予算委員会 第7号
- 発言数
- 295 件
- 登壇者
- 30 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1985/03/15
会議録
○委員長(長田裕二君) 予算委員会を開会いたします。 昭和六十年度一般会計予算、昭和六十年度特別会計予算、昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。 ─────────────
○委員長(長田裕二君) この際、中曽根内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根内閣総理大臣。
○国務大臣(中曽根康弘君) チェルネンコ・ソ連邦最高会議幹部会議長の葬儀参列のため訪ソに関する御報告を申し上げます。 三月十二日から十五日までの間、私は、安倍外務大臣とともにソ連邦を訪問し、十三日午後、モスクワの赤の広場で行われました故チェルネンコ・ソ連邦最高会議幹部会議長の葬儀に参列するとともに、クレムリンにおいてゴルバチョフ・ソ連邦共産党中央委員会新書記長と会見して、日本政府及び国民の弔意を伝達し、また天皇陛下の御弔意をも伝達いたしました。葬儀参列に先立ち、同日午前、労組会館において献花、弔問を行いました。 ゴルバチョフ新書記長とは、十四日午後改めて正式に会談をし、平和と軍縮の問題、特に核兵器廃絶につきまして話し合うとともに、二国間問題については、私より日本の平和への念願と他国に脅威を与えない節度ある防衛政策を説明し、対話の強化拡大を通じて相互理解を増進し、領土問題を解決して平和条約を締結することにより、長期的に安定した両国関係を確立するとの我が国の基本方針を述べました。双方とも今回の会談が極めて有意義であったと確認し、かつ私の訪ソにつきまして先方より謝意の表明がありました。故チェルネンコ議長の葬儀という悲しい機会でありましたが、日ソ両国間の対話が実現したことは今後の日ソ関係の発展にとってよい影響を与えるものであると確信いたしております。 なお、今般のモスクワ滞在中、十三日に各国首脳との間に積極的に個別会談を行いました。 マルルーニー・カナダ首相との会談においては、良好な両国関係の一層の強化及び新ラウンドの積極的促進について合意を見ました。 ミッテラン・フランス大統領との会談においては、近年とみに強まっている両国間の種々の分野における交流をさらに一層増進することと、私の訪仏についてもいろいろ意見を交換いたしました。 コルー西独首相との会談では、来るべきボン・サミットを成功に導くべく双方間で協力を推進することに意見の一致を見ました。 ブッシュ副大統領との会談におきましては、同副大統領より米国の対ソ政策についての説明があり、また、日米貿易問題については、私より目下懸案となっている問題について全力を挙げて解決すべく努力していることを説明いたしました。 また、ペルチーニ・イタリア大統領及びラジブ・ガンジー・インド首相とも会談をいたしました。それぞれ有益な会談でございました。 これらの各国首脳との個別会談は、今後の我が国の外交を推進していく上で積極的意義を有するものと確信いたしております。 以上で御報告を終わります。 ─────────────
○委員長(長田裕二君) それでは、これより矢田部理君の残余の総括質疑を行います。 まず、加藤防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。加藤防衛庁長官。
○国務大臣(加藤紘一君) 前回の昭和五十九年度第二回対港特別訓練とフリーテックス85に関する矢田部委員の質疑に対する答弁を補足いたします。 海上自衛隊は、米海軍との間で昨年十一月十五日から十一月三十日までの間、本州東南方海域において昭和五十九年度第二回対潜特別訓練を実施しましたが、同訓練の終盤、米海軍独自の演習、フリーテックス85参加中の三個米空母部隊より支援を受けたところであります。 フリーテックス85は、米海軍の実施する艦隊レベルの演習の一つであり、昨年十月中旬から十二月初めにかけて五個空母部隊を中核とする艦艇約六十五隻、航空機約五百機、人員約三万四千五百人が参加して、第三艦隊及び第七艦隊の担当海域で行われた高レベルの演習と承知しております。 海上自衛隊がフリーテックス85参加中の米空母部隊から支援を受けるに当たっては、同演習の目的が艦隊レベルの練度の向上を目指すものであること、演習を実施する上で必要な想定はあるが、特定の国からの攻撃を念頭に置くといったいわゆる戦略想定はないことについて、米側との調整の過程で事前に確認しておりますが、それ以上の詳細については承知いたしておりません。 いずれにせよ、昭和五十九年度第二回対潜特別訓練はフリーテックス85とは別個に計画、実施された独自の日米共同訓練であり、同訓練の際、フリーテックス85参加中の米空母部隊より支援を受けたことはあるものの、海上自衛隊がフリーテックス85に参加したということはありません。 現在、防衛庁としては、今後米海軍がフリーテックス演習を実施するかどうかは承知しておりませんが、一般に自衛隊が米国との間において訓練を行うか否かについては、まずその訓練が集団的自衛権の行使や、ICBMなど我が国が保有することの許されていない兵器を我が国が使用することを前提とするものでないかどうかなど、所掌事務の遂行に必要な範囲かどうかを当該訓練の目的等から総合的に検討し、これによって法的に可能であるとしても、さらに当該訓練を実施することが政策的に妥当かどうか、教育訓練上の効果がどの程度あるかを慎重に検討した上、判断すべきものと考えております。 以上でございます。
○矢田部理君 今の防衛庁長官の答弁には依然として納得できない点が多いのであります。 特に、この演習は、先般私が指摘をしましたように、アメリカの戦略に深く組み込まれて、ソ連を仮想敵国とした大軍事演習であるという点に特徴があるわけでありまして、総理、大変このたびは御苦労さまでございましたが、弔問外交の最後にゴルバチョフ書記長との会談の際、日本の防衛政策に疑念を表明されたというような報道もあるわけでありますが、まさにそういう政策などを含めてソビエトは警戒をし、疑念を持っているのではありませんか。その疑念とは一体どういうものだったのでしょうか。日本が人為的につくり出した障害を取り除くことが日ソ関係の改善にとって大事だというふうに言われたとも伝えられておりますが、その辺の状況についてお話をいただきたいと同時に、今回の会談が今後日ソ関係改善のための契機たり得たのかどうか、その認識と見通しなどについて少しく説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 大事な参議院の予算審議中に二日間の時間をいただきまして、お留守いたしまして大変恐縮に存じております。この貴重な時間を休ませていただきましたが、皆様方に対しまして果たして御期待にこたえたや否や、甚だじくじたるものがございますが、私といたしましても安倍外務大臣とともに精いっぱいの努力をしてきたつもりでございます。 結論から申し上げますと、初めて日本の行政のトップの者とソ連の政権のトップにある者が、悲しい機会ではございましたが、会うことができまして、まず双方の基本的見解を十分に述べ合ったと思います。その双方の基本的見解につきましては、一致した部分もありますし一致しない部分もございました。そして、一致した部分については今後ともお互いに積極的に努力しよう、友好を増進するためにお互いに善意を持って努力しよう、そして今回の会談はお互いに甚だ有益であり有意義であったと。ゴルバチョフさんは最後に立ち上がって握手して別れるときに、極めて有益でありましたと、そういうお話でございました。私は極めて意味があったと思いますと、そういうことでお別れをしたのでございます。 会議の冒頭にゴルバチョフさんから先に発言がございまして、ソ連政府としては日本との間に長期的な、安定的な友好関係の存続を望みます、対話を強化してまいりたい、日本が世界的に果たしている役割については一定の評価もいたしておりますと、そういう発言が実はあったのでございます。それで、ソ連側の考え方の開陳がございました。その中に、日本の安全保障等の政策について最近の傾向はソ連側もやや疑念を持たざるを得ないような要素があるのではないかと憂えておりますと、そういう趣旨の発言がありました。 それから一番終わりのころ、いろいろまた締めくくりの話をしましたときに、先方から人工的につくり出した障害という表現がありましたが、それは何を意味するのかは私はわかりません。そういうような問題は不要なものでありましょうと、そういうようなことを言っておりました。私は一致する部分については大いに協力しましょうと、そういうことで話を終わったと、そういうことでございます。
○矢田部理君 最後のところでまた若干触れるかもしれませんが、従来の論議に戻しまして、今防衛庁長官からお話がありました内容についても依然として幾つかの疑点、疑念が私なりにまた残っているわけであります。例えばこの演習は仮想敵を持っていたわけではない、ソ連を敵視してやったわけではないというふうに言われますが、どうも長官としてはアメリカの説明を聞いただけでそう信用されては困るのであります。演習全体のシナリオは知らない、アメリカがそう説明しているから仮想敵でない、敵を持っていないというのは説得力がありません。どんな大軍事演習でもあるいは小さいものでも、どこどこを敵として演習しますなどということを高らかに宣言する演習はないのでありまして、これは主観的な判断ではなくて客観的に問題を見るべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤紘一君) 累次申し上げておりますけれども、私たちそのフリーテックス85に参加する場合は、仮に参加する場合であったならばこの演習の性格、シナリオ等を当然詳細に米側に問いただした上で、私たち参加するかどうか、法的に問題ないか、政策的に妥当であるかを判断したと思います。しかし、このたび私たちが参加しておりませんので、その点については事前にある程度の概要を聞いただけでございますので、その限度においてしか私たちは存じておらないということを御理解いただければと思います。
○矢田部理君 時間がありませんので、問題点の指摘を中心にやりたいと思いますが、情報等の支援を受けただけだ、したがって参加でないという議論も、少しく前回の答弁には混線がありましたが、結論的にそういう評価をしているようでありますが、それも余り正しくありません。情報等の支援をもらいながら、潜水艦がどこに逃げたとかどう捕捉すべきだとかという訓練をやっているわけでありますから、それはまさに訓練の一つの重要な内容というふうに今日的にはとらえるべきなのであり、それは別個の訓練だとか情報の支援を受けただけだという評価もこれまた正しくないのでありますが、いずれにしましても防衛政策の基本に背くような、あるいは憲法の規定はもちろんでありますが、これに反するような演習、訓練には今後参加をしない、そこの原則をやっぱりきちっと確認すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤紘一君) 私たちが米側と訓練をいたしたりする場合には、御承知のように、まず憲法上はもちろんでございますし、それから私たちの持っております防衛の基本政策に合致するかどうか、そしてそれがまた詳細に述べられているのが日米防衛協力についてのガイドラインでございますが、そういったガイドラインに従って従来もやってまいりました。したがって、委員御指摘のように防衛の基本政策に背馳するような演習に今まで参加しておりませんし、そのようなことはやっておりませんし、今後もやるつもりはございません。
○矢田部理君 集団自衛権にかかわるような演習はしない、ICBMなどを想定した演習もしないというふうに先ほど述べられましたが、具体的に防衛政策の基本に背馳するような演習はしない、訓練には参加しないということになりますと、防衛政策の基本というのはどういうことを考えておられるのか、それをきちっとしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤紘一君) 私たちの防衛政策の基本としては、憲法に従い、専守防衛に徹し、非核三原則を守り、そして近隣諸国に軍事的脅威を与えることのないように、そして厳格なシビリアンコントロールを厳守していく、こういうような項目を私たちは防衛政策の基本と考えて実施いたしております。
○矢田部理君 訓練、演習たりともその政策に反するようなことは一切しない、そういう演習には参加をしないということを明言されますね。
○国務大臣(加藤紘一君) いかなる訓練であろうとも、運用であろうとも、私たちの防衛政策の基本に反するようなことは一切いたしておりませんし、今後もやってはいかぬことだと思っております。
○矢田部理君 そこで、もう一、二点つけ加えて伺っておきたいのは、フリーテックスは昨年の十二月一日ですか、十一月三十日ですか、終わったということなのでありますが、それに連動して、米軍独自の演習だとは言いつつも三沢に来て、空母から艦載機が数十機飛び立って射爆演習をやる、さらにウラジオ沖に行っていわば数日間にわたって挑発的な大演習をやる、こういう事態についてはどの程度つかんでおられるのか。それについての受けとめ方、考え方について、これは外務大臣でしょうか、防衛庁長官でしょうか、まずお聞きをしたいと思うんです。
○政府委員(栗山尚一君) ちょっと事実関係について御説明さしていただきますが、フリーテックスが終わりました以後の米海軍の行動につきましては、私どもは一般的に日本海に入るということは承知しておりましたが、今委員御指摘のようなウラジオの近海で云々その他、そういう米軍の行動については一切私ども承知しておりませんので、これに対して云々という立場には政府としてはないというふうに考えております。
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今政府委員が答弁いたしましたように、私もその実態につきましては承知いたしておりませんけれども、米軍が在日の基地を利用していわゆる演習をするということにつきましては、日米安保条約、そういう枠内においてはこれは許されるべきものである、こういうふうに認識しています。
○矢田部理君 日本にはレーダーもある。あるいはまた運輸省とか防衛施設庁は、艦船や航空機の出入りについては米軍のものも、ある条件がありますが管理しておられる。例えばフライトプランを出させるなど、相当程度つかんでおられるはずでありますが、そういう米軍の大きな行動、演習等の状況についてはほとんどつかんでいないのでしょうか。その関係はどうなっておりますか。
○国務大臣(安倍晋太郎君) 米軍のやる大きな演習とか、そういうものにつきましては、日米安保条約の効果的運用というものがありますから、それを前提としまして、一般的にはそう詳しいことまでアメリカも知らせるということはないと思いますけれども、しかし大きい部分については、日米信頼関係あるいはまた日米安保条約の効果的運用という立場から連絡をとっておると、こういうことであります。
○矢田部理君 今度のフリーテックス85に在日米軍がどういう形でどの程度参加したか。F15が現に沖縄の嘉手納から飛び立っているわけであります。それからフリーテックスの部隊が日本でどんな演習をしたか、この周辺海域でどんなことを行ったかについて詳細に調べて報告をいただきたい。これは運輸省も含めてであります。それが第一点であります。 それから二点目には、大変問題なのでありますが、今度のフリーテックスの演習につきまして、ウィリアム・アーキン氏という米国の核戦略研究家がこういうことを言っているんですね。「フリーテックスは米軍独自の演習で日本が参加する必要はない。日本の国益にもならない。ソ連艦船がワシントン沖合五十マイルのところであのような演習を行ったらどういうことになるか。」
○委員長(長田裕二君) 矢田部君、時間が参りました。
○矢田部理君 「あれほど挑発的な演習はない。日本はレーガンの軍事挑発戦術で、米ソ対決の中にはめ込まれてしまう」、大変重大な警告をしていると思うのでありますが、これをかみしめると同時に、総理、ウラジオ沖のような大変な威嚇的、挑発的な演習は、とりわけ日本近海で行われるわけでありますから、アメリカに対しても自制を求めてしかるべきではないか。まさにそういうことがアジアにおける緊張を緩和し、対ソ関係改善のもう一つの糸口になりはしないのかと私は思うのですが、総理の見解を伺って私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本は極東における平和と安定の維持を強く望むものでありまして、日本の周囲というものを平穏な状態にしておくということは外交や防衛の我々の大事な考え方の基本であると思います。しかし、その平和と安全を維持していく上について、日本の周辺において一定の演習が自衛隊あるいはアメリカとの協力等において行われることは、これはある程度やむを得ない。これは日本本土防衛を全うするための一つの手段であると思います。また、これは相互主義のもとにこういうものは行われる。そういう意味において、先方の動向等もよく見つつ、こちらの限度というものも考える必要もあるのでありましょう。そういう点について我々は深く慎重に考慮してまいりたい。要するに国際関係というものは大体相互主義というものが原則になっておるものでありまして、そういう意味において我々はよく考えていく必要があると思っております。
○委員長(長田裕二君) 以上で矢田部君の質疑は終了いたしました。(拍手) ─────────────
○委員長(長田裕二君) 次に、伊藤郁男君の総括質疑を行います。伊藤君。
○伊藤郁男君 私は民社党・国民連合を代表いたしまして質問をいたします。 総理並びに外務大臣、大変御苦労さまでございました。大変お疲れのことと存じます。しかし、十二年ぶりの日ソ首脳会談が実現し一つの目的を果たされたので、安堵感もおありかと存じます。総理の帰国報告が先ほどありましたので、まずこれに関しまして御質問を順次申し上げていきたいと思います。 第一は、ゴルバチョフ新政権は今後どのような内外政策を進めていくものと考えられますか、これが第一点でございます。
○国務大臣(中曽根康弘君) 葬儀という不幸な機会ではございましたが、ゴルバチョフ新書記長と会談をいたしまして、その人となりというものを直接見聞することができましたことは非常に幸せなことでございました。私は二人の話し合いのぐあいというものは非常に友好的になごやかな雰囲気で行われたと思っております。 今までソ連の書記長というもののイメージは、今までの歴史的因縁もございまして、必ずしもそう穏やかな近代性を持ったものとは限らないというような印象が世界的にあったのではないかと思います。しかしゴルバチョフ新書記長の印象は、非常に若い、エネルギーに満ちた、そして近代的感覚を持った、理性の発達した、現実的な、そして非常に周到な目配りを行って非常にソフトなタッチをする、さわりの感じというものは非常にソフトな上品な感じで、しかもかなりの重量感と威厳を持っておるという感じがいたしました。そういう意味では立派な人だなと、そういうふうに感じた次第です。 しかし、ソ連という国は、そういう個人の力というものが発揮できるまでにはかなりの長時間を要する組織の国でございます。したがいまして、当分の間、かなり当分の間というものは、やはりソ連は組織で動いておりますから政策がそう急に変更することはあるまいと、そういう気がいたします。現に私とゴルバチョフ氏との会談の席にもグロムイコ外相がそばにおりまして、私との会談において時々耳元へ口を寄せて助言をしておりました。そういうような情勢で、外交につきましてはグロムイコ氏の発言力は依然としてかなり大きいのではないか。そう思って見ていますから、そう変化は急には起きない、楽観は禁物である。 しかし、ゴルバチョフ氏の演説にありますように、善意には善意をもって、信頼には信頼をもってこたえよう、そういう言葉がございます。そういう意味において、人間性を非常に感じさせられる要素というものは私は期待しておるところであります。
○伊藤郁男君 新政権の安定度にも触れられましてお話がございましたが、今後このゴルバチョフ新政権は、アメリカとの軍縮交渉あるいはデタントの回復、このようなものにどのような方針で臨んでいくと考えられるでしょうか。この点をお伺いをいたします。
