法務委員会 第16号
- 発言数
- 197 件
- 登壇者
- 21 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1985/04/17
会議録
○片岡委員長 これより会議を開きます。 法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小澤克介君。
○小澤(克)委員 私は、この衆議院に議席を得て初の委員会の質問におきまして、さきの百一国会の当委員会におきまして、精神障害者の人権の保障の問題を取り上げさせていただきました。それ以後、予算委員会の分科会であるとかあるいは当委員会の法案審議その他も含めまして、例えば部落差別に苦しむ方々であるとか、さらには在日外国人、また最近はいわゆる過激派というようなレッテルを張られている方々のことについてまで取り上げさしていただきました。弱者、少数者それから異端者といった方々の人権の擁護の観点から取り上げさせていただいたわけです。 その理由は、当委員会の役割というのは、何よりも人権の擁護にあるというふうに私は確信するからであります。また、本当に自由な社会、民主的な社会というのは、弱者に温かく、また異端者に対して寛大である、そうあるべきだと思いますし、逆に、社会から自由が失われ、あるいは非民主的な社会になる、そういうときには、まず弱者、少数者、異端者の人権の侵害から始まる、こういう歴史的な教訓があるからであります。 そこで、私は、さきの国会において、先ほども申し上げたように一番最初に精神障害者の問題を取り上げ、特にその統計的な数字をお尋ねいたしました上で、その数字自体から、我が国においては欧米に比較して不必要に多数の者が不必要に長期間、また不必要に強度の拘禁を受けているのではないか。しかもその救済手段が、そういった手続が極めて不備ではないかということを指摘いたしまして、また、我が国も既に批准を終わっております国際人権規約にも違反しているのではないかというような問題を提起したわけでございます。 そこでまず、人権の擁護を重大な職責としておられます法務大臣に、これらの質疑を読まれての感想といいますか、御見解を賜りたいと思います。
○嶋崎国務大臣 ただいまお尋ねの基本的人権の尊重という問題につきましては、御承知のように、新しい憲法のもとで基本的な人権というものを確実に守り抜いていこうというようなそういう精神の中で、今日まで日本の国民の中でもそういう意識というのがどんどん進展してきておるように私は思っておるわけでございます。しかし、いずれにしましても、この基本的人権の問題につきましては、すべての国民について尊重すべきことは当然のことであります。 今、例示的にお挙げになりましたいろいろな問題につきましても、そういう差別的なものというものがどんどん撤廃されていくということ、特に形而上の世界では、人間本当に全く平等であるという意識はあっても、形而下の社会ではなかなか、分けて物が考えられなければならないような条件というものがあるだけに、基本的な人権の問題については、やはり十二分に心をして運用をしていかなければいけないというふうに思っておるわけでございます。 また、今例示をされました精神障害者についても、等しく尊重さるべきことは当然でありますので、また、そういう状況にあられる人でございますから、それらの対策というのは、非常に気配りをし、また難しい問題があることは十分わかっておりますけれども、それだけに精いっぱいの配慮をしていかなければならぬというふうに思っている次第でございます。
○小澤(克)委員 私が精神障害者の問題を取り上げて以降、この一年間に、例えば栃木県の宇都宮病院の事件などに代表されるように、精神障害者に対する甚だしいといいますか、非常に忌まわしい人権侵害のケースが次々に明るみに出る。国連などでも問題とされるといったような事態が展開していることは、御承知のとおりだろうと思います。 そこで、最近私はまた、極めて重大な人権侵害があったのではないか、むしろ人権侵害があったと断ぜざるを得ないような事件を知ったわけでございます。それは、昨年、一九八四年の一月末から二月初めにかけまして、国立の大学であります岐阜大学の大学病院において、精神障害者である妊婦がその主治医の一定の方針のもとに人工妊娠中絶を受ける。そしてそれに引き続いて、その取り出された胎児に対して解剖が行われた。その母体に投与された向精神剤の胎児の脳への影響が調べられ、研究された、こういう事案だと聞いております。 そこで、まずこの件に関しまして、これは後ほど細かく指摘したいと思いますけれども、非常に重要な、重大な人権侵害の疑いが濃いわけでございますが、この点に関しまして法務省の人権擁護当局、それからまたこれは医療に関連した事柄でございますので厚生省、そしてまたこれは国立の大学病院でございますので文部省、各当局に対しましてこの件についてこれまで何らか実情の把握をしておられますかどうか、あるいはもし調査を既に開始しておられるとすればその調査の経過また調査の結果、これらについてまずお知らせいただきたいと思います。
○野崎(幸)政府委員 御指摘の事案につきましては、岐阜地方法務局におきまして人権擁護上問題がないかどうかということから情報の収集に当たっている段階でございます。この問題につきましては、精神衛生行政を所管する厚生省や日本精神神経学会におきましても調査検討を進めておられるということでございますので、私どもはその点も重大な関心を持って見守っておる段階でございます。
○小林説明員 本事件に関しては、昨年の五月、新聞報道等で事件になっていることを承知しておりますし、また先般岐阜県から報告を受けまして、事件のことについてはおおむね了承しております。
○佐藤説明員 文部省といたしましては、先生御指摘のこの件につきまして、概要につきましては大学から報告を受けております。岐阜県内の病院で岐阜大学の精神神経科の助手の治療を受けていた患者が昭和五十九年一月二十七日に岐阜大学の精神科に転院をいたしまして、その後、大学の産婦人科で人工妊娠中絶が行われて胎児が分娩された。その夜、第一病理教室においてその胎児の遺体が解剖された。その後、二月六日に患者は岐阜県内の病院に移っておる。この件に関して日本精神神経学会におきまして問題となりまして、そのことを学会の研究と人権問題委員会の調査団が医学部の学部長のところに参って事情をただしたというところまで私ども報告を受けております。
○小澤(克)委員 次に、警察当局に対しまして、本件についてこれまで捜査の対象としたことがあるかどうか、お尋ねいたします。
○藤原説明員 警察といたしましては、御指摘の事案が新聞報道されたことは承知いたしております。また、その内容として、優生保護法に定める関係者の同意を得ておるという報道の内容も承知いたしております。しかし、現段階では特に捜査の対象とはいたしておりません。
○小澤(克)委員 幾つかの省庁では事件の概要は報告は受けているということのようでございますが、必ずしも詳細にわたる調査はまだ進んでいないようにお聞きいたしましたので、こちらで承知しておりますことを指摘しながらなお伺っていきたいと思います。 それで、この事件においては、これは後に述べますけれども、あらゆる観点から見まして、まず第一に、患者が出産を強く希望していたのにこの意思が全く尊重されていない、むしろ踏みにじられているという側面、それからもう一つは、この一連の経過から見まして人体実験という性格がかなり濃厚である、むしろ人体実験であることを否定しがたいように思われる、そういった重大な問題点があると思うわけですけれども、その前にまず順序として、本件の患者、仮にAさんならAさんとしますが、に対する精神衛生法上の手続関係から伺いたいと思うのです。 この方、当時年齢三十四歳だったと聞いておりますが、昨年の一月七日に岐阜県下の私立の精神病院に措置入院、精神衛生法二十九条による知事の措置によって入院しているわけですけれども、これはある資料によれば、この措置入院とされた理由として「経済的背景のため措置入院となる」、こういう記載があるんですが、経済的背景のために措置入院、入院の措置を受けるというようなことが精神衛生法の運用上あり得ることなんでしょうか。これをまず厚生省にお尋ねしたいと思います。
○小林説明員 先生おただしの経済的理由により措置入院があり得るのか、こういうおただしでございますけれども、現在では経済的理由によって措置入院がされるなどということはないと私ども思っております。
○小澤(克)委員 言うまでもなくこれは自傷他害のおそれというのが要件なわけですけれども、「岐阜県精神科医会調査委員会の見解」と称する調査報告を拝見いたしますと、看護記録の中に「経済的背景のため措置入院となる」という記載があるわけでございます。何らか経済的理由のために自傷他害のおそれという要件がないにもかかわらず措置入院、これは本人の意思に反して強制的に人を拘禁するという大変重大な措置でございますので、そういうことが行われたとしたら重大な問題を含むと思いますので、この点さらにお調べを願いたいわけでございます。 それから一月七日にこのように措置入院になりまして、それが同月の二十七日に、その事情については後で述べますが、岐阜大学の精神科に転院させられているわけなんですけれども、その際の手続がどうなっているのか、この措置入院の関係はどうなっているのか、さらにまた、岐阜大病院への入院はどういう手続になっているのか、この点、厚生省、お調べは済んでおりますでしょうか。 〔委員長退席、亀井委員長代理着席〕
○小林説明員 本件の事例の患者さんですけれども、岐阜県の民間病院から仮退院を五十九年の一月二十七日にいたしまして、そして岐阜大学の医学部附属病院へ同意入院という形で入院をされていらっしゃいます。
○小澤(克)委員 ちょっとわからないのですけれども、措置入院になった方が仮退院という形で退院をする、そしてさらに同意入院という形で他の病院に入院する、これは仮退院後も措置入院としての効果がすぐに切れるわけじゃないと思いますので、二つの強制的な手続といいますか、同意入院というのも本人の意思に反しているという意味ではまさに強制的な手続ではありますが、二つの手続が重複しているということは、こういうことはあり得ることなんでしょうか。
○小林説明員 仮退院は、措置入院患者の症状に照らし、その者を一時退院させ、経過を見る目的で行うものであります。このような事案に対しまして、今現在の事件ですね、人工妊娠中絶を行うためにこの制度を使うのはその趣旨に反していると考えておりまして、この事案では県知事が転院手続をとるべきであったと考えております。なお、岐阜県では、昨年十月ないし十一月に関係者に対しまして、仮退院制度の適正な運用について改めて指導を行ったと報告を受けております。
○小澤(克)委員 少なくともその段階で既に手続的な違反といいますか、趣旨に反することがあったというふうに今お答えいただいたわけですけれども、この同意入院に関しまして、これは保護義務者の同意ということで入院になっているのだろうと思いますが、これは家庭裁判所による保護義務者の選任ということは履践されているわけでしょうか。
○小林説明員 岐阜県からの報告で、家庭裁判所の選任を受けているという報告がありましたし、それを確認いたしております。
○小澤(克)委員 病院側がみずから作成した文書があるのですけれども、これには保護義務者の選任がされていなかった、しかも、大学病院の一般の慣例とはいえ、こういう手続が行われていなかった点はまずかったというようなことを言っているのですが、これはそうすると間違いなんでしょうか。
○小林説明員 先生のお手持ちの資料はちょっと私、拝見しておりませんのでわかりませんけれども、私の方の資料に裁判所の書類のコピーがきちんとありまして、確認をいたしております。
○小澤(克)委員 これは昭和六十年三月七日付の岐阜大学医学部神経精神医学教室難波益之という方の作成名義の文書に、「また保護義務者の選任を行っていなかった点は大学病院一般の慣例とはいえ不注意であったと思います。今後の教訓にしたいと思います。」という文書がございます。この保護義務者の選任手続というのは、事後的に補正といいますか、追完されるということがよくあるというふうに聞いておりますので、この点についてもなおもう一段突っ込んだ調査をお願いしたいと思います。 また、「大学病院一般の慣例とはいえ」と、ここにみずから書いているわけですけれども、もしこういう慣例があるとすれば重大な問題を含むと思いますので、こういう慣例が本当にあるのかどうか、この点についてもお調べを願いたいと思います。 そこで、人工妊娠中絶に関しまして伺っていきますが、先ほど示しました調査委員会の報告によりますと、事実関係は、岐阜大学附属病院の精神科の助手をしておられますお医者さん、この方が、この患者さんが最初に入院しました私立の精神病院に非常勤で勤めておられて、この患者の主治医になっていた。そして入院後一週間くらいたって診察をした際に、本人が九月ごろから既に生理がないあるいはおなかにしこりがあるというようなことを言ったので、そこで私立の精神病院の近くの産科医で受診をさせ、妊娠していることをこの主治医の方は知った。しかしながら、そのことを家族には伝えたけれども、本人にははっきりは伝えていなかった。そこで、この主治医の方でもろもろの事情により人工妊娠中絶が適当と判断をし、そして大学病院産婦人科にてこれを施行するために転院をさせた。その際、この本人である患者に対しては、妊娠しているかどうかを確かめるために転院するのであるという説明をした。なおその際、妊娠していたらおろさなければなりませんよということも言った。これに対しまして本人の方は絶対に産むと息巻いていた。こういう経過になっているわけでございます。 それで、先ほども指摘しましたとおり、転院手続自体が措置入院を仮に解除といいますか、仮解除させた上で新たに同意入院という、また別の手続をとったわけですから、ここでは本人みずからの意思で転院に応じたという側面は全くないわけでございますので、絶対に産むというふうに息巻いているものを医師がまず最初に人工妊娠中絶が適当であると判断をし、そして妊娠しているかどうか確かめるためだというふうに欺いて転院を本人の意思とは無関係にさせたというようにしか受け取れないわけでございます。 そして、転院三日後というふうに医師の方は言っているようですが、記録によりますと、一月二十八日のようですけれども、産科で受診をいたしまして、そしてこの段階で初めて本人に妊娠の事実を告げる。そして、その医師から本人に対して、育児の自信はあるのか、再入院することになったら子供はどうするんだ、経済的に問題はないか、それから家族や夫が中絶を望んでいる、さらに、妊娠中に薬物を服用しているではないか、こういった点を指摘して、人工妊娠中絶を説得をした、そして最終的に本人と内縁の夫がこの同意書に署名をした、こういうことが大学側作成の文書にも明らかなわけでございます。 ところが、この資料によりますと、本人の方は産みたいという意思が非常に強固であったということがいろんなところから散見されるわけでございます。例えば、そもそもこの措置入院となった理由が、この方は入退院を繰り返している方なんですけれども、退院すると薬を飲むことを拒絶する。薬を飲んでいれば普通に社会生活ができるわけですけれども、薬を飲まないといろんな症状が出まして、入院することになるわけですが、その薬を飲まない理由が、「赤ちゃんがほしくて薬を服用しなかった」、そのためにいろいろ症状が出た、そもそもそういうことのようですし、それからその発作も、「赤ちゃんがほしい」と叫ぶ、それから「赤ちゃんを絶対に産むと頑張っているため、検査目的で転院を納得させた」、そういう記載もございますし、また、看護記録では、「家族はだまして連れてきたという」、また本人は看護婦に対して、「私はどこも悪くないよ。お腹の赤ちゃんを検査するために来たんだから」と答える。それからさらに看護記録によりますと、一月二十九日には、「「私うちの人と仲が良いのにどうしておろさないかんの」と涙を流しながら話す。」それからまた「他の人に何人か聞いてみたけど、精神科の薬をのみながら赤ちゃんを産んだって言ってたよ。痛み止めの薬なんかはダメだけど、ここのはどうもないと思っていた。」こういうことも言っておりますし、さらに、これは二月一日ですけれども、人工妊娠中絶手術開始後も「どうしたら子供を産んでもいいか」と看護婦さんに聞いている。それからまた二月二日には母親に対して「なんでおろさんならんの」と怒ったということを母親が訴えた。こういうことが散見されるわけです。 これに対しまして、先ほど紹介しましたように、医師の方は専ら産んではならない理由のみを羅列しまして同意書に本人の署名を求めている。本人の希望をかなえる方向での真剣な検討は一切なされていない。しかも見落としてならないのは、本人の意思に反する拘禁下にありまして、したがって、だれかと相談するということが全くできない、そういう状況にあったわけです。まさに本人が産みたがっているにもかかわらずその主治医が、本人が最も信頼すべき、本人のために治療行為を行うべき主治医がまさに因果を含めるというようなやり方で、かなり強引に同意書に署名をさせている。こういう状況がうかがえるわけでございます。そして、何よりも指摘しなければならないのは、本人に何らまだ説明がされてない段階で中絶の方針が既に立てられていた、中絶の方針であるということは記録に明記されているわけですけれども……。 そこでお尋ねするんですが、このような形での同意、あるいは承諾といいますか、これに堕胎罪の違法性阻却事由としての同意というものが果たして認められるんでしょうか。すなわち、真意による同意、承諾と言えるのか。あるいは特に拘禁下にあるということからしまして、本当に任意に出た同意、承諾というふうに評価できるのか。これは優生保護法十四条の要件を満たしているのか。さらに刑法の堕胎罪の違法性阻却事由を果たして充足しているのかどうか。これは法務省の刑事局、それからまた優生保護法に関しましてはあるいは厚生省でしょうか、まずお尋ねしたいと思います。
○筧政府委員 お尋ねの件につきましては、事実関係が何分不明でございますので、今委員が御指摘のような条件のもとで同意があったと言えるかどうかという点については確定的なお答えはいたしかねると思います。一般論として申し上げますれば、繰り返しになりますが、優生保護法所定の要件を満たしていれば堕胎罪は成立しないということは明らかであろうかと思います。
○小澤(克)委員 事実関係が明らかでないということですから今のようなお答えでやむを得ないかと思いますけれども、一般論として堕胎罪の違法性が阻却されるには、同意というものが本当に真意に出たものであり、かつ自由な意思決定ができる任意性が保障されている条件下の同意でなければ、単に形式的に同意書に署名があっても真の同意とは認められない、こういうことは一般論としては言えるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○筧政府委員 抽象的に同意ということを考えますれば、やはり真意に出たということが実質的に違法性を阻却するあるいはその他の法律的な要件として認められる同意であろうかと思います。本件については事実関係が何も定かでございませんので、具体的事件については確定的なお答えはいたしかねると思います。
