法務委員会 第10号
- 発言数
- 230 件
- 登壇者
- 23 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1986/04/23
会議録
○村上委員長代理 これより会議を開きます。 委員長所用のため、委員長の指名により私が委員長の職務を行います。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所猪瀬家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○村上委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ――――◇―――――
○村上委員長代理 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本政弘君。
○山本(政)委員 きょうは残留孤児の問題について、特に入国要件、それから手続、就籍の問題等についてお伺いしたいと思うのです。 残留孤児あるいは終戦時十三歳以上であって中国に敗戦時の混乱から結婚して残らざるを得なかった婦人たちが帰国をする場合の入国手続ですが、一般に残留孤児とかあるいは残留婦人と呼ばれている人々の中に二つあるだろうと思うのです。一つは、日本に戸籍の確認のできた人、あるいは就籍手続によって国籍を確認されて戸籍が新たにできた人、こういう一つのグループがあるだろうと思う。もう一つは、日本の国籍が不明な人がある。この二通りがあると思うのですけれども、いずれにしても中国政府の調査結果では日本人である、そして敗戦時の混乱によって孤児となって、あるいは結婚して残留者となっているから日本への帰国が認められるはずであると思うのですけれども、日本政府は彼らの帰国のための入国に当たって、一体そういう人たちを日本国民として扱うのか、あるいは外国人として扱うのか、まずその点を第一点でお伺いしたいと思います。
○小林(俊)政府委員 お答え申し上げます。 私ども入国の手続につきましては、いわゆる中国残留孤児といわれている人々につきましての取り扱いは、中国政府が中国旅券を発給して帰国を認めたか否かということによって入国の際の手続を左右しておるわけでございます。すなわち、中国旅券の交付を受けて帰国した人々につきましては、これは入国の時点におきましては中国人として処理いたします。それ以外の人々、すなわち、既に中国において我が国の外国人登録に類するような手続のもとで日本人として取り扱われた人々、これらの人々につきましては、当然日本旅券が発給されておりますので、入国の時点におきましても日本人として取り扱うことになるわけでございます。 若干事態が複雑になりますのは、中国を出発する前に就籍を許可されておるにもかかわらず、中国側の事情で中国旅券の発給を受ける人々でございます。中国側の事情と申しますのは、中国当局がこれらの人々につきまして、すべてではないようでございますけれども、恐らく外国人登録制度の混乱を避けるというようなことでございましょうか、事情は必ずしもはっきりしない点がございますけれども、中国旅券を持って出国することを求めるというケースがあるようでございます。そうしますと、この場合には実態的には一種の二重国籍のような形になりますけれども、本人についての実益あるいは実害の点がないということもございますので、とりあえず中国人として入国を認めた上で入国後に就籍が確認された場合には、その後は日本人として取り扱うという扱いで、実際に障害のないように取り計らっている次第でございます。
○山本(政)委員 それじゃもう一遍お伺いしますけれども、要するに日本に国籍の確認ができた人、あるいは就籍手続によって国籍を確認されて戸籍が新たにできた人、この人たちは要するに日本国籍のはっきりわかる人ですね。そういう人たちはフリーパスじゃないのですか。
○小林(俊)政府委員 実際問題としては入国について障害あるいは支障のないように取り計らっておるわけでございますけれども、形式上中国旅券の発給を受けて帰国する人々につきましては中国人として取り扱って、入国後就籍の許可証を所持するなりあるいは戸籍抄本の入手が可能である人々につきましては、登録の段階で日本人として取り扱う。すなわち、住民登録の取り扱いを行う、外国人登録の取り扱いの対象とはしないということで、その時点から正式に日本人として取り扱うということにしておるわけでございます。申し上げましたのは、その入国の時点の取り扱いのことでございます。 〔村上委員長代理退席、委員長着席〕
○山本(政)委員 私は素人でわからないのですけれども、要するに帰国の時点から、何といいますか住民登録をするというような期間ですね、その期間はどれくらいあるんでしょうか。まあ個々のあれによって違うでしょうけれどもね。
○小林(俊)政府委員 外国人登録法によりますと、登録の猶予される期間は九十日でございます。しかしながら特別の事情がある場合には六十日これを猶予することができるようになっております。したがいまして、特別の事情で就籍の確認あるいは戸籍の確認のために時日を要する場合には、最大限百五十日までは外国人登録をせずに確認の手続をとることができるようになっておりますし、私どももそのように処理いたしております。 ただ、これは必ずしも、登録の明確化がされないという期間が長くなりますと、長くするというのは本人のために長くするわけでございますけれども、子供の学校の問題であるとかあるいはその他福祉上の取り扱いの問題とかで長くすればよいというものでもございませんので、場合によりましてはとりあえず外国人登録をしてもらって、そして学校の就学であるとかあるいは生活上の福祉の取り扱いであるとかを進めて、その上で就籍なりあるいは戸籍の確認なりの手続をするという場合もございます。
○山本(政)委員 お話を聞きますと、原則としては一応入国の管理手続について外国人として取り扱うのだということですね。 そうすると、こういうことは一体どういうふうになるのですか。中国政府は日本人と認めて、そして出国をさせる、つまり日本へ帰国させるわけですね。これを認めているわけです。そうすると、厚生省の方は、今度は日本人として認めて帰国旅費を支給しているわけです。そして家裁は就籍の申し立てに対して、中国籍を有する者に対しても日本国籍を失っておらぬという要するに審決例がありますね。そうすると、中国も日本人と認めている、日本でも厚生省としては日本人として帰国旅費をちゃんと支給しているということになれば、僕は日本人だということになるだろうと思うのです。それを初めから外国人として登録をさせるということは、少し酷過ぎやしませんか、どうもそんな感じがするのですね。そういう意味では、法律の許す限りというのですか、解釈の可能な限りやはり日本人として扱うことを原則とすべきじゃないだろうか、そんな感じがするわけで、どうも僕は、法務省の扱いというのはそういう意味で孤児問題の認識を欠いているんじゃないか、大変失礼な言い方になるかもしれませんけれども、そういう感じがするのですが、いかがでしょう。
○小林(俊)政府委員 先生ただいま御質問の中で、中国政府が日本人と認めておる、あるいは厚生省も日本人としての取り扱いをしておるにかかわらず、法務省が入国について日本人としての取り扱いをしないのはおかしいではないかという御質問と承知いたしましたが、私が若干問題が複雑になると申し上げましたのは、中国政府が中国旅券を発給した場合でございます。 中国旅券を発給するということは、中国政府がその段階ではまだ日本人とは認めていないという場合でございます。したがいまして、中国政府が日本人として取り扱っている、したがって現地で外国人登録に類する制度の対象としておるという場合において就籍が既に許可されたあるいは戸籍の存在が確認されたという場合において、なおかつ法務省入管当局が日本人として取り扱わないというケースは全くございません。これは常に日本人として入国を確認するという手続をとっておるわけでございます。問題は、中国政府が日本人としてまだ取り扱っていないにもかかわらず就籍が許可されたという場合の取り扱いを先ほど申し上げたわけでございます。
○山本(政)委員 一番目の方は理解ができます。ただ、そうすると、パスポートを出したからといって、日本国籍を現実に失っていない場合があるわけでしょう、実態としては。ありますね。しかし、それをどうして日本人として扱わないのか、その辺が、くどいようですけれども、ちょっと酷なような感じがするのですね。これはたしか一昨年の三月二日の法務委員会でそういう質問があったと思うのですけれども、いかがでしょう。
○小林(俊)政府委員 ただいま御質問のケースは、就籍が許可されておりながら中国旅券を持って帰国した場合でございます。厳密に手続上のことを申しますと、出国のときには中国旅券を持って出国しても、入国の際には日本人が旅券を持たずに帰国したケース、時々そういうケースもあるわけでございますが、そういう場合におきましては空港等の窓口におきまして帰国証明書を交付するということで、中国旅券は実際には持っておるんだけれども、日本人が旅券を持たずに帰国した事例に準じて取り扱うことは法理論的には可能でございます。しかしながら、これは実体的には余り実益のないことでございまして、単に手続上の感触の問題ということで、むしろ時間がかかる、中国旅券でそのまま入国をするという事例に比べまして多少なりとも時間がかかるというようなこともございますし、余り実益、実害がないということで、入国した後で登録の段階ではすぐに日本人として取り扱うわけでございますので、その場は中国人として取り扱うということを実際には行っておるわけでございます。しかし、本人が気分の上で、自分は日本人なんだから日本人として入国したいということを非常に強く主張されれば、そういう便法もあることはあるということでございます。
○山本(政)委員 おっしゃったように、自分が要するに日本人であると思って、現実に向こうで日本人としての取り扱いを受けている、そういう場合に外国人の登録を云々と言われることは、本人にとっては非常に不愉快な気持ちになることは当然だと思うのです。したがって、そういう意味ではひとつぜひ前向きに早く処理をするというようなことで取り扱ってほしいと思うのですね。 次に、これまでの帰国に当たって残留孤児の人たちは、一つは国内にいる人たちの身元保証人、これは判明した場合、もう一つは身元引受人、つまり未判明の人たちの場合、その身元保証書あるいは身元引受書、こういうものが必要だ。それからさらに、聞くところによると、採用証明書というものも必要である、こういう話を実は聞きました。そうすると、そういうことのために彼ら自身帰りたくても帰れないという事情が出てくる、こう思うのです。そういうケースというのは私は大変多いと思うのですね。ですから、そういうものが一体なぜ必要なのか。つまり、そういう必要であるという法的根拠、それからそれを要求しなければならないという実質的な理由というのが一体どういう点にあるのかということをひとつ説明していただきたいと思うのです。
○小林(俊)政府委員 御指摘の身元保証あるいは採用の証明書、これは世帯主の場合における職業の確保の証明ということでございますが、いずれも、いわゆる中国残留孤児の人々が日本へ帰ってきてから路頭に迷うとかあるいはいろいろ生活上の障害に逢着するとかいうことがないようにあらかじめ受け入れの態勢を整えておくことを促進するという考え方から、言いかえれば実体的な必要に関する考慮の上から定めておることでございます。 ただ、先生御指摘のように、これらの要件を整えるために帰国が非常におくれるといった事態は好ましくございませんので、この点につきましては私どももできる限りの配慮をしておるつもりでございます。すなわち、身元保証につきましては必ずしも肉親でなくともよい、社会的に能力のあり、あるいは身元保証の意思のある人であれば構わない、あるいはそういう方々の世話に当たっておる団体の責任者といったようなケースも最近はございます。そういうことで、その資格につきましては柔軟に考えておるつもりでございます。しかしながら、実際に帰国されてからだれかそれを当座少なくとも世話をする人々がおるということはどうしても必要なことでございますので、そのためにそういう人々を特定するということを要件にしているわけでございます。 また、就職につきましても、これは事前にそういう手配ができておることの方が望ましいことは間違いございませんので、一応そういう努力をするように身元保証をする方々に求めておるわけでございますが、もちろん場合によりましては、あるいは多くの場合、離れたところにおる人々の就職を世話するということは必ずしも容易なことでございません。そのことが帰国の障害になるという場合には、採用の証明書あるいは就職の手配ということについては要件としてあくまで固執するということは考えておりませんし、地方につきましても、この点については弾力的に処理するように、身元保証がしっかりしておれば就職については弾力的に処理するようにという指示を出しておるところでございます。
○山本(政)委員 採用証明書というのは弾力的にというお話でありますが、私はなぜ必要なのかちょっと疑問なんですよ。つまり採用証明書といったって、大体そういう中国におって顔もわからぬ、言葉もわからぬで、会ったこともないというような人を一体、企業がたやすく採用しますか、今。僕はそういう意味で、それは極めて常識を外れていると思うのです。少なくともこういうものは要らないだろうと思うのです。これは常識的範囲だと思うのですね。だって、企業だって採用するのに面接をやるのですよ、国内にいる日本人ですら。だから、中国におる人たちは、その間どうやって面接をすることができるのか、その人たちを知ることができるのか。そういうことについて採用証明書が要るなんということは全く意味のないことだと思うのです。これは弾力的とかなんとかいうよりか、そういうものは全く不必要じゃありませんでしょうか。 それからもう一つは、局長に対して大変失礼な言い方になるかもわかりませんので御勘弁願いたいのですけれども、要するに、帰られて、そして生活面もあるだろう、だからそういう面について身元保証人あるいは身元引受人の身元保証書あるいは身元引受書が要るのだ、こうおっしゃるのですが、私は今申し上げたように、孤児の人たちが路頭に迷わないようにというのか、あるいは生活に困らないようにということでそういうことをやるというのは法務省のお仕事ではない。それはむしろ政府の政策として、要するに全般的な問題として考えるべきであって、大変失礼な言い方かもわかりませんけれども、それは局長が御心配なさることじゃないのじゃないか、そんな感じがします。 と申しますのは、一般の日本にかつて在住しておった人たちが外国に行く、そうして国外に出て帰国しようとしたときに、一体身元保証人が要るんだろうか、身元引受人が要るんだろうかという気が私はする。そういう人たちに対しては、そういう身元保証人とか身元引受人は要りませんね。中国におって日本人であるということがはっきりした人に対して、それじゃなぜそういうことをするのだろうか。つまり、一般国民が国外に出て帰るときと同じことになりはしないだろうか。むしろ私は、そういうことでは条件を十分に考慮する必要すらあるのではないかという感じがする。ですからそういう点で、この身元保証人とか身元引受人とか、特に採用証明書なんということは不必要であるという感じがするわけです。もう一遍お伺いしたいと思うのです。
○小林(俊)政府委員 いわゆる中国残留孤児の人々の帰国に当たって身元の保証を求められた、あるいは身元の保証をしようという方々がなさることは、まず帰国後の生活設計についてどうするかということを考えることでございます。その過程におきまして、当然のことながら通常は生活設計の手段として就職を世話する、就職をあっせんするということが普通でございます。したがいまして、身元保証ということを引き受けるという段階におきましては、生活のために就職先までも用意することが極めて多いわけでございますので、身元保証と同時にその辺のめどがついておるというのが通常の形態でございます。したがいまして、身元保証書を提出する段階におきましては採用の証明書も出すということがそれほどまれではない。出し得る状況になっておる。身元保証を引き受け得る状況になっているときには就職についてのあっせんのめどもついているというのが極めて多いわけでございますので、その双方をあわせて提出する、あるいは就職の方のめどがつくまでは身元の保証も差し控えるといったようなこともあるかも存じません。ということで、両方があわせて要件が成立するということはそれほど少なくないのでございますけれども、しかし先ほど申しましたように、就職の方のめどがつかない、しかし帰ってきた当座においてはともかく自分が世話を見るといったような方がおられるというケースにおきましては、採用の見込みがまだなくても身元の保証だけでこれを入国を許可するようにということで考えておるということを先ほど申し上げたわけでございます。 ただ一言、申しおくれましたが、このケースにつきましても、大きく言って二つ事例がございます。一つは既に日本国籍の確認ができておる人、それとまた、それがまだできてない人ということでございます。そこで前者につきましては、たとえ今まで日本に帰国したことがない人、あるいは終戦前に現地へ行かれた方の直系卑属といったような場合であっても戸籍の確認ができている場合には、極端に言えば採用証明書のみならず身元の保証書も簡略化していいんじゃないかということが言えるわけでございます。それは、日本人が出ていって帰ってきた場合と同じじゃないかと先生が今おっしゃられたケースに該当するわけでございますので、その線に沿って現在、外務省及び厚生省と手続の簡略化を協議いたしております。そして昨日ですか、外務省の方から一応の回答をもらいましたので、それを今度は厚生省の方に提出してその内容について詰めようといたしておるという事実がございます。
○山本(政)委員 それは一歩でも二歩でも前進することはありがたいことでありますので大変結構なことと思うのですが、僕はやっぱり帰国後の少なくとも生活保障というのは国の責任だと思うのですね。これは全体的な政治問題だと思うのです。それは国が起こした戦争ですよ。国が向こうの方に入植させた人たちなんです。そして国が捨てた人たちなんですよ。そういう人たちに対しては、要するに政治的な問題として取り扱うべきであって、そして同時に、そういう人たちの身元保証というものは国がやってすらいいんじゃないかという感じがするので、ぜひそういうことも考えていただきたいと思うのですね。 もう一つ、日本国籍の確認と戸籍についてお伺いしたいと思うのですが、身元が未判明の孤児でまだ日本に国籍ができてない孤児、こういう人たちも帰国が受け入れられるようになりました。そういう人たちが日本に入国した場合に、そういう人たちは一体日本国民としての立場を認められるのか、あるいは外国人の扱いを受けるのか。例えば住民登録ができるのか、あるいは外国人登録をしなければならないのか。先ほどのお話では難しそうなお話ですけれども、あるいは戸籍ができるまでの間その権利義務というものについてはやっぱり外国人並みに扱わざるを得ないのか、その点は私はお答えは想像しているのですけれども、もう一遍聞かしていただけませんか。
○小林(俊)政府委員 帰国された残留孤児と言われる方々は市区町村の窓口に出頭されます。そこで、住民登録の方の窓口に行かれまして、自分は中国から残留孤児として引き揚げた者だということを言われますと、日本国籍の保有、保持を証する書類を持っているかどうかをチェックするわけでございます。たまたまその書類がまだないという場合には、外国人登録の窓口の方に行くようにという指導をすることになります。 そこで、外国人登録の係の方へ参りまして、自分は外国人登録をするように言われたけれども私は日本人なんだということを引き続き主張されますと、その外国人登録の係ではみずから担当法務局の方に照会をいたしまして、何の何がしという方が中国から引き揚げられて外国人登録の方へ来られておるけれども、日本国籍を持っておるということを主張しておりますという連絡をいたします。そうしますと、法務局の方でその方の日本国籍の有無について調査をしてくれます。そしてその結果を連絡をしてくれるわけでございますが、そこで日本国籍が確認されれば、当然また住民登録の方へ行っていただくわけでございます。しかし、そこで確認がされませんと、その場におきましてはこれは外国人登録をせざるを得ないということになります。 と申しますのは、それをしないでずるずるいたしておりますと、先ほど申しましたように、学校の問題であるとかあるいは生活上の福祉の問題であるとかの問題が生じます。そういう手続を進めるためにもとりあえず外国人登録をしていただいて、それから就籍の方の手続を指導するということになるわけでございます。あるいは場合によってそういうことを急ぐ事情がない場合には、先ほど申しましたように百五十日の猶予期間がございますので、その間に就籍なり確認なりの手続を進めていただくという条件を付するということになるわけでございます。
