法務委員会 第2号
- 発言数
- 316 件
- 登壇者
- 22 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 1984/12/20
会議録
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 去る十二月四日、山田譲君が委員を辞任され、その補欠として小山一平君が選任されました。 また、去る十二月五日、橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として山中郁子君が選任されました。 また、去る十二月十九日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として安武洋子君が選任されました。 委員の異動についてなお御報告申し上げます。 本日、園田清充君及び藤田正明君が委員を辞任され、その補欠として松岡満寿男君及び志村哲良君が選任されました。 ─────────────
○委員長(大川清幸君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認めます。 それでは、理事に寺田熊雄君を指名いたします。 ─────────────
○委員長(大川清幸君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。 まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。嶋崎法務大臣。
○国務大臣(嶋崎均君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。 政府は、人事院勧告の趣旨等にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は次のとおりであります。 第一に、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給は、従来、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職の職員の俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職の職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給を増額することといたしております。 第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬並びに検事及び副検事の俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。 これらの給与の改定は、一般の政府職員の場合と同様、昭和五十九年四月一日にさかのぼって行うことといたしております。 以上が裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
○委員長(大川清幸君) 以上で両案の趣旨説明は終わりました。 これより質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○寺田熊雄君 自民党の政調会内に司法の公正に関する特別委員会なるものができまして、既に何回も委員会を開いて諸般の調査、審議を進めておられます。 その審議の経過を調べてみますと、重点はロッキード事件の見直しにあるように思えるのであります。この会は非公開であると言われておりますが、既にその審議の内容が相当マスコミに漏れて詳しい報道がなされております。例えばサンデー毎日の十二月九日号などはかなり詳細な記事内容でありますし、フォーカスなどは鬼頭元判事補がその委員会の玉置委員長その他の有力なメンバーと面接している写真まで掲載しておるのであります。その審議の中で、玉置委員長が、ロッキード事件は余りにも政治が司法に介入した事件だというふうに我々はとらえている、こういうことは再びあってはならぬという反省のもとに司法の公正を期してやっているという趣旨の御発言をなさっておられるようであります。したがって、ねらいはロッキード事件の見直しなるものにあることは、これは容易に推定せられ得るのであります。 こういう考え方のもとに、玉置委員長がこの委員会に御提案になりましたものは、私の調査によりますと、第一が鬼頭史郎元裁判官の弾劾裁判所におけるいろいろな証言の取り扱い、それから第二番目は衆議院予算委員会における告発なしに検察当局が大久保利春氏を逮捕した問題、第三は衆議院予算委員会における若狭得治氏の偽証告発の問題、この三つの問題を審議して議長と弾劾裁判長に質問状を提出したいというような趣旨の御発言をなさっておられると伝えられております。私もこの委員会においていろいろな意見陳述をなさった方々に当たってみますと、今ロッキード事件で最大の問題とせられる嘱託尋問の手続の違法性という、その一部の主張についての調査、審議、総理の職務権限の問題の審議などが既にかなりウエートを置いて論議されているようであります。 この委員会の審議のうちで私が特に注目いたしましたのは、当時の布旋元検事総長を名のって当時の三木総理に電話したのは鬼頭判事補ではない、元鹿児島地裁所長で、当時京都産業大学の教授であられた飯守重任氏であるという点の指摘であります。これは先ほどお話しをしたサンデー毎日の十二月九日号にもそうした報道があるのでありますが、この委員会の玉置委員長が、にせ電話の真正の主は鬼頭ではない、それはほかのだれかであるが鬼頭はかばっておったのだという趣旨の前提のもとに審議をお進めになっておられるようであります。住前法務大臣も検察当局もこの事実を知っておったというふうな御発言もあるようであります。しかし、このにせ検事総長事件は警察当局が慎重な捜査を遂げた結果、起訴をなさった。裁判所も一審、二審の事実審が鬼頭元判事補の犯行であるという事実認定をし、鬼頭の上告も最高裁で棄却せられておるのであります。したがって、国民の法律的な思考、常識から言いますと、鬼頭が犯人であるということは、もう国家機関の動かざる判断であるというふうに受け取ってしかるべきものであります。 この委員会の性格でありますが、これは純然たる私的の機関と見るわけにはまいりません。国民の代表たる国会議員がそのメンバーでありますし、自民党の政調会は国政に大きな影響力を持っております。問題によっては決定権さえも持っておるものでありますので、これを私的の機関と見るわけにはいかない、公的な性格を持つと考えざるを得ないわけであります。その公的な機関が、既に司法機関が動かざる判断をしておる事件がそうではないんだ、これは別に犯人があって鬼頭は犯人ではないと断定しておるということは、これは到底批判を免れないと私は考えるのであります。 それで法務大臣にお尋ねしますが、この国会議員から成り、自民党の政調会の一機関であり、国政に大きな影響を及ぼす力を持っておるこの委員会、その委員会のねらいはやはり司法や政治に影響を与えるという目的のもとに今審議をしていらっしゃるようでありますが、この委員会の性格は今私が指摘いたしましたように純然たる私的のものと見るわけにはいかない、公的な性格を持つと考えるのでありますが、法務大臣のこれについての御所見をまずお伺いしたいと思います。
○国務大臣(嶋崎均君) ただいまお尋ねの司法の公正に関する特別委員会、御承知のように自民党の政調会の中に特別委員会として設置をされているものでございます。その発足の当初は人権問題を中心に論議をしようと、御承知のように再審の事件等が続いておりましたので、そういうことに関連をして人権問題を取り扱うというようなことでスタートをしたというふうに私たち聞いておるわけでございます。今いろいろ御論議のあった経緯等について新聞等に報じられているということは事実でありましょうけれども、自民党の中の、何というか、特別委員会として、司法の一般的な運用についていろいろな意見を聞かれるというようなことは当然あってしかるべきことであろうと思いますが、個別のいろいろな事案につきまして関与されるというようなことは余り適当ではないというふうに私たちは考えておる次第でございます。
○寺田熊雄君 大臣のおっしゃる御意見、これは私も了といたしますが、一体自民党の政調会の中のこういう機関、しかも司法の公正を期して議長や弾劾裁判長に質問状を出すというような、こういう委員会の性格、これは純然たる私的の機関とは言い得ないというのが私の主張なんですが、これはお認めになりますか。
○国務大臣(嶋崎均君) 政権政党である自民党の政調会の中に設けられている委員会でございます。そういう意味では、何というか、国政の運用につきましていろいろな意味で協議をお持ちになる、いろいろな質問、調査をされるというようなことは当然あってしかるべきことであろうというふうに、私はやむを得ないことだというふうに思っておるわけでございます。しかし、先ほど来から申し上げておりますように、これは一般の野党の皆さん方もそうでありますけれども、司法の運用等の問題につきましていろいろな意味で法務省に聞かれるというようなときに、関係の当局の者が出向いていろいろ説明をするというようなことはもう当然やっておることでございます。そういう範囲内で事柄を処理するわけでございますから、我々のその委員会に対する考え方も、今申したような考え方で対処をしていきたいというふうに思っておる次第でございます。
○寺田熊雄君 大臣、私がお尋ねしたのは、この政調会内の機関を純粋に私的な機関とは思えないと私はお尋ねしたわけです。公的な性格を持つと言ってお尋ねをしたのですが、それについてはどうお考えになるかという質問をしているわけです。
○国務大臣(嶋崎均君) これは政権政党である自民党の政調会の中にある特別委員会である、そういう事実はもう何も変わらないことだと思うのでございます。
○寺田熊雄君 公的か私的かという点はどうですか。
○国務大臣(嶋崎均君) どういう意味で公的か私的かと言っておられるのか、よくわかりませんけれども、自民党の政調会の中にある機関であるということで御理解をいただければ結構だと思います。
○寺田熊雄君 なぜ私がこの点について大臣に再三お尋ねするかといいますと、この委員会の内部で、これは私的な機関だから何を言っても構わないのだ、当該の今現に裁判中の事件であろうと既に確定した事件であろうと、それについてどういう意見を言おうと、それは我々の言論の自由であるというような誤った考えで発言なさった方がいらっしゃるので、特にお尋ねしているわけです。多分に公的な性格を持つのではないか、だからおのずからそこに節度が必要ではないか、結論としては大臣と一緒ですけれども、そのお尋ねをしているわけです。
○国務大臣(嶋崎均君) 今申し上げましたように、自民党の中の組織運営というような点につきましては部会の議論もありましょうし、それからだんだん発展をして政調会の中の議論もありましょうし、総務会その他の手続もありましょうし、いろいろな段階を経て党の考え方というのは整理をされるというような手続になっておるわけでございます。したがいまして、今問題になっているのは政調会の中にある司法の公正に関する特別委員会、そこでいろいろな意味での調査を行うということを行っておるということでございます。
○寺田熊雄君 公的か私的かという大臣のお考えを。
○国務大臣(嶋崎均君) 公的か私的かというのはよくわかりませんけれども、自民党の政調会、これ政権政党でございますから、ある意味で、何というか、公的な性格を持っておるということは事実であろうと思いますけれども、中で議論をされている人がどういうお立場で議論をされているか、議論の立て方等もありましょうから、私も内容はよく承知はしておりませんけれども、そういうことだと思っております。
○寺田熊雄君 そういう公的な性格を帯びておる機関が、最高裁まで経た国家的な判断がなされておる具体的な刑事事件について、これは犯人が別にあるのだというようなことを、確たる裏づけもなし、それからまた再審等の法的な手続を経ておらないのに、そういうことを前提にして議長に申し入れるとか、あるいは弾劾の裁判長に申し入れるというのは不当なように思いますが、これは大臣としてはどうお考えでしょうか。
○国務大臣(嶋崎均君) 今いろいろお話しになったような問題につきまして、この司法の公正に関する特別委員会がどのような議論をしておるかというようなことの実態につきましては私はよくこれを承知しておるわけではありません。したがいまして、そういう申し入れを行うのかどうか、あるいは申し入れの内容がどういうぐあいになっているとかというようなことについては全く承知をしておらないというのが実情であります。したがいまして、私自身としてそういうことに発展するかどうかということも承知をしていないというふうな事情を御認識いただきたいと思う次第でございます。
○寺田熊雄君 ただ、具体的な刑事事件の問題につきましては、裁判所の判断を尊重すべきであるという点は大臣もお認めになるでしょう。
○国務大臣(嶋崎均君) そのとおりでございます。
○寺田熊雄君 ところが、この委員会で住前法務大臣もこのにせ電話事件の犯人が別にあるということを認めておった、検察当局も知っておったのだというような発言を委員長がしていらっしゃるようでありますが、そういう事実があるのかどうか。法務大臣の発言は別として、検察当局はそういうことを知っておって処置をしておるんだと。殊に鬼頭が三木元総理大臣を偽証の罪で告発していますね。これは刑事局長も御存じだと思う。それを鬼頭が犯人でないということを知りつつ、あえて不起訴処分にしておるのだ、けしからぬということを言っておるんだけれども、これは刑事局長どうでしょうか。
○政府委員(筧榮一君) 鬼頭元判事補に対します軽犯罪法違反の事件につきましては、寺田委員御指摘のように、検察当局におきまして所要の捜査を遂げまして、これを軽犯罪法違反で公判請求をしたものでございます。そして一審の渋谷簡裁で有罪の判決が言い渡されまして、二審、三審ともそれが維持されまして有罪判決が確定しておるわけでございます。その過程におきまして、検察当局において、これは真犯人ではなくて別の者が真犯人であるというような判断をしたことは今まで一度もございません。したがいまして、検察当局ももちろんでございますし、住前大臣がそのように知っておられたということはあり得ないことと思っております。
○寺田熊雄君 仮に今の司法の公正に関する特別委員会がロッキード事件の見直しをするということが自由であるといたしましても、その論拠の一つとして鬼頭元判事補のにせ検事総長事件というのを据えるのは大変な私は誤りではなかろうかと考えておるのであります。 これはマスコミの方々に伺うというと、このにせ電話の中に中曽根幹事長というようなことが頻繁に出てくる、中曽根を逮捕するということをにせの検事総長が言う、三木さんがそれに対して指揮権発動的な言辞を弄したというようなことがこのにせ電話事件の骨子のようでありますけれども、そもそもにせ検事総長が中曽根ということを何回言おうと、そんなことが三木さんの指揮権の発動につながるなんということはおよそナンセンスである。それからまた、にせの検事総長と三木さんが話をしたからといって、三木さんが本物の検事総長である布施検事と話し合ったということにもならない。まして相談してやったというようなことはあり得べきことではない。そういうおよそ見当違いのことを言い立てて、このロッキード事件なるものは当時の三木元首相と検察当局が話し合ってやった政治的な事件であるというような結論に導こうなどということはおよそナンセンスである。 私も実は昨日布施元検事総長に直接電話をいたしまして、こんなことを言う者があるがどうなんだといって直接尋ねたのであります。布施元検事総長は、何を言っておるのか、私が政治家から指揮を受けるとか、総理から指揮を受けたなんていうことは全くない、政治家からの働きかけなどは全くないし、検察が独自で捜査し立件したものだということをきっぱり答えておるのであります。私はたまたま布施君と裁判所の同期生でありますから、彼の剛直な人となりをよく知っておりますし、彼がうそを言う男でないということは自信を持って言えるのであります。三木さんももちろんそういうような事実がないということを、これは裁判所の証人として証言をしておるのであります。 こういう点にかんがみて、そもそも鬼頭のにせ電話事件などを理由として、またそれを一つの証拠として、ロッキード事件は政治が検察に介入して生まれたものであるというような見解は全くとるに足らないものだと私は考えるのですが、法務大臣はどのようにお考えになるか。これについてまずお伺いしたい。
○国務大臣(嶋崎均君) 司法の公正に関する特別委員会の中身につきましては、先ほど申し上げましたように、私たちも余りよく関知するところではないわけでございますけれども、弾劾裁判所に対しまして、いろいろな仮に抗議のようなことをするとかいうようなことがあって、弾劾による裁判官の罷免事由の有無を判断した裁判所の判断と、それから刑事法令の実現を目的として刑事裁判を行うこととは、おのずからその制度なり目的は違うことはこれは当然のことであろうというふうに私は思っておるわけでございます。 御承知のように、弾劾裁判所の認定した罷免事由に当たる行為というのは、御承知のように御指摘になりましたいろいろな経緯がありまして、そしてそういう三木さんから指揮権発動の言質を引き出そうとした電話の内容を録音したテープを新聞記者に聞かせたということが弾劾裁判所の判定事実でありまして、軽犯罪法違反事件について裁判所の認定事実となっておることと内容は異なっておるわけでございます。御承知のように、軽犯罪法の場合には、何というか、その検事総長の官職を詐称してやったということが理由で軽犯罪法違反事件として訴追をしておるわけでございますから、おのずからその内容は異なっておるというふうに判断をすべきであるというふうに思っておる次第でございます。
○寺田熊雄君 確かに大臣のおっしゃるとおりでございますが、この委員会が今のにせテープを非常に重要視しておるわけです。サンデー毎日の先ほどの号にもありますように、玉置委員長がこのテープの真正なるものを入手しておるということをおっしゃっておられるのです。そのテープなるものなどを一つの有力な資料としまして、ロッキード事件は政治が司法に介入した事件であるというようにおっしゃっておられるわけですが、大臣はロッキード事件というものは検察当局が純粋に職務を遂行して立件したものと考えていらっしゃるのか、それとも政治が検察当局に介入してでっち上げた事件だというふうにお考えになっているのか、どちらかということをお伺いいたします。
○国務大臣(嶋崎均君) 当然、今御質問の二つのタイプに分けられましたけれども、前者の考え方に立っておるというふうに信じておるわけでございます。
○寺田熊雄君 そうと言いますと、法務大臣のお考えと司法の公正に関する特別委員会の方向とは全く逆の方向だというふうに考えるのであります。まあ大臣がおっしゃったからいいようなものだけれども、刑事局長にもちょっと言ってもらいたいのだけれども、今言ったようにロッキード事件は政治が検察に介入し、そして生まれた事件だというような見方はとるべからざる問題であると私は信じておるが、検察当局はどういうふうにお考えか、ちょっと。
○政府委員(筧榮一君) 今寺田委員御指摘のとおり、政治の介入というものは全然なかったというふうに考えております。 その点で、先ほどの電話の件でございますが、その根拠になっております電話の件で、これは鬼頭の公判におきまして三木総理が証言されまして、それに関連いたしまして、鬼頭の方では三木総理は検察と打ち合わせをしてこれに介入したという事実があるのにそれはないという偽証をしたということを公判で再三主張いたしております。しかし、これに対しましては裁判所は一、二審ともそのような事実は全くないというふうに認定をいたしておりますし、また、それとあわせまして鬼頭元判事補が三木総理を今の証言に関しまして偽証罪で告訴をいたしたわけでございますが、これにつきましても東京地検で捜査の結果そのような事実はないという判断で不起訴処分にしているところでございます。
○寺田熊雄君 次に、十分な論拠なしににせ電話の主は飯守重任氏であると、既に故人となられた元裁判官をその犯人であるというようなことを断定したり発表したりすることは死者の名誉を著しく棄損することになり、これこそ人権を侵害することが甚だしいと私は考えておるんですね。私自身が飯守さんの奥さんに電話をして奥さんのお考えをお尋ねしたところ、奥さんも、死人に口なしということで私の主人に罪をかぶせるとはもってのほかであると非常に憤っておられるのであります。そして奥さんのお話では、飯守さんの妹さんも非常に精神的な打撃を受け、憤慨をし、このままほっておいてはいけないんじゃないかというふうにも考えているということでありました。 故人の人権について、担当者でいらっしゃる人権擁護局長はどういうふうにお考えか、ちょっと。
○政府委員(野崎幸雄君) 御指摘の事案につきましては事実関係が必ずしも明確ではないのでございますが、故意に虚偽の事実を公表して死者の名誉を棄損した場合につきましては、法廷の違法阻却事由がない限り刑法上名誉棄損罪が成立するということになっておりますことは御承知のとおりでございます。この場合に、死者が名誉権の権利の主体になるのか、あるいはそれは遺族であるのかといった点についてはいろいろ議論があるところでございまして、これは民事上の責任を論ずる場合にも同様の議論がなされておるところでございます。 しかしながら、その点をいずれに解するといたしましても、死者の名誉が侵害されたという場合には、考え方によりまして死者あるいはその遺族につきまして名誉が侵害されるという場合があり得るわけでございまして、この場合に人権侵犯の問題が起こり得ることは先生の御指摘のとおりかと存じます。
○寺田熊雄君 今の御答弁で私は結構ですが、ただちょっと敷衍させていただきますと、この事件は鬼頭が犯人であるということが、検察当局が起訴して刑事事件になりまして一審、二審の事実認定がもう済んでおりますね。それから最高裁で上告棄却で確定していますね。そういう動かし得ない裁判の結果があります。それがまだ再審で覆されていない、まあ覆されることはないと思いますが、そういう前提があるのに、いや、死んでしまったけれども飯守が犯人であると言っていることは、これはやっぱり著しい名誉棄損の該当事項ではないかと私は思うんです。これはそうですね。
○政府委員(野崎幸雄君) ただいまの御質問の点は既判力の問題とも関連してくるかと思いますけれども、これは後発事件と果たして同一事件と論ぜられるかどうかということで決まるのではないかというふうに考えるわけであります。ただ、その点をどういうふうに考えるといたしましても、既に確定判決があるということは、それ自体がある事実の存在あるいは不存在について大きな証拠となるものであることには変わりがないことと存じます。
○寺田熊雄君 したがって、そういう動かし得ない明確な証拠があるのに、それと全く異なった結論を言い立てて死者に罪をかぶせるということは死者の名誉を著しく棄損するという結論には変わりないわけでしょう、局長のおっしゃることは。
○政府委員(野崎幸雄君) つまり後続の事件でそれを争い得る可能性があるかないかということについては、先ほど申し上げたような問題があるということを申し上げているわけでございます。例えば刑事事件で確定した事件につきまして民事訴訟が起こされたときに、前の判決の確定力というものがどういうふうに働くかということと同じ問題があろうかというふうには考えるわけでございます。
○寺田熊雄君 争い得る可能性を私は否定してはいないのですよ。民事訴訟で刑事事件の判決を覆すということはあり得ますけれども、ただ、この場合どうなのでしょう。そういう刑事上の犯人だともう既に裁判で確定した者について別な人間を犯人だとして公表することが、それは別の人間に対する、死者であろうと生存者であろうと、名誉を著しく棄損することになるという結論には変わりないのでしょう。そういうふうに人権擁護局としてはとらえるわけでしょう。
○政府委員(野崎幸雄君) そういった場合に人権が侵犯されたとされる場合が多いであろうということは先ほど来申し上げているところでございます。ただ、侵犯事件でそれが争えるかどうかということにつきましては、今先生も御指摘がございましたように問題が残っておるということでございます。
○寺田熊雄君 あなたのおっしゃるのは余り専門的過ぎるから、もっと単純率直に答えてもらいたいのだけれども、例えばこの場合でもAならAという人が具体的な刑事事件で犯人であるとして有罪の判決を受けているわけです。ところが、ある人間が、そうではない、これはBが犯人であると言い立ててそれを公表するというようなことは、これはBの名誉を著しく棄損する、人権を侵害する問題であるというふうにとらえてもこれは当然でしょう。そこを伺っているんですよ。それは民事裁判で争えるとか争えないとかいうような法律技術的なことをお尋ねしているんじゃありません。それが人権を侵害するかどうかという点についてあなたの見方をお尋ねしているんです。
○政府委員(野崎幸雄君) 既に確定されております刑事裁判がある場合において、それと違う事実を主張する、そしてその結果、死者あるいは生存している者の名誉が棄損された場合に、それが人権侵害になり得るかどうかということが問題になっておるかと存ずるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、既に適正な裁判手続を経てある事実が確定されておるということになりますと、それが他の手続におきましても非常に大きな証拠として働くことは申すまでもないところでございます。それを先生のおっしゃるように、そのときに人権侵犯になるのが普通ではないかと言われればそういう場合が多いということを申し上げているのでありますが、ただ、それが争えるか争えないかということにつきましては別に問題が残っておるということも先ほど来申し上げておるところでございます。
○寺田熊雄君 どうも何か奥歯に物が挟まったような、多少いろいろな点に御遠慮なさっていらっしゃるような印象を受けるのですが、刑事裁判の結果を民事裁判で争えるなんということは、これは法律家として常識ですから、それは当然のことですが、今そんなことをお尋ねしているのじゃないんです。それは現に民事裁判も起きていないんです。そうじゃなくて、現にある者が犯人であるとして確定裁判があるのに、別な人間が犯人だといって流して公表するようなことは、その別な人間に対して名誉を棄損することになりはしないか、私はなると思うのだが、その結論をお伺いしているんですよ。これはやっぱり人権を守る立場であるあなた方がそういう点は明快に御答弁なさらないとかえって存在価値が疑われるんじゃないでしょうか。やはりそれははっきりおっしゃっていただきたいと思うんですが。
○政府委員(野崎幸雄君) 先ほど来ちょっと刑事判決の効力について申し上げているところに御疑問がおありのようでございますが、ただいま御指摘のようなケースが人権侵犯事件として人権擁護機関にかかりました場合におきまして、侵害者とされておる者がそれは違うのだということが全然言えないかという問題は法律論として残るということを申し上げておるだけでございます。
○寺田熊雄君 そういう法律論をあなたにお尋ねしているんじゃないですよ。だから私が何もそういう法律論についてあなたの御答弁を求めておるのじゃないんです。いきなり山田なら山田という人間が犯人だという破廉恥罪について言い立てることがその人間に対する名誉棄損になるかならないかということをお尋ねしているわけです。これはもう結論としては私は非常に簡単なことだと思いますが。
○政府委員(筧榮一君) 刑事的な観点からお答えいたしたいと思いますが、鬼頭氏などがどういう根拠でどういう発言をしておられるか、私どもその事実関係を承知しておりませんので、本件の場合、直ちにこれが死者に対する名誉棄損になるかと言われますと断定はいたしかねるわけでございますが、やはり一般論として申し上げますと、「誣罔ニ出ツルニ非サレハ」ということでございますので、虚偽の事実であることを認識しながらこれを摘示したということでありますれば死者の名誉を棄損したということで名誉棄損罪が成立することになろうかと思います。ただ本件の場合は、先ほど申し上げましたように、事実関係が必ずしも明瞭ではございません。それと確定した軽犯罪法違反の事実があるわけでございますが、もしそれに鬼頭氏の方で、そうではなくて真犯人は別の人である、その証拠はこれこういうものがあるということであれば、寺田委員御指摘のように、新たな証拠として再審を申し立てるなり何なり事実を革正されてしかるべきであろうかと思っております。
