法務委員会 第18号
- 発言数
- 339 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1985/05/14
会議録
○片岡委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所山口総務局長、上谷民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○片岡委員長 内閣提出、参議院送付、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 きょうは法案の審議の日ですけれども、その他の一般質問もやってもいいというのですか、それを中心にやるというのですかどっちですか、いずれにしても法案の審議に入る前にいろいろお聞きいたしたいと考えているわけです。 第一は、川崎で外国人登録法の指紋の押捺を拒否したというので逮捕された李相鎬という人の件ですね。この件で横浜地検は処分保留のまま釈放したわけです。なぜ処分保留のまま釈放したのか、なぜ処分保留にしたのかというところですね、この理由をお聞かせ願いたいし、その経過もお聞かせ願いたいと思います。
○筧政府委員 本件、日本読みで李相鎬に対する外国人登録法違反の事件につきましては、本年五月八日に警察で逮捕いたしまして、十日に横浜地検でこれを受理し、その日の夕方でございますが処分保留のままで釈放いたしております。 その理由といたしましては、本人身柄の送致を受けまして本人について調べ、本人から一応の聞くべきことは聞いた、それからその後本人も任意出頭に応ずるということを言っておるようで、任意出頭が得られることが明らかになったので、あえてそのまま身柄を拘束して捜査を継続する必要はないということで釈放したわけでございまして、その後所要の捜査を継続した上で事案に応じた適切な処置をとるということであろうかと思っております。
○稲葉(誠)委員 身柄を釈放した理由については、これは当たり前のことなんですね。罪証隠滅のおそれもないし、ちゃんと住居もあって逃亡のおそれもないわけですから、初めから勾留請求できる事案でないことはわかり切った話なんです。 今、私が聞いているのは、なぜ処分保留にしたのかということなんですよ。そこの理由なんです。それを聞いておるわけです。普通ならば、そこで処分を決めるわけでしょう。なぜ処分を決めないのかという理由を聞いておるわけです。全国的な傾向というか均衡といいますか、そういうふうなものを考えなければいけないということも一つの理由になっているのかもわかりませんけれども、そこら辺のところをお聞きしているわけなんですね。釈放したことを聞いておるわけではないのです。当たり前の話なんです、釈放するのは。
○筧政府委員 一言で申し上げますれば、さらになお捜査する必要があるということでございまして、一般論として申し上げますれば、検事が身柄を受けた場合に最初一応のことは聞きましても、本人の申しておる背景とか動機その他についてさらにそれを裏づける客観的な関係ということも調べなければならないかと思います。また、今先生御指摘のように全国で統一を図るかどうかと言うとちょっと言葉が適切でないかもしれませんが、本件、この事件についてのいろいろな背景なりというものも十分検討した上で処分を決める。でございますから、犯罪事実並びにこれを起訴するかどうか処分を決める上に必要な諸般の捜査を遂げる必要があるということでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、具体的に言うと、処分を決めるについてはどういうことが判断の資料になるということなんですか。今お話がありましたけれども、もう少し具体的に言うとどういうことなんですか。
○筧政府委員 本件は何分、今これから捜査をするといいますか捜査が始まったばかりでございますので、本件についてどういうものが重要な意味を持つかとか調べなければならないかという点につきましては、差し控えさせていただきたいと思います。 簡単に言えば、本人の犯罪行為の背景なり動機なり、あるいは外形的なことはもちろんでございますが、そのほかに、それの起訴あるいは不起訴を決めるに当たって考慮すべき事項についてさらに捜査を進めるということであろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 これは警察が逮捕しましたが、このことについては一体検事は知っていたのですか、知らなかったのですか、どっちなんですか。逮捕したそのこと自身については関与していたのかということが一つと、知っていたか知っていなかったかということが一つ、どっちです。
○筧政府委員 具体的な捜査の内容でございますので、その点は控えさせていただきたいと思います。
○稲葉(誠)委員 だって、今の法律では警部以上が逮捕状を請求できるわけですから、これは検事を経由しないでしょう。検事は指揮権がないわけですから、検事は知らなかったのが本当じゃないのですか、どうなんですか。これは何も捜査の内容でも何でもないでしょうが。
○筧政府委員 法制上は確かに稲葉委員おっしゃるとおりでございますが、現実の運用としては検事に前もって相談するという事件も全国的には相当多いわけでございまして、本件がそのいずれに当たるかということは具体的な事件の内容にもわたるので差し控えさせていただきたいと思います。
○稲葉(誠)委員 検事に相談して検事の了解のもとに逮捕したとなったら、これは大変なことです。これは恐らく検事は知らなかったのだと私は思います。それは知らなかった方がいいのです。あなた、知っていたらまずいぞ。 そこで、これの前々から問題になっておりますのは指紋押捺拒否の時効の問題です。 新聞で報ずるところによると、大臣が十日の記者会見で逮捕問題について「時効ぎりぎりのものは、これまでも説得を続けて解決を目指して来たが、」云々ということを言われたというふうになっておるのですが、「時効ぎりぎりのものはこということについて大臣はお話しされたわけですか、どうなんでしょうか。
○嶋崎国務大臣 そういう趣旨のことを話したと思っておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 御案内のとおり、この時効の問題は難しいです。難しいし、法務省の意見は、大臣の言う意見——大臣の言う意見と言っていいかどうかわからないですけれども、時効は即時犯ではないのだということを、「注釈特別刑法」で「第三巻外事法編」というのがあるのですが、ここで山本達雄君が——これを書いた当時に入管の官房参事官をやっていたのかどうか、これはどうなんですか。
○筧政府委員 その原稿を書いたときに果たして入管におったか、あるいは高検に戻っておりましたか、その点ちょっと定かに承知いたしておりません。
○稲葉(誠)委員 それじゃ、この本が出たときはどうだったのですか。
○筧政府委員 私、その本が出たのも、現物は知っておりますが、いつ出たかよく存じませんが、山本君が高検にいたのは、今水戸に行っておりますからもう三年ぐらい前、もっと前でしょうか、相当前になるかと思います。
○稲葉(誠)委員 今高検に行っていると言うが、今高検にいないのじゃないの、水戸地検の次席に行っているのじゃないの。(筧政府委員「そうです」と呼ぶ)そうでしょう。 それで、これは読むと「指紋不押なつ罪の性質」ということでいろいろ説明されているわけですけれども、「真正不作為犯で、犯罪が成立した後、所定の指紋を押す等により、押なつ義務が消滅するまで犯罪が継続して成立する継続犯である。」こういうふうに言っているわけです。これは山本参事官の個人的な意見として聞いていいわけなのですか。法務省としての見解はどういうことになるのですか。
○筧政府委員 御指摘の「注釈特別刑法」につきましては、これはあくまでも山本君個人の責任において書かれた論文であると承知いたしております。
○稲葉(誠)委員 そういうふうに答弁するだろうと思っていたわけです山それが普通の答弁の仕方ですけれども。 それでは、ここにこういうのがあるのです。昭和三十年二月五日付管登合第一三二号附属書「指紋事務処理要領」法務省入国管理局というのがあるのですが、これも山本君かだれかほかの人が個人的に書いたものですか。
○小林(俊)政府委員 御指摘の文書は、入国管理局として作成されたものと了解いたしております。 この問題につきましては、入国管理局はその執務の上での物の考え方といたしまして継続犯であるという考え方が強かったわけでございます。しかし、その後、刑事局の方との連絡協議、その他の結果、この点について明確な法務省としての統一見解を下すことが必ずしも容易ではないという認識が深まりまして、その点に関する記載は関係の文書から削除した経緯がございます。したがいまして、その後も物の考え方といたしましては、入国管理局としては継続犯であるという考え方が強かったというのは事実でございますけれども、明確に法務省の統一見解としてそれが採用されるということには至っておらないわけでございます。最近におきましても、この件につきましては先生の御指摘もございまして、刑事局においてさらに検討していただいたというふうに了解いたしておりますが、私どもとしては、物の考え方としてはそういう考え方があったというのは事実でございますけれども、明確な統一見解としてはなお協議を要するものと考えております。 ただ、この問題は、先生おっしゃいますように直接には公訴時効に関係することでございますので、裁判所において即時犯という考え方がとられる可能性が排除されないという観点から、たとえ即時犯として判断が下されても差し支えのないように、その場合には公訴時効となる三年以内に処分が行われるという方向で措置がとられることが望ましいということは入国管理局としても理解しておったのでございます。
○稲葉(誠)委員 あなたの方の「処理要領」にはっきり書いてあるのですね。いいですか、読んでみましょうか。「指紋不押捺罪は継続犯である。法第十四条の規定に違反して指紋を押さず法第十八条第一項第八号に該当する者の指紋不押捺罪は、即時犯ではなく継続犯である。従って、法第十八条第一項第八号の指紋不押捺罪に対する公訴時効の進行は、その義務を履行しない者が後に至ってその義務を果たしたとき、又は同一種類の指紋を押すべき原因となる申請によって前の指紋押捺義務が調整されて押す必要がなくなったときを起算点とすべきである。」と書いてあるわけですね。これは法律的になかなか難しいところですよ。私ども、読んでみてもよくわからないというところなのです。 そこで、問題となってくるのは、大臣はどうも、これは談話で言われたことですからあれかもわかりませんけれども、あるいは警察の方で公訴時効が三年だというふうに即時犯でいっているというふうなことを受けて言われたのかもわからないので、その間の事情は必ずしも定かではありませんけれども、私はことしの予算委員会分科会で質問しているわけですよ。あのときは急の質問だったのですけれども、その後も法務委員会でも質問しているわけですからね。あなたの方ではもう統一見解というものをはっきり出すべきなのですよ。そんなに難しいものではないわけですね。まず、従来の法務省の考え方はどういう考え方だったのか。今、局長が言われたような考え方でしょう。警察の考え方は三年の時効だという考え方でしょう。そこら辺、従来は明確に違っていたのですか、どうなんですか。
○筧政府委員 今の問題につきましては、稲葉委員から予算委員会分科会等でいろいろ御指摘を受けたわけでございます。この即時犯か、継続犯かという点は刑事法上は時効の点で問題になるということでございます。ただ、今までこの問題が実務上時効の点として問題になったことはございませんし、また、したがいまして裁判例も最高裁あるいは下級審含めて、私ども承知しておる限り全然ない状況でございます。といいますことは、実務上問題になっていなかったので、サボってきたというわけではございませんが、統一見解を出すとかあるいは見解を一本にするとかという必要を私どもとしては感じていなかったわけでございます。 この前から御指摘がございまして、入管ともいろいろお話し合いをし、私どもとしても検討しておるわけでございますが、ここでまた統一見解を出す必要があるかどうかという点は別にいたしまして、私どもで検討しております結果では、どちらかということを強いて申し上げますれば、継続犯ではなくて即時犯ではなかろうか。即時犯というか、あるいは状態犯といいますか、いずれにしても不押捺であれば、不押捺の時点から時効は進行する。ただ、押捺しないという違法状態がその後も残るという意味で窃盗などと同じように犯罪の時効は始まるけれども、講学上いわゆる状態犯というものであろうというのが私どものただいまの見解でございまして、この点についての実際上の取り扱いについては、今、入管局長が申し上げましたように両説ある。反対説の継続説というのもそれなりに理由があるというふうに思いますけれども、やはり即時犯、時効が始まるという方が私どもとしては解釈としては正しいのではなかろうかというふうに考えておりますので、それを前提にした処理なり運用が行われるというふうに考えております。
○嶋崎国務大臣 ただいまの時効の問題については、今、刑事局長から御説明したとおりでございますが、この指紋問題についてきょうの閣議で政令を改正いたしましたので、その点について発言させていただきたいと思っておる次第でございます。 外国人登録法の指紋に関する政令の第二条に「指紋は、市町村の事務所に備えつける用具を用い、手指の第一関節を含む指頭掌側面で、指頭を回転しながら押さなければならない。」というのが現在の規定になっておるわけでございます。しかし、いろいろ制度的な改正というのを考えましたけれども非常に難しかったという経緯もありまして、何らか在留外国人の皆さん方のお気持ちを少しでも察した処理をしなければいかぬのじゃないかということで検討を続けてまいりまして、本日、「指紋は、市町村の事務所に備える用具を用い、手指の第一関節を含む指頭の掌側面の正面の部分で押さなければならない。」ということに改正をいたしました。すなわち百八十度回転をして指紋を押していただくというのを、押印をすると同じように正面から押していただくというような制度に改正をいたしたわけでございます。 それとともに、指紋のやり方につきましても、黒色のインクをつけまして処理をするというのが従来やっておった方法でございますけれども、少し工夫をいたしまして、特殊の用紙を使いまして、特殊の薬液をここへつけましてそれをやっていただく、そうすると指紋が出る、そういう新しい方式を取り入れたらどうだろうかという考え方をとりまして、早急にその手続を進めていきたい。具体的には、できるだけ詳細なことについては通達をいたすつもりでございますけれども、そういうことをやりたいと思っております。 それから、御承知のように最近指紋をめぐっていろいろな地方自治団体等の動きがあるわけでございますし、また皆さん方からも十分意見があるわけでございますが、何しろ七月一日を境にしまして相当大量の切りかえが行われるという事態になっておるわけでございまして、地方自治団体において的確に処理されるようにそれに関係するところの指導通達を、きょう入管局長名で出したいというようなつもりで我々今おるわけでございます。 非常に簡単な説明でありますけれども、少しでも新しい改正をということで工夫をして、皆さん方から見られるといろいろな御議論があると思いますが、できるだけの努力をしてそういう制度を改めるということに相なりましたので、その点この席で御報告させていただきたいと思う次第でございます。
○稲葉(誠)委員 そういう点に関しましてはこれから聞こうと思っていたところなんですが……。 指紋押捺に反対する人が非常にどんどんふえているわけですね。実際に署名だけで言えば百八十万の署名がある。今度は三百万の署名を集めたいということを言っているというようなことですけれども、では大臣としては、なぜそういう人たちが指紋の押捺に反対をしておるというふうに考えるわけですか。
○嶋崎国務大臣 私の憶測というのは余り当たらないかもしれませんけれども、新聞等に報道されているようないろいろな理由があるわけだろうと思っておるわけでございます。しかし、指紋制度というものは、外国人の地位あるいは待遇等の問題につきまして過去長らくの経過がありまして運用されてまいったわけです。我々としましては、過去においてはそういう制度が導入されたことについての成果というものはそれなりに上がっておるように思っております。最近でもそういうような関連のものも皆無ではないというような事態になっておるわけでございます。そういう中で、この指紋制度をどういうぐあいに運用するかということは十分な注意を払っていかなければならぬということは、各般のいろいろな議論から見て推測されるところでありますけれども、前々から申し上げておりますように、五十七年の改正というようなことがありまして、今回改正が行われるというようなことになっております。したがって、在留される外国人に対して日本の国内的にこういう法規制が残っておるという事実を前提に、できる限り外国人の皆さん方も日本の法規制に従って事柄を処理していただきたいというのが私の考え方であるわけでございます。その理由の中をせんさくして考えるというようなことは、どうも私から御説明することは適当なことでもないように思っておる次第でございます。
○稲葉(誠)委員 今度、日韓の実務者会談が二十三、二十四ですか、あるわけですね。外務省、法務省、自治省、警察庁が参加するということのようですが、なぜ法務省がそれに参加をするわけですか。
○嶋崎国務大臣 実は私のところに法務省として正式に参加をしてくれというような話が表立つではない状態であろうと思っておるわけでございますが、我々は、この制度を考える場合には、従来からも申し上げておりましたように、どういう事態になろうとも一刻もこの問題についての検討をゆるがせにしてはいけないというような考え方でずっと対処してやってきたわけでございます。もちろん、いろいろな御議論があり、また韓国の中にもそういうような議論があるということは新聞等によって承知はしておりますけれども、我々はそういうこととは別個に、この国内の外国人の登録問題というものを真剣に考えよう。しかも日韓共同声明の中で引き続き検討するというようなことがあったわけでございますから、そういうことをずっと引き続いて検討してきて今日に至ったということでございまして、何か閣僚会議があるとかないとか、私も正式に承知しておるわけではございませんけれども、そういうことで関連して処置をしたわけではないわけでございます。
○小林(俊)政府委員 先生ただいま御指摘の日韓実務者協議というものは、毎年一回、慣行としてここ数年間行われてきておりますが、正式の協議は昨年東京で行われましたので、ことしはソウルで行われることになるわけでございます。そういうことで、先方から外務省に話があったようでございますが、国会開会中は難しいという回答を外務省側でいたしましたところ、先方が、それでは遅過ぎるので、ぜひとも例えばこの四月末とか五月とかのうちにでもそれを行いたいということで、場合によっては先方からこっちへ来てもいいという話があったのだそうでございます。 そこで外務省側から協議がございましたので、正式の協議を五月といった時点で行うというのは適当ではない、しかし、どうしても先方が来たいというのであれば、非公式に協議のため局長が出張してくるというのまで困ると言うわけにもいかないだろう、したがって、局長が出張してきて、非公式に個別に協議を行うというのであれば、これを拒否する理由はなかろうといったようなところで外務省と話をしたわけでございます。したがいまして、二十二、二十四と言われておりますのはいわゆる正式の実務者協議ではございませんで、先方外務省のアジア局長が出張してきて、この問題を含め、また閣僚会議の準備等を含めまして、関係の各省と話をするというふうに私どもは了解をいたしております。
○稲葉(誠)委員 今、国会開会中だというので、本来はこっちから向こうへ行くのだけれども行けないというので向こうがこっちへ来る、こういうことですが、それは報道されているわけです。そこで、先方側から法務省関係のことで出てくる問題はどういう点があるというふうにお考えなのですか。
○小林(俊)政府委員 先方が期待しておりますのは、いわゆる日韓法的地位協定にかかわる問題であると思いますし、その中には当然指紋の問題も入ってくるのだろうと私どもは考えております。
○稲葉(誠)委員 だから、日韓の法的地位協定がどうだというのですか。それがどうして議題になるというふうにあなたの方ではお考えになるのですか。一体、どうして指紋の問題もその中に入っているのだというふうに考えられるわけですか。
○小林(俊)政府委員 この点につきましては、先方からどういうことについて今回話をしたいというところまで説明があったわけでございませんから、私どもとしては従来の物の経緯にかんがみて想像しておるわけでございます。物の経緯と申しますのは、例えば昨年の全斗煥大統領の訪日における先方の申し出あるいは先方の議論の内容その他を踏まえての話でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、今お話があったように、法的地位協定の問題、これは具体的に何を指すのかよくわかりませんけれども、指紋の問題も出てくるとするならば、そのときに法務省側としてはどういう態度をとるのですか。指紋の問題を含めて、外国人登録法の改正について恐らく要請があるに違いないと常識的に考えられる。それについて法務省としてはどういうふうな考え方をとることになるのですか。これは大臣ですか、局長ですか、どうですか。
○小林(俊)政府委員 先方の局長が私どもとの協議を求めてまいりました場合の対応ぶりにつきまして、まだ詰めた結論を出しておるわけではございませんけれども、先ほど大臣から御説明申し上げましたような今回の改正事項につきまして十分説明いたしまして、先方の正しい理解を得るということは当然なすべきことであると思いますし、それからこの問題をめぐる我が方の立場あるいは問題点について先方の理解を得るようにさらに説明を行うといったことは当然なさなければならないと存じております。
○稲葉(誠)委員 同じ話になってしまいましたから別のことを少し質問しますけれども、指紋押捺拒否の問題について、検察庁の方では何か近ごろ横浜地検の問題も処分保留にしましたね。だから、情勢が流動的だというふうなことを踏まえて起訴を近来見合わせておるということではないのですか。
○筧政府委員 川崎の件につきましてはまだ身柄送致を受けた直後でございます。当然、通例の場合におきましてもなおある程度の日時をかけた捜査が必要で、その後に処理をするというのが常道であろうかと思います。過去の例でも、委員御承知のように全国で八件でございますか、起訴して現在公判中でございます。最近でもございませんが京都の例などもございますので、特に流動的であるので処分を見合わせておるというような考えはないものと承知しております。
○稲葉(誠)委員 そうですか。何か特別の場合を除いては国際情勢その他を考えでできるだけ起訴をしないような方向にしているというふうに、李相鎬というのですか、この人は任意の出頭要請に関する質問書で言っているのですけれども、私もその意見というか事実については必ずしもそのまま一〇〇%オーケーというわけではありませんけれども。 そうすると、結論的に言うと、指紋押捺を含めた外国人登録法の改正については、きょうは何か閣議で政令が決まったなどというお話がありましたが、大臣としてはそれで終わりという考え方なんですか、さらにこういう点、こういう点については検討をしていきたいということなんですか。そこら辺のところの最終的な一つの大臣の意見といいますか、それをお伺いさせていただきたいと思います。
○嶋崎国務大臣 先ほども御説明申し上げましたように、過去政府部内でもいろいろな論議を積み重ねて今日まで参りまして、この委員会でも、どうも法律改正をするというようなことはなかなか困難な事情にあるように見受けられる、したがって改正はできないでしょうというようなことを申し上げたと思うのです。しかし、そういう中でもせめて政令の改正によって、こういう取り扱いについて努力を積み重ねていく一環として、処理をいたしたいということで、今度回転指紋を平面指紋に切りかえるということを講じますとともに、黒色のインクをつける、あるいは新聞等によっては朱色のをつけたらどうかというような議論もいろいろありましたけれども、そういうことをさらに通り越して、ともかく特殊な薬品をつけていただいてこうやっていただくというようなことで、新聞等に言われているように何か人道的なことに反するというような御議論がありますけれども、そういうような感触を少しでも和らげるというような対策を講ずる、一方また、運用については的確に処理をしていただくというようなことでこの問題を処理したらいいのではないかということで今回の結論になったわけでございます。したがいまして、今後法改正をやっていくとか制度上特別の運用をやっていこうというようなことは考えておりません。 なお、登録証の携帯義務については、これは警察関係の所掌になることでございますけれども、それらの運用につきましては十分配慮をして運用していただきたいということをきょうの閣議でも私は申し上げておりまして、それに対して、警察庁でも厳正公平にやっておるつもりだけれども、今後十分配慮して対処をしたいという自治大臣の発言があったというのが現実であるわけでございます。 いずれにしましても、そういうことでございますので、今の改正でことしの大量切りかえの時期を確実に乗り切っていきたい。また、そういうことについて、我々の気持ちを察していただいて、在留外国人の皆さん方もこの切りかえに御協力を賜りたい、心からそう念願しておるというのが実情でございます。
○稲葉(誠)委員 お話は承りましたけれども、それでは無理ではないですか。七月、八月、九月に多いですね。この問題に対する反対運動がどんどん盛り上がってまいりますし、それから拒否者がどんどん出てきますと、法務省当局としても非常な、さらに一層の努力をしないと解決ができない状況になってくるというふうに私は考えるわけです。 その他、いろいろ問題がありますけれども、この問題については、きょうは一応この程度で終わらしていただきたいというふうに思うわけです。 もう一つの問題は、今問題になっておりますことの中で、具体的な事件に触れるというようなことはちょっと差し控えたいと思うのですけれども、死刑囚に時効があるかという問題が——時効があるかという言い方はちょっとおかしいかもわかりませんが、いろいろな意見があるわけですね。例えば確定後三十年たったならば時効によって消滅するという考え方があるわけです。これについては、私は私個人の考え方を持っておるわけですけれども、法務省当局の考え方は前にもお聞きいたしておるので大体わかっております。 そこで、問題は、例えば六十年五月九日の朝日新聞の夕刊に渥美東洋教授と沢登佳人教授の談話が両方載っているわけですが、私は渥美さんの考え方の方が法律的には正しいという理解の仕方ですけれども、それは別といたしまして、この中で一つ問題に出てまいりますのは、こういうことがあるのですね。沢登さんの方が言っていることですが「死刑の言い渡しを受けた共犯者の一人が逃げ、一人が拘置されたまま三十年過ぎて、逃げた人が得意げにマスコミに登場した同じ日に、拘置されていた人の死刑執行が報じられたとしたら、不公平だと思わぬ人がいるだろうか。」こういう設問を投げているわけですね。これはレアケース中のまたレアケースであって、それは観念的だと言われれば観念的だとも思うのですけれども、こういうこともないわけではないわけですね。これが現実の問題だとすると、法務省側の従前の見解というものが問題になってくる可能性がある、私はこう思うのですが、こういう場合について一体どういうふうに考えるわけですか。
○筧政府委員 今御指摘の朝日新聞の記事でございますが、沢登教授が、レアケース中のレアケースと思われますけれども、挙げておられます。それに対して、申し上げるまでもございませんが、渥美教授は同じような事例について不公平ではないという反論をしておられるわけでございます。 それとほぼ同旨になるかと思いますが、私どもが従来申し上げておりますのは、刑の時効制度というものの趣旨は、国家の刑罰権が行使されないまま一定の期間が経過する、それによって通常、社会において一定の事実上の秩序というものが形成される、そして右の期間が経過後においては、なお国家は刑罰権を行使して右の秩序を破壊することはかえって国家社会の利益に反する結果になるということから、これを尊重して、国家の刑罰権の行使を許さないとするというのが時効制度の本質であるというふうに考えておるわけでございまして、このことからいいまして、今沢登教授が挙げておられるような結果が仮に起こったとしても、そのことが不公平だというふうには考えておらないわけでございます。例えがいいかどうかわかりませんが、罰金なら罰金、何百万の罰金で一万円ずつ月でも年でも分納している人は終わるまで納めることになりますし、中にそれを逃げておる者は一定期間が来れば時効で納めなくてもいい。そういうことがあってはいけないわけでございますが、これも仮定中の仮定の問題として考えればそういうこともあり得る。あるいは民事上でも、サラ金に返した人は取り立てられて、返さなくて逃げた人は一定期間後に消滅する。そういう意味の不公平というのはこの時効という制度から当然出てくるといいますか、レアケースではありますけれどもそれはやむを得ないことであって、そのことをもって不公平であって許されないというのは、ちょっと場面が違うといいますか、論理がおかしいというふうに考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、死刑の制度についてイギリスの国会で問題になりましたね、それからフランスでも問題になっておったわけですね、それについてはどういうふうなところが問題となってどういうふうになったのか。これは両国のあり方、違うわけですね。それについてちょっと御説明をいただきたいというように思います。