○山本(政)委員 なぜそんなことをお伺いしたかといいますと、こういうケースがあるのです。中国名で馬文林、この人は、申し立てから審判までに一年八カ月かかっているのです。つまり、申し立てた日にちが五十九年六月十八日、審判の年月日が六十一年二月十七日。もう一人、梁玉芳さん、この人は、五十九年十一月八日に申し立てをして、審判の年月日が六十一年一月二十八日。百五十日をとっくに超えているわけですね。これは最近の事例なんです。ここに一覧表がありますけれども、もちろんお話のように短期間で、二カ月とか三カ月で審判が出た、そして就籍の許可が出たという例もありますけれども、しかし、ここの後ろの方に書いてある六十年あるいは六十一年にかけてというものは全部、九・六カ月、六・三カ月、一年、一年三カ月、一年三カ月、一年八カ月なんですね。これは僕は大変な日にちだろうと思うのです。そのほかにも、三年二カ月なんという人がおります。そして、その人たちは決して少ない数じゃないのですよ、ここに出ている数字から見れば。かなりな数なんです。 その人たちは、要するに六十日が九十日になり、九十日が百五十日という日にちがあるにしても、とてもじゃないが間に合わない人たちですね。今申し上げたように、これは現状でも大体平均して一年内外かかっている。しかも、その申し立てた孤児が日本人であるということを立証できるかといえば、必ずしも立証できるとは限りませんね。そして、手続をすること自体が、彼らが自分で行うことが不可能であるということが十分考えられるのですよ。 そうすると、一体こういう日本人であるということを中国の政府も認めているというような人たちに対して、こういう不利益な取り扱いをしていいのだろうかという感じがしてなりません。だから、もちろん手続を早くするということも必要ですし、それについては最高裁の方でも検討していただいているようでありますし、それから厚生省の方でも手引書を配るなどいろいろなことをしておりますけれども、しかしそれにしてもこれだけの年月がかかるということは大変気の毒でもあるだろうし、そして何よりも彼らがそういう不利益な取り扱いを受けていいのだろうかという感じがするのです。 私は詳しいことはわかりません。ただ、一番疑問に思うのは、そういう不利益をずっと受けていいのだろうかどうだろうか、そしてそれを我々が一体そのまま何の手当てもしなくていいのだろうかという感じがするのですが、何か方法がありませんかね、こういうことについて。あるいは法務省として、日本国籍の確認と就籍についてもっと手早くすることができないものだろうかということを考えざるを得ないのですが、私の質問があいまいかもわかりませんけれども、ひとつお考えがあったら聞かしていただけませんでしょうか。
○枇杷田政府委員 ただいまの問題は、突き詰めてまいりますと、中国残留孤児で日本人の子供であろうというふうに思われる人が日本人であるということをいかにして早く確認できるか、そういう問題だろうと思います。 家庭裁判所におきましても、就籍の申し立てがありました場合に、いろいろな事情を総合判断して認定をされておると思いますけれども、事情が事情でございますので、なかなか的確な認定資料がそろわないというふうなことで御苦労なさっておられるのではないかと思います。したがいまして、これから厚生省等の御努力あるいは中国政府のいろいろな資料の提供などもお願いをすることによって、就籍と申しましょうか、日本国籍を持っていることの認定が早くできるような、そういう措置を講ずること以外にさしあたり方法はないのじゃないかというふうに考えております。 いずれにいたしましても、日本国籍が認定できて、したがって戸籍をつくるというふうな事件につきましては、これはただ御本人が養親からおまえは日本人から預かった子供だというようなことを聞かされているというだけではちょっとまだ認定しがたいということがございまして、何がしかのその資料が欲しいということでございますので、したがいまして、その資料の収集方法等について今後とも行政的な努力を続けていくことによって解決するほかはないというふうに考えております。
○山本(政)委員 私もここに家庭裁判所の申し立て、そして審判の中身について見ているのですが、なかなか家庭裁判所でも大変な努力をしてくだすっていると思うのですね。前向きに非常に努力をなすってくだすっていると思う。ただ、それだけでは非常に日にちがかかるということは事実なんですね。しかも、訪日調査に参加しながら身元が未判明である、こういうことについて、先ほども申し上げたように、中国側が訪日調査を希望する孤児を事前に徹底調査をしている、そして日本人であるということを確認済みだということが一つある。それから、日本政府も要するに独自調査で日本人と判断をした、そういう事実もある。私は、そういう意味の合意でそういう人たちが来ているのじゃないかという感じがするのですね。これをこのまま国籍が宙に浮いているというような場合には、国内的には問題があるだろうけれども、同時にやはり対外的にも問題が出てくるのじゃありませんか。とすれば、何らかの方法を講じて少し早い手続といいますか方法をとっていただきたいということを私はお願いしたいわけです。ぜひその点についてお考え願いたいと、こう思います。 それから、身元未判明の人たちが日本で戸籍を得ようとすれば、今申し上げたように就籍の申し立てをしますね。これは代理人を立てることもできます。ただ、就籍の申し立てという以上、現行法下では、自分が日本人であるということを自分で立証しなければなりません。そこでお尋ねしたいのは、どういう立証がどの程度必要なのか、あるいはほかに何らか方法がないのか、このことを一つ考えるわけですけれども、いかがでしょう。
○猪瀬最高裁判所長官代理者 残留孤児の就籍申し立て事件については、申立人が日本人であるということが一番基本的な要件になるわけでございますが、この点についてどの程度の証拠、どの程度の立証があれば認定できるかという点につきましては、これは個々の事案において各裁判官が専ら判断すべき事項でございますので、一律にどの程度というようなことをお答え申し上げることができないわけでございますけれども、これまでの審判例から極めて概括的でありますが、その程度の説明で御了承いただけますならば、一般的には中国の公的機関から発給されます孤児証明書のほかに中立人が養父母に預けられたいきさつであるとか、それから養父母のもとで生育してきたいろいろな事情等を総合しまして申立人が日本人であるという認定をしているのが実際の取り扱いであろうかと思います。
○山本(政)委員 それではもう一つだけ聞いて後、私の考えもひとつ聞いていただきたいと思うのですけれども、帰ってくる孤児の人たちですが、あるいはすぐに帰れなくても日本国籍だけは確認しておきたい、日本に戸籍をはっきりさせておきたいという孤児の人たちがいらっしゃるだろうと思うのです。例えば養父母の反対がある、自分たちが年をとっているからまだ行ってもらいたくない。孤児の人たちにとっては育ててもらった養父母を捨てて日本に帰れないというようなこともあるかもわからぬと私は思うのです。しかし、当分帰れないにしても日本の国籍だけは確認をしておきたいという人たちがおるのではないかと思うわけですね。そういう孤児たちが、自分が日本人の孤児であるということの証明を全部の子供たちがとれるのだろうかどうだろうか、なかなか難しいと思うのですね。 ですから、そういうことを含めまして私思うのですけれども、一体今の国籍とか戸籍についての法制というものはこういう事態を予想しておったのかといえば、予想しておらなかったと思うのですね。戦争が起こって、そしてああいう敗戦のときに子供たちが、あるいは婦人の人たちが自分の意思ではなくて向こうに、要するに置かれてきた。そして四十年の年月を過ごしてきた。そういう事態を予想してできた国籍法でもないだろうし戸籍法でもないだろう、こう僕は思うのです。だから、身元の未判明者が日本人であるということをどうやって証明したらいいかということは彼らにとってなかなか大変なことだと思うのですが、現実にさっき申し上げたように、就籍の訴訟を見ましても、あるいは聞きましても、なかなか容易でないと思うのです。ですから、先ほど言ったように、向こうにおって日本の国籍を確認をしたいという人たちがおると同時に、今度は帰ってきて自分が日本人であるというようなことについての裁判官の心証が得られるような証言とかあるいは証拠書類といいますか、そういうものを中国から取り寄せるということが非常に困難である、これはもう十分に予想されることでありますね。 〔委員長退席、村上委員長代理着席〕 ですから、そういうことについて現行の就籍手続によらないで調査の結果に基づいて調製、復活をすることができないものだろうか。帰還前でも帰還後でも同じだろうと思うのですが、本人に就籍の手続をさせること自体が酷であるような感じがしてなりません。そして、かなりの部分そういうことについては事実上不可能なことがあるだろうと思う。だから、政府の調査に基づいて在留邦人として認定された人々については、政府の調査によって日本国籍を認定して戸籍を調製することができないものだろうか、そのことをぜひ考えてほしい。いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 今のお話は家庭裁判所の就籍の手続を経ないで就籍をするという方法が認められないかというお話だと思いますけれども、政府が日本人であるということが認定できるような状況下では、家庭裁判所でも就籍の許可を当然するはずだと思います。したがいまして、現在の就籍というのが、国籍の確認とどこに本籍を定めて戸籍をつくっていいということを決める重要なことでございますので、その点は裁判所の判断に任せられているという制度を特にひっくり返すというふうな必要はないのじゃないかと私は思います。 おっしゃるような趣旨は、私も、非常に厳格な資料を要求して、そして長時間かけてなかなか許可が得られないようなというふうなことは望ましくないということについては全く同意見でございますけれども、御提案のような、日本政府がいろいろな事情から日本人であるということが認められるような、そういう事情の場合には、家庭裁判所も就籍の許可を当然出すだろうと思われますので、特段の立法措置をするという必要はないものと考えております。 〔村上委員長代理退席、委員長着席〕
○山本(政)委員 これは孤児名簿なんです、中国残留孤児。 岳宝麟さんという人がおる。肉親と別れたところはハルビン市なんです。今の住所は甘粛省の蘭州市なんですよ。ハルビンから甘粛省の蘭州市まで行っているわけです。もう一人、杜永湘という人がおりますが、肉親と別れたところは長春市です。今おるところが陳西省の西安市。これも随分離れていると思うのです。劉国忠、肉親と別れたところはハルビン市、行ったところが雲南省の弥勒県ですよ。この人たちがどうやって自分が日本人であるということを証明できるんだろうか。「昭和二十年九月ころ、私は嗜爾浜市南南と道外大平橋の鉄道踏切から二百メートル種の道路わきに蒲団に包まれていた。養父が、毛布と自分の上衣で包んで家に帰って育てた。」こう言っているのです。 こういう人たちを一般的な問題として長時間の手続を経て、そして要するに形式、あえて、しかられるかもわかりませんが形式を、ちゃんと手続を経て日本人だという証明をしなければ就籍ができないんだとすれば、僕はその人たちが永遠に証明できないんじゃないかという感じがしますよ、別れた場所が非常に遠くなってきている。離れている人も多い。証人になる関係者も四十年たってしまったら死んでいる人たちがおるかもわからぬ。遠隔地に郵便で一体意が尽くせるかどうだろうか。そんなことを言うとしかられるかもしれませんけれども、気の毒だけれども、文盲の人がいるかもわからぬ。経済的な時間的な負担というのは不可能な人たちが多いだろうと思うのですね。そういう人たちを考えれば私はもっと政治的な解決の方法がありはしないだろうかということを本当に思うのです。それをひとつ考えてくれませんか。 中国政府は日本政府に対して残留孤児の名簿を提出しているはずなんですね。調査の結果を名簿にしていると思うのですけれども、今申し上げたように要するに戦争と戦後の混乱がある。戸籍がわからなくなってきている。既に四十年経過しているという年月がある。特別な配慮が必要だろうと僕は思うのです。なぜ中国政府の調査結果によって、その名簿中の戸籍作成を希望する者に戸籍を調製してやれないのだろうかとあえてお伺いしたいのです。これはどなたにお伺いしていいかわからぬけれども、大臣にひとつお答え願いたいのです。中国政府の調査以外に信用度の高い証明資料が一体得られるとお考えになっているのだろうかどうだろうか。もしそういうふうに中国政府の調査を一番信用すべきだとお考えだったら、その調査を得ただけで戸籍を調製して孤児の負担を軽減させるべきだと私は思うのです。いかがでしょう、大臣。
○枇杷田政府委員 ただいまの中国側の調査の結果というものは、家庭裁判所の就籍の申し立て事件の中でも十分に重要な資料として参酌されることになるであろうと思います。したがいまして、そのような形で出ているものにつきましては、いろいろそのほかにもできる限りの資料は出してほしいということを家庭裁判所ではお考えになるだろうと思いますけれども、しかし、決まった資料がなければそれは認定しないというふうなことではないと思います。各裁判官の御判断によりますけれども、中国の残留孤児が置かれている事情、それから残留になったいろいろな事情というものは御理解の上に立って、そして集められる限り集められた資料の中で判断されることになると思いますので、ただいまの名簿あるいはその裏づけになった調査の結果というものは就籍の審判の中では非常に重要な資料として参酌されるであろうと思います。 また一方、そういうことでございますから現行の手続でも私は賄えるのではないかと思いますけれども、ただいま御提案になりましたようにそれを家庭裁判所の手を経ないで行政機関の方でやるようなことが考えられないかという点につきましては、私どもがもし考えるとすれば法務局とかあるいは法務本省とかでいわば戸籍をつくってよろしいという認定をするという機関として構成をすることになろうかと思います。しかしながら、そのような行政機関で構成するにいたしましても、やはりその就籍で家庭裁判所がお考えになると同じような立場に立っての資料と判断の仕方と申しますか、そういうものは軌を一にするのではないかというふうにも考えられますので、特段の立法措置というのを私は今のところ考える気持ちはございませんけれども、しかし何にいたしましても余り厳格な資料を要求することによって今お話がありましたような事情の方々の日本人であるということの確証を与えないということは問題であろうかと思いますので、その点については現行の制度のもとにおいて運用を十分に考えていくべき問題は残されていますので、その点につきましては今後とも関係の方々の御努力を期待いたしたいと思います。
○山本(政)委員 私はよくわかるのですよ。おっしゃることはよくわかるのですけれども、しかしそれでは救われない人たちがおるんじゃないだろうか。それはやはり政府の考えるべきことじゃないだろうかと思うからお伺いしているのであって、僕は大臣にお伺いしたいのですが、一体そういうことについて考慮願えませんか。考慮願えるか、考慮願えないかということで結構なんです。
○鈴木国務大臣 戦後四十年も経て、まだ中国残留孤児の問題が解決できないでおること、本当に私も肉親捜しに来るあの記事を見るたびに心の痛む思いでございます。 先ほどから先生本当に御心配をいただいている日本国籍の問題、それぞれの制度、法律ということ、とりわけ家庭裁判所の問題等もありますので、それらを経ないでどうこうということにはちょっと現在の段階でまいらないと思いますけれども、それにいたしましても本当に日本として解決しなければならない重要な戦後処理の問題でございます。また人道上の問題もあります。そういうことを考えますと、法務省といたしましても、そういう法律なり制度はともかくとして最大の努力を、先生御心配していただいているような努力を法務省としてもしなければならない、やってまいるつもりでございます。
○山本(政)委員 戦時死亡の宣告を受けて戸籍を抹消している人たちについても僕は同じことが言えるだろうと思うのですけれども、宣告で死亡したことにされた孤児や婦人が生存をしていて回復を希望した場合に、やはりこれも二つほど問題があるんじゃないか、こう思うのです。一つは、現状ではどういう手段で回復しているのかということがあるだろうと思うのです。この場合にはやはり留守家族というのですか、そういう家族の方がやっていただくのですけれども、しかしやってくれない留守家族の人たちもいらっしゃる、いろいろな事情がおありだと思います。同時に留守家族がいなくなった人もおるだろうと思う、四十年もたちましたから。そうすると、そういう人々は戸籍を回復したくても厚生省の方は戸籍上生きていることを要件に一時帰国旅費の援助をしておるわけでありますから、そういう人たちは日本の土を踏むことはできませんね。 私がお願いしたいことは、こういう人たちが自分で希望すれば速やかに戸籍上の復活ができる方法をとる必要があるだろう、こう思うのですけれども、これは厚生大臣ができるはずなんです、やろうと思えば。きょうは援護局長いらっしゃいませんから残念でありますけれども、厚生大臣がやることになっているとすれば最近そういうことをやっていらっしゃるのだろうかどうだろうか。そうしていらっしゃらないならば、やはり厚生大臣がちゃんとそういうことをやってほしい、そのことについてちょっとお伺いしたいと思います。
○水本説明員 戸籍の回復手続につきましては原則的には関係する親族の方々によって行われるということでございますけれども、今先生御指摘の戦時死亡宣告が行われた者について厚生大臣がその取り消しができるかどうかということ、またやっているかということでございますが、従来はそういうものもございましたが、最近はちょっとございませんが、未帰還者に関する特別措置法第二条によりまして厚生大臣が取り消し請求を行うことができるということになっておりますので、今後ともその活用について十分検討してまいるように努力したいと思います。
○山本(政)委員 戦時死亡宣告された者について、親族に対し十分な指導説得を行ったにもかかわらず、親族が所要の手続を行わない場合には、最終措置として厚生大臣がその取り消しを申し立てることもできるということがありますので、ひとつぜひお願いします。 話が前後になるかもわかりませんけれども、法務省に一遍お伺いしたいのですが、残留孤児というものの定義は一体どういうことになりましょうか。
○枇杷田政府委員 私がお答えするのが適当かどうかわかりませんけれども、残留孤児というのは、今次大戦のときに外地におって、そして日本に帰国するべき状況下に置かれているときに、その特殊な事情から親のもとを離れて、そして現地に残らざるを得なかった人たちというような意味だろうと思います。
