本会議 第3号
- 発言数
- 14 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1986/09/16
会議録
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。 ────◇───── 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(原健三郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。土井たか子君。 〔土井たか子君登壇〕
○土井たか子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、今国会の冒頭に行われました中曽根総理の所信表明に対し質問をいたします。(拍手) 先ごろ、私は本を読んでおりまして、現代社会の側面を的確にとらえた次のような文章に出会いました。「ほとんどすべての人間が都市に住まねばならないとき、都市は人の住み得ないところとなる。自然をもう一度取り戻したいといういや増す欲求を感じるとき、自然は汚染され破壊されている。通勤距離が長くなっているというのに、通勤輸送は耐えがたいものとなっている。老人の比率が増大しているのに、老齢化はのろわしい性格を帯びている。各人がその個性を発達させる可能性と欲求を持っているとき、巨大な組織の支配の締めつけは厳しくなっている。」 総理、私は、私たち国民の築いてまいりましたこの国の繁栄に対して、あら探しをするつもりでこのような文章を引き合いに出したのではございません。実は、これは西欧のある国の政治学者が自分たちの社会、すなわち西ヨーロッパについて書いたものでございます。しかし、ここに描かれたことは、私たちの国の抱えている悩みに何と似通っていることでありましょうか。 そこに気づいてみますと、ここに取り出された自然や生活にかかわる問題の解決が、ただ一つの国のためだけではない要請だということがわかってまいります。もし、どこかよその国ではない、ほかならぬ私たちの国がこれらの課題について解決の方向に一歩でも半歩でも踏み出しますならば、それは私たちの国だけではなく、多くの国々に住む人々に対して私たちが貢献することを意味すると申せるのではないでしょうか。 私たちは、私たちの国の長い歴史を顧みまして、古くは中国大陸、朝鮮半島から、さらには大陸の背後のオリエントから、新しくは欧米諸国から、それらの国々の人々が創造し、幾多の困難を乗り越えて生み出したさまざまな成果を、私たちの文化の中に取り入れさせてもらっております。今、私たちが、私たちの国の課題であると同時に、先進諸国を初めとする多くの国々の困難であるこれらの事柄に取り組んでいきますならば、それこそが諸外国の利益にも通ずる道であり、総理の口癖でもある国際国家に、わざわざ国際国家などと改めて力まなくてもいい、自然な国際国家になる道であろうと私は信ずるものでございます。(拍手) そのような観点から申し上げるならば、例えば総理が今臨時国会召集の理由として所信表明でお挙げになりました緊急の課題、国鉄改革、老人保健制度、経済対策などにつきましても、問題の焦点は、ただ単に行財政改革というだけでなく、もちろん行財政改革も重要な課題であることは申すまでもございませんが、それよりももっと大切な視点が政府の施策には欠けているところがあると言わなければなりません。(拍手) 女性の多くは、よく老人問題は女性問題であると申します。女は三つの老後を生きなければならないからだと言うのです。サラリーマンならばとっくに定年を過ぎたころになって、夫と自分の親の老後に人生を費やさなければなりません。次いで、平均寿命の違いと夫婦の普通の年齢差からすれば、多くの女性たちが夫の老後に苦労させられ、そして最後に自分自身の孤独な晩年を迎えます。老後とは、もちろん女性だけにやってくるものではありませんが、このように老後という言葉の後ろからは、女性たちのため息が聞こえてくるのでございます。 高齢化社会に立ち向かうには、そうした生活の実態のひだの部分にまで入り込んだ施策が国民からは求められていると私は思うのです。そのような目で見ますとき、政府が六月にお決めになりました長寿社会対策大綱は、いかにもお役所の作文らしく、心のこもらないものと私たちには感じられるのでございます。(拍手) 特に、日本の高齢化は諸外国に例を見ない急速な老人人口の増大に問題の中心がありますのに、さまざまな方策の言葉の中に量的な考察をほとんど見ることができません。これでは、老人の比率が増大しているのに、老齢化はのろわしい性格を帯びている事態から逃れるにはほど遠いと申さねばなりません。 政府提案の老人保健法が、結局はお年寄りの医療費負担をふやすだけの冷たい内容となっている底には、こうした根本的な意味での情のなさが横たわっていると思うのであります。さきの解散によって廃案とされた老人保健法案を総理は平気なお顔で再び提案されるのでしょうか。ぜひ思い直しを要求いたします。(拍手) また、国鉄改革の問題について申しますならば、国鉄と関連の職場で働き続けてきた多くの人々が、これから働く場所について深刻な不安を抱いております。明年四月実施を想定して、まだ国会審議も行われていないにもかかわらず分割・民営化の既成事実が進む中で、今、国鉄の現場では、差別問題や雇用不安から多くの自殺者を出すほどに異常な緊張と動揺がみなぎっています。少なくともこうした不安を解消することは、いかなる施策を選ぼうとも、政府が果たすべき最低限の責任であります。(拍手) また、ローカル線の廃止は、過疎問題に悩む地域に決定的な打撃を与えるものであります。これに何らの具体案を示すことなく、国鉄の公共性を放棄しようとする政府改革案に私は断然反対するものであります。(拍手) 国鉄財産の処分についても多くの疑いが持たれております。国鉄改革について、極めて不十分な審議のままに将来に禍根を残すことのないよう、あらゆる角度からの審議、検討を尽くすことが必要と思いますが、総理はなお四月実施に固執されますか。私は、そうした大局を見ない判断に強く反対せざるを得ません。(拍手) さらに、国鉄、交通政策と国民経済にかかわって申し上げますならば、国鉄改革によって、利用者である国民全体の利便にあくまで気が配られねばなりません。改革に当たって、例えば日本経済を大きく支えている働き手、大都市周辺のサラリーマンたちが朝晩体験している苦痛に満ちた通勤地獄の解消にどんな展望が開けるかといった対策が見当たらないならば、そのような改革は、日本国民及び同じ悩みを持つ諸国から敬意を持って迎えられるものとはならないと存じます。 次は、経済、財政の問題でございます。 第一にお尋ねしなければならないのは、円高による深刻な不況の問題であります。 中小企業も大企業も、多くが苦痛の声を上げております。既にことしの四月、総理の諮問にこたえた前川報告は、日本経済の現状を危機的段階と警告し、そこから抜け出すために、内需拡大に向かって政策の歴史的転換が必要だと述べております。 私たち社会党もまた、方法に違いはあるものの、早くから内需中心の経済運営への転換を唱えてまいりました。問題は、前川報告が出されたにもかかわらず、また、欧米など諸国がこの報告に沿った日本経済の転換に強い期待を抱いたにもかかわらず、この半年、目に見える形での取り組みやその成果をこれといって見つけることができないことにあります。 総理は、就任以来、日米間の緊密さを強調しながら、その実、軍事的関係を強めるに明け暮れ、両国間の経済、貿易構造の改善を図ることはほとんどできないままに今日に至っております。とりわけ、解散・総選挙を挟んだ六月、七月、八月の三カ月間、いわゆる政治空白による無為無策は一層問題を深刻にしてしまいました。解散への主導権を終始おとりになった総理は、この間の責任をどうお考えになり、今後どうなさるおつもりか、伺いたいと存じます。(拍手) アメリカからねらい撃ちされている農業にしても、ずるずると後退しながらの減反、米価政策では、国内外の環境変化にとても対応できません。食糧自給率の向上、生産性向上と食品の安全確保、緑資源育成の基本的立場から、農業の体質強化のためにどんな手段を進められるのか。関連して、食管制度をどうなさるのか、生産者と消費者が協調する食糧政策はどうあるべきかなどが問われていますが、これらに対する総理の御見解はいかがでしょうか。 さて、私たち社会党は、内需拡大の一つの重要な柱は大幅減税だと考えております。総理も、選挙中に所得減税を公約なさいました。総理の公約以前に、自民党と私たち野党との間で、年内に成案を得て実施するとの合意も成立しております。それにもかかわらず、今国会冒頭の総理の所信表明には、所得減税をしますといったはっきりしたお言葉は一言も聞こえてまいりませんでした。この際、国民への約束、公党間の約束を守って、大幅な所得減税をするとおっしゃるのかどうか、改めてお伺いしたいと存じます。(拍手) また、円高不況によって深刻な犠牲を強いられている中小企業や地場産業に対する具体的な対策をお示しいただきたいと思います。 公約と申せば、総理は、選挙中、大型間接税の導入は断じていたしません、マル優制度は決して廃止いたしませんとおっしゃいました。ところが、選挙が終わってみますと、大型間接税導入、マル優制度廃止の準備が政府税調、大蔵省の手で公然と進められております。言葉だけは新型間接税と言いかえ、マル優も制度を変えるのでなく運用を変えるのだと言い逃がれていますが、実質は大型間接税であり、マル優の廃止であります。総理は、今も選挙中と同じように、大型間接税導入とマル優の廃止はやらないときっぱりとおっしゃることができますか、お伺いいたします。(拍手) 大型間接税導入に賛成する方々の中には、そうしないと古くて新しいクロヨン、トーゴーサンなどと呼ばれる税負担の極端な不公平を正すことができないという考えのあることを私も存じております。しかし、問題の根本は、実際に存在する租税特別措置など税制のゆがみと、課税の不公平と、それに伴うサラリーマンの重税感にあります。根本的な税制改革とは、第一にそこに目を向けたものでなければならないはずであります。 総理は、所信表明で、「税制については、望ましい税制を確立すべく、税制調査会において精力的に御審議をいただいております。」とお述べになっております。私の今の質問に対しても、調査会の結論が出るまで意見は差し控えるといった御答弁があるいはあるかもしれないと存じます。しかし、総理は、私の知るところでは、審議会などの中に御自分の意思を十分に伝えられる方々を配置し、思いどおりの答申を得て実行に移すという手法を編み出された方であります。(拍手)税制改革につきましても、答申に予定される内容をしっかりと御自分の心づもりとしてお持ちになっているのではありますまいか。国民の関心の深い問題でございます。あいまいでない御答弁をお願いしたいと思います。(拍手) 内需拡大に関連して、政府は三兆円以上の公共事業費を補正予算に計上すると伝えられておりますが、その額もさることながら、大事なのは使い方でありましょう。私たちは、国民の生活関連の施設や施策を優先させ、また、不況に悩む中小企業や地域に優先させて配分すべきだと考えますが、総理の基本的なお考えをお示しいただきたいと存じます。 公共事業一般につきまして、一つだけ重要な懸念を申し上げておきたいと存じます。それは、公共事業の取り扱いが有力閣僚や与党実力者あるいは何々族議員などによって特定の県や地域に特に厚く流れ、そうした有力者を出していないところは冷遇されるということが広く信じられている問題であります。課税の不公平に加えまして、その税金を使う大きな事業の配分を力の強い政治家にほしいままにされるということでは、国民の間に政治道義についての虚無感が広がるのも無理がないと申せましょう。公共事業取り扱いの公正確保について、御存念をお聞かせいただきたいと思います。