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103回国会参議院1985/12/06

科学技術特別委員会 第3号

発言数
6
登壇者
3
会派数
1
開催日
1985/12/06

会議録

馬場富公明党・国民会議

○委員長(馬場富君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、海洋開発に関する件を議題といたします。  本件について、参考人として三菱重工業株式会社技術本部顧問岡村健二君及び東京水産大学助教授大森信君に御出席をいただいております。  この際、参考人の方々にごあいさつ申し上げます。  岡村参考人、大森参考人には、御多忙のところ貴重な時間をお割きくださいまして、まことにありがとうございます。  当委員会は、科学技術振興対策樹立に関する調査を進めているところでございますが、本日は海洋開発について専門家の方から御意見を賜り、本調査の一助としたいと考えております。  両参考人には、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日の議事の進め方について御説明いたします。まず、参考人の方からそれぞれお一人四十分程度御意見をお述べいただいた後、速記を中止いたしまして、懇談形式で自由に質疑応答をしていただきたいと存じます。  それでは、これより参考人の方から御意見を承ります。  まず、岡村参考人にお願いいたします。

岡村健二三菱重工業株式会社技術本部顧問

○参考人(岡村健二君) 岡村でございます。本日、このような機会をいただきましたことを厚く御礼申し上げます。  私は、海洋開発の全般のお話を申し上げさしていただきたいと存じますが、日本の国と海とのかかわりがどうなっているかということを、もう一遍最初に簡単に頭に入れておく必要があると思います。  日本は、極東の非常に細長い国土が狭い島でございますけれども、非常に長い海岸線を持っておりまして三万キロ以上ございます。それからもう一つは、付近に黒潮、親潮という、南と北から暖流、寒流がございまして、このおかげがございまして水産資源の非常に豊富な場所にあるということでございます。  それから、港湾関係、これは湾もございますし、海運が非常に便利であるということでございます。これは恐らく有史前から非常に重要な要素になっておったと思います。したがいまして、海洋につきましては、我が国は古くから水産とそれから海運、したがいまして港湾、こういった方面の仕事は非常に活発に行われてきたものと考えております。  もう一つ重要なことは、我が国が温帯地方にあるということであります。これは港も活発に動けるという非常に重要なことでございます。これは有利な点でございます。  それからもう一つ有利な点は、最近わかりつつあるんでございますが、将来海底にある鉱物資源というものがやがて開発される時代になるであろう、そのときに、世界には七つの海があると申しますけれども、太平洋こそまさしく資源の豊庫であるということが、最近の科学的調査の結果はっきりしつつある、その太平洋の一角にあるという点は極めて重要なる要素であると考えます。  一方、我が国のすぐ太平洋側には、世界一深い海溝という溝がございまして、そこにはいろいろな現象が起きております。これは沈み込みと申します現象によりまして地震のもとになっております。それから、大きな大洋の西側に起こりますところの台風、これは自然現象として今どうしても避けられない現象でございまして、こういった地震であるとか、それに伴う津波、あるいは台風というふうななかなか難しい問題も抱えておるという事実がございます。    〔委員長退席、理事塩出啓典君着席〕  そこで、さらに海を大切に考えなければならないということは、現在の気象予報、あるいは長期間にわたる気候の予測というのがございますが、これはなかなか難しい問題でございますけれども、もしこの気候の予測まで的確にできるような時代になれば、これは社会全体にとりましても極めて重要なるものになるわけでございます。このためには、単に気象だけでは不十分でありまして、海洋の状態を調べて総合的に判断するということが絶対に必要な要件でございます。この意味におきましても、海を十分調べることの重要性がいかに大きいかということがおわかりかと思います。  次に、海洋開発と申しますが、海洋開発という言葉は、割合最近、この二十五年間程度使われ始めました言葉であります。どういうことかということにつきましてはいろいろ議論されたことがございますが、国連で議論いたしましたときにもこういうことになりました。もちろん、海に関係した仕事というのは昔からあったわけでございますけれども、今これから言う海洋開発というものは、海洋を十分によく調査をしてその真相を知り、しかもその海洋を人間社会のために役に立つようにするためにはどうしていくか、新しい技術、科学というものを応用して、今までは応用していなかったような新しい分野で海を社会に役立てる方式、これを海洋開発と言おうというふうに解釈いたしまして、その線で現在使われておるわけでございます。したがって、この海洋開発というようなお話が出る前に、もう何千年という間に、水産業もございましたでしょう、それから船で物を運ぶ海運もございましたでしょう、従来ど おりのようなそういう伝統的な海洋に関した仕事はありますけれども、これは一応海洋開発という言葉の外に置きましょうと、こういうふうな解釈でやっております。  したがいまして、海洋開発の仕事は何であるかと申しますと、まず海洋がどういうものであるかをよく知らなければいけません。私どもは海を見て、海はこういうものだというふうに感じるようでございますけれども、実はこれは本当の海の一部分であり、しかもその表面しか見てないわけです。海の持つ実態というものは非常に広いものでありますし、地球的な大きさから考えなければいけませんし、一歩海面から下に入りますと全く違った世界であり、特に深海底に関する人間の知識は、まだまだ非常に少ないと言わなければならない。逆に言えば未知の世界であると申し上げてよろしいかと思います。そういったものを知るためには、それに要する観測、調査の技術が必要であります。これがまず第一。海を知らなければ、それをどうやって人間に役に立つようにしたらいいかという考えがまとまるはずがありません。したがって、調査、観測は非常に重要でございます。  その次には、どういう手法で人間の社会に役に立つようなものがあるだろうか。