○山本(政)委員 僕は今のお答えがすべてをあらわしていると思うのですね。だから、繰り返しませんけれども、要するにお答えになったような状況を、そういう定義をひとつ十分に踏まえてほしいと思うのです。 最後に一つだけ質問をして、また要望申し上げて終わりますけれども、今の定義から、お話があったように、残留孤児とか残留婦人の基本的な地位というものについてぜひひとつきちんとしてほしい。これも繰り返しになるかもわかりませんけれども、いわゆる残留孤児とか残留婦人と呼ばれている人は、お話にありましたように帰国したくても帰国ができなくて残された人なんです。自由な選択によって日本の国籍を放棄した人じゃないのですよ。つまり生きる道のない人たちが選べる道というのはこれしかなかったということじゃないかと思うのです。だから、そういう人たちは果たして自由意思と言えるだろうかどうだろうか。そういうことを考えると私はまだまだ大変不十分なような気がしてなりません。同時に司法と行政の間の問題もあるかもしれません。しかし、この問題を解決するのは政治的な課題として政府が対応する以外にないだろう、私はこう思えてならぬわけであります。したがって、ひとつぜひそういうことをお考え願って前向きに対応していただきたい、こう思います。 まだ幾つかお伺いしたい点がありますけれども、そんな時間がありませんので、繰り返しになるようで大変申しわけありませんけれども、ひとつ今までの私の質問を通じて大臣の最終的なお考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思うのです。お願いいたします。
○鈴木国務大臣 先生の御心配、私も身にしみて感じておりますので、さような考えに基づきましてこれから検討し、努力をしてまいりたいと考えます。
○山本(政)委員 済みません、もう一つ。総合的な調整機関をつくっていただきたいのです。今までのものは各省各省で、なるほど連絡的な機関はあるかもしれません。しかし、ベトナムの難民とか、そういう人に比べたら余りにもお粗末じゃないかという感じが私はいたします。したがって、それはひとつぜひ政府の方として、きちんとした総合的な調整機関といいますか対策機関といいますか、そういうものをつくっていただきたいということを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○福家委員長 大臣が帰られたので、私個人からお願いがあります。 私も引揚者の一人ですが、ただいまの山本議員との質疑応答を聞いておりまして非常な感銘を受けました。また、大臣から善処するとのお言葉がありましたが、引揚者はもう戦争の犠牲者でありまして、今質疑の中にハルビンから蘭州、西安という話もありましたが、大体四百キロ以上あって、シルクロードの中国四百余州の西域の果てであります。中国は、御存じのように行政権も末端の地方自治体にまで及んでおりますが、電信、電話あるいは郵便等は非常におくれています。手続をせいといってもなかなか実際上できない。最近の例ですが、鄧小平さんからトルファンに連絡してもらうのに三月もかかりました。国家元首が連絡するにも三月かかるのですから、こういう小さい問題を一々連絡しても、恐らく解決には一年以上の歳月を要すると思うのです。特に、遺児の皆さんは本当に戦争の犠牲者でありまして、運命的にも非常に同情すべき点が多々あります。 中国政府は日本人と認めて帰してくるのですから、質疑応答を聞いていますといかにも法務省は事務的な答弁に終始しています。十歩も百歩も前進していることは小林局長の答弁でよくわかりますが、そういう事務的な問題で解決するよりも、これは政治的な問題だと思うのです。特に遺児は異郷で捨て子にされて祖国に久しぶりに帰ってくる。わらでもつかむような気持ちで温かい祖国の温情を求めていると思うんです。法にも涙があるということがありますが、事務処理でなくて、そういう高い政治的見解から、特に大臣は人格高潔にして人望の高い人ですから、法務大臣の立場で特にこの問題に善処をしていただきたいと思います。近く遺児が入国する予定のように聞いておりますが、できればこの今度帰ってくる遺児から、今山本委員の質問のような、我々は国民の選良でありますから、温かく迎えてやれるように善処されるよう特に希望いたします。(拍手) 稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 私がお聞きをいたしたいのは、私が非常に興味を持っておる問題であって、興味を持っているという意味は学問的に興味があるという意味なんですが、極めて一般論です。極めてじゃなくて本当に一般論ですから、その点は十分配慮をされてお答え願いたいというふうに思うのです。 それは、国会議員がどういうときに涜職罪の贈収賄罪の適用があるだろうかというのは、私非常に興味を持っているのですよ。いつか細かい質問主意書を書いたことがあるのですが、これだけで博士論文ができるのではないかという話が出たくらい非常におもしろい――おもしろいという言葉は悪いですが、学問的に興味のある問題なんです。 そこで、例を分けて質問いたしますと、例えば一つの法案が提出されているときに、法案を議決する、賛成、反対ありますけれども、それは国会議員の職務権限ですから、その場合は、委員会が違っておっても、本会議で議決する権限を持っているわけですから職務権限があるというふうに法理的に理解をされていいのかどうかということですね。ただ、これはまだ最高裁に上告されていって結論が出ていない案件にも関連をするのですけれども、これは一番はっきりしている事件に近いですね。もっとはっきりしているのは、その委員会に法案がかかっていて、そしてそこで議決をして、そのことのために金銭の授受が職務に関してあるというのが一番はっきりしていますけれども、それは当たり前のわかり切ったことですから除いて、今の場合はどういうふうに考えていいのですか。
○岡村政府委員 大阪タクシーの汚職事件に関します大阪高裁の判例があるわけでございますが、この判例によりますと、限定された範囲内においてではあるけれども、自己の所属しない委員会の所管事項に干渉し得る権限を有するということで、これらの権限は贈収賄罪の成立要件としての職務権限に当たる、こういう判断をいたしておるところでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、それは本会議の議決とは関係なくて、その委員会の議決に どういうことですか、ちょっと言葉がはっきりしないのですが、国会法の場合は委員会をいつでもチェンジできる情勢にあるから、こういう意味ですか。今の一番重要なところはどういう意味ですか。
○岡村政府委員 議員といたしましては、本会議の議決によりまして委員会の審査を省略すること、あるいは委員会で審査中の案件につきまして中間報告を求めること、委員会の審査に期限をつけ本会議に付する措置をとることなど、議員が委員会の権限事項に干渉し得ることが認められているわけでございます。そういう限定された範囲において議員が委員会の権限事項に干渉し得るということのほかに、一定の要件のもとで所属しない委員会に出席して意見を述べることもできますし、また、委員会で廃案の決定があった議案につきまして本会議での審議を要求する権限を有する、こういうような面におきまして自分が所属しない委員会の所管事項にまで権限を及ぼすことができるんだ、こういうふうに大阪高裁の判例は理由中で判示いたしておるところでございます。
○稲葉(誠)委員 もう一つの問題は、常任委員会制度をとっているわけですから、その常任委員会の委員がその常任委員会の所管する事項について国政調査権の発動として質問をする、こういうふうな場合、その委員会が何委員会であってもいいわけですね。法務委員会であってもいいわけですし、それからあとの委員会どこでもいいのですけれども、これは一般論として述べているのですから特定の委員会の名前を挙げませんけれども、いずれにしてもそういう場合はどういうふうになっているのですか。 最高裁の判例は札幌高裁のあれを受けて、最高裁で上告棄却になって、これは確定しているわけですね。これはどういうふうな判例でしょうか。表題を読んでみますと、判例体系によるとこういうふうになっているわけです。「衆議院常任委員会の委員および同委員会が衆議院議長の承認を受けて行う国政調査のために設置した小委員会の」これは農林水産関係で小委員会が設置されたようですが、「小委員会の委員に選任された衆議院議員が、当該常任委員会の会議において所定の国政調査事項に関し特定の具体的案件を調査の対象として取上げてはどうかという意見を述べることおよび当該小委員会の会議または協議会に出席してその調査に関与することは、右委員としての衆議院議員の職務行為である。」これは昭和三十六年八月十二日に札幌高裁第三刑事部ですか、昭和三十五年(う)一三六号ですが、これはまず一つは最高裁へ上告して棄却になって確定しているかどうかということが一つと、それからこれに関連して、今私が読み上げたのは表題だけですから、そのポイントのところの具体的な内容、それは「議院の国政調査権」云々というのが判決の中にありますが、そこら辺のところをちょっと御説明願いたいと思います。
○岡村政府委員 ただいま御指摘の札幌高裁の言い渡した判決につきましては、最高裁で被告人側の上告を棄却いたしております。したがって、この札幌高裁の判決は確定いたしておるわけでございます。 その内容は、ただいま委員御指摘のとおりでございまして、衆議院の水産委員会の委員で同委員会に設置されました漁業制度などに関します小委員会の委員でありました国会議員が、石狩湾におきます禁漁区域の拡大等に反対しておりました漁業関係者から、同委員会にこの問題を提案して議題として、その審議において有利な発言をしてもらいたいという請託を受けまして現金を収受したという受託収賄の事案に関するものでございます。
○稲葉(誠)委員 ですから、その札幌高裁の判決の中で、国政調査権云々に関連をする重要なところがあるでしょう。では、私の方から読みましょうか。これはあくまで一般論として聞いていますからいいと思うのですが、「議院の国政調査権は、」ずっと書いてあるものですから、どこら辺になっているか。一番おしまいの方。これは一審判決は無罪だったですね。どういう理由で無罪だったのかちょっとはっきりしませんけれども。原判決破棄になっているのだが、検事控訴ですか、これは。 最後のところですが、 議院の国政調査権は、国会の権限を効果的に行使するために認められた調査の機能であって、これによって議院が直接に行政に関与するものでないことはもちろんであるが、しかし国会は憲法上立法及び予算議決の権限を有するほか、広く行政部に対する監督の権限を有すると解されるのであるから、これらの権限の行使に資するため、議院は個々の行政行為の妥当性も調査の対象とすることができるものと解すべきであり、その調査行為自体によって行政作用に対し影響を及ぼすことも当然予想されたことである。前記証拠によれば、 云々ということで、ちょっと途中を省略いたしますが、 経過を全体として見れば、それが議院の国政調査権に基づく行動であることは明らかである。 したがって、被告人の前記委員会における発言並びに小委員会の会議及び協議会に出席してその調査に関与した行為は、いずれも衆議院議員並びに前記委員及び小委員としての職務上の行為であるといわなければならない。 こういうふうに書いてあるわけですね。おしまいのところです、結論なんですが。 そこで、この判例が確定しているわけですから、そこから出てくるのは、その人が当該常任委員会の議員であったということがまず前提になっている、こう思うのですが、ここはどういうふうに理解したらいいわけですか。この場合は、その委員会の委員でなければいけないわけですか。あるいは委員もチェンジできるわけですから、ほかの委員でも、その当該委員会の委員ではないけれどもチェンジして出られるわけだから、ほかの委員会の委員であっても、その委員会に出席をしてそういうような権限は行使できるのだから、その場合も当然含まれるんだ、こういうふうに理解をしてよろしいわけですか。
○岡村政府委員 先ほど申し上げました大阪タクシーの高裁判例によりますと、限定された範囲内においてではあるけれども、自己の所属しない委員会の所管事項に干渉し得る権限を有する、これは贈収賄罪に言うところの職務権限に当たる、こういう判断をしているのでございまして、この判断に沿って具体的事実関係に沿って判断されるべき事柄であろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 そうすると、当該委員会の特に委員である場合は委員でない場合と比べると割合にはっきりしているわけですね、これは当たり前の話ですが。そこで、その当該委員会で国政調査事項に関して特定の具体的案件を調査の対象として取り上げたという人と、取り上げはしなかった、けれどもその人との間で、言葉は悪いのですけれども法律用語で言うと共謀なんですが、共謀という言葉はちょっと言葉が悪いもので余り使いたくないのですが、相談したでも何でもいいですね。相談をしてその結果としてこういうふうな国政調査権の行使、職務行為ということになったとすると、その共同した人はどういうことになるのですかね、これは。
○岡村政府委員 まず一つは、当該委員会に所属しておられる議員とのいわゆる収賄につきましての共謀の責任が認められるかという問題であろうかと思いますが、この点は具体的事実関係が明らかでございませんと何とも申し上げかねるのでございますが、一般的に職務に関してわいろを収受するというそこまでの認識と共謀が認められるならば、収賄の共謀罪が成立するということになろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 もう一つ別な問題もいろいろあるのですけれども、余りそういうことを聞いてしまうと、ちょっと言いづらいのですけれども何かいろいろな道を教えるようなことになっても困るので、一般論はここら辺にしておきます。 そうすると、当該委員会で職務行為がありとして国政調査権を行使した人との間では、例えば人を介したとしても、その間のいわゆる法律的に言う共謀ですが、共謀というまででなくても相談でもいいでしょうけれども、そういうふうな点が一つの認識を含めてポイントになるということと承ってよろしいわけですね。
○岡村政府委員 共謀関係が認められる要件といたしましては、私が先ほど申し上げたところでございます。 なお、大阪タクシーの判例によりますと、国会議員が自己の権限事項に関しまして他の同僚議員に働きかけ、一定の議員活動を求めるため勧誘、説得をする行為は、国会議員の有する有職務権限と密接に関連する行為になるのだ、こういうことも言っておるわけでございまして、その面からの判断もあろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 今の密接関連行為ですね、密接関連行為が近ごろ非常に広く判例等でも解釈されてきておるということは事実だと思うのですが、そこで今の法律的な共謀というのは、直接その二人が会って話をしなくてもいいわけですね。いわゆる順次共謀というのがありますが、それでもいいわけでしょう。
○岡村政府委員 共謀の解釈といいますか認定の一つといたしまして、順次話し合っていくという、いわゆる順次共謀というものが認められておることは御指摘のとおりでございます。
○稲葉(誠)委員 その順次共謀と普通の共謀とはどういうふうに違うわけですか。
○岡村政府委員 共謀の責任を負うという点では同じでございます。
○稲葉(誠)委員 だから直接AとBとが会って話し合うのではなくて、その間にだれかが入って、Aがその中に入った人A’ならA’に話をする、A’がBに話をするという形での順次共謀、その意を受けておるというのであれば順次共謀になる。これは一般論として当たり前のことですね。
○岡村政府委員 そのとおりでございます。
○稲葉(誠)委員 そこで今度は、一般論ばかりやっていてはゼミナールみたいになってしまいますから、一般論でないことに入るわけですが、これで一たん話は切りますよ。一般論は一般論として切ってください。そうでないと誤解を招いてしまってしようがないから。 撚糸工連事件は、現在はどういうような進め方をしているわけですか。現況はどうなっているのですか。
○岡村政府委員 現在は横手議員に対します贈収賄事件を捜査いたしておるという段階でございます。
○稲葉(誠)委員 いや国会議員のことを聞いているのじゃないのですよ。全体としてのことです。だから私は一般論を切ったのですよ。一般論を切ったのだから、撚糸工連事件は、最初の出発はわかります、業務上横領で告訴したわけでしょう、それから詐欺で起訴したり何かしてますね、その後の経過をちょっと整理して聞いているわけです。
○岡村政府委員 昨年の九月十四日に撚糸工連から三谷元経理課長に対します告訴を東京地検が受理いたしまして捜査を開始いたしたわけでございます。その後、十二月二十四日に三谷元課長を業務上横領の事実で起訴いたしました。また、本年三月六日に小田前理事長ほか三名を詐欺の事実で起訴いたしました。三月在十七日には小田前理事長ほか一名を業務上横領の事実で起訴いたしたわけでございます。四月十六日には通産省の高沢課長ほか三名を贈収賄の事実で起訴いたしたわけでございます。 以上がこれまでの起訴処分の概要でございます。
○稲葉(誠)委員 そして今の捜査は何をやってるんですか。私はそこまで聞かなかったのにあなたの方で答えちゃったんだけれども、今の捜査はどういう点をやっておられますか。
○岡村政府委員 今は横手議員に対します贈収賄の事実、これを捜査いたしておるところでございます。
○稲葉(誠)委員 それはこの前、家宅捜索をやったようですね。それは被疑者不詳でやったんですか、あるいは被疑者としてやったんですか。そこら辺のところはどうなっているんですか。
○岡村政府委員 横手議員関係の場所の捜索は横手議員に対する収賄容疑の事実で行ったものでございます。
○稲葉(誠)委員 同僚議員のことですから、今進展中の事件ですから、これ以上のことは聞きませんけれども、普通、家宅捜索の場合は被疑者不詳でやるのが多いんじゃないですか。多いとは言わぬけれども、そういう場合も相当あるのじゃないか。今のお話だと被疑者不詳ではないですね。被疑者ですか。
○岡村政府委員 被疑者不詳の被疑事実に基づきまして捜索等を行う場合もあろうかと思いますが、やはり被疑者が判明している以上、被疑者を明確にいたしまして捜索するのが普通でございます。
○稲葉(誠)委員 これは全然別な話ですけれども、ちょっと話が飛んで恐縮なんですが、テレビなんか見ていますと私は気になってしようがないんですよ。一般の事件ですよ。逮捕したのによく何とか容疑者と書いてあるんですが、容疑者というのは一体法律的に言うとどういう意味なんでしょうかね。法律的には何の意味もないですよ。逮捕すれば、現行犯逮捕なら、そこから被疑者になるんじゃないですか。容疑者というのは何なんですか。
○岡村政府委員 私ども、被疑事実といいますのと容疑事実といいますのをそれほど区別せずに使っておるわけでございますが、刑事訴訟法から申し上げれば被疑者、こういうことになると思います。
○稲葉(誠)委員 じゃ、容疑者というのは何なの。これはテレビを見ると、みんな容疑者と書いてあるんだよ。私は変な言葉を使うなと思って見ているんだけれども、逮捕状で逮捕されてしまえばそこから被疑者になるんじゃないかと思うんですね。どうしてああいうふうに使うのかなと思って見ている。何か意見があるんでしょうけれどもね。そこへ行く前はまだ容疑者かもわからぬけれども、ちょっとよくわからない。あなたに聞いてもそれは無理な話だね。私はテレビをいつも見ながら変な言葉を使うなと思っている。どうもあれに統一したらしいんですけれどもね。 その話は別として、こういう事件というのは今後どういうふうに進んでいくと見ていいんですか、ざっくばらんな話は。
○岡村政府委員 現在、捜査中でございますので、その点につきましてはひとつお答えを差し控えたいと思います。
