法務委員会 第4号
- 発言数
- 365 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1987/05/22
会議録
○大塚委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂上富男君。
○坂上委員 坂上でございますが、刑法一部改正に関する質問の前に、関連事項として二、三点、重要な問題も出ておりますので御質問をお許しをいただきたい、こう思っておるわけであります。 まず一つは、福岡県苅田町に起きております、住民税の一部を町会計に計上しないで裏口座に入れていたという不正操作事件が報じられておるわけでございます。当時の町長は、現衆議院議員の尾形議員だと言われておるわけであります。新聞の報ずるところによりますると、大体こういう不正は昭和四十年代から行われておりまして、ピンはね総額は約二億円に及んでいると言われておるわけであります。 本件について東京地検の特捜部が捜査をされているという話でありますが、当時、前収入役である花房氏は、検察庁の取り調べを受けまして、尾形氏が出馬した六十年七月の町長選前後に、千五百万円を二回、二千万円を一回、裏口座から引き出して尾形氏に渡した、尾形氏は選挙で金が必要と言っていた。という供述をなした旨のような報道がなされておるわけでございますが、現在捜査中でありまするが、できるだけ、答えられる範囲においてひとつ捜査の状況についてお話しをいただきたいと思います。
○岡村政府委員 ただいま御指摘のありました件でございますが、東京地検におきまして告発を受けまして、現在捜査中でございます。 告発事実の要旨でございますが、これは、苅田町の前収入役であります花房という者が公金数千万円を横領したということでございます。こういう事実で告発を受けましたので、現在東京地検におきまして捜査中でございます。捜査中でございますので、具体的な状況につきましては申し上げかねるところでございます。
○坂上委員 大変私たちの想像を絶するようなことでございまして、県民税あるいは町民税を裏口座に入れておいてこれを横領または流用するというようなことは、まさに前代未聞の犯罪じゃなかろうか、こう思っておりまするので、私は、本当に社会正義の実現のために、検察の適正な、かつ厳格な捜査を一刻も早く遂げられまして国民の前に明白にしていただきますことを期待いたしまして、これ以上質問をすることは避けます。 いま一つでございますが、これは私の出身地新潟県の名誉にもかかわることでございますが、大変たくさんの町議員さんの犯罪が、新潟県黒埼町と、それから鳥取県国府町に起きている事実でございます。 黒埼町の事件は、定員二十六名のところ十四名が県会議員の選挙で買収罪で逮捕されているという事件でございます。鳥取県の国府町の事件も、町議会議員十六名中十二名が逮捕されまして、臨時会も開けず、出直しも候補者難というような記事が報じられておるわけであります。この二つとも、議会制民主主義、選挙に対する国民の信頼を失うこと極めて大きいのでありまして、厳格な規制が望まれるところでございますが、今後さらにこのような間違いがあって、さらにこれをもとにいたしまして間違いが発生してはいかぬと思いまするので、自治省に御質問を申し上げたいのであります。 黒埼町は、定員二十六名中十四名逮捕されました。そして、きょう現在ではどうも十四名いずれも釈放されたというような状況でございますが、まだ議会は開かれておりません。そして十四名中七名から辞職願が提出をされておるわけでございますが、しかしこれには議会が開会されておりません。それから議長、副議長が選任をされておりません。また、仮議長も選任をされておりません。したがいまして、自治法によりますと、辞職願を閉会中に出す場合、議長がこれを受理して許可権があると言われておるわけでございますが、議長、副議長がおらない、かつまた仮議長がおらないというような場合、年長議員が受理してこれについて許可権があるとも言われておるのでありますが、しかし地方自治法を読みますと、これに対する規定はないようでございます。しかも年長者については、御存じのとおり議会が開会前に年長者をもって臨時議長とすることが規定の中であるわけであります。そうだといたしますと、一応自治省の見解では、年長議員が議員の辞職の許可権を持つがごとき説明もなされておるようでございますが、いかがなものかと思っておるわけでありますが、黒埼町の今申し上げました実態を踏まえながら、自治省の御見解を賜りたいと思うのでございます。
○濱田説明員 正副議長がともにいない場合に、議員の辞職につきまして年長議員が許可できるという行政実例があることは御指摘のとおりでございます。 この考え方につきまして条文上直接の規定があるかという御趣旨でございますが、確かにこれにつきましてはないわけでございます。しかしながら、議員の辞職というのは一身上の問題でございますので、これが辞職できないということは制度的にいかがかということでございますが、ただ、その職が公の職であるがために議長の許可を要する、こういう慎重な手続になっているということから申しまして、やはり辞職をするためには許可が必要であるという理解でございます。そうしますと、自治法の中でそういう解釈をしていく上で参考になる条文がないかということでございますが、自治法の百七条の中で、議会で議長を選挙する場合に、「議長の職務を行う者がないときは、年長の議員が臨時に議長の職務を行う。」こうなっておりまして、年長の議員に議長の役割を与えるようにしているわけでございます。 こういったことから考えますと、議長が不在の場合に、許可は必要である、そしてその許可を与えるにふさわしい議長の職務を行える者はということになりますと、この百七条を類推して、臨時議長に当たるべき年長の議員が辞職を許可することができる、このように解釈するのが最も条理に適している、このような理解をいたしているわけでございます。
○坂上委員 時間がありませんから要望だけをしておきますが、なぜこういう問題を取り上げるかと申しますと、御存じのとおり二十六名中七名が辞職願を出した。年長者がこれを許可した。そして二人、何か三カ月以内であれば繰り上げ当選ができるそうです。しかし六分の一定員が欠けますと、補欠選挙ということになるそうです。やはり五名以上がどうも欠員になるのじゃなかろうか。そうだとするならば補欠選挙がある。しかし、年長者のこの辞職の許可権が違法であったとしたならば、これは選挙無効になるわけです。あるいは当選無効になるわけであります。これまた騒ぎになるわけでありまして、黒埼町では慎重な取り扱いもなさっておるようでございますが、今言ったように臨時議長にそれだけの権限を果たして地方自治法は与えているのかどうか。確かに行政実例がある、こうおっしゃっておりまするが、この行政実例は果たして本当に正しいのだろうかというと、私は、一応臨時議長に大変な権限を与える、しかも臨時議長というのは、まあきょう招集になった、その日の程度の臨時議長でありまして、当選から開会まで臨時議長の権限を持つのだろうかというと、これまた疑問なのじゃなかろうか、こう思っておるわけでございまするから、自治省、本当に心配ない、こういうふうに言えるかどうか、もう一度お答えいただきたいと思います。
○濱田説明員 具体的な議員の辞職の許可をどのように進めるかということにつきましては、これはその町の状況によりまして、例えばこういった逮捕者が釈放された後に臨時議会を招集されて、そのもとで辞職の許可を与えるということもあり得るわけでございますが、そういった事態になるかどうかということはおきまして、一応議員が辞職をしたいという場合の許可につきまして、議長、副議長が不在であるという場合に年長者が臨時議長として許可を与えるということは正しいと理解をいたしております。
○坂上委員 ひとつ間違いないような御指導を期待いたしております。 さて、コンピューター犯罪に関連をいたします刑法改正問題についてまず御質問申し上げたいと思います。 最初に、大臣に御質問申し上げたいと思うのでありまするが、本改正によりまして、今後いよいよ増加すると思われるコンピューター犯罪にはこの条文でもって十分対処することができるか、いかがでございましょうか。
○遠藤国務大臣 御指摘の問題については、コンピューターの発達によって現行法では的確な対応が困難になったということで、各種の不正行為にこの法令によって十分対処することができる、このように考えております。
○坂上委員 きょう特許庁からも来ていただいておるわけでありますが、特に役所の中では特許庁が最もコンピューターと深い関係をお持ちなのだろうと思うのでありますが、今回のコンピューター犯罪の刑法改正について特許庁としてはいかなる御所見をお持ちであるか、お答えいただきたいと思います。
○山本説明員 まず、私どもの事務処理の一端でコンピューターをいかに活用しているかということでございますが、私どもは年間で特許等いわゆる工業所有権四法を合わせますと約七十五万件の出願を受理しているわけでございます。このような膨大な事務を処理するために、私どもとしては昭和三十九年から電子計算機を導入してまいりまして、現在では大型コンピューターを二台活用しております。しかしながら、こういった出願がますます伸びると、私どもの審査資料もますます膨大なものとなっていくということでございまして、私どもとしてはこういうことに対処するために、昭和五十九年度から十カ年計画で実はペーパーレスシステムというものを推進しております。これは要するに出願から審査、審判、登録までの一連の事務処理をすべてコンピューターで処理しようというものでございまして、これができた暁には、私どもとしては相当高度な事務処理ができるものと自負しております。 そのような状況のもとで、私どもとしては電子計算機システムのセキュリティー対策というものをもともと非常に重要なものだと認識しておりまして、そういう観点から、今回の電磁的記録に関する刑法改正案につきましては非常に意義の深いものであると認識しております。
○坂上委員 ありがとうございました。 それでは次に、本改正案の準備作業についてまずお聞きをいたしたいと思うのであります。 その一つは、本改正案を準備するに当たりまして、法務省とされましてはコンピューター関係業界や学界から意見を徴したと聞いておりますが、いかなる団体や大学やあるいは関係者に意見を照会をされたものか。二番目に、照会に当たりましては具体的な意見を求める方法をとられたのかどうか。そして三番目に、意見照会の結果の概要は大体どういうようなアンケート結果が出てきたのか、御答弁をいただきたいと思います。
○岡村政府委員 まず第一点でございますが、法務省刑事局におきましては昭和六十一年五月十四日付で、コンピューターのメーカー、ユーザー、また法学部等を有しております全国の大学等約百カ所に対しまして、コンピューター関連犯罪立法に関します意見の照会を行ったところでございます。また、五月二十六日から七月三十日までの五回にわたりまして、刑事局の中にコンピュータ関連犯罪立法研究会というものをつくりまして、関係省庁、関係団体との間で意見の交換を行ったところでございます。また六月以降、例えば日本電子工業振興協会、情報サービス産業協会、経済団体連合会、金融情報システムセンターなどとの間で個別に意見交換を行うなどの措置をとったところでございまして、今回の立法に当たりましては各界の意見を十分に聴取し、これらの意見を参考にいたしまして立案作業を進めたところでございます。 次に、第二点の、その照会に当たってどういうような方法をとったかということでございますが、文書によります意見照会を行うに当たりましては、本改正案と同様の三つの柱、すなわち電磁的記録の不正作出、業務妨害、財産利得犯及びその他の項目につきまして、立法の必要性あるいはそのあり方に関しまする具体的な意見や希望を記載いただくようにお願いしたところでございます。また、コンピュータ立法研究会におきましては、いろいろの問題点に関しまして刑事局の当時の検討結果を御説明いたしまして、個別の項目ごとに立法の必要性があるのかどうか、またそのあり方はどうかということにつきまして幅広く御意見をいただいたところでございます。また、個別的な意見交換の過程におきましては、本改正案を作成いたします基本となっております物の考え方、こういったものを説明いたしまして、それに対しまして具体的な御意見なり御要望を承ったところでございます。 その結果でございますが、こういった意見交換の過程で寄せられました意見を集約いたしますと、コンピューター関連の不正行為に対処するための刑事立法が必要であるということ、また本改正案に盛り込まれておりますように、電磁的記録の不正作出あるいはその毀棄の関係、また業務妨害の関係、さらに財産利得の関係、こういったものにつきましては立法の必要性があるということでは異論がなかったのであります。さらに、情報の不正入手という問題につきましても検討の必要があり、これについてはさらに時間をかけて検討されたいという御意見もございました。また、立法のあり方につきましては、メーカーやユーザーの側にセキュリティー費用の増加等過重な負担を余儀なくさせるようなことになっては今後のコンピューターの利用なり普及を阻害することにもなりかねないので、そのようなことのないよう配慮してもらいたいという意見がございました。また、日常の企業活動に伴います過誤と犯罪行為とを構成要件において明確に区別してもらいたいという御意見があったところでございます。 以上のような次第でございまして、本改正案は、これらのいろいろな御意見なり御要望、御指摘、こういったものを十分考慮いたしましたし、また、必要な協議を十分に行って取りまとめたものでございます。
○坂上委員 次に、コンピューターの国外犯関係について御質問を申し上げたいと思います。 まず、刑法第二条に関する問題でございます。 刑法第二条第五号には、改正部分は「第百五十八条及ビ公務所又ハ公務員ニ依リ作ラル可キ電磁的記録ニ係ル第百六十一条ノ二ノ罪」、こういう改正が行われます。それから同じく第三条でございますが、「本法ハ日本国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル日本国民ニ之ヲ適用ス」とありまして、三号に「前条第五号ニ記載シタル以外ノ電磁的記録ニ係ル第百六十一条ノ二ノ罪」、こういう改正になっておるわけでございますが、この改正の趣旨はどのようなところにあるか、お聞きをいたします。
○岡村政府委員 電磁的記録の不正作出供用罪につきまして、国外犯の処罰規定を整理したところでございます。 すなわち、百五十八条は、公正証書の原本として電磁記録もこれに当たることを明らかにする規定であります。次に、「公務所又ハ公務員ニ依リ作ラル可キ電磁的記録ニ係ル第百六十一条ノ二ノ罪」といいますのは、いわば従来の公文書に相当するものでございます。これらの不正作出供用罪につきましては、公文書偽造・同行使の罪と同じように、刑法二条の五号においてすべての者の国外犯を処罰することとしたのであります。 第三条の三号の関係でございますが、ここはその他の電磁記録、すなわち私文書に相当いたします電磁記録に関する不正作出供用罪でございまして、これらは現行の私文書偽造・同行使と同様にこの三条三号におきまして国民の国外犯を処罰することとしたものでございます。 なお、付加いたしますと、業務妨害罪につきましても新たな規定を設けることにいたしたわけでございますが、現行の威力・偽計業務妨害罪については国外犯処罰の規定がありませんので、これと同様に取り扱うことといたしまして、国外犯処罰の中には含めなかったわけでございます。 また、電子計算機の詐欺罪を新たに設けたわけでございますが、これは現行の詐欺罪と同様に国民の国外犯を処罰することとなるわけでございますが、現行法の三条十四号の規定が「第二百四十六条乃至第二百五十条ノ罪」という規定をいたしておるところでございまして、今度新設されます電子計算機の詐欺罪は二百四十六条ノ二になっておりますので、二百四十六条ないし二百五十条の罪というものの中に当然これが含まれるので、立法的な手当ての必要がない、こういうことでございます。
○坂上委員 それでは、今の改正の趣旨を具体的事例に当てはめまして御質問をいたしたいと思います。 例えば、国際データ通信回線を介しまして外国から日本国内のコンピューターにアクセスし、電磁的記録の不正作出、供用、電子計算機損壊等の業務妨害などの加害行為を行った場合は、これは国内犯に当たるのか、国外犯に当たるのか、いかがでございましょう。
○岡村政府委員 御指摘のありましたような犯罪に当たる事実の一部が我が国内で生じている場合は、国内犯ということになるわけでございます。したがいまして、国外犯処罰規定の適用を待たないで、そういった場合には国内犯ということで処罰することができるのでございます。
○坂上委員 それでは今度は、第七条ノ二の定義規定の関係について御質問をいたします。 電磁的記録ということについて第七条ノ二は解説をしておりますが、しからば一体電磁的記録とは具体的にどのようなものを指すのか、お聞かせをいただきたいと思います。 次に、七条ノ二によりますと「人ノ知覚ヲ以テ認識スルコト能ハザル方式」による記録に限定した趣旨はどういうわけでございましょうか。 それから三番目に、電子計算機について定義規定を設けてないようでございますが、その理由はいかがなのでございましょう。
○岡村政府委員 まず、電磁的記録とは何かということについて御説明いたします。 電磁的記録につきましては、改正案の七条ノ二に記載してありますとおり、まず電子的な方式、磁気的な方式、その他人の知覚をもって認識することができない方式によりつくられる記録であるということ、次に電子計算機による情報処理の用に供されるということ、これらの要件を満たす記録であるわけでございます。 現在一般的に用いられております不可視的な記録方式と記憶媒体といたしましては、電子的方式を用いる記憶集積回路、磁気的な方式を用います磁気テープ、磁気ディスク、光電的な方式を用います光ディスクなどがあるのでございます。次に、電子計算機による情報処理の用に供される記録ということは、電子計算機によって行われますところの情報についての演算、検索等の処理に用いられるところの記録であるということであります。電子計算機によって直接読み込まれて処理されますデータの記録に限らずに、電子計算機によります検索などという情報処理の対象となるようなデータの記録も含まれるところであります。ただ、電磁的記録は、記録といたしましてある程度の永続性を持つことが必要でありますので、例えば通信中のデータとか処理中のデータなどはこれに当たらないと解されるところであります。 次に、「人ノ知覚ヲ以テ認識スルコト能ハザル方式」ということについて申し上げます。 電子計算機によります情報処理の用に供されております記録は、磁気テープ、光ディスクのように人の五感の作用によって記録の存在及び状態を認識することができない方式によるものと、そのほかに電子計算機によります読み取りが可能な文書、例えばパンチカードのようなものやバーコードのようなものがございまして、これらは人の目でその存在を認識することができるのでございます。ところで、後者につきまして、すなわち人の目でその存在を認識することができる記録につきましては、現行の文書偽造罪なりあるいは文書毀棄罪によって対処するのが適当と判断されたところでございます。そういう意味からいたしまして、電磁的記録といたしましては「人ノ知覚ヲ以テ認識スルコト能ハザル方式」による記録というふうに限定いたしたところでございます。 第三番目に、電子計算機の問題でありますが、電子計算機とは自動的に計算やデータの処理を行います電子装置のことでありまして、汎用コンピューターを初めといたしまして、いわゆるオフィスコンピューター、パソコンあるいは制御用コンピューターなどがその代表的なものであるわけでございます。自動的に情報処理を行います装置としての電子計算機に当たるものにはいろいろのものがあるわけでございますが、刑法で一般的に捕捉すべき電子計算機というものがあるわけではないのでありまして、具体的な構成要件におきましてその対象となるべき電子計算機の範囲が適切に限定されておれば足りるというふうに考えておるところございます。 すなわち、具体的に申し上げますと、電磁的記録の不正作出罪におきましては、その構成要件とのかかわり合いで、権利義務あるいは事実証明に関します電磁的記録を使用するような規模、性能を有しております電子計算機に限定されるのであります。また、電子計算機の詐欺罪におきましては、財産権の得喪、変更に係る電磁的記録を使用するような規模、性能を有している電子計算機に限定されるのであります。それから業務妨害罪におきましては、業務に使用いたします電子計算機に限定されるのでありまして、おのずから構成要件との関係でその範囲が明確になるというふうに考えているところであります。
○坂上委員 それでは、今度は具体的事例をたくさん並べまして、これがどういうふうに当たるかということをお聞かせをいただきたいと思っておるわけでございます。 まず一つは、コンピューターの操作というのは、キーの打ち間違いやミスがしばしば起こると言われておりますが、そうした場合、過失であるか、故意犯、わざとにやったのかの区別がなかなかつけられないものでございますから、過失行為でも故意犯として不当に捜査または処罰されるおそれ、危険があるのではなかろうかと思いますが、これに対する心配はないのでございましょうか。 あるいはまた、プログラムの作成に当たっては、ある程度作成段階で発見できないバグがあるのが常識でありますが、その結果、使用者が予定していない記録が出たり、または業務の遂行が妨げられたような場合、プログラムの作成者が処罰されるおそれがあるのではなかろうか。特に、第一線に立っておるプログラマーの人たちは、この刑法改正に対してそういう点に最も危惧感を持っておるわけです。殊に捜査の過程の中で、間違いなく故意にやったのだ、わざとにやったのだろうと言って、思想、信条、立場によってそちらの方に追い込められるおそれがあって、これを防衛する方法がどうもできないのじゃなかろうかというようなことを私も危惧しておるわけでありますが、立法者としてはいかがなお考えでございますか。
○岡村政府委員 例えばコンピューターの操作を誤って業務の妨害というような結果が発生したような場合でございますが、業務妨害罪につきましてあるいはまた電磁的記録の不正作出罪につきましても、いずれも過失犯を処罰するものでないことは明らかでございまして、故意犯に限られておるところでございます。例えばキーの打ち間違いと申しますか、現行のもとでも操作のミス等によりまして何らかの妨害的な結果が発生する場合もあり得るかと思うのでございますが、そういう場合でもやはり現行法は故意犯の処罰ということに限られているところでございまして、現行法のもとでそういったような点について何か問題があったというようなことは、私ども特に聞いていないところでございまして、今回の改正後におきましても、業務妨害罪にせよ、電磁的記録の不正作出罪にせよ、あくまで故意犯が処罰されるということでございまして、過失犯を含まないことは明らかであるわけでございます。 故意犯か過失犯かという認定につきましては、もちろん捜査の結果を待たなければならないわけでございますが、これはやはり諸般の状況を合理的に判断して証拠によって認定すべきことでございまして、捜査というものは常に公平かつ適正に行うよう心がけているところでございます。 次に、プログラムの作成に当たって、ある程度作成段階で発見できないような欠陥等があった場合はどうなるかという問題でございますが、プログラムの開発段階で発見できなかったバグといいますか、欠陥のために予定外の記録ができたとか、あるいはコンピューターの動作が阻害されて業務の遂行が結果としてたまたま妨げられるというようなことはあり得ることでもあろうかと思うのでございます。特に開発段階等におきましては、使用者側におきましても、このような事態に備えましていろいろなテストなりあるいは打ち合わせを行うなどした上、使用することになると思われるのでありまして、そういう経過の中でもついに発見に至らなかったような欠陥というものはやむを得ない欠陥と見られる場合もあろうかと思うのでありまして、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように故意犯が処罰されるのでありまして、不正に電磁的記録をつくる故意あるいは業務を妨害する故意、こういったものが認められない場合には、本改正案に基づいて処罰されることはないのであります。
○坂上委員 申されるとおりなのでございますが、ただ、これが捜査の過程において悪用されること、乱用されることを恐れるわけであります。と申し上げますのは、例えばよくあることなのでありますが、タクシーの運転手さんが組合活動をやっておる、しかも組合の中心的活動家である、うっかりタクシー料金の計算違いをして会社に報告をした、実際上は実は計算違いをして、お客さんに払うべきものを余計に払ったなどというような間違いがいろいろ、うっかりあるわけでございます。それをもって猫ばばしたというようなことで首を切られるということを、労働事件において我々はよく知っておるわけであります。 こういうようなコンピューター犯罪に関連いたしまして、こういう一線に立っておる皆様方で、殊にこういう人たちはいろいろとまた職業病にも悩まされながら職場の改善等、労働条件の向上等を願って組合活動をしている人が多くいるわけであります。特に私は冒頭、本件改正の準備作業に当たりまして、第一線の皆様方の御意見はどの程度お聞きになったのかなということも頭の中に置きながら実は御質問申し上げたわけでございますが、確かに過失犯を処罰するものでないことはもうはっきりしているのでありますが、うっかりしておっても、その人が思想、信条、立場によって経営者に嫌われておりますると、そちらの方にとかく取り扱われがちになり、捜査がそちらの方に走って、言葉で言いますると、でっち上げされることを私は極めて危惧しておるわけでございます。そういう部分を実は聞いておるわけでございます。 本日、立法作業でございまするけれども、この立法がこういうような働く人たちに大変な危険を場合によっては及ぼすのでなかろうか、こういう意味で実は聞いておるわけでございまして、ぜひひとつ、これは私の立場としては賛成の方向なのでございまするが、こういう部分についての御配慮を、捜査の過程の中で、今後刑法のこの改正の運営の中で御配慮いただきたいというのが私らの強い要望なのでございます。でありまするから、議論の問題でもなさそうでございまするから、要望としてお聞きをいただきまして、この立法趣旨の中にそのことを特に間違いのないようにお願いをしたいなと思っておるわけであります。 さて、また具体的な事例の一つでございますが、御商売なさっている人たちが脱税の目的、これははっきり脱税の目的で取引状況を記録する帳簿、ファイルに虚偽の記録を行う行為、これは一体この法律が通りますると該当するのかどうか。 それからいま一つ、情報窃取の目的で電磁的記録のコピーをつくるという行為は、一体コンピューター犯罪に当たるのかどうなのか、どの条文に当たるのか、お聞かせをいただきたい、こう思っております。
○岡村政府委員 御指摘のような虚偽の記録をつくる場合でございますが、これは現行法のもとでは、そういった帳簿が文書としての作成名義を偽ったものではないということで、私文書偽造には当たらないというふうに解せられているところでございます。改正案の電磁的記録につきましては、さきに説明いたしましたとおり、文書と同様の作成名義を観念することが困難であるために不正作出という構成要件を定めたところでございます。ここに不正といいますのは、権限がないのに、あるいは権限を乱用して、権限を実質的に逸脱して記録を作出するような場合をいうのでございまして、御指摘のありましたような虚偽の記録をつくるという場合は、いかなる内容の電磁的記録をつくるかについての権限を有しておる者がその権限の中でつくっている場合に当たるだろうと思われるのでございます。そうだといたしますれば、不正につくったものには当たらないということになるわけでございます。 次に、情報窃取の目的で他人の電磁的記録を勝手にコピーしたりしたような場合でございますが、これは権限がないのに記録を作出したことにはなりまするけれども、コピーいたしました電磁的記録を、それが使用されるべき他人の事務処理において用いることによりまして事務処理を誤らせる目的があるかといいますと、その点はそういう目的があるとは認められないことになろうかと思うのでございます。そういたしますれば、本罪は成立しないということになるのでございます。
○坂上委員 さらに、以下五つの今まであった犯罪について、これらの条文がどの構成要件に該当するのか、お聞きをしたいと思っておるわけであります。法務省が私たちに配られました「刑法等の一部を改正する法律案関係資料」の中から引用いたしまして御質問をいたします。 まず、この事件でございますが、昭和五十六年五月十日から十月十二日、これはK相互銀行のCDカード偽造事件と言われるものでございまして、事案はこういう事案でございます。 被告人は、K相互銀行オンラインセンターのオペレーターであるが、昭和五十六年五月十日ごろから同年十月十二日ごろまでの間、同銀行オンラインセンター等で、自己名義のキャッシュカード及び窃取に係るキャッシュカード原板の磁気ストライプ部分に、職務上知り得た他人の預金口座の口座番号、暗証番号等を印磁し、カード表面に預金名義人の氏名等を刻字して、同銀行の記名のあるキャッシュカード十六通を偽造し、そのころ、これをCD機に差し入れて行使し、現金合計約二千万円を引き出して窃取したという事案であります。これにつきましては、有印私文書偽造・同行使、窃盗等で懲役四年六カ月の実刑判決がなされたわけでございます。 今度この法律が通りますと、これはどのような条文に該当することになるのでございましょうか。あるいは該当しないでございましょうか。
○米澤説明員 お答えいたします。 この事件は、既に判例集にも出ておりますけれども、先生が今おっしゃいましたように、有印私文書偽造あるいは偽造文書行使、窃盗ということで有罪になったわけでございますが、この一連の事実の中で、磁気ストライプ部分に他人の口座番号を印磁したという箇所、これは今度でき上がります構成要件の中では電磁的記録不正作出罪に当たろうかと思うわけであります。それと、そのほかの有印私文書偽造に当たります、CDカード上に預金名義人の氏名等を勝手に刻字したという、現行法でも処罰される部分、これとの法的関係は包括一罪だろうと思うわけでございます、一枚のCDカードにそれぞれ部分がございますので。その上でそれを使いますものですから、今度つくります不正作出電磁的記録の供用罪というのも、同時にまた、使ったときに成立するということになります。その結果として現金をとったわけでございますから、一連の行為は電磁的記録不正作出、有印私文書偽造あるいは同行使、それから窃盗ということで、牽連犯関係に入ろうかと思います。
○坂上委員 次はこの二番目でございますが、これは北海道銀行が被害者の事件でございまして、電電公社職員がCDカードを偽造したという事件でございます。昭和五十七年一月四日から一月二十八日までの事案であります。 被告人は、電電公社函館電報電話局の係長でありますが、昭和五十五年十二月三日ごろから同五十七年一月十三日ごろまでの間、同局で、北海道銀行の使用するオンライン通信回線から信号音を録音して解読し、同月四日ごろから二十八日ごろまでの間、テストカード等の磁気ストライプ部分に解読した他人の預金口座の口座番号、暗証番号等を印磁して、可視的部分白地のキャッシュカード三通を作成し、そのころ、これをCD機に差し入れて、現金合計百十二万円を引き出して窃取したという事案でございまして、これは窃盗罪、公衆電気通信法違反、そしてキャッシュカードの偽造行為については起訴できず、こう書いてありまして、判決は懲役二年六カ月、四年間の執行猶予、こうなっておるわけでありますが、この場合はどうなるでしょうか。 それから、この罪数の関係はどうなるのでございましょうか。
○米澤説明員 この北海道の事件でございますが、磁気ストライプ部分だけを勝手につくり出しましたので、現行法上は文書偽変造罪等に該当しないという判断で、その部分だけは不起訴にしておるわけでございますが、今度刑法改正が実現いたしますと、まさに電磁的記録不正作出罪あるいは同行使といいますか、その供用罪というものが新しく適用する余地が出てまいりますので、一連の行為がそれぞれ旧公衆電気通信法、現在の電気通信事業法でございますが、それの違反、それから電磁的記録の不正作出、それから同供用、つまり行使と同じでございますが、それから窃盗と、こういうふうな各訴因になろうかと思うわけでございます。 その罪数関係でございますが、旧公衆電気通信法違反、現行ですと電気通信事業法違反と、それ以下の不正作出、それからその記録の供用、それから窃盗との間は併合罪でございまして、なお、その併合罪関係に入ります不正作出罪以降の行為はそれぞれ牽連犯という関係に立とうかと考えております。