現在のところ考えてみますと、まず第一に生物資源の問題でございます。それから海洋の持っているエネルギーの問題、それから鉱物資源があります。そのほかに海をめぐっての防災の問題あるいは救難の問題、それから保全の問題、さらには我が国のように国土の狭い場合には、海洋のスペースをいかに活用するかというふうな問題がございます。その意味におきまして、科学及び技術を開発しまして、今までなかったものを開発して人間社会に役に立つというふうに持っていく。人間の社会に役に立つということは、当然経済効果もあるものとなり、しかもそれが事業化して発展していくという条件が必要でございます。したがいまして、海洋というものは陸上と条件が違いますので、特に海の中に入りますと極めて異なった状況でございますので、海の中で仕事をする、あるいは観測するためには、陸上とは異なった技術が要ります。ある場合には、宇宙開発よりも確かに難しい問題がたくさんございます。そういったものを克服していこうということでございます。  また、海というものは、数多くの国の間を流れていく流動的なものでございます。当然国際的な問題が非常に多いわけでございます。また非常に膨大な海洋でございますので、これを調べるにつきましても、一国の力だけでは難しい場合がございます。したがいまして、国際協力という面からも極めて重要なことが認識されつつあるわけでございます。  翻りまして、過去二十年間に海洋開発についての幾つかの各国のステップを翻ってみますと、我が国におきましては、昭和三十六年に海洋科学技術審議会が発足いたしました。最初は主として科学調査の問題を審議していただきました。しかし、総合的に海洋をどう活用していくかという方策の答申というのは、昭和四十四年七月の第三号答申において最初に本格的な施策が答申されました。それから以後今日まで、ずっと進展を続けてまいりました。昭和四十六年に海洋科学技術センターが設立されました。お手元に海洋科学技術センターのパンフレットがございますが、御承知のとおりでございます。    〔理事塩出啓典君退席、委員長着席〕  一方、アメリカはどうしていたかということにつきましては、画期的に海洋開発に手を打ち始めましたのは、やはり昭和三十六年のケネディの天然資源に関する特別教書でございます。  海洋を開発するためにはやはり総力を挙げなきゃならないという点から、四十一年に海洋資源工学開発法という五年間の時限立法をつくりまして、大統領みずからが音頭をとりまして、委員長は副大統領が行うという処置をとりまして、四十四年にストラットン委員会の勧告、極めてこれは有名な報告でございますが、これが出されまして、これに基づきまして政府内部の海洋開発部門の統合を図りまして、四十六年には現在の国立海洋大気局、NOAAと申します部局が設立されたわけでございます。  一方、この教書は一九七一年から一九八〇年までの十年間に、海洋開発のために特に八十億ドルの研究資金を投ずべしという答申が出されまして、後から調べてみますと、そのとおりに実行したようでございます。  一方、フランスにおきましては、昭和四十二年に国立の海洋開発センター、CNEXOという組織をつくりまして、昨年、さらにそれを拡大して水産研究所も合併いたしまして、IFREMERという組織に改称しております。その間、フランスとアメリカは共同研究を幾つかやっておりますが、目ぼしいものといたしましては、昭和四十八年に米仏共同で深海底を探査するFAMOUTH計画というプロジェクトを実施いたしました。その結果、後ほどちょっと申し上げますが、新しい鉱物資源として注目されております熱水鉱床が発見されたのでございます。  西独は海の非常に少ない国でございますが、つとに海底の鉱物資源の開発に心がけておりまして、米国と共同いたしまして、昭和五十六年に中部太平洋におきまして重要な新しい発見、コバルトクラストの発見をいたしております。  それから英国、ノルウェーにつきましては、御承知のように北海におきまして大きな油田の開発を進めておりまして、大きな成果を得ております。  その間、昭和四十八年から、国連におきましては、将来の海底資源の帰趨をめぐりましていろいろ議論が沸騰いたしまして、その結果として第三次海洋法会議が発足したことは先生方御承知のとおりでございます。約九年間の会議の結果、若干の先進国を除きまして妥結いたしまして現在批准を待っておりますが、現在までの批准国は約二十六と聞いております。規定によれば六十カ国の批准をもって発効することになっております。  そこで、海洋開発という分野における我が国の事業はどの程度本当に動いているのかという実態を少し申し上げてみたいと思います。  海に関係した事業としましては、まず第一に水産業でございます。五十八年の統計によりますと、金額にいたしますと約二兆九千億円でございます。それから外航の海運、これが約二兆三千億円でございます。もちろんこれは海運の運んだ仕事でございますが、この船の上には約六十数兆円の物資が輸出及び輸入で運ばれているわけでございます。それから、今度は海洋開発を進めるためのいろいろな機械類でございますが、このようなものが約三千六百億円製作されております。それから、機械その他を使いまして海洋工事などのマリンサービスをいたします事業が約二千二百億円。それから港湾、土木、建設関係が約六千億円でございます。これを全部合わせまして約六兆三千八百億円でございまして、GNP二百七十八兆円に比べますと約二・三%でございまして、必ずしもまだ大きなものとは言えないわけでございます。そのうち海洋開発産業というのは今申し上げましたもののうちの最後の方でございまして、従来の水産、海運というものを除きますとわずかに一兆一千八百億円程度でございまして、GNPのわずか〇・四二%ということになりましょう。  では、それだけの海洋開発事業をやっておりますけれども、その内容を国内、国外というふうに分けてみますと、輸出が約三五%ある。民需は二〇%しかない。官公庁の需要で四四%、一番多くございます。これは特に港湾、土木、建設及び機器の一部でございますが、こういった関係で現在の海洋開発の産業というものは何で支えられているかというと官公庁の需要が一番大きい、その次が輸出である、要するに国内にお客様が少ないというのが実態であり、むしろ外国の方でそれが活発であるので、機器をつくっては輸出しようという努力をしておるのが実態でございます。  一方、我が国の輸出入状況につきましては、私から申し上げるまでもなく御承知のとおり、非常に輸出の盛んなものもございますが、どうしても 輸入しなければならない重大な幾つかのアイテムがございます。  