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103回国会参議院1985/12/04

国民生活・経済に関する調査特別委員会技術革新に伴う産業・雇用構造検討小委員会 第1号

発言数
39
登壇者
9
会派数
5
開催日
1985/12/04

会議録

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) ただいまから国民生活・経済に関する調査特別委員会技術革新に伴う産業・雇用構造検討小委員会を開会いたします。  参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  技術革新に伴う産業・雇用構造等に関する件の調査のため、必要に応じ参考人から意見を聴取してまいりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等は、これを小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) 技術革新に伴う産業・雇用構造等に関する件を議題とし、技術革新に関する欧米諸国の経験と取り組み状況及びバイオテクノロジーの産業・社会に及ぼす影響について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、三名の方々に順次御出席いただくこととなっておりましたが、参考人中村桂子君につきましては、本人から急病のため本日出席できない旨の申し出がございましたので、本日は、氏原正治郎君及び宮田満君の両参考人に対し調査を行うことといたしたいと存じますので御了承願います。  まず、マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウム組織委員会委員氏原正治郎君から意見を聴取いたします。  この際、氏原参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  本日は、技術革新に関する欧米諸国の経験と取り組み状況につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず二十分程度御意見をお述べいただき、その後四十分程度小委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、氏原参考人に御意見をお述べいただきます。氏原参考人。

氏原正治郎マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウム組織委員会委員

○参考人(氏原正治郎君) 私が今御紹介にあずかりました氏原でございます。  私に本日与えられました課題は、欧米諸国の経験と取り組みの状況についてということでございますが、ここでは本年九月二十五、二十六、二十七日に行われましたマイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウムの議論の状況についてお話ししたいと思います。といいますのは、私がこの国際シンポジウムの企画委員長をやっておりました関係で、シンポジウムに提出されました論文、及びここで行われました報告、討論につきまして幾つかの知見を得ましたので、それを要約的に申し上げてみたいと思います。  幾つか論点がございますが、第一に現代の技術革新の性格についてでございます。  今まで、現代の技術革新ということでございますと、マイクロエレクトロニクスということで日本では議論されてまいったのでありますが、もともとエレクトロニクスの技術は、情報の受け入れ、処理、加工、保存、伝達の技術でございまして、その応用範囲は大変広うございます。最近になりましてから、グラスファイバーの技術やあるいは宇宙衛星の技術と結びつきましてコンピューターと通信技術の結合が可能になってまいりました。こういうことで、広くインフォメーションテクノロジー、つまり略称いたしましてITという用語で使われておるのが一般的でございます。  これは、この会議におきましても、新しい技術革新をどういうふうにとらえるべきかということについて若干の議論がございました。結論は出ませんでしたけれども、おおよそそういう考え方で共通の地盤が得られたのではないかというふうに考えております。  と申しますことは、今まで日本で、新技術革新ということで主として議論されてまいりましたのは、産業用ロボットや、あるいはCNC工作機械でございますとか、あるいはファクシミリ、ワードプロセッサーのようなオフィスオートメーションの個々の機器の導入がどういう影響を与えるか ということに限定されがちでございました。こういうふうな問題のとらまえ方は、私が個人的にサセックス大学の教授でございますクリストファー・フリーマンと話したときには、そういうアプローチの仕方は非常にフラグメンテッドであって、断片的であって、新しい技術革新を全体としてとらまえるのには適切ではない、こういうことで話が出ました。  こういうふうに考えてみてみますと、新しい技術革新の影響と申しますのは、例えば新しい製品やサービスの開発、俗にプロダクトイノベーションと呼んでおりますが、そういう面にも非常に大きな影響を与えますと同時に、例えば製造分野で申し上げますと、設計、製造、原料、製品の保管、管理、それの配送、それから販売、それから金融、こういうあらゆる経済の過程に導入されて大きな変化をもたらします。こういうのを俗にプロセスイノベーションと呼んでおりますが、このプロダクトイノベーションとプロセスイノベーションを総合して考えてみますと、これが社会に与える影響は大変大きなものであるということでございます。  それから第二に、私が得た知識といたしましては、このような新しい技術革新の進展の速度は、今の段階で考えてみますと、まだ当初予想されておりましたよりは緩慢でございまして、また部分的であるということでございます。  例えば、どういうことかと申しますと、今申し上げましたようなITという考え方がらいたしますと、ITの応用機器は単体で導入されているところが大部分でございまして、例えば企業の中全体がシステム化しネットワークができるとか、あるいは地域社会あるいは全体社会にネットワークができるというような状況はまだごく一部分の例にすぎない状態でございまして、今後そういう状況が進むに従いまして影響がますます大きくなっていくというふうに考えられるからであります。  ところで、こういうようなIT技術の普及が緩慢でかつ部分的であるという理由につきましてもいろいろな議論がなされましたが、そのいろいろな議論を御紹介する時間はございませんが、その中で特に重要視されましたのは、例えばこういうIT技術が普及していくことになりますと、企業の組織でございますとか、あるいは産業の組織でございますとか、あるいは職業の構造でございますとか、あるいは勤労者に要求される能力でございますとか、さらに進みますと、建物でございますとか、あるいは都市構造でございますとかいうような変化を伴わざるを得ません。  ところが、このような社会経済の諸制度やインフラストラクチャーというのは非常に慣性がございまして、イナーシアでございますが、変わりにくい性格を持っておりますので、この技術の進歩と社会経済の制度、あるいはそのインフラストラクチャーとの適合が進みませんと技術の普及もなかなか行われない、こういうことだと思います。その中でも特に重要視されてまいりましたのは、こういうような情報を創造、生産し、活用するのは何といいましても人間でございますから、その人間の重要性ということがこの際大変強調された、こういうことでございます。  こういうことでございますので、今はその技術革新の始まりでございますけれども、今後この技術革新が加速度的に進む可能性がございます。例えばファクシミリをとってみますと、ファクシミリはファクシミリが普及していない限りはその利用、操業率は非常に低いわけでございまして、これが便利だということになりますと急速に普及する可能性がございます。  こういうような状況を考えてみますと、今後の技術革新と経済社会ということを考えていく場合には、これも先ほど申し上げましたクリストファー・フリーマン教授の言葉でございますが、テクノ・エコノミック・パラダイム、先ほど皆様のお手元に差し上げてございますこの会議の最終報告の中で、技術経済系というふうに翻訳されておりますが、そういうテクノ・エコノミック・パラダイムが古いテクノ・エコノミック・パラダイムから新しいテクノ・エコノミック・パラダイムに変化するという観点から考察いたしまして、技術の変化が経済的社会的コストをなるべく少なくして、そのベネフィットを最も多くするような方向で考えていく必要があるのではないかということでございます。ここで労働に関係してみますと、この社会経済的コストというのは、後でも申し上げますが、最大のものは失業でございます。これが第二番目の論点でございます。  第三番目に私が申し上げたいと思いますことは、数年前までは、あるいは五、六年前と言った方がいいかもしれませんが、までは、技術革新が雇用を減少させるという議論がかなり有力な見解でございました。これは国際的にも、あるいは日本でもそうでございました。  これに対しましては、こういう見解は、例えばロボット一台が人間二人ないし三人の仕事をするとか、あるいはワードプロセッサー一台が秘書二人ないし四人の仕事をするというような観点からの研究でございまして、産出量を一定だという前提の上で、しかも専ら技術的観点からいたしました計測が大部分でございまして、経済社会全体の仕組みの中で新しい技術革新がどういう影響を与えるかという観点が少なかったというふうな意見が出されてまいりました。専らこの新しい技術革新が経済社会、特に経済成長にどういう影響を与えるか、そしてまた、それが雇用にどういう影響を与えるかという観点からの議論がなされたわけでございます。その結論といたしましては、この新しい技術革新の普及が新しい成長の波を引き起こすという期待を持った議論でございました。  その理由といたしましては、例えばプロダクトイノベーションによりまして新しい製品、サービスが開発され、品質の改善が行われることになりますと、マーケットが拡大することになる。これに対しましては、今日飽和の状態であるので、そういう新しいマーケットの拡大はあり得ないという反論もございますけれども、そういう新しい製品やサービスの開発は新しいマーケットを拡大するに違いないということでございます。  それからまた、プロセスイノベーションによりまして生産性が上がり価格が低下することになりますと、これもまたマーケットを拡大することになる。ただし、これは需要の価格弾力性に依存するところが大きいわけでございますから、価格弾力性の少ない、例えば食料品のようなものについてはそれほどの需要の拡大はないかもしれないが、例えば新しい耐久消費財でございますとか、特にサービスにおきましては需要の拡大が大きく期待される、こういう面からもサービス経済化が促進される、こういう見解でございまして、こういうような新しいマーケットの拡大によってその新技術革新の導入による省力化効果が保証される、こういう見解が出されました。  実際に幾つかの国の、日本でもやりましたけれども、調査の結果によりましても、新しい技術を導入した業種におきましては雇用のふえたところが多く、また雇用が変化しなかったところが多く、雇用の減少したところは少ないというデータも出されております。また、逆にITを導入しなかった分野におきましては、かえって雇用の減少が起きている、こういうことが言われております。というようなことが指摘されました。  また、これは西ドイツの政府の関係者の見解でございますが、今日の西ドイツあるいは例えばアメリカをとってみましても、資本ストックはもう古びているのであって、これを新しくかえる必要がある、そのためにはイノベーションが必要である。つまり、ITの導入が必要であって、これが投資需要を増大させることによって成長の触媒になる、こういう見解も行われました。  さらに、また、資本と労働という関係からいいますと、つまり新しいITを体現した資本と労働という関係からいいますと、特に生産過程におきましては資本が労働を代替する。つまり、新しい技術を導入させることによって省力化効果が大きく働くけれども、例えばサービス分野におきましては資本と労働の補完関係が大きく見られる。し たがいまして、新しい技術を導入することによって、例えば銀行のようなところにおきましても、その単純反復作業は機械が代替することになりますが、銀行業務の中の機械に代替され得ない部分はかえってサービスが拡大して、雇用の減少はそれほどにも起きなかった。むしろ取引量が大きくなりましたので、その雇用量はかえって増大したというふうなことも指摘されました。  また、これはヨーロッパ諸国で特に強調されている点でございますが、国際競争力の観点からいたしますと、ITを導入することによって国際競争力を強化しなければ、どうしても経済の低成長は免れ得ない、こういうことでございます。  さらに、もう一つの意見としてつけ加えておきたいと思いますのは、こういう新しい資本投資、ITを中心とした資本投資の特徴でございまして、従来は資本に対する投資という観点からいきますと物的資本が中心に考えられてまいりましたが、これはこの前に私がここへ呼ばれまして申し上げたことと同じことを繰り返すことになりますが、ITの普及ということからいきますと、物的資本だけではなしに、例えば研究開発でございますとか、あるいはシステムエンジニアリングでございますとか、プログラミングでございますとか、あるいはシステムアナリシスでございますとか、こういうようなソフトウエアの蓄積が不可欠でございます。従来、こういうようなソフトウエアは、人間が担当するわけでございますから、所得、消費という考え方でとらえられてまいりましたが、これも資本の一部であるというふうに考えるべきであって、したがいまして労働者の所得の増大、あるいは労働者に対する教育、訓練のコストというのは生産要素の中の一つである労働コストという考え方から、今後は資本投下の一部分であって将来リターン、収益をもたらす投資であるという考え方で対処すべきであるというふうな見解が述べられてまいりました。  以上が経済成長と雇用、それからITという観点から、私の会議から得た知識を要約してみたわけでございますが、もう一つ、従来ITの普及に伴いまして、労働の二極分解あるいは労働の非人間化が進むという見解が、これは日本にもございましたし、国際的にも存在していたところでございます。これに対しましても、その可能性はあるが、しかしITの技術的性質から見ると、それを克服する、あるいはむしろ労働の二極分解を抑制し、かつ労働の人間化を進めることに利用できるという見解が支配的、まあ一般的であったというふうに私は考えております。  その理由といたしましては、先ほど申し上げましたようにプロダクトイノベーションがITによって進められるということになりますと、新製品、サービスの需要が短期化いたしまして、あるいは多様化することになってまいります。こういうことになってまいりますと、こういう新しい製品、サービスを供給するシステムもフレキシブルにならなければなりません。こういう製品、サービスのフレキシビリティーが大きくなるということになりますと、それに携わる労働者は、今までのように一つの仕事をするための一つの技能だけを持っていたのでは間に合わないということになってまいりまして、むしろ多能工化が必要になってくると、こういうことが一つでございます。  いま一つは、先ほど申し上げましたようなプロダクトイノベーションにとりましても、プロセスイノベーションにとりましても、これはIT機器を利用したり、あるいはITのシステムを利用して働くわけでございますから、ITの知識、技能が必要になってくる。したがいまして、労働者につきましても、技術者につきましても、従来のようなメカニックスの知識だけではなしに、例えばエレクトロニクスの知識でございますとか、あるいはエレクトリシティーの知識でございますとか、あるいは油圧、空圧などの知識、技能が必要になってくるという見解が述べられております。  それからまた、品質が向上するということになりますと、品質管理についての能力が要求されてまいりますし、また工程がシステム化してくるということになりますと、工程についての知識が必要になってくる。こういうふうになってまいりますと、労働者、技術者を通じまして必要とされる能力は、より大きな、あるいはより質の高い労働に従事する、そして質の高い能力が必要となる、こういう見解が述べられてまいりました。  もう一つの点は、こういうような過程を通じまして、機械の操作をやる労働者、あるいは従来の熟練労働者、それから従来の下級技術者——これは英国の報告でございますが、オペラティブ、クラフツマン、テクニシャン、テクノロジスト、エンジニア等といういろんなステータスがございましたが、こういう労働者のステータスの間の境目がだんだんとあいまいになってくる、こういう点の指摘がございました。これはイギリスの報告だけではなしに、ほかの国でも類似の報告がされてきたと、こういうことでございます。  それから、もう一つ重要な点が指摘されましたのは、先ほど申し上げましたように、このIT技術はフレキシビリティーを増大させるわけでございますから、今申し上げましたような傾向、つまり労働者、技術者の多能工化あるいは多技能化を促進するような方向で組織をつくるか、あるいは二極分解的な方向で組織をつくるかという選択の範囲が広がってくるということになってまいります。そこで、どちらを選択するかは企業のストラテジーによるところが非常に大きい、こういうことでございました。と同時に、今も私が申し上げましたような、どちらかといいますと労働の質を向上させ、労働を人間化するような方向をとった方が効率的であり、生産性を高める結果になる、こういうことでございます。  また、ここで重要な議論になりましたのは、こういうようなオプションの範囲が広いわけでございますので、ITを導入する場合におきましては、労使間でもって協議、交渉をやることが大変重要だということが、これは政、労、使、学識経験者共通に指摘されたところでございます。特に職場レベル、企業レベル、産業レベルでの労使協議が重要だということでございました。  その労使協議といいますのは、ITを導入する場合の事前の協議、それから雇用の保障、それから雇用を保障する場合におきましては、もし配転が起きるとするならば、その配転の場合の条件、労働条件あるいは訓練等について協議の重要性が強調されたところでございます。  ただ、協議のやり方につきましては、各国の労使関係、制度は非常に違っておりますので、例えば西ドイツのようなところでございますと、経営協議会が非常に有効に働いているというような報告がなされましたし、カナダの場合でございますと、団体協約の中に特別の制度を設けているというような報告がございました。こういうことでいろいろと制度としては違っておる点がございます。  もう時間が参りましたので、あと簡単に二点だけ申し上げます。  それから、もう一つ議論になりましたのは、特別の労働者に対してどういう影響を与えるかということでございます。  特別の労働者といいますのは、一つは女性でございます。今まで女性は、特にこれはイギリス、西ドイツ、カナダともに強調している点でございますが、多くの女子労働者がオフィスの比較的単純な労働に従っていたので、これに対する影響は大きいだろうという点が一つでございます。それから、もう一つは中高年の労働者でございます。中高年の労働者につきましては、訓練のコストが高くつくこと、仮に訓練をいたしましても、まあ引退までの期間が短いわけでございますので、リターンを得る期間が短い、この二つの理由のために企業は余り熱心にならない傾向がある、こういうことでございます。それから第三番目は、身体障害者に対しては、ITの導入は例えば在宅勤務のような形で有利に働くであろうというような見解が述べられました。  もう一つは、今申し上げましたようなIT技術というものは社会経済組織のフレキシビリティー を増大させるということになりますので、労働市場においても同様でございまして、例えばパートタイム労働者でありますとか、あるいは派遣労働者でございますとか、あるいは在宅勤務者でございますとかいうふうな多様な就業形態で働く労働者を多くするだろう、こういうことが指摘されました。ただ、最後の点につきましては指摘されただけでございまして、特に議論され結論が得られたわけではございません。  以上、簡単でございますが、シンポジウムに際しての私の知見を御報告いたしました。時間を超過いたしまして大変失礼いたしました。

