法務委員会 第13号
- 発言数
- 89 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1986/05/20
会議録
○福家委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所猪瀬家庭局長から出席説明の申し出がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○福家委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○福家委員長 内閣提出、参議院送付、扶養義務の準拠法に関する法律案を議題といたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 扶養義務の準拠法に関する法律案、これについて質問をするわけですが、まず最初に、昭和四十八年にヘーグの国際私法会議で扶養義務の準拠法に関する条約が作成された、こういうわけですね。それで五十二年に発効しておるわけです。それが、今日まで約十年近くたつわけですが、どうしてこういうふうにおくれたのか、その理由はどういうところにあるのですか、どういう点が問題だったわけですか。
○枇杷田政府委員 ただいま御指摘のように四十八年に採択されまして、五十二年に発効いたしたわけでございます。内容的には私どもとしてはそれほど問題意識を持っておらないので、直ちに批准して国内法の制定をするということも十分に考えられたわけでございますが、一つにはまだ国際的な身分関係の問題がそれほど多くはないという状況がございまして、ほかの関係の審議を法制審議会でもお願いしなければならぬということがあったためにおくれたということでございます。具体的に申しますと、国籍法の改正の方に力を注いだということがおくれた一つの理由というふうに申し上げてもいいかと思います。
○稲葉(誠)委員 この法律ができた場合とできない場合とでは、具体的な例を挙げて御説明願いたいと思うのですが、どういうふうに違うわけですか。
○枇杷田政府委員 現在の法例で申しますと扶養義務者の本国法ということが原則になるわけでございます。これはいろんな、親子間であるとか夫婦間であるとかで法例の適用条文としては若干違うわけでございますけれども、結論として言いますと、現在の法例によりますとおおむね扶養義務者の本国法が適用されるというのが結果になりますが、今度の法律によりますと扶養権利者の常居所地法ということになるわけでございます。 例えて申し上げますと、韓国の父親と日本国籍を持っている子供との間の扶養義務関係、子供が親に対して扶養義務を請求する、日本の裁判所で問題にするという場合には、現行法で申しますと扶養義務者が韓国籍を持っておりますと韓国法ということになるわけであります。ところが今度の法律によりますと、扶養権利者が日本に住んでおれば日本の法律によって扶養義務を定めていくというふうに変わっていくわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると今、日本と韓国の例を示されたわけで、扶養義務者の本国法によるか権利者の本国法によるかが違うと言うのですけれども、それはわかるのですが、具体的に例えばどこがどういうふうに違うのですか。
○枇杷田政府委員 実質法を比較いたしますと、その親子の関係にいたしましても扶養義務というものが認められますから、結果は同じことになるわけでございます。ですから、ただいま申し上げました例では結果としてはほとんど変わりがたいということにたってまいろうかと思いますが、例えばそれが韓国人相互の間で、おじとおいというような関係で片っ方のおいがおじに対して扶養義務の履行を請求するという場合に、日本の裁判所に訴えを起こしたときに、例えば扶養権利者であるおいが日本に常居所地を持っている場合に、現在の形で申しますと韓国ではそれは当然に扶養義務が生ずるということになりますが、今度は日本の法律で適用になりますと、これは特別事情がある場合に家庭裁判所の判断で扶養義務が生じたり、あるいは特別の事情がなければ扶養義務がたいというふうに結論が変わってくるということがあるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 韓国はヘーグの国際私法会議には入っていたいわけでしょう。そして扶養義務の準拠法に関する条約については今どういうふうな状況になっておるのですか。あるいは国内法をまたつくるということになるのですか。あるいはそれは全く関係なくて日本は日本の独自の立場から、仮に韓国との間でいろいろな問題があっても処理できる、こういうことになるわけですか。
○枇杷田政府委員 韓国は、この扶養義務の準拠法に関する条約には加盟をいたしておりません。けれども、この条約は、いわゆる相互主義をとっておりませんで普遍主義をとっております。したがいまして、その国内法も締約国の人であるかどうかというふうなことは関係なしに一律に処理をするということにたっておるわけでございますので、ただいまの問題につきましても、韓国が入っているか入っていないかということはこれは問題にならないということになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 国際私法というのはこれはよくわからないのですが、日本の場合には国際私法という法律がたくて法例というものが国際私法に当たるのかちょっとよくわかりませんけれども、各国ではやはり国際私法という法律があるわけですか。日本の場合は何か国際私法というものをつくろうという動きが、前の商法改正のときにたしか元木さんがそういうふうなことを言われておったのを覚えているのですけれども、その作業は具体的にはどういうふうにたっているわけですか。
○枇杷田政府委員 ただいまの日本の法制度では、いわゆる国際私法と言われている分野の規定は法例という中で定められておるわけでございますが、この法例という中で置かれておりますのは、いわば法律の一般的な適用の通則のようだ形で置かれておるわけであります。したがいまして、法例の一条とか二条とかにはいわゆる渉外関係には関係のない規定もあるわけでございます。また、各国の法制を見ましても、民法その他の法律の中にそういう国際私法的な規定を設けているところもあるわけでございまして、法律のつくり方の体裁としては必ずしも一律ではないわけでございます。 ただ、我が国の場合に、法例という言葉自体が余りなじまれない言葉でございますしするので、実は現在、法例の中の国際私法的な部分についての見直し作業をやっております。その見直し作業が終わりました際には、これはまだ確定しておるわけではございませんけれども、いわゆる国際私法に関する部分を抜き出しまして国際私法典というような形での単行法をつくった方がわかりやすいのではないかという考え方を持っておりますので、あるいはそのような形でのまとめた法案を将来、国会に御提出するというふうなこともあり得ようかと思っております。
