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102回国会衆議院1985/03/08

予算委員会第二分科会 第2号

発言数
641
登壇者
67
会派数
6
開催日
1985/03/08

会議録

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和六十年度一般会計予算、昭和六十年度特別会計予算及び昭和六十年度政府関係機関予算中外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。安倍外務大臣。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 昭和六十年度外務省所管一般会計予算案の概要について御説明申し上げます。  外務省予算の総額は、四千十億七千百五万円であり、これを昭和五十九年度予算と比較いたしますと、二百二十四億七百二十三万一千円の増加であり、五・九%の伸びとなっております。  我が国を取り巻く国際情勢は一段と厳しく、外交の役割はいよいよ重大であります。近年国際社会における地位が著しく向上した我が国が、世界の中の日本として、各国からの期待にこたえてその地位にふさわしい国際的役割を果たし、積極的な外交を展開していくためには、外交実施体制を一層整備強化する必要があります。  この観点から、昭和六十年度においては定員、機構の拡充強化、在外公館勤務環境の整備、情報機能の強化等に格別の配慮を加えました。  特に外交強化のための人員の充実は、外務省にとっての最重要事項の一つでありますが、昭和六十年度においては、定員八十八名の純増を得て、合計三千八百八十六名に増強されることになります。  また、機構面では、本省においては中近東アフリカ局担当官房審議官を設置し、在外においては中国の瀋陽に総領事館を開設することが予定されております。  次に、経済協力関係の予算について申し上げます。  経済協力は、平和国家であり、自由世界第二位の経済力を有する我が国が世界の平和と安定に寄与するための主要な手段の一つであります。中でも、政府開発援助、ODAの果たす役割はますます重要となっており、政府は中期目標のもとに、その計画的拡充に努めてきております。そのような努力の一環として、昭和六十年度ODA一般会計予算については、厳しい財政事情にもかかわらず、政府全体で対前年度比一〇・〇%増とする特段の配慮を払いました。  このうち外務省予算においては、無償資金協力予算を前年度比八十五億円増の一千百五十億円としたほか、技術協力予算の拡充に努め、なかんずく国際協力事業団事業費を前年度比七・五%増の八百八十六億円とする等格別の配慮を払った次第であります。  また、各国との相互理解の一層の増進を図るための文化・人的交流予算についても、一層の手当てを講じております。  このほか、海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事の一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校二校の増設を図る等の配慮をしております。  以上が外務省関係予算の概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、詳細につきましてはお手元に「国会に対する予算説明」なる印刷物を配付させていただきましたので、主査におかれまして、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げる次第であります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 この際、お諮りいたします。  ただいま安倍外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔参照〕    外務省所管昭和六十年度予算案の説明  外務省所管の昭和六十年度予算案について大要をご説明いたします。  予算総額は四千十億七千百五万円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費二千八百八十六億五千百十一万円、エネルギー対策費二十六億三千二百五十一万九千円、その他の事項経費一千九十七億八千七百四十二万一千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省三千二百九十四億三千五百二十六万二千円在外公館七百十六億三千五百七十八万八千円であります。  只今その内容についてご説明いたします。    (組織)外務本省  第一 外務本省一般行政に必要な経費百九十五億四千四百六十八万八千円は「外務省設置法」に基づく所掌事務のうち本省内部部局及び外務省研修所において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一、六二〇名の人件費及び事務費等、並びに審議会の運営経費であります。  第二 外交運営の充実に必要な経費二十一億三千三百三十万四千円は諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種の条約協定を締結する必要がありますが、これらの交渉をわが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費五十四億百十二万七千円は国際情勢に関する国内啓発、海外に対する本邦事情の紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金二十八億四千六百九十四万二千円及び啓発宣伝事業等委託費五億七千百七十五万二千円等であります。  第四 海外渡航関係事務処理に必要な経費五十億九千八百九十八万九千円は旅券法に基づき、旅券の発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費二十五億二百四十三万五千円であります。  第五 諸外国に関する外交政策の樹立等に必要な経費三十二億七千八百三十三万八千円はアジア、北米、中南米、欧州、大洋州、中近東、アフリカ諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整を行うため必要な経費と財団法人交流協会補助金十億七千八百三十五万九千円、財団法人日本国際問題研究所補助金二億八百七十万六千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金四千七十二万一千円及び日中友好施設建設費等補助金八億七千二十二万九千円並びにインドシナ難民救援業務委託費七億五百十万四千円であります。  第六 国際経済情勢の調査及び通商交渉の準備等に必要な経費八千七百五十八万八千円は国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を適確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第七 国際科学技術博覧会接遇等に必要な経費一億四千二百七十五万九千円は国際科学技術博覧会参加国の来日元首等政府賓客の接遇等に必要な経費であります。  第八 条約締結及び条約集の編集等に必要な経費五千三百二十二万八千円は国際条約の締結及び加入に関する事務処理並びに条約集の編集及び先例法規等の調査研究に必要な事務費であります。  第九 国際協力に必要な経費十三億二千九百二十二万一千円は国際連合等各国際機関との連絡、その活動の調査研究等に必要な経費及び各種の国際会議に我が国の代表を派遣し、また、本邦で国際会議を開催するため必要な経費と財団法人日本国際連合協会等補助金三千九百一万二千円であります。  第十 経済技術協力に必要な経費二十一億二百二十万三千円は海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施の総合調整並びに技術協力事業に要する経費の地方公共団体等に対する補助金十一億三千七百八十二万八千円等であります。  第十一 経済開発等の援助に必要な経費一千百五十億三千六百十五万二千円は発展途上国の経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助等に必要な経費であります。  第十二 経済協力に係る国際分担金等の支払に必要な経費八百二十九億一千七百三十三万一千円は我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十三 国際原子力機関分担金等の支払に必要な経費二十六億三千二百五十一万九千円は我が国が加盟している国際原子力機関に支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十四 国際分担金等の支払に必要な経費十億八千二百三十九万一千円は我が国が加盟している各種国際分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十五 国際協力事業団交付金に必要な経費八百四十二億七千百四十二万四千円は国際協力事業団の行う技術協力事業、青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。  第十六 国際協力事業団出資に必要な経費四十三億二千四百万円は国際協力事業団の行う開発投融資事業及び移住投融資事業に要する資金等に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。    (組織)在外公館  第一 在外公館事務運営等に必要な経費五百八十一億八千七十一万三千円は既設公館百六十三館五代表部と六十年度中に新設予定の在瀋陽総領事館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館の職員の増加、合計二、二六六名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営の充実に必要な経費六十二億四千五百二十二万八千円は諸外国との外交交渉の我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費三十三億九千五百四十三万四千円は我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流の推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。  第四 自由貿易体制の維持強化に必要な経費四億七千九百八十五万三千円は自由貿易体制の維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動を実施する等のため必要な経費であります。  第五 在外公館施設整備に必要な経費三十三億三千四百五十六万円は在米大使館事務所新営工事(第二期工事)、在サウディ・アラビア大使館宿舎新営工事(第三期工事)、在韓国大使館事務所増改築(第二期工事)等の建設費、その他関連経費であります。  以上が只今上程されております外務省所管昭和六十年度予算の大要であります。  慎重御審議のほどをお願い申し上げます。     ―――――――――――――

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 私は、せんだっての予算委員会で、日米共同作戦計画についていろいろな観点から質問をいたしました。とりわけ外務大臣には、その概要、中身についての説明を受けたのはことしであるというお答えをいただいたわけであります。さらに北米局長は、署名前から説明はあったが最終的な説明は署名後であった、こういうお答えがあったわけです。  そこで、北米局長に、最終的な説明が署名後であったということについて、外務省の北米局長としての責任がそれで十分果たせるものかどうか、さらには、大臣に年を越えて説明をするということがあなたの職責としてそれが忠実であるのかどうか、まずこの点から聞いていきましょう。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 本件につきましては、予算委員会で御答弁申し上げましたとおりに、事柄の性質上安保条約の運用と密接にかかわる問題でございますし、およそ国の防衛政策と外交政策の間に乖離、そごがあってはならないという見地から、外務省としては、共同作戦計画の内容につきましては必要に応じ十分の説明を防衛当局より受ける立場にある、防衛当局におかれましても同様の認識で外務省に対して説明をする、こういうことでございまして、事前に防衛当局と米軍との間の署名に先立ってある程度の説明を受けまして、また事柄につきましては事務当局と大臣の間で十分に御相談をいたしまして、そうして説明を受けた次第でございます。  委員御指摘のとおり、最終的な説明は署名後ということになりまして、その結果につきまして署名後に事務当局より大臣に御報告申し上げた次第でございますが、冒頭申し上げました外務省の立場からの説明の聴取ということにつきましては、そのような過程におきまして十分に行われたというのが私どもの認識でございます。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 署名前に十分な話し合いをあなた方は受けたと認識しているのですか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 計画の内容そのものの詳細につきまして、必ずしも署名前の段階において説明を下したということではございません。しかしながら、事柄の基本的な性格等につきましては、従来より防衛当局と外務省の間に基本的な認識については相違がございませんので、その枠の中で行われた研究であるというのが私どもの認識でもございます。したがいまして、最終的な説明というものが署名後に行われたということによりまして、特に基本的な点について問題があるというふうには私ども認識しておりません。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 SDCの構成メンバーにもあなたは入っているんですよ。それが十分な協議も説明も受けずに、今の答弁では防衛庁の専行というか、そういうものに対して外務省の強いメンバーであるあなたに十分な説明をしなかったことについては、あなたはもっと強い怒りを持って当然だと私は思うのですよ。基本的な認識がどうだとかこうだとか、それは効果的な運用を指して言われていると思うのですよ。しかし、この共同作戦計画については外務省は置き去りにされている。私は前回の予算委員会でも、戦前軍部の独走に対して手も足も出なかった、同じようなことが起きているというのが私の認識なんですよ。しっかりしなさい、あなた方。それで日本の外交を真剣に責任を持ってやっていることになるのか。特に、大臣に年を越してしかすべてを報告できない。むしろ署名前に大臣に報告をして大臣も了解をする、そういうことでないと日本の外交はやっていけないと私は思うのです。これは北米局長の大変な責任がそこにあると私は思うのです。あなたは責任を感じないのですか、今回のこういう手順で。当然だと思っているのですか。そういう認識で日本の外交をやっていくのですか。  これはまた改めて、総理が外務大臣にどのような手順を踏んだか、私はそのことも総理には直接聞きます。しかし、いわゆるSDCの直接の構成メンバーである北米局長が、事前に十分――基本的な認識は防衛庁と外務省は変わらないのだと言うが、それはそれとしても、この作戦計画の詳細について事前に報告を受けない、相談にあずからない、なおかつ大臣にも署名後でないとすべてを報告しない、そんなことでは北米局長の責任は果たされていない、僕はそう思っているのですよ。そこが外務省のひ弱さというのか、まあまあというのか。こんなことは戦前私たちの先輩が強く戒めてきたことであり、いつか来た道をまた突っ走ろうとする防衛庁の独走を許すことはできぬ。あなたは言いわけは要らぬから、率直に私が今指摘したこの気持ちが理解できるのか、強くあなたの胸に聞いてみなさい。それで私は、特に北米局長は十分な仕事を果たしたことになっていないということ、そのことにも返事がない。あなたは果たしたと思っているのですか、果たしたと思っているなら、あなたは本当に外務省の局長としては適任であるのかどうか疑わざるを得ないのですよ。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 外務省として十分防衛庁から協議、連絡にあずかるべきであるという委員の御指摘はまことにごもっともでございまして、私ども外務省の事務当局といたしましても、おっしゃられるような立場から大臣を補佐申し上げ、防衛庁に対してもそのような外務省の認識、立場というものは十分申し伝えておるというつもりでございます。  防衛当局と米軍との間に行われました署名前後の問題につきましては、委員御指摘の点もあろうかと思いますが、私どもといたしましては、基本的に、日本の外交政策あるいは対米外交という観点から、防衛庁が非常にぐあいの悪いことをしておるとか独走しておるとかいうことではないという認識でございますので、先ほど申し上げましたようなことで事前にいろいろ話は聞いておりましたが、最終的な説明、事務当局から外務大臣への御報告につきましては署名後になったということでございますので、先ほどの繰り返しになりますが、そのこと自体によって日本の外交あるいは防衛政策と外交との関連につきまして、事柄の性質上、問題が生じ得るというようなことはなかろうと判断しておる次第でございます。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 日米防衛協力小委員会、SDCの構成メンバーであり、安保条約の運用面を担当しているというのですか、効果的運用の面から、基本的には防衛庁と認識は同じだということについては一定の理解を私も持つわけですが、北米局長が署名前にすべてを承知しないということは外務省が置き去りにされたことである。さらには、署名後大臣にすべての詳細について報告をする、そういうことについても、あなたがいかに苦しい答弁をされようとも、答弁は繕った答弁だと私は思っております。  私の指摘をしていることについては恐らくあなたも十分反省をしていらっしゃるだろうし、あるいは私と同じような意見に立って、防衛庁に対する強い考えを持っていらっしゃるかもわからぬ。しかし、十分防衛庁に強く意見を具申できなかった、そういうことについては、やはり今後いずれかの機会に――これは私は、この問題についてはずっとあなたに責任があると思いますよ、ポジションがかわろうとも。だからあなたは、日本の将来に、外交史上に一つの汚点を残すことになると私は思うのですよ。きっちりされた方がいいと思う。  もう一点、日米共同作戦計画、私はその正式なタイトル、表題というものを大臣にお聞きしたら、おぼろげながらというのでしょうか、そのタイトルのフルネームは何だと言えば、日米共同作戦計画だ、こう答えられた。私はそうじゃないと言っている。日米共同作戦計画と便宜上そう言っているだけだ、私はこう思っているのですけれども、北米局長、日米共同作戦計画、大臣が答えられたとおりでよろしいのでしょうか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 私どもは、現実に、最終的に防衛当局と米軍の間に署名をされました文書にいかなる題、タイトルが付されておるかということについては承知しておりません。  その正式の題名云々という御質問でございますが、私どもといたしましては、研究の主題は、まさに委員御指摘のように共同作戦計画、委員御承知の防衛計画のガイドラインに出ております共同作戦計画、英語で申し上げますと、ジョイント・ディフェンス・プラニングということでございまして、そういうものとして説明を受けたということでございます。最終的に署名された文書にいかなる題名が付されているかということについては、私ども見ておりませんので承知しておりません。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 そうでしょう、あなた。正式な表題は承知してない、これは大変なことなんですよ。正式な表題を承知しないで、私がさっきからあなた責任は果たしていますかと言ったら、何やらわけのわからぬ答弁をして苦しい逃げ方をしているわけなんです。正式なタイトルもわからずに、あなた、大臣に何と言ったのですか。何と説明したのですか。国会では日米共同作戦と、私はそうじゃないと言っている。あなた方は隠してはだめだ。なぜ正式なタイトルをあなたは防衛庁から聞かないのですか。SDCの構成メンバーであるあなたは聞く義務があるのですよ。なぜ聞かないのですか。これは大変なことだ。  それでは、日米共同作戦計画というのは、だれがつけてどこからこの言葉が出てきたのか。私は、正式表題を承知しない外務省、繰り返すようですが、まさに戦前の手も足も出なかった外務省のひ弱さ、非常に情けない今日の外務省の状況を憂えます。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 最終的に署名されました文書につきましては、表題を含めまして全体が秘になっておって、公表できないということを防衛庁から説明を受けております。したがいまして、私どもといたしまして、この場で、文書の表題について、どういう題が付されておるかということにつきまして委員に御答弁申し上げる立場にございません。  ただ、繰り返して申し上げますが、私どもは防衛当局と米軍との間に行われました研究自体につきまして十分な説明を受けておりまして、委員は正式の題は違うのじゃないかということをおっしゃるわけでございますが、私は、どうもちょっとその点は、どういう趣旨で御質問をされているか必ずしも理解いたしませんけれども、研究の主題はあくまでもガイドラインに明記されております共同作戦計画でございますので、現実に署名された文書がどういうタイトルになっておるかということにつきまして、どういう意味があるのか委員の御質問の趣旨理解いたしませんが、私どもとしては最終的に署名された文書自体は見ておりませんので、どういう題が付されているかということは見なかったということを正直に御答弁申し上げた次第でございます。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 その文書は協定なんですか、それとも取り決めなんですか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 これは明確に申し上げておきますが、協定でも条約でもございませんし、いかなる意味におきましても、国と国との間、あるいはさらに防衛当局間におきましても法律的な拘束力が生ずる性質の文書ではないというふうに説明を受けておりますし、また、その説明の内容から見ましても、当然そういう性質のものであろうというふうに私ども判断をしております。防衛当局も同様の判断だろうと存じております。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 当然、正式表題を承知してない、教えてもらってないのだから、英文のフルネームもあなたはわからないのですね。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 英文のフルネームにつきましても、最終的に署名されました文書につきましては承知しておりません。また、申し上げられる立場にないということは先ほども申し上げたことの理由によるものでございます。  ただ、先ほどもちょっと申し上げましたが、主題といたしましては、まさにガイドラインにありますように、英語ではジョイント・ディフェンス・プランニング、こういうことであろうと思います。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 正式な原文を承知せずに、大臣にあなたは報告をされたのですか。説明をされたのですか。大臣にはどういう形で説明をしたのですか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 私、事務当局から大臣への御説明は、防衛庁から説明を受けましたタイトルに基づきまして大臣に御説明を申し上げました。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 防衛庁から説明を受けたタイトルは、さっきから言われているジョイント・ディフェンス・プランニング、そういう形で防衛庁から受けたのですか。これは非常に幅が広いのですよ。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 具体的に防衛庁から説明を受けましたタイトルと申しますか、そういうものにつきましては、この委員会の場で外務省より御答弁を申し上げることはできないので御容赦願いたいと思います。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 どこかで言わなければいけないんですよ。正式のタイトルは承知しない、知らない。これは中身についても要旨だけは出すということになったそうですが、しかし正式なタイトルが出なければ、これはあなた、要旨を出したって、概要を出したって、これはどういうふうにタイトルをつけるのですか。だから、私は、承知していないものを今ここで言いなさいとは言わないけれども、防衛庁から聞いた、あなたの方が説明を受けたタイトルはここで話をしてもいいんじゃないか、答えてもいいんじゃないか、私はそう思っておるのです、それは正式でないとしても。正式な表題ではない、しかし防衛庁から説明を受けたその表題にかわるものは、委員会で、国会の中で明らかにしたって、何が都合が悪いのですか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 ただいまの御質問、大変恐縮でございますが、むしろ防衛当局の方にお尋ねいただいた方がよろしいんじゃないかというふうに存じますけれども、いずれにいたしましても、私どもといたしまして、防衛庁から受けました説明の内容につきまして、その文書の表題も含めて申し上げられる立場にございませんので、その点はぜひとも御理解をいただきたいと思います。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 何を言っているんですか。私は防衛庁に聞いておるんじゃないのですよ。防衛庁には防衛庁にまた聞きます。外務省に、SDCのメンバーであるあなたに聞いているんですよ。あなたは仕事を、十分責任を果たしたことにならぬよ。それを言えないというのはおかしい。  これは委員長、こんな答弁、時間協力してくださいという委員長の冒頭のなにだけれども、これは私は到底納得はできないし、こんなことは許せないよ。あなたが防衛庁から聞いた、説明を受けたタイトルを話しなさいと言ったって、できない、防衛庁から聞いてくださいなんて、何を言っておるのか。外務省は言えないのかね。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 私の御答弁が若干舌足らずだったかもしれませんが、これは政府全体として文書の内容については公表できないという立場でございますので、そういう観点から先ほど御答弁申し上げた次第でございまして、外務省といたしまして、防衛庁より説明を受けた紙の内容は、そのタイトルを含めて申し上げるわけにはまいらない、こういうことでございます。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 北米局長、いろいろ外務省の中でそれぞれのポジションでみんなが頑張っていらっしゃる。しかし、とりわけ日米共同作戦計画、この問題についての北米局長の責任は重大である。心してあなたはこの問題を受けとめなさい。いずれ機会を見て私はこの問題を続けてやります。  次に、経済協力について若干尋ねておきたいと思うのです。時間が余りありませんので、私の方から質問を何項目かいたします。  今日までの経済協力について当局はどういう評価をしているのか。さらに、エチオピアにおける井戸掘りの経済協力について、アメリカからその計画に横やりが入ったと報じられているわけでありますけれども、これは昨年外務大臣がエチオピアを訪問されて、向こうのメンギスツ元首との会談で約束をしたことでもありますし、このことについて、我が国はどのように対応していくのか。ウォロ州のバチに一本掘るわけなんです。これは完成したのですか。これは、結果としては十分な役割が果たせないようなことになるのではないか。ということは、キャンプが閉鎖をされる、そういうことになると、せっかくの援助した井戸が効果を発揮しない、こういうことですね。このことについて、エチオピアに対する飢餓住民救援の井戸掘り、飲料水用の井戸ですね、この支援をどのようにしていくのか。  それからもう一つ、対フィリピンに対する経済援助の問題でありますけれども、昨年も強く、商品借款についてはこれは本当の援助にはならないということを私は再三指摘をしてきました。報じられるところによると、ことしも商品借款が含まれた円借款のいわゆる経済援助要請がフィリピン側からあった、こういうことであります。事実なのかどうか。あるいはそういう計画を持っているのかどうか。予算委員会でも言ったように、昨年の商品借款が三分の一も消化されていないというような状況であり、今日のフィリピンの政情、経済情勢も含めて非常に不安定である。そういう中で、フィリピンの経済援助が、本当に相手国の民生安定、福祉向上につながっていくのかどうか。このことについても全く方向が狂ってしまうのではないか。引き続いての商品借款も予定されているのかどうか。そういう点についてひとつ説明いただきたい、こう思います。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 第一点の総合的な評価でございますけれども、我が国の経済協力は、総合的に見ますと、所期の目的に沿いましてそれぞれ適正かつ効果的、効率的に活用され、相手国国民から高い評価を受けていると考えております。  ただし、先生御承知のとおり、私ども、適正な援助の実施のために詳細な評価活動を続けておりますが、その際に、問題点として挙げます場合には一応三点挙げられるかと思います。一つは、事前に十分な調査を行うことが非常に必要だ。十分な調査を行わなかった場合には問題例が起こるということと、第二番目は、相手国側の政府の予算の手当てと申しますか、そういう相手側の対応ぶりというのは十分踏まえて対応していかなければいけないということと、三番目は、資金協力と技術協力がきちんと結びついていないとなかなか有効な援助にならない、この三点が一応今までの評価活動を通じての教訓かと思われます。  第二のエチオピアの点でございますが、おっしゃいましたように、昨年の十一月、安倍外務大臣が御訪問の際、先方との間で合意を見まして、十二月に直ちに事前調査団を派遣いたしまして、先方政府と協議するとともに事前調査を行ってまいりました。その結果、恐らく今明日かと思いますが、現地におきまして、エチオピアの北部の、今先生の御指摘になりましたバチキャンプを含みますウォロ州南部及びショア州北部の干ばつ被災地に対する井戸掘りの実施を行うということで、先方側の政府と合意に達することになるかと思われます。その際、一部通信社報道に見られましたようなアメリカの申し入れ云々ということは、事実としては一切ございません。  それから、第三番目のフィリピンとの関係でございますが、五十九年度と申しますか、第十三次の円借款の要望というのはフィリピン側から参っております。その内容につきましては、これからの交渉内容にわたりますので詳細申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、商品借款の要請もあるかという御質問につきましては、商品借款も、現下の国際収支の困難にかんがみ協力してもらいたいという要請が含まれております。  以上でございます。

井上一成日本社会党・護憲共同

○井上(一)分科員 私は、フィリピンの経済援助、とりわけ商品借款についてはすべきではない、十分な対応、正しい対応を強く要望して、質問を終えます。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて井上一成君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷昭雄君。

細谷昭雄日本社会党・護憲共同

○細谷(昭)分科員 どうも、おはようございます。  私は、主として日本とヨーロッパの学術文化交流について二つの点で外務省にお尋ねをしながら、私自身のささやかな提案でございますけれども、御提案を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  その一つは、現在、ヨーロッパ各国の青年の中に、日本に対する関心が非常に高まっておるというふうに言われておるわけであります。私の友人でも具体的にそのことについて触れて特にこの点を心配しておる方々が多いわけでございまして、その方々にかわって、私はこの席をおかりして訴えたいと思うわけであります。  例えばフランス、ベルギー、オランダ、これらの国々について特に顕著だと言われておりますが、日本人並びに日本に対する関心、この点で私はそういうふうに聞いておりますけれども、外務省から、そういう点の最近の状況についてお知らせ願いたいと思います。

波多野敬雄外務省大臣官房外務報道官

○波多野政府委員 ただいま御指摘がありますように、欧州諸国におきまして対日関心の高まりは最近著しいものがございまして、御指摘のフランス、ベルギー等におきましては日本語の学習熱も極めて高まっております。我が方といたしましてもできる限りの協力をこれにいたしていきたいと考えております。

細谷昭雄日本社会党・護憲共同

○細谷(昭)分科員 例えばフランスの場合でありますけれども、パリ大学の第三大学、旧東洋語学校だそうでありますけれども、最近、入学者が千名を超えるまでになった、こういうふうに言われておるわけであります。これは考えてみますと、フランス人というのは大変に保守的な民族でございまして、ヨーロッパの各国に対しても優越感を持っておりますし、まして東洋、日本に対するこれまでのべっ視といいますか、自分よりも一段下だというふうな考え方を持っておった、そういう民族の傾向があったそうでございますが、これはやはり異常なほど日本に対する関心が強まっているというふうな証左と見られるわけでございます。  ところが、このパリ大学第三に一千名ほどの入学者があるにもかかわらず、これはフランスの国立大学そのものが制度的に日本と大変に違うということもあるそうでありますが、教授陣がたった八名だというふうに言われております。そして、卒業は一体どれくらいするのかといいますと、十名程度だと言われております。一千名も入学して卒業生が十名。これは何を物語るかといいますと、中途退学者がかなり多いということでございます。ほとんど中途退学だということでございます。  この原因をさまざま考えてみますと、青年諸君の求めておるものは現代の日本、政治、経済、社方という躍動する現代の日本であり、経済国日本に生きておるたくましい日本人ということ、そしてその高度な科学技術について学びたいという欲求があると言われております。確かにパリ大学第三というのは旧東洋語学校でございますので日本語が主だと思いますが、入ってくる人の関心はそういうふうに躍動する現代の日本ということでございますのに、教授陣は相変わらず日本語並びに日本文学、広い意味で教養のある方々だそうで、芸術論という程度までしかいかないということだそうでございます。したがって、求めておるものと与えるものが全く食い違いますので若者は中途退学が多くなってしまうということでございまして、日本の立場からしますとまことに惜しいということであります。  したがいまして、二十一世紀を目指す日本の現状からしますと、このような実態をどう埋め合わせていけばいいのか、その点について私は大変心配をしておるわけであります。多くのそちらの方に行っておられる方々もそのことを異口同音に言っておりまして、二十一世紀の日本を求めておるのに対して、いまだに十九世紀の初めのころのような日本文学と歌舞伎と浮世絵の日本しか与えておらない。これをどう埋めるかということが今回の私の主題でございます。  したがって、私が外務省にお願いしたいことは、文部省とも協力をしながら、フランスなどの青年の要望にこたえるべく、例えばパリ大学の意向を十分伺いながら、日本の若い社会学者といいますか社会科学の立場に立った若い研究者、学者を半年でも一年でも結構ですが、二人ぐらいずつ交換教授みたいな形で送り、現代の日本を十分向こうの学生に伝える、そういう教授の交換といいますか派遣をお考え願えないのか。六十年度の文化交流、学術交流という予算の中で実現できないものかどうか。このことを検討していただきたいと思うわけでございますが、御所見をお伺いしたいと思うわけです。

波多野敬雄外務省大臣官房外務報道官

○波多野政府委員 最初に、御指摘がございました日本のイメージ、日本が欧州に何を売り込むべきか、どういうイメージを与えるべきかという問題、これは基本的な問題だと考えます。外務省もこのことに強い問題意識を持っておりまして、昨年の十一月に、経団連の山下副会長を団長といたしますミッションを欧州に派遣いたしましてこの点について調査いただきまして、実はちょうど昨日、その報告書を安倍大臣に提出願ったところでございます。  そこで、問題になっております最大の点といたしましては、従来日本はややもすると古典的、伝統的な日本を欧州に対して売り込みがちであったけれども、ただいま先生御指摘のように、日本としては現在求められているものは現代の日本であって、昔の日本ではないのじゃないだろうかというのが一つの問題点として指摘されております。この点につきましては、我々も同様な感じを持つ向きもございますので、慎重に検討させていただきたいと思います。  ただし、現代を売り込んで昔の日本は一切忘れてしまっていいというものでもありませんで、歌舞伎にしろ、昨年、一昨年欧州で行いました大江戸展はむしろ大変な活況を呈しておりますので、こういうものも続けていきたい、しかし現代と隔離してやるのではなくて、現代とつながっているのだという現代との接点をあわせてPRしなければならないと思っております。  次に、パリ大学第三大学の日本語研究体制でございますけれども、学生数が千五百六十名おります。これは昭和三十五年には四十四名しかいなかった。昭和四十五年には五百七十名しかいなかった。それが昭和五十八年には千五百六十名にふえておるということで、それこそ飛躍的な日本研究熱と言うべきだと思います。  これに対する日本語の教授陣が必ずしも整備されていないという点も御指摘のとおりだと思いますけれども、我々が持っております数字によりますと、教師の数は八名でなくて十八名と聞いております。我々といたしましても、いろいろなところから日本語及び日本研究の先生を送ってくれという要求が来ております。これはヨーロッパはもとよりでございますけれども、アジアが極めて多くて、中国等における日本研究熱はそれこそ大変なものがございますので、限られた予算、限られた教員数をどのように海外に派遣していくかということについて十分検討していきたいと思っております。  パリ大学につきましては、パリ大学の第七大学の方からも要望が来ておりまして、第三大学からはまだ具体的な要望という形になって我々の方には来ておりません。要望が参りました暁には慎重に検討させていただきたいと考えます。

細谷昭雄日本社会党・護憲共同

○細谷(昭)分科員 私が特に強調したいことは、日本語教授ということじゃなくて、実態からしますと確かにパリ大学の第一からもありますし、そこには文部省も交換教授という形で出しておるわけであります。しかし、それは大変エリートでございまして、なかなか入れない。したがって、結局、日本そのものを知りたいと思っても、第一に入れないために第三の方へどっと流れていく傾向だそうでございます。そして、与えるのは、あなた方は日本語を習いにきたのということで、日本語だけで、結局、あたらたくさんの若い人々が日本を知りたいというのに対して、そういう求められるものが与えられない現状だ。したがって、第三から要望がないから黙っているのじゃなくて、せっかくそういう状況がございますので、私どもは社会学者、現在の社会学を専攻している学者をそちらの方に、むしろお伺いしながら、こちらの方から押しつけるわけにはもちろんまいりませんので、そういうことを積極的にできないのかということを言っているわけであります。今までのフランスからいたしますと大変な違いが出てきておる。そこへ我々が的確に手を打っていくべきではないかと私は思うわけであります。  なお、ことしの二月に、イギリスと日本の間に日英二〇〇〇年委員会の合同会議が持たれたと聞いております。これは二〇〇〇年と言うのですから、これからの二十一世紀を目指してイギリスと日本がお互いにどう協力できるのかという文化人、知識人、民間のいろいろな方の会議と聞いております。したがって、フランスやその他の国々にも、日仏二〇〇〇年委員会でも結構でございますから、どんどんやるべきじゃないかなと私は思うわけです。こういう試みを、二十一世紀を見通した上で、これは日本の国際社会での多面的な外交、これは恐らく安倍大臣はその点を十分お考えになっていると思うのですが、今までのようにアメリカ一辺倒、私たちの党ではそういうふうに言いたくなるのですけれども、安倍さんの時代になりましてかなり多面的な外交に力を注いでおるということに対しては深く敬意を表するものでございます。そういう意味では、二十一世紀はますます日本は多面的な外交を目指すということになろうかと思うのです。その土台をなすという意味で、私は、日英二〇〇〇年委員会のような試みを他のヨーロッパの国々ともやることが必要ではないかというように思いますけれども、いかがでしょうか。

波多野敬雄外務省大臣官房外務報道官

○波多野政府委員 同種の委員会が欧州の種々の国にできておりまして、フランスとの間では日仏文化協定に基づきまして文化混合委員会が設立されております。昨年三月東京で会合を開催いたしましたけれども、今後ともこの会合を通じまして、日英二〇〇〇年委員会と同様な活動もできるかと存じております。

細谷昭雄日本社会党・護憲共同

○細谷(昭)分科員 大臣には、次の問題も含めまして最後にひとつ御所見をお願いしたいというように思います。  第二の問題点は、在仏日本人のフランス観、それから在日フランス人の日本観、それぞれの相手国の政治、経済、社会、文化、思想、習俗の基底にある基礎的な意識調査を実施してはいかがかという問題でございます。大変長い表題でございますけれども、要するに、フランスに行っておる日本人と日本に来ておるフランス人の皆さん方がそれぞれの相手国に対してどんな意識を持っているのか、これを系統的に具体的に調査してみる必要があるのじゃないか、こういう提案でございます。  外務省は、今までそれぞれのグループごとに大変膨大な調査をされておるようでございます。例えばEC六カ国対日世論調査、これはイギリス、西ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダで、五十七年五月に情報文化局海外広報課でこんな立派な調査をされておるわけであります。そのことは私も存じておりますけれども、問題は何といいましても、これらの調査というのはかゆいところといいますか本音を調査するというところまでは至っておらない、こういうように思うわけでございます。  と申しますのは、現在日本にとって大変頭の痛いのが経済摩擦の問題だと思います。この経済摩擦の根底にあるものは単に経済の問題ばかりではないと私は思います。これは相互の理解、それぞれの国に対する習慣、民族そのものの伝統といったものに対しての偏見がかなりあろうかと思うのです。鯨なんか見てもそのとおりだと思うのです。こういう食文化一つをとりましてもかなり誤解があるというふうに私は思うわけでありまして、大事なことは、この経済摩擦の要因というものの根底を十分探っていくと、建前だけしゃべっておる、本音は言わない。我々が相手国に対する本音を持っておる、私はこのことへの対応が今まで不十分ではなかったのかというふうに思うわけであります。そのために私は、こうした建前と本音を区分けした形で、五つも六つもということはなかなかできませんので、まずフランスならフランスの調査をじっくりするべきではないか、こんなふうに思うわけであります。  それで、問題はどんな点が難しいのかというふうに私いろいろ聞いてみましたら、フランス人で日本に来られている方々の把握は割合に簡単だろう、問題はフランスに行っておる在留邦人の方が非常に把握が難しいだろうと言われているわけであります。それはなぜかというと、短期旅行者を含めまして日本人は非常に多種多様な人間がフランスに入り込んで、いるということもございますし、日本人というのはどうも島国根性そのもので、例えば商社の皆さん方がフランスに行ってどこへ住んでいるかというと、大抵立派なマンション、しかも集団で住んでいると言われております。そうして、わざわざフランスに行っても、朝昼晩とみそ汁を食べたり、そういう日本人の習慣をむしろ固守している。つき合いも日本人同士だという人方が非常に多いと言われておるのです。したがいまして、そういう人力の調査を幾らしても、それはフランスのごく一部の限られた皆さん方との接触でしかありませんので、フランス人の本音、フランスの本音というのを十分把握できない、こういう弱さを持っている。したがって、一般の旅行者なり留学生なり、こういう外務省の在外公館がなかなか把握し切れない部分に、本当にフランスの本音というのを知ることができる、そこのところの調査が難しいというふうに言うわけなんです。  したがって、私は、そういう難しさはあろうかと思うのですが、少ない予算で総花的に世論調査をするよりも、本当にその調査費で、これから生きるそういう実態調査というのをぜひしていただきたいものだ、こういうふうに思って提案するわけでございますが、大変調査の困難性ということはあると思いますけれども、その点で外務当局のお考えをお知らせ願いたいというふうに思います。

波多野敬雄外務省大臣官房外務報道官

○波多野政府委員 お話のように、確かにフランスにおります邦人の実態調査というのはなかなか難しい点がございます。しかし、外務省では、毎年一回、海外において三カ月以上の長期滞在をしている在留邦人の数を把握するために、在外公館を通じまして実態調査を行っております。また、邦人の観光客等の短期滞在者につきましても、邦人援護等の観点から、可能な眠り大使館としてその把握に努めている次第でございます。その結果、昭和五十八年十月一日現在の調査によりますと、在仏在留邦人の数は九千三百九十一名、五十九年十月にはこれが一万二百五十六名という数を一応把握しております。  この人たちを対象とする意識調査の問題でございますけれども、新しい御提案でございまして、我々今まで意識調査をやっておりますのは皆外人を対象としてやっておりまして、先生お話しになりましたように、五十七年に相当大部の意識調査、世論調査を行っております。そろそろ外人を対象とする世論調査、意識調査を行う時期にも来ておりますけれども、在外邦人を対象として意識調査を行うことは今まで余りやったこともございませんし、どのようにしてやるのか、ちょっと新しい提案で、検討させていただきたいと考えております。

細谷昭雄日本社会党・護憲共同

○細谷(昭)分科員 私は、先ほどから言っておりますように、日本人の意識調査というのは、大変海外に進出しております商社の皆さん方、こういう人力もおりますし、それから芸術、文化、そういった問題で留学をしておられる方もおりますし、そしてまた一般の旅行者もたくさん現在は入り込んでおるわけです。したがって短期、長期によってさまざまな意識はあると思うのですが、私のねらいは、その国の本音を得るためには、やはり一般民衆に多く接しておるその部分の日本人の対外観、フランス観、これを引き出していくということに重点を置いておるわけであります。ですから、日本に来ておるフランス人の意識調査をすることも今言ったように大変有効でございますけれども、日本人自体のフランス観、そこには偏見その他いろいろあると思うのです。この点の実態を、非常に困難ではあっても、ひとつぜひ検討していただきたい。今局長が、新たな問題でありますので十分検討するというようにおっしゃいましたので、何とかその点を、私が意図するところは一般大衆、一般民衆、こういうところに重点を置いてありますので、ぜひとも実のある前向きの検討をお願いしたい、こういうように思っておるのです。

波多野敬雄外務省大臣官房外務報道官

○波多野政府委員 確かに、一般大衆の意向を調査することは大変に重要でございますけれども、この点につきましては意識調査の問題とは離れまして、大使館も何もその国の指導者、政府の役人ばかりと接触しているわけではございませんで、一般大衆との接触には大使館員も鋭意努めている次第でございます。  他方、その国におります日本人との会合を随時開いておりまして、これは我が方の広報サービスの一環といたしまして在留邦人と種々の打ち合わせをやって、日本としては、先ほど申し上げましたように、どういうイメージをフランスに与えたらいいだろうか、あなた方はどう思いますか、あなた方は最近感じておられることはどうですかということを、これは電話でもやっておりますけれども、定期的に会合を開いてもやっております。一番大がかりなものは、官民合同会議というものを年に一回開催いたしまして、その土地に駐在しております各日本企業の代表者を一堂に集めまして、本省からも幹部が出席いたしまして、意見交換を行うという場も設けております。  ということで、意見交換を行うか否かは別といたしまして、在留邦人の考え方、在留邦人の問題意識等は、常時吸い上げるように努力しているつもりでございます。

細谷昭雄日本社会党・護憲共同

○細谷(昭)分科員 最後に、大臣にお伺いしたいと思うわけです。  第一の、例えばパリ大学の第三に対する社会学者の派遣、これはもちろん当面は文部省ないしはパリ大学そのものの意向が重要なわけではございますが、今言ったような観点で、ぜひともひとつ前向きに文部省の協力をもらいながら実現できないかという点、それから今の在仏日本人の調査、この点も二つあわせますと、いろいろ生臭い防衛の問題、それから今のいろいろな世界のそういうのもありますけれども、二十一世紀を展望した場合にはこういうことの積み重ねが一番必要になってくるし、将来は生きてくるんじゃないか、こんなふうに思うわけであります。こういう布石だと思うのです。  その点では、安倍外務大臣はもう本当にそういう多面的な外交、恐らく将来の国際社会というのはそういう意味でヨーロッパが重要になるだろう、それから中東アジアが重要になるだろうという意味でそれこそ活動されておるわけで、何とかそういう点で、大臣、事務当局の皆さん方、いろいろ今までもやっているのですけれども、さらにそれを鞭撻いたしまして、今のは私のささやかな提案でございます、まことに大きい金がかかるわけじゃありません、調査なんかは、六百万か七百万あれば十分やれるというふうに言っておる学者もおるわけでありますので、その点でひとつ温かい御配慮をお願いしたい。このこともお願いいたしまして、御所見をお伺いしたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 今お話しの御意見は、もっともなことじゃないかと思います。これから日本の国際社会における役割というのはますます重要になってきますし、それと同時に日本というものをよく知ってもらわなければならぬし、相手の国を知悉をするということが極めて大事だ、そういうところに真の信頼関係というものが生まれてくるわけでございます。そういう意味で、今のパリ大学の問題も、今お話しの点はいろいろと十分実態等を踏まえての御意見であろうと思いますので、これはひとつ工夫をしてみたい。我が国には、国際交流基金の援助等で客員教授の派遣といったような制度もあるわけですから、こういう中で今お話しのように社会学を中心とした教授の派遣等について、向こうの要望がないとできませんが、向こうとも相談をしながら、要望があれば工夫をして、そしてそういう方向で努力をしなければならぬ、こういうふうに思います。これは賛成でございます。  それから、例えばパリにはなかなか大使館でつかめない日本人の層も随分あるわけで、例えば仏日協会なんというのがありますけれども、これは向こうで集まっている日本人は非常に固定化されておりまして、これでもって本当の意見というものが出てくるかどうかということについては疑問もあるわけでございますから、もっと幅広い、もっとフランスの社会に溶け込んで働いているような日本人、そして日本人の社会とはまた違った立場で動いている人たちもおるわけですから、そういう方々の意識を調査するということは、これからのきめの細かいといいますか幅広い外交を展開する上においても大事でございますから、これももっといろいろな面で、きのうもこれからの日仏関係を踏まえてもっと工夫をしろ、知恵を出せというふうな調査団の御意見を承っているわけでございますから、きょうの御意見ともあわせて、そうした点に基づいて調査等も、これも多少の予算はかかっても日本のために実現をする、実行する必要があると思いますから、この点も御意見がもっともでございますので、前向きにひとつ指示をして取り組んでまいりたいと思います。

細谷昭雄日本社会党・護憲共同

○細谷(昭)分科員 どうもありがとうございました。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて細谷昭雄君の質疑は終了いたしました。  次に、森本晃司君。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 まず最初に大臣にお伺い申し上げたいわけでございますが、本国会の所信表明のときに総理から、「本年は、国際連合において国際青年年と定められておりますが、私は、これを契機に、みずからの社会的責任と世界における日本の立場を自覚する、国際性豊かな青年を育成するとともに、海外の青年に日本が正しく理解されるよう、青年交流を強力に推進してまいります。」との施政方針演説がございました。  また、同時に、外務大臣の外交演説の中にも、「本年は、国際青年年に当たりますが、青少年の人的交流も一層促進していく考えであります。」また、「我が国の外交は多くの重要な課題を抱えております。」云々で、「海外で活躍する邦人の生命、身体、財産の保護、海外子女教育などにつき十分な配慮を払っていくことが必要と考えております。」このような施政演説をお伺いしたわけでありますが、いよいよ二十一世紀に向かっての日本の外交が大事なときになってまいりました。特に、開発途上国に向かって今さまざまな問題がございますが、どのような交流を深めていくか、また海外援助を行っていくかということが大事な点であるかと思います。  同時に、昭和四十年に政府事業として発足いたしました青年海外協力隊、これは民衆レベルの国際交流として発足して、今日まで数多くの人たちが貢献されてまいりました。ちょうどことしで二十年目を迎えたときでございます。私は、この青年海外協力隊のことについて大臣にお伺いしたいわけでございますが、この二十年間で三十三カ国、隊員が四千八百九十二人、今日まで海外に派遣された。また同時に、今二十九カ国で千百五十名の人が活躍中であると伺っておりますし、ことしもまた六百名の人々を海外に派遣する計画がされていると伺っております。発展途上国の国づくりのためにいろいろと協力する青年もふえております今日、日本の協力援助の歴史の中で、青年海外協力隊の位置づけと将来の展望をどのようにお考えになっているのか、まず大臣にお伺いしたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 これから二十一世紀に向かっていくわけですが、そういう中で大事なことは、今おっしゃいますように世界の青年の交流であろうと思います。特に、日本がこれから国際化をますます進めていく状況、そして国際的な信頼をかち得ていくためには、こうした青年の協力というのは、あるいは相互交流というものは極めて重要なことであろうと私は思っております。また、今お話がありましたように、ことしは国際青年年とということでもありますし、さらに、青年協力隊を派遣いたしましてちょうど二十周年に当たる年でございますから、ことしを起点にしてさらにこうした国際的な青年交流を積極的に進めていかなければならぬ。  具体的には、御承知のようにこうした青年の交流事業については、厳しい財政の状況ではありますが予算も伸びてきておるわけでございますから、そうしたものを踏まえて、各国との具体的な研修生の交換であるとかあるいはまた受け入れであるとか、青年の交流事業等を活発に行っていきたいと思います。特に青年協力隊の派遣につきましては、これは日本の海外協力の中で最も成功した事業の一つであろうと私は思っております。私自身も、開発途上国等、アフリカには四割の青年協力隊が働いていただいておるわけですが、アフリカに行ってみましても、この青年協力隊の働いておられるその真剣なあるいは情熱を持って取り組んでおる姿というものが、それぞれの国の共感と支持を大変得ております。それが日本に対する大変いい印象につながっておるわけでございますから、そこで六十年度予算も隊員の派遣の増加を行ったわけでございます。  これは二十周年を踏まえて、いろいろと待遇等について改善すべき点も私はあるように思いますから、そういう点も含めこの事業をさらに活発にしていくことが、これからの開発途上国と日本との結びつき、ただ経済援助という姿だけではなくて心と心のつながる、そうした青年協力隊の派遣がいかに大きいかを認識しながら努力を重ねていかなきゃならぬ。まさにそういう面では、ことしはこれからの新しい発展への大きな礎石を築かなきゃならない年じゃないか、こういうふうに思っておりまして、お話の点については全く同感でありますし、今申し上げました趣旨を踏まえてこれから努力を重ねていきたい、こう思います。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 大臣にお答えいただきまして、私も大変うれしい思いでございますが、やはり何といっても海外、しかも開発途上国で働く青年たちの苦労は大変なものであるように伺っておりますし、また同時に、先ほどの御答弁の中にございましたように、各国から大変な評価を受けているわけでございまして、特に、人づくりのために人と人との交流をしているというのが大きく評価されているようでございます。それだけに私は、この協力隊の隊員の皆さん一人一人について十分な御配慮をいただきたい。また、でき得れば、ありとあらゆるところでいろんな形での顕彰をいただきたいと思うわけでございます。  そこで大臣、私の友人のことになって大変恐縮でございますが、少々お話し申し上げさせていただきまして、何とか大臣の温かい御配慮、また御支援を賜りたいと思うわけでございます。  私の住んでおります奈良県に、佐久間啓二君という青年がおりました。私も小さいときからよく知っておる青年でございます。この佐久間啓二君は少年のころから、海外で活躍し世界の平和のために一生懸命尽くすんだという夢を持っておりまして、私にもそんな夢をよく語ってくれました。学校を卒業してから彼は単身で、世界探訪のためにまずケニアに行ったわけでございます。ケニアから帰ってまいりましたときに、青年海外協力隊のことを知りました。自分もそういったことで世界平和に役立つのであればと応募して、合格したわけでございます。そして、昭和五十八年一月二十二日に同僚と真冬の東京を立ちまして、バングラデシュに向かったわけでございます。  現地に行く前に、彼が残した作文がございます。これは彼が亡くなったときに、協力隊の事務局長の野村さんから弔辞の中でお読みいただいた文章でございますが、こう書いております。「自分は、民間外交官であるとの決意を持ちつつ、〝郷に入れば、郷に従え〟で現地の人々と生活し、〝何を与え何を得られるか〟との答えを七百三十日間のボランティア活動にかけてみたい。」これは本当に、青年協力隊の皆さんの原点ともいうべき大事な貴重な部分であると思います。そういう文章を書いて、彼は、コミラという地方の職業訓練センターで自動車整備の指導主任として活躍しておりました。  私も、彼がバングラデシュで活躍している姿をこの国にあって時々は思い浮かべたりしておったわけでございますが、任期もあと三カ月という昨年の十月六日に、彼は向こうの地で発病いたしました。そして日本に、十月二十二日に送られて帰ってまいりました。私は、十月六日に発病して二十二日までなぜ帰れなかったのだろうかと思うわけでございますが、十月二十二日に帰ってまいりまして、そして十一月十六日に、東京船員保険病院で三十三歳の人生の幕を閉じたわけでございます。私は、そのとき病院にも駆けつけさせていただきまして、協力隊の皆さんや外務省の皆さん、彼のその最期に多くの人が駆けつけてくださった姿にいたく感動し、感謝した次第でございます。また同時に、きょうここでこういう質問の場を与えていただいたのを機に、謹んで彼に哀悼の意を表するものでございますが、本当に事業団の皆さんにいろいろお世話になりまして、心から感謝を申し上げると同時に、お通夜の晩にも彼の御家族が本当に皆さんにお世話になった、感謝申しておられる言葉をお伺いいたしました。きょうはむしろ御家族にかわって、その関係者の皆さんにお礼を申し上げたい次第でございます。  ところで、この佐久間啓二君が昨年亡くなりましたけれども、今日までのこの二十年間の歴史の中で、十七名の方々がお亡くなりになったと伺っているわけでございます。ところが、大臣、不幸にしてお亡くなりになった方々の顕彰が、今日までほとんどされていないということでございます。広尾にある事業団に碑があるということも私は存じ上げておりますが、佐久間君が亡くなって、御家族といろいろとお話し合いをさせていただいたのですが、家族の心情を思いますと、どうしても、ここで本来ならば我々にかわって海外友好のために頑張ってくれた人たちのために顕彰し、総理大臣か安倍外務大臣から、例えて言うならば名誉協力隊員の称号を与えていただくとか協力隊の旗を大臣名で贈っていただくとか、御家族の気持ちにこたえるべく何かがあってもいいのじゃないか、このように思う次第でございます。  総理が海外に行かれまして、青年協力隊の皆さんの働いている姿を見て、これは顕彰しなければならないなど二年ほど前におっしゃったと伺っております。それは元気でお帰りになった人たちのことも含めてでございます。しかし、総理にそういう気持ちがあって、この協力隊が大変大事だというのであれば、まず亡くなった功労者の方々をきちんと顕彰すべきだ、私はこのように考えておりますが、大臣、いかがでございましょうか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 まさに胸の痛む思いがいたします。私も心から、故佐久間隊員の冥福を祈りたいと思います。特にバングラデシュで病気にかかられた、ああした瘴癘の地で働いておられる青年協力隊の努力、御苦労に対しては、今さらながら本当に感謝にたえないような次第でございます。  私も、アフリカなんかで働いておる青年協力隊員の姿を見ておりまして、アフリカの大衆の中に飛び込んで自動車整備を教えたり、農業を教えたりしておられる、これは青年だから何とか頑張っておるな、普通の人では到底やれない仕事を若い人の情熱と体力で乗り切っておるなということを本当に痛感をいたした次第でございまして、そういう意味でもやはり国として、こうした青年協力隊の尽くされた功労、功績に対しては、顕彰あるいは表彰しなければならないのは当然であろうと思います。これは全く同感でございます。  幸いにいたしまして二十年を迎えるわけで、これまでの協力隊事業のあり方等も踏まえて、いろいろと反省もしなければなりませんし、これからさらにこの制度を発展させなければならぬというときでございますので、今お話しの点は十分踏まえさせていただきまして、亡くなられた協力隊員の方々、同時にまた協力隊員として努力されてこられた方々に対する表彰あるいは顕彰の制度をこの機会に発足させたいものだ、こういうふうに思います。これはこれから検討いたしまして、二十周年の記念の式典を盛大に行いたい、こう思っておりますから、それまでにひとつ間に合わせるようにしたいものだ、こう思っておりますし、ぜひともそういう方向で進める考えであります。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 大臣の温かいお言葉、非常にうれしく思うわけでございます。  さらに大臣、これは非常に勝手なお願いでございますが、大臣にそこまでおっしゃっていただきましてぜひ御家族を顕彰いただくわけでございますが、その際家族が上京してまいりましたら、ぜひ直接会って、そういった人たちに激励の言葉また感謝の言葉を述べていただければ、御家族の方にとってどれほどうれしいまた励みになることか。また、今後も起き得るというこういう流れの中で、決してあってはならない出来事ではございますけれども、不幸に遭った人々にとってもまた安心していけることかと思います。地球より人の命は重いと言った賢人がございますが、どうか大臣、私が奈良の地よりその御家族をお連れいたしますので、世界外交に向かって大変御多忙であるということはわかりますが、それだけに一人の人を大事にしていただければと思うわけです。できれば大臣、大臣室でお会いしていただきたいと思います。ちょっと勝手なお願いでございますが、いかがでございますか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 喜んでお目にかかりまして、そして我々の感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 ありがとうございます。早速御家族に、きょうの大臣のその旨を御報告させていただきたいと思う次第でございます。  そこで、いろいろとお伺いしたいわけでございますが、もう一つ彼の家族が言っておりましたことは「海外の医療制度をもっと充実してもらえないだろうか。隊員が心身ともに健康で任務を全うするには、自己管理は当然ではございますけれども、現地での健康管理がやはり一番必要かと思います。そこで、その医療体制について御回答をいただきたいと思います。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 ただいま御質問の海外協力隊員の海外派遣中の健康管理でございますけれども、まず、出発される前にそういう面でのガイダンスといいますか、健康記録簿というものを作成いたしまして、国内訓練中に海外における健康の状況を常時記入できるようにした上で、出発していただくことにしております。  海外に到着しましてからの健康管理、これが大事なわけですが、現地におきまして嘱託医というのを指定いたしまして、一年に二回健康診断を実施するということを行っております。それに加えて、特に医療状況に問題があるという国につきましては、婦人の、協力隊としてやっておられました特に看護婦さんを、OBではなくてOGと申しておりますが、その方々を調整員という形で派遣いたしまして、協力隊の健康管理に常時当たっていただいているということで、現在五カ国にこのような看護婦さん出身の調整員というものを派遣いたしております。  隊員の傷病の際、今佐久間さんのことにつきまして、先生からなぜ早く帰ってこれなかったのかという御質疑がございましたけれども、傷病の際に現地で十分な治療を受けられないおそれがあるという場合には、できる限り速やかに帰国をして、本邦で治療に専念していただくという体制をとっておりまして、五十九年度は二十五名ぐらいの方が今まで帰ってこられて、本邦で治療をしておられるという状況にございます。そのほかに、健康管理休暇というようなものを設けまして、健康の保持にできるだけ配慮するようにいたしておる状況でございます。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 ぜひ、医療体制をさらに充実させていただきたいと思います。協力隊の皆さんも、あるいは海外でこれから働く方々も大変ふえてくるわけでございますが、そういう面で、特に発展途上国の大変な中で頑張っている人たちのためにそういう体制を充実してもらいたいと思います。  これは要望でございますが、でき得ればそういった診察を巡回して回るという先生方を事業団あるいは外務省の中に設けていただきまして、病院までとはいきませんけれども、絶えずそういった経験のある方が回るという方向をも将来御検討いただきたい、このように思います。これは私の要望でございます。  さらに、不幸にして病気や災害等に遭われた方方の補償制度の問題でございますが、私は、団体生命保険それから労災保険、災害補償、共済給付というのをこの青年海外協力隊のパンフレットの中で存じ上げておりますが、一つは、団体生命の額が今日の一般的な概念から見ますと非常に低いのではないだろうか、そういう思いがいたしますが、いかがでございますか。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 団体生命保険につきましては、業務上、業務外を問いませんで、不幸にして死亡されました場合には、現在のところ三千五百万円が遺族に対して支払われるということになっております。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 その額も、もう一度よく見直していただきたいと思います。  それから、きょうは労働省の方にお見えいただいておりまして、詳しくはまた社会労働委員会でいろいろと御質問をさせていただきたいと思いますが、海外に赴任中、この佐久間君の場合にはまだ労災がおりるかどうか検討をしていただいておりますが、海外に行っている、例えば休みの期間であっても、海外に行ったということ自体がもう大事な仕事ではないかと私は思うのです。だから、その辺の労災の適用を受けることができないものなのか。それからもう一つは、派遣前の訓練期間中それから帰任途上での災害の場合には、労災が適用されるかどうかということをお伺いしたいと思います。