○小澤(克)委員 それから、仮に同意ないし承諾が一たんなされたとしましても、中絶手術を行うまでに明示で撤回されていればこれは同意があったとは言えなくなるのではないかと思いますが、一般論で結構ですが、いかがでしょうか。
○筧政府委員 一般論、抽象論で申し上げれば、おっしゃるとおりかと思います。
○小澤(克)委員 この報告を詳細に見ますと、月三十日に同意書の署名を求めて署名を得ているわけですね。そして、その翌日にこの妊婦に対しましてラミナリアというものを挿入しているわけです。二月一日にこの患者はどうしたら生んでもいいのかということを看護婦さんに聞いているわけです。これは言い落としましたが、妊娠がわかった段階で少なくとも十六週は超えているということでございますから、十六週から妊娠五カ月目に入るということのようですので五カ月の半ばだったわけです。したがいまして、いわゆる掻爬術とは違いまして、産道といいますか子宮口を広げる、そういう術を行うんだそうです。ラミナリアという何か海藻からつくったものを挿入しまして、これが自然に膨張して子宮口が広がる、そうやって胎児を娩出させるという術のようでございます。この事実経過からしますと、三十一日にラミナリアを挿入された段階ではまだ本人が自分に何が行われているのかわかっていない、知らされていない。既に妊娠中絶手術が開始されているということを知らないままに、二月一日にどうしたら生んでもいいということになるのかと尋ねているとしか思えないわけでございます。そうしますと、この時点ではやはり生みたいんだという意思が外部に表明されているわけでございます。そうであればこの段階でやはり中止をしなければならないのではないか。お医者さんに伺ったところでは、ラミナリアを一たん挿入しても早期にこれを出してしまえばもとに戻るといいますか、人工妊娠中絶を中断することができると聞いているわけですが、これは同意の撤回が明示になされているにもかかわらずそのまま強行されたとしか思えないわけです。この点に関しまして、まず事実関係をお調べ願いたいと思うわけです。 それから、これまた法務当局にお尋ねしたいんですが、後に述べますようにこのケースは引き続いて胎児の解剖が行われているということで、最初に申し上げたようにいわば人体実験的な側面が非常に強いわけです。そこでお尋ねしたいのは、たとえ優生保護法の要件を形式的に満たしていてもその中絶の目的が異っていた場合、優生保護法は母性の保護と優生目的ということを目的としているわけですが、形式的にこの要件を満たしていてもこの目的とは違った目的、すなわち実験を目的とするものであった場合にはやはり違法性を阻却されないことになりはしないかと思うのですが、この点についての解釈はいかがでしょうか。
○筧政府委員 繰り返しになりますが、具体的な内容、事実関係が明らかではございませんし、今御指摘の点もその実験目的、優生保護法本来の目的と違うという点、その辺もどういう目的で具体的に行われたのか、やはり事実関係を前提に考えませんと、ただ目的が形式的な目的と違うんだということだけで、優生保護法に基づく行為であるということでの違法性阻却が認められるかどうかということにはならないのではないか。さらにその詳細それに関連する事実関係を明らかにした上で判断されるべきものと考えております。
○小澤(克)委員 一般論として、違法性阻却事由があるときにその違法性阻却の行為が他の目的で行われた場合に、それでもなおかつ違法性を阻却するのかどうかというのはいろいろ議論のあるところだ。平野龍一さんの論文でも違法性を阻却するのは目的が阻却するのか、行為自体が阻却するのかという議論がたしかあったと記憶しておりますが、一般論としてその点はどうなんでしょうか。本来の目的と違った目的で、しかし外形的には手続がきちんと履践されている場合に違法性が阻却されるのか阻却されないのかということについての、一般論で結構ですが、御見解を賜りたいと思うのです。
○筧政府委員 あくまで具体的な事実を前提にして総合的に判断されるべきものと考えております。例えば今の優生保護法の点につきましても、違法性が阻却されるというのは優生保護法に書いてあることをきちんと守った場合だけに限られるかといえば、そうではない場合も、社会事象としてはいろいろあろうかと思います。社会事象としていろいろな目的下での行為が行われた場合に、その目的によってどれだけ形式的に犯罪構成要件に該当しても違法性が阻却されるかどうか。やはり個々の具体的な事実をもとにして、社会通念等をもとにして判断されるべきものということに尽きるのではないかと思っております。
○小澤(克)委員 もう一つ、この人工妊娠中絶に関して問題点があろうかと思うのは、主治医によって立てられた中絶の方針に基づいて中絶が行われたわけですが、実際の中絶術を行ったのは同じ病院の産婦人科のお医者さんのようですけれども、この産婦人科のお医者さんによって妊婦の意思確認ということがきちんと行われているのかどうか、その点について、これは文部省になりましょうか、実情がわかっていれば教えていただきたいと思います。
○佐藤説明員 大学から報告を受けましたところによりますと、精神科としては、中絶に適するか否かという最終的な判断は産婦人科の方に任せた。それを受けて、産婦人科としては、妊婦を診断した後、精神科とは別に、本人を呼び、家族の同意、承諾を得ている、こういうふうに聞いております。
○小澤(克)委員 そうしますと、今おっしゃった産婦人科で得た同意書というのは、この一月三十日付の同意書とはまた別なんでしょうか。二通重複してあるんでしょうか。それとも同じものなんでしょうか。
○佐藤説明員 私ども大学からそこまで詳細に報告を受けておりません。
○小澤(克)委員 それについて、なお一層の調査をお願いしたいと思います。 この主治医の側でいろいろ説得をして、三十日には本人とその内縁の夫からの同意書を得ているというふうに言っているわけです。これとは別に、産婦人科の方で改めて本人の意思確認を行った上で同意書を得ているのか、それとも主治医の側で説得して得た同意書、これに乗っかって、そのまま術を行ったのか。これはやはり産婦人科の医者の注意義務の問題として重要な意味を持つかと思いますので、先ほど申し上げたように、お調べを願いたいと思います。 指摘しておきたいのは、ロボトミー実験を行ったというケースの裁判で、これは札幌ロボトミー事件の第一審判決ですけれども、ロボトミーを現実に行った医師についても、「ロボトミー相当だとしてその施行の依頼を受けた際、右診断過程の不備につき慎重な考慮を廻らさず、漫然ロボトミー実験を引受けたことは」「余りに安易であって、」「注意義務を怠った過失責任は免れない。」こういう判例もあるようでございますので、今の指摘した点について、なお一層のお調べを願いたいと思います。 それで、これは最初に伺うべきだったのですが、そもそも本件、この人工妊娠中絶手術は優生保護法のどの条項によって行われたんでしょうか。これは厚生省でしょうか。
○小林説明員 本件の中絶は、優生保護法第十四条第一項第四号の規定によったと報告を受けております。
○小澤(克)委員 私がちょっと漏れ聞いておるところでは、大学側の説明では、十四条一項の第一号によって行われたというふうに聞いております。これはちょっと確認できていないのですけれども、この点についてもなおお調べを願いたいと思います。 〔亀井委員長代理退席、太田委員長代理着席〕 そこで次に、胎児解剖についての問題点をお尋ねしたいと思います。 これは最初に申し上げたように、この人工妊娠中絶と胎児解剖が一連の経過で行われているということから、人体実験としての性格がどうも否定しきれないように強く印象づけられるわけでございます。 病院側の文書によりましても、これは中絶が決まった後に思いついて行ったのであって、決して計画的な人体実験ではない、このようにいろいろ弁解しているようでございますが、しかしこれは中絶によって胎児が娩出された後に解剖が決まったとは言っていない。中絶が決まった後に発意されたと言っておりますので、少なくとも中絶の実行前から解剖が予定されていたことは大学側も認めているとしか思えないわけですけれども、まずこの大学側の発表によるところの中絶が決まった後に発意されたという、この中絶が決まった後ということの意味合いについて、これは厚生省になりますか、文部省になりますか、ぜひ詰めた調査を願いたいと思うわけです。 なぜかと申しますと、本件では、先ほども指摘したように、まず最初に主治医による中絶の方針が決まり、そして中絶目的のために転院が行われ、その後に本人の同意を、これが非常に形式的なものだということは繰り返し指摘しているわけですけれども、取りつけているわけです。この中絶が決まったというのが、医師の方針が決まったときなのかあるいは本人から同意書を取りつけたときなのか、その辺微妙に違ってくると思いますので、ぜひお調べを願いたいと思うのです。 いずれにしても、中絶の実行前に既に後の解剖が決まっていたということは明らかなわけですけれども、この解剖するということが本人には全く事前に告げられていないわけですね。 病院側作成の記録によりましても、この中絶が行われて胎児が娩出された後に、この患者が、「先生が試験につかってもいいかときいた」、こういうことを看護婦さんに告げているわけです。そしてこの患者さんは、既に中絶が行われた後にも大変赤ちゃんに対する強い執着を示しているわけですね。胎児が娩出された後、必死で胎児を見ようと起き上がろうとするため、臥床させた。その際に、「赤ちゃん小さいけど、犬みたいに小さくても育つから、育てれん?」と看護婦さんに告げている。そしてさらに自室に戻ってからも「あの赤ちゃん育てられないか。今どこにいる?」と聞く。そして「先生が試験につかってもいいかときいた」、それから「「さっき見たけど、もう少し見たい」と矢継早に喋りかける。」それからさらに「「赤ちゃんをキチンと産んで育てたかった。旦那はもうとしだから、体も弱いからできるかどうかわからない」と言い、泣きだす。」二月五日の時点ですけれども、内縁の夫に会いたい、私も年だから赤ちゃん産んで育てたかったのに、お姉さんがだめや言って、中絶の手続を取った、この内縁の夫も中絶を勧めた、と思い出し、泣きじゃくる、こういう、これは事後的でありますけれども、やはりどうしても産みたかったという強固な意思を表出しているわけですけれども、この本人にはただ単に試験に使ってもいいかと聞いたというような程度で解剖が強行されているわけです。病理解剖かどうか知りませんけれども、一体こういうことはあり得ることなんでしょうか。厚生省いかがでしょうか。
○横尾(和)説明員 死体を解剖する場合の法的な要件として、遺族の承諾を要することになっております。その承諾がきちんとした形でとられていたかという点は十分に問題になり得ると思います。
○小澤(克)委員 主治医の話によりますと、この辺の手続については病理の人に聞いたら母親に書いてもらえと言われたということで、患者の母親の、解剖についての承諾書をもらったということなんですが、これはちょっと理解できないですね。肝心の妊婦本人ではなくてその母親、胎児から言えば祖母に当たるわけですが、その承諾をもらった。どうしてこんなことになったのか。推測するところ、病理の人の方は母親というのは妊婦のことを指して言った、ところがこの精神科の主治医の方は、母親というのは妊婦のさらに母親というふうに受けとめた、こういうことじゃないか。と思うのです。胎児の解剖について妊婦ではなくさらにその母親の承諾をとって行うなんということはどうなんでしょうか。手続的に見てこういう運用というのは実際にあるのでしょうか。
○横尾(和)説明員 今回の問題について今、先生がおっしゃったような事実があったかどうか私ども承知しておりません。また、このような関係者の中で胎児の祖母に当たられる方の承諾書が有効かどうかについては、もうちょっと具体的な事実を見てからでないと判断しかねます。
○小澤(克)委員 母親に書いてもらえと言われたときに、妊婦それ自体を思い浮かべずにさらにその母親のことをまず念頭に思い浮かべたとすれば、この主治医においては妊婦、患者それ自体の意思についての配慮が全く欠けている、徹頭徹尾妊婦本人の意思を尊重するという態度が欠けているとしか思えないわけです。これは倫理の問題とも非常に絡むと思いますので、厚生省あるいは文部省、どちらが適しているのかその辺の両省の範囲が私ちょっとわかりませんけれども、よりお調べを願いたいと思います。 そしてまた指摘しなければならないことは、この主治医が共同発表ということで、この前年の非常に近いとき、昭和五十八年十二月十日に東海神経学会でハロペリドールという向精神薬の脳内分布についての研究発表を行っている。そして、本件で母体に投与され胎児の脳への影響が調査された薬品も同じくハロペリドールである。こういうことから見ますと、どうも動物実験には飽き足らずに人体で試験をしてみた。たとえ解剖を思いついたのがどの時点であれ、こういう研究の一環として行われたのではないかという強い疑いを持たざるを得ないわけです。したがって、人体実験としての側面が否定しがたいというふうに繰り返し申し上げているわけです。 そこでお尋ねしたいのは、この解剖が行われたということは事前に病理教室の方と十分な打ち合わせが行われなければ実施できないのではないか。お医者さんは皆さん忙しいはずですから日程の調整一つとっても必要でしょうし、解剖を行う標本までとるということになりますとそれ相当の準備が必要だったと思うわけです。この点も、これが単に思いついてのことなのか、それとも事前に計画された人体実験であるのかということに非常に密接に関連すると思いますので、この点についてある程度状況を把握しておられますでしょうか。これは文部省になりますでしょうか。
○佐藤説明員 先生ただいま御指摘のことにつきまして私どもが報告を受けた範囲では、事実関係として、解剖が産婦人科の依頼によって第一病理学教室の教室員が担当した。その際に、産婦人科医と精神科医が立ち会っていたようである、それで通常の病理解剖の業務として行われた、こういう報告を受けているだけでございまして、それ以上今、資料、報告を持っておりません。
○小澤(克)委員 この点についてより一層のお調べを願いたいと思います。 それから、これは厚生省にお尋ねしたいのですが、死体解剖保存法との関係でございます。記録を見ますと、この解剖については主治医が非常に深く関与しているようでございます。まず解剖するという意思決定が主治医によって行われている、これは主治医みずからがそのように認めております。さらに解剖の際にも、主治医みずからの言によりますと、解剖のとき立ち会った、「外麦面の奇形、内臓の奇形を調べ、脳に関しては、組織学的なこと、向精神薬の脳内分布のことは私のほうでやらせて欲しいと申し出た。」「胎児の脳は、左右半球を切って、片方を組織学的に、もう一方を向精神薬の脳内分布測定に使った。」こういうふうにおっしゃっているようですので、そこで、このような場合に死体解剖保存法上適法なのかどうか。死体解剖保存法は、原則としては保健所長の許可を得て行う。ただし、「医学に関する大学の解剖学、病理学又は法医学の教授又は助教授が解剖する場合」、それからまた厚生大臣が認定したものが解剖する場合については保健所長の許可は要らないというふうになっておりますが、このように精神科医が深く関与している場合、解剖保存法上の解釈はどうなるのでしょうか。厚生省、いかがでしょう。
○横尾(和)説明員 精神科医の解剖に際しての関与の仕方についてのお尋ねというふうに理解をいたしますが、先ほど文部省の課長から御報告のありましたような、病理学教室で担当医によって行われたという限りにおいては問題はないものと考えます。また、病理学教室所属以外の者がかかわった場合を仮定いたしました場合に、それらの臨床系の医師が有資格者であったかどうか、あるいはその解剖について病理学教室等の指導が行われて、その指導のもとに行われていたかどうかというような事実によっては問題があり得る場合もあろうかと思います。
○小澤(克)委員 この点についてもより一層の調査をお願いしたいと思います。 死体解剖保存法が何を保護法益としているのか、それによっても、単に執刀者が病理の方であればいいということなのか、あるいは解剖の意思決定をするのがだれかということにむしろ重要性があるのか、その辺についての解釈学、これは特殊な法律でございまして私もよくわかりません。御検討を願いたいと思います。 それで、この解剖に関しましては、先ほども指摘しましたように、承諾というものが胎児から見れば祖母の承諾を受けている。これが死体解剖保存法に言う「遺族の承諾」ということに果たして当たるのかどうかという点が問題ですので、この辺についての調査もぜひお願いしたいと思います。 それで、そもそもこの脳の解剖についてはだれが行ったのか。また、記録によりますと実験についてはある教授の許可をもらったというような記載もございます。どのような手続を経てこの解剖についての大学内部での意思決定が行われたのか。それから、この解剖の結果についての記録が全く出ておりません。どこでだれがどういうカルテをつくり、そしてその結果について、例えば標本はどこでどう保存されているのか。それからまた通常このような研究を行う場合には動物実験等の十分な積み上げがあって初めて行われるのが常道だろうと思いますが、そういったことがきちんと行われたのかどうか。さらに、この岐阜大学の病院には胎児を使ってこういう解剖等を行う場合の倫理基準等について審査をするような機構があったのかどうか。この点をぜひお調べ願いたいと思います。 そこで、この解剖に関しましてもう一点、これは法務省の刑事局の方に見解を伺っておきたいのです。 これは五カ月目に入っていて、医学者のあれなどを見ましてももう完全に人間の形をしている、各種器官が全部できておりまして、ただ小さいだけということで、例えば心臓なども娩出された時点で動いていたのは当然だろうと思うわけです。こういう場合に殺人罪に該当する余地があり得るのかどうか教えていただきたいと思います。
○筧政府委員 御承知のように殺人罪は人を殺すということでございます。人というのは生命を有するということが前提でございますので、ただいまの場合、出生じた胎児といいますか、それが生命を有していたかどうか、普通、人工妊娠中絶で出た場合は生命を保有してないというふうに考えますれば、四カ月、五カ月で形は通常といいますか人間の形をしていたとしても、その場合には解剖いたしましても、それによって殺したということにはならない、したがって殺人罪にはならないというふうに考えております。