○稲葉(誠)委員 「扶養権利者が現実に生活を営んでいる社会と密接に関係するため、その者が常居所を有している地の法律によって規律するのが妥当である」というような考え方による、こういうわけですね、今度の立法は。そうすると、今まではこれが扶養義務者であったわけですね、それは扶養義務者の方がやはり現実に生活を営んでいる社会と密接に関係するためにというふうな理由であったと思うのですが、それが変わってきたというのは、具体的にどういうところに根拠があるのですか、あるいは思想的な流れというふうなものがあるのですか。そこがよくわからないので、もう一遍お答え願いたい。
○枇杷田政府委員 一般的に申し上げますと、大陸法系のところが主でございますけれども、身分法関係につきましては本国法を中心に考えるという考え方があるわけでございます。その場合に扶養権利者の本国法によるか扶養義務者の本国法によるかということが決定されなければならぬわけでございますけれども、義務を背負う方のこの人たちがいわば納得するといいましょうか、そういうふうな形で考えますと、義務者の本国法によるのが適当であろうというふうなことから、本国法主義をとっておるところでは扶養義務者の本国法という法制をとっておるところが多かったわけでございます。しかしながらだんだんと、身分法関係の分野につきましても本国法主義というのには少し問題があるケースがある、事柄によっては生活の実態に即した準拠法というものを考える必要があるであろうというふうな風潮が出てまいりました。しかも扶養の問題につきましては扶養権利者の生活の問題でございますから、したがいまして扶養権利者が住んでおるところの社会的な水準といいますか、その者の考え方によって扶養が受けられるようにすることが第一義的には正しいのではないかというふうに考え方がだんだんと変わってまいりまして、そこで、四十八年のヘーグで採択されました条約においては、扶養権利者の常居所地法というものをまず第一義的に取り上げようというふうにたったわけでございます。 ただしかし、そうたってしまってそれが扶養権利者に不利に働いては問題があるということから、段階的な適用として、次には共通本国法であるとか、それでもだめな場合には法廷地法とかいうふうなことにいたしておるわけでございまして、したがいまして、従来の本国法一本的な考え方を常居所地という概念を取り入れて、しかも扶養の問題については扶養権利者の生活というものにまず焦点を置いた考え方をするのが適当だという考え方に変わってきたというふうに理解いたしております。
○稲葉(誠)委員 この常居所地という言葉がちょっとよくわからないのです。今までの民法には、それは居所とか住所という言葉はもちろんありますけれども、この言葉はよくわからないのですよ。これは、この条約そのものはヘーグだからフランス語でできているのですか。正文は何で、これはどういうふうな言葉を使っているのですか。
○稲葉(威)政府委員 これは正文は英語とフランス語でございますが、英語ではハビチュアルレジデンスという言葉を使っております。 ちなみに、日本の住所とほぼ同じような概念でございますけれども、住所という概念については各国の法制によってそれぞれ一定の意味合いを持って用いられている、それを国際的な概念として統一する趣旨でそういう常居所地という概念をつくったのだというふうに言われております。
○稲葉(誠)委員 今の英語はまあわかりますけれども、それは普通の住所とは違うのですか。
○稲葉(威)政府委員 これもいろいろ説がございまして、一定の客観的条件としてそこの場所に定住する事実が必要なわけでございまして、それにどの程度主観的要件が要るかということが問題になるというふうに言われております。日本の住所とはそれほどかけ離れた概念ではないというふうに理解されております。
○稲葉(誠)委員 私ども習ったときは、生活の本拠を住所というというふうにたしか民法にあったと思いますが、何条か忘れましたけれども。そのときに、住所というのは主観説と客観説があるのじゃないですか。今あなたの言われたのは何か主観が要るようだ要らないような、ちょっとはっきりしなかったのだけれども、今は客観説が大体通説になっているのじゃありませんか、ちょっと私も忘れましたけれども。だから意思は要らないのではないですか、定住する意思とかなんとかということは。どういうふうにたっているのですか。 〔委員長退席、村上委員長代理着席〕
○稲葉(威)政府委員 例えば客観的事実として何年間かその場所に、その国に定住しているということが一つの客観的事実でございますけれども、その場合に、留学生としてその場所へ行っているという場合と移民として完全に移っているという場合とではやはり考え方が違うのではないか。その国の法律に服する意思という意味ではそこに違いがあるのではないかというふうなことが言われているわけでございます。
○稲葉(誠)委員 私もテキストを調べてきたわけではありませんで、忘れましたけれども、主観説と客観説があるということだけ覚えているのですよ。そうすると、大体客観説の方が中心になっているように思っているのですが、どういうふうになっているのですか。 それからもう一つは、一体住所というものが一つしかないんだという考え方と、二つ、三つ住所が——三つというのはちょっとおかしいかもわからぬけれども、二つくらい、複数説というのがあるでしょう。複数の住所というものを認めるという考え方がこのごろ強くなっていますね。そこら辺のところはどういうふうに理解しているのですか、これは余りこれとは関係ないかもわかりませんけれども。
○枇杷田政府委員 おっしゃいますように、従来から住所については主観説、客観説というものがあって、現在では客観説がいわゆる通説的なことだろうと思います。この問題の常居所地法というのも客観説的な概念の内容だろうと思っておりますが、二つ住所があることを認めるかどうかということにつきましては、これははっきりした定説があるというわけではございませんが、事柄によって二つの住所を認めてもいいではないかというふうなことがあって二つの住所を認める、例えば送達などについて、ここに送っても住所としての送達で有効であるというふうな意味で考えるというふうなこともあるだろうと思います。ただ、住所というものは二つあっていいということが果たして現在通説的にすべての場合に言えるかということについては、まだ問題があるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 これは学生が寮や何かに入っているでしょう。その場合選挙権のときに問題になったのですよ。私はそれを思い出すのですけれども、そのときにそれを住所と言えるか言えないかという問題がありまして、当時、今もそうですけれども、都立大学におられる眼先生に来ていただきまして、そして眼先生は複数説か何か述べられたのを覚えているのですが、いずれにいたしましても、そこで常というのを入れなければいけないわけですか。居所はもちろん暫定的というか仮定的なものですから、ちょっと言葉が余りなじまないような言葉なものですから、普通の住居所地法とかなんとかという言葉ではいけないのか、なぜ常というのを入れたければいけないのか、特別な理由があるのですか。