佐藤正人労働省労働基準局補償課長

○佐藤(正)説明員 お答え申し上げます。  海外派遣者の特別加入につきましては、一般的には国内労働者に準じております。御質問の赴任途上とか帰任途上がまず問題になろうかと思いますけれども、これは一般的にはそういう行為自体が、旅行の手段とかあるいは旅行日程というのは、いわば個人の自由に任されておるというのが一般的でございます。そういった意味で、そういった行為については使用者の支配管理下にはないということでございまして、今のところ業務外という形をとっております。しかし、先生御指摘の点につきましては、関係各界からも強い要望がございますので、現在労災保険審議会の中に労災保険基本問題懇談会というものを設置をいたしておりまして、特別加入制度全体についての見直し作業をやっておる段階でございます。そういった意味で、その懇談会からの意見等を踏まえて対応したいというふうに考えております。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 帰任途上と言えば通常、通勤と我我は同じように考えることができるわけでございますが、もう一度よく見直し検討をお願いしたいと思います。  それから、佐久間君の件あるいはその他の労災の問題については、また追ってよく社労委員会の方で論議をさせていただきたいと思いますが、こういう特殊な事情にある人たちでございますので、ぜひ労災の適用をお願いしたいと思う次第でございます。  それからもう最後になりまして、時間がなくて大変残念でございますが、これは大臣、きのうも朝のNHKのニュースで報道されておりましたが、海外青年協力隊の皆さんの帰ってきた後の職場ということが、今やはり大きな課題になっておりまます。私も、何人かのOBの方々と直接お会いいたしまして話を聞きましたことろ、アルバイトをしているとか、あるいは一たんやむを得ず就職をしたという方々もいらっしゃるわけでございますが、二年間発展途上国へ行ってまいりますと、帰ってきて日本の職場というのが大変厳しいようでございます。きのうのNHKの報道によりますと、ことし三千五百人の応募の中で今四百六十六人の人が決まった。その中で、いわゆる現職参加、職場を持ったままで休職扱いになって参加できるという人たちが、国鉄の十人それから松下電器の二名ほか合計三十一名のみである。残りの人たちは、帰ってきてもう一回復職するか、あるいはもうやめていけと言われるのか、これから会社と話し合ったり、あるいは再就職の道を探らなければならないという状況下にございます。  公務員の方々、あるいは民間の企業もいろいろと最近そういう制度を取り入れるようになってくれたようには伺っておりますが、全体の中でまだまだだと思うのです。したがって、私は、現職参加への強い方向性と、それからもう一つは、今後その二年間の海外生活を終えて帰ってきた人たちが優遇される措置、就職のあっせん、今まで以上に御尽力いただだくとともに、例えば進学したいという人に対しては奨学資金制度を設けていくというふうなことを御検討いただきたいと思うわけでございます。  時間がございませんので、この現職参加、就職の問題については、もう一度委員会でいろいろと論議をさせていただきたいと思います。きょうはそういった要望と、一言御回答をいただきたいと思います。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 ただいま先生お話しのように、数字で申しますと、帰国されました協力隊の方が一年間に約九八%ぐらいの方が職についておられますけれども、例えば郷里を離れて東京ないし大阪というような大都会でなければ就職できないとか、必ずしも一〇〇%御満足いただけない状況にあるということは御指摘のとおりでございますので、また現職参加の方が約二割というのが今の状況でございますので、派遣法の適用、それから各都道府県におきます休職条例の制定、それから民間におきます各企業が休職というような形で参加する道を開いていただけるように、今後とも努力を重ねてまいりたいと思います。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 最後に大臣に一言。こういう状況、まだまだ青年海外協力隊の皆さんにいろいろな点で今後も検討を加えていき、応援をしていかなければならないと思いますが、就職の問題を含めまして今後とも御検討いただきたいと思います。最後に大臣に一言お願いいたします。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 この青年海外協力隊制度は、国際社会に貢献する非常にすばらしい制度であります。歴史はまさにそのとおりでございますので、二十年たった今日を起点としまして、これまでのいろいろな反省も踏まえて、今お話のありましたような点、再就職その他につきましても、改善すべきことは改善をして、また、国として協力すべきことは積極的に協力してまいりたい、こういうように思います。

森本晃司公明党・国民会議

○森本分科員 ありがとうございました。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて森本晃司君の質疑は終了いたしました。  次に、小沢貞孝君。

小沢貞孝民社党・国民連合

○小沢(貞)分科員 これは外務大臣に直接お尋ねしたいわけですが、グロムイコ外相の訪日は近いうちにその可能性があるか。大臣は、最近、本人にもお会いしていると思いますし、新聞は、来さそうで来なさそうで、毎日いろいろ報道がありますが、それをまず第一点お尋ねいたしたいと思います。  次に、チェルネンコ書記長さんの病気も、大分重体そうだ、健康そうだ、これまたたくさん報道されているわけです。これは、外務省がつかんだ情報をお聞かせいただきたいことと、その病気とグロムイコさんの来日とは直接関係があるだろうか、以上の三点をお尋ねします。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 グロムイコ外相の訪日の問題も、チェルネンコ書記長の病気の問題も、いずれも確たる御回答ができるような状況でないわけなんですが、グロムイコさんの来日につきましては、私も強く求めております。これは、日本が要望するというよりは、グロムイコ外相が、日ソ定期外相会議という制度があるわけですから、それを踏まえて、今度はこちらに来られる番でございまして、そういう意味で来日を求めております。グロムイコ外相も、自分が日本に行く番だ、そして条件さえ整えばぜひとも日本に行きたい、こういうことを私に対しても直接言っておられるわけです。  同時にまた日ソの関係の方も、領土問題につきましては、御承知のように基本的に相入れないわけで、対立しているわけでございますが、その他の政治、経済、文化の対話が官民両面で相当進んできております。また、米ソ関係、東西関係も緩んできておる、こういうこともありまして、最近では、鹿取大使の帰朝報告であるとかあるいはまたソ連における要人の発言等も総合的に判断をしますと、グロムイコ外相の訪日の可能性はあるのじゃないだろうかと思います。しかしこれは、今後の国際情勢、日ソ間の情勢等の変化にもよるわけでございますが、日本としても対話を進めたい、ソ連もまた対話を進めたい、こういう基本的な姿勢が見られますので、この可能性はあるのではないか。しかし、それでは具体的にいつごろとか、そういう準備をしようというふうな話し合いというところまでは、まだいっておりません。しかし、可能性はこの前と違って出てきたのじゃないか、全体的に少し楽観かもしれませんが、そういうふうに私は見ております。しかし、これは今後とも具体的にひとつ折衝してみたい、みなければならぬ問題であります。  それから、チェルネンコさんの病気につきましても、これもいろいろな情報がございまして、もう既に危ないのではないかとか、何回も情報が流れたわけでございますが、御承知のように、チェルネンコさん自体がテレビに姿をあらわすということでございます。しかし、状況から見ますと、どうも健康であるとは必ずしも言えないというように我々も受けとめておるわけでありますし、また、ソ連の公式的な報道でもチェルネンコさんが病気である、こういうことを言っておられます。どの程度のものかわかりませんが、しかし、今のチェルネンコ体制が今ここですぐどうなる、こうなるということを言うのは少し早いのじゃないか。チェルネンコさんが少なくとも姿をあらわしておられるわけでありますから、依然として今チェルネンコ体制というものは続いておるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。

小沢貞孝民社党・国民連合

○小沢(貞)分科員 これは外務省の資料によってもそうでありますが、日ソ領土交渉について、第一回交渉を一九五六年の日ソ共同宣言、第二回は一九七三年の田中・ブレジネフ会談、第三回交渉は宮澤外相訪ソ、第四回交渉は、グロムイコ外相来日、それから第五回交渉は、亡くなられた園田外相訪ソ、こういうぐあいにそれぞれ位置づけておるわけです。     〔主査退席、小泉主査代理着席〕 したがって、私たちの理解では、今外相も触れられたかと思うのですが、グロムイコさんが来るということは、日本が第六回領土交渉だ、こういうように位置づけるのは当然だと思いますが、グロムイコさん自体もそういうつもりで来日するだろうかということです。いろいろな報道、新しい駐日大使の新聞記者団との会見その他を見ると、向こうの態度は文化交流だとか経済交流を重点にして、なるべくなら領土交渉を避ける、懸案があるのは領土交渉だからなかなか行けないんだ、こういう報道に我々はとれるわけですが、当然、グロムイコが来るとするならば、グロムイコさん自体も第六回と位置づける、領土交渉をするという覚悟で来るであろうか、こういうことなんです。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 この点につきましては、実は昨年の国連の総会で私が出席をしたときにグロムイコ外相と会いまして、あなたが日本に来る番だということを私が言いまして、グロムイコさんも、それは私が行く番だということを認めたわけです。そのときグロムイコさんが私に対して、しかし日本に行けば、あなたはまず領土問題を持ち出すだろう、そうなればソ連の立場と真っ向から対立するということにもなり得るので、かえって行くことが日ソ関係にとってプラスにはならない、そういうこともあり得るのだというようなことを言われたわけでございます。  私は、日本としては、領土問題というのは日本の最大の外交課題、特に日ソ間の外交課題であって、日本の外務大臣がソ連の外務大臣とお目にかかるときに、この問題を抜きにして話し合いをするということは到底できませんということを私からはっきり言ったわけでございます。このときには何ら回答はなかったわけでございますけれども、しかし、これは日本の基本的な態度でございますから、グロムイコ外相が訪日される場合には、我が方より日ソ間の最重要な懸案である北方領土問題の解決をソ連側に提起することになるのは、これはもう当然のことである、こういうふうに心得ておりますし、また、グロムイコ外相もその点については日本の立場は承知しておる、私はそういうふうに思います。

小沢貞孝民社党・国民連合

○小沢(貞)分科員 わかりました。  今度は事務当局でいいわけですが、前からたびたび論議されておりますのは、この北方領土問題について国際司法裁判所に訴えるべきだ、こういうように考えますが、いかがでしょう。

西山健彦外務省欧亜局長

○西山政府委員 ソ連を相手といたしまして国際司法裁判所に提訴するということにつきましては、ソ連が国際司法裁判所のいわゆる強制管轄権の受諾宣言ということを行っておりませんので、我が国が北方領土問題を同裁判所に提訴をして司法的解決を図るためには、この問題の付託に関する日ソ間の特別合意というものが必要でございます。ところが、従来の経緯、また現在の事情から判断いたしまして、ソ連側がこれに同意する可能性はないというふうに考えざるを得ないわけでございます。したがって、こういう方法で北方領土問題を解決することは困難であると考えております。

小沢貞孝民社党・国民連合

○小沢(貞)分科員 事務当局の御意見はそう聞いております。  次にお尋ねすることは、これは外務大臣からきょうここで御答弁いただかなくても結構ですが、政治的に北方領土返還運動としては次のような提訴の仕方をしろ、こういう署名運動まで行われて、約七十万名前後の署名があるわけです。それは、「われわれ日本国民は、国民の意志を国内外に表明するため、具体的に衆議院、参議院において北方領土返還を国際司法裁判所に提訴する議決を求める」、こういう署名運動が現に一、二年前から行われているわけです。  今の事務当局のお考えだと、向こうは応訴しませんからやっても意味がない、ずっとそういうふうにお聞きしてまいりました。しかし、向こうが応訴しようとしまいとこれは提訴することができる、司法裁判所には受理される。過去もそうでありましたし、受理される。それから、場合によっては途中でソ連が応訴するかもしれないという可能性もまたあるのではないか。それから国際世論の喚起にも役立つ。それから国際法のことは私よくわかりませんが、時効の中断の効果もあるのではないか。この四つくらいのことが言われて、過去にも論議されたことがあるかもしれませんが、それはいわゆるフォルム・プロロガツムですか、そういう慣習法でそういうことができ、現にやっておったというわけであります。今七十万名も署名したのは実は目的はそこにある、こう考えるわけです。  というのは、最近のソ連の態度を見ていると、第六回交渉をやるというような前向きの態度は見られない。墓参は途中でだめだとおやめになってしまった。その次は軍事基地を築くようになってきた。去年だかおととしは、これはたしか外務省からお聞きしたことなのだが、駐ソ日本大使がナショナルデーに、一九五六年の平和宣言に基づいて、そのことを基本として両国が条約といいますか、基本問題を解決して日ソ親善を図りましょうという放送をモスクワでやらせてもらっておったのが、去年はもうこれもだめだ。こういう一連のことを考えると、我々は遠慮しておったのではなかなかソ連は言うことを聞いてこない。レーガン大統領じゃないが、強気でいった方が向こうは逆に低姿勢になってくる。これは米ソの外交を私が素人なりに見ていてもそう見えるわけで、これだけの署名が集まって国民の願望でありますから、できましたら、向こうが応訴しようとしまいと、そういう道が開かれるというならば提訴に踏み切ってもらいたいと思います。  ただこの問題は、私は事務当局の意見も十分承知しておりますが、政治家外務大臣としてはどういう意向を持っているかということを――実は、この署名者たちと我々は会談をしなければならない、近くこれを解決しなければならないということがありますので、こういう質問があっていいかどうか知りませんが、別の機会に、来週にでもお聞かせいただけぱいい、ここでは答弁を求めないことにしたいと思います。  これも同じことなんですが、この間、日ソ円卓会議に行けということでやらされて北方領土問題をやってまいりました。最後の締めくくりのコミュニケを発表するとき、日本代表、ソ連代表二人ずつでやったわけですが、しらばくれて言っているのかわかりませんが、北方領土とは一体どこだや、サハリンまで含まれるかや、そういうことを公の席で平然と言っている。  これはまた別に、司法裁判所へ訴える道がサンフランシスコ講和条約第二十二条によって行われるわけですが、事務当局でいいですけれども、これについて検討を加えたことがあるか。サンフランシスコ講和条約第二十二条、長いから読みませんけれども、この道によって、これはソ連は参加していませんから何もソ連の意見は聞く必要はありません。講和条約に参加した国だけに、日本は北方領土を放棄したものではないという合意を得ておくことは、対ソ交渉上非常に有利ではないかと私は思いますが、これはやる、やらないでなくて検討したことがありますか。

小和田恒外務省条約局長

○小和田政府委員 ただいまの委員の御質問でございますが、検討したことはございます。  ただ、これは委員が前から御質問ございまして御存じのことでございますけれども、サンフランシスコ条約第二十二条は、当事国の間でこの条約の解釈、実施に関する紛争が生じたときということになっているわけでございます。その場合には国際司法裁判所に提訴することができる。ただ、ソ連はこの条約の当事国ではございません。そこで、それじゃサンフランシスコ条約の当事国間でこの問題について紛争がある、あるいはあったということかと申しますとそういうことはございませんので、紛争は日本とソ連との間で存在しているわけでございますので、第二十二条によって当事国の間に紛争があるという形で国際司法裁判所に出すことは無理ではないかというのが、私どもの検討の一応の結論でございます。

小沢貞孝民社党・国民連合

○小沢(貞)分科員 これも御答弁をこういう席ではいいかと思いますが、大臣にぜひ聞いておいていただきたいと思うのですが、サンフランシスコ講和条約二十二条はソ連は入っていないから、ソ連の意向なんか何も反映されない。ソ連に近い国にオルグするかどうか、それはわかりませんけれども、日本はアメリカに公式に四島は放棄しない、そう認めますか、今度はイギリスに、フランスにと、四十八カ国ですか全部に照会して、オーケーと言えばこれはいいことだと思うし、ノーと言うところがあったら、これは私は紛争だと思いますから、二十二条により国際司法裁判所へ訴えることができるわけです。これは司法裁判所でノーと言われれば、我々はもう北方領土返還運動をやめなければなりませんが、そういうことをまだ一回もやっていない。ことしは占領されてもう四十年たつわけであります。これには事務的にはいろいろ問題がありますけれども、私は政治家としては少なくともそういうことをすべきだと大臣に訴えるわけですが、これまた公の席でありますので、先ほどと同じように別の機会に御答弁いただければありがたいと思います。要望だけしておきます。  最近、ヤルタ協定見直し論がかまびすしいわけでございます。私たちは、ヤルタ協定とは何の関係もありませんからそれに拘束される必要はありませんが、ソ連の唯一のよりどころは、あのやみ協定であるヤルタ協定に基づいて日本の北方領土を占領しているのだ、こういう口実のようであります。あのレーガン大統領もヤルタ協定見直し論、ヨーロッパにおいてもあります。国内においてもございますが、北方領土返還運動はヤルタ協定見直し論とは無関係に、日ソ間の独自の問題として強力に進める方が日本にとっては有利であり、日ソ交渉はうまくいくのだというように私は理解いたしますけれども、外務大臣、どうでしょう。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 北方領土問題はヤルタ協定とは別に、我が国のまさに固有の領土でありますし、国際法的にも歴史的にも日本に帰属するのが当然のことであるという立場で、まさに日ソ間の懸案として日ソ間で処理をすることが最も妥当じゃないか。そして日ソ間におきましては、ソ連とは基本的に立場は違っておりますけれども、日本としては事あるごとに日本の正当な主張を堂々と述べて、ソ連の翻意を求めていかなければならない。しかし、力でもぎ取るというわけにいきませんから、平和的に交渉で解決しなければならない、こういうふうに思うわけでありまして、時間はかかりますけれども腰を据えて、この問題については絶対に譲れないということで、正面から堂々とそして執拗にソ連に迫っていかなければならない。そのために一番大事なことはやはり国民世論の統一であろうと思います。国民世論がしっかりとこの問題を支えていただいて、そして政府をバックアップしていただくということが極めて大事ではないか、こういうように、思います。

小沢貞孝民社党・国民連合

○小沢(貞)分科員 ことしは北方領土が占領されて、占領されて四十周年記念と言うわけにもいかぬでしょうが、四十年目の節目に当たるわけであります。この節目に当たって、新たな何らかの国際的な世論喚起の運動あるいは国内的な連動を展開しなければ、国民の中にあきらめがあればこの領土問題はだんだん風化していってしまうのではないか、こういうように考えるわけで、外務省、総務庁それぞれ、ことしはそういう年に当たって何らかの国内、国際運動を展開する用意があるか、両省から聞きたいわけです。

西山健彦外務省欧亜局長

○西山政府委員 まず国内の運動に関しましては、先生御指摘のとおり、まさしく四十年目に当たります今日、国民世論を一層結集していかなければならない、そういうふうに我々も強く感じております。特に北方領土の返還運動がなかんずく若い世代に正しく引き継がれていくことが重要である、こういうふうに考えておるわけでございます。そこで、学校における教育がその点で非常に重要であるという認識に立ちまして、外務省といたしましては民間団体でありますところの北方領土復帰期成同盟を通じまして、北方領土問題の経緯をわかりやすく説明して正しい理解を得るための副読本というものを作成、配付することを積極的に推進しております。具体的に申し上げますと、まず北海道内の小学校五年生、中学校二年生の全員にそういう副読本を配付いたしまして、社会科の時間にこれを適宜活用してもらう計画を立てておりまして、これを五十九年度から開始しておりますが、当初四年でもってそれをやるつもりであったのでございますけれども、三年に短縮して推進しようということで現在実施中でございます。将来はこれを全国的規模にも広げてまいりたいということで総務庁とも密接に協議してまいりたいと存じております。  次に、国際啓発の問題でございますが、これは先ほど大臣からもお答え申し上げましたとおり、基本的には日ソ二国間の問題で、両国間の話し合いで解決すべき問題であるということでございます。しかしながら、御承知のようなソ連側の態度にかんがみ、国際社会においても我が国の立場を広く知ってもらう必要があるということから、英文のパンフレット、英文のフィルム、そういうものを利用して海外の広報に努めております。他方、国連におきましても、外相演説において毎年北方領土問題に言及するなどいたしまして、我が国の主張を国際社会に広く訴えているわけでございます。今後もそれを継続してまいる所存でございます。

加藤甫総務庁北方対策本部参事官

○加藤説明員 総務庁といたしましてもこれまで北方領土問題対策協会でございますとか地方の北方領土返還要求運動の推進基盤であります都道府県の県民会議、また民間の各団体の活動等を通じまして北方領土返還要求運動の推進に努めてまいりましたが、来年度四十年の筋目に当たるということで、特に北方領土問題対策協会において新しい事業を二つ計画いたしました。  一つは、国際的な理解のもとに我が国の国民運動としての北方領土返還要求運動を推進していくというような趣旨で、内外の専門家をお招きしまして北方領土問題に関する国際シンポジウムを開催するというような事業を企画いたしております。それから、先ほど外務省からもお話がございましたけれども、少年向きの啓発資料、つまり副読本でございますが、これを北海道と並行いたしまして、北海道以外の全国に六十年度から中学校に計画的に作成し、配付をしていくという事業の実施を始めたいというように考えております。  それから、各地方の推進基盤でございます北方領土の返還要求のための県民会議がございます。これは現在四十四の都道府県において結成がされております。残りの三県につきましても現在結成を準備中でございますが、これらの県民会議の活動につきましても、北方領土問題が発生してから四十年の節目にふさわしい年としてその事業が充実したものとなりますように十分支援をしていきたいというように。考えております。

小沢貞孝民社党・国民連合

○小沢(貞)分科員 時間でありますので、最後に要望だけ申し上げますが、先ほどの二件についてはまだ大臣からしかるべく御連絡をいただくようにお願いいたします。  それから、最近アブラシモフ駐日大使が新聞記者と会見しているところを見ると、原則は政経分離論、政治問題は回避したい、もうそれに貫かれているように見えるわけで、これに対しても外務省が直接、日本にはその問題が最高だぞということを駐日大使が赴任した直後にきちっとしておかないと、一歩一歩、ずっと押されっ放しで、レーガン外交を見ていてもあれだけ強気に出た方が向こうが下手に出てくるわけですから、日本としてはソ連に対して大変強硬な国民世論から外交方針で進んだ方がソ連の国内事情からして一歩引き下がってくる、ここが外務省の事務当局と私たちの考えとの違うところでありますので、その辺も十分考えていただきたい、こう私は思います。  それから、新しい運動として私は日本にいる各国の駐日大使を納沙布岬まで、何カ国一グループかしらぬけれどもどんどん招待して連れていくとか、何かもう少し新機軸の運動を占領四十年目に当たって考えていただく、こういうことを要望して終わりたいと思います。  ありがとうございました。

小泉純一郎自由民主党・新自由国民連合

○小泉主査代理 これにて小沢貞孝君の質疑は終了いたしました。  次に、辻一彦君。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 私はきょうは日中の青年交流と、そのシンボルとしての日中青年交流の友好センター、この二つの点について少しお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、日中関係は戦後かつてないほど友好的な空気にあると思いますが、特に昨年、一昨年、日本の中曽根総理が北京に、そして胡耀邦総書記が東京に、こういうふうにして日中間の首脳交流、また外相もそれぞれ交流されております。     〔小泉主査代理退席、主査着席〕 それらをもとにし、また長年のいろいろな積み上げをもとにしまして、去年の九月の終わりから十月にかけまして日本から三千名の若い青年の皆さんが中国を訪ねました。いろいろな縁で十名ほど国会議員団が同行をいたしまして、参加をしました。そのときに、中国で百万人の若い人を天安門前に集めて、十月一日の晩に一晩交流をしまして、五千人の輪を二百ほどつくって、そこに日本の青年が二十人、三十人と入って一夜、友好、交流を深めたんですが、これを見て、戦後四十年、我々が交流を始めてから約三十年たっておりますが、日中間の友好と青年の交流は非常に深まったという感じを持ちました。  ちょっと私ごとになって大変恐縮なんですが、昭和三十一年に中華全国青年連合会、当時は廖承志さんが主席でしたが、日本の青年団協議会に対して五十名の招請がありました。当時は日青協と言いましたが、私はその会長をやっておりましたが、代表を一県から一人ずつそろえて東京へ来たんですが、残念ながら当時外務省は旅券を出さないということを決めて、昭和三十年三月二十四日臨時閣議をもって共産圏の渡航制限を決定して、せっかく全国から集まった五十名が非常に困ったことがありました。半年、旅券を出してもらいたい、いや出せない、これが続いて、三十一年の九月に二十二名旅券が出て中国を訪ねました。あと半分は各国を訪ねましたが、その二十二名は七十五日、二万五千キロ、重慶、昆明から東北の果てまで、戦後日本人がほとんど行ったことのない地域を七十五日間訪ねたわけであります。そのときに、中国と日本は再び戦ってはならないということで、青年同士で日中青年不戦の誓いを結ぼう、こういうふうにして当時各地で日中青年不戦の誓いを結んだ記憶があります。あれから約三十年たっております。そして、そのあくる年、昭和三十二年に中国の青年十名を初めて日本に招請をしました。これも非常に困難な状況の中で一カ月近く招待したんですが、不思議な縁で、私はちょっと体を痛めて長野療養所に寝ておりましたが、そこへ当時の青年連合会の国際部長の呉学謙氏と日本課長の楊振亜氏が見舞いに来てくれました。彼らは今中国の外相、アジア局長をやっているのは御存じのとおりであります。  そういう縁で、私は日中青年交流には非常に深い関心を持っておりますが、昨年十月の天安門前の集まりを見て、この両国の青年が再び戦うことがあってはならない、これは政治家の大事な役割ではないか、こういうことを痛感をして、アジアの安定と平和のもとはやはり日中両国の友好と特に若い人の交流を深めることにある、こういうように深く感じた次第であります。  外相は今この日中関係にも非常に重要な役割を果たしておいででありますが、過去の歴史を振り返って、これらについての御見解を少し承りたい、このように思う次第であります。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 お話しのように、今、日中関係は日中の歴史の上でもと言ってもいいぐらい最も安定しておりますし、友好関係にあります。この関係をさらに着実に進めていくということが、日中両国のみならず、これはアジアの平和、世界の平和のためにも必要であると認識をいたしております。そういう中で、青年交流等は、これからの時代を青年は背負っていくわけでございますから、極めて重要であります。中国もこの点については非常な認識を持っておりまして、胡耀邦総書記は特にこの青年の交流計画に熱心で、去年三千名日本から招聘されたのは胡耀邦さんの特別な配慮があったのじゃないかと思うわけでございます。また、日本側も今後とも中国の青年を招聘することに努めていきたいと思います。  青年のときの思い出というのは非常に強烈だと思います。今、呉学謙外相のお話が出ましたが、呉学謙さんと食事なんかするとき必ず出るのは、呉学謙さんが青年時代に日本に来た思い出であります。随分日本で非常に強烈な印象を受けた、そのときの交流の思い出が忘れられないということをしょっちゅう呉学謙さんは言っております。そういうことで私なんかも非常に呉学謙さんとは意気投合しまして、これからの日中関係の友好発展のために努力をしようということで具体的にいろいろの問題を解決し合っておるわけでございますが、まさに日中が戦ってはならないことは当然でありますし、そして日中の経済、文化あるいは青年交流、そういうあらゆる面での交流関係をこれから進めていくことが、日本のみならず、先ほど申し上げましたように、アジアのためにも世界のためにも絶対に必要である、こういう認識でございます。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 胡耀邦総書記がこの青年交流に非常に関心を持たれているというのはそのとおりだろうと思いますが、私もこの間行って二度ほどお会いしました。実は昭和三十一年に二十二名の代表を中国に送ったときに胡耀邦氏は中華全国青年連合会の第一書記として、秘書長ですかとして今と同じような歓迎の演説をされたことがありますが、以来青年問題に深い関心を持っておられると思います。  そこで、去年三千人行って随分とお世話になりました。中国の方は今まで随分いろいろとやってもらったのでひとつ今度はそのお返しのつもりで三千人を招きたい、こういうことで出発したわけでありますが、しかし行ってみて三班に分かれた日本の青年が、四班ですか、各地で非常な歓迎を受けた。それに対して今外務省は、中国の各都市で中心になって世話をしてくれた百名の代表を三月四日から招いておられて、今国内の交流に回っておりますので、その労は私は歩といたします。しかし、あれだけ向こうで熱心に歓迎してくれたことを思いますと、そしてまた青年時代の交流の思い出というものが強烈な印象となって残り、そういうものが将来大きな友好のもとになるということを考えれば、今度中国の方から日本の方にかなりな代表を送って、そして友好を深めたいというこちらの希望もありますし、向こうのお気持ちもある。聞くところによると、大体五百名程度をこの秋ぐらいに日本の方に送って友好を深めたい、また招きたい、こういう動きがあるようでありますが、二十一世紀委員会の中でもこれらの問題がいろいろと論議をされておりますが、ひとつ政府の方もこの問題につきまして特段の対策を立てて考えていただきたい、このように思います。というのは、お国柄が違いますので、向こう、中国は民間と国との関係は表裏一体の国柄でありますが、したがって官民まさに一体になりますが、我が国の場合は国柄上なかなかそういうようにもいかない難しさもあります。できれば官民一体の態勢をとってこれらをひとつ受け入れて十分にこたえるべきでないかと私は思いますが、これらについての若干の経過と、それからどう対応されるか、これらについてお伺いいたしたい。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 日本と中国の青年交流の重要性、その意義というものを今、辻先生から伺いまして、また安倍大臣からも御見解を承ったわけでございます。  例えば一九八三年、一昨年の数字でございますけれども、日本から中国へ参りました青少年は、法務省の調べによりますと、十歳から三十四歳、この三十四歳が青年かどうかよくわかりませんが、その数字ですと大体四万四千人、他方、中国から来られた青少年が約八千人というように伺っております。この方たちがどういう、例えば政府レベルで来られたかあるいは自治体の御招待、あるいは民間レベルのいろいろな御努力で参られたという点の詳細は承知しておりませんけれども、いずれにしましても昨年九月、十月のただいま先生御指摘の三千人の御招待もいただいたということで、とにかくこれについて日本としては最大可能にお返しをすべきではないかというお話は各方面で私もよく伺っております。ただいま先生の御指摘がありましたように、外務省がつい先日、まだ日本におりますけれども、百人の青少年を招待したわけで、この中には三千人の日本の青年が参りましたときにあちらでお世話をいただいた方が大変入っておるということでございますが、外務省も、百人というのは五十九年度百人でございまして、それまでは予算上は三十人しかお呼びできなかったということでございますが、とにかく少しでも全体の青少年交流の枠組みで外務省としても可能な努力をしたいということで、予算で御理解をいただきましてこういう百人というものができたわけでございます。  ただいまの五百名が日本に来られるという計画につきましては、非常に具体的な形での計画につきましては私ども詳細は存じておりません。しかし、今先生が御指摘のように、できるだけ多くの方たちを招待すべきであるという点については、政府あるいは地方自治体、それから民間レベルの御協力を得て実現していきたい。その意味で、私ども今後ともそういう具体的な計画がありますれば可能な限りで御相談しまた協力をしていきたい、かように考えております。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 大いに努力をしていただきたいのですが、既に日本の方からことしも中国の方に相当な個々の招待というか招請はしておるようですね。そこで、中国側の希望は、できればこの秋に相当まとまって五百人ぐらい、可能ならば人数はもっとふえてもいいという感じのようでありますが、たくさん受けている招請を、非常に忙しいときでもあるし、ある程度、国慶節前後を避けて九月か十一月ぐらいの間にまとめて受け入れられる方法はないだろうかというような感じのお話は聞いておるのです。今、局長が言われるように非常に具体的な成案として聞いておるのじゃないのですが、非公式にいろいろな話として出ておるのです。そのときに、中国側の国情は官民一体の態勢がすぐとれますが、我が国はなかなかそうもいかない難しさもありますので、急に言ってもなかなか準備ができないので、私ならばもうこの冬からいろいろ相談をして、そしてそういう状況があれば政府も民間もともに力を出して受け入れる。こういうように今から取り組まないとちょっと急では間に合わないという感じがしますので、その点どうでしょうか。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 御指摘のとおりだと思います。それから、ただいま御説明いたしましたように、これは本当に政府だけでこういう具体的なものを実現するわけにもまいりませんので、ひとつ関係省庁のほかに先生のまた具体的な御示唆もいろいろと参考にさせていただきまして、そういう具体的な考え方がもう少し出てまいりましたら、どの程度どうしたら可能かという点については例えば総務庁とも御相談しなければいけません、あちらこちら御相談しなければいけませんので、ひとつ十分検討してみたいと考えております。よろしくまたお願いいたします。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 総務庁から見えていますか。これは青少年問題で外務省を中心にしながら文部、総務と皆関係が深いので、特に青少年問題の本部長は総務庁長官がやっていらっしゃる、こういう関係で、総務庁のこういう問題についての対応をどう考えるかをひとつお伺いしたいと思います。特に、総理が行って、外相も一緒に行かれて、向こうからもまた首脳部が見えての相互交流がもとになっておるわけですから、この点総務庁も頭に入れながら対応を考えていただきたい。考えをお伺いしたい。

大坪正彦総務庁青少年対策本部参事官

○大坪説明員 総務庁青少年対策本部におきましては、日中の青少年交流につきましては先生御承知のとおり、日中平和友好条約の締結を記念しまして昭和五十四年からいたしております。日本の青年を派遣したり中国の青年を招聘するという格好でいたしておるわけでございまして、六十年度で第七回を迎える格好になっております。先生御指摘のこの秋に予想される五百人の派遣団につきましては、私どもの行っておりますこの事業との関連でどのようなことが支援できるか、十分検討させていただきたいと考えております。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 胡耀邦総書記を日本で招くときに青年団体の受け入れの実行委員会をつくりました。それらがまたもとになって、去年は八四年日中青年友好交流組織委員会が発足をして、これが三千名送り出しの母体になりました。また一つ今度この秋に中国から代表が見えるとすれば、それを受け入れるときにも、今まで果たしたこれらの機関等の歴史的な役割も十分考えてもらって、民間の声を十分生かしながら、また政府もできる限りの協力、バックアップをしてもらう、そういう態勢づくりに進んでいただきたいと思います。  そこで第二に私、日中青年友好交流センターの点について二、三お伺いしたいと思います。  大平総理が前に訪中されて、それがきっかけになって日中友好病院ができた。中国の近代病院としては非常に立派な病院が日本の政府の支援のもとにできたわけですが、単に中国の医療関係のシンボルといいますか役割のみならず、日中友好病院は日中の友好のシンボルとして大きな役割を果たすであろう、こういう評価が中国側に非常に強いわけです。そこでそれと同じように、ここまで高まった日中の友好、特に若い人のこういう交流、去年三千人くらい行った若い人たちの交流を記念して、北京に日中友好交流のセンターをつくってはどうか、こういうことが日中両国の二十一世紀委員会の代表者の中で随分と論議をされたと聞いております。過日、総理の方にも二十一世紀委員会の日中両国代表からそろって申し入れがあったと聞いておりますが、私はもしこれが実現するならば日中の青年の友好の長いシンボルとして非常に大きな役割を果たすのではないか、そういう点でぜひ促進すべきであると思います。これらの経過と今の対応につきましてお伺いいたしたい。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 青年交流センターを日中の間でつくったらどうかというお話は、昨年中曽根総理が訪中されましたときにフー・ヤオバン、胡耀邦総書記との会談においてこれが話題になりました。それからまたそのほかにも各方面から、こういうセンターが極めて有意義ではないだろうかという御示唆をいただいた経緯を承知しております。具体的には、ただいま先生が御指摘のように、昨年九月東京及び箱根で開かれました日中友好二十一世紀委員会の第一回の会合におきまして、まずこの二十一世紀委員会の具体的な政府に対する提案としてこの建設及び促進方を両国政府に対して提言があったというのも、先生の御指摘のとおりでございます。たまたま私はこの日中友好二十一世紀委員会の日本側の事務局長をしておりますので、ずっと会議に出ておりまして、その経緯は十分承知しております。  そこで、その後この問題につきましては、政府レベルで、一応そういう委員会の御提言をいただきましたので、私ども内部と中国側の担当の事務局との間におきまして、具体的な促進方についてこれまで連絡をとってきたわけでございます。第一には、早く設立する、そしてその中身は、やはり二十一世紀に向けた日中間の青年交流の一つの柱になるべきものであろうというのを私どもの一つの心構えに置きまして、つい最近は日本側の二十一世紀委員会の先生方御三方に訪中していただきまして、中国側の委員との間で、本件センターが具備すべき機能とか先方での用地の選定等につきまして初歩的な話し合いが持たれて、つい先日お帰りになりました委員からもお話の詳細を伺ったところでございます。  いずれにいたしましても、そのような検討の結果を踏まえまして、さらに具体的な問題につきまして中国側と協力、協議いたしまして、この構想の早期実現に努力してまいりたいというかたい決意を持っております。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 聞くところによると、中国側は北京で既に用地の物色に入っている、公の話ではないのでありますが、そういう動きがあるということではないかと思います。そこで、中国の対応に比べて我が方はやや対応がおくれているのじゃないかという感じも持ちますが、その点はどうでしょうか。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 率直に申し上げますと、私どもは、おくれているどころかむしろ早く用地を探していただくということが第一だということで、昨年秋以来ごとしにかけまして中国側にお願いいたした次第でございます。  それから、とにかく手紙や電報だけでは不十分でございますので、我が方の委員に行っていただいて具体的にお話をしていただくということで、ただいま申し上げましたような形での訪中があったわけでございます。用地の問題につきましても、なかなか北京ではいろいろな用地の事情はありますけれども、現在最終的にはその中で幾つか中国側で御検討いただいておると承知しております。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 おくれているというよりはむしろ早い方であるというならば大変心強いので、これは日中友好病院と並んで将来は非常に大きな役割を果たすだろうと思いますので、これにつきましても大臣の決意を一言伺いたい。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 今アジア局長から答弁いたしましたように、政府としましても、中曽根総理と胡耀邦総書記との間でせっかく話し合われた案件ですし、二十一世紀委員会が強力に進めておる構想ですし、今お話しのように、まさに日中友好病院とともに日中友好の一つの大きな柱である、こういうふうに思っておりますので、早期実現に向かって力を尽くしてまいりたいと思います。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 共通した認識を持っていらっしゃるので非常に喜んでおりますが、ぜひ努力をお願いしたいと思います。  通告外でありますが、一つお尋ねしたいのは、中国の残留孤児問題で今外務省当局、厚生省当局もそれぞれ非常に努力していただいておる。私も昭和四十八年から五十年ごろに、まだなかなか帰ってこられない県内の家族等が相当ありまして、行った機会にいろいろ連絡をとって、二十三家族ほど一時帰国という形で四十八年から五十年ごろに帰国させてもらったことがありましたが、なかなか難しい問題がありました。向こうの養父母の問題、これは今いろいろ対処されております。それから、肉親がいろいろな事情でわかっておっても会ってくれないというようなこと、そんな難しさがありましたが、だんだんと今政府の方も力を入れて、これは前進をして解決されつつあります。  そこで、初めのときの一時帰国、永住帰国された方は年齢が非常に高かったので日本語を皆話したのですが、最近の残留孤児はみんな赤ん坊か二、三歳で親と離れたために日本語がわからない人が多い。そこで身寄りがない人は、何とかして日本へ帰りたいのだが、今のうちに少しでも日本語を覚えておきたい、こういう希望が非常に強いようですが、中国で、例えば大学で日本語を教えるようなそういうコースに特別に参加をして習おうとすると、一年間に四百元ぐらいの授業料が要る。四百元といいますと日本円で四万円ですから、日本円で言えばそんな大きな金額ではありませんが、これは向こうの東北地方における賃金が四、五十元とかあるいは北京では七十元、これに比べて四百元という金額は非常に大きいわけでありまして、それを出すことはなかなか容易でない。そういう意味で日本語の教師をぜひ日本から、ボランティアで行っているような人がありますが、送ってほしいとか、あるいは現地でそういう機会を与えてほしい、こういう要望が非常に強いのです。教師の派遣になると文部省とか厚生省とかいろいろ関係があると思いますが、どこの省の管轄ということでなしに、外務省の方でも、残留孤児のそういう切実な声にこたえるような対策を政府、省庁内で相談をして努力していただきたいと思いますが、これについていかがでしょうか。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 日本に来られました孤児の方が日本の父親、母親あるいは親戚の方と再会される非常に感激的なシーンをテレビで拝見いたしております。そのときに、確かに言葉というものは、どうしても通訳を介して初めてようやく本当の親族とお話しできるという現状を私もよく承知しております。  今、そういう方々が来られる前に日本語をできるようにするために日本語の講師の派遣についてもっと積極的にすべきではないだろうかという先生の御示唆でございます。その御示唆をよく踏まえまして関係省庁と御相談いたしまして、可能な努力を今後とも続けてまいりたいと思っております。

辻一彦日本社会党・護憲共同

○辻(一)分科員 本会議があるようですから御協力をしましてこれで終わりますが、大事な問題でありますので、外相初め外務当局には、さきに掲げました二点につきましては全面的な努力をしていただくように要望いたしまして終わりたいと思います。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて辻一彦君の質疑は終了いたしました。  次に、永井孝信君。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 冒頭に外務大臣にお伺いいたします。  日本にたくさんの外国公館が存在をいたしておりますが、この外国公館に働く日本人の地位とか身分、いわゆる権利の問題について政府としては一般的にはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。

小和田恒外務省条約局長

○小和田政府委員 日本にあります外国の公館でございますとか国際機関の代表部とかは、それぞれ必ずしも一律に申し上げることは適当ではないと思いますが、在外公館につきましては、外交関係に関するウィーン条約によって規律されておりますし、それ以外の国際機関の代表部につきましては、それぞれの国際機関との取り決めによってその地位が定められているということでございます。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 現在日本にある在外公館の現地採用されておる日本人の人数は大体どれくらいと把握されておりますか。

浅見真外務省大臣官房儀典官

○浅見説明員 お答え申し上げます。  私、資料を今持ち合わせておりませんので、至急取り寄せまして御報告いたしたいと思います。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 分科会で非常に時間が短うございますから、端的に問題点を御質問申し上げてみたいと思うのでありますが、今までも外務委員会などにおきまして、日本の在外公館における現地の採用した職員のいろいろな問題について幾つかの裁判の経験も持ってきているわけですね。その国国の実情によって多少の違いはあるかもしれませんけれども、日本が海外において採用した現地職員のいろいろな紛争問題についてはおおむね現地の国内法に基づいて処理がされているというふうに私どもは承知をしておるのですが、そのことは間違いございませんか。

北村汎外務省大臣官房長

○北村(汎)政府委員 外務省といたしましては、在外公館の現地職員が良好な雇用関係のもとに勤務するということにいろいろ気を使ってやっておりますが、不幸にして在外公館の所在地で現地職員と問題が起きたというような場合には、労働訴訟が提起されるような場合には、我が方は裁判管轄権の免除を主張いたしまして、そうして当該外国の裁判管轄権の不行使を求めるとともに、他方、当該の現地職員に対しましては誠意を持って臨み、できるだけ円満な解決を図る、こういう方針で臨んでおります。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 今の答弁はちょっと私の認識と違うところがあるのですが、もちろんすべてのケースがそうだとは言いません。しかし、在外公館における現地職員との間に起きたトラブルについて、できるだけその雇用者と被雇用者という関係を越えて現地の国内法に基づいて処理をしてきたケースも現実に存在しているわけでしょう。そうじゃないのですか。

北村汎外務省大臣官房長

○北村(汎)政府委員 もちろんケースによりましては、我が方が裁判管轄権の免除を主張いたしましても現地の裁判所がそれを認めないで判決を下した例はございます。そういう場合には、我が方が上級の労働裁判所に対して裁判管轄権なしという理由で控訴の手続をとっております間にいろいろ当事者間の示談が成立したり、そういうことで誠意を持って問題が解決されるというようなケースはございます。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 そこに問題が、一つの焦点があるのだろうと思うのでありますが、例えば西ドイツで日本の総領事館が現地の職員の解雇をした問題について、今言われたような形で争われたわけでありますが、最終的にドイツの裁判権を認めてドイツ人の職員が勝訴したという例もあるわけですね。そのことは御認識されていますか。

北村汎外務省大臣官房長

○北村(汎)政府委員 勝訴したというケースは、これはドイツなり現地の国の裁判所の管轄権を我が方が認めて、そうしてその裁判で応訴をいたして、その裁判で我が方が敗れた、こういうケースではなくて、我が方はあくまでも管轄権免除を主張いたしておりましたけれども、しかし裁判所の方で我が方の主権免除の申し立てを却下いたしまして、そして現地職員に有利な判決を下した、こういう例はございます。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 具体的な国内における問題について、それとの関係も生じてくるのでありますが、具体的に問題点で御質問してみたいと思うのです。  日本にたくさんの在外公館がありますけれども、その中の一つにECの代表部が存在するわけですね。もちろんほかの在外公館にもたくさんの日本人が採用されているわけでありますが、そのECの代表部で実は解雇事件がありました。これは氷山の一角でありまして、日本人が日本の国内に存在する在外公館に勤務して、その日本人はもちろん日本の国籍を持ち、日本でいわゆる国税も市民税も全部かけてきているわけですね。そういう日本人の法的地位の保全を図るとか権利を守るとかいうことについては、それは日本から見た場合には――今言われたように他の国から見た場合は裁判権の免除ということで済ましてしまうのですか。それはどうですか。

小和田恒外務省条約局長

○小和田政府委員 御質問の趣旨は、私正確に把握したかどうかちょっと自信はございませんが、EC代表部の場合は、先ほど申し上げましたように日本との本部協定がございますので、それによって律せられるわけでございますが、その内容によりますと、大体ウィーンの外交関係条約を適用するということになっております。ウィーン外交関係条約は日本にあります在外公館全般に適用があるわけでございますが、その場合に、在外公館は原則としてその所在する国の裁判権からの免除を享有するということになっております。他方、その在外公館は職務の遂行に当たって接受国の法令を尊重しなければならないということでございますので、法令を尊重する義務はございますが、裁判に関する限りは裁判権の免除を主張することができる、こういう形でバランスがとられるわけでございます。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 一九七二年五月十六日のヨーロッパにおける国家免除条約を見ましても、その第五条で、法廷地国で供給される労務を内容とする雇用契約に関する訴訟、解雇の問題はそれに該当するわけですね、そういう問題については、被用者が使用国の国民であったり使用国に常住していたものである場合を除き、免除を認めず、法廷地国の裁判に従うものとしているというふうになっているわけですね。そういう関係からいっても、日本の国内に存在する在外公館、外国の公館に現地採用されておる日本人のそういう問題については、やはり日本の国内法に基づいて一定の権利が保障されるということでないとちょっと日本の国益に反するのではないか、こういう気がするのですが、どうですか。

小和田恒外務省条約局長

○小和田政府委員 先ほどの繰り返しになる点がございますが、確かに委員が御指摘になりましたように、ヨーロッパの中では国家免除に関しまして特別の条約がございまして、それによって律せられております。ただ、私が申し上げておりますのは、日本にございます在外公館、あるいはEC本部との特別な取り決めによって律せられておりますEC代表部の場合は、一九六一年のウィーンの外交関係条約の規定によって律せられる、こういうことになっておるわけでございます。ウィーンの外交関係条約は第三十一条で、派遣国の国自体それからその在外公館の職員は裁判権からの免除が規定されているわけでございますので、日本にあります在外公館につきましてはこのウィーン条約の規定によって律する、こういう形になると思います。  ただ、先ほども申し上げましたけれども、手続的な規定の問題と実体的な規定の問題はございますので、私が申し上げておりますのは、あくまでも手続的な問題としては裁判権から免除されるということを申し上げておるわけでございます。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 その解釈論争についてはまだいろいろ問題があるのですが、そればかり時間をとっておったのではどうにもなりませんので、具体的なことをお聞きするわけでありますが、このECの日本代表部において現地人を採用した、日本人を採用した場合の就業規則があるわけですね。その就業規則を見てみますと、その就業規則の第三十一条で「当機関と現地被傭者のいかなる紛争も日本法の下で管轄権がある裁判所に提訴される。」いわゆる日本に裁判権があるということを認めておるわけですね。そしてECの本部の規則でも実は同様に規則がされておるわけです。そしてECの裁判所の判例を見ましても、このように言っています。全文を紹介するのは時間の関係で省略をいたしますけれども、「現地職員の就業条件は、国内法に従って定められ、国内裁判所での訴訟のテーマとなることができる。」こういうふうに判例でもうたっているわけです。だから、このECの代表部でいいますと、そういう就業規則、日本でいえば日本に裁判権があるということを現実に定めた就業規則がある。そういう中で、具体的な個人の名前を挙げて恐縮でありますが、一九八〇年の六月に○○○○さんという職員が解雇されたのですね。その解雇されたことについて、職業規則の違反であるということから、身分保全の仮処分の裁判を起こしました。一審、二審で、それぞれ結論的にはその解雇が不当であるということになっていないわけでありますけれども、しかし、その一審、二審の仮処分の判決の中で、訴えの利益がある、そして日本の労働法が適用されるということを触れているわけであります。そこまでは司法の判断でありますが、その司法の判断を外務省に求めようとしているわけじゃないのですね。そういう事実の経過がある。そうして、その判決に対して、訴訟を起こした本人からすればこれは納得できないということで本訴に持ち込んだわけですね。本訴に持ち込んで、今度、東京の地裁からECの代表部にその訴状の送達をしたのでありますが、その訴状の送達が拒否されていまだに裁判が具体的に始まっていかないという状況になっているのですが、その事実は外務省としては御承知ですか。

浅見真外務省大臣官房儀典官

○浅見説明員 お答えいたします。  ○○さんでございますが、○○さんが昨年の六月東京地方裁判所に対しまして訴訟を提起いたしました。ただ、訴状は、在日EC委員会代表部にいまだ送達されていないと私ども承知しております。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 事実はそういう経過があるわけですが、大臣、ここはひとつ大臣にお答えいただきたいのでありますが、日本人の権利を守ることと、もしそのことが、例えばECの代表部で言いますと、そういう就業規則を持ち、日本の裁判権を事実上認めているにもかかわらずそういうことになっていっていないという、このままの状態で放置しておったら、日本に存在する外国の公館の現地採用の日本人は、いわば無権利状態に置かれてしまう。そういうことで紛争が起きていくということは、両当事国間のいわば友好関係の発展に必ずしもプラスになっていかないのではないか、こう思うのですが、大臣はこれについて、一般的な考え方でよろしいのですが、どのようにお考えになりますか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 私も、今初めていろいろとお話を聞くわけなんですが、一般的なといいましても、これは条約だとかあるいは取り決め等もあるわけですし、またその国の法律、雇用関係もあるわけですから、なかなか一般的には言えないと思います。やはりそれぞれのケースごとに判断をしていかなければならぬ、そういうふうに思いますけれども、いずれにしても、今具体的にお話が出ておりますEC代表部の労使訴訟問題については、これは訴訟で解決しようということで今日まで来ておるという状況でございますから、外務省として今これに立ち入るということについてはおのずから限界はある、こういうふうに思います。  ただしかし、外務省としましては、こうした問題につきましてはやはり日本人の職員の立場も守られなければならぬ、そういう意味において、円満な解決が行われることを期待するわけです。外務省としての努力の限界はありますけれども、そういう意味での外交的な努力はしていかなければならぬかな、こういうふうに思います。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 この問題については、ECとの関係が友好的に発展するようにということで、実はヨーロッパ労連、ヨーロッパ各国にまたがっている、労働組合の組織で言えば、国際自由労連とか世界労連とかいうものを横断的に組織しているところでありますが、このヨーロッパ労連のヒンタージャイドという書記長も、EC本部との中にいろいろな接触を持ってくれているわけです。そうして、その書記長からも日本の総評に対して親書もいただいておるわけでありますが、いろいろな問題があったとしても友好的な中で問題の処理が図れるように希望を持っている。希望を持っているということは、ECの内部でもそういう動きがあるということを示唆していると思うのでありますが、それは非常に大事な側面だと思うのですね。ところが、片方で日本で裁判を起こしている。裁判で解決するのが最善の方法かどうか、これはまた別問題です。そして、仮にEC代表部が本訴を受けて立って、司法の判断がどういう結論になるか、これもまた別問題です。そのことをここで論じても、これはどうにもならぬわけですから。  ただ、私がここで申し上げたいのは、今大臣も、いろいろなケースの違いはあってもそのケースことに一定の努力はしなければいかぬ、こういう原則は述べられているわけでありますが、私どもからすれば、外国の公館に勤務する者がいわばそういう裁判に訴えることもできないということになってくると、日本人としての権利が損なわれてしまう。しかも日本の国内でありますから――もちろん大使館なら大使館の塀の内側は、それは治外法権かもしれません、正直言って。しかし、そこに雇用される日本人としての権利を擁護するという立場をやはり政府は基本的にはとってもらわなくては、何のための政府が、こういうことになってまいりますね。だから、日本人としての権利を何よりも大切にする、日本の法律というものについての権威も高めていくという立場からすると、この問題についてはおのずから一定の努力をしてもらわなければいかぬ選択の幅というのは決まってくると思うのです。  そこで、時間も余りないのでありますが、今大臣の言われたことを私は非常に重視いたします。重視いたしますが、いずれにしても、現実はECの代表部が東京地裁からの訴状の送達についても拒否しているというこの状態のままでは、この紛争の解決はどんな方法をとってみてもまとまっていかない。だとすると、何らかの方法をとって、ECの代表部と外務省の関係においてこの問題が一定の円満な解決に向かっていくようなそういう努力を外務省としてもされてしかるべきではないかと私は思うのですね。その努力が、中身はどういうやり方があるのか知りませんよ、しかし、そういう努力をしてもらえるかどうかということが非常に大事なポイントだと私は思うのです。また、外務省にそういう努力をしてもらった上で初めて日本とECの正常な友好関係を発展させることもできると思うのですが、このことについて、大臣を含めてひとつ対応をお願いしたいと思うのですが、どうでございますか。

浅見真外務省大臣官房儀典官

○浅見説明員 本件は、まさに先生がおっしゃいましたように、日本の国民の権利が関係した重要な問題でございまして、その観点から、私どもとしましても、EC代表部と御本人の間で円満な誠意ある解決ができるように心から願っているわけでございます。  その観点から、例えばこういう問題が起こりますと、お互いの意思が十分疎通できないような場合がございます。そういうような場合には、通常の場合でございますと、私どもがお互いの意思を確認してお互いに通報をいたしまして、意思の疎通が円満にいくように側面から協力させていただくというような形でできる限りの努力を従来からしてきておりますし、今後もそうさせていただくつもりでございます。ただ、御理解いただきたい点がございますが、先ほどから述べられてございますように、本件は既に裁判所が取り扱う問題になっている問題でもございますので、私どもがなし得る御協力もおのずから制約があるとは思いますけれども、そういう範囲内で私どもはできる限り努力させていただくつもりでございます。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 今のお話のこの案件につきまして、一般的には、日本人である、同時にまた外国公館で勤めておる、そういう制限もある、そういう中で外務省がどういうふうにこういう問題について対処すべきかということなんですが、やはり外務省としましては、各国との友好関係が大事でありますし、また、日本の公館との調整とか円満な関係とかいうものを進めていくという立場にありますから、こうした問題で訴訟になったということは残念ですが、それはそれなりに訴訟でやっていただかなければならぬことでしょう。しかし、基本的には何とか円満に解決していくことが大事ではないか、こういうふうに思います。そういう中で、外務省としての限界はありますけれども、今儀典官が申し上げましたように、円満解決を目指して、調整とか委員会との話し合いとかをやって、側面的に努力はしていくのが外務省の責任の一つでもあろうと思いますし、限られた中ではありますが、できるだけのことはしなければならない、そういうふうに思います。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 今、局長も大臣も御答弁いただいて、その御努力をいただくことに、私自身も含めて円満な解決のために大きな期待を持ちたいと思うのです。  裁判になっている問題は司法の問題でありますから、そこで一定の処理がされると思うのでありますが、しかし、この裁判一つとってみても、門前払いで裁判になっていかないということになればどうにもならぬわけです。だから、裁判の問題をどうするかという問題と、円満な解決という問題とを複合させた対応が必要だと思うのですね。  これはEC代表部に勤務しておった○○○○さんの解雇問題を具体的な例として私はここに提起しているわけでありますが、そのほかにもたくさん外国の公館が日本に存在するわけですね、そこにたくさんの日本人が働いておるわけです。今、正確な数字は後でというお話でありましたが、私どもが推定している限りにおいては少なくとも五、六千名はいるのではないか、こう見ているわけですね。この人たちの日常の働く権利あるいは労働条件の問題、あるいは法的にいろいろな面で保護される問題、非常に幅広い問題がありますので、ECの代表部にかかわる問題を一つの具体的な例として努力してもらって、それが突破口になって、外国公館で働く日本人全体の権益が守られるように、重ねて外務省の御努力をお願い申し上げて終わりたいと思うのですが、もう一言だけお答えいただけますか。