その中でまず第一には、一番大きなものはやはりエネルギー、燃料関係でございます。非常に石油に関しましては我が国は約九九%以上を外国から仰がなければならない。つまり国内からは生産されてないという大きな問題がございます。  それからもちろん食料品、御承知のとおりこれも非常に大きな問題でございます。  それからもう一つは金属の鉱物及び非鉄金属、例えばニッケル、銅、コバルトというような金属類でございますが、これが非常に足りません。我が国は私が子供のころは産銅国でありまして、銅を輸出していたことを覚えております。しかし、今や銅は非常に足りなくて大部分を輸入に頼っておるという時代に変わってきております。  このように我々の生活をあるいは産業を支える基本になるエネルギー、それからその原材料、特に鉱物資源に関しては非常に難しい状態にあることを認識しておく必要があろうかと存じます。  そこで、我々は将来海洋開発を進めて社会のために役に立つのにはどういう点を考えてやるべきかという社会的なニーズの点からまとめてみたいと思います。  生物資源につきましては、御承知のように生産量そのものは五十八年におきましても千百九十七万トンという数字が出ておりまして、この数字は世界一でございます。しかしながら、やはり若干必要なものは輸入しておりまして、輸入金額を調べてみますと約九千二百億円もございます。  それから水産業そのものは、遠洋漁業が二百海里問題からぐっと圧縮されまして非常に問題が大きいわけでございます。  一方、我が国の国民の食生活のたんぱく質資源は約四四%が魚介類からとられておりまして、これは他の外国の一般の数字でございます八%とか九%というものに比べますと圧倒的に多いわけで、非常に重要な食糧でございます。したがって生物資源に関しましては、将来のことを考えまして大きな手を打つ必要があると考えます。  次は、石油、天然ガス関係でございますが、我が国の消費量は非常に省エネに努めまして大分少なくはなりましたけれども、それでも現在の産業を支えるためには二億トン以上を必要といたします。ところが我が国から出るものはわずか二百五十万トン相当でありまして、一%にしかならない。したがいまして、日本の国内を相当に掘削いたしましても油田の賦存が見つからないのでございます。極めて少ないのでございます。外国にはあるところには相当にございます。したがって我が国といたしましては、自主開発を海外において行おうという努力をいたしております。それによりましてかなり外国から日本の技術力で開発した油を輸入するように努力しておりますが、その数量も我々の所要数のわずか一一%しかございません。したがって、その他の残りの約九〇%近くのものは外国から依然買わなければならないという実態でございます。  したがいまして、今後もこの石油の生産につきましては、あらゆる技術を駆使いたしまして発見開発に努めなければならないと思いますが、海底からかなり油が生産されております。世界じゅうの生産量というのは金額にいたしますと百五十四兆円もございます。そのうちの約四分の一は海底から生産されております。ですから相当の量が海底にあるということでございます。今後はこの海底からのパーセントはさらにふえるであろうと見込まれております。しかしながら、易しいところはかなり開発が進んでおりまして、今後石油開発をするところはもっと深いところ、例えば水深が三百メートルあるいはそれ以上という非常にやりにくいところが出てまいります。あるいは極地地方、非常に寒いところで掘らなければならない。そういう問題がございますので、技術的に非常に重要な問題を持っております。  一方、油にかわる代替エネルギーということにつきましては、必死に新技術を勉強しているわけでございますが、海洋エネルギーから将来見込まれるものといたしましては幾つかございます。  その一つは、燃料としまして海水中のウラン、非常に微量ではございますけれども海水の中にございます。ところが海の水の量は非常に多いものですから、もし全体をとるとすればウランの量は十分あるわけでございます。いかにこの薄いウランを濃縮するかという技術、これは基本技術でございますのでまだ完成というまでには至っておりませんけれども、非常に重要な技術開発であると存じます。  一方、比較的実現の早いものとして考えられておりますのが波浪エネルギーあるいは温度差エネルギー。海面は温かい、しかし底の方に行くと冷たい水がある、この温度の差を利用いたしましてそのエネルギーを電気に使おうということになります。これは非常に有望ではありますけれども、しかしながら現在の技術をもってしては発生された電力の費用が非常に高いものになっています。これをコストダウンするための努力が今求められておるわけでございます。こういったものは経済的にペイしない限り実用化は難しいものですから、経済的に早く実現できる方式を選んで各国とも努力をしております。  例を申し上げますと、温度差発電におきましても、クローズドサイクルとオープンサイクルと二種類あるんでございますが、クローズドサイクルが大電力用には非常によろしいと思われますが、オープンサイクル方式のものの方が離島でございますとか、小容量ではございますが実現は早いと見られております。単に発電するだけでなしに、それによって海水から淡水を同時に得られる、そういう副産物がある。さらに冷水を養殖に使うと非常に効果があるというような副次的な利益もございますので、将来の応用が期待されるものでございます。  一方、鉱物資源につきましては、御承知のように深海にマンガン団塊というものがございまして、これは非常に多量にあるということが今から約二十年ほど前に発表されまして、これがもとになって海洋法会議というようなところまでいったわけでございます。将来は極めて重要な資源になると思います。これは銅、ニッケル、コバルト、この三つが特に重要な問題でございます。このような元素は我々の現在重要な産業でございますいわゆるハイテク産業、これに欠かすことのできないものでございます。  それで、このほかにもまだいろいろあるのではないかということで、海の底の資源につきまして、アメリカ、フランス、ドイツあたりは相当に長期にわたって基礎研究をいたしました。その結果、先ほどもちょっと申し上げましたように幾つかの新しい資源を発見しております。その一つが熱水鉱床でありまして、マンガン団塊は五千メートル程度の水深のところにありますけれども、熱水鉱床は二千五百メートルから三千メートルぐらい、かなり浅くなってきております。