法務委員会 第5号
- 発言数
- 164 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1987/05/26
会議録
○大塚委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所上谷民事局長、吉丸刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○大塚委員長 内閣提出、参議院送付、刑事確定訴訟記録法案を議題といたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 きょうは法案の質問の日なんですが、ちょっとその前にお聞きしたいのです。 それは福岡県の苅田町というのですか、あそこの事件で、税金の問題ですね。まず、なぜ東京地検へ告発がなされたのか。東京地検は管轄権がないのじゃないかと思うのですが、どうして東京地検に告発がなされて、東京地検としてはそれを受理されたわけですか。
○岡村政府委員 告発人がなぜ東京地検に告発したかという事情につきましては、具体的には承知いたしておらないわけでございます。いずれにしろ、東京地検に対して告発をしてきたということでございます。 また、管轄の問題でございますが、やはり捜査いたしてみませんと、管轄があるかないかということは一概には言えない面があるわけでございます。事実関係がある程度確定いたしませんと、その辺のところは確定的なことは申し上げかねるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 だって東京地検で、特捜部へ告発がなされれば、それを受理するか否かについてある程度内容を審査するわけでしょう。審査して、東京地検で受理するのが相当だ、こういうふうに考えたから東京地検の特捜部で受理したわけじゃないのですか。
○岡村政府委員 告発につきまして特に管轄のある検察庁にしなければいけないという理由ですか、こういったものは特にないものと考えるわけでございます。したがいまして、いろいろ検討いたしました結果、東京地検といたしましては、告発状が提出されましたのでこれを受理したということでございます。
○稲葉(誠)委員 だから、いろいろ検討したというのでしょう。いろいろ検討したという中に、いろいろあるわけですよね。例えば被告発人がだれかということも、そこで当然問題になってくるのじゃないですか。被告発人が何人かいるかもわかりませんけれども、これ以上言わぬけれども、そこも問題になってくるのじゃないですか。東京に関係があるかもわからないのじゃないですか。
○岡村政府委員 被告発人の関係でというただいまの御指摘は、必ずしもそうでもないように思うわけでございます。
○稲葉(誠)委員 だから、被告発人はじゃ一体だれなんですか、これは。
○岡村政府委員 花房という前苅田町収入役でございます。
○稲葉(誠)委員 しかし、その調べはもう済んでいるのじゃないですか。
○岡村政府委員 現在告発を受けておりますので、捜査の具体的な中身にわたることにつきましては、答弁いたしかねるところでございます。
○稲葉(誠)委員 一般の人が受ける感じは、それは全国的な事件だというならば、最高検へ告発するというのはよくあるわけですね。例えば福岡と東京とが関連しているとかなんとかというときには最高検へ告発する、高検が違いますからね。そういうのはよくありますけれども、東京地検へ告発するというのは普通ないわけなんです。だから、それは東京地検が受理するにふさわしい内容があると考えたから東京地検ではそれを受けた、こういうふうに考えるのが私は筋だと思うのですが、それはそれとして、今捜査中の事件ですからね。いろいろなことが言われたりなどしていますね。そうすると、そういうようなことの真相究明を早急に進めるということについてはいかがなんですか。
○岡村政府委員 一般的に申し上げまして、検察といたしましては、告発事件等があればその事案の真相の解明に努力をするわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それは当たり前の話ですね。あらゆる事件について当たり前なんで、普通告発事件というのは、あったって二年や三年ほったらかしておくのが多いのじゃないですか。告発とか告訴事件なんか机の引き出しにしまってしまって、余り言っては悪いけれども、後の検事に引き継ぐというのが多いのじゃないか。事件によりますよ。この事件をこれだけ取り上げているということは、それだけの重要性がある、こういうふうに考えたからこそ早急な相当大がかりな捜査をしているのではありませんか。
○岡村政府委員 要するに、捜査中の事件につきまして具体的なことは申し上げかねるところでございます。
○稲葉(誠)委員 捜査中の事件について具体的なことを申し上げかねるというのは当たり前の話ですから、それは私もわかっているわけです。ただ、いろいろな疑惑があるようにも言われておりますから、早急に捜査を遂げるということについての心構えというものはしっかりあるわけですか。
○岡村政府委員 検察当局としては、事案の真相の解明に努めるものと理解いたしております。
○稲葉(誠)委員 捜査中の事件ですから、ここら辺のところのあれは見守っていきたい、こういうふうに考えております。 そこで、この刑事確定訴訟記録の法案なんですが、提案の説明を拝見しますと、刑事訴訟法第五十三条第四項が、訴訟記録の保管については別に法律でこれを定める旨規定している、こういうわけですね。実は私もこういう刑訴の五十三条の第四項があるというのをよく気がつかなかったのですが、そうすると別に法律で定めるというのは、これはいつごろそういうふうに決めたわけですか。
○岡村政府委員 これは刑訴法が制定されましたその時点でございます。
○稲葉(誠)委員 いや、だから今まで何年ぐらいかかったのですか。
○岡村政府委員 昭和二十四年一月に新刑事訴訟法が施行されましたので、それ以来三十八年余ですか、になると思います。
○稲葉(誠)委員 そんなことは計算すればわかるのですが、法律で定めると書いてあって、どうして法律で定めなかったのですか。そこなんです、問題は。どうしてなのか。それは裁判所と法務省との間で意見がまとまらなかったのでしょう。そういうことですわな。どうして裁判所と法務省との間で、何がポイントになって意見がまとまらなかったのか。裁判所側の言い分はどういう言い分ですか、法務省側の言い分はどういう言い分ですか。
○岡村政府委員 これは古い当時からのいきさつがあるわけでございまして、新刑訴法が施行されました後も、一部の裁判書につきましては裁判所が保管する、大部分は検察庁において裁判書それから記録を保管する、こういうような実情にあったわけでございます。 そこで、これを従来の経緯等その他の事情から見ましてどこの機関で一元的に保管するかということにつきまして、関係機関との間で意見の調整を図る必要があったということが一つの理由でございます。もう一つは、やはり各種訴訟記録の保管期間につきましてこれをどの程度にするかとかいったいろいろな運用面につきまして、ある程度の期間運用の実績を見て、それに基づいて法律をつくる必要もあった、こういうような点で今日に至ったわけでございまして、委員御指摘のように相当の期間がかかったことは、これは否定しがたい事実でございます。
○稲葉(誠)委員 裁判書が一部裁判所で、一部検察庁というか法務省というのはちょっとよくわかりませんが、判決の原本は永久保存で、裁判所が保存していくのじゃないですか。裁判書という意味はどういう意味なんですか。
○岡村政府委員 判決の原本を含むわけでございます。
○稲葉(誠)委員 判決の原本は裁判所で保存していくのじゃないですか。永久保存でしょう。おかしいな、それは。どういう意味ですか、それは。
○岡村政府委員 正確に申し上げますと、最高裁の裁判書と高等裁判所のうちの五つの裁判所の裁判書、これにつきましては裁判所が保管をいたしておったのが実情であるわけでございます。それ以外の裁判書並びに各種の記録、こういったものは検察庁で保管していたのが実情でございます。
○稲葉(誠)委員 それは刑の執行の関係か何かあったのかもわかりませんけれども、ちょっとよくわかりませんが、今はそれは変わったのですか。
○岡村政府委員 今回の法案では、一元的に検察官がこれを保管することとしているのであります。その理由は、簡単に申し上げますれば、裁判の執行その他訴訟が終結いたしました後の一連の刑事手続は検察官が指揮をし、あるいは関与する、こういうことでございますので、検察官が保管するのが相当であるという考えで検察官保管といたしたものであります。
○稲葉(誠)委員 私は勘違いしていたのかな。判決の原本というのは裁判所でずっと保管してあるのだというふうに思っていたのですが、ちょっと聞き違いですか。そうすると、今は全部検察庁へ原本は行っちゃっているのですか。
○岡村政府委員 ただいま申し上げましたように、最高裁判所と高裁のうちの五高裁の分を除きましては検察官が保管いたしておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それほど重要なことでもありませんからあれですけれども、私はちょっと勘違いしていたのかな。判決の原本というのは裁判所が当然持っているのだというふうに思っておったのですがね。それは刑の執行に必要なときはあれですね、だけれども、原本は裁判所にあったって刑は執行ができるのじゃないかと思うのですが、まあそれはそれとして、それから今言ったように、刑訴法で別に法律でこれを決めるというふうになっていてまだ決まってないのはほかにあるのですか。
○岡村政府委員 法務省関係では、ないと理解いたしておりますが。
○稲葉(誠)委員 いや、だけれども、そこら辺のところはね。 もう一つの問題は、一体裁判所と法務省との間でそういうふうなどっちが取り扱うかということで今まで意見が分かれていて、いろいろ問題と言うと語弊がありますが、結局落ちついたのでしょうけれども、それはほかには何かありますか、どんなものがありますかね。これは修習生のあれと司法試験の扱い、これで最高裁と法務省で大分議論していたわけでしょう。それで両方、片方ずつとって話がついた、俗に言えばそういうことなんでしょうが、ほかにもあるのかな、ちょっとよくわかりませんが。 そこで、ほかのことになるのですが、これは再審の手続のための保存が中心ですね。再審というのは、これは実際には刑事裁判が確定をした、それでこういう点、こういう点が問題だということで再審の申し立てがなされて、そして再審が決定になって裁判になるというわけですね。そうすると、再審手続のための保存ということで、ほかの法制でもみんなこういうふうにして刑事確定訴訟記録というようなものの法案ができているのですか。こういうのをわざわざつくらなくても、結局、事実上運用していけばいいのではないのですか。
○岡村政府委員 再審の手続のために保存をする場合に当たって、委員御指摘のように事実上保管するという方法もあろうかと思いますが、今回この法案を成立するに当たりましては、再審の請求をしようとする者などに再審保存記録として保存する請求権を認めたわけでございます。また、その請求権が入れられなかった場合は不服申し立ての道も開いたところでございまして、そういう意味で再審の手続のための記録の保存手続を明確にいたしたところでございます。
○稲葉(誠)委員 これは、法案をつくるについて法務省側が積極的にこういう法案をつくりたいということで始まったのではないのでしょう。名前は言いませんけれども、一部の弁護人が非常に熱心に、ぜひこういうふうな確定訴訟記録の保存のための法律をつくってほしい、権利関係というものをはっきりさしてくれ、こういう要望が強くて、そして法務省側がそれに応ずるという形でできたのじゃないのですか。あなたの方としては、そんなに積極的にこの法律をつくらなければならないというところまでは考えてなかったのじゃないのですか。