○枇杷田政府委員 常居所地という言葉は余りなじまれておらない言葉でありますが、ただ住所という言葉を使うということには問題がある、実質的な内容は日本で考えておる住所と同じでございますけれどもと申しますのは、国際私法的な概念で住所という言葉をあらわしますと、それはまだその住所というものを判断する準拠法は何であるかというふうな問題につながっていきやすいわけであります。したがってヘーグの国際会議におきましても、要するに国際私法上のいわば各国共通の概念としての何かそういうものをあらわす言葉をつくらなければいけないということで、先ほどの英語で申しますとハビチュアルレジデンスという言葉が使われて、それを日本訳としては常居所地というふうに訳して、もうそういう概念だということで使おうといういわば一種の約束事としてやっておる。この例が実は遺言の方式に関する法律におきましてもう既に国内法としても使っておりますので、今度もそういうふうな使い方をいたしたわけでございます。ただ居所ということでは先ほど御指摘のあったように単純な一時滞在ということになりますので、ですから、住所的な意味で一定の継続的な生活の本拠になるという意味をあらわすとすれば、常居所地という言葉であらわすほかはないのじゃないかということでございます。
○稲葉(誠)委員 アメリカはこのへーグの国際私法会議の諸条約のうち十一、十三、十九、この三つしか批准してないわけですか。これはどういうわけなんですか。そのことと、それから日本の場合は一、七、十、十一、十三ですか、十三がダブっているわけですね。ダブっているというか、日本とアメリカの関係ではあれですけれども、これで、日本とアメリカとの関係でこの法律に関連していろいろだ問題が出てきたときには支障はないわけなんですか。
○枇杷田政府委員 アメリカは、ヘーグの国際私法会議には参加しておりますけれども、比較的批准しているものが少ないわけでございます。その理由は、州によって身分法を異にいたしておりますので、その関係で非常に批准しがたいという要素がある。そのことはカナダについてを言えることだろうと思いますが。しかしながら、英米法的な考え方はどちらかといいますと常居所地的なものを連結素として考えるというふうなことが強いものですから、アメリカとしては、むしろ他国が常居所地という概念で国際私法を考えてもらうようになれば大体合うというふうなつもりでもいるのじゃないかと思います。 したがいまして、今度の扶養の関係につきましても、これはアメリカも将来は加盟するのではなかろうかと思いますが、日本といたしましては、アメリカとの関係と申しましても、相互的にどうかという問題は残りますけれども、先ほどもおっしゃいましたように普遍主義でございますので、アメリカが加盟していようとしていまいと、ともかく条約を承認し、それに合う国内法を制定すれば常居所地主義というもので進んでいくわけでございますので、結果としてはアメリカの基本的な考え方と違いない結論で処理されることになるのではないかというふうに思っております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、ヘーグの国際私法会議の諸条約の二十三が今問題になっているわけですね。扶養義務の準拠法に関する条約、これがそうですね。そうすると、二十三のこの条約に関する法律を国内法で決めるのは、今はどことどこたんですか。今まであるもののほかに今決めようとしておるところはどこなんですか。
○枇杷田政府委員 外国で今これを承認して国内法をつくろうという動きがあるのが、西ドイツがそうだというふうに聞いております。
○稲葉(誠)委員 扶養義務ということに関連して、各国の制度が違うと思うのですけれども、日本の場合は扶養義務を決めるのについて相当広い範囲で決めている。夫婦とか親子とか、そういうのはわかりますけれども、そうでないものについても扶養義務を決めていますね、特別関係といいますか何といいますか。日本の決め方は少し範囲が広過ぎるのではないんですか。そこはどういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。
○稲葉(威)政府委員 英米は夫婦と親子の関係だけでございまして、北欧も大体そういう系統でございます。ただ、ヨーロッパ諸国でもラテン系、例えばイタリアですと兄弟姉妹あるいは直系の姻族というような関係にも扶養義務を認めております。さらに東洋諸国では、韓国は御承知のように大家族主義的な色彩が強うございまして、かなり広い範囲において認めている。中国は大体日本と同じような立場でございまして、日本はどちらかと申しますと大体中間的な関係、北欧系に比べますとやや広目という感じになっております。先生御指摘のように夫婦、直系血族間以外は裁判所の裁量によって扶養義務を認めるということにたっておりますので、その点は家庭裁判所がしかるべく運用をされて適切な処理がなされているものというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 傍系親族間または姻族間の扶養義務を認めるということは、私は、少しく広過ぎるのではないかということと同時に、新しい民法の精神というものとちょっと反するのではないか、やはり昔流の家族主義的な色彩を非常に強めている残滓ではないかというふうに考えるのですが、今家庭裁判所の方においでになっていませんけれども、実際には傍系親族間または姻族間の扶養義務というものは、日本の場合でも扶養義務を認めてやっているというのはそうはないのではないですか。
○枇杷田政府委員 実際に家庭裁判所で傍系とか姻族とかの間の扶養義務を認められたケースがどれほどあるかということは私承知いたしておりませんが、比較的少ないのじゃないかというふうに想像いたしております。御指摘のように、次第に社会保障的な制度が完備するに伴って、むしろ扶養の関係でも、いわゆる生活保持的な関係についてはどこでも残っておりますけれども、いわば生活扶助的なそういう扶養の関係はだんだんと社会保障の方に切りかえられていくというふうな傾向にありますので、将来はただいまおっしゃったような形での民法の扶養義務の規定の見直しというふうな事態も考えられるところだろうと思います。
○稲葉(誠)委員 ヘーグの国際私法会議の諸条約、一から三十まであるわけですけれども、今後これに対しては日本の政府としてどういうふうに対処していくという予定になっているわけですか。
