本会議 第4号
- 発言数
- 29 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1986/09/17
会議録
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。 ────◇───── 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
○議長(原健三郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。塚本三郎君。 〔塚本三郎君登壇〕
○塚本三郎君 私は、民社党・民主連合を代表して、さきに行われた中曽根総理の所信表明演説に対して、我が党の見解を述べつつ質問をいたします。 きらびやかな中曽根演説は、次から次へと国民の前に政治課題を投げかけ、素人受けする文学的表現で、いかにも仕事師内閣のイメージを見事に印象づけられました。いわく行財政改革、いわく税制改革、いわく教育改革、いわく長寿社会に対応した経済社会システムの転換等々、その言葉は華麗であり、その構想は雄渾で、中曽根総理の二十一世紀へ向けての自負は、大宰相として歴史に名を残し、聞く人の耳をそばだてることをねらっておられます。 中曽根総理が投げかけられたこれらの政治課題は、長い間のひずみが、今我が国の懸案となって解決を待っております。しかし、その政治課題とひずみこそ、歴代自民党内閣の中で生まれ、放置されて、長い間にひずみとなり、また、中曽根内閣の四年間の治政の中からでさえも、そのひずみは解決されることなく、かえって課題をふやしてきたことに総理はお気づきになりませんか。今やあなたは、あと一年という総決算の舞台で、実行に事欠かない三百八議席を与えられました。総理は、この壇上から天意と表現されたことを忘れないでいただきたい。総理が総選挙に公約された政策を単なる言葉に終わらせることなく、着実に実行するとのさきの演説が偽りでないことを行動をもって示していただきたい。 靖国神社の公式参拝についてお尋ねいたします。 昨年八月十五日、中曽根総理は、自民党多年の懸案でありました靖国神社に対して公式参拝を実行されました。しかるに本年は、内閣総理大臣の靖国神社への公式参拝が差し控えられました。官房長官は、これについて「公式参拝は制度化されたものではなく、その都度、実施すべきか否かを判断すべきものであるから、今回の措置が、公式参拝自体を否定ないし廃止しようとするものでないことは当然である。政府は引き続き良好な国際関係を維持しつつ、事態の改善のために最大限の努力を傾注するつもり」と談話を出し、A級戦犯合祀がネックであると指摘しておられます。ならば、この点については、昨年は国際的に問題になるとはお気づきになりませんでしたか。そしてまた、宗教法人靖国神社に合祀されているこの七名の方に対して、合祀を外すことが政府の権力で可能とお考えになっておられるか、しかとお尋ねいたします。 次に、教科書の検定制度について、既に何度も、家永裁判が左に対する文部省の検定という名の圧力であるとの印象を国民に与えてまいりました。教科書は学校教育の中心であり、その検定は厳正でなければなりません。しかるに、このたびの高等学校用教科書検定においては、外国からの非難が上がるや、内容に関する検定は事実上終了しているのにかかわらず、総理が二度にわたって修正を指示されたのであります。このような措置は、検定制度を事実上崩壊させ、教科書に対する国民の信頼を失わせる、極めて遺憾なものと考えられます。このような政治介入がまかり通るのも、学校教育のかなめである教科書検定が、省令や行政措置という官僚の行政裁量にゆだねられている現行制度に問題があるからでありましょう。 民社党はさきに、教科書法の制定によって教科書検定に関する法律を整備し、厳正な検定制度が実施されるべきだと主張してまいりました。教育の根幹である教科書こそ、右に偏せず、左に偏らず、時の政治権力に利用されないものであるべきだと主張いたしますが、いかがでありましょうか。 次に、前文部大臣の罷免の経過についてお尋ねいたします。 憲法第二十一条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と規定されております。私ども民社党は、現職大臣として近隣諸国に対する友好親善を欠く不穏当な発言をなさった藤尾氏を弁護するつもりはありません。罷免はいたし方のないものという前提に立って質問をいたします。 ここに、文芸春秋の抗議文と背景説明がございます。 抗 議 貴殿らは文藝春秋十月号所載「”放言大臣”大いに吠える」につき、発売前にそのガラ刷りを入手し、九月三日官房長官の使いとして、藤田公郎外務省アジア局長を当社に差し向け、内容の二ケ所にわたって、削除、訂正を申し越した。 これは憲法二十一条に保障された言論・出版の自由、検閲の禁止に違反する。よってここに抗議し、以後、かかることのないように反省を求める。 株式会社文藝春秋 代表取締役社長 上林吾郎 昭和六十一年九月九日 内閣総理大臣 中曾根康弘殿 内閣官房長官 後藤田正晴殿 あてになっております。 抗議に至る背景説明がございます。 九月三日、後藤田官房長官から編集長の堤堯宛、 「(ガラ刷りで)藤尾発言をよんだ。これはたいへんなことになる。藤田アジア局長に会ってやってほしい」 との連絡があった。 同日、午後四時過ぎ、藤田アジア局長が来社した。これに対し堤は、 「①ガラ刷りはどこから入手したか? ②あなたがたは教科書だけでなく雑誌も検閲するのか?」 と、問うた。 藤田アジア局長は返答に窮しながらも、内容の二点について削除、訂正を求めた。 これに対し堤は、 「発言者の藤尾氏が削除を申し込まれるのならまだしも、その藤尾氏に断りもなく発言の変更を求めてくるのは筋違いではないか」 として、一切の要求に応じなかった。 発売に先立つ一週間以上も前に、当該ガラ刷りを如何なる手段によってか入手し、その内容の変更を迫るのは事前検閲としかいいようがない。あまつさえ変更が拒否されるや、そのコピーを流布し、発言内容が広く世に問われる以前に発言者を封じ込めて、その地位の異動を策するがごときは許されることではない。言論機関として憂慮に堪えず、抗議にいたったものである。 としております。 官房長官は、この説明書にこたえて、検閲の意思はないし、その事実もない、しかし、修正を依頼した事実は認めると述べられたようであります。官房長官やアジア局長はその文章に関する政府の最高の権力者であり、責任者ではありませんか。いかにやわらかい言葉と態度であられようとも、応対する出版社としては検閲と受け取られかねないと思うが、いかがでありましょうか。 まして問題の書は、九月十日が発売で、いまだ私どもの目に触れていない九月八日に文部大臣は罷免されました。まさかと思いますが、中曽根総理の戦後政治の総決算とは、信教の自由への干渉であったり、教科書検定への政治権力の過度の介入や出版の自由への圧力であったならば、ゆゆしき事態であります。とりわけ、以上三点について、国内で議論がいかに大きくともこれを放置し、他国から指摘されれば直ちに極端な反応を示されることはよくない。こういう問題は、国内問題として他国に指摘される以前に処理すべきであり、また、そんな危惧を抱く人を大臣に据えられた総理御自身が御反省なさるべきではございませんか。 さて、私ども日本国民の所得は、ドルに換算して、今や米国を抜いてスイスと世界一を競っております。我々が世界一の給料ならば、その金によって生活もまた世界一の暮らしができて当然でありましょう。だが、どう考えても今の日本人の生活が、これが世界一だとは信じられません。それは、諸外国と比べて食糧が二倍ないし三倍であり、住まいに至っては約十倍だからであります。食糧と住宅がこんなに高いということは、政治が国民生活のために機能していないというべきではありませんか。今こそ、政治が国民生活のために真剣に取り組まなければならぬときが来たと総理は思われませんか。 日本の製品は品質がよくて値段が安いから売れる。ならば、諸外国とも品質がよくて値段が安いものならば、買えと言ってくるのは至極当然でありましょう。ただ、日本が輸入を求められている物の主たるものは、不幸にして農産物であります。勤労者の立場に立てば、当然安くて品質のよい農産物を輸入して、食糧をもっと安くせよとの要求の出ることは至極当然と言えましょう。 今、日本の政治は、貿易摩擦解消及び食糧の価格安定の勤労者の希望と農業の保護育成とをどのように調和せしめるかが最大の課題となり、避けて通ることのできぬ事態になったと思います。貿易摩擦の解消は、輸出を減らすか輸入をふやすかの重大な岐路に立っている今、米国議会は保護貿易の風潮が日ごとに高まってまいります。日本の産業界、特に輸出に依存する産業は、既に欧米各国で現地生産に踏み切りつつあります。その対外資産は約十二兆円、生産活動に換算して二百十八万人、日本の労働人口の三・七%と計算されております。すなわち、現地生産によって日本の雇用人口の三・七%が外国に移動したとすれば、やがて今の三・一%の失業者と合わせて約七%の失業者の時代が迫ったというのは取り越し苦労でございましょうか。 日本は欠陥商品を輸出して世界から非難されているのではない。政府が内需拡大を怠り、輸入に対する手続の合理化等々の対応をおくらせていることが諸外国のいら立ちとなり、結果として過度の円高を招いていることを憂慮いたします。今こそ政府は、過去のいきさつにとらわれず、なすことを大胆に実行するとともに、米国自身の経済の空洞化についても堂々と指摘する必要がありましょう。 また、円とドルの関係は、五カ国蔵相会議による協調によって切り上げられてもはや一年、もうこのあたりで一定の安定したゾーンを設けなければ、輸出業者は生産計画のめどが立ちません。政府の決意のほどを伺います。 また、中小企業は円高緊急対策として五・五%の金利になっているが、これとて市中金利と余り差がない。よって、この際三%以下に下げるべきだと思うが、いかがでありますか。 また、国際的に自由化のあらしの中で、農産物とてそのあらしの圏外に立つことは難しくなってまいりました。日本の政治の中で、農業問題も今までのごとく避けては通れなくなってまいりました。今こそ、日本の農業を保護の立場から育成する農業に、そして国際競争力に耐えられる農業に転換せしめるために真剣な討議が必要になったと思うが、いかがでありましょう。 内需拡大の最も大きな柱の一つは、所得税減税であります。既に、六十一年度予算成立の際の三月四日、与野党書記長・幹事長会談において約束がなされたにもかかわらず、いまだに補正予算の骨子にもそれがあらわれていません。七月六日の衆参同日選挙には、中曽根総理は所得税減税を約束されました。総理の選挙時の公約はぜひ実施していただかなければなりません。 今仮に私どもの試算によれば、二兆円を一番生活に苦労しておる、しかも、社会の中堅層として日本を支えておられる人たちに当てはめて試算してみますと、年収三百万から五百万までの層に一兆円の減税を実施すれば、納税額は現行十六万六千円が八万四千円と、約半分となります。また、年収五百万から八百万までの層に一兆円を減税すれば、三十九万六千円が二十万一千円と、これもまた半分に減税されます。よって、三百万から八百万という中堅サラリーマンに対して二兆円を集中的に減税すれば、国税負担額はおよそ半分になり、不公平感、重税感は大きく解消されることでありましょう。住宅ローンの支払い、教育費に追われる中堅層に対し、内需拡大、消費拡大のためにも実施される必要があると要求をいたします。 次に、行政改革の継続的断行を図るため、行革審と同様に権威のある機関を創設すべきであります。 今までの行革審は三年の任期を終え、臨調答申以後行政改革推進にある程度の役割を果たしてきましたが、行革審みずからが認めているごとく、いまだ道半ばであります。肥大化し硬直化した行政機構を簡素効率化し、財政を再建し、時代の変化に対応せしめ、真の国民に奉仕する本来の行政改革はこれからであります。 民社党は、この観点から、政府に対し行政改革の継続を求め、行革審にかわる権威ある機関の創設を総理に直接要求してまいりました。