法務委員会 第2号
- 発言数
- 129 件
- 登壇者
- 20 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1984/12/18
会議録
○片岡委員長 これより会議を開きます。 この際、理事の辞任の件についてお諮りいたします。 理事稲葉誠一君から、理事を辞任したいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。 ただいまお諮りいたしました理事の辞任により、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、横山利秋君を理事に指名いたします。 ————◇—————
○片岡委員長 お諮りいたします。 本日、最高裁判所山口総務局長、櫻井人事局長、川嵜経理局長、小野刑事局長、猪瀬家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○片岡委員長 内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
○横山委員 最近、裁判の判決につきまして、社会的に非常に問題といいますか評価といいますか、あるいは批判といいますか、さまざまな渦が沸き上がってまいりました。これは、最高裁判所を初めとする裁判所及びその判決について社会的に極めて注目をされ、影響を受けることが甚大であるからにほかならないと思います。 〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕 今、私の頭の中にありますものを考えましても、伊方の原発の判決あるいは定数是正の判決あるいはポルノに対する判決、きのう、きょう大韓航空についての訴訟があるという報道がされておりますが、まことに、最近の判決に対する世人の関心、マスコミの取り上げ方は極めて大きなものがあります。それなるがゆえに、最高裁判所を初め各裁判官に対する関心、その判決の内容というものに極めて私どもは関心を持つわけであります。裁判批判ということ、判決批判ということはどう考えたらいいのであろうか。社説における判決批判あるいは国会における判決批判、国会における自由民主党の司法の公正委員会に関する問題も同僚諸君が取り上げたわけであります。これらを通じてみまして、私は寺田最高裁長官が就任以来取り上げましたいろんな訓示なりあるいはごあいさつを通読をしてみました。 例えば五十八年一月一日の「新年のことば」で注目されるのは、「時代は激しく動いている。裁判にたずさわる者は、時代を先取りすべきではないともいわれるが、このことは、裁判所職員が社会の動向に無関心であってよいということを意味するものではあるまい。」あるいはまた五十八年六月の長官訓示では、「しばしば、既存の法律知識では処理し切れない複雑な様相を呈するのも、このような社会情勢と国民の意識を反映したものと思われます。」それから五十九年の一月の「新年のことば」では、「複雑で困難な内容のものや従前見られなかった種類のものが数多く見られました。」五十九年の六月の訓示では、「環境には著しい変化と発展が見られるのであります。このような状況の下で、将来をも展望しつつ時代の要請に的確に対応していくためには、制度の上でも、運用の面でも、新たな観点から検討を加えるべき問題が少なくないように思われます。」等々、累次のごあいさつの中で、時代が動いておる、こういうことを強く力説をされておるようであります。 確かに、私もそう思うのであります。ここに少し悪口の一番標本のようなものがありますが、作家の野坂昭如さんが言っておる言葉があります。「目に見えない精神活動の産物に、国の末端機関が口出しするのは、我々が自由の国に生きていない証拠。警察の取り締まりと合わせ、二重の検閲を受けているわけだ。世間の常識と遊離した判決で、最高裁は行政の走狗となっている」。ポルノ判決についての野坂さんのコメントでありますが、要するにこの言わんとするところは、裁判所及び裁判官が時代の著しい発展に即応していない、こういうことを強く指摘をしていることだと思うのであります。 そこで、きょうは事務総長の出席を求めたわけでありますが、御都合が悪いというお話でありますから、どなたが最高裁御答弁なさるか知りませんけれども、この結語的に長官が言っておる「制度の上でも、運用の面でも、新たな観点から検討を加えるべき問題が少なくない」ということをどういうふうに具体的にこれから検討をしようとするのか、それをまず伺いたい。
○山口最高裁判所長官代理者 寺田長官が新年のあいさつあるいは長官・所長会同の訓示におきまして、ただいま横山委員御指摘のような発言あるいは意見表明をなさっておられることはそのとおりでございます。長官・所長会同の訓示と申しますのは、年一回行われます長官・所長会同におきまして、司法行政の最終的な責任者としての長官の立場をお述べになっていることでございまして、その内容につきましては裁判官会議で慎重に検討された上決められたものでございますので、事務当局といたしましては訓示の本文自体から御判断いただくほかはないと考えておりますが、ただ原案の作成に若干関連いたしました者といたしまして、少しばかり述べさせていただきたいと思います。 ただいまお尋ねの時代の変化という点につきましては、御承知のように高度成長から低成長への移行、あるいは技術革新の問題、高齢化社会の到来、あるいは意識の面では価値観の多様化、権利意識の高揚、そういった問題がございまして、訴訟の面ではコンピューターに絡まる犯罪あるいは特許の問題、さらには環境権といったような新しい権利主張の問題、離婚訴訟の増大でございますとか、隣人訴訟の到来でございますとか、従来見られなかったような形での訴訟につきまして我々裁判官は対応を迫られるわけでございます。 そこで、私どもといたしましては、時代の変化を的確に見通して時代の要請を的確に把握しながら、それに相応したような紛争の解決を図らなければならない、そういうふうに考えておりますところから、ただいま御指摘のような長官の訓示あるいは「新年のことば」にあらわれているわけでございます。 今後どのように対処するかという点につきましては、会同、協議会あるいは種々の資料、研究等を通じまして幅広く知識を吸収しながら、時代の変化に対応できるような訴訟の解決のために努めてまいりたいというように考えているところでございます。
○横山委員 極めて抽象的でわかりませんが、訓示の中で指摘をしている具体的な問題があるとすれば、裁判所の適正配置、後進裁判官の育成、こういうことが頭を出しておるわけでありますが、先般来本委員会で取り上げた自民党の司法の公正に関する委員会、これが判決批判を含めて裁判所、検察陣の体制批判として最も大きな影響のあるものだと私は思っています。 法務大臣は先般好ましくないとおっしゃいました。好ましくない理由は一体何でしょうか。また、好ましくないとすれば、一体どういうふうにそれをあなたの立場として注意をなさろうとするのでしようか。
○嶋崎国務大臣 横山委員御指摘の自民党内の司法に関する特別委員会、その内容につきましては私も余りよく存じておるわけではありませんけれども、その出発点は人権擁護というような立場からスタートをしておるというふうに聞いておるわけでございます。 その審議の内容につきまして、今御指摘のような何か強力な働きかけがあるのかということにつきましては、そう個別問題についての議論をするというような段階に至ってないように私は承知しておるわけでございますが、いずれにしましても、個々の裁判に関係をして我々自身も個別的な調査なり指導なりをやることを遠慮しておるという実態があるわけでございますから、そういう点から見まして、これらの問題で、具体的に現在係争中の事案につきましていろいろな意味での意見を聞かれるような会を持たれるというようなことは余り適当ではないというふうに思っておるわけでございます。 先般のときに申し上げておきましたけれども、もうおやめになったような人、私人になっておるような人にいろいろなお話を聞かれる、そういうことよりも、むしろ問題があるとするならば、現に法務省というのがあるわけでございますから、直接そこに勤めている者に聞いてもらう方が適当ではないかというようなことをあわせて申し上げたような次第でございます。 したがいまして、個々の事案につきまして調査特別委員会でいろいろな論議をされるということは適当ではない、そういうようなことで、それじゃ政党が全く司法に関して何もさわらないでいいのかといったらそうじゃないんで、ある意味でそういう点について御批判をされるということはあり得るのだろうと思いますけれども、それにはおのずからの限界というものがあるだろうというふうに申し上げた次第でございます。
○横山委員 いや、わからぬことがあったら役人を呼んで聞いてくれとおっしゃるのですか。私はまさかと思うのですけれども、役人を呼んで、おまえのやったことはけしからぬじゃないか、おまえの考えは間違っているんじゃないかというようなことが一つの政治的圧力になる、私はそう思っているんですよ。大臣は自分の部下はそんな圧力に屈しないというふうに考えているのですか。
○嶋崎国務大臣 全くそのとおりに考えておる次第でございます。
○横山委員 ぜひそのように、ひとつ部下の皆さんに、役人が次から次へと呼ばれてロッキード判決、検察陣のあり方について質問を受けるときに、それが精神的圧力になるというふうに世間は見がちでございますから、そのようなことのないように御留意を願いたい。 先ほど最高裁からお話があったわけでありますが、この間高島さんが判事におなりになりました。私はよく存じ上げている方でございますから、御本人についてとやかく言うわけではありません。最高裁判事の選任の方法でございます。本来、御存じのように十五人の中で五、五、五ということで弁護士が五人であったのですね。いつの間にやらそれが四人になっておる。一体、これは最高裁でも御回答されることじゃないと思うのですが、最高裁判事の選任方法は、事実上、どういうふうに行われていますか。総理府ですか、御答弁を願います。
○荘司説明員 お答え申し上げます。 先生既に御承知のように、最高裁判所の長官及び判事の選任につきましては、憲法の規定及び裁判所法の規定がございまして、長官につきましては内閣の指名に基づいて天皇が任命をいたしますし、判事につきましては内閣が任命することとされておるわけでございます。 内閣といたしましては、この指名または任命の権限を閣議によって行使するわけでございますけれども、その際、最高裁判所裁判官としての任命資格が御承知のように裁判所法の第四十一条にございますし、四十六条には欠格事由がございますので、こういった事項につきまして検討を加えました上に、真に最高裁判所裁判官としてふさわしい人材を得るために、広範囲にわたり人格、識見、能力、経歴等につきまして慎重に調査を行いまして、厳正かつ公平にその権限を行使しておるところでございます。
○横山委員 そんな抽象的なことを聞いているわけじゃないのです。事実上、どういうふうに行われているかということなんです。 法務大臣はこの選任に全然タッチしませんか。最高裁は全然タッチしませんか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 ただいま御答えがありましたように、最高裁判所の裁判官は内閣において任命しておられるわけですが……(横山委員「するかしないかだけを」と呼ぶ)その任命に際しまして、最高裁判所の長官が意見を述べられる機会はあるわけでございます。