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で氏原参考人からの意見聴取は終わりました。  これより氏原参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。

竹田四郎日本社会党

○小委員外委員(竹田四郎君) 先生のお話を承りまして、私どもも考えを新たにしなくちゃならぬことが多いわけでありますけれども、確かにITによって私ども雇用が減ってくるんではないかというのが、今まで一番心配していたことであります。今のようなお話で、確かに他の分野が充実をしてくることによって、そちらで新しい雇用が起きるという点はよくわかるんですが、ただ、今の最後のお話のところでありますけれども、労働者がそれにどう適応していくかというところが、短期間になかなか適応していかない、かなりの期間、時間、訓練しないとなかなか適応していかないという、その辺にやっぱり一番不安があると思うんです。その辺がシステム化していかなければ、なかなかそう簡単によろしゅうございますというわけにはいかないというのが現実だろうと思うんですが、その辺は各国でどんなふうな形でその間を埋めて、期間的なことを埋める適応訓練、これはどんなふうにされているのか、あるいはどんなふうにしていくのがいいのかというのが一つの問題のような気がします。  それからもう一つは、やはりこういうITがこれから加速度的に出てくるというお話もありましたわけですが、そうなってまいりますと、そういう教育訓練内容というものが非常な広範囲にわたらなくちゃならないというようなお話でございますので、こういう適応訓練というのは、よく企業とかあるいは一つの協会的な、同業種を集めたところで盛んにそういうことを今まではやってきているわけですが、こうなってまいりますと、教育自体をもっと広げていかなくちゃならぬという問題があると思うんですね。  日本の教育の中には、今まで文科系だ、理科系だと、大体専門教育になってきますとその辺が分かれてきていますね。今のお話を聞いていますと、技術も知らなければいかぬ、金融も知らなくちゃいかぬ、経理や管理も知らなくちゃならぬという、かなり広い知識というものを持っていないと新しいITに適応できていかない、そこで満足な働き手にならないというわけでありますから、教育全体のあり方をこのITの立場からやっぱり考え直してみなくちゃいけないんじゃないか。  そうなってきますと、日本の今の教育も、今いろいろ議論はされているわけでありますけれども、そういう視点というのが果たしてあるかどうかわかりませんけれども、私も余りその辺は詳しくはありませんけれども、国の教育制度全体をもう一回洗い直してみるというようなことをしていかないと、なかなか対応した労働力というのは生まれてこないんじゃないか、こんな気がしますが、その辺はどんな議論がされたんでしょうか。

氏原正治郎マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウム組織委員会委員

○参考人(氏原正治郎君) 今御質問、御意見がございました点につきましては、このシンポジウムでは大変関心がございまして、各国の政府代表者及び労使の関係者も大部分の人がその点に触れております。そしてまた、第二日目に三つの分科会で、一つは経済成長、雇用の分科会、もう一つは教育訓練の分科会、もう一つは労使関係の分科会でございましたが、その三分科会とも共通して今御質問がございました教育訓練について最終的には議論が集中したということでございます。  考え方は、各国で制度的には非常にばらばらでございますので、各国別に申し上げるのは煩瑣でございますが、共通して考えられております点は、一つは学校教育をITの普及に対して適応させていくべきである。つまり、学校教育の段階から、ITについての基礎的な知識なり、あるいはIT応用機器についての操作でございますが、これはもう非常に簡単なものでございますから、そういうことをやればいいんだ。たしかイギリスの政府の報告だったと思いますが、相当程度教育用のパーソナルコンピューターを学校に導入して将来に備えるということだということでございます。  それからもう一つは、訓練の関係で申し上げてみますと、今も私が申し上げましたように幅広い能力が必要とされることになりますので、専門教育あるいは訓練の場においても、狭い職業訓練や狭い専門的教育ということではなしに、なるべくコンプリヘンシブな、広い範囲の教育訓練をやって、そして適応力を高める必要がある、こういうことでは共通していたと思います。殊にヨーロッパでは、今青少年の失業が多いものですから、この青少年を失業者としてとどまらせておくと、これは人間として、ちょっと言葉は悪いですが、だめになる点もございますので、今の段階で大規模な教育訓練計画をイギリスでは立てております。ここに報告ございますので、詳しいことは後でもし御質問があればお答えしたいと思いますが、そういうことが一つでございます。  それからもう一つは、先ほど申し上げました中高年につきましては、なかなか企業は熱心ではないというのは共通の認識のようでございまして、今は先ほど申し上げましたようにITの普及のスピードが遅いものですから、古い仕事は幾らも残っておりますからそういうところでやって、新しいところは若い人が行く、こういうことでございますが、これでいけるかどうかということにつきましては、特に深刻な議論はございませんでしたが、幾つかの国では、そういう成人に対する教育訓練を、ファーザートレーニングといいましょうか、能力開発訓練と申しましょうか、そういうものについて訓練計画を持って熱心にやっている。これも企業と公共施設とが協力してやるというシステムを考えているようでございます。  それから、女子につきましては、イギリスでは女子に特別の教育はやらないと、これは男女機会均等の観点からして女性と男性と同じ教育をやる、こういうことの方針のようでございます。それから、カナダでは家庭にいた婦人が職場に出てくる場合のトレーニングというのを非常に重視しておりまして、これはITだけのトレーニングではございませんが、その中にはIT教育訓練というのが重要な部分をなしている、こういうことを報告いたしております。  それからまた、各国共通している点でもう一つつけ加えておきますと、どこの国でも、まあ日本も似たような状況にあるのじゃないかと思いますが、産業と学校教育というものが非常に離れている。こういうことからいって、産業と教育との関係を緊密にして、そして新しい産業、つまり新しい技術に適応するような、先ほど申し上げました経済社会制度が変わっていくわけですから、それらを先取りするような、あるいはそれに適応できるような能力をつける教育をやるためには、産業と教育との連携を深める必要があるということを主張しております。  これは、イギリスなどは特にそういうことを強く主張し、それからカナダも同様でございます。フランスもそういう点は非常に強調いたしております。ドイツは、なかなか自分の国の訓練制度に自信を持っておられるようでございますので、うまくいっているんだというお話でございましたが、私が行ってみた限りでは必ずしおうまくいっているわけではないので、内部ではいろいろ議論があるようでございますが、このシンポジウムの限りでは割とうまくいっている、こういうことで ございます。  これは私見でございますが、重要な点といたしましては、学校教育の段階で新しい、先ほど申し上げましたテクノ・エコノミック・パラダイムに合うような教育をやるということ、それから訓練については比較的コンプリヘンシブな訓練をやるということ、もう一つは、これもどこの国でも強調している点でございますが、生涯にわたっての継続的な職業訓練をやる、こういう点が重要になるのではないかという印象を強く持ちました。

長谷川信自由民主党・自由国民会議

○長谷川信君 ちょっとお聞きをいたしたいと思いますが、昨今円が高くなりまして、ドル安ということになりまして、中小企業関係では六十何種類の業者がそれぞれの産地においてかなり打撃を受けておる。私のところの新潟県では、燕のごときはもう例のナイフ、フォークですね、あれは全国生産の九〇%でございますけれども、それでみんな中小、細かい連中だけでもって、今緊急融資をしなければちょっといろいろ問題があるというくらいまで追い詰められておるわけであります。  今、先生の御説明になりましたハイテクの関係、あるいはこの種の関係の面で、円高ドル安の影響は現に出ていますが、これからどのような形で進むのか、あるいはどのような対策が適切に考えられるのか、見通しも難しいとは思いますが、端的に御専門の立場でひとつ教えていただきたいということであります。

氏原正治郎マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウム組織委員会委員

○参考人(氏原正治郎君) 大変難しい御質問でございまして、これは抽象的なお答えしかできないと思いますが、私は円高になって輸出が困難になれば、逆にその技術革新は進むのではないかというふうに考えております。  といいますのは、日本でこのIT技術が普及いたしました一つの非常に大きな原因は、実は第一次オイルショックでございまして、第一次オイルショックによって、エネルギー価格が高騰し、さらにまた七四年の春闘で賃金も大幅に上がり、金融引き締めで金利も高くなった。こういうような生産諸要素のコストが上がったのをどうやって乗り切るかというときに最も適切な技術だと考えられましたのがIT技術でございまして、これは省エネ、省資源、省力効果を持ちますから、それで日本がロボット先進国というような形になりましたのも、経済的な解釈をいたしますと、一つの理由はオイルショックだったと思うのでございます。こういう点が一つ。  いま一つは、IT技術というのは先ほど申し上げましたようにスタンドアローン、つまり単体でも導入できるという点がございますし、非常にフレキシビリティーが大きいという点で、これは国際的に、この会議の中では部分的にしか議論されませんでしたけれども、もともと中小企業に向いている技術でございまして、中小企業に向いているというのは、その導入資金が要らないというわけじゃございませんけれども、導入資金が大規模な設備投資に比べればはるかに少なくて済むということが一つ。  それから、もともと中小企業は少量生産でございますから、少量生産に向いた技術でございます。それからまた、先ほど申し上げました新製品の開発とかいうのにも向いているわけでございますので、これは会議の席で議論になったことではございませんけれども、イギリスでもドイツでも、中小企業のIT化と申しますか、これには非常に熱心でございまして、ベルリンにVDI、ドイツ技術者協会というところがございますが、ここでは中小企業向けの技術情報の提供や、あるいは経営の情報の提供、あるいは場合によるとコンサルティングでございますとか、そういうことをやっている。日本でもそういうものはございますけれども、それによってIT化を進めているという状況がございます。でございますから、日本の企業がそういう点からいいますと大変耐久力もございますし、それから企業家精神にも富んでおりますので、そういう困難な状況を克服するために私はIT化がかえって進むのではないか。  ただ、これをほっておいでいいという意味では少しもございませんので、それに対しましてはいろいろな援助、これはどこの国でもやっていることでございますが、基本的な援助のやり方というものはITの基本技術の研究開発、これは政府資金が非常に大きく入ってやっております。それから、その基本技術及び応用技術の技術情報の提供でございます。これもどこの国でもやっていることでございます。こういう点は、今後産業政策としても、日本で現在もう相当やっておりますけれども、私はもっと進めるべきではないかというふうに考えております。  一般論で大変恐縮でございます。