浅見真外務省大臣官房儀典官

○浅見説明員 先生のお述べになられました御趣旨をよく体しまして、今後も本件の円満な解決に私ども努力させていただきます。  それから、大変失礼申し上げましたが、先ほどの日本人の現地職員の数でございますけれども、私どもに登録されている日本人の数は約千三百名でございます。

永井孝信日本社会党・護憲共同

○永井分科員 まだ時間が残っておりますけれども、本会議の関係もありますので、御努力をいただくという回答に期待と感謝を申し上げながら、終わりたいと思います。  ありがとうございました。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて永井孝信君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬長亀次郎君。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 私は、最初に、一月十五日の深夜に米海兵隊員に刺殺された前泊さんについてお尋ねいたします。  この前、その家族をお訪ねしました。お訪ねしましたら、ここに写真がありますが、普通は仏壇にあれするのですが、まだ事件が解決しないものだから、机の上に簡単に位牌と写真が置かれておりました。そして、娘さんがそばに座っておりまして、私に、お父さんはあなたの座っているその畳の上で刺されてうつ伏せになって死んでおりましたと言われた。その写真の前には細いろうそくがともっておりました。娘さんは本当に悲痛な顔をして、このようなことが一夜にして起こった、何と言っていいかわかりません。私はこのとき心に叫んだのですが、アメリカ海兵隊は沖縄から出ていけ、こういった怒りを覚えました。何の罪もない、論争もしないで、飛び込んできてすぐにテレビを見ていた前泊さんを押し倒して一刺し、そしてうつ伏せになって死んでしまう。これに対してアメリカ総領事が、何と四十七日たってから向こうにおくやみに行ったという状況でありますが、大臣、これらについてどのようにお考えになっているか、一言御意見を伺いたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 まことにお気の毒な事件であると思いますし、こうした米軍の行為というものは厳重に処断されなければならないと思います。  今、犯人の引き渡しも行われたということでございますが、裁判によって厳正な措置がとられなければならぬと思います。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 この件は後にも関連いたしますが、次に、地位協定十七条に基づいて、これは合意事項、外務省からもらったのですけれども、この合意された中で、二十日以内に起訴しなければその裁判権はアメリカに移ると合意しています。  私は、これは実に大変な合意だと思うのです。地位協定によって起訴するまで犯人を渡せないということがありながら、なぜ進んで二十日以内に起訴しなければその裁判権はアメリカに移るということを合意したのか。これについて、一体どういう考えでそこまで合意されたのかということを答弁してもらいたいと思います。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 ただいま御質問の合同委員会合意の具体的な事項について、合意ができた経緯についての資料をただいま手元に持ち合わせておりませんので、何ゆえにという御質問の点についてはこの時点でお答えできませんけれども、本件に関しては、捜査当局の捜査を経まして起訴、身柄引き渡しということになりまして、先ほど大臣から御答弁がありましたように、法に基づいて厳正な処断が行われることを私どもとして期待しておる次第でございます。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 私は、特に前泊さんの殺害事件について関連して聞いておるのじゃないのです。あの事件は経過も知っております。それに、アメリカが犯人を拘束しながらも、八時から四時まで勤務時間中は、ちゃんと検察庁に調べられておることも聞いております。そういうことじゃなくて、起訴するまで犯人を渡さないぞというふうに規制されているでしょう、にもかかわらず、それをまた追いかけて、進んで、二十日以内に日本政府が起訴しなければこの事件の裁判権はアメリカに移るということになぜ合意したのか。この合意はまさに屈辱的じゃないか。情けないと思うのです。もし当時のことでわからなければ、後でもいいから決着をつけてもらわないと、このような民族に屈辱を与えるような、むしろこれは捜査権の放棄と言ってもいいぐらいの合意なんですよ。ですから、この点について今即答ができなければ、後でもいいから、調査して、なぜあの時点で――これはあなた方、外務省からもらった合意事項なんです。これは日弁連でも問題にしておりますよ。そういった意味で、民族に屈辱を与えるような、捜査権の制約じゃなくてむしろ放棄をなぜ一体やったのか。この問題、回答できますか。できなければ後で詳細を。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 突然の御質問でございましたので、大変申しわけございませんが、当時の合意をいたしました経緯につきまして調べさせていただいて、後日御報告させていただきたいと思います。  ただ、一言だけ一般論として申し上げますと、基本的には裁判権が競合しまして、第一次裁判権が日本側にあり、第二次裁判権がアメリカ側にあるというケースにおきまして、第一次裁判権を行使する立場にある日本側が、いつまでも結論が出ないままにずるずると事態が延引するということでは、これまた第二次裁判権を有するアメリカ側との関係でいろいろぐあいが悪い面がありますので、そこは適当な、ある種の常識的な判断で一定の期間を限って、その間に第一次裁判権を行使する日本側が裁判権を行使しない場合には、アメリカ側に裁判権が移る、そういう仕組みを基本的につくっておく必要があるということは当然だろうと思います。  ただ、今御質問の二十日という期間がどのような経緯によって合意されたかということにつきましては、ちょっと手元に資料がございませんので、調査をいたしまして改めて御報告させていただきたいと存じます。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 大臣、お聞きのとおりですが、これは十分調査して、今でもオフィシャルでは制約されているのですよ。だのにまた、二十日以内に起訴しなければこの裁判権はアメリカ側に移るということまで合意した、屈辱の合意です。これを進んでやることになるというのは問題にならぬ。この点について十分調査の上、その当時の事情はなぜこうなっていたか。改めるなら改めるということになると思いますが、この件については大臣もよく留意してもらいたいと思います。  次に移りますが、この事件は城間幸栄が殺された問題で、この点について補償金を四千百九十六万四千四百七十六円要求しておりますが、那覇地裁の決定額が三千九百五十六万八千二百二十円。ところで、この二枚目にありますように、アメリカが裁定した金額が二千四百十六万二千二百四十一円。この数字を挙げたのは、裁判の決定はもちろん要求額上り少ないが、やはり裁判の決定は要求額に近づいております。ところが、アメリカが裁定で出そうと言ったのは二千四百万ということになっている。この問題が一つ。  もう一つは、二番目にあるいわゆる示談書であります。この示談書は大変な示談書なんだな。今の二十日間問題とも関連しますが、これは重要なので読みます。これは英文と和文両方書いてある。  「私は」、受け取る人だ。「茲に一九八二年三月八日に発生した米軍人に係わる事故又は事件より生じた損害、損失或いは傷害に対する総べての請求を完全に満たす最終的解決として」今申し上げました「二千四百十六万二千二百四十一円也を受取ることに同意しここの次だ。「上記事件から生ずる総べての請求、要求、訴訟及び訴訟の原因となるものから同人、日米両国政府及びその職員、代行者、被用者を永久に免責する。 その証として、一九八四年六月二十九日茲に署名捺印する。」ということで弁護人が捺印しておるのです。  この点で指摘したいのは、今言った金額の問題、もう一つは、二番目のあれに「日米両国政府」と書かれておるものを、どうもおかしいと「日」を削って、第二番目にありますが、削って出したところ、いや、削ったとすれば出せませんという返事が来たから、意見書を添えて出した。意見書もここにあります。そして、泣く泣くこの損害補償を受け取るということ。私は、こういった示談書は示談書じゃないですよ。これはまさに脅迫だよ。遺族に対する脅迫でなくて何だ。条件つきでなければ金を渡さぬぞ。しかも今言ったような――示談というのはこれは別に説明する必要ないですよ。両方がお互い意見を交わし合いながら、ああ、いいでしょう、あんたもいいなということでするのが示談でしょう。これは条件がついている。脅迫ですよ。  もう一つは日本政府だ。これは最初は日本政府を削ってあります。弁護士はまさかと思った。日本政府は国民の訴訟権は認めておるのですよ。基本的人権なんです。もしこれで免責されるといかないということでやったら、いや、それではだめだ、もとどおり「日米両国政府」ということにして初めてこれが成立する。この示談書について、外務省御承知ですか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 ただいま御指摘ありました諸点につきまして、基本的には、この示談書と称しますものは、地位協定の十八条六項の(C)というところに、先生御承知のとおりに、慰謝料の支払いの申し出との関連におきまして「請求人がその請求を完全に満たすものとしてこれを受諾したときは、合衆国の当局は、みずから支払をしなければならず、」ということがございまして、その後にさらに「支払が請求を完全に満たすものとして行われたものでない限り、合衆国軍隊の構成員又は被用者に対する訴えを受理する日本国の裁判所の裁判権に影響を及ぼすものではない。」という規定がございます。したがいまして、慰謝料を被害者の方に受け取っていただく限りにおきましては、アメリカ政府は免責をしてもらわなければならないという立場に立ちましてでき上がっておる書式であろうというふうに存じます。  日本政府云々の点につきまして、いかなる理由に基づきましてただいま先生御指摘のようなやりとりが生じたかということにつきましては、ちょっと私、経緯をつまびらかにいたしませんものですから、直ちに御説明できかねます。  アメリカ政府との関連におきまして、アメリカ政府を免責にしなければならないということは、先ほどお読みいたしました地位協定の規定から明白でございますので、その限りにおいて、示談書においてそのようなことを明示しなければならないという要請は当然アメリカ側にあるだろうと思います。示談の金額が不満足であれば、当然地位協定の規定によりましても裁判に訴えるという道が開かれておるということでございますので、この金額を受け取ってこの示談書に署名をすれば後は裁判にいくことはできないということになりますので、その点を明確にさせるというのがこの示談書の趣旨であろうというふうに理解をしております。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 私が言っているのは、これを知っているかどうか。初めて知るんでしょう。正直に言ってください。初めてでしょう。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 書式そのものについて私が見るのは初めてでございます。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 大臣、それはもう進行中なんです。しかも、今この問題は金額を言いましたね。要求額よりも裁判の決定額はもちろん少ないです。那覇地裁の決定は要求額の半分ぐらい。まず、その補償金の問題です。  もう一つは、この示談書の中に日米両政府とあった。弁護士もまさかと思ったんです。アメリカ政府であればいいとして、日米両政府だから、これは削らぬといかぬといって削って出した。出したらまた返事が来て、そういうふうなことではこれは出せません、おくれますよということで、泣く泣くこの原文のままで出したということなんです。私はこういった示談書、今局長もこういったのは初めてだと言っておりましたが、まさにそういう屈辱的なのが進行中であります。これは民族の自決権の問題にも関係するんですよ。この点につきましては、私は三つの点があると思うのです。  一つは、金額の問題です。もう踏み倒して、しかも被害者はみんな弱い人々なんですよ。前泊さんの話を聞きましたが、十一万ぐらいしか収入がなかったというようなところで、ああいった今大臣が写真を見たような非常に貧しい人々、こういう人々がほとんど被害者なんです。この要求をする、裁判所がそれに近い決定をする、今度また値切りに値切って、しかも条件をつけるというわけです。これはまさに脅迫ですよ。示談ではない、脅迫である。この点につきまして、私はこういった示談書形式はやめてもらわないといかぬと思う。  それからもう一つは、こうなってくると日本国民の訴訟権、提訴権を奪う。基本的人権に関係する。今問題になっていました弁護士、代理人は国を被告として訴訟を起こしているんです、これに関係して。被告は国、右代表者法務大臣坂田道太、これはその当時の法務大臣です。訴訟物の価額は三千九百五十六万円余り、これは那覇地裁が決めた金額を要求しているわけです。これはもうこういったような屈辱的な示談書ではいかぬ。日本国民として本当に国を相手に訴訟する権利を行使したいということで、現にこれが今進行中なんです。  大臣、もう時間がありませんので大臣の意見を聞きたいと思いますが、私は非常に屈辱を感じるのですよ。例えば今言ったような一連のものがありますね。起訴しなければ犯人を渡さぬというあの十七条の条項。それからまたまた、進んで二十日間に起訴しなければ裁判権は移るんだという合意。それに今申し上げた示談書だ。この一連の基本的人権に係る問題が公然と踏みにじられつつあり、しかもこの示談書の内容すら局長は初めてだと言うに至っては、外務大臣、私は、現在一番大事なのは日本の平和の問題だと思います。それから日本民族の民族自決権の問題だと思うのです。これを放棄しますともう大変なことになる。平和の問題についてはもちろん多くは言いませんが、今、核戦争が起ころうとしている。核兵器の廃絶の問題が当然今日的課題である。  さらにもう一つは、今言ったような対米従属ではなくて、真の日本の独立を目指すいわゆる日本民族の自決権の問題、まさにこの自決権が今侵されつつあるということは、一連の質問と答弁の中からわかった。特に対米外交を進める場合に、安倍大臣はニューリーダーということにもなっておりますので、よほど慎重に、日本民族の自決権を放棄するといったような屈辱外交はしてはならぬということ。  さらに、前泊さんの場合にはまだ裁判中で決まっておりませんが、その損害要求があると思います。これについてはそういったようなことも配慮して適正にやってほしいというふうに思いますが、時間が参りましたので、大臣、民族自決権の問題、平和の問題、対米外交の問題の基本、この点についてお答えを願いたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 本件につきましては、先ほど申し上げましたように極めて遺憾な事件であると思いますし、裁判でその容疑者が厳正に処断されることを我々も期待をいたしております。  同時にまた、米軍の今後のあり方につきましては、我々としても、こういう事件が起こらないように厳重に注意を求めておりますし、今後も求めてまいりたいと思うわけであります。  ただ、米軍の日本における存在は、日米安保条約に基づいて、日本自身の平和と安全を守るために我々が認めたものでありますし、その中で地位協定というものも結ばれたわけでありますから、これは独立国対独立国の条約、それに基づく協定でございますし、何も日本が従属的な立場に立っておるわけでも何でもないわけでございますし、あくまでも安保条約、そして沖縄における米軍の存在というものは日本の平和と安全のために必要な存在である、これはもう日米安保条約を効果的に運用していくためにも必要な存在である、こういうふうに我々は確信をいたしておるわけであります。  事実関係につきましては防衛庁から答弁させます。

小澤毅防衛施設庁総務部補償課長

○小澤説明員 十八条六項の関係の業務を担当しておりますのは防衛施設庁でございますので、事実関係について若干申し述べておきたいと思います。  ただいま先生御指摘の件につきましては、十八条六項の事案としまして、被害を受けられた方からの請求に基づきまして、当庁が、その事故に関しましてのすべての事情等を公平に考慮しまして補償額を算定し、それを米軍当局に送付し、また米軍当局が、被害に遭われました方の御遺族等と交渉しまして最終的に決めた額ということで、その慰謝料が支払われているというふうに我々は理解しております。  また、本件につきまして、このような交渉の途中におきまして裁判が進められておりましたけれども、これについてはその交渉期間中は若干停止しておりましたが、これの交渉が進みまして以降、また二月の中旬になりまして弁論が再開されていると我々は承知しておりますので、このようなことによって、裁判権が奪われだというような御指摘には当たらないのではないかというふうに存じております。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 あと四分間残っておりますので、残ったことをお聞きします。  一つは、米兵による日本人を被害者とする殺害事件は、昭和四十七年以降沖縄が八件です。それから、沖縄を除く他府県は六件発生しております。それぞれ事件ごとに補償金を明らかにしてほしいと思います。

小澤毅防衛施設庁総務部補償課長

○小澤説明員 十八条六項等に基づきます米軍が支払いました慰謝料の額につきましては、これはせっかくの御指摘でございますけれども、個人のプライバシー等に関する問題でございますから従来から公表しておらないところでございますので、御理解願いたいというふうに思います。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 これは発表できないのですか。

小澤毅防衛施設庁総務部補償課長

○小澤説明員 従来から、個人の問題であるということで、その辺の個人の理解といいますか御了解を得ない限り発表しておりませんということでございます。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 遺家族の承認があれば発表するんですか。

小澤毅防衛施設庁総務部補償課長

○小澤説明員 御遺族等の御了解が仮に得られた場合であっても、これを全般的に一般に公知するというふうなことについては考えておりません。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 これは発表すると大変なことになることをあなた方は知っているからなんだ。要求額、補償額を要求しますよね。それと裁判の裁定。それから支払われた金額。例えば私、ここに事例を持っているのです。ある女の人の暴行事件があります。暴行致傷、これはわずかに百五十万円ぐらいやって、もう――この暴行事件というのはなかなか発表できないんですよ。我々もこれは発表しません。これはプライバシーに関係する。ところが、殺されたというような問題は決してプライバシーじゃないんですよ。これは余りにも金額が少な過ぎて、発表すると世論が許さぬ。これが国の方針です。何がプライバシーか。私、それは検討を加えて発表できるようにやってもらいたい。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 瀬長君、持ち時間を終了いたしました。よろしく……。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 それから、時間が参りましたので大臣に一応要望して終わりますが、大臣は口を開けば安保条約、安保条約ということですが、私の要望はそういった意味じゃないのですよ。安保条約下でも――私は安保条約を認めていないのですよ。地位協定を認めていない。立場は違いますが、違っても、日本民族の民族自決権、これまで制限され、放棄するというふうな姿勢で対米外交はやってほしくない、これを強調しているわけなんです。そういった意味で、時間が参りましたので、何か御返事があればお聞きしてやめたいと思うのですが、いかがですか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 先ほどから申し上げましたように、対米従属外交もしておりませんし、日本の自決権というのは独立国家である以上は当然のことであります。

瀬長亀次郎日本共産党・革新共同

○瀬長分科員 終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて瀬長亀次郎君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管について質疑を続行いたします。小川新一郎君。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 短時間でございますので簡単明瞭に私が質問いたしますので、よろしくお願いいたします。  私は、竹島問題については毎回この分科会で質問を続けておる関係上、この続きをいつもやっておりますので、どうかお答えをいただきたいと思うのです。  昨年九月、全斗換、チョン・ドゥホァン大統領が訪日し、日韓関係は成熟時代に入ったと言われております。そのことは大変結構なことだと思うのでございますが、私はしばしばこの委員会でも取り上げております竹島問題の領有権について、この問題において忘れ去られてはならない、こう思っている一人でございます。竹島は間違いなく日本の固有の領土であり、韓国が不法占拠していることに対し、機会あるごとに厳重な抗議をしなければならないと思っているのでございます。また、ごく最近の抗議はいつ行ったのか。また、昨年、一部報道によれば、韓国が日本に対して竹島を譲渡するといううわさが流されたと言われておりますが、日韓間で譲渡の話はあったのかどうか。また、韓国の警備隊が竹島から撤退されたようなことを聞いておりますが、事実関係はどうか、お願いします。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 今先生御指摘のとおり、竹島の問題につきましては、歴史上からも国際法上からも我が国固有の領土であるということでございまして、韓国が現在竹島を独身として不法占拠しているという事実について常に遺憾の意を表明しているわけでございます。昨年、全斗換大統領が来られましたときの外相会談におきましても、安倍外務大臣より本件を取り上げられまして、我が国の従来からの立場を強く申し入れていただいたということがございます。  それから、先生も御案内のとおり、毎年海上保安庁の巡視船が竹島の近くを巡視いたしまして、あちらの現状を査察するということがございます。つい最近では昨年の十月にこれを行いました。行いました結果、依然として先ほど申し上げましたような不法占拠あるいは施設がそこにあるということでございましたので、昨年の暮れ、もちろん外務大臣の今のような申し入れとは別に、私どもとしては遺憾であるということを口上書を通じて先方に言っております。  それから、ただいま先生からお話がございました何かうわさということでございますけれども、ひところ韓国の一部にそのようなうわさが流れたことは承知しております。しかし、韓国側の方では、韓国の立場としては、従来どおりの立場は変わっておらないというように私どもは理解しております。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 大臣、全斗換大統領に竹島問題を提起し、また抗議をなさったということは、新聞紙上で余り報道されてなかったやに記憶しているのでございますが、その感触、またどのようなことを言われたのか、お願いいたします。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 私は全斗換大統領には、直接竹島問題に触れて日本の主張を述べてはおりません。私のカウンターパートであります韓国の外相に対しましては、これまで数回会談をいたしましたが、そのたびに今局長が申し上げましたような日本の立場、すなわち竹島は日本の固有の領土であるという日本の明確な立場を主張し続けてまいりました。しかし、これに対して、残念ながら韓国もまた、竹島は韓国の領土であるという立場は変えておりません。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 今局長からお話があったように、直接お話をなさったように私聞き違えたのかどうか知りませんが、大統領に大臣が直接お話をなさったんではないと言う。あなたがおっしゃったのは、何か直接というように私一応理解したのですが。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 私、あるいは言葉足らずであったならばおわびいたしますけれども、私が申し上げましたのは、全斗換大統領が来られましたときの外相会談、したがって今大臣が申されましたように、安倍外務大臣と先方の李源京外務大臣との外相会談において、今外務大臣がお話しになったように本件を取り上げ、先方に申し入れた、こういうことでございます。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 これは非常に残念なことだと思うのです。そういうようなことでは遺憾でございますので、この問題には今後とも厳しい姿勢で臨んでいただきたいが、大臣、いかがですか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 おっしゃるとおり、この問題については、日本の姿勢といいますか、基本は確固不動であります。あくまでも竹島は日本国有の領土であるという主張を貫き続けなければならぬ。そして、この竹島問題が日本の主張のとおり公正な形で処理されることを望んでおります。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 よろしくお願いします。  私は、アメリカとの友好関係が我が国外交の基軸であると思っている一人でありますが、しかし、東西関係の一方の雄であり、我が国の隣国であるソ連との関係を全く無視するような外交も、あり得ないと思っているわけであります。アフガニスタン事件、大韓航空機事件など、相互不信の厳しい冬の時代が続いてきておりましたが、幸い、米ソ両国の間で軍縮交渉の再開に合意し、東西関係改善の機運が少し盛り上がってきたわけであります。このような米ソ関係に連動しまして、すっかり冷え込んでおります日ソ関係を一遍、春が来たとは言わないまでも、少なくとも雪解けぐらいに持っていく時期ではないかと思うのでございますが、まず外務大臣の御所見を承ります。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 私も同感でありまして、日ソは何といいましても隣国同士であります。残念ながら領土問題が両者の間に横たわっておりまして、これは基本的に考え方が違っておりますし、特に日本は、この領土問題の解決なくして平和条約の締結はあり得ないという姿勢を貫いておるために、日ソ間ではそうした基本問題については厳しい対立があるわけですが、しかし、その他の問題につきましては、日ソ間でできるだけ対話を進めて関係を改善していきたい、こういう改善をすることがまた領土問題の解決にもつながるという考え方で、対話を昨年以来、政府あるいは民間、広範な形で進めておりまして、それなりの成果を徐徐に上げつつある。また、幸いにして米ソの関係にも、軍縮交渉が再開されるという状況にも来ておりますから、この際にグロムイコ外相の訪日をひとつぜひ求めたいものだ、こういうふうに思っております。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 外務省は、昨年一年間を日ソ対話元年と位置づけ、安倍外相もただいまお話があったような姿勢の中で、グロムイコ外相と二度も会談なされておるわけでございます。そして、中曽根・チーホノフ両首脳会談も持たれました。しかし、会談して悪いとは言いませんけれども、二回とも葬儀のついでの会談ということで、雪解けムードとしてはいいかもしれませんが、やはりことしは単なるムード会談ではなく、実質討議をするような時期が来ているのではないかと私は思っているわけでございます。  日ソ関係改善の実質討議ともなれば、北方領土問題は我が国としてはどうしても避けられない問題でございます。しかし私は、領土問題を棚上げせよと言うのではございませんけれども、まず何をおいても、日ソ関係の真の相互理解に基づく安定的な関係を確立するためにはグロムイコ外相が訪日することであり、日ソ外相定期協議を軌道に乗せることが第一だと思いますが、グロムイコ外相の訪日の見通し、またそれについて外務大臣の御所見を承りたいと思います。     〔主査退席、熊川主査代理着席〕

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 ぜひともグロムイコ外相を日本に迎えて、本格的な会談を行いたいものだと思っております。もちろん会談に当たりましては、日本の基本的な主張は先ほど申し上げましたように、領土問題を解決して日ソ平和条約を結ぶということにありますので、この問題を避けて会談ということに入るわけにはいかない、こういう考えでございますが、しかし同時に、日ソ間には多くの問題、広範な問題がありますから、これらの問題の改善も進めていかなければならない、そういうふうに思います。  グロムイコ外相側も、いろいろと条件つぎのような報道もなされておりましたが、最近では鹿取大使等の報告等を承りましても、徐々に日本への訪問というものを考えておるという姿勢がにじみ出ておるわけでありまして、これから時間もありますから、そういう中でいろいろと対話を進めながら日ソの空気をさらによくして、ぜひともグロムイコ外相を日本に迎えなければならぬ。グロムイコ外相も、今度は日本に来る番だということをはっきりと私にも言っておるわけでありますし、そういう状況がいい方向へ進んでおるのじゃないか、予断は許しませんが、そういうふうな感じを私は持っております。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 ただいまいいムードということでございますけれども、今度はおまえが来る番だ、おれが二度も行って話したのだからということだけを言っていたのでは、来たくてもなかなか、相手は大国でございますし、メンツもございますので、訪日するわけはないと思います。幸い外務大臣は、ポスト中曽根と言われ、国際的視野にもたけており、我々も尊敬している外務大臣でございます。グロムイコ外相の訪日が実現しやすいようなきっかけを考えること、これが重大なことだと思っております。  では一体、どういうふうなことがきっかけかと言えば、例えば我が国が締結しております文化協定は既に二十四件、東欧圏とも一件締結しております。日ソ文化協定締結といっても、体制が違うためいろいろ問題点があると思いますが、幸い日ソ間には文化交流取り決めの交換公文もございますし、グロムイコ外相が訪日した折、文化協定ができ、ついでに署名して帰ったという、そういう政治的な何かのインパクトを与える知恵を働かすべきだと思いますが、そのような政治的な配慮と知恵は安倍外相にはできると思います。また、それだけの人物であると私たちも評価をしているわけでございますが、突っ込んだ質問で失礼でございますけれども、重ねて御所見を承りたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 これは確かにきっかけが大事だと思います。そういうきっかけをどこに求めるかということで実はいろいろと模索もしておりますし、日ソ当事者間でぼつぼつ話し合いもしよう、こういう段階でございますが、そのきっかけを何に求めるかということにつきましてはこれからといいますか、これはなかなか微妙な問題でもありますし、はっきり申し上げる段階にありませんが、文化協定等もやはりそうした中で我々として検討をしなければならぬ課題ではないかな、そういうふうに思います。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 対立的な色彩の濃い北方領土問題を話すから来てくれと言ったって、なかなかこれは来ないでしょうし、今外務大臣がおっしゃったようなそういう知恵というかきっかけというか、この問題は、今の私の呼び水でございますけれども、そういった問題をはっきりしていただいて何とか実現に持っていっていただきたい、こう思うわけでございます。  次に、SDIのことでちょっとお尋ねいたしますが、来る三月十二日から、注目されておりますアメリカとソ連の軍縮交渉が開始されることになっております。米戦略防衛構想であるSDIには、さまざまな疑問が本委員会を通じても指摘されております。簡単にお尋ねいたしますが、SDIの研究に対し、日本政府は理解を示していると言っておりますけれども、支持はしていないということでよろしいのでしょうか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 SDIの研究については、これはロサンゼルスにおける本年初頭のレーガン大統領と中曽根総理との間の会談で、また、私とシュルツ長官との会談の中で、アメリカ側から説明がございました。これはいわゆる弾道ミサイルを無力化するんだ、そして非核兵器である、防御兵器である、こういうふうな骨子の説明がありまして、日本としてはこの研究に対しては理解を示したわけでございますが、これは非常に長期的な構想でございますから、今後、この研究が進む段階において情報の提供を受けたい、同時にまた、その後の問題についても協議をしたい、こういうことでアメリカとの間には基本的に合意がなされておるわけでございまして、最終的な判断というのは、これはやはり日本が平和国家という立場、日本の憲法その他の基本的な日本の立場というものを踏まえて判断をしていかなければならぬと思うわけでございますが、しかし少なくとも研究段階においてはこれを理解する、こういうことでございます。これは支持というのとは、基本的には相当な隔たりといいますか、あるのではないか、私はそういうふうに理解をしております。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 そうすると、支持はなさらないのだけれども理解を示す、しかも、支持もしていないのにSDIの技術協力を日本政府が実施することには矛盾があるのじゃないでしょうか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 要するに理解、研究段階の理解ということでありますが、支持ということになればやはり最終的な判断につながっていくという面があるわけですね。ですからそういう点で、支持と理解という面は、私はそれなりに違っておるというふうに解釈をしておるわけでございます。  それでは、これからどういうふうな協力をするかということにつきましては、これは例えば武器技術については武器技術の両国間の取り決めがございますし、また日本は日本の基本的な立場を持っておりますから、そういうものを踏まえて自主的に判断をしていかなければならぬ課題であることは申すまでもありません。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 理解をするということはそういう具体的な協力ではなくして、あなたのやっていらっしゃることについては私はそれなりに理解を示したのだ、だからこれが技術協力や何かで日本がそれなりの行動といいますか、そういう問題を出すことについては、理解を超えた範囲であると私は思うのでございますけれども、外務大臣と私とのすれ違い、行き違い、考え違いなんでしょうかね。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 これは今別に、日米間にはいわゆる武器技術協力についての取り決めがあるわけですし、この取り決めに基づいて日米間の協力が行われる。その際は、日本は日本の立場で自主的に判断をして協力するかどうかを決めるということになっておりますから、この限りにおいては、アメリカからもし求められればその基本的な姿勢で判断をしていけばいいのじゃないか、こういうふうに私は考えております。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 SDIに中曽根首相が理解を示した根拠には、ソ連方でも同様の研究が進んでいるという認識と説明がアメリカ側からあったと言われております。SDIと同様の研究がソ連でどのように進んでいると認識しているのでしょうか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 我が国としまして、ソ連が独自にこのような分野についてどの程度までの研究を行っておるかということにつきまして、具体的な情報を持ち合わせておるわけではございません。一般的にアメリカが公表しております資料、それから特にSDIにつきましては、レーガン大統領の戦略防衛構想ということで基本的に考え方をまとめた文書を一月早々出しておりますが、その中で触れられておりますように、一つは、ソ連が、御承知のように米国との間で結ばれております現行条約の範囲内で認められておる弾道ミサイルに対しますシステムを現実に配備しておるということ、それから、そのほかいろいろな在来技術、先端技術を含めまして、レーザー兵器でありますとかその他の兵器の研究をソ連が従来から行っており、それに対しては、アメリカが従来つぎ込んでおる金額よりもはるかに大きな金額をつぎ込んでおるということをアメリカの資料で説明をしておるということでございまして、それ以上に日本政府として何らかの具体的な情報を持ち合わせておるということではございません。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 それでは、SDIについては、今後アメリカ側から日本側へ協議したり説明することになっているというわけでございますけれども、どのようなルート、機関で行われるのか。明確になっていなければ、説明したり協議しないこともあるのではないでしょうか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 この点につきましては、先ほど外務大臣からも御答弁がありましたが、ロサンゼルスの会談で総理の方から、今後必要に応じ、節目節目に情報の提供、それから協議を求めるということを言われまして、レーガン大統領もそれはそのとおりであるというふうに答えたという経緯がございますので、当然そのような首脳間のやりとりを踏まえましてそういう情報の交換、協議というものが行われると思いますし、どのような場でということは特に今の段階で決まっておりませんが、少なくとも外交チャネルを通じて、そのような情報交換というものは今後随時行われることになろうというふうに考えております。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 外務大臣にちょっとお尋ねします。  これは大事なことなんですが、このSDIについては英国は支援、西独は協力、フランスは反対、日本は研究に理解というように、私の考えではそう思っています。間違っていたら訂正してくださって結構ですが、四者四様、これは小川新一郎の、素人の考えでございますから……。この問題がサミットの政治問題で、このサミットも国際経済の協力とかそういう話し合いの場から政治的な色彩がだんだん濃くなってきておりますが、そういう政治の問題の一つの焦点になると思われますが、この調整が検討されることになるのではないか。また、話し合いの中でどういうふうに展開していくかということは今ここで予想が難しいにしても、我が国の立場というもの、この四者四様の中で、大臣の御所見を承りたい。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 ボン・サミットの議題についてはまだ何も決まっておりませんで、今個人代表で相談をしておるわけですが、サミットの基本的性格は経済ですから、特にまた経済問題が世界で大きい問題になっておりますから、経済が中心で論議されると思います。しかし、これまでのサミットの経過から見まして政治問題が除外されるわけではありませんし、どういう政治問題が出るかはそのときの状況によって決まっていくわけでございます。したがって、今ここで政治問題として何が論議されるかということを私が言う立場にはありませんし、またそういうことは何も決まってないとしか言えないわけであります。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 でも、これは重大な国際問題で、西側陣営のアメリカを中核とする宇宙の米国戦略体制の中の話としてこれはまた大変に議題になる、ならない方がおかしいのではないかと私も思うのですが、確かになってみなければわからない問題です。  そこで、これはさておきまして、SDIに日本の技術協力や専門家の派遣もあり得ることになるのか、またこれはできるのかどうか、資金の面の協力は我が国としては憲法上等からできないのではないか、この二点いかがですか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 技術の点につきましては、先ほど大臣から御答弁があったとおりでございまして、現在そのような要請がアメリカからあるというわけでは全くございませんので、あくまでも仮定の問題でございますが、そのような技術というのが仮に武器技術という範疇に入るものであれば、これは既存のアメリカとの間の取り決めの枠内でケース・バイ・ケースに、先ほど大臣がおっしゃられたような立場に立って判断をして対処する、すなわち言ってきたものをすべてやるということでは毛頭ございませんで、ケース・バイ・ケースで判断して対応するということでございます。  資金についての御質問がありましたが、アメリカが外国に今後SDIの研究を続けていく過程において、資金的な協力を友好国あるいは同盟国に対して求めるというようなことは現在何ら考えられておらないようでございますし、現在の時点では余りにも仮定の問題でございますので、云々するということは必ずしも適当ではないと思いますので、御答弁は控えさせていただきたいと思います。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 最後に、それでは中国問題で一点だけお尋ねしておきます。  中国は、民間航空の育成強化の中の一環として航空保安システム近代化のために、日本から空港監視レーダーASR一基、二次監視レーダーSSR九基を購入する意向を持ち、先月その商談がまとまったやに聞いております。この商談も、欧米の有力航空電子素子機器メーカーと激しい売り込み競争の末に成立したのでありますけれども、このような高度技術品を輸出する場合ココムの規制に触れるのでございましょうか、触れないのでございましょうか。

恩田宗外務省経済局次長

○恩田政府委員 先生御指摘の案件は、二月の中旬に新聞に出ました東芝、日商岩井の案件かと思いますが、私どもとしてはこの案件についてはまだ詳細を承知しておりません。それで、一般論といたしましては、レーダーの中国等に対する輸出の場合につきましては、輸出貿易管理令に基づきまして通産大臣が所要の審査を行った上で、承認をするなり承認をしない、かようになるかと思います。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 そうすると、これは商談が成立しても今お話にあった通産大臣の許可がなければだめなのか、それとも対共産圏輸出規制におけるココムの範囲を超えている問題なのかどうか。こういった電子素子の非常に高度な技術の輸出、これも今私がお話ししましたように、ただこれは日本が簡単に商談に成功したわけではございませんで、アメリカやヨーロッパの有力会社と猛烈な競争の末獲得した商談だと聞いております。これは日本としては、逆に育成し応援をしてあげなければならぬ立場なんですが、そういった一つの面での抑制がある。しかし、こういった大きな中国と日本との外交上または貿易の面、友好的な面、ただ単にだめだと言って相手側が非常に要求しております近代化の足場になるこれらの問題については、外務大臣としては、通産大臣の範囲ではございましょうけれども、対中国貿易、外交の面から判断してもこれは考えなければならぬ問題だと思うのですが、大臣の所見はいかがでございますか。

恩田宗外務省経済局次長

○恩田政府委員 我が国としては、中国の近代化のためにできるだけ協力していくということでございますので、先端技術に関する輸出につきましてはココムとの協調を勘案しつつ、これらの問題については、中国に基本的に協力していくんだという立場から判断していく問題ではないかと思います。  レーダーにつきましては、具体的にその内容がどういうものか承知しておりませんので、これがココムの規制との関係でどのように判断すべきかどうかということについては、ちょっとここではわかりません。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 今政府委員から申し上げたように、ココムの枠内においては日本としてはそういうふうに、日中関係を安定させるためにも、日中の今日の友好関係に照らしてみても、積極的に進めていくというのが日本の姿勢であります。

小川新一郎公明党・国民会議

○小川(新)分科員 時間が参りましたので、終わります。

熊川次男自由民主党・新自由国民連合

○熊川主査代理 これにて小川新一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、竹村泰子君。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 政府開発援助、ODAのあり方について御質問いたします。  今問われているわけですけれども、六十年度予算案でも二千七百五十一億円、九・五%の伸びですね。ほかの部門が軒並み頭打ちだったり減額されていたりしますときに、これは極めて大幅な突出だと言えます。大臣の御尽力も大いにあったかと思いますけれども、しかし対外経済協力は量がふえることも大切ですけれども、その質がもっと重要だと思うわけであります。今日問われているのは、その質の向上ではないかと思うわけです。そのためにも、技術協力の量的、質的な充実をあわせて進めることが求められていると思います。  私は、きょうは時間が少ないので、技術協力の中でも国際協力事業団、JICAの進めております青年海外協力隊の問題に絞ってお伺いしたいと思います。  青年海外協力隊は二十周年を迎えるわけですね。ここいらでその活動を総合的に評価して、報告をお出しになってもよいと考えますが、最近そのための特別の調査などされたことがおありでしょうか。もしなければ、その調査をされる予定があるのでしょうか。また、経済協力評価は、委員会があってそれなりにやっておられるようですけれども、技術協力の方はいかがでしょうか。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 経済協力の評価につきましては、今先生御指摘のとおり、経済協力の評価委員会というものを外務省内に設けまして、過去四年来熱心に手法の改善等も含めまして取り組んでおります。その外務省の評価に加えまして、国際協力事業団自体、それから海外経済協力基金におかれても評価の作業を進められておられます。  外務省及び国際協力事業団におきます評価作業の対象としましては、技術協力も当然含んでおりますし、また、青年海外協力隊の活動もその評価の対象として評価作業を行っております。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 五十八年度を初年度として、三年間で新規派遣数を倍増する計画をお立てになっている。六十年度では八百名ですか、予算も七十七億六千五百万円、十五億円余り伸びているわけですね。一方では、発展途上国からの要請に対する実際の派遣数つまり充足率は、それまで五〇%前後で推移していますけれども、倍増された五十八年度以降の充足率、それをちょっとお示しいただきたいと思います。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 ただいま先生御指摘のように、開発途上国から青年協力隊に対する要望というのは非常に大きゅうございまして、大体その半分くらいを満たすという状況にございます。  それから御指摘のように、四百三十名でございました青年海外協力隊の年間の派遣数を五十八年から三年間で倍増ということで、六十年度の予算案におきましては八百名の定員をいただきました。その後のことをどう考えるかという御質問かと思いますけれども、ただいままだその六十年度の予算を御審議中でございますので、それ以後の計画を具体的に検討しておるという状況ではございません。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 充足率は順調にということですけれども、このことは今後に期待するということですね。  私、協力隊員のOBの何人かの方にお会いしてみたのですけれども、押しなべて大変孤独感を持っておられる。それは何も情緒的に孤独ということではなくて、私が向こうに行ってやったことが後で果たして役に立つのだろうか、もしかしたら一発勝負で終わってしまうのではないか、貴重な青春を投じて、そういう不安から来るもののようですね。現場で得た貴重な体験をどのように継承していくのか、この点についてまだシステム化と言うと言葉が少しがたいですけれども、されていないように思えますけれども、いかがでしょうか。まあ五代十年などと言いますけれども、帰国者が現状のようにばらばらに離散していくような状況の中ではそれも難しいのではないかなと、私はお会いしてみて思ったわけです。  これとの関連ですけれども、帰国者の経験を大学とか専門学校とか研究機関などで引き続き生かしていく、研究指導ができるような道をお開きになってはどうかなと思いました。例えばアフリカの農業なんかのことを見ましても、日本の農業技術をそのまま持ち込んでも成功するものではない、大変難しいと聞いております。現地で試行錯誤しながら苦労して学んできたとうとい経験を、後進の指導に役立たせるということが極めて大切と思われますけれども、大学や研究機関の門戸は必ずしも開かれていないのではないでしょうか。経験者の実践的な指導を受けた生徒がアフリカへ行く、あるいはアジアの国々にも行くということがあれば大変すばらしいことだと私は思いますけれども、学問というのはそういうものではないか。実際的な体験を役立たせる道といいますか、文部省、いかがでしょうか。

倉地克次文部省大臣官房審議官

○倉地説明員 私は、直接にはそちらの方を所管していないものでございますから、きょうそちらの方はまだ参っておりませんので、そちらの方に今の先生の御趣旨を伝えたいと思います。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 数点ただいま先生お述べになりましたけれども、一つは青年海外協力隊、もう終わりまして帰りました者が現在四千名余りおりますけれども、その経験をきちんと体系的に利用すべきじゃないかという御示唆は、全くそのとおりだと思います。  私どもが今やっておりますのは、青年協力隊の方々が行かれた国別ないし分野別の経験をまとめていただきまして、小冊子にまとめまして、それを後進の利用に供するというような形で利用させていただいております。それから、OB会という連絡の組織があるというのは御承知のとおりでございます。  それから、ただいまお述べになりました、例えばアフリカの農業などにその経験を生かすべきだという御示唆につきましては、先般十一月に安倍大臣がアフリカを御訪問になりましたときに、やはりアフリカの農業問題に腰を据えて基本的に取り組んでいくべきだというお考えから、アフリカの農業に関します総合的なミッションを来月派遣いたしますが、そのミッションのお考え方も、やはり重点国につきましては日本の農業のプロジェクトをつくりまして、青年協力隊のOBの方々などで経験の深い方にそこに駐在していただいて、研究及び指導を進めるということがいいのではないかというお考えが浮かんできている状況にございます。  それからもう一つ、つけ加えさせていただきますと、OBの方で四千名のうち約二割の方が、何らかの形で海外で今御在勤中でございまして、JICAの専門家という形で勤務しておられる方が今まで二百十名おられます。ちなみに、外務省も青年協力隊の出身の方を現在までに五名採用いたしておりまして、活動を願っているという状況にございます。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 二十年ですからね、まだまだこれからと言えるでしょうけれども、しかし、二十年というのは決して短くはないですよ。しかも、これは外務省の目玉商品と言っては何ですけれども、大変力を入れていらっしゃる、大変よいプログラムである、事業であるということは私も認めるわけですから、もう少し真剣に資源を生かすように、貴重な財産を生かすように、私もJICAの方にもお会いしましたし、OBの方たちにもお会いしましたけれども、まだまだ十分に生かされているとは思えなかったわけですね。そういうことをやはり真剣に検討していただきたいと思いますことと、文部省のお返事はちょっと私、満足できませんが、全く考えてもいなかったということですか。     〔熊川主査代理退席、小泉主査代理着席〕

倉地克次文部省大臣官房審議官

○倉地説明員 先生のお話、私ども大変共感する部分が多いわけでございます。ただ私、大変恐縮ですが、きょうこちらへ参りましたのはその問題でなくてほかの問題で参っておるわけでございまして、直接所管しておりませんので、先生の御趣旨を所管する方へよく伝えましてその点について十分考慮するように進めてまいりたい、そのように思っております。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 そうですか。文部省では、所管ではないとおっしゃいますけれども、やはりこれは大変大切なことですし、ぜひいろいろな部門でお考えいただきたいことだと思います。例えば教育、文化関係の方たち、二四・五%ですか、大変多く行っておられるわけですね。しかし、帰ってきても先生になれるという保証は全くないし、なれない例が多いという問題もあるわけですから、文部省で余り海外青年協力隊のOBのことまで考えていらっしゃらなかったんじゃないかなと思いますけれども、今後の課題としてぜひお考えいただきたいと思います。よろしいですか。

倉地克次文部省大臣官房審議官

○倉地説明員 今先生のお話のありました教員の問題でございますけれども、私ども承知しているところによりますと、多くの者は休職とか職務専念義務の免除という形で行ってまいりますので、帰ってきても職がつながるということで、スムーズにいっておるわけでございます。ただ、県によりましては、そのような制度をとっていないところもあるわけでございますので、今後、各県のその辺の実情をよく調査いたしまして十分適切な指導をしてまいりたい、そのように考えておるわけでございます。  また、先生の御指摘のありました点につきましては、私ども大変共感する部分が多いわけでございますので、十分留意してその点について進めてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 私が調べたところですと、そうみんなが休職を認められて、帰ってきてまた復職できるという形ではないようですね。文部省でどう把握しておられるかわかりませんけれども、その辺のところ、やはりお考えいただきたいと思います。  それから、先ほどの協力隊員の充足率、そしてただいまの大学の研究機関の門戸開放とも関連するのですけれども、協力隊員の帰国後の就職、再就職の問題ですね、これが大変大きい障害になっている。これは外務省も労働省もよく御存じと思います。協力隊員は原則として、専門的技術と実務経験とを要求されるわけですね。そこで、現に仕事を持っている青年の参加が望まれるわけです。しかし、約二年半も勤務先を離れることは、終身雇用、年功序列の日本の企業社会の慣行の中では、協力隊員の受ける不利益が非常に大きい。ほとんどの人がもとの職場に復職できないという事実があります。  また、行革行革といって公務員は削減されていますけれども、不況続きで民間企業の就業も非常に厳しい。これでは、協力隊員になろうと思っても二の足を踏んでしまう。事実、私がお聞きしたところでは、協力隊員の試験に受かっても、そういった障害に阻まれて実際に協力隊に行けない人たちがたくさんいると聞きます。勤務先から休職措置が得られないため、やむなく退職したりあるいは参加を断念するというケースも少なくないと聞いております。現職者の参加は全体の三割ぐらいと聞いておりますけれども、もちろん量的にも質的にも、これでは期待にこたえる、外務省の思っておられる隊員が集まるはずはないのではないでしょうか。  そこでお聞きしますけれども、民間企業の場合休職措置が得られるように、JICAから関係企業へ依頼をしていらっしゃるというお話を聞いておりますけれども、わずかな協力隊の事務局のスタッフがこれで回っておられる、あるいは指導相談課の職員が回っておられる、これがスムーズにいくとは私、思えないのですね。本当に、彼ら若い協力隊の方たちの将来を真剣になって心配してやっておられるかどうか。職業安定所、雇用問題の主管官庁である労働省は、このことでどう対応しておられますでしょうか。能力の開発、雇用政策の一環として、海外技術協力を労働政策にしっかりと組み込んで位置づけて、そして中長期の視点を持って対処すべきではないかと思いますけれども、労働省いかがですか。

佐藤ギン子労働省大臣官房国際労働課長

○佐藤(ギ)説明員 労働省といたしましても、海外協力隊の意義ですとか必要性については十分に認識しているところでございます。そこで、私どもといたしましても、民間企業において働いておられる方が外国に行かれまして大いにそういう点で活躍して、また帰ってこられて職場でその力を発揮していただけるような措置は重要であると思いますが、今後十分外務省とも連絡をとりながら、どういう措置が必要であるかということはさらに検討してまいりたいと考えております。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 ただいまの御質問に関連してちょっと御説明を申し上げますと、昭和五十九年、本年度から帰国隊員の進路特別対策という新しい予算をお認めいただきまして、系統的なオリエンテーションですとか帰国後の就職可能といいますか、候補になるような企業に関します情報の提供等を行っておりますが、それに加えまして、ただいま御審議願っております六十年度政府原案におきまして、今後の進路相談のカウンセラーを設けることを盛り込んでいただいております。これによりまして、いろいろ専門的な就職面でのカウンセリングに対応する一助にいたしたいと思っております。  それから、労働省との間では定期的に連絡会議を開きまして、労働省の持っておられる国内のネットワークを利用させていただいて、隊員の就職の手助けをしていただいているというのが現状でございます。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 外務省の御努力はわかるのです。遅まきながら、進路相談カウンセラーというのを今度新規に設けられておりますね。四百万円という金額でどれくらいのことができるかなと、ちょっと不思議に思うわけですけれども、とにかくしておられる。しかし、労働省ではこれまでにそういったことで何か本当に、海外青年協力隊の人たち、OBを入れまして、何か働かれたというか、がっちり外務省と取り組んでそれにこたえられたということが余り感じられないと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。

鹿野茂労働省職業安定局業務指導課長

○鹿野説明員 先生御指摘のとおり、確かに海外青年協力隊の方が帰国された後の就職問題につきまして、外務省あるいはJICAと連携をとりながら組織的な職業紹介体制が確立されているかと申されますと、確立されていないと答えざるを得ないと思うわけでございます。したがいまして、労働省としましても、今後海外青年協力隊の持つ役割などを十分認識しまして、具体的には、例えば海外協力隊の事務局のつくられております帰国前の就職希望情報、そういうものを早期にいただきながら、就職希望先での求人活動であるとか、あるいは帰国された後におきまして、やはり日本の労働市場も変わりますので、専門的な職業相談も必要であろうと思います。  先ほどの外務省のお答えになった、カウンセラーの方に対する職業相談の御協力とかそういう組織的な紹介体制を確立しながら、地方で就職困難な方に対する援助、あるいはせっかく技能とか専門知識をお持ちでございますので、そういうものに合ったような職業紹介、就職あっせんができるような体制につきまして、外務省と十分協議して確立していきたいと思います。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 大変正直なお答えをいただきまして、ありがとうございます。ぜひ、その貴重な財産を地に埋もれさせることなく、不況で大変就職難の折ですけれども、御指導いただきたい。これはお約束いただけますね。

鹿野茂労働省職業安定局業務指導課長

○鹿野説明員 外務省と協議しながら、積極的に対応してまいりたいと思います。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 厚生省にお聞きしたいのですが、国立病院、公立病院その他の施設でのこの人たちの受け入れはいかがでしょうか。

目黒克己厚生省保健医療局国立病院課長

○目黒説明員 国立病院での受け入れにつきましては、国立病院の医師とか看護婦を採用する場合には、本人の専門分野とか技術、経歴等を考慮いたしますとともに、チームワークになじめる人材を選ぶということが重要になっております。したがいまして、民間の医師や看護婦が海外派遣を終了いたしまして帰国した場合でございましても、国立病院に再就職させるという特別な配慮を行ってはおらないわけでございます。しかし、本人が再就職を希望するような場合には、そこの国立病院に定員の枠がある場合に限りまして、一般の志望者と同様の方法で選抜をして採用することは可能でございます。  ちなみに看護婦の場合でございますが、年間約四千人退職がございまして、約四千人就職しているといったような状況でございます。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 看護婦さんの状況は割といいのですね。しかし、今要請先から最も期待されているのはドクターなんですね。そういう意味で、やはり厚生省も、これまでは余りよい対応ができているとは私は思えませんけれども、ぜひお力添えを考えていただきたいと思います。  きょうは、時間がありませんからこのことは余り深追いいたしませんけれども、協力隊の海外体験は文字どおり草の根ですね。したがって、その地域での体験の還元に最も適していると思うわけです。そこで都道府県、各自治体との密接な関係が求められるわけですけれども、特に帰国隊員の就職、再就職問題について、どのような働きかけが都道府県、各自治体でされているでしょうか。身分措置としての求職条例の未定県がまだあると聞きますけれども、なぜおくれているのですか。外務省、わかりますか。

藤田公郎外務省経済協力局長

○藤田(公)政府委員 ただいま御指摘のとおり、求職条例をただいままで制定いただいております都道府県は、全国四十七都道府県のうち三十県ということでございまして、近く三つの県がこの制定を行ってくださるという方向で進んでいるというふうに承知いたしております。  それからそのほかの、求職条例をお持ちでない県につきましても、職務専従義務免除と申しますか、そういう形での都道府県の職員の青年協力隊員としての活動の道を条例で図ってくださっている県ないしは実効上でそれを打っている県も、若干ございます。  未制定の県の理由はなぜかというお尋ねでございますけれども、各自治体におかれましても、現在のような行政改革、定員の不足というような状況下で、なかなか人数をお割きいただけない状況にあるというのが基本的な問題点かと思います。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 労働省の御見解も聞きたいところすけれども、時間の関係で触れられません。  私は、このJICAの意思決定を下す理事会のメンバーを見ましたのですが、ほとんどが外務省、農水省、通産省などからの天下りのお役人ですね。どのくらいの意思決定をされるかということはわかりませんけれども、JICAの出身者は今一人ですか、関係省庁での経験を生かすことは結構ですけれども、政府レベルではない、もっと市民的な活力を入れるために、技術協力の現場でとうとい経験を積まれた方たちの起用をぜひ心がけていただきたいと思うわけです。運営委員会の方は別としまして、理事会の方ですね。  大臣にお聞きしたいのですけれども、技術協力は相手国との人と人との関係、それだけによきにつけあしきにつけ影響するところは、はるかに私たちの予断を超えるものがあると思うわけです。他国の物まねとかおざなりでは済まないと思うわけですが、協力隊に対する政府の基本姿勢を明らかにしていただきたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 海外青年協力隊につきましては、先ほどもお話がありましたように、私も、日本が行っておる海外協力事業の中では最も成功した例の一つだと思います。二十年の歴史を経ておりまして、確実に定着をしております。同時にまた、海外の評価も非常に高いわけであります。特に、私は昨年アフリカを訪問しまして、アフリカでは四割の協力隊員が活動しておりますが、今のアフリカのあの惨たんたる状況の中で、救世主のごとく大変な評価を受けて一生懸命に働いておられる協力隊員の皆さんの姿に非常に感銘を受けたような次第であります。これからの日本が平和国家として積極的に世界に貢献していくには、やはり青年協力隊のような事業を充実していくことが非常に重要じゃないかと思っております。  そういうことで、今回も厳しい予算の中で隊員の数をふやしたわけでございますが、今後ともこうした事業の拡大については努力を重ねていきたい。同時に、ちょうど二十年たって、ことし二十周年の記念事業もやりたいと思いますが、二十周年でやはりいろいろ今日までのあり方等について反省もしなければならぬ点もあると思います。特に、先ほどからお話しの帰ってからの再就職の問題等は、これから本当に安心して働いてもらうように、国としても自治体にお願いをするとか、積極的な努力をしなきゃならぬ、こういうふうにも思っておりますし、同時に内容の問題ですね、協力隊の内容の問題、質の問題といいますか、そうした面についてもっと向上を図っていくということも必要であろうと思うわけでありますし、まだ海外からの需要の半分も消化してないという状況でございますから、まずやはりこれを拡大をしていくということに、ことし二十周年を一つの礎石といいますか再スタートの年として、あらゆる面について充実を図っていかなきゃならぬ。これだけ成功した事業ですから、確実にこれを進めていくことが日本の世界に対する責任を果たしていく、あるいは世界からの信頼を確保していく上において極めて必要である、こういうふうに思っております。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 大臣の今のお言葉に私は期待をしておりますけれども、もう時間ですので終わらせていただきますが、今あたかもブームのようにアフリカの飢えが語られ、気の毒な海の向こうの遠いところのお話として貴重な善意のささげ物がされております。それはそれでもちろんすばらしいことなのですが、その飢えをつくっているのは、実は北の私たちが原因になっているところが非常に大きい。アジアでは先進国と呼ばれる北の国々が必要以上に食糧を買いあさって、人々の食べ物をかっさらってきてしまうがための飢えというものも少なくありません、よくおわかりと思いますけれども。そして経済援助として一握りの政治をつかさどる支配階級を助けているという、そういう海外援助も決してないとは言えない。非常に多いと言ってもいいのじゃないかと思います。世界で一時間に千五百人の子供が黙って死んでいく、南では毎日二千人の難民が国を逃れて他国に流入していく、飢餓最悪状態の人が南では五億人いる。こういう現実を踏まえまして、私たちのODAのあり方、今GNP〇・三三%でしょうか、それでいいのだろうか、根本的にあり方を考え直すべきではないかと思って、私はきょう質問させていただきました。このことはいずれまた違う場でゆっくりとやらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