○岡村政府委員 この点につきましては、委員御指摘のように再審の手続のための記録の保存を明確な手続にするようにという御要望もございましたし、法務省といたしましても、再審保存記録として保存することが妥当であるという考えでこういう法案の規定を設けることにしたわけであります。
○稲葉(誠)委員 だから、これは大臣、刑事訴訟法の第五十三条第四項でちゃんと決まっているわけですよ。これは法律で決めるようになっているわけですね。手数料も決めることになっていますが、手数料は何か別な形で、百五十円ですか、決まっているわけですね。それで、これは現実に再審が次から次へ起きてきて、そして熱心な弁護士の方がおられたわけです、名前は申し上げませんが。それらの人が、ぜひこれをつくってほしいというふうなことの要望が非常に強かったわけですよ。そして、それから法務省が重い腰を上げたというか、別に重い腰でもなかったかもしれませんが、そういう形でやってきた、こういうふうに私は理解をしているわけですね。ですから、こういう法律でちゃんとあるならば、法務省の中できちんと、もっと積極的にやるような形をしなければいけなかったのじゃないか、こういうふうに思うのですが、そこら辺のところは現実にこうできてきているわけですから結構なことだ、こう思っております。 そこでこの前ちょっと、委員会のときに、刑法の一部改正でしたかね、あのときの初めに小澤委員から陪審の問題について質問がありましたね。陪審制度というのは、この前私もちょっと質問しましたように、今札幌の検事正の亀山さんが何か論文の中で、日本の刑事訴訟法は陪審制を前提としておるのだというようなことを書いておられるわけですね。それはどういう意味かちょっとよくわからぬけれども、起訴状一本主義だとか証拠の採用の問題だとか、いろいろあるようなことを言っておられたのですが、「自由と正義」の第三十八巻の五号にこういう書評が載っているわけですね。 それは宮本三郎という方が書いた「陪審裁判・市民の正義を法廷に」という本の警評です。宮本三郎という方は私はどなたかよく存じないので、後からお聞きをいたしましたら弁理士の方だということをお聞きをしたのですが、この批評を書いたのは私も存じ上げておる東弁の上田誠吉さんです。 この中に、これはどこからどういうふうに引いたのかよくわからないので、この本を読んでおるわけじゃございませんのですが、「一九八四年度の刑事裁判の無罪率は、僅かに〇・一四%であった。それにひきくらべ、一九四三年に「停止」されるまで一五年間に、」これは昭和十八年ですかな、停止になっているのは。ちょうど私が試補になったときには陪審法廷というのはありましたけれども、実際に陪審はもう行われてなかったのですが、「一五年間に、陪審裁判総数四八四件のうち、無罪八一件(一七・六%)であったということは、なにを物語るのであろうか。いっときは、東京控訴院管内の放火事件のほとんどが無罪になる時期があった。」こう書いてあるのです。 これを見まして、果たしてこれが事実かどうかということですわね。私もこの点について率直に言いましていろいろ考えたものですから、そこでお聞きをいたしたいのは、陪審によって無罪が多いということ、ここに書かれている数字等は一体事実なのかどうか。あなたの方でお調べになった数字はどういうことなのか、ちょっとお聞かせ願いたい、こういうふうに思うわけです。
○岡村政府委員 当時の資料によりますと、先ほどの書評に書かれておりますように、陪審が施行されておりました間の陪審事件終結の総件数が四百八十四件でございます。そのうち陪審が更新されましたのが二十四件でございますので、これが重複計算になろうかと思います。これを差し引いた四百六十件というふうに見てもいいのだろうと思います。そのうち有罪になりましたのが三百七十八件、無罪が八十一件、公訴棄却が一件ということになります。したがいまして、無罪率は四百六十件のうちの八十一件で、一七・六%ということになります。
○稲葉(誠)委員 これは大臣も関心を持ってお聞き願いたい、こう思うのですが、ここにありますように、刑事裁判の無罪率というのは日本の場合は非常に少ないのですね。九九・ずっと幾らまでほとんど有罪なわけですよ。だからそれは、検事の起訴したものは有罪だという前提で日本の裁判が進められているようなところもあるわけですね。これは、平野龍一さんなんか盛んにそういうことを言われているのです。 そこで、陪審という制度にかかわるというと無罪率が一七・六%あるのですね。これは一体どこに原因があるのかということは、私はもっともっといろんな角度から真剣に考えなければいけないことだ、こういうふうに思うのです。陪審の中で、これは罪名がどういうのか私も知りませんが、恐らく殺人か放火、そういうのは法定合戦の事件がほとんどだと思うのですが、どういうふうな事件が一番八十一件の中に多いのですか。わかっている範囲でずっと八十一件の内容を説明をしていただけませんか。そして、それがどういう理由によって無罪になったのか。ちょっとこれ、私は普通と非常に違っているように思うのですよ。
○岡村政府委員 何分古いことでございますので、無罪になりました具体的な理由については私も承知していないところでございます。ただ、罪名で申し上げますと、殺人が十四件、放火が六十一件無罪になっておりまして、これが無罪件数の大部分を占めておるということになると思います。
○稲葉(誠)委員 これは放火が非常に多いのですよ。放火というのは非常に難しいのです、事件そのものが。捜査が非常に難しいのですけれども、それにしても非常に異常というか、陪審にかかればこれだけ無罪が出て、そうでない場合には無罪は極めて少ないということ。ただ、これだけの比較ではいけないわけで、否認事件の中で無罪になる率というものと、この陪審によって無罪になる率というものと、また比べてみないとわからぬとも思うのですがね。そうなってくると、否認事件で無罪になるパーセンテージ、これがどういうふうになっているかということはおわかりですか。 さらにそれを細かく言うと、本当は、これは事実上調査できないと思うのですが、一番問題になってくるのは、警察なり検事のところで認めていて、公判で否認してそして無罪になる事件というものと、それから警察なり検事のところでずっと否認していて、そうするとそれに対応する捜査が行われてくるわけですが、それで公判へ行ってなお否認して無罪になる事件と、いろいろあるわけですね。本来ならそこのところを分けてみないといけないかもわかりませんが、それはなかなか実際問題として無理でしょう。と考えますというと、どういうふうになるのですかね、これは。
○岡村政府委員 昭和六十年で見ますと、地方裁判所で無罪になりました事件、すなわち無罪率が〇・一一%でございます。一方、地方裁判所の場合におきます否認事件の割合でございますが、これが八・〇%でございます。そういう点を考えますと、およそのところ地方事件につきまして否認事件の無罪率は一・四%程度ではなかろうかというふうに考えられます。
○稲葉(誠)委員 だから問題は、無罪の事件がどういうふうにして無罪になったのか。それは捜査が悪くて無罪になったのか、あるいは公判の中の対応がまずくて無罪になったのかとか、いろいろ理由はあると思うので、それは法務省の研究所が、そういうところで研究しているのだと思うのです。 そこで問題になってくるのは、今言ったように、陪審によって、国民というか素人というか、そういう人の考え方によって罪にならないという考え方ですね。証拠がどうも不十分だというような考え方なんでしょう恐らく、放火の場合ですから。そうすると、どういうふうに言ったらいいのでしょうか、昔の陪審ですから裁判官を拘束するわけではないですわな、陪審員が評決しても裁判官はそれに拘束されないわけですから。それをただ参考にすればいいわけでしょう、今までの日本の陪審というのは。ですから、そういうふうな中ですら、これだけ国民が裁判というものに関与をしてくれば無罪が出てくるということは、考え方によっては、罪があるとされた者が罪がない者となって、真実罪はなかったということが証明されるという場合だと考えていいと思うのですが、そうすると、これは何か非常におっかないような感じがするのですね。この中から一体どういうふうなところが問題だというふうに大臣は、これはちょっと専門的になるかもわかりませんけれども、国民的な感覚ですね、素人と言っては大変失礼なのですけれども、そういう感覚から見て、国民が参加して陪審になればこんなに無罪があるのだ、職業人がやったときにはほとんどないのだというところは、どこか問題があるのじゃないかと私は思うのですが、大臣の感想というか、それをお聞かせ願えれば、こう思うのですがね。これは私の考え方がちょっと違うかな。
○岡村政府委員 陪審裁判において無罪率が高かったということは、当時の統計、資料等から見て言えることでございます。 その理由でございますが、これまた古いことでございますので、正確を期して個々具体的に申し上げかねる点はございます。ただ言えますことは、当時の陪審は、公判で認めるような場合は陪審に付せられなかったわけでございまして、要するに否認事件だけが陪審にかかったという実情といいますか、そういう手続になっておったわけでございます。そういう意味で、否認事件について無罪率が高いということ、これは一つは言えるだろうと思います。 また、この陪審裁判のことにつきましていろいろ書いておられます資料等によりますと、陪審員につきまして、要するに忌避権を行使して陪審員を排除することが被告人にも認められておるわけでございます。この権利を行使いたしまして、自分に有利な陪審の構成に持っていったというようなことを指摘する御意見もあります。また陪審員は、例えば不作為による故意犯だとかあるいは未必の故意といったようなものを理解することが困難な点があったという御指摘もあるわけでございます。こういった点が、無罪率が高かった理由として挙げられているところでございます。 一方、無罪率が高いか低いかといいますことは、もう一つは、起訴をいたします段階でどの程度証拠があるかということにもかかわってくるわけでございまして、長い検察の歴史の中で捜査技術も、また科学捜査の能力も高められてきておるわけでございまして、起訴する段階において十分な確実な証拠を収集するようになったということが、やはり無罪率が低いということにもつながる問題ではなかろうかと思います。
○遠藤国務大臣 今刑事局長からお話がございましたが、私の感覚から申し上げると、その問題については本当に何の知識も持っておりませんけれども、私は今のお話をいろいろ聞いていて、証拠とか今の刑法とかということは別個にして、状況によって素人の人たちが何となく、あの人はそれでは気の毒だからというムードで審判を下したのではないかなという感じもなきにしもあらずだという点がございますが、先ほど先生から、きょう御審議をいただいているこの法案で、あとは残りはないかというお尋ねがございましたけれども、今御指摘のように、これが一応停止ということで、昭和十八年以降停止しているものでございますので、この点もやはり一応おてんとうさんにさらして、これをどうすべきかということを真剣に検討していかなければならない法務省としての課題だ、こう御理解を願いたいと思います。