○稲葉(誠)委員 それはそれでいいので、今あなたの方から答えたら話がおかしくなるのですよ。法務省と検察庁との関係で、どういうふうに検察庁がやるのか一々法務省が知っておるわけはないので、法務大臣は一般的な指揮権はあるけれども個別の指揮権はないのだから、そんなもの法務省が知っているわけはないので、聞く方が悪いと言えばあれだけれども、そうもいかないから聞いておるのです。なかなか質問が難しいですね。 そこで、今一般論でいろいろお聞きしたのですけれども、私もこういうことを聞きたくないのですが、日本でも著名な週刊誌、私は週刊誌というのは大体いいかげんなことを書いてあるのが多いと思って、大体汽車の中で読んで捨ててしまうのが多いのですけれども、しかし、このサンデー毎日は日本では権威ある週刊誌なわけで、五月四日号に、ある議員の名前入りで出ているのです。私は、ここまで書いていいのかどうか疑問だとは思いますけれども、とにかくそういうふうに、サンデー毎日という有力な週刊誌の五月四日号に事実が指摘されていますから、私は同じ国会議員ですから、その方の名誉のためにもこれをお尋ねをしていかなければいけないだろうというふうに思うわけですが、ある人の名前が出ている。ある人というのは、ここにちゃんと名前が出てしまっているのだから、稻村佐近四郎氏という名前が出てそういうふうに報ぜられているのですね。これは事実なんですか。昭和四十五年当時、稻村建設の倒産をめぐる不正事件で云々、偽造手形を振り出して何とかかんとかでやって、事情聴取を受けて、詐欺容疑などで書類送検をされたことがある、犯意を否認して起訴猶予処分になったと書いてあるのです。新聞記者の名前も出ているのですが、これは事実関係はどうなんですか。
○岡村政府委員 お尋ねの件でございますが、昭和四十五年六月に東京地検におきまして不起訴処分にいたしております。罪名は詐欺等でございます。
○稲葉(誠)委員 不起訴処分ということは、これは具体的にはどういうことなんですか。ある程度内容は説明できるのじゃないですか。
○岡村政府委員 起訴猶予処分でございます。
○稲葉(誠)委員 起訴猶予と嫌疑なしというのと嫌疑不十分というのとどういうふうに違いますか。
○岡村政府委員 事実が認められる場合が起訴猶予でございまして、証拠が不十分な場合あるいはかなり証拠がないような場合、これが嫌疑不十分あるいは嫌疑なし、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 去年の七月に贈賄容疑で云々ということが書いてあるのですが、よくわからないのです。これは警察の方ですか、ここに書いてある事実関係はどうなんですか。事実ですか、事実でないのですか。
○国松説明員 先生お尋ねの点は、サンデー毎日の記事の中の「昨年七月には、贈賄容疑で岐阜県警」云々、これ以下のことを指しておられると思うわけでございますが、この点に関しましては、確かに岐阜県警におきまして、昨年六月岐阜県生コンクリート工業組合の理事長等が、同県議会におきます質問をめぐりまして同県の県議に現金を贈ったという贈収賄容疑がございまして、これにつきましては被疑者を六月三日に逮捕いたしまして、六月五日岐阜地方検察庁に送致したところでございます。
○稲葉(誠)委員 いや、ここに名指しで何か記事に出ていますね。それとの関連ではどうなんですか。
○国松説明員 ただいまお答え申し上げましたとおり、この件につきましては贈収賄容疑ということで送致をいたしたところでございますが、送致事実以外に立件送致すべき事実があったという報告は受けておりません。
○稲葉(誠)委員 あなたの話の中で大体のことはわかりますから、これ以上のことは聞きませんので、あなたの方は結構です。 そこで、また話は一般論に戻るのですが、私もよくわからないのは、政治献金と贈収賄のわいろとの関係です。 その前に、まず贈収賄罪の場合の構成要件をわかりやすく説明をしていただけませんか。
○岡村政府委員 収賄は、要するに公務員がその職務に関しまして金品等の利益の供与を受ける、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 それは条文にそういうふうに書いてあるので、条文を読んだだけの話でしょう。そこをもう少し詳しく構成要件について説明をお願いできませんかというわけです。公務員といったっていろいろあるわけで、それはいいですが、職務に関してわいろを収受したときのその認識なら認識というのを、どういうふうに必要なのかとか、単純収賄の場合と請託収賄の場合とどういうふうに違うのか、いろいろあるわけでしょう。そこら辺のところを含めて、もう少し詳しく御説明願えませんか。
○岡村政府委員 収賄の類型といたしましては、まず単純にわいろを収受するという単純収賄が一つの類型としてあるわけでございます。また、請託を受けてわいろを収受するといういわゆる受託収賄という類型が一つあるわけでございます。また、わいろを受け取りまして不正の行為をなしあるいは相当の行為をなさなかったという、いわゆる枉法収賄という類型が一つあるわけでございます。また、あっせん収賄という類型があるわけでございまして、他の公務員をして職務上不正の行為をなさしめあるいは相当の行為をなさざらしむべくあっせんをなすことあるいはそういうあっせんをなしたことの報酬としてわいろを収受すること、これがあっせん収賄という類型になるわけでございます。もちろん、職務に関した利益の供与を受けるものであるというその認識は必要でございます。
○稲葉(誠)委員 今の単純収賄や請託収賄、枉法収賄は非常にわかりいいわけです。ですけれども、あっせん収賄というのがちょっとわかりにくいのです。これは後がちできた法律ですね。これは、構成要件がどういうようなものをあっせん収賄と言うのか、そのときの認識とか具体的な行為とか、それはどういうふうになっているのですか。もう少し説明願えませんか。
○岡村政府委員 普通の収賄は、自己の職務に関してわいろを収受するわけでございます。ところが、あっせん収賄というものは、自己の職務に関してわいろを収受するということではなくして、他の公務員に一つのあっせん行為をなす、そのことで自分が金品を受け取る、こういうことでございます。ただ、そのあっせん行為といたしましては、他の公務員に職務上不正の行為をなさしめるあるいは相当の行為をさせない、そういう要件が加わっておるわけでございます。だから単純にあっせんをいたしましても他の公務員に今言いましたような職務上不正の行為等がなければこれは要件を欠く、こういうことになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 もう一つの問題は、政治献金ということとそれからわいろとはどういう関係に立っているというふうに理解したらよろしいでしょうか。なかなかこれは質問の意味もあなたの方でも十分了解されにくいかと思うのですけれども、あなたの方の了解でいいですから、その政治献金だということとわいろとの関係と、それでは政治献金だと言ったことによって、主張することによって、わいろ罪の適用を免れることが一体できるのかできないのか。できない場合もあるならばあるというところを説明を願いたいと思うのです。
○岡村政府委員 政治献金という言葉は非常にいろいろな場合に使われておると思うのでございまして、厳密な定義はないのではなかろうかと思うわけでございます。要するに、わいろになるかどうかといいますのは、どういう名目で渡された金であるかという、そういう名目にかかわらず実質に着目して判断しなければならないことであると思うのでございます。 そういう意味におきまして、結局はケース・バイ・ケースで個別的に判断されるべき事柄でございますが、一般論としてお答えいたしますと、いわゆる政治献金と言われておりますものの中には全く献金者の利害に関係のないようなものもあろうかと思います。こういったものがわいろに当たらないことはもとよりでございます。また、政治献金の中には自己の利益を期待して提供するものもあろうかと思います。その中でもやはりその献金を受けます公務員としての職務に関する対価と認められる、そういう実質があるならば、仮に政治献金といったような名目でありましても職務に関したわいろということで収賄罪が成立をするものと考えております。 〔委員長退席、村上委員長代理着席〕
○稲葉(誠)委員 そうすると結論は、政治献金という名前で政治献金をもらったんだというように主張をいたしましても事の実質にかんがみて判断をしなければいけないし、そういうふうになってくると政治献金だと言ったところで贈収賄罪の成立を妨げられない場合が多々出てくるというかそういう場合がある、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
○岡村政府委員 そういうことでございまして、政治献金だからすべて収賄罪に当たらないというわけではございませんし、逆にまた政治献金のすべてが収賄罪に当たるというわけでもございません。要するに個別的に判断すべき事柄である、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 一般論として国会議員の職務権限というのは非常に難しいですね。私は今ここですぐ答えてくれという意味じゃないのですけれども、例えば解散になっちゃった、国会議員の職務がなくなっちゃった。なくなっちゃってからもらう場合がありますね。もらう場合に、それは今まで随分尽くしてくれたお礼という意味をも含めてもらう場合もあるし、将来こういうふうなことをしてくれという意味でもらう場合もあるでしょうし。しかし、その人が今度当選すれば犯罪にひっかかって、そうでなければならないというのも、これも何だか変なように考えられるのでね、常識的に見て。だから身分を失っちゃったときに受け取ったときに一体それはどういうふうになると理解していいんですか。場合を分けて、まあなかなか難しいんですよ、これ。ですから今わかる範囲ならばわかる範囲で説明願ってもいいし、また別の機会でということならば、私もいろいろ細かい点、研究はしているんですけれども、別の機会にお聞かせ願っても、どちらでも結構です。きょうはもう時間が十二時を過ぎましたものですから、時間余っていますが、ちょっと私、今の質問でお答え願ってもいいし、あるいは後で研究して答えるというのでも、どちらでも結構ですから、私の質問を終わらしていただきたい、こう思います。
○岡村政府委員 それでは簡単にお答えさせていただきます。 刑法は事後収賄という規定を設けておるわけでございまして、公務員であった者が在職中に請託を受けて職務上不正の行為をなしまたは相当の行為をなさざりしことに関してわいろを収受すれば事後収賄に当たる、こういう規定があるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 今の問題とかその他いろいろな問題が出てくるんですよ、これ。ありますけれども、それはまた別の機会にお聞きすることにして、きょうは私の質問はこれで終わらしていただきます。 〔村上委員長代理退席、委員長着席〕
○福家委員長 午後一時半再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時六分休憩 ――――◇――――― 午後一時四十二分開議
○太田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。岡本富夫君。
○岡本委員 昨日でしたか、私が九段の宿舎を出ようとすると、自民党さんの車がたくさんありまして、どこへ行ったのかなと思ったら、靖国神社へ昔お参りしたそうですが、車が込んで非常に困ったわけです。それはそれといたしまして、この靖国神社の公式参拝について、きょうはお聞きしておきたいと思うのです。 昨年の八月十五日、中曽根総理は閣僚十八名とともに歴代内閣では初めて靖国神社の公式参拝を強行しました。そして、見ておりますと、秋季の例大祭には外交的配慮があったのか取りやめられた、こういうことになっておりますけれども、この公式参拝は憲法上も外交上も重大な問題をはらんでいると認識をいたしております。 そこで、ことしもまた八月十五日の例祭が来るようでありますけれども、閣僚の一員として、それに参加の可否も含めて法務大臣の御意見を承りたい。いいのか悪いのか、あるいは出席なさるのかなさらないのか、これについて御意見を承っておきたい。
○鈴木国務大臣 この問題は、いろいろ経過等もあるようでございますから、閣僚の一員というよりは、きょう、内閣を代表して副長官が来ておられますから、そちらの方からお答えをさせていただければと思います。
○岡本委員 昨年の八月十五日に総理と閣僚が初めて公式参拝をしたときに行かなかった人もいるので、それで法務大臣として、この八月十五日にそういうお誘いがあった場合、閣僚の一員として参加なさるおつもりがあるのか、あるいは憲法上非常に疑義があるというお考えでお取りやめになるか、この点についてお聞きしたい、こういうことで御見解を承っておるのです。
○鈴木国務大臣 まだ時間もあることでございますし、私は出るか出ないかということもまた考えてもおりません。
○岡本委員 法を一番守らなければならない法務省、そこの大臣でありますから、行動というものは慎重にしてもらわなければならぬだろうと思うのです。この質問については既に政府の方に要旨を通知してあります。したがって、まだ決めておりませんというような簡単なことでは納得できないわけです。法務大臣、もう一遍、まだ決めておりませんというようなそんな簡単なお答えでは困るわけです。
○鈴木国務大臣 いろいろ御意見等があることも承知いたしておりますので、慎重に考えさせていただきたいと思っております。
○岡本委員 なかなかはっきりしませんな。 次に、内閣法制局にお聞きいたします。 昭和五十五年の十一月十七日に出された政府見解、靖国神社参拝については違憲の疑いありということで政府に進言をして、特に内閣法制局というのは、時の内閣を間違わしてはならない、あるいは憲法上いろいろと意見を開陳して、また政府の方も内閣法制局に対しては相当頼っておるだろうと私は思うのです。そういう重要な地位にあり、また重要な役割を持っておるのが内閣法制局じゃないかと思いますが、それが五十五年十一月十七日には違憲の疑いありということで統一見解を出して、これに参画なすって、そして公式参拝はしていない。今まで戦後の内閣総理大臣で公式参拝をしなかったのは、ここらあたりに違憲の疑いがあるということでしなかったのではないだろうかと思うのですけれども、昨年の夏の公式参拝は合憲だというような意見を、意見といいますか政府見解を出しております。この変更について内閣法制局としてはどういうような御意見を持っているのか、お聞きしたいと思います。
○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。 御指摘の政府統一見解におきましては、「政府としては、従来から、」「国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは差し控えることを一貫した方針としてきた」、その理由として、「憲法第二十条第三項との関係で」「このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できない」というふうに述べていたと存じます。この政府統一見解と昨年八月十五日に総理等が靖国神社に公式参拝されたこととの関係につきましては、昨年八月に衆参両院の内閣委員会において当時の藤波官房長官が明らかにされているわけでございますが、それによりますと、先般の総理等の靖国神社公式参拝に先立って、まず閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会、いわゆる靖国懇の報告書等をも参考として政府として鋭意検討した、その結果、昨年八月十五日に行われたような方式、つまり専ら戦没者の追悼を目的として、かつ神道儀式によることなく追悼の気持ちをあらわすということであれば、これを総理その他の国務大臣が国務大臣としての資格で行ったとしても憲法二十条三項に違反しない、かような判断に至ったわけでございまして、そういった意味でこのような参拝は差し控える必要はないという結論を得まして、御指摘の政府統一見解をその限りにおいて変更した、こういうことでございます。
○岡本委員 これに対して法制局はどういう考えを持っておるのか。政府統一見解はわかりますけれども、違憲の疑いがある、これに対して法制局としてはどういう進言をしたか、あるいは考えを持っているのか、これをもう一遍伺いたいと思います。
○工藤(敦)政府委員 政府の統一見解でございますので、当然その過程におきまして私どもも御相談にあずかり、また御意見を申し上げる、こういうことでございまして、いずれの件につきましても私どもそういう立場にいたわけでございます。
○岡本委員 内閣法制局設置法では、法制局の役割の一つとして、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」を規定しているわけですけれども、そうすると今あなたの御答弁によりますと、法制局も官房長官の私的機関でありますところの靖国懇の報告に基づいて、公式参拝よろしい、違憲でない、合憲だというように判断をなさったのですか、いかがですか。
○工藤(敦)政府委員 従来、さきの藤波官房長官からも国会の場におきまして申し上げておりますところでございますが、いわゆる靖国懇の報告書をも参考としてというふうなことでございまして、決して靖国懇の報告書のみによって統一見解がつくられた、あるいは方針を変更した、かようなことではございません。
○岡本委員 そうしますと、昨年八月二十日の内閣委員会におきますところの法制局長官の答弁の中に「社会通念」、これは最高裁の判決文の中から引いているわけですけれども、この社会通念について五十五年十一月十七日までは十分把握ができていなかった、それが靖国懇の何といいますか答申が出たために社会通念というものを把握した、それで今般行われました公式参拝の実施ということになった次第でございます、こういうふうに御答弁をされておるわけですが、これは間違いありませんか。
○工藤(敦)政府委員 私、ただいま手元に当時の議事録をちょっと持っておりませんので正確なところはお答えできかねますが、その趣旨のことを御答弁申し上げたことは記憶しております。
○岡本委員 そうすると、今あなたは靖国懇の報告だけでこの公式参拝の意見を出したというのと若干このお答えが違うように思うわけであります。 それで、これは報道によりますと、「昨年、政府見解について説明するため出席した自民党議員の会合や国会答弁の中で「最高裁判決を踏まえても、なお違憲の疑いはある」こういうように味村内閣法制局次長あるいは前田第一部長らは昨年答えているんだ。これは報道でありますから、新聞記事でありますからあれですが、法制局の中にもこういった意見の違いの方が、これについて違憲の疑いがある、こういうように言っている人もいるという報道がありますが、この点についていかがですか。
○工藤(敦)政府委員 ただいま先生がお引きになりました部分、私もちょっと正確にはわかりかねますが、決して法制局の内部においてそういった意見の不一致があるといったようなことはございません。むしろ昨年の見解より以前、その中で検討していたときのといいますか、五十五年の見解についての部分を述べたのと時点が、ちょっと私も今の時点正確に把握いたしませんが、昨年のその統一見解におきまして意見の不一致が内部においてあるというようなことは一切ございません。
○岡本委員 そこで、じゃこの靖国懇というのは官房長官の私的機関ですね。これはどういう法的な根拠を持っておるのかひとつお聞きしておきたい。絶対なものなのかどうか。
○工藤(敦)政府委員 靖国懇は御指摘のようにいわゆる私的懇談会でございます。藤波官房長官のもとに設けられました私的懇談会でございまして、私的懇談会なるものは、藤波官房長官からのいろいろな話を受けましてそれに対しての意見を申し上げるという意味で、法的な根拠のあるものではございません。
○岡本委員 まあそうだろうと思うのですね。その証拠に、今度中曽根総理がアメリカに行く前に、前川前旧銀総裁の国際協調のための経済構造調整研究会ですか、この案を持ってアメリカへ行ったわけですけれども、これについて今党内あるいはまた政府内でも非常な、特に党側ですね、「党側への根回しが不十分だった」とか「私的諮問機関などを重視する首相の”ブレーン政治”に対する反発」、きょうもこういうような新聞記事が出ておりますけれども、法的に何の根拠もない、また我々から見れば国会にも語らない、こういうあいまいな私的機関でもって、この靖国懇の意見が金科玉条といいますか、これが出たからといって早速五十五年の統一見解を、六十年の八月かに靖国神社に公式参拝するというので変えてしまう。こういった法制局の見識のなさといいますか、この点に非常に問題があろうと私は思うのです。時の内閣を間違わさないように、あるいはまたいろいろな意見をきちっと出して迎合しない、それでこそ立派な法制局としての立場を堅持できるのではないか、私はこういうふうに思うわけでございますが、このことを今第一部長さんに言っても仕方がないから、このくらいにしておきますけれども。 そこで、官房副長官、お忙しいところ御苦労さまですが、あなたのお考えでは、昨年八月十五日に総理が初めて公式参拝した、これは合憲か違憲かということだと合憲だとはおっしゃると思うのです。どういうところが合憲なのか、ちょっと説明いただけませんか。