(拍手) 次に、総理が力を込めてお話しになりました「世界の平和と繁栄への積極的貢献」の中の二、三の問題について伺いたいと思います。 まず、総理のおっしゃった言葉で言えば、「最近、アジアの近隣諸国との関係に悪影響を及ぼしかねない事態が生じた」こと、もっとはっきり申しますと、藤尾前文部大臣発言問題などについてであります。私は、八月十五日の靖国神社公式参拝をことしは取りやめ、日本を守る国民会議編集の歴史教科書に修正を要請し、藤尾前文部大臣を罷免なすった総理の御判断に敬意を表します。しかし、これら一連の措置を講じなければならなかったことは、そもそも総理の責任とは無関係と言い切れるでしょうか。総理の御所見はいかがなものでございましょう。 また、総理は、アジアの友好発展に「今後とも一層の努力を払う」とおっしゃっているとおり、文部大臣罷免によって問題が根本的に解決したとは申せない部分がございます。なぜアジアの人々はこんなに敏感なのだろう、なぜこうした問題が繰り返し起きるのだろうということを問いかけ、その問いかけの中に問題の根が見出せると私は思います。 アジア諸国との友好はだれでも唱えることができますが、友好の第一の条件は、アジア諸民族と日本人との和解と信頼の関係にあることを考えるならば、そもそも根底にある不信感と、事件が繰り返されることでそれが増幅される事態を深く思いみる必要がございましょう。(拍手)その意味で、総理の我が国の歴史に対する根本的な考えは極めて重要でございます。 あえて総理に確認をいたします。総理は、公人としても私人としても、ここが大事なのですが一代議士としても、日本の朝鮮支配に関する藤尾前文部大臣の発言のような考えを完全に否定なさっていると信じてよろしいのでしょうか。 さらに、関連してつけ加えなければならないのは、いまだに日本と国交のない唯一の国、朝鮮民主主義人民共和国の国民に対することでございます。他の問題はともかく、朝鮮併合についての問題である以上、大韓民国国民同様に、朝鮮民主主義人民共和国の人々も深く傷ついているはずであります。しかしながら、その国民に対しては、日本政府の正式な謝罪は伝わりません。私は、この際、形式を超えて、共和国の人々に伝わる総理の真意と、また、これに対する対応をお尋ねいたします。 より根本的に申し上げるならば、日韓両国間にこの種の心理的緊張が繰り返される底には、朝鮮植民地支配の無効性をめぐって、日韓両国政府の解釈が対立したままに締結された日韓基本条約第二条の問題があります。また、朝鮮半島の三十八度線以北について日本政府が没交渉であり続け、一九四五年八月以来、四十一年を経た今も植民地支配の清算をなし得ていないのは、基本条約第三条にかかわっております。第二条の改正は韓国政府の望むところであり、第三条の改正は、緊張緩和を求めて模索する極東情勢に大きく資するものと信じます。近く韓国を訪ねられる総理は、この問題についてどのようにお考えになりますか。 また、総理は最近、さきの戦争について、私は侵略戦争だったと思っていると述べられたことが伝えられております。いまだかつてない御発言と思われますが、このことについてもあわせてお伺いしておきたいと思います。(拍手) 次に申し上げなければならないのは、政府がアメリカのSDI研究計画への参加を決めたことについてでございます。 SDI計画が、軍拡の歯どめの希望を断ち切って、宇宙にまで際限なく広げられるものであり、人類を絶望のふちに追い詰めるものであることは、アメリカのマクナマラ元国防長官、バンディ元大統領特別補佐官、ジョージ・ケナン氏らが、一昨年暮れにフォーリンアフェアーズに憂いに満ちた批判を共同論文の形で発表したことでも知られるところであります。総理は、これを我が国の平和国家としての立場に合致するとおっしゃり、さらに、我が国の関連技術水準の向上にも影響を及ぼす可能性があると位置づけておられます。 しかし、関連技術の問題について考えますと、以前は兵器と言えば明らかに兵器であると識別できるものばかりでありました。だからこそ、日本の武器輸出禁止措置はまずまず有効に働くことができたのです。ところが、SDIの研究となりますと、そしてその関連技術への波及を考えればなおのこと、すべての高度科学技術は軍事と分かちがたく結びついてしまうことでしょう。となりますと、軍事と普通の技術の境界がなくなり、一般的な科学技術の発達は直ちに軍事技術の発展そのものになってしまいます。軍事の発展を抑えるには一般の科学の発達を抑えねばならない、それはできない相談だということで、宇宙空間にまで広がる軍備の高度化にブレーキがきかなくなりはしませんか。 しかも、SDIは、日本も賛成した国連の宇宙軍拡防止決議にも、もちろん日本国憲法にも、そして国会における宇宙の開発及び利用に関する決議にも明白に違反します。政府自身が繰り返し述べてこられた日米安保条約の限定的性格さえも超え、さらに国家秘密法を誘う性格を持っております。総理は、それでも平和国家の立場に合致するとお考えなのでしょうか。私は、改めて、SDI研究参加に関する閣議決定を撤回するよう強く求めます。御見解を承りたいと存じます。(拍手) 平和の問題では、非核三原則についてさらにお伺いしなければなりません。トマホーク積載艦ニュージャージーなどが最近日本に寄港したことに関連いたしまして、三原則の中の持ち込ませずには寄港や領海通過は含まれないことにしようという、いわゆる二・五原則化の主張が聞こえてまいるからであります。端的に伺います。総理は、従来どおり、非核三原則を厳守することを国の内外にお約束することができますか。はっきりと御答弁をいただきたいと思います。(拍手) 防衛費のGNP比一%問題について伺います。 この歯どめは、改めて言うまでもなく、政府が約束し、国会が一致して決議した原則であります。いかなる理由によっても、この原則があいまいにされることがあってはなりません。また、かつて中曽根内閣下において安倍外務大臣が、GNP一%を守ることは日本がアジアに対して軍事大国にならないあかしでありますと述べられたことを深く記憶いたしております。GNP一%厳守について、総理の明確なお答えをお聞きしたいと思います。 また、軍事費が聖域であってはならないと思います。今日、正面装備について、円高による極めて大きな差益が生まれていることは明白であります。それに対して、今まで政府からは何も説明を聞かされてはいません。これは、軍事費が民主政治を遮って厚いカーテンの中で自由にされてきた典型的事例であります。政府は、円高によって変化した防衛費の実態を国会に対して明らかにすべきであります。どのようにお考えですか。(拍手) 最後になりましたが、私たちにとって最大の問題の一つは教育の問題であります。 総理も所信表明でおっしゃいましたとおり、そこには痛ましいいじめの問題を初め、学歴社会の問題、偏差値重視の受験競争の問題など幾多の課題がございます。それらはいずれも、私たち大人が知恵と勇気を振り絞って取り組まなければならない長い時間を必要とする問題でもあります。そうした困難に取り組むに当たっては、多くの専門家の技術を動員されねばならないでしょう。しかし、私たち政治家もまた、単に教育の制度をつくったり変えたりする役割のほかに、みずからの人格によって教育の根本にかかわっていることを忘れてはならないと私は考えております。 このことに関しまして、私は、昨年の五月、西ドイツの敗戦記念日に当たって、ワイツゼッカー大統領が行われました連邦議会での演説を思い起こすのでございます。大統領は、長い演説の終わりを若い人々への呼びかけで結びます。「ヒトラーはいつも、偏見と敵意と憎悪をかき立て続けることに腐心しておりました。若い人たちにお願いしたい。他の人々——ロシア人やアメリカ人、ユダヤ人やトルコ人、黒人や白人、これらの人たちに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。互いに手を取り合って生きていくことを学んでいただきたい。我々政治家にもこのことを肝に銘じさせてくれる諸君であってほしい。」教育の根は、やはりこのような誠実な平和思想と歴史認識にあることを、私はまことに肝に銘じさせられております。総理の御所見を承りたいと存じます。(拍手) 以上で私の質問を終わります。中曽根総理の御誠意ある御答弁をお願いいたします。ありがとうございました。(拍手) 〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 土井議員にお答えをいたします。 まず、委員長御就任おめでとうございました。(拍手) 第一問は、老人保健政策の問題でございます。 私も土井さんと同じように、人間主義の政治、人生と自然を大切にする政治を心がけてやっているつもりであります。老人保健制度の改正は、日本が急速に長寿社会を迎えまして、この長寿社会にふさわしい高齢者の保健医療制度を確立するためにぜひとも必要なことなのであります。特に、この制度を長期安定して持続的にこれを行う、また、世代間の公平ということも長い期間には考えてもおかなければなりません。そういうような考えに立ちまして本老人保健法案を提出したので、撤回する考えはございません。 国鉄改革の問題でございますが、今回の国鉄改革は、臨調答申及び国鉄再建監理委員会の意見を受けまして、国鉄の現状からどうしても民営・分割、そういう方法以外には国鉄を再生せしめる方法がないという結論から実行しておるものであります。すなわち、経営の健全化であるとか、あるいは従業員に対する年金や退職金の保障であるとか、あるいは国民に対するサービスの向上であるとか、地域との密着であるとか、そういうさまざまな問題を解決するのはこの方法以外には断じてないと考えて提出しているものであります。(拍手)国鉄改革法案の成立後には、設立委員の任命あるいは承継計画の策定、新事業体の職員の採用手続等新規事業体発足のためのいろいろな準備が必要であります。したがいまして、国鉄改革法案については十分御審議をしていただき、できるだけ速やかに成立さして来年の四月一日に間に合うようにお願いいたしたいと思うところであります。 次に、解散等に伴う政治空白の問題でございますが、先般の解散は、これは衆議院の定数違憲状態を速やかに解決するという院の決議及び政府の方針等に基づいて、やむを得ない処置として行ったものでございます。景気に対する影響については十分注意をしておりまして、四月八日の対策、五月三十日の総合対策等々をもちまして事前にいろいろの準備をして、さらにその間におきましても行政的空白を生じないように、十分各省庁に方針を明示して解散を行ったものであります。その点は御了承をお願いいたしたいと思います。 次に、農業の問題でございますが、私は前から、農は国のもとであり、また農業は生命産業であると申して、農業を重視しているものであります。しかし、農業をめぐる内外の状況はかなり厳しい状況にだんだんなってきつつあります。しかし、政府としては、食糧自給の強化に関する国会決議を踏まえまして、食糧自給力の維持強化を基本としつつ農業の生産性の向上を図り、国際競争力をできるだけ速やかに付与して、そして体質強化を図ってまいりたいと思っております。 食管制度につきましては、国民の主食である米は国内産で自給するという方針のもとに米を政府が責任を持って管理するということによりまして、生産者に対してはその再生産を確保し、消費者に対しては安定的にその供給の責任を果たす、こういう制度が食管制度でございますが、この制度の基本は今後とも維持していく考え方でおります。(拍手) ただ、農業につきましては、海外における米の値段と日本における米の値段の落差が非常に開いてきておりまして、さまざまな論議を海外からも受けております。これらの問題については十分注意をしつつ、農業自体の生産性の向上や改革を我々は急いでいかなければならない、このように考えておるところであります。 所得税の減税等につきましては、税調中間報告において、個人所得課税については累進構造の緩和等負担の軽減、あるいは特に家庭婦人に対する特別の減税措置、あるいはサラリーマンに対するいわゆる必要経費を選択的に認める等々の中間答申を得ておりまして、今最終答申に向けて努力されておるところでございます。