法務委員会 第3号
- 発言数
- 98 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1986/03/25
会議録
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 議事に先立ち、一言申し上げます。 既に御承知のことと存じますが、本委員会の委員として長くその職責を果たされてまいりました安井謙君は、去る三月十日、急性心不全のため逝去されました。同君の急逝は、まことに哀悼痛惜にたえません。 ここに皆様とともに同君をしのび、謹んで黙祷をささげ、心から哀悼の意を表しまして、御冥福をお祈りいたしたいと存じます。 それでは、皆様の御起立をお願いいたします。 〔総員起立、黙祷〕
○委員長(二宮文造君) 黙祷を終わります。御着席願います。 ―――――――――――――
○委員長(二宮文造君) 委員の異動について御報告いたします。 安井謙君の逝去に伴い、本委員会は委員が一名欠員となっておりましたが、去る三月十三日、その補欠として中西一郎君が選任されました。 また、本日、抜山映子君、大坪健一郎君及び林ゆう君が委員を辞任され、その補欠として中村鋭一君、吉村真事君及び谷川寛三君がそれぞれ選任されました。 ―――――――――――――
○委員長(二宮文造君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。鈴木法務大臣。
○国務大臣(鈴木省吾君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。 この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます、 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るため、判事の員数を八人増加しようとするものであります。 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、一方において地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件及び破産事件並びに簡易裁判所における民事訴訟事件及び督促事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員を三十九人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員を三十八入減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を一人増加しようとするものであります。 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いを申し上げます。
○委員長(二宮文造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案並びに検察及び裁判の運営等に関する調査のうち、法 務行政の基本方針に関する件を便宜一括して議題とし、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○寺田熊雄君 法務大臣にまずお尋ねをいたしますが、天皇在位六十年祝賀に関連をいたしまして恩赦を行うかどうかという点が先般取りざたをされまして、その後、中曽根総理大臣も恩赦は行わないということをおっしゃったようでありますが、これは中曽根内閣として正式に決定されたものでしょうか、ちょっとお尋ねします。そしてまた、行わないというのはどのような理由で行わないというのか、それもあわせて御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(鈴木省吾君) 御質問のように、去る三月八日の衆議院の予算委員会におきまして総理から、今お話しのような、在位六十年に関連して恩赦は行わないという御答弁がございました。これは内閣の方針でございますから、今回、そのとおりでございます。
○寺田熊雄君 これは大変結構なことだというふうに私も思っております。恩赦を行えという人々のその動機をそんたくしてみますと、公選法によって公民権を喪失した人を救い上げようというような政治的な思惑なり、あるいは田中角榮氏の裁判に何か関連をさせまして、これを恩赦によって、まあ大赦になるのでしょうか、救い上げようというような動機がほの見えたわけであります。そういうような政治的な動機から恩赦を行うというのはどうも適当でないので、私どもとしては、これは法務大臣のいわば正論が中曽根総理を動かしたと、こういうふうに理解しておるんです。これは私どもの推定だけれども、大変結構なことであった。法務事務当局もよく頑張ったのじゃなかろうかとそんたくしておるわけです。大変結構だと思います。今大臣がおっしゃるように、これは中曽根内閣としての決定であるというのですから、もう何も申し上げることはないわけであります。 次に、刑法の改正についてやはり法務大臣が所信の中で述べていらっしゃるわけですが、かつて奥野法務大臣の時代に、奥野さん大変熱心にその促進を図られるような御発言があったわけであります。日弁連その他との対立点を除いて、それは恐らく保安処分が主な点であろうとは思いますけれども、日弁連との余り衝突がないようなそういう内容で刑法の全面改正を進めようとなさったことがあるのでありますが、大臣はこれについてはどういうような抱負を持って臨まれるんでしょうか、まずその点をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木省吾君) 先般の所信表明の中でも申し上げた次第でございますけれども、現在の刑法、御承知のように明治時代のものでもございます。いろいろ時代にもそぐわない点がございますので、法制審議会等でも御検討いただきまして、おおむねその成案を得たのでありますが、残念ながら、その後各方面等の御理解が、特に今お話しのように保安処分の問題等に絡めて御賛同が得られないものですから延び延びになっておりましたけれども、何としましてもやはり古い法律でもありますから、時代に合ったものにしてまいらなければならない、こういうことで鋭意提案をする努力は続けておるわけでございます。 今後もさような姿勢で各方面との意見の調整を図りながらやってまいりたいと思っておりますが、とりわけ最近、御案内のようにコンピューターによる犯罪等が起きておりますから、これは早急に何とか立法化して対処していかなければならないではないか。それは刑法の中の一部として取り入れるのか、あるいはまた別途のものにするかということは、これからまた検討してまいらなければならぬと思いますけれども、とりあえずそういったコンピューター等に関連したものだけは早急に結論を出して、来国会あたりにはできれば提案しなければならないのではないか、かように考えております。
○寺田熊雄君 今のコンピューター犯罪についても続いてお尋ねしようと思ったのですが、大臣がお答えになりましたので、この際特にそれに触れてみたいと思うんですが、大臣は、この問題を早急に処理したい、来通常国会には提案をしたいとおっしゃいますと、これはやはり刑法の全面改正の中に取り入れるというのはちょっと無理なふうに思うんです。そうしますと、やはり特別立法で処理を図るというふうに、その公算の方が大きいように思いますね。そういうふうに伺ってよろしいでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいまの点でございますが、特別立法によりますか、あるいはその点だけの刑法の部分改正といいますか、こういった方法によるかというような点を含めまして、現在検討中の段階でございます。
○寺田熊雄君 現行刑法の一部改正ということになりますと、今、暗証番号みたいなものがありますね。そういうものを財物の中に加えるといいますか、財物と同じように窃盗罪の対象とするということなんでしょうか。全くそれは新しい犯罪類型をつくるということですか。どちらでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 現在のコンピューター犯罪で問題になりますのが、要するに電磁的記録物を改ざんいたしました場合に文書犯罪になるのかというような点が一つの問題でございます。また、コンピューターシステムを不正に利用いたしまして財産上の利得行為を得た場合に、従来の詐欺とか窃盗というようなことで一体処罰できるのであろうかというような点が問題であるわけでございます。したがいまして、そういうような点につきまして新たな罰則を設ける、こういう方向で現在検討いたしておる段階でございます。
○寺田熊雄君 新たな罰則といいますと、新たな犯罪類型が刑法の中に生まれる、こういうことになりますね。
○政府委員(岡村泰孝君) 新しい類型の犯罪を刑法の中に含めて刑法の改正を行うか、あるいは新しい犯罪の類型につきまして特別に立法するか、こういうような点について現在検討いたしておる段階でございます。
○寺田熊雄君 それから、刑法の全面改正について日弁連との間の協議というのはもう終わったんですか。それとも、まだこれから行うんですか。その点はどうなんでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) この点につきましては日弁連とも従来から協議をいたしておるところでございます。 刑法の全面改正は、先ほど大臣申されましたように、法務当局といたしましても可能な限り早期に実現したいというふうに考えておるわけでございますが、保安処分制度をめぐりますいろんな論議等がございまして、今のところ若干時間がかかっておるような段階でございます。したがいまして、今後の改正作業の進展に伴いまして日弁連との話し合いをやるべきかどうか、そこら辺のところも検討しなければいけないものと思っております。
○寺田熊雄君 この際、大臣の所信として、保安処分については大臣はどういうふうにお考えなんでしょうか。保安処分制度というものはやはり必要だというふうに現在お考えなんでしょうか。そして、それを刑法の中に盛り込むべきだという御意見なんでしょうか。その点ちょっとお伺いしたいんです。
○国務大臣(鈴木省吾君) 御案内のように、新宿でもいつかああいった問題等も起きておるわけでございまして、現に新しいそういった最近の事件に対処するためには、やはりそういう対策というものもまた必要になってくるわけでございます。しかし、これについては各方面でいろいろ御議論もありますから、それらを十分考えつつ対処していかなければならないのではないかと思います。しかし、余りああいったものを放置することは、これは法秩序の維持上、大変やはり問題があるのではないかというふうに考えております。