○坂上委員 その次に、今度は福岡銀行通帳偽造事件といわれる事案でございます。 昭和六十年七月三日から十二月四日までの間の事案でございまして、被告人は会社員でございますが、福岡銀行コンピューターセンターに派遣されたプログラマーであるが、昭和六十年七月三日ごろから同年十二月四日ごろまでの間に、同センターで、コンピューターから検索した他人名義の預金口座の口座番号等を自己または家族名義の預金通帳の磁気ストライプ部分に印磁し、そのころ、これをCD機に差し入れて、現金合計約一千百七十万円を引き出して窃取した。こういう事案でございます。罪名は窃盗罪だけの処分でございまして、通帳の磁気ストライプ部分の偽造行為については起訴できなかったようでございます。懲役四年の実刑判決でございますが、これはいかがでしょうか。
○米澤説明員 このケースにつきましては、まず準備行為といたしましてコンピューターのテストデータから顧客のデータを検索いたしております。これはいわゆる情報ののぞき見あるいは盗みという先ほど来話題になっております事実関係になるわけですが、これは刑法改正後も不可罰でございまして、その構成要件は予定しておりませんから、その準備行為には何ら構成要件に触れるものはないわけですが、それ以後の磁気ストライプ部分に他人の口座番号等を印磁し、つくり上げましたカードをCD機に差し込んで使用したこの二つの行為は、まさに先ほどの北海道銀行のCDカードの偽造といいますか、不正作出と同じような関係になりまして、電磁的記録の不正作出、供用、それから窃盗という三つの一連の犯罪が成立するわけでございまして、その罪数関係は牽連犯ということになろうかと考えております。
○坂上委員 今度は馬券の偽造事件でございます。これは大変有名な事件であったのですが、昭和六十一年三月二十九日に起きた事件でございまして、被告人甲、乙及び丙は、共謀の上、昭和六十一年三月二十九日、中央競馬会発売の勝馬投票券の裏の払い戻し事務処理用の磁気面を的中組番号等に改ざんし、翌日、場外勝馬投票券発売所の自動払い戻し機に挿入して、同払い戻し機から払戻金約二千二十万円を窃取した。被告人甲及び同丁は、共謀の上、同月二十九日、中央競馬会発売の勝馬投票券の裏の払い戻し事務処理用の磁気面を的中組番号等に改ざんし、翌日、場外勝馬投票券発売所の自動払い戻し機に挿入して同払い戻し機から払戻金約三十四万円を窃取しようとしたが、右投票券について注意券登録がなされ払い戻し停止措置が講じられていたため目的を遂げなかったということで、窃盗、同未遂罪で起訴になったのであります。そして、勝馬投票券裏面の偽造行為については起訴できなかったのでありますが、その結果は懲役十カ月、懲役三年六カ月あるいは懲役三年という処罰を各被告人が受けているわけでございますが、これはいかがでございますか。 もう一つ、秋田県警運転免許証不正発行事件という、とんでもないのがありました。これはちょっと古いのですが、五十七年十月二十二日から五十九年四月十六日でございます。被告人は運転免許の審査、登録等に従事する秋田県警事務吏員でありますが、昭和五十七年十月二十二日から同五十九年四月十六日までの間、同県警運転免許センターで、無免許者につき運転免許を取得している旨の虚偽の登録用原票を作成し、係員に端末装置から警察庁情報処理センターの電子計算機にその旨送信させて磁気ファイルに登録し、その後、同県警係員に端末機で右データを出力させて、虚偽の運転免許証四十三通を作成したのであります。これには虚偽有印公文書作成、加重収賄罪ということで起訴されましたが、磁気ファイルへの虚偽の登録行為については起訴できませんでした。その結果が懲役三年十カ月という判決でございましたが、この二つはどういうことになるのでございましょうか。
○米澤説明員 まず最初の馬券の偽造事件でございますが、馬券というのは、先生御承知のとおり表面に当たりの、連番ですと一−五が当たりとかいうことで、普通は有価証券だと考えられておるわけでございます。従来ですと、仮に馬券が当たりますと、払い戻し口へ差し出しまして現金をいただくわけでございますが、支払いを便宜にするために馬券の裏面に磁気テープ部分をつくりまして、自動支払い装置で読み取れるようにしたのが問題の馬券でございます。 当初、法律的な検討をいたします場合に、表面の馬券と一体をなすものとして、有価証券偽変造罪ということになるかならないかが法律上問題になるわけでございますが、裏面は専ら日本競馬会側の支払いの便宜のためにたまたまそこに磁気ストライプ部分をセットしておるのでございますので、表側の有価証券とは別の、支払い手段のための、文書であれば別の文書であろうというふうに理解いたしました。したがいまして、現行法上は、文字または記号等で書いてございませんので、つまり不可視的なものでございますので、どうも文書には当たりかねるということで最終的に不起訴になっておるわけでございますが、今度法改正が実現いたしますと、当然のことながら電磁的記録の不正作出になり、それの供用になり、そして窃盗になる、こういう一連の犯罪行為が成立することになろうかと思います。それは当然のことながら牽連犯という処理になろうかと思います。 それから秋田県警のケースでございますが、これは先生御指摘のとおり、虚偽公文書作成ともう一つの虚偽公文書作成罪、二つの虚偽公文書作成罪で起訴されておるわけでございますが、中途段階のオペレーターをして端末装置から警察庁情報処理センターに送信させていわゆる磁気ファイルにその旨の登録をした部分、これはまさに不可視的な磁気ファイルにその記録を載せたわけでございますので、現行法上は文書関係の犯罪が成立しないわけでございますが、今度法改正が成立いたしますと、ここで電磁的記録不正作出、それの供用、こういうものが表に浮かび上がってくることになろうかと思います。全体としては牽連犯関係に入ろうかと考えております。
○坂上委員 時間が迫ってまいりますので、急いでお伺いをさせていただきます。 今度は、電子計算機損壊等の業務妨害関係でございます。法第二百三四条ノ二の関係でございます。 まず第一に、本条新設の趣旨はいかがかということでございます。 その次に、次の用語についての解釈をお願いしたいのであります。 まず一つは、「人ノ業務ニ使用スル電子計算機」、この意味です。二番目、「虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与ヘ」、この意味。三番目、「其他ノ方法」。四番目、「動作」。五番目、「使用目的」。六番目、「使用目的ニ副フ可キ動作」。七番目、「使用目的ニ違フ動作」。八番目、「業務ヲ妨害シ」。この八つについて逐条解釈をお聞きいたしましょうか。
○岡村政府委員 まず業務妨害改正の趣旨でございますが、電子情報処理組織によります大量迅速な情報処理に基づいて行われます業務の範囲が最近非常に拡大してきているところでございまして、従来であれば人間が行っておりました作業が、電子計算機によって行われるようになりつつあるわけでございます。また、そういった情報処理が阻害されることによりまして広範囲な、また重大な被害が生ずる事態も十分に予測されるところでございます。こういった事態に適切に対処するために本改正を行おうとするものでございます。 次に、「人ノ業務ニ使用スル電子計算機」ということでございます。先ほど来申し上げましたように、それぞれの罰条の構成要件のもとにおいてそれぞれの対象となるべき電子計算機の範囲が限定されてまいるわけでございます。業務妨害罪の関係で申し上げますと、加害の対象が「業務ニ使用スル電子計算機」ということになっておりますので、それ自体が自動的に情報処理を行います機器としての一定の独立性を持って業務に用いられるものであるということが前提になっているのでございます。したがいまして、情報処理を行わないほかの機器に組み込まれてその部品となっているようなマイクロプロセッサーなどはここに言う「電子計算機」には当たらないと考えております。また、いわゆるワープロはいろいろな性能、機能を持っておるわけでございますが、それ自体が情報の保存、検索等の情報処理を行う装置でありますればここに言う「電子計算機」に当たると解されるのであります。 次に、「虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与ヘ」ということでございますが、「虚偽ノ情報」とは、当該システムにおいて予定されております事務処理の目的に照らしまして、その内容が真実に反する情報のことであります。「不正ノ指令」といいますのは、当該システムで予定されております事務処理の目的に照らしまして、本来予定されていない指令のことであります。「与ヘ」とは、これらの情報あるいは指令を電子計算機に入力することでございます。例えて申し上げますと、化学工場におきまして電子計算機によってある化学反応のため反応機を一定の温度、圧力に保つという制御が行われているような場合、その電子計算機に反応機の温度、圧力について実際と異なるデータを入力するような場合が虚偽の情報を与えるということに当たることになります。また、その電子計算機に停止すべきでないときに停止の指令を入力するような場合が「不正ノ指令ヲ与ヘ」ということになるのであります。 次に、「其他ノ方法」でございますが、これは電子計算機に向けられました加害手段でありまして、その動作に直接影響を及ぼすような性質のものを言うわけでございます。具体的には電子計算機の電源を切断するとか温度、湿度といった動作環境を破壊するとか通信回線を切断するとか、こういったことなどがこれに当たると解されるのであります。 次に、「動作」とは何かということでございますが、これは電子計算機の機械としての働き、すなわち電子計算機が情報処理のために行う入力、出力あるいは演算等の働きのことであります。 次に、「使用目的」のことでありますが、これは、電子計算機を使用しております人が具体的な業務遂行の場面におきまして当該電子計算機によります情報処理によって実現しようとしている目的を言うのであります。 「使用目的ニ副フ可キ動作」というのは、このような目的に適合するような動作、例えば一定の条件のもとで一定の制御を行うこととされている場合に、そういった制御を行う動作を言うのであります。 「使用目的ニ違フ動作」と申しますのは、このような目的に反する、あるいは矛盾するような動作を言うのでありまして、例えば一定の場面、状況のもとにおいて行うべきでない制御などを行う動作を言うのであります。 最後に、「業務ヲ妨害シ」ということでありますが、これは現行刑法の偽計・威力業務妨害罪におけると同じものでございまして、業務、すなわち人が反復継続する意図で行う経済的、社会的な活動を妨害することであります。
○坂上委員 それでは、本条を適用する場合の具体的な事例を二、三挙げていただきたいと思います、おわかりでしたら。
○岡村政府委員 電子計算機損壊等業務妨害罪によりまして処罰の対象となる二、三の具体的事例について申し上げます。 例えば銀行のオンラインシステムで使用されておりますプログラムを消去、改変して、これによりましてオンラインシステムをシステムダウンさせるような行為、二つ目といたしましては、工場の製造工程のプロセス制御を行っておりますコンピューターに不正の指令を与えまして、コンピューターそれ自体は機械としては機能いたしておりますけれども、不正の指令を与えた結果不良製品を量産させるような行為、三つ目といたしましては、電子計算機室の空調設備を損壊いたしまして室内の温度を異常に上昇させまして、電子計算機の動作を狂わせあるいは停止させるような行為、こういった行為が処罰の対象になると解されます。
○坂上委員 それでは、こういう場合どうなりますか。他人のパスワードを勝手に使用いたしまして情報を不正にのぞき見する、あるいは自分の情報処理のため他人の電子計算機を無権限で使用するような行為、これはどうなりましょうか。
○岡村政府委員 御指摘のような行為でありますが、例えばそういうような行為によりまして電子計算機の処理能力をオーバーさせて動作を狂わせたりあるいは停止させるといったような、業務において必要な情報処理を害することとなるような特別の事情が生ずれば別でございますが、そういう事情のない限りは、御指摘のような行為だけでは「使用目的ニ副フ可キ動作ヲ為サシメズ又ハ使用目的ニ違フ動作ヲ為サシメ」という要件に当たらないわけでございますし、また「業務ヲ妨害シ」という要件にも当たりませんので、本罪は適用されないというふうに考えられるところでございます。
○坂上委員 時間がありませんので急ぎながら質問さしてもらいますけれども、できるだけ簡略に御答弁賜りたいと思うのです。 今度は法律関係資料の中にある過去の事案について説明を申し上げまして、これの適用についてお伺いをいたしたいと思います。 これはどこのものでありますか、ちょっと古いものですから名前を忘れたのですが、H紙本社ビル爆破事件と言われるもので、昭和五十年二月二十八日の事件でございまして、こういう事案のようでございます。被告人らは過激派構成員であるが、コンピューター室等を爆破しようと企て、昭和五十年二月二十八日、H紙本社ビル九階電算部パンチテレックス室等に時限式手製爆弾を仕掛け、これを爆発させて、同室等を破壊し、九階の大半を全焼させ、コンピューター二台を損壊するなどして、約十四億五千万円の損害を与えたという事案でございます。これは爆発物取締罰則違反、殺人未遂、そして三菱重工爆破事件とあわせまして、その結果が何か死刑の判決があったようでございまして、現在これは上告中でございましょうか、この場合の本条適用についてお聞きをします。 それからいま一つでございますが、これは大阪工業大学のプログラム消去事件でございます。犯人不明でございますが、昭和五十九年三月ころ、O工業大学中央研究所のコンピューターの磁気ディスクに記録された教授等の研究用プログラム等約千五百件が消去プログラムの入力により消去された、こういう事案でございます。 この二つについてお聞きをいたしましょうか。
○米澤説明員 まず、一つ目のH組の本社ビル爆破事件でございますが、既に最高裁で裁判が終わっております。その資料を作成しましたときにはまだ審理中でございましたが、確定しております。 ところで、コンピューターを損壊いたしまして業務妨害いたしておるという事実がその事案でおわかりいただけるかと思いますが、そうだといたしますと、今回の刑法改正後の電子計算機等業務妨害罪が成立するかと考えるわけでありますが、他方爆発物取締罰則違反も当然のことながら成立いたしますので、両罪の関係が問題になるわけであります。その両罪の関係につきましては、私どもとしては観念的競合になろうかと考えております。 それから大阪工大のプログラム消去事件でございますが、これは刑事事件として立件されておりません。新聞等によって事実がわかるだけでございますので、事実関係について正確性を期することができるかどうかは少し自信がございませんけれども、プログラム等の消去ということによりまして仕事ができなくなったということが事実だといたしますと、今回の刑法改正後の電子計算機等損壊による業務妨害罪というものが成立することになろうかと思います。その前に、例えばいろいろな手段を用いまして、別途器物毀棄等が成立しておりますと、これと電子計算機等損壊による業務妨害とは観念的競合になろうかと考えております。
○坂上委員 時間がありませんので急ぎますが、今度は、公正証書原本不実記載・同行使について、改正百五十七条及び百五十八条の関係についてでございます。 この両条文の改正の趣旨はいかがかということ、それから二番目でございますが、これに関連をいたします自動車登録ファイルはいわゆる権利義務に関する公正証書原本に当たるという最高裁判例でございます。五十八年十一月二十四日でございます。これとの関係はどうなるのか。 それから用語の意義でございますが、一つは「公正証書ノ原本タル可キ電磁的記録」、それから「公正証書ノ原本トシテノ用ニ供シ」、この二つの意義について。
○岡村政府委員 御指摘のありましたように、最高裁の判例は、道路運送車両法に規定いたします電子情報処理組織によります自動車登録ファイルは公正証書の原本に当たるという判示をいたしているところでございます。この最高裁の決定の趣旨をめぐりましては、端的に電磁的記録一般の文書性を認めたものであるという解釈がある一方では、そうではないという反対の解釈もあるところでございまして、見解が分かれているところでございます。 ところで、今回の刑法改正によりまして電磁的記録というものを文書と異なるものとしてとらえまして、その特質に着目いたしまして、不正作出罪を新たに設けるなど罰則の整備を行うことといたしたところでございます。それに伴いまして、文書である公正証書の原本と、公正証書の原本として用いられる電磁的記録と、両方区別して規定する必要が生じたというところから今回のような改正案に至ったのでございます。 次に、「公正証書ノ原本タル可キ電磁的記録」とは何かということでございますが、これは公務員がその職務上つくる電磁的記録でありまして、それが文書であれば公正証書の原本に相当するものといたしまして、それに基づいて利害関係人のために権利義務に関します一定の事実を公的に証明する効力を有するものをいうのでございまして、具体的に申し上げますと、自動車登録ファイル、住民基本台帳ファイル等がこれに当たるところであります。 次に、「公正証書ノ原本トシテノ用ニ供シ」ということでございますが、従来の公正証書原本不実記載につきましては行使という概念を使っていたところでございます。なぜ行使という従来の表現を使わなかったかという点でございますが、電磁的記録を不正作出いたしましてそれを使用いたします場合、その使用方法にかんがみまして文書と違った面があるので「用ニ供シ」という表現を用いたわけでございまして、これに対応して「公正証書ノ原本トシテノ用ニ供シ」という構成要件にいたしたところでございます。その意味するところは、本来の目的に従って公正証書の原本と同様の機能を有するものとして用いる行為を処罰することを明らかにしたものでございます。
○坂上委員 次は、電磁的記録不正作出、供用、百六十一条ノ二の解釈についてであります。先ほどいろいろと事例を挙げましたので、新設の趣旨は大体わかりました。それから具体的事例もわかりましたので、用語の意義だけお聞きをいたしておきたいと思います。 まず「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的」、二番目に「権利、義務又ハ事実証明ニ関スル電磁的記録」、三番目に「不正ニ作リ」、四番目に「公務所又ハ公務員ニ依リ作ラル可キ電磁的記録」、五番目に「人ノ事務処理ノ用ニ供シ」、その意味についてであります。 それから今度は電子計算機詐欺、二百四十六条ノ二についてでございますが、これも用語の意味をお聞きをいたします。「前条ノ外」という意味、二番目に「虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与ヘテ」という意味、三番目に「財産権ノ得喪、変更ニ係ル電磁的証録」、四番目に「不実ノ電磁的記録ヲ作リ」という意味、「虚偽ノ電磁的記録ヲ人ノ事務処理ノ用ニ供シ」という意味でございます。この場合、不動産登記ファイルに不実の記録をさせ財産上不法の利益を得た場合、この事例はこれとの関係でどうなるかということをお聞きしたいと思います。
○岡村政府委員 お答えいたします。 「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的」ということでございますが、これは不正作出されました電磁的記録が用いられることによりまして他人の事務処理を誤らせる目的のことであります。事務処理と申しますのは、例えば財産上、身分上その他の人の生活関係に影響を及ぼし得ると認められる事務の処理をいうわけでございまして、これは業務として行われるかどうか、あるいは法律的な事務かどうか、財産上の事務かどうか、こういったことは問わないわけでございます。従来は「行使ノ目的」ということで文書偽造の目的を規定いたしておったところでございます。ところが、今回の改正案につきましてはそういう表現ではなしに、「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的」といたしたわけでございます。これは、例えば無権限者が作成したコピーのようにたとえ不正につくられましたものであってもそこに記録されているデータが本来のものと同一でありますれば、それが当該のシステムにおいて使用されても害が生じないわけでございます。こういったような点を考えまして、処罰の範囲を適切に限定いたしますために「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的」という実質的な違法目的を必要とすることにいたしたのでございます。 次に、「権利、義務又ハ事実証明ニ関スル電磁的記録」ということでございますが、これは一定のシステムにおいて権利義務または事実証明に関するものとして用いられる情報を記録した電磁的記録のことであります。権利義務に関する電磁的記録と申しますと、権利義務の発生、変更、消滅の要件となり、あるいはまたその原因をなす事実について証明力を持っております電磁的記録をいうのでありまして、例えばオンライン化されました銀行の元帳ファイルなどがこれに当たります。「事実証明ニ関スル電磁的記録」とは、実社会生活に公証を持っております事項を証明するに足るものとして情報を記録した電磁的記録のことでありまして、例えば商品台帳、顧客台帳ファイル、キャッシュカードといったようなものがこれに当たるのでございます。なお、プログラムでございますが、これはその記録の内容がコンピューターに対する指令でありまして、権利義務あるいはまた事実証明に関するものではありませんので、ここに言う「権利、義務又ハ事実証明ニ関スル電磁的記録」には当たらないのであります。しかし、プログラムを改変することによって権利義務または事実証明に関する電磁的記録を不正に作出したような場合は不正作出罪として処罰されることがあり得るわけでございますが、それはまた一つの別の問題であろうかと思うのであります。 次に、「不正ニ作リ」ということでございますが、これは違法に電磁的記録を存在するに至らしめるということでございまして、行為者について申しますと、記録の作出過程に関与するそのあり方に違法があると言えると思うのでございます。例えばデータを入力する権限がないのにデータを入力して記録を作出するような行為、あるいはデータ入力の権限は一応あってもこれを乱用して虚偽のデータを入力して記録を作出する行為、こういったような行為がこれに当たると思うのであります。従来の文書の偽造、変造という概念を用いなかったわけでございますが、電磁的記録は可視性なり可読性がないという点で文書と違うわけでございますし、また、入力したデータがプログラムによってほかのデータなどとともに処理、加工されてつくり出されるなど、その作出の過程に複数の者の意思や行為がかかわることが多いのでございまして、その作成方法も文書とは異なるという点から、電磁的記録につきましては文書と同様の作成名義を観念することが困難な点がございますので、偽造、変造という概念を用いることによっては処罰すべき不正行為の実態を的確にとらえがたいということからこれを用いなかったのであります。 次に、「公務所又ハ公務員ニ依リ作ラル可キ電磁的記録」ということでございますが、これは、公務所または公務員の職務の遂行として作出される電磁的記録のことでございます。 次に、「人ノ事務処理ノ用ニ供シ」ということでございますが、これは、不正に作出された電磁的記録を他人の事務処理のために使用される電子計算機において用い得る状態に置くということでございます。 次の詐欺罪の関係につきましては、米澤参事官からご説明いたします。
○坂上委員 できるだけ簡単でいいです。
○米澤説明員 まず、コンピューター詐欺に関しての構成要件の用語を簡単に申し上げます。 二百四十六条ノ二が「前条ノ外」とした理由でございますが、伝統的な取引形態では必ず取引に人が介在いたしまして、人をだまして財産上不法の利益を得るということが行われるわけでございますが、コンピューターが自動的にそうした取引を処理いたします場合には人が介在いたしませんで、コンピューター自体がだまされるというような実質を持つわけでございます。したがって、人が介在すれば前条の詐欺罪でいくということの趣旨を明らかにしたものであります。 それから、「虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与ヘ」という点でございますが、「虚偽ノ情報」とは、当該システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らしてその内容が真実に反する情報のことでありますし、「不正ノ指令」とは、当該システムで予定されている事務処理の目的に照らして本来予定されていない指令のことであります。「与ヘ」とは、いわゆるインプットすることでございます。 それから、「財産権ノ得喪、変更ニ係ル不実ノ電磁的記録」の意義でございますが、財産権の得喪、変更の事実またはその得喪、変更を生じさせるべき事実を記録した電磁的記録であって、一定の取引場面におきまして、その作出により事実上当該財産権の得喪、変更が生じることとなるようなものを指しております。したがって、不動産登記ファイルのように財産権の得喪、変更の事実を専ら公証をするために記録しているにすぎないものはこれに当たりませんので、先生の御質問の具体的事例の中にございました、不動産登記ファイルに不実の記録をさせたような場合に本罪が適用されるかという点につきましては、これは消極でございます。 それから、「不実ノ」及び「虚偽ノ電磁的記録」という文言がこの構成要件に使われておりますが、両方ともその内容が真実に反する記録という趣旨でございます。お時間の関係もあると思いますので、個々の具体例は省略させていただきます。 それから、「不実ノ電磁的記録ヲ作リ」という、この「作リ」の意義でございますが、これは人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報または不正の指令を与えることによりまして不実の電磁的記録を存在するに至らしめることをいう、そういうふうに考えております。 それから、「虚偽ノ電磁的記録ヲ人ノ事務処理ノ用ニ供シ」とは何かという点でございますが、虚偽の電磁的記録を他人の事務処理のために使用される電子計算機において用い得る状態に置くことを言います。例えば虚偽の電磁的記録を正規の元帳ファイルに差しかえるとか、残度数を虚偽のものに改変したテレホンカードを電話機の差し込み口に挿入する場合等がこれに当たります。 本罪ができ上がりますとそれではどのような事例が適用されることになるのかという点を最後に申し上げますが、例えば銀行のオンラインシステムにおきまして他人のキャッシュカードをATM機で不正に使用いたしましてその預金口座から自己の口座等に振り込み送金を行う行為、あるいは銀行員が窓口端末機から虚偽の入金データ等を入力いたしまして自己の口座残高を勝手に増額する行為、あるいは不正に作出された先ほどのテレホンカードのような事例というものがそれに当たるかと思います。
○坂上委員 大変時間を超過してどうも恐縮でございますが、一言だけ。 電磁的記録破棄、二百五十八条及び二百五十九条、これも質問したいのでありますが、時間がありませんのでほかの先生方からお願いいたします。それから条約締結関係、これについても時間がありませんのでやめますが、一言だけ大臣、今お聞きのとおり、これは本当に社会正義の上において条文の適用がないものがいっぱいあったものですから、これをつくろうとしてこれまた大事なのでございます。また、コンピューター犯罪というのはあるいは氷山の一角なのかもしれません。そんなような状況であるものですから、それはそれで必要性はわかるのでございます。しかし、これは一歩運用を間違えますと無垢の人がこの犯罪の中に巻き込まれるということでございまして、運用上大変問題があるわけでございます。いつも私が言っておりますとおり、社会正義の実現そして基本的人権の擁護、この二つが私たちの究極の任務なのでございますが、今お話をお聞きをいたしまして、ひとつ法務大臣としての御所見をお聞きをいたしまして私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○遠藤国務大臣 御指摘の点についてお答え申し上げます。 人権擁護も法務省所管でございます。そのような点もございます。本改正案は御承知のとおり現行法でなかなか問題のある点をこの改正によって補うというような趣旨でございまして、これを乱用するとかなんとかというような点については厳に戒めたいと思います。この改正案の趣旨の認識の徹底を十分図っていくという決意でございますので、よろしく御了承願います。
○坂上委員 どうもありがとうございました。
○大塚委員長 小澤克介君。
○小澤(克)委員 本日は刑法等の一部改正に関する法案審議でございますが、今国会は非常に特殊な状況にありまして、一般質問の機会が非常に少なかったといいますか、私に関してはありませんでしたので、この機会にちょっと、直接関係のないことですが、冒頭にまずお尋ねをさせていただきたいと思います。 我が国には陪審法がございまして、かつては、戦前でございますが、陪審裁判が実施されたこともあったわけでございます。ところが、昭和十八年法律第八十八号、陪審法ノ停止ニ関スル法律によりまして停止され、現在に至っているということになっているわけでございます。なぜそうなったのか。その実質的な事柄について本日は立ち入る時間もございませんので、また法案審議という原則からも避けたいと思いますが、一つだけお尋ねしたいのは、この陪審法ノ停止ニ関スル法律の附則の第三条におきまして「陪審法ハ今次ノ戦争終了後再施行スルモノトシ其ノ期日ハ各条ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム」、こういう規定になっているわけでございます。 そこでまずお尋ねするのは、ここに言う「今次ノ戦争」とは一体何を指し示しているのか、まずお願いします。
○岡村政府委員 「今次ノ戦争終了後」ということでございますが、これは戦後の昭和二十一年にここが改正されまして現在のような表現になっているわけでございまして、それ以前、すなわち陪審法ノ停止ニ関スル法律が施行されました当時は大東亜戦争終了後という表現になっていたわけでございます。 ところで、この戦争終了後とは何かということでございますが、何分古いことでございまして、当時の資料等を調査いたしませんと正確にお答えいたしかねるところもあるわけでございますが、我が国が参戦いたしましたいわゆる第二次世界大戦の終了後という意味であろうかと思っておるところでございます。 また、終了というのはいつかということでございますが、陪審法は専ら国内の訴訟手続にかかわるものでございますので、各国との戦争状態が終結して国内的にも通常の状態に戻ったということを想定しているものであろうかと今の段階では考えているところでございます。
○小澤(克)委員 今のお話では、歴史的事実としての第二次世界大戦を指し示すのであろうというお話でしたが、この昭和二十一年改正前は大東亜戦争という表現であったことからすれば、第二次大戦のうち欧州における戦争は含まない。むしろ太平洋地域あるいは中国大陸、東南アジア等における、主として我が国が戦争当事国として戦争を遂行した地域における戦争のことを指すのではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
○岡村政府委員 恐らくそういう趣旨であろうかと思いますが、正確なところは少しお時間をいただきませんと、何分古いことでございますので断定的には申し上げかねる点があることを御了承いただきたいと思います。
○小澤(克)委員 そこで、この陪審法ノ停止ニ関スル法律の今の附則三条の目的論的解釈からすれば、まさに戦争状態、事実行為としての戦争というのでしょうか、それが終了して世の中が落ちついたらという趣旨だろうと思いますが、何せ法律用語でございますので、厳密な意味での戦争の終了という意味かもしれないと思いまして、外務省の方にも来ていただいたわけでございますが、現在我が国がどこかの国といまだ戦争状態が終結していない、宣戦が布告されたまま講和が結ばれていないというような国が世界に一カ国でもございますか。
○谷内説明員 ただいま先生御指摘のような、そういうような国はないというふうに理解いたしております。
○小澤(克)委員 現行憲法上、外国に宣戦布告するなどということはあり得ない、交戦権が否認されておりますのであり得ないわけでございますが、明治憲法下の我が国と現在の我が国、これは国家としての同一性があるわけでございますから、明治憲法下で宣戦布告し、その後新憲法移行後も国際法上の戦争状態が継続していたということは当然法理上あり得るかと思うわけでございます。そこで、いつどのようにしてすべての我が国が宣戦布告をした国との戦争状態が終結したのか、大まかなところと、最後がいつであったか、どこの国と、というところを御説明願いたいと思います。
