農林水産委員会 第19号
- 発言数
- 166 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1985/05/21
会議録
○今井委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。 本日は、本案審査のため、参考人として全国農業会議所専務理事池田斉君、日本大学法学部教授宮崎俊行君、東京大学名誉教授、成城学園学園長加藤一郎君及び農業者年金基金理事長森実孝郎君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。 次に、議事の順序について申し上げますが、池田参考人、宮崎参考人、加藤参考人、森実参考人の順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。 それでは、池田参考人にお願いいたします。
○池田参考人 当委員会におきまして農業者年金基金法の一部改正が審議されておりますが、私、参考人としてこの委員会におきまして意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを、厚く御礼を申し上げたいと存じます。農業者の立場に立ちまして、今委員会で審議されております基金法の改正につきまして若干所見を申し上げたいと存じます。 御案内かと思いますが、私は農業委員会系統組織の頂点にある農業会議所におりますので、我々系統組織の農業者年金制度への対応等につきましてまず申し上げたいと思います。 御案内のように、農業者年金制度の発足並びに発足以来既に数次にわたる制度改正が行われているわけでございまして、だんだんと前進をしてきており、その間多先生方には大変お世話になりました。この機会をかりまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。 各先生方御承知のように、農業者に対する年金につきましては、昭和三十三年に農林年金制度、三十四年に国民年金制度が制定されまして、それらをきっかけに、農業者、農業団体あるいは政府の内部におきましても農業者年金の問題が話題となってまいりました。昭和四十二年一月の総選挙におきまして、当時の佐藤総理が遊説先におきまして農民にも恩給をという公約を選挙公約としていたしたことは御案内のとおりでありまして、それ以来この問題が急速に具体的な日程に上ったわけでございます。 私ども農業委員会系統組織は、昭和四十二年以来、現在の制度とほぼ同趣旨の、農業者の老後の保障と農業構造の改善を促進するため、老後の生活保障、経営移譲及び離農の円滑化を目途とする農業者年金制度の確立を図ることが必要であるということで、系統組織を挙げましてこの制度の実現に対応してまいりました。その過程では、有史以来と言われる三百五十万人の署名をとり、これを国会に請願をするというようなことも含めまして、ようやく昭和四十五年に至りましてこの制度が実現いたしたわけでございます。 そして、その後十五年たつわけでございますが、今やこの制度は農業者にとってはなくてはならない制度として定着し、非常に喜ばれておるというのが実態でございます。私ども系統組織は、土地と人という面から構造政策の実施、推進を担当し、農用地の確保及び流動化の促進による規模拡大を通じまして担い手の育成確保を図るべく組織を挙げて現在も努力しているところであります。 農業者年金制度は、このような観点から見まして、現在いろいろ農業施策がありますけれども、その中でも極めて重要な制度、政策でありまして、また、市町村の農業委員会あるいは都道府県の農業会議におきましても、その業務の中で非常に今大きなウエートを占めているものでございます。 そういう歴史的な経過を踏まえながら、現行制度の評価、認識につきまして、私の所見を次に申し上げたいと思います。 農業者年金制度は、先生方既に今回御審議の中で十分御承知のことと存じますけれども、現時点におきましてどういう評価をするか、また認識はどうかということを申し上げますと、先ほど申しましたように、制度が発足して以来既に十五年になりますけれども、経営移譲年金の受給者は三十七万人、また農業者老齢年金の受給者は十七万人を超えておるわけでございます。また、年金の受給額全体で見ますと、昭和五十九年度一年間に約千五百五十億円というような多額な支給がされておる、こういうことに相なるわけでございます。 現在農業情勢は極めて厳しいわけでございまして、特に農畜産物の価格が相対的に低迷しておる、こういう中におきまして年金の給付は、老後の生活の保障だけではなくて、後継者の経営への投資あるいは負債整理というような面にも幅広く活用されておるというふうに聞いております。このような年金の使い方がいいか悪いかは別としまして、農業者からは戦後の農政の中では善政の最たるものであるという評価をされており、農村、農家生活に全く定着してまいっておるというふうに私は評価するものでございます。 また、経営移譲率も当初の予想をはるかに上回りまして約九〇%となっており、経営移譲を受けた後継者の年齢は平均三十二歳で、若返りを実現をしておるわけでございます。これら専業農家におきましては、新しい感覚でこの若い後継者が農業経営の展開を図っているというふうに聞いております。 さらに、相続による農地の細分化の防止ということがこの制度の目的の一つでもありますが、私どもの調査によりますと、経営移譲をしておったがために、五五%の農家が一括相続ということができておりますし、また、今後相続が見込まれる農家の親は、経営移譲による細分化防止に大きな期待を持っているわけでございます。結局、新しい民法での均分相続制度に対する農業資産の細分化防止対策が、かつて国会や、あるいは農業基本法制定と関連いたしまして何回か検討されたことは御案内のとおりでございますけれども、いまだこれが実現しておりません。言うなれば、本制度がその代役を果たしていると言っても過言ではないというふうに考えるわけでございます。 一方、この制度の目的の大きな柱であります第三者への経営移譲について見ますと、経営移譲を受けた者の経営規模は着実にふえておりまして、都府県では一・八三ヘクタールから二・四八ヘクタールというふうに拡大しております。ただ残念なことには、第三者移譲というものが全体のまだ一〇%程度ということにとどまっておる点でございます。 本制度の現状につきましては、制度の仕組みとの関係で若干問題はあるにいたしましても、全体的に農業者から高い評価を受けており、我々もそのように見ている次第でございます。 そこで、次に今回の改正の中身に触れまして若干御意見を申し上げたいと存じます。 御案内のように、今回の改正は三点ございまして、その一つは、国民年金、厚生年金の改正と連動した中身の改正でございます。第二番目は、政策年金として構造政策をより一層推進するための改正でございます。三つ目には、私どもがこの制度に従来からいろいろ制度改正の要望をしてまいりましたが、それに関連する幾つかの問題でございます。 この第一点に関連しましては、公的年金と同様に、給付と保険料水準、国庫助成等との問題がございまして、例えば給付水準は引き下げ保険料水準は引き上げる、また拠出時の国庫負担の打ち切り等、かなりそういう意味では厳しい内容になっております。しかし、その中で厚生年金並みの給付水準、それから政策年金の位置づけに立って特別の国庫負担率確保、約五〇%というような点、また、年金財政の健全性を追求し、本制度が将来にわたって存立し安定的に運営されるためにも、今回の改正は、いろいろございますけれども、必要やむを得ない措置であるというふうに私は考えておるわけでございます。 ただ、本年金制度は構造政策の重要な一翼を担う制度でもあり、専業的な担い手が減少する中では後代負担の制約が避けられない状況にございますので、今後におきましても、国庫助成に対する特別の措置をやはり継続して続ける御配慮をぜひお願いするものでございます。 次に、構造政策効果との関連で、サラリーマン後継者に経営移譲をした場合、年金給付額に格差が導入されることになっております。この点につきましては、経営移譲が望ましい自立経営農家の育成に結びつくよう推進する立場から考えますと、将来的にはこのようにあるべきであるというふうに私は考えます。しかし、途中から給付水準が変わるというところには種々問題があるわけでございます。 御案内のように、現在、経営移譲の実態を見ますと、半数以上がサラリーマン後継者への移譲であり、その譲受後継者は農業者年金以外の年金に加入しており、厚生年金や共済年金の保険料を支払っておるわけでございまして、農業者年金の財政から見ますと、農業者年金の支えにはなっておらないということが言えるわけでございます。このような指摘は、実は本当に農業に精進しておる専業農家からもいろいろ問題が出されておるわけでございます。今回の改正は、ある意味では、方向としては当然であるというのが専業農家の意見として強く出されておることを私は承知をいたしております。そういう意味で、この際、格差の導入につきましては、今回の程度、いわゆる五年間の経過措置をもちまして二十分の一ずつということでやる、この経過措置を考えますと、その方向としてはやむを得ないというふうに私は考えておるわけでございます。 なお、今回の法律改正事項には直接入っておりませんけれども、私も農業者年金制度研究会に参加したわけでございますが、その報告書にもありますように、特定処分対象農地の支給停止要件の緩和の問題がございます。これは法律事項ではなくて政省令の改正でやるかと思いますが、これにつきましては、農地の有効利用の観点から、関係方面の意見を十分聞いて政府はぜひ積極的に対処されることを要望するものでございます。 第三番目の点として、先ほど申しました、我々がいろいろ要望した問題の中で若干前進が図られている点を申し上げます。 第一は、農業者老齢年金の支給停止要件の緩和の問題でございます。第二は、死亡一時金の支給対象の拡大の問題でございます。三番目は、農協等の常勤役員の受給資格期間の通算措置の問題でございます。これらは、我々が従来要望してきた問題でございまして、ある程度盛り込まれておるわけでございまして、敬意を表したいと思うわけでございます。 なお、農業生産法人の構成員の被保険者資格につきましては、今後さらに検討していただき、構成員の農業者年金への加入が将来にわたって確保されるようお願い申し上げるわけでございます。これは、厚生年金の改正の中で、従来五人以上は厚生年金の対象でございましたが、一人以上全体をやるというようなこととの関係で、いわゆる生味法人、法人というものの農業関係の位置づけ、こういう点につきましては、将来その辺の整合性がどうとれるかということにつきましては、格段の御検討を願い、将来の問題として心配のないような方向が確保されるようお願いを申し上げるわけでございます。 以上のような評価その他を考え、今回の改正につきましては、以上の見解に基づきまして私はこの法案に賛成するものでございます。 なお、最後に、今後の問題について若干申し上げたいと思います。 農業者は、本制度が長期にわたり維持され、安定的に存続するということを望んでおることはもとよりでございます。そのために、今回のこの中身においては相当厳しい面もあるわけでございますが、これを乗り越えて、未加入者の加入促進について私どもは組織を挙げて取り組み、また今後その成果を上げなければならぬと考えておるわけでございます。また、今日加入者、受給者の組織化をさらに進めており、現在十七の都道府県におきましてそれらの組織ができておるわけでございます。 同時に、本制度は過去数次にわたる改正により一段と実態に即した制度となってきておりますけれども、制度の目的並びに農業者の意向を踏まえてみますとまだ幾つかの問題が残されております。これらの論点につきましては、今回の短期間の対応の中では十分検討されないままになっておりまして、制度研究会におきましても別途改めて検討すべきだと指摘されておりますので、政府においてはそのような方向で別途検討をさらに進めるということをぜひお願いいたしたいと思います。 その中身につきましては、被保険者の資格の問題、それから第三者移譲を初め農地の流動化を促進する経営移譲の方法の問題、また農地、税制、金融など他の農業政策との整合性の問題、被保険者資格の配偶者への承継の問題、業務体制の整備の問題等々、構造政策を一層推進する観点から、制度の基本的なあり方について、長期的視点に立って別途検討する必要があると考えておるわけでございます。 最後に、本制度は、加入者資格や経営移譲につきましても、世帯員との関係、農地制度や税法との関係など、非常に複雑になっており、事務手続も大変複雑でございます。したがいまして、この改正を踏まえまして事務を円滑に処理するためには、相当の準備期間と農業者へのPRが市町村段階では必要でございます。先生方の御協力によりまして、そういうような面を含めまして早期にこの改正法案が成立することを、実務を担当しておる組織の立場からお願いするものでございます。 以上をもちまして私の意見といたします。ありがとうございました。(拍手)
○今井委員長 ありがとうございました。 次に、宮崎参考人にお願いいたします。
○宮崎参考人 初めに、いわば序論といたしまして、農業者年金制度のいわゆる政策年金としての効果の実績判断に関しまして、日ごろ強く感じておりますことについて一言申し上げます。 例えば、経営移譲というものが書類上のものにとどまって実質が伴わないような場合が少なからずあるのではないか、こういう疑問が出ているようであります。すなわち、経営移譲の相手方の九〇%は後継者であります。そしてまた、農地に関する権利の約七〇%は、所有権移転ではなくて使用収益権の設定になっております。この使用収益権の大部分は実は無償の貸借、正式には使用貸借と申しますが、無償の貸借になっているのが実態のようであります。このような状態でありますので、後継者が取得する権利が大変弱い権利になっております。そこで、そのことが経営移譲を名目的なものにとどまらしめ、実質が伴わないものにしてしまった一つの原因ではないかと思われております。 それでは、なぜ経営移譲の際に使用貸借、無償貸借が多いのかといいますと、実はこれは、税務行政上、もし賃貸借にいたしますと、耕作権の無償設定となって耕作権の価格に対する贈与税課税の問題が発生するとか、経営移譲のためのものであっても、その後に親が死亡した場合、もし親が子に賃貸借をしておりますと子が相続税の納税猶予の特例を受けられないのではないか、こういったふうなことが税務行政上出ておりまして、そこで農林行政ないしは農業団体実務の方が、このような税務行政上の方針に、いわば歩調を合わせてといいますか妥協をなさっておられるようでございます。したがって、賃借権の設定を指導するということを意識的に控えておられるのではないかと私には思われるわけでございます。 このようにして親子間の賃貸借の実行がかなり抑制されておりますので、どうしても経営移譲に実体が伴わないことになってしまうのではないだろうか。そこで、この経営移譲に実体を伴わせるためには、いわゆる家族協定あるいは父子契約というふうなものを積極的に導入して、それによって経営移譲に実体を持たせなければならないと思うわけでございます。しかし、この辺もまた税法ないし税務行政の現実にかなり引きずられてそれが実現できない、こういう要素があるように思うのです。要するに、一言で申しますと、現在まで農業者年金の経営移譲が必ずしも実体を伴っていないのではないか、このような批判があるように思います。 事実としてはそういう状態もあるかと思いますが、そのことの責任は、現在の農業者年金基金法が悪い、あるいはその農業者年金基金のもとにおける実務が悪い、あるいは農家が悪いのだ、こういうふうに年金法なりその実務なり農家ばかりについて厳しくその責任を追及する、こういうことは的外れであろうと思います。むしろ、税務行政がもう少し農林行政に歩調を合わせてくれたならばよかったのではないか、こういうことをつくづく感じておる次第でございます。 以上を序論として、では次に、今回の改正案に関して、私のこれまでの研究分野に関するものについてのみ卑見を申し上げさせていただきます。 私の研究分野は農業関係の法律学でございまして、保険論とか農政一般ではないものですので、私が申し上げます点は次の二点に絞られますことをお許しいただきたいと存じます。 第一点は、改正法案の第四十四条でございます。つまり、経営移譲年金の年金額につきまして、経営移譲がいわゆる特定譲受者に対するものである場合とそうでない場合、そうでない場合といいますと代表的なものはいわゆるサラリーマン後継者、被用者年金加入の後継者でございますが、このような者に対するものの場合とで、経営を移譲した親がもらう年金額に差をつける、こういう案でございます。 このことに関しまして、これをもっともなりとする御意見もあるかとも思いますが、私はなお多大の疑問を持っております。それは、後継者が農業者年金の非加入者になるあるいは農業に常時従事しなくなる、このことにつきましては、一体だれの責任か。もちろん経営移譲をした親の責任ではございません、また、後継者本人が特に責任を負うべき事柄でもないと思います。じゃ、それはだれの責任かといいますと、むしろ経済高度成長政策の当然の帰結でございます。経済高度成長がむしろ農業者年金加入資格ある経営主の後継者を被用者年金加入者にしてしまう、もしくは農業常時従事者ではなくする、そういうことによってまさにその目的が、その目的と申しますのは高度成長の目的が達成されたわけでございます。 そこで、農業者年金加入の経営主の大部分の方にとっては、農業者年金制度というものは自分の後継者が農業常時従事者ではなくなったときに、そのときに自分が老境に達するわけでありますが、このときに自分たちを助けてくれる制度である、まさにこういう認識を持っていたはずでございます。したがって、経営移譲者の大部分、少なくとも過半数の者にとって、自分の後継者に移譲したのでは年金額に加算が受けられない。これは加算というよりもむしろ現実の意識としては減額されるということになると思うのですが、法律の条文上では加算が受けられない、こういうことになるわけです。これは彼らの当然の期待に対して相当のショックを与えることであろうと存じます。 このような私の意見に対して、本案をそのまま是認するお立場の方からは、経営移譲者が加算を受けたければ、年金をいわばフルに受けたければ、後継者ではなくて特定譲受者であるところの第三者に譲渡すればよいわけだし、しかもその方法は、何も所有権を移転する必要はない、十年間の使用収益権の設定、もっともこの場合の使用収益権というのはほとんどが賃借権、使用貸借ではなくて賃借権になると思いますが、賃借権の設定でよろしいわけであります。したがって、経営移譲者にとって与えるショックというものは無視し得る程度である、こういったふうなことかと思います。 そのような御意見に対して、なお私は疑問を持っております。それは、山村、農山村もしくは離島、こういったふうな地域をとってみますと、現実に特定譲受者に該当する者はほとんどいない場合があるようでございます。そこで、そういう場合には年金基金なり農地保有合理化法人なりあるいは農協、場合によっては市町村、こういうものが使用収益権の設定を受けておけばそれで年金はフルにもらえるんだからいいではないか、こういう御意見かと思いますが、しかし、これらの法人が経営移譲として賃貸借によって賃借権の設定を受けましても、これらの法人が現実に農業を経営するわけではございませんので、結局これらの法人は現実に農業を経営する特定譲受者などに転貸しなければならないわけです。ところがその希望者がいない。転貸して農業をやる人がいない。とすれば、実態としては農地の高度利用には結びつかないわけでございます。 さらに、感情論だと言われるかもしれませんが、高齢農民の感情として、後継者が仮にパートタイムでありましても、とにかく在村し、そして農業に従事しているという場合には、こういったふうな基金とか農地保有合理化法人とかいったいわゆるお役所的な第三者に経営移譲をすることについては、そのための方法が十年の賃貸借でよい、かつまたいわゆる自留地が十アール残せるということがありましても、なおかなりの抵抗感が残るのはやむを得ないだろうと思います。 この点は単なる感情論だけではございませんで、法律的にもある程度の理由があることでございます。それは、その後その後継者がもし農業常時従事を希望するようになった場合にどうなるかということでございます。その場合に、第三者に賃貸中はその農地はもちろん使えないわけです。のみならず、農地取得資格に関しても、農地法の最低面積制限五十アール、この要件に抵触してしまいまして、ほかの人から農地を追加取得することもかなり困難になるだろうと思います。それやこれやで、やはりこのような感情論というものも無視できないものがあると思います。 以上のような次第で、本案のこの部分につきましては、農業者年金加入者で経営移譲時期が近づいた者の大多数の者の現況に適合しないので、非常に疑問があると思います。 あるいは反論として、特定譲受者への譲渡についての加算と同額の年金を、特定譲受者ではない人、いわばサラリーマン後継者への譲渡についても支給するということは、結局兼業農家の世代的再生産になり、あるいはそのための財政負担というものは不合理である、こういう批判があると思います。私はそういう批判があるのは知っておりますが、しかしなお私としては納得をいたしかねます。 それは、兼業農家の世代的再生産を悪と決めつけるのはどんなものであろうか。それは社会的現実を無視し、また将来の歴史的展望を非常に楽観視した、そしてまた極度に合理主義に走り過ぎた思想であろうと思います。私としては、経営主の交代が実態として実現する以上は、兼業農家の世代的再生産であっても差し支えない、もしくはやむを得ないという立場をとりたいと思います。また、財政負担についての問題でございますが、これにつきましては経営移譲者の後継者の労働力を利用している者の応分の負担を何らかの手法によって求めるということの方が、広い意味での社会的公平に合致するというふうに考えます。 なお、どうしても本案のように年金額に差をつけたいということであれば、一種の妥協的意見でございますが、ある集落の中に特定譲受者に該当する者がほとんどいない、こういう地域につきましては例外を設けまして、特定譲受者に該当しない者に経営移譲した場合も年金に差をつけないでフルに支給する、こういったふうなことが考えられると思います。 さらに、もし本案のこの部分がそのまま法律となる場合におきましては、いわゆるUターン後継者でありましても特定譲受者に該当する場合が多くなりますように、政令におきまして十分の御配慮をお願いしたいところでございます。このUターン後継者につきましては、現行政令の第九条におきましても、そうでない後継者に比べて少し要件が厳しいようであります。例えばUターン後継者についてのみ同一世帯員となっていなければならない、こういうことが要求されているようでありますが、これも、Uターン後継者ならば、むしろ逆に必ずしも経営移譲者と同一世帯員となっている必要はないのではないか、このように思います。そういったふうなことにかんがみまして、特に本案がそのまま法律となります場合には、政令で、Uターン後継者が特定譲受者になる場合が多くなりますように、特段の御配慮をお願いする次第でございます。 それから、大分時間がたってしまいましたが、次は、農業生産法人の組合員または社員、いわゆる構成員で常時従事する者につきまして、厚生年金法の改正によって厚生年金加入者となり、したがいまして農業者年金の被保険者資格がなくなる、こういう問題についてでございます。 この点につきまして、経過措置といたしましては厚生年金法の方と農業者年金法の両方で一定の手当てはあるわけでございます。農業者年金法の側の手当てといたしましては、本案の附則第三条にあるとおりでございます。これは当然の配慮でございまして、この点については一応賛意を表したいと思いますが、しかし、このような経過措置があるからこれでもう十分であるかといいますと、やはりそうとは言いかねるという感じがいたします。 経過措置はさておいて、いわば、最終的な姿といたしましては、農業生産法人の構成員で常時従事する者が農業者年金加入資格を失います。したがいまして、このような人たちは立派な農業従事者でありますけれども、農業者年金の経営移譲年金を受ける可能性は完全にシャットアウトされることになります。今までは農業生産法人というものがそう多くはなかったわけで、数の上ではネグってしまってもいいというような感じもおありかと思います。しかし、今後は大型の自立経営は一戸一法人となることが非常に多くなると思います。 また、自立経営が育ちにくいような地域、例えば山村、農山村などでありますが、そういうところでは、多くの場合、集落を基盤とした一集落一法人なり、あるいは数戸一法人というふうなものが農業の担い手として育っていくでありましょうし、農政としてもそれを大いに育てていただきたいと思います。現に、パイロット的なものでございますけれども、例えば岐阜県上石津町の有限会社松ノ木農園、これは一集落が一有限会社に結集した例でございます。それから、これも岐阜県でありますけれども、瑞浪市大湫町の農事組合法人大湫機械化営農組合、これは農事組合法人で第二号法人でございますが、こういったふうなものが、自立経営が育たないといいますか育ちにくいところで農業の担い手として頑張っているわけであります。 そういうわけでございますので、やはり農業生産法人の構成員で常時従事者につきましても、農業者年金に加入する道が残され、そして経営移譲によって経営移譲年金を受けられるという道を残していただければ大変ありがたいと思うわけでございます。 なお、本案の四十四条の第二項第四号に、経営移譲年金の額は、特定譲受者に対するものはフルに出す、そうでない場合には四分の三になる、この条文でございますが、その中で、農業生産法人に対して有する持ち分の全部を特定譲受者に譲渡しないと農業生産法人の場合には年金がフルに出ないということになっております。しかし、この持ち分の譲渡というのはやはり財産権の処分でございますので、したがって、同じ特定譲受者に対するものであっても少し要件が厳し過ぎるのではないか。 したがって、結論としては、私は、農業生産法人の構成員であり常時従事者である者につきましては、特定譲受者に対するものでなくても経営移譲年金は一〇〇%支給するということでよいのではないかと思います。 以上のような二点でございます。 失礼しました。(拍手)