○寺田熊雄君 ちょっとまだ大臣の本当のお気持ちが今の御答弁では十分にお伺いできぬような気 がしますが、またさらにお伺いすることにして、ちょっと人権擁護局長が私と同じ質問内容で予算委員会の方に御出席の予定のようでありますから、ここでその方をお尋ねしたいんですが、後で石山矯正局長にまた詳しくお尋ねをさせていただきます。 人権擁護局長もお聞き及びと思いますけれども、最近、高知刑務所で刑務官の差別事件が発生をいたしました。これは衆議院法務委員会でも論議がなされたようであります。しかし、どうもこの発言内容を見てみますと、非常に重大な差別発言であって、今どきこんな考えを持っている人がなお存在するのかという驚きにたえないわけであります。 それからもう一つは、後で石山局長にもお尋ねしますが、今の行刑は教育を理念としておりますね。ところが、差別意識を持った人間が教育を理念とする行刑を担当する資格といいますか、能力といいますか、そういうものを持っているだろうかというような気持ちを払拭することができません。人権擁護局長として、このような差別発言の内容はもう御承知になっておりますか。まず、それからお伺いします。
○政府委員(野崎幸雄君) 存じております。
○寺田熊雄君 我々としてはもうこの席で繰り返すことさえも容易ではないような発言さえもその刑務官は現実にしたようであります。このような差別意識が今なお国民の間に残っている。しかも、それが国家公務員の中にある。しかも、それも教育を担当する、教育を理念とする刑務官の中にあったということで、一層私どもにとっては遺憾の念にたえないんですが、人権擁護局長としてはどういう所感をお持ちになりますか。
○政府委員(野崎幸雄君) 委員も御承知のとおり、私ども法務省の人権擁護機関は創設以来、部落差別の解消のために懸命の努力をしてまいったのでございますが、その人権擁護機関を持っております法務省の部内におきまして、しかも今委員が御指摘になりましたような教育的な仕事もあわせ持っております刑務官がこのような差別発言をいたしましたことは、もう非常に遺憾なことでございまして、私どももこれまでの努力の至らなかったことを痛切に感じ、こういうことが二度と起きないように今後は一層の努力をしなければならないということを痛感いたしておるところでございます。 現に今、高知地方法務局におきましてこの事件につきましては人権侵犯事件として立件をいたしまして、既に相当回数の調査と啓発を行っております。なお調査すべきところが少し残っておりますので、その調査をさらに行いまして事件の全容を明らかにいたしますとともに、徹底的な啓発を行いたい、かように考えておるところでございます。
○寺田熊雄君 この問題で部落解放同盟と法務省との間にある程度の交渉がなされたように聞いておるのでありますが、部落解放同盟としてはその前身である水平社の昔から、この種の差別事件が起きました場合には、そうした差別的な言動をいたしましたその当該の人物を糾弾するということをずっと歴史的にやってきておりますね。あなた方は、自己の部内の職員である、部下であるというところから、それを糾弾会に出したがらないようなお気持ちのようでありますけれども、しかしこれを是正するといっても部内の教育研修というようなことでそれが十分果たされ得るのか、私どもとしては疑問に思わざるを得ないわけです。そういうことを専門にやってきた団体は、あなた方は民間団体ということを非常に強調なさるけれども、営利を目的とする団体ではないので、そういう差別を払拭することを使命とする団体なのでありますから、そういう団体の糾弾会に出て、誤った意識を洗い流すということが非常に効果を持つのではないだろうかと思うのですが、どうでしょうか。
○政府委員(野崎幸雄君) 現在、同和問題に関しまして部落差別等が起きましたときに啓発をする機関といたしましては、法務省の人権擁護機関のほかに、今先生御指摘になりました解放同盟の確認・糾弾会あるいは都道府県、市町村の同和を担当する部署が行っております啓発等、いろいろな啓発がございます。ただ、その中で法律に基づいて設置され、法律に基づいて人権侵犯事件を調査し審理する機関は私どもの人権擁護機関が一つだけでございまして、私どもとしましてはそのことを非常に誇りに思ってこれまで仕事をしてまいっておるところでございます。 私どもは、先ほど申し上げましたとおり、法務省の部内においてこのような差別事件の起きたということを本当に残念に思っております。そうして今、人権擁護機関を挙げてこの問題に真剣に取り組んでおるわけでございます。私どもといたしましては、法律によって与えられた職責を果たすためには、今回の事件について十分の、いやそれ以上に十二分の啓発効果が上がるまで徹底的な啓発をいたすつもりでございます。したがいまして、それが終わった後あるいはその前に他の行政機関あるいは民間運動団体の啓発に事件をゆだねるということは、どうも私どもの存在意義そのものを自分で否定するようなことにもなるわけでございますので、私どもとしましては人権擁護機関の権威にかけても徹底的な啓発を行いたい、かように考えておるものでございます。
○寺田熊雄君 あなた方が御自分のお仕事に誇りを持たれることは、これは私結構だと思いますよ。また、そうなくちゃなりません。だけれども、あなた方が誠意を持って、かつ精力的にそうした啓蒙活動をなさること、そのことが、その対象となる差別行為をした人間が民主団体の糾弾会に出て洗礼を受けるということによって、あなた方のお仕事が無意味に帰するものでもないと思いますね。それはそれなりの意味があって、それを行うことが、民間団体の糾弾会に出ることによって全部その価値が失われるということにはならぬのでしょう。両々相まって目的を達しても一向差し支えないように思いますね。御自分のお仕事に誇りを持たれるのはいいけれども、一切ほかの啓蒙活動、教育活動をも排除しなければやまないというのはちょっと行き過ぎじゃなかろうか。どうでしょうか。
○政府委員(野崎幸雄君) 先ほど先生も御指摘になりましたように、部落解放同盟は水平社の正統な後継者ということで、大正十一年の水平社創立大会における大会決議に基づく確認・糾弾闘争というものを部落解放闘争の中核に据えておられるということは私も十分承知をいたしておるところでございますし、この確認・糾弾闘争の歴史についてもある程度勉強したつもりでおります。 大正、昭和の初めにかけまして非常に厳しい部落差別があった、そしてそれに対してどこもが対処をしてくれない、こういった中にあって差別糾弾闘争はある種の自力救済的な運動として全国に広がり、大きな効果を上げていったものであることは私もよくわかっております。しかし、この歴史を見てみますると、例えば軍隊あるいはその他の公共機関がいろいろな差別をしながら何もしない、あるいはそれを覆い隠しておるといったときに、華々しい確認・糾弾闘争が展開されたわけでございます。 私どもは、今この差別事件を覆い隠そうなどという気は全くないわけでありまして、解放同盟との交渉におきましてもその事実は率直に認めておりますし、また国会におきましても、その事実が明らかに部落差別につながるものであるということも認識しておるということを申し上げておるところであります。そして、その認識のもとに今調査及び啓発活動を徹底的にやっておるのでございまして、私どもはこれを隠そうとしたりあるいはもみつぶそうとしたり、そういう気で扱ったことは全くないわけであります。でございますから、ひとつこの法務省の人権擁護機関がそういうふうに真摯にやっておるというときには、ぜひそれに任せていただきたい。それがお互いに一つの共同の目的に向かって進んでいるものの中で守られていくべきものではないか、私はそういうように考えておるわけであります。 先ほど来申し上げましたように、私どもは人権擁護機関の存続価値をかけてこの事件を担当しておるということをぜひ御理解いただきたい、かように考えるものであります。
○寺田熊雄君 人権擁護局長のその誠意を疑うものではないですよ。また、お気持ちもよく理解できるんだけれども、何分にも部落解放同盟の長い歴史、その糾弾闘争の歴史、今までに部落差別の撤廃に努めてきたその功績、そういうものを考えますと、やはりあなた方の御努力と同時に、そういう方々の御努力も尊重して任していいのじゃなかろうかという気持ちがいたします。 それから、もう一つは、やっぱりあなた方の部下が行った差別事件ですから、それをあなた方が教育をする、たたき直すといっても、どうしてもやっぱり第三者が行うような徹底した洗い直しというのは不可能ではなかろうかと私は考えるんです。 そこで、この場であなたがそれじゃ部落解放同盟の糾弾闘争に出させますと言って所信を変えるとも思われないから、この点は後でまた石山局長にお尋ねをすることにして、ほかの点をひとつお尋ねをする。 部落解放同盟と人権擁護局との間のいろいろな交渉の中の出来事でしたけれども、これは最近の出来事なんですが、あなた方の主管の課長が交渉の中で部落解放同盟の諸君に向かって、非常に興奮をして、お前はだれだ、名を名のれと言ってどなったというのだけれども、その方は決して悪い方じゃないのだろうけれども、東京地検の特捜部の検事をしておられた方というのだけれども、やはり民衆に対して余りそういう過去の職掌的な意識を丸出しにして、お前はだれだ、名を名のれというような高圧的な態度をとることは決して好ましいことじゃない。その方が検察官をそのままお続けになって、そして悪いことをした被疑者をお調べになるときにそういう言葉遣いをなさることは、これは私は別段これに対してとやかく言うことはないと思いますけれども、お互いに業務に関して話し合いをするという段階で、そういう高圧的な高飛車なことで相手をやっつけるということは好ましくない。これは局長としてどうお考えですか。