そこで、総理にお約束いただきたいことは、今回の審議会もさきの行革審と同じく総理の直属の機関とし、委員は国会の同意に基づき任命し、権限もまた縮小、弱体化させることは断じてないということであります。 電電、たばこ産業の民営化、国鉄の民営・分割は成果を得つつあります。しかし、中央省庁の統廃合、公務員の純減、国の地方出先機関の整理、補助金の整理合理化など、本来の行政改革は遅々として進まず、いまだ手さえつけられていないとさえ言いたい。新たな審議会は、本来の行革断行のため、これらの課題に取り組むべきであります。 とりわけ、地方自治体の行革は二、三の成果は出ているものの、その大部分は進んでいません。また、特殊法人は百十二が九十九にと十三減らしましたが、公益法人はその間に国と地方で約六千もふえて、二万を超してしまったことを総理は御存じでありましょうか。この二年間でさえ、総理が行革三昧と口ずさんでおられるその裏をかいて、表面に出ない公益法人が何と四百も新設され、それに国の補助金や民間の拠出金が求められて、高級官僚の天下り先がふやされていることをどう説明されるのか、総理の決意のほどを伺いたい。(拍手) 今国会の最大の課題が国鉄法案の成立にあることは、総理御指摘のとおりであります。私ども民社党は、ここ数年来、国鉄問題を国会活動の最も重要な改革の課題として取り上げてまいりました。とりわけ、無責任な経営体質と労使関係の乱れが、やがて国有鉄道そのものの命取りとなることを危惧してまいったところであります。そして、ついに国鉄にとっては最悪の事態を迎え、今となっては不本意ながら民営・分割やむなし、これ以外に国鉄が国民の交通機関として生き残るための道なし、かつ最善の方途と判断するに至りました。この際、第一に、職員の雇用の確保に万全を期することを強く要求いたします。 次に、非事業用地二千六百ヘクタールを売却し、五兆八千億円を計上しておりますが、適正な価格で売却すれば、十六兆七千億円の国民負担分は不必要になるどころか、国鉄の長期債務の大部分も返済できるとの推測さえあります。三塚前運輸大臣は、国鉄の土地について、公開入札を原則とすると約束されましたが、安売りして不明朗にならぬよう、さりとて、さなきだに高騰しつつある都内の異常な地価の暴騰をあふるがごとき一筆ごとの競争入札についても一考を要すべきでありましょう。例えば、国、地方自治体、経済団体等、だれが見ても異論を差し挟まぬ方法、すなわち土地保有組合のごときものをつくり、土地処分を計画的に行ったらいかがでありましょうか。 増税なき財政再建は、税金を払う側の旗印であります。間接税は、導入するときこそ大騒ぎするが、一たん導入されれば、所得税の場合と違って国民の側では抵抗感が薄い。間接税は課税対象が広いから、税率が小さくて済む。その後はごく小幅の税率の引き上げで政府は巨額の収入を確保できる。 かくて、間接税に対する政府の理由はそのときどきによって変わりました。すなわち、大平内閣のときは財政赤字を埋めるためと言い、その後、高齢化社会を控えて福祉財源を確保するための目的税と言い、今は所得税、法人税減税の財源確保と言い、クロヨンなど所得税の不公平を是正するためと言っておられますが、税金を取る側にとって魅力的な税制は、納める側から見れば極めて危険であります。大きな政府をつくり、行政改革に逆行いたします。総理は、選挙のとき、やらないと言明された以上、大型といわず、中型といわず、はたまた新型といわず、公約どおりあっさりと否定していただきたい。(拍手) 政府が十一日に国会に提出された老人保健法改正案が成立すれば、お年寄りの外来時一部負担は、現行の一カ月四百円が千円に、二・五倍も引き上げられ、また、入院時一部負担は、お年寄りが六カ月入院した場合、今の一万八千円が九万円と、一挙に五倍に引き上げられることになります。このような制度の改悪は、お年寄りが思うように医者にかかることができずに病状を悪化させる結果を招くなど、早期発見、早期治療という医療の基本原則に逆行する措置であり、福祉は大幅に後退すると言わなければなりません。当面の財源対策を重視する余り、医者にかかっている高齢者にさえ負担を強化しようとするこのようなやり方は容認することができませんので、この法案の撤回を求めます。 さきの通常国会で議長調停によってできた衆議院の定数是正は、本年十一月には国勢調査の確定値が出たら直ちに抜本改正に取り組むという前提があったからだと信じます。よって、抜本改正に当たっては、まず、その定数五百十二名をより大きく削減することが第一であります。第二は、三名ないし五名という中選挙区制に戻すことは各党間の合意が成立しておりましたから、二名区及び六名区は解消すること、第三は、格差は二倍程度に抑えること、第四は、国勢調査ごとに自動的に是正されるよう法律に盛り込むこと等々、原則をまず各党間で合意すべきであり、この点はさきの是正の経緯からして本国会中に着手すべきだと信じますが、いかがでありましょう。抜本改正は、以上の原則を踏まえ、その上で具体的、個別的作業は選挙制度審議会にゆだねることが公正な是正を行う上で必要であると考えるが、いかがでありましょうか。 また、衆議院以上に格差の著しい参議院地方区の定数是正もまた早急に取り組むべきだと考えます。加えて、比例区については既に見直し論が出ておりますが、この際、地方区、比例区を一本化してブロック制の実施を検討されることを提案いたしております。 年金客船について。日本産業の中で今最も不況に苦しんでいるものに、鉄鋼と造船と海運があります。日本は四方を海に囲まれた海洋国家であります。これからは日本人も海に乗り出す時代がやってきます。よって、大型客船の建造に政府が先駆的役割を果たすことによって、時代の先駆けとなるだけでなく、鉄鋼、造船の能力を活用すべきだと思うが、いかがでありましょう。 最近、我が国も休日をふやせという声が高まり、国民も幸い余暇を楽しむ余裕を持ちつつあります。ところが、休日ともなれば、道路も乗り物も満員であります。海に出れば、広々として、人生に夢とロマンを与えることができましょう。幸い、世界じゅうが豪華客船の時代がやってきつつあります。しかるに、日本には旅客船が一隻もありません。海洋国家であり、造船王国日本にとってはいかにも残念であります。よって、さきに私どもが提案し、政府も検討を約された年金客船について、再度実施方を強く求めます。 今日、私どもの拠出した年金の額は約五十兆を超え、その一年間の利子は三兆円を超えております。その利息の中から三・三%、すなわち一千億円を旅客船の建造費に充てよという主張であります。定年を迎えた人が、夫婦そろってまず旅客船でゆっくりと外国旅行に出ることは、欧米においては最高の夢とされております。日本でも、自分たちで積み立てた年金の中のわずかな利息でそんな夢をかなえてみようではありませんか。既に提案しております年金客船懇談会を実施に向けていただきたい。(拍手) 最後に、防衛について。人事院勧告二・五%を実施すれば、GNP対比一%を守るという政府の約束が破られるという議論が焦点になりつつあります。私ども民社党は、防衛費がGNP対比によって決められることは論拠が薄い、政府が一%を守ると約束されることは結構であるが、それよりももっと論ぜられなければならないのは、現在決定されておる約三兆四千億円という国費が効果的に我が国の防衛に役立っているか否かを論ずることこそ国会の使命であると信じます。 例えば海上自衛隊について、政府は八月に防衛白書を公表し、その中で、ソ連の対日軍事力の増大を強調し、防衛努力の必要性を国民に訴え、中曽根総理も、海空自衛隊の強化による洋上撃破を勇ましくぶち上げておられます。政府の防衛白書によれば、極東ソ連艦隊の勢力は八百四十隻、百八十五万トン、これに対し我が海上自衛隊の勢力は百六十五隻、二十五万トンで、隻数にして五対一、トン数にして七対一と、圧倒的に優勢な軍事力をソ連極東艦隊は保有しております。このような強大な海軍力が一たび侵攻勢力に転じたとき、我が海上自衛隊の防衛力では洋上撃破することが本当に可能かどうか。ソ連沿海州から一千キロ前後に位する日本列島まで艦艇で一日半、かくも強大なソ連の海軍力が眼前におる事実を説明せずに、米国の求めにこたえてシーレーン防衛を強調し、国民の防衛の関心をあえて南方洋上に固定させておられるのは、いかなる魂胆でありましょうか。 航空自衛隊について。総理は総合安全保障政策の推進と言われるが、各省庁が役人特有の縄張り根性にとらわれ、協力ができておりません。去る六月、航空自衛隊のファントム戦闘機二機が、悪天候のため宮崎県新田原基地に着陸できないため、福岡県築城の自衛隊基地に向かう途中、燃料切れのため墜落、民家を壊す事故がありました。宮崎県には民間空港があります。隣の鹿児島にも熊本にも民間空港があり、遠く福岡まで飛行しなくとも、それら近くの県の民間空港に緊急着陸すれば、一機七十億円もする貴重な二機を喪失せずに済んだと言われております。運輸省と防衛庁の間でどうして緊急着陸についての取り決めがなされていないのでございましょうか。 また、忘れることのできない昨年八月の日航機事故の際、わざわざ羽田まで引ぎ返そうとする苦難のダッチロールを繰り返さずとも、下田沖のすぐ目の前には浜松基地があったではありませんか。緊急の場合には、民間空港と自衛隊基地との効率運用こそ総理の言う総合的安全保障ではありませんか。 陸上自衛隊について。北海道には陸上の主力部隊がいます。しかし、隊の要員が六百八十九名欠員であります。そのため、戦車を初め多くの機材が十分に演習の機能を果たしておりません。戦車三・八台分、十五億円をそちらに回せばすべてが計画どおりに動くのに、五十八年以来放置されております。北方の脅威を論じ、これが強化のために、全国の陸上自衛隊から、六十二年には百四十両の戦車を人員つきで本土から北海道に移動させる計画であります。それでは北海道以外のところが手薄となるではありませんか。私は、昨年既にこの点について指摘をいたしましたが、いまだ改められておりません。自衛隊の中での予算さえ機動的に運用ができず、大蔵省のお役人の縄張りに身動きができない今日の自衛隊で、どうして総合安全保障と言えましょうか。 GNP対比一%の議論もさることながら、決められた予算の使い方にこそさらに重大な問題が残されていることを改めて指摘して、私の質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 塚本議員にお答えをいたします。 まず、靖国神社の問題でございますが、靖国神社は戦没者追悼の中心施設でありまして、この中心施設に対して、我々は今まで国民的な敬意、尊崇の念を持ってまいってきたわけでございます。私は、このような考えから、平和を祈念し、また戦没者を追悼する、そういう考えに立ちまして、昨年は憲法に違反しないような配慮をもって公式参拝をしたところであり、その考えについては官房長官談話をもって発表したところでございます。この官房長官談話は現在も生きておるものでございます。 そこで、いわゆる戦犯問題という問題が起きましたが、昨年の私の公式参拝に先立ちまして、関係各国等との間にいろいろ理解を進めよう、そういうことで外務大臣あるいは外務省等を通じましていろいろその努力もしておったのでございます。そして、ある程度の話し合いは進んでおりましたが、私が公式参拝をいたしますと、やはり相当な批判を生み、反発を生んだわけであります。このような事態を前にいたしまして一体どうするか、そういうような点をいろいろ考えました結果、今回のような措置をとりまして、その理由についてはきのうもここで申し上げたとおりでございます。 そこで、ここで申し上げたいのは、私は、一国の国政をつかさどりあるいは国民の代表として大事な政治をつかさどる政治家というものには、大きな責任が伴っていると考えております。これは、戦前戦後を問わず同じであると考えております。やはり政府をつかさどるような政治家は、大きな栄誉が与えられますが、一面においては、それに伴う大きな責任が与えられておりまして、国民の皆様やあるいは歴史によって、ある場合には弾劾され、ある場合には厳重な批判を受け、ばりざんぼうを浴びるということも十分覚悟しておらなければならぬと、私は自分でそういうふうに肝に銘じております。 