○稲葉(誠)委員 そこで、なぜ再審の問題が起きてくるか、きょうは刑事確定訴訟記録の問題ですから、刑事確定訴訟記録というのは、今お話ししたように再審との関連で問題になってきているわけですからね。そうすると、なぜ再審の問題や何か起きてくるかということになってくると、日本の刑事訴訟のあり方が問題だ。殊に捜査のあり方が非常に問題だ。むしろ全体の捜査から、公判といいますか、そういう中で供述調書のとり方の問題、その証拠能力の問題、そこら辺に非常に大きな問題があるというのが私の理解の仕方なんですよ。 実は私、二十年ぐらい前、十何年前かな、ここで質問したことがあるのです。ちょうど安原さんのときですが、安原さんは、そのために三百二十一条があるのだというようなことを言われたわけです。確かにそれはそうかもわかりませんし、それから、名前を書いて判こを押したじゃないかと言うのですけれども、それは名前を書いて判こを押せと言われれば、断る人は実際問題としていないわけでしてね。それで、この前ちょっと話したのは、名前を書いて判こを押せと言ったって、ちゃんと調書ができ上がって、そして契印を押した、契印を押したものをコピーにして本人に渡して本人に読ませて、それで間違いないかというのでそこで名前を書いて判こを押させるなら話はわかるけれども、今の場合はそうじゃないわけですからね。ただ、ばらばらになっているところで、ばあっと読んで聞かせて名前を書いて判こを押せというわけで、製本も何もできていないわけですから、後でちょっちょっとてにをはや何かを直したって、これは全然わからないですよ。ここのところに非常に問題があるのですよ。だから刑法の改正も、これはいろいろ重要な問題があるのでしょうけれども、刑事訴訟法を改正しろとは私は言わぬけれども、再検討すべきだということを前から言っているのですよね。ちょうどこのごろになって松尾先生も言い出されて、札幌高裁から北大へ行かれた渡部教授もいろいろ言われてきておられるのです。 そこで、この前お話が出てまいりましたイギリスの刑事訴訟法だと思いますが、その中で、供述調書にかえてテープをとって、それを供述調書にかえるという制度が採用されたということがこの前の答弁にありましたね。これはイギリスで大分長くかかったことだと思うのですが、具体的にどういう経過を経てどういう問題があって、そうしてそれが運用されてきて、その後のメリットというかデメリットというか、そういうふうなものはどういうことになっておるのですか。そこら辺のところをひとつできるだけわかりやすくお答え願いたい、こう思うのです。
○岡村政府委員 前回の御質問の際に、警察の取り調べの際に録音テープをとることが実施されておるというふうに申し上げたかと思うのでありますが、よく調査いたしましたところ、法案自体はできておりますけれども、現在は試行の段階にあるということでございますので、そういうふうに御理解をいただきたいのであります。 その法案でございますが、警察及び刑事証拠法という法律が一九八四年の十月三十一日に制定されているわけでございます。それによりますと、内務大臣におきまして、警察官によって警察署に拘禁されている被疑者の取り調べのテープ録音に関します実務準則を発すること、もう一つは、すべての、あるいは特定の犯罪の被疑者の取り調べについてはテープ録音を義務的とする命令を定めること、こういったことを規定いたしておるところでございます。この法案が制定されまして、一部現在試行しておるところもあるわけでございますが、その試行段階等を踏まえまして今年中に最終報告というものが作成される見通しのようでございます。この最終報告でどういうふうなことを言うのかということによりまして、その後の具体策が決まってくるものと思っております。
○稲葉(誠)委員 それはどういう理由でテープを供述調書にかえた、証拠書類になるという意味なんだと思いますが、どういう理由でそういう問題が出てきたのですか。そこですね、問題は。そこがこの刑事確定訴訟記録、そして再審の問題に関連してくるわけですな。
○岡村政府委員 これはもう外国のことでございますので、私どもが調査してわかっている範囲ということでお聞きいただきたいわけでございます。 まずイギリスでは、我が国のように供述調書による立証ということではなくして、公判で、取り調べをいたしました警察官がメモに基づきまして、こういう趣旨の供述を被告人がしたというような証言をするというのが一つの立証方法であるわけでございます。そういたしますと、捜査段階で被告人が自白したのかどうか、あるいはそれはどういうような状況でなされたのかということにつきまして、警察官が法廷でメモ等に基づきましてかなり長時間証人として証言するというようなことになるわけでございます。一方また、その証言等に対しまして弁護側から反証等がなされまして、それが成功するというような事例が生じますと、捜査機関に対します不信感が高じかねないというようなととから、それでは、そういった争いを避けると申しますか、そういうことのために、警察が取り調べを行うときには録音テープを使えばいいのではないか、こういうことでこの問題が持ち出されたというふうに承知いたしておるところでございます。
○稲葉(誠)委員 大臣、これはまたよく考えておいていただきたいのですが、法務省の人たちというのはいわゆるプロなわけですよ。職業人ですわね。そういう人たちの頭で考えるのじゃなくて、清新なフレッシュな、素人といいますか、国民常識を持った人の頭で問題を考えないと、これはもう解決にならないのですよ。 今ちょっと局長が言いましたけれども、日本の刑事訴訟の実態というのは、御案内と思うのですが、逮捕されて四十八時間警察にいて、二十四時間どうするかあれして、あと十日間、十日間、こう延びてくるわけですね。それはほとんど代用監獄にいるわけですが、その中の取り調べというのは、警察官なり、検事もそうですけれども、ずっと調べて、調べたものを自分でメモしていくわけですよ。メモしていて、それを今度は口授といって本人に対して口で言うわけですよ。そうすると、事務官はどんどんそれを書いていくわけです。それを後で、できたものを、今私が言ったようにちゃんと製本してコピーを本人に渡すわけでもなし、判こを押したわけでも何でもないわけですよ、契印なんか。しない段階で読んで聞かして、そのとおり相違ないか、名前を書けと言うわけですからね。だれだって名前を書いてしまうわけですよ、みんな日本人は。そういう関係で、そこでできた供述調書というものはもう最後まで物を言っているのですよ、日本の裁判というのは。 これは東大の学長をやられた平野龍一先生がこのごろ盛んにその点を言われておるのですけれども、そこに問題があるので、イギリスの制度と日本の制度とは違いますけれども、今言ったような形で調書を、本人がしゃべったことをまとめて、まとめたときにいかにして——犯罪の構成要件というのがあるわけですね。条文があるわけです。条文に合ったように検事の頭や警察官の頭で整理をして、そしてずっと聞いていくわけですから。ところが詐欺の場合で、おまえ、人をだましたかと聞いたら、決してだましませんと言うのですよ。これはだれだって言うのです。おまえ、詐欺したかと言えば、いや私は詐欺しませんと言うので、そんなことを聞いてはだめなので、だから詐欺になれば、他人を欺罔して財物を騙取するというところに持っていくためには、いろいろな状況を調べて、それでぐるっと回っていって、そこで最後にとるというか、そういうふうになるわけですね。そこであの検事はできるとかできないとかいうことになってくるわけですね。 そういう調書のとり方というのに基本的に問題があるのですよ、日本の刑事裁判というか刑事訴訟は。この点、やっとこさこのごろになって大分疑問点が起きてきて、何とかしなければいけないじゃないかという議論が出てきているわけですね。ですから、私は刑事訴訟法をすぐ変えろというのではなくて、検討しなければいかぬ、こういうふうなことを前から言っておるのです。 そこで、今言ったような形が出てきて、イギリスでは試行をするということになったのですが、そうすると、テープをとることについて、それを供述調書にかえるということについて、日本の中でも学者を中心として一部議論がありますね。新しく出てきていますね。今北大の渡部さんを中心ですが。それに対してまたいろいろな議論がもちろんある、こう思うのですが、テープをとることによってまず得られるメリットというのはどういうことなんですか。 今言ったように、問いがあって答えがあるのですよ。当たり前の話でしょう。ところが、供述調書というのは問いは全然出てこないのですから。全然出てこないで、答えばかりずっと並んでいるわけです。私は何月何日何々をいたしました、例えば石を投げると、石ではちょっとまずいかもわからぬけれども、例えばナイフで人を刺すと、刺しところによっては、相手が場合によっては死ぬのではなかろうかと思いましたなんてなってくるわけですね。調書ができてくるわけですよ。あなた、そんなこと答える人、いないですよ。それはいろいろな聞き方があるから、追い詰められてきて、そこに答えになってくるのです。そうでしょう。ところが、日本のは追い詰めてきた問いは全然出てこない。そこに問題があるのですよ。テープになると、今度はその問いが出てくるのですよ。こういう間いがあったからこういう答えになるので、それが出てこなければ、本当にフェアな裁判というか人権を守るというか、あるいは全体の公共の福祉にもかなうということになると思いますが、私はそういうものはできないというふうに思うのですよ。これは非常に大きな問題なんですね。 だから、あなたの方としては答えにくいかもわからぬけれども、嫌な質問かもわからぬけれども、テープということになるとまずそのメリットはどういうところにあるというふうにお考えになりますか。問いは出てきますわね。問いがあって答えがあるということ、これはわかりますね。どうですか。どういうメリットがあるというようにお考えになりますか。
○岡村政府委員 取り調べ官と被疑者との間のやりとりといいますか、取り調べの状況が具体的に録音されるわけであります。したがいまして、現在におきましても我が国におきましては、将来供述の任意性なりあるいは信用性が疑われる可能性のあるような事件等につきましては、必要に応じまして供述の際にテープに録音するということは行われているところでございます。ところが、現実の姿といたしまして、供述調書の任意性なり信用性が争われる事件はそんなに多くはないのでありまして、むしろこれは非常に少ないと言ってもいいわけでございます。 しかも、日本型の取り調べといいますものは、イギリス等と違いまして、犯行の動機から手段、態様あるいは結果の発生、さらには犯行後の状況等につきましてかなり詳細かつ具体的に供述を求めるということになっているわけでございまして、取り調べも非常に長時間かかってくるわけでございます。そういう長時間の録音は、これを聞きますときには同じだけの時間が必要になってくるわけでございまして、録音テープの再生という問題を考えましたときにこれはかなりの時間を要するということになってくるわけでございます。これはある意味ではデメリットといえばデメリットになるのではなかろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 いや、私が聞いているのは、私の聞き方もちょっとフェアでないのですよ。アンフェアなんですよ。これは、あなた、テープの場合のメリットだけ聞いているのですからね。デメリットは聞いてないのですからちょっと私もアンフェアなんだけれども、今言ったように確かに取り調べの中でテープをとる場合があるのですよ。その場合、取り調べ官がテープをとるのに調べられる方は知らないですね。知らないでテープをとった場合でもテープは法律的に有効なんですか。じゃ、逆の場合はどうなんですか。被疑者の段階、被告人の段階ではこれは取り調べの対象じゃないはずですよ。だから、それじゃ被疑者、被告人も黙って隠しマイクか何か持って取り調べ官のあれをとるということは、できるのですか、できないのですか。片方だけできて片方ができないなんて、そんなばかな話ないんじゃないですか。これはおかしいじゃないですか。それはどういうふうに考えたらいいのですか、そこのところは。
○岡村政府委員 通常は、被疑者に録音テープをとるということを伝えて取り調べの状況を録音化しておると思います。もっとも、現場録音と申しますか、いろいろな犯行の状況その他を録音するような場合は、これは相手方に録音するというようなことはもちろん伝える筋合いのものでもないと思いますが、いわゆる供述録音をいたします場合は、普通は被疑者にそのことを伝えまして、あるいはまたそのテープが間違いないものであるということを明らかにいたしますために、テープの上に被疑者にも署名させて封印するというようなことも行われていると思っております。