○政府委員(野崎幸雄君) 私どもは、これまでも有力な運動団体とほぼ年に数回の割合でいろいろな交渉を持ってきておるのでありまして、これらの交渉におきましては、ともに部落差別を解消するという目的に進んでいくものとして、誠意を持って私どもは対応してまいっておるつもりでございます。 今度の井口総務課長の発言についていろいろ運動団体で取り上げておられるということはよく承知をいたしておりますが、井口君は東京地検の特捜部じゃなしに、刑事部から去年の九月に参ったものでありまして、私が見ておりましても、同和問題については一生懸命勉強をして、真摯にこの問題に取り組もうといたしております。 ただ、どちらかというと関東、東京で育った人ですので、交渉に来られる方は大体西日本の方が多うございますので、必要以上に言葉を強く感じておられるのじゃないかという気がしないではないんですけれども、私も交渉の内容につきましては、交渉終わった後テープを何度も聞き返しまして、その内容のやりとりについては十分承知をいたしておるのでありますが、この交渉というものは、時に非常にエキサイトした方向に行くものでありまして、例えば前回の交渉におきましても、もう総務課長が発言をするずっと前から、お前ら、きさまはといったような怒号とやじに包まれたような交渉になっておったわけであります。 私は、人権擁護局に参りまして、地対協が一昨年に出しました意見具申の中で、行政が主体性を持って仕事を進めていくためには運動団体を含めて自由な意見の交換ができる場というものを早急につくらないといけないということを指摘しておるのでありますが、どうしてそういう指摘がなされるのだろうかと最初は不思議に思ったのでありますけれども、実際この交渉などをテープで聞いてみますと、やっぱり自由な意見の交換ができる雰囲気というものを求めておられる理由がわかるような気がいたすわけであります。 我々は心理差別の解消を担当しておるものでありますが、この心理差別を生んでおる土壌というものは残念ながら非常に根が漂うございます。これを根本的に改めるためには、残念ながら、まだかなりの時間が要ると思います。しかし、私どもはこれに一歩一歩近づいていかないといけないと考えます。そのためにもこういった交渉というものを、お互いに意見を出し合える、そうしてお互いに静かに話し合えるものにしていかなければいけないというのが私の今の信念でございます。私は運動団体の方にもそのことをよく申し上げておるんですけれども、現在のような交渉形態でありますと、どうしてもしのごうとする姿勢で終わることが多うございます。 しかし、それは決していいことではない、もっと建設的な交渉にもっていきたいと考えておるところでございます。その方向に向かっていきますときに、もちろん私どもに反省すべきところがあれば、これは真剣に反省しないといけないと思います。しかし、同時に運動団体の方々もぜひその点を御理解いただきまして、もっと自由で建設的な意見を出し合い、そうしてもっと重要なことをお互いに静かに議論し合えるという雰囲気をつくるように私どもも努力いたしますので、ぜひ力をかしていただきたい、かように考えておるものでございます。
○寺田熊雄君 私も別段テープを聞いたわけではありませんから、前後の状況というものをそう詳しく知っておるわけではありません。 私もかつて岡山で市長をいたしましたときに、解放同盟の諸君と団体交渉をする、あるいは自由労働組合の諸君と団体交渉をするその中では、熱意の余り我々に対して時には失敬なことを言う諸君も、それはあるんです。あるけれども、あなた方は大宮人なんだから、それに相和して興奮をして乱暴な言葉を使うとか、お前は何者だ、名を名のれと言って高飛車に出るとかいうような態度をとるというのは、それはどうもちょっとよろしくない。こっちはやっぱり公務員としての矜持というものを絶えず持って、興奮せずにたしなめていくというぐらいな気持ちがなければ、これはいけませんよ。それを一緒になって乱暴な高圧的な態度に出るということは決して望ましいことじゃない。その点はひとつ気をつけてください。人権擁護局長、これからの交渉に当たって一緒になって興奮しないように、それこそ部下をひとつよく教育してもらいたい。
○政府委員(野崎幸雄君) 今、名を名のれと言われた発言については、これは数回前の、前回よりももっと前の交渉だったと思うんですが、交渉に先立ちまして自己紹介をして交渉が始まるところを、自己紹介をしなかったグループがありまして、その方はそれぞれ発言の際に名を名のるということで進んでいったわけであります。ところが、非常に議論といいますか、糾弾が激しくなりまして不規則発言がたくさん出てきたものですから、総務課長が名を名のってもらいたいということを言った事実は確かにございます。しかし、今の総務課長がそんなに興奮をして、いたけだかになったという事実は、これは私がテープを聞く限りはございませんし、性格的にそういう方ではございません。 ただ、委員から今いろいろ御指摘になりましたことは、もちろん行政当局として真摯に意見を伺い、またこちらの意見も申し上げないといかぬという立場にあることは明らかでございますので、十分御忠告を受けとめて帰りたい、かように考えております。
○寺田熊雄君 私の言うことをよく心にとめてお考えいただければ、それで結構です。 私も、戦時中に憲兵隊長なんかとよくけんかみたいになったことがある。向こうは、そのころ戦争中だから、威張って乱暴な言葉を使った。しかし私は、向こうが寺田と言った場合に向こうに小田村と言えば一緒になってしまうから、小田村君と言って、僕はそういう点、戦争中でもそのぐらいの配慮をしながら交渉したわけで、やっぱりそういう一面矜持を持ってほしい。これは要望をしておきます。 それでは、局長はもうあちらにいらっしゃって結構です。 それから、石山局長は一番当面の責任者で、あなたの部下がとんでもない差別発言をしたというのは、これはよほどあなたにも責任がありますよ。どうお考えです。
○政府委員(石山陽君) まさに仰せのとおりでございまして、私どもの直接指揮監督しております職員がこのような重大な差別発言をしたということ自体は非常に深刻に受けとめております。でありますので、本件につきましての概要等は後ほど申し上げるといたしまして、事が私どもの耳に入りましてから、直ちに施設側としましても高知の地元の人権擁護機関の方に御通報を申し上げまして、それ以来、施設を挙げましてその啓発指導を受けながら、私どもも部内の職員の啓発指導に努めておるという、ただいまはそういう現状でございます。
○寺田熊雄君 先ほども人権擁護局長にお話をしたんですが、今、行刑の理念は教育ということになっていますね。したがって、受刑者に教育をするという立場におる人が頑固な差別意識を持っておるということでは教育なんかできませんよ。それはお認めになるでしょう。だから、何とかしてそういう差別意識の払拭を図らなきゃいかぬ。あなた方は研修を刑務所の所内でなさっていらっしゃるだろうと思います。ただ、それでは自分の患部に十分なメスを加えるということがやっぱりなかなかできにくいんじゃないだろうか。 そこで、さっきもお話ししたように、解放同盟の糾弾会に出して、そういう差別意識の払拭を図る一助としたらどうかというふうに私は考える。また、何か通達があるというんだけれども、中立公正を図らなきゃいかぬからというようなことを言っておられるようだけれども、そういう差別的な言動をなさった人、そもそも中立公正でない言動をなさったそういう人をいたわって、中立公正を守るために民間団体の方に出さないのだというのは、それ自体が大変な矛盾なんですよ。だから私は、あなた方もかわいそうだと思われるかもしれないけれども、それがいけない、そういう誤ったことをした人は投げ出して、そして誤った意識を徹底的に洗い旅させるという手だてを講じられた方がいいと思いますが、局長、いかがです。
○政府委員(石山陽君) 先ほど、委員の御質問に人権擁護局長からも御説明申し上げましたとおり、私どもも大正十一年の水平社運動以来の歴史を、私自身、個人的ではございまするけれども、昔その辺の文献を調べたこともございまして、非常に関心がございましたし、こういった人権を無視するような差別発言、差別意識というものがまだ日本全体とすれば残っているということ、まことに遺憾だと思っておったわけであります。 ところが、今回たまたま、申し上げるのも恥ずかしいのでありますが、夫婦げんかを契機として、子供を自分の方に引き取りたいという父親が子供に対して、お母さんの出身はかくかくだというような、いわゆる部落の出身者であるかのごとき言動をしてしまった。一時は離婚の騒ぎになった。その結果といたしまして子供の心にも非常な傷を残しましたし、もちろんそういうことを言われました母親であります妻の立場としても大変な精神的ショックがあったろうと私は思うわけであります。これが家庭内の出来事であるとは申しながら、私どもは今、委員の仰せのように、教育刑を理念として日々収容者の人々を相手にして何とか更生、社会復帰の道を歩ませなきゃいかぬという、こういう刑務官を監督している立場でございますので、こういった発言の意識が職員の間に残っておるということ、これは公事、私事を問わず極めて遺憾であるというふうに受けとめております。 そこで、先ほど申しましたように、人権擁護機関とは早速連絡をいたしまして、それから現在に至るまででも本人に対しまして無慮数十時間の啓発啓蒙活動というものを所内で実施をいたし、あるいは人権擁護機関の係官に来ていただきまして、本人に会ってそういう意識は絶対にいかぬことだということを徹底しております。そこで現在、本人は非常にその点については反省、悔悟の念が強うございます。 一方、私どもの所長の立場から申しますると、御存じのとおり法務省というのは人一倍法律を守り、法律を執行しなきゃならぬ立場でありまするので、これは仰せになるまでもなく、こういったことを部下に起こさせないために所長はあるわけでございます。そこで、所長の立場とすれば、まさしく部下のしたことの監督責任、指導責任を負いまして、まことに申しわけないことをしたという遺憾の意を表しておりまするが、これだけでは済みません。直ちに人権擁護機関の啓発活動を受けながらも、所内の職員等に対しまして、二度とこういうことがあってはならぬという形で、あそこの刑務所は職員百五十人余の小さな施設でございまするが、これが発覚いたしました昨年の秋以来、現在までの間に、延べで五百数十名の職員に対し再三、広報映画を見せる、講演会を開く、個別指導をするという形でもって人権差別意識の払拭に努めておる、こういう状態でございます。 そこで、確認・糾弾会に出席せよという御要望がありましたことは事実でございまするが、水平社運動の歴史を考えましても、当時何もなく、だれも人様の人権を守ってくれないという中であの運動が展開された業績は、先ほど人権擁護局長が申しましたように、私もその労苦は歩といたしまするが、その努力がありまして、今日、法律は人権擁護機関として法務局に人権擁護局を初めとする指導機関の設置を決定し、まず国が先に立ってそういう差別意識の払拭を徹底する、こういう体制ができ上がりました。そこで、私どもといたしましては、自分たちのしたこの不祥事に対しまして、まず部内の人権擁護啓発機関のいわゆる啓蒙指導を受けながら、まず自分たちで徹底的な差別意識の解消に努めるということ、これが一番こういった差別意識に悩む人々に対するおわびの道ではないかというふうに考えておるわけでございます。 そこで、先般来御質問にありましたように、私ども役所の立場でございますし、法務省の性格から見ましても、一つこのような事件がありました際に、すべての同和関係者の心の痛みというものを考えます。ただ、一つの民間運動団体に対してその痛みを言うたことで全部の同和関係者に対しましておわびをしたという形に直ちになるかどうか、そういう問題を先ほど御指摘のある行政の中立性、公平性という面から申し上げたわけでありまして、私どもが中立公正を保つ立場にあるから直ちに確認・糾弾会に出なくてもいい、こういう短絡した言い方で申し上げているわけではないわけです。 こういう次第でございまするので、当面は人権擁護局を中心とします司法人権擁護機関の啓発を十分に受けまして、所内でまず行動あるいは実践でこういった差別意識の払拭の徹底に努める、これが目下私のとるべき一番の責任の果たし方ではないかというふうに考えておる次第でございます。