○筧政府委員 何分、外国の事情でございますので詳細は承知しておらないわけでございますが、承知しております限りで申し上げますと、イギリスにおきましては、一九六四年に殺人罪に対する死刑を実験的に五年間廃止するという法律が制定されまして、その後五年たった一九六九年に至って、大逆罪等を除く通常の犯罪については死刑が正式に廃止されているわけでございます。その理由としては、人道主義的見地が強調されたというふうに言われておるわけでございます。しかし、イギリスにおきましてもその後も死刑復活を求める声が強くて、議会では否決されたものの、一九八三年にはサッチャー首相によりテロによる殺人等に関する死刑の復活法案が提出されております。その後も死刑復活に向けての議員の動きもあるように承知しておりますし、新聞、雑誌等の記事によりますれば、イギリスにおける何回かの世論調査では死刑存置論の方が多数を占めておるというのが現状であるようでございます。 それから、フランスにおきましては、選挙戦で死刑廃止を公約としていたミッテラン大統領が就任いたしました一九八一年に死刑廃止法が制定されておりますが、死刑を廃止するに至った理由としては、イギリス同様、人道主義的な見地が強調されたことによるものの、その背景には、ヨーロッパ議会等EC内部における死刑廃止の動きにも影響されたというふうに推察されるわけでございます。また、イギリスと同様にフランスにおきましても死刑復活を求める声も強く、死刑復活の運動も国内でなされているように承知いたしております。
○稲葉(誠)委員 今のお話、イギリスとフランスの話で出たわけですけれども、そうすると、死刑というものについていろいろ議論があるわけですが、そのことについて、これを存置するとかあるいは廃止をするとか、それから仮に存置するとしても実際にはなかなかやらないようにしたいとか、もし誤りがあったら大変ですからやらないようにしたいとかいろいろ考え方があると思うのですけれども、大臣としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
○嶋崎国務大臣 死刑の問題につきましていろいろな御議論があることは十分承知をしておるつもりでございます。人道的な見地からこれを廃止すべきだという御議論があることもまた熟知しているわけでございます。しかし、現に我が国の状況から判断をいたしまして、死刑問題というのは、一般的な世論の調査の中におきましても、その範囲はある程度縮減したらどうだろうかという考え方はありますけれども、それを廃止すべきだというような議論はどちらかというと非常に少ないような状況に相なっておるというふうに思うのでございます。現に実定の刑法があるわけでございます。法務大臣としましては、御承知のように、長い裁判の過程を通じて死刑という判決があったものについてそれを的確に処理するというのは法務大臣の重要な職責である、それが結構なことであるかどうかということについてはいろいろな議論があると思いますけれども、大事な職責であるというふうに私は思わざるを得ないと思っておるわけでございます。したがいまして、これらの問題については、死刑廃止論の動向というようなことのいかんにかかわらずある程度日本の刑法体系の基礎の中でこれに対処をしていく以外にはないというふうに思っておりますし、また、そういう傾向が一般的に国民の中でも存在をしておるということを認識して対処しなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
○稲葉(誠)委員 世界各国の情勢というものは、死刑についてもし間違いがあったら取り返しがつかないことですから、だから再審なりなんなりというものを訴えて極力争っておるようなものについては特にその間の事情はしんしゃくしなければいけない、こういうふうに考えられるわけです。その点についてはどうなんですか。
○嶋崎国務大臣 その点につきましては、御承知のように、日本の場合でも再審制度というような制度もあるわけでございまして、それらの運用につきましては十二分の配慮をして対処していかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。しかし、形而上の問題として私は死刑廃止の当否というのを議論するといろいろな問題があると思いますが、形而下の社会においてやはり現行の法秩序体系というものを守っていく場合に、どういうことが国民的な合意であるかということは十分見きわめて対処をしていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。 いずれにしましても、我が国の場合にもその点については運用上十二分の配慮をしていかなければならぬというふうに思っております。
○稲葉(誠)委員 長い間入っていて、そして非常な老齢だ、例えば九十二歳になっておる、こういうふうな人について、私ども普通の国民の常識といいますか、それはもうそれだけ入って九十幾つの老齢になってしまったのだから、恩赦といいますかそういうような形のことを考えてあげてもいいのではないかというのが一つの素朴なといいますか、国民の中にあることは事実ですね。それで、あなたのところへもそういうようなことでいろいろ要望や何か言っておられる方もおるわけでしょう。それについての恩赦を中心としたあなたの考え方はいかがなんでしょうか。
○嶋崎国務大臣 今、稲葉委員は多分平沢さんのことを念頭に置いて御質問になっておられるのだろうというふうに思うのでございますけれども、御承知のように、平沢の場合につきましては十七回目の再審、さらに五回目の恩赦の問題が論議をされておるわけでございまして、そういう中で何らかの答えが出るまで私がそれに対して対処をする方法が今のところどうもない、そういう事態を十分見きわめて判断をしていきたいというふうに思っておるわけでございます。その答えが出たところで判断をしていきたいと思っておる次第でございます。
○稲葉(誠)委員 今の話の中で、きょうは保護局長を呼んでいないわけですけれども、恩赦関係のことについてどういうふうになっているのか、大筋はおわかりですか。
○筧政府委員 現在、恩赦につきましては、第四回及び第五回、これは特赦と刑の減軽で趣旨が違っていると思いますけれども、いずれにしても現在中更審で審査中ということで、それ以上のことは私ども承知しておりません。
○稲葉(誠)委員 そこで、きょうは法案の質問の日なわけですから、法案の質問をしないのもちょっとぐあいが悪いですから、法案の質問という形であれしたいと思うのですけれども、私、よくわからないのは、今度証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案について、これは「国選弁護人又はその近親者が国選弁護人の職務の遂行に関して」云々という場合に国が責任を持つということですね。これは参議院の審議の中で、委員会ですか本会議ですか、無所属の一部の方が反対されましたね。これはどういう理由から反対されたわけですか。
○筧政府委員 どの程度の反対があったか、ちょっと定かに記憶しておりませんが、いずれにしましても、保護といいますか補償といいますか、その内容がまだ不十分である、もう少し十分の補償をする必要があるという御趣旨であったと考えております。
○稲葉(誠)委員 そこで、この国選弁護人の選任行為をめぐっていろいろな説があるわけですね。これについて、どういう説があるのかということと、法務省当局としてはどの説が正しいというふうにお考えなのですか。
○筧政府委員 裁判所の方から主としてお答えになっていたと思いますが、正当な理由がなければ辞任できないという点をめぐっていろいろ裁判例があったように承知いたしております。 正当な理由の内容についてはいろいろな考え方があろうかと思いますが、暴行を受けるとか、その他、その判例になりましたように、被告人が弁護人を信用しないではり雑言を浴びせるというような事態があった場合にはその辞任は認めるべきであるというふうな判例も出ておりまして、大体その線で妥当ではないかというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 いや、私の聞いているのは、辞任の問題に絡んでくることはわかるでしょう。それで、その前に説があるでしょうと聞いているんですよ。例えば公法上の契約説というのもあるけれども、あるいは一方行為説というのもあるし、それから裁判所の命令説というのもあるわけでしょう。大体、説が三つあるのでしょう。公法上の契約説というのはあなた方としては採用しない、これは弁護士会でそういう説を強く言っているわけですけれども、とらないということなのでしょう。後の二つの説があるのだけれども、違いがよくわからないんですよ。それで聞いているわけですよ。
○筧政府委員 その点、私、不勉強で明確な御説明ができないわけでございます。
○稲葉(誠)委員 私もよくわからないのですけれども、これは裁判長の命令だという説と、それから一方的な行為だという説とあるのでしょう。その違いがよくわからないんですよ。公法上の契約説はまあわかるのですけれども、そうでない、裁判長の命令説というのは、これは臼井滋夫さんなんかそういう説でしょう。大体通説のようですね。それから何か一方的な意思表示によって選任の効力が生ずるというのかな、これはどうもそういう考え方もあるようなのだし、それがどういうふうに違うのか、どうもよくわからないんですよ。公法上の契約説じゃない説があるでしょう。その二つが、一体弁護人の辞任の問題についてどういうふうに違うのかわからないんですよ。
○筧政府委員 辞任に関しては、その二つの説で特に差異はないというふうに承知しております。
○稲葉(誠)委員 辞任についてはその二つの説で差異はないんですね。それじゃ、どこが違うのですか。ゼミナールだよ。
○筧政府委員 その違いは、辞任するといいますか、その弁護士の方の承諾が要るか要らないかという点にあるというようでございます。
○稲葉(誠)委員 それから、おかしいのは、弁護人と被告人とは信頼関係というものを前提としているわけでしょう。それで、争っている被告人がいるというのに、国選弁議人の方では、もう争う必要はないから認めちゃうと言って、証拠書類、書証を認めちゃうということになれば、信頼関係というものは崩れちゃうわけでしょう。そういう場合でも、被告人と弁護人との関係は信頼関係が成立しているから国選弁護人でなければいかぬということなんですか。辞任できないということになるのですか。どういうことになっているのですか。きょう裁判所を呼んでいないのですけれども、これは法務省の責任で出している法案だから、私は、裁判所を呼ぶ必要がないという理解の仕方ですから呼ばないのですけれども、どうもよくわからないのです。
○筧政府委員 弁護人の立場といいますか処遇ということをどう考えるかということになろうかと思いますが、弁護人というものは単なる被告人の言う利益の擁護者、その立場だけを守るというものではなくて、やはり社会的な責任というものがあるわけでございます。したがって、被告人の意見を尊重しながらも、最終的には、法律家としての独自の立場で決すべきものであるというふうに考えますと、単に意見が違ったからといって、辞任なら辞任の正当な理由になるというふうにはならないのではないかと考えております。
○稲葉(誠)委員 弁護人が被告人の利益だけを守るのではなくて社会的な利益とかなんとかを守るというならば、それじゃ検察官は何なんですか。公益の代表者というのはどういう意味なんですか、具体的に。それなら検察官は、被告人に有利なものであろうと不利なものであろうと全部証拠を開示すべきことになるのではないですか、今の話からいけば。それはまた別になるのかな。
○筧政府委員 公益の代表者という意味は、被告人に反対するばかりではなくて、もちろん被告人に有利な証拠が発見された場合には、それを法廷に提出するという場合もあろうかと思います。しかしながら、持っている証拠を全部出すか出さないかというのは、現在の訴訟構造の問題でございまして、公益の代表者である検察官の立場から全部出すということにはならないというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 それはそうなんですね。確かに話は違うんでしょう、違うことはわかっているのですけれども。ただ、公益の代表者という意味がよくわからないのです。今あなたの言われるのだと、国選弁護人も社会的利益の代表者のようなことを言うから、ちょっとよくわからなかったのですが、社会的利益とは一体何なのですか。ちょっとよくわからないのです。被告人の利益に反しても、被告人の弁護権というか何というか、そういうようなものに反しても公益のために国選弁護人は活動しなければならない義務があるということなんですか。結局、裁判に協力して、早く裁判が済むようにしろということなんですか。どうもよくわからない。
○筧政府委員 例えば被告人が明らかに虚偽の主張をして、それで争っておるという場合に、虚偽と知りつつそのとおりの訴訟活動をすべきかどうか、これは弁護士倫理ということにもなろうかと思いますけれども、そこには法律家としての、弁護士としての責任というものがあるのではないかという意味で申し上げたわけでございます。
○稲葉(誠)委員 この法律が今度出て、参議院先議で来たわけですけれども、どうして、証人等の被害についての給付に関する法律というのができたときに、具体的に今度の場合のような国選弁護人の職務の遂行に関してこういうふうな害を加えられたというような場合の給付について一緒に出てこなかったのですか。
○筧政府委員 御承知のように、この証人被害給付法ができましたのは昭和三十三年であったかと思いますが、その当時は暴力団、やくざ等による証人へのいわゆるお礼参りと申しますか嫌がらせというか、そういう事件が相次ぎまして、何とかしなければならないということから、証人威迫罪の新設あるいは刑事訴訟法の一部改正と並びまして、証人、参考人等が害を受けた場合に補償することによって安心して司法に協力できるようにしようという必要性から当時立案されたものと承知しております。その当時は国選弁護人の問題というものは、危害を加えられたというようなことは発生しておりませんし、その必要性がなかった。ところが、昭和五十二、三年ごろに至りまして、過激派等を中心とする裁判で、被告人が弁護人と先ほどのように信頼関係をなくして相争うあるいは暴力を加える、脅迫を加えるというようなことが相次ぎ、それに伴いまして裁判の正常化法案という法案が出されたことを契機に日弁連、最高裁、法務省の三者でいろいろ協議がなされまして、その結果やはり国選弁護人についても同様の被害の補償を図るべきであるということが協議されたわけでございます。それを受けまして法務省でその後検討して、今回改正を御提案しておるわけでございますが、やはりその時点、時点における必要性から後に加えられたと承知いたしております。
○稲葉(誠)委員 経過はそうだと思いますけれども、実際は大蔵省が聞かなかったのでしょう。予算を伴うからということで大蔵省がオーケーしなかった、これでおくれたということなのでしょう。
○筧政府委員 大蔵省が反対したというよりは、端的に申し上げますと、日弁連との間でこの補償の内容をどの程度にするかあるいは立法形式をどうするかというような点での話し合いが続きまして、結論を得るまでに相当の日時を要したというのが実情でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、国選弁護人だけなのですか、私選弁護人がされた場合はどうするのですか。その場合は保険か何かで貯えということなのですか。
○筧政府委員 私選弁護人と国選弁護人のこの点に関します違いの理由の一つといたしましては、先ほど稲葉委員御指摘のように、国選弁護人は一方的に受任するあるいは辞任も正当な理由がなければ解任されないというような性質のものでございます。片や私選弁護人はお互いの契約でございますからいつでもやめられるという状況で、そういう意味で国選弁護人が本改正で加えられたわけでございます。 私選弁護人が同様の害を受けた場合にどうなるか。これは一般にはその不法行為者に対する損害賠償ということがございますし、もう一つは、民法の委任の規定によって、過失なくして害を受けた場合には委任者つまり依頼者にその損害賠償を請求できるという規定があったと思いますが、それによって賄われるのであろうと考えております。
○稲葉(誠)委員 これは、現実問題としてアメリカなどにおいて、国選弁護人という制度があるのかないのかよくわかりませんけれども、どういうふうになっているのですか。こういう場合は、弁護人がみんな保険をつけていてその保険で賄うというやり方をアメリカなどではとっておるのですが、どういうふうになっていますか。国選弁護人という制度があることはあるでしょう、アメリカにも。修正憲法の第何条でしたか、今判例が出ているでしょう。あらゆる場合にそれをつけるべきなのをつけなかったとかなんとかということで判例がありますね。きょうそれを持ってこなかったのですが、それは別といたしまして、どういうふうになっていますか。
○筧政府委員 立案の当時調査しました限りでは、諸外国において国選弁護人的な者についての同種の補償規定というものがあるということは承知しておりません。結局は見当たらなかったということでございます。
○稲葉(誠)委員 アメリカの場合は、民事裁判でもそうですけれども、裁判に負ければ依頼者からそれに対して、委任事務に反したとかなんとかということで損害賠償の請求がどんどん起きているわけですね。そういう場合のことに対応して保険で賄うような、いわゆる法曹保険といいますかそういう制度が発達しているわけですね。ですから、こういう場合でも、私選弁護人にしろ国選弁護人にしろ、被害を受けたときには保険で賄うというようなことがほかの国では発達しているのじゃないですか。日本でも近ごろ、弁護士が訴訟に負けたという場合に、あの弁護士の訴訟遂行が悪かったのだからというので弁護士相手に損害賠償の訴えを起こしたということがありましたけれども、保険で賄うのが筋ではないのですか。
○筧政府委員 諸外国の事情はつまびらかにいたしておりませんが、日本の場合、この法律ができる前に、同様の危害、危険がありそうな国選弁護人の方で、これは弁護士会の方でたと思いますが保険をかけておられた例が何件かあったと承知いたしております。
○稲葉(誠)委員 法廷で、もし弁護人が被告人なり傍聴人か何かから危害を加えられたということになれば、これは法廷警察権 法廷警察権がいいか悪いかは別ですよ、その行使の仕方はどの程度が正しいかということが問題になると思うのです。それを拡大しろということを言っているのでは決してありませんけれども、法廷警察権というか法廷秩序を守るという義務を負っている裁判官がその義務を十分に果たさなかったからということで事故が起きたということになるので、それは裁判所に責任があるということになるのじゃないですか、どうなのですか。
○筧政府委員 今、委員御指摘のような事例もあり得ると思いますけれども、それより広くて、やはり国選弁護人としての活動を原因として危害を受けるということでございますから、弁護人のやり方がいかぬ、悪いということでその事務所へ押しかけていって害を加えるということもございましょうし、あるいは現に、この法案の大分前でございますが、国選弁護人が被告人の支援者等から軽いけがをさせられたという事案が一件ございますけれども、それも別に法廷警察権とは関係なく行われているわけでございまして、一般には法廷の内外を問わないわけでございますから、特に裁判所の責任というふうには考えておらないわけでございます。
○稲葉(誠)委員 いやいや、法廷の外でのことについてはそれは裁判所の責任じゃないかもわかりませんけれども、法廷の中あるいは廷内ということになれば裁判所の責任ということになるのじゃないですか、そういうふうに考えるのです。そうでない、別の場所で起きたのならこれは別として。 それは別として、これは予算はどのくらい組んであるのですか。
○筧政府委員 これは証人被害給付法ができて以来でございますが、一定の金額を証人等被害給付金という目で法務本省の中に計上しております。ここ数年来は十万円でございます。 結局、いつ発生するかわからない、発生しないかもわからない、発生した場合にも幾らになるかわからない、死んだような場合には多額に上ることもございましょうし、けがの場合は数万円で済む場合もございますので、一応そういう目を設けるという意味で十万円が計上されておりまして、発生した場合には、財政当局と協議をいたしまして、予算の流用なり予備費の使用承認という形をとって措置されているわけでございます。
○稲葉(誠)委員 今までは実際にはどの程度、例はあるのですか。
○筧政府委員 証人被害給付法の運用の実績でございますが、現在までに五件ございます。昭和三十四年にこれは軽便かみそりで切られて四日間の傷害、昭和三十六年、これは顔面を殴打されて全治二週間の傷害、これも証人でございます。それから昭和三十八年、これについても、加害者が服役後出所した後に証言についての恨みを理由に小刀で殺害したという事案、それから昭和四十三年に、これは証言中に被告人からボールペンで顔面を突かれて全治三カ月の傷害、それから昭和五十八年二月に、証言中の証人がやはり被告人から手で顔を殴られまして全治六日間の傷害、この五件が現在までの事案でございます。
○稲葉(誠)委員 法案についてはそれほど議論のあるものでもないように私には考えられますので、時間はちょっとありますけれども質問を終わります。
○片岡委員長 天野寺君。
○天野(等)委員 私の方から、まず外国人登録法の問題、指紋押捺問題その他を中心にしまして少しお尋ねをしてみたいと思いますが、最初に指紋押捺について、みだりに指紋押捺を強制されない権利というようなものを基本的に持っている、そういうふうに法務省としてはお考えになっておられるかどうか、この点についてはいかがでございましょうか。
○小林(俊)政府委員 私どもといたしましては、何らの合理的なあるいは正当な理由もなしに、また本人の意思に反してその指紋を採取されるということは、憲法の保障する個人の私生活上の自由を侵害するものと考えております。しかしながら、同時に、こういった自由も無制限に保護されるわけではない、相当の理由のある場合、公共の福祉のための理由のある場合にはしかるべき制限を受けるのもやむを得ないというふうに考えております。
○天野(等)委員 そうなりますと、先日、東京地裁で判決がありました。これは指紋押捺拒否の問題についての韓さんの事件でございますけれども、そこの判決の中に、これは結論としては法務省の立場を支持したわけでございまして、有罪判決でございますけれども、その理由の中で「国家権力の行使にあたり合理的理由がないのに個人の指紋の押なつを強制することは、私生活上の自由を保障する憲法一二条の趣旨に反し、許されない」あるいは「その強制の手段ないし方法によっては、国際人権規約B規約七条にいう「品位を傷つける取扱い」に該当する場合もある」という、判決の中での裁判官の意見でございますけれども、この意見については法務省としても、この段階といいますか、まず第一段階でございますから、それについてはお認めになるというふうに考えてよろしいのでございましょうね。
○小林(俊)政府委員 先ほど申し上げましたように、相当な理由なくして指紋の押捺を強制するといったことは、そうした規定に違背する疑いを生じさせるおそれが極めて大きいと考えます。 ただ、人権規約B規約でございますが、七条に御指摘の「品位を傷つける取扱い」といった表現がございますけれども、この点は、その言葉そのものから受ける印象をそのまま伝えますと、非常に広範にわたる印象が強いのでございますけれども、甚だしく本人の人格を傷つけるような行為というふうに私どもは理解しておりますので、指紋の押捺そのものが直ちにその品位を傷つける行為といったことでB規約の規定に触れるというふうには考えておらない次第でございます。
○天野(等)委員 そのB規約との関係の問題についてはまだ後ほど、政令をお変えになったという問題とも関係してちょっとお尋ねしておきたいと思いますが、それはさておきます。 さらに、実は東京地裁の判決はこういうふうに続いておりまして、「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶもの」である云々とありまして、「合理的な理由なくこの点で差別的な取扱いを受けたときは憲法一四条及び国際人権規約B規約二六条に反する」ことになるのだという見解を述べておるわけでございますが、この点についてはいかがでございますか。
○小林(俊)政府委員 その点につきましても、やはり相当な理由というのが問題の根幹をなすものと存じております。したがって、合理的な理由なしに差別を設けるということは、法のもとの平等といった憲法の規定あるいは人権規約B規約の規定に反するものと存じます。
○天野(等)委員 今、指紋押捺をみだりに強制されないという権利の存在と、これが外国人に対しても等しく適用されるべきものであるという前提をまずお伺いしておいたわけでございますが、ところで、この外国人登録法で指紋押捺を要求している必要性、これは具体的にはどういうことでございますか。
○小林(俊)政府委員 外国人登録法の目的は、外国人の身分関係及び居住関係を正確に記録して、公正な外国人の管理に資するということでございます。したがって、指紋そのものについて申し上げますれば、一定の登録義務を要する外国人が登録される場合に、登録された人物と同一人であるということを確認する保証あるいは手だてを講ずるということがその目的でございます。
○天野(等)委員 結局のところ、登録の際に、あるいは再登録といいましょうか切りかえ登録の際に、出頭した者と既に登録されている人との同一性を確かめるという、それに尽きるのでございますか。
○小林(俊)政府委員 既に登録がなされておる場合にはそのとおりでございます。ただ、新規登録の場合にはその者が登録と正確に結びつけられる手だてを講ずるということでございます。言いかえれば、その人物を登録という手段を通じて特定するということでございます。また、さらに申し上げれば、将来の入れかわり等を防止する手だてをあらかじめ講じておくということでございます。したがって、新規登録の場合と確認登録の場合とは若干その意味合いが変っておりますけれども、いずれにせよ同一人性の確認ということがその目的であることには相違はございません。
○天野(等)委員 それはおかしいでしょう。新規登録のときに幾ら指紋の登録をしたって、その人間が同一性があるかどうかについては、登録した人間がその登録原簿に登録されている者と出頭した人間との同一性ということになりますか、切りかえ登録については旧登録人と新しく現に出頭している者との同一性ということになりますか、その点についての同一性を確保するというだけの意味しかこの指紋の押捺の効果というものはないというふうに考えてよろしゅうございますね。
○小林(俊)政府委員 市町村に保管される登録原票との関係においては先生御指摘のとおりでございます。ただ、指紋の押捺は三つの押捺が行われるわけでございます。一つは市町村に保管される登録原票でございます。一つは法務省に送付されてくる指紋原紙でございます。もう一つは本人が常時携帯すべき登録証明書でございます。したがって、登録証明書について申し上げれば、登録証明書を現に所持している人物とその登録証明書に記載されている人物とが同一であるということを確保する手段としても指紋は重要な役割を果たすわけでございます。
○天野(等)委員 今のお答えの中で二つの問題があると思うのですが、一つは登録証の所持者と登録証の名義人との同一性、これを確かめる手段というのは強制的にこれを確かめる手段というものがあるというふうにお考えになりますか。
○小林(俊)政府委員 その指紋が登録証明書に押されておるということは、究極的にこれを確認する手段として利用できるわけでございますが、通常の場合特に理由がなければ外国人に対して指紋を新たに押捺することを強制することはできません。したがって、本人が任意に自分がその登録証明書と同一の人物であるということを立証するために押捺に応ずるならば、それによって両者間の同一人性が確認できるわけでございます。しかし、本人が押捺を拒否する場合には、指紋によってその登録証明書の所持者と名義人とが同一であるということを立証することは即時的にはできないわけでございますが、しかしながら、その他の理由で身体の拘束が行われるといった場合には、刑事訴訟法の手続によって指紋の採取ができますから、そこで両者の照合が可能ということになります。しかしながら、そのためには身体の拘束を正当づける別途の理由が必要でございます。したがって、一般論として言えば、そのような特殊な理由がない場合には、本人の任意の押捺がなければ指紋による登録証明書所持者と名義人との照合はできないということになります。