○小澤(克)委員 人とは何か、胎児はどの段階から人になるかという解釈論だろうと思います。なかなか難しいことだろうと思いますけれども、生存の可能性についてはかなり小さい場合も可能性があるというようなことも最近の医学書などでは、これは医学の発達もあるのでしょうけれども、聞いておりまして、例えば五百グラム以上あれば何とか育つとか二十週を過ぎていれば全く可能性がないではないというようなことも聞いております。昔私が勉強したころは、胎児であっても一部露出すれば既に攻撃の対象になるから刑法上は人であるというようなことを習ったことを記憶しておりますが、最近の医学の進歩の中でどの段階から人としての保護法益の対象になるのかというのは重要な問題を含むと思いますので、御検討を願いたいと思うわけです。仮に放置すれば育たない状態であっても、心臓が動き、生きているのであれば、その死期を早めるということは殺人の要件に当たろうかと思います。 まず、そもそも本件で娩出されたときに、これは最初に申し上げたように掻爬術などとは違いまして子宮口を人為的に広げて普通の出産と同じように産み出されたわけでございますから、小さいとはいえ生きていた可能性が非常に高い。それが自然に死ぬ以前にもし解剖に着手したとすれば殺人ということも全くあり得ないではない、決してとっぴではないと考えますので、この辺についての事実調査をぜひお願いしたいというふうに考える次第です。 さて、そのような法律違反かどうかという問題はともかくといたしまして、この一連の経過は倫理的には非常に重要な問題を含むと思われるわけです。 これは厚生省に伺いたいのですが、これが人体実験に当たるかどうかはともかくとしまして、人体実験についての倫理基準というようなものが、現在お医者さんの世界あるいは世間一般も含めまして、何か確立した基準のようなものが存在しますでしょうか、いかがでしょうか。
○横尾(和)説明員 人体実験全般について、政府が関与した形のものはまだないと承知しております。
○小澤(克)委員 日本精神神経学会理事会の一九七三年二月二十七日に発表された「人体実験の原則」というのがございまして、これは諸外国での例えばヘルシンキ宣言であるとか、いろいろな成果を踏まえてつくられたものだろうと思いますが、この中で、人体実験の対象となる被験者について、自発的な同意がなければならない。しかも、その同意の前に、あらかじめ十分な実験内容についての説明がなければならない。これをインフォームド・コンセントというふうに言うようですが、十分に情報を与えられた上での全く任意の自発的な同意がなければならない。しかも、被験者は、いつでも中止させる権利と自由を持つ。こういったことが決められているようでございます。 本件に照らしますと、まず基本的な認識として、これは胎児に対する解剖ですけれども、人工妊娠中絶が行われて、それに引き続いて胎児の解剖が行われたということは、この一連の経過から言いますと、やはり妊婦に対する行為というふうに見るのが相当だろうと思うわけです。そうしますと、妊婦に対して、あなたの赤ちゃんを中絶して、出てきたら解剖しますよ、それでもいいんですかという十分な同意を求めている形跡はみじんもない。むしろ娩出された後に、お医者さんから試験に使ってもいいかと言われたという程度でございますし、もちろん事前の説明ということは全くなされていない。しかも、この被験者は中絶後、つまり胎児が娩出された後も、先ほど紹介したように、この胎児に対する非常な執着を示している。何とか育てられないだろうか、あるいはもう一目見たい、そういうことを繰り返し述べているわけですから、この段階ででももし事実が告げられていれば、解剖などとんでもないというふうに言ったであろうということは、容易に推測されるわけです。 そうしますと、この中止を求める権利も全く保障されていない。これは全体としての説明がないからなわけですけれども、この原則等に照らしますと、全く倫理的な基準を満たしていないとしか思えないわけですけれども、この辺につきまして、厚生省の御見解はいかがでしょうか。
○横尾(和)説明員 先ほど来先生からいろいろ状況について御説明を承っておりますが、私どもといたしましては、まだその事実について承知をしておりませんので、その段階で意見を申し上げるのはまことに難しく、差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
○小澤(克)委員 これは法務省の方に伺いたいのですが、国際人権規約のB規約の七条二項でしょうか、「何人も、自由な同意なくして、人体実験を受けることはない。」というところで、「たとえば、被験者が強制的に特定の場所に収容されている場合などになされた同意は、自由な同意とみなすべきでない。」というような見解が示されているわけですが、これはどうでしょう、このとおりなんでしょうか。
○野崎(幸)政府委員 ただいま先生が御指摘、御提起になっております問題につきましては、人権擁護上いろいろなかかわりがあるということは明らかであろうかと思います。 ただ、人体実験というものをとらえましたときに、それがどのような場合に適法になるのかということはなかなか難しい問題でございますが、少なくともそれを適法化するにつきまして、その実験の対象とされる人の真意に出た同意というものがそれを適法化するために必要なものであるということは、一般論として明らかであろうかと考えます。
○小澤(克)委員 今読み上げました見解によりますと、身体を拘束されている場合には、もうそれだけで、人体実験に関する限りでしょうけれども、自由な同意とはみなされないという見解がありますので、本件では、措置入院である、あるいは同意入院であるか、両方重複していたようですけれども、まさに身体の自由を拘束されているケースでございますので、こういう観点からも十分な調査をお願いしたいわけでございます。 さらに、先ほど指摘しました人体実験の原則によりますと、精神障害者の人体実験について特に定めておりまして、身体障害者については「特別に慎重な配慮が必要となる。」「保護義務者・親権者が真にその精神障害者の利益を代表しているかどうかにわかに判断しがたいことがあることをとくに考慮しなければならない。」したがって、精神障害者については、自発的同意ということの要件に問題がある。「真に被験者の利益を代表しているとみられる保護義務者・親権者の自発的同意も必要である。」もちろん先ほど指摘したと同様に、十分な説明がなされなければならないし、いつでも中止させる自由と権利を持っている、こういうことが特に書いてあるわけでございます。本件では、先ほども指摘しましたように、本人はこの胎児の解剖についてほとんど知らされてもいないし、同意も求められていない。同意をしたとされている本人の母親、胎児から見れば祖母については、本当に真に被験者の利益を代表しているかどうかというところにも疑問の余地があるケースでございます。単に法律違反かどうかということだけではなく、倫理的な側面からも問題がなかったのか、十分な調査と、また対処を要求したいと思います。 それから、この患者の主治医ですね。これはお名前まではきょうの段階では申し上げないことにしますが、この方について、そもそもこれは非常勤ということで私立の精神病院に勤務していたと聞いておりますが、いつからこういう私立病院に勤務をしていたのか、その辺は調査はできておりますでしょうか。
○佐藤説明員 本件の主治医につきましては、昭和五十八年の七月一日付で岐阜大学の教官に採用されておりまして、その同じ日に、七月一日付で国家公務員法の百四条に定めるところによって兼業の許可を受けて私立の精神病院に非常勤の医師として診療に当たっている。そこで、それ以前にその他の病院に行っているとか、あるいは本件にかかわる病院に行っていたかどうかということにつきましては、その方の身分が非常勤の医員という身分でございまして、これは兼業許可を必要とするということでございませんので、記録がございません。したがって、それ以外については私どもとしては現在承知はしていないところでございます。
○小澤(克)委員 今のお話からしますと、公務員法上の百四条の許可を受けた上で兼任の届けなど所定の手続がきちんと履践されている、こういうことでしょうか。
○佐藤説明員 法律上定めたところの所定の手続を経て兼業許可が行われております。
○小澤(克)委員 この私立の病院とそれから岐阜大の大学病院、それ以外に何らかかかわっている病院というのはございませんでしょうか。
○佐藤説明員 それ以外の病院にこの主治医がかかわっていたかどうかということについては、私ども承知しておりません。
○小澤(克)委員 この私立の病院でも勤務していたわけですから当然報酬も得ていたのでしょうが、その辺についても調査はいかがになっておりますでしょうか。
○佐藤説明員 月に四回行っておりまして、一回につき四万円の報酬を得ていたという報告でございます。
○小澤(克)委員 それからこの方は現在何か外国に留学しておられるというふうに聞いておりますが、これはいつごろから、また公務員法上何らか手続が必要なんであればそれらの手続等はどうなっておりますでしょうか。
○佐藤説明員 現在この方はアメリカ合衆国にございます環境衛生研究所で神経ペプタイドの研究ということで従事されておりますが、人事院規則の規定に従いまして、昭和六十年の二月一日から十二月三十一日までの期間、岐阜大学長より研究休職という発令を受けまして出かけている、こういうふうに報告を受けております。
○小澤(克)委員 この問題が学会等でいろいろ取り上げられた後に米国留学ということのようでございます。今後の調査に障害になるのではないかということも危惧いたしますし、また見方によってはいろいろ問題が起こったんでとりあえずほとぼり冷めるまで外国にやったというようなことも考えられないわけではないわけです。この辺についても、これは文部省の方になろうかと思いますが、調査をする上でもし妨げになるようなことがありましたらぜひ善処をお願いしたいと思うわけでございます。 そこでもう一つ、これは現在も続いている問題なわけですけれども、当該の患者がこの一連の事実経過の後に再びもとの病院へ戻っている、措置入院ということのようでございますが、そのために本件につきましていろいろ調査をしたいということで精神学会の関係者等が要請をしてもこれが拒否されているという状況があるようですが、これは、まず、この方が第三者に会えない状況にあるのかどうか、もしあるとすればそれはいかなる法的根拠によって行われているのか。これは厚生省でしょうか、いかがでしょうか。
○小林説明員 一般的に医療の分野では見知らぬ人が患者さんに面会を求めたといたしましても、医師の判断でもって患者の病状が悪化するという可能性があったりする場合には面会を拒否できるもの、私はこう考えております。 本件の場合も、主治医の判断によって、今、先生がおっしゃられた面会の方々に対しては、病状の悪化を懸念したため面会を拒否されたと報告を伺っております。
○小澤(克)委員 今の面会を拒否するというのは、精神衛生法上の行動制限の条項によって根拠づけられるのでしょうか、それとももっと一般的な治療行為そのものに内在する、いわば医者の治療の権限から生ずるものなんでしょうか。いかがでしょう。
○小林説明員 これは精神衛生法上の規定による拒否とは関係がございません。一般の医療における患者さんに対する主治医の判断として行われたものと解釈いたしております。
○小澤(克)委員 この件が問題となって、本件では何といいましても患者の利害と主治医の利害とが対立、まあ対立と言っていいかどうか、緊張関係にある、そういうケースでございますので、これを調査しようとしても、この主治医自体、特に昨年の六月二十六日に調査をしたいということで他の医師が——一般の人ではございません、しかも精神科のお医者さんであります、医師が面会を求めたのを、まだ米国留学する前ですから依然として主治医であるこの方が治療を理由に断った。これはどう考えても相当とは思えないわけですね。自分の利益を擁護するために治療の権限を行使したというふうに言われても仕方がない。まあ、精神障害者ということですから、治療目的からしても、それはやたらめったらだれにも合わすということは多分差し控えなければならない場合もあるでしょうけれども、会おうとしたのもお医者さんでございまして、素人ではない。その辺から見ましても、これはどう考えても相当とは思えない。今その主治医は外国へ行っているわけですけれども、依然としてこれらの舞台となった私立の病院に本人の意思に反して措置入院という形が続いている。すると、これは今後の調査等についても大変重大な障害になるのではないか。少なくともこの患者が自分の自由な意思を表明できる、そして事実関係について心理的な圧迫なしに語れる、それよりも何よりも、第三者がまず会える、そういう状況をつくり出すべきではないかというふうに考えるのですが、厚生省、いかがでしょうか。
○小林説明員 御質問の趣旨は精神病院の閉鎖病棟における通信、面会の自由を確保せよとの趣旨からの御質問だと思いますけれども、近年徐々に閉鎖病棟内の患者についても公衆電話の利用等が可能になりつつあります。また、昨年十一月に日本精神病院協会から全会員に対しまして精神病院マニュアルを配付し、自助努力を行ってきているところであります。また、厚生省といたしましても、入院患者の処遇に関するガイドラインというものを現在検討中でございまして、そのガイドラインの作成をいたしまして、今後患者さん方の自由意思が表明できるように努力をしてまいりたい、このように考えております。
○小澤(克)委員 質問の趣旨をそう勝手に決められては困るのでして、そういう趣旨で質問しているのではないのです。一般論じゃなくて本件のこの患者さんです。現在もこの舞台となった最初の私立病院に入院している。そこに身柄を拘束されているわけでして、その支配下に今あるわけです。今後いろいろ本件について調査をしなければならない。まあ先ほどから調査を繰り返し要求しているわけですが、この事態は私はどう考えても妥当ではないのではないか。他の機関に、他の医院に移す、その上で公正な調査が行われるべきであるというふうに考えるのですが、これについていかがでしょうか。
○小林説明員 この患者さんの現在の主治医もいらっしゃるわけでございますので、まずその主治医さんと面会されようとしたお医者さん方とお話をされるということがまず最初ではないかな、このように思います。
○小澤(克)委員 これは知事の措置によって強制的に入っているわけです。私は、まず他の病院に移す、それが先ではないかというふうに考えるのですけれども、どうでしょうか、単に今の主治医と調査をしたい人が会うとか会わないとか、そういったレベルの問題ではなくて、今お答えになった場合は、念頭に置いておられるのは、他のお医者さんが私的な立場で調査に行く場合を考えておられるようですが、そうではなくて、先ほどから繰り返しお願いしているように、各行政当局による公正な調査をお願いしているわけですから、その前提として、まずこの緊張関係といいますか、対立関係にある病院との関係を断つことが前提じゃないかと思うのですが、いかがでしょう。繰り返しになって恐縮ですが、厚生省、いかがでしょうか。
○小林説明員 医療につきましては、その精神病院の患者さんの場合、治療期間が大変長くなるということもございます。そういう意味では、同じ病院できちっとした継続的な医療が行われるということが大変大切ではないか、私はこのように思います。 なお、措置患者の待遇問題といいますか処遇問題についてのことは、県の方の精神衛生審議会ですか、それからその措置入院患者についての再審査ですか、それがきちっと行われていると思いますので、私は、まだ現在の医院で治療を継続して構わない、このように思っております。
○小澤(克)委員 長い治療が必要であるということですが、その治療の相当性が今まさに問われているわけですから、この病院を信頼し、ここでの治療を今後も継続的に受けるべきであるというのは絶対に私は納得できません。 大変不勉強で恐縮なんですが、知事の措置というのは、これは機関委任事務なんでしょうか。知事の固有の権限なんでしょうか。
○小林説明員 機関委任事務でございます。
○小澤(克)委員 そうであれば、これはまさに厚生省からの指示をすることによって、知事の措置について、例えば他の病院への入院を措置させるとかということは十分可能なはずでございますから、これはぜひ実現していただきたいと思います。 長期の治療が必要であるからなおこの病院での治療が相当であるというのは、私は、これは絶対詭弁以外の何物でもない。なぜならば、この病院における治療、この病院が出発点ですからね、ここにおける主治医の判断で転院させられ、そして本人の全く希望しない中絶が行われ、さらにその非常に執着を示している胎児について、本人に断りなく切り刻まれた、こういうケースなんですから、これは絶対納得できません。何とか他の病院にとにかく移す、その上で公正妥当な調査が行われるように、これは厚生省として絶対にやっていただきたい、強く要求します。いかがでしょうか。
○小林説明員 先生の御意見もございますので、もう一遍再考させていただきます。
○小澤(克)委員 ぜひお願いしたいところでございます。 時間も残り少なくなってまいりましたので、ややまとめてみたいと思いますけれども、本件につきまして、先ほどから繰り返しお願いしておりますが、やはり文部省、厚生省、法務省、これは人権擁護局と同時に、捜査の対象にも場合によってはなり得ると思いますので刑事局ですか、それから警察庁ですね、本件についてのまず細かい実態の調査、そしてまたその結果についての資料の提出を求めたいと思います。資料についてはかなり膨大なものになると思いますので、今ここで読み上げることはいたしませんけれども、後に事務的にいろいろお願いしたいと思います。概括的で結構でございますから、各省庁、調査と資料の提出をお約束いただきたいと思うのですが、いかがでしょう。順次お願いします。
○佐藤説明員 関係の省庁とも御相談いたしまして、できるだけ先生の御趣旨に沿うようやってまいりたい、こう思っております。
○野崎(幸)政府委員 御指摘の事件につきましては、今後とも人権擁護上問題がないかという観点から、積極的に情報を収集してまいりたいと考えております。
○小林説明員 先生の御指摘のありました点につきまして、厚生省といたしましても、岐阜県を通じて資料の収集等に努めてまいりたいと思います。 なお、資料提出に関しましては、患者のプライバシーの保護ということが大変重要でございますので、プライバシーの保護に関する部分を除きましては、御要望があれば提出をしたいと考えております。
○藤原説明員 ただいま先生から一連の御指摘がございましたが、警察といたしましては、関係機関などと十分な連絡を進めまして、その結果を踏まえ、一応事実関係を判断の上、適正に対処いたしたいというふうに考えております。 ただ、警察が行いますこういう問題は、おおむね犯罪の捜査でございます。そういうことでございますので、具体的なこの事実関係については保秘を原則といたしておりますので、御了承いただきたい、こういうふうに考えております。
○筧政府委員 検察当局といたしましても、新聞等で事件については承知しているところでございます。今後、関係行政機関等と十分連絡の上、必要があればそれに適切に対処をいたしてまいりたいと考えております。