○枇杷田政府委員 たくさんの条約が採択されておりまして、我が国が承認していない条約がたくさん残っておるわけでございます。この中で、日本の制度との整合を考えなければいけないという問題はにわかにちょっと加盟しにくいわけでございますけれども、そうでないものについて、殊に、何と申しましょうか裁判手続の共助的なようなものは、できるだけ早く検討して承認をしていくというふうなことであるべきだと思います。 なお、身分法関係の問題につきましては、制度に絡むようなものがありまして承認という形ではなかなかうまくまいりませんけれども、その精神といいましょうか、その趣旨というものは尊重していいというものがございますので、先ほど申し上げました法例の見直しの際にはそのような考え方を取り入れた国内法を考えていくというふうなことで進めてまいりたいと思っております。
○村上委員長代理 岡本富夫君。
○岡本委員 ただいま議題となっております法律についてお聞きいたします。 まずは、ヘーグ国際私法会議規程が一九五一年十月に採択されているけれども、会議の第七会期に代表を派遣した国の過半数が一九五五年の七月十五日に受諾し発効している。しかし我が国は一九五七年の六月二十七日にこの受諾宣言をしておるわけですが、これはどういうわけでこうなったのか、ちょっとお聞きしておきます。
○枇杷田政府委員 この会議規則につきましては、内容的に特に問題があるというわけではございませんけれども、発効するまでは実は様子を見ていたと言うと言葉は悪うございますけれども、発効を見ましてからアクションを起こしたということでございます。ただ、入るということになりますと予算的な手当ても必要になってまいります。そういうふうな準備がかかりましたので、ただいま御指摘のようなときに加盟をするということになった次第でございます。
○岡本委員 参議院でほとんどの質疑が出尽くしておるわけですので重複を避けたいと思うのです。 そこで、簡単なことですが、ヘーグ国際私法会議の運営が、なぜオランダの国家委員会がその運営の委員会になっておるのか、その理由についてお聞きしておきたい。
○枇杷田政府委員 ヘーグの国際私法会議と申しますのは、明治二十六年、一八九三年にできたものでございますが、この会議はオランダ政府の発議によってできたという経緯がございます。したがいまして、一八九三年以来いわばオランダの地で招集される、ヘーグで行うということでヘーグ会議というふうに言っておるわけです。そういういきさつがございますので、この新しくできましたヘーグの国際私法会議の規則におきましても、いわば事務的なものはオランダが行うというふうなことで、オランダの方でも勅令でわざわざこのための国家委員会というものを設けておるわけです。 そういういきさつ、沿革に基づくものでございまして、オランダが特に何かの意図を持っているというものではない、むしろお世話役をしようというようなつもりでこういう形になっているというふうに了解をいたしております。
○岡本委員 次に、扶養権利者が未締約国に居住する場合その権利を主張できるのか。端的に言いますと、例えば、中国は未締約国ですが、終戦のときにお世話になった孤児たちが今日本に帰国しておるわけでございますが、この孤児の人たちは中国の養父母の扶養義務があるのかどうか、これについてまずお聞きしたい。
○枇杷田政府委員 今度の条約並びに国内法は、未締約国に国籍を有する者であるかどうかということを問わず一般的に適用することになっております。条約で申しますと相互主義ではなくて普遍主義というふうに申しておるわけでございますが、そういう関係でございますので、ただいま御指摘の中の未締約国であるかどうかという点は、これは考慮の外にしていただいて結構かと思います。 ただ、今度は義務が認められるかということになりますと、これは日本の裁判所が判断した場合にどうなるかというふうな観点で考えるわけでございますが、現在の法例で申し上げますと、いわば扶養義務者、ただいまの法例で申し上げますと日本に帰国した残留孤児の方ですね、その本国法によるということになります。したがいまして、日本法でございます。日本法の場合には、養親子関係についてはこれは当然扶養義務関係がありますので、扶養義務があるということになります。今度新しい法律ができますと扶養権利者の常居所地法ということになりますから、今度は養親が住んでおるところということになります。これは中国でございます。中国の法律は、これも日本と同じように養親子関係については実親子と同じような扶養義務関係があるということになっておりますので、どちらによりましても養子である者は養親に対して扶養義務を負うということには変わりないということになろうかと思います。
○岡本委員 その場合、帰国した残留孤児の人たちは、実態からいってとても扶養する——自分たちだけでも食べていけない、大変なんです。それなのに、中国に残された養父母から権利を主張されて扶養義務を果たせ、こういうことにたった場合どういうようになるんだろうと非常に心配たんですが、これについてちょっとお聞きしておきます。
○枇杷田政府委員 法律の理論的な結論としては、先ほど申しましたように扶養義務を負うということになるわけでございますが、ただ、おっしゃったような事情がございますので、私必ずしも内容をつまびらかにいたしておりませんけれども、外務省、厚生省が努力をされまして、そして中国にいる養親に対してある一定の金額のものを、これを残留孤児が出すというわけじゃなくて、政府並びに基金からの拠出金と申しましょうか、そういうところからいわば扶養料があるいは扶養料に相当するものを送るというふうなことで処理をすることになっているように聞いております。
○岡本委員 これもずっとということはなかなか難しかろうかと思うのですが、孤児の人たちがしっかりしてきて日本に生活基盤ができて、そうしてちゃんと扶養する力が出ればこれはよいと思いますけれども、今のところは今答弁のあったように国で見てあげるしかないだろう、こういうように考えるわけです。 次に、今度は逆に、私の選挙区に芦屋というところがあるのですが、ここにいる方でアメリカ人と結婚をして、そうして子供が二人くらいおるんですが、この配偶者と子供を残して未締約国に、これはアメリカですが帰還した。その帰還した本人はまたアメリカで正式な結婚をしておる。こういう場合、日本に残っておるところの子供たちは扶養を受ける権利があるだろうと思うのですが、これについてひとつお聞きしたい。
○枇杷田政府委員 今のお話でございますと、アメリカ人と結婚をした日本女性というのが正式の婚姻をされたかどうか。アメリカへ帰って夫の方が正式の結婚をしたというお話でございますので、あるいは内縁であったのかもしれませんが、ともかくそういうふうな問題につきましては、まず第一番目には、日本の裁判所に事件を持ち出した場合に裁判管轄権があるかどうかという実はもう一つ難しい問題があるわけでございますが、仮に日本の裁判所に裁判管轄権があるというそういう前提で物を考えてまいりますと、内縁関係の場合にははっきりした扶養義務という関係はないわけでございます。殊にアメリカに帰ってから正規の婚姻をしたということになりますと、少なくとももう事実上の内縁関係というものは終了しておるというふうに見られますので、内縁を普通の夫婦に準ずるような形で物を考えるにいたしましても、もはや扶養義務を請求することは、その日本女性にはないのではないかという感じがいたします。 あと子供さんでございますけれども、この子供さんはそのアメリカ人との間に親子関係というものが法律上あるんだということになりますと、これは親子というのはずっと縁が切れるわけのものではございませんので、したがって扶養の権利を主張することは当然できるわけであります。問題は、法律上の親子であるかどうかという関係でございますので、認知をしていないとその関係は法律的には親子関係ということが言えませんので、扶養の関係は生じないということになろうかと思います。