○国務大臣(中曽根康弘君) その前に、きのうは会談が長時間になりまして日本の新聞記者と会見する時間がほとんどございません。締め切りあと五分ぐらいという時間でございましたので、新聞の皆さんにも余り内容を申し上げる機会がありませんでしたから、私がどういう発言をしたかということをこの機会を通じて国民の皆様方に申し上げてみたいた思います。 冒頭、私から弔意を重ねて表明いたしまして、日本国民よりの、日本政府及び日本の天皇陛下からの深甚なる弔意を表明をいたしましたが、先方は非常に厚くお礼を言っておりました。そして先ほど申し上げましたように長期的安定を望む、そして対話を促進していきたいという話、それから日本の世界的役割、位置というものについて一定の評価を考えておることを出発点としておる、そういうような話がありました。 それで、私からは、ともかく日本はまず第一に平和と軍縮を一番強く望んでおる国家である、特に核軍縮、核の廃絶というものについては原爆の惨害を受けた地上唯一の国として全国民を挙げてその熱望を持っておる、政府はもとよりそうである、幸いにしてジュネーブ会談というものが開かれておるが、このジュネーブ会談は核軍縮及び核の廃絶を目的にして行われておるものであって、これが成功して、そして核の廃絶に向かって進んで世界の国民を安心させてくれるようにソ連側の積極的な努力を望む、我々も環境をそういう方向に持っていくために我々の立場において努力したいと、そういうことを言いましたら、先方は、ソ連側もジュネーブ会談につきましては建設的な態度をもって臨んでいくつもりである、そういう意思の表明がありました。 それから私は両国関係について次に申し上げまして、我々は日ソ関係の友好親善の促進を望むし現状の打開を切望しておる、そういうような方途についてお互いに知恵を出し合おうではないかと、そういう話をするとともに、それが基本である、そうして我々の立場はまず第一に領土問題を解決して平和条約をできるだけ早期に締結して日ソ関係を長期安定の関係に導くことが第一であると、こういうことを言って領土問題の解決ということをまず冒頭に強く言うたのであります。 それと同時に、我が国の外交防衛政策について説明したいと。実は新しく書記長になられた方でアジア関係には余り今まで関係がなかったわけでありますから、この最初のときに我が国の基本方針、日本国民の考え方というものをずばり言って、そしてよく頭の中に入れておいてもらおう、そういう考えがありましたから、少し時間をもらいたい、五、六分ひとつ時間をくれ、自分がまず話すからと。一方的にしゃべりまくられるのでは困りますから、そういう意味で自分が話すからと言ってそういうことでやったのであります。 それで、我々は世界平和、世界の繁栄を目的にして外交の基本としておるし、安全保障については、我々は憲法もあり、また非核三原則を堅持して、そうして日本の防衛のみを目的にして自衛隊、防衛政策を実行しておる極めて節度のあるやり方であって、他国に脅威を与えるような武器は持たない、例えば航空母艦とか長距離爆撃機とか、あるいは長距離ミサイルとか、そのような他国に脅威を与えるようなものは持たないということを厳に実行しておる国である、そういう節度のある防衛政策を今後とっていく、しかし日本列島を防衛するにはその力はまだ弱い、したがってアメリカとも安全保障条約を締結して、そして共同で日本の防衛については当たっておる、しかし、この日米安保条約というものはあくまで国連憲章の精神にのっとっておる防衛的なものであって、これはほかの同盟条約とは性格が違う条約で、この点はよく記憶してもらいたいと、そういう日本の防衛政策について話をしました。 そして、二国間の問題についてはいろいろな問題がある、しかし例えば文化協定の問題もあり、あるいは租税協定の問題もあり、あるいは経済協力の問題もあり、あるいは科学技術協力というようなさまざまな問題がある、これらの問題とさきに私が述べた問題、こういうような諸問題についてこれをどういうふうに処理していくかという基本的方針、原則というものをまず話し合ってみたらどうか、先般、去年日ソ円卓会議というのが行われた、相当数の両国の文化人、経済人、政治家等が集まって両国関係を話し合った、あの日ソ円卓会議の共同コミュニケについては自分は満足しておる、あの精神の線に沿って、あれはソ連側も同意したのであるから、あの線に沿って両国の基礎的な問題、基本的原則、こういう問題についていかに打開するか話し合う話をやったらどうか、それには、より高級なレベルの間の話し合い、そういうすべての問題を包括的に話すということが妥当ではないだろうかと、そういう話を私からはしたのです。 先方からは、日本の問題についてはソ連側はいろいろ提起しておる、例えば環境醸成、安全のための、安全保障のための環境醸成であるとか、あるいは経済の長期協力協定の問題であるとか、文化協定の問題であるとか、そういうような積極的な提起をソ連はしておるが、これに対するあなたの考えはどうかと、こういう質問もありました。私は、環境醸成については相当な人的交流が行われている、特にここ一年以来いろいろな上級の立派な人たちの交流がさまざまな分野で行われて、非常にこれを歓迎している、こういう形をさらに促進強化して、そしてよき環境を醸成するようにするのがいいだろう、それから経済の長期協力協定については、これはケース・バイ・ケースで経済協力も話し合おう、また将来の見通しについて話し合うことも結構である、ただし、ここで長期経済協力協定を結ぶ考えはない、文化協定については話し合いを再開しようではないか、そしてできるだけ両方が努力してこれが締結に向かって努力することがいいと、そういうことを言いました。 それから、先方が先ほど御質問のあったことで言ったのは、NATO等の関係で日本の政策は前より違った傾向が出てきているのではないかとか、沖縄に核があるのではないか、そういうあれがあるとか、防衛政策について疑念があるとか、そういうような内容の話があったわけです。 私は、我々は世界の平和と安全保障というものは地球的規模でそれは達成されるものであると思う、言いかえれば、前から私が主張しておりますように、SS20等の問題についてアジアの犠牲や日本の犠牲においてこれが解決されてはならない、そういう趣旨のことを頭に置いて地球的規模において世界的協力でこれは解決すべきものである、NATOというものについて我々は軍事的には全然介入もしていないし、コミットしているわけではない、その心配は要らない、それから日本の安全と防衛政策については節度のある防衛をやっており、国民がこれを支持しているので、何らそういう言われる筋のものではない、日本に核兵器があるなんということは全く事実無根であって、それは重大なる誤解である、そういうものは断じてありませんと、そういう話もしておいたのでございます。 それで、グロムイコ氏の来日につきましては、もうその潮どきが来ておる、したがって、なるたけ早く促進してもらった方が結構だろうと思う、それから、万博についてソ連館のオープンデーがあるけれども、そのときにも相当な大物を派遣してもらったら結構である、我々は歓迎しましょうと、そういうことを言いました。それで、グロムイコ氏の来日については、肯定的にこれに対処いたしますと、そういう話がありまして、おいでになれば歓迎いたしましょう、そうして、いろいろな実りのある話をする、以上のようないろいろな問題について話をする、グロムイコ氏が日本に来られれば、日ソ関係というものはより友好親善な関係に強く前進するのじゃないですかねと、そういうことを私言っておきました。 それで、最後に、そのほかいろいろな話はありましたが、極めてあなたと話し合ってみて有意義であったと思う、会えてよかったと、そういう話で、私も、向こうは有意義という言葉でしたが、私は非常に意味があったと思うと。これは立ち上がって握手したときの話であります。それで、これは座っておった最後のときの話でありますが、向こうから将来また話し合おうと、そういうことを言いまして、また将来も話し合うということを双方で確認した、そういうのが現状でございます。 そこで御質問でございますが、どういう御質問ですか。もう一回お願いしたいと思います。
○伊藤郁男君 アメリカとの軍縮交渉やデタントの回復について、どのような方針で今後ソ連は臨んでいこうと考えておられるのか、その辺の感触をお伺いしたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) ソ連側は建設的に対応したい、そして成果ある実りあらしむるものにしたいと、そういう発言がありまして、いろいろこれは紆余曲折が将来もあり得ると思うんです。それから、いわゆる宇宙軍事競争ですか、アウター・スペース・アームスという問題です。そういうようなものについては、自分は反対であるということも先方は言っておりました。ですから、SDIに対するかなり深い懸念と反対を持っているように思いました。しかし、ジュネーブ交渉というものは私から強く成功するように期待する、全世界が願っているということも言ったので、建設的に自分たちはこれは対応するというので、私はかなり誠意をもって、そしてできるだけ実りある方向に進めるような気持ちでやっぱりきているのではないかと、そう思います。 それから、ブッシュさんに会いましたときもいろいろ話をしましたが、ブッシュさんはアメリカはソ連に対する優越性を求めていない、ソ連より優越的な軍事力とか地位を保とうなどとは全然考えていません、そしてアメリカも建設的な立場でこれに臨みますと、そういうことをこれは別の機会で私とブッシュさんとの会談で言ったのであります。ですから、やはりこれだけ核兵器がふえてきますと、もうある程度限度が来たということはわかったので、両方とも人間の業に気がつき始めてきているのではないか、それで何とか実りある方向に進めたいという気持ちが両方にあると思うんです。この気持ちは大事なことでありまして、我々もそれが実りある方向に今後とも積極的に環境醸成等についても努力をいたしていきたいと、そう考えておるところであります。
○伊藤郁男君 会談の内容、雰囲気はよく今の総理の御説明で私どももわかります。この会談に先立ちまして、総理もブッシュ・アメリカ副大統領ともお会いになったはずでございますが、この伝えられておるところによりますと、ブッシュさんがレーガン大統領の親書を渡したというようにも報道されておるわけでありますが、この米ソ首脳会談が実現するのかどうか、大変この辺のところも注目されるところなんですが、総理の感触がありましたらお伺いをしておきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) レーガン大統領の方もジュネーブ会談を成功さしたいという非常な熱意、正直な真っ当な気持ちを私は持っておるとレーガンさんの私に対する手紙やあるいはブッシュさんの動向、補佐官の話等々から見まして判断をしております。恐らくゴルバチョフさんの方もやはり平和を築く書記長としての歴史的な足跡を残したいという気持ちもあるのではないかと思うんです。でありまするから、両方が誠意を尽くしてやるとは思いますが、やはりこれは膨大な軍事技術に関する問題であって、今までの現状の均衡状態とか、あるいは平和の維持に関する仕組みという膨大なものが両国側にあるわけで、さまざまな国際関係がそれに絡み合っておるわけであります。事によれば、内政も絡み合ってくるという情勢もその関係国の間になきにしもあらずでしょう。東欧圏のような場合にはそういう問題がかなり強いものもあるのではないかと思います。 そういうようないろいろな問題を考えると、そう簡単に急にこれが雪解けに向かうとは考えられない。やはり専門家同士の話になりますと、かなりそういう技術的な問題で、またそういう技術的な専門的な科学的な中身の話をしないでその話が解決するとは思わない、アメリカ人やイギリス人のそういう科学的な精神とか心理状況から見まして。これは日本人や中国人と違う。腹でいこうなんという気持ちありませんからね。やっぱりちゃんと確かめ合って、そしてロジックの合う、数学計算が合う、バランスシートの合うというやり方をやるのがあの人たちの伝統的な立場でしょうし、またそういう地位を持っておる責任者の立場でしょう。そういう意味もありまして、この交渉はかなり長引く、紆余曲折のある、そして雨が降ったり、あるいは風が吹いたりすることもあるし、また日が差したり、おてんとうさまが出るという場合もあるでしょう。そういうていの長続きのする根強い交渉であるというふうに考えた方がいいと思っています。しかしその根底には両国にそういう善意があると、そう思っておるので、この善意を生かすように私たちは努力していきたいと思っております。
○伊藤郁男君 次に、総理はフランスのミッテラン大統領初め各国の首脳ともお会いになったわけでありますが、これらの各国の首脳がソ連のこの新政権をどのように見ておるのか、この点についてもお伺いしておきます。
○国務大臣(中曽根康弘君) 大体人柄等については私と同じような感触を持っているように見受けられました。
○伊藤郁男君 また中ソ関係というのは今後重要だと思うんですが、この中ソ関係が今後どのように展開していくとお考えでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ゴルバチョフ書記長は、李鵬副首相、代表団の長でありますが、ともお会いをいたしました。前回アンドロポフ書記長お亡くなりになったときも、あれはたしか万里さんが行ってお会いになっておるようです。そういうわけで、今までの両国の基本原則にのっとって、延長線上でいるのではないかと考えております。
○伊藤郁男君 グロムイコ外相訪日について肯定的に実行したい、いつどうやるか両国で話し合いたいということを言われたといいますけれども、その相談はいつごろまでにどの機関でどのレベルでやろうと考えておられますか、この点をお伺いします。
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今おっしゃるようにグロムイコ外相が訪日することについては肯定的に実行したい、そのために両国間で相談したい、そういう趣旨の発言がゴルバチョフ新書記長からございました。かねがねグロムイコ外相は日本を訪問するのは自分の番だということも言っておりますし、最近のいろいろの日ソ間の感触ではそういう空気も出ておったわけでありますが、今回のゴルバチョフ最高首脳がグロムイコ外相をそばに置いてそういう積極的な発言をしたということは、グロムイコ外相の訪日の可能性が非常に強くなった、客観的にはそういうことがはっきり言えると思います。したがって、この首脳同士の発言を受けてこれから外交チャンネルでひとつグロムイコ外相の訪日を詰めていきたい、こういうふうに考えております。
○伊藤郁男君 グロムイコの訪日が実現した場合、今日までの経過にかんがみて日本側としては領土問題は避けて通れない重要な最大の課題であるわけです。グロムイコ外相も訪日の場合は当然この問題が議題になる、このことは十分承知しているはずでございますが、とすれば、この訪日を肯定的に考えると言ったということは北方領土問題についてソ連の態度がこれまでよりも多少前向きになったということなのかどうか、この点をお伺いをいたします。
○国務大臣(安倍晋太郎君) 領土問題につきましては、今回の両国首脳の間で中曽根首相からまず領土問題を解決して平和条約を締結する、そして真の長期的な日ソ関係を安定させていくことが日本の基本方針であるということを明確に打ち出されたわけでございますが、これに対しましてゴルバチョフ新書記長は、領土問題につきましてはこれはもう従来からのソ連の考え方をあなた方もよく承知しておられるはずだ、この考えは変わらない、こういうことをまた述べられておるわけであります。したがって、日ソ間におきまして依然として領土問題は極めて大きな対立点になっておるわけでございます。しかし、我々としましてはあらゆる機会を通じましてこの領土問題を解決する、そして平和条約を結ぶという不動の日本の姿勢というもの、考え方というものは主張していかなければなりません。したがって、グロムイコ外相と私のこれまでの会談でもこれは必ず日本側の基本的な考え方として述べておりますし、訪日される場合においても日本の立場、考え方というものを変えるわけにはいかないわけであります。
○委員長(長田裕二君) 中村鋭一君の関連質問を許します。中村君。
○中村鋭一君 総理におかれましては本当に御苦労さまでございました。先ほど来の伊藤委員の質問に関連をいたしまして一、二お尋ねをさせていただきます。 総理の御報告を承っておりますと、随分ゴルバチョフ新書記長に対しまして好印象を抱いて帰られた、このように理解をしておりますが、そしてまた話し合いの内容につきましても非常に微に入り細をうがって今この委員会で御報告をいただきました。よく了解はできたつもりでございますけれども、私の聞いておりました感じで言いますと、あれだけ詳しく御説明をいただいたにかかわらず、我が国民の最大の関心事であるところの、悲願であるところの北方四島の返還につきましてのくだりは、総理が領土問題を解決して後に平和条約を締結したい、こう申し上げたら云々という平行的な返事が返ってきた、そこのところはごく簡略にお済みになったように思うのでございますが、ひとつ北方領土問題につきましてゴルバチョフ新書記長との間にどのような会話が交わされたのか、ニュアンス等も含めて正確に再現をいま一度していただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は会談について自分で考えて小さなメモをつくっていきましたが、そこに今あるのがその小さなメモです。その中で我が方の言うべきポイントを箇条書きに幾つかずっと書いておいたわけですが、その冒頭はまず日ソの友好協力を安定的にやるという、これが基本である、第二番目のことが領土問題なんです。そこで領土問題を解決して平和条約をできるだけ早期に締結して長期的安定に持っていきたい、これははっきり強い声で言ったわけです。その次が日本の防衛政策をよく説明しておこう、そういう意味で今度は防衛政策に入ったわけです。初め何しろ二十分ぐらいという話であったわけです。ですから、こっちの言うことは一応全部聞いてもらおう、そう思ってそういう要領を考えながらやったわけであります。日本側のそういういろいろな説明を私がしました後で、彼が言った最初の言葉は、あなたの御発言は非常に注意深く傾聴いたしましたと、そういう非常に謙虚な態度で発言をされたのであります。領土問題については、非常にこれはちょっとデリケートな表現だろうと思うんですけれども、領土問題についてはソ連側の考え方というものはあなたもつとに御承知でございましょう、それについて新たにつけ加えることは何もありません、そういう表現なのであります。それ以上向こうも触れません。それで、いろいろな別の話をした、それがそういう結末でございます。
○中村鋭一君 総理、通訳は日本の方でございますか、それともソ連の方でございますか。なお、その席には終始グロムイコ外相がしっかりと横に座っていろいろと助言もされておいでになったんですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 通訳は、向こう側の発言はロシア人、日本側の発言は日本人、我が外交官がやったわけであります。 それで、ゴルバチョフさんのわきにグロムイコさんが座り、そのわきにアレクサンドロフ氏がついておった。これは中央委員会の国際部長で、書記長の常時外交補佐、総括的補佐をやっている方で、この間クナーエフさんが日本へ参りましたときに一緒においでになった方で、私は最後に別れるときに、英語ができると思ったから、いろいろとお世話になりました、あなたに会えて非常によかったと英語で話したら、どうもありがとうございますと日本語で言いました。ちょっと驚きました。恐らく日本へ来ている間に日本語を勉強しておったんじゃないでしょうか。私が行くというので、またそれを暗唱してきたんじゃないか、そういう気がいたします。 それで、あの方は世界の情勢を全部見ておって、歴代の書記長に対するアドバイザーで、かなりの影響力がある。彼がグロムイコさんのわきに座って、向こうは三人ですからね。三人のうちの一人としてそういうふうにお座りになっていたというのはちょっと驚きました。かなりの発言力のある方だなと、前から聞いておって、そう思いました。その方がクナーエフさんと一緒に日本へ来て、そして日本をよく見聞して帰られた、帰りに日本語で、いろいろありがとうございましたと言ったということは、私は、非常に好感を持って帰ったということであります。
○中村鋭一君 ということは、ゴルバチョフさんは、例えば一九五六年の日ソ覚書の当時は、一九三一年生まれの方でございますから、まだ二十歳超えたばかりの若い方で、したがいまして、この領土問題については余りよく御研究でないという印象でございましたか。それとも、例えばグロムイコさんなんかに言われたとおり公式的にこの件については今回の席ではもう避けて通っておこうというような感じでございましたか。例えば総理の非常に熱意ある領土問題という問いに対して冷静な反応でございましたか、積極的な反応でございましたか。
○国務大臣(中曽根康弘君) クレムリンの中は雲深く、霧深くしてよくわかりません。
○中村鋭一君 最後にお伺いいたします。 五十六年の覚書は平和条約を締結して後に二島を返還する、このように明記をされておりました。現在の総理の心境としては、例えばきょう先ほどの御報告によりますと、領土問題を解決して後に平和条約を締結するということでございました。それがオプションの一つであると思います。それから平和条約を締結して二島を返還してもらいたい、それから平和条約締結と同時に四島を一括して返還してもらうように努力をしていく、それからもう一つは、平和条約を締結して後に時間的経過を設けて二島もしくは四島を返還してもらう、さらにいま一つは、現在の総理の心境はまさに明鏡止水でありまして、今回の新書記長との会談を機といたしまして、地道にネゴシエートを重ねていって、最終的に実務者会談のレベルから首脳会談に及ぼして、そして最後には北方四島の解決に長期的に導きたい、こう思っておられるのか、率直な総理の今の心境をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 領土問題と平和条約は同時的に解決すべきものである、そう考えております。これは解決のためにはさまざまな努力が必要であるし、粘り強く全国民とともにうまずたゆまずそれが実現されるまで努力すべきであると考えております。その努力の中には、いろいろな友好協力関係であるとか、そのほかいろいろな問題もある、私はそういう意味において包括的にこの問題は考えよう、そしてハイレベルの外交当局者によっていろいろな問題について話し合うということ、そういう環境をつくっていくということも大事ではないか、そういうふうに私は考えたわけで、両方ともそういう気分で友好的なお互い信頼し得る方向へさらに前進させていく、善意はお互いあると思うんです。信頼するという方向により進めるようにさらに努力を重ねていきたい、そういうふうに思っております。
○伊藤郁男君 あと二、三点お伺いいたしますが、先ほどの御報告にもございましたが、ソ連は日本の国際的役割について評価できる部分もある、こういうように表明されたと言われるわけでありますが、それは一般的な評価であるのか、あるいは何か具体的なものを挙げて評価したのか、その点をお伺いをいたします。
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本の国際的役割について一定の評価をしているということを出発点としていろいろ考えたいと、そういう表現でありました。私は一般論ではないかと思います。
○伊藤郁男君 政府といたしましては、今回のソ連の新政権誕生を踏まえまして今後どのような対ソ政策を進めていこうと考えておられますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ゴルバチョフ氏と私との会談が実現しまして、そして日ソ関係の問題に対する両国最高首脳部の見解が率直に披瀝され合ったわけです。この基本的な両国の国策というものを両方でぶつけ合ったということは非常に意味がある。特にゴルバチョフ氏が新しい書記長に御就任になったその当座のところでありますから、これからいろいろ政策を練り上げたり展開していく上について、日本側の最高責任者の考えをよく知っておいてもらうということは非常に大事なことであり、間違いを起こさないためにも、より前進させるためにも必要である、そう思って私はやったつもりであり、また先方の考えも直接お聞きし、ニュアンスも直接会って話すときにはいろいろな問題について私は私なりに感触するところがあり、外務大臣も外務大臣なりに感触を得るところがあった。 こういうことは非常に大事な、貴重なことなので、人の報告やあるいは書物では得られない大事なものがある。そして、相手が相手を直接見て、ああこれはどういう人かな、どの程度信頼できるかな、どの程度指導力が将来できるかなと、そういうような値踏みをお互い話し合っているときにやっているだろうと思うんです。これが首脳外交の一番大事なポイントでもあるだろうと思うんです。そういう意味において非常に有益であったし、お互い善意を持って別れたということは非常に収穫であったと思います。それで、しかも一致する点は一致する点、一致しない点は一致しない点とはっきりさせました。これは大事なことであります。向こうも一致する点、それから一致しない点があった、共通のアイデアについてはお互いに積極的に努力し合いましょう、そういう発言をしておるわけでございます。そういう点を明らかにして、それをわきまえつつ、さらにそれを越えて解決するために知恵を出し合っていこうということを確認し、また将来も話し合おうと、そういうことを最後に確認し合ったということは、将来についても引き続いて積極的な努力をし合う余地ができたし、情勢によっては手紙を出し合うという可能性も出てきているわけでございますから、私は成果としては私の考えているようなところへいけたのではないかと思っております。
○伊藤郁男君 最後になりますが、ブッシュ副大統領とも会見をされたわけでありますが、今後の対ソ政策についてアメリカとの意見調整などが行われたのかどうか、あるいは今後調整を行っていこうと考えておられるのかどうか、この点をお伺いいたします。
○国務大臣(中曽根康弘君) アメリカは日本と安保条約を結んでおる最も大事な国でもありますから、常時いろいろそういう問題については話し合っておりまして、モスコーでそんな話をする必要もない状況であります。また、あそこで話したことはもう筒抜けになると考えなければならぬのでありまして、そういう機微な話は場所を考えなければならぬ点もあるわけであります。そういう点は注意してやってきたつもりであります。
○伊藤郁男君 次に、外務大臣にお伺いをいたしますが、イラン・イラク戦争でございますけれども、都市攻撃にも戦争が拡大されまして大変憂慮すべき事態にあると思います。これからこのイラン・イラク戦争がどのように展開していくと考えられますか、この見通しをお伺いをいたします。