○稲葉(誠)委員 それは、普通と言ったでしょう、今。言葉じりをつかまえて悪いけれども、普通はというのは、普通でないときはそうじゃないやり方をしているということでしょう。そこの証拠能力はどうなっているのですか。最高裁の判例があるでしょう。まあいいですよ、きょうはそういう時間じゃありませんから。だから、おかしいのですよ、それは。 そこで問題は、僕は刑事施設法なんかでもよく言うのですけれども、受刑者の法律的な地位というのは国家との関係で権力関係に立っているわけですよ。上下の関係だと私は思うのです。被疑者、被告人の場合は違うと思うのですよ、それは。むしろ、当事者対等と言ってはあれかもわからぬけれども、とにかく横の関係に立つわけですからね。 そこで、今の場合、一方的に録音をとることが認められて、普通はたから、普通でないときは黙ってとっていいわけですよ。こっちの方は、それはもうどなられたり何かされているのも立証方法なんかなくなっちゃうでしょうが。何とかして録音なんかとろうと思ったって、何も持ってないわゆですけれどもね。それで録音をとることができるのかといったら、現実にはできないわけですよ。ちっとも当事者対等ではないわけですね。刑事訴訟法で当事者対等の原則というのが一体どこまで認められるかということは、なかなか難しい問題が確かにあると思うのですけれども、いろいろたくさんな問題があるのですよね、大臣。きょうは法案のときですし、この法案は賛成法案ですから私はそんなに長くあれしませんけれども、たくさんな問題があるのです。だから、刑事訴訟法というものは、すぐ改正しろと言いませんけれども、検討すべき点がたくさんあるのですよ。これはやはり検討しなければいかぬです。大臣、どうお考えになりますかな。
○遠藤国務大臣 ただいまのテープの問題を加えて、法務省として勉強させてみたい、刑事訴訟法ももちろんでございますが、そのような点において勉強させてみたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
○大塚委員長 橋本文彦君。
○橋本(文)委員 大臣、きょうの朝日新聞を見ましたか。
○遠藤国務大臣 まだ見ておりません。
○橋本(文)委員 局長は読みましたか、けさの朝日新聞。名古屋高検の豊島検事長が、最近再審がはやり過ぎていると、そういうような発言があったように報道されておりました。これをどのように我々は理解したらいいのか、まず大臣なり局長の率直な意見を聞きたい。再審が多過ぎるというような発言らしいのですが、お願いいたします。
○岡村政府委員 朝日新聞の記事だけしか私も見ておりませんので、豊島検事長がどういう意図なり真意でお話しになったことか、私も承知いたしておらないわけでございます。ただ、新聞報道を見る限りにおきまして、個々の具体的な事件を念頭に置いての発言ではなくして、最近再審の請求全体を見ますと数が多いのではないか、理由のない再審請求もなされるような傾向があるのではないか、こういうような趣旨から述べられたものではなかろうかと推察いたしますが、これは全く私の記事を見た推察ということでございます。
○橋本(文)委員 今回の法律の三条と五条に「再番保存記録」ということが出てくるわけです。つまり、再審ということを相当予想したような文言があるわけですね。そういう法案を審議しているさなかに、再審がはやり過ぎる。その表現からすると、何かこれはけしからぬと聞こえるわけです。そうしますと三条、五条のこのせっかくの「再審保存記録」というものの精神がどうなってしまうのだろうかと危惧しておるわけですけれども、大臣の率直な意見を聞かしてください。
○遠藤国務大臣 私は、けさ七時半から会議がございましたので、残念ながらまだその新聞は目を通しておりませんけれども、再審問題が最近多くなってきたということを率直に話されたのではないかなと、こう感じております。再審を請求するかしないかはその人の考えでやっていることであって、これに対して事務的に多くなったとか少なくなったとかという言葉は、これはやむを得ないことだと思いますけれども、それ以上の言葉というのは慎むべきだ、こう感じております。
○橋本(文)委員 それではこの問題はまた後刻取り上げることにしまして、今回のこの立法に際しまして一応法曹三者での協議会があったと思うのです。日弁連の試案によりますと、特別保存というような概念を設けておるわけですね。文化遺産というような発想、見地のようなんですけれども、この法務省提案の刑事確定訴訟記録、これを何回も何回も読んでみまして、私は、端的に言いまして、従来の校務関係文書等保存事務暫定要領と、保存という言葉があります。それから最高裁の規程の、民事事件に関しましては事件記録等保存規程、そういう名称なんですね。我々この刑事確定訴訟記録法と言われているものだけで、一体これは何なんだろうかということで、法務省では当然保存なり保管ということを意味していると思うのですけれども、ちょっとこの名前だけではわからない。これは単純率直な疑問点なんですけれども、なぜこれを確定訴訟記録保存法なり保管法なりあるいは閲覧法なりというように、国民が一目でわかるようなタイトルにしなかったのか。私は、これをよく見ますと、ああ、この刑事確定訴訟記録法とつけた由来はこう理解するんだなと思ったのです、極めて皮肉にとりますけれども。刑事確定訴訟記録閲覧禁止法、これが今回の法案の率直な意味合いじゃなかろうか、このように考える次第でございます。今回の立法理念がどこにあるかが大事な問題だと思います。 このように、刑事訴訟法の条文では保管という名称を使っております。暫定要領では保存。それから事件記録等保存規程でも保存という名称。今回の立法の言葉の中では、いわゆる保管記録という名称、それから再審保存記録という名称、そして刑事参考記録という三つの概念があるように思うのです。この保管と保存、どのように区分けして使っておられるのか、意見をお聞かせください。
○岡村政府委員 刑事被告事件に係る訴訟の記録の訴訟終結後におきます本来的な用途を申し上げますと、これは裁判確定後におきます裁判の執行その他の一連の検察官の行います事務の適正かつ円滑な遂行の確保ということにあると考えられるのでございます。したがいまして、そういう本来的な用途のために記録を保有することを保管という言葉で言いあらわしたわけでございます。これに対しまして、再審手続のため、あるいは刑事参考記録として物理的に保有する場合、これを保存というふうに表現をいたしたわけでございます。 それから、先ほど何か本法案は閲覧禁止法案であるかのような御発言をされたところでございますが、私どもは、閲覧するということと、それに伴います弊害と申しますか、特に訴訟記録の場合は個人の生い立ちから犯行に至る状況、犯行後の状況、その他プライバシーにわたる点が非常に多いわけでございまして、プライバシーの保護ということも十分考えた上このような法案にいたしたところでございます。
○橋本(文)委員 暫定要領と今回の法案を比較してみますと、要するに閲覧の制限される条項として、三年を経過した記録は閲覧させない、これが新たに加わっているわけですね。なぜこの三年ということが出てきたのか。端的に言えば三年間でもう閲覧できなくなってしまう、大変な制限を受けるわけで、暫定要領に比べてはるかに後退してしまった、こんなような気もするわけです。
○岡村政府委員 先ほど申し上げましたように、記録の閲覧ということにつきましては、プライバシーの保護あるいは犯人の改善更生に支障にならないようにするといったような、いろいろな配慮が必要であると思うわけでございます。こうした関係人の名誉等の利益の保護といいますものは、訴訟が終結いたしまして期間が経過するに伴いましてやはりそちらの方が優越してくるということが言えると思うのでございます。また、これまでの運用の実績を見ましても、閲覧した者の九八%までが三年以内に閲覧を行っているところでございます。こういったようないろいろな事情を考慮いたしまして、三年を経過したときは閲覧ができないということにいたしたのでございます。 しかしながら、全面的に閲覧ができないということではないのでございまして、「訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合については、この限りでない。」というふうに四条の二項で規定しているところでございます。
○橋本(文)委員 この法案の関係資料に添付されております閲覧件数の表から見ると、確かに裁判確定日から三年以内で九八・一%という数字が出ております。今局長の答弁を聞いておりますと、このデータから直ちに、九八・一%の閲覧件数があるから三年でよかろう、データ的に、そういう御意見なんですね、根拠としては。 それで、その前の(3)に閲覧の申請件数、許可・不許可件数というのがあるのですけれども、これを見てみまして私びっくりしたのですが、非常に閲覧申請件数が多い。そしてまた閲覧許可件数も圧倒的に多い。閲覧不許可件数というのは極めて少ない。実態からするとこんなことはあり得ないのでありまして、この表はどういうことを物語っているのか。私は、これは相当虚偽があるのじゃないかと思うのです。あるいは操作があるのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
○岡村政府委員 虚偽もございませんし、操作もないわけでございます。ただ、これまでの閲覧に関する事情を申し上げますと、閲覧請求書というものを提出する前に、事前に口頭で検察官との間に閲覧できるかどうかというような問い合わせといいますか、事前交渉といいますか、そういったことがなされる場合が多いわけでございます。そして、その段階で検察官が閲覧させるのが相当でないという判断でその旨を回答いたしましたときは、それで閲覧者側も申し出を引っ込めると申しますか、閲覧をしないというようなケースもあっただろうと思うのでございます。そういうものはこの中には入っておらないわけでございまして、要するに書類で閲覧申請をした、それに対して許可したものの数はこれだけであるというのがこの表であるわけでございまして、今述べましたような実情から、実際に口頭で閲覧は申し出たけれども閲覧できなかったという例はあると思います。ただ、その数が幾つあるのかということにつきましては把握ができていないのでございます。
○橋本(文)委員 言うなれば閲覧の事前審査制がある、極論すれば、そうとられるじゃないですか。閲覧していいのか悪いのか、だめだよ、じゃやめとこう、そういうものは全部最初に言った三年以内の中に含まれているはずですよ。それから、三年を超え五年以内あるいは五年を超え七年以内、こういう記録についても当然閲覧申請があるはずなんです。今局長がおっしゃったようにあらかじめ検察官がだめですよと言う、そういうふうに言われるから出てこない、そういうこともデータにきちっと入れれば果たして局長が言うように三年以内で切るのが妥当か、そういう疑問は消えないのです。すべての申請が、口頭であれ電話であれ書類であれ、出てきた段階でそれはだめですよという件数が出る。それが何年後に出ようがきちっと出れば、この添付された関係資料三番、四番につきましても相当数字は違ってくると私は思うのです。そういう観点から、局長のおっしゃったように三年で閲覧を制限するというのは極めて不当である、こう思うのです。
○岡村政府委員 事前に口頭で閲覧の申し出がたされるのが事前審査ではないかという御発言でございましたけれども、事前審査というのがどういう趣旨か私もちょっとよくわかりませんが、要するに閲覧したいものをいきなり申請書を出す人もあるでしょうし、口頭で申し出る人もあると思うわけでございまして、事前審査というようなことではないと思います。それともう一つは、口頭で閲覧の申し出をされて結局閲覧しなかった方でございますが、その数は先ほど申し上げましたように正確に把握しているわけではございませんが、私どもが承知している限りにおいてはそんなに多いものではないと理解いたしておるところでございます。 そしてまた三年という期限を設けた点につきましては、先ほど来申し上げておりますように期間の経過に従って関係人の名誉等の利益の保護というものの方がやはり優越してくるのではないかということ、それと、三年以内に大体九八%の人が閲覧しておるという実情を踏まえて三年が相当であるとしたのでございます。しかも、これも先ほど申し上げたようにすべて三年を経過したら閲覧させないということではないのでございまして、訴訟関係人、閲覧につき正当な理由のある者につきましては、その役といえども閲覧が可能であるという道が残されているのであります。