小泉純一郎自由民主党・新自由国民連合

○小泉主査代理 これにて竹村泰子君の質疑は終了いたしました。  次に、橋本文彦君。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 米軍の相模総合補給廠の問題についてお尋ねいたします。  補給廠といえば昭和四十七年の八月に、いわゆるベトナム戦争の戦車輸送阻止運動が連日新聞紙上をにぎわした年でございますけれども、今回、昨年の十一月三日付の新聞で、いわゆるM109自走りゅう弾砲が配備されておる、こういうニュースが出まして、地元はびっくり仰天したわけでございます。     〔小泉主査代理退席、主査着席〕 直ちに私の方ではこの補給廠を視察を申し出たわけでございますけれども、通常ならば三週間以内に許可がおりるというところが二週間たっても何の返事もない。そのあげくが、今はとにかく見せられないという返事で視察を断られた経緯がございます。  そこでお尋ねしたいのは、ベトナム戦争最中のこの補給廠の機能、それからベトナム戦争終結後の現在に至るまでのこの補給廠の機能がどのように変化しているのか、まずお答え願いたとい思います。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 相模の補給廠は、御案内のようにアメリカ陸軍の主として車両、通信機械等の修理、整備、補給を行っておるところでございます。ベトナム戦争中には、ただいま先生御指摘のように、ベトナム戦争において使用されました戦車等の戦闘車両など、かなりの数量のものが相模原の補給廠において修理をされ、またそれがベトナム戦域に送り返されるというようなことがございましたが、もちろんベトナム戦争につきましては、その後戦争があのような形で終結いたしまして、現在は通常のただいま申し上げましたような補給廠としての機能を果たしておる、こういうのが現状でございます。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 通常の機能というのがよくわからないのですが、そうしますと、戦車あるいは兵器はそこには備蓄されていないと伺ってよろしいわけですか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 補給廠の機能は、先ほど申し上げましたように車両、通信機械等の修理、整備、補給ということでございます。現在相模原の補給廠に保管をされております。そのような車両等の総量あるいはその内訳等につきましては、アメリカ側は軍の運用の細部にわたる問題ということで公表をいたしておりませんので、そのような数字は私どもといたしまして承知いたしておりません。  しかしながら、新聞報道で伝えられましたような、いわゆる有事に備えましてのアメリカ軍のための備蓄あるいは事前集積というような形での装備の運用については、これはそのようなことは考えられていないということを、私どもの照会に対しましてアメリカ側は申しております。そのような意味におきまして、相模の補給廠の機能が最近になりまして変化をしておるというようなことはございません。  ただ、他方におきまして、もう一点補足させていただきますと、在韓米軍の方でいろいろ装舖の更新が行われておる由でございまして、その関連で韓国の方において不用になりました在韓米軍の装備等を、韓国にスペースがないものですから、これを相模原に持ってきて同補給廠で一時的に保管をしておる、そのような意味においての車両等の動きが最近においてあるということは米側も私どもの照会に対して説明をしております。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 それではまず、この補給廠視察が従来は許可されておった、それがいつごろから許可されなくなったのか、その日時をお伺いしたいと思います。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 一般的な方針として、外来者の訪問、補給廠におきます……(橋本(文)分科員「細かいことはいいんです。いつからで結構です」と呼ぶ)一般的に外来者の訪問をお断りするというのが最近になりましての補給廠の方針であるというふうには私ども伺っておりません。先生の御視察の御希望につきましては私どももアメリカ側に取り次ぎさせていただいた経緯がございますので、その際におきましてアメリカ側がお断りしたという経緯は存じておりますが、今後とも恒久的にそのような視察をお断りするというのが米軍の一般的な方針になったというふうには承知いたしておりません。恐らくその当時の状況のもとにおきまして米軍の判断におきまして視察をお断りした、こういうことであろうというふうに理解をいたしております。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 最近において視察が許可されたのはいつですか。言い方を変えれば、最後に視察ができたのはいつでございましょうか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 個々の事案につきまして、視察を先方が一番最近認めたのはいつかということにつきましては、私どもちょっと存じておりません。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 北海道に島松演習場というのがある。そこにM109を配備するというような動きがあった。ところが、アメリカの方でも、非常に難しい問題ということでいわゆる方向転換をして、それを相模補給廠に持ってきた、こういうような論評も一部行われているわけであります。今、事前集積の問題とかあるいは事前配備の問題ではない、このように御答弁なされましたけれども、十一月三日以降、地元の方では連日のように大騒ぎをいたして、昨年の十一月二十日には、キャンプ座間にある在日米軍司令部の広報室長D・M・ハリスというのが非公式ながら市の職員に対しまして、確かにM109は現在相模補給廠に六面置いてある、しかも、これは戦車ではないと。それは戦車でございません。これは動く大砲と言われております。  そこで、お聞きしたいのですが、外務省ではM109走りゅう弾砲というものをどのようなものと理解しておられるのか、それをお尋ねいたします。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 御質問の趣旨を必ずしも理解いたさないわけでございますので、ちょっと適当な御答弁を申し上げられるかどうかわかりませんが、M109というのは、まさにただいま委員御指摘のように、アメリカの陸軍が採用しております百五十五ミリの自走りゅう弾砲ということでございまして、そのようなものとして私どもは承知いたしております。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 このM109にはいわゆる核が搭載できるということはいかがでしょうか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 公表されておる資料によりますると、核弾頭を装てんすることができるというふうに私どもも承知をいたしております。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 先ほどの答弁の中で、在韓米軍の兵器のいわゆる一時保留という形で相模補給廠に来ているということは、現在外務省は認めておるわけですか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 新聞の報道等によりまして、相模の補給廠にかなりの量の車両等が搬入されておるということでございましたので、私どもといたしましても、アメリカ軍の装備の運用あるいは相模補給廠の機能そのものとの関連で何か大きな変化があり得るのかということにつきましては安保条約の運用との関連で当然の関心事項でございますので、米軍に照会をいたしました。それに対しますアメリカ側の説明が先ほど申し上げたようなことでございまして、私どもも、アメリカの説明をそのように受け取っております。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 そうすると、外務省としては、M109が現在相模補給廠にあるということは公式にお認めになるわけですね。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 M109の存在そのものについては、私どもは、公式に認めるとか認めないとかいうことを申し上げる立場にございません。それは、先ほども申し上げましたが、アメリカ側は、個々の具体的な装備の運用、移動につきましては公表しないという方針でございまして、これは軍隊の特性というものから考えますとまた理解をしなければならないということでございますので、そのように受けとめておる次第でございます。  ただ、もう一点だけ補足させていただきますと、在韓米軍の装備の更新ということでございますから、諸般の情報等を総合いたしまして一つの推論として申し上げますと、韓国で要らなくなった装備をこちらへ持ってきて相模原に保管をする、同時に韓国の方で在韓米軍が新たに必要とする装備をアメリカの本土から韓国へ送る、その過程におきましてそのような装備が一時的に相模原にとどまるということは排除されないわけでございまして、そのような過程の中でM109の問題が出てきたのではないかと、これは推測でございますが考えられるところでございます。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 公式的な見解では云々できないと言うけれども、じゃ外務省としては、現在109が相模補給廠にあるということは御存じなんですね。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 これは先ほど申し上げましたように、あるともないとも、ということは私どもは承知しておりません。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 先ほどの答弁では、いわゆる在日米軍司令部の方に問い合わせをしてみた、その結果109があるというような御返事に聞こえたのですけれども、違いますか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 あるいは私の答弁が不正確であったかもわかりませんが、米軍に照会いたしましたのに対しましてアメリカ側の説明は、具体的にM109自走りゅう弾砲の存否について回答してきたものではございませんで、先ほど御答弁申し上げましたようなことで、一般的な在韓米軍の装備の更新との関連で車両等の移動があるということでございまして、具体的な個々の装備の内容につきまして公表ができないということでございますので、その点についてはひとつ御理解をいただきたい、こういうことでございます。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 私が先ほど申し上げました在日米軍司令部の広報室長D・M・ハリスの言葉が新聞報道に出ております。たしか十一月二十二日ごろの新聞と思いますけれども、その記事を恐らく拝見したと思います。そういう記事がありながら、あるのかないのかわからないようなこんにゃく問答をこれ以上続けるわけにいきませんけれども、大事な問題ですので、なぜ外務省は事実を確認しないのか。地元の方では今非常な憤りを持っております。しかも核搭載が可能な兵器となれば、大変な問題です。外務省の方で何とかそれを認めたくないという気持ちはよくわかりますけれども、そこに働いておられる方々が事実としてその存在を認めておる。しかも広報室長みずからがあるということを明言しておられる。しかし、ここに至ってもまだ外務省はあるともないともそんなことわかりません、こんなことでもって地元の皆さんあるいは神奈川県、ひいては日本の国民が納得できるでしょうか。少なくともどういうものがあるか、確認は急ぐべきじゃないでしょうか。視察は許してもらえない、外務省は何もわかっていない。  聞きます。相模原市は神奈川県下で人口的には何番目の都市でございますか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 大変恐縮でございますが、まことに不勉強で申しわけございませんが、ただいまの御質問には私はお答えできません。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 第一番が横浜市、二番目が川崎市、三番日が相模原市でございます。参考までに、四番目が横須賀市。  では、この補給廠が相模原市役所とどのくらいの距離にあるか、わかっておりますか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 大変恐縮でございますが、私、現地に行ったことがございませんので、存じません。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 相模原市役所、まさに相模原市のいわゆる中心地である市庁の前の道路から直線コースで真っすぐにありまして、一キロでございます。  では、この相模補給廠の面積というのはわかりますか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 面積につきましては、土地全体の面積が二百十四万五千五百四十二平米というふうに承知しております。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 数字では二百十万平米ですけれども、いわゆる縦、横にすると何キロ、何キロになるかわかりますか。図形を見ればわかると思いますけれども、大体二キロ掛ける一・一あるいは一・二キロくらいの長方形でございます。これをもっとわかりやすく言うと、この国会議事堂が相模原市役所としますと、その一キロ先といったら皇居です。具体的に言えば東京地方裁判所がある建物、あのあたりが一キロでございます。そこにゲートがある。しかも、二キロ掛ける一・二キロというような面積は、具体的に言えば皇居、北の丸公園あるいは皇居外苑、これを含めてももっと大きいのが二百十万平米でございます。この国会議事堂を例にとれば、いわゆる皇居全域が相模原補給廠と思ってもらえば一番わかりやすい。しかも、ゲートは、通称西門と言われておりまして、そこは相模原市でも屈指の近代化が進められております商店街です。そういうところに核装備ができるM109というものが現実に存在しているということを市民がみんな知っておる。もし仮にこの国会議事堂のすぐ目と鼻の先の皇居にそういうようないわゆる動く大砲というものが配備されたら、局長、どうしますか。

栗山尚一外務省北米局長

○栗山政府委員 御質問にそのままお答えするのは必ずしも適当ではないと思いますが、先ほど申し上げましたように、在日米軍の装備というものが基本的に何か非常に新しい兵器が導入されつつあるとか、それから、先ほどの繰り返しになりますが、相模補給廠が在日米軍との関連で新たな装備の集積機能を持つようになったというようなことはございません。そのような意味におきまして、地元の住民の方々の御関心は私どもよく理解いたしますが、しかしながら在日米軍との関連におきましてそのような意味での大きな変化が生じたということは、アメリカ側はないと申しておりますし、また私どももそれはない、そういうことがあれば当然日米間で防衛当局あるいは政府全体としていろいろ話し合いが行われるべき性質のものでございますので、当然のことながらそういうことはないと理解いたしております。  M109の問題につきましては、先ほども申し上げたとおりでございますが、一般論として、在韓米軍の装備との関連で韓国から装備がこちへ来る、その反対の流れといたしまして韓国へ行くべき装備が一時的に短期間相模原にとどまるということはあり得たであろうと思います。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 全然質問の趣旨がわかってくださらないようですな。要するに国会議事堂の目と鼻の先に皇居がある。そこにそういうものがあったら一生懸命事実確認をするのじゃないかということを聞いたのです。相模原市は田舎だからそんなもの知るかいということのようでございますので、これで終わりにいたします。  実は昨年、この補給廠が遊休化している、しかも面積的に約五十万平米があいておるというので、地元では何としても早期返還してもらいたいということで、私もこの分科会で質問させていただきました。その質問のときには既に在韓米軍からのこういう兵器がそろそろ備蓄されつつあったということが現実にこの時点でわかりました。したがいまして、この問題を契機にさらに補給廠の早期返還という運動が強くなるでありましょうし、また施設庁としてはこの野積み場の問題、新しい段階を迎えた現在、どのようにとらえておられるのか、まずお答え願いたいと思います。

大場昭防衛施設庁施設部連絡調整官

○大場説明員 相模原補給廠は、装備品の保管、整備、補給等のために使用されており、米軍にとって重要な施設でございますので、返還の見通しはございません。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 前回よりもさらに厳しい姿勢ということが今よくわかりました。  話を変えます。やはり外務省が所管しております財団法人アジア福祉教育財団というのがありまして、ここでいわゆるインドシナの難民を日本が保護しているわけでございます。これは要するにインドシナの民生安定あるいは日本とインドシナの友好親善を強化する、こういう大きな目的のためにつくられたものでございます。  神奈川県の大和市にいわゆる定住センターというのがございます。大変な人数がそこを卒業いたしまして現在就職等をしております。ところがその内容を見ますと、我が国は大変な経済大国と言われながらも、この難民の受け入れ人数は何と十三番目。小さなスイスよりはるかに下だ。その数も本当に少ない。こういう数字が現実的に出ますと、なぜこれで友好親善なんかに寄与できるのかという疑問が出るのですが、今後の対策としていかがでしょうか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 今、先生御指摘ございましたインドシナ難民の我が国への定住者は、先月末で約四千百名になっております。ただ、先生御指摘のように他国に比べますと定住者が非常に少ないわけでございますが、これは主といたしまして我が国に一時滞在しておられます難民の方々にも、定住先として第三国を希望される方が非常に多いという事情によるものでございます。さりながら我が方といたしましては、日本に定住を希望される方につきましてはできるだけ定住後の我が国社会への円滑な溶け込みを図るよう努力していきたいと思っております。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 今、アメリカ以下ずっと勘定してまいりますと十三番目になるということを質問しましたよね。ちょっと恥ずかしいのじゃないかなということを質問したのですが、もっとダイレクトに答えていただきたいのです。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、昨年末の数字で確かに日本は十三番目でございます。かつ、その数字が例えば上位五カ国ぐらいに比べて非常に少ない、これまた事実でございます。先ほど御説明させていただきましたような事情もこれあるということを御理解いただきたいと思います。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 先ほども、アフリカ難民、アフリカの危機ということで日本としても大きな行動を起こそうというような時期でございます。このインドシナの難民問題、大分社会問題化されてから時間を経過いたしまして、やや忘れかけている嫌いがありますけれども、本来の目的は友好関係を高めるのだというところにあるわけでございますので、今後ともその辺のことをよく配慮していただきたいと思います。  それで、幸いにしてここを卒業した方が就職できるわけでございます。その就職率はまず一〇〇%近いわけでございますけれども、しかし転職率たるや六〇%というようなデータが出てまいりまして、この原因はやはり言葉が違うあるいは民族意識が違うあるいは生活環境が違う、いろいろな原因がありましょうけれども、とにかく転職率が極めて高い。二度、三度と繰り返しているうちにこんなものかなという形で落ちつくようでありますけれども、これはやはり難民でございますので、大変な生活不安もありますし、自分たちの感情というものも不安に揺れ動いている。しかも、その中で転職ということは一時的にも仕事をしない、収入の道が途絶えるという、精神的にも物質的にも大変苦労するわけでございます。その辺でネックになっておるのがやはり言葉の問題になると思います。また、難民の中にもいわゆる教育を受けようという方がおられます。この間、中国残留孤児については、高校進学の場合にはたしか三十万円貸し付けられる、そして毎月一万円の貸し付けが行われることもお聞きいたしました。ぜひ、難民についてもそういうような配慮を願いたいと思っております。  これは現実には極めて難しい問題と思いますので提言だけにとどめさせていただきますけれども、また難民の方々がてんでんばらばらに散らばりまして働いているわけでございますけれども、実態を申し上げますと、その働き先は日本人がもう嫌がって就職しないような分野に配属されておる、ほかに働き手がないからそこに難民が入っていくという、民族の意識を本当に逆なでされるような環境におられる。これで果たして友好諸国との親善が強化できるのだろうか、こういう疑問を持つわけでございます。そういうわけで、これは職場の問題でございますけれども、やはりその前提として教育レベルが低いということも原因じゃなかろうかと思います。そんなわけで教育問題に配慮していただきたいし、また現場におります人の言葉を聞きますと、これはアフターケアが一番大事なのだ。その一つの方法として施設をつくって、そこで難民たちが集まってお互いに今の状況を話し合って、その結果明日に向かって働くという場がほしい、そういう声も強い。それから、生活相談という形でもって、現在相当数の方がおられますけれども、今五千人というインドシナの人たちが日本にいると思いますが、それに対してわずか四、五十名の人間が配備されておる。そういう方々の声が届かないし、そういうことでもって今現実にできることはいわゆる定住相談員というか、その辺の拡充を図るべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

飯島光雄インドシナ難民対策連絡調整会議事務局長

○飯島説明員 ただいま委員御指摘の点は、私ども難民事業に携わっている者といたしましては、まさに今後私どもに課せられた最大の課題と考えているところでございます。  幸いにしまして、委員御指摘ございましたように、難民の就職率はほとんど一〇〇%でございまして、就職希望者はすべて就職しておりますけれども、就職後転々と職を変える難民は必ずしも少なくない、かなりいる。この就職、再就職の問題を含めまして、私ども官民挙げて難民の世話をして、社会に送り出した後の定住以後の問題、これを今最大の課題として正面から取り組んでいるところでございまして、幸いにして、外務省の予算でございますが、昨年度からは定住相談員拡充のための予算もつけていただきまして、今年度もさらにそれらは少しふやしていただいておりますので、今後とも私ども政府関係各機関、それから民間関係諸団体と密接に協力いたしまして、この相談員拡充を含めまして、定住後の難民の生活の拡充に努力していきたいと思っている次第でございます。

橋本文彦公明党・国民会議

○橋本(文)分科員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、M109につきましてはまた別の機会に改めて論議したいと思います。  終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて橋本文彦君の質疑は終了いたしました。  次に、簑輪幸代君。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 私は、予算委員会の一般質問で外務大臣にお尋ねしたいと思いましたところ、たまたまシリアの外務大臣との会談があって、重要な外交日程ということで御出席いただけなかったものですから、お尋ねしようと思った問題をきょう大臣に直接お尋ねいたしますので、よろしくお願いしたいと思います。  アフリカ問題については大臣も大変造詣が深いと思いますけれども、特に飢餓問題を中心にいたしまして国民の関心も大変広くなってきているところでございます。そこへ、御存じのようにこの夏、国連婦人差別撤廃条約の批准という段階を迎えまして、男女平等という観点でも南アフリカのアパルトヘイトの問題が取り上げられております。私は、南アフリカのアパルトヘイト政策に関連して日本政府の態度をただしたいと思います。  人種差別ということで世界的非難を浴びている問題でございますので、国連では南アフリカへの投融資の禁止、武器輸出の禁止、核兵器の製造開発の協力の禁止、貿易の促進措置の中止などを決議して、南アフリカのアパルトヘイト政策に対する制裁措置をとっております。南アフリカのアパルトヘイトの現況は大変重要な段階を迎えておりまして、新聞でもいろいろ報道されておりますけれども、南アフリカの警察がこのほど南アフリカのスラムの一つ、ケープタウン市郊外のクロスロードで強制送還に抵抗する黒人住民を襲撃、約三百人を殺傷したというようなことも言われておりますし、南アフリカ政府は、世界の非難にもかかわらず白人による支配を貫くために分割統治ということを強行しているわけでございます。南アフリカ政府がこうしたやり方を早急に改めることが必要であると思いますし、こうした基本的人権をいつまでも無視する政策が許されるわけはないと思いますが、今日なおこういうことが強行されているという状態です。  日本政府はかねてから人権外交という見地でこの南アフリカのアパルトヘイト政策への措置を幾つかとっておられるわけですけれども、国連外交というふうにも言われておりまして、国連の決議に基づく厳正な制裁措置がとられなければならないと私は思うわけです。この点に関連して、南アフリカのアパルトヘイト政策に対する日本政府の基本的な態度をまず最初に大臣からお伺いしたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 先般の予算委員会の一般質問では、ちょうど私、シリア外相と会談がございまして、失礼をいたしました。この場をかりましておわびいたします。  次に、今お話しの南アのとっておるアパルトヘイト政策についての我が国の基本的な態度でございますが、今さら申し上げるまでもなく、我が国は断固としてこのアパルトヘイト政策には反対をしております。国連の場においてもこの基本的立場をしばしば表明しております。今後とも南アに対しましては、同政策をできるだけ早く撤廃して、基本的人権と自由を尊重するようあらゆる機会をとらえて訴えていく考えでございまして、こうした観点から我が国はいろいろ措置をとっておりますが、その措置によって南アとの関係を制限的なものにしておるわけで、例えば南アとの関係を領事関係にとどめておりまして、外交関係は有していない。これは、南アがアパルトヘイト政策を改めない限りは外交関係を持つ考えはありません。また経済面では、本邦企業による現地法人設立等の対南ア直接な投資は認めない、こういう姿勢を貫いております。さらに、国連決議の趣旨を踏まえて、スポーツ、教育、文化の分野における日本、南アの間の交流も制限をしてきておりますし、また国連の武器禁輸決議も厳守しておる。こういうことで、南アに対する制限政策は今後ともとり続けていき、南アに反省を求めてまいりたいというふうに思っております。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 日本政府の対応の中で今おっしゃいましたような基本的な態度がとられてきているとは思いますけれども、そういう中でも通常貿易についてはこれを維持するというような姿勢がずっと続いてきているわけですね。ここでの問題点というのは、実にいろいろ世界の人々から問題を指摘される余地もあるわけでございまして、昨年の七月に国連の経済社会理事会人権委員会に「南アフリカおよびナミビアに対する政治的、経済的、軍事的援助についての最新の包括的リスト」というものが提出されているわけでございますが、こういう包括的リストが国連に出されている、人権委員会に出されているということについて大臣は御承知でいらっしゃいますでしょうか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 この点につきましては、私も報告を受けております。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 この包括的リストというのは国連決議に基づいてつくられたもので、スポーツ、文化交流など人のブラックリストと並ぶ企業のブラックリストというふうにも言われているわけでございます。ここでは我が国の銀行、商社、自動車、電機メーカーなど大企業五十四社がリストアップされております。全体としてはこういう膨大な資料でございますけれども、この中で関係する日本企業、大企業が大変問題であるという指摘がされております。ここで指摘された大企業が一体南アフリカに対してどのような経済援助を行っているのかというようなことについてお答えをいただきたいと思います。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘ございました報告書は、先生仰せのように人権委員会の下部機構でございます差別防止少数者保護小委員会に提出されまして、最新版は昨年の七月に発表されたものでございます。いわゆるカリファ報告と言われておるものでございますが、その中に日本関連の企業といたしまして五十六社列記されております。このうち、私どもの方で調べまして、三社につきましてはちょっとまだ識別ができておりませんが、そのほかの五十三社につきましては関係省庁を通じましてそれぞれのところに実情調査をいたしました。私どもが実情調査いたしました趣旨は、先ほど大臣が述べましたように我が国は南アへの直接投資を許可しないという方針をとっておるものでございますから、その違反があるかないかという趣旨から調査したものでございます。今その調査結果がほとんど最終段階になっておりますが、私どもの承知いたしております限り、政府の方針としております直接投資に違反した事実はないと思っております。  その他のいろいろな経済活動についての記述にも相当事実と違うところがございます。これはこの報告にも述べてございますが、主として公になっておる新聞報道等をもとにつくったということでございますのでそのような差ができてくるのであろうと思います。私どもは、この全企業についての正確な情報を確認いたしました上で国連側に連絡したいと考えております。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 このリストでは日本の銀行が南アフリカの企業への金融上の援助を行っているというふうに指摘しております。銀行は東京銀行とか長期信用銀行とかかなり有名な銀行でございますし、こういう銀行が金融援助を行っているという指摘が名指しでされるということはまことに重大なことだと思うのです。金融機関が指摘されておるその問題について、日本政府としてはこれらを調べてどういう結論をお出しになったのですか。それぞれの銀行についてお調べになったものがあれば、簡単で結構ですがお答えいただきたいと思います。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 金融機関につきましては大蔵省を通じて現在調査をしていただいておりますが、本邦に住所を有します企業につきましては、直接投資の実績と申しますか直接投資の事実はないという確認を得ております。ただ、海外法人につきましては必ずしも確認できない点がございますので、その点、現在調べております。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 これは私が知り得た範囲ですけれども、国連反アパルトヘイト特別委員会の資料では、南アフリカ企業の債券の引き受けを日本の銀行あるいは証券の欧米現地子会社が行っているというふうに聞いているわけです。こういう点で、今のところ実態がまだつかめないということですけれども、きのうきょう指摘されたものというよりは、これまで何度も何度も指摘されてきて、それを積み重ねて最後にまとめたものが昨年出されたわけですね。ですから、実態がつかめないということを今日もなおおっしゃっているというのは私はちょっと納得できないと思うのです。日本に住所がある銀行ならともかく、現地の子会社ということになるとわかりにくいとおっしゃっておりますけれども、これはどのように、いつまでにはっきりできるものでしょうか。何としても明確にするためには、日本にちゃんと系列の本社といいますか本体があるわけですから、そこを通じて機敏にやればできるはずのことではないかと私は思うのです。ですから、そういう手だてを早急にとり、明確に結論を出して御報告をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

三宅和助外務省中近東アフリカ局長

○三宅政府委員 日本法人につきましては、既に御説明いたしましたように直接投資を規制しております。ただ、日本法人でない海外の法人につきましては、当然本店を通じてそれぞれ自粛のことをやっておりますが、今まで大蔵省を通じまして調べておりますが実態が判明しないということでございます。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 ですから、私が申し上げましたように今回初めて指摘されたわけではなく、この金融機関の問題については過去に何度も指摘されている経緯もございますので、今の段階で、まだ調べておりますでは済まされない、もし本気でなさる気があるならば、それは本社を通じてやれば即できることではないか。そうして、それをやらなければ到底信頼をから得ることはできないのではないかと思うのです。それをいつごろまでになさるのかということも含めてもう一度お答えいただきたい。

三宅和助外務省中近東アフリカ局長

○三宅政府委員 本件につきましては大蔵省と相談して、どの程度可能か、私たちが承知している限りにおきましては、日本の法令が及ばないという意味においてなかなか難しいということでございますが、なお大蔵省と協議いたしまして、どこまでできるか検討してみたいと思います。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 そういうのんびりした態度がやはり世界の非難を浴びるのだと思うのです。私が再三申し上げておりますように、国が直接投融資を行わないといっても、銀行が肩がわりして、そして現地の子会社が肩がわりをして金融上の援助を与えるということになりますと、やはりこれは実際上の経済的援助ということで制裁措置と矛盾することになるのではないか。事実上しり抜けになってしまうのではないかと言わざるを得ないと私は思うのです。この点については、ぜひとも緊急に厳正な態度で臨んでいただくことが必要だと思いますし、そういう意味での大臣の御決意を伺いたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 今、政府委員から答弁しましたように、この問題は日本の法令の及ばない範囲ですから、直接調べるというのは非常に難しい点があると思います。しかし、これは監督しているのが大蔵省ですから、大蔵省と相談しまして、真相を明らかにするように努力はしてみます。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 それはぜひ早急に、厳正にやっていただきたいと思います。  次に、南アフリカのアパルトヘイト政策への制裁として、七七年十一月に国連安全保障理事会決議で軍事援助の禁止を明確にしております。この軍事援助禁止決議の中には、核兵器の製造、開発についての一切の協力を行わないということも含まれております。決議は、南アフリカがまさに核兵器を製造しようとしていることに重大な関心を有するためだとされているわけでございます。このような安全保障理事会の決議を遵守する立場からは、日本は、核兵器の製造、開発に関連するいかなる協力も行わない、厳正に対処する態度をとるというのが基本的な姿勢だと思いますが、これはいかがでしょうか、大臣。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 核兵器の問題につきましては、我が国は、核不拡散条約の締約国、非核兵器国に対しては核爆発装置の取得を援助するようなことを一切してはならないという義務を負っておりますので、この条項を誠実に遵守してまいります。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 南アフリカ共和国は核防条約に入っているのでしょうか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 南アは核防条約の当事国ではございません。ただ、御説明いたしますと、我が国は当事国でございますので、相手が条約の当事国、非当事国にかかわらず、この条項の義務を受けます。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 今お示ししましたこの包括的リストの中には、日本が核兵器の開発に協力している疑いがあるという重大な指摘が行われているわけですね。これは日立、東芝、三菱の三社で、南アフリカのケーベルグ原子炉への機材を輸出して、これがバリンダバのウラン濃縮工場の建設のためのものであるという指摘がされております。このウラン濃縮工場というのは核兵器製造用の高濃縮ウランもつくれる能力を持つと言われておりまして、この指摘に対して日本政府は一体どのようなコメントをなさっておられるのでしょうか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  東芝、三菱電機、日立につきましては、関係省庁を通じて実情調査いたしましたところ、原子力に関する取引の実績はないということを確認いたしております。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 どのような方法で調査されたのでしょうか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 外務省といたしましては、通商産業省を通じて調査を依頼いたしました。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 日本政府のコメントとして国連に報告されておりますのを見ますと、通常の輸出取引の枠内であるからこれは関係ないという言われ方をしておりますけれども、通常輸出取引なら、それが核兵器開発につながる原子力発電への関連機材の提供であったとしても、それはいいとお考えなのでしょうか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 先生御指摘のコメントというのは、カリファレポートの昔の版に対するコメントかと思いますが、この三社が通常貿易に従事したことはあると思いますが、南アの原子力関係に関する関連資材を輸出した実績はないということでございます。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 通産省がそのように報告をしたということだけで外務省はそれを国連にこれから報告するのでしょうか、それとももう既にしたということでしょうか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 昨年七月のカリファレポートに対する我が国の一般的な回答というのは、最初に申し上げましたように現在まとめておる段階でございますので、先ほどの三社の核兵器関連の部分につきましてはこれから返事をするところでございます。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 初めて指摘をされたというわけではないのですね。大分昔の指摘ではありませんか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 カリファレポートの最初の版が出ましたのが一九七六年でございます。今回、昨年また新たなものが出ましたので、現在私どもが作業をしておりますのは、それについての最新の日本企業の関連の調査をして国連に返事をするという段階でございます。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 そうしますと、過去に指摘をされたときには通常の輸出取引だということで国連に報告をしているけれども、今回同じことが重ねて指摘をされたのに対して、もう一度調査をしてみたら、それは違う答えになってくるということになるのでしょうか。同じような通常輸出取引ですという答弁ではなかったのでしょうか。どうもちょっと違うように思うので、はっきりさせていただきたいと思います。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 私、七六年の報告に対する該当部分の日本側の回答を手元に所持しておりませんので答弁がちょっと混乱して申しわけないと思いますが、今回私どもが調査しておりますのは、この三社についての核に関する協力があるかないかというところを調査いたしておりますので、まだ全体的にどういう形の回答にするかは作業中でございますが、この核関係に関する協力は一切ないということは明確にしたいと思っています。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 明確にしたいと思うと言ったって、調べてみて関連するかもわからないわけでしょう。それはちょっとないと思うのですね。よくよく調べてみてその事実を明らかにするということであって、核開発に関係がないということを明らかにしたいと言うのは、ちょっとおかしいと私は思うのです。  過去にそういう調査をしたときにやはり指摘をされていながら、通常の取引だというふうに回答していることから見ましても、今回調べてみたらまた違うということになると、実際信用ならないということになります。ですから、通産省を通じてという話でございますけれども、外務省が責任を持って、それぞれの企業が果たして真実を述べているのかどうかも大変疑わしいと私どもは思っておりますので、その点も含めて、きちんとした調査をぜひしていただくように外務省からの責任ある御答弁をいただきたいと思います。もちろん通産省との協力によってということになると思いますが。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 企業を主管しております官庁が通産省でございますので、通産省の御協力が要るわけでございますが、もちろん政府といたしまして、企業の申し述べますところ、それから政府が関与しております輸出関係の規制があるわけでございますから、その点はしっかり調べた上で処置いたします。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 それをきちんと調査の上、私どもの方にもぜひ御報告をいただきたいというふうに思います。  皆さん御存じのように、原子力の平和利用とそれから軍事利用というものが不可分のものであるということは常識に属することです。核の平和利用研究をしている機関が、軍事利用の基礎となるものを生み出しているという指摘も再三されております。原子力発電所の平常な活動が生み出すプルトニウムというものは爆発物に加工するということが可能です。本来、原子力エネルギーの平和利用は軍事研究から派生したものだ、その逆があっても不思議ではないという指摘もされております。日本政府の態度は、本来ならば最初に指摘されたときに毅然と厳正にすべきであったにもかかわらず、非常にあいまいに過ごしてきたことに大変問題があると思います。  南アフリカ政府は一九七七年、大蔵大臣などの演説で、南アフリカはその核潜在能力を必要に応じて平和目的以外にも使用する権利を留保するというふう言明しておりまして、核兵器開発ということを決して隠そうとはしておりません。そしてまた、核防条約にも入っていない、そういう意味で極めて危険な国であるというふうに受けとめざるを得ません。  そこで、ケーベルグの原子力発電というところに機材が輸出されたんだということは、大きな疑惑が残るわけで、どうしてもこの問題を明確にする必要があると強く私は思うわけです。ただいま御答弁をいただきましたけれども、大臣の責任においてきちんとそのことを処置していただくように重ねて御答弁をいただきたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 これは国連にもきちっと、それこそ答弁、回答しなければなりませんし、日本が平和国家として、またアパルトヘイトに断固として反対しておる国として、国連決議を守っていかなければなりませんから、通産省を通じまして、調査をちゃんとしまして、こういうことがないということを政府の責任において答弁をしなければならぬ、回答をしなければならぬ、こういうふうに思います。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 その調査結果を私どももぜひいただきたいと思っておりますが、よろしゅうございますね。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 回答につきましては、もちろん調査をした結果の政府としての統一的な回答ですから、この点についてはお知らせをいたします。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 民間企業ということであっても、世界の重大な疑惑を招くというようなことについては放置することができません。南アフリカのアパルトヘイト政策への日本政府がとっている態度というものは、大変注目されているわけであります。スポーツ関係などでは、御存じの外務省関係者の方々の問題、それからゴルフの青木選手などの問題、そのときには大変機敏な反応をされたというふうに思うわけですけれども、大企業それから大銀行の融資の問題、貿易、投融資、軍事援助の指摘ということについては、過去、大分前に指摘されながら、割とルーズに今日まで推移してきた、不十分であったというふうに言わざるを得ないと思うのですね。南アフリカのアパルトヘイトの現状というのは、よくなるというよりも大変深刻な事態を迎えておりまして、人種差別を撤廃するという人権外交を推進する上で、日本政府が真に国連外交を推進していくという上からも、非常に重要なことであるというふうに思っているわけです。国連決議で日本も賛成している、経済援助のすべての促進策の中止という点での厳正な態度をとるべきだというふうに思います。  少数民族の差別防止及び保護に関する小委員会は、国連事務総長に対し、この特別レポーターの更新レポートですね、これを最も広く宣伝普及し、国連刊行物として発行するように要請しているわけですね。したがいまして、その結果、この国連の文書として広く世界に宣伝されるということになってまいりますので、一層この対応については真剣に誠実にしないと、これはもう世界の真に平和と民主主義を愛する人々から大きな指弾を招くことにならざるを得ないというふうに思います。  これらを含めまして、今後のアパルトヘイト政策に対する日本政府の厳格な、厳正な態度というのを重ねてお願いをし、最後に外務大臣の御決意をもう一言伺って、終わりたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 日本の場合は、他の自由国家群の国々と比較しても、南アフリカに対しては厳しい措置をとっておると思います。さらに、アパルトヘイト政策反対という線を貫いていきたいと思います。

簑輪幸代日本共産党・革新共同

○簑輪分科員 終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて簔輪幸代君の質疑は終了いたしました。  次に、森田景一君。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 私は、最初に、中国残留孤児の養父母日本招待についてということでお尋ねしたいと思います。  御存じのとおり、日本は戦争放棄を明記した平和憲法のもとに、世界各国と平和外交を推進しているわけでございまして、大臣も大変御苦心していらっしゃいます。とりわけお隣の中国とは積極的に善隣外交を進めているわけでございますけれども、今日までの外務省の対応について、大臣からお答えいただきたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 今、日中関係は、これまでの日中の歴史の中で最も安定して、いい関係にあるのじゃないか、こういうふうに思っております。日中関係が安定をしておるということがアジアの安定にもつながりますし、世界の安定にもつながっていくわけでございます。やはり安定友好関係を今後長期にわたって維持していくために、日本としてもこれからもあらゆる努力を傾注してまいりたい、こういうふうに思います。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 最近、第七次中国残留孤児が肉親捜しに来られました。第一陣、第二陣合わせて九十名の方が来られました。そのうち三十四名が肉親がわかった、こう報道されております。しかし、残りの五十六人の方々は肉親に会えず、悲嘆に暮れて帰った様子がテレビ等にも報道されておりまして、私も非常に心を痛めました。日本人残留孤児ということからか知りませんけれども、この問題は厚生省が担当しているようでございますけれども、外交上からも非常に重要な問題だと私は考えているわけでございます。外務大臣はどのようにお考えでしょうか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 おっしゃるように、日中の友好関係を促進していくという立場から見ましても、この残留孤児の問題は非常に重要であろうと思います。外務省としても、厚生省と和協力して、さらに民間の御協力も得ながら肉親捜しを行っておるわけでございますが、だんだんと年を経るに従って、この肉親捜しというのが困難になってきておるわけでございますけれども、しかし、これからも受け入れを続けまして、さらに、それだけに力を尽くしていかなければならぬ。さらにまた、肉親の見つからない孤児の故国日本への受け入れであるとか、あるいは養父母に対する措置であるとか、いろいろな問題、これまでも徐々に解決してきておりますが、今後とも解決していかなければならぬ問題がございますので、これは改善を進めていきたい。いずれにしても、日中両国間で密接な連絡をとりながら、この解決のために努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思います。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 ぜひ外務省としても格段の御努力をお願いしたいと思いますし、きょうは厚生大臣いらっしゃいませんけれども、厚生省とも協力をとって、今後とも努力を積み重ねていかれるようにお願いしておきたいと思います。  中国残留孤児と同時に忘れてならないのが、こういう孤児を育ててこられた養父母だ、このように私は思うわけでございます。この孤児を育てられた養父母の方々は、日本人にとっても恩人である、こう私も考えておりますが、大臣いかがでしょうか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 全くそのとおりであろうと思います。あの終戦の中に置き捨てられた孤児を育てて今日まで慈しんでこられたわけでありますから、孤児にとっても恩人でありますし、また日本にとっても恩人であると言っても過言でないと思います。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 昨年の十一月に、日本に永住帰国した中国残留孤児の養父母十八人が来日いたしました。このことは御存じと思います。この来日に当たりましては、国民の善意のお金をもとに設立されました、財団法人中国残留孤児援護基金が招待したということでございます。予算の関係で十八人しか招待できなかった、こう報道されておりました。まことに残念だと思っているわけでございます。  中国では、水を飲むときには井戸を掘った人の恩を忘れまい、こういうことわざがあるそうでございます。その例として私がいつも思っておりますのは、中国の要人が来日されますと、日中国交正常化のために自分から中国へ渡って調印しました田中元総理大臣を必ず訪問している、こういうことが挙げられると思うのです。田中元総理を日中国交正常化の恩人としているようでございます。ですから、相手の立場がどう変わろうと恩人は恩人だ、はっきりしているのだと思うのです。こういう中国の行為に対して私は心から敬服しているわけでございますが、外務大臣はこういうことについてどう感じていらっしゃいますか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 これはやはりあくまでも中国の受けとめ方であろう、こういうふうに思っております。今、先ほどからお話しのように、中国が古い友人をとうとぶ、あるいはまた井戸を掘った人を大事にするという中国自身の考えのあらわれであろうと思います。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 そういう立場から、私たちも恩人を忘れてはならない、こう思うわけでございます。  この中国残留孤児あるいは養父母のことに関係しまして、五十九年三月日中両国政府間で口上書が取り交わされているわけでございます。この内容はどういうことでございましょうか。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、昨年三月十七日口上書の交換が行われておりますけれども、この内容は、いわゆる日中友好と人道主義の立場に基づきまして、日中双方の関係法令の規定に従いまして孤児の親族捜し等について引き続き努力する、同時に孤児の日本国への永住によって生ずる家庭問題については適切な解決を図るようにいたすということ、それからまた、今先生から御指摘のありました、日本国に永住した孤児の中国に残る養父母等に対しまして負担すべき扶養の費用は今後は日本政府が二分の一は援助する、そういうことの内容でございます。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 こういう口上書が取り交わされているけれども、まだ細かい点については解決しなければならない点がたくさん残っている、こういうふうに私は聞いているわけでございます。ひとつ非常に大事な問題でございますので、一日も早くきちんと解決できるように御努力をお願いしたいと思うわけでございます。  そういうことで、先ほどは、政府が招待したというのじゃなくして財団法人がお呼びした、こういうことでございますから、せめて政府として、こうした養父母を定期的に日本へ招待することを考えなければいけないのじゃないか、こう思うわけでございますが、この点について外務大臣としてお答えいただきたい。これは厚生省じゃないかなんて、そんなことを思わないで、重要な外交問題だ、こういう立場から大臣の見解をお聞きしておきたい。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 もちろんこれは政治家としてもあるいは政府としても、先ほどからお話がありました養父母というのは日本にとっても大事な人たちでありますし、恩義を非常に感じておるわけでありますから、いろいろな面で手厚く感謝の気持ちを表明する努力をしなければならない、こういうふうに思っております。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 外務大臣は前にアフリカの方に行かれまして、アフリカの窮状をつぶさにごらんになって、それで、きのうの報道ですと毛布を百七十何万枚か集められた、こういう報道がございました。  ひとつ中国につきましても、厚生省が直接担当とはいいながら、外務大臣としてもそのぐらいの熱意を持って中国を訪問なさって実情を見てこられたらいかがか、こう思うのですけれども、どうでしょうか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 私もしばしば中国を訪問しておりますが、機会がありましたら、残留孤児のいわば故郷である東北地方にもぜひ参りたいと思いますし、そういう際、養父母の皆さんにもお目にかかる機会を得たい、こういうふうに思っております。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 終戦のあの混乱時に昔のいわゆる満州ですね、今の東北地区、ここで麻山事件というのがあったそうでございますが、これは御存じでしょうか。

後藤利雄外務省アジア局長

○後藤(利)政府委員 旧満州で敗戦の直前、開拓団の婦女子ら四百六十何人かが集団自決した事件というように承知しております。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 私は、第三次哈達河友好訪中団という訪中団の団員から聞いた話でございます。直接聞きました。  それは、中国黒竜江省の佳木斯市鉄道局に勤めていらっしゃる張学政さん、今七十三歳だそうです。この方は、その麻山事件のときに、皆さん集団自殺をなさった、ところが子供さんが何人か自殺をしないで残っていたわけですね、そして七人の日本人孤児を救ったんだそうです。救われた方は、鈴木幸子さんと妹さん、滝沢さんという女性、黒川さんという男の子、馬場さんという女子、佐々木さんという男子、川又礼子さんという女子。この七人を集団自決の現場から救出いたしまして、そして御自分は鈴木姉妹を引き取り、残りの子供さんはそれぞれ部落の人たちに育ててもらったんだそうです。この鈴木幸子さんというのは日本に帰りまして、現在北海道に在住しています。妹さんの方は一昨年死亡しました。滝沢さん、黒川さん、馬場さんは今も中国に残っていまます。佐々木さんと川又礼子さんは病気のために中国で死亡した。こういう話を聞きました。  あの混乱の時期に日本人孤児を救った恩ある人、もう既に戦後四十年たっておりまして、今もお話しいたしましたように、この張学政さんは七十三歳でございます。こういう方々をせめて早い機会にぜひ日本に招待して、そしていささかでもお礼の気持ちをあらわすべきではないか、私はこのように考えているわけでございます。  これは一つの例だと思います。そういうことについて大臣はどうお考えになりますか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 非常にお気の毒な例であります。と同時に、そういう中で助けていただいた方々に対して、改めて感謝を表明したいと思います。  厚生省とも検討しまして、これからどういうふうにするかといった点についても検討させていただきます。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 厚生省からもおいでいただいていると思うのですが、厚生省としての見解もお聞かせいただきたいと思います。

森山喜久雄厚生省援護局業務第一課長

○森山説明員 先生から今お話がありました張学政さんという方ですが、この方は養父母さんでございますから、御本人が日本に来たい、孤児もぜひ呼びたいという話になれば、また援護基金の方に話をいたしまして、実現するように努力したいと思います。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 援護基金が豊富であれば結構でしょうし、またその範囲内で、連絡がとれる人たちでありますから、そういうお話も伝えておきます。そういう話になったらぜひ御招待をしていただきたい、このようにお願いしておきます。  特に、昨年中国では、日本の青年三千人でしたか、招待しているわけです、お国が大きいといえば大きいのですけれども。とにかく日本は、GNP世界第二位とか三位とかという国でございますから、面積が少ないし、三千人とまではいかないかもしれませんけれども、この養父母を含めましてそういう交流も大事ではないかと思います。この点について大臣の所見をお伺いしまして、この問題は終わらせていただきます。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 青少年の交流は、これからの日中関係にとって非常に大事だと思っております。去年は胡耀邦さんの努力で、三千人招待していただいた。これには大変感謝しております。これにお返しするという意味におきまして、日本政府としてもこれから、一挙に三千人ということはもちろん難しいわけですが、ことしは百名、お世話になった方を呼んでおります。今ちょうど来ておられますが、さらにこれから段階を経て、青少年の招聘を続けていきたい。  日本も、今まで政府だけでやっているわけでなくて、民間の企業とか団体とかを合わせると、中国の青少年も相当招待をしておるわけでございますが、こうした青少年交流というものはさらに積極的に進めることが日中両国のために大事だ、こういうふうに考えております。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 中国は日本にとりましても本当に大きな恩がある国でございます。戦争が終わりましてからも賠償金を取らない、これはこれからもずっと忘れてはならないことだろうと思いますし、そのほかにもたくさんあるわけでございますから、その友好をさらに進めるためにも、これは細かい問題かもしれませんけれども、一つ一つ、恩を忘れないという姿勢で取り組んでいただくことをお願いしておきたいと思います。  次に、SAR条約、一九七九年の海上捜索救助に関する国際条約ということでございますが、この締結についてお尋ねしたいと思います。  SAR条約は、世界各国が海上捜索救助活動を分担し、かつ、協力し合って、広域哨戒体制や船位通報制度の整備等を行い、全海域をカバーする海難救助体制を創設しようとするものでありまして、これは御存じのとおりでございますが、十五カ国が締約国となった日から十二カ月目に発効するということになっているわけでございます。この締約国の状況ですが、今何カ国になっておるのか、どういうところが締約国になっておるのか、お答えいただきたいと思います。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  国名を申しますと、アルジェリア、アルゼンチン、オーストラリア、バルバドス、ブラジル、カナダ、チリ、デンマーク、フランス、ドイツ連邦共和国、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、連合王国、アメリカ合衆国、この十五カ国が昨年締約手続を下しておりまして、条約第五条の規定によりまして、本年六月二十二日に発効する運びとなっております。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 日本は、もう申すまでもなく先進海運国であり、水産国であるわけでございます。その日本が、SAR条約発効までに加入手続が終わらないということがあっては、これは大変な問題だろうと思うわけでございます。この加入手続のためには、今国会で加入について承認を得なければ間に合わないわけでございますが、その辺の作業については外務省はどのように進めていらっしゃるのでしょうか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 先生御指摘ございましたように、我が国としては本件条約には参加すべきものと考えております。関係省庁との協議もほぼ調いまして、できるだけ早期に今国会に提出させていただきたいということで、現在作業を進めております。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 今国会の会期は四月二十九日までだったと思います。ですから、それまでに承認を得なければならないことに。なるわけですが、間に合うのでしょうか。

山田中正外務省国際連合局長

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  条約関係の提出につきましては、私どもといたしましてはできれば来週中にもさせていただきたいと思っております。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 了解しました。  この条約締結に伴って、いろいろと作業、準備を進めなければならない問題があるわけでございます。例えば捜索救助区域、SRRと言っておるようでございますが、これの設定であるとか、捜索救助組織を確立するとか、入域等に関する調整、航空業務との調整、捜索救助活動の準備、あるいは船位通報制度の確立、こういったいろいろな問題がちゃんと進められなければ、加入しただけでは意味がないわけでございます。これの準備状況について、時間も余りありませんけれども、御説明いただきたいと思います。

茅根滋男海上保安庁警備救難部救難課長

○茅根説明員 海上保安庁の警備救難部救難課長でございます。実際に海難救助を担当いたします者としてお答えさせていただきます。  我が国が本条約に加入しました場合に、先生今御指摘のように捜索救助区域を定めてまいることになりますけれども、これは条約上隣接の締約国と話し合いをしながら決めていくということになっております。  現在のところ、締約国としては隣接としてはアメリカだけでございますので、今アメリカとの間では、この海難救助の機関でございますUSコーストガードが海上保安庁と非常に緊密な関係でございますので、今いろいろ下準備の打ち合わせをしているところでございます。  もう一つアメリカとの関係で、捜索救助区域を考えていきます場合に、分担する区域は、太平洋側で恐らく本邦から千二百海里ぐらいまで及ぶ広い海域になるであろうということが予想されております。そのために、海上保安庁では、航空機と巡視船を有機的に組み合わせまして、広大な海域における捜索救助活動を機動的、効率的に行うための体制の整備をずっと計画的に進めてきております。  それから、同じように同条約で、捜索救助活動に非常に有効だということで船位通報制度というのを勧告をしております。導入を締約国に勧告をいたしております。これは一般の商船が自分の船の位置を定時に送る、それをコンピューターでずっとフォローいたしまして、その船が遭難通信を発する、連絡を絶ってしまうというときに、コンピューターのデータをもとにいち早く捜索の体制を確立するということを目的とするものでございます。  海上保安庁では、このシステムを導入すべく、昭和五十七年度からいろいろな無線機器、コンピュター等を導入して整備を計画的に進めてまいりました結果、本年の十月からほぼ運用を開始できる見込みとなっております。そのような準備状況でございます。