○国務大臣(安倍晋太郎君) イラン・イラク戦争は一進一退を重ねておりまして、我々としても一日も早い平和的環境が醸成されることを願っておったわけですが、逆に、国連事務総長と約束をした、お互いに都市攻撃はしない、そういう約束が破られまして、両国が都市攻撃を始めるというふうな事態で、イラン、イラク両国においても施設の破壊だけでなくて、相当な死傷者が出ておるということで大変憂慮いたしております。このような状況が進めば、ますます戦争は泥沼化し拡大をしていって、そしてこれは二国間だけの戦争でなくて、もっと大規模なものになりかねないおそれも私はあるのではないかと憂慮しておるわけでございます。 そういう中で、イラン、イラクとも、同時にそうしたお互いの攻撃はしながらも、何らか平和への道を求めたいということで努力もしておるようでありますし、同時にまた各国もイラン、イラクに対して自制を求めております。我が国としましても、これまでのイラン、イラクとの友好的な関係、そしてこれまで築き上げました我々のパイプを通じまして、イラン、イラク両国に対しまして強く自制を求めております。私がちょうどソ連に参ります日には、事務次官がイラン、イラク両大使を召喚いたしまして、そして両国に対して強い自制を求めたような次第でございます。 なお、イラン、イラク両国とも、国連のデクエヤル事務総長の重ねての要望によって、お互いに都市攻撃は中止してもよろしいと、そういう返事はいたしておるわけでございますが、具体的な詰めというところになりますと、なかなか今これは容易でないというふうにも情報として得ておるわけでございますので、日本としましても、国連と十分連絡をとりながら、イラン、イラクがせっかくここでこの事務総長の提案をのんでもいいというところまでいっておるわけですから、さらに国連という舞台を通じまして、また日本が築き上げましたパイプを通じまして、何とかこの都市攻撃を初めとする両国の戦争の拡大を防ぐために、日本自身としても最大の努力を傾けてまいらなければならぬ、そういうふうに考えております。
○伊藤郁男君 我が国はこの中東の地域から原油の六割を輸入しておりますし、また、あのホルムズ海峡を毎日二十隻から三十隻の日本のタンカーが出入りしているわけでありますから、両国に太いパイプを持つ少ない国と言われる日本の果たす役割は大きいと思いますので、積極的な御努力をお願いを申し上げておきたいと思います。 次に、与野党合意の問題について一点だけお伺いをしておきます。 これは所得税減税などの与野党合意の問題でありますが、それは時間短縮並びに連休等休日の増加の問題についてであります。これにつきましては「各会派責任者で予算成立までに協議機関を設置し、今国会中にその実現をはかるよう」にする、このような合意がなされたわけであります。また、これらの合意によって一週間も中断されました国会論議が再開されたという経緯があります。ところが、予算が参議院に回ってきたとたんに、自民党四役というか三役というか、自民党の首脳が財界首脳との会合で極めて後ろ向きの発言をされている、こういうことが報道されているわけであります。まことに不見識だと私は思います。これは、この合意の紙は、ただ単なる紙じゃありません。これを破棄するようなことは、これは政党政治の根幹にもかかわるし、政党政治そのものがふっ飛んでしまうというような重要なやはり私は意味を持っておると思います。労働大臣はこれについてどのようにお思いでございましょうか。あわせて総理大臣の御見解をお伺いしておきます。
○国務大臣(山口敏夫君) 労働時間短縮の問題は各労働団体から強い御要望もございます。しかし、そうした要望があるからということだけではなくて、高齢化時代を迎えての労働人口の問題、またME化、オフィスオートメーション、そういう機械化、省力化の中における雇用の変動の問題、さらには国際社会に絡む労働摩擦の問題等々いろいろな角度からの一つの問題がございまして、単に労働福祉あるいは労働条件の改善にとどまらない広範な社会的な問題がこの時短の中にとらえられておる、こういう認識でございまして、労働省としても懸命にこれを、行政指導を進めておるところでございます。 衆議院の予算の段階におきまして、各党の幹事長、書記長会談で減税問題とあわせて労働時間の問題、休暇の問題がお取り上げをいただいた。こういうことでございますから、ひとつこの各党責任者の話し合いの上に立って、しかるべき結論がよりよい方向に出ることを我々は期待しておるわけでございますし、また国権の最高機関たる国会の各党責任者が協議をする、こういうことを決めた大事な約束でございますので、かりそめにも、外からのいろいろな問題の中でこれがほごにされることのないように、そういう成り行きをひとつ注目をし、期待をしておるというところでございます。
○国務大臣(中曽根康弘君) 幹事長、書記長会談の話し合いの結果は、政府もこの結果をいただきましたならば尊重したいと考えております。したがいまして、この協議機関の結論がどういうふうに出るか静かに見守ってまいりたいと思っております。
○伊藤郁男君 その静かに見守っていきたいということは、どうも後ろ向きのような見解に聞こえるわけであります。やっぱり与党の幹事長が約束をしたことでございますので、この点については結論が出たちこれを速やかに実行に移していく、電光石火のごとく実行に移していくというのが中曽根流の発言だと思うのですが、もう一度御答弁を願います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 自民党の幹事長が出席して各党の書記長の皆さんと話し合ったことでございますから、そういうような結果が出ることを私は期待しておるところであります。そういう期待を持って成果を見守ってまいりたいと思っております。
○伊藤郁男君 引き続き労働大臣に基本的な問題について二、三点お伺いをしておきます。 それは時短の問題でございますが、労働基準法は、これまで三十八年間基本的な改正が行われてこなかったことは御承知のところであります。労働時間の規定も週四十八時間を超えてはならないと、こういうようになっておりますが、法定労働時間の改正についての労働大臣の御見解をお伺いをいたします。
○国務大臣(山口敏夫君) 労働基準法は伊藤先生御指摘のように三十数年改正されておらないわけでございますが、しかし、その三十数年前の基準法が今日のこうした労働条件の中でそれなりに役割を果たしておるということは大変私は驚異的だと思うのでございますけれども、いずれにいたしましても、基準法研究会でそうした問題を踏まえて新たな労働事情、労働条件の問題をあわせて今御協議をいただいておりまして、ことしの夏ごろまでに一つの結論が出されるのではないかということを待っておるところでございます。そうした一つの提言に基づきまして、労働省といたしましてもしかるべき一つの成案をまとめまして、国会等いろいろ御相談いただき、御審議をいただくような段取りを現在検討しておるところでございます。
○伊藤郁男君 その労基法研究会ですが、昨年の八月に中間報告を出したわけですが、その中には、一日九時間にしようと、こういう提起ですね。これは世界の労働時間短縮の現状から考えても逆行しているのではないか、このように私は認識を持っておるわけでありますが、労働大臣の御見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(山口敏夫君) 労働大臣といたしまして、いろいろ先生方にぜひひとつ広範な角度から労働時間の問題を御討議いただきたいと言って今討議をいただいておる最中でございまして、その中間答申の中に一日九時間という問題も出てまいりまして、特に労働界初め強い批判があることも私は承知をしておるわけでございますが、しかし、あくまで中間の段階でございますので、それがいい悪いということを、お願いしておる大臣の立場でこれの結論を出すということは僣越でございますので、最終答申を待っておるというところでございます。 しかし、今伊藤先生の御指摘のように、一日八時間というのが労使の一つの主流になっておるわけでございまして、九時間という問題につきましては、もう先生御承知のとおり、週休二日制に移行するための、改善への促進というものも学者の先生方もお考えいただいて、一日を削るために、週休二日制へ移行するために一日の時間を九時間と、こういう一つの立場からの御検討でもあったのではないかというふうに思います。しかし、現状八時間が主流になっておりますので、なかなかそれが九時間というようなことは、現状の労使関係においては実態になじまないのではないかと、私自身はそう考えております。
○伊藤郁男君 少なくとも労働大臣としては一日当たりの労働時間をふやすような法改正は考えていないと、こういうことですね。もう一度確認します。
○国務大臣(山口敏夫君) 先ほど申しましたように、大臣としてお願いをした手前、その最終結論が出る前に自分としてはこうだと言うことは経過上失礼な点もございますので、今私御答弁申し上げましたように、現状八時間というものが定着をしておる。そしてさらに労働時間短縮の問題が大きな社会問題、労働問題になっておる、こういう現状でございますので、九時間が主流になるということは極めて少ないのではないか、また、そうした傾向にならないのではないかという私は考え方を持っておりますということを御説明させていただきたいと思います。
○伊藤郁男君 それでは次に移ります。科学技術の問題についてお伺いをしておきます。 あすから科学万博が開かれるわけであります。これは国家事業として、あるいは国際事業としてもぜひ成功させなければならない、そういうように私も考えておりますが、この機会に我が国の科学技術開発のあり方について御所見をお伺いしておきたいと思います。 戦後四十年、我が国は自由世界第二位の経済大国となりました。大変豊かな国となったわけであります。二十一世紀に向けてこの豊かさをさらに確かなものとするために、私は、我が国が大変資源の乏しい国ではありますけれども、頭脳資源は無限にあるわけでありますから、我が国は技術立国への展望をこの機会により明らかにすることだと思います。それは低開発国や発展途上国の経済発展にも貢献できる道であり、日本が二十一世紀に向けての平和大国への道でもあると私は思うのでありますが、総理の見解をまずお伺いをしておきます。
○国務大臣(中曽根康弘君) 全く同感でございます。日本は資源がなく、人口は多い、しかも高い教育程度のある国でございます。最近におきましては、基礎科学、応用科学おのおのの部面におきましてかなり独自性のある研究が進められつつあります。こういうようなところから日本の将来を考えてみますと、科学技術立国ということが日本の立国の一つの重大な条件である、かねてから考えておるとおりでございます。今回の筑波の科学技術博が行われましたのもこういう趣旨で国民の皆さんと一緒に科学技術の問題を考えようという意味でつくったところでございます。 政府の諮問機関である科学技術会議におきまして、先般来も将来を見通すいかなる科学技術政策を行うべきかという諮問をしまして立派な答申をいただきました。この御答申を尊重いたしまして科学技術政策を強力に展開してまいりたいと思う次第でございます。
○伊藤郁男君 特に先端技術の分野は物すごい勢いで進展を遂げているわけであります。そしてそれが産業構造の変革はもとより、経済、国民生活、そして文化の面に大きな変革をもたらしていくことは明らかであります。そういう意味で、この科学技術の振興の問題は日本の運命をも決する大きな課題だと思いますけれども、科学技術庁長官、我が国の技術水準は欧米と比べて一体どこがすぐれて、どこが劣っているのか、お伺いをいたします。
○国務大臣(竹内黎一君) お答え申し上げます。 我が国の科学技術水準は官民挙げての努力によりまして大きく進歩いたしております。応用開発の面では欧米と肩を並べるようになったかと認識しております。特に鉄鋼とか自動車、半導体あるいは産業用ロボットにおいては高い競争力を有し、世界的技術水準にあると見ております。ちなみに、私どもの役所で昨年実施いたしました民間企業の研究活動に関する調査におきまして、回答企業の四分の三以上が欧米企業に比べて同等以上の技術水準であると認識を示しております。一方、将来の新しい技術を生み出す技術開発力については、欧米に比べて同等以上とするものが三分の二、こういうことでございまして、発展のポテンシャリティーについては欧米に比べて若干の立ちおくれをこの企業の皆さんも持っておるかのように私は見ております。
○伊藤郁男君 今の長官の認識は若干私の認識と違うわけであります。日本は確かにこの開発技術はすぐれたものを持っておりまして、これが日本の経済発展の基礎にもなったわけでありますが、しかし創造的な基礎研究の分野では大変おくれている。欧米よりも本当に数段著しくおくれている。これは長官、五十八年の科学技術白書も大半を割いてそのことを強調しているわけです。 そこで、具体的にお伺いをいたしますが、第一に、我が国の科学技術開発の総額はどのくらいなのか、民間も含めてお伺いをいたしますし、そして民間と政府の負担割合は一体どのくらいになっておるのか、この点もお伺いをしておきます。
○国務大臣(竹内黎一君) 先ほどの私の答弁に関連して一言補足をさしていただきますと、まさしく先生御指摘のように、我が国の科学技術水準の問題点の一つは、基礎的な、あるいは基盤的な研究面に問題があるということは私も承知をいたしております。 さて、研究投資の御質問でございますけれども、我が国の研究投資は、民間、国を合わせた国全体といたしまして、総務庁の統計局がつくりました科学技術研究調査報告によりますと、昭和五十八年度における我が国の自然科学部門の研究費は六兆五千億円となっております。このうち、国、地方公共団体の負担は一兆四千億円で全体の二二%、民間の負担は五兆一千億円で全体の七八%、すなわち国並びに地方公共団体が受け持っておる分が四分の一にも足りないというのが私どもの今後の問題点かと認識しております。
○伊藤郁男君 もう少し具体的にお伺いいたしますが、政府の技術支出の中で基礎研究費の占める割合はどのくらいになっておりますか。欧米との比較も含めて御説明いただきます。
○政府委員(堀内昭雄君) 先ほどの基礎研究費の分担の問題でございますけれども、欧米におきましては大体十数%、多いところでは二〇%程度が基礎研究費の割合でございます。それから日本におきましてはトータルの研究投資のうち大体一四%というものが基礎研究費でございます。
○伊藤郁男君 それから企業ですね。大きな企業が研究費を投資しているわけでありますが、この企業の実態を御報告いただけませんか。企業が基礎研究の分野にどの程度の一体投資を行っておるのか、どの程度力を入れておるのか、お伺いをいたします。
○政府委員(堀内昭雄君) これは五十七年度の実績でございますけれども、先ほど申しました全体で基礎研究費の割合は一四%でこざいますけれども、産業界におきましては大体五・五%でございます。
○伊藤郁男君 すなわち長官、我が国は欧米と比べましてこの基礎研究の分野は民間、政府とも大変おくれているわけですよ。そして民間はこの基礎研究、これは時間もかかり膨大な費用もかかりますし、リスクも伴うから、これにはなかなか手がつけられないんですよ。何としてもこういう分野については政府が責任を持つ分野だと私は思っておるのでありますが、長官の御見解をいただきます。
○国務大臣(竹内黎一君) 先ほどもお答え申し上げましたように、我が国の科学技術研究費の抱えておる問題点の一つは、国ないし地方公共団体の占めておる割合が著しく低いということ、私もこれが私どもの将来の科学技術政策を振興していく場合にこれから特に留意していく点であると考えております。そういうことで、これから特に開発に長期の時間あるいは人材あるいは資金を要するような、こういった問題についてはもっと国が積極的に役割を受け持っていくべきだと考えます。
○伊藤郁男君 私は、この基礎技術研究の立ちおくれから我が国が速やかに脱却しないと日本の将来の発展は危うくなる、こういうように思っているんです。専門家も将来への研究投資を怠れば我が国の産業の発展も今が絶頂期で終わるかもしれない、このような重大な警告も発しているわけです。具体的にこの警告に対しまして何か対策は立てておられるのかお伺いをいたします。
○国務大臣(竹内黎一君) 先ほど総理が科学技術会議の答申のことをお触れになりましたが、その科学技術会議の十一号答申の中におきましても、我が国の研究開発投資の水準は当面は三%、しかしやがては三・五%、それぞれ国民所得に対してでございますけれども、それを目指すようにという一つの御指示がございます。現況は国民所得に対しまして約二・九%でございますので、私としては今申し上げた三%あるいはないし三・五%の目標達成にせいぜい努力をしていきたいと、こう思います。
○伊藤郁男君 総理、レーガン大統領の一九八五年の予算教書によりますと、アメリカ政府は技術開発予算を、これは国防関係の技術関係予算を除きますけれども、昨年に比べまして一四%もふやしているんですね。総額にして日本円でおよそ十三兆円ですよ。この先端技術分野で世界のトップランナーであるアメリカはさらにさらにもう一歩先に行こう、こういう戦略で臨んできているわけであります。日本の科学技術開発の政府支出は総額一兆五、六千億円ですよ。ここ数年ふえても減ってもおりません。アメリカの十何分の一と、こういうようなお寒い限りであります。しかも基礎研究費はこの一兆五、六千億円のうちの半分程度ですね。さらに問題なのは、この技術予算というのは各省庁に細切れに配分されまして、その間に整合性も優先性もない、こういう状況なんです。もっと政府の、総理が言われましたような意欲を具体的に予算の面にもあらわしていく、こういうようなことが必要だと思いますし、この面における大胆な政策の充実というのですか、そういうものを望みたいと思いますが、総理の御見解をお伺いをしておきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 米国の科学技術に対する執念、あるいはソ連の科学技術に対する熱意というものは非常に大きなものでございまして、我が国においてもこれはつとに叫ばれていることでございますが、必ずしも予算上十分な措置がとられていないということははなはだ遺憾でございます。たしか科学技術研究費の国民所得に対する比率を見ますと日本は二・九ぐらいであって、科学技術会議の目標はこれを三・五ぐらいまでに上げようというものであったと記憶しております。この科学技術会議の目標に達するように今後とも努力してまいりたいと思いますが、日本の場合は割合に民間の研究投資の比率が多くて政府関係が少ないのです。外国の場合は政府、民間ともどもやっております。 そういう面から見まして、日本側のやり方については政府関係についてもっと拍車をかける、あるいは民間側につきましてもいろいろ税とか、そのほかいろいろな面で考えてやる面がありはしないか。それから、もう一つ大事な点は研究従事者の質と量の問題でございまして、この研究従事者の質と量の増大、特に独創的研究をしている者に対するいろいろな助成、援護措置、こういう問題、それから研究管理のやり方の問題、特に研究を指導してくれる、例えば昔の理研の仁科さんのような方々が各方面に輩出していただいてガイダンスを与えていただく、こういうさまざまな問題がございまして、これらもやっぱり予算に帰する点も多うございますから、大いに努力してまいりたいと思っております。
○伊藤郁男君 次に、防衛問題に入っていきたいと思います。 総理は、我が国の防衛体制や自衛隊の編成は見直しの余地のない完全なものとお考えでございましょうか。
○国務大臣(加藤紘一君) 我が国の防衛力整備は、委員御案内のように、五十一年度に決められました防衛計画の大綱に従って現在整備を進めております。その際、たびたび御指摘いただくのでございますけれども、自衛隊においてもいろいろな意味で時代に即して編成を変えたり、いろいろ効率化に努力すべきではないかという御指摘をいただいておりますが、私たちも自衛隊が行政改革等効率化努力のための聖域であるとは思っておりません。私たちも努力をしなければならないと思っております。防衛計画の大綱の中で、編成等につきましても極力効率化等に努めてまいりたいと、こう考えております。
○伊藤郁男君 国の行政組織は臨調答申によりまして大分改革が進んできております。したがって、自衛隊だけが域外にあるというわけにはいかぬと思うんですね。自衛隊の編成についても国際情勢の変化や我が国の地理的特性などを踏まえてその基本を見直す必要があるのではないかと私は思うのですが、いかがでしょう。
○国務大臣(加藤紘一君) 先ほども申しましたように、自衛隊としても行政改革の聖域にあるとは思っておりません。 さて、私たち現在の自衛隊、特に三自衛隊のいろいろな任務でございますけれども、それぞれ我が国の置かれております地理的な特性等に従いまして綿密に考えながらつくられてきておるものでございます。しかし委員御指摘のように、今後の科学技術の推移もございますので、私たちとしては五九中業を設定する際に最近の科学技術の推移を踏まえ、最近の情勢の変化を踏まえながら防衛計画の大綱の中でもその変更は可能であると考えておりますので、そういう効率化等についてはできる限りの努力をしてまいりたい、こんなふうに思っております。
○伊藤郁男君 それは防衛計画の大綱の枠内ではどうしてもなかなかいかぬと思うんですよ。自衛隊の編成につきましては、例えば陸上自衛隊は五方面隊十二個師団を基幹としておりますけれども、この師団という単位が本当に適切なのかどうか。あるいは海上自衛隊も実情に沿っていないではないかという、こういう批判もあります。海上自衛隊は自衛艦隊と地方隊をその編成の基本としておるわけですね。しかしこれは旧海軍の連合艦隊と鎮守府という、そういう編成と全く同じなんですね。これに対する批判もある。 そしてまた、三自衛隊の警備区分がそれぞれ全く違うというのもどうなのかという批判もあるわけですね。陸は北海道重視、海は南西部のシーレーン重視、あるいは空は北を重視と、こういうことは三自衛隊の防衛戦略がばらばらで統一がとれていないのではないか、こういうようにも思うわけですね。したがって、そういうようなさまざまな問題点をやはり常時見直していくということがなければだめではないか。しかも、この自衛隊の編成配備というものは、これは防衛大綱で規定しているわけですね。だから防衛大綱の枠内でというのではなかなかその見直しができないのではないかと私は思うんですが、いかがでしょう。
○国務大臣(加藤紘一君) いろいろな御議論もございますけれども、防衛計画の大綱自体幾つかの面で弾力性を持たせてございます。そういう範囲内で最近の技術の変化、それから情勢の変化をしたものを吸収できるように五九中業で十分考えてまいりたいと思います。 委員御指摘の三自衛隊の管轄区域の問題等幾つかの問題点ございますけれども、その点につきましては防衛局長から若干の答弁を補足させていただきたいと思います。
○政府委員(矢崎新二君) 陸海空自衛隊の管轄区域の問題についてお尋ねございましたので、若干補足して御説明を申し上げたいと思います。 御指摘のように、陸上自衛隊は五個方面隊、それから海上自衛隊は自衛艦隊のほかに五個地方隊をもって編成をいたしておりますし、航空自衛隊につきましては三個航空方面隊と、それから沖縄の方の一個航空混成団ということにしておるわけでございます。御指摘のように管轄区域について若干の相違があるということでございますが、これはそれぞれの部隊の特性に応じてつくっておるということでございます。この管轄区域の区分は、主として平時におきます教育訓練とか、警備とかいうものを効率的に実施するという観点からつくっておるわけでございます。そういたしまして、陸は主として陸上で行動する、海上自衛隊は主として海上で行動する、航空自衛隊は主として空中で行動し、かつ平時では特に領空侵犯対処の仕事を持っておる、こういう特性がございます。 そこで、陸の場合で申しますと、やはり地理的な特性に応じまして海峡等の区分というものを踏まえた管轄区域を設定せざるを得ないということがございます。それから、海上自衛隊につきましては今申し上げました海峡等を例えば二つに分けてやるというわけにもいきませんから、そこら辺は一つの地方隊に管轄をさせるということが必要になります。それから、航空自衛隊の場合ですと、これはただいま申しましたような空中での行動でございますから、陸上の地理的な条件等とは別個の観点から区分をすることが可能である、そういうことが理由になっておるわけでございます。 ただ、いずれにいたしましても、有事におきます行動、運用というものは、これはまた別の話でございまして、有事におきます三自衛隊の統合的な運用も含めまして、それが弾力的、効率的に動かし得るように私どもは従来から別途の分野でいろいろと工夫をしておるところでございます。