さらには、コバルトクラストというコバルトが非常にたくさん入っている、一%以上入っているようなクラストが太平洋の真ん中の島あるいは海山——海の山と書きますけれども、太平洋の中には島がございますが、そのような島のほかに背の低い海の山がございます。海面からそれが出ない場合には島になりません。そういうのを海山と申します。その海山の周辺にへばりつくようにいたしましてコバルトのたくさん入ったクラストがついております。よくよく調べてみますとコバルト、ニッケルのほかに白金が相当入っているということが最近はっきりいたしております。こういったものが、今度は深さはどのくらいかといいますと、浅いところは八百メートル、深くても二千メートル、大分浅いところでございます。したがって、浅いところであれば、これはとるのには容易でございます。  このような新しい海底鉱物資源を考えてみますと、対象金属は何であるかと申しますと、銅、ニッケル、コバルト、それからマンガン、亜鉛、貴金属関係としては銀、金、白金、そのほかにいろいろレアメタルがございます。これはエレクトロ ニクスなどに必要なゲルマニウムでございますとか、オスミウムであるとか、そういったものが発見されておるわけでございます。  以上のようなことが科学的調査で発見されまして、これを具体的に開発をどうもっていくかということが今後の技術開発の大きな問題であり、やがて二十一世紀初頭あたりに大きな資源的な分布の再編成が行われるであろうということが予測されます。  おもしろいことには、先ほど申し上げましたように、太平洋こそこういった鉱物資源の宝庫であるということがはっきりいたしました。ほかの海にもないわけではない。しかしながら、品位のいいもの、そういうものがほとんど太平洋に集中しているという事実がごく最近認識されました。したがって、ヨーロッパのフランスとかドイツなんというのは、ああいう我々に比べれば海岸線の小さな国でありながら非常に熱心に海洋調査をやり、しかも太平洋にみんな出てきてやっておるわけで、いかにこの関心が強いかということがわかるかと存じます。  ところで、この海そのものですが、海そのものの挙動というものは非常に複雑なものでございまして、その実態は、わかっているようでいて実はまだわからないことが非常に多うございます。というのは、海の中に入りますと、酸素は簡単には得られませんし、三百メートルも潜りますと真っ暗でございます。四六時中真っ暗でございます。そのほかに圧力が高い。したがって普通の状態では人間は生きてられません。したがいまして、この耐圧の問題がございます。そういうところでよく調べて、しかも作業をもするというためには特殊な技術が必要でございます。  まずは、その海の中を調べるというためにどうやって調べるかということにつきましては、まず潜水船というものが最も有効でございます。しかしながら、最近のロボット技術その他を応用いたしまして、必ずしも人間でなくても、無人の探査機というものをつくってある程度これを補うことができないかという努力が今懸命に続けられております。  それから海の実態を知るというのは、海の水というのは、絶えず動いておりますし、温度も変わりますし、塩分も変わりますし、中の栄養分の移動もございます。これをよく探査する、あるいはモニターするということができればその実態がだんだんわかるわけでございますが、そのためにはそれをはかる技術が容易ではございません。しかも、それをはかったらすぐ、リアルタイムで、実時間方式でそれを知るということが望ましいわけでございます。そういったためには観測技術が非常に重要であり、これができるかできないかで、先ほど申し上げました資源開発がうまくいくかいかないかということも決まるわけでございます。  また、海底におけるいろいろな資源の発見あるいは地震の予知、そういった非常に重要な問題につきましては、海底における地形でございますか、地殻の挙動をはかるいろいろな測定器具がございます。そういったものを早く開発してそれを設置し、実態を知らなければ真相はわからないわけでございます。この辺が現在の海洋開発を進めるための基本的な技術開発の最も強いニーズのあるところでございます。  また一方、海面の表面の状況につきましては、もちろん調査船ではかることもできますけれども、むしろ人工衛星を利用いたしまして遠隔探査観測システムを使うということは極めて有効でございます。来年海洋衛星が打ち上げられることになります。これは今受動型のセンサーをつけておりますが、能動型センサーのものを早く整備する必要があろうかと存じます。  一方、陸上の狭い我が国といたしましては、海上の空間をより利用するというためには、そこに構造物の技術——この構造物は、さびたり、生物がついたりなどいたします。それから波が非常にございますのでその辺のところをよく対策をとらなければならないという問題がございます。  一方、海は非常に広いわけでございますので、これを一国の力だけで調べるには相当の機材と人材と費用が必要でございます。これを国際的に協力してやっていこうという風潮が最近特に強まっております。こういったものにつきましては、例は幾つかございますが、最近では黒潮の研究にも、来年からは中国と共同でやろうということが進んでおるやに伺っておりますが、これなど、日本の周辺の黒潮はよくわかっておりますが、その発生の源は東シナ海でございます。これも日中共同によりまして恐らく実態が明らかになってくるかと存じます。  その他深海底の鉱物資源をめぐっての問題、さらには地球科学の問題の深海底の掘削計画などたくさんございます。  また、一番重要でございます有人潜水船につきましても、我が国でも深海潜水艇の計画がございますが、現在のところ六千メートル潜れる潜水船は、アメリカに一隻、フランスに一隻あるだけでございます。非常に数の少ないものでございますので、これらのオペレーションにつきましては、国際協力をするということが極めて有意義であろうと存じます。  このようなことから考えまして、最終的には資源、エネルギーの補給、さらには現在の陸上生活をより豊かにするための気象予測、気候変動の予測、さらには地震、津波あるいは台風の予知の精度をぐっと上げるということが非常に重要であります。これは具体的には非常に大きな問題は幾つかございます。早くこれらの問題を調べるためには、どうしても陸の上だけでは十分ではありません。現実にそういった源は海底にあるわけでございます。したがいましてこういった海洋技術を促進いたしまして、陸上生活にもそれを反映して豊かなものに持っていくということが必要であろうと存じます。  ありがとうございました。(拍手)