○橋本(文)委員 これだけやっておっても時間がたってしまいますけれども、せっかく件数の問題に触れましたのでお聞きしたいのですが、確定記録を閲覧する人は具体的にはどういう人が多いのじすか。
○岡村政府委員 訴訟関係人が約五%、報道関係者が〇・八%、民事事件の関係者が八七%、学術研究者が〇・二%、その他という数字になっております。これは昭和五十七年から六十一年の間の回覧人についてまとめた数字でございます。
○橋本(文)委員 従来、閲覧をする場合その記録の謄写あるいは写真撮影は許可しておるのですか。
○岡村政府委員 許可した場合もございます。無条件で謄写、写真撮影を認めていたわけではございませんで、その必要性等を勘案して必要な場合にはこれを認めていたところでございます。
○橋本(文)委員 暫定要領時代は原則としては謄写は認めない、そのように理解していいわけですか。原則としては謄写はさせない、ただ見てメモするだけだという趣旨でございますか、それとも、謄写をしてもいいけれども、とめる場合もあると理解すべきなのですか。その割合は。
○岡村政府委員 閲覧を許す場合には、記録の謄写、撮影等を許すことができるというのがこれまでの通達の規定であったわけでございます。現実の運用がどうなっているのかということでございますが、この点も、謄写の申し出を書面で必ずしもとっておりませんので、実数の把握ができていないわけでございます。 原則として許すのか許さないのかということでございますが、これは必要性に応じて、あるいはまた謄写の正当性といったものに応じて具体的に適正な運用に努めていたところでございます。
○橋本(文)委員 今回の立法をされますと、閲覧に際しての謄写等はどうなってくるのですか。暫定要領よりもはるかに進歩するのか、暫定要領時代の慣行を踏襲するのか。
○岡村政府委員 刑事訴訟法上、閲覧と謄写は別の概念として定められているところでございます。刑訴法の五十三条では閲覧ということを定めておりますので、今回の法案も閲覧だけを定めたわけでございます。 ただ、謄写につきましては今後通達等におきましてその適正な運用を図るよう努めたいと考えているところでございます。記録の謄写につきましては、謄写されました記録が出回ったりして関係人の名誉を傷つけたり、あるいは犯人の改善更生を妨げるという場合、その程度は閲覧の場合に比しまして非常に大きいものがあると思います。したがいまして、そういう点は謄写の申し出がありましたときに検察官としても十分考慮してこれを認めるかどうかを決定しなければいけないと考えております。しかしながら、例えば弁護士が民事関係あるいは刑事関係の手続を進める上において必要であるので謄写なり写真撮影をさせてもらいたいというような業務上の必要性から生ずるところの謄写、撮影等につきましては、正当な理由もあり、その必要性もあるということでございますので、こういう場合は一般的にはこれを認めることになろうかと思います。いずれにいたしましても、その辺は適正な運用に努めるよう配慮いたすつもりでございます。
○橋本(文)委員 時間がないから論議できないのですけれども、大臣、私の持論は、端的に言えばこの問題は確定記録を幾ら保存してもしようがないのです。閲覧のチャンスがなければ意味がない。まさにそれは保存ではなくて、死蔵であり退蔵なんです。保存という以上は、原則的には閲覧のチャンスを大幅に認めるべきである。もちろんプライバシーの保護ということも大事であります。そういう点で、僕は今回の法案は極めて不満なんです。率直に言って、大臣は暫定要領時代よりも一歩も二歩も前進したとお考えですか。
○遠藤国務大臣 御承知のとおり別に法律で定めるということになっておったのでございまして、そのような点で整備していこうという気持ちであります。
○橋本(文)委員 戦後四十年も放置されておって、今になって法律で定めるとあるから決めるのだ、そんなような発想ではだめですよ、はっきり言って。少なくとも今の時代は情報公開制度なんです。政府が持っている情報を公開しようというのが一般的な動きになっている。そういう時代に先駆けて、憲法八十二条の精神を受けて刑事訴訟法はきちっと保管をしなければならない、閲覧させなければならない、こうなっているわけです。そういう考え方をすると、一般情報公開制度に先駆けてむしろこの問題はきちっと整備しておかなければならなかった。それを今、法律が決めているのにまだ決めてないから十分な議論もしないで慌ててやるんだ、そんなようなことでは僕は拙速のそしりを免れないと思うのです。しかも、その内容たるや何回も言うように閲覧制限が多過ぎる、こういう点で非常に不満なわけです。もう少し基本的な物の考え方、ただ単に刑事訴訟法で保管について別途法律をもって定めなければならないというから今回定めるんだ、そんなようなことではだめです。やはり基本的な方針でもって、一体基本理念は何なんだろうか。確定記録の持つ意味は何なんだろうか。単純に法律があるじゃなくて、文化遺産なのかという見地とか、裁判の再審に必要なものだとか、学術研究に必要なものだとか、裁判の公正を担保するためとか、いろいろな理由があるでしょうけれども、少なくともそういう基本的なものをきちっと踏まえた上で立法を進めるべきじゃなかったかと思うのです。 私、別に日弁連の肩を持つわけじゃないですけれども、特別保存という概念の方がはるかにいいと思うし、それから従来裁判所と検察庁のいろいろ確執がありましたけれども、やはり記録としては保存するのは裁判所がいいと思うし、それからとういう確定記録を永久保存するかということについても、いろいろな協議機関を設けて検討していこうという方がはるかに民主的であると思うのです。ところが、今回のこの法案は、再審保存配球も検察官の裁量、それから刑事参考記録も大臣の裁量、そこには裁判官も一般の学術経験者も全然関与できない。こういう内容でございますから、今大臣の、刑事訴訟法上法律に定めるんだというから今回立法したんだという御答弁では納得できません。
○岡村政府委員 今回の法案は、暫定要領をベースにいたしまして、その間の運用の実績も踏まえて、さらにこれを改善する方向でつくったものでございます。暫定要領に比べまして、例えば再審の手続のための保存記録を定める、これに対しましては、検察官も保存をすることができるわけでございますけれども、再審の請求をしようとする者にも保存の請求権を認め、しかも不服申し立て権まで認めているのであります。そのほか、保管記録の閲覧につきましても請求権を認めて、不服申し立てを認める。あるいは、刑事参考記録というものを保存することを明確に定めているわけでございまして、こういったような点で手続を非常に明確化しておるという点では、暫定要領に比べまして著しい、といいますと先生の方の御意見とは合わないかもわかりませんが、私どもは相当の進歩もあり改善もある法律であるというふうに考えているところでございます。 また、情報公開という点でございますが、情報公開の制度のもとにおきましても、個人のプライバシーに関するものまで公開せよということではないのでございまして、この刑事確定訴訟記録につきましては、通常の個人のプライバシー以上のプライバシーに関する部分が、例えば供述調書等において非常に生々しく記載されているわけでございます。そういった点を考えますれば、やはり法務省といたしましては、関係人の名誉の棄損あるいはせっかく立ち直ろうとする被告人の改善更生というもの、こういった面を十分に配慮する心安があるというふうに考えたものでございます。 閲覧が著しく制限されておるという点も、法務省の立場から申し上げますならば、訴訟関係人や正当な理由があると認められる者については、閲覧の請求権が三年経過後でありましても認められているのでございまして、決して閲覧を著しく制限するような法案ではないというふうに考えておりますので、その点はひとつ十分御理解をいただざたいと思うのでございます。
○橋本(文)委員 局長から、今再審のための保存ということも出てきた。検察官も保存記録にそれ征できるし、また関係人の請求によって再審保存則録になることもできる。そういう動きがあって一歩前進したんだと今おっしゃった。ところが現概の、先ほどのある高検の検事長さんは再審がはやり過ぎているという発言をしている。そうなると、やはり現場にいる検察官も、余り再審記録は保管しちゃいけないのかな、保存しちゃいけないのかなと思うんじゃないでしょうか。それからまた、関係人が再審保存記録と申請しても却下さ恐れるというようなケースがあるんじゃないかな。偶然にもきょうこの法案の審議に際しまして、再審が多過ぎるというような発言をするのは極めて無神経である、この確定記録法に対する挑戦である、私はこう思うのです。真意はまだわかりません。わからないけれども、そう思うのです。したがって、冒頭申し上げましたように、刑事確定訴訟記録閲覧制限法なり、そういうふうに名称を直すべきだ、むしろ端的に。そう思うのです。これは見解の相違でございますから、結構でございます。 閲覧の制限もさることながら、再審保存記録にするかしないかということも、これは全部検察官の裁量のようでございます。例えば、今回の第三条の「保管検察官は、保存すべき期間を定めて、これを再審保存記録として保存するものとする。」この「保存すべき期間を定めて、」ということは、どのくらいの期間を定めることを予想しているのですか、この法律は。一年なのか、十年なのか、五十年なのか、永久なのか、この保存すべき期間を定めたとは一体何なのでしょうか。
○岡村政府委員 これは、当該事件が再審の手続に進んだ場合、その手続を進める上においてどの程度必要であるかという見通しのもとに定めるわけでございまして、一律に何年ということはできないわけでございます。また仮に、三年とか五年という保存期間を定めましても、その間に再審手続が終わらないような場合、引き続き保存の必要があるような場合におきましては、四項で保存期間は延長することができるわけでございます。
○橋本(文)委員 少なくともこの保存すべき期間を、短期だけは法定しておくべきじゃないかと思うのです。おかしいですかね。最低期間何年間は再審保存記録とするというような、短期は決める、それ以上は今おっしゃったように再審に要する時間というものを考慮する、さらに徒過すればこの第四項で延長、その方が我々はわかりやすいのですけれども、これでは本当に検察官の裁量に一方的になってしまうような気がするものですから。
○岡村政府委員 例えば道交法違反の無免許運転とか、あるいは交通事故の身がわり犯人という問題が再審の問題としてあるわけでございます。こういった問題につきましては、検察官が捜査の過程で発見いたしまして、かなり簡易迅速に再審の開始決定が行われまして、再審の裁判が行われるということになるわけでございまして、そういう場合は保存すべき期間を仮に定めましても、短い期間で足りるわけでございます。したがいまして、保存すべき期間を一律何年とかあるいは最低何年という決め方をする必要はないというふうに考えるのでございまして、委員は非常に難しい、例えば殺人とかいった事件の再審ということを念頭に置いての御質問であろうかと思いますが、全体的に見ますと、そういう再審もございますし、私申し上げましたような、身がわり犯人のような極めて簡単な再審もあるわけでございまして、そういうもの全体を眺めますと、短期を定める必要もないというふうに考えるわけでございます。また、保管検察官の裁量ということではございますけれども、これは二項で再審の請求をしようとする者などに保存の請求権も認められておりますし、それに対する不服申し立てもできるということになっておるところでございます。