○谷内説明員 第二次大戦が法的に終了した時点について、まず一般論を若干申させていただきまして、その上で先生の御質問にお答えさせていただきたいと思うのでございますけれども、さきの第二次大戦、これは日本に関してのことでございますけれども、我が国がいわゆるポツダム宣言を受諾しまして、降伏文書に署名したことによりまして実際の交戦状態は終結いたしたわけでございます。しかしながら、法的にはどうかということになりますと、これは個別の講和条約等によりまして各連合国との間で戦争状態を終了させたところでございます。具体的に申しますと、英米等、サンフランシスコ平和条約の締約国との間では、右条約が我が国と当該連合国との間で効力を生じた日に戦争状態が終了した、こういうことでございます。さらにインドネシア、ソ連、中国等につきましては、個別の平和条約等によりまして当該国との戦争状態が終了した、こういう関係に立っておるわけでございます。 そこで、先生の御質問の核心にございます、最後に第二次世界大戦が日本について終了したのはいつ、どこの国か、この御質問でございますけれども、厳密に、法的に申しますと、平和条約等の規定に従ってこれら条約が双方の間で発効した日が戦争状態の終了の日とされていることから、連合国の中で最後に我が国との間で平和条約等が発効した国及びその時期を指摘することも可能かと思いますけれども、他方におきまして、実際の二国間関係におきましては、平和条約の発効以前にも友好関係を基礎とした外交関係が再開されてきているのが通常でございまして、したがって形式的に平和条約の発効の日のうち最も遅いものを当てて考えるというのは必ずしも実質的な議論ではないのではないかというふうに思うわけでございます。そういうようなことを考えますと、一九七二年の日中国交正常化によりまして、日中共同声明第一項、ここでは双方の間の不正常な状態がこれをもって終了したという意味におきまして、このような実質的な事例としては最も遅いものであったというふうに考えることができるのではないかと思っております。 いずれにいたしましても、我が国の立場からいたしますと、昭和二十七年四月二十八日のサンフランシスコ平和条約の発効は、連合軍による占領を終了させ、我が国が完全なる主権を回復したという意味におきまして極めて重要な意義を有したということは申すまでもないところでございます。
○小澤(克)委員 今の御説明にありましたが、必ずしも実質的には妥当しないかもしれないが、形式的な講和条約が双方で発効したというのですか、批准といいますか、その意味での最終はいつになりますでしょうか。ちょっと仄聞したところでは南米の国の方が最後まで残っていたというようなことを聞いておりますが。
○谷内説明員 先生御指摘のとおり、南米のボリビア、これがこのサンフランシスコ平和条約との関係で効力を発生させましたのは一九七七年八月二日、これがそういう意味では一番最後の国でございます。
○小澤(克)委員 実質的にも、それから非常に形式的な意味でも、あらゆる意味で、ここに言う、陪審法に言う「今次ノ戦争」というのはもはや終了しているというふうに理解できるかと思うわけです。 そこでさらに伺うのですが、「戦争終了後再施行スルモノトシ」というふうに規定されておりますので、この停止に関する法律がもちろん現行有効だからこそ陪審法が停止されているわけでございますが、そうしますとこの陪審法附則三条を有効な規定として一つの当為といいますか、法が一定の行動を我々に命じているというふうに思うわけでございます。 そこで、なぜいまだに再施行されていないのかというのが一つの不思議といいますか、のところでございますが、その辺は実質的な話になりますので今回おきまして、その附則の三条に「再施行スルモノトシ其ノ期日ハ各条ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム」と書いてあるわけですね。これについてまた法務省にお尋ねしたいのですが、勅令は現在では立法形式としては存在しない。いや、存在しなくはない。戦前からのは憲法等に違反しない限りは存在しているわけでございますが、現憲法下で勅令が新たに立法されるということはあり得ないことだろうと思います。そういたしますと、ここのところはどのように読みかえることになるわけでしょうか。
○岡村政府委員 昭和二十二年法律第七十二号、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律というものがあるわけでございます。その二条によりますと、「他の法律中「勅令」とあるのは、「政令」と読み替えるものとする。」というふうに規定されているところでございます。この点ももう少し調査をしてみませんと断定的には申し上げかねるわけでございますが、今のところはこの第二条の規定の適用がありまして、勅令とあるのは政令というふうに読みかえるというふうに解釈できるのではなかろうかと思っております。
○小澤(克)委員 そういたしますと、これは政令でございますから、国会が関与しなくても行政府で本来ならばできることであろうかと思うわけでございます。もちろん今停止されている陪審法がそのまま即復活するということは中身的にもいろんな問題があろうかと思いますし、訴訟法も変わりましたのでいろいろ問題があろうかと思いますけれども、この陪審法ノ停止ニ関スル法律の附則の三条が命じているところが全く無視されて今日に至っているということは、これはやはり非常に奇異でもありますし、まずいことでもありますし、しかも今お聞きしますと政令限りで開始できるということになりますと、これは立法府ではなく行政府のサボタージュではないかと思われます。この点、御注意を申し上げておきたいと思います。 それでは、本来の法案審議の方に入らせていただきたいと思います。 今回の刑法等の一部を改正する法律案、特にコンピューター犯罪関係でございますが、全体的に眺めまして、コンピューターにまつわるいろんな問題を特別に刑事罰の対象にしようということではなく、現行刑法上コンピューターの出現によって適用がやや困難になっているような、いわば穴となっている部分についてのみこれを埋めていこう。端的に言いますと、文書における文書性の問題であるとか、あるいは業務妨害における威力あるいは偽計といった概念、あるいは詐欺罪における欺罔といったような概念について、コンピューターの登場によってそれがそのまま適用しがたい、人を対象とする行為類型がそのまま適用しがたいということから、そこを穴を埋める程度にとどめた法案であろうと思うわけでございます。これ自体は、このような考え方は刑法の謙抑性といいますか、刑事罰をもってするのは最後の手段であるというようなことからも、その姿勢自体は非常に妥当なものであろう、私としてはかように思うわけでございます。ただ、個別的には幾つか問題点もありましょうし、解釈の疑義等を生ずることがあってはならないと思いますので、少し細かくお尋ねをいたしたいと思います。坂上委員の方から既に質問がありましたので、なるべく重複は避けたいと思いますが、あるいは重複する部分があるかもしれません。その点は御了解願うことにいたします。 まず、改正案の七条ノ二でございます。 先ほどの坂上委員に対する御説明で、電磁的記録については磁気式の記録、磁気テープであるとか磁気ディスク、それから電子式に当たるものとしては集積回路等の一種の記憶装置といいますか、記録装置、それからそのほかに光ディスクなど光学的方法によるものを例示として挙げられたわけでございます。そこで、現在存在するものとしては今挙げたところだろうかと思いますけれども、この中で光ディスクですか、光学的記録装置、これは電子式あるいは磁気式とは違いまして、人の知覚をもって認識することができる、目で見ることができるのではないかなという気もするのですが、相当な拡大をしなきゃいかぬというようなことかなとも思うのですけれども、その辺はどう考えるのでしょうか。
○米澤説明員 光ディスクにつきまして、小澤委員のおっしゃるように、相当拡大すれば見えるのじゃないかというようなお考え、あるいは科学者がそういうふうな話をしているのを私も耳にはいたしておりますが、一般私生活におきましてその情報の内容が社会生活上深いかかわりを持ってくるようなものにつきまして相当拡大をしなければならないという、本来五感の作用ではちょっとやそっとではわからぬというようなものでございますれば、やはり直接認識することはできないという要件に当たるものとして取り扱う方が社会生活上実際的であろうかと思うわけであります。もちろんその光ディスクに関しましては、これは目で見ることはできないんだという考え方あるいはそういう意見の方もおられます。今開発中の問題でございますので、定かに私が確実に截然区別して申し上げるだけの力量はございませんけれども、なおバイオテクノロジーなんかを使った記憶媒体等も開発されるやに聞いておりますので、そういったものが十分取り込めるような定義をしたものであります。
○小澤(克)委員 マイクロフィルムのような記録装置、これも相当拡大は必要でしょうけれども、一応目で見れるという解釈になるのでしょうか。
○米澤説明員 小澤委員御承知のように、マイクロフィルムといいますのは拡大鏡をかけて即座にその場で内容を認識できますので、もちろん拡大鏡の倍率の問題はございますけれども、これは五感の作用で認識できるものと自分たちは理解しております。
○小澤(克)委員 その次に、既に坂上委員の質問にもありましたけれども、電子計算機という用語が使われているわけですね。これがなかなか定義規定もございませんし、非常にわかりにくいのですが、法務総合研究所発行の「コンピュータその他各種情報処理機器の利用をめぐる犯罪の研究と捜査・処理上の問題」という冊子には一応の定義規定があって、「入力された一定のデータを記憶して、それに基づき高速・自動的に四則演算や比較判断をなし、その結果を新たなデータとして出力する機械装置」、このように定義づけられていると聞いているわけでございます。 そこで、このような形で考えますと、かなり簡単な装置、例えば切符の自動販売機、その程度のものまで入ってくるのではないか。すなわち、切符の自動販売機を考えますと、これはオレンジカードのようなプリペイドカードを使ったり、あるいは金銭そのものを入れることによって一定のデータが入力されて、それを機械装置の中で記憶して、さらに幾らの切符というボタンを押すことによってこれは一つの情報として入力される。あるいは一種の指令を与えるという、オペレーションのごく基本的なものかもしれません。そして、それら入力されたデータあるいは指令に基づいて一定の演算作用が行われまして、そしておつりを判断し、さらに切符に行き先などをプリントしたものがアウトプットとして出てくる、すなわち新たなデータが出力する、こういう機械装置ということになりますので、本当に駅にあるようなありふれた自動販売機などでも電子計算機ということになるのかなと思うわけでございます。 そんなふうに本当にワンチップを使ったような機械程度まで電子計算機ということになりますと、余り限定的な意味がなくなるのではないだろうかというようなこともちょっと考えるものですから、その点について、この電子計算機なる概念についていま少し細かい御説明を願いたいと思います。
○岡村政府委員 電子計算機とは何ぞやということでございますが、先ほど委員からも具体的な御説明があったわけでございますが、要するに、自動的に計算やデータの処理を行う電子装置ということで総称できると考えておるわけでございます。 御指摘のありましたマイクロチップでございますが、ほかの機器に組み込まれておりますマイクロコンピューターも、それが自動的に情報処理を行うものとしてやはり電子計算機には当たるというふうに解されるのであります。しかしながら、先ほど御説明いたしましたように、具体的な構成要件とのかかわり合いで電子計算機の範囲というものが適切に限定されてくることになるわけでございます。例えば電子計算機損壊等の業務妨害罪におきましては、業務に用いられる電子計算機という限定になっているわけでございます。したがいまして、ここで加害の対象としてとらえられますものは、自動的に情報処理を行う装置として業務に用いられている電子計算機に限られることになるわけでございまして、単なる販売機というものは、その中にマイクロチップ等が使用されているといたしましても、それは業務に使用する電子計算機には当たらないということになるわけでございます。
○小澤(克)委員 二百三十四条ノ二についてはまだ後にお尋ねしようと思っていたのですが、「人ノ業務ニ使用スル電子計算機」ということですが、そういう限定的な意味が果たして生じますかね。これは継続反復して行うことはすべて業務でしょうから、駅頭にある自動販売機だってこれは立派に継続反復をして、いろいろな判断をして、おつりを計算をしたり切符を吐き出したりしているわけでありますから、そうならないのではないでしょうか、どうでしょう。
○米澤説明員 ただいま局長がお答えいたしましたのは、多分業務妨害罪との絡みで電子計算機がどういうものであるかをお答えいたしたと私聞いておりましたが、今小澤先生は、今度は財産犯の方を少しお聞きのようでございます。 財産犯の場合には、確かに、つまりコンピューター詐欺と私ども俗称いたしております構成要件の中にありましては、場合によりましては、今おっしゃいました駅の自動販売機的なものが入ってくる余地はあろうかと思っております。ただ、業務妨害では、例えばそれ自体が一般的に電子計算機と称されるマイクロチップ的なものが果たして自動的にすべての情報を受け付けて情報処理を行って、人にかわって業務を遂行しているかどうかというところで限定が加わってまいりますので、業務妨害のときにはなかなか入りにくいのではなかろうかと私ども考えているわけでございます。つまり、一つのメルクマールを申し上げますと、プログラム可能なものであろうかどうか。いろいろな作業をさせるにつき、例えば一定の一連続の作業だけではなくて、これは使用者の目的によりまして多目的にも使えるものである。例えば三角形の鉄板をつくる機械制御をやっているコンピューターを、あしたからは正四角形の鉄板をつくらなければならぬというときに、プログラムを組みかえて、そして使っていけるというような電子計算機を一応原則として考えておるわけでございますので、各罪ごとに電子計算機の範囲はそれぞれ変わってくるだろうと思います。 それから、法務研究所の方で電子計算機を一般的に定義しておりますのは、それはグローバルなといいますか、抽象的に社会で電子計算機とはどういうものをおおむね言っておるかという、いわゆる電子工学的な観点からの定義規定でございますので、ちょっと刑法と必ずしも平仄が合わないのではなかろうかと思っております。
○小澤(克)委員 それでは定義規定はこの程度にいたしまして、次に百五十七条でございます。 これは公正証書原本不実記載に若干の変更といいますか、を加えたということになろうかと思いますが、先ほども坂上委員が例の自動車登録ファイルの最高裁判例との関連をお尋ねしておられましたけれども、やや重複するかと思いますが、「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本タル可キ電磁的記録」、この「タル可キ」というのが非常にわかりにくい表現なわけです。この条文の作成の前提としては、電磁的記録は公正証書の原本そのものではない。だから、「可キ」という一種の当為をあらわす言葉を入れたという理解なんでしょうか。
○米澤説明員 自動車登録ファイルにつきまして、先生御指摘のとおり、最高裁が昭和五十八年に、これは公正証書の原本に当たるとはっきり結論づけております。その理由づけにつきましては学説等でいろいろ御意見のあるところでございますが、ここでは触れませんけれども、一応最高裁判例がそのように言っているにもかかわらず今回こういう規定を置きます趣旨は、一般の電磁的記録につきまして、つまり現在の私文書あるいは公文書偽変造罪に見合う電磁的記録の不正作出罪をつくる以上は、そこの関係で文書と電磁的記録を截然区別することになる、その反射的な関係上、従来なら公正証書原本と言われていたものも電磁的記録は突出してくるように見られるので、誤解を避けるために最高裁の判例を確認的に書きたいというのが初めの立法動機であるわけです。 そこで、その場合にどう書くかといいますと、電磁的記録を用いて公正証書が調製されるような場合、例えば今後は登記簿もそうなっていくように聞いておりますが、そういうふうなものを仮に表現いたします場合に、電磁的記録がイコール公正証書の原本であるとなかなか表現しがたいわけでございます。伝統的な文書の形態で公正証書が調製されている部分がまだ相当程度ございますので、それを公正証書の原本と仮に言えば、今度は電磁的記録が公正証書として調製される、公正証書として意味づけを持ってくる、そういう法的性格のあるものということを表現するのには「公正証書ノ原本タル可キ」というような、これは文語体でございますので、私ども戦後の教育を受けた者にはぴんとこないかもしれませんが、法制局の御審査も受けて、こういう表現がそれに一番ぴったりであろう、立法動機との兼ね合いでこういう表現がいいのではないかということになったわけでございます。あくまで公正証書の原本というのは原則的には、従来、伝統的には文書形態を考えていたものでございますから、それにかえて電磁的記録で調製する、そうすると、その文書である公正証書原本と同じような意味合いを持つ、そういう意味でございます。
○小澤(克)委員 わかったようなわかりにくいようなところがあるわけですが、まず、この電磁的記録が文書性はないという前提に今回の立法がなされたのだろうと思います。これは非常に明確だろうと思うのであります。次に、電磁的記録は原本それ自体であるのかということについてはなかなか難しいところで、今御説明あったように、原本というのは伝統的には文書であるということから、この「原本タル可キ」という、大変苦心の作だろうと思うのですけれども、結論としては原本たる電磁的記録としなかったということは、電磁的記録それ自体は原本ではない、しかし「可キ」という当為をあらわす言葉が使われていることから原本と同様に扱われるべき、そういった性格のものであるからこのような表現になった、こういうことだろうと思います。そのように理解をして、次に進みたいと思います。 それから、先ほどの質問で既に出ましたけれども、現時点で存在する「公正証書ノ原本タル可キ電磁的記録」といいますと、自動車登録ファイルと、それから住民登録ファイルですか、挙げられましたが、そのほかには現在存在しませんでしょうか。それから、近い将来にこのようなものとなり得るものがありましたら示していただきたいと思います。
○米澤説明員 身近なものといたしましては、特許登録マスターファイルというのがございます。それから先ほど住民基本台帳ファイルにもお触れになりましたが、それも身近なものでございます。それから、先ほど私がちょっとお答えいたしましたが、今後は登記簿が電磁的記録によって調製されることにだんだんなっていくかと思いますので、それも将来においては「公正証書ノ原本タル可キ電磁的記録」に移行してくるかと思っております。
○小澤(克)委員 それでは、次に百五十八条に入りまして、ここで「公正証書ノ原本トシテノ用ニ供シタル」という表現となっているわけです。これは従来では行使という概念であったわけでございますが、実質的にどういう違いがあるのでしょうか。
○米澤説明員 この「用ニ供シ」という文言は、前の委員の方にも御説明しましたように、電磁的記録といいますのは電子計算機の用に供するという形で使われるものですから「用ニ供シ」となっておるわけでございますが、従来の文書形態での公正証書原本、例えば登記簿なんかは、不実の記載がなされまして法務局に備えつけられた場合に行使罪が成立するということで、備えつけ行使というのが一般的なのでございますが、この場合にも同じように不実の電磁的記録が作成されまして、法務局なり登記所に備えつけられている電子計算機でいつでも閲覧に供することができるような状態に置かれた場合に、その用に供したということになろうかと思うわけでございます。そういう理解でつくってございます。
○小澤(克)委員 用に供するという言葉は、例えば自賠責法などは運行供用などという言葉があって、あれは運行を支配したり運行から利益を得たりでしたか、かなり概念を広げるために供用という言葉を使ってあるか、多分そうだろうと理解しますけれども、ここでは行使よりも概念を広げるということではなくして、行使といいますとあくまで人を対象とする行為であるから、電磁的記録として電算機の内部に記録装置としてセットすることはちょっとそぐわないということから用に供するという言葉を使ったのであって、別段従来の行使罪に比べて処罰の範囲を広げようという趣旨ではない、このように聞いてよろしいでしょうか。ちょっと明確にしていただきたいと思います。
○米澤説明員 小澤委員御指摘のとおりでございまして、従来の備えつけ行使と、実態において幅を広げるとかいう意図はございませんし、また、そう読むこともできないのではないかと考えております。
○小澤(克)委員 それでは、次に百六十一条ノ二について伺います。 これは目的犯という構造になっているわけでございますが、これと対応するのはどうしても文書偽造罪だろうと思うのですけれども、文書偽造罪の場合は「行使ノ目的」と端的に書いてあるわけですね。ここでは「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的」というふうになっているわけですが、この違いを少し明確にしていただきたいと思います。
○岡村政府委員 電磁的記録は、文書とその作成方法なり使用の方法が異なる場合があるわけでございます。例えて申し上げますと、権限のない者が作成したコピーのように、それがたとえ権限がないということで不正につくられたものでありましても、そこに記録されているデータが本来のものと同一でありますれば、それが当該システムにおいて使用されましても害が生じないわけでございます。こういった点を考えますと、電磁的記録を不正につくるという、そういう「不正ニ」という一つの絞りといいますか、それとあわせて処罰範囲をさらに一層適切に限定するために、「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的」という実質的な違法目的を要件とすることにいたしたものでございます。
○小澤(克)委員 そうしますと、端的に言って行使目的よりはなお限定されている、こういうことになりましょうか。考えようによっては、「事務処理ヲ誤ラシムル目的」といいますと、何らか事務処理に錯誤や困惑を生じさせるようなものはすべて入ってしまうから、広がるのではないかというような解釈もあり得るかと思いますので、そこをぜひ明確にしていただきたいと思うわけでございます。考えてみましたら、行使というのも、結局人が見得る状態に置くということは、文書偽造の場合はそのことによって文書の信用性についての一種の錯誤を生じせしめて、結局のところ事務処理を誤らしめるというところにつながるので、行使という言葉を中間項を飛ばして、さらにその奥にある目的を前面に出してきた、こんなふうに理解していいのかなとも思うのですが、いかがでしょうか。
○米澤説明員 まず、「行使ノ目的」という従来の文書偽変造罪の構成要件を使いませんでした理由は、先ほど来しばしば申し上げていますように、電磁的記録の利用形態が文書の利用形態とは違いまして、対人的にその内容を直に交付とか見せるとか展示して知らしめるということではなくて、電子計算機の中で使いこなしていく、どちらかといえば対物利用するのだということになりますので、「行使ノ目的」というのを同じように使いますと、文書偽変造罪の行使概念に若干影響を与えるのではないかということも配慮いたしました。 他方、「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的」ということを書くことによりまして、例えば他人が無断である人の電子計算機内の情報をコピーいたしましてそれを持ち出す、磁気ディスクは自分のものを持ち込みますから窃盗にならないという事例を考えていただきますと、それを持ち出しまして、ここに電磁的記録のいい情報が入っているよといって第三者に交付行使するというような、情報の窃取とか盗み取りというものが、「行使ノ目的」と裸で書きますとどうもいくかもしらぬというようなことも我々配慮をいたしたのであります。ただ、それだけでそうなるかと言われれば、いろいろなお考えがあろうかと思いますが、我々としては「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的」の方がより不正作出との関連で、情報の盗み取りというものがアウトになるのではないか、チェックできるのではないかというような、構成要件を厳格にする意味で用いております。
○小澤(克)委員 その点はわかりました。 次に、「不正ニ作リタル」という用語になっております。これがやや誤解を招きかねないようでございまして、伝統的な概念でいえば無形偽造を広く含むものではないかという趣旨の批判的な論文も拝見するわけでございます。先ほど坂上委員からも御質問がありましたとおり、会計処理のデータに脱税目的で権限のある者がわざと違った数字をインプットすることを含んでしまいはしないかというような論文を拝見するのですけれども、そういうことはない、これは伝統的な概念で言えば有形偽造のことを言うのである、このようにお聞きしてよろしいでしょうか。
○米澤説明員 ここで不正につくるという文言の意味でございますが、不正にと申しますのは、私どもの考えではつくり出す権限がないとか権限を乱用してつくるというふうな意味に理解いたしております。これは他の法令用語でもそういった趣旨のことを不正に云々というふうな用語で使っておるのが伝統的でございますので、それに倣ったわけでございますが、作成過程が違法だ、反社会的な違法性を持つというような感じで書いておるわけでございます。したがいまして、原則としては有形偽造を前提にいたしております。 ただ、少しつけ加えますが、例えば私どものような公務員が仮に公文書を作成します場合には、ありのままの内容のものを書く義務というのがあるわけでございます。したがいまして、作成者の立場、地位いかんによりましては、やはり真実の内容のものをつくらない限りは権限の乱用だと見なされる、権限の乱用に当たると理解される場面が出てくるかと思うわけでございます。したがいまして、不正作出罪の二項のところには従来の虚偽公文書作成罪に当たるようなものも入ってくるだろう。その意味では、いわゆる伝統的な意味における無形偽造は全く入らないんだという線切りにはならないかと思いますが、それは権限乱用だという事実がない限りは入らないというふうにお答えしてよろしいかと思います。
○小澤(克)委員 そうしますと、今つけ加えておっしゃられたことは、むしろ権限というメルクマールをいかに理解するかという問題であろうと思うのですね。権限の乱用や権限踰越についてこれをどう考えるか、何人も虚偽内容の文書を作成する権限などないと言ってしまえばすべて無形偽造ということはなくなってしまうわけでございますから、その判断の問題だろうというふうにお聞きしまして、基本的にはここの「不正ニ」というのは内容の虚偽性を言うのではなく、権限の有無を言うのである、このようにお聞きして間違いないでしょうか。
○米澤説明員 委員のお考えのとおり御理解いただいていいと思います。したがいまして、前の委員の方にも御説明しましたように、虚偽の会計帳簿を自営業者がつくってもそれは当たらないとお答えしているところであります。
○小澤(克)委員 そうしますと、この百六十一条ノ二の保護法益は、文書偽造罪と同様に文書の内容の正確性を、あるいはここでいいますれば電磁記録の内容の正確性を担保することを直接の保護法益とするというよりは、やはり結局のところ何らかアウトプットされて人間の目に見えるような、可視的な、五感で知り得るような状態になるわけでございますが、そのインプットされた文書のようなものの作成名義の証明作用を保護法益とするんだ、このように理解してよろしいでしょうか。
○米澤説明員 委員の御指摘のとおりであります。文書の例の保護法益と同じようにお考えいただいていいかと思います。
○小澤(克)委員 それから三項でございますが、これはそのように作成された電磁記録をもって「用ニ供シタル」と書いてあるわけですね。これも行使という用語を避けて「用ニ供シタル」となっているわけですが、先ほど御説明あった他のところと同じ趣旨だろうと思いますが、念のために、行使という言葉を使わずに「用ニ供シタル」という言葉を使った理由を明確にしていただきたいと思います。
○米澤説明員 一言で申しますと、対人的に文書等を交付等いたしますと、これは行使と一般的に刑法上も考えているわけでございます。今度の電磁的記録は、逆にコンピューターに用いられるという形が原則といいますか、当たり前のことでございますので、対物供与という感じで「用ニ供スル」という文言を使いました。
○小澤(克)委員 これは具体的には、このように不正に権限のない者によってつくられた磁気的記録が電算機の記憶装置としてセットされている状況になれば、すなわちオペレーターがボタンを押せば電算機が動いてその電磁的記録に基づいて何らかのアウトプットが出る、そのボタンを押す寸前の状態になっていれば、これは「用ニ供シタル」という既遂状態になる、こう理解してよろしいでしょうか。
○米澤説明員 委員の御理解のとおりでありまして、不正に作出された電磁的記録が当該のコンピューターなりでいつでも用いられる状態に置かれておれば、それで既遂であると考えております。
○小澤(克)委員 それでは次、二百三十四条ノ二に移ります。 これは先ほど御説明がありまして、ここで言う「人ノ業務ニ使用スル電子計算機」というのは、多少限定的な意味がある。すなわち、自動販売機のように一定のプログラムに従って非常に単純なことを行うような、ワンチップといいますか、マイクロチップのような機械ではなく、プログラミングによっていろいろに利用し得るいろいろなデータを記憶させ、それを加工して、いろいろなアウトプットとして人が使用する、そのような機能を備えた電算機を念頭に置いているという御説明だったわけですが、字面上そこまで出るのかどうかわからないのですが、そのような理解だということでよろしいでしょうか。
○米澤説明員 原則としてすべての場合を私自身が推測いたしましてお答えすることは非常に不能を強いられるわけでございますが、原則としてそういうようなものを考えておりまして、その電子計算機等いわゆる電子機器類がそれ自体として人にかわって業務を遂行するというような場面で用いられている電子計算機、こういうふうに考えております。
○小澤(克)委員 これは業務妨害罪に対応する犯罪類型だろうと思うわけでございますが、電算機を実際に操作されているプログラマーあるいはオペレーターなどからも、実は大変な御心配が寄せられているわけでございます。 プログラマーの仕事の実態というのは、何万ステップというような大変複雑なプログラミングをする場合にどうしても虫といいますか、バグが無数に出てくることは避けられない事態である。したがって、実際の取引においても納入する段階でそういう不都合が、バグがあることは双方承知の上で納入をする。そして実際に電算機に入れて使ってみて、不都合なところを訂正していく。そして検収、納品されたプログラムでも電算機の稼働が始められた後にもなお不完全であることを予想して、一定の保守契約期間が置かれている。そしてその保守期間にはさまざまな故障が生じ、手直しが行われているというのがユーザーとソフト会社との取引の実態であるというふうにも聞いておりますので、そういたしますと、故意でなくても外形的にはこの条文に当たるようなことはむしろ日常茶飯事に起こってしまうではないか、故意か過失かというのは非常に微妙なものがありますので、そのようなものに捜査が介入するということになるとたまらぬ、商売できないところか人権問題になるというような非常な危惧があるわけでございます。その辺についてはどのようにお考えなのか。 それからもう一つは、納入する場合にバグがあることはもう予想している、したがって機械が正常に動かないということは承知の上である、しかし納期に追われて納めざるを得ないということはむしろ実態である。そうしますとこれは未必の故意があったと言われかねないわけでございまして、その辺について余り安易には解釈、運用できないのではないかという気がいたしますが、その辺の御見解を伺いたいと思います。
○米澤説明員 今のソフトエンジニアがつくられるプログラム等につきまして必然的にバグを伴うものであることは十分理解しておりますし、かつ、今委員がおっしゃいましたような方法で使用者側というか、そのプログラム作成を依頼した会社側もそれからソフトエンジニアも共同してデバッグに努めるということもよく理解しております。したがいまして、本罪についてそのような事態を対象に適用することは一切ないと私ども確信いたしております。もっとも、意図的にバグをいっぱい時限爆弾のように組み込みましてそのプログラムを講入した人の業務を妨害するということをやった場合は別といたしまして、誠心誠意納入されてこられる業者の方あるいは技術者の方々に本罪が適用される余地はないと確信いたしますし、また、運用に当たってもそのように運用する所存であります。
○小澤(克)委員 そこで、意図的にバグを生じさせるような行為というのはあり得ないではないと思うのですが、普通の犯罪類型であれば、故意なのか過失なのかというのは内心的な事実とはいえ行為の外形からある程度わかるといいますか、類型的な判断が可能なわけですね。ところが、コンピューターのプログラムに意図的にバグを仕込む、虫食いをつくるということは外形的な判断がほとんど不可能じゃないかという気がするわけでございます。そういたしますと、これは捜査あるいは訴訟法上の問題にもかかわるわけでございますが、場合によっては無事の人が非常な苦境に立たされるということがあり得ないではないわけで、ここを非常に危惧するわけでございますが、どうなんでしょうかね、外形的な判断に親しむものなんでしょうか。私、プログラミングの実態がよくわからないのでこれは率直にお尋ねするのですが……。