○唐沢政府委員 釈迦に説法でございますが、昨年の八月十五日の公式参拝は、政府がたびたび御答弁申し上げておりますように、国民や遺族の方々の多くが靖国神社を我が国の戦没者追悼の中心的な施設であるとして同神社における公式参拝を実施するように強く望んでおられるという事情を踏まえまして、祖国や同胞のためにとうとい一命をささげられた戦没者の皆様の追悼を行い、あわせて我が国や世界の平和への決意を新たにする目的で実施したものでございまして、先生の言われます憲法のいわゆる政教分離の原則との関係に十分に配慮いたしまして、参拝が専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的のために行われるものであるということで神道儀式によらずにさせていただいたものでございますので、そういう点で問題はない、このように考えておるわけでございます。
○岡本委員 一つは国民が願っておるというようなお話でありますけれども、大体今一億二千万の国民のうち靖国神社のことを知っている人というのはそんなにたくさんいないですよ。この間も地元の方で若い人たちに、靖国神社知ってるかいと言ったら、花見に行って手たたくところや、こんなふうに言っていますね。戦前の我々はよく知っていますけれども、戦後の皆さんはもう戦争なんというのは神武の昔のことと考えている。したがって、国民のと言っても、二人も三人も国民ですけれども、こういう表現はどうも私はわからない。 もう一つは遺族会の関係、僕も実はいとこが五人戦死しております。その後の報道によりますと、日本遺族会に靖国神社公式参拝が引き金となってどんどんひび割れがきている、そういう報道がなされておるわけですね。結局遺族会の分裂を起こしたというのが今度の公式参拝なんです。こういうことになりますと、遺族会の皆さん、私の親戚もたくさん遺族会に入っていますけれども、かえって今度の公式参拝が遺族の一部の一僕は浦野さんという遺族会の会長に会ったことがありますが、一部とは言いませんけれども、何人か知りませんが、その方々は喜んでおるかわからぬ。しかし、その傘下にありますところの遺族会がひび割れがどんどん広がるということはかえってマイナスじゃないか、こういうふうに考えるのですが、いかがでございましょう。
○唐沢政府委員 今、岡本先生から遺族会が分裂しているのではないかと御心配をされておられるようでございますが、私のところに見えます御遺族の方は、国民のため祖国のために命をささげた方にぜひ敬意を表してもらいたい、そして靖国神社を戦没者追悼の中心的施設として考えておられたように私は受け取っておるわけでございます。 また、国民の皆さんの多くがと私は申しましたが、たしかNHKの調査でも公式参拝は当然だとか、よかったという方が半数を超えておられるというような調査もございますので、私は、国民や御遺族の非常に多くがこういうことを希望しておられた、このように考えております。
○岡本委員 大体、調査のデータというのは二百人あるいは三百人、その辺抜き取ってくるわけでしょう。そして答えないのは随分おるわけですよ。わからぬ人はわからぬ。出てきた分の中で何%、私はそういうものが国の世論であるとは考えられない。それは書いてもらったんだろうと思いますが、だれかに。恐らく今遺族会がひびが入って割れているということは事実だ。若干思想、信条の違う人もいるかもわかりません、そういうリーダーのところはそういうところもあるかもわかりませんけれども、いずれにいたしましても、遺族会傘下のところが靖国神社公式参拝実現のため各遺族に特別負担金一世帯一万円を求める、こういうこともあるのですね。そういうことになりますと、結局この公式参拝はこういった遺族会に大きなひび割れを起こす、これが一つ。これはお互いにへし合いしても仕方がありません、見解の相違ということもあるかわかりませんから。 そこで、このときに三万円の供花料ですか、これを公費から出しておりますね。この領収証はもらっておりますか。
○唐沢政府委員 今の先生のお話は、総理大臣が供花を行いましてそのお金は出しておりますが、玉ぐし料は一切出しておりません。
○岡本委員 その供花は色花ですか、それとも何ですか。恐らくシキミでしょう。
○唐沢政府委員 生花一対ということだそうでございます。
○岡本委員 宗教行事というのは、御存じだと思いますけれどもお花を供えたり、あるいは頭を下げたり、手をたたく人もたたかぬ人もいますけれども、これはやはり宗教活動なんですよ。玉ぐしを持ってはあっとやるのは神主さんがやりますけれども、一般の人はやらない。そうなりますと、憲法二十条に「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」こういうふうにありますね。そうすると、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」追悼のために行かれたと言いましても、これはもう宗教活動の一つなんですよ。だから遺族会の一部の人は手をたたいて喜んでいるんじゃないですか。そうでしょう。いや、行ってもこれは宗教活動と関係ないのだ、これではだれも納得しないはずです。こんな紛らわしいことをなぜするのですか。
○唐沢政府委員 いろいろ先生御心配をいただいておりますが、見解の相違と申しますか、確かに玉ぐし料ということになりますとこれは宗教的な儀式の一環かもしれませんが、供花でございますし、お花はいろいろなところへ出しておりますので、私はこれが宗教儀式だとは考えておりません。
○岡本委員 玉ぐし料のかわりに供花料を出した。これはかわりなんですよ。かわりということは宗教活動なんです。首を横に振ったってだめですよ。この領収証はどこの領収証が出ておるのですか。一遍お聞きしたい。
○唐沢政府委員 それは何か靖国神社の受取だそうでございますが、靖国神社において供花を行ったわけでございますので、そこで立てかえて出していただいてその受取をいただいた、こういうわけです。
○岡本委員 そうだろうと思ったのですよ。恐らく花屋の領収証じゃないはずです。恐らく靖国神社の領収証だと思うのですね。ということは靖国神社に出しておるのですよ。立てかえてもらった、そんなのは関係ない。これは靖国神社の領収証が出ておるはずです。ということは、靖国神社に玉ぐし料を、玉ぐし料でなくても公費を出しておるわけです。 そこで、ここには駆り出された人と東条英機、戦犯が一緒に合祀されているわけですよ。ここへお参りしたときに、そっちは関係ありませんよとは言わなかったはずだ。ただ、国のために亡くなった人、その点は分けて頭を下げたのですか。これはどうですか。
○唐沢政府委員 もう先生重々御存じのことだと思いますが、個々の方にお参りをしたというわけではなくて、祖国や同胞等のためにとうとい一命をささげられました戦没者の皆様の追悼を行わせていただいたわけでございます。
○岡本委員 そうすると東条戦犯も入っておるということですね。これは細かく言っても仕方がない。 そこで、こういうことをやるものだから、せっかく日中国交を正常化して、十年前に竹入委員長が行ってやっと日中の間が正常化になった。これがあったからこそ現在の大きな平和が来ておると私は思うのです。向こうがソ連とくっついておったらどうにもならないです。現在は非常にうまくいっている。その中国から、ましてや戦犯に対して公式参拝するということはけしからぬというクレームがついているわけですね。そういう配慮は全然しなかったのですか。これはいかがですか。
○唐沢政府委員 公式参拝につきまして内外にいろいろな御意見のあることは承知をいたしております。今後とも引き続き必要に応じまして政府の考え方をよく御説明をし、御理解をいただくように努力してまいりたいと考えております。 そして諸外国に対しましては、先生御心配をされておられますが、我が国は過去においてアジアの国々を中心とする多数の人々に多大の苦痛と損害を与えたということを深く自覚をいたしまして、このようなことを二度と繰り返してはならないという反省と決意の上に立ちまして平和国家としての道を歩んでおるわけでございますが、この公式参拝の実施に当たりましても、その姿勢はいささかも変化がない、国際平和を深く念ずるものである、こういうことをまた重ねて説明をしてまいりたい、このように考えております。
○岡本委員 それだったら、アメリカで中曽根さんが言ってきたのと同じですよ。また今度の内需拡大して輸出をセーブしますなんて、レーガンさんも初めからそんな信用してないけれどもね、我が国の状態というのはそういう経済ができないことになっておるんだから。そういうように口だけうまく言ったところで態度で示さなければ、特に中国というところは御承知のように一遍信用しますと非常につき合いがよろしいけれども、だますと向こうはメイファーズで終わりだけれども、後は非常に厳しい関係になるだろうと思うのです。 したがって、これはあなたにお聞きしてもどうかと思いますけれども、中国の呉学謙外務大臣が日本に来たときに金丸幹事長と会談された。そのときに靖国神社公式参拝に対して非常な厳しい意見があった、その前もあったわけですけれども。そのときに金丸幹事長は、外国要人や国民すべてが花をささげられる、外国へ行きますと無名戦士の墓とかいうものがある、そういうような場をつくりたいというような御意見を出したそうでありますけれども、政府部内においてはこれに対してどういうような考えを持っておるのか。いやしくも一党の幹事長がこういうことを発表しているわけですから、その後何の考え方もやってないんだ、また打ち合わせもないんだということは、これはちょっと失礼に当たるだろうと思うのです。したがって、その問題についてはどういうようになさるのか、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○唐沢政府委員 ただいま先生御指摘のように、金丸幹事長が呉学謙外相と会談した際の記事を私も拝見をいたしておりますが、詳細は存じておりません。いずれにいたしましても、将来検討するべき課題、こういうふうに考えております。
○岡本委員 これは報道でありますから、金丸さんがいいかげんなことを言うたとは考えられませんけれども、国民のすべてが花をささげられるような場所をつくることを検討しているというように答弁したというような報道があるわけですね。何も検討してないのにそんなことを言うのもおかしい話だから、やはり政府部内では早速検討しなければならぬし、またそういうものをつくらなければならぬだろうと思うのです。これは、ここで余りあなたに言いますと困るだろうと思うので、ここでおいておきます。 そこで、政府は戦没者追悼の場として千鳥ケ淵の戦没者墓苑、こういうものを前に厚生省を中心にしてつくっておるはずですね。ここで政府はその後どういうようにこれに対しての行事を行っておるのか、あるいはまたこれをどういうように考えておるのか、それをひとつ聞いておきたいと思います。
○大西説明員 お答えを申し上げます。 お尋ねの千鳥ケ淵戦没者墓苑でございますが、これは、さきの大戦におきまして戦没された方々のうち、海外の旧戦域で収集されました遺骨で氏名がわからないものにつきまして、これを遺族にお渡しすることができないため、これをおおさめする施設として昭和三十四年につくられております国立の納骨施設、お墓でございます。 それで、行事といたしましては、その墓苑が竣工いたしました昭和三十四年に、その竣工式を兼ねまして追悼式を行っておりますが、その後、昭和四十年以来毎年春に厚生省主催という形で、皇族の方の御臨席もいただきまして、関係閣僚、遺族代表、来賓の御参集を得まして、前年の納骨以来新しく集めました御遺骨の納骨を行うとともに、あわせまして、それまでにおさめられました御遺骨に対する拝礼を行うという意味で、戦没者墓苑拝礼式を実施しております。ちなみに納骨されております数は、これまで合計三十二万三千柱になっております。 それで、この墓苑は、今申しましたように、遺族にお渡しすることのできない御遺骨をおおさめする施設ということでございまして、その施設の性格からいって、その活用についてはおのずから限界があろうと思いますし、またこの施設をどのように活用するべきかということにつきましては、遺族の方々の間にも、また国民の間にもいろいろな御意見があるように私ども伺っておりますし、政府としてこの施設についてどう考えるかにつきましては、厚生省だけにとどまりませんで、関係するところも広うございますので、政府全体として慎重に考えるべき問題だろうと思っておりますので、きょうは、その活用につきましても先生の御提言を承る形でとどめさせていただきたいと思います。
○岡本委員 官房副長官お忙しいらしいですが、今もこういうような話が厚生省の方からありましたが、こういった宗教色を抜いた、外国では無名戦士の墓といいますか、だれでも行ってお参りできるような、花をささげることができるような、そういうものを、先ほど言いましたように金丸さんもこういう答弁をしておるのですから、政府としてちゃんと早急に考える必要があろうと思うのです。この点について何にも考えていないということはないだろうと思うのですね。聞き初めだというような顔をせずに、ひとついかがですか。ここでちゃんと答弁しておけば、できるのだから。あなたは実力がある方だから、言ってください。
○唐沢政府委員 ただいま先生から、無名戦士の墓のような宗教色のない施設はどうかという御提言がございました。確かに靖国懇でもそのような御意見があるし、また戦没者のみならず、社会や人々のために平時の生活でみずからの生命をなげうたれた方々、こういう方もあわせて追悼する施設もどうかというような御意見があったように承っております。そして、「宗教・宗派の別なく全く自由な追悼の方式が認められるべき」との御意見が確かにありました。「この新たな施設の設置そのものは十分考慮に値することではある」、こういうように靖国懇の報告書では述べてあるようでございます。 しかし、先ほど先生に申し上げましたように、国民や遺族の方々の多くが戦没者追悼の中心的な施設として靖国神社を考えておられる。そこで、いろいろな新しい施設をこれから考えるということにいたしましても、今、そういう国民や遺族の方々が長年考えてこられた、国のために亡くなった方々に対して公人として敬意を表してもらいたいということを解決することにはすぐはならない、そういうように思いまして、これは先生の有力な御提案、貴重な御意見として受けとめさせていただきます。今後も、先生初め国会の先生方やまた各方面の御指導をいただきまして、これからよく検討してまいりたい、このように考えております。
○岡本委員 普通であればそのくらいにしておくところですが、少なくとも今、中曽根内閣、自民党の中で金丸幹事長が、これは検討しておりますと、当時中国と約束をしておるわけですね。また、そういう答弁をなさっているわけですよ。中国もそれでお帰りになったのでしょう。なのに今のような、要するに新聞の見出しにもありますように「靖国以外の場を検討 自民幹事長 中国外相に表明」、こういうことですから、靖国以外のところで早く、今のようなきれいな言葉でなくして、現実のものをつくっていかなければならぬ。いずれにしましても、これは内需拡大の一つにもなるのだし、民活ばかり言っておらずに、そういったこともできるわけですから、もう一遍内閣の方で考えていただきたい。これは考える余裕があるか、これだけ一つお答えいただいて、帰ってもらいましょう。
○唐沢政府委員 今いろいろ申し上げたわけでございますが、本当に先生の有力な御提案、貴重な御意見としてしかと承りまして、今後よく検討させていただきたい、このように考えております。
○岡本委員 ちゃんとこっちから質問要旨を出してあるのだから、検討してこなければだめですよ。この次にしましょう。お帰りください。 そこで、この問題ばかりやっていると時間がないのですが、今も官房副長官からも話がありましたけれども、日本人の戦没者のみならず、あの第二次世界大戦ではアジアの人々にも非常に迷惑をかけた。アジアの人々も含めた慰霊、これも大事なことであると思うのですが、この慰霊祭について外務省の御意見をまず承りたいと思います。
○浅井説明員 先生よく御承知のとおり、我が国は戦後一貫して過去への反省に立ちまして平和国家としての道を歩んでまいりましたし、その一環としまして、アジアの一員としてアジアの発展のために貢献する、そういう努力を行ってまいったところでございます。そして、そういう日本の姿勢につきましては、アジア諸国においても十分な理解が得られているのではないかというふうに感じております、先生の御指摘の点につきましては、アジア諸国のいろいろな事情ということもございますので、貴重な御意見として今後検討の一つとして考えさせていただきたいと思っております。 〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
○岡本委員 そのくらいしか答えられぬのじゃ仕方がないな。 次に、特別養子制度について伺っておきたいのですけれども、法制審議会で検討されているところの特別養子制度の中間試案が昨年の十月二十九日に発表されたようでありますが、この中間試案と、先般菊田さんという医師がお見えになりましていろいろと意見を聞いたのですが、この相違点、これをひとつお聞きしておきたい。
○枇杷田政府委員 菊田医師の考えておられるところが法律的にまとまった形で示されておりませんので、厳格な意味での比較というのは問題でございますけれども、私どもが理解しておる限りでお答えを申し上げますと、現在の養子制度と違って、実親との関係を法律的に断絶する断絶養子をつくろうということにおきましては中間試案と全く同じでございます。 一番基本的に違うところとして考えられるのは、菊田医師のお考えの中心は、法律的に実親と切れるばかりではなくて、戸籍その他の面で実親とのつながりが全くわからないようにしてしまうというところに一つの主眼点があるようでございますが、私どもの考え方は、養子関係であるということを殊さらわかるようなことは避けるけれども、しかし実親とのつながりが手繰っていけばわかるような、そういうふうなものは残すべきであろう。しかし、どういうふうな具体的な形にするかということはまだ決まっておるわけではありませんけれども、全く全面的に隠してしまうということは問題であるという立場に立っております。その点が菊田医師の主張との主な相違点ではなかろうかと思っております。
○岡本委員 今、法務省が法制審議会の試案によっていろいろと検討されておるようでありますが、特別養子制度と諸外国の例、この比較ではどういう点に相違があるのか、また、その理由についてちょっと承りたい。
○枇杷田政府委員 諸外国といいましても、欧米諸国との比較でお答えをさせていただきたいと思いますが、欧米諸国の最近の傾向といたしますと、先ほど申し上げましたような、実親との関係を断絶をするという形のものが未成年養子については原則的でございます。したがいまして、そういう意味では、私どもの中間試案の特別養子制度と共通しておるところでございますが、違うところと申しますと、そういう養親子関係であるということをどの程度公的な帳簿等に明らかにしておくかという点に若干の違いがあるようでございます。 それは、私どもの日本では戸籍制度というものができておりまして、そこでどう扱うかということが問題になるわけでございますが、欧米では御承知のとおり戸籍制度というものがございませんで、ドイツでは家族簿というものが設けられておったり、あるいはフランスでは家族手帳というようなものがあるようでございます。そういうところにどのような記載をするかというところが、ちょっとこの中間試案とは違っておるわけでございまして、欧米諸国の方では、そういうものには実親との関係は記載をしないというふうなことを原則にいたしているようであります。ただし、ではもう全部隠しおおせるかという点につきましては、むしろそうではなくて、帳簿には書かないけれども、しかしながら、ある一定の時期に親は子供に対して養親子関係であるということをむしろ積極的に告知すべきである、テリングの制度と呼んでおるようでありますが、そういうようなことも考えておるわけであります。 その点で、形の上では違いますけれども、私どもの戸籍制度の上で引き直せばどういうふうになるかということになりますと、そう決定的な違いということは言えないかもしれないという感じはいたしております。