○天野(等)委員 今の御答弁をお聞きしていますと、一般的な犯罪で身柄が拘束されて刑事訴訟法に基づいて指紋が採取をされた場合に、その被疑者と外国人登録法に基づいて登録をされているその者との同一性を確かめるためにこの外国人登録法の原票は使用されますか。
○小林(俊)政府委員 外国人登録の問題に関しまして、特にこの指紋の問題に関しまして一般犯罪捜査との関連についてかなり微妙な問題を含んでいる、特に関係の外国人の側において一般犯罪の捜査に用いられるのではないかといった疑念を持っておるということを私どもは承知いたしております。したがいまして、外国人登録によって採取された指紋の取り扱いにつきましては慎重を期しておるつもりでございます。今回、本日付で発出いたしました各地方公共団体に対する入管局の通達におきましてもこの取り扱いをさらに慎重にするようにということを明記いたしておるわけでございます。 一般論として申し上げれば、特に入国管理法あるいは外国人登録法にかかわる同一人性の確認のために必要であるという場合を除いては、外国人登録によって採取された指紋は利用しないようにというのが私どもの基本的な原則でございます。
○天野(等)委員 私もこれは重要な原則だと思うのですね。だから、私は一番最初に、指紋押捺を強制されないという権利は日本人であれ外国人であれまず持っているわけでありまして、しかもこの外国人登録法による指紋押捺というのは一般犯罪捜査のためにあらかじめ指紋をとっておくというような制度ではないということをまずはっきりさせておかなければいけないんだと思うのですね。ところが、この問題について、私は、決してそう建前だけで進んでいるわけではないということについての危惧を持つわけでございますし、また、それが同時に外国人の方々に外国人登録法によって指紋押捺を強制されることについての嫌悪感をもたらしているかなり大きな問題なのじゃないかというふうに私は考えるわけです。だから、この指紋押捺の原簿をいたずらに他の目的のために使用させないための措置を従来どういうふうにとってこられたか、あるいはまた、これからどういうふうにとろうと考えておられるか、この点については法務大臣、いかがでございましょう。
○小林(俊)政府委員 先生御指摘の点は、ただいま私が申し上げた点に関連いたしますので、改めてお答え申し上げたいと存じます。 本日付で発出いたしました各地方公共団体に対する通達におきまして、登録原票、特にその指紋の取り扱いについては慎重に行うようにということを明記いたしております。また、具体的に申し上げれば、特に指紋を必要とする理由を付して照会があった場合には、法務省にその取り扱いについて協議するようにということを通達いたしております。その上で、私どもとしては慎重にその取り扱いを判断したいと存じておるわけでございます。 ただ、私、ここで一言申し上げておきたいと思うことがあるのでございます。 先生御承知のように、外国人登録法に基づいて採取される指紋は左手の人さし指一本だけでございます。左手の人さし指一本だけであるということは、一般犯罪捜査にこれが利用される可能性を局限するものでございます。何となれば、一般犯罪において犯罪捜査上利用される指紋の照合というのは、現場に残された遺留指紋とそれから既に採取されておる指紋との照合でございます。ところが、現場に遺留されている指紋というのはどの手のどの指が残されているか、極めて種々雑多でございまして、多くの場合においては恐らく右手の指の方が遺留されている可能性が高いわけでございます。ところが、左手のしかも人さし指一本だけの指紋が採取されておりましても、これが遺留指紋と一致するという可能性は十分の一以下でございます。したがって、一般犯罪にこれを多くの場合利用し得るという物理的な可能性が存するといった考え方があるとすれば、それは事実に反するということを一言つけ加えさせていただきたいと思います。
○天野(等)委員 その問題について少しお聞きします。 実は韓さんの指紋押捺拒否訴訟の中で検察側の証人として立たれました野村さんという新宿区役所の職員の方、この方の証言の中で、外国人登録原票の閲覧について新宿区役所では、従来の取り扱いとして、警察官が閲覧をしたいということで来られたときには自由に閲覧をさせていたし、またこの回数についてもかなりの頻度で警察官の方が登録原簿の閲覧に来られている。それについて、どういうふうな閲覧をしているかということについてまでは、外国人登録の係の人もわからない。そこに一々横についているほどの時間的なゆとりもないし、またそういう必要も感じていなかったからというふうに、これは宣誓をした上で証言をしているわけでございます。こういうように警察にならば自由に使わせている。これは単に指紋押捺だけではなしに、写真についても私は同様かと思います。写真も同じように、私は肖像権として本来みだりに撮られないという権利を持っているものだと思いますが、こういう点について、従来そういう取り扱いがあったということについては承知をしておりますでしょうか。
○小林(俊)政府委員 従来の取り扱いに限って申し上げれば、閲覧については認めておるわけでございます。ただ、今回の通達におきまして、例えば登録原票の写しを交付してほしいという関係機関からの要請があった場合には、指紋欄の指紋の複写されていない写しを交付するようにという指示をいたしております。したがって、指紋につきましては登録原票の中でも特別の取り扱いを今後とも行っていくということを明らかにしたわけでございます。
○天野(等)委員 閲覧については、従来と同じように自由にさせておくということでございますか。
○小林(俊)政府委員 関係の行政機関から法的な根拠を示して閲覧を求めた場合には、これを認めても差し支えないということでございます。
○天野(等)委員 非常に抽象的でわかりにくいです、今のお答えだけでは。といいますのは、現場の職員はどういう場合に閲覧を許すことができ、どういう場合には閲覧を許すことができないのか、どの程度の疎明といいますか、どの程度の必要性について疎明があれば閲覧を許すのかという点についてはいかがでございますか。
○小林(俊)政府委員 まず、閲覧を求める者がその身分を明らかにする必要がございます。したがって、その所属する機関が閲覧を必要とする相当の背景を持っておる、権限を持っておるあるいは責任を持っておるということがまず第一の要件でございます。 第二に、閲覧を求める理由が明確に法的な根拠を持っていなければならない。したがって、その職務権限に属するもの、特にその閲覧を必要とする理由が法的に認められたものでなければならないといったその二つの要件が閲覧を求めることの要件となるわけでございます。 これに関する判断は、第一義的には当該地方公共団体の首長に属するわけでございます。
○天野(等)委員 今、閲覧を求めることができる職務権限とおっしゃいましたが、一般的な職務権限で足りるのか、具体的な事件についての職務権限を必要とするのかということですが、なぜそういうことをお尋ねするかというと、一般的な職務権限ということで足りるとするなら、警察官が来れば、警察手帳を見せるなり、あるいはもう顔見知りの警察官であるということならば一般的な権限があることは明らかですから、従来そういう形での一般的な権限として警察官がほとんど自由にこのあれを利用できたのではないかというふうに考えるわけです。今度それにさらに具体的な職務権限あるいは具体的な必要性ということで絞りをおかけになるのか、この点についてはいかがでございますか。
○小林(俊)政府委員 この点につきましての私どもの考え方は、単に警察官であるということだけによって常に自由にこれが閲覧できるということであるべきではないと考えております。したがって、具体的に閲覧を必要とする理由を明示する必要があるというのが私どもの考えでございます。
○天野(等)委員 これは指紋押捺だけではありませんで、外国人登録原票に記載されている事項については、やはりプライバシーとしての権利を持っているわけでございますから、それを現に保管をしている官庁としてこれの使用について責任を持たなければならないという立場にあると思うのです。その点の取り扱いが従来緩やかに過ぎたのではないかという感じを私は持っておりますが、今後その点でも厳しい縛りをかけていただきたいというふうに思います。 また、先ほどの御答弁の中にございました次の点ですが、現在は指紋押捺については指紋登録証明書と登録原票と指紋原紙、この三通りの捺印をしているということでございますし、法もそのとおりだと思うのですが、しかし、これは昭和五十七年以前には指紋原紙についての指紋押捺を省略することができるという形の通達があって、実務的には指紋原紙には押捺を求めていなかったという事実がございますか。 〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
○黒木説明員 外国人登録事務の過程におきまして、昭和四十九年から五十七年までの間、その三つ押すべき指紋の中で、指紋原紙については、これがほかの方法によって私ども確認できるということでございましたので、この間指紋原紙への指紋の押捺ということをしていただかなくて、登録原票と登録証明書だけに指紋を押していただくという運用をしたことがございます。
○天野(等)委員 ほかの手段でというのはどういうことですか。 それからまた、それが昭和五十七年になって指紋原紙に押捺を求めるようになったという理由はどういうことなのですか。
○黒木説明員 ちょっと細かいことになりますけれども、昭和三十年代半ばから市町村に保管されておりました登録原票、これには実は七回確認を行うようなシステムになっております。ですから、それには七回分の写真と七回分の指紋が押されているというものが実は保管されておるわけでございますが、これは五十年代に入りまして、ほぼ記載がいっぱいになるということで、この使用済みの登録原票が私どもの方に送付されてくる。私どもがそれを集めれば、わざわざ指紋を押してもらわなくてもそれによって確認ができるということで、実は指紋原紙への指紋の押捺ということを一時やめたわけでございます。ただ、これがいずれも五十年代の半ばに登録原票が全部回収されまして、その後の回収は法改正もありまして五年ごとになりますので、七回分と申しますと五、七、三十五年先にならなければそういう登録原票が回収できないわけでございますから、五十七年の法改正を機会にまたもとに戻って、登録原票と指紋原紙と登録証明書、この三つに指紋を押してもらうというふうにもとに戻したわけでございます。
○天野(等)委員 おかしいのですよ。何で指紋原紙というのはそれじゃ必要だったのですか。これは、その登録切りかえごとに新指紋原紙と旧指紋原紙に押されている指紋の同一性を確かめるためにやられたものじゃないのですか。
○黒木説明員 先ほど局長からお答えしましたように、指紋にはそれぞれの、その場その場における効用というのがあるわけでございます。 まず、登録原票、市町村に保管しております登録原票というのは、市町村においてまず確認するものでございます。それから、市町村における確認が不十分であったとか、適切でなかったというようなこともあり得るわけでございますので、指紋原紙というのを一緒にとってもらいまして、その指紋原紙は法務省の方へ送ってもらう、法務省において市町村における照合が正しかったかどうかということを事後的に、言葉をかえますと、バックアップ的に再度確認する、こういうシステムでございますので、非常に極端なことを言えば、すぐに確認しなくてもよろしいわけでございまして、実際、タイムラグと申しますか、現実に送られてきて私どもの方で確認いたしますのは半年ぐらいから後になっている、こういう現状でございます。 したがいまして、四十九年から五十七年の措置というのは、いずれ送られてくるということで、いずれ送られてくるその使用済みの登録原票によって確認すれば足りる、こういうことで、指紋原紙は個別にとって送らなくてもよろしい、こういう措置をとったわけでございます。
○天野(等)委員 通常の指紋原紙は半年ぐらいたってから照合するのだというのは、それはわかるとしまして、いずれ送られてくる古い原票が、なぜ同一性の確認になるのですか。登録原票自体は、これは法務省には送らないでしょう。そうじゃなくて指紋原紙だけが法務省に送られ、それで法務省でこの指紋の照合について、やられたか、やられないか、それは私の方ではよくわかりませんが、建前としては法務省でもやるということになっているわけでございましょうか。これは、法務省でも、全部のものについての法務省での指紋の照合というものを、過去にもやっており、また現在もやっているのですか。
○黒木説明員 昭和三十年代に指紋制度が発足以来、法務省における指紋照合を行っております。 それから、その前のお尋ねの、登録原票というのは、御指摘のとおり市町村で保管するものでございます。ただし、先ほど申しましたように、これは七回記載いたしますと記載事項がいっぱいになります。いっぱいになりますと、新しい登録原票がつくられまして、新しい登録原票は市町村で保管される。したがって、七回記載しましていっぱいになりました登録原票というのは、実は置き場所というのは特に法律上指定してございませんので、私どもとしては、先ほど申しましたように五十年代の半ばに、全国の市町村で使用済み、記載がいっぱいになりました原票がありましたので、これを全部法務省に回収する、こういう作業をしたわけでございます、したがいまして、そのいっぱいになりました登録原票に押されている指紋と法務省に保管されております指紋を確認する、ないしは原票に押されていると個の指紋を確認することによりまして、私どもが本来指紋原紙で確認すべき指紋の確認ができることになるわけでございまして、そういった意味から、一時、指紋原紙の送付が必要ない、こういう取り扱いをしたわけでございます。
○天野(等)委員 七回の指紋の欄がいっぱいになるのには、旧法でいきまして三、七、二十一年。そうですね。二十一年たてば、当初から見れば二十一年後に、あれしたものをどうだったかということでもう一遍調べ直したということになるのかもしれませんが、本当に、法務省でもってそんな指紋の同一性なんかをやっておったのですか。実際には、指紋原紙ということで法務省に送られてきても、法務省ではそれについて一々の指紋の照合というものをやってもいないし、やる必要もないということで、その当時はそういう取り扱いを停止したというにすぎないのじゃありませんか。現に、法務省でそういう指紋照合のための人員は一体何人いるのですか。
○黒木説明員 指紋の照合につきましてはいろいろ曲折がございまして、指紋制度が始まりました昭和三十年代におきましては、指紋の紋様を数字に置きかえる、いわゆる換値分類というシステムをとりまして、この際は非常に多くの職員を、専門の鑑識のできる職員を置きまして指紋を換値分類し、照合しておりました。しかし、指紋制度を採用いたしまして多くの不正が是正されまして、外国人登録事務が正常に戻った、こういう時点からは、指紋の確認照合の方法を改めまして、換値分類をやめました。やめましたのは、一つは人員を効率的に使うという目的と、今申し上げたように制度が落ちついたということでございまして、そのころから人数は減っております。 現在の指紋は、各登録番号順に保管されておりまして、新しく指紋を押した人、過去に押した人も一律に登録番号順に保管しております。そういたしますと、次の切りかえのときに新しい指紋が押されてこれが送られてくるわけでございますが、Aさんの登録番号は前は何番であったということがわかっておりますので、その指紋と今度送られてきたAさんの指紋を照合する、こういう簡便な作業に変えております。 したがいまして、お尋ねの職員の数も減っておりまして、現在、登録課の指紋係の職員は三名でございます。
○天野(等)委員 全国の外国人登録の登録者の人数はどのくらいでございますか。念のためにお尋ねします。 〔太田委員長代理退席、高村委員長代理者席〕
○黒木説明員 外国人登録数は約八十三万でございます。そのうち、指紋を押している人は約六十万くらいと思っております。
○天野(等)委員 六十万人の方の指紋の照合を法務省が三人の係官でやっているなんていうことは、こんなばかばかしい話はないと思うのですよ。実際問題として、指紋照合をやっているのは現場の市町村の窓口でもって、やっているとすればそこでしか実際、指紋照合というのはやっていないというのが現状でしょう。法務省でもって、三人の係官でもって法務省に上がってきた全国の登録原票、それから古くなった登録原票、それから指紋原紙とを照合していますなんて、三人でそんな、八十万ですか、六十万ですか、こういう人数ができるなんて考えられません、そんなこと。実際問題として、現実にも今指紋照合をしているのは各出先の市町村の役場、それからかつても、特に指紋原紙に押捺を要求していなかった時期について言えばなおさらのことですけれども、それでもって法務省で特に同一性を一々調べるという必要まではなかったというのが実態なのではありませんか。
○黒木説明員 私どもはやっておると申し上げておりますし、先生の方はやってない、こういうことで、押し問答してもしようがないと思いますが、ただ数的に申しますと、六十万の外国人がいつも指紋を押しているわけではございませんで、五年に一遍ずつ押すということになりますと……(天野(等)委員「いや、前は三年ですよ。単純に割ったって二十万人ですよ」と呼ぶ)はい、それが月に割りますと、月に一万幾らという数でございまして、照合は可能でございます。
○天野(等)委員 今度は、出先の市町村役場でどういうふうに指紋の照合というものを位置づけているかということでお尋ねしたいのです。 実は、この点についても、先ほど申しましたように、韓さんの指紋押捺拒否訴訟の中で証人に立っております野村さんという区役所の職員の方の、どういう手順で指紋の押捺を登録、承認してもらうのかということでの証言があるわけでございます。これによりますと、まず切りかえ登録のために出頭してきた人が窓口で登録申請書ですか、その用紙をもらって、それに必要なことを書き込み、そして写真を提出して、それで一応登録証ができ上がる。そうしてでき上がってから一番最後の段階で指紋を押してくださいと言って指紋を押すという形のものである。それで指紋を押されれば、それでもって登録証は持って帰ってくるというのが、新宿区役所における実際の登録のあり方です。一々指紋を旧指紋と合わせて、それで同一性を確認してから、そうして登録証をつくってというような手続になっているわけではないということが、これまた宣誓をした証言の中で語られております。 そうしますと、実際問題としては、窓口でだってこの登録証による同一性の確認というものをそんなに重要視して行っているわけではない。むしろ貼付されている写真、それから窓口に来た人ということの同一性の方が、普通に考えても一番早くそれを見るわけでありますし、そこでつくってしまうというのが現状だというふうに言われております。それがまた全く間違っていないというふうにこの方は考えておるわけです。こういうふうに最後に指紋押捺をとにかくしてもらうのだ。それで、今も黒木課長のお話の中でもありましたように、法務省としては、確認するとしたって半年ぐらいたってから法務省では確認するのですよというような大変のんきなことをおっしゃっていらっしゃる。 ところが、実際問題として、これも先ほど局長にお尋ねしたのですが、この指紋押捺を要求する意味は、出頭してきたときに、出頭してきた人間と既に登録されている人間あるいは新規に登録する人間との同一性を確かめることの意味しかないのですよ。果たしてそのためにだけにこの指紋押捺というようなものが必要なのかどうかということについて、私はもう一遍改めて考えてみる必要があるのじゃないか。これが、犯罪捜査に使うために間違ったら大変だということの問題があるならば、これはまた別問題かもしれません。しかし、原則としてこれはそれには使ってはならないものなんですよ。そういう状況の中で、果たして今後ともこの指紋押捺制度を維持していく必要があるかどうか、やはり私は根本的に考え直していただきたいと思うのです。ここに黒木課長が御出席になっておられる「ジュリスト」の座談会がございます。ここの中でもいろいろ問題が指摘をされておりますけれども、むやみに指紋押捺を強制されないというのが権利であるとしたら、できる限りその権利を侵害しないような方法で外国人登録制度というようなものも考えていかなければならないというのが、私はやはりこれからの立法の問題として重要だと思うわけです。 先ほど、法務大臣の御答弁の中に、立法問題については考えないのだというような意味の御答弁があったようにちょっとお聞きをしたのですけれども、この韓さん事件の一審の判決は、実はこの押捺問題はまさに立法問題だと言っているのです。これは、先ほど局長もお話しになりましたけれども、どれだけ指紋押捺に合理性があるかということだと思います。それならば、他に合理的な手段がないのかどうかということについて、やはり絶えず考えていかなければならないのが立法当事者としての法務省の務めではないかと思いますし、法務大臣の務めではないかというふうに私は考えるわけです。 その点で、実は強制的に指紋押捺をして同一性を確かめる、こういう手段をとっているのは、この外国人登録法のほかに何と何がございますか。まずその点。
○筧政府委員 御承知のように刑事訴訟法では身体検査令状でする場合がございますし、身柄を拘束されている被疑者については令状なくして指紋の採取ができるということになっております。
○天野(等)委員 刑事訴訟法のその点と、矯正局長お見えになっていらっしゃるが、多分監獄法に最初の収容の際に指紋押捺をするという規定があったかと思います。いずれも身柄を国家が拘束をする、そういう重要な必要性があって、その場合に限って認められている制度です、強制的な指紋押捺制度というのは。そのほかではこの外国人登録法しかないのです。 それでは、指紋押捺によらないで同一性を確保しようとしている制度にどういうものがございますか。
○小林(俊)政府委員 先生御指摘の問題点は一般論であると思いますので、一般に人物の同一性の確認のために使われている最も普通の方法は、写真によるものであろうというふうに存じます。
○天野(等)委員 いや、私は法的なことをあれしているのですよ。例えば道路交通法に基づく運転免許証、これはまさに同一性の確認のために、今は刷り込み写真になっていますね、前はそうではなく貼付した写真でございました、それがございます。私は、それだけではなくて、同一性のための制度として何も写真を使わなくても生年月日を書いてあればいいとか、その他いろいろなものがあると思いますけれども、外国人登録法のこの指紋押捺というのは何のためにやっているのかということを、まずそこを考えていただいたときに、それじゃそれと本来外国人あるいは我々国民が持っている肖像権であれ、あるいは指紋押捺についてのみだりにこれをとられないという権利であれ、こういうものとの衝突ができるだけ少ないもの、そういう方法をやはりもっと真剣に法務省として考えてもらいたいと思うのですよ。そのために、この法律ではこういう制度があり、この法律ではこういう制度があるんだということについて、同一性を確認するためにはどの程度のものでやっているのかということを法務省としても検討していただきたいと思うのです。 法務省、それを検討なさったことがあるのでしょうか。例えば道路交通法の免許証がなぜ写真だけでいいんですか。なぜ人間の同一性を明らかにするのにあの写真だけでいいのですか。その点についてお考えになってみた、あるいはお調べになってみたことがございますか。
○小林(俊)政府委員 道路交通法の主管官庁でございませんので、その点について有権的にお答えする立場にはございませんけれども、常識として私が判断するところでは、運転免許証の取得につきましては、日本人の場合には住民票の写しの提出を求められていると記憶いたします。また、写真の提出を求められていると思いますし、また現場で写真も撮られております。したがいまして、日本人の場合にはそうした資料の提出によって同一性の確認が行われているということでございます。 しかしながら、日本人の場合におきましては、外国人と違います点は、一般論としては居住性においてより固定的である。外国人の方が流動的である。あるいは身分関係において、すなわち親族関係、知人関係において社会に広くそういった関係が存在するということで、身分の特定をあるいは同一性の確認をしやすいという状況がございます。 しかしながら、外国人の場合には戸籍法の対象にもなりませんし、住民基本台帳法の対象にもなっておりません。外国人の身分を特定する唯一の手段が外国人登録法による登録でございます。そこで、今申し上げましたような身分関係、居住関係の限定という点に着目いたしまして、日本人には課されていない指紋の押捺ということが導入されたわけでございます。 先ほど、先生は、指紋の照合が必ずしも常時行われていないではないかという点を御指摘になりましたけれども、指紋がとられておるということは、同一性に疑問が生じたときにこれを確定する最終的な手段でございます。したがって、そういう最終的な歯どめを設けておる、確保しておくということは、今言った法の目的からいってどうしても必要であるというのが私どもの見解でございます。 ただ、先生がおっしゃいますように人権に関する問題もございますので、その点に関する配慮の一つのあらわれとして本日発表いたしました二つの運用の改善措置をとったということなのでございます。
○天野(等)委員 同一性の確認がどういう場で行われるかということについても、しょせん限定的な場でしか行われないのだということを私は最初にも話をしたわけですよ。その点の確かめをしたつもりです。常に同一性の確認ができるのか。所持している者と登録証との同一性の確認というのは、法的に言えば、これは強制ができる種類のものではないということですよ。強制的に指紋をとることができるのは、外国人登録法の新規の登録あるいは切りかえ登録のそういう場でしかないのですから。いつでも外国人を見て、それで登録証の提示を求めることはできる。これはまた後でちょっと問題にしたいのですが、それはできるとして、しかし、それではあなたの指紋をその場でもって押せと言うことはできないわけですから、同一人であるかどうかについては、これはできないということだと思います。 それで、私は、その程度の同一性の確認ということならば、他にもまだまだ手段、方法があるだろうと考えるわけです。確かにこれは先ほど大臣の御答弁にもありましたし、黒木課長のお話の中にもありました。指紋押捺制度をとることによって外国人の登録制度がかなり整備されたのだという意味でのお話があったようにも思いますけれども、実際問題として、果たして指紋押捺制度をとったから外国人の登録の未確認の方の人数が減ったのかどうかという点では、実は疑問なしとしないという見解というか事実もあるわけでございます。 これは、私ももとの資料に当たる暇がございませんでしたけれども、黒木課長も御出席になっていらっしゃった「ジュリスト」の座談会、その中で東大教授の大沼先生が、一九五〇年のときには未確認の外国人登録人員というのは約八万人、それが一九五二年には一万九千人に減り、さらに一九五四年には一万三千人に減少している。これは昭和三十五年の「在留外国人統計」というのを引用しているわけですが、実は指紋押捺制度が法文上導入されたのはこの一九五二年で、実施されたのは一九五五年。したがって、指紋押捺制度が実際に行われるようになった一九五五年以前に既に大幅に、未確認外国人といいますか、その数が減っているんだということです。この一九五〇年当時の八万人というのが一九五四年には一万三千人に減少したのは、これは指紋押捺制度によるものというよりはやはり社会的な安定が、特に在日朝鮮人・韓国人についてこういう外国人登録法というような形での制度の中になじんできたということが言えるのだろう。そう考えると、必ずしもこの指紋押捺制度が現在の比較的整備をされた外国人登録制度のどうしてもなければならない中心のことだというふうに考える必要はないんじゃないか。これはむしろ、指紋押捺制度についてかつては十指の指紋を押しておられた時期があったのではないかと私は思うのですが、あるいはそういう形で指紋押捺をとることで犯罪捜査の一つの条件になっていたのではないかというふうに考えます。これは、十指押していたことはございませんか。
○小林(俊)政府委員 私の記憶では、一時期でございますが、再交付、すなわち登録証明書を紛失したといった場合の再交付の申請の場合にのみ、十指の指紋を押捺させて同一人性の確認を行った時期があったと存じます。しかしながら、この制度はその後数年にして廃止されたわけでございます。