やはり所得税、法人税等につきましては、できるだけ簡素化するということが大事であり、そして適正な減税を断行するということが必要である、そういう考えに立ちまして、税調におきましては今鋭意検討を加えておるところであり、その財源措置等も含めて、いずれ十月か十一月には答申がなされると思います。その包括的答申を得て適切に対処するつもりでおります。 円高不況と中小企業対策でございますが、政府としては、最近の経済動向にかんがみまして、経済の動向と国際通貨情勢を注視しつつ、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めるつもりです。来る十九日には、円高不況等に対処するために経済の総合的な対策を思い切ってやりたいと考えております。そして、でき得る限り四%成長に近づけるべく、内需の拡大に最大限の努力を払う所存でございます。 具体的には公共投資の追加、住宅投資の促進、規制緩和、あるいはインセンティブの付与等による民間活力の活用の推進、それから中小企業対策等、さらに円高による差益の還元等、あるいは雇用対策、これらにつきましても十分配慮してまいるつもりであります。特に中小企業等については、輸出関連あるいはいわゆる城下町企業と言われる地域的な産業の問題、あるいはそれから派生する失業問題等々につきましては、深甚の注意を払いまして対策を講じたいと考えております。 いわゆる大型間接税とマル優の問題でございますが、私は選挙中に、国民も反対し、党も反対するようないわゆる大型間接税というようなものはやりませんと言っておりまして、それは今日も一貫しているところであります。(拍手)マル優につきましても、老人とか母子家庭とか、社会の弱い人たちについては十分配慮しなければならないとも演説しておるのでございます。いずれ包括的に税調で討議が行われると思います。税調におきましては、聖域を設けないで、自由闊達な議論を保障しているところであります。この包括的な答申が出まして我々は検討してまいりたいと考えております。 公共事業費の優先配分の問題でございますが、配分につきましては、当然、不況地域あるいは富裕でない府県あるいは失業の多発地域等々について優先配分を行う考えでおります。その際、これらの配分や事業の執行等につきましては、あくまで公正を確保してまいりたいと考えております。 次に、いわゆる靖国問題でございますけれども、靖国神社が戦没者に対する追悼の中心施設である、平和祈念と戦没者に対する追悼、そういう考えに立ちまして、昨年公式参拝をし、官房長官談話を発表したところであります。この官房長官談話は今日も生きております。しかし、その後いわゆるA級戦犯の問題が惹起されました。やはり日本は近隣諸国あるいはアジア諸国との友好協力関係を増進していかなければ生きていけない国でございます。しかも、それらの国との平和の回復の際におきましては、条約あるいは宣言等におきまして、過去についてはこれを教訓とし、そして反省すると我々は約束もしておるところでございます。しかし、一方におきましては相手側の国民感情もございますが、日本側の死生観とか日本側の国民感情もあり、主権と独立の擁護、内政不干渉という、厳然と守らなければならぬ点もあります。 しかし、国際関係におきましては、我が国だけの考えが通用すると思ったら間違いでありまして、一方的通行というものは危険であります。特にアジア諸国等々の国民感情も考えまして、国際的に通用する常識あるいは通念によって政策というものは行うのが正しい。それが終局的には国益を守る方途にも通ずることになると思います。アジアから日本が孤立した場合に、果たしてアジアのために第一線で戦死したと考えているまじめなあの将兵たちが、英霊が喜ぶであろうか。英霊も理解していただけるのではないかとも考えております。日本がアジアから孤立して喜ぶ国はどこの国であるか、そういう点も外交戦略としてもまた考える必要があり、いわゆる国益全般を考え、また日本の国際的名誉を確保するという面からも、日本には民主主義に応ずる正しい反省力もある、そういうことも国際的に示す必要もあると思っております。(拍手) やはり民主主義の一番強いところは反省力であり、抑制力であると私は思っております。そういうような考えに立ちまして、靖国神社の問題を処理したものでございます。今後とも、このように国際関係を良好に維持することによりまして、責任を果たしてまいりたいと思います。 次に、いわゆる藤尾文相の発言問題でございますが、あの文芸春秋に出ました発言内容を詳細に検討いたしましたが、政治家個人の発言と言われておっしゃったことであります。御本人はそのような心情でおやりになったと思いますが、やはり現職大臣として見ると、国際的影響ということも考えなければならぬのであります。したがって、内容については現職大臣としては部分的に妥当を欠くものがあると考えました。そして、日本の立場に重大な疑惑を生ずるおそれもなきにしもあらず、そう考えて、重大かつ厳粛に我々はこの問題を考えたわけであります。そしてやむを得ず解任という処置をとった次第でございます。政府は、アジア各国等に対する考え方、外交政策については、これらの問題が起きましても一貫して変わらない友好政策を持っているということをここで申し上げる次第でございます。しかし、このような事態が起きたことはやはり遺憾な事態でありまして、今後ますます近隣諸国との友好を増進してまいりたいと思います。 北朝鮮との問題でございますが、やはりこの問題は南北を問わず遺憾の事態であったと私は考えております。しかし、北朝鮮には日本は外交関係はございません。官房長官談話をこの間発表いたしましたが、この官房長官談話というもので一般的に政府としての意思表示をしている、このようにお考え願いたいと思うのであります。 次に、日韓基本関係条約の問題でございます。 御指摘の第二条は、いわゆる日韓併合条約がもはや無効であるとの客観的事実を申し述べたものであると御理解願いたい。第三条は、大韓民国政府の基本的性格について国連決議を引用して確認したものでありまして、御指摘のごとき南北の緊張緩和と統一問題とは関係はございません。 次に、侵略戦争の問題でございます。 私は、六十年十月二十九日の衆議院予算委員会における答弁におきまして、「私は、いわゆる太平洋戦争、大東亜戦争とも言っておりますが、これはやるべからざる戦争であり間違った戦争である、そういうことを申しております。また、中国に対しては侵略の事実もあったということも言うております。これは変わっておりません。」このように予算委員会において昨年答弁しているところでございます。歴史の解釈、歴史の流れというものは、一つにはやはり国際的に通用する判断で考えられなければならない、そうして、歴史の流れ全般を考えながらこれは大局的に判定すべきものである。一つ一つの個々の事件というものに焦点を当てれば、両方にいろいろな言い分もございましょう。しかし、大きな歴史の流れというものも我々はよく考えなければならない。それと同時に、我が国の主権、独立、内政不干渉を我々が擁護するという点ももちろん考えなければなりませんが、先ほど申し上げましたように、民主主義の大事な点は、その自制力と反省力にあるという点もまた大事な点であると考えております。 私は、日中戦争につきましては、例えばいわゆる対支二十一カ条の要求であるとか、あるいは張作霖の爆殺事件であるとか、あるいは柳条溝事件であるとか、さまざまな事件がその根底にありまして、中国民族の感情を著しく傷つけていたという事実を否定することはできない。しかも、それらの事件が起きた場合に、大部分の場合には、中央政府は不拡大方針をとっておったけれども現地軍がこれを次第次第に拡大の方へ持っていったという歴史的事実も指摘されております。そういうような状態全般を考えてみた場合に、やはり侵略的事実は否定することはできないと私は考えておるところでございます。 次に、SDIの問題でございますが、米国は、軍備管理・軍縮交渉努力と並行しつつ非核による高度の防衛システムについて研究を行って、究極的には核兵器を廃絶しようという基本理念のもとにSDI研究計画を推進しております。言いかえれば、今までのような攻撃的な兵器体系から防御的な兵器体系へ転換しよう、それから核兵器を廃絶するという究極的目的を実現しよう、そして非核の防御体系を建設しよう、これがSDIの基本理念であります。これは、レーガン大統領から私は直接聞いたところであります。これらの考え方は、我が国の平和国家としての立場に矛盾するものではありません。また、SDI研究計画への我が国の参加は、日米安保体制の効果的運用に資するものであり、かつ、我が国の関連技術水準の向上にも影響を及ぼす可能性がございます。 しかし、問題は、国会決議に抵触するかしないかという問題がございます。これらにつきましては、国会決議に抵触しないと政府は考えました。決議につきましては国会が有権的に解釈すべきものであると考えておりますが、これは、米国政府が主体的になって行うそのような兵器研究でありまして、そこに部分的に、局部的に我々が参加するということは国会決議には反しない、そう考えておるところでございます。 我々は、SDIにつきましてはアメリカ大統領に対して五原則を私から言ってあります。これは、第一は、ソ連に対する一方的優位を追求するものではない。第二は、西側全体の抑止力の一部としてその維持強化に資する。第三は、攻撃核兵器の大幅削減を目指す。第四は、ABM条約に違反しない。第五は、開発、配備については同盟国との協議、ソ連との交渉が先行すべきである。このような五原則を申し述べて、レーガン大統領も承知しておるところでございます。このような考えに立ちまして、SDIに対する決定を撤回する考えはございません。 次に、非核三原則についてでございますが、政府としては、非核三原則を堅持する所存であるということは変わりはございません。日米安保条約上、いかなる核の我が国への持ち込みも事前協議の対象であり、もしその事前協議が行われた場合には常にこれを拒否する、非核三原則を堅持するということは前から申し上げておるとおりでございます。今回、ニュージャージーの入港問題につきましても、倉成外務大臣とマンスフィールド駐日大使との間で核持ち込みについての事前協議制度の確認を行っているところでございます。 次に、GNP一%の問題でございますが、今後のGNPの推移及び防衛関係費の動向には不確定の要素がありまして、具体的にどういうふうになるかということは、現時点では確たることは申し上げられません。いずれにせよ、政府が昭和五十一年の三木内閣の閣議決定を尊重し、守りたいと考えていることは前から述べておるところでございます。 円高によって変化した防衛費の実態を明らかにせよという御質問でございますが、防衛費の一部が今回の円高によって影響を受けていることは事実であろうと私も考えます。それらの部分は、いずれ節約であるとか、あるいは自衛官のベースアップに転用されるとか、いろいろ内部的操作も行われるのではないかと思いますが、いずれ委員会等において御質問がある場合には、政府の専門家、担当大臣から御答弁申し上げると思います。 次に、平和教育と歴史教育の問題でございます。 結論から申し上げれば、ワイツゼッカー西独大統領の発言については私も同感であり、土井さんの御質問の趣旨には賛成でございます。我が国の教育基本法第一条には、教育の目的として、平和な国家及び社会の形成者として必要な資質を養うことを明示しております。これに基づきまして、学校教育においては、世界平和の必要性や日本国憲法の平和主義の原則並びに我が国及び世界の歴史について、児童生徒の心身の発達段階に応じて適切に教育を行っているところでございます。 以上で答弁を終わります。(拍手) 〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 二点にわたりまして総理大臣の御答弁を補足いたします。 まず、税制調査会の審議に当たりましては、税制改革に関する国会の御論議、選挙中に行われました総理大臣の発言等につきましては、当然のことながら十分念頭に置いて審議が行われているものと信じております。私どもといたしましては、同審議会の包括的な指針を得まして税制改革に対処してまいりたいと考えております。 次に、公共事業の執行につきまして、土井委員長から御意見と御懸念の御表明がございました。 公共事業の執行に当たりましては、地域の経済事情、景気状況等の実情を念頭に置きまして、御指摘のように国民生活関連、中小企業関連の施設を重視しつつ、適切な執行に努めてまいったつもりでございます。今後もそのようにいたさなければなりません。なお、公共事業の執行が御指摘のようないろいろな事情によってゆがめられることが万々一起こりませんように、今後とも十分戒心してまいる所存でございます。(拍手) ─────────────