吉川春子日本共産党

○吉川春子君 三点お伺いしたいと思うんですけれども、「ME化が雇用の量に与える影響」のところで、ME化の影響だけを区別して取り出すのは困難であるというふうにしながらも、少なくともME化に伴い雇用が減少している兆しは見られていないと述べています。マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウムの総括報告でですね。しかし、日本の場合、ことしの就職戦線で銀行とか生命保険会社で大量の求人の減少があらわれています、特に高校卒の女子ですね。これはME化による減少と見るべきではないのかというふうに思うんです。そういう数字を具体的にはつかんでおられないんでしょうか。つかんでいたら教えていただきたいんです。  この委員会で、経済界の代表の方がお見えになったときに、将来の大変な失業者の問題を予測して中間労働市場という考え方も述べておられるわけなんです。それで、今雇用に余り深刻な影響を与えていないということは、技術革新の進展の速度が緩慢であるということを述べられましたけれども、そのこととの関係でまだ決定的に深刻にはならないのではないか、その点はいかがでしょうか。  それからさらに、ME機器の生産拡大が直接的、間接的な波及効果を生み出しているというふうにしているんですけれども、具体的にトータルとして数字かなんかでつかんでおられるかどうか。  それから、学校教育の問題が今出されましたけれども、ここでも一般的かつ広範な教育が重要だということが再認識されたというふうに言われていますけれども、これは従来の教科に加えて新しく職業教育の教科を加えている国があるでしょうか。こういう教育は、小中高いずれの段階での教育が大切だというふうに各国は考えているんでしょうか、その辺教えていただきたいと思います。  産業と学校教育との関係をどう見るかなんですけれども、学校教育を産業に従属させてはならないことは当然ですし、産業と教育の連携を深めるというけれども、これは非常に難しい問題で、学校教育は基礎的な学力を全般的につけさせるということが第一の目的であって、職業学校のような形にはなってはならないと思うんですけれども、その辺の参考人の御意見を聞かせてください。  それから、最後に三番目ですけれども、「ME化と労使関係・労働条件」の問題で、ME化は労働組合の組織化が進んでいない中小企業、未組織分野に及ぶ、こうした分野ではME化のデメリットが労働者に悪影響を及ぼす可能性が高いというふうにここで指摘されています。ME化に伴う諸問題に対処するための社会的フレームワークの形成について、ナショナルレベルでの討議が必要であるとの意見があったとしていますけれども、これは具体的にどういうことなんでしょうか。  労使協議の重要性を強調されましたけれども、組織のないところとか、あるいは労使関係というのは力関係で言えば圧倒的に使の方が強いわけですけれども、そういう中でそこに働いている人々をME化のデメリットから守るためにはどうしたらいいか。  以上、三点についてお伺いいたします。

氏原正治郎マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウム組織委員会委員

○参考人(氏原正治郎君) たくさん御質問がございましたので、一つ一つメモしてございませんが、後でまたちょっとお聞きしたいと思います。  一つ、ME化の影響は直接に雇用に影響を与えるかどうか、それがことしの女子の高校生の求人に影響を与えているかどうか。ダイレクトに影響 を与えているかどうかということにつきましては、これは確かめておりません。また、確かめるのは大変難しいと思います。  ただ、推測として考えられますのは、ME化が進みますと、先ほど申し上げましたように事務系、まあ事務系と言っていいかと思いますが、その部分での単純作業分野というものは縮小する傾向がございます。ですから、労働者の構成から申し上げますと、研究開発技術者というのは絶対的に不足でございます、これはどこの国でもそうでございますが。それから情報関連産業の技術者、これも不足でございます。それから、それに比べますと事務系の単純労働者というのはどうしてもME化の省力効果が大きく働きますので、これは相対的に減少と。相対的に減少とは、ふえておりますけれどもふえ方が少ない、こういうことでございます。  それから、生産労働者もそういう傾向があるということでございますので、そういう労働力のコンポジションといいましょうか、構造が変わってきた影響が出ている、出ていないとは言えないと思いますが、これを確かめることは大変に難しゅうございます。と申しますのは、もう一つ女子の労働力といたしましては、勤続年数が長くなってまいりましたので、かつてのような代替需要が相対的に少なくなってきた、こういうこともございますので、どの要素が強く働いたかということについてはちょっと確かめることが難しゅうございます。  それから第二の点で、大量の失業者が予想される、こういうことでございますが、これはどういう根拠でそういうふうに言われたのかわかりませんが、先ほど申し上げました議論をもう少し敷衍させていただきますと、ITが発達するためには社会経済構造が変わらなきゃならない。その中には、例えば建物もあれば都市構造もあればインフラストクチャーもある。こういうことになりますと、ITが進むためにはそういう新しい公共投資も必要になるということでございまして、それから資本ストックそのものが古びできますからこれを新しく切りかえるための設備投資もふえる、だから投資需要がふえてくる、こういうことが今後予想される点でございます。  これはうまくいけばということでありまして、うまくいかなければこれは長期沈滞ということになります。うまくいけばそういう循環が始まって長期的な成長をもたらす、こういうことでございますので、大量失業が出るということを経営団体の人がおっしゃったというのはちょっと経営者の怠慢ではないか、こういうように私は思います。  それから、もう一つの点で申し上げてみますと、その中で重要な投資というのは、先ほど申し上げましたように人的投資でございまして、教育訓練投資でございます。こういうことからいきますと、先ほど私がおおよそこのシンポジウムで共通に得られた結論からいいますと、重要な点は、最終的な消費需要がなければバランスがとれないわけでございまして、そのためには勤労者の所得の向上とそれから労働時間の短縮による余暇利用でございますね、そういうふうな需要が発生しなければ、供給の方だけふえたからといって売れないわけでございますから、その点を先ほど強調するのを落としましたので、もう一つ申し上げます。  それから、労働時間ということにつきましては、これはいろいろな考え方がございまして、一つは一日の労働時間を短縮するという考え方もございますし、それから週休二日制にして一週間の時間を短縮するということもございますし、休暇を多くして年間の労働時間を短縮するという考え方もございますし、それから遅くまで学校に行っていて生涯の労働時間を短かくするということ、あるいは早く引退して短かくするという考え方もございます。  こういうことからいきますと、今後重要だと考えられますのは、これは私見になりますが、そして暗黙のうちにヨーロッパでも前提にしていると思いますが、教育期間を長くして生涯の時間短縮をする。そして供給量も減少いたしますし、投資も行われる。こういう考え方をとっていく必要があるし、またそういう考え方が前提になっているのではないかというふうに考えております。  それから、もう一つ申し上げておきたいと思いますのは、これはME、IT化が進まない分野におきましても、雇用は、例えばサービス産業なんか動揺するわけでございまして、これはスウェーデンの労働組合のLOの代表の強調しておりますのは、スウェーデンでは、例えば社会サービスの従事者が非常に増大したために、MEの補償効果と申しますか、それが働いて、そしてME化は雇用総量には影響を与えなかった、こういう報告をいたしております。私は、この点も今後全体の経済社会政策を考えていく上では重要な点ではないかというふうに思います。  それから、学校教育と産業との関係といいますのは、これは何も学校教育を職業教育にかえたらいいということをイギリスでも考えているわけではございませんのでありまして、学校の教師なりが産業の状況について知識を余り持っていない。それで、その知識を入れた基礎教育、これから必要になるミニマムエッセンシャルについて改定をしていこうと、こういうことのようでございます。ただ、カリキュラムの変更その他につきましては、私も詳細なデータを持っておりませんので、これはお答えしにくいところであります。  それから、コンプリヘンシブだということを申し上げましたが、これは初等教育の段階ではなしにむしろ中等教育、訓練の段階、今まで訓練が非常に狭い訓練をやっておりましたので、それについては広げていくということが必要だということでございまして、これは特にイギリスではその点が強調されております。ドイツでも、そういう職業訓練をブロードンにしディープにする、つまり深くして広げていく、そのかわり期間も長くかかるということでございますが、そういう考え方が強いようでございます。

吉川春子日本共産党

○吉川春子君 あと労使協調の点は。

氏原正治郎マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウム組織委員会委員

○参考人(氏原正治郎君) それから労使関係につきましては、御指摘がございましたような点がいろいろと議論になりました。それにつきましては、これはまず労働組合の方に御努力いただくということと、それから社会的な考え方の基準みたいなものについては、その社会的レベル、各関係者による意思疎通と申しましょうか、情報交換並びに意見の交換が必要ではないかと、こういうことの提案がされたということでございます。

藤井恒男民社党・国民連合

○藤井恒男君 時間も参っておりますので一点だけお伺いしたいと思うんですが、ME、ITがどんどん普及していきますと、私は既存の企業における勤務形態が変わっていくんじゃないかという気がするんです。労働省も大きく旗を振って、国際的な観点からも労働時間の短縮というようなことをしきりに——しきりにというか強く主張しているし、産業界でも真剣に受けとめている状況下にある。だから、一日当たりの労働時間もさることながら、週における労働時間、あるいは今度フランスのように年間労働時間、休日との絡みというようなことも国際的にもいろんな論議が出ている状況ですね。  日本の場合には、おおむね企業は四組三交代、三組三交代あるいは日勤といろいろの形態がありますが、押しなべて一日長時間労働してそして休日を持っている、こういう勤務形態だけど、こういった形のITが普及していくと、在宅勤務であるとか、あるいは固めて仕事をするとか、繁忙期にぱっと季節——季節と言うまでもないけれども、労働するというような勤務形態の変化というものが出てくる。それに伴ういろんな通勤の問題だとか職場環境の問題に広がっていくんじゃないかなという気がします。  それについてどういうお考えかということと、いま一つ、日本の企業もかなり高齢化してきておりまして、大体中高年齢者が主体を占めてきている。こういった人たちへの教育については大変コストがかかる、またリターンも高齢者ということにおいて非常に薄い。そうなると、勢い企業側か らすれば、そういったところへ教育投資をすることよりも、簡便な派遣労働というものを求めていくのじゃないか。国会でも派遣労働法が成立しまして、新しい就業形態として位置づけができたわけですね、派遣労働の。だから、IT等の普及がどんどん進んでいけば、企業は、労使交渉をして、複雑な問題を惹起するよりも、そういった人たちを配置転換して派遣労働を持ってくる方が、極めてイージーにいけるしコストも安いということになるわけですから、派遣労働をこれは促進させていくことになるのと違うのか。そういった点で先進国などはどういうことになっているのか。  日本の場合には、終身雇用ですから企業への帰属性も高いし、派遣労働ということに対してまだまだなじみが薄い。そういった面から新たな労使間におけるトラブルというものが出てくるんじゃないかなということを懸念もするんですけれども、この辺について教えていただきたいと思います。

氏原正治郎マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウム組織委員会委員

○参考人(氏原正治郎君) この点につきましては、各国の方々からそれぞれ今のような御指摘がございました。ありましたけれども、この点は労使で意見の違いがございまして、どちらかというと使用者側は、自由にそういう派遣形態なり、あるいは派遣だけでなしに下請もそうでございますが、そういうものを使っていきたいという御意向のようでございます。これもはっきりとそうおっしゃっていたわけではございません。労働組合の方では、本雇いのできる範囲の仕事は本雇いでやって、だからどの部分を下請にするかということについては交渉で決めよう、殊にこれはイギリスの組合がそうでございます。  そういう点がございますが、これが多くなっていくであろうということにつきましては皆さん共通の認識を持っておりましたが、それではそれにどう対処すべきかという点については、先ほど最後にも申し上げましたけれども、結論が得られなかったというのが客観的な評価だというふうに思います。これは、皆さんいずれもその点については言及されておられました。

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) 松岡君、時間も大分超過したので簡単に、ひとつ一問ぐらいにしてください。

松岡滿壽男自由民主党・自由国民会議

○小委員外委員(松岡満寿男君) ME化の問題と労働の問題について国際シンポジウムを開かれた、非常に有意義なことだと思うんです。時間もありませんので基本的な問題だけ一つ伺ってみたいんですが、やはりその国の総合的な意味での福祉というものが向上していくためには、これは労働問題も含めまして、やはり経済というものが安定的に成長していかなければいけないということが前提としてあると思うのです。  この最後のところで、マクロ経済の現状が比較的良好な国では新技術の導入に対して労使が積極的に取り組んでいるというお話が出ておりますけれども、まさに我が国の場合は、そういう点ではマクロ経済というものが非常に良好な環境であったというところが、やはりこういう新技術の導入が非常に円滑にいった、もちろん今までの何十年にわたる労使関係の着実な集積というものもあったと思うんですけれども。これを考えてみますると、やはりその背景には輸出依存型の経済成長が持続しておったということがあるわけですね。  ところが、現下の貿易摩擦の中で、そういう輸出依存型から内需依存型に切りかえていかなければいけないというのが、アクションプログラム以来一連の我が国の大きな経済政策の基本的なものになってきていますね。そうしますと、こういう技術革新とそういう経済、いわゆる外需依存型から内需依存というものに切りかえていくということになりますと、この技術の導入につきましてもさまざまな問題が出てくる可能性があるのじゃないかと私は思うんですが、こういう点についてどのように氏原参考人はお考えになっていられるのか。これは、非常に急速に切りかえていくということは不可能ですね、現実問題として。徐々にそういう体質は変えていかなければいけないという一つの方向はあるにしても、非常に厳しい問題が私はあるんじゃないかと思うんです。  これと、もう一つは、先ほどお話がちょっとございましたけれども、産業と教育の問題ですね。私自身もこの前アメリカにちょっと行かせていただいたんですけれども、諸外国の場合は、やはりそういう基礎的な学力のほかに、そういう非常に実用的な職業訓練というのが学校教育の段階であるわけです。だから、それは産業に教育が従属するという意味じゃなくて、当然新しい技術革新というものが家庭の中でも社会の中でも産業の中でも行われてくるわけですから、それに適応する人材を育成していくということは基本的に大切なことだというふうに私は考えておるわけです。  諸外国の場合、非常に意欲的に取り組んでおるようですし、我が国の場合も徐々にでありますけれども専門学校の重要性というのが今認識されつつありますし、そういう方向にいくべきであろうというふうに考えておるわけですけれども、これは私の意見だけを申し上げておきたいと思います。