○寺田熊雄君 あなた方が御努力になるというその気持ちがおありなことは、これは私は否定しようとは思いません。ただ、あなたの今の御説明の中でも、差別問題に関する非常な認識の欠如というか、そういうものを感ぜざるを得ない。というのは、部落解放同盟の糾弾会に出て謝罪なりあるいは教育を受けることがほかの解放団体に対して謝罪したことになるかどうかというようなことがあったけれども、部落解放同盟以外の解放団体というと共産系の全解連というのがあるけれども、これはあなたも御承知ではあると思うけれども、差別というものを把握する上において、これは一般的な人権との間の差異というものを全く認めていないわけですよね。これは非常に封建的な名残というものを持った、歴史的な背景を持ったもの なのですよ。単に新憲法で認められた基本的人権の一つであるというような平板な考えで理解しておったのでは差別の本質がわからないのですね。そこをやっぱり考えていただかなきゃいかぬ。 もう一つは、自民党系の解放団体というのもあることはあるけれども、これは果たして実体があるのかどうかも十分はっきりしない上に、しばしば新聞、マスコミをにぎわすかのように、相続税を免れるために虚偽の貸し金の存在をつくり上げて、そして犯罪を犯すというような傾向の強い団体なんですね。そういうものと昔から部落差別の撤廃を目的としてやってきた部落解放同盟と一緒くたに同列に並べて論議なさるというのは、まだあなたは実態をよく把握しておられないのですよ。その辺の認識をもっと改めてもらわなければ困ります。そんな理由で糾弾会に出るのはどうかというようなことをおっしゃってはいけない。どうですか。
○政府委員(石山陽君) 私の申しましたのは、ただそれだけのもちろん理由じゃございません。 前段に申し上げましたように、法律に基づいて設置された人権擁護局は、同じ法務省の部内でございますが、戦前と戦後と違って、人権意識の高揚ということを踏まえて政策として決定されておる。これが私どもにとって、役所の立場で言いましたら啓発指導を受けるべきまず第一義的な団体という言い方はおかしゅうございますが、啓発を受けるべき機関ではないか、こういうこともありますので、現在それに基づいて適切な啓発指導を受けながらやっておる、これを申し上げたかったわけであります。 それと同様に、先ほど人権擁護局長のお話にもございましたように、人権擁護局はその性質上同和問題には設立当初から深くかかわりを持っております。それと同時に、年に何回かの中央交渉あるいは行政交渉を通じまして個々の問題につきましてしょっちゅう、そのような事案の発生しますたびに、これらに基づいてどのように啓発するかということについて常日ごろ実態をよく承知の上で意を砕いておる機関でございます。それで、私どもといたしましては、まず法務省部内でそういう事態が起きたということを深刻に受けとめると同時に、せっかく設けられております人権擁護機関の啓発指導をまず十分受けるべきだということを申し上げたかった次第でございます。
○寺田熊雄君 他の質問事項もありまして、他の省庁からもおいでいただいているので、この問題はこれでとどめますが、大臣もやはりあなたの部下になるわけですからして、部下のそういう遺憾な行動があったわけですからして、十分やっぱりこれについては一半の責任をおとりになって是正の措置を遺憾なく行っていただきたいと思いますが、そのお考えをお伺いします。
○国務大臣(鈴木省吾君) 先ほど来のお話の件が起こりましたことをまことに遺憾に存じます。今後十分職員に対して指導監督をしてまいりたいと、かように考えております。
○寺田熊雄君 それから、刑事局長にお尋ねしますけれども、これは岡田理という個人が五十六年の五月二十二日に金大中事件に関連したデモの際に警視庁の機動隊員山口哲史という巡査から暴行を受けて大変な傷を負ったという事件がありました。これは東京地裁で先般判決がありまして、この巡査が何人なりやという点では、なお山口哲史個人かどうかという点での断定は避けておるようでありますけれども、いずれにしても警視庁の機動隊から暴行を受けたことは間違いないという認定で東京都に損害賠償を命じた判決があったわけであります。これは同時に東京地検に刑事の告訴がなされておるようであります。罪名は特別公務員暴行傷害罪ということで告訴がなされておって、もう既に五年の日時が経過しておるというのですが、この処理はどうなっておりますか。
○政府委員(岡村泰孝君) お尋ねの件につきましては、昭和五十六年七月の三十一日に東京地検において告訴を受理いたしました。現在なお東京地検におきまして捜査を継続しておる、こういう段階でございます。
○寺田熊雄君 これは傷害がくっついておるから公訴の時効は七年ということになりますね。あなたのおっしゃるのだと、五十六年にお受けになったと言われましたね。もう時効期間が刻々と迫っておりますので、あなた方の捜査では被疑者の特定ができないというのもどうもおかしいように思うんです。今は警察官が独自の捜査権を持っていますから、あなた方の部下というわけにはいかぬけれども、あなた方のやっぱり指導を受けておる、同じ任務を持っておられる人々ですから、検察庁が徹底的に捜査をするということはなかなかやりにくいかもしれないけれども、これをまずやらずにいわゆる付審判請求などで公訴が提起されるとかいうようなことになりますと、かえってあなた方のかなえの軽重を問われるようなことにもなりかねないでしょう。ですから、五年間捜査を続けられたというのですから、鋭意捜査をなお継続されて結論を得られるようにすべきだと思うんですよ。いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) この告訴事件につきましては、委員がただいま御指摘のありましたように、いわゆる被告訴人が氏名不詳ということで写真をつけて告訴されておるわけでございます。犯人がだれであるかという特定がいろいろ難しい事案でございまして、そういう点で捜査が長引いておるものと思いますが、東京地検におきましても既に告訴を受理して以来、相当年月日たっておりますので、早急に結論を出すよう努力するものと思っております。
○寺田熊雄君 それでは、その捜査に期待をいたしまして、一応この質問を終わりたいと思います。 それから、本年三月十五日に、これは午前零時四十分といいますから深夜に入るでしょう、東村山警察署巡査部長柳田孝男君という人物が小平市の朝鮮大学の構内に侵入して、女子寄宿舎のあたりを徘回しておるうちに警備員に逮捕されて、小平警察署に引き渡されたという事実があったようでありますが、これはあなたとしては把握しておられますか。
○説明員(鳴海国博君) お尋ねの点でございますが、それは三月十四日の深夜と申しますか、あるいは三月十五日になったばかりのとき、真夜中でございますが、問題の人物は警視庁の東村山署の警ら課に勤務いたしております巡査部長、三十七歳の人物でございます。これが三月十四日の勤務が終了しました後、同僚たちと居酒屋で酒を飲みまして、深夜一人でタクシーに乗り帰宅途中であったわけですが、途中気分が悪くなってタクシーからおりて歩いているうちに、恐らくおりたのは問題の朝鮮大学校の付近であったと思われますが、彼の目に団地のような建物が入った。どうも大変酩酊というか、泥酔いたしておったわけで、これを自分の住んでおる住宅の建物と勘違いをしたようでございます。酔っぱらって前後不覚の状態のまま、ふらふらと大学校の構内に入っていったわけですが、もとより自分の住んでおる団地ではございませんので、自分の住んでおる団地じゃないということに気づいたようで、これは外へ出なきゃいかぬということで出口を探していたところだった。そのときにこの大学の職員の方に呼びとめられまして、そしてその大学校の職員の方から所轄の警察署に連絡があり、所轄の警察署から現場にかけつけましたところ、大変な泥酔状態であったということで、これを泥酔者保護ということで本署へ連れてまいりまして保護をした、そういう状況であったと報告を受けておるわけでございます。酔っぱらっていたということではございますが、他人の敷地に入って、しかも警察の保護を警察官でありながら受ける、そういうことは法を執行する立場にある警察官としてはあるまじき行為である、こういうことでございまして、現在この処分について厳正にとり行うべく進行中でございます。
○寺田熊雄君 審議官、あなた方は厳正に調べられたのだと思うけれども、この人の帰る家と方角が全く違うようなんだ。しかも、この人が写真を撮られているんだけれども、その写真を見ますと 余り泥酔してもいないようなんだね。それから、朝鮮大学校の職員の質問に対して、姓名であるとか住所であるとかいうようなものをちゃんと名のっておるわけですよ。だから、あなたのおっしゃる泥酔というのはちょっとどうだろうか。この写真をごらんなさい。ちょっとこれを見ていただきたい。(写真を手渡す) 厳格に言うと、これは刑法百三十条の住居侵入に当たる犯罪ということにもなるわけです。あなたのおっしゃる心神喪失とおっしゃるのか耗弱とおっしゃるのか、そこはよくわからぬけれども、どうも心神喪失とは言いがたいように思うんですね。これは当然その大学に対して所轄の署長から謝罪をするとかいうような措置を講ずべきだと思うけれども、その点はどうですか。
○説明員(鳴海国博君) 事件の起きましたのがただいま申し上げた三月十五日でございますが、これは三月十八日でございますか、大学校の方から警視庁の方へ朝鮮総連の方が申し入れということでお見えになりまして、応対いたしました責任者の者から当時の事情等について説明を申し上げ、何分本人、大変、さっき言ったように酩酊といいますか、泥酔という状態にあって、警察官としてあるまじき振る舞いをいたしてしまったわけだが、これについては十分に注意をし、措置をとりますということを申し上げた次第がございます。