○小澤(克)委員 ぜひお願いいたしたいと思います。 警察に関しましては、これまで必ずしも捜査の対象とは考えていなかったということでございます。今回を機会に、これで端緒を得られたということになろうかと思いますので、適切な捜査をお願いしたいと思います。刑事法違反として立つかどうかというのはなかなか難しい問題もあろうということは先ほど法務省の方からのお答えでもありましたけれども、なお、例えば宇都宮病院の事件でも刑事法違反にはならなくても他の細かい法律違反というようなこともあったようでございます。本件につきましても、例えば先ほど指摘しました死体解剖保存法でしたか、それから精神衛生法とか種々関連する法規はあるように思いますので、それらについても十分な配慮といいますか、検討をお願いしたいと要望する次第でございます。 それから、これは厚生省にお願いすることになりましょうか、精神衛生法の適用を受けて拘禁下にある方の自由な意思を確認する制度、これが非常に欠けているというのが宇都宮病院その他のケースからも痛感されるところです。刑事被告人であれば曲がりなりにも弁護士との接見交通権が保障されているわけですけれども、精衛法上はそういうものがはっきりしていない。むしろ精神衛生法三十八条ですか、行動制限というものがございまして、あるいは先ほどおっしゃったような医師の治療の権限、こういうものによってほとんど外部との意思の疎通ができない、妨げられている、このことが、場合によっては不法に拘禁されている場合というのがなきにしもあらずですから、そのような場合の救済、あるいは精神病院の中で行われます、極端な場合では暴力事件とかいろいろあるわけですけれども、これらについての訴え、救済というのが全く妨げられている、そういう実態を痛感いたしますので、本来、治療をするお医者さんというのは本人のために治療するわけですから絶対的に信頼していいはずですけれども、残念ながらそのような性善説にのみ依拠することができない実態があるわけですから、拘禁下にある人の意思を確認することの制度の確立をぜひお願いしたい。これは厚生省のみならず法務省にも検討をお願いしたい。前にも私、お願いしていた件でございまして、前の住法務大臣は一応検討してみたいというふうにお言葉をいただいていたと記憶しておりますので、ぜひ御検討願いたいと思います。 それから、先ほど申し上げたところですけれども、今も最初の病院に入っているこの患者について、とにかく他の病院に移す、公正な調査を可能にするために移す、これをぜひお願いしたい。 それからもう一つは、これは文部省にお願いすることになりますか、このような胎児に関する実験、本件が人体実験であるかどうか議論の余地はありますけれども、私は人体実験としての側面がどうしても否定できないと見ているわけですが、それはともかくといたしまして、胎児に対する解剖その他の実験というのは、胎児といえども場合によっては人間になり得た存在ですから、その尊厳というものは尊重しなければならないと思いますので、これについての何らか倫理基準、こういったものを確立すべきではないか、そういうことを検討すべきではないか、これはこの岐阜病院に関してでも結構ですし、より一般的にでも結構でございますが、一般的には厚生省、それからこの大学病院に関しましては文部省、いかがでしょうか。
○佐藤説明員 今回の問題とも深く関連をするわけでございますけれども、医療行為をしたりあるいは病理解剖を大学で実施をしていく場合に、医師としての倫理感あるいは専門的な知識、これはやはり担当の医師が責任を持って判断をしなければいけない問題だというふうに私どもは考えておりまして、先ほど先生も御指摘がございましたが、ヘルシンキ宣言などというようなものがございますけれども、倫理基準の確立につきましては医療機関全体あるいは医師、学会、こういうところで積極的な取り組みが期待をされるところでございます。私ども文部省といたしましては、特に人を対象にする臨床研究の取り組みに当たりましては、大学の中に倫理委員会の設置をして倫理の問題について慎重な対応をするように指導をしてきているところでございます。先生も御承知かと思いますが、東京大学、京都大学、徳島大学等々、現在十一大学、一研究所でこうした倫理委員会の設置をされておりますし、今後も幾つかの大学がそれに向けて検討しているというふうに聞いておりますので、私どもとしてもこの面で今後も指導を徹底してまいりたいと考えております。
○小澤(克)委員 大学の自治の問題がありますのでいろいろ難しい点もあろうかと思いますが、この舞台となりました岐阜大学も含めまして倫理委員会というようなものを設置すべくひとつ御検討願いたいと思います。また、厚生省につきましては、やはり精神衛生法それ自体にかなり重要な問題があるというふうに考えておりますので、これについての検討もぜひお願いしたいと思うわけです。 時間が終わりましたのでこれで質問を終わりますが、最後に法務大臣に、きょうの私の質問を聞いていただいていたわけでございますので、率直な御感想といいますか御所見等ありましたらお教え願って質問を終わりたいと思います。
○嶋崎国務大臣 本日、小澤委員からこの問題につきまして非常に詳細な御質問があったわけでございます。お話を聞いておりまして、非常に多くの問題があることを我々も承知をしたわけでございます。特に、御承知のように精神障害者の方々につきましては、基本的には精神病院に入院をしておられる患者の処遇に係る問題であると思うのでございます。そういう意味で、今後精神病院の運営その他につきまして十分な配慮をしていかなければならぬというふうなことをつくづく感じますとともに、御承知のように精神障害者の方々につきましては、どうしてもその状態から申しまして、医療の必要上から本人の意思ということを必ずしも十分反映しないままに、先ほど質問がありましたように精神衛生法の三十八条でいろいろな意味で拘束をして治療をしていかなければならぬというような場合も相当あるのではないかと思うのでございます。そういう問題であるだけに、この問題の処理の仕方というのはある意味で非常に難しいところがあるような気持ちがするわけでございます。 しかしながら、冒頭にもお話し申し上げましたようにある意味で弱い立場にあられる精神障害者の皆さん方に関することでございますから、人権擁護的な面から見まして格別な配慮をされなければならぬと思っておりますし、またこれらの問題について具体的な処理というのは非常に難しいところがあるのかもしれません。あるいは法的な責任というものを非常に問いにくいというような場合に、倫理的な感覚でどういうふうに問題を整理をしなければならぬというようなことも考えていかなければならないこともあろうかと思うのでございます。そういうことを考えてみますと、今後必要に応じて関係機関ともよく連絡をとり、我々自身も人権擁護的な立場からこの問題について十分な関心を持ち、省庁間で意見を整理して対処をしていかなければいけないのではないかと思っておる次第でございます。
○小澤(克)委員 大変恐縮です。時間が過ぎたにもかかわらず、一点だけ落としておりましたのでお願いしたいと思います。 実は岐阜大病院精神科においては本件以外にもいろいろな問題点があったということが私の方に聞こえてきております。 一つは、岐阜大学医学部精神科に神経系疾患で三年くらい入院されていた五十歳くらいの女性の方が昭和五十年の十月二十日ごろ亡くなられた際に、この精神科教室の講師をしておられた方が、名前は伏せますが、呼吸困難に陥った患者に必要な救急措置を行わず、新鮮な脳組織を確保するために頭部を氷で冷やすことに奔走した、そして本件についてカルテが数日後破り取られているというようなことも聞いております。 それからさらに昭和五十九年二月六日にこの精神科を受診された、また別の患者さんですけれども、これに対しまして向精神剤を投与するということを全然しないままに、しかも非常に経験の浅い方を主治医につけた上でプロスタグランディンE1、これは閉塞性動脈疾患に対する薬、すなわち抹消動脈の拡張のための薬ですが、これが精神分裂症にも効くんだという仮説のもとにこれのみをずっと投与したというようなケースがあったということも聞いております。この件については実験予定が最初一、二週間だったのが後に三、四週間と書き直されたり、この実験について批判的な声が出た後にカルテの主任医師の欄にその経験の浅い方の判こ以外に他の指導的な立場にある方の判こが追加して押されたというようなことも聞いておりますので、これらにつきましても含めまして調査をお願いし、また必要な資料についての提出をお願いしたいと思います。 これで終わらせていただきます。
○太田委員長代理 午後一時再開することとし、この際暫時休憩いたします。 午後零時十九分休憩 ————◇————— 午後一時八分開議
○片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行します。橋本文彦君。
○橋本(文)委員 人権擁護局長の名義でせんだって「児童・生徒間のいわゆる「いじめ」の問題に対する人権擁護機関の取組についての人権擁護局長通達」が出まして、それに対するマスコミの評価というのが、例えば「法務省も立ち上がる」とか「「いじめ」法務省もメス」とか、そういうような非常にきつい表現で出ておったわけですけれども、内容を見ますと、いわゆる啓発運動を開始していきたいということに尽きるようでございます。 そこでお聞きしたいのは、約一万一千五百名のいわゆる人権擁護委員が全国津々浦々におられるということなんですけれども、まず最初に、この人権擁護委員というのは市区町村長の推薦によって地区住民の中から出てくる、それを法務大臣が委嘱されて人権擁護委員になる、こういうことなのですけれども、いわゆる推薦の基準というのはどういうのがあるのでしょうか。
○野崎(幸)政府委員 人権擁護委員はボランティアとして人権擁護のために御活躍を願うものでございます。その観点から、人権擁護委員には弁護士さんでありますとかその他人権意識が強く、こういうボランティア活動をやろうという意欲のある方ということで、各市町村長にお願いをして推薦をしていただいておるところでございます。
○橋本(文)委員 人権意識を持っておられる方というのですが、具体的に。弁護士はわかりました。
○野崎(幸)政府委員 人権擁護委員法の六条には、人権擁護委員としてお願いするに当たってどういう人をお願いするかということの規定がございますが、これは「当該市町村の議会の議員の選挙権を有する住民で、人格識見高く、広く社会の実情に通じ、人権擁護について理解のある社会事業家、教育者、報道新聞の業務に携わる者等及び弁護士会その他婦人、労働者、青年等の団体であって直接間接に人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員の中から、その市町村の議会の意見を聞いて、」推薦を願うということになっているわけでございます。
○橋本(文)委員 具体的に一万一千五百名の、いわゆる職種というものの分類はできますか。
○野崎(幸)政府委員 きょうちょっとその資料を持ってまいっておりませんけれども、一番多いのは農業者、漁業者であって、あと先生でありますとか、商業の経営者でありますとか、会社員でありますとか、各層各般にわたる方が現実に人権委員として委嘱されておるわけでございます。
○橋本(文)委員 この一万一千五百名の方の平均年齢はどの程度でございますか。
○野崎(幸)政府委員 人権擁護委員につきましては、調停委員のようにいわゆる定年的なものがございませんので、相当高齢者から四十代の方までおられるわけでございますが、大体平均年齢が六十五歳くらいになろうかと思います。
○橋本(文)委員 この間局長が二月の段階で、この委員会で天野委員の質問に答えて、いわゆる人権擁護委員の方もお子さんがおるだろうし、そういうお子さんを通じて、いわゆる自分の子息が通っている学校の中の情報が入るだろうというような発言をされておりましたね。今年齢を聞きますと、六十五歳ですので、いわゆる擁護委員には学校に行っているような方が少ないのではないか、こう思いまして、あえて質問したわけなのですけれども、これは結構です。 ところで、今いじめの問題というのは中学校、あるいは小学校の高学年、あるいは殺人事件がございましたように、高校にも広がっておるということなのですが、法務省として人権局長、いわゆる全国にどの程度学校があるか、把握しておりますか。
○野崎(幸)政府委員 学校の数等につきましては、まだ把握いたしておりません。
○橋本(文)委員 文部省、わかりますか。
○遠山説明員 御質問の学校の数でございますが、小学校が五十八年度の数、正確な数でございますが、二万五千四十四校でございますし、中学校が一万九百五十校、高等学校が五千三百六十八校でございます。これは国立、公立、私立を含んでおります。
○橋本(文)委員 約四万校あるわけですね。四万校に対して人権擁護委員が一万一千五百名、単純な計算では一人で四校見なければならないという計算になりますけれども、この人権擁護委員のほかに、いわゆる法務局あるいは地方法務局あるいはその支局の方で専任の、人権擁護専門の職員というのは何名ぐらいおられますか。
○野崎(幸)政府委員 人権擁護部、擁護課に属する職員は本省を合わせて二百二十名でございます。
○橋本(文)委員 そうしますと、計数的に言えば一万一千七百二十名でこのいじめの問題に取り組む、こういうことになろうと思います。 そこで、我々は人権擁護委員の皆さんの活動というものを余り耳にしないのですけれども、現実にはどのような活動をなさっておるか、ちょっと具体的に、概略で結構でございますが……。
○野崎(幸)政府委員 人権擁護委員の大きな仕事の一つは人権相談でございます。これは各地の法務局、地方法務局及びその支局に常設の人権相談所が置かれておりまして、人権擁護委員及び職員の人が、そこで常時相談に応じております。また、人権擁護委員の方々は、その自宅におきまして人権相談に応じておるわけでありまして、これも言うなれば常設の人権相談所になっておるわけであります。そのほかデパートでございますとか市役所でございますとかいったところで、臨時の人権相談を催す場合がございます。このほか人権委員は、具体的な人権侵犯事件が発生いたしますと、それについての情報を収集する、調査をするという活動をいたしまして法務局の職員とともにその処理に当たります。また、人権侵犯の疑いがあるような事象を発見いたしますと、それが果たして人権侵犯になるかどうかといったことについて情報を集めてまいることもやっておるわけであります。このほか、人権擁護委員は人権思想というものの高揚を図るための啓発活動に従事することになっておりまして、各地で講演会をやったり座談会をやったりといったこともやっておるところであります。
○橋本(文)委員 この質問は法務省にお聞きするのはちょっと場違いかと思いますけれども、いわゆるいじめという問題が発生いたしましても、当のいじめられている子供も家庭に言わない、学校も知らないというケースが多い。それで最終的には悲惨な結末に終わっているというケースが多いものですから、果たして通達どおりにいろいろな情報の収集ができるのかどうか甚だ疑問に思うわけなんですよ。先ほども言いましたように、人権擁護委員の子息が学校に通っておるならば、その子息を通じての学校の情報ということも可能かと思いますけれども、現実的に親にも言わないようなケースがありますので、どういうふうに常設のいわゆる人権相談所に来るのか、あるいは人権相談員の自宅を知っている方もおらないと僕は思いますし、残るところは要するに公共の施設、デパート等のところで声を大きくして叫んでいくしかないかなというふうに思うのですけれども、いわゆる人権侵害というのであれば、情報収集はどこで一番とろうと思っておられますか。
○野崎(幸)政府委員 いじめの問題でございますが、私どもも、子供のころからの生活を振り返ってみますると、いじめたり、あるいはいじめられたりして成長してまいったわけでありまして、そういった過程の中で人生のルールといったことを学ぶこともあったわけであります。ところが最近では、同じような転校をしたとか動作が鈍いとか性格が暗いとかいったことを理由にしていじめが始まるのに、そのいじめ方というものがまことに陰湿化、深刻化して、その態様を見ると社会常識上到底容認することができないという域に達するものがあらわれてまいっておるのでありまして、私どもはそれを括弧をつけて「いじめ」と呼んでおるわけであります。私どもが法務省の人権擁護機関を挙げて何とか対応しないといけないんじゃないかと考えておるいじめは、今申し上げた括弧をつけた「いじめ」になるわけでありますが、先生も今おっしゃられましたように、いじめられている子供は、そのことを先生に言ったり親に言ったりするとさらに厳しいいじめに遭うということで、親にも先生にも告げない、そのことがいじめというものを表面化させないことになっておる、そうして、それが時には殺人であるとか傷害であるとかいった悲惨な結果になってあらわれてきておるんだと言われておるわけであります。 確かに、いじめというものは被害者の口からはなかなかあらわれてこないのでありますけれども、実際よく聞いてみますると、子供の間ではあの子がいじめられておるんだということは皆知っておるわけです。また、子供は家庭に帰って、実はだれだれちゃんがいじめられておるんだということは話題にしておらないわけではないわけであります。ただ、それ以上にいじめの問題が表に出てこない。例えばそれを聞いた父兄の方も、自分の子供がいじめられておらないとそこで安心をして、それ以上にその問題を公の場で持ち出そうとはしないといった現象があると言われておるわけであります。 いじめというものがなぜ出てくるのかということについてはいろいろなことが述べられておりまして、もはやそれは構造的なものであるといったような考え方も述べられておるのでありますけれども、仮にいじめの原因がそういうものであったといたしましても、そういうストレスの解消が人権を侵害するといった形で出てくることだけは阻止しないといけない、そういう風潮だけは阻止しないといけないというふうに私どもは考えるわけであります。そこで、人権擁護委員といたしましては、まず世間にいじめというものの実態を明らかにし、いじめというものはどういう理由に基づいてなされても許されないんだということを声を大にして啓発していきたい、そうしてまずいじめというものはいけないんだ、許されないんだという風潮を社会全体、地域全体に盛り上げるとともに、その中で人権活動やいろいろな活動を通じていじめの情報を集めていきたいというふうに考えておるわけであります。 先ほど私は、人権擁護委員の平均年齢は六十五歳前後であるということを申し上げましたが、若い人権擁護委員の方にはお子様のおられる方もありますし、年配の方にも同じ家に、あるいは近所に自分の孫であるとかその友達であるとかを持っておられる方もたくさんあるわけですから、人権擁護委員がそういったことに意欲的に取り組むならば、まだ表面化していないいじめというものはかなり上がってくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
○橋本(文)委員 最後に一点だけ。通達の中で「人権擁護委員及びその組織体との緊密な連携と協力に留意すること。」ということがありますが、その「組織体」というのは何を意味するのか明らかにしていただきたいと思います。
○野崎(幸)政府委員 人権擁護委員はまずその地区に協議会というものをお持ちでありますし、その上に都道府県単位の連合会があり、また全国に全国人権擁護委員連合会というものがあるわけでございまして、これらの組織を通じていろいろの情報を流し、また人権擁護委員の研修などもしていって、人権擁護委員がいじめの問題に取り組んでいける体制を整えていきたいと考えておるわけでございます。
○橋本(文)委員 では文部省にお尋ねいたします。 ついせんだって、児童生徒の問題行動に関する検討会議というものをおつくりになりました。今、人権擁護局長の言葉で、構造的な背景があるのではないかという発言がありましたけれども、この十一人のメンバーを見ておりますと、心理学者とか精神医学の方とかがおるのですが、あくまでもそれは心の問題という形でとらえているような気がするのです。人権擁護局長の方ではむしろ構造的な問題、社会的な問題ととらえておるように聞こえたのですけれども、まずこの点からお聞きいたします。
