予算委員会 第3号
- 発言数
- 164 件
- 登壇者
- 21 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1985/02/04
会議録
○天野委員長 これより会議を開きます。 昭和六十年度一般会計予算、昭和六十年度特別会計予算、昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。 去る一月三十一日以来、審議が中断し、委員並びに関係各位に御迷惑をおかけいたしましたが、先刻、理事会の合意を得まして再開の運びとなりました。 つきましては、この際、田邊君の質疑を続行するに先立ち、田邊君が指摘されました防衛費の問題について、総理から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根内閣総理大臣。
○中曽根内閣総理大臣 防衛費につきましては、今日まで対GNP比一%を超えないことをめどとするとの三木内閣の閣議決定の方針を守ってきました。六十年度も、当初予算においても、その方針を守ったところであります。今後とも、その方針を守りたいと存じます。
○天野委員長 田邊君の質疑を続行いたします。田邊君。
○田邊(誠)委員 一月三十一日の私の質問は、今総理から答弁がありました前半の五十一年における三木内閣の閣議決定の方針を今日まで歴代の自民党政府はこれを遵守してきたわけであります。そして、この三木内閣の閣議決定以来十年間これが遵守されてきたというのは、政府は、その一週間前に「防衛計画の大綱」を決定いたしましたけれども、しかし大綱達成は野方図にやってよろしいというのではない、これは一つの節度、めどを持ってやるべきだという考え方に立ってこの三木内閣の一%枠は守るという、こういう閣議決定があったことを想起したときに、我々はこのことは十年間における国の政策の基本に当たるものである、そして今や国民世論からいいまして国民の合意になっている問題である、このように考えておるわけであります。 そして、日本は低成長下といえども着実にGNPも伸びてまいっておるという現状の中で言えば、今必要なことは、総理も言っておるように、ことしこそは平和と軍縮の年にしたいという、こういう考え方の上に立って我々は明確にこの防衛費の凍結、削減の方向に向かわなければならない、これが日本の果たすべき役割である、このように我々は考えておるのでありまして、そのことはまた、装備費にしても、人件費にしても、それぞれ内容的にこの縮小、削減というのはでき得る実態的な内容である、我々はこのように考えておるのであります。 いずれにいたしましても、数字だけの問題でない、国の基本としてのこのGNP比一%の防衛費の問題があるというこの現実に照らしてみた場合には、この枠を守るということについて私は国民にこれは問わなければならないほどの大きな課題である、このように考えておるわけでありまして、私はこの問題に対して是非を問うならば、これは国民投票に訴えても、そのいわば是非を問うべきである、このように考えておるわけであります。したがいまして、我々は今後とも中曽根内閣の政治姿勢を追及し、この防衛費の歯どめについて今後とも同僚議員を通じてさらにひとつ政府に迫っていくということの決意をこの際改めて表明しておきたい、このように考えておるわけであります。 それで委員長、引き続いて残りの時間の質問をさしていただきたいと思います。 今、私が申し上げましたように、総理もしばしば言っておるわけですが、日本の防衛というのは一つのこれは枠がある、一つの実はけじめがある。それは、平和憲法のもとで専守防衛に徹する、シビリアンコントロールは明確にこれをひとつやっていく、さらには非核三原則は守っていく、武器輸出禁止の三原則もこれもひとつ我々は守っていくべきものである、このように言っておいででございます。しかし、現実にはこのいわば一つのけじめというものが次から次へと破られてきているのではないだろうか、こういうふうに国民は心配をいたしておるわけであります。専守防衛といっても、だんだんとこれはいわばその枠というものは取っ払われてきているのではないだろうか。シビリアンコントロールはどうだろうか、なかなかこれが厳格な意味において守られていないじゃないか。さらには非核三原則というものは今や空洞化しつつありはしないか、こういうことを実は国民は心配いたしておるのであります。 私は、この一月に総理が各国を訪問されました際に、ニュージーランドにおきましてロンギ首相と会談をされた。このニュージーランドは御承知のとおりANZUS条約を持っておりまして、アメリカとの間では同盟関係にあるのです。しかし、ニュージーランドはいわば核問題については非常に厳しく明快な政策をとっているわけです。第一には、自国の領土内での核兵器の製造、貯蔵、配備は行わない。第二は、いかなる国の核積載船艦の入港も拒否する。第三番目には、しかし入港を拒否するからといって、核船艦の公海通航の権利は、これは我々は損なわないというものでありまするが、私はこのニュージーランドの核に対するところの政策は、我が国の非核三原則と全く同じである、こう私は考えておるわけでございまして、総理は当然この中身について実は同意、同感をされておるのではないだろうか、こう考えておりますが、いかがでございますか。
○中曽根内閣総理大臣 ニュージーランドでロンギ首相と世界の平和、軍縮の問題及び二国間の問題等についていろいろ会談をいたしました。その際、ニュージーランド側からはニュージーランド側の現内閣の国防、安全保障政策の説明があり、我が方は我が方の従来の安全保障政策の説明をいたしました。両方が自分たちの考えを述べ合った。しかし、今後とも世界の平和と軍縮の達成に向かって両国とも協力していこう、こういうことにおいては一致をした。各国は各国独自の見解に基づく固有の防衛、安全保障政策を主権の名のもとに独自に持っていく、そういう点では一致したと思っております。
○田邊(誠)委員 ですから、今のニュージーランドにおけるところの核政策、これと日本の非核三原則というものは、これは実は同じ内容ではないかと私は考えておるけれども、いかがでございますか。
○中曽根内閣総理大臣 同じであるとか同じでないとか、そういう話はいたしませんでしたが、我が国はいわゆる非核三原則を持っておりまして、核兵器搭載艦、これについては事前協議の対象になっておって、そして、もしそういう搭載艦の事前協議があれば、それは拒否する、一貫したそういう方針をとっておるところであります。
○田邊(誠)委員 実はこのニュージーランドの核政策は、日本の非核三原則と内容的には同じ立場に立っておる、こう私は思いまするけれども、しかし現実には、日本の今とっておるところの政治のやり方とニュージーランドと違うところは、今総理もいみじくも言いましたけれども、この核の寄港について、非核三原則の中で最も実は今国民が心配をしておるところの核船艦の寄港について、日本の場合は実はこれはあなた任せである。アメリカが協議の対象にしないから実はこれは入っていないんだ、こういうあなた任せの態度である。ニュージーランドの方は自国の政策に基づいて自国で意思決定をする。この自主性を持っておるというところが実は大きな違いであるということを総理も認識をしなければならない、私はこう思っておるわけでありまして、そういった点で、非核三原則の問題についてこのニュージーランドの政策に日本は学ばなければならない。日本はやはり一つの自主的な立場、自国の決定権に基づいて、核の寄港についてはこれを認めないということをとっていかなければならないだろうというように私は考えておるわけであります。 しかも、ロンギ首相との会談の中では、非公式なときにこのニュージーランドの政策に対して圧力をかけたのじゃないかというような報道がされたのであります。総理は本会議においてはそういった事実はないとおっしゃっていますけれども、これは外国の新聞の報道でございまするから、それに対する確認を私どもはできませんけれども、しかし、これはアメリカの要請によって行われたとある政府筋は語ったということも、これは実は国内の新聞報道で伝えられておるのであります。そういった事実があるとすれば、今、総理がいかに、非核三原則を守ります、これは事前協議の対象でございますというようなことを言いましても、事実は非核三原則を空洞化するだけでなくて、アメリカの要請があれば他国に対してもそういった政策というものに対する変更を要請するような、こういう立場というものを今とっているのじゃないだろうかということを私は大変心配するのであります。西側の結束ということだけに意を用い過ぎて、実際には、日本の今日まで取り来ったところのとうといところの国是、この政策の基本というものを大きく覆そうとするのじゃないだろうか、こういう心配を私はいたしておりまするが、総理自身はそういう心配はございませんか。
○中曽根内閣総理大臣 日本とニュージーランドの間の場合を考えてみますと、日本には、例の事前協議条項というのがきちっと制度として日米間に安保改定のときに決めてある。先方とアメリカとの関係にはそういうようなものはないのではないかと私想像しております。 なおまた、ロンギ首相との会談をいたしましたときに、圧力をかけたとか、人の国の方針に干渉がましいようなことは一切いたしておりません。
○田邊(誠)委員 私の心配に対して、これが杞憂であればいいわけでありまするけれども、私は、総理がこのような外交姿勢の中でもって、いわばアメリカとの力の結束という、その言い方の中でもってだんだんと今までの基本的な理念とその政策というものを変更するという危険性を指摘したわけでございまして、どうぞひとつ心して今後に当たってもらいたいというように考えておるわけであります。 もう一つ、私が今防衛費の問題と関連をして指摘をいたしましたシビリアンコントロールでございます。 これが厳格に守られていなければ大変だというのは、これは共通の認識だろうと思うのでございますが、総理が防衛庁長官のとき、昭和四十五年四月十五日、衆議院内閣委員会において我が党の大出議員のシビリアンコントロールに関するところの質問に対して総理は、「国民代表である政治家が軍事を掌握するということであると思います。したがいまして、シビリアンコントロールの大黒柱は、国民代表の最高機関である国会であると思います。そしてこの国会の意思のままに自衛隊の管理運営が統制されるということが最も望ましい姿であります。」とあなたは明確に答弁をされておりますが、このお答えは今でも変わりございませんか。
○中曽根内閣総理大臣 国会は国権の最高機関でありまして、そして政府の行政をまた監督する、そういう役目にもあります。したがいまして、いわゆる文民統制の究極的の場は国会でありまして、国会がしっかりとこの安全保障問題を掌握して間違いがないようにされることが一番望ましいことであると考えております。
○田邊(誠)委員 シビリアンコントロールの大黒柱は国会であるという御認識は総理も今は変わりない、こういうように私は受けとめておるわけであります。しかし、最近の状態を見ると、防衛費の問題もしかりでありまするが、内容的に言いましてもその装備、技術は世界一級である。したがって、戦力的に見た場合には世界の各国においても引けをとらないところの戦力を持っている、こういう状態になってきた。アメリカも日本に対して実はNATO並みの比重でもってその内容の充実強化を期待をしている、こういうことが言われておるのでございます。防衛費の政府予算が決まるたびにアメリカの国防長官がこれに対する評価をいたすというような状態を見たときに、このことがはっきりと言えるだろうと思うのです。 しかも、既に有事の諸研究が行われている、あるいは軍事演習が行われている、そういう状態の中で日本の自衛隊というのは米戦略に組み込まれている、こういうことが言われておるわけでありまして、しかもこの有事の諸研究の具体的な内容というものが、あるいは演習のシナリオというものが軍事機密とされて、なかなか国民なり我々の手の届かないところにある。こういうことが現実の姿じゃないだろうか、こういうふうに我々は考えておるわけでございます。現代戦の作戦計画というものが制服の中でもって実はつくられてこれが秘密に行われるということは、私はあってはならないと思っておるわけであります。 そういった中でもって昨年の暮れ、五十九年十二月二十六日に、私どもの感覚で言えば、いわば総理の訪米の手土産という形でしょうか、急遽日米共同作戦計画というものの署名が制服の間で行われているということについて、総理は御存じでございますね。
○中曽根内閣総理大臣 知っております。
○田邊(誠)委員 安倍外務大臣は御承知でございますか。
○安倍国務大臣 承知しております。
○田邊(誠)委員 この内容を私が新聞報道でもつて拝聴するところでは、なかなか重大な内容をこれは持っておるということでございますが、これを私が一々説明する時間はございません。しかし、これは一九七八年十一月二十八日の閣議了解によるところの「日米防衛協力のための指針」、すなわちガイドライン、これに基づいて行われておる。実はいろいろと前提条件があります、憲法やその他のことも前提として枠にはまっておる、こう言っておるのでございまするが、しかし米ソ戦の一環の中で日本の攻撃がある、こういう見方をする人もございまするけれども、いわばこの作戦計画というシナリオはアメリカの世界戦略を予定したところのシナリオじゃないだろうか、こういうふうに言われておるわけでございまして、それがそのままこの作戦計画にあるとすれば、これは明らかに専守防衛の域を脱却するものである、こういうように私どもは実は心配をいたしておるわけであります。 そういった点で言いまするならば、この日米共同作戦研究というものが国会のシビリアンコントロールのらち外にあるということは許されないというように考えておるわけでございまして、我々は、この日米共同作戦計画というものをひとつ当委員会に提出をされまして、国会の審議の対象にされるように要求をしたいと思いますが、いかがでございますか。
○中曽根内閣総理大臣 日米両国が安全保障を結びまして、安全保障条約に基づく日米両国の共同防衛、日本が侵略された場合にどうやって日本とアメリカが協力して日本を守るか、そういうための作戦の研究を共同でやったというものがその内容で、それは事柄の性質上表には出さない、国家防衛に関する大事な問題でございますから出さないということになっておるのでございまして、御了承を願いたいと思います。
○田邊(誠)委員 しかし、シビリアンコントロールの大黒柱である国会にこれが出せないというはずはない。そうなれば、一体、制服がつくるところのいろいろな計画なり研究というものについて我々の目の届かないところでもってどんどんと進められるようなことがあっては断じてならない、こういうように私は考えておるわけでございまして、委員長、ひとつこれは当委員会に提出をするように、政府をして指示してもらいたいというように思います。
○天野委員長 田邊さん、これは理事会預かりにしておいていただきたいと思いますが。
○田邊(誠)委員 それでは、我々は国会にこれが提出をされるもの、こういうように考えておりますので、ひとつ理事会において明確な回答を出されるようにお願いしたい、このように考えております。よろしゅうございますか。
○天野委員長 わかりました。
○田邊(誠)委員 日米の会談がいろいろな角度からやられてきたということについて我々も承知をいたしておるわけでございまするが、この日米会談後におけるところの新聞発表、これを拝見をいたしますると、総理とレーガン大統領の発表には、微妙な相違というものが随所にあるように私どもは考えておるのであります。例えば日米安保体制の評価の問題で、総理は自主的な努力を強調いたしましたけれども、レーガン大統領は相互協力を重点に置いている、こういうことでございます。 ところが、この総理とレーガン大統領と、両首脳の新聞発表を拝見いたしましたところが、二人とも日米諮問委員会報借というものに言及をいたしておるのであります。この委員会というのは、有名な不沈空母発言や三海峡封鎖発言をいたしました八三体の一月の日米会談で設置されたものであると我々は承知をいたしておりますが、この発表のニュアンスが相違するということになっておりまするけれども、私は、これはレーガンの発表の方がより正確であると実は考えておるのであります。 この報告というのは余りにも重要な中身を提起をしているというふうに考えておるわけでございまして、多くの点を指摘することはできませんけれども、例えばこの諮問委員会報告の百四ページには、海外派兵の問題について実は言及をいたしております。「非制服要員そして可能であれば制服要員の派遣を通じて参加することを考慮すべきであろう。」こういうふうに言っておるわけであります。実はこの日米諮問委員会の報告は、中曽根総理は、貴重な貢献であって真剣な検討に値する、こう言っておるのでございまするけれども、しかしレーガン大統領は、この日米諮問委員会の最近の報告が両国関係の将来の道を描く上ですばらしい出発点になるとの認識でも一致いたしましたと言っております。そうすると、この日米諮問委員会報告、今言った海外派兵まで道を開くようなこの諮問委員会報告というのが、実はこれからの日米関係の新しいページを開く重要なもとになる、こういうレーガン大統領の発言に対して、あなたはこれを是認されますか。
○中曽根内閣総理大臣 この諮問委員会は日米首脳会談に基づきましてつくられましたものでございます。日本側はお亡くなりになった牛場元駐米大使、先方はパッカード氏が中心になりまして、非常に御努力をしていただいて、日米関係を良好、改善、友好ならしむるためにつくった労作であると思います。もちろんこれは諮問委員会でございますから、それを政府は受けまして、そしてそれを検討して、政府は自主的にいいものはとり、もし自分たちの考えに合わないところはとらない、そういう自主的な立場を政府は持っておるものでございますが、今の自衛隊の海外派兵の問題につきましては、これは政府は自衛隊を海外派兵するために法律を改正して、そういうことをやることはやりません、そう言っておるので、それは今も同じように考えておるところでございます。
○田邊(誠)委員 ですから、あなたは国内に戻ってくると何かこうべールに包まれて、余りそういったことについての約束をしてないとか言いまするけれども、レーガン大統領との間ではかなり突っ込んで、意見の一致を見ているんですね。この諮問委員会報告をもとにして、ひとつこれから先いろいろと国内的な整備もしていこうじゃないか、私はそうしますよ、今、法律改正しないと言ったけれども、将来はこの報告に基づいて、海外派遣の問題とか、あるいは朝鮮半島に対するところのいろいろな、実は戦力になるというようなこととか、そういったものについて、ひとつ着実にやっていきますよという約束をこれはしているんですね。 ですから、そういった本音とそうでないものを使い分けて、アメリカに行ったときだけ本音をあなたが言いまして、国内に来るとそれを何とか覆い隠そうというところの手法というものが、これが今日国民を大変疑問に陥れている大きな要素ではないだろうか、実は私はこう思っておるわけでございまして、総理が本当に我々に対して、国民に対して率直に真実を語ってもらいたいということを実は私は心から希望するわけでございます。 日米会談は、実はいろいろなことがございます。貿易摩擦について余りこれから先もできないようなことまで約束をしているんじゃないかというようないわゆる疑問もございましたりいろいろしまするけれども、私、最後にもう一つだけ取り上げたいのは、経済援助のあり方ですね、これに対して実は重大な転換をしようとしているんじゃないだろうか、こう思っておるのでございます。 我が国の経済援助はまだまだ量的にも質的にもおくれをとっておる、もっとこれを改善しなければならぬということを安倍外務大臣も言ってきたわけでございまして、ことしは相当努力されたというのでございまするけれども、しかしせっかく倍増計画というものが、もう少しのところで達成できなかった。安倍さん五百八十億ですね。私はこれは防衛費を五百八十億ぐらい削って、それでもって海外援助費に回せばなかなか立派なものであった。残念なことをしましたね、これは。そういうことですけれども、我々は一応この海外援助というのは、やはり人道的な立場に立ち、その国の国民が本当に受け入れやすいような、受け入れられるような、そういう海外援助をしなければならぬ、こういうように考えておるのでございます。 私も実は昨年その趣旨の海外援助についての質的な転換を図れというアピールをいたしたのでございまするけれども、しかし今度の日米会談でもってアメリカが言っておるところの戦略的な海外援助、実はこの方式に取り込まれてきておる、そのための協議を開始する、こういうことが約束されてきたということを聞くわけでございまして、これは私は、まさに我々の考えている経済援助と逆行するという状態ではないだろうか。何か戦略的な地域にだけ海外援助をする、こういうようなやり方というのは、我々はもう改めてもらいたいというように考えておっただけに、そういったことがもし約束として取り交わされたとすれば極めて重大であるというように考えておりまするけれども、ひとつこの海外経済援助の問題について改めて政府の考え方をただしたいと思います。
○安倍国務大臣 この経済協力、海外援助につきまして話をしたのは、私とシュルツ国務長官との間でございますので私から説明を申し上げますが、我が国が経済協力、ODAの拡充に非常に力を尽くしておる、そして六十年度予算もマイナスシーリングといいますか、一般歳出をマイナスにとどめた中で一〇%も伸ばしたということを私から説明をいたしまして、この経済協力、ODAは世界の平和と安定のために大いに日本として使っていかなければならぬ、しかし、もちろん日本の経済援助は原則はあくまでも人道主義的なものでなければならぬし、あるいはまた相互依存に基づくものでなければならぬ、そういう精神で今後とも努力をしたい、こういうことを申したわけですが、これに対してシュルツ国務長官の方から、日本がODAに努力していることは敬意を表する、同時にアメリカも経済援助を進めておるので、日本とアメリカとの間で世界の平和あるいは安全のために協力できる分野については協力をしましょう、そのためには、ついてはハイレベルの協議をこれからも行うようにしましょう、こういう御提案がありまして、お互いの経済援助については原則があるけれども、その原則の枠内においてお互いに協議することは賛成です、日本とアメリカがそういう中で協力して開発途上国のためにできる分野があれば、それはやりましょうということで、協議機関を設けることに決めたわけであります。 したがって、アメリカの戦略援助とかあるいは戦略的な考え方に基づいた日本との協力とかそういうものではないということを私からも申し上げさせていただきます。
○田邊(誠)委員 あなたはそうおっしゃるけれども、シュルツ国務長官がアメリカの下院の外交委員会でも一九八三年二月十六日に証言しているように、ソ連の政治的影響力、軍事的勢力を封じ込む観点から援助を行い、国家安全保障に直結している、こう言っておるわけでございまして、我々としてはアメリカのこのいわば援助目的というのはあくまでも戦略的な援助である、軍事援助も含めての戦略的なてこ入れである、こういうことを実は心配いたしておるわけでございまして、今外務大臣はそのように答弁をされましたけれども、我々としては、今後の経済援助についてはあくまでも人道的な立場に立った援助に徹する、そして質的な転換を図る、ひとつこういう態度に立ってやってもらいたいということを強く要求しておきたいと思いますが、総理、いかがですか。
○中曽根内閣総理大臣 経済協力は、主として発展途上国を中心に民生の安定あるいは福祉の向上等々のためにやっておるのでございます。今、外務大臣が御答弁のとおりです。日本としましてもこの点には非常に努力をいたしまして、前の内閣が、福田さんのときからでありましたか、倍増しよう、七〇年代後半の五年閥の倍を八〇年代の前半の五年間にやろう。それで大体、その努力をしまして、倍増は九五%前後ぐらいまでようやく、これはドル換算にもよりますけれども、行ったところです。大体アメリカ側は七十億ドル前後やっておって、日本が三十八億ドル前後やって、西ドイツが三十一億ドル前後、あとはずっと下がります。そういう点でも日本としてはかなり世界的にも経済協力しているということはおわかりいただけるだろうと思います。今後とも民生安定、福祉の向上等のために努力してまいりたいと思います。
○田邊(誠)委員 ありがとうございました。 私は、委員長並びに理事会に預けた課題もありまするし、また残余の問題は同僚議員を通じて政府の所信をただすということになろうと思いますので、私の質問をこれで終わります。ありがとうございました。