○伊藤郁男君 総理、防衛大綱にはさまざまな批判があることは御承知だと思うんですね。現実の脅威に対応していないとか、あるいは大綱決定当時よりも国際情勢はもう大きく変わっているではないかとか、あるいは別表は単に数量を示したものだけでその内容がわからない、こういうようなさまざまな批判があるわけでありますが、これについてどうお考えでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 大綱がつくられたときと客観情勢がかなり変化をし、かつ科学技術の進歩も非常に顕著なものがありまして、その条件が変わってきているということはよく知っております。しかし、大綱水準を達成するというのが我々の現在の目的でございまして、その点に努力していきたいと思っております。大綱の内容につきましても、質的な転換、質的な前進ということは認められておるのであります。それから、編成等につきましてもあの既定の枠は守ってまいりますが、あれは大体あのときの条件を前提にしてつくられている、そういう注釈がついております。そういう意味におきまして、いろいろな改良、工夫を加えることは可能である、そういう意味におきまして努力してまいりたいと思っております。
○伊藤郁男君 総理は、これは衆議院予算委員会の答弁でこう述べておられます。すなわち大綱の水準の枠内において海と空からの侵入に対抗する力を重視していく必要がある、陸上自衛隊をないがしろにするという意味ではないが、むしろ洋上撃破とか水際撃破とかということを考え、陸海空の総力とその統合力を運用していく、しかし現在の大綱水準の達成状況を見ると海と空の作戦航空機及び艦艇の達成率が非常に低いと言われているわけであります。この発言を聞きますと、まさに陸をないがしろにするわけではないが、これからは海と空に力点を置いていく、洋上撃破を重視していくお考えと受けとめられますけれども、所見をお伺いをいたします。
○国務大臣(中曽根康弘君) そのとおりの考えを持っております。
○伊藤郁男君 それは重大な発言でありますが、日本は周囲が海であります。したがって、空から侵入する勢力があったとしても洋上で撃破してしまえば食いとめることができるというのが洋上撃破という言葉が与えるイメージだと思います。しかし現実はどうなのか。果たして日本は空と海だけで作戦行動ができるような広々とした海に取り囲まれているのかどうか。例えば旧樺太から北海道はわずか四十キロですね。国後島から北海道まで十六キ〇、これは大砲の弾が届く距離であります。そこから外部勢力が侵攻した場合、洋上撃破は空と海の責任だといって、これは不見識な言い方かもしれませんが、陸は昼寝をしていてもいいのだろうかと、こういう疑問があるのですが、いかがでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) 陸はもとより重要でありまして、決してないがしろにしておるわけではありません。しかし達成率等々を見ますと、航空機、艦艇等々が非常におくれておる、そういう意味におきまして、おくれておる部分を強く押し上げていかなければならぬ、また質的にも転換していかなければならぬ、陸にいたしましても、今までのような陸の概念のみに拘泥することなく、新しいいろいろな配慮、工夫というものを陸の装備や運用についても考えなければならぬと思うのであります。それから、三幕の連携、統合につきましても長い間言われていることでありますが、この統合、連携というものが必ずしも十全であるとは思いません。特に情報の統合というような問題につきましても、今後改良すべき点がかなりあると、そう思って申し上げておるのであります。
○伊藤郁男君 総理は今、大綱の水準に比べて海と空の達成率が非常に低いと言われましたけれども、しかし陸も非常に低いわけですね。念のために申し上げますが、現在自衛隊が持っております戦車の半分は弾を撃っても相手の装甲を貫くことができません。大砲は旧式で射程距離は相手の半分しかない。各国の開発している新式の砲弾は使えない。ごろごろ引っ張っていく牽引式のものでございますから、相手からはすぐ探知されて撃破されてしまう。そして師団の機動性もまことに惨めな状況にある。このように陸も大変低い状況にあるわけでありますが、そのように認識されてはおりませんか。 〔委員長退席、理事梶木又三君着席〕
○国務大臣(中曽根康弘君) おっしゃるとおりでございます。陸の方も、しばらく前まで第二次世界大戦後米軍が使っておった戦虫や何かを貸与してもらって、大砲にしても戦車にしてもそうです。そういうものを磨いて使っておったというのを、ようやく代替して自前のものに今切りかえつつある最中でございまして、それもある程度旧式になりつつある。そういう点で、我々は大いに今後とも改良を加えていかなければならぬと考えております。
○伊藤郁男君 自衛力を整備するその目的の主眼は、侵略を未然に防止するということが一番の主眼ですね。そして陸上防衛力を整備する理由は二つある。一つは、たとえ国土が戦場になっても国を守ろうとする国民の強い防衛意識を内外に表明することだと思います。第二は、侵略国に対して我が国の陸上防衛力を撃破するだけの戦力を海空の妨害を排除して送り込むという大きな覚悟と決心を強いることになる。うかつに手を出せない、手を出したら大変なことになるぞという体制、このことが侵略を未然に防止することになると思うわけであります。与えられた予算の中で陸海空のバランスのとれた自衛の整備が必要であると思いますし、中でも陸は国土防衛の最後のよりどころになっておるんだ、こういうように思いますけれども、総理の御見解はいかがでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) やっぱりバランスのとれた防衛体系が必要であると思うんです。それから地域的に重点化ということが客観情勢及びその地域の地形等を考えてみまして必要であると思います。しかし、やはり一番大事なことは制空権のないところでは有力な防衛行為はできないということでありまして、制空権、その地域における航空優勢ですね。側空権という言葉は古い言葉になりました。その地域における航空優勢あるいは海上優勢、そういうようなものがないところでは列島防衛を担当している日本の場合では非常に難しくなる。一たん上げてしまったら、これはもう日本の国民もおりますし非常に被害も出てきて混乱が起こるのでありまして、やはり上げないでやる、それが防衛の第一義である、そういう面から見ると、陸も海も空も上げないでやってしまうという方向に力をつくっていかなければならぬと、そう思っておるのであります。
○伊藤郁男君 現在は防衛計画大綱の水準を達成する過程にあるとはいいましても、私は現在の我が国の防衛体制は非常に穴だらけで欠陥が多いと思うんですね。 そこで、さらに具体的にお伺いをいたしますが、六本木の防衛庁の広い構内に中央指揮所という地下式の建物がありますが、あれは有事の際にどのような役割を果たすものでしょうか。
○政府委員(矢崎新二君) 中央指揮所は有事におきましては長官が行いますいろいろな情勢判断、これを的確に行うための情報の集中をそこで行い、そしてまたそこの情報に基づきまして迅速なる判断を行う、そして長官の指揮命令をまた的確かつ迅速に各部隊に伝達をするということを目的としてつくったわけでございまして、設備としては、中心になるものは防衛会議室というものがございまして、そこに必要に応じまして長官及び各幕僚、内局及び制服の幕僚が集まりまして、そこで協議をして一挙動でいろいろなことができるということをねらいとしてつくったものでございます。また、これは有事だけではございませんで、大規模ないろいろな緊急事態というときにも使うことは想定をいたしております。
○伊藤郁男君 建設費は幾らかかりましたか。
○政府委員(矢崎新二君) この中央指揮システムは五十六年度以降整備を進めてきたわけでございまして、システムの整備に要しました総経費は約八十六億円でございます。
○伊藤郁男君 この指揮所に総定員何人を予定しておりますか。
○政府委員(矢崎新二君) この中央指揮所を二十四時間完全にフル稼働で管理をしていくためには、私どもとしては約七十名ぐらいの要員が必要ではないかというふうに考えて計画をしてきたわけでございますが、現在の定員は三十四名ですか、その程度でございまして、現在のところは完全な二十四時間運用ではございませんで、夜間は当直体制をもって維持をしておるということでございます。
○伊藤郁男君 防衛庁はこの六十年度予算要求で何人を要求いたしましたか。
○政府委員(矢崎新二君) 六十年度の概算要求に当たりましては、中央指揮所の管理要員等の増員といたしまして三十五名の増員を要求をしたわけでございますが、最終的には、全体としての防衛庁のいろいろな諸事業についての財源の配分の最終的な判断の過程で、本年度は増員を全体として見送らざるを得ないという判断をいたしましたので、この増員につきましても六十年度は断念をした経緯がございます。
○伊藤郁男君 さらにお聞きをいたしますが、中央指揮所は有事の際の食糧や水、医薬品などの備蓄、これが行われておりますか。
○政府委員(矢崎新二君) 中央指揮所の中には、現在は平素から特に医薬品とか食糧を備蓄するということはまだしておりませんけれども、緊急事態が起こるというようなことになりますれば、必要に応じまして非常用糧食等を持ち込むということを考えているわけでございます。それから水の点は、これは中に貯水槽がございますので、ある程度の期間に耐え得るような状況にはあると判断をいたしております。
○伊藤郁男君 今のようなお話にありましたように、大蔵大臣、これは定員が七十くらい要る、現在はその半分しかいない、何とか充足したいといって要求をしたけれども、ゼロ査定に終わってしまった。これは中央指揮所ですから国の運命を左右する中央頭脳ですね。これの定員をむげに退ける。私は自衛隊もさまざまな部面でもう節約するところはしなければならぬし、削るところは削る、ふやすところは大胆にふやすということが必要だと思うんですが、このような中央機構の定員を半分にとどめておくというのは余りにも問題があると思いますし、大蔵大臣は、所管外のことで質問をいたしますが、日本の防衛について大臣はどのような所見を持っておりますか、お伺いをしておきます。
○国務大臣(竹下登君) これは伊藤さんからそういう公式な立場から御質問がありますならば、私としてはやっぱり五十一年十月二十九日の国防会議及び閣議決定になりますところの防衛計画の大綱、これの趣旨に沿ってのお答えをせざるを得ません。我が国憲法上許されます範囲内での防衛力を保有することは「日米安全保障体制と相まって、わが国に対する侵略を未然に防止し、万一、侵略が行われた場合にはこれを排除することを目的とするものである」というのが私はまず基本認識であるべきであろうというふうに思っておるところであります。 さらに、このいわば中央指揮所等の定員充足率の問題に対しての御質問に関連してのお答えでございますから申し上げますならば、いわば総体的な人件費増加を極力抑制するという観点から、ぎりぎりの調整の結果、中央指揮所の運用につきましては、防衛庁におかれて現行の要員で指揮所の諸機能に支障を来すことのないよう工夫に努めて、これを適切に維持管理していくという方針と聞いて、最終的なぎりぎりの調整を行った次第であります。
○伊藤郁男君 総理、この指揮所は、先ほどもお話がありましたように、防衛出動だけじゃないんですね。大規模災害、東海地震などの災害にも備える、そのときにも使用するはずになっているわけでありますが、災害はいつやってくるかわかりません。夜昼これ区別なく突発するわけであります。こういうような一番大切な、そういう災害が突発したときの初動体制の準備がこの程度ではまことにお寒い限りだと私は思うんですね。だから、こういうところはやっぱり重視して、定員いっぱいを充当すべきだ、このように思いますけれども、いかがでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほども申し上げましたように、統幕の統合能力が十分でない、情報もそうだ、そう申し上げましたように、ややもすると三幕に重点が移り過ぎていて、これを統合運用するというその中心点が弱いという憂いを持っておるのであります。それと同じように、指揮所の問題も同じような性格のものであるだろうと思いまして、改善を加えたいと思います。
○伊藤郁男君 もう一つ、これは幾ら立派な近代兵器を導入いたしましても、結局それを扱うのは人間ですね。その自衛官の処遇でありますけれども、これがどうなっておるかというと、公務員の中では最も低い扱いを受けているわけですね。 そこでお聞きをいたしますけれども、一般職の公務員が五十三歳で退職いたしますと、これは勧奨退職に当たるわけでありますが、退職金でどのような優遇措置が設けられておりますか。
○政府委員(藤井良二君) どのようなモデルを設定するかによっていろいろ違ってまいると思いますけれども、一般職の国家公務員の場合、十九歳で採用になって五十三歳でやめた、それで最終が行政職俸給表(一)の五等級二十四号俸という場合には千九百二十万円になります。
○伊藤郁男君 質問に答えてない。優遇措置はどういうようにこれからなるのかということですよ。退職金は幾らということを言っているんじゃないです。
○政府委員(藤井良二君) 今の千九百二十万円というのは定年退職前の特例措置を入れた数字でございます。
○伊藤郁男君 五十三歳定年の自衛官はそういった優遇措置はないわけですね。
○政府委員(友藤一隆君) お答えいたします。 自衛官に対します退職手当につきましては、御案内のとおり、原則といたしまして一般職の国家公務員と同様に国家公務員等退職手当法が適用されることになっておるわけでございますが、自衛官が勧奨退職をいたしました場合にも、特例措置も当然適用になるということになるわけでございますが、御質問の五十三歳という年齢でございますと、一尉から曹長までの階級にある自衛官では五十三歳が定年でございます。したがいまして定年退職ということになりますので、このたびの勧奨優遇措置は適用がございません。ただ、三佐以上の階級の自衛官については定年が五十四歳以上ということでございますので、それぞれの年齢差に応じて特例措置がある、こういうことでございます。
○伊藤郁男君 総理、これ五十三歳、一般職員が定年になりますと勧奨退職でかなりの優遇措置がとられる。自衛官はそういうものはない。五十三歳で比べてみますと、私の計算では約五十万円くらいの差になるわけです。 それからもう一つ、医療費の問題ですけれども、自衛官本人の医療費は国が見るということに法律でなっているわけですね。ところが、俸給表をつくる際に千分の二十四相当分をカットしているわけです。これは本人分医療費が実質的に有料になっているということです。こういうように自衛官の待遇につきましては一般公務員より大変低位に置かれているわけです。総理はしばしば自衛隊の最高指揮官として精強な自衛隊員たれ、こう訓示されておりますけれども、これでは精強になれるはずもありませんし、有能な人材も私は集まらないと思う。やっぱりもっと人間を大切にしていくということがこの分野においても基本的なものでなければならないと思いますし、これらのさまざまある冷遇措置について改善を加えるべきだと思いますが、総理の御所見をお伺いをしておきたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) おっしゃるように、自衛隊の職員の給与、退職金その他が一般の公務員よりも冷遇せられているということであれば、これは私は速やかに検討し直すべき性格のものである、こう思います。やはり自衛隊発足当時は、下の者はたしか公安職と横並び、公安職は少し優遇せられておりますから、上の者はこれは一般職と一緒、こういうことにした記憶がございますけれども、今も私は自衛隊職員の俸給表その他は一般の公務員をにらみながら職務の特性に応じて当然規定せられておるもの、したがって、おっしゃるように退職金その他を含めて特段に今不利になっておるとは私は承知しておりませんけれども、仮にそういうことであるならば、そしてまた退職金の問題等について防衛庁当局から相当厳しい御要望があったことも私は聞いております。したがって、こういう問題はやはり自衛隊職員にはどういった処遇がふさわしいのかといったようなことは真剣に検討して私は結論を出すべきものであろうと、かように考えております。 〔理事梶木又三君退席、委員長着席〕
○国務大臣(加藤紘一君) 自衛隊職員の退職手当等について委員からいろいろ御関心をいただき、御質問をいただきましたこと、私たち非常に感謝申し上げます。 このたびの定年制の導入実施とそれから退職手当の改正によりまして、自衛隊員の処遇が従来より悪くなったわけではございませんけれども、退職手当法の改正自体の波及効果として若干の今後の運用によってはアンバランスが出るところが出てくるというような感じは、委員の御指摘のとおり私もそう感じております。したがって、この点につきましては問題点の指摘と改善のために私たちも今後とも努力をしてまいらなければならない、こう思っております。 それから一般に隊員の住宅、隊舎等かなりの問題がございまして、現在御審議いただいております六十年予算ではその辺の改善を大幅に進めたいということで一生懸命努力した内容を出しておりますけれども、若手の曹士なんかが二段ベッドにまだ入れてあるというところもかなりございますし、家族が九・五坪の住宅に入っておる、特に北海道なんか冬は非常に寒くてどうしようもないものですから、じゃ、アルミサッシを入れるかというと、曲がっておるものですからアルミサッシさえもはめ込むことができないので仕方なくビニールで目張りしている、地域からは全体的にちょっと美観を損ねるからもうちょっと自衛隊職員隊舎は何とかしてくれ、でなければどこかに出ていってくれみたいな声さえもいただいているような状況なものでございますので、今後とも一層私たちも努力しなければならないと思っております。 とりあえず今度出しております予算についてはよろしく御理解の上御審議いただければと、こう思います。
○伊藤郁男君 やっぱりこの面は人間を大切にするという基本に基づいて速やかな改善の方策をお願いをしておきたいと思います。 そこで、造船、海運政策についてお伺いをいたします。我が国の造船業は世界一です。ところが、およそ十年間に及ぶ長い低迷の中にあります。国際競争力も低下をしてまいりました。日本産業発展の基盤的役割を担ってまいりましたこの造船業の将来見通しをお伺いいたします。
○政府委員(神津信男君) 先生御指摘のとおり、日本の造船業は近年の海運市況の低迷によります世界的な新造船需要の減退によりまして、仕事量の減少であるとか低船価受注を余儀なくされるという非常に厳しい状況に置かれております。新造船受注量も四十八年度のピーク時を境としまして大幅に減少しておりまして、現在操業量は設備能力の七割程度の低水準で推移をしております。今後の見通しにつきましては、当分の間、需要の回復は期待できない状況でございまして、現状程度の低操業が続くものと思われます。
○伊藤郁男君 造船界は七年前に不況業種の指定を受けまして、三五%の設備削減を行いました。このため四十数%に及ぶ従業員が離職を余儀なくされているわけであります。そして今なお、お聞きをするように将来見通しは大変厳しい。業界の安定と雇用の安定のためにいかなる方策がありますか、運輸大臣。
○政府委員(神津信男君) 先ほど申し上げましたように非常に厳しい状況でございますので、先生今御指摘のございましたように、三五%の設備能力を削減いたしました後も造船能力拡張を抑制しております。また、過当競争防止のための操業調整を実施しておりますし、需要創出のための輸銀、開銀資金の確保、あるいは船舶回撤の促進等の対策を講じてきております。また、雇用の問題につきましても、特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の特定不況業種に指定をしていただきまして、雇用調整助成金制度等の雇用関係助成が受けられるような措置を講じておるところでございます。
○伊藤郁男君 運輸省は今日までの造船政策、そして行政指導の柱をぬじ曲げたことがないと明言できますか、お答えをいただきます。
○政府委員(神津信男君) 私どもといたしましては、ただいま御説明いたしましたいろいろの政策の原則の中で行政を行っておると思っております。
○伊藤郁男君 それではお聞きしますけれども、昨年の函館ドックの救済に当たって一万八千五百総トンの造船能力を三万総トン引き上げることを認めたのは何ゆえでございますか。
○国務大臣(山下徳夫君) 函館ドックは第一次石油ショック以来、全般的な造船不況の中に非常に苦しい経営を続けてまいりました。五十二年に至りまして、これらの造船不況対策として、例えば債務の棚上げであるとか造船設備の処理、あるいは大幅な人員整理等を行ってまいりましたけれども、依然として低迷する造船不況の中で、昨年に至りまして非常なピンチに追い込まれました。 そこで、政府といたしましても、このまま放置できないということでいろいろと相談をいたしまして、たまたま来島グループが後を引き受けるという意思があられるということでいろいろ相談いたしまして、まず社内におけるひとつ改革をやらなければならぬということで希望退職等を募集いたしまして、七百九十人の目標に対して六百四十二人希望退職に応ぜられました。したがいまして、残りの千三十三名で新しい来島グループによる経営が一応確立したわけでございます。しかしながら、今申し上げましたように、希望退職も完全に行われたわけではございませんし、依然として低迷するそういう状態の中にあり、そしてまたこの函館ドックというのが函館において唯一、最大の企業でございますし、この影響はまた函館のみならず北海道全般に対して非常な経済界に与える影響が大きいということも私どもは配慮をいたしたわけでございます。 そこで、緊急措置といたしまして御指摘のような点も行ったわけでございますけれども、今申し上げましたような、とにかくこれはつぶしちゃいけないという緊急措置でございますから、先ほどねじ曲げるというお言葉ございましたけれども、これはねじ曲げ方でございますけれども、いずれにいたしましても、とにかく今申し上げましたように事業を破綻に追い込んではいけないということで、例外中の例外措置として今御指摘のような点を行ったわけでございまして、このことによって全体的な造船計画を曲げようということではございません。その点御了解いただきたいと思います。
○伊藤郁男君 今造船界は能力過剰ですね。過剰建造に悩んでいるわけですね。そして、業界はこの十年程度我慢の子を押し通してきたわけです。その業界に新たなる過剰要因をこれはもたらした結果になるわけですよ。特例措置、特例措置と言われますけれども、明らかにこれはこれまでの造船政策の根本をぬじ曲げたものである、運輸省当局がみずから禁を破ったものだ、こういうような強い批判がわき上がっているわけですが、この批判にどうお答えになりますか。
○国務大臣(山下徳夫君) 先生の御指摘の点は私もよくわかるわけでございまして、造船業界が非常な不況である、そこまでして、例外的にまでして救済しなければならぬのか、そのこと自体が全般的に造船界に決していい影響を与えないよ、こういう御趣旨であろうかと思いますが、先ほども申し上げましたように、函館において最大の企業であり、あるいはまた地域経済に非常な大きな影響があるということを考慮いたしまして、例外ではございましたけれどもそういう措置をとったということを御理解いただきたい。同時にまた、造船工業界にもいろいろとお諮りいたしまして、これはあくまで例外だからということで一応の御了解を得たということもひとつ御賢察いただきたいと思います。