氏原正治郎マイクロエレクトロニクスと労働に関する国際シンポジウム組織委員会委員

○参考人(氏原正治郎君) 国際経済の問題につきましては、このシンポジウムでいろいろ議論になるのではないかと予想しておったところでございます。これは先進国間の問題と、先進国と途上国の間の問題でございましたが、この問題についてはシンポジウムの限りでは余り大きな問題になりませんでした。  ただ、私が推測するところでは、ヨーロッパ、EC諸国でございますね、これは非常にITに対して関心を深めております。そして、日本に対する関心は非常に深うございまして、ことに今、西ドイツでは非常に深うございます。その認識は、ITのために失業がふえたのではないのであって、ほかの理由によって失業がふえたと。それで、ITを進めることによって、先ほども申し上げましたように設備投資を進めることによってその生産性を上げ、そして雇用を拡大し、雇用拡大というか、国際競争力をつけて雇用を拡大していく、こういう方針でございます。  ですから、西ドイツの政府関係者の報告によりますと、ドイツでは、生産性が上昇していた時期には雇用が拡大した、しかし生産性が上昇が低下した最近において失業者が出ている、だからもう一遍IT投資をやることによって生産性を上げて雇用を拡大すると、そのことがドイツは輸出国ですから間接には貿易輸出を増大させる、こういう基本政策。これは私の感じではイギリスにつきましても。イタリアは、これはベネチア報告でございますので、イタリアだけのことを議論しておるわけではございませんが、世界に共通した認識でございます。それから、開発途上国の参加者からもいろいろ発言がございました。それから、ILOが非常に関心を持っておりますので、それにつきましても報告がございました。これは十分な議論がされたわけではございません。  ですから、今後の問題といたしましては、これが非常によかったと言われておりますのは、少なくとも先進国の人が集まって、政、労、使、学識経験者が集まって、しかも日本の近隣諸国の途上国の人も来て、そこで会議をして情報及び意見の交換が行われたということに、この会議としては非常に大きな意味を私も感じておりますし、参加者の方は大体そういう点でそういうふうにお考えのようでございます。ただ、具体的な今おっしゃられたような問題につきましては、ちょっと議論が出ると困るなという感じを持っていたんですけれども、その点はほとんど議論になりませんでした。  ちょっと、私の個人の意見を申し上げる場所ではございませんので、客観的に申し上げさせていただきました。

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) 以上で氏原参考人に対する質疑は終わりました。  氏原参考人には、お忙しい中を本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表して厚くお礼を申し上げ ます。ありがとうございました。     —————————————

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) 次に、日経マグロウヒル株式会社日経バイオテク編集長宮田満君から意見を聴取いたします。  この際、宮田参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、バイオテクノロジーの産業・社会に及ぼす影響につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず二十分程度御意見をお述べいただき、その後四十分程度小委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  それでは、宮田参考人に御意見をお述べいただきます。宮田参考人。