○遠山説明員 いじめの背景、原因が一体どんなところにあるかということは非常に難しい問題であるということを、御指摘の中でもあったわけでございますし、私どもも感じているわけでございます。そのために、今回発足いたしました検討会議のメンバーをごらんいただきましても、心理学、医学の専門家以外に、教育相談の担当者でありますとか青少年問題の専門家あるいは学校現場の先生方に委員としてなっていただいておりますように、幅広い角度から御検討いただきたいと思っているわけです。特に、医師のメンバーの中にも、いわばこの問題を文明史的な角度からあるいは日本人の特性といったようなことからも論じられ得るような背景をお持ちの先生にもお願いしているわけでございまして、多角的な視点からこの問題に取り組みたいと思っているわけでございます。また、固有のメンバーは余り多いと会議体は成り立たないものでございますから十一人に絞ってはございますけれども、それ以外のいろいろな専門家を必要に応じてお招きいたしまして、御意見を拝聴いたしたいというふうに考えている次第でございます。 構造ということについての考えはどうかという御質問でございますけれども、その点も含めまして本当の意味での原因、背景についても地道に解明した上で対応を練りたいというふうに考えている次第でございます。
○橋本(文)委員 校内暴力が去ったと言うとまた語弊がありますけれども、やや鎮静化の方向に向かってきている。しかし、その内容は暴力的な様相の度合いが濃くなっているケースもある、直ちに予断を許さないとありますけれども、その校内暴力と相応じてというような感じでいじめの問題が表面化してきたわけだと思うのです。文部省としてはこの問題、いつごろから心配しておったのか、そして現在そのいじめがどういう形で発生してきたのか、その辺の社会的な背景とか学校教育のあり方とかいう点から意見を聞かせてほしいのです。
○遠山説明員 今御指摘いただきましたように、校内暴力の大きな火の手が上がっておりました時期はやや峠を越したという感はいたしますが、御指摘のようにまだ予断を許さないというふうに考えております。いじめの問題はその問題にかえて起こったというふうには考えておりません。これはかなり長い経過を持って今日に至っているというふうに考えております。昭和五十年代の前半におきましてもいじめに起因する非常に不幸な事件が幾つか起きているわけでございまして、この問題は常に社会の底流にあってまいったというふうに考えております。しかしながら、校内暴力のように非常に歴然とした暴力行為が学校で行われるというふうなことがありまして、しばらくこのいじめの問題は人口に膾炙する頻度も少なかったように思えるわけでございます。しかしながら、そういう底流があったものでございますから、大きな火の手がおさまったときにこの問題が改めてクローズアップされたというふうに考えておるわけでございます。 文部省といたしましては、この問題がどういたしましても学校の現場で起きやすい、あるいは学校の現場で起きたことに起因するいろんな不幸な事件があるということで、この問題の重要性は常に認識してまいったわけでございます。校内暴力に対応するいろいろな生徒指導の施策も、こういう問題も含めまして生徒指導というのが一体どうあったらいいか、児童生徒の豊かな人格形成はどうあったらいいかという角度で仕事を進めてまいったわけでございます。しかしながら、一つ大きな問題に対する対応策もできた後に、再びまだ底流にあるこのいじめの問題の重要性にかんがみまして、今回検討会議を開いたわけでございます。この問題について検討会議を開く前に、いろいろな専門家から個別に意見を聞いたりいろいろ勉強もしてまいったわけでございますが、個別の勉強よりは多くの方々が相互に意見を交換されましていい方策を示していただきたいということで会議体にさせていただいた次第でございます。したがいまして、今後そこでのいろいろな御示唆をもとにいたしまして、長期的な観点あるいは短期的な観点からいろいろ方策があり得るかと思いますので、可能なものから積極的にこれを実施してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
○橋本(文)委員 教育評論家の意見でも、いじめのケースが百あればその背景は百なんだ、したがって個々に原因は違っているというようなことを言っておりまして、トータル的にこれこれこうだからいじめがあるんだ、したがってこういう対症療法をすればそれが解消するというようなことはまず期待できないというような意見もございまして、このいじめという問題を解消するには甚だ悲観的な声が多いように思うのですよ。そんなところで、この検討会議の十一人のメンバーの意見を聞くということも大事なんですけれども、文部省としてはこのいじめの問題をどうとらえて、どうしてできたのかという背景をどのように見ているのか、その辺をまずお聞きしたいのです。
○遠山説明員 お尋ねの件でございますけれども、これまでこの問題に関しまして文部省としましてはっきりととりました施策の一つが、先生もお持ちの「児童の友人関係をめぐる指導上の諸問題」というタイトルの手引書でございます。この中でいろいろ専門的な角度からいじめの原因というものが分析されているわけでございます。それが現在の私どもの用いております基本になる考え方ではございますが、さらにより広い角度からこの問題を検討したいということで、まずは今本格的な調査検討に乗り出した時期でございます。その意味では、ここで改めてその原因なり背景なりあるいはその方策についてもしそれを明らかにすることができましたならば、この検討会議そのものの発足も要しないわけでございまして、先生の御心配なり御指摘の点というのは非常に理解できるわけでございますが、いわばそういったいろいろな背景をもとにいたしまして今回この検討会議でより本格的な調査研究を始めたい、そういうスタンスであるわけでございます。
○橋本(文)委員 じっくりその検討会議の意見を待って原因究明をしたいという気持ちはわかるのですけれども、その間にもどんどん深刻な事態が発生してくる。私、冗談半分にいじめの問題は最後はみじめな問題だということを言っているのですけれども、余り悠長なことをやっているわけにいかないのですよ。現実に不幸な事件が起きた場合にも学校当局は知らなかった、そういう声が共通点として出ている。ですから、早急に文部省としてもどういうふうにこれを解明するのかという態度がないと、第二、第三、第四のケースが出てくるのではないかということを心配しているのですよ。ですから、検討会議の意見を待つのは結構なんですけれども、学校として、確かに今管理権の強化がどうのこうのというのが問題になっておりますけれども、どうしたらこういう不幸なケースが回避できるかということをもっともっと学校という場所が単に義務教育の場であれば、子供に教育を授けるのではなくて、学校は一体児童のためにどういう存在なのかということを考えて、学校はあくまでも児童のためにあるんだという意識がないように思うのですよ。これは登校拒否の問題とかいっぱい出てくるのでしょうけれども、登校拒否の背景にはやはりいじめの問題があるとも言われております。ですから、そういう通り一遍の答えではなくて、子供が苦しんでおるという現実を文部省は現段階でどのように思っておるか、またどういうふうにこれを解消するか、それをお聞きしたいのです。
○遠山説明員 私どもも今先生の御指摘のような、それに準ずる考え方をもちまして今回の検討会議を発足させたわけでございます。その検討会議での御示唆を得てということでございますが、これは、今とるべきことについては、比較的早い段階で御示唆をいただいてそれを直ちに実行に移したいというふうに考えているわけでございます。 まず、この問題の不幸な点は、いじめの問題が児童生徒の相互間で起きておりまして、先ほど来お話が出ておりますように、それを親なり先生なり大人につなげていかない、そういう事態があるわけでございます。学校という場は教育の専門機関でございますから、私どもといたしましては、学校の教師は児童生徒間で行われていることであってもより一歩中へ入ってその実態をまず認識する、そして的確な対応をとっていくことがまず大事であろうというふうに考えるわけでございます。それに対応する方策が、単に教師に対してだけこうしろという方策だけではなくて、教育委員会なりあるいは関係機関なりはそのことを支援するために一体何ができるのかというふうなことを明らかにしてまいりたい。そして、そのことにおいてよい示唆なり施策の方向性が示されましたならば、できるだけ早い段階でそれを全国的な視野で促進してまいりたいというふうに考えてはいるわけでございます。 しかしながら、それは対症療法的な、今現に起こりつつあることをどうするかということへの対応でございますが、私どもが今回始めましたことの背景には、より予防的と申しましょうか本質的な意味でこのようないじめのようなことが横行しないそういう社会にしていきたいということが背後にあるわけでございまして、その意味では幼いときからの規範意識の確立等のより基本的な問題にもメスを入れてまいりたい、そんなふうに考えている次第でございます。
○橋本(文)委員 なかなか難しい問題だと思うのです。これは現在の教育そのものに欠陥があるのかもしれませんけれども、生徒の個人差、能力というものに一つ一つ焦点を当てていくという教育が行われていないと思うのです。画一的に、あるいは定型的にと申しますか、そういう教育でして、人は人、他人は他人というそれぞれの能力に着目した教育は現在の義務教育においては行われていないと思うのですね。成績主義であるというようなことで、児童の心にいろいろな深い傷を残していると思うのです。せんだって新聞を読んでおりましたら、いじめられっ子が無気力な人間であると周りからばかにされておる。ところがその生徒に対して先生が絵をかかした。嫌がる生徒に絵をかかしたところが、すばらしい絵をかいた。先生自身もかけないような絵をかいた。それをみんなの前でこの子はすばらしい能力を持っているんだという形でほめてあげたところが、いじめがやんだ。こんな新聞を見まして、なるほどな、その人の持っている個性とか能力というものを発掘さえしてあげれば、周りでもその人の評価が高まるんだな、よく俗に言うところの桜梅桃李、桜は桜、梅は梅、みんな能力が違うんだ、みんないいところがあるんだ、そういう本当の意味の生徒の人権を尊重するような教育さえ行われておれば、私はこういういじめの問題は相当減ると思うのです。したがって、ただ単に精神的な問題とか心理学の問題ではなくて、もっともっと大事なものがあるように思うのですね。これから厚生省に聞きますけれども、その背景には構造的な問題というものも大変大きなウエートを占めておると思うのです。 時間がなくなりましたので、厚生省の方に移りたいと思います。 厚生省は、昨年、心の健康づくりに取り組むという形で、心の健康づくり推進協議会、それから思春期精神保健対策専門委員会を設け、ここで家庭内暴力あるいは登校拒否という問題を考えていこう。この問題、当初予算要求の段階では五千数百万ありましたけれども、現実的には終わったのは一千三百万ぐらいでしたか、随分減りましたね。今度は家庭内暴力になりますけれども、この家庭内暴力というものもひいてはいじめの問題にも関連しているんだろうと思うのですが、これを見ていますと、例えば文部省は、教育現場で起きているので文部省としての検討会を開く、厚生省は厚生省で児童の心身の健全な発展のためにやはり考えていく。これはわかるのですけれども、いじめという問題に関しては、その原因がどこから来るかもわからぬと言えばそれまでなんですけれども、ここに東洋大の田村健二教授、それから厚生省の国立精神衛生研究所児童精神衛生部長、これらのチームが厚生省の補助を受けて実施した調査があります。全国百六十四カ所の児童相談所に照会をしてそこから四百十六のデータをもらった、そのデータを分析した結果がつい最近新聞発表されましたけれども、まず最初に、「厚生省の補助を受けて実施した。」と書いてありますけれども、これはどういうことを意味しているのか。
○堀説明員 お答えします。 ただいまのお話ですが、その団体については厚生省が認可した法人でございますけれども、今のお話で補助した事実はございません。団体の経費によって行った研究でございます。
○橋本(文)委員 今のお答えは、財団法人の日本児童問題調査会、ここに厚生省がお金を出しているということですか。(堀説明員「いえ、出しておりません」と呼ぶ)では、この四百十六のデータの件は御存じですか。
○堀説明員 その調査の中身は、今お話のございましたように厚生省の専門官が中に入って相談に乗っておりますので中身は知っておりますが、予算は出しておりません。
○橋本(文)委員 これを拝見しますと、四百十六のうち「外傷が残ったり、生命に危険が及ぶような「身体的暴行」を受けたのが二百二十三例」、全体の半分以上。それから、「子捨て、十分な栄養をとらせない、極端な不潔、怠慢による病気の発生、学校に行かせないなど「保護の怠慢や拒否」が百十一例」。それから「親による近親相かんなど「性的暴行」が四十六例」。それから「児童に不安、おびえ、無感動、無反応、強い攻撃性、うつ状態など極端な心理的外傷を引き起こしたと思われる「心理的虐待」が三十四例」ということで、これを見てびっくりしたのですね。そして、いわゆる非行に走っている数が多い、あるいは登校拒否あるいは学校を長期欠席している、こういうデータが出ています。結局、こういう大変な家庭は、世間に中流意識が横行する中で家庭的に貧しいとか、いわゆる両親の中流意識からの落ちこぼれという形でもって、その落ちこぼれ意識から自分の子供につらく当たる、こういうことがあるんだという報告がありますね。こういうデータを見て、厚生省はどういうことを考えておりますか。
○堀説明員 お答えします。 今先生のお話ございましたように、児童が親や保護者から身体的暴行、また子捨て、性的な暴行等の虐待を受けているという実態は今御紹介のありました調査のとおりだと思います。 これにつきましては、厚生省といたしましても従来から対策を幾つかやっておりますが、先生がおっしゃいましたように幾つかの事例を見てもその要因となるものが非常に多くあるわけで、単純に追求するわけにまいりません。そのために、これらの児童に対する対応といたしまして当省がとっております対策の幾つかを申し上げますと、例えば児童相談所、また家庭児童相談室というのが福祉事務所の中に設けられておりますが、そういうところで相談を受ける、それによって対処するというような機能の充実と、それから相談されました子供の内容が、児相等の事例を見ますと、乳児院または養護施設等に措置するものがございます。そういうような対応。また、これらの施設における父兄からの直接の相談。それからまた地域におきましては母親クラブとか児童委員等の組織もございます。そういうものを活用して、地域ぐるみでそれに取り組んでいくというような活動を行っているわけでございます。
○橋本(文)委員 時間がなくなりましたので、中途半端になりましたけれども、昨年法務省がまとめた十三歳から十五歳の少年少女の非行原因研究調査、これによりますと、幼いときに両親から面倒を見てもらえなかった、あるいは虐待を受けたという人が物すごく非行に走っておる、それからいじめの原因にもなっているというようなデータがございます。ですから、この問題はただ単に文部省だけを責めるのじゃなくて、厚生省の方のいわゆる虐待される児童の救済問題あるいは虐待する親をどういうふうに精神的、経済的に保護するのかという問題も研究しなければならないのです。いずれにいたしましても、いじめの問題に限って言えば、青少年に関してはいろいろな窓口がございますね。それをなるべくでしたら機動力を持たせるような形で一本化して、速やかに対応できるようなことを望みまして、質問を終わります。
○片岡委員長 三浦隆君。
○三浦(隆)委員 指紋押捺問題についてお尋ねしたいと思います。 今、いじめの問題についての御質問が続いておりましたが、いつの時代でも、だれに対しても、弱い者いじめというのは決していいことではないと思うのです。たまたま指紋押捺というのが、国にとりましては外国人を別にいじめているつもりはないのでしょうけれども、現実に外国人の方から見ると日本人によっていじめられているとむしろ考えて、それが人権問題という形になっていると思うのです。 実は、三月二十九日付の新聞に各紙一斉に載ったのですが、アメリカ人の大学の先生をしておりますキャスリーン・クノルド・モリカワという方が一審で有罪、そして控訴をしておったのですが、たまたま裁判の途上に参考人として伊藤三郎川崎市長あるいは友光上尾市長を証人申請をしたところが、証人申請を裁判長が却下をした、これではまともな裁判が成り立たないというふうな大変抗議の意思を示しまして、裁判所が十分な審理を尽くしてくれないということで控訴を取り下げております。その記者会見の言葉で、こうした不十分な裁判で私が有罪になってしまうと、問題は私だけでなくて押捺拒否をしているほかの方へも影響が及ぶということを述べております。これはやはり一つの大きな問題だと思います。 それからまた、川崎の李相鎬という人、前回も実はただしたのですが、警察の方から二度ほど出頭命令が来て、それを断った。今度また三度目がやってきたということで、むしろ質問書を出して、なぜそうたびたび私に呼び出しをかけるのかというのですが、その最後のところに、「私及び家族に対して恐怖心をあおらず人権を配慮して対応していくのも警察機関の責務ではないか。」という言葉がございました。言うなれば、警察にしろ法務省にしろ、法律に従っていることであって悪いことをしているつもりはさらさらないと思うのですが、こうした外国人にとりましては殊さらに怖いのですね。我々は、そうしたおどす方じゃなくておどされている方というか怖がっている人の側に立っていろいろな問題を考えていく必要があるのじゃないかというふうに思うのです。 さて、そこで改めて指紋押捺拒否の最近の状況につきまして事実的な問題から確認をしていきたいと思うのです。まず、きょう現在で指紋押捺を拒否している人は何名でしょうか、お尋ねをしたいと思います。
○小林(俊)政府委員 ただいま私どもの持っております最新の数字は百九十九名でございます。
○三浦(隆)委員 その百九十九名のうち外登法違反容疑で告発された人は現在何名でしょうか。
○小林(俊)政府委員 十四名でございます。
○三浦(隆)委員 何か読売新聞の方では十五名と書いてありますが……。
○小林(俊)政府委員 十五名告発されておったのでございますけれども、一名が出国いたしましたので、現在押捺拒否の状態のまま本邦に在留している人間で告発されているのは十四名ということでございます。
○三浦(隆)委員 現在市長みずからが不告発を明らかにした自治体の市の名前、市の数をお知らせいただきたいと思います。
○小林(俊)政府委員 川崎市を初めといたしまして、幾つかの地方自治体の首長が市議会等において告発をしないという意向を表明したというような報道が伝えられております。私どもがこうした事例を承知しておりますのはこうした報道によるわけでございまして、その報道を理由として個別に関係の自治体に対して正式に報告を求めるということはいたしておりません。川崎市につきましては、早急に処理を要する特定の案件とのかかわり合いがございましたので、私どもから県を通じて文書による報告を求めたわけでございます。その報告につきましては国会においても御説明申し上げたことがあると存じますけれども、そうした特別の事情があったためにそうした措置をとったわけでございます。その他の事例につきましては、こうした事情もございませんので特に正式の報告を求めておりません。したがいまして、私どもとしては新聞に報道された以上の公式な情報は持っておらないわけでございます。