馬場富公明党・国民会議

○委員長(馬場富君) ありがとうございました。  次に、大森参考人にお願いいたします。

大森信東京水産大学助教授

○参考人(大森信君) 大森でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。  ただいま岡村参考人から海の概略というふうなところをお話しいただいたものですから、私は主に生物資源のことについて先生方にお話しをさせていただきたいと思います。  何世紀もの間私たちが知っていた海というのは、太陽の光を浴び、風に動く水面のことだったと思います。人類は大気を通して星を眺めたり、太陽を見て、そういうことで天体とともに生きてきたわけですけれども、水を通して深海とか海底を見るということはありませんでした。厚い大気層を通過してきてもわずかに太陽光というのは二〇%か三〇%ぐらいしか減らないんですけれども、その光が水に入りますと途端に減衰し始めます。そしてよほどきれいな海でも百メーターも潜れば人間の目には暗黒の世界になってまいります。なぎさいわゆる波打ち際と海面、水面だけが今日でも多くの日本人の海に対する感覚であったところに、華やかな宇宙開発に比べると海の研究とか開発とかはいま一つ進んでない原因の一つがあるのかと私自身考えてみたりいたします。それから船べりから海面を見おろして、もしこれが飛行機の窓から下を見るように、海の中にいる魚とかそれから海底の様子がわかっていれば、そういうものを見ることができたら、私たちの海から得る富とか、海に対する考え方はどういうふうに変わっていただろうなというふうに感じることがございます。  海を見るということで私が意味するのは、海の中を見るということなんですが、海の中を見るということは、長い間の人間の想像を超えることだったんですけれども、今ようやくそういうことができるような科学技術の進歩がございます。海を見るということの意義の大きさ、そして海の中で自由に動いて仕事ができるということは、これは海の開発ということを考えると画期的なことで、私たちは新しい、今まで人類が経験しなかった時代に入りつつあるということが言えると思います。  今日私たちが、食糧あるいは家畜の飼料として利用している水産物の総水揚げ高は、大体年間七千五百万トンでございます。日本の漁獲高はほぼその一五%ぐらいを占めております。これらの値というのは、この十年ぐらいの間はほぼ横ばいでございまして、これは今の漁獲方法や利用の仕方ではもうこのあたりが限界であって、今後漁獲高が急に大幅にふえることは期待できないということを示しているようでもあります。これをふやすにはどうすればよいのか、一体どのぐらいまでの可能性があるのか、それを探ることが私たちの課題でございます。  地球上のほとんどすべての生物活動の源というのは太陽の光でございますが、その光のエネルギーを光合成によって生物が利用できる化学エナージーに変えることができるのは植物だけです。海ではその役目は単細胞の藻類すなわち植物プランクトンが果たしております。この植物プランクトンというのは、ほとんどが十分の一ミリメートル以下の大きさでございます。この植物プランクトンの成長とか繁殖には、光と栄養物質が必要でございますけれども、彼らが盛んに光合成活動をする深さは、水の濁った沿岸では表面から数メーターぐらい、それから水の澄んだ熱帯の外洋でも百五十メーターぐらいまでです。あらゆる生物資源のもとは、海の場合はこの植物プランクトンの生産量にかかわっているわけですから、彼らを基礎生産者と呼びますけれども、海の基礎生産というのは平均三千八百メーターもある海のごく薄い薄皮か膜のような場所だけで行われているのでございます。  栄養物質というのは、基礎生産が行われている表層ではどんどん使われて、下層の方にたまってまいります。ですから陸から川の水などを通じて栄養が流入したり、それから海が浅いので上下の水がまざりやすい沿岸とか、あるいは栄養に富んだ深いところの水が強い流れによって表層に運ばれるようなところで、これを私たちは湧昇流域と呼びますけれども、そういうところで基礎生産量は高くなります。これに対して外洋の真ん中の大きい部分というのは、年じゅう栄養不足で、いわば海の砂漠と言えます。地球上の外洋と沿岸と湧昇流域の面積にはほぼ九〇対九・九対〇・一ぐらいの開きがございます。もう圧倒的に外洋の面積が大きいわけですね。ところが、基礎生産量というのは、大体五〇対一〇〇対三〇〇ぐらいの開きがございます。つまり、逆に沿岸と湧昇流域が非常に高いということですね。  こうして生産された物質は、海の中に住んでいるあらゆる生物の間で見られる、食う、食われるという関係によって分配されて、次第に高次の、高い栄養段階にある消費者に渡ってまいります。実際には、この食う、食われるという関係というのは、複数の生物の間で複雑に入りまじっておりまして簡単ではないんですけれども、おおよそ基礎生産者である植物プランクトン、それからそれを食べる動物プランクトン、さらにそれを食べる小型の魚、それから大きな魚、やがてその次は人間にくるわけですけれども、そういうふうに、海の中では幾つかの栄養段階に分けられるわけです。外洋では、基礎生産物は五つ程度の栄養段階を経て大きな魚に到達しますけれども、沿岸とか、それから湧昇の起こるところでは三とか一・五とかいう段階で最上位に到達いたします。もしその一つの栄養段階を経ることにエネルギーが等しく失われていくとすれば、栄養段階が少なければ少ないほど上位の、つまり私たちが利用している大型の魚には都合がよくえさが十分回ってくるということになりますね。今基礎生産が仮に一万あるというふうに仮定しますと、そして栄養段階を経るごとに九割が失われると仮定しますと、外洋では最終的には一方が一になってしまう。これに比べますと、湧昇流域では二百ぐらい残るわけです。こうした計算をもとに、外洋では大体百六十万トン、それから沿岸と湧昇流域それぞれでは一億二千万トンの魚の生産があるだろうと、まあ一年間にですけれども、そういうことを推定している研究者がございます。