○米澤説明員 これはプログラムというようなものだけでとどまりませんで、一般論を申しますと精密機械工業に属します精密機器類、電子機器類、このハードの面でも当然起こり得ることでございまして、あるパーセンテージの欠陥商品ができることは当然常識的でございます。これはソフトも同じだろうと思います。 そこでこの構成要件を見ていただきたいのですが、例えばソフトの関係で申しますと「虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与ヘ」、この与えるという行為、たまたまそこに紛れ込むということではなくてやはり相当程度積極的に——正常な取引ではこんなことはやらないわけでございます。技術者もそれからハードのメーカーも信用を重んじますので、通常取引では不正の指令を与えるようなことをしたりあるいは虚偽の情報を与えたりという、積極的な反社会的行為には出ないわけでございますので、結果において外形的にこういうふうなものに当たるように見えても、捜査官が常識で考えますとそこはこれに当たらぬという判断をするのが通常だろう。そこは先生も捜査手法の問題とか手続の問題だと今御指摘されましたが、構成要件上はなかなかそこまで書き切れないわけでございます。本罪を策定するに当たりましても、ソフトエンジニアの方々がそのような危惧を持っておられるということは法制審議会が始まる前からお聞きいたしております。通産省の方からもお聞きいたしておりまして、それぞれその辺を注意しながらつくってきたものでございます。したがいまして、私としてはその辺の御懸念はそう大きなものでないのじゃなかろうか、できるだけ慎重に運用すればそれでいけるのではないか、しかし構成要件上はなかなかそこは書き切らぬと思います。
○小澤(克)委員 これは運用の問題でございますので、ぜひこの辺は慎重な運用が必要であろうかと考えます。 念のためにお尋ねしますが、今出ました「指令ヲ与ヘ」というのはオペレーターがキーボードの上でいろいろ操作をする、そして最終的には、コマンドというようですが、ボタンを押してコンピューターがランする、そういう段階での指令のほかに、プログラムの中での個々の演算の指令、インストラクションというようですが、これを当然含むということでしょうね。これは間違いないですね。
○米澤説明員 両者とも入ると理解しております。
○小澤(克)委員 それから、「業務ヲ妨害シタル者」ということで業務妨害罪とパラレルに解釈すれば、これはいわば危険犯だろうと思いますが、「電子計算機ヲシテ使用目的ニ副フ可キ動作ヲ為サシメズ又ハ使用目的ニ違フ動作ヲ為サシメテ」と、こういう結果が生ずることを必要とするという意味では一種の結果犯というようにも理解できるかと思うわけでございます。ここの意味内容なんですけれども、こういうことがあるのだそうですね。私もどうもよくわからぬのですが、プログラムをつくるときに、プログラムというのは幾つかのブロックに分かれた論理的な構造を持っていて、幾つかのプログラム単位というのがあるのだそうです。それを別々の会社に発注してつくる。そして全体としてワンセットのプログラムになるというようなことがあるのだそうです。そういたしますと、そのどこかにバグをつくっておきますと、それによってコンピューターが誤動作をして、我々の目に見える形のアウトプットが出る以前に全くコンピューターの内部で、あるプログラム単位から他のプログラム単位へまさに電子的な指令がなされる。それだけでも既に誤動作だというふうに言うのか、あるいはさらにその指令に基づいて次の演算がなされて最終的に変なアウトプットが出てきた段階で初めてこれはここに言う、先ほど言ったような結果が出たと考えるのか、その辺はいかがなんでしょうか。
○米澤説明員 この構成要件をつくります場合に明確性ということを非常に重視いたしまして、この中段の「電子計算機ヲシテ使用目的ニ副フ可キ動作ヲ為サシメズ又ハ使用目的ニ違フ動作ヲ為サシメテ」という結果、中間結果でございますが、が生ずるように構成要件に取り込んだわけでございます。今委員のおっしゃったコンピューター内部でのプログラム間同士それぞれの無形の人の目には見えないいろいろな作業、それ自体が間違った方向に走っておるということでは即座には「副フ可キ動作ヲ為サシメズ」とは言わないと私は思います。 例を言いますと、「為サシメズ」というのはコンピューターそのものが所期の目的どおり動かなくなってしまう、システムダウンというのがありますが、そういうのが一つの例です。それから「違フ動作ヲ為サシメ」というのは、先ほど三角形の鉄板などと例を申しましたが、三角形の鉄板をつくろうとしてプログラムを組み込んだはずのところ、だれかが違うプログラムを差しかえて四角形の製品をつくらすということで「使用目的ニ違フ動作」が結果的に起こってしまった、そういうことを要件としているつもりであります。
○小澤(克)委員 先ほど、「不正ノ指令ヲ与ヘ」という意味について個々のプログラムの中でのインストラクションまでも含むんだとお聞きしましたが、今度は逆にさかのぼって、実際にプログラムをつくる場合にはシステムエンジニアが機能仕様書というようなものを作成する、これは利用者からこうこうこういったものをつくってくれと言われてそれに合った機能仕様書をまずつくる、そしてそのシステムエンジニアからの指示に基づいてプログラマーがさらに細かいプログラミングをしていくという経過をたどるわけですね。そして、でき上がったものをコンピューターにセットして、最終的にはオペレーターがランさせる。その最初の段階で、すなわちシステムエンジニアがプログラマーに機能仕様書において指示をする段階から、依頼者というかお客の発注とは既に違ったようなものを意図的につくらせる、こういったものまでも含むのでしょうか。
○米澤説明員 今おっしゃいましたような事例は、その意図的につくった人が最終的には他人の業務を妨害してやろうという意図があっても、本罪の構成要件の前段階的行為であろうと私は思います。予備罪はございませんので、単に意図的にそういうプログラムの開発をしているとかあるいは仕様書をつくり上げている段階は、別の犯罪が成立するかどうかちょっと定かではございませんけれども、これには当たらないだろうと思います。
○小澤(克)委員 いや、そうじゃなくて、そのシステムエンジニアがプログラマーに対して利用者、依頼者の指示とは違った機能仕様書をわざと与えて、プログラマーはそれに基づいて忠実にプログラミングをして、そして最終的にでき上がって機械にセットしたら発注者の意図とは違った動きをする、これは既遂になりますかどうか。
○米澤説明員 その仕様書をつくりました当該本人が、業務を妨害する目的で間接的にプログラマーを利用してそのようないいかげんな不正の指令をつくり上げた上で、当該本人の電子計算機に使わしめて、結局はその人の業務を妨害したということになれば、それは間接正犯ということになろうかと思います。
○小澤(克)委員 今の場合は、むしろ間接正犯ということになるのでしょうね。指令そのものとはちょっと言いがたいということでしょう。わかりました。 それでは、時間も余りありませんので、二百四十六条ノ二に移ります。 これなんですけれども、「財産権ノ得喪、変更ニ係ル不実ノ電磁的記録」、この意味内容がどうもはっきりしない。これは何らかの限定的な意味を持たせるためにこう書かれたのだろうと思いますが、「財産権ノ得喪、変更ニ係ル」というのは具体的にどんな意味を持つのでしょうか。
○米澤説明員 この「係ル」という言葉は非常にいろいろな意味合いに使いますが、私どもがここで構成要件として使っておりますのは、まさに電磁的記録の内容の変動そのものが、ある人の財産権の得喪、変更の事実を表示しているという結果を生じさせるようなといいますか、その情報をそこに作成させるような、そういう記録という意味でございます。したがって、先ほどもお答えしたかと思うのですが、登記簿が仮に磁気ファイル化されましても、そんなものは入らないわけでございます。それは権利の得喪、変更それ自体をその記録で発生させるわけではございませんし、事実上の状態を発生させるわけでもないということでございます。ですから、例といたしましては、各得意先の預金の口座元帳のような性質を持つ、そういう磁気記録といいますか、そういうものを考えておるわけでございます。
○小澤(克)委員 銀行にある預金の元帳ですか、これは典型的な例だろうと思います。まさにある人の預金高あるいは負債高がデータとしてきちんと端的に載っているわけですから、そういう典型的な例はよくわかるのですが、例えば給与支払いのための給与データファイルですね。どこかの会社にそういう給与データファイルを備えつけておいて、それに基づいて計算して即給与を払うというような場合と、さらに会社で作成した給与データファイルから銀行の電算機にデータを送りまして、それに基づいて銀行の口座のファイルの書きかえがあって、そして最終的に支払いがなされるというような場合に、給与データファイルに不実の電磁的記録をつくった段階でこれが「財産権ノ得喪、変更ニ係ル不実ノ電磁的記録」をつくったということになるのか。それとも、そこからデータが送られて銀行にある口座ファイルですか、それの数値の変更があって初めてこれが既遂になるのか。それはどうなりますのでしょうか。
○米澤説明員 基本的な問題でございまして、たしかある学者もそのような点について御関心を示しておられるところでありますが、私どもといたしましては、給与を今例に挙げられましたが、ある会社が給与の計算をしておる、しかし残業とかなんとかいろいろございますが、給与のデータファイルといいましても、基本的なもの、人間の名前とか家族関係とか、そういうものが書いてあるデータファイルはそれに入りませんで、むしろ銀行側で振替送金といいますか、払い込みをしてもらうための基礎になります、まさに直にそれを銀行が利用して入金していく基礎になるファイルを原則として考えておるわけであります。例えば、ある会社がそういうものをつくって持ち込みまして、これで各使用人の給与を各口座に払ってくれという要請をいたします。そのときの磁気ファイルはこれに入るかと思います。
○小澤(克)委員 それから、逆に「財産権ノ得喪、変更二係ル不実ノ電磁的記録」というのは、非常に簡単な、プリペイドカードみたいなものも全部含まれてくるだろうと思うわけでございます。キャッシュカードは、それ自体には預金がどれだけあるとか残額というようなことは何ら記録されてないわけでございまして、暗証番号だとか、要するにキーのような役割しかしないわけですね。これはここに言う「財産権ノ得喪、変更ニ係ル電磁的記録」とは言えないでしょうか。 それからプリペイドカードの場合には、オレンジカードにしましてもテレホンカードにしましても、あと何通話あるいは何円分残っているということがまさにその電磁記録部分に書き込まれているわけでございますから、これは入るということになるのかなと思うのですが、そうでしょうか。
○米澤説明員 プリペイドカード等は入りますし、CDカードはむしろ身分証明書、かぎのようなものでございますので入らないという結論においては、委員の御指摘のとおりでございます。
○小澤(克)委員 これはいまだ実験段階のようですけれども、ICカードというのがありますね。私も余り細かいことは知らないのですが、集積回路に電子的に預金残高等を記憶させて、それによって買い物ができる。ある人が自分の口座からICカードに一定の預金なら預金の枠を移行させておいて、そのICカードで買い物ができる。店備えつけの端末機に入れて操作をすると、そのICカードに示されている預金口座の残高からお店の方の口座に移るというようなものだろうと理解しておりますが、この場合はICカードはここで言う「財産権ノ得喪、変更ニ係ル電磁的記録」ということになるのでしょうか。
○米澤説明員 なると思います。
○小澤(克)委員 その点についてはその程度にとどめまして、百六十一条ノ二、文書偽造とパラレルといいますか、一応対応する類型だろうと思うのですが、基本的な疑問なんです。というのは、これによりますと電磁的記録それ自体に不正な記録がなされた、その段階で既に犯罪が成立するということになるわけでございますが、考えてみますと、電磁的記録自体は全く不可視といいますか、人間の五感ではわからないものでございますから、それ自体に意味があるのではなくて、最終的にそこから何らか人間の目に触れるようなアウトプットされてきた段階で初めて信用性を害するとかいう結果が生じるわけです。ですから、電磁的記録それ自体に誤った情報を書き込んだその段階で処罰しなければならない必然性ということにちょっと疑問があるわけですけれども、その辺についてはどう考えるのでしょうか。
○米澤説明員 確かに電磁的記録がプリントアウトされまして、そのプリントアウトされたものが社会内に転々と流通するということもあろうかと思いますけれども、電磁的記録の中には、相互のコンピューター間のオンラインを利用したり、いろいろな意味合いで電磁的記録がコンピューター内部においてそれぞれ利用され合うということがございます。それを信用して利用して、いろいろな業務を遂行したり取引をしたりするということもございまして、必ずしも不正につくり出された電磁的記録が社会にハードコピーとして出回るということはないものでございますから、やはり電磁的記録作成の段階で処罰をする必要があろうかと思っております。
○小澤(克)委員 アウトプットしないまますなわち人間の五感ではわからない状態のままでデータとして利用されるからだというお話だったのですが、そうだとすると、今度はその先で、例えば業務妨害であるとか財産の異動とかいう結果が生じた段階で処罰をすれば足りるのではないかという気もするのですが、そこはいかがでしょう。
○米澤説明員 不正作出罪については、作成過程が違法だということで内容が虚偽だとは必ずしも限らないわけでございますために、先方様がそれをお使いになった、それに依拠していろいろな計算をしたり何かされた場合に必ずしも財産犯が成立したり業務妨害が成立したりするわけではない、そういう面も出てくるわけでございます。したがって、ハードコピーの段階でとらえたのでは不十分であろうと考えております。
○小澤(克)委員 そう言われればそうなのかなという感じでございますが、若干疑問がないわけでもないわけでございます。 それから二百三十四条ノ二ですけれども、「使用目的ニ違フ動作ヲ為サシメ」とかいうような表現が、先ほど坂上委員からの質問にも既にあったかと思いますが、コンピューターの無断使用であるとか無権限使用のような類型に拡張されては大変まずいと思うわけですけれども、そのような趣旨ではないということは、先ほどと重複するかもしれませんが、ぜひ明らかにしていただきたいと思うわけです。
○米澤説明員 簡単に結論だけ申しますと、そういうものは当てはまらないと理解しております。
○小澤(克)委員 今回のコンピューター関係の法改正は、最初に申し上げたとおり、コンピューターにまつわるものをすべて取り込んでいくということではなくて、現行法上やや問題がある、場合によっては拡張解釈がなされることは必ずしも適当でないというものについて、当罰性があるけれども現行法を拡張して賄うのはやはりまずいというような判断から、その穴埋め的にこの改正がなされているというふうに理解いたしますし、それはそれで基本的には結構な態度だろうと思うわけでございます。 仄聞するところによると、この立法の議論の過程では電算機の無権限使用であるとか、あるいは情報の不正入手、あるいは情報の漏えい、こういったものも考えていこうというような意向もあったやに聞いております。しかし、最終的にはそういうものは入れられなかったと聞いているわけでございます。それ自体、刑法の謙抑性ということからも大変結構なことだろうと私は思うわけです。 もう一つの理由は、コンピューターが発達いたしますと非常に多量の情報の集積が可能であり、しかもそれをごく少数の者が管理可能であるということになりますと、逆に一般の国民からは自分たちの情報を特定の者に独占をされてしまう、むしろそのことからの解放に関心を持つという側面があるわけでございまして、したがって、多量の情報を特定の者が集積し管理をするということを、そのまま刑法によって保護することは非常に重大な問題があると思うわけでございます。その意味でもこの無権限使用あるいは情報の不正入手、いわゆる情報の窃盗ですね、あるいは情報漏えいについてどう扱うかというのは、慎重の上にも慎重になされるべきではなかろうかと思うわけでございます。 そういった観点から、これは大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の改正に盛られなかった電算機の無権限使用や情報の不正入手、情報の漏えいについては今後とも非常に慎重に対処すべきであるというふうに私どもは考えますが、大臣としてはいかがでしょうか。
○遠藤国務大臣 この点については、先生御指摘のとおり、情報の不正入手とか無権限使用とかという問題については、御承知のようなコンピューターの普及、情報社会がこのように進展しているのに伴って生じた大きな問題でございます。しかし、情報保護のあり方、また無権限使用の処罰の根拠等については種々議論が存するところでございます。さような点で、先生御指摘のとおり、私としてもこのような議論の動向を見守りつつ、そして諸般の角度から慎重な検討が必要である、このように承知いたしております。
○小澤(克)委員 大変適切な大臣の御意見であろうかと思うわけでございます。 最後に、今回の法改正部分についても、先ほどちょっと指摘しましたが、二百三十四条ノ二の電算機の使用目的にたがう動作というようなものを拡張いたしますと、無権限使用であるとかそういったものを含みかねない、そういう危険性もなくはないと思うわけでございます。したがって、法務省がこの解釈、適用の重大な権限を担うわけでございますので、そのような拡張的な適用はしない、無権限使用や情報の不正入手等を盛り込むことを見送ったという趣旨は、そういうものについて、今回のこの条文の中にそういうものを盛り込んでいって解釈するということは逆に許されないことだということを明らかに、あるいはそういう御決意を今度はこの改正案に関してお聞かせ願いたいと思うわけでございます。
○遠藤国務大臣 本改正案は、まきの現行法で対応がなかなか不十分だということでございまして、現行法で対応したということになると拡大、乱用という非常に危険な問題が生じる、そのような点で改正案を提出し、御審議を煩わしておるわけでございますので、さような点で私としては、本改正案によって乱用のおそれはない、しかも捜査の段階に至っては、皆さん方の御意見もございますが、乱用の批判などを受けることのないような適正な措置を講じたい、かように考えておりますので、御了承をちょうだいいたします。
○小澤(克)委員 人質の関係あるいは国外犯でしたかの関係について残ってしまいましたが、時間が参りましたので、この程度で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○大塚委員長 冬柴鉄三君。
○冬柴委員 私は、国際的に保護される者に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約、これを以下国家代表等保護条約と略称させていただきますが、それと人質をとる行為に関する国際条約、これも人質条約と略称させていただきますが、これらの条約の締結に伴い、条約により処罰すべきこととされる行為にかかわる国外犯の処罰規定及び人質をとる行為についての処罰規定にかかわる部分に限定をいたしまして質問をさせていただきたいと思います。 まず、両条約は多国間条約としてそれぞれいつ国連において採択をされ、また、いつ発効をしたのか。重ねて、今日までにそれぞれ何カ国が締結をしているのか、とりわけ先進国でいまだ締結をしていない国があればどういう国か、その点についてお答えをいただきたいと思います。
○谷内説明員 お答え申し上げます。 まず、両条約の採択日、発効日でございますけれども、国家代表等保護条約につきましては昭和四十八年、一九七三年十二月十四日に国連総会で採択されまして、昭和五十二年、一九七七年二月二十日に効力が発生いたしました。人質条約につきましては昭和五十四年、一九七九年十二月十七日に国連総会で採択されまして、昭和五十八年、一九八三年六月三日に効力が発生しております。 次に、各国の条約締結状況と先進国の未締結状況につきまして簡単に御説明いたしますと、まず国家代表等保護条約につきましては、これの締約国は本年五月十四日現在で六十九カ国でございます。人質条約につきましては、締約国は本年五月十四日現在で三十八カ国でございます。また、両条約とも先進国、なかんずくサミット参加国の中では我が国とフランスのみが現在までのところ未締結でございます。
○冬柴委員 我が国は、残念なダッカ事件という非常に世界じゅうを驚倒させた事件を引き起こした当事国でもありますけれども、それがなぜ、殊に人質をとる行為に関する国際条約について現在まで締結がおくれたのか、あわせて、現時点においてこれを締結する理由とその意義はどういうところにあるのか、それらの点について答弁をいただきたいと思います。
○天江説明員 お答え申し上げます。 我が国がこの条約を締結するのがおくれた理由でございますが、両条約につきましては、国連の場で我が国が各国と積極的にその作成に参加したことは事実でございます。 他方、両条約とも刑罰法規に係るものでございます。本条約がいわゆる世界主義的な刑事裁判権の設定義務を課しているという点がございます。そのためには、必要かつ適切な国内立法が必要でございます。さらに同様の義務を課す条約が、我が国として締結すべきものが今後出てまいります。そのような場合にも、国際社会の一員として遅滞なく締結できるような体制を今のうちから整備しておくということが重要になるわけでございます。したがいまして、そのためには各国の事情を十分調べ、我が国の国内法において何を行うべきかということを中心に、外務省及び法務省が徹底的に慎重に検討して今日に至ったということでございます。 他方、国際的に申しますと、この条約ができました後でございますが、一昨年、四十回の国連総会におきまして、本条約を含むテロ関連諸条約の当事国となることを要請するという決議案が通過いたしました。また、国連安保理におきましても、テロ行為を防止し、処罰するため国際協力をやろうじゃないか、こういうような決議が通っておりまして、各国からも日本は早くやってほしい、このような要請を受けてきた次第でございます。その両方を勘案いたしまして鋭意検討した結果、今日に至ったわけでございます。 次に、現時点で我が国が締結する理由でございますが、これは昨年の東京サミットにおきまして、御承知のとおり国際テロというものを防止しようということで東京宣言が発出されましたし、七年前のベネチア・サミットにおきましても非常に強いテロ防止のための呼びかけというものがございまして、今回のベネチア・サミットの機会に日本が締結するということは、やはり先進国あるいは大国日本として当然の必要性があることと思いまして、そこに意義を見出したわけでございます。アメリカの国務省の統計によりますと、一九八五年、一昨年は全世界で八百件のテロ活動があり、約八百人がその犠牲になっておる。負傷した人はもっと多いわけでございます。そのような最近の国際的なテロ活動が高まっておりますときに日本がこれを批准するという意義は高いと思います。
○冬柴委員 私がお尋ねするのは、むしろ遅きに失しているのではないか。今日本は、貿易摩擦等で米国のみならずEC諸国からも非常にいろいろと批判を受ける、そういうような立場にあります。そういうようなことを考え合わせますと、このような条約の締結が非常におくれている、そういうことについて私は残念に思うわけでございまして、今後こういうことのないように努力をしていただぎたい、そのように申し上げておきたいと思います。 次に、国家代表等保護条約に関連してお尋ねいたしますが、この七条には、「締約国は、当該容疑者を引き渡さない場合には、いかなる例外もなしに、かつ、不当に遅滞することなく、自国の法令による手続を通じて訴追のため自国の権限のある当局に事件を付託する。」このように記されております。しかし、一方、我が国の刑事訴訟法は起訴便宜主義がとられておりまして、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」このようなことが二百四十八条に定められております。これを読み比べますと、「事件を付託する。」という条約上の文言の解釈に係るとは思いますけれども、片や例外なしに訴追をせよ、片一方はいわゆる起訴を独占している検察官の判断によって諸般の事情によって起訴を提起しないことができる、このような差があるように思われるわけでございまして、今回提出されている改正案にはもちろんこの刑事訴訟法の一部改正とかそういうことは全然考えられていないようでございますので、その整合性と申しますか、その点についてお尋ねをしておきたい、このように思っております。
○岡村政府委員 条約は刑事手続の付託義務を定めたものではございますが、訴追の義務までを定めたわけではないのでございます。先ほど御指摘のありましたように、「容疑者が領域内に所在する締約国は、当該容疑者を引き渡さない場合には、」「自国の法令による手続を通じて訴追のため自国の権限のある当局に事件を付託する。」というふうに定めているところでございます。したがいまして、この条約上の義務の履行として訴追することまでも義務づけられているものではないと解されるのでございます。したがいまして、御指摘のありました刑事訴訟法二百四十八条の起訴便宜主義を定めた規定と矛盾するものではないわけでございまして、そういう意味で刑訴法二百四十八条の改正の必要はないというふうに考えているところでございます。
○冬柴委員 次に、改正刑法四条ノ二についてお尋ねをいたしておきたいと思います。 現行刑法には、二条ないし四条でいわゆる国外犯を定めております。二条では、何人を問わず日本国外において次の罪を犯した場合にはこれを罰する、こういうことで一号から七号までそれぞれ罪名が制限列挙されております。また、三条は、日本国外における日本国民の犯罪について、一号から十六号まで列挙をいたした罪について罰する。また四条は、日本国外における日本国の公務員が犯した罪につきまして、一から三号の制限列挙された罪については罰する。このようないわゆる各則と申しますか、そういう適用されるべき条文がそこに明確に示されているわけでございます。 今回のこの刑法第四条ノ二というものは、何人を問わず日本国外における犯罪を処罰する、こういうことになっているのですが、肝心のいわゆる構成要件の列挙ということがそこになされておりません。私は非常に奇異に感ずるわけでございますけれども、それにかえて、刑法「第二編ノ罪ニシテ条約ニ依リ日本国外ニ於テ犯シタルトキト雖モ罰ス可キモノトセラレタルモノ」、このように規定されておりまして、非常に抽象的な定めにとどまっている、このように感ずるわけでございます。 ここで、急なことでちょっと申しわけないのですが、犯罪事実を一つ例示してみたいと思うのです。後でお尋ねする罪名等にも関するのですが、外国人甲と日本人乙は、共同して、日本国外である某国において、某外国の代表者を刀剣を示して逮捕し、その際同人に傷害を負わせた。これを人質にして、第三者に対し義務のないことを要求した、このような犯罪事実があった場合に、我が国の判決において摘示さるべき罰条、これは急なことでございますから概略で結構ですけれども、どのような条文を示せばいいのか、今の質問に関連してお尋ねしたいと思います。
○米澤説明員 突然事例を挙げられましたので、正確に答えられるかどうか自信ございませんけれども、まず、この資料の新旧対照表の人質による強要行為等の処罰に関する法律の現行のところを見ていただきたいのでございます。八ページでございますが、今お尋ねの事実関係を前提にいたしますと、現行法の人質による強要行為等の処罰に関する法律第一条がまず構成要件的には当てはまろうかと思うわけでございます。そして共犯関係は外国人と日本人でございますが、その条文の第四条のところで「前三条の罪は、刑法第二条の例に従う。」こうなってございますので、すべてのものの国外犯の例に従うことになっておりますから、内外人の二人の共犯者はともにこの第一条で処罰されることになろうかと思います。 その中で、凶器を示して云々、結果として傷害ということを一つつけ加えておられますので、傷害罪に対する擬律関係がどうなるかという問題が一つ生じます。この特別法を見ていただきますと、第一条では傷害行為は何もうたっておりませんで、第三条は人質殺害、急に殺害の方へいくわけでございます。したがいまして、この傷害がどういうふうに評価されているかという問題がございますが、第一条の法定刑を見ますと「無期又は五年以上の懲役に処する。」傷害罪は十年以下の法定刑でございますので、今私が即断します範囲内でお答えいたしますと、この第一条で傷害の部分は十分評価済みではなかろうか、こういう規定をすることはよくございますので。したがいまして、傷害はまずここに吸収されるという関係でございますので、結論を申しますと、人質強要行為等の処罰に関する法律第一条違反及び第四条を適用して、両名とも日本国におりますれば処罰されるということになろうかと思います。
○冬柴委員 暴力行為等処罰に関する法律の適用についてはどういうふうになるでしょうか。
○米澤説明員 暴力行為の関係も吸収されると考えております。こちらが特別罪といいますか、特別類型だと考えております。
○冬柴委員 何か司法試験の口述試験みたいなのですが、外国の代表者を刀剣を示して逮捕しているのですが、これはどうなんでしょうか。
○米澤説明員 外国の代表者が被害者である場合も同じでございます。
○冬柴委員 私が聞きたいのは、その罰条の中に条約、例えば国家代表等保護条約一条というものが入るのかどうか、そこら辺が聞きたかったわけですが、いかがでしょうか。
○米澤説明員 四条ノ二の立法趣旨を長々と申し上げると時間がもったいないと思いますので省略させていただきますが、我が国が締結いたします条約上の義務を履行するに当たりまして、現行法制度で十分履行できるものは特段その四条ノ二を使う必要はないわけでございまして、その場合にはもろに人質強要行為等の処罰に関する法律で十分条約上の義務は履行できると思いますから、このケースにつきましては四条ノ二が介入してくることはないと考えております。
○冬柴委員 突然のことですので、事例はそれぐらいにいたしますけれども、いずれにいたしましても、この四条ノ二が絡んでくる規定を考える場合には、ある人の所為が罰せられるのか否かということを判断する手順として、そのような行為を条約中において我が国の国内法により犯罪とすることを求めているのか否かということをまず判断する、その次に四条ノ二が絡むかどうか、そして最後に我が国の刑法各則を調べてみなければならない、このようなことになるのじゃないかと思いますが、そのような理解でいいでしょうか。
○米澤説明員 法律関係の適用といいますか、理解の前後関係は委員のおっしゃるとおり特段条約から入るということに決まっておるわけでございませんで、むしろ当該本人が、自分が罰せられるかどうか判断します場合に、四条ノ二を先に見ることになる場合もありましょうし、刑法各則から見る場合もありましょうが、最終的には四条ノ二が問題になります場合には条約を参照するということになろうかと思います。
○冬柴委員 私は、日本国憲法第三十一条は罪刑法定主義を規定していると解釈する立場をとるものでございますが、それを平たくいいますと、法律なければ犯罪なし、法律なければ刑罰なし、このような言葉に置きかえることができるかと思います。しかし、今御答弁を聞いてみますと、条約なければ犯罪なし、条約なければ刑罰なし、このようなことになるのではないかと思います。その点について私は、ここで言う罪刑法定主義というのは本来我が国の国内法で簡明直截に規定されるべきものであると考えるのでございますけれども、憲法との関係ではどのように解釈をしておられるのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
○岡村政府委員 今回の改正案は、現行刑法の各則におきまして既に犯罪とされている行為につきまして、条約が要請している限度でその国外犯を処罰するというものであるわけでございます。したがいまして、犯罪自体は法律で定められていることになるわけでございます。 ただ、その国外犯処罰の範囲がどこまでかということにつきましては、それを定めますのが条約でございますが、この条約はまた国会において審議されましてその承認を経ました後、条約の日本語文が官報に公布されるという手続が踏まれるのでございまして、こういった点を総合いたしますと、罪刑法定主義の趣旨に反するものではないというふうに考えているところでございます。
