えはございません。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣稲村利幸君登壇〕

稲村利幸自由民主党環境庁長官

○国務大臣(稲村利幸君) 斉藤議員にお答えいたします。  公害健康被害補償法の改正についての基本的考え方につきましては、総理から御答弁のあったとおりでございます。  今回の改正につきましては、関係地方公共団体から広範な意見が寄せられ、特に大都市の地方公共団体からは、幹線道路沿道を中心とした窒素酸化物等による汚染がなお改善されていないことについて強い懸念が示されておりますが、これに対しては、今後、大気汚染防止対策を一層推進するほか、本法律案にも盛り込まれております健康被害の予防に重点を置いた総合的な環境保健施策を積極的に推進することで対処していきたいと思います。  次に、大気汚染による健康被害に関する調査研究につきましては、中央公害対策審議会に設けられた医学等の専門家から成る専門委員会において、環境庁が行った調査結果や内外の最新の疫学を初めとする科学的知見を総合して検討を行った上で、現在の大気汚染の状況のもとでは、第一種地域の指定解除につきましては、本制度の趣旨に照らして相当であるとざれたものであり、観察期間を置くといった考え方はとることができないと考えております。しかしながら、大気汚染による健康被害の予防に万全を期するために、必要な局地的汚染の影響調査及び地域の人口集団の健康状態と大気汚染との関係を定期的、継続的に観察する環境保健サーベイランスシステムの構築につきましては、中公審答申の趣旨に沿って努力してまいります。  以上でございます。(拍手)     —————————————