○寺田熊雄君 過失をした場合には率直に謝るということが日本人の美徳になっているのだが、何かあなたの御説明を聞くと、謝ったのか謝っていないのかよくわからないのだけれども、誤った場合には憶するところなく悪かったということをおっしゃった方がいいんじゃないかな。その方があなた方の人格をかえって高めることになるので、何か中途半端なことではかえってみずからの人格というものを下げてしまうのじゃないだろうか。今のは謝ったんですか、謝らないんですか、どちらですか。
○説明員(鳴海国博君) 本人の行為については十分に本人についても反省をさせ、また今後の指導についても、この反省の上に立ち、今後二度とこういうことが起きないように十分反省をしてまいるということで厳重な処分をしてまいりたい、こういうことでございます。大変遺憾な出来事であった、このように深く遺憾の意を表さしていただく次第でございます。
○寺田熊雄君 結構です。 それから、これはあなたの方でお調べになったかどうか。三月の十六日に李勝順という朝鮮人が浦安へ釣りに行った帰り道、江戸川区の派出所で交通上の違反で呼びとめられて調べられましたときに、免許証不携帯ということと外国人登録証の不携帯と、この二つの件で葛西署に連れていかれて逮捕されたようでありますが、その夜八時に妹が免許証と登録証を警察署に持っていって示したのだけれども、なおかつ釈放されなかったという事件があるのですが、こういう際には、その所在がわかり、氏名がわかり、かつ妹がそういう現実に免許証なり登録証を持っていったということがありますと、これはもうすぐ釈放してもいいのじゃないでしょうか。しかし、翌日までとめたというんですけれども、これはどうお考えですか。
○説明員(鳴海国博君) 若干この事案についての状況を御説明させていただきたいと思います。 三月十六日の午後四時五十五分ころのことでございますが、警視庁の葛西警察署管内の江戸川区の東葛西四の二十七先路上におきまして外勤警察官が一時不停止の車両を現認した。そこで、停止させて免許証の提示を求めたところ、同人は運転免許証不携帯であったということが判明したわけでございます。そこで、道路交通法違反、これは一時不停止ということで葛西署の東葛西派出所に任意同行を求めまして、その派出所で身分事項を確認するなどしたところ、免許証がない、まあ、あるわけですが、それと国籍が朝鮮であるということが判明した。そこで、道路交通法違反として反則告知をするとともに身分事項の確認のため外国人登録証の提示を求めたわけでございます。ところが、この人は外国人登録証についても不携帯であるという供述をいたしまして提示しなかったわけでございます。そこで、本署に任意同行を求めまして、あなたは一体どこにお住みですかと現住所などをいろいろ聞いたわけですが、どうも言を左右にしてあいまいである、詳細が判然としないということで、外国人登録法の第十三条違反、登録証の不携帯でございますが、それで現行犯逮捕をしたわけでございます。 釈放の経緯は、翌日になりまして被疑者の弁護士がその問題になりました免許証と外国人登録証を本人に差し入れてまいりまして、それを被疑者から任意提出を受けまして証拠保全の上釈放をした、こういう経緯でございます。 なお、同日の夜、妹さんが見えたということでございますが、確かに妹さんは免許証、外国人登録証などを持って見えたわけでございますが、これを任意提出手続をしてもらいたいという警察署側の申し入れに対しまして頑強に拒否されまして応ぜられなかった、こういうことでございます。 警察の考えとしては、慎重にこの事案を処理する上からも、証拠保全上これを領置いたしまして、被疑者本人に確認をさせた上で本人に還付する、そういう手続をとろうとしたわけでございますが、どうも本件の場合そういうような拒否に遭いまして、いまだ十分確認を得た状況ではなかった。また、妹さんが拒否の上、後にまた来ます、そういうようなお話もございます。そういうことも多分ございまして証拠保全が十分できなかった。そういうことから留置を継続しておりましたところ、先ほど申しましたように、翌日になりまして弁護士の方が必要な二つの登録証と免許証を持ちまして署においでになり所要の手続をとられた、このような事情になっております。
○寺田熊雄君 入国管理局長にお尋ねしますけれども、登録証不携帯の場合、登録証を家族が持ってきた場合、今審議官のお話では領置しようとしたけれども応じなかったということなんですが、妹の方がこのとおりだといって見せて釈放をしていただけるものならば、それでよかったのだけれども、責任者が今夜おらぬのだ、夜の八時だからということで釈放していただけないということで、それならあす持ってきますと言って持って帰ったと、今警察の言われるのと当事者のあれとは少し意見が違うんですね。何にしても、登録証の存在が確認できればあえて逮捕を続けなくても私はいいと思うんだけれども、入国管理局長としてはどう考えられますか。
○政府委員(小林俊二君) 私どもといたしましては、外国人登録証の携帯そのものは制度として在留管理あるいは入国管理の目的を達する上に必要不可欠であると思っているわけでございまして、この制度を維持するということに非常な関心を持っております。そうした何か義務の履行を担保する上とはいえ、その取り締まりや捜査に当たって行き過ぎとかあるいは権限の乱用とかということがあってはならないという関心を持っておるわけでございます。 ただいまのお尋ねの件は、既に外国人登録証明書の不携帯という事態が起こった後での捜査の過程における問題であろうと思われるわけでございますので、これは既にそうした事態が起こった後の処理のことになるわけでございます。このことにつきましては、これはその権限と責任は捜査あるいは取り締まりの責任を有する警察当局の判断にまつべきものと存じますので、そうした事態が起こった後における取り締まりの対応といたしましては、私どもがコメントすることは適当ではないと存じます。
○寺田熊雄君 審議官、今のあなた方のと少し私どもが聞いているのと事実が違うわけです。私どもとしては、もう既に妹が登録証、免許証を持ってきて、そのときに本人をそこへ呼んで突き合わせればよかったけれども、そういう臨機の措置はとっていただけなかったようですね。そこにちょっと私どもの不満が残るし、そういう場合には本人をそこへ呼んで、そしてその登録証と本人とを突き合わせるということによって、あなた方が心証をとって、そしてすぐそこで、もうわかったと いうことで釈放なされば、これはもう実に人権を重んずる立派な御処置であったというふうに我々は評価するんだけれども、どうもそういう点に非常に遺憾な点があったんですね。だから、これは水かけ論になるから、きょうはこれで質問を終えますけれども、以後はやはりそういう点、十分人権の保護に遺憾のないように御注意をお願いしたい。それをあなた方に要望して、きょうは質問を終わりますが、最後に一つ刑事局長にお尋ねする。 今、フィリピンの問題が非常に我々国民の関心になっておりますが、これは刑事局長としてもやはり関心を持って見ておられるんでしょうか。まず、それから伺いたい。
○政府委員(岡村泰孝君) 御質問の件につきましていろいろ報道されていることは承知いたしておるわけでございますし、関心も持っておるところでございます。
○寺田熊雄君 それで、私どもが今与えられている資料で判断をするのですから、刑事局長が掌握していらっしゃる資料よりは私どもの方がはるかに少ないと思うから、あなたにお尋ねをするのですが、問題は、この業者が代理店に手数料を払ったという点がリベートであるかあるいは違法なもの、つまりわいろになるのか、そういう点が争われると思うんです。 それで、問題は代理店というものの存在なんだけれども、これが一体マルコス政権を代理する代理店なのか、それとも業者と何か代理店契約を結んで業者のために働く代理店なのか、それによってこの事態というものはまるで変わってくる。それで、何かマスコミの報道するところによると、代理店が大統領に直接いろいろな報告をしたりなんかしておるところを見ると、これはむしろマルコスの代理店ではないだろうか。マルコスの代理店ならば、これに対して手数料という名目で金を払うということは、これは即マルコスに対する違法な金銭の支出になるのじゃないだろうかと考えられるんですけれども、この代理店なるものの存在がどっちを代理するかというような点で結論が違ってくるでしょう。これは、刑事局長としてはどうお考えですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 私どもがかなり具体的な資料を持っているという前提での御質問でございますが、これは外務省がいろいろ取り寄せておる段階であろうかと思うのでございまして、具体的な事実関係につきましてまだ承知いたしておらない段階でございますので、ただいま御質問の点につきましても、いずれともお答えいたしがたいわけでございまして、その点、ひとつ御了承いただきたいと思うわけでございます。
○寺田熊雄君 それでは、法律論としての見解は表明していただけるでしょう。つまり、マルコスを代理する者に対して手数料名義で支払いをする、それは手数料の意味をなさないでしょう。これはもう贈賄としか考えられないわけでしょう。そういう法律的な見解は局長としてお答えいただけるんじゃないでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) やはり具体的事実関係がはっきりいたしませんので、この段階で法律論だけをお答えするわけにもいかないと思いますので、その点、ひとつ御了承いただきたいと思います。
○寺田熊雄君 それから、仮にこれがわいろになったとしましても、国外犯は刑法百九十八条の贈賄罪で処罰するわけには、日本の刑法ではいかぬのでしょうね。これはわかるでしょう。
○政府委員(岡村泰孝君) 日本の刑法は、日本の公務員に対します贈収賄、こういう形で規定されておるわけでございますので、御質問のような場合は、やはり贈賄は成立しないだろうと思います。
○寺田熊雄君 これはどうですか。手数料の支払いと称して、つまり贈賄に当たる違法な支出を手数料という名目で請負金額の中に包含させて、そして海外経済協力基金からその金を支出させて受け取る、これは詐欺になるのじゃないでしょうか。詐欺罪を構成しませんか。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいまの点も、海外経済協力基金からどういう形でその金を入手するといいますか、その辺の事実関係もまだよくつかんでおりませんので、ただいまの御質問に対しましても何ともお答えいたしがたいわけでございます。