○天野(等)委員 再交付の際に十指を押させるということについても、やはりこれは何らかの犯罪なり何なりが前提にされているんじゃないか、そういう予断を感じるわけですよ。結局、指紋押捺をなぜ求めてきたかと言えば、外国人、特に在日朝鮮人・韓国人に対する一般犯罪との関係での差別的な見方、そういうものが特に制定当初にかなりあったのではないか、そのことは否定し得ないのじゃないかというふうに私は感じるのです。もちろん、これはあってはならないことですし、この国会の場でそういうことがありましたということを法務省の方がお話しになるとは私も思いませんけれども、しかし、そういうことがあってはならないという自戒の意味も含めて、これからの指紋押捺制度を考えていかなければならないのじゃないかと私は思います。 それで、その点で実はきょう新しい閣議決定をされたということでございますが、押捺の仕方で、左手の人さし指の——どういうふうにおっしゃっているのですか、表面ですか(小林(俊)政府委員「平面です」と呼ぶ)平面ですか、平面だけを押せばいい、いわば回転式で押さなくてもいいというようなことに改正になったといいますけれども、従来回転式で押さなければならなかったということが政令の中に出ているわけですが、なぜ従来はそうだったのですか。なぜ、従来は回転式で押させていたのですか。
○小林(俊)政府委員 回転指紋によって採取した指紋と、今回改正いたしました結果採用されます平面指紋方式によって採取した指紋とは、面積において約一対三ほどの違いがございます。したがって、もちろん回転指紋の方が、肉眼によってもあるいはその他の方法によりましても照合する場合に照合しやすいということがありましたので、回転指紋という方式をとっておったものでございます。
○天野(等)委員 そうすると、今度改められたものによると、この照合が非常にしにくくなるのですか。それでは今度改めた理由をお答えください。
○小林(俊)政府委員 改めました理由は、先ほど申し上げましたように、登録を行うあるいは指紋をとられる外国人の受ける心理的な抵抗感を少しでも軽減するというためでございます。なぜ、その心理的な抵抗感があるかと申しますと、回転指紋方式というのは、例えば私どもが銀行その他で印鑑のかわりに拇印を押すような方式とは違いまして、百八十度回転するわけでございますから、非常に特殊な状態といった印象を与えます。また、うまくそういうやり方ができない人もおりまして、その場合には係員が手を添えて指紋をとらせることもあるわけでございます。ところが、外国人の場合には特に人にむやみにさわられることを毛嫌いする傾向がございます。私も、海外で生活したことがございますからそういう気持ちがあるということは承知いたしておりますけれども、そういうようなことが起こりますとやはりそれに対する心理的な抵抗感あるいは屈辱感といったものが生じやすいわけでございます。したがって、そうした可能性あるいはそうした状況を少なくするために、あるいはなくすために、自分で普通に押せるやり方に改めたということでございます。 それが改めた理由でございますが、しからばなぜそういうやり方に改め得たのかと申しますと、先ほどもちょっと申したことでございますが、犯罪捜査に使う遺留指紋と既に採取してある指紋とを照合する場合には、遺留されている指紋が指のどの部分であるかは状況によって変わりますので、それと照合を確実にするためには回転指紋をとっておくことが必要なわけでございますけれども、外国人登録法に基づく指紋の採取はそういう一般犯罪捜査の必要に応ずるものではございませんので、前に押した指紋と今回押した指紋が同じであるということが確認されればいいわけでございます。そのためには同じ押し方さえしておけばその照合の用には十分立ち得るということから、その改正を行うことが可能である、差し支えないという結論に達したわけでございます。
○天野(等)委員 今いみじくも局長がおっしゃったとおりだと思いますよ。回転指紋にしてあったのは、これは警察が指紋を採取する際の方法ですし、わざわざ外国人登録法でも政令の中に指紋の押し方まで一条入れて規定をしておいたということは、やはり外国人登録法の指紋採取も犯罪捜査との関係がかなり色濃く残っていた、そういう時期のものだったろう。今、いろいろな形で指紋押捺拒否という運動あるいは外国人登録法そのものについての改正の動きの中で、指紋を一般犯罪捜査には使わないという原則が強く打ち出されてきたときに初めて、ここまでの必要はないだろうというふうにお考えになったのではなかろうかと私は考えます。もちろん犯罪捜査のためにもともと用意をしておったんだというふうにはお答えにならないかもしれませんけれども、当初から単に同一性だけの問題ならば、あんな回転式でやるんだなんという規定を入れておく必要なんかもともとなかったものだろうと思う。これは毎回押すということになっていたわけですから、毎回同じ押し方でやっていさえいれば、それでもってできたはずなんです。 ところが、そうなってなかったということは、しかもそれが普通のいわゆる拇印というものの押し方ですし、この拇印というものについて、外国人の方はともかく、日本人については多少経験があります。拇印というものは比較的押します。これは何もどうやって押さなければならないということは定められているわけじゃありません。どうやって押すかというような方法まで定めておいたということの中に、この外国人登録法の指紋押捺というものが持っているある差別の感じを私は持つわけです。それが外国人の方たちにも非常に屈辱感として映ってくるのじゃないかというふうに感じます。あの回転式の指紋、これは確かに外国人だからじゃなくて、日本人だってあの回転式の指紋で押させられるというのは決して気持ちのいいものではございません。個人的なことを申しますと、実は私のうちに空き巣が入りましたので、その関係があって私の指紋を私の方で申し出をしてとったことがございますが、気持ちのいいものじゃないということは私自身しみじみよくわかる。 指紋押捺制度も一つの歴史的な経過を持ってきている。したがって、ここで今まさに立法を含めて新しい外国人登録制度の同一性の確認ということをぜひともお考えをいただきたいし、これはこれだけ世論が盛り上がっている今が一番いい時期なのではないかというふうに私としては考えるわけでございますが、この点でいかがでございますか。
○嶋崎国務大臣 今、指紋の問題について非常に多角的な御質問があったわけでございますが、我々も過去のいろいろな経緯というものを十分踏まえ、また先ほど来お話がありましたように、制度ができたから余りはっきりしてない外国人の居住者の数が減ったというような論理もありましたけれども、逆にこういう制度を行うということがそういうことを促進をした役割というものも持っていたと思うのでございます。また、こういう制度が実施されましてからも、私の承知するところでは相当数の問題のあったケースも出てきておるというふうに見ておるわけでございます。 しかし、いずれにしましても、そういう長い経緯の中で今日に至ったわけでございまして、さきに私たちも御説明申し上げておりますように、外国人の地位なり待遇なりというような問題につきましての制度をどういうぐあいに運用するかということについては多くのいろいろな議論があることは承知をしておるわけでございます。また、既に御承知のように五十七年にこの改正を行って、その際にもある意味での改善を行ってきたという現実もあるわけでございます。今回の場合に対処する場合、我々はいろいろ考えましたけれども、制度的な改正を法律上やるということはいろいろな意味でなかなか難しい事態があったわけでございまして、そういうことの背景の中で知恵を絞って今度の改正案をつくってみたわけでございます。御指摘がありましたように、指紋のやり方も要するに普通の拇印を押すというような平面的なものにするということにしたわけでございますし、かつまた、それに使用するインク等につきましても工夫を重ねて、ともかく後に問題が余り残らないような制度の改正も行ったわけでございます。 いずれにしましても、そういう努力を積み重ねてきたわけでございまして、今後も世の中の推移というものを十分見きわめていかなければならぬというふうに思いますけれども、本年度におきましてはこういう制度改正を前提にしまして、我々の工夫してきたところを酌んでいただきまして、在留外国人の皆さん方も今度の登録の切りかえにつきましてぜひとも御協力を賜りたいというふうに思っておるというのが現実でございます。
○天野(等)委員 今度は川崎の李さんの事件に関係してでございますけれども、今各地でいろいろな形で起こっています指紋押捺拒否というようなものについて、警察当局としての具体的な対応についてちょっとお尋ねをしたいと思います。 まず、川崎の李さんの事件で強制捜査に踏み切られた、逮捕請求をされたというその理由ですね。これは任意捜査というのが本来だと思いますし、またこの種の事件でいけば、既に押捺をされていない登録原簿もあるわけでございますし、これは押していないということの証拠といいますか、そういうものはもうかなり歴然としたものとしてあるわけでございますので、通常考えれば強制捜査でというケースとは到底思えないわけです。 まず、こういう指紋押捺拒否の事件について現に今まで検挙された数、その中でいわゆる強制捜査、身柄を拘束してというような捜査に入ったのがどのくらいあるかということについて警察庁の方から。
○赤木説明員 お答え申し上げます。 法違反を認知いたしまして事件捜査を終えたものは昭和五十五年以降二十七件でございます。このうち強制捜査は二件、そのほかの二十五件につきましては任意捜査により処理をしているところでございます。
○天野(等)委員 通常、任意捜査だと思いますが、この二件について強制捜査で行われたということの理由は何でございましょうか。
○赤木説明員 今回の川崎におきますところの事件について申し上げますと、本件につきましては、従来から所轄警察署が任意捜査を推進してきておったわけでございます。被疑者の方に対しましても再三にわたって呼び出しに応じていただくようにお願いをし、手だてを尽くしてきたわけでございますが、再三の呼び出しにもかかわりませず、正当な理由なく呼び出しにも応じていただけない、要するに出頭の意思が認められない、そういった理由など諸般の事情を本件について考慮いたしまして逮捕の必要性があろう、こういう判断に達したわけでございます。したがいまして、逮捕状の発行を得まして逮捕に至った、こういう経緯でございます。
○天野(等)委員 出頭要求をしたということはわかるのですが、こういう事件ですからそんなに手間のかかることでもないと思うのですが、この被疑者といいますか、李さんのところにこちらが行って、警察の方で行ってその同一性を確かめるなり何なりというような——呼び出しをして調べるというのが通常の任意捜査の形ではあると思いますけれども、必ずしもそれにこだわる必要はないのではないかと思うのですが、こちらから行って捜査してくるというような形の捜査もなさったのでございましょうか、これはしていないのでしょうか。
○赤木説明員 お尋ねではございますけれども、本件はただいま検察当局において捜査中の事件でございますので、具体的な内容につきまして申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
○天野(等)委員 それじゃ一般的なこととしてお尋ねしてもいいのですけれども、必ずしも呼び出して警察署で調書をとるという方法までしなくても、また調書についていえば、被疑者には当然黙秘権もあるわけですから、必ずしも調書がなければならないというものでもない。私がちょっと考えまして、同一性さえはっきりすればそれはそれで事件としては立件できるのじゃないかなという気もするのですが、私、素人ですからこれはそういくかどうか。普通に考えますとそれで十分なんじゃないか、それならば何も逮捕というようなところまでやらなくても、本人も恐らく自分としては法の判断をまつという気持ちでしょうから、その際の立件の仕方というようなことで、任意捜査ということも、任意捜査のままでやっていく方法というようなものも考えられるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○赤木説明員 先生御指摘のように、任意捜査というのが原則ではあるわけですけれども、しかし、単に呼び出しに応じない云々ということではございません、それ以外にもさまざまな要素というものもやはり捜査当局としては考慮いたしまして、所定の手続を経まして強制捜査を行ったという経緯があるということを御理解いただきたいと思います。
○天野(等)委員 ところで、この李さんの事件はその後検察庁の方では処分保留で釈放という形になったわけでございますが、警察としては身柄を確保しておくという点についての必要性はなかったあるいは現にないというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
○赤木説明員 検察庁が被疑者を釈放されたことにつきましては、本人が法違反の事実を認めたこと、それから被疑者が出頭要請に応ずる確約をしたということからその必要がなくなって所定の措置をとられた、こういうふうに理解をしております。
○天野(等)委員 これについては、警察の段階ではどうだったのでございますか。
○赤木説明員 もちろん、警察といたしましては、逮捕の必要性があるという形で逮捕をし、所定の手続を経た後検察庁に送致をいたしたわけでございます。私どもとしては、法の規定に基づいて万全の措置をとった、かように考えております。
○天野(等)委員 これは自宅で逮捕でございますか。
○赤木説明員 出勤途中の路上においてでございます。
○天野(等)委員 警察としては、任意捜査で捜査をしていくことができるということの中には、出頭してきて任意に犯罪事実を認めるというそこのところまでなければ任意捜査にはいかないのだというふうに考えておられますか。こういう事件をいわば任意の形で立件をしていく。私は、警察の立場として起訴、不起訴はともかくとしまして一応立件をしなければならないという立場は、それはそれとしてわからないわけではありませんが、しかし、そうだとしてもあくまでも任意の形でというふうに考えるわけですが、どういうあたりが任意か強制捜査になるかの境目になるのでしょうか。
○赤木説明員 これは大変お答えしにくい質問でございますが、一般論として申し上げるのははなはだ困難であろうかと思います。単に任意であって事実の確認を警察署でできるだけというのが、また任意と強制捜査との分かれ目だけでもございません。いろいろな要素があるわけでございますので、一般論としてはこれは任意捜査と強制捜査、どちらをやるべきかという区別につきましてははなはだお答えすることが難しかろうと思います。
○天野(等)委員 もちろん、外国人登録法のこれに関してですよ。その点で、一般事件について私は申し上げておるわけではございません。
○赤木説明員 外国人登録法違反事件につきましてもやはり同じことを申し上げることができようかと思うわけでございます。やはり個々具体的にその事件、その事件について判断をすべきものであると考えるわけでございます。
○天野(等)委員 この李さんの事件で、逮捕されたということではかなり国際的な反響もあったかと思うわけですが、外務省の方にも一応来ていただいておりますが、外務省では二十三日、二十四日ですか、事務レベルでの協議ということが行われるというふうな報道でございますけれども、この事件についてどういうふうに受けとめておられますか。
○渋谷説明員 五月二十三日、二十四日の両日にわたり東京において実務者レベルで非公式な意見交換を行いますけれども、これは在日韓国人の待遇の問題のほか、その他二国間で問題になっているもろもろの点について意見交換を行うという趣旨でございます。 指紋押捺問題につきましては、外国人登録法の制度上及び運用上の問題点につきまして、関係省庁で現在までのところ検討を行ってまいっておりますけれども、今回閣議で了承を見た以上の結果はまだ出ておりません。したがって、今回の非公式な意見交換の場では、基本的には日韓双方の相互理解を一層深めるという目的を持って韓国側のこの問題に関する基本的な考え方を聞き、我が方の立場を説明するということに終わると思いますけれども、今回政府がとりました改善措置についても、我が方の姿勢を示すものとして韓国側の理解と評価を得るために努力するつもりでおります。
○天野(等)委員 きょうの閣議決定の結果で理解を求めるというのはわかるわけですが、これで韓国に対して検討は終わったんだというようなことになるのですか。それとも、やはり今後ともこの指紋押捺の問題については、さらに指紋押捺の廃止という方向に向かっての何らかの検討なり何なりということが外務省の立場として考えられるのでございましょうか。
○渋谷説明員 現在、関係省庁間で続けられております検討は引き続き行われるものと考えております。
○天野(等)委員 指紋押捺問題は一応ここであれしまして、実は平沢問題について一つだけちょっとお尋ねしておきたいと思います。 仙台拘置所から八王子へ移監をされたということですが、これはどういう理由でなんでしょうか。平沢氏の病状ということでなのか、あるいは今行われています人身保護請求ですか、そういうことの審尋のためというようなことなんでしょうか。
○嶋崎国務大臣 平沢の問題につきましては、高齢者としては現在比較的良好な健康状態を保っているというふうに私は思っておるわけでございますが、何分にも高齢のために、緊急に適切な医療措置を講ずる事態を迎えることも予想されるわけでございます。したがって、それに応じた処理を行う必要があるというふうに常日ごろ考えておったわけでございます。医療機構がそういう意味で整備されている八王子の医療刑務所に移送することが適当であると考えておったわけでございますが、かねてからその可否、その時期、その方法等について考えておった次第でございます。たまたま本年の四月人身保護請求がなされ、その準備手続において請求者側から裁判所に対し、本人の審尋を行われたい旨の強い要請があり、裁判所の方でも、本人が在京の施設におられる場合には審尋を、審尋というか準備的なお話を聞いてもいいというような感覚が見受けられましたので、それを一つの機会に八王子の医療刑務所に移した方が適当であろうという判断をいたしまして八王子に移送したというのが現実でございます。
○天野(等)委員 そうしますと、人身保護請求の問題ですが、これからどういう手続で進んでいくのでしょうか。大変わかりにくい。通常の民事、刑事の手続ともどうも違うようなあれなんですが、これからはどういう形でこの手続が進み、どういう形の判断が——内容の問題じゃありません。形式問題ですが、その点いかがですか。
○上谷最高裁判所長官代理者 人身保護法及び人身保護規則の中に手続について規定がなされております。まず、人身保護法の第七条によりますと、「裁判所は、請求がその要件又は必要な疎明を欠いているときは、決定をもってこれを却下することができる。」ということになりますので、不適法な申し立て等でございますれば、この段階で却下ということになるわけでございます。さらにその後いわゆる準備調査、民事訴訟で例えますれば準備手続に類した手続かと思いますが、準備調査という段階で双方の陳述を聞くという手続がございます。その手続をいたしました結果、人身保護法の第十一条に規定がございますが、「請求の理由のないことが明白なときは、裁判所は審問手続を経ずに、決定をもって請求を棄却する。」ということになるわけでございます。これを受けまして第十二条では、「第七条又は前条第一項の場合を除く外」、つまり、要件が欠けているとして却下され、あるいはまた、請求の理由のないことが明白だとして棄却される、そういうようなことでない場合でございますが、その場合には「裁判所は一定の日時及び場所を指定し、審問のために請求者又はその代理人、被拘束者及び拘束者を召喚する。」ということになっておりまして、いわゆる審問期日というのが開かれることになります。その審問期日を開きました上で、今度は人身保護法の第十六条でございますが、「裁別所は審問の結果、請求を理由なしとするときは、判決をもってこれを棄却し、被拘束者を拘束者に引き渡す。」ということになりますし、第三項では「請求を理由ありとするときは、判決をもって被拘束者を直ちに釈放する。」こういうふうな手続が規定されております。 現在、この関係の事件につきましては東京地方裁判所で審理されておりまして、いわゆる準備調査の段階にあるわけでございまして、その準備調査の結果裁判所の御判断により、審問期日が開かれるか、あるいはそれ以前の段階で請求が決定をもって棄却されるかにまず分かれると思います。もし審問期日が開かれるということになりますと、公開の法廷で審問期日を開いて双方の主張をもう一度よく聞き、さらに必要な証拠調べをいたしまして、いわば本案に当たる最も厳格な手続による判決があるわけでございます。その場合にも、請求を理由ありとして釈放を命ずる裁判になるケースと、それから、結論的には請求を理由なしとして判決をもって棄却する場合と、二通りに分かれるわけでございます。先ほど申しましたとおり、本件につきましてはいわゆる準備調査の段階というふうに聞いております。
○天野(等)委員 通常、これはどのくらいの期間が——この法律には「迅速」にということが書かれているようですけれども、大体どのくらいの期間がかかるものですか。
○上谷最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、人身保護法にもあるいは規則にも、「速やかに裁判しなければならない。」あるいは他の事件に優先して審理をしなければならないという規定もございますし、また、原則として、何日以内に期日を指定する、あるいは判決を言い渡すという規定があるわけでございまして、実務におきましても、できるだけその規定に従った運用がなされております。 ただ、この点につきましては、実は私ども詳しい統計はとっておりませんので、委員のお尋ねがございましたので、たまたま最高裁判所の訟廷部に報告されている事件の中で、事件の種類を見ていただきまして、大体の傾向をちょっと調べていただきました。 その調査結果で申し上げるわけですが、これは一番数の多うございますのは、実は子供の取り合い、両親の子供の取り合いのケースが非常に多うございます。そういうふうなケースになりますと、実は、法律上は人身保護事件になりましても、実際問題として一刀両断にやるというのはなかなか難しゅうございますので、ある程度双方を説得しながら手続を進めるという関係もございまして、若干の日時を要するケースがあるわけでございます。しかし、それでも大体一カ月前後で普通ならば判断になっておるようでございます。件数自体が、母数が少のうございますので、統計的には、数字で平均数字を出しても余り意味がないかと思います。 そういう意味で、新聞でも報道されましたが、宇都宮の病院に拘束されている被拘束者が、精神衛生法に定める同意がないのに入院させられたということで釈放を命じられたケースがつい最近ございました。そのケースを御紹介いたしますとよくおわかりだと思いますが、この請求がなされましたのが本年の二月十三日でございまして、東京高裁に提訴されまして、直ちに宇都宮地裁へ移送する旨の決定が十五日になされております。宇都宮の地方裁判所がその記録を受理いたしましたのが二月二十日でございました。その後、一度準備調査をいたしました上で、三月四日には審問期日を開いております。規定どおりその四日の後でございます三月八日に釈放の判決を言い渡しておりますので、宇都宮の地方裁判所が事件を受理いたしましてから十六日目に釈放の判決が出た、そういう例がございます。 したがいまして、裁判所の運用の実務といたしまして、特にこういうふうな釈放になるような場合、人権保護に十分な配慮をして迅速に処理するという扱いが行われているわけです。ただ、事案によりましていろいろ難しい問題も含むという場合がございましょうし、本件におきましては、たまたま時効成立という主張をなさっている日が五月七日でございましたので、それ以後の期間が本来迅速に処理すべき要請の働く期間になろうかと存じます。
○天野(等)委員 これで終わります。
○高村委員長代理 午後二時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後一時四分休憩 ————◇————— 午後二時十四分開議
○片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 この際、お諮りいたします。 本日、最高裁判所小野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○片岡委員長 年前中に引き続き質疑を続行いたします。中村巖君。
○中村(巖)委員 本日は、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案の審議でございますけれども、この法案について質問をする前に若干他の問題についての質問をいたしたい、こういうふうに思っております。その問題は、一つはほかならぬ平沢の問題であり、もう一つは外国人登録における指紋押捺の問題でございます。図らずも本日はこの二つの問題の集中審議のような観を呈しておりますが、したがいまして私の質問も一部他の委員の質問と重複をすることもあります。その点を御了承をいただきたいというふうに思っているわけでございます。私自身はこの二つの問題で当委員会で初めて質問をいたしますので、御了承をお願いをいたしておきます。 最初に平沢問題でございますけれども、帝銀事件の平沢貞通氏は、最近宮城刑務所から八王子の医療刑務所に移監をされた、こういうことでございますが、平沢氏の健康状態については、新聞で一部伝えられておりますけれども、実際に今九十三歳という高齢で健康状態はどうなんだろうかということが世の中の関心を集めておりますので、現在の健康状態について、まず法務省当局にお伺いをいたしたいと思います。
○石山(陽)政府委員 八王子に四月の二十九日に移送したわけでありますけれども、現在のところ、前におりました宮城刑務所仙台拘置支所在所中の健康状態と変わりないということでありまして、最近すっかり落ちついておるというのが昨今の情勢でございます。しかし、委員御質問の御趣旨にもありますように、何分にも九十二歳という高齢でございますものですから、こういう年齢の高齢者はちょっとしたことですぐ健康状態が激変するということがあり得ますので、それらに対して十分医療措置がとり得るように所では気をつけて処遇を行っておる、こういうのが現状でございます。
○中村(巖)委員 今のお話では落ちついておる、こういうようなことですけれども、仙台の拘置支所にいるとき、それからさらに引き続き現在、肉体的な病気というようなものがあるのでしょうか。それからさらに、精神的な健康というか、そういう面ではどうなっているのでしょうか。
○石山(陽)政府委員 具体的な個々の収容されております者の病状でございますと、プライバシーの問題がありますので余り詳細には申し上げかねるわけでありますけれども、本人は肉体的にはほぼ現在のところ発症しておるような病状というものは特にございません。多少目が不自由であるということはありまするが、これも新聞を見ることができる程度でございますので、いわゆる肉体現象としてはさしたることはないと思います。 それ以外の面につきまして、特に精神状態という御質問でございましたが、これは、高齢者に似合わず頭脳はまだ大変明晰でありまして、応対につきましてもはきはきしておる。ただ、高齢者特有の状態として、全体の印象からいいまするとやはり多少肉体的な衰えが目立ちますものですから、歩行その他について動作がスローモーになる、こういう状態がございますので、事故等で転んだりすることのないように、あるいは風邪を引かしたりすることのないようにという点を注意して処遇をしておる、こういう現状でございます。
○中村(巖)委員 そうなりますと、今八王子の医療刑務所に収容をしているということは、ただ高齢だから医療刑務所に収容しているのである、何らかの病気だからではない、こういうことになりますか。
○石山(陽)政府委員 一種の年相応の老衰状態が進んでおるという形でございますので、一般受刑者の場合でございまするとやはり高齢者にはいわば養護的な処遇をしなければいかぬ、こういうのと同じような状態で、病院処遇でいいますると、特に老衰に備えて処遇をやっておる、こういう現状だというふうに御理解いただければよろしいと思います。
○中村(巖)委員 この平沢氏に関しましては、従来言われておりますように、何度も個別恩赦というか刑の執行免除というか、そういうような申請というものがなされている。私どもの聞いておりますところによりますと、大体五回ほどそういう申請がある、こういうことでございますけれども、いつごろどういうような申請があって、結果としては申請が入れられないということになったのだと思いますけれども、どういう経緯になっておるのか。現在の恩赦の申請はいつなされて、今どういう状態にあるのかということをお伺いしたいと思います。
○俵谷政府委員 お答え申し上げます。 御指摘のように、平沢貞通につきましては本人から恩赦の出願がございまして、昭和三十七年十二月六日から本年二月十四日までの間に五回にわたって中央更生保護審査会に行われております。一回目が三十七年十二月六日、二回目が三十八年十二月十四日、三回目が四十六年七月九日、それから四回目が昭和五十五年十二月二十二日、それから五回目が本年の二月十四日。この本人からの出願でございますが、初めの四回はいずれも特赦の申請でございます。それから最後の五回目の出願が刑の執行の免除、こういう内容になっております。最初の三回の特赦の出願に対しましては、一回目は三十八年五月十八日、二回目は四十六年六月二十二日、三回目が五十五年十二月十六日、いずれも恩赦不相当ということで議決がされております。したがいまして、現在なお第四回目と五回目の恩赦の出願が審査会に係属しておるということになっておりますが、本人につきましては御案内のように東京高等裁判所に再審の請求がなされておりますし、また、最近人身保護請求訴訟が東京地裁に係属いたしております。したがいまして、審査会におきましてはこれらの審理の状況等を見ながら慎重に審査を進める、こういう状態にあるわけでございます。