○寺田熊雄君 それは鬼頭自身が民事訴訟を起こすとか再審を申し立てるということはこれは可能かもしれない。しかし第三者がそれを言い立てるわけだから、第三者は別段民事訴訟を起こす余地もないし再審を起こす余地もないんですよ。そうでしょう。だから、それがそういうことを言い立てることが名誉棄損になるということは、これは法律的に言ったってもう明らかなんです。だから、それが民事訴訟を起こすということはどういうことなんだ、意味をなさないと思う。わかるでしょう。 あなた方がおっしゃっているのは、刑事事件で有罪とされた者が民事事件で違った結論を求め得るということ、そういう法律的な点は明らかだけれども、例えば私が実際犯人だという有罪判決を受けたとしますか。いや、そうじゃないのだ、これは山田というのが犯人だということを第三者が言い立てて公表するようなこと、そういう人権を侵犯することをあなた方がちゅうちょなくお認めにならないということの方がおかしいのじゃないだろうか。
○政府委員(野崎幸雄君) 先ほど来申し上げているところでございますけれども、既に確定判決があるにもかかわらず、それと異なることを申し立てて死者の名誉を棄損したという場合には名誉棄損の問題が起きて、しかもそれは原則的に名誉棄損になり得るのだということは私が先ほど来申し上げているところでもございますし、ただいま刑事局長からもお話があったとおりでございます。ただ、先ほど来その判決の効力という点につきましては、人権侵犯事件は民事事件と同じような問題が起こることがあり得るというただ可能性を指摘しておるだけでございまして、既に確定判決があるにもかかわらずそれと全く違うことを言い立てて死者の名誉を傷つけていいということでないことは論ずるまでもないところであろうと、かように考えておるわけであります。
○寺田熊雄君 大分結論に近くなったからこれ以上時間がかかるからあれしないけれども、余り法律技術的にあなた方は走り過ぎて問題の本質を見失っているように思うのですが、これはこれでもうよろしい。 それから、大久保利春氏を国会の告発を待たずに逮捕したという点を非常に論難しているのでありますけれども、これは国際的に非常に重大な犯罪であるわけでありますから、殊にユニットとかピーシーズとかいうような名称を使った物証さえもあるのに、その事実を否定するという、証拠隠滅が非常に極端に行われるという事実を見た場合に、むしろ検察当局がこれに対して捜査権を発動するというのは職務に忠実なゆえんではないかと私は考えておる。そうした検察当局の捜査がなければ恐らくロッキード事件はやみからやみに葬られてしまったかもしれない。当時はそうした事件の真相を究明してほしいということが国民一致の願望であったことは疑いないのであります。それだからこそ国会も動いたという事実がありますので、私は検察当局が大久保利春氏を国会の告発を待たずに逮捕したという点、一向差し支えないと考えるのだけれども、大臣なり刑事局長はこの問題をどうお考えになるか、ちょっとお答え願いたい。
○政府委員(筧榮一君) 大久保利春氏を告発前に逮捕した件でございますが、申し上げるまでもなく議院証言法の偽証罪は議院等による告発が訴訟条件というふうに解されております。しかし告発というのは訴訟条件ではありますが、捜査を開始する際の要件ではなくて、捜査の必要上逮捕等の強制捜査を先行させる必要があるという場合には告発前にそのような措置を講ずることも適法であるというのが従来の判例、通説であろうかと思っております。本件の大久保の場合にも、その当時の事情によりますれば、そこで逮捕しなければ逃亡あるいは罪証隠滅等のおそれがあるということで、告発前に逮捕し取り調べに着手したわけでございまして、その際の判断は間違っていなかった、必要かつやむを得ないものであったというふうに考えております。
○寺田熊雄君 大臣も刑事局長の今の御答弁、御承認になりますな。
○国務大臣(嶋崎均君) ただいまの大久保さん逮捕の件でございますが、検察当局はロッキード事件の真相を解明するために諸般の実情をいろいろ考えた末、大久保を議院証言法違反により逮捕してその身柄を確保し、同人の取り調べに着手する必要があると判断したものであろうと思います。したがいまして、その措置は必要かつやむを得ないものであろう、ただいまの刑事局長の考えどおりであろうと思っておる次第でございます。
○寺田熊雄君 次は、若狭得治氏の偽証に対して国会が告発した点は、これは国会が間違っておったと司法の公正に関する特別委員会の玉置委員長はおっしゃっておられるのであります。事務局の報告なるものもそういう趣旨に受け取られるのであります。しかし、これは検索当局の判断は当然でありますけれども、東京地裁で何年もかかって裁判所の判断が既に出ております。恐らく高等裁判所の判断ももうじき出るでありましょうけれども、そういう事実が既にある場合に、国会の処置が誤りであったというようなことを検察当局なり裁判所のように十分な証拠をもって事実の裏づけをしたわけでないのに断定することは私は著しく軽率に過ぎる、またそれが著しく政治的な判断であるというほかはないと考えておるのでありますが、これは大臣はどんなふうにお考えになりますか。
○国務大臣(嶋崎均君) 若狭さんに対する告発の問題につきましては、立法府である国会においてその議決に基づいて行われたものであることは事実でございます。したがいまして、法務大臣としてお答えする立場にないと私は思っておる次第でございます。
○寺田熊雄君 それはしかしわかりますけれども、大臣もやっぱり立法府の一員でいらっしゃるから、構成分子でいらっしゃるから、だから、その構成分子である大臣が立法府のそうした処置なり当時の判断を是認なさるのは当然だと思うのだけれども、その点をお伺いしているんです。
○国務大臣(嶋崎均君) ただいま申し上げたところでございますが、その告発に基づいて調査が行われ、既に御承知のように一審の裁判が済み、進んでおるというような状況になっておるわけでございまして、それが適切に訴訟が行われて裁判所の適正な判断が下されたものであるというふうに我々理解しておるわけでございます。
○寺田熊雄君 そこで、こういうふうに公的な性格を持つ政調会、政権党である自民党の政調会の中のこういう委員会が若狭を告発したことは誤りであるとかいうようなことを仮に決議したとしても、そういうことは私は裁判所には全く影響はない、裁判所はそういう雑音に少しくも影響されることなく自己の信念に基づいて、憲法の規定によりますと憲法並びに法律の規定に基づいて裁判官が良心に従って裁判するという、その結論においてはいささかも変わりはないと私は考えるのだけれども、最高裁の刑事局長はどういうふうに考えますか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 先ほどからお話に出ております司法の公正に関する特別委員会というようなものにつきまして、その目的でありますとか、その活動内容というようなことにつきましては私ども詳細に承知しているわけではございませんので、その点についての意見は差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。 ただ、一般論と申しますと、政党におきましてもいろいろ立法を御検討になるとか、あるいはいろいろ施策をお考えになるというようなことで事実関係を御調査になるということは必要でもございましょうし、当然でもあろうかというふうに考えるわけでございまして、また司法制度についてもいろいろ御検討になるということも当然あろうかと思います。ただ、具体的な刑事事件というようなものをお取り上げになります場合、特にそれが係属中の事件でありますとか、あるいは近く係属することが予想される事件でありますとか、そういうものにつきましては、先ほど委員からも仰せになりましたように、裁判官は憲法で裁判の独立を保障されていますと同時に、それはまさに裁判官の使命でありまた職責でもございますので、そのようなことに裁判が影響されるということはあってはならないことでありますし、私どもとしてはそういうことはないというふうに確信はしているところでございますけれども、一般国民の目から見ますと、これが何らかの司法に対する影響を与えるのではないか、裁判所もそれによって何らかの影響を受けるのではないかという危惧を抱くということが、まあその取り上げ方あるいはその方法にもよりましょうし、場合によってはそういうおそれもないわけではないというふうに考えるわけでございます。 これまで私どもといたしましては、これは国会を初めといたしまして各方面から裁判の独立あるいは裁判の公正については十分な御理解をいただき、また御配慮をいただいているところで、非常にありがたく存じておるところでございますが、ただいま申し上げましたようなところから今後ともよろしくお願い申し上げたい、このように考えておるわけでございます。
○寺田熊雄君 この司法の公正に関する特別委員会に出頭して意見を述べた人々に尋ねてみますと、やはりこの委員会が嘱託尋問手続の適法性を問題としているということが十分うかがえるようであります。それからまた、この委員会はその嘱託尋問の際に登場した証人、コーチャン、クラッター、それからエリオット、この三人の証言について問題として、このうちコーチャンとクラッターは証拠として裁判所に提出されておる、しかしエリオットの証言については全くこれが出されておらない、隠されているというふうに受け取られるような意見を述べておられる人があるようであり、それでエリオットをアメリカに人を派遣して調べるというような報道まで我々は伺っておるのでありますが、検察当局はこのエリオットに関する調書をどういうふうに処置されたのか。これを隠したのか、そんなことはなくて法廷に提出しておるのか。またエリオットなる者は一体どういう役割をした人物なのか。そういう点について御説明を願いたい。
○政府委員(筧榮一君) まずエリオット氏がロッキード事件でどういう役割を果たしたかという点でございますが、まずエリオット氏につきましては、若狭得治ら六名に対する外為法等の違反事件、いわゆる全日空ルートの方でございますが、そこに登場するわけでございまして、これに対します一審判決を引用いたしますと、一審判決、罪となる事実につきまして二カ所に出てくるわけでございます。 一つは、被告人若狭等が共謀の上、全日空の薄外資金とするために全日空がロッキードから購入したL―一〇一一の五号機、これを日本へ輸送するに際しまして、ロッキード社の要請によって輸送途中オーストラリアにおいて販売キャンペーンのためのデモフライトに使用させた費用として同年六月中旬ごろに――同年といいますのは昭和四十九年でございますが、全日空本社においてエリオットからロッキード社のための支払いである現金二千七十二万円を若狭等が受領したという点でございます。それが第一点。いわばデモフライトの費用を裏金と申しますか簿外資金とするために全日空へ渡す際にエリオットがその授受の役を果たしたというのが一点。 もう一点、これも似たようなことでございますが、やはりL―一〇一一に関しまして、十五号機から二十一号機までのオプションがなされたわけでございますが、そのうち十五、十六の二機につきまして正式の契約を早目にしてほしいというロッキード社からの要請がありまして、それによって早目に契約がされましたが、その謝礼ということで、やはり同じく全日空本社においてエリオットから現金三千三十四万円余が支払われたという点でございます。 この二点におきまして、当時エリオットはロッキード社の一部門であるロッキード・カリフォルニア・カンパニーの日本担当者という立場にあった者でございますが、これは全日空の植木忠夫ほかと相談をいたしまして、それに金員の支払いを担当したということでございます。 一つつけ加えますと、このエリオット氏は今のようにロッキード社のカリフォルニアにおける子会社の日本担当者でございまして、コーチャンあるいはクラッターというロッキード社の幹部とはいささか立場を異にしているということが言えようかと思います。したがいまして、そのほかの今の若狭等の全日空の会社ルート以外にはエリオットという人は関与はしておらないわけでございます。 それで、その調書の関係でございますが、エリオットにつきましても捜査段階で東京地検の請求に基づきまして東京地裁の裁判官からアメリカに証人尋問の嘱託がなされ、チャントリー執行官主宰のもとでエリオットに対する証人尋問が行われ、その尋問調書は東京地検において入手をしたわけでございます。その調書のその後の経過でございますが、全日空関係の公判におきましては、今申し上げましたように、エリオットからの現金の受領については被告人、弁護人側においても争いがないということから、検察官においては公訴事実の立証のために証拠として請求する必要はないというふうに考えておったわけでございます。ところが弁護人側の方から裁判所に対しましてエリオットの証人尋問の請求がなされ、それでエリオットの方へ照会をいたしましたところ、日本の法廷に出頭し証言する意思はない、それから、前に嘱託尋問を受けているので、その調書を活用してほしいというエリオットの方からの意向が伝えられたわけでございます。 そこで、裁判所が勧告をいたしまして、検察官にこの尋問調書を弁護人に開示したらどうかということで開示をいたし、弁護人はその内容を検討した上、証拠調べをすることに同意するという意見でございましたので、裁判所において職権でこのエリオットの嘱託尋問調書を採用し、法廷において取り調べたということでございます。
○寺田熊雄君 最後にこの問題でお尋ねをしたいのは、新聞報道でもなされておりますし、私はいろいろなルートを通じてそれを確認したわけでありますが、玉置委員長の意向は、当時の藤林最高裁判官、布施検事総長、安原刑事局長、若狭得治氏などを委員会に呼ぶことを考えておられるようであります。しかし、私は布施元検事総長に電話で確かめたところ、まだ自分のところへはそういうことは言ってきてないということでありましたけれども、そういう当時の関係者、これを今現に裁判中の事件について事件を洗い直すというような見地から呼んで調査をするというふうなことは、これは明らかに国会の司法権に対する介入となりはしないだろうかと私は考えるのであります。過去に参議院においては浦和充子事件というのがありました。最高裁と参議院とが激しい論争を展開したことがあったのであります。まず、そういう委員会に当時の関係者を事件を洗い直すという見地から喚問することの是非についてどうお考えになるか。これは大臣に御意見を伺いたい。
○国務大臣(嶋崎均君) 特別委員会がどのような趣旨、目的で若狭被告なりあるいは藤林元最高裁長官の出席を求めておられるのか、現段階においてはその内容を私承知をしておりませんので、何ともお答えができかねる状況にあることはもちろんでございます。ただ、一般論として申し上げるならば、現に裁判所に係属中の事件について被告人等から当該事件について事情聴取を行うというのは、そのことが与える当該裁判に対する影響というようなことから考えまして望ましいことではないと私は思っておる次第でございます。また実際法務省あるいは検察庁のとった処置につきまして何やか御質問があるというようなことであるならば、当時の担当者が単に私人の資格でお答えするというよりは現時点におけるところの担当者が公的な資格でその責任においてお答えを申し上げるというのが相当でないかというふうに私たちは考えておるわけでございます。
○寺田熊雄君 これは大臣のおっしゃるとおりだと思います。それで、恐らくそういう方々も出頭をがえんじないだろうと私は考えておる。若狭得治氏は既に出頭を拒否したと伝えられておりますが、もしそういうことならば、今度は法務委員会に証人として喚問するぞというようなことを言い立てておるというふうなことも漏れ承っておるのであります。それが本当かどうかということに私も確信を持ってお答えはできないが、私の耳にはそういうようなことが入ってくる。しかし、これがやはり適当でないというのは私も大臣と全く同じでありますので、法務委員会でこういうことが論議された場合に、私どもはそういう証人喚問には到底応ずるわけにいかない。したがって、実現はしないと私は考えるけれども、しかし一般論として、大臣のおっしゃるように、これを委員会に呼ぶとか、あるいは法務委員会に証人として喚問するというようなことがあってはならないことは申すまでもないのであります。 大臣が今お話しになりましたが、結論としては最高裁の刑事局長も一緒でしょうな。どうでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 証人にお呼びになるということ、あるいはまたどういう目的でなさるか、あるいは実際それをお決めになったのかどうかというようなことは私ども全く承知しておりませんので、そのことについてはお答えいたしかねるところでございますが、一般論として申しますと先ほども申し上げたところでございまして、国民の疑惑を招かないというような御配慮を賜りたいと思います。 また、国会にお呼びになるというような点、これ全く仮定のことで恐縮でございますけれども、先ほどちょっとお話に出ました例の浦和充子事件に関する経緯というようなものもございまして、これは国政調査権の行使と司法権の独立、あるいは三権分立との関係で難しい議論もあるところでございます。ひとつ今後ともその点についての御理解と御配慮を賜りたいというふうに考えております。
○寺田熊雄君 それでは今の自民党政調会内の司法の公正に関する特別委員会に関連する質問はこれで終わります。 次に、法制局長官がおいでのようでありますので、解散の問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、従来、解散の問題では国会でもたびたび論議せられております。問題は、最高裁が投票価値の平等を損なうような定数配分規定は憲法十四条に適合しない、したがってこれは国会において必要な合理的期間内に是正しない限りは違憲の法律となって、これに基づいて行われた選挙は違法であるという最高裁の判断が既にあるわけであります。この判断は、憲法八十一条によって法律が違憲なりや合憲なりやという判断は最高裁判所がこれを決定する終審裁判所であるという規定がありますので、立法府もそれから行政官庁もこの判断には従わざるを得ないと私は考えるのでありますが、これはそう考えるべきでありましょうね。まずこれからお伺いしたいと思います。
○政府委員(茂串俊君) 行政府のあり方の当然の原則としまして、最高裁の判決が出ました場合には、その判決に従って行政を処理し、またその他の実務を運営していくということは当然の事理であると思います。
○寺田熊雄君 昨年なされた最高裁大法廷の判決、これは特に判決の末尾において現行の定数配分規定の速やかな是正を国会に求めておるようであります。こういう最高裁の意思表示がなされるということが既に相当異例なことのように私も今までの経験上考えております。現在の配分規定が立法化されてもう既に十年近くなるわけでありますが、この定数配分規定の是正を求められている現在において、もう既に前回の改正によってこの配分規定が成立いたしましてから是正のための合理的な期間が果たして過ぎているだろうか、まだ来ていないだろうかという問題が一つありますが、長官はこれについてはどうお考えですか。
○政府委員(茂串俊君) 先ほど御指摘がありましたように、昨年十一月七日の最高裁の判決におきまして、この違憲の状態になっている定数配分規定について「できる限り速やかに改正することが強く望まれる。」という異例の判示がなされたことは御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても早急に定数配分規定の改正が行われるべきことは言うまでもないと考えておりまして、法改正の早急な実現を心から御期待申し上げておるところでございます。 次に、ただいまお話のございました昨年十二月十八日の総選挙についての定数配分規定違憲訴訟につきましての御見解であろうかと思うのでございますが、これにつきましては御承知のとおり既に高裁ではほとんどの案件につきまして判決がおりておるわけでございますが、いずれにしましても、これらにつきましてはすべて現在上告中でございまして、今後最高裁においていわゆる最終的な判決が下されるのではないかというふうに考えておりまして、この段階で私どもの立場で予断を持った御意見を申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思いますので、御了承をお願い申し上げます。
○寺田熊雄君 確かに政府はこれに対して上告中であることは私もよく承知しておるのですが、ただ、この一連の高等裁判所の判決は、たしか昭和五十一年になされた大法廷判決、それから昨年の大法廷判決の趣旨を忠実に守った上の判決なのであります。たしか五十一年だったと思うが、最高裁の大法廷判決は当時の定数配分規定が憲法十四条に違反をしておる、しかも制定時からもう是正に必要な合理的な期間を徒過しておるということで、これに対して違憲の法律である、これに基づいた選挙は違法であるという判決をしておったわけであります。それから昨年の判決は、これはまだたしか施行のときから三年半である、法改正のときから五年である、したがっていまだ必ずしも是正に必要な合理的期間が徒過したとはみなされないということで、違憲とまでは言えない、選挙も違法とは言えないという判決でありました。 この二つの大法廷判決を総合いたしますと、是正のための必要な合理的期間というものは大体我々推定がつきますね。もう既に現在のように満十年がそろそろ来ますよというようなことになりますと、これは一連の高裁判決のように、是正のための合理的な必要期間というものを徒過していると判断することが当然であると私は考える。長官はこれはまだ最高裁の判決が出ないので御容赦願いたいということでありますが、あなた個人として、この高裁判決の言っておることは極めて私は理にかなったものだというふうに思いますが、そうは思われませんか。
○政府委員(茂串俊君) 私個人として意見を申し述べたらどうかというような御意見でございますが、何分にもこのような公の席で私がそのような重大な問題、しかも最高裁で現在審理が始まろうとしている問題につきまして個人的な見解を述べるということ自体が非常に問題であり僣越であると思いますので、重ねてその点は御容赦をお願い申し上げます。
○寺田熊雄君 恐らく法律家の常識としては、今までの最高裁の大法廷判決から見て、これらの高裁の判決が是認をされる、国の上告が棄却されるだろうという見通しはほぼ断定して誤りないと私は考えておるのであります。そうした点にかんがみますと、その違憲の定数配分規定を是正しないまま、これを放置して解散はなし得るかどうかという問題であります。これは憲法第九十九条の憲法擁護義務の問題とも関連をいたします。 長官は五十九年八月二日の当委員会における徳永議員の質問に答えられまして、総理大臣の解散権の行使は、この最高裁判決がなされた現在においてもその解散権の行使は妨げられないという結論を述べておられますね。今のようなもう既に期間が経過し、一連の高裁判決がそろって違憲であるということを判決しておる現在においても、なおかつあなたはこの意見を維持されますか。
○政府委員(茂串俊君) 先ほども申し上げましたように、昨年十一月の最高裁の判決におきまして、定数配分規定について「できる限り速やかに改正されることが強く望まれる。」という判示がなされたことにかんがみましても、当然に一刻も早く法改正がなされるということを心から期待しておるものでございますが、それはそれといたしまして、ただいまの解散権の行使とこの定数配分規定が違憲であるという事態とどのような関係を持つかという点の御質問であろうかと思いますので、そのあらましをお答え申し上げたいと思います。 これは純粋の理論上の問題として考えた場合には、定数配分規定が違憲である場合における衆議院解散権の行使の可否につきましては、第一に衆議院の解散権というものは立法府と行政府の意思が対立する場合、あるいは国政上の重大な局面において特に民意を確かめる必要があるような場合におきまして、主権者たる国民に訴えてその判定を求めることをねらいとするものであることはもとよりでございまして、同時にまたこの解散権の制度は、近代国家の基本原理である権力分立の原理の上に立ちつつ立法府と行政府の権力の均衡を保つという見地から、憲法により行政府に与えられた基本的に重要な国政上の権能であるということは申すまでもないことでございますし、特に衆議院で不信任決議案が可決されたような場合におきましても内閣による解散権の行使が許されないといたしますと、内閣としては総辞職の道しかないことになりまして、憲法六十九条の趣旨が全うされないということになるわけでございます。 また、このように非常に基本的に重要な権能である解散権につきまして、憲法上特にこれを制約する明文の規定もございませんし、もともと解散権の行使とこれに伴う総選挙の執行とは別個のものであるという考え方に立っておるわけでございまして、これらのことを総合勘案しますと、ぎりぎりの法律論として申し上げれば、定数配分規定の改正前における衆議院解散権の行使が否定されることにはならないのではないかというふうに基本的には我々考えておる次第でございます。
○寺田熊雄君 そうとすると、結局違憲の法律をあえて執行する、したがって違法な選挙を行うという結果になりますね。それをあえてしても構わないという結論になりますが、それでいいんでしょうか。
○政府委員(茂串俊君) たびたび申し上げますように、そのような異例な事態が起こらないように一日も早く早急な法改正が行われるべきことは言うまでもないことでございますが、ただいまの御質問に答える意味で一つの例を申し上げますと、仮に改正が行われないままに任期満了となった場合を考えますと、選挙が行えないとしますと衆議院の不存在という事態が生ずることになるわけでございますが、憲法四十二条が国会は衆参両院で構成するということを定めておることからいいまして、そのような事態が生ずることは憲法の予想するところとは考えられないことでございます。そうだといたしますと、そのような場合には、憲法全体の秩序を維持するためには、むしろ選挙を執行することが憲法全体の秩序を全うすることになると考えられるのでありまして、このような理は衆議院解散権の基本的性格にかんがみますと解散権の行使にも妥当するものではないかというふうに我々考えておるわけでございます。 たびたび申しますが、そのような極めて異例なことにつきましては、いずれにしても法改正によって早急に解消するという必要があることは重ねて申し上げたいと思います。
○寺田熊雄君 今あなたは解散権の行使が妨げられない論拠として、衆議院議員の任期満了に伴う選挙と解散権の行使とを同列に並べてお話しになったけれども、片方は法律の規定に基づいて当然に選挙が行われるという事態でしょう。片方は総理大臣が持っている権利を行使する、積極的に権利を行使するという問題でありますから、それは両者は全く別物であって、今問題になっているのは、任期満了に伴って法律上当然に選挙が行われるという事態を論じているのじゃないんです。総理大臣がその公の権利というものを行使し得るだろうかどうか、違法な選挙ということがわかり切って、また違憲の法律であるということがわかり切っておるのにあえてそれを行使することが許されるかという問題です。それは権利の乱用にならざるを得ないと私は考えているんだけれども、あなたは権利乱用ということは私権についてだけ言えると考えているのか、公権についてもあり得ると考えているのか、まずその点をお伺いします。
○政府委員(茂串俊君) 権利乱用というものは私権に限らず公権についても存在し得る事態であると思います。 それから、先ほど任期満了の点につきまして申し上げましたのは、これは寺田委員がおっしゃるように確かに前提になる事態としましては法律上当然に任期満了がくれば選挙が伴うという問題であり、解散権の行使につきましてはそのような内閣の行為があって初めてそのような事態が招来されるという点は確かに違うわけでございますけれども、先ほど申し上げましたのは憲法全体の秩序との兼ね合いにおきまして任期満了の場合にはそのような解釈をせざるを得ない、またそのような解釈をしても別に法治主義の原則に反することはあるまいというような一つの憲法秩序の底にある精神と申しますか、そういうようなものがあるわけでございまして、その精神は解散権の行使の場合でも同じように働き得るのではないかということを申し上げたくて、そのような例を先に申し上げたわけでございます。 すなわち、あとそれじゃ解散権の行使につきましてはどういう評価が与えられるべきであるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように憲法がその基本原則としておるところの権力分立の原則に立ちつつ立法府と行政府の権力の均衡、これを非常に重要な原理として憲法は取り入れているのではないかと思うのでございますが、そういった面からしますと、この解散権の行使というものは憲法上内閣に与えられた基本的に重要な権利である、権能であるという評価が与えられてしかるべきであろうと思うのでございまして、その意味におきまして私どもはそういう評価を与えておりますし、またその解散権の行使というものと、それからそれに伴う総選挙の執行というものとは、先ほども申しましたように別個のものであるというふうに考えておりまして、そういう意味で先ほどからるる御説明を申し上げたわけでございます。