○冬柴委員 このような答弁を私は是認するとしましても、条約と法律ではその成立経過あるいは形式その他が大きく異なっていることは事実であります。そういたしますと、二つのことが問題になると思います。 一つは、条約正文の明確性の問題でございます。条約正文というのは、多国間条約であれば数カ国語をひとしく正文とするのが例でありまして、本件両条約においても数カ国語で表示されることになっております。したがいまして、正文における刑罰規定の内容が我が国のいわゆる刑罰法規としての観点から明確に規定されているかどうか、その点が問題の第一点であります。 第二点は、締結された条約を、ただいま刑事局長の御答弁にありましたように、日本語に訳しましてそれを官報に公告する、このようになっているわけでございますが、このような訳文が余り文学的にやられますと刑罰法規として適当かどうかという点が、我々国民の権利義務の範囲を画する意味から非常に重要になっていくと思います。 その点についてお尋ねしたいのですが、今回四条ノ二というものを刑法の総論で決めてしまいますと、今回締結される条約だけに適用されるだけじゃなしに、今後未来永劫にこの条文が生きている限りは、締結される条約の中に刑罰規定を含むものはすべてこの四条ノ二が絡んでくるのでありまして、そのようなことを考えますと、条約正文の明確性、訳文の正確性が非常に大事になってくると思いますので、その点についての配慮をまず外務省の方からお伺いしたい。
○谷内説明員 お答え申し上げます。 まず、条約正文の内容の明確性を確保するための努力という点でございます。 私どもといたしましては、関係各省との連絡を非常に密にすることはもちろんでございますし、できる限り条約文としての明確性を確保するために、例えば二国間条約でございますと、条約専門家同士が実質的な事項を話し合った後の言葉の問題については十分に協議して、この言葉あるいはこの文章の方がいいのではないかというようなことを専門的立場から検討しますし、また多数国間条約につきましては、通常起草委員会というものが別途できまして、これは実質問題ではなくて全く言葉の問題を、今先生御指摘のとおり、明確性を担保するという観点から非常に精力的な会合を行うというような努力が重ねられまして、条約正文の明確性を確保するということを図っておるわけでございます。 次に、条約の日本語文作成の点でございます。 これは、私どもの手続的な観点から申しますと、各省とももちろん協議いたしますし、それから内閣法制局を含めまして数次にわたる厳密な検討を行っておるわけでございます。特に、条約文としての明確性を確保するためには、条約の作成経緯あるいは諸外国のとっておる立場、解釈等を参考にいたしまして非常に慎重に検討した上で、条約文が真に意味するところは何であるかということを正確かつ明確に翻訳する努力を行っておる次第でございます。
○冬柴委員 非常に大事なことでございますので、法務大臣からも御答弁をちょうだいしたいと思いますが、いわゆる罪刑法定主義の観点から、条約内容の明確性及び条約訳文の正確性を確保、担保するためにいかなる方策を法務省としてとられる所存か、その点についてお尋ねします。
○遠藤国務大臣 先生御指摘の罪刑法定主義の問題を今外務省からもお答えいたしましたけれども、これは申すまでもなく刑事法の根幹をなすものだということで、その精神にかんがみて、外務省及び法務省が相互に緊密な連絡を保ちながら、条約起草段階からその内容を明確にするものである。そのためには最善の努力をするとともに、その訳文の作成に当たっては、これを十分正確かつ明確なものにしておかなければならぬ。罪刑法定主義の精神にもとることのないような万全の措置を講じていかなければならぬ。このような点で、先生御指摘の点は十分身につけておきたいと思います。
○冬柴委員 国家代表等保護条約の締結によって刑法四条ノ二により国外犯が処罰されることとなる刑法第二編の罪の範囲、このようなものを法務省としては将来何らかの形で明らかに示してほしいのですが、その点についてお伺いいたします。
○米澤説明員 お答えいたします。 一応条約承認案件の外務委員会の審議資料にこのたびの国家代表等保護条約を通じて刑法が適用される範囲というのは入れておられるようでございまして、それに基づきまして条約承認案件が御審議になるようでございますが、最終的には、そうした罪の範囲につきまして私どもが法を運用いたします場合の内部的な通達その他におきましてその範囲を明らかにするとともに、しかるべき法律雑誌等にも我々の考え方を明らかにする等、所要の措置をとりたいと考えております。
○冬柴委員 ちょっと時間がなくなりましたので、もう五分だけ。 暴力行為等処罰に関する法律の第一条ノ二の三項を改正して、刑法三条とともに四条ノ二をつけ加えられている。両方とも日本人の国外犯については何かダブるような感じを受けるのですが、その点についてはどういうふうに考えていますか。
○米澤説明員 まず、第四条ノ二の精神からこれは由来するわけでございまして、第四条ノ二は「前三条ノ外」と書いてございます。原則的には二条から四条までが国外犯処罰規定の原則であり、例外的に条約との絡みで包括的国外犯処罰規定をまず置く、こういう精神を持っておるわけでございますが、この暴力行為等処罰に関する法律の一条ノ二と申しますのは、現行法では国民の国外犯だけでございます。それは従来の刑法の一般の傷害罪よりは法定刑を上げておりまして、「一年以上十年以下ノ懲役」になっておるわけでございます。 ところで、日本人が外国で国家代表等を傷害させまして逃げできますと一応一年以上十年以下になるわけですが、外国人の場合に逃げできますと一般の傷害罪になって法定刑は軽くなるわけです。そこで、その調整をとるためにこの三項に「刑法第三条及第四条ノ二ノ例ニ従フ」、こう書いてございます。日本人の場合は原則として第三条を適用するという精神になってございます。
○冬柴委員 もう一問だけ。 人質条約に関して三つの点についてお尋ねしたいと思います。 刑法二百二十条、単純逮捕監禁罪は未遂を罰していないのに、今回この未遂を罰することにしていることがいいのかどうか。 それから、刑法二百二十条の法定刑は「三月以上五年以下ノ懲役」ということになっていますが、本法ではこれを「六月以上十年以下」、非常に重く倍になっているわけでございまして、刑法体系全体の法定刑に照らして権衡を失するのではないかという感じを受けます。 もう一つは、刑法二百二十八条ノ二は被拐取者解放による刑罰の軽減を定めております。これはいわゆる被拐取者の人命を尊重するために、人質をとっていたけれども解放した者について刑を軽くしてやるということで、そういう犯罪から被拐取者の生命を守ろうという立場が刑法にはあるわけですけれども、今回の人質処罰法規にはそのような配慮がなされていない。 その三点についてお伺いして終わりたいと思いますが、簡単にお願いします。
○岡村政府委員 まず第一点でありますが、人質行為防止条約は、人質強要目的によります逮捕、監禁の未遂を国内法上の犯罪として処罰すべき義務を課しているところでございます。したがいまして、これに対処いたしますために、今回の人質による強要行為等の処罰に関する法律一条の三項におきまして未遂犯を処罰することとしたわけでございます。 第二点は、刑法二百二十条の逮捕、監禁の法定刑に比べて今度の改正によります人質強要罪の法定刑が重いのではないかという御趣旨であったかと思います。 今回の人質強要行為の基本類型は逮捕、監禁ということと強要、この二つの犯罪の結合犯であるというふうに考えられるわけでございます。そういった点を考慮いたしましてこの法定刑を定めたわけでございますが、そのほかに現在、逮捕、監禁を基本として、それの加重規定になっておるものとして特別公務員職権乱用という罪があるわけでございます。この法定刑が六月以上十年以下という懲役になっているところでございます。あるいはまた、現行法で既にあります二人以上共同して人質強要を行った者については無期または五年以上の懲役ということでございます。こういったいろいろな点を考慮した結果として六月以上十年以下の懲役という法定刑を定めることにしたものでございます。 第三点は、人質解放減軽規定が設けられなかった点でございます。 これは、現在の刑法のもとにあります身の代金の拐取の場合はこの規定があるわけでございますが、この場合は、犯人が拐取した幼児などの身柄を隠匿いたしまして、また自分の所在も明らかにしないで身の代金を要求するという例が多いわけでございます。あるいは中には、要求が実現されたにもかかわらず犯行隠ぺいのために拐取された者を殺害するという例も少なくないように思うわけでございます。こういうような実情からいたしまして、要求実現の前後を問わないで犯人に反省と悔悟の機会を与えて被拐取者を解放させその生命の安全を図るという、刑事政策的な配慮に基づいて必要的な減軽規定が設けられたわけでございます。 ところが、今回つくりますような人質強要の場合でございますが、最近におけるこういったテロ活動としての人質強要というものの実態を見ると、犯人は建物であるとか乗り物であるとか、要するに所在の明らかな特定の場所に人質を連れ込んで監禁して立てこもる、そして第三者に不法な要求を行うという場合が多いのでございまして、少し実情が違う面があるように思われるわけでございます。また、法定刑等から見ましても特に解放減軽規定を設けるまでの必要もないと認められますし、現在ある人質強要行為等処罰法に人質の解放減軽規定というものが設けられていないわけでございます。そういったいろいろな点を総合いたしまして、今回この種の解放減軽規定は設ける必要がないという判断に達した次第でございます。
○冬柴委員 終わります。
○大塚委員長 中村巖君。 〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
○中村(巖)委員 今回、二つの国際条約の関係とそれからコンピューター犯罪に対処するために刑法等の一部を改正する法律案が出されたわけでございますけれども、そういう意味でこの刑法の改正は部分改正、こういうことになるわけでございます。しかしながら、刑法を全面的に改正しなければならないのではないか、こういう考え方はかねてからあるわけでございまして、たしか昭和三十八年ですか、法制審議会の刑事法特別部会に諮問をされて、その後法制審議会の総会でも審議をされて、四十九年でしたか、案ができ上がっているわけでございます。それ以来刑法の部分的改正というものはほとんど行われていない。それは全面改正で対応しようという法務省のお考え方があったやに思うのでございますけれども、今回部分改正ということに踏み切った経緯といいますか、考え方はどういうことであるのか、まずそれからお尋ねしていきたいと思います。
○岡村政府委員 刑法全面改正作業につきましては、現在も引き続きその作業を継続しているところでございます。しかし、この点は委員も御承知かと思いますが、全面改正の中の重要な柱の一つであります治療処分の新設に関しましていろいろの議論のあるところでございます。また、現在、精神衛生法の改正作業が進められておるところでございますので、その改正後の運用等も見守る必要があると考えておるところでございます。 それはそれといたしまして、一方におきましては人質行為防止条約等のテロ関連の条約について、早期に締結することが国際的にも重要な情勢になってきているところでございます。また、コンピューター犯罪について申し上げますと、コンピューターの著しい普及に伴いまして、これまで刑法で対処が可能でありましたいろいろな不正行為が、現行刑法のもとでその対処が困難だという面も出てまいっておるわけでございます。そういった緊急に対応が必要となりました事態に適切に対処するという必要性も生じてまいったわけでございまして、そういう意味で刑法全面改正作業とは別個に、さしあたって必要とされる立法について部分改正を行うというのが今回の改正の趣旨でございます。
○中村(巖)委員 そうすると、今後も必要に差し迫られた場合においては、一方で刑法の全面改正作業をにらみつつ、必要に応じて部分改正をやっていくという考え方でしょうか。
○岡村政府委員 そういう方向でございます。
○中村(巖)委員 刑法の全面改正についてはいろいろ問題点があることは私の方も十分に承知をしているところでありますが、法務省としては、まだ全面改正というものをあきらめたわけではなくて作業を続けている状況である、こういうふうに言われるわけですけれども、刑法全面改正について今後どうなさるおつもりなのか、大臣から伺いたいと思います。
○遠藤国務大臣 ただいま刑事局長から法務省の模範答弁がされております。しかし、なかなか模範答弁のように進んでおらぬというのが先生御指摘の現況でございます。しかし、これは柱ともいうべき問題、法務省として一つの大きな課題であります。これをぜひ解決したいということでございますが、御承知のとおり三法曹なり関係省庁なり、いろいろ横縦の連絡その他を考えると、正直申し上げでまた相当時間がかかるのではないかな、こう思います。それに、さらにまた社会情勢がこのように変化しておりますので、心にもなくその都度改正案を提出して御審議を煩わすということが現況でございますけれども、法務省としては、全面改正は我々の大きな一つの課題でありぜひ果たしたいということを、これは希望として持っていることを申し上げておきたいと思います。
○中村(巖)委員 とにかく昭和四十九年からただいままで相当の年数が経過しておる。そういう状況の中では、大体法制審議会にかけたのが昭和三十八年でありますから、そうすると今大臣が言われるように社会情勢も随分変わっている。そうなると、状況の変化ということを背景にすれば、もう一度法制審議会に刑法改正を諮問しなければならぬのではないかというふうに思われますけれども、その点、法務省はそういうお考え方はあるのかないのか、いかがですか。
○岡村政府委員 現在、引き続き全面改正の作業中であるわけでございますが、差し迫ってそれでは次期国会に出せるというような状況でもないわけでございます。引き続き作業中である、そういう検討の中ではあるいは委員御指摘のようなことも考える必要がある場合もあるかもわかりませんけれども、まだ差し迫ってそこまでいっていないということで御理解いただきたいのでございます。
○中村(巖)委員 それでは次の問題に移りますけれども、何か大臣が食事をされておられないようなので、ずっとここにくぎづけになっておられるということは大変気の毒でございます。私は当分の間大臣にお尋ねすることがございませんので、どうぞ食事のために御退席いただいて結構です。 そこで、今回の部分改正の中のコンピューター犯罪関係についてお尋ねをしてまいるわけでありますが、今回の改正は、言ってみれば文書偽造に相応する部分、それから業務妨害に相応する部分、それから財産罪、詐欺罪に相応する部分、この三カ所が改正点でありますけれども、コンピューター犯罪全般についてはもっと広く処罰をすべきではないかという考え方もないわけではないわけであります。また、法務省御自身も法制審議会に出された骨子の中では、今申し上げた三つのほかにコンピューターデータの窃用の関係、さらには無権限使用の関係というようなものも出しておられたわけでございます。そういった中でこの三点に絞って今回やられたということになっているのでございますけれども、そこに至ります経過というか基本的な考え方、どういうわけでそういうことになってしまったのかということについてお尋ね申し上げます。
○岡村政府委員 コンピューター犯罪に対しましていかに対処するかという問題がまずあるわけであります。その問題の中には、今回の改正案が柱といたしておりますところの電磁的記録の不正作出、業務妨害、電磁的記録によります詐欺、こういう三つの点のほかに、委員が御指摘になりました情報保護というかデータ保護、あるいは無権限使用という二つの問題があるわけでございます。こういった五つの問題についていろいろ検討をいたしたところでございますが、本来ならば、コンピューターが普及する以前であるならば現在の刑法によって的確な処罰が可能であったにもかかわらず、コンピューターの出現によって事務処理の形態等が変わったことによりまして、実際は処罰が可能であるにもかかわらず処罰し得ないような空白部分と申しますか、そういった面がある程度出てきておる。そういったものに対して緊急に対処する必要がある。そうだといたしますれば、今回の改正案が取り上げました三つの点にまず絞って、その点について改正を行う必要がある、こういう考えに到達したからでございます。
○中村(巖)委員 一つの考え方は、コンピューター犯罪というものに着目すればすぐに情報処理の阻害というようなものでまとめて物を考えていく、こういう考え方もあり得るわけでありますけれども、今回の場合は情報処理阻害というか、そういう観点からの物の考え方はとっておらない、こういうことでございましょうか。
○米澤説明員 情報処理阻害という言葉が非常に難しいというか、意味づけが難しゅうございますが、例えば今度つくります業務妨害ですと、電子計算機による業務の遂行過程における情報処理は阻害されるわけでございます。 ただ、委員の御指摘は、多分、大きく情報処理阻害という大枠をはめてすべての情報処理阻害的な行為を捕捉するようなことはしなかったのかという御質問だと思います。それはなぜしなかったかといいますと、一つには、コンピューターの無権限使用とか情報ののぞき見あるいは窃取といいますか、そういうものを外すということが局長が申しましたように基本的な姿勢として決まっておりますので、そうだといたしますと、伝統的な犯罪類型を基本にしつつ、それに似通わせてつくっていくという基本的な態度をとったわけでございます。したがいまして、情報処理阻害を頭から網をかぶせるということはしていないわけでございます。
○中村(巖)委員 そういう観点からコンピューターのデータの窃用あるいは無権限使用等の関係は今回はやらないんだ、こういうことでありますけれども、これについてはとりあえず今回やらないでペンディングにしておいて、今後また何か立法を考える、こういうことですか。
○米澤説明員 正直に申し上げますと、例えば他人のプライバシーにかかわる情報をのぞき見することが当罰性があるかないかといったことを実質的に検討する必要があろうかと思います。一般的に申し上げますと、他人の非常に貴重なプライバシーといいますか、重大なプライバシーをのぞき見るといったことは、反社会的行為としては当罰性のある方向に動くのだろうと思います。 しかし、今の情報の窃用とか盗み見とかいろいろな問題は、正直なところコンピューターに直接かかわるというのではなくて、非コンピューター化といいますか、コンピューター化されていない情報も存在いたしますし、それからプライバシーだけでなくて企業秘密とか財産価値のある情報とか、あるいは国家社会上必要なといいますか、守るべき情報というのもございますので、それは実質的に非常に幅広くよく検討してみないといけない。検討した結果、国民の大方の方々がそういうものはある意味においてある程度処罰すべきだというふうな御意見が高まってきた場合には、処罰規定を置くこともあり得るだろうと思います。しかし、関係当局、あるいは学者の方々、あるいは在野法曹の方々、あるいは一般国民の方々の御意見を十分検討しなければならない問題だろう、そういうふうに考えているわけであります。
○中村(巖)委員 それでは、以下条文の解釈上の問題をお伺いいたしていきたいと思います。 まず、百五十八条の関係。これは公正証書原本不実記載罪の拡張というか、そんな関係でありますけれども、電磁的記録、これが公正証書になるというか、相当しているというか、そういうような現実に今電磁的記録をもって公正証書の用に供しているというようなことが行われているものとしては、どういうものがあるわけですか。
○米澤説明員 判例にございます自動車登録ファイルとかあるいは特許登録ファイルあるいは住民基本台帳のようなものが、既に電磁的記録で編製されております。今後の問題といたしましては、さっきも申しましたが、登記簿、こういうものがどんどん電磁的記録で編製されるようになるだろうと思います。
○中村(巖)委員 次に、百六十一条ノ二以下に入るわけでありますけれども、その前に、七条ノ二において電磁的記録の定義というものをしているわけであります。この電磁的記録というのは大変わかりにくい、素人わかりがなかなかしないわけでありますけれども、電子的方式あるいは磁気的方式、磁気テープのようなもの、そうでない電子的な処理がなされているもの、こういうものがあるわけであります。こういうもののほかに「其他人ノ知覚ヲ以テ認識スルコト能ハザル」というものがあるんだ、こういうことでありますけれども、「其他」というのは一体何を意味しようとしているわけですか。
○米澤説明員 「其他」というのにまず例として挙げられますものは、光ディスクと申しますか、光学的な方式を使いますもの、あるいは将来におきましてはバイオテクノロジー的技術を用いるものも出てこようかと考えられております。 特に、ついででございますので申し上げますと、「其他」というのを使いました理由は、こういった先端技術は日進月歩でございますので、刑法改正をしばしば行うことはできませんので、将来の技術開発をも踏まえまして、そういった開発された結果として生じますいわゆる電磁的記録に当たるものは捕捉できるようにしたということでございます。
○中村(巖)委員 そういうことになりますと、今度は電磁的という言葉が当たらなくなってくるという、ここでは電子的方式と磁気的方式ですから電磁的と、こういうことになるのでしょうけれども、今のようなことになると電磁的という言葉がふさわしくないということになろうかと思いますけれども、その点はいかがですか。
○米澤説明員 検討の過程におきましてそのような、委員のような御意見を表明される方もおられますし、先端技術の関係者によりますと電磁的記録というのはちょっとフィットしない言葉だというようなことを言う人もおられます。ただし、どうしてそういう言葉を使ったかということを御説明申し上げますと、既に判例等にも電磁的記録という用語が使われ出しておりますし、かつ法律学者、特に刑法関係でございますが、電磁的記録というのを使っておりますので、一つの記号というと言い過ぎかもしれませんが、一つの表現の方式として電磁的記録という文言を使わせていただくのが、構成要件を書く際にも非常にはっきりと明確化できる記号といいますか、暗号といいますか、標識といいますか、そういうものとして使えますので、電磁的記録という言葉を使ったわけでございます。光ディスク等を予測しますと、必ずしも電磁的というのにはそのまき言葉どおりには当たらないかもしれません。
○中村(巖)委員 電磁的記録というものの中にはいわゆるデータというもの、さらにそのほかにプログラムといわれるもの、そういうものを双方含むのだと思いますけれども、その点はいかがですか。
○米澤説明員 一般論として申し上げれば、電磁的記録の中にプログラムが入ります。プログラムが電磁的記録化されているものはございます。
○中村(巖)委員 あと具体的に、今世の中で行われているキャッシュカード、CDカードというものがありますけれども、それ自体は電磁的記録ですか。
○米澤説明員 キャッシュカード等の磁気ストライプ部分にいろいろ暗証番号等が印磁されておりますが、それは電磁的記録であります。
○中村(巖)委員 知覚をもって認識することができないということになっておりますから、バーコードみたいな、電磁的に記録してあるようであっても表から見える、こういうものは含まない、こういうことなんですか。
○米澤説明員 そのとおりであります。
○中村(巖)委員 あと、この定義の中に「電子計算機ニ依ル」ということがあります。電子計算機というのもなかなかわかりにくいわけでありますけれども、電子計算機の範囲というか、どういうものが範囲になるのだろうか、伺いたいわけでございます。いわゆる大きな電子計算機のほかにいろいろなものがあるわけで、先ほども何か駅の切符の販売機の話が出ておりましたけれども、そのほかに、いわゆるパソコンとかワープロあるいはまた電卓というようなものが世の中にたくさんあります。そういうようなものはそれぞれどういうことになりましょうか。
○米澤説明員 先ほど来お話が出ておりますが、電子計算機にはいろいろな形のものがございます。汎用コンピューター、パソコンあるいはロボットを制御しておりますコンピューター等ございますが、その範囲を明確に文字であらわすということは非常に難しいわけでございまして、今回の立法ではもう既に明らかになっておりますとおり、各構成要件ごとにその電子計算機の範囲を画していこう、構成要件からはね返して読んでいこうということになってございます。委員御指摘のワープロでございますが、単にキーをたたきまして自分が書こうとする文字を表現していく、そしてそれが文字に転換されていくという単なるワープロは電子計算機ではないと私思いますが、例えばワープロもパソコンに近い機能を持つものが出てまいりまして、情報の保存とか検索、その他情報処理ができるというようなものもありますので、そういう場合にはワープロという商標がついておりましても電子計算機だ、その機能面に着目して考えることになろうかと思います。
○中村(巖)委員 電卓なんかは入らないということになりますな。
○米澤説明員 単に積算、プラス・マイナス、加減乗除をやるというようなものは入らないと思います。
○中村(巖)委員 いわゆるファミコンというやつはどうですか。
○米澤説明員 ファミコンもコンピューターの機能を備えておるものだと思いますので、電子計算機の範疇には入ろうかと思いますが、構成要件で排除されるようになってございます。
○中村(巖)委員 百六十一条ノ二の関係でありますけれども、「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的ヲ以テ」、こういうふうに一つの目的罪になっているわけでありますが、「人ノ事務処理」という、ここに言う「事務処理」というのはどういうことでございましょうか。
○米澤説明員 お答えいたします。 この「人ノ事務処理」とは、例えば財産上、身分上、その他人の生活関係に影響を及ぼし得ると認められる事務の処理、そういうふうに理解しております。それ自体が業務として行われる事務か否か、あるいはそれが法律的な事務か否か、あるいは財産上の事務か否かは問わないと解しております。
○中村(巖)委員 この条文の中にまた「不正ニ作リタル」ということがありまして、先ほど来の御答弁によりますと、これは権限なくしてあるいは権限を乱用してと同意義であるということでありますけれども、それは他の立法例においてもそういうことになっておるのでしょうか。
○米澤説明員 まず、偽造、変造という言葉を使わずに不正作出というような概念を使いました理由は、既に御説明したかと思いますが、本来文書は作成名義というものを前提に考えられるわけですけれども、電磁的記録の場合にはそれと同じような意味における作成名義を観念することは非常に難しゅうございまして、電磁的記録について偽造、変造なる概念を使いますと、逆に文書偽変造罪における偽造、変造の概念をゆがめるのではないかというようなことが憂慮されまして、むしろ端的に電磁的記録の作成過程を正面からとらえますと不正に作出という言葉を使った方がぴったりするんじゃないか。その不正にというのは、委員御指摘のとおり、権限なくあるいは権限を乱用してという、一般にそういうことを概念する。そういう場合に、不正にという言葉を使っている国内の法令は存在いたします。むしろ権限なくとか権限を乱用してという言葉を使っている方が少ないだろう、私ども当時ちょっと検索いたしましたが、そういうふうに記憶をいたしております。
○中村(巖)委員 不正にということになりますと、法律的に解釈するとそういうことになるのかもしれませんけれども、一般から見れば不正にというのは正しからざるということであって、これは、内容虚偽のものをつくればだれがつくろうとも不正につくったことになるんじゃないか、こういうふうに読まれかねない、こういうことでございます。 そこで、いわゆる偽造罪における無形偽造と申しますか、そういう内容虚偽の文書をつくり出すということ、これはこの「不正ニ作リタル」という構成要件で不処罰であるというふうにして排除できるのでしょうか。
○米澤説明員 不正の電磁的記録とでも書きますれば内容が虚偽なものが紛れ込むように誤解されるおそれがあろうかと思いますが、つくるというのにかかる、不正につくるというかけ方でございますので、作成過程が違法な、つまり権限なくあるいは権限を乱用し、こういうふうに読むのだろうと私どもは理解いたしております。 ついでですので先例を刑法上から見ますと、例えば公印等不正使用罪あるいは公記号不正使用罪等々がございまして、判例でも、不正に使用するとは権限なくして使用することをいうというふうにやっているのもございます。その他、商法の四百八十九条にもそういうふうな用語例がございますので、虚偽の文書的な電磁的記録を作成した場合には本罪は当てはまらないと考えております。
○中村(巖)委員 二項は「公務所又ハ公務員ニ体リ作ラル可キ電磁的記録ニ係ルトキハ」ということになっておりまして、この場合は「不正ニ作リタル」ということはどういうことになるわけですか。この場合は、先ほど来の御答弁によると公務員がつくる、あるいは公務所でつくる場合においては内容虚偽のものであってもこれは処罰をされるんだ、こういうことのようでありますけれども、それはいかなる根拠に基づくわけですか。
○米澤説明員 誤解を恐れず端的に明らかに申し上げますと、例えば公務員が電磁的記録を職務上つくります場合に、やはり公務員としての立場から考えますと真実の記録を作成する義務を負っているだろう、要するにそれ以外の権限は持っていないのだろう、あるいは権限を乱用した結果になるのだろうという意味におきまして、その権限なくまたは権限を乱用しを意味する「不正ニ」に当たる。つまり、実質的には有形偽造的意義を持つのですけれども、言うなれば「不正ニ」に公務員の場合は当たり得る場合が多かろう、そういうことでございます。公務員の勝手気ままに、その職務の遂行上とはいえ内容虚偽のものをつくっていいとは少なくとも考えられないからであります。
○中村(巖)委員 これも御承知願ったところでありますけれども、データの窃用というのはこの百六十一条ノ二によっては処罰をされないんだ、こういうことでございますけれども、これはデータをただ盗むということについては、盗むことが不処罰であるのはどこでその絞りがかけられるわけですか。
○米澤説明員 まず第三者が被害者の電磁的記録をのぞき見まして、そして仮にコピーしたという例でお話し申し上げたいと思いますが、不正につくったという構成要件には形式的には当たりそうに見えるわけでございます。したがいまして、委員は絞りがどこでかかるかと多分おっしゃるのだろうと思いますが、むしろ人の事務処理を誤らせる目的がないというところではねることがまず第一だろうと思います。もちろんコピーをつくる権限がなければ不正につくったことになるわけでございますが、それはそれといたしまして、形式的にはまず目的のところではね飛ばすことになろうかと思っております。
○中村(巖)委員 この第四項目で不正作出された電磁的記録の供用罪の未遂というものを罰することになっておりますけれども、それはどういう場合にそういうことが想定をされるのですか。
○米澤説明員 一つには携帯型の電磁的記録をお考えいただきたいと思いますが、CDカードの磁気ストライプ部分にいろんなことを書きまして不正作出に当たるような行為をしたと仮定いたしますと、当該不正に作出されたCDカードをCD機に差し込むまでは供用の実行着手はないわけでございます。したがいまして、差し込もうとするそのときには実行着手がありますが、完全に供用というのかどうか、その辺の限界は非常に難しゅうございますが、未遂段階的行為があることは容易に御想像がつくと思います。 もう一つの方の備えつけ型のものは、これはいろいろな作成過程がございますけれども、大体厳格な方法で電磁的記録をつくっております会社等では、作成途中段階では完全にロックをいたしまして第三者のアクセスを許さない、そのロックを外すまでは供用にならないわけでございますので、電磁的記録がロックをかけられた中ででき上がりましても、だれも使えないわけでございますから、これは供用にならない。ロックを外した段階で一応供用の実行の着手になる。それをどの段階で既遂というかという難しい問題はございますが、事実関係でいろいろな問題が出てくるだろうと思います。
○中村(巖)委員 いずれも何か考えてみると極めて瞬間的に終わってしまう犯罪で、着手があって、そして結果の発生があるという間というものが時間的に余り考えられない。例えばCDカードを差し込むといいましても、差し込んだ途端にキャッシュが出てくるわけでありまして、そこに未遂罪をつくっているというのは何か特別な意味があるのかな、こういうふうに思っているわけですが……。
○米澤説明員 確かに我々の中で供用未遂罪を検討いたします場合にも、委員御指摘のような意見もございましたが、一応既遂段階をどこでとらえるかという非常に難しい、法解釈的には既遂と未遂の違いをどこに限界線を引くかという難しい問題もございまして、既遂だけにしておきますとその途中段階のが飛んでしまう可能性がございますので、一応文書偽変造罪との並びで未遂を置いておこうということに結論的にはなったわけでございます。瞬間的かもしれませんが、頭の中では考えられることであろうと思います。