○天野委員長 これにて田邊君の質疑は終了いたしました。 次に、海部俊樹君。
○海部委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、いろいろとお尋ねをさせていただきたいと思います。 最初に、総理大臣に、新しい時代の展望、そしてそれに対してどのような御決意を持っていらっしゃるのかをお尋ねしたいわけでありますけれども、よく世の中は曲がり角とか新しい時代とか言われます。考えてみますと、内閣制度が始まって百年、昭和になって六十年、戦後四十年、自由民主党も結党以来三十年、いろいろことしは節目の年であるということが言われております。ただ数の上で節目になっておるだけじゃなくて、次々に新しい価値側を持った世代が続々と誕生しております。 私は昭和六年の生まれでございますが、私の生まれた年は世界大恐慌の年で、世界的に大変不景気で苦しい時代だったとよく親から聞かされたものでありますが、生まれた年のことは実感としてわかりません。おやじたちはさぞ苦労したんだろうなぐらいの気持ちで大きくなってきました。ただ、物を大切にしろよということは繰り返し繰り返し教えられたことも今覚えております。 この間、一月十五日の成人の日に成人式に行きまして、戦後四十年、あなた方戦勢を知らない世代の方にはわからないだろうけれどもという話をしましたら、戦争は知らない、戦争は何がいけないんだ、どこがいけないんだ、こういうことですから、私は、人間が人間の生活を奪うことがいけない、人間の命を奪うことが一番いけないんだ、だから平和を守らなきゃならぬし、我々は一生懸命努力をしておるのだという話をしましたら、ことし大人になった青年は、総理、戦争はもちろんのこと東京オリンピックも知らない世代の人であります、生まれた年のことでありますから。生まれた口から新幹線が走っており、生まれた口から高速道路があって、まさに豊かな極致に達した時代に生まれた子供たちでありますから、戦争の話をしますと受け取り方も別で、わかりました、人間の命を奪うことが一番いけない戦争ならば、鉄砲を撃たなくても爆弾を落とさなくても、今一番かわいそうな戦争は、毎日、テレビで放送しておるじゃありませんか。アフリカのことを言うのです。そして、自由民主党が百万枚の毛布をアフリカに送ろうというキャンペーンをしてポスターを張っておるのを見て、あれはあれでいいけれども、僕たちだったらもうちょっとお正月らしく書くなあ。何と書くんだと言ったら、おもちを一人一個ずつ集めて、これを冷凍してアフリカヘ送りましょう、こういった方がナウいと思うがどうだと言われました。 だから私は、戦争を知らない世代とか、東京オリンピックを知らない世代というのは、何かこう豊かさの中でずるずるっと大きくなっただけかと思っておったら、テレビを見て、それほど国境を越え、人道主義に立った敏感な反応をします。そういった青年にそこはかとない信頼感と頼もしさを持ったわけです。けれども、価値観はうんと多様化しておりますから、キャッツを見に行った明くる日に歌舞伎を見に行って、よかったというような多様な価値観を持っている。大蔵大臣、税が上がってウイスキーやビールを飲めなくなると、簡単に安いチューハイを飲もうというのが今の若い世代の感覚なんです。けれども、そういう若い世代もどんどん出てくるが、一方、年齢がどんどんと延びていく世の中では、高年齢時代も必ず来ます。五十歳で定年、六十歳で還暦、六十五歳で敬老会、どうぞおじい様、おばあ様お体を大切に、お暇がありましたらゲートボールをどうぞと言っておるだけでは、政治の責任は果たせなくなってくる。生きがいをどうするか、余った余暇をどうするか。結局、私は、新しい時代というものは、ひたすらに豊かさを求めてきた時代から、心の大切さ、生きがいの大切さ、そういったものを求めていかなければならない。とすれば、心の大切さを政治の世界に持ってくると何が一番必要かと言えば、私は、社会の公正、能力に応じて人々が社会に参加することのできる平等な競争の場の確保、参加することの機会の均等だ、こう思っておるわけであります。 総理大臣は、自民党総裁としても再選せられて、まさに最初の国会の予算委員会でありますから、八〇年代、そして昭和の六十年代、この移り変わりの節目と新しい時代をどう展望し、どのようにこの国を導こうとしていらっしゃるのか、御決意のほどを改めてお聞かせをいただきたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 やはり政治家としても国民としても、歴史的洞察力を持つということは非常に大事であるように思います。ケネディさんでも、ドゴールさんでも、チャーチル首相でも、みんな歴史的洞察力に富んだ政治家であったと思います。 日本を見てみますと、明治維新から日露戦争までが約三十八年でございますね。この間に大変化があったわけです。それから、日露戦争が終わってから太平洋戦争までがやはり三十八年ぐらいなんです。我々は、あなたより大分前ですけれども、学生のころ、乃木将軍とか東郷元帥というのは遠い遠い昔のように思っておった。ですが、太平洋戦争が終わってから今日までもう四十年です。ですから、明治維新から日露戦争経過以上の時代が過ぎてしまっているし、日露戦争から太平洋戦争までの時代以上にもっと戦後は長く続いているわけですから、ですから、やはり大変化が起こりつつあると考えていいと思います。 この間に人類は、一面においては核兵器という凄絶な兵器を持って、のたうち回ってきておったと思います。今でもそういう状況が続いておる。 しかし、また一面において、大戦争はなかった、しかし各地で独立運動が起こって、驚くべきほどの独立国家が世界に誕生した。特に一九六〇年、六〇年安保前後に五十ぐらいの独立国がアフリカを中心にできましたね。こうして南北問題というものが世界的にも生まれてきて、そして石油危機その他もあって、非常に大きな変化が実は行われた。 ところが、最近は、今度はコンピューターという怪物が出てきまして、エレクトロニクスの世界がどんどん進んできまして、実はこの間オーストラリアに行きましたときに、ホーク首相に会ったときに、二人で食事しておるときに、あなたの孫は何の遊びをしているかと聞いたら、パソコンでコンピューター遊びをしている、まさに私の孫がやはり同じことをやっている。そのパソコン遊びというのは我々には全くわからないことなんです。そこでホーク首相が言うには、うちの孫どもが大きくなったときには我々がわからない世界が出てきますね、そう言っておりましたが、全く我々も、私自体も、今のパソコンをいじっておる子供たちが二十、三十になった場合の日本がどういう日本になるか、これはよほどよくきわめていかないといけないなという気がいたしました。 そういうような歴史的な変遷をたどって考えてみて、しかし一貫していることがやはり一つあります。それは、日本人がこの大八洲に生まれてここで死んでいかなければならぬということ、これはもう変わりっこない。それから太平洋モンスーン地帯、こういうところに生まれて、先祖から田を耕し、あるいは自動車を走らせ、テレビを見て生きてきたというこの厳然たる事実も変わらない。そうして、やはりみんな人間でありますから、動物と違うところは、精神性を持っておる、そういう独特の精神文化というものを持って生き抜いてきたという、これも変わらない。 そういういろいろな特色を考えてみると、日本が過去にこういう地形のこういう場所でこういう因縁を持って、そしてギリヤークも入っているかもしれぬ、ツングースも入っているかもしれぬ、あるいは南の方のポリネシアもミクロネシア系も入っているかもしれぬ、朝鮮半島からも大分来たかもしれぬ、大昔のことです。しかし、今混然一体となって精神文化を持ちながらやってきたこの日本が、二十一世紀に向かって、さらに世界に向かってたくましく生き抜き、世界文化の形成に貢献するような平和国家として生き抜いていく、そういう厳然たる方向に向かって日本を進めていきたい、その基礎工事をやっていきたいというのが私の念願であります。
○海部委員 どうぞその方針でしっかりと前進をしていただきたいと思います。 しかし、問題を絞ってお尋ねしますけれども、そういう二十一世紀に向かっての渡り廊下だと総理はよくおっしゃいますが、この渡り廊下を渡っていく間にきちっと我々の手で片づけておかなければならぬ問題として三つの改革を席に挙げておられます。行政の改革、財政の改革、教育の改革であります。私はいずれもなし遂げねばならぬ課題であり、やらねばならぬ問題だと思っておりますが、どれ一つをとらえてみても広く国民の皆さんの理解と協力がなければできない問題ばかりであります。そのためにも政治の道義確立といいますか、政治が信頼を取り戻すことが何よりも必要な条件だと思います。総理も政治の根底は道徳だとおっしゃいますが、政治倫理の確立についてはただいま政治倫理協議会の方でいろいろお話しを願っておると思いますが、総理は自由民主党の総裁であります。先頭に立って政治倫理確立のために指導力を発揮していただきたいと私は思いますが、御決意のほどをお願いいたします。
○中曽根内閣総理大臣 この点は本会議でも申し述べましたが、やはり民主政治は国民の信頼の上に成り立つ、国民の信頼は道徳性を基礎にして初めて成り立つ、こういう考えに立ちまして、政党もあるいは個人、政治家もやはり道徳性というものを基礎にして行動をし、また政策を推進していかなければならぬとかたく信じております。しかし、個人の問題につきましては、個人の信条あるいは個人の人権、そういうようなものに帰するものもございます。外からはうかがい知れない一定の領域というものを個人はあくまで持っておるわけです。これは憲法上も保障されておる。しかしまた一面において集団で行う道徳性という問題も要求されておる。そういう意味におきまして、おのおのの限界を守りつつ、我々としてはこの国会を中心にいたしまして個人の政治家としてのあり方、それから政党としてのあり方、相互関係、こういう問題につきまして道徳を高めるように、私も陣頭に立って努力してまいりたいと思っております。
○海部委員 外交問題についてお尋ねしますが、自由と民主主義を大切にして、日米関係を基軸に価値を共有する国々と力を合わせて平和を守る外交に徹する、私は、この基本方針は正しいと思っておりますし、また、きょうまで自由陣営というものは、日米が中心であって、欧州との関係を三角形で考えてみると、日米関係とか欧米関係は非常に強い太いきずなで結ばれておったが、日欧関係というものはやや弱いのではないかという危惧をしておりました。日欧関係は、経済問題は非常に議論されておりますが、その間に政治問題が入っておらぬのではないかという御指摘もありました。たまたまきょうから日英二〇〇〇年委員会というのが日本で開催されておるわけでして、私も委員の一人に任命されましたから、できれば今後の日欧関係にもパイプを太くしていって、この三角形関係を強固なものにしていかなければならぬと考えておりますが、その日欧の対話強化についてはどのようにお考えになっておるのか。 あるいはまた、アジアの国々との連帯強化も日本にとっては非常に大切なことでございます。これは外務大臣にお尋ねすることになると思うのですが、そのアジア諸国との間の友好、連帯強化のために外務大臣は随分努力もされ、飛び回っていらっしゃるが、日本青年海外協力隊という制度もどんどん今普及をして、各地で非常に喜ばれておる。私はこういったような相互依存関係、でき得る限りの努力を続けていくということが外交の基本でなければならぬと考えております。就任以来精力的に各地を飛び回り、さきにちょっと触れました青少年の心を震わせたアフリカ問題も外相は現地に飛んでいらっしゃる。イラン、イラクの紛争回避のための努力も、もしあそこで第三次石油ショックが起こったならばと、想像するだけでも大変な問題が出てくるわけでありますから、この飛び回り外交の中で日本の果たすべき役割をどのように肌で感じていらっしゃったのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○安倍国務大臣 最近日本の力が非常に伸びてまいりました。アメリカに次いで経済的にも自由世界第二位という力を持ってきた。それだけに日本に期待をする声が非常に強い。日本の世界における発言力も大変強くなったように思います。同時にまた、日本の国際的な責任も非常に求められる時代になったわけで、そうした世界の声にこたえて、日本が今お話しのありましたような基本路線に従った平和外交というものを積極的に展開をして世界の各国から信頼を受けなければならぬ、そういう時期に来ておると思います。したがって、外交もいわばこれまでの受け身という立場からさらに積極的な創造的な面を強化していかなければならない、私はそういうふうに感じて頑張ってきておるわけでございます。 もちろん、外交の基本は、今お話しのように同じ自由主義、民主国家として日本とアメリカとの同盟関係を強化するとともに、やはりヨーロッパとの関係も、同じ自由国家群として日米欧という連帯の中でこの関係を進めていかなければならぬ。最近も日欧関係におきましても、今の日英の二〇〇〇年委員会にも見られるように、政治の面におきましてもあるいは経済の面におきましても大変な対話が進んでおります。経済でもECとの間の経済閣僚会議が行われるようになりましたし、あるいはまた政治対話も積極的に進んできておるわけでございます。この日米欧関係、ヨーロッパの諸君に言わせると、日本とヨーロッパとの関係をヨーロッパとアメリカとの関係のようにしたい、そうしてまた日本とアメリカどのような関係にしたいということを言っておりました。まさに、そういう意味で日米欧関係をこれから同じ先進民主主義国家としての価値観をともにする国々として進めていく。 同時にまた、今お話しのように日本はアジアの一国であるわけでございます。そのために、アジアの中にあってアジアの諸国と相互依存関係、さらに相互信頼関係、相互協力関係を積極的に展開をしていく。日本は経済協力の面におきましても全ODAの中で七割をアジアにつき込んでおるわけでございます。それはやはりアジアの一国であるという原点に立った外交の基本に根差すわけでございます。 さらに、東側の国々との間には対話を絶やさずに協力関係というものを進めていくことも当然のわけでございますが、同時に先ほどからお話しがありましたような、世界の中ではいろいろと今不幸な事態が起こっております。イラン、イラクもその一例でございますが、そうした不幸の事態を日本の力で何らか解決できるとするならば、それは日本が積極的に取り組んで解決の努力をしていくことは当然のことであろうと思うわけで、私もそういう立場でイラン・イラク外交にも精力を費やしてまいったわけでありますし、あるいはまたアフリカは今大変な惨たんたる状況にあります。私もアフリカに行ってみまして、飢餓というのはまさに戦争と同じように不幸なものであるということを身をもって痛感をしたわけで、こうしたアフリカをそのままに置いてはならないわけですから、日本も日本なりの力を尽くしてアフリカの再生のために努力をしていくことは当然であろうと思うわけです。 いずれにいたしましても、これからはやはり日本外交の世界の平和を確立するために果たす役割というものはますます重くなってきておると思います。その自覚に徹してこれからこの外交を進めていかなければならぬ。それがとりもなおさず日本が世界の中で信頼を確保して、資源のない日本がこれから国際社会の中で堂々と生きていける道につながっていく、私はそういうふうに感じて現在も努力を重ねておる次第でございます。
○海部委員 外交を展開するときには平和の確保を目指すものであり、同時に今外交で一番焦点になるのは世界的な核廃絶の問題だろうと私は思います。核軍縮の達成というのはいろいろ具体的な措置を積み重ねて実効あるものにしていかなければならぬ。総理も、演説やビラだけでは核はなくならないとおっしゃいましたが、私もまさにそうであって、あるいはまた一方的な引き算だけを言っておりますと、どうも精神的な観念論になって、現実になくしていくにはどうしたらいいかということを世界の心ある人は皆見詰めておると思うのです。 日本は申すまでもなく核の問題については一番発言をできる立場であり、また、しなければならない国だ、こう考えておりますが、最近ジュネーブで米ソの外相会談が一年ぶりに再開されて、我々もその成功を心から期待しておるのでありますけれども、それに対して日本がどう対応し、何をどう期待し、どう見通しを持っていらっしゃるのか、お示しをいただきたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 ジュネーブで米ソ外相が会談をいたしまして、この三月十二日でございましたか、いよいよ具体的な交渉に向けて道が開けましたことを非常に歓迎するものでございます。 私は、ことしのお正月の元日の記者会見の際テレビでも全国の国民の皆さんに申し上げましたが、ことしこそ平和と軍縮を物にする年にしたい、全力を尽くします、こう申し上げましたが、その気持ちで努力してまいりたいと思っております。 それで、ジュネーブでああいう会議が開かれ、三月の初めにそういう具体的な専門官同士の話し合いが始まるということは大きな前進であります。この大事な炎を消さないように、そしてこの炎を広げていくように世界的に協力するということが大事であると思いますし、我々は自由主義陣営の一員でございますが、やはりこういう会談が始まったということを考えてみますと、一面においては世界的世論、また一面におきましては自由主義陣営の結束というものがこういう事態を生じせしめた一つの原因でもあると思います。そういう意味において、自由主義陣営としての結束を守りつつ、しかもいい方向にレーガン・チェルネンコ会談を終局的にはできるだけ早く持つような具体的な目標を持ちつつ、今後とも努力してまいりたい、そう考えておる次第であります。
○海部委員 核兵器の問題と関連が出てくるわけですが、この間総理がアメリカでいろいろ首脳会談をなさって、米国の戦略防衛構想、SDIという構想に対して、その研究に理解を示されたということについて、何かこれは直ちに宇宙軍拡の引き金になるのではないかとか、宇宙条約第四条に書いてある宇宙の平和利用に反するのではないかという考え方や意見がたくさん出てきて、聞いていらっしゃる国民の皆さんの方も、一体どちらが本当なんだろうかというクエスチョンマークがつくと思うのです。 けれども、核兵器を持っておる国があり、それに対抗するために核兵器を持っていくのだ、核が抑止力としての理屈でさらにますます高まっていくという競争になりますと、地球上を十回も十五回も皆殺しにすることができるほどたくさんのものを持ってもなお安心できない、この抑止力の競争はどこにいったら天井になるのだろうかという疑問もある中で、その考え方が変わるかもしれない。ICBMが飛んできたら、途中でそれを無力にしたり抑えたりすることができる研究開発がなされるならば、ある意味では私は核兵器の無力化、廃絶に向かっての一つの一里塚になるのではないかとも考えるのです。 私は総理の御答弁を本会議場でも承りましたけれども、この宇宙条約に反しないということと、核抑止力の戦略構想について転機が起こるかもしれない、それを十分我々はいい方に持っていくためにはどういう考え方で理解を示したらいいのか、示された理解の程度をもう一回お示しをいただきたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 まず第一に、このSDIというのは戦略防衛構想、構想の研究を行おうというのでありまして、あと十五年か二十年くらいかかるかもしれぬ、そう言われております。そういう研究をしようというのでありまして、したがって、いわゆるABM条約に違反するをのではありません。ABM条約においては研究というものは禁止はしていない。アメリカもソ連も研究はしているでしょう。しかし、研究というのはなかなか外からは査察もできないし、わからないものですから、そこまでは禁止してないわけです。そういう研究という意味におきましては、これは違反するものではないし、また、宇宙に関する国際条約についても、研究という段階でございまして、これは違反するものでもございません。 それから第二に、私は、米国大統領から直接この戦略防衛構想というものを責任を持った話として聞いたわけです。それはあくまで非核兵器であり、そして、途中で向こうから飛んでくるICBMというものを無力にするというものであって、防御兵器である、そして、それは将来もう核兵器を地球上から追放して、地上からなくすための兵器であり、考え方であります、そういう話を聞きまして、これは兵器革命、兵器体系の大革命が起こるかもしれぬなという感じがしたのであります。 戦後の今まで、今日まで両方、米ソがやってきた、あるいは英仏そのほかも入れた、中国も同じでございましょう、やってきたこの平和維持の構造というものは、お互いが攻撃的な兵器を持って、そしていざというときには両方が自殺するぐらいな力を持ち合って、どうせ死ぬのだからやめた方がいい、そういう、向こうの言葉でいいますと相互確証破壊という考えに立って、均衡と抑止の理論で、積極的に攻撃し合って、両方つぶれてしまうからやらない、そういう理論で攻撃力をもって抑止力をつくったわけですね。今度の考え方は、それはもうだめだ、そんなものを持ってきても途中で落としてしまう、防御兵器、防御というものを中心にして寄せつけない。 この間、ある新聞を読んでみますと、レーガンさんの軍縮・核兵器問題の顧問であって軍縮局長をやっているアメリカ人とある新聞の特派員が対談をしましたね。その対談を読んでみると、まず研究であるということと同時に、ある程度研究が進んでいるような感じが私はしておる。それは、最初大陸間弾道弾が発射された五分以内に、上昇過程に落としてしまうのだから一番早いのだ。なぜなれば、一番これは不安定で核を持っている段階だから、この五分間で落としてしまう。それからあと五段階にわたってあらゆる機会をつかまえて、あるいはレーザーであるとかあるいは粒子ビームであるとか、そういうものを使って落としていく。そういうような考えに立っておるようであります。 こういう構想は前から私は聞いておりましたが、いよいよそれがアメリカ国会で予算として提出され、研究が始められるという形になると、ある程度見当がついたからこういうふうに入ってきているのかなという感じもしておる。レーガン大統領が正式に演説したのは八三年の三月ですからね。ですから、二年前にレーガン大統領は正式に世界に演説しているところを見ると、それからもう約二年もたっているわけですから、アメリカのことですから相当研究もあると見なければならない。そういうものがもし仮に成功すれば、ICBMとかIRBMとかという大陸間弾道弾の恐しい飛んでくるものは使えなくなる。そういうことになると、原爆が出現して以来の兵器体系の大革命が出てくるわけです。第二次世界大戦までは通常兵器の火薬の兵器であった。第二次世界大戦の終わり際から今日までは核兵器であった。それができると、次に何か別のものの体系に入る可能性がなきにしもあらずです。 そういう将来性もにらみつつ、核兵器を地上から抹殺していくという方向に、しかも防御兵器でそれがやれるというならば、我々が願っている方向に一歩前進するかなどいう気持ちがいたしまして、そして研究に理解を示した。しかし、どういうふうにこれが具体的に研究が進むか、我々に情報を与えてもらいたい、また、協議してもらいたいということも留保をつけて話しておるのは、しかし果たしてそのとおりいくかどうかわかりませんから、変なふうに曲げられては困りますし、そういう意味で留保をつけてきておるのでございます。 しかし、こういう新しい——考えついたものは人間は必ず実現しますからね。ですから、これは余り軽々にお笑いにならないで、そして真剣にこの前途を見詰めながら、我々も対応を考えていくべきときが来ておる、そのように考えておるわけでございます。