○寺田熊雄君 今長官のおっしゃった立法府と行政府との間のバランスが崩れる、立法府がそれでは優位になってしまうじゃないか、それは憲法の所期するところではない、それを主要な論拠として解散権の行使は妨げられないのだという結論を導いておられるように思うのだけれども、内閣がそういう違憲の法律を是正するための義務を尽くさない、みずから義務を尽くさない結果としてそういうことが起きても、それはしようがないのじゃないか。この法案を提出するための誠実な努力をしない、その結果として違憲の法律がそのまま残っている。そういう場合に、みずから義務を履行せずして、ただ単に立法府と行政府との間の均衡のみを言い立てるということが果たして妥当だろうか。これを私は問うておるんです。みずから是正のための法案を提出することは可能でもあるし、望ましくもある。それを全然なさずして、その結果として自分みずからの力の均衡が失われるという結果が生じたとしても、それはしようがないでしょう。そのことのゆえに、どこまでも解散権は行使すべきものであるというその理論には導けないと思いますよ。そうでしょう。権利はやはり義務を伴うということは法律家のこれはまず第一に承認しなければならぬ原理である。誠実に義務を履行しない者が権利のみを言い立てるということが信義則の点からも言い得ないことは当然であります。 私が特に問題とするのは、最高裁が違憲だと判断をして、それが固定した場合に、これを無視して行うということは憲法八十一条の規定からその方面の憲法原則が崩れるのじゃないか。また第九十九条の憲法遵守義務を規定している憲法上の原則、これも崩れるのじゃないか。つまり片一方においては憲法上の原則が一つも二つもガラガラと音を立てて崩れていく。それはみずからの怠慢の結果としてそういう事態を招いた。それにもかかわらず立法府と行政府との均衡を保つというその一つの原則だけを言い立てて、他の憲法原則はガラガラと崩れているのを、あえて違憲の法律を執行しても構わないのだ、違法な選挙を行っても構わないのだと。それでは一体憲法遵守義務というものはどこに行っちゃったんだ。国民に対して法を守れというようなことを言い得るかどうか、これは大いに疑問になりますね。長官どうですか。
○政府委員(茂串俊君) 先ほどの定数是正、いわゆる定数不均衡是正の法案につきまして政府が怠慢ではないかという御指摘がありました。これは私は法律の専門家の立場でございますから、この点につきましてとやかく申し上げる立場ではございませんが、政府としましても、先国会の最後にも中曽根総理が最大限の努力を尽くしたが大変遺憾ながらまだ実現を見るまでに至らなかった、今後もできるだけ早い機会にこの法改正を実現したいという決意を述べられておるわけでございますし、また、この国会におかれましても各党の折衝と申しますか、この定数不均衡是正のための法改正をどのような形で行うべきかということが非常に真剣に論議が重ねられておられるというふうに伺っておるわけでございまして、あながち内閣が怠慢だからそのような結果を招来しているのではないかということに帰することはできないのじゃないかと私は思うのでございます。これは国会、内閣を通じての非常に大事な重要な、しかも早急に処理すべき問題として一日も早くその法改正の実現が所期されるべきであると考えておる次第でございます。 それから、先ほど憲法の面で八十一条とかあるいは九十九条といったような面からいって問題があると申しますか、そういう原則が崩れてしまうではないかというような御意見があったわけでございますが、私どもといたしましては先ほど来申し上げましたように、先ほど申し上げた衆議院の解散権、これまた憲法上行政府に与えられた基本的に重大な権能であるというふうに考えておるわけでございまして、いわば憲法秩序の中でこれらの問題をどのように整合性をもって解決していくのが一番妥当であるかということであろうかと思うのでございまして、その点につきましては先ほど来御答弁申し上げておりますように、この問題は憲法レベルで解決すべきことは当然でございますけれども、その法秩序を守るためには任期満了選挙の場合を例として申し上げましたけれども、やはりその秩序全体の底にある条理と申しますか原則というものがあると我々考えておるわけでございまして、解散権の基本的に重要な性格にかんがみますれば、そのような条理というものとの兼ね合いにおきまして解散権そのものの行使が制約されるというふうには我々どうしても考えられないのでございます。
○寺田熊雄君 最後にお尋ねするが、結局そういう長官の意見を貫くと、違憲の法律に基づいて内閣が行動する、そして違法なことを行うという結果にならざるを得ないが、あなたはそれでも構わない、それは権利の乱用にならないとあくまでもおっしゃるのですね。その点どうですか。
○政府委員(茂串俊君) 先ほどからの繰り返しになりますけれども、私どもも憲法全体の秩序と申しますか、調和と申しますか、そういう点を十分に勘案してそのような見解を持っておるわけでございまして、仮に将来そのような最高裁の違憲判決が出るということになりましても、その点はその考え方については変わりはございません。ただ、もっとも仮に最高裁の判決によって定数配分規定が違憲とされた場合において、定数配分規定の改正前に衆議院の解散権の行使がなされるといたしますと、違憲な定数配分規定に基づく選挙にならざるを得ないわけですから、その行使につきましてはこのことを十分念頭に置いた上で慎重に対処すべきものであると考えております。
○寺田熊雄君 それはどうも法律を守るという立場の法制局の議論としては私は邪道であろうと思う。最高裁の判決が出ても、なおかつ解散権の行使は現行のままでやっても差し支えないというような、そういう憲法秩序を破壊する、違法な権利行使を承認するようなことを法制局が言い立てたら憲法秩序なんか守れるはずがない。法の尊重といいますか、法の支配が根本から崩れてしまう。それはもうそんな法制局が意見を固持するということは日本の最も大事な法の支配の原則を打ち破ることだ、とんでもないことだと私は考える。もっと法を守る一念に徹して任務を尽くしてもらいたい、そういう私は希望を述べて質問を終わります。
○政府委員(茂串俊君) 御質問はございませんでしたけれども、一言申し上げますが、私ただいま申し上げましたのは、いわゆるぎりぎりの法律論として考えればそのようなことになるということであって、事態が極めて異例であるということは申すまでもない前提でお話を御説明申し上げたわけでございまして、その意味におきましては一日も早く国会、内閣の良識においてこの法改正が実現することが強く期待されるということを申し上げておきたいと思うのでございます。
○委員長(大川清幸君) 午前の質疑は都合によりこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。 午前十一時四十五分休憩 ─────・───── 午後一時三分開会
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 委員の異動について御報告いたします。 本日、河本嘉久蔵君が委員を辞任され、その補欠として出口廣光君が選任されました。 ─────────────
○委員長(大川清幸君) 休憩前に引き続き、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。 これより質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○飯田忠雄君 法案の審議につきましては大臣がおいでになってからということにいたしたいと思いますので、その前に一般の国政調査について御質問を申し上げます。 最初に、国際条約の国内法的効力について御質問申し上げますが、最近全抑協という運動がなされておりますね。抑留者の人たちの運動でございますが、それがいろいろパンフレットを出してやっておられます。それで、この件は裁判の件なので直接裁判内容に解れるということは差し支えがあると思いますので、できるだけ一般化した一般的な問題として御質問をいたしたいと思います。 まず最初に、いろいろ国際条約を締結されるわけですが、国際条約というものは国内法的に直ちに効力があるのかないのかという問題につきまして現在学説では二つに分かれております。このことは御存じだと思いますが、我が国はそれではどちらの方の考え方でおられますか。政府の御見解をお尋ねいたします。
○説明員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問、あるいは法制局の方から御答弁いただく方が適当かと存じますけれども、外務省の立場を御説明いたしますと、我が国といたしましては、我が国が締結いたしました国際条約はそのまま国内法上の効力を有するという立場に立っております。したがいまして、学説といたしましてはいわゆる受容説という学説をとっていると言えるかと存じます。しかしながら、慣行といたしましては、条約を締結する際にはその条約の実施がスムーズに行えるように所要の国内法の改正をいたしまして、条約と国内法のそごを来さないように手当てをするというのが我が国の慣行でございます。
○飯田忠雄君 そうしますと、例えば安保条約がございますし平和条約もございますね。こういうようなものは条約を結べばそれが直ちに国内法的効力が生ずるという御見解でしょうか。この点につきまして法制局の御見解どうでしょう。
○政府委員(茂串俊君) ただいま外務省の政府委員の方から御答弁がありましたように、我が国は従来から一貫して条約は公布されることによりまして国内法としての効力を有するというふうに考えられております。その根拠としますところは、憲法七十三条の規定によりまして条約の締結については国会の承認を要するということにされていること、また憲法九十八条二項にはいわゆる条約遵守義務の規定が置かれておるわけでございまして、条約の内容として含まれる法規範に対する国家意思というものは確定しておりまして、改めて同一内容の国内法を制定する必要はないと考えられるからでございます。もっとも条約の中にはその規定のしぶりから直ちに国内法の規定として機能できるようになっていないものもございますので、そのような場合には国内法による補足が必要でございまして、現にそのような国内法が多数制定されておるわけでございます。 国内法と条約の一般的な関係は以上でございます。
○飯田忠雄君 それでは、人権に関する条約はいかがでございますか。
○説明員(斉藤邦彦君) 人権規約につきましても、一般論といたしましては人権規約に書いてある内容が公布によりまして国内法上の効力を持つという形になっております。しかしながら、人権条約の個々の条約に着目いたしますと、それぞれの規定は必ずしも通常の国内法が持ちますような意味で法的な効果を発揮するという条項はございませんで、むしろ国としての定めるべき方針、目標というようなものを掲げている条項が多いのでございますので、人権規約は理論的には国内法上の効力を持っておりますけれども、それが通常の意味で法律が施行されるというような形で日本国内で施行されているという状況にはないというふうに御説明できるかと思います。
○飯田忠雄君 それでは、ついでにお尋ねしますが、安保条約にはいろいろ国民に対する義務のようなものが入っておりますね。こういうものにつきまして安保条約自体で既に国民は拘束される、こういう御見解でございますか。
○説明員(斉藤邦彦君) 安保条約につきましても理論的には国内法上の効力を有しております。安保条約につきましては安保条約及びその関連諸条約、特に地位協定でございますけれども、国民の権利義務に直接関連する内容が多いわけでございまして、これを支障なく国内法的に実施するために幾つかの数多くの法律が特に制定されております。
○飯田忠雄君 それでは、こういう新憲法ができて後の条約につきましては御見解わかりましたが、いわゆる戦前の条約で有効なもの、こういうものにつきましてはどうなっておるでしょうか。
○説明員(斉藤邦彦君) 我が国が戦前に締結いたしました条約につきましても、現在我が国にとりまして有効な我が国が加盟国となっております条約につきましては今まで御説明しました戦後の条約と同様の立場にあるというふうに考えております。
○飯田忠雄君 戦争に関する条約が戦前に随分出ておりますね。陸戦に関する条約、海戦に関する条約、あるいは捕虜条約、こういうような条約につきましてはどのような御見解ですか。
○説明員(斉藤邦彦君) 戦前にできました条約、特にただいま御指摘の戦争に関する条約、これは戦争が国際法上合法であると考えられていた時代にできた条約でございまして、国際連合憲章が成立した後、国際法上これらの条約がどういうステータスにあるかということにつきましては幾つか議論がございますけれども、通説といたしましては、これらの条約は実際の武力紛争が起こった場合、現在でも適用があるということになっております。したがいまして、戦前にできました戦争法規関連の条約につきましても、我が国といたしましては当時締結いたしまして、それからサンフランシスコ平和条約で効力を再確認したものにつきましては、我が国にとりまして依然として有効であるという立場をとっております。これらの条約につきまして国内法上どういう効力を持つかという点につきましては一般論といたしまして先ほど来御説明しているとおりの状態にございます。
○飯田忠雄君 戦争に関する条約でも国内法上は国会の承認を得ないで直接国内法としての効力を有する、このように理解してよろしゅうございますか。つまりこれは昔もう日本国として批准は経ておるのですから、こういう条約について現在の国会の承認を経なくても国内法上の効力があると、こう理解されるのでございますか。
○説明員(斉藤邦彦君) そのとおりと考えております。
○飯田忠雄君 それでは、憲法との関係はいかがになりましょうか。憲法では戦争を否定しておりますが、否定しておって、しかもそういう戦争に関する条約が有効だということになりますと、ちょうど新憲法ができた当時刑法改正をやりましたが、刑法改正で戦争に関する条文を全部削ってしまった、こういう考え方と矛盾をするように思いますが、この点について法制局の御見解いかがですか。
○政府委員(茂串俊君) ただいま御指摘の戦争に関する法規という点につきましては私余り詳しく知識を持っておりませんので、一般論で申し上げるほかないのでございますけれども、憲法の九十八条二項に「日本国が締結した条約及び確立された国際法現は、これを誠実に遵守することを必要とする。」という規定が置かれておるわけでございまして、そこにいうところの「確立された国際法現」というものにただいま御質問にありましたような条約あるいは慣習法が当てはまるといたしますれば、当然この規定によりまして我が国は憲法上それを遵守する義務が生ずるということに相なろうかと思います。
○飯田忠雄君 ただいまお挙げになりました憲法の条文と憲法九条との関係はいかがなりましょうか。この点の法制局の御見解を承りたいと思います。
○政府委員(茂串俊君) 憲法九条と九十八条二項との関係についての御質問でございますが、これは従来からも問題とされたかもしれませんけれども、いずれにしてもこれは矛盾することは全くないというふうに考えております。
○飯田忠雄君 これは、もうこの辺でその質問はやめておきます。 次に、一九二九年の条約というのがございます。捕虜条約です。四九年の条約もございますが、これにつきまして危険作業については捕虜を使役してはならないという意味の規定がございますが、この条文の意味についてどのように解しておられましょうか。外務省の方にお尋ねいたします。
○説明員(斉藤邦彦君) 一九二九年の俘虜の待遇に関する条約におきましては、第二十七条から第三十四条までの規定において捕虜の労働につき定めておりますが、危険な労働につきましては三十二条において次のとおり定めております。「俘虜ヲ不健康又ハ危険ナル労働ニ使役スベカラズ 懲罰ノ手段トシテ労働条件ノ一切ノ加重ハ禁止セラル」、それから、もう一つ御指摘の一九四九年の捕虜の待遇に関するジュネーブ条約におきましては、第五十二条において危険な労働について次のとおり定めておきます。「捕虜は、自ら希望しない限り、不健康又は危険な労働に使用してはならない。捕虜は、抑留国の軍隊の構成員にとっても屈辱的であると認められる労働には使用してはならない。機雷、地雷その他これらに類する機器の除去は、危険な労働と認める。」 以上でございます。
○飯田忠雄君 ただいまの御説明によりますと、捕虜を危険な作業に使用してはならないというのが国際法上の原則でございますね。そして、この原則に違反したとして戦争裁判が行われましたことも既定の事実でございます。 我が国の軍人が捕虜を虐待したということで処罰を受けた例は相当多いと思いますが、こういう問題について御研究になったことはございますか。
○説明員(斉藤邦彦君) 検討したことがあるかという御質問の趣旨がちょっとわかりかねますけれども、捕虜を虐待したという理由で処刑されたり処罰をされた日本人がいるということはもちろん承知しております。
○飯田忠雄君 私が実は質問しようと思っていますのは、我が国の軍人が処刑をされました。ドイツの軍人も処刑をされましたね。ニュルンベルク判決ではどうなっておったでしょうか、お尋ねいたします。
○説明員(斉藤邦彦君) ニュルンベルク裁判の結果、捕虜の虐待について具体的にどういうような処罰を科したかということは、申しわけございませんが、今手持ちの資料がございません。
○飯田忠雄君 戦敗国の軍人は捕虜虐待ということで刑事罰を科せられておるということは伝えられておるところが事実であろうと思います。ところがいわゆる戦勝国の方は捕虜虐待をいたしましても何ら刑事罰を科せられたということは聞かないわけですね。例えば我が国の軍人軍属及び満州国公務員、こういう者が昭和二十年、戦争が終わりましてからソビエト連邦に強制的に連れ去られまして、そこであのシベリアの地で激しい強制労働を科せられて、そして亡くなった人も相当あるということも聞いております。これは一体戦争責任を問うたのか、それとも特別にそういう人たちが何か戦争犯罪を犯したからやったのか、こういう点が明らかでありません。 それからもう一つ、戦勝国は日本の捕虜を随分虐待したことがありますね。虐待したのだけれども、それに対していわゆる捕虜に関する条約違反だとして責任を問われたことも聞いたことはありませんが、こういう点についてどのようにお考えでしょうか。
○説明員(斉藤邦彦君) 戦勝国の側にも捕虜虐待の事実があったとすれば、これが国際法違反であるということは疑いがございませんので、理論上その虐待の事実につきまして国際法上の責任を追及するということは可能でございます。ただし現実の問題となりますと戦勝国、敗戦国という力関係、あるいは当時の国際情勢というようなこともございまして、現実の問題として戦勝国側のそのような責任が追及されたことはないというのが現状でございます。 それから、ただいま委員御指摘のソ連の捕虜の虐待の事実でございますけれども、我が国といたしましては、ソ連が我が国の日本人捕虜に与えた待遇の一部は、これは当時確立された国際法規と考えられます捕虜を虐待してはいけないという規則、これに違反する国際法違反の行為であると考えております。
○飯田忠雄君 いわゆるサンフランシスコ平和条約におきまして、我が国は連合国に対してあらゆる請求権を放棄するという申し入れをしてそれが決まったということを聞いておりますが、それは事実でございますか。
○説明員(斉藤邦彦君) ただいま委員が御指摘の点はサンフランシスコ条約第十九条のことであろうと思いますが、第十九条におきましては「日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、」云々と書いてございます。
○飯田忠雄君 ただいまの連合国というのは平和条約を締結する際の当事国を指すのか、あるいは当事国じゃなくてもすべての連合国を指すのか、その点はどのように御見解でございますか。
○説明員(斉藤邦彦君) この日本国との平和条約は、この条約の締約国間でのみ効力を生じますので、ただいまの規定が適用されるのは日本国とこの平和条約の締約国との間に限るというふうに考えております。
○飯田忠雄君 ソビエト連邦におるところのいわゆる日本の捕虜、本当の軍事上の捕虜かどうかわかりませんが、とにかく捕虜ですね。この捕虜に対する虐待はこれはもういろいろの証言によって確実であるとなっておりまして、虐待された人は補償を求めたいと、こう言うておるのですが、ソビエト連邦に対して個人として補償を求める裁判を起こすことができますか。この点についての法的手続はございますか、お尋ねいたします。これは外務省。
○説明員(斉藤邦彦君) 日本国民が戦時中にソビエト連邦で受けました待遇に関して請求権の訴訟を起こすということはできるというのが政府の見解でございます。
○飯田忠雄君 いろいろのパンフレットを見ますと、現実にはどうもできないようですね。それで政府に要求するという形をとっておりますが、日本国として国民が受けた損害を外国に対して補償を求める場合に、本人の力が及ばない場合には政府がかわってその請求をするという、そういう制度はないのでしょうか。そういうことをやるのはあるいは間違いなんでしょうか、お伺いいたします。
○説明員(斉藤邦彦君) ソ連の場合で申し上げますと、日本国民個人がソ連に対して請求を行うことができるというのはただいま申し上げたとおりでございますが、現実の問題としてこれが果たして有効な結果を生み出すかというと、なかなかそこは疑問があるかと存じます。しかしながら、そうであれば日本政府が補償すべきではないかという考え方も当然あり得るかと思いますけれども、今度の大戦に関しましては国民のすべてが多かれ少なかれ戦争による犠牲をこうむっておりまして、これらのいわゆる戦争犠牲については国民が等しく受忍しなければならなかったところでございますので、政府といたしましては御指摘のようなケースについてだけ国に補償する義務があるというふうには考えていない次第でございます。
○飯田忠雄君 終戦当時私は満州国の公務員として勤務しておりました。終戦後における状況を現実を見てきたのですが、戦争のためにいろいろ被害をこうむったということは昭和二十年八月十五日をもって終わりなのです。それ以後は戦争の犠牲というよりも日本国の力が弱いためにその日本国の力の弱さを背負わされたというのが現実でございました。 私どもも強制労働は満州で中共軍に収容されてやりました。しかしソビエトに連れていかれるときはどういう名目で連れていかれたかというと、今から日本に帰してやるから集結しろということで集められて、そしてそのままソビエトに連れていかれたのです。そして向こうで自分の意思に反して強制労働を科され、それからいろいろな思想教育を強制され、やってきているのです。その理由を私ども考えまするに、私が抑留されております当時、ソビエトの方は安奉線の取り払いを私どもに命じました。素手で全部取ったのですよ。そしてそれはソ連に持っていったんです、安奉線は。そういうのは全部賠償だと言うておりました。私が働くのも日本から取る賠償の一部だと、こういう言い方であったわけです。そうしますと、ソビエトへ連れていかれた人たちはこれもまた日本国が支払うべき賠償の一部としてなされたのではないかというふうに思われるわけですね。 これはすべての人が戦争の犠牲を負うたという問題とは次元が違う問題であろうと思います。日本国内における人は引っ張られなかったんです。そういう特殊事情というものをお考えになったことがありましょうか。いかがですか。
○説明員(斉藤邦彦君) 私どもといたしましても非常にお気の毒なケースが多々あったということはよく存じております。しかしながら法的に申し上げますと、ソ連は日ソ共同宣言第六項で日本国に対する一切の賠償請求権を放棄する旨を約しております。したがいまして、ソ連がこのシベリア抑留者の方々の強制労働によって利益を得たという事実があったといたしましても、法的な関係におきましては我が国が同項においてソ連による強制労働を賠償の一形態として認めたということにはならない次第でございます。
○飯田忠雄君 これはいわゆる法律に書いてあるとかどうとかいう問題ではなしに、事実問題として日本国のために支払われた個人の犠牲であると言わざるを得ないわけですね。満州に行っていた兵隊はこれは召集令状をもらって行った兵隊が多かったわけです。もちろん職業軍人もおりました。おりましたが、大部分は召集されて行った人であって、それがそのままソ連に抑留されて大変な苦労をしたという状況ですから、こういう状況というものは、そう簡単におまえが勝手に引っ張られたのだからおまえの罪だと言い切れるかどうか、私は疑問だと思いますが、こういう問題につきまして全部が全部金を払ってやるということはそれは財政上難しいでしょう。しかし少なくとも心の問題で、冷たく突っぱねるのとそうでないのとでは事情が違うのではないかと私は思いますが、こういう点について従来政府はどのようにお考えになったのでありますか、お尋ねいたします。
○説明員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問に外務省からお答えするのは必ずしも適当でないかと思いますけれども、政府が従来御説明しておりますのは、ただいま御指摘のような非常な犠牲を払った方々がおられるけれども、今度の戦争では全国民が多かれ少なかれ非常な犠牲をこうむったので、これらの方々にだけ特に補償をするのは適当でなかろうという考えだというふうに承知しております。
○飯田忠雄君 大変御答弁は不満足で納得できませんけれども、この問題だけで時間をとるわけにいきませんので、次に進みます。 私のところへ一通の手紙が来ております。これは平沢貞通氏を救う会というところから来ておるものでございますが、この文面によりますと、死刑囚として既にまさに三十年近く勾引を受けておるということで、これは学者によっては意見が違うけれども問題ではないか、死刑には時効というものがあるはずだがこれについてどう考えるか、こういうお手紙をいただきました。なるほど死刑につきまして条文を見ますと、三十二条に「時効ハ刑ノ言渡確定シタル後左ノ期間内其執行ヲ受ケサルニ因リ完成ス 一 死刑ハ三十年」、こうあります。この規定の読み方なんですが、学者によっていろいろ違うようですけれども、この読み方につきましてどのような御見解でありますか。法務省の刑事局長いかがですか。
○政府委員(筧榮一君) 今御指摘の条文があることは承知いたしておりますが、平沢貞通氏の問題につきましては、前々申し上げておりますとおり、あの件について平沢は確定判決を得て以来ずっと拘置されておるわけでございます。その拘置というのは死刑判決という裁判の執行としてなされておるわけでございますので、刑の執行と同視すべき状態にある、したがいまして時効の問題は本件の場合には生じないというふうに解釈いたしております。
○飯田忠雄君 死刑を執行するということはどういうことをやることでございましょうか。
○政府委員(筧榮一君) 最終的には絞首してその生命を奪うということでございます。
○飯田忠雄君 監獄に留置する行為は、これは死刑という行為の一部でございますか、それとも死刑とは別の行為でございますか、お尋ねします。
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、拘置というのは死刑判決という裁判の執行としてなされておるものでございますので、死刑の執行というのと同視すべき状態にある、したがいまして時効は進行しないという解釈でございます。
○飯田忠雄君 刑法の十一条に「死刑ハ監獄内ニ於テ絞首シテ之ヲ執行ス」とはっきり書いてございます。そして「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ其執行ニ至ルマテ之ヲ監獄ニ拘置ス」、ですから監獄に拘置するのは執行に至るまでの間のことであって、執行そのものとは違うはずでございますが、いかがですか。