そういうような考えに立ってみますと、やはり我々は現在でもジャーナリズムの大きな批判を年じゅう受けておりますが、国民の皆様方からもいろいろな論議のもとに御批判をいただきまして、政治を間違えないようにしていく必要があり、歴史的にそれは継続していくという必要もあると思っておるのであります。それが民主主義を強堅ならしめ、健全ならしめ、責任政治を有終ならしめるもとである、そう考えておるのであります。 そういう意味において、私は、政治家として私の信念でございますが、いつでも国民のそのような批判に耐え得るような政治をしなければならない、そして、いわゆる国民の死生観とか、国民感情というようなものに政治家は甘えてはならぬ、そういうように考えております。これは、戦前においても戦後においても同じでありまして、そのような政治家の行為に対する国民自体の批判力というものが、日本においては戦前において薄かったのではないか。現在においてもそういう点は戒心しなければならぬ点である。戦争指導を行った政治家であるとか、あのとき政府の責任者であった政治家というものは、そういう意味において国民的にこれは評価され、あるいは批判をさるべきものである。外国をまつまでもなく、日本人みずからがそれを行うことによって政治は前進していく、そう考えております。 しかし、一方において、あの戦争のときにおきまして、国の命令によって前線へ出まして、そして戦死された将兵は、国の命令によって出撃いたしました。あるいは植民地解放を信じ、あるいはアジアの独立を願って、あるいは東洋の平和を願って戦死した方々が大部分でありまして、それらの方々と戦争を指導した人たちの立場は違う、責任も違うと私は考えております。そういう意味におきましては、我々は、理想を信じて戦死された一般の将兵については心から追悼し、そして瞑目し、黙祷すると同時に、平和を祈念する。そういう考えに立って今後もいきたい、そう考えておるのであります。(拍手)このような考えに立ちまして、いわゆる靖国問題という問題についても私は正しく対応していこう、そのように考えております。 先般の藤尾文相の問題はまことに遺憾な問題でございますが、この問題もあるいはさらに靖国参拝の問題も、基本的にはやはり民主主義の基本に関する国民の確たる観念あるいは政治家の観念、信念というものが確立していなければならない、そういうことをここで重ねて強調申し上げ、さらに自粛自戒して、日本の政治が有終の美をおさめるように今後とも努力をし、周辺諸国と良好な関係をさらに確立するために努力してまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手) いわゆる教科書の検定問題につきましても、ただいま、きのうから申し上げているような考えに立ちまして私は対処しておるつもりでございます。 なお、いわゆる検閲問題等につきましては、官房長官から御答弁があると思います。 次に、中小企業向けの貸付金利の問題でございますが、円高により影響を受けている中小企業に対しましては、中小企業国際経済調整対策等特別貸付制度によりまして、年四・八五%または五%の低利融資を今実施しておるところでございます。円高の一層の進展と構造不況等によりまして、地域中小企業に集中的な影響が発生しておることにかんがみまして、地域中小企業に対しましては法的措置を含めた総合的な対策を検討中であり、さらに一段の対策を講じよう、そういう考え方で十九日の総合経済対策もつくろうとしておるわけでございます。 農産物の自由化問題につきましは、農業はほかの産業と違いまして、国土の保全とか、あるいは国民生活の基礎物資であるとか、さまざまな重要な要素がございます。しかし、また一面においては国際商品でもございます。そういう面を考えまして、日本の安全保障あるいは農村の健全化というものも考えつつ、需給動向も踏まえ、そして、国際的に調和のとれた農業政策も進めなければならぬと思っております。 大体各国とも農業については保護政策をやっておる情勢でございます。保護政策が必ずしもいいとは言えませんが、各国ともやっておるというこの現実も踏まえまして、我々はお互いがよく理解し得るという措置を発見し得るように努力しつつ、今後とも調和を図ってまいりたいと考えております。 生産性の向上につきましては、日本では、国土条件の制約もあり、生産性は立ちおくれております。健全な発展を図っていくためには、構造政策等を積極的に推進して、現在の制約のもとで可能な限り高い生産性の実現を図り、農業の体質強化を進める努力をしなければなりません。しかし、一面においては、この厳しい環境のもとに、農業者あるいは農業団体自身におきましても、農政の改革に向かって自主的に検討を進め、努力されることを期待しておるものであります。 いわゆる所得税の問題等につきましては、この間の税調の中間報告におきまして、あるいは中堅サラリーマンに対する必要経費の問題あるいは家庭の主婦に対する特別控除の問題等が中間報告になっておりますが、我々は、できるだけ簡素化するということ、重税感からの解放、公平化という点に特に注意をいたしまして、できるだけフラット化するということ、給料が上がっても税金がすぐ重くならない、そういうような措置を中堅サラリーマンに考えたい、税率の刻みも少なくしたい、そういうような考えに立って税の改革を念頭に置いておりますが、いずれにせよ、税制調査会の答申を待っておるという状態でございます。 行革審の問題につきましては、先般の行革審におきましても、去る六月の最終答申において、引き続き国民の協力のもとに推進するために、特に審議機関の設置を必要と指摘されております。そこで、政府は、早急に成案を得べく部内において今具体化の検討を行っておるところです。総理直属の、任命が国会同意に係るものにすべき等の御指摘につきましては、貴重な御意見として十分尊重しつつ検討さしていただきたいと思っております。 公益法人の問題でございますが、公益法人は、公益目的の実現のために民間人のイニシアチブによって設立され、広範な活動を行っております。民間活力の推進の有力な担い手として発展が期待されております。しかし、この設立許可に当たりましては、真に公益目的に合致するかどうか厳正に審査するとともに、その監督については十分行ってまいりたいと思っております。 公益法人への補助金等につきましても、個々に事業の緊要性、その重点化、効率化というものを今後考えてまいりたいと思っております。公益法人も含めた補助金の整理合理化を今後とも推進してまいります。 天下りの問題につきましても、この運営が健全に行われるように、法令の範囲内におきまして適正にこれらの人事が行われるように指導監督を強めてまいりたいと考えております。 国鉄職員の雇用対策につきましては、政府を挙げて昨年決めた基本方針の線に沿って実現すべく努力しておるところであります。六万一千人の目標に対して約五万三千人の採用の申し出がなされまして、比較的順調に進んでおりますが、いささかも不安のないように今後とも努力してまいるつもりでおります。 用地の問題につきましては、売却可能用地は五兆八千億円、監理委員会の試算でございます。政府としては、さらに売却可能な国鉄用地を生み出してできる限りこれを上乗せする、そういう方針で参りたいと思っておりますが、処分については厳正、公平に行われるべきことであります。具体的な方法につきましては、国鉄清算事業団において第三者機関の意見も聞いて検討していくということでございます。 ここで一つ起きている問題は、一般競争入札にした場合に、地価を暴騰させはしないかという問題がございます。これらの問題については、今、いろいろ関係各省におきまして、できるだけ地価を暴騰させないでうまくいける方法はないか等を含めまして研究しておるところでございます。 大型間接税につきましては、選挙中、私は、国民が反対し、党員も反対するような大型間接税と称するものはやる考えはないと申し上げてきたところで、これは一貫しておるところでございます。 老人保健法の改正問題につきましては、老人医療費を年寄りを含めてすべての国民が公平に負担するというシステムを確立して、老人保健制度を長期的に安定したものにするためにはやむを得ざる改正でありまして、撤回する考えはございません。 定数是正の問題につきましては、第百四国会において、違憲とされた定数配分規定が改正され、これは、各党の御協力について心から感謝申し上げる次第でございますが、さきの国会における定数是正は暫定措置でありまして、六十年国勢調査の確定人口の公表を待って速やかに抜本改正を行うと約束しておるところでございます。 衆議院の定数配分規定の抜本改正の内容をどういうふうにすべきかということは、これは選挙制度の根本にかかわる問題でありまして、各党におきまして十分御論議を願い、政府もその推移を見守りつつ検討してまいりたいと考えております。 参議院の選挙制度の改革について御提言をいただきました。ブロック制というような貴重な御提言もございますが、十分参考にさしていただきまして、今後検討さしていただきたいと思いますが、いずれこれらは各党間において十分論議さるべき問題であると考えております。 年金資金による豪華客船の建造でございますが、塚本委員長から累次にわたり御提案をいただきまして、運輸省を中心にして、厚生省も含めて検討してきたところでございます。アイデアとしてはすばらしいアイデアであり、特に造船不況の折から傾聴に値するお考えではあるのでありますが、問題は、この経営、運用をどうするか、管理をどうするかという問題があるのであります。この点についてまだ自信がないのであります。そういう意味におきまして、年金も、国民の皆様方の大事なお金を預かっておるのでございますから、いささかもむだのないようにしなければならぬので、慎重に検討を継続させていただきたいと思っております。 次に、防衛の問題でございますが、四面環海の我が国におきましては、やはり防衛につきましては、海とそれから空が非常に重要であるというふうに考えております。これらの配備につきましては、マンネリズムに陥らないように、海につきましても空につきましてもあるいは陸上につきましても、時代の変遷あるいは装備の変化、進歩、こういうものを十分取り入れて、効率的な有効な防衛力を整備するように、防衛庁を中心にいたしまして検討も今加えさせておるところでございます。御指摘のように、海上における問題については洋上撃破ということがやはり重要でありまして、その方面に今重点を入れつつあるところでございます。 あるいは陸上におきましても、北海道と本州、四国、九州における装備、配備等につきましても、昔のままで果たしていいかという批判もありまして、やはり北方重点の方向に装備も配置も次第に切りかえていく、そういうような考えに立ちましていろいろな改革を今進行させておるところでございます。しかし、陸上自衛隊も最後には重大な機能を発揮する大事なポジションでございますので、十分陸上自衛隊の機能も考慮しつつ、中期計画等において地理的特性等も考えて充実させてまいりたいと考えておるところでございます。 次に、緊急時における自衛隊機の民間空港の利用でございますが、先般来、事故が相次いで起きまして、まことに遺憾な次第で、申しわけないと思っておる次第であります。しかし、民間空港の利用という問題は、緊急時においては、自衛隊機、民間機の別なく最寄りの基地あるいは民間空港を使用できることになっておるのでございます。御指摘のように、事故防止の観点から、今後とも関係機関で十分連携をとらせるようにいたしたいと思っております。 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手) 〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 大部分の問題につきまして総理からお答えがございまして、一つ為替の問題が残っております。 確かに、塚本委員長の言われますように、変動相場というものの機能は甚だ不十分でございますし、我が国の場合、過去一年間を見ますと、やはりそういう感じを持っておるわけでございます。そこで、何かこれを改善する方法はないか。委員長は例えばターゲットゾーンということを言われましたが、そのような考え方は、御承知のように専門家の間にも学者の間にも絶えず繰り返されて議論をされておりますし、また、十カ国蔵相会議におきましても、御承知のように真剣な討議が行われたわけでございます。しかし、結果としては、例えばその水準をどこに設けるかといったようなことがございまして、現実的でないというようなことで、ついに結論を得るに至っておりません。そこで、やむを得ず乱高下の場合の介入であるとかあるいは東京ラウンドでございましたような政策協調であるとかいうことが、ただいま残されました唯一の変動相場安定の方法ということになっておりまして、それはしかし、必ずしも十分に目的を達していないというのが偽らざる現状であります。 したがいまして、やはり何かその方法がないかということは絶えず考えなければならない問題であって、現実に米国の議会人等が中心になりまして、国際間の討議も昨年もことしも行われたようなことでございます。いろいろなことを考えながら、絶えずそういう問題意識を持って模索をしていくということはどうしても私も必要なことである。具体的に今お答えをすることができませんけれども、委員長のおっしゃいましたようなことは、絶えず考えておくべきであると考えております。(拍手) 〔国務大臣後藤田正晴君登壇〕