○海部委員 私もやはり、核には核を、目には目を、歯には歯をという抑止の理論だけでは、どこかもろいところ、危ないところが出てきたらどうするんだろうかという心配をいつも持っておるわけでありますので、その理論が転換していくように、核兵器の廃絶にもこれがつながっていくような研究開発がされるなれば私は一歩前進だと思いますので、どうぞそういう方針の立場でお見守りをいただきたいと思うのです。 きょうは予算委員会でございますから、これから予算、特に経済運営、財政の問題について、大蔵大臣にちょっと御質問をさせていただきます。 私は、今日の経済運営の課題は、今の日本の景気拡大をインフレなしに持続していくこと、これは一つ非常に大切なことでありますし、もう一つは、技術革新に支えられた新しい成長がいろいろな面から出てきておりますから、この成長がどんどん伸びていくように配慮することも大切でしょうし、また、先ほどの外務大臣の御答弁のように、国際社会における日本の責任を果たしていくためには、どうしてもいろいろな意味で日本の経済というものは世界の注目を受けるわけであります。 そこで、この観点からまずお尋ねしたいことは、政府見通しの六十年度成長率、四・六%となっております。民間の見通しは、えらい少なくて三%とおっしゃる有名なM研究所とか、六%とおっしゃるK国民経済研究所とか、いろいろございます。ところが、平均すると政府見通しと同じ四・六というところにきちっと重なるようになっておりますが、中身が子細に見ると随分違っておるわけであります。 そこで、政府見通しのときの背景をお尋ねしたいのですけれども、まず第一に、アメリカの景気の先行きをどうごらんになっておるのか。我々の予想以上にアメリカの景気は力を持って向上している。何か下がってくるようなこともありましたが、また力強く反発をして、力をつけてきたということも言われております。どう見ていらっしゃるのか。それから、個人消費の伸びはどの程度に見ていらっしゃるのか。企業設備投資の問題はどうなるのか。まずこの三点を中心にことしの見通しについて蔵相のお考えをお尋ねしたいと思います。
○金子国務大臣 お答えいたします。 アメリカの景気の先行きにつきましてはいろいろの見方がございましたけれども、今回発表されたアメリカの政府見通しでも、新年度の実質成長率は三・九%でございます。そこら辺までいきそうな強い確信を持っておるようでございまして、大体四%程度をいくのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。 それから設備投資でございますが、当初はアメリカへの輸出に支えられた投資が日本でもどんどん進んでおりました。しかし、最近は輸出に関係のない分野にどんどん投資意欲が起こってきておる。 また、消費も、昨年の暮れまでは比較的沈滞ぎみでございましたけれども、半ばを過ぎましてから大分元気が出だした。年末からこの正月にかけての一般の消費の状況、特にレジャー関係の数字等を見ましても、まずまず私どもの見込んでいるようなところまでいけるんじゃなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
○海部委員 財政の現状をどのように見るかということは、六十年度予算の特色をどう受けとめていくかということと裏腹をなすわけですが、大蔵大臣、一般歳出を三年連続マイナスに抑えられた、同時にまた、対前年の公債発行額を一兆円減額された、この二つは今年度予算の特色として大きく報道されておりますし、私もまたそういった緊縮財政という大きな看板のもとでそのような御努力をなさったことには敬意を表します。けれども、台所論争とでもいいますか、大蔵大臣がこういう緊縮予算をいろいろ組んでいらっしゃったその努力、御苦労というものを私なりに思うのですけれども、要求をいろいろ抑えたり、私どもも大蔵省へ行ったことがある。いろいろな角度からいろいろな理屈で抑えられたりいたしました。 私は、そういうときにふっと思ったのは、一軒の家庭でも台所を預かる主婦のことを家庭の大蔵大臣と言いますけれども、家庭でもやはり台所のやりくりにはいろいろな御苦労がある、無理難題がある。しかし、それを調整していかなければならない。脱線するようですが、わかりやすい例を一つ出させていただくと、この間、我が家でも台所でいろいろな論争が起こっておりました。大学生になって料理学校へ通っている私の娘は、ちょうどてんぷらを揚げる調理場の母親のところへ来て、そんな古い油を使ってはだめだ、三回も四回も油を使うと油が酸化して体によくない、油はいつも新しいのを使いなさいと母親に言っております。これはこれで理屈としては全く正しいと思うのです。けれども、母親の方は、そうは言っても我が家は油だけ買っておればいいのではありません、あなたの小遣いも要るし、私のパーマネント代も要るし、だんなの靴下代も要るでしょう、そういったところを、いろいろ限りあるお金をどうやって使うかを考えると、健康に害がない程度ならば油も二度ぐらい、三度ぐらい使ったっていいではないか、こういう論争をしております。私はどっちに軍配を上げようかなと思ったのですが、黙って聞いておって、やはり台所の苦しみは大変なんだから聞きなさいよと娘に言いました。 けれども大蔵大臣、今申し上げた二つのこと、三年間連続緊縮された、一兆円の公債発行をマイナスにされた、御努力は評価しますが、それは財政再建に向かってどのような影響、どのような効果をあらわすのか。新聞によると、やりくり予算とか忍術のような予算とか、おさまってはおるけれども、借換債という問題が出てきて八兆円、そして合計すると二十兆円を超える公債を出さなきゃならぬ、これで果たして財政再建はできるのだろうかという記事が随分出ておりました。大蔵大臣の御努力、評価はいたしますけれども、これで財政再建にどのような効果があり、どのように進んでいくのか、今年度予算を編成されたときの御苦労とともにその見通しをお話しいただきたいと思います。
○竹下国務大臣 確かにこの三年間、一般歳出を対前年度減額とするということは、これは容易ならざる気構えで対応しなければならぬと私自身も思います。それに対して、補助率問題等からいえばツケ回しとかいう批判もいただいております。が、私なりには、これは地方と国とのいわゆる役割分担というものに一つの整合性を見出した措置であったとも思います。また一方、つじつま合わせ、これも表現としていただいておりますが、予算というものはまたつじつまが合わなかったら予算じゃないな、こういう感じも私自身もいつも持っておるところでございます。 そこで、三年連続のいわゆる対前年度減額と、そして初めに一兆円の減額ありきというものが、財政再建というスケジュールの中でどのように位置づけされるかということを考えてみますと、やはり平均的に申しますと、赤字公債を一兆七百億円ずつ滅していけば、これは財政再建の第一期ともいうべき昭和六十五年度に赤字公債依存体質から脱却するということになるわけであります。が、しかし、現実問題としては、七千二百五十億、そして建設国債で二千七百五十億、こういうことになりましたが、一つのその減額の努力というものは、やはり六十年度の、財政改革の第一期の少なくとも赤字公債依存体質から脱却しようというその道に向かっては歩一歩と進めた性格があるではなかろうか、こういう印象を持っておるわけであります。 しかし、財政改革というのはそれでもちろん終わるわけではございません。なかんずく六十五年、大変困難なことでありますが、それを努力目標として、それを達成したといたしますならば、その後は公債残高をいかにして対GNP比減らしていくかという努力をしなければなりません。私も、家計のやりくりのお話がございましたが、五十兆を出る予算の中で初めにまず十兆を上回る利払いありき、国債費であります。その十兆というものを初めから利払い費として取ったあとでもってもろもろのサービスに振り分けていくということに対しては、これは海部さんの奥さんが家計をやりくりされるときの心境のもっと痛烈な心境ではなかったか。しかし、だれかがやらなければならぬ、これが課せられた使命ではなかろうかと考えております。
○海部委員 公債問題についてちょっとお尋ねしたいのですけれども、昭和六十五年に赤字公債の発行に頼らないという目標があることは皆さん御承知のとおりであります。けれども、赤字公債に頼らないといっても依然として建設公債は残るわけでありますから、そうなりますと、今お尋ねしますが、昭和六十五年にもし仮に公約どおりに赤字公債がゼロになったとしても、政府からいただいておるいろいろな資料を見ると、そのときの国債発行高は残高が百六十六兆になる。償還利払いにその大半を使う国債費が十五兆六千二百億円になる。こういうことになりますと、これだけの大きなものを抱えることについてはそろそろ考え方を改めて真剣に考えなきゃならぬのではないだろうか。 学者の中には、あるときに、国債赤字、それは一軒の家計に例えると、言葉は悪いかもしれぬが、サラ金財政と同じだという例をもってこれを述べた方がございました。そのとき私は素朴に考えて、アメリカや中国から借りてきているお金ならばサラ金財政と言われても仕方がない、返さなければならぬけれども、国内で借りておるんだから、借りてきたのは国内だから、政府が債券を国民の皆さんに渡したということになるので、日本という枠の中では全体としてはそう心配したことではないという学説が随分出ておったことを思い起こします。今でも有力にございます。ある程度はそうだろうという気も私はしておりましたが、しかし今年度予算を見ておると、国債費は社会保障も超えて十兆円で、項目の中で一番多くなっておる。ある人が計算をしたら、その利払い費は一日が二百七十億で、一時間に換算しても十一億円ですと言われて、今さらのように額の大きさを私は見てびっくりしたのですけれども、しかしそれだけになってくると、もう返すのは国民の皆さんに返すんだからよろしいと言っておるわけにはまいりません。私の考えでは、これはそろそろ越えてはならぬ一線を越えておるのではないか。昭和六十五年までに赤字公債に頼らない体質をつくっていくんだ、この御努力は、努力目標として達成してほしいし、達成された後はどうなっていくのかということについてはまだ何も示されておらぬわけでありますけれども、その辺のところの見通しはどうなっておるのでしょうか。
○竹下国務大臣 おっしゃるとおり、まず第一義的な目標といたしましては、昭和六十五年度予算を編成するに当たって赤字公債を財源とする体質から脱却していこう、これを努力目標として孜々営々としておるわけでありますが、今おっしゃったように、いわば予算というのは、みんながそれぞれ道路をつけたり普遍的なことをやりますと同時に、いま一つは、担税力のあるところから税金をちょうだいして担税力のないところへこれを振り向ける、言ってみれば、富の再配分とでも申す性格を持つものであると思います。ところが、まず利払いありきで、社会保障費を上回る国債費というものを抱えておりますと、富の再配分という性格を持つものが予算の一面であるとすれば、非常に悩みを感ずることも事実であります。 そこで、今、海部委員のおっしゃいました、よくこれをISバランス論とか申します。日本には確かに世界に冠たる貯蓄がございます。その貯蓄をいわば民間が必要とするときにはそれは民間で必要とされ、そして民間の需要の少なきときでは国なり地方団体なりがそれを吸収することによって、なかんずく資産を後世に残す建設公債等に充てたらいいではないか、こういう議論もございます。その一面、ISバランス論というものについて、また現実問題として我々が非常に注意をしなきゃならぬのは、一度ふやした、ことしされば六兆円の公共事業を行え、来年は民間の景気がいいからといって、それが四兆円に削減されるというようなことは現実問題としてなかなか困難なことであります。 よく我々も国際会議に出ますと、今御指摘のように、おまえのところは債務累積国ではないではないか、言ってみれば国民の貯蓄を政府が借りてこれを活用しておる。我々はいわば債務累積国として、まさに日本を初めとするその他の債権国から金を借りてやっておる、おのずからそれは性格が違うじゃないか、この議論は確かにございます。それは確かに日本も、かつては世界銀行からあの新幹線もあるいは高速道路もあるいは製鉄所もまた黒四ダム等のダムも皆借りたものでございますが、それを全部返済して、まあ幾らか残っておりますけれども、今債権国の立場をとっておるというのは、日本の国民全体が勤勉であった証左であろうと私はいつも心の中にはある意味における誇りを感じておるわけでございます。 したがって、まずは六十五年度までに赤字公債依存体質から脱却する。とはいえ、今お示ししておりますところの収支試算等を見ましても、建設国債は横ばいで発行するという前提の上に立ってこの試算を提出しておるわけでございますから、おっしゃるとおり、非常に大ざっぱな言い方をしますならば、昭和六十五年公債残高百六十五兆、大ざっぱに言って百兆が建設国債、六十五兆が赤字国債、そして百六十五兆とは、七%の金利をつけて六十年の間で十年に六分の一ずつの返済をすれば、後世の納税者に五百十兆円のツケを回すという論理にはなるわけであります。したがって、その段階までにも努力をしつつ、毎年毎年の努力を積み重ね、その段階に来た場合、昭和三十九年までは公債を抱えない財政をやっておったわけですから、そして四十九年までは全部で九兆七千億円しか建設国債はないわけです。その後の百数十兆というものを抱えた財政の中で、されば、先ほど来二十一世紀というお言葉が出ておりましたが、昭和六十五年になれば二十一世紀まであと十年、その間に赤字国債の残高分が一体幾ら減されていくのか、その減らす努力はどのような形の中に行うのかということを、それこそ私は国会の真剣な論議等を通じ、国民の理解と協力を得ながら進めていかなければならない。今、六十五年までに脱却します、その後は年々、いわゆる対GNPに対して残高をどれだけ滅していきますという非常にリジッドな計画を持っておるわけではございません。これはまさに年々の努力と、そして国会等の議論を通じて、国民の理解と協力を得ながら進めていかなければならない課題ではなかろうか、このように考えております。
○海部委員 今おっしゃるように、財政再建というものにとって昭和六十五年度の赤字公債に頼らないというのは大きな目標であり、総理大臣も過日、本会議場で、容易ではないけれども実行をしていくと御答弁になっております。 そこで、これをやるためには、歳出の削減ということを右手にしっかりとやらなければなりませんが、同時に「増税なき財政再建」という大きな理念がある以上、そこへ安易に踏み込んでいく前に、成長を高め、自然増収を確保するという方策についてもできるだけ政治は努力をしていかなければならぬと思うのです。今年度予算を見ておりましても、対外公約である経済援助、ほとんど達成するように大きく計上していらっしゃる。しかし、国内の公共事業に対する十五本の閣議決定の長期計画は、進歩がまだ著しくおくれておる面が見受けられる。ということになりますと、経済に活力をつけて税の自然増収を図るということも大切なことでありますが、これに対する大きな柱は、今、内需の振興のためには、これは民間の活力の活用である。右手に歳出削減をしっかり掲げたら、左手には民間活力活用の両手の安全運転でこの六十五年のまず第一目標を達成しなければならぬと言われておりますが、歳出削減の御努力は、今よく御説明でわかりました。 そこで、民間活力の活用の面について、政府としてはどのようにこの問題に取り組んでおられるのか、その決意を、あるいは対応をお示しをいただきたいと思います。
○河本(敏)国務大臣 民間活力といいますと、いろいろな意味に使われておるのですけれども、狭い意味も広い意味もございますが、広い意味で申しますと、一つはやはり個人消費とかあるいは住宅投資、こういう個人部門の投資が伸びるということが私はまず前提条件だ、こう思います。その意味で、税制の抜本改正、これがどうしても必要になるわけであります。 それから第二に考えられることは、民間には相当資金がだぶついておりますから、民間部門での設備投資、これが拡大することが望まれるわけでありますが、やはり民間の設備投資が拡大できるようなそういう客観的な条件を整備していく、こういうことが必要でなかろうか、こう思います。 それから第三には、今社会資本投資のお話が出ましたが、社会資本投資を整備するという意味において、十五本の五カ年計画を進めるということももちろん大事でありますが、同時にまた、国有地とか公有地で相当余ったものがございます。そういう分野にこの社会資本投資整備のためのいろいろな条件をつくり出していく、こういうこともまた必要だ、こう思います。 それから、経済活動を進める場合に、やはり規制の解除ということが非常に大きな課題だと思うのです。アメリカで経済が活力を回復いたしましたのは、一つはインフレがおさまったこと、それから税制の改革、それと規制の解除、このように言われておりますが、そういう意味で、我が国でもこの規制の解除はもう全面的にやる必要があるのではないか、このように思いますが、大体そういう方向で政府部内で歩調をそろえまして、党や関係機関と連絡をとりながら今進めておるところでございます。
○海部委員 我が党でも宇野調査会で、民間活力の活用について、社会的規制とかあるいは経済的規制の問題についていろいろ協議検討を進めていらっしゃるわけでありますから、十分協力をして活力が伸びていくように御努力を賜りたいと思います。 政府からいただいております中期展望のことについてちょっと御要望を申し上げておきますが、政府の中期展望、仮定計算例を見ておりますけれども、いろいろ機械的な計算がずっと並べてあります。膨大な要調整額がかかるぞというところまではよくわかるのですが、今後一体どのような形でやっていくのか、なかなかわかりにくいところがたくさんございます。 わかりやすく、さわやかな行動をとろうというのがことしの自由民主党の党大会の決定でありますけれども、我が党は、村山調査会という財政問題についての調査会を政調会の内部につくって、二十五回にわたっていろいろ調査研究をした結果、一つの試案をここにまとめて持っております。これによりますと、例えば国債償還額の定率繰り入れを半分にした場合、残る半分を税収に頼るのか自然増収に頼るのか、いろいろな具体的な例をここに示して、このようにしたら財政再建はできるのではないかという具体的な仮定を置いた案をたくさんお示ししております。また、同僚の澁谷議員が党の政務調査会に「活力ある経済成長による財政再建」という案を示して、これも具体的な数字を挙げて、このようにしていったならば再建ができるんだという具体的な案を出しております。 ひとつ政府も、このように問題の所在を明らかにして、しかもいろいろな具体的な計算例を出して世に問うておるわけでありますから、政府もこれに従って、これを参考にして、このようにしたらなおよく国民の皆さんにわかるという資料をつくってお示しをいただければ論議がより深まっていくと思いますが、お示しいただくわけにはいかないでしょうか。
○竹下国務大臣 ただいま御指摘なさいましたように、このたび提出いたしております試算は、昨年度のものと全く同じ手法によりまして、歳出と歳入の差額を要調整額という形で示しておるわけです。そこで、一定の仮定のもとではございますが、いわゆる七、六の中間でございます六・五%の名目成長掛ける一・一の租税弾性値というような仮定のものでございますし、そして歳出の方も現行の施策、制度をそのままにおいたという前提のもとでございます。したがって、それらをお出しいたしまして、それをたたき台としてもろもろの議論をいただきたいということが、私どもの最もお願いを込めた考え方で提出しておるわけであります。 したがって、その中に、要調整額に一定の方策を盛り込んでみたらどうだ、こういうことになりますと、残念ながら現時点で政府として一定の方策を示す段階に至っておりません。まだまだいろいろな議論が交わされる中で、国民の合意と選択というものがいずれにあるかということを見出す努力をしていかなければならないであろう。 そこで、村山調査会の試算もございます。それから、澁谷直藏議員の試算もございます。これは、一つには潜在成長力をどう見るか、あるいは租税弾性値をどう見るかという点について、確かに基礎的に若干違ったところもございますし、またいわゆる国債整理基金の繰り入れについて、初めからいわば法定の半分を繰り入れたらどうだというような御意見に基づく試算でもございます。また昨年来、本委員会におきましても大内委員からも一つの前提に置いた試算が示されておる。したがって、これから政府としてはもろもろのケースを想定してその試算を出すということではなく、むしろそのようなもろもろの前提の御意見を承りながら、それに対して試算をお手伝いをしてつくらしていただくというようなことで議論をなお詰めていくというのが、手間取るようでございますが、国民のコンセンサスを得るための手法としては、今の場合それが現実的なことではなかろうか、このように私は考えております。
○海部委員 ちょっと問題を変えて、税のお話をお聞きしたいと思いますが、大蔵大臣、「現在の税制は複雑で、あまりにも不公正だと受けとられているため納税意欲がひどく損なわれている。」「課税には非常な欠陥があって税金逃れの機会を提供し、金持ちは少ししか税金を払はずにすみ、税制に対する信頼を掘り崩している。」この言葉、竹下大蔵大臣がと言いたいところですけれども、そうじゃなくて、アメリカのリーガン財務長官が発表された税制改革案の中の一節でありますが、同感ですか、同感じゃございませんか。
○竹下国務大臣 このリーガン財務長官が先般発表された、これは国会、どうなるか予測は別といたしまして、総理から申されております公平、公正、簡素、選択という筋は、今の総理が申されておるその考え方とはかなり一致しておる考え方であるなと思います。 それからもう一つは、具体的に見ますと、特別措置などを日本政府がだんだんなくしていこう、その方向へ、かつてはどちらかといえば非常に特別措置を余計採用されたアメリカ型が日本型に近づいておるという面も幾らかあるではないかな。 いずれにいたしましても、やはり公平、公正、簡素、選択というような思想と、リーガンさんがこの間発表されたものそのものは、今後の推移は別として、私は似た点があるという感じは持っております。
○海部委員 私が申し上げたいことは、税というものについて国民の皆さんにも大変ないろいろな意識や問題点がある。しかしそれは、高いか安いかということは、国民の負担をする税と政府が出してくれる公共サービスとの比較検討の問題でありますから、これは一概に、今の状況を見て、金額だけを見て高いとか安いとかいうことはなかなか議論しづらいと思うのです。 現に、諸外国の課税最低限というものと日本の課税最低限を比べれば、これは個人においても家計においても日本が一番安いという数字は出ておりますし、また、租税負担率と社会保障保険の負担率の数字を見ましても、日本の場合は論外国と比べて安いところにあるという結果になりますが、しかし国民の皆さんから見ると、そういう問題を乗り越えて、何かおれだけが損をしておるんじゃないか、不公平ではないかということを考えていらっしゃる層もあることは事実でありまして、例えば、ことし発表になった税の伸び率でも、全体からいきますと八%であるのに、源泉徴収の勤労者、サラリーマンの伸び率は一・二%になっておる。日本の平均給与者の所得は一年で二十一万円上がった、これは五・六%の伸び率であるけれども、税金の方は二万五千円上がった、これは一一%だ。こういうところは、やっぱり税の不公平感というものが何となくわき起こってくる根源なのではないだろうかという感じがいたします。 私は、今度の税制の改正というのは、党の税調でもあるいは政府の税調でもあるいは行財政改革の審議会でも、いろいろなところで取り上げられておりますけれども、一番の基本は、ただ単に直間比率の見直しとか、直接税が七三%を超えたからもういけないということじゃなくて、不公平感をなくするように、そしてみんなが納得して税金を払うことができるような、そんな仕組みに変えていくためにはどうしなきゃならぬかというところに一番焦点を置いた税制改革をしませんと、国民の皆さんも納得をしてついてきにくい面が出てきてはいけない。 そこで、冒頭に読みましたアメリカのリーガン財務長官のこの意見は大蔵大臣は賛成か反対かとお聞きをしたんでありますけれども、私は、日本もアメリカのように——ついこの間も法人税は日米どちらが高いか大変な論争があったことは御承知のとおりですけれども、今やアメリカは法人税は一律に三三%に下げる、そのかわりいろいろな特例措置とか優遇措置は除くという。計算して差し引き増税になるのか減税になるのか、得なのか損なのかということを抜きにして、やはり自分も参加して考えてみよう、公正なものならば協力してやっていこうという気持ちにもなろうと思いますし、また、日本の所得税も一〇・五%から七〇%まで十五段階刻みになっておるというのは、いろいろな面においてやや複雑過ぎるのではないだろうか。 アメリカのように一挙に三段階というのが無理にしても、何かもう少しわかりやすく、もう少し簡素な、おれは不公平な扱いは受けておらぬぞということを、みんなが一遍真っ白な立場に立って考え直してみて、なるほど税金は安ければ安いほどいいに違いないけれども、国が成り立っていくためには適正な負担はしなければならぬということをみんなが考えながら、討論を通じてその心証を高めていく努力が必要だと思っておりますが、税制改正というものは単に増税をねらったり財政再建のためにではなくて、たまたま同じ時期にぶつかったけれども、そうではないんだ、不公正を是正してみんなが納得して出してもらえるようなものに根本的に考え直していくんだという方針を、総理大臣あるいは大蔵大臣、お答えいただいたらありがたいと思います。