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、拘置というのは死刑判決の執行としてなされておる、したがいまして時効に関しては刑が執行されている場合と全く同視すべき状態にあるということでございます。 今、委員御指摘のようにいろいろ解釈はあるかと存じますが、やはりその場合には時効という制度の本質から解釈すべきものと考えて、時効という制度、これは一定の期間刑罰権が行使されないことによってこれを消滅させる制度でございますので、今申し上げましたように刑の執行と同視すべき状態にあるという場合には時効は進行しないという解釈でございます。
○飯田忠雄君 残念ながら今の御答弁はどうも納得しかねるのですが、死刑は絞首してこれを執行する、監獄内でというのは死刑を執行する場所なんですが、首を絞めて行うのだと、こう書いてあります。監獄内に留置して行うとは書いてないんです。逃げるといかぬから監獄内にとどめるというのなら意味はわかりますが、監獄内に置いておることが死刑の執行だということにはどうしても文字の解釈上読めないわけです。 それから、刑法というものはそういう犯罪者または被告人に不利に理解をして解釈するということについてどのようにお考えでしょうか。お尋ねいたします。
○政府委員(筧榮一君) 別に有利とか不利とかいうことではなくて、その条文に忠実に解釈すると、今の場合には時効という問題でございますので、時効という制度の本質を考えまして、先ほど申し上げましたような解釈をしておる次第でございます。
○飯田忠雄君 これは重ねて念を押してお尋ねいたしますが、条文には今のような御答弁は書いてないのですよ。死刑は絞首してこれを執行する、どこでやるかというと監獄内でだ、そう書いてあるだけなんです。そして監獄内に拘置するのは死刑の言い渡しを受けてから執行に至るまでの間拘置するのだということが十一条に書いてあるんです。執行とそれから拘置とは違うのですね。区別して書いているんです。執行するというのは首を絞めることだ、こうはっきり書いてあります。そして死刑の時効のところでは、刑の言い渡しが確定した後、執行を受けないことによって完成す、「死刑ハ三十年」、三十年執行を受けない、つまり首を絞められなければ時効が完成するよと、こう三十二条に書いてあるんですが、これを引っ張られておる期間、つまり犯人を引っ張ればそれで死刑の執行だと、そういう理解の仕方をされますとちょっととんでもない困った事態が生ずるのですが、死刑囚が無罪になった場合の問題、これは大変な問題を生じますが、今刑事局長が解されたような解釈も、刑法学者の中でそういう解釈をとる人もありますよ。しかしそういう解釈をとることが果たして妥当なのかどうかという問題を今お尋ねしているのですから、そういう点について、もう少しこの点の解釈問題について御検討を願いたいと思います。今ここで刑事局長をとっちめても、これはこんなことじゃ、しようがないんですよ。そういう問題じゃないので、ここでこれ以上きつく言いませんが、私は執行ということは首を絞めることだと、こう理解をしております。 そこで、いわゆる平沢の問題、これ手紙いただいたのでいろいろ考えてみたのですが、もうこれは三十年近い。もうじきに三十年になるらしいですね。二十九年何カ月になるらしい。しかもこの間監獄に拘置しただけだということになりますと、拘置所に拘置しただけだということになりますと、これは法に忠実に刑の執行をしていないということだと思います。刑の執行は絞首してこれを行う、こう書いてあるのに絞首しないで監獄内に拘置しておくだけだということになりますと、これは法に忠実でない処分だということになりますが、この点についてどうお考えでしょうか。
○政府委員(筧榮一君) その拘置しておることが執行そのものだというふうに申し上げているわけではございませんで、その拘置が行われている以上は時効に関しては刑が執行されている場合と全く同視すべき状態にあるというふうに解しておるわけでございます。
○飯田忠雄君 刑の言い渡しを受けましてから逃げ回れば三十年でもうそれで刑に服さなくてもいい、捕まっておって絞首するだけの理由がないのでそのまま監獄に置いたところがこれは時効が完成しない、こういうことになりますと、非常にその間に不均衡な事態があるとしか考えられないんです。逃げ回るような悪意のある者は許してやって、真っ正直に捕まってじっとしておったら助からぬ、これはちょっとおかしいのじゃありませんか。私は、この時効という問題については、三十年間も絞首する理由がないので法務大臣が判こをよう使わなかったような事件については、三十年たてば時効を完成さしたっていいものではないか、こう考えるのですが、しかも条文はそう考えてもいいような書き方をしているんですよ。こういう点についてどうでしょうか。法務大臣はどうお考えになりますか。
○政府委員(筧榮一君) その前に一言私から補足いたしたいと思いますが、もう平沢を三十年も執行もしないで置いておくというお話でございますが、大臣が判を押さぬからというようなことでございますが、平沢を現在まで執行していない理由としましては、死刑というものは、一たん執行されますと重大な回復しがたい結果を招くということでございますので、執行命令権者としての立場から記録をいろいろ精査するという点で慎重な検討が必要であることは当然でございます。特にその死刑確定者本人から再審の請求とか恩赦の出願というものがあった場合には必要に応じてその結論が出るまで執行を控えるということも必要であろうと考えております。 この平沢につきましては、これまで再審請求十七回、それから恩赦の出願四回行っておりまして、現在も東京高裁で再審請求がなされて審理されておりますし、恩赦につきましても中央更生保護審査会に上申がなされている状態でございます。そういうことにかんがみまして、死刑の確定判決を十分に尊重しながらも、なおその執行を現在まで差し控えているという状況でございます。
○飯田忠雄君 従来死刑囚は相当あったはずですが、占領下、日本が戦争に負けまして、まだ戦争の痛みから回復しない間、いわゆる連合軍によって占領されておりまする間、この間にはいろいろな凶悪犯罪が起こったわけです。そして死刑の宣告を受けた者もございます。このうち、例えば免田、谷口、このお二人の人は無罪、それからそのほか恩赦になったのが三名、一人が処刑された、こういう記録になっておるということを聞きましたが、このことは事実でございましょうか。お尋ねいたします。
○政府委員(筧榮一君) 細かい数等は今手元に資料ございませんが、おおむね今委員御指摘のとおりかと思います。
○飯田忠雄君 これは無罪になった人はいろいろの理由があって無罪になったと思います。また平沢氏の場合は、再審を請求してもなかなかおりないというのは彼の立場が弱いために再審請求を通すだけの材料を集める力がなかった、それだけのことであろうと思います。 それで、罪は相当重いと思いますけれども、しかもこの平沢の事件につきましては、いろいろの書物を読みますと、どうもこれは平沢ではないのではないかという疑いを提示した書物も随分出ておりますね。そしてこれは占領下において特殊工作のために行われたもののような疑いがあるということを書いた本もございます。そういう本が出ましても、それに対する反論が今まで出ていないのですよ。無視すればいいということで無視されたかもしれませんが、反論が出ておりません。 そうしますと、その疑いというものは今日国民の中で相当根強く残っております。いわゆる占領軍の方で行われた犯罪であるのに、これを占領下であるために一般人に罪をかぶせたのだといったような言い方をした本がいろいろ出ておりますね。そういう本が出ておる現段階において、しかもあと半年ぐらいで三十年になるようですが、こういうのをそのままにしておくということは果たしていかがなものかと、こう思われるわけです。三十年もたてば罪は消えてしまうのではないか。しかも国民の中から忘れ去られておる。こういうものをあえて留置して死刑を執行しなければならぬのかということを私は考えるわけですが、拘留も死刑の一種であるということであるならば、そういう事態においてなお拘留しておくという死刑の執行の仕方を続けなければならぬのか大変疑問があると思いますが、この点についてどのような御見解でございますか、お尋ねします。
○政府委員(筧榮一君) 平沢の執行を現在まで行っていない理由につきましては先ほどから申し上げたとおりでございます。あれが真犯人ではないとか、あるいは占領軍の特殊工作であるとかいうような本、あるいは一部にそういう意見が出ているということは承知いたしておりますが、私ども記録等に基づいて承知しております限りは平沢が真犯人であるということは絶対間違いないと確信を持っておるわけでございます。
○飯田忠雄君 途中ですが、大臣がおいでになりましたので、ほかの質問者としばらくかわらしていただきますので御了承願います。
○委員長(大川清幸君) ただいま内閣官房長官がお見えになりましたので、飯田君の質疑中ではございますが、この際、寺田君が午前中留保されておりました内閣官房長官に対する質疑を行います。
○寺田熊雄君 官房長官、御苦労さまです。 最高裁裁判官の人事につきましては、従来から法務大臣ではなくして内閣官房長官が窓口であったようであります。私は五十一年五月十一日、当委員会におきまして、そのときは最高裁長官の人事の問題でありましたが、井出官房長官においでをいただきましてお尋ねをしたわけであります。私がお尋ねをした一遍の趣旨は、最高裁裁判官の人事につきましても内閣が責任を持つことは当然ではあるけれども、問題は司法の最高の人事であり、極めて重大なものであり、公正にそれが行われることが必要であるので、できる限り最高裁長官の意向を重く見てその人選をしてもらいたいという趣旨であったわけであります。 当時井出官房長官は、それについては「裁判所側の御意向というものは、これは一番重要な要素として尊重しなければならぬ、従来もそういうたてまえで推移をしてきておるであろうかと、こういうふうに考えております。」、それから「裁判所側の御意見とそれから内閣の側とそごしないように、一致することが一番望ましいと、こう考えてそれを願って」おりますという答えをせられたのであります。 また、かつて決算委員会におきまして、当時の安倍官房長官においでをいただいてこの問題についてお尋ねしたことがあります。そのときはちょうど最高裁の裁判官が弁護士会から出られた方が御退任になりましたので、弁護士会の中から人選がなされるという場合であったようであります。私はその問題につきまして日弁連の意見をなるべく聞いてほしいという趣旨のお尋ねをしたわけであります。それに対して安倍官房長官は、「大事な人事を行うに当たって、」「在朝、在野の御意見を聞くということもまたあり得」ますというような答弁を前向きになさったわけであります。 私はかつて村上朝一最高裁長官に直接この問題についてお尋ねをいたしました際、自分の意見が内閣に具申して通らなかったことはなかった、内閣は長官の意見を尊重してくれておるということでありました。現在まで歴代の長官の意見が最高裁裁判官の人事について尊重せられてきたというふうに私は見ておる。中曽根内閣においてもそうした扱いをなさっておられるのかどうか。 もちろんその任命は内閣の所管事項であり、その責任において行われるものでありましても、こうした大切な人事はできるだけ政治的な利害にとらわれず、公正にそれにふさわしい人物が選定されることが望ましいわけであります。そういう趣旨においてできるだけ最高裁長官の意見を尊重して行うことが望ましいと私どもは考えておりますが、中曽根内閣になられてからもそういう方針にのっとって最高裁裁判官の人事が行われているのかどうか、まずその点についてお伺いしたいのであります。
○国務大臣(藤波孝生君) 内閣の責任において任命するということになっておりますので、その責任を自覚してこの衝に当たらなければいかぬ、そのように考えておりまして、どなたをお願いするかということにつきましては、人格、識見あるいは経歴などいろいろな角度から検討いたしまして、この人をこそと、このように考えて、自信を持ってお願いをする、こういうことになるわけでございます。 しかし、今先生からお話のございましたように、かつて井出官房長官あるいは安倍官房長官がお答えになっておられますように、当然最高裁判所長官を中心といたしまして裁判所の側でどんなような方をという感じを持っておられるかということにつきましては、これはそのようにいたしますとか、そのようにしてまいりましたとか余り申し上げることがいいかどうかというふうに思いますけれども、政府の気持ちといたしましてはそのことを大事にしていかなければならぬ、そんなふうに従来も考えて取り組んできたところでございます。
○寺田熊雄君 私も今官房長官のおっしゃるようなことであったろうと考えております。また寺田最高裁長官にも直接電話で今回の高島益郎裁判官の人事についてもお尋ねをしましたが、その内容をちょっとここで申し上げることは適当でないでしょう。だから、これは申し上げませんが、ただ今回の高島益郎判事の人事が十二月二日の新聞で一日にもう内定しておるという新聞辞令が出ましたので、ちょっとこれはどうだったろうかという疑念を私は持ったわけであります。それで、寺田最高裁長官が中曽根総理をお訪ねしたのがたしか十日のようでありました。それで、十一日の新聞にそれが出ました。やはり今官房長官がおっしゃられたような趣旨で今回の高島益郎判事の任命もなされたのかどうか。政治的な利害で、全く中曽根内閣の独断でなされたのではないと思うけれども、念のためにその点をお尋ねするわけですが。
○国務大臣(藤波孝生君) どういうふうな形で最高裁判所長官の考えを求めたのかということにつきましては、これは内閣の方で責任を持ってやっていくということになっておる事柄でございますので、あうんの呼吸でとしか申しようがありませんけれども、よくそこは事前にも最高裁判所長官のお考え方なども伺うような感じでずっと進んでまいりまして、そして最終のところで最高裁判所長官と総理大臣とでお話し合いをいたしまして、高島さんの任命ということに決まったようなことでございます。 いろいろと新聞などで早くから決まったように書かれておる向きもございますけれども、政府の方で勝手に決めて、後から最高裁判所に対してこんなところでいこうと思うよというふうな無理をしたわけでは決してありませんで、いろいろどんな立派な方が立派にこの仕事についていただけるか、職務を遂行していただけるか、いろいろとつおいつ考えております。ときに新聞などは予測をいたしまして、いろいろ内定したかのような報道をするものですから、内外に御迷惑をかけたり、内閣が独走しておるのではないかという印象を与えておるかと思いますが、十分最高裁判所長官、最高裁判所当局と御相談を申し上げて進んできておるというふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
○寺田熊雄君 終わります。どうもありがとうございました。 ─────────────
○委員長(大川清幸君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、石本茂君及び山中郁子君が委員を辞任され、その補欠として石井道子君及び橋本敦君が選任されました。 ─────────────
○委員長(大川清幸君) それでは、引き続き質疑を行います。
○飯田忠雄君 平沢問題につきましてはよろしくお願いをいたします。 次に、大臣おいでになりましたので、法案の方の問題に移りますが、裁判官、検察官の俸給を上げるということ自体につきましては私どもは決して反対ではありません。上げるべきときが来れば上げるのは当然だと思いますが、問題はこの上げ方の問題でいろいろ疑問がありますのでお尋ねをするわけでございます。 裁判官報酬法の第十条によりますと、最高裁は「別に法律の定めるところにより、」云々とありますが、その「別に法律」という言葉の意味なんでございますが、これは二つの意味にとれるのではないか。一つは別の法律でと、こういう意味にとれるわけでございまして、この別の法律でという意味にとって裁判官報酬法の改正法という法律をつくってやる、こういう意味にもなるのでございますが、同時に裁判官の報酬につきましてほかの公務員とのバランスをとるための調整の法律、そういうものをつくりまして、一般の官吏に俸給の異動がありましたらその対応する表で自然に裁判官、検察官の俸給も変わっていくという、そういう法律をつくるという意味にも解釈ができるわけですね。「別に法律」と書いてあるが、その別の法律のどういう法律かという問題で改正法以外に調整法でもいいじゃないか、こういうふうにとれるのですが、この点について政府の御見解はどうでございますか。
○説明員(菊池信男君) ただいまの点でございますが、先生御案内のとおり、この裁判官報酬法は昭和二十三年の第二回国会において成立したものでございますが、この十条につきましては当時の政府原案にはこの「別に法律の定めるところにより、」という文言はございませんでした。この文言は国会での御修正によってつけ加えられたという形になっております。したがいまして、原案のようなことでございますと、経済変動によりまして一般の官吏について給与の増加等の措置がとられる場合には法律上の措置を待たずして最高裁判所の措置によって裁判官の給与についても同様の措置がとられるということになる、そういう考えに基づいていたというふうに考えられます。国会での御修正の理由というものは必ずしも明らかではございませんけれども、要するにそういう場合でも最高裁判所だけでその改定を行うというのではなくて、やはり一度国会で御審議をいただいて法律で定めるべきであるというふうに考えられたというのがその御趣旨だろうと思われます。 先生のお話しのように、従前この十条に基づく裁判官の給与改定の行い方につきましては今回のように報酬法の一部改正をその都度やるというやり方がとられてまいっておりまして、こういうような一部改正法がこの十条に申します「別に定める」というふうに言われるところの法律に当たるということは言うまでもないと思いますけれども、先生が御指摘のような裁判官報酬調整法というような、いわば対応関係を決めておきまして、その対応関係によって、一般官吏の方が決まることによって最高裁判所がそれに応じた措置をいわば自動的にとることができるような、そういう法律というものを仮に考えますとすれば、そういう法律もやはり同条にいうところの法律に当たるのではないかというふうに考えております。
○飯田忠雄君 その点はわかりました。 憲法の七十九条六項、八十条二項によりますと、裁判官はすべて定期に相当額の報酬を受け在任中減額をされない、こうなっておりますが、この場合の相当額というのは具体的にはどのような額を申すのでございましょうか。これが非常にあいまいでございますのでお尋ねをいたします。
○説明員(菊池信男君) 先生御指摘の憲法七十九条六項、それから八十条二項の相当額と申しますのは、これは一般に理解されておりますところでは、裁判官の地位、職責にふさわしい生活を保障するに足りる額というふうに考えられておるわけでございまして、どのような額が具体的にその相当額に当たるかということは、これはどうしても抽象的な申し方になりますけれども、物価事情というものも一つの要素でございましょうけれども、それだけではございませんで、国民一般のそのときの所得水準がどうであるか、あるいは生活水準がどうであるか、それから裁判官の任用制度がどういうふうになっているか、それから一般公務員の給与体系、給与水準というようなものを中心にいたしまして、もろもろの事情を総合的に考慮して合理的に定められてくるという言い方、申し上げ方になるかと思います。
○飯田忠雄君 それでは、相当額といいますのは結局大変標準がないので決めがたいので、一応行政官の給与の例に準じて決めていくという便宜主義を今とっておるのだ、裁判官について行政官に対応する地位を一応決めてそして相当額を決めていこう、こういう方法をとる以外にうまい方法はないのでそういう方法をとっておる、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
○説明員(菊池信男君) ただいまの点でございますが、現在の裁判官報酬法の考え方と申しますのは、裁判官につきまして一般の特別職あるいは一般職の場合と全く別個の給与体系を独自にそれ自身としてつくっておるわけでございます。そしてその中での裁判官の報酬額の決定をいたします際の物の考え方といたしましては、まず前提といたしまして三権分立の制度のもとにおける現在の司法部、それから行政部の地位というもの、これに着目いたしましてそれぞれの長であるところの最高裁判所長官、それから内閣総理大臣、あるいはさらにそれぞれの構成員であるところの最高裁判所判事、それから国務大臣というものをそれぞれ同額で対等の給与を受けるという位置づけをまずしておりまして、それを前提として裁判官の地位、職責の重要さということを考慮して給与表のそれぞれの号俸を設けておるということであろうと思います。 その号俸の個々のものを見ますと、裁判官につきましては行政官になった方と比較いたしますとずっと優遇された位置づけの給与額というものが決められておるわけでございまして、それが憲法の申す相当額をそういう形で法律が実現しておるというふうに考えております。したがいまして一般政府職員との関係で申しますと、現在の給与法の体系というのは行政官の例に体系そのものがならっているということではなくて、むしろ全く別個に独自の体系を決めておるということであろうと思います。 ただ、それぞれの裁判官の報酬表の中におきますそれぞれの具体的な号俸の具体的な金額を見てみますと、それに相当するものが、それぞれ特別職あるいは一般職の給与体系の中にも同じ金額のものがほぼ見出される。場合によっては全く同額でございますし、ときによりましては相当の数につきましては全く同じ金額ではない、あるものとあるものとの間ぐらいになっておるというものもございますわけですが、そういうことで具体的な格付の結果の具体的な金額はそれぞれ似たものが行政官の場合に見出されますので、その改定の仕方につきましては行政官の給与改定が行われますときにその対応するところに対応して同率のアップをしていくということで考えられていると思います。したがいまして、行政官の格付に倣って格付をしているというふうな考え方ではなかろうと思っております。
○飯田忠雄君 行政官の格付に倣ったのではないという御答弁でございましたが、現実に提出されました法律を見ますと、表のところで大体倣っておるわけですね。そこで、現実には倣わざるを得ないということはよくわかります。ただ、もし行政官の給与が上がらなかった場合、検察官は当然行政官ですから上がらぬことになるでしょうが、裁判官は上げずにおくのか、それとも上げなければならぬのかという問題が一つあります。それから、場合によっては国家財政上行政官の俸給を下げなければならぬこともあるでしょう。そういう場合に、裁判官の俸給を下げることは憲法が禁じておりますから下げられないですね。検察官の俸給は下がることになるといったような問題も生じてくるわけなんですが、これは行政官の俸給を基準にするからそういう問題が起こると思いますよ。 そこで、人事院勧告が今度出されましたが、人事院勧告の内容は今度政府が提出されました給与法の改正法案、これとどのように違いますかお尋ねいたします。
○説明員(藤野典三君) お答え申し上げます。 人事院が本年勧告いたしましたものにつきしては、民間企業との差が本年四月で金額にいたしまして一万五千五百四十一円、率にいたしまして六・四四%でございますが、今回政府案では金額で八千百三十八円、率で三・三七%となっております。
○飯田忠雄君 人事院勧告の意味を一つはお尋ねいたしたいのですが、政府の方で実際にお出しになった改正案と人事院勧告とはある程度開きがございますね。こういう開きがあるままの状態を現出するということについて人事院はどのようにお考えでしょうか。それで満足か、だめなのか。
○説明員(藤野典三君) 先生御承知のように人事院の勧告制度は公務員の労働基本権を制約している代償措置でございますから、そういう意味におきましては勧告は完全に実施していただくのが筋と考えておりまして、そういう意味で人事院といたしましても関係者の理解を得るように努力しておりまして、そういう意味で今回政府といたしましてもこのような経緯の中で勧告の実施につきまして努力はされていると承知しておりますけれども、結果といたしましては引き続き抑制という取り扱いに至っておりますが、この点につきましては人事院といたしましては残念であると申し上げる以外にないということでございます。
○飯田忠雄君 総理府の人事局おいでだと思いますのでお尋ねいたしますが、行政官の給与を定めるに当たりましてどのようなものを基準としてお決めになるのでしょうか。人事院勧告ではないということになりますとどういうものを基準としてお決めになるのか、お尋ねいたします。
○説明員(中島勝己君) 五十九年度の人事院勧告の取り扱いにつきましては御承知のとおり八月十日に人事院勧告が出されました。政府といたしましては労働基本権の制約がございます代償措置でございます人事院勧告制度を尊重するという基本線に立ちまして、四回にわたり給与関係閣僚会議を開催いたしました。その結果でございますが、厳しい客観情勢のもとでありますけれども、人事院勧告の完全実施に向けて誠意を持って取り組んだところでございます。 本年度におきましては、これまで維持されてきました良好な労働関係、あるいは給与改定が公務員の士気あるいは生活に与える影響等に配慮する必要があるといった事情がありますが、さらに本年度の財政事情は例年予想される追加財政需要もかなりあると見込まれる上、さらに健康保険法の改正の施行遅延に伴いまして追加財政需要も相当規模に上るといった厳しい状況でありました。また現下の経済社会情勢、あるいは行財政改革を推進している中での国民世論の動向、あるいは安定的に推移しております消費者物価の動向といったさまざまな事情にも留意する必要がございました。しかしながら、五十七年度の人事院勧告でございました四・五八%の実施見送り、五十八年度さらに給与改定が二・〇三%にとどまったたという経緯がございまして、給与改定後の宮民較差が約四・四%残っております。これが職員の士気にかなりの影響を与えている、これを今後できる限り早く解消していくめどを立てまして、いわゆる将来展望を示しまして職員に安心感を与える必要がある、こう考えたわけでございます。 その場合、厳しい財政事情との兼ね合いを考慮しまして、少なくとも三年をめどといたしまして宮民較差の解消を図るためには本年度におきましては一・四%程度は改定後の官民較差の縮小を行う必要がある、それにいわゆる本年度分と見込まれますのが二%程度でございますので、それを加えますと三・四%程度になるということを念頭に置きまして、政府といたしましては公務員給与を取り巻く諸事情を国政全般との関連を考慮しまして幅広く格討したわけでございます。その結果政府としては、なし得る最大限の努力の結果といたしまして五十九年四月一日から平均三・四%内の給与改定を行うということでございます。一般職の平均で言いますと具体的には三・三七%、こういうことになるわけでございます。 以上でございます。
○飯田忠雄君 国家財政を考えた上でいろいろ決めた、こういうお話でございましたね。行政官の給与というものは、もし国家財政が窮屈になれば減額をすることもございますか。
○説明員(中島勝己君) 給与といいますのはそれぞれの置かれます国政全般といろいろな諸事情がございますから、減額することも場合によってはあるかもしれませんが、今のところそういうことは想定しておりません。
○飯田忠雄君 行政官の給与は国家財政に左右される大変浮動的なものだと承りましたが、そうでありますと、裁判官の給与は憲法によって保障された給与であって、そうした浮動的なものではあり得ないということになりますと、従来のように行政官の給与をまず標準にして、それから裁判官、検察官を決めるという決め方が正しいかどうか、大変疑問が生じてくるわけでございます。 そこでもう一つお尋ねいたしますが、政府では人事院勧告そのものをどの程度参照なさるのでしょうか。もう頭から勧告があったら勧告があったというだけで内容は見ない、それで適当に決ちゃうと、こういうことなのか。そうじゃなくて、人事院勧告の内容も丹念に調げた上でおやりになるものなのか。その丹念におやりになる程度はどの程度おやりになるのか、お尋ねします。
○説明員(中島勝己君) 先ほど人事院勧告は六・四四%と、ことしの人事院勧告はそういうものでございます。それは何を意味しているかといいますと、いわゆる水準でございます。官民の較差がこれだけあるからということでございます。そしてその六・四四%の具体的中身を見ますと、具体的には俸給表という形であらわれる、あるいは諸手当、俸給と諸手当、こういうもので組み合わせされているわけでございます。俸給は御承知のとおり八種十六表という形になりまして、様々な等級、号俸がございますが、一般職でいいますと約二千号俸で組み立てられているものでございます。したがって、そういうことで配分というのも実は人事院勧告の極めて重要な要素でございます。水準につきましては、ただいま御説明申し上げましたように、六・四四%に対しまして三・三七%ですから完全実施というわけにはいきませんけれども、配分につきましては人事院勧告の趣旨に沿いまして作成しておるものでございます。