○嶋崎国務大臣 最高裁判所長官の指名及び最高裁判所判事の任命につきましては、内閣はその地位の非常に重要であるということを十二分に考えまして、常に最もふさわしい人材を選んで選任をしておるというふうに思っておるわけでございます。従来からもそういう任命の仕方については割合一般的に高く評価をされておるというふうに私は思っておりますけれども、今後とも一層そういう点については十二分の配慮をして的確な人材を選任するように努めていかなければならないというふうに……(横山委員「タッチをなさるかなさらぬかということです」と呼ぶ)私自身はタッチをしておりません。
○横山委員 最高裁長官が意見を述べる機会があるというのですが、意見は最高裁判所の会議に付されるのですか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 最高裁判所の裁判官の任命は、事が人事に関するものであり、しかも内閣の方でお決めになる問題でございますので、最高裁判所長官が意見をお述べになることはございますけれども、それは組織的に最高裁判所としての意見がつくられるわけではないわけでございます。すなわち最高裁判所の裁判官会議によって決められるわけではないわけでございます。
○横山委員 長官が自分の意見を勝手に——勝手というと語弊があるけれども、一存でやるというわけですね。そうですね。 日本弁護士連合会が弁護士の枠、今四名でございますけれども、四名の枠について弁護士出身の判事が交代するときに推薦をいたしますね。その推薦は総理府へ届くのですか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 通常弁護士御出身の最高裁判所の裁判官が退官される場合に、日本弁護士連合会の方から最高裁判所の方にその候補者について意見を述べてこられます。最高裁判所の長官がその意見をさらに考慮された上で内閣の方に意見を述べられるというふうになっております。
○横山委員 それは日弁連が推薦するのですけれども、それは日弁連が勝手にやるのですか。おれのところの枠だから、次はひとつこの人を頼む、たしか複数で出すのですね。複数で出して、それを長官が、おれはこの人がいいと思う、あるいは複数で出してきたものを、これは両方とも気に入らぬで第三者を出すといいと思う、そういうことも含むわけですか。それから日弁連でなぜ公式に、次期枠は日弁連の枠であるから、弁護士の枠であるから、ひとつ推薦願いたいという公式な依頼状は出さないのですか。なぜ出さないのですか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 日本弁護士連合会の方でなぜ公式の依頼状という形でお出しにならないか、これは私どもの方で承知しているわけではないわけでございます。 ただ、先ほど来申しておりますように、事柄が人事の問題でございますから、そういった形式的な文書というような形には必ずしもなじまないということがあるのではなかろうかと思いますけれども、しかし、日本弁護士連合会の方から意見は最高裁判所長官の方に十分に述べられて、それを長官がお聞きになった上で、最高裁判所長官の方でも内閣の方に十分意見は述べられておられるというふうに理解いたしております。
○横山委員 第三者を出すときがあるのかどうか、推薦した人以外に長官が推薦したことがあるか、就任したことがあるか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 先ほど来申しておりますように、最高裁判所長官が内閣の方へ具体的にどういう人をその候補として挙げられ、どういうふうに述べられるかということは、私どもとしては承知いたしていないわけでございます。
○横山委員 最高裁判事というものは裁判制度及び日本の制度の中で重要な人事ですね。私はこれが密室のシステムであっていいというわけにはならないと思うのです。一遍考え直す必要があると思うのです。もちろん人事ですから、横山利秋を推薦すると言って横山利秋でなかったという場合にはおもしろくない場合がある。けれども、日弁連は推薦委員会というものがあるわけです。人間が決まって、その中でこの人とこの人とを推薦する、それは部外極秘であってもいいが、民主的な手続があるわけですね。その手続で出したものを最高裁へ持っていく、長官が会議に語らずに、これはいかぬぞとこっちにする、二人目もいかぬ、こっちにするというようなことが行われておるわけですね。 今度、最高裁から政府へ行って、政府では法務大臣は判事の推薦について何も知らぬというわけですか。これもちょっとおかしいと思うのですね。政府部内で内閣総理大臣が勝手に決めるということもおかしいと思うのです。私ども社会党は前から、最高裁の裁判官、判事の推薦委員会というものをつくれと言っているわけです。その運用についてはいろいろあるけれども、少なくとも各界を網羅した判事の推薦委員会というものがあっていいではないか。そこで民主的な討議を経て裁判官が決まっていくということが好ましいことではないかと言っているわけです。法務大臣、どうお考えですか。あなたは全然タッチしてないというのですか。 〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕
○嶋崎国務大臣 御承知のように、司法権というのは一つの独立した存在でございます。したがいまして、それに関与する人事について積極的に法務省の立場からいろいろな発言をするのは適当ではないということでございます。もちろん、そういう任命についていろいろな情報を集められる過程で資料収集のための御努力をされるということは当然あろうかと思いますけれども、少なくとも形式的にはきちっとそこのところは整理をして処理すべきものだと考えておるわけです。
○横山委員 だけれども、大臣、あなたは新任で十分過去のいきさつを御存じないかもしれぬけれども、白紙でお聞き願いたいと思うのだが、最高裁判所判事の選任というものは内閣の専権事項である。しかし、内閣の専権事項ではあるけれども、事法務行政を担当するあなたの方に何も話がない、これはちょっと私は奇異な感じがするわけです。だから、もしそうであるならば、内閣の一員として、しかも主管大臣として何か意見があっていいではないか。それから、その選出の民主的方法について意見があっていいではないか。 特に、私はこの際大臣に考えてもらいたいのは、選任は十五名のうち五、五、五だったのです。いつの間にやら弁護士出身が四になったのですね。どうしてこんなことになったのか、これは一回改めて、最高裁の基本的な性格、任務からいいまして五、五、五に戻すべきではないか、こう思いますが、どうですか。
○嶋崎国務大臣 御承知のように、閣議には私は法務関係として出ておるわけでございまして、きのうも内麦して認証式が行われておる、それに私自身が出席をしておるわけですから、形の上では大いに関与している姿のように見えますけれども、やはり司法権の独立ということから考えますと、そこはいろいろな資料を収集されるという過程で十二分に最高裁判所の方でお調べになることは当然のことであるし、そういう中である程度の受け答えはあるかもしれませんけれども、事人事に関する限りはやはり内閣の任命人事として十二分に資料を収集し、そしてそういう中で判断をされるのが筋道ではないかというふうに思っておる次第でございます。
○横山委員 司法権の独立を侵せとかなんとか言っているわけではないですよ。内閣の専権事項という中におけるあなたの立場ということを言っておるので、一遍お考えを願っておきたいと思いますよ。 次に、孤児の問題についてお伺いをいたします。 最近、中国孤児の問題が話題の中心になりまして、いろいろと各方面の話題になっておるわけでありますが、厚生省にまず伺います。 孤児の中で国籍が中国国籍である者、それから無国籍である者、あるいはそういう人たちが就籍をする希望があると思うのですが、厚生省が孤児の扱いをしておって戸籍に関する問題点はどんなことがあるか、まず説明を願いたい。
○森山説明員 中国残留孤児の訪日肉親調査というのを過去六回実施したわけでございますが、これで身元が判明したという方について見ますと、戸籍がそのまま残っておるという人ももちろんあるわけでございますけれども、既に死亡除籍をされているケース、それから戦時死亡宣告によりまして除籍をされているケース、それから失踪宣告によりまして除籍されているケース、それからまだ入籍されていないという人もあるわけでございます。こういう死亡除籍ないしは戦時死亡宣告、失踪宣告というものにつきましては、利害関係人であります当該肉親の方が戸籍回復の手続をするわけでございますけれども、団体などから入った話によりますと、いろいろな事情でまだ戸籍の回復手続をしてないというケースもあると聞いております。 それから、未判明、判明しなかったという人もあるわけでございますけれども、こういう方々につきましては中国との間に合意ができておりまして、そういう方々で日本へ帰国したい、日本に定住したいという方につきましては、日本政府がこれを受け入れて援護するという口上書が取り交されておりまして、これは今実際上の事務的な手続の日本側の案を中国の方に送っておりまして、中国側で鋭意検討されておるわけでございまして、早晩実施の段階に移るのじゃないかというふうに考えております。
○横山委員 口上書が中国側とできているというのですが、これに対処する法務省としてはどういう措置をしておりますか。
○枇杷田政府委員 中国残留孤児の戸籍の問題につきましてはいろいろなケースがございますが、大別いたしますと、身元が判明している場合と判明していない場合とがございます。判明いたします場合には、既に戸籍を持って現に戸籍が残っておる方については確認をすればそれで足りるわけでございますが、すでに失踪宣告とかあるいは死亡の届け出とかというふうなことで除籍になっている場合には、それぞれの手続によってその戸籍を回復するということをいたしております。それから、まだ戸籍ができていないという場合には、両親などがおられる場合には出生届によって戸籍をつくることになります。 また、身元の判明いたしておらない場合には、家庭裁判所に就籍の許可の審判を求めていただいて、その審判が得られればそれによって戸籍をつくるという扱いにいたしております。なお、その審判も得られないという場合には、日本の国籍を取得したいという場合には帰化の方法によるほかないわけでございますが、その場合にも、私どもといたしますと、中国の孤児証明書のようなものが出ている場合には、なるべく日本人の子供というふうなことで簡易な帰化手続をするようにいたしておるところでございます。
○横山委員 戸籍に記載されたことがない場合が問題でございますが、承れば、届け出義務者があるときには出生届により記載する。五十、六十にもなって生まれましたという届けをするわけですね。それは過去にさかのぼって生まれたという届け出をすることですか。 それから、届け出義務者がないときには、原則的には就籍届に基づいて記載するのだが、親子関係に関する明白な資料が存するときは職権による記載も認められるという話だそうですが、親子関係に関する明白な資料が存するなんということは、これはあなたはそこでそういうふうに言うけれども、実際四十年もたってそういう明白な資料が存するというようなことにはならないのではないか。身元が判明しないケースで孤児証明書等の日本人の子である蓋然性の強い証明書があるとき、これはお役人がつくった言葉だと思うのですけれども、そういうことが実際窓口でうまくいくものでしょうか。どういう指導をしてなさるのか。