○三浦(隆)委員 それでは、新聞に報道された限りでの市名はどういうことになっておりますか。
○小林(俊)政府委員 新聞報道から私どもが承知しております案件は十一件ございます。この十一件のうち、実際に拒否者が発生しておりますのは川崎市と滋賀県大津市と奈良県奈良市のみでございまして、その他八件は、先生が御指摘のような報道はございましたけれども実際には拒否者は一件も生じておらない状況でございます。
○三浦(隆)委員 今十一件と言いますが、私の手元にあります新聞では十三市が載っていると思うのですが、いかがでしょうか。
○小林(俊)政府委員 あるいは新聞報道の上での調査と申しますか、私どもが承知していない報道があったのかも存じませんが、私どもでリストアップしておりますのは川崎市以下十一市でございます。
○三浦(隆)委員 川崎のほか町田、保谷、黒石、上尾、桶川、蕨、静岡、摂津、大津、奈良、八幡、高松その他が載っていると思うのですが、ここで言ったのは、数もさることながら、当初私が質問したときには川崎だけであったわけです。私、恐らくこうした市がふえるのではないかというふうに御質問したと思うのですが、事実このようにふえてきているわけです。 それではさらに、不告発を明らかにはしておりませんが、現実には拒否者に対して告発を行っていない自治体の市名と市の数はどのくらいになっていましょうか。
○小林(俊)政府委員 現在までに押捺拒否の事例が発生しておるけれども告発が行われていない地方自治体は、五十二市、十二区、四町でございます。
○三浦(隆)委員 拒否者が大変な数に一方で今上りつつあります。現実に告発をしない川崎のような市もあれば、明白には言わないまでも事実として告発していない市が、今のお答えにもあるように、大変に後から後からふえ続けてきているわけです。ここで問題になりますのは、告発される人とされない人と出た場合の法の不公平ということなのですが、なぜこういう事態が起こると思われますか。
○小林(俊)政府委員 最近押捺拒否事例が発生している地方自治体におきまして、告発が遅延しておるというのは事実でございます。私どもが承知しているところでは、こうした傾向は告発が地域の住民を犯罪者として司法当局に引き渡す行為であるというような考えを持っている自治体が存するということから生じているようでございます。そのために告発をちゅうちょする傾向が見られるように承知いたしております。したがいまして、外登法違反で告発されたり告発されなかったりというような取り扱いの相違が生じておるわけでございます。私どもとしてはこうした状況は決して好ましいものではないと存じておりますので、公務員の義務に従って市区町村長が告発を励行するように今後とも指導を強化してまいりたいと思っておるわけでございます。 また、告発そのものの見方につきまして、今のような見方が存するというのが事実のようでございますけれども、私どもの理解は、告発というものは公務員が職務の執行に関連いたしまして犯罪の発生を承知した際にこれを司法当局の判断にゆだねるという事務的な手続であって、告発があるから処罰される、告発がなければ処罰されないといったものでもございませんし、また告発がされれば必ず処罰されるというものでもないという事実を現場の市区町村長初め関係の係官が正当に理解するように私どもとしては希望しておりますし、そのように指導をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
○三浦(隆)委員 今のお答えで少しひっかかるところがあるのですね。告発されても有罪になるかどうかはわからないといった場合、これは一般的な犯罪の場合はその言葉が当たると思うのです、いわゆる容疑の段階ですから。しかし、指紋押捺拒否というのは窓口で押すか押さないかという極めて明らかなことでありまして、調べるまでもないのですね。既にこれまでの裁判では、前回も言いましたように、押捺を拒否した後で説得されて押捺したにもかかわらず、押捺拒否したその段階で言うなら法に触れたということで有罪が決まっているわけですね。とすれば、その百九十九人という押捺拒否の方は全員有罪になっても決して不思議でないわけですね。にもかかわらず、告発されないというところにこの法の現実の大変難しい問題がある、こう考えるわけですね。 さて、もう少し進めましょう。それでは、現在裁判中の者は何名おりますか。
○小林(俊)政府委員 現在裁判が進められている件数は七件、七名でございます。
○三浦(隆)委員 これまでの裁判によって判決が確定した人は何名であり、またその判決の結果あるいはその判決理由の大筋はどういうことになっているのでしょうか。
○小林(俊)政府委員 正確に申し上げますと、昭和三十年に指紋制度が導入されました直後の昭和三十年代にかなり押捺拒否という案件は起こっておるようでございます。件数は数百件に上るようでございます。その中のかなりのものが訴訟手続に参りまして、最高裁判決も二件ほど下されておるようでございます。ただ、その詳細が残念ながら今のところ手元にございませんので正確に御説明申し上げることができないのでございますが、ただいま問題になっている指紋押捺拒否事例というものは昭和五十五年あたりから起こっておるのでございまして、昭和三十年代の案件とは一応区別して考えることができるようでございます。 そこで、この昭和五十五年以降の案件に限って申し上げますと、現在までに判決が確定している事例は、先生先ほど御指摘になりましたモリカワ・キャスリーンの一件のみでございます。 また、判決の要旨は三点ほどございまして、第一点が、指紋押捺制度は個人の尊重等に関する憲法十三条あるいは平等原則に関する憲法十四条に反するものではない。第二点が、指紋押捺制度は国際人権規約B規約第七条、これは品位を傷つける取り扱い等の禁止を定めたものでございますが、これに反するものでもない。第三点は、指紋押捺が同一人性の識別に必要であって、指紋にかわる適当な代替手段がない以上その制度には合理性がある。 以上三点が判決の要点でございます。
○三浦(隆)委員 このように裁判になると有罪になっている人がいるということですね。一方で、先ほど言ったように百九十九人が拒否をしていて全然法に問われない人も出てくるとなると、これは著しい法の不公平と言ってかまわない。ある人は大変人権を侵害された事実があって、ある人はいつ怖い思いをするというか警察に連れていかれるかと毎日をぴくぴくした思いで過ごしている人もいる、何でもない人もいるというふうなことがこの法の大きな問題点だと思います。特に告発をしないというか、むしろ法を守らないあるいは上級官庁の指示、指導にも従わないというのが未成年者であったり最初から法を守ろうとしない人だったらば仕方のないことかもしれませんが、問題は自治体の首長さんでありまして、大変立派な方ばかりなわけですね。大変難しい選挙戦を戦い抜いて勝たれてきているわけですから、大変御立派な方だろうと思うのですね。そうした法を守らなければならないということをよくよく御承知の人たちが法をみずから守らないで告発をしないあるいはためらっているということをもう一回私たちは十分に考えてみなければいけないのだというふうに思いますね。ぜひ御考慮をさらにいただきたい、こう思っております。 二番目に、同一人性の確認に関連しましてお尋ねをしたいと思うのです。 そこで、これも事実の確認からお願いしたいのですが、初めに、市町村窓口に出頭して登録原票に指紋を押した者が、その前の登録時に同一の原票にかかわって登録手続を済ませた者と同じ人物であるとの確認はどのようにして行っているのかという問題、あるいはその際指紋の照合をどのようにして行っているのかという問題、自治省からお答えをいただきたいと思います。
○小川説明員 お答え申し上げます。 外国人登録法に基づきます事務、これは先生御案内のように機関委任事務でございまして、この事務につきましての市町村長に対する指導と申しますのはその法律を所管しております法務大臣の権限に属しております。したがいまして、自治省として直接答弁申し上げる立場にございませんので、御了承いただきたいと思います。
○三浦(隆)委員 では、法務省からお願いします。
○小林(俊)政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に一言申し述べさせていただきたいわけでございますが、先ほど、先生、その告発の問題に関連いたしまして、告発があったりなかったりということで罪を問われたり問われなかったりという状況が生ずるのは権衡上おかしいではないかというような御発言がございましたけれども、私どもとしては先ほど申し上げましたとおり、確かに告発が行われたり行われなかったりという状況は好ましいものではないというふうにお答え申し上げました。そのとおりでございます。ただ、告発が行われなければ罪に問われないということではないということは申し上げておきたいと存じます。告発が行われなければ捜査、立件、起訴あるいは処罰が行われないというものではないということを一言だけつけ加えさせていただきたいと思います。 そこで、ただいまの御質問でございますけれども、市区町村長は申請の受理あるいは登録証明書の交付等に際しまして、出頭した者が本人であるかどうかをまず第一に提示された旅券、第二に提出されたその他の書類、また保管されている原票の写真、さらに指紋の照合等により確認することといたしております。なお、指紋の照合は、前回押された原票上の指紋と今回隣り合わせに並んで押された原票上の指紋とを肉眼で対比照合することによって行われております。
○三浦(隆)委員 最初に告発の問題についてでありますが、告発しないでもし法に触れるというならば警察が強制逮捕なり捜査なり行ってやるべきものなんですね、もし法に触れていけないというものなら。しかし、それが現実になし得ないでいるということをむしろ私は言いたかったのです。いわゆる告発の問題もさることながら、法に触れている人が現実にいながら、しかもその人を逮捕することも実際にできない、そこを私は言いたかったわけであります。これが明白な例えば刑法に触れた犯罪であればいや応もなく逮捕するわけですね。同じことで、指紋の問題も押捺を拒否したというその事実だけで有罪になった人がいるのに、同じように拒否している事実があるにもかかわらずためらって強制捜査をなすことができない、それほどこの法に対しては強い執行力というか、そういうふうなものが現実に機能を喪失してしまっているということについて触れたかったわけです。 それから、今の窓口においては、局長さんはそういうお答えですけれども、現場の職員の人、窓口に座っている職員の人が果たして指紋の照合を行っていますかというのが私の質問なんです。現実に裁判の過程で明らかにされたりしましたように、その自治体の方々が口をそろえて指紋の照合は行っておりません、こう答えているわけです。局長は指紋の照合を行うと言うが現場の人は行っていないというのです。私は、この質問に照らして地元のところに行ってただしてきたわけです。今までそういう指紋の照合を行いましたか、行いませんと私はお答えを聞いてきたわけであります。どうお考えでしょうか。
○小林(俊)政府委員 私どもは毎年定例的に各地方自治体の外国人登録関係の担当の方々にお集まりいただきまして、各種の指導の機会を設けております。その指導の一環といたしまして、指紋の照合についてもお願いを申し上げ、また要領を御説明申し上げておるところでございます。現に、その窓口におきまして指紋の照合が行われていないケースがあるとすれば、それは写真の照合等によって同一人性の確認に疑問がなかった場合であろうかと承知いたします。もし写真の照合によって疑問が生ずる場合には、指紋の照合を手段として行わざるを得ないのが現実でございますので、そのように措置されているものと承知いたしております。
○三浦(隆)委員 法務省の意見と現場の意見とでは、そうありたいということとあるということとの違いがある。いわゆるゾルレンとザインの違いがあるのでして、法務省としてかくあってほしい、かくあらねばならないと言っているのに現場では現実には指紋押捺の照合はし得ない、そういうふうな明白な違いだと思います。その点がもう少し説得力を持って御説明いただければありがたいわけです。 これだけやるとちょっと時間がかかりますが、指紋押捺拒否にかかる裁判の判決文の中にも、例えば法務省では同一人性の確認のために指紋の照合を行うように指示、指導しているというふうに答え、あるいは市町村の窓口においても照合を行わせているというふうに述べているわけですね。ところがこれに対して市町村の窓口での同一人性の確認は写真等のみで行われているなどという被告弁護人の主張について、判決では、右主張されているような事実が立証過程で明らかになったとしても、立法政策の問題云々というふうに避けておりまして、大変微妙な言い回してあります。この裁判過程で出た証人の皆さんがそういう指紋照合をしていないと答えているものですから、裁判官ですらもしているとは明白に言い切っていないわけです。ですから、これも本当は控訴して争っていったならば、そんな不確かな判決理由をもって人一人を有罪に果たしてなし得るものか疑わしいものというふうに私は思います。これについてはもう少し先に行って改めて質問したいと思います。 次に警察の方にお尋ねしたいのですが、登録行政以外の場面におきまして警察官などから登録証の提示を求められた場合、警察官はどのようにして同一人性を確認されるのですか。その際、指紋の照合をどのようにして警察官の方は行っているんですか、お尋ねしたいと思います。
○赤木説明員 お答えを申し上げます。 我が国の外国人登録は指紋という人物確認方法の上に行われているわけでございますので、極めて正確なものであると理解しているところでございます。したがいまして、警察官がその職務の執行に当たりまして登録証明書の提示を求めた場合におきましても、常に人物の同一性に疑いを持って接しているわけではございません。しかしながら、登録証明書貼付の写真と所持人の風貌が異なる場合でございますとか、登録証明書に偽造、変造の跡が見られますとか、また周囲の状況等に照らしましてその人物の同一人性に不審点が見られるということは間々あるところでございまして、このような場合におきましては、あらゆる方法を尽くしましてその人物の同一人性の確認を行うわけでございます。その際に、本人の同意を得て所持人の指紋と登録証明書に表示されている指紋の照合を行うということもございます。その結果、指紋の照合が決め手となりまして偽造登録証明書の行使事件等を検挙した事例もございます。
○三浦(隆)委員 私の質問の趣旨とちょっと違う点があります。どのようにして指紋照合を行っていますかと私がお尋ねしたのは、素人が見て指紋が渦を巻いているとか流れているところまではわかるかもしれませんが、一億二千万人いる中の一人だとこの指紋をもって言い得るくらい鑑識能力というのをいわゆる外勤のお巡りさんが一人一人お持ちだとお考えですか。
○赤木説明員 警察官はすべて指紋についての教育を受けているわけでございまして、それについての必要にして十分な知識を有しておるわけでございます。特に鑑識と申しておりますけれども、鑑識の業務につきましては指紋を含めた鑑識技能検定制度というものを設けておりまして、九割くらいの警察官がその資格を取得しておるわけでございます。指紋の紋様につきましては、先生御承知のごとく、やや専門的な言葉になりますが、蹄状紋でございますとか渦状紋でございますとか、いろいろな形があるわけでございます。そういうものにつきましては、現実には比較的短い期間の教育を行いまして十分に判別できる程度の知識は与えられるわけであります。もちろん御指摘のように人物の絶対的な同一性につきましては専門的な鑑識技術によらざるを得ないわけでございますけれども、警察の業務の現場におきまして必要があります場合には、登録証明書に印象された指紋とその指紋とを見比べることによりまして、少なくともこれは別人であるといった、場合によりましては捜査の端緒になり得るような心証を得るには十分であるというふうに考えております。
○三浦(隆)委員 親子関係を立証するときに、父親の血液型、母親の血液型がこれこれだから子供はこうだといった場合に、A型、B型、O型、AB型とか、そういった大ざっぱな分け方は、これは比較的簡単ですね。しかしその中で、これは絶対我が子だと言い切るまでにやるには血液型の鑑定だって大変不確かというか、大変難しいと思うのですね。同じことで、指紋というのも、渦を巻いているか巻かないかといった大ざっぱなところはだれでもできるかもしれない。しかし今私が言った、例えば一億二千万の人がいる、その中でたった一人というふうに確認するためには、そんなちょっとした講習ぐらいで指紋が見分けられるわけがない。だから警察の方も自動鑑識装置のかなり優秀な機械を使って確認をされているのだと思うのですよ。人間の目で見ただけでは不確かだから機械に頼って確認しているのだろう、私はこう思いますね。それから、事実また外勤のお巡りさんたちに聞くと、先生そんな一々指紋なんか見たってわかるものじゃありませんよと現実に答えているわけで、この点も先ほどの法務省の方の答弁と同じで、かくあってほしい、わかるはずだというのとわかるということとは違いがあるわけですね。それを、わからないのに、極端に言えば、わかるはずだ、はずの建前論で現実が動いてしまっている。だから、それをやるなら、私が前回言ったように、法務省の方も既にもう指紋原票はあるんだから、新しく登記のコンピューター化だけじゃなくて指紋もコンピューター化して、警察庁に教えを受けても結構だから、正確にやっていれば間違いないわけですね。もう指紋を押してと頼まなくてもいいわけです。指紋を押す必要はないわけです。もう既に指紋原票はあるわけです。相手は押すのを嫌がっていますから、それ以上指紋を押せと言わなくなって、これまでの記録をコンピューター化すれば十分に済んでしまうじゃないか。警察は目だけではあやふやだから特別な高価な最新の機械を導入されているわけでして、法務省だってそうすべきものじゃないか、こう思うのですね。 また、自治省お答えいただけなければ法務省ですが、一般の行政の窓口などで、あなたの身分を証明できるものを見せてくださいと言われた場合に行われ得る、登録証の所持者と登録証上の名義人とが同一人物であることの確認というのは、どのようにして行っておりますか。また、その際の指紋の照合はどのようにしてなされておりますか。
○小林(俊)政府委員 一般の窓口におきましては、同一人性の確認は、本人の提示した登録証明書の写真と本人との照合によって行われていると存じます。その際には、一般の窓口の方にはあらかじめ採取した指紋はないわけでございますから、指紋の照合ということは行われておりません。
○三浦(隆)委員 次に、同じく、法務省において行われる、新しい指紋原紙に指紋を押したものが、それに対応する旧原紙に指紋を押したものと同一人物であるとの確認は、どのようにして行われていますか。また、その際の指紋の照合はどうされますか。