○飯田忠雄君 それでは最後に一つ念のためにお尋ねしますが、人事院ではいろいろ人事院勧告をなさるときに何を標準にして人事院勧告をなさるのでしょう。全然標準がないというわけじゃないでしょうね。それから国家財政というものは無視しておやりになるのか、あるいは事前に政府の方へないしょにちょっと相談してみるといったようなことがあるのかないのか、その点いかがですか。
○説明員(藤野典三君) お答えいたします。 人事院の勧告につきましては公務員の勤務条件を一般的に世間一般の情勢に適応させるということで、そういうことを基本に考えておりまして、給与につきましてはそういう意味では官民均衡を原則に勧告を申し上げておるわけでございます。そういう意味で、現下の財政情勢が極めて厳しいということは認識しておりますけれども、人事院が財政事情を考慮するということにつきましては、これは先ほど申し上げた基本原則という意味からいきましても現実的な処理の問題からいたしましても困難と考えておりまして、そういう意味におきまして、やはり今の制度の中におきましてはこういう公務員の労働基本権制約の代償措置として設けられている趣旨をにらみまして、そういう意味で公務員にとってこの給与勧告といいますものは適正な処遇を確保するほとんど唯一の手段でございますので、そういう財政やその他いろいろな事情はあるにいたしましても、勧告制度の趣旨からいいましても完全実施をしていただくのが筋であるというふうに考えておるわけでございます。
○飯田忠雄君 このたびの報酬法の点についての質問はこれで終わりまして、次に少し時間がありますのでお尋ねをいたしますが、これは政府が民間企業に対していろいろ干渉を行い得る状態に現在あると思いますが、政府が民間企業の企業活動に対して干渉できる権限、それはどの程度あるという御見解でしょうか。 例えば、時間がないから限って申しますが、罪刑法定主義というものを考えておられるかどうかという問題に限ってもよろしゅうございます。例えば無過失責任論がしばしば持ち出されます。従来過失責任論でやってきたものが、賠償額を会社がよう払わないからほかの金持ちの会社に払わせようということで無過失責任論を援用するということになりますと、これは民事、刑事を問わずあらかじめ国民に知らしておいたこと以外のことで責任を問うことになる、そういう点につきましてどのような御見解をお持ちでしょうか。これは刑事局、民事局あるいは法制局、どこでもよろしゅうございますが、お答え願います。
○政府委員(藤井俊彦君) 私、訟務局長でございまして、御質問に適切にお答えできるかどうか心配ですけれども、今御指摘のような事件といたしましてはカネミ油症判決あるいは予防接種事件の判決、いろいろございます。 この種の事件と申しますのは食品行政、薬品行政、それから労働行政、いろいろ各分野にわたる事件が多うございまして、その中に国の賠償を命ずる場合に行政庁の権限行使につきまして国家賠償法で定められております要件、つまり過失責任の限界を超えて直接憲法上の補償責任を認めるとか、あるいは過失責任を論ずるといたしましても、その論ずるに当たりまして、その解釈を今までの多くの裁判例で見ておりましたのと違うような態度を示される判決もないわけではございません。こういう点につきましては、国といたしましては当然法律に基づいて、厳正に法律を解釈適用されまして、国が責任を負うべきものは負う、負うべからざるものは負わない、これが国会の法律で定められました限界であるというふうに考えておりまして、厳正に適正に裁判所の御判断をいただきたいというふうに対処いたしておるところでございます。
○飯田忠雄君 その点はよくわかりましたが、実は我が国の場合、国会でつくった法律が不足する場合に裁判で法的効果を生ずるようにすることが認められておりますね。判例法とかいうて認められておりますが、判例法というものの効力の範囲ですが、これはよほど注意をしませんと不当に民間を圧迫することになるのじゃないか。会社自体は金があるから賠償を取るということは、それはいいでしょうが、そこの会社に勤めておる職員に直接響くのです。現実に俸給が減ったりボーナスが減ったりするのですよ。そうすると、そうした罪もない職員を苦しめる状況になっていく。そういう問題をどこまで考慮されていろいろの行政施策が行われるかという問題、私は非常に危惧しておりますが、どのように考えますか。
○政府委員(藤井俊彦君) 今の判例法の法的効力という非常に高遠な御質問に私答えられませんけれども、先ほどおっしゃいました企業の責任を非常に広くといいますか認めていく、それの前提といたしまして国の行政行為の責任を非常に厳しく見ていくということも、それは一つの見方、考え方でありますけれども、そういうふうにしてまいりますと、裁判所の裁判でそういう行政の対応が厳しくあるべきであるということになりますと、当然それに伴ってその義務を果たすに十分なだけの行政機構の拡大ということは免れない。それと同時にそれを負担する国民の負担も増加する。これも免れない。と同時に、これはもっと大事なことでございますけれども、企業の営業の自由というものを四六時中国の監視下に置くというようなことになりまして、活発な自由な企業活動を営むことができなくなるというようなマイナスの要素も当然あるわけでございまして、法の解釈、適用に当たりましては、そのあたりも重々配慮していただきまして、裁判所におかれましてどうか適切な適正な御判断がいただけますようにというふうに考えて訴訟に対処いたしておるところでございます。
○飯田忠雄君 最後に一つ、これは具体的な例を挙げますが、ロッキード事件で一番問題になったのは民間航空機の機種選定に総理大臣の権限が及ぶか、監督権が及ぶかという問題ですが、これはひとつ言い方を変えますと、そういう民間航空機のどういう航空機を選定するかといったような民間会社がやるべきことに対して、なぜ運輸省は干渉しなければならぬのか、そういうことをなぜ法律でもって、干渉する法律をつくらなければならぬのかということが一つあるわけですね。そして運輸大臣が干渉してもいいという法律をつくった、それならばそれは運輸大臣の任務であって、ただ当然に総理大臣が干渉できる権限はないはずなんです。そういう権限逸脱行為をもしやったということになりますと、それに対する処分関係ほどうなるのかという問題も起こりますね。一番偉い人だから、おれは一番偉いから処分受けぬのだと、昔の殿様みたいなもので、そういうことでいいのかという問題があるんですよ。 それで、一番根本問題は、民間の企業の自由に任すべき問題をなぜお役所が監督して制約しなければならぬのか、こういう問題があるのですが、こういう点についてどのようにお考えになりますか。これはどこにお尋ねしたらいいですか。この問題は法制局ですか。どこでもいいからひとつお答えください。これは法律全般の問題ですよ。運輸省と限りませんよ。そうした民間企業が実際にやるべきことを国が監督をしなければならぬように、なぜそんな法律をつくらねばならぬかという根本問題です。
○政府委員(茂串俊君) 必ずしも的確な御答弁になるかどうかは自信が持てないわけでございますけれども、立法の問題として受けとめて御答弁を申し上げたいと思います。 もう当然のことでございますけれども、我が国はいわゆる法治国家でございまして、法律による行政の原理が行政運営の基本とされるべきことは当然でございまして、それぞれ公共の福祉の実現とか、あるいは国民生活をより豊かにするとか、いろいろな観点から立法がなされるわけでございますが、その場合に必要に応じて合理的な限度で基本的な自由とか権利を制約するというような立法がなされることも往々にしてあるわけでございますが、いずれにしましても、これはあくまでも憲法の趣旨にのっとりまして、合理的な限度における制約という範囲にとどまっておるのが現状でございます。 ただ、ただいま委員のおっしゃいましたのは、あるいはそういった行政権の行使と申しますか、法律に基づく公権力の行使とかいうことではなくて、行政指導、よく日本では各省が行っております行政指導に対するあるいは御批判というような感じも読み取れたわけでございますけれども、行政指導というのは御承知のとおりその性質上相手方の任意の協力を大前提とするわけでございまして、もちろん行政機関が行政指導をする場合には、それぞれの設置の根拠である法律によって与えられた任務とか所掌事務を遂行するためにその範囲内で行政の相手方の任意の協力を得て行うというのがその基本でございまして、国民に対して新たに義務を課するとか、あるいは国民の権利を制限したりするような法律上の強制力を有するものでは全くないわけでございます。ただ、この行政指導というものが行政を実施していく上においてはいろいろな意味でプラスになる場合も多いということで、日本の場合にはかなり行政指導というものが行われておるやに聞いております。 ただ、これも今申し上げましたように、あくまでも強制力は伴わないものでございますし、また、それだけに相手方の十分な御納得を得た上で実施されていくということでございますので、今お話のございましたように、いわば不当に国民の権利義務を侵害する、あるいは企業に不当な干渉を行うというふうなことは当然慎むべきことであろうかと思います。そういう意味で、行政指導を行うに当たっても心してそういう行き過ぎのないように各省は十分検討した上で行政指導というものを行っていくべきである、かように考えております。 非常に一般論で恐縮でございますが、以上をもってお答えといたします。
○飯田忠雄君 終わります。
○橋本敦君 きょうは久しぶりの法務委員会でございまして、いろいろお聞きしたいことがたくさんございまして、寺田先生も指摘をなさいましたが、自民党の司法制度調査会の問題その他お聞きするつもりでございますが、まず最初に、私は平田村の選挙違反事件について、さきにこの法務委員会でもお尋ねをしたのですが、重ねてお伺いをしたいと思うわけです。その趣旨は、この事件はまれに見る悪質な事件だと言わざるを得ない大変重大な不正行為を内容とするものでありまして、日本の選挙制度の公正なり民主主義ということを擁護していくという観点で考えましても、ゆるがせにしてはならぬ重大な事件だ、こう思うからであります。 この事件は、昭和五十四年四月二十二日に福島県石川郡平田村で行われました村長選挙に係るものでありますが、沢村金治という人と高橋晴光氏が激しく選挙戦を戦いました。その結果わずか百八十四票の僅差で高橋氏が敗れるという選挙になりました。ところが調べてみますと、この選挙は全くひどい不正が行われているという状況で、調べれば調べるほど、こういう選挙は無効だという、そういうことになってこざるを得ない状況がございました。当然高橋氏の方が選挙管理委員会に申し立てをするということから事件が発展をしてまいりましたが、結論的に言いますと、選挙無効訴訟で仙台高裁は五十七年十月二十九日に選挙無効の判決を下したのでありますし、さらに五十八年四月一日に最高裁もこの判決を維持しまして、県選管の上告申し立てを棄却するということで確定をして、実際に選挙のやり直しが行われたというところまでいった、そういう事件であります。 その中身でありますけれども、仙台高裁の判決でも明らかになりましたように、不在者投票の二百九十一票のうち何と二百四十六票、これが書きかえ、改ざんをされたという重大な疑惑があって、当然こういうものは無効であるとすれば、選挙の結果に影響を及ぼすことが明白だということになって、選挙無効、こうなったわけであります。こういうことですから、投票用紙、不在者投票用紙を含めて、これの改ざんが行われたという事実は、これは刑事事件としても積極的に解明されなければならぬ重要な公選法違反あるいは刑法違反の疑いがあることでありますから、この点の告訴も行われて、今日まで不起訴処分をなされたり、あるいは検察審査会から不起訴処分は不相当だという見解が出されたり、紆余曲折を経て今なお捜査をお願いしているところであります。 そこで、きょうは自治省に来ていただいておりますので、まず自治省の方に御見解を伺いたいと思いますが、こういうように一たん行われた選挙の中身の投票用紙あるいはそれにかかわる封筒などが選挙管理委員会が選挙を執行した後で書きかえられるという異例の事態が起こって選挙が無効になるというようなことは、この件以外に一体日本であったのだろうかどうだろうかというぐらい私はとんでもない事件だと思っておりますが、いかがでしょうか。
○説明員(浅野大三郎君) ただいま御指摘の平田村の事件につきましては、私どもは選挙の管理執行あるいは選挙制度という立場からも最高裁の判決につきましては関心を持っておるわけでございますが、私どもが承知しております限りでは不在者投票の管理者の補助執行事務と、それから立会人でございますか、それを兼務してやってしまった、そこが手続上の誤りがあったので無効になったというふうに承知しておりますので、ただいま御指摘のような書きかえ云々につきましては実は私ども事実関係よく存じないものでございますから的確にお答えいたしかねるのでございます。それからまた他にそういう例があるかどうかということにつきましてもちょっと私その辺のところの十分なる調査もこれまでしたこともございませんものですから、にわかに的確にお答えできないので、その点は御了解いただきたいと思います。
○橋本敦君 質問の通告をしてありますから当然勉強してこられていると思いますが、判決自体は精査をされておりますか。
○説明員(浅野大三郎君) これは最高裁の判決につきましては読ませていただきました。
○橋本敦君 それではその点を振り返ってもう少しこの問題の重要性について真剣な配慮を要求するという立場であなたにお伺いをいたしますが、不在者投票を管理する補助者と立会人というのは別個でなくちゃならぬ、それを兼ねるようなことになればそれ自体選挙の公正を疑われるということになりますから、当然公選法ではそういうことは許さないという建前を貫いている、これは明白ですね。いかがですか。
○説明員(浅野大三郎君) 御指摘のように兼ねることはできないということでございます。
○橋本敦君 そういうことは選挙事務執行をする村役場の選管にとっても、平田村に限らずどこの選管にとっても、こんなことはわかり切った常識も常識である、これは知らなかったとは到底言えない、そういう問題だということは明らかですね。
○説明員(浅野大三郎君) 選挙管理委員会としては当然そういうことは承知しておるはずのものであると思います。
○橋本敦君 そういうことを承知しておりながらあえてやったということでもって、そもそも行為の悪質性が出発をするのですね。あなたがお認めになったとおりですよ。それで、この判決はそういうような兼ねてはならぬというそのことを実際に兼ねているのに、兼ねている事実が発覚すれば選挙無効になるからそれをごまかさなくてはならぬ、兼務をしていないように繕わなくてはならぬ、そういうところから投票用紙の書きかえという事態が起こってきたという事実の経過を事実の判断として認定をしている部分がありますが、これは御承知ですか。
○説明員(浅野大三郎君) とりあえず私は最高裁の方の判決を読ましていただきましたものですから、その中で、上告理由の中で若干その辺争っている部分があるということはその判決に関連して承知しておりますが、高裁の判決における事実そのものをすべて詳細に承知しているわけではございません。
○橋本敦君 大変私はきついことを言って申しわけないけれども、不勉強だというように私は言わざるを得ないのですね。最高裁の判決というのはまさに法律判断で、事実認定そのものについてやり直すようなことはありませんから、その最高裁の判決を読んでも事実認定の核心部分がどこであるかというのはこれは出てきませんよ。ですから最高裁判決というのは通例極めて簡単なものが多いでしょう。だから、そのベースになった事実関係をしっかりつかむということになれば、高裁判決の事実認定、それを読んできていただかないと私の質問にしっかりお答えいただくということにならぬのですからね。私は自治省の方に質問通告をした際に、事件関係その他は法律判断も出ているから御存じのとおりでしょう、調べておいてくださいと言ってあるのは高裁判決もしっかり読んでおいてくださいということを私は言ったわけですね。 例えばこの判決の事実認定の三十一ページにどう書いているかといいますと、立合人の氏名を蓬田という名前から生田目という名前に書きかえている、そういう投票用紙がある、そしてさらに代理記載者が生田目であるのに不在者投票用外封筒では代理記載者が蓬田となっている、こういうことで蓬田、生田目という二人が書きかえられる、あるいは改ざんされるということで、行ったり来たりになっているややこしい票がいっぱいあるというのですよ。 そこで、判決はそういう事実を認定して鑑定の結果書きかえられたという状況も明らかにした上でどう言っているかといいますと、読んでみますと、「これらは、生田目昌幸が不在者投票管理事務補助執行者として不在者投票管理の執行面の仕事をした事実を隠ぺいすることによって、同人がそれと兼ねて立会人となった投票が無効となるのを避けようとした意図的なものであったと認められる。」と、はっきり認定している。今指摘したとおりです。いいですか。だから明らかにこんなことをやったら選挙無効になるということを知っておってやって、それを今度は隠ぺいするためにそういうことをやったということでありますが、しかも、それをやり始めたのはこの選挙の不正があるということを状況をつかんで、これは許せないということで高橋さんが選挙争訟を提起した後、このような書きかえがやられたという重大な事実がある。これは証拠隠滅に近いですね。 その点を裁判所はどう認定しているかといいますと、「すでに、争訟が提起された以後前記のような書き変えが行われたことは、右選挙書類の保管に関する法の趣旨に反するものであるのみならず、本件の不在者投票全体の適法性について疑惑を生ぜしめるものであり、違法というべきである。」と断定をしていますね。私は極めて当然の裁判所の判断だと思いますよ。慌ててそういうようなことをやって書きかえて、選挙無効になるのを防ぐように隠ぺい工作をしたというこのことは、今あなたはこの選挙無効の意味を極めて単純に選挙事務の補助執行者と立会人が同一であるということで無効になったのだと言われたが、その背景にこういう重大な事実関係があるということを軽く見ておられるという点を私はこれは正当な答弁をいただいたとは思いません。したがって、今指摘したとおりであります。 そこで、こういうことになりますと、不在者投票の外封筒に立会人の名前も書くわけですから、そういう外封筒というものはその名前を書きかえられたとしましょう。それは選挙管理委員会に事務執行で一たん保管されて選挙争訟の問題が提起された後で書きかえたということは明らかですが、その外封筒が選挙の書類にとじられて公文書として存在をしておる、それに手を入れて書きかえたということも明らかですから、そういう意味ではこれは本当に書きかえたということであるならば、公文書に対する重大な刑法犯を成立せしめることはそのこと自体疑いないと思うのですが、この点の法律解釈は間違いないと思いますが、法務省いかがですか。
○政府委員(筧榮一君) 今お示しの最高裁判例、あるいはそれのもとになります二審といいますか高裁判例はよく承知しておるところでございます。ただ、刑法上の問題になりますと、選挙無効とは違いまして、仮に書きかえたというような事実があるとしましても、それは個々にだれがどういう事情でだれのためにといいますか、代理の場合ですと、だれの代理で云々という細かい事実関係を確定しないと、なかなかその刑事責任というものは確定できないことは橋本委員御承知のとおりでございます。
○橋本敦君 その点は捜査を遂げていただく重要な中身になるわけですが、一般的に私が指摘し最高裁がこういう判断をしているもとで、その書きかえがなされたということはまさに選挙無効を隠ぺいする意図で、しかもそれにかかわる職員が役所に保管されている書類を書きかえたということになれば、公文書に対する偽造もしくは毀棄という犯罪の容疑がそれ自体はあるケースだということはこれは明らかではありませんか。
○政府委員(筧榮一君) 委員御承知のように、この点につきましては文書偽造その他の罪名で告発がなされておりまして、それについて目下鋭意捜査中の状況でございます。
○橋本敦君 だから、そういう嫌疑があるから鋭意捜査をしていただいておるということも明らかであります。 この問題について実は決算委員会でも我が党の佐藤議員が質問をいたしました。その際は筧さんから「最近第四次の告発を福島地検で受理、立件いたしております。したがいまして、お話の高裁の判決等も改めてしんしゃくいたしまして厳正な捜査が行われるものと確信いたしております。」という御答弁をいただいております。それから、私が三月二十七日、法務委員会で取り上げて厳重捜査を求めましたことにつきましても、「現在まで相当数の関係者を呼び出して取り調べを行っておりますし、今後も引き続き捜査を行いまして、できるだけ早い機会に事実に即した処理を行うことになろうかと思います。」というように御答弁をいただいておることは明らかであります。 ところが、今日まで具体的な捜査をやっぱり詰めて結論を出すという方向に本当に捜査を進めていただいておるのかどうかという点について、地元の関係者の方から疑念を持たざるを得ないというそういう状況で私の方にも話がございました。実は検察庁は時効になるのを待っておるのでないだろうか、一たん不起訴処分にしたという経緯があるので、本気になってやるというそういう状況ではないのではないかというような疑念も持たれるほど、その後捜査の進展が果たしていっておるのかいってないのかということで疑問を持っているような状況でございまして、本気になってこの問題を徹底的に糾明していただけるものかどうかという点についてもう一度きょうは重ねてお伺いしたいと、こうなったわけであります。 今刑事局長は書きかえられたという事実があっても、それがどういう意図でどうなるかということが問題だというお話がありました。確かにそれは捜査の過程で糾明していただかなければならぬ重大な問題であります。しかし、こういうことが行われたということについて、その意図はこの最高裁が維持した判決自体が私が指摘したように選挙無効になるのを防ぐためにそういう意図でもってこういうことをやったのだという認定を証拠によってやっておりますが、私はこの認定はきわめて筋の通った認定であるし、そういうことなしにこんなことを、勝手に書きかえるとか、そういうことをやる必要もなければ話もないのですから、そういう意図で書きかえをしたという意図そのものはこれは不法な意図があるということは明白だと思いますね。単に誤りを正したとか事実関係が間違っているのを訂正したという程度を超えて、そうではない、まさに選挙無効を隠ぺいするためにこういう書きかえをやったと裁判所ははっきり断定しているわけですから、この点で不法な意図があるというのはこの判決からも十分に推認される事情だと思っておりますが、その点はいかがなんですか。
○政府委員(筧榮一君) 先ほども申し上げましたように、刑事事件でございますので、相当数確かに一たん書いたものを書きかえたという形跡がある封筒でございますか、あるようでございますが、その一つ一つについて、だれがどのような事情で行ったということを確定しなければならないわけでございます。私が承知しておりますところでも、それぞれいろいろな事情といいますか、千差万別というとオーバーでございますが、それぞれ事情が異なるようでございます。そこらを一つ一つ確定いたしませんと文書偽造なりの形跡の有無ということを判断するには至らないかと思っております。
○橋本敦君 一つ一つ、それは結構です。実にたくさん書きかえられておるわけですから。しかし一つ一つ調べねばならぬとおっしゃるけれども、その書きかえられた一つ一つを調べるとしても、その中にその意図としては今判決が指摘しているように選挙無効を隠ぺいするという意図でやられたという疑いがあるという事実は、これは捜査の中でも完全に否定できますか。それは否定できない状況があるので一層厳重に捜査をしてもらわねばならぬし、またやるということではないのですか。この判決が言っておることは今までの捜査でまるで否定できますか。そうだとすれば大変な事実問題が裁判所のこれまでの判断と今の捜査の基本点と違ってくるわけですね。こういう意図で書きかえたのだという状況は否定できないというのは、たくさんある中で調べていってもこれは消し去ることができないということではありませんか。
○政府委員(筧榮一君) 確かに二審あるいは最高裁の判決でそのようなことが指摘されていることは事実でございますし、検察当局におきましてもそのことは十分念頭に置いて捜査を進めているところでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、選挙判決でございますので、個々のものについての特定はなされておらない、それをやはり個人の刑事責任を問うためには一つ一つを確かめる必要があるということでございます。
○橋本敦君 関係者について言えば投票した人はたくさんいます。しかし、こういうことを選挙争訟が起こってからやる人というのは特定ですから、そういう意味ではこれは被疑者ということで取り調べられる対象になっている人はこれは極めて特定されている。だから、その人に対して徹底的に厳しく真相糾明をしていただく捜査を遂げると同時に客観的に一つ一つの状況を明らかにしていくということを詰めていただくならば、まさに最高裁までいって筆跡の鑑定、その他の証拠、証言も積み重ねられて、しかも関係者がこの村の中で何百人から何千人いるというわけでもないし、事件の捜査の観点というものは、今私が指摘しているような観点を貫いていけば、真相糾明に近づいていく捜査を進めていく、そういう道も開けやすい状況が私はあり得ると思うのですが、これだけ捜査が長引いてはっきりしないというのはどういうことなのかという点について聞かしていただきたいのです。
○政府委員(筧榮一君) 本年の一月三十日に郡山検察審査会から不起訴不相当の議決がございまして、その事件は福島地検白河支部から福島地検本庁の方へ引き取ると申しますか移送し、福島地検本庁でその後捜査を続けておるところでございます。どういう人をどれだけ呼んで、あるいは物証をどういうふうに調べたかという内容については差し控えさしていただきたいと思いますが、告発人あるいは被告発人、さらにその投票の関係者、選挙事務従事者等を含めまして相当数の人間から事情を聴取して、現在捜査を続けているところでございます。
○橋本敦君 だんだん事件が古くなってくるし、そういった個々の事情も調べなければならぬということで、私は御苦労はわかります。わかりますが、検察審査会が検察官の処分について不起訴不相当という意見を出すというのは、私も仕事柄例が極めて少ない重大な判断だと、こう思うのですね。したがって、検察審査会が今局長おっしゃったように検察官が行った不起訴が不相当であるという意見を出した以上は、この審査会制度の趣旨からいっても検察官はまさに心を新たにして、初心に返って捜査を遂げるという立場を貫いて、検察審査会の不起訴不相当処分ということについて、必ず起訴せよということを言っているわけではありませんけれども、不起訴処分が正しくなかったということはまた一面言っておるわけですから、捜査を遂げて真相を極めるということに全力を挙げていただかなくてはならぬと、こう思うわけですね。その点検察審査会の意見をどう受けとめていらっしゃるか、もう一度お尋ねしたいと思います。
○政府委員(筧榮一君) 確かに橋本委員御指摘のように、検察審査会から不起訴不相当あるいは起訴相当という結論を得る事件は審査会申し立て事件の中では少数でございます。そういう意味で、検察官としても改めてその事件を最初から見直し、その上で事実を解明してその事案に即した適切な処理を行うという気構えで捜査を行っているところでございます。
○橋本敦君 これ以上捜査の中身に詳しく突っ込んでお尋ねするのも相当でない問題も出てまいりますので、結論的には今局長もおっしゃったような立場で、この事件がいつまでも日にちがいたずらに経過するというのではなくて、鋭意責任を持って捜査を遂げていただきまして、不正行為はやっぱり不正行為として徹底的に明らかにする、そういうことをおやりいただくことを強く要望するわけであります。 相手方、被告発人、被告訴人が村役場に勤めておる選管関係者であるということから公務員であるということで、その点でも慎重に捜査を遂げていらっしゃる事情はわかりますけれども、しかし逆に言えば、公務員という職にありながらこういうような書きかえをこの原判決が認定しているような不法な意図でやったとすれば、それなりにまたその責任は重大であるということも明らかですね。したがって、そういう意味で私はいずれにしても厳重な捜査を遂げて、近く明快な結論を出していただくように重ねてお願いをして一応この質問は終わりますが、局長、もう一度御決意のほどを伺っておきたいと思います。