○寺田熊雄君 いや、これは局長、純粋の法律問題としてあなたの見解をお伺いすることはできると思うんですよ。つまり、違法な支出である、マルコスに対する贈賄だ、違法な支出なんだけれども、それを隠して手数料名義で請負代金の中に包含させて、そして海外経済協力基金からその支出をさせるということはやっぱり詐欺罪を構成するのじゃないだろうか。これは純粋の法律論として、どうでしょう。
○政府委員(岡村泰孝君) その点も一般論で申し上げますと、詐欺は虚偽の事実を申し向けて相手方を誤信させて利益を得る、こういうことでございますが、フィリピンに対します援助がどういう形で行われておりますのか、そこら辺のやはり事実関係をつかみませんと何ともお答えいたしがたいと、かように思うわけでございます。
○寺田熊雄君 これはやはり国民が非常に関心を持っているし、こういう事件というものは外国の情報からとかく入ってくる傾向がありますね。やはり法務省としては事実の捜査のために検察官を御派遣になるというようなお考えはないんでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検察当局も、この件につきましていろいろ報道等がなされておることは承知していると思うのでございまして、事態の推移に応じまして検察当局といたしましても適切に対処するものと思っておりますが、今の時点で検事を派遣するというそこまでのことはまだ考えていないのではないかと思うのでございますが。
○寺田熊雄君 最後にお尋ねしたいのは、できるだけ外務省を通ずることになるんでしょうけれども、フィリピンの当局の調査結果、そういうものはやっぱり検察当局もよく入手に努力されて、国民の期待というものにおこたえになるように要望したいと思うんですが、大臣、その点どうでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 先ほど来申し上げましたように、検察当局は事態の推移に応じまして適切に対処するものと思うわけでございまして、今後どういう事態になっていくかというその辺のところをやはり見きわめませんと、今の段階で何ともお答えいたしがたい、かように思うわけでございます。
○秦野章君 最初に、広い意味で司法制度に関する問題ということになろうかと思いますが、まず具体的には裁判官それから検察官、これは司法試験を通ってなるわけだけれども、司法試験に合格した者から司法修習生が採用される。最近の様子を聞くと、裁判官、検察官の志望者が余り多くないということを聞くんですけれども、その実情をちょっと教えてもらいたい。 つまり、司法試験にはどのくらい合格するか、定員があるなら定員。それから、受験者がどのくらいあって、合格者がどのくらいあって、その合格者の中から検察官、裁判官が採用されるわけだが、それぞれのパーセントというか人数をちょっと最初にお聞きしたいと思います。
○政府委員(根來泰周君) 司法試験の庶務を担当しております法務大臣官房の責任者といたしまして、ただいまの御質問にお答えいたしたいと思います。 御承知のように、現行の司法試験法は昭和二十四年から施行されているわけでございますけれども、その節目節目に従いまして受験者、合格者の数を御説明いたしたい、こういうふうに思うわけでございます。 まず、昭和二十四年には、出願者、これは受験者は必ずしも出願者と一緒じゃございませんので出願者で申し上げますと、二千五百七十人でございました。それが昭和三十六年には一万人を超えまして、一万九百九人ということでございます。それから、昭和四十五年に二万人を超えまして、 二万百六十人というふうになっております。それから昭和五十三年度、これが一番のピークでございまして、二万九千三百九十人ということでございまして、昭和六十年度は二万三千八百五十五人ということで、昭和五十三年より減っておるわけでございます。 これに対しまして合格者はどういうふうになっているかと申しますと、昭和二十四年には二百六十五人でございました。そして、一万人を超えた昭和三十六年度には三百五十人ということでございます。二万人を超えた昭和四十五年度には五百七人、そしてピークの五十三年度には四百八十五人、そして昨年の昭和六十年度には四百八十六人という合格者になっております。
○秦野章君 この合格者の中から裁判官、検事志望というのを、余り長くなるから去年あたりのでいいですから、ちょっと教えてください。
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 司法試験に合格しました者を今度は司法修習生に採用するわけでありますが、司法修習生の採用数は大体前年度の司法試験合格者に見合った数が採用されています。 最近ですと、司法試験の合格者が四百五十名から五百名ぐらいでありまして、大体それに見合う数が司法修習生として採用されています。 その中で、今度はどのような進路へ進んでいくかと申しますと、昨年度で申しますと、裁判官を希望しました者が五十三名でございます。この中から五十二名を裁判官に採用いたしました。今年度は、これはまだ最終的なところははっきりいたしませんが、大体七十名程度が裁判官を希望いたしております。
○政府委員(根來泰周君) ただいまの件で、検事に任官いたしましたのは、昭和六十年には四十九人でございまして、本年は三十四人が希望しております。
○秦野章君 今の公式の説明では実態がよくわからないけれども、やっぱり志願者が少ないときは勧誘して、裁判官になれ検事になれといってやるわけだよね。実際は志望者が少ないというのが現状のようなんだけれども、合格者の平均年齢、それから採用の平均年齢、例えば去年だけでいいから、ちょっと教えてください。
○政府委員(根來泰周君) 司法試験の昭和六十年度の合格者の平均年齢は二十八・三九歳でございます。
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 司法修習生の平均年齢もその合格者の平均年齢に見合う数でございます。前年の十月から翌年の四月までの月数が加わるだけでございます。
○秦野章君 司法修習生から裁判官になったときの平均年齢はどのくらいですか。
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官に任官する者の平均年齢は、昨年で申しますと二十七・一歳でございます。
○秦野章君 司法修習生は今二年ですな。二年だと、二十八・三九で司法修習生になると、そこから結局二年、三十過ぎて普通のサラリーマンというか、検察官、裁判官、こうなるわけだね。三十過ぎて、いわば青年が世の中で就職するという年は三十じゃないんだ。やっぱり大学を出て少なくとも二十三、四、多少ダブっても二十四、五で、頭のいいのは昔、東京大学でも在学中通るんだから、平均が二十八・五で修習生が終わったら三十になっちゃうということは、本当は大問題なんだ。こういう人が裁判官や検察官になったときに果たして柔軟な対応ができるかな。試験が難しいものだから、さっきの志願者と合格者の数を見ても、とにかく六法全書丸暗記みたいな試験をやるわけだから、それは大変残酷な状況になっていると思うんです。そういう点から、やっぱりいい人を採るということは、若い方を採るということが一つの要素だと思うんです。若ければいいというものじゃないけれども、とにかく青年期というものはそういうものなんだ。 だからこれは、私は本当に思うんだけれども、五百人足らず合格するわけだけれども、これは時間がたつから私が一方的に言ってしまうと、そもそも弁護士さんの数というのが日本は非常に少ないんだよね。米国は六十五万人いるのに日本は一万二千七百人。英国は日本の人口の半分だけれども、バリスターとソリシター、つまり二階級の弁護士の段階があるけれども、三万人いるんですね。だから、これはやっぱり司法試験合格者の数を四、五百人というのを千人ぐらいにしてちょっと若い者でも受かるような、そういう試験、試験科目の問題もあろうと思うんだけれども、試験制度の大改革をやらぬと硬直した人間がやっぱり世に出るということになって、これは問題なんですな、大臣、我々常識で考えて。これは、僕は常識論だと思う。 それで、これは試験科目の問題もあるような気がするんですよ。これは法律一辺倒になり過ぎているという感じがするんだ。こういうことで、試験制度それから採用人数、それから弁護士会の中にはふえたら仕事の妨害になるという感じもあるのかもしらぬが、販路の拡張ということもあるんだよね。世の中は契約社会なんだから、予防医学というのに対して予防法学的な見地からすれば、契約社会でいろいろ仕事はふえるんですよ。私はこんな日本が世界で最も少ない弁護士で頑張っているよりはもっとふやしてやる。そして、判検事もやっぱりもっと多くの中から選択をするというふうにすれば、いい人がとれるし、地獄の苦しみが緩和される。大体三十過ぎて就職といったら世帯持ちになっちゃうんだよ。世帯持ちになっちゃえば転任だって嫌だ。そもそも三十過ぎて一人前になったらもう先が見えちゃう。検事なら検事正になれないだろうと、こう思っちゃう。裁判官なら裁判所長は無理だろうと、こうなると来なくなっちゃうんだよ。これは人間というのはそういうものだと思うんです。 だからこれは、一方的にしゃべっちゃうと、きのう私は予算委員会で、司法制度調査会を一遍起こせと。総理大臣の諮問機関で池田内閣のときに二年間の時限立法で、そこでいろいろな答申をしたんですけれども、少なくともそういう形をとった方がいいのなら形をとって結構だけれども、そういうことで一つの革新をやらぬと非常にもう困ったことになると思うんですよ。そういう私は提案をして、法務大臣、きのうは答弁してもらう時間なかったけれども、ぜひひとつ司法制度調査会、こういうものを内閣総理大臣が諮問機関でつくって、世の中のいろんな偉い人を集めて一年か二年か答申を待って、これをぜひ一つの大きな柱として、司法修習生の問題、試験の問題、そのほかにも司法制度の問題ではあろうと思いますが、これをぜひ政治の課題として取り上げてもらいたい。 私も実は自分で法務大臣をやったときにちょっと考えてスタッフには言ったことがあるんです。試験制度をちょっと改革したらどうだと。今スタッフみんなかわっちゃっている。あなた方いないんだよ。もう全部いないんだ、一年ぐらいしかだれもやらぬものだからね。私たち政治的課題を実らせるということは不可能だから結局役人さんに頑張ってもらうほか手がないと思うんだ。そういう意味で、これは非常に将来にわたって大きな問題だろうというふうに思うんですね。これはひとつ提案をしておきますから、法務大臣、本当にやってくださいよ。 それからいま一つは、上級職というのが法務省でもあるし、裁判所は上級職に当たるものを採っているか、どうですか。