○竹下国務大臣 今の、総理から申しております公正、公平、簡素、選択ということが基本になる考え方であろうと思っております。確かに今御指摘のように、国民の皆さん方、税金を納めるのが嫌だ、こうおっしゃっている国民の皆様方はいないと思います。やはり、およそ人間でございますから自己中心的嫌いはあるにいたしましても、自分とあの人と比較した場合の不公平感とか、そういうようなものがいろいろな意味において、クロヨンでございますとかトーゴーサンでございますとか、そういう言葉となってあらわれてきておるであろうというふうに私は思います。 したがいまして、そうした、大蔵大臣がクロヨンがございますとかトーゴーサンがございますとか言える筋のものではございませんけれども、そういう言葉がいわば社会に通用するような環境を直していかなきゃならぬということは、私は事実であろうと思うわけであります。そして、最終的にはやはり負担するのも国民でございますし、受益者もまた国民でございますから、それは国民の合意と選択、そのコンセンサスがいずれにあるかということを見定めなければ、いかなる立派な政策も、もとより税制も国民の理解と協力なくしてはそれが実現できるものではございません。 したがって、今、税制についての御議論がございましたが、我が国の税制はシャウプ税制以来三十五年を経ております。そしてその当時のシャウプ税制というのは、私は、あの際それなりの基準が存在しておったというふうに思っております。それがやはり長い間に、社会経済情勢の変化の中にいろいろな制度改正等も行われてきましたものの、やはり不公平感でございますとかあるいは企業の活力を低下するいろいろな問題ができてきておることも事実であります。 したがって、これからはやはり税制、まず増収措置ありきではなくして、まず公正な税制ありきというところから、たまたま、もとより財政再建の時期に一致しておるわけでございますが、直接税、間接税を含め税制全般のあり方について、公正、公平、簡素、選択の立場からこれを議論をしなさいというのが税制調査会の答申であって、まず増収ありきという角度からこれを論議しなさいという指摘を受けておるわけではございません。そのためには、広く国民の意見を聞きながらこの方向を見定めなさいという答申がなされておるわけでございますから、その広く国民の意見を聞く場とは何ぞやということになれば、まず最初に国会ありき、なかんずくそういう答申が出て初めて行われます本予算委員会ありきというところから、このいろいろな議論を聞きながら、それを税制調査会等へ正確に報告し、そしてそこで本当の公正、公平の立場から議論された税制というものをどれが国民のコンセンサスかということを見定めながら選んでいく、こういう手法ではないかというふうに考えております。
○海部委員 まさにその国会の予算委員会の場で申し上げておるわけでありますから、どうぞ税制改革に当たっては、公平、公正ということを旨として、一般の国民の皆さんに余りわかりにくい複雑な制度はできるだけ簡素にしていただく、そうして必要なものは出していただかなければならぬけれども、むだを省いて、本当に納得のいただけるような根本的な税制改正に取り組んでいただきたいということを強く要望をいたしておきます。 次に、教育改革の問題について、総理並びに文部大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。 私は、今教育改革を総理が改革の大きな柱に挙げていらっしゃることを非常に大切だと思っております。また、今まで文部省が担当し、中央教育審議会が昭和四十六年に四六答申というのを出していろいろ改革を続けてきたけれども、政府が臨教審をつくって一段高いところで解決をしようと御決断されたことは、それだけに教育の現状が大きな問題をたくさん抱え過ぎておるということです。大きく分けて、制度、仕組みの問題と、教育の理念、内容の問題と、教育を取り巻く人、すなわち教師、両親、社会、大きくその三つに分けて物を考えてみましても、私はまず当面、我々が一生懸命努力してきたにもかかわらず、日本の教育はいい教育が行われてきたにもかかわらず、やはり社会にいろいろ病理的な現象が出てきておるわけであります。それをまず片づけたところから、世のお父さん、お母さんが納得して協力してくれるようなそんな教育改革に進んでいかなければならないと心から期待をしておるのです。 その立場に立ってお尋ねをいたしますが、最近の新聞に、何かこの臨教審の内部でも教育の自由化ということに対して大変な対立があるという報道があったり、あるいは文部省と臨教審の間に考え方が違うのではないかというような報道がなされて、私も実は心を痛めたのですけれども、この間、三十一日に臨教審の岡本会長や幹部の皆さん方に文部大臣経験者がお招きをいただいて、朝飯会でいろいろお話を承ってきました。我々の考えておる要望も述べてきました。やはり報道と実態とがちょっと違っておりまして、私はああいった会見をしてお話を聞いてよかったなと思っておるのです。 結論を先に言いますと、自由化の問題とか弾力化の問題とか、そういったことはお芝居で言うなら第三幕に出てくる問題であって、今当面取り組むのは、社会に起こっておる病理的な現象を何とか解決するためには力を合わせてまず取り組まなければならない。 例えば総理、去年私が一番心を痛めたのはグリコ・森永事件ではありませんでした。グリコ・森永事件も大変心痛む大きな報道ですが、教育を大切に考える立場から物を言うと、東大に受かった新入生が山中湖のほとりでコンパをやって、三人乗りのボートに六人が乗って沖に出て、ひっくり返って五人命を失った、あの何とももったいない、そしてあの何とも表現することのできない事件に私は心を痛めたのです。いろいろ批判はあろうが、偏差値でも最高点、近所の子供にはうらやましがられ、頭が一番いいと言われて東大に入った一年生が、人間として守るべき基礎、基本、人の物を黙って盗んではいけない、三人乗りの定員に六人乗ってはいけないということすら守ることができずに命を失ったということが、いかにも心を痛める事件でありました。けれども、中学校における校内暴力、家庭における家庭内暴力、この間はとうとう犠牲者まで出た中学校の校内暴力記事なんか読んでおりますと、一体この原因は何なんだろうか、これを何とか解決する方法を見出すところから教育改革はスタートすべきであると考えます。 問題を追求していくと、そこには偏差値教育とか入学試験の問題とか、いろいろ出てきました。ゆとりある教育をやらなければならぬ。私も一生懸命、ゆとりある、しかも充実した教育ということを主張したのですけれども、あのときはみんなが賛成したが、学校教育をゆとりあるものにして、人間として心を大切にするような教育をしようと思っても、ほかの段階の協力がなかったらうまくいかないのです。入学試験が改まらないと、いかに授業時間の週平均四十四時間を三十九時間に減らしてもらっても、それは困るから、もう一、回英語の時間をふやせ、数学の時間をふやせ、暇があったら塾に行こう、それでないと入学試験に受からないという、また病理現象に拍車をかけることになってくる。入学試験の制度さえ改めればいいのかというと、やはりそうではなくて、共通一次試験も各党の皆さん方の御理解と御協力を得て全会一致で通したのでありますが、残念ながら、現場の入り口の大学の入学試験が率直に申し上げて予期したような御協力がいただけないと受験生にとっては二重の負担であるとか、いろいろな問題が出てきます。 じゃ、いい学校に行きたいということにはどうするかと言えば、社会において学歴偏重社会、いいところへ就職するためにこの学校へ集中するんだという風潮がなくならないと病理現象の解決ができませんので、まず第一は、ここのところへ手をつけて解決をしていかなければならぬ。それが片づいたら、教育内容、教育理念、そして最後に弾力化、多様化、国際化、そちらに向かって教育改革は完結されていかなければならぬと私は思っておるのでありますが、総理は、臨時教育審議会を発足するに当たって私たち自由民主党の文教関係の幹部と何度もこういった考え方のお話し合いをいただきました。あの当時の総理のお考え方が今も変わっておらないのか、あるいはその後いろいろなことがあってもしお変わりになったことがあるとすれば、ここでお聞かせを賜りたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 考えは変わっておりません。 海部委員がおっしゃいますように、制度の問題もさることながら、我々が目の前に見ておる、子供たちが先生のところへナイフで向かっていくという記事、あるいは先生がナイフで子供に向かっていくという記事、これが教育の現場であろうかと考えさせられる、こういう痛ましいことをなくすことが政治の責任だ、我々の責任だと、こう思うのであります。 なぜこんな痛ましいことが起こるかといえば、やはり現象的には突っ張りであるとか、あるいは暴力であるとか落ちこぼれであるとか、そういうものから来ているんだ、だからその根をどうして絶とうかということが我々の今一番力を入れなければならぬ問題であると思います。そういう解決の方法として、試験であるとか、あるいは弾力性であるとか自由化という問題も次に出てくる問題であろう、そう思います。 そういう意味におきまして、臨教審の委員方がこの二月から三月にかけまして一部会から四部会まで二泊、三泊ぐらいで合宿して、そして真剣な討議を行って、できるだけ早く結論を出していこう、今まで中教審はありましたけれども、二泊、三泊とかというので合宿してみんながねじり鉢巻きでやったということは私はないと思うのです。それぐらいになってきておるというのは、国民の皆さんがぜひ早くしっかりやってくれと熱い眼で臨教審を見ているから、先生方も気合いが入ってきてそういうことになってきたのだと思うのでありまして、我々もこの先生方の熱情にこたえて、できるだけ御協力も申し上げ、成果を生むようにいろいろ側面的にも努力しなければならないと考えております。
○海部委員 教育の問題で、私どもが自由民主党の中でいろいろと小委員会をつくって調査検討も進めてまいりますけれども、一番大切なことは、やはりこの国に生まれた国民として歴史や文化や伝統というものを正しく身につけ、それをまた後世代に受け継がせていくためのあすの世代を担う今の学校教育、これは極めて大切だと思います。その学校教育の中で、余りにも点数にこだわる教育をしたり余りにも頭の教育だけに時間をとられてしまっておりますと、人間として大切な心の持ち方、今総理も触れられたように、間違っても親や教師に手を上げること、ナイフを持って向かっていくなんていうことは許すべきことではない、論外のことだ。人間としてそのことははっきりと身につけてもらうように教育をするのが大切な大切な使命だと考えておりますけれども、私は、そういったことを確立するためにも、世の中のいろいろな教育を取り巻く病理的現象を取り除いて、制度、仕組みを改革してそちらの方に重点を持ってやっていけるようにしないと、活力ある活発な次代を背負う青少年の育成というものができなくなるのではなかろうか、こんな心配をいたします。 そこで私は、討論会なんかではよく日教組の指導者に対しても、どうかひとつ大人の世界の応用問題と子供の世界の基礎、基本とは区別をしてくださいということをお願いをするんです。同時にまた、子供の世界に教えることは、この国のあすを担う青少作がどんなことをどこまで身につけておったらいいんだろうかということもきちっと覚えてもらわなければなりません。そういう面からいくと、私は、まず第一段階で入学試験の問題やその他のこと、学歴社会のことを解決していただいて、同時に心の問題や教育理念の問題を片づけていただいて、それから自由化とか弾力化とか国際化という問題に入ってもらわなければならぬと思っております。ただ、今臨教審の三年間の審議の途中でありますから、予断と偏見を持って余り我々が党の結論を申し上げることは差し控えなければならぬと思いますけれども、一つだけ大切なことは、教育は学校だけでできるものじゃありませんから、御家庭の御協力も社会の御協力もどうしても必要だということであります。 そこで、最近、入学試験期を迎えますと、全国で受験期の中学生や高校生を持っていらっしゃる御家庭というのはもう大変に重苦しい空気に包まれていらっしゃる。しかも、特に中学の偏差値教育というものの中で、生徒が点数だけで割り振りをされてしまう。コンピューターが点をつけて、同じ試験問題をやって、いい子、悪い子、普通の子と分けられる。あなたはこの学校、あなたはこの学校、そうしますと、どうしても活力もやる気もなくなっていく。私は、例えば神奈川県が神奈川方式とか、熊本県が熊本方式とか、今言った偏差値一辺倒ではない新しい受験の制度を生み出して、進路指導ということに学校の自主性や親の自主性を入れていらっしゃるとは聞くけれども、よく調べるとやはりそれも形を変えた点数整理主義で、さあやろう、人間の心が、人間の魂が入学試験というものを基準にして燃えたり屈辱を感じたり喜んだり、そういったような場面がだんだん失われておるのは残念なことだと思います。点数だけで、単願制度という安易なところへざあっと同じぐらいの人を送り込む。同じレベルの人が集まる学校だということにしていくと、どうしても無気力になっていきます。思い切って私が申し上げたいことは、活力とか挑戦とかやる気というものがもう少し生かされるような制度を考えてみたらどうなんだろうか。 我々がよく申し上げますことは、私たちのころは受験というものは、ある程度子供と家庭と先生とで相談はしますが、自由でありました。恥を言うようですが、私は、愛知県で一中という学校を受けておっこちたんです。発表を見に行って、出ていないときのあの何とも言えない寂しさや悲しさというものは、やはり落ちた者でないとわからないと思うのですが、いわんや隣に来て同じ組の受かった子供が喜んでおるのを見ると、つらくて、悲しくて涙が出るわけであります。そのとき泣いておった私が救われたのは、大学も出ておらない私の母親が、手を握って、男だったらこんなところで泣くな、学校はここだけではない、あさってまた受けに行く学校があるではないか、帰りにはおいしい物を食べさせてやるから涙なんか流さないで帰ってこい、悔しかったらひとつ追い抜け、マラソンだと思って頑張れ、人生は試験だけではないぞと言って活力を与えてくれたことに、私は今でもそこはかとない感謝の気持ちを持つわけですし、同時にやろうという活力が出てくるのは、悔しくて残念であったというあの体験から生まれてくるのですけれども、そういったようなことが何か学校教育でも家庭教育でも、兄弟の数が少なくなってきた、かけがえのない大切な子供だというので、なくなっておるような気もいたします。そういうやる気、活力というものをもっと教育の中で出していく。同時に社会は子供の健全育成のためによくない環境やよくない雰囲気をつくらないように、社会もみんなこぞって協力を願わなければ解決できないのがこの大きな教育の問題だと思っております。 私は、そういう意味で三年間の臨教審の間に、制度、仕組みも、教育内容も理念も、あるいは人、親、社会というものが一人一人の人間の心の中に日本人としての自覚と魂を育て上げていくような心の教育に重点を置いておやりいただきたい。そうすれば、お顔とお名前がみんな違うように、資質も個性も能力もみんな違うものを持っていらっしゃるのですから、それは社会に出てみんな役に立つわけであります、点数に評価されない能力も社会ではみんな役に立つのですから、一人一人の心を育て、能力を引き出す、そんな教育に向かって総理も指導力を発揮していただきたい。改めてここでお願いを申し上げて、決意を承りたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 海部委員から今御体験に基づく非常に麗しいお話を承りまして、私もお母さんの愛情に打たれた次第でございます。 今、試験の当落の発表のシーズンでございまして、各家庭では悲喜こもごもいろいろな風景があると思うのであります。また、親御さんや試験を受けている子供たちの心配も私たちも身につまされるような気がいたしまして、一生懸命勉強した子達たちがせめて受かっていただけるように神様に祈りたいような気持ちがしております。しかし、今おっしゃったように、この学校だけが人生ではない、そのお母さんの言葉は非常にとうといと思うし、また我々のやり方といたしましても、オリンピックでも敗者復活戦というものがあるんですから、一回おっこってもまたどこかで試験を受けるチャンスを得られる、この学校あるいはほかの学校で得られる、そういうような、何回でもチャレンジする場所をできるだけ多くつくってやるようなやり方に変えていく必要がある、そう私思っております。案外、落ちた子供が海部さんみたいにこういう立派な政治家にもなるんですから、上位で上がる子供よりも落ちた子供の方が将来伸びるかもしれないのであります。大体一番で卒業する人が伸びた例は余りないのです。大体びりっことか中くらいで出た子供がみんな伸びてくるのが人生で、実社会と学校の成績とは別ですからね。そういう意味で、子供たちがたくましく頑張ってもらいたいと思うのです。しかし、競争のない社会はない。競争のない社会というのは必ず堕落しますから、したがって学校だって競争はあるんだし、試験だって競争は当然あるんだけれども、今のような重圧感を与える、人間を物のような扱い方をするやり方がいけない。もっとおおらかな、そして何回も挑戦できるような、子供たちが勇んで学校に行けるようなそういう競争の仕方にぜひ変えていただきたい、そういうふうに念願して、臨教審の先生方にもそのように直していただくようにお願いしたいと思っております。
○海部委員 懇切丁寧な御答弁をいただいておりましたので、私が質問したいと思っておりました項目がまだ大分残りましたけれども、きょうは新自由クラブの代表の方に関連質問がございますので、ここで私の見解だけを表明させていただきたいと思います。 それは、先ほど田邊委員との間でいろいろとございました安全保障、防衛費の問題でございますが、私は、総理がおっしゃったように、きょうまで一%粋を守ってきた、今年度予算もいろいろなことはあっても一生懸命頑張ってお守りになったということ、これは戦後の日本がいろいろなことはあっても、国民の皆さんが八〇%以上も自衛隊を支持してくださった、同時に、近隣諸国に脅威を与えないで安全保障というものが守られ続けてきたこと、これは、日本国憲法とかシビリアンコントロールとかあるいは専守防衛の精神とともに、この予算のめどとしてのGNPの一%というのが果たしてきた役制はそれなりに大きかったと思っております。 安全保障というのは、国民の支持と近隣諸国の安心感というものも大きな要素であることは間違いございませんから、日本が今の状況のもとで、アメリカの信頼関係を失わないように必要にして十分なる適正規模の、華麗ではないけれでも、質素ではあるが、これが十分な適正規模のものだという基準を「防衛計画の大綱」で示されておるわけでありますから、私は、これは今も自由民主党の中でいろいろ幅の広い考え方があって、この問題についても討議が進んでおるわけでありますが、田邊委員にお答えになった第三項目、「今後とも、その方針を守りたいと存じます。」とお答えになっておりますので、どうか、これはきょうまで果たしてきた役割等を十分に評価されながら、慎重に御判断を賜りたいと思います。 また、行政改革の面では、特に国鉄の問題についてどうするのかということをお尋ねしたかったし、社会福祉の問題、特に高齢者対策、高齢者の雇用対策の面でいろいろとお尋ねしたかったのでありますが、御用意願っても御答弁の現がなくて申しわけございません。また、中小企業の振興育成についても、あるいは農業の自給率に関しても、あるいは新型の食品産業に対する犯罪、地下鉄の犯罪なんかをどう取り扱うのかについてもお尋ねをしたかったのでありますが、それぞれ御用意いただいた閣僚の皆さんには大変申しわけありませんが、新自由クラブの質問と交代をいたしますので、お許しをいただきたいと思います。 ありがとうございました。
○天野委員長 この際、小杉隆君から関連質疑の申し出があります。海部君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小杉隆君。
○小杉委員 それでは、関連質問をさせていただきます。 私は、新自由クラブの政策担当をやっております小杉隆でございます。約三十分ほど時間をいただきまして、総理並びに関係大臣に、政治倫理、平和外交などを中心に質問をさせていただきたいと思います。 一昨年十二月に私たち新自由クラブと自民党との連立が行われましてから、既に一年がたちました。私たち新自由クラブは、この連立を組むに当たって四項目の政策合意、すなわち政治倫理の確立、教育改革、行政改革、さらに平和外交の推進、こういった項目で政策合意書を取り交わして連立が成ったわけでございます。既に、一方の直接の担当者でありました田中六助さんが死去され、また、昨年の今ごろは本会議でもこの予算委員会でも連立問題に対する質疑が活発に行われたわけでありますが、今回は全く影を潜めている。これも一年間の一つの時の流れを感ずるわけです。 この四項目の政策合意につきまして、今まで一年間、例えば政治倫理の問題では政治倫理協議会の設置が見られたこと、あるいは行革では専売公社、電電公社の民営化が法律として決まった、さらに、国鉄も近く監理委員会の結論が出る、こういう時期を迎えておりますが、中曽根総理に、この一年間の連立についての御感想なり評価なり、山口労働大臣には私ども後から聞きますから、まず総理の御感想を聞かせていただきたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 新自由クラブの皆様方との連立によりまして政局は非常に安定をし、そのおかげで昨年度の予算も無事に成立を見、また、行政改革を中心とする法案も大量、重要な法案が続々と成立もいたし、また、国際外交におきましても、必要な日本の政策が十分理解され、また、積極外交が各国からは評価される、こういうことになりまして、この連立は非常に成功である、そして政局安定に役立っている、このようにして、新自由クラブの皆様方の御協力には感謝している次第であります。
○小杉委員 これからの日本の将来を考えますと、米ソを中心とする核軍縮の問題あるいは日本の国際経済協力の問題、また国内では「増税なき財政再建」とか教育改革など、多岐にわたる課題を抱えておりまして、私は、単に一党一派の利害を超えて多くの国民、多くの政党の協力なしにはこれらの問題の解決はでき得ないと信じております。だからこそ、ヨーロッパ諸国を見ましても、フランスにしてもドイツにしても、一つの政党が過半数をとっていても連立ということを志向している。そして、この一年間の国会運営を見ましても、例えば健康保険法あるいは年金改革の問題あるいは電電公社、専売公社の法律案を見ましても、これらの重要法案は、今まで成立をさせるためには大変な混乱の中で、例えば野党の書記長の首が飛ぶというような騒ぎを起こしてようやく成立するというような不毛な対立が見られてきたわけですけれども、この一年間を振り返ってみますと、与党の中にも野党に対する謙虚な、耳を傾けようという姿勢が出てきたと思いますし、また、野党の側にも現実的あるいは柔軟な対応が見られてきた。これは一つの私は大きな連立以後の変化だと思っております。 私どもは、しかし、こうした逃亡問題はやはり政策を中心に、単に一党一派の利害を超えて国民にとって重要なこの四項目の政策を実行していくことがこの連立の意義であるというふうに確信しておりますが、総理が引き続きこの四項目の合意を誠実に実行していくお考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 新自由クラブと行いました政治倫理、行革、教育、平和外交、これらの四項目の政策協定は誠実に遵守していくつもりでおります。