○伊藤郁男君 大臣、例外が例外でならなくなっちゃうんですね。この函館の特例措置をきっかけにいたしまして、中小、大手の造船界から上限規制を撤廃せよとか、分野調整を求める声が一気に噴き出しているわけですよ、こういうのにどう対処されますか。
○政府委員(神津信男君) ただいま先生御指摘のように、いろいろ抑制政策を続けてまいりまして、それに対する要望が出ておることは十分承知をしておりますが、私どもといたしましては、造船業の将来どうあるべきかという長期ビジョンを現在検討しておりまして、これの結果に基づきましてそういう個々の要請に今後また対応してまいりたいと考えておるところでございます。
○伊藤郁男君 地域の救済はもっともでありまして、しかし総合的な見地からそういうものをやらなければいかぬと思うんです。造船のある所は大体城下町なんです。造船業が中心なんですね。だから、そういうようないろいろな波及を考えて総合的な見地からやるべきだと思う。 そこで、重大な問題だと思いますのは、函館の再建が労働条件の切り下げを条件にして追求されようとしていることだと思うんですが、労働大臣、この点についてどう思いますか。
○国務大臣(山口敏夫君) 函館ドックは昨年十二月二十八日に新会社が発足、再建中でございまして、したがって労働者の引き継ぎに際しての労働条件を新たに規定するという協議がまだ最終的に決定されておらないという状況でございますので、先生御指摘の労働条件が切り下げられておるのではないか、まだそうした点も含めて最終的に労使の協議が決まっておらない、こういう状況でございます。
○伊藤郁男君 例えば年間の労働時間を二千六十四時間から二千二百時間、一隻当たりの工数二十五万時間を十五万時間に短縮するというような提起もかつて行われたこともある。これはまさしく超人的な過重労働だと私は思うんですね。労働大臣、どう思いますか。
○国務大臣(山口敏夫君) 現在の「函館どつく」の所定労働時間は年間二千六十四時間ということでございまして、時間外労働も現状多くないという状況に私ども報告を聞いております。
○伊藤郁男君 そこは深く追及いたしませんが、坪内商法にはさまざまな評価がありますね、前近代的な経営だという見方もありますし。しかし、企業は人なりでありまして、企業に働く人々により明るさと豊かさ、こういうものを同時にもたらしていくのが近代経営のあり方だと私は思うのですが、大臣の見解いかがでしょうか。
○国務大臣(山口敏夫君) 会社の状況が厳しければ厳しいほど労使双方の信頼関係、再建への共通の意欲、連帯が大事でございまして、先生の御指摘の部分も十分経営の上に反映されることが望ましいことだと考えます。
○伊藤郁男君 総理、この低賃金、長時間労働、このごろは三重交通のあの例のスキーバスの転落事故もありましたが、こういうようなものによって低船価競争がさらに一層進んできますと、造船業の危機というものが今叫ばれている段階においてさらにその危機が増幅される、こういうことになるわけでありますが、どのように総理は考え方を持っておられますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 時短と休暇の問題は与野党の書記長、幹事長会談でも問題になりましたし、労働側の御要望も非常に強いことを承知しております。一般論として見ますと、日本の労働時間が平均して労働省の報告によりますと二千百三十六時間でございましたか、それに対してドイツが千六百時間、イギリス、フランスあたりが千八百時間前後、こういう情勢を見ますと、日本人は非常に勤勉だなという気がいたします。しかし、これでこれだけの生産力と繁栄と所得水準が維持されておるし、また流通機構も維持されておる、そういう点もまた見逃すべからざることであります。原則的には労使関係でこれを打開していくことでございますが、政府の関係する部面につきましては政府もできるだけ時短に協力出し上げるように努力してまいりたいと思っております。
○伊藤郁男君 総理お疲れでこざいますので何か私の質問にとんちんかんの御答弁をされておりますが、これはお疲れですから私はこの場では余り追及はいたしません。 次に、過剰船腹の解撤の問題でお伺いをしておきます。 現在、全船腹量の四分の一程度が過剰船として係留されているわけであります。これらの大半は老朽船でありまして、安全の面あるいは省エネの面から経済的メリットはありません。これらを解撤して廃材の再生、有効活用を望む声が東南アジアを中心に多いわけであります。そこで、これらの国々へ経済援助、技術援助の立場から日本政府が積極的役割を果たすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(神津信男君) 先生御指摘のとおり、国際的な船腹過剰を解消いたしまして海運造船市場の正常化を図るために、国際的な規模での船舶解撤の促進を図ることは極めて重要であると考えております。また、開発途上国の中には、工業化の進展に伴いまして鉄鋼需要が増加している諸国がございまして、これら諸国において船舶解撤事業が促進されれば、当該国の経済的利益をもたらすのみでなく、世界の海運造船市況の回復にも貢献することになると認識をしております。 このような見地から、我が国におきましては、昨年の十一月のOECD造船部会で、開発途上国における船舶解撤の促進を図るべきことを提案をいたしまして、基本的な合意を得て、さらに検討を進めることになっております。 こういう情勢を受けまして、我が国において開発途上国等における船舶解撤を促進するためにいかなる方策が可能かにつきましてさらに検討を行うことにしております。
○伊藤郁男君 総理、ここでちょっと一つだけお伺いをしておきますが、ことしも横浜港にイギリスのオリアナ号やソ連のイワン・フランコ号など、次々と毎月一隻ぐらいずつ十六隻の各国の豪華客船が入ってくるわけですね。かねてから私どもは海洋国日本のシンボルとして三万トン級の客船をつくるべきだ、このように主張してまいったわけでありますが、総理も党首会談やあるいは我が党の書記長の塚本質問にお答えをされて、ロマンのある話だとして真剣に研究されることを約束されておるわけでありますが、この考えに変わりはありませんか。ぜひ積極的にお考えをいただきたいと思いますがいかがでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) さきに年金客船の問題が民社党の皆さんから御質問があったと思います。これについては政府間で検討を進めたいと思いますとお答えしておきました。運輸大臣からその辺の状況を報告させます。
○国務大臣(山下徳夫君) 年金客船の問題につきましては民社党挙げて大変御熱心で、基本的に私も賛成でございます。そのようにいつも申し上げておりますし、私も長いこと社労におりまして、従来の年金福祉事業団等の行う年金福祉政策について、やはり御指摘のように海にこういうものがあってもいいなあということは私も十分わかるのでございますが、問題は、さてこれは豪華客船をつくっても、それからの経営の維持、ペイできるかということが一番問題であろうかと思います。いろいろと御意見もございましたので早速行政当局に命じましていろいろ検討させましたのですが、一つ例をとってみますと、クイーン・エリザベスというような豪華船がペイするためには、大体一人当たりで一日に七万円ないしは八万円お客さんからちょうだいしなきゃならぬ。御指摘の年金客船については、それじゃどの程度でペイするかということを一応いろいろ積算をやってみたのでございますが、大体この半分程度、一人で三万五千から四万ぐらいちょうだいしなければとても今後これを維持していくことができないということになりますと、よほどやり方を考えなければとても維持できないのではないか。問題はそこのところでございまして、今後とも検討は十分いたすつもりでございますが、当面そういう点でちょっと私どもも悩みはそこにあるわけでございます。
○伊藤郁男君 やっぱりこの問題は、経営の面は第三セクターみたいなもの、あるいは民間にお任せいただければ十分にやっていけるんですよ。こういうことを踏まえて、そして、この問題は海洋国日本のシンボルとしてやっぱり大いにつくる方向で努力すべきだ、このように思いますので、さらに一層の検討をお願いをしておきたいと思います。 漁業問題についてお伺いをいたします。 日ソ漁業交渉の取り決めによりまして、一昨日ソ連漁船が塩釜港に入ってきたわけでありますが、船員の安全は確保できますか。
○国務大臣(佐藤守良君) 伊藤先生にお答えいたします。 地元の治安、警備態勢については政府として万全を期する必要があると考え、この問題につきましては警察庁と十分連絡をとって万全を期してあります。
○伊藤郁男君 この問題は政府間の取り決め、相互主義に立って決められたものでありまして、政府はそういう事情というものを国民に対して人道的見地から大いにPRすべきだと思うのですが、いかがでしょう。
○国務大臣(佐藤守良君) 先生にお答えいたします。 実は今度の寄港は、私も訪ソいたしましたけれども、難航する日ソ漁業委員会の協議の局面打開のためにやむを得ざる措置で、単年度として認めたものでございます。そんなことで、地元宮城県及び塩釜市に対しましては理解と協力を得るべく誠心誠意話し合いを行ってきたのでございますが、また先生の御指摘のとおり、一般国民に対しましても種々の機会を通じ、正しい理解を得るべく努めておるところでございますが、今後とも一層の努力をしたいと、こう考えております。
○伊藤郁男君 この寄港に関して中心的責任を持つ担当官庁はどこですか。
○国務大臣(藤波孝生君) ソ連漁船の塩釜寄港につきましていろんな問題がございます。それに政府として積極的にそれぞれ連携をとりながら対処する必要がある、こういうふうに考えておるところでございますが、これらの問題につきましては農林水産省が中心になりまして、関係する各省と十分連絡をとりながら、そごを来さないように努力をいたしておるところでございます。
○伊藤郁男君 昨年の小名浜港への寄港の際には右翼が連日押しかけて大変な迷惑をこうむっておるわけですね。しかし、この問題はもし人身に対する殺傷事件などでも起これば事は外交問題になるわけですね。したがって、重大な問題だと思いますので、きちっとした担当官庁を今そのような形で決めていただいて、これは税関は大蔵省だとか、出入国は外務省だとか、港湾施設は運輸省だ、検疫は厚生省だなんてばらばらに対策をとっていてもどうにもなりませんので、その点はそういう形で積極的にその担当官庁を通じて調整をし、進めていっていただきたい、このように要望をしておきます。 そこで、日本の漁業戦略についてお伺いをしておくのですが、十二月—一月にわたりました日ソ漁業交渉も決裂寸前までいきました。二月のアメリカとの間の割り当て漁獲量の問題も大変な事態に達しているわけであります。このアメリカとソ連の日本に対する今後の対応はどのように変化していくと考えられますか。
○国務大臣(佐藤守良君) 先生にお答えいたします。 昭和五十年、先生御存じのとおりでございますが、米国との二百海里水域設定を契機として世界は二百海里時代に入りました。そんなことで、我が国の遠洋漁業は大変厳しくなっています。漁業生産量は毎年千百万トン台の水準を維持しているということでございます。そんなことで考えることが二つございまして、その一つは遠洋漁業をどう考えるかということと、周辺水域の漁業をどう考えるかということでございます。 遠洋漁業につきましては、二百海里体制のもとで諸外国の操業規制がますます強く厳しくなると考えております。我が国周辺水域は世界的に見ましても有数の実は漁場であるわけで、今後はその高度利用を従来にも増して図る必要があると考えております。こんな状況でございますし、私たち農林水産省としましては粘り強い漁業外交を展開して、海外漁業協議の推進等により我が国遠洋漁業の存続に努めてまいりたいと、こういうように考えておるわけでございます。 また、沿岸漁業につきましては主な点が二つございまして、その一つは沿岸漁場の整備、開発、栽培漁業の振興等、つくり育てる漁業の推進をやること、二番目には漁業生産及び水産物流通の基地である漁港の整備等各種の対策を推進してまいりたいと、こう考えております。 そんなことで、我が国漁業の総合的な発展に努めてまいり、国民に対する水産物の安定的供給を確保してまいりたいと考えております。
○伊藤郁男君 具体的にお伺いいたしますが、アメリカの下院漁業小委員会は、ことし九月に切れるマグナソン漁業保存管理法の修正法の作成に入って、原案がもう既に決まったと、こう言われておりますが、どのような内容のものでございますか、説明をいただきたい。
○政府委員(佐野宏哉君) お答えをいたします。 原案と申しますよりは、今できております案は今後どうするかということの議論をするためのたたき台的な案であるというふうに御理解いただいた方がよろしいかと存じますが、その中には先生御懸念のように大変危険なことが書いてございまして、一九九九年をもちまして二百海里水域内の外国漁業を禁止してしまう、それから外国漁船によります洋上買魚の仕事も一九九二年をもって終わりにしてしまうというようなことが書いてございます。
○伊藤郁男君 さらに、すり身などの加工品も輸出を控えさせる、こういうことも入っていると思うんですが、これが実施されますと日本の北洋漁業は大打撃を受けるわけですね。したがって、アメリカは我が国水産物の市場開放を求めておりますが、これと全く矛盾した法律ということになりますが、政府の対応を問いたいと思います。
○政府委員(佐野宏哉君) 確かに先生御指摘のように、水産物の対米輸出を抑制させるようなことも含まれておるわけでございまして、私どもといたしましては、先ほどの二百海里水域内での外国漁業の一九九〇年以降の操業禁止という点に特に重点を置きまして、そういうことが立法化されることのないよう私どもとしても全力を傾けるつもりでございまして、二月上旬に行われました、先生先ほど言及なさいましたが、対米協議の際もその点は強く米側に申し入れているところでございますし、三月一日には同様の趣旨のコメントをアメリカの下院漁業小委員会あてに提出をしたところでございまして、今後ともあらゆるルートでそういうことの立法化を阻止してまいりたいと考えておるところでございます。
○伊藤郁男君 問題の捕鯨問題でもアメリカが先頭に立って理不尽かつ非科学的な態度を今までとり続けてきたわけですね。鯨の資源量は国際的に見てどうなっておりますか。
○政府委員(佐野宏哉君) 現在我が国がとっております鯨種について見ますと、例えば南氷洋のミンククジラの場合では、これはイギリスやアメリカ等の科学者も参加した国際的な共同資源調査が行われておりまして、その結果資源量は二十六万頭以上という大きなものであることがIWCの科学委員会におきましても全員一致認められておるところでございます。また、日本の沿岸捕鯨がとっておりますニタリクジラ、あるいはミンククジラという、こういう資源につきましても同様に全会一致で捕獲をしても差し支えないものであるという勧告が行われておりますし、それから一番最近の時点で問題になりましたマッコウにつきましても、現在程度の捕獲を五年間程度続けても資源にはごくわずかの影響しかないという勧告が、これもIWCの科学委員会によって行われておる、そういう状況でございますので、現在我が国がとっております鯨種について見ますと、いずれも資源的には全く問題のないものばかりであるということでございます。
○伊藤郁男君 国際機関の、しかも科学的な調査によって資源量は十分であるということが証明されているのにもかかわらず、アメリカは日本の伝統的な捕鯨を結局つぶすというような、そういうような態度に出てきている。まことに私は許されないと思うのですが、これに対する対応をお伺いしておきたいと思います。
○政府委員(佐野宏哉君) お答えをいたします。 先生今御指摘のような考えを私どもも持っておりまして、従来から政府といたしましてもそういう考えで対処をしてまいったところでございます。ただ、最近も新聞紙上でも報道されておりまして御案内のことと存じますが、昨年暮れ私自身がワシントンでまとめてまいりましたマッコウクジラの捕獲についての日米両国政府間の合意がアメリカの裁判所によってパックウッド・マグナソン修正法に違反するものであるという判決が下されまして、今後アメリカ政府は日本との間でパックウッド・マグナソン修正法に基づく証明を行わない旨の合意を日本政府とすることを禁じられておるような状態でございます。これに対してアメリカの行政府あるいは日本側の関係業界も、さらに上級審の判断を仰ぐべく手続を進めておるところでございますが、今後とも粘り強くやってまいるつもりでおります。
○伊藤郁男君 農水大臣、我が国も対抗手段を持つべきだと思うんですよ。例えばアメリカにあるペリー修正法等のような立法措置というものを我が国も考えられないのかどうかお伺いをします。
○国務大臣(佐藤守良君) 先生にお答えいたします。 実はこの間、先生御存じと思いますが、三日五日に米国連邦地裁で、昨年十一月の日米捕鯨合意は違法であるという判決を下しました。そんなことで早速三月七日にマンスフィールド米国大使を招きまして、本件について米国政府として適切な措置をとるよう要請しましたところ、米国としては直ちに執行停止請求を行い、さらに控訴の準備を進めていると聞いております。 実は先生御指摘の点でございますが、例えば現在の輸入制度を改正しまして、対日漁獲割り当てとリンクした国内法を仮に制定したとした場合には、ガットに抵触するのみならず、実は今いろんな日米感情の問題がございますが、日米関係全体に悪影響が及ぶものと考えております。 そんなことで、そういうような今長官が言ったような努力を続けながら、何らかの形で我が国の捕鯨の存続を図ってまいりたい、このように考えております。
○伊藤郁男君 次に、地方行革についてお伺いをいたします。 政府は、地方行革大綱を決めましてその推進を地方に求めているわけでありますが、その内容を御説明いただきます。
○国務大臣(古屋亨君) 私からお答えいたします。 地方行革大綱は、前文におきましてその必要性と行革の趣旨を述べておりまして、大体三点に分かれておりまして、第一は地方行革推進体制の整備の問題、第二は重点事項、第三が計画的推進というような三部に分かれております。それで、その重点事項につきましては、やはり地方行革の重点事項として、事務事業の見直し、組織・機構の簡素合理化、給与の適正化、定員管理の適正化、民間委託、OA化等事務改革の推進、会館等公共施設の設置及び管理運営の合理化、地方議会の合理化等を取り上げておるわけでございます。
○伊藤郁男君 その中で、民間委託を積極的に進めよと述べておられるわけですね。 私が今配付させていただいております資料は、地方自治経営学会の権威ある資料であります。この中で、例えば十万規模の中の場合では、委託可能な二十五の事業を民間に委託すれば二十億円から三十億円、二十万から三十万の規模の市では四十億円から五十億円も節約できる、このようになっているわけでありますが、大臣、どう思いますか。
○国務大臣(古屋亨君) 配付になっております今の資料は私も非常に関心を持って検討させていただいたものでございます。これは民間団体が御承知のように独自の立場で調査したものでございます。私ども自治省としては、この配付資料にありますような事務事業で民間委託にして適当であるというような事業は、地方の実情に即しまして、地方公共団体の自主的な判断に基づいて当該団体の適切な管理監督のもとに民間委託を進めることは望ましいものと考えておりまして、今回の地方行政改革大綱の趣旨もこのような観点から民間委託を推進することとした次第でございます。 なお、地方団体において具体的に民間委託を進めるに当たりましては、この先生の配付されました資料などは重要な参考資料になると考えております。
○伊藤郁男君 ところが、この民間委託を進めたいけれども、したくてもできないというのが地方の首長さんの大方の声なんですね。それは国の各省の通達や文書でさまざまな制約が加えられているからであります。例えば、文部省通達によりますと、公民館、美術館、博物館、少年自然の家等は直営でなければならないと、このようにしておりますけれども、どうして直営でなければいけないのか、文部大臣の御答弁をいただきます。
○国務大臣(松永光君) 今御指摘の公民館等でございますが、御承知のとおり社会教育をする拠点でございまして、したがいまして、根幹にかかわる部分、基本的な部分についてはこれは民間委託にはなじまないと思いますけれども、その他の部分、例えば建物の保守、清掃あるいは警備、こういったものにつきましては民間委託は可能であると思いますが、仮に民間委託になじまない分野につきましても、非常勤職員の活用等、行革大綱の指摘の趣旨を踏まえて経費の節減合理化、これは進めてまいらなければならぬと、こういうふうに考えておるわけでございます。
○伊藤郁男君 通達で直営でなければならぬと、こう言っておるものですから地方はできないんですね。 もう一つ、学校用務員をどうして委託、パート化してはならないのか、これもお伺いいたします。
○国務大臣(松永光君) 学校用務員につきましては、これは学校の設置者である市町村がその必要に応じて、あるいは実情に応じて置くことになっておりまして、学校用務員の業務を民間に委託するかどうか、これは学校の設置者である市町村が地方の実情に応じて判断をし決められることでありまして、文部省としては地方の実情に任せておると、こういうことでございます。
○伊藤郁男君 大臣、それはちょっと認識が違いますよ。よく調べまして対応していただきたい。 労働大臣、庁舎の管理またはこれは学校の警備や電話交換手またはコンピューター管理、学校給食業務を民間に委託することが何ゆえに職業安定法違反になりますか。
○国務大臣(山口敏夫君) 電話の交換業務あるいは警備、今先生の御指摘のような業種も含めて、請負事業として適正にこれが運用されておれば職安法四十四条には抵触しない。ただ、発注者の指揮監督権というのが連動してまいりますと、現状の法律では一応職安法四十四条に抵触するということで、その部分につきましては、今派遣法の問題をいずれこの国会に御審議をお願いする段取りになっておりますが、その部分で、現在職安法に抵触する部分も含めて改正されるというふうに今作業を進めておるところでございます。