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 最高裁判所は人事院の方で試験しておられるいわゆる上級職試験、現在Ⅰ種試験と申しておりますが、その合格者からの採用はいたしておりません。ただ、ほぼそれに見合うような裁判所の中のⅠ種試験というのは実施いたしております。ただ、これは人事院の方で行っておられます試験とは全く系統を別にするものでございます。
○秦野章君 法務省も僕は見ておってそうなんだけれども、法務省も裁判所もやっぱり司法官試験を通った判検事というものは何といったってこれは圧倒的な地位を確保するわけだ。だけれども、 忘れてならぬのは、上級職で来たり、あるいは裁判所でもそれに似たような仕事で来た人たちがどういうふうな人生の行く末を見て働いているかということを考えなきゃいかぬと思うんです。そういう意味では、私は法務省の中だけしかわかっていないけれども、上級職出身の者についてはもう少し進路を考えてやる。行政官庁なんだから、行政職なんだから、やっぱり判事と検事が一番うまいんだということではないんだよ。上級職通ればそれだけの資格はあるので、この点はやっぱりひとつ法務省でも検討の余地があると思う。 私どもは、昔は上級職じゃなくて行政科の試験、こういうので来たんだけれども、これは似たようなものでしょう、ランクからいけば。それはやっぱり全然違うものな、法務省の上級職とは。私なんかでも警視総監になるんだから、不思議なくらいだよ。だけれども、やっぱりこれは試験を通れば機会均等でいいことなんですよね。人によってはもうこれで終わりだ、絶対ここから行けないと、こういう世の中というのは余りよくないんですね。試験制度があれば試験制度は守っていくし、同時に試験で資格があればそれ相応にやっぱり面倒を見てやるというところがないと組織全体としてはうまくないんじゃないか。これも私の経験を含んで、こういう機会に、私も六月で終わりだから、頼んでおかにゃいかぬと思うんですよ、この公開の席でね。こういう問題があるということだけは間違いないと思うんです。 それから、法曹三者、口を開けば出るのだけれども、これは確かに法曹三者だ。ところが、さっき人権の問題が出たけれども、私が法務大臣のときに人権擁護局長、今の人権擁護局長が適格でないとかなんとか言うんじゃないよ、それはやっぱり優秀な人が来ているんだけれども、やっぱり判事と検事だけで法務省を固めないで弁護士をちょっと入れるんですな。来手がないかもしれぬという配慮を私も考えたときがあったけれども、ないこともないんです。人権擁護局長なんというものは判事と検事が一番適任であるかといったら、そんなことない。それは、そんなことないと思うんです。 これは、私があのときスタッフに言ったことは、できれば大学の教授だ。人権という問題はいささか法律問題というだけじゃなくて、もっと哲学的なやっぱり社会にアピールするような性格のポストなんだよね。だって、今の人権擁護局で課長は検事がやる、局長は判事だという仕組みの中では、現実の人物はいいかもしらぬが、やっぱりユニークな存在として世間が認めない。人権擁護というものはかなり社会的な問題だから、社会的な機能というか社会的な効用を考えざるを得ない、より多く、法律問題よりも。私は、そういう点では例えば人文科学なんかが発達した京都大学の若い教授に人権擁護局長に来てくれないかと言ったっていいと思うんですよ。それで、集中講義をやる。ある程度は兼務だってできるかもしらぬよ。 いずれにしても、人権その他、日本弁護士会となかなか話がうまくいかぬというのも現実だが、そういうものの対立の中からなかなかうまくいかぬなら、やっぱり法務省あたりに弁護士会から人間が少し来ていると、そこから何か生まれてこぬかという気もするんですよ。弁護士の方が収入がいいからということもあるかもしらぬけれども、それは人間、収入だけでもないから、工夫して努力すればやっぱりそういうことがあるんじゃないか。法務省という役所が判事と検事だけで固めてしまうというよりも、弁護士が入った方がいいに決まっているんだ。これは社会的にも機能的にもいい。 判事と検事一緒というのは、やはり旧概念の司法行政だ。今は法務行政だが、それはやっぱり法曹三者という形をとるべきだと思って、私もやろうとしてやり損なってやれなかったのだけれども、口では言ったけれども難しいかもしらぬが、これはやはりぜひそういう方向で法務行政というものを考えた方が客観的にいいと思います。これもあるいは司法制度調査会の問題というようなことになるかもしらぬが、これは法務行政の中でも配慮できるのじゃないか。ひとつこれはまじめに検討してもらえぬか、こう思うんです。 それから、裁判官の再任の問題、十年目にあるのだけれども、これは再任されないのが実際にはどのくらいあるか。
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官が十年の任期を終えて再任される場合に、再任の希望を出して、しかも再任されなかったというケースは、最近はほとんどございませんで、昭和四十六年に一つあって、それ以来は現在に至るまでございません。
○秦野章君 裁判官に一遍なったら定年まで裁判官、それはまあいいんですよ。大体いいのだと思うけれども、再任制度というのはほとんど意味がなくなっている。 それから、最高裁には弁護士から入るが、やはり裁判官という者の中に弁護士からもう少し入れるという工夫がないものだろうか。これは、僕はちょっとあった方がいいのじゃないかという気がするんだ。あった方が大局的に長い目で見て、画の先だけで見ないで、その方がうまくいくのじゃないか。うまくいくというか、司法の運用としてはその方がベターであろうと思います。これはなかなか裁判所も難しいかもしらぬけれども、入ったら定年まで裁判官、それもいいけれども、やはりそういう純血主義だけが一番いいということにはならない。世の中が多様化し、価値観の多様化、そしていろいろな社会的経験も導入しなければならぬということになれば、やっぱり弁護士から裁判官の道を開くというのが私はいいことだと思うんですよ。そういうことで公正な機能がよりよく発揮されるという可能性を追求すべきだと、そういうふうに私は思うんです。 それから、さっきちょっと聞き損なったが、検事と裁判官の毎年退官する人はどのくらいいるんですか。
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) これは、その年度その年度の定年の数によって異なりますが、大体三十名から四十名の人間が、ここ数年でございますが、退官していきます。
○政府委員(根來泰周君) これもざっとの話でございますけれども、これも毎年違うわけですが、私の認識では大体五十人から六十人ぐらい退職しているんじゃないかと思っております。
○秦野章君 そういうふうに例年退官していく人に対して判検事の志望者が余りない。新聞に出たのが本当かどうか、検事は九人しか志望者がなかったなんというのだったら、とてもこれはいかぬ。話が戻るようだけれども、退官する人、歴史は永遠に流れていくんだけれども、したがって変化はあるでしょう。例えば世の中が非常に不景気になってしまえば志望者が多いとかということがあるのかもわからぬけれども、しかし今の状態は少し寒心にたえない状況だと思います。 そういう意味でも、話は戻るけれども、ぜひひとつ司法官の制度、今回、五百人採っているけれども、これを倍にして千人採って、司法研修所が足らなければ大阪へ半分つくってもいいし、それから東京で拡大してもいい。こういうのは今行政改革時代だけれども、ばかの一つ覚えでもいけないんだ。やっぱり世の中の長い流れの中で物事を見ていくということなら、ふえるところがあっていいわけだから、そういう意味でひとつ司法制度調査会とか大がかりな舞台装置ならばそういう発想だってできないことはないと思います。重ねて要求しておきます。 それからいま一つ、これまたちょっと具体的な例で余り言いたくないのだけれども、名古屋の戸塚スクールの戸塚という人、あの人はどのくらい勾留受けているかな、月日は。
○政府委員(岡村泰孝君) 戸塚被告人につきましては、昭和五十八年の六月に逮捕されまして以来、現在公判審理中で身柄は勾留中でございます。したがいまして、勾留期間は約二年九カ月ぐらいということになります。
○秦野章君 判決がなくて勾留が二年九カ月、これは裁判官の勾留でしょう。法的、形式的にはい いのかもしれぬが、これは物すごく長いと思うんです。そういう勾留、そういう起訴後の犯罪捜査ということ、その実態というか、これは捜査中だから内容は余り言えないと思うけれども、ちょっと異常だが、例はありますか、こういう例は。
○政府委員(岡村泰孝君) 例はございます。ほかにも事案に応じてでございますが、やはり複雑な事案あるいは公訴事実が非常に多いような場合、重大な犯罪であるような場合、こういった場合におきまして相当期間勾留が続く場合はございます。
○秦野章君 判決のない状態で勾留を二年以上も続けるという問題は何人であろうと。ただ、出てきたらすぐ爆弾つくるというのは実際問題として、法的にはどうかしらぬけれども、ちょっとこれは危険性というか、そういう意味も僕はあるような気がするのだけれども、あの男が出てきて爆弾つくるわけじゃないんだよ。結局、証拠隠滅というか、そういうことでしょう。ちょっと長いな、常識論として。ほかに例はあっても例によるんだよ。例によっては事ごとに違うと思うけれども、少し長過ぎると私は思うんですよ。岡村君の方は、現場の意見で幾ら置いておいても長くないということかもしらぬが、限度というのは、これ判断でしょう、常識的な。どうかね、この限度というのは。判決なくて勾留二年でも何年でもこうやっていくというのは。 それからいま一つ、ついでになるが、人身保護法という法律があるのだけれども、こういうものの適用はあり得るのか。あったか、どうですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 戸塚被告人の場合は公訴事実が全部で十三あるわけでございます。この十三のうち被害者を死亡させました傷害致死あるいは監禁致死の事件が三件あるわけでございます。昭和五十八年の十月三十一日に第一回公判が開かれまして以来、現在まで二十九回の公判が開かれておりまして、現在公判を継続しておる段階でございます。 勾留が不当に長くなったときは勾留を取り消しあるいは保釈を許さなければならないという規定があるわけでございますが、この勾留が不当に長くなったかどうかといいます問題につきましては、事案の性質とか態様、あるいは審判の難易、そういった諸般の事情を総合的に判断して決めるべき事柄でございまして、現在裁判所におきまして、被告人につきまして死刑あるいは無期もしくは短期一年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪を犯したものであるときという八十九条一号と、八十九条四号の、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときという条項によりまして、被告人から出ております保釈請求を却下いたしておるわけでございます。