○岡本委員 そうですか。義理の子供、すなわち認知をしていないということになると扶養権利者にならない、こういうことなんですね。そうするとアメリカに裁判を持ち出してもこれはだめだ、こういうことですか。この法律が通ってもそういうわけにいかない、こういうことですかね。もう一遍ちょっとお聞きしたい。
○枇杷田政府委員 認知というものがありませんと嫡出じゃございませんので、法律上の父子関係というふうにはならないわけでございます。したがいまして扶養の権利を主張するということはできないと思いますが、ただアメリカの法制はよく存じませんけれども、どこかアメリカで、そういう事実上の親子関係というものがまた認められれば、そこで扶養の義務が生ずるというふうな法制のところがあるかもしれません。そこにその子供さんが常居所地を持っていれば、今度の国内法によってはそこで扶養の権利というものが生ずる可能性はございますが、ただいまの法例のお話ですと日本に住所があるわけでございますので、日本ではそういうふうな認知されていたい関係では扶養の権利を主張することはできない、要するに認知の方が先行するということでございますので、ちょっと難しかろうと思います。その関係は今度の条約や国内法によっても変わるところがないというふうに思います。
○岡本委員 次に、ちょっと戻りますが、昭和五十二年に締結された子に対する扶養義務の準拠法に関する条約について国内立法措置がとられたかった。このたびはこの条約の締結に伴い単行法を制定する。その理由はどういうわけなのか、これをひとつお聞きしておきたい。
○枇杷田政府委員 子に対する扶養義務の準拠法の関係につきましては、これは私ども簡単に子条約というふうに呼んでおりますが、その子条約の中身は相互主義をとっております。したがいまして、締約国との間のそういう渉外的な扶養事件にのみ適用されるということになるわけであります。国内法を制定いたしますと、これはいわば一種の全体的な規制ということになるので、国内法の制定にはそういう面で若干なじまない面がある。ただ、そういうふうな締約国にだけ適用があるという形での国内法をつくることも、それは不可能ではないわけでございます。その場合でも締約国の数が少のうございますので、特に法律をつくるということはしないでもいいじゃないか、条約はそれ自体として拘束力を持つわけでございますので、そういう関係で国内法をつくらなかったわけでございます。 今度は普遍主義でございまして、未締約国との関係を問わず適用されるということが条約でも決まっておるわけでございます。それに従って国内法をつくるということでございますが、これはまさにどこの国との関係でも今度の条約の内容について適用していくということでございますから、まさに国内法を制定しなければならない、むしろその方がいいということになるわけでございます。
○岡本委員 これは話は全然この法案とあれですけれども、先国会の終わった後で各刑務所あるいはあっちこっち視察をいたしました。そのときに神戸の刑務所に参りましたら、相当一生懸命働いている囚人がたくさんいました。この人たちの扶養義務というのはちょっとおかしいのですけれども、この人たちの生活については今法務省が責任を持っているだろうと思うのですが、最近の円高不況の影響によって刑務所の被収容者の刑務作業、これに非常に影響しておる、こういうように聞いておるのですが、その実態についてお聞きしたいと思います。
○石山(陽)政府委員 最近一部の新聞紙等にも私どもの刑務作業の実態につきまして多少紹介されたということもありまして、ただいまの委員の御質問のような御懸念が出てまいったというふうに私ども考えておるわけでございます。 実情を申し上げますと、昭和六十年度、つまりことしの三月末日決算の段階で、私どもは全国で就業しております収容者の数約四万三千人を持っております。いわゆる刑務作業にいろいろな種類がございますけれども、大きなものとして外部の企業等から注文をいただいてそれを加工して製品にしてお届けするという、いわば委託加工を受ける賃収作業というものと、それから私どもが独自の生産計画を立てまして自発的に製品をつくって外へ売る、いわゆる製作収入作業の二本立てがあるわけでございます。このうち特に賃金収入作業といいますのは、民間の業者の御注文を受けてやる仕事でございますから、景気に非常に左右されがちでございます。現在四万三千人の就業人口のうち約八五%の三万七千人程度の作業人口というのは、この賃収作業に従事しておるわけでございます。 ところが、毎年上半期と下半期で、一応スポット生産等がございますので、契約が終了して業者が撤退される、こういう数字によって一時的に不就業にたる人員が出てまいります。ところが、これは六十年度で申しますと、前半が約千六百程度でありましたのに後半に参りまして二千五百程度というふうに、上半期に比して七、八〇%解約人口がふえた、これが三月三十一日現在の締めになりましたので、この点に多少危機意識を持って私どもが受けとめておるということが新聞記事になって出たのだと思います。毎年、通年でございますと、上半期と下半期で多少下半期の方が年度の終了でございますので契約終了の人数はふえるわけでございますけれども、これは大体上半期、下半期の比率でいいますと下半期は四〇%増ぐらいで済むのが通例でございます。それが倍近くたりましたので、結果的にいいますと約二千五、六百の人が三月末で一応不就業の状態ができ、四月以降また新しい作業を探してそちらに振りかわっておるという状態になるわけでございます。まだこういう作業が見つかるうちはよろしゅうございますが、本年度に入りまして円高がいよいよ進みましたので、ことしの上半期よりもむしろ中期以降にその影響がより深刻に出てまいるのではないか。そうなりますると、作業が見つからずそのまま不就業になってしまうという人員が出ては大変でございます。このため私どもは、独自の製作収入作業の方への転換を含めましていろいろ新しい作業の開発、御注文を受けるという受注作業でございますが、これを一生懸命各企業にお願いして取ることに努めておりまするけれども、今後ともこの努力をしまして、収容者に作業につけさせようと思っても作業がない、こういう事態を防がなければならないというふうに思っておるところでございます。