原健三郎無所属議長

○議長(原健三郎君) 岩佐恵美君。     〔岩佐恵美君登壇〕

岩佐恵美日本共産党・革新共同

○岩佐恵美君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  加害企業の費用負担で医療と生活を支える公害健康被害補償制度は、不十分とはいえ、公害患者にとってまさに命綱であります。それを非情にも切り捨てていこうという今回の大改悪に対して、私は心からの憤りを覚えるものであります。(拍手)。一九六〇年、四日市石油コンビナートに端を発した大気汚染公害は、たちまち東京、大阪など全国に広がりました。我が国経済の高度成長は、まさしく国民の生活と健康の破壊、さらには命と引きかえのものだったのです。当時、政府や企業が被害者の救済に手を差し伸べることをしなかったため、被害者はみずから救済のために裁判に訴えるよりほかありませんでした。公害健康被害補償制度は、こうした公害患者の命をかけた闘いによって実現されたものなのです。  この経過を振り返るとき、大気汚染公害が企業による社会的犯罪であるとはっきり認識すること、さらに、行政は企業の側にではなく患者、国民の側に立つべきこと、これこそが公害行政の原点であることを改めて痛感するものでありますが、総理はどのようにお考えですか、まず最初に、基本姿勢について伺います。(拍手)  政府、財界は、公害は終わった、だから指定地域を解除してもいいんだとして、毎年新たに発生する九千人もの大気汚染による公害患者を切り捨てようとしています。しかし、公害は本当に終わったのでしょうか。とんでもありません。公害認定患者は法制定後毎年ふえ続け、十二年間で六・七倍にもふえ、その数は九万六千人を超しています。このことは、まさに大気汚染が広がり、深刻になっていることを示しています。現に、この二、三年でも、東京、神奈川、大阪では二酸化窒素の汚染がひどくなり、緩められた五十三年の環境基準さえ超えてしまう地域が全体の六割から八割以上にも上っているのです。  また、昨年発表された足かけ八年に及ぶ東京都の大気汚染健康影響調査では、幹線道路に近いほど持続性のせき、たんなどの呼吸器症状の有症率が高いこと、道路から五十メートル以内の乳幼児は呼吸器の病気が他地域に比べ高い上に症状が重いこと、さらに、幹線道路周辺の過去十年間の死因別調査では、大気汚染との関係が高く、特に商業地域では高いこと、女性の肺がんによる死亡と大気汚染との関係が高いなどのショッキングな事実が明らかにされています。  総理、事実に照らして、硫黄酸化物の排出量が減ったからといって単純に公害は終わったなどと言えるのですか。今や、大気汚染の原因が硫黄酸化物、窒素酸化物、浮遊粉じんなど複合汚染によるものだということは常識ではありませんか。  中央公害審議会の答申は、公害地域指定の条件について、専門委員会報告の文章を曲解して、大気汚染がどう健康に影響しているかを数字の上で明確に示すことができなければならないとか、その地域の患者すべてが大気汚染によるとみなすことができなければならないと決めつけています。これに対し、中央公害審議会の鈴木武夫専門委員長は、「病気の現実を知らない人が書いた文章だ。これらの条件を満たすような病気があるかどうか逆に質問したい。事故以外にはあり得ない」と批判しています。政府はこれにどう答えるのですか。はっきりした答弁を願います。(拍手)  また、専門委員会報告にある「感受性が高く、被害を受けやすい人たち」の中には、児童、高齢者、呼吸器系の患者等が含まれるのは、これは医学の常識だと鈴木委員長が説明しているのに、中公審答申はこれを無視し、そういうことはないんだと結論づけていることについて、鈴木委員長は激しく抗議しています。地域指定解除の理論的根拠となる中公審答申のこのような事実の歪曲は許されません。地域指定解除の択捉が崩れたのですから、当然地域指定解除は撤回されるべきであります。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)  次に、関係五十一の自治体のうち、指定地域解除に同意できないが二十一、慎重に対処は二十四、賛成はわずか六つにしかすぎないではありませんか。慎重、反対が全体の九割を占めています。これらの自治体の意見を政府は全く無視しているのではありませんか。そもそも、法第二条第四項で、内閣総理大臣に自治体の意見を聞くよう義務づけているのは、何よりも大気汚染と住民の健康被害の実態など、その地域の実情を最もよく知り得る立場にある関係自治体の判断を重視し、その意見を尊重しなさいという趣旨ではないのですか。総理、自治大臣の答弁を求めます。  新規患者を切り捨てることで最大の利益を受けるのは財界であると言われています。向こう十年間で二千五百億円の経済メリットを受けるとい身試算があります。財界はどのような利益を受けるのか、明確にお答えください。さらに、財界の拠出金五百億円は、財界が別に五百億円出すのですか。そうではなく、六十二年度の総賦課金額をこの先五年間固定し、既存の認定患者をどんどん切り捨てて、その分のお金を浮かせて、積み立てて捻出するのではありませんか。そうであるとするならば、患者を犠牲にした政府と財界の醜い政治的取引で、絶対に許せません。認定患者の皆さんが納得のいく説明を求めます。(拍手)  以上、限られた時間内で幾つかの問題点を指摘しただけでも、本法案は、手続的にも内容的にもまさにうそとごまかし、そして、問答無用のやり方であり、公約違反の売上税とそっくりではありませんか。  総理、あなたはなぜ、公害に苦しむ患者さんや公害の危険にさらされている国民の立場に立って、財界、企業に、公害補償の額がふえるのが嫌なら公害をなくす努力をしなさいと真っ正面から言えないのですか。今も東京湾横断道路、首都圏中央連絡道、関西新空港、さらには東京湾に三百万キロワット級の超大型火力発電所などの建設が計画され、公害がますますひどくなることが予想されます。  今、患者の多くの皆さんが、発作的に起こるせきに襲われ、絶えず死と直面し、苦しんでいます。その患者さんが、きょうは補償法を心配して、病身を押してこの本会議を息を詰めて見守っておられます。総理、あなたには患者の皆さんの悲痛な叫びが聞こえないのですか。本法案は患者を苦しめ、公害を野放しにする以外の何物でもありません。撤回を強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕

中曽根康弘自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 岩佐議員にお答えをいたします。  環境行政は国民の健康の保護を使命とするものでありまして、国民の立場に立って、あくまで公正、合理的、科学的に対処すべきものと心得ております。  大気汚染の現状につきましては、公害健康被害補償制度発足以来、我が国の大気汚染の態様には変化が見られまして、事態は改善されつつあります。これを踏まえ、中公審で検討いただいたところ、現在の大気汚染の状況下では地域指定は解除すべきとの結論を得たものであります。言うまでもなく、我が国の公害の状況はなお改善を要する課題も多く、公害対策は引き続き積極的に推進する所存でおります。  今回の中央公害対策審議会の答申は、科学的知見を踏まえて、この問題に関する医学者を含め各分野の権威者を集めた審議会の総意として取りまとめられたものであり、政府としては、指定地域のすべてについて解除を行うことが適当と考えて、撤回はいたしません。  次に、公健法第二条第四項の趣旨でございますが、これは、地域の実情を十分把握している関係地方公共団体の長の意見を聞くことにより、制度の運営の適正を期するために設けられているものであり、関係地方公共団体の意見は尊重していかなければなりませんけれども、その同意がなければ地域指定の解除ができないという趣旨のものではないと考えております。  次に、認定患者の問題でございますが、指定解除前に認定を受けた患者に対する補償については、指定解除後も従前どおり補償給付を行い、万全を期します。今回の改正案では、積極的に大気汚染による健康被害を予防する事業を実施することとして、その財源の拠出を新たに大気汚染の原因者に求めているものであります。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣稲村利幸君登壇〕

稲村利幸自由民主党環境庁長官

○国務大臣(稲村利幸君) 岩佐議員にお答え申し上げます。  二酸化窒素環境基準取り消し訴訟における鈴木専門委員長の御発言についてであります。  中公審答申は、医学的事項については、鈴木先生を初めとする医学の専門家により取りまとめられた専門委員会報告を前提とし、かつ、専門委員会に参画された先生方も含めて、中公審の総意としてまとめられたものであります。医学的事項について歪曲したというようなことはなく、十分科学的根拠を踏まえたものと考えているところであります。中公審答申の地域指定の合理性のための条件は、医学的判断を踏まえた上で、さらに制度的な割り切りを行う際の条件について述べたものであり、純医学的判断とはおのずから異なるものと考えております。  次に、指定解除による経済的メリットについてのお尋ねでありますが、今回の指定地域の見直しは、現在の大気汚染の状況を踏まえ、本制度を公正かつ合理的なものとする観点から行われるものであり、指定解除により経済的メリットがあるかどうかということを問題にすることは適当でないと考えております。  なお、公害患者の増加についての御指摘でありますが、ぜんそく等の疾病は大気汚染以外の原因によっても発生するものであり、現在の大気汚染の状況のもとでは、認定患者の増加の原因は大気汚染であると結論づけることはできないものであります。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣葉梨信行君登壇〕

葉梨信行自由民主党自治大臣・国家公安委員長

○国務大臣(葉梨信行君) 岩佐議員にお答え申し上げます。  公害健康被害補償法第二条第四項の規定の趣旨はどうか、こういう御質問でございます。  地域の指定に当たりまして、あらかじめ地域の公害とその影響による健康被害の状況を把握し、住民の健康保持と環境保全の第一線に立つ地方公共団体の長から意見を聴取し、本制度の適正かつ円滑な運用を図ることにあるわけでございます。したがいまして、関係地方公共団体の意見はできるだけ尊重さるべきものであると考える次第でございます。(拍手)

原健三郎無所属議長

○議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————

谷垣禎一自由民主党

○谷垣禎一君 議事日程は延期し、本日はこれにて散会されることを望みます。

原健三郎無所属議長

○議長(原健三郎君) 谷垣禎一君の動議に御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原健三郎無所属議長

○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後一時七分散会      ————◇—————

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