○橋本(文)委員 時間がなくなりましたが、最高裁も来ておりますので、裁判所に聞きます。 今回、この確定記録の保管あるいは保存は検察庁が行うということなんですけれども、昔から裁判所と法務省との間で保管をめぐっていろいろな確執があったやに聞いております。今回、四十年経過して検察庁に落ちついた経緯、それから裁判所の見解を聞かせてください。
○吉丸最高裁判所長官代理者 訴訟記録はもともと裁判所が訴訟工作成、保管するものであるということなどから、確定後も引き続き裁判所において保管するのが相当であるというような考え方もございます。しかし他方、判決の確定後には、先ほど法務省からも御説明がございましたとおり、検察庁において裁判の執行指揮その他各種の事務を行うこととなりますところ、これらの事務を適正かつ円滑に行うためには訴訟記録を必要とするという実情がございます。現行刑訴法の制定過程におきまして裁判所と法務省との間で見解が分かれたのは、主として今申し上げましたようなところからでございます。 その後、確定記録は御承知のとおり法律の制定を見ないまま検察庁が保管してまいりましたが、その間の運用を見てみますと、確かに裁判の執行等のために訴訟記録は検察庁において保管する必要があるというふうに認められます。また、記録を保管する実際上の必要といたしましては、裁判所の方が、例えば確定後にも書記官に対する司法行政上の監督権の行使等のために必要であるというような事情はあったわけでございますが、この点につきましても、この間の運用から見ますと、裁判所と検察庁との間でその点を調整することによって格別の支障なく運用されてきたという状況もございます。そのようなことを考えまして、今回の立法に当たりましては特に裁判の執行その他の事務の適正円滑な実現というようなところを重く考えまして、検察庁で保管するのが相当であるというふうに考えたわけでございます。
○橋本(文)委員 無罪判決の場合にも検察庁に返るわけですね。無罪判決の場合にそういう後の処置というのは必要なんでしょうか。
○吉丸最高裁判所長官代理者 無罪判決の場合に裁判の執行等の問題が生じないということにつきましては、委員御指摘のとおりでございます。ただ、御承知のとおり無罪判決は比較的数が少ないということもございますし、有罪判決の場合と無罪判決の場合とによって記録の保管の主体を異にするということは実際上いろいろ問題があろうかと思います。例えば閲覧その他の点につきましても、統一的に検察庁において保管するということがまさるというふうに考えられるわけでございまして、無罪判決の記録につきましてはいわばそのような統一的な取り扱いという観点から有罪判決の記録に合わせたということでございます。
○橋本(文)委員 民事記録の事件記録等保存規程がございますね。この規程をやはり法律にまで高めるというお考えはお持ちなんですか。
○吉丸最高裁判所長官代理者 まず現在の状況を御説明申し上げますと、現在は事件記録等保存規程で保存いたしておるわけでございますが、これは、法形式からいたしますと最高裁判所規則の一形態でございます最高裁規程に属するわけでございます。また、確定記録の保存に関する事務はもともと裁判所の内部的な司法事務処理に関する事項に当たると考えられます。そのようなことで、これが最高裁判所規則の範囲内に属することははっきりいたしておるところだと思います。そのような意味で、私どもといたしましては、今後も民事の記録の保存につきましては最高裁判所の規程で定めていくのが適当であると考えております。
○橋本(文)委員 時間が来てしまったのですけれども、刑事参考記録とみなすものが今回できるわけですね。その実態を知りたかったのですが、具体的にどういうものが刑事参考記録とみなされていくのか、その名前、もしよかったらこんな事件なんだというふうに言ってくれませんか。
○岡村政府委員 現在、刑事参考記録として保存されておりますのが約二百八十件ございます。これらの事件につきましては、訴訟終結後相当期間か経過はいたしておりますけれども、なおこういったものを個々具体的に述べますことは、被告人あるいは関係人の名誉、プライバシー等にもかかわってくることにもなりますので、その点はひとつお答えを差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
○橋本(文)委員 保管、保存するについての予算的な措置はどうなっているのでしょうか。
○岡村政府委員 本年度の予算におきまして、約二千七百万円予算措置が講じられております。
○橋本(文)委員 暫定要領の時代は予算はどうなっていたのですか。
○岡村政府委員 法律ができておりませんでしたので、具体的な訴訟記録保存のための関係経費ということで個別の事項が設けられていなかったのでございます。したがいまして、どの程度予算がついておったかと言われますと、ちょっと何ともお答えいたしがたいところでございます。
○橋本(文)委員 最後に大臣、いろいろ耳ざわりなことも申しましたけれども、要するに裁判の公正を担保するという意味での立法と思います。その見解に立つような今後の運用をお願いいたします。一言どうぞ。
○遠藤国務大臣 ただいま委員お話しのように、やはり法の厳正ということを中心として実施していくことと承知いたしております。 それから、先ほどいろいろお話がございましたけれども、私どもとして情報の縮小というようなことは考えておりません。先ほどの刑事局長のお答えのとおりでございますので、その点十分御理解願いたいと思います。
○橋本(文)委員 終わります。
○大塚委員長 安倍基雄君。
○安倍(基)委員 同僚議員がいろいろ聞かれた後だと思うので余りなにでございますが、きょう最初に私、あるいは変わった観点かもしれませんけれども、マイクロフィルムか何かで保存するということは考えていないのかな。というのは、今までの保存というのは、非常に訴訟が累積していけばそれの書類を保管するのも大変だ、そのたびにそれを未来永劫とっておくなんて大変だというような観念が先に立っていると思うのです。この進歩した時代に、例えば国会の議事録なんかでも、ちょっと私もやったことはないけれども、ボタンを押せば昔の議事録が出てくるというような話も聞いています、その辺私の知識が正確じゃないかもしれませんけれども。判決はまあいいけれども、いろいろな訴訟記録などはマイクロフィルム化していけば本当に幾ら保存したってそんなにスペースもとらないし、いわば最初のコストはちょっとかかるかもしれませんけれども、そういうぐあいに考えてみてもいいのじゃないかな。従来、こういったら何年、こういったら何年としておりますから、それはそれなりのあれはございましょう。その一番の前提としては、そういうのを全部保存しておくとなかなか大変だ、場所もとるしどこかへいってしまうというような前提があったんじゃないかな。そうすると、特にこういう裁判記録なんというものは非常に将来も大事な話でございますから、マイクロフィルムにでもしてしまえば相当保存期間も長くたって構わぬじゃないか、これは何年これは何年と。もちろん余りつまらぬものをとっておく必要もないかもしれませんけれども、そう思うのですが、その辺はどういうお考えでいらっしゃいますか。
○岡村政府委員 訴訟記録をマイクロフィルム化するというのは、確かに一つの考え方であると思っております。しかしながら、現状におきましてマイクロフィルム化するのにはやはり多くの手間がかかるわけでございます。したがいまして、現段階で直ちに訴訟記録のマイクロ化ということは困難だというふうに思っておるわけでございます。ただ、今後ともそういった方法につきましては十分ひとつ検討は続けてまいりたいと思っておるところでございます。
○安倍(基)委員 前の質問者でも出てきたと思いますけれども、例えば保管期間は、被告事件が終結後三年を経過したものはなかなか見せぬとか、そういうのもお話によると平均値がこのくらいだからとかいう話もあったようでございますけれども、そういうことはちょっとおかしいので、これはまた逆に、昔のものを引っ張り出すのはべらぼうに大変だというような意図があるのかどうかはちょっとはっきりしませんけれども、ある程度そういった機械化、科学化すればそんなに、例えば三年以上のものは見せないとか、そんな規定までつくらぬでも済んだのじゃないかな。これは聞き落としたかもしれないので私ももう一遍確認したいのですけれども、被告事件が終結後三年を経過したものは原則として見せないよ、だけれども特別の場合は違うというようなことを言っている理由をちょっともう一遍私にもお聞かせ願えませんか。
○岡村政府委員 訴訟記録の閲覧は、裁判の公正担保という趣旨でこれを一般人の閲覧に供するわけでございます。しかしながら一方におきまして、訴訟記録は刑事事件の場合、被告人にしろ被害者あるいは関係人にしろ、かなり具体的なプライバシーにわたることが極めて具体的に供述されている場合が多いわけでございます。したがいまして、そういったものを閲覧させおことによります関係人の名誉の保護とか、あるいは犯人の改善更生の妨げにならないようにするとか、あるいは公の秩序なり善良の風俗を害することのないようにするとか、そういった点の配慮も必要であるわけでございます。したがいまして、両者を比較考量いたしまして、閲覧の範囲といいますか、それを決めていくのが妥当であると思うわけでございます。 そういたしますと、三年を経過いたしますと、先ほど来申し上げておりますように九八%の人がこれまでの実績からいきますと閲覧をしておるという実情にありますし、また、年月の経過に従いまして関係人の名誉等の利益の保護といった方が慢越してくるということが考えられるわけでございまして、こういった点を踏まえて三年ということを定めたわけでございますが、この点も先ほど来から申し上げておりますように、三年ということを定めたから三年以後一切閲覧ができないということではないのでありまして、訴訟関係人あるいは閲覧につき正当な理由があると認められる者につきましては閲覧が可能であるということにしているのでございます。
○安倍(基)委員 私は外国との比較が好きなんで、今度の資料にもある程度用意されておりますけれども、今度の記録保存期間の基準、これは達観してほかの諸国と比べてどうであるのかということと、今の例えば三年の閲覧という期限を切っているような話はほかの国ではどうなっているのか。確かにプライバシーという面もございましょうけれども、もともと何%が大体終わるからそれで済む、もし本当にプライバシーの面から言えばもっともっと期間は短くたっていいわけですから、その辺、プライバシーに関するものはいけないという話だったら、一年であろうと二年であろうとむしろその部分は外すというくらいのあれがあっていいわけでございまして、たまたま今の切り方なんかほかの国と比べてどうなっておりますか。
○岡村政府委員 参考資料として既に御提出をいたしておるところでございますが、それを見ていただければおわかりいただけますように、例えばアメリカでは裁判書は永久保管、その他の訴訟記録の保管期間は内容によりまして永久のものから期限のあるものまであります。しかしながら、裁判書につきましては裁判所に保管しておりますのは事件終結後二十五年でございまして、その後は国立の公文書館に引き継いでいるところでございます。また、永久保管とされております訴訟記録につきましても、事件終結後五年間裁判所で保管して、その後は連邦文書保管センター等に引き継がれていっているのでございます。 西ドイツでは、死刑、これは一九四九年に廃止になっておりますが……
○安倍(基)委員 時間もないですから、細かく言わなくてもいいですから、私が今聞いているのは、何というか、最終的には閲覧なんかの問題につきまして、ちょっと何か日本の場合にはえらい早目に切ってしまっているんじゃないかという気もするので。