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、検察官としては厳正、公平な立場で事案の真相を解明し、事案に即した適切な処理を行うということで鋭意捜査を行っているところでございまして、できるだけ近い機会に結論を出したいというふうに考えております。
○橋本敦君 わかりました。じゃ、次の問題に移ります。 最近の江崎グリコ事件から森永事件へのエスカレート、まさに憂慮にたえない次第でございます。こういった社会に対する重大な挑戦なり犯罪とも言わなければならぬ事態に対して、国民は恐らく一刻も早く真相の徹底解明と犯人の検挙を願つているということはこれは言うまでもないと思います。法務省は直接この捜査にタッチをしている状況ではありませんけれども、この事態がまさに捜査機関に対するいわれのない挑戦、挑発、そして国民に対する不安をかき立てているという、こういう重大な事情がエスカレートしていることにかんがみますと、法務大臣としても無関心ではおれないというお気持ちでいらっしゃると思うのですが、まずこの事件について法務大臣のお考えいかがであろうか、お聞きしたいと思うのであります。
○国務大臣(嶋崎均君) グリコ、森永事件につきましては、事件の性質から考えまして非常に重大な犯罪であるというふうに私は思っておるわけでございます。したがって、当面主として警察当局において調査が進められておりますけれども、警察当局との連絡を十分保って鋭意捜査を進めていかなければならないのではないかというふうに思っておる次第でございます。そういう意味で、私といたしましても本件の重要性にかんがみて一刻も早く犯人を検挙し、かつ真相の解明を図るということがぜひとも必要であろうというふうに考えておる次第でございます。
○橋本敦君 刑事局長にお伺いいたしますけれども、この事件で刑法上の適用はどうなるかということがもう一部で議論されているようでございますね。 例えば江崎グリコの場合は社長を具体的に監禁をしておりますからこれは一見明白で、監禁、脅迫、こういう罪が該当いたします。森永の場合は、あの毒物を入れたチョコレートを置いて、そして社会に対する挑戦的な犯行をやったわけですが、これは一体どういう犯罪容疑になるのかということについては、一説にはこれは未必の殺人罪で未必の殺人未遂罪が成立するのかという説もあったり、あるいはやっぱり今の刑法草案でも問題になっております飲食物の毒物混入罪、これでいかないと具体的には処罰が基本的には難しいのかという議論があったり、いろいろしておると思います。現在捜査が進められておるわけですが、どういうことで犯罪として刑法上考えられるのか、ちょっとこの点を教えていただきたいと思います。
○政府委員(筧榮一君) 現在まで発生しました事件、個々について承知しておりませんので、非常に雑駁になるかも存じませんが、一番重いものとしては、やはり社長を誘拐して身の代金を要求したというのが身の代金目的拐取でございますか、これは無期まである刑だったと記憶いたしております。あと監禁、脅迫その他、あるいは恐喝未遂のあることは御承知のとおりだろうと思います。ただ、毒物を混入してばらまくという点について、殺人の点になりますと果たして故意、あるいは未必の故意にしても未必の故意が認められるかどうか、やはり犯人が検挙されて調べてみて、さらにその頒布された状況、一般人がこれを食べる危険がどの程度あったかというような点を考えませんとにわかに殺人あるいは殺人未遂と言えるかどうか難しいかと思っております。ただ、いずれにいたしましても関係会社に対します威力あるいは偽計の業務妨害という点は、これは間違いなく成立するのではなかろうかと思っております。 それから、刑法草案の飲食物毒物混入、これはまだ草案でございますので現行法ではございませんが、そういうものができればストレートにそういうものを処罰することになろうかと思いますが、草案の法定刑は、御承知のように三年以下でございますので、威力業務妨害と同じでございます。そういう意味では現在の威力業務妨害でも十分目的を達し得るというふうに考えております。
○橋本敦君 威力業務妨害ということもひとつ確かに私もわかりますが、それで、ああいうことで実際に現金を要求して、現金を取るという行為について考えますと、これは恐喝もしくはその他の容疑に該当しますか。
○政府委員(筧榮一君) 現在まで判明した事実は明らかに恐喝未遂になろうかと思っております。
○橋本敦君 いずれにしても犯罪容疑は恐喝未遂としても威力業務妨害としても考えられるということは明白ですが、その他殺人罪の未必の故意、あるいはおっしゃいました飲食物毒物混入罪、これはまだ刑法草案の段階ですが、いろいろ議論がありますね。 それにしても、法務省としては今度の事件に関連をして法の適用という観点から考えますと、現刑法では今おっしゃったような範囲にとどまるわけですけれども、特別立法として、刑法草案全体というのはなかなか大変ですから特別立法として、この刑法草案にもあるような飲食物毒物混入罪を早く立法化するというお考えはありますかありませんか。この点はいかがですか。
○政府委員(筧榮一君) 先ほど大臣からも申されましたように、この犯人を一刻も早く逮捕し真相解明をすることが先決でございます。今申し上げましたように、飲食物毒物混入罪あるいはその他の特別立法がなければ処理し得ないとは思っておりませんので、事案の真相が明らかになりまして必要が生じましたらば検討いたしたいと思いますが、現在のところは現行刑罰法令の適用で十分ではないかというふうに考えております。
○橋本敦君 私もそのお考えは賛成な意見であります。結局早く犯人を検挙するということが社会の要請にこたえることになるというのは大臣もおっしゃったとおりであります。 そこで、警察の方は新聞で警察の失態だとか何とかいうことで、犯人の取り逃がしということも含めて厳しく国民から批判をされておる面もあるんですが、広域捜査も含めて鋭意努力をなさっているとは常々聞いておるんですが、こういった問題で法の適用の問題もいろいろ検討しなくてはならぬという問題もあり、そしてまた第一次捜査は警察に全面的に任すということが常態化になっているとは言っても、まさにここまで来れば政府の総力を挙げて犯人検挙に向かって国民の期待にこたえなくてはならぬという状況も出てきておるのではないか。 そこで私は、今法務大臣ができる限りの協力体制をとるというお話がありましたけれども、積極的に協力体制を具体的に組むということも含めて早急に検討して、捜査体制の充実と事件の速やかな解決に法務省としても検察官の英知も集めながら協力体制をとって前進をしてほしいということを国民の立場でお願いしたいのでありますが、法務大臣、重ねてお考えを伺いたいのであります。
○国務大臣(嶋崎均君) 先ほど来も申しましたように、今は主として警察当局が主力になって鋭意捜査を進めておるわけでございますけれども、検察当局としては本件の重大性ということを考えますと、ぜひとも早期に検挙をし、真相の究明を図るということがまず第一番目に大切なことだというような考え方のもとに、警察とも密接な連絡をとって対処をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
○橋本敦君 それじゃ、その点を期待して次の質問に移りたいと思います。 寺田委員からも午前中指摘がなされました自民党の司法制度調査会の問題については私も極めて憂慮しておる一人であります。そういう立場でこの問題についても質問をしたい、こう思うのでありますが、まず最初にお伺いしますけれども、元裁判官、元検察官、あるいは元法務大臣、こういう方々が職務上担当なさった問題については職務をやめた後は守秘義務がありませんか、まだありますか。極めて単純ですが、まずこのことからお伺いをしたいのであります。
○政府委員(筧榮一君) 公務員の場合は御指摘のように国家公務員法に守秘義務を規定してございまして、これは職を退いた後も同様でございます。ただ、大臣についてはこれは特別公務員でございますので、官吏服務紀律に規定があって、その場合もやはり退職後も漏らしてはならないということになっております。
○橋本敦君 法務大臣、この点について大臣の見解を伺いたいんですが、具体的な事件を担当された方々が、元裁判官にしろ検察官にしろ法務大臣にしろ、奥野さんが行っておられるかどうかということもあるのですが、この司法制度調査会に呼ばれて、具体的な職務中に知り得たこと、あるいは行ったこと、そのときに処理をした具体的な事件、例えばロッキード事件、にせ電話事件、いろいろありますが、それに関連しての具体的な質問をそこで受けるというようなことで、これをどんどんやられましたら、私はまさに守秘義務という問題に対して重大な侵害を政治の力で行うということになりはせぬかということをまず心配するわけであります。だから、そういうことについては、この司法制度調査会が、一般論はともかくとして、具体的な事件を担当した人を具体的な問題に関して呼び出すというそのこと自体がまさに制度上不当だというように、まずその出発点から言わなければならぬのではないか、こう思っておるのですが、法務大臣はいかがお考えでしょうか。
○国務大臣(嶋崎均君) 今刑事局長から答弁がありましたように、具体的な事件について過去にタッチした問題につきまして守秘義務があるということは当然のことだと私も思っておる次第でございます。したがって、これらの問題を取り扱う場合に、先ほど来も申しておりましたように、そもそもこの特別委員会が発足したのは人権上の問題の整理というようなことでスタートしておるということでありますし、内容の個々については私も十分承知をしておるわけではありません。ありませんけれども、現在審議が進んでおるようなそういうケースにつきましていろいろと取り上げ論議をするというようなことは、裁判の適正な進行のためによろしくないというふうに思っておるわけでございます。
○橋本敦君 おっしゃるとおりそういう節度は私はやっぱり持たなくてはならぬと思うのですが、実際に今までの経過を見ますと、濵邦久法務省大臣官房審議官は出席を求められ出席をしておられるわけですね。これは大臣と御相談の上、許可をされて行かれたのでしょうか。それとも全然そういうこと、大臣あるいは上司との関係なしにお行きになったのでしょうか。どちらですか。
○政府委員(筧榮一君) 御指摘の濵邦久官房審議官でございますが、これは刑事局担当でございますが、彼が九月二十八日に司法の公正に関する特別委員会へ出席いたしております。それにつきましては私はもちろん承知いたしております。私の代理として濵君に出席をしてもらったということでございます。
○橋本敦君 そうすると、もともとは刑事局長に対する出席要請があったわけですか。
○政府委員(筧榮一君) そのとおりでございます。
○橋本敦君 どういう点を聞きたいという要請でございましたか。
○政府委員(筧榮一君) 先ほど大臣も申されておりますように、この特別委員会の目的いろいろあるようでございますが、その当時受けましたのは、最近の再審無罪事件等人権が問題になっている刑事事件について法務省から説明を受けたいということでございます。
○橋本敦君 もしもそういうことで要請をされた中にロッキード事件の進行とかいうことにかかわるとか、現に進行中の、つまりもう確定した事件じゃないんですが、進行中の事件にかかわる問題での要請であればお断りになったのでしょうか。この場合は代理をお出しになったのですが、その点の判断はどうですか。
○政府委員(筧榮一君) 委員会でいろいろ調査をされること自体は私どもとやかく申し上げる立場にございません。ただ出席いたしました場合でも現在に進行中の裁判そのものに関する御指摘がありました場合には、その点については今裁判で進行中であるということをお話しいたしまして、その点についての論議なり当方の意見を述べるということは差し控えるということになろうかと思います。
○橋本敦君 それは当然のことですね。当然のことですが、私が聞きたいのは、この委員会に呼ばれたらやはりぴしゃっと断れない、刑事局長の場合は判断をなさってお出にならずに代理でお出しになったんでしょう。しかし、ぴしゃっと断れない、私はそこが政治の舞台における大事なことだと思うんです。法務省の皆さん、あるいは裁判所の皆さん、元裁判官、元法務省の皆さん、政権党の与党であるこの委員会に正式に呼び出されたらぴしゃっと断れない。 逆に言うと、私ども共産党にも金権腐敗追及委員会というチームがあって私もその一員ですけれども、私の方は呼ぼうとも思いませんが、恐らく呼んだってお断りになると私は思いますよ。私は政権党の与党がおやりになるということが、これはやはり具体的な司法の独立なり、あるいは職務の大事な守秘義務の問題なりに介入と侵害のおそれを持つという状況の一つとして今あなたのお話を伺ってさらに痛感しておるわけです。 だからぴしゃっと断るということが事実上できない状況ということがこれはやはりぐあい悪いのじゃないか、お断りになるべきだということを私は意見として持っているんですけれども、その点について、行ったら、聞かれたら具体的なことは述べませんと、こう言うけれども、言ってみれば我々がいるわけじゃありません。国会の目が届くわけじゃありません。野党の目が届くわけじゃありません。言ってみれば与党の密室内のこういう特別の委員会であなたが具体的にはそれは断ると言っても、心理的にも、また事実上も断り得ない側面が仮に起こり得るとしたら、これは司法上重大な問題を引き起こすことになるでしょう。 だから、そういう意味でこういう特別委員会は具体的な事件にかかわるというようなことはもう絶対にあり得てはならないというのはもとよりですが、こういうことには応じていかないという姿勢を検察庁も裁判所ももちろんのこと、元判事、検事であった人に対してもできればそういう姿勢をとるということで、毅然として司法の独立なら司法の独立を守るという姿勢に立ってもらわなくてはならぬ、こう思っておるのですが、法務大臣、いかがお考えでしょうか。
○政府委員(筧榮一君) 今一点ちょっと私の言葉が足らなかった点がございます。私が代理で濵君と申しましたのは、当日私出張、不在でございますので、その点で代理として濵君が行ったという事情でございます。 それから、ぴしゃり断れというお話もございますが、政権与党に限らず各党の正式の機関から私どもの所管事項について説明を受けたい、あるいは報告を受けたいというお話がございますれば、私どもとしては可能な限りそれに御協力を申し上げているところでございます。それは与党、野党特に区別をいたしておるわけではもちろんございません。
○橋本敦君 それは局長、筋が違う答弁ですよ。それは私どもでもいろいろお聞きしたいということでわざわざ来てくださることあるのですから、私はそんなこと否定していませんよ。この委員会はそういう法務委員会でお尋ねしたいことがあるから教えていただきたいというようなことで来ていただく委員会じゃないんですから。この委員会は人権が司法の場で侵害されている問題があり得る、それをただすという名目だけれども、何が問題かと言えば田中角榮の人権が侵害されているということを具体的に提起している。それが出発点ですから、見ても明らかでしょう。だから、やっぱりそういう取り違えをされるというのは、私はこの特別委員会の持っている心配な事情について考え方が刑事局長はそれはやっぱり甘いと思いますよ。もっと毅然として捜査の問題、司法の独立の問題を守っていただくように私は強くお願いしたいと思う。 それで、この委員会の中に保岡先生が入っておられるわけですが、私は奇妙に思いますのは、法務大臣、保岡先生は田中角榮氏の弁護人ですね。それで法廷で検察官相手に、裁判所相手にいろいろおやりになっている。そこで裁判所では意見が通らなかった、弁護人の主張は全部はねられた、嘱託尋問の問題しかり、証拠採用の問題しかり。それでその事件を田中角榮氏に対する人権侵害で調べるのだということで委員会に呼んで元裁判官なり元検察官なりに聞くということになりますと、法廷で本来やるべきことを、弁護人が自分がやった主張が入れられなかったので、今度は言ってみれば自民党の司法制度調査会という委員会の中でそれを追及してひっくり返していくというような道にもつながっていくのですね。だから、そういう点から考えても、私は現に進行中の裁判にかかわってこういうことをこの委員会がやるというようなことになれば大変なことだと、こういうように心配をして問題を提起しておるわけですね。 だから、そういう意味ではこの司法制度調査会というのが本当に司法権を侵害する危険性を持っているものだという認識をもっと深めていただいて、我々が国会で論議しているのも、まさに日本の司法の独立と政治介入をきちっと防いで、検察官が鋭意努力されてこられたこれまでのロッキード事件での御苦労も守らなければならぬし、徹底的真相解明という国会決議に基づくそれもやらなければならぬということで質問をしておるわけでありますから、その点はしっかりと私の質問の趣旨も踏まえて、刑事局長、先ほどの御答弁ありましたが、検討していただきたいということをお願いしておきます。
○国務大臣(嶋崎均君) 各政党のこういう場所でいろいろな論議をされるときに、先ほど話が出ましたように、人権関係が中心でということでスタートをした中でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、もし係争中のいろいろな問題について論議が盛んに行われるというようなことになりましたら、やはり法務省として守るべき考え方というのはきちっとあるはずだと思うのでございます。私自身だって検察行政に対する一般的な指揮監督権は持っておりますけれども、司法が独立をしておるというような考え方に対応しまして、検察庁法の第十四条にありますように、個別的な事件につきましては検事総長を指揮するということ以外のルートというものは原則として慎まなければならぬということになっておるわけでございます。そういう考え方というものを基本に置きまして、間違いのないようにしっかり指導をさせていきたいというふうに思っております。
○橋本敦君 法務大臣の考えを伺いましたので、次に裁判所にお伺いをいたしますが、裁判所にもこれはかかわってくるわけでありますが、元裁判官がこの委員会に呼び出されるということになりますと、裁判官をおやめになった方であれば裁判所としてはどうにもならないという立場でお考えなのか、何らか考えをお持ちなのか。この委員会が、元裁判官も呼びたいということを新聞で報道しておりますだけに私は気になりますが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) お尋ねの委員会につきましては午前中も申し上げたところでございますが、その性格でありますとか、あるいは目的あるいはどういう活動をしていらっしゃるのかということを私ども詳細に承知しているわけではございません。また、ただいま最高裁判所元長官を何かお呼びになるというようなお話もありましたけれども、そういう話が現実に出ているのか、あるいはお決めになったというのか、あるいは出席してどういう事項についてお尋ねになるのかというような事柄について私ども一切承知しておりませんので、ただいまのところ私どもとしてはこれについてお答えするわけにはまいらないわけでございます。 午前中も申し上げたところでございますが、この委員会ということを離れまして、とにかく一般論として申し上げますと、これは政党でございますので、いろいろ立法あるいは施策をお考えになる、その中には司法制度というようなものもおありになるでありましょうし、それについて事実を御調査なさる必要性も当然おありになると思います。ただ、先ほど来出ておりますような具体的な係属中の事件をお取り上げになるということになりますと、先ほど来お話ありますように、国民の一般から見まして、何らか裁判所に対して、あるいは裁判に対して影響を与えるのではないかというような誤解を招くおそれは全くないというわけにはいかない場合があると思います。そういうようなことから、今までも各方面でそういう司法の独立あるいは裁判の公正につきましてはいろいろと御配慮をいただいてきているところだと思っておりますので、今後ともそういう御配慮を賜りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○橋本敦君 裁判官ということになりますと、今度は検察官以上に裁判の独立という面でこれは本当にしっかりしていただかなくてはならぬというものでございますから、今お話しいただいた後段部分の考え方をきちっとお持ちいただいて、万々が一我が国司法の独立に対する暗い影を国民に与えることのないようにお願いしたいと思っております。 それに関連してきょう私が伺いたいのは、何でもないように見える記事ですけれども、私が見逃すことができません記事がございまして、これは十一月九日の毎日新聞の記事なんですが、田中角榮被告に懲役四年を言い渡した東京地裁判決がございますが、この判決に対する批判がいろいろ出されている。それは言論の自由ですからいいでしょう。ところが、この判決を受けた当の田中角榮氏の秘書の早坂茂三氏、この人も被告人ですが、この人が元法務大臣の秦野さんがお書きになった「何が権力か。」という本だとか、それから田中裁判が人権侵害だ、司法の自殺だということで一斉に田中擁護キャンペーンをやっております「諸君!」という雑誌がありますが、そういう雑誌など、これにあいさつ状を添えて、田中角榮秘書早坂茂三ということで何人かの裁判官の自宅にお送りになった、こういう記事を私は見たのです。 これは私はもう驚きでして、私も弁護士で刑事事件の弁護をしたことがありますけれども、裁判官に公正裁判の要請をするときはきちっと法廷でルールを守ってやります。裁判官の自宅だとかそこらに被告人が被告人の名前で自分に有利な書物だとか文書を送りつけるというようなことをやって、法廷のルールを超えたところでそういうようなプレッシャーを裁判所にかけるなんということは、私は弁護した被告人に許したこともありませんし、また一般的に聞いたこともない。 ところが、事もあろうにロッキード事件でこれだけ社会の耳目を集めている早坂茂三氏が、みずから被告人の身でありながら田中角榮秘書ということであいさつ状まで添えてこういう本を裁判官に送ったという事実を見まして、これが事実かどうかこれは重大な問題だ、裁判所にこの点について事実かどうかをお調べいただいたかどうか、これをお聞きしたいということできょうはお伺いするように質問通告しておきましたから、お調べいただいた結果どういうことでございましたでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) まず最初に、早坂さんは被告ではないはずでございます。 私どもが東京地裁から聞くところによりますと、本年六月二十日過ぎでございますが、文芸春秋発行の「諸君!」の五月号、六月号が東京地裁の裁判官五名に自宅あてに送られてまいったということでございます。同じく七月のやはり二十日過ぎでございますが、講談社発行の「何が権力か。」という書物がやはり全く同じ五名の裁判官に送られたということがございます。
○橋本敦君 委員長、その前に私ついうっかりして早坂さんを被告と申し上げましたが、その点は議事録を訂正していただきますようにお願いしておきます。 で、この五名の裁判官というのは東京地裁のいずれも刑事部の裁判官ですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) そのとおりでございます。
○橋本敦君 一連の丸紅、児玉ルートを含むロッキード事件の裁判官に合議体の一員として、もしくはその他何らかの関与をされた関係がございますか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 全く関与されたことはないと思います。
○橋本敦君 そうすると、たくさんいらっしゃる裁判官の中でこの五人の方にというこのセレクションはいかがなことによるのかどうか、これはおわかり、あるいは推測がつくでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 全くわかりません。むしろ職員録では裁判官の住所が出てない方のところにも行っているとかいうようなことでございますので、どうも職員録ではなさそうだという感じはしておりますけれども、それ以上のことはわかりません。
○橋本敦君 秦野さんは「何が権力か。」という本をお書きになっていらっしゃいますが、私はこの本の序文を見まして、これは大変な本だという印象を実は持ったわけであります。その中で秦野さんがこうお書きになっているのですが、有吉佐和子さんとお会いになった、その有吉佐和子さんがこうおっしゃったというんですね。「そうおっしゃるけど、田中さんは三木さんの直前の総理でしょう。稻葉さん一人血祭にあげればそれですんだはずですよ」と。そこで秦野さんは「私はこの話を彼女から直接聞いたのだが、優れた作家の感覚は尋常ではないと思った。」と、そして「ものごとの核心を直截に衝く力は驚嘆に値する。」、こうおっしゃっているんですね。 これは何を意味するかは、まさにあの造船疑獄で犬養法務大臣の十四条に基づく指揮権発動で当時の佐藤幹事長逮捕、これを食いとめて、そして責任をとって犬養法相が辞任をされた、このことを頭に置いて、稻葉さんが指揮権を発動し、稻葉さんが血祭りに一人上げられて大臣をやめれば済んだことだということを有吉佐和子さんは言わんとしているんだということをおっしゃっているんですね。まさにその直截な直感力に驚嘆をすると。これはまさに秦野さんの考え方に沿う問題ですよ。 こういう本をお出しになるのは自由だけれども、裁判官にあるいは「諸君!」という雑誌の論文を、裁判批判を送るということは一体何を意味するのであろうか。たくさん本が出た中で、田中角榮氏と早坂氏と越山会の皆さんは何百冊何千冊という田中擁護の本を買って越山会に配ったり広めたりしていらっしゃるという話はマスコミでも私どもときどき承知をしておりますが、裁判官にまでこれを送ったというのは、私はこれはゆゆしい問題だと思うのであります。 そこで、こういうことについてはこれはまことに遺憾であり相当でない、しかも被告人田中角榮氏の秘書がこういうことをやるということは被告人である田中氏そのものにとっても公正さを疑われるという重大な事情を持っておりまして、こういうことをやるべきでないというのは常識的に見て当然だと思いますが、書物を裁判官に送られた最高裁としてこういう動きをどうお考えになっておられますか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) これらの雑誌がこの五名の裁判官になぜどういう目的で送られたのか、私どもも全く不可解と申すほかはないわけでございます。先ほど来何らかの意図があったかというお話でございますけれども、この五人の裁判官は全くロッキード事件とは無関係な方々でございますし、現に東京地裁にはもうロッキードの事件はございませんで、手を離れまして東京高裁の方に参っているというようなことでございます。これよくわかりませんけれども、別な新聞では早坂氏の談話として、学者や弁護士に送ったけれども裁判官には送った覚えはないというようなこともおっしゃっているところを見ると、あるいは何かの手違いであったのか、何か私どもとしては全く不可解と申すほかはないわけでございます。最高裁判所としては、もうこれについては特段の手は何も打っておりません。
○橋本敦君 送ってないと言ったって現に着いているわけですね。関係ないと言うけれども、これから田中派のキャンペーンとして関係なければたくさんの裁判官にもっと送ろうと、仮にこうなったらどうなりますか。私はやっぱり裁判所も包む世論操作の一環にされてしまう。だから裁判所としては、いやしくも被告人田中角榮氏の秘書が田中角榮氏の秘書という名前のあいさつ状まで添えて、最高裁が所管される全国の裁判官のだれであろうとも、関係があろうがなかろうが、こういうことはやってもらいたくないとおっしゃるのが当たり前だと思って私は聞いたのですが、その点いかがなんですか。関係がなければ、事件係属部でなければ最高裁は平気ですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 平気かどうかということになりますと問題でございますが、たまたま五人に来ている、いろいろな裁判官に送ったということでもなさそうだという、どうもこれだけのことであるということで、これはこれで、このままで特に裁判にどうこうということではなかろうと、こう判断しておるわけでございます。