現在の全世界の漁獲高というのは、先ほど申しましたように七千五百万トン前後ですから、全体で世界の海が生産することのできるだろうと思われる魚の量というのはその三倍ぐらいになるわけです。いずれにしましても、面積比では全部の海の一割程度しかない沿岸と湧昇流域で、私たちの必要としている魚介類の全体の九〇%の漁獲が、その非常に狭いところで得られているというところに御注目いただきたいと思います。  このことは、これからの海の生物生産や生物資源とかその開発を考える上で大変重要で、私たちの海の利用も、生産力の高い沿岸域とか湧昇流域を中心にして考えていって、この水域の特性を生かした有効利用、資源管理、環境保全が図られ、進められるだろうと思います。  生物資源の開発には、大体五つの研究や技術の向上が考えられます。第一に生物資源調査研究、これは、一つ一つについて後ほど御説明申し上げます。第二に資源培養技術、第三に漁場造成技術、第四に未利用資源の開発技術、五番目に、漁具とか漁獲方法の開発に関する技術、これらにつきまして、これから、現状あるいは問題点を私見を交えて述べさせていただきます。  先ほど私は、海の中が見えないと申しましたけれども、見えないだけでなくて、海の中というのは水が動き、それから生物が動くという三次元、四次元の世界でございます。まあ、そういうところでは、見えないということは、調査をするにも研究をするにも大変難しい問題がございます。例えば、きのうくんで調べた水というのは、きょうどこに行ったのか、どれぐらい周りの水とまざったのか、そういうことを正確に知る方法はございません。また、仮に同じ水を追跡できても、その中にいる生物がきのういたものと同じかどうかということを確かめることはほとんど不可能です。そういった、海で私たちが今までほとんどあきらめていたようなことが最近次第にできるようになりつつあるように私は感じます。それは、有人潜水機器の開発あるいは無人の観測機器、それから計測・採集器具の進歩、あるいはまた、環境制御装置というのが随分発達してまいりました。  考えてみますと、そういう機械というのは、海を研究していた人間だけではなかなか開発できなかった面がございます。やはり海洋以外の分野からのサポートが必要でございまして、海の研究を進めるにはそういうふうなあらゆる技術を駆使して、そういう測器類などの開発を図っていくということが全体の進歩につながるというふうに考えております。  水産生物の資源量というのは、非常に変動が大きくて、解明は重要な課題ですけれども、主な有用な魚についてでさえその成長に従ってその魚がどこに行くのかとか、それから、資源の補充の機構がどうなっているのかという点に関しては、私たちは知らない点の方が多いわけです。資源の変動というのには、人間の力の及ばないものがたくさんございます。  よい例が、例えばペルー沖の湧昇流に見られるアンチョビー、これはカタクチイワシの一種ですけれども、そういう資源がございます。ここには南東貿易風というのがいつでも吹いているんですけれども、数年に一度それが弱まりまして、湧昇流が衰えるとともに表層の水温が高まって漁獲量が急に下がってまいります。この異常現象というのは、エルニーニョと呼ばれるもので、非常に一般に広く知られておりますけれども、最近では一九七二年と七三年、それから一九八二年、八三年に規模の大きいエルニーニョの現象が発生しまして、一九七一年には一千万トン以上もあった漁獲が、一九七三年には五分の一以下に低下いたしました。  一方、日本の太平洋岸では、それまで年間三十万トン以下で一時ほとんどいなくなったと思われていたマイワシが、一九七五年ごろから急にとれ出しまして、一九八二年には三百二十九万トンに達し、マイワシだけでも我が国の水産物総漁獲量の三分の一近くを占める豊漁となり、浜値が下がって問題になったのは、先刻御承知のことと思い ます。異常気象の原因とか機構が明らかにされつつある一方で、そういうカタクチイワシとかマイワシの資源に何が起こっているのかの究明も急がれていますけれども、まだ知見は十分ではございません。一種類でも資源の動向とか生物の生産機構が十分に解明されると波及効果は非常に大きいんですが、それだけに目的を絞った集中研究が我が国ではなかなか行われないことと、それから、すぐれた計測機器の開発というのがまだ十分には進んでいないということを私は問題の一つに挙げておきたいと思います。  次に、資源培養技術についてお話ししたいと思います。  資源培養技術、こういう技術というのは、ある海の中の生態系の中に、例えばマダイとかヒラメとかいうような有用な魚の子供を放しまして、保護管理を行って、漁場の天然生産力をその生物に最も有効に利用させて増産を図ろうというものです。クルマエビだとかカキだとかいうふうなほぼ一生を通じて管理養殖ができる種類とか、サケとかサクラマスというふうな母川に帰る性質、生まれた川に戻る性質のある魚についての生産技術の進歩には目覚ましいものがございます。種苗生産は、マダイとかヒラメとかクルマエビとかアワビとかあるいはノリ、ワカメとかいったような海藻について大量生産技術が確立しまして、養殖及び放流用として実用段階に達しております。ホンダワラとかカジメとかいう海藻がございますけれども、そういうものにつきましても人工採苗による藻場の造成が進められております。藻場をつくるということは、そこで有用な魚の子供が生活する場所として重要なことでございます。さらに、育種学とか遺伝子工学が最近非常に進歩しておりますけれども、その応用によって、成長のよい雄とか交雑種とかをつくったり、それから成長促進のためのホルモンを量産することが実験的に進められておりますし、やがて病気に強い魚とか肉質のよい系統を育てることもできることと思われます。  種苗生産につきましては、かなり明るいところまでその技術が進んでおりますけれども、まだ難しいところも幾つかございます。