○小杉委員 そこで、まず最初に、政治倫理の確立について総理に伺いたいと思います。 私は、政治倫理の確立というのは、本来政治家個々人の倫理観なり道徳性が基本であるべきだと考えております。しかし、現実の政治状況を見ますと、個々の政治家のそういう倫理観や道徳性に頼るだけでは不十分であるというその限界を感ずるわけなんですね。そこで、制度としてやはり政治倫理確立の一つの仕組みというものをつくることが重要であるということを感ずるわけです。私どもも、既に一昨年の連立政権樹立の前から、こうした政治倫理確立に関する提言ということでいろいろな項目を提唱してまいりました。資産公開であるとか政治倫理協議会の設置であるとか政党法の制定であるとか、あるいは情報公開法、行政監察制度の制定であるとか、そういった問題を提起してまいりましたが、これらの問題をここで全部やるということには時間的制約がございますので、私は、いま一歩で実現が可能と思われる問題に絞って総理の御見解を伺いたいと思うのです。 私ども新自由クラブは、昨年の三月から所属の国会議員全員が、配偶者の分も含めまして資産公開を実施しております。ことしも確定申告の時期に合わせて、三月に二回目の資産公開を行うことを予定しております。また、各政党を見ましても、野党の一部には資産公開法という制度としてやるべきだという主張をされている方もおられます。中曽根総理も、組閣に当たって各閣僚に資産公開を義務づけ、そして二回実施されたわけですが、私は、公職選挙法で選ばれた国会議員会員がこうした資産公開というようなことを実行することによって、何か国会議員という地位を利用してうまいことをやっているのじゃないかというような国民の疑惑を解く一つの手段になり得るのではないかというふうに考えるわけですが、国会議員の資産公開について、総理の御見解を伺いたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 過去二回にわたりまして閣僚の資産公開を行いました。これを行うにつきましては、内閣官房におきまして、できるだけガラス張りを貫くような配慮のもとに、必要な限度においてその資産公開の基準をつくって実行したところでございます。今後も、このような精神で政治倫理の一環を実行してまいりたいと思っております。 なお、今後もまた資産公開の方法につきまして、いろいろ御議論があれば改善してまいりたいと思っております。
○小杉委員 今質問したのは、国会議員の資産公開について伺ったのですが。
○中曽根内閣総理大臣 これは、党によってはそういう国会議員の資産公開法という案をおつくりになっておるところがあると思いますが、国会議員の、各党の御議論がどういうふうに収れんするか、それを見守ってまいりたいと思います。
○小杉委員 私どもも、みずから実行し、そしてこの資産公開法というものを制定するという努力を続けていきたいと思いますし、総理も、自民党の総裁として御努力をいただきたいと思います。 アメリカでは、一九七八年に政治倫理法というものを制定いたしまして、立法、司法、行政の高級公務員にはすべて資産公開を義務づけるというような、非常に厳格な内容の法律ができたわけであります。この制度を発足させるときに、やはり多くの反対意見や抵抗があったわけですが、時の大統領であったカーターさんが決断をいたしましてこの政治倫理法をつくったわけです。やはりこうした制度を定着させていくためには、国の最高責任者の強力なリーダーシップというものが発揮されることが必要であろうと思います。 そこで、中曽根さんがせっかく閣僚の資産公開を実現されたわけですが、この制度を一歩進めて、政務次官にまで対象を広げていくお考えはないかということをまず伺いたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 そういう御議論もありまして、検討させておるところでございます。目下検討中でございますが、政務次官の場合は大臣と違いまして、大臣を補佐すべき役目にあって、直接の責任はすべて大臣に集中してくるところでございます。そういう意味におきまして、今すぐ行うのはちょっとどうかな、もう少し検討を要する、そう思っております。
○小杉委員 それでは、大臣の資産公開が既に二度にわたって行われましても、仮に中曽根さんが交代をされる、総理がかわればそれで終わりになる可能性もあるわけです。これがやはり継続して行われていくことが必要だと思うのですけれども、今のところ何らの保証もありません。 この資産公開については、閣僚の口頭申し合わせということで今実施されていると思いますが、今後とも永続的に継承されていくためには、やはりそれの担保措置というものが必要だと思うのですが、例えば閣議決定なり、あるいはさらにこれを一歩進めて法律とするようなお考え、そういう担保措置を何らかお考えにならないかどうか、お答えいただきたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 その点はよく検討してみたいと思います。
○小杉委員 政治倫理問題は多岐にわたるわけで、私が特にこの資産公開にのみ絞ったのは、せっかく二度にわたって実際に行ってきて、そして各党にもこういう意見がある、こういう問題こそ総理が具体的に、実質的にこうした制度をひとつつくっていただきたいということを重ねて申し上げまして、次の問題に移りたいと思います。 次は、今度の国会や予算委員会でも最大のテーマとなっております防衛費あるいは外交の問題であります。 私ども新自由クラブは、従来から、防衛費の対GNP比一%粋を堅持する方針をとってまいりました。そして、連立に当たりましても、平和外交の推進ということで協調しておりますし、また、その後のたびたびの党首会談あるいは定期協議などの場でこの方針を確認してまいりました。六十年度予算においても、防衛費の一%枠の堅持を強く政府に求めまして、実現を図ってきたところでございます。 先ほど総理のお話によりますと、これからも守っていきたいということでございますが、私たちは、この一%の問題は、平和憲法のもとでの非核三原則や専守防衛、こういうものと並んで、諸外国に対する、平和国家であるという一つのあかしになっていると思うのです。経済的には大国の仲間になっても、軍事的には小国であり続ける、平和国家に徹するということを、私どもは論外国に強く印象づけてきたことが、これだけ日本の貿易も発展した一つの大きな原因であったと思います。そして、最近の世論調査を見ましても、国民の七割以上がこの問題は支持をしているわけであります。外交、防衛問題というのは、一番国民の理解と協力が求められているわけですから、私たちは、ぜひこの今までの方針を貫いていただきたい。 そこで、私はここで少し、この一%の枠内で十分な防衛力が可能であるということを申し上げたいわけであります。それには、自衛隊の質的な転換あるいは効率化を進めることが大切だと思います。 かつて、第二次世界大戦当時、有名な、電撃作戦を展開したあのナチス・ドイツも、ヨーロッパ大陸ほとんどすべてを席巻したにもかかわらず、イギリスだけは屈服させられなかったわけであります。その最大の理由は、イギリスとドイツの間に横たわるドーバー海峡が存在したからであります。我が国も、英国と同様に、四面を海に囲まれている島国という、防衛面では極めて有利な地理的条件に恵まれております。もし仮に我が国を侵略しようという国があれば、兵力を船舶または航空機で運んでいくしか方法がありません。この意味で、我が国の防衛は海空に重点を置いて防衛力を整備すべきだと考えております。 ところが、今の防衛費を分析してみますと、六十年度予算では防衛費の約四五%が人件費、糧食費、しかもその六〇%が陸上自衛隊であります。日本のこうした地理的な条件を考えますと、私は、陸に重点を置く防衛よりも、むしろ海空に重点を置く防衛ということに考え方を切りかえる必要があるんじゃないかと思いますが、まず総理の見解を伺っておきたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 日本が海に囲まれた特殊性を持っているという御指摘は、そのとおりでございます。ですから、私は昔、私の本にも書いてありますが、中国へ行って伍修権参謀次長と話しましたときに、あなた方は大陸型・人民遊撃戦略型戦略ですね、こう言って、私の方は海洋型・総合安全保障タイプの防衛戦略です、そういうふうなことを申し上げたのを覚えております。やはり、そういう日本にある独特の地理的位置とかあるいはそのほかのものを十分活用した、特に科学技術力を活用した高度の防衛戦略体系が必要であろうと思っております。 ただしかし、機械だけでは守れないので、やはり人間も必要ではあると思いますが、常に、自衛隊の編成等については改良、改善を加えていく必要があると思います。
○小杉委員 ここに傾聴に価する提言があります。 総理もよく御存じだと思いますが、防衛問題に関する世界的な権威であるストックホルム国際平和研究所の前の所長フランク・バーナビーさんによれば、例えば三千万ドルの戦闘機はたった六万ドルの対空ミサイルで効果的に撃墜することができる、これは五百分の一であります。また、二億ドルの巡洋艦はわずか十万ドルの対艦ミサイルによって難なく沈めることができます、これは二千分の一であります。さらに、三百万ドルの重戦車は八千ドルの対戦車ミサイルで撃破することができる、これは三百七十五分の一でございます。 こういう提言を考えてみますと、私は、国の安全を守ること、国を防衛することが政府にとっての義務であると同様に、国民から徴収した税金を最も効率よく使っていくことも政府の責任だろうと思います。今、総理もちょっと触れられましたが、費用対効果のすぐれた、近代技術を駆使した防御兵器にこそ金を投じなければならないと考えております。 現在の「防衛計画の大綱」ができましたのが昭和五十一年であります。先ほど総理の海部委員に対する発言でも、最近の子供たちの遊ぶ道具はパソコンに変わってきているというようなぐあいに、今大変な科学技術の進歩をもたらしているわけでありますし、日本がその先端技術の最も進んだ国という状態になっているわけでありますから、そうした先端技術を駆使した、コンパクトで効率的な専守防衛システムというものをもっともっと開発できる余地があるのではないか。一機百億円の爆撃機を買うよりも、一基一億円のミサイルをもっとたくさん配備をして国を守る、そういう考え方を私は取り入れるべきだと思うのですが、そういう点について総理の見解を伺いたい。
○中曽根内閣総理大臣 原則として賛成です。しかし、今のスウェーデンの専門家がおっしゃったのは、もしその弾が当たった場合なのであって、当たらなければ何にもならないのであります。いかに当てるかという問題が残る。当てるのは人間と、人間と結合した科学技術ですから、そういう高度の能力のある部隊編成をしていく、そういうことが大事であろうと思います。 しかし、御趣旨は私賛成なんでして、今五六中業をやっておりますが、近く五九中業をつくりますけれども、私からも自衛隊あるいは防衛庁の方に、やはり海空を重視した、そして非常に科学性を中心にした、コンピューター時代にふさわしい機動的移動力を持った、しかも洋上撃破、そういうものを中心にした思想で大いに五九中業を練るように、そういうことを指示してあるのであります。
○小杉委員 この一%という問題は、一部には既にナンセンスだという議論の人もいるようですけれども、私はやはりこの一%こそシビリアンコントロールの一つの象徴だと考えております。国会が専守防衛だ、非核三原則だと言いましても、具体的にこれをコントロールする手段を我々は持たない。私は、予算の面から国会がシビリアンコントロールを発揮していく、その一つのよりどころが一%ではないかというふうに考えますときに、このように一%問題がぎりぎりの段階に来たときこそ、今までの防衛のあり方、例えば私が指摘したように、日本の置かれた地理的条件を考えて、もっと陸上から海空へ重点を置くべきではないか、あるいは今までの防衛力の質的な転換を図って、技術力を駆使した防衛システムというものをもっともっと開発すべきじゃないかということを申し上げたいわけでございまして、この点は私どもこだわり続けたいということを申し上げて、次の質問に移ります。 次の問題はODA、政府の開発援助ということであります。 この問題については、政府が、昭和六十年度予算の中でも、他の予算が軒並み削られていく中で、前年度対伸び率が一〇%、主要経費の中で最高の伸びを確保したことは評価をいたします。そして、過去五年間の倍増計画もほぼ達成をしたということは、私も高く評価をしております。 しかし、この昭和六十年度が五カ年間の倍増計画の最終年度でありまして、六十一年度以降をどうするのかということが、非常に緊急の問題であろうと思います。今、聞くところによりますと、外務省を中心に検討に入っておられるということでありまして、この経済協力に関係する四省、つまり外務、通産、経企庁は計画の策定に積極的であるようでありますが、大蔵省は財政難を理由に反対というか、消極的だということであります。私は、たとえ現在の財政状況を考えましても、来年度以降も引き続き我が国が円滑な海外援助を行うために、新たな目標なり計画をつくる必要があると思いますが、まずこの問題に対する総理のお考えをお示しいただきたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 ODAにつきましては、先ほど来申し上げましたように、政府は重点中の重点政策として今後とも重要視してまいるつもりでおります。ただ、長期計画をどういうふうにつくるかという点については、少し時間をいただきまして、関係各省庁においていろいろ構想やら内容についてすり合わせをさしたいと思っておりますので、しばらく時間をいただきたいと思います。よく検討いたします。
○小杉委員 外務大臣に伺いますが、伝え聞くところによりますと、外務省は四月までに新たな計画をまとめて、四月の十一、十二日のパリで開かれるOECD、経済協力開発機構の閣僚理事会の場で公表する運びになっているようでありますが、今後の作業スケジュールについて伺いたいと思います。
○安倍国務大臣 今総理からお話がありましたように、ODAは我が国の政策として最も重点を置いておりますし、御承知のようなことで、今回の予算でも一〇%伸ばしたわけであります。我々は今後とも世界の開発途上国に対する援助の強化、南北問題を解決していくためにも我が国の責任を果たす、こういう意味で努力を重ねていきたいと思っておりますが、今のところはまだ関係各省庁、それをどうやったらいいか、五年間は一応予算的には倍増の目標を達成したのです。これからどうするかという問題については今鋭意検討をしておりまして、できれば四月ごろまでに関係省庁間の話がまとまればいいな、こういうふうに思っておるわけでございますが、いろいろ問題もあります。財政の問題もありますから、そういう点も含めて、これから鋭意まとめる努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
○小杉委員 時間が迫ってきましたので、もう一つ、外務大臣にこの点で確認しておきたいと思うのですが、従来の援助というのは、大体量的な拡大に重点が置かれていたと思うのですが、これからはもうちょっと質的に変えていかなくちゃいけないと思います。そして実際に援助されたものが本当にその国の民生安定につながっているか、国民生活の向上につながっているかという、援助の効果測定といいますか、アフターケアといいますか、そういったものの必要があると思いますし、今後どういうところにポイントを置いて考えていくか、その辺をひとつお聞かせ願いたいと思います。 そして、ちょっと続けて労働問題について最後にひとつ聞きたいと思うのですが、先ごろ厚生省がまとめた五十九年度国民生活実態調査によりますと、六十五歳以上の夫と六十歳以上の妻だけの世帯、それに十八歳未満の子供がいる場合も含めた、いわゆる高齢者世帯の平均所得が初めて前年度を下回ったということが報告されております。特に所得のうち、働いて得た所得の割合が全体の三五%に落ち込んでいる。これは前年度の四一・八%から相当ダウンしているわけでございまして、それに反比例して年金や恩給に頼る部分が五〇%を超える、半分以上が年金と恩給に頼る、こういう状況になっております。 私は、年金や社会保障が充実したことによって老後の生活の不安がだんだんなくなってきたことは大変いいことだと思いますけれども、単に所得の面だけを考えるのではなくて、やはり生活全体の問題として、高齢者の立場に立って考えることが必要だと思うのです。 今高齢化社会になって、十分に気力も体力も能力もありながらその働く場がないという高齢者の問題が非常に深刻であります。私は、本当に活力のある経済社会、ゆとりのある社会を形成していくためには、高齢者が生きがいを求めて生きていくということが必要だと思いますので、こうした高年齢者の雇用就業対策というものを早急に図る必要があると思います。中長期的な観点も含めて、これからの高齢者の雇用対策について、労働大臣の見解を伺っておきたいと思います。
○安倍国務大臣 我が国のODAは、各国から最近非常に評価を受けております。これは、我が国のODAの基本的な方針があくまでも人道主義で、それから相互依存関係を貫くということで、対象国の民生の安定といったものを中心にきめ細かな援助を進めておるからであろうと思うわけですが、こうした基本精神を貫きながら、なおかつ今お話しのようなアフターケア、フォローアップ、そういうものが大事であろうと思います。この点についても、これまでも留意をしてやってきておるわけでございますが、さらに学識経験者等の意見も聞きながら、十分今後とも留意をして、そしていやしくもODAに対していろいろと批判が起こらないように努めてまいらなければならない、これは政府の責任である、こういうふうに考えております。
○山口国務大臣 先ほど、海部議員のお話の中にございましたように、人生八十年時代、我々日本人は二十年で達成したわけでございますし、そうした時代における高齢者対策の中で、年金でございますとか、また社会保障も非常に大事でございますが、何せ勤勉をもって鳴る日本国民でございますので、やはり高齢者の定年の延長あるいは雇用の延長というものも当然進めていかなければならない。そういう意味で、雇用審議会でございますとか中央職業安定審議会等におきまして、六十歳までの定年の法制化は是か非かという問題も既に御審議いただいておりますし、六十五歳までの雇用の延長に対する奨励金措置も含めていろいろ議論させていただいておる。 いずれにしましても、これから数年の間に、今六千万の労働人口が約五百万拡大をする。そういう中で、高齢者が約八割を占めておるわけでございますし、また一方においては女性の職場への進出、さらには技術革新におけるOA化等の中における雇用の問題等もございまして、そうした雇用の安定が、内需拡大も含めまして日本経済の大きな必要条件である。同時に、労働時間短縮の問題でございますとか、いずれにしましてもよく働き、よく英気を養うという勤勉な国民の大きな意識変革も必要だということで、労働省といたしましても、そうした行政指導を今進めさせていただいておるというところでございます。
○小杉委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○天野委員長 これにて海部君、小杉君の質疑は終了いたしました。 次に、堀昌雄君。
○堀委員 私は国会に大変長く籍を置かしていただいておるのでありまして、予算委員会にはたびたび出席をして総括質問をやらしていただいておりますが、ことし初めて正規の予算委員となりまして、きょうはその正規の予算委員として最初の総折質問ということでございます。私にとっては、そういう意味では実は大変重要な総括質問でございます。 そこで、実はこれまでの総括質問で総理はいずれも明治生まれの皆さんでございましたけれども、きょうは初めて大正生まれの総理と質問を交わすということになりました。ちょっとお見受けしてみますと、今やまさにこの内閣もやや大正時代以下の方が多くなっておるのではないか、こういう感じがいたしますが、総理、いかがでございましょうか。
○中曽根内閣総理大臣 まさに明治は遠くなりました。大正もやや遠ざかりつつある。私、さっきお昼前にアメリカの新聞を読んでおりましたら、アメリカの下院の平均年齢が四十九ぐらいです。上院が五十四ぐらいでした。これを見ると、アメリカの方がはるかに日本より若いなと、ちょっと考えさせられるものがありました。
○堀委員 ですから、そういう意味では、自分たちの育ってきた環境とその人間の持っておるいろいろな認識というものは、おのおのやはりそういう時代的な問題があるだろう、こういうふうに私は考えておるわけでありまして、きょうはひとつ中曽根内閣と対決をするというような姿勢ではなくて、ともかく民主主義の政治というものは国民の常識の範囲で行われていなければどうもうまくないのではないか。さっきの一%問題、これはまさに八〇%の国民が支持しておるということでありますと、これも実は重要な国民の常識の範囲の問題だ、こう思っているのですが、これはきょうは私の目的ではございませんので、きょうは年金問題と財政改革という問題に絞って、ひとつ総理及び関係閣僚との間で論議を進めさしていただきたい、こう考えるわけであります。 そこで、総理のこの前の施政方針演説を拝見いたしまして、まず、「昭和六十年、一九八五年は、昭和二十年の終戦から四十年、明治十八年の内閣制度の創設から百年に当たります。歴史の流れにおける大きな節目とも言うべきこの年に当たり、これまで我々日本国民がなし遂げてきた実績の上に立って、各分野にわたりさらに大胆な改革を進め、我々の次の世代へよりよい日本を引き継ぐために、一段と力を尽くさなければならないことを痛感いたします。」こうお述べになってますね。 言葉はこれですが、あなたのお考えとして、この各分野にわたり大胆な改革を進めるということについては、あなたも本気でおやりになる考えかどうか、ちょっと最初にお答えを願いたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 今本気でやっておる行政改革、財政改革、教育改革等は、その内容の一部をなすものでございまして、真剣にこれを完成すべく努力しておるところでございます。
○堀委員 その次に、いろいろ前段がありますが、「その際、基本的に重要なことは、政治の運営が、常に、国民に公開された場において、政策を中心として行われることであります。そのため、国会における各党、各会派との関係におきましても、対話と相互理解を深めることが肝要と考えるものであります。私は、」云々、こうなっているのでありますが、そこで私も、実はこの国会の場において、政策を中心にしてひとつ論議を深めてまいりたい。国民が理解と納得できるような我々の提案については、皆さんも謙虚にこれを受け入れるということなくしては、政策中心の対話は成り立ちません。この点についての総理の御見解を承りたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 施政方針で申し述べたとおり実行してまいりたいと思いますし、堀さんの円熟した御議論については、常に敬意を表しているところであります。
○堀委員 三番目、税制について、「また、我が国の税制につきましては、社会経済情勢の変化により、種々の問題が指摘されるようになってきており、国民各層における広範な論議を踏まえながら、幅広い視野に立った税制全般にわたる改革を、これからの課題として検討する必要があると考えております。」こうお述べになっておりますが、これについてはいかがでしょうか。
○中曽根内閣総理大臣 この点は、かねてから私は日本の税制というものを個人的に検討しておりまして、もうそろそろ四十年もたって、シャウプ以来三十五年ですか、ともかくいろいろなひずみやゆがみやあるいは不合理も出てまいりまして、もうそろそろこれを根本的に、総合的に改革する、それを課題として我々が受け取るときに入ってきた、そう思いましてそのように申した次第でございます。
○堀委員 そこで私は、きょうはまず最初に共済年金の問題を取り上げ、あわせて現在政府の進めておられる年金制度の問題を取り上げ、それとの関連で税制の問題を取り上げるという形で物を進めたいと思うのでありますけれども、要するに一つ一つの個別問題ではなくて、全体に関連のあるもの、包括的なシステムとして実はきょうは私はいろいろと問題提起をさせていただきたい、こういう考えでございますので、財政改革を含めて全体の一つのシステムの流れとして問題を次々と提起をしてまいりますから、どうかそういう御認識でひとつお聞きをいただきたい、こう考えるわけであります。 そこで、最初に国鉄共済年金の、国家公務員等共済年金の問題についてお伺いをいたします。実は今、国鉄問題は国鉄監理委員会でありますか何かで原案が作成中ということに聞いておりますが、私は、きょう国鉄問題を議論する気はないのでありますけれども、この国鉄共済の問題を解決するめどがつかない限り国鉄の再建問題はあり得ない、実はこういう基本的な認識でございます。そのことをこれから少し申し上げて、皆さんもおわかりをいただけると思うのでありますけれども、長期給付財政調整事業運営委員会というのが国家公務員等共済組合の運営の財政調整五カ年計画というのを実は提案をしておるわけでありまして、大蔵大臣は五十九年十月十六日にこの認可申請を受けておられるわけであります。御承知でしょうか、大蔵大臣。