森田景一公明党・国民会議

○森田(景)分科員 このSAR条約にはひっかかる問題もあることはあるのですけれども、しかし、日本が海運国であり水産国であるという立場から、今日でもなおたくさんの海難事故が発生しているわけでございまして、この海難事故を早急に救出するといいますか、そういう立場からは、一日も早くSAR条約が発効して実質的な活動に入ることが、この海難事故を防止する大きな手だてとなるわけでございますので、来週中にも国会に提出する運びとなっておるということでございますので、どうかひとつ成立には皆様方の御努力を心からお願い申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて森田景一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。嶋崎法務大臣。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 昭和六十年度法務省所管予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、法務省所管の一般会計予算額は三千八百十八億九千七百五十三万三千円でありますが、このほか昭和六十年七月一日から登記特別会計を創設することとしており、これに五百五十五億七千三百三十二万九千円を計上しておりまして、それらの純計額は四千六十七億四千十八万四千円となります。これを前年度当初予算額三千七百四十七億八千二百九十三万四千円と比較しますと、三百十九億五千七百二十五万円の増額となっております。  次に、重点事項別に予算案の内容について、御説明申し上げます。  まず、定員の関係でありますが、昭和六十年度末定員で申し上げますと、当省の総定員数は、四万九千九百十七人で、うち一万五百六十七人が登記特別会計の定員となっております。  昭和六十年度の増員は、新規に四百二十三人、部門間配置転換等による振りかえ増員三十三人の合計四百五十六人となっております。  その内容を申し上げますと、一、検察庁における特殊事件、財政経済事件、公安労働事件等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため、検察事務官百一人、二、国の利害に関係のある争訟事件及び人権侵犯事件に対処するため、法務事務官七人、三、刑務所における保安体制及び医療体制の充実を図るため、看守部長二十六人、看守九十三人、看護婦(士)三人、四、少年院及び少年鑑別所における処遇体制の充実を図るため、少年院教官十八人、少年鑑別所教官十四人、五、保護観察活動等の充実を図るため、保護観察官二十二人、六、出入国審査及び在留資格審査業務に対処するため、入国審査官十六人、七、登記事件に対処するため、登記特別会計創設後の増員を含めて、法務事務官百五十六人となっております。  他方、減員は、昭和五十六年九月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第六次)の実施について」による昭和六十年度定員削減分として四百四十三人、定年制施行に伴う欠員不補充分二十人、その他削減分として十三人、合計四百七十六人となっております。  次に、主な事項の経費について概要を御説明申し上げますと、一般会計では、一、法務局、地方法務局において、登記、供託及び戸籍等の事務を処理するために要する経費として十二億九百五十三万一千円、二、検察庁における刑事事件の処理等検察活動に要する経費として、二十九億一千七百十六万九千円、三、拘置所、刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院における被収容者の衣食、医療、教育、作業等に要する経費として二百四十一億八千五百九十五万三千円、四、保護観察に付された少年等を更生させるための補導援護に要する経費として三十九億九百五十六万四千円、五、出入国の審査、在日外国人の在留資格審査、難民の認定等及び不法入国者等の護送、収容、送還等に要する経費として七億一千四百七十六万三千円、外国人登録法に基づく在日外国人の登録等の事務を処理するために要する経費として十七億一千七百八万五千円、合計二十四億三千百八十四万八千円、六、公安調査庁における破壊活動防止のための調査活動に要する経費として十八億五千二百五十万八千円、七、施設費の関係といたしまして、検察庁等の庁舎及び刑務所、少年院等の収容施設の新営、整備に要する経費として九十一億六千百三十五万円をそれぞれ計上しております。  次に、登記特別会計について御説明申し上げます。  登記特別会計の予算額は五百五十五億七千三百三十二万九千円でありまして、主な内容といたしましては、登記のコンピューター化経費、登記事件を処理するための経費等の事務取扱費として四百九十五億九千六十一万二千円を計上し、ほかに、登記所等の施設の整備経費として三十億七十七万八千円を計上しております。  以上、法務省関係昭和六十年度予定経費要求の内容について、その概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤誼君。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 それでは、私から、外国人登録法にかかわる諸問題について質問してまいります。  まず、外国人が登録をする場合に指紋押捺を義務づけておりますが、そのねらいは何であるか。また、なぜ外国人は登録の際に指紋押捺をしなければならないのか。このことをまずお尋ねします。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 お答え申し上げます。  外国人登録法の外国人登録の目的は、外国人の身分関係及び居住関係を把握して、これによって公正な管理を行うということにございます。  外国人は、御承知のように日本人と違いまして戸籍及び住民登録の対象となっておりません。したがって、これにかわるものとして外国人登録制度が存するわけでございます。なお、これに加えまして、外国人の場合には、日本人と違いましてその親族関係あるいは友人、知己関係等の関係が限定されているのが一般でございまして、こういう関係から、その実情に応じた措置が必要になるということでございます。  指紋は、これらの目的を達成するために、在留する外国人の同一人性を確認する手段として最も確実なものとして存在し、実施されているものでございます。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 今の答弁を聞きますと、つまり外国人の公正な管理、そして同一人性を確認するためには指紋は有効だ、こういう趣旨の御答弁だと思うのですが、私はそれは納得がいかないのでありまして、続いて質問してまいります。  国内法で見ますと、指紋押捺を法律をもって義務づけているのは、私の理解では刑事訴訟法と外国人登録法、つまり外登法に基づくものだけではないかと思うわけです。そこで、刑事訴訟法に基づくものは犯罪捜査をするというその目的、理由がわかりやすい形ではっきりしているわけですね。ところが、外登法による外国人に対する指紋押捺というのは、今も答弁ありましたように、同一人性の確認というその必要性を理由に挙げられておる、そのために有効だということですね。私は、それは必要性の理由からいうと非常に薄弱ではないか。私は対比として刑事訴訟法を挙げましたが、刑事訴訟法で言う犯罪捜査の必要性ということと同じに指紋押捺を外登法の形で対比をしてみますと、その点、この同一人性を確認するために指紋がどうしても必要だという理由が、根拠としては非常に薄弱ではないかと思うのです。さらに、指紋押捺しない場合には御承知のとおり拒否者に対して刑事罰を科する、こういうことになっているわけです。言うなれば外国人であるがゆえをもっての不公平な扱いであり、今日までも言われてきたと思いますけれども、まさに人権上の大きな問題ではないか。したがって、これは今日までも問題になってきたけれども、ことしは大量の書きかえ登録があるわけです。国民は非常に大きな関心を持っておることでございまして、私は結論から言うならば、どうしても外国人に指紋押捺をしてもらわなきゃならぬという理由が、特に刑事訴訟法で言う犯罪というものと対比した場合についても、その根拠が薄弱ではないか。結論から言えばそこまでしなくてもいいじゃないか。あえて突っ込んで言うならば、その程度の理由であれば例えば写真だってできるのじゃないか、こういうことを思うのですが、御答弁をお願いします。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 ただいま写真ということがございましたが、写真の場合には、写真の写り方あるいは本人の成長その他による変化、こういうことで、同一人性の確認手段としては、これが有効に働く場合も多い反面、十分ではない場合も多多存するわけでございます。そういう点から申しますと、指紋は人によってすべて異なる、それから一人の人間の指紋は終生変わらないという特性がございまして、指紋にまさる同一人性確認の手段は現在までのところ発見されておらないのでございます。もとより、指紋そのものに伴う精神的な負担その他の問題は私どもも理解いたしておりますけれども、技術的な必要上、これにまさる手段が現在のところ存在しないという事実の前提のもとでこの制度が継続されておるということでございまして、先生御指摘のような人権問題につきましては、私どもとしても十分意を用いているつもりでございますし、今後も意を用いるつもりでございますけれども、それが憲法とか人権規約とかの規定に反するものではないという点については私どもは確信を持っておりますし、既にこの点については裁判所の判決も存在するわけでございます。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 今、同一人性の確認ということを言われましたけれども、同一人性の確認ということで、例えば運転免許証その他に写真を使っているじゃないですか。そうなりますと、それも全部指紋でなきゃならぬというふうに極論すればいっちゃうのですね。今、写真では云々と言われて、指紋は終生変わらないからこれ以上同一人性を確認するにすぐれたものはない、こういう言い方をされましたね。それは考え方によってはそうかもしらぬ。しかし、だからといって、いかなる場合であってもいかなる人に対してもこれをやっていいということにはならぬと思う。私は、これをするためには納得できる正当な理由と根拠が明確になければならぬ。そういう意味で、先ほど、刑事訴訟法で言うところの犯罪捜査という目的がはっきりしているものとの対比から言うならば、根拠が非常に薄弱ではないか。そういう理由の上に立って押させるということになりますとこれは人権の問題になってくるのではないかという、総体的なことを計慮してこのことについては判断をしていかなきゃならぬじゃないか。そのことが、つまり根拠理由の問題、突っ込んで言えば強制してやらせれば人権まで問題になるのじゃないか、ここのところが問題になっているのですよね。ですから、あなたが言うように、指紋押捺が同一人性を確認する上で非常に有効だということは認めざるを得ないでしょう。しかし、やっていいこととやって悪いことがあるのですね。ここのところが私は疑問になっていると思いますので、この点は法務大臣どうですか、基本的な問題だと思いますから。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 お尋ねの指紋問題を含む在留外国人の法的な地位及び待遇の問題につきましては、世界的にもいろいろな制度があるわけでございますけれども、どのような制度が適当であるか、国内的な事情ばかりではなしに、やはり国際的な事情も十分判断をして考えていかなければならない問題ではないかというふうに思っておるわけでございます。そういう意味で、我々もこの問題については多くの意見があることはよく承知をしておるわけでございます。  しかし、御承知だと思いますが、昭和五十七年度に外国人登録法の問題が議論をされまして、その際に、指紋押捺の問題も含めていろいろと論議が行われたことは御承知のとおりでございます。そういう過程におきまして現在の制度ができたわけでございます。当時は十四歳というのを十六歳に上げるとか、あるいは三年ごとの切りかえを五年に直すとかいったような改正もあわせて行ったという実情があるわけでございまして、そういうときの審議を踏まえまして、現在、私は、この問題はたちどころに改変を図るべきような性格のものじゃなしに、また、長い我が国の制度の中で今日まで根づいてきたものであるというふうに思っておるわけでございます。  しかし、御承知のようにこの日韓の共同声明がありまして、総理自身が引き続きこの問題については検討をする、引き続き努力をする旨の答弁をされたというような経緯もあるわけでございまして、制度上あるいは今後の運用上、各般のいろいろな問題につきまして、今後とも十分研究は続けていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 大臣についてはこの質問の後の方でまたお尋ねしますから、引き続いて聞きますが、法律上の根拠に基づくというのは、私は先ほどの二つだと思いますが、しかし、ずっと私なりに調べてみると、法律上の根拠なし、つまり事実行為とでもいいましょうか、任意とでもいいましょうか、そういう形で指紋押捺を日本でもやってきた、あるいは現在やっているのがあるのですね。  というのは、私が調べたところでは、過去に愛知県の場合に、昭和二十六年から指紋押捺をやって五十七年に廃止したという、期間は不正確かもしれませんけれども、そういう経過や、あるいはまた運転免許の場合に、かつて昭和二十六年ごろから東京と千葉でやって途中でなくなったようですが、あるいは福岡県などでは昭和四十年から四十二、三年ごろまでやった。しかし、今言ったのは、いろいろな人権上の議論などがありまして、結局やめてしまった、こういう経過のように私は聞き及んでいるわけです。現在も法律上の根拠に基づかないでやっているのがあるそうでありますが、自衛官の場合、法律上の根拠を持たずして指紋押捺を身分証明書なんかに捺印をさせている、こういう状況があるやに聞いておりますが、きょうは防衛庁の方おいでですか。その事情を教えてください。

友藤一隆防衛庁人事局長

○友藤政府委員 防衛庁の職員につきましては、身分証明書を各機関、ことに発行交付をしておうわけでございますが、このうち陸上自衛隊と航空自衛隊につきまして、身分証明書に指紋押捺をしておるということでございます。  それで、根拠でございますが、自衛隊法三十一条二項に「隊員の任免、分限」等につきましての「人事管理に関する基準は、長官が定める。」というふうな規定がございまして、それを受けまして、長官の定める訓令の中で、発行権者が身分証明書を発行して携行させるわけでございますが、その中の様式で、指紋の押捺等についても記載をするというようなことを決められる、こういう形になっております。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 今、自衛隊法とありましたけれども、ここに一連の訓令、達というのがありますが、どの程度根拠が明確であるのか私も理解できない点があります。いろいろ御意見を聞きますと非常に根拠が不明確ではないか。しかもこれは強制ではなくて任意でやっているのですね。そういうふうに聞き及んでいますが、それなどを照らし合わせたときに、法律上の根拠ははっきりしているのか、やや不明確な点があるように思います。 それから、もう一つの点は、陸上自衛隊と航空自衛隊は行っているけれども、海上自衛隊はやっていない、どうもこの辺、我々が聞くところによると納得できない。しかもこれは昭和三十年ごろからやっているのですね。私も初めて気づいたのですけれども。国会の中でこういうことがそれなりに。議論されたことがあるのですか、どうですか。

友藤一隆防衛庁人事局長

○友藤政府委員 国会での御議論は今まで特段なかったと思います。  それから、お尋ねのございました海上自衛隊でやっていないではないかという御疑問でございますけれども、指紋押捺の必要性と申しますのが、御案内のとおり、自衛隊員と申しますのは国防に従事するということで、日常の訓練、平時でも災害派遣等非常に危険な業務もございまして、安全管理には十分力を尽くしておるわけでございますけれども、やはり不測の事態が避けられない場合もございますので、その場合、隊員の身元を確認するために有力な手段として、身分証明書への指紋押捺を採用いたしておるわけでございます。海上自衛隊の場合は、御案内のとおり行動が主として海上でございますので、部隊側の判断で、海上では指紋による識別の有用性が必ずしも高くないということから指紋の押捺を行っていない、こういうのが現状でございます。  それで、法律上の根拠というようなことでございますけれども、私どもとしては、先ほど申し上げましたように人事管理の中の身分証明書の携行、交付というような枠の中で実施をしておるということでございまして、決して強制的に指紋の押捺をさせるということは自衛隊としてはやっておりませんで、事実上指紋の押捺を拒否された例はございませんけれども、一応趣旨をよく説明をいたしまして押捺をしていただいておるというのが実情でございます。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 自衛隊の指紋押捺問題はきょうは主題でありませんから、これ以上深みに入りませんけれども、これが初めて議論されたやに聞いておりますので、いずれの機会がにまたやりたいと思います。  ただ、いずれにしても、この防衛庁における文書の形式に関する訓令、それの第六条ですが、どう考えても根拠がはっきりしない。今もありましたけれども、任意という形、これは自衛隊に限らず、そういう形で事実行為として、しかも任意ということでやられていったら、大変なことになるのじゃないかということを私は非常に危惧しているわけです。きょうはこれ以上御答弁いただく時間がありませんのでこれでとめますが、私のところにもここに写真がありますけれども、昭和五十八年七月何のたれがしというのがはっきりあって、指紋を二つ押すようになっていますね。私もこれは初めて見ました。ですけれども、これは今私が言ったような観点からもう一度議論してみる必要があるだろうというふうに考えておるところです。きょうのところはその程度にしておきますので、防衛庁どうぞお帰りになって結構です。  そこで、法務省にお尋ねしますが、指紋不押捺罪については、継続犯説と即時犯説があるようであります。法務省としてどういう学説、見解をとっているか、これは改めては問いませんけれども、いずれにしてもそういう説があるそうであります。  それで私は、いずれにしても、どの説をとるにしても、時効を前提にその扱いを強要したり、あらかじめ期限を切って無理な対応をしていくことは、法務省の指導としてはいかがなものかということを感ずるわけであります。つまり、拒否したから即時告発とか告発なしでも書類送検するとか、これは事実ありましたね。大阪府警生野警察署ですか、ごく最近ありました。それから、起訴するということでは、対応の仕方として、現状皆さんも御承知の問題になっている事柄をさらに大きくしていくことになりはしまいか。特に、これから七月以降大量の切りかえ登録時期を迎え、しかも先ほどありましたように、一方日韓共同声明等の内容に照らしてみたときに、時節柄法務省としては賢明な対応をすることが望まれるのではないか。むしろ外登法をめぐる今日の内政上の諸問題、それに朝鮮半島との外交上の諸情勢を考えたときに、早く外登法の改正を検討すべきであると思うし、また当面する内政上の諸問題、意味はおわかりだと思いますが、適切な対応をしていくことが急を要する課題ではないかというふうに私は考えるわけです。  今、内政上ということを言いましたが、現に皆さん御承知のとおり、皆さんからいえば残念ながらということになるのでしょうけれども、拒否者がふえてきています。数字は私の方で申し上げています。各自治体からも、外登法を早く改正してほしいという意見書がどんどん上がってきております。これからも恐らく上がるでしょう。こういう状況というものをよく見きわめ、判断して対応していかないと、法は法だという形の強制的な対応なり扱いによって、むしろ問題をさらに大きく惹起し、この適切なる解決をおくらしてしまうのではないか、こういう感じさえ持つわけでございます。  したがって、後半の方で言いましたように、私は諸般の情勢から見て外登法の改正を早く検討すべきであると思うし、当面する内政上の諸問題については適切なる対応をすべきであるというふうに考えますが、その点についてどう思いますか。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 ただいま先生から即時犯、継続犯といったような御指摘もございましたが、この問題につきまして、当局といたしましては両説があり得るということを前提にいたしまして、公訴時効にかからない案件の処理を行うということを原則としておるわけでございます。  また、押捺の拒否が上がったからといって直ちに告発するのは、むしろ問題を悪化させるのではないかという御指摘もございましたが、私どもの委任いたしております地方公共団体に対する処理要領土の指導は、押捺拒否が生じた場合には、極力その押捺に応ずるよう説得に努めるべきであるということを指導の中心といたしております。したがいまして、押捺拒否事案が発生したと同時に直ちにこれを告発するということは現実にも行われておりませんし、また、私どもの指導の内容にもなっておらないわけでございます。  告発なしに捜査が行われたという事例についてもただいま御指摘がございましたが、この事案は既に時日を経過いたしまして、放置すれば公訴時効とされておる三年を経過するおそれがあるといった事案に限っておるのでございまして、したがって、現在までのところ、それだけの時間をかけて押捺をするように説得し、あるいは期待して、性急に過ぎる措置をとらないということが実際に行われておるわけでございますから、この点についての先生の御懸念は、現実の処理ぶりとは必ずしも一致しないのではないかと存じます。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 私が懸念しておるようなことがなければそれにこしたことはないのですが、しかし私は、今のままでいくならば、この懸念がどんどん広がっていくのではなかろうかという危惧の念を持っているからなんです。  私が調べたところでは、指紋押捺拒否者がどんどんふえまして、三月六日には百四十八人というふうに聞いております。それから、外登法の改正意見書を出している自治体がこれまたふえまして、三月四日には六百三十七自治体、これも恐らくふえるでしょう。こういう現実に存在する事情、情勢というのをよく見きわめなければならぬのではないかということを考えます。また、今答弁では、極力説得するのだ、即時に告発というようなことは考えていないのだということですが、書類送検というのはそれなりにいろいろ事情があったということはありますけれども、これなども告発を受けずに書類送検ですね。三年時効ということを言われましたけれども、それは即時犯ということを前提にしての話だろうと思います。ですから、この辺のところはよく実情に合った形で適切に指導していかないと、そのことの問題でむしろ問題が大きく膨れ上がってしまって解決が先送りになってしまう。いろいろな運動が各地で起こっていることは、皆さん御承知でしょう。  そこで、時間がなんでございますので、私は法務大臣にお尋ねしたいのです。  新聞などではこの問題についていろいろ報道されてまいりまして、外登法については今私が述べたように早急に検討すべきだ、あるいは適切な対応をすべきだというようないろいろな意見がございました。それで、先ほどの答弁も一応法務大臣からありましたけれども、今この外登法についての検討を始めているのかどうか、検討してないとすればいつごろから検討しようとしているのか、やるとすればそれはいつごろを目途に考えているのか、この辺のところ。あえて加えて言うならば、我々はどの程度のところまでを想定し、検討しなければならぬというふうに思っているのか。  特に、私が先ほどからるる申し上げているような、一つは日韓共同声明のああいう取り決め上の問題があるでしょう。これは国際的な問題ですし。しかも、外交上の日程からいえば、私が把握したのでは、五、六月ごろ外務省局長レベルの日韓協議、七月、八月ごろには日韓定期閣僚会議があるやに聞いているわけです。この辺もにらまなければならぬだろうと私は思う。また、七月から九月にかけて大量に登録が行われていく。恐らくいろいろな問題が出てくるでしょう。この辺もにらまなければならぬでしょうし、国会の運営からいえば、今の通常国会は会期が決まっておりますから、その辺をにらんだときにどうなるか。私は、それぞれの立場で非常に関心を持っていると思いますので、この辺、ひとつ法務大臣の見解も含めてお聞かせいただきたいと思います。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 先ほど御指摘になりましたように、本年は五十七年度の改正で更新期間を五年間にしたというようなことに関連をしまして、七月、八月、九月という時分に大量の切りかえがあるという事態を我々知らないわけではないわけでございます。そういう事態でありまして、そういうことを前提にいろいろ内部でも議論をしておるわけでございますけれども、まだ各省庁挙げてきちっとした答えが出てないというのが現実であるわけでございます。そういう意味では、検討には入っておりますけれども、現在の段階で整理し切れるというような状況になってないというのが実情であろうかと思うのでございます。     〔主査退席、熊川主査代理着席〕  そういう意味で、この問題は何も休むというようなつもりは全然ありませんけれども、今の国会の状況から見まして、この国会の中で整理をするということは事実上なかなか難しいのではないかというふうに思っております。と申しますのは、五十七年の改正で五年に延ばして一度もその延長した経験をしない、そのままいろいろな改正をするというようなことでは、いかにも朝令暮改というような感じもするわけでございます。今いろいろな御議論はありますけれども、日本の法律で決められたことがあるわけでございますから、この大量切りかえにつきましても、外国人の皆さん方の良識のある判断の中で円滑に実施されるように、ぜひお願いを申し上げたいというふうに思っておる次第でございます。しかし、先ほど来申し上げましたように、引き続き努力をするということもあるわけでございますから、今後ともこの問題については十分配慮をして、閣内の意見の一致を図るような努力を積み重ねてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 法務大臣のその辺の答弁はお聞かせいただいたのですが、言葉じりをとるわけではありませんけれども、法律を一たん決めて一遍も実施しないのでは朝令暮改ではないかという趣旨がありましたけれども、そんなことを言えばグリーンカード制だってあるじゃないかというような議論も一方出てくるのでありまして、いいものはそんなにこだわらなくていいと私は思うのです。それから、庁内でいろいろあるということを私たちもいろいろな報道で聞いておりますが、しかし、それは早くまとめてもらうことが必要だと思いますし、特に最後にそれなりに外国人の皆さんの良識で対応してほしいということがありましたけれども、いたずらに皆さんが事を構えるということはないと私は思うのですよ。残念ながら、やはり政府のこれからの対応の姿勢とか、あるいは法務省の指導のあり方等と関連してくると私は思うのですね。私たちはそんなことはありませんけれども、諸外国の皆さんからいえば、日本で言えば犯罪者しか押さないようなものを、しかも強制的、法律的に、やらなければ罰金、罰則、刑罰が加わるということでは納得いかないと思うんだね。ですから私は、いろいろ法務大臣言われましたからそれなりの話はわかるのですけれども、ぎくしゃくしたり遅くなるといたずらに問題を惹起すると思いますので、その辺は十分に配慮されて適切なる対応をされますように私の方から最後に御要望申し上げまして、質問を終わりたいと思うのです。法務大臣、何かありますか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 この問題につきましては今お答えしたとおりでございますが、御意見としてそういう御意見があったということを十分受けとめてまいりたいと思っております。

佐藤誼日本社会党・護憲共同

○佐藤(誼)分科員 それでは以上で終わります。

熊川次男自由民主党・新自由国民連合

○熊川主査代理 これにて佐藤誼君の質疑は終了いたしました。  次に、竹村泰子君。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 指紋押捺の問題では数多くの論議がされておりまして、ただいまも佐藤議員から御論議があったようでございますけれども、私は、これまでとちょっと違った局面が今出てきているのではないかと思っているわけですね。ことしの二月の二十日過ぎぐらいから、例えばイタリアの特派員の方が数次再入国を取り消されたという事件がございましたね。メッサジェロのピオ・デミリアさんという方です。それからキャスリーン・モリカワさんという方、この方は横浜地裁で、昨年の六月に押捺を拒否されて全国で初めて罰金一万円の有罪判決を受けておられる。この方の高裁論争が始まっているわけですね。それから、川崎市では指紋押捺拒否を告発せずと、自治体で初めての方針を出しているわけですね。それから、法務省の方針では指紋押捺運用緩和を考える、これは新聞の報道ですけれども、「朱肉でもOK」というふうな報道がされております。これは八五年二月二十四日の毎日新聞ですね。読売新聞では八五年二月二十六日、同じ日に「指紋押捺運用緩和へ」「拒否運動激化の予想に対応」としまして、「このため、内閣官房が中心となって調整を進めた結果、まず、制度運用の緩和方針のとりまとめを急ぐ」というふうに出ております。  さまざまな報道が今されているわけですけれども、一体法務省及び外務省は外国人登録法に関して、あるいは指紋押捺拒否に関して、本当はどういうふうに考えておられるのでしょうか。本当は内閣と警察にもお聞きしたいのですけれども、時間の関係でお伺いできませんが、法務大臣のお答えは先ほどもお聞きいたしましたので、どうぞ簡潔にお答えください。外務省の御返答もお願いいたします。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 非常に種々の問題にわたる報道に言及されましたので、その報道について一一コメントすると時間が長くなると思いますから、基本的な点だけを申し上げたいと思います。  法務省といたしましては、既に法務大臣からお答えいただきましたとおり、この問題について制度面の問題あるいは運用の問題を含めて検討を進めておるという現況でございます。その関係で関係省庁とも御相談しておるということでございまして、したがって、その運用上の問題も検討の対象となっているのは御承知のとおりでございます。ただ、新聞に報道されましたような具体的な施策が採用されるとか、採用されそうだとかいうようなことをお答えする段階ではございません。現に、今御指摘のような具体策は私も新聞で初めて承知したようなわけでございまして、そういうことが部内で研究されておるということも、まだ報告は受けておらなかったような事情でございます。ただ、部内に研究班を設けて、そういう問題を含めて研究するようにということは命じてございますので、研究されていること自体は別に驚くに当たらないのでございますけれども、実情はそういうことでございまして、まだ御報告申し上げるような段階になっていないということでございます。

渋谷治彦外務省アジア局北東アジア課長

○渋谷説明員 指紋押捺の問題につきましては、外務省は直接所掌する立場にはございませんけれども、外国人登録法が五十七年に改正されたばかりであるという事情があることは私ども十分承知しておりますが、他方、指紋押捺制度の撤廃ないしは改善を求める意見があるということも承知しておりますので、昨年の日韓共同声明の趣旨をも踏まえまして、制度上、運用上の各般の問題点につきまして、風係省庁において鋭意検討を重ねているというのが現状だと思います。このような外務省の立場は、二月六日の予算委員会における嶋崎法務大臣の御答弁と同趣旨でございます。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 そうしますと、この新聞の報道は、法務省としてはそう定かなものではない、そういうコメントは全然していないということですね。どうですか。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 いろいろ新聞の報道に言及されましたので、どの報道であるかということはございますが、もしその報道が、例えば指紋押捺制度を大幅緩和とか全廃とかの方針について既に政府が決定をしたとか、あるいは見通しをつけたとか得たとかいうことをお指しになるのでありましたら、その報道は事実に反すると申し上げるほかございません。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 私がさっき言ったのはそういうことではありませんよ。「指紋押捺運用緩和へ」「内閣官房が中心となって調整を進めた結果、まず、制度運用の緩和方針のとりまとめを急ぐ」と内閣官房が言っているということと、それから法務省方針で緩和をしようという方針であると。決めたとは言ってません。それはどうですか。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、ただいま私どもが進めております検討は、制度の問題と並んで運用の問題も入っております。したがいまして、運用の問題についても改善の余地を検討しているというのは事実でございます。しかしながら、その方針について、既にはっきりした部内の結論を得ておるとか各省と合意に達したとかいうことはございません。また、各省と協議を進めた上でどうしても合意に達しないという場合に、内閣官房の御調整をいただくということもあり得ることでございますけれども、現在の段階におきましては、具体的な案を前提として内閣官房に調整をお願いしておるという事実はございません。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 わかりました。この読売と毎日の二つの新聞は、全く虚偽を言っているわけではないけれども、検討を進めているということですね。  外国人登録法に関して各自治体で改正決議をしておりますね。現在どのくらいですか。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 三月七日現在、約六百三十の地方自治体の議会が外国人登録法の改正について要望を決議し、政府に提出をいたしております。なお六百三十という数は、地方自治体の数が全部でおよそ三千三百ございますので、約五分の一に当たるということに。なります。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 私の調べたところですともう少し多くて、六百六十九くらいになっているのですけれども、まあ六百三十にしましても決して少ない数ではないですね。日本の人口のどのくらいがこの市町村に所属しているかということははっきりいたしませんが、六〇%くらいになるのではないかと思います。このことは非常に重要なことで、これだけの市町村が決議をするということをどう見られますか、大臣。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 各自治体からそういう要望書が出ておりますけれども、その内容につきましては、御承知のようにこの制度を全廃するというような言葉が入ったものもありまして、これは改正一つの意見だと思うのでございます。どういう環境の中でそういうことになったのかは、私もよく熟知はしておりませんけれども、我々、長い間の取り扱いの中で今日の制度をつくってまいったわけでございますし、先ほども御答弁申し上げておりましたように、五十七年に改正を行っておる、しかもそのときは全会一致でその法案が通っておるというような実情から考えまして、そのときの主要なポイントになっている五年、それがたまたま本年に当てはまるというようなことに相なっておるわけでございますから、そういう事態も十分認識をして対処をしていただきたい、私たちはそう思っておるわけでございます。したがって、これは自治体の御判断のことでございますからなんでございますが、我々の方に出てきているのは、そういう要望が出てきているということとして理解をしている次第でございます。     〔熊川主査代理退席、主査着席〕

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 要望が出てきているということは大変大きなことだと思うのですが、私の手元に今、札幌弁護士会人権擁護委員会と山梨県弁護士会人権擁護委員会の二つの要望書があります。  これは八四年十月四日に札幌弁護士会人権擁護委員会から出されたものですけれども、李稔浩という方の人権侵犯問題を扱っております。   申立人は昭和五八年一一月一一日空知管内栗山町内で車を運転中、速度違反の取り調べを受けた際、運転免許証と外国人登録証をもっていなかったため、栗山警察署に出頭を求められ、その際、指紋、掌紋の押捺の他、顔写真撮影や身長、体重、足底部の長さの測定等を強制された というものであります。これは申立人の自由を侵害し、人間としての尊厳を傷つけたものということで、人権擁護の上からこのまま見過ごし得ないという要望書が出されております。  それから、もう一つの山梨県弁護士会人権擁護委員会から出されておりますのは、ことしの二月、つい先日ですけれども、金美代子さんという方、この方は、申立人によりますと、三人の警察官、お名前を言うのはちょっと控えますけれども、三人の警察官が共謀の上、   塩山警察署内において、外国人登録法違反被疑事件の身体の拘束を受けていない被疑者として取り調べを受けた。   「写真をとるから座りなさい」と写真撮影に応ずることを求め、申立人が「どうしてそんなことをするの。私が人殺しでもしたんですか」と涙を浮かべながら写真撮影の承諾を拒むと、その理由及び必要性について何らの説明をせず、語気強く「早く座りなさい」と写真撮影をした。   何らその必要がないのに、身長・体重の測定足型採取   「これじゃまるで重罪犯人じゃないの」と承諾を拒む申立人に対し、   指紋及び掌紋採取に応ずることを求め、申立人が涙を流し身体を振るわせながら、再三「何だこんなことをするんですか」と必死にその承諾を拒むと「みんなやってんだよ。規則だから仕方がないんだよ」   指を一本一本つかみ、語気強く「こうするんだよ」といいながら十指を順次指紋採取用紙に押しつけて、指紋採取 こういうことです。これも非常に人間としての尊厳を傷つけたものとして、人権擁護委員会から要望書が出ております。  それから、東京の洪信幸さん二十三歳。この方は一九八四年四月に  検問に会い、免許証を提示したが、酒気帯び運転の嫌疑でパトカーで派出所に連行された。この方は取り調べに際して、  呼気検査を行ない「酒気帯びだ」として検挙し、   登録証不携帯事犯として扱い、   無理矢理、全裸にして身体検査し、一〇指の指紋、掌紋の採取を強行した。 こういうことが実際に行われているわけですね。  こういうことは大臣、既に御存じだと思いますけれども、指紋をとる目的はずばり言って何ですか。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 先ほどお答え申し上げましたことの繰り返しになるおそれがございますので恐縮でございますが、指紋は、特性上一人の人間の指紋は同一のものが存在しないということ、それから一人の人間の指紋は生まれてから死ぬまで変わらないということがございますので、その特性に依拠いたしまして同一人性を確認するという手段に使っておるわけでございます。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 同一性を確保するためと言っていますけれども、こういうことがあるのですね。一九五三年五月の国会では犬養健法務大臣が、「一番大きい問題は治安問題でありまして、治安状態が今よりもさらに悪化いたしますと、あるいは少し貿易関係で来ている人の感情を悪くしても、あえて指紋をとるという制度を採用しなければならない。」と答弁しております。また、一九五八年二月には、唐澤法務大臣が「指紋をとっておくだけの必要がある。日本の治安の関係から必要がある」と発言しております。随分はっきり言ったものですけれども、法務省、これに対してどうですか。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 その当時の発言の背景につきまして必ずしも詳細に承知しているわけではございませんけれども、その答弁の行われた時期から考えまして、社会情勢が現在よりもはるかに混乱をしておったということは容易に想像されるわけでございます。これは推測でございますが、その治安という言葉は恐らく、例えば北鮮からのスパイの潜入といったようなことを念頭に置いてお答えになられたのではないかと考えるわけでございます。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 では、今は治安問題でとっているわけではないのですね。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 先生の御指摘の治安問題ということが、一般犯罪をお指しになるものでありましたらば、一般犯罪捜査のために外国人登録法上指紋をとっているわけではございません。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 確認は写真で十分なんじゃないですか。指紋が実際に使われたことがありますでしょうか。指紋を犯罪捜査には使わない、同一人と確認するために指紋が必要と述べていらっしゃるのだけれども、実際はどうなんでしょうか。  八三年九月に、韓宗硯さんという方の第二回公判が東京地裁で開かれました。この公判で、韓さんの弁護側と韓さんを応対した職員、東京都の職員の野村証人とで次のような反対尋問がされました。   「警察の閲覧はフリーパスだということですが」「はい、その通りです」「警察官の役職は」「公安担当だと聞いております」「犯罪捜査には使わないと説得しているのは、法務省の説明をオオム返しで伝えているにすぎないわけですね」「はい」「法務省は同一性確認のために指紋が必要だと言っていますが、確認は何でやっているのですか」「写真です」「写真で出来なかったことがありますか」「ありません」「同僚などではどうですか」「聞いたことがありません」「つまり指紋は必要ないと」「わたしどもでは必要ありません」「指紋を取られるのが快いものではないことが伝わってきますか」「はい、拒否したらどうなるんだって質問する人もいます」 こういう対話が交わされているのですね。写真で十分なんじゃないですか、どうですか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 先ほどお話があった時分は、外国人の登録問題というのが非常に深刻な事態でございまして、実は指紋制度を導入しまして、それによって随分間違いがたくさん発見をされたという経緯があるわけでございます。そういう中で、この指紋制度というのがスタートをしてきているという現実があるわけでございます。その後、結局戸籍がないわけでございますから、そういう意味でこの指紋制度というものをずっと維持をして、今まで指紋の問題の歴史が積み重なってきておるというのが現実であるわけでございます。  そういう中で、昨今いろいろな議論がありますので、そういうことを引き続き検討しようという段階に現在来ておるということでございます。したがって、何か当時の模様から考えて、実はその指紋制度によって、本当に年に何万件というような非違が発見をされて整理をしてきたという経緯があることを御了承願いたいと思います。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 じゃ、パスポートとか運転免許証とかは、どうして写真でいいのですかね。そのことは御検討いただくとしまして、余り時間がありませんので申し上げにくいのですけれども、法務省は登録時、初回一回だけということも検討されているとお聞きしておりますけれども、一回であろうと五回であろうと、屈辱を受ける側にとってみれば全く違いはないのですね、一回ほっぺたを殴られるか、五回殴られるかということですから。  今、私の手元に、お読みすることができませんが、「十五歳のお願い」という文章があります。これは、在日朝鮮人の中学生の方の、十五歳の少女たちのお願いです。私たちは、間もなく十六歳になると指紋を押さなければならない。みんなの見ている前で、黒々と墨をつけられて押さなければならない。指紋は悪いことをした人からとるということを知っています。辞書にはこう書いてあります。「指先の内側にある、多くの線からできている模様。人によって異なり、しかも一生変わらないので、犯人捜査などの個人識別に利用される」と書いてあります。一体、私たちが十六歳になるまでどんな悪いことをしたのでしょうかということが、るる訴えてあるわけです。これは差別ですと。  時間の関係で申し上げられませんが、在日韓国・朝鮮人の歴史的な社会的な特殊性ということはもう十分おわかりだと思いますけれども、今なぜ、八十三万人の在留外国人のうちの八三%、六十八万人が韓国人、朝鮮人であるかということは、もう大臣、よくおわかりと思います、きょう私は申し上げませんけれども。  次に、日本は人権擁護が不十分であるということを国連の専門委員会が責めているという記事があります。ちょっと前の記事なんですけれども、「日本は人権擁護不十分」「わが国は三年前に〝世界の人権憲法〟といわれる国際人権規約を批准したがこれは八二年の新聞ですが、「政府が国連に提出した同規約の国内実施状況についてのレポートが、」「国連人権専門委員会の席上、海外の委員から厳しい批判を浴びた」ということが明らかになっているわけです。このレポートは、「席上、日本政府の富川明憲代表(外務省国連局首席事務官)が「人権規約にうたわれているすべての権利が憲法などで保障されており、実行状況をみても日本は人権が最も良く守られている国の一つ」と自画自賛した。」というのですね。  これに対して、人権問題の権威者である海外の委員たちは、「日本の報告はあまりに簡潔過ぎる」「日本にマイノリティーズは存在しないといっているが、朝鮮人、中国人、アイヌ人のグループがあるではないか」「国籍法は国際結婚で生まれた子供」国籍法は一つ進展いたしましたね。「警察、監獄関係者や公務員の研修で人権規約について教育しているか」「同和問題解決のため政府はどんな努力をしているか」「外国人の人権を十分保護していないのではないか」こういう厳しい批判、質問が相次いております。これは幾つかの新聞に報道されております。  国連専門委員会のこの人権に関する日本政府に対する厳しい批判、これはどういうふうにお受けになりますか、外務省。

増井正外務省国際連合局人権難民課長

○増井説明員 ただいまのお話についてお答えいたします。  これは、我が国が昭和五十五年に、市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約と言われております、その第四十条に基づく報告書を初めて国連に提出したわけでございます。そして一年おくれの五十六年に、このリポートの審査が人権委員会において行われた次第でございます。  この報告書と申しますのは、もちろん非常に多岐にわたるものでございますので、関係各省庁とも十分相談させていただいた上で作成したものでございます。(竹村分科員「そんなことはわかっております。短くお答えください」と呼ぶ)それで、審査のやり方なんでございますが、これは我が国だけではなく、各国が出してまいりました報告書に基づきまして、出席の各委員がいろいろ質問を行うというやり方が行われておるわけでございます。  それで、我が国も初めて提出したというようなことがございましたので、十分な対応ができなかったというような指摘も一部なされたわけでございます。しかしながら、かなり誤解、それから認識不足等々について質問等、意見なんかもあったというふうに聞いております。しかし、その後いろいろな機会をとらえまして、その機会に指摘があった問題につきましては、極力実情を理解していただくように努めてまいったところでございます。  いずれにしましても、今後とも政府といたしまして関係各省庁といろいろな協議をしながら、人権の擁護及び促進のためにできるだけの努力をしてまいりたいと考えております。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 外務省の中に、人権難民課というのが去年できだそうですね。それまではなかったわけですね。日本は、人権という問題では大変後進国だと私は思っているわけですけれども、今の法務省のいろいろな指紋押捺拒否の問題などお聞きになってもおわかりのとおり、やはり人権難民課というのが、しかも人権と難民とそれぞれ別にしても大変膨大な仕事と展望を持たなければならないものが一緒になって去年できたばかりという、日本のそういう方面に対する考え方の基本的な理念の大変お粗末さというか、貧弱さというのを感ずるわけです。これはやはり、人権問題ではしっかりとやっていただかなければならないのと同時に、外務省の中にだけこれを託しておくことの不都合さを私は非常に感じたわけです。難民問題にいたしましても、今飢えの問題が非常に取りざたされている大きな問題ですから、これは外務省の範囲としては制限がおありになると思いますし、今後の問題ですが、人権の問題につきましては、政府の大きな展望と御英断をぜひお願いしたいところですけれども、きょうは大臣お一人しかいらっしゃいませんが、法務大臣、どうお思いになりますか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 御承知のように、法務省の中にも人権擁護局というのがあるわけでございまして、全国に、人権擁護委員の皆さん方も一万五千人を数えるぐらいおいでになるわけでございまして、人権の問題については、啓発運動をどんどん進めるという考え方で現在まで対処してきておるつもりでございます。私は、新憲法ができましてから、日本人は随分そういう面ではよその国に劣らない状態になっておると信じておりますけれども、人権問題というのは重要な課題でございますから、今後とも、人権擁護の立場を維持するように努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。

竹村泰子日本社会党・護憲共同

○竹村分科員 もう時間が参りました。  外国人登録法のうち指紋押捺制度の廃止、登録証の常時携帯、これもまた大変大きな問題なんですね。ちょっとお買い物に行くのにも、事情に応じてと言っておられますけれども、極端に言うと、おふろに行くときにも買い物に行くときにも持っていなければならないという、この圧迫ですね、大変なプレッシャーだと思いますけれども、この登録証の常時携帯それから懲役、罰金などの刑罰、この三つの点につきまして、今大きなうねりをもって指紋押捺の問題が出てきておりますけれども、ぜひ法務省の御検討をお願いしたいと思います。  ありがとうございました。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて竹村泰子君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  先ほどもいろいろとお話があったようでございますが、私は、やはり同様に指紋押捺問題、常時携帯、あるいはまたサハリンに残留をいたしております韓国人の帰国促進の問題を取り上げたいと思っております。  日本と大韓民国との間に国交が回復をいたしまして二十年がたちます。両国の間にはかってないほどの友好親善関係が保たれておることは、今さら言うまでもございません。しかし、真の友好関係が確立をされるには、不幸であった過去の日本と韓国との間の歴史的な経過というものを十分反省しなければなりませんし、また、その落とし子という言葉が適当かどうかわかりませんが、日本におみえになりますところの韓国人あるいはまた朝鮮人の方々の処遇問題、特に差別問題を撤廃しなければ真の戦後処理にはならないのではないか、その具体的なものが今回の指紋押捺の問題であり、あるいはまた、後ほど提議をいたしますサハリンに残留をする韓国人の問題ではないだろうか、私はこう思うわけであります。そういう意味で、私は今回ぜひ問題提議をしたいと思うのは、外国人登録法に規定をされているところの指紋押捺、これの廃止、あるいはまた登録証の常時携帯制度というものを廃止するという基本的なことが必要だという立場から質問をしたい、このように思うわけであります。  ことしの大体八月から十月ごろにかけましてピークが来るであろうところの、外国人登録の大量更新が来るわけでございますが、予定人員はどの程度か、まずお伺いをしたいと思います。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 お答え申し上げます。  本年中の大量切りかえと呼んでおります確認申請の案件は三十七万件でございます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 三十七万の方がおみえになるわけでございますが、既にそれぞれ登録を行ってみえる方もおみえになるでしょうし、あるいは拒否者の方々もおみえになるだろうと思いますが、ただいままでのところの拒否者の総数はどの程度に把握をされておるのか、お伺いをしたいと思います。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 現在までのところ百四十八名でございます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 百四十八名の方々が拒否をなすっておみえになる、こういうことですね。  それで、たまたまこの窓口は地方自治体でございますけれども、川崎市は、この指紋押捺を拒否された方々については告発をしないということを決めたようでございます。決めたようでございますけれども、その報道に対して法務大臣は、川崎市を告発するあるいは説得するということを言われておりますが、具体的にどのような態度をとられたのか、お伺いをしたいと思います。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 御承知のように、地方公務員も含めて公務員でございますから、公務員が定められた規定を守って運用するということは、まず第一番目に大切なことであろうというふうに私は思っておるわけでございます。  そういうところから、実は五十七年の八月に指紋押捺を拒否した外国人の方につきまして、ことしに入りましてからも去年からも、再三指紋押捺してもらいたいということをお願いしておったわけでございます。これは、市役所の側もそういう努力をしておりますし、我々の方も、そういう考え方で整理をしていただきたいということで努力を積み重ねてまいりましたけれども、いよいよ時期が、三年という時間との絡みもありまして、これがある程度、参考人を呼ぶとかあるいは調査に入るというような事態になったわけでございます。そういう事態を踏まえまして、この件について告発をしなかったというのが現案内輪の取り決めだということに聞いておりますけれども、そういう処理が行われておったわけでございます。したがって、それは非常に遺憾なことであるというふうに私は申し上げたわけでございます。その後の取り扱いについては、よく諸般の実情を勘案して対処をするというようなことでございますので、今後ともそういう気持ちでぜひ運用をしてもらいたいと思うし、そういうことを深く期待しておるというのが私の現在の気持ちでございます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 具体的に川崎市を呼んで説得をされたのですか。そういう事実はあるのですか。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 現在までの慣行といたしまして、外国人登録の実務は都道府県を通じて各市町村を指導してもらっておるということでございます。そういう従来の慣行もございますので、本件につきましても、神奈川県を通じて文書による説明を求めた、これに対して川崎市が神奈川県を通じて文書による報告をしてきたということでございます。したがいまして、そういった経緯がございますので、本件についての指導と申しますか、当方の意向の表明も神奈川県を通じて行ったということでございます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 先ほどの質問者もあったようでございますけれども、各地方自治体は全国で六百を超す議会で特にこの制度の廃止についての決議を数年前から行っておるわけでございまして、また、そういう日本国内における現状を一番承知をしている自治体のいろいろな要望というものを無視して行われるということは、今法務省は法を守るということをおっしゃいましたけれども、法律は生き物であります。政治というものも生き物であります。しかも、日本との間に不幸な歴史があった落とし子であります。そういう問題に対する十分な配慮が必要ではないか、私はこう思うわけです。  そこで、きょうは余り時間がございませんので警察庁にお伺いをいたしますが、このように今非常に大きな問題になっておるのですが、警察庁はどのような対応を立てられているのか、お伺いします。

赤木孝志警察庁警備局外事課長

○赤木説明員 お答え申し上げます。  外国人登録における指紋制度の基本的なあり方につきましては、これは警察の所管外でございますが、せっかくのお尋ねでございますので警察の立場から考えを申し述べますと、在留外国人の公正な管理は、公共の安全と秩序を維持していく上においても極めて重要なことである、かように考えております。そして、この在留外国人の管理を公正に行うには、個々の外国人を特定することが基本となるわけでございますが、そのためには、指紋という絶対的な方法によることが最も有効である、こう考えておるわけであります。また、我が国への密入国者等が後を絶たない現状におきまして、現行の指紋押捺制度は、これらの不法行為に対する大きな歯どめになっておるというふうに考えております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 非常に重要な答弁をしておりますが、公正な管理ということを今おっしゃっておりますけれども、私どもが主張しておりますのは、きのうやきょう、ひょこっと日本にビザを持って入国をしてきた外国人の管理を云々しておるわけではないわけであります。歴史的な不幸な事態の中からということを私ども何回か申し上げておりますし、しかも永住権を持ち、三世、四世の時代になっておる、そういうものに対する対応の答弁ではないわけでございまして、今の答弁は一般外国人の取り扱いではないか、私はこう思うのでございますが、あわせて、警察は例えば拒否者に対して自治体の告発がなくても捜査をするのか。法務省の方はこの前若干その点についての意見があったようでございますが、警察としてどうするのか。あるいはまた、拒否者について逮捕をするようなことがあるのかないのか。これは非常に重要なことでございますから、念を押しておきたいと思います。

赤木孝志警察庁警備局外事課長

○赤木説明員 この種の事件は、告発を端緒として捜査を行う場合が多いわけでございますけれども、外国人登録法違反の罪につきましては、告発が訴訟条件となっておりませんので、告発がなされなくても捜査を行う場合はあり得るわけでございます。逮捕云々ということでございますが、捜査は個々の事案に即して行うものでございまして、一般的に申し上げることは大変難しいわけでございますが、ただ、いかなる捜査におきましても、強制手段によることの可能性を最初から排除するものでないことは申し上げられるだろう、かように思います。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 これまた、それでは地方自治体に何のために登録をするのかという根本的な精神の問題にも今触れるわけでございまして、告発がなくても捜査を行う場合があるというのは、私は、警察庁としては非常に強い態度だと思うのですね。私どもが問題提起をしておるのはそういう態度ではなくて、少なくとも地方自治体自身がやめてもらいたいという、そういう議会の決議がもう六百を超す事実がありますよ。しかも国会の中でも、我々はきのうやきょうこの問題を取り上げておるのではなくて、もう数年前から、後ほど中野先生もやられると思いますけれども、私どもの党だけではなくて、一生懸命やっておみえになる先生方もたくさんいるわけであります。何回か申し上げますけれども、それなりの歴史的な経過があるわけでございますから、これはやはり単純な密入国者の取り扱いと厳然と分けていただかなければいかぬと思うわけであります。  そこで、これは一回外務省にお伺いをしたいわけでございますが、昨年金斗換韓国大統領が日本にお見えになりまして、そこでいろいろと、宮中晩さん会での天皇のお言葉もあったわけでございますし、そしてまた共同声明の中における文言もあるわけであります。これをひとつ申し上げておきたいと思うのでございますが、それを十分警察庁も聞いてもらいたいわけです。いわゆる日韓の共同宣言の中には、中曽根総理と大統領との間の共同声明の中で、「総理大臣と大統領は、在日韓国人の特殊な歴史的背景を考慮し、その法的地位及び待遇の問題が両国民間の友好関係の増進に深くかかわっていることに留意した。」十分承知をしたと総理も言っておみえになるわけであります。「大統領は、これに関連し、これまで日本政府がとってきた措置を評価しつつ、日本政府がこの問題について今後とも努力を継続するよう要請し、総理大臣は、引き続き努力する旨述べた。」わけです。努力する旨述べておるにもかかわらず、今当局側の方は、一般外国人と同様な取り扱いをなすっておみえになるわけであります。  そしてまた、宮中晩さん会での天皇のお言葉、これが当時非常に高く評価をされ、一つの提起をされておるわけでございますが、中段で「永い歴史にわたり、両国は、深い隣人関係にあったのであります。このような間柄にもかかわらず、今世紀の一時期において、両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います。」私は、この言葉の意味するもの、あるいは両国のこの共同声明の言葉の意味するものの中から、今の問題提起をしておる。ところが、現実の現場の当局なり法務省は、このことに何ら関係ない一般外国人の管理というような言葉で処置をする。これでは私は、せっかくの両国の友好にならない、こう思うのですが、これはひとつ法務大臣、どのような御見解でしょうか、お伺いをします。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 御指摘のように、今宮中晩さん会におけるお言葉の中にありましたように、やはり日韓の関係というのは、非常に不幸な歴史というものを過去に持っておることは事実であろうと思うのでございます。しかし、御承知のように、この指紋問題を考える場合に、非常に長く日本に居住をされておいでになる方々に対して指紋をなぜとっておかなければならぬかというのは、過去の長い歴史もありますけれども、ともかく、戦後非常に外国人登録が乱れた時期があったわけでございます。そういうときに、やはりきちっとした整理をしないといろいろ問題があるということでございまして、この指紋制度を導入をしました。現にその結果、非常に間違った非違事実がたくさんあったという経過を持っておるわけでございます。そういう中で今日まで参ったわけでございますが、先ほど来御説明申し上げましたように五十七年の改正という問題がありまして、そこでもいろいろな論議があった経緯があるわけでございます。たまたまその五年目が、ことし大量切りかえというようなことに相なっておるという実情を踏まえまして、我々も、事柄をいろいろ判断をしておるというのが実態でございます。  しかし、先ほどお話がありましたように、総理自身も引き続き努力するという発言もありますから、それ以後いろいろな意味でそういう内部的な検討は進めてきておるというのが現実でありますけれども、一致した政府の取り扱いが出ていないというふうな現実であるわけでございます。特に、長くおられる人の指紋問題というのは非常に厄介な問題でありますけれども、アメリカの例等で見ましても、本当は長くおられる人の指紋保持ということについては、かえって厳格にやっておるというようなことが実情にあるわけでございます。今後とも我々自身も、これを何か人権問題というとらえ方ではなしにきちっとした整理をしていくということが非常に大切なことであるということでこの問題を取り扱っておるわけでございまして、外国人の皆さん方も、そういう意味で今ある法律の状態というものをぜひよく御理解願って御協力してもらいたいと思っている次第でございます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 今、政府部内で内部的にいろいろ議論をしておみえになるとおっしゃっておられますが、そういう結論は今国会中に出るのかどうかお伺いしたいと思います。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 お尋ねの検討状況についてはまだ十分答えが出ていないというのが現実であろうと思っておるわけでございます。この国会の状態から考えまして、それをきちっと整理をして今国会に成立させるというような状態には現在ないように思われます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 これは、一番最初にお伺いをしましたように、夏に大量の切りかえが起きるわけであります。窓口では当然混乱をいたします。混乱を好むものかどうか、あるいは外務省にお伺いをしますが、これはいずれますます政治問題化をするわけでございますが、そういうことに対する対応は、外務省なり自治省はいいのかどうか。自治省はお見えになっていますね。ちょっと、混乱が起きるのがいいかどうかということを、自治省なり外務省、答弁を願いたいと思います。

小島重喜自治省行政局振興課長

○小島説明員 お尋ねにお答えしたいと思います。  ただいまのお尋ねでございますが、御承知のとおり、この外人登録の事務と申しますのは国の機関委任事務ということになっておりまして、これにつきましては、市町村長が法務大臣の、言うなら分身といいますか機関として事務を処理するわけでございます。したがいまして、法務省におきましてしかるべき適切な措置をとっていただきたいというように私どもは期待をいたしておりますし、そのように考えておるところでございます。

渋谷治彦外務省アジア局北東アジア課長

○渋谷説明員 お答えいたします。  指紋押捺問題に関します目下の韓国政府側の反応でございますけれども、最近では、本件は日本国の主管事項であるが、現在日本政府部内で行われている努力の結果には強い関心と期待を持っているというような形で、機会があるたびにそういう発言が私どもになされております。  この問題に対して、今後韓国政府がどのように反応していくかという点でございますけれども、私どもも常々、韓国政府に対しては、指紋押捺問題は我が国の問題でもあり外交問題にしないようにということを要請してきております。今後の日本国内の情勢に対応して韓国側がどのように反応していくかという点につきましては、もう少し見守っていきたいと思っております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 今、自治省は、しかるべき措置を法務省にとってくれ、こう言っておるわけですよね。明確ですね。外務省の方は、非常に遠回しではございますけれども、韓国政府がこの問題についての非常に強い処置を期待しておるということを言外に言っておみえになるわけであります。法務大臣、先ほどのような答弁ではだめですよ。少なくとも何らかの形で今国会に合意をするということを表明してください。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 この問題につきましては、関係各省の間でいろいろと検討して今日まで参っておるわけでございますが、先ほど来申し上げましたような五十七年の改正という事態を踏まえ、今いろいろな議論があることは十分承知をしているわけでございますから、今後ともこの問題については慎重に検討してまいりたいというふうに思っております。ただ、御承知のように、今度の国会の情勢から見まして、この中で整理ができるかどうかということについては非常に難しいというふうに判断をしております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 じゃ、今国会で処理をするのが難しければ、年内に何らかの形の提案ができるということを言っておみえになるのですか、どうですか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 その時期を年内ということに区切るかどうかということには非常に問題がありますけれども、この問題の重要性ということは十二分に承知をしておるわけでございますから、早急に答えが出るように努力をしてまいりたいと思っております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 きょうは予算の分科会でございますから時間が限られておりますから、もうこれ以上詰めることはできないと思いますが、ぜひ早急な対応ということが発表できるようにしていただきたい、こういうようなことを強く要望いたしますし、また、十六歳の子供に指紋をとらせるということは、黒色を紅色にしようと、例えば第一回のときだけだからあとはいいじゃないかというような、そういう妥協案ではなくて、基本的に、国際人権規約を結び、難民条約も結び、そして内外人の差別を撤廃するという、近代工業国家として日本はこれから伸びていくわけでありますから、全くの平等、差別のない対応を私はしていただきたいということを非常に強く要望して、この問題を終わりたいというように思います。時間があとございませんので、最後にサハリン残留の韓国、朝鮮人問題の処遇について、これは特に外務省にお願いを申し上げたい、こういうように思います。  このサハリンに残留をいたしております韓国人、朝鮮人の方々数万名という問題につきまして、私自身も一昨年サハリンへ行ってまいりまして、そして、少なくとも日本を舞台に、韓国に残っておみえになります韓国の方々と再会をするようにということを訴えてまいりまして、昨年、私自身が権という夫婦を一組招待いたしました。四十二年ぶりに日本で再会ができまして、私自身も非常によかったと思っておりますが、本年になりまして、ぼつぼつと、二、三ではございますけれども、おいでになっておられるわけであります。  そういう現状と、そういう上に立ってぜひ日本に情報連絡センターというものを設置することが非常に重要だと私は思っております。韓国の方々から手紙が来る、サハリンに残ってみえる方々とこういう連絡交換ができるセンターを私はぜひつくっていただきたい。それは財団法人であろうと何であろうといいのでございますが、この協力を外務省に求めたいわけでございます。以上の二問について一括して外務省から答弁を願いまして、ちょうど五分前でございますので終わりたい、こう思います。

渋谷治彦外務省アジア局北東アジア課長

○渋谷説明員 お答えいたします。  このサハリン在留の朝鮮人問題は非常に難しい問題でございます。従来から草川先生がこの問題の解決のためにいろいろ努力され、いろいろ御苦労されたということは私どももよく承知をしておりますし、その点につきましてはある意味では非常に感謝をし、敬意を持っております。  外務省といたしましては、本件の問題の解決につきまして今後とも粘り強くソ連に対して働きかけていくつもりでおりますが、御指摘のセンター設置問題につきましては、政府がこのようなセンターを設置すべきかどうかという点につきまして、所管官庁の問題を含め、慎重に検討する必要があるというぐあいに考えております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川分科員 以上で終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて草川昭三君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。

中野寛成民社党・国民連合

○中野(寛)分科員 私も引き続いて指紋押捺の問題についてお尋ねするわけでありますが、私はここでこの関係の質問をいたしますのはもう九回目でございます。当選以来九年目、毎年この問題を取り上げてまいりました。また最近は、こういう公式の委員会の席上だけではなくて、その他いろいろな場所において法務省の担当の皆さんとも話をしてまいりましたから、端的に幾つかの問題についてお尋ねさせていただきたいと思います。  まず、外務省にお尋ねいたします。  先般、韓国において国会議員の選挙が行われました。新韓民主党が発足し、そして大変な勝利をおさめたわけであります。私どもも個人的に親しい人たちがたくさんいらっしゃいますけれども、その方々は、今日までの韓国の国会における野党の皆さんよりもどちらかと言えば大変自己主張を明確になさる人たちでありますし、同時に国益については大変ストレートに物を言う人たちが多いと思います。当然韓国の国会ではこういう在日韓国人の指紋押捺問題等がこれからも大変大きくクローズアップされるだろうと思いますし、それに対応するために、韓国で新たに内閣も組閣されましたけれども、国会の意思を受けて当然日本に対してより一層強い姿勢で臨まざるを得ない状態になるであろうし、また臨んでくると思うのであります。単に今日までの韓国政府からの日本政府に対する要請の延長ということではなくて、ことし大量切りかえの年であるだけに、なお一層この問題はいやが応でも政治問題化してくる、避け得ない、こういうふうにも考えるわけでありまして、外務省の判断と、そしてこの問題に対する外務省の希望について改めてお聞かせいただきたいと思います。

渋谷治彦外務省アジア局北東アジア課長

○渋谷説明員 最近の総選挙の結果、御指摘のとおり新韓民主党が躍進いたしましたけれども、この新しい野党である新韓民主党が在日韓国人の待遇問題につきまして、これは指紋押捺問題を当然含みますけれども、いかなる考えを有しているかは残念ながら現時点では私どもも明確に把握するには至っておりません。今後、韓国の国会がどのような動きを示すかということとも関連して、現時点では新韓民主党のこの問題に対する態度というのは非常に予測が困難だと思います。私どもも、今後新野党の動きについていろいろ注目していきたいと思っております。