○議長(原健三郎君) 加藤紘一君。 〔加藤紘一君登壇〕
○加藤紘一君 私は、自由民主党を代表して、中曽根総理の所信表明に対し質問を行います。 総理、さきの同日選挙で、我が自由民主党は予想を上回る大きな勝利をおさめました。これは、何よりもまず、中曽根総理の過去三年半の実績と強力なリーダーシップのもと、我が党の政策が国民の強い共感を得たためだと思っております。(拍手)しかし、同時にこの大勝は、全党員が何としても政局の安定をという強い使命感に燃えて、持ち場持ち場でその力をフルに発揮したことによるものでもあります。中でも、我が党のニューリーダーと呼ばれる方々は、競い合うように全国をはせめぐり、有権者に対し熱烈に我が党への支持を訴えられました。すなわち、私は、この勝利は、中曽根総理のリーダーシップ、我が党の政策、ニューリーダーの活躍を合わせた総合力によるものと考えますが、総理はいかなる見方をされておられるのか、まず御所見をお聞かせ願いたいと思います。(拍手) 中曽根総理、三十一年前、左右社会党の統一と保守合同による自由民主党の誕生の際、人々は政党の離合集散の時代は終わって、二大政党が交互に政権を担う健全な議会政治の時代が来ることを期待しました。この年が一九五五年であったことから、この二大政党制は五五年体制と呼ばれました。しかし、実際にはその後政権の交代は行われず、我が自由民主党が国民の支持のもとに一貫して政権を担当するという形が続いてまいりました。 そして、総理は、先般の同日選挙勝利後、この選挙の大勝によって五五年体制は完全に終わったと述べられたのであります。それでは、総理、これから果たしてどのような体制の時代が来るのでしょうか。総理の言われる八六年体制とはいかなるものなのでしょうか。その中で、野党は一体どのような役割を果たすことになるのでしょうか。御所見をお伺いしたいと存じます。(拍手) さらに、私は、この与党絶対多数下の国政運営についてお尋ねいたします。 同日選挙開票後、総理は、数におごることなく、野党の言い分にも謙虚に耳を傾けるべきであると全党員を戒められました。我が党は、各党各派との協調を図り、特に国民生活に関係する施策については、野党との間に率直な対話を重ね、理解と協力を得るように努めるべきであると思います。ただ、ここで留意しておくべきことは、過去の例を見ると、与野党の議席差の少ないときよりも、我が党が安定多数を占めているときの方が、逆に法案等の審議が渋滞するということであります。 一方、我が党は選挙に当たり国民に多くの公約を行っており、本国会では補正予算を初め多くの重要法案を成立せしめなければなりません。国民が政局の安定を我々に与えたのは、これら我が党の政策が速やかに、かつ強力に実行されることを求めたからであります。我々は、まず議論を十分に尽くし、どうしても話し合いがつかない場合には、議会政治の多数決の原則によって対処すべきことをためらってはならないと思いますが、総理の御所見はいかがでございますでしょうか。(拍手) 総理、日本経済は今、戦後かつて経験したことのない状況に直面しております。 その第一は、何といっても昨今の急激な円高のあらしであります。そして、円高にもかかわらずふえ続ける貿易黒字。経常収支の黒字は、対GNPで昭和六十年度三・八%と未曾有の水準に達しました。さらに、この結果、海外への投資活動が活発化し、日本はついに海外に対する世界一の債権国となりました。これらのことは、基本的には、我が国のファンダメンタルズが良好であり、国民が勤勉さも活力も失っていないことを物語っております。しかし、大幅な対外不均衡の継続は、我が国の経済運営においても、世界経済との調和という点からも、決して望ましいものではありません。我々は、拡大された生産能力にふさわしい規模の国内需要を喚起するとともに、製品輸入の拡大等の措置を強力に推進して、現在生じている種々のアンバランスを解消しなければなりません。 この点で、私は、先般、総理の提唱により政府・与党経済構造調整推進本部が設けられ、総理みずから本部長となって、国際的に調和のとれた経済構造実現に強い熱意を示されたことに深く敬意を表するものであります。しかし、総理、経済構造調整は我が国の経済、産業の根本にかかわるものであります。これが達成にはかなりの歳月を要し、即効を期待してはなりません。例えば、最近まで造船所で溶接作業に従事していた人がすぐコンピューターソフトの仕事に移ることは困難です。 我々は、経済の急激な変動の中で発生している幾つかの問題にとりあえず早急に手を打つことが必要であります。最大の問題は、本年度の経済成長率が政府見通しの四%を割り込むと予想されていることです。特に、円高による製造業の企業収益の悪化、それに伴う設備投資の減少、そして堅調と言われる消費も、先行きは楽観できない状況にあります。当面の不況を克服するためには、やはり財政の発動が必要であります。私は、財政改革の基本路線はあくまで堅持しつつも、本国会に提出を予定されている六十一年度補正予算をかなり大型な規模のものとすることを強く望みたいと思います。その財源については、必要とあらば建設公債を発行することもあわせ考えるべきであります。補正予算を含め、内需中心の経済成長を実現するため、どのような施策を講られるか、総理のお考えを承りたいと存じます。 また、この関連で、円高等の差益の還元について伺います。 急激な円高は、国内の輸出産業等に対して大きな打撃を与えておりますが、輸入面ではプラスに作用し、価格低下による実質所得の向上をもたらして、内需拡大に寄与し得るものであります。私の計算によれば、本年一月から七月までの輸入支払い総額は、円ベースで、昨年の同じ時期に比べて五兆六千億円も減少しています。これは、数量面等の影響も含まれておりますが、円高による輸入価格の低下によるところが大きいのでありましょう。これを単純に年ベースに直せば、九兆五千億円のメリットが出ることになります。 この円高差益等の問題については、これまで電力、ガス料金の引き下げ、輸入牛肉の小売目安価格の引き下げ、国際航空運賃の方向別格差の縮小、国際通信料金の引き下げ、輸入品の価格調査等の施策が講じられてきました。しかし、国民の間に還元はまだ不十分との声が強いのも事実であります。私も、もう一段の差益還元策を講ずるべきであると考えます。総理は、すし、うどん、てんぷらの値下げも主張されておりますが、それらに限らず、国民生活に密接な消費財、あるいは公共的料金等の差益還元をより速やかに進めるとともに、国民に対して積極的な情報提供を行うことが重要であると考えます。差益還元についての総理の取り組み姿勢をお示しいただきたいと存じます。 次に、中小企業問題についてお尋ねいたします。 円高により一番深刻な影響を受けているのは、輸出依存度の高い中小企業です。政府は、これまでも、特定中小企業者事業転換対策臨時措置法の制定を初めとして、数次にわたり緊急中小企業対策を講じてきておりますが、円高の一層の進展の中で円高関連倒産が急増し、七月には七十二件を数えるに至りました。特に輸出型産地や構造不況業種に依存する地域は、円高の打撃を真っ向から受けており、地域経済全体が疲弊してしまうおそれすらあります。地域の中小企業が新しい経済環境に適応していくことができるよう、事業転換の円滑化等のための金融対策や地域活性化対策など、あらゆる手段を導入してこれらを支援していくべきであると考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。 次に、雇用の安定についてお尋ねいたします。 円高の急速な進展を背景に景気動向に不透明感が増す中で、失業率の上昇が目立ちます。特に七月には男子の失業率が三・一%に達し、雇用失業情勢は厳に警戒を要します。輸出型産地においては休業や解雇など各種の雇用調整が実施され、また、造船、非鉄金属等の構造不況業種では膨大な余剰人員を抱えて、希望退職の募集など人員整理が予定されております。 また、今後、国際化の進展につれて企業の海外投資はますます促進されるでありましょう。企業にとっては、利潤やコストを重視する以上、これは当然の流れかもしれませんが、これによって国内産業の空洞化や雇用状態の悪化が生じないよう、政治は適切な対応を行わなければなりません。雇用の安定は国政の最重要課題の一つであります。(拍手)総理の御見解をお伺いいたしたいと存じます。 次に、国鉄改革についてであります。 先般発表された国鉄の六十年度決算は、一兆八千億円の赤字を計上した史上最悪のものでありました。国鉄の抜本改革の必要性、緊急性はもはや論議の域を超えており、分割・民営を基本とする改革は二十一世紀に向けて鉄道の再生を図る最善の方策であると思います。(拍手〉 改革を実施するに当たって最も重要なことは、余剰人員の雇用対策、長期債務対策とともに、新会社で働くこととなる職員の意識改革でありましょう。国鉄では企業人教育の実施、民間企業への派遣等を行うなど、労使一体となっての改革への機運が高まりつつあると聞いております。また、最近国鉄職員の言葉遣いが丁寧になったとか、出札窓口が親切になったとかの声を多く耳にするようになりました。このことは、我が党が主張してきた国鉄改革路線が既に成功の兆しを見せ始めているものでありましょう。(拍手) 「新しい皮袋には新しい酒を」のことわざのとおり、時代の変化を先取りする精神とコスト意識を持ち、意欲を持って仕事に取り組む人材を擁した活力ある新会社をスタートさせることが必要なのではないでしょうか。そのためにも国鉄改革関係法案の一日も早い成立を期さなければなりません。総理の御所見をお伺いいたします。(拍手) 中曽根総理、課税や税制に対する国民の関心がこれほど高かったことはかつてありません。また、今ほど人々が重税感や不平等感を訴えたこともありません。課税や税制が国民の勤労意欲と結びついていることは明らかであり、ゆがみやひずみのない税体系を確立することは我が国の最重点課題の一つであります。 我が党は、このたびの選挙において、特に負担感の強い中堅サラリーマン層を中心とした所得税、住民税の思い切った軽減合理化と、他の先進国の水準と比べて高負担水準にある法人課税の見直しを公約いたしました。減税を実行するには財源が必要ですが、税の自然増収によって減税財源を満たすことができたかつての高度成長時代とは異なり、減税の財源は同じく税制改革の中で見出さなければなりません。このいわゆる増減プラス・マイナス・ゼロの中での大幅な税制改革は、各般の既存の利害が絡むところから、その推進には多大の困難を伴うことでしょう。しかし、どれほど困難であろうとも、我々は今後の日本の社会を展望しつつ、真の改革を実現すべきであり、それには確固たる決意と強力なリーダーシップが必要です。税制改革に対する総理の御決意のほどをお伺いしたいと思います。 本国会の重要問題の一つは、老人保健法の改正であります。先般発表された人口推計によれば、我が国は今後世界に例を見ないスピードで高齢化し、昭和九十六年には国民四人に一人がお年寄りという時代を迎えるわけであります。