○中村(巖)委員 先ほど伺ったことですけれども、あるいはまたほかの委員も聞いておられることですが、ある学者は、脱税のために脱税プログラムというかそういうようなものをつくって、みずから自分の会社のプログラムあるいはデータをそういうふうにしておいた場合にこれは処罰をされるのだ、こういうようなことを言っているわけですけれども、それは間違いである、こういうことになるわけですか。
○米澤説明員 間違った理解であると申し上げることができるかと思います。つまり、自営業者なりだれでも結構でございますが、帳簿作成権限のある者が内容虚偽の帳簿をつくっても、現在の文書偽変造罪には当然なりませんし、今回の電磁的記録不正作出罪にもならないと考えております。
○中村(巖)委員 次に、二百三十四条ノ二の関係でございます。 これは構成要件がなかなか複雑でわかりにくいわけでありますけれども、要するに電子計算機に「使用目的ニ副フ可キ動作」をさせずというのと、それから使用目的に反する動作をさせるというのと、二つの行為があって、それが人の業務を妨害した結果になったというものを処罰するので、その前段は要するにその二つの行為の手段というか、そういうものである。手段としては電算機もしくは電磁的記録の損壊と、それから電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与える、その他の方法と、三つの手段というか方法があるのだ、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
○米澤説明員 そのとおりであります。
○中村(巖)委員 この場合に「其他ノ方法」というのがありますけれども、「其他ノ方法」というのはどういう方法があるのですか。
○米澤説明員 一番典型的な事例は、通電を遮ることでございます。電子計算機は電気をとめられますとCPU中にございますいろいろな情報が吹き飛んでしまって大変なことが起こるわけでございますし、そのほかの例といたしましては、電子計算機は非常に繊細な機械でございますので、室内温度を一定温度それから一定湿度に維持しない限りは機能をおかしくしてしまうわけでございます。したがいまして、異常な高温にしたり物すごく湿度を上げて、電子計算機そのものは物理的に壊しませんが、機能障害を生ぜしめるというようなものがそれに入ると考えております。
○中村(巖)委員 その三つの手段それぞれが電子計算機に「使用目的ニ副フ可キ動作」をさせない方法であり得る、あるいはまたその三つの手段が使用目的に反する動作をさせる方法手段であり得る、その三つが行為二つにそれぞれ対応している、対応しているというのか、それぞれあり得るということになるのでしょうか。あるいはその三つの手段の中のあるものは使用目的に反する動作をさせるというものではないということに、そういうふうに対応関係を持たないものがあるということになるのでしょうか。
○米澤説明員 手段の中の例えば損壊とか、あるいは先ほど私が申し上げました「其他ノ方法」等が果たしてどちらにひっかかっていくかという問題をお聞きだと思いますが、その程度の問題に、程度次第によりましてどちらにもひっかかる可能性があると私どもは考えております。
○中村(巖)委員 ここで「使用目的」という言葉が使われているわけですけれども、この使用目的というのはどういうことなのか、なかなか難しい。使用目的というものを広く解すると犯罪の成立範囲が非常に広がってしまうということになろうかと思いますけれども、使用目的というのはどういうことを考えておられますか。
○米澤説明員 電子計算機を使いまして業務を遂行している人を前提に申し上げますと、当該その人がある自分の業務を電子計算機に遂行させるに当たりまして、その電子計算機をどういった形でどういう目的で使おうということが個々具体的に特定されるわけでございますが、そういった意味の使用目的をここでは指しております。
○中村(巖)委員 ここでは使用目的との関連で、無権限の使用というものは、この「使用目約二副フ可キ動作ヲ為サシメズ又ハ使用目的ニ違フ動作ヲ為サシメ」たということになるのでしょうか。
○米澤説明員 結論だけ申しますと、それは本罪に当たらないと考えております。
○中村(巖)委員 それは、どういうわけでそういう解釈になるのでしょうか。
○米澤説明員 業務の妨害にまず当たらないことが多かろうかと思いますけれども、他方、その「使用目的ニ違フ動作」といいますのは、例えば無権限使用の内容次第によっては、どういうことか私ちょっと具体的にお答えいたしかねるのでございますけれども、例えば無権限で自分の何らかの演算をさせる、勝手に使ったという場合には、コンピューターのキャパシティーの問題もたくさんあろうかと思いますが、おおむねは、大体のコンピューターは同時的にいろいろなことをやりますので、本人の業務を妨害することはなかろうと思われますし、「使用目約二副フ可キ動作ヲ為サシメズ」というような事態は惹起されないと考えております。
○中村(巖)委員 「使用目約二副フ可キ動作ヲ為サシメズ又ハ使用目的ニ違フ動作ヲ為サシメ」というのは電子計算機の一つの働きでございますけれども、そういうことになりますと、電磁的記録を損壊をしたというような場合に、それが現にその電子計算機に使用されていない、例えばバックアップ用の電磁的記録あるいはまたその運搬中というか、そういう電磁的記録、こういうものを損壊をしてもこの条文には当たらないわけですね。
○米澤説明員 この条文には当たりませんけれども、例えばそれが器物と考えられるならば器物毀棄にもなりましょうし、今度新しく文書毀棄のところに電磁的記録を入れておりますので、それに該当すればその毀棄罪が成立することは、別途あり得るだろうと思います。
○中村(巖)委員 この二百三十四条ノ二に当たるような犯罪、典型的な犯罪というのはどういうことですか。
○米澤説明員 例えて申しますと、過激派が銀行の計算センターに入りまして、銀行の業務を麻痺させてやろうということで銀行の大型コンピューターを爆破した、そのために銀行は何ら仕事ができなかったというような典型的な事例があると思います。
○中村(巖)委員 損壊する場合はそれでわかりますけれども、損壊以外の、例えば「電子計算機二虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与へ」これこれしたということについては、典型的な犯罪としてはどういうものを想定をされているわけですか。
○米澤説明員 例えて申しますと、ロボット制御のコンピューターをお考えいただきたいのですが、ある工場でロボットを使いましていろいろな製品をつくっている場合に、ロボットがつくるべき製品とは違うような製品をロボットがつくり出すようなプログラムを与えまして、そしてどんどん作業をさせてしまうというようなこともこれに当たるかと思います。
○中村(巖)委員 よく問題にされるのは、オペレーターに対して拘束する等の加害行為をして、電子計算機が作動できないようにしてしまう、こういう行為というのはこの条文で処罰ができるのでしょうか。
○米澤説明員 オペレーター個人の身体に対し、例えば威力を用いましてオペレートすることができないようにした結果として電子計算機が作業しなかったというような事象を考えてみますと、それはオペレーターに対する威力業務妨害、オペレーターの業務遂行に対する妨害罪は別途成立いたしますが、本罪は、原則としては対物加害による業務妨害というふうに言うことができるかと思いますが、コンピューターに対する直接加害を考えておりますので、必ずしもオペレーターの身体に対する威圧を加える、あるいは意思に対して威圧を加えるということだけでは本罪は成立しにくかろうと思います。それも電算機の前で一生懸命作業しておるので機械と一体になっておるとか、事実関係が非常に微妙になってきた場合は相当程度違うかもしれませんが、端末機等の場合はどうなるか、それは事象ごとによって判断されることですが、原則としては今申し上げたように考えております。
○中村(巖)委員 学者の中には、「使用目的」という部分で、使用目的というのは電子計算機としての機能だというふうに解釈する余地があるんじゃないか、そうなると、使用目的に反するというのは無権限使用や情報の不正入手もこれに入ってしまって、非常にこの犯罪が広がる危険性がある、こういうふうな指摘をしている方があるわけですけれども、それに対してはどういうふうにお考えでしょうか。
○米澤説明員 業務の遂行過程に用いられている個々の具体的なコンピューターを前提にして構成要件の理解をいたしますから、単にコンピューターの機能、抽象的なコンピューターの機能、性能というものが即使用目的だと理解されることはないと確信いたしております。
○中村(巖)委員 次に、二百四十六条ノ二の関係でございます。 これは詐欺罪の特別補充規定というか、そういうふうに理解をされるわけでありますけれども、コンピューターを使って二項詐欺をするというような関係でありますが、二項詐欺だけではなくて二項横領というか、そういう関係をもこれによって処罰し得るというふうに考えられるのでしょうか。
○米澤説明員 本罪は財産上の利益を不法に取得する行為を処罰するものでございまして、いわゆる二項横領を処罰する趣旨の規定ではございません。単純横領の類型であると学者が一部指摘したり、いろいろ批判しておりますが、二項横領まで拡張して本罪を適用するという趣旨でつくったものではございません。
○中村(巖)委員 「電子計算機ニ虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与ヘテ財産権ノ得喪、変更ニ係ル不実ノ電磁的記録ヲ作リ」、こういう構成要件でありますけれども、具体的には先ほど来のお話で、一つは銀行の元帳、こういうものを変更させてしまうというようなことがあるということでありますが、そのほかに現段階ではこういう犯罪としてはどういうものが現実に想定をされておりますか。
○米澤説明員 例えば、水道料金とか電気料金を水道局や電気会社等が計算して、それぞれの顧客ごとに磁気ファイルにインプットして銀行に持ち込んでそれぞれ自動引き落とし等にかけますけれども、そういう自動引き落とし等あるいは給与の自動振り込み、そういったものに使われる持ち込み型の電磁的記録を利用して不正なことをやる場合も出てこようかと思っております。そういった関係で構成要件をつくりましたところ、その範疇に入るものとしては、携帯型のプリペイドカード等にインチキというか不正の仕掛けをして財産上不法の利益を得るという行為も出てこようかと考えております。
○中村(巖)委員 プリペイドカードというのは、テレホンカードとかオレンジカードというものがありますけれども、その磁気の部分を変えてしまうことによって電話をかけるとか切符を買うというような財産上の利益を得た場合には、これに該当するということになるわけですね。
○米澤説明員 オレンジカードとかプリペイドカード等につきまして、磁気テープ部分を不正につくり出しますと、これはさきの不正作出罪の関係も出てきますが、財産上不法の利益を得た場合には本罪が当たるというふうに考えております。
○中村(巖)委員 拾った他人のテレホンカードを使用するという関係は、本罪で処罰できるのでしょうか。
○米澤説明員 テレホンカードそれ自体は正規のものでございますので、本罪の予想しないところであります。
○中村(巖)委員 ついでに聞いておきますが、テレホンカードにしてもCDカードにしても、拾った他人のものを勝手に使うことは、今回の改正でどれかの条文に該当することになりますか。
○米澤説明員 委員のお挙げになりました例のCDカードとテレホンカードは、今度つくります構成要件との関係ではちょっと事柄を異にいたしますので、一つずつ分けて御説明いたします。 拾ったCDカードを自動現金引き出し機、キャッシュディスペンサーに差し込んで現金を引き出す行為を仮に想定いたしました場合、CDカードというのは、いわゆる財産犯で、今度のコンピューター詐欺で言っておるところの財産の得喪、変更に係る電磁的記録ではございませんで、身分証明書みたいな、あるいはかぎみたいなものでございますので、今度の新しい構成要件には当たらないとまず言えるわけです。ですから、CDカードとテレホンカードとちょっと質が違いまして、テレホンカード自体は、拾ったことは別にいたしまして、まさに今度コンピューター詐欺で考えております財産権の得喪、変更に係る電磁的記録ではあるのでございますが、今も申し上げましたようにそれ自体は不正に作出されたというか、虚偽の情報が入っているわけではございませんので、それを使っても本罪には当たらない。ただ、遺失物横領とかなんとかになることは別の話でございます。
○中村(巖)委員 今の財産権の得喪、変更——財産権というのは大変広いのでよくわからないのですけれども、銀行の顧客台帳というか口座ということになると債権ということになるのでしょうけれども、債権以外に何かがあるということで財産権というふうに広く概念をつくっておるわけでしょうか。
○米澤説明員 単に債権というものに限定されるかどうかでございますが、債権以外の、例えば財産権というのは民法にたくさんございますものですから、そういった財産価値ある権利を電磁的記録における記録にかけて、その得喪、変更が事実上進められていくというようなシステムが開発されますれば、当然そういうものも入ってくるわけでございます。したがいまして、財産権と一応大枠を書いておるわけです。当面は預金、債権とかそういうものが対象になるでありましょうし、テレホンカードだとまさに電話をする利用権みたいなものでございます。
○中村(巖)委員 先ほどこの関係で、不動産登記ファイルはここには該当しないんだ、不動産登記というものは別にそれで財産の得喪をするわけじゃなくて対抗要件であるからそうなんだということでありますけれども、金を請求する台帳とか例えて言えば売掛金の台帳のようなもの、そういうものの電磁的記録についてはどうなりましょうか。
○米澤説明員 商人が商業帳簿としていろいろ電磁的記録を用いましてつけますけれども、今の売掛金元帳といいますか、台帳もその一つだろうと思います。しかし、最終的に我々が考えております財産権の得喪、変更に係る電磁的記録というのは、その売掛金台帳が転じて自動的にそれが集積され、そしてその集積結果が相手方、得意先の預金口座の自動引き落としにかけられるような、そういった自動処理がされるような状況に置かれているものならともかくといたしまして、商人が専ら自分の商行為を記録していくための記録として電磁的記録にいろいろつくっているというのは当たらないのではなかろうかと考えております。
○中村(巖)委員 今の点ですけれども、そうすると、それを誤ったものにしてしまうと実際上は相手に対する請求権を失うことになりますけれども、あるいはまた、金額を少なくしてしまえばその少なくした部分だけの請求権を失うような実際的効果を持つわけですけれども、それでも関係ないわけですか。
○米澤説明員 私が先ほど申しました例だけに限定して申し上げますれば、商人が専ら自分のためにつくっております記録を、今度は自分で積算いたしまして、この請求のための磁気ファイルをつくるだろう。その請求のための磁気ファイルが同時に銀行へ持ち込まれて、銀行が今度自動引き落としにかけていくという、それぞれ段階があるのだろうと思います。ですから、商人がもともとつくっております元帳それ自体では、財産権の得喪、変更が生じた、事実上も生じたとは考えていないわけですから対象にならないだろう、原則としてそうだろうと思っておるわけです。 例えて言いますと、電話の料金なんか自動的に記録いたしますが、それ自体は今私どもが予想しますものじゃなくて、さらにその積算されたものが集約されまして、そして自動引き落としにかけられるような電磁的記録になったという、主としてはそちらの方でここに言う財産権の得喪、変更に係る電磁的記録に当たっていく可能性があろうかと考えております。
○中村(巖)委員 二百四十六条ノ二の法定刑が「十年以下ノ懲役」、こういうふうになっておりまして、これは詐欺罪と同じような関係になるわけですけれども、例えば今のテレホンカードみたいな軽微なものについては、これは罰金刑とかを選択刑として入れるというようなことは考えられなかったわけですか。
○米澤説明員 委員御指摘のとおり、詐欺の一つの同様な類型として処罰しようとしておるものでございますので、詐欺罪の法定刑と横並びで十年以下ということにいたしました。もちろん、構成要件のかけぶりから、当然のことながら今御指摘のような犯情の軽いものも入ってまいります。そのために、一部の学説では、自動設備の不正利用と同じように罰金刑を置いてはどうか、あるいは法定刑をもっと下げてはどうかという御意見がございましたが、構成要件で予想しています本体部分のものはもっと重大な犯罪を想定しておりまして、具体的事例に即しまして、その下限は、罰金はございませんけれども、下の方までございますのでそういった処理をし、その体系でもなお過酷であれば起訴猶予処分という具体的、妥当な処理結果をもたらすことができるかと考えておりますので、罰金はつけ加えておりません。
○中村(巖)委員 では、私は終わります。
○井出委員長代理 安倍基雄君。
○安倍(基)委員 今同僚議員がいろいろ聞いておられますので、重複しない範囲でお聞きしたいと思いますけれども、今度の改正は、コンピューター犯罪といわゆる国際テロの防止という関係でございますが、まず第一に、コンピューター犯罪について、いろいろな電磁的記録とか、その損壊あるいは詐欺と、こう幾つか分類してございますけれども、大体この関連の犯罪がそれぞれ日本においてどの程度発生しているのか。これは資料としてある程度、CDがこのくらいでございますとか、あるいはいろいろな分類がございますけれども、それぞれの構成要件というか、それぞれの規定に合致している犯罪の数というのは大体どのくらいになっておるのでございましょうか。また、それはどの程度ふえているのでございましょう。
○米澤説明員 正直なことを申し上げますが、これから構成要件化して処罰しようということで御審議を願っておるところでございますので、そのものずばりの統計を手元には持ち合わせておりません。そこで、いろいろな判例とか警察庁の統計とか、そういうものを総合いたしまして、ラフにお答えすることをお許しいただきたいと思います。 まず、総計は五十六件だというふうに報告を受けておりますが、これが果たしてすべて今度の構成要件との関係での反社会的行為がどうかというのは、私よくわかっておりません。コンピューター絡みの反社会的行為が五十六件。そして、その中でほとんどの部分がどうも財産をねらっておるといいますか、経済的利益をねらっておる犯罪のように聞いておりますので、主としては不法利得罪等に当たってくるものが多かろう。キャッシュディスペンサーの絡みとか、あるいはその他で行われておるためでございます。 ただ、コンピューター破壊の例といたしましては、表にあらわれましたのは三件でございます。しかし、私どもがこの改正作業をいたします過程でいろいろなコンピューターのユーザーの方等にお伺いした限りでは、非常に階数が多いと承っておりますので、数字というのは余り信用できないのではないかと自分らも考えておりまして、今度の構成要件ができました場合に摘発事例をどんどん集積していけば正確な数字が出るかと考えております。 〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
○安倍(基)委員 これはいささかペダンチックな議論になるのですけれども、いろいろな犯罪数というものが、一つの規定を導入した場合と導入しない場合、あるいは刑を重くした場合とそのままの場合、そういった規定を変えることによってどう犯罪防止になるのかという種類の検討というのが本来必要なんじゃないかと私は考えております。 私は、ちょっとエコノメトリックスをやったことがございます。計量経済でございます。これはいろいろな変数を変えることによって、いろいろな投資なり消費なりが、どういう要件でどのくらい変数が変わるか。今私がここでちょっと各構成案件別のいわば犯罪件数をお聞きしたということは、すべての立法において、それをそう決めることによって犯罪がどの程度抑制されるのか、抑制されないのか、これはちょっとアカデミックな話になるし、学問倒れになりますけれども、本来そういう研究が立法論においてなされるべきだという見解を私は持っているのです。 例えば交通違反という件数がある。これはどういう関数かといいますと、例えば道路の状況とか自動車のふえ方とか、いろいろな要素があるかもしらぬけれども、その中には罰則というのが一つある。この罰則をきつくするかしないか、それがある程度交通違反件数に影響してくるわけでございますが、そういった意味の検討というのが従来全然されていない。私はシュリメトリックスという名前くらいつけたらいいじゃないかと思っている。果たしてそういう研究がどれくらいされているか。実は、私は向こうで経済を学んできた直後に、ジュリメトリックスでもやってみようかという気持ちがあったのですが、これはなかなか難しい話でそう簡単にはできないのだけれども、これからの刑罰とかいうものを決めるとき、要するに過去の案件がこれによってどのくらいチェックされるのかされないのかという種類を考えるべきなんだ。だから、単に従来の構成要件と似ているからこれくらいの範囲内で決める、もちろん刑というのは横並びがございますから、できるだけ従来の範囲内でやることが正しいわけですけれども、こういった件数的な検討というものも決して怠ってはならないと思う。 そういう意味では、私が一体件数はどのくらいだと聞いたときに、すぐ出てこなかった。ほかの国の件数だってなかなか出てこない。これはなかなか難しい問題かもしれませんけれども、この前法務委員会で、借地・借家あたりで、各権利関係という面もいいけれども、それが社会全体にどういう影響を及ぼしているのだということを考えなければいけない。それと同じように、コンピューター犯罪にしてもいろいろな犯罪にしても、これが犯罪件数にどう響いてくるのだという検討が要るのじゃないか。これはいささか学者的な話で、皆さんの耳にあれかもしれませんけれども、その意味で私はこの件数的な分析というものがいささか欠けているのじゃないかという気がしますので、この点ちょっと一言皆さん方のお考えをお聞きしたいと思います。
○米澤説明員 委員御指摘のとおり、犯罪の予防、鎮圧の政策決定をいたしますに当たりましては、犯罪発生件数等の正確な統計を分析いたしまして、犯罪動向をよく見きわめる必要があろうかと思いますが、我が国では御承知のように犯罪白書あるいはその他犯罪統計、警察の統計もございますし裁判所の統計もございまして、一応犯罪統計としては世界の中では非常に正確な統計をとっておる国だと確信いたしております。 コンピューターに絡みましては、御承知のふうに最近徐々にふえてきている傾向にございますために、そして殊に構成要件がなかったということもございまして、コンピューターを中心とする統計というのは余りたくさんはございません。それともう一つ、犯罪は暗数がつきものでございまして、被害者が届け出る尊いたさない限りはどうも正確な数字がつかめないということもございますので、その辺を十分配慮の上、今後とも立法その他の刑事政策で統計を活用していきたいと思っております。
○安倍(基)委員 今お答えがあったようになかなか難しい問題ですけれども、これからやはり一度こういった構成要件をつくれば、よくそれをフォローしておいていただきたいと思います。 二番目は、何年から何年という刑のいわば範囲ですね、それもいいのですけれども、それが実際上どう運用されているかというのが常に問題になる。例えば、今の私文書偽造とかいろいろな犯罪がございますね。これが現実問題として大体何年以下というのだったらどの辺に収れんしているかという問題があるわけですね、どの辺の件数が一番多いか。コンピューター犯罪をこれからやるときに、恐らく構成要件によって行われていくのでしょうけれども、例えば私文書偽造あたりは通常は大体どの辺の刑の分が一番多いのかという点の御説明をしていただけますか。
○米澤説明員 私文書偽造だけに限って申し上げますと、現行法の私文書偽造、つまり百五十九条の一項は、法定刑は三月以上五年以下の懲役、こうなってございますが、量刑の事情を統計から探ってみますと、有罪人員中三年未満二年以上の懲役になった人が十六人、二年未満一年以上の懲役になった人が二百十二人、一年未満六月以上の懲役になった人が九十九人、これは昭和六十年の統計によっておりますが、そういうふうになっております。
○安倍(基)委員 今御説明を受けましたけれども、こういった、どこに中心部分が行くかということはやはり絶えず注意しておく必要がある、特に刑を決めるときに大体この辺じゃないかということを。 そこでもう一つの話ですけれども、罰金刑ですが、これは本当に、例えばいろいろつくったものがどんどんと意味がなくなってしまうわけですね、通貨価値がどんどん変わりますから。これは罰金刑としてくっつけておく必要がないくらいのものにすぐなってしまうわけですね。あっても本当に意味がない。しかも、あっても非常に軽い。軽いといいますか、通貨価値が変わりますからね。この辺は、罰金刑を残すならそれなりのちゃんとしたスライド条項というか、相当それに応じた改正を本来はしていかないと全く意味がないわけですね。だから、そのくらいの罰金なら幾らでも払う、それだったら逆に罰金にならないという話になるわけで、むしろ私は罰金刑を併科しながら、罰金刑を重くするくらいの感じでいくべきじゃないかと思うのです。その辺は、参事官でもいいし、あるいは局長でもいいし、場合によっては大臣の御意見も承りたいと思いますが、いかがでございますか。
○米澤説明員 委員御指摘のとおり、罰金刑が一見された場合には非常に安いといいますか、意味があるのかというようなことをお感じになる方もおられるかと思います。 この点につきましては、御承知のように昭和四十七年だったと思いますが、罰金等臨時措置法を改正していただきまして、現在は法定刑に書いております千円単位あるいは百円単位の罰金が二百倍にまず一応はなっておるわけでございますが、それ以後の物価の上昇あるいは所得の上昇といいますか、そういったものがいろいろ事情が変わってきておりますので、内部的には今後とも慎重に検討いたしまして、やはり適正な罰金刑を策定していかなければならないだろうと考えております。
○安倍(基)委員 ちょっと急に大臣に申しわけないけれども、御感想を……。
○遠藤国務大臣 ただいまお答え申し上げておりますが、やはり世の中の経済情勢が変化するに相応した、罰金刑という名前自体が罰金刑でございますので、それにふさわしいような方法を講ずることが必要ではないかな、こう考えておりますので、今後十分検討したいということをお答え申し上げておきます。
○安倍(基)委員 いろいろ年金とかそういうことになると、すぐスライドで毎年毎年ちゃんと法律を出して上げているわけですよ。そこまでと言わないにしても、罰金という制度を設けながら一遍決めたのはたまに何倍にするというのじゃ、罰金を科する必要は全くないですな。この辺がどうも、さっき刑法の根本改正がないかというあれがございましたけれども、これは非常に日本のお役所仕事というか、そういう感じがするのです。突然のあれでございますけれども、たまたまこうやって刑の量定あたりを読んでみますと、罰金なんか科してもしようがないのを何で書いておくのだという気が非常にするので、これはやはりそれなりの検討課題にしていただく必要があるのじゃないかと思います。 それとともに、コンピューター犯罪につきましてちょっと二、三質問いたしますと、コンピューター犯罪は大体ほかの国と比較して要するに軽いのか重いのか。これは余り細かくどの国がどうと言ってもらう必要はないです。それを言い出すとすぐ時間がたってしまうからね。大体どうなのかということが第一点。 それから、何かアメリカあたりではちょっとコンピューター犯罪的なものは別の一つのジャンルにしてやっているという話も聞きますけれども、日本の場合、従来の刑罰とのいわば横並びで全部処理している。今までもいろいろ議論がございましたけれども、コンピューター犯罪というのはちょっとまた異質なものかもしれないな。その辺は従来の構成要件との横並びで見るべきものなのか、ちょっと別の見地で見るべきものなのか。最初の刑が重いか軽いかという点と、今の概念的な差を設くべきなのか設けなくてもいいものなのかという点についての御意見を承りたいと思います。
○米澤説明員 刑罰法規は各国のそれぞれの社会的なあるいは文化的な、歴史的な事情等が考慮されますので、それぞれの国でコンピューターにまつわります反社会的行為に罰則としてどう対応するかということは、それぞれ国によって違っております。したがいまして、刑だけを単純比較いたしますことは非常に問題があろうかと思いますけれども、委員が刑について話せとおっしゃっておられますので、一例だけ簡単に触れてみますと、我が国は今回電磁的記録の不正作出につきまして五年以下の懲役あるいは公記録の場合は十年以下の懲役と、一番上限を言いますとそういうふうな法定刑を決めようとしておるわけでございますけれども、ドイツはよく似た規定を持っておりますが、その中で法定刑は五年以下の自由刑、特に重い事情がある場合には一年以上十五年以下というふうな法定刑を決めております。したがいまして、全く構成要件が一緒ではありませんので、比較するのがどこまでいいことかという点もございますけれども、ドイツの方が重い。しかしながら、逆にアメリカの連邦法によりますと、記録の不正作出そのものじゃございませんが、よく類似した構成要件だけを引いてみますと、五年以下の拘禁刑、こういうふうになっておるということでございます。 それから、刑法で規定することがいいかどうかということも当然のことながら法制審議会で御議論がございました。特別法にすべきか、あるいは刑法の中に組み込んでいくべきか、ちょっと異質なものなのかどうなのかという御議論もありましたが、とりあえずはコンピューターの出現によって現行刑法が秩序維持機能を失いつつある部分を早急にともかく手直しをしておく必要があるということで、今回の法律案を出させていただくことに法制審議会も御決定があり、そういう準備をしたわけでございます。
○安倍(基)委員 それから、外国では例えば情報の不正入手とか計算機の無権限使用とか、そういう面についても罰しているわけですね。その点、日本ではそういったことまでしなかった理由はどういうことでございますか。
○米澤説明員 前の委員の方にも若干申し上げましたが、正面からお話し申し上げますと、情報の不正入手等につきましては、そのターゲットになります情報をどういうふうに見るか、つまりプライバシーにかかわる情報か、財産価値ある情報か、企業秘密が、あるいは国家機密が、あるいは社会的な、公的な秘密かというような、秘密にもいろいろ種類があること。そしてもう一つは、コンピューターにかかわる秘密とコンピューター外の秘密というのがやはり社会には存在いたしまして、その辺をどう取り扱うか非常に難しい問題がございますので、その辺の線切りやあるいは取り込み方等につきまして各界の意見を集約して、大方のコンセンサスである程度構成要件を確定していく必要もあろうかと考えて、今回は見送っているわけでございます。
○安倍(基)委員 ということは、これからもこの関連につきまして新しいいわば構成要件に基づく罪というものをつくっていく可能性は十分あるわけでございますね。結局、これは最終的にコンピューター犯罪を防ぐのに十分であるかという質問に連なるわけでございますけれども、この点についてちょっと御説明を願えませんか。
○米澤説明員 秘密が必要な限度で守らるべきであって、それが侵害されてはならないということは当然のことでございますので、その点につきまして何らかの秘密侵害行為があれば、探知行為も含めてあれば、当罰性のある反社会的行為に属するという御判断が国民の合意として形成される場合もあろうかと思います。そういう意味で、今後とも秘密侵害に対しまして、あるいは秘密探知に対しましていろいろな方々の御意見を総合し、一番落ちつきのいいところで解決するのが社会にとっていいのではないかという判断もございますし、刑法でそれをとらまえるべきかどうかという問題もございますので、今回は俎上にのっていないということでありますから、国民の大方の合意でそういうものをつくれということになれば、そういうことも実現する余地はあると考えております。
○安倍(基)委員 ちょっとはっきりしないのですけれども、というのは結局今の状態では必ずしも十分ではない、これから要するにある程度考えていかなくちゃいけないというのか。国民の合意といったって、これはちょっとわからない要素ですよ。国民としてなかなか、それはもちろん合意は必要ですけれども、こういうことがあるよということで、ある程度国民の合意というのは、非常にあいまいな言葉ですが、当局としてこれで十分だと考えているのかどうかということをむしろ聞いているわけでございますから、ちょっと国民の合意というような言葉で逃げられては困るので、これははっきり聞きたいと思いますね。
○米澤説明員 結論だけを申し上げたものでありまして、当然のことながら、法秩序の維持あるいは当罰性ある反社会的行為についてどう国が対処すべきかに責任を持っております法務省の役人といたしましては、当然関係当局等とその問題についても今後とも検討を重ねていくつもりでございます。
○安倍(基)委員 大臣の御見解はいかがでございますか。