宮田満日経マグローヒル株式会社日経バイオテク編集長

○参考人(宮田満君) どうも御紹介ありがとうございました。日経バイオテクの宮田と申します。  私どもは、丸四年、八一年の十月から日本経済新聞社とアメリカのマグロウヒルという出版社と共同で、バイオテクノロジーに関する小雑誌をつくってまいりました。これが日本で唯一のバイオテクノロジーの産業化に関する小雑誌ということで、本日ここの席に出席させていただいたものと了解しております。  本日のお話は、私が申し上げたいことは極めて簡単であります。一つは、バイオテクノロジーの商業化というのは確実に進んでいるということを御指摘したい。それからもう一つの点は、とは言っても、現在進んでおりますバイオテクノロジーの商業化というのは、バイオテクノロジーの潜在力から申しますと、ほんの氷山の一角というか、そういうごく限られた部分に関する商業化が進んでおります。ですから、技術的にはまだまだ解決しなければいけない関門が多い。私どもは、まだバイオテクノロジー自体が幼年期にあるという判断があります。そのためにここに御出席の先生方の力も借りて、バイオテクノロジーを真の我が国の産業の基盤技術とするためには、やはりもっと基礎研究を含めた研究奨励策が必要であろうということをお話ししたいと思います。  きょうは、私の下手なお話よりも、スライドをお見せいたしまして、皆様にバイオテクノロジーの実用化の現状を御理解していただきたいと思います。  これは私どもがやっておりますニューズレターです。小雑誌ですが、ことしに入ってまいりまして急速に読者がふえています。これを我々分析いたしますと、エレクトロニクスとか鉄鋼とか、ほとんどバイオテクノロジーのイメージとはほど遠いような企業の方が読者となっております。  ここで一つ私どもが考えておりますのは、これらの企業がなぜバイオに関心を持っておるのかと申しますと、やはり二十一世紀にこのバイオテクノロジーが基幹技術になるんではないか。つまりそういった、今は医薬品とか食品ばかりですが、そういった部分以外のところにも技術的なインパクトを与えるだろう。そのためにある種の保険としてエレクトロニクスとか鉄鋼、素材型の巨大産業がバイオテクノロジーに現在関心を深め始めております。  次、お願いします。  バイオテクノロジーの商業化は確実に進んでおります。  ここにお見せいたしましたのは、人のインスリンの結晶であります。これは我が国で初めて、多分来年の春までには発売になると思いますが、売られることになります遺伝子操作でつくりました医薬品の第一号です。ことしの十月に厚生省の方から製造承認をいただいております。ただし、残念なことに英国及び米国、あるいは西ドイツでこのヒト・インスリンが承認されたのは八二年の十月以前ということでありまして、ここにおきまして我が国では三年間の商業化でのおくれがあったということを皆様に御指摘したいと思います。  次、お願いします。  これは、お手元の資料にもお渡ししてありますが、バイオテクノロジー、つまり遺伝子操作でつくりました医薬品がどれだけ商品化のパイプラインに上がっているのかということをお示ししています。第一号は、米国のイーライ・リリーという企業から塩野義製薬が輸入して申請いたしました、先ほどお見せいたしました人の糖尿病薬のインスリンですが、それ以外にインターフェロンとか、その他インターロイキン2、B型肝炎ワクチン、あるいは腫瘍壊死因子というまあこれは一種の抗がん剤ですが、そういったものが臨床試験に入っております。ですから、これらがうまく進めば、あと三年あるいは五年以内に続々とこういった医薬品が我が国の病院あるいは診療所で使われるようになるだろうということであります。  次、お願いします。  今申し上げたのは遺伝子操作というテクニックでつくりました医薬品ですが、それ以前に細胞培養というテクニックを用いまして医薬品の商業化は進んでおります。これは、世界に先駆けてことしの八月から、東レがベータインターフェロンというものを細胞培養を使いまして抗がん剤として発売しておりますが、その東レが使っている動物細胞のシステムをあらわしています。  次、お願いします。  動物細胞培養を使いまして商品化が進んでいるものは、ここに挙げたように、やはりお手元のところに表は多分あると思いますが、ベータインターフェロンあるいはウロキナーゼという、これも体内にあります一種の酵素なんですが、そういったものがもう既に商品化されております。それ以外に、ここにお示ししましたようにさまざまな物質が商品化されようとしております。  次、お願いします。  もう一つ、バイオテクノロジーには基幹技術があります。それは細胞融合というものでございまして、この細胞融合技術を使いました、モノクローン抗体という非常に特異性の高い抗体を使いました診断薬の開発が進んでおります。これは、そのモノクローン抗体を使いました診断薬のキットの一例をお示ししていますが、これはクラミジアという一種の性病を検出するキットでありますが、これはモノクローン抗体という極めて特異的な抗体が得られて初めて開発が可能になりました。  次、お願いします。  こういったモノクローン抗体を使いました診断薬の商業化は、遺伝子操作を使いました医薬品の商業化に先駆けて進んでおります。    〔小委員長退席、長谷川信君着席〕 アメリカでは、八一年にアレルギーの診断薬がハイブリテックというベンチャービジネスから発売されております。我が国では、八二年にやはり診断薬がお手元の資料にございますように発売されております。それ以降、ことし八五年になりまして、そのモノクローン抗体の診断薬の商品化件数が十数品目、我が国で発売されております。まさに爆発的にことしモノクローン抗体の商品化が日本で進んでいます。アメリカでは、ことしの一月までに六十から七十品目のモノクローン抗体の診断薬が発売されています。もう既に皆さんも、アメリカに行ってドラッグストアにお寄りになりますと、モノクローン抗体を使いました妊娠診断薬を買うことができるというところまで普及しています。  次、お願いします。  そういうわけで、これはアメリカのマグロウヒル社が出しております、全米ナンバーワンだと思うんですが、ビジネス誌がありまして、ビジネス・ウイークというのがありますが、そのビジネス・ウイーク誌は、八四年一月のスペシャルフィーチャーで、バイオテク・カムズ・オブ・エイジ、バイオテクの時代がやってきたと宣言しております。私どもは、日本ではことしこそがバイオテク・カムズ・オブ・エイジであったんではないかという認識を持っております。    〔小委員長代理長谷川信君退席、小委員長 着席〕  次、お願いします。  ここで、その商品化が進んでまいりましたということを申し上げましたが、それでは技術的に見てどこまで現在きているのかということを申し上げます。  そもそもバイオテクノロジーとは何だということに少し触れなければいけないんですが、バイオテクノロジーというのは、ここにお示ししました写真は、実は私の息子なんですけれども、子供が親に似るということがバイオテクノロジーの根本であります。  次、お願いします。  なぜそれじゃ似るのかということになりますが、それは、実は私どもの精子とかあるいは母親からきている卵子というものを通じまして、我々の体から子供にDNAという遺伝物質が伝わるということが、親が子に似る、あるいは子が親に似るという証左になっています。そのDNAという物質は、ここにお示ししました大腸菌、あるいは先ほどお示ししました桜あるいは人間に至るまで共通でありました。このことがバイオテクノロジーのインパクトの大きさをあらわしています。  もう一枚お願いします。  ここにお示ししましたどろどろした一種の水あめ、あるいは口の悪い人はたんだと言いますが、そういったものが我々の体を形づくっている、いわば設計図となっています遺伝物質のDNAであります。これが子供に伝わって遺伝ということが起こります。この遺伝物質が大腸菌及び植物及び我々に至るまで共通であったということが、バイオテクノロジーがそもそも基本技術になる大きなインパクトだったと思います。ですから、大腸菌で進んでいる研究がそのまま植物にもあるいは人にも当てはまるということが、このバイオテクノロジーのすそ野の広さを示唆するものであります。  次、お願いします。  我々は、その遺伝物質を酵素的に処理したり、あるいは遺伝物質を化学的に合成することがもう既に可能になっています。その合成した、我々がつくってほしい遺伝物質をそのまま大腸菌に入れ込むこともできます。その結果、大腸菌の遺伝物質と同じものでありますから、DNAは、大腸菌は間違えて一生懸命我々が望むようなものをつくってしまいます。ここに矢印でお示ししましたのは人のインスリンの塊であります。大腸菌は自分のたんぱくだと思って一生懸命人のインスリンをつくってしまいます。その結果、ここにお示ししましたように大量に生産することが可能になっています。今は人のインスリンを大腸菌の全菌体たんぱくの三割から五割までつくることがもう既に可能になっています。  次、お願いします。  その結果、我々の血液の中に例えば一億分の一ぐらいしか含まれていないようなインターフェロンといった非常にごく微量の物質を、このように、バターのように我々はもう大量生産することができます。その結果、冒頭にお示ししました我々の体の中の物質を使った医薬品の開発というものが非常に進む結果となりました。  次、お願いします。  今まで申し上げたことをまとめますと、こういうことになってしまいます。つまり、千手観音のようにバイオテクノロジーというのは何でもできちゃうんだというふうな印象を与えました。我々マスコミは、確かに八〇年代初めから今まで、こういうような印象を皆様にお与え続けた責任がありまして、今反省させていただいております。  次、お願いします。  しかし、現状のバイオテクノロジーはこんなものだと思います。プラスチックの槌にしかすぎません。これはバイオテクノロジーの潜在的な力から比べると、我々が今商品化し得たものはたかだか医薬品と診断薬にすぎません。それから、もう一つは研究試薬のようなものにしかすぎないということであります。  次、お願いします。  これは八二年に通産省が予測いたしましたバイオインダストリーの二〇〇〇年の市場なんですが、それでは四兆円から六兆円規模にバイオインダストリーが膨張するだろうというふうな予測をしています。最近の予測では十五兆円まで膨らんでおりますが、私はむしろこっちの方がリアリティーがあるだろうと思っています。ただ、これを見ますと、医薬品というのはそのうち二兆円を占めるにすぎません。ですから、現在のままでバイオテクノロジーが進歩をとめてしまいますと、この予測のうち半分、あるいは半分以下の期待倒れのテクノロジーになってしまうと思います。  次、お願いします。  現実に、例えば医薬品でも、ここにお示ししましたような複雑なこれはたんぱくを示しています。このたんぱくはティッシュ・プラスミノーゲン・アクチベーター、TPAという、ちょっと長い名前なんですが、我々の体の中に血液の塊ができてしまって、そのために心筋梗塞とか脳梗塞というものが起こるんですが、その血液の塊を溶かす酵素であります。この酵素がうまくつくれれば、例えば発作で倒れたときに医者が注射一本で救急することができると期待されているものなんですが、残念ながら今のテクノロジーではこれをつくることはできませんでした。そのために、このティッシュ・プラスミノーゲン・アクティベーターをつくるために、第二世代といわれるような遺伝子操作の研究開発が進んでいます。  次、お願いします。  それからもう一つ、現在の大腸菌を中心といたしました第一世代のバイオテクノロジーというのは非常にコストの高いものしかつくれません。例えばモノクローン抗体でも、診断用のモノクローン抗体というのは、本当にごくわずかしか使いませんために、一グラム大体二千万円とか三千万円で取引されています。ただし、残念なことに、一年間に一グラムもそのモノクローン抗体は使われません。そのために、非常に価格は高いんですが、市場そのものは小さいものしか現在のバイオテクノロジーではつくられていません。  それからもう一つ、医薬品なんですが、血清アルブミンというものを遺伝子操作で一生懸命つくろうとしていますが、これも現在はつくれません。と申しますのは、血清アルブミンは一グラム二百円ぐらいでつくれなければ、いわゆる血液から分離生成してつくる血清アルブミンと対抗できないからであります。残念ながら、グラム二百円という価格は、現在のバイオテクノロジーではまだ超えることはできません。  こういった価格的な制約があるために、バイオテクノロジーの実用化というのは一見華やかなんですが、現状では診断薬と医薬品の分野に限られているということであります。ですから、現状のバイオテクノロジーではつくれないものをつくる研究と、もう一つは安くつくる研究というのが、現在から今後二〇〇〇年まで強力に進められていくだろうと思います。  次に、お願いします。  今まで申し上げたことを第一世代、第二世代というふうに現在我々の方では分析しております。  それで、第一世代のたんぱくは、人のインスリンに代表されますように、我々の体の中から一つだけ遺伝子を持ってきて、それをコピーして大腸菌に大量につくらせるという技術です。  ところが、ティッシュ・プラスミノーゲン・アクティベーターのような複雑なたんぱくはこれではつくれませんでした。そのために、第二世代のバイオテクノロジーの研究開発がもう既に始まっています。これは多分二〇〇〇年まで続くだろうと思います。これができれば、今は医薬品だけですが、食品とかファインケミカルにまでバイオテクノロジーの応用が進むだろうと思います。  それは、例えば複数の遺伝子を操作してしまう。その結果、たんぱくだけではなくアミノ酸とか抗生物質のような低分子のものをつくるという方法であります。  それからもう一つは、ティッシュ・プラスミノーゲン・アクティベーターはそうなんですけれど も、動物の細胞を遺伝子操作してつくらせてしまうという方法があります。  それからもう一つは、大腸菌という実験室の微生物ではなくて、アミノ酸の発酵菌とか、そういったプロの発酵菌を遺伝子操作しようという方法が一つあります。  それからもう一つは、先ほどインスリンをつくっている大腸菌の写真でもお示ししましたけれども、菌体内につくりますと、全部大腸菌のたんぱくをインスリンに置きかえてもたかだか一リットル当たり二グラムしかつくれません。これではとてもコストダウンは望めませんので、培地の外に、菌体の外に分泌させようという分泌ベクターの研究開発も進んでいます。  それからもう一つ、これは今後非常に有望になるだろうと思うんですが、多分来年の四月にたんぱく工学研究所というものが通産省の後押しでつくられますが、このたんぱく工学という分野も新たに開かれてきた分野です。  これは、先ほどインスリンのところではただコピーしたものだというふうに申し上げましたが、抗生物質の開発の歴史を見ても、もともと菌がつくっている抗生物質が我々の医薬品としてはベストではございませんでした。それに化学的な修飾を加えて、より使いやすい抗生物質が開発されてきた経緯があります。それと同じように、我々の体の中にあるホルモンとかあるいは酵素というものを改良しようという研究が、誘導体をつくろうという研究がもはや進んでいます。こういったたんぱく工学の研究もこれから二〇〇〇年にかけて盛んになるだろうと思います。  それから、二〇〇〇年以降ですが、これはほとんど鬼も大笑いしてしまうかもしれませんけれども、第三世代のバイオテクノロジーの研究が進んでまいります。これは、一つは動植物の個体を遺伝子操作する。これは農林水産業に革命的なインパクトを与えるだろう。それからもう一つは、たんぱく工学がうんと進んでまいりますと、我々が望んだような形の分子あるいは機能を持った分子を設計して、生物につくらせることも可能になるのではないかと思っています。  この第三世代のバイオテクノロジーが完成して初めて、多くの今のバイオテクノロジーの市場予測が占うような幅広い分野に、初めてバイオテクノロジーの影響が、貢献ができるようになるんではないかと思っています。その結果、農林水産、エネルギー、コモディティーケミカル、それから情報の分野にも多分バイオインダストリー、バイオテクノロジーというものが波及していくだろうと我々は期待しています。  次、お願いします。  現実に、もう既に第二世代のバイオテクノロジーの研究が進んでいます。これは動物細胞を培養しているところです。この培養基の中で遺伝子操作した細胞を大量培養しようとしています。  次、お願いします。  それからもう一つは、これは協和醗酵の防府工場にありますアミノ酸の大量培養施設ですが、こういったところで安いモラセスという、廃糖みつという、一度サトウキビを搾って、もう一度搾ったときに出てくるような安い原料を旺盛に食べながらアミノ酸に変えるようなプロの発酵工業用微生物を使った遺伝子操作がもう既に始まっています。この分野では日本の協和醗酵とか味の素、田辺製薬が世界をリードしています。  次、お願いします。  これは第三世代のバイオテクノロジーになりますが、ちょっと写真が悪いんですが、左側はラットの成長ホルモンを受精卵に導入してつくりましたスーパーマウスというものであります。これはごらんのとおり、同じ年齢のマウスに比べて二倍も大きさができています。現在、既に人の遺伝子、成長ホルモンの遺伝子を組み込まれた豚とか羊とか、そういうものまでつくられています。  ただ、残念ながらこれは病的な発現をしています。そのために、こういった技術で例えば牛のような豚をつくっても、その豚が現在の飼育技術で安く育てることができるかというと甚だ疑問です。むしろ糖尿病の豚をつくってしまうのじゃないかというおそれがありますので、我々が調和のとれた形で遺伝子を個体の中で発現するような技術というのはまだまだ手に入れておりません。これは二〇〇〇年以降の技術開発の課題になるだろうと思います。  次、お願いします。  もう一つは、先ほどたんぱく工学ということを申し上げましたが、バイオテクノロジーとエレクトロニクスが急速に、あるいはコンピューター技術が急速にドッキングし始めています。これはたんぱくをデザインするためにコンピューターグラフィックスを導入した例であります。最近では、このたんぱくの形をコンピューターグラフィックスでシミュレーションいたしまして、遺伝子操作でここのところを変えたらこうなるのではないかという予測が徐々にできつつあります。  次、お願いします。  もっとそのエレトロニクスとバイオテクノロジーの結合が進みますと、ここに出てまいりますバイオチップという概念まできます。我々の脳神経がこのようにコンピューター以上の働き、ある部分ではもうコンピューターの方が、例えば記憶とかそういうところではコンピューターの方が上回っていますが、判断とかそういったところではコンピューターはとても足元にも及びませんが、そういったものがどういうふうに行われているのかという研究がバイオテクノロジーによって進みまして、エレクトロニクスの情報処理の新しい概念が生まれてくるだろうと思っています。  次、お願いします。  もう一つは、コストの解決のために周辺技術の研究が相当に進んでまいりました。これはコンピューターコントロールしております発酵槽の一例であります。もう既に発酵槽が頭脳を持つような時代になっています。  次、お願いします。  こういった周辺技術も含めましたバイオテクノロジーの総合的な発展があって、初めて先ほど申し上げました広い分野にバイオテクノロジーの影響が波及するだろうと思います。かつて十年前は、バイオテクノロジーというのは生物学をやっていればいいというふうに思われる風潮がありましたが、現在ではバイオテクノロジーで我が国の産業あるいは企業が国際的に勝ち残るためには、バイオテクノロジーももちろんですが、発酵技術、精製技術、製剤技術、販売技術も含めた総合力が勝負だという認識が現時点では非常に高まっています。  次、お願いします。  あと五分で説明をしますが、バイオテクノロジーが今ハイテクの方向で第一世代、第二世代、第三世代で成長していると申し上げましたが、もう一つバイオテクノロジーが逆のベクトルで世俗化、それから地方に普及しているという面が最近非常に際立っております。これは皆様の選挙区にもまさに直接影響してくる分野ですけれども、これは特に日本において顕著であります。やはり日本の国民の技術を取り入れるどん欲さ、それから優秀さというのがここで示されているのではないかと思います。  ここにお示ししましたのは何の変哲もない稲に一見見えますが、この稲は、実は葯培養という細胞培養技術によって育種されたものであります。こういったものが今北海道の道立上川農業試験場で最終的な奨励品種の試験を受けています。ことしうまくいけば、来年には北海道ではこのお米がまかれて食べることができます。  次、お願いします。  今申し上げましたが、こういったバイオテクノロジー、遺伝子操作とか細胞融合とかそういった難しい技術ではないんですが、細胞培養を中心としました世俗化したバイオテクノロジーというものが地方に非常に普及しています。ここにお示ししましたのは、我々が地方にバイオテクノロジーがどういう普及をしているのかということを毎年調査している結果ですが、ここにグリーンにお示ししたのは熱心な県なんですけれども、続々とバ イオインダストリーを振興しようという政策が全国の自治体でとられ始めています。  次、お願いします。  先ほどは稲を例に申し上げましたけれども、発酵産業にバイオテクノロジーが忍び込みつつあります。例えば、現在もう既に仕込みは終わりましたが、細胞融合で清酒のコウジ菌としょうちゅうのコウジ菌を融合させたものをつくりまして、鹿児島の河内源一郎商店というところでは、新しいタイプの香りのいいしょうちゅうをことし仕込んでおります。うまくいけばクリスマスまでにそういった新しいしょうちゅうができるので、私は非常に楽しみにしているんですが、こういったところに徐々にバイオテクノロジーが浸透し始めています。  私も調べてびっくりしたんですが、清酒のメーカーが日本で二千社以上、それからみそ、しょうゆメーカーは合わせますと四千社から五千社あります。それから漬物のメーカーも五千社あります。それから納豆のメーカーは何と七百社もあります。こういった地方の中堅企業にバイオテクノロジーという一つのブームがありまして、今まで忘れていた研究開発に本腰で取り組んでいます。こういった基盤、地方の中堅企業が頑張って日本のバイオインダストリーを底上げするのではないかと私どもは期待しています。  次、お願いします。  もう一つは、今度は受精卵移植です。ホルスタインが肉牛を最近では産み始めています。  次、お願いします。  もう一つは魚です。これは我々常に複雑な気持ちになりますが、魚では雌の方が非常に体も大きくておいしいということで、受精卵を圧力とかホルモンで処理しまして全部雌にしてしまおうという技術が進んでいます。そのうち全部雌ばっかりになってしまうのではないかと恐れています。  次、お願いします。  その結果、バイオテクノロジーというのは、ハイテクという方向もありますが、もう一つは非常に身近なテクノロジーになりつつあります。その結果、地方にこういうアグロインダストリー・コンプレックスのような新しい産業技術体系が今後生まれるのではないか、あるいは生んでいかなければ日本自体が発展しないのではないかと私どもは思っています。  次、お願いします。  それでは、こういったハイテクとローテクと方に両方のベクトルで発展しているバイオテクノロジーを動かしている企業は何かということを少しお話しします。  ここにお示ししましたのは、ジェネンテックというアメリカのバイオベンチャーの雄の社長を示しています。ジェネンテックは、ことし秋にアメリカのFDAから正式に成長ホルモンが医薬品として認可されたために、米国では二十数年ぶりの医薬品メーカーとして脱皮いたしました。ベンチャーはもう既にメーカーに脱皮するものが出ています。ところが、時を同じくして多くのベンチャーは脱落して買収されています。  次、お願いします。  それで、現在のバイオテクノロジーの研究開発の主体は、欧米ではここにお示ししましたモンサントとか——次お願いします——次にお示ししますICIのような巨大企業になっています。これらの巨大企業は、医薬品ばかりではなくて食品、農業に対して猛烈な研究開発を進めています。彼らはもうマラソン競争を覚悟で二十一世紀に生き残るためにバイオテクノロジーを企業戦略の中に取り入れ始めています。  次、お願いします。  こういった巨大企業と日本の企業は、これから正面衝突をせざるを得ない段階にあります。これは明治乳業が一昨年小田原につくりました明治インスティテュート・オブ・ヘルス・サイエンスというバイオテクノロジーの研究所です。これは大体六十億円ぐらいです。日本の企業は数十億円を投じまして次々にバイオテクノロジーの研究所を設立いたしました。もうその設立ブームは一段落したと思います。  次、お願いします。  これは決して公式的な資料にはならないと思うんですが、我々の編集部の中で企業番付というのをつくっております。この横綱あるいは大関、関脇レベルまでの企業は、もはやテクニックという意味では欧米の企業と同等の、あるいはそれを上回るような技術を持ちました。ですから、八〇年以降我が国の企業は、猛烈な勢いで欧米の企業にキャッチアップしたということが言えます。  次、お願いします。  ただし、そこで問題が起きています。今我が国の企業は、技術的には追いついたんですが、一体何を商品化していいのかというアイデアに詰まっています。そのアイデアは一体どうして出てこないのかという原因をいろいろ考えますと、結局アイデアが出てくるのは基礎研究から出てくるものだと思います。商業化のアイデアが出てくる。  ところが、我々が米国と日本とを比べますと、基礎研究に対する投資が一けた違います。これは研究費のカウントの仕方にもよりますけれども、そういうカウントの仕方を考慮に入れたとしても、我が国では五分の一しか研究開発投資を基礎研究に出していません。そのために我が国の企業は、テクノロジーは導入できます、これはお金で導入できるものでありますけれども、しかし商業化あるいは国際的に競争力があるような商品を生み出すアイデア、それを手に入れるところでは非常に問題が起きています。そのため最近では、アメリカの例えばMITに数億円払って味の素が基礎研究の研究開発センターをつくるような動きすらあります。  次、お願いします。  結局、バイオテクノロジーのアキレス腱というものをまとめますと、一つは原料の問題です。結局、バイオテクノロジーと申しましても、発酵をするときに糖が要ります。微生物が食べる糖が要ります。協和発酵の調べでは、もはや既に我々は東南アジアが輸出可能なモラセス、先ほど申し上げましたけれども、我が国の大部分の発酵原料になっているモラセスの輸出可能な量の過半を輸入しています。ですから、欧米の各国とかあるいは東南アジアの国が、バイオテクノロジーでいろんな商品を工業化したときに、モラセスショックということが起こる可能性も否定できません。  それから、もう一つは研究者の供給です。これは、バイオテクノロジーのテクニックのところに関してはほぼ大分供給が満たされてきましたけれども、基礎研究の分野ではまだまだ足りないと思います。それは三番でも同じことを言っております。  それから、もう一つは産学の連携です。きのうも実はカリフォルニア大学の教授と話してみましたが、その方はベンチャーのサイエンティフィックボード、つまり顧問の一人であります。そういった緊密な産学の連携があって初めてバイオテクノロジーというのは実を結ぶんだろうと思います。残念ながら、我が国では国立大学が中心であるために兼職禁止規定ということがございまして、なかなか我が国の大学の教授が気軽に企業に行ってコンサルティングをするようなことはできません。ですから、これは非常に難しい問題をはらんでいると思いますが、何とかうまく産学の間で調和のとれた研究ができるような新しい仕組みを皆様お考えになっていただきたいと思います。  それから、もう一つはベンチャーキャピタルの整備であります。  それからもう一つ、行政の一元化ということをお話ししたいと思います。  例えば、これは今一番問題になっているのは、遺伝子操作でつくった新しい植物が、特許になるのか、あるいは種苗法として品種登録されればいいのかということであります。これは現在では両方とも日本では受け付けております。ところが、企業から言わせれば、品種登録をした場合には権利保護は非常に緩やかであります。これはどちらかというと農業生産者の保護のためにつくられたような法律でありますので、企業の権利が十分確 保、保護されるようなものではありません。そのために企業は特許として取りたいという希望が強くあります。アメリカではことし、これは九月か十月だったと思いますが、細胞バイオでつくったトウモロコシの物質特許が成立するという判断を米国特許庁がいたしました。  ですから、今後植物をつくるためには莫大な投資が要ります。その投資を回収できるように権利保護を保障してやらないと、我が国の企業というものは決して、やはりこれも商売ですから、バイオテクノロジーを使いました新品種の研究ということを行わないと思います。そういうような権利保護の整備が必要だと思います。ですから、特許庁がやるのか、あるいは農水省がやるのか、そこら辺をすっきりさせていただいて、あるいはどこまで農水省がやるのかというその線引きを何とか早くやっていただいて、企業に研究開発の意欲を引き起こすような舞台装置をぜひつくっていただきたい。  同じようなことは、例えば健康食品の分野とか、あるいは工業化の遺伝子操作のガイドラインという問題でも各省庁で縄張り争いが起こっていますので、ここら辺ぜひ皆様のお力ですっきりさせていただいて、企業が将来どれぐらい投資すればいいのかというような計算ができるような体制づくりをしていただきたいと思います。  随分長くなりましたが、以上で終わらさせていただきます。