このような超高齢化社会を、国民だれしもが人生八十年の長寿を心から喜ぶことのできる長寿社会となし得るか否かは、これからの最大の課題でありましょう。 政府は、去る六月、長寿社会対策大綱を決定しましたが、その中で、壮年期からの総合的な健康づくりと高齢者の医療保障の中核は老人保健制度であるとし、その長期的安定を図るため、老人医療費拠出金の加入者按分率の見直しと一部負担の適正化等の推進を挙げております。長寿社会における社会保障の構築の第一歩は、この老人保健制度の改革の成否にかかっていると言って過言ではありません。老人保健制度改革に対する決意について総理にお伺いします。 中曽根総理、次に外交問題についてお尋ねいたします。 日米関係は我が国外交の基軸であります。最近の経済摩擦によって、我々はともすれば両国関係の問題点のみ列挙する傾向にありますが、確固たる信頼感に裏打ちされた日米安保関係と密接な政治経済関係は、世界に類例のないほど良好な二国間関係と申せましょう。これは中曽根外交の大きな成果であります。(拍手)ただ、中間選挙が近いこともありますが、最近米国内でとみに顕著な保護主義的傾向は我々の気になるところであります。 我が国としては、今後、積極的な内需拡大政策を責任を持って推進するとともに、米国に対しては、第一に、日本の市場はアメリカ人が考えるほど閉鎖されたものではないこと、第二に、円ドルレートの変更のみでインバランスは解決し得ないこと、第三に、急激過ぎる円高は、日本経済に調整能力を超えた衝撃を与え、ひいては日米関係にかなりの傷跡を残しかねないことを率直に、かつ強く発言すべきだと考えますが、総理の御見解を求めます。(拍手) 次に、日ソ関係についてであります。 ソ連は、体制及び理念が異なるとはいえ、我が国にとって重要な隣国であります。そのソ連との間に、昭和四十八年以来閉ざされていた首脳の相互訪問が原則的に合意され、まずゴルバチョフ書記長の訪日実現につき話し合いが進んでいることを私は高く評価いたします。 ここで伺いたいのは、ゴルバチョフ書記長訪日に際してとるべき我が国の基本的方針であります。すなわち領土問題であります。北方四島は歴史的にも法的にも我が国の領土であります。また、ソ連はかつて、歯舞、色丹両島の返還の可能性につき言及しました。また、昭和四十八年の田中首相訪ソの際には、双方が領土問題は戦後未解決の問題と了解しました。しかるにソ連は、その後、北方領土問題は解決済みとのかたい姿勢に返ったまま、その態度を変えておりません。私は、隣国ソ連との間で真に相互理解に基づく安定的な関係を築くべきであると考えますが、領土問題のごとき国家間の基本問題についての約束がほごにされるようでは、信頼関係の樹立は困難であり、各種分野での協力推進は不可能であり、また推進すべきでもありません。ゴルバチョフ書記長は対日関係改善に強い意欲を表明しているとのことであり、総理も同書記長と率直な意見交換をされることになると思いますが、この点についての総理の御決意のほどをお伺いしたいと存じます。(拍手) SDI研究参加問題について伺います。 レーガン大統領のSDI、戦略防衛構想は、スターウオーズ、核戦争を宇宙に拡大するものといったおどろおどろしいイメージで語られています。しかし、私は、この構想は基本的には人間を殺りくする攻撃的兵器の開発ではなく、そのような武器を防ぐ手段、すなわち盾の開発を研究するものであると考えます。 昔、中国のある城下町で、どんな盾をも貫き通す矛と、どんな矛をも防いでしまう盾とを同時に声高に売っている商人がいました。これを見たある老人が「商人よ、その矛と盾とをともに闘わせたらどちらが勝つのだ」と尋ね、商人が返答に窮したところから矛盾という言葉が生まれたことは余りにも有名な故事であります。 みずからの生命と国家を守り得る完璧な盾をつくり得ないと考えた人類は、これまでより強力な矛、つまり攻撃的兵器の開発とその抑止力による安全保障を模索し、最終的には核兵器の恐怖の均衡に到達しました。しかしそれは、レーガン大統領みずからが言うごとく、人道的な状態ではありません。唯一の核被爆国日本としては、一刻も早く取り除きたい状態であります。 また、私の知り得る限り、ソ連は現在、米国提案のSDIには反対しているものの、防御兵器を主とする安全保障という概念そのものを否定したことはないはずであります。この意味において私は、政府がこのたび研究参加を前提として米国政府との協議を決定したことに賛意を表するとともに、研究に参加する我が国企業が、その研究成果の帰属及び利用などにつき、決して不利にならぬよう厳しい対米交渉を行うべきだと考えますが、この点についての総理の御見解を求めます。(拍手) 中曽根総理、私は、我が国の今日の繁栄の中で最も気になってならないことを最後に一つだけ申し上げます。 昭和三十年代、例えば我が国に初めて高速道路の建設が行われた際、その資金は世界銀行からの借款、技術は西ドイツや米国からの導入によるものでありました。しかし現在、我が国には多くの企業や組織に資金、技術、人材が満ちあふれており、三十年前を思うとまさに隔世の感があります。にもかかわらず、この我が国の能力や活力は、今日十分に生かされておりません。人々のエネルギーは、むしろ株や土地への投機など、いわゆる財テクに消費されるようになりました。私は、この原因は、我が国に今日、そのエネルギーを吸収し得るような大きな夢や目標が欠けているところにあると思います。 しかし、今、一つの新しい動きが生まれつつあります。我が党の次の時代を担う指導者の方々が、あるいは列島ふるさと論を、あるいはニューグロウス、すなわち新しい発展を、あるいは資産倍増論を打ち出され、それを本格的な構想に築き上げることに努めておられます。私は、これらの構想が真に国民自身のものとなったときに、日本人は、かつての高度経済成長時代にも増して、そのエネルギーを爆発的に発揮し、日本民族の可能性を実現し、歴史に新しい次元を開くものと信じます。 中曽根総理の自由民主党総裁としての任期は延長されました。私は、総理がこの期間に、総理の提唱されるたくましい文化と福祉の国、国際国家日本の建設のためにも、ぜひこれらの新しい世代の構想づくりに積極的な支援と助言を行い、そのレールを敷くための土盛りの仕事を完成していただきたいと念じつつ、私の質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) まず、先ほどの土井議員に対する御答弁の中で欠落している部分を補足させていただきます。 三月四日の与野党の幹事長・書記長会談における与野党の合意事項、減税に関する問題でございますが、これらにつきましては、合意事項をあくまで尊重してまいります。そして、与野党の協議が進められることを見守っていきたいと思っております。 次に、加藤議員の御質問に対しお答え申し上げます。 まず、選挙戦でのニューリーダーの活躍の評価でありますが、私も非常に評価しているものであります。(拍手)もとより、今回の選挙は全自民党員及び自民党を支持してくださる国民のお力のたまものでございまして、確かに総合力であります。心から全国民及び党員について感謝を申し上げる次第であります。(拍手) 次に、いわゆる五五年体制と八六年体制の問題でございますが、私が自民党の研修会で演説をいたしましたのは、実は五五年体制というものができました。しかし、五五年体制にどの程度の成果があったのだろうか、この原因はどこにあるだろうかと考えてみますと、どうも与野党の政策に距離の差があり過ぎる、その御不満が国民の皆さんにかなりうっせきしてきたのではないか。自由民主党は、今回の選挙におきまして、都市の市民層あるいは青年や婦人の立場を非常に重視して、政策の幅をかなり左の方にも広げたわけであります。そして改革を訴えたわけであります。しかし、選挙の結果を見ますと、どうも指摘されますことは、自民党が改革党であって、そうでない一部の野党は改革を渋る政党になった、そういうふうに指摘されております。(拍手) そこで、これから我々が日本の民主政治を完成していく上について、いつか来た道をもう一回たどるということは愚劣である。やはり新しい道を模索しなければならない。それはどういうことであるかといえば、与野党の政策の差の距離を縮めるということである。でき得べくんば、与野党はセンターラインを中心にして政策的にオーバーラップすることを国民は欲しているのではないか。その方向に持っていきましょう。そういう意味において、特に社会党で土井委員長がお出になりまして、原子力発電、韓国問題、安保条約、自衛隊の問題、どういうふうに力を発揮されるか、注目しているところであります。こういうことなんであります。(拍手) 次に、国政運営の問題でございますが、民主政治におきましては数も非常に重要であります。しかし、政策の問題というものは必ずしも数に正比例するものではございません。やはり数も大事であるけれども、政策の質というものを我々は謙虚に考えなければならぬと思います。最終的にはもちろん議会政治は多数決でございますから、この多数決を遵守しなければならぬと思いますが、そこに至る過程におきまして、やはり謙虚に国民や野党の声に耳を傾けながら競争と協調の実を上げたい、このように考えておるところでございます。 次に、内需の問題でございます。 政府は、今後とも内外の経済動向及び国際通貨情勢等を注意しつつ、引き続き機動的な経済運営を図りますが、特に最近の景況にかんがみ、来る十九日に経済対策閣僚会議を開いて思い切った総合対策を行います。その総合対策の中身といたしましては、やはり四%への成長の努力を捨てない、四%に限りなく近づける努力を今後も継続して行う、そのために幅広い手段を尽くしまして有効な経済対策を策定したい、そのように考えております。 円高差益の還元の問題につきましては、四月八日の総合経済対策あるいは五月三十日の当面の経済対策、二次にわたりまして特に指摘をし、いろいろ施策をしたところでございますが、ややもすれば国民の皆様方にはまだ御不満が多いことを知っております。政府としても、特に公共料金及び国民生活に密着した消費財等の円高の効果を一層浸透するように情報提供あるいは監視を行う、そういうような政策を強力に進めてまいるつもりでおります。 地域の中小企業対策につきましては、産地、いわゆる企業城下町、あるいは輸出関連、あるいは下請企業、あるいは金属工業、そういうところに不況がしわ寄せして出てまいります。造船、海運の不況も長い間の課題でございます。あるいは北洋漁業問題も、我々はこれを重視しなければなりません。これらの問題につきましては、低利融資制度を初め、その地域に適切な総合的な支援策を考えてまいるつもりでおります。 次に、雇用対策に対する基本的考えでございますが、最近の景気状況等にかんがみまして、失業が続出する危険性を我々は十分注意して見ていかなければならぬと思っております。そのためにも、今回の総合経済対策を行う予定でございます。雇用調整助成金制度の拡充、不況業種、不況地域対策等の施策を積極的に推進してまいります。また、海外投資に伴う雇用問題、いわゆる産業の空洞化の問題等につきましても、これは今後の重要な問題であります。労使間を初め関係者の意見も聞きながら、基本的な対応のあり方を検討してまいりたいと思います。 国鉄職員の意識改革の問題でございますが、御指摘のように、最近国鉄職員の意識はかなり変革してきたと思っております。さらにこれを進めてまいりたいと思います。新会社におきましては、厳しい競争に勝って効率的な経営を行っていかなければならないのでありますから、今までと異なった民間的な手法、民間的な意識に立った徹底的な改革が必要であります。元来、国鉄職員には素質的に優秀な職員が多いと思っております。したがって、今回の改革を機に企業マインド、民間マインドというものを誘発いたしまして、教育に十分心がけてまいりたいと思っておるところでございます。 税制改革につきましては、特に重税感、それから公平の確保、こういうような点に注意してまいりたいと思っております。