○国務大臣(後藤田正晴君) 私に対する御質問は、先般の文芸春秋の記事に関連して、官房長官のとった処置は検閲ではないか、憲法二十一条を何と心得ておるのか、見解を聞きたい、こういう御趣旨であろうと思うわけでございます。 御指摘の文芸春秋のインタビューの記事につきましては、私は、これによって大きな国際的な問題に発展するのではないか、こういう心配がございましたので、文春の編集長に対し電話で、これは国際的な問題になるおそれもあるので、御相談を願って、何とかひとつ修正なりなんなりできるものならばお願いできないかという協力をお願いを申し上げた次第でございます。その際に、編集長は、そういう心配はないと思う、こういう御返答でございましたので、それはいかがなものでございましょうかな、私どもはさように思いませんよ、だから、それならば専門家のアジア局長を差し向けますから、よくひとつ事情も聞いていただけませんかということで、アジア局長を差し向けてお願いをしたわけでございますが、先様の御返答は、時間的にそれはもはや間に合わぬ、こういうことでございました。したがって、それならばやむを得ない、こういうことでございまして、私どもが文春に申し上げたのは、協力をお願いを申し上げたわけでございます。(拍手) 御承知のように、検閲ということが法律的にいかなる意味を持つのかということは、委員長さん既に御承知のとおりでございます。最高裁の判決も出ております。これは禁止ということを前提にして審査をする、こういうことでございまして、私どもは協力のお願いを申し上げたわけでございます。(拍手) ─────────────
○議長(原健三郎君) 阿部未喜男君。 〔阿部未喜男君登壇〕
○阿部未喜男君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、総理並びに関係閣僚に対して質問をいたします。 我が党は、昨日、土井委員長から総括的な質問を申し上げましたので、私は、若干具体的に政策の内容に触れながら質問を申し上げたいと思います。 総理、私は、昨日来、我が党の土井委員長を初め野党党首の皆さんの質問に対する総理の御答弁を拝聴しながら、言い知れぬ寂しさを感じたのでございます。あなたの答弁のほとんどが既に発表されたことであり、あるいは所信表明の繰り返しであり、誠意を尽くしてお答えになっておるとは思われないからでございます。私たちが望んでいますのは、決してあなたの流暢な答弁ではなく、野党の質問や意見に対し、たとえ百分の一であろうとも、耳を傾けるものがあれば素直にそれを受け入れて、誠実にお答えをいただくという態度が欲しいのでございます。ぜひ御留意くださるよう、冒頭お願いを申し上げておきます。 総理、あなたの率いる自由民主党は、先般の衆参同時選挙におきまして圧倒的多数の議席を獲得されました。その理由はいろいろありましょう。昨日は自画自賛されておったようでございますが、例えば莫大な選挙資金を投入されたことも勝利の原因の一つかもしれません。しかし、私は、今それを問おうとしておるのではありません。自民党の圧勝が我が国の政党政治に与える影響について心配をしておるのであります。 申すまでもなく、政党政治の理念は、主義主張の異なる政党がそれぞれの立場から意見を述べ、議論を闘わし、切磋琢磨しながらそのよきを取り、悪しきを捨てて国民のための政治を行うことにあります。一つの政党が圧倒的な力を持つことは、一党独裁に陥り、政党政治の機能を失うおそれがあることを憂うるものであります。(発言する者あり)総理の御感想を承りたいと思います。 総理が所信表明の中で、「あくまで謙虚に、誠意を尽くして、」国民の期待にこたえると述べられましたことは、政党政治にとっても救いでございます。総理、どうかこれを言葉だけで終わらせることなく、所信として実行されるよう期待をしてやみません。 さて、総理は、世界の平和と軍縮を力強く推進すると重ねて主張をされました。軍縮とは、読んで字のごとく、軍備を縮小することであります。みずからの国は軍備の拡大を図りながら、他国に向かって軍備の縮小を訴えてもどれほどの信頼を得られるというのでしょうか。 総理は恐らく、我が国は軍備の拡大ではなく、質の高い防衛力の整備であり、自衛のために必要な限度であるとおっしゃるでしょう。しかし総理、世界のいずれの国に、侵略のための軍備であるとか、戦争を期待しての軍備拡大であると主張する国がありましょうか。また、軍備の拡大か縮小かは、その量だけで決められるものではなく、その質についても同時に論じられなければなりません。したがって、軍備拡大か縮小かは、その国の軍備のための予算が年々増大の傾向にあるか否かによって判断さるべきものでありましょう。さらに、他国との軍備の均衡を図るという議論は、軍備拡大の競争を行うということにほかなりません。総理、あなたが真に世界の平和と軍縮を強力に進めるお考えならば、まず我が国が進んで軍備の縮小を実行すべきではないでしょうか。しかと御答弁をお願いいたします。(拍手) 次に、国鉄改革について伺います。 総理は、行政改革を国政上の最重要課題として推進を図ってきたと申されましたが、臨調答申の骨格をなす増税なき財政の再建、そのための長期にわたる緊縮予算の編成は、福祉や教育の予算を圧縮し、勤労国民や弱者に犠牲を強要してきたばかりでなく、今日、貿易摩擦の解消や円高不況の対策に財政の出動を余儀なくされ、財政再建は春の野の淡雪のごとく消え去ろうとしております。しかるに総理は、行政改革の最大の課題として国鉄改革の断行を強調していますが、国民の足であり、輸送体系の根幹であり、それゆえに公共事業として我が国経済の発展に大きな役割を果たしてきた国鉄の使命を忘れ、その国鉄をばらばらに分断し、地方交通線まで廃止するなど、国民の不便を顧みず、公共性を無視した採算第一主義の改革は、本末を転倒したものであると言わなければなりません。 我が党も、国鉄改革の必要性を否定するものではなく、その改革案は、既に発表のとおり、まずその原因を究明し、今日の国鉄の危機的状態を招いた責任が国鉄当局の無能と政治の介入によるものであることを明らかにしながら、国鉄の公共性を守り、国民の足を確保するため、全国ネットワークはこれを保持し、地方に大幅な権限を移譲して民営的手法を導入し、経営の多角化を図ることによって国鉄の再建は可能であることを主張しておるのであります。とにかく、最初に分割・民営化ありきという発想を改め、国民を主体とする我が党の改革案を中心に検討を進められるよう強く要求するものであります。(拍手)総理並びに運輸大臣の答弁を求めます。 さらに、先般の選挙に当たって、自民党の多くの候補者が地元において、地方交通線の廃止は絶対に行わせないと公約をされておりましたが、これは明らかに政府の方針と矛盾します。総裁であるあなたはこれをどのように処理されるか、お考えを承りたいのであります。(拍手) 総理は、また、国鉄の改革に当たっては、国鉄職員とその家族に不安を与えないよう、雇用対策に万全を期すると申していますが、既に国鉄の職場は雇用をめぐって労使間に激しい対立があり、自分だけの雇用の保障を求めて他を顧みない人間性の喪失さえうかがわれ、雇用の不安におびえ、そのためと思われる自殺者が数十名に上っておると聞き及んでおります。国鉄当局は、分割・民営を急ぐ余り、労使関係を無視し、不当労働行為と思われることまで平然と強行されて、職場にはぬぐいがたい不信感が充満し、国鉄再建の大きな支障ともなっております。もし国鉄当局が、法の定めるところに従って労働者を代表する労働組合との間で誠意を持って交渉に当たれば、このような事態には至らなかったと思うのでありますが、運輸大臣の所感を承りたいのであります。 次に、総理は、「安定的な東西関係の構築のためには、理性に基づく対話と交渉が不可欠であるとの信念に立ち、米ソ間で実りある対話と交渉が確実に実現されるよう、引き続き強力に働きかける」と申しておられます。しかし、同時に総理は、「米国の外交努力を支援するとともに、ソ連に対しても、この交渉に真剣かつ建設的態度で臨むよう呼びかける」とも述べておられます。総理の努力は多としますが、米ソ両国の対話と交渉を強力に働きかけるという我が国が、米国の外交努力を支援するという姿勢を明確にし、一方の側に立つ態度であることが、果たして両国の信頼を得て交渉を成功に導くことになるであろうか、疑問を持たざるを得ません。(拍手) 今こそ、我が党の主張する厳正中立の外交を展開し、安定的東西関係の構築に努めることが緊要ではないでしょうか。それはまた同時に、総理の念願する日ソの間に真の理解と友好の関係を構築する道でもあると思うのでありますが、総理の所見を承ります。(拍手) 続いて、税制について総理並びに大蔵大臣の所信を伺います。 総理は、十二日に行った演説の中で「税制については、ゆがみ、ひずみを除去し、公平、公正、簡素、選択、活力の基本理念に立脚した望ましい税制の確立」を訴え、同時に、「抜本的税制の改革は喫緊の国民的課題」であると申されました。総理、税制については、我が党を初め全野党が一致して、数年前より、不公平税制の是正、所得減税を中心とする抜本的税制の改革を強く主張してきたところであります。しかるに政府・自民党は、財政難を理由に我々野党の主張に耳を傾けなかったではありませんか。今日に至って「抜本的税制の改革は喫緊の国民的課題」であると申されるのは、政府みずからの不明を天下に明らかにしたことにほかなりません。総理並びに大蔵大臣は、国民の前にその不明をわびるべきであると思いますが、所感をお聞かせ願いたいのであります。(拍手) さて、税制については政府税調が四月二十五日中間報告を行いました。しかしそれは、負担の軽減と合理化の方策を示し、部分的かつあいまいな減税の方針が述べられたにとどまり、財源措置を含めた一体としての包括的指針とはなっていません。しかるに総理は、先般の選挙に当たっては、減税を断行し、大型間接税についてはこれをやらないと公約いたしました。選挙が終われば、その舌の根も乾かぬ今日、財源対策として大型間接税の導入を検討させているようでありますが、明らかに国民を欺瞞するものであり、断じて認めるわけにはまいりません。総理、もしあなたが公約を守るというお考えならば、我が党の主張を入れ、不公正税制の改革や軍事予算の削減を中心とする改革によって増税、減税のバランスをとるよう検討されることを強く望みます。総理及び大蔵大臣の所見を承りたいのであります。 次に、少額貯蓄非課税制度についてお尋ねいたします。 申すまでもなく、この制度は、現在郵便貯金、銀行預金についてそれぞれ一人三百万円までを無税または非課税とする措置であります。この制度は、地域、職業、年齢、所得を問わず、広く国民に利用され、かつ親しまれてまいりました。かつて日本の経済が急速な成長を遂げる中で、預貯金の目減りが大きな社会問題になったことは記憶に新しいところであります。