○橋本敦君 このことが裁判に影響をもたらしたという質問を私はやっていませんよ。こういうことを被告人がやったと言いません。被告人の秘書がやるということは社会的に見ても相当でないというのはだれが見ても明らかじゃないのか、裁判所が五人だけだから、関係ないところだからと言って軽く済ましていいのか、こういうことは今後ともふさわしくないとはっきり言って、裁判所の姿勢を述べることが当然ではないのかと私聞いておるんですが、それだけのことをはっきりおっしゃるということがなぜできないんですか。こんなことはやってもらっては困るとなぜ言えないのですか。私はその点をもう一遍重ねて伺いますが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 裁判批判一般ということになりますと、これは言論の自由あるいは表現の自由ということでございます。ただ言論の自由、表現の自由といいましても、そこには一定の限度があろうかというふうには考えております。ですから、それが非常に過熱いたしましたり行き過ぎになりましたりということになりますと、これは裁判に対する影響というような面からも考慮しなければいけないことで、むしろそういう言論の側で十分な配慮をしていただきたいというふうには思っておりますが、たまたま裁判官五名に送られてきたというようなことにつきまして、特にこれが何か裁判所に対する何らかの圧力であるとか、あるいはそういうふうには受けとめていないわけでございます。
○橋本敦君 私は納得できないですね。最高裁としては裁判官の皆さんに田中角榮氏の方が秘書を通じて自分に有利ないろいろな文書をどんどん送る、そういうようなキャンペーンを裁判所内部にまで、裁判官の自宅に送るということで手を伸ばしても特にとがめることも、非難することも、やめてほしいということを断固言うこともしないというのは、これは私は問題じゃないかと思いますよ。 田中氏は昨年総選挙のときに、投票を二日後に控えた十六日、湯之谷村の小学校の講堂の演壇に立ってどう言っているか。新聞の報道によりますと「(裁判中の)六年半、静かにしてきた。それがあんな判決だ。ばかを見た。じっとしていればロウソクの火が消える。これからは勝手にやる。田中角榮、目覚めよ。これが神の声だ」、とんでもないことを言っているわけですよ。そういう人が、秘書がまたその意を受けて裁判官の自宅にまで自分に有利な本をどんどんこれからも送ったらどうなりますか。国民が裁判所の公正を疑うということになっては大変でしょうが。だからそういうことはやるなと。被告人はむしろ謹慎すべきでしょう。今保釈中の身でしょう、田中角榮氏は。証拠隠滅行為やったらどうです、保釈取り消しになるでしょう。そういう立場の人が、政治的に自粛自戒、これも守ってはおりませんが、そういう立場の人が秘書を通じて裁判所に自分に有利な書物をどんどん送りつける。法廷のルールに従って証拠提出をする、弁論するなら大いにやったらいいですよ。こういうことを裁判所に対してやるということは、私は断じて許せぬと思う。これに対してあいまいな答弁しかしない最高裁に対しては、私はそのこと自体厳しく批判せざるを得ない。 最後にこのことをもう一度重ねて伺って、質問を終わります。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) まず先ほどから申し上げておりますとおり、これがどういうことで送られてきたのかということ、全くわからないわけでございます。これが例えば高裁に行ったとかあるいは全国各地の裁判官に送られたということでありますれば、これはまた別問題でございますが、ただいまのところこの五名の方に来ているというだけの状態でございます。これが現にロッキードの裁判を担当したとかあるいは現在担当しているという者ではないようでございますし、先ほど申し上げましたような新聞記事でございますけれども、頭の中で裁判官に送ったつもりはないのだというようなこともあるというようなことがあります。そういうようなことで、何ら特に手は打ってないというようなことでございます。ただ、先ほど申し上げましたように国民一般から裁判の公正に対する誤解を招くというようなことはやはり避けていただきたいというふうには考えておるわけでございます。
○橋本敦君 終わります。
○柳澤錬造君 法務大臣はお聞きになっていただいて、一番最後にお聞きしてまいりますが、人事院の方にお聞きいたしますけれども、五十七年度の人事院の勧告というのが四・五八%出されたわけですが、これが政府の方でもって全額見送ってしまったわけです。人事院としてはこれを五十八年度のときにどういうふうに反映なさったのかということをまず第一にお聞きしたいと思います。
○説明員(藤野典三君) お答えいたします。 人事院は給与勧告につきましては従来から毎年民間の最も給与の変動が大きい四月時点におきまして四月分の給与をお互いの官民両方の比較をいたしましてその差を出しておるわけでございます。したがって、五十八年の場合で申し上げますと、前年見送られた影響もございまして、その較差は六・四七%という形になったわけでございます。
○柳澤錬造君 もうちょっと、そこのところはっきりしてほしいのだけれども、その六・四七%というのを五十八年度にはじき出したわけですね。五十七年度のときには四・五八%は全額カットしたわけだ。もしこの六・四七%から四・五八%というものを引きますと一・八九%しか残らない。五十七年度全額カットなんだから、その分はなかったものとして五十八年度分をということになれば今言ったように五十八年度分になるのは一・八九%しかなかったことになるんですよ。その辺をどういうふうにお考えになっているんですか。
○説明員(藤野典三君) 先ほど申し上げましたように、人事院が行っております官民給与の比較と申しますのは、昨年から本年にかけます給与の伸びではございませんで、あくまでもその時点におきます官民両方におきます給与額を比較しておるわけでございます。したがいまして、一年経適いたしますと、その間に公務は公務の内部におきまして、民間は民間におきましてその中で変動する要因があるわけでございます。したがいまして、今先生おっしゃいましたように、そういうふうに抑制分と、あるいは見送り分と本年度いわゆる民間等で上がっております春闘分といいますか、そういう賃上げ分と分離して区別することは実際問題として困難だと考えております。
○柳澤錬造君 理論的にそういうやり方をしていることは私も知っているんです、改めてそういうふうなことの計算をしないことは。しかしながら、今そういうおっしゃられるような理屈からいくならば、もし五十七年度に四・五八%という人事院勧告を政府がそのとおり実施をしておったら、じゃ、五十八年度になったときに一・八九%しかないようなことになりますよ。だからその辺のところが全体的な水準でもって計算するから、今私が言ったような機械的にそういう足し算引き算にならないことは私ももう十分承知をしているわけです。 しかしながら、今あなたが言われているようなことでは数字というものが余りにも開き過ぎるわけなんで、結局四・五八%全額カットされてしまった公務員の諸君というものは泣き寝入りみたいなことになるじゃないですか。しかも現実に五十八年度に民間はやっぱり四・四%上がっているわけですから、その辺がもう少し単なる理屈というか何というのだろうか、そういう数字のもてあそびと言っちゃいかぬけれども、数字の魔術みたいに扱うことだけではなくて、人事院の使命としてそういうことで果たしてよろしいとお考えになっているかどうか、そういう角度からお聞きしたいと思います。
○説明員(藤野典三君) 先生御質問の趣旨はそれなりに理解できるわけでございますが、先ほどから申し上げましたように、私どもといたしまして考えておりますのは、民間におきます春闘のそういう伸びだけで比較いたしますと、やはり問題がございまして、したがってあくまでも四月分の高さそのもので官民の給与を比較する以外には、そういう意味においてその方がより正確であるという意味で比較をしておりまして、これは先生御承知のように、従来からそういう方式をとっておりまして、完全実施が行われております時代からそういう計算をしておりまして、やはり人事院としてはこれは最も一番適当な方法であろうと考えておるわけでございます。
○柳澤錬造君 適当な方法じゃないんですよ、これは。 私は民間育ちだし、それからいろいろ企業合併したりします。そのときに今のようなマクロでもって比較をして、いや、これだけの差があるからこっちをなんということは民間の場合はやらないんです。何千人おろうと何万人おろうと、一人一人のあれを全部それこそチェックしていって、そうして年齢が三十歳で勤続何年だという比較をして、そうしてバランスをとって、合併したら合併した方の従業員の賃金を直してあげないと同じような公平な座に置けないわけですよ。ただ、それを日本全国の企業のそういうことを個別個別に一人一人にそんなことできないから、今言われることはわかるわけだけれども、だからといって、皆さん方が勧告したものを政府が全額カットしてしまって、また次の四月一日になったらその四月一日のときの民間との比較でマクロで比較して、これだけの差がありましたと、それを出したらそれでもって人事院の役目は果たしたことになるというふうなお考えでは困るのだけれども、そこはどうですか。
○説明員(藤野典三君) 今の先生お尋ねの、いわゆるマクロ的な比較ではないかという御質問ございましたが、これは先生御承知かと思いますが、私どもの比較といたしましては民間と公務との関係を単純に年齢とか職務とかいうことと無関係に比較しておるわけではございませんで、具体的に申し上げますと、あくまでも仕事の種類別、申し上げますと、例えば事務、技術であるとか、そういうものとか、役職段階別、課長であるとか係長であるとか、そういう役職段階別、あるいは学歴別、年齢別、あるいは地域別、そういうことで、そういうものが官民双方見合いのものについて比較をいたしましてその差を出しておるわけでございまして、単純な比較をやっておるわけではございません。
○柳澤錬造君 素人のような答弁しなさんな。それがマクロだと言うんですよ。さっきも言ったように、私ども民間ならば一人一人全部チェックをするんです。企業が合併したというならば、合併した方の企業の一人一人、何千人おろうが全部、どういう条件にあってそして幾らだといって、今度は本体の方の、本体というか吸収する側の主体の方の従業員との比較において、これは幾ら上積みしてあげなければいけないといって、一人一人そういうものを比較してやるんです。ただ国家の場合にそんなことはできないことはわかっていますし、課長だ部長だとか何等職だとかどうかというふうな程度のことは、それはやらなければ比較はできないでしょう。しかしそれであっても結果的にはそれは現実において課長なら課長だといったって、企業によって全く違うんですから、三十二、三で課長になるところもあれば、もう三十八、九、四十にならなければ課長になれない企業もあるわけですよ。しかしそれは課長といったら全部一緒くたにして、民間の課長は幾らだ、じゃ、こちらはとやるわけでしょう。だから、そういう点からいけば、それはマクロの扱いですと言うんです。 それで、五十八年度のものも考え方は同じだと思うから、もうそれは聞きませんけれども、そういうぐあいでもって、ことしの場合もやっぱり五十九年度に人事院は六・四四%の勧告を出した。それでそれが三・三七%に削られちゃったわけです。人事院として政府がとられたことについて黙っておられたんですか。何か物を言ったんですか。人事院の権威というものがどこにあるんですかということをお聞きします。
○説明員(藤野典三君) この点につきましては、いわゆる人事院勧告制度は公務員の労働基本権の代償的措置といたしまして設けられておりますことは申し上げるまでもございませんが、そういう意味におきまして勧告を完全に実施していただきたいということでございまして、人事院といたしましても勧告後におきましても関係者の理解を得るようにできるだけの努力をしてきたつもりでございます。そういう意味で、ぜひこの勧告を実施していただきたいということが筋でございますので、そういう意味でぜひそういうことをお願いしたいと思っておるわけでございます。
○柳澤錬造君 私は人事院の皆さんを責めようとは思わないんですよ。皆さんの方はちゃんと決められたとおりきちんとやって、そうういう数字を出したんだから。ただ、それを三年続けてカットされてきたので、ことしの場合も六・四四%という勧告を出した、それが十月三十一日の閣議で無視されてしまったんです。その十月三十一日の閣議決定後、人事院として政府に何か物を言われたんですか。
○説明員(藤野典三君) 今申し上げましたのは、閣議決定前におきまして人事院におきましてはそういう関係でいろいろ努力をしてまいりましたが、閣議決定いたしました後においては、これは御承知のように内閣と国会に勧告されております関係もございますが、そういう意味で国会でいろいろ慎重審議をいただきたいということでございまして、特に政府等についてはしておりません。
○柳澤錬造君 私がお聞きしているのは、六・四四%という勧告をお出しになったんです。それを持っていかれたときは、これはきちんとやってくださいよと言うことは当然なことなんです。十月三十一日の閣議で三・四%以内というものは決まったのですから、その時点でもって人事院が勧告したものを政府は守っていただけないということがわかったわけですよ。当然その後に何で私たちの勧告したことを守らないんですか、何で法を無視してそういうことをするんですかと言って、当然政府に物を言われなくちゃいけないと思うんですけれども、それがいつ、どういうことを言われたんですかと私は聞いているんです。
○説明員(藤野典三君) 今先生御質問のいわゆる閣議決定につきましては、この決定が行われました直後におきまして人事院総裁がこれに対します総裁談話という形で談話を出しておりまして、その中で、一刻も早い実現をこの際強く要請いたしますと、さらにこの勧告は国会に対しましても行われておりますから、今後国会において勧告の方針に基づく慎重な審議が行われることを切に期待いたしますと、こういう総裁談話を出しております。
○柳澤錬造君 談話なんというのは、私はこう思っていますといって物を言うだけなんです。少なくとも内閣総理大臣が人事院が勧告したことについて守らなかったということについて、勧告をお決めになったときにはちゃんと持って行ったんです。どうかことしはこれを守ってくださいと言ってお渡しをしているわけです。それが十月三十一日の閣議でもってそれを無視されたことが明らかになったのであって、そんな一般に向かってただ談話なんていうものではなくて、当然内閣総理大臣のところへ行って、なぜお守りにならないんですかと、そういう閣議決定は我々人事院としては承服できませんと申し上げなくちゃいかぬはずだと思うんですが、なぜそれをやらなかったんですか。 それからもう一つは、今もお話ししているように、政府に向かって勧告するのと、国会に対しても勧告をちゃんと渡しているわけですね。政府の方は三・四%以内ですか、そういう閣議決定をした。だったら、同じように国会にも勧告しているんだから、国会に向かって、議長さんにお会いするか何かして、三年続けてこういうことをやられたのでは私たち人事院としては困ります、国会として何とか人事院で私たちが勧告したものを守れるようにお取り計らいをいただきたいということが言われてしかるべきだと思うんですが、それがあったんですか、なかったんですか。
○説明員(藤野典三君) 総裁は個人的にお話し申し上げたのかどうか私承知しておりませんが、正式にそういう要請をしたということは聞いておりません。
○柳澤錬造君 そうすると、これから人事院の権威というものをどうやってお守りになるつもりですか。
○説明員(藤野典三君) 人事院といたしましては、長期にわたりまして先生御指摘のようにこのような勧告の取り扱いが続きますと、人事院勧告制度の意義につきましても議論が生ずるおそれがなしといたしませんので、公務におきます労使関係あるいは職員の士気に憂慮すべき影響を及ぼすのではないかという点もございますので、このような事態に至らないように、ぜひ完全に実施をしていただきたいということを念願しておるところでございます。
○柳澤錬造君 じゃ、総務庁の方に今度はお聞きしていくのだけれども、これは私が言わなくてもこの人事院の勧告制度というのは労働基本権を取り上げた代償としてあることはもうおわかりのとおりですね。これだけ非常に国の財政が苦しいからことしは何とか勘弁してくれというようなときだと、またこれは話が違いますけれども、三年続けられたわけでしょう。三年続けて法が守られなかったということになると、その取り上げた代償にあったことを政府が守らないということになれば、取り上げたものをいわゆる返すというか、昔に戻って団結権、団体交渉権をもう付与する、それで今度は人事院のこんな制度をやめてしまうというようなことをやらなかったならば公平を欠くと思うんだけれども、その辺について総務庁の方のお考えはいかがなんですか。
○説明員(小島迪彦君) お答えいたします。 ただいま先生がおっしゃられましたように、人勧制度というのは公務員の労働基本権を制約しているその代償措置の一つでございます。憲法上の位置づけもされておるわけでございます。そこで、お尋ねの人勧制度がしばらく凍結なりされてきたのでどうかということなのでございますが、政府の基本的な考えといたしましては、国家公務員の給与につきましては、これは第三次公務員制度審議会、これは昭和四十八年でございます。これは昭和四十年から四十八年にかけて公務員制度審議会というのが設置されておりまして、ずっと審議した結果が四十八年に答申が出ております。それから第二次臨時行政調査会、これが昭和五十七年に基本答申というのが出ております。どちらの答申にいたしましても人事院勧告制度によるべきものだというふうな答申になってございます。ですから、政府といたしましてはこの人事院勧告制度を維持、尊重するという基本的な方針でございます。 それで、最初に申し上げましたように憲法上の位置づけもされているということで、その勧告制度はやはり何としてでも最大限尊重してその完全実施につきまして最大限の努力を払っていかなければいけないということで、関係の閣僚会議等も何回もやりまして、その最大限努力を払った結果、いろいろ財政事情等公務員をめぐる厳しい情勢のもとでございまして、ああいう結論が出たわけでございます。 最近に戻りますが、やはり政府といたしましては公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度は今後もそれを維持、尊重してまいるということでございます。
○柳澤錬造君 いや、維持していく考えだといっても政府が維持しないわけでしょう。労働組合が法に反して違法行為をすれば、それは当然すぐ処罰されるわけです。政府がこうやって法を守らないで無視をしていたときに、政府に向かってどういう処罰を求めるんですか。そうでなかったら公平さを欠くのじゃないですか。
○説明員(稲橋一正君) お答えいたします。 私どもは本年度人事院勧告の取り扱いにつきましては、先生御承知のように、先ほどから申しましたように労働基本権の代償措置であるということは基本に置きまして、これの完全実施に向けましていろいろ努力をしてまいったわけでございますが、御承知のように財政事情等の事情がございまして今回三・三七%というような結果になったわけでございます。これは政府といたしましてはそれまで数回の給与関係閣僚会議を開きまして完全実施に向けて最大限の努力をしてまいったわけでございまして、そういう上に立ちましてそういう結論になっているわけでございます。争議行為につきましては先生おっしゃいますように国公法の規定によって禁じられておりますので、そのようなことがあった場合には国公法の規定によりまして処罰されるという、そういう法の建前でございます。 それから、最後の先生のお話でございますが、政府に対して何らかの制裁を加えないのは問題ではないかというお話でございますけれども、これはどうも私ちょっと御返事できる立場にございませんので、その辺御了解をお願いしたいと思います。
○柳澤錬造君 あえてきょう答弁の指名をしないで、どなたでもいいですと言ったけれども、だからといって私答弁できませんということじゃ困るので、やっぱり人事院にしたって三年続けてこういうことをやられたら来年はもう人事院勧告なんか出しません、もう政府は勝手にしなさいと。総務庁も総務庁の方で、もうそれは法改正しなければいけないけれども、こういうことであっては人事院制度を維持するわけにはいかないんだから、もう労働基本権、団結権、団体交渉権を返してそれぞれが自主的に交渉しなさいという、そういうぐらいのことを言わないと問題が片がつかない。そういうことを言う勇気ございますか。
○説明員(藤野典三君) 本年の勧告の閣議決定に当たりましても、先生御承知のように、人事院の勧告制度は今後も最大限尊重し、完全実施に向けて努力するということが掲げられておりまして、そういう意味で私どもは大いに来年以降においてそういう政府の姿勢について期待しておるところでございます。
○柳澤錬造君 それは私もここにちゃんと線を引いてあるように、今おっしゃるとおり「人事院勧告の趣旨等にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、」、もう「人事院勧告の趣旨等にかんがみ、」じゃないんですよ。 あなたにもうこれ以上言ってもしょうがないので、最後に大臣にお聞きするんだけれども、三権分立になっているわけです。そういう点から司法という方は法の番人というか、国民に向かって法は守りなさいと言う、そしてそういう法が守れるような厳正な態度をとるのが私は司法だと思うんです。さっきもロッキード裁判の問題について橋本先生いろいろ質問なさっておったけれども、そういう立法行政司法の、司法の側のその関係の裁判官なり検察官の人たちに、政府として法で決められておるものを守らないで、今回のようなこういう勧告を値切って報酬なり給与の引き上げということをやらないということで、そして司法の関係の人たちに法を厳正に守っておまえたちは国民に対処せいということが法務大臣として言えますかどうですか。閣議決定のときは、それは国務大臣の立場でもってそういうことについてはいろいろ御発言をなさるだろうし、なんですから、今私が聞きたいのは法務大臣の立場でもって検察官なり裁判官なりにどういうふうに言おうとなさるのか、大臣の御見解をお聞きしたい。
○国務大臣(嶋崎均君) 人事院の勧告というのは、御承知のように一般職の職員に対してその給与を改善するという意味で勧告がなされておるわけでございます。ストレートに裁判官の報酬と結びつくというような形じゃありませんけれども、御承知のように今回の給与ベースの改定に当たっては民間とのバランスを保っておる、それが基本的な考え方だと。先ほど来御指摘のように、労働基本権を制約しておるということの代償的な措置として人事院勧告というものがあるわけでございますから、それをできるだけ尊重して実施をしていきたいという気持ちは我々もやまやまそういう気持ちでおるわけでございます。 しかし、御承知のように今日本の財政事情というのは本当に厳しい状態にあることもまた現実あるわけでございます。しかも過去のいろいろな経緯もありまして、これを一挙に解決するということがなかなか困難であるという中で、何とかひとつことしは少しでも勉強するところを出したいというような気持ちで、今度の人事院勧告を受けての対処策というものが一般職の職員及び特別職の職員について明らかになったわけでございます。そういう意味合いから申しまして、我々も裁判官及び検察官の報酬、給与につきましてそれが相当額が保障されるということが望ましいわけでございます。 御承知のように、裁判官に関する給与の法律の第十条には、こういう増額が行われたときにはそれに準じて引き上げるというような建前になっておるわけでございます。その中身は、過去長らくの直近の中で特別職の職員あるいは一般職の職員、それをいろいろにらみながらそれぞれの俸給額というものを決めて今日まできておるわけでございます。そういう過去の実態から考えまして、今回も一般職及び特別職の給与の引き上げに準じて引き上げの措置をとるということでこの二法案を提出したというのが現実であるわけでございます。 今後ともいろいろな努力を積み重ねまして人事院勧告の趣旨が十全実現できるような努力をぜひとも積み重ねていかなければならないのじゃないかというふうに思っておる次第でございます。また、それに関連をしまして、裁判官及び検察官の報酬、給与につきましてもできるだけその他位なりあるいはその立場なりというものが十分保全されるような努力を今後やっていかなければならないというふうに思っておる次第でございます。
○柳澤錬造君 終わります。 ─────────────
○委員長(大川清幸君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、安井謙君及び小山一平君が委員を辞任され、その補欠として佐藤栄佐久君及び梶原敬義君が選任されました。 ─────────────
○中山千夏君 ことし新潟刑務所で六月七日から十二日にかけて四人の受刑者が次々に亡くなるという事件がありました。それで、そのことについては七月の委員会で質問をしたわけなんですが、その際にこの四人の方たちの病理解剖の結果が九月ごろ出るというふうなお話を伺っていましたので、最初にその結果の御報告と、それからその後のことなども含めてお話しいただければと思います。
○政府委員(石山陽君) 本年の七月二十六日だと思いましたが、本委員会におきまして中山委員から御質問ありました新潟刑務所におきます収容者の急死事故の関係でございますが、今御質問のありましたとおり、当時四例目の急死者につきましては家族の同意が得られましたので、病理解剖等を地元の大学病院の御協力を得て実施しておったわけでありますが、その結果、少しおくれましたけれども、去る十月二十九日に一応病院側から回答がございました。その結果、難しい名前なものですからちょっと資料見さしていただきますけれども、原因不明のうっ血性心不全、括弧がついておりまして、壮年男子突然死症候群という形でありまして、わかりやすく申しますと、やはりあの当時申し上げましたいわゆるポックリ病に間違いなかった、こういう結果であったようであります。 私どもといたしましては、その後本年七月以降の収容者の健康状態についてはそれ以後十分注意してまいりましたが、幸いのことにこれまでに同様の症例で急死するあるいはその他の病理的事由によりまして死んだという例は本年はこれまでにございません。病室の方の入所患者も夏季は大体減少するわけでございますが、おかげさまをもちまして順調な平年どおりの経緯をたどって、当時から比べると非常に減少をしておる、これが現状でございます。
○中山千夏君 次に、最初の委員会ですので大臣のお考えを少し何点か伺いたいと思います。 初めに、在日外国人の方たち、特に在日朝鮮人の方たちの間で登録証の指紋を押すということに大変反発を感じていらっしゃる方が多くて、拒否をするという運動が起こっていますね。それは無理もないことだと私なんかは考えているんですが、それについての大臣のお考えと、それから今後そういう事件に対してどういう姿勢で臨まれるのかというのをお答えください。
○国務大臣(嶋崎均君) 我が国に在留しておられる外国人を正確に登録をしていくことの必要性というのは、これは諸外国の例で見ましてもその必要性は十分考えられておるわけでございまして、それを維持していくというためには、やはり現行の指紋を押捺する制度というのは私は必要な制度であるというふうに基本的には考えておるわけでございます。また、諸外国の例を見ましても、このような制度を採用しているというところは非常に多いわけでございます。御指摘になりました韓国の例でも、あるいはアメリカの例でもそういうようなことになっているように思っておるわけでございます。 また、さきに外国人登録法の一部を改正する法案の御審議をいただいたときにも、国会の中でもこの問題が非常に重要な問題であるというようなことでいろいろ論議された経過も存じておるわけでございます。今そういう実定法の中で仕事をしておるわけでございますが、御指摘のようにいろいろこの問題について議論があり、また最近そういうような兆候の一部が見受けられるような状態も見えるわけでございます。そういうようなこともありまして、御承知だと思いますが、去る九月の韓国大統領が来日をされた際に、在日韓国人の法的地位及び待遇問題については今後とも慎重に検討してもらいたいというようなことで共同声明にも出ているという実態もあるわけです。 以上のようなことを考えまして、私は基本的にはどこまでもこの制度を維持していくことが大切なことだと、それから外国人に対してはやっぱりどの人にも公平にこの制度が適用されるということが前提でございますから、そういうことを基本にしながら今後この問題についても検討を続けてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