○中村(巖)委員 この中央更生保護審査会に対する恩赦の申請というものについては、恩赦の申請があればそれに対する、これが不相当であるなら不相当ということで本人に対しては通知があるということだと思うのですけれども、どういうわけでそれは相当でないのかという理由等は公表をされないことになっておるのでしょうか。
○俵谷政府委員 審査会におきます恩赦の審理につきましては非公開を原則といたしまして、その議決につきましても公にはされない、こういう建前になっております。これは本人の名誉その他はもちろんでございますが、関係者等に問題が波及するという場合もございまして、本人には通知をいたしますが、これは公表はいたさない、こういうことになっております。
○中村(巖)委員 今の点ですけれども、そうすると、そういう理由づきの決定書みたいなものというものもないわけですね。
○俵谷政府委員 委員会におきましては議決書は作成されております。
○中村(巖)委員 議決書みたいなものはあるけれども、それは外部には公表されない、本人にはその結論だけが示される、こういうことですか。
○俵谷政府委員 さようでございます。
○中村(巖)委員 今、従来の恩赦の申請についての審査結果、いずれも相当でないということでありますけれども、それは見ておりますと、恩赦の申請から結果が出るまでの間にかなり期間がかかっておる、こういう状況になっているようでありまして、四回目の申請に至っては、五十五年十二月二十二日に申請されて今日までなお結論が出ない。もう四年有余経過をするわけでありますけれども、通常そういう恩赦の審査というものについては相当の期間がかかる、何年もかかる、こういうことになるんでございましょうか。
○俵谷政府委員 もちろん、この審査を行うに当たりましては、いろいろな記録の検討であるとか、あるいはいろいろな方面の意見を聞くとか、慎重な審理が行われるわけでございますが、事案によりましては大変膨大な裁判記録等もあるというようなことで審理に時間もかかるということも事実でございますが、片や、この再審請求等がなされておりますとその推移も見る、刑事裁判所で審理が行われているということを考慮しながら審理を進めるということでございます。それでかなりの時間を要した、こういう結果になっておるわけでございます。
○中村(巖)委員 特赦とか減刑とかあるいは刑の免除ですか、こういうものについては中央更生保護審査会でもって審査をなさる、こういうことでありますけれども、この中央更生保護審査会というものはどういう構成というか、どういうメンバーをもって構成をされているということでございましょう。
○俵谷政府委員 中央更生保護審査会の委員につきましては、これは法務大臣の任命でございますが、国会の同意をいただいた上で任命される、こういうことになっております。 実際にはその人員は五名でございますが、その一名が委員長、それから他の二名は常任の委員、それからあとの二名が非常勤の委員、こういうことになっております。現在の委員長は元高等検察庁の検事長をやられた方でございます。それから他の一名は高等裁判所の長官をなされた方、それからもう一名は地方更生保護委員会の委員長の経歴を有する方、他の二名は、一名は女性の方でございますが、いずれも学識経験者ということになっております。
○中村(巖)委員 個別恩赦のうちに特赦とかあるいは刑の免除とかあるわけでありますけれども、特赦にしても刑の免除にしても、大体それが相当するかどうかの審査基準というかそういうものは同じようなことではないかというふうに想像いたしますけれども、概括的に言って、これはなかなか難しい質問かもわかりませんが、恩赦というものはどういう基準でもって個別恩赦を相当とする、あるいは相当としない、こういうことになるのか、概略をお聞かせをいただきたい。
○俵谷政府委員 個別恩赦ということになりますが、この個別の恩赦ということになりますと、それぞれ個々の事件によりまして、犯罪の状況なり、あるいは犯罪後の情状あるいは本人の性格など、それぞれケースによって違うわけでございます。その状況、ケースの事情に応じまして審査会で審理をされた上で結論を出すということになるわけでありますが、基準的なものを申し上げてみるということになりますと、恩赦を行うにつきまして、犯罪の状況と申しますか犯情あるいは本人の行状、犯罪後の状況、これは被害者その他の感情なり社会感情、こういったもの等が入ると思いますが、犯罪後の状況等にかんがみまして恩赦をすることが赦免をすることが相当と認められるものというのが一般的な基準ということになろうかと思います。これを中心にいたしまして、個々のケースにつきまして、どういう状況であったかということが考慮に加えられていくということになろうと存じます。
○中村(巖)委員 そこで、平沢氏の場合においては新聞紙上でもいろいろ言われておりますけれども、死刑の判決が確定をし、その後今日まで三十年にわたってそれが執行をされないという状況があるわけでございまして、それと同時に、今九十三歳というこういう高齢になったということがあるわけでありますけれども、この死刑を執行されないままに三十年という長い年月を経過をしたということ、それから現に九十二歳の高齢で余命が幾ばくもない、こういう二つの事情、これは恩赦に当たって恩赦の許否を決める基準の中では一定の意味合いを持つものでしょうか。
○俵谷政府委員 御指摘の三十年にわたりまして刑の執行がなかったということ、あるいは九十三歳という高齢に達しておるということ、これはもちろん客観的な事実でございますが、このような事態になりましたことについてはいろいろ経過があったわけでございまして、これは既に御案内のとおりでございます。こういう事情をどう評価するかということは問題でございますが、いろいろ見方があろうかと思いますが、この点につきましても、審査会におきましては十分考慮するということは間違いないと思います。
○中村(巖)委員 そこで、現在出されておりますところの恩赦に対する今後の結論が出る時期の見通しというかそういうものでありますけれども、それは全くおわかりにならない、こういうことになるわけでしょうか。 それから、先ほど来のお話で、再審の請求がなされて刑事手続がされておるということ、これは考慮しながら審査を進めるのだということでございましたけれども、そうしますと、現段階では再審の請求が出されておるわけですから、それに対する結論が出るまでの間は、審査そのものがいわば中断をしている状態というふうになるわけでしょうか。
○俵谷政府委員 客観的な事実と申しますかあるいは前例という点で申し上げてみますと、再審請求が係属している間に恩赦の結論が出された、こういう前例はないわけでございます。審査は中央更生保護審査会におきまして行っておるわけでありますが、本人の恩赦の出願はいわゆる特赦、その内容は、自分は真犯人ではない、したがって赦免を求める、こういう趣旨の恩赦の申し出の内容でございます。片や、同じように真犯人ではない、こう言って再審請求をしておるわけでございます。それが刑事裁判所に係属しておる、こういう状況でございますから、中央審査会としましても、その裁判の動向、推移を見守るということは当然ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
○中村(巖)委員 ちょっといま一点気になるというか、そういうところがありましたのでお尋ねをしますけれども、本人が真犯人ではないという、こういうことを主張をして特赦の請求をしておるという状況、それは確かにそうだろうと思うのですけれども、そのことは特赦、刑の執行免除でもいいのですが、申請をする理由というものは、その特赦なり刑の免除をするかどうかということを決めるために、本人が申し立てている主張が理由があるかないかということを判断する必要があるのでしょうか、ないのでしょうか。
○俵谷政府委員 その判断自体につきましては、審査会の方でなさるわけでございます。具体的な事件につきましてはそういうことでございますが、前例を見てみますと、いわゆる改悛の情があるかないかということが大きな問題点になるわけでございますが、改悛の情が認められないというケースにつきまして恩赦が認められた、こういうケースもまたないわけでございます。さような意味合いで、平沢氏の特赦の出願というものは、客観的にはそういう主張であるということを申し上げたわけでございます。
○中村(巖)委員 恩赦の申請と同時に、人身保護の請求がなされておって今裁判所で審理中である、こういうこと、これは新聞でも明らかになっているわけでありますけれども、この人身保護の請求について、それは拘束者は法務大臣ということになるのじゃないかと思いますが、その人身保護請求の請求理由というか、それは正式にはどういうことになっておるのでしょうか。
○筧政府委員 拘束者といたしましては、請求者の請求書によりますと、法務大臣、検事総長、それから宮城刑務所長、それから仙台の拘置支所長というふうに挙げられております。ただ、私どもの解釈では、拘束者というのはやはり現実の拘束者を言うものであると考えますので、法務大臣を拘束者として挙げることは法律上は適当でないというふうに考えておりますが、その辺の御判断は裁判所でなさることになろうかと思います。
○中村(巖)委員 今、二つのことをお尋ねしたのですけれども、後の方の請求の理由、それは法務省の方でわかっておりますか。
○筧政府委員 請求の理由は、簡単に申し上げまして、本年の五月七日以降は死刑の時効が完成するので拘束する理由がなくなる。したがって釈放せよというのが請求の理由でございます。
○中村(巖)委員 人身保護請求そのものが出された時点でまだ時効が完成しておらない、おらないけれども五月七日以降は時効が完成するのでというのが当初からの請求の理由、こういうことになるのですか。
○筧政府委員 直接担当ではございませんが、その趣旨につきましては、請求がなされた後に裁判所等の予備調査がいろいろあったわけでございますが、その点は将来給付の訴えの性質を持つものというふうに解釈されているようでございます。
○中村(巖)委員 死刑の確定判決があってから執行されないままに三十年経過をした場合に、これは時効の規定を適用すべきであるかないかということについては、従来からもいろいろ議論があるところでございますけれども、学者の中にはやはり時効の規定を適用するべきである、こういう御意見の方もあるようでございます。法務省としては、法務省の法律解釈とすればやはり時効の完成はないんだ、そういう場合に時効の規定は適用されないのだ、こういう解釈でございましょうか。
○筧政府委員 先生申されておるとおりでございまして、現在の拘置されている状況は国家の刑罰権が行使されている状況である。したがいまして、国家刑罰権の不行使を前提とする時効を論ずる余地はない。したがって時効は完成しないといいますか、進行していないんだというのが私どもの考えでございます。
○中村(巖)委員 そうだとすると、よく言われる議論としては、逃亡をしている者との対比の中で非常に不公平ではないかというようなこと、あるいは時効の制度の根本の趣旨、それからすれば、言ってみれば類推してもいいのじゃないかというような議論、これに対しましてはどうお考えでございましょうか。
○筧政府委員 不平等論と申しますか、逃げている場合には時効になり、拘置されていれば時効にならない。時効になりますのは逃げている場合に限りませんで、要するに国家刑罰権の行使を受けていない状況が続けばということが正確であろうかと思います。 よく言われておりますのは、逃げた場合と拘置されている場合とで不公平ではないかということでございますが、やはり時効制度の趣旨といいますか本質というものが、一定の事実、状態が続いた場合にそこに一定の事実上の秩序が形成される、それを尊重するというのが時効制度の趣旨でございますので、午前中も申し上げましたように、ほかの場合、あるいは民事上の場合その他をとってみましても、時効の場合にそういう不公平な結果が生じるということは当然といえば当然のことであって、それをもって、だから時効が完成するんだということにはならないのではないかというふうに考えております。
○中村(巖)委員 恩赦についても、現在、先ほど私がお尋ねしたような状況の中では、これはなかなか簡単に結論が出るというものではない。言ってみれば相当の年月を要するような結果になるだろう、つまり、再審の結論を待って云々ということになればかなり先の話になる。また、人身保護の請求についても、刑事局長の御答弁によれば時効は完成しないのだという解釈で、それは保護請求そのものが棄却をされるだろう、こういう結果になりかねないわけでございまして、そうなりますと、その間にこの平沢氏が、このまま医療刑務所の中で死んでしまうのではないかということが大変に懸念をされるわけであります。それについて、人道的な立場から法務省としてはもうちょっと別の措置というものが考えられないのかということを、私どもこの時点に立ってもつくづく思うわけでありますけれども、この点について大臣のお考えはいかがでございましょう。
○嶋崎国務大臣 平沢の問題につきましては、これまでもたびたび申し上げておりますように、死刑の確定裁判の執行として拘置がずっと行われておるわけでございまして、刑の時効の進行を論ずる余地はない。したがって、刑の時効を理由とする釈放はあり得ないというふうに実は私たちは今までずっと考えておるわけでございます。 しかし、御承知のように、何分にも非常に高齢にも達しておるというようなこともありまして、何かそういうことを理由に釈放すべきではないかというような御意見があるということ、今委員が御指摘されるまでもなく、我々の耳にも再々入っておるわけでございます。 しかし、この問題、先ほど来いろいろ御質問の中でも明らかなように、ある意味で少しにっちもさっちもいかないような状態で今日まで来ているというのが実態ではないか。しかも年齢が九十三歳にもなっておられるというようなことになっておるわけでございます。しかし、この時点で、たまたま三十年という時間だけを計算しますと、私、法務大臣という仕事を仰せつかっておるわけでございまして、この問題を取り上げられるときに、ある意味では非常に深刻な気持ちを味わっているというのが実態であるわけであります。 しかし、死刑につきましては、御承知のとおり高齢を理由として死刑の執行を免除するとか、あるいは拘置を解いて釈放するということは、法律上許される余地がないわけでございますし、また死刑を言い渡された者は、再審で無罪等の判決があった場合、あるいは恩赦があったというような場合にしか釈放されないというのが現実であるわけでございます。したがいまして、今回の人身保護請求の問題もありますし、この判断は裁判所でいろいろ御判断を願うわけでございますけれども、やはり今度の移送で考えましたように、仙台の拘置所では、高年齢に達しておられる、しかもいつ、どういう事態になるかもわからない、また、この刑務所の運用というような面からもいろいろな問題が出てきておる、そういうことで八王子の医療刑務所に移した、そういう現実がある。いろいろ考えた未、そういうことを考えなければならぬのじゃないかということを従来私も思ってきましたし、たまたま人身保護請求がありまして、何か準備調査の段階で、東京におられるなら審尋をしてみたいというお気持ちがあったということがありましたものですから、それをあわせて八王子の医療刑務所に移したということが、私、この時期に考えられる精いっぱいの知恵であるということで、ひとつぜひお認めを願いたいというふうに思っておるわけでございます。 なお、再審とか恩赦の出願が現にあるわけでございますから、その問題については余り私の意見を申し上げるようなことではなしに、事態を見守っていきたいというのが私の現在の心情でございます。
○中村(巖)委員 今の点について言いますると、九十三歳にもなった人間に死刑を執行するなんてことは考えられない、また、そういうことがあり得るんだとすれば死刑制度というのは何だろうかということにもなってしまうわけでございますし、人道的な見地から言いまするならば、そういう希有の事例に属することでありますので、何らかの超法規的な処置というか、あるいはまた平沢問題だけに対処をするための個別立法みたいなものも考えなければならぬ、そういう状況にあるのではないか。余りこういうような問題が多くあっては困りますけれども、現実にこういうふうになって、大臣御発言のようににっちもさっちもいかない状態ということになれば、何か考えなければならぬのではないだろうかというふうに私は思っているわけでございまして、大臣、今のところは知恵を絞っても医療刑務所に移すくらいしか処置がないのだ、こうおっしゃるけれども、再度法務省当局で知恵を絞っていただいて何らかの対処をお考えいただきたい、こういうふうに希望をいたす次第でございます。 次に、外国人登録における指紋の押捺の問題に移らせていただきます。 まず最初に、大変抽象的なことで恐縮でございますけれども、現在、外国人登録法というものがあって外国人の登録をさせているわけでありますけれども、この外国人登録法というものが外国人に対して現行法のやり方で登録をさせているこの目的というものはどこにあるのでございましょう。
○小林(俊)政府委員 先生今言及されました外国人登録法そのものの表現を使えば、外国人登録の目的は「外国人の公正な管理に資する」にあるということになるわけでございますが、これをもう少し具体的に砕けた言葉で申し上げますれば、外国人を対象とする行政の適正を期するということが第一義的な目的であるということが言えるかと存じます。外国人を対象とする行政というのは、もちろん入国管理行政というものがまずあるわけでございますけれども、そのほかにも医療の問題あるいは福祉の問題、さらに租税の問題といったような行政もあるわけでございまして、こうした行政を適正に実施するためには在留する外国人の身分関係あるいは居住関係を明確に把握する必要が極めて高いわけでございます。 また、第二義的には、外国人登録というものは外国人自身の利益にも即している面が非常に多いわけでございます。例えば日本人の場合には戸籍謄本とか住民票の写しとかを提出するような必要の生ずる場合に、外国人の場合には外国人登録に基づく登録済証明書というものの発給を受けて、その交付を受けて、これを提示することによってそれにかえているということがあるわけでございます。現実に年間約百万件の登録済証明書が市町村の窓口から発給されておるわけでございまして、このことを考えただけでも外国人登録というのは在留する外国人の本邦における社会生活上に大きな役割を果たしている、その利益にこたえているということも言えるわけでございます。
○中村(巖)委員 今、局長が外国人登録法の法文上の目的のことに言及されましたけれども、その法文上は「外国人の公正な管理」、こういうことになっているわけで、それをパラフレーズしていろいろおっしゃいますけれども、管理ということはやはり大変に問題ではなかろうかというふうな感じがいたすわけであります。日本人について管理をするためのこういう法律があるんだということになるとこれは反発を免れないわけで、外国人については管理するんだと言うと、何か特殊な差別をした、同じ人間としての土俵、土壌の上にない、そんな感じがするわけでありまして、管理という言葉を特に使われる意味といいますか、それはどの辺にあるのでしょうか。
○小林(俊)政府委員 私も、その「公正な管理に資する」という表現だけでは御理解しにくい点があると思いましたので、それをパラフレーズしてもう少し申し上げたわけでございます。 管理という言葉の是非という観点からあるいは再考の余地があるのかもしれませんけれども、また、私はその管理という言葉が立法の際に用いられるに至った経緯をつまびらかにいたしませんが、ただ、一つ今考えますことは、出入国管理という言葉は外国でも用いられておるわけでありまして、例えば英語の場合にはイミグレーションコントロールと言っております。したがって、そういう用法からのあるいは転用ということもあり得るかと存じます。
○中村(巖)委員 出入国の管理というものと外国人の管理というのは、それは私は違うと思うのです。出入国は出入国についての一つの統制をその際にするということであって、それはある程度やむを得ないけれども、常時日本に居住をしているような状態にある人を管理するのだ、こういうことは不適切きわまりないというふうに私は思うわけでありますけれども、そのことは議論してもいたし方ありませんので……。そういう管理的な発想というものが、いろいろな意味で今回の指紋押捺問題を含めまして外国人に、日本のやり方というものは大変に差別的であって人間としての立場を尊重をしてないやり方である、そういう外国人の考え方につながってこようかというふうに思われるわけでございます。 そこで、登録についてどういうふうに今現実にやっているか、これを知りたいわけでございますけれども、私が知っている限りにおいては、新規に登録する場合と、それから切りかえをする場合、こういうのがありまして、いずれの場合においても外国人登録原票というものに記載をさせて指紋を押捺させ、さらに外国人登録証そのものに指紋を押捺をさせ、さらにはまた指紋原紙というものに指紋押捺をさせる、こういうやり方で、それはいずれも市町村の窓口でやっているということのようでございますが、そのとおりでございましょうか。
○小林(俊)政府委員 在留する外国人の登録義務は入国してから九十日で生じますので、したがって九十日に満たない存留期間の外国人については実際上登録の必要はないわけでございます。それを超える者につきましては登録の義務が生じますが、ただいま御指摘の指紋につきましては、日本に一年以上在留することを認められた外国人のみについて適用されておるわけでございます。したがいまして、これらの外国人が登録するに際しましては、ただいま御指摘のございましたように、登録原票、指紋原紙及び交付される登録証明書に指紋が押捺されることになります。
○中村(巖)委員 そこで、先ほど午前中来のお話で、きょうの段階でその指紋の押捺の制度について閣議決定で若干の改変をする、こういうことでございましたが、改めてお伺いしますけれども、どういうところが改定をされることになるのでしょうか。
○嶋崎国務大臣 今回の改正につきましては、従来からも何らかの意味で、制度的には昭和五十七年の改正があったわけでございまして、制度自体の改変を行うということはどうだろうかというようなこともずっとあったわけでございますけれども、そういう中で、皆さん方も含めて多くの御議論があるということ、かつまた、御承知のように昨年九月、日韓の共同声明の中に引き続き地位及び待遇の問題について努力をするというような言葉が使われておることでも明らかなように、何らかそれに対応する努力をしなければいかぬというふうに我々は思っておったわけでございます。そういう中で、制度的な改正というのは非常に難しい。そういう中でぎりぎり解決できる工夫は何かないでしょうかということで、いろいろな意味で研究をしてまいったわけでございます。 そこで、今回の政令改正では、百八十度回転をする指紋のやり方、それを直しまして、平面で、ちょうど指紋を押捺をいただくと同じような感覚で取り扱ったらいいのではないか。そういうことにすれば、けさほど来も議論がありましたように、感覚が随分違ってくるということになるのではないかということで、その改正をきょう閣議決定をしたわけでございます。 しかし、それと同時に、黒色のインクを使って指紋をいただくということも一つは感触的にどうも悪い点もあるのではないか。それを解決する工夫は何かないだろうかというようなことで、精いっぱいいろいろなことを考えたわけでございますが、最後に到達したのは、特殊の紙を使いまして、その上に、薬液を手につけていただいてそれを軽く押していただくということで済ましていただく、そういうことをやれば、外国人の皆さん方に対して我々が引き続き努力をするという気持ちで研究をしてきた気持ちは少し受けとめていただけるのではないか、そういうことを背景にして、この夏の切りかえを円満に運行させていただきたい、また、関連の、これを執行していただく自治体の皆さん方にも、そういう意味で、我々の考えておるところを十分末端に浸透させていただいて円滑に運行できるのではないかというようなことで改正をしたわけでございます。かつまた、それを的確に運行するのには、そういう大量切りかえのときでございますので、事務にある程度の整理がきれいにつくように何らか通達を準備しておいたらいいではないかというようなことをあわせて、この問題をきょう閣議決定をし、また、運用の方法等につきましても改め、かつまた、執行のやり方についてもけじめをつけて理解をいただくというような考え方をとったのが経緯でございます。
○中村(巖)委員 そこで、話はもとへ戻りますけれども、市町村の窓口におきまして、先ほど、指紋の関係で三つの書類をおとりになる、まあおとりになるといっても、外国人登録証そのものは本人に交付をするわけでしょうけれども、そのうちの登録原票については市町村役場に保管をする、こういうことになるのだと思いますが、その保管については、これは閲覧とかそういうようなことができるようになっておるのでございましょうか。
○小林(俊)政府委員 これは午前中に御説明したことと重複することになって恐縮でございますけれども、登録原票の閲覧につきましては、閲覧を求める者が身分を明らかにして、その所属する機関が閲覧を必要とするに足る公的な機関でなくてはならないということがまず第一にございますし、第二に、その閲覧を求める理由が合法的なものであって、具体的にこれを必要とするその必要性を正当づけるものでなくてはならないということでございます。したがって、外国人登録につきましては、一般人がその閲覧を求めるということは認められておらないのでございます。
○中村(巖)委員 具体的な場合として、今閲覧を求めてくるという事案というのはどういう場合がございますか。
○小林(俊)政府委員 手元に具体的な数字を含んだ資料があるわけでございませんけれども、多くの場合には警察であるとかあるいは税務署であるとかといったような関係が多いかと存じます。
○中村(巖)委員 一方、指紋原紙の方は法務省でもって保管をしているというふうに聞いておりますけれども、それは市町村の窓口で指紋原紙をおとりになった場合に、市町村は直ちにこれを法務省に送付する、こういう手続になっておるのですか。
○小林(俊)政府委員 そのとおりでございます。
○中村(巖)委員 改めて聞くようですけれども、指紋原紙を法務省が保管をしていなければならない理由というのはどういうところにあるのでしょうか。
○小林(俊)政府委員 これも登録課長から午前中にお答えしたことと同一のことになりますけれども、第一義的には、その登録されている人物と登録を申請する人物とが同一人であるということを確認するという照合は市町村の窓口において行われております。したがって、その照合が完全であれば改めてこれを照合し直すという必要はないわけでございますが、念のための措置として、第二義的な同一人性の確保の手段として法務省においてもこれを照合できるように手だてを講じておくというのが指紋原紙を法務省に送付する目的でございます。
○中村(巖)委員 その辺のところが、なぜに法務省がそこまでやらなければならぬのか、外国人登録というのは市町村に対する機関委任事務のようなものだと思いますけれども、市町村というものに機関委任事務として事務を渡しておきながら、やはりそれは信用できないということになるからそういう措置をとらなければならないということなのかどうかということでございまして、法務省に原紙を置くのだということになると、これは何となく前科台帳というようなものと同じような感じ、何か犯罪とかかわりがあるというような受け取り方をされるわけでございまして、法務省の指紋原紙の保管ということをやめちゃえばどうかと思うのですが、どうでしょうか。
○小林(俊)委員 外国人登録法に基づいて採取された指紋は一般の犯罪捜査に実際上使い得ないものであるという事情につきましては午前中御説明申し上げましたけれども、それとは別に、法務省で現在保管いたしております指紋原紙につきましては、かつては実は二枚採取しておった時代があるわけでございます。したがって、数年前までは在留外国人が指紋を押捺する場合に四回押しておったわけでございます。すなわち、指紋原紙の一枚はその市区町村の属する都道府県に送付して、もう一枚を法務省に送るという手続がございました。数年前にこれを改正いたしまして、指紋原紙は一枚ということにいたしましたのは、その都道府県に送付される指紋原紙を省略したわけでございます。これは、現在までの指紋制度の改変の一つの過程として、不必要な手続をなるべく合理化していくという一環として行ってきたわけでございます。したがって、現在までそういう経過があったということでございまして、今後法務省における指紋原紙をどうするかということは、現在のところこれを改めるという結論は何ら持っておりませんし、また、そういうことを考えてもおりませんけれども、将来の問題としてはあり得るかもしれないという程度の感じはいたします。