にもかかわらず、国民は老後の不安、子弟の教育、病気などの対策として、乏しい中から貯蓄に励んでおります。政府もまた、財政運用の資金としてマル優制度を利用して貯蓄を奨励してきたではありませんか。 今、国民に老後の生活に不安がなく、子弟の学資にも事欠かず、病気になっても経済的に安心して過ごせる、そういう状態が来たというのでしょうか。事態はむしろ逆であって、高齢化社会が進む中で社会保障は後退し、残念ながら一層の自助努力を期待しなければならない状況であります。その自助努力の最たるものが庶民の預貯金でありましょう。そうだとすれば、いわゆるマル優制度を廃止して零細な預貯金の金利に課税するなどという発想は、この際きっぱりとおやめになるよう強く要請するものであります。(拍手) 政府は、殊さらに、マル優制度を悪用して脱税を図る一部の人たちのことをあげつらい、マル優制度廃止の理由としていますが、このような一部の現象をとらえて全体を律することは、角を矯めて牛を殺すのたぐいであり、悪用の是正は、グリーンカード制の導入など他の措置によって是正すべきでありましょう。思うに政府は、税の増収を図るためマル優制度の廃止を政府税調に求めようとしているのではありませんか。現に郵政大臣は、この制度を堅持すべきであると申されております。大蔵大臣並びに郵政大臣の所信を伺いたいのであります。(拍手) さて、総理は、「我が国の経済構造を国際社会と調和のとれたものに変革することが緊要な課題」であると申されました。私も昨年ECとの議員会議に出席し、その感を深くしたところであります。総理も述べられましたように、我が国の経常収支の黒字は年々増大し、貿易摩擦の要因となっています。これを克服するためには、内需の拡大を中心に多くの施策を必要とするでありましょう。 特に、生産の原点である労働者の労働時間については、諸外国と比較するとき隔世の感を抱くのであります。前川リポートでも指摘されておりますが、例えばヨーロッパ諸国においては、年間の総労働時間が千六百時間から千八百時間となっていますのに、我が国では年間の総労働時間が二千百時間を超えているのであります。ECとの議員会議の席でも日本の長時間労働が問題になりまして、世界の労働時間を統一して、生産現場におけるイコールフッティングを図るべきではないか、そういう意見さえ述べられました。総理の申される国際社会との調和という理念にも合致するように思われますが、政府に労働時間短縮の具体的プログラムがあればお示し願いたいのであります。 続いて、円高差益の還元について伺います。 円高と呼ばれて既に十カ月になりました。円高・ドル安という為替レートに対する認識は、やがてまた円が安く、ドルが高くなるという期待感があるからではないでしょうか。しかし、今日の世界経済の状況のもとで円安が期待できるのでしょうか。私は、今日の一ドル百五十円ないし百六十円というレートが定着する傾向にあるのではないかと思われてならないのであります。もしそうだとすれば、もはや円高とは言えないのでありまして、我が国の経済もそれに対応できる産業構造を模索する必要があるのではないでしょうか。以上の視点に立って、現に今日生じておる円高差益の還元に触れてみたいのであります。 電力、ガス料金については、本年六月から暫定的還元の措置が講ぜられましたが、これはあくまでも今年度に派生する差益の還元にすぎません。為替レートの見直し、原油価格の見通し、さらには原価変動積立金や別途積立金も含めて原価の洗い直しを行い、新しい料金体系にすべきではないでしょうか。総理の所見を承りたいのであります。 総理はまた、みずから輸入の促進や内需拡大のためにも円高差益を消費者に還元すべきであると主張をされました。対ドル円レートは三〇%程度円高となっているにもかかわらず、輸入品の小売価格は一〇%内外しか値下がりになっていません。特に、政府関与物資である小麦や牛肉、そして航空運賃を初めとするバス、タクシー、私鉄などの公共料金について還元を求める声は強く、消費者の納得できる還元がなければ政治不信を招く結果となりましょう。総合経済対策にも国民生活に密着した消費財の差益還元が求められていると聞きますが、政府関与物資や公共料金について具体的な還元の方策をお持ちであれば承りたいのであります。関係閣僚の答弁を求めます。 さて、さきに民営化されたNTTの株が今秋に売り出されるということで、国民の間に関心を集めております。株式の売却に当たっては、利権を防止し、特定の個人や法人への集中を規制し、一切の不明朗な動きを封じ、国会決議の趣旨を踏まえて処理されるよう、特に大蔵大臣に注意を喚起しておきたいと思います。(拍手) 次に、石炭政策についてお尋ねいたします。 我が国石炭産業は、今年度基準炭価の決定をめぐり、鉄鋼業界の輸入炭並みという炭価の一方的支払いにより、第八次石炭政策の答申を待たずして深刻な危機に直面しています。政府は、我が国唯一のエネルギー源である石炭の使命を全うさせるためにも、当面、貯炭及び緊急融資を実施してなだれ閉山を回避するとともに、政策需要の確保、基準炭価制度の維持、政府援助と特別会計制度を引き続き存続すべきであります。炭鉱社会が一山一自治体を形成しておる今日、閉山は自治体の崩壊に直接つながる深刻な問題であります。 我が国石炭産業は、欧州諸国の炭鉱に比べ高い生産性を維持しているにもかかわらず、政府の助成措置は低水準というのが現実で、エネルギー国際連帯の一環として、また産炭地域と雇用確保の立場から、政府は、最大限現有炭鉱の維持、存続に努めるべきであります。一昨年、北海道の炭鉱に坑内キャップランプをつけて入坑され、親しく視察をされました総理の御見解を承りたいのであります。 最後に、人権政策について伺います。 総理は、所信表明の演説において国際国家を強調されました。その実現のために、我々日本国民自体が「日本自体を正確に知り、その正確な日本を外国に知らせる必要がある」とも述べられました。総理、我々が知っている日本自体は世界に誇れるものとお考えでしょうか。今日、国連を初めILOやユネスコなどで差別の撤廃と人権の確立が大きな流れとなっています。南アフリカ共和国におけるアパルトヘイトに対する批判の高まりや世界人権宣言、国際人権規約、さらに女子差別撤廃条約、人種差別撤廃条約などの諸条約が多くの国々で批准または締結を見ていることもそのあらわれでありましょう。国際国家日本となるためにも、いまだ批准、締結の行われていない人権にかかわる国際条約の処理を急ぐべきでありましょう。総理のお考えを承りたいのであります。同時に、国内においても、国際的流れを正しく受けとめ、憲法の精神にのっとって人権の確立を図ることが重要であります。 我が国の最も深刻な社会問題ともいうべき部落解放の政策は、歴代内閣が国の責任として推進してきたところであります。この政策をさらに前進させ、部落問題の早急な解決を図ることこそ国際国家日本への第一歩であると信じますが、部落差別解消のための総理の確たる所信を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
○議長(原健三郎君) ただいまの阿部君の発言中、不穏当の言辞があるとの申し出がありますが、議長は、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。 内閣総理大臣中曽根康弘君。 〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 先ほどの塚本議員への御答弁の中で欠落がございますので、補正さしていただきます。 教科書の検定問題でありますが、教科書検定は、学校教育法等の法令の規定に基づいて、教科書の記述が客観的かつ公正で、適切な教育的配慮が施されたものとなるよう、厳正かつ公正に実施すべきものであり、政府としてもこの方針に基づき努力いたしております。 なお、教科書検定を含む教科書制度のあり方につきましては、現在、臨時教育審議会において審議が進められており、その審議結果を踏まえまして適切に対処いたしたいと思います。 次に、阿部議員の御質問に対してお答えをいたします。 まず、自民党の圧倒的勝利に対して一党独裁の危険はないかという御質問でございますが、あくまで謙虚に野党及び国民の皆様方の声に耳を傾けまして、協調と競争の実を上げるようにいたしたいと思います。選挙の勝敗は時の運でありますから、お互いに阿部君、頑張りたいと思います。(拍手) 次に、軍縮と我が国の防衛力整備の問題でございますが、当面の問題として、やはり米ソ首脳会談を促進して実りあらしめることが、世界に明るさを漂わせ、軍縮へ一歩前進させる大事な政策であると思い、努力してまいりたいと思います。 我が国に関しては、憲法及び基本的防衛政策に従いまして、従来どおり、自衛のため必要最小限度の防衛力を整備してまいりたいと思っております。 いわゆる増税なき財政再建問題につきましては、昭和五十八年度以降四年連続で一般歳出を前年度同額以下に圧縮する等、厳しい見直しに最大限の努力を行ってきておりますが、その中におきましても、大切なことについては重点施策を行ってきたわけであります。現在検討中の経済対策におきましても、行財政改革の基本路線は堅持してまいりたいと思います。六十二年度予算編成におきましても、引ぎ続き財政改革は推進していく考え方でおります。 国鉄改革の問題でございますが、今回の分割・民営化の施策は、これ以外に国鉄を再建する道がないと、長い研究の結果結論を得てお願いしている次第なのでございます。このような方法が利用者の負担を軽減し、地方交通線も含めてより多くの路線を維持する結果になるのではないかと考えております。これによりまして鉄道事業として再生されることにより、サービスのよい、地元に密着した、国民の利益にかなう鉄道というものをつくってまいりたいと思う次第でございます。 社会党案につきましては、いろいろ検討さしていただきましたが、どうも今までのような親方日の丸あるいは赤字垂れ流しというものが社会党案では克服できないのではないかと考えておる次第であります。(拍手) 地方交通線対策でございますが、特定地方交通線は、従来どおりバス等への転換を図る所存であります。他方、その他の地方交通線は、分割・民営化という抜本的な改革を行えば、新会社が地域と一体となった活力ある経営を行える結果、地域住民の足として再生し、維持していくことが可能と認識しております。この考え方は、自由民主党において一般的に考えておる考え方でございます。 東西関係の安定への貢献の問題でありますが、我が国は戦後、自由と民主主義を信条とし、自由市場経済によって繁栄を維持してきました。これには米国を中心とする自由世界との協調と提携というものが大きな貢献をなしておるものと考えております。我が国は、安定的な東西関係を構築するために、米ソの軍備管理を含め、実りある対話が米ソ間、東西間において継続されるよう引き続き努力してまいります。 厳正中立と東西関係の問題でございますが、現在の世界の平和は遺憾ながら均衡と抑止で成立されております。我が国の平和と繁栄を維持して世界の平和と繁栄に貢献していく上で、やはり米国を初めとする先進民主主義国あるいは第三勢力の諸国と緊密な提携を維持発展することを基本にして、共産圏との交渉、協力も図っていく、こういう立場にあります。その間において、経済の交渉、軍備管理・軍縮を中心とする東西間の対話促進、交流に向けて努力してまいりたいと思います。日ソ関係も同様であり、北方領土問題を解決して平和条約を締結するという一貫した方針を堅持してまいります。 税制改革につきましては、現在、政府税調において鋭意検討しておるところでございますが、さまざまな案を提示していただきまして、国民の皆様方にそれをお見せして、そして最終的には国民の選択によって、まあこれがいいと、そういう大多数の収れんしたところを探しつつ、国民の欲する税制改革へ持っていきたい。このように考えて、現在、税制調査会の答申が出るのを待っておるという状態であります。 いわゆる大型間接税については、選挙中、国民が反対し党員も反対するような大型間接税と称するものはやる考えはないと申し上げ、現在も一貫して同じ考えでおります。 