ハマチは皆様方よく御存じの魚で、これは養殖は進んでおりますけれども、このもとのところ、いわゆる子供は天然からとってまいります。本当の意味で言いますと、資源をふやすという意味で申しますと、天然採苗というよりも、やはり子供を親から人工的に採苗するということがどうしても必要でございますけれども、そのための技術、例えば卵を産む親魚をどういうふうに育てるのか。それから、そういう親魚を、私たちは催熟技術と呼びますけれども、早く成熟させる、卵を産むようにする技術の開発というのが今盛んに行われております。これはどういうふうなことをするかと申しますと、温度を変えてみたり、それから日照時間、光を当てる時間、そういうものを人為的に制御してみたり、あるいはホルモンとか甲状腺の粉末を与えてみたり、そういうようなことをして成熟させるというようなこともやっております。資源をふやすには、完全に管理するということができる種類もございますけれども、大部分のものがなかなかそこまで至っておりませんので、海に一応放流するわけですけれども、放流効果を高めるには、少なくとも放たれた子供たちがどのように移動、分散し、育つのか、そしてその環境収容力、つまりそれが育つ海がどのくらいの数の子供たちを育てる能力があるのかということを事前に調べておかなければいけません。水域ごとに環境条件は異なりますし、それから生態系も異なってまいります。そういうことでいろいろ調査をやっているわけですけれども、その現実を申しますと、サケとかサクラマスとかいうふうなごく数例の魚を除きまして、今もうほとんどの魚が放流されてから親になるまでどのように移動し、どのように大きくなるのかがわかっておりません。  一方、栽培漁業の単位というのは、対象になる魚が一生を過ごす水域に広げて考える必要がございますけれども、我が国で行われている放流事業の多くは、行政区画とか漁業権設定区域とかいうふうないわば人間が決めた枠内で、およそ魚の生活を考えない、そういう枠の中で試みられているというのが現実でございます。  一般に海の生物が一生を通じて最も生理的に弱く死にやすいのは幼生の時代なんです。幾つかの魚種で確かめられておりますように、大体生まれました子供がその幼生の間、つまり生まれて一週間から二週間の間に九割ぐらい死んでしまいます。甚だしいものはもう九五%とかいうふうなことになるんですけれども、そのぐらいは死んでしまうわけですね。しかし、それから後というのは割合に強く、ほかの生物に食べられなければ大きくなるのです。ところが、その多目的利用の著しい沿岸水域では、その放流魚を保護するための規制とか規則とかいうのが必ずしも効果的ではございませんで、一方でせっかく大きく育てたマダイとかヒラメの子供をすぐそばでとっているのをしばしば見ることがございます。これでは何のために増殖事業をやっているのかと思うわけでございます。  日本海でも夏になると対馬暖流に乗って南方からクロマグロの子供が入ってまいります。これはヨコワと呼ばれて大体大きさが三十センチぐらいですか、それで二キロぐらいの大きさなんですけれども、これをどんどんどんどんひき縄でとってしまうわけですね。ところが、これなんかはもうそこまで大きくなればなかなか死ぬわけでございませんので、二、三年待てば見事な百キロもあるような大きなマグロに育って大群をなしてやってくるということはほぼ確実なんです。  こうした問題の起きる背景には、総合的な資源管理のシステムができていないことによると私は考えております。増殖にはその管理というのが前提です。これからは生物を単位とした広い一つの水塊とか一つの大きな海とかを考えて、そこでも資源培養技術の進歩を図らなければいけないと思いますけれども、例えば日本海とか東シナ海とか黄海とか、そういうところを一単位にした考えが必要だと思うんです。そのためにも漁民というか、漁業者の水産科学知識の啓蒙、その人たちのいわば意識の向上ですね、を図るようなこと、それから国内及び隣接海域の国家間の漁業管理を含めた政策の見直しが必要ではないかと思います。海の国際協力というのはその意味でも大変重要なことでございます。  次に、未利用資源のことについて少々お話しさせていただきます。  南極の海にはナンキョクオキアミというのがおりまして、これは捕鯨にかわる新しい水産資源として宣伝され、スーパーマーケットなどでも売られておりますのでその名がよく知られておりますけれども、この資源量は極めて大きく、この種類だけでも七千万トン程度、つまり今の世界全体の総漁獲高に匹敵するぐらいの漁獲が期待されると言われています。現在、国際学術連合傘下の南極研究科学委員会の計画のもとにバイオマスと呼ばれる多国間の科学技術協力が行われておりまして、我が国も積極的にこれに参加して、ナンキョクオキアミを含む南極洋の生物学や生態学の研究を行っております。また、我が国は昭和四十七年から試験的な操業を行って、毎年三万トン程度を漁獲しておりますけれども、ナンキョクオキアミは鮮魚食品としてはエビにはちょっとまだ勝てませんし、漁場が遠隔の地で、漁期が限られているなど、事業の発展には経済性からの困難がつきまとっております。また、ナンキョクオキアミのほかに、沖合の中層とかそれから深海にはハダカイワシ類とかソコダラ類とかいうふうな未利用資源がありまして、これもやはり注目されているものですけれども、これらの生態にはまだよく知られていない点がございます。一般に深いところにいる生物は、繁殖とか成長は極めて遅いのでございまして、今はたくさんいると思っていても、それを大量にとってしまうと資源の補充に時間がかかり、生態系に大きな影響を及ぼすおそれがございます。さらにこのようななじみのない食材、食品ですね、それが市場で歓迎されるかどうかが問題 です。私たちの目や口や舌というのはなかなか保守的でございまして、新しいものを喜んで迎えてはくれない。食糧資源の開発にはそれぞれの民族の食習慣とか歴史とか宗教とかそういうふうな社会的背景を理解し、そしてその上での適正な食品づくりを進めなければならないと思います。  