○岡本委員 確かに仕事がない。円高によって仕事がどんどん減ってくる。また、今お話がありましたようなたんすだとかいろいろなものをつくっておりました。しかし、なかなかそうたくさん売れないだろうと思うのですね。そうしますと不就業の発生ということは、拘束された生活の中で就業しない、これは相当不穏たといいますか、毎日運動ばかりさせておるわけにいきませんし、刑務所の方も大変だろうと私は思うのですね。したがって、円高対策、これはもうあらゆる面に——私たちも地元に帰りますと、何しているんですかということですよ。いや、これは中曽根さんが悪いんやと。中曽根さんが悪い言うただけで済まない。どこへ行っても非常なおしかりばかり受けて、ほうほうのていで帰ってきておるわけです。したがって、とても解散などして政治的に空白をつくるわけにいかないというのが現在の状況でないか。一生懸命に円高対策あるいはまた日本の経済の立て直しをやらなければならない時期だと私は思うのです。 大臣、それについて福田元総理は、政治的空白は許されないのだというような御発言をされておるようでありますけれども、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
○鈴木国務大臣 ただいま先生御心配いただいたように、円高の影響勅各地で出てまいりまして、早急な対策を要望する声が大きいことは私もよく承知をいたしておりますが、しかし、閣議等におきましても、総理からたびたび、各省庁においてそれぞれ今までもそれに対する対応は指示されておりますけれども、ここへまいりましてさらに一層大局的また早急にやれるものをひとつ検討するようにと、こういうような指示等もいただいております。 しかし、それにつきまして、それでは国会を召集して臨時国会でそういう案件を法律改正とかその他のあれをやるのか、あるいはお話しのように、そういったことをやることによってかえって政治的な空白ができたりして対策がおくれるというよりは、むしろ早急に緊急のものをそれぞれの省庁の責任において進めるというのとどちらがいいのかということになるわけでございますが、それらについてはやはりいろいろ検討してみたいと、今のところ私としてもどちらがいいのかという結論は実は持っていたいというのが本当でございます。御了承いただければと思います。
○岡本委員 あなたの所管の法務省の中でも、これは円高で大変な問題が起こると私は思うのですね。矯正局長あたりはもう大変だと思うのですよ。したがって、立法をしてそれから政省令をつくって規則をつくっておると、これはもう来年になっちゃうのですね。ガンもハトも飛んだ後じゃ話にならない。今じっくり総理以下真剣にたって行政が取り組まなければならぬというときに、政治的空白をつくってごちゃごちゃやっていたんじゃ話にならないと私は思うのです。それをやっぱり福田元総理も言っているわけですね。あなたもひょっとしたら福田さんの方の派閥じゃなかったかと思うのです。したがって、やはり非常な決意とそれから非常な精力で取り組まないと大変なことが起こると思うのですね。 また、アメリカの方では、日本は輸入をふやして輸出を抑えるんだというような決意を中曽根さんが言ってきたわけです。このしっぺ返しがあるわけですよ。したがって、一生懸命内需拡大をしなければならぬ。あらゆる方法でやらなければいかぬ。今ごろ立法措置をやっておったんじゃこれはだめですよ。したがって、今ある法律の中で、あるいは私たちが要求をしたりいろいろな意見を出しておるわけですから、これに向かって、私は法務大臣だから関係ないのだというような顔をせずに、同じ閣僚として真剣にひとつ取り組んでいただきたい、こう思うのですが、その決意をひとつお聞きしておきたい。
○鈴木国務大臣 私も今先生の御心配されるような点を心配いたしておりまして、各省庁のできる範囲内で、あるいはまたそういうことまでも乗り越えた決意なり努力において早急に対策をすることが必要であろうとは思います。 同時にまた、根本的にどうしてもやらざるを得ないというような法律の改正等が必要であれば、これまたそういう手続もしたければならぬのかたというふうに考えておりまして、よく各方面の御意見等も聞き、また私の担当している法務省、先ほど刑務所内の作業についてのお話ございました、それに限らず、国務大臣として閣議等においても十分総理にも申し上げ、あるいは閣僚とも相談をいたしたい、かように考えております。
○岡本委員 立法措置というのはちょっと消してください、それは、私言うように来年、再来年、一年おくれたんじゃどうもならない。法務省としても内需拡大に協力することは幾らでもあるのです。例えば神戸の裁判所、これはいつ壊れるかわからぬのです。非常に危ない裁判所。それから明石の刑務所、これも非常によくない。こういった内需拡大のしたければならぬことはいっぱいあるのですよ。その点について、今明石架橋やいろいろやっていますけれども、あんなもの随分先の話ですよ。もう土地を買わずに直ちにいける、あるいはいろいろなことができる、そういうことがすぐあるわけですね。だから法務大臣としても、この内需拡大については、円高対策については、ひとつ重大な決意とともに頑張っていただきたいと思うのですよ。もう一遍あなたの決意を承って終わりたいと思うのです。
○鈴木国務大臣 御意見のとおり、法務省の所管の問題につきまして最善の努力をいたしたいと考えます。
○岡本委員 終わります。
○村上委員長代理 柴田睦夫君。
○柴田(睦)委員 まず最初に、扶養義務をめぐる考え方の基本について大臣にちょっとお伺いします。 近代社会におきましては、親子、夫婦あるいは一定の親族間でそれぞれ扶養の権利義務を法律で定めておりますが、これが普遍的なものになっていると思うわけです。同時に、国家が個人の生存権を認め文化的な生活を保障する制度も、社会主義国はもちろん資本主義国でも同様にたっております。日本国憲法も、国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」というのを規定しているわけです。社会の発展の中で公的扶助が拡大される、これが進められるということが社会の進歩の一つの表象だというふうに思われますが、私的な扶養と国家による公的扶助との関係についてどのようにあるべきか、お伺いしたいと思います。
○枇杷田政府委員 私的扶養と公的扶養の関係につきましては、従来は私的扶養がむしろ原則であるということで、いわば家族主義的に生活の維持をしていこうというふうな考え方が主軸であったと思いますけれども、だんだんと考え方が変わり、また経済的にもかたり高水準になってくるということとあわせまして、次第に傍系あるいは姻族、そういうような関係についての扶養義務は縮小していくという傾向になっていようかと思います。 そういうふうな考え方が、実は今度の御審議いただいております法律の中にも三条の一項で、傍系とか姻族とかの扶養関係については、共通本国法で認められていないという場合にはその共通本国法によって処理をするというふうな規定も設けられているのはそういう考え方のあらわれであろうかと思います。したがいまして、ただいまお話しのように、これは全部ということにはならぬと思いますけれども、次第に私的扶養から公的扶養への切りかえというふうな傾向があろうということは言えようかと思います。