○枇杷田政府委員 これは最初の親子関係がはっきりしておる場合は、例えば戸籍法で定められております届出義務者というのがあります。これは親が原則でございますけれども、そういう方が既に亡くなっておられる、しかし兄弟だとかおじさん、おばさん、そのような方が生きておられて、そして対面をしてここのうちの子だということがわかる場合があります。そういう場合には、届出義務者はありませんけれども、親子関係は全体から判断できるという場合には先ほど御指摘の職権でやるというふうなことがあり得るわけでございます。 また、身元がわからないという場合に、中国側の方の、これは日本人の子であって、そして養親に育てられている子であるというふうな証明がある場合には、これはどこのだれの子であるかということはわかりませんけれども、日本人の子であろうということだけはわかるわけでございますね。そういう場合には就籍でやっていただくのが一番いいのですけれども、就籍の審判の場合にうまくいかない場合には私どもの方で帰化の簡易な手続で日本国籍を取得する道を考えておるということで、そういうケースについては法務局の窓口でも十分御相談に乗るというふうな態勢をとっておるところでございます。
○横山委員 この中国残留孤児の問題は決してきれいごとばかりではないわけでございますね、表向きは涙ながらの御対面ということで私どもも心が熱いような気がする場面が多いのですけれども。私の姉も中国から帰ってきて死んだのですが、背中に一人、両方の手に子供と、三人を連れて夫と一緒に帰ってくる途中に夫が死んだわけです。私の姉は、そういうふうに、夫が死に、子供三人を連れて帰ってきたということなんですけれども、実際は涙ながらのきれいごとばかりではなくして、子供を売った人がたくさんあるわけですね。買いに来た中国人があり、それをもうどうにもならなくて数百円で売った人があるわけです。この売ったということが親の脳裏について離れぬわけですね。ですから、今さら名のりを上げられない家庭事情もかなり多いと私どもは考えているわけです。 ですから、中国孤児が来ても涙をのんで、胸中の煩悶を長らくしながら名のりを上げない親が現におるわけですよ。そういうことからいいまして、規則どおりの取り扱い、戸籍実務の取り扱いどおりでうまくいかない、せっかく日本へ来たけれども親がわからない、名のりを上げないというわけで、涙ながらに帰っていく人がかなり多いと私は思っています。親は親で心中に煩悶しながら名のりを上げられない今日の家庭事情、あの当時のいきさつ、子供を捨てたといういきさつ、そういうものがかなりあるのではないかと私は思っているわけです。 したがいまして、私は日本人ですといって日本へやってきた中国孤児の皆さんが涙を流してついに帰っていく、そういう人たちのことを考えますと、この戸籍実務の取り扱いについて余り証拠がなければとかなんとかかんとか言っておったのでは期待に沿えない、日本人でありながら期待に沿えないということがあると思うのですが、大臣はどうお考えでございますか。
○嶋崎国務大臣 御指摘の入国の問題につきましては、いろいろと工夫をして何か新しい道をつくりたいということで研究をして今日まで来ておるはずだと思っておるわけでございますが、なおそれらの問題について、私たちが考えても非常に難しいケースがあるのではないかというふうに思っておるわけでございます。今後とも何かうまい工夫があるのかどうかというのは研究させていただきたいと思っております。
○横山委員 民事局長は実務をやっていらっしゃるのですが、この種の実例上何かお考えになっておることはありませんか。
○枇杷田政府委員 さしあたり新しい考え方というものはございませんけれども、実は就籍による戸籍の取得といいますか、国籍の確認というふうなことが余り用いられていなかったと思います。それが二、三年前からそういう方法が利用されるようになりまして、しかも家事審判規則による代理人による申請、申述というふうな道でやることが認識されるようになりましてから、最も認定しがたいようなものがそちらの方で認定されるようなことになりましたので、御本人が希望され何がしかの日本人であるという証拠がある者についてはほとんどそれによって救われるであろう、また仮にそれに漏れた場合であっても、私どもの方では帰化の面では非常に簡易なことでやるということで現にやっておりますので、多くの問題は、現在のところ、どちらかといえばうまくいく方向に向いているのではないかというふうな認識を持っております。
○横山委員 今の、好意をもって措置をされるとおっしゃるわけですけれども、戸籍実務の取り扱いを見ましても、失踪宣告除籍の場合には失踪宣告取り消しの裁判、死亡報告除籍の場合には死亡報告の取り消し通知に基づく市町村長限りの職権訂正、戦時死亡宣告除籍の場合には戦時死亡宣告取り消しの裁判、死亡届けによる除籍の場合は戸籍法第百十三条の戸籍訂正等あります。こういうことを法律、規定に基づいて窓口では恐らくちゃんと言うだろうと思うのですね。 こういうやり方でやるのがオーソドックスな方法ではありますが、そのほか戸籍に記載されたことがない場合の点も考えますと、何か中国残留孤児の戸籍実務の扱い方については、法律、規定、通達はもちろん尊重しなければならぬけれども、便法について少し考慮をする必要がないかどうかと私は思うのでございますが、いかがでございましょうか。
○枇杷田政府委員 私どもも基本的には中国残留孤児について余り厳格な証明を求めるということは無理であろう、そして、そういう事情でございますので、なるべく簡易な方法で日本国籍の確認をし、戸籍の処理をすることが最も必要だということで法務局あるいは市町村の方にも指導いたしておるところでございますが、なお、出生届による戸籍をつくるというケースが現に年間百件以上中国残留孤児について行われております。そういうケースにつきましては、窓口でも十分に事情を伺って、そして一番簡明にいく方法について御相談に乗るということをいたしておりますが、今後ともそういう道を続けてまいりたいと思います。 いろいろと簡便な方法というものも考える必要があるのかもしれませんけれども、一たん裁判で決まったものは一応その裁判を取り消すというふうなことがないとやはり法律制度としてはうまくまいらない面もございますので、失踪宣告の取り消し手続とかいうふうなことが必要になってまいりますけれども、それも、家庭裁判所の方でもそういう面についてはかなり中国残留孤児の実情というものは御理解の上処理をなさっておられるように承知いたしておりますので、今までそのような手続が不備であるために非常に困難な状況に陥ったとかいうふうなことは余りないように承知いたしております。
○横山委員 この点は、民事局長のお話でわからぬわけではないのですが、大臣に念頭に入れてもらいたい。この種の問題でそんなに証拠があるわけではない。したがって、今のお話しのように、家庭裁判所の裁判だって、そうきょう行ってあすできるものではありません。そのほか、証拠がないからということでじんぜん日をむなしゅうするということもあり得る。本人は、日本人です、私は日本人ですと言って涙を流しておるものを、おまえさんは証拠がないからだめだということばかりでは、せっかく日本へ来て、いけないのじゃないか。家庭的な事情もいろいろあるだろうけれども、これは本人の意向をいろいろな便法で受け入れるように措置をしてもらいたいと思いますが、大臣はいかがにお考えですか。
○嶋崎国務大臣 先ほど来民事局長がお話しのように、その手続をどうしてスムーズにやるかというようなことについて過去いろいろな努力が行われておるというふうに聞いておりますけれども、御指摘のような非常に難しい事案もあります。先ほど申しましたように、今後ともできるだけそれが的確に行われるような努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。 また、この法律的な援助等につきましては、法律扶助協会、そういうようなところでも何か援助をしようというような考え方をとっておりますので、そういう御指摘になるような方向で今後さらに研究を進めてまいりたいと思っておる次第でございます。
○横山委員 同じ戸籍の問題ですけれども、本年九月十四日、長野県王滝村で災害が起こりまして、王滝村の人たちについては死亡確認その他死亡届も出ました。しかし、名古屋の市役所のバス運転手の四人、それから友人の一人、その五人につきましては王滝村として死亡届を受理しないわけですね。受理しない理由はないわけではない。本人は王滝村のそばへ朝早く行って、そこで魚を釣っておったと言うのだけれども、本人が言うわけじゃない、みんなが言っているけれども、それを確認する方法がないということのゆえをもって王滝村は死亡届を受理しない、証明書を受理しないということで、今もって五人は葬式もできない、退職もできない、生命保険ももらえない、労災保険ももらえない、そういう状況にあるわけです。 長野の法務局の言い分もわからぬではないけれども、九月十四日午前八時ああいう災害があって、五人は恐らく、大変申しにくいことではあるけれども、ビルをさかさまにしたほどの土砂の真下に埋もれていると思わざるを得ないわけです。だれが考えても、五人の人は死んだと思っておる。ところが、死んだ証拠がない。王滝村に行った証拠がない。だから、役場も法務局も死んだということを確認しない。話を聞けば、失踪宣告だとか、あるいは法規によって措置せざるを得ない、それじゃ実情を判断しないも甚だしいじゃないか、こういう意見でございますが、大臣はどうお考えになりますか。
○枇杷田政府委員 王滝村の名古屋市民の五人の方の死亡届は各御本人の奥さんから出されておりまして、まだ受否を決定いたしておらない状況でございます。 御指摘のように、遺体が発見されているわけでもありません。それから、乗っていかれたという自動車も発見をされておりません。それからまた、王滝村においてその五人の方がおられたということを目撃した方もおられないようであります。ただ、前の日に各自宅で王滝村の方に釣りに行くと言って出かけたということがあるだけでございますので、通常の死亡の認定をするという資料にはそれだけでは乏しいということで、王滝村役場の方ではにわかに受理をしないで法務局の方にどうしたらいいかという相談が今来ているところでございます。 長野の方では、今申し上げたような事情でございますので、それだけではちょっと死亡届を受理するという資料に乏しいということで、名古屋の法務局の方に調査の委託を今いたしておりまして、先週各奥さん方の方からその出かけるについての事情を伺っております。それから、なおいろいろな関係者もおられるらしいので、多分きょうだろうと思いますけれども、調査をいたしております。その結果によって王滝村に行っていたということの蓋然性のある資料がかなり出てくるかどうかということを調査中でございますので、別に今受理しないということを決定したわけでございませんので、もう少しその調査の結果をお待ちいただきたいと思います。