中野寛成民社党・国民連合

○中野(寛)分科員 もちろん新韓民主党には金大中氏もいらっしゃいますし、金泳三氏もいらっしゃいます。人権問題については韓国のみならず日本の人権問題についてももともと大変な興味、関心を持っておられる方々であることは既に周知の事実であります。これからの韓国の政治情勢等を見ますときに、彼らがこれらの日本国内における在日韓国人の問題を決してそのまま見過ごすわけはないわけでありますし、むしろ日本の国内情勢にも彼らは詳しい人たちでもございます。韓国政府もそれを受けて、新しく就任されました国務総理も元外務大臣として日本政府とは強い姿勢でやり合われた方でもあります。そういう情勢を見ますときに、これからの日韓関係というのは大変厳しい状態になるであろうことを覚悟しなければならないと思います。もちろん韓国からの圧力によってこれらの問題が対応されるべきではありません。しかし、そういう政治問題化することを避けられない情勢であることも現実であると思うのであります。  あわせて、自治省にお伺いいたしますが、私はこの外国人登録証の切りかえ事務に携わっている自治体の担当者の皆さんに何人がお会いしてお尋ねしたことがあります。そういう中で、先ほども同僚議員が触れておられましたけれども、現実に切りかえ作業をするときに指紋で本人確認をしておりますかと聞きました。異口同音に、我々の目で指紋が同じかどうかという見分けは、おおよその見分けはっくけれども、はっきりとした見分けをそこでしているものではない、現実には写真でやるしかないのです、また現実に写真でやっておりますという答えてあります。     〔主査退席、小泉主査代理着席〕 ということは、既に現実には指紋を押捺することは形骸化してしまっているわけであります。こういう実態、そして地方自治体が現実にはいかにこの問題において当惑しているかということを自治省は既に御存じだと思うのであります。自治省の御判断をお聞かせいただきたいと思います。

小島重喜自治省行政局振興課長

○小島説明員 お答えいたします。  今御指摘の点でございますけれども、御案内のとおり、先ほどもお答え申し上げましたが、外国人登録事務と申しますのは、主務管庁が法務省でございまして、法務省の機関委任事務という法律上の制度になっておりまして、自治省として直接これをこう指導するとか、あるいはくちばしを挟むという立場にございません。私どもといたしましては、とにかく窓口の混乱ということは市政、区政あるいは市町村政の上でいろいろと問題が生じかねない場合があると思いますので、そういう点も含めて適切な指導をしていただきたいということを法務省にお願いするというのが私どもの立場ではないかと思うのです。

中野寛成民社党・国民連合

○中野(寛)分科員 今の自治省の御答弁、言うならばその立場にないということですが、実際は結局自治省ではお手上げなんです。自治省でお手上げというよりも現場ではお手上げなんです。そういう状態の中で法務省はなおこれにこだわっていくのかどうか。私は大変そこに疑問と同時に大きな怒りを感じます。すなわち人権の問題としてとらまえられておりますけれども、実際上は形骸化してしまっているということは行政の実際の効果を上げ得ていないわけです。これは自治省、否定をなさらない。現実に、私自身は実際この目でこの耳でその担当者の皆さんから見聞をしているわけであります。こういうことを考えますときに、法務省としては当然実態に即した対応をせざるを得ない。今後ともそのままの状態で行くとするならば、それは法務省の怠慢であると言わざるを得ない。それを今度は逆に、私どもこう指摘したからといって、各自治体の窓口ちゃんとやれ、指紋でちゃんと見分けろと幾ら御指導なさろうと、実際は不可能であります。こういう状態の中で法務省としての決断が迫られていると言っても過言ではないと思うのであります。  ちなみに、先般韓国居民団の皆さんから衆参両院議長あてに請願書が提出されました。総数百八十一万余の署名に基づくものであります。在日韓国人の人口数とこの署名者の数字を比較していただければ、いかに多くの日本人がこの署名に参加したかということもおわかりいただけると思います。  そう長い文章ではありませんから、この請願の趣旨を改めてここで読み上げます。   われわれ、在日韓国人は、外国人登録法に規定されている指紋押捺制度の改正を請願するものであります。その理由は、外国人登録に際し、指紋押捺を強いられることによって著じるしく屈辱感を覚ゆると共に、人権差別を感ずるのであります。また外国人登録証の常時携帯の義務は、一般外国人と異り、歴史的事情による特殊な在留経緯をもち、しかも長い年月に亘って日本社会に深く根をおろし日本国民と何らかわらない生活を営んでいる在日韓国人にとっては、いまや不必要な規定と思われます。   在日韓国人は一九六五年、法的地位協定による協定永住権者であり、同協定に際し、日本国民に準ずる待遇をするという法務大臣の特別声明を御配慮されることを切に願いつつここに次の事項につき署名をそえて請願いたします。     請願項目  一、永住韓国人に対し、指紋押捺制度の廃止。  一、永住韓国人に対し、外国人登録証の常時携帯制度の廃止。 これは既に法務大臣御存じのことだと思います。ここに記載されております「歴史的事情による特殊な在留経緯」についてはもう今さら説明を申し上げるまでもないことであります。これらのことを勘案しながら、法務省としては格別の御判断と御配慮が必要かと思います。  ここで私の意見を一つだけ申し上げたいと思います。  世界で二十数カ国しか実施されていないこの指紋押捺制度は、原則的に人権的に見ても本来廃止されるものと考えます。しかし、そこに至るまでの間は外交的には相互主義に基づいてこの種問題は処理されていることもよく承知をいたしております。ですから、他の国々との関係において一般永住者については相互主義によってこの問題が処理されるということも一つの判断材料だと思います。このことについて、法務省として御考慮の余地がありますかどうか、お尋ねをいたします。  あわせまして、この相互主義による措置になじまない存在があります。それが今読み上げました在日韓国人、協定永住者であります。歴史的経緯によってわざわざ協定が結ばれて、そしてこの在日韓国人だけが協定というものによって保障された永住資格が与えられているわけでありますけれども、それはまさに歴史的経緯に基づいて日本人と同じ扱いをされるべきものと位置づけられている存在であります。ゆえに、この存在だけは相互主義にさえもなじまない。むしろそれこそ特別に日本人と同じ扱い、すなわち指紋押捺そしてまた外国人登録証の常時携帯等については廃止されるべきものだと考えるわけであります。  以上の点について、法務省の御見解をお尋ねいたします。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 ただいま先生から相互主義の問題について御指摘がございましたので、この点についてまずお答え申し上げます。  相互主義という方式は、外国人の入国については広く行われておる点でございます。すなわち、例えば査証の相互免除といったような問題がございます。しかしながら、外国人の在留については相互主義というものが一般的に行われているというのは事実ではないのではないかと存じます。と申しますのは、外国人の在留管理の方法は国によって極めて大きな差異がございます。したがって、もし相互主義によってこれを律しようとすれば国籍によって現に一国に在留している外国人の扱いがさまざまの面で変わってこなくてはならないわけでございますけれども、在留という問題は入国と違いまして画一的につかむことが非常に難しいということでございまして、そういった非常に差異のある扱いを国籍によって在留している外国人に適用するということは行政技術的に極めて困難であると思われますので、これが現に各国においてこの在留管理についての相互主義が一般的に行われていない理由と存じます。例えば外交官の行動範囲といったような非常に限られた面においては相互主義がございますけれども、これは非常に限られた範囲の話でございまして、一般外国人に適用し得る問題ではございません。したがって、この在留管理に関して指紋押捺を含めて相互主義を適用するということは技術的、物理的に非常に難しいことと思います。  それから、韓国人、朝鮮人の本邦とのかかわりに関する長い歴史、背景を考慮して、永住外国人の中でも協定永住その他朝鮮半島出身者である永住者については別途の扱いをすべきじゃないかという問題につきましては、これは同じ永住外国人の中で国籍によって扱いを異にするという結果を招くわけでございまして、この点から新しい問題を生ずることになりかねない、それこそ区別によって不利益を他の国籍を有する外国人にもたらすという結果を生ずるわけでございまして、その点から実際上実施に移すことは極めて困難ではないかと存じます。少なくとも在留管理という観点からは、朝鮮半島出身者が外国人にとどまる限りにおきましては、同じ立場にある――同じ立場というのは法的にでございますが、法的に同じ立場にある他の国籍を有する外国人と扱いを異にするということは、立法論的にもまた行政的にも実際的ではないと私どもは考えております。

中野寛成民社党・国民連合

○中野(寛)分科員 相互主義の問題はこの話の経緯の中でついでに申し上げましたから、あえて反論はいたしません。しかしながら、この在日韓国人の協定永住の問題は、他の外国人とこれを差別するわけにはいかないということですけれども、考えてください。この在日韓国人の皆さん、特に協定永住者の皆さんの場合には、日本の国策によって、日本が朝鮮統治をしたことによって、韓国籍であるにもかかわらず勝手に日本人とされたのです、本人の意思にかかわらず。そして、戦争が終わり韓国の独立。その中で日本国籍であったのが、本人の意思にかかわらず、しかも日本に住んでおったとしてもその協定によって韓国籍に戻されたのであります。そのいずれのときにも本人たちは選択の自由は認められなかったのであります。そういう歴史的な経緯があるからこそ協定が結ばれ、そしてまた今般韓国の全斗煥大統領と中曽根総理との共同声明にもわざわざこのことが盛り込まれたのではありませんか。ならば、単に他の外国人、一般在留者や一般永住者どこの協定永住者との間に差別をすることができないというふうなことが果たして簡単に言えるのかどうか。私は、特別の理由がその歴史的経緯から見て存在する、こういうふうに判断をするわけであります。改めて法務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 先ほど一点申し上げ損ねた点がございますので追加してお答えの中に含ませていただきたいと思いますが、日本国と大韓民国との間の法的地位及び待遇に関する協定がございます。その協定の第五条は次のように述べております。すなわち「第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民は、出入国及び居住を含むすべての事項に関し、この協定で特に定める場合を除くほか、すべての外国人に同様に適用される日本国の法令の適用を受けることが確認される。」というものであります。したがって、韓国は既にこの地位協定が締結された時点において特に定めた事項以外、すなわち協定永住権を与えるというような問題でございますけれども、特に定めた事項以外については他の外国人と区別する取り扱いを受けないということを確認しておるわけでございます。  この点は、私の答弁の中に一つ追加される点として申し上げさせていただきました。

中野寛成民社党・国民連合

○中野(寛)分科員 私は、その条文があることもよく承知をいたしております。この指紋押捺の問題をあえて取り上げてその条文があるにもかかわらず申し上げているのは、この協定永住資格のある意味では延長線上にこの問題は取り上げられていいものだと判断するからであります。その条文に規定されているもの以外は他の外国人と同一に、それはそれで一つの意味を持っていると思います。しかしながら、その永住に伴う中身についてこれら特別の判断がなされても、私は決して問題が生じるというふうには思えませんし、ましてその協定をこれから見直すことだって当然考えられることですし、また格別に先ほど申し上げましたような両国首脳の特別声明等々も存在をするわけであります。私は、そういう意味でこれからの対応について法務省としては当然のあり方として前向きにこれが検討されてしかるべきではないかというふうに考えますし、強く要請をいたします。  あわせてこの際お聞きしますが、先般二月八日の補正予算総括質問でこの問題を私が取り上げましたときに、法務大臣は「今後制度上、運用上、各般の問題点につきまして、関係省庁の中で鋭意検討を進めていきたいというふうに考えておる次第でございます。」という御答弁でございました。またあわせて、このことについて総理大臣は「この問題は、私と全斗煥大統領との話し合いにも出た問題でもありまして、自来法務省を中心にして検討をさしておりますが、さらに幅広く各省庁で詰めを行うように努力していきたいと思っております。」今日まで検討さしているけれどももはや詰めの段階に来ている、いわゆる詰めをさせるということが答弁でなされているわけであります。  「制度上、運用上」、制度上ということは抜本的な改正のことでしょう。運用上は現行法の中でとりあえず何かできないかということの検討をするということでしょう。具体的にそのことはどういう検討になるのか、今日どういう検討をなされているのか、そのことについてお伺いしたいと思います。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 御指摘のように、日韓の共同声明において引き続き努力するということが書かれておるわけでございますし、またこの問題をめぐっていろいろな御議論があるということは我々自身も十二分に承知をしておるわけでございます。  そういう意味合いからこの問題の論議を進めておるわけでございますけれども、まず第一点は、従来から御説明申し上げておりますように五十七年度の改正ということでございますし、その過程におきましてこの問題も含めていろいろな議論があったと開いておるわけでございます。そういう経過を踏まえて、今最初の五年目の切りかえのときにこれを切りかえるのが適当であるかどうかという問題が一つあるわけでございます。  それから二番目は、制度あるいは運用上のいろいろな問題につきまして関係各省がいろいろな議論を出し合って調整をやっておるわけでございますけれども、現実まとまった案にはなかなかならない。一方、全般的に指紋を押捺をしないあるいは携帯をしないというようなところが論議の焦点になっておりますから、そういうところまで問題が進展をすることを前提に議論をしていってもなかなか決着がつかないというのが現実の状態であろうというふうに思っておるわけでございます。  しかし、日韓共同声明の話もあるわけでございまして、今申し上げたような意味合いから、今後とも引き続いてこの制度上の問題及び運用上の各般の問題につきまして、意見を集約するように鋭意努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。

中野寛成民社党・国民連合

○中野(寛)分科員 制度上の問題については、先般来の同僚議員の質問にも、できるだけ速やかに結論を出したいという大臣の御答弁でした。運用上の問題については――私は本当は制度上の問題だけ聞きたいのです。制度上の改正がなされる、しかもそれはどういうふうな改正の方向が目指されるということがおおよそ明らかになってくる。またそれまで、できるだけその制度上の改正の線に沿った運用上の改正がなされるということによって、今直面しているこの問題の混乱を防ぐことに大きく寄与するであろうこともまただれも否定しないと思います。  私どもはそういう意味で先般来幾度もしつこくお尋ねしているのは、そういう方向づけを大臣から、また法務省のお立場で具体的に示されること、そのことが当面の混乱を回避することに極めて大きく意味のあることだと思うがゆえにお尋ねをしているわけであります。そういう意味で、もう少し制度上、運用上の改正の方向づけについて、また時期について示唆をしていただきたいと思います。

小林俊二法務省入国管理局長

○小林(俊)政府委員 先ほどからお答え申し上げておる点の繰り返しになるおそれがございますけれども、部内の検討はいまだ関係省庁間の合意として煮詰まった段階ではございませんので、例えば例示としてこういうことが考えられている、ああいうことが考えられているということを申し上げることは、物理的には可能でございましょうけれども、そういうことを申し上げますと、そういう方向で問題が進んでおるというふうに受け取られる傾向が極めて多うございますので、そういった誤解はかえって検討の過程を妨げることになりますので、私どもとしては、合意された結論が出るという見通しがつくまでそうした具体的な内容について申し上げるのはかえってマイナスではないかというふうにおそれている次第でございます。

中野寛成民社党・国民連合

○中野(寛)分科員 もう一度お聞きしますが、今国会で改正することは無理である、しかし速やかにという法務大臣の御答弁が先ほどございました。しかしこの国会で改正をしなければ大変大きな混乱が生じる。既に百数十人の拒否者が出ているのです。確かに警察では、それを自治体が告発しなくても捜査をして告発することも可能でしょう。警察では、それが五千人であろうと一万人であろうときちっとした手続をとりますとさえおっしゃられるでしょう。しかし、そういうことをきちっとできることが必要なのではなくて、そういうことを起こさないことが必要であり、ましてその人数が既に百数十人を数えるということ自体が問題、これがふえてくるということはなお一層重大な問題なんであります。まして、そのことによって日韓関係が、せっかく国交回復二十周年を迎えたこの年に逆の方向に落ち込んでしまうことを私は大変おそれるものであります。  また、韓国政府は当然国家間の道義を心得て、先ほど外務省からの御答弁のように大変筋道の立った遠慮した、日本の国権を損なわないように気をつけながらの要望がなされているようでありますけれども、具体的に私どもが韓国国会議員等と個人的に接触いたしますと、それは痛烈な言葉でこれらの日本の態度について批判をするのであります。もちろん我々は我々なりに日本の立場に立って反論はいたしますけれども、しかし決して外務省の分析のような生易しいものではないこともまた我々は知るべきだと思います。  そういう観点に立って、私どもはこの問題については誠意を持って積極的に、しかも早急に結論を出すべきだと考えます。そういう意味で、法務大臣の御答弁を改めてお願いして、時間が参りましたので質問を終わります。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 御指摘の問題につきましては、この予算委員会の中でも皆さん方から随分御指摘があり、またいろいろな面からいろいろな御議論があるということは十分承知をしておるわけでございます。我々も可及的速やかに結論を得るように努力してまいりたいと思っておりますけれども、現在の実情から見まして、この国会で成立するということはなかなか難しいのではないかと思っておるわけでございます。しかし、そうは申してもこの問題につきましては、その重要性にかんがみまして早急に検討を得たいという心組みで努力をしてまいりたいと思う次第でございます。

中野寛成民社党・国民連合

○中野(寛)分科員 終わります。

小泉純一郎自由民主党・新自由国民連合

○小泉主査代理 これにて中野寛成君の質疑は終了いたしました。  次に、和田貞夫君。

和田貞夫日本社会党・護憲共同

○和田(貞)分科員 ちょうど私の家の近所に日本一の大阪刑務所があるわけです。この刑務所ができた当時は、付近は野っ原であったわけで、現在の土を使ってれんが積みの塀をつくったり刑務所自体を建設した、そういうものなんです。ところが、今は国鉄の阪和線が通り、駅名も堺市駅と言いまして、堺市の玄関になっています。その駅前に刑務所がある。私記憶するところでは、徳島駅の近所の出来島町というところに徳島刑務所がございまして、何年か前にこれを撤去して移転をした。大阪刑務所の付近地は今日の段階では住居で囲われておりますし、堺市の玄関口としての市駅の真ん前に位置しているのですが、これは適さないと私は思いますが、そういうところに大阪刑務所があってしかるべきと思っておられるのか、あるいはまた適当な時期に移転をしようと考えておられるのか、このことについてお答え願いたいのです。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 ただいま和田委員仰せのとおりの状況でございまして、何しろあの大阪刑務所は、一面の草ぼうぼうのところに初めて私どもの施設ができた、地域社会が発展するにつれて、特に刑務所付近の発展のためにあの堺市駅ができた、こういう経緯があるわけでございます。  できたときから東洋一と言われた刑務所でありますので、収容人員が約二千五百、職員数が約五百という規模でございまして、たしか十数年前からだと思いますが、堺市当局におかれましても、当刑務所の移転問題につきまして私どもにもいろいろと御交渉がございましたし、市議会で御審議いただいたことも間違いございません。  私どもは、現在のところあれだけの大きな、つまり中規模の刑務所を四つ合わせただけの規模がございますので、その施設をしかるべき場所に移転するための移転条件、つまり職員、家族もそこで生活しておりますので、これらの人々をあわせて移転できるような場所があるか。被収客者にとりましても家族の面会等が楽しみでございます。そういった人々が来るのに著しく不便な場所でも困るということがありますので、従来から堺市との間では移転条件等につきまして、しかるべき場所を市等でごあっせんいただきまして、その条件が私どもの条件と合うということであるならば検討するにやぶさかでない、こういう形で従来から御折衝もしていただいておりますが、今までのところなかなか見つからないということで心ならず遷延しておる、これが現状でございます。

和田貞夫日本社会党・護憲共同

○和田(貞)分科員 確かにそうであろうと思います。私もこの付近の住民から言われまして、今御答弁いただいたように、これまた受刑者にも人権問題がありますけれども、五百人の職員、家族、これが刑務所の勤務の特別な事情からそばへ住まわなければならない、おのずから家族、子どもさんもあるわけですから学校にも行かなげればならぬ、市場にも行かなければならぬ、あるいは社会生活もしなければならぬということから、なかなか難しいのだと言っておるわけです。今の御答弁で理解できるわけでございますが、適当な場所があれば移転をすることにやぶさかでない、こうお聞きしたわけでございますが、そう短兵急にそのようなことはできないと思いますけれども、地元もその点の努力をしますので、ひとつ法務省当局も、今の時代にそぐわない場所にあるということを御理解いただきまして、その努力をなお続けてもらいたいと思うのであります。  そこで、受刑者の出所あるいは仮出所、これは何か時間的な制限というようなものはあるのですか。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 各施設多少の運用の差はございますが、出所をします時間帯としては早朝が多うございます。早朝といいますと、大づかみな時間帯で申し上げますと四時半ないし六時過ぎぐらいまでの一時間半ぐらいに集中的に出しておるという例が多うございます。

和田貞夫日本社会党・護憲共同

○和田(貞)分科員 出所する出口は、何か手続等によって限られておるのですか。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 出所者につきましては、その地域社会に余り迷惑をかけないで済めばよろしいのでございますが、施設の構造上それぞれの事情がございますので、大体出所口というのはどこの施設も通常一カ所に定めている例が多うございます。

和田貞夫日本社会党・護憲共同

○和田(貞)分科員 これは古い刑務所のことでございますので、今から穴をあけて出口をつくれということにはすぐにはならないと思いますけれども、先ほど申し上げたように刑務所の周りは住居が取り巻いておるわけです。しかも玄関が本当にメーンストリートに向いているわけですね。今、出所の時間は早朝の四時半から六時というように言われましたけれども、私の知っている範囲では、私が事務所へ行く時間、大体七時半から八時ごろそこを通るのですが、黒い服を着た連中がたくさんいて、出所か仮出所がわからないのですが、その出迎えのにぎにぎしさ、これには付近の住民は本当に迷惑至極、脅威を抱いておるわけです。外車を連ねて黒い服が並ぶわけですよ。この刑務所の移転ということは私も理解するわけですが、そういうような点を十分配慮をして、出所の時間というのは付近地の住民に目の届かないような時間、あるいは出所の出口も別につくるというようなことも考慮に入れて、住民に迷惑をかけたり脅威を与える、そういうことのないような出所、仮出所の仕方というものは考えられないものか、こう思うのですが、どうですか。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 まことに和田委員仰せのとおりでございまして、私ども施設を運営する立場から一番つらいのは出所のときの出迎え問題でございます。特に暴力団組織でございますると、大阪刑務所に限って申しましても、あそこにもかなり多くの暴力団が入っております。出迎えに際しましては、いわゆる彼らの組織仲間におきます義理の世界と申しましょうか、必ず出迎えに行ってやらなければいかぬという一つのしきたりがあるようでございまして、そのようなものが大勢来ることによって、何も関係のない一般市民の方々の生活の安全を脅かすようなこともある、これは私どもとしても一番頭の痛い問題でございます。実は私どもも、各地から折々におきまして出迎え状況については本省側に情報をとりまして、目に余る行動のある場合には報告もさせ、またそれに対する対応策をとらしているわけでございますが、大阪刑務所では昨年の八月ごろ実は刑期が終わりになりまして、五百人以上出迎えに来たという例が一つありました。それで、これではならないということで、その後できるだけ出迎えを事実上規制できるように本人の説得その他警察への要請、こういったことに努めまして、ことしになりましてから一番多くて五十名内外が二回あった程度というふうに大分下がってまいりました。なお、今後とも一人当たり五名以内ということで何とか御迷惑のかからぬような形にいたしたいと思っております。それから、全く出迎えがなかったという例もことしになりまして大部ふえてまいりました。  まだまだ足りないと思いますが、今後とも努力いたしますので、何とぞ住民の御理解を得たいというふうに考えております。

和田貞夫日本社会党・護憲共同

○和田(貞)分科員 時間的な面、現場の所長にぜひとも厳格に指示をしてもらいたいと思います。四時半から六時までというようなことが守られれば、夏場は別として、市民の目に届くというようなことは間々ないと思いますし、できるならば出所者の出口を、例えば裏の方から出すとかという点も、現場の事情をひとつ知ってもらって御配慮願いたいということをこの機会につけ加えておきたいと思うわけでございます。  この機会に私、最高裁判所の方にひとつお尋ねしたいわけでございます。  最高裁判所ではこういうようなものを発行されて、破産について法百四十条で自己破産の場合に手続をする費用のない人については国費の方で仮支弁しますよということを啓蒙されているわけなんですね。ところが、現実の問題として、あるいは破産宣告の手続の今日の実情というものを見てまいりますと、必ずしもこのリーフに書かれておるようなことにはなってないわけですね。予算が足らないから国費の仮支弁ができないのか、申し立てが非常に多いために予算が枯渇するから控え目にしておるのか、その点ひとつお尋ねしたいのです。

上谷清最高裁判所民事局長

○上谷最高裁判所長官代理者 破産法第百四十条によりますいわゆる費用の仮支弁でございますが、このための予算といたしましては、ここ数年間五千百三十万円の予算額を裁判費の中で認めていただいているわけでございます。  ただ、この仮支弁と申しますのは、法律の規定から仮支弁と書いてあることからもわかりますとおり、破産の手続をするために要する費用を一時国庫の方で立てかえてさしあげる、こういう制度でございまして、破産の手続が終わりますと、その後破産宣告を受けた方から国庫の方にお返しいただく、建前としてはそういう制度になっております。     〔小泉主査代理退席、主査着席〕  一方、破産宣告をいたしまして破産手続を進めていきます場合に、例えばかなりの不動産があるとかその他の財産があるといったような場合には、通常、弁護士さんを破産管財人に選任いたしまして、財産の調査あるいは監査、配当等の手続を行いますので、破産管財人に対する報酬がかなりの額になる、その他手続の費用もふえる、そういう関係がございますが、実は最近、非常に多うございますいわゆるサラ金の自己破産の場合には、初めからもうほとんど債務者の方には資産がないということがほぼ見通しがつきますので、例えば管財人を選任して手続を進めても、とても手続の費用にも足りないであろう、こういう見通しがつくケースが多いわけでございます。したがいまして、そういうふうなケースにつきましては、裁判所の手続を進めるために必要最小限度の費用だけを計算してみますと、これは債権者の数の多い、少ないによって若干異なりますが、安く済む場合ですと大体一万五千円くらいで終わりますし、債権者の数が非常に多い、あるいはまた新聞紙に破産の宣告のあったことを公告いたします、その新聞紙の広告料金が各地によって若干違っております、そういうようなものの値段の差によりまして、もう少し高くなる場合がございます。最高限で四万ないし五万を見込んでいただければ足りる、そういう状況でございますので、実は私どもといたしましては、本当に生活に困っておって破産手続の、今申し上げた費用すら納めることができないという人のために、できればこの仮支弁の制度を活用していただきたい。若干でもゆとりがございますれば、この破産手続を経て、後で免責の申し立てをしていただいて、免責を得るということになって経済的に、再生できるわけでございますので、そういうようなことも考えて、少しなりと余裕があればできるだけ自分で費用を用意していただいて、それ以上に困っている方にこの予算を使えるように御協力いただきたい、こういうふうなことでお願いしているわけでございます。

和田貞夫日本社会党・護憲共同

○和田(貞)分科員 破産法百四十条では、国に対して自己破産の手続費用を国庫から仮支弁することを裁判所側に義務づけておると私は思うわけですね。だから、裁判所自体が申立人に対して、仮支弁を認めるとかあるいは仮支弁を認めぬとかいうことを裁量することは――特に裁判所というのは法の番人であるわけですから、法があれば法とおりに、申立人から代支弁をしてほしいという申し出があれば、予算がある限りにおいては代支弁を認めるようにしていくべきじゃないか、こういうふうに私は思うのであります。今も言われたように、もともと金がないから破産するのですから、ところが手続上、金がないために破産手続さえもしないということで、これは人権問題になるわけですね。首をつったり、自殺をするようなことが起こってくるわけですから、これはやはり法の番人として、裁判所はぜひともこの破産法百四十条というのがある限りにおいては、国民の権利としてこの法律どおり、経費を節約するというのじゃなくて、どんどん貸してあげる、そして破産手続が可能になるようにひとつ努力してもらいたいと思うのです。私は今お聞きいたしまして、五千百三十万という予算で、そして使われている費用も極めて少ないわけですね。ずっとこの方は百万円以内に終わっている。これじゃまだ予算があるのですから。私は予算がないと思っておった。予算がなければ、きょう法務大臣にお願いして、裁判所の予算獲得に協力してやってくれよ、こう言おうと思っておったのです。ぜひともそういう立場で、法を守るということで、今後申立人に対して法とおりに代支弁をしてあげようという観点に立ってもらえるかどうか、お答え願いたいと思います。

上谷清最高裁判所民事局長

○上谷最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のとおり、破産法の第百四十条の条文によりましても「破産手続ノ費用ハ仮ニ国庫ヨリ之ヲ支弁ス」となっておりますので、自己破産の申し立てがあった場合に、裁判所の裁量というのではなくて、当然に国庫から立てかえて仮支弁をするという建前になっていることは御指摘のとおりでございます。  ただ、先ほど申しましたとおり、自己破産の場合は大体一カ月ないし二カ月くらいで破産手続が終了いたしまして、同時に破産廃止ということになるのが大部分でございます。したがいまして、申し立てをいたしましてから大体一カ月ないし二カ月くらいたちますと、お立てかえした金銭をお返しいただくというふうなことになりますので、そういうことがございまして、事情を御理解いただければ、予納金を納めていただいて、より以上困っている人に十分なことをしてあげることができるように御協力いただきたい、こう申してお願いしているわけでございます。もちろんこれは、今委員が御指摘のとおりに、申し立てがあれば裁判所としてこれを断ることはできないわけでございますし、予算的にもまだ十分ゆとりがございますので、当事者の方で本当に困っており、ぜひとも仮支弁で法律どおりやってほしいという申し出があれば、裁判所としては直ちにこの手続をとることができますように、私どもとしては細かい手続等もそれぞれの裁判所に指示しておるところでございます。  現に、一昨年の十二月にも、特に破産事件の多い東京でありますとか大阪、名古屋その他の裁判所の裁判官、それから書記官にもお集まりいただきまして、この問題の処理について御議論いただきました。その機会にも、私どもの方から、当事者が仮支弁を希望しておるのに、例えば予算がないからということで断るようなことは決してしてはいけない、そういうふうな扱いをしないようにということは十分申しておりますし、その後、この事件の取り扱いに関して、そのような裁判官あるいは書記官の間で協議がなされたことを、全国の各裁判所に書物を配りましてお知らせしてございます。万一にも、当事者が希望するにもかかわらず予算がないからというようなことの対応がなされるようなことがありましたら、先ほどの各裁判官、書記官の申し合わせにも反することでもございますし、私どもの意にも反することでございますので、そういうふうな取り扱いのないように、さらに一層徹底していきたいと存じます。

和田貞夫日本社会党・護憲共同

○和田(貞)分科員 サラ金被害防止ということでサラ金法が改正されて、悪質な業者を締め出していってはおるのですけれども、やはり生活の中ではどうしても借りなければいかぬという立場に追いやられる者があるわけで、そのときには最後の救いとしてそれしかないわけです。だから裁判所の方は、予納しなさいと命令しているものでもない、あるいは要求しているものでもない、ただ勧めているんだというようなことだけれども、やはり破産手続を進めるためにはどうしても手続の費用が要るのですから、その手続がスムーズにいくように、予納に当たって国費の代支弁は、今御答弁いただいたように拒むことなく、ひとつ国民の権利として、法を遵守するという立場に立って、なお一層各裁判所に周知方をお願いして、そういう苦情が出ないようにぜひとも努力してもらいたいと思いますし、また、そのような予算が不足するのだ、どうしても予算が足らなくなるのだという場合は、私たちはそういう国民の権利を守るために予算を十分に計上する御協力はさせていただきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思いますが、もう一度お答え願いたい。

上谷清最高裁判所民事局長

○上谷最高裁判所長官代理者 御意見は十分よくわかっております。私どもといたしましても、当事者の方に無理強いをして費用を予納させるというようなことがないように、この趣旨を十分説明しながら、任意の御協力を求めるという範囲にとどめるように十分徹底してまいりたいと思います。

和田貞夫日本社会党・護憲共同

○和田(貞)分科員 くどいようでございますが、一つ大阪の例を挙げておきましょう。ある飲食店を経営しておられた人が経営に行き詰まって、約一千万の負債を抱えて倒産しているのです。これも、あらゆる金融機関を探し求めたあげく、最終的にサラ金業者からの引き出しですね。ところがこれに取り立てを厳しくされて、とうとう廃業した。その廃止の直後にこの手続をしたのですが、裁判所は同時廃止を認めてくれなかった。そして手続上、五十万円の予納金を求められておるわけです。代支弁をしてくれと言ったところ、それができなかったというところでこの破産申し立てを取り下げた、その途端にサラ金業者から激しい取り立てが再開された、こういう事例があるわけです。気の弱い方はそこで自分の命を捨ててしまうというようなことにもなりかねないわけでございますので、ひとつ人権を守るという立場に立ち、国民の権利ということを考えていただき、法律を遵守するという立場に立って、法の番人として国民の信頼できる裁判所として、ひとつぜひとも先ほど御答弁いただきましたようなことを守っていただくよう、最高裁の方から地方裁判所の方へそのことの周知指導方をよろしくお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて和田貞夫君の質疑は終了いたしました。  次に、山田英介君。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 登記のコンピューター化に関して若干伺いたいと思っております。  まず、登記のコンピューター化に関しまして、予算の裏づけとして創設されようとしておりますのが登記特別会計でありまして、まず、この登記特別会計を創設なさる理由につきまして簡潔に御説明をいただきたいと思います。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 このたび登記の特別会計を創設するということで、これから国会の御審議をお願いいたすことになっておりますけれども、その登記特別会計を創設するということは、従来から法務局の登記部門が非常に事件が激増いたしまして、これに対処するという体制が十分できておりませんでした。そういう意味で、抜本的に考えて、そして法務局の体質を改善していく必要があるということはかねがね言われておったわけでございます。その中心の課題といたしまして、登記のコンピューター化という問題があったわけでございます。  ただ、登記のコンピューター化をいたしますためには多額の経費を必要といたします。そういたしますと、現在、一般予算ではその経費を賄うには十分でないという面がございます。したがって、その経費を何とかして捻出する方法はないか。一方、登記制度というものは国民全体のものでございますけれども、さしあたっては現実に登記制度をお使いになる方々のためでもあるということがございますので、そういう受益者の負担でこのコンピューター化を進めるということが適当であろうということから、登記の手数料を歳入の主たる財源といたしまして、そして特別会計にしてその経費を取って、コンピューターを中心とする登記事務の抜本的な改善を図るということが必要であるというところから、その創設をお願いいたしまして、創設が認められたということになっておる次第でございます。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 この登記特別会計の法案につきましてはまだ提出をされていないようでありますし、この問題は大蔵委員会とか法務委員会等で実質的な審議がなされるわけでありますけれども、事は極めて重要な問題でありますので、基本的な事項につきまして最初に二、三点伺っておきたいのです。  今御答弁にもありましたように、この登記特会は、基本的には登記手数料の特別会計化ということであるわけでございます。受益者負担という原則を貫くということであれば、厳密に言えば乙号事件処理に関する費用にしか歳出することができないのではないかというふうに考えられますが、この点はいかがでございますか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 乙号の手数料だけをその歳入財源とした場合にはおっしゃるとおりのことになろうかと思いますけれども、今度の特別会計の仕組みといたしますと、中心は乙号の手数料でございますけれども、登記全体の歳出を賄うということで組んでおりますので、一般会計からもかなりの金額を繰り入れて、そして全体として登記事務が円滑にいくような歳出をしていくというふうな仕組みになっておるわけでございます。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 関連で、私は、この際、法務省の御見解を伺っておきたいのでございますが、登記手数料とは別に登録免許税というのがございます。この登録免許税は、手数料収入ということではなくて、登記を受けることによりまして享受される利益に課税されるものである、そういう性格のものであると私は理解をしておるわけであります。登記手数料というのは乙号事件処理に要する費用の実費の償還である、こういう立て分けになるんだろうと思いますが、御確認いただければと思います。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 登録免許税と申しますのは、例えば登記をする場合に受ける利益というもの、それからまた、登記をする場合の取引という実体に担税能力があるというような側面から、そこで税金として課すというものでございます。したがいまして、登記の処理にかかる実費というものとは結びつかない性質のものでございます。一方、登記の手数料につきましては、これはまさに実費を出していただくということでございますので、両者はただいま御指摘のとおりの区別があろうというふうに思います。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 ちょっとくどいようで恐縮でありますけれども、登記の電算化というのは乙号事件の処理のみならず、実際には登記事務全体の処理の合理化とか省力化というものにつながっていくわけであります。この登記のコンピューター化の経費を、登記手数料納付者のみが負担するということであれば矛盾であるというふうに言わなければなりませんが、冒頭の質問に対する御答弁では、一般会計からもかなり多額の受け入れをしておるというような御説明がありましたが、この点に限りましてもう一度御答弁いただければと思います。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 コンピューターの導入の目的につきましては、形の上からいたしますと登記特別会計全体で賄うということになるわけでございますけれども、私どもの考え方からいたしますと、なるほど登記全体のために効果を発揮するということはそのとおりでございますけれども、その大部分の実際上の効果と申しますのは乙号事件の処理に集中的に働くものでございます。したがいまして、実費計算上の乙号の手数料を決めたりなどする際には、コンピューターの導入経費というものがほとんど乙号の実費というところに計算されてもふさわしいような、そういう内容のものであるというふうに考えております。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 登記の電算化に関係しまして、今度は、既に国会に上程されております電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律案というのがございます。これとのかかわりでまずお伺いしておきたいのは、登記特別会計法案とのかかわりにおきましては、この円滑化法案といいますか、これは前提となる法案と理解をしてよろしいのでしょうか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 端的に前提となると言えるかどうかはわかりませんけれども、先ほど申し上げましたように、このたびの登記特別会計といいますのは、コンピューター導入を中心として登記の全体の仕組みを変えていくということを内容として、そのための財政的な裏づけという意味での特別会計でございます。したがいまして、その中心的な改善方策としてのコンピューター導入、これが、国の責務であるということがうたわれる法律が成立をして、国家意思としてそのようなことができるということが、また一つには、先ほど申しました特別会計がよって立つ国の施策というものが明らかになるという意味では前提になる、そういう性格のものであろうと思います。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 もう一つ伺いますが、法案第五条の第二項「法務大臣は、前項の施策のうち重要なものを講ずるに当たっては、政令で定める審議会の意見を聴かなければならない。」このようにございます。この「政令で定める審議会」ということの意味でありますが、民事行政審議会のことを、既設のものを指すのか、あるいは新設のものを考えておられるのか、まず明らかにしていただきたいと思います。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 私どもといたしますと、既設の民事行政審議会をこの五条二項の審議会に指定するという予定にいたしております。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 そうしますと、先ほど、円滑化等に関する法律案がその前提であるということが言えるという御答弁がありました。いま一つは、ただいま御答弁いただきましたように、民事行政審議会の中で重要事項の審議をしていこうという御答弁でございました。  従来、法務省の姿勢あるいはおっしゃり方といたしましては、登記の電算化パイロットシステムの評価を待って、板橋区の高島平で今パイロット事業が行われているわけでありますが、この事業の評価を待って登記コンピューター化の可否を決する、こういう姿勢であったわけでありますが、今までの御答弁二つを引き比べてみますと、事実上電算化はゴーサインが出たということになりまして、今までの法務省の姿勢と矛盾するのではないですか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 コンピューター化の方向で開発を進めていくということは、従来からも考えておるわけでございます。その一環として、板橋出張所でパイロットシステムによる現場実験をしているわけでございます。ただ、どのようなシステムのコンピューター化をしていくのか、あるいはそれをどういう段階で、どういう手順でしていくのかということについては、従来まだ白紙であったわけでございます。今度は、そのような方向で、民事行政審議会の意見も聞きながら、具体的にどのようなコンピューターならば登記制度を改善し、充実していくために有用であるかということの検証をしながら、そこで本当にいいシステムができた、あるいは法律的にも大丈夫だというふうなことが同時に進行いたしまして、その上で、最後には本格導入が具体的に決定されるということになります。その決定の形というのが、不動産登記法あるいは商業登記法の改正という形で決定されるということになるものだと思っております。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 ちょっと苦しいところだろうと思いますけれども、コンピューターの機種だとかシステムがどうなるかの違いということじゃないのだろうと思うのです。いわゆる登記事務の電算化の可否ということでありますから、次元が違いまして、私は必ずしも今の御説明に納得をいたしておりません。あえてまた言えば、このいわゆるパイロットシステムの事業の評価が実際に行われたのかどうか、行われたとすればどういう形でそれがなされたのかという点も問題にしなければならないわけでありまして、なお、その民事行政審議会で検討したのかと言えば、何かこれから検討する、重要事項というのはこれから出てくるんだということでありますけれども、それはおかしいと思うのです。登記事務をコンピューター化することの可否を、いわばこの民事行政審議会の登記部会というのでしょうか、そういうところでしっかりと検討をされるべきではないでしょうか。そしてまた、パイロットシステムの事業の評価をきちっと踏まえて、二段構え、三段構えで電算化の可否を検討していく、こういう慎重なあるいはまた筋道を立てた形を踏まえなければならないのではないかと私は思っておりますものですから、ちょっと言いただきたいと思います。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 コンピューター導入の問題の考え方が、ちょっと御説明しにくいところもございますけれども、抽象的にコンピューターの本格導入がいいか悪いかという問いを仮にだれかに出したにしても、それでは答えは出てこないのだろうと思います。どういうシステムで、こういう法制度になって、そして、そういうコンピューターの本格導入がいいか悪いかという形でなければ、本当の答えは出てこないのではないかと思います。現在までは、いろんな形で実験をいたしまして、方向とすればコンピューター化になじまないものではないだろうというところから始めまして、だんだんと検証を重ねてきておるわけでございます。ですから、これからは、どちらかと申しますと、具体的にどういうシステムのコンピューター化をしたらいいのか、法制度もどういうふうにしたらいいのかというふうなことの検討もあわせて、そしてその両者が全部そろって、これならコンピューター化がいいだろうというのが本当のゴーサインだろうと思います。そういう何と申しましょうか、最初から、卵みたいなものからだんだんと育っていって、そして本格導入の決定というものが最終的になされるその中間過程でございます。したがって、今の段階で、システムがどうなるとか手順がどうなるとかというふうなことまでを含めてみての本格導入はできませんけれども、そちらに向かっていろいろ検討を進めていくということにふさわしいという意味ではゴーサインは出ているというふうに、思うわけでございます。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 今御答弁ありまして、実は一番最後の部分を私は申し上げているわけでありまして、そういうことになりますと、五十三年法改正、司法書士法の一部を改正する法律案の衆参の附帯決議ともかかわりが出てくるわけでありまして、必ずしも今の御答弁では納得できない部分がございます。これはもう一度しっかりと、当然読んでいただいていると思いますけれども、国会の衆参両院の法務委員会における附帯決議でありまして、大事な部分でありますからちょっと確認をいたします。  まず衆議院、「コンピューターシステムを登記事務に採用する問題については、日本司法書士会連合会を含む関係者の意見を尊重しつつ、慎重に検討し、国民の権利の保全に遺憾のないよう期すること。」  同様の趣旨で、参議院でも附帯決議がございます。当時の法務大臣、瀬戸山国務大臣におかれては、「ただいまの司法書士法の一部を改正する法律案についての附帯決議につきましては、委員会における決議の趣旨を十分尊重いたしまして努力いたしたいと思います。」こういうことになっておるわけでございます。  したがいまして、私は、この附帯決議の趣旨からいきますと、いわゆる途中におけるゴーサインという話がありましたけれども、それも含めて、やはり司法書士会連合会を含む関係者の意見を尊重しつつ、慎重に検討をしたという経過がなければならないんだろうと私は思うのです。そうしないと、衆参法務委員会のこの附帯決議の趣旨を当時の瀬戸山大臣も十二分に尊重しますというふうにおっしゃっているわけでありますから、これは今の御答弁ではおかしいのではありませんでしょうか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、コンピューターの導入はいろいろな各段階を経ていくものでございます。現段階では、板橋の出張所でパイロットシステムによる現場実験を行っております。実験を行いながら客観的な目でそれを十分に評価をするという作業をしておるわけでございますが、その評価委員会の中に司法書士会あるいは土地家屋調査士会の方にも入っていただきまして、そして一緒に多角的な検討をするということに加わっていただいております。司法書士会からは連合会の副会長さんにもその委員として入っていただいておるわけであります。そして、私どもがしていることあるいは現場の様子というものは全部司法書士会、調査士会の方にもわかるようにしておりまして、そこで十分な御意見が例えるような形にいたしております。  今後これがもう一歩進んでいくということになりますと、今度は民事行政審議会においてそういうふうな形をつくってまいりたいと思いますし、そうでなくても、連合会の方にもいろんな資料を提供して、そして御意見を述べていただくというふうなことにしてまいりたいと思います。現に司法書士会の方では、コンピューター導入関係についての研究の委員会を設けておられます。そこでいろんな研究をしておられるわけでございますが、私どもとしても十分に、それについては資料の提供もし、そしてその結論については十分拝聴するということは従来からも行ってきているところでございます。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 日司連の方から代表が、評価委員会でございますかに一名入っておるということは私も承知をいたしておりますが、それだから慎重に十分に日司連初め関係者と協議をした、それでもう全部対応できているんだということではないと私は思います。  とともに、繰り返すようでありますが、民事行政審議会の登記部会は今どうなっておるんですか。ここでもってパイロット事業の評価、検討、まあ日司連からも一人入っておるが、登記事務の電算化なんというのは実に大変なことでありまして、それとともに、住民票の電算化が一部進んでおります。戸籍の電算化も今進められようなんという状況にもあります。そういう中で、いわゆる財産権といいますか、物的編成とか人的編成とか、そういういろんなプライバシー保護にかかわるような問題すら敷衍していけばつながっていくような、登記の電算化というのは極めて大事なんです。そうすれば、民事行政審議会の登記部会なりは、まさに今ここを充実させて、委員の先生方に鋭意頑張っていただいて、真剣に導入の可否を、今から、これは昨年から、一昨年からやっておかなければならなかったのじゃないのでしょうか。その点いかがですか。登記部会というのは今機能しておるのでございますか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 現在は登記部会はちょっとお休みになっております。私どもといたしましては、ただ抽象的にコンピューター導入の可否といっても、それはにわかに結論が出にくいことであろう。そういうふうなものならば、いいか悪いかという形での結論しか出ないであろうという考え方を持っております。そういう意味合いから、まず板橋の出張所で現場実験をいたしまして、そのある程度の評価が客観的なデータとして出た段階で皆さん方の御意見を伺うというふうなことが、実際問題としては手順ではないかという考え方でおります。  現在、評価委員会の方ではいろんな分野からの検討を進めておりまして、大体今月中には一応の中間的な評価意見というものを出していただけるのではなかろうかと思っております。それが出ましたならば、その内容をもとにして民事行政審議会に御検討いただくというふうなことにいたしたいと思います。同時に、その評価の結果を司法書士会とか調査士会の方にも提示いたしまして、そこで意見の交換をするというふうな、要するに具体的な形での協議がそこから出発するものであるというふうに考えております。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 大臣、これは五十三年の法改正時における衆参法務委員会の附帯決議事項、先ほど申し上げたとおりでありまして、瀬戸山大臣も当時十二分に尊重して努力します、こうおっしゃっているという経緯にもかんがみまして、そしてまた、登記の電算化というものは極めて重要な事業である、私は必ずしも電算化に反対しているわけじゃないのです。それから、何といいますか、登記特会の創設についても、法務省の長い間のコンピューター化とは別の流れとして、一つの御要望というのもあったということを私もよく承知しておるものですから、それはとやかく今言うつもりはありません。ただ、大事な問題でありますがゆえに、手続とか手順とかということに万全を期すべきである、慎重を期していただきたい、私はそういう考えでおるものですから、事はそういう重要な事柄にかかわる問題でありますので、ぜひひとつこれは国民の利益あるいはまた期待を裏切らないように、そしてまた関係各方面との意思の疎通あるいは協議、相談、意見の聴取等、慎重の上にも慎重に対応していっていただきたいと思うわけでありますが、大臣、ひとつ御所見を伺わせていただきたいと思います。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 今、板橋でいろいろ研究的な実験を積み重ねてきておるわけでございます。私自身も、よその登記所と板橋の出張所の場合を比較して見せていただいたわけでございます。中間的な、中間というか最終的な意見がもう近くまとめられる段階にあると思いますけれども、現在までの積み重ねの過程で、コンピューター化をしていく可能性は十分だというふうに私自身は見ておるわけでございます。  そういう過程もありまして、全国的にそれをやっていくというような過程を踏まなければいけませんから、従来からいただいておる司法書士会その他関係者の意見を積み重ねて板橋の登記所でも実験をやってきておりますが、これを受けまして、間違いのない処理ができますように十二分に配慮をしてやっていきたいというふうに思っておる次第でございます。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 よろしくお願いしたいと存じます。  そこで、この問題は、そういうことで今後のある意味では長い期間をかけての電算化問題ということでありますので、今後また、法務委員会あるいはまた大蔵委員会等でも特会の関係につきましては審議がなされるわけでありますが、私はまた、いずれ機会を見てこの問題は継続的に議論をさせていただきたいというふうに思っております。  それはそれとしてこちらに置いておきまして、先ほど来御答弁いただいておりますように、仮に政令で定める審議会、重要事項をそこで審議しますという、これは民事行政審議会の登記部会を改めて活性化させて再スタートさせてやっていくということでありましょうが、私はぜひこの際、この時点で御要望いたしたいと思いますけれども、いわゆる登記利用者の代弁者ということが言えるかと思いますが、司法書士あるいは土地家屋調査士の代表は、登記部会に委員というのでしょうか審議委員というのでしょうか、ぜひ加えるべきであると思っておりますが、いかがでしょうか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 この審議会におきましては、慎重に各方面からの御検討をいただかなければなりませんので、そういたしますと、登記の関係について一番かかわりの深い司法書士会、土地家屋調査士会から委員の方がむしろ出ていただかなければならないというふうに考えております。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 二問だけ簡単にお尋ねしますので、簡潔にお答えいただければと思います。  一つは、登記所の統廃合の問題と登記電算化のかかわりでございます。予算絡みでありますので、あるいはまた行政改革というような角度から、従来も、いわゆる登記所の統廃合、適正配置とおっしゃっておるようでございますけれども、進められてきておるところでありますが、このコンピューター化には当然多額の経費がかかるわけであります。そういうような事情の中で、極めて急ピッチで、あるいはコンピューター化が浮上してくる以前と比較いたしまして、統廃合が一層強力に絡みの中で進められていくというようなことを心配をしているわけでありますけれども、そういうことがないということをお答えいただければと思います。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 結論から申しますと、コンピューター導入の問題と登記所の適正配置とは全く無関係であるという考え方でございます。何も、コンピューターを導入するために庁数を減らさなければ実現できないというような関係に立つものではないというふうに考えております。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 もう一つは、国民負担とのかかわりであります。一般会計から三百億を六十年度予算案では受け入れる形になっておりますけれども、実際には五十八年度実績で乙号手数料約二百五十億ということであります。本年の七月一日百円上げる、五十円上げるという対応だけでは、このコンピューター化というものは成就しないということになるわけであります。したがって、今後、本年の七月一日を期しての手数料の引き上げとともに、将来的にこの手数料というものを引き上げなければ対応できないのではないかというふうに常識的に考えることができるわけでありまして、そうなってまいりますと、例えば言われておりますのは、十年で四百二十庁をコンピューター化する、あるいはまた十五年で一千二百庁全部をコンピューター化する、そのための予算がそれぞれ千八百億円ぐらい、あるいは十五年の場合には四千億円を超えるようなそういう見積もりがなされているようでありますけれども、一般会計からそんなに受け入れがふえるとは考えにくいものですから、結局はそれは、乙号手数料の一層のといいますか今後の引き上げで、そしてそれは国民の負担で賄われるという基本的な性格があるわけでございます。そういうことで、この登記のコンピューター化を進めていく上には、どうしても乙号事務の利用者あるいは登記利用者、いわゆる国民の理解とか支持とかあるいは信頼というものがなければ、よく事を成就することはできないだろうというように私は思っております。  そういうことで、いろいろな角度がありますけれども、最後に一点、そういうような観点から、今後の登記所の窓口のサービスの改善とかそういうことを含めて、いろいろ対応する努力をなさらなければならない部分というのは大きいと私は思います。  最後に、法務大臣のその辺の御努力にかける御決意なりをお伺いをいたしまして、時間でありますので質疑を終わらしていただきたいと思います。大臣、どうぞお願いします。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 この問題を考える場合に、とりあえず七月一日から動かそうというようなことで、それに対応したいろいろな手当てを考えておるわけでございますが、長期的に考えてみますと、ある程度の負担をお願いしなければならぬというような事態になることも十分考えられると私は思うのでございます。  しかし、今の登記所の実情というのは、御承知のとおりだと思うのですけれども、一年に千六百五十万件ずつ乙号関係のものがふえるという、ちょうど愛知県一県ずつふえていくというような事態でございますから、集中しているところはなかなか困難な実情にある。したがって、待ち時間その他を考えますと非常に不能率な実情になっておる。それを解消するために今までいろいろな努力を積み重ねてきております。しかし、コンピューター化によって対処をするという以外には何とも道がないという判断の中で、今回特別会計をつくっていただいたという経緯があるわけでございます。我々も、将来の夢だけを追うのじゃなしに、そういうものを実現するために、窓口の整備その他についてはなお一層の工夫を凝らして、特別会計についての御理解が得られるような努力をしていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。