○柴田(睦)委員 今回の法案は、扶養権利者の保護を図ることを主眼とした渉外扶養事件を定める法例の改正でありますが、義務者中心から権利者中心に改めることに我が党も基本的に賛成の立場であります。法案の中身につきましては、これまで参議院それからこの委員会でいろいろと多面的に論議されておりますし、時間も短時間でありますので、具体的事例についてただしたいと思います。 今社会的に大きな問題となっております中国残留日本人孤児の養父母等に対する扶養の問題があります。この点に関し五月九日に日中両国政府間で確認、交換されました口上書について、その内容を簡潔に外務省の方から説明していただきたいと思います。
○槇田説明員 お答え申し上げます。 本年の五月九日、北京の我が方の日本国大使館と中国外交部との間で御指摘の中国残留日本人孤児の養父母等に対する扶養費に関する口上書というものが交換されたわけでございます。 口上書の内容についてのお尋ねでございますが、具体的に若干長くなりますが御説明をいたしますと、帰国孤児一人当たりの被扶養者数を一人として算定して、扶養費の額は月額六十元、支払い期間は十五年間とする、これが第一点でございます。第二点は、扶養費は一括して、すなわち、年次払いということではなくて十五年間分を一括ということでございますが、一括して中国残留孤児援護基金が送金をしまして、中国紅十字会総会を通じて被扶養者に転送される。第三点は、扶養費の送金は毎年六月三十日までに前年度に帰国した孤児について一括して行われる。ちなみに、ことしの三月三十一日までに帰国した孤児につきましては、口上書の交換後原則として三カ月以内に送金される。このような内容になっているわけでございます。
○柴田(睦)委員 その日上書について、問題と思われる点についてお尋ねしますが、まず、今言われました口上書ではなぜ帰国孤児一人当たり被扶養者を一人と算定されるようにたったのか。一般的には父母その他複数のケースが多いと思われますし、個々に被扶養者、いわば扶養権利者をだれそれが代表すると、そういうふうに特定して算定すべきではないかというふうに考えますが、その理由をお伺いしたいと思います。
○槇田説明員 委員御指摘のように、扶養費を支払う場合にどういう基準でもって払うことにするかということはまさに非常に難しいところでございまして、この問題につきましても、この口上書交換に先立ちます日中間の折衝におきましては確かに焦点になったわけでございますけれども、やはり被扶養者と申しますのは、いわゆる養父母等につきましても、個々の孤児につきまして申しますと、現在不幸にして養父母の方々が亡くなっておられる、そういう孤児もおられるわけでございますが、他方健在でおられる孤児もおられる。すなわち、二人養父母がおられるというケースもございましょう。あるいは配偶者であるとか子供というふうな、そういう方々が向こうに残っておられて被扶養者としての資格を持っておられるということもあるわけでございまして、そういうふうにいろいろなケースがあるわけで、これは今回の扶養費支払いの問題というのは個々のケースについてそれぞれケース・バイ・ケースでお払いをするという話ではなくて一括してのお支払いということでございますから、そういう基準をどうしても何らかの形で設けなければならなかったということがあるわけでございます。 実は、これは交渉の経緯を若干お話しすることになりますが、中国側が、この問題につきましては孤児一人当たりについて被扶養者一人ということにしてはどうだろうかというお話がございまして、日本側としてもこれを検討した結果、どこに決着点を見つけるかといえばやはりそういうところではないのだろうか、こういうことになった経緯があるのでございます。 〔村上委員長代理退席、委員長着席〕
○柴田(睦)委員 孤児一入当たり十五年間分で一万八百元の一時払いということで、これは財団法人中国残留孤児援護基金を通じて支払うとしておりますが、なぜ政府が直接にやらないのかということ。それから、国の負担が二分の一ということで極めて低い負担になっている、これはまたどういうことか。それから、本来帰国孤児が扶養義務者として責任を持つという考えに立たれたのでありましょうが、中国残留孤児そのものが戦争犠牲者であって、これまでの大変な苦労、それから日本での生活状況を考えるときに、政府自身がもっと厚い援助をするのが当然ではないかというような感想を持つわけですが、この点についての御見解を伺います。
○大西説明員 お答えを申し上げます。 まず第一点の、なぜ国が直接支払わだいかという点でございますが、まずこの扶養費問題につきましては、中国の一般国民でございます養父母の方々が日本人をお育ていただいたということに対する国民の感謝の意も含めまして、その扶養費をお払いするという意味から、国及び日本国民が一体となって中国政府及び中国国民に対して扶養費を払うと同時に、心の面で感謝の意を表する一つの手段ということもございましてお払いをすることにしたために、二番目のお答えを先にすることになりますが、国二分の一、それから基金、要するに国民という形で二分の一を持つということにいたしまして、これは五十九年三月の口上書で日中双方でそういう方針を確認いたしておりますので、それに基づいて国としては二分の一をお払いし、国民サイドとしてのお払いは中国残留孤児基金でお払いをするということで既に十億円の国民の御寄附をいただいておるわけでございます。 そこで、お支払いをするときには受け皿の方の中国サイドは、中国紅十字会総会という日本の赤十字に相当するところに口座を設けさせていただいて、そこにお払いをしてその紅十字会を通じて養父母にお払いいただくということもございまして、支払う方も基金から民間ベースでお支払いをさせていただくという意味で日本政府の負担する分も基金の方に一括させていただいて、基金から一括してお払いをさせていただくという仕組みにさせていただいておりますので、御了解いただきたいと思います。
○柴田(睦)委員 本年の三月末日までに帰国した孤児について三カ月以内に送金するということですが、対象人数は何人になるのか。それから、自費帰国者も含めるのかどうか。それから、三カ月たった後でそういう条件に合致しているということがわかった、申請があったという場合も送金するということであるかどうか、お伺いします。
○大西説明員 お答えを申し上げます。 まず第一点の、六十一年三月三十一日までに帰国した孤児で私どもで確認しておる孤児の数は二百七十六名でございます。 お尋ねの自費帰国者についてはどうかという点でございますが、厚生省でまだ把握していない自費帰国者がおられるわけでございますので、これは日中双方で確認をいたしまして、その確認がなされた段階から三カ月以内に支払いをするということにいたしております。 それで、三カ月後に申請者が新たに出てくるというお尋ねでございますが、基本的には日中双方で名簿を交換しまして確認をいたしますので、孤児から申請というケースはまずないものと考えておりますが、いずれにしても遺漏のないように、該当する者には対象といたしまして確実に支払いをするように努めたいと思っております。