○横山委員 どうですか、委員長、同僚諸君もお考えでしょうが、九月十四日ですよ。九月十四日の明くる日に死んだということを証明しろと言うのは無理だということもあるでし。よう。今十二月じゃありませんか。それで、今調査をしておると、こう言う。私もこの間名古屋の法務局長に会ったのですけれども、何とかならないだろうか、前の晩、飲み屋で飲んでおったという話があるけれどもどうだろうか、飲み屋の証明書、どうだろうか、王滝村へ行ったという証明書はないだろうか。私も相談を受けたのですね。仮にその飲み屋の人が、あるいは奥さんが、あるいは近所の人が、朝出かけましたぜとか、夜、車に乗って行きましたぜと言ったところで、王滝村へ行ったかどうかは、本人は行くと言っておったけれども、それはわからぬわけですね。 けれども、もう三カ月もたって、そして居どころ不明で、証拠がないので死亡を確認するわけにはいかぬというのはいかにもお役人仕事だと私は思うのですよ、本当に。それで葬式ができない、退職金が出ない、生命保険が出ないでは、三カ月もたって家族はどうなるのですか。勇気を鼓して愛知労災だけは金を出しましたよ。生命保険会社は出さぬのですよ。こんなことはいかにもお役人仕事だと私は思う。車で夜行で行ったのでしょう。それで朝早くから魚を釣っておったのでしょう。それで災害に遭って、ビルディングをさかさまにしたぐらいの土砂の下で亡くなっているとだれしも思わざるを得ない。 証拠がないので死亡届は受理できぬと言うのではどうかと思うじゃありませんか。これは何の証拠が、それはあったにこしたことはないけれども、今もってないのは、これは法務大臣、決断をしてもらわなければいかぬ。枇杷田さんは一生懸命捜していると言うけれども、じゃあ捜して、なかったらどうするのですか。これは法務大臣、決断をしてくださいよ。
○嶋崎国務大臣 御指摘の趣につきましては、速やかに調査を終わって処理ができるように早急に努力をしていきたいと思います。
○横山委員 これは法律上はだれの責任ですか。長野の法務局の支局の登記官の責任ですか、権限は。
○枇杷田政府委員 最終的には王滝村の役場の方に届け書が出ておりますので王滝村の村長がやることになりますけれども、それを監督指導する責任は長野の法務局長ということになります。 なお、届け出が出ましたのが十一月二十日でございます。それからいろいろなことを検討いたしておりますので、私どもとしてはなるべく早く結論を出したいというふうに思っております。
○横山委員 先ほど言ったように、九月十五日に死体が上がっておればいいけれども、ないのです。全然証拠もないのですから、家族としてもわらをもつかむ思いで何回も行って捜したけれども、とてもとてもそんなものはわけがわからぬ、退職金の問題がある、葬式の問題がある、年金の問題がある、あるいは共済組合の問題がある、いろんな問題があるので、それでとうとうやむを得ずあきらめて出した。出したら今度は王滝村が死亡届は受理できない、法務局が証拠がなければ死んだとは言えぬと、こういうことにぶつかってしまって、お役所は悪気でやっているのではないのですよ。悪気でやっているのではないけれども、何ぞ証拠がないかと言う。証拠がないから困っているので、五人がひょっとしたらこんにちはと言って、おい迷惑かけたなと言って出てくることを期待しているのでしょうかね。こんなことはあり得ない、あり得べからざることなんで、ないですよ。 だから、今日これまでたったのですから、もう決断をして、法務大臣がもうそれではいたし方がない、受理をせよ、そして即刻遺族の皆さんに御面倒がかからぬようにひとつ処理をせよ。愛知労災はそれで決断をしてしまったのですよ。一千万円払ったのですよ、八百万円の人もあるかもしれぬけれども。ほかの生命保険会社はその愛知労災のような決断ができないので、お役所がどうしてくれるかを待ってということらしいのですね。それでは困ってしまうのです。今の状況で調査をしておると言ったところで出るはずがないと私は思う。もう一遍法務大臣の決断を望みたい。
○嶋崎国務大臣 先ほども御説明申し上げたように、手続をどんどん進めて……(横山委員「どんどんじゃない、のろのろやっているんだ」と呼ぶ)先ほど末お話がありましたように、十一月の中ごろになって、私自身もそれを承知しておりませんでしたけれども、早急に事実を調査して決着をつけるような努力をしてみたいと思っております。御了承を願いたいと思います。
○横山委員 頼みますよ。これは本当に証拠なんてありはしませんよ。王滝村へ魚釣りに朝早く行って村民にも会っていないのだから、ジープもありはせぬし、みんなもう谷底のビルディングをひっくり返した一番下くらいに埋まっているのですから、それはもう無理なことですよ。無理なことを証拠何か捜せ、それだったら死亡届を受理してやるなんということは、実態を知らざるも甚だしいし、今日になっての遺族の人情、遺族の気持ちをもやはりそんたくしないことなんですから、この際考えてもらいたい。 それから次に、来年度の予算の問題についてちょっとお伺いします。 私、つい最近まで決算委員長をやっておりました。それで思うのですけれども、法務省では五十五年度で刑務所の職員の不正、それから刑務所刑務作業製品展示即売会における販売代金を歳入に組み入れないでこれを別途に経理した問題等が出ています。 それから、最高裁では電気料金の調査を決算委員会でいたしたところ、東京高裁及び地方裁判所におきまして契約電力が過大であるということが出ております。法務省とか最高裁というところは会計検査院や決算委員会に余り関係がない、まじめなところだと思っておったのですが、必ずしもそうでもない。これは十分注意をしてもらわなければいかぬ。今までやっておったからいいだろうでは済まされない。私は、刑務所の製品の即売会をやりますときにいつも名古屋の刑務所に行って買わしてもらっているのですが、そういう金が別途経理で自由裁量ができるというようなことになっておったとは、率直に言って実は知らなんだ。これはいけませんね。 最高裁も、裁判所というところはそういうような、これは節約の問題ですから不正ではありませんよ、不正ではありませんけれども、やはり来年度予算に際してみずからを正すということについてもっと厳粛になってもらわなければいかぬ、どうですか。
○岡村政府委員 御指摘の点はまことに遺憾に存じている次第でございまして、法務省といたしましても、官房に監査室を設けておりまして、ここに室長以下の専門の担当者を置きまして各組織におきます会計の内部監査に当たらせているところでございますし、また監査の結果につきましては報告書を作成して提出させるといったような措置を講じておるところでございまして、監査体制の充実強化ということには十分配慮し、このような不正事件の発生のないようにかねがね心がけているところでございます。
○川嵜最高裁判所長官代理者 裁判所の契約電力量につきましては、御承知のとおり、オイルショック以来省エネ政策が進められまして、その結果といたしまして契約電力量にゆとりが出てきておるということで、数年来この見直しを図ってまいりまして、その契約電力量を低く抑える方向で来ております。 御指摘の東京高、地、簡裁につきましては、当初六千五百だったと思いますが、契約をいたしました。これはどれくらいかかるか、ちょっと一年間ぐらい様子を見ないとわからないものですから、ある程度のゆとりを持った契約をしたかと思いますけれども、その後、実績が出ましたので、ことしの八月に契約電力量を五千二百に低くいたしました。そのように改善をいたしておる次第でございます。
○横山委員 今の二点につきましては、また別途改めていたします。 最後に法務大臣に、来年度の予算の問題で、あなたが一番力点を置いておられると思うから、督励かたがた言うのですが、まず第一は特別会計の問題です。特別会計がいいか悪いかは議論があるにしても——この間も長野の登記所へ行ってまいりました。総理府の世論調査では一番評判が悪いのが登記所と国鉄ですね。私も法務委員が長いものですから、登記所に身を打ち込んでおるのですけれども、あそこでサービスをもっと強化しろと言う方が無理なんですよ。だから、人員増加のためには落差のあることをやらなければ百年河清を待つようなものだ。だから特別会計、そんならよろしいと特別会計をつくって、根本的な、抜本的なことをやらなければいかぬ。ことしこれがパーになったら百年河清を待つようなものだと思うのです。 だから、法務大臣としてこれに最も中心を置いてもらいたい。大蔵省の言うように、それじゃ何か一つなくそうといったって、何もないですわね。だから、専らあなたの政治力にかかっている。特別会計の創設は、同時に人員の問題にも関連をいたします。ですから、この決意を伺いたい。
○嶋崎国務大臣 御指摘の登記関係の仕事につきましては、私もいろいろ実情を見せていただきまして、こういう姿で今後継続をしていくというようなことはもうとても不可能であるという判断をしておるわけでございます。幸いにしまして、この情報の仕事の処理が非常に的確に行われるような段階を迎えて、いろいろな実験の結果、現在板橋の出張所でやっておりますように何とかうまく処理をできる方法が確立をしたというふうに考えておるわけでございます。今までもいろいろな意味で努力は積み重ねてきましたけれども、ある意味で需要とそれを供給する側とのアンバランスというのはもうとてもこのままでは整理ができないというような事態になっておると思うのでございます。 そういう意味で、六十年度予算において登記の特別会計をつくるということは本当に絶対避けて通れないというような状態であろうと思っておりますので、励ましの華言葉をいただきましたけれども、精いっぱいの努力を続けて、その実現方に十全の努力を払ってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
○横山委員 最後に、恐縮ですが、法務省というところは権力行政とサービス行政と両方あると私はかねがね言っているのです。権力行政だけが目について、サービス行政というものがなかなか目につかない。 それから、人権行政というものがなかなか表へ浮かび上がらないということは、私は野党の一人として大変に残念に思っているわけです。人権の中で、金大中さんが最近韓国に帰国するというのですね。これは新聞で御存じになっていると思うのです。金大中さんは、御存じのように、九段のホテルで日本における国家権力を無視して韓国のKCIAが連れ去ったというのは周知の事実でございます。ですから、内政干渉の問題であると言って当時法務委員会で何回も何回も騒ぎまして、田中元法務大臣は、閣議の中で人権問題として法務大臣として取り上げたいきさつがございます。 その後、政治決着ということで何かわけのわからぬようなことになっていったのですけれども、それにしても、金大中さんの問題は、ただ韓国の一人の政治家というふうに律し切れない。日本の政治と関係を持っていると思うのです。日本へは寄らずに、またヨーロッパを回ることも断られて韓国へ帰国する、帰国したら途端に監獄へほうり込まれるという話が伝えられています。 これは人権問題として、私は歴代の法務大臣に言っておったのですけれども、やはりあなたとしても、金大中さんの問題はひとり韓国の問題ではない、国際的にも問題になっている人であるから、金大中さんの帰国について、韓国政府が、国際的な世論、日本における金大中さんが帰国させられた経緯等から通じて、十分な配慮を望むということを閣議でもあるいは韓国に対しても言うべき立場に今あるのではないかと思いますが、いかがですか。