○今井委員長 ありがとうございました。 次に、加藤参考人にお願いいたします。
○加藤参考人 加藤一郎でございます。 私の専門は民法でございまして、農業法直接ということではないのですが、戦後の農地改革のときから農業法に関心を持っておりますので、きょう伺った次第でございます。ただいまお話しになりました宮崎さんなどと一緒に農業法学会という学会をつくって、人数は少ないのですけれども勉強しているというものでございます。 この農業者年金の問題、非常に素人にはわかりにくい問題で、私も理解するのに大分苦しんだ点もございますが、この問題を考えますのには、農業者年金の性質というものをやはり考えておく必要があるのではないかと思って、そこから始めることにいたします。 農業者年金が昭和四十六年から発足をいたしましたが、その基本的な考え方は二つあったと思います。 第一は、一般の国民年金では内容が不十分である、そして、被用者年金である厚生年金あるいは共済制度などとの間に格差がある、農民も勤労者の一人であるので、被用者年金並みの老後保障、年金の保障を受けさせるべきである、これが第一の点だったと思います。 それから第二の点といたしましては、農業構造政策の一環として農業後継者を確保する、相続による細分化の問題を防止するということのほかに、後継ぎがいなくなるというのを引きとめる。それと同時に、経営移譲ということを促進することによって経営者の若返りを図る、それによって経営が近代化する。そういう意味での構造政策の一環としての意味を担っていたと思われます。 この二つの農業者年金の目的といいますか性格というものは、今の農業者年金基金法の第一条に書かれているわけでございます。 なお、こういう制度をつくるについては、ほかのいろいろな制度、例えば西ドイツやフランスでも同じような農業者年金制度が行われている、あるいは我が国では、前から六十歳になると隠居ということがこれは一部の農村の慣行などでも行われている、そういうことも関連している点があると思われます。 こういう農業者年金の二重な性格というものから見ますと、よく言われますように、農業者年金というのは一種の政策年金である。つまり、専ら経済的な、保険料を積み立ててその中から年金を払っていくという一般の被用者年金とは違いまして、政策的につくり出された年金であるということが言えると思います。 その政策年金ということの第一は、先ほどの構造政策との絡みでございまして、農業経営者の確保、若返りを図るという点が政策年金ということの第一の意味だと思います。 それから第二の意味としましては、保険料だけではとても年金を賄い切れない——被用者年金の場合には、労働者のほかに、それを雇っている事業者と申しますか使用者側がほぼ同額を出して、両方合わせて年金になるわけですけれども、農業者年金の場合には、使用者、事業者に当たるものがないといいますか、そういうものの拠出が期待できない。 理論的に言いますと、農業というのは自営業でありまして、農民というのは勤労者であると同時に経営者でもある、だから経営者の分も出せるのではないか、理屈はそうでございますけれども、それを出せるだけの経済力は農業にないわけでございまして、結局その分は国が面倒を見ざるを得ない、国の税金で出さざるを得ないということで、国庫補助が相当必要である。大ざっぱに言えば、半分は農民の拠出、半分は国が国庫負担で出すということにせざるを得ない。そういう意味で、純粋に経済的なものでない。そういう内容を持っているという意味でやはり政策年金である。 先ほどの構造政策の点とあわせて、そういう二重の意味において政策年金であるということが言えるかと思います。 こういうことを一応基本的な理解といたしまして、今回の改正について考えてみたいと思うのですが、今回の改正の中心は、給付水準の改定と言われるものでございまして、これは率直に言いますと年金額の引き下げ、二十年にわたって段階的に引き下げるという点と、それから保険料を引き上げるという点で、財政の再計算によってその安定を図るということでございます。 その内容としては、一般の年金制度の見直しということが行われておりまして、それと歩調を合わせている。全体として老齢化が進みまして、とても今までの水準は維持できないということが基本にあるわけでございますが、それとともに、農業者年金として特殊の事情というか財政が困難になったということがあると思われます。 それは、一つは経営移譲年金の対象者が急激にふえたということでございまして、これは老齢化ばかりでなくて、経営移譲年金を受ける者が、先ほどの使用収益権でも差し支えない、もとは所有権の一括移譲でなければいけないとされていたのが、昭和五十一年の改正で五十二年から適用になりまして、使用収益権でもいい。そして、先ほどから話のありますように賃借権でなくて使用貸借権によるものが大部分である。全体農民の約九〇%が経営移譲の形で年金を受けている、そのうちの七〇%は所有権ではなくて使用収益権で移譲が行われている。その中には、司法書士に頼んで書類を書いてもらって、そして安易に経営移譲の形をとって年金を受けるという者がふえているということがあるわけでございます。 それと同時に、保険料を納める被保険者の方も、兼業化が進むことによりまして被用者年金の方に取り込まれる者が多くなりますから、結局農業者年金の保険料収入はむしろ減っていっている。そういうことがございまして、農業者年金の特殊事情としても今までの水準は維持できないので、ここで見直しが必要だということになってきたと思われます。 それともう一つは、国庫補助の形でございまして、拠出時の補助というのはほかの制度にありませんので、それを何とか変えなければならない。金額はそう急に減らすわけにはいかないので、説明によりますと一割減程度でおさめるということですが、全体の三分の一の国庫補助を二分の一に当分の間ふやすということが行われているわけでございまして、そういうもの全体が五年ごとに行われる財政の再計算という形の中でほかの年金制度とあわせて行われたということだと理解しております。 こういう経済計算については私は全く専門でございませんので、話を聞けば、ああそうか、そうせざるを得ないのだろうということでありまして、計算の仕方をどう変えてもなかなかうまい結論は出てこないので、これはやむを得ないものであるというように考えるほかはないと思われます。 それからもう一つの内容は、制度の合理化、適正化というような点で、そのうちの中心になるのは、先ほどから議論になりました特定譲受者に対して五年間で年金に四分の一の格差をつける。これは譲った方の、つまり親の方に格差をつけるわけで、譲られた方は直接それに関係ないわけですが、だれに譲るかによって譲った方の年金に格差をつけるということで、ちょっとその間が必ずしもぴったり結びついてはいないという点が問題になるわけであります。 確かに、筋としてどうかという問題はあるのですが、一つは、これは原則としては譲り渡し、移譲をする側で選択の余地があるということが一つのそれを許す理由づけになるかと思いますが、基本的には政策としてそれが適当かどうか。つまり、先ほど申しました農業者年金の政策年金という性格からして、構造政策上そういうことが望ましい、サラリーマン後継者でなくて、本当に農業をやる農民に、第三者であれ、また後継者でも、農業に常時従事するといういわゆる特定譲受者に経営移譲することが望ましいということであれば、それを政策目標に掲げていくことは、政策年金としての政策上許されるといいますか考えでいいのではないか。そういう意味で、先ほど宮崎さんのお話がございましたが、私はこれもそれでやってみたらどうかという気がしております。 一つは、差をつけるといいましても、五年間で金額に四分の一の差をつけるということで、それほど大きな金額ではない。これはもろ刃の剣みたいなもので、そう大きな金額でないから差をつけても別にそう既得権を侵害するということはないだろう、だからやってみたらいいじゃないかというふうにも言われるのですが、逆にまた、四分の一くらいの差で一体これが誘導政策になり得るだろうかという疑問もないわけではございません。しかし、一つの政策としては考えられる行き方でございまして、これはやってみたらどうかというのが私の意見でございます。 そのほかの細かい点と申しますか、いろいろな点は、それぞれの理由があって制度の合理化を図るということで、私もそういうものだろうと思うわけでございますが、もう一つ、今後の問題としての点にちょっと触れますと、この経営移譲ということをどうやってとらえるかということがやはり一番基本問題であると思います。 農業構造政策から見ましても、今のような、形の上だけで使用貸借で移譲をする、実体は何も変わらないで、そうして六十歳以上になった親の方が年金を受けるということでいいのだろうか、そういう基本問題でございます。 確かに経営移譲を所有権だけに限るのは狭過ぎるというごとで使用収益権を入れたわけですが、それが今形式的に流れているという点をどうやって今後考えていくかということが基本問題である。これは使用収益権を仮に賃貸借にしても余り——さっき税金の話も出ましたけれども、日本の実態としては、形を賃貸借にしても、賃料を余り払わないで、結局今までと同じ形で形式だけ賃貸借にする。これは父子協定とかそういう形の場合も本当に給料を払っているかどうかという点は問題になるわけですが、どうも日本の経営の実態に根差している点がありますので、形の上だけでとらえることは甚だ難しい。 そうなると、結局余りうまい方法はないのですけれども、やはり経営移譲をどういう形でとらえるかということが今後の中心問題であろうと思われます。 そこで、全体として結論を申しますと、給付水準の改定、引き下げということはやむを得ない。それから、いろいろな改正点は政策年金という立場からしてこれでやってみたらどうか。そういう意味で改正案については賛成ということでございます。 どうもありがとうございました、(拍手)
○今井委員長 ありがとうございました。 次に、森実参考人にお願いいたします。
○森実参考人 農業者年金制度の実施機関を預かっております立場から、現状、問題点、改正案について申し上げたいと思っております。 まず、現状でございます。 ようやく農業者年金制度も定着してきております。ある意味では成熟段階に入っていると言って過言でないと思います。 加入者数について見ますと、関係者の御努力で実は昨年度も新規加入者数は三万人を確保することができました。しかし、加入者から受給者への移行数が非常に多い。そういう意味で、全体としては加入被保険者数は減少傾向にございまして、現在では九十万人を若干下回るという水準にまでなっております。 他方、年金給付を見ますと、受給者数は年々増加しておりまして、現在では経営移譲年金が三十七万人以上、老齢年金も十七万人以上の者が給付を受ける状況になっております。平均年金額も、受給者の加入年数がだんだん伸びてきておりますことと、物価スライドの年金額改定によって相当な水準に達しておりまして、例えば六十五歳未満の者に支給されます経営移譲年金の月額は、現在では五万三千円という水準にまでなっているわけでございます。 問題になります経営移譲率でございますが、これは制度発足当時では四割未満程度を一応見込んでいたということでございますが、現在は、経営移譲要件の大幅な緩和、端的に申しますと、後継者に対する使用収益権の設定による経営移譲を認めるという措置を背景といたしまして大幅に上昇いたしまして、現在では九割という移譲率になっております。 なお、年金業務につきましては、このほか農地の買い入れ、売り渡し業務、農地の買い入れの資金の融資、さらに安定兼業農家等で農業者年金の対象とならない方々に対して、農地等の譲り渡しによる経営移譲についての離農給付金の支給等の業務を行っておりまして、それらの事業もそれぞれに着実に一定の成果を今日上げつつあるわけでございます。 そこで、問題になります財政事情について若干述べさせていただきたいと思います。 経営移譲率の大幅な上昇等によります年金受給者の急速次増加という問題、もう一つは、数次にわたる物価スライド等によります年金支給額の年々の増大、それからもう一つは、加入被保険者数の減少傾向もありまして、非常に大きく変化し保ております。 昭和五十九年度末で申しますと、私ども基金が預かっております年金資産額は五千七百十二億円でございまして、当面の年金支給には支障のない数字でございます。しかし、単年度収支で見ますと、例えば、従来は六百億とか七百億という大幅な黒字になっておりましたものが、五十九年度は二百六十九億円の黒字というところまで圧縮されてきておりますし、早晩単年度収支は逆転いたしまして、年金資産の取り崩しを考えていかなければならない状況にあるということでございます。 次に、この制度の運営に当たりまして問題になる点や課題等について若干申し上げてみたいと思っております。 まず一つは、加入の問題でございます。私どもといたしましては、農業構造の改善に果たす大きな役割、さらに制度の長期的安定という視点から、五十六年度以降業務運営の最重点課題として未加入者の加入促進を積極的に実施しております。ある程度重点地域を設け、さらに後継者に焦点を合わせる等の措置をとり、また関係者の御尽力によりまして、先ほど申し上げましたように五十九年度は三万人の新規加入を確保できたわけでございますが、五十九年度末の加入率は八〇%程度でございまして、なお二十万人を超える未加入者が存在しているものと見られております。 私が申し上げるまでもなく、農業者年金制度は世代間の相互扶助を前提として成り立つということが基本でありますので、これからも従来に増して加入の促進が重要な課題となっております。その意味で、本制度の役割、農業者にとっての相対的な本制度の有利性、さらに加入資格の拡大の道も講ぜられたこと等について積極的なPRを行いまして、強力に進めていかなければならないと思っております。 次に、この制度によります構造改善の促進という視点について申し上げたいと思います。 経営移譲は、制度発足当時の見込みを先ほど申し上げましたように大幅に上回りまして、十人のうち九人の方までが年金の受給を受けられるという実態になっております。この制度は、いわば単独相続の実現への誘導と申しますか、要するに保有する農地の細分化の防止ということ、それから規模拡大という問題、経営の若返りという問題、そういった構造政策上の重要な役割を果たしているわけでございますが、問題は、後継者移譲につきまして、譲り渡しを受けた後継者の約半数がいわゆるサラリーマン後継者であるということから、このような経営移譲について政策年金としてどうかという批判があることは事実でございます。私ども、サラリーマン後継者であっても農地の保有の細分化の防止という視点、若返りの促進という視点から効果は十分に確保されていると考えられますけれども、やはり構造政策の視点から今日の財政状況のもとで一層の効果を発揮していくためには、農業者年金の加入者等農業に専従する者に集中するような誘導が図られることが必要ではないかと見ているわけでございます。 もう一つ、業務を実施していく上での課題がございます。それは業務の適正かつ円滑な運営の実現という問題でございます。 端的に申しますと、特に経営移譲につきましては、その件数が著しく増大して農村社会に定着してきていることは先ほどからも申し上げているとおりでございますが、必ずしも十分な経営移譲の実体を具備していないと見られるものも間々散見されるわけでございます。この制度は構造政策の重要な一翼を担うものであり、またそれゆえに高率の国庫補助も付せられている制度でございますので、やはり実体に裏づけられました適正な経営移譲が実現されるよう、今後さらに指導等を強化していくことが必要ではないかと思っているわけでございます。 また、基金の業務は、その性格上、被保険者及び受給者と長期にわたって密接に関係するものでございますので、私どもそういう視点からも、被保険者の資格の確認、管理の問題、保険料の収納や経営移譲年金の裁定の問題、さらに離農給付金の支給や買い入れ資金の貸し付け等につきまして、業務の的確かつ円滑な運営が重要であると考えており、これからも、基金といたしましても、また業務受託機関である農業委員会、農業協同組合等を通じましても、一層の業務の適正かつスムーズな運営ということには努力していかなければならないと思っているわけでございます。 最後に、今回の改正案につきまして若干の所見を述べさせていただきたいと思います。 まず、中心になります給付と負担の適正化という問題でございます。 給付につきましては、いわば今回の年金制度改革の一環として行われました厚生年金保険制度の改正との関連での見直しということが当然問題になると思いますけれども、同時に、農業者年金財政の独自の立場からの対応ということも、先ほどから申し上げましたような事情から必要になっていることは事実だろうと思うわけでございます。 加入と給付ということを頭に置きまして、まず加入という点から考察してみますと、高齢化社会への移行、特に農村社会においてはそれが先行している事情、兼業化の進展という点を考えますと、相当の努力を払いましても、加入被保険者数はなお当分の間減少が続いていくことは避けられないと思います。 それから、給付という点から見ますと、まず経営移譲年金の給付でございますが、制度発足当時十人中三、四人程度と見込まれました経営移譲率が、現在では十人中九人までが年金給付に結びつくようになってきている。受給者数は年々当然増加するわけでございますし、物価スライド等を通じまして既裁定者の受給年金額も年々増加しております。これらのことは、当然農家の方々にも喜ばれておりますし、また、実際こういう実態を持ったゆえに幅広い支持を受けて農村社会に定着してきていると言っても決して過言ではないと思います。しかし、このことが反面において農業者年金の財政を厳しい状況に置いているということもまた否定できないわけでございます。 私は、いろいろな議論がございますが、ここまで定着、成熟いたしました本制度の枠組みなり実態を今後とも維持していくことは、いろいろな点を考えて妥当な選択と考えられますが、それだけに、長期にわたりまして安定的な運営を確保していくためには、給付と負担の適正化はどうしても避けられない措置ではないかと考えているわけでございます。 もう一つここで頭に置いていただきたいと思いますことは、給付と負担の関係でございますが、これは国民年金でも同様なわけでございますけれども、制度発足当時の経過措置として、年金受給資格期間の短縮と加算の優遇措置が講ぜられていることは御案内のとおりでございます。現在の既裁定者である三十七万人の方々や近く支給を受ける昭和一けた生まれの方々は、まずこの優遇措置を受けておられます。これは率直に申し上げて、後代の農業者に負担が及ぶことではございますけれども、やはり戦中戦後の歴史やあるいは制度発足の沿革を考えるとき、後代の若い農業者の方々にも御理解をいただけるものと考えておりますし、そのための努力をしていかなければならないと思っているわけです。 以上の諸点を踏まえ、かつ今日の厳しい財政状況を考えますと、また、基本的には他の年金制度に見ません高率の国庫補助の枠組みがとにかくほぼ維持されているということを考えますと、今回の改正案によります給付と負担の適正化の措置はやむを得ないものではないかと考えているわけでございます。 第二は、農業構造の改善を一層促進する見地から年金額に差を設ける措置についてでございます。 この件につきましては、識者の間にも関係者の間にも意見がいろいろ多岐にわたっているということは事実でございます。しかし、やはり構造政策を担当する政策年金といたしまして、経営移譲についてできるだけ農業者年金加入者等農業に専従する者に集中するような誘導が図られるということは望ましいことではないかと思うわけでございます。今回の改正案を見ますと、こういった基本的な姿勢を貫きながらも、同時に関係者等の強い要望ということも頭に置きまして、いわゆる差額もかなり圧縮されておりますし、特に強い要望がございました衝撃緩和措置と申しますか、経過措置も講ぜられているという点を考えますと、私どもとしては妥当なものではないかと思っているわけでございます。 なお、このほか、私どもが実施機関の立場から関係者の改善要望を踏まえまして主務省にお願いしてきました諸事項につきましても、制度のねらいとか仕組みの制約、あるいは年金の財政事情等から、必ずしも全面的に取り上げられたわけではございませんけれども、いわゆる経営移譲年金の受給者が短期間に死亡された場合に死亡一時金を遺族に支給する措置が講ぜられたり、あるいは六十歳以降の任意加入制度が創設されたり、さらに農業者老齢年金につきましては、六十歳に到達する以前に被保険者でなければならないという厳しい要件が緩和されまして、農業経営主であればよいということになった点、あるいは物価スライドを本則に明定された点等は、加入者にとりましても受給者にとりましてもメリットをもたらすものとして前進だろうと考えているわけでございます。 今回の改正案につきましては、関係者の方々の御尽力によりまして、厳しい状況下ではありますけれども、基本的な枠組みが守られると同時に、将来に向けて制度の運営を安定させるための措置も講ぜられ、その礎石もつくられたと思っております。また、懸案事項につきましても、必ずしも十分ではありませんけれども、ある程度まで前進、解決を図り得たものと評価しております。その意味におきまして、この法案の早期成立をこの機会に心からお願い申し上げたいと思います。 私ども農業者年金基金といたしましても、加入者、受給者、さらには未加入者を含め、十分な理解と積極的な協力を得るためのPR活動につきましては、今後精力的に実施いたしまして、農業者年金制度の円滑かつ適正な運営に今後とも努力してまいりたいと思います。 以上をもって私の意見とさせていただきます。(拍手)
○今井委員長 ありがとうございました。 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。 —————————————
○今井委員長 これより参考人に対する質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田名部匡省君。
○田名部委員 参考人の先生方には大変貴重な御意見を賜りまして、お忙しい中に本委員会に御出席いただきましたことをまず厚く御礼申し上げたいと思います。 最初に森実参考人にお伺いしたいのでありますが、先ほどの御説明の中で、加入促進をやっていかなければいかぬ、未加入者が二十万人とも言われておる、こういうことでありますが、私も、この種の年金制度というものは加入者がなければ制度の存続はあり得ないというふうに思っておるわけであります。 〔委員長退席、島村委員長代理着席〕 したがって、極めて重要な点でありますのでこのことをひとつお伺いをしておきたい。先ほども、積極的にPRをいたしております、こういうことでありますが、具体的にどのような方策を講じておられるか、あるいはまた、若い人の加入というものが大変重要だと思っているのでありますが、どのような働きかけを若い人たちにしておるのか、さらに、農業者年金基金あるいは農業委員会、農協等がどのような役割を分担して加入促進を行っているのか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