○中村(巖)委員 指紋原紙を法務省が保管をしておって、また切りかえで指紋が押捺されて新しい原紙が来るということになると、恐らく前に保存をしておったものとの照合ということが問題になるんだろうと思いますけれども、それは問題があったときに照合をするということなんですか、全ケース、全部照合してみるということなんですか、今のやり方はどういうふうになっているんでしょう。
○小林(俊)政府委員 原則は、時間はかかりますけれども、全部を照合するということであります。しかし、特に何か現場で問題が生じた場合、例えば窓口で疑問が生じた場合にこれを特に抽出して確認するということは当然あるわけでございまして、その場合にも、法務省に保管されている指紋原紙というものが役割を果たすということにもなるわけであります。
○中村(巖)委員 原則はということですけれども、実際に実行しているのかどうかということをお聞きしたいわけで、例えば今年度の場合、切りかえというものは三十七万件もあるんだということが言われておりますが、今年度中に三十七万件もの切りかえの場合の指紋原紙が上がってきて、それを全部、従来保管しているものとの照合をして一々やるということは大変難しいことで、現実問題できないことではないかというふうに思うわけであります。ましてや、これをどういうふうに照合するのかわかりませんが、従来の法務省のお答えでは、換価分類というのは、数字で分類するというのはやめてしまったんだ、こういうことでございますので、そうなればあとは肉眼で比較対照するしかないということになるわけで、今年度上がってきたものを、今年度あるいは来年度で三十七万件も比較対照照合するということは困難だと考えざるを得ないのですが、これは全部やるつもりなんですか。
○小林(俊)政府委員 基本的には、その同一性確認のための最終的な手段が存在する、確保されているということが重要なことでございまして、実際にそれが窓口において日常行われているいないとはかかわりなく、その重要性は引き続き残るものと私たちは考えております。 また、法務省におきます照合は、時間はかかりますけれども、肉眼で行っておるということでございます。その指紋の照合というのが専門の鑑識技術を要するものであるという考え方が一般にあるようでございますけれども、実際には、鮮明に同じ方法で押捺された二つの指紋を照合する、そしてその異同を認識するということはさほど難しいことではございません。これは別に特別の訓練がなくてもできることでございまして、そうして一義的に行われた照合の結果疑問がある、非常に似た指紋であるあるいは差異があるという疑いがあるという場合には、これを最終的に確定するためには専門的な鑑識にゆだねることもあるわけでございますけれども、一義的な指紋の照合を肉眼で行うということはさほど難しいことではございません。 また、将来の問題としては、これは国会でも御発言のあった点でございますが、これをコンピューター化してもっと機能的に容易に検出できるようにするということは考え得る方法であろうかと思いますので、そのためにも指紋という資料が存在するということは引き続き重要だろうと存じます。
○中村(巖)委員 今のお話では、三十七万件について現実におやりになるつもりなのかどうか明確で。ないのですけれども、今のお話によるならば、要するに法務省は指紋を持っているんだぞということでおどかす、こういう効果の方をねらっているんだ、こういうふうにかえって受け取られかねないわけでございまして、やはり指紋を押捺することによって実際上に人を識別するということよりも、おどかして管理をするというか、そんなようなニュアンスが非常に強いように思うのですけれども、いかがですか。
○小林(俊)政府委員 おどかすという言葉の表現はいかなる意味においても適当ではないと存じます。しかし、それに近い効果、すなわち不法な入国、在留あるいは登録証明書の不法な使用というものを事前に抑止する効果、すなわち指紋があるためにあえてそういう行為に赴き得ないという効果をもたらすということは、指紋制度の正当な目的であると私どもは考えております。
○中村(巖)委員 では、今度は警察の方にお伺いをいたします。 外国人登録法に基づいて指紋が登録をされている、このことは犯罪の捜査にとって有益かどうかということですけれども、一つは外国人登録法違反という犯罪の捜査にとって、もう一つはそれ以外の一枚犯罪の捜査にとって、この二つについてそれぞれ御説明をいただきたいと思います。
○赤木説明員 お答え申し上げます。 外国人登録における指紋につきましては、けさほど来、法務省から御説明ございましたように、在留外国人の公正な管理という行政目的のために採取され、利用されているものでございまして、警察としてこれを一般的な犯罪に利用する、そういった立場にはないわけでございます。ただ、例外的に、先生御指摘のございましたように、密入国事犯あるいは外国人登録証明書の不正入手事犯等の捜査におきましては、当該事件において外国人の同一人性を確認し、身分事項を確定するといった目的で指紋に関して照会をするということはあり得るわけでございます。
○中村(巖)委員 今の点について重ねてお尋ねをするわけですけれども、この外国人登録法の違反事犯以外の犯罪については、今の指紋の制度というものは廃止をされても捜査上一向痛痒を感じない、こういうことになるわけですね。
○赤木説明員 指紋による確認というものを一つの支えといたしましたもの、外国人の公正な管理というものが治安というものに大変役に立つものであるという認識は私ども持っておるわけでございます。
○中村(巖)委員 今の点、そういう認識をお持ちだということは、その理由はどういうことですか。
○赤木説明員 先ほど法務省からも御説明ございましたように、切りかえのたびにきちっと指紋をとるといったことが行われますことによりまして、例えば不正登録というものも防止をされますし、その他の外国人登録証明書にまつわる各種の不正事犯の抑止というものに大変貢献をするものであろうというふうに考えるところでございます。
○中村(巖)委員 外国人登録法違反というか、外国人登録法にまつわるところの不法入国あるいは不法滞留、出入国管理、そういうふうな犯罪というものがあるわけでありますけれども、こういうような犯罪を発見し捜査をするためにはこの指紋というものが不可欠でしょうか。指紋の登録ですね。
○赤木説明員 大変重要な手段になり得ることは間違いのないところだと思います。
○中村(巖)委員 では、その辺はそのくらいにいたしまして、別なことを聞きますけれども、先ごろ新聞紙上をにぎわしました横浜における李主事の事件でありますが、この事犯というものは具体的にはどういう事犯でございましょう。
○赤木説明員 お尋ねの事件は、韓国国籍を有する李相鎬被疑者に対する外国人登録法違反被疑事件でございまして、その内容は、被疑者が昭和五十七年八月七日に川崎市川崎区長に対しまして、外国人登録法に定められた外国人登録証明書の切りかえ交付申請に際して、法で定められたところの外国人登録証明書や外国人登録原票などに指紋押捺することを拒否したという事件でございます。
○中村(巖)委員 この事件について、あえて李主事を警察として逮捕をしなければならなかった理由というのはどこにあるのでしょう。
○赤木説明員 本件につきましては、かねて所轄警察署が任意で捜査を推進してきておったわけでございますが、被疑者が警察の再三にわたります呼び出しにも正当な理由なく応ぜず、かつ出頭の意思が認められないことなどから、逮捕の必要があるという判断に達しまして、令状を得て逮捕したものでございます。
○中村(巖)委員 そうなりますと、警察としては、今後とも指紋の押捺に応じないという事犯が発生したときにはこれを必ず立件をし、かつ呼び出しに応じない場合には逮捕する、こういう御方針でございましょうか。
○赤木説明員 警察といたしましては、法違反を認知いたしますれば、当然の責務といたしまして捜査を推進してまいりたいと考えております。 ただ、これが逮捕といった強制捜査によるかあるいはそうでないかということにつきましては、これを個々の事件について判断をしてまいるべき問題だろうと考えるわけでございます。
○中村(巖)委員 重ねて今の点についてお伺いしますけれども、こういう事犯が今後本年じゅうに何千件、何万件発生してもそういう態度で臨む、こういうことでございましょうか。
○赤木説明員 そのとおりでございます。
○中村(巖)委員 では、法務省にお伺いをいたしますけれども、今回の李主事の事件のような問題が今後起こった場合について、やはりこれは場合によっては勾留をし起訴していく、それが相当件数起こってもやっていくつもりである、こういうお考えでございましょうか。
○筧政府委員 まだ仮定の問題でございますが、犯罪事件が発生いたしました場合にはそれに即応して検挙すべきものは検挙し、その事案に応じた適切な処理を図ってまいりたいということでございます。
○中村(巖)委員 李主事の事件につきましては、現在捜査中の事件でありますけれども、検察庁としてはこれは勾留の必要性はないという御判断になったと思いますが、住所とかというものがはっきりしており、あるいはまた証拠隠滅のおそれがないというような場合には、やはり一般論として勾留をしないという方針でこの種事案の場合に臨むわけですね。
○筧政府委員 個々の事案によりまして逃亡のおそれあるいは罪証隠滅のおそれというものが判断されるわけでございまして、そういう要件がない場合には在宅ということになるでありましょうし、個々の事案によって罪証隠滅のおそれがあれば勾留をするということになろうかと思います。
○中村(巖)委員 この問題の最後に外務省にお伺いをいたします。 この問題に関して従来から韓国との間にいろいろの話があるというふうに思っておりますけれども、韓国の方は今日本に対してこの指紋押捺制度そのものを完全に撤廃をするように要求をしているのかどうかという点はいかがでございましょう。
○渋谷説明員 指紋押捺制度の全廃、それができない場合には登録切りかえ時の押捺義務の免除、これを要望しております。
○中村(巖)委員 その点について、今回、制度そのものが若干の改変をされるようでありますけれども、それによって、これからの韓国との間の実務者会談というか、あるいはさらに先の日韓閣僚会議という場合に韓国側の要望を何らかの形で入れたということで了承を得られる見通しというものがございますか。
○渋谷説明員 今回の決定と韓国側の要望との間にはもちろん差はございますけれども、今回の決定に当たりましては、内外各般の事情を種々勘案しながら関係省庁との間で検討が行われ、その運用上、改善できる措置として決定を見たものでございます。したがいまして、五月二十三日、四日の実務者間での話し合いの場におきましては、こういった我が方の努力の結果を韓国側は評価すべきであるというような形で対応していきたいと思っております。
○中村(巖)委員 今の点ですけれども、今回の内閣の処置、それについては各省庁間協議という形で、外務省も、これなら韓国を了承させる自信があるということで法務省の考え方を了承されてこの処置に至ったのか、それとも法務省がそれしかできないと言うからしようがない、こういうことなのか。どうなんですか。
○渋谷説明員 外務省としましては、現行法制の中で改善できる措置として今度決定がなされたというぐあいに思っております。 これに対しまして、韓国がどのような反応を示すかはまだわかりません。とりあえずの報道が出ておりますけれども、それはかなり厳しいようでございますけれども、外務省といたしましては、韓国政府に対し、指紋押捺の問題を外交問題としないように今後とも働きかけていくつもりでおります。
○中村(巖)委員 今の点、最後に今度は法務大臣に伺いますけれども、外務省との間においては十分にこの点協議を遂げて、これでいけるというか、こういうことでおやりになったのかどうか、いかがでしょう。
○嶋崎国務大臣 本日、閣議決定をしたわけでございまして、そういう意味では内閣の中で一致した意見としてこれに対処しようという結論になったものだと思います。 これまでの経緯はいろいろあったわけでございますけれども、省庁間の中での調整ということにいろいろな意味で努力をしまして、制度改正というのは現実なかなか難しいという背景もあるわけでございますが、そういう中でともかく何らか一つの道を見つけたいということでこの決定に至ったわけでございます。したがいまして、そういう制度の改正とともに、あわせて先ほど来申し上げておりましたように運用面でも工夫を加えておるわけでございまして、これを基礎にしましてぜひ御納得がいただけるように努力をしなければいけないというふうに思っております。
○中村(巖)委員 時間がなくなりましたので、今度の証人等の被害についての給付に関する法律の改正案について若干の質問をいたしたいと思います。 最初に、今回は、この証人等の被害というのに国選弁護人またはその近親者の職務の遂行に関しての被害というものを加えようという法案でございますけれども、従来の証人等の被害についての給付に関する法律、これに基づいて実際にいろいろな形の給付がなされた実績というものはどのくらいあるのでしょうか。その点の御説明をいただきたい。
○筧政府委員 証人等の被害給付法制定以来今日まで、五件の事例がございます。 最初は、昭和三十四年に、証人が公判へ行って待機中に被告人から、不利益な供述を警察にしたというようなことで軽便カミソリで顔に切りつけられた。全治八日間でございます。これは療養給付がなされております。それから、次は昭和三十六年、これも証人でございますが、有利な証言をするように強要された上、顔面等を手拳で殴打された。全治二週間で、療養給付と休業給付がなされております。昭和三十八年には、証人として証言した人が、当該犯人でありました者が服役し出所した後に、証言についてのうらみを理由に小刀で殺害されたというもので、これは遺族給付と葬祭給付がなされております。それから、昭和四十三年にも証人が証言中に被告人からボールペンで顔を刺されまして、全治三カ月、これは療養給付と休業給付がなされております。昭和五十八年に、やはり証人が証言中に被告人から顔を殴られまして、全治六日間、これに対しても療養給付がなされております。 以上の五件でございます。
○中村(巖)委員 今回は、この法律の中に国選弁護人と近親者を加えよう、簡単に言ってしまえばそんなことでありますけれども、これについては特段の必要性というか、そういうものが起こってきたということになるわけですか。
○筧政府委員 ちょっと前でございますが、昭和五十二、三年ごろ、過激派等の裁判を中心に被告人と国選弁護人の間でいろいろいざこざが起こり、脅迫をするとかあるいはばり雑言を浴びせるとか、その他危害を加えかねまじき状況が出てまいりました。そういうことで、刑事裁判の正常化法案というのが出されたわけでございます。それを契機として最高裁判所と法務省、それから日弁連の三者でいろいろ刑事裁判をめぐる問題について協議をいたしました。それぞれでいろいろな対策を立てようということになりました。昭和五十四年の三月にこの三者協議会で一応の結論を得たわけでございます。その中に、法務省では、国選弁護人がその職務に関して生命、身体等に危害を加えられた場合の補償についてその実現方を検討するという一項目が合意されたわけでございます。日弁連の方では、自治機能を強化するとか、あるいは国選弁護人の選任等について体制を整えるとかというような事項がございますし、裁判所の方では、国選弁護人に対する報酬の充実ということを約束されたわけでございます。いわば法務省が今の点で約束をいたしたわけでございます。その後は、主として日弁連との間で、今申し上げた趣旨に沿った立法をするについての立法形式あるいは補償の内容等について検討を重ねてまいりまして、ようやくその結論を得て今回御提案を申し上げた次第でございます。
○中村(巖)委員 今回の改正前の法律そのものの趣旨でありますけれども、必ずしも生じた被害の一切を補償するという建前でないようにうかがわれるわけでありまして、療養給付はともかくとして、そのほかの給付は、損害額とそれから補償される額との間にはやはり相当の径庭があるように思われるわけでありますけれども、そういう従来の法律が立法された趣旨というのは、本来補償されなければならない損害全額の一部を補てんをする、こういう目的であったわけですか。
○筧政府委員 広く被害と申しますと、無限とは申しませんが相当範囲が広がるわけでございます。この証人等被害給付法自体が給付基礎額に基づいての計算でございますから、必ずしもいろいろな面で発生した被害を補償するまでには至っておらないわけでございます。 この法律の趣旨をどういうふうに見るかということでございますが、刑事補償とかその他国家賠償とかというのとも若干性質を異にいたしまして、刑事裁判の円滑な執行を図るために証人等の協力を得る、そのために被害を受けるおそれがあるということで、本人あるいはその近親者が害を受けた場合の給付というものを約束することによって円滑な協力を得て円滑に刑事司法を進めようという趣旨で国が約束して給付を行うという趣旨のものでございます。他の同種の補償関係の法律等を見ましても、必ずしも生じた損害全部ということにはなっておらないと思います。この法律におきましても極めて基本的な、重大な損害である生命または身体に対する被害というものの補償ということにしたわけでございます。日弁連との交渉の過程では、物損であるとか精神的損害、あるいは被害者の範囲も近親者に限らず同僚の弁護士であるとか事務員とかという者まで含めるとかいろいろ御要望がございまして、検討を重ねた次第でございますが、結論としてはこの法律にあるような形にとどまっておるわけでございます。
○中村(巖)委員 御趣旨はわからないわけではないのですが、給付基礎額そのものについても現時点では言ってみれば実際損害よりもかなり抑えられた金額ではないか、こんな感じがしているわけです。 この給付基礎額については政令四条の二項で「五千九百円とする。」ということで、場合によっては「一万円を超えない範囲内」で増額することになっているのですが、これはどういうふうにして決まってくるわけですか。
○筧政府委員 最初にお断り申し上げておきますが、その五千九百円と一万円というのは、本年の四月六日であったかと思いますが四月上旬に政令を改正いたしまして、五千九百円のところが六千百円、それから一万円が一万三百円というのが現在の金額でございますので、その点を訂正申し上げます。 これの基準につきましては、この法律に書いてございますように、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律というのをしんしゃくして内容等定めることになっております。今の六千百円あるいは一万三百円と申しますのは、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律に現在定められておる金額でございまして、六千百円というのは平均的な巡査と申しますか、公安職俸給表(一)の七の十六でございます。その人の給料をもとにいたしまして日額相当分で六千百円といたしております。それから一万三百円というのはもう少し上級の警察官と申しますか警視クラスでございまして、公安(一)の俸給表の特三の十となっておりますが、その日額が大体一万三百円前後であるというところから、六千百円あるいは一万三百円という金額が給付基礎額として定められておる次第でございます。
○中村(巖)委員 今回、国選弁護人をこの法案の中に入れられるに当たって、その辺の金額の問題とすれば、弁護士という職業上からすれば何か金額的にそぐわないというか、何か安過ぎるという意見があったのではないかと思ってお聞きするわけですが、弁護士の場合であってもそういう一般の人と補償の金額に関する限りは同じでいいのだというお考えですね。
○筧政府委員 先ほど申し上げましたように、日弁連との協議の過程では、確かに日弁連の方からは弁護士の地位あるいは収入等から考えて特別に高くすべきであるという御要望がございました。それについてもいろいろ検討したわけでございます。弁護士さんでも、いろいろあると言うと失礼でございますが、平均的にどれくらいの収入があるか、これは公表されたものがございませんので、私どもでもつまびらかにし得ないわけでございます。片や、もとになる証人、参考人等につきましても、同じく、証人といっても社会的にはいろいろな地位のある人もいるし、収入の非常に高い人から非常に低い人までいろいろいるわけでございます。しかし、それが刑事司法に協力する、その協力する過程で生命、身体に害を受けたという場合の補償についてはやはり一定の金額によって補償せざるを得ないであろう、証人、参考人と弁護人との間に差を求めるというのもこの法律の趣旨からいって難しいのではないかということで最終的には日弁連の方にも御納得いただきまして、このような改正になったわけでございます。
○中村(巖)委員 最後に一点だけ伺っておきます。 この証人等の被害についての給付に関する法律施行令の第七条によりますと、妻が遺族給付を受ける場合においては、夫が亡くなられた場合、無条件に遺族給付が受けられるわけでありますけれども、妻が亡くなった場合においては、夫の方は七条一号によって五十五歳以上でなければならないとなっておるわけで、その点は夫と妻を差別して取り扱われているということになるわけでございまして、弁護士なんかの場合において妻の方が弁護士であって夫の方がそうでないというような事例もあるわけで、その場合に何か差別して取り扱われる根拠は薄いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○筧政府委員 この法律の第六条によって参酌することとされております警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律による災害給付あるいはそのまたもとになっております国家公務員災害補償法による補償につきましても、この政令七条と同様に夫については年齢制限があるわけでございます。この政令もこれらをしんしゃくしてつくったということでございます。 ただ、実質的に考えましても、我が国では一般的に男性、女性を比べました場合、男性の場合の方が就業等が比較的容易であり給与も高いのに対しまして、女性は就業も困難であり、また給与も低いという実情にあるわけでございます。そういうことから、夫の死亡後、遺児等を抱えて生活に困窮することなどが婦人の場合は考えられるわけでございまして、男女間における事実上、実質上の平等を図るということから、妻の場合は年齢制限を設けていないわけでございます。
○中村(巖)委員 時間がなくなりましたので、終わります。
○片岡委員長 三浦隆君。
○三浦(隆)委員 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案が審議されるわけですが、ここに新しく国選弁護人等が加えられることになりました。この国選弁護人というのは在日外国人が被告人となった場合にもつくのですか、お尋ねしたいと思います。
○筧政府委員 当然のことでございます。
○三浦(隆)委員 国籍条項を超えて外国人であっても被告人に国選弁護人をつけるというのは、人権に対する配慮を行ったものだと思うのです。その国が、今、指紋押捺問題をめぐって人権侵害だと強く批判されるようになっているわけでして、人権擁護という立場からは国はもう一歩進んで、在日外国人に対して、指紋を含めて人権侵害と言われないようにぜひなってほしいなと思うわけでございます。 そこで、外務省に初めにお尋ねしたいと思います。 先ほど来の質疑の中でも、外務省答弁が大変に慎重な節回しというか、大変に法務省なり警察に気遣いながらの答弁ではなかったかなというふうな気がいたしました。 そこで、まず初めに、本日の閣議で政令改正が行われまして、回転指紋を平面指紋に改めるとともに黒色の指紋インクを無色の薬液とするということになったようでございますが、指紋押捺義務そのものの免除を求める従来の韓国側の要望にこたえるものとしてはこのような改善では不十分だと思いますし、より抜本的改善を図る必要があるのではないかなと考えるわけです。そこで、韓国側の要望との関連で、外務省は今次の改正をどのように位置づけておられますか。
○渋谷説明員 韓国側は、指紋押捺制度の全廃ないしは登録切りかえ時における押捺免除を要望しております。このような韓国側の立場からすれば、今回の我が方がとりました措置につきましてはかなりの差があるという受け取り方をする可能性もあるかと思われます。しかしながら、我が方といたしましては従来から外国人登録制度につきましていろいろ改善の措置をとってきておりますし、韓国側はその我が方の改善措置自体につきましてはそれなりに評価しております。したがって、今回の措置につきましても、各般の事情を勘案しながら各省庁間で検討してまいりました結果としまして韓国側に説明し、積極的な評価を求めたいというぐあいに外務省としては考えております。
○三浦(隆)委員 これまでも指紋問題についていろいろと日韓間で話し合いが進められておったと思うのですが、それが韓国を中心として在日外国人の皆さん等の了解が必ずしも得られないという状況の中から、実はきのうの夕刊にも載っておったり、最近の新聞によく載りますけれども、釜山にある日本総領事館あるいはソウルの日本大使館に爆破するぞというふうな脅迫電話がかかっているというふうに伝えられております。こういうふうな韓国側の反応、さらにソウルの新聞などでもこの間の李相鎬さんの逮捕の問題に関連しては一面トップ記事で大きく載せられる、あるいは韓国の韓日親善協会、韓日議員連盟それぞれが李さんの逮捕をめぐって慌ただしい動きを示しながらその善処を求めて日本に電報などが打たれている。 〔委員長退席、高村委員長代理着席〕 さらにまた、国際人権擁護韓国連盟では百万人の署名運動を展開するというふうに伝えておりまして、韓国におけるこの種の問題が大変厳しくなってきております。良好な日韓関係をこれからも維持していこうという観点から、こうした問題についての外務省の認識及び今後の対処方針についてお尋ねしたいと思います。
○渋谷説明員 先般の逮捕措置に関します韓国側の反応はかなり厳しいものがございました。今回の改善措置に関する反応につきましては、公式なものはまだ出ておりませんけれども、とりあえず報道されるところも相当厳しいようでございます。したがって、外務省としては韓国側の情勢につきましては決して楽観はしておりません。しかしながら、従来韓国政府は指紋押捺問題を外交問題とはしないという慎重な姿勢で我が方に対応してきておりますし、我が方もそういう方向で韓国側には働きかけてまいりました。今後の情勢につきましては楽観は許しませんけれども、同様な努力を韓国側に対して続けていくつもりでおります。
○三浦(隆)委員 両国でこの問題を外交問題としたくないと仮に思いましても、いわゆる民主主義の国というのは国民の世論によって動いてくるものだと思いますから、こうしたことを契機に新聞を中心にマスコミの方でどんどんと連日のごとく記事が載ってくる、国民の間からは反対の署名運動がだんだん盛り上がってくる、国会でもいろいろと発言されてくる、あるいは地方自治体でも活発な動きが出てくる、とするならば、それを反映しない政治とか外交というのはむしろ感覚としておかしいのではないでしょうか。国民の世論の動きに沿った動きということが一番の戦後の政治、少なくともそれが我々に課せられていると思うのですね。それでもなおかつ外交問題にはし得ないのですかどうですか、お尋ねしたいと思います。
○渋谷説明員 指紋押捺の問題につきましては、昨年出されました日韓共同声明の趣旨、さらには地方におきまして制度及び運用の改善の声があるという点も十分勘案いたしまして関係省庁との間で検討が重ねてこられたということだと思います。したがいまして、今後もいろいろ内外の情勢を見ながら自主的な立場から関係省庁の検討をやっていくということを外務省としては希望しております。 韓国との間におきましては、今後ともこの指紋押捺問題につきましてはできるだけ静かに対応するようにということで引き続き働きかけてまいる方針でございます。
○三浦(隆)委員 静かに対応したいというお答えですが、前にも例えば教育関係で教科書問題が起こりました。日本では当時これを取り上げたくないと思いました。にもかかわらず、東南アジアを中心として韓国なり中国その他から教科書問題で大きく反日的な運動というか火の手が上がって、これははっきりと外交問題になっていったわけです。今回の指紋押捺問題も旧来と違って大変に運動が今盛り上がってきておると思うのです。ですから、静かに対応したいと言っても、静かに対応できるような法体制あるいは法の運用がなされないで国民から遊離したような法の運用が行われれば、おさまるわけはないのじゃないかと私は思うのです。そこら辺が感覚の違いだと思うのです。少なくとも今月じゅうにも日韓局長会談が開かれるというふうに言われておりますけれども、そこではどういうことを議題に取り上げ——恐らく指紋の問題も取り上げられる、むしろこれが中心であると思うのですが、そのとき外務省としては今ここで述べられた答弁でとまるのですか、それとももう一歩進んだ何か打開への見通しを込めた話し方を用意されて会談に臨むのですか、それについてお尋ねしたいと思います。