○嶋崎国務大臣 ただいま御指摘の問題でございますが、韓国へ帰国すると投獄をされるというようなことでありますが、これは人権上非常に大きな問題であるというふうに私は思っております。また、御指摘のように、日本でのいろいろな過去の経緯も我々も承知をしておるわけでございます。 しかし、韓国へ帰国する場合に、韓国内で韓国法に基づいてどのような措置がとられるかについては、やはり韓国の国内問題でありますので、これについて今私がここで論評するということは適当ではないというふうに思いますので、その点御了承願いたいと思います。
○横山委員 前段はよく、後段は何を言っていらっしゃるかよくわからないのですが、何を言おうとしたのですか、今。重大な関心を持っている、けれども結論については何も言うことはないということなんですか。もっと語尾をはっきりしてください、結論を。
○嶋崎国務大臣 御承知のように、韓国に入国することに関して、その問題は韓国の問題でございますので、他国のそういう法手続の問題について私がこの席で論評するということは適当ではない、こう思いますということです。
○横山委員 気持ちを前段でおっしゃったでしょう。確かに、韓国の入国についてはこれは韓国の問題だ。しかし、事の出発点は日本への内政干渉から始まったんですよ。 歴代の法務大臣は、特に最初出発したときの田中法務大臣は、明らかにこれは内政干渉である、人権問題であるということを閣議で発言された、そういう経緯があるわけです。入国をする、しないということ以前に、日本政府としても無縁の問題ではない。国際的にも、これは近代国家としての日本の立場としても関心がある。だから、私は結論を言っていませんよ。ああせよ、こうせよと言っていません。少なくとも、その関心がある、韓国政府がこの問題について善処されんことを望むぐらいのことは、あなたの立場としても、外務大臣と御相談なさるにしても、何らかの発言があってしかるべきではないか、こう言うのですよ。
○嶋崎国務大臣 冒頭申し上げましたように、非常に残念な過去のケースというものを私たちは承知をしておるわけでございます。 ただ、今具体的な問題につきましてどういうようなことになっておるかということにつきましては、これは韓国内の問題で、こういう席で私が論評すべきことではない、こう思っておる次第でございます。
○横山委員 これで終わりますけれども、何か法務大臣は、ここまで出ておるけれども、それ以上は勘弁してくれというような雰囲気に見えるのですが、そういうことでしょうかね。私は、今あなたがここまで出ておることをもうちょっとここまで言ってもらいたいというような気がするのだが、それ以上言えぬかね。言えぬとしたら、そういうことがないとしたら、私は非常に残念で、あなたに失望せざるを得ないのですが、心中察してくれとでも言うのですか。それとも、全然わしは知らぬことだ、そんなことはおまえさん言ったってだめだということなんですか。どっちなんですか。
○嶋崎国務大臣 御判断で見えるとおりでございます。
○横山委員 終わります。
○片岡委員長 神崎武法君。
○神崎委員 給与法案につきましては人事院勧告の完全実施を求めるものでありますが、それはさておきまして、二、三お尋ねをいたしたいと思います。 初めに、今回の改正に伴って司法修習生の給与はどのように改定されるのか、お尋ねをいたします。
○櫻井最高裁判所長官代理者 司法修習生の給与は、最高裁判所規則としまして司法修習生の給与に関する規則というものがございます。これに金額が書いてあるわけでございますが、この金額は、毎年度一般政府職員の給与の改定が行われるときに、それに合わせて金額の改定が行われるわけでございます。今回は、従来の計算方法によって計算いたしますと、十三万五千八百円ということになる予定でございまして、そういう金額で先ほど申しました規則を改正して、本法律案が可決されました場合にはその同じ日付で公布をするという予定にいたしております。
○神崎委員 次に、裁判官、検察官の最近の任官の状況はどうなっておるか、お尋ねいたします。
○菊池説明員 最近十年ほどで見ますと、司法修習生を終えまして判事補及び検事に採用される者の数は、年に判事補で大体六十名から七十名程度、検事が四十名から多い年で七十名程度ということでございます。したがいまして、平均いたしますと、大体判事補が毎年六十七人程度、検事が五十一人程度ということになっております。
○神崎委員 今回、一般職員のうち医療職につきましては初任給調整手当の引き上げが図られているようでありますけれども、裁判官、検察官の初任給調整手当については引き上げがなされておりません。この点については増額をすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官の関係について私の方からお答え申し上げます。 裁判官の初任給調整手当は、昭和四十六年に、当時の裁判官の任官状況が必ずしも多く望めなかった。そして、その原因が弁護士の収入との較差の問題にあるということから設けられたわけでございます。幸い、その後比較的順調な裁判官の任官が得られまして、先ほど司法法制調査部長の方から答えられたような判事補の任官が確保できているわけでございます。 したがいまして、今年度につきましても弁護士の収入というもの、私ども関心を持って見守っているわけではございますが、とりたててそこの較差を埋めるほどの収入の較差というものは生じていないように見られますので、今回はそのような必要性はないものというふうに考えて、その増額の措置はとらなかったわけでございます。
○菊池説明員 検事につきましても、今最高裁判所からおっしゃいましたように裁判官の場合と同様のことでございます。
○神崎委員 次に、簡易裁判所の適正配置問題についてお尋ねをいたします。 簡易裁判所の適正配置問題につきまして、現在法曹三者協議で検討されているようでありますけれども、現在の検討状況と今後の見通しにつきまして、裁判所当局にお尋ねをいたします。
○山口最高裁判所長官代理者 神崎委員御指摘のとおり、本年の六月、三者協議会におきまして適正配置問題を正式議題として取り上げるということで、法務省、日弁連、最高裁の三者で合意ができました。それ以来、七月、九月、十月、十一月、十二月は昨日も三者協議を行ったわけでございます。 この間に、主として裁判所側から全国の簡裁につきまして、昭和三十年代以降の管内の人口動態であるとかあるいは事件数の推移、それから交通事情等につきまして資料を提供いたしまして説明をしてまいりました。御承知のとおり全国的に地方から都市部への人口の移動が進んでおる、それにつれまして簡裁の事件数も著しく都市部に集中しておる。その結果、都市部の簡裁と地方の簡裁との間に事件数におきましても、また事務処理の対応の面でもいろいろなアンバランスを生じているというようなこと、さらに交通事情の発達によりまして簡裁間の距離がいわば時間的に短縮されてきておるということ、こういうようなことを資料をもちまして説明したわけでございます。 日弁連におかれましても、この問題につきましては真剣に取り組まれまして、各単位弁護士会を通じまして各地の実情を調査しておられるところでございます。来年の二、三月ごろにはこれを踏まえて意見を述べられるべく目下作業中であるというように伺っております。 今後の予定でございますが、日弁連の意見をも伺いました上、この問題点につきましてさらに突っ込んだ討議を加えていく必要がございます。その上で、法曹三者間で見直しの方向あるいは規模等につきまして具体的な意見の調整を図っていきたいと考えております。 この問題は、国民の裁判所利用の利便という司法制度の基盤にかかわる問題でもございますので、法制審議会といったようなより幅広い場で御検討いただく必要もあろうかと思われます。最終的には各地の住民の利便にかかわる問題でございますので、今後地方の自治体や住民の方々の御理解、御協力を得るということも肝要であろうかと考えております。したがいまして、いつごろをめどにするかというような点につきましては、現在の時点では明確なお答えはできないわけでございますが、私どもといたしましては、この問題が早急に検討を必要とする事柄であると同時に、各方面の十分な理解を得て行うべき重大な問題であることを十分に認識しまして、プロセスを慎重に踏みながら早急に作業を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○神崎委員 次に、人事訴訟手続法の改正につきましてお尋ねをいたします。 認知の訴えにつきまして言い渡されました判決は、当該訴訟の当事者でない第三者に対しましても効力を有するものと定められているわけでございます。認知訴訟に利害関係を有します第三者に対して、訴訟係属等を知らせずに訴訟に関与する機会を与えなかったことが再審事由となるか争われた事例で、一審判決でございますけれども、福岡地裁の昭和五十八年十二月一日の判決は、被告たる検察官の訴訟活動が期待できる、こういうことを主な理由にいたしまして再審事由に当たらないとしているのであります。 この事件につきましては控訴中でございますし、現行法の解釈論には立ち入りませんけれども、立法論としては、私は検討を要する点が多々あるのではないかと思われるのであります。刑事の第三者没収についての最高裁判例の趣旨からいたしましても、認知の効力が他の相続人に及び、相続分に影響が生じるのでありますから、他に相続人がいるときには、その者に告知、参加の手続を与えるなり、被告たる検察官の訴訟活動が一層期待できるようにするなり、改善の余地があるように思うのでありますが、その点いかがでありましようか。
○枇杷田政府委員 死亡者を相手にいたします認知の訴えにつきましては、御指摘のように検察官が公益の代表者として被告になって訴訟が進められるわけでございますが、公益の代表者といいましても、検察官はその親族関係について必ずしもつまびらかではございません。いろいろ事実の調査はした上で訴訟活動をすることにはなっておりますけれども、そういう面でも、親族の方々が訴訟に参加をして、そして事実がきちんと解明されることになることが望ましいと思います。 現在も、かなりの事件につきましては親族の方が補助参加人として訴訟に参加しておられるケースがございますが、必ずしもそうでない、またそういう訴訟があることを知らなかったという方もありまして、問題が提起されていることはただいま御指摘のとおりでございます。実務の上では、なるべく検察官もそういう親族の方に訴訟が係属しているということを知らせることになっておりますが、必ずしも徹底を欠いている面がないとも言えないかと思いますので、今後それを、法規の面でするかあるいは実際上の運用の面でするかという問題がございますけれども、ただいまの御指摘の点は大変もっともでございますので、私どもも最高裁あるいは刑事局とも相談した上で、どのような方法でするかということはまだここで申し上げることはできませんけれども、前向きに何らかの方法をとりたいというふうに考えております。
○神崎委員 次に臓器移植、特に最近問題になっております腎臓移植の問題につきましてお尋ねをいたします。 最近、二つの点から臓器移植、特に腎臓移植の問題が問題とされているわけでございます。 一つは、脳死の問題でございます。これまでは、死の判定基準につきましては、心臓の不可逆的停止、永久停止、これをもって人間の死亡というふうに認定しているわけでございますけれども、最近の医療技術の進歩に伴いまして、心臓の停止とその前の段階の脳死の段階とで数日間のずれが生ずることも出てきたわけでございます。脳死患者から臓器の摘出ができるようにしてもらいたいという難病患者からの強い要望もございますし、現実にそういった臓器移植もなされている事例もあるようであります。 もう一つは、事実の有無ははっきりいたしませんけれども、健康な人が自己の腎臓を売買しているというマスコミ報道があるということであります。現在あるいは将来の問題といたしまして、これに対してどう対処するか、こういう問題があろうかと思うのであります。 まず初めにお尋ねいたしたいのは、脳死の状態というのは一体どういう状態を言うのか、また脳死から呼吸または脈拍の不可逆的停止まで現実にどのような時間のずれが生じているのか、こういう点についてどうでしようか。