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で宮田参考人からの意見聴取は終わりました。  これより宮田参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言願います。

松岡滿壽男自由民主党・自由国民会議

○小委員外委員(松岡満寿男君) バイオテクノロジーの現状と見通しにつきましてただいま詳細な御説明をいただいたわけでありまして、大変参考にさせていただきました。  この問題は、我々自民党の中でもバイオテクノロジーあるいはサイエンスについての議連なんかつくりまして、いろいろ研究もいたしておるわけでありまして、まさに二十一世紀に向けまして産業の分野でも大きなウエートを占めてくるだろうというふうに考えておるわけでありまして、政治がどのようなかかわり方をこれにしたらいいのかということについて御質問しようと思ったんですけれども、今アキレス腱につきまして、行政の一元化の問題とか、そういう御指摘もいただいたわけですけれども、具体的な予算の問題等につきましてお考えがあればひとつ伺ってみたいと思います。  それからもう一つは、科学技術がいろんな分野で進歩している、これはやはり科学技術の進歩というものは、考えてみますると人間が幸せになるための一つの手段としてこれを求めてきたんですね。ところが、いつの間にか科学技術というものがひとり歩きをしてしまっている、それが目的になってしまっているというところに一つの大きな問題がございますね。きょうは時間の関係でお触れにならなかったと思うんですけれども、バイオエシックスの問題、いわゆる生命倫理の問題というものもあるわけです。  これを進めていく段階で、例えばいろんな遺伝子のそういう操作によりまして、二倍のマウスとか、大きな牛と同じような豚とかいうようなことがありますね。それと同じように、人間の中でも、相撲取りをつくっていくとか、非常に強いプロレスラーとか、あるいはマラソン選手、非常にスタイルは細くて筋肉が強くて心臓が強い、そういうものがいろいろできていくだろうと思うんですね。オリンピックなんかもいろんな形で問題が出てくるだろう。そういう一定の、こういうバイオを進めていく上においての歯どめといいましょうかね、ルールというものが私はどこかでやはり議論され、整理されていかなければいけない問題が一つ大きな問題点としてありはしないか。そういうものについてのお考えをちょっと伺いたいと思います。  もう一つは、これが産業として成長していく過程の中で、医療からさらに食品とかファインケミカルとか、こう出ていく。現在、御承知のように非常に飽食の時代を迎えている国もあれば、アフリカのように非常に飢餓に苦しんでいる国もある。そういう中で、食糧生産にこういうバイオテクノロジーを使っていく。この前、筑波の万博で一万個のトマトというのがありました。そうなってきますと、経済の原則というのは需要と供給とのバランスにおいて決まっていくわけですね。もちろん、そういう品質が均一化して多量に出ていくということはいいことではあるけれども、反面商業の流通の過程の中では大きな問題が出てくるわけです。  ですから、なかなかそれを商業化していくということについては、確かに基礎技術というものがすぐ商品につながっていくということがバイオの一つの大きな特徴だろうと私は思うんですけれども、それだけに、この農林水産にこういうものが適用されていくときのバランスというものが、一体どのようにこれをコントロールしていったらいいんだろうかなということが、実用面で大きな問題としてありはしないかなという感じがするんです。ここにもやはり自然の摂理と科学との大きな溝というものがあるように感じるんですね。だから、非常にいいことではあるんだし、やっていかなければいけない。それはわかるんですけれども、その辺の問題をどう考えたらいいんだろうかなという感じがいたします。  今御指摘になりました、地方でいろいろな形でバイオテクノロジーが取り入れられていくということは、お酒としょうちゅうを合わせてつくっていくという段階では非常にいいんですけれども、それ以上に進んでいくと一体どうなるんだろうかという危惧が一つあるわけでありまして、そういう問題について先生のお考えがございましたら、ひとつお聞かせを願いたいと思うんです。特に我が国の場合は、発酵技術というものが非常にベースとして進んでおるわけですから、地方にもそれはあるし、そういうものを生かした我が国の進路というものもこれはあろうと思うんですが、今ちょっと申し上げました農林水産、現実の問題として、魚も雌ばっかりになってくると、これは確かにそっちの方が値打ちがあるんだろうと思うんですけれども、これはいかがなものだろうかと思うんですけれども、いかがでございましょうか。

宮田満日経マグローヒル株式会社日経バイオテク編集長

○参考人(宮田満君) 予算に関しては、私は先ほど申し上げて、余り考えはないんですけれども、一つは基礎研究を振興するような部分にぜひ強化をしていただきたい。  それからもう一つは、重複がある場合があります。それは、先ほど行政の一元化をぜひやっていただきたいと申し上げたことと裏腹なんですけれども、例えばジーンバンク、各省庁でつくっておりますが、あのジーンバンクを我々が利用したときには、各省庁をそれぞれ訪ねていって調べて、いただきに上がるということになるかと思うんですが、ここら辺はうまく調整していただいて、そうすれば予算の重複も少なくなりますので、しかも我々にとっては使いやすいジーンバンクができるだろうと思いますので、そこら辺の調整をぜひしていただきたいと思います。  それから、二番目の科学技術の進歩に伴うバイオエシックスのことですが、まさに今松岡先生が御指摘なさったとおり時間切れでスライドでは出しませんでしたが、私が持ってまいりましたスライドでは、脳のしわまで見えるような医学の診断装置、NMRのCTというものがありますが、これは最初見たときには、僕は解剖標本じゃないかと思ったぐらいクリアに出ているんですが、今はかぶるだけで見えるんだそうですが、こういった技術も片や進歩しております。  それからもう一つは、先ほど申し上げた、御指摘がありました遺伝子治療という、非常に我々の生命の根源に触れるような技術も進歩しております。そういう意味では、今までブラックボックスでありました人間というものが次々に暴かれると いうのが、今後二十一世紀に向かっての我々の社会が遭遇する最大の問題だろうと思います。人間はただの水と油とそれからお砂糖であるなんということに我々は果たして耐えられるかということがもう一つあります。  私どもの兄弟誌でありますビジネス・ウイークが実はちょうど調査した結果がありまして、遺伝子治療をどう見るかという調査があります。アメリカ国民の意見ですが、八割の方が治療目的あるいは診断目的であったらこれはいいだろうと。ただし、それを例えば雇用とか、あるいは学校の成績の評価、それから国家が要注意人物であるというようなときのスクリーニングに使うのは絶対まかりならないというような意見だったと思います。私もまさにそれはそのとおりでありまして、これから人間のプライバシーに触れる問題が非常に出てまいります。どこまで我々は自分たちの好奇心に歯どめをするかということをそろそろ皆様のところでお考えをいただく、国民のコンセンサスを得るような問題に直面していると思います。  現実にアメリカでは、NIHが遺伝子操作、遺伝子治療のガイドラインをつくるという過程で、そういった議論があるやに承っております。日本ではそれが今のところ欠落しておりますので、ぜひ皆様の御活動によって、我々も世論を喚起したいと思いますが、今まで好奇心というのは、パンドラの箱じゃありませんけれども、無制限に自由を得てきたところがありますけれども、そろそろ我々はその好奇心に対する何らかの一定の枠を設ける段階に来ているだろうと思います。これは非常にデリケートです。学問の自由にもぶつかってしまいます。こういったデリケートな問題をしかし今からもう考えないといけない状況に我々はあると思います。残念ながら私答えを持っていません。ただ、これは全国民のコンセンサスを得なければいけないという認識だけは強く持っております。  それから、三番目の農林水産の問題です。それは確かにあります。例えば嬬恋のキャベツでも、いつもでき過ぎてしまいますと、青刈りしてすき込んでいる風景を見ますと、確かに農林水産業は非常にギャンブルなんだなということがあります。それがバイオテクノロジーによって生産性が上がりますと、余計ギャンブルになる可能性も一方ではあるかと思います。  ところが、もう一方バイオテクノロジーというのは、松岡先生から御指摘いただきましたように、生産性をむやみに上げるという技術だけではございません。今多くの企業が興味を持っているのは、自然環境と農作物のつながりが一体どういうふうになっているのかということでございます。ここら辺のなぞが解けてまいりますと、生産調整、つまりいろいろな気候変動に対する農作物の成長というのが非常に安定して期待できるようになる。あるいは気候の予測というものが非常に的確になってまいりますと、そういった別の分野のテクノロジーとバイオテクノロジーが結びつきまして、ことしは例えば霜が非常に多そうだというときには、霜に強いような例えばキャベツをバイオテクノロジーで、もしその場でつくられておりましたら、そういうふうに利用されるだろうと思います。  ですから、僕は生産過剰よりもむしろ安定生産の方に、いっときは確かに混乱が起こると思うんですが、自由競争の原理さえ働いていれば、安定生産の方にテクノロジーが応用されていくだろうと楽観的な期待を持っております。ただし、私どもが今見るところでは、自由競争でない農作物が日本では一つ二つあります。主要農作物と言われるものであります。それは現在のようなバイオテクノロジーで生産力が増強された結果、ひとたまりもないと思います。と申しますのは、ただでさえ現在国際価格と乖離しております。それが安定的に生産でき、なおかつ高生産性の稲がもし外国でつくられた場合には、国際価格の乖離がますます激しくなる、こういう現状が必ず訪れます。  ですから、松岡先生の御心配はごもっともだと思いますが、私は自由競争あるいは自由市場がその心配をむしろいい方に転用して安定生産に向かうだろうと思います。ただ、自由競争がない市場では、このテクノロジーというのは、このままでは非常に悲惨な結果を招く可能性があるんではないかと、私どもは非常に心配しています。ですから、稲のような主要作物に対して技術革新を取り入れて、安定生産に向かうような市場の仕組みというのをいかにこれから導入していただくのかというところが、今後の大きな問題であろうと思います。皆様の検討をぜひお願いしたいと思います。