○小林(俊)政府委員 法務省当局におきましては、ただいま御指摘の指紋の照合は係官が肉眼で行っております。
○三浦(隆)委員 これも、先ほど来言うように普通の一般の職員が指紋の正確ないわゆる鑑識能力はあるわけがない。そんな簡単にわかるものじゃないと思うのですね。先ほど言ったように、ある程度までは、大ざっぱには素人目でもわかるかもしれませんけれども、一億二千万のうちの一人だと断定するまでに至るにはよほどの訓練がなければできないことじゃないのですか。それ専門の鑑識の専門家でなければ、ちょっと講習を受けたぐらいでは私は間に合わないのじゃないかというふうに思うのですが、この点どうなんですか。
○小林(俊)政府委員 確かに先生おっしゃるとおり、一つの指紋を持ってまいりまして、これを何十、何百、何千の指紋の中から同一のものを探し出せというようなことになりましたら、これは肉眼では到底容易にできることではございませんし、専門的な訓練も必要であろうと思います。しかしながら、二つの指紋を取り出しまして、その二つの指紋が同一であるかどうかということは、肉眼である程度の心証を得ることはさほど難しいことではございません。これは特別の訓練がなくてもできることでございまして、現に昨年八月の本件関係の東京地方裁判所の判決におきましても、同一の指紋を新たな指紋との間で対照することはさほど専門的な技術を要することではない、肉眼でも可能であるという判示が出ておるわけでございます。
○三浦(隆)委員 そういうふうに言っているということだけであって、本当に正確かどうかはわからないわけです。ですから、先ほど言った有罪の判決文も、よく検討してみますと、極めてあいまいな表現で書かれているわけです。危なくなるとこれは立法政策の問題だ、あるいは立法裁量の問題だというふうに抽象論で逃げておりまして、現実の指紋の照合その他の問題に関しては極めて不確かな表現になっている。この点は、我々はもう一度本当に考え直してみていいことだと思うのであります。特に、これから夏から秋にかけまして指紋押捺の人がたくさんふえるわけですね。その場合に、もう本当にあっという間に見ていかなければ間に合わないぐらい大勢の方が見えてくるわけです。そうした場合に、現場の人は今までですらも指紋の照合はしていない。何となく写真を見たり態度でもって決めているだけであって、同一人性の確認というのは必ずしも指紋の照合をしていないというふうな答弁が、これはほとんどどこの自治体でもそう答えられるだろうと思うのです。もしなにでしたらここに川崎の伊藤市長を参考人としてお願いして呼んでも結構でございますし、あるいは横浜の細郷市長を呼んでも同じことで、そういう答えが来るはずであります。同一人性確認のためには指紋の照合が絶対に必要だという確信があるから外登法十四条では指紋押捺を義務づけているわけですね。にもかかわらず、指紋照合を伴わない指紋押捺制度というのが現実なんですね。とすれば、それは極めて法の適合性を欠いている。言いかえれば違法の疑いがある。あるいは、さらにひいていけば運用違憲と言ってもいい問題が生ずるのではないかという、これがまず第一点であります。 時間ですので続けてお尋ねしたいのですが、同じことで、今度は指紋照合は指紋照合の専門家が行ってこそ事実の確認を期し得るものだ、こう考えるならば、今秋も大量に予測される登録証明書の切りかえ交付に際して、特に指紋照合の専門家とは言えない人による指紋の照合は、法運用上著しい瑕疵があるし、ひいては法違反であり、ひいては運用違憲の疑いが出てくるのじゃないかと思うのですが、この二点についてお尋ねしたいと思います。
○小林(俊)政府委員 指紋の照合は、先ほど申し上げましたように、同一人と思われる二つの指紋を相互に照合するだけであるならば、肉眼でかなりの程度正確にこれを認識することは可能でございます。ただ、そこで疑問が生じた場合に、これを最終的に確定するためには専門的な鑑識が必要となるということは明白でございますけれども、一般の場合には、それが同一の指紋であるという認識を持つために専門的な訓練が必要であるというふうには私どもは理解しておらないわけでございます。また、そういう観点から指紋というものの意義が認められておるわけでございますが、さらに申し上げれば、指紋がとられておるということによって同一人性を最終的に確定する手だてが確保されておるということでございます。したがって、それが必要な事態が日常生じていないということが指紋の採取を、あるいはそういう手段の確保を不必要なものとする結論には結びつかないというのが私どもの考えでございまして、要するに決め手がそこに確保されておるということが重要なのだというのが私どもの考え方でございます。
○三浦(隆)委員 今の最後のお言葉にありましたように、お話を聞いておると指紋は必ずしも要らないのですね。結局写真その他で確かであることがわかればそれでいいのであって、写真ではどうも疑わしい、わからないから指紋だという程度のように聞こえましたね。ですから、今後とも指紋によらないで、言うなら指紋以外の方法でより正確を期して、よい方法があれば進んでそれを検討されるように、今すぐに法改正はともかくとしましても、近い将来において指紋を不必要としてもいいくらい、近代科学の粋をきわめまして、それを採用する方法をぜひとも検討していただきたいということを今度は法務大臣にちょっとお尋ねしまして、質問を終わりたいと思います。
○嶋崎国務大臣 三浦委員から指紋の問題を集中的に御質問をいただいたわけでございます。御承知のように、今でも大体月平均的には五千件くらい、切りかえその他のことで押捺をいただいておるというのがベースであるわけでございまして、そういう中で、この問題、最近非常に意識的に取り上げられる部面もないわけではありませんけれども、皆さん方の御協力によって今日まで推移をしてきておるわけでございます。御承知のように、指紋の制度というのは同一人性を確認するというような意味でぜひとも必要であるということで今日までやってまいりました。この制度ができてから相当長い間経過をしておりますけれども、当初にはこの制度を通じて間違った事案というのが相当整理をされてきたという経過もあるわけでございます。 これからも指紋制度というものをどういうぐあいに考えていくかというのは、前々から御答弁申し上げておりますように、ただ単に国内的な事情だけでなしに国際的な事情というものも十分加味していかなければならないし、またいろいろな御意見があるということは十二分に承知をしており、かつまた日韓の共同声明の話のあることも我々承知をしておるわけでございまして、今後とも制度的にあるいは運用上には十分配慮をして事柄の整理を進めていかなければならぬという感覚については、間違いなしにそう思っておるわけでございます。しかし、いずれにしましても、五十七年に改正をされてまだそう日時がたっておるわけではありませんので、できる限り皆さん方には御協力をしていただきたいというふうに思いますとともに、我々も先ほど来申し上げたような気持ちで、今御指摘のような感覚をずっと持ちながら、この制度というものをどういうぐあいに制度的にあるいは運用上検討できるかということを詰めて考えてまいりたいというふうに思っておるわけです。
○三浦(隆)委員 この指紋問題につきましては、今拒否者が出たから問題になっていますが、逆に法規に従いまして、窓口に行った人が、指紋照合もしないで写真だけで簡単に切りかえ交付がなされた場合に、それは本当に私であるかどうかを指紋を確実によく見て確認をとってからじゃなければ同一人性を確認したとは言えないじゃないか、写真だけで済ましちゃおかしいじゃないか、なぜ指紋をとっているんだ、指紋をとっている以上は指紋での確認をしてからでなければ正確に同一人とは言えないんだというふうに開き直りまして、むしろ拒否闘争でなくて順法闘争的にきた場合にどうなるかというふうな問題も踏まえて、次回に改めて指紋の問題でお尋ねしていきたいと思います。 きょうは、これで終わります。
○片岡委員長 柴田睦夫君。
○柴田(睦)委員 暴力団の問題について伺います。 まず最初に、山口組と一和会の抗争の問題です。 一月二十六日に一和会系組員が山口組幹部を襲撃し殺害した事件が起きてから、両組織による武闘抗争事件が頻発し、一般市民さえ巻き添えにされております。これは重大な問題であります。特に三月以降これが激発しておりまして、新聞報道で拾ってみますと、五日夜、六日朝、十四日早朝それから十四日夜、十五日夜、十七日夜、ずっと続きますが、まるっきり連日の状況です。しかも、ほとんどすべての事件がけん銃による襲撃事件になっております。これじゃ、全く無法状態ではないかというふうに考えるわけです。 そこで、警察庁に伺いますが、抗争事件の実態を国民の前に明らかにしていただきたいということで、この一月二十六日以来の事件数あるいは使用される武器、また何件検挙がされているか、これからどう展開していこうとしているのか、こういう点についてお伺いします。
○横尾(敏)説明員 お答えをいたします。 まず、山口組と一和会の対立抗争事件につきまして、現在までの発生、検挙状況につきましてお話を申し上げます。 ただいま御指摘のように、一月二十六日夜、大阪府下で発生いたしました山口組長ら三名の射殺事件に端を発しまして、現在までに高知県を含めまして北陸、近畿、四国等で傘下の暴力団によりまして四十一回の抗争事件が発生しておりまして、両組織関係者十名が死亡し、十名が負傷しております。このうち二十件を検挙いたしまして、被疑者六十二名を逮捕するとともに、三件につきましては被疑者を指名手配して追跡捜査中でございます。 なお、これらの抗争は、警察の徹底した取り締まりと警戒措置によりましてまだ小競り合い程度で、本格的な抗争には発展しておりませんが、警察といたしましては、市民の安全確保の万全を期するために各種警察活動を強化いたしまして抗争の拡大防止を図るとともに、両組織に対する徹底した取り締まりを実施しているところでございます。 一月二十六日抗争事件発生以来現在まで、きのう現在の数字でございますが、両組織の構成員二千百九十七名を検挙いたしまして、けん銃百十九丁を押収するなど着実な成果を上げているところでございますが、今後ともこれらの施策を強力に推進していく所存でございます。
○柴田(睦)委員 けん銃が問題になりますが、要するに日本では銃砲所持が禁止されているわけです。こういう中におきましてたくさんのけん銃が出回っている。そしてこれが使われるということは、国民にとっては本当に心外なことでありますし、そしてまた、自分たちがいつこのけん銃抗争に巻き込まれるか、そういう心配がありますし、恐怖があると思うわけです。 そこで、警察庁は、昨年千七百丁余りを摘発しておられますが、今言われた百十九丁、これは一月二十六日以来のことのようですが、山口組、一和会抗争関係全体でどれだけ摘発をされているのか。新聞報道などを見ますと、警察幹部の話が出ております。その中で、暴力団員一人一丁時代に入ったとかあるいは両組織合わせて一千丁以上あろうというようなことが言われておりますが、一体、どのくらい暴力団がけん銃を所持していると考えていらっしゃるのか、また山口組、一和会系の両組織ではどれくらい所持していると考えていらっしゃるのか、お伺いします。
○横尾(敏)説明員 お答えを申し上げます。 先ほどもお答えを申し上げましたように、現在まで山口組、一和会関係者から百十九丁を押収しております。ちなみに山口組全体は約一万人、一和会系が約二千八百人ということでございますが、どのくらい山口組と一和会がけん銃を持っているかということにつきましてはちょっとわかりませんけれども、私どもといたしましては徹底的にけん銃の摘発をいたしたい。けん銃を所持することによりまして一般市民に対する被害が及ぶ可能性が非常に強うございますので、現段階におきましてけん銃の徹底的な摘発につきまして警察の総合力を挙げてやっておる最中でございますし、今後ますます努力していく所存でございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
○柴田(睦)委員 現にこれだけの発砲事件が頻発しているわけですから、もっと本腰を入れて摘発してもらいたい。あるいは警察に対する批判として摘発がなまぬるいのじゃないか、これもまた現状から見れば偽らぬ国民の感情であろうかと考えます。警察庁の方では全力を挙げて頑張っていくということでありますけれども、本当に頑張っていただきたいということを申し上げたいと思います。 それから、五十九年度の警察白書によりますと、全国の暴力団は五十八年末現在数が二千三百三十団体、九万八千人を超えている。そこで、その中で、今言われましたように山口組につきましては一万名、一和会が二千八百人、こうなっておりますが、こうした暴力団対策といたしましては、人・要するに組員、物・短銃、金・資金源、これを徹底的に追及してその供給源を断つことが基本であると言われております。十万の暴力団員を本当に解散に追い込んでいかなければならないと考えております。そういう中で、政界や官界と暴力団との癒着、これはどんな小さな芽であっても厳しく取り締まる必要があるということを特に言いたいと思います。アウトローであります暴力団が公然と事務所を持っておりますし、こういうことは諸外国では本当に例を見ない異常事態でありまして、国民には本当に理解しがたい問題だという考えが率直な考えだと思います。 そういう意味で、今日の状況の中で暴力団を壊滅せよという世論が高まっているわけです。一月二十九日、ちょうど竹中組長が襲われた直後、日本の新聞に、例えば「暴力団壊滅に全力をあげる」とか「内部抗争を機に暴力団壊滅へ」あるいは「山口組壊滅、今が好機」というような社説あるいは解説が出ております。これはまさに世論を反映したものだと考えておりますが、この壊滅しなければならないという点についての警察庁の決意をお伺いしたいと思います。
○横尾(敏)説明員 お答え申し上げます。 暴力団の壊滅につきましては国民的な課題でございます。私ども従来からこの根絶を目指して力いっぱい取り締まりをやってきたわけでございます。今回の一月二十六日以降の山口組対一和会の抗争に見られますように、暴力団の存在そのものが大変けんのんな存在でございます。そういうことで今後とも警察の取り締まりを強力に進めていきたい。また暴力団根絶のためには警察の取り締まりだけではなく、先ほど先生の御指摘のように暴力団事務所の撤去を初めとする国民の各種暴力排除運動の機運を盛り上げて暴力団を孤立化させていくという二面の方策で今後とも強力に暴力団の根絶を目指して邁進してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
○柴田(睦)委員 そこで治安を預かる法務大臣として、暴力団壊滅の具体的な戦略、具体策を検討していただきたいと思いますが、そのことを含めまして決意をお伺いしたいと思います。
○嶋崎国務大臣 最近の暴力団の動きを見まして、私自身も非常に心配しておるというのが実情であるわけでございます。これに対しましては、警察の方でも総力を挙げてその対応に努力されておるというふうに聞いておりますけれども、我々としましても、これらの事案に対しては的確な処理をいたしましてそれの絶滅を期していくという気持ちで取り組んでまいりたいと思っております。
○柴田(睦)委員 実は暴力団が刑務所の中まで汚染している状況が出ているのじゃないか、そういう面も心配しているわけです。 そこでちょっとお伺いしますが、全収容者の数とその中で暴力団員が何人いるかの数字。それからB系統の刑務所ではどういう割合になっているのか。さらに後の質問と関連いたしますので、甲府の刑務所の収容者と暴力団員の数をお示し願いたいと思います。
○石山(陽)政府委員 全国の受刑者数で申しますると、五十九年度で大体四万五千程度でございます。そのうち暴力団員が占める割合が一万三千ぐらい、率にしますと大体二八・五、六%ぐらいなところでございます。 それからB級の施設、これはいわゆる犯罪傾向の進んだ者だけを入れる施設でございまして、暴力団員はB級に入る場合が多いわけでございまして、それだけを取り上げてみますると、B級施設の受刑者数が約三万でございまして、そのうち暴力団員が一万二千ちょっとぐらいでございますから、率にしますと、これは一般の場合より上がりまして、約四〇%。 それから甲府の刑務所についてのお尋ねは、正確に申し上げますると、五百三十七人の受刑者中、暴力団員が百八十九名でございますので、率にしますと三五・二%。これが私どもの調査の結果でございます。
○柴田(睦)委員 要するに、これだけの暴力団員が刑務所に入っているわけです。その刑務所の中でも率が非常に高いわけです。ですから、こういうところではやはり刑務所内でいろいろなトラブルが生じる、汚染が生じるというような問題が出てくると思いますが、刑務所の目的を達成するためにも意識的な暴力団対策、こういうものが必要であると思うわけです。 そこで、刑務所内におきまして、今の山口組あるいは稲川会あるいは住吉連合、こうした大組織の暴力団員受刑者に対して、この刑務所の運用あるいは収容目的の達成のためにどういう点に留意して処しておられるか、この点についてお伺いしたいと思います。
○石山(陽)政府委員 委員仰せのとおり、暴力団の受刑者に対しましては私どもとしても非常に気を使っておるわけであります。それは仰せになるまでもなく、暴力団が社会内におきます対立派閥の抗争をそのまま施設内に持ち込む。あるいは、施設内におきます暴力団受刑者と一般の受刑者との間でとかくボス化を図っていろいろな画策をする。あるいは、職員に対しましても不服従その他という反抗的態度で出ます場合が多うございますので、規律、秩序の維持の面から見てもいろいろ問題を起こしやすい。こういうような要素もございますので、私どもといたしましても、各種の対策を立てて暴力団受刑者の処遇の適正化を図ろうということで、いろいろな方策を講じておるところでございます。 一つの例を挙げますると、幾つかの点がございますので順次申し上げていきますと、例えば暴力団関係の受刑者が入りました場合には、その者の過去の非行歴あるいは前科、前歴、そういったものを含めました社会内におきます対立抗争等の行動歴、あるいは本人の性格、性向、それから所属の派閥、こういったものに関します情報をよく集めまして十分に分析、検討をして処遇の適正を期さねばならぬという問題が一つあろうかと思います。 それから第二点といたしまして、やはりたくさんの暴力団受刑者が入っておりまするB級施設等におきましては、対立派閥がたくさんそれぞれ入りますと中で問題を起こしがちでございますので、そういった場合には適当に分散収容するという方策も当然講じなければならぬと思います。そのために各刑務所間で連絡をとりまして、管区の指導によりまして、例えば特定派閥の者だけが一つの刑務所に多くなり過ぎるという場合に、分散収容のために他の刑務所に収容者を移す、こういった方策も講じておるところでございます。 それから、暴力団の受刑者の場合に、いろいろな不正行為がよく出がちでございまするので、これらに対しまする警備力の強化と申しましょうか、いわゆる厳正な処遇を通じまして、いろいろな不正工作を行ったり外部と不正連絡を行ったりということのないように、時によりましては警備機器と申しますか、そういったものも応用しながらその処遇の適正を図るという問題点もございます。 それから最後になりますが、私どもとしましては、これら受刑者でありましても、できるだけ社会へ戻る際にはこういった暴力組織から足を洗わせるという必要がございまするので、教育指導面におきましては暴力団受刑者に対し、生活指導を通じて規律正しい社会生活になじむだけのルール、規範というものをしっかり身につけさせる。それと同時に、できれば組織から離脱するようにということについての教育指導、これも重点を置いておる。 以上申しましたような点、ざっとでございまするけれども、こういった面を考えながら処遇に努めておるところでございます。