サラリーマンあるいは家庭婦人等に対する特別措置等についても言及しておるところでございます。今後、税制調査会において総括的な最終的な答申が出てくると思いますが、二十一世紀を展望いたしまして、合理的な、大多数の国民が、まあこの程度で、これならまあいいと納得する案を、できるだけ国民の選択のもとに最終的に絞り上げていく、そういう考えに立ちまして税制を改革してまいりたいと思います。 老人保健制度につきましては、先ほど来申し上げましたように、長寿社会にふさわしい長期的に安定した高齢者の保健対策を確立していくというために、どうしてもこれは不可欠の法案でございますので、我々は全力を尽くして成立を期する次第でございます。 円高と日米経済関係でございますが、最近、アメリカ側におきましても、単に円ドル調整だけによってアメリカの輸出は伸びないということが次第にわかってきたようであります。やはりいわゆる経済のファンダメンタルズというものが非常に重要であるということが認識され、あるいはさらに、例えば内需の喚起であるとか、そのような総合的な対策によってこの経済不均衡は是正さるべきであるという認識が強くなってまいりました。我々も我々の認識をアメリカ側に強く意見を申し上げまして、両者の合意を得るように努力してまいりたいと思っております。 ゴルバチョフ書記長の訪日の問題でございますが、日ソ間の基本的な領土問題、これを解決して平和条約を締結するという基本方針にのっとりまして、粘り強い交渉を行うつもりでございます。やはり日本民族の最大の関心事は領土問題であるということを、重ねてここで確認しておく次第でございます。 SDIにつきましては、まさに先ほどのお話のように盾とやりの関係でございますが、今までのような攻撃的な核兵器による戦略体系というものを、今度は防御的な非核兵器による新しい戦略体系へ転換しようという画期的な理念を持った、私は新しい体制であると考えております。これを我々はよく理解をし、かつまた国会決議等も十分に検討いたしまして、我々の解釈では国会決議に違反しない、そういう考えのもとにこれに参加しようというものでございます。参加に当たりましては、御指摘のように日本の企業の利益、日米関係の円満なるこれらの協力関係というものを確保するために、我々としても努力をしてまいる所存でございます。 最後に、日本の現状についてのお話がございましたが、まことに加藤議員のお示しには私も賛成でございます。やはり二十一世紀への道へ向かって、日本の持っておるこれだけの膨大なエネルギーのはけ口を適切につくるということが政治の使命であります。今、内外ともに、国際関係においても新しい胎動が今や生まれんというしるしもあります。国内関係におきましては、大きな改革が進行中でございます。我々が今歩んでいる道は前人未到の道でございます。その前人未到の道に向かって、内政の改革と国際国家への前進に向かって日本民族の正しいエネルギーが爆発するように、今後とも努力してまいります。(拍手) ─────────────
○議長(原健三郎君) 竹入義勝君。 〔議長退席、副議長着席〕 〔竹入義勝君登壇〕
○竹入義勝君 私は、公明党・国民会議を代表して、さきの総理の所信表明に対し、重点項目に絞って質問をいたします。 さきの衆参同日選挙の結果は、自民党の大勝でありました。この結果、自民党、特に中曽根総理の責任は極めて重大となり、かつは、選挙中の数々の公約が実行され、実現されることでなければ責任を果たすことにならないと思うのは国民の考える常識であります。同時に、自民党を支持した人々も、個別の政策については大きな不満と不安を持っていることも十分考えられることであり、すべてを白紙委任したのではないと思うのであります。 特に私は、総理が力を入れている防衛力増強やSDIへの参加、国家秘密法案の制定などを国民が支持したとは思えません。本年初頭の代表質問で、昨年十月の平和と軍縮を訴えた総理の国連総会での演説を文字どおり実行するように申し上げました。今、総理は、自民党の圧倒的多数の国会勢力のもとにあって、改憲の意図を捨て、あくまでも平和憲法を守り抜く決意がおありなのかどうか。我が国が軍拡路線を歩むことなく、世界の平和と軍縮に向けて努力することを国民に確約できるかどうか、改めてその基本姿勢を伺うものであります。(拍手) さて、昨年九月のG5以降ちょうど一年が経過しようといたしております。この間、急激かつ大幅な円高は、我が国経済並びに産業に大きな打撃を与え、一方、国際収支の経常黒字は、六十一年度政府見通しを突破するのも時間の問題と言われるほどふえ続けました。対外経済摩擦も、緩和の兆しさえ見せておりません。まさしく、我が国の経済社会は歴史的転換の真っただ中にあり、そして政治は、日本の将来にかかわる幾つかの重要な選択を迫られております。 総理も、経済、産業構造の改革について所信表明で言及されました。アメリカでは、今秋の中間選挙に向けて、再び保護貿易主義の台頭が必至と予想されていることから、日本の経済、産業構造を改革し、均衡のとれた国際協調型経済構造へ転換すべきであるという総理の認識に私は異論はありません。しかしながら、経済構造の調整は一朝一夕にできることではありません。言葉だけがひとり歩きをし、諸外国に経常黒字がすぐにでも減少するかのような安易な期待を抱かせるとすれば、それは新たな摩擦要因になりかねません。したがって、まず長期展望を明確にし、その方向に向かって何をどう改革するのか、その段階的計画を明らかにすることが先決であろうと思います。 我が国は、国民の英知と努力によって経済大国と言われるほどになりました。ところが、国民生活は果たして経済大国にふさわしい水準でありましょうか。住宅の質的整備は著しくおくれ、いまだに最低居住水準未満の世帯が四百万世帯、下水道普及率は欧米の三分の一、むしろ生活小国であります。 私は、我が国の経済、産業構造の調整に当たっては、いかにして先進国水準に達する日本を築くかという点に主眼を置いて策定されるべきであると思います。とりわけ生活関連、サービス、文化、レジャー、老齢社会対策などの総合的な社会資本整備が急務であり、その社会資本の整備は、内需依存型の成長パターンの定着と我が国の産業構造の転換にストレートに結びつくものであります。すなわち、我が国が迫られている産業構造の調整とは、いわば経済大国から国民生活重視への転換にほかなりません。私どもは、二十一世紀の日本を目指すシンボルに住環境の質的向上を掲げ、ここから始めるべきであると考えますが、総理の具体的構想を明らかにしていただきたいのであります。(拍手) さて、総理は、直面する現状を打開するため、大型補正予算を編成する方針を明らかにされました。しかし、私は、所信表明を伺いながら、多くの疑問を持たざるを得なかったのであります。 あなたは、我々が近年、再三にわたって景気後退を指摘し、実効ある対策の実行を迫ったことに対し、円高不況の実態を認めず、長期的な円高メリットを強調し、それによる景気の拡大基調を主張するのみであり、不況をますます深刻化させたのであります。ここにようやく景気の後退を認めたとはいえ、景気を著しく後退させた責任をどう認識されておるのか、しかと伺いたいのであります。 私は、かねてより政府の消極的な経済運営を積極型に転換し、財政の出動による内需拡大を中心に、補正予算の早期編成を主張してまいりました。補正の中身として、一兆三千億円の所得税、住民税の大幅な減税の実施、七千億円の住宅減税の実施、そして三兆円の生活福祉関連の公共事業の追加を要求をいたしております。国民生活の安定、中小企業の経営安定を図るため、重ねて五兆円規模の大型補正予算の早期編成を要求をいたします。総理の御決意を伺いたいのであります。(拍手) 特に、所得税減税は、六十一年度予算修正要求段階におきまして、共産党を除く与野党間で、六十一年内の所得税減税の実施が合意されております。しかし、いまだ具体的な話が進んでおりません。所得税減税の年内実施について、再度自民党総裁としての総理に確認の答弁を求めたいと思います。(拍手) さらに、円高不況を克服するためには、この大型補正予算に引き続き、六十二年度予算における政策の継続が不可欠であります。六十二年度予算編成に当たっては、積極型財政への転換を図り、福祉、文教予算、公共事業など国民生活に密着した予算を優先確保すべきでありますが、総理のお考えを伺いたいのであります。 産業構造の調整と内需拡大の大きな柱として期待される住宅については、国の援助等が先進諸国に比べ格段に見劣りがいたします。例えば、今年、アメリカは財政赤字にもかかわらず、年間四百億ドル、日本円換算によりますと六兆円以上の住宅減税を実施をいたしました。それに引きかえ我が国は、住宅取得促進税制の創設など若干の改善はされましたが、住宅減税の総額は約千二百億円、すなわち、アメリカの五十分の一の減税でしかありません。この際、公団、公社、公営による適正家賃で質のよい賃貸住宅を供給するとともに、潜在需要の強い民間の住宅建設を促進するために、住宅投資減税など総合的な住宅減税を行うべきだと考えますが、いかがでありましょうか。(拍手) これからの住宅問題とは、建てかえがその中心であります。特に、大都市圏における住宅建てかえ需要は極めて大きなもので、この需要を引き出すには各種規制の見直しが必要と言われます。総理の所見を求めるものであります。 次に、税制改革問題について伺います。 総理は、同日選挙期間中、間接税の導入はしないと公約をされました。ところが、政府税調は、選挙後間もなく、新型間接税なる本質的には大型間接税と変わらない間接税を提示し、大蔵省は大型間接税導入に向けて着々と世論工作を始めております。総理は、名称はともかくとしても、税調の答申いかんにかかわらず、課税範囲の広い間接税の導入はしないとの姿勢を今なお堅持するのかどうか、しかと伺いたいのであります。(拍手) また、マル優制度問題は、悪用に対する限度額管理の徹底をあくまでも第一義とすべきであります。そのために総合課税方式のグリーンカード制度を復活させると同時に、お年寄りや弱い立場の人々に必要なマル優制度は国民生活の中に広く定着をいたしており、廃止には断固反対であります。さらに、年金課税に対する強化は老後生活に対する圧迫にほかならず、ここに強く再考を求めるものであります。 ところで、総理が強調されている円高メリットは、本年六月に電力、ガス料金の差益還元が行われました。しかし、その後の円レートの推移から見てまことに不十分であります。電力、ガス料金の再値下げを含めた公共料金の円高差益還元並びに輸入原材料による製品の大幅な差益還元等を強力に推し進めるべきだと考えますが、今後の取り組みについて伺いたいのであります。(拍手) 最近の国民健康調査によれば史上最高の有病率が報ぜられ、年齢階層別に見れば特に高齢者に多く、社会保障対策のより充実が求められております。しかし、政府は逆に大幅かつ急激な自己負担の増額や保険者拠出金増額を目指す老人保健法改悪案をあえて提案をいたしております。低額年金や核家族化の進んでいる生活実態からすれば、一部負担の強化はお年寄りにとって物心ともに大きな苦痛であり、初期診療のおくれが医療費増大を生むという悪循環にさえなっております。お年寄りに直接負担増を求める以前に、医療機関による医療費の不正請求や乱診乱療など他の医療費抑制策を講ずべきであり、老人保健法改悪案は撤回するよう強く求めるものであります。総理の見解を伺いたい。(拍手) さて、二階建ての公的年金制度として基礎年金がスタートをいたしました。しかし、国民年金法等改正の際にも指摘したとおり、基礎年金額の問題を初め、勤労者の退職年金と年金受給年齢の乖離、職業間や雇用形態による年金格差による老後の生活格差の拡大など、今なお問題が山積をいたしております。このため、四十歳代で二人に一人が老後生活に不安を感じ、年金制度のより充実を求める声が高まっております。 厚生、共済など勤労者の年金と国民年金一本の自営業者等の年金格差是正のために、地方自治体経営で任意加入の国民年金基金の創設を提案をいたします。