労働時間の短縮については、我々もできるだけ短縮するように今後とも努力いたしたいと思って、週休二日制の普及、労働条件の適正化等についても努力しております。現在、中央労働基準審議会におきまして労働時間法制のあり方について検討が行われておりまして、これが答申を待っておるところでございます。 電気、ガスの差益還元等については、既に一兆一千二百億円の暫定的な引き下げを実行したところでございます。原油価格については、今後は不透明な状態でございますが、引き続き、為替レートや原油価格の動向等を深甚の注意をもって見守ってまいり、適切な処置をとっていきたいと考えております。 次に、公共料金の円高差益還元の問題でございますが、四月八日総合経済対策、五月三十日当面の経済対策、二次にわたる対策によりまして公共料金の円高差益還元についても決定し、実行しておるところでございます。今後も引き続いて努力してまいるつもりでおります。 石炭政策でございますが、現在、石炭鉱業審議会におきまして、そのあり方について鋭意検討しておるところでございます。この答申を踏まえて適切に対処していきたいと思いますが、御指摘のように、石炭は一つの町の盛衰に関する重大な産業でございますので、扱いは慎重にしてまいりたいと考えております。 人権関係条約の早期批准でありますが、我が国は、国際社会における基本的人権の尊重及び擁護のために人権関係条約が果たす役割を十分認識して、国際人権規約及び女子差別撤廃条約等を既に締結しておるところです。未締結の人権関係条約についても、条約の目的、意義、国内法体制との整合性等を勘案の上、鋭意検討してまいります。 同和問題の早期解決については、地域改善対策特別措置法の有効期限内に所期の成果を達成すべく最大限の努力をしてまいります。 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手) 〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 税制改正につきましてお尋ねがございました。 税制調査会におきましては既に一度中間報告を出しておりまして、それによりますと、中堅サラリーマンについて所得税の負担を軽減すべきである。その方向といたしましては、累進構造の緩和でありますとかあるいは給与所得、それから配偶者等の控除について改善を加えるべきであるという、そういう線でございますが、その後、ただいまは資産課税、それから現在の間接税についての再検討、最後にこの所得課税を軽減いたしますための財源措置という順序で検討することになっておりまして、御指摘の利子配当課税につきましても、ただいま公平、公正という見地から検討を進めておられるように存じております。その際、もとより国会における御論議、それからこれにつきましての総理大臣の選挙中の発言等々はよく念頭に置かれて検討しておられると信じておりまして、私どもとしては、最終的にこの指針が出ましたときに、それを包括的に承って対処をしてまいりたい、最終の答申を待っておるところでございます。 次に、電電株式の売却につきまして御注意がございました。これにつきましては、今年売却を予定しておりますのは百九十五万株でございますが、何分にも価格につきまして見当をつけることが非常に難しゅうございますので、まず一割程度のものを入札をいたしてみたいと考えております。ただ、その場合、二万株を最高数量といたそうと思っておりますが、それによりまして適正価格をある程度把握いたしまして、その後、その価格を参酌いたしまして売り出しをいたしたい。ですから、大部分はいわゆる公募、売り出しになるわけでございますが、その際、当院の関係委員会の御決議にありますように、特定の個人、法人に集中することのないように十分に注意をいたしてまいる所存でございます。(拍手) 〔国務大臣唐沢俊二郎君登壇〕
○国務大臣(唐沢俊二郎君) お答えいたします。 少額貯蓄非課税制度につきましては、国民の七割以上がその存続を希望しているように聞いております。また、申し上げるまでもなく、貯蓄は経済全体の活力維持のために今後とも必要であり、さらに、豊かな長寿社会に向けて、自助努力による貯蓄の重要性は今後ますます大きくなると考えます。したがいまして、この問題は現在郵政審議会等で御審議中で、まだ答申をいただいておらない段階でありますが、郵政大臣といたしましては、こうした貯蓄の重要性等を考慮し、郵便貯金の非課税制度は今後とも存続に努め、国民の期待にこたえてまいりたいと考えております。(拍手) 〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私に対してお尋ねをいただきましたポイントは二点であります。 第一点は、社会党の提出をされた国鉄改革案についての評価でありますが、先ほど総理から申されましたとおり、私どもは、必ずしも社会党案が現時点における解決策になるとは考えておりません。(「検討したのか」と呼ぶ者あり)検討はいたしました。私どもは、今日の破綻の状況を招いた原因はいろいろあると思いますけれども、やはり巨大な全国一元組織のもとで画一的な業務運営を行ってきたことにつきましても、実はそれぞれの地域における輸送体系の変化とか利用者のニーズにこたえ切れない側面が出てき、これが経営の不振を招き、また、国民からさまざまな御論議を呼ぶ部分になったとも考えております。 こうした見地から考えてみますと、改革の実施に当たって、ただ単なる民営化のみにとどまることなく、経営の分割をあわせて断行をし、効率的な、本当に利用される方々の期待にこたえられるような鉄道として再出発をすることが、私どもは必要不可欠なものであると考えておりまして、この点で社会党案と遺憾ながら認識を異にいたしております。私どもは、今回国会に提出をいたしました改革関連法案に示しております分割・民営化の施策によってこそ、国鉄をむだのない効率的な経営形態とすることになり、それが地方交通線をも含めて、少しでも路線を生き延びさせる、維持することにつながる施策であると考えております。 また、もう一点は、国鉄の職場における労使関係及び雇用についてのお尋ねでございました。 国鉄の職場における労使関係については、これは労使間で解決されるべきことであります。ただ、御指摘のように、国鉄当局が誠意を持って組合と交渉をせよというお話でありますが、国鉄当局も労働組合も、いずれもが誠意を持って話し合っていただくことを私どもは願っております。そして、現在の厳しい経営環境というものを労使ともに共通の認識として受けとめて話し合いをしていただくことを願っております。雇用対策につきましては、全力を尽くします。(拍手) ─────────────
○議長(原健三郎君) 金子満広君。 〔議長退席、副議長着席〕 〔金子満広君登壇〕
○金子満広君 私は、日本共産党・革新共同を代表して中曽根総理に質問をいたします。 言うまでもなく今国会は、さきの同時選挙と第三次中曽根内閣の成立を受けての本格的な審議をする国会であり、その成り行きは、国民の生活と安全、我が国と近隣諸国、世界の平和にとっても重大な意味を持つ国会となっております。 あの同時選挙で自由民主党は大幅に議席をふやしました。どうしてこういう結果が得られたかについては、中曽根首相は、八月三十日、軽井沢セミナーで、グレーゾーンのお客さん、つまり自民党と野党の間にある中間層の票をとるために、それに合うような演説を考えたと述べています。さらに、中道右派や民社党、社会党右派までウイング、つまり翼を左に伸ばしたと述べております。確かに総理は、選挙に当たってその第一声から平和と軍縮の促進をうたいました。福祉社会の建設などをも繰り返し強調してきました。しかし、同時選挙後わずかの期間に総理が実行したものは何であったでしょうか。この平和と軍縮とは全く似ても似つかないものであります。 それは、平和と軍縮どころか、暮らしや教育や福祉を圧迫した来年度予算の概算要求における軍事費の連続した異常突出であります。それはまた、核兵器積載間違いなしのアメリカの戦艦ニュージャージーの佐世保寄港であり、核積載艦船の呉、横須賀への同時寄港でありました。また、核戦争の危険を増大させるものとして、アメリカにおいてもノーベル賞受賞者五十四名を含む三千数百名の科学者、そして内外から強い反対を受けているSDIへの日本の参加決定でありました。総理が翼を左に伸ばし、平和と軍縮の促進を言ったのは、中間層を獲得するためのまさに虚構であり、うそであったことは、この事実によって全く明らかにされているのであります。(拍手) 総理、あなたがみずからの公約に忠実であり、平和、軍縮を真剣に追求するというのであれば、異常突出させた軍事費の削減をこそ当然行うべきであります。この削減をやる意思があるかどうか、明確にまずお答えいただきたいと思います。また、総理が非核三原則の堅持を言うなれば、アメリカ海軍の最高責任者、レーマン海軍長官がアメリカ議会でも証言している核トマホーク配備のニュージャージーはもちろんのことでありますが、核兵器の積載の有無を事前にアメリカ側に確かめるべきであります。これを実行する意思があるかどうか。 さらに、核軍拡を宇宙にまで拡大するSDIが平和国家の立場に合致するなどということは、総理独特のやり方であって、これが国際的に通用しないことは明らかであります。我が国の安全と世界の平和のためにこの参加を白紙撤回すべきでありますが、総理の見解を伺います。(拍手) さて、ここで私は、我が国と国際政治の中で緊急、重大な問題になっている核戦争と核兵器の問題について総理の本音を伺いたいと思います。 総理、あなたが総裁をしている自由民主党は、昨年十二月「「非核都市宣言」は日本の平和に有害です」とのパンフレットを発行いたしました。今、核戦争の危機を阻止し、核兵器廃絶の声は国際的にも高まっております。特に被爆国日本においては、これまでにない意欲的な運動が展開されているのであります。この中で全国自治体の三一%、千五十の自治体が非核都市宣言を既に行っています。そこに住む人口は、皆さん方を含め六千四百万人、日本人口の五三%に達しているのであります。ところが、自民党発行のこのパンフレットは、まさにこの運動を敵視したものであります。しかも、このパンフレットには、核兵器廃絶は日本の平和を破壊するという、とんでもないことが書かれているのであります。総理、なぜ非核都市宣言を攻撃するのですか、なぜ核兵器廃絶が日本の平和を破壊するのでありますか。自民党の総裁でもある総理、はっきりとした答弁をお聞かせ願いたいと思います。(拍手) さらにまた、「反核運動の欺瞞と危険性」という部内資料をも発行しています。特に、その中でよい核と悪い核を厳しく識別すべきであるなどと言っています。言うまでもなく、核兵器は人類絶滅の兵器であります。核兵器をすべてこの地球上からなくすことは、被爆国日本のみならず全人類の共通の願いであります。総理、よい核と悪い核があるなどということで、何で核兵器を廃絶することができますか。核兵器と人類が共存できないことは、今や国際的な常識でさえあります。総理、よい核とは一体どんな核ですか。はっきり答えていただきたいと思います。(拍手)以上述べた事柄は、総理が言っている核廃絶が、結局は口に核兵器の廃絶をうたいながら、実際には核軍拡の車を走らせていると言わざるを得ません。 第二の広島、第二の長崎を繰り返させてはならない、この声は被爆国から世界に広がっています。核戦争阻止、核兵器廃絶を緊急の課題として呼びかけた「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」は、この一年間で百四十七カ国に広がっています。我が国では、既に二千万を超える人々がこれに署名をしているのであります。総理、第四十一回国連総会は昨日開会をされました。総理が真に核兵器の廃絶を願うならば、国連総会に対して、唯一の被爆国の政府としてためらうことなく核兵器全面禁止、廃絶のための国際協定の締結をこそ提案すべきであると考えますが、総理の所見を承りたいと思います。(拍手) 次に、ますます重大化する経済と国民生活について質問をいたします。 今日、円高不況のもとで中小企業の倒産は、昨年十月から今年七月までの十カ月間で一万五千件にふえております。