山田英介公明党・国民会議

○山田分科員 終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて山田英介君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田スミ君。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 最初に、法務大臣にお伺いをしたいと思います。  私は、きょう主たるところは大阪刑務所の問題についてお伺いをするわけですが、今山口組の組長の射殺事件というようなものが起こりまして、御承知のように、山口組と一和会との抗争というのは本当に目に余るような状態であります。連日の新聞でもにぎわしておりますので詳しく言うことはやめますけれども、まさに法治国家であるべき日本が無法地帯というような状態になっております。警察の方でも頂上作戦だ、壊滅作戦だと言っておりますが、一向に効果がありません。法の番人である法務大臣は、こういう事態をどう見ておられるか、まずお伺いをしたいわけです。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 暴力団関係の犯罪につきましては、関係の当局とも密接な連絡のもとに厳重な取り締まりをやっていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。また、その捜査あるいはその処理につきましては、厳正な科刑の実現を図ることによって、その根絶を期していくことが必要であるというふうに思っておる次第でございます。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 どうしてこんなに暴力団がはびこるのか、その一つの背景に、警察と暴力団の癒着あるいは政治家と暴力団の関係、こういうものがあるというふうに私は思わざるを得ないわけです。  警察と暴力団の癒着ということになりましたら、警察官そのものであった鈴木達也という方が「山口組壊滅せず」という最近本を出されました。山口組の事始めの行事には所轄の警察署長も列席をしていた、あるいはまた警察の暴力団情報のコピーが当の暴力団の事務所から出てきた、こういうことが書かれております。また、雑誌「現代」二月号をごらんになりましたら、「「ヤクザと警察」癒着の全貌」という大変ショッキングな記事が載っております。そこへ加えて、けさの小岩署のこの問題、山口組の元組長の暴力団に大変なサービスをしたということが報ぜられております。こういうふうに見ていきましたら、これは警察と暴力団の癒着、こういうふうに言わざるを得ないわけです。  政治家の方はどうか。これも国民の目から見たら癒着と言わざるを得ないものがあります。  現一和会の幹事長である佐々木道雄という人物が、昨年の七月に出版祝賀会というのを開きました。そのときに現職である自民党の代議士がこれに出席をされて、そして堂々と鏡割りまでされておられる。さらにはまた、住吉連合会の副会長で右翼団体の日本青年社の会長である小林某が開きました昨年五月の会合に、岸元首相や田中角榮元首相などの花束が並んでおりまして、これも国民の目から見たらいかにも異なものであります。さらに、八〇年十月に出されておりますが、右翼暴力団である青思会の雑誌「青年思想」という、この青思会の雑誌には、中曽根総理、当時は総理じゃありませんけれども、青思会議長の高橋という人物と一緒に写真を写して、それがその雑誌に載せられているわけです。  こういうふうに見ていきましたら、まさにこれは何だという国民の思いが出てまいります。また、暴力団がこうして右翼団体を名のりますと、警察庁のパンフを見たらこう書いてあるのです。「右翼の多くは、基本的には啓もう活動などを通じて、合法的な運動によって「国政刷新」をはかろうとしている」、大変対応が変わってくるわけであります。政治献金の名目で、右翼団体を名のれば資金集めが公然とできるというようなことにもなっております。  今、暴力団が何ぼ壊滅作戦と言っても絶えてこないのは、こういう背景が大きな要因になっておると私は考えますが、法務大臣はいかがお考えでしょうか。(発言する者あり)こんなものは新聞でも報道されている事実だけを並べたのです。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 今いろいろ御指摘になりましたけれども、日本の警察は治安の維持のために非常に大変な努力をされて今日まで参っておられるわけでございます。今後とも誤りのないような運営をされていくに違いないと思うし、我々も、そういう警察当局の考え方と一緒になって、暴力団犯罪というものをなくするように努力をしていかなければならぬというふうに思います。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 私の尋ねていることにお答えにならない。少なくとも警察と暴力団の癒着、これは所管じゃないからともかくとしても、政治家である大臣が、政治家として、そういうふうに国民の目から見ればこれも暴力団と癒着じゃないかと思えるようなことに対してどう思われるか、そのことをお伺いしているわけです。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 具体的な事案については私、内容をよく承知をしておりませんが、政治家は国民の信頼を受けて大事な仕事をお預かりしているわけでございますから、そういう間違いのない処理をやっていかなければならぬというふうに思っております。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 それでは本題に移ってまいります。  まず最初にお伺いするのは、暴力団の出所の問題であります。この問題については、私の地元堺市には、御承知のように大阪刑務所という日本一大きな刑務所がございます。もう三年ほど前というのは本当にひどい状態でした。とにかく車も通れなくなるぐらい、周りの住民も本当に怖かったし、迷惑もかかりました。そこで、地元田出井町の自治会の皆さんが署名を集めて刑務所の方にお願いをする、私の方もこれは何とか考えるべきじゃないかというような申し入れをする、そういうことで、最近はもう早朝四時半ごろから六時ぐらいの間に出所させるとか、あるいは警察の指導――署長さんはそう言うわけですが、何で警察の指導かな、もう足を洗ってくるはずの暴力団をどのようにして指導するのかなというふうに思うのですが、とにかく警察の指導ということで警察が暴力団を指導している。こういうようなことで、いっときに比べましたら幾らかましになったかなというようなことはありますけれども、やはり近所に迷惑がかかってくるようなそういう者が出所するとき、そういうときにはもう絶対に暴力団員はこの刑務所から出さない、比較的迷惑のかからないようなところから出所させるようにしていく、そういうふうな配慮が必要じゃないか、こういうふうに考えます。(「女性らしい考え方だな」と呼ぶ者かり)女性らしいって、現実にやっているのですよ。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 藤田委員、たしか先般大阪をごらんいただきまして、職員の苦労話を聞いていただいて大変ありがとうございました。  仰せの出迎え問題につきましては、私どもも昨年の夏以来大分努力いたしまして、最近では、地域社会に非常な御迷惑をかけるような大規模の出迎えというのはだんだん減ってきておるのは御説明をお聞きいただいたと思いますが、なお今後とも努力したいと思いますし、ただいま仰せのようにもし大規模な出迎えが予想されるようなときでありましたら、私どもでいわゆる部内の保安上移送ということも使って対処する、こういうふうに考えたいと思っております。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 人の声が少なくなってくると、じきにその歯車が逆回転するのです。だから、いっときは前よりましやったかなと思っても、去年の夏も大変だったでしょう、八月に非常に大がかりな出迎えがありました。――うなずいておられますからそうだと思うのですがね。ほんの最近もまたあったんですね。五十人くらいの出迎え、去年の夏なんて五百人くらいだと言われていますが、間違っていたら言ってください。ことしに入ってまた二回ほどあったんです。朝も早くからマイクが使われるんです。呼ぶわけですね。暴力団員を並ばすつもりかどうか知りませんが、呼んだりなんかして、本当にじきに逆戻りするんです。何でそういうことになるのかなと思って、私は大阪刑務所に訪ねていって聞いてみたら、このころは警察の指導がよく行き渡ってきたので、そのほかの刑務所に移すというようなことは少なくなってきた、こう言っているのです。なるほどな、もうすぐに逆に戻ってしまうんだなというふうに思ったわけです。  法務省からいただいた資料では、全国の受刑者に暴力団が占める割合は二八・六%と言われていますが、大阪刑務所の方は四二・三%、しかも、これも所長のお話ですが、その半分が組長クラスの幹部級、こう言うわけです。大阪刑務所は受刑者が二千五百人というような刑務所ですから、一日二件ないし三件も絶え間なく出てくるというような状態は十分考えられるわけですが、こういう年じゅう出所の中で、私はもっと法務省として厳しい対処をお願いしたいわけです。  管内で受刑者を移す場合には刑務所長の判断で、それ以外のところは法務省の指示でということなんですが、重ねて申し上げます。近所の住民に迷惑になるようなところでは、出迎えが予想される暴力団員は一切出所させないということを全国的な方針とし、もっと徹底して行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 一切出所させないと申しましても、満期になりますと出ますので、これは仕方ありませんが、そういう形で、なるべく出迎えというような形のところから近隣に御迷惑をかけない、これは引き続きやってまいりたいと思っております。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 私が一切出所させないと言うのは、暴力団員を刑務所に永久に閉じ込めよという意味じゃないんですよ、誤解されたら困りますからね。それは、近所に迷惑をかけるような出所の派手さが予想される暴力団員は、そういうところから出所をさせないで別のところから出所をさせることを徹底せよ、こういうことを申し上げているんですからね。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 それならば、御趣旨はよくわかりました。そのようにしたいと思います。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 そのようにしたいという言葉を信頼して、次の質問に移ります。  大阪刑務所の職員宿舎の建てかえの問題で関連する質問ですが、大阪刑務所については、二十年ほど前から、堺市や市議会を含めて移転要望が出されておりました。大阪刑務所というのは阪和線堺市駅、大阪天王寺駅から次の急行停車駅です。そういう非常に大事な訳なんですが、その近くに住宅が密集しておりまして、町づくりの上でどうしても刑務所というのが大きな障害になっているわけです。また、さっき述べましたように、住民の方が非常に暴力団の関係でいろいろな迷惑をこうむっている、そういうことで移転要望が出されているわけですが、法務省の基本的なお考えをまずお聞きしておきたいわけです。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 委員もよく御承知のとおり、大阪刑務所の移転問題につきましては、ここ十数年来いろいろと堺市、市議会等からも御要望を承っております。これにつきましては、私どもは基本的に、何しろあの大阪刑務所と申しますのは、二千五百名収客規模の非常に大きな施設でございますので、しかるべき移転候補地があり、移転条件が私どもの希望と合うような形であるならば、検討するにやぶさかでないということを申し上げておりました。今後とも、宿舎問題とは切り離しまして、また、今お願いはしておりまするけれども、そのような候補地が出ました場合には、いろいろと検討させていただくことを進めたいとは思っております。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 そうすると、今もおっしゃいましたが、今回の官舎の建てかえの問題は本来の刑務所の移転問題と別個の問題である、こういうふうに考えていいわけですね。今の御答弁にもありましたが、その点はっきりともう一度お願いしたいわけです。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 おっしゃるとおりであります。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 次に、職員の宿舎の建てかえ、立体集約化によって出てまいります二万六千平米の用地の問題なんですが、この点では、昨年の十二月二十四日付の大阪刑務所長の名による「宿舎の整備について」という照会に対して、せんだって堺市が一応合意をする、そういう回答を出しておる、そういうことを聞いております。ところが、刑務所側の照会では、「貴市に」、つまり堺市に「有償譲渡することが双方にとって最も望ましい措置」、こういうふうになっておりますが、堺市の回答では、「本市等が譲り受ける」ということで「等」という言葉が入っているわけです。これでは払い下げの先が一体堺市なのか堺市でないのか、その辺が非常に不明確であると思いますが、法務省はこの点についてはどうお考えでしょうか。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 委員仰せのような文書をちょうだいしております。これにつきましては、私どもとしましては、来年度の特別会計事業として計画を進めさせていただきたいと思っております。大体ことしの五月ごろまでに、具体的な跡地利用計画を堺市の方からお出し願いたいというふうに申し上げておりますので、それを見てからどういうことになるかを判断したいというふうに思っております。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 その事業計画なんですが、私がこういうことを聞いておりますのは、この刑務所周辺の住民にとっては跡地利用が非常に大事な問題になってくるからなんですね。払い下げ先によっては、周辺住民の跡地利用に対する意見だとか要望が全く無視されるということもあるから、心配をして聞いているわけなんです。だから、国有財産の処分は公共公有を優先するということが原則になっておりますけれども、ここの場合も少なくとも民間に払い下げるということはないようにしなければいけない。一たん払い下げを受けた公共団体が民間へ転売というような可能性もなきにしもあらずですから、そういうことも含めてこの土地が民間に移るようなことのないようにしてほしい、こういうことがあって「等」という意味も聞いているわけです。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 まだ、私どもの立場では「等」の意味はなぞでありますけれども、結論的に申しますれば、私ども、施設のそばの敷地を開放するわけでございますから、委員仰せのとおり、私どものそばに余り妙なものが建ってもらっても困るこういう思いは同じだと思います。今後具体的な利用計画の御提示がありました際、また市側ともお話し合いをさせていただきたいというふうに考えます。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 そうすると、ことし五月前後に市の方から跡地利用について具体的な提示がなされる、その提示の中に跡地利用はかくかくするということが堺市から示されることによって予算の要求作業が始まる、こういうことになっているわけですね。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 仰せのとおりであります。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 何遍も申し上げますが、ここの跡地の処分は、いわゆる普通の国有財産の処分の場合とは相当違っているわけです。「まちとともに」というパンフレット、いいのを出しておられるなと思って見たのですが、「地域社会の協力」だとか「地域との深いかかわり」ということを強調しておられますね。そうなりましたら、これまでの町づくりの経緯、住民の感情からして、この跡地についても単に払い下げということではなしに、言わしてもらえば、国が堺市や地域の住民の声を聞いて、そして国の責任でしかるべき施設をつくっていく、そういうことまで言いたいわけです。国がそこまでやってもおかしくないじゃないかということまで言いたいわけです。そういう用地の問題ですから、法務省としても、払い下げた後はこちらの方に余り関係ないということではなしに、ここが本当に住民の要望に反するような形で利用されることのないように、法務省としてもその対応をお願いをしたいということを申し上げているわけなんです。

石山陽法務省矯正局長

○石山(陽)政府委員 藤田委員の御存念は、十分私どもも理解できます。あとは堺市においてお決めになる問題でございますが、双方の希望が一致するような形でこの計画が推進できればというふうに考えております。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 最後になりますが、大臣は大阪刑務所をごらんになられたこと、ありますかね。――ないですか。機会がありましたら、どうぞ一度ごらんください。どんな異様なものかということがよくわかるはずなんです。そして、それが本当に周辺の商店の寂れ様までつくり出している存在になっているということも、ごらんいただければもう明らかなものであります。したがって、この跡地問題につきましても、あくまでも周辺の地域住民、あるいは堺市民の声、願いに沿った形で事が進むように、それから移転の問題につきましても、これは市任せということではなしに、積極的に法務省としても対応していただけるように、それから、せっかく改善、更生させるという刑務所、それが暴力団がわんさと入っていて刑務所本来の姿になかなかならないという点では、やはり暴力団そのものをほんまに絶滅ささぬと、これは基本的な問題の解決にならないわけですから、そういう点では、法務大臣として一層決意新たにこうした問題に取り組んでいただきたい。その三つの問題を申し上げて、最後に大臣の御答弁をお願いをしたいわけです。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 大阪刑務所の移転の問題につきましては、職員のいろいろな生活条件というような問題もありましょうし、また被収容者の処遇といったような問題もありますから、その移転問題というのは、非常に与える影響が大きい問題であるというふうに思っておるわけでございます。  実際、刑務所の施設というものを考えてみますと、これを受け入れていただけるような条件がなかなか整わないというのが現実でありまして、そういう意味合いから、四苦八苦しながら刑務所の運用をやっておるというのが実態であるわけでございます。したがいまして、可能なら現在地で続けさせていただきたいというような気持ちではおりますけれども、地元自治体等からこの移転につきまして適当な場所が御提示があるというようなことになれば、検討することにやぶさかであってはならないというふうに思っておるわけでございます。  また、暴力団関係の問題につきましては、我々自身もこれらの犯罪が一刻も早く絶滅をすることを心から望んでおるわけでございまして、今後ともその処理につきましては、十分な心組みを持って対処していきたいというふうに思っておる次第でございます。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 これでもう終わりますけれども、さっきも言ったでしょう、移転問題は市任せじゃあかんわけです。だから、市任せということではなしに、法務省の方も真剣に取り組んでいくということを願っているわけなんです。そのことについては、大臣もそういうことで取り組むというふうに考えていただかないと、あの問題はあなた任せではそんなに簡単に進まない。だからそういうふうに言っているんですがね。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 今お話申し上げましたように、なかなか難しい問題でございます。したがいまして、いろいろな工夫をしながら、今の刑務所の建てかえその他の問題を考えて今日まで参っておるわけでございます。したがいまして、我々も、大阪の刑務所が相当古い施設であるということは十分承知をしておるし、何とか整理を進めたいというような気持ちを持っておることは事実であるわけでございます。ところが、先ほど来申し上げましたように、こういう施設を受け入れていただくこと自体に非常に難渋が実はあるものでございまして、我々も、そういう点に十分配慮をしていろいろな努力は積み重ねておりますけれども、なかなかそれがうまくいかないというのが現実であるわけでございます。そんな意味合いから、できたときとは事情が異なっておる、そういう状況もあるわけでございましょうけれども、ぜひともひとつ、市当局にも十分考慮していろいろな意味での知恵を出していただきたい、こういうぐあいに考えておる次第でございます。

藤田スミ日本共産党・革新共同

○藤田(ス)分科員 そういう問題があるだけに、職員宿舎の跡地利用については十分心して取り組んでいただく、このことを最後に申し上げ、移転問題についてはなお今後の努力を厳しく要求して、これで私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて藤田スミ君の質疑は終了いたしました。  次に、関晴正君。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 私は、第一に法務大臣にお尋ねをしたいと思います。  昨年の九月十九日、自民党本部が焼き討ちをされたその日のことであったと思います。このときに、現職の法務大臣が現職の国会議員である浜田幸一氏に殴られたということが報道されたようでありますが、この事件というものはその後どのように処理されたものであるのか、伺いたいと思います。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 事件の処理について、私からお答え申し上げたいと思います。  お尋ねの浜田幸一衆議院議員に係る暴行事件につきましては、東京地検におきまして昨年十月に奥崎謙三外一名からの告発を受理いたしました。これに基づきまして所要の捜査を遂げました上で、同年十一月二十九日に不起訴処分に付したということでございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 暴力行為があって、そうして結果として不起訴処分というのはどういうわけですか。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 今申し上げましたように、二名の人から暴行事件につきまして告発がございました。暴行につきまして所要の捜査を遂げました上で、昨年の十一月二十九日に不起訴処分にしたということでございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 どうして、暴力行為があってそれを不起訴にしなければならないのですか。しかもただの人じゃありませんよ、現職の法務大臣ですよ。暴力行為を取り締まる我が国最高の責任者でしょう。その法務大臣が現職の国会議員に殴られて、そうして告発があったとかどうとかという問題ではないと私は思うのです。法を守らなければならない責任において、なすべきことをしないままにしているということは、まさに怠慢と申しましょうか、職務に忠実でないのじゃないだろうか、こう思います。不起訴処分にするというのはどういうわけですか、何の理由で不起訴処分なんですか。しかもその殴られ方、殴り方、当事者についてどのようにお調べになられましたか。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 告発の点は問題ではないという御指摘でございますが、検察といたしましては、どのような事件につきましても必要かつ十分な捜査を行った上で、当該事案の実態を明らかにし、その実態に即して適正に起訴、不起訴の処分を行っているところでございます。本件につきましても、事件の内容等各般の事情を十分勘案いたしました上で、起訴の必要はないということで起訴猶予処分にいたしたわけでございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 これは法務大臣にお尋ねするのですが、あなたもたたかれた場合は黙っておられますか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 どういう条件の御設定か、よくわかりませんけれども、そのときの事態によって判断をしたいと思います。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 法務大臣がたたかれる、そうしてそのことが不起訴処分にされる、これを妥当だと大臣はお考えになりますか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 余り妥当でないと思っておる次第でございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 やはりそのくらいのことは、法務大臣に言ってもらわなければならないと思います。私はこの問題については、特に住栄作現職大臣を浜田幸一現職国会議員が殴ったなんということは、不祥事件中の不祥事件だと思う。それを不問に付したまま、そして不起訴処分にしたなんということは適当ではない。そういう意味においては、これはさらに検討をし直して対処すべき問題ではないかということについて提起をしておきたいと思います。  今日、我が国において何で暴力国家という汚名を受けなければならないのか、私は本当に、つくづく悲しく思うわけです。平和国家という憲法がありながら、そして民主主義だということを規定していながら、我が国においては暴力団花盛りです。一体だれがこれに頼って、そうしてこれを生かしているのでありましょうか。社会主義の国に暴力団はありません。私は、モンゴルを訪ねたときに、暴力行為というものを何よりも取り締まるという国の方針を聞きましたときに、本当に感激いたしました。暴力行為というのは、資本主義の国の避けがたい一つの存在なのかもしれません。でも、この狭い我が国のことなんですから、本気で暴力団を取り締まろうとしたならば可能性があると私は思う。そういう意味において、法務大臣、暴力団を根絶するそのことにおいて打つべき手を何とかひとつ打って、そしてなくする、そういう決意がございませんか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 暴力犯罪というものをなくするということは当然望ましいことではございますが、今後ともそういう気持ちで対処したいと思います。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 この問題は、わずか三十分の間で結論を出すとか、あるいは方針を導くとかという問題ではないかもしれません。けれども、暴力団同士がけんかをする、そういうことを互いに見守っていなければならない、何という情けないことだろうと思うのです。  子供たちによい教育を教えようと現場の先生方が幾ら苦労しても、苦労がすべて水泡に帰する。暴力をしてはいけませんよと学校で教える。教えるのはいいけれども、法務大臣を国会議員がたたいても、たたいたのか、たたかれたのかも明らかにされないまま葬っておいて、そうして暴力団花盛り、ここから直さなければ何の平和国家だろうかと思います。そういう意味においては法務大臣、法治国家として暴力は許さないと言っていながら暴力団花盛りの現状を払拭するためには、なし得るすべての力を向けて、ひとつ全力を挙げていただきたい、このことを希望しておきます。  第二点は、私どもの青森県に総合流通団地というものが建設されたわけであります。この総合流通団地において大変な汚職が発生いたしました。買った土地の値段よりも申請する金額が何倍にもなって、そうして不当な利益を懐にした男が逮捕され、それがまた自民党の市会議員であったわけであります。自民党の市会議員からどれだけの金が自民党の現職の地方議員あるいはまた衆議院議員、それらの者に金が渡ったかわかりません。その点については、警察当局において今日どのようなお調べをしておられるものか。国会議員であれば取り調べもしない、あるいは県会議員であればそれも許しておく、そういうような緩やかな手ぬるいことをしているようなことがないかどうか、この際明らかにしていただきたいと思います。

上野浩靖警察庁刑事局捜査第二課長

○上野説明員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの事件につきましては、青森県警におきまして昨年の五月事件捜査に着手いたしまして、青森総合流通団地の協同組合連合会の副会長で当時青森市議でございました松森昭外二名を、同流通団地の用地買収をめぐります総額四億四千十三万円余の詐欺事実で検挙いたしました。さらに昨年八月、同松森昭並びに青森市の助役でありました工藤友男を、同流通団地建設及び公共用地買収をめぐる一千万円余の贈収賄事実で検挙いたしまして、それぞれの事件を青森地方検察庁へ送致いたしておるところでございます。  ただいまお尋ねのことにつきましては、この事件が公判中でございますので、その余の事件のことにつきましては答弁を差し控えさせていただきます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 私の聞いているところの地方議員に対する取り調べはしたのですか、しないのですか。その地方議員の調べられた数等がありましたら御報告ください。

上野浩靖警察庁刑事局捜査第二課長

○上野説明員 この事件を固めます関係で、多数の人を参考人として事情聴取をしているところでございます。しかしながら、どういう人を呼んだとかあるいはどういう県会議員の方を調べたかということにつきましては、現在公判中でございますし、捜査の秘密にも属する事項でもございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 ちまたでは、自民党の有力幹部の方から特別の指令が入って、そうして国会議員は特に田中派でありますからね、あるいはまたこれにつながる県会議員もいずれも皆田中派であります。だから、調べるようなことはするなというようなことを受けて手をやいている、こういう話が出ております。でも、それにも負けず竹中修一後援会の事務所を捜索されました。よくやったと私は思っております。しかし、後援会の事務所だけを捜索をして、金をもらったと言われるところの竹中修一代議士については何の捜査も何の捜索もされていないのかどうか、お尋いたします。

上野浩靖警察庁刑事局捜査第二課長

○上野説明員 先ほど申しました事件を送致するにつきまして、捜索等につきましても必要な箇所について行っておるわけでございますけれども、お尋ねのことにつきましては、先ほどから何度も申し上げて恐縮でございますけれども、一連の事件が公判中でございますので、個々の具体的な事柄にかかわることにつきましては、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 控えさせていただくということは、あなた方の勝手かもしれません。だが私の聞いているのは、少なくとも竹中修一前代議士の後援会事務所が捜索を受けている。しかし、御本人については事情聴取、そういうことがないとするならば片手落ちじゃありませんか。どうです。

上野浩靖警察庁刑事局捜査第二課長

○上野説明員 何度も申し上げて恐縮でございますが、現在公判中でございますので、ただいまお尋ねのことにつきましては、答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。  ただ、一般的に申し上げますと、捜索、差し押さえの場所等につきましては、被疑者の居宅とか事務所のほかに、関連場所といたしまして第三者の居宅とか事務所もあるわけであります。このような場合には、先生御存じかと思いますが、刑事訴訟規則にも、被疑者または被告人以外の者の住居その他の場所についての捜索の場合に、令状を請求するというような場合には、差し押さえるべきものの存在を認めるに足りる状況があることを認めるべき資料を提供しなければならないというようなことも規定されておりまして、慎重な取り扱いを要求されているところでございます。そういうような趣旨、また捜査結果ににつきましては、人の名誉を害さないようにしなければならないということも刑事訴訟規則に規定されているところでございまして、そういうことから、個人である第三者の居宅や事務所等につきましては、捜索を実施したかどうかというようなことにつきましては、一般的にお答えするのは適当ではないというふうに考えておるところでございます。     〔主査退席、小泉主査代理着席〕

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 流通団地の事件の中で特別不正行為があったというところから、その金がおよそ二億円近いほど昨年の四月に県が中小企業事業団に戻しておられます。この金はどういう性格の金で、それがどういう対象人員があって、その金の計算はどうしてなされたのか、御発表いただければと思います。

斎藤太一中小企業事業団理事長

○斎藤参考人 青森県流通団地の土地の取得につきましては、高度化資金を県を通じまして融資をしたわけでございますが、その土地の取得価格が、私どもの方に上がっておりました金額は二十二億八千百万円でございましたが、その後昨年の三月に県が調査されましたところ、実際に地権者の方に払われております額は二十億五百万円ということが判明いたしまして、二億七千六百万円の差額がございましたので、この差額分の、高度化資金の融資額は大体所要額の七割ぐらいの融資比率になっておりますので、高度化資金分といたしまして一億九千六百万円を期限前の償還をしていただいたわけでございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 その内訳を発表してください。

斎藤太一中小企業事業団理事長

○斎藤参考人 一億九千六百万円の中で、事業団の融資分に当たりますものが一億四千万円、県の融資分に当たりますものが五千六百万円でございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 私の聞いているのは、それらの金が何件あって、お返しするようになったんだ。その何件の内容を知らせてほしいわけです。

斎藤太一中小企業事業団理事長

○斎藤参考人 この契約額と実際に支払われた額の食い違っております地権者の数は、全体で七件であります。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 七件の方々で、買収した金額と申請された金額というのはどういうふうになっているのですか。

斎藤太一中小企業事業団理事長

○斎藤参考人 この高度化融資の対象といたしました土地代は、契約金額が十億五千九百万円でございます。それに対しまして、実際にその七件の地権者に払われておりました金額は七億八千三百万円でございまして、差し引き二億七千六百万円の差額が出ております。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 そこで、その七件というのは全部個人ですか。

斉藤太一中小企業事業団理事長

○斎藤参考人 そのうち一件は法人と申しますか、国でございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 国はどういう計算をされて、どういう計算で返還することになったのですか。

斉藤太一中小企業事業団理事長

○斎藤参考人 契約額は五億六千四百万円でございますが、実際に地権者に払われました分は四億四千三百万円でございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 ちょっと今の話は違うように私は思います。そこでこの問題は、個人で貸したというのは全部個人でございますか。法人がございませんか、国のほかに。七件の中の一件は国、あと六件は全部個人ですか。

斎藤太一中小企業事業団理事長

○斎藤参考人 さようでございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 会社がございませんか。

斎藤太一中小企業事業団理事長

○斎藤参考人 会社はございません。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 そこで私は、こうした不正事件がどうして起こったのかということについていろいろ申し上げたいと思うのだけれども、一番の問題は刑務所の持っておる土地、これはいい土地でありました。一反歩から十俵以上米の上がる場所であります。その土地と交換する相手の方の土地というのは、全くの荒れ地です。原野です。この荒れ地と交換したところの美田の評価が、適正を欠くものがあったと私は思っております。そのために、国の方に払うべき金を非常に不足にしたじゃないか。国の財産というものはもっと高く評価されるべきものであった、こう思います。逆に、相手の方の民間の荒れ地は相当に低いものであった。それを無理やりに高くして、そうして国に払うべきものを少額に抑えた、こう思うわけであります。  この評価をあなた方は鑑定士に依頼して、鑑定士の評価だからということで事を進めたようですが、この鑑定士の鑑定の評価をどのように受け取られましたか。特に、この点については大蔵省からも出ていると思いますので、お答えをいただきたいと思います。

乙部二郎法務省大臣官房営繕課長

○乙部説明員 ただいまお尋ねのありました青森刑務所の農耕地でございますが、これを流通団地の方に提供いたしまして、これにかわる農耕地ということで交換をいたしたわけでございます。したがいまして、渡した方の財産は水田と畑とございました。それから交換で受け取った方の財産は、ただいま御指摘ありましたように山林であった部分もございますし、それから原野のような状況であったところもございます。一部休耕田であったところもございます。それで、刑務所側といたしましては、これを農耕地として使いたい、畑として使いたいということで、造成をした上で交換をするということで進めたわけでございます。したがいまして、評価というのも造成した後の評価ということになりますので、必ずしも美田と荒れ地とそのままを交換したということではないわけでございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 その評価する時点は荒れ地から畑に直して、そして評価されたのですか。

乙部二郎法務省大臣官房営繕課長

○乙部説明員 評価は、造成後の時点における価格ということで評価をしていただいたわけでございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 ですから、造成後に評価したのですか。

乙部二郎法務省大臣官房営繕課長

○乙部説明員 造成工事が終わる前の段階であったと承知しております。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 いつの日でございますか。そして、造成が終わったのはいつの日ですか。

乙部二郎法務省大臣官房営繕課長

○乙部説明員 細かい日付は手元にございませんが、鑑定が出てまいりましたのは五十七年の二月であったというふうに思います。造成が終わりまして、交換契約が最終的に締結されたのは五十七年の五月でございます。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 そこで大臣、お聞きのとおり、青森県の一月、二月というのは雪の中です。そうして、この雪の上でどう鑑定したのかわかりませんよ。見渡す限り雪原です。そうして、土地の造成というのが何も行われていない、行われたのは五月です。それを何で一月に鑑定され、そしてそれを受けて直ちにそれをよしとし、そして流通団地造成のための処分を行わせたのか。私は、まことに不当な行為であったと思うわけです。ただいまもお答えにあったように、何にも畑に直っていない。畑にしたらどうなるであろうかというような推定でやったと言うけれども、どれだけの金がこれにかけられたかということを計算すれば、何も鑑定士なんか要らない。雪の上において造成作業をすればどうなるかなんという、要らないことは要らない。買い上げた土地と造成費を加えれば、その土地の価格というのは出てくる。何も権限もないような鑑定士に、農地の鑑定なんか依頼する必要もない。土地の鑑定士というのは、農地については何らの権限が及ばないものなんだ、適用除外ですからね、悪いことをしても処分することができない。  そういう点からいきますと、今度の刑務所の土地の交換というものは、あらゆる点から見ても私は妥当ではないと思う。そこには何が介在したか。これは国会議員ですよ。刑務所まで顔を出して、よろしくと言う国会議員があった。中小企業庁に対しても事業団についても、早く早くという要請があった。何も急がぬでもいいのです。その鑑定の内容というものをつぶさに精査をして、そして当たればいいことなんです。こうした粗雑なことを平気でやる大蔵省、一味と申しましょうか、私はどうして――こういうようなことの鑑定をするのに地元に財務部というのがありますよ。法改正で財務部ではなくなりましたけれども、名称は変わりましたけれども当時は財務部。財務部を使ってその土地の鑑定をさせるだけで十分わかる。奥山の奥山です。ネコヤナギの生えている土地です。それをどのくらいの価格で買ったかというのは、買った価格と申請価格をみんなごまかして申請している。そうして、ばれたものだから今度は二億近い金を返還したでしょう。ここにもいろいろと問題があります。  いずれにしても、この鑑定というものの意見をうのみにして、そうしてお茶を濁した。この粗雑さが、私は大きな災いをまたもたらしたと思っているわけです。そういう意味からいけば、本当に国民の財産を処分するに当たっての厳然たる厳正な姿勢というのがない。大蔵省というものは、つまらないことにやたらにつめを立てる、しかし、こういう大事な財産の管理においてはうのみにしているじゃないでしょうか。もう一遍やり直す、そういう必要があるのじゃないだろうかと思いますし、この進め方というものについては大きな疑惑があります。でき上がった土地を見もしないで鑑定したという、これは何たることです。そんないいかげんなことで大蔵省というのは物を通すところですか。  大臣、大事な刑務所の、しかも土地の処分に当たって、いいかげんなやり方というのは許されない。この際もう一遍見て、そうして正しい方向で売買行為、交換行為がなされるように、検討する必要があるのじゃないだろうかと思いますが、どうです。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 御指摘の実情につきましては、よく調査をしてみたいと思います。

関晴正日本社会党・護憲共同

○関分科員 大臣のお答えのとおり、ぜひ再調査をしてください。日にちから、それぞれの鑑定士のとった行為から、どこから見てもこれは疑問だらけです。警察当局だってこれについてメスを入れれば、また幾多の問題点を発見することができるだろうと思います。とにかく、急ぐから急ぐからといって年度のぎりぎりに間に合わせるようにという、えてしてあるような政治家の推進運動と申しましょうか、それでもやはり法は曲げられない。事務の進め方については、準拠すべき筋は通して、そうして当たらなければならない。こういうことについては、私から言われなくても、あなた方が我々に教えるくらい知っているはずです。鑑定士の鑑定をそのままにうのみをし、現地の最もよく肥えた目を持っておる職員の意見も徴することなく、そうしていいかげんにやったこの事件ですので、この点については重ねて、法務大臣は再検討すると言うのですから再調査をして善処していただきたい、これを希望して終わります。

小泉純一郎自由民主党・新自由国民連合

○小泉主査代理 これにて関晴正君の質疑は終了いたしました。  次に、稲葉誠一君。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 それでは、刑事局長がおられますから刑事局長を先にしましょう。  三月二十日に判決がある事件で、旭川の事件ですね。これは事実上結審してあと判決までですし、それに対するいろいろな判断を聞くわけにはまいりませんから、そういう意味ではなく聞くわけですけれども、私が関心を持ちますのは、一つは、これは何か自白調書の証拠採用が却下されましたね。それがどういう理由で却下をされたのか、その点について御説明を願いたい、こう思うわけであります。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 自白調書等につきましての証拠申請が却下された理由について申し上げます。  これはたしか自白調書等あわせて二十八通でございますが、その裁判所の決定、これは相当長くなっておりますが、要点を申し上げますと、まず最初に本件につきましては、業務上横領で送致を受けまして起訴したわけでございます。そして、その後に本人が殺人事件について自白をいたしまして、殺人事件について逮捕状をとって逮捕、勾留ということになるわけでございます。調書のうち自白調書一通は、業務上横領で起訴後に殺人被疑事件により再逮捕されるまでの間に作成されたものでございます。裁判所はこれについてまず判断いたしまして、自白を得る過程で過酷な取り調べがあった、許容される限界を超えておる、したがってこれによって得られた自白調書には任意性に疑いがあるという判断をしました。この自白調書一通、これしか殺人事件について本件と被告人と結びつく証拠はないのだ、これは裁判所の判断でございますが、その自白調書をもとにして殺人事件についての逮捕、勾留がなされたのである、したがいまして、そのもとになった自白調書一通が違法であるとしますとこの逮捕、勾留も違法なものである、したがって逮捕、勾留後の自白調書、実況見分調書等二十七通でございますか、それについてはこの収集過程に違法があって証拠能力がないということで、全部を証拠能力なしとして却下したというふうに理解いたしております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 そうすると、検察官が、最後のところ、科刑の意見というのは、何も懲役何年というのは科刑意見じゃなくて、それは法律的には言わなくてもいいわけですね、意見を言えばいいわけですから。そこのところはどういうふうになったわけですか。論告を放棄したようなことがちょっと出ていましたけれども、それは具体的には……。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 論告求刑ですが、これも長文にわたりますが、要点だけ申し上げますと、業務上横領につきましては証拠は十分である、殺人については、今の自白調書等の二十八通を証拠能力なしとして却下されたので、検察官としては、本件殺人について被告人が犯人であることについては疑いを差し挟む余地はないと確信はする、しかし自白調書が全部証拠として採用されなかったので、当法廷における実体的真実の究明、確定は困難となった以上、検察官としては、遺憾ながら本件殺人の事実関係等についての意見は述べないこととするといたしました上で、あといわゆる求刑についてでございますが、業務上横領の件については、これのみでも優に懲役三年相当の責めを負うべきであると思料するが、殺人罪と併合罪の関係にある、求刑するにあっては殺人罪の罪を併合加重の上決定する必要があるところ、殺人の公訴事実については事実関係に関する意見を差し控えたので、結局被告人に対する求刑もこれを差し控えざるを得ない、だから懲役何年ということは、殺人事件の事実関係についての意見は述べないので殺人事件についての何年ということは言えない、したがって、具体的に何年ということは申し上げないという趣旨でございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 いずれこれは、法務委員会の一般質問の中で取り上げるといいますか、問題にしたい点だと思います。  問題にしたい点はどういう点かというと、もうこれはおわかりだと思いますけれども、業務上横領で起訴した後に殺人のことを自白したというけれども、それは殺人容疑を追及しなければ自白するわけはないので、だからそこら辺のところは全然別のことを調べているわけですから、それが一体法律的にどういうふうな判断を受けるかということも、一つの大きな問題になってくるわけですよ。殺人の逮捕状が出るまでの間の問題ですよ。一つは、そこら辺のところが問題なわけです。  それから捜査で自白したときの状況が、どこでどういう状況で自白に至ったのか。例えば代用監獄ですか、あるいは拘置所ですか、ちょっとよくわかりませんが、警察官取り調べにおいて自白してきたのか、そこら辺のところがよくわかりませんけれども、もしわかっていればわかっている限りでいいです、どういうふうになっているわけですか。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 殺人の自白は警察署においてでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 どういう状況でされたかどうかということは、時間的なあれがあるものですから、とれはまたきょうでなくていいですよ。  だから、そういうのは検察官としては一番難しいですね。検察官のところへ来たときに否認してくれればいいわけだ。否認してくれればいいわけというのは変な話だけれども、そうすれば捜査が非常に違ってくるわけでしょう。だけれども、それをすっと自白されてきて公判で違ってきたときに、事件は非常に難しくなってくる。しかし、これはそれと同時に手続の問題もあるし、違法な取り調べの問題もあるし、本人は自分でないと言っているわけですから、結果を待っていずれ、いろいろな面での教訓を含んでいる事件だというふうに私は考えますから、別な機会に質問さしていただきたい、こういうふうに思うわけです。  一番問題なのは、私はいつも思っているんですけれども、捜査の過程におきます、今言った代用監獄と拘置所の問題が一つありますね。同時に、検事と警察官の関係ですよ。これは指揮権の問題という法律的な問題と同時に、指揮権でなくてもいいけれども、指導の問題とか、それから警察におけるそういう捜査というものが、ほとんどといっていいくらい検事のところではわからないわけですよ。私どもの経験しているところでも皆さんが経験しているところでもそうでしょうけれども、警察で最後に送り出すときには大抵、検事さんの前へ行ったら、はいはいと言って頭を下げなさいよ、その方が得ですよ、こういうふうに言ってみんな送り出すんだから。送り出すというのは変な言葉だけれども、大体そうですよ。だから頭を下げてしまうでしょう。それでそのとおりですというわけです。そういうふうにすると、検事も細かい点の証拠の吟味をしないわけですから、そこでそうなってくるのです。  私は、今ここでなくていいのですけれども、去年、法務委員会でヨーロッパにずっと視察に行ったときに、ロンドンの空港でアタッシェの一等書記官に会ったわけです。聞いてみたときに、サッチャー政権の中で刑事訴訟法の改正、特に検事と警察の関係についていろいろ今問題が起きて再検討しているというか、そういう話がありました。それから西ドイツへ参ったときに、西ドイツの刑事訴訟法で、何か身柄を警察から裁判所へ連れてきたときには、すぐ拘置所へ入れるように法律ではなっているのだけれども、裁判官の決定があると身柄を警察に連れていくんだ、こう言うのです。そこら辺のところが、法律の建前というものと実際上どういうふうに行われているかということがよくわからないのですよ。だから、その西ドイツの一等書記官は研究しておいてくれているわけですけれども、なかなか向こうも言わないそうですよ、実際のことは。条文はわかる、条文はドイツ語で書いてあるだけで翻訳すれば見ればわかるんですが、実際のところはわからぬというのですね。そこら辺のところをよく研究しておいてもらわないと、これが今後の大きな問題になってまいります。これはいずれ、一般質問であれしたいというふうに思っております。  そこで、入管の問題につきまして、きょうのあれを見ますと、指紋の問題につきましてずっと質問が出ていますね。ですから大体同じことを聞いているのじゃないか、こう思うものですから、しようがないというとあれですけれども、聞きたいのは、一つは指紋押捺を拒否するでしょう、その場合の公訴の時効が三年なら三年ということでいいんですか。私の聞いたのは、入管の中にいた人でその説と違う説を述べている人がおられるらしいのですよ。私は、直接聞いたんじゃないものですから、間接に聞いたものだから確めてないのですけれども、別の説を述べておられる方がおられるというのです、今地検に帰られたけれども。そうすると、公訴の時効が三年でなくなるわけですよ。そこら辺のところをどう理解するかということが、押捺拒否の問題に非常に関係してくるのですよ。おわかりと思いますけれどもね。そこをどういうふうに理解したらいいですか。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 ただいまの点は、外登法の十四条での指紋の拒否、違反、十八条だと思いますが、それの犯罪の性質についてということになろうかと思います。簡単に言いますれば、申請を出して、それで証明書を受領するときに押せと書いてございますから、その時点で拒否すればそこで犯罪が成立して終わってしまうのか、あるいはその義務はいつまでも、押すまでずっと残っていわゆる継続犯になるのか。それによって、いわゆる即時犯であればその時点から三年の時効が成立する、継続犯であれば当該違反行為がずっと続いておりますから、押した時点、三年後に押せばその三年後指紋を押捺したときから進行する、当然そういう結果になることは御承知のとおりでございます。     〔小泉主査代理退席、主査着席〕  そこで、この問題を継続犯と見るかあるいは即時犯と見るか。大体入管等の現在の運用では、継続犯ということで扱っておられるというふうに承知しておりますけれども、この点については今いろいろ異論もないわけではございません。両方の解釈も、ある程度の合理性を持って主張し得る問題ではないかと私も思うわけでございます。御承知のようにいわゆる不申請罪、原始申請で申請を怠った場合はずっと不法な在留が続きますから、これは継続犯であるというのは、最高裁初め多くの判例が出ておりますけれども、指紋押捺拒否については判例はございません。したがいまして学説でございますが、いわゆる不真正不作為犯、この種の届け出だとか押捺だとか許可を得る行為であるとか、そういうものをしなかったという行為について、いろいろな行政法規に同種の規定がございますが、それについても学説がいろいろあるわけでございますし、それぞれの個々の行政法の趣旨、目的に従って解釈すべきであるという説もあるわけでございます。そういういろいろ説がございますので、現在のところ継続犯であるという説が運用上とられておると承知しておりますけれども、その反対説もあり得るわけでございまして、まだ判例もございませんので、私どももさらに検討いたしたいと思っております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 私も、その点は十分勉強してないんです。しかし、その点がはっきりしてないと、指紋押捺拒否者に対して告発するとかしないとか、告発の問題や何かに関連して時効の完成の問題が出てきますからね。そうでしょう。そこをはっきりしてないとどうにもしようがないんじゃないですか、決まってないと。そこのところが、入管当局というか法務省当局として確定してないと、指導しようといったって指導のしようがないんじゃないですか。  今の即時犯と継続犯、状態犯といいますか、そのどっちをとるかによって時効の完成は変わってくるということなんですか、変わってこないというのですか。僕は不勉強でちょっと意味がよくわかりませんけれども、これは差し迫った問題になってくるんじゃないですか。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 先ほど申し上げましたように、現在は継続犯という解釈がとられておるわけでございますけれども、これについては異論もいろいろございますので、私どもとしても早急に検討して結論を出したいというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 だけれども、今の問題は基本問題でしょう。押捺拒否の問題がこうやって出ているのですから、これは早くあれしないといけないんじゃないかと思いますね。率直な話、私もよくわからぬものですから。ざっくばらんな話、直接聞いたんじゃないのです。だから、僕は、そういう説を述べておる人の名前も挙げないわけですけれども、どうもよく私にはのみ込めない。それは勉強の課題にしましょう。私の方も勉強しますからね、大臣。ちょっと難しいところですから。  そこで大臣にお尋ねしたいのは、指紋押捺の問題、これはもう技術論はいいです、いろいろな答弁したって率直に言うと始まらないわけです。今は、政治的解決というか、あるいは政治家が乗り出すというか、もう少し上のレベルでの事務的解決じゃない方向でないと、解決できない状態になっているんじゃないですか。私はそう思いますよ。だから、それをどういうふうにしたらいいのか。それが違反であるとかなんとか、そういう話はもういいですよ。そうじゃなくて、どうやって解決するかというもっと上の方で政治的な立場から、政治家が乗り出した形での解決というものが今要求されてきているんじゃないですか。そう私は思うのですが、大臣どうでしょうか。細かい技術論はいいですよ。細かい解釈論はもうわかっていますからいいですよ。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 この問題につきましては、私自身も事務当局からいろいろな相談を受けて判断をしておるわけでございまして、ただ単に事務当局に任し切りという考え方で処理しているつもりはないわけでございます。ただ、今までのいろいろな経緯を踏まえて考えてみますと、そうは言ってもそれで簡単に処理ができるかということになりますと、なかなか話が難しいという事態になっておるということを先ほど来お話し申し上げておるというのが実情であるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 いろんな議論というものは、率直に言うと憲法の議論だとか、外国人登録法の議論、それから人権規約の議論だとか、そういうのがいろいろ出ていますね。それから判例もありますしね。また新しい判例が出るかもわかりませんけれども、いずれにしても今までのあれはある。しかし、そういうことを言っているだけでは解決できないのじゃないですかね。私は政治的な解決――政治的な解決という言葉は誤解を与えるかもわかりませんけれども、そういう高次元で問題の解決をしないといけない時期に来ているのではなかろうか。今の時効の問題もそうです。まあ時効の問題は技術的な問題ですけれども、それも時期的には絡んでくるようになると思います。そういう全体を含めて大きな立場から解決をしないといけない時期に来ている、こういうふうに私は思うわけです。  そこで、民事局長おいでなものですからお聞きするのは、実は養子の問題に関連しまして、法制審議会の身分法小委員会で養子の問題をずっとやっておられるわけですね。それが今どういう状況なのか、どこに問題があるかということです。どうも身分法の場合は、世界観とか人生観というか、そういういろいろなものが入ってきますから、純粋な理論だけではいかないし、一つの習慣というか習俗というか、そういうふうなものの絡みもありますから、なかなか解決がつかない点があるかと思いますけれども、具体的にどうなっていて、どういうところが問題で、将来どういうふうにしようとしていくのか、こういう点についてお話し願えればと思うわけです。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 法制審議会の民法部会身分法小委員会におきまして、五十七年九月から養子制度全般につきましての見直し作業に入っております。その作業の中で最初に取り組んでおりますのが未成年養子でございます。その未成年養子の検討をしております中で一番大きな問題として取り上げられておりますのが、いわゆる完全養子とか特別養子とか言われているそういう養子制度を新たに導入することにしたらどうだという意見が、小委員会の中にも出ております。目下のところ、そこら辺を中心に議論を進めておるわけでございます。  この完全養子というのは、実親との関係を断絶してしまうという形で、法律的な親子関係は養親子の間にだけ認めていくというふうなことを骨子とするものでございますが、その場合に、養子になるべき者が年齢的に幾つぐらいまでの者に制限したらいいのかとか、あるいは手続的に家庭裁判所の関与をどういうふうにしたらいいかというようなこともございます。それから、実親との関係が切れますので、養親の方からの離縁というものの請求ができないというような形にする方が適当でないかとか、そういうふうなことがいろいろ議論になっておるわけでございます。  そのほかに、戸籍の上での表示を完全養子を認めた場合にどうしたらいいのかというふうなことも、技術的に出てまいります。そこら辺をいろいろな角度から煮詰めておる次第でございますが、ことしといいますか、一年ぐらいの間にそこら辺の問題を整理いたしまして、未成年養子についての問題点を外部に示して、そして各界からの御意見を伺うというふうな段取りで進めていきたいという方向で作業が進められております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 そうすると、今の進行ぐあいからいくと、ことしじゅうくらいに結論が出て、ながなが難しいかな、来年いっぱいぐらい成案や何かにかかる、大体こういうふうな見通しですか。それが一つ。  それから石巻でしたか、菊田医師ですね、前にずっと実子特例法をやっておられて今医師の方の処分を受けて裁判や何かやっておられますね。それで菊田さんが唱えておられたのと今度の養子制度、今局長が言われたもの、断絶養子なんかとは違うのですか、あるいは同じなんですか。これはどういうふうになっていると理解したらよろしいのでしょうか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 まだ審議会の方での完全養子の内容構想というものがはっきり固まっておるわけではございませんので一概に比較はしがたい面がございますけれども、菊田医師がやっておりましたのは事実上公の手を経ないで実子関係にしてしまうという事実上の処理の仕方だろうというふうに思います。  今度考えておりますのは、そういうことではなくて、何か公的な機関が介在をしまして、その上で養親子関係を結ぶということが子の福祉のためにもなるというふうな判断のもとにその実親との関係を断絶した養子にしていこう、しかし、なるべくその実態は実親子関係と同じような形が維持できるような内容にしたいということでございますので、結果といたしますと菊田医師のやり方と似ているところはございますけれども、事実上目をつぶってやるというふうなことでないという点では決定的な違いがあろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 今の事実上目をつぶるというのは、実際には行われておったわけですよね、それはいいか悪いか別としまして。私ども、よくそういう相談を受けまして非常に困ったことがあるわけですよ。それはそれといたしまして、そこで民事局が抱えておるいろいろな法制審議会なり何なりでやっておりますことは何と何があって、大体どういう見通しになっておるということでしょうか。ちょっと御説明を願えればと思います。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 まず最初に申し上げなければなりませんのは商法でございます。これは御承知のとおり、昨年問題点を整理をいたしまして大小区分の関係につきましてが中心でございますけれども、これを公開をして各界からの御意見を伺っております。これを整理をいたしまして、これから中間試案というものにまとめていって、それをまた各界にお示しをして御意見を伺おうということにいたしております。この中間試案の取りまとめに早くても一年ぐらいはかかるであろうという状況でございます。  それから、身分法の関係につきましては、ただいまおっしゃいました養子制度を検討いたしております。  それから、民事訴訟法の関係につきましては、保全処分が先般の民事執行法の制定のときに一つ残してある問題でございますので、これを整理しようということで作業をいたしております。  それから、国際私法の関係につきましては、法令の見直しをどうしたらいいかとか、これはまだ入り口のところでございますけれども、そういうことの検討に入っております。法制審議会の各部会で動いているような問題は大体そういうことでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)分科員 あとは法務委員会の一般質問なり何なりで質問させていただきたいというふうに思います。これで終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて稲葉誠一君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たか子君。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 主査、そして法務大臣、関係の皆さん、夜遅くまでお疲れだと思います。どういうわけですか、私が当分科会で国籍法の質問をしようとしますと、いつも時間がこういう時間に当てはまりまして、どうもこれは分が悪いと言えば分が悪いような、しかしお昼から考えますとあしたの夜明けに向かっては近いわけでありますから期待が持てるというふうによく解釈することもできるようでありますが、いずれにしろ大変お疲れだと思いますけれども、ひとつ大事な問題ですからお聞き取りをいただいてこれに対する適正な取り扱い方を進めていく必要があるであろう、私はそう思います。  さて、父系血統主義であった国籍法が父母両系主義に変わりまして、この新法がことしの一月一日からいよいよ施行されたわけであります。全国は言うまでもなく、国外におります女性の中にこの日の来ることをどれだけ待ち望んでいた人があるかということを考えますと、一月一日以降きょうに至るまでこの新法による取り扱いがどういうふうになされているかというのは大変重要な問題であることは言うまでもありません。  まず、外務省としては国外においてこれに対する取り扱いを今まで進めてこられているわけですが、私の方にも国外に住んでおられる女性の方々からいろいろな手紙とか電話とかが届いておりまして、その中身を見ますとどうももう一つ思わしくないのが多いのです。これに対してのいろいろな要求は言うまでもなく、このままであっては子供に対してせっかく法律が予定している権利として設定されている国籍が取得できないということに対して、ふんまんやる方ない思いで申し入れをされている方もあるのです。例えば、これは地名をはっきり申し上げていいと思いますが、アメリカで昨年の十月に日本人の母親で出生じた子供、夫はアメリカ国籍です。アメリカで生まれていますから当然ながらアメリカ国籍が既にあるわけですが、日本国籍をということで領事館の方に行かれますと、領事館の窓口では、お子さんが日本に住所を定めたらそのときに日本国籍の申請を法務局ですることになりますから、そこで初めて出生届けも提出するわけです、つまり日本に帰って日本でやりなさいという指示をされているのです。日本でないとだめですよというわけなんです。こういうふうな物の言い方をされたのでびっくり仰天されまして、本人はワシントンの方に問いただしをされたら、領事館の方で指示されたとおりになさい、木で鼻をくくったような声がワシントンから聞こえたそうであります。外務省とされてはこんな指示されているのですか、いかがですか。

池田勝也外務省大臣官房領事移住部領事第二課長

○池田説明員 私どもといたしましては国会で御審議いただきました国籍法の精神にのっとって、かつ地方によりましていろいろ特殊性がございますので、そこら辺の特殊性も加味してできるだけ届け出人の方に御不便をおかけしないようにということで、在外公館の方に日ごろから指導しているつもりでございますけれども、お話しいただいたような事例が仮に起こっているとしますと極めて残念な話でございまして、今後ともこういった事例が再発しないように一生懸命私ども公館を指導するなりまたそういった方法について考えていきたいと思います。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 考えていただくのは当然だと思うのですが、国籍法の附則第五条に伴う届け出による国籍取得、これは外国の地において当然できる。これに対しての外務省からの指示なり指導なりはどういう形でされる予定ですか。

池田勝也外務省大臣官房領事移住部領事第二課長

○池田説明員 私どもは国籍法の改正に伴いまして、今現地の関係の方にお知らせする内容のパンフレットをつくっております。そういったものの一つとして「届出申請による国籍取得手続の手引」といったようなものを出してございます。こういったものを在外各公館の窓口に置きまして、御関心がある方にはそれをお渡しして御説明申し上げる、こういうふうにしております。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 御関心のある方には、では困るのです。やはり権利取得ということですから、当然ながらその権利を行うことに対しては、外務省としてはもっと周知徹底させることに努力していただかなければならない。ちょっと努力が足りないように思います。  その一つの例を、ここに来ているまた手紙を読みましょう。ヨーロッパです、今度は。ヨーロッパの方では、昨年の十二月に新法に対しての問い合わせをやったところが、一月の終わりに話し合いの場所をつくってその折にでも手引をお渡ししましょうというふうな答えが出てきたのです。一月の終わりというと、新法施行は一月の一日からですから、どうしてそんなときまで待つのですか、早くできないのですかと催促をされる向きがございまして、それではというので初めて話し合いの場をつくって手引を渡すということをされたようであります。どうも努力がもう一つ足りない。しかも、手引書をそのときに渡されて、手引書というのは、私もここに持ってまいりましたが、昨日も外務省の方に要求をいたしまして、こういうものを外国の地において手渡しをいたしておりますとか配布をいたしておりますというお話だったのですけれども、これを読んで、これをこのままやはりだれでも、読んだ以上は読んだことに対して、高分では事実に即応してありのままに理解をしてそのとおりに手続をとろうとしますよね。ところが、このとおりにとったら、またこれではだめだと言われるような向きが後に出てきておるのですが、まずもう一つ努力が足りないという例を私ここに挙げましたので、外務省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるかをまず承って先に進みましょう。