○竹下国務大臣 承知いたしております。
○堀委員 その中でこういうことが言われているのであります。「従って今回策定した計画は、あくまでも昭和六十年度から六十四年度の五年間に限った当面の対応策にならざるを得なかった。仮に六十五年度以降も現行の財政支援体制であるとすれば最早支援は不可能であって、支援体制の拡充、強化が是非とも必要である。」非常に重要なのは「六十五年度以降も現行の財政支援体制であるとすれば最早支援は不可能」であるという断定が実は下されておるわけであります。「国鉄共済組合の昭和六十五年度以降の給付の増加は目を見張るものがあるが、長期的にみた給付と負担の不均衡の拡大は単に国鉄共済組合だけではなく、共済年金制度全体にも共通する問題である。各共済年金制度の健全なる財政運営を図って行くためには、現行の給付水準の抜本的見直しと大幅な保険料の引き上げとは避けて通ることができない状況であるが、自助努力にも限界があり、他方、これを放置しておけば各共済組合とも早晩財政破綻が生じる。従ってこれはただ単に財政上の問題だけではなく共済年金制度の存続にかかわる問題でもあり、ひいては公的年金制度全体に対する国民の信頼を失う恐れがある。」こういうふうに指摘をしているのであります。 そこで、これだけではちょっと皆さんに国鉄年金の問題というのがおわかりにならないだろうと思いますが、この財政調整計画で今出されておりますのは、この前、国家公務員共済組合とそれから電電公社共済組合、専売公社共済組合を統合して国鉄救済のための国家公務員等共済組合というのができました。そうしてこの六十年から六十四年にかけて、ここで述べられておるのは約四百五十億円をみんなが出してひとつ国鉄の共済組合を支援しましょう、こういうことになっているわけですね。それはできる語として認可が申請されておる。ところが、六十五年から先の問題は今私が述べたようなことになっているわけです。 事務当局の答弁でひとつ六十五年以降、国鉄職員が今三十二万人、これは六十五年には大体何人になるのか、そうして七十年には何人になるのかという職員数を下敷きにしながら、六十五年からその他の三共済が支援を必要とする金額というのはどういうふうになるのか、国鉄側から答弁を求めます。
○仁杉説明員 お答えいたします。 六十五年度以降につきましては、大体二十五万五千ぐらいの数字を今考えております。こういうふうに組合員が減少してくるということ、それから追加費用の未払い分を六十四年度までに早く支払いまして国鉄の年金制度を維持したいということでございまして、六十五年以降はこの追加費用がなくなるという、共済組合の方に入る金がなくなるということがございまして、現在細かく試算するわけにもまいりませんが、平均といたしまして七十年度までを試算をいたしますと、一年当たり約三千億程度の不足額が生ずるというふうに計算しております。
○堀委員 大蔵大臣、あなたが国家公務員等共済組合の主務大臣でございますから、同時に大蔵大臣でございますから、昭和六十年度以降、なるほど四百五十億なら三つの共済組合協力できるでしょうけれども、三千億を超えるような膨大な支援を求められては、これはこの答申が言っておるように支援は不可能ですね。大蔵大臣、これはどうして対応されますか。
○竹下国務大臣 これは確かに堀委員御指摘のとおり、年平均四百五十億円程度の財政援助を受けなければ年金給付ができない、しかも人員はこの場合はまだ三十二万体制、こういうことでございます。今も二十五万五千というお話がございました。したがって、そういうことで考えてみますと、このいわゆる共済年金全体について抜本改正を行ったといたしましても、国鉄共済年金の財源不足というものはまさに巨額になることが必至でありますために、六十年度以降については、公的年金一元化の趣旨に従って公的年金全体を通じての負担調整を図るということが必要である。だから、今似た者同士で、電電さんと専売さんと国鉄さんと国家公務員とやりましたが、その中でこれは消化、調整できる問題ではないという事実認識をいたしております。
○堀委員 今皆さんの方の年金改革は、年金の統合一元化というのは七十年をめどにしておるわけですね。ですから統合化は七十年がめどになっている。六十五年からもう実は三千億金が要るのですよ。これはここで書いておる、財政支援がなければと。まさに私はそうだと思うのですね。要するにその三千億のものを、例えば厚生年金に持ち込むにしても厚生年金の人は関係ないのですよ。厚生年金自体もこれから大変なんですよ。だからそういうときにこの今の三千億問題というのは、年金というのはこれは非常に長期の、今後五十年、百年を見渡して考えなければならないような問題の中で、わずか五年したら、もう重大な年金制度の根幹を揺るがせる危機は目の前にある。この認識は、私は、閣僚だけでなく全議員の皆さんが真剣にお考えをいただかなければならぬ問題だ、こう思っているのです。これが一つの問題点ですね。 その次に、それでは今の国民年金、それから厚生年金の問題に移りますが、今実は皆さんの方が提案されて参議院に行っております法案、これがベースにして考えております国民年金その他は、私は、憲法十四条から見てまことに適切でない法案だというふうに感じておるわけであります。 それはどういうことかといいますと、憲法十四条は、皆さん御承知のように、国民はすべて法のもとに平等だ、こういうふうに規定しているわけでありますね。現在、国民年金加入者は実は二千六百八十万人かそこらですね。ほぼ厚生年金の加入者と同じくらいです。大変たくさんの人たちが参加をしているわけです。ところが、今の厚生省が出されておる案は、下に基礎年金というのをつくって、五万円は皆さん平等にやりましょう、そうして厚生年金の方はその上に二階建て年金と言って報酬比例部分を乗せましょう、共済組合も報酬比例部分を二階建てで乗せましょう、国民年金の皆さんは二階建て部分はありませんよ、皆さんは五万円ぽっきりしかないですよ。国民の二千六百万を超える人たちに対して、雇用者は全部二階建て年金で十七万円程度が保障されるだろうという構想になっておるときに、あとの二千六百万人の人は五万円でよろしいよと。これは総理、憲法十四条から見てどうお考えになりますか。
○中曽根内閣総理大臣 基礎年金という構想自体がやはり最低ベースを保障する、そういう思想で基礎という言葉もできているのではないかと思います。それで二階建てというのは、報酬比例部分で本人がかつて納付したそのものに対するリターンとしてそういうふうな制度を考えた、ある意味においては公平性が維持されている、そういうふうに私考えます。
○堀委員 過去についてはそうでしょう。過去は、確かに厚生年金、そして共済年金は報酬比例部分でやっています。厚生年金は定額部分もあるのですから、定額部分と報酬比例制。それから共済年金はほとんど報酬比例制ですけれどもね。じゃ、この国民年金にもどうして報酬比例制というものを早く導入するような問題が提起されていないのでしょうか。まさに憲法十四条に私は違反しておると思うのです。ですから、どうして報酬比例部分が国民年金になくて、国民年金全部定額制なのか。ほかのものには報酬比例部分が主になっている。二千六百万人のこの自営業者の皆さんも、いずれも所得があるのです。収入があるのです。その収入を公正に把握をして報酬比例部分をつくって、雇用者も自営業者も同じにするというのが政治の基本ではないでしょうか。総理、いかがでしょうか。
○中曽根内閣総理大臣 国民年金の性格に関する部分でありますから、政府委員から答弁させます。
○堀委員 政府委員じゃだめだな。厚生大臣、答弁してください。
○増岡国務大臣 御指摘のように、ただいま御審議いただいております改正法案にはそのとおりになっておるわけでございます。しかし、私どもは国民年金にも報酬比例部分を採用すべき時期がいつかは来るであろうという真剣な検討はしてまいらなければならないというふうに思うわけであります。しかしながら、まことに残念でございますけれども国民年金一般はほとんどが低所得者でありまして、したがって、報酬比例に対する掛金を基礎年金に対する掛金にオンさせることができるかどうか、それから所得の把握が正確にできようかどうかという、いわば多種多様な業界に御勤務でありますから、また給料の払い方もいろいろございますので、その点が今日ではまことに残念ながら直ちに踏み切れないという理由になっております。
○堀委員 前段の所得水準が低いという話は、税務統計を見ると所得の高い方もあるのですから、それは直接理由にならないと思うのですけれども、今厚生大臣が触れられたのは、総理、実は厚生省は年金についての保険料の関係のことは自分たちの主体性で処理ができるけれども、その年金に税金を充てるという話になると、これは厚生省では主導的にそういう年金の構想を立てることができないわけです。私は長年財政をやってきておるし、社会保障もやってきておって包括的な立場で物を見ますと、今度私どもの党が決定をしました、要するに基礎年金については国の負担で公平にやろうではないかというこの提案がまさにこの問題の解決のかぎだ、こう考えているわけでございます。 それはなぜかと言えば、要するに年金の問題というのはいろいろな問題がありまして、私は昭和三十三年の五月に国会に当選してまいりまして、その八月に箱根の山で大変私たちの先輩の皆さんと年金の論議をいたしました。 そのときに、もう亡くなられましたけれども八木先生という大変年金を一生懸命やっておられた先生と、二日間にわたって論戦をいたしました。私は当選してまだ三カ月でありましたけれども、日本の将来として、要するに保険料制度、掛金制度という制度を保険に導入するのではなくて、賦課方式でやらなければ日本の年金制度の将来には大変大きな禍根を残す、こういうことでいろいろな問題を例示しながら実は八木議員と論議をいたしました。最終的に、まだ現在議員でおられます多賀谷議員から、堀さん、あなたは医者だから、八木さんは肺が片一方ないのだぞ、肺が両方あるやっと片一方しかないやつがそんなにいつまでもやったら健康に害があるから医者として考えると言われたので、私は論理としては私の主張が正しいと思いましたけれども、先輩に譲って、実は私どもの国民年金も保険方式になったという歴史的な経過があるわけです。に言えば賦課方式なんです。その年度の税金を取って、そうしてそれを年金に持っていくわけですから、最も端的な賦課方式。しかし賦課方式だけですべてをやる気は私はないのでありまして、そういう税と、それから今の保険方式、これを組み合わせて年金の将来を考えるということは大変重要だと考えます。 そこで、さっき総理も、要するに国民の最低を基礎年金は保障するものだ、こうお答えになりましたですね。ナショナルミニマムを保障するのなら、まさにこれは国民全体が負担をして、自分たちもやがて受け取るであろう年金を世代間の関係でみんなで払うという形にするのが賦課方式の導入であるが、同時に年金財政の問題点としては大きく構造が変わる。そうしてもちろんこれからスタートするとすれば、今国民年金は、将来の基礎年金についても五万円の三分の二が実は保険料で、そうしてあとの三分の一が国庫負担です。私どもの提案のように五万円全部国で負担するとすれば、その三分の二部分は二階建て年金として要するに報酬比例部分の処理ができる仕組みになる。これは将来の問題です。 そこで、総理、さっき厚生大臣の答弁にもありましたように、一番肝心なのは、給与所得者の場合には一体幾らの報酬を受け取っておるか非常にわかりやすい。わからないのは今の自営業者の所得なのであります。そこが今秋の非常に重要な問題になっておるトーゴーサン、クロヨン問題というものと実は関連がありますから、私は、総理がおっしゃっておる税の公正、公平、簡素、選択、全く同感であります。どうしてもこうやってもらいたい、こう考えるのであります。そうして、税の公正、公平によって国民の所得が明らかになれば、その方たちから要するに報酬比例部分のようにともかくも所得に応じた保険料をいただいて、そうして二階立て年金をこれからやっていく、そうすれば全国民が魔法十四条の言うようにすべて法のもとに平等になる、これは年金問題の将来を含めて大変重要な問題だ、私はこう考えているわけであります。 私どもの党は、実はこの間の大会で中期経済政策というのを決定をいたしました。そうして、その中期経済政策では「上昇する最大の要因としての所得保障を中心とする福祉費用の政府負担分は、目的を限定して使われる目的税方式への移行を検討する。」ということを私どもの党は大会で決定をいたしておるわけであります。どういう税にするかは別としても、目的税としての社会保障に対する税をつくった方が、これからだんだんふえていく所得保障、年金問題に対しては非常に重要な問題だということで私どもの党はそういう提案をしているのでありますが、今まで私が申し上げたことについて総理のお考えをひとつお聞かせください。
○中曽根内閣総理大臣 基礎年金の基礎という言葉につきまして先ほど私が申し上げましたのは、生活の基礎的部分に対するカバレージである、そういうふうに御了解願いたいと思っております。それで全部カバーしてしまうという意味ではない、基礎的部分に対するカバレージである。 それから、堀さんが前からお唱えになり、また社会党が大会で決めました、基礎年金の部分に当たるいわゆる目的税の構想というものは今後の検討課題であると私は思っております。 ただ、問題は、私はまだ素人でよくわからぬのですが、感じで申し上げますと、今まで国民年金という概念で来て、国民一般の基礎的部分をカバーして割合所得の少ない方々を中心にやってきた部分について、果たして税という名前がなじむかどうか、その問題が私の頭に実は非常に絡まってきておるのです。なるほど福祉目的税あるいは社会保障税、いろいろ名前が出て、考えられると思うのですけれども、ともかく税という名前について日本国民が持っておる印象というものは独特のものがあるわけですね。しかし、その辺を突破しようというお気持ちは非常に勇敢だと思いますし、確かに改革派であると思うのですけれども、その点についてはやはりもう少し検討を要する、私はそういうふうに考えておる次第です。
○堀委員 総理は税を専門にやっていらっしゃらないわけですから、そのお気持ちはよくわかります。しかし、税とは一体何だろうかということですね。総理、一体税というのは、これは何ですか。ちょっとそこから伺いたい。初歩的な質問ですから、初歩的にお答えいただいて結構です。
○中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣が専門家ですから、大蔵大臣から答弁させます。
○堀委員 いや、総理の認識を聞きたいのですから、ちょっと総理。
○竹下国務大臣 私も決して専門家であるわけではございません。税とは、すなわち国民が受益をするための代償として負担すべきものというふうに考えております。 〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
○堀委員 今の大臣のお答えは極めて適切だと思うのであります。 税は、要するに欧州大陸、日本を含めて、封建社会というものを経過したところでは、封建社会の領主たちが国民から収奪をしたところの税なんです。だから、今総理が、税というのはどうも余りいいニュアンスがないとおっしゃるのは、まさにこの欧州型、日本型税というものに対する概念なんですね。 アメリカの税は、総理、ちょっと違うのです。これは私ども西部劇を見てよくわかるのですけれども、あの西へ西へとフロンティアをやっていって、何もなかったところに家を建てて集落ができる。集落ができるとやはりそこの秩序を守らなければいけないから、そこでシェリフというお巡りさんをひとつ雇おうじゃないか。お巡りさんを雇うには、みんなが金を出し合ってこのお巡りさんの給料を負担しようじゃないか。要するにアメリカで税というものができてきた歴史というのは、みんなで自分たちを守るために、税金という名前のものを出して自分たちの秩序を守ろう。だから、今の大蔵大臣が言われたのはまさにそういう概念で言っていられる。 しかしそれは、イギリスを初め欧州——日本もそうですが、言葉の問題で恐縮ですけれども、日本の税金というものは、みんな召し上げるという言葉なんですよ。第一、申告納税制度というのをアメリカから持ってきましたね。これは英語ではセルフアセスメントと言っているのですよ。セルフ、自分がアセスメント、評価をする、そういう制度なんですよ。それが日本へ来ると申告納税制度ということになる。 そこには大分軍隊の経験者がおられるから、軍隊で申告というのはどういうことでしょうか、ちょっと総理、お答え願いたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 自分はこういう者でありますということを表明することだと思います。
○堀委員 下の者が上の者に向かって言うのであって、ただ言うのじゃないですよ。上下の関係が申告というのにははっきりついている。そうでしょうね、総理、ちょっともう一回お答えください。
○中曽根内閣総理大臣 多分そうだろうと思います。
○堀委員 徴収という言葉がありますね、税金を徴収する。徴という字は召し上げるという字なんですよ。収というのは、下の者が上へ向かって納める。ともかく、今の税という字の中には、全部日本の字は上下の関係になっているわけです。アメリカではタックスペイヤー、こうなっているわけですよ。税金を払う者、受け取る者、まさに民主主義の原則、対等になっているわけですね。だから、そこを総理は、日本の税制はあなたもやはり召し上げる方の概念があるから、さつきのように、年金に対する原資を税で取るというのはどうも抵抗がある、それはそうでしょう。やはり中曽根さんも、どうも召し上げる考え方で来ておられるのではないかと心配するのですが、そこは総理、どうですか。
○中曽根内閣総理大臣 私がそうだと言うのではなくて、日本の体質がそうなっているから、その日本の体質になじむかどうか、そういうことを憂えているわけです。
○堀委員 実は、税というものは何が一番大事か。税は、何の目的にそのお金が使われるかということが一番大事なんですよ。金を集めて何かに使うからおまえたち出せと言われたって、そうはいかぬぞと国民は思いますよ。ところが、自分たちの老後のために役立てるために、みんなひとつ負担してくれないかという話なら、ああそうか。このお金はともかくGNP一%突破のためには使いませんよ、こういうふうな条件がびしゃっとついているわけですね、社会保障目的税というのなら。心配ないんだ。そうして、この目的税を基礎年金に全部入れますよ、そうなると、ともかく今の国民年金の自営業者の二千六百万人の方も、雇用者の厚生年金の人も、あるいは共済年金の人も皆公平、平等にすべての国民が必ずある一定年齢、六十歳なら六十歳から年金を受けられるようになるのですから、みんなで払おうという認識が出てくるのは当たり前で、税であろうと何であろうと、そこに使うという目的によって区別しなければ問題がある、私はこう思っているわけですね。 そこで、その財源にどういう税を充てなければいかぬか、こういうことになるのですが、総理もどうやら直間比率の見直しということをおっしゃっているようでありますね。ちょっとお答えいただきたいのですが。
○中曽根内閣総理大臣 私はストレートにはそういうことを言ってないのです。税制全体の総合的見直し、そう申し上げているのであって、直間比率の見直しというのは臨調答申の中にありました。しかし臨調答申を尊重するということは言っておるわけですから、間接的にはそういうことになると思います。
○堀委員 実は政府の税制調査会もこういうふうに言っておるのですね。 したがって、既存税制の部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期にきていると考える。 昭和六十年度の税制改正に関する答申に当たって、極めて異例ではあるが、当調査会としては、以上のことを指摘し、更に、この問題については、国民に十分な理解と協力を求める努力を尽すことが是非必要であることを付言しておきたい。政府の税制調査会はこういうふうに言っているのですね。私も確かに、シャウプ勧告以来ちょうど三十五年、何としても税制の改正をしなければいかぬと思っています。 そこで、税制の改正でありますけれども、入り口は、私はやはり所得税の問題だと思うのです。事務当局でいいですから、今度アメリカの財務省がレーガン大統領にプロポーザルで出したいわゆるシンプル税制のポイントだけを簡単にひとつ答えてください。
○梅澤政府委員 公表されました報告書をごくかいつまんで申し上げますと、連邦税収の八割以上を占めております所得税制と法人税制を基本的に見直すということでございます。所得税制、法人税制を通じて改革の一つの主眼になっておりますのは、税の公平という観点から課税ベースの侵食をなるべく縮小するということで、租税特別措置等の各種の措置を整理いたしまして課税ベースを広げる。所得税につきましては、累進構造の緩和というよりもむしろフラット税率の修正というふうに言っておりますけれども、その意味ではかなり大胆な税率構造の提案になっておると思います。法人税につきましては、ただいま申し上げましたように、投資税額控除とかACRSというような措置を一切廃止いたしまして、そのかわりに単一の税率で簡明な税率構造にするという提案になっております。
○堀委員 私は昨年の十一月中旬にアメリカへ参りまして、レーガン大統領再選後におけるアメリカの財政、経済の運営について、二週間ばかりワシントン、ニューヨークで調査をしてまいりました。そうして、実はこの税制について、私は財務省の人にフラット税制ですねと言ったら、シンプル税制と言ってください、こう言っていました。まさにそれはシンプルの方に比重がかかっているのかもわかりません。 そこで、ちょっと事務当局に聞きますけれども、過去五年間に毎年幾らぐらいいわゆる自然増収という名の増収があったのか、ちょっと事務当局で答えてください。
○梅澤政府委員 自然増収と申します場合、いろいろなとらえ方があるわけでございますけれども、通常前年の対当初予算に対しまして税制改正のない場合の税収の実勢の伸びということで申し上げますと、過去五年、五十六年度が四。兆四千九百億円、五十七年度が四兆三百二十億円、五十八年度、これは前年度の対当初予算が大幅に減額になりましたので、実質四兆三千億円の減収という表現になります。五十九年度は二兆二千百六十億円、六十年度、現在御審議賜っております予算では三兆七千七百六十億円でございます。
○堀委員 実はこの間新聞を見ておりましたところが、ともかくもことしは減税がない。減税がないと、五%ベースアップが行われるとすると実は増税になるんですね。その新聞の計算によりますと、三百万円のところでは、年収三百万円に五%ふえると三百十五万円の所得になりますね。そうすると、結果として税金の合計が七万三百二十円から八万七千百円になる、こういうことでありまして、それが差し引きしますと一万六千七百八十円で、七万円に対して二三・九%、要するに名目所得が五%伸びただけで実はこれだけ負担がふえるのです。五百万円の所得の人のところではその差が四万九千八百二十円で、税金の伸び率は一三・六%になる、こういうことになっているんですね。 ちょっと事務当局に最近の、ともかく給与所得者を例にした方が簡単でしょうから、給与所得者の所得階層別納税者数、階級別納税者数を、昭和五十八年で結構ですから答えてください。
○梅澤政府委員 年収の区分を七段階に分けることにいたしまして、これは五十八年度の実績の計数でございますが、百万円以下のところが七十八万人、それから百万円から二百万円のところが七百八十九万人、二百万から三百万のところが九百五万人、三百万から五百万のところが一千二百二十四万人、それから五百万から一千万のところが五百八十七万人、一千万を超えるところで四十四万人ということでございます。