○岡本委員 枇杷田さんの話を聞いていると、本当かなと思うようなときがありまして、これはまあ話がまた別ですけれども。 要するに、養子であるというのは外からはわからない。AとB二枚に分けて、そして自分でよく調べれば、これは養子だ。しかし、外へ出すもの、これは養子であるかないかわからぬ。こういうことになりますと実子ですね。そういうような案を菊田さんあるいはまた米倉私案ですか、こういうのを読んでいるわけですけれども、いずれにしましても、子供の幸福というものを考えて、血族結婚、これはまずいと思いますし防がなければなりませんが、余り戸籍制度に法務省がこだわって、そして養子だ、養子だ、こういうことのないように、案はこれからつくられるところでありますから、A、Bに分けるとか、そういうよい考えを特別養子制度に入れることはどうかな、こういうように考えるのです。この点についてのお考えを一遍承っておきたいと思います。
○枇杷田政府委員 今度の特別養子制度を導入しようという考え方は、子供の福祉という観点に立ちまして、そして養親と養子との間の親子のきずなというものをもっと強めていくことが養子の福祉のためにいいであろうという観点から考えられているわけであります。 そういうふうなことを前提に置きまして戸籍の上でどのような表現をしたらいいかということで考えておるわけでございますが、ただいまお話ございましたような、いわばA、B二種類の帳簿をつくって、外には養親子関係がわからない、あたかも実子そのものであるというような形のものをつくり、そしてもう一つの帳簿には実体関係がよくわかるような帳簿をつくっておくというふうな案を提示されておることも、私どもよく承知をいたしております。この点はいろいろな考え方があるわけでございまして、私どもも戸籍のあり方に何か固執しているというわけではございませんで、先ほど申し上げましたように、特別養子の制度の場合に子供の福祉のために何がいいのかということを中心に考えておるわけでございまして、ただいまその中間試案に対する各界からの御意見が集まってきておるところでございます。その中には、要するにそういう特別養子であるということを戸籍上隠すのはむしろ好ましくないというふうな御意見もあります。新聞などにもそういう投書も出ておるわけでございまして、そういう各界の御意見を十分に承った上で、また技術的にも可能なやり方を工夫してまいらなければいけないというふうに考えておるわけでございまして、私どもとしては今の段階で確固たる戸籍のやり方を決めているということではございません。
○岡本委員 よくドラマなんか見ておりますと、今までは自分の本当の親だと思って甘え、あるいはまたいろいろやっていた、ところがある日突然におまえはおれの子じゃないんだ、あるいはまただれかから聞いた、それが非常なショックで、そこから非行に落ちていったというようないろいろなものも見ておりますから、こういうことを考えますと、この菊田医師あるいはまた米倉私案というようなものを法務省も採用して、将来の子供のために、あるいはその人たちが大きくなってくるわけですから、ましてこのごろは非常に子供を産む量が、量と言ってはおかしいですけれども少なくなってきておるということで、また不妊の方も多いということを考えますと、この特別養子制度については相当検討をして、子供たちのためにあるいはそういう人たちのためにひとつ立派な成案をつくっていただきたい、こういうことをお願いするわけですけれども、大臣、今私がお話をしておったことについての御意見がありましたらひとつお聞きをしておきたいと思うのです。
○鈴木国務大臣 先ほども民事局長から申し上げておりますように、基本的には子供の幸せ、福祉というものを基本にして考えていかなきゃならないというふうに考えております。今、幸い法制審議会の民法部会でも御議論をいただいておりますが、そういうところでいろいろと御検討いただいているように聞いておりますので、成案を得て答申がいただけましたならば、そういう考えで処理してまいりたい、かように考えております。
○岡本委員 枇杷田局長、大体いつごろこの成案ができて、恐らく法務委員会に出てくると思うのですが、いつごろをめどにこの法案を出すつもりにしておるのか、これを承って、きょうは終わります。
○枇杷田政府委員 ただいま申し上げましたように、中間試案に対する意見が今続々と集まっておるところでございまして、それを整理いたしまして、余り激しい意見の対立というふうなことでもなければ早急に案をまとめまして、できれば来年の三月には国会に法案を提出することにしたい、そういう目標で作業を進めたいと考えております。
○岡本委員 終わります。
○福家委員長 安倍基雄君。
○安倍(基)委員 先日、私は当委員会におきましていろいろ解散権の問題について質問したのですけれども、その際に後藤田長官が、後から官房副長官も来られるというのでおさらいというふうになるかもしれませんけれども、非常におかしな発言をした。私の主張が全然マスコミには載らなくて、後藤田長官の答えだけ出てきた。その答えも、こちらが反論する時間がない時点で答えられてしまったものですから、非常に間違った意見というか不謹慎な意見が中を素通りしておるという感じを受けているのでございます。きょうは後藤田長官そのものにもう一遍聞きたいということで要求したのですが、サミットの前でひとつ勘弁してくれという話なので一応副長官で我慢したのでございますけれども、その際に法務大臣の御意見も十分承ることがなかったこともございまして、この機会に法務大臣にまず先にお聞きしたいと思います。 後藤田長官のその言い方は、本国会で定数是正ができなければ、それが解散の大義名分になり得るということを言われた。その理由は、国会が自律機能を持っていないからだというようなことを言われまして、こちらはその前にできない理由を幾つか述べたにもかかわらず、それに対して全然答えないで、自分の主張だけ述べられて、それで時間切れになってしまったというわけでございます。そうすると、まず第一に、もし定数是正ができないことを理由にして解散すれば、実際上定数是正がないままに選挙が行われるということになるわけです。今は各党非常に一生懸命定数是正の議論をしておりますけれども、定数是正なしで選挙してもいいんだという発言があるのでございますが、これはまさに司法に対する行政の挑戦と言わざるを得ない。この点につきまして法務大臣、司法を守るべき担当大臣として、この発言は穏当であるかどうか、それについての御意見を承りたいと思います。
○鈴木国務大臣 定数是正につきましてはただいま各党間でいろいろ御協議をいただいておるようでございますし、また先般の国会で衆議院議長見解等もございまして、その線で進んでいるものと私は理解をいたしておる次第でございます。さようなことで、近く私はその定数是正が成立するであろうというように御期待を申し上げているわけでございますが、その場合の解散云々でございますが、総理はたびたび解散は考えておらないというお答えでございますから、そういうことにはならないだろう、私はかように考えております。
○安倍(基)委員 私が聞いていますのは、この前もいろいろな質問に対して、総理が解散しないと言っていますと、その先を全部逃げているわけです。私が聞いているのは、後藤田さんが、定数是正ができない場合でも、それを大義名分に解散してもいいんだ、それはすなわち定数是正なしで選挙することになりますね。私は、今総理はそう言っていますということで逃げることは許さないわけです。もしそういう事態が起きたときに、これは司法を守るべき法務大臣としてどう思うのか、後藤田発言は正しいのかどうか、私はそれを聞いているのです。総理が解散しませんと言うからその先は答えられませんなんというような逃げ口上ではだめですよ。お答えください。
○鈴木国務大臣 そういう法律問題ですと、法制局長官が来ておりますから、そちらの方にどうぞお願いいたします。
○安倍(基)委員 法律問題じゃなくて、司法を守るべき法務大臣として後藤田発言は受け入れてもいいものかどうか。私は法律問題を聞いているのじゃないのです。定数是正ができないからそれを理由に解散する、それは定数是正なしの選挙でございますけれども、それに関連してお聞きしますが、これは突然の話ですからまだそっちの方までいっていないかもしれませんけれども、最高裁で反対意見を述べた者が大分いるわけです。補足意見として五人いましたけれども、それが三人やめています。完全な反対意見を言った谷口さんというのはまだそのままいるわけですよ。今度そういった選挙をすれば無効にするとまで言っているわけです。そこまではっきり司法が言い切っている問題です。となりますと、定数是正なしで選挙をするということについて、法律問題じゃなくて、司法を守る立場としての法務大臣は後藤田発言を是とするか否とするか、私はその一点を聞いているのです。
○鈴木国務大臣 その点は、ただいまも申し上げましたように、法律問題ですから、私より専門家の内閣法制局長官にお聞き願えればありがたいと思います。 ただ、私の立場としては、法律等を守る立場でございますから、当然、法律に従って法律を守るようにやってまいらなければならぬと考えます。
○茂串政府委員 お答えいたします。 ただいまの御質問には二つの意味があると思うのでございます。一つは、仮に定数是正が行われなかった場合、実現できなかった場合に、それを理由として解散権の行使ができるかという問題、それから、もしそういうことであれば定数是正が行われる前に選挙が行われることにならざるを得ない、そうなれば違憲の判決がおりているところの定数配分規定によって選挙をすることになるがそれでよいのかという二つの問題があろうかと思うのでございます。 そのうち、第一の問題については、解散権の行使というのは高度な政治的な判断を要する問題でございまして、これは法律的な見地からどうこうという問題ではないと思うのでございます。そういう意味で、私からこれこれというふうに直接的な御答弁をいたしますのは差し控えたいと思います。 それから、二つ目の問題については、前々から申し上げておりますように、違憲とされる定数配分規定が是正されないままで、すなわち憲法に違反する状態のままで残っていること自体がそもそも法的に言ってあってはならないと申しますか予想されていない異例の事態でございまして、そのような特殊、異例な事態を前提としての処理ということになるわけでございますから、どうしてもそのことが法理論の展開面に反映されるということにならざるを得ないわけでございます。その意味におきまして、ただいま国会におかれまして与野党こぞって定数是正の実現にいろいろ御努力されておるということでございますので、このような違憲とされた定数配分規定が一日も早く是正されることを我々としても強く希望しておるところでございます。 ところで、任期満了に伴う総選挙でも解散に伴う総選挙でも同じでございますけれども、総選挙しなければ衆議院が組織できないわけでございまして、衆議院が不存在になってしまうということでございます。これは憲法に規定する前提から考えて到底放置できない事態であることは当然でございます。そこで総選挙をやらざるを得ないといたしまして、その選挙を執行する手続を定めておるものとしては、違憲とされた定数配分規定を含む公職選挙法しかない、ほかに準拠すべき法律がないわけでございますから、政府といたしましては、これに基づいて総選挙を行うほかはないわけであって、それによって憲法全体の秩序を全うすることができると考えておるわけでございまして、この点については過去においても何遍か御答弁申し上げているところでございます。
○安倍(基)委員 私がまだ法務大臣に聞いている間に出て来たわけでございますが、法務大臣、さっき法律を守るということをおっしゃいましたけれども、その意味では、違憲状態における選挙は好ましくない、後藤田発言の違憲状態のもとにおける選挙というものに対しては司法権に対する挑戦であると私は発言いたしましたし、それに対して同感の意を表されたと思ってよろしゅうございますか、いかがでございますか。
○鈴木国務大臣 私はそこまで踏み込んで申し上げたつもりはございません。
○安倍(基)委員 それじゃ、この議論は法制局長官の方へ少し矛先を向けます。 まず第一に、定数是正は国会自身の構成にかかわる問題である、内閣が信を国民にある政策について問うという問題ではない。したがって、これを理由に解散するというのはいささかおかしい。もともとが今国会において是正することを期するという国会内部における取り決めというか考えてこの問題が進んでいるわけです。それに対して外から内閣総理大臣が、これはけしからぬと言えるのかどうか。内閣の国民に対しての政策が予算にしても法律にしてもいろいろある、それが国会において否決というような問題であれば内閣は国民に信を問う理由があるが、この場合には国会の内部の問題について内閣総理大臣が、国会けしからぬじゃないかと言えるのかどうか。これがまず第一点です。 第二点は、総理は与党の党首である、いわば当事者そのものである、中においてそれが成立するしないは自分たちの責任じゃないか、それを外部に行って国会けしからぬと言えるのかどうか。まさに行政府の立法府に対する挑戦であると同時に、自分自身の責任を全く考えていない、簡単に言えばブレーキを踏みながら車が走らない走らないと言っているのと同じじゃないか。こういった情勢のもとにおいて、これを理由に解散できるのかどうか。 まず、第一点、第二点をどうお考えですか。
○茂串政府委員 私の立場はあくまでも法律のいわば専門家と申しますか、そういう立場からの御答弁にならざるを得ないわけでございますが、一般的に申しまして衆議院の解散権というのは、言うまでもないことでございますけれども、国政の重大な局面において民意を問う手段として憲法上内閣に与えられた重要な機能でありまして、いかなる場合に衆議院を解散するかについては憲法上これを制約する明文の規定はないわけでございまして、内閣はその政治的責任で決すべきものである旨を述べているわけでございます。 そういった法律論を私は前々から述べておるわけでございますが、しからばいかなる場合に解散するのが適当かどうかということになりますと、先ほども申し上げましたように内閣の高度の政治的判断に基づいて決定される筋合いのものでございまして、純粋に法律的な立場からとやかく御答弁申し上げることは差し控えたい、かように考えております。
○安倍(基)委員 前回、いわゆる七条解散説、六十九条解散説ということについて議論したわけでございます。たまたま、きょう出ました「ジュリスト」に私の論文が載っております。もう一遍この議論を繰り返しますと、もともと無制約的な解散権というのはおかしいのであって、というのは、憲法七条は天皇の国事に関することを言っておる、あくまでも儀礼的なことを言っておる、そこにおける助言と承認はあくまでも儀礼的な行為についての助言と承認である。しかも、天皇は国政に関する機能を持っていないのです。国事に関するいわば国事行為だけを行い、それについて助言と承認が認められている。となりますと、衆議院の解散というのはもともと国政に関する最も重大なる機能ですね。それは天皇は持っていない。天皇が持っていないのだから、内閣は助言と承認権はないのですよ。 これはこの前も議論いたしましたけれども、吉田内閣の突然解散以来非常に憲法がゆがめられている。当時の内閣法制局長官は佐藤さんですけれども、後世に対して非常に重要なる責任を持っているわけです。確かに最高裁は昭和三十五年に、もう自分たちで判断できないと憲法判断を避けたんです。要するに今までの解散を全部無効とできないから。したがって、内閣法制局長官というのは非常に重大な、いわば歴史的な責任を持っているのです。必ず五十年後、百年後にこの解釈が正しかったかどうかということの責任を問われるのですね。私はそのことを言いたい。法務大臣もそうです。 その際に、定数是正なしでいわば選挙をしてはならぬ。今のお話が、末期になって期間が来たときに要するに直ってなかったらどうか、まさにそのとおりでしょう。そのときは全員首になるというくらいの覚悟がなくちゃいけない。途中で解散するしないというのは判断が入るわけです。その判断権を行使していいのかということになりますと、そこまで行政ができるのか。だから私は、行政府の司法に対するいわば挑戦であると言っているわけです。つまり、任期末になって直ぐでなかったら選挙ができないから要するに定数是正なしでもできるんだという論理はおかしいんですよ。解散をするという行為が許されるかどうかと言っているわけです。それはもう任期末になって是正できなかったら総員辞職すべきですよ。そういうデッドラインはあるのです。その途中で、是正しないときに解散権を行使するというのは全く別個の問題なんです。 でありますから、今の答弁、どうしてみんながそれに納得しているのか私は非常に疑問である。会期末に選挙ができなくなるからそのために違憲状態の選挙もいいというのと、途中で違憲状態のまま解散してしまう、全く異質の問題です。そこまで解散権があるのかどうか、それが行政の司法に対する挑戦であると私は言っているわけです。その点どうお考えですか。
○茂串政府委員 その点は、憲法上保障されている内閣の解散権の行使、これに対してどのような評価を与えるかという点にも絡むわけでございます。先ほども申し上げましたように、もともと解散権というものは、政局が重大な局面になって、民意を問う必要がある、国民の判断を仰ぐ必要があるというような事態が生じた場合にこの解散権を行使いたしまして、そうして国民の意思を確かめるというところにその本質がありまして、これはまことに重大な機能であり、また国民主権主義の原理をとっております我が憲法の上におきましても重要な機能であることは言うまでもないことであります。 ところで、国民の意思を問うべき事態が仮に生じたというのにもかかわらず、定数配分規定の改正前であることを理由にいたしまして解散権を抑制して国民の意思が問えないというようなことになりますと、これは先ほど申し上げました国民主権主義にのっとって国政が国民の意思に従って行われるべきことを予定している憲法の精神にもむしろ沿わないのではないかというように考えられるわけでございます。こういった点から申しますと、憲法全体の趣旨からいたしまして、仮にそのような事態が現出したという場合には、法律論としては解散権の行使が否定されることにはならないというふうに私どもは考えておるのでございます。