○伊藤郁男君 この職安法第四十四条は、「労働者供給事業の禁止」を定めているのですね。これは本来、強制労働とか中間搾取による労働者の不利益を禁止するという法律なんですよ。今の自治体がそんなことをやるわけがありません。だから、職安法第四十四条によって庁舎の管理やコンピューターの管理や学校給食業務を民間に委託することはできないのだという労働省の通達や文書があるものだから、地方は民間委託ができないということになっているわけですね。 総務庁長官にお伺いいたしますが、私が今挙げたのはほんの一例です。まだ八つぐらいあるんですよ。この種の制約があるということは、地方行革は国が一面阻害しているということになるわけですね。したがって、洗いざらいこういう問題を検討して、そして改善をし、そして民間委託が進むように推進すべきであると思いますし、あわせて総理の御見解をお聞きしておきたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) ことしの行革の大きな目玉が地方行革にあるわけでございます。そういうことで自治省からも通達を出して、これはもう何しろ地方が自主的にやっていただかなければならぬわけです。行革は総理大臣と各省との関係よりは、本当に地方がやる気になればやさしいんですね、文字どおりの部下ばかりなんですから。ところが、そういう意味合いでよくやってくれておる地方団体もあれば、まだそこまでいってない団体もある。これはやってもらわなければいけません。しかし地方行革を、中央各省庁もだんだん考え方は変わってきておりますけれども、妨げておる大きな原因は、今御指摘のような点にあると思います。これはやはり中央のそれぞれの省庁の役人諸君の意識の変革、これをぜひ私は私の立場としてはお願いをしたいと、かように考えるんです。 そこで、今地方の行革に対しては、公共団体に対する国の関与、必置義務の整理合理化、それから人件費補助の見直し、機関委任事務の整理合理化、地方公共団体の許認可等の整理合理化、こういったことを従来からもやっておりますが、さらに推進をしていきたい、さように考えておるわけでございますが、いずれにせよ、いろいろ理屈を並べて、これは法令にあるものはしようがない、ぐあいの悪いものは法令だって幾らでも改正できるんですから、改正をしていただかなければならぬ面もこれはあると思いますね。しかし、改正のできないものもありますから、そこらの取捨選択は必要だと思います。同時に補助金、あるいは各種の通達、あるいは行政指導、こういうところで率直に言って過剰介入がある、これだけは事実だろうと思いますから、こういう点についてはやはり行政改革全体の立場に立って中央各省庁もぜひお考えをいただきたい。これは私の立場で協力を要請をいたしたい、かように思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 地方行革の推進は、ことしの施政方針演説でも申し述べた政府の重大政策でございまして、今の後藤田長官の申されましたように、また自治省を督励いたしまして所期の目的を上げるように努力いたしたいと思います。
○伊藤郁男君 大蔵大臣、時間がありませんので、通行税の問題についてお伺いをいたしますが、通行税というのはどのくらいの額に上っておりますか。
○国務大臣(竹下登君) 五十六年度六百七十一億円、五十七年度七百十五億円、五十八年度七百一億円、五十九年度、これは補正後でございますが七百三十億円、御審議いただいております六十年度予算では七百七十億円。 以上でございます。
○伊藤郁男君 本来、この通行税というのはどういう性格のものでございましょうか。
○国務大臣(竹下登君) これは通行税は、通常より質の高い輸送サービスの消費に着目して負担を求めるところの租税で、いわば消費税の一種であります。通行税は、我が国のサービスの消費に対して課税する消費税体系の一翼を担っておるものといたしまして、他の同種の消費税との間でバランスのとれた合理的租税である、こういうことであります。
○伊藤郁男君 通行税の大半というのは飛行機に乗るときにかけられるわけですね。もともとこれは日露戦争のときに戦費を集めるために無理やりつくった税なんですね、奢侈税なんですよ。昔は飛行機はぜいたくな乗り物でありましたけれども、今は国民の五千万人が利用しているわけです、まさにぜいたくな乗り物ではとてもありません。これはもう廃止すべきだと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(竹下登君) 大体税制というのが変化していきますときには、これは残念ながら世界の実例を見ましても、いわば戦争が起きたときとかいうようなときが一つの契機となっておるという例は確かにございますが、今の航空機の利用者、確かにもう五千万人に上ると言われるわけでございますので、今、伊藤さんの趣旨は、言ってみればもう大衆化しているじゃないか、だからぜいたくじゃないじゃないか。こういう考え方が基本にあると思うわけでありますが、通行税は、我が国のサービス消費に対して課税する消費税体系の一環として、通常より質の高い輸送サービスの消費に着目して負担を求める租税でありまして、他の同種の消費税の間でバランスのとれた合理的な租税である。すなわちほかのものと同じように一〇%、こういうことでありますが、現下の厳しい財政事情のもとにおきまして多額の減収を生じます。したがって、また主要諸外国でも輸送サービスの消費に負担を求めておるということからいたしまして、大変大衆化したのだからこれを廃止するという環境にはないとお答えせざるを得ません。
○伊藤郁男君 前細田運輸大臣も、これは昔から自分自身も主張してきた、悪税の代表だと、こういうように私に御答弁があったんですね。廃止できなければ少なくともこの税は利用者に還元すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(竹下登君) 恐らく利用者に還元するということになるといたしましたならば、空港整備事業等を念頭に置いてのお考え方の御開陳であろうと思っております。したがって、空港整備特別会計に対して、従来から航空機燃料税の十三分の十一に相当する額に加えて、一般財源から多額の繰り入れを行いまして事業の推進を図っておる、こういうことになります。十三分の十一と申しましたのは、あとの十三分の二というのはいわゆる譲与税でございますが、したがって、現下の厳しい財政事情からすれば、これ以上の財源を空港整備に充てる余裕は残念ながらないと言わざるを得ない。特定財源制度につきまして、仮に一般的に申し上げますと、これは財政の硬直化を招く傾向があること等から、やっぱりこれは慎重に対応しなければならない課題だというふうに御理解をいただきたいと考えております。
○伊藤郁男君 この第四次空港整備五カ年計画を見ましても、その進捗状況、達成率は五七・八%なんですよね。したがって、これはもう古い税、全く、ぜいたく品にかけるという思想のもとにできた税をいつまでも残しておくことは問題だと思いますし、できなければそれを利用者に還元をしていく、すなわち空港整備や周辺対策に十分にこの金を目的税的につぎ込むべきだと私は思います。廃止を含めて検討をさらに要求しておきたいと思います。 もう一つ最後でございますが、航空行政につきまして、航空局は現在、航空行政政策研究会で規制緩和について鋭意検討が続けられていると聞きますが、どのような検討を行っているのか。そこで、当面のものと将来のものとに分けて検討を行っているようだが、当面のものとは具体的にどういうものか、将来の検討課題とするものは具体的にどういうものなのか……
○委員長(長田裕二君) 伊藤君、時間が参りました。
○伊藤郁男君 あわせて御説明をいただきたいと思います。 以上でございます。
○政府委員(西村康雄君) 運輸省の航空局におきましては、部内に航空行政政策研究会を設けまして、航空行政が当面しております各般の問題を検討することにしております。このうち、一つは規制緩和の問題でございますが、他の問題は航空利用者のためのサービスのあり方ということでございます。これの長期の問題がいわゆる四五、四七体制と申されておりますような現在の航空事業の運営体制のあり方の問題でございます。これは非常に航空需要が伸びておりまして、何とか自由な競争のもとに利用者に対するいいサービスをしたいというのが非常に強い声でございますが、現在は、御承知のように、羽田、伊丹と両空港とも非常に詰まっておりまして、これらの空港の容量をふやすために今航空局が全力を挙げて空港の整備に努めているわけでございます。おおむね昭和六十八年当時には関西国際空港もできますし、また羽田の沖合展開ということができまして、将来の航空交通体系が大きく飛躍する状況ができるだろうと考えているわけで、それに向かいまして、その前にこれからの航空事業の運営体制というものをできるだけ早い時期に方向づけしたいというのが一つの研究課題でございます。しかし、さしあたりはそのような体制にいきますにはまだ時間がございます。そこで私どもがいたしておりますのは、航空の運賃のあり方等いろいろなサービスの改善問題というのをいかに短期的にやれるかということで今鋭意研究している次第でございます。
○伊藤郁男君 終わります。(拍手)
○委員長(長田裕二君) 以上で伊藤君の質疑は終了いたしました。 ─────────────
○委員長(長田裕二君) 次に、林健太郎君の総括質疑を行います。林君。
○林健太郎君 まず最初に、中曽根総理大臣それから安倍外務大臣、このたびソ連のチェルネンコ前書記長の葬儀に御参列になりまして、それを機会に新書記長のゴルバチョフ氏と大変外交上の成果を上げられましたことを大変高く評価いたしまして、その御苦労に対しまして厚くお礼を申し上げるものであります。 しかし、お帰りになると早速お休みもおとりにならないでこの席においでになって質問を受けられるということで、さぞかしお疲れのことと思いまして、まことに申しわけないと思うんでありますが、どうも国会というところはそうなっているらしいのでしょうがありません。どうぞあしからずひとつお願いいたします。 それでは、私の質問は主として教育とそれから文化の問題についてでございますが、しかしこの教育につきましては既に昨年来臨教審というものが設けられまして、目下精力的に仕事を行っております。私はこの臨教審の設置に賛成でありまして、その人選も私は非常に妥当であると考えております。そして現在行われておりますこの臨教審の仕事に大いに敬意を表しているものでありまして、その審議の結果に期待をしております。 そこで、現在のところはこの臨教審で十分に審議を尽くしていただくように、それをただ望むだけでありますので、ことで審議中の事柄について政府に質問をするというようなことは、これはなすべきことではないと思います。したがってそういうことはいたしませんが、しかしまた、この教育改革といいますのは現在の日本の重要問題でありまして、これはすべての国民が関心を持っていることであり、殊に国会においては大いに論議をすべきことであると思われますので、ここで若干の問題を取り上げたいと思います。 まず、この臨教審の設置は中曽根総理の強いイニシアチブのもとに行われたものでありまして、それは総理がかねてから標榜しておられました戦後政治の総決算という趣旨に沿うものであると考えます。この戦後政治の総決算ということにつきまして、実は、昨年この参議院の予算委員会におきまして関嘉彦委員の質問がありまして、それに対しまして総理は、簡単に言えばオーバーホールであると。大分くたびれたものもあるし、沈殿物もあるし、摩滅したものもあるし、曲がったものもある、そこでオーバーホールをして、二十一世紀への坂道を上がっていく強靭な車体に改造していこうということだというふうにおっしゃいました。大変適切な、しかし巧みな表現だと思いますけれども、しかし、何といいましてもこれは戦後政治の総決算ですから、戦後政治といいますと、これは占領政策の時代でありますから、日本が主権に制限を加えられておった時期のことであり、そのころと事情も大変変わりましたししますので、それの是正ということが当然含まれると思います。 しかしながら同時に、今日の教育改革は、そういうような占領政策の是正といういわば短期的な、あるいは日本に特殊な課題があるとともに、他面また長期的な、そして世界的な規模で考えていかなければならないものがあります。つまり、先ほどの引用した言葉でも、総理は二十一世紀に向かっての云々ということをおっしゃいましたが、つまり現在という時点が、大きく見まして、世界の文明史的な見地からいいまして非常に大事な時期に当たっている、そういう意味での大局的な視点というものが必要であろう、そう私は考えるのであります。 総理は既に、施政方針演説その他いろいろな機会におきましてこのたびの教育改革の理念について述べておられますが、とかく断片的でありまして、そのときどきの御発言でありますので、今私が言ったようなことに関連いたしまして、改めて今度の教育改革に関する総理の教育理念というものを伺いたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 教育は国家の統治行為の中でも非常に重要なことであると考えております。もちろん、政府権力が介入できる分野とできない分野と我々は厳格に区別して考えなければなりませんけれども、教育の理念やその他に関する問題については、憲法の趣旨に従いまして、適切に学校教育等においてこれが基準として確立されておる必要があると考えております。そういう意味において、戦後四十年たちまして、こいねがわくは、世界の文明史的な、歴史的な観点から現在の日本というものをよく見据えまして、そして将来に向かってしっかりとした考え方を基礎にして教育をやっていただく、そういうことが必要であると思っております。単に行政技術的なことや教育技術的な問題に堕すことなくして、よく昔から言われたことでございますが、一体どういう人間像がまず基本的に必要な時代に入ってきておるかということを基本にして、そういう人間像を生み出すためにどういう教育の手段、方法が必要であるか、そういう方法論がまず確立される必要があると思うのでございます。 私は、一口で申し上げれば、世界的日本人、そういうことを申し上げておりますが、いよいよこの世界が非常に身近に迫ってまいりまして、交流も多いし、文明の融合ということも切実に感ぜられている今日でございますから、そういうことに耐え得るようなしっかりとした愛国心と、それから日本の歴史や伝統や日本の風土から出てきておる人間性というものを、いわゆる日本の精神文明というものをわきまえた上に立って、そして世界的に通用する堂々たる見識を持った日本人をつくっていただきたい。 今私がひそかに自分で憂えておりますのは、秋葉原あたりへ行きますと、パソコンを買いに小学生や中学生が殺到しておるようであります。あれもまあ非常に結構なことでありまして、そういう文明の時代に入っていることは事実であります。私はオーストラリアへ行きましてホーク首相に会いましたときに、飯を食べながら彼が言うには、自分の孫はもうパソコンに熱中していると。小学校の上級生だそうです。私の孫も実は同じことなのであって、我々と全く違った遊び方をしておる。この子供たちが我々の時代になった場合に一体どんな時代になるだろうかと考えれば恐ろしいような気がするとオーストラリアの首相も実は言っておったのであります。私はそれほど恐れてはおりませんけれども、しかし、そういう時代に入れば入るだけ、人間性とか、あるいは社会とか、人間の関係とか、宗教心とか、道徳性とか、そういうものがそれと同じぐらいに強調されていくような教育が必要ではないか。人間としての正しい生き方の基本をよく教え込んでいくことが必要ではないか。そういうことも痛切に感じておる次第であります。
○林健太郎君 ただいま、新しい人間像、世界的な日本人、それから愛国心、日本の精神文明、それから人間性、人間関係、道徳、宗教というようなお話がありまして、私もそれは同感であります。 今のお話のことをちょっと私なりに、多少歴史家的に、同じことになりますけれども別な角度でちょっと申してみたいと思いますが、結局、現在という時代は、ここのところしばらく我々が享受してまいりました近代文明というもののこれまた総決算の時期に達しているのじゃないかというふうに思います。近代文明をつくってまいりましたのは、個人の解放、自由ということを基本とするところの人間主義でありますが、それが一方においてすばらしい科学技術を生み、また民主主義という社会制度を生み出しましたが、他面、それが人間の存続を危うくするような状況をつくり出してきたということが問題であると思います。 この科学の発達と人間性ということに関しましては、これはよく言われます核兵器というようなものがありますが、同時にバイオテクノロジーというようなものが出てきまして、人間の生命それ自身をテクノロジー化するというようなことになって、これは大変恐ろしいことになりかねない。 それから、民主主義という社会制度でありますが、実を言いますと、この民主主義の拡大がかえってその中から民主主義の基礎を危うくするような要素を生み出したという面があるのでありまして、これは十九世紀の主としてヨーロッパ、アメリカのことですけれども、後半から学者によって注目されまして、これが二十世紀に入って非常に拡大した。殊に最近になって非常に人々の注意を引いているということであります。といいますのは、つまり、民主主義というものは元来、責任ある行動主体としての個人というものを前提として構想されているものでありますけれども、それが危うくなってきたというのは、今日いわゆる大衆社会というようなもの、あるいは大衆民主主義というような言葉で呼ばれますが、そういう社会現象がそれを生み出したと思うのであります。 実は、総理、二、三日前この会議でもって、現代は大衆民主主義の時代であるということをおっしゃいました。これは悪い意味じゃなくておっしゃっておりましたね。これは民主主義が大衆の間に大いに広がったという意味か、あるいはマスメディアというものが非常に発達した、そういう状況のもとにおける民主主義というような意味でお使いになったように聞こえましたけれども、そういう使い方ももちろんあってよろしいと思うのですけれども、現在、社会学とか政治学なんかの方で言われているのは、つまりマス、大衆というものが独特な意味に使われておりまして、 〔委員長退席、理事梶木又三君着席〕 これが個人個人の価値というものを捨象した、全く抽象的な個の集合というものですね。そうなりますと、そういう集団というものは単なる人間の欲望の量的な拡大、またそれの無限の追求ということになりまして、この社会というものが集団的な利己主義の跳梁の場になる。そこで本来民主主義を支えておりました人間の個性とか人格とかいうものが失われてしまう。これが大衆社会とか大衆民主主義とか言われているものでありまして、これはイギリスのジョン・スチュアート・ミルとか、フランスのトクヴィルとかいうような人が言っているところであります。 こういうようなマス化した人間というのは非常に他の者によって操作されやすい。これはマニピュレーションとか言うようですが、そういうことによって全体主義という独裁主義を発生させるというおそれがある。ですから、そこで個人に自律性を回復してその独立した人間相互間の共同性というものを確立するというのが今日の課題であります。 ところが、そのような人間関係、つまり人間社会を成り立たせている根本の基礎、それは倫理というものであります。実はこれも昨年の関委員との問答で中曽根総理は、自分はカントの断言命令というものを正しいと思っている人間であるということを発言しておられまして、これは大変私は立派な言葉だと思います。このカントの断言命令、今の教育基本法でも人間尊重の立場、これは今日の教育基本法でも「個人の尊厳を重んじ、」とか「個人の価値をたつとび、」という言葉がありますが、これはカントの断言命令、これカテゴリッシェル・インペラチーフといいまして、定言的命法なんという訳もありますが、要するに人間というものを単なる手段として扱ってはいけない、あくまで目的として扱えというのが、これがカントの断言命令の一つのあれですね。そこでもっと難しい言葉で、カント自身の言葉を使うともっと長くなりますけれども、それはちょっときざですからやめます。 それで、なぜそうであるかといえば、これは人間には道徳律というものがあるからで、これも有名な言葉があって、天には星の輝く空があって我が内には道徳律があるということを言っておりますね。これもまた断言命令で、難しい言葉がありますが、それは略します。これはまた、人間の意志ということを中心に申しますと、結局人間の本質である自由というのは意志の自律である、みずからを律することである。そういうふうな倫理、道徳ですね、これが結局人間を人間たらしめている最も根本的なものである。しかも、人間というものは一人一人が独立の個人であると同時に、他の人間もまた独立の個人でありますから、そこでもってそういった人間関係の学、これが倫理学というもので、これは和辻哲郎さんも人間の学としての倫理学、そういうことも言っております。 ところが、この倫理、道徳こそは最も教育を必要とするものでありまして、人間をただほうっておけば自然にその中のいい要素が芽生えて広がってきていい人間になるかといえば、それは絶対にない。ということは、これはよく言われていることですが、ほかの動物には本能というものがありまして、個人とか種族の維持のためにその本能によってそれがうまく行われている。しかし、人間というものは自然にほうっておいたらば決して道徳、倫理というものを身につけることはできない、よくこれはオオカミ少年の例などが言われますけれども。 そこで、この教育は人間が生まれたときから始まるものでありますから、これは家庭教育、幼児教育というものが絶対に大事である。それから、何といいましてもこれは学校の役割が重要でありますから、学校の先生の教育者としての自覚というもの、それから学校における責任体制の確立ということ、これが最も重要なことだと私は考えます。今、臨教審においていろんな方面のことについて研究されておりまして、それぞれ立派な方がいろいろ議論をしておられますからいい結果が出ると思いますが、何といっても一番根本はこの倫理という、道徳教育という問題、しかもそれをただ道徳教育の時間を設けるということだけじゃなくて、家庭それから学校における教育の確立、それが根本だと思います。私一人でしゃべってはちょっといけませんので、この辺で、倫理と教育とか、それから今申しました家庭教育とか教育者の自覚とか、そんなことにつきまして文部大臣にちょっと御感想を伺います。
○国務大臣(松永光君) 先生から高邁な御意見をかしていただきまして感謝しておるわけでありますが、先生の御説、私はまことにごもっともであると思いまして、今後の文教施策を進めていく上で先生の御意見を十分尊重し参考にしながら進めてまいりたいと、こういうふうに考えた次第であります。
○林健太郎君 ではまたちょっと長くなりそうですけれども、今日はいわゆる大衆社会ということを私さっき申しましたのですが、実はこれは先進工業国に共通にあらわれている現象であります。それと同時に、現在の世界であらわれております非常におもしろい現象は、大衆社会化現象の克服策として最近共通に認識されていることがあるのであります。それはアイデンティティーというような言葉でよく言いあらわされますね。これは人間の生活を文化という観点からとらえるということだと思います。つまり社会が人間の行為の連関からできているわけですが、その行為を内面的にえているのがその属する文化であります。このことは必ずしも人によって意識されているとは限りませんが、しかし人々が先祖から受け継ぎ学習しそれを通じて創造し、それをさらに子孫に伝えていく、これが文化であります。 それからまた、人間はさっきも申しましたように孤立しては存在せずに、必ず集団として存在するのでありますが、それがさっきのマスとしての集団というものはその中から人間性を失わせる、人格を失わせますけれども、それが量的なそういう集合ではなくて、共通の文化によって結ばれた集団というものであって初めて個人の行動に支えと活力を与えるというようなことになると思います。そして、こういう文化的共同体が英語で言えばネーション、民族であり、民族の自律組織というものは国家であります。 国家ということについていろいろとまた論じなければならないことがありますが、余り長くなってはちょっと困りますからごく簡単な、アリストテレスが人間はポリス的動物であると言ったように、国家というものは人間生活にとって非常に本源的なものであって、それからまた個人の自律、自由ということに対して一番深い哲学的な基礎づけを与えたのはドイツの観念論哲学ですね。これは私は近代の西洋の非常に大事な価値だと思いますけれども、それが例えばフィヒテのように結局 国家というものの倫理的な役割です。これはまた社会主義者でもラッサールみたいな国家の倫理的役割というものを強調する人もおります。そういうようなわけで大変国家というものは重要なんですが、その議論はそれだけにしまして、非常に私注目していることがあります。それは、現在先進工業国でもって共通に認められているというのは自国の文化的伝統への着目です。これはさっき総理のおっしゃったことでありますが、これはどこの国でもあらわれてきております。そのための歴史教育の重視ということが先進工業国でどこでも行われているんであります。 そこで一つだけ例を申し上げます。それはフランスの例です。これは今フランスのミッテラン政権のもとでもって歴史教育の強化ということが非常に叫ばれているんです。これは国会図書館から出ております海外ニュースガイドというのがありますね。これの最初に一昨年の十月二十日号ですが、これはル・モンドですね、それの一九八三年九月二十三日号というのにありまして、これ読むとおもしろいのですが、時間がたって私の時間なくなっちゃいますから。要するにミッテラン大統領がフランスのある学者に今のフランスの歴史教育というものの調査を命じたところが非常に不十分であると、子供たちが自分の歴史の知識をさっぱり知らないということをミッテラン大統領が知って大変びっくりして、これはもう歴史教育を早急に充実させなければいかぬということを言っていると。それから今度は、これは最近出ました国会のやっぱり海外ニュースガイドです。これはついこの間出た三月七日号ですが、それにその続編が出ております。それでこれなんかも、歴史というものはちゃんと体系的にクロノロジカルに時代というものを追って教えなければいけないと。何かひょこひょことただ過去のことをいいかげんに振り返るのじゃなくて、ちゃんと系統的に歴史というものを教えなくちゃいけない、しかもそれがフランスでは非常におくれているということを言って、現在のフランスでは歴史教育の充実ということが大変叫ばれているということが出ております。これは何も外国のことをまねしろというわけじゃなくて、フランスの社会党政権ですらという意味で申し上げているわけであります。 ところが、そこで私は戦後の日本でもって非常に何といいますか、なおざりにされたのは当初は歴史教育です。それですから、実をいいますと占領政策というものの中での一番私は是正されなければならないのは、その当時のアメリカの占領軍当局を支配しておったプラグマティズムの思想というものなんですが、それが端的にあらわれたのが歴史、地理、これは占領直後の懲罰的な意味ももちろんあったのですが、それだけじゃなくて、当時のプラグマティズム思想からきていると思いますが、社会科という新しい科ができたわけですね。これが私は道徳教育とそれから歴史と地理の教育を希薄にしてしまった非常に大事な要素だと思うのです。これは大臣じゃなくてよろしゅうございます、係官の人でよろしゅうございますが、この社会科という科目ができたいきさつ、過程ですね、それからそれがその後いろいろと是正されてきた経過、それをちょっとお伺いいたします。 〔理事梶木又三君退席、委員長着席〕