そしてそれは、失業率二・九%という史上最悪の状態をもつくり出しています。国民生活と中小企業を守る緊急対策、抜本対策の必要性はいよいよますます大きくなっているのであります。そこで、この現状をどう見るかについてであります。総理は所信表明演説で、せめて一ドル二百円台にとの中小企業者の声には答えませんでした。高過ぎるとも言わず、逆に円高メリットを説きました。そして、円高に適応できる経済、それを大いに強調したのであります。三井銀行の調査によれば、購買力を基準にした円の実力というのはせいぜい二百三十円ぐらいであります。ところが現在、それとはけた違いの異常な円高を当たり前とするような政治が中小企業に被害を集中させ、国民経済の土台を揺るがせていることは、解釈の問題ではなくて現実の問題であります。 そこで、まず円高不況をもたらした大企業の輸出ラッシュの根源にメスを入れる問題であります。今、これらの大企業は一ドル百五十円、百四十円に対応する経営体質づくりというのを唱えて、減量経営を一層強化して輸出の維持、促進を図っています。先進諸国に類例を見ない低賃金と長時間の過密労働、そして下請単価の切り下げなどによる中小企業への犠牲の強要、このことを解決しなければ円高不況の本当の解決ができないことは言うまでもありません。総理も労働時間の短縮を演説し、あるいは賃上げの必要性もしばしば認めているのでありますが、残念ながらこれが実行に今日移されておりません。週休二日、そして週四十時間労働を確立することは、今では国際的にも常識であります。総理は、この労働時間短縮をいつ、どのように実現するのか、根本的なことでありますから、明確に答えていただきたいと思います。(拍手) 次は、総理が述べた産業構造の転換ということについてであります。 政府は、円高不況を引き起こしたその根源にはメスを入れないで、専らその犠牲を農業とか石炭とか中小企業に負わせて産業構造の調整を図ろうとしています。問題は、日本経済の自立ということが欠落していることであります。農業を破壊し、石炭をつぶして、食糧も燃料も外国に頼ってやっていく、これが日本経済の自主的発展をどんなに破壊しているかは、現に穀物の自給率が三二%、エネルギーが一〇%という、この現状を見れば明らかであります。サミット諸国の中で、このように低い自給率のところは一つもありません。しかも、これらの諸国は積極的政策をとり続け、それを向上させております。総理は、ますます低下する我が国の自給率をどのように認識し、どのように解決していきたいと考えているのか、お聞きしたいと思います。(拍手) 次は、円高不況によって深刻な打撃を受けている中小企業、地場産業に対する緊急対策であります。 我が党は、政府がみずから招いた異常な円高の被害を政府の責任で救済するために、まず緊急融資の金利を激甚災害並みの三%以下に引き下げるよう要求してきましたが、これは一刻も早く実現させなければなりません。この点についてもお答えを願いたいと思います。また、赤字企業にも担保の要らない、保証人の要らない融資制度を適用するよう求めます。 円高で休業に追い込まれる業者が相次いでいる中で、生活を維持し、事業再建に備えるため、自営業者の休業補償制度を国の責任で創設すべきであることをも既に申し入れてきたわけでありますが、ぜひこれを実行すべきであります。同時に、下請企業への犠牲の転嫁を防ぐために、一方的な発注の打ち切りとか単価の切り下げ、これを強要した企業の名前を公表すること、そして原状回復を行うこと、以上の諸点について具体的な答弁をいただきたいと思います。(拍手) 次は、内需の拡大の問題であります。 声はすれども姿は見えずであります。聞こえてくるのはかけ声ばかりであります。内需拡大、それは増税なしの所得税二兆五千億円の減税です。電力、ガスなどを初め五兆円を超える円高差益の消費者への還元、社会保障制度の改悪の中止、住宅や福祉、教育施設など、国民生活に密着した事業に思い切った公共投資をすることであります。その財源は、ふえ続けている軍事費の大幅な削減、大企業、大資産家に対する特別の優遇税制を見直すなら全く可能であります。 また、選挙中総理は、これも既に質問されておりますけれども、大型間接税は導入しない、増税はしないと繰り返して言明してきました。ところが、選挙が終わるや否や、政府の税制調査会も、大蔵省も、自民党も、一斉に増税に向けて走り出しているのが現状であります。総理は、選挙公約の実行をするというのであれば、こうした作業は中止すべきであります。この際、改めて伺っておきたいと思います。(拍手) ここで、老人医療の問題についてお尋ねをいたします。 総理は、老人福祉の充実を強調してまいりましたが、ことしの敬老の日を前に総理が高齢者に示したものは、老人医療費の再改悪でありました。外来二・五倍、入院一年で実に十倍という引き上げであります。全国の老人クラブを初め、怒りの声が各地域から巻き起こっているのは当然のことであります。 四年前の老人医療の有料化によって、初年度は確かに外来の受診抑制で国の医療費負担は減少しました。しかし、この受診抑制は早期発見をおくらせまして、早期治療ができず、老人の病状を極度に悪化させてきたのであります。受診即入院となり、そのために次年度から国の医療費支出が急増してきたことは政府資料でも明らかであります。目先の金に目を奪われずに、大局を展望した老人医療の無料化を復活させるべきであります。ヨーロッパ諸国のそれに比べて我が国の高齢者の医療制度がいかに貧弱であり、いかに無慈悲なものであるかは今日明らかであります。全国のお年寄りの願いである老人医療の無料化復活を重ねて要求する次第であります。(拍手) 同時に、ことしは国際障害者年の折り返し点でもあります。心身障害者、障害児の医療、教育、仕事の保障など、社会保障の充実についてもあわせて総理の所見を伺います。(拍手) さて、私は、今国民注目のもとにある国鉄の分割・民営化問題について、改めて今日の時点に立って質問をいたします。 百十四年の長きにわたって我が国の産業と経済の発展のために、文字どおり動脈としての役割を果たしてきたのが国有鉄道であります。今その国鉄の歴史を継続するかどうか、重大な関頭に立たされているのであります。国鉄の分割・民営化、それはそのまま、国民の共有財産をばらばらにして、これを利潤追求第一主義の財界に売り渡すことを意味いたします。 国鉄の分割・民営化を強行しようとする国鉄再建監理委員会、国鉄当局及び政府は、その最大の口実として膨大な国鉄の累積債務、赤字の解消をうたっています。その借金三十七兆円。しかし、その借金が分割・民営の新会社によって克服されるのかどうなのか。また、六つに分割して黒字が見込めるのかどうか。黒字になるのはただ一つ東海新会社だけであることは、国鉄当局の発表で明らかであります。国鉄用地の売却その他をもってしても解消策のない借金は十六兆七千億円になっていますが、これを一体どうするのですか。最後は国民に押しつけるのではないですか。その負担は、三十年の長期ローンでも一世帯当たり毎年五万円ずつ、三十年間で何と百五十万円の負担になるのであります。国民は全く身に覚えのない負担をさせられることになるのであります。はっきりとお答えをいただきたいと思います。(拍手) 言うまでもなく、国鉄の赤字は、国の交通政策で、道路建設には無利子で資金をつぎ込みながら、新幹線を初めとする国鉄の設備投資はすべて借金でやらせた結果こういう赤字になったことは今や全く明白であります。(拍手) また、赤字線を理由に、全国八十五のローカル線の廃止が、地域住民や七百を超える自治体の反対の声と決議を無視して次々に強行されようとしています。都市と山村の格差を埋め、産業の発展と生活や文化、教育の向上に今なお重要な役割を果たしているこのローカル線の廃止計画は直ちに中止すべきであります。(拍手)総理の考えをただします。 次は、安全性の問題であります。まだ分割・民営化が決定されていないにもかかわらず、国鉄の安全性は極度に無視されています。これまで、国鉄については九万を数える余剰人員がいるなど、口をきわめた宣伝がなされてきました。しかし、実態はどうか。それは動力車の一人乗務の強行でありました。車掌の乗務省略でありました。ローカル線の廃止であり、無人駅でありました。そして無人ホームの急増であります。さらには車両や線路の検査、点検、見回りの間引きであり、下請であり、そうして要員の削減であります。このようにして人為的につくり出されたのがいわゆる余剰人員であります。 一人乗務の列車運転、それがどんなものであるかは、私自身かつて国鉄の機関士をやったことがありますからよくわかります。一人運転、一継続時間は三時間から六時間、しかも長距離運転、上越・東北新幹線も一人運転であります。自動車輸送と違って、分刻みの時刻表に基づき、千数百名の乗客の命を乗せて走る高速度運転、緊張と疲労で深夜にまたがる長距離列車の運転などでは、常に孤独と不安感に駆られていると言われます。車両検査の間延び、そして検査要員のカットなどから車輪の破損事故も相次いで発見され、一 つ間違えば重大な事故に直結するのであります。無人駅、それに続いて無人ホームはついに東京の都心部にまで広がってまいりました。ホームからの転落事故も相次いでいます。昨年の日航機の墜落事故はあすの国鉄の姿だとさえ言われているのであります。安全性、これは絶対に保障しなければなりません。 当面、少なくとも長距離運転、夜行運転は二人乗務にすべきであります。無人ホームの解消、車両や線路の検査及び保安要員の増員措置を直ちにとるべきであります。すぐれた動力車乗務員や車掌、経験豊かな営業マン、技術者、それが今、収容所と言われる人材活用センターに送り込まれているのであります。人材活用センターを直ちに廃止をして、労働者を正規の職場に帰すべきであります。(拍手) 国民にとって百害あって一利ない国鉄の分割・民営化を取りやめるよう重ねて要求をいたします。(拍手)国鉄の再建は、あくまでも公共性と安全性を土台に、国有鉄道として民主的に再建すべきであります。 最後に、今国会の直前に問題となったいわゆる藤尾発言に関連して総理の見解をお聞きいたします。 侵略と侵略戦争を正当化した藤尾発言は内外で重大な問題となり、その過程で、総理は藤尾氏を文部大臣から罷免をいたしました。しかし、事態はこれによって決着がついたということではありません。これは、総理並びに政府自身の体質にかかわる問題でもあります。あの藤尾発言は、これまでの政府の基本的な考え力をそのまま素直に表現したものではありませんか。 それは、一九六五年十一月の国会、しかも朝鮮問題を集中的に審議したあのいわゆる日韓条約特別委員会で、朝鮮併合問題について当時の佐藤首相が次のように述べています。「対等の立場で、また自由意思でこの条約が締結された、」と答弁しているのであります。この立場は今日まで取り消されることなく、政府の一貫した方針として継続しているのであります。これは極めて重大な問題でありますから、この際、中曽根内閣としての態度を内外に明確にしていただきたいと思います。(拍手) さて、ここで関連してでありますが、総理は、今国会でこの前の戦争について一定の反省を表明いたしました。この反省を真に進めるならば、あの戦争を推し進めた反動政治を復活させるべきでないことは明白であります。したがって、戦前の国防保安法、軍機保護法の復活とも言うべき国家機密法の再提出は絶対になすべきではありません。総理・総裁としての見解をお伺いしておきます。 戦前、我が国は日独伊三国の軍事同盟によってあの侵略戦争に突き進み、大きな惨禍を招きました。今、日米軍事同盟のもとで、多くの国民は新たな戦争へ巻き込まれないことを切に望んでいます。我々は、今こそ「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやう」決意しとの憲法前文を想起し、文字どおり平和と国民生活擁護のために全力を挙げなければなりません。日本共産党・革新共同はその先頭に立つことをここに表明し、私の代表質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 金子議員にお答えをいたします。 まず第一に、軍事費の問題でございますが、我々は平和と軍縮のために懸命な努力をしていることは御存じのとおりであります。