○安倍(基)委員 茂串長官は役所の先輩でございまして、余りぎしぎし言いたくないのですけれども、ただ私は、この問題は非常に重大な問題である。今まで答弁はすべて政治が重大な局面に立ち至ったときと言いますが、だれがそれを判断するんだ、判断権、決定権はだれにあるんだという問題が根本にあるわけです。 かつての日本国憲法においては、天皇は統治権を総撹しました。したがって、国会がそれをある程度制約する。天皇は統治権を持っていたわけです。統治権は、そういった判断権があったわけです。それは国務大臣の輔弼によって実行されるという状況ですね。イギリスの場合にも、キングが機能を持っておる。国会がそれを制限している。ところが日本国憲法、今の新しい憲法は、国会を国権の最高機関としたのです。天皇は象徴になったんです。そうすると、総理大臣が何でその決定権と判断権を持っているか。七条に書いてあるといったって、七条は全くの国事行為です。形式行為です。 特に、私はこの前もお話ししましたけれども、非常に似たケースが西独です。西独の場合には、大統領が象徴大統領です。そのときに解散権はいつ与えられているかというと、不信任案が成立したときだけしか与えられていないのです。不信任案が成立するということは、行政府と立法府が決定的に対立するときです。そのときこそ初めて政治が重大な局面に立ち至って国民の意思を問うべきときです。それ以外のときは、総理大臣が勝手に政治が重大な局面だ、だから国民の意思を問うという権利がどこに与えられているか。単に七条に書いてあると言いますけれども、七条は全く国事行為ですね。全く形式行為です。となると、まさに六十九条が西独と非常に似た、国家構造論的に言っても同じ、文理的に言っても同じなんです。 私はここに書きましたけれども、六十九条にはこう書いてあるのです。「アンレス ザ ハウス オブ レプリゼンタティプズ イズ ディゾルブドウイズイン テン デーズ」私は六年間海外におりました。この英語的な感覚からいけば、解散するか総辞職するか、そのいずれかなんですよ。まさに要件そのものを定めた。それが国家構造論的に言っても文理的に言っても全く正しいのです。七条は単に国事行為を書いた。国事行為であるからこそ何ら制約なく助言と承認によりできると書いてあるのですよ。 私はこの論議は、ある憲法学者が海外に行きまして、ケーディスという昔書いた男に聞いたら、私の本意は六十九条だけだったんだ。それであるからこそ、憲法制定後最初の解散のときには、不信任案が可決されたときにそれを要件に解散しているのです。それがたまたま吉田内閣が鳩山派をやっつけようと思って突然解散した、七条解散したわけです。そのときの法制局長官は佐藤達夫さんです。彼の汚名は必ず残りますよ。もし茂串長官が中曽根さんのいろいろ言うことにつられてそれを是認していけば、必ずや汚名が残りますよ。私はそれを言っているのです。 たまたま唐沢さんが来られましたから、唐沢さんとも私は昔からの、ちょうど同期でございますので余り強く言いたくないけれども、私は今までちょっとこの前の後藤田発言をとらえて言っているわけです。法務大臣と法制局長官にいろいろお聞きいたしましたから、またあれでございますけれども、私が今問題としていますのは、後藤田さんがこの間、定数是正できない場合はそれを大義名分にして解散できるということを言っている、これはまさに不謹慎な言葉であるということをとらえて言っているわけです。 後藤田さんが来られたらもう一遍そのことを確かめようと思ったんですけれども、本人じゃないから余り言ってもあれでございますが、ちょっと話をずらしまして、むしろ個人的な意見として聞きたいのですけれども、私はこの前の総理に対する質問で、ダブル選挙をやると必ずそれは繰り返されるだろう、三年ごとに繰り返される可能性がある、これは非常に悪例を残すということを言いました。たまたま後藤田さんのときもそう言ったのですけれども、後藤田さんは、総理が解散しないと言っていますからとかいって逃げちゃったわけですよ。だけれども一考えてみればうまく逃げられちゃったと思って後で残念だったわけですが、これは本当にダブル選挙を一遍やりますと非常に悪い先例になる。前回のダブル選挙は不信任案が通過した。不信任案が通過したというのは、さっきお話が出ましたように、行政府と立法府が決定的に対立したときです。そのときこそ政治が重要な局面に達していると言うべきなんですね。そのときにダブルが結果的に行われた。今度は意図的に行おうとしているわけです。これが一遍行われたら繰り返される可能性がある。これは憲政史上いい例であるのか悪い例であるのか、それについての御見解を承りたい。
○唐沢政府委員 お答えいたします。 今いろいろ先生からお話しありましたが、繰り返すようになりますが、最近の国会で総理は衆議院の解散は考えていないと答弁をされておりますので、私もそれを額面どおり受け取っておりますので、そういうことでひとつ御承知をいただきたいと思います。
○安倍(基)委員 恐らくそう答えるだろうと実は思ったのです。総理もそのとき言ったから、天地神明に誓って解散しないと言えるかと言ったら、とうとうやむを得ずに、何か柳の下にドジョウはいないですから後の総理か考えることですなんて逃げたわけです。むしろ私は個人的に聞きたい。そういう慣例ができていいのかどうか。 これはむしろ法務大臣にお聞きしたいな。まず法務大臣にお聞きしましょう。要するにダブルを一遍やると、それが次々と繰り返されるおそれがある。まるで三年周期になってしまうわけですよ、ダブルで勝ては。この制度でやれば勝てるということになるから。これはまさに憲政史上非常に悪い例を残すと思うのです。私は中曽根さんにこの前も言ったのだけれども、いかにあなたがいろいろな実績を上げて大宰相と言われても、こういう憲政史上悪い例を残したら汚名はいつまでも残りますよと言ったのです。もし三年周期でダブルが繰り返されるということになりましたら、今度行われたらそういう可能性が十分あるわけです、一遍勝てはこれは許されると思うから。前回の場合には六十九条のぶつかりです。要するに行政と立法が決定的に対立した。そのときは仕方がない、結果的にダブルになった。ねらい撃ちダブルというのを一遍やると必ずそれは続く。いわば憲政史上いい例とお思いか、そうではないとお思いか、いずれでございますか。
○鈴木国務大臣 どういうことでそういうふうな例になるのかちょっと理解できませんが、参議院の方は六年に一回、衆議院の方は四年に一回ですから、必ずしもこれが今回そうで、次もそうだということにはならないんじゃないかなと思うのですが、いかがでしょうか。
○安倍(基)委員 私の言っているのは、当然その時期に合わせて解散するということを言っているわけです。その時期に合わせて解散をしようとしているのが今の中曽根内閣ですよ。そうすると、それで勝ては次の内閣もそれをねらう。ダブルの方が有利だと思われていますから、恐らくそういった要素があるかもしれません。当時の状況とは別に、機構的にダブルがやりやすいということで実際上ねらっているわけですよ。私は何も六年と四年と言っているのではなくて、そういう解散を一遍ねらい撃ちでやれば大義名分を無理につくる、まず第一に。二番目が、要するにそういうことが繰り返される。憲政史上非常な問題であると私は思います。それについての個人的な御感想を法務大臣、官房副長官にお聞きしたいと思います。
○鈴木国務大臣 解散はそのときの政治情勢によってあれでしょうから、必ずしも私はそれは慣例になるというふうには考えておりません。
○唐沢政府委員 もう再々お答えしていることだと思いますが、安倍さんも百も御承知のように、解散というのは国政の重大な局面で民意を問う手段として内閣に付与された基本的な重要な権限でございますから、したがって、内閣が国民のために政治的責任においてそのように判断をすれば解散権を行使し得るものだ、こういうふうに考えております。
○安倍(基)委員 今あなたが来られる前にその論議していたんですよ。この前も後藤田さんが来る前にその論議をしていたんですよ。前の論議を聞いていれば後藤田さんもそんな軽々な発言をしなかったはずなんだ。あなたも前の論議を聞いていないからなんですけれども、政治が重大な局面にあるというのはどういうときかというのは、我が国の憲法の場合には行政と立法が決定的に対立したときに初めて言える話なんですよ。それをいかにも総理大臣の専権のごとく、いわば吉田内閣の突然解散以来、我が国家構造は曲げられてきているんですよ。私は、さっき来る前に話しましたけれども、当時は押しつけられた憲法という話がございますけれども、立法者の意思、いわば立法者の国家観、国家構造観からいえば、六十九条解散こそが本当に要件なんですよ。政治が重大な局面に達したときにその判断権がだれにあるか。それは憲法に何も書いてない。私は自民党の代議士に一体総理大臣の解散権はどこに書いてあるか、だれもわからない。よくよく見たら天皇の国事行為に書いてある。国事行為は形式行為、それに対する助言と承認しかない。国政に関する機能はないわけですよ。国政に関する機能のない天皇に助言も承認権も内閣は持っていないわけですよ。たまたま七条にそう書いてあるから内閣に実質的権限があると勝手に決め込んだ。国家構造論からいって全くおかしい話なんですよ。 この論議は基本論になりますから長くなりますけれども、いずれにせよ解散権というのは非常に制約的にしか使ってはいけない。保利書簡とかに書いてありますけれども、まさにそのとおりなんですよ。それをいかにも――大統領だったらできるんです。フランスの大統領はいつでも解散できるんですよ。これはかつての日本の天皇と同じように、まさに議会の一歩上にある人間です。ところが日本の内閣はむしろ国会の方が最高機関であって、内閣は行政機関なんですよ。かつての日本であれば天皇が、あるいはイギリスであればキングが統治権を持って、それを国会は制限しているから解散権は天皇の名においてあるいはキングの名においてできるわけです。今の聖なる権利であると大見えを切る根拠はまさにないのですよ。であるからこそ、保利書簡のようにある程度制約的に、本当はもう六十九条だけなんだけれども、慣例的にしばらくやってきているから、ある程度六十九条に準ずるような場合を考えてもいいという形になりつつあるわけですよ。 私は法制局長官にさっきお話ししましたけれども、法制局長官というものはまさに歴史に対して責任を負うのです。だから、中曽根さんが聖なる権利である、いつでも行使できるということを裏づけるようなことばかり言ってはだめですよ、本当のところ。将来必ず指弾されます。佐藤達夫、恐らくもう名前を覚えている人も少ないかもしれないけれども、後世必ず批判される。それと同じことだ。もし法制局長官がダブル選挙に対してそれを支援するような発言をすれば必ず後世において指弾される。そのことを法制局長官に先輩に対する忠告として私はお話しします。この点はもう一度総理とよく話されるといいと思います。ダブルを本当に許していいのかどうかをどうぞ。
○茂串政府委員 幾つかの点につきまして、当法制局に対する御批判と申しますか御要望と申しますか承ったわけでございますが、まず第一のいわゆる解散権の根拠が一体どこにあるかという点でございます。これは前回の当委員会における委員の御質問に対しましてお答えしたところで尽きておりますので、改めてもう一遍申し上げることはいたしませんが、いずれにいたしましても、歴史的に見ますと確かに昭和二十三年十二月の新憲法施行から第一回の解散権の行使の場合には、占領軍司令部の意向がありましていわゆる六十九条解散ということが実施されたわけでございますが、その後いろいろと経緯がございます。これはもう委員御承知のとおりだと思いますが、例えば国会におかれましても昭和二十七年に両院法規委員会ができまして、解散権について非常に詳細な真摯な御検討が行われた上で、二十七年六月にいわゆる両院法規委員会の勧告というものがまとめられまして、それにおきましても解散権というのは六十九条だけではなくていわゆる七条解散もできる、したがって六十九条に定められた要件だけの場合しか解散権が行使できないわけではなくてそれ以外の場合でも行い得るということは、この国会自身のおまとめになりました勧告でもるる述べられておるわけでございます。 また、これは学者の説といいましてもいろいろございますけれども、最近におきます学者の多数の方の御意見も私どもも検討しておりますが、ほとんどの方が内閣に解散権がある、そして七条にその解散権の根拠があるというのがいわば定説となっておるわけでございます。私どもと申しますか、法制局が独善的にそのようなことを申し述べておるわけでは決してないわけでございます。そしてその論理と申しますのは、繰り返しになりますが、前回安倍委員の御質問に対しまして御答弁申し上げたような筋道で七条が解散権の根拠になるということで我々はこれを確信しておるわけでございます。 それからまた、同時選挙につきまして何か私がいろいろ激励をしておるというようなお話もございましたけれども、決してそういうことではないので、国会でいろいろと御質問がありまして、同日選挙というのが憲法に違反するのではないか、特に憲法五十四条との関係は一体どうなんだというような御質問がありましたから、それに対しまして私は純粋に法律論的な立場でるる御説明をし、これが決して五十四条に違反するものではないということを御説明申し上げたわけでございまして、それ以上に何も私が政治的にどうこうというような立場ではもともとございませんし、そういうことは決して考えておるわけではございません。極めて客観的な法律論を述べたつもりでございます。 以上、そんなことでよろしゅうございますか。
○安倍(基)委員 どうも言葉つきが激しくなって申しわけないのですけれども、ただ私も両院法規委員会の話は知っております。高橋英吉さんあたりはむしろこれは反対でした。尾崎行雄も反対でした。当時における考え方というのは非常に旧憲法に支配された人々が多いのです。天皇の統治権を総攬する、それを制限するという旧憲法との連続性を考えている連中がどっちかというと七条を支持したわけです。新憲法の理念に重点を置いた人は六十九条解散を言ったわけです。その後、大体昭和二十八、九年ぐらい、三十年代の初めになるとむしろ六十九条解散説の方が大分主流になってきたのです。ところが最高裁判決が昭和三十五年に逃げた。というのは、今でも七条説、六十九条説、ございますけれども、あくまで国家構造論的にいえば、しかも主として七条説を言っている人間は、六十九条は要件を定めたのではない、いわば解散されたときにはこうすべきだ、だから要件を定めているのはほかのところにあるはずだ、そこから七条にジャンプしているのです。しかも無制約説になっているわけです。ところが、七条で無制約になっているのはまさに国事行為だから助言と承認としか書いてないのです。 でありますから、これは議論すれば切りがないのだけれども、さっき話しましたように、英文解釈からいったら、私は随分長い間外国におりましたから、あのアンレスというのはいわばまさに解散するか総辞職するか、プロパイデッドサットと考えてもいいような表現なんですよ。それをあたかも解散されない限り総辞職しなければならぬと、解散権の要件は別にあるかのごとき解釈をしているというのは、憲法論というのは、割合とどちらかというと各国のものと国際比較をしたときには、まさに七条解散説というのは最終的にはおかしいということになると私は思います。これは学者の議論ですから、私も「ジュリスト」あたりに投稿しますけれども、学者じゃないから言いませんけれども、ただ、日本の七条解散説というのは国際的に本当に通用するかどうかまことに疑問であると私は思います。 私は法規委員会の話も知っております。ここで質問する以上はちゃんと全部読んでおります。そのあげくの結論です。長官が何も援助しているんじゃない、それはそのとおりかもしれません、法律論をおっしゃっているのであって。ただ、ここの五十四条の関係もいささか疑問がある。といいますのは、いわば定数は、要するに三分の一出席すればいいんだ、半分いるからいいんだという話がありますけれども、本来三分の一出ればいいというのは全員がいるときにおける三分の一ですね。院が半分になったときの三分の一とはちょっと概念が違うのです。五十四条そのものは通常そういう同時解散を想定してないのですよ。たまたま六十九条のときに、前回はやむを得ず六十九条優先か五十四条優先がというときに六十九条が優先されたのであって、通常ほかの政治的に解散するということは本来おかしいんだから、それを予想してないのですよ。だから数字の上で単に三分の一の定足数で、まだ二分の一いるからいいじゃないかというのもいささかおかしいのですよ。もともと全体がいるときにおける三分の一を考えているわけですから、それこそまた文理解釈し過ぎるわけであって、まさに三分の一の定足数というのは全体がいるときの三分の一、半分になったときに半分いるから三分の一、形式的にはそうかもしれないけれども、精神としてはおかしいと私は思うのですよ。この点いかがですか、法の条文の本旨からいって。
○茂串政府委員 同日選挙の関係でございますけれども、確かに今お話のありましたように、五十四条の場合にいわゆる半数改選でございます。したがいまして、仮に参議院議員の半数の改選が任期満了後に行われたということになりますと、これは非常に例外的でございまして、今まででもたしか二十年代には例があったかと思いますけれども、最近では例を見ないところでございますが、そういったまれな場合に今お話があったような問題が出てくるわけでございまして、通常の場合、最近におきましてはほとんどが、ほとんどと申しますか、最近における例はすべていわゆる任期満了前に改選のための選挙をやっておりますから、そのような問題が出てこないわけでございます。この場合を考えてみますと、これは何も衆議院が解散されて緊急集会が行われるというような場合だけではなくて、参議院議員の通常選挙が公示された後において国に緊急の必要があるために国会が召集されるというときになりますと同じような事態が参議院の場合には現出するわけでございますし、それからまた先ほど申し上げましたように、非常にまれとはいいながらも任期満了後に行われたという場合でありましても、参議院議員の半数が存在するということでございますから、議事と議決には総議員の三分の一以上の出席があれば足りるというその憲法の規定から申しまして参議院の緊急集会は可能でございます。そういう意味で、いわば法律論としてはこれは問題がなかろうということを申し上げているわけでございます。
○安倍(基)委員 もう時間も余りありませんからあれでございますけれども、もともと五十四条はそういうことを想定はしてないんだ、法の趣旨からいえば。これは明らかですね。たまたま三分の一の方が二分の一よりも小さいから成立するというようなことは形式論ですけれども、もともと五十四条はそういったことを想定してない。それは明らかですね。その辺は水かけ論になりますから、これはもうちょっと時間があるときにお話ししたいと思います。でありますから、五十四条の本旨からいえば避けるべきことであるということは言わざるを得ないと思います。これはもうあと三十分もしたいのですけれどもあれでございます。 最後に、ほかに幾つか警察庁とか企画庁の方にも質問を出してあるのですけれども、ちょっと時間がないですから一言別のことを言います。 過去数年間は不信任案の提出、本当は六十九条からいけば不信任案は可決されなかったらいけないと私は思う。過去四回くらいは不信任案提出、あと二回はそれに準ずるような発言でしたか、それが行われているのですよ。これは一つはやはり七条解散で一方的にばんとやるのはいささか制約すべきだということから、いわばそういう慣例が少しずつ生まれたと思うのです。となりますと、これは唐沢さんに聞くのはちょっと荷が重いかもしれませんけれども、不信任案の提出がなくても解散するという話になると、これは非常な慣例違反という話になると思います。今度の国会は非常に微妙な面でございますけれども、このできつつある慣例ですね。 私はさっきダブルを一遍やると非常に悪い慣例になる、これはやはり避けるべきだ、これについての答えは承ったかな。ちょっとその辺がはっきりしないのだな。またもとへ戻りますけれども、法務大臣は悪い慣例になると思わなかったのでしたかな。それで唐沢さんはどういうことだったかな。
○福家委員長 答弁してないよ。
○安倍(基)委員 悪い慣例になるかならないかについての答弁をはっきり聞いていなかったと思いますね。どう思いますか。
○唐沢政府委員 悪い慣例とかなんとかいうのではなくて、今お話ししていましたら、同じ先生に習ったんだけれどもちょっと大分違うなと思ったわけですよ。それはやはり六十九条というのはどちらかというときっかけであって、私は根拠は七条だと思っているわけですよ。宮沢先生もそう考えておられたんじゃないかなと思うわけでございます。そして七条に列記してある国事行為は、これは確かに天皇の名において行われますが、実質的な決定は内閣がその責任において行うものでございますから、やはり国政の重大な局面で民意を問う必要があると内閣が判断したときに行われるべきものだと私は思っております。安倍さんは私、子供のころから知っておりまして、大変な論客であることもよく知っておりますが、その点だけはそういうことで意見を異にいたしますので、あしからずひとつ御了承いただきたいと思います。