○堀委員 総理、今お聞きになったように、今や日本の給与所得の大半は、今局長が言いましたように、三百万円から二百万円の間が九百五万人、それから五百万円から三百万円の間が一千二百二十四万人、ここへ大量に集中しているわけですね。それで今私は三百万円のところと五百万円のところをちょっと申し上げたのですけれども、いわゆる自然増収という名によるところの増税が行われておるというのが現実の姿です。 私は、昭和五十六年の二月に、当予算委員会の集中審議で鈴木総理との論議をさせていただきました。そのときに、ともかくも公平の概念というのはそのときの客観的な条件で変わっていいはずだ。日本の最高税率の七五%、当時一〇%からで十九段階があったのですね。これをひとつもっと下げろ、当時私は六五%まで下げるという提案をしているわけです。なぜかというと、一〇%から高い税率に行くとカーブが立つわけですね。このカーブをできるだけ緩くすれば今のような、要するに名目所得がふえて、階段が多いからすぐ次の階段のところの税率に移行するということがなくなってくる、階段の幅を長くすべきだということを提案しました。そこで十五段階、七〇%最高税率に実は改正されている事実がある。 さっき主税局長がアメリカの税法を説明したように、アメリカの税法は今度は三段階。一五%、二五%、三五%、三段階です。アメリカもこれまで十五段階なんです。これをひとつ三段階にしよう。しかし、日本の場合には三段階ではやや逆進性が生まれるのではないか、もう少し段階があった方がいい、五段階にしたらどうかというのが今の私の考えです。 一〇%、二〇%、三〇%、四〇%、最高税率五〇%。税の公平の概念からいうと、たくさん所得のある人間の税金を安くするのはどうも不公平だ、こういう気持ちがあるかもしれません。しかし、実際は今のともかく最も主力をなしておる給与所得者、勤労者のそういういわれなき税の増額を避けるためには、上を下げなければこの人たちに対して適切な処置がとれないわけです。上の方の話はまず横に一応置いておいて、最高税率五〇%にしてこういう段階の処理をしていく。十五を五つにするのですから、階段の幅がうんと長くなる、三倍ぐらいになっていいわけですから、ちょっとぐらい名目所得が上がったからといって税率は上がらない。この人たちは大きな負担の増加から免れることになる、こう考えておるわけです。 これはまさに総理の言われる簡素ですね。公正、公平、簡素。簡素な税制、これは私、所得税を受けておる者は反対はないと思うんですよ。簡素な税制にしてそういう負担が免れるということは反対ない。こういうものをやるについては、減税をやることになるのですから、税のそういう見直しをやれば、要するに財源が必要になる。所得税を公正、公平なものにするために、私は、今税制調査会が言っておる全体として物を考えるという必要がここで出てくるんじゃないだろうか、こう考えるわけですね。 我が党も、この間、田邊書記長が、我が党は大型間接税による増税は反対だ、こういうふうに当然言っておられます。私も、大型間接税による増税反対なんです。しかし、増税ではなくて税の公正に役立つようなものが仮にあるとすれば、私は国民全体にとって税の公正に役立つものは大変重要なものではないか、こう思うんですね。 事務当局、ひとつ今言われているいろいろな間接税の問題の中に、税の公正化に役立つ税制があるかどうか、答えてください。
○梅澤政府委員 税の公平とか公正という観点からどういう税体系、税目がいいかというのは、学者の間でもいろいろな意見があるわけでございまして、その中で、公正あるいは公平という観点から消費課税が望ましいとする学者もかなりいるわけでございますけれども、ただ、いろいろな議論を見てみますと、その論拠もさまざまでございます。ただ共通して言えることは、なるべく課税ベースが広い方がいいという点では共通したものがあると思いますけれども、ただ、いろいろな類型ということになりますと、学説上もそれから各国の制度上もいろいろございます。最近では直接税タイプのものがいいという議論もございますし、間接税タイプについてもいろいろな類型があるわけでございますけれども、結局のところ、税制の理論的な立場ということになりますと、各国の社会経済構造とか財政構造とか、それから具体的な税制の中で、公平の観点からどういう税目がいいのか、そういうことで幾つかの類型についていろいろな選択があり得るということでございまして、これはあくまで学者を中心にした意見の御紹介ということでお答え申し上げました。
○堀委員 全然答弁になっていないな。皆さん、今のをお聞きになって、あれが答弁になっていると思いますか。私は、今の間接税の中に税の公正のために役立つ税制があるかと聞いている。なければないと答えればいい。それを、何だかわかったような、わけのわからぬようなことばかり言って、予算委員会におけるこの答弁で、ともかく質問者は私です。ともかくあなたよりは実は長く税をやっているんですよ。あなたは主計局におられた時期もあるけれども、私は、ともかく大蔵委員会に昭和三十五年に行ってからもうずっと税金をやっているのだから、ひとつもう少し率直に答えてください。小泉さん、そう思うだろう。——ほらごらんなさい。小泉さんもベテランだからよくわかる。 なければなくていいですよ、あるならあるとまず先に。いや、説明は要らないんです、あるかないかを聞いているんだから。
○梅澤政府委員 ただちょっと前提だけ申し上げたいと思うのでございますが、公正というのはやはり公平よりやや広い概念だろうと思います。通常、公正という場合には、所得の捕捉が適正に行われている、そういう執行が適正に行われているかという問題とか、あるいは経済の各取引のうち一つの局面だけに税制が干渉的に働くという税制は望ましくないという意味での中立性といったような問題、そういったかなり広い概念でございますし、究極的には各国とも、何が公正かというのは国民の選択の話でございますから。 ただ、ただいま申し上げました公平も含むところの公正という観点から、学者の理論としてこの税目が望ましいという議論が展開されている税の類型はございます。
○堀委員 それはどういう税ですか。あると言った以上は答えてください、学者の意見でいいから。 〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
○梅澤政府委員 これも冒頭に申し上げましたように、税というのはあくまで、税体系という言葉もございますように、いろいろな税の組み合わせで全体としての税の公平とか公正という問題が議論されるわけでございますから、一つの税目をとりまして、この税目は公正である、あるいは公正でないという議論は必ずしもなじまないだろうと思うわけでございます。 ただ、例えば課税ベースが広いということが、課税ペースの狭い消費税よりも、消費が多様化し、あるいは消費の塊が大きくなった場合には負担として公平に働く。その場合にいろいろな類型の税目があるわけでございますけれども、この税目が一番公正であるというふうに言うのは余り科学的でもなかろう。ただ、それぞれの税目につきまして、公正という観点からメリットニアメリットの議論は多々ございます。
○堀委員 まあ答えたくないようだからこれ以上あれしませんけれども、きょう私、朝、日本経済新聞を読んでおりましたら、税制調査会長の小倉さんが実はその問題に触れて、一般的に言えばEC型付加価値税が一番望ましいと、そう言っておられるわけですね。 総理、いろいろな社会科学に属する問題は、実は実験できないんですよね。私は出身が医者ですから、自然科学は実験ができるわけですね。実験をしてこれがどうなるかと物を確かめられるけれども、社会科学、政策なんかもそうですが、実験ができない。そうすると、どういう手段で問題を考えたらいいかというと、我々と同じような生活水準で、同じような民主的な国家において行われておる制度なら、それは一つの実験済みのことですから。 私は、実は鈴木総理にかつて公職選挙の特別委員会にお越しをいただいて、今の政治倫理の問題を含めて、この前も選挙法のときに言いましたけれども、最大の日本の選挙制度のマイナス部分は個人本位の選挙制度だ、これを政党本位の選挙制度に改めなければいかぬというのが私の信念なのです。実はかつて自由民主党が提案をされた全国区比例代表拘束名簿式というのは、私が昭和五十年に政審会長のときに出した私の案なのです。この案を、当時の自由民主党の竹下選挙調査会長が、堀さん、あなたの案だけれども、今度自民党で出したいけれどもどうかと言われるから、結構ですなあと。大体自民党というのは、我々の案を次々と持っていってやっているから、今日こううまく行っているんですけれどもね。そういうような歴史的な経過もあるわけなんですね。 私は、本来、実は参議院にそれをやる前に、衆議院を西ドイツ式の比例代表小選挙区制、これは比例代表なのですけれども、日本の拘束名簿と違って、選挙民が名簿を変更させることができる。小選挙区で当選した者は、名簿の順位いかんにかかわらず当選する、実はこういう制度なんですよ。だから選挙民が名簿の順位に介入するが、その総枠は比例代表で決まるという大変すばらしい選挙制度なのです、西ドイツの選挙制度は。だから、鈴木総理、それをひとつ導入する気はありませんか。急がないから、どこかで決めて十年先でやりましょうということにすれば、まあ十年先になりますと、ここにずっとたくさんおられる中で三分の一ぐらいいなくなりますからね。新しい人も出てくるしするからまた考え方も変わるだろう、私らも十年先にはいませんから、そういうことで提案したのですが、今日そうなっていない。そうでなくて全国区の方が先に打っちゃったということですね。 ですから、そういう意味で私は、今の税制調査会長のお話はそれなりの提案だな、実はこう聞いておるわけなんですね。総理はどんな感じで今のお話を聞かれましたか。
○中曽根内閣総理大臣 私は、シャウプ税制以来のやや煩瑣になった、ひずみのできた、これをねじり戻して、そして簡素なすらっとしたものにしたい、言いかえればシンプルという言葉に近い、そして公平なものにしたい、そういうことをかねがね念願しておりまして、もうそろそろ課題として出していい時期だな、そう思いまして、総合的、総括的な検討課題として今度の国会で申し上げているわけなのです。 しかし、それを言いました一つの背景には、リーガン・プロポーザルというものがあるわけです。去年の秋からリーガンがそれを研究しているということは聞いておりまして、それで、それが表に正式に出たものを見まして、これは一つのアイデアだな、この税制がアメリカの議会でどういう扱いを受けるであろうか。あるいは、あれを見ますと所得税はなるほど減税になって、八%ぐらい減税になりますが、法人税は二〇%前後強くなる。法人税の場合は、特にいろいろな留保や何かを取っ払ってしまうものですから、そういう意味では企業家がどういう反応を示すだろう。そういう意味で、しかし所得税を一五、二五、三五にしたのはなかなかの英断だな。ちょうど今あなたのおっしゃった日本の刻みの曲線のカーブのぐあいを見ておりましたから、私は非常におもしろいところだなと。それから、法人税も一遍に五〇%を三三%に減らしてしまうというのは大勇断ですね。 だけれども、また片一方ではいろいろなものを取っ払ってしまうから、かえって負担が重くなってくる。あるいは投資を助長するということがやみはしないか、景気に影響しはしないかとか、いろいろな問題がこれはあるのです。しかし、そういう問題をあえて出したというところにアメリカらしい勇敢なところがあると思って、これがアメリカ国民にどういう反応を呼ぶか、アメリカの国会でどういう扱いを受けるか、相当むしり取られてあるいはポシャれるかもしれぬ、そういう様子もよく勉強する必要がある、そう見ておるというのが今私の心境です。 しかし、簡素、大体自分で所得税を申告するときには、税理士の助けを必要としないような程度のものにしたいですね。そういう簡素化というものと、それから中央と地方の関係ももう少し簡素化できないものだろうかというような問題について、課題として勉強していきたい、そう思っておるわけです。
○堀委員 実は今の問題はどうも事務当局も答えたがらぬので、それ以上追及しませんが、しかし、簡素な税制をやるためには、金は天から降ってくるわけじゃないのですから、やはりまたそれをどこかからお金を集めてこなければ簡素な税制はできない。それが一つ。 もう一つは、さっき私が年金で問題を提起しておる問題の流れですね。要するに、国民全体で負担をして年金を払いましょう、もらいましょう、こういう話、これを総括的に実はシステムとして構築をするということがこれからの財政改革の主要なテーマだろう、同時に年金改革の主要なテーマになるのじゃないだろうか。 さっき主税局長が言いましたように、これからは、実は物からサービスへ、ハードからソフトへの時代になってくるわけですね。そうしますと、彼がいみじくも言いましたように、課税範囲の広いものを税の対象にすべきだということは、それだけ課税範囲が広がれば税率を低くできるわけですから、合理性があるわけですね。そうなると、課税範囲を物だけに限らないでサービスも課税範囲に入るようなシステムを考えるということは、私は極めて合理性のある問題だと思うのですね。 そして、低率の税制でスタートすればいいのです。初めからお金をもらうためじゃないんですから、要するに、年金改革その他をやるために、今の私が言う、今は三分の一が国の負担で三分の二が保険料というのを、徐々に国の負担をふやして、その余ってきた分を二階建ての部分にやっていこうということですから、年金なんというものは急激に変えることはできないのですから、時間をかけてそうやっていく。こういうためにはそんなに急に財源が要るわけではないから、そういうきめの細かい調整ができるようなシステムの必要があるということもまた避けられない。 そうして同時に、今の年金で自分たちが払って自分たちが受け取るのですから、幅の広い人たちが納める税にしなければいけませんが、同時に、さっき厚生大臣が言われたように、所得が確実に把握されるようなシステムというものも検討上の非常に重要な課題になるわけですね。 ですから、きょうはもうここまでにしておきますが、そういう非常に包括的な立場で、国民の将来の年金の安定した生活を保障できるような、今の私どもの党が提案しておる社会保障目的税というのは、私はここにいらっしゃる自民党の方を含めて検討の対象になることではないのか、こういうふうに考えておりますので、ひとつそれをお願いをしたいと思っております。 ちょっとここで、実は私の方から資料を見て申し上げますと、日本も随分変わってきまして、シャウプ勧告が行われた昭和二十五年には、給与所得者の所得者数というのは千二百六十五万人です。それが五十八作には四千二百八万人に実はふえてきたわけであります。そして、納税者数が当時九百九十四万人、七八・五%であったのが、その後三十年、三十五年になりますと、納税者比率はがたっと下がりまして、四八、四九・四となるのですが、その後だんだんと上がって、五十八年には八六・一%の人が給与所得者は所得税を払っている。 ところが農業所得者は、昭和二十五年には所得者数は四百八十四万、納税者数は百八十四万で三八%。これはまさに高度成長の前でありますからこういう状態だったんですが、それが昭和五十八年には、所得者数が二十五年の二七%に減りまして、そして二〇・三%の二十七万人が納税者ということになる。 農業以外の事業所得者というのは、二十五年に四百万ありましたのが、現在一・七六倍で七百七万人。そしてここは、一時は二〇%、二五%という納税者比率だったのですが、五十八年には四〇%程度。それにしても給与所得者の半分以下ですね。 ですから、トーゴーサン、クロヨンというのは挙証できないけれども、これから見て、私はやはりトーゴーサン、クロヨンというものをどうしても是正する必要がある、そういうことを是正するのに足る公正、公平を担保できる税制というものをみんなでひとつ検討したらどうだろうか、こんなふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。
○中曽根内閣総理大臣 今までお聞きしましたところ、堀さんの非常に大胆な勇気のある御提言をお聞きいたしまして、我々も課題としてひとつ検討の対象にとらえなければいかぬ、そういう気がいたします。 ただ、先ほど来申し上げましたようなポイントについて日本の体質になじむかどうかとか、あるいはEC型付加価値税というものが、これも同じように受ける対象の人たちから見てどういうような反応を及ぼすであろうかとか、そういうこれから究明すべき幾多の問題があると私は思うのです。しかし、今のように社会保険にかえるにそういう目的税というやり方をとっていくということも、あるいは長期遠大な考え方からすれば検討に値する考えだと後がる思われるようになるかもしれませんね。その辺は、我々の方も謙虚によく今の御提言を研究していくべきである、そう思います。 ただ、先ほど来申し上げるように、何か日本的体質から見ますと消化不十分で残るものがある。しかし、あのリーガン財務長官のプロポーザルというものはかなり思い切ったものであって、相当これは我々の方の検討すべきポイントもあるなというふうな気がいたしておる次第です。
○堀委員 私は、最初に総理に、大胆な改革をやるとおっしゃって本気だとおっしゃっているから、ついそれにつられてこっちもちょっと大胆な改革を提案しているのですから、そこはひとつ共同の責任において、国民全体のためなんですから、真剣に考えるということでお願いをいたしたいと思います。 そこで、次の問題は財政改革の問題であります。実は、戦争が終わりまして、日本ではあの戦争中に臨時軍事費というものがどんどん使われて、その財源を国債で調達をした、その国債を全部日本銀行が引き受けて、ある意味では不換紙幣を発行したような通貨インフレを起こした、それが戦後の大変なインフレを起こしたという苦い経験があったものですから、我々の先輩はこういうことが二度と起きてはならないということで今日の財政法ができたと思います。立派な財政に関する基本法なんです。ただしかし、その戦後のときと、それから今四十年たった今日とを比べてみますと、ともかくこれはもうすべての人が感じるわけですが、経済的にもいろんな諸条件がすっかり変わってきておるということはこれは皆が認識できることだと思います。おまけに戦後のときにあのインフレーションですから、戦前に出した国債というものはもう処理ができたと同じことになったわけですね。そういう国債がなかったときの財政に対する考え方、この年度末真二十三兆円、実は国債残高ができますね、この百三十三兆の国債を抱えておる財政とを同じことで考えでいいのかどうか。私は、やはりこれはひとつ少し新しい問題を考えなきゃいけないのじゃないか、こういう感じがするのです。 事務当局に答弁を求めますが、昭和五十年から五十九年までの間で、シンジケート団引き受けの十年利付債の、月別の必要はないですから、クォータ別でもいいけれども、金利ですね、要するに国債の利回りはどんな姿になっておるのかをちょっと事務当局から答弁してください。理財局長でしょうな。
○宮本政府委員 五十年度から申し上げますと、五十年度につきましては最初のころが八・四一四でございます。それから八月から十月までが八・三二〇、それから十一月からずっと一定しておりまして五十二年の四月までが八・二二七、それから五十二年の五月から六月までが七・四八七、七月が七・二八六、五十二年八月から九月が六・九八四、さらに五十二作の十月から翌年の三月までが六・六八三、五十三年の四月から翌年の二月までが六・一八〇、それから五十四年の三月が六・五八二、五十四年度に入りまして四月から七月までが七・二八六、それから五十四年の八月から翌年二月までが七・七八八、さらに五十五年の三月から八・〇九〇、さらに五十五年の四月から六月まで八・八八八、さらに七月から十一月まで八・五四六、さらに五十五年十二月から五十六年の四月までが八・二二七、五十六年五月が七・八六八、六月が七・九五九、五十六年九月から十二月までが八・三六七、五十七年の一月から三月までが八・〇一五、さらに四月から六月までが七・八一一、五十七年八月から十一月までが八・二七四、十二月が七・九六九、五十八年一月が七・七六六、さらに三月から五十八年八月までが七・八五七、さらに五十八年九月が七・九九四、十月七・九〇二、十一月、十二月が七・六九八、五十九年一月、二月が七・五六三、同三月が七・四七四、五十九年四、五月が七・三四六、八月が七・六九八、九月七・五三八、十月七・四四八、十一月七・〇五五、十二月が六・九六九でことしの一、二月が六・六六六でございます。
○堀委員 実は今理財局長が答弁をされましたのは、今の金利なんですが、お聞きになったように高いところは八・八ぐらいのところがある。低いところは一番低いのが六・一八かな、そのくらいあるんですね。金利に大体二%以上の差があるのです。そうすると、現在の財政法というのは大量の国債などを発行することは全然頭に置いてないのです、均衡財政論ですから。均衡財政で国債は四条国債以外は発行してはならないという厳しい財政法になっていますからね。そこで、国債の機動的な発行なんというようなことは全然頭にない。発行しちゃいかぬというのが原則ですからね。ところが、今や大量の国債発行をやっていて、金利の高いときは八・八、低いときは六・一と二・五%以上も差ができてくる。 これが会社だったらどうするかといいましたら、ともかく債券を発行するときに、金利が高ければ一年とか二年とかの短期のものを発行して泳ぐわけですよ。要するに、長期のものは金利が高くなるけれども、短期のものは金利が安いですからね。短期の安い金利で泳いでいて、そうして金利が下がってきたところで長期債にはっと乗りかえる。なぜ長期金利が下がってくるかというと、資金需要がないからそこで下がるわけですから、そのときに国債をだあっと出せばそれは結構売れるわけですから、安い金利で国債が販売できる。ところが、今の財政法に基づいて全然今の国債発行というものには弾力性がないのです。弾力性がないだけではなくて、予算総則にちゃんと何年債を幾ら、何年債幾らとこう書いてある。そうすると、国債をやっている諸君というのはこれは者ともかく玄人のディーラーですからね。ともかくも、ああ、ここはこうなる、大体ここでこれが出てきてこうなるなというのはわかるわけですから、そこで対応ができて、言うなれば国は足元を見られていて国債の売買に応じなければならぬというのが今の現状なんですね。 だから、五兆や十兆の残高のうちならそれはそれでも大したことはないですよ。百三十三兆、今私が言ったように二%安くできたらまさに二兆六千六百億円一年に国債の利払いが減るわけですから、どうしてもこういう大量な国債残高があり、これからもしばらくは出さなければならぬという状態ならば、ここで要するに国債発行の弾力化ということを考えるのは日本財政にとって非常に重要な問題提起だ、私はこう考えているわけです。 昭和五十六年の二月に、私は当時の渡辺大蔵大臣に、これから借りかえ問題その他重要な問題があるから、ひとつ今の国債整理基金特別会計を国債特別会計ということに改めて、国債の発行、償還、借りかえ、全部ここで一元的にやらせろ、そうして国債特別会計が一般会計が必要とする資金をそれだけ一般会計に繰り入れればよろしい。この国債特別会計は完全にともかく市中の金融機関に対応できるように、国の経済にとって最もプラスなときにどういう国債を発行して国の財政負担を軽くするかということのために真剣にやらせればいいじゃないか、こういう提案を五十六年二月に、私は渡辺大蔵大臣にしているわけですね。大蔵省の皆さんも、少しでも国債費が減るというのは大変いいことですから、いろいろと努力をしてもらっているようでありますけれども、やはりこの基本法の中にいろいろと難しい問題もあるわけです。ですから、財政改革と言うのなら、やはりいかにして国の負担を少なくするかという財政改革というのが私は大変重要な財政改革の一つだ、こう思うのですね。そういうものを少し検討しなきゃいかぬ、こう思うのです。 もう一つ、理財局長に答弁をいただきたいのですが、さっきのお話で、クーポンレートでいくと今国債六・五%ですね。資金運用部の預貸率は幾らですか。
○宮本政府委員 今七・一%でございます。
○堀委員 今やこれは逆ざやになっているんですね。六・五%の国債を片方で発行していて、七・一%の金利を払っている。私はこの間大蔵省の若い人と雑談しているときに、先生、この間ちょっと冷やかされましてね、銀行の方から私どももちょっとこの際ひとつ資金運用部に預託させてもらえませんでしょうか、これにはちょっと困りましたという話がありました。私もまさにちょっと大蔵省の痛いところをつかれていると思います。これはなぜこういうことが起こってくるかというと、私が昭和三十八年以来大蔵委員会で延々と金利自由化問題というのを主張してきてようやく、これは実は二十何年かかっているんですよね、金利自由化問題とかやってきたわけです。それで、その金利が自由化してくればこういう現象はしょっちゅう起こってくるわけです。なぜかというと、要するに資金運用部の資金というのは、そのもとが要するに厚生年金であり、国民年金であり、それから郵便貯金であり、簡易保険でありということになっていて、これは大体自由に動かないものですわね、みんな決まった問題ですからね。だから、これは私は今後財政投融資の問題というのも大変難しいいろんな問題が将来生じてくるであろう、こう考えておるわけですね。ですから、そういう問題、金利の自由化、弾力化という情勢の中で新しい問題に対応してくるときに、例えば資金運用部のあり方もかなり変わっていかなければいけないんじゃないだろうか。さっき厚生大臣が言っておられたように、厚生年金、国民年金、みんな資金運用部に預けてあるわけですね。 私は、この間急に亡くなりまして本当に残念だと思っているのは、大蔵省証券局長の佐藤徹君のことでありますけれども、実はずっと見ておりますと、大蔵省という役所はどういうわけか銀行局長は最低二年必ず在職するのです。最近ずっと証券局長は一年しかいないのですよ。一年したらすぐかわる、次々に。 これはちょっと大臣に答えてもらおうかな。これまで佐藤さんの前に二年いた証券局長というのはだれぐらいですかね。ちょっとそこら知恵を授けなければ竹下さんも答えられぬかもしれぬよ。