○岡村政府委員 閲覧につきましては、裁判所が秘密の指定をした場合は公開されないというのがアメリカでございます。フランスでは、閲覧は原則として非公開というふうにされております。それから西ドイツでは、閲覧につきましては犯人の改善更生や関係者のプライバシー保護の観点から原則として非公開、公開いたしておりませんけれども、弁護士については正当な利益があるとき、学術研究者についてはその研究が重要であって乱用のおそれのないときについては閲覧が許されるということになっております。それからイギリスでは、閲覧につきましては裁判所の裁量によるわけでございますが、公開を三十年間禁止することができるということになっております。
○安倍(基)委員 これは各国によっていろいろ違うのでしょうけれども、私は一つは、さっきも話したかもしれませんが、裁判所で保管する方が、いろいろ見に行くにしても検察庁に行くよりは何となく気軽に行けるのじゃないかということと、それから何年で切るということよりも、本質的にプライバシーに属するものはきちっと最初から外しておく。だから、三年間で何となく切るというのは、古いものを引っ張り出すのほかなわぬよというような事務的な意味があったのじゃないかという気もするのです。この辺は何か従来の例にそのまま沿ってあるいは立法されたかもしれませんけれども、ちょっと問題がなきにしもあらずかなという気がいたしますが、いかがでございますか。
○岡村政府委員 先ほど来申し上げたところに尽きるわけでございまして、正当な理由がある者とか訴訟関係人につきましては三年という期間の制限はかぶらないわけでございます。したがいまして、訴訟関係人でもなく、また正当な理由のない者が三年を経過して閲覧を申し出てきたときにはこれを認めないということであるわけでございます。 そういたしますと、正当な理由もなく訴訟関係人でもない者としては一体どういう者が考えられるのだろうか。そういう者が三年を経過して記録を閲覧に来た場合にもやはり閲覧をさせなければならないのであろうか。やはりこれは、三年という経過に伴いまして、先ほどから申し上げておりますように、関係人の名誉等の利益の保護を図るということ、これが優越してくるのであって、この三年という期間はそういうようないろいろな点から見ましても妥当なものであるというふうに考えるわけでございまして、決して閲覧権を一方的に制限するものではないというふうに思っております。
○安倍(基)委員 じゃ、ある人が伝記を書こうとかドキュメンタリーを書こうとか、そういうときは正当な理由になるのですか。
○岡村政府委員 これは難しい質問でございますが、実名を出してそういうものを出版するというようなことは、やはりケースによりましては関係人の名誉を傷つけたりプライバシーを侵害するおそれ、あるいは場合によっては被告人の改善更生を妨げる事情となる場合が考えられると思います。
○安倍(基)委員 ケース・バイ・ケースかもしれませんけれども、ちょっとその辺がはっきり——私は、あるいは重複するかもしれませんけれども、本来むしろ裁判所で保管する方が適切ではないかなという気がするのですが、その辺はどういうことでそうじゃないのか、ほかの国の立法例で両方ございますが、ドイツあたりは検察局ですか。アメリカ、フランスあたりは裁判所というぐあいになっておりますね。イギリスもそうですね。これは私もそこで最終的に判断をしたところがむしろ保存すべきじゃないかなと思いますけれども、その点いかがでございますか。
○岡村政府委員 例えば外国でも、アメリカとかイギリスは裁判所が保管いたしているところでございます。しかしながら、アメリカ、イギリスにおきましては、裁判を執行するのは検察官ではなくして裁判官であるわけでございます。一方、西ドイツは検察官が保管いたしております。西ドイツは裁判を執行するのが検察官であるわけでございます。そういうような点を考えますと、やはり諸外国におきましても裁判を執行する機関が保管をするということが言えるであろうかと思うのでございます。我が国におきましても、裁判の執行は検察官が行うことになりますし、また訴訟が終結いたしました後のいろいろな手続は検察官が関与し、あるいは検察官が行うということになっておりますので、検察官が保管するのが相当であるというふうに考えている次第でございます。
○安倍(基)委員 これは法体系の差でもございましょうけれども、私は直感的には裁定を下した場所の方がよりベターではないかなという気がいたします。私の質問時間が非常に短いもので余り幾つもできませんので、じゃ民事の保存はどうなっているのかということをひとつお聞きしたいと思います。
○上谷最高裁判所長官代理者 民事事件の記録の保存につきましては、最高裁判所の規則でございますが、事件記録等保存規程というのがございまして、これを根拠にいたしまして保管をいたしております。保管いたします裁判所は、民事訴訟事件で申しますと、当該事件の第一審を担当した裁判所で保存する、そのような規定になっております。
○安倍(基)委員 刑事だけこうやって法制化した理由はどこにあるのですか。
○千種政府委員 今の御質問は民事の記録について立法する必要があるかという御趣旨と理解いたしまして申し上げますが、民事の場合には刑事訴訟法と違いまして記録の保存主体を別に法律で定めるという規定がございません。なぜないかということは、民事事件については記録を本来裁判所が保管するということが一般の考え方になって定着しておったからだと思います。どこでということについての明文の規定はどこにもないのでございます。民事訴訟法のいろいろな規定がそういう建前でできておるとか、その性質が裁判所の規則で定めるに適する問題であるとか、そういうことからそういう事件記録等保存規程というものが裁判所規則にありまして、その中に保存の期間とか資料で重要なものについての特別の保存の規定とか、そういうものが整備されており、それが実際に今日まで運用されて支障がないということでございます。そこで、私どももこれを特別に法律をつくって定めるという必要性を今まで感じておりませんで、特に法律をつくるということに至っていないのでございます。
○安倍(基)委員 もう時間もございませんから、最後に保存、これは集中管理ということは考えられないのですな。
○岡村政府委員 刑事参考記録は別といたしまして、保管中の記録につきましてはやはり裁判の執行といった事柄上必要であるわけでございます。裁判の執行は一審の裁判所に対応する検察庁の検察官が指揮することになっておりますので、やはり各検察庁で保管するのが妥当であるわけでございます。 ただ、刑事参考記録につきましては、将来の問題といたしましてその点は検討に値することでもあり、また、研究はいたしてみたいと思っております。
○安倍(基)委員 最後に大臣から、一つはマイクロ化の問題、それから第二は裁判所で保管するか検察庁で保管するかについては一応御答弁ございましたけれども、閲覧との関連で私はひとつ裁判所の方がいいのじゃないかという気もいたしますが、それと最後に民事についてどう考えているか、その三点をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
○遠藤国務大臣 マイクロ化するということに対しては、私もなるほどなと。改めて申し上げるまでもなく、一つはスペースが最小限度にとどまる。先ほど刑事局長の答えは、金もかかるし、手間もかかるといういろいろの話がございましたが、一度やってしまえば後は簡便にいくのではないかなと思いますけれども、とにかく訴訟記録の保存の法案自体がようやく三十数年かかってここに皆さんに御審議をいただくということで、なかなか制度を変えるということは、役所自体も各省庁といろいろの関係がございますけれども、先ほど稲葉先生の問題もございましたが、私はこれは我々法務省として大いに勉強していくべきだなという感を深めております。 それから裁判所と検察庁との保存の問題でございますが、とにかくこの記録法案をようやく意見の一致を見て提出したという段階でございまして、この法案が前進したな、保存期間も前進したなということで御理解をちょうだいすれば大変結構なことだと思います。 刑事の方は五十三条の四項で別に定めるということでございますけれども、民事の方は今民事局長のお話しのような状態でございまして、現状は支障がないという感がございますので、その時期に当たってまた再検討したいと思います。
○安倍(基)委員 終わります。
○大塚委員長 安藤巖君。
○安藤委員 いろいろお尋ねがありましたので、私は要点を絞ってお尋ねしたいと思います。 まず、法案の第九条の関係でお尋ねしたいと思うのですが、先ほど法務省岡村刑事局長の答弁の中で、現在刑事参考記録として二百八十件保存をしておるというお話がありましたけれども、この中には、かつて第百二国会、昭和六十年四月十日のこの法務委員会で私ども共産党の林吾郎議員が質問をいたしまして、松川事件とかメーデー事件とかチャタレー事件その他有名重大事件の記録が保存してあるかとお尋ねをしたわけでありますが、それも入っておるのですか。
○岡村政府委員 先ほど来申し上げましたように、現在保存されております刑事参考的な記録につきまして個々具体的に件名等を挙げますことは、関係人の名誉等の関係もございますので、ひとつ御容赦いただきたいところでございます。ただ、刑事参考記録は、重要な判例となった裁判がなされた事件など法令の解釈、適用上特に参考となるような事件、あるいは国政を揺るがせたような事件、犯罪史上顕著な事件、重要な無罪事件、その他社会の耳目を集めた事件等でございます。ただいま委員御指摘のありました事件はこれに当たるとお考えいただいても差し支えないのではないかと思うわけでございまして、その辺でひとつ御了承いただきたいと思います。
○安藤委員 今の御答弁を聞いておりまして、それならもっと五つか六つ、十か二十ぐらい申し上げて、これはどうだとお尋ねして今のような答弁をいただきますと大体見当がつくのですがね。 それでは、現在参考的に保存しておられる記録、これも閲覧をすることができるのですか。
○岡村政府委員 これにつきましては、閲覧が絶対できないというわけではございませんが、本法が施行されますれば、これは刑事参考記録とみなされまして、九条に基づきまして閲覧させることができるということに明確になってくるわけでございます。
○安藤委員 そうしますと、これは法務省が保管、保存をしておられるのですが、どういう事件、何と何の事件が保存されているのか明らかにできないとおっしゃると、あの事件が見たいなと思ってもあるのかないのかわからぬということになるでしょう。せっかく閲覧をさせる、今度は九条の二項でちゃんとこうなるわけですから、これとこれとこれはありますよということでないと、これを見たいのですというふうに言えないのじゃないかと思うのですが、その点どう考えてみえますか。
○岡村政府委員 これは、学術研究などのため閲覧が必要であるということで閲覧の申し出をされました方がありました場合には、その方にはどういう種類の記録であるかというようなお話を伺いまして、それなりの便宜は図るつもりでございます。
○安藤委員 そうしますと、閲覧希望者が具体的に件名を申し上げて、こういう事件の記録を見たいのですということでお邪魔したときに、実はそれはないのですということで門前払いですね。それでは四つか五つ持っていったら、そのうちの二つはあります、こういうことになって非常に手間がかかるわけなんですが、大体見当をつけて、これはあるだろうといって当たった、やはりあったということではどうも心もとないのですけれども、例えば私が法務省へ行って、今保存しておられるリストをちょっといただけぬか、あるいは見せてもらえぬかというふうにお願いした場合はどうなるのですか、応じてもらえそうですか。
○岡村政府委員 リスト全体をもらいたいという御要望には応じかねるものでございます。ただ、具体的にこういう関係の事件が残っておるのかというふうにある程度範囲を特定していただければ、学術研究のため必要があるような場合には、その方に対しましてはこちらも誠意を持って対応いたすつもりでございます。