○渋谷説明員 今回の会合は非公式な意見交換ということでございます。まだ議題は確定はしておりませんけれども、在日韓国人の問題、当然のことながら指紋問題を含みますが、その問題のほか現在両国間で懸案となっております諸事項に関する意見交換を行うつもりでおります。指紋問題につきましては、今回の改善措置につきまして説明し、韓国側の理解と評価を求める努力をいたすつもりでおります。それ以上につきましては、現在のところ、従来から行われてまいりました各省庁間の検討の状況から見まして、具体的なことは韓国側には言えないという気がいたします。
○三浦(隆)委員 もし、今程度の話し合いであるならば、局長会談を行ってもまず韓国が納得するとは私にはとても思えないですね。むしろ会談を持つことによって失望して韓国の方が帰られた場合、今韓国の野党側の主張を見ますと指紋問題その他に対しても大変に厳しくなってきておりますし、韓国の与党・政府にしても強力な野党の主張に対して耳を傾けざるを得ないだろうと思います。あるいは、韓国の大学は昔の日本の大学紛争のときの大学に似ているところがありまして、かなり運動が激しく行われる可能性を持っておる。今、この問題が改めて日韓関係の中で不穏な動きを示してきているということなんです。特にことしはせっかく日韓の国交正常化二十周年という大変なよい年であるにもかかわらず、こうした局長会談を開いてもさっぱりと決着がつかない、韓国側を一方的に失望させるようなことであったのでは、この日韓両国の関係というのもだんだん冷えてきてしまうのではないか、私にはそれが心配に思えます。もう少し外務省としても積極的な対応策をとっていただきたい、こう考えます。 なお、今秋開かれることが予定されている日韓閣僚会議も、七月以降に大量の指紋押捺拒否者が出たりしまして、そういう意味では恐らく大変厳しい状況下でこの閣僚会議が開かれるというふうに予想されるわけであります。 そこで、先日の衆議院の外務委員会で安倍外相が、指紋問題に絡んでですが、それまでに一つの方向を打ち出さなければならないと答弁されたようですが、この一つの方向を打ち出すというのは、具体的には外相としてはどういうことを考えられておったのでしょうか。
○渋谷説明員 現在、各省庁間で制度及び運用上の問題点について検討しておりますけれども、ことしの夏行われます日韓閣僚会議を念頭に置きながら検討が行われてきたという経緯もございます。そういった経緯を踏まえて安倍大臣からそのような御発言があったものと思います。
○三浦(隆)委員 外務大臣は一つの方向を打ち出すと言ったのですから、これはやはり何かがなければだめなんだと思うのですね。外務大臣ではないし局長さんでもないから、課長さん遠慮されての発言かもしれませんけれども、少なくとも外務大臣がそう言われる以上は、相当な何らかの覚悟というか何らかのお気持ちをはっきりとお持ちだと思うのですね。そうした大臣の意向なりというものはやはり外務省内部の情報として伝わっているのであろうと私は思うのですが、きょうのところは他の省庁、法務省なり警察の方に御遠慮されているのかどうか、やはり外務委員会と法務委員会という場の違いが出ているのか、お答えがどうもひとつはっきりしないように思うのです。 そこでもう一度重ねて、御無理かもしれませんけれども、この指紋押捺問題解決に向けて、個人的見解であろうと、課長さんはどういうふうにしたらいいというふうなこと、答えられますか。
○渋谷説明員 外務省でのこの問題の直接の担当課長といたしましては、韓国側の要望を十分意識しながら関係省庁間の討議に参加しているつもりでございますけれども、具体的な諸点につきましてはこの場では御容赦いただきたいと思います。
○三浦(隆)委員 それでは外務省はもう結構でございます。 法務大臣にお尋ねをしたいと思います。 今、指紋押捺拒否の運動の輪が広がりまして、現実に押捺拒否者が出ているわけですが、この拒否者に対して法務大臣はどのようなお感じを持たれておりますか。あるいは進んで、拒否するくらいならば本国へ帰国した方がいい、あるいは帰化すればいいじゃないか、そんなようなお感じもお持ちですか、お尋ねしたいと思います。
○嶋崎国務大臣 指紋制度についてはいろいろな御意見があることは十分承知しておりますが、御承知のように、我が国はきちっとした法律に基づいて統治が行われている法治国家であるわけでございまして、外国人の方でありましょうともやはり日本で決まった法律についてはきちっとこれを守っていただかなければならぬということは言うまでもないことだと私は思っております。しかし、既に今までも当委員会等でも十分お話し申し上げておりますように、外国人の地位あるいは待遇等についてその取り扱いをどうするかというようなことについては、国内的ないろいろな問題もありましょうし、国際的な問題も十分加味して研究しなければならぬ事柄であるというふうに思っておるわけでございます。 特に五十七年度に法改正をやっておるわけでございまして、制度的な改正を行うということはいかがかというふうに私も思うのでございますけれども、御承知のようにいろいろな御議論があり、かつまた、昨年日韓の共同声明の中で引き続き努力をするというような総理の発言もあったわけでございますから、そういう点を踏まえまして、何とか工夫はできないものかといろいろなことを考えて、本日政令の改正におきまして百八十度回転の指紋方式を改めまして、押印と同じような方式による、平面によるところの指紋というような考え方をとったわけでございます。かつまた、色が手に残るというのも感触として悪いだろうというようなことも考えまして、大分過程はあったわけでございますけれども、また、三浦委員の方からもさきにお話がありましたように、いろいろな工夫を積み重ねて研究してみなければならぬというような御注文もありまして、相当研究をさせていただいて、特殊の用紙を使いまして、ここに無色の液体をつける、そして押していただくというようなことで、ある程度工夫を凝らして今回の改正及び運用の改善を図ってまいったというのが実情であるわけでございます。 したがいまして、先ほど申しましたように、法治国家である以上守られるのが当然であるというような一方的を言い方だけをするつもりはありませんので、そういうことをも十分踏まえて今度の改正に至ったのが実情であろうと思うのでございます。その意味で、最近指紋制度に反対であるとして押捺を拒否される方があるということは事実であります。私は、ある意味で非常に残念至極なことであるというふうに思っておるわけでございます。どうか今度の改正というものをよく踏まえていただいて、我々が我々なりに努力をしている点を十分に御勘案の上、御協力方を願いたいものだというふうに思っておるわけでございます。 なお、先ほどお話がありましたように、このような人たちが帰国するとか帰化したらどうかというような問題の取り上げ方でございますが、いかにもお聞きになられ方がはまり過ぎたように聞こえてしようがないのですが、私はそんなことは全然考えておりません。これは御本人がそれぞれ御判断をされるべきことであって、私がとやかくそういうことを申し上げるべき筋合いのものではないというふうに思っておる次第でございます。 ともかく、せっかく苦心をした改正あるいは運用の改善でございますので、ぜひとも在留の外国人の皆さん方の御協力を得たいとともに、野党の皆さん方も、苦心してここに至ったところをひとつ御理解を願いまして御協力を賜りますことをお願い申し上げる次第でございます。
○三浦(隆)委員 関連して大臣にもう一つお尋ねしたいのです。 昨今、憲法訴訟論といいましょうか、大変学問も進んできまして、LRA基準というのが訴訟の中でよく使われております。これは、同じ目的を達成するにはいろいろな手段があって、その中で一番人権を制約することが少ない方法を選ぶべきだ、いろいろと方法がある場合には最も人権の制約が少ない方法を選べ、そうすると効率的には落ちる場合があるけれども、効率が落ちてもその方をとるべきだというふうな感覚の研究が今裁判所の方でもかなり進んでいるように伺っております。 もう一つには、立法事実論といいましょうか、立法事実を厳密によく調べて行えということです。この有名な例が、例の薬事法の距離制限規定が違憲だとした昭和五十年の大法廷判決です。この指紋押捺も今は地裁段階ですけれども、最高裁まで来てこの昭和五十年の大法廷の判決と同じ論旨が展開されたらば恐らく違憲判決が出るだろう、私はこう考えるのです。 その理由はこういうことです。この判決の中では立法事実論を具体的に進めまして、当時の国会における法の提案理由をまず述べて、この薬事法の「適正配置規制は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極的、警察的目的のための規制措置であり、そこで考えられている薬局等の過当競争及びその経営の不安定化の防止も、それ自体が目的ではなく、あくまでも不良医薬品の供給の防止のための手段であるにすぎないものと認められる。」こう認定いたしまして、この立法目的とそれを達成するための手段、すなわち距離制限との間の合理的関係について審査を進めまして、「競争の激化—経営の不安定—法規違反という因果関係に立つ不良医薬品の供給の危険が、薬局等の段階において、相当程度の規模で発生する可能性があるとすることは、単なる観念上の想定にすぎず、確実な根拠に基づく合理的な判断とは認めがたい」ということをここでは述べているわけであります。 同じ論旨で、この外登法の立法目的は身分関係と居住関係を明らかにしたいということであって、指紋押捺をさせることが目的ではないわけです。ですから、指紋押捺にかわるべき方法によって居住関係、身分関係を明らかにすることがもしできるとするならばそれでよいから、それを強いて、それによって罰条を加えてやること自体、果たしてどんなものか。 先ほどの法務省の御答弁を聞いていても、指紋を押捺させておいても別にふだん見ているわけじゃないんだというふうなことを言う。では、なくても大した弊害はないじゃないかということであって、そういうふうな事実関係をもっと厳密に検証してみる必要があるだろうと私は思うのです。しかも、そう言うけれども、法務省のように、これはもう法があるからとか、あるいはそれをどうするかこうするかは警察なり法務省のいわゆる行政裁量だという、そうしたような感覚を持たれれば、私らの方としてはそれ以上こうしろああしろとは言えないことでありますけれども、こういうことが結局はいわゆる憲法感覚という問題じゃないんだろうか、こう考えるのですわ。国民の人権であれ外国人の人権であれ、嫌がることを無理強いするという場合には、国家のいわゆる抽象的な意味での公共の福祉的な発想を押しつけるということは今日もう無理な発想なんじゃないか。 そうではなくて、先ほど大臣も御答弁の中でいろいろな方法を研究されているというふうなお話がありましたが、大変結構なことでありまして、指紋押捺にかわるべき、そして指紋押捺よりももっと簡単に人物が識別できる方法があるならば絶対にそれをとるべきだと思うのです。言うなら、法の目的は指紋押捺じゃないわけですね。ですから、むしろ答弁の中では、今まで、過去から現在に至るまでは指紋押捺が同一人物であることの確認のベスト、最善の手段だと思っていた、しかし現在から未来にかけては科学も発達していることだし、別に指紋にこだわらなくても指紋以上により簡便で、より確実な方法が研究によって生まれるかもしれない、もし生まれるならばすぐにでも法を改正していきたい、今即座に改正はできないにしろ即刻研究を進めることによって、この研究の成果をもって法をすぐにも改正したいというふうな答弁をすることは何ら差し支えないことだと私は思うし、そのことによって外国人の方々が少しでも日本の政府の努力を評価するきっかけがつかめるんじゃないかというふうに思うのですね。そのことが憲法というか人権擁護に立とうとする感覚なんじゃないんだろうかというふうに私には思えるのです。 大臣に改めて人権感覚ということで、いわゆる指紋押捺は目的でない、指紋にかわるべき方法があり得るならば、今すぐと言わなくても、それに積極的な努力を傾注して、法改正も辞さないというお答えはいただけませんか。あるいはそれがすぐにお答えできないならば、これだけ話題が沸騰しているのですから、この指紋押捺をめぐる外登法問題は法制審議会で十分に検討してほしいというふうな御提案をされる気持ちはございませんか。
○嶋崎国務大臣 行政庁として事柄を考えていく場合に、現在ある法制の中で具体的にどの程度のことができるのかということを考えるというのはまず優先的な事柄であろうと私は思っておるわけでございますが、そういう意味で今日まで努力してきたつもりでございます。御指摘のように、一つの目的を達成するために、人権的な問題に支障を来さないようなうまい方法があって効果がより的確に上がるというようなことがあるならば、それを採用するということにやぶさかであってはならないと思うのでございます。 ただ、逆にそういう制度をぎっしりする余り、例えばこの指紋制度の問題にしても、警察権の非常に強いようなところはそちらの方におもしがかかっておりまして、指紋制度自体が非常に軽く見られるというようなことになれば、どこにウエートを置くかというのは総体的な問題として判断をしていかなければならぬというような問題も出てくるだろうというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、将来の問題、いろいろな環境も整備されるし、今度採用された特殊な紙を使うというのもやはり新しい技術があってそのベースの上で事柄を考えられたわけでございますので、私たちはそういう努力は積み重ねていかなければならぬ。ただ、役所の仕事をしていく場合に、末端の地方自治団体の皆さん方の御協力も得なければならぬわけでございますから、再々ころころ話が変わるということではやはり非常に問題があるわけです。かつまた、今度の春のケースでもそうでございますが、私自身が将来制度的あるいは運用上いろいろな問題を各省庁間で検討する余地があるという発言をしたら、そのことをとらえて、だから指紋はやらぬでもいいじゃないかというような論理に結びつけられて事柄を考えられても困るわけでございまして、それは事柄を正常に判断される環境の中で我々の行政努力というものを積み重ねていかなければいけないのではないかというふうに思っておるわけでございます。 いずれにしましても、日韓の共同声明というものがあるわけでございますけれども、私は、現在の時点でことしの大量切りかえを前にこれ以上事柄を整備して対応するということは現実問題として不可能であろう、七月一日から山は来るわけでございますから、もうぎりぎりの段階での判断であるというふうに思っておるわけでございます。本年の実施状況というものをよく見まして、そういう中でどういう工夫が検討されなければならぬのか、またいろいろな意味でどういう形でこの問題というものが評価をされていくのかということを見きわめていかなければならぬと思いますけれども、私自身としましては、せっかくのこういう改善努力というものを積み重ねてきたわけでございますから、そういうことについて在留外国人の方にも十分我々の苦労を理解していただきたいと思うし、また、韓国でも、そういう問題をどういうぐあいに取り上げられるかよくわかりませんけれども、そういう苦心の跡を十分理解して我々の考え方に協調し、事柄がうまく円滑に処理されるように協力を賜りたいというふうに思っておる次第でございます。 なお、審議会等にかけて事柄を処理するかどうかというような問題については、やはり非常に技術的な問題でございますから、我々が引き受けて研究をしていくという面については十分それで対応できるものであるというふうに思っておりますので、今審議会等にかけるというようなことは考えておりません。
○三浦(隆)委員 その最後の結論の部分だけなんですが、お答えのとおり我々で十分対応できるものならばこれは相愛で問題はないのでして、むしろ今法務省、警察あるいは外務省、いろいろと意見がふくそうして悩まれているのが実情なんだろうと思うのですね。これをもう一度冷静に法制審議会でもって検討いただくというのは、法律が大切な場合には結構なことじゃないでしょうか。いろいろと十分に検討してもらって、その検討の成果を踏まえながらよりよい道を模索していくということですね。大臣、ひとつ考え方をお改めいただいて、急にきょう言ったからきょうというわけじゃないのですから、法制審その他にもかけていただいてぜひとも法務省としても十分な御検討をしていただきたい、こう思います。 それから、川崎市への対応の問題についてお尋ねしたいと思います。 というのは、前回私は警察の方に時効と言われる期限が迫ってくればそのときに強制逮捕的なことは行うのですか行わないのですかと言ったときに、まだ仮定の問題だからというふうなお答えがありました。しかし、私がそれでももう時間というものは、七月、八月には確実に訪れてくるものですからそのときはどうしますかというふうにお尋ねして、その一つの結論が、警察としても万やむを得なかったのかと思いますけれども、逮捕に踏み切られたのだろう、こう思うのですね。ここまで延びたということ自体は、警察としても相当慎重な検討があったと思うのです。また、警察の留置場での待遇その他は十分御考慮があったように新聞は伝えておりますね。ですから、警察にしろ、法があったから法のとおり運用したというかやむを得ず動いたというふうに思うのですが、とするならば、今度は、大臣として法務省として川崎市に対してどういうふうな対応を同じくとられようとしていますか一前四言いました国家行政組織法の十五条をどうされますか。仮定の問題でなくて、警察も迫られて一つの決断を出されたわけですね。同じことが、法務省が今度は川崎市、自治体に対して言わざるを得ない場面だと思うのですが、どうされますか。
○嶋崎国務大臣 本日、御承知のようにこういう政令改正を行いますとともに、その運用についての改正も行うという措置をし、近くそれに関連した通達も出したいというふうに思っておるわけでございますが、それとともに、この問題を処理する基本的な考え方というものを整理して入管局長名で通達を出すという決心をしておるわけでございます。したがいまして、そういう実態をよく見ながら川崎市とも十分調整の機会は今後とも持ってまいりたいというふうに思っております。
○三浦(隆)委員 ちょうど警察が李相鎬という方に二度、三度、四度と出頭命令を出された、それでも応じないので強制逮捕に踏み切った、同じことが、法務省は川崎市に対して機関委任事務なんだから従えということをこれまでも言ったと思います、今回も改めて政令改正ということで恐らくすぐにでも言われると思うのですね。これでも川崎市が聞かなかったときどうするのですか。私の質問はこれなんです。いかがでしょうか。
○小林(俊)政府委員 先生の言及されている問題は地方自治体による告発の問題であろうかと思います。外国人登録業務は、御指摘のように機関委任事務であります。しかし、告発という行為が機関委任事務に含まれるかどうかという点については、残念ながら必ずしも明確かつ統一的な見解が確立しておらないのが現状でございます。この問題は地方自治の根幹に関する問題でもございますし、それゆえに地方自治法においては非常に慎重な規定が置かれておるわけでございます。また、実際に地方自治法に定めるところの職務執行命令といったような措置がとられた例は希有のことでございまして、軽々に発動することができないという問題も別途ございます。そこで、私どもといたしましては、告発という問題に限って言えば、これを地方自治法に基づく職務執行命令にまで安易に結びつけるという考えは少なくとも持っておりません。第一義的には、あくまでも説得あるいは指導によって各地方自治体の自発的な告発を実現したいと考えておるわけでございます。そのために、今大臣からも御説明がございました通達によって改めて現在、本日発表された新しい方式を説明かたがた、告発についてはこれをちゅうちょすることなく実施するようにという指導を行うこととしたわけでございます。
○三浦(隆)委員 法務省が市に対していろいろと通達を出される、しかし何回出しても聞かない。幾ら言っても聞かない、じゃ仕方がない、で果たして済むものなのかどうかなという感じもするのですね。そうすると、ますます川崎市と同じような輪が広がってくるのではないでしょうか。結局、先ほど言ったように、今の政治は民主主義の政治ですから、地方自治体の数がどんどんウナギ登りに国の法律に対しておかしいじゃないかと言えば、法の権威というか法の正当性というものが大きく動揺を来すのではないでしょうか。法の安定を言う以上は、法の実効性を担保できるためには、もっと国民がその法への信頼を持たなければいけないことだと思いますね。ところが、現実に市長さんその他各自治体がどんどんどんどん、この法律はだめだ、場合によっては国の機関委任事務はもう投げ出したい、そういうような発言が公然とされてきて、果たしてそれでよいものかどうかということを、私は大変不安、疑問に思います。そこに——先ほど来言うような、恐らく最高裁判所までいけば、ひょっとすれば違憲になるかもしれないようなあいまいなおかしな法律、そこに問題が、私は振り出しに戻ってくるのじゃないかというふうに思うんですね。 そこで、今全国の自治体で法改正への意見書の採択、あるいは不告発を宣言したところはどのくらいになりましたか。
○小林(俊)政府委員 現在までに自治体、地方公共団体で法改正への意見書を採択しておりますのは七百十七自治体でございます。また、不告発といったような意向の表明が行われたというのは、私どもといたしましては新聞報道によって承知しているだけでございまして、直接私どもに対してそういう連絡をしてきたところはもちろんないわけでございますけれども、私どもが新聞報道で承知している限りにおいては十一あるというふうに承知いたしております。 なお、先ほどの御発言について一言だけつけ加えさせていただきますと、その地方自治体に対する告発との関連における問題は、いわゆるその機関委任事務の中に告発という行為が含まれるかどうかという点のみが問題なのでありまして、したがいまして、登録事務そのものについて当方の、中央の通達に従わないといったような問題が出てきた場合には、これは明らかに地方自治法に基づく機関委任事務に定められた規定の適用ができる状態になるわけでございます。しかしながら、御存じのように告発という行為は刑事訴訟法に規定されておる公務員一般の義務でございまして、この機関委任事務に明確に含まれる行為であるという問題はそれなりの法解釈を要する点でございまして、残念ながら現在までのところ、必ずしも明確なあるいは統一的な見解が確立していないということでございます。
○三浦(隆)委員 今、自治体の数が、私の手元の新聞だと約八百となっております。いずれにしましても七百の大台を超えて大変な数に今上ってきている。しかも、質問するたびにだんだん輪が広がっていきまして、七月以降どうなるかまだ予測はつきませんけれども、恐らく大きな問題に発展していくのではないかというふうに思います。 これと同じ事件というか、関連事項なのですが、これは法務省にお尋ねするのでしょうか、警察にお尋ねするのでしょうか。実は、この間強制逮捕をされました李相鎬さんと同じ日に指紋押捺を拒否された方がいらっしゃるわけですね。李敬宰さん、韓国名でどう読むのかわかりませんが、この方は、この間逮捕された李相鎬さんと全く同じ日に押捺を拒否されているわけです。そこで、次は私も捕まるかもしらぬというふうに書いてありますけれども、どういうふうな対応になるのでしょうか。 〔高村委員長代理退席、委員長着席〕
○赤木説明員 個々の事例につきまして、警察としてこれをどうするかということは大変お答えをしかねるわけでございますけれども、ただ、法律違反がある限りにおきましては、私どもは必ずそれについて捜査を推進してまいりたいということは一般的には申し上げられると思います。
○三浦(隆)委員 私は一般的なことでお尋ねしたのじゃないので、指紋押捺を拒否したという全く同じ事例なんですね。全く同じことが同じ日に、たまたま大阪と川崎という土地が変わったというだけのことなんだ。そうすると、指紋押捺を拒否した、同じ日の人が強制逮捕されたわけですね。それに対して大阪府警はどうされるのか。同じ事件が起こった場合に大阪府警と神奈川県警は違うことをしても構わないのですか。現実には違うこともあるかと思うのですが、今回はどうなのですか。
○赤木説明員 ただいま申し上げましたように、個別に、個々具体的なことにつきまして警察はどうするかと申されれば、大変これはお答えしにくい問題でございます。ただ、繰り返しになるようで恐縮でございますが、法律違反という事実があります限りは、警察は必ず手だてを尽くして捜査を推進してまいるということだけははっきりと申し上げられると思うわけでございます。
○三浦(隆)委員 一般論としてお尋ねしても結構なのです。例えばある方には指紋押捺拒否という事実を踏まえて、三回、四回と任意出頭の要請がある。全く同じ行為をやった人に対して何にもしない。いわゆる警察というのは中央の統一指令というのが、神奈川県とか大阪にばらばらに届くものなんですか。そこら辺のところをお尋ねしたい。
○赤木説明員 警察の捜査につきましては、中央の統一指令といったものは、これはあり得るはずのものではないわけでございまして、したがいまして、あくまでも各都道府県警察が独自の立場で個別に判断をして捜査をしてまいるわけでございます。
○三浦(隆)委員 外登法という法律は同じものなんですね。しかも、同じ行為は同じ条文で動くはずなんだと思いますね。ですから、片方には何回も任意出頭が出ているのに、片方にはしない。私が言いたいのは、警察というのは、神奈川県と大阪と土地が変わってしまうと全く対応の方法が変わってしまうのか。住んだところによって運のいい人と悪い人が出てしまうのか。同じ法律が、そんなにアンバランスな、適用がそんなくるくる変わるような運用で果たしていいものなのかどうか。法律が同じなら、大体同じような結論が出てこなければおかしいのではないかと思うんですね。裁判の判決でも、一応判例が出てくるというのは、同じようなケースが出たときには大体同じような流れというのが当たり前だと思うんですね。ところが、現実には、外登法の同じ条文の違反を起こしているのに、片方の警察は何回も何回も任意出頭を要求し、場合によっては逮捕までする。片方は何のこともしないのか。それじゃ、今度は九州ではどうか、北海道ではどうか、それぞれ全部ばらばらになってしまうということは、これは法の運用において平等を欠くのじゃないでしょうか。憲法十四条というのは、単に法律の条文だけじゃなくて、運用においても、アンバランスがあって不平等になったら認めないというのが憲法十四条の解釈じゃないでしょうか、お尋ねしたいと思います。
○赤木説明員 捜査を進めてまいります上におきましては、これは厳格に法にのっとって、手順を踏んで、手段を尽くして行っていくわけでございます。ただ、この種の事案というものはそれぞれ千差万別でございます。したがいまして、千差万別でございますから、そういう処理の上での方法において違いが出てくるのはいわば当然でございまして、片方の事件である取り扱いをしたから、片方の事件で同様の取り扱いをするということを、あるいはそれとは違うということを申し上げるのは大変難しいだろうと考えるわけでございます。
○三浦(隆)委員 それは余り答えになっていないのじゃないかなと思うんですね。私が言っているのは、外登法の同じ指紋押捺を義務づけているのに、それをしなかった。そのことに対して指紋押捺を拒否したという事実は何も動いていないんですよ。全く同じなんですよ。変わっているのは、場所が変わったというだけなんですよ。だから、場所が変わっているだけなのに、同じ法律があった場合に、それが勝手にそのときそのときでもってくるくる変わっていいものか。そういうことは憲法十四条の法のもとの平等に違反することなんじゃないのか、法の運用において。憲法でよく運用違憲というふうな言葉が言われます、文面違憲じゃなくて。それをどうお考えですか。こういう質問なのです。
○赤木説明員 同じような答弁を申し上げるようで恐縮でございますが、確かに指紋を押捺しなかったという法違反の事実は似通っておりましても、当該法違反に至る動機なりあるいはその背景なり、また同人のよって来る犯罪行為に及んだ経緯なり、そういったものは先ほど来申し上げておりますように実にさまざまでございます。したがいまして、一律に申し上げることは大変難しいということを繰り返し申し上げるわけでございます。