○遠藤国務大臣 情報の不正入手の問題については、今日のようなコンピューターの普及、また社会がこのような発展をしてきたときに当たって新たな問題であるということは私も承知をいたしており、ただ情報保護のあり方というような点を考えると処罰の根拠ということについてはいろいろ議論ができるところでございまして、御指摘のとおりいろいろ我々としてもその結論がつかないというところが正直なところです。例えば、率直に申し上げると三法曹界が御理解願えるか、それよりもましてや国民の世論、というよりも国会自体が御理解願えるかというような点を考えると、慎重に検討していかなければならぬということで御理解をちょうだいいたしたいと思います。
○安倍(基)委員 私の質問は二つあるのですよ。今の情報入手的なものをカバーしていくのかという話と、もう一つは、今度の規定でコンピューター犯罪全体をうまくちゃんと防止できていけるのかどうか、これで十分かどうかという二種類があるわけでございまして、情報の入手については、今の何が秘密であるのかとか何がプライバシーであるのかといういろいろな議論が行われる。それまでについてのいわば国民的コンセンサスとおっしゃったら、その辺の、大臣がお話しされたように片方を立てれば片方が立たずというような話で、何が前提になる守らるべき法益であるかということについての議論がまだ煮詰まってないという考えだと思います。 それとともに私が聞いておりますのは、今回の改正でほぼ大体のコンピューター犯罪がうまく抑え込めるのか。それはなかなか抑え込めるというか、刑罰をつくったからといって完全には防止できませんけれども、さっきのシュリメトリックスじゃないけれども、要するに相当の犯罪を抑えられるのかどうか、十分かどうかという見解についてのあれでございますね。
○遠藤国務大臣 御指摘のとおりコンピューターがこのように発達しており、現行法ではなかなか的確な対応が困難となったということは先生もよく御理解願えると思います。そのような点で、各種の不正行為に対して十分対処することができるかどうかというような点で、法務省自体が関係省庁やその他と連絡をとって今回法改正を提出したということでございますので、私どもとしては、提出者としては十分対応できる、こういうふうな姿勢でございますので、よろしく御理解願いたいと思います。
○安倍(基)委員 提案者がこれでは不十分だと思ったら提案しないでしょうから、そこまではあれいたしませんけれども、いずれにいたしましても、コンピューター犯罪というのは多岐にわたっていると思います。そこで、さっきアメリカとの関係でアメリカはちょっと別のアプローチをしていると言ったわけですけれども、その辺、ちょっとアメリカは別なアプローチをしているというのと、我が国と要するに考え方が違う、その辺のいわば差というか、プラス・マイナスの面はどういうことでございますかな。
○米澤説明員 アメリカは御承知のように連邦法や州法の多くでコンピューターに対する不正アクセス罪というような形で、とにもかくにもコンピューターに対して、第三者が情報をのぞき見たりあるいはそれを盗んだり、あるいはいろいろなことをするというのを包括的にとらえようという形で規定を持っております。それに対しまして我が国は、現行刑法ではコンピューターを予想していなかったために、従来ならば当然のことながら処罰できだというような反社会的行為が抜け出てしまう、現行刑法ではどうも網の目にかからなくなってしまうというようなところを、とりあえずは早急に手当てをしようという基本的な構想のもとに立法作業をしたものでございますから、いわゆる不正アクセス的な観点で大網をかけるというような規定ぶりはしていないわけでございます。 その中にあって、先ほどの問題にあります情報の探知とかあるいは情報の盗みとかいう問題がどういうふうに理解されるかという問題が生じてくるわけであります。それぞれ一長一短あろうかと思いますが、我が国の立法態度としては、現在の法律案のような行き方で確実に反社会的行為を捕捉していくという方法で十分であろうと思いますし、それから、いわゆるハッカーと言われております行為のほとんどは、中の情報を盗み見するだけではなくて、盗み見た上で特定の情報に対して攻撃をしかけるというのが悪質なハッカーでございます。その場合には、当然今回の構成要件で捕捉できる部分が十分にあろうと考えております。単なるおもしろ半分の盗み見は今回はございませんけれども、例えば情報を書き変えたり壊したり、あるいは財産的な利益を得るために適宜それを悪用したりというのは、すべて今回捕捉するつもりであります。
○安倍(基)委員 では、今のところは米法的な立場をとるまでに至っていないというようなお話でございますね。それはそれなりに理解させていただきますが、いずれにいたしましても、これは今までには把握できない要素の犯罪なわけでございますから、あるいはアメリカ的なまた別個の観点からの検討の方がいいのかもしれぬ。この辺の話はこれからも十分検討課題にしていただいた方がいいのじゃないかと思っております。 次に、国際テロリズムの関係でございますが、これは今やまことに世界としては大事な問題でございまして、今回も国会が条約も早く批准するし、こちらもつくるということはまことにいいことだと思いますが、ここでちょっと、各国と比較したときのいわば国内法のあり方ですね、例えば、私はこれでちらっと気がついたのですけれども、アメリカあたりは脅迫なんかが刑としては日本よりも相当重いような感じでございますが、これはほかの国と比べて、それぞれの国内法というものが刑罰においてどういう状況にあるのか、これも余り長くない時間の範囲内で、簡単に御説明願いたいと思います。
○岡村政府委員 人質行為防止条約の関係について申し上げますと、我が国では、今回の改正によりまして、人質強要罪につきましては六月以上十年以下という法定刑が設けられることになっております。また、既存のものといたしましては、二人以上共同して凶器を示したというような加重要件が加わりました場合は、無期または五年以上の懲役ということになっているわけでございます。これと同種類の犯罪につきましてどういうふうな処罰が外国で行われるかという点でございますが、ドイツの場合は刑法に人質強要罪というものがございまして、三年以上の自由刑ということになっております。イギリスの場合は、終身刑以下の拘禁刑ということになっております。アメリカの場合は、有期または無期の拘禁刑ということになっております。 次に、国家代表等保護条約の関係でございますが、これにつきましては、我が国の場合は、現行の刑法上の多罪、例えば殺人、傷害、暴行、こういった罪が適用されることになるわけでございます。例えば殺人につきましては、その法定刑は死刑、無期または三年以上の懲役刑ということになっているわけでございます。これと横並びにドイツを見てみますと、ドイツでもやはり既にあります刑法上の罪で対応することにいたしております。例えば謀殺の場合は無期の自由刑ということになっております。イギリスの場合は、謀殺につきましては終身刑でございまして、イギリスにおきましても既存の刑事罰則で対応することにいたしております。アメナカの場合は、新たに国際的に保護される者に対する殺人、誘拐等の連邦犯罪というものを定めておりまして、例えば謀殺につきましては終身刑という法定刑を定めているところでございます。
○安倍(基)委員 例えば、細かい話になるのですけれども、横並びで見ますと、アメリカなんかの場合には脅迫について割と厳しいのですね。日本は脅迫は二年以下の懲役、アメリカは五年以下の拘禁刑または併科。人質とかこういった国家代表に対するというのは、ある意味からいうと相当厳しくしてもいいのじゃないか。ただ、例えば人質なんかの場合、厳しくするとすぐ殺してしまうというような話になりかねない面もあるのですけれども、しかし、これから人質問題が大きな話になってくると思います。今までの犯罪の中で、恐らくこれから社会不安が起こったときに人質が一番、一番とは言わないけれども相当ふえるのではないか。これについて相当厳正な態度をとらなければいかぬと思うのですけれども、この点について、ほかとの横並びの関連で、我が方のこういった犯罪に対する量刑が果たして妥当であるのかどうか。これは出される以上妥当だと思うから出したに違いないのですけれども、これについて、特に実際に至らない脅迫くらいなんかについても、ドイツは割と軽いのですが、この辺の感じはいかがでございますか。
○岡村政府委員 御指摘のとおり、脅迫につきましては、アメリカの場合は五年以下、ドイツは一年以下、日本は二年以下ということでございまして、各国それぞればらつきと申しますか、それがあるわけでございます。ドイツとアメリカの例だけから申しましても、日本だけが特に脅迫について法定刑が軽いとは言えないと思うのでございまして、要するに刑法上の多罪のバランスといいますか、そういった中でそれぞれの法定刑が定められでいくところでございまして、日本の場合も特に軽いわけでもございませんし、また特に重いわけでもないという意味では適正なところではなかろうかというふうに思っておる次第でございます。
○安倍(基)委員 これは、提出される以上適当と思って出されるのでしょうから、ちょっと意味のない質問かもしれません。 こういったこと、それからいわゆる人質行為ですね、これはほかの国と比べていささか軽いのではないですか。これの判断はどうなんでございますか。
○岡村政府委員 人質の場合でございますが、日本の現行の人質による強要行為等の処罰に関する法律というものがあるわけでございまして、その場合、二人以上共同して、凶器を示して逮捕、監禁して強要行為を行ったこれらの者が「人質にされている者を殺したときは、死刑又は無期懲役に処する。」という規定もあるわけでございまして、そういう面から見ましても、人質行為防止の見地から見ましても、日本の法定刑は適正妥当なところではないかと思っております。
○安倍(基)委員 二人以上という要件が入るか入らないかでしょうけれども、例えば日本の場合に六カ月以上十年以下、ドイツの場合には三年以上、イギリスの場合には終身刑以下の拘禁刑、アメリカの場合には有期または無期の拘禁刑、一般的にどうも日本の方が軽いような気がいたしますが、いかがでございますか。
○岡村政府委員 二人以上共同して、かつ凶器を示して人を逮捕、監禁した場合の強要行為につきましては無期または五年以上の懲役という法定刑が定められているところでございまして、特に日本の場合は軽いとは考えられないところでございます。
○安倍(基)委員 それは人質の場合には二人以上だろうというような感じかもしれませんけれども、その辺は一人でやる場合だってあり得るし、凶器を示して云々というような要件でもって縛っているわけですから、一般論としては私は軽いと思わざるを得ない。その辺はちょっと将来の検討課題ではないかと思いますね。二人以上、凶器を示してという構成要件をつければ、じゃ構成要件に入らない場合にはそうならないのかという話になるわけでございますが、これはちょっと、もう少し検討していただけませんかな。どうでございますか。
○岡村政府委員 法定刑が適正かどうか、あるいはまた外国等と比べて適正かどうかというようなことは、法務省としてもやはり研究はしていかなければいけないことであると思っております。
○安倍(基)委員 それから、これはちょっと突然というか、前もって余り……。お話もあったけれども、今度の国家代表というのは、もちろんそれは国家に対する挑戦になるわけですから、それなりに一つの条約ができたのは当然なんで、一歩の前進なのでございますけれども、私どもの頭にすぐ出てくるのは、最近、若王子さんですか、あれですごい身の代金を渡してどうにか釈放された。日本はお金持ちのグループだ、こういうぐあいに世界的に定着した状況のもとでは、これは必ず第二、第三の若王子さんの話が次々と出てくる可能性があるわけですね。でございますから、今度いわば国家代表について一応できたけれども、これから若王子さんみたいなのがどんどん出てき始めたら一体どうするんだ。これは刑法だけの問題ではない話でございます。むしろ外務省と法務省と、捕まえなかったら意味がないので特に警察と、この辺をどうお考えなのか。私は、この辺がこれからの大きな課題だと思います。 例えば、私の理解では、若王子さんの犯人が検挙されてもこっちへ引き渡してはもらえないのだろうな、要するに向こうの国で裁判するのだろうな。向こうの国で裁判する場合に、一般的には後進国はそういったものについては刑が重いのかもしれませんけれども、向こうの刑が非常に軽い。あるいは罰金が、どうせ向こうの通貨は安いですから、罰金が安い。恐らく六億という日本の三井が払った金なんというのは、彼らにとっては莫大な額なわけですね。要するに、幾ら罰金刑を科しても彼らとしてはちょっぴりした刑に違いない。そういったことをいろいろ勘案しまして、私はこれは外務省の方だと思いますけれども、若王子さんのときの犯人が捕まった場合に、我が国はどういうあれを持っているのですかな。向こうの裁判権の管轄内だから全く手が出せないんじゃないか。その辺はどういうことになるのでございますか。
○天江説明員 お答え申し上げます。 ただいま外務委員会の方で河上民雄先生からも、若王子事件と今回の人質防止条約との関係が議論されてございまして、まさにただいま先生がおっしゃるように、私ども非常に大きな問題としてこの若王子事件を考えておるわけでございます。外務省といたしましては、今後民間人が多数外国に出るというこの傾向はますます大きくなるということから、まず第一に自己防衛をするということで、在留邦人を含め海外に進出する日本人には平素から種々のアドバイスをしていくということは、今までも行ってきましたし、今後とも強めていくということでございます。 ただいまの御質問の若王子事件の際に、フィリピン当局が犯人を捕まえた場合に、その量刑が軽い場合日本としてどうするのか。これは、国家がおのおのの主権を持っている関係上、ここに我が日本政府当局がその量刑について云々することは内政干渉になるという観点から、その点については現地の政府あるいは法制上の判断にゆだねざるを得ない。逆の面もございまして、例えば東南アジア、マレーシアでございますが、二十グラム以上のヘロインを所持していただけで死刑になる。これはヨーロッパの国から見れば大変、現に捕まって死刑になった人もおります。それで、マレーシアの政府に対しておかしいではないかというような声が一般にありますけれども、これはその国の方針でございますし、その国によって決めていく国家の主権の問題でございますので、私どもはその辺はいたし方がないと思います。 最後に、若王子事件とこの人質防止条約との関係でございますが、この条約におきましては、我が国について効力を発生する以前の段階で若王子事件は終了した犯罪でございますので、この条約を適用することはできないわけでございます。仮に犯人とおぼしき人が日本に逃げてきた場合には、この条約ではなくて、犯人が二人以上共同して、かつ凶器を示して行ったというのがはっきりしておる場合には、これは現行の人質強要法にて犯人を処罰できるものと思います。
○安倍(基)委員 そうすると、今後発生する事件については犯人の引き渡しは要求できるし、また、犯人の引き渡しは行われ得るのですか。
○天江説明員 その発生した場所が日本であるとか、あるいは日本が全体としての法益が著しく侵されたと判断する場合には、それはあり得ると思います。
○安倍(基)委員 ということは、フィリピンで行われた犯罪である場合はだめだし、それから若王子さんあたりが、あたりと言っては悪いけれども、商社の支店長あたりが人質になった場合には、必ずしも引き渡しは要求できないというか、しても拒否されるという形でございますな。
○天江説明員 先ほども申しましたようにケース・バイ・ケースで、果たして日本の法益がどこまで侵されたかということとの関連でございますので、具体的な点につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
○安倍(基)委員 ケース・バイ・ケースというお話でございますけれども、ちょっとこれからの大きな検討事項かと思います。 本当はきょうは警察も来ていただいたらよかったのですけれども、これからいろいろ捜査関連のいわば協力とかいう問題もありましょうが、なかなかこれは主権の問題と侵害された法益の問題、ここではっきりと、その国を代表するような人間は特別に保護しなければいかぬ、それに対して特別規定を設けるのは正しいことでございますし、それが国際的な慣例になってきつつあると思いますけれども、だんだんと最近は、その国を代表しなくても、本当に貿易が密になり、相互進出が密になってきますと、特にお金持ちの国の日本というのは人質にねらわれる可能性があるし、今回あれだけ払って、確かにある意味からいえばハッピーエンドだったのですが、しかし、日本人一人捕まえればあのくらいになるわという一つの観念が定着したとすれば、これはまた怖い話には違いない。それはそれなりに外務と法務とあるいは警察と協力した形で、何かのことを考えていかなければいけないのじゃないかと思いますが、これはあるいはほかの委員会でも問題になっているのかもしれません、私は余りほかの委員会のを聞いておりませんけれども。これについてちょっと法務大臣の、御感想で結構でございますから。
○遠藤国務大臣 ただいま先生のお話しのように、その国その国の主権ということもございますので、大変いろいろ問題が出ると思いますけれども、この若王子事件というのが発生したということは、日本国の国民が被害者となったという事態は大変我々として重大な問題であり、遺憾なことだ、このような感を深めておる次第でございます。今後この保護政策といいましょうか、邦人の保護については、先生御指摘のとおり外務省と十分緊密な連絡をとって邦人保護の施策を講じていかなければならぬ、このように考えており、さらにこの改正案に基づきまして、この条約を締結したということになりますると、幸い例えばフィリピンもこの条約は締結をしておる、そうなりますると、例えば犯罪や何かでも罪の軽重等もある程度は各国間で、その締結の中の国でございますので、話が通じる点もあろう、こういうふうに感じておりますが、とにかく我々として、今先生御指摘のとおり、日本国が経済大国だということで、一人一人は懐には金は持っておりませんけれども、何となく金持ちだというような点でねらわれる心配はあると思います。そういうような点で、今後邦人保護ということに対して相当やはり検討を重ねていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
○安倍(基)委員 これはいろいろ考え方はあるのですけれども、それぞれの主権というのは、要するに自分らの国民が例えばほかの国に連れていかれてべらぼうに厳しい刑をかけられては困るというような意味もあると思いますし、自分の国で起こった犯罪にほかの者が入り込んできていちゃもんをつけるのはどうだというような意味もあるかと思いますが、しかし、こういう人質行為のような、非常にこれからははびこるかもしれぬし、けしからぬようなものの犯人を、その国の国民だからといってかばうというような話が果たして適当であるのかどうか。恐らく今度の条約もいろいろそういう考えが出てきているのじゃないかなと思います。 その面で、法務省もさることながら、外務省がやはり頑張る場所じゃないかな、私はそういうぐあいに考えておりますし、特に先ほどもたまたま私が聞いて、話が出て、国内法でも厳しいところも厳しくないところも、いろいろアンバランスがあるわけですね。そこで結局ほかの国にとっては厳し過ぎるではないかと見るところもありましょうし、そうすると、厳しくないところでやればいいわ、こういう話にもなりかねないわけですから、その辺は私はこれから外務省は大いに頑張ってもらわなければいかぬと思いますけれども、あなた、外務省の課長さんでも、外務省を代表してひとつ、一度外務委員会でも聞いてみたいと思っていますけれども、御答弁願えますか。
○天江説明員 お答え申し上げます。 人質防止条約の第四条は、先生御案内のとおり締約国は、今の場合でございますとフィリピンと日本でございますが、特に次の方法で犯罪防止について協力するということをうたってございます。すなわち、犯罪が起きてからではなくて、犯罪防止にも力を入れるべきである、そのための締約国間の協力ということが第四条に詳しく載っているわけでございます。その一つとして、お互いの情報を交換し、行政上の措置その他の措置を調整することというのが一つの義務になってございますので、この面で外務省は、関係国とも防止の面で十分調整してまいりたい、かように思います。
○安倍(基)委員 大体この法案についての大まかな点は終わりまして、まだまだ聞きたいことはいろいろございますけれども、私どもは時間が少ないものですから、最後に、前回ちょっと積み残した話がございまして、借地・借家法を論議したときに、これが土地の有効利用をある程度妨げるのではないかなというような議論をいたしました。たまたま前回、今借地・借家法を議論している最中だとおっしゃいましたから、それは貸す者、借りる者の権利義務という調整だけではなくて、土地問題が非常に大変になってきているときに、現行の借地・借家法が土地利用に対してある程度足かせになっているのじゃないかなという見解を私は述べました。収用法についてはそれなりの担当官が来てお答えになっているのでございますけれども、これは遠慮なく建設省の立場というか、考え方をお聞きしたいと思います。
○藤田説明員 お答え申し上げます。 借地の実態を見ますと、近年特に新しい借地というのが少なくなってきておるわけでございます。この原因を各種の近郊の地主さんなどのアンケート調査で見ますと、やはり一度その土地を貸しますと二度と返ってこないというような不安を持っておられるというようなこと、あるいは地代の改定が非常に煩わしいというようなことを御指摘をされておるわけでございます。 そもそも借地方式におきまして土地の利用を図っていくということにつきましては、近年特に土地の所有者が土地の保有志向を強めておりますので、土地の所有者が所有権を手放すことなく将来の収入を確保できるということがございますし、また一方、借地人にとりましても当初比較的安い負担で土地を利用できるというような利点がございますので、建設省といたしましても、その借地方式による土地の利用というものを進めていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。このため、こういうような利用の促進を図る観点からも借地・借家法の改正の幅広い御検討が必要であろうというふうに考えておる次第でございます。
○安倍(基)委員 時間もございませんからあれでございますけれども、ひとつ現在審議中の借地・借家法の改正におきまして、私は前回申しましたようにその当事者だけじゃなくて、遠くから通わざるを得ないようなそういう法の外というか、権利義務とそこにある庶民の声というか、そういったのをひとつ勘案して借地・借家法の論議を進めていただきたいと思います。それについて、担当者及び大臣まで出していませんけれども、担当者とそれから大臣の御感想もお聞きしたいと思います。
○千種政府委員 先回も十分に御説明する時間がございませんでしたが、ただいま建設省の方でお話しになったような問題も私ども意識をいたしまして、そういう問題を含めて今考えておるわけでございます。法制審議会でそういう問題点も出まして、新規に借地を供給促進するのにどういうことが効果的であるか、そういうことによって庶民の住宅がどういうふうに供給できるか、こういうことももちろん考えておるわけでございます。例えば新しい借地契約の類型をつくりますと、それが終了したときにはどういうことにするか、建っておる建物はどういうふうにだれに帰属するか、そういうことを現在の制度との関係でどういうバランスをとってやったらよろしいか。新規のものだけあるいは企業でやる場合だけ特別な法律をつくるか、いや、つくったとしても今までのものとどういう整合性を持つか、そこでやはり借りる者、貸す者のそれぞれの利益の調整ということが再び問題になってくる、こういうことで今議論をやっているわけでございます。
○遠藤国務大臣 さきにも申し上げておりましたけれども、現在大変需要が多様化している土地であり、借地・借家法の見直しが必要だと私も考えております。しかも現行の借地・借家法は貸し主と借り主の利害の調整を図ることを目的とした法律であって、これを社会経済情勢の変化に伴ってその公正が確保されるというような法制化という希望を私は持っております。
○安倍(基)委員 もう時間がございませんからあれでございますけれども、私も別に弱者をいじめろというのじゃなくて、我々野党というのは弱者を守る立場ではありますけれども、ただしかし、それが本当に社会の進展に応じて余りにも一方だけの権利保護ではいかない。その権利を全く持ってない連中は一体どうなるんだということでございますので、ひとつ借地・借家法を広い観点から検討していただきたいということでございまして、私の質問を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
○大塚委員長 安藤巖君。
○安藤委員 今回の刑法等の一部を改正する法律案につきまして、まず第四条ノ二の関係でお尋ねをしたいと思います。 これは先ほども同僚議員の方から質問がありまして、これは包括的に規定してあるわけですね。そこで、いろいろ法制審議会の刑事法部会でも列挙主義をとったらどうかというような議論があったということも聞いております。そうしないと、ここに規定してあるだけでは、そして条約の抄訳をいただいておりますけれども、これだけでは具体的にどの行為が今回さらに処罰されることになるのかということが国民にとって明確でないと思うのです。それで、包括的な規定にしたという理由につきましては、これを述べると長く時間がかかるという話でお述べになりませんでしたが、私もいろいろ聞いておりますからその点は伺いませんけれども、少なくとも今申し上げましたように国民に対して明確にしなければならぬと思うのですね。これが罪刑法定主義の要請だと思うのです。 それで、先ほど伺っておりますと、内部通達ではっきりさせるとか、あるいは法律雑誌にも掲載するようにするとかいうこともおっしゃったのですが、もっとさらにこれを明確にするということを考えていただく必要があるのではないか。法務省の方としてはどれとどれが該当するのかということは今きちっと持っておられるのじゃないですか。持っておられるのなら示していただきたいと思うのです。これは法制審議会の刑事法部会でも、国会審議の場で基本的なものはちゃんと明確になるようにすると、国会審議の中でというふうに合意が得られておると理解をしているのです。だから、そういう意味で明らかにしていただきたいと思います。
○米澤説明員 委員御指摘のように、法制審議会の場で、基本的にどのような刑法各則上の罪が今回の条約を介して四条ノ二の関係で国外犯処罰になるかということを国会審議の場で明らかにすると私自身もお答えしてきたところであります。その明らかにする仕方といたしまして、さっきも申し上げましたが、外務委員会におきましては、条約承認案件を審議なさいます場合に、外務省の事務当局から条約承認案件の審議資料といたしまして、既に当該承認を求められております条約の条約上の義務の内容及びその義務の内容を実施する国内法実施措置の内容を明らかにした資料を提供しておられるわけでありまして、その資料の中に、一応今回の条約を締結した結果として、刑法四条ノ二を通して別表のような構成要件の罪が今後国外犯処罰になりますという一覧表をその審議資料に出しておるところであります。法務委員会にお出ししておりませんから、その意味では片手落ちだという御指摘があろうかと思いますが、一応そのコピーを持ってまいってはおりますので、もし与野党の理事の先生方の合意がございましたら提出させていただけるように準備はいたしております。
○安藤委員 委員長、今の答弁のとおりですので、出していただいて、できれば議事録にくっつけるとかなんとかということを考えていただけますか。
○大塚委員長 安藤委員の御要望のように配付をさせていただきたいと思います。
○安藤委員 それは後で配っていただけばいいです。 ところで、今回はコンピューターに関する犯罪類型として電磁的記録の不正作出ですか、それと業務妨害、不正利得、こういう三つの類型を新たに制定をされた法案を出しておられるわけですが、先ほどお聞きしておりますと、これに漏れたといいますか、あえて入れなかった情報の探知あるいは不正入手、これは今回も入っていない。しかし、先ほどお話を伺っておりますと、これは臨時に突如としてお尋ねするわけですけれども、コンピューターに係るそういう情報の不正入手あるいは探知を処罰する規定、刑法の一部になるのか特別法かは別にしまして、そういうのを近いうちには制定するということを考えておられるのかどうか、お尋ねしたいのです。
○米澤説明員 近いうちにそのような内容の罰則を盛り込んだ法律あるいは刑法の一部改正を実施する予定はございませんけれども、先ほど来答弁申し上げておりますとおり、秘密事項についてゆえなくこれを探知する等につきましては、プライバシーの観点から見てもあるいはその他の観点から見ても、当罰性のある反社会的行為があり得ることをおよそ予測できるところでありますので、慎重に検討を続けていくという答弁をしたわけでございます。
○安藤委員 その関係についてさらに質問はいたしませんけれども、これはまさに国民の知る権利、情報の公開の問題等々とも絡んで非常に重要なことでございますので、軽々なお考えはおとりにならないようにということを申し上げておきます。 そこで、第七条ノ二の関係で、もう同僚委員の方からもいろいろ質問があって答弁がありましたから、できるだけ重複しないようにお尋ねしたいと思うのですが、この七条ノ二の「電子計算機」、これは簡単に言えばコンピューターということだと思うのですが、いわゆるワープロ、ワードプロセッサーは入らないが、入るのもあるというお話もありました。ところで、自動タイプライターとか、そういうのがあるらしいです。それから今新聞社なんかでよく使っています電子植字機、こういうようなものはここに言う電子計算機に入るのですか、入らないのですか。
○米澤説明員 私も今委員御指摘の機器類につきまして完全に精通しているわけではございませんけれども、もし当該機器類が一定の方向にのみ作業する、つまり、さきの委員の方にお答えした言葉で申し上げれば、プログラム可能なような機器類であるかどうか、つまり、ほかの方向への作業もなさしめ得るような機械がどうかという観点から入る入らないを決定することになろうかと思いますので、当該機器類をよく分析してみないと私正確な答えを言うわけにはいきませんけれども、自動的にはタイプを打つわけでございますが、タイプライターと同じ機能しか発揮しないものであれば、私は入らないと思います。
○安藤委員 今お尋ねしたのは、アメリカ合衆国の連邦刑法の中にそういうのが入らないというのがあるものですから、どういうふうに考えておられるかと思ってお尋ねしたわけです。 そこで、第百五十七条の中の「公正証書ノ原本タル可キ電磁的記録」、これはいろいろお話がありましたが、そのほかに例えば外国人登録法の外国人登録原簿というようなものも入るのですか。
○米澤説明員 外国人登録原簿が日本国民の住民基本台帳と法律上同じ意味を持つものであれば、公正証書原本だと私は考えます。
○安藤委員 ちょっと意地の悪い質問をしたみたいな感じですが、原本には指紋があるのです。指紋は電磁的記録にどうやって載せるのかなと思って、だからこれは入らないのでしょうね。
○米澤説明員 お答えいたします。 今の指紋が例えばある書類といいますか、記録媒体に押捺されている場合には、それ自体が電磁的記録になるかどうかという問題が一つあろうかと思います。ただ、御承知と思いますけれども、指紋も声紋もすべて、例えば顔の形もコンピューターに組み込んでそれを計算させまして一定の電磁的記録化することは技術的に可能でございますので、もしそういうことが実現いたしました暁には入り得るというふうに思います。
○安藤委員 だから、外国人登録法の関係では指紋押捺をやめれば素直にいくのかなとも思ったわけです。 ところで、電磁的記録というのが百六十一条からずっとあるのですが、百六十一条ノ二の「電磁的記録」と二百三十四条ノ二の「電磁的記録」と二百四十六ノ二の「電磁的記録」、普通記録といいますとデータということを思うのですが、この中にはプログラムも入るのかどうか。そして、入るとすればインストラクションといいますか、プログラムの中の部分的な指令の部分、そういうようなものも入るのかどうか、お尋ねします。
○米澤説明員 七条ノ二で定義しております電磁的記録、つまり一般的意味における電磁的記録の中にはプログラムが入りますけれども、後の文書偽変造罪に見合います百六十一条ノ二でございましたか、それの電磁的記録には制約がございまして、「権利、義務又ハ事実証明ニ関スル」という一定の枠はめがございますから、プログラムがここに入ってくることはまずなかろうと考えておりますし、逆に業務妨害の方へいきますと、一定のインストラクションを載せておりますプログラムというものはまさにそこの電磁的記録に入ってくるという可能性といいますか、道があるといいますか、余地がある、そういうふうに考えております。
○安藤委員 二百四十六条は。
○米澤説明員 補充して申し上げますが、財産犯の方は財産権の得喪、変更に係る電磁的記録でございますので、プログラム自体は入らないと考えます。