公明党は、これを新地域年金制度と呼んでおります。老後生活を保障する年金と福祉サービスを結合させるシステムの確立、さらに、高過ぎる基礎年金の定額保険料を適正負担額にするとか、早急に改革すべき課題に対し、総理、政府はどう対処されようとするのか、所見を承りたいのであります。 さて、問題は変わりますが、さきに総理との党首会談でも要望いたしましたが、姿の見えない脅威としてエイズが我が国にも上陸し、ついに陽性患者が発生をいたしました。しかるに、エイズに対する我が国の取り組みは極めて不十分と言わざるを得ません。このまま放置すれば、エイズ汚染が広がるおそれが強いことは言うまでもありません。しかも、いまだ治療法が確立をしていないため、現状では予防が最高の対策であります。この際、すべての献血血液について早急にエイズ抗体検査を実施すべきであると思いますが、総理の所信を伺いたいのであります。また、予防、治療薬の研究開発などエイズ対策の充実を図るべきであると思いますが、あわせて御答弁をいただきたいと思います。 さて、今国会最大の焦点である国鉄改革について質問をいたします。 巨額の債務を抱え、毎年二兆円を上回る赤字を出す国鉄の経営状態を放置すれば、やがてその債務と赤字が国民に重くのしかかることになります。それゆえに、国民の多数は国鉄改革の必要性を認めております。しかし、最近行われた国鉄改革に関する幾つかの世論調査において明らかなように、国鉄改革を認めつつ、なお政府案の改善を求める意見が多数あることもまた事実であります。それは、国鉄改革には多くの課題があるにもかかわらず、その対策が必ずしも明確でないこと、政府案で果たして国鉄が健全な企業として立ち直れるかということを危惧していると思われるのであります。 この臨時国会は、そうした国民の危惧の念を払い、国民の理解と協力の得られる国鉄改革とする議論の場であります。我が党も、国鉄改革を推進する立場から、国鉄をまず民営化することを基本とした独自の改革案を提言をいたしております。今国会では十分な審議を尽くし、国民合意の得られる改革を図る必要があります。その意味で、政府提出の改革関連法案にもし正すべきところがあれば正すという姿勢に立たれるのかどうか、お答えをいただきたいと思うのであります。 総理、国鉄改革に伴う職員の雇用の問題は深刻であります。我が党は、各地に調査団を派遣し、国鉄職員の雇用対策、改革に対する自治体の意見、土地利用計画などに関する調査を行いました。その中で、この職員の雇用問題は、各管理局の努力、自治体の協力にもかかわらず、就職の確保が極めて困難な状況にあると思われます。さらに、中高年の職員については、自治体、民間企業ともに雇用に難色を示しており、雇用状況は極めて厳しいと言わざるを得ません。こうした状況の厳しさを政府が改めて認識し、早急に対処することを求めます。総理の答弁を伺いたいのであります。 さて、長期債務の問題でありますが、政府は、国鉄の抱える長期債務のうち、国鉄再建監理委員会の試算に基づき、約十六兆七千億円は国民に負担を求めざるを得ないといたしております。国民の関心は、この債務をどのように処理するのかに集まっていると言っても過言ではありません。しかし、長期債務の総額を初め、償還財源となる用地売却益や新会社の株式売却収入は不確定であり、また、償還期間は何年にわたるのかも明らかにされておりません。これで改革問題を審議することは不可能であります。長期債務にかかわる基本的数値を国民の前に明らかにすることを求めます。 なお、長期債務の規模だけではなく、各旅客会社及び貨物会社の収支見通しなどについても、監理委員会の試算としてではなく、政府の試算を提出すべきであり、その用意のあるなしをお答えをいただきたいのであります。このほか、地方交通線対策あるいは安全投資のあり方、整備新幹線の建設問題など、ただすべき問題が数多くあります。総理、関係大臣は課題を放置したまま改革を進めることのないよう強く要望し、答弁を求めるものであります。(拍手) さて、教育改革については、去る四月、臨時教育審議会より第二次答申が行われ、今後どのようにその実現が図られるかが注目をされております。先国会における私の質問でも指摘をいたしましたが、教育改革を行うには当然多額の予算を必要といたします。しかし、六十二年度予算概算要求を見る限り、総理の教育改革に対する熱意を反映した予算になるとは想像しがたいのであります。所見を伺いたい。 今、父母の学校に対する意識は、我が党の全国小中学校に対して行ったアンケート調査でも明らかになりました。父母の学校に対する不満は、子供とのコミュニケーションの不足、受験本位の教育、そして信頼できる教員が少ないの順でありました。また、教員が、会議、学校行事、事務に時間をとられ、教育に専念しにくいということも明らかになっております。 このような中で、教員の資質向上が大きな課題となり、初任者研修制度の新設が検討されております。この制度の新設で教員の資質向上が十分であるわけはありません。教員養成制度あるいは研修、再教育など、教員の生涯教育の中で資質の向上が図られなければなりません。父母の不満にどうこたえるのか、あわせて総理の見解を明らかにしていただきたいのであります。 さて、生涯教育が提唱されて久しく、臨教審でも大きな課題として取り上げられております。生涯教育の必要性はますます高まるばかりであります。放送大学の関東エリアでの実施は大きな前進でありました。これを全国規模に拡大することが次の課題であります。総理の所信を承りたいと思います。(拍手) アメリカの戦略防衛構想、SDIに対して、政府は去る九日、官房長官談話において日本が研究に参加する旨を明らかにいたしました。平和憲法を有し、非核三原則を国是とし、専守防衛を明言している我が国が、たとえ研究段階にあるにせよ、米国の世界核戦略であるSDIに参加、協力することには極めて慎重な対応が必要であります。米国内においてさえ、戦略、有効性、技術、費用など大部分で疑問ありとされているSDIに、なぜ我が国が急いで参加を決めなければならないのか。SDIは、非核で専ら防衛のためであり、究極的には核廃絶につながるというレーガン大統領の説明をうのみにすることなく、いかなる検討によってこうした結論に至ったのか、その経過と根拠をもう一度国民の前に明らかにしていただきたいのであります。(拍手) 特に、昭和四十四年の宇宙の開発、利用は平和目的に限るとした国会の決議を政府が勝手に解釈し、この重要な国の方針を歪曲させてSDIに参加することは、国会決議に反しないとの強弁をされる根拠を明確にしていただきたいし、国会軽視も甚だしいと言わざるを得ません。(拍手) アメリカ議会では外国のSDI参加規制法案が可決され、従来に比べ参加への条件や環境に重大な変化が見られることをどう認識しておられるのか。開発された技術の使用権、発表権もアメリカが持ち、軍事機密のもとに民生用に利用することはほとんど困難になると言われております。説明を求めるものであります。 本年一月のシュワルナゼ外相の来日以来、北方墓参の再開など日ソ関係は進展しつつあります。そこで、懸案の領土問題と平和条約締結、ゴルバチョフ書記長の訪日の見通しなど、日ソ関係の展望をこの際明らかにしていただきたいのであります。 最後に、防衛問題についてお尋ねをいたします。 来年度の防衛予算概算要求を見ますと、正面装備に関してはほぼ大綱水準に達する内容となっております。「防衛計画の大綱」を決定して十年、昨年九月の中期防決定後二年目にして大綱水準に達する見通しが出てきたわけであります。しかし、大綱達成後の計画について、政府は早期達成を繰り返すだけで一向に明らかにしておりません。達成の見通しがついた現在、政府は大綱以後の防衛構想を示すべきであります。総理の考えを明らかにしていただきたい。 防衛問題の中で、国民の関心を呼んでいるのは防衛費のGNP比一%問題であります。 今年度の防衛費は、一%枠までわずか二百三十五億円を残すだけ、先月発表された人事院勧告は二・三一%で、この完全実施に伴う防衛関係の人件費は約三百三十三億円が見込まれております。人勧完全実施によって防衛費はGNP一%枠を九十八億円オーバーする事態を迎えます。もとより、これだけで防衛費がGNP一%枠を突破すると決めることは早計かもしれません。円高差益と原油値下げによる費用減、さらには、例年防衛庁が実施している不用額の捻出もあるでありましょう。しかし、円高不況によって経済成長率の見直しは必至と言われ、GNP自体の下方修正も避けられないと思います。 いずれにせよ、GNP一%枠問題は、中曽根内閣の続投により、総理自身が決着をつけるべき問題であります。総理は、従来の政府方針である防衛費はGNP比一%以内を厳守されるのかどうか、重ねて明確な答弁を求めるものであります。(拍手〉 さて、国是である非核三原則の厳守と絡み国民の関心を呼んだのが、巡航ミサイル・トマホーク搭載アメリカ艦船の日本寄港問題であります。先月末、佐世保に戦艦ニュージャージー、横須賀に原子力巡洋艦ロングビーチが分散して寄港いたしました。総理、戦艦ニュージャージーは核トマホーク計画の一番艦で、核搭載の可能性が極めて強く、入港に際して核を撤去することはあり得ないと言われております。核持ち込みの疑惑を持つ米艦船の寄港に際しては、我が国の重要な平和原則である非核三原則の遵守という立場から、疑わしきは寄港させずとの毅然たる態度をとるべきであります。 これら平和問題の諸点に対する総理の明確な答弁を求め、質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 竹入議員にお答えをいたします。 まず、平和憲法の問題でございますが、現内閣におきましては、憲法改正を政治日程にのせる考えはないと申し上げてきましたが、これは前と変わりません。しかし、憲法を含むいかなる制度も常に見直して改善を心がくべきものであると前から申し上げているところであり、これを検討するということは適当であると考えております。 次に、防衛の問題でございますが、我が国の防衛力整備については、他の施策との調和を図りつつ、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準をできるだけ早く達成しよう、こういう考えで一貫して進んでおります。もとより、憲法及び基本的な防衛政策に従い、自衛のため必要な最小限度にとどめるということは当然のことであり、今後もそれを維持してまいります。 世界の平和維持と軍縮の促進は、これは人類共通の重要な課題でありまして、その点は竹入委員長御指摘のとおりであります。いよいよ米ソ首脳会談が開催される気配が濃厚になってまいりましたが、やはりこの首脳会談を促進いたしまして、具体的かつ実効的に軍縮が推進されるよう、特に核軍縮が推進されるよう国際的にも努力してまいりたいと思っております。 経済、産業構造の調整の問題でございますが、日本の現在の貿易黒字の突出が世界経済全般を変調化たらしめているという非難が強く高まってきつつあります。我が国としては、この経済構造を国際社会と調和のとれたものに改革するということが緊要な課題であり、我々が全力を尽くすべき対象であると考えております。 政府は、去る五月に経済構造調整推進要綱を策定して、内需の拡大、国際的に調和のとれた産業構造への転換、あるいは輸入の増大、あるいは円ドル関係の安定等々の諸施策を決定いたしました。これを強力に推進するために、先月、政府・与党経済構造調整推進本部を設け、私自体が本部長となりまして、これを強く推進してまいりたいと考えておるところであります。 景気の状況につきましては、景気は底がたさはあるけれども、その足取りは緩やかなものとなっており、内需と外需、製造業と非製造業との間の格差が出てまいりまして、景気の二面性がより明瞭になってきておりますし、輸出産業や特に円高の直撃を受けた一部の産業あるいは城下町と言われるそのような産業等について、かなりの痛撃が起こっておるわけであります。 