○安藤委員 その場合は協力をお願いしたいということを申し上げておくのですが、いや、私だって学術研究のためにお願いする場合もなきにしもあらずですからね。 そこで、この第九条では「刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、」と、これは法務大臣が思料するときはということになっておるわけですが、今まだ係属中なんですけれども、例えばロッキード事件のようなものはこの第九条の刑事法制云々に該当するというふうにお考えになっておられるのですか。
○岡村政府委員 御指摘の事件は現在公判審理中の段階でございまして、訴訟終結に至っておりませんので、今の段階でそれが刑事参考記録に当たるかどうかということについては答弁いたしかねるところでございます。
○安藤委員 まあ事例を挙げたわけなんですが、そういう趣旨で今お聞きいただきたいと思うのですが、例えばロッキード事件の場合は、事件の罪名は別ですけれども、いわゆる丸紅ルートとか全日空ルートとか、それからそれぞれの被告人によって分割をされておるとか、こういうようなことになっております。ほかの事件だって分割をされるということがあるのじゃないかと思うのです。あるいは被告人の数がたくさんおるときには分離公判とかどうとかいうこともありましたが、事件として一応別に処理されることになった場合も、例えばその事件ならその事件として一括して保存される、あるいは一括して保管をされる。この別表によりますと、それぞれ刑の軽重によって保存期間が違うわけですよね。だから、そのうちのある被告人については何々だということになっております。それからある被告人については例えば死刑がある、ある被告人については懲役だというような場合は、一番重い事件としてこの保管期間ですか、になるのかどうか。そして、あるいは刑事参考記録として保存するときもそういうふうに一体として保存されるのかどうかということをお尋ねしたいのです。
○岡村政府委員 保管記録といたしましては、それぞれの事件別で保管期間を判断いたしまして、保管期間内保管するということになると思います。ただ、刑事参考記録となりますと、あるいは関連事件は一括で残すのが相当な場合もあると思いますし、その辺は個々のケースに基づいて適正に判断いたしたいと思っております。
○安藤委員 それからこの第九条で、刑事参考記録として保存する、その中身については、いろいろ先ほどもおっしゃっておるのですが、例えばこれは違憲立法審査権、いわゆる憲法の問題ですね、それからもう一つは、憲法問題としましても違憲立法審査権が問題になるばかりではなくて、国民の基本的人権、いわゆる憲法第三章の関係ですね、そういうようなものが問題になって争われた、そういうような事件、これはもう対象にすべきじゃないのかと私は思うのですが、その点どうですか。これは法務大臣が思料されるのですが、ただ法務大臣が思料するときはというふうになっておって、もちろん独断的に思料されるとは思わぬのですけれども、どなたかに相談される、あるいはしかるべき機関があって相談されると思うのですが、今私が申し上げましたような違憲立法審査権の問題、あるいは国民の基本的権利が問題になったような事件、こういうのは対象にするというような基本的な方向を考えておられるのかどうか。いや、そういうことも全然関係なしに、とにかくそのときケース・バイ・ケースで思料するのだということなのが、一遍その辺のところを大臣にお伺いしておきたいなと思うのです。
○岡村政府委員 大臣が刑事参考記録として保存されるかどうかに当たりましては、事務当局が大臣に対しましていろいろ御説明申し上げ、また御意見を申し上げることになりますので、私から答弁させていただきたいと思います。 ただいま御指摘のありましたような事件につきましては、刑事参考記録として保存される場合が多かろうと思います。刑事参考記録として保存されるものは大体こういうふうな事件を考えておるということにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、それに当たる場合であろうと思っております。
○安藤委員 大臣、今答弁なさりたいようなそぶりですが……。これは大臣が思料するのですからね。事務当局から意見を聴取されるということは十分考えられるのですが、最終的な決断はこの法律の条文によってはそうなるわけですから、やはりお答えをいただきたいと思うのですが、一番最後までとっておきますから。 そこで、今度は第四条の関係でお尋ねをしたいと思うのですけれども、第四条の二項、次に掲げる場合には閲覧させないと、ずっとあります。先ほども問題になった三年という期間などもあります。が、その前に、二項の最初のところに、「刑事訴訟法第五十三条第三項に規定する事件のものである場合」は、次に掲げる場合に限らず閲覧をすることができるわけですね。これでいきますと、そうですね。そこで、この刑事訴訟法第五十三条第三項は、申し上げるまでもなく「日本国憲法第八十二条第二項但書に掲げる事件については、閲覧を禁止することはできない。」というふうにあるわけです。そして、日本国憲法第八十二条第二項ただし書きは「政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となってゐる事件」ですね、この場合は閲覧をさせなければならぬ、こういう規定なんですね。これは間違いないですね。いいですね、今うなずいておられるから。 そこで先ほどの九条に戻りまして、私がお尋ねしたような違憲立法審査権あるいは基本的人権が争われた問題、大体そういうのが含まれるだろうと思うというふうに先ほど答弁がありましたが、これは今回は、先ほど大臣がおっしゃったように、長年検討した結果やっと日の目を見たということですから、今回は今回として、やはり第九条の大臣が思料されるときの一つの基本的な考え方として、この第四条の二項の冒頭のところに書いてあるような趣旨のことを、刑事訴訟法第五十三条第三項に規定するもの、いわゆる憲法八十二条二項ただし書きの関係です、のものは刑事参考記録として保存するのだというふうにきちっとこれは明文化した方がいいのではないかなという気がするのですが、その辺はどういうふうに考えてみえますか。
○岡村政府委員 刑事参考記録としてどういうものを残すかということにつきましては、通達等によりましてこの具体化を図る予定にいたしております。
○安藤委員 そこで、そのこととも関連しまして、大臣、今度は答えてくださいよ。事務当局の意見をいろいろ聞いてというふうにおっしゃっておられるのですが、やはり事務当局ばかりではなくて広く国民の意見を聞く、そういうような趣旨も含めて、例えば法曹三者あるいはマスコミあるいは研究者、こういう人たちの意見を聞く、そういう機会をきちっと持てるように、例えば日弁連あたりは選定委員会と言っておりますか、名前は何でもいいのですけれども、そういうものをおつくりになって、そしてこの第九条の「思料する」という中身を充実をさせるというようなことをお考えいただくということはどうでしょうか。
○遠藤国務大臣 法務大臣が最終的に決定するということは間違いございませんけれども、事務当局でこれこれこれを永久保存したいとかいろいろのあれが出てくる場合に、私は、今先生のお話ではございませんけれども、法曹界なり有識者の方方の御意見を聴取した後に法務大臣が最終的に決定したい、このように考えております。
○安藤委員 できるだけそういうようなきちっとした組織なり機関なりをつくっていただければなおありがたいのですが、さらに一歩進めていただくように御要望を申し上げます。 時間が来ましたので、最後に、また四条に戻りますけれども、四条二項のただし書き「訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由」、この「正当な理由」というのはなかなか難しい話なんですが、時間がありませんから私の方から申し上げますが、例えば当該事件を担当していない弁護士、これはほかの事件を担当しておってもほかの事件の記録をきちっと見ることによって弁護活動に資するとか、いろいろあると思うのですね。あるいは私ども議員、国会議員に限定してもいいのですが、いろいろ議員活動をする上においてもどうしても見たいという場合もあります。あるいは学者、研究者、こういうような人たちがそれぞれ理由を申し上げて閲覧を申し出たときはこの「正当な理由がある」というふうに認めていただけるのかどうか、お尋ねします。
○岡村政府委員 御指摘の場合は、正当な理由があると認められる場合が多かろうと思います。ただ問題はやはり個別の問題でございますので、一律にはちょっと申し上げかねるところではございます。
○安藤委員 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。
○大塚委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————
○大塚委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 刑事確定訴訟記録法案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○大塚委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○大塚委員長 次に、本日の請願日程第一から第一〇一の各請願を一括して議題といたします。 各請願の内容につきましては、文書表で既に御承知のことと存じますし、また、先ほどの理事会において検討いたしましたので、この際、紹介議員の説明等を省略し、直ちにその採否を決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 本日の請願日程中、日程第八ないし第一四、第一七ないし第三九、第四一ないし第四九、第五三、第五四及び第五六の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 なお、ただいま議決いたしました請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○大塚委員長 なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、外国人登録制度の抜本的改善に関する陳情書外一件でございます。念のため御報告申し上げます。 ————◇—————
○大塚委員長 閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。 まず、内閣提出、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○大塚委員長 起立多数。よって、本案について閉会中審査の申し出をすることに決しました。 次に、内閣提出、外国人登録法の一部を改正する法律案につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○大塚委員長 起立多数。よって、本案について閉会中審査の申し出をすることに決しました。 次に 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案 裁判所の司法行政に関する件 法務行政及び検察行政に関する件 並びに 国内治安及び人権擁護に関する件以上各案件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。 閉会中審査案件が付託になり、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、その派遣地、期間、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 次回は、明二十七日水曜日午前十時三十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時二十四分散会