○柴田(睦)委員 今までの交渉の経過で、例えば中国孤児に世帯更生資金の貸し付けというような方針が出されたりして孤児の個人責任として処理するというような態度が出されたことがありました。今日の段階におきまして確認したいことは、孤児の個人責任に帰することはしたいという点、それから孤児に対する国の求償権は行使したいという点、これは確認できることでありますか。
○大西説明員 お答えを申し上げます。 まず第一点の孤児個人の責任という点につきましては、口上書の上で日本側から中国側に扶養費を一人当たり六十元、十五年分一括でお払いした段階で、その対象にたった孤児については扶養義務が履行されたものとみなすという趣旨の口上書になっておりますので、その限りで個人の責任は履行されるものということでありますが、なおそのほかに、それ以上に孤児御自身が御自分で引き続きさらに扶養の義務を果たされるということは妨げるものではございません。しかしながら、それを義務づけるという意味では、もう一応支払いした段階で履行されたという形で法的な義務は消滅するというふうに理解しております。 それから求償の話でございますが、これは孤児の扶養すべき義務を国及び国民がかわって行うわけでございますので、求償ということは一切ございません。
○柴田(睦)委員 法案と関係しますけれども、政府間の取り決めによる扶養費の支払いと別途に、中国に残された扶養権利者から帰国孤児に対し扶養費の支払いが請求された場合にどうたるかという問題が将来発生するということが考えられたいわけでもないわけです。 そこで、中国の親子間の扶養についての実体法、これは日本の法律と大体同じようなものになっているかどうかお伺いします。
○稲葉(威)政府委員 中国の婚姻法という法律に扶養の関係がございますが、一応同じような規定にたっております。子供に対して父母が扶養の請求をすることができるというふうに書いてございまして、さらにその義務を子供が履行しないときには、労働能力もなく、または生活困難な父母は子供に対して扶養費の給付を請求する権利がある、こういう規定になっております。
○柴田(睦)委員 そうすると、実体法上もあり得るだけでたくて、現に本問題についての中国政府の立場は八四年の口上書に、日本国に永住するすべての孤児は、訪日に同伴したい養父母、配偶者、子女及びその他孤児の扶養を受ける者に対し、扶養、養育の義務を有しておる、こうなっておりますが、この点は今度の交換公文で解決したということにはならないと思うわけです。こうした中国側の関係者の日本孤児に対するこれまでの大変な尽力があったわけですが、そういう点から考えてみて、孤児の責任に任せるのではなくて政府が極力責任を持って今後生ずる問題にも対処しなければならないと思いますが、大臣、見解があったらお伺いしたいと思います。
○枇杷田政府委員 口上書の中身を私よく存じておりませんけれども、実際上その扶養の必要性と申しましょうか、扶養を要する状態は今度の基金の措置によって解決するのではなかろうかと思います。したがって、事実上の問題であろうと思います。法律的にはそれによってもなお扶養の状況が残っていれば、扶養義務者に対する請求権というものは観念的には残ることになろうかと思いますが、法律的にこれを処理するというべき問題ではないのであって、ただいまの外務省、厚生省の方で御努力なさったそういう方策がまさに法律問題と切り離してその実情を処理しようというお考えでございますので、将来とも扶養が十分でないということがあれば、中国政府の方からも話がございますでしょうし、そういうふうな場で適正な問題の解決が図られるべき事柄ではなかろうかというふうに考えております。
○柴田(睦)委員 終わります。
○福家委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————
○福家委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 扶養義務の準拠法に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○福家委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○福家委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○福家委員長 次に、本日の請願日程第一から第二九の各請願を一括して議題といたします。 各請願の内容につきましては、文書表で既に御承知のことと存じますし、また、先ほどの理事会において検討いたしましたので、この際、紹介議員の説明等を省略し、直ちにその採否を決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○福家委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 本日の請願日程中、日程第八、第一〇ないし第一九及び第二一ないし第二三の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○福家委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 なお、ただいま議決いたしました請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○福家委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○福家委員長 なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、外国人登録法の改正に関する陳情書外三件であります。念のため御報告申し上げます。 ————◇—————
○福家委員長 閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。 第百一国会稲葉誠一君外七名提出、外国人登録 法の一部を改正する法律案 裁判所の司法行政に関する件 法務行政及び検察行政に関する件並びに 国内治安及び人権擁護に関する件以上各案件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○福家委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。 閉会中審査案件が付託になり、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、その派遣地、期間、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○福家委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 本日は、これにて散会いたします。 午前十一時二十三分散会