資源の開発とともに従来利用されることの少なかった資源の有効利用を図る必要もあります。特定の値段の高い魚種のみを漁獲の対象にすることとか、それから処理加工能力の乏しさのためにせっかくとっても利用されないままに洋上とか沿岸で捨てられている生物資源が少なくございません。こうした投棄魚の量は一年間に数百万トンに達するだろうと、そういうふうに言われております。混獲物をできるだけ少なくする漁法技術の開発と、現場で使える簡易軽便な処理加工施設の開発普及への努力が必要だと思います。イワシやサバや海藻などは従来家畜や養魚の飼料にされておりまして、人間の口にも少しは入っておりますけれども、全般的に申しますと低利用のたんぱく源ということが言えます。こういうものを大量消費型の食品素材を開発することに努力するということも望まれます。  また、今後海洋生物資源については、食品化ということばかりでなく、エネルギー資源とかそれから薬品素材としての種々の可能性について研究開発が行われる必要がございます。もちろんその一部は実験段階に入っておりますけれども。  我が国の漁具、漁法技術というのは世界の最先端を行っておりまして、カツオやイカ釣りは一部ロボットによって無人操業ができるようになりました。しかし、なお海面下で使う測器の開発には立ちおくれが目立ちます。魚群探知機は日本の中程度以上の船にはほとんどついておりますけれども、それで魚種の判別や資源量の測定など、そういうことをしようとしますと精度が不足しております。海況や漁況の把握は現在では航空機による観測が既に実用化され、人工衛星の利用も現実のものとなりつつありまして、情報の整備、提供についても日本海洋データセンターとか、漁業情報サービスセンターなどが意欲的に活動を行って効果を上げております。しかし、精度の高い現場の情報を収集し、必要なものは解析して即刻利用者に提供するという技術面では、まだまだこれからやらないといけないことが少なくございません。どこにどんな魚がいるのか、潮目はどこにあるのか、そういうようなことが簡単にわかれば漁労効率の向上と生産コストの低減に直ちにつながります。  それからもう一つ、これからの漁業というのは、大量に魚をとるということじゃなくて、値のよい魚を上手にとる賢い漁法の方にもますます向くだろうと思います。同じ魚でも新鮮さによって値段が随分違ってまいりますから、ですから効率的で、小型で、しかも魚種の選択性のある漁具の開発が必要でしょう。また、たくさんとれたらそれを一定期間生かして蓄えておけるような設備や技術の開発、そういうことにももっと目を向けるとよいと思います。  我が国の海洋研究とか開発技術というのは、先進諸国にほぼ近い水準にございますから、途上国とか国際機関から水産資源あるいはそれ以外の天然資源の調査、開発に多くの国際協力の要請がございます。また、公海の調査とか観測を円滑に行うためには国際協力が有効な場合が少なくございません。魚が国境を持たないわけですね。ですから、ここまで自分のところだと言っても、どこかに行ってしまうわけですけれども、生物を中心に考える資源の有効利用のためにも、知識、情報の国際間の交換というのは非常に重要でございます。そういう面でも、そういうことを前提にした共同研究がますますなされるだろうと思いますけれども、この点に力点を置きたいと考えております。  世界に窓口を広げる国際性のある領域というのが、これは海洋研究なんですけれども、ほかの国に対して何か貢献できるものを持っているということは国の財産です。そういう意味では、日本の国の財政制度というのは予算単年度主義になっているために、将来の財政的約束が取りつけにくいということや、協力事業のために国外に出向する人材や制度が少ないということが協力への全面的な寄与をためらわしている原因になっている事実も考えていただきたいと存じます。  先進国との協力に関して言えば、生物資源開発でも何でも、やはり日本が何かよその国の持っていない能力とか技術を有するということが最も重要でしょう。そのような領域を重点的に伸ばすというところにも、もっと力点を置く必要があると私は思っております。  生物資源の利用は、人類が最も古くから手をつけてきた海洋開発でした。漁業という大きな産業が存在し、社会構造の中に確固たる位置を占めている我が国では、ほかの資源開発よりも、それ以上に資源、それからそれにつながる採捕、それに今度は市場というトータルな見方で資源管理とか開発の政策を進めていく必要があるんじゃないかと思いますが、漁業者が安定して生活を営み、納得して人類共通の財産である生物資源を積極的に守ろうという姿勢で開発と管理に参加して、私たちが海を心と物の両方の恵みの場として長く子孫に残せるような配慮が今必要ではないでしょうか。  生物資源開発のための科学技術が、どんな大きな花を開き、実を結ぶかは、日本のあるいは世界の海洋たんぱく資源について国がどういう考えを持っているかによって決定されることのように思います。  本日はどうもありがとうございました。(拍手)

馬場富公明党・国民会議

○委員長(馬場富君) ありがとうございました。  以上で参考人の意見聴取は終わりました。  これより、参考人がお述べになりましたことを中心にして、委員の皆様には御自由に御発言いただきますが、発言されます際には、挙手によりお申し出いただき、委員長より指名をさせていただきます。  それでは速記をとめてください。    〔午後二時二十一分速記中止〕    〔午後三時八分速記開始〕

馬場富公明党・国民会議

○委員長(馬場富君) 速記を起こしてください。  他に発言がないようでしたら、本日はこの程度にとどめます。  岡村参考人並びに大森参考人には、当委員会のために貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時九分散会

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