松岡滿壽男自由民主党・自由国民会議

○小委員外委員(松岡満寿男君) ありがとうございました。

竹田四郎日本社会党

○小委員外委員(竹田四郎君) 私、バイオテクノロジーというのは、今の御説明を聞いても、何のことだかよく実際にわからないのが現状でありますけれども、しかしそういう方向にあることは私もわかるわけです。  そこで、ちょっとこれはバイオテクと結びつくかどうかわかりませんけれども、日本の基礎研究が足りないということはもう前々から言われていることなんですが、ますますそういう意味では、今アイデアの出てこないところはそこにあるんだと、こういうお話なんですが、しかし一方、理科系といいますか、理工系のオーバードクターですね、これはあり余まって捨てるほど実はいるわけですね。実際オーバードクターが行き場所がないということで、あっちこっちでちょっと論文を書いたり、あっちこっちの講師的な仕事をしているというのが非常に多いわけですね。  こういう人たちというのは、どうして基礎研究と結びついていかないだろうか。あるいは先ほど言われた産業と学問との結びつき、その辺の問題にそういう人たちが何で行かないんだろうなということを常々考えているんですけれども、MEのお話も先ほど聞いたわけでありますけれども、そこでも基礎的な教養、学問というようなものも強調されていたわけでありますけれども、宮田先生もその点ではそういう点を強調なさっているんですが、しかし実はそういう大学院を出た研究者がいるというようなのは、どこに欠陥があるんでしょうか。

宮田満日経マグローヒル株式会社日経バイオテク編集長

○参考人(宮田満君) 実は、私もオーバードクターがいっぱいいる東大の植物学教室の出身であります。最近の学士会の会報を読みますと、東大の学長だった先生が、十年前は東大の植物に行くのは変わり者だったと一行書いてありまして、胸がじいんとしましたが、確かに植物とか動物のようなところに行くのは、先生御指摘のとおり、オーバードクター覚悟で行く研究者が非常に多かったわけです。それはなぜかと申しますと、学問のための学問を愛するためであります。  私は、それは一つの学問の研究の方向であろうと思うんですが、ただオーバードクターがこれほどたくさんいる現状をかんがみますと、我々少し考えを変えなければいけないんじゃないかと思います。つまり、学問のための学問がとうといのかということであります。せっかく我々は基礎研究を進めて、その成果をそれでは論文を書くことだけでいいのか、しかも大学での研究というのは国民の血税を使って行われたものであります。ですから、その研究成果を、むしろ商業化ということを通じて一般国民に還元すべきではないかという気が最近ではしております。残念ながら、十年前の大学の体制というのは、学問のための学問を愛する余り、そういった社会還元、学問の社会的な責任ということに対する認識が欠けていたんではないかと思います。  ですから、企業の方に伺いますと、オーバードクターになったような研究者を、どうしてオーバードクターを採用しないのかということを申しますと、理由が二つあります。一つはもう既にいい年になって頭がかたくなっているということと、もう一つは産業あるいは企業化研究というものを軽べつしているということがあります。ですから、そういった意識をそろそろ変えていただきたい。イギリスの研究者にこの間インタビューをさせていただいたときに、すばらしい言葉をいただ きました。科学が経済性を失ったら社会性も失うんだということであります。ですから、余りにも象牙の塔にこもるような研究開発体制というのは、ここでひとつ反省をしなければいけないだろうと思います。  ですから、先ほど産学連携のことを申しましたけれども、ここら辺で大学の方も考え方を改めていただく、それから国の方も考え方を改めていただく、それから企業の方ももっと目先の研究だけではなくて、長期的な研究開発にお金を出すような体制にしていただく。この三者がそういう意味で考え方を改めていただかなければ、このオーバードクターはいわば逃避先になっていますから、モラトリアム人間のたまり場みたいなものになっておりますので、そういった問題は決して解決できないんではないかと思います。

竹田四郎日本社会党

○小委員外委員(竹田四郎君) ありがとうございました。

刈田貞子公明党・国民会議

○小委員外委員(刈田貞子君) 途中からお話を伺いましたので何でございますけれども、私はかねがねこのバイオの問題を考えるに当たっては、先ほど松岡先生の方からもお話は一部出たように思いますけれども、やっぱりその技術がもたらす利益の再配分の問題というようなことが、これからやはりいろいろな形のテーマとして出てくるであろうというふうに思いますので、そういう再配分の問題について、ここらはいろいろ出てくるわけですけれども、先生はどんなふうなお考えを持っていらっしゃるかが一つ。  それから、私は農業の方に大変関心を持ってその委員会に所属しておりますものですから、先ほど先生が言われました、こういう技術に関する権利保護の保障というもの、こういうものが確立されなければ、こういう技術というものは進んでいかないし、また意欲を持たれないということの中で、種苗法とそれから例の特許法の問題が出ておりますけれども、私はこの問題について二度ほど質問いたしておるわけですが、非常に歯切れの悪い背景があるわけでございます。  先生がお考えになるには、この種のバイオテクノロジーのようなものについては、例えば今種苗戦争などと大分華々しくマスコミの書き立てている部分がありますけれども、ああいうことを背景にバイオを中心として物を考えた場合には、先生の個人的御意見としては、これは種苗法で保障されればいいのか、それとも特許法で保障される方がいいのか、国際的立場からはどうなのかということについて、二点お伺いいたします。

宮田満日経マグローヒル株式会社日経バイオテク編集長

○参考人(宮田満君) 再配分の点に関しては、今のところ余り考えはないんですけれども、ただ先ほど農業のキャベツの例でお話しいたしましたけれども、この再配分はバイオテクノロジーに限った問題ではなくて、新しいテクノロジーが出てきたときに、それによって得られる利益はどういうふうに最も合理的に配分されるのかといった問題だと思います。  これは、私はむしろ楽観的でありまして、政府の統制とか規制というような問題で扱うべきものではなくて、むしろ企業間の自由競争でそれが行われるべきであろうと思います。むしろ競争が激しければ激しいほど、その技術の成果を得る消費者にとっては非常に利益が来るんではないかと思っています。よりよい製品をつくろうという努力があるからです。  利益の再配分というのは、確かに僕は楽観的なものを持っておりますが、実はバイオテクノロジーというのは、時間がなくて御指摘できなかったんですけれども、生産技術だけではなくて、知識を得る技術であります。むしろ人間のなぞが次々に暴かれていきます。我々はまだ人間のことについてはほとんど知りません。我々の体の中には十万の遺伝子があります。十万のたんぱくがつくられていますが、現在わかっているのは百三十ぐらいのたんぱくしかわかっていません。ですから、十万引く百三十の未知の分野がこれから続々と明らかにされていきます。そういった知識はごく最先端の大学の研究室とか企業の研究室で得られるものであります。そういったものの知識の再配分ということが今後大きな問題になるのではないかと思っています。  微力ながら我々は、マスコミニュケーションの立場におりますので、そういったものをいかに一般大衆の方に還元して、皆様の問題として考えていただくかという情報のルートづくりというのを我々もやりますし、国でもぜひやっていただきたいなという気がします。そうではないと、ある発見が行われてから十年後ぐらいにその重要性に一般大衆が気づいて議論が巻き起こる、そのときにはもう手おくれであるというおそれがあります。ですから、情報の公開ということになるんでしょうけれども、それをいかに合理的にやるか、知識をみんなが共有するのかというところをぜひ皆様に御検討していただきたいと思います。  それから、権利保護の問題ですが、これは全く私の個人的な見解です。と申しますのは、まだ世界的に見ても植物に関して、バイオテクノロジーを応用した新植物に関して、特許法でいくのがいいのか、あるいは種苗法でいくのがいいのかということは、米国を除いて判断が下されていません。アメリカは、トリプトファンという栄養源が豊富なコーン、トウモロコシに関しては特許法でいくんだと、これは細胞培養でつくったものですが、そういう判断を示しました。ですから、アメリカも特許保護の方向に向かうだろうと思います。私も、実は個人的な意見ですけれども、特許法で保護されるべきであろうと思います。  その理由は幾つがあります。一つは、もう既に工業製品と同じような再現性を持ってバイオテクノロジーを使えば、例えば除草剤耐性の新植物をつくることはもはや既に可能になっているということです。これは特許を得るに値す各発明の要件を一つ満たしております。再現性、だれでもできる、つまり特許の記載を読めばだれでもできる、これは発明を公開できるということであります。ですから、私は特許法でやっていただきたい。  それからもう一つは、自家採種というのは実は種苗法で登録した場合にはできます。農家の方が、翌年自分たちの畑にまくために種をとっておく、この分に関しては権利が及ばないということでありますが、特許法でありますと、その分に関してもある程度のロイヤリティーを払わなければいけません。考えてみますと、工業製品では自家採種というような概念は決して当てはまらないものであります。ですから、その製品を使った場合には、この製品に対するロイヤリティーを要求するのは当然だと思います。私、先ほど申し上げたとおり、工業製品のようにもう新植物はつくられる時代が近づいています。そういった新しいテクノロジーの革新に対応した権利保護としては、種苗法よりもむしろ特許法だろうと思います。これは全く個人的な意見で、今後五年ぐらい論争が続いて、結局は決まることだろうと思います。

刈田貞子公明党・国民会議

○小委員外委員(刈田貞子君) ありがとうございました。

吉川春子日本共産党

○吉川春子君 今お話伺って、生物倫理と申しますか、バイオエシックスの問題が非常に重要だという感を私も強くしました。生命の尊重とか自然との調和という中で、バイオテクノロジーをどういうふうにとらえていかなきゃならないかというのは、確かに政治家とかあるいは一般の国民とかの大きな課題であると思うんですけれども、こういうものを研究開発し、実用化を進めていらっしゃる立場の人は、そういう生命倫理というような、バイオテクノロジーの開発にストップがかかるような方面については余り熱心ではないのか。それとも、そういう方々もやはりこういう問題について真剣に考えておられるのかどうか。参考人個人というよりは、一般的な傾向についてお伺いしたいと思うんです。  それから、生命倫理という観点ではなくて、もう一つバイオテクノロジーの名のもとに生産競争というんですかね、それがすごく激しい勢いで今後行われていくと思うんですけれども、こういう問題についても企業活動にどこが注文つけるのか。あるいはこういう過剰な生産競争を防ぐ手だてというものについて何か方法があるのか。お考 えをお聞かせいただきたいと思います。  それから、もう一つお伺いしたいんですけれども、バイオテクノロジーと産学共同の問題ですが、産学共同そのものについては私どもも一つの見解を持っているんですが、産学共同も活発に行うという立場に立ては、企業は採算重視ということをどうしても考えますから、基礎研究がおろそかになるんではないかというふうに考えられるんですね。  それで、基礎研究に対して例えば大学の一般会計からの繰り入れの予算などを見ても、来年度は六五%なんです。数年前までは八〇%ぐらい国費で出していたんですけれども、行革その他によってそういう状態になってきています。とすれば、国立大学は予算が乏しいわけだから、産学共同という形になるとやっぱり企業の要求する研究にすぐ飛びつくということにならざるを得ないと思うんですけれども、産学協同を認めるという立場に立って、しかも企業の研究費の援助が基礎研究にも注がれるような、そういう方向についてはどういうふうにお考えなのか。  その三点お伺いいたします。