○中山千夏君 ぜひともその法律は血も涙もないというような感じがないような行政をしていっていただきたい、これはお願いです。 それから死刑という制度についての大臣のお考え、それからあわせて国際人権規約(B)というのがございますね。それの六条と、それから一九七七年十二月八日国連総会の決議についての大臣の御見解をちょっと聞かせてください。
○国務大臣(嶋崎均君) 死刑制度の存廃の問題につきましては、この死刑というのは犯人の存在を否定するというような冷厳な刑罰を科することでございますから、いろいろな意味から論議が行われているということを我々は承知をしておるわけでございます。しかし、こういう問題を議論する場合には、やはり国民の皆さん方が死刑というような問題についてどういうようなお考えを持っておられるかということをある程度十分承知をしてかからなければならないというふうに思っておるわけでございまして、法制審議会から出ておる刑法の改正というようなところでもこの制度はやっぱり存続すべきものだというようなことになっておりますし、また一般の世論調査等の結果を見ましても、やっぱり死刑をやめてしまおうというような議論というのは非常に少数になっているという現実もあるわけでございます。やはりそういう点を十分理解をしてこの死刑の問題というものは考えていかなければならないのじゃないかというふうに思っておる次第でございます。 あとの問題についてはちょっと細かい問題ですから、刑事局長の方から御説明を願います。
○中山千夏君 刑事局長の御意見は前の委員会でこの条約についてお伺いしたんです。それで大臣にと思って伺ったのですけれども、これがまた長くなっちゃうと時間がなくなっちゃうのですね。悩んでしまうところなんですが、じゃ、この質問は考えておいていただいて、次の委員会のときにでも、もう一度ちょっと研究をしておいてください。 今御質問したのは、この間の委員会でも議論いたしました世界、国連の中では、なるべく死刑は廃止した方が望ましいという方向に決議がいっているということなんですけれども、今のお話に出てきました世論ということについても、やはりなるべくみんなが死刑のことを考えて、余り知らないうちに自分の判断を下さないようにするのが正しいのじゃないかと思っているわけです。それで国会の中でもなるべく死刑についての議論が活発になった方がいいというふうに考えています。 私なりに勉強したり研究をしたりしているわけなんですけれども、そういうわけで、なるべく死刑の現状、死刑の事実というようなものを早く正確に知りたいということがありまして、それで今度も質問の中に去年までのことについては前の委員会でお伺いしたものですから、ことしももうそろそろ終わりそうなので、ことし執行がどのくらいの数あったか、それから罪名、年齢、それから判決の確定から執行までの期間、それから再審の請求ですとか、それから減刑の嘆願というのでしょうか、そういうものの有無とか回数とかをお尋ねしようと思っていたわけです。 そうしたら、個人の刑を受けられる方のプライバシーの問題、それからその御家族、それから被害者の方たちの心情というようなものがあって、個人が特定できるような方法ではとてもお伝えできない、お話しできないというふうに伺ったんですね。それでその判決の確定から執行までの期間というようなことを伺いますと、たとえその名前だとか年齢だとかを聞かなくても期間を逆算していって、大体死刑判決がこの辺にあったからこれだこれだというふうに個人が特定されてしまうからこれはいかぬと。 私は、大抵被告になる方が逮捕されるときに相当マスコミの中で名前は発表されてしまうし、まだ判決も確定しないうちに相当人権侵害が行われていると思いますので、そのことと比べると、これは毎回言うことですけれども、こういう情報を、死刑の執行が行われたという厳粛な事実を知らせることはかえって益のあることじゃないかと考えているんですが、それは見解の相違ですし、そちらのお説も伺って、矯正統計月報というものが出ていますね。そこにある範囲であればいいのだろうと思いまして、それをちょっとさっきお昼休みの間に調べました。 矯正統計月報では収容者別の刑務所、拘置所の入出所及び月間一日平均収容人員というので月ごとにその数が出ています。死刑確定者数というのが出ていまして、その「出所」というところに、「釈放、資格異動、施設間の移送、その他」というのがありまして、「その他」のところが「死刑の執行、死亡、逃走又は」――これは少年に関するところだと思うのですが、「少年院、少年鑑別所、代用監獄への移送等である。」というふうになっているんですね。これで少なくとも死刑の執行、死亡というものは数がわかるようになっているわけです。ずっと見ましたら九月までしかとにかく月報には載っていなくて、十月、十一月というのはまだ出ていないものですから、それだけをちょっとお伺いしようかと思ったんですけれども。
○政府委員(筧榮一君) 先ほど中山委員御指摘のように、死刑の執行に関する個別的情報につきましてはその者の遺族その他関係者に対する配慮が重要なことでございますし、どの人がいつ執行されたということが、個々の残っておりますといいますか、公表すればどうしてもその他の死刑囚に知られる可能性がある、そうした場合に、その当該死刑囚が自分がいつどうなるかというようなことをいろいろ考えたりして心情の安定を害するというような点から、できるだけ死刑を執行された者についての個人的な情報については公表しない方が適当であろうと。確かに捜査等の段階で大々的に出たものがにわかに公表しないというのは矛盾だといいますか一貫しないという御意見もあろうかと思いますが、やはり死刑が確定された場合に、それを執行するということは極めて厳粛な事実でございます。それについてはできるだけ静かにといいますか、公表を避けて死刑囚の心情の安定並びに遺族等の名誉といいますか、そういう点についての配慮も考えなければならないということで今御指摘のような方針をとっておるわけでございます。 矯正月報あるいは矯正年報等にある程度のことは出ておりますが、それによりますと、恐らく今私が心配といいますか、理由として申し上げました個々の死刑囚に対する影響、そういう面での影響が少ないというような事柄について公表しているところだろうと思います。
○中山千夏君 ちょっと質問の意味がわかりにくかったのかと思いますけれども、今おっしゃったことは一応納得したわけです。それで、月報で二、三カ月たてば十月、十一月の統計も出てくると思うのですけれども、今九月までしかまだ私は見ることができないものですから、十月、十一月がおわかりになっているはずなので、それをお知らせいただきたい。どのくらい拘置所にいたかとか、そういうことからは特定者が割り出せるからよくないというので、それは伺いません。
○政府委員(石山陽君) 中山委員にちょっと申し上げておきますが、矯正の統計年報でございますれば、今出ておりますのはまだ五十八年度分でございますので実は昨年の分でございます。それで月報というのはありますが、これは二カ月ないし三カ月おくれで来ますので最新の分しかまだ私も拝見しておりません。九、十あたりが出たかどうか実は私はまだ確認しておらないのでございますので、ちょっとこの場ではお答えできないことをお許しいただきたいと思います。
○中山千夏君 結局月報が出るまで待てというお話だと思うのですけれども、そうすると、つまり個別の方のプライバシーを守るという目的ではなくて、何かほかにあるのじゃないかなという感じがどうしてもするんですね。 それで私は、法務大臣のお仕事は、ほかの諸大臣もとても重い任務だと思いますけれども、その中でも特にやはり大変なお仕事だと思うのです。ですから、法務大臣が死刑に関する任務を果たされるのはとても厳粛で大変なことだと思いますけれども、だから法務大臣が心置きなく任務を、まあ私は余り果たしてほしくないんですが、果たされるように気を使うというのもわかりますけれども、それを考えるのであれば、現場で死刑に実際携わる職員の方たちも非常に大きな負担を受けられると思うんですね。そういう方たちの存在も考えると私はどうしても死刑に反対だという気持ちが起こるわけなんです。だから、そういう何か厳粛なものを厳粛なものとして表立って国民すべてが受けとめることができないという死刑という刑罰の性格について私は非常に疑問を持っているわけなんです。だけれども、時間もありませんからこれは意見だけでとどめておきます。 次に、先ほど飯田委員の方からも質問がありまして、非常に詳細に専門的に聞いてくださったのでほとんどその補足という感じになるんですが、いわゆる帝銀事件の平沢という方がいらっしゃいます。あと半年ぐらいで三十年拘置されている死刑囚ですね。その方は大体どういう生活をしていらっしゃるのかちょっと伺いたいのですが。
○政府委員(石山陽君) 帝銀事件の確定死刑囚であります平沢貞通は現在宮城拘置所で拘禁されておるわけでありますが、何分にも九十二歳になりました。高齢特有の現象もございますので、日常につきましては、死刑囚につきまして特別のいわゆる懲役囚と同じような作業を課すような日課規定というのは厳格なものがございませんので、通常の起床時間それから就寝時間、これを守るほかは原則としては自由にさせて処遇をしておる、これが実情でございます。
○中山千夏君 先ほど筧さんのお話の中で、拘置は執行と「どうひ」であるというお答えがあったと思うんです。私が学がないせいもあるんですけれども、国会へ来ると珍しい言葉が耳に入ってきてよく戸惑うのですけれども、「どうひ」というのはどういう字を書くのですか。
○政府委員(筧榮一君) 私の言い方が不鮮明であったかと思います。同視すべき状態であると申し上げたつもりでございます。
○中山千夏君 それなら知っている言葉なんで安心しました。同じように見るということですね。それは同じであるというふうに解釈する方としては解釈していいんでしょうか。同じことであると。
○政府委員(筧榮一君) 同じであるというのと同視できる状態というのはいささか違うかと思います。
○中山千夏君 だんだん難しくなってきたんですけれども、先ほどそこの議論を拝聴していましたら、どうも私は飯田さんがおっしゃっている解釈の方が普通にすっと入ってくるわけなんですね。拘置するのは死刑が執行されるまでの間拘置するのであるという文章があれば、当然拘置と死刑の執行というのは別物であって、死刑の執行とは執行そのものを指すのだというような気がどうしてもしちゃうわけです。でも法律というのもいろいろ解釈があるということもわかります。だけれども、例えばある一つの法律解釈でやっていきますね。そうすると、結果として非常に一般人にわかりにくい、納得しにくい結果になったり、それから不合理な結果になったりというときには、その法律の解釈の方を変える方が普通じゃないかという気がするんですね。 どうしても、先ほど聞いていました解釈だと、これは法律の専門家がごらんになると納得できることかもしれませんけれども、一般の者から見まして、三十年間も拘置されていた、それでも時効というのは成立しないのだというようなことを言われますと、時効の項目があるにもかかわらず、これはちょっと一般の者には物すごくおかしいなという感じがするんですよ。だから解釈の方を変えれば相当納得できる結果になると思うんですが、解釈変えるとどこかぐあい悪いのですか。
○政府委員(筧榮一君) 確かに法律の解釈について一般的に理解しがたいと思われるような場合に、できるだけ一般人が理解し納得できるような解釈をすべきであるというのは、一般論としてはそのとおりだろうかと思います。 ただ、これは確かに死刑に関連いたします極めて重要な問題でございますので、午前中申し上げましたように、やはり時効制度の本質といいますか、目的から解釈をすべきである、そういたしますと、拘置というのは死刑判決という裁判の執行であるわけでございます。一方時効というのは一定期間刑罰権を行使しないことによって刑罰権を消滅させるという制度でございます。そうすると、今の裁判の執行として拘置しているという状態は狭い意味での死刑の執行行使ということと同一視あるいは同視すべき状態である、刑罰権を行使しないことによって刑罰権を消滅するという時効を考える場合には同視すべき状態であるというふうに解釈をしているわけでございます。
○中山千夏君 それから、ちょっとこれはお伺いしたいんですが、死刑執行の命令は判決確定の日から六カ月以内にしなければならないということになっていますね。ただし、その間、再審請求ですとか恩赦の請願とかが出ている期間は算入しない、ただし算入しないというだけであって、再審請求が出ているからといって死刑を妨げるわけではないというふうに聞いたのですけれども、そうすると、三十年もいる人、あるいは私が調べたところでは皆さん相当長年拘置されているわけですけれども、そういう方たちは算入しないと六カ月以内にならない、なってないわけですか、計算上。
○政府委員(筧榮一君) 今六カ月その他に関します中山委員の御指摘は法文上そのとおりでございます。ただ六カ月というのは、これはあくまで訓示規定というふうに解しておりますので、それを超えたからどうこうということまでの意味は持たないというふうに考えております。
○中山千夏君 そうすると、超えたときに大臣がその任務を果たさなかったからといってどうにか、例えば責任を問われるとか、そういうことはないわけなんですね。 それで、そうすると例えば平沢氏の場合ですけれども、三十年というのは私は期間として相当長いと思うのですね。三十年前、私ごとになりますが私はたった六つでした。それがこのぐらい大きくなるんですから、相当長い期間だったと思うんです。その間、何人も大臣の方がいらしたと思うんですが、さっきお話伺っていたら、いろいろ審査を厳密になさって、その結果として三十年という月日がたってしまった、先ほど筧さんは真犯人であると信じているということをおっしゃっていまして、それはお立場として当然だろうと思うんですが、その信じていることに対して三十年という重みを持った抵抗があるわけですね。そのことについてはどういう感想を持っていらっしゃるのか聞いてみたいと思うんですが。
○政府委員(筧榮一君) 確かに三十年というのは現在までほかに例はございません。その意味では異常な例ということは言えるかもしれません。ただ、午前中申し上げましたように、十七回の再審請求あるいは四回の恩赦上申というようなことを考えますと、やはりその間、その事態の推移を見守り、あるいは慎重に検討するという態度をとり続けてきたことは、それなりに意味があったというふうに考えております。
○中山千夏君 法律の専門家じゃなくて、我々みたいな素人同士でいろいろ話をしていますと、三十年間も長い間再審を開きもせずに、そうかといって行使もせずにずっとほうってある、それはどうも今となってはもう権力は平沢氏が年をとって自然と亡くなって、これはうやむやになるのを待っているのじゃないかという意見が出てくるわけなんです。それはもちろん一生懸命お仕事をやっている方たちにはひどい意見だと思いますけれども、さっきの一般の者、法律に余り詳しくない一般国民の感覚からしますとそういう意見を持っても仕方がないという気が私はするんですね。その三十年の間、やはり司法が本当に真実を追求する努力とか、それから本当の正義を実現する努力とか、そういうものを怠って、何となく責任を先送りにしてきたという感じがするわけです。私は行使をされなかったこと自体についてはそれもだんだん死刑がなくなっていく一つの道だと思いますから大変歓迎はしますけれども、だけれどもやはり異常な事態だと思うんですね。 こういう状態について、例えば新しく任におつきになってまだ間がないと思いますけれども、大臣はどういうお考えをお持ちでしょうか。
○国務大臣(嶋崎均君) 平沢さんの件につきましては、先ほど来説明がありましたように、ともかく十七回再審請求が出ておりまして、今十七回目を審理をしておる、それから恩赦につきましても四回出ておりまして、三回までは一応の決着はついておりまして、四回目が現在かかっておる、こういう状態になっておるわけでございます。これは私も過去の長いこの問題についての経過というのは十二分には承知をしておりませんけれども、やはり三十年というのは長いなという感じを持っておることは事実であります。事実でありますけれども、現在の状態を考えてみますと、すなわち先ほど申しましたように再審が十七回目審理中である、また恩赦につきましても四回目が論議をされているという状態を考えますと、やっぱりここのところその答えが出るまで冷静に見守っていかなければ仕方がないのじゃないかというような気持ちを現在持っておる次第でございます。
○中山千夏君 時間が来ましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。
○委員長(大川清幸君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認めます。 両案の修正について柳澤君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。柳澤君。
○柳澤錬造君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。 その内容はお手元に配付されております案文のとおりでございます。 これよりその趣旨について御説明申し上げます。 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案に関し、提案理由及び内容の概要を御説明いたします。 言うまでもなく人事院勧告制度は労働基本権制約の代償措置として設けられたものであり、毎年四月時点における官民給与格差を是正させるためのものであります。ところが、国家公務員の給与はここ三年の間改定の延期、改定の見送り、勧告の一部実施という措置が繰り返されてまいりました。これらは法治国家において政府みずからが確立した制度を政府みずからがじゅうりんするものであり、極めて不当な措置であると言わなければなりません。 しかるに、政府は本年度においてもまた人事院より勧告された給与改定率六・四四%を大きく下回る内容の改正案を国会に提出してまいりました。政府原案は公務員の士気の低下を招来し、健全な労使関係を損なうばかりでなく、人事院勧告制度そのものの崩壊につながるものであり、我々はこのような提案を断じて容認することはできません。政府は人事院勧告制度を守り、すべての国家公務員の給与について勧告の早期完全実施を行うべきであります。 この見地から、本修正案は裁判官及び検察官の給与について人事院勧告どおりに完全実施する内容といたしており、本修正に要する経費は約三十億円と見込んでおります。 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
○委員長(大川清幸君) ただいまの柳澤君提出の両修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から両修正案に対する意見を聴取いたします。嶋崎法務大臣。
○国務大臣(嶋崎均君) ただいまの両修正案につきましては、政府といたしましては反対であります。
○委員長(大川清幸君) それでは、両修正案について質疑のある方は御発言願います。――御発言もないようですから、これより両案の原案並びに両修正案について討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○寺田熊雄君 私は、日本社会党を代表して、原案に反対、修正案に賛成の立場から討論をいたします。 裁判官及び検察官の報酬、俸給に関する法律の改正案は、言うまでもなく内閣総理大臣その他の特別職の職員に関する俸給の増額に準じて定められたものであります。また、裁判官一般の報酬、検察官一般の俸給の増額を規定いたしておりますものも、これに相応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受けて、この増額を規定するものであります。しかるに、その根拠となりました、基盤となりました一般職の職員の給与の増額に関する法律案の内容は人事院の勧告を完全に実施するものでないことは申すまでもございません。 人事院の勧告制度は、御承知のように憲法二十八条によって公務員に対しても保障せられております団体行動権、なかんずく争議権を剥奪いたしました代償として与えられたものであります。したがって、この制度は憲法二十八条にその淵源を持っておるものでありますがゆえに、憲法上の要請に基づくとさえも言い得るのであります。したがって、政府はもちろん憲法第九十九条に基づいて憲法遵守義務をも有する観点からいたしますと、この人事院勧告制度はいやが上にも尊重することを要するのであります。しかるに、政府は財政難にかこつけて従来五十七年度、五十八年度におきましてもその実施を怠ったのであります。今年度もまた三たびその完全実施を怠っておるのでありまして、我々は憲法上の要請からいたしましても、これを是認することができません。 なかんずく政府がこのような憲法無視の措置をあえてするゆえんのものを尋ねてみますと、第二臨調を支配する財界の、公務員は民間の労働者に比べて優遇され過ぎておる、できるだけ公務員の給与、退職金等はこれを削るべし、そして財政支出をできるだけ減少させ小さな政府であるべきであるというような財界の哲学がその根底にあるようであります。 しかし、このように公務員給与を削ることは同時に民間労働者の給与も低めることにつながるのでありまして、結局いわゆる低賃金政策の実現にほかなりません。それは国民大衆の購買意欲を減少せしめ、不況の原因ともなるのであります。できるだけ労働者の生活を切り詰めて、しかもなおかつ景気を招来せしめようとする相矛盾したこの財界の哲学を我々はまずもって弾劾しなければなりません。 以上、憲法上の要請よりするも、誤てる財界の哲学の支配を排除する必要からいたしましても、我々は原案に強く反対せざるを得ないのであります。財政上の困難を負うにいたしましても、我々からいたしますと、今の防衛費のごとく、アメリカの要請に屈して米ソ戦った場合に日本がその戦争に巻き込まれるような軍備を拡大するような必要は毫も存在しないのであります。それはむしろ国家を危うくするゆえんのものであります。 以上、さまざまな考慮からいたしまして、私どもは原案に反対し、人事院勧告の完全実施をこの裁判官並びに検察官の給与にも実現せんとする民社党の修正案には賛成いたす次第であります。 以上で討論を終わります。
○小島静馬君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案両法案について賛成、柳澤委員提出の両修正案について反対の討論を行います。 右両法案は一般の政府職員の例に準じてその給与を改善する措置を講ずるものであって、財政事情その他を考慮し、現時点においては適切なものと考えます。よって、両法案に賛成、両修正案に反対をいたします。 以上でございます。
○飯田忠雄君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました法律案の原案に反対、修正案に賛成の討論をいたします。 労働争議権を制限されております国家公務員の給与につきましては人事院勧告を重視するのが正しいと判断されます。次に、裁判官の報酬は憲法によりますと定期に相当額を支給することになっております。相当額につきまして、これをどのように考えるかという点につきましては、現在の段階では人事院勧告の額を相当額と認めるのが正しいと考える次第でございます。 右の二つの立場から、改正法案の内容は不十分なものと判断されるのであります。よって、公明党・国民会議は原案に反対、修正案に賛成をいたす次第であります。 終わります。
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、原案に反対、民社党提出の修正案に賛成の討論を行います。 我が党は、この議題となっております二法を含め、今回の給与関係法案に反対でありますが、その理由は人事院の給与改善勧告を一昨年は凍結、昨年は切り下げ、本年は値切りと、三年連続して公務員の給与の引き上げをストップないしは低水準に抑えるものだからであります。 言うまでもなく、人事院勧告制度は公務員労働者から労働基本権を奪ったかわりにその代償措置として設けられた制度であり、そのこと自体一つのごまかしの要因ともなりかねませんけれども、それすら尊重しないというのは憲法が定める労働基本権保障を真っ向から踏みにじるものと言うほかはありません。中曽根内閣は、軍事費は大いにふやすけれども国民生活は圧迫するという諸政策を進めていると言わざるを得ませんが、この公務員の給与問題もこれまたそういう立場のものであり、賛成することはできません。 特に裁判官については、裁判の独立を物質的に保障するためにその報酬は在任中減額することはできないこととなっておりますが、このような三年連続の昇給抑制は実質的には報酬の減額を招くおそれなしとしないものであります。 以上の理由で、人勧の完全実施を求める立場から我が党は原案に反対するものであります。 次に、修正案については、それが人勧完全実施の立場をとるものである点で賛成いたします。ただし、我が党がかねてから主張しております給与体系の上に厚く下に薄い点の改善が織り込まれていない点が不十分であることは指摘をさしていただきたいと思います。 以上であります。
○中山千夏君 私は、原案に反対、修正案に賛成の立場から討論いたします。 過去三年に次ぐ政府の人事院勧告無視は人事院の独立性を著しく損ない、その勧告の公正さを否定するものです。私は、その独立性と公正さに対する信頼こそが労働権を制限されている公務員のみならず快適な行政サービスを必要とする国民にとっての人事院の存在価値だと考えます。政府提案は人事院の存在価値をなくすものです。ある機関の存在価値をなくすことは、なくてもよい機関を増設するのと同じで、真の行政改革に逆行することでもあり、血税のむだ遣いです。 よって、私は政府提案の二改正案に断然反対し、人事院勧告の完全実施を目指す修正案に賛成いたします。
○委員長(大川清幸君) ほかに御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大川清幸君) 異議ないと認めます。 それでは、これより裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決に入ります。 まず、柳澤君提出の修正案の採決を行います。 本修正案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(大川清幸君) 少数と認めます。よって、柳澤君提出の修正案は否決されました。 それでは、次に原案全部の採決を行います。 本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(大川清幸君) 挙手多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 次に、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。 まず、柳澤君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(大川清幸君) 少数と認めます。よって、柳澤君提出の修正案は否決されました。 それでは、次に原案全部の採決を行います。 本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(大川清幸君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大川清幸君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(大川清幸君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。 検察及び裁判の運営等に関する調査のため、自然休会中に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認めます。 つきましては、派遣委員、派遣地、派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十九分散会