政府は、今後とも内外の経済動向、国際通貨情勢等を注視しつつ、引き続き機動的な対策を進めてまいりますが、来る十九日に経済対策閣僚会議を開いて思い切った総合経済対策を決定して、四%の成長を目途に、できるだけこれに近づけ、実現するように今後とも努力してまいるつもりでおります。 大型補正の問題でございますが、現在、公共投資等の事業規模もいろいろ検討しておるところでございますが、事業量として過去最高の三兆円以上を確保するように現在努力しておるところでございます。 所得税の減税については、与野党合意の事項についてはあくまでこれを尊重いたしまして、各党間の協議の推移を見守ることといたしております。また、今税調におきまして所得税、法人税等の検討を鋭意進めておるところであり、その包括的指針が示されましたときに、我々はそれを検討し、適切に対処してまいりたいと思うところでございます。 六十二年度の予算編成につきましては、引き続き財政改革を強力に推進し、臨調路線を堅持するという方向のもとに、今後とも、流動的な内外の経済情勢に即応しつつ、一面においては既存の制度、施策の改革を行う、あらゆる分野にわたり徹底した節減合理化に努めるという考えを基本にして編成してまいりたいと思っております。しかし、真に必要な施策につきましては、その緊要度、内容等を検討いたしまして配慮してまいりたいと考えております。 公共賃貸住宅の供給の問題につきましては、今や良質な住宅の建設ということが課題になっております。このため、公営住宅、公団住宅等公共賃貸住宅の的確な供給を図るとともに、長期低利の融資等によって、良質な民間賃貸住宅の供給促進に努めておるところです。今後とも、各般の施策を総合的に展開して、良質な賃貸住宅の供給に努力してまいるつもりでおります。 住宅減税については、昭和六十一年度において減税総額千三百億円に及ぶ住宅取得促進税制を創設し、現下の厳しい財政状態のもとで最大限努力をしてきたつもりであります。さらに、五月の与野党の政調・政審会長会談を踏まえて、住宅取得促進税制等の追加拡充措置を講じてきたところでありますが、今後、その周知徹底を図る等により所期の効果を上げるように努力してまいります。 次に、建てかえ促進の問題あるいは規制緩和の問題でございますが、老朽化した住宅の建てかえ、再開発を推進することは極めて重要であります。その際、大都市において土地の有効利用を図ることもまた重要であります。このため、土地の高度利用を促進すべき地域に係る第一種住居専用地域等、地域、地区の見直し、特定街区、市街地住宅総合設計等、優良なプロジェクト推進のための制度の積極的活用を推進してまいります。 課税範囲の広い間接税の問題でございますが、選挙中申し上げましたように、国民や党員が反対するいわゆる大型間接税と称するものはやりませんと言っておるとおりでありまして、大蔵省を通じまして税調にもこの方針は伝えておるところであり、今後、税調の包括的指針を待っておるというところであります。 利子非課税の問題につきましても、老人あるいは母子家庭等社会の弱者については特別に配慮すべきであるということも選挙中申し上げまして、この考えは変わっておりません。 次に、年金課税の問題でございますが、高齢化社会の到来を控えまして、税調においては、税制全体の見直しの一環として年金課税のあり方についても幅広い検討が行われており、包括的指針の答申を待って検討してみたいと思っております。 円高差益の還元については、政府も鋭意努力してきたところでございますが、今後とも、特に政府が関与している部分、あるいは民間におきましても国民から指摘されている部分等については、この施策を充実、徹底してまいりたい、また、民間につきましても監視を強めてまいりたい、このように考えております。 老人保健法の問題につきましては、長期的に安定した老人保健制度を確立していくためにはまことにやむを得ない改革であると思い、さらに、このため、レセプト審査の充実強化など各般の医療費適正化対策を強力に推進してまいる考えであります。同時に、すべての国民が公平に老人医療費を負担するシステムを確立するため、老人保健制度の改正がぜひとも必要なのであります。 次に、国民年金基金の創設でございますが、サラリーマンと自営業者等の年金格差是正のための国民年金基金の創設という提案については、現に国民年金法上、国民年金基金という制度があります。その活用方策について今後検討してまいりたいと思います。 年金と福祉サービスの結合の問題でございますが、これを有機的に連携するということは大切な課題であると私も思います。長期的な年金財政の安定に留意しつつ、例えば厚生年金、国民年金積立金の福祉還元、あるいは厚生年金基金の福祉施設の仕組みを一層有効に活用する方策について検討してまいりたいと思います。また、基礎年金の保険料については、今回の年金制度の改革において給付の適正化を図ることにより、将来の保険料負担についても大幅に適正化したところであります。 御指摘のエイズの対策は、エイズは極めて死亡率の高い疾病でありまして、細心の注意を行っておるところであります。今般、新たに献血血液の中からエイズ抗体の陽性が確認されたことにかんがみまして、御指摘に沿いまして、全献血血液についてエイズ抗体検査を実施すべく、今体制を確立中でございます。なお、予防、治療薬の研究開発等についてもさらに強化してまいります。 国鉄改革関連法案につきましては、国鉄改革の円滑な実施のためにぜひ必要とされる国鉄職員の雇用の確保、長期債務等の処理等、これらの諸問題を解決しつつ、ぜひ法案を成立させたいと考えておるところであります。 特に、雇用問題につきましては、昨年末に定められた基本方針に沿い取り組んでおるところでございまして、大体再就職先の目標数についても計画を定め、現在、六万一千人に対して五万三千人の採用の申し出がなされまして、割合順調に進んでおります。今後とも、きめ細かい努力を積み重ねて、心配のないように努力してまいりたいと思っております。現在までのところ、国が約一万三千人引き受けて、特殊法人等が五千五百人、地方公共団体が一万一千五百人、つまり公的部門で三万人、一般産業界で一万人、国鉄関連企業で二万一千人、こういう目標をつくっておりますが、大体五万三千人の申し出が行われたというところであります。今後とも努力してまいります。 次に、長期債務の問題でございますが、このデータにつきましては、法案審議の段階において可能な限り提出をいたしますし、また、旅客会社、貨物会社の収支見通し等についても可能な限り提出してまいりたいと考えます。 次に、国鉄改革に伴う諸問題につきましては、国鉄職員の雇用対策の推進、長期債務の適切な処理はもとより、地方交通線対策の円滑な遂行、所要の安全投資の確保等にも十分配慮しつつ、分割・民営化を全力を挙げて遂行する所存であります。 整備新幹線については、現在、整備新幹線財源問題等検討委員会において検討しているところであり、その結論を待って適切に対処してまいります。 教育改革の概算要求等につきましては、臨時教育審議会の答申を踏まえまして、厳しい財政の中でも工夫を凝らして実現化に努力してまいりたいと思います。現在申し出ている主要な事項は、初任者研修の試行、大学院最先端設備の整備充実、科学研究費の充実、留学生十万人受け入れ計画の推進等でございます。 次に、教員の資質向上につきましても、その養成、採用、研修など総合的に見直しを図りつつ、資質の向上に努める必要があります。現在、教育職員養成審議会においてその具体策を検討中であり、その答申を待ちまして処理してまいりたいと思います。 放送大学につきましては、対象地域の拡大については、臨教審答申及び第一期計画の実績等諸般の事情を勘案しつつ、放送大学の将来構想の一環として専門家により多角的に検討させておるところであります。 SDIにつきましては、先般来申し上げましたように、核を持つ攻撃的な戦略体系から非核の防御的な戦略体系に兵器体系を転換しようとする画期的な体系でありまして、しかもこの計画は、米国が将来、戦略防衛システムの開発、配備の可否を決定するに当たって必要な技術的知識を提供するための研究計画であると承知しております。我々は、アメリカのいろいろな調査を経まして、平和国家としての立場に矛盾しない、また、我が国の参加は日米安保体制の効果的運用に資する、加えて、関連技術水準の向上にも資する、そういうふうに認識しております。そして、同計画への参加を円滑なものとするよう所要の具体的措置について米国と交渉を始めようとしておるところなのでございます。今後とも、日本の国益を守りつつ、交渉を強力に行ってまいりたいと思います。 SDIの国会決議との関係でございますが、国会決議の有権解釈はもとより国会においてなさるべきものであると解釈しております。しかし、政府としては、我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する国会決議については、同決議は我が国における開発及び利用を対象としたものであって、他国の開発及び利用に対する我が国の関与は、我が国みずからが行う開発及び利用と同列に論ぜらるべきものではありません。性格が違うと思います。SDI研究計画の場合は、あくまで米国が策定し、推進している計画でありまして、我が国の参加の態様は、このような計画の個々の具体的プロジェクトの特定の一局面への参加にとどまるものであり、本件決議がこのような参加までも対象としているとは考えておりません。しかも、SDI研究計画は、非核の防御手段によって弾道弾を無力化する、核廃絶を目指すものでありまして、平和国家としての我が国の立場に矛盾するものではない、そう考えておるのであります。 SDI参加規制法案、米国議会における動向でございますが、米国上院修正案については、下院において同様の修正案が可決されていないことから、最終的にどう扱われるかまだ予断する状況ではございませんが、いずれにせよ、米国政府は、右修正案は望ましくないとの考えを有しており、同盟国よりの研究参加を大いに歓迎するとの立場を一貫してとっていると考えております。米国との協議に当たりましては、研究成果の利用等の問題を含め、日米双方にとり満足のいく結果が得られるように努力するつもりでおります。 日ソ関係につきましては、本年、二度にわたって外相間定期協議が行われ、その際、北方領土問題を含む平和条約交渉が再開され、これの継続が合意されているという点は評価しているところであります。そして、ゴルバチョフ書記長の明年一月末までの訪日を求めておるところであります。訪日実現の暁には、所信表明で述べましたように、我が国対ソ外交の基本方針を堅持して、四島返還を図るべく最大限の努力を行う考えでおります。 次に、「防衛計画の大綱」の問題でございますが、この水準の達成を図ることを目標とする中期防衛力整備計画の着実な実施に努めているところであり、大綱の見直しは現在は考えておりません。 次に、GNP一%の問題でございますが、今後のGNPの推移、防衛関係費の動向には不確定な要素がございます。現時点で確たる見解を述べることは困難でありますが、政府が昭和五十一年の三木内閣の閣議決定を尊重してまいりたいと考えていることは変わっておりません。 非核三原則については、今後とも堅持してまいるつもりでございます。今般のニュージャージーの寄港につきましても、倉成外務大臣よりマンスフィールド大使に対しましてそのことを確認しておるというところであります。事前協議制度の確認を行った次第でございます。 以上で答弁を終わります。(拍手) ────◇─────
○谷垣禎一君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十七日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
○副議長(多賀谷真稔君) 谷垣禎一君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。 本日は、これにて散会いたします。 午後三時二十一分散会