○多田説明員 お尋ねの脳死の状態と申しますのは、回復不可能な脳機能の喪失ということでございまして、具体的には深昏睡、深い昏睡状態、自発呼吸の停止、それから両側の瞳孔の散大、対光反射及び角膜反射の消失などの所見を示す状態と理解をいたしております。 脳死から呼吸や脈拍の不可逆的な停止までの時間的なずれという点につきましては、脳死と判定される状態におきましては、自発呼吸は停止をいたしておるわけでございますが、その状態のまま人工呼吸器を使用せずにおくということにいたしますと、心臓もその後、幅はあるものの、一般的には数分で停止すると言われております。しかしながら、人工呼吸器をつけるというようなことをいたしました場合には、心臓は長く拍動を続けますが、それでも七日ないし十日程度で心臓も停止するものであるというふうに聞いております。
○神崎委員 これまでの法律上の死の判定基準からいたしますと、脳死患者がち臓器を摘出する行為は違法性を阻却するかどうか、これは別論といたしまして、構成要件的には殺人罪、傷害罪に該当すると考えられるのでありますが、いかがでしようか。
○筧政府委員 委員御指摘のように、従来、死の判定につきましては心臓死あるいは三徴候説と申しますか、自発的な呼吸の停止あるいは心臓鼓動の不可逆的な停止、さらに瞳孔反応の喪失というものが判定基準とされ、このような考え方が刑事法上の分野でもいわば判例といいますか通説として実務もこれに従っておったことは御指摘のとおりでございます。 ところが、最近、御指摘のように、医学の発達に伴いまして、いわゆる脳死、脳の機能の回復不可能な程度の喪失ということをもって死と認めるべきであるという考え方が主張されておることも承知いたしております。 ただ、この問題につきましては、ただいま厚生省の方からお答えございました脳死の定義がございますが、それをどういうふうに判定するかという点については、世界諸国あるいは国内のいろいろな学者の方あるいは病院の実務等を私承知しておる限りでもいろいろな説があって一致を見ていないようでございます。また、この脳死といわゆる三徴候説、心臓死との関係がどういうふうにあるのかという点についても難しい問題がございまして、結局現状では、今御指摘のような事案については、それぞれの具体的事案において、どういう時点でどういう理由で死が判定されたかということを考慮する必要がございますので、一概に脳死の場合には殺人罪あるいは傷害罪であるということまでは断定はいたしかねるかと思います。
○神崎委員 しかしながら、従来の法律の考え方からいたしますと、心臓の不可逆的停止の段階をもって死亡と見るということでありますから、ただいま厚生省の御答弁のように、一週間から十日ぐらい前に脳死の段階がある場合が人工呼吸器を使った場合にはあり得るわけでございます。そういった脳死段階から日時のずれがある。その間において臓器を摘出するという行為は、やはり構成要件的にはそういう殺人罪、傷害罪に当たると考えるのが一般的な考え方じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○筧政府委員 具体的な問題といたしましては、今委員御指摘のように、それぞれの場合に何分とかいろいろなことがあろうかと思います。ただ、具体的な場合に、どのような徴候で、どのような時点で死と当該医師が判定されたかということを確定いたしませんと、いかなる説をとってもちょっと断定は困難ではなかろうかと思います。
○神崎委員 以前、札幌医大の和田教授の心臓移植事件では、脳死の問題が特に問題になったと言われておりますけれども、この事件の事実関係、処分関係、不起訴の主な理由についてお尋ねをいたします。
○筧政府委員 御指摘の点は、札幌医大におきます心臓移植事件でございます。 この事件は、昭和四十三年の事件でございますが、被疑事実といたしましては、当時、水泳中の事故で仮死状態にあった甲という人、その人の胸部から心臓を摘出して他の患者にその心臓を移植したという事実につきまして、その胸部を切開して心臓を摘出したことが殺人ないし業務上過失致死に当たる、もう一つは、移植を受けた方について見ますと、拒絶反応によって患者が死亡することが明らかであることを知りながら手術を行ったという点で、同じく殺人あるいは業務上過失致死に当たるのではないかというのが被疑事実でございます。 これにつきましては、昭和四十五年九月一日に不起訴処分にいたしておりますが、その理由といたしましては、殺人の件につきましては、心臓を摘出した時点において、その心臓を摘出されたといいますか、その対象となった人が生存していたと認めるに足る証拠がないという理由でございます。それから、もう一人の移植を受けた方に対する事実につきましては、その手術は延命効果、命を長らえさせる効果を期待した治療目的による手術であって、未必的にも殺意を認めがたいということで殺人罪については不起訴ということでございます。 さらに、業務上過失致死罪の成否につきましても、当時の医学上の問題もいろいろ検討いたしました結果、この手術は違法なものとは認めがたいということで不起訴となっております。
○神崎委員 最近の新聞報道によりますと、我が国で初めての膵臓と腎臓の同時移植が、筑波大移植外科の岩崎教授らのグループによりまして脳死の女性が提供をして行われた、こういうことが大きく報道されているわけでございます。このように、現実には医療行為として脳死患者からの臓器摘出、特に腎臓摘出がなされている事例もあるようでありますけれども、厚生省として、この臓器移植の実態というものをどのように把握しているでしようか。
○多田説明員 厚生省といたしましては、移植学会の方で調査されているところによって承知をしておるところでございますが、これまで四年二カ月余りの期間で三十八例の脳死状態からの腎臓の摘出、移植が行われたと承知をしておるところでございます。
○神崎委員 さらにまた、厚生省の脳死に関する研究班の調査報告によりますと、調査期間六カ月間の脳死の症例数は千三百二十七例ある、こういうことが言われているのであります。このように、医療の現場で幅広く脳死の判定が行われているということは、一体何を意味するのかという点であります。 これは、脳死患者からの臓器移植というものが実際には医療現場で幅広く行われていると考えるべきなのか、あるいは既に医療現場では、法律上の従来の考え方とは異なりまして、脳死段階で人の死亡というふうに認定をしていることを意味するのか、その意味について御説明をいただきたい。
○多田説明員 私どもの方の研究班というところでやっておりますのは、脳死と判定した件数、それから、そのときの臨床所見等を調査したものでございまして、臓器移植の有無は直接には調査いたしていないわけでございます。 脳死に至った場合に、医師は医学的な見地から脳死かどうかを判定はいたしますが、それは即臓器移植のために行っているというわけではございません。実際に臓器移植につながっているものも、先ほどお話し申し上げたとおりそれほど多くはないのではないかというふうに思っております。
○神崎委員 その場合に、脳死判定の基準につきましては、どうも医療現場ごとにまちまちのようでありますけれども、聞くところによりますと、厚生省としては来年春に脳死判定の基準案を公表する予定だ、こういうことも言われておりますが、その点いかがでしょうか。
○多田説明員 厚生省の研究班におきましては、五十八年度から研究を実施しておりまして、今年度も引き続いて、かつて四十九年に脳波学会が出しました脳死の判定基準というものの見直し作業を進めているところでございます。 この取りまとめの時期につきましては、来年三月を目標にいたしておりますけれども、今後の検討の進捗状況によってはやや流動的というところが正直なところでございます。
○神崎委員 医療現場で客観的な脳死の判定基準ができたといたしまして、脳死をもって法律上の死亡と認めるかどうか、この点につきましては、国民感情を含めて慎重に検討を要すると思われるのであります。従来の法律上の死の考え方からいたしますと、ますますこういう脳死と心臓の不可逆的停止の間に時間のずれが生ずるということでありますから、脳死患者の臓器移植と刑法との接点というものが大きな問題になってくるであろうと思われるのであります。 死体からの腎臓移植につきましては角膜及び腎臓の移植に関する法律によりまして立法上の措置が講じられているわけでありますけれども、脳死患者からの腎臓移植につきましては、現在、法の盲点となっているわけでございます。このままでいきますと、医療現場も困るでしょうし、取り締まり当局にいたしましても、もしこれが殺人罪とかあるいは傷害罪という形で告発がなされれば、それについて捜査をせざるを得ないわけでございますから、大変困ってくるわけでございます。 その意味におきまして、少なくとも脳死患者の臓器移植を法律上可能にいたしますとともに、その限界をも明らかにして、脳死の認定手続をも明らかにするための立法措置というものを検討すべきではないかと考えるのでありますが、この点いかがでしょうか。
○筧政府委員 この問題は、今委員御指摘のように、国民感情あるいは宗教観あるいは生命観というものとも深くかかわる問題でございます。医学の分野におきましても方法やら基準その他をめぐって今議論がなされているようでございますし、今申し上げました生命観、宗教観、国民感情等を含めた社会的なコンセンサスというものもいまだ必ずしも成立していないと思われるわけでございます。私どもといたしましても、確かにこれはいろいろな法律問題にかかわる重要な問題でございますので、各界の議論の動向を見守りながら、関係当局とも意見を交換しつつ検討を続けてまいりたいと思っております。
○神崎委員 この点について、臓器移植ということですので、むしろ厚生省の方が中心になるのじゃないかと思うのですが、厚生省の方のお考えはいかがでしょうか。
○多田説明員 ただいま法務省の方からお答えいただいたのとほぼ同様でございますが、死というものを定義をするということはなかなか難しい問題であろうと思います。 脳死についてもいろいろな議論もございます。国民の共通的な認識が形成されることを期待しつつ、それを見守りながら対応を考えていきたいと思っておるところでございます。
○神崎委員 また、厚生大臣の私的諮問機関といたしまして生命と倫理に関する懇談会というのが設置されて、この生と死という問題につきましても検討をされているようでありますけれども、先ほどから申し上げておりますように、死の問題につきましても、刑法との接点というものが大変難しいのであります。 その意味におきましては、当然この懇談会にも刑法学者が委員として入っていなければおかしいだろうと思うわけでございますけれども、現実にはどうもこの懇談会には刑法学者が入っていないというふうに聞いておりますが、これはどういう理由によるものでしょうか。