池田勝也外務省大臣官房領事移住部領事第二課長

○池田説明員 先ほどの私の御説明にちょっと足らない点がございました。こういった改正の国籍法につきましては、もちろん在外公館からこういった手続についての手引を配らせていただいておるわけですけれども、そのほかに幾つかやっていることがございます。  その一つは、現地の日系の新聞等にこういった国籍法の改正とその要旨といったようなことを流して、そういった新聞記事を通して関係の方の目に触れるような機会をつくるということが一つやってございます。それからもう一つは、パンフレットを日本の方あるいは日本と関係のある方がお集まりになるような日本人クラブとかそういったところに張りまして、国籍法が今度こういうふうに変わりますという説明をさせていただいております。それからもう一つといたしまして、国によりましては、非常に地域が広くて地方の邦人の方の日にとまる機会が少ないような国もございます。こういったところにつきましては、担当官が、配賦された旅費の範囲内でございますけれども、そういった地方へ行きまして、関係のお方をあらかじめ集めておいて、そこでこういった御説明をさせていただくといった機会もつくってございます。そういった意味で、私ちょっと先ほど手引だけが私どもの広報のすべてのように申しましたけれども、実はそういった努力もいたしておるわけでございますけれども、いずれにしても、その辺先生御指摘のあったような若干のずれといいますか、ちょっとあったようなので、しかもこれは身分にかかわる非常に重大な問題なので、そういう点、今後とも引き続き広報といいますか、周知に取り組みをしたいと思います。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 これはまた別の例です。ここで内容に入る問題も出てまいりますから、まずこの別の例も挙げさせていただきましょう。この手引書を読んで、そして一月の初めのころは、国籍取得の請求のときには、届け出をする際母親が行けばよいというふうに考えておられた。またそういうふうな窓口での話もあったのです。一月の二十二日になりまして、これはヨーロッパの例ですよ、国籍を取得するために届け出をする際は父親と母親がそろって領事館に出向いてもらわなければならない、こういうことを特に強く言われた。さらに、一月が終わって二月に入ってから、今度は写真を撮るのに、五センチ掛ける五センチの写真ですね、この写真には、母親と子供だけでいいと思っていたところが、今度は父親も入って、父親、母親、そうして子供というのがぜひ必要で、そうでなければ受け付けられないということを言われた。これは雨垂れのようなものです。順番に言うことがどんどんと変わっていくのですね。そうして、そのことに対しては、これをやっていただかないと困る、法務省より直接の通達がありましたというふうな説明だったというのです。外国に対して法務省の方は直接通達というのが行くのですか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 私どもの方から直接在外公館の方に通達するということはございません。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 そうすると、こういうふうに事情が変わっていったというのはどういうぐあいなのかちょっとよくわかりませんが、しかしこの御当人にしてみますとこれは大事なことなんですよ。大変大事なことで、これはもう深刻な問題であります。どんどん変わるのだったら、将来にわたってまたくるくる変わるかもわからない。届け出はいつどういう形で正式に受け取ってもらえるかこれではさっぱり要領を得ない、困るというので、本人は抗議文を法務省の方に出されております、ヨーロッパから。抗議文届いているでしょう。いかがですか。お受け取りになっているはずです。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 多分今お示しの抗議文だと思いますが、その同じものが私どもの方にも届いております。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 返答をお出しになりましたか。いかがですか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 返答はまだ出しておりません。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 抗議文ははるか前に行っているはずなんですよね。返答はいまだに出していらっしゃらないということなんですが、御本人の方は大変深刻な問題ですから、法務省としては、やはり抗議文に対してお答えになることが必要であろうと私は思います。  さて、これは直接の通達があったというふうに聞かされたというお手紙でありますが、今法務省にお尋ねをすればそういう通達は直接外には出してないと言われるわけでありますけれども、現状いろいろな取り扱いからしますと、外国についての窓口はもちろん、日本の国内では各地で、この手引書の中身をそのまま読んでいった人にとっては当惑するような取り扱いになっているのです。どういうことかといいますと、今私は手元に手引書、正確にこの表題を読みましょう。「届出申請による国籍取得手続の手引」というのを持参いたしておりますけれども、これは恐らく国内においても国外においてもお配りになっている文書であろうと思います。ごらんいただきたい。そうでしょう。きのうこれは外務省から私は正式にいただいたのです。

池田勝也外務省大臣官房領事移住部領事第二課長

○池田説明員 お手元にお届けいたしましたのは、私ども在外公館で配るために法務省と協議した、もともとの案を若干実は手直ししてございます。それは、例えば地方の法務局というところを在外公館と書き直すとか、そういった点を主としてでございますけれども、そういったことで、この手引は国内で配られている手引とは同じものではございません。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 そういう表現のところは違っても、届け出申請の方法とか、それから届け書作成上の注意とかいうふうなところは変わらないのでしょうね。いかがでございますか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 若干異にいたしております。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 それでは、国内用はどういうのを配っていらっしゃるのですか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 国内用は、ここにございますけれども、こういう四ページにした、こういうものを国内用としては配っております。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 それは「届出による国籍取得の手引」というので「法務局 地方法務局」というこの肩書きがつけられている、これですか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 両者をそれぞれ見てまいりますと、確かに記載の方法というのは少し違っているようですが、今から申し上げる中身は同じだというふうに、私は両方を読み比べて理解をした上でここに出てまいりました。それは、届け出申請をするには、日本の国籍を取得しようとする方が十五歳以上のときは本人が十五歳未満のときは親権者である父または母、後見人などの法定代理人が自ら在外公館に出頭しなければなりません、こうなっているのです。二十歳未満の子供について今回経過措置としてとられているこの届け出によるところの国籍取得、この取り扱いに対して特に十五歳未満の場合と十五歳以上の場合とは区別されているわけですね。十五歳未満のときにはどうなるかといったら、父または母が在外公館に出頭しなければならない、文章を読むとそのとおりなんです。ところが、これは先ほど申し上げたとおり、実際に、説明がまた後に変わっておりまして、父と母は両者そろって行かなければ受け付けられないということになっているのですが、何でそんなことになってしまったのですか。  しかも、問題がさらにある。届け出のときだけじゃないのです。今度は国籍取得証明書受け取りについても両親がそろって来なければこれはだめだ、こういうふうに強く言われているというのはどういうわけです。だから、これは手引からしたらおかしいですよ。手引を見れば、そんなことはどこにも書いてないのです。どこにもそんなこと要求されてないことを、殊さら要求されるというのはどういうわけですか。

池田勝也外務省大臣官房領事移住部領事第二課長

○池田説明員 実はこの手引のここのところの書きぶりでございますけれども、確かに読みますと、父または母どちらか一方でもいいというような解釈の仕方が可能でございます。(土井分科員「可能って――日本語を正確に読めばそう書いてあるじゃないですか」と呼ぶ)私どもこれをつくりましたときに、そしてここで「親権者である父又は母」ということを書き込みましたときに、実は基本的に、特定の国によりましては親権者が父親だけの場合しか認めない国がある、そういったいろんなケースを考えまして、父及び母としてしまうと、そういった違うケースをカバーできないというふうに考えてしまって、こういうことを書いたわけでございまして、御指摘いただきますと、ここは明らかに誤解されてもしようがない書き方になっておりますので、その点非常に私ども遺憾に思っております。  その後私どもも、二月の段階で実はここの文章の与える誤解ということよりも、親権とかそういった点に関連して、いろいろ在外公館の担当官にもっと周知した方がいいだろうという説明を出しておるわけでございますけれども、そのときにその説明を担当の領事が見まして、多分その途中で方針が変わったのではないかというようなふうにとったのではなかろうかと思っております。  そういったことで、率直に申しまして、この最初の親権者の後の「である父又は母」という文章を入れましたのは私どもの誤りでございまして、その結果御迷惑がかかった方に対しては大変申しわけないと思っております。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 誤りであってこれは申しわけないで済む問題じゃないのです。  ついでのことながら、これは写真撮影が必要なんですね、届け出申請の中の提出しなければならない文書に写真をはるわけですから。その写真は「十五歳未満の方は、父または母などの法定代理人と一緒に撮影したものを使用するようにしてください。」と書いてある。これまた同じように「父または母」なんですよ。にもかかわらず、両親がともに写ったものでないと受け付けられないというのはどういうわけですか。

池田勝也外務省大臣官房領事移住部領事第二課長

○池田説明員 私ども指導いたしましたのは、両親がともに写っている写真の方が望ましいというような格好で指導いたしておったわけでございますけれども、そういう強い調子で現場で当たったケースもあったかと思いますけれども、そういう点、私ども指導の方がちょっと十分でなかった、そう思います。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 先ほどの届け出に出頭する場合も、ただいまの写真の場合も同様なんでありますが、これは父親にだけしか親権を認めていない国も全世界の中にはございます。しかし、共同親権を認めている国においても、今のような取り扱いを一律に、しかも強くされているというのはどう考えても解せない。いろいろ聞こえてきている国国は、私の手元にあるのは父親にしか親権がないという国内法を持っている国からも手紙が来ておりますけれども、大半は共同親権を認めている国からですよ。共同親権を認めている国においてなおかつ父親の出頭がどうしても必要だ、そうでないと受けられません、写真にも写ってないとこれを正式の手続とは認めない、こういう取り扱いを外務省としてされるというのはまことにおかしい話です。間違っているとしか言いようがない。  本来、これは、日本の国籍法が変わって、母親が日本人であるときその子に日本国籍をということを認めることに今回なったということから、問題になっているのですよ。ことしの一月一日以後に出生じた、日本人の母親から生まれた子供も文句なしに日本国籍が取得できるのです。以前に生まれた子に対しては、経過措置として、したがって、これに対する取り扱いをどうしようかということで問題にされているのですからね。本来から言えば、外国の法がどうであるからこういう取り扱いをという考え方というのは間違っているのです。母親が日本人であるというその一点において、子供に対しては本来、日本国籍が取得できるのであるという権利を保証されているという点を履き違えないように手続上も考えてもらわないと困るのです。したがって、そういうことからすると、今の外務省の取り扱いは、不穏当というよりも不適正ですね。いかがです。これははっきりしてもらいましょう。父親が出頭しなくてよろしい、写真に写っていなくてもよろしい、親権者である母親が出頭して、ただ手続の上では、外国では、父親も署名しないと正式の文書にならないですから、正式の文書であるならばそれで事足りる、写真も母親と写っていればそれでよろしい、そういう指導をされている時期があるのですからね、そのとおりの手続でしかも受理されている例がありますよ。それは私は当然のことだと思っている。いかがです。その点をはっきりしておいてもらいましょう。これ、大事ですよ。

池田勝也外務省大臣官房領事移住部領事第二課長

○池田説明員 最初の点について、つまり父または母でいいのではないかという点でございますけれども、その点については国籍法の施行規則がございまして、法務省との間の協議に従った手続でやっておるわけでございます。そういったことで、私ども限りというよりは、むしろ法務省との間で考えていくということになると思います。  それから第二点の、写真の件でございますけれども、先ほど申し上げたように、私どもとしては両方そろった方が望ましいという指導をしてきておりますので、確かに現場の中では先生の御指摘のように、若干、その望ましいというのをそうでなければいけないというような指導をしたケースがあったかと思いますけれども、それは先ほど申し上げましたように、ちょっと不適切なケースであった、そういうふうに思っております。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 特にこれは外務省に聞いておきますけれども、領事館が遠距離にある場合があるのですよ。遠い遠いところまで出かけなければならない、そういう場合があるのですね。しかも、父親と離れて生活を今現にしておられるという家庭もあるのです。父親の仕事の関係からいって、どうしてもこれ、父親が同伴でなければならないと言われると、この条件を満たすわけにはいかないという事情を持っている方々があるということを考えると、これを条件にはしないということを、今ここで一言言っておいていただきましょう。だから、取り扱いの上でいってこれを強制しない、これを条件としない、こういうことをはっきりしておいていただきたいと思います。いかがです。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 ただいまの問題はいろいろありますけれども、まず届け出の段階で申しますと、ただいまお話ございましたように、共同親権の国が多うございます。したがいまして、届け出が有効に法律上なされたということを評価するには共同親権者、要するに、母親と父親がそろって届け出をしたということが認定できないと受理できないということになります。その両親ともに届け出の意思を持って届け出たということを確認するために、できるだけ御両親そろっておいでくださいということにいたしておるわけでございますが、ただ、実際上、遠距離などでできない場合に、そろって来られないから届け出を受理できないということではございませんので、したがいまして、そのほかの方法で届け出の意思が十分に確認されるというふうなことがございました場合には、これは受理することも十分あり得るわけでございます。  写真の点につきましては、これはなるべく子供さんの特定のために御両親の写真が写っていることが望ましいわけですけれども、何もそれに限ったことではございませんで、母親と一緒に写っている写真でも受けております。現に私どもの方に在外公館から送られてくる写真は半数以上は母親と子供さんだけが写った写真ということでございます。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 それは周知徹底しておいていただかないと困ります。  さて、国内の措置というのが、これまた三人が写ってないとだめだといって窓口で、これは届け出を受け付けるわけにいきませんと言われている例がたくさんありますよ。これも手紙がたくさん届いています。今おっしゃったことからしたら、取り扱い方からするとこれはおかしいんですね。お父さんが写ってないとだめだ、お父さんははるかフランスなんです、それじゃフランスに行って撮ってきてください、こんなの暴言ですよ。お父さんが一緒に来られないと窓口では書類を受け付けるわけにはいきません、どうしたらいいですか、フランスに行って手続をとっていただくかフランスからお父さんを呼ぶことですな、これもまた暴言ですよ。わざわざ父親も同時に出頭しないと受け付けないというのは間違っている。国内の取り扱いにおいてもこういう強制の仕方というのは間違っていますよ。これはなぜ父母がそろって来ないと受け付けられないとおっしゃるんですか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 そろって来なければ受け付けられないというのではございませんで、先ほども申し上げましたように、親権者が届け出の意思を持って届け出をするのでなければ届け出の効力が生じません。したがいまして、御両親がそろって日本国籍を子供のために取らせるんだという、届け出をなさるということの意思確認をしたい、その方法として、御両親がそろっていらっしゃれば法務局の方で面接をしてそれを確認すれば一番手っ取り早くいくという意味で、できれば御出頭いただきたいということにしておるわけです。しかし、そうでなければ受けられないというものではございません。事情によっては、これは先ほど申し上げましたように、外国にいる場合にはその外国にいる父親の人が確かにその届け出の署名をしたのに間違いないんだというような証明書でもあればそれでも受けられますし、また、現に、実際上は別居といいますか音信不通のような状態になっておるというケースもございます。そういう場合にはそういう事情によりまして、そして共同親権者の一方がそういう親権を行使しがたい実際上の状況にあるということがわかった場合には、それでも受理をするという考えております。写真もただいま申し上げましたようなとおりでございますので、何も両親が必ずしもそろわなければならぬということではないのですけれども、子供さんの特定のためには、一緒に写すということがそう困難でないような場合には一緒に写していただきたいというお願いはしておりますが、ただいまの御設例のように、フランスに行っておる方を写真を写すためにわざわざ日本に来るとかあるいはフランスにこちらから出かけていくというようなことまで要求するものではございません。ただ、私どもはそういう考えで現地を指導いたしておりますおりますけれども、なお不徹底な点もあろうかと思いますので、再度その点は現地の方に十分に注意をしてまいりたいと思います。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 これはだめ押しをいたしておきます。届け出のときには父親が同時に出頭しないとだめですといって受け付けてない例が全国にたくさんございますから、これは今おっしゃったような趣旨をひとつ徹底していただかなければならない。父親が必ず出なければならないという法的根拠なんてどこにもないですよ。それは親権に対しては確かに共同親権でありますけれども、しかしながら十四歳までの子供と十五歳からの子供とでは取り扱いがまるで違うんですから、十五歳から二十歳までの子供は本人が届け出をすればそれでいいわけでしょう。十四歳と十五歳とでは取り扱いがまるで違うんですからね。したがって、十四歳以下の子供に対して窓口でそういう嫌がらせみたいなことをやって、これは本来言えば権利侵害ですよ。そういうことをやって、なかなか取得することが難しいというふうなことだけはやってもらうことは断然な間違いだと私は思っています。現にあちこちでそういう例が起こっておりますから、法務省としては心してこの取り扱いについてやってもらわなければならない。そして、ここでその子供の国籍が最終的に決まってしまうわけじゃないでしょう。いろいろ問いただすと、国籍の問題というのは大変ですから、確かにこれは基本的人権の問題ですけれども、原則として二十二歳になるまでに本人が日本の国籍か外国の国籍かのいずれかを選択するという機会がさらにあるのです。そうでしょう。したがいまして、今ここでその十四歳までの子供に対して母親が日本人であるということで当然認められなければならない日本国籍に対して、取ることが大変難儀だというふうな条件をわざわざ法務省としてはお出しになることは大なる間違いであるということを私は申し上げねばなりません。この点はよろしゅうございますか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 日本の国籍を取得するということは大変大事なことであります。また、届け出をして日本国籍を取得したと思っておったけれども後になって親の意思が十分でなかったためにひっくり返るということになっても、これまた大変なことでございます。したがいまして、私どもの方としましては、なるべく十分に法定代理人の意思がなされていることを確認するということはやらなければいけないことだと思いますが、それだからといって嫌がらせをするというふうなことはもちろんあってはいけないことでございます。事情がいろいろございますのにしゃくし定規にそれを一律に処理をすることは適当でないことは十分わかっております。したがいまして、そういう点については十分に現地の方についても注意をしてまいりたいと思います。  なお、ただいま選択のことをおっしゃいましたけれども、届け出によって二重国籍になる者については選択の問題が生じますが、そうではなくて届け出をすることによって現国籍を喪失するというようなケースもございますので、必ずしも選択の問題が生ずるというものではございません。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 そうしますと、総じて言うと、これは、先ほど外務省としては手続の手引については不適当な表現だったと言われますが、このままでいいんです。よろしゅうございますか。父または母でいいのですよ、今の話からすれば。母だけが出頭しても、これは当然届け出が受理されなければならない。写真も母親だけと写った写真でも正式の手続を踏むことによって取れる、当然だ。このままでいいんじゃないですか。したがって、不適当であったとおっしゃるのは実は間違っているのです。取り扱いの上で不適正な取り扱いをされた例があるという事実をお認めになればそれでいいのです。そういうことだと思います。よろしゅうございますね。

池田勝也外務省大臣官房領事移住部領事第二課長

○池田説明員 手続のここのくだりの処理につきましては、先ほど民事局長の方からも説明のありましたように、私どもは柔軟に対処をしていくということでございます。そういう点で今後、今まで若干のケースで申請者の方に御迷惑をかけたようなケースがあるようでございますので、それは先ほど申し上げましたように、今後再びこういうことがないように、かつ本来の趣旨に合っていればしゃくし定規に事案を処理していくというようなことはなるべく排して、そこら辺は適切な処置をしていきたいというふうに思います。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 持ち時間を終了いたしました。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 これで終えたいと思いますけれども、いろいろ手引書の中身を見ましても、「国籍法・戸籍法の改正について」という今回の法務省民事局から出された説明書を見ましても、どうもやはり父系血統主義のときの残滓をぬぐうわけにはいかない部分がございます。これも指摘しようと思いましたが、時間のかげんで次回に譲ります。どうも姿勢として変わることはなかなか難しいみたいですね。  最後に法務大臣、せっかくの御出席ですから一点だけこれを申し上げておいて私終わりますが、この問題に関連して必ずいつも討議されるのは法例なんです。明治三十一年につくられた法例なんです。てにをはは全部片仮名であります。中身を見ますと、これは外務省も御出席なんですけれども、台湾というのは日本の領土なんですか。施政権は日本は台湾に及んでおりますか。どうなんですか、ちょっと言ってください。(相沢主査「次の質問者が待っています」と呼ぶ)及んでないでしょう。そうすると、法務大臣に申し上げておきたいのですが、法例の第一条の二を見ますと、「台湾、北海道、沖縄県其他島地ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ施行時期ヲ定ムルコトヲ得」と書いてあるのです。こういう法例なんです。これはいずれかの日に改めなければならぬですよ。これは国際問題にもなりますね、これをこのままに放置しますと。いかがでございますか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 なかなか古い法律が残っておりまして、現実的にはそれは死んだものとして取り扱っておるわけでございますけれども、適当な機会には直しておいた方がいいと思います。

土井たか子日本社会党・護憲共同

○土井分科員 終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて土井たか子君の質疑は終了いたしました。  次に、滝沢幸助君。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 委員長、どうも御苦労さま、大臣以下皆さん、遅くまで御苦労さまです。  今ほども外国人との関係の戸籍をめぐるいろいろの論議があったことでありますが、私は戸籍法、これは日本人の話でありますが、日本でまともに生まれた子供さんにお名前をつけるときのことをひとつお伺いしたいと思うわけであります。  実は、これは二十五日の一般質問でも申し上げさせていただきましたけれども、戸籍法五十条、これには、常用平易な文字を使いなさい、こう書いてあるのですね。この施行規則の六十条、これによりまして「常用平易な文字の範囲」というものを決めている。これによりますると、要するに五十六年に国語審議会が決めました常用漢字を使えということですね。そのほかに別表第二ということで幾らかの漢字をこれまではよろしいよ、そのほかに仮名文字もよろしい、こういうふうに書いているわけであります。  私は、この思想はまことに残念なものだと思っております。一般質問でも申し上げましたけれども、親が子供の幸せを考えて、それこそ今どきですと、都会に若い御夫婦が、赤ちゃんが生まれます、それぞれの御両親にお電話をして御相談をしたり、また尊敬する恩師のお名前をちょうだいしたりいろいろしましてお名前をせっかく相談して市役所に参りますると、その文字はございませんということになる。これは憲法で定める表現の自由ということにも抵触するのではないか。およそ性名というものは尊厳なるものである、名前というものはとうといものである、この認識に立って、ひとつこのことについての基本的な思想を改められるお考えは、大臣、ございませんか。――大臣に聞いているんです。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 ちょっと前提として……

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 大臣に聞いているんです。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 御承知のように、今の戸籍法の中では第五十条で、子供の名前については「常用平易な文字を用いなければならない。」ということになっており、また、「常用平易な文字の範囲は、命令でこれを定める。」ということになっております。それを受けまして、戸籍法施行規則第六十条には、どういうものを掲げるかというようなことになっていて、それぞれ別表に字数が掲げられておるという姿になっておるわけであります。  この制度も長く落ちついてきまして、それなりに今の社会に浸透してきているというような感じを私は持っておるわけでございまして、この制度を維持していったらいいのではないかというふうに思っております。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 ちょっと厳しく今申し上げましたけれども、局長、先ほど官房長官のときもそうでありましたが、私は礼儀として、委員長にも大臣にも敬意を表してそして発言を始めているわけです。最初のお答えくらいは大臣みずからがおっしゃるのが礼儀というものです。官房長官もそれをせずに最初から局長を出しておりました。これはやはり閣議等で双方の礼儀作法というものをもう少し研究すべきじゃありませんか。そんな意味で今申し上げたわけで、局長ちょっと気の毒でした。  そこで、大臣あなたは、局長も御一緒だとなおいいけれども、姓名学というのを信じていらっしゃいますか。あれは、運命が名前で決まるというのですね、非科学的か知りませんけれども。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 私は信じておりません。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 信じていないですか。  大臣、どうですか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 私も信じておりません。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 どっちも信じていらっしゃらないからそういうお答えが返ってくるか知りませんけれども、しかし、姓名学というものも権威のある学問としてこれは通用しているわけであります。事実、それを信じて大変な苦労をして名前を変えたりしていらっしゃる例が多々あるわけであります。  それはそれとして、実際は名前をそのように制限をして易しい名前をつけさせて、せっかく選んできた名前を発言が同じならいいじゃないかと言って取りかえさせても、名字は変えられないのでしょう。今二万幾らとか三万幾らとかあるそうですが、随分と難しい字を使った名字もある、これを変えることはできない。そして現存して今いる人々についても変えることはできない。いわんやまして、亡くなった人々のことを記述する場合にその名前も変えることはできない。これは生活の利便ということを考えておつくりなすったんだろうけれども、まことに効果の少ないものと私は思うがゆえに、せめて名前ぐらいは、お父さん、お母さんの愛情を込めた、祈りを込めた選名をそのままに受け付けさせていただいたらどうなのか、こう申し上げているわけです。政治にそのくらいの愛情があっていいでしょう。大臣、いかがですか。お孫さんの名前をつけるときのことを考えてごらんなさい。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 民事行政審議会におきましての審議のことについて少し申し上げてみたいと思います。  ただいまお話ございましたように、五十六年に常用漢字表に基づくものとそれから人名漢字表に基づくものと合わせて二千百十一字を制限の範囲として決めたということでございますけれども、そのときの議論の中にもただいま議員のおっしゃるような御意見を述べられる方もかなりおられました。いろいろ議論の末、多数の方は、やはり子供の名前というのは親がいろいろ考えてつけるにしても、子供自身がかえってそれによって将来社会生活上困る場合もあるし、それからまた、人の名前というのは社会生活で接触をする人々にも読んでもらったり書いてもらったりするということがあるわけでございますので、そういう面からある程度の制限はやむを得ないんだ、こういう意見がありまして、そちらの方が多数の御意見であったということでこの制限説になっておるといういきさつでございます。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 文部省からはお見えになっていませんか。――いませんね。仕方ありません。  私は国語審議会のあの漢字の制限が日本文化を破壊するもの、生活をかえって混雑させるもの、こういう理解に立っているのだけれども、そのときに文部省の答えは、これはお勧めするのであって、一つの目安であって、これを強制しないんだからいいじゃありませんかと言うのですよ。ところが、法務省の方はかくのごとく法権力によってこれを規制し、制限し、強制しているわけです。これがいけない。そして今のお答えのように、そのよって来るところは国語審議会でしょう。国語審議会をやめさせればいいのか法務省の方が思想を転換すればいいのか。今もいろいろとお話がありましたけれども、親御さんからちょうだいしたお名前が、画数が多少多いぐらいのことで一生不便するなんてことございませんよ。それよりも、さっき申し上げました、親御さんが愛情を込めて、祈りを込めて選んだ名前を素直に受け付けてあける、これが愛情ある政治というものであります。  どうかひとつ大臣、お孫さんがお生まれになったときのことをお考えになってください。おじいちゃんのお名前を一つちょうだいしてつけますよと言ったら、ああよかった、大きくなれよとおっしゃるでしょう。それが、市役所に行きましたときに、おじいちゃんは明治生まれだからいいけれども、きょう生まれた子供はだめですと言われたらどうですか。そういうことをお考えになって、お金もかからぬのです、このくらいのことは自由を認めてやっていいじゃありませんか。むしろ私は、変な話だけれども、今後はローマ字のお名前すらも受け付けていい時代だと思っているんだ、今の土井先生のお話、いろいろありましたけれども。どうかひとつこの法を改正して、名前ぐらいは親御さんの祈りを、願いを聞き届けてやっていただきたい。重ねて、これの改正の研究をされる意思があるかどうか、お伺いさせていただきます。大臣、どうですか。政治家としての判断を私は求めているのですよ。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 今までの経緯の中でできている法律であり規則であるわけでありまして、これをこの際に改めて検討しなければならぬというような事態であるのかどうか。せっかく滝沢委員のお話でありますけれども、なかなか難しいんじゃないかと思います。思いますけれども、そういう御意見があったということは、何かの機会に検討の材料にさせていただきたいと思います。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 政党政治であります。私は役人さんを何も悪く言うわけじゃありませんけれども、行政を政治がリードするところに政党政治のよさがある、私はこう思うのですよ。行政のお役人さんの机の上ではなかなかできない発想を我々政治家が、庶民、大衆に接している立場から新しいしかも過ちなき助言をする、ないしは判断をする、責任を持って一つの方向を示す、こういうところに実は政治家の使命があると私は思います。日本の古きよきものを回復しようということは、これは中曽根首相の勇気でしょう。どうかひとつそういう意味で、おじいちゃん、ひいおじいちゃん、尊敬する恩師のお名前をちょうだいして名前をつけるときにこれが拒否されるなんという冷たい政治ではなく、どうかひとつ党にも持ち帰っていただいて御相談いただきまして、これは親御さんたちの願いを聞き届けていただきたい、重ねて要望申し上げます。どうぞ、お願いします。  次に、印鑑登録について申し上げさせていただきます。  印鑑登録を見まして、最近非常に機械的になってきております。ここの中でも古きよきものが失われ、文明、芸術というものが失われていくのですね。印鑑というものの意義が時代とともに非常に変わってきました。よそさま、外国はほとんどサインでしょう。日本だけが、例えばスタンプを押したり印刷したものに対しても、四百円のでき合いもので「滝沢」というのが押してあればそれは有効だ、私があなたの目の前で書いても、書いただけじゃ無効だという今日の制度は、やはり改められなければならぬというふうに思うわけです。しかしきょうはそのことの議論は抜きにさせていただきましても、市町村ごとに、条例ですから違うのですよ。これは自治省が指導していらっしゃると思うのです。自治省見えていらっしゃると思いますが、これはやはりいけないと私は思うのです。私は福島県だけれども、今東京に半分住まっておる。そうなれば、印鑑というのは広域に通用するわけです。あるいはまたきょうここに住まっておる者が向こうに行けば、向こうの役場に印鑑登録をしなければならぬこともある。ところが、東京で受け付けになったのが会津の市町村で受け付けにならぬことがあるのですよ。わかってますか。どうかひとつ……。

小島重喜自治省行政局振興課長

○小島説明員 お答え申し上げます。  御存じだと思いますけれども、印鑑登録という制度は明治時代からずっと我が国のいわば固有の制度として、社会生活あるいはいわゆる商取引等について、言うなれば慣習と申しますか、そういうものとして定着をしてきておる。これにつきましては、市町村の側で住民のために印鑑登録という行為を、言うなら公証行為を引き受けまして、それでサービスをするといいますか、そういうやり方をしておると思います。  これにつきましては、実は自治省といたしましても昭和四十六年に研究会を設けまして、いかにあるべきかということを一年半ぐらいにわたりまして検討いたしました。学識経験者あるいは実務家、何人かの方にお集まりをいただいて検討したわけであります。その際、今おっしゃいましたような法制化についても、検討したらどうかというような話も中ではございました。しかし、自治省の中でいろいろ検討した結果、三千三百余り市町村があるわけでございまして、しかもこれは言うならばまさに市町村の固有の事務としてやってきておりますので、それを全国的な一定の基準のもとに統一するにはいささか時期としては早過ぎるのではないか、むしろ行政指導という形でそれぞれ地域、地域に応じた態様というものが考えられるのではないか、こういうことで現在まで至っております。今御指摘のように、私どもの方から示しました要領というのがございますが、これでやられているところは多いと思いますが、中には御指摘のようなことが、まさに市町村の固有といいますか、そういう点で、あることも事実だと思います。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 このことで時間をとりたくないもので簡単にしますけれども、実は戦前に受け付けになった判こでも、今また持っていけば受け付けにならぬのです。白印はだめだというのですね。そして、運命鑑定印というのがありまして、これはなかなか評判がいい。しかし、運命鑑定印はだめですよという市役所がある。つまり、読みにくい文字は求めというわけでしょう。だけれども、市役所の印鑑登録の事務に当たる人がどれほど文字に関する知識があるというのですか。自分が読みにくいものはいけないという判断をなさるのは非常に困る。ですから活字みたいな楷書のものだけがいいのだということになるのだけれども、私はこれは大変間違っていると思う。どうかひとつ研究していただきたいと思います。  そして、ついでながら私の経験を申し上げます。私自身が、この役場じゅうだれ一人私が滝沢幸助であるということを知らない人はないところに実際に判こを持っていった。けれどもカードを持っていかない、今カード制ですね、だから交付にならぬと言うのです。帰れと言うのです。ところが、カードを持っていけばだれが持っていってもオーケーだ。そこで私は、町長のときはどうするのだ、自分自身、あなたのときはだれが判断するのだ、こう言ったのです。どうしても私はそのときに印鑑証明書が必要だった。そこでどうすると言ったら、今の判こは紛失したことにして、そしてまた同じ判こを登録して、そして証明してくれる。だから手帳が新しく交付になりますから、そこで初めて使ったということです。こういうばかなことを市町村はやっているのですよ。これはそれぞれ固有のなんて言いますが、そんな簡単なことじゃございません。先ほど申し上げたことも同様、国民の生活の利便を考えることが政治ですから、ひとつ研究していただきたいと思います。どうも御苦労さま、帰っていただいて結構です。  ところで大臣、実は、ちょっと時間ありませんけれども、これは厳粛な話ですが、死刑の問題についてお伺いさせていただきたいと思います。  要するに、国民の意思によって国会ができる、その国会が法律をつくる、そして行政がこれを処理なさる、裁判所がこれによって判決をするということであるのだけれども、その間の説明が国会に対して足らない場合があるのではないか。つまり平沢貞通、帝銀事件のあの犯人が、死刑宣告の後もなお三十年生き長らえているわけです。これについての説明等も国会に対してもう少しなさってもいいのではないか、私はこう思うのですよ。  御存じのごとく死刑というものは、歴史的また人道上の見解、また法解釈のいろいろの議論もそれはありまするけれども、しかし現実には、刑の判定が確定しまする日の条件というものは、一、二審においては申し渡しから十四日間、三審においては十日間、こうなっておりますね。これは刑訴法三百七十三条と四百十八条の規定だということであります。ところが、御存じのごとく刑訴法の四百七十五条で、判決確定の日から、つまり平沢の場合は言い渡しから十日過ぎたら、六カ月以内に法務大臣は死刑の執行を命じなければならないとなっているのです。もちろんここの中で恩赦の申し立て、また再審の請求というものが四百七十五条の二項によってなされるならば、その日は確定してからの六カ月の計算から除外する、こうなっている。つまり平沢の場合は、異議申し立て、恩赦の申し立て等をしておりまする期間は除外されます。  そこで一つお伺いしたいことは、平沢何がしが刑の宣告を受けてから今日までの経過をひとつ報告をちょうだいしたい、こう思うのです。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 まず、私から御説明を申し上げたいと思います。  平沢につきまして裁判確定後、現在十七回目の再審請求が継続中でございます。それから恩赦につきましては、現在第四回目と第五回目の恩赦が中央更生保護審査会で審査中でございます。その十七回の再審請求と五回の恩赦の出願というものが重なり合いあるいは前後しながら来たわけでございまして、今御指摘の六カ月という観点からそのいずれかがなされておるという日数を引きました場合に、いずれもなされていない日数というのは合計八十二日でございます。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 六ケ月というのは百八十日でしょうか、大体そういうことになりますね。そうしますと、あと九十日くらい残っていることになりますか。今後この九十日を経たならば、大臣は決定を命じなくてはならぬことになりますが、何か今後のことについてのお考えがあれば承っておきたい。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 今刑事局長から説明がありましたように、現在まで十七回の再審請求が行われ、今四回目、五回目の恩赦の手続が行われているという実情であるわけでございます。  時効の進行についてどういうぐあいに考えるのかということについては、法務省の考え方と一般でいろいろ言われているような議論の間に、少し乖離があることは御承知のとおりであろうと思います。法務省は、死刑になる方が拘置所に留置をされておる期間は時効は進行しないという考え方で従来説明もし、そういう取り扱いで今日まで至っておるというのが現実であるわけでございます。  御質問の問題は、それとは別に再審と恩赦がずっと続いておる。先ほど説明しましたように、八十二日間ということになっておるわけですね。今の形でいきますと、これはずっと時間が消えていきまして、とても残りの日数を稼ぐという実態にはならないのではないかと思うわけでございます。いずれにしましても、この問題については現在再審の手続中でもあり、また恩赦も出ておるというような段階でございますので、その推移を見て判断をいたしたいと思います。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 今お伺いしようと思ったのですが、刑の時効の話をおっしゃいました。この時効については、おっしゃったようにいろいろの解釈がありまして、逃亡等によってどうにも困るというときに、しかもそれで三十年過ぎたら確かに時効かもしれません。しかし、あそこにああしておいでのうちは時効にならぬ、成立せぬということになれば、挙げてさっき申し上げました六カ月以内の計算ということになるわけであります。ただ、このように再審の請求、再審の請求ということで繰り返しいったならば、実際問題として死刑を宣告しても死刑にすることはできないじゃありませんか。平沢が年とっているから気の毒だということとごっちゃにして議論したら、議論になりません。  また参考に聞いておきますが、六カ月が経過しても印を押さなかった例が今までありますか。何か承りますれば、犬養法相は任期中判を押さなかったというようなことを聞いております。期限が来なかったから押さなかったのか、期限が来ても気持ち悪いから押さなかったのか知りませんけれども、そういう例がありますか。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 今御指摘の刑事訴訟法四百七十五条の規定でございますが、「判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。」と規定してございます。これは死刑の執行ということではございますけれども、死刑の場合、事は人命を奪う刑罰の執行に関することでございますので、すべて機械的に六カ月以内に執行しなければならないということで執行するということになりますと、妥当を欠く場合も考えられるわけでございます。したがいまして、この規定につきましては、いわゆる訓示規定であるというふうに解されておるわけでございます。したがいまして、六カ月を超えた後で執行されたという例も現在までに何件かあるわけでございます。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 それが精神規定だ、教訓規定だということを言えば、法律は全部摩滅するわけです。何かそういう特例が明記されておりますか。法務大臣は六カ月以内に命じなければならないと書いてあるのです。そして、命令があったら五日以内に執行しなければならない。こういうように、ならない、ならないと書いてある。これを精神規定だとか言っておるのは、御自分の御都合のいい解釈と違いますか。それでやりにくいことがあるならば、法を改正すればいいのです。  私が今申し上げたいことは、現実に刑が執行できないままに九十歳、三十年を経ているわけですから、このようなことをすべての死刑囚がするならば、この法はないと同じになるわけです。法改正の用意がありますか。

筧榮一法務省刑事局長

○筧政府委員 特に今御指摘のような特別の規定があるというわけではございませんが、先ほど申し上げましたように、事は死刑の執行でございます。片や、この規定自体は裁判の執行という点で、確定した場合に速やかなる執行という観点から六カ月以内に執行すべきことが規定してあるわけでございますけれども、取り返しがつかないことに、取り返しがつかないというのは変ですが、事は人一人の生命を奪う刑の執行でございますので、これについて六カ月というふうに機械的に考えるべきではなくて、訓示規定、精神規定というふうに解しておるわけでございます。  片や、再審の請求あるいは恩赦の出願がなされております場合にも、これは法律上当然に刑の執行、死刑の執行をしてはならないということには、そういう効力はないわけでございますから、その場合でも死刑の執行は理論的にはできるわけでございます。しかし、何回も申し上げますように、事が死刑の執行という極めて深刻かつ重大な事柄でございますので、そういう請求があった場合には、必要に応じてその推移を見守った上で判断するという措置がとられているわけでございまして、それと同じような趣旨で六カ月という点についても、訓示規定というふうに解しておるわけでございます。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 訓示規定であるという解釈は、これは重大な発言と聞かなければなりません。人の命を奪うこと、これは大変なことだというのはわかっております。ですから、裁判の過程も慎重にして、最高裁判所が責任を負って判決をしているわけでありますから、それをそのような解釈で――それじゃ、何か厳粛でない刑がありますか。罰金だって厳粛です。私は、それは言葉にならぬと思うのです。  時間がありませんから、最後に、大臣は死刑廃止論者ですか。死刑廃止というのは、大変権威のある一つの学説ともなり、また意見ともなっておりますが、大臣はどちらですか。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 死刑というのは、人間の存在を否定するという非常に重要な問題でございますから、その執行については、十分な配慮がなされなければならぬことは当然のことであるというふうには思っておりますけれども、死刑問題を考える場合に、従来国民が死刑問題をどういうぐあいに受けとめておるかということは、十二分に承知して判断しなければならぬことだろうというふうに思っておるわけでございます。過去のいろいろな調査の案件から見まして、日本人自身は、死刑があるということについて反対するというのは少ない状態になっておるわけでございます。したがって、私は死刑廃止論者ではもちろんありませんし、全般的にはそういう背景がありますから、刑の執行については的確な判断をしていかなければならぬと思います。

滝沢幸助民社党・国民連合

○滝沢分科員 わかりました。  まことに御苦労さま、ありがとうございました。大臣、御苦労さまでした。皆さん、ありがとうございました。終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて滝沢幸助君の質疑は終了いたしました。  次に、小澤克介君。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 大変長時間、お疲れさまでございますが、私で最後のようでございますので、三十分ばかりおつき合い願いたいと思います。  来年度予算の同和関係予算に関連いたしまして、部落差別問題に関して人権擁護をその重要な職責とされておられます法務大臣あるいは法務当局に若干お尋ねいたしたいと思います。  いわゆる部落差別、この差別事件、差別事象は、残念なことに現在もなお後を絶たないと私は認識しているわけでございます。この点に関しまして、さきの第百一国会で大原委員あるいは亡くなられました湯山委員がお尋ねいたしました際に、言動、言辞、結婚、就職差別は後を絶たない、また逆差別、ねたみ意識に基づく悪質な差別落書きなども新たに増加している、こういうようなお答えがあったと聞いているわけでございますが、今日における差別事件の状況についての大臣あるいは人権擁護局長等の御認識をまずお聞かせいただきたいと思います。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 先般小澤議員から、「部落差別 写真で見るその現実」というのをぜひ一読してというお話がありました。私自身も、長らく税金の関係の仕事をやっていたという関係がありまして、同和問題について全然無関心である人間ではないと思っておりますし寸また過去においても、随分前の話でございますけれども、そういうところの仕事のお手伝いをさせていただいたような経験も持っているような人間でございます。基本的人権を尊重するということが大きな柱である新憲法ができまして今日まで来ておるわけでございますが、そういう中で同和問題としての問題が取り上げられているような実態があるということは、非常に残念なことであると考えます。今後ともそういう問題がなくなるように、精いっぱい努力していかなければならぬと思っております。  なお、これを見せていただきましたけれども、ちょっと時代的に古いものが非常に多うございますし、もちろん中に新しいものもございますからそれも見ておりますが、少しでも今後我々の啓蒙努力というものが積み重ねられてこの差別問題が解消するように、精いっぱいの努力をしていかなければならぬと思っている次第でございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 この「部落差別 写真で見るその現実」という小冊子でございます。先般、事前に大臣にお渡しいたしまして、感想をお聞かせいただきたいとお願いしておったわけでございますが、早速お読みいただいたそうで大変ありがたいと思います。若干古いものもあるという御指摘でございましたが、たかだかここ十年間ぐらいのものでございます。昨年三月、大阪で「人権展」が開催された際のもののうちから、その一部を取捨選択したものにすぎないわけでございます。私もこれを読みまして、実に腹立たしいといいますか、そしてさらには腹立たしさを通り越して悲しくなるような感想を持ったわけでございます。普通の感受性を備えた者ならば、こういうものに接すれば一刻も早くこの地上からなくさなければならぬというふうに思うだろうと思うわけでございます。私など非力でございまして、こういう場でこういう問題を取り上げ、法務当局、人権擁護当局にお願いをするしかないわけでございますが、大臣ならば権限を持っておられるわけでございます。ひとつ、今のお聞かせいただいた感想を法務行政にぜひ生かして、強力に差別解消の政策を推し進めていただきたいと願うわけでございます。  最初に私がお尋ねしました現状認識についてでございますが、依然として差別事件がふえているのか、あるいは喜ばしいことに減っていく傾向にあるのか、その辺の御認識を伺いたかったわけでございます。

野崎幸雄法務省人権擁護局長

○野崎(幸)政府委員 基本的な人権尊重を柱といたしております日本国憲法が制定されまして既に三十八年を経過しておるにもかかわらず、またその間、同和対策事業特別措置法、地域改善対策特別措置法に基づきまして、国や地方団体が一体となって同和問題の解決に取り組んでおりますにもかかわらず、いまだに差別事象が続発しておりまして、近年も横ばいではございますけれどもなお減少していないということは、まことに遺憾なことであると感じられおります。私どもも、こういった何とも恥ずかしい現象というものは、本当に一日も早くなくさないといけないというふうに考えておるものでございますが、問題の底にはなかなか根強い差別意識が存在しておるのでありまして、それを根絶するためには、なおしばらくの時間を要すると考えざるを得ない状況にあろうかと思います。これは同和問題に対する理解と自覚というものがいまだに国民の間に隅々まで徹底してないということによるものでございますので、私どもは啓発機関といたしまして、部落差別というものが許しがたい社会悪であるということを今後とも強力に用知徹底させるための啓発活動を展開して、このような差別事象がなくなる社会を一日も早く迎えるように努力したい、かように考えておるところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 人権擁護当局としても、ふえてはいないが横ばいである、すなわち差別事件は依然として後を絶たないという御認識であることがわかったわけでございます。私も大変残念なことだと思います。  私事で恐縮でございますが、ことしの正月、解放同盟のある地区の旗開きに招かれまして、いろいろ懇談をしたわけでございます。年配の女性の方が孫を連れてこられて、本当に二つ、三つのお孫さんをひざに抱いておられたのですが、この子が大人になるころにはせめて差別がこの世の中からなくなってほしい、こういうことをつくづく言われまして、私どう言っていいのか、本当に言葉もなかったわけでございます。大変残念でございますが、相変わらず横ばいであるということだそうです。  なお、法務省においては、差別事件のほかに、情報収集等取扱件数というようなものを把握しておられるというふうに聞いております。これにつきまして、五十七年度、五十八年度については私の方へ既に数字を教えていただいておりますが、五十九年度、もし数字が出ておりましたら明らかにしていただきたいのです。

野崎幸雄法務省人権擁護局長

○野崎(幸)政府委員 五十七年度、五十八年度につきましては、既に調査の結果が出ておるところでございますが、五十九年度につきましては現在調査中でございますので、しばらく時間をおかしいただきたいと思います。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 なるべく早く集計の上、御報告願いたいと思います。  それから注文でございますが、五十七年度、五十八年度の集計では内容別になっていなくて、各県別の件数のみ集計されているわけでございます。やはり結婚差別、就職差別というように幾つかの類型別に集計の上、御報告願えればと考えるわけでございますが、ぜひこの点お約束願いたいと思います。

野崎幸雄法務省人権擁護局長

○野崎(幸)政府委員 御期待に沿うように努力したいと考えておるところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 さて、このような差別につきまして、一刻も早く根絶やしにしなければならぬということは異論のないところだろうと思います。それで、そのために対策を立てなければならぬ。そうしますと、その対策を立てるためには、まず差別の実態把握、特に近年における実態ですね、特徴であるとか背景であるとか、そういった実態把握が対策の前提として必要ではないかというふうに考えるわけです。ぜひ、実態調査を強力に行っていただきたいと思うわけでございます。この点につきましても、昨年の特別国会で前法務大臣が、人権擁護局中心の努力と総務庁中心に各省で事件、文書等細かい把握が必要であり、言動、言辞には正しい考え方をPRし、制度的に許された範囲で最大限徹底する、このように答弁されておられるわけです。  そこで、この実態調査につきまして、具体的な方針をお聞かせ願いたいと思います。恐らく、総務庁中心にというお答えになろうかと予想されるのですが、たとえ総務庁中心であっても、法務省としていかにこれに協力し、コミットしていくのかという方針をお聞かせ願いたいわけです。

野崎幸雄法務省人権擁護局長

○野崎(幸)政府委員 ただいま先生からも御指摘がございましたように、総務庁は昭和六十年度におきまして、同和関係者及び同和地区周辺居住者を対象にしました地域啓発と実態把握の実施を予定しておると承知しております。御承知のように、当省は物的事業を所管はしておりませんけれども、啓発活動のためには同和問題に対する国民の意識を知ることが何よりも肝要でございますので、総務庁に対しまして、同和問題に対する意識調査を同時にやっていただきたいということを申し入れておるところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 この実態調査でございますが、恐らく地方自治体の方も、日常住民に接しておりますし、いろいろな生活相談などを受けている関係から、相当事情を把握しているのではないかということは容易に想像されるところでございますが、自治体の協力を得ての実態調査を法務省としてぜひ毎年実施していただきたいと思うわけでございます。この点について、特に大臣に御答弁を願えればと思います。

野崎幸雄法務省人権擁護局長

○野崎(幸)政府委員 事務的な点につきまして、まず私からお答えを申し上げたいと思います。  同和問題に関する差別事象につきましては、法務省の人権擁護機関が人権侵犯事件としてこれを処理しておりますほか、全国の市町村等、地方公共団体においても取り扱っておるわけでございます。昭和五十四年度及び五十七年度につきましてはその取り扱い件数を調査いたしましたが、昭和五十九年度のものにつきましても、現在その件数を調査しつつあるところでございます。  この調査に当たりましては、地方公共団体の協力をいただくことが何よりも必要でございますので、それらの協力が得られるよう今後とも努力をしてまいりたい、そして、先生から御希望がございますように、そういう調査は今後ともできる限り間隔を詰めてやっていきたいというふうに考えております。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 今御説明のありましたように、五十四年、五十七年、五十九年というようなことで調査を進めておるわけでございますが、調査ができるだけ稠密に行われるような努力を考えてみたいと思います。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 ぜひ毎年お願いしたいと思います。また、実態調査が出ましたら、その結果はなるべく早く集計の上、国会の方に御報告願いたいと強く希望をしておきたいと思います。  次に、特に悪質な差別事件、懸案となっているものが幾つかあると聞いております。これについての現在の調査あるいは啓発等の進展状況についてお伺いしたいわけです。  一つは、部落地名総鑑事件でございますが、これについての現在の進捗状況を御報告願いたいと思います。

野崎幸雄法務省人権擁護局長

○野崎(幸)政府委員 御指摘の部落地名総鑑と言われますものは、同和地区の所在地等を記載した文書でございます。この地名総鑑は、昭和五十年の初めにそういうものが発売されておるということが発覚いたしまして以来、法務省といたしましては、極めて悪質な人権侵犯事件であると考え、調査を続行し、今日までに、地名総鑑と呼ばれるものには八種類のものがある、そしてそれらの差別文書を二百二十の企業が購入しているということを突きとめまして、これらのもののうち、実は昨年の七月にそのコピーを持っておる者が見つかっておりますが、その事件を除きまして、その余の事件につきましては一応調査を終えまして、これを発行した企業、購入した企業等につきましても啓発を実施してまいったところでございますけれども、この地名総鑑の発行者と目されるものの中には、当局の調査に対しまして非常に非協力的な態度をとりまして、そのニュース源等を明らかにしないというようなことで、一部未解決のものがある状況にございます。私どもといたしましては、今日なおその調査を続けておるところでございますけれども、既に十年の月日を経過してまいっておりまして、これ以上事実の解明を行っていくということが極めて困難な状況にあるというふうに考えております。しかしながら、こういった文書が発行されますのは何よりも部落差別という現実があるからでありまして、部落差別というものがこの世から消えますれば、こういった文書を出そうという者はもはやなくなることは自明の理でございます。私どもは、そういった観点から、部落差別というものが許しがたい社会悪だということを根強く国民に周知徹底させるための啓発活動を行いまして、こういった差別そのものがなくなるよう今後とも積極的に努力をしてまいりたい、かように考えておるものでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 この事件は、十年の日時が経過しているわけでございます。購入者の判明したしたものについては、以前に伺ったところでは、なお啓発中のものが何件か残っておるというふうに認識しておりましたら、今のお話では、既に全部処理が終わったということで若干の前進だろうと思います。しかし、発行部数に比べまして、購入先が判明していないようなものがなおたくさんある。そうしますと、このようにコピーの機械の発達した時代でございますので、コピーをしてどんどん出回るということも容易に推測されるところでございます。一日も早い調査あるいは啓発の結了をお願いしたいと思うのです。  聞くところによりますと、この発行者のうちには、名前を申し上げてもいいと思うのですが、田中靖造あるいは本田治ですか、こういう方々が調査に対して非常に非協力的である、居直っているとかというようなことも聞いているのですが、どこかにそういうことを許す何か制度的な欠陥があるのではないかというようなことも思うわけですけれども、その辺についてどのようにお考えなのか。あるいは、今後の調査進展への打開策がありましたらお聞かせ願いたいと思います。  それで、今の中で差別がなくなればこういうものはなくなるというお話があったのですが、これは鶏と卵の関係で、むしろこういった差別を商う、飯の種にする者があるからこそ差別が消えないのではないか、そのようにも思うわけでございます。一体、なぜそれを結了しないのか、非協力な者に対して協力させることができないのか、何らか打開策はないのか、それらについてお考えを伺いたいと思います。

野崎幸雄法務省人権擁護局長

○野崎(幸)政府委員 地名総鑑の発行にかかわりました者及びその購入者等につきまして、なお啓発の必要な者については啓発活動を続行している者もございます。ただ、今御指摘のように発行者の一部は非常に非協力的でございまして、法務省の方で数え切れないぐらいこれにコンタクトをいたしまして、その調査に協力するよう求めてまいっておるわけでございますが、断固これを拒絶しておるわけでございまして、私どももその対策には苦慮いたしておるところでございます。私どもといたしましては、今後ともさらにその真相を明らかにするためにこういった人たちと接触を続けて、何とか啓発の実を上げたいというふうに考えておるのでございますが、ただ、先ほども申しましたように、余り楽観的な展望は持てない、どちらかといえば、その人たちが心変わりして協力をしてくれるに至るということについては、現在の段階では極めて悲観的だというふうに考えているところでございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 御努力は大変よくわかるのでございますが、このような確信犯的な者に対しては、啓発ということでは限度があるのではないかと思う。もちろん啓発でございますから、相手に心を変えていただかない限りは啓発の実を上げないわけでございます。場合によっては法的規制、とりわけ差別を商売にしている者、飯の種にしている者、こういう者については、やはり法的規制が必要なのではないかというように考えるわけです。以前に法務省などで、法的規制についても御検討いただいたというようなことを聞いておりますが、現状あるいは今後どのように、お考えなのか、ぜひお聞かせを願いたいと思います。

野崎幸雄法務省人権擁護局長

○野崎(幸)政府委員 人権擁護機関というものは戦後にスタートしたわけでございますけれども、実は創設に当たりましては、アメリカの司法省にございます人権擁護課の機構というものを参考にしたと言われております。しかし、アメリカの人権擁護課というものが、人権侵犯につながる特定の行為を犯罪行為というふうに定めまして、それに対して調査を遂げ、訴追をする機関というように構成されましたのに対しまして、我が国の人権擁護局は非権力的な啓発機関という性格づけをされ、そういう形で発足したことは先生もよく御承知のとおりでございます。  その結果、いろいろメリット、デメリットがあるわけでございますけれども、私どもといたしましては、法務省の人権擁護機関は、憲法の基本的人権の理念に反する行為をすべて人権問題としてとらえ、これに対する啓発活動を行うことによって対処するということができるようになったわけでありまして、むしろ人権侵犯事件に、アメリカの場合よりもはるかに広く対応できることになったというふうに考えております。  我々といたしましては、これまでその非権力的な啓発機関という基本線に従って人権問題に取り組んでまいったのでございまして、今後とも、そういった方向でやっていくべきだというふうに考える次第であります。  今、先生の御指摘になりました法規制の問題でございますが、法規制の形というのは恐らくいろいろなものが考えられ、一口では言えないとは考えますけれども、ただいま申し上げました人権擁護機関が非権力的な啓発機関だということを考えますと、その規制はどうも、つまり強制力を伴う規制というものは、当人権局の所管ではないと私どもは考えておるわけであります。  ただ、その点はさておくといたしましても、確かに過去において法務省の内部では、こういったものの規制について一部検討した経過がございます。しかしながら、実際それを立法化しようということになりますと、いかなる差別行為を対象として取り上げるか、そしてそれについての構成要件というものをどのように考えるかという点について非常に難しい問題に突き当たりまして、結局、これが実を結ばなかったということがあったと私は聞いておるのであります。  一方、確かに差別の問題に対してこういった法的規制を加えるということが、大きな目で見て差別行為の解消に役立つかどうかということになりますと、またいろいろな議論があるわけでございまして、そういった規制をやるということは差別行為の抑止には役立つ面はあるとしても、むしろ差別意識の面では、これを潜在化、固定化させるおそれがあるという考え方も強く述べられておるのでございます。したがいまして、この法規制の問題につきましてはいろいろな問題があるわけでございまして、今後とも慎重な対応が必要なのではないかというふうに私どもは考えておる次第であります。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 確かに、差別行為をそのまま刑罰等に当てはめるということになりますと、構成要件が非常に難しいとかいろいろな問題があろうかということは、私もよく理解できます。一つのアイデアとして、行政委員会で差別行為に対する禁止命令、排除命令、救済命令みたいなものを出して、その上でそれに違反したら初めてその段階で刑罰適用というような、不当労働行為制度あるいは公正取引委員会制度のようなことも検討の余地があるのじゃないかと思いますので、ぜひこの点、検討を願いたいと思います。  もう一つ、具体的な事件として大蔵住宅の事件を伺いたかったのですが、質問時間がなくなってしまいましたのでこれはまた後日伺うことにいたしまして、最後に、時間をオーバーして恐縮でございますが、法務大臣にぜひひとつお願いしたいことがございます。  大臣は同和啓発映画の「明子の愛そして」を見られたというふうに聞いております。大臣みずからこういう映画をごらんいただいて大変ありがたいことだと思いますが、さらに、映画だけでなくて部落の実態視察をぜひ行っていただきたいと思うわけでございます。かつて古井法務大臣が視察をされて、その結果部落差別に対する取り組みに大変積極的な姿勢がうかがわれたというようなことも聞いておりますので、ぜひこれをお願いしたい。大臣のお考えをお尋ねしまして、私の質問を終わりたいと思います。

嶋崎均自由民主党・自由国民会議法務大臣

○嶋崎国務大臣 現在、こういうような状態で大変忙しい思いをしているのが実態であるわけでございまして、その意味で今回和地区の現状を見に行くというような計画を直接持っておる状況ではないわけでございますけれども、いずれ時間が許し、また私が出向くことが何らかのお役に立つということであるならばそれは何も拒否する理由はないわけでございまして、そういう機会を得ましたら見せていただきたいと思っておる次第でございます。

小澤克介日本社会党・護憲共同

○小澤(克)分科員 よろしくお願いします。終わります。

相沢英之自由民主党・新自由国民連合

○相沢主査 これにて小澤克介君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、法務省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後九時四十三分散会

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