○秦野章君 人身保護は裁判所かな。
○政府委員(岡村泰孝君) 人身保護法の関係でございますが、これは裁判所の勾留状によりまして適法に勾留されておるわけでございますので、仮にこの請求がありましても、その理由はないものと思っております。
○秦野章君 もちろん理由はあるわけでしょうが、問題は、その実体的な判断の問題だと思うんですよね。私はそういう感じを持つわけです。 それから最後に、これは私の問題提起として、ひとつ法務省で検討してもらいたい。余りだれも言っていないものだから、これは間違っているかどうかわからぬけれども、意外に思うかもしらぬが、岡村君にしても根來君にしても、その世界でやってきた人には、特に検察の方には検察一体の原則というのは戦前からずっと今日に至る不文憲法みたいなものだね。問題提起だから答弁要らないけれども、ちょっと聞いておいてください。 検察一体の原則というものは、これは私の考えでは、一つは検察官が司法官であるという時代の思想だと思うんですよ。そして戦後、検察は行政官になったんですね。裁判所に附置された検察庁は行政官庁になってしまった。もう司法官じゃない、司法官は裁判官だけだ。そういうことを考え、かつ行政官になると上命下従の原則が適用になるわけだ。特別の事項がない限り国家行政組織法、国家公務員法の適用があると、これは法律に書いてある。だから、検事正は次席検事を指揮し、次席検事は部下を指揮する、これは行政官だから当たり前の話だ。しかし、公判の関係があるから検事は独任官という性格もある。独任官という性格がちゃんとあることは当然だ。これは、裁判の当事者になり、裁判官に対応していわば検事個人が、検事そのものが起訴、不起訴、公判維持の役所的性格を持つ。それと矛盾することなく行政庁の一員であって、検事正、検事長、検事総長と階級、役所の階層組織があって、そのもとで指揮を受けるということもあるんですね。私は、それは矛盾しないと思うんだ。矛盾しないし、当然指揮を受ける。指揮を受けながら公判でもって仕事をする。 そういうことになると、検察一体の原則というのは何だろう。確かに検察庁は全国一体にならなければだめだし、ならなければだめだというのは、これはもう行政組織だからそうなんです、もともと何も一体を言わなくたって。司法行政だけじゃない。これは全部、事件でも上へ上げて相談して指揮を受ける、そういう行政組織というものがちゃんとあるのに検察一体を言うと、これは私の経験からのニュアンスなんだけれども、例えば第一審で有罪の論告をする、検事だから有罪の論告、それで、裁判所が無罪と言ったら控訴するわけだ。そのときに、これは本当は無罪かもしれぬと思っても、やっぱり検事は疑わしきは罰する。それは、疑わしきは罰する立場だから、いいんだけれども、これはどう考えても無罪にしまいにはなってしまうといっても、やっぱり検察一体の原則で、第一審が有罪なら一体の原則で有罪で持っていってしまうというのが実情のように私は感じたわけだ。 再審事件というものがあったでしょう。一審、二審、三審やって再審で無罪になるあの中には、証拠不十分だから疑わしきは罰しないという裁判所の原則適用でいうものと、間違いなく捜査の間違いで、まるで人違いみたいなもの、間違いで無罪というものがあるんだよ。だけれども、これは一遍一審で有罪にしたら何とかして頑張らないとまずいという、それは頑張るのはいいけれども、検察一体の原則というものは第一審の有罪判決というものに対してそれが相当に働くという感じがするんですな。これは無用のものではないのか。行政組織でいいのではないか。 なぜそういうものができたかというと、検察一体の原則というのは、これは戦前の不文の憲法ですよ。それは、日本の刑事法というものがドイツから入ってきたもんだからだ。ドイツというのは統治主義の完璧な国ですよね。日本の明治以後の近代化がドイツを入れたことによって急ピッチで成長したということは、これは確かなことであって、よかったと思う。不平等条約を取っ払って、とにかく近代化をなし遂げたのは、ドイツの系統のものを随分入れたからですよ、日本の文化に。それはそれで、急ピッチで上がるときはいいけれども、普通の状態になれば、少しドイツ統治主義あるいは観念論的なものよりも英米法的なリアリズムというか経験論、そういうリアルな可能性の追求が大事だと私は思うわけです。 ところが、刑事法は現代でもやはりドイツ統治主義的、実体的真実主義的という枠組みがかなり強い。しかし刑事訴訟法第一条では、そこに戦前と違ったのは、公共の福祉と人権とを全うしつつ真実を明らかにする、公共の福祉と人権とをと、ちょっと思想が入ってきたわけですよ。それは、国家の性急な建設ということもさることながら、同時に人権が大事だということだが、憲法のいろいろな新しい思想というものが刑事法に反映されてきたという自覚というものが一体どこまであるのか。私は、別に偏したことを言っているつもりはないのだけれども、やはりドイツのいわば統治主義的な観念論、これはちょっと問題なんですね。 それは、ヘーゲル、カント哲学というのは全部観念論の世界ですよ、マルクスもそうだけれども。それは参考にすべきものはあるけれども、一 方において英国議会主義の歴史あるいは英国的哲学というか、英国へ行くと哲学でも芸術でも、シェークスピアなんかでもそうだけれども、言うならば自然科学のニュートンですらリアルですよ。これはリンゴが落っこちるのを見て万有引力なんだから、自然科学、社会科学、哲学、すべてドイツとはちょっとニュアンスの違った思想が英国に育ち、それが米国に行った。こういうこの世界の二大潮流の中で日本は、言うならば近代化の中で大陸、特にドイツ傾斜というものがあったということは、ある程度反省する必要があるというふうに思うんですよ。 これは私の考えだからいろいろ反対もあるかもしらぬが、要するに、特に刑事法は、東大の法学部が日本の官僚をつくった、これは間違いないでしょう。東大の法学部は何を勉強したかといったら、刑事法なら全部ドイツだよ。これは間違いないんです。それはすばらしい文化ではあった。近代化に貢献もした。だけれども、戦後平たくなって考えてみると、英米思想を、英米、英米法なんと言ってかなりばかにしていたんだ。実は私もその日かもしらぬ。私はまともな勉強してないからそこまで言わなくてもいいんだけれども、どっちかといったらそうだったが、やっぱり英国はまたドイツに劣らずすぐれたものを持っている、英米法には。このことを、英米法をややばかにしておった戦前、高柳賢三なんという英米法学者がいたけれども、何といったって日本ではドイツ系の学者が一流ですよ、公法を初めとして刑事法でも何でも。しかし、そういう文化の中に浸り切って今後ずっといくというのは無理なんです。やっぱりもっと切りかえなきゃいかぬ。 英米が何でもいいというんじゃないですよ。それは、アメリカだって雑なところはいっぱいありますよ。きのう質問した中で、自治法で私は、個人個人の議員をリコールするなんというのはファッショだと言ったのだ。合議体の議会があるのだから、三十人も二十人もの、そこで除名もできれば何もできるようになっているのに一人一人をリコールするなんというのは自治じゃなくて自治の破壊だときのう言ったんだけれども、こういう一種のばかげた条文をアメリカは持っていると同時にすごい民主主義のものを持っていますな、議会でも何でも。だから、やっぱり何もかもみんな満点というのはどこにもないんだけれども、私はぜひひとつこれは検討課題というか、検察一体の原則というのはちょっと問題だ。極端なことを言えば、根拠は何もないんだ。 例えば事件をこの検事にやらしておいちゃまずいといったら移送すること、こっちの検事にやれと上の人が指揮できるし、それから、ほかの検察庁に持っていけと、取り上げることもできる。ちゃんと規定はある。行政組織としてあるわけだ。あるのだから、一体の原則で縛ってしまうことは、むしろ下から一番最初に事件をやった検事、それのものをやっぱり尊重するというのは結構かもしらぬが、上の方へ行かないで、下手すれば検事になりたての一番下へ来るんだから、どっちかといったら未熟ですよ。それによって全体を縛るという傾向があるようなことがある。これは下の人を悪く言うんじゃないですよ。組織というものはそういうものです。 普通の役所だって役所はやっぱり一体なんですよ。検察だけが一体であって、普通の役所は一体じゃないかといったら、やっぱり一体なんだよ。私は、行政庁というもの、組織というものはそういうものだろうと思っている。そういう意味において、検察一体の原則というものは刑法や刑事訴訟法なんかの学者の本には全部書いてあるし、検察官がお書きになったものにも全部ある。例外なさそうだが、クエスチョンマーク。思想的に歴史的にクエスチョンマーク、検討の余地あり、問題提起と、私はそのことをきょう申し上げて、答弁要りませんけれども、ただ大臣にはひとつ司法制度調査会の方を一言ここで言ってもらって私の質問を終わります。
○国務大臣(鈴木省吾君) 大変に広範な学識を持ち、また御経験をお持ちになって、しかもまだ法務大臣を御経験になられた先生の各方面にわたる貴重な御意見を伺って、本当にありがとうございました。 司法制度調査会の問題につきましては、昨日、先生予算委員会で御質問になられて、総理の代理としての官房副長官が来て御答弁を申し上げたわけでございます。私も拝聴いたしておりした。法務大臣としましても、先生の御意見を尊重して、きのうの御答弁に沿って努力をしてまいりたいと思います。 その他のことについても大変貴重な御意見、本当に重ね重ね御礼を申し上げます。重要な問題等多数あるわけでございます。なお今後ともひとつ大いに御指導いただくことをお願い申し上げまして、答弁にいたさせていただきます。ありがとうございます。
○委員長(二宮文造君) 両案件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。 次回は三月二十七日午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後四時十四分散会 ―――――・―――――