宮田満日経マグローヒル株式会社日経バイオテク編集長

○参考人(宮田満君) バイオエシックスを研究者がどういうふうに考えているのかという問題ですが、我々もインタビューをいろいろな最先端の研究者の方にいたしますと、やはりみずからの中に生命を扱っているということで、非常に皆さん、研究者の態度が慎重であります。これは、無邪気に物理学を研究して原子爆弾をつくってしまった、ああいうようなことには多分ならないだろうと思います。というのは、研究者の心の中には、実はこれを扱うことは自分自身の、なぜこんなところにいるんだとか、なぜ生きているんだという自分自身の問いかけを追求しているということがありますので、自分自身がどこまで解明したらいいのかという当然な歯どめがかかっています。  ただし、もちろんこの研究競争の中には功名心というものがあります。ですから、二年か三年前に遺伝子治療を先走って行った研究者がアメリカのカリフォルニア大学におりましたけれども、そういった功名心争いのために内なる規制を破ってでも研究を進めてしまうというおそれはもちろんございます。そのときに科学のコミニュティーが、アメリカのようにNIHの研究予算を打ち切るとか、そういった制裁が果たして日本で行われるかどうかというところが今後の問題であろうと思います。  私はかなり楽観的に考えています。やはり生命の神秘に対しては、研究者といえども、何と表現したらいいでしょうか、おそれというものを持っているようであります。ですから、そういったものが内なる規制となっておりまして、例えば永遠に生きちゃうような人間をつくるような技術開発とか、そういったことをテーマにしようとは決して思っておりません。ですから、まだ科学者のヒューマニティーというものを信じていいだろうと我々は思っています。  それから、二番目の過剰な生産競争の問題であります。  確かに御指摘のとおり、現在例えばインターフェロンの研究開発に日本の企業が二十数社、水面下を入れれば三十社以上研究開発を進めまして、これは世界でも未曾有の国であります。同じくインターロイキン2に対しても十数社、ティッシュ・プラスミノゲーン・アクティベーターに対しても十九社、もうまさに過当競争をやっています。これを日本の活力のあらわれと言う人もおりますが、十九社のうちあるいは二十社のうち生き残るのは多分二、三社であろうと思います。我が国のバイオインダストリーの発展のためには、こういった異常な過当競争がいつまでも続けられては、貴重な企業の研究資源の浪費以外何物でもないと思います。  ただし、日本の企業もそうばかではありませんので、このような過当競争が起こっている現状は皆さん認識しています。ですから、第一世代では確かに過当競争が起こってしまいましたけれども、現在第二世代の研究開発で皆さんがおねらいになっているのはかなりユニークなところをねらっています。人のいないところをねらおうという研究開発が既に始まっています。そういった努力が行われることによって、欧米と比べれば日本の企業はあくまでも過当競争体質があると思うんですけれども、市場はだんだん合理的な競争におさまっていくだろうと思います。  それから、もう一つ重要なのは、過当競争がなぜ起こるかと申しますと、これは基礎研究を決定的に欠いているからであります。というのは、基礎研究を欠いているために、世界じゅうのいろいろな基礎研究の成果をずっと見ていて、物になりそうなものというのは、大体インターフェロンとかティッシュ・プラスミノーゲン・アクティベーターとか、数えられるぐらいしかリストがないわけであります。そのリストに対してみんながラッシュしてしまったために起こったわけであります。ですから、基礎研究でまだだれもが気づいていないような有用物質をそろそろ日本の企業も探ろうという段階に入っておりますので、基礎研究の振興がなされれば、このような過当競争体質というものが少しでも減っていくだろうと我々は期待しています。  三番目の産学協同の点であります。  確かに大学の研究費の予算はどんどん削られておりまして、大学もいろいろな財源を求めなくてはいけない段階に来ております。私、産学協同をやれやれと申し上げましたけれども、ここで一つ限定条件をつけさせていただきたいのは、公明正大に産学協同をやっていただきたいということであります。今までの、例えば卒業生を通じた企業と研究室のコネクション、これはまさに一種の家元制度みたいな、あるいは肉親関係のようなコネクションで今まで随分産学協同が行われてまいりました。ところが、残念ながらそういった肉親関係のようなコネクションで得られる技術が、この技術革新によって陳腐なものしか入らなくなっているおそれがあります。  ですから、今まで発酵産業は発酵関係の農芸化学とつき合っていればよかったものが、これから理学部にもあるいは医学部にもつき合わざるを得なくなっています、基礎研究をするためには。そのためには、今までになかったような新たな肉親関係を持とうという動きももちろんありますけれども、それだけではなくて、もっと成文化された公明正大なルールに基づいて、いろんなところと基礎研究を共同開発するような仕組みをつくっていただきたいと思います。  それからもう一つは、先ほどおっしゃられましたけれども、企業は目先の研究ばかりやるから基礎研究に余り力を入れないんじゃないか、そのおそれは確かにありますが、私が先ほど御説明申し上げたとおり、今目先の研究だけやっていたんじゃ企業はアイデアが得られないという状況になっております。ですから、むしろ企業は、今までやったことがないんですけれども、清水の舞台から飛びおりたような気持ちでいわば捨て金をしようと思っています。そういう意味では、何に役に立つかわからないんだけれども基礎研究やってみようという機運が芽生えておりますので、応用研究ばかりに走るというおそれはないだろうと思います。  ただ、今一番実は心配しておりますのは、それでもなおかつ基礎研究の分野でそういった企業の関心を呼ばない分野が生じてくるだろうと思います。それは、例えば私、植物学教室でしたから非常に身近に感じるんですけれども、牧野富太郎先生が集めた標本、植物の標本ですね、これはもう世界に冠たるコレクションですけれども、私が入学した十数年前はもう散乱しておりまして全然整理されていませんでした、これは最近整理されたようですけれども。ああいった植物学の基礎的な分類学のようなところには、多分企業がお金を出さないだろうと思います。それから、医学でも病理学のうんと基礎的なところとか。でも、これは学問をやるためには本当のベースになるものです。そういった分野にそれじゃどうやってお金を回すんだということを次にぜひお考えになってい たたきだい。  そのためには、例えば大学が窓口になって産学協同を受けたといたします。その研究費の例えば五%ぐらいプールいたしまして、そちらの方の本当に日の目を見ない、日は当たらないんですが非常に重要な研究分野の方に、大学として回すようなシステムができればいいんではないかというふうに思っています。これは全くの私見でありますので現実的かどうかわかりませんけれども、産学協同が基礎分野の方に及んできてもなおかつ日が当たらない分野があるんだという御指摘は、私はそのとおりだと思います。

藤井恒男民社党・国民連合

○藤井恒男君 先ほどスライドの中で一つ御説明がなかったんだけれども、遺伝子源の収集管理ですね。私、聞いた話なんだけれども、例えばアメリカと日本を比べたら遺伝子源の収集管理という面でもう甚だしい差がある。その差だけでこれから日本はもうとてもじゃないが太刀打ちできぬだろうという話を聞いたことがあるんです。どれくらいの差があるものなのか、私はこれ聞いた話で、自分が調べたことじゃないので教えていただきたいということ。  それからいま一つは、ここに出されている資料、開発中、臨床試験中というような企業、一社ならず私は直接話を聞いて、まあタッチしたこともあるんだけれども、我が国における輸入承認ですね。主としてこれは厚生省が管轄するわけだけれども、輸入承認、これは日米との間に非関税障壁の問題まで起こした経緯があるんですが、非常に時間がかかる。それから、基礎研究から応用研究、開発研究と進めて臨床は終わった、それから製造承認を受けるまでにとてつもない期間がかかる。だから、開発投資した企業が諸外国におくれをとる。極端な例を言うと、製造承認を出して、その後例えば西ドイツが製造承認を出すと、西ドイツが製造承認オーケーが出ても我が国は出ない。これは現にあるわけですね。だから、こうなってくると、国際特許の問題もあるし、企業家の開発意欲をそぐ結果になっている。  これは、私も厚生省にはたびたび指摘するんですよ。ところが、学者グループの何というか、封建的なあるいは学校に縛りつけられているというような状況の中から、一人の学者が反対すればだめだ、満場一致じゃないとだめだと、審議会がですね。だから、製薬なら製薬でやっておるんだが、その中には目医者さんもいる、耳鼻咽喉科もいる。ところが、内臓と関係ないのにその医者が反対すれば、満場一致じゃないからだめだと。そして、その審議会は年に三回ぐらいしか開かれない。こうなってくると、企業家としてはもう大変な問題になってくるわけですな、設備もつくって、人もそこに配置して売れないわけですからね。じっと一年、二年と塩漬けで待たなきゃならない。この辺非常に私は矛盾を感じているんだけれども、外国と比べてどうなのか。あなたがマスコミという立場から見て、一体それはそうなのか、それはそうじゃない、およそそんなものだというふうに判断されるのか、その辺ちょっと聞かせていただきたい。

宮田満日経マグローヒル株式会社日経バイオテク編集長

○参考人(宮田満君) 遺伝子源の収集の差なんですけれども、これは歴史的な差ですね。先ほど植物のコレクションの話を申し上げましたけれども、アメリカでは、あそこは植民地から出た国家でありますので、建国以来種の収集には非常に力を入れております。ですから、そのために探検隊を世界各地に送りまして有用植物の遺伝子源を集めています。なおかつ、ただ標本として集めているんではなくて、それを栽培特性を調べたり、あるいはそれを育種材料としていろんなものを、品種をつくり出していくような一種の研究の流れですね、アクティブコレクションと言うらしいんですけれども、そういった研究の流れを彼らは持っています。  日本の場合には、どういう形で遺伝子源のコレクションがつくられたかをいろいろ聞いてみますと、農水省なりあるいは微生物工業技術研究所の研究者が、自分たちが研究するために微生物を私的に集めている。それが寄り集まったものがコレクションということになっているわけです。ですから、そもそも思想が違います。ですから、いろいろな海外から遺伝子源を集めてきて、それによって自国の農業とかあるいは産業を振興するんだという、一本筋の通った遺伝子源の収集管理、利用体制というものがひとつ日本ではない。しかも、建国以来ずっとやっておる歴史的な厚みがありますので、遺伝子源の収集でも、これ正確な数字ではないんですけれども、多分五分の一とかそれぐらいの点数しか日本では持っていないと思います。  それからもう一つ、私は米国のATCCという、これは民間の機関なんですけれども、半分は国家予算で運営されているんですけれども、そのATCCという遺伝子源を管理する一種の会社なんですが、そこを訪れたときに見たんですけれども、彼らは完全に遺伝子源のデータベースをつくって、それをいろんな利用者からの問い合わせに役立てようとしています。というのはどういうことかと申しますと、遺伝子源は集めているとこうが研究をサポートするためのサービス機関として働こうという志を持っているということであります。  日本の遺伝子源は、確かに点数はそこそこはありますけれども、そういう外向きな発想で実は集められたりあるいは利用されてきたりしたことは決してありません。ことし農水省が民間に自分たちが持っている遺伝子源をオープンするような手を打ったのは、これは初めてなんじゃないでしょうか。ですから、そもそも遺伝子源に対する考え方が大きく違って、それがしかも時間的にも大きく違うために、今では決定的な差ができているという気がします。  ただ、日本でも、例えばゴマの世界的なコレクションを持つ研究者がいたり、あるいは稲ではフィリピンのIRRIという研究所には負けますけれどもそこそこコレクションを持っていたり、ユニークなコレクションを日本では持っていますので、そういったものを大切にはぐくんでいって、世界のそういった遺伝子源の収集施設と交換するなり何なりすることによって、遺伝子のコレクションをふやしていくという手はあると思います。  ですから、今後それはもっとサービスに徹しろということと、それから世界じゅうの遺伝子源の研究機関、収集機関と協力してどんどんコレクションをふやす。そのためには日本自身がユニークなコレクションを集める。世界と同じようなことで点数だけ集めているのは大きな間違いでありまして、日本のコレクションがこれを持っているからうちのコレクションをやろうということになりますので、ユニークなコレクションをどれだけつくれるかというところが今後の問題だろうと思います。  それからもう一つは、これは藤井先生のお考えのとおりだと思います。ただ、医薬品の場合には急げばいいのかという問題が一つあります。例えばサリドマイドのような薬禍事件を日本では起こしてしまいましたが、アメリカではFDAがサリドマイドを許可しなかった、そのためにそういった悲惨なことは起こりませんでした。ただ、それは科学的な根拠に基づいて追加データを要求することでおくれるということであります。それと、単に今おっしゃったような事情で、全然サイエンティフィックじゃない事情でおくれるというのとは別な問題でありまして、今藤井先生がおっしゃったようなことでおくれているというのも我々は随分伺っております。ですから、そういう意味では、制度的な問題で新薬の製造承認をもっと迅速的に、あるいは合理的に行うことができるだろうと思っています。  それからもう一つ、先ほど冒頭に御指摘いたしましたが、人のインスリンがことし日本でも承認されましたが、これは何と三年もおくれてしまいました。これは藤井先生が今御指摘にあった問題を内包していると思います。一つは、企業が、塩野義製薬が臨床開発を進めるのが確かにおくれたこともありますが、それ以外にやはり遺伝子操作を使いました画期的な新薬ということで、日本の 方ではそれに対する対応が非常に遅かったということであります。アメリカでは八二年の十月に承認が出ましたけれども、英国ではもっと前に出ています。西ドイツでももっと前に出ています。  現在は情報が瞬時にして伝わる時代であります。ですから、日本の厚生省が何でもっと欧米から情報を収集して、少なくとも一年は早く製造承認が、半年といいましょうか、半年は早くできたんではないか。もっと技術の進展に対して対応ができるような情報収集と審議体制というものをとるべきではないか、これはもうジャーナリストの立場から思っております。

藤井恒男民社党・国民連合

○藤井恒男君 終わります。

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) ありがとうございました。  以上で宮田参考人に対する質疑は終わりました。  宮田参考人には、お忙しい中を本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。当委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。  なお、本日参考人の方々から御提出いただきました参考資料等につきましては、その取り扱いを小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梶木又三自由民主党・自由国民会議

○小委員長(梶木又三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会します。    午後零時四十分散会

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