○安倍(基)委員 今の私の質問は、ダブルを始めるとそれが繰り返されるおそれがあるよ、大義名分を探し出しますよ、これは非常に悪い慣例になる、私はそう思うけれども、あなたはどう思いますかと聞いているので、この答えがまず中心です。 そのことについてここでお答え願いたいということと同時に、宮沢さんあたりは旧憲法とのいわば連動性だけを考えている。輔弼の概念と国事行為の助言と承認とを混同しているのですよ。しかも解散権を、解散というのはまさに重大なる国政行為で、天皇は持っていないのですよ。国事行為だけ持っている。その実質的機能はどこにも書いてないのですよ。あくまで天皇は要するに国事行為ができる、国事行為ができる以上は内閣が決定できるのだろうという一種のジャンプなんですよ、本当のところ。私は宮沢さんに習ったし、彼とは全然意見を異にしていましたけれども、その辺は国際的に議論したときには必ずこの七条解散説というのは最終的には破れると思いますよ。 それは別として、悪い慣例になるかどういについての御意見、ダブルを一遍やるとそれは繰り返されるおそれがありますよ、そうですね。大義名分を無理に探して繰り返される可能性が、悪い先例ができると私は思う。それについての意見がちょっとはっきりしないので、それはどう思いますか。それとも、この慣例は悪い慣例にならないと思いますか。
○唐沢政府委員 安倍さんに申し上げますが、私その先例はよく知らないんですよ。ですからお答えするとすれば、基本的な解散についての考え方は再々申し上げたそれしか御答弁するほかないので、そのとおり私は考えておるわけでございます。
○安倍(基)委員 余りこれ以上質問してもあれですけれども、個人的にもなかなか発言できない立場かもしれませんが、いずれにせよこのダブル解散というのを一遍やりますと、私は憲政史上非常に悪例を残すと思います。その点ひとつ法務大臣も官房副長官も――中曽根さんが、ともかく解散権、聖なる権利を持っている、それは私は違う。私は「ジュリスト」を贈呈します。これはちょっぴり投稿欄に載っているので大したことじゃないですけれども、しかし、それはそれなりの理屈がありますから、小さな意見でも筋というものは歴史が必ず証明する。今度中曽根さんがそれをやれば、まさに長い目で見たときには必ず批判される。たとえ今回選挙に勝って一時的な発言力を強く持っても、あるいは三選になるかわからぬけれども、これは監視すべき問題であると私は思います。 この辺で質問は終わります。
○福家委員長 柴田睦夫君。
○柴田(睦)委員 最初に、フィリピンとの捜査共助、それから司法共助の問題についてお伺いします。 フィリピンのマルコス前大統領の不正蓄財を調査しておりますフィリピン行政規律委員会の活動がいろいろ伝えられておりまして、かなり進んでいると見られますが、外務省の方では現状をどのように把握しておられるか。行政規律委員会の活動状況について御報告をいただきたいと思います。
○小林説明員 お答えいたします。 フィリピンのいわゆるサロンガ委員会の活動状況でございますが、私ども承知いたしておるところでは、まず諸外国にあるマルコス資産の回収ということを第一の目標にしているということで、その面で外国に人を派遣したり、国内で調査をしたりということをやっていると承知しております。それに続きましてその他、例えば日本関係のものについても考えていくということを伺っております。
○柴田(睦)委員 今のサロンガ委員長、その委員会のダサ委員、それにメルカド公共事業・道路相が五月の第二週に日本に来るという報道が出ておりますが、これは正式の要請があったのかどうか、あるいは正式の要請ではなくて何らかの打診があったのかどうか、お伺いします。
○小林説明員 サロンガ委員長が五月に来日する予定であるとの趣旨の報道があることは承知しておりますけれども、我が国政府に対しましては今のところこの点につきましてサロンガ委員会その他フィリピン側より特段のお申し出ないしは打診といったものはない状況でございます。
○柴田(睦)委員 きょうの新聞報道によりますと、フィリピン政府がスイスの政府に対して正式に司法共助の要請をしたというように伝えられております。このことは外務省はつかんでいらっしゃるのですか。
○小林説明員 フィリピンのサロンガ委員会といたしましてスイスにあるマルコス資産との関係で裁判手続を行うということは報告を受けております。ただいまのスイスに対して司法共助手続を行ったということは報道で聞いておりますが、まだそれについて公式の報告はございません。追って、来るものと思います。
○柴田(睦)委員 八三年八月二十一日、マニラ空港でアキノ元上院議員の暗殺事件がありまして、これにつきましては八十四年の初頭に真相究明委員会、アグラバ委員長が率いる真相究明委員会ですが、この調査についてフィリピン政府から日本の政府に対して捜査共助の要請がありまして、日本の捜査当局も一定の協力をなさいました。今回のマルコス不正蓄財の調査に関連してフィリピン政府から捜査共助の要請ないしは捜査共助要請のための相談、こうした問題に関してサロンガ委員会の調査にかかわる接触というのは今まであったかなかったか、その内容をお伺いします。
○小林説明員 ただいままでのところ、サロンガ委員会を含めましてフィリピン側より我が国政府に対しましてはこの問題に関する捜査共助の要請、これに関する相談といったことがなされたことはないと承知いたしております。
○柴田(睦)委員 今まではないが、いずれにしろそういう相談が持ち込まれる、そういう見通しは立てておりますか。
○小林説明員 先ほど申し上げましたとおり、サロンガ委員会におきましては現在のところ、アメリカ等外国におけるマルコス資産の回収ということを優先して考えているということでございまして、日本関係のことも含めましてその他のことにつきましては必ずしも十分進捗しているかどうかは不明の状態でございますけれども、そういった状況でございますので、捜査共助要請というのが今後行われることになるかどうかということは今のところちょっとわかりかねる情勢でございます。
○柴田(睦)委員 しかし、先ほど言いました五月に予定されておりますサロンガ委員長外二名の来日、この報道があるわけですけれども、これに関連して、これは調査のための来日であるというように報道もされておりますし、またそういうことであろうと考えられます。そこで調査に関して日本の政府に協力が求められてくるのではないかと思いますが、そうした協力を求められるような場合において、これは法務省も関係してくると思いますが、外務省が窓口になるでありましょう。そこで日本政府としては、そういう調査の要請に対して積極的にこたえていくという姿勢であるかどうか、法務大臣と外務省の方にお伺いします。
○小林説明員 外務省といたしましては、今後フィリピン側よりより具体的な要請がなされた段階で、その内容を踏まえましてどのような協力が可能かということを考えていきたいと考えております。
○岡村政府委員 捜査共助の要請がありました場合は国際捜査共助法に従いまして、要件を充足しているかどうか、こういったことを検討する、こういうことになると思っております。
○柴田(睦)委員 国会にも特別委員会が設けられました。そこで、今度反対にこの日本のフィリピンへの借款をめぐる疑惑というのが国会の特別委員会でも中心になってくると思いますけれども、日本政府からフィリピン政府に対し、真相を明らかにするために捜査共助の前段階として調査のための協力を要請するつもりであるかどうか、これを法務省と外務省にお伺いします。
○小林説明員 我が国よりの調査ないしは共助要請の前段階としての調査の可能性でございますけれども、現時点におきましては、私どもは現在我が国にある資料等の情報をもとにいたしまして事実関係の把握に努めているところでございます。今後の政府としての対応について対外的にどうするかということも含めまして現段階で確たることを申し述べる状況にないということを御理解いただきたいと思います。
○岡村政府委員 具体的なことについては申し上げかねるところでございます。ただ極めて一般的に申し上げますならば、国内犯罪について捜査いたしまして何らか捜査共助の要請が必要であるならばそういう方向もとるであろう、こういうことでございますが、本件に関しましては何とも申し上げかねるところでございます。
○柴田(睦)委員 次は撚糸工連汚職事件に関連してですが、去年、撚糸工連事件で横領や詐欺容疑による摘発がありました。その最初から政治家や通産省の役人との黒いうわさが指摘されて、現に一部は摘発されました。問題はトカゲのしっぽ切りにしてはならない、検事総長が言われるように真相を究明して巨悪を逃さないということでなければならないと思います。 そこで、通産省の方にお伺いします。 マスコミでいろいろと報道されておりますが、一つだけ例を挙げますと、週刊新潮の二月二十七日号で小田理事長が「通産省の局長、課長の就任時にそれなりの接待をしていた」と述べた記事があります。そして撚糸工連の元幹部も「接待の対象は篠島さんです。あの人は原料紡績課長、中小企業庁次長、生活産業局長と、この業界に関わる重要ポストを歴任しています。他にも通産官僚が何人か宴席に参加しました」「篠島さんをしばしば四谷の料亭「宮さ和」で接待しました。」こういう記事もあります。これらについて、篠島氏や大野前原料紡績課長が宮さ和で接待を受けた事実を認めた記事の内容になっております。この記事は通産省としては承知しておられますか。
○江崎説明員 週刊新潮に御指摘のような記事がございましたことは承知しております。
○柴田(睦)委員 この記事から考えてみますと、現在の生活産業局長や原料紡績課長も就任時に宮さ和などで接待されたことがあるというように、記事を読めばそういうことになってくるわけですが、その事実関係と、通産省、生活産業局では従来からそういう記事にあるような慣例があったのかどうかお伺いします。 〔委員長退席、上村委員長代理着席〕
○江崎説明員 週刊誌の記事が正しいか否かという直接的な論評は差し控えたいと思いますけれども、私どもは、今回検察当局によりまして既に起訴されております案件を除きますと、撚糸工連と当省の職員との接触状況というものは担当者の交代の際の顔合わせといった程度にとどまっているものというふうに承知しております。
○柴田(睦)委員 その顔合わせ、それは宮さ和で顔合わせしたという意味ですか。まあ宮さ和に類するところですね。
○江崎説明員 本件は現在検察当局でも捜査中でございますので、個別具体的なケースにつきましてはここで申し上げるのを差し控えたいと思いますけれども、従来から撚糸工連と当省との職員の接触状況というのは、今回の事件を除きますと交代の際の顔合わせ程度にとどまっているというふうに私ども承知しております。
○柴田(睦)委員 なければ胸張って、そういうことはありませんと言うのが普通だと思うのです、捜査当局ならばあるいは捜査中ということであるかもしれませんが。だからそういう答弁を聞いても、やはりここに書いてあることのような疑惑が感じられるということであります。 ところで、横手議員の収賄被疑事件につきましては、これは国会の質問が問題とされておりますが、例えば繊維産業のあり方に関連して、設備登録制度、設備廃棄制度について商工委員会などで質問通告がなされた場合、これは過去の例でいいわけですけれども、商工委員会で質問をやる場合は通常も通産大臣あるいは生活産業局長が政府委員として答弁に立っておられるわけであります。ところで、答弁の内容についてはどのように検討され、どのような過程を経て答弁の中身ができ上がっていくか。それはその場でいろいろ展開する場合がありますから臨機応変に局長なり大垣なりが答えられるということでありましょうが、役所の従来のあり方としてやはり役所の中で基本的な問題で答弁の趣旨、要旨をつくっていくというのが普通ですが、今のような問題の場合にどういう過程で答弁ができ上がるのか、この役職も含めて明らかにしていただきたいと思います。
○江崎説明員 通常の場合ですと、各会派が決定されました質問者が委員部を通じまして私どもの方に対しまして質問をする旨の通告があります。私どもとしましては、この通告を受けますと質問者の先生あるいはその秘書の方々と連絡をとりまして、質問内容をお伺いします。こうしてお伺いしました質問内容に応じまして質問ごとに担当の局を決めまして、この担当局が関係があれば必要な関係局とも協議を行いながら答弁をつくるというのが通常でございます。
○柴田(睦)委員 その担当局がつくるに当たっては、これは局長がつくるわけじゃなく、結果的には局長がつくるかもしれないけれども、実際は下から上がるあるいは協議して中身を決めるということになると思いますが、一つの局の答弁、これをつくるには実際にはどういう役職の人たちが動くわけですか。
○江崎説明員 通産省の場合ですと、通常は担当の課の課長補佐あるいは課長が原案をつくります。
○柴田(睦)委員 そうすると、現在逮捕され起訴されているそういう役職の人もやはり答弁に関与したということに結果的にはなるというふうに思われます。じゃ通産省それで結構です。 次に政治家の問題についてお尋ねしますが、先ほど指摘しました週刊新潮には、この政治家の問題に関して、「撚糸工連の元幹部によると、「政治家では稻村佐近四郎が”横綱”です。五十五年の衆参同時選挙の時には五、六百万円……全部合わせると数千万円はいくでしょう。あとは、やはり繊維議員の武藤嘉文、海部俊樹、森喜朗」「一回選挙があれば数十人の議員に撚糸工連から合わせて一千万~二千万円は出ましたよ。」こういうことを述べた記事がありますが、刑事局長はこれは御存じですか。
○岡村政府委員 その記事、私ちょっと読んではおらないわけでございますが、そういう事実があったかどうかということにつきましては、現在撚糸工運の一連の事件について捜査中でございますので、お答えはいたしがたいところでございます。
○柴田(睦)委員 サンデー毎日の三月二日号によりますと、「撚工連の関係者からは気になる話も伝わってくる。「繊維族のセンセイを中心に、五十七年に二、三百万円単位の献金をしました」こういう記事が出ております。 それから四月二十二日付の我が党の赤旗ですが、ここでは、自民党の稻村氏ら繊維対策特別委員会関係議員に献金がなされ、同議員らが受け取りも、その中で七名の人は受け取りも認めたという記事があります。 要するに週刊誌や新聞には、事実の有無の問題ではなくて具体的な政治家の名前が横手議員以外に書かれているということ自体は刑事局長は御存じですか。
○岡村政府委員 いろいろなことが報道されておること自体は承知いたしております。
○柴田(睦)委員 そのいろいろなことが報道されている中で、議員の名前まで挙がっているということも御存じですか。
○岡村政府委員 特定の議員の名前を挙げた報道のあることも承知いたしております。
○柴田(睦)委員 今三つの記事のことを言いましたのは、国会でいわゆる何々族議員と言われるのがあります。とりわけ政府の政策決定に重要な位置を占める自民党の専門部会所属議員の権限は、実際上政策をつくっていく上においてかなり強いと見なければならないと思います。 そこで、午前中稲葉委員から質問がありました大阪タクシー汚職事件、これは現在最高裁に係属中でありますけれども、五十八年二月十日の大阪高裁の判決では、国会議員の職務権限について判示をしているわけです。午前中の繰り返しになりますが、国会議員の職務権限についての判示の概略をもう一度答えていただきたいと思います。
○岡村政府委員 御指摘の昭和五十八年二月十日の大阪高裁の判決の要旨でありますが、「国会議員は、自己の所属する議院の本会議及び自己の所属する委員会において、法律案その他各種の議案について、その発議をし、発議又は提出される法律案その他の議案の審議又は審査に関し質疑、討論、修正案の提出及び表決等をなす権限を有するほか、限定された範囲内においてではあるが自己の所属しない委員会の所管事項に干渉し得る権限を有するのであって、これらの権限は贈収賄罪の成立要件としての職務権限に当たる。そして、国会議員がこれらの権限事項に関し他の同僚議員に働きかけ、一定の議員活動を求めるため勧誘説得をする行為は、国会議員の有する右職務権限と密接に関連する行為」に当たる、こういう判示をいたしておるところでございます。
○柴田(睦)委員 そうしますと、国会議員の一般的権限、それから限定された範囲での関連する権限というものが判示されておりますが、この関連する権限という点から見ますと、さきに言いましたいわゆる何々族議員、要するに専門部会員で政策決定などで影響がある、この大阪タクシー汚職事件の場合も運輸族と言われるような人であったと思いますが、この何々族議員という者については、やはり限定された範囲での関連するこういう問題で強い影響力があるというような判示も含まれていると考えていいでしょうか。
○岡村政府委員 裁判所の判例といたしましては先ほど申し上げたところでございまして、あとは事実関係がそういう判例の言うところの判旨に当たるのかどうかという判断になるわけでございまして、事実関係が明らかでございませんと、直ちにこの判例どおり行けるかどうかということはお答えいたしがたいのであります。
○柴田(睦)委員 それから、国会議員の場合に、法案が係属する委員会があって、その委員会の委員というものの権限については、この大阪タクシー汚職事件だけではなくて、ここにも判示があるわけですけれども、これはいろいろ判例があって、確定した判例になっておりますか。要するに、当該委員会所属議員についての法案審査の権限、あるいは行政に関する権限、こういう問題について。大阪タクシー事件は、要するに委員会に所属していない議員の権限について判断したというふうな意味では初めての事例じゃないかと思うのですが、当該委員会に属する者の権限については、過去に幾つか判例があるわけでしょうか。
○岡村政府委員 過去にも判例がございますし、法律上も、自己の所属する委員会におきまして、法案の審議、採決あるいは国政調査に関する権限を行使できることが規定されておるところでございます。
○柴田(睦)委員 最近の新聞で、A代議士という表現をしておりますが、A代議士が横手議員に対する撚糸工連の働きかけの仲介をした疑いについていろいろと報道が出ております。大阪タクシー汚職に対する大阪高裁判決は、他の議員を説得勧誘する行為について、それを職務権限の関連で判示しているわけですが、この判示ではどういうふうになっておりますか。
○岡村政府委員 御指摘のような報道がいろいろなされておることは私も承知いたしておりますが、それはあくまでも報道であるわけでございまして、具体的事実関係が明らかでございませんと、先ほどのタクシー汚職に関連いたしました判例の判旨に当たるかどうかについてはお答えいたしがたいところであります。
○柴田(睦)委員 その大阪高裁判決は、他の議員を説得勧誘する行為というものについての国会議員の職務権限をどのように判示しておりますか。
○岡村政府委員 先ほど申し上げましたように、国会議員が自己の権限事項に関して他の同僚議員に働きかけ、一定の議員活動を求めるため勧誘説得をする行為は、国会議員の有する職務権限と密接に関連する行為である、こういうふうな判示でございます。
○柴田(睦)委員 新聞報道では、それそっくりのことがA代議士について言われているわけです。今後の撚糸工連汚職事件の捜査の問題で考えてみました場合に、大阪タクシー汚職事件の判例、判決というものは、これは検察庁としてもやはり同じような見解をとっておられるのじゃないかと思いますが、法律の適用という面においては参考になるものであろうかと思いますが、いかがですか。
○岡村政府委員 検察当局がある犯罪を捜査いたします場合は、そのある犯罪に関します判例、こういったものはやはり参考にいたしておるところであると思っております。
○柴田(睦)委員 それからきょうの新聞ですが、「撚糸工連側から」A代議士については、授受が何回にもわたっているため、横手代議士に比べかえってワイロ性の立証にやや難しい面があるもののこというふうに書いてありますが、献金が一般的に一回であれば、それは贈与の趣旨、受託の趣旨がわかればいいのですが、何回も金が渡っているというような場合に、ここにあるように立計画でやはり難しいという問題が出てまいるでしょうか。
○岡村政府委員 それは具体的証拠関係によるわけでございまして、一概には何とも申し上げられないと思います。
○柴田(睦)委員 時間ですから終わります。
○上村委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時十一分散会