○国務大臣(松永光君) お答えいたします。 先生御指摘のとおり、社会科は戦後の教育改革によって生まれた新しい教科なんでありますが、終戦の年の大みそか、昭和二十年十二月三十一日にGHQから修身、歴史、地理の停止に関する指令がなされて、そして修身、地理、歴史というものが実は一時学校教育の場から姿を消したわけであります。そして、その翌年の二十一年の十月になりまして、日本歴史授業の再開が許可されたわけでありますが、そして間もなくしてGHQの民間教育情報局の方から社会科の創設が示唆された。それを受けて至急に社会科についての学習指導要領が作成されて、昭和二十二年九月から小・中・高等学校における社会科の授業が開始された、こういう経過でございます。 先生先ほどから御指摘のように、歴史教育というのは国民的自覚の育成上大事なことでありますので、その後社会科の内容を充実する、なかんずく先ほど先生御指摘の歴史教育というものは系統的になされなければならぬということで、改善充実に努力をして今日に至っておるわけであります。まだまだ十分とは思えない点もあろうかと思いますが、今後とも歴史教育の重要さにかんがみまして、改善充実に努めてまいりたい、こういうふうに考えているわけであります。
○林健太郎君 ただいまの御意見、よく承りました。 それから、これはもう別にお答えにならなくていいんですが、私の勝手な意見を言いますと、社会科というものは私はもう役割を終えたので、あれは解体して歴史と地理、それから道徳教育、これはまあどういう名前をつけるか自由ですが、それを私はこれからやるべきだと思っております。 それから、ついでに申しますと、私は日本の小学校なんかがもっと国語ですね、小学校一年のときから理科とかそれから社会科とか、そんないろいろ何といいますか知識をごたごた教える必要はないのであって、小学校の低学年にはこれはまず国語をしっかりやること、それから数学ですね。この国語をしっかりやるということは日本の古典をやがて読む力を養うもとになるものでありまして、もちろん小学校のときに古典を読むわけじゃありませんが。それから数学の力というのはやっぱり人間の頭の訓練の非常に根本になるものであります。そういうわけで、ゆとりのある教育ということがよく言われますけれども、これは小学校では理科にしても社会科にしても、大人の常識の断片みたいなものをちょこちょこ教えたりする必要はないのであって、根本的に人間の文化の基礎になる言葉ですね、背のような読み書き、それからそろばん、そういう教育をすべきだというふうに思っておりまして、これは質問じゃなくて私の意見を言ったわけであります。 次に、私は歴史教育の必要ということを主に強調いたしましたし、それはさっき総理も愛国心とか、それから世界の中の日本人ということをおっしゃいましたけれども、現在いわゆる国際化時代、国際社会ということでありますが、国際社会であればあるほど、これはそれぞれの民族の持っているところの文化的伝統というものが非常に重視されるべきであると思います。さっきちょっと国家ということを言いましたが、国家というものも、これはさっきの私の使い方をすれば、いわゆるマスとしての人間の集団として国家があらわれますと、これは非常な国家利己主義になって、これは侵略主義にもなります。また権力主義にもなるわけです。ところが、国家というものは、これは文化の所産であるとともに、また文化の担い手であります。そういうわけで、それぞれの人間の持っている集団の、特に内的につながっているものでありますから、これは当然国家に対する愛国心というものは教育に必要でありますし、しかも国家というものは一つの文化共同体として、一つの歴史的個体と言ったらいいと思いますね、個です。ちょうど人間というものが個人個人が自我というものを持っていれば、当然他者があって、その両者が関連することによってより高い自我というものに発展する、それと同じで、それぞれの民族なり国家なりがそれ自身の伝統、文化を持っておって、しかもお互いにこれが接触するということによって本当の世界的な国際化の時代がこれから発展する、そう思います。そういう意味からいいまして、文化交流ということが非常に大事になるわけです。 ところで、これは私は実を言いますと、この前私が国会議員になる前に、外務省のこれは所管であります国際交流基金というところにおりまして、ちょっとそっちの仕事をやっておりましたが、これは非常にやりがいのある仕事でありました。日本の文化を外国に紹介するというようなことが非常に今までおくれておった。日本ではそういうことは国際交流基金だけではありません、ほかの方でもやっておりますが、日本はこの点で非常に立ちおくれているわけですね。そこで、私は外務大臣にこの国際的文化交流の必要性ということについてのお考えを伺いたいのと、それからまた、日本が非常におくれているということを申しましたが、諸外国のそれに携わっておりますいろいろな団体、それからそういう団体の規模とか予算とか、それと日本のそういう団体との比較、そういうことを外務省の方から伺いたいと思います。
○国務大臣(安倍晋太郎君) まず私からお答えしますが、林先生、国際交流基金の理事長として長年にわたりまして我が国の国際文化の交流事業に非常に積極的に御努力していただいたことに対して感謝をいたすわけであります。 この国際交流事業、特に文化交流は、これはこれから日本が国際化をしていく、あるいはまた世界における相互依存というものが非常に密接になってくる、こういう中にあって、文化交流の占める地位というものは非常に重要になってきている。特に外交を行う場合でも、その外交の中の私は文化交流というのは最も大きな位置づけを占めなければならぬ。これは日本が平和国家としてこれから進んでいく上においても大事なことだと。今回もソ連に総理と一緒に行ってまいりましたが、ソ連との間の文化交流も、ソ連の新書記長も文化交流協定をぜひ締結したいということを提唱いたしましたが、ソ連との間には基本的には領土問題といった両国の基本的な対立問題がありますけれども、しかし文化交流といった面から、やはり隣国でありますから、日ソ間の改善の道というものもそれなりに開けてくるのじゃないか、私はそういうふうに思っておるわけでございます。そういうことから、外務省でいろいろと人的な交流であるとか文化の交流、あるいは日本の古典だとか日本の文学その他、音楽であるとか、あるいはまた舞台芸術であるとか、そういうものを海外にも出しておるわけでございますが、これは相当海外的にも評価されておりまして、日本というものを知る上に、新しい日本と古い日本というものについての理解がそういう面から開けてくる。本当の日本の姿を知ってもらうには、やっぱり古い日本も知ってもらわなければなちぬ、同時に新しい日本も知ってもらわなければならぬ。そういう意味における文化交流の役割というのは非常に大きいのじゃないかということを痛感しております。 予算の方もおかげさまで、非常に財政は厳しいわけですが、六十年度予算も一〇・五%ぐらい伸びまして、厳しいそうした財政の中でそれだけ配慮していただいておるわけですから、これは有効に活用してまいりたいと思っております。 海外との比較の問題等につきましては、政府委員から答弁をいたさせます。
○政府委員(波多野敬雄君) 諸外国におきましての文化交流関係の機関について御説明いたします。 まず、英国におきましてはブリティッシュカウンシルがございまして、これは約八〇%政府出資の公益法人でございますけれども、一九八三年度におきます総事業費は五百三億円ということになっております。 ドイツにおきましては一番大きな関係機関はゲーテ・インスティチュートでございまして、約七〇%政府出資の公益法人でございますけれども、同じく一九八三年度の総事業費は百八十九億円ということになっております。その他、ドイツにおきましてはフンボルト研究所、国際アカデミック奉仕団等がございます。米国におきましてはもう先生御承知のように、フォード財団、ロックフェラー財団等がございますけれども、そのうちフォード財団につきましては、これは民間財団でございますけれども、総資産二十四億ドルということになっております。ロックフェラー財団は総資産一億六千二百五十万ドルというふうに承知しております。
○林健太郎君 それと実は日本の国際交流基金との比較を言っていただきたかったのです。
○政府委員(波多野敬雄君) 国際交流基金につきましては、各国が行っております交流基金とは多少規模も違いますし、またそのやり方が違っておりまして、日本はどちらかというと政府主導型で文化交流事業を行っておるのに対しまして、英国、ドイツ等はブリティッシュカウンシルなりゲーテ・インスティチュートなり、半官半民の機関を主体として事業を行っておりますので、多少規模も違います。 国際交流基金につきましては総資産が五百億円余りということになっております。
○林健太郎君 今のお答え非常に私は不満ですね。といいますのは、総資産というのは、その資産の利子で運営しているわけですから、一年の運営費は四十億とかそんなものですね。ブリティッシュカウンシルの十分の一以下です。それからゲーテ・インスティチュートだったら恐らく三分の一ですかな。もちろん今おっしゃったように、国際交流基金だけが国際交流をやっているのじゃありません。これは文部省の所管の学術振興会がありますし、それからもちろん民間の財団でもやっているところもありますから国際交流基金だけがやっているというわけではありませんけれども、一番主なのは交流基金ですね。 それから、日本は政府主導型だけれども外国は独立のとおっしゃったのもどうもおかしいと私は思いますね。それで、国際交流基金の仕事は政府の出資ですけれども、これはインデペンデントな機関として仕事を行っております。ただし、外務省の補助金という形でやっている部分と、それからさっき五百億とおっしゃったのも私は不満なんです。五百億にする予定が四百八十五億まで出て、私がやっているときにそれ以上とまっちゃって、出なくなっちゃったから大変残念に思っているわけなんです。その利子でもって運営する。しかしこれは自主的に運営できるんですよ。ですからそこで事業が違うわけなんです。 外務省が国際文化交流を重視してくださいまして、基金はふえなくなったけれども補助金をその利子に当たる分だけかなりふやしていただいております。防衛費ほどじゃないんですが、外務省の予算の中ではちょっと突出しているところがありまして、これは感謝しております。しかし、補助金でやる事業というのは非常に限定されてしまうんです、例えばこれはODAの関係だから発展途上国でなければいけないとかですね。私の経験から言いますと、例えばヨーロッパにしてもアメリカにしても、非常に日本は世話になっておりますね。しばらく前までは、ちょっと外国へ学問やなんかで旅行するのはみんな向こうのお金で行ったもんです。最近は日本に対する研究をする人が非常にふえてまいりまして、これはもうヨーロッパはどの国でも日本学者が非常にふえて日本へ留学に行きたいというのがたくさんいるんです。そういうのをふやすということになりますと、どうも補助金ではやりにくくて、国際交流基金本来の利子運営の果実でないとなかなかできないので、これは何もヨーロッパ、アメリカに限りません、お隣の韓国でもそうです。実は外務省が非常に重視してくださっていることはわかりますけれども、やはり基金を充実してその利子でもって自主的に国際文化交流をやるという量をこれからもっとふやしていかないといけないと思います。 今の財政事情非常に苦しいですから、そういうことを今すぐやれというわけじゃありませんけれども、長期的な展望として、やはり基金をふやしていくということ、これを大いに御努力いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは林先生も御存じのように、私もこの基金をふやすということについては相当努力しました。政調会長をやっているときも先生と相談して大蔵省に働きかけまして、あのときわずか五億ですけれども基金をふやしたわけです。それ以後はずっと財政が厳しくなりましたのでとまってしまって、いわゆる補助金というもので負担をしていくということで、全体的には徐々にではありますけれども、私も外務大臣になりまして文化交流、人材開発事業、啓発といいますか、そうした国際的な啓発事業は非常に大事だと思いまして、これには相当力を入れて、非常に財政の厳しい中ではそうした文化交流、国際交流関係の予算は、ほかの省に比べれば私はいろいろと外交の重要性あるいはまた文化交流の重要性というものから見て、努力をした成果というものはそれなりに出ているのじゃないかと思いますが、全体的に見て諸外国と比べるとまだまだ基礎が弱い点がある。特に私は、政府の方は割合やってきているのですけれども、この文化交流協会へ民間から相当資金をいただくという予定が、民間の経済の情勢が悪くなったということで、その辺のところは思うようにいってないという点もちょっと寂しいような思いがいたすわけでございます。 いずれにいたしましても、これから文化交流事業というものは非常に重要であるし、日本外交あるいは日本の姿というものを世界に知らしめる、また、信頼関係を確立していく上においても文化が一番入りやすいですから、その点についてはこれから十分努力をいたしまして、厳しい中にも日本の独自な姿というものを、努力というものの成果を上げたいと、こういうふうに思っております。
○林健太郎君 安倍外務大臣のこれまでのいろいろのお骨折りは私もよく知っておりまして感謝しております。どうかひとつこれからも一層よろしくお願いいたします。 それから、やはりまあ広い意味での文化交流なんですけれども、広い意味といいますか、イギリスのブリティッシュカウンシルとかドイツのゲーテ・インスティチュートなんというのができましたのは、元来外国における自国語の教育というのから始まっております。つまり、英語は世界的に使われておりますので、ブリティッシュカウンシルなんかは英語教育ということですね。それからゲーテ・インスティチュートはもちろんドイツ語の教育。そこから始まっているものですから、しかも長い歴史があるものですから、非常に大きな規模の団体になっているわけですね。日本はその点非常におくれております。というのは、外国で日本語を勉強する人間の数というのは非常に少なかったわけです。ところが最近、皆さん御承知と思いますが、非常にふえてまいりましたね。ですから、外国における日本人の教育、これをこの際うんと拡充しなければいけないと思うのです。この点について、これは国際交流基金もやっておりますし、それから文部省関係もありますし、それから同じ外務省関係でも、例えば青年海外協力隊ですか、あの中でやっているのもありますし、そういう海外における日本語教育の振興のためにどういうことが行われているかということをちょっとまた質問したいと思います。
○政府委員(波多野敬雄君) 日本語教育につきましては、現在我々がやっております文化交流の最も重要な柱としておりまして、在外におきましては、まず教師の派遣、日本語学校の設立、それから日本関係図書類の配付等、予算の大幅な増強を得た上で、鋭意この事業に取り組んでおります。さらに、日本語教育を受けまして本国に一度帰った人々を、これをどうフォローアップするかというのが非常に重要なことでございまして、この点につきましても随時集会を開き、随時研修を開き、必要に応じては再度日本に招請して研修をやり直すというようなことをやって、日本語教育の充実に努力しております。
○林健太郎君 日本語、日本に対する関心、それから日本語を学びたいという人間はますます今ふえている状況でありますので、どうか今後ますますこれを拡充していただきたい。 それからもう一つ、これは質問ではありませんが、青年海外協力隊ですね、あれは私、非常に感心しているものです。日本の若者は近ごろは何かだらしないとか、いかぬなんて言う人間よくおりますけれども、外国へ行っているあの連中見ますと実に感心ですね。立派な人間がおります。しかも日本人の優秀性を非常に発揮して、しかも現地へ飛び込んで感謝されているというような若い青年がたくさんおりますね。ですから、こちらの方の予算もどうかひとつふえるようにやっていただきたいというわけであります。私の質問相手に大蔵大臣というのが入っておりまして、これは結局お金をどうしても出していただかなければならないので、個々の点についてどうとは申しませんが、文化関係とか、それから国際交流とか、そういうことについて、全般的に大蔵大臣が大いに関心を持って、そういう方面の予算も、個々のことはそれは各省から出てきますから一々口を出せとは申しませんけれども、それを重視していただきたいということをちょっとお願いして、かつお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(竹下登君) 林先生のお考え方でございますが、一つは国際交流基金の規模が小さいということからする予算と、それからいま一つは、国際文化交流関係全体の予算を文化的見地からいかなる見識を持っておるかと、こういうことでございましょう。 基金の問題は、安倍外務大臣からもお話がありましたように、確かにまだ約五百億の中、それこそ民間が六百万円程度でございますので、この方へも力も入れなければいけませんが、確かに先生がおやめになった後からストップしております。したがって、事業費の補助でもってこれをカバーしておるというのが実態でありますが、国際文化交流全体の予算につきましては、ことしの一般歳出、マイナス予算の中でも一〇・五%増、こういうことで、厳しい財政事情の中からもこれに対してはそれなりの配慮を行っておりますし、また先生が今お話しになりました海外協力隊は、これはODA関係の予算の中にもカウントされるわけでございますけれども、これについても従来からすれば飛躍的な伸びということでございます。いずれにせよ、この厳しい財政事情の範囲内にあっても可能な限りの努力をしなければならないというだけの理解は持っております。
○林健太郎君 あれでございましょうか、文部省の方で何か日本語教育のことでお答えになることありますでしょうか。
○国務大臣(松永光君) 日本語教育というものは、国際交流を盛んにし、また、日本の国を外国の人に理解をしてもらう、こういう意味から非常に大事な仕事であると考えております。文部省のやるべき事柄は、言うなれば日本語教育の基盤づくりというのが主たる任務でございまして、日本語教育の優秀な教員を養成する、あるいは日本語教育に関連する教材をつくってそれを配付する等々の仕事も文部省が中心になってやっております。そしてまた、日本においでいただく留学生の日本における日本語教育、こういったものを文部省が中心になって所管をし、外国における外国人に対する日本語教育、これを主として外務省が中心になってやっていただくと、こういうことで一応の仕分けをしながら、同時に文部省、外務省相協力し合って日本語教育の推進を図ってまいりたいと、こう考えておるわけであります。
○林健太郎君 まだ一分余っておりますけれども、これで私やめます。 どうもありがとうございました。(拍手)
○委員長(長田裕二君) 以上で林者の質疑は終了いたしました。 ─────────────
○委員長(長田裕二君) 次に、久保亘君の総括質疑を行います。久保君。
○久保亘君 私の質問に当たって、臨教審会長の岡本先生に参考人として御出席いただくようにお願いいたしておりますが、どうなっておりますでしょうか。
○委員長(長田裕二君) 久保君に申し上げます。 岡本臨時教育審議会会長の参考人としての出席要求につきましては、先般来から理事会等で御協議をいただいていたところでございますが、理事会での御協議が整わず今日に至った次第でありますので、御了承のほどお願いいたします。
○久保亘君 それは参考人の側の事情ですか、理事会の事情ですか。
○委員長(長田裕二君) 理事会の協議が整いませんでした。
○久保亘君 教育改革というのは、これ国政上の今日の最重要な課題でございます。私は、臨教審の目的な審議を拘束する気持ちは全くありません。しかし、臨教審の組織、運営、審議の方法、公表の仕方、あるいは答申をいつ出すのかといったような問題について私どもは深く関心を持たなければならないし、そういうことについてただしていかなければならない問題もたくさんあると考えております。これらの点は国政上国会が持っている責任であると思っているのであります。これらのことができないとすれば、国政上の調査権をみずからが縛ることでありますから、私は理事会の事情で参考人の出席を拒否されることについては絶対に納得ができません。理事会でお諮りの上、参考人の出席を求められるようお願いいたします。
○委員長(長田裕二君) 速記をとめてください。 〔速記中止〕
○委員長(長田裕二君) 速記を起こして。 暫時休憩いたします。 午後四時五十分休憩 ─────・───── 午後五時二十三分開会
○委員長(長田裕二君) 予算委員会を再開いたします。 昭和六十年度総予算三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き久保亘君の質疑を続けます。久保君。
○久保亘君 私は、臨教審会長の参考人出席については、国政調査権を委員会がみずから制約するようなことは絶対に認められないと思いますので、この扱いについては委員長が善処されることを強く希望いたしておきます。 それでは、それらの問題を除いて少しお尋ねいたしますが、最初に防衛費のGNP一%の問題について、私は中曽根さんの年頭のインタビューをテレビで詳しく見せて、聞かしていただきました。その中で、政党政治だから党高政低と言われても不思議ではない、こういうお言葉がございました。そういたしますと、衆議院において金丸幹事長が約束されました一%を守るために最善を尽くすというのは、やはり政党政治という立場に立てば内閣もこれに拘束される、私はこう思うんでありますが、いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 金丸幹事長の発言につきましては、党幹事長として発言されたものであり、我々といたしましては尊重いたしたいと思っております。