○多田説明員 御指摘の生命と倫理に関する懇談会につきましては、厚生大臣の私的な勉強会として発足したものでございますが、その目的は、科学技術の発展に伴って生じてくる生命と倫理の基本問題を論じてもらおうというような趣旨でございまして、具体的に法改正などを検討するというような段階になりますれば、また違った形でいろいろ詰めをやらなければいけない、そのときのメンバー構成というのはいろいろな角度で、先生おっしゃるような意味も含めて検討していかなければいけないのではないかというふうに思いますけれども、現段階では基本問題を一般的に論じていただくということで、現在のようなメンバー構成になっておるわけでございます。
○神崎委員 次の段階では十分そういう点についても配慮をして委員の構成を考えていただきたい、このように厚生省には強く要望をいたしておきます。 引き続きまして健康な人の腎臓の売買問題についてお尋ねをいたします。 厚生省としては、マスコミで言われているところの腎臓の売買問題につきまして実態調査を行っているというふうに聞いておりますけれども、どのような調査結果になっているのか、それからこの問題についてどういう措置をとっているのか、また、厚生省としてこの問題をどのように把握しているのか、考えているのか、この点についてどうでしようか。
○窪木説明員 お答えいたします。 一部マスコミで報道されています内容について、大阪府の衛生部を通じまして回生会からの事情聴取及び大阪府内にあります腎施設におきます腎移植の状況について調査を行いました。 現在までのところ、生体腎の売買あっせんの事実は確認されていない状況でございます。 また、都道府県の衛生部局に照会いたしましたが、現在までのところ、同様の事実の報告はございません。 それから生体腎の売買についての考え方でございますけれども、厚生省といたしましても、生体腎の売買のあっせんなどはもとよりあってはならないこと、そういうふうに考えておるところでございます。 それで、事実とすれば重大なことであるということで、先般、各都道府県に対しまして、事実の把握に留意し、万一そのような事実があれば厳重な指導を行うよう通達してきたところでございます。
○神崎委員 生体腎の腎臓売買問題につきましては、刑法上は傷害罪の成否という点が問題になるわけでございまして、さきに刑事局長も、昭和五十五年十一月十三日の最高裁判例を引用されまして、その趣旨からも個別的に判断せざるを得ないという御答弁をなされているわけでございます。 この最高裁の判例につきまして理解の仕方が二通りあるわけでございますけれども、私自身は、こういう事態が全体として違法性を帯びるかどうかという点については承諾自体の違法性は問題としない、行為者側、傷害行為をした者の行為が動機、目的、手段、方法等において社会的に相当な行為であるかどうか、それによって違法性の有無を判断すべきである、こういう見解を個人的には持っておるわけでございます。 これに対して両方を含めるという見解もあるでありましょう。しかしながら、売買目的で承諾をするという行為、これは少なくとも違法な目的での承諾とは言えないでありましょう。自分の腎臓を売買するわけでございますから、傷害罪で処罰すると言ってもなかなか困難であろう。そういう意味におきましてはこの腎臓売買問題、まことにけしからぬとは思うわけでありますけれども、現行の刑法上なかなか取り締まりが難しい、このように考えるわけでございますが、いかがでありましようか。
○筧政府委員 御指摘の昭和五十五年の最高裁判例についていろいろの解釈のしようがあろうかと思います。そこで述べられておりますことを要約しますと、承諾のある場合の傷害罪の成否につきましては、承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度等諸般の事情を照らし合わせて、社会通念上許容される範囲がどうか、個々の事案ごとに判断されるべきものであろうかと思います。その判断に当たっては国民の倫理観をどのように考えるか、その他いろいろ困難な問題がありまして、確かに結論を出すことは相当困難であろうかと思います。 一般論としてつけ加えますならば、腎臓等は人体の重要な臓器でございますので、そういうものに回復しがたい損傷を与えるような場合には、当該行為が違法性を阻却するかどうかについては、例えば血を売る売血のような場合、この場合は回復が可能でございます。そのような場合と比較いたしますと、より厳格に判断されるべきではないかというふうに考えております。
○神崎委員 現行法上は取り締まりがなかなか難しいと思われるわけでございますけれども、しかしながら、この腎臓の売買というものは倫理上は大変問題があろうかと思うわけであります。 アメリカではこの問題が大変大きな社会問題となりまして、最近、全国臓器移植法という法律をつくり、臓器の売買のあっせんをした者を処罰するといった措置を講じているようでありますけれども、先ほどの厚生省の御答弁によりますと、今のところ実態は把握されていないようでありますが、現実にあるかもしれませんし、あるいは将来はアメリカの事例を見ましても当然起こり得ることでございます。 その意味におきまして、我が国におきましてもこの問題についての対策を今から検討すべきではないかと思うわけでございますが、いかがでしょうか。
○窪木説明員 お答えいたします。 先ほど申しましたように、腎を売買の対象とすることはもとよりあってはならないと考えているわけでございます。こういうことをなくすためには、売買禁止の立法化も一つの考え方であろうかと思いますが、腎移植というのは専門家、特に医学の面の専門家の方がいなければできないものでございます。それで、その専門家がそのような腎を一切使わないということでこれは防げることでもあろうかと思います。 日本移植学会におきましてもそのようなことがないよう既に警告を発しているところでございまして、行政といたしましても厳重に目を光らせているため、歯どめがかかっているというふうに思っているところでございます。
○神崎委員 最後に、大臣にお尋ねいたしたいと思います。 生の問題につきましても、体外受精とか冷凍保存受精という法との接点でいろいろな問題が生じておりますし、死の問題につきましても、先ほどから申し上げておりますような脳死の問題とか臓器移植の問題とかいろいろな問題が生じているわけでございます。法との接点で大変問題が生じているわけでございまして、この問題について厚生省で検討しているだけでは済まないのじゃないか、法務省としても本腰を入れて取り組まなければならないであろうと思いますし、法務省一省でもこれは対処がなかなか困難でございます。政府挙げて取り組むべきであろうと思うわけでございますが、閣僚として大臣のこの問題につきましての御所見をお伺いいたしたいと思います。
○嶋崎国務大臣 先ほど来お話しのこれらの問題につきましては、基本的には医療のあり方を含む医学の問題であるというふうに思いますけれども、何分にもこの問題は国民の感情あるいは生命観とも深くかかわった問題ではないかというふうに思うのでございます。 今、生命と倫理に関する懇談会でいろいろ議論されていることを聞きますと、どうも基本的な問題のあり方を中心に議論されているということではありますけれども、今市し上げたような事情を考えますと、非常に多角的に十分な検討が行われなければならないというふうに思う次第でございます。 これらの問題につきまして法務行政の面からいろいろな関係があるとすれば、また、そういう問題についていろいろな意見を求められるというようなことになれば、積極的に協力して総合的な答えが出るような努力をしていかなければならないのじゃないかと思っている次第でございます。
○神崎委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
○片岡委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午前十一時五十七分休憩 ————◇————— 午後一時十三分開議
○片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 午前中に引き続き裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。 他に質疑の申し出がありませんので、両案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————
○片岡委員長 ただいま委員長の手元に裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案に対し、三浦隆君より修正案がそれぞれ提出されております。 提出者から趣旨の説明を求めます。三浦隆君。 ————————————— 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案 〔六号末尾に掲載〕 —————————————
○三浦(隆)委員 私は民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました裁判官の報酬等に関する法律及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案に関し、提案理由及び内容の概要を御説明いたします。 言うまでもなく、人事院勧告制度は労働基本権制約の代償措置として設けられたものであり、毎年四月時点における官民給与較差を是正させるためのものであります。ところが、国家公務員の給与は、ここ三年の間、改定の延期、改定の見送り、勧告の一部実施という措置が繰り返されてまいりました。これらは、法治国家において政府みずからが確立した制度を政府みずからがじゅうりんするものであり、極めて不当な措置であると言わなければなりません。 しかるに、政府は、本年度においてもまた、人事院より勧告された給与改定率六・四四%を大きく下回る内容の改正案を国会に提出してまいりました。政府原案は、公務員の士気の低下を招来し、健全な労使関係を損なうばかりでなく、人事院勧告制度そのものの崩壊につながるものであり、我々はこのような提案を断じて容認することはできません。政府は人事院勧告制度を守り、すべての国家公務員の給与について勧告の早期完全実施を行うべきであります。また、この人事院勧告は、一般職、特別職等を問わず、国家公務員のすべてに向けての勧告と受けとめ、この見地から、政府原案については反対せざるを得ません。 本修正案は、裁判官の報酬及び検察官の俸給について人事院勧告どおりに完全実施する内容といたしており、本修正に要する経費は約三十億円と見込んでおります。 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
○片岡委員長 これにて両修正案についての趣旨の説明は終わりました。 この際、両修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。嶋崎法務大臣。
○嶋崎国務大臣 ただいまの両修正案につきましては、政府といたしましては、反対であります。 —————————————
○片岡委員長 これより討論に入ります。 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案並びに両案に対する両修正案を一括して討論に付します。 討論の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