○柴田(睦)委員 そういうせっかくの対策を講じていながらも、今日の状況はその中で不正行為が起こるというように、刑務所の中まで暴力団が汚染する事実があるわけであります。 私は昨年の末に、甲府の刑務所におきまして看守が暴力団稲川会からの接待を受けるなどした収賄の事実を聞知いたしました。この事実は一切公表されておりませんので事実関係を調査いたしましたところ、この看守は昨年の十二月二十二日に懲戒免職処分になったということが判明いたしました。また、刑事被疑事件として調べられたことも判明いたしました。本人は現在、新しく就職をいたしまして更生しようとしていると思われますので、名前を挙げることは避けた方がよいと思いますけれども。 そこでお伺いしますが、一つは、どんな事実であったかという問題で、刑事事件として立件したということでありますが、被疑事実の要旨及び裁定の結果と裁定の理由を言える範囲でお答え願いたいと思います。
○筧政府委員 御指摘の元甲府刑務所の看守に対する収賄事件でございますが、被疑事実の要旨は、被疑者は甲府刑務所看守をしていた者であるが、同刑務所の受刑者らから、同人の刑務所内における処遇等につき有利な取り扱いを受けたい趣旨のもとに、昭和五十八年十二月ごろから五十九年九月ごろまでの間に現金合計十五万円の供与を受けるなどして収賄したという事実でございます。 これにつきましては、その後捜査を遂げた上、起訴猶予処分にいたしております。起訴猶予処分の内容につきましては、不起訴でございますので詳細は差し控えさせていただきたいと思います。
○柴田(睦)委員 今、被疑事実の要旨を言われましたけれども、犯罪の場所というものは明らかですか。
○筧政府委員 現金合計十五万円ということで、これが三回ぐらいに分けてのことでございまして、その場所は……(柴田(睦)委員「自宅とかあるいはスナックだとか」と呼ぶ)そうですね。この元看守の自宅でありますとかあるいは市内のその他の場所というふうになっております。
○柴田(睦)委員 これは懲戒免職処分になされたということでありますけれども、その理由を言える範囲でお答え願いたいと思います。
○石山(陽)政府委員 ただいま刑事局長から申し上げましたように、三回にわたる現金授受、合計十五万円という非行事実が明らかになりました。それからなお二、三物品の供与等も受けておったという事実等をあわせまして、私どもでは本件が発覚しました際に直ちにできる限りの行政調査をいたしまして、このような事件、不祥事でございましたので、速やかに人事処分としての上申を行わせ懲戒処分を決定した、こういう経緯でございます。
○柴田(睦)委員 この元看守の事件に関連する共犯容疑者あるいは関連事件といいますか、そういう容疑を受けた看守などについての調査があったかどうかお伺いします。
○石山(陽)政府委員 私どもはいわゆる行政調査の範囲内で、この問題を起こしました看守と市内のスナックに、野球部の会合の帰りに同僚の若い看守が数人一緒に連れていかれて、いわばおごってもらったという形になったことがございました。その点は何か特に不祥事がないかということでいろいろ調べましたけれども、そのスナックは、暴力団組織に関係のないごく普通のありふれたスナックでありまして、さらに全く事情を知らずについていったものであり、なおその金の支払いも、連れていったこの事故を起こしました本人がみずから払っておることを確認しておるということでございましたので、これらにつきましては後日、担当の上司から十分指導上の注意をいたしましたけれども、特に行政処分その他の職責を問うということは現在までいたしておりません。そのほかには関連する容疑その他で行政調査をいたした者はございませんでした。
○柴田(睦)委員 私がこの件を聞知して調査をしなければならないというように考えた原因ですけれども、事が暴力団関係であるということ、それから元看守の処分の発表前に職員からせんべつが集められたという情報があったということ、それから表には出ておりませんし、あるいは刑務所当局において外部に漏らさないように工作しているんだというようなことを聞いたということから、これはちょっと調べなければならないということで調査したわけですけれども、せんべつを集めた事実、あるいはそれはそういう気持ちになるかもしれませんけれども、表に出ないように指導したというような事実があるかどうか、お伺いします。
○石山(陽)政府委員 お尋ねの点が数点ございますが、まずせんべつ関係ということにつきましては、私どもも調査をいたしました。これは実は名前を伏せていただきましたけれども、元看守は三十前の若い身空で大変将来を嘱望されておった優秀な若手職員でございましたが、たまたま暴力団の誘惑に負けたという形で今回の事故を起こしたわけでございますが、懲戒処分ということになりますと、本人は現在幼児を一人抱えておりますし、奥さんはなおそのほかに身重でございます。全く生活のすべもなくほうり出されるということにつきまして、上司、下僚を含めて同僚の声も上がりましたので、全く自発的に任意で、せめて更生の糧にしてやりたいということからそういう行為があったということは承知いたしております。最終的に金額が幾ら集まったかというところまで調査しておりませんので私自身は存じておりませんが、それが一つあったことでございます。 それから次に、事故が起きましてその後の措置でございますが、私どもはその報告を聞きまして実は本当に驚きました。まことに矯正を預かる私の立場から見るとつらく、かつ切ない思いをいたしましたけれども、申しわけないことでありまして、直ちに地元の検察庁と関係機関に対しましては調査の状況を逐次御報告申し上げております。もちろん、こういったことを所長がわざわざ一般人に対し報告するという性質のものでもないという点については御容赦をいただきたいと思いますけれども、決して所内の塀の中の密室の事件として関係機関にも通報しないで隠すというようなことは一切いたしておりませんでした。その点だけは御理解を賜りたいというふうに考えております。
○柴田(睦)委員 実は私も十五年ぐらい前に弁護士としてかかわった事件ですが、千葉の刑務所におきまして、千葉の刑務所ですから長期の受刑者が入っておりますし、その中の関西系の暴力団でありましたけれども、うまく若い看守がはめられて収賄行為になった。忠実に装っていて、それから機嫌を取りながら検閲を通さない手紙を出してもらう。それから金を贈る。金を返すと、もう金を返しても手紙を出しているから先生だめだということで反対におどされるということでうまくだまされて、結局そういう事件に発展したものがあったわけですけれども、今の矯正局長のお話によりますと、今度の場合も暴力団の誘惑に負けたということをちょっと言われましたけれども、もともと看守としてそういう重大な仕事をやるわけですから、まじめにやろうと考えて看守に採用されたと思うわけです。また、公務員として関係者から金品をもらうことがよくないということも十分考えて執務をしながら、それがどうしてこういう事件にかかわるようになったか。誘惑があったということでありますけれども、その背景についても十分調査されていると思うわけです。 そういう問題を含めて、いろいろなケースが過去にもあって、看守がこういうことに陥っていくという事例を自分の経験で知っているのもありますし、そういう事例があると思いますけれども、そうした事件が起きればその背景までずっと調べて、刑務所内における暴力団の悪事のやり方の手口も解明して、これから看守の人たちがこんなことを言っても驚かない、そしてそういう事件に巻き込まれないように教育指導していくということが必要だと思っておりますけれども、この点についてはどのような対策あるいは研修などなさっていらっしゃるか、お伺いします。
○石山(陽)政府委員 ただいまの点は委員の仰せのとおりでございまして、刑務所もちょうど看守の世代交代が大分進んできておりまして、実務の経験の浅い若い職員がふえて、これが第一線のいろいろな監視業務、指導業務につかなければならぬという事態を迎えております。言うなれば若い看守さんが、暴力団は世代の交代どころか高年齢化が進んでおりまして、いわば中高年齢層の世の中の裏表をよく承知した暴力団の受刑者に対応しなければいかぬ。そういう場合のときに、私どもは職員と受刑者との間の規律、秩序維持の面で一線を画しながらきちんとした処遇をやれということでありまするが、人情でございまするので、例えば暴力団の一つの手口を申しますれば、受刑者がちょっとしたことで、看守さん、何々をお願いします、つい人情に負けて、所内のルールではそういう場合にはやってはいかぬことで面倒を見てやったということがあります。これは決して悪気でやったわけではないようでありますが、それを非常に感謝して、またお願いします、またお願いします。ある日それを断って、そうたびたびはできない、こう申せば、向こうはそこで急に態度を翻しまして、今までやったことを全部ばらすぞ、君のやっていることは全部ルール違反になるだろう、こういったような形で手懐けられる、こういう手口が多うございます。 そこで、私どもとしては、若い職員に対しましては、先輩の意見を聞くために現場では各種の職務研究会を催しております。そういう際に暴力団受刑者のいわゆる取り扱い方、こういったことのノーハウを先輩から教わり、かつはお互いに気を引き締めてこういった事態を招かないようにするというための研究会というものをよく開いておりますので、この席上等を使って若い人たちの、新人教育に努めております。それから、各種の研修あるいは会同等におきましても、そういった点につきましては、暴力団がこれほどふえてきておりまするので、所内の収容対策上の見地から見ましても、または職員との関係におきましても、そういった事態を起こさないようにということでこれまでも努めてきておったわけであります。たまたま今回のような事件が起きてみますると、私の立場からしますると、よりそれらを徹底して今後二度とこういう事態を起こさないようにしたいというふうに考えておるところでございます。 この種の不幸な事故と申しましょうか、言いわけをするつもりはありませんが、過去に何件かございました。最近その件数は順次減りつつあります。昨年度はこれ一件でありましたが、それでも私としては大変申しわけないと思いますので、今後ともこういう事態を招かないように努力をさせていただきたい、こういうふうに申し上げたいと思います。
○柴田(睦)委員 懲戒処分の調べをいただきまして、五年単位ぐらいで見ると確かに減っていることがわかります。問題は職員に対する締めつけあるいは受刑者である暴力団に対する締めつけだけで解決する問題ではないと思います。 職員について言えば、劣悪な労働条件、聞くところによりますと、例えば刑務所の塀の中に官舎があって、そこから職員の子女が学校に通わなければならないというようなところがあると聞いておりますが、職員の労働条件を改善して専門職にふさわしい社会的地位と素養の向上を図って、職員が市民的自由、政治的自由、こういうものが保障される方向で、そして本当に誇りを持って仕事ができるようにしなければならないと考えております。 それから、受刑者に対しては厳正な執行を行わなければならないことはもちろんであります。同時に、裁判で決まった刑罰以上に侮辱を与えたりあるいは非人道的な取り扱いをしてはならないと思いますし、そのためにも労働と教育を重視して、この受刑者の自主性を高めて社会復帰後の累犯を防止するための努力をすることが必要であると考えております。 こういう点から考えてみましても、暴力団員に対して一般的な受刑者と違った特権を与えることは決してあってはならないと思いますし、暴力団員については、その将来の更生というようなことを考えてみた場合に、遠隔な土地に分散して収容することも必要であるというように考えております。大臣のこの刑務行政についての御見解を最後にお伺いいたします。
○嶋崎国務大臣 ただいま柴田委員から御指摘がありましたように、矯正の職員の中から非常に不幸な事件がありましたことはまことに申しわけないと思っておるわけでございます。御承知のように罪を犯した人の矯正をかけて努力をしている仕事でございますので、みずからの姿勢というものをきちっとするということは当然に、まず第一番目に大切なことであるというふうに思っておるわけでございまして、今後ともそういう点については抜かりのないようにしっかりした管理を続けていかなければならないと思っておるわけでございます。 先ほど矯正局長から御説明がありましたように、今ちょうど矯正関係の職員につきましては世代交代期に入っておるわけでございまして、先輩の皆さん方が、いかに受刑者の人と的確に対処をしていくかということをよく教育、訓練をしていくということが非常に大切なことであることはもちろんのことでございますけれども、それぞれの担当者が自分の仕事を自覚して精いっぱいの努力をしていただきたいと心から思っておる次第でございます。 先ほど来御指摘がありましたように、この矯正関係の施設というのは、ある意味では一般の社会から隔絶されたような仕事であるわけでございまして、そういう意味で、人から評価をされるというような点が非常に少ない職場であるというふうに思っておるわけでございます。そういう意味で、ある程度の待遇はしていただいておりますけれども、なかなか十分であるというような状態ではないと思っておる次第でございます。今後ともこれらの方々の待遇その他の問題、また御指摘にありましたように施設の所在あるいは子弟の教育というようなことも含めて、それが安定するような条件というものをつくり出していくということが非常に大切なことだと思っておりますけれども、なかなかこの問題一つとらえましても、矯正施設に対して、総論はともかくとして個別の問題になると賛成していただけないというような部面も非常に多い環境にあるわけでございます。我々もそういう意味で精いっぱいの努力をしていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。 今後とも御指摘の点につきましては十二分に留意をしまして、我々一体となって将来のために十分な配慮を行って対処してまいりたいと思っておる次第でございます。
○柴田(睦)委員 時間が過ぎておりますが、あと一点だけ……。 別の問題で、これは私が予算の分科会で取り上げました問題ですが、中古車販売業者が中古車を販売する際、既に前の所有者が自動車重量税を払い込み済みであるにもかかわらず新たな所有者、要するに中古車を購入するユーザーから車検残期間を案分した重量税が必要である、こういう言い分で、これを法定費用というような名前で徴収して実は業者が取得する。これによって、ユーザーの方は一件当たり一万円から二万円と少額ではありますけれども、ユーザー全体では年間五百億円前後に上ると推計されるものであるわけです。 この問題は三月七日の予算委員会の第六分科会で私が質問しまして、刑事告訴事件になっている業界最大大手のケイユー商事のことについて警察の捜査状況と検察庁の対応、方針をただしたときに、警察庁の捜査第二課長が、「昨年十一月の十日に警視庁町田警察署におきまして告訴を受理いたしまして、本年一月九日に東京地方検察庁へ送付をしているところでございます。告訴の要旨でございますが、被告訴人は、昭和五十八年九月十五日ごろ、告訴人に対しまして中古自動車一台を販売するに当たりまして、当該中古自動車の重量税の残存期間といたしまして自動車重量税十一カ月分一万千百五十円を納入してくれなどと申し向けまして、同金額を支払わせたというものでございました。」こう答弁しております。これに対して法務省の東條刑事課長が、「本年の一月九日に受理をいたしまして、現在東京地検の八王子支部で捜査中でございます。」「検察当局といたしましては、その背景の商慣習といいますか、そういうものまで含めまして十分に調べて適正に処理するものと考えております。」こう答弁されました。 そこで、検察庁はどうしたか。要するに今でも告訴人からの事情聴取も行われていないようでありますが、この捜査はどうなっておるのか、今後どういう対処をするつもりであるか、できる範囲で報告してもらいたいということ。 それから一緒に聞きますが、今の問題は詐欺の容疑問題ですけれども、業者が自動車注文者に対して、税金でもないのに税金と表示し、法定費用でもないのに法定費用などと表示しているわけですが、これは不当景品類及び不当表示防止法の第四条が禁じております不当表示にも該当する。この点についてこの分科会でただしたところが、公取委の景表指導課長が、「重量税と本体価格との関係については、必ずしも業界内でも解釈について一致しないところがありましたものですから、これにつきましては、今中古車の公正取引協議会にこの関係を明らかにするように、そうでないと、ただいま先生御指摘のように景表法上の問題が生ずるということで、関係団体にその適正化を指導しております。それで、ただいま先生御指摘のように、この規約の協議会に対しては今後とも違反が再発しないように厳重な措置をとること、また、そのことについて私どもも十分監督していきたいと思っております。」と答弁されました。それで、この点について公取委としてどのような指導監督をしたか、中古車の公正取引協議会はその指導監督に基づいて規約の適正化についてどのような措置を講じたか、違反の再発防止のためにどのような措置をとったか、まとめて両方からお答えいただきまして終わりたいと思います。
○筧政府委員 御指摘の事件につきましては、本年一月九日、東京地方検察庁八王子支部で警視庁から送付を受けまして、その後現在に至るまで捜査を継続中でございます。今後もなお捜査を続け、捜査を遂げました上で事案を解明し、その実態に応じた適正な処理をするものと考えております。
○黒田説明員 お答えいたします。 現在中古車の販売に関する公正競争規約では、第十条で車名とか型式、初度登録年月、販売価格、走行距離教、自動車検査証の有効期限、販売の態様等の表示の義務づけをやっておりますが、販売価格として車両本体価格を表示して、かつこれに保険料、税金、登録等に伴う費用は含まれていない旨を併記する、ここまでは実は規約に規定してあるわけです。ところが、ただいまも御指摘がありましたように、車両価格と重量税との関係については必ずしも規約上では明らかになっておりませんので、そのことに対して自動車公正取引協議会に対して両者の関係を明示するよう指導をいたしたところです。現在、自動車公正取引協議会としましては、自動車重量税の徴収の実態を調査するとともに、自動車業における表示に関する公正競争規約第十条において車両本体価格に含むことができない税金には自動車重量税は該当しない旨を明確化する方向で検討しております。
○柴田(睦)委員 終わります。
○片岡委員長 次回は、明後十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時二十二分散会