○安藤委員 先ほど質問の中で、脱税目的で自分の会計帳簿の何とかという話がありました。これはいいのですが、お客さんに対する売り掛け台帳ですか、商人の人が持っておりますね、それを自分で、お客さんからたくさん代金をもらおうという魂胆かどうか知りませんが、とにかく改ざんしてたくさんあるかのごとく電磁的記録をつくった、そしてこれをお客さんに示した、それでたくさんもらったということになりますと、これはどうなりますか。
○米澤説明員 まず、当該商人がみずからの商業を遂行する上でインチキな、内容虚偽の売掛金元帳といいますか、伝票というものをつくったという想定でございますが、それは不正作出罪には当たりません。ただし、その伝票なり元帳をどういう形にいたしましても相手方に見せまして、そして錯覚を起こさせて現金なりなんなりをもらえば、現行法の詐欺罪になろうかと思います。
○安藤委員 ところで、この百六十一条ノ二、二百三十四条ノ二、二百四十六条ノ二、きょう午前中からいろいろお伺いしておったのですが、結局これの保護法益というのはどういうことになりますか。
○米澤説明員 まず、百六十一条ノ二でございますが、これはまさに文書偽変造罪との見合いでつくっておりますので、その保護法益は、当該電磁的記録の社会的信用といいますか、証明機能というものが保護法益になると自分たちは考えております。 それから、二百三十四条ノ二はまさに業務妨害罪の特別類型みたいな形でございますので、保護法益の観点からいいますと、現行の業務妨害罪と同じと御理解いただいていいと思います。 それから、二百四十六条ノ二はまさに詐欺類型の一つの特別類型というふうに思いますので、同様の趣旨で御理解いただければと思います。
○安藤委員 同じく先ほど来申し上げております百六十一条ノ二、二百三十四条ノ二、二百四十六条ノ二、それぞれ「不正ニ」「不正ノ」、それから最後がやはり「不正ノ」か、それぞれ「不正」というふうに使ってあるのですが、これはそれぞれの条文によって意味が違いますか。
○米澤説明員 朝以来御説明いたしておりますように、同じように「不正」という言葉を使っておりますが、百六十一条ノ二不正作出罪は、まさに作成過程における違法性、つまり権限を有さないかあるいは権限を乱用しておるかということを表現するための用語でございますし、二百三十四条ノ二の「不正ノ指令」といいますのは、当該コンピューター終みのシステムにおきまして予定されていない指令、要するにその意味では、コンピューターを使って業務を遂行している方からは到底予期しない、そういった趣旨のインストラクションが与えられるというような場合を指しているわけでございます。それから二百四十六条ノ二の「不正」といいますのは、まさに客観的真実と違うという指令を与えるわけでございます。例えば、送金依頼をした事実がないのに振替送金をするように電子計算機に指令を与えるということでございます。
○安藤委員 それでは、各条でお尋ねしていきたいと思うのですが、百六十一条ノ二の関係でいきますと、電磁的記録を不正に作出した者、つくった者、そしてつくった記録から文書を取り出した、だから不正につくられたものが記載された文書ということになりますが、そこまでの行為をこれはつかまえようとしているわけではないのですね。そうすると、不正に電磁的記録をつくった者というのですが、その電磁的記録は、第七条ノ二によって「其他人ノ知覚ヲ以テ認識スルコト能ハザル」ものなんですが、これはどうやってつかまえるのですか。
○米澤説明員 現行の捜査手法で果たしてつかまえられるかどうかというのは非常に大きな問題だと思いますけれども、一応そうしたコンピューター技術関係の人たちによる分析その他いろいろな方法をもちまして当該電磁的記録の内容等を検出し、あるいはそれに関しまして関係者の供述を求める等、種々の方法があろうと思います。
○安藤委員 そこで「不正ニ作リタル」という行為が出てくるのですが、この行為者はいわゆるオペレーター、それから外部の全く関係のない人、あるいはプログラムをつくる人も入るのですか。
○米澤説明員 逆説的な言い方をさせていただいて恐縮ですが、もちろん身分犯でございませんので、当該システムにかかわりを持つ音あるいはそれ以外の者、第三者、それから一般市民の方々すべては、この当該構成要件該当行為があればそれは行為者になり得ると思うわけであります。
○安藤委員 いろいろなことが考えられるものでお尋ねするのですが、コンピューターを操作する権限のある人が間違ったものを入れるのだ、しかし、それはもともと前のものが間違っておったので、正す意味で今まであるのと違うものを入れるのだという場合もこれは該当するのですか。
○米澤説明員 今の御質問は非常に複雑なケースをおっしゃっていただきましたので、私の答えが正確かどうかちょっと自信ございませんけれども、例えば権限のない者がより内容の真実に近い情報を記録する電磁的記録をつくっていくという方向で、権限なく他人の電磁的記録をつくった場合にはやはり作出罪に当たると考えております。
○安藤委員 今答弁されたのを先ほど聞けばよかったのですな。それも聞こうと思っていたのです。なるほど、それもやはり当たるのですね。 例えば今度は、人の委任を受けてコンピューターで会計処理をやっておるという人がおりますね。だからそのコンピューターは自分のものあるいは自分が属する組織のものというような場合に、そのコンピューターに打ち込むべき原簿、元帳、これはどう考えても間違っておる、だから自分の判断でそれと違うものを打ち込んだ、こっちの方が正しいのだというので入力した場合はどうなりますか。
○米澤説明員 先ほどの御答弁に際しまして若干舌足らずのところがございますが、構成要件をごらんいただきますとおわかりのとおり、「人ノ事務処理ヲ誤ラシムル」という要件が一つかかりますので、その意味では先ほどの例が外れるケースも出てくると思います。それも事実関係いかんによります。 今お示しの例につきましては、まさに委任を受けて計算をしてそれを打ち込む材料をつくる、あるいはそれを打ち込むという仕事に携わっておりますので、その委任の範囲内であるだろう。ですから、権限の範囲内ではなかろうか。普通の場合は権限の範囲内でやった行為になるのでありまして、本罪には当たらないことが多かろうと思います。
○安藤委員 ちょっと前後しますが、念のためにお尋ねしたいと思うのですが、百六十一条ノ二、二百三十四条ノ二、それから二百四十六条ノ二、それぞれ「人ノ」とあるのですね。この「人ノ」というのは、そのコンピューターを扱う権限を持っている人、自然人ばかりではなくして、会社なら会社、法人、組織というものも含むというふうに理解していいのですね。
○米澤説明員 「人ノ」という用語は、委員御承知のように他人性を示す構成要件でございますが、それが法人である場合もあり得ると考えております。
○安藤委員 二百三十四条ノ二の関係でお尋ねしますけれども、一冒頭に「人ノ業務ニ使用スル」というふうにあるのですが、百六十一条ノ二あるいは二百四十六条ノ二の関係では「人ノ事務処理」というふうにあるのですね。これは言葉の問題だけかもしれませんが、業務に使用というのじゃなくて業務処理に使用というのが本来の意味なのかなと思うのですが、特に「処理」というのを二百三十四条ノ二で抜かしたというのはどういう理由があるのですか。
○米澤説明員 特に業務妨害罪の方は、業務遂行の全体に対する妨害といいますか、包括的な業務ということを観念いたしておりますので、個々的な業務処理という書き方をしていないわけであります。現行法の業務妨害罪と同じ立て方をしております。
○安藤委員 同じく二百三十四条ノ二ですが、「虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与ヘ」というのがあるのですが、この「虚偽ノ情報」というのも、データばかりではなくてプログラムあるいはそのうちの一部の、それを構成する個々の指令というインストラクションも入るのですか。
○米澤説明員 「虚偽ノ情報」と「不正ノ指令」という二つの違った言葉を使っておりますので、前者はまさにデータそのもの、後者はインストラクションを含む、あるいはそれを含むプログラムというものが当たると考えております。
○安藤委員 「情報若クハ不正ノ指令ヲ与ヘ」というこの行為ですね。この行為はいわゆるオペレーターなんかも入るのだろうと思うのですが、これにもやはりプログラマーが入るのか、そしてさらにはソフトエンジニアと言われているプログラムをつくる人も入るのか、どうですか。
○米澤説明員 プログラムが作成される前後の関係で時系列に従って作業が流れていくのをおとらえになって御質問と思いますが、まさにオペレーターそのものが当該プログラムが不正のものであるという認識のもとにそれをインプットいたしました場合には、それが業務妨害その他の要件に当たりました場合でございますが、当然そこで捕捉される。その前段階のプログラマー、これは直接にキーはたたきませんけれども、そういったキーをたたく人を通じてその不正の指令がある人の電子計算機の中へたたき込まれる、そしてそれが業務妨害の結果を惹起するであろうという認識をしていれば、そのプログラマーも機械から離れてはおりますが、そのオペレーターを介しての間接正犯なり共同正犯なりになっていく可能性というのはなおあります。その意味において、ソフトエンジニアも同じ立場にあろうかと思います。要件次第だということでございます。
○安藤委員 そこで、「使用目的」という言葉がこの条文の中に二つ出てくるのですが、両方とも趣旨は一緒だと思うのですが、使用目的というのはいろいろこれまでも質疑がありましたけれども、具体的に言いますと、例えばソフトエンジニアに対してプログラムをつくってくれというユーザーの方からの注文があって、そういういわゆる特注ということでつくる場合が多いというふうに聞いているのですが、その場合にユーザーの方からこういうプログラムを組んでくれと具体的な注文があるわけですね。そういう具体的な注文、これは私が聞いたところによると、口頭でなされる場合もあるし文書でなされる場合もあるという話ですね。それを文書でやる場合が機能仕様書、口頭でやる場合は機能仕様、こういうふうに言っておるそうですけれども、いろいろ細かい注文があるようなのですね。だから、その「使用目的ニ副フ可キ動作ヲ為サシメズ」という、だからユーザーの方から注文があったその機能仕様書どおりに動かなくてちょっとおかしいなという程度でもこれになるのかどうか、これはなかなか微妙なところなのですが、そういう点はどう思われますか。
○米澤説明員 さきにもお答えいたしておりますけれども、精密機械にかかわるものあるいは高度な先端技術にかかわるものにつきましては、ある程度の確率をもちまして不良品が出るということはその業界では常識でございます。そういった関係のもとに契約が成立したり、受け取り側、使用者側ですね、その者が了解して納品を受けておりますから、そういった状況のもとで、万全を尽くしてつくってみたけれども、たまたまその仕様書に完全には合致しない、その結果として依頼者が言ってきた使用目的そのものずばりの結果は生じなかったといいますか、動作しなかったという場合には、本罪は当たらないと思っております。それは過失犯でもありますし、商道徳を守って十分な注意をしてやっていることが法違反になろうはずがないからであります。
○安藤委員 相当細かい注文があって、納期の関係とか、あるいはそういうことを言うとその関係の方に失礼かもわかりませんが、能力もあるのかもしれませんが、それは納期の関係との絡みの能力ということもあろうかと思うのですが、そういう仕様書があるのだけれども、そこまで動くかどうかちょっとわからぬがまあ一遍出しておけということで出したという場合、認識があってない、あるといえばある、ないといえばやはりない。そして実際やってみたら違っておった。やはり知っておったのではないのか、故意ではないのかというようなことは起こるのではないのかなという気がするのですが、先ほどおっしゃったように、やはりソフトエンジニアやプログラマーも当てはまるということになると、この点は相当きっちりとしておかないといかぬのではないのかなという気がするのです。 例えば使用目的というのは、金利計算をするのだ、そういう使用目的だ、あるいは在庫の管理をするのだ、そういう使用目的だ、一定の規格の製品をつくるんだ、そういうようなので、三角を三角のようにつくるというのはいいと思うのですが、それが一ミリぐらい狂ったのが出てくるようなものになってしまったというような場合も、そういうことを知っておったのじゃないかということになると、やはりこれに該当するのかなという気がするのですが、その辺はどう考えてみえますか。
○米澤説明員 委員の挙げられました例のように、非常に詳細な仕様書に基づきます例えばソフトのプログラムとかあるいはコンピューターの納品に関する契約は、私の知る限りではメーカーといいますか、ソフトエンジニアも含めてでございますが、製品をつくります側が一たん納品いたしましても試用期間というのを持ちまして、しかも技術者が泊まり込みで一カ月、二カ月相手方と一緒になってバグを取り除くという訂正作業をした上で最終的な納品に至るといいますか、引き渡しに至るというふうに聞いておりますけれども、仮にそうでないといたしましても、プログラムの作成者がプログラムの中にはどこかに不可避的な欠陥があるかもしれないと思いながらやむを得ず納品したような場合でありましても、そのようなバグの存在、欠陥の存在を利用して特定の記録をつくってやろうとかあるいは業務を妨害してやろうという積極的な意思の存在というのはそういう状況のもとでは認められませんので、本罪が適用される余地はないと確信しております。
○安藤委員 先ほどからお尋ねしております機能仕様書あるいは機能仕様というのは、プログラマーの人は相当細かいことまでお考えになっておられると思うのですが、注文する方はこういうものをつくってもらえばいいんだということで、そう厳密きわまるものでもないという場合が多いという話も聞いているものですから、そうするとそういう関係でそれをつくっておけばいいんだ。ところがやってみると、心の中で期待しておったものがもっと細かいものであって実は違っておった。それで先ほどおっしゃったようにそういう欠損、欠陥が出てきた場合に一定の保証期間というのがありまして、実際に使用してみたがどうも調子が悪いという場合は、修理をするとかいうことがあろうかと思うのです。ところがそういう場合は、それで何らかの損害が生じた場合は損害賠償とかそういうことにも発展することがあるかもしれません。しかし、それが仕様書の中身がそう厳密でなかったというようなことで言い争いになって、ああだこうだとなって民事の方の損害賠償の方もうまくいかぬ。これはそんなもの知っておってやったに違いないのだということで告発するなり告訴するなりして、この条文でいこうということもこれはあるのじゃないのかなという気がしてきましたので、この辺のところは大事なところなんですから大臣も聞いておってくださいよ、その認識がなければいいんだ、故意がなければいいんだという、これは当たり前の話です。しかし、今私が申し上げましたような心配も全くないかというと、そうでもないと思うのです。だから、その辺のところでこの条文を適用するについては相当慎重にしていただかなくちゃならぬのじゃないかな。乱用があってはならぬことは当たり前の話ですが、その辺のところで、この条文は今私が申し上げましたように取引上のトラブルだとかいろいろな問題を含んでいるのです。だから、慎重に取り扱っていただかなくちゃならぬと思うのですが、大臣いかがですか。
○遠藤国務大臣 お答え申し上げます。 この改正案は、先生御承知のとおりコンピューターが非常に発達したというような点で、現行法では対応がとても困難だということでお願い申し上げたわけです。この改正案は乱用するとか何かというようなことはございませんで、しかも今先生の御指摘のような点については我々として慎重に対応してまいりたいと思っております。なおまた、捜査、処理等も乱用について批判を受けることのないような対応をしていくことを申し上げておきたいと思います。
○安藤委員 そこで、具体的な事例について一、二お尋ねしたいのです。 いろいろなデータを集めてこれを提供する、いわゆるデータ提供業というのがあるのですが、そこで例えば株の見通し、何々銘柄の株が過去はどういう状況であって今後はこういう方向だとかというようなデータを提供する業者が扱っているコンピューターに対して、これでいうと「不正ノ指令」あるいは「虚偽ノ情報」を与えて間違ったデータを出させた、そしてそのデータ提供業者はそれをお客さんにそのまま渡した、渡さしたという格好になるのか、そういう場合はやはり虚偽のデータを与えたあるいは不正の指令を与えたということで、そして業務を妨害したということでこの二百三四条ノ二に該当しますか。
○米澤説明員 非常に微妙な例を挙げられました。回答することは非常に困難でございますので、例を少し変えさせていただきます。 例えば替え玉受験のような不正入試というのがございます。あれが偽計による業務妨害に当たるかどうかという、非常に難しい法律問題がございます。あの場合に業務妨害が成立するためには、大学側の実施する入試という仕事、業務が外形的にある程度支障を生じてくるという状況にならないといけないわけでございまして、平穏裏に替え玉受験を見逃して入試が実施されてしまいますと業務妨害は非常に難しかろうと考えているわけでございます。それと比較して、今の情報提供業のやっている、株式の情報とおっしゃいましたが、ほんの一部の虚偽情報をインプットして虚偽の情報を客にスムーズにというか、円滑にというか、提供していって、結果的には誤っておったわけでございますが、提供自体はなすことができたというような場合は、どうも業務妨害罪そのものの保護法益の考え方、つまり人の業務の遂行の意思決定あるいはその遂行の実現としての行動の自由といいますか、それを妨害したと言えない範囲内にとどまるものも出てくるわけでございます。ところが、大量に虚偽の情報をインプットして、そんなものを提供しても全く提供したことにはならないといいますか、だれも利用しようとしないということで提供業自体が業務をほとんど行うことができないというような結果を惹起いたした場合には、業務妨害罪になるだろうと思います。
○安藤委員 ちょっとようわからぬのです。だから、提供した情報がほんの少し間違っておっただけということと、いや大部分虚偽の情報を入れられてしまって大狂いだという場合とで、構成要件に該当するしないということになってくるのがようわからぬのですけれども、たとえ一部にしてもあそこからもらった情報が間違っておった、おかげで損してしまったとなれば、そのデータ提供業者は信用を失うわけでしょう。そういう関係では業務妨害になるのじゃないかなと思うのですが、そんなことはないですか。
○米澤説明員 なかなか限界を画しがたい事例であるものですから、個々具体的な事例を目の前にして証拠関係を分析した上でお答えすれば御納得のいく答えができるのかと思いますけれども、例えば二千人以上受ける一つの大学の入学試験に一人の替え玉受験生がいたからといって、そして結局は大学が判断を誤るわけでございますけれども、そういった場合に即偽計による業務妨害だというふうには私どもも考えておりません。できるだけ謙抑的に物を考えておりますので、そのデータの量とか質とか、いろいろなものがかかわりを持ってくるかと思います。ですから、成立する場合もございますし、消極に解する事例も出てくるかと思います。
○安藤委員 二百四十六条ノ二の関係でお尋ねします。 これは前にもここで質問があったかと思うのですが、「不実ノ電磁的記録ヲ作リ」というのと「虚偽ノ電磁的記録ヲ人ノ事務処理ノ用ニ供シテ」ということで、「虚偽ノ」「不実ノ」というふうに出てくるのですが、これは中身はどう違いますか。
○米澤説明員 委員よく御承知と思いますが、公正証書原本不実記載では「虚偽ノ申立ヲ為シ」「公正証書ノ原本ニ不実ノ」と、こういうふうに一つの条文で「不実」とか「虚偽」と使っておりますが、内容的には客観的真実と異なることだということに一応なるわけでございます。この場合のことを申しますと、そういう意味ではいずれもその内容が真実に反する記録だというふうに言えるわけでございますが、わざわざ二つの表現を使いました趣旨を申し上げますと、「不実ノ電磁的記録」とは、他人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報または不正の指令を与えることによって他人のシステムにおいて作出される真実に反する内容の記録、つまり他人のシステム内にある電磁的記録にうそのといいますか、そういうものができる。他方、「虚偽ノ」と書きかえましたのは、携帯型の電磁的記録を考えまして、犯人の手中にある電磁的記録にうそのことをまず自分でつくり出す。そういうことで、若干表現を変えておるだけでございまして、公正証書原本不実記載のところの用語のやり方と同じだと理解していただければ結構かと思います。
○安藤委員 そこで、この条文には「財産権ノ得喪、変更ニ係ル」というふうにあるのです。二カ所あります。この「財産権ノ得喪、変更ニ係ル電磁的記録」というのは、普通考えられるのは銀行の預金口座の残高元帳とか、そういうものですね。 例えば不動産登記簿の原本をそのまま記録にしてあるもの、それからクレジット会社の信用情報のファイル、こういうのは入らないのですか。
○米澤説明員 入らないと理解しております。
○安藤委員 不動産の登記原簿というのは「財産権ノ得喪、変更ニ係ル」ものじゃないかと思うのですが、違うのですか。
○米澤説明員 条文上「財産権ノ得喪、変更ニ係ル」と書いております趣旨は、今委員もおっしゃいましたように預金口座元帳の残高、そういうものでございますが、法律上権利の得喪、変更が行われなくても事実上そうした財産的利益が移転したような形をとり、そして結果としていつでもその移転された財産的価値を処分できるような状態を作出するような関係での記録というふうに理解しておりますので、確かに登記簿を一見いたしますと所有権が移ったような記載があるわけでございますが、まさに実態をそのまま反映しているわけでございませんで、対抗要件としてそれが認められているにすぎない。そういう場合には「係ル」という言葉には当たらない、関するとは言えるかもしれませんが、「係ル」とは言えないということであります。
○安藤委員 それから、この条文の関係で先ほど同僚委員の方からテレホンカードの話がありまして、テレホンカードの偽造ですか、これはこれに該当する、その関係で十年以下の懲役刑だけというのは重過ぎる、私もそう思うのですよね。罰金をどうして盛り込まなかったのかというふうに私も思います。 そこで、先ほど答弁をされた中で、起訴猶予ということもあるというお話だったのですが、これは挙げて捜査の段階になって、起訴の段階になっての話でして、今この場で、そういう軽微なものはこの条項によって刑罰に処するに値しないものであると考えておるのだ、立案当局としてはそうだというふうにおっしゃられるのか。おっしゃることができないのかできるのか、その辺はどうですか。
○米澤説明員 起訴猶予処分の対象になるものもあろうという予測を申し上げておりますが、構成要件に該当する行為はやはり犯罪を行ったことになりますので、国家としては当該犯罪者を処罰するという権限を放棄するわけではもちろんございません。事情によって、刑訴の規定に従って起訴猶予をするわけでございます。 そこで、この規定につきまして、テレホンカードのようなと委員おっしゃいますが、そういったものも入ってくるのは事実でございます。ところで、こういうものが入ってくるといいましても、本来これ自体を主眼に構成要件をつくったわけじゃございませんで、基本的には、先ほどおっしゃいました銀行側に備えつけられました預金口座元帳といいますか、残高のところ、あるいは悪い人間が考えましてすりかえる目的で部外で一応そういうものをつくりまして持ち込むこともある。ですから、備えつけのものをオートマティカリーに解約いたしまして、内容を変更いたしまして利用する場合と、外から持ち込んですりかえるやつを考えるということで、まず構成要件を立てるわけでございます。その場合に、プリペイドカードとかテレホンカードというのは枝葉末節だから外せ、構成要件から何とか外せぬかという話がまず出るわけでございますが、それ自体もやはり財産犯の典型的な犯罪でございますので、構成要件から括弧をして例外的にそれを外すぞということは書けない。 もう一つ、罰金を設けるべきかどうかというのは非常に難しい問題でございまして、罰金をつけさえすれば犯罪者にとって非常にプラスかといいますと、逆に、罰金刑も刑でございますので、言うなれば軽微な事件についても罰金にしておくというようなことがあってもこれまた非常に問題があろうか。したがいまして、詐欺の亜型といいますか、類型として法適用を決めます場合には、やはり詐欺罪の横並びが穏当なところだということで十年以下という体刑だけにしたわけであります。
○安藤委員 最後に、人質による強要行為等の処罰に関する法律の改正案のことでお尋ねします。 昭和五十三年の現行の第一条、これはダッカ事件との関連でできたと思うのですが、このときにも構成要件をどういうふうに、例えば凶器というのは何かということでいろいろ議論があったはずなんですが、ここで言う第三者というのはどういう人あるいは法人が、組織にも当たるんじゃないかと思うのですが、該当するのかということでお尋ねしたいのです。例えば若王子さんのお話が先ほどありました。私は違った面からお尋ねするのですが、若王子さんは三井物産のマニラ支店長ですね。三井物産に対して金品の要求があったわけです。そうしますと、三井物産というのは、あの事件の場合、この新しい第一条の「第三者」、現行の一条でももちろん第三者なんですが、この第三者になるわけですね。
○米澤説明員 委員の御意見のとおり、第三者には国とかあるいは自然人、法人、人の集団、すべて入ります。
○安藤委員 そこで、若王子さんは支店長だったのですが、支店長の場合もあるかもしれません、あるいは工場長というような場合もあるかもしれません。私が心配するのは、これは私がいろいろ手がけてきた事件の中でもあるのですけれども、労働組合が、例えば春闘の時期は賃上げ要求、あるいは解雇事件というようなときには解雇撤回要求、あるいは解雇されそうだというときはするなという要求、こういうことで、憲法に保障された労働三権のうちの団体交渉権、これで工場長あるいは支店長を相手に団体交渉をする。もちろん正当な権利行使としての団体交渉なんですが、割とこれはあるのですが、これが長時間にわたると監禁だというようなことで刑事事件をでっち上げられて、裁判、起訴されるというようなこともあるのです。そうすると、先ほどの若王子さんの場合、三井物産、会社が第三者ということになると、今度の改正案は二人以上共謀とか凶器を示してというのがないわけです。こうなると、非常に広いわけですよ。だからそういうような心配をせざるを得ないのですが、工場長に対してそういう要求をする、しかし正当な要求だ。しかし、でっち上げられて、第三者、会社に対して要求したではないか。賃上げを要求した、解雇を撤回しろ、これは該当する、これはでっち上げられた場合の話ですが、ということもあり得るのですか。
○米澤説明員 正当な労使の交渉である限りは、本罪の適用のないことはもう明らかなところでございます。 今度の構成要件は、確かに二人以上共同して、凶器を示してという制限がございませんけれども、現行刑法に規定のございます逮捕、監禁という行為は少なくともしなければならない、それは要件になってございます。確かに、強要の方は第三者というわけで、現行刑法の強要罪よりはやや範囲が広がっておるといいますか、委員御指摘のとおりのような範囲の広がりを見せております。そこで、私どもの考えといたしましては、通常の労使交渉や学内交渉が本罪に該当することはないと確信いたしておりますが、ただ、団体交渉という名のもとに逮捕、監禁に当たる行為が行われた場合には、それは労使交渉の範囲を超えたものとして現行刑法でも逮捕監禁罪の適用を見る余地のあるところでございますので、今度の構成要件がそう特段に、逮捕監禁罪と比較しての話でございますが、構成要件をあいまい化したとは考えておりません。
○安藤委員 あいまいだとまでは言っておらないのですが、現行の一条よりは大分広がっておることは間違いない。 それで、大臣、今米澤さんの方からも答弁をしていただいたのですが、そういう正当な権利の行使に対して、これができたから、会社に対して要求した、まさにこれに当てはまるということででっち上げるなどということはゆめゆめあってはならないことだと思うのですが、そういう点で、乱用を戒めるという点でしっかりと御答弁をいただきたいと思うのです。
○遠藤国務大臣 この保護条約については、先生御承知のように、殺人また人質の誘拐というような点の刑事手続を完成する、国際条約によって一層完璧を期していきたい。この条約は、御承知のとおり現在六十九カ国が条約締結をしている、かような点で、若王子事件といえども、やはりもっと連絡、情報が取り交わされるような方向にしていきたいというようなことでございまして、先生が御心配されているようなことには、捜査の面においてもいろいろの面において乱用の批判があるようなことは慎みたい、注意したい、このように御理解をちょうだいいたしておきたいと思います。
○安藤委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
○大塚委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————大塚委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 刑法等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○大塚委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○大塚委員長 内閣提出、参議院送付、刑事確定訴訟記録法案を議題といたします。 まず、趣旨の説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。 ————————————— 刑事確定訴訟記録法案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○遠藤国務大臣 刑事確定訴訟記録法案につきまして、その提案の趣旨を御説明いたします。 刑事被告事件が終結した後における訴訟の記録の保管等につきましては、検察官等においてこれを行っているところでありますが、刑事訴訟法第五十三条第四項が訴訟記録の保管については別に法律でこれを定める旨規定していることにもかんがみ、訴訟の記録の訴訟終結後における適正な管理を図るため、その保管並びに保管期間満了後における再審の手続のための保存及び刑事法制等に関する調査研究の重要な参考資料としての保存について必要な事項を定め、あわせてその閲覧に関する規定を整備する等の必要があると認められますので、この法律案を提出することとした次第であります。 この法律案の要点は、以下のとおりであります。 その一は、刑事被告事件に係る訴訟の記録は、訴訟終結後は、当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が保管することとし、その保管期間については、別表のとおり定めることとしたものであります。 その二は、検察官は、その保管する訴訟の記録(以下「保管記録」という。)について、再審の手続のため保存の必要があると認めるときは、職権で、または再審の請求をしようとする者等の請求により、その保管期間満了後も、これを再審保存記録として保存することとしたものであります。 その三は、保管記録について、その閲覧に関する手続を定めるとともに、刑事訴訟法第五十三条第二項の閲覧制限事由を具体化するなどし、あわせて、再審保存記録について、その閲覧に関する手続を定めることとしたものであります。 その四は、保管記録について再審保存記録として保存することを請求した者または保管記録もしくは再審保存記録の閲覧の請求をした者であって、検察官の保存または閲覧に関する処分に不服のあるものは、裁判所にその処分の取り消しまたは変更を請求することができることとし、その手続は、刑事訴訟法第四百三十条第一項に規定する検察官の処分の取り消し等の請求に係る手続の例によることとしたものであります。 その五は、法務大臣は、保管記録または再審保存記録について、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、その保管期間または保存期間の満了後、これを刑事参考記録として保存することとするとともに、学術研究等のため必要があると認める場合には、これを閲覧させることができることとしたものであります。 その他所要の規定の整備を行うこととしております。 以上がこの法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○大塚委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。 次回は、来る二十六日火曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時三十六分散会 ————◇—————