○太田委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、民社党・国民連合の修正案に反対、両法律案に賛成の意見を申し述べたいと存じます。 御承知のとおり、人事院は去る八月国家公務員の給与について平均六・四四%の引き上げを勧告したのであります。 しかし、国家の財政事情は極めて厳しい状況にあり、また、行政改革は引き続き国民的課題として推進されており、かかる状況から、政府は、本年度の人事院勧告の実施に関し、さきに給与関係閣僚会議を開き、厳しい財政事情にもかかわらず最大限の努力を払い、昨年度の改定率を上回る平均三・三七%の引き上げを四月にさかのぼって実施することを決定し、一般の政府職員の給与を改定する法律案を提出したのであります。 ところで、裁判官は、憲法によって身分の保障の一環として、すべて定期的に相当額の報酬を受け、在職中これを減額されないことが保障されており、一般政府職員とは異なる独立の給与体系が設けられ、その地位にふさわしい報酬が支給されることとされております。 また、検察官についても、その職務の準司法的性格から裁判官と同様、独立の給与体系が設けられ、裁判官の報酬との均衡が図られることとされており、一般賃金の著しい変動などに伴う裁判官及び検察官の給与の改定については、一般官吏の例に準じて行うことといたしております。 今回の裁判官及び検察官の給与の改定については、人事院勧告の趣旨に基づく一般政府職員の給与の改定に伴い、かつ、その内容においても、これに準じて改定するものであって、その措置は憲法が保障する相当額に当たり、妥当なものと思うのであります。 また、民社党・国民連合から、両案に対し、人事院勧告の引き上げ率におおむね準じて増額する内容の修正案が提出されましたが、さきに述べた理由によって遺憾ながら賛成いたしかねる次第であります。(拍手)
○片岡委員長 天野寺君。
○天野(等)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の採決に当たりまして、政府提出原案に反対をし、民社党・国民連合の提出になる修正案に賛成の立場から討論を行います。 本年八月十日、人事院は、国会及び内閣に対しまして、国家公務員法及び一般職の職員の給与に関する法律の規定に基づき、一般職の職員の給与につきまして六・四四%の引き上げを行うよう勧告をいたしました。この勧告は、人事院勧告制度が労働基本権の制約に伴う代償措置であり、公務における正常な労使関係の維持のために、この勧告が尊重され、完全実施されるべきであるということを特に述べております。 また、昭和五十七年度における人事院勧告の凍結、昭和五十八年度における人事院勧告の不完全実施によって、公務員給与の現状が公務員の士気の保持、厳正な規律の維持、人材の確保にとりまして極めて憂慮すべき状態であるということを述べております。この勧告を早急に完全実施するように人事院勧告自身が述べているということは、これまた異常な状態であろうと思われます。 ところが、政府は、この人事院勧告を無視して、引き上げ幅を平均三・三七%に削減をした改定を行う給与法案を国会に提案をしてまいりました。また、これを受けまして、裁判官、検察官の報酬、俸給につきましても平均約三・四%に圧縮した本法律案を提案いたしてまいりました。 裁判官、検察官の報酬、俸給につきましては一般職の公務員、一般官吏に準ずる取り扱いが定められてはおりますけれども、この一般官吏の給与改定そのものが人事院勧告を無視した、憲法上の要請を無視した違法なものでありまして、その観点からいきましたときには、この法案自体が憲法の要請する「相当額の報酬を受ける」という裁判官に与えられました憲法上の権利を無視したものであり、また、検察官に対しましても同じように相当と言えない金額の引き上げを提案しているにすぎないものでありまして、この憲法上の要請である人事院勧告を無視した政府の今回の法案は全くの暴挙であると言わざるを得ないと思います。 私たち日本社会党・護憲共同は、本法案に対して反対をし、そして人事院勧告どおり六・四四%の引き上げに基づく給与の作成をいたしました民社党・国民連合提案の修正案に賛成をするものであります。(拍手)
○片岡委員長 石田幸四郎君。
○石田委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました政府提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に反対、民社党・国民連合提出による同修正案に賛成の立場から討論を行います。 既に本法案をめぐる議論の中でも明らかになったように、人事院勧告制度は労働基本権制約に伴う代償措置であり、政府がみずからこの制度をないがしろにすることは同制度の軽視のみならず、将来同制度の崩壊を危惧させるものであり、断じて容認できません。 同時に、裁判官、検事等に関する報酬、俸給もこの人勧に準拠しており、あくまでも人勧を尊重した上で裁判官、検事等の報酬、俸給等を決定すべきであります。 その趣旨から、私は、政府原案に反対、民社党・国民連合提出の修正案に賛成の意思を表明し、討論といたします。(拍手)
○片岡委員長 林百郎君。
○林(百)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に対し反対、民社党・国民連合提案の修正案に対しましては賛成の討論を行います。 我が党が政府提出の両法案を含む給与関係法案に反対する大きな理由は、本法案は人事院の給与改善勧告を、一昨年の凍結、昨年の切り下げに引き続いて三年間にわたってさらにこれを値切ろうとしている点であります。 この人事院勧告の値切り措置は、政府がILOなどで表明してきた公務員労働者の労働基本権の剥奪を合理化する制度として実施されておるべき公務員の給与に関する人事院勧告制度をみずから破壊するものであり、憲法の労働基本権保障規定への真っ向からの挑戦と言わなければなりません。しかも、この三年間にわたる人勧の凍結または抑制措置は、戦後最悪といわれる中曽根内閣の国民生活の破壊、あるいは軍事費の増大、大企業奉仕のにせの行革の名のもとに強行しようとしている反動的な諸政策の一環として行われるものであり、我が党としては断じて許すわけにはいきません。 とりわけ、裁判官は独立して職務を行うものであり、憲法でも「定期に相当額の報酬を受ける」べきこと並びに「この報酬は、在任中、これを減額することができない。」と規定されているところであります。ところが、政府の一方的な判断のもとに不当に人勧を無視して報酬を低く抑えるということは、物価の値上がりに比例いたしませんので、この憲法で規定されている「報酬は、在任中、これを減額することができない。」という規定にも実質的には違反することになり、これは司法の独立を裁判官の処遇の面から抑圧するものと言わなければならないのであります。 次に、我が党は従来から一貫して、上に厚く下に薄い給与体系を改めよと主張してまいりました。その点から見ましても、例えば本法案では最高裁判所長官の報酬月額は百六十三万二千円でありますが、判事補の十二号は十六万四千五百円でありまして、最高裁判所長官の一割にようやく該当するかしないかというような上厚下薄の給与体系であります。また一方、その率は、判事補の一、二号などは三・二%の増額率でありますが、最高裁判所長官等上級特別職相当の増額率を見ますと三・三%ということになって、判事補の一、二号は三・二%とこれを下回っているのであります。これは上原下薄を改善しようという我が党の主張に全く反するものであります。 以上が両法案に対する反対の理由でありますが、我が党は、三年前の本委員会において、政府に対し、今後再び人事院勧告を値切るという不当な措置をとることがないように重ねて強く要求し、また警告もしてまいりました。ところが、あえて本法案のごとく三たびこれを繰り返す今度の暴挙は、断じて容認できない点であります。 我が党は、軍拡と大企業奉仕を聖域とした中曽根内閣の臨調行革路線には断じて反対し、その一環としての今回の不法、不当な人勧値切り法案を厳しく糾弾するものであります。 最後に、我が党が本法律案に対して修正案をあえて提出しなかった理由を一言述べておきますが、我が党は内閣委員会で審議されております一般の政府職員の給与改正案に対し、人事院の給与改善勧告に沿った改定額に修正するとともに、三年間の凍結や抑制を回復する措置をとるべきことを柴田委員等が内閣委員会で修正案を提出しているのであります。本法案の基礎となる内閣委員会で提出する法案に対する修正が実現されるならば、政府は必然的に本法案の手直しもせざるを得なくなるという給与関係法案の性格から申しまして、我が党の考え方は明白に示されており、あえてこの法務委員会で提案されている本法案に対する修正はいたさなかったのであります。 以上のごとく我が党は政府提案の法案には反対でありますが、他党の提出の人勧を完全に実施するという趣旨に沿った修正案に対しては、前述のごとく、我が党としては賛成の意を表し、あえて当委員会に提案しなかった我が党の立場も明らかにしまして、これに賛成する意思をここで表示し、この政府提案の法案に対する考え方も表明いたしまして、共産党・革新共同を代表しての反対の討論を終わらせていただきます。(拍手)
○片岡委員長 これにて討論は終局いたしました。 —————————————
○片岡委員長 これより採決に入ります。 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。 まず、三浦隆君提出の修正案について採決いたします。 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○片岡委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。 次に、原案について採決いたします。 原案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○片岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 次に、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。 まず、三浦隆君提出の修正案について採決いたします。 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○片岡委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。 次に、原案について採決いたします。 原案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○片岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○片岡委員長 理事の補欠選任に関する件についてお諮りいたします。 本日、石田幸四郎君が委員を辞任されましたので、理事が一名欠員となっております。この補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は岡本富夫君を理事に指名いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後一時三十五分散会 ————◇—————