○久保亘君 それで、同じようにそのインタビューの中で総理が言われました中に、六十年度予算は一%を守る、公約どおり実行した、こういうことをおっしゃっております、もちろんその後に少し注釈がついておりますけれども。公約どおり実行したと言われることは、GNP一%以内にとどめるということが公約だということは、これは国民に公約されたものと見てよろしゅうございますね。
○国務大臣(中曽根康弘君) たしか十二月の段階におきまして、今度の六十年度予算編成におきましては一%以内にとどめるようにやります、そう申し上げた、それを指しておるのであります。
○久保亘君 次に、総理は最近大衆民主主義という言葉をよくお使いになりますが、民主主義というのはそもそも大衆の基盤の上に立つものだと思っておりますが、殊さらに大衆民主主義とおっしゃっておりますのはどういう意味でございますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 大衆の声をよく聞き、それと同時に政府や我々の考えを国民大衆の皆さんによくお話し申し上げて御理解をいただく、そういう相互の交流関係を示しておるものであります。
○久保亘君 そうなりますと、このGNP一%の問題につきましては、最近の世論調査では国民の七二%が一%の枠を守ることを支持いたしております。特に自民党支持者の中でも六九%がこれを支持いたしております。また、自民党の国会議員の中でも二二%が一%の枠を守るべきだと主張されております。 そうなりますとやっぱり大衆民主主義という立場に立てば、一%の枠は公約でもあり、大事にしなければならないものなんじゃないでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 守りたいと思っておりますと申し上げているとおりであります。
○久保亘君 それでは、もしこの一%の公約を変えなければならないと総理が判断されたときには、これは当然に大衆民主主義という立場に立っても、国民に信を問わなければそのことは決められない筋のものではないか、こう思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 将来のそういう仮定的な問題については、この際は発言を差し控えた方がいいと思います。特に国民に信を問うというような物騒なことは余り申し上げない方がいいと思うんです。
○久保亘君 国民に信を問わずに一%の枠を超えることが物騒なことなのじゃないですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ここは参議院でありますが、そっちの方は衆議院に関係することでございまして、そういう点からも慎重に私の発言は考えたいと思います。
○久保亘君 それではこの問題を、公約を破棄することについて中曽根さんは自分の判断で国民に問うことなくやってもよいとお考えですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 将来の情勢はまだ不定であります。一連の答弁を衆議院段階にいたしておりまして、公明党の矢野書記長あるいは社会党の田邊書記長、あるいは塚本民社党書記長、大内政審会長、皆さん方にいろいろ答弁しておりまして、そういうような意味からも政府といたしましては慎重にこの問題には対処しておる次第でありますが、将来どういうことになるかというようなことは、ともかく守りたい、そういうことでまいりたいと思っております。
○久保亘君 大変お疲れのようでありますから、少しお休みになりましたらまたお尋ねいたします。 それから次に、私、放送法における番組編集の自由の問題についてお尋ねをしたいと思うんでありますけれども、最近衆議院において科学映画「核戦争後の地球」が問題になりました。その際、郵政大臣は放送法四十四条に反するとすれば、NHKは放送事業者としての責任を果たしていないことになり、遺憾であるという答弁をされておりますが、郵政大臣はこの映画をごらんになりましたか、そして四十四条のどこに反するとお考えになっておりますか、お答えいただきたい。
○国務大臣(左藤恵君) 私はそのテレビは見ておりません。 それから、今お話がございましたが、放送番組につきましては放送法第三条でもって放送事業者に放送番組編集の自由が保障されておるわけでありまして、その編集は放送事業者の責任において自主的に行うわけでありますが、その責任を十分果たしてもし事業者がいないということであれば遺憾であることであって、事業者自身の責任で判断をして、そういうことでやっていただきたいということを申し上げただけでございます。
○久保亘君 それでは、郵政大臣としては、この問題に関しては番組編集の自由、放送法三条や憲法二十一条に照らしてその自由が完全に保障されなければならないというお立場を明確にされますね。
○国務大臣(左藤恵君) そのように私は考えております。
○久保亘君 今の問題に関して、文部省はこの「核戦争後の地球」に昨年度の芸術祭大賞を授与いたしておりますが、この受賞の理由と審査経過を御説明いただきたい。
○政府委員(高石邦男君) 芸術祭は、すぐれた作品を広く一般に公開して芸術鑑賞の機運を醸成するとともに、芸術家に意欲的な公演、発表を促して芸術の創造と進展に寄与する目的で各界の学識経験者等をもって構成する文化庁の芸術祭執行委員会が毎年開催しているわけでございます。芸術祭大賞は、芸術祭参加公演の中から各部門ごとの審査委員会において選考し、優秀なものとして選考されたものが受賞されるわけでございます。御指摘の作品は昭和五十九年度芸術祭のテレビドキュメンタリーの部に参加した作品でございまして、審査の結果、その取材、構成、表現技術ともに特にすぐれた作品であると認定されまして、芸術祭大賞が決定されたわけでございます。
○久保亘君 少し説明が足らぬのじゃないですか。
○政府委員(高石邦男君) ちょっと文化庁所管でございまして、今、政府委員がおりませんので、私がかわって御説明しているわけでございますが、そのほか、この作品は芸術祭大賞のほか第十七回テレビ大賞、第三十六回イタリア賞等の内外における賞を受賞しているわけでございます。
○久保亘君 いや、このテレビ部門のドキュメンタリー部門の受賞の理由は、ちゃんとこれはあなたのところからもらったんだ、完全に読まにゃいかぬよ。受賞理由が書いてあるでしょう。それを全部読めばいいんですよ。
○国務大臣(松永光君) 先ほど政府委員も答弁申し上げましたが、審査委員会において選考し、優秀なものとして受賞されたわけでありますけれども、それはその取材、構成、表現技術、いずれも特にすぐれた作品であるというふうに認められたわけであります。
○久保亘君 どうしても私に読ますのかな。「核戦争後の世界を、内外の科学者百人の協力を得て科学的に予測、みごとに映像化した。」こう書いてあるでしょう。そして、「取材、構成、表現技術ともに秀逸であり、報道・教養・教育各番組領域を総括して、そこから抜きん出たドキュメンタリー作品となった。」こう書いてあるでしょう。違いますか。
○国務大臣(松永光君) 先生仰せのとおりであろうと思います。
○久保亘君 だろうじゃない、そのとおりでしょう。
○国務大臣(松永光君) 今照会しておりませんものですから、先生のおっしゃることでありますから間違いないと思います。
○久保亘君 そんなばかなことがありますか。これは文部省が持ってきたんだ。何を言っているんです。その一部分だけちょこっと読んで、そんなのだめだ。
○国務大臣(松永光君) 間違いないと思います。
○久保亘君 そうすれば、衆議院で文部大臣がこの映画が教材として教育に活用されることについては、やはり事前に教育委員会の慎重な検討が必要である、こう言われておりますが、文部省がこの映画を表彰されたその根拠からすると大変おかしなことだと私は思うのです。まかり間違えば検閲を文部省が言われるような結果にもなりかねないと思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(松永光君) 衆議院における予算委員会の議事録を私も検討してみましたが、これは質問者の方で、専門家の間で科学的に妥当であるかどうか非常に意見が分かれておると、こういうことを前提にした御質問でございました。そこで、そういう場合には、教材として使用する場合の一般原則というものはあるわけでございまして、もしそうであるならば、教育委員会やあるいは学校で教材として採用するかどうかを決める場合には慎重に扱う必要があるという一般論を申し上げたわけでございます。 なお、教科書の問題もそのときに出ましたが、それも教科書検定に関する一般論を申し上げたわけでありまして、客観性、公正なること、教育的配慮、こういう一般論を申し上げたわけでありまして、具体のことについて申し上げたわけではないんでございます。
○久保亘君 それでは、あなた方は文化庁の芸術祭大賞を受賞されたものの具体的な問題としてはそのようなことは考えていない、こういうことですね。
○国務大臣(松永光君) これも一般論であるわけでありますけれども、芸術的な価値と教材として適当であるかどうか、あるいは教科書の記述として妥当であるかということとは判断の基準が少し違うと思うんであります。やはり教科書として検定する場合には、先ほど言ったような客観性、公正、それから教育的な配慮というのが加わるわけでありまして、そういったものを総合的に考えて判断すべきものだというふうに思うわけであります。
○久保亘君 だめなんだな。それでさっきあなた方読まなかったんだよ、僕が言った部分を。「報道・教養・教育各番組領域を総括して、そこから抜きん出たドキュメンタリー作品となった。」そういうことで受賞しているんだよ。何言っているんだ。
○政府委員(高石邦男君) 学校の場合に教科書以外の図書その他の教材で有益、適切なものを使用することができるわけでございます。これは学校教育法で明示されております。その場合に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第三十三条がありまして、教科書以外の教材につきましては、あらかじめ教育委員会にそれを教材として使用する場合には承認を受ける、ないしは届け出をするという制度になっておりまして、それが都道府県、市町村の学校管理規則という形でつくられるわけでございます。したがいまして、それを副教材ないしは教科書以外の教材として使用する場合にはそういう手続規定を必要とするというのが一般的なルールでございます。 その際に、その教材を使うか使わないかという判断はそれぞれの教育委員会が判断をする、もちろん学校の届け出ないしは承認を求められたことを前提にして判断をして使用される、こういう形になっているわけでございます。
○久保亘君 それじゃ、番組編集の自由とか、こういうものを拘束したり抑圧したり、あるいは検閲を行ったり、そういうことは絶対にいけないことだということは文部大臣も認められますか。
○国務大臣(松永光君) 検閲とか放送の自由の抑圧とか、そういったことはいけないと、私も先生と同感であります。
○久保亘君 じゃ、総理大臣ちょっとお尋ねいたしますが、この問題について何か総理大臣はコメントなさったことございますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 特にコメントしたことはないように思います。
○久保亘君 それでは、今郵政大臣と文部大臣が憲法二十一条、放送法三条は、これは民主主義の原則にかかわる問題ですから尊重せられなければならぬと言われたことについては総理大臣もそのとおりお認めになりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 法律は守らなければならないし、法律を実行できるように、それが守られるように監督することもまた当局の責任であります。
○久保亘君 私は、いかなる番組についてもこれを個人が批判する自由はまた保障されていると思います。そのことを私は問題にしようとは思わない。しかし、国家権力の一つの権力を構成している国会で、政府がもし番組の内容にわたって批判をしたり責任を追及したりするというような立場をおとりになるならば、明らかにこれは憲法二十一条、放送法三条に違反するものだと思うのです。そういう意味で、権力の側に立つ者はこの点について自由の保障、検閲の禁止ということについて毅然たる態度がなければいかぬと思うんですが、郵政大臣、最後にもう一言その点についての御見解をお聞きいたします。
○国務大臣(左藤恵君) 今御指摘のとおりだと、そのように考えます。
○久保亘君 それでは次にユネスコの問題について少しお尋ねいたしますが、アメリカがユネスコを脱退した真の理由は何でしょうか、外務大臣。
○国務大臣(安倍晋太郎君) アメリカはユネスコのいわゆる事務局といいますか、ユネスコの事務局のやり方にもいろいろ問題があると、あるいはまたユネスコが決定することが非常に政治的な形で決定されておるということに対して反対といいますか、反感を募らして、そういう積み重ねの結果ユネスコ全体が非常に政治的に偏向をしておるということで脱退を決意したと、こういうふうに聞いております。
○久保亘君 そのユネスコの加盟国と国連の加盟国とを考えてまいりますと、今のような立場だと、アメリカは国連そのものにも同じような考えを持っておりますか。
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私もアメリカの政府はどちらかというと、やはり国連には率直に言いまして相当批判的な面が多いのじゃないか、強いのじゃないかと私も向こうへ行きまして、ニューヨークに国連本部があるわけですけれども、ああいうふうに第三国勢力が非常に強いというふうなこともあって、国連の決定がしばしばアメリカと極めて対立するというふうなことも多い関係もあって、国連についてはどちらかというと批判的な声を聞くことが多いわけであります。しかし、国連を脱退するとか、そういうことはもちろん考えておるわけじゃないわけですけれども、どちらかというと全体的に批判的な声を聞くことが多いわけです。
○久保亘君 ユネスコとの関係についてアメリカが日本に対して何か求めていることはありますか。
○国務大臣(安倍晋太郎君) ユネスコにつきまして、アメリカが批判的になり、そしてユネスコが非常に政治的な活動をし過ぎるということを我々にも説明をしたということはございます。
○久保亘君 総理大臣はユネスコの関係について、その再検討を何か指示されていることはありますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) あります。それは、ユネスコの最近の活動を見てみますと、まず第一に、ユネスコの憲章の精神から逸脱して、政治的偏向と思われるような分野にまで手を伸ばしておる。また、ほかの専門機関がやるようなことをまたユネスコがダブってやっているという面もある。あるいはさらに、その管理運営について、浪費といいますか、乱費といいますか、そういう面で非常に批判が集中してきておる。そういうような面から見ますと、ユネスコの経費の約一〇%を負担している日本といたしましても、国民の税金がそういうような憲章に違反する疑いのあるような情勢で使われているということは、政府の責任に関する問題であります。特に、今のムボウという事務局長は割合にそういう点は恣意に経費を使い過ぎているのではないかと、いろいろうわさがあります。ユネスコの職員の大部分はパリにおって、現地へは行かない。七割ぐらいはみんなパリに在住しているといううわさすらある。ユネスコがむしろ全世界に散って、そして文盲を退治するとか、あるいは文化財を保護するとか、そういう固有の仕事に没頭してもらうべきであると考えております。
○久保亘君 今指摘されたような点で、もし秋の総会までに中曽根さんが望んでおられるような改革ができない場合には、ユネスコとの関係を断つということをお考えになっているんですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ユネスコの国内委員会からも建議書、諮問に対する答申みたいな建議書が出てまいりまして、同じような指摘をし、これを非難しておって、この是正を政府に対して求めておるわけであります。私は、ともかく是正を求めることが大事だと、そういうことで全力を尽くしなさい、そう言って外務省を通じて指示しております。その後どういう態度をとるかということは、その結果がどういうふうになるか、そのときの情勢をよく見て判断したいと思っております。
○久保亘君 国内委員会がきのう理事会か委員会の会議を開きましたですね。そこではどういうことを決めたんですか。
○政府委員(大崎仁君) お答え申し上げます。 ユネスコ国内委員会としては去る一月の総会でこの問題につきまして基本的見解を取りまとめ、文部、外務両省への申し入れがなされたわけでございますが、先生御指摘の会は運営小委員会ということでございまして、その席ではその総会で基本的見解をおまとめになられた後の内外の経過の報告をそれぞれ関係の方々からいただきまして、それで非常に重要な問題でございますので、運営小委員会の中にワーキンググループを設けまして、さらにその対応等も含めての検討を深めたいということで昨日閉会をいたしております。
○久保亘君 民間団体の日本ユネスコ協会連盟の理事会は、ユネスコを脱退すべきでないという決定をしておりますか。
○政府委員(大崎仁君) 日本ユネスコ協会連盟で先般中央委員会というものを開きまして、この件につきまして討議をされたようでございますが、その結果といたしまして、文部大臣あて、また、ユネスコ国内委員会会長あてに、日本はユネスコの内部にとどまって改革に努力をしてほしいという趣旨の御要望を提出をされております。
○久保亘君 先ほど中曽根さん、大変ユネスコに対して強い立場を御表明になりましたけれども、ユネスコは、日本が国連に入ります五年くらい前にユネスコに入って国際関係につながりを持っていった非常に歴史のあるものなんですが、日本の外交の原則というのは国連外交、こういうふうに考えていいのじゃないですか、外務大臣。
○国務大臣(安倍晋太郎君) これまでもそうでありましたが、やはり国連の世界における平和安定の役割というものは非常に大きいと我々は考えております。したがって、国連についても日本は大きな負担をいとわないで行っておるわけでありますし、私たちはやはり国連がさらにそうした平和維持、あるいはまた国際社会の安定に大きく寄与していくために日本としても協力しなければならぬ、そういう立場でございます。
○久保亘君 今度ムボウ事務局長が来日されると聞いておりますが、そのときは外務大臣はお会いになるんですか。
○国務大臣(安倍晋太郎君) ムボウさんには昨年も会いましたが、今回また科学万博で呼んでおりまして、お見えになりますから私も会いたいと思っております。そうして加川大使を通じまして日本政府の改革案というものをユネスコ総会で打ち出しております。 日本政府のその改革に対する考え方、これ三点にわたるわけでございますが、一つは、ユネスコ本来の分野の事業を進めるということが大事であるということ。あるいはまた予算の膨張を抑制して、こういう厳しい状況でございますから、節約等をやっていくべきである。本来の仕事を合理的にやるべきである。あるいはまた人事とか、あるいはその他事務局運営の合理化、効率化、そういうものも含めて率直に今のユネスコの運営というものが、先ほど総理も述べましたように、少し政治的に偏向しているのじゃないかと、こういうことを日本としても考えておるし、そういう世界的な指摘があって、アメリカも脱退をし、あるいはまたイギリスも脱退をし、あるいはまたシンガポールも脱退をする、こういう危機的な状況にあるし、我々は何としてもやはりユネスコを改革をして、そしていきたいというのが日本の願いである。何も脱退するとか、そういうことじゃなくて、改革をするということ、そしてユネスコの健全な運営が行われるということが日本の願いであるということを基本にいたしまして十分話し合ってみたいと思っております。
○久保亘君 どうも最近の動きを見ておりますと、ユネスコの改革というよりは、ユネスコの現状を批判することによってアメリカとの関係といいますか、ロン・ヤスの関係がユネスコと日本との関係を決める基本にあるのじゃないかという感じもいたしますが、総理がお考えになっておりますのはユネスコの改革であって脱退ではない、こういうふうに理解していてよろしゅうございますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ユネスコとロン・ヤスの関係はありません。ユネスコは私は非常に大事な機能を持っておる大事な国連の機関であると思って尊重したいと思っておるのです。特にやってもらいたいのは文盲の退治の問題でもあるのです。それから文化財の保護というような大事な問題があるわけであります。世界にある文化財がもう朽ちてだめになっていくのをユネスコは守ってきてくれているわけです。そういうような文盲の退治とか文化財の保護とかという一番大事な仕事にもっとお金を注ぎ、熱中し、そして一人でも字の読める人がふえるようにしていただくのが大事な仕事であると思うのです。そういう方面に余り力を入れないで、むしろほかの方の政治的な東西の対立関係の問題みたいなものを議題に持ってきたり議論したりするというのは、ユネスコ本来の趣旨には沿わないことであるのであります。そういうのはほかのところでやるべきなんです。安保理事会とか幾らでもそういうところはあるわけです。したがって、そういうようなことは直さなければならない。国民の税金は文盲の退治や文化財保護のためにという約束で出さしていただいているんです。そういう面からも、正しい運営をするということは政府の責任でありますから、それは絶対やってもらわなければいけないと思っておる。我々が幾ら言ってもどうしようもないという場合には、そのときに考える。今は白紙の状態でおります。しかし、できるだけ内部にとどまって改革に挺身したいというのが我々の基本的態度です。
○久保亘君 それではやっぱり日本としては、国連外交を基調とするという立場からもアメリカの脱退は支持できない、賛成できない、こういうことでよろしゅうございますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) アメリカが脱退するという決意を示したり、イギリスが脱退するという決意を示したのは、私は一つの見識だと思うのです。国連外交、国連中心といっても何も盲従して悪いことまでついていけという問題じゃない。国連精神、国連憲章というものがありまして、その憲章から逸脱したものについては直すということがあるし、どうしても直せないという場合には国民の意思に従って行動するという場合もあるでしょう。国連に盲従するとか、国連機関に何でも無条件に従うというような考えが国連中心主義であると思ったら大間違いです。国連には国連憲章という大事な憲法があるわけでありますから、それに従って動いてもらうようにしなければならぬと思っています。
○久保亘君 そういう議論をしますと、ユネスコの軍縮に関する十大原則とか、いろいろ私も中曽根さんに言いたいことがいっぱいあります。あなたの一方的な意見だけでそう言われても困るんです。これはまた改めてやりましょう。
○委員長(長田裕二君) 久保君の残余の質疑は明日行うことといたします。 明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後五時五十八分散会