米ソ首脳会談を速やかに開くように我々は積極的に努力もしておりますし、日ソ会談についても、先方にゴルバチョフ書記長の来日を慫慂しておるところであります。 一方において、来年度予算の概算請求も行わなければなりませんので、やはり既成の国防の基本方針に基づきまして概算請求を行ったところであります。どの国家におきましても、防衛努力を行うということは現代においては当然なことなのであって、これまで否定するというのは亡国の党につながるのではないかと我々は考えるものであります。(拍手) 次に、非核三原則の問題でございます。 この問題については、前から述べますように、核兵器の持ち込みの問題は事前協議の対象であり、もしその協議が行われた場合には拒否すると申しておるとおりで、この点はここでも確認しておるところであります。 SDIの問題についても、これも、今までの攻撃的な核兵器による戦略体系から防御的な非核兵器による戦略体系に変換しよう、核兵器を廃絶しようという理念のもとに行われているものでありまして、我が国の平和国会としての立場に背馳するものではありません。この点も御理解願いたいと思うのであります。 非核都市宣言の問題でございますが、自民党の一部のパンフレットの中に書かれていることは、これは我が国がアメリカの核の傘のもとにおって安全が維持されている、そういう点を強調してあのような表現になったものと考えております。別に他意があってやっているものではありません。白い核兵器とか黒い核兵器とかおっしゃいますが、核兵器はどんな色をしているか知りませんが、いずれもあれは業の兵器であると私は申し上げておるのであります。 次に、国際協定の締結の問題でございますが、その意味においても、米ソ軍備管理交渉が今回の首脳会談で前進することを強く期待しております。そのポイントは、やはり両方が安心し得るような、例えば検証であるとかそのほかにおける実効性ある措置が担保される必要があるし、これは世界的規模において、いわゆるグローバルケースにおいて解決されなければならぬと我々は常に主張しておるところでございます。 貿易の問題についていろいろお話がございましたが、経済構造を調整して内需を拡大し、国際摩擦を解消せんとする政府・与党の不退転の決意をもって今後も努力してまいるつもりであります。 労働時間短縮の問題は、週休二日制の普及等に今後も努力してまいりますが、中央労働基準審議会での審議を待っておるところであります。 食糧自給率の向上等については我々も同感でございまして、現在の食管制度の根幹は維持していくと前から申し上げているとおりであります。 エネルギーの自給率の向上についても、バランスのとれた経済性のあるエネルギーの自給を考えております。石炭につきましては、石炭鉱業審議会の検討を待っておりますが、いずれにせよ、石炭対策は町ぐるみ大事な問題になりますので、慎重に取り計らいたいと思っております。 円高不況中小企業対策等については、特別貸付制度によりまして四・八五%とか、そのほかさまざまな政策をやっております。特に、地域に集中しているいわゆる城下町産業であるとか、あるいは造船そのほかの特定の不況であるとか、そのような問題についてはできるだけ我々は努力をして、心配かけないようにしてまいりたいと思っております。 休業補償制度という御質問でございましたが、自営業者等小規模企業者の転廃業等に際して共済金を支給する小規模企業共済制度が設けられておりまして、加入を促進する等、本制度の充実に努力をしてまいりたいと思います。下請取引の適正化、充実化についても今後努力してまいります。 減税については、先般来から税調において審議され、今答申を待っていると申し上げたとおりであります。 差益の還元につきましては、既に四月八日及び五月三十日の対策等で二次にわたってこれを遂行しており、今後とも情報の提供やあるいは監視を強めまして、特に公共料金やあるいは国民生活に密着した消費財等については、これを進めるように努力してまいりたいと思います。 社会保障制度の問題については、長期的に安定して有効に機能する制度を保障しよう、そういう考えに立っていろいろな改革を行ってきておるところであり、この点については御理解をいただきたいと思うのであります。 内需の拡大につきましては、十九日に経済対策を発表する予定でおります。 大型間接税につきましては、選挙中私が申し上げたことは、これは守ってまいるつもりでおります。 老人医療の問題につきましては、やはり長期的に安定した老人医療制度を持続的に維持していく、世代間の公平も維持していく、そういう意味におきましてやむを得ざる法律的制度を御提案申し上げておるのであり、人口の高齢化が進み、長寿時代が来るという日本にあっては、こういう措置を現在講じておかなければならないと考えておる次第であります。 障害者の医療の確保等につきましては、リハビリテーションの観点から障害の除去、軽減を目的とする更生医療等を中心として適切に対処しております。また、障害児の教育。能力の最大限発揮、社会参加等についても努力をしております。また、仕事の確保につきましても、長期計画を基本として、重度障害者に最大の重点を置いて、その特性に応じてきめ細かな対策を講じておるところであります。 さらに、国鉄赤字の問題でございますが、この問題につきましては、これまでのように赤字が累積していく状況は発生しないように根源的に解決しよう、そういう考えで、監理委員会の意見に沿って今大きな改革をやっておるところであります。 長期債務については、去る一月二十八日の閣議決定において明らかにしたとおり、用地売却の上乗せ等によりその額を極力縮小するということで行っております。国鉄清算事業団におきまして自主財源を充てても残る長期債務等については、最終的にはこれは国において処理するといたしておりますが、処理のために必要な新たな財源、措置については、雇用対策、用地売却等の見通しのおおよそつくと考えられる段階で、歳入歳出等の全般的見直しとあわせて検討する予定であります。 地方交通線については、バス等への転換を図る一方、その他の地方交通線は、分割・民営化という抜本的な改革を行えば、新会社が地域と密着一体となって経営を行うという形になり得るであろうと考えております。 さらに、安全政策と人材活用センターの問題でございますが、安全は鉄道本来の使命であり、運転乗務、駅及び検査、保安の要員体制等の効率化を進めるに際して、当然これは考えていかなければなりません。人材活用センターは、職員を効率的に管理して有効活用を図るという考えに立ちまして、現在の国鉄の過剰な要員体制等を考えますれば、妥当なことであると理解しております。 日韓併合問題に関する佐藤総理の答弁は、いわゆる日韓併合条約が行われました当時の状況のもとにおいては、法的に欠落したものではないという意味の事実を述べたものと理解しております。いずれにせよ、同条約は一九六五年の日韓基本関係条約によりもはや無効であることが確認されておりまして、その評価については、この見解のもとに日韓間の問題としては決着していると考えます。 なお、御指摘の藤尾前文部大臣の発言の一部は妥当ならざるものがあると考えまして、適当な措置をいたした次第なのでございます。 以上で答弁を終わりにいたしますが、最後に、国家機密法の制定、この問題につきましては、自民党においていろいろ検討しております。日本はいわゆるスパイ天国と言われるぐらいにスパイが割合に横行していると承知しておりまして、やはり国益を守るために何らかの妥当な措置を行う必要はある。ただ、国民の基本的人権やいわゆる知る権利等、これらの問題については十分注意をいたしまして、慎重に行いたいと考えておる次第でございます。(拍手)
○副議長(多賀谷真稔君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。 ――――――――――――― 議員請暇の件
○副議長(多賀谷真稔君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。 谷洋一君から、九月二十一日から二十八日まで八日間、伊藤忠治君及び川崎寛治君から、九月二十二日から二十九日まで八日間、野口幸一君から、九月二十二日から十月四日まで十三日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。 ────◇───── 裁判官訴追委員の予備員辞職の件
○副議長(多賀谷真稔君) お諮りいたします。 裁判官訴追委員の予備員中西績介君から、予備員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。 ────◇───── 裁判官訴追委員の予備員の選挙 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙 北海道開発審議会委員の選挙 国土審議会委員の選挙 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙 鉄道建設審議会委員の選挙
○副議長(多賀谷真稔君) つきましては、裁判官訴追委員の予備員の選挙を行うのでありますが、この際、あわせて、検察官適格審査会委員及び同予備委員、国土開発幹線自動車道建設審議会委員、北海道開発審議会委員、国土審議会委員、日本ユネスコ国内委員会委員及び鉄道建設審議会委員の選挙を行います。
○谷垣禎一君 各種委員等の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名され、裁判官訴追委員の予備員の職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。
○副議長(多賀谷真稔君) 谷垣禎一君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。 議長は、裁判官訴追委員の予備員に坂上富男君を指名いたします。 なお、その職務を行う順序は第四順位といたします。 次に、検察官適格審査会委員に 高鳥 修君 宮崎 茂一君 坂上 富男君 及び 中村 巖君 を指名いたします。 また、 太田誠一君を高鳥修君の予備委員に、 高村正彦君を宮崎茂一君の予備委員に、 清水勇君を坂上富男君の予備委員に、 橋本文彦君を中村巖君の予備委員に 指名いたします。 次に、国土開発幹線自動車道建設審議会委員に 竹下 登君 安倍晋太郎君 伊東 正義君 小沢 辰男君 瓦 力君 中村 茂君 伏木 和雄君 及び 小沢 貞孝君 を指名いたします。 次に、北海道開発審議会委員に 阿部 文男君 川田 正則君 町村 信孝君 奥野 一雄君 及び 藤原 房雄君 を指名いたします。 次に、国土審議会委員に 稲葉 修君 田澤 吉郎君 大西 正男君 渡辺 栄一君 山崎平八郎君 大出 俊君 佐藤 敬治君 薮仲 義彦君 及び 米沢 隆君 を指名いたします。 次に、日本ユネスコ国内委員会委員に 船田 元君 臼井日出男君 馬場 昇君 及び 有島 重武君 を指名いたします。 次に、鉄道建設審議会委員に 竹下 登君 安倍晋太郎君 伊東 正義君 長谷川 峻君 小林 恒人君 及び 浅井 美幸君 を指名いたします。 ────◇───── 宇宙開発委員会委員任命につき事後承認を求めるの件 労働保険審査会委員任命につき事後承認を求めるの件
○副議長(多賀谷真稔君) お諮りいたします。 内閣から、 宇宙開発委員会委員に久良知章悟君を、 労働保険審査会委員に高橋久子君を 任命したので、それぞれ事後の承認を得たいとの申し出があります。 まず、宇宙開発委員会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(多賀谷真稔君) 起立多数。よって、承認を与えるに決しました。 次に、労働保険審査会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認を与えるに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。 ────◇─────
○副議長(多賀谷真稔君) 本日はこれにて散会いたします。 午後四時二十八分散会