○吉野政府委員 正確に記憶をいたしておりませんが、吉本証券局長が二年証券局長をしておられたように記憶をしておりますが、あるいは間違っておるかもしれません。
○竹下国務大臣 証券と銀行の垣根問題がありましたので、それで米里、吉本、これを二年やらしております。それから後はなくて、それで佐藤君を二年目にして失った、こういうことでございます。
○堀委員 これは大臣の方がはるかに正確です。 そこで、実はこれは局長が一年では法律案を整備して国会に出すということはできないのです。私は実は最近の国際的な金融情勢の中で、投資顧問法という法律を整備しなければいかぬというのをかねてから考えておったわけです。そうしたら投資ジャーナルとかいろんなものが、付録が出てきたわけですけれども、これは別の話でして、要するにアメリカも非常にこの問題は関心があるわけです。投資顧問業というのは関心がある。日本もこれから年金がどんどん、今のは公的年金ですけれども、私的年金に相当企業年金もあるわけですから、これの運用についてひとつアメリカも参加したい、こういう情勢があるわけですから、アメリカにはSECにちゃんと法律がありますけれども、日本にはそれがない。ですから、ぜひそれをやってもらいたいと思うけれども、一年ではそういう法律をやってもらうわけにはいかないのです。たまたま佐藤さんが二年やるということになったからすぐ彼に、ぜひひとつ投資顧問法を法制化するために努力してくれよという話をしました。彼は、わかりました、やりますと言って、一生懸命やってくれていて、今証券取引審議会の課題になるところまで来たわけですね。 さらに、私が昭和三十五年に大蔵委員会に来て最初に証券取引所に行きましたときに、ともかく株券がどんどんふえてきて、この株券の処理が大変です、振替決済というシステムがフランスや何かにあります、フランスではシコバンと言うのですけれども、何とか日本もそういうふうにしてほしいという話がありまして、私もなるほどなと思っていたんですが、なかなかうまくいかなかったが、とうとう佐藤さんのときに、二十五年ぶりに振替決済制度という制度もできたし、それから債券先物取引という問題も、ことしの国会に証取法の改正を実は提案をしておられるわけなんですね。 こういうふうに彼が非常に熱心にやってくれておったわけですが、なぜ私が投資顧問法ということに関心があるかと言えば、これからの私的年金をできるだけ高い金利で運用できるものに、競争原理の中で運用させることが私は年金受益者にとって非常に大きな課題だ、こう考えるわけでして、そうすると資金運用部もただあぐらをかいてともかくもやっていてもらったんでは、厚生年金、国民年金の受益者にとっては、これは幾ら何でも、安全かもしれないけれども、金利が安いだけじゃ困るな、こういうことになってくるわけでありますから、やはり財政投融資全般を見直して、要するにある意味でのデレギュレーションですね、要するにそれをやって、ひとつ国民のために有利な運用ができるようにする道を開くべきではないのか、こう考えるものでありますから、そういう意味では財政投融資の問題も財政改革の非常に大きな今日的課題ではないのか、こう考えるわけでありますね。 そこで、そういうような一連の問題の次に、実は非常に重要な問題であります人事院勧告の問題をひとつ取り上げたいと思うのであります。人事院総裁、御出席いただいていますね。
○天野委員長 出席しています。
○堀委員 ひとつ最近皆さん方が人事院勧告をされて、その勧告がどういう措置がとられたのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
○内海政府委員 お答えをいたします。 御承知のように、人事院勧告につきましては、昭和五十四年に指定職の部分が若干の抑制を受けました。その翌年も指定職並びに管理職等が受けました。さらに五十六年、それから五十七年、五十八年、五十九年まで、それぞれ…(堀委員「ちょっとそれを具体的に言ってください、毎年。五十六年はどう、五十七年はどう、五十八年はどう、五十九年はどう」と呼ぶ)五十六年は同様に、これは五十九、五十八、五十七ですから、逆向きに申し上げて失礼ですが、五十九年が、昨年でございますが、これがやはり勧告に対して抑制を受けました。(堀委員「いや、総裁、勧告に抑制じゃ全然わかんないですよ、毎年勧告は抑制されているから。金額で何%、幾らを勧告して何%、幾らが実施されたかというのをちょっと」と呼ぶ)ちょっと今資料をここに持っておりませんから、資料に基づいて説明させますが、よろしゅうございますか。(堀委員「私、資料要求していたらそのぐらいはちゃんと事務当局が総裁なんかにどんどん渡しておかなければだめだよ」と呼ぶ)大変申しわけありません。五十四年が、勧告が三・七〇%でございます。金額で七千三百七十三円、これは実施は、そのとおりに実施されましたが、指定職につきまして半年おくれる。それから、五十五年が四・六一%で、九千六百二十一円を勧告いたしまして、同様、そのとおりの実施になっておりますが、五十四年同様、指定職については半年おくれ。五十六年につきましては五・二三%、一万一千五百二十八円、これもそのとおりの実施にはなっておりますが、管理職等の調整手当が一年おくれ、さらに、期末あるいは勤勉手当等が旧ベースで支給される。それから、これは御存じのように、五十七年は四・五八%、一万七百十五円を勧告いたしておりますが、これは全面凍結。五十八年は六・四七%、一万五千二百三十円で、これは二・〇三%の実施。それから昨年でございますが、六・四四%、一万五千五百四十一円に対しまして、三・三七%の実施でございます。
○堀委員 そこで、こうやって随分削られているわけですが、この削られた内容についてちょっとお答えをいただきたいと思います。局長クラス、課長クラスそれから課長補佐クラスというようなことで毎年削られておる額がありますね。これをひとつ総裁の方でお答えをいただきたい。
○鹿兒島政府委員 お答えいたします。 一定のモデルに基づきまして試算をした概算でございますが、まず局長につきましては五十四年が十八万三千円、以下、五十五年以降についてずっと申し上げますが、二十四万一千円、七十四万円、六十一万八千円、五十四万五千円、三十八万二千円、合計二百七十万九千円ということでございます。 次に、課長クラス、これは行政職(一)表一等級六号俸ということを前提にいたしまして、妻のほか子供が二人あるという前提でございますが、五十六年が四十五万三千円、三十九万四千円、三十九万円、二十七万四千円、合計百五十一万一千円でございます。 次に…(堀委員「次、少し飛ばして下の方へ行きましょう、係長クラスに」と呼ぶ)次に、係長クラス、これは行政職(一)表五等級七号俸でございますが、妻のほか子供が二人いるという前提でございますが、五十六年が八万九千円、五十七年十九万七千円、以下十九万一千円、十三万三千円、合計六十一万円でございます。 それから、いま一つごく初任の係員の場合でございますが、行政職(一)表の八等級三号俸ということでございまして、これは独身の場合を前提にしておりますが、五十六年が三万五千円、以下七万四千円、七万二千円、五万円、合計二十三万一千円ということでございます。
○堀委員 私は、どうして人事院勧告というのが実施されないのか、不思議でしょうがないのですね。この間藤波官房長官は田邊書記長の質問に対して、積み残し分を五十九年、六十年、六十一年に処理したい、こういうふうなお話がございましたね。藤波官房長官、もうちょっと確認をいただきたいのですが。
○藤波国務大臣 田邊委員にお答えをいたしましたのは、その年度の人事院勧告を出すに当たりまして、人事院はいろいろな調査をいたしましてその年の勧告を出すわけでございます。その勧告を完全実施するために、政府としては、当然誠意を持って最善の努力をするということにいたしてまいりましたし、これからもそのように努力をいたしてまいりたい、このように考える次第でございます。 ただ、五十九年度の人事院勧告を実施をする態度を決定をいたします環境といたしまして、公務員の方々が今までの積み残しの分を一体いつまで積み残しになっていくんだろう、完全実施がどうしてできないんだろう、積み残した分はどういうふうにして推移していくんだろうという大変な御不安の念がうかがえましたので、六十年度も六十一年度も完全実施に向けて最善の努力をしていく、しかし、どれだけこの完全実施に努力して、できないということになった場合でも少なくとも、いわゆるでございますが、いわゆる積み残し、これはもう先生御専門でございますので、いわゆるでお許しをいただきたいと思いますが、いわゆる積み残しと言われておりますものは、少なくとも五十九年度を初年度として六十年度、六十一年度ということで、もうそこまでいったら積み残しというものがなくなるということは最低限政府としては心がけていくようにいたします。しかし、六十年度完全実施に向けて努力します。六十一年度も完全実施に向けて努力します。このことは当然でございますけれども、余りにもその御不安が大きいように思いましたので、そのことを示唆するような表現で官房長官談話にさせていただいた、このように田邊委員にお答えをしたところでございます。
○堀委員 これは、総理、私は公務員は非常に皆まじめに一生懸命働いていると思うのですね。決してサボったりいろいろしていない。にもかかわらず、制度の根幹なんですね。公務員給与の制度の根幹にかかわる問題がこういうふうに安易に実は削られておる。これは私はやはり財政上の非常に重要な問題だと思うのですね。そこで、これは財源がないからできないのか、何か他の理由があってやらないのか、これはどちらなんでしょうか、総理。
○中曽根内閣総理大臣 政府としては、人事院制度が制定され、実施されている経緯にかんがみましてできるだけ尊重し、実行したいという熱意に燃えて努力しておるところでありますが、財政上そのほかの理由もありまして、十分御期待に添い得なかったことは残念であります。しかし、公務員の皆様方のお立場も考え、かつ制度の意味もよく我々は考えまして、いわゆる積み残しというものはできるだけ早く解消するように努力しようというので、今官房長官がお答えした次第なのでございます。
○堀委員 まあ財政上の理由その他もあるのかもしれません。財政上の理由ということになれば、お金がないということですね。予算上、支払うお金がない。これは、今の情勢ではまさに赤字国債を発行して公務員の給与を払うわけにはいかないでしょうから、それは一つの問題だと思うのでありますけれども、もし財政上許すようになれば、実は私は一つ新しい提案をしたいのですよ。それは、新しい提案というのはどういうことかといいますと、現在の財政法は、第二十四条予備費の項で「予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、歳入歳出予算に計上することができる。」二十四条で予備費についてはこういう規定をしております。第二十九条補正予算、「内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。」一、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」二、「予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合」こうなっているのですね。 このことはどういうことかというと、大体、人事院勧告によって公務員のベースアップをしなければいかぬというのは、ここでは実は予見されざることじゃないのですね。これは全く予見されているわけです。そして同時に、これは予備費の方ですが、補正予算の方で「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」これにも実は当たらないのですよ。そうすると、現在の財政法は、こういう人事院勧告のようなものが当時はまだなかったのでしょうね、財政法ができたころは。ちょっとそこのところ総務長官どうですか、人事院勧告というのはこの財政法より後でできたのかなと思うのですが。
○後藤田国務大臣 今、堀先生のおっしゃった意味、これは、人事院の勧告は政府としては当然完全実施をするのは政府の責任でございますから。ただしかし、何分とも最近の御案内のような実情で、やむを得ずここ数年抑制が続いておるわけですね。そこで、今の財政法の関係で申しますと、やはり私は今の人事院勧告制度が基礎にある。春闘の結果を見まして、そして八月に人事院勧告が官民較差として出される。その後で政府の方針が決まって、そこで初めて、この予算に計上する場合はどうしたって事項と人員でしょう、それから単価、こういうものが決まらないと、やはり私は、あらかじめ計上するというのは、これはいかがなものであろうかなという疑問を持つのです。やはり予見すべからざる事情に該当するのではないか。こういったことで、今日までずっと五%とか二・五%とか二%、一%、こういうことになっておるのだろう、私はさように理解をしておりますが、財政法のことでございますから、これはひとつ大蔵大臣の方からお願いいたします。
○吉野政府委員 御指摘のように、予備費、それから補正予算につきましては、堀先生御指摘のように財政法に書いてございます。ただ、この人事院勧告の問題でございますが、先ほど来関係大臣からも御答弁申し上げておりますように、人事院勧告が出ました段階でこれを完全実施をする、そのために最大限努力をするという建前を貫いているわけでございます。 そこで、来年度、つまり今の場合で申しますと六十年度でございますが、六十年度の人事院勧告が具体的にどのような形で出されるのか、これは予測がつかないわけでございます。したがいまして、従来からも、結果的にあるいは予備費あるいは補正予算という形で措置がされたわけでございますが、これは財政法上は特に問題はない、こういうふうに考えております。
○堀委員 これは認識の問題ですから、総理。私はこう考えているのですよ。大体五%組んだりいろいろするために、私も随分努力をしてここでやって五%まで持っていけたのですが、こういう格好になってきている。ただしかし、給与というのは人間の働く基本ですからね。ですから私は、財政運営として、給与を削らなければ財政運営ができないような財政運営はやるべきじゃないのじゃないか、こんなふうに思いますけれども、総理いかがでしょう。
○中曽根内閣総理大臣 給与というものの性格から考えてみますと、そのような考えに私も同調したいと思うのです。人事院規則もそういう精神で書かれているだろうと思うのです。ただしかし、国家財政ということもまた一面考えて、人事院規則はできるだけ完全実施する方向で処理されておる、こういうことではないかと思います。
○堀委員 私はそこで私なりの提案をしたいのは、今六十年の問題は、この八月に人事院勧告が出て、これは補正でやっていただく以外に方法はないけれども、六十一年について、まず六十年の人事院勧告というのが一つあるわけですね。今や物価の上昇もそんなに大きくないわけですから、誤差の範囲というのはそんなに大きくないだろう。そうすると、六十年の人事院勧告をベースにして、六十一年の予算のときに、それだけまず給与費の中に組んでもらって、そうすると、確かに六十一年にどんな人事院勧告ができるか、ここは予見できないのですけれども、根っこの部分は大体予見できると思うので、根っこの部分をそんな五%とかなんとかでなくて、ひとつ前年の人事院勧告というものをベースにして処理をする。そうしてその次の六十一年には、六十一年の人事院勧告が出ますと、明らかに六十年の人事院勧告との差ができますね。この差額について、予見せざるものだから予備費で処理をまずするか、その差額がもう少し大きければ補正予算を組んで処理する。ここは予見されざる部分に対する対応で処理する、こういうことにしますとどういうことになるかといいますと、ともかく公務員のいろいろな紛争の中に、この給与の問題というのは労働組合では一番大きな問題なんですから、そういう公務員の一番大きな給与の問題を当初予算に組んで、そうして後は予備費か補正で処理をすれば、要するに、今ある、国公の場合は余りないのですけれども、地方公務員の中での大変な、確定闘争とかいろんな問題がある問題が除かれて、教職員は教育に専念し、地方公務員は地方行政に専念できるようになるのではないか。だから、総理がここで言っておられる、対話と話し合いによって問題を処理しよう、こう言っておられるわけでありますから、ひとつこの問題を含めてみんなで私どもの提案について与党も政府もどんなふうに考えられるか、謙虚な気持ちで、日本の将来を考えるときに、紛争があるのがいいんじゃないですから、紛争がない方がいいのですから、そうしてそれらの仕事に専念していただけるような道が選択肢としてあるのならば、そういう選択をみんなでひとつ考えてみる余地があるのじゃないだろうか、こんなふうに実は私は今考えているわけであります。 そこで、実はさっきこの委員会が始まってから、私はかなりいろんな問題提起をさせていただきました。年金改革に対する問題、年金の原資に対する税の問題、あるいは全般的な税制改正についての問題、財政改革に関する問題、財政投融資に関する問題、予算上の今の処理に関する人事院勧告の問題と、幅広く数多くの問題を提起いたしましたけれども、これはここで私が言いっ放し、皆さん聞きっ放しては、私は総理が最初におっしゃった趣旨に反すると思うので、この際、最後の提案でありますけれども、この予算委員会に財政改革小委員会というものをひとつつくっていただいて、財政の詳しい者たちが少数で寄って、そうしてひとつ予算が上がった後にみんなで知恵を出し合って、将来二十一世紀を目指してのこれから十五年、二十年の間に日本の年金制度がいかにあるべきか、財政はいかにあるべきか、予算制度はいかにあるべきか、税制はいかにあるべきか、あるいは今の人事院勧告はいかにあるべきかというような問題をひとつしっかり論議をする場をつくっていただいたらどうかな、こういうふうな提案を最後にさせていただきたいと思うのですが、委員長、いかがでしょうか。
○天野委員長 ただいまの堀君の小委員会設立の提案につきましては、私が預かりまして、理事会でよく相談をいたしまして結論を出したいと思います。御了承を願いたいと思います。
○堀委員 きょうは、総理もおっしゃいましたが、かなり大胆な提案をしておりますが、私が付加価値税を提案しているということではないのでございますからね。質問の過程でそういうものがあるということが出てきただけであって、それは今の小委員会で皆さんでしっかり協議をすればいいことでありまして、社会党が付加価値税を提案したなんという話では困るのであります。そこはひとつ細かく後で会議録をお読みいただけば、そういうことになっていないということがわかりますので、誤解のないようにひとつ皆さんに御理解をいただきたいと思います。 残余に、実は総理、まだ私はいろいろたくさん問題提起したいことがあるのです。その最大の問題は水の問題です。 私は、地元が阪神間でありまして、琵琶湖の水はこの阪神間千三百万人くらいの住民にとって命の水なんですね。ところが、これが水位マイナス九十五センチ、大変水位が低下していますから、水は大変汚れておりますね。これは環境庁長官、ちょっと時間に余裕ができたので、通告をしていませんが、この間長官は琵琶湖を御視察になったので、御感想をちょっと述べていただけませんか。
○石本国務大臣 先日琵琶湖に行ってまいりました。千三百万人の方々の飲料水源でございますが、水が非常に減っております。これはいろいろな渇水の事情があったと思うのでございますが、環境庁が非常に気にしておりますのは水質の問題でございまして、この水質の問題につきましては滋賀県当局とも連携を密にいたしておりますが、ただいまのところ、特に水質が悪くなったということではございません。ただし、湖底が干し上がりましたり、それからまた、そこにありました藻などが腐りましたりというような問題がございまして、これはやはりただごとではないというふうに私は見て帰りました。 以上でございます。
○堀委員 私は、この問題は既に竹下大蔵大臣と大蔵委員会でも一団論議をしているわけでありますけれども、とにかく総理、私は日本人は水というのはいつでも必要があればあるんだという全体的認識だと思うのです。幸いにしてこの列島は、台風が来たりいろいろなことで被害も受けますけれども、水に恵まれた地帯なんですね。しかし私は、吉村冬彦、まあ寺田寅彦さんの話ではないが、今度のこの水不足というのは、我々日本民族に対して大変大きな警鐘を鳴らしていると思うのですね。この水という問題をもっと我々は真剣に考えていかなければいけないのではないか。 この水を考えるときには、森林の問題がまた非常に重要な問題になってくるわけでありますね。ですから、そういう意味では私どもは、総理も言っておられますけれども、少なくとも十五年、二十年の将来を常に見ながら今日時点で手を打っていかなければ、こういう水の問題なんというのは、急に来たから急にやろうなんといっても絶対できないですね。ですから、ひとつこういうような問題、この水に対する対策。 私は、かつて桜田財政制度審議会長、日経連会長とお話をしているときに、私も下の方にいるものですから、こういう話をしたわけです。私は、琵琶湖の水をきれいにするためには、あの周辺に完全な流域下水道をつくって、いわゆる生活排水とかいろいろなものは全部その流域下水道で下へおろして浄化をするようにしていったらいいと思う、そうして琵琶湖の水は、これから五十年、百年の間わき水と雨水だけがあの琵琶湖の中にきちっとたまるようにすれば、百年たったら本当にきれいな水になるんじゃないでしょうかということを桜田さんにお話ししたことがありました。桜田さんは、いや堀さん、その提案は大変いい提案だと思う、私は実は繊維業で、あの琵琶湖の北側に日清紡の工場をつくっている、この工場は、製糸というのはいい水のあるところでなければいい糸はできないのです、だから、あそこへそういって製糸工場をつくった、その後だんだんと琵琶湖の水は汚染をされてきて、当初に考えたとおりになっていない、だから堀さん、あなたの提案は私も全く賛成だ、こう言って桜田さんにも賛成をしていただいたことがあるのですが、万事——これは、今のは琵琶湖だけですが、琵琶湖だけではないと思うのですよ。湖沼を浄化するために、私は、これは後代の国民のために、今の我々がやらなければならない仕事だと思っているのですよ。これをただ、要するに、財政再建、ともかくも金がないから先送り、先送りなんという無責任なことをして、私たちは後代の国民にこの時期における政治家として顔向けできないようになる、十分そういう事態が起こるおそれがある、私はこういう心配をするのですね。 総理、これらの問題についてのお考えをひとつ承りたいと思います。
○中曽根内閣総理大臣 水をきれいにしなければならぬという御議論には全く同感でございます。政府も昨年は湖沼法をつくりまして、いろいろ御指導もいただいて実行しておりますのも、やはり琵琶湖あるいは霞ケ浦、そのほか牛久沼、手賀沼、あの辺の状況を見て、このまま放置できない、そういう考えに立ちまして立法もやって努力しているところでございます。やはり流れ込む水をまず第一に規制しなければいかぬ、それは全く同感でございます。 ただ、畜産物のかげんとかいろいろな問題もございますが、それらにつきましては、環境庁等を中心にしまして厳重に監督して、必要な措置を講じてやっていきたいと思っております。
○堀委員 以上で私の総括質問は終わります。どうかひとつきょう私が問題提起をしましたことは、お互い政治家として真剣に考えて、国民のため、将来の国民のためになるような皆さん方の御協力をお願いして、私の質問を終わります。
○天野委員長 この際、一言人事院当局に申し上げます。 今後、資料の準備等について怠りなきよう注意をしていただきます。 これにて堀君の質疑は終了いたしました。 次回は、明五日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後七時十七分散会