○三浦(隆)委員 私が言っている趣旨は、交通取り締まりなんかのときに例えばスピード違反をやった、お巡りさんが立っている、みんなどんどん通っている場合、みんなとめられればそれはそれでいいのですが、ある人だけがとめられてある人がとめられないということがもしあると、何で私だけが捕まるのか、あの人が見逃されているのはおかしいじゃないかというふうになっては困るのじゃないかということなんです、法というものがある以上は。ですから、先ほどの告発も同じなんですよ。公務員として告発しなければならないのだということがもしあったとすると、違う事例なら別ですが、全く同じ事例であれば、告発しなければならぬのを告発するのは当たり前なんだ、しない方がむしろおかしいのだということじゃないですか。にもかかわらず、これが今回みんなばらばらになってしまったというのは、先ほど言うように、法の目的は単にこの身分関係、居住関係を明らかにするというだけのことであって、別に指紋押捺が即目的ではない。それを目的化してしまったところに法の運用に無理を来してしまって、そこで応対がちぐはぐ、ばらばらにならざるを得ない。しかも、そのことが国内外にわたって大きな問題に発展しようとしている。しかも、それがまずくいくと、法律だけではなくて国の権威そのものが、国民からも自治体からも何をやっているのだというふうになることは極めて嘆かわしいことなんじゃないだろうかな。ですから、そのためにもっと整合性がはっきり出るような速やかな法改正なりあるいは何らかの対応を打ち出していただきたいというのが質問の趣旨でございます。 もう時間が来ているようでございますが、ついでに告発の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思うのです。 告発は一般には捜査の端緒となるにすぎないのですが、特定の犯罪については訴訟条件となり得るわけです。外登法違反の場合も、いきなり独自捜査そして強制逮捕にいったのですが、告発なしでやったのですね。それでもいいのでしょうけれども、いや、それではいけない、むしろ告発をしてから逮捕に踏み切るという順番を守ったらどうなのだろうかという考え方もあり得ると思うのですが、いかがですか。
○赤木説明員 もちろん、警察といたしましては、そういう法違反の事実を市町村の窓口の方が認識された場合には告発をいただくことは期待をしておるわけであります。ただ、告発をしていただくようにたび重なるお願いにもかかわりませず告発をいただけないというケースもあるわけでございまして、かような場合にはやむを得ず告発なしでの措置をとらざるを得ないわけでございます。
○三浦(隆)委員 ですから、外登法による指紋押捺拒否というのがそれほどの悪いことなのかどうか。もちろん、法違反ということであればよくないのですが、それほどの悪いことなのかどうかという問題なんです。例えば、告発が特定犯罪についても訴訟条件となる例として「独占禁止法八九条ないし九一条の罪については公正取引委員会の告発が、公職選挙法二五三条一項の罪については当該選挙管理委員会の告発が、また関税法所定の犯則事件については税関長等の告発がそれぞれ訴訟条件とされているし、国税犯則取締法所定の犯則事件についての国税局長等の告発は、訴訟条件と解されている。また、刑法九二条の罪についての外国政府の請求、労働関係調整法三九条の罪についての労働委員会の請求、教育中立法違反の罪についての学長・教育委員会・都道府県知事の請求も、訴訟条件とされている。」なお、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の場合も、合同審査会の告発を訴訟条件と解するというふうな最高裁の判例もあるわけです。ですから、法の事例によっては告発を待って初めて強制逮捕というか普通にいくというのも幾つでもあるわけですね。とすれば、今度の外登法のような場合もそれで差し支えないじゃないか、あるいは法律の改正をもってそうしてもいいし、改正しないまでも法の運用としてそうあってもおかしくないのじゃないかと思うのですが、このように外登法以外でもたくさんの法律が現実にあるわけですね。そういうことについてどうお考えですか。
○赤木説明員 お尋ねは制度そのものの内容にかかわる問題であると思いますので、主管の法務省の方からお答えすべき問題だろうと考えるわけでございます。
○筧政府委員 告訴、告発が条件とされております犯罪は今先生御指摘のとおりたくさんあるわけでございまして、これらの犯罪、あるいは告発ではございませんが、強姦罪等については告訴が訴追要件になっておるわけで、いずれも被害者とか関係者、当該機関の意思にかからしめるを適当とされる犯罪ということでそのようになっておるわけでございますが、外登法が、その犯罪の性質上それと同様に告発を要件とする犯罪とすべきかどうかという点については、どうもそうではないように私どもは考えております。
○三浦(隆)委員 私が今読んだのは高田卓爾先生の「刑事訴訟法」という本からの引用なのですが、藤木先生の説では「実務上も、警察、検察庁が、行政犯についていきなり独自捜査を行なって公訴を提起するという例は少なく、当該の法律を主管する行政庁の側からの告発をまって公訴を提起するのが通例である。」ならば通例に従っていいじゃないか。通例を破るほどのことをなぜ外登法で、この指紋の問題で特に言わなければならないのかということを問題にしたい思います。 時間が来ましたので、また次の機会に指紋の問題について触れたいと思います。
○片岡委員長 柴田睦夫君。
○柴田(睦)委員 きょうは、外国人登録法問題特に指紋押捺問題、また帝銀事件の平沢貞通氏の問題について同僚議員からいろいろと御質問がございました。改めて繰り返すことはないと思いますので、私はこの問題に関しまして私たちの日本共産党の立場と私の考えを述べておきたいと思います。そして、要望したいと考えます。 外国人登録法をめぐる問題で言いますと、ことしの夏に三十数万人の登録確認申請が予定されておりますことから、指紋押捺を中心にしまして社会的な大問題になっております。前回の一九八二年の外登法の改正のときに、我が党は抜本的な同法改正の必要性を強調いたしまして、修正案を本委員会に提出いたしました。残念ながら、各党の賛成は得られず否決されましたけれども、その後の事態の推移特に今日の状況から見ますと、この改正案は正しかったと考えております。 我が党の案の骨子は、第一に指紋押捺制度の廃止、第二に登録証明書の常時携帯義務の廃止、第三に登録、変更など各種申請の際の本人出頭義務、写真提出義務年齢の二十歳への引き上げ、四番目に確認申請の廃止、五番目に登録事項から「職業」、「勤務所又は事務所の名称及び所在地」を削除する。六番目に罰則の軽減。この六点が骨子でありますけれども、これらの点は今では大きな世論になってきていると言っても言い過ぎではないと考えております。 きょうの議論を聞いておりましても、法務、警察当局では、従来の在日朝鮮人を中心とする在日外国人を治安の対象として管理するといった、国際人権規約などの精神に反する考え方が随所に出てまいりますけれども、こういう考え方を改めて、在日外国人の人権を尊重した、真に国際社会の一員たる民主国家にふさわしい抜本的な外国人登録法の改正が一日も早くなされることを願っているわけであります。この点につきまして、法務大臣いろいろと御答弁がありましたけれども、ひとつなおこの点を十分に検討していただいて、世論の動向、そして今日の社会の必要性にこたえられるようにお願いをしたいと思います。 それから、帝銀事件の問題でありますけれども、昭和三十年の五月七日に判決が確定してから既に三十年がたっております。判決確定後繰り返し再審請求が行われまして、またことしの二月十四日には刑の執行免除を求める第五回目の恩赦の出願がなされております。 この恩赦出願につきましては、一般的には監獄の長が職権でなすこともできますし、本人の出願に対しましては意見を付して中央更生保護審査会に上申をしなければならないものとされております。これを受けて中央更生保護審査会の申し出があったものに対して恩赦を行う、こうされているわけです。この審査会の申し出は、法務大臣に対して申し出ることになっております。その際、審査会は申し出に当たって、本人の性格、行状、違法の行為をするおそれがあるかどうか、本人に対する社会の感情その他関係ある事項について調査をする、在監者については社会の安寧秩序を脅かすことなく釈放されるに適するかどうかを考慮しなければならない、こうされております。 恩赦は内閣の決定事項であるわけですけれども、この手続の中において監獄の長の上申といい、あるいは審査会からの申し出の受理といい、法務大臣がかかわり合いを持ちますし、大臣の意向、考え方というのは、この問題については大きな影響を持つものだと思います。かつて西郷法務大臣が、昭和四十四年の七月八日の当委員会におきまして、占領下の死刑囚の恩赦を積極的に行うということを言明されたこともあるわけです。過去四回恩赦出願がありましたが、この中央更生保護審査会の結論は伝えられるところによりますと、一方で再審の請求を繰り返し行っていることが大きな障害になっているやに聞いております。そして再審の請求を出しているという点、これはちょっと別にして考えてみますと、審査会の調査事項とされていることにつきまして、平沢貞通氏はすべて十分に条件を満たしているというように思うわけです。特に高齢であるということなどの諸般の事情を考慮するときには、法務大臣としては、今私はとにもかくにも恩赦によって刑の執行の免除を決定して、釈放するための努力をしていただきたいと思うわけであります。 この事件につきましては、私個人から言えば無実だと思っておりますけれども、その点はいろいろ言い分はあると思います。再審については裁判所が決定することであるとか、あるいはまた人身保護法の請求が出ておりますが、そうした再審の請求をしていることあるいは人身保護の請求をしていることをとらえて、形式的に改悛の情がないというような見方があってはならない。いろいろの見解はあるでしょうけれども、きょう各党の委員からいろいろなお話がありましたように、平沢は既に三十数年にわたる拘留生活、絶えず死刑の恐怖の中に過ごした年月があるということを考慮していただきまして、判決の是非、この結論が出るということを待つのではなくて、九十三歳の高齢を重視して、恩赦法の規定の趣旨も考えながらひとつ自由の身にしていただくべきではないか、これがまた国民の世論になっているというように考えております。 こういう点、まさに法務大臣の決断にかかっていると思うのでありますけれども、きょうの各委員の議論も踏まえていただきまして、刑の執行の免除をなすことについて積極的に取り組んでいただきたい、これが私の考えであるということを申し上げておきたいと思います。 そこで、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案の問題ですが、提案理由ではいわゆる過激派裁判等を契機として、要するに国選弁護人の弁護方針と被告人らの裁判への対応方針の相違などから、その身体に害を加えられ、または加えられるおそれが生じた事例も発生していることにかんがみて、国において国選弁護人に一定の給付を行うこととする必要があるからこの改正案が出されるという提案理由になっているわけですが、国選弁護人がその身体に害を加えられ、また加えられるおそれが生じた事例の実態をひとつ法務省の方からお伺いしたいと思います。
○筧政府委員 まず、実際に傷害を受けた事例として承知しておりますのは、昭和五十三年の秋ごろに強盗殺人等被告事件の国選弁護人が、被告人の支援団体七、八名等から、国選弁護人を早くやめろというようにおどかされ、あるいは暴行を受けまして、その結果全治五日間ぐらいの傷害を受けたという事例一件でございます。そのほかには、事柄の性質上、弁護士さんの方も刑事事件にしたとかあるいは申告するということが余りございませんで、あと日弁連の調査等によりましても、詳細はわかりませんけれども、その間傷害を受けなくても、おまえみたいなばかなやつはやめろとかいうようなことで、支援者あるいは被告人等の間ではり雑言を浴びせられたとかあるいは自宅等に脅迫の電話が来たとかいうような事例は七、八件あったというふうに聞いております。
○柴田(睦)委員 次に、最高裁判所の方にお伺いしたいと思うのですけれども、裁判官が担当する裁判手続に関連いたしまして、被告人あるいは被害者、またその関係者などから身体に害を加えられる事件あるいは加えられるおそれが生じた事案、そうしたものの実態をお知らせいただきたいと思います。
○山口最高裁判所長官代理者 私どもが報告を受けております被告人もしくはその事件の関係者が、事件担当の裁判官に対してその身体に暴行を加えた事例は現在までのところ十三件ございます。うち、傷害を負いました件数は八件でございます。これを民刑別に見ますと、民事が四件、刑事が五件、少年事件が三件、家事事件が一件ということになっております。 二、三例を御紹介申し上げますと、例えば昭和三十年の十二月、京都家裁におきまして少年が鑑別所内の審判廷で送致決定言い渡し後、裁判官に対し処分の撤回を求めて木製の長いすを振り上げて投げつけて、裁判官の左ひじに治療一週間の傷を与えたというようなものがございます。そのほかに、例えば勾留質問を受けた際に、被疑者が裁判官に対し墨つぼ等を投げつけて裁判官の職務の執行を妨害して加療約二週間の傷害を負わせたというケースもございます。それから民事事件におきましても、例えば仮処分申請の当事者が自分の申請が却下されたことに不満を持ちまして、裁判官室に侵入して担当の裁判官に対しカシ棒で殴打して職務の執行を妨害するとともに、全治一週間の打撲傷を負わせたというようなケースもございます。大体そのようなケースが多うございます。
○柴田(睦)委員 ちょっとお尋ねいたしますが、今のケースの中にいわゆる過激派と言われる関係のケースはあるかないか、わかったら教えてください。
○山口最高裁判所長官代理者 事件の関係者が過激派であるかどうかというところまでの確認はいたしておりませんが、例えば四十九年の十月に東京高裁の長官室に五名の者が乱入いたしまして、長官、事務局長、秘書官等に対し鉄パイプで殴打する等の暴行を働き傷害を与えたケースはございますが、これはある事件の被告人の支援者のグループであったということだけはわかっております。
○柴田(睦)委員 裁判官に対する傷害事件が発生したという事案について言いますと、一般的にはその傷害につきまして国家公務員災害補償法が適用されて給付がなされるというような規定だと思うのですけれども、そのような適用がなされた事例もございますか。
○山口最高裁判所長官代理者 まず最初に裁判官の公務上の災害に対する補償等につきましては、実は昭和三十五年の六月二十二日、法律第百号というものがございまして、裁判官の災害補償に関する法律という単行法がございます。これによりまして「一般職の国家公務員の例による。」ということになりまして、国家公務員災害補償法の例によって給付がなされる、こういう仕組みになっております。過去におきまして裁判官に対しまして災害補償がなされました事例は二件ございます。
○柴田(睦)委員 日本弁護士連合会が出しております「自由と正義」の中で、日弁連の事務総長の一九八二年の会務報告が載っております。「法曹三者協議会」の項のところに「国選弁護人の被害補償関係」というのがありまして、「昭和五四年三月三〇日成立の三者協議結果、付属了解事項に記載された事項については、「法務省は、国選弁護人がその職務に関して生命・身体等に危害を加えられた場合の補償についてその実現方法を検討する」ことが残されている。」そしてこの件についていろいろありまして、要するにこの証人等の被害についての給付に関する法律の一部改正をもってするということに日弁連も了解した。そして、その立法作業の過程でいろいろの注文を日弁連がした。その中で、三番目の「証人等の被害についての給付基準は低いので、弁護人については、公務員の災害補償並みの基準とすること」、それから四番目の「査定手続に日弁連の意向が反映できるよう検討することの四点を特に要望し、これに対し法務省は基本的に了承しており、今後は、立法作業の然るべき必要段階において随時協議することとなっている。」これは八二年の報告であります。 今の点についての、公務員の災害補償並みの基準とすること、それから査定手続に日弁連の意向が反映できるように検討する、この問題については今度の改正案においてはどのように受けとめられているのか、お伺いしたいと思います。
○筧政府委員 今回の改正に至りました経緯につきましては先ほど御説明申し上げたとおりでございまして、三者協議会の結論を得てから日弁連との間で最近に至るまで協議を続けたわけでございます。その間に日弁連の方からはいろいろな御要望がございまして、その一つに今柴田委員御指摘のように公務員の災害補償並みの基準ということがございます。言うなれば、証人等と同じでは低いので何らかの形でもっと高い基準を設けてほしいというような御要望もございましたし、あるいは補償額の裁定に当たりまして日弁連の意向が何らかの形で反映するようにという御要望もございました。そのほか、被害者の範囲を広げるとかあるいは物損、精神的損害も含めるとか単独法にするとか、そういう四、五点が中心であったと記憶いたしております。その点につきましてもその後いろいろ両者の間で検討を加えまして、結論としては、結果的には今の二点の御要望には応じられなくて今回の改正案のような結果になり、もちろん日弁連も御了承の上最終結論を得たわけでございます。 確かに国家公務員災害補償法並みの補償という点、日弁連の立場として望ましいことはよくわかるわけでございますけれども、この証人被害法の中に入れるということにだんだん合意ができてまいりました。その中身を見ますと、証人、参考人と国選弁護人ともに刑事司法に協力するという意味で立場は同じでございます。弁護人の重要性あるいは社会的地位ということは十分わかるわけでございますけれども、証人、参考人等にもいろいろな立場の人がいる。そうすると、これを特に区別するまでの理由というのがちょっと見当たらないのではないかということで、証人等と同一の基準になったわけでございます。 なお、国家公務員災害補償法は御承知のように過去三カ月間の平均給与を基礎にして計算するわけでございますが、そうした場合にはその当該災害を受けた公務員の給与がもとになるわけでございますから、高い場合もあるし相当低い場合もあるということでございます。それよりも、証人、参考人あるいは国選弁護人の場合にはある程度の基準で、それに幅を持たせてその当該弁護人なら弁護人の方の実情に応じて、先ほど申し上げましたように一万三百円という最高限があれば現実にはそれに近い形で運用がされるであろうというふうに思うわけでございます。その範囲内で賄うことで落ちついたわけでございます。 それから、裁定手続に日弁連の意向を反映するという点、これもいろいろ両者の間で協議をし、意見を出し合ったわけでございますけれども、この法案にありますように、給付額というものは基準額があってその幅の中で行われるといういわば自動的な計算がもとになっておるという点がございますし、先ほど申し上げましたように、その裁定の場合に証人等と弁護人等を特にこれも区別するまでの理由もないのではないかということで、証人と同じような形での裁定手続ということに結論が落ちついたわけでございます。
○柴田(睦)委員 法案関連は以上で終わります。 それで、いわゆる過激派裁判などを契機として改正案の提出ということになったと言われておりますので、ひとつ極左暴力集団あるいは過激派集団、いろいろ言われておりますが、我々はにせ左翼暴力集団と一般的に呼んでおりますが、これら暴力集団によるいわゆるゲリラ事件についての状況なんですが、昨年の概況をひとつ説明願いたいと思います。
○鏡山説明員 昨年中のゲリラ事件の概要という御質問でございますけれども、このゲリラ事件といいます場合、私ども明確な規定というものはございませんが、ただ極左暴力集団、過激派が単独もしくは比較的少人数で奇襲的に行うものを一応ゲリラ事件というふうにとらえておりますので、その中には例えば爆発物を使ったり火炎瓶を使ったり火炎放射器等を使ったりするものもありますと同時に、フェンスの金網を切ってしまうというようなことも入っているわけでございますけれども、そういう数を全部含めますと、昨年中の発生は四十八件となっております。その中でも特に対象として多いのは成田闘争関連でございまして、昨年中に二十九件発生しております。 この成田二期工事に関連して発生しましたゲリラ事件二十九件というのを、襲撃対象、どういうところを対象にしてやったんだというふうに見てみますと、一つは空港本体とかその関係施設あるいは空港公団の施設あるいは警察の施設、政党の本部、それから成田関連の各種工事関係の施設とか業者、それから国会議員の事務所あるいは千葉県知事の私邸、こういうのが対象になっておりまして、昨年の主な事件としましては、五十九年三月一日の空港公団本社ビルに対しまして高速道路上から火炎車を使いまして放火した事件とか、あるいは五月五日に成田空港に対して妨害電波を発射しまして飛行機の離着陸に影響を与えるというような事件を起こしておりますし、あるいは九月十九日には自民党本部に放火するという事件、十一月二十七日に千葉県選出の国会議員の方々の事務所あるいは千葉県知事の私邸に対する放火、同未遂事件というような極めて悪質な事件を行っております。
○柴田(睦)委員 昨年の概況を伺いましたが、ことしに入ってからもにせ左翼による今言われたようなゲリラ事件が成田空港問題を口実にしていわゆる無法的に頻発しているように聞いております。 それで、ことしに入ってからの概況、それからことしに入ってからの事件の捜査状況あるいは犯人検挙の実態、それから今年度の事件についての特徴あるいは昨年と比べてみた場合の傾向、そうした問題について、要するにことしの問題についてお伺いしたいと思います。
○鏡山説明員 本年に入りまして発生しましたゲリラ事件は、現在までのところ二十三件になっておりまして、昨年同期に比べまして非常に増加しております。 その二十三件につきまして、犯行声明等からどのセクトがやったのかと見ますと、中核派によると認められるものが十四件ということでございまして、そのほか革労協狭間派によるものと認められるものが三件、戦旗荒派によると認められるものが五件、あと犯行セクトが不明というのが一件になっております。 このうち、成田工事に関連したゲリラ事件としましては、このことしの二十三件中の十八件に上っておりまして、その襲撃対象も昨年と同じように空港本体やその関係施設、警察施設、空港公団施設、空港関連企業、成田用水施設等々となっておりまして、特にことしは一月十一日に警察庁の科学警察研究所に対する放火事件、四月十二日に成田及び羽田両空港に対する爆発物発射事件、あるいは四月八日に新東京国際空港公団工事局に対する火炎瓶発射事件、さらに五月七日には埼玉、千葉両県下の三カ所の航空管制施設等に対する火炎瓶発射事件が発生しております。 特にこのゲリラ事件を昨年とことしというふうに比較してみますと、ことしの注目点は、一つはいわゆる飛び道具といいますか火炎瓶発射装置あるいは爆発物発射装置というものが出てきたということと、もう一つは中核派でございますけれども、爆発物を使用し始めだということが非常に大きな特徴であろうか、こういうふうに思っております。 こういう事件に対しましては、警察といたしましてもそれぞれ捜査本部を設けまして全力を挙げて捜査しております。犯行声明を出したセクトに対する組織的な捜査、あるいは犯行に使用されました盗難車両とか時限式発火装置等の組成物の捜査、あるいは犯行現場周辺での聞き込み捜査等鋭意推進して犯人の早期検挙に努めておるわけでございますけれども、本年の検挙事案といたしましては、先般、四月二十八日に警視庁で昨年の九月十九日の自民党本部放火事件に対する被疑者一名を逮捕するとともにあと一名を指名手配しております。 それと同時に、直接どの事件に関与したということはまだ今のところわかっておりませんけれども、中核派の四日市にありました非公然アジトをことしの一月九日に摘発いたしまして、開発中の新しい武器等を押収すると同時に、爆発物取締罰則で起訴しているという状況でございまして、着々と彼らの非公然軍事部門に対する打撃を与えておるという状況でございます。
○柴田(睦)委員 四月になっての成田、羽田空港、新聞などでは新型ロケット弾を撃ち込む、こういう重大な事案に発展してきているわけです。これは、一般国民に対する無差別殺傷につながりかねない、一般国民が安心して暮らす権利があるにもかかわらず、そういう状況を意図的に奪ってしまうというような方向にエスカレートしているというように思うわけです。ゲリラ事件ですから、現行犯逮捕の場合あるいは、要するに人がいないところでカムフラージュした上で犯行に及ぶわけですし、またそういう犯罪者集団になっておりますので、いろいろ画策もしながらやっていると思いますから、現行犯やあるいは一般の何かつながりのある犯罪などに比べてみると、確かに検挙が簡単でないということはわかるわけでありますけれども、それにしても、ことしになってからでもいろいろな事件が起きて、二十三件起きている。そして、ことしの分についてはまだ犯人逮捕というところには至っていないという事実から見ますと、これはもうだれが見ても将来、今後について不安を持たせるものであるというように思うわけであります。 そこで、今課長の方から犯人検挙の努力、また、こういう犯罪が起きないための対処の基本についてお話がありましたけれども、こういう新しい事態を迎えて警察として 新しい事態というのはエスカレートする事態ですけれども、そういう事態を迎えて特に対処として考えている点について、あるいは犯人検挙の見通しといいますか、そうした問題についてもう一度お伺いしたいと思います。
○鏡山説明員 ただいま御指摘ございましたように、この四月十二日に使われました凶器というのは、飛ぶ距離も非常に遠くまで飛ぶというようなことで、今まで以上に国民の皆さん方に御心配をかけるような事態になっておるわけでございます。これにつきまして、私どもとしては二つの立場から対策をとっているわけでございますけれども、一つは攻めという立場でございますし、もう一つは守りという立場でございます。 攻めといいますのは、どうにかして積極的に、こういう悪質な犯行を繰り返しておる極左暴力集団を検挙しなければならないという立場からの攻めでございますけれども、これにつきましては国民の御協力も得ながら、例えば非公然軍事部門の関係者とかそのアジト、あるいは犯行に使う、いろいろ盗難自動車なんかを改造しておりますが、そういう地下工場の発見とか、あるいはゲリラ事件が発生しそうだということになると、いつ、どういう時点で行われるだろうかという箇所に対する待ち伏せといいますか要撃捜査、あるいは犯行に使用されるおそれのある盗難車両を早期に発見する、こういう活動を攻めという面でやっておるわけでございます。 一方、奇襲的なゲリラを、何とかその被害をなくさなければならぬという意味で、そういう対象になる場所についての防護、これにも力を入れておるわけでございます。 警察といたしましては、こうした極左暴力集団の過激な闘争に対するものにつきましては、これまでも所要の警備体制を確立しまして、空港諸施設等重要防護対象については常駐体制などをとりまして厳重な警戒警備をやっておるわけでございますけれども、特にこの四月十二日の事件のような問題が起こって以後は、警戒範囲というものをもっと広げるというようなことも十分検討しながら、情勢に応じて所要の防護体制、警備体制をとりながら、この種事件の再発防止に全力を挙げているところでございます。 先ほど、犯人の、そうした連中の逮捕の見通しはどうかという御質問でございますけれども、これにつきましては、ただもう警察を挙げて、国民の御協力も得ながら全力を挙げて取り組むということを申し上げておきます。
○柴田(睦)委員 最後に、大臣にお伺いしたいと思いますが、お伺いすることは、要するに先ほどお話がありましたように極左暴力集団、まさに暴力行為をエスカレートして国民を本当に不安の中に陥れている。そしてまた、現状においてはなかなか犯人が挙がらないという状況にあるわけです。 元警視監をやった人が書かれた本を見てみますと、その最初の「はじめに」のところに、「新東京国際空港反対闘争で、」——これは去年の、五十九年の十一月のものですけれども、「三十八件もの放火爆破事件が起きているのに、まだ一件も検挙解決されていないという。発生した違法事態を鎮圧するのが治安警備の役割だから、ゲリラ犯罪に弱くても仕方ないのかも知れない。」こういうことも書いて、それから「刑事警察の鑑識面は、警備公安事件や交通事件の処理に忙殺されるようになったし、手配共助捜査などの広域捜査では、刑事警察が警備公安事件の捜査に大きく貢献しなければならなくなった。」そういうことから刑事警察の面が非常に弱くなっている。そういうことを述べてあるわけです。 この極左暴力集団の去年またことしにかけての状況から見てみました場合に、これをもう本当に鎮圧する、犯人を検挙する、そこにやはり検察、警察全部の知恵と力を出さなければならないというように考えておりますけれども、担当大臣として法務大臣に、にせ左翼暴力集団の妄動を取り締まる決意をお伺いして、終わりたいと思います。
○嶋崎国務大臣 最近、日本の治安状況というのは諸外国に比べて非常に落ちついた状況にあると言われておるわけでございますが、そういう中で、今御指摘になりますように極左暴力集団の最近の活動というのが非常に根強く残っておるというような感じを我々は受けておるわけでございます。何しろ、新しいいろいろな工夫を凝らした犯罪が行われるわけでございまして、それの影響するところもまことに大きいというふうに思っておるわけでございます。そういう意味で、ぜひともその抑制、鎮圧に我々も努力をしていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。 今後とも、警察当局でもいろいろな御努力を積み重ねておられると思いますけれども、我々もそういう事態にどうしてうまく対処するかということについて、努力をしていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
○柴田(睦)委員 終わります。
○片岡委員長 次回は、来る十七日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時三十分散会