○森実参考人 先ほど申し上げましたように、二十万人のなお未加入者があると考えなければならないと思っております。 そこで、進め方といたしましては、市町村によって非常に加入率に差がございますので、重点市町村の区域を定めまして加入の促進を考えたいと思っております。それからもう一つは、やはり対人的に重点を定めて加入の促進、勧奨を図ることが必要だろうと思っております。そういう意味におきましては、後継者加入の問題、四十歳に近い方、加入期間の通常の限界に近づいた方に特に重点を置いて加入促進を図ってまいりたいと思っております。 具体的なPRの仕方といたしましては、農業者年金制度の果たしている役割、今回の改正の内容なりその背景というものをまず理解していただきながら、相対的に裏業者年金制度の持っている有利性というものを農民の皆さんに訴えていくことが非常に重要だろうと思っております。 さらに、御指摘のございました具体的な進め方の問題といたしましては、実施機関であります農業委員会及び農協に第一線に立って加入の促進を働きかけていただくことが基本だろうと思っておりますが、当基金といたしましても、あるいは県の協力も得まして縦断的な体制を整備してその促進を図っていく必要があると思っております。このために、特に本年度は実行予算上特別の経費を計上いたしまして、PRということに業務の重点を振り向けていきたいと思っております。 なお、具体的な進め方といたしましては、特に後継者加入の問題につきましては、やはり年金裁定時における加入勧奨という問題については非常に成果も上げておりますので、重視してまいりたいと思っております。
○田名部委員 今後の農業者年金制度について、被保険者数、受給者数の動向を考えてまいりますと、年金額と保険料とのバランスをとるということが私は大変大事なことだと思うのです。 どんな制度をつくっても一〇〇%全体を満足させるということはなかなか難しい。確かに農業者の皆さんに喜ばれることは、一方においてはどこかでの負担が非常に多くなる、そういうことをやってまいりますと制度そのものが崩壊をしていくということから考えますと、何人かの先生方もやむを得ない措置だというところは、これは、いろいろな方々が苦労されて長期安定的に制度を持続していこうとするとどこかで妥協点を見出していかなければいけない、そういうところでやむを得ないというお話になったのだろうと思うのでありますが、このバランスをとることが非常に大事だ。 今回の改正は、農家の負担能力を考慮しつつ給付と負担のバランスを図った、しかも年金財政の安定というものもまた図らなければならない、そういうふうに私どもは評価しておるわけでありますが、その点についてのお考えを承っておきたい。 また、もう一つは、農業者年金について政策年金としての性格が強過ぎるという意見がこの委員会でもたびたび委員の方々から指摘がありました。したがって、老後保障の面が不十分ではないかという御意見が非常に強かったわけでありますが、この制度が国民年金の上乗せ年金として、一般の自営業者の中で農業者だけに設けられたということはやはり特徴のある点であろう。現在の農政の中で農業構造の改善を図ることが重要であることなどを考えますと、政策年金としての性格を明確にしておかなければならない。 私もわずか六、七反歩でありますが農地を持っておりました。相続問題で、都市近郊の農地だったということもあります、これが相当山村地帯にあれば相続問題も起きなかったと思うのでありますが、やはり地価が非常に高いこともあって、兄弟にそれぞれ分割する、兄弟たちはみんな家を建てて住まいをするということで、日本の農業は規模拡大であると言われながらも、実態としてはなかなか規模の拡大ができにくい。そういうことを考えますと、政策年金としての性格を明確にして制度の安定を図っていくことが重要だ、私はこう認識をしているつもりであります。この点についてひとつ森実参考人のお考えを伺いたい。
○森実参考人 御指摘のございましたように、年金制度を枠組みとして維持するためには、収支の均衡をどう図っていくかという問題がやはり基本論だろうと思います。年金制度未加入者の御意見を伺ってみますと、まだ早過ぎるから加入しないんだという御意見が実は一番多いのでございますが、一部には、果たして農業者年金制度はうまくいくのかという不安もあることは事実でございます。この不安を解消していかなければならないということも私どもに課せられた重要な課題であり、そのことの基本は何といってもやはり収支の均衡だろうと思っております。 年金制度は、ただいま御指摘もありましたようになかなか難しい問題がございます。農業者年金制度自体につきましても、経営移譲率の問題であるとか、余命が変わってきている問題とか、あるいは平準保険料について絶えずどうしても積み残しが残らざるを得ない経過措置があったという事情、さらに物価修正の問題、さらに、将来は解消していくでありましょうが、いわゆる制度の創設期における経過措置で優遇を受けた方々の問題、そういったいろいろな問題があるわけでございます。 そういう意味においては、絶えず現実に即しまして年金財政を長期に均衡させるための見直しを行い、制度の手直しを行うことは、年金制度の枠組みを維持するためにはどうしても避けられない里程であると私は思っております。今回の改正も、そういう意味において従来以上にかなり突っ込んだ取り組みをされたという意味において、私どもも評価申し上げておるわけでございます。 次に、政策年金としての物の見方でございます。 先ほどからもいろいろ議論がございますように、経営の若返りという問題あるいは規模拡大という問題以上にこの年金制度が果たしている重要な機能は、今日の憲法なり民法の体制のもとで、あるいは国の行政のもとで、どんどん農地の価格が上昇してくると、絶えず分割相続の危険があるわけでございます。いわば農業者年金制度は、おやじさんが、移譲者が六十歳になったとき後継者を決めて、その後継者が二十年なり何なりの実績をつくって、そこで次の段階において単独相続につながってくるという意味においては、構造政策の原点としての役割を果たしていると思います。 まさに農業者年金制度は御指摘のように国年の上乗せの政策年金であるというゆえんは、そういった幾つかの構造政策課題を果たしているところにあると思うわけでございまして、このことは今日の状況のもとでは関係者の皆さんにも広く理解されてきていることではなかろうかと思っているわけでございます。
○田名部委員 どうぞ、規模拡大を図り、後継者の育成を図ることが日本の農業のこれからの進む道だということであれば、これを補完的に、そして農家の皆さんが積極的に参加できるよう、特段の御配慮をいただきたいと思います。 〔島村委員長代理退席、委員長着席〕 十五分という時間でありますから、最後に池田参考人にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほどの御説明の中にも、今後さらに国庫助成の道をぜひ、こういうお話がございました。 サラリーマンの後継者に経営移譲をした場合に年金額に差を設ける措置が講じられているわけでございますが、先ほどの説明の中でも、いろいろ問題はありますけれども政策年金の性格上やむを得ないというお話でありました。この点についてはいろいろ議論があったと思われますが、この措置については一定の経過措置も講じられているわけであります。農村において受け入れ可能な措置だと私は思いますけれども、何といったって、農家の皆さんが本当にこの制度はいい制度だということでなければ、これが基本でありますから、私ども実態をよくわからないままにここで議論したりしていることが間々ありますので、その実態を一番よく御承知されております池田参考人に、これが本当に農家の皆さんに受け入れられる措置なのかどうか、この点をお伺いして終わりたいと思います。
○池田参考人 ただいまの御質問に関連いたしまして、私も、もし国の財政その他が十分に許されるならば、いわゆるサラリーマン後継者に差をつける——これは今までついてないのですから、農業者はみんな拒否反応を示すのは当然だと思いますが、先ほど来申し上げましたように、今の年金の枠組みの中でこれを安定的につないでいく、なお政策年金へ若干でもシフトをする、こういう視点に立ちますと、十分な経過措置を我々は強く政府に要望をしてまいりました。その辺が二十分の一、五年間ということで、それほど大きな差ではないということで、個人は、将来的にはこの辺は構造政策との絡みでどうするかということをもっとしっかり考えるべきだと思いますが、当面こういう経過措置で行われる、これくらいならば先ほどの加入促進その他の問題につきましても、全体として年金を守ろうという姿勢の中で農業者に対するPRはぎりぎり限界としては可能ではないかということで、政策年金の研究会の委員といたしましても私は賛成をしたものでございまして、またこれから年金を守りながら加入者の促進をする、その辺の接点を含めまして私はやむを得ないというふうに思っており、この点を了承しておる、こういうことでございます。
○田名部委員 時間が限られておりまして、宮崎参考人、加藤参考人に対する質疑ができませんでしたが、どうぞ御了承いただきたい、こう思います。 きょうは本当にありがとうございました。 以上で終わります。
○今井委員長 次に、上西和郎君。
○上西委員 大変お忙しいところを私たちの委員会のために御出席いただき、大変ありがとうございます。御発言をいただいた順に、四人の参考人の方々に簡潔にお尋ねをしてまいりたいと思います。 まず、池田参考人に率直にお尋ねをします。 加入がなぜ伸びないのか、この理由をずばりお答えいただきたいと思うのです。
○池田参考人 とかく年金の問題は、将来これは安定して続くかどうか、こういうような不安が常に農家にある、背景にはそういう問題があると思います。しかし、これはそうであってはならないので、その辺のPRが十分できれば、未加入者の加入促進は、今後も続けますが、かなりその成果は上がってくるのではないか、また上がらなければならないというふうに私は考えております。
○上西委員 次に、具体的な給付条件といいますか、内容について二つだけお尋ねしたいのです。 一つは、あなたが先ほどの御発言の中で要望しておった、他の年金の加入のいわゆる通算問題ですね、農業団体の役員の期間が認められた、こういうことで評価をなさったのでありますが、私たちは従来、そういったものを含めて、平たく言えば誘致企業、進出企業に働く、その企業が諸般の事情これあり閉鎖、撤退した後、その間の厚年加入期間が認められないためにどうしても年数が足りない、こういう方々を救済する意味での期間通算でありますが、これが今度入ってないのです。極端に言うと農林団体の役員の共済年金だけは認められる、この点についてはどうお考えか。 もう一点は、寡婦年金的なものはどうか。いわゆる経営移譲年金をもらわないままにお亡くなりになったときに、国民年金の寡婦年金と同じ発想で農業者年金の寡婦年金はどうかと、創設を我々はかねて議論しているところでありますが、この二つについてどのような御見解をお持ちか、池田参考人にお尋ねしたいと思います。
○池田参考人 年金を充実していく意味におきましては、経過措置をできるだけ幅広くとるということは、我々も強く要望しておる問題でございます。今回その辺の問題が若干は改善されましたが、まだ問題は残っておる。ただ、工業導入等でそこへしばらく働きに行った、それがつぶれるとかあるいは廃止になる、したがってまたもとへ戻る、その間を経過措置として認めたらどうか、こういう御意見のあることは承知いたしておりますが、その辺の問題も確かに必要な措置だと思いますが、私は、それよりももっと一般的な形でこの経過措置がとられればなおいいのではないか。しかし、この辺はやはり一遍にはいかない問題でございますので、今回若干そういう問題がいろいろな面で配慮されましたので、やむを得ないのではないか、こういうふうに考えております。 それから寡婦年金の問題は、やはり農業団体としては従来から要望をしておる問題でございまして、これはそのまま認められておりませんが、今回若干それに関連する問題で前進をされた、この辺からひとつ今後の問題を前進させていったらどうかというふうに考えております。
○上西委員 ありがとうございました。 では、引き続き宮崎、加藤両参考人に同じお尋ねをしたいので、よろしくお願いしたいと思うのです。 実は私は浅学非才にして法律は余り詳しくないのでありますが、とかく農業者年金を収支のバランスで議論することに大変強い抵抗を感じておるのです。なぜか。佐藤榮作総理が諸君に厚年並みの保障をすると言って、一国の総理が大見えを切り、公約をなさったことが農業者年金として具現をされたわけです。やはり私は、日本国の、政府の責任だと思うのです。それを、加入がどうの、給付がどうの、財政的なことがどうのということで、まさに「羊頭を掲げて狗肉を売る」と言ってよいような改悪といいましょうか、これを導入されることについて私は強い抵抗があるものですから、法律的な立場で、一国の総理が約束をしたこと、それの実行の拘束力といいましょうか、そうしたことについて、この改定と絡んでどのような御見解をお持ちか、両参考人にそれぞれ御所存を承りたいと思うのであります。
○宮崎参考人 ただいまの御質問はいささか私の専門とは離れる感じがございますので、御満足のいくようなお答えができるかどうか疑問でございますが、時の内閣総理大臣であられた方がお約束をなさった、これは政治的な約束でございまして、その約束を果たすかどうかは政治的な責務であるというように考えます。 法律問題になりますと、そのようなお約束に基づいてこのような法律ができた、そしてその法律に基づいて既に具体的な権利を得ている方に、後から法律の改正によってその権利を奪う、これは既得権不可侵という原則に触れると思いますので、それは法律的にできない話である、このように考えるわけでございます。ただし、どの部分が既得権と言えるのか、どの部分はそこまで言えないのか、この辺の判断はかなり微妙なところだと思います。 これで失礼します。
○加藤参考人 宮崎さんと同意見でございます。
○上西委員 ありがとうございました。 森実参考人にお尋ねします。 あなたは、かつて農林水産省の要職にあるとき、農業者年金を改善しようと火と燃ゆる情熱で事に当たられた方であり、今の日本の政府内から見たときに最適任の理事長だと私は高く期待を申し上げておるところであります。 まず最初に、極めて具体的な数字でありますが、障害の状態になって農業者の経営移譲年金を繰り上げて受給されている方の数並びに年齢等について、データをお示しいただきたいと思います。
○森実参考人 数字の問題なので、ちょっと今調べさせます、今ここに持ち合わせておりませんので。
○上西委員 ざっくばらんに言って、すぐ出ますか。
○森実参考人 ちょっと時間をいただきまして、電話で照会させていただきます。
○上西委員 森実さん、あなたに大変厳しいことを申し上げるようですが、農業者年金の一番の魅力は、経営移譲年金なんですよ。そうでございましょう。そして、かつ、経営移譲年金の特色は、加入年数さえ満たしておれば、障害の状態、ざっくばらんに言って国民年金の障害年金の一級、二級を受給できるような状態になっておれば、年齢が幾つであろうとその時点で、五十四であろうと五十五であろうと経営移譲年金を繰り上げて受給できる、こうなっておりますね。そのことのデータが即座に出ないところに、私はいささかの戸惑いと不満を覚えるのであります。そのことがなければ加入者に満足を与えられないでしょう。 あなたは先ほど、鋭意努力をして三万人加入をさせたと。私は選挙区でも聞いております。森実さんが全国をわらじ履きで歩いて大変な御努力をなさっている、ああ本当にいい方に理事長になっていただいたと、私は心ひそかに感謝をしておりました。しかし、その一番肝心な魅力あるところの数字がぱっと出ないところに、私は本当言って若干の問題を覚えるのであります。 したがいまして、今度の改定についても、先ほどあなたはお立場上、はっきり言って苦しい御見解の表明がありましたけれども、本当に農業者年金に加入者をこれから結集していこうとすれば、現在持っている農業者年金の長所、これを大胆にPRをする、現にこういう状態がある、人工透析の方はこうしてもらっている、脳溢血で倒れた人はこれだけいる、こういうものを示すことによって加入は伸びていくのじゃないでしょうか。そうした点について、数字は間に合わなければ結構でございますが、ずばり御見解をいただきたいと思うのです。
○森実参考人 これからの農業者年金の加入の確保という点に当たりましては、一つは農業者年金の果たしている役割、それから国庫補助とか、いわゆる事務費の負担がないという事情や、物価修正という仕組みが仕組まれて実績も上げているという点、そういった点を理解していただいて加入の確保に努めることが重要だろうと思っております。 先ほども申し上げましたように、いろいろ調べてみますと、加入がいま一つ進まないという重要な理由をアンケートをしてみますと、一つは、先ほど申し上げたようにまだ若過ぎる、もう少したってから入りたいという意見が圧倒的にございます。それ以外に、数は少ないわけでございますがいろいろな意見もありまして、その中には保険料の問題もあるし、それから恐らくその他の中には、今先生御指摘がございましたような点もあるのかと思います。そういった点は、各県の協議会等でのお話をよく伺いまして、今までと違った形で、いわゆる一つ一つ要望なり疑問に答える形でのPRの組織化ということを、特に今回の制度改正に当たっては留意してまいりたいと思っております。
○上西委員 私は、日本農業の前途を考え、そうした立場から農業者年金は本当に幅広い多角的な視野で見る必要があると思うのです。 ざっくばらんに申し上げて、今度共済年金の改定が国会に付議されようとしておりますが、恩給制度から通算百年以上はさしたる改悪はなかったわけですね。厚生年金もでき上がって四十年を超えてから初めて大なたが振るわれようとする。国民年金だって二十五年たってからでしょう。農業者年金だけが十五年そこそこで、何か年金統合法が出たら待ってましたとばかりに改悪を一気に押しつける。 とりわけ特定譲受者との格差導入などは、まさに加入してきて同額の保険料を納めてきた者にとってはペテンにかけられたといってもいいようなショックを与えるのじゃないでしょうか。その経過措置の年数がどうの、比率がどうのじゃないのです。おれの年金が削られるのだ。ようやくの思いで息子を帰して、サラリーマンだけれども三年の後継者の資格であるぞ、こうやっている方々にとっては大変なことだと思うのです。これはまさに為政者の責任だと思います。 そうした意味合いで、私は今後の加入促進その他、森実さんの御発言を高く評価しながらも、なおかつこの格差の導入、そういった点についてあと一つ、ずばり参考人として、とりわけ格差導入について農業全体に対する影響などについて御見解をいただきたいと思います。
○森実参考人 必ずしも御指摘のような意見では私ございません点は、まずおわびしなければいけないと思いますが、私もこの問題はなかなか難しい問題だと思いまして、かなり幅広く識者の方々やそれから関係者つまり農業者の関係者の方々の意見も聞いてみたわけでございます。 結局、この格差を設けるかどうかという問題は、一方においては、年金財政の立場からいけば、保険料をどう見るか給付水準をどう見るかという問題自体にも大数法則上かかわりを持ってくるわけでございます。そういった視点も踏まえましていろいろ御意見を伺ってみますと、冒頭申し上げましたように、識者の中でも、構造政策純化論から極端なことをいえば切り捨て論もあるし、それから少なくとも半分以下にしろという議論も有力にあったことは事実でございます。それから関係者の中でも、実はこれは農家の兼業の姿が地帯によって非常に差があるものですから、地帯によっておのずから保険料や給付水準との絡みにおいて御意見が分かれてくる、県によって非常に差がある、ニュアンスに差があるということは事実だということを確認をしたわけでございます。 私は、やはりそういった御意見なり実態を踏まえて判断いたしますとき、また、本制度が構造政策手段として重要な役割を果たしている政策年金であることを考えるとき、先ほど加藤先生のお話の中に、四分の一のカットでは効果が上がらないのではないかという逆の見方もあるという御指摘もありましたけれども、やはり余り極端な格差を設けないで、しかも、その格差を設けるについては、農業者の皆さんから強い要望のあった衝撃緩和措置を講ずることが一番現実的な解決ではないか、こういう制度でございますから、あちらを立てればこちらは立たずという、本質的にすべてがトレードオフの関係にある要素がたくさんあるわけで、一つの名案は一義的にはないわけでございますけれども、そういった意味で、その二点については私どもなりに行政庁にも、立案者である役所の方にもお願いしてきたつもりでございます。 幸い、役所の方の御尽力で、格差四分の一で五年間の経過措置になったということで、いろいろ理屈はあるが現実的な妥当な処理ではないだろうか、そういう意味で私は評価をしております。
○上西委員 大変ありがとうございました。 四人の参考人の皆さんに改めてお礼を申し上げ、いただきました御意見を今後の法案審議に生かしていく、こうお約束を申し上げ、終わらせていただきます。
○今井委員長 次に、田中恒利君。
○田中(恒)委員 参考人の皆さん、お忙しい中、貴重な意見をありがとうございました。 日ごろいろいろ考えさせられております点を二、三御質問として申し上げて、なお御意見を賜りたいと思います。 まず、池田参考人は全国農業会議所で、ある意味では最も近代的な日本農業のあり方を描かれていらっしゃるわけですが、私はいつも思いますが、この農業者年金だけではありませんが、農業者年金の場合は組合員資格であります。この組合員資格というものを絶えず農地で縛っておる、五十アール以上当然加入、三十アールから任意加入、こういう考え方で臨んでおるわけでありますが、つまりこの農業者とは何ぞや、こういう概念規定について、一体、これでいいのかどうかという問題であります。これからの日本農業の展開の過程で、必ずしも農地にこだわらない農業経営というものが続出してくるのではないか、そういう点も踏まえて、この組合員資格について、今すぐどうこうということではないかもしれませんが、どういうお考えか、改めてお尋ねしておきたいと思います。
○池田参考人 この制度は、当面の姿としては農地を基礎として農業者の概念規定が行われておる、今先生お話しのように、今後の日本の農業におきましては、必ずしも農地の面積に依存をしないで立派な農業経営を行う、こういう業種もだんだん成長していることは御案内のとおりであります。 そういうような関係から、農業をどういうふうに概念し、この農業者年金を将来の展望としてどうするかということは、私も先生の考え方と同様に、やがてやはりそういう問題を含めて、この年金制度の枠組みを相当幅広く解決をしていくということが必要ではないかというふうに考えております。
○田中(恒)委員 時間がありませんから、御意見だけいろいろ聞いておきます。 これに多少関連するわけですが、この際、法律という立場で、宮崎先生、加藤先生にお尋ねをしておきたいと思うのですが、これは婦人の年金権に関する問題であります。 つまり、この農業者年金は、実態としては九六%が男子でありまして、四%が婦人であります。しかし現実に、日本農業というのはまさに婦人労働によって支えられておるというのが実態であります。しかも、一農家に経営主が一人、こういう概念というか、法律的に、農家単位で経営主というものは土地の所有権者が一人、こういう考え方になっておるのですね。しかし、現実には、特に専業農家でありますが、専業農家の中には、主人は米をつくっておる、奥さんは蔬菜園芸専門にやっていらっしゃる、これは一つの経営権者であると私は思うのですね。だから、そこへ土地の所有権というものをやれば、これは当然加入の条件があるということになるんだと思いますが、その辺が、実態的には婦人に対する組合員資格というものがどうも動いてないわけであります。 今度の年金改定が、厚生年金、国民年金通して婦人の年金権というところを三本の柱の一本にしておるわけでありますが、これを受けて農業者年金が、前々から婦人の年金権の問題が議論されておったわけでありますが、この点について法律的にいろいろこの年金を外から見ていただいてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、この機会に御意見をいただきたいと思うわけです。
○宮崎参考人 ただいまの御質問の婦人の農業者年金加入資格についてでございますが、この点につきまして現行法律の枠組みを前提とした上で考えますと、ただいまの先生のお尋ねのような場合、例えば御主人が米麦の部門をやり奥様が蔬菜園芸なら蔬菜園芸を専らやっている、こういうふうな場合に、御主人がその家の農地全部の所有者であれば、現行法では御主人だけが加入できるということになっているわけでございます。 そこで、これを改善するためには、御主人から奥様が経営する部分につきまして使用収益権の設定を農地法の許可を受けてやる。そうしますと奥様が、その場合は使用収益権の設定ですから、農地について使用収益権に基づいて耕作または養畜の事業を営む者ということになりますから、そうすれば加入の余地は出てくると思います。どうも、今まで何か一世帯一人主義というふうな何とはなしの感情と申しますか慣習といいますか、そういうものがございまして、今のように同一世帯の中で例えば御主人から奥様あるいはお父さんから息子さん、そういうぐあいに使用収益権の設定をする例が余り多くないようでありますが、私はそれは大いに進めてよろしいのではないかというふうに考える次第でございます。
○加藤参考人 この夫婦の関係はなかなか難しいと思うのですが、法律よりも、今の農家の実態としまして夫婦共同でやっているというのが普通でありますし、それからまた、夫が年金をもらえば妻もそれで共同の家計でやっていくというのが普通ですので、一般の場合はそれで済んでいくのではないか。 それをまた分けるとなると、これはなかなか面倒になるのじゃないかと思うのですが、問題は、夫が死亡したり離婚したような場合にどうなるかということで、その点は何か考えなければならないのだろうとは思うのですけれども、これはほかの年金とかそういうものについても似たような問題がございまして、それと農業者年金はまたちょっと違う点もあるものですから、今どうしたらいいか私も答えがないのですが、そういう問題は今後考えなければならないだろうというように思っております。
○田中(恒)委員 森実さん、これはあなたのところですね。法律的には専業農家の場合はそういう処置ができるということだと思うのですけれども、実際には余りそういう示唆に富む御指導をされておるようにも思わぬし、専業農家の主婦はできない、ともするとこういうふうに理解をされておる節が多いわけでありますが、加入者をふやしていくということになっていくと、跡取りの問題もありますが、私は、婦人が農業者年金にどういう位置づけになるかということが非常に大きいと思うのです。それはどういうふうに考えたらいいでしょうか。
○森実参考人 農業者年金制度の基本的枠組みから考えまして、土地の権利名義に着目した加入ということにならざるを得ないだろうと思います。 その場合、問題は、一つは今御指摘のありました果たして一農家一世帯というふうに考えるかどうかという問題があると思います。これは論理的には私どもも、法律は、一世帯が二つの経営に分化いたしまして、その分化が客観的に明白に確認されて、それぞれの分化された独立した経営が加入要件を満たしているならば制度的には否定していないだろうと思います。 ただ、問題は、私、非常に難しいと思いますのは、果たして土地の名義以外に、そのほかの生産手段とか収入、所得、それから支出、そういったすべてについて区分ができる実態があるかどうかということも一つあるでしょうし、それからもう一つは、そういった加入というものが、次の移譲の過程において、いわば農業者年金制度のねらいとするものと外れた、脱法とは申しませんが、脱法的な行為にわならないかどうかというあたりは留意してみる必要があると思います。 しかし、御指摘の点は、これから農業経営が専門特化していく過程で、また、個々の経営が大型化していく過程ではあり得ることだろうと思いますので、十分勉強させていただくと同時に、やはり個々の事案を伺いましてそれに即して判断してまいりたいと思います。
○田中(恒)委員 森実さんにもう一つだけ質問して終わりますが、農業者年金の財政というものがどうなっていくかという心配から離れることができないのです。年金制度は、年金の運営あるいは年金に関係する諸団体の人々がどうこうということではないと宮崎先生がおっしゃった、そのとおりだと思いまして、日本農業全体がいびつな格好になりつつあるわけですから当然その反映を受けているわけでありますが、本当に大丈夫なのか。 それは、掛金を今度の改正だってふやすわけですね。私は、十三万一千円の農業所得でもって国民年金と合わせれば二万二千円出てくる、この委員会でも議論されたわけですが、それは農家の負担としては大変なものだ、こういうふうに思います。しかし、これどころでは済まない状況になっていく可能性は非常に強いのではないかという気がいたします。もちろん年金でありますから、長期の形でいけば二十年か三十年先にはもらう人が少なくなってくるわけでありますから何とか乗り切れるということでありましょうけれども、どうもやはり不安であります。 社会保障制度審議会や国民年金審議会などが、これは主として年金という立場の視点が強いのだと思いますが、この農業者年金については非常に厳しい警告というか抜本改正を迫っておるわけでありますが、当該責任者として、この年金財政の見通しについて、細かいことは要りませんが、自信を持ってやれるのかどうか、改めてこの席で御返事を聞いて、終わりたいと思います。
○森実参考人 厳しい状況にあることは事実でございます。しかし、今度の改正法案でも経営移譲について五割の高率の国庫補助が予定されているわけでございます。こういった他の年金に見ない高率の国庫補助、さらに給付と負担のバランスをとるための改善努力が続けられるなら、私は十分維持できるだろうと思います。 と申しますのは、経営移譲率の問題とか物価修正の問題あるいは老齢化の問題、それからさらにいわゆる過度的な経過措置で給付を受けている方の負担の問題等が大きな問題になっているということを先ほど申し上げたわけでございますが、そのうちの幾つかの要因は逐次解消され吸収されていくわけでございまして、そういう意味においては、ただいま申し上げましたような点についての努力が持続されるなら、十分可能だろうと思います。 ただ、この農業者年金の研究会においても指摘されましたように、今回の改正だけでは最終的な安定にいくかどうかという議論はなお残ると思います。そういう意味において、支給開始年齢の問題を含めた制度の検討をさらに研究会が訴えられていることは十分理解できる点があると思います。
○田中(恒)委員 終わります。 ありがとうございました。
○今井委員長 次に、武田一夫君。
○武田委員 四人の参考人の皆さんには、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。 量初に私は、森実参考人にお尋ねします。 先ほど、経営移譲につきまして、実体に裏づけされていない経営移譲も見られるという話がありました。具体的にどういう点を指摘したのか、今後質問の過程でいろいろ参考にさせていただきたいもので、その点、ひとつ具体的な内容をお話しいただきたい。 それからもう一つは、今回の改正によって保険料が上がる、それから経営移譲年金は下がる、それから国庫助成も総体的には多少下がるというような中で、これから加入促進する上において大変な苦労があるのじゃないか。聞くところによると、現地でも加入促進には相当な苦労をしながら取り組んでいるというわけでありますから、今回の中身を見たときに、将来余りいいものでないなという思惑が出てしまいますと、加入促進には現場の皆さん労相当苦労するのではないか、我々はこう思うのでありますが、その点の問題を解決するための方途としてどういうお考えをお持ちなのか。 その二点をお聞かせいただきたいと思います。
○森実参考人 実体を伴わない経営移譲という点で従来からも議論されておりますのは、一つは配偶者交換と言われているものでございます。これは端的に申しますと、妻に使用収益権を設定しまして、妻が年金に加入して夫に経営移譲を行って年金を受け取るというふうな形が間々あったわけでございます。それからもう一つは、俗に迂回作戦と言われているものでございまして、端的に申しますと、基準日前に加入者である夫がかなりの土地を妻に使用収益権を設定して、残りの土地を他人に経営移譲するというものでございます。 これらにつきましては、私ども既に、役所の指導なり指示もありまして、いわゆる適正な資格を備えた第三者に移譲を行うなり後継者移譲が的確に行われるというふうな指導を行っているわけでございまして、この浸透を図ることによって問題の解決に努めていかなければならないと思っております。 ただもう一つ、やはり最近留意しなければならないと思っておりますのは、経営移譲が単なる名義だけにとどまって実体を伴わないものをどう考えるかという問題の議論が、昨今いろいろな場所で指摘を受けているわけでございます。やはりこれは相当厳正に考えていかたければならぬ。もちろん本人の心理的な要因なり社会経済的実態からいうと、ある日突然に父親から息子に経営移譲が行われて全権が移行するというほど単純明快に割り切れない側面があることは私は事実だろうと思います。しかし、少なくとも形式的に表現されている、例えば農協の組合員名義であるとか税金の申告名義であるとか、あるいは土地改良区の名義であるとか、さらに農産物の販売名義であるとか、そういった諸名義についてはやはり明確に移転が行われるようにしなければならないし、また、そういった形を通じて実体が息子さんに移行しているということを確実なものにしていくことは必要だろうと思っております。
○武田委員 加入促進の問題……。
○森実参考人 失礼いたしました。 加入促進の問題は、率直に申し上げますと、従来、農業者年金制度が非常に有利な制度であるということに主力を置いて加入促進の努力をしてきたことは事実だろうと思います。しかし、今回の改正を通して出てきました姿というものは、そう簡単なものでないことは私も否定いたしません。そういう意味におきましては、やはり農業者年金制度の果たしている役割、それから高率の国庫助成なり国の事務費負担なり、あるいは物価修正等を通じて他の年金制度に比べて相対的に有利性があるという点、それからさらに、制度の見直し、改正を通じて、やはり長期的に持続する姿をとることができるようになったという点を訴えていきたいと思っております。 特に、先ほど申し上げましたように、加入率がいま一つさえない重要な理由というのは、まだ早過ぎると言って加入しない方のウエートが非常に高いわけでございます。他のいわゆる公的年金におきましても、長期の加入を前提とした現行水準の給付の実現ということが今回の見直しの骨子になっているわけでございまして、やはりこれから低成長、老齢化社会に入るならば、できるだけ若いときから入っていただくということを農業者年金についても特に訴えていく必要があるのではないか、そういう意味でいわゆる若いときの加入に対する優遇措置は今回も存続しているわけでございまして、その点は特に訴えてまいりたいと思っております。
○武田委員 池田参考人にお願いします。 今、森実参考人から実体を伴わない云々という話がございまして、三、四点指摘されましたが、今後、農業会議等においても特にこの問題には一番熱心に取り組んでいる皆さん方ですから、加入促進等に対しては大変な御苦労があることは私も知っております。 そこで、加入促進に当たりまして、今、森実参考人からもお話があったのですが、今後、農業会議としてはどのような対応をされるつもりか。また、今回の法改正によって今後年金財政が好転する、要するに将来我々にとっていい年金の内容になっていくんだというようなことを加入者に説明できる根拠があるものかどうか。 それからもう一つは、国民年金審議会や社会保障制度審議会が抜本的な見直しをすべきであるという要請をしているわけです。ですが、この問題については農業会議としても長期的視点に立って検討すべきだという話を聞くわけでありますが、どういう点に一つの焦点を当てて今後この問題に取り組んでいこうとしているのか。 これらの問題についてひとつお考えを聞かしていただきたい、こう思います。
○池田参考人 従来もこの加入促進を一生懸命やりましたが、まだ二十万人当然加入すべき対象の者が入っていない、これを解消する運動を従来もやり、今も続けております。 ただ、今回の改正におきまして、よほどPRをして、やはり中長期的にこの制度は有利であるというようなことが徹底をしなければなかなか難しいというふうに考えております。その辺が、年金基金当局が、先ほど森実理事長が言われますようにいろいろな方針、方法を打ち出しておりますが、それを受けまして、特に農業委員会におきましては、戸別訪問をやるとかあるいは集落の座談会をやるとか、電話でいろいろ勧誘をするとかあるいは研修を行うとか、いろいろな方法を含めながら今までもやりましたが、今後もやらなければならぬ。 特に、私どもの方では受給者、加入者の組織化の問題を今続けております。今日まだ十七都道府県でございますが、これは受給者、加入者含めまして、特に受給者等が今非常に有利で喜んでおるというような問題を含めまして、この組織がやはり加入運動の一つの推進の力になるというようなことをあわせて、実は非常に難しい問題を今後さらに前進をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。 なお、中長期的にこの制度をどういうふうに改善をしていくかというような問題につきましては、先ほども意見を申し上げましたが、被保険者の資格の問題が現在の姿でよろしいのかどうか、あるいは第三者移譲を初め農地の流動化を促進する経営移譲の方法はどうか、あるいは農地、税制、金融などほかの農業政策との整合性をこの年金はどういうふうにしたらいいか、あるいは被保険者資格の配偶者への承継問題をもう少ししっかりしたものにできないか、また、我々、農協も同様でございますが、業務体制が今非常に不十分である、この業務体制の今後の整備の問題、そういう点を含めまして、構造政策を一層推進するという観点から、制度の基本的なあり方につきまして、長期的視点に立ってこの法案が通った後にまた別途検討をすべきである。 また、私も研究会に参加しておりますが、研究会でもそういう問題提起がされておりますので、政府におきましてもまたこの問題の別途検討ということを長期的な視点からやって、制度全体がさらに農家に喜ばれ、定着し、また長期的に安定するということを探求してまいりたいというふうに考えております。
○武田委員 宮崎、加藤参考人にお尋ねをいたしますが、この経営移譲の問題について、第三者移譲が一〇%なんですね。ということは、要するにほかの方々への土地の規模拡大というのは微々たるものだろう、その中のほとんどが今は大体賃貸借で所有権の移転がない、しかもその全体の半分はサラリーマン経営の方がやっている経営状況なわけです。そうすると、構造政策の上においては、これは非常に苦労している割には経営移譲年金というものの効果というのは上がっていないのじゃないかと言う人もいるわけです、この数を見た場合に。 確かに全体の一〇%ですからそう言われることもあるのですが、こういうことを考えますと、先ほどの国民年金審議会や社会保障制度審議会の抜本的な見直しというのも、言われるゆえんもここにあるのではないかと思うのですが、全体のどのくらいの程度が構造政策の推進として効果が上がっているんだというバロメーターみたいなものをどういうふうにお考えなのか、その辺の御所見がもしありましたら聞かしていただきたいな、こう思うのでありますが、いかがでしょうか。
○宮崎参考人 農業者年金と農業構造改善政策との関係ということについて、私は通常言われているのとちょっと違った理解をしております。極めてこれは少数説だろうと思いますけれども、御質問でございますので申し上げます。 それは、先ほども申し上げたことに関連するわけでありますけれども、昭和三十六年の農業基本法のころから、いわゆる農業構造改善政策が、広い意味では高度経済成長政策に歩調を合わせると申しますか、高度経済成長政策の一環として行われた。その結果、多数の農業者が老齢化した場合にむしろ農業専従の後継者を失う。その場合に手当てをする。むしろ構造改善政策のいわばアフターケア的な意味というものがこの農業者年金の中にはあるのではないか、そういう理解をしております。したがいまして、この農業者年金、特にその目玉が経営移譲ですから、結局経営移譲というものを通じて直接に経営規模の拡大に資するということは、私はもともと余り期待しないといいますか、期待するべきではないと思うのです。 それでは経営規模の拡大はどうしたらいいかということになりますと、これは経営移譲があった後において、その移譲を受けた後継者が、しかるべき専業の農業経営者なりあるいは農業生産法人とか、そういう大変バイタリティーを持った経営者に、農地の貸し付け等によってその規模拡大に寄与していく。私は、経営移譲年金の給付、特に経営移譲の相手方の資格要件のところで、それで直ちに農地の流動化をし経営の規模拡大に資そうということよりも、その後の措置で規模拡大に寄与していった方がいいのではないかと思います。 なお、規模拡大の問題となりますと、実は年金といささか関係の深いものに相続税納税猶予の対象になっている農地を相続人が流動化することが非常に困難であるというふうな問題もございまして、むしろ経営移譲のところだけで、流動化に寄与しないからといってここを余り責めるということは、私はどうも賛成できないのでございます。 失礼しました。
○加藤参考人 経営規模の拡大の問題はなかなか難しい問題で、いろいろな経済条件がございますので一概に言えないのですが、これはむしろ全体としての農業政策、構造政策の問題であって、農業者年金制度はそれの一助になる、それを助けるという関係にあると思うので、今宮崎さんも言われたように、ここだけで何%になればいいかということは一概に言えない、また、地域によってもいろいろ差がございますし、と思うのです。 自作農主義から借地の容認へというふうに全体が動いてきておりますし、また、土地を保有することが農村における農家の格式を維持するというようなことは少しずつ薄れてきておりますので、もっと借地による規模拡大ということが進むことが望ましい、私はこういうふうに思っておりまずし、これから少しずつ徐々にでも進むだろうとは思うのですが、これもその一助になるということではないだろうか、そんなふうに思っております。
○武田委員 大変ありがとうございました。
○今井委員長 次に、神田厚君。
○神田委員 参考人の皆さん方には、大変貴重な御意見をありがとうございます。 短い時間でありますので簡単に御質問をさせていただきますが、まず最初に、ちょっと抽象的で恐縮でありますが、本制度が発足以来十五年を経過しているという中で、政策年金としての位置づけがあるわけでありますが、そういう意味におきましては政策年金としての評価をどういうふうになさっておられますか、また、今後の本制度の理想的なあり方ということについてどのようなお考えをお持ちでありますか、ひとつお一人ずつお願いしたいと思うのです。
○池田参考人 政策年金としての位置づけが基本的なスタンスとしてこの制度にある、それがまた十分でないという問題はあると思いますが、先ほど申し上げましたように、使用収益権の設定で経営移譲ができるというようなことで、いろいろ問題はありますけれども、少なくとも後継者いわゆる農業経営者がその限りにおいては若返って三十二歳である、これは現実の姿でございます。またこの制度は、いろいろありましてもとにかく経営移譲年金がもらえるということで、年をとってもいつまでも経営にしがみつくということは一面でなくなりまして、経営としてのバイタリティーはそれなりに出てきておるというような問題を含めまして、十分ではありませんが政策年金としての位置づけの効果は逐次あらわれてきておる。 また、第三者移譲が十分でないという問題がございますが、少なくとも第三者移譲で行われているのは経営規模が確実に上がってきているということは高く評価していいのではないかというふうに考えます。 また、理想的なあり方についてどうかということでございますが、本制度設立のときの基本的な考え方の中に、一つは政策年金、もう一つは老後の保障、この二つがあるわけでございまして、それがうまくセットされまして——構造政策は年金だけでは十分でございません。もっと一般の構造政策があって、これを補完するという役割を今よりももっと前進をさせる形でのこの制度のあり方等は、今後の基本問題としてさらに検討をしていく。しかし、一方におきましては老齢年金的な性格がございますから、やはり長期安定的に運営が行われるということを模索していかなければならぬと考えております。
○宮崎参考人 政策年金としての効果いかん、あるいは位置づけいかんという御質問に対しまして、先ほど私が述べましたことと重複を避けて申し上げたいと思います。したがって、経営規模拡大にどれくらい寄与するかという点は先ほどのお答えに譲らせていただきます。 そこで、政策年金としてのもう一つの大変大きなねらいは、経営者の若返りということであります。もちろんその反面、経営を移譲したお父さん、親の方で老後の安心を得るということはございますが、これはちょっと割愛いたしますと、要するに経営者の若返りということであります。これについて、名目的なものではなくて実質的にそうなってもらいたいということであります。 その際、親子間での農地の使用収益権の設定が使用貸借、無償の貸借でございまして、譲り受けの相手方、後継者の方が取得する権利が大変弱いわけでありますが、こういう状態では本当の意味での経営の若返りが余り実現しないのではないだろうかと私は考えております。 しかしそれに対して、親子間の貸借が使用貸借であっても賃貸借であっても、家の中でやっておることですから外からわからないし余り差はないのではないかという御意見もあると思います。ただ、賃貸借でありますと、まず第一に後継者の受ける権利が第三者に対抗できる強力な権利になります。そして、賃貸借ですから当然地代を親に払うことになりますので、この点も親の老後の保障としてよろしいと思います。 さらに、先ほど森実参考人もおっしゃっておられましたように相続対策と、いうことでありますが、これもこの見地から考えました場合に、親子間が使用貸借でありますと、相続対策としての効力がほとんどないというか極めて微弱でございます。それに対して、賃貸借であればかなりのところまで相続対策としての意味があるであろう、こういうふうに考えます。そこで、むしろ税務行政の方をこちらの要求に合わせて改善していただきまして、今後大いに賃貸借による経営移譲を進め、かつその上でいわゆる家族協定、父子契約を推進し、これによって経営移譲の実質を大いに上げたいと考えているわけでございます。
○加藤参考人 政策年金としての効果を今農業者年金が上げているかどうかという点には、先ほど来かなりの問題点があるということが指摘されてまいりました。私も経営移譲の実態とのずれということに問題があると思っております。 これは、その実態を政策目的に合わせていくのにどうしたらいいかということをこれからも考えなければならないと思いますが、それと同時に、名目的であっても、仮に使用貸借であっても、それで経営移譲が形の上で行われたということは若い人の発言権にプラスにはなっているのではないか、初めに意図したこととは相当違っていても、この経営移譲年金を利用することによって少しずつは農村が動いていっているだろう、そんなふうにも思うわけであります。 一つの慰めみたいなものですけれども、そういう感じもいたしますが、本来の政策目的を実現するのにどうしたらいいかということを、なかなか名案はないのですけれども、考えていく必要があるだろうと思います。 それから、もっと基本的に申しますと、先ほど特定譲受者の問題もいろいろ議論されましたが、構造政策そのものの見直しといいますか、今の兼業化の進展の中で、農業基本法以来考えてきた自立農家とかいうことが果たして今後どうなるのかという、一番基本になる問題ですけれども、それの検討も必要ではないか。兼業の増大は、農業所得はともかくとして、農家所得を増大させて、ある意味でそれを含めた形での農の他産業との均衡というようなことが実現している面があるわけで、これは一概に悪いと決めつけるわけにいかない、むしろそれを認めた上でどうするかということを今後考えていかなければならないのじゃないか。 これは農業政策の基本にかかわる問題で、また地域によって、米作地帯のような専業的な地帯とそれ以外の一般の地帯と地帯別の問題もありますので、非常に根本的な問題で、その中で農業者年金をどう考えるかということの位置づけも必要になるかという感じもいたしますが、これはもう先の問題でございます。
○森実参考人 お答え申し上げます。 全体として、非常に老齢化が進行している過程で、経営の若返りについては非常に弾みをつける制度として働いているということは評価できると思っております。 それから二番目は、土地保有の問題でございます。 私は前々から、この農業者年金制度といわゆる相続税の徴収猶予制度が相まって農地の細分化を防止する機能を果たしてきたことを重視すべきものだと思っているわけでございます。と申しますのは、親子関係が一昔前とすっかり変わってきている、もう一つは、昔で言うなら隠居する六十歳ごろの年と、死んで相続が行われる時期との間には相当大きな隔たりがあるわけでございます。この後継者移譲の制度を通ずることによって、父親が六十歳になったとき跡取りの息子が実質的に決まってきて、それから経営の実体をつくり上げるという形で、地価がどんどん上がってきて単独相続がなかなか難しい今日の御時世でございますが、大部分の農地は割合スムーズに単独相続が行われる実態ができ上がってきているだろうと思っております。 第三者移譲による規模拡大の問題につきましては、この年金制度が直ちに基本的な効果を発揮することを期待することは、土地所有なり継続性の見地から見てそう簡単なことではないと私は思います。むしろ、先ほどもお話がございましたように、農用地利用増進法に代表されますような利用権利の設定による段階的な規模拡大の道をとるということが意味があると思います。 ただ今回の改正で、継承されました農地についても農用地利用増進法による貸し付けが行われる場合においては停止要件にならないということで、制度的な結びつきができたことは一つの前進だろうと思っております。さらにこういった仕組みをもう少し幅広く考えるかどうかは、さらなる検討が要るのではないかと思っております。
○神田委員 森実参考人にちょっとお尋ねします。 今回のこの改正は、先ほど既に御指摘がありましたように、給付水準の引き下げ、それから保険料の引き上げというようなことがあるわけでありまして、ちょっと加入促進の問題を考えますと、そういうことの足を引っ張るような方向に作用しないかどうか、その辺のところはどうでしょうか。
○森実参考人 率直に申し上げまして、今までのような加入促進のやり方をするならば、非常にやりにくくなるということは否定できないと思います。はっきり申し上げると、今まで非常に有利な制度であるというアピールだけで加入促進をやってきた。そういう意味におきましては、実は末端の業務を受託して担当しておられます農協の職員の皆さんあるいは農業委員会の皆さん等にやはりこの際もう一回再研修を行いまして、年金制度の果たしている役割とか、なお残されている相対的有利性とか、そういったものをはっきり訴えながら、新しい視点に立ってのPRが必要だろうと思っております。 それから、なお具体的な問題といたしましては、しかしそうは申しましても、いろいろ制度も今までも変わってきておりますが、やはり問題になるのは加入がおくれている地域、かなり格差があるわけでございます。それからもう一つは、後継者加入の確保という問題だろうと思います。この点につきましては、制度の改正に関係なく相当密度を上げてやっていきたいと思います。その意味におきまして、実は基金の実行予算におきましても特段のPR経費をことしは計上して努力いたしたいと思っております。
○神田委員 どうもありがとうございました。
○今井委員長 次に、中林佳子君。
○中林委員 参考人の皆様、どうも御苦労さまでございます。 先ほどから参考人の方々の御意見や参考人の皆様方に対する質問などを聞いておりまして、婦人の年金の問題というか、婦人の立場からというのが話の中で非常に少ない。先ほど婦人の農業者年金の加入の問題が出ましたけれども、私はまずこの点で宮崎参考人と加藤参考人にお伺いしたいと思うのです。 この制度が始まりましてから、ずっとこの委員会でも婦人の加入促進の話は出ているのですけれども、今の農業の主な担い手が婦人であるにもかかわらず、この十年以上婦人の加入比率の推移を見てみますと、ずっと四%台なんですね。一番高くて四・九%というときがありますけれども、五十九年では四%と一番最低になっている、こういう状況なのです。婦人が農業者年金に入れる道も、所有権を持つとか使用収益権を設定すれば加入できるのですよということがこの委員会でもたびたび政府側の答弁としてあるわけです。 しかし、今の制度の枠内でそういうことをおっしゃってみても、少しもふえていないというこの実態で、どうやれば——この制度の枠組みを外してでも考えていただきたいのですけれども、実際の主な農業の担い手が婦人の肩にかかっているときに、その婦人の方々が働いた苦労が報われるというのがやはり老後の保障だろうと私は思うのですね。ですから、そういう意味では、今の枠組みの中では所有権だとか使用収益権の設定以外にないと思いますけれども、その枠組みを外してお考えいただきたいと思うのですけれども、婦人が本当に農業をやってよかったと言えるような農業者年金への加入の道を開くものがあるならばお教えいただきたいと思うわけです。 それから、遺族年金の制度もないということや、それから例えば御主人が農業者年金に入っていてほかの職業につかざるを得なくなったという場合は途中でとまるわけですね。そういった場合に、この農業者年金権を継承する道が婦人に開かれないだろうかというようなことなども実は考えられているのですが、現実に加入する問題と、それから例えば遺族年金だとか寡婦年金だとか、あるいは年金権の継承の問題、これらが婦人に開かれればもっと促進方ができるのではないかというふうな考えを持っているのですけれども、その辺でのお考えがあればぜひお聞かせいただきたいと思います。
○宮崎参考人 御婦人の年金加入、または御主人が年金に加入なさった場合に状況によってはいわば年金加入者としての権利の承継といったようなただいまの御質問に関しましては、私も農村でその声を若干聞いております。何らかうまい方法はないだろうかということも少し考えたことはあるのですが、まだ余りその考えが熟しておりません。したがいまして、これから申し上げることも試案的なものであることをお許しいただきたいと思います。 まず、加入段階の問題でありますが、現行法の枠組みを維持する限り、農業者年金に加入するためには、農地について、所有権ではなくてもせめて使用収益権を持って農業を営まなければいけないということになっております。しかしながら、実際に先生御指摘のとおり婦人が農業の担い手として盛んに労働あるいは経営の采配までも振るっていらっしゃる例が少なからずあるわけで、この場合に、その方をどうしたら使用収益権に基づいて農業をしている者と言えるようになるのか。 この辺について先ほど私は、使用収益権の設定をして農業委員会の許可を受ければいいだろうというふうに申し上げましたけれども、実は理論的に、純粋に学問的に申しますと、それよりも、実際に経営の采配まで任されて御婦人がやっていらっしゃる場合には、それは決して無断耕作といいますか不法耕作ではないので、農地の所有名義を持っておる御主人なら御主人との合意のもとにやっていらっしゃるわけです。しかもそれを長年やっていらっしゃるといたしますと、改めて契約をして農業委員会の許可を受けないでも何らかの使用収益権があるというふうには考えられないだろうか。 時効法理を使うということも一つかもしれませんし、時効法理その他何らかの法理の活用によって、その農業をやっていらっしゃる奥様が使用収益権に基づいて農業をしているというふうに認定する道もあるのではないかと思います。ただこれも、私、理論的にそう考えているのであって、実務的にすべての場合にそれで大勢の方の処理が画一的にできるかどうかについてはちょっと別の問題でございまして、自信がございません。 それから、いわゆる後継者のお嫁さんの場合でございますが、これにつきまして後継者加入の余地がないかどうかという問題があります。これは、後継者は直系卑属と書いてありますので、養子縁組をすれば後継者になりますので、彼女の状況いかんによっては後継者加入の道もないことはないわけです。それからもう一つは、農業生産法人の構成員となって常時従事すれば、これは農地の権利と無関係に農業者年金の加入資格が現行法ではあるわけです。先ほど申し上げたように、今度の改正法によると難しくなるわけでございますが、現行法ではそれが残されております。 それから、後の御質問の夫の権利の承継などにつきましては、ちょっと私十分研究しておりません。御質問のようなことができるだけ実現した方が好ましいとは存じますけれども、残念ながら今こういう方法によれば可能でおるという提案を申し上げるまでに研究が熟しておりません。 時間の関係もございますので、失礼いたします。
○加藤参考人 農家の婦人労働については、今御指摘のような問題点があるわけでございますが、今の実情からしますと夫婦一体で経営しているということが普通であり、民法上は昔、家団論という、つまり夫婦なり世帯を一つの単位として見たらどうかという議論もございまして、まだそんなに個人主義化が進んでいないということで、夫婦一体でやっているものを、名義は夫の名義で年金に入っている、そんなふうにも理解できないわけではない。 これは婚姻する場合に夫と妻のどちらの氏を称したらいいか、これは自由だと言いながら夫の氏を称するのが圧倒的に多いという国民の意識、実態とも関連するわけで、今の理解としては妻の分も含めて夫名義で年金に入っている、そんなふうに考えられるわけです。実際に、年金を受け取って正常な状態で生活をしていれば両方とも潤うというのがまた実態でもあるわけです。 そこで問題になるのは、直接には離婚や夫が死亡した場合にどうするかということです。理論的に言えば、離婚の場合には、財産分与の中でその分も含めて、夫は農業者年金をもらっている、その中には妻の分も含まれているということで、理屈は財産分与で一応解決できる。実際はなかなかそうはいかないが、理屈は立つわけです。残る問題は死亡の場合でありまして、今度は死亡一時金ということである程度差額はもらえるようになった。一つの改善だろうと思いますけれども、今後残された問題としては、死亡の場合にどうするかということがあるだろうというように思います。 今のは夫婦一体として実情に即して考えた場合ですが、今後は必ずしも夫婦一体とは言えなくて、妻は妻、夫は夫というふうに考えなければならなくなってくるかもしれない。そのときにこういう年金をどうするかということはちょっと先の問題であろうと思いますが、さしあたりは、今の現状の中でどこを直していけばいいかということで考えていくのが実際的だろう、そんなふうに思います。
○中林委員 次に、森実参考人にお伺いしますけれども、このように婦人の加入の数がふえない、率的にはむしろ下がっているという原因は一体どこにあるとお考えなのか、これが一点です、 それから、未加入者の加入促進のために随分お力を入れてこられた経験をいろいろお話しになられましたけれども、婦人の加入促進については基金としてどのような対策を講じてこられたかということですね。その辺についてお聞かせいただきたいのです。 といいますのは、いろいろここで論議をしてきましても、今の日本での意識とか慣習では、所有権だとか使用収益権の設定の問題というのは本当に進んでいないというのが実態じゃないかと思うのです。ですから、加入促進のためには行政側なり実際にそれをおやりになるところの指導というものが非常に大切なんじゃないかというふうに私は思いますので、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
○森実参考人 一般的に婦人加入の実態が低いと申します理由は、農業者年金に加入しておられる農家は専業的農家あるいは第一種兼業農家で、主として農業に従事している方でございます。つまり、御主人の労働が主体になって農業経営をやっている方が農業者年金に入ってくるわけでございまして、いわば御主人が厚生年金に加入している通勤兼業農家の場合に比べると、どうしてもやはり男性の労働力のウエートが高いし主宰権が一般的に高いという事情があることはひとつ御理解を賜る必要があると思います。 さて、問題は加入率でございますが、いろいろ考察してみますと、ある特定の年齢階層に集中して高いという実態があるわけでございます。これはいろいろな解釈があるだろうと思いますけれども、婦人加入という問題が、必ずしも使用収益権を婦人に設定して経営の主宰権を婦人が持っているという形を媒介にしたものではなくて、いわばいろいろな、その地域の慣習とかその家の事情とか、あるいは一部には問題になっておりますようないわゆる年金をもらうための仕組みの活用と申しますか、そういうふうなことから起こってきているのではないだろうかと思います。 基金といたしましては、加入問題については鋭意努力しているわけでございますが、その促進に当たりましては、婦人が経営の主宰権を持ち主として労働に従事している場合は当然使用収益権を設定して加入できるということについては相当浸透しているとは思いますけれども、これからもさらに十分な注意の喚起に留意してまいりたいと思っております。
○中林委員 最後に、池田参考人にお伺いします。 今、全国の農業委員会の皆様方は、加入促進だとか脱退希望者への説得活動だとか経営移譲の手続だとか、制度維持のために大変御苦労をなさっていらっしゃると思うのです。そういう制度維持のために今一番御苦労なさっている点は何であるかということと、この年金の問題も含めてですけれども、農民の老後保障や生きがいの問題で政治が非常に大きな光を当てていかなければならないと思うのですが、そういう老後の生きがいだとか保障の問題で切実な御要望がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
○池田参考人 従来も加入促進に非常に努力をしておる、しかしいまだに未加入者の解消ができない、その辺の難しさは先ほど森実理事長も言われましたが、二十年掛ければ資格を持ちますので、少し若い人がまだ足踏みをしているというようなことも現実の問題としてはあると思います。しかし、何とか年金財政全体を含めまして、加入促進について今度の改正は若干これにブレーキをかける面がありますけれども、そこは十分PRをして、これからも努力をしてまいりたいと思います。 老後保障、生きがいの問題に触れた御意見でございますが、使用収益権の設定を含めまして経営移譲が現在九割というようなところまで行っておることは、この年金の受給者が老後保障に対して何となく明るい一つの条件を確保した、こういうことだと思います。 しかし、全体としての老齢化社会が特に農業関係は先に進んでおるという実態から見まして、そういう問題は、年金だけではなくて全体の政策の中でさらにいろいろ考えることが、今後の日本の農業の老齢化の進展との関係では必要ではないかというふうに考えております。
○中林委員 どうもありがとうございました。
○今井委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。 この際、参考人各位に一言お礼を申し上げたいと思います。 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。 午後二時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時五十一分休憩 ————◇————— 午後二時一分開議
○今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 審査を続行いたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
○島田委員 年金は、今当委員会に提案されて審議が行われている農業者年金法に限らず、他の共済年金等についても、これは大変国民の高い関心事でございまして、性格が違うとか、あるいはよって立つ基盤が異なるとか、出発のときの趣旨が違うとかいったようなたぐいのもので分類することのできない、これは大変大事な法案だと私どもは心得まして、本来であればこれはもう国会対策全体の問題としての扱いになる法案でございますが、あえて私どもは当委員会におきまして農業者年金改正の問題に、他の年金法に先駆けまして議論を進めているという点は、もう一つ重要な意味があるという点で、一つ私どもの位置づけがあるのであります。 とりわけ昨年の佐藤農林大臣御就任以来、私どもは日本の農政というものの基本にかかわっていろいろな角度から議論をさせていただいてまいりました。まだ大臣とのやりとりが結論が出ているという段階ではないし、私の主張あるいは大臣がお考えになっております我が国の農政の方向というものについて必ずしも一致点が見出せたとは言えない現況にあると私は思います。 ただ、私はもう一度ここで私の主張を繰り返してみますと、農業基本法制定後、基本法農政という立場で政府はお進めになり、そしてまたその主要な柱に構造政策、構造改善、こういう事業もあわせて推進する、そういう立場でお進めになってまいりましたが、私は現時点で将来までを明確に展望して結論づけることは、私としても極めて早計のそしりを免れませんから、それはやりません。しかし、ここのところを振り返って、この時点で立ちどまってみますと、私はこの政策というのが必ずしも成功しているとは思えない。とりわけ農家の経済という立場で分析をいたしますと、経済の状況は日増しに厳しさを加えておる。中には破綻している農家も数多く出ている。手放しで構造政策が成功であったというのなら、今日なお続いている我々の直接の仲間の農家の離農をどうやって説明すればいいのか、あるいはまた膨大な借金を抱え、その返済に苦しんでいるという実態、これに対してどうこたえていけばいいのか、大変私は疑問に思うのであります。 しかしながら、本法の目指すものは、そうした苦しい中をくぐり抜けて一定の社会的任務を終えた後、やはり農業に踏みとどまって、農業にいささかなりとも貢献しようとする農業の我々の先輩の皆さん方に対して、気持ちとして、一体この年金法がどのようにこたえ得るのかという点で、私はもう一つの大きな課題がここにあると思うのです。 ところが、財政上の理由とかあるいはもろもろの置かれている環境の変化とかということによってこの制度を後退させようとする考え方がこの法案の中にあるということに、私どもは賛成できかねる基本的な姿勢があるのであります。現時点で、私が今申し上げましたような認識と大臣のお考えになっていることとにかなりの乖離があるやに思いますが、いかがでしょうか。
○佐藤国務大臣 島田先生にお答えいたします。 農業者を含めた一般自営業者の老後保障という問題は、基本的には、先生御存じのように国民年金で行うことになっています。そんなことで、農業者年金制度というのは、経営移譲の促進と、あるいは農業者の老後保障が密接な関係があることに着目しまして、国民年金の付加年金として仕組まれたものであります。 そんなことでございまして、このような農業者年金制度が一般自営業者の中で農業者だけに特別に仕組まれた制度であること、あるいは現下におきます農業構造の改善を図ることは極めて重要であることを考えまして、本制度は、今後とも国民年金の給付とあわせて農業者の老後の保障を図るとともに、農業構造の改善を図る政策年金としてその役割を高めたい、このように考えておるわけでございます。
○島田委員 さらに構造政策、構造改善事業、こういったものを通して我が国の農政の推進を図りたいというお考えだ、こうお述べになっているのでありますが、私はとてもそうは思えない。これは私は後退だと思う。 それは、今までもう三日にわたりまして当委員会がこの問題の議論をいたしておりまして、我が党の同僚議員からも繰り返し個別的な具体的な問題点が指摘されております。それに対して構造改善局長は、私が聞いている限りにおいては納得のいくような御説明だったとは思えないのです。制度のいわゆる改悪を通して国の財政負担を軽減しようとか、言ってみれば、もう少し高い次元で言えば、中曽根総理が言う戦後政治の総決算、その延長線上でこの法案が改正されようとしているのではないか、私はこう思うのです。そしてまた、それは行革であるとか臨調のこういう絡みの中で農業の大幅な見直しを図ろうとしているその一つの課題である、こういうふうに決めつけても間違いではない、私はこう思っているのであります。 ですから、大臣が御強調なさっても私は納得ができないのでありますが、しかし、法案は現に審議が進んでおるわけであります。我が党としてもこうした幾つかの問題点を明らかにするべく修正をいたしたい、こういう考え方で、今与党を初め各党の皆さんの御検討にゆだねているところでございます。 そうした幾つかの問題点なども明らかになっておりますことをひとつお尋ねしながら、さらに、この年金について午前中も実は参考人の皆さんにお話をされている中で、我が党の上西委員から厳しい口調で、当時構造改善局長もおやりになった森実さんがおられたから、森実さんが、この制度をつくった中では、私どもに言わせれば、これは改悪の方に手をかした局長さんではないかという気持ちがあるから、だから厳しく午前中の参考人質問の中でも指摘をされておられました。 〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕 私もこの指摘については間違っていないと思って聞いていたのであります。 しかし、どうも今度のこの改正に当たって、少し歴史的な経過を振り返ってみる必要もあるのでありましょうが、私はたまたまもう約三十年という昔になりますけれども、アメリカに農業の実習に一年八カ月ほど参りまして、そのときに向こうの調査活動の中の最も高い関心事として私がマークをしましたのが、親子間における経営契約でございました。いいか悪いかは、国民性とか国のよって立つところによって違うわけでありますから、それをそのまま評価したりすることはできないのでありますが、向こうでは明確に、経営は移譲方式をもって進められているのですね。ですから、我が国のようにただで我が子に継がせたり孫に経営を移譲したりというようなやり方ではなくて、極めて割り切ったやり方であります。両親が経営が継続不可能になった時点で、自分の農場は、我が子に限らず他人に限らず一般の競売に付するというほど徹底したやり方であります。 それで私は、これは一つの考え方としてかなり参考にしてみたいと思って一生懸命勉強しましたが、我が国にこれを取り入れるには相当限定つきのものでないとだめだな、そんな感じがいたしました。 帰ってまいりまして翌年、私は農業委員になりました。そのときに私は北海道から提案をいたしました。これからのことを考えると、農業は、自動的に受け継いでいく、継承していくという日本式のやり方ははやらなくなってくるのじゃないか。だんだんすると、親子の間でも契約を結んで、そして今で言う使用収益権でありましょう、その当時私の頭には使用収益権なんという、そんな高邁な仕組みなどは思いも及ばぬことであります。ただ、一定の年齢に達して、嫁さんをもらう年齢に達しておりながらも、なおおやじさんと共同経営ができないというのは悲劇であります、日本の農業の場合。親が実権を握っているうちは三十になろうが嫁さんをもらおうが、息子はおやじの言うことを聞いていないと営農設計が立てられないというのは、これはちょっとばかり日本の農業にも問題点があるというふうに私は考えました。 私はまだ当時農業を始めて十年に満たなかったので、ほかの世界から入ったものですから農業の世界に対して幾つかの疑問を持っておりまして、この親子関係をどういうふうにすればいいのか。それをただ親子関係でぶった切ってしまいますと、今度は土地をとられた両親、とりわけおやじさんはうろうろしてしまって、経営参加もできなければ息子に小遣いと言って手を出すわけにもいかぬというようなことになりますから、これは当然のことながら年金問題というものをきちっと裏づけしていかないと、日本の農業を一つの方向転換させていくということは容易なことではないと考えました。 私が提案しましたのは、とりあえずは親子契約をやったらどうか、親子契約で息子が経営参加をして正当なる報酬を得る。これは日本の非常に長い農業、農民の世界の伝統からいえば封建制の殻をぶち破るというほど思い切った提案でありましたから、当時だれからもそんなことは相手にされなかった。ところが幸いなるかな、それから二年たちまして、広島県に私が言ったような考え方を持った父子契約というのが、試験的でありますけれども出てまいりました。 これを農業委員会あたりが指導して進めていく過程でもう一つの壁に当たったのが、それではそのおやじさんにどういう保障をすればいいか。まさか日本はアメリカみたいに公売、競売に付しまして、そしてそのお金をもらって、年寄りたちが息子に経営を移譲しあるいは他人に経営を移しかえて、自分たちはアパートに住んだりして、その売った金額で老後をゆっくりと暮らすことができるような、そういう仕組みを日本に持ち込むなんということはとてもじゃないができないわけであります。やはり同居生活といいますか、親子何代にわたって同じところで飯を食うという美風はそのまま残したいというのが一般的な気持ちでありますから、それならそういう中から、長い間我が家の経営にしろ、中心になって頑張ってくれた両親に対してどういう気持ちを家族としてあらわせばいいのかということになれば、やはり年金という手法にならざるを得ないのだろう、私はそう思いました。 その後佐藤内閣が、佐藤総理がみずから言い出しまして、農業者にも年金をということでありました。その後生まれましたものは佐藤総理の本当の腹のうちからいえば似て非なるものではなかったのかという気持ちが私はいたします。しかし、いずれにしろ農業者年金法という制度ができて今日に至っているというのは歴史的に明らかな事実でございますから、それを今否定しても始まりません。ただ、これが成立する段階で、親子契約から始まって農業者年金にまで発展してきたこの精神というものが、何となしに、どこでだれがどうしたのかわかりませんが、ねじ曲げられてしまった。 そして、ようやく法律の体をなし、国会に提出されたものを見て、私たちは、これは年金じゃなくて、つまり農業者の追い出しを図る政策的な意図を持った制度ではないかと真っ向から反対をいたしました。我が党は当然のことながら、この法案に対して賛成できかねるばかりか、対案を出したわけでございます。しかし、それが国民年金とのセットになりまして、もはや今日幾つかの事実を生んでいるわけであります。しかし、そういう歴史的経過を考えてみましただけでも、改悪は絶対に許されない、私はこう思っているのです。それでもなお改悪をおやりになるのでしょうか、大臣いかがですか。
○井上(喜)政府委員 農業者年金の発足当初といいますか、年金法案が議論されますときに、いろいろな角度から議論されたことと思いますし、今のお話にございましたように社会党の方からも年金法案が提案されたわけでございます。現行の農業者年金制度は、国民年金の付加年金といたしまして老後保障をいたしますとともに構造政策を推進する、こういう目的を持った年金制度として仕組まれているわけでございます。制度発足以来十五年近くになるわけでございます。この年金の目的につきましては、この年金自身で構造政策を推進するというものではございませんけれども、他の構造政策とあわせまして一定の効果は上げてきておる年金でございますし、かつまた、この期間に農業者の間にかなり深く浸透してきている制度だと思います。 現状の制度を考えてみますと、最近におきます農村における急速な高齢化の進展という事態もございますし、また兼業化の方も非常に進んできておるわけでございます。そういうことで、この農業者年金制度につきましては、制度の発足当初予定しておりました状況とかなり違ってきているわけでございます。私どもといたしましては、この年金制度が農家の中に定着をしてきている現状から見まして、長期に安定した制度として運用していくことが基本的に重要なことであろう、こういう認識に立ちまして、今回の幾つかの点につきましての改正案を国会に提案いたした次第でございます。
○島田委員 農家の間に安定しているとか喜んで受け入れられているかのごとき局長のお話でございますけれども、それは認識が非常に違っているのではないか、私はこう思うのですね。 実は大臣、私も代議士になるまではこの資格者だったのであります。代議士になった途端に召し上げられちゃったのですね。しかし、依然として私は今農民でございます。山林合わせて四十町歩の土地を持っているれっきとした農家であります。しかし農業者年金の対象者ではない。おまえは国会の年金をもらっているのだからいいだろうという話になりますが、これはほかから幾らもらっても、農家である限り、農民である限り、私は実に寂しい思いをいたします。特に、あるとき突然、あなたはもう資格なくなりましたという通告を受けました。五年ほど積んだ年金の一時金、ぽんと返ってきました。あの寂しかった思いを今も忘れないでおります。国会を十年やれば年金当たるから経済的にはその方がよっぽどいいじゃないかというお話になるのかもしれませんが、私でさえ農業の世界からはじかれてしまったという思いをしてきたのであります。 話を少し変えてみますが、実は私の島田牧場の隣に多田牧場というのがございます。軒を並べておるような国道ぶちにいるのであります。せんだってここのおじいちゃん、おばあちゃんに、たまに帰ってきたら顔ぐらい出せというお話で、隣でもなかなか顔を出せないでおりましたら、実はついこの間夫婦そろって健康で結婚満七十年を迎えました。大臣、七十年というのは何婚というのでしょうか。私、わからないのでお聞きするのでありますが、七十年というのを大臣は御存じですか。恐らくそれはないのですよ。もしあるのでしたら教えてください。
○佐藤国務大臣 島田先生にお答えします。 実はこれはちょっと調べてみました、多分こんな質問も出るのじゃないかと思って。申しわけありませんが私も知らなかったのですが、やはり七十年というのはなくて、五十年、六十年、七十五年と一般的にありますが、七十五周年というのはあるそうで、これはダイヤモンド婚式というそうです。六十年、七十五年があって七十年はないそうです、というのが調べた結果でございます。これは世界大百科事典とかその他調べた結果そういうことでございます。
○島田委員 御親切に、大変恐縮でございました。そこまで調べていただいているとは思いませんでした。ただ、六十年というのは通常ダイヤモンド婚というのですね。ですから七十五年になってもやはりダイヤモンド婚というのか、それはどうでもよろしゅうございます。 私は、この多田さん御夫婦にもう一つ敬意を表しますのは、あそこに開拓で入りました、私の隣に。そして、やがてもう一、二年で百年だと思います。私はその後あそこへ入りまして、四十年一緒に農業をやってまいりました。御夫婦二人合わせて三日と医者にかかったことがないという健康な方でございます。ですから、恐らく、大臣がおっしゃるように、七十年というのはもうあっさりとクリアしまして、ダイヤモンド婚をもう一つやりまして、あるいは結婚八十年だって不可能でないな、かくしゃくとしております。いまだに牛舎に出て孫と一緒にぶん出しもすれば乳搾りもいたします。おばあちゃんは台所でこつこつと包丁さばき鮮やかに現役でございます。 ところが、こういう人たちが何の手当でもないのです。今三夫婦住んでおりまして、家族は大家族であります。とてもうらやましいような円満な家庭でございます。しかしこの七十年、おじいちゃんという人は十八で、おばあちゃんという人は十四で結婚をされたそうでありますが、結婚して来てみたら、しゅうとめさんも一緒に子供を産んでおられたそうでありますから、四つの乳房で二十五人の子供を育てたというエピソードもございます。これは改めて、大臣、表彰してもいいのではないか、年金を差し上げている以上の功績を評価してもいいのではないかと私は思っているのですね。 大臣、ついでだからちょっと申し上げておきます。この間から豊かな海づくりの話をしましたが、ことしは私の島田牧場、多田牧場の目の前で、実は皇太子御夫妻がおいでになって、両院の議長、副議長を含めて、大臣もお見えでしょうが、全国から六千人ぐらい集まるそうであります。私のうちの前、多田さんのうちの前を通って宿舎に皇太子夫妻がお入りになられます。このおじいちゃん、おばあちゃんに長生きおめでとうぐらいは言ってもらいたいなと僕は思っている。そのくらいの価値はあるのじゃないでしょうか。 この方は長い間農業委員会長もお務めになりました。農業委員はたしか三十年ぐらい務められたと思います。それから農業共済組合長も、七十四、五までですから、相当に長い期間やりました。農業団体にとっては、まさに我が町ばかりではない、功労者の一人でございます。その方が我々の手本になるような長生きをされ、しかも夫婦円満で、自分たちがお産みになりました子供さんはいまだ一人も欠けずに全部おいでになります。これも驚異といえば驚異。毎日毎日何の不満もなく豊かに暮らしておられますけれども、私は、こういう人を見ますと本当に農業の大功労者だと思うのです。ですから、おくればせながら農業者年金という制度ができて、とても今おじいちゃん、おばあちゃんにはこの年金は当たりません、ですけれども、それぐらいの功労を持っておられる方が全国にたくさんおられるということは、我がうちの隣の多田さんを例に引くまでもない話だと私は思うのです。ですから、年金というのは物すごく大切に皆さんが考えてあげなければならないし、考えている。 実は私のおふくろも、さっき申し上げましたように、私が五年目に代議士になったものですから私の資格は剥奪されまして、同時に、国会議員になったがために——これは農業者年金ではございませんよ、うちのおふくろは老齢福祉年金を私が代議士になるまでもらっておりました。代議士になった途端にこれも切られちゃって、隣のおばあちゃんとこっちのおばあちゃんと、両手つないで三カ月に一遍年金を役場の支所にもらいに行くのが大変な生きがいであり楽しみであった。ところが、三人のうちうちのおばあちゃんがぱっとある日、もうあんたに年金は当たりませんと言われた。わけがわからぬから、私が代議士になったからもらえないということはわからないから、私にだけどうして年金が当たらないのか。僕は知っているけれども説明しにくくて、そんなら僕が小遣いやればいいのでありますが、小遣いやっても、息子からもらう小遣いとお国さんからもらう小遣いとはまた違う、明治の人ですから。私もちょっと表れに思いましたよ。 ですから、年金というものは、金額の多寡ももちろんありますけれども、いただいている、もらっているというありがたさというのは、本当に言い知れない喜びを御本人たちに与えているものだと私は思います。そういう点を少しお話をしてみましたが、大臣、どうですか、改悪するなんていうのは血も涙もないやり方じゃないでしょうか。私はそう思います。 しかし、時間がどんどん過ぎていきますから、私はそういう雑談にふけっている暇はないのでありますけれども、さて、そういう点を考えますと、私は改悪許さじという立場で若干の問題提起をしていきたいし、また質問したいと思うのでありますが、例えば経営移譲の実態について見てみますと、当初の制度が始まったときのねらいとか考え方というものがややねじ曲がっているという感じがしないでもない。きょうの午前中の参考人のどなたかの御意見の中にもたしかあったように思うのでありますが、例えば当初の目的は真っ当に、所有権を完全に移転するというところに目標を置いたのですね。ところが、最近は必ずしも所有権の移転が経営移譲の実態のすべてではないみたいな、それどころか、かなり大多数の人たちが使用収益権という形で経営移譲が行われる、実態がそういうふうにある、こういうふうに思うのですが、局長、これはどうでしょうか。
○井上(喜)政府委員 きょうの参考人のお話にもございましたように、当初は所有権移転で経営移譲を行うということでございましたけれども、昭和五十一年の法律改正ですか、昭和五十二年から適用されております制度では、使用収益権の設定によりまして経営移譲を行ってもよろしい、こういうことに相なりましたので、大部分が使用収益権の設定という方法で経営移譲を行っている実情でございます。
○島田委員 これは局長、大臣ももちろんそうでございますが、繰り返し、この農業者年金というものは政策的色彩を持っている、政策的な目的を持っているのだ、こうおっしゃっておる。そういう意味でいえば、政策誘導の効果というものは期待しなければいけないと思うのです。これが今私が指摘して、局長、あなたからお答えになっている点で、十分政策誘導効果を発揮しているというふうに認識されますか。
○井上(喜)政府委員 政策誘導効果と申しますのは、年金法の目的にございますように、経営者の若返り、それから農地の細分化防止、さらには経営規模の拡大、こういったことでございますけれども、そのいずれにつきましても、この年金制度が発足いたします前と後を比べますと、経営者の若返りの点につきましてもかなり若返ってきているわけでございまして、これもきょうの参考人の御意見にもございましたが、三十五歳未満の経営者への移譲が相当程度行われるようになってきているわけでございます。 〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕 また、農地の細分化防止につきましても、特に農地価格が上昇しております地域につきましては、ややもすれば農地を分割して売るというような状況があるわけでございますけれども、こういった制度によりましてその細分化防止が図られているわけでございますし、まして第三者移譲につきましては明らかに経営規模の拡大が行われてきている、こういう状況でございます。なお、経営移譲後の経営の動向を見ますと、例えば後継者移譲の場合をとりましても、三年、五年と時の経過がございますが、そういう経過の時点でそれぞれの経営状況を見てみましても、経営移譲後規模を拡大してきている、こういう傾向が読み取れるわけでございまして、全体といたしましては、この農業者年金はおおむねその目的に沿った効果を上げてきているのじゃないか、私どもはこのように考える次第でございます。 ただ、先ほど申し上げましたように、構造政策の効果といいますのはこの年金制度だけではございませんで、各種の補助なり融資その他の事業を通じまして実現するものでございますので、その中の有力な一翼を担うそういう制度であると理解をしておるわけでございます。
○島田委員 私にはどうもこじつけに思えてならないのであります。 ところで、皆さんがこもごも指摘をされておりますのは、普通に保険料を払っておいて、もらうとき減額されるというそんな選別はいかぬのではないか。つまり特定譲受者以外の経営移譲者に対する経営移譲年金の減額支給というのは極めて不当なやり方である、こういう指摘をしますが、私も同じような考えを強く持っております。 そこで、これは政令事項になるのでありますが、特定譲受者の要件、法四十四条第二項で、第三者移譲と後継者移譲とございますが、農業に常時従事することの要件、これはどちらにも書いてあります。この点で言えば、私なんかも、今は農業に従事する時間が最近忙しくなったせいもあってかなり大幅に減っておりまして、今農業者かと言われると、農業者でないともあるとも言いかねるようなありさまでございますが、私も代議士当選後数年以上にわたりましてはほとんど毎週帰りまして、ほとんど農業に従事をいたしました。その従事時間は家内にも負けないつもりでおりましたが、最近ははるかに家内の方が多いのであります。 そういう点を考えますと、農業に常時従事することの定義というのは一体どういうことなんだろうか。私はうちへ帰りましても、靴を長靴に履きかえ、作業服に着がえて、家の中に上がらぬうちに牛舎に飛び込んで仕事をするというくらいやって、それでも常時従事者でないという認定であります。だから、これは実にこの政令規定でもいいかげんだな、一体どこにこれはラインを引いて農業者というのか農業従事者でないというのか。これは時間的に何時間だと言われれば、何時間といっったって農業の場合は時間を超越しておりますから、私だって日誌を書けば、代議士の行動と農業の行動となら、三分の一くらいは牛飼いをやっていたつもりでおります。今はだめですけれども、昔の話になりますが。そんなときでも、おまえはもう農業者でないよと決めつけられてしまうことに私は大変強い不満を覚えたものでございます。 恐らくこういう思いをサラリーマンの諸君だって持っているのだと思います。野良の真ん中にある自分の生まれた我が家から弁当を持って給料を取りに行っている人たちだって、おまえらもう農業に従事しているのではないのだからと決めつけられれば、何を言っているか、おれだって農家だよということになるのではないか。この辺の線引きは余りに冷酷に過ぎやしないか。どうですか。
○井上(喜)政府委員 御指摘のとおり、常時従事をするという場合の常時の定義というのはかなり幅のあるような感じもいたすわけでございますが、この年金制度の趣旨からいたしまして、年間を通じまして常時従事をしている人がやはり対象になるということでございますが、現在までの運用では、百五十日ぐらいを基準にいたしまして常時従事しているかどうかを判断している状況でございます。
○島田委員 そうですか、百五十日か。なかなか厳しいことを考えておられるようでありますが、三百六十五日のうちの三分の一ちょっと、大体百五十日でしょう。そう言われれば、立派に僕は農業従事者だったと思いますよ。ところが、だめだと言われて切られたわけですから……。 それでは次に、老齢年金のことについて承りたいと思います。 老齢年金支給額が余りにも低いというのは、制度発足以来指摘されている点ですね。それは、経営移譲年金と違って単純な年金だし、掛金にも違いがあるからという理由は幾つかあるにしろ、非常に安い。よく年金の話をするときには、孫のあめ玉代みたいなことを言うのでありますが、今の年金でそんな表現を使ったら、私ども演説会でぶったたかれますよ。年金ってそんなものじゃないぞ、何言っているんだ。暮らせる年金ということであります。当たり前のことを言って恐縮でございますが、家一軒持って、アパート一つでも結構ですが借りて、かまどから煙が上がれば最低十万円はかかるというのが常識でございましょう、今の物価の状況から言えば。 さっきの多田さんの例を引くまでもなく、多田さんはもう一銭も年金なんてありませんよ。大臣、こういう人たちもおりますけれども、こういう人たちを例に見てこれから暮らせと言ったって、これからの人には無理であります。第一次改正、第二次改正、第七次改正、四十九年、五十一年、五十六年、これは財政再計算の時期に一定程度の見直しを行ってきたのは評価していいと思います。しかし、見直しといったって根っこが低いのだから、こんなものは幾ら直したって話にならぬのですね。しかし、せめて気は心ということもございまして、私どもはこの改正の都度、たくさん修正をしたい点はあるけれども、せめて老齢年金支給額のいわゆる倍増くらいはやったっていいのじゃないか、そういうことで、私たちはその都度老齢年金の引き上げを要求してまいりましたのも御承知いただいているとおりでございます。 ところが、今度は六〇%に下げるというのでしょう。ただでさえ千円札一枚に足りないくらいしかもらってないものを、今度は五百円玉一つしかもらえないようになるというのだから、これは余りにもひどいじゃないですか。それは、お金がない、国家財政窮屈の折からだといういろいろ理屈はございましょう。しかし、私は今二十分以上にわたって、農家のお年寄りそしてみんなが頑張っている状態というものを訴えてまいりました。この私の訴えを聞いただけでも、佐藤大臣がこういう千円札を五百円玉に落としてしまうようなことをやるというのに何の抵抗も感じないというのは、いささか血も涙もない大臣だということになりはしないかと私は思うのですが、これは大した金額ではないのですよ。驚くほどの金額ではないと私は思うのです。厚生省の数理課に計数の積算をしていただきました。これを我が党が言うような金額でやると一体どれくらい要るんだと聞いたのです。二百億くらい要ります、二百十九億、大した金額じゃないですよ。農家の皆さん方が期待をしているその期待にこたえる金額としては決してべらぼうな数字ではないと私は思う。やはりそれくらいな温かい思いやりがあってしかるべきじゃないでしょうか。二千億も二兆円も出せと言うなら話はべらぼうということになるかもしれませんが、これくらいのことはぜひおやりいただいて、長い間農業で頑張っていただきました皆さんに少しばかりお礼の気持ちを示すというのも、今我が国の農政を将来に向かって展望いたしてまいります段階では大変大事な政策の一つではないか、私はこう思うのです。全く原案で押し通す、こういうお考えなのでしょうか。
○井上(喜)政府委員 農業者年金制度といいますのは、経営移譲年金を中心にいたしました年金の制度でございまして、六十五歳以降の老後保障といいますのは、国民年金と相まって行うということにしているわけでございます。いわば長く農業に従事をしてこられた方に報いる、そういう意味の老後保障として設けられたものでございまして、経営移譲年金のような構造政策の推進というような政策手段としての性格はそういう意味では持ち合わせてないわけでございます。こういう性格の農業者老齢年金につきまして国の助成を行うというのは非常に困難な情勢にございますし、したがいまして、今御提案のようなことをいたしますと保険料を大幅に引き上げるというようなことになるわけでございますが、現行の保険料におきましても平準保険料をかなり下回る水準で設定をいたしたところでございまして、到底そういう大きな保険料を農家が負担していくというのは難しいと思うわけでございます。 ちなみに、今お話しになりました二百十九億円でございますが、これは昭和六十一年度の金額でございます。六十五年度の概算の金額では五百七十九億円がさらに必要になる、こういう状況でございます。したがいまして、五百七十九億円ということでございまして、そういう状況にございますので、今御提案の趣旨に沿いまして農業者老齢年金を引き上げるというのは非常に難しい状況下にあるわけでございます。
○島田委員 まともに言えばそうなるわけですよ。それはそうなんですよ。しかし、私は、あなた方に心があるかと聞いているのでありまして、にべもない返事でありまして、いささか私も遺憾に思うのであります。 さて、保険料。保険料もえらい恩着せがましく、本当はこれだけかかるのだけれどもこれでとめておくのだ、こう言うのであります。それにしても、半分くらいの値上げでいったらどうですか。私は全く全面否定をするつもりはありません。それは、御承知のように、国民年金、この間改正案通ったわけでありますが、厚生年金の保険料というのは本人だけじゃなくて使用者が半分負但してくれるでしょう。農業者年金はだれも負担してくれないですよ。当たり前のことでありますが、本人が掛けなければいけないわけです。その上、今申し上げました国民年金も、今度あれが施行になりますと、だんなばかりじゃなくて奥さんも掛けなければいけません。掛けなければというか、両方合わせてのあれになりますから、負担が倍になるということであります。 そんなこんなを考えますと、農家の出費ばかりがかさみまして、大臣に乳価を初め抑えられっ放してありますから、入ってくる方はさっぱり目鼻がつきません。出る方は何のかんのと名目つけて出されてしまう、我々国会議員の歳費みたいなものでございます。取られる方は本当によくこんなに取ってくれるわというくらい取られるものであります。保険料もその一つ。保険料、これっぽっちくらいの負担がなどというようなものではございません。そんなのが、いっぱい重なる。どうですか、局長、これは半分の四百円くらいでおさめておくということになりませんか。これだって大した金額じゃないですよ。あなた方の試算はどうですか。
○井上(喜)政府委員 お答えいたします。 保険料の額は五十九年度価格で昭和六十二年から八千円ということにいたしまして、以後一年ごとに八百円を上積みしていく、そういう改正案になっているわけでございます。 実を申しますと、これも本委員会で何回か御答弁申し上げておりますけれども、財政が均衡いたしますのに必要な保険料、平準保険料と申しますが、これは昭和六十二年一月一日現在で一万三千二百三十八円、これは五十九年度価格でございますが、そういうぐあいになるわけでございます。それを相当下回る水準で設定したわけでございまして、現下の年金財政を考えますとどうしてもこの水準は確保しないと負担と給付のバランスがとれないような状況でございます。この点ひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。 それで、ただいまの保険料の引き上げ幅を、私どもは八百円としておりますが、従来どおりの四百円といたしました場合の所要の金額でございますが、これは概算でございます、昭和六十三年度が五十一億円、それから昭和六十六年度が百七十四億円ということで、その間漸次この所要額がふえてくる、こういうような状況に相なっております。
○島田委員 午前中の参考人のお話の中にも経過措置という言葉が幾つか出ておりました。その経過措置をどういうふうにせよというのかという点になりますといささか鮮明でないお話の中身もありましたから、それを完全に引き合いに出すことはできませんが、ただ経過的な措置というのが大変大事なことでございまして、それはぐうんとやるのではなくて自然にいくというやり方も時には大変親切なやり方であります。私は初めからゼロにせいと言っているのではなくて、やはり何のかのと取られることが多いのですから、ひとつなだらかにやってもらいたい。それには八百円というのは余りひど過ぎるのじゃないですか。半分にしなさい。これくらいは大臣、原案どおりじゃなくて修正してもいいのじゃないでしょうか。大した金額ではないでしょう。今お話にありましたとおりでございます。時間がどんどん迫ってまいりますので、問題の詰めはまた日野さんや上西さんがおられますから、私はこうした皆さんの御論議にゆだねたいと思います。 さて次は、御主人が亡くなられた後、一時金でくれるのだからというお話であります。しかし、たんなど一緒に長い間、何十年と苦労してきた奥さんに、やはりその立場を大事にしてあげるというのがこれまた政治の大事な一つのポイントだと私は思うのです。だんなが亡くなった、一時金でぽん、これで終わり、これではどうも心がこもっておりません。むしろやはり制度的に仕組みまして、少なくとも掛金の残りの部分相当額については、だんなに先立たれて悲しみに暮れる奥さん方にその権利を与えるべきではないかと私は思うのです。そういう意味では、寡婦年金であれ遺族年金であれ、名目はどうでもよろしゅうございますが、これはぜひ温かい心の通った制度にする一つの大事な、いわゆるねらい目として私は問題提起をしたい、提案をしたい。 ところで局長、ここ数年、経営移譲年金にしても老齢年金にしましても、御主人に先立たれたという事例としては何件ぐらいおありなんですか。
○井上(喜)政府委員 正確な数字ではございませんけれども、年金受給者では年間で約四千名の該当者がいると思います。
○島田委員 つまり四千人の寡婦、未亡人ができたということであります。もうこの年齢になったら、息子たち夫婦はしっかりとおばあちゃんの面倒を見てくれる。それは老後の心配というのは、それなりに親の面倒を見る責任が子供にもありますから、それはあると思いますよ。しかし、さっき僕が言ったように、うちのおふくろももう十年前に亡くなりましたが、悲しそうにしていたあの姿を、顔を、今も私は鮮明に思い浮かべるのです。せめて寡婦年金制度だって、それこそ大した金額じゃない、二十億くらいあればいいのです。二十億から三十億がらみでこの奥さん方に悲しい思いを味わわないで老後を何とか暮らしていただけるということだったら、実に安いものではないですか。これもだめですか。
○井上(喜)政府委員 確かに今お話しになりましたその案での所要額は六十一年度では二十七億円ということでございます。せっかくの御質問でつれない御答弁ばかり申し上げて申しわけないわけでございますが、農業者年金といいますのは、たびたび申し上げますように、国民年金の付加年金として仕組まれ、かつまた農業構造の改善ということを目的にした年金でございまして、そういう年金にさらにこのような年金を仕組んでいくということは非常に難しいわけでございます。したがいまして、今回の改正では死亡一時金の支給対象を拡大するということを最大限努力いたしまして、いたした次第でございまして、その点ひとつ御理解のほどをお願いいたしたい、そのように考える次第でございます。
○島田委員 本当につれない御返事でございまして、最後になりましたが、国庫負担の問題についてお尋ねをしたいと思います。 これもまあえらい切り下げるわけですね。切り詰めるわけであります。現行の保険料の十分の三、経営移譲年金に対する三分の一、これやそれや合わせますと、合計で四六%の財政切り詰めでございます。これは大蔵省、本当に喜んでいるでしょう。何でも切ることが行政のすべてであるかのごとき感さえ私は持ちます。 そうでなくても私は、昨年の大臣御就任のときの初めてのこの場のやりとりで、防衛予算、もうあごにつかえてきましたから、もう間もなく農林予算恐らく逆転ですよね。これだけやれば、農林予算はどんどん切り詰められて、黙っていたって防衛費の下になってしまうことは間違いないわけです。それでいいのだろうか。こんな農政で本当に大丈夫なのか。大臣のお話やお考えを聞かしていただくたびに、私の不安が消えるばかりか、一層募るばかりであります。 その上に、またぞろ農災法に続いて国庫負担の大幅切り下げを図ろうとする農業者年金、せめてこれぐらいは最後のとりでで大臣踏ん張ってもらえなかっただろうか。また、踏ん張ってもらいたいものだ。農業者年金そのものはいずれにせよ百年、二百年大丈夫な制度ではないです。私どもよくそれはわかっているわけであります。しかし、それを大丈夫にさせるかどうかは、やはり政策的にどんどん農家が切り詰められて、追い詰められ離農してきて、資格要件を持った農家がだんだん農業の世界からいなくなっているわけですから、絶対量が不足している。そういう中で一定の制度をもたせようとしたら一体どうすればいいのか。 あなた方は政策的に農家を追い出したわけです。被保険者、つまり保険加入資格要件を持っている農家はいなくなっている。それじゃ、その分を国費で抱いてフォローアップしなかったら、これは制度がもたぬのは当たり前じゃないですか。片っ方で追い出しておいて、片っ方で国費の投入を切り詰めていく、切り捨てていくといったら、こんな制度もう何年もたたぬで破綻しますよ。間違いないわけであります。こういうやり方をしているというのは、いわゆる政策上の極めて大きな矛盾ではないのでしょうか。その矛盾を抱え込んだまま私たちはこの法律よしとして賛成するわけにいかないのは当たり前でしょう。 六十一年度予算、もう間もなく始まります。これは大臣ひとつ頑張っていただきたいという意味も込めて、何でも切り詰めればすべてよし、私はそれは農林関係予算としてはいただけない。人の命を預かっているという大事な任務、意識をお持ちなら、国の責任だってきちんとしてもらうということでなかったら、整合性ある政策推進とは言えないのではないでしょうか。そのことを厳しく指摘をして、大臣の所信を伺いながら、少し時間が早うございますが、私はここで終わりたいと思うのです、いかがでしょうか。
○佐藤国務大臣 島田先生にお答えします。 お話聞きまして、私も母が八十九歳でございまして、実は年金をためては孫にやる姿を見ております。そんなことで、先生のおっしゃる意味はよく理解できる、倍としては忍びないものがあるのですけれども、農業者年金制度というのは、今も言っているとおり、農業者の老後生活の安定のみならず、農業経営の近代化及び農地保有の合理化を目的とした政策年金であります。そんなことで、国民年金等の他の公的年金に比べ今まで高率の補助が行われておったところでありますが、一方、先生御存じのことでございますが、現下の農政におきまして農業構造の改善を促進することは極めて重要であることにかんがみ、また今後農業者年金の政策年金としての役割を一層高めつつ、政策効果に応じた国庫補助が行われるよう努力してまいりたいと考えております。
○島田委員 ぜひひとつ、我が党が提起しております修正案などを十分御検討いただきまして、将来に悔いのない制度の完璧な前進に向けて役立てていただきますようお願いをしながら、私の質問を終わりたいと思います。
○今井委員長 次に、日野市朗君。
○日野委員 今大臣に伺っておりますと、情において忍びないがということであります。私も、情において忍びないところか、実はこの法案についての質疑をやるのがまことに気が重くて、実は私この質疑はパスしようと思ったのでありますが、一人どうしても都合が悪くて、あなたやってくれと言うものですから、私もここに立ちました。いまだに非常に気が重い。 それは、おっしゃることはわからないではないのですよ。いろいろな厳しい状態でやっておられる御苦労は歩といたします。しかし、それと同時に、現実に今大臣が言われたように、情において忍びないと言われるその忍びがたさというものは私自身もひしひしと身にしみて感じておりますし、じゃこの先どのような展望が開けてくるのかということになりますと、おまえさん考えてみな、こう言われると、これもまたできない。ここは非常に豊富な情報を持ち、いろいろな組織を持っておられる皆さんにやっていただくしかないわけでありますが、みんなで同じ痛みをきちんと受けとめるということも必要でありますし、痛みを受けとめているだけではだめなんで、これは先に進まなければならない、そういう立場から質問をいたしたいというふうに思います。 社会保障制度審議会の答申、これは昭和六十年の三月一日に厚生大臣と農林水産大臣にあてて出されたものでありますが、私もこれを目を通させていただきました。かなりきついおしかりでありますね。それと同時に、これは社会保障制度審議会も随分勝手なことを言うものだ、それから国民年金審議会の意見書、これもかなり勝手なことを言うものだというような思いもあります。 というのは、この農業者年金の制度の発足に当たって、それぞれこの審議会がかんでおりますね。そして、政策年金としてこれを位置づけることについての一役を果たしたことは、これは間違いないのであります。しかし、それはそれとして、これを見てみますと、まず社会保障制度審議会の答申でありますが、本制度については、本審議会は、これまで繰り返し社会保障制度としてのあり方からみて疑念を述べてきたのだ、こう書いております。今までこの社会保障制度審議会から出された疑念というようなものはどのような点であったのか、ここでちょっと振り返ってみてもらいたいというふうに思います。
○井上(喜)政府委員 お答えを申し上げます。 社会保障制度審議会の御意見は、この三月にいただきましたもののほかには、過去二回だと思いますが、主たる御意見をいただいているわけでございますが、一番最初この年金制度が発足いたしますときにいただきましたものに、以下のような内容の答申があるわけでございます。「たとえ国の農業政策的要請があるとしても社会保障制度としての年金制度のあり方になお疑念が残る点がある。とくに国庫負担その他の点において他の年金制度に及ぼす影響も大きいと思われるので、その運用にあたってはとくに慎重を期せられたい。」ということでございます。 この当時問題になりましたのは、一つは年金制度として将来とも成り立っていくのかということでございます。年金の加入者が減少していく、年金の受給者がふえていく、こういう傾向がある期間続くわけでございます。そういったことで、年金制度が継続的に維持できるのかどうかというような点がありましたのが第一点でございます。 それからもう一つは、自営の人の年金といたしましては国民年金があるわけでございまして、その国民年金のほかにこの農業者年金制度というものをつくるということが他の自営業者に影響を与えるのではないか、こういった懸念があったようでございます。 それから第三点といたしましては、当時から公的年金制度の一元化といいますか統合化のようなことが検討されていたようでございまして、そういう時期にまた新しくこういう農業者年金制度のようなものをつくるというのはいかがなものであろうかというような御意見があったようでございます、 それから、答申の二回目の大きなものといたしましては、五十六年の二月にいただいたものでございます。この場合には、当時の制度の改正というのは「おおむねやむを得ない」という答申でございますが、その場合にも「年金保険という形態をとる限り、長期的財政見通しに立脚することが不可欠である。」こういうことで「近い将来、年金財政上ゆゆしい事態が生ずることは必至とみられるので、この際、農業者年金制度そのもののあり方について、抜本的検討を行われたい。」ということで、当時の一番大きな問題は、やはり長期の見通しといたしまして、単年度収支で赤字になり、さらに将来的には資産を食いつぶしてしまう、こういう状況が見込まれましたので、財政の健全化という観点に立って基本的な検討を行うように、こういった趣旨でございます。 それで、さらに今回、ことしの三月の社会保障制度審議会の答申につながってくるわけでございまして、基本的に制度の抜本的検討をいたしまして年金財政の確立を図るように、こういう趣旨のものと受け取っておりまして、この点私どもといたしましては、早急に今後のこの制度の安定運営のための基本的な事項につきまして検討していく必要がある、このように考えている次第でございます。
○日野委員 それほど詳しくおっしゃっていただかなくてもよかったのですが、御苦労をおかけしました。結局こういうことでしょう。つまり、加入者は減っていくのだ、受給者はふえていくのだ、こういうものが社会保障制度の年金としてそもそも成り立ち得るのかという疑問点は、最初から社会保障制度審議会では提示されていたわけでございましょう。いかがです。
○井上(喜)政府委員 制度の発足当初から、年金の加入者は減少していくということはある程度見込まれていたわけでございますけれども、発足後の今までの経過を見てまいりますと、発足後かなりの加入者がございまして、そういう加入者が現在受給権者になりまして年金を受け取っている、こういう状況にあるわけでございます。そういうことで、現時点におきましては、年金加入者に比べまして年金を受ける数の方が非常に急速にふえてきているような状況にあるわけでございます。 これからの見通しといたしましては、漸次加入と受給の関係が正常化してくると考えられますので、私どもといたしましては、今後、長期的に加入者が減少し、それと反対に受給権者がふえていくということではなしに、ある時点で加入者の減少がとどまりまして、また受給権者の方も安定をしてくるというように考えているわけでございまして、そういう意味におきましては、現時点におきましては年金財政の長期見通しは非常に厳しいものがありますけれども、一定の前提を置いて考えますと、将来ともそういったことが続いていくということには必ずしもならないのではないか、このように考えております。
○日野委員 この年金は、恐らくもう何度も何度もこの委員会でも問題にされたわけですけれども、佐藤総理が農民にも年金をというようなことを言いながら、実は換骨奪胎した制度が法律として成立してしまったという不幸ないきさつはあります。しかし、政策年金として、政策誘導を強く図るためにこの年金制度が誕生したという点を見ますと、私は、農水省は非常に大きな二律背反をやったのだと思うのです。そういう意味では、この年金自体が非常に鬼っ子的な性格を持っているものだと思います。 この年金がうまくなくなってくるファクターの中には、読み取り切れなかった非常に速やかな高齢化という問題がございましたでしょう。その点、私も同情しないではありません。この制度が発足した当時よりはすさまじいスピードで高齢化が進んだことは認められるのですが、何よりもこの問題点として私が挙げなくちゃいかぬのは、大体この制度が目的とした政策そのもの、つまり構造政策の推進というのが一つの大きな前提としてあったわけでございますね。構造政策が進んでいけば、農業者というのはいやでも減っていきます。そのための構造政策です。生産性を上げていく、大きな経営単位をつくっていく、こういうことが目的でございますから、そもそもこれは農家を減らしていく、そのためにこういう制度をつくったのです。そうすると、加入者はどんどん減っていく、これは当然のことだったのではないでしょうか。私は現在もその悩みは解決できていないと思うのです。これを解決する方策というのは私はあり得ないと思うのですが、いかがでございますか。 大体このような制度が、こういう二律背反性を抱えたままで成り立っていき得るものかどうか、私はそう楽観的には見ていないのです。この制度だけでこれが成り立っていくという可能性はございますか。
○井上(喜)政府委員 制度発足以来、現在までのところ加入者の数が減少をしてきているわけでございますが、ただ最近の状況を見ておりますと、ここ二、三年でございますが、加入者が若干増加をしてきておりまして、五十九年度におきましては三万人を超す加入者が出てきているわけでございます。 これからの見込みでございますが、私どもといたしましては、当分の間は年間三万人程度の加入がありまして、以後漸次減少してくるとは思いますが、二万人程度の加入者というのは引き続きあるのではないか、このように考えておりまして、そのような条件を満たすならば、今の受給権者の数の推移から見まして、確かに中期的にはなかなか難しい財政的な問題もございますけれども、この年金制度が同世代間の相互扶助ばかりでなしに、世代を超えました農業者の相互扶助によって成り立つ制度であるということを考えてまいりますと、今先生御指摘のように、加入者の方が全く減少していってその面から破綻が来てしまうのではないかというふうには、私どもとしては必ずしも考えないわけでございます。
○日野委員 五十九年度三万人の新規の加入者があったということについては、これは御同慶の至りと申し上げたいところでございますけれども、しかし、全体のバランスを見てみますと、これは受給者の方もどんどんふえていく、こういう傾向は断ち切りがたい流れでございますね。こういう中で年金の財政が非常に苦しくなってくるということになっていくのだろうと思いますが、この年金を政策年金として位置づけて構造改善に一役果たさせようと思ったところに一つの問題点があったのだろうと私は思う。 これは私はこの委員会でも何度も申し上げているわけでございますが、構造政策を強めていけばいくほど加入者は減ってくる、こういう相関関係を断ち切らなければならないのじゃないでしょうか。つまり構造政策、後でまた話題にしますが四分の一の格差ですね、四分の一カットなんということになりますと、これは構造政策は加速されることになるだろうなと私は思うのですが、同時にこれは加入者を減らしていく方向に流れる、こういうふうに見ておりますが、どうですか。
○井上(喜)政府委員 農業者年金が政策年金の性格を持ちます以上、一定の構造政策的な効果を上げる必要があるわけでございます。そのために幾つかの要件とか条件は設定しているわけでありますけれども、ただ、やはり農業の現状、農業者の現状というのがあるわけでございまして、こういう現状に立脚いたしました上で構造政策を推進していくことになるわけでございますので、余り現実離れをしたような条件等を設定することには問題があろうと思うわけでございます。 現に、今回、経営移譲をいたしました場合に経営移譲の相手方によりまして年金額に差を設けるわけでございますが、この差につきましても、各方面の御意見もお聞きし、また、経営移譲をする移譲者の老後の生活等も考えまして格差を設定したというような状況にございます。そういう意味におきまして、やはり現実的に構造政策を進めるという観点から制度を仕組んでいく必要があるだろう、このように考えている次第でございます。
○日野委員 どうも局長の御説明を聞いてもよくわからないわけでございますね。経営移譲をして、サラリーマン農家に移譲したら四分の一カットだということになりますと、これはサラリーマン以外のところに経営移譲の相手を探せ、こういうことを結局はおっしゃっているわけですね。そして、この経営移譲年金というのは本年金においては非常に魅力的なものとして農家の側としては受け取っておりますので、これが障害を受けるというようなことになりますと、障害を受けるというのは、そういう大きな魅力の部分が減ってくるということになりますと、この年金そのものに対する農家の側の受け取る感じというのは大分変わってくるのじゃないでしょうか。 きょうも午前中、日本大学の先生だったと思いますが、現実に特定農家に経営を移譲できないところが出てくるというお話をしておりました。私もそうだと思います。現実に私、今ふっと思いついてしゃべるのですが、数字はつまびらかではありませんけれども、日本の全農業集落において六十歳以下の働き手が一人しかいないという集落、これが全集落の大体二〇%ぐらいになっていると思います。それが一人ぐらいはいるというところも大体二〇%。もうかなりの部分が、農業を六十歳以下で、中核農家でやっていこうという働き手を失っている集落、これが非常に大きい数字になっていると私、認識をしているのです。 そういうところで、じゃサラリーマン農家以外の者に経営移譲を、こう言ってみても、これはかなり難しい。そして、そういうところに経営を移譲しようということになれば、勢い大農家にだけ経営は集積をされていく。実際上は、二兼どころか一兼農家ももう農業はやめてもらいたいという意思が明瞭にあらわれているように思うのです、いかがでございましょう。そういうのは農水省の真意なのかどうか。
○井上(喜)政府委員 現在、農村で高齢化が進行をしておりまして、六十五歳以上の老齢者が占めるウエートが非常に高まってきているのは御指摘のとおりでございます。最近、経営移譲を行います場合にも、ただいまお話しになりましたような事例が時々出るわけでございますけれども、私どもといたしましては、農協でありますとかあるいは合理化法人等を通ずるという方法もあります。その前に農業委員会等によりまして経営移譲の相手方を積極的に探すということをやる必要があろうかと思います。各方面の御協力を得まして経営移譲の適当な相手方を見つけるという努力を今後ともしていく必要があるし、これからも確かにそういう事態が多くなってくるということも予想されますので、そういう点、特に力を入れて努力をしてまいりたい、このように思う次第でございます。
○日野委員 大臣、今局長さんと私の間で、政策年金としての本年金についてのいろいろな話をしていた。私は、こういう構造政策を強めれば強めるほど農家の数は減ってくるのだ、そして加入者になる対象者も減ってくるのだ、こういう話をしながら、この農業者年金基金法の一条に言う大きな目的が二つあるわけでありまして、政策的な部分についてもう少し見直す必要があるのではないかということを今お話をしていたわけなんであります。 これは政策年金としてもうスタートを切ってしまった。本当はあのとき、スタートを切るときに社会党は対案を出しているわけですね。これは社会保障制度としての面に重点を置いた案を出していたのです。それが今どっちがいいか悪いかなどということを聞くことはよしましょう。しかし、これは本当に農業者年金として社会保障的な色彩をもっと強めるように将来を展望すべきではないかと私は思います。いかがでしょう。 今までいろいろなネックがありますよ。年金の運用については障害がありました。個々の点についていろいろ運用上の難しさがあったが、そういったものの多くは、政策年金であるというふうに烙印を押してそっちの面を強く推してきたところに多くの問題点があったのだ、私はこういうふうに理解しておりますが、いかがでしょうか。
○佐藤国務大臣 日野先生にお答えいたします。 今先生のお話で、途中からでございますが、農業者年金制度の発足時において日本社会党から国会に提出されました農民年金法案、これは農業者の老後保障に重点を置いたものであると承知しております。しかしながら、農業者と一般自営業者の老後保障は基本的には国民年金で行うことになっておりまして、農業者のみを対象として老後保障を目的とした制度を設け、これに高率の国庫補助を行う制度を仕組むことは基本的に非常に困難であると考えております。 なお、農業者年金制度は、経営移譲の促進と老後保障が密接な関係にあることに着目しまして国民年金の付加年金として仕組まれたものでございます。
○日野委員 そこのところばかりやっていますと時間がなくなりますから、私の希望としては強く申し上げておきたいのですが、それは国民年金に対する付加年金である、こんなことは百も承知です。こういう制度をつくって多くのところからいろいろな点を指摘をされて、多くの問題点を抱えながら今苦悶しているわけですね、この年金自身が。そういうときに、構造政策にまたさらにウエートをかけてこの年金をさらに苦しめるようなことのないように、特に希望をしておきたいというふうに思います。 次に、この年金の加入者をふやすためにいろいろの努力をされておられるということは私よく聞いております。 一つは若年農業者が加入してこないということでありましょう。四十歳以下の人でありますと一五%やそこらしか入っていないということになっておりますが、何でこうなっているのか。これは午前中もちょっと議論がありましたし、いろいろな論議が出ましたけれども、原因を分析することは大事なことでありますから、農水省は若年加入者が伸びない理由は何と何と何と思っておられるか、もう一度正式に述べてください。
○井上(喜)政府委員 現在の未加入の状況でございますけれども、五十八年十月一日現在で見ますと、当然加入資格のある者の未加入者が七万四千人、それに任意加入資格のある者の未加入者が十七万人ということで、総数で二十四万四千人でございます。加入対象者が百十七万ございますので、その約二一%が未加入者になっている状況であります。 この未加入の理由でございますが、これはいろいろあろうかと思いますけれども、譲受後継者に対しまして農業者年金基金が調査した結果がございます。それによりますと、加入するのにはまだ早いというのが六一%、それから農業経営の将来が不安なので加入しないというのが一二%、それから保険料が高いとする者が九%、その他が一八%となっております。これは譲受後継者でございますけれども、大体こういったところが全体的に見た理由になっているのじゃないかと考えております。
○日野委員 そういった理由は当たらないではないのだと思いますが、非常に抽象的なのですね。私なんかから見ておりますと、農業の将来に対する不安というのは非常に大きなものであろうと思われますね。農業の将来、自分の農業経営の将来への不安、これを取り除いてやるということをやらなければふえないものでございましょう。そうしますと、これはもう農業全体を包む環境の問題が出てくるわけでございますね。こういったものに国の農政が積極的にこたえていかなければ加入者はふえないということになりはしませんか。 さっきからも論じられておりますけれども、現実に経営移譲をするにしても、第三者に移譲するのはわずかに一〇%でございましょう。それから後継者に所有権を移転しているというのは大体二〇%ぐらい、そのほかは使用収益権の設定でございますね。これは、農民の方が、経営移譲に当たってもよっぽどよく物事を見ておりまして、自分の身を守る姿勢をちゃんととり続けている。これは若年の加入者がふえないということと同じ平面で見られると思うのですね。やはり農業を営む者に対する安心感を国が与えていない、こういうところに最大の問題点がある、こうお考えになりませんか。それは四十になってから入ればいいやと言う人もいるでありましょうし、それから掛金が少し高いなと言う方もいるでありましょう。しかし一番根本的に考えなければならないのは、安心して農業を営めるような国政、国際、そういうところにおける環境だと思う。 これを是正していく方途となりますと、ここでわずかな時間で論じられることでも何でもないけれども、これを切り開いていくための積極的な姿勢が私は農水省に見られないような気がしてならないのです。この間、金融の話でもそれから農業共済の話でも私はこの点質問しましたけれども、私はもっと頑張ってもらいたい。そうでなければこの年金はだめですよ。情において、それこそ叫びたい、ここでギャッと叫んで跳び上がりたいようないらいらした感じを持つのですが、そこの点についていかがですか。
○井上(喜)政府委員 やはり御指摘のとおり、農業を魅力のあるものとして若い者が受けとめまして農業に入ってくるということが基本だと思います。そういう努力は農林水産省全体としてやるべきことでございまして、まことにごもっともな御指摘だと考えるわけでございます。 ただ、加入者の状況を見ておりますと、発足当初は加入期間の特例でありますとかあるいは移譲年金の割り増し、かさ上げ等の措置によりまして相対的に高齢者が加入をするという傾向が強かったわけでございますけれども、最近の状況を見てまいりますと、三十五歳未満の比較的若い層が年金に入ってきているようになっておりまして、全体としてもそういう若い人たちの占めるシェアが高くなってきているわけでございます。今後ともこういう若い人たちの加入が促進されるような、そういう方向での努力が必要だと考えております。 ただ、最初にお話がございましたように、やはり基本的には農業を魅力のあるものとしていく必要があることは当然のことだと考えております。
○日野委員 それから女性の加入ですが、これは基幹的農業従事者数で見て三万七千人ぐらいが今加入している、こういうことですね。これもちょっとさっきから話が出ておりましたけれども、実際は女子が基幹的な農業従事者になっているという件数からいったら、これはもっともっと多いはずなんですね。むしろ実際に農業をやっているのは男子よりも多い。ここを何とかなりませんですか。女子が加入をできるという道を開くことによって加入者はかなりダイナミックにふえていくのではないかというふうに思うのですが。
○井上(喜)政府委員 現在の農業の実態といいますのは、女子が相当のウエートを持って農業に従事をしている状況だと思います。ただ、農業者年金の方は、経営の若返りでありますとかあるいは農地の細分化防止というような政策目的を持っておりますので、現に一定期間農業をやっているというような条件のほかに、土地につきまして一定の権利を持つ必要がございます。あるいはそういった後継者が必要でございます。御婦人の方はそういう点におきまして、そういう点といいますか、現に農業に従事をしているという状況ではありますけれども、地権等につきましてはそれを持たないというような現状があるわけでございまして、そのようなことから農業者年金に加入をしないというのが一般的な傾向だと思います。 ただ、逆に言いますと地権者であります場合には主婦が加入できるわけでございまして、兼業農家の妻の場合などには、夫から使用収益権の設定を受けまして農業をしているということで農業者年金に加入する道が開かれており、また、ただいまのお話のように三万七千人という方が加入をされているわけでございます。現在のような制度の仕組みをとる以上、やはりこういった要件は最低限必要な要件だというふうに考えるわけでございます。
○日野委員 女性の基幹農業従事者、これは二十歳から五十九歳まで百五十七万八千人いるわけですね。経済的な実質から見ればこの人たちが農業を担っているということが言えるのですね。一〇〇%なんというそんなことを言っているのじゃありません。経済的な実態から見たら大きな農業の部分を担っている。しかし一方は、農業について見ると世帯主義でございますね。農地法にしてもそれから農業者年金にしてもそうです。ここを何とか変えられないかと私は思うのですね。経済的な実態、これは決して農業者年金ばかりではなくて、農協法や何かについてもかなりいろいろ考慮してしかるべきではないかというふうに私は思っているのですが、本基金法の二十二条によると、要するに「所有権又は使用収益権」、これと結びつけて考えていくという考え方が一般的になっているわけです。 ここの結びつきというのは、今までの伝統的な手法からいいますと、ここを結びつけてきた非常に強い権利関係があった。それから、相続等をめぐる、また農地の細分化ということをめぐるいろいろな思惑が伝統的にずっとあったことは私もよく承知しております。しかし一方では、社会的な経済的な現実というものは、こういう「所有権又は使用収益権」という権利関係と乖離してきているということもまた私は指摘せざるを得ないのではないかというふうに思いますので、この二十二条ですね、これをもう少し手直しをする。これはかなり大きな手直しにはなるのだろうと思いますよ、ここでこういう資格要件を定めるということは、本法ばかりではなくていろいろ波及するところは多うございますから。しかしそれは、農水省はもう一度大胆に取り組みをやってみる必要があるのではないか、こんなふうに思っているのです、いかがでしょう。
○井上(喜)政府委員 経済的に見ますと、今お話しされましたように主婦が中心になりまして農業をやっているというような経営も間々あるわけでございまして、そういった形態がある程度増加をしてきているのじゃないかというふうにも考えるわけでございます。 ただ、今御提案になりました方向での制度改正ということになりますと、制度の基本に係る問題に触れてくると思います。果たしてそういうことでこういう制度が成り立つのかどうか、そこまでさかのぼって検討する必要が出てまいると思うわけでございまして、現行の法律第一条の「目的」からいたしますと、農地の細分化防止でありますとか経営の若返りということになりますと、どうしても地権、所有権なりあるいは使用収益権を持っているということが必要になってくる、それに係ってくると思うわけでございます。 御指摘の点は御指摘の点として十分検討いたしますけれども、どうもそういう方向での制度改正というのは非常に難しいものではないかというふうな感じを持つわけでございます。
○日野委員 この点は私もいろいろ検討を加えてみたいと思いますが、女性を加入させるということは私は非常に重要な点であろうというふうに思っておりますので、その点の指摘はしておきたいというふうに思います。 それから、経営移譲の場合の四分の一カットの問題について伺っておきたいのですが、経営移譲すればこのくらいもらえると思いながら今まで掛金をしてきた人が、経営移譲して楽になろう、楽になって年金ももらおうと思って営々としてやってきた人が、自分の息子はサラリーマンをやっている、サラリーマンでは四分の一カットよと言われたらどう思うと思います。これはまさに既得権の侵害になりませんか。
○井上(喜)政府委員 確かに、今まで同じような保険料を払ってきたわけでございますし、また年金額につきましても、移譲先が農業の専従者であろうとあるいはいわゆるサラリーマン後継者と言われる人であろうと同じ年金額を受け取っていたわけでございます。そういう意味からいいますと御指摘のような感じを持つ人もいると思うわけでございますが、農業者年金というのは経営移譲年金を中心に据えた政策年金ということでございまして、政策年金なるがゆえに高率の国庫補助もしているという状況にあるわけでございます。そういう制度の本来の趣旨に照らしまして、その趣旨により適合しているものに加算をしていく、そういうこともやむを得ない措置ではなかろうか、このように考えているわけでございます。この点につきましては、私ども政府部内でも慎重に検討いたしまして、既得権の侵害ということにならないように配慮したつもりでございます。 なお、もう既に御案内のとおり、この移譲年金の格差につきましては関係者の方の御意見を伺ったわけでございます。余り大きな格差をつけることは問題で、言ってみればそこそこの格差というのが関係者の御意見であったわけでございまして、我々といたしましては、老後の保障というようなことも考えまして、まず四分の一程度の格差であればその点も心配なかろうということでつけたわけでございます。 また、きょうの午前中の参考人の御意見にもございましたけれども、これは各地域によって若干異なっているところがあろうと思いますが、経営移譲年金を受ける人の後継者あるいは移譲先の人が農業者年金に入りまして年金を受ける方の一部の負担をするわけでございます。そういう場合と、移譲先の農業者がそういう負担をしない、つまり被用者年金等に入っておりまして農業者年金への保険料を払わない場合とでは格差をつけるべきではないかという意見もあったわけでございまして、そのような点も配慮いたしまして格差をつけたわけでございます。
○日野委員 私、さっきから感じておるのですが、皆さんちょっと政策年金だからと言い過ぎる。それで許されることと許されないことがあると私は思います。 この年金に加入することによって掛金を掛けるわけですね。その掛金を掛ける加入者と国の立場、基金の立場と言ってもいいですが、法律的にどういう関係になるのでしょう。これは政策年金だから許されるのだと言える立場にあるかどうか。私はないと思うのですよ。 これは、考えてみると契約ではございませんね、私人間のものではありません。しかし、国と加入者の関係は確かに公権力関係でありましょう、加入するときまでそうだ。しかし、一たん掛金を払い始めたら加入者と国との間には一種の対価関係が成り立つ、そう思いませんか。一種の対価関係が成り立ては、これはもうお互いに勝手なことはできないわけでして、私はそういう関係だと思うのですが、いかがでしょう。
○井上(喜)政府委員 農業者年金への加入というのは自由な契約関係に基づくものではございませんで、農業者年金法に基づいて当然加入する人は当然加入、任意加入する人は任意加入ということに相なるわけでございます。加入後の保険料なりあるいは年金の受け取り等につきましては農業者年金法の規定するところによって行われるということで、全体が年金法によって規制されることになるわけでございます。
○日野委員 ちょっと裁判例を調べてみたのですが、本法によるものはありませんでした。似たものとして、これは国民年金の問題ですけれども、東京高裁の昭和五十七年(行コ)第二四二号というのがあります。これはケースはまるっきり違いますが、ここに年金の法律関係について触れている部分があるのです。 それを読んでみますと、「拠出制の国民年金制度においては、被保険者の保険料負担と老齢年金等の給付はある程度対価的関係にあるから、この点からも、控訴人の右信頼は法的保護を要請されるものである。」と書いてある。つまり、今お互いに対価関係があって信頼関係がそこにできているのだから、その信頼関係は保護されなければなりませんよと書いてあるわけです。 さて、この四分の一カットを見てみますと、四分の一程度だとあなたはおっしゃるわけですが、三十五年間加入した場合における現行のものと二十年後の水準の比較をやってみると、その比率が六〇・二%になることはもう既に御承知のとおりです。そして、サラリーマン農家の方に経営を移譲するということになると四五%に下がってしまう。これは半分以下です。あなたは四分の一だと言うけれども、受け取る側にしてみれば、掛金を掛けて半分以下です。この裁判例を裁判に使うとなれば、厳密に言えばそれは事例が違うということになりますけれども、考え方としては正しいものを含んでいると私は思います。基金もしくは国と加入者との間は金を払うことによって対価関係ができ上がって、そこから信頼関係が結びついていると思うのです。これは重大な信義則違反じゃないですか。感想はいかがですか。
○井上(喜)政府委員 負担と給付という関係でございますので、いわゆる対価関係は成立はしていると思いますが、その具体的な中身につきましては、それぞれの個別法によってそれを決めていくべきものではなかろうかというふうに考えるわけでございます。 今回の農業者年金法の場合には、公的年金の制度改正の方向に即しました給付水準の適正化ということを改正内容にいたしておりますが、同時に、今御指摘になりました移譲先によりまして経営移譲年金に格差をつけるということをしているわけでございまして、そういう意味におきましては、いわゆるサラリーマン後継者の場合は二重の給付額の改定が行われることになろうかと思います。 そういう場合にも給付と負担の関係、その広い意味でのバランスといいますか、それは確保していく必要があろうと我々は考えているわけでございますけれども、それが直ちに期待権の侵害といいますか、現行法の、法律の趣旨に即していないということには必ずしもならないというふうに思います。むしろ我々といたしましては、改正案は現行法の趣旨に照らしましたところのものであると理解しておりまして、そういった点につきましても政府部内でも十分検討して結論を出したものでございます。
○日野委員 この関係が公権力関係に入るということは一つ重大な問題点を生み出すわけです。これは憲法上の問題が出てくるのではないでしょうか。同じ掛金をやって、そして経営移譲をやって——三つの種類に分かれるわけです。老齢年金しかもらえない人、経営移譲年金をもらえる人、それから四分の一カットされる人、この食い違い。本来、年金制度というのは平等でなければならないはずです。それは政策的な配慮が入ったって私はまるっきり悪いとは言いません。しかし、今数字を挙げたように、かなり大きいギャップがそこに出てくるということになりますと、憲法の平等原則から疑問が出てくると思いませんか。これは憲法上の重大な疑問が出てくると私はこの改正案を見ながら思った。 大体、本当は平等でなければならないのでしょう。しかも皆さんの側は、それは経営移譲すればいいじゃないですか、こうおっしゃる。サラリーマン以外の者に経営移譲すればいいじゃないですか、そういうことがやれるのだからいいのですよ、こうおっしゃるわけです。しかし、現実を見てみると、午前中の日本大学の宮崎俊行先生も言っておりました。現実にそういう農家に経営を移譲することは不可能な場合がある、例えば離島であるとか農山村というような例を挙げておられましたが、私もさっき言ったように、農山村落の場合にはもうやりたくてもできないという現状があるということはよく知っているのですのもうこれは法律の理屈ばかりじゃなくて、事実論としてそういう者が出てくるという指摘がある。そうすると、皆さんが言う経営移譲すればいいじゃないですか、サラリーマン以外の者にしたらいいじゃないですかという理屈は通らなくなる。そういう憲法判断が働くだろうと思いますね。私は、この点は憲法の平等原則に照らして大きな問題点ではなかろうかと考えているのですが、いかがですか。
○井上(喜)政府委員 現在の農業者年金制度におきましても、同じ保険料を払って受け取る年金が違う、こういう場合があるわけでございます。例えば法律の要件に適合いたして経営移譲いたしました場合には経営移譲年金が受けられますけれども、経営移譲をしなかった場合には農業者老齢年金しか受けられないわけでございます。 既にそういう差もあるわけでございますが、今回の改正は、経営移譲につきましてその対応が違う場合、しかもその場合に農業者年金法の趣旨により合うような経営移譲をいたしました場合とその他の場合につきまして格差をつけるということになったわけでございますけれども、この点につきましても、私どもの改正の中身が中核農家等のより望ましい経営に経営移譲が促進されるというような趣旨でございますので、法律の趣旨、目的からいってその範囲内に入るもの、このように考えているわけでございます。 憲法上の問題等も指摘されたわけでございますけれども、私どもといたしましてもそういう点については慎重に検討し、配慮いたしまして、現在の格差、四分の一とした次第でございます。
○日野委員 この点は、私が申し上げたことは恐らく局長及び大臣も全く理由のない立論とは考えておられないだろうと思います。私自身もそう思っておりませんし、かなりこれはリーズナブルな疑問点であると私は思います。この点を、私がこんなことを言っていたということをよくお考えいただいて、そして我々この点について修正の案を出しておりますが、この点十分お考えいただきたいと思います。 それから最後に、もう時間がなくなってきましたが、先ほどから言っております社会保障制度審議会の答申の一番最後の部分に「早急に本制度の趣旨、目的にまでさかのぼって、根本的な検討を行うことを強く要望する。」こう書いてあるのです。このところをどのように読んでおられるか、その点についての御意見を聞かせていただきたいと思います。
○佐藤国務大臣 日野先生にお答えいたします。 社会保障制度審議会の答申は、年金財政を健全に維持していくための制度のあり方について抜本的な検討を行う必要があるという趣旨であると考えております。 一方、農業者年金の年金資産は、昭和六十年度末におきまして約六千億円と見込まれております。当面の制度運営については支障はないものと考えておりますが、改正後の年金財政の収支見通しにおいては、昭和六十二年度末には単年度収支で赤字となり、この結果、積立金についても漸次減少していくものと見通されております。そのため、我が省といたしましても、給付と負担のあり方、経営移譲年金の支給開始年齢等の制度の基本的枠組みに係る問題等につきまして、今後部内に設けられている研究会等の場において十分検討を行うことにしております。
○日野委員 時間ですから終わります。
○今井委員長 次に、菅原喜重郎君。
○菅原委員 大臣にお尋ね申し上げます。 私は、保険料の大幅値上げとか年金の減額措置とかいうものには反対するものでありますが、しかし、我が国の農業者年金も昭和四十六年発足以来十五年を迎え、農村に定着していることも事実であります。政策年金として大臣はこの点どのような御評価をしているのか、まずお伺いしたいと思います。
○佐藤国務大臣 菅原先生にお答えいたします。 今、先生が御指摘のとおり農業者年金制度ができましてから約十四年を経過しております。その間、経営移譲の促進を通じまして、いろいろな効果の差はございますが、四つの大きな役割を果たしてきたと思います。その一つが農業経営の細分化防止、一つが中核農家の規模拡大、また農業経営主の若返りを進めるとともに、農業者の老後保障という役割を果たしてきたと思っております。
○菅原委員 私は、農地対策に対しましては、北欧のように農地の均分相続の禁止を法令化すべきだと考えておるものでございますが、この点、農業者年金法は政策年金として、今大臣がおっしゃいましたように農地の細分化防止とか中核農家の規模拡大とか後継者若返り対策上ではそれ相当の効果を上げているものとは思っております。しかし、現実には経営移譲の半数以上はサラリーマン後継者への移譲となっている、このことは問題でないかと思うわけでございます。この点について、政策年金としての趣旨からこの事態をどのようにお考えなのか、ひとつお伺いいたします。
○井上(喜)政府委員 後継者移譲でございますが、後継者移譲の移譲先にいわゆるサラリーマン後継者農家が多くなってきているわけでございまして、全体の後継者移譲の中に占める割合も五〇%というふうに多くなってきているわけでございます。 確かに、サラリーマン農業者といえどもやはり若い農家でございますので、それ相応の効果はございますし、また農地の細分化防止という点からいいましてもまたそれなりの意味はあるわけでございますけれども、やはり農業者年金法が目的にしております本当に経営能力のある若い人に経営を移譲していく、農地を渡していく、こういう点からいって問題があると考えるわけでございまして、農業者年金制度が政策年金といたしまして一層政策効果を発揮していくためには、こういった農業専従者であります農業者年金の被保険者等に対します経営移譲とそうでない移譲とについて年金額に差を設けまして、農業専従者であります農業者年金の被保険者等に対して経営移譲が誘導されていくという必要があると考える次第でございます。
○菅原委員 今後とも政策年金としての趣旨に沿った運営、実効性のあるような対策を進めていっていただきたいと思うわけでございます。 次に、農業者年金の給付水準はこれまで厚生年金並みの水準としてきており、今回の改正においても厚生年金並みとしておりますが、厚生年金の給付水準に比べ低過ぎるのじゃないか、さらに給付水準の基礎としている農業所得十三万一千円の算出根拠というものはどうなっているのか、お伺いいたします。
○井上(喜)政府委員 農業者年金の給付水準はこれまでも厚生年金並みということになっておりましたし、これからも厚生年金の給付水準並みということで考えているわけでございます。この厚生年金並みの水準といいますのは、農業者の平均的な所得でもって厚生年金に加入していたとすれば得られるであろう年金水準、こういうことでございます。具体的には、農業者の平均的な所得を厚生年金の算式に当てはめまして算定した基準といいますか水準、金額を確保する、こういうことになっているわけでございます。 確かに具体的な年金額について見ますと、経営移譲年金の額は現在の厚生年金の年金額よりは低いわけでございます。ちなみに五十九年三月末の時点で申しますと、六十五歳未満の場合には経営移譲年金月額が四万九千三百四十円、片や厚生年金の平均年金月額が十一万三千三百一円でございます。これは物の考え方は同じでありますけれども、農業者年金と厚生年金の平均加入期間が違っているということと標準報酬月額が違うということでこういった違いが出るわけでございます。今農業者年金の加入者の平均農業所得が十三万一千円であると仮定いたしますれば、厚生年金に加入いたしましても農業者年金加入者との年金額の差は出てこないわけでございます。 さて、その十三万一千円の積算根拠でございますけれども、これにつきましては従来から算定しております方法で算定したのでございますけれども、農家経済調査を基本にいたしました昭和四十六年度から五十八年度までの平均農業所得、それから昭和五十五年から五十八年の間に米麦の冷害等がございましたが、これの作況を一〇〇に補正をいたしまして出した農業所得、こういうものを基本にしまして推計いたしたものでございます。 推計の方法といたしましては、直線回帰の方式、片対数回帰あるいは三次曲線回帰、その期間の農業所得の平均というような方法で積算をいたしたわけでございますが、月額にいたしまして、最低が十二万円、最高が十三万一千円となったわけでございます。その最高値であります農業所得十三万一千円を採用いたしまして、今回の計算の基礎といたしました次第でございます。
○菅原委員 私は、この格差は農業と他産業との所得格差を解消しなければ基本的に解消することはできない問題だと思うわけでございます。そうなりますと、この所得格差をどのように解消させていったらいいのかという対策が問題になります。同時に、このことを抜きにして見ますと、今回の保険料改定は農家の負担能力から見て問題ではないのか。そういう点で、今回の保険料設定の考え方と、同時にこのことをお伺いしたいと思います。
○田中(宏尚)政府委員 農業と他産業との所得格差の解消ということは、農政にとりましても大きな政策課題でございますけれども、ここのところ食糧消費支出が伸び悩んでいるとか、農産物の需給が緩和しているというような状況にございますので、一般的に価格の引き上げによりまして所得の増大を図るということは残念ながら非常に難しい局面になってきておるわけでございます。 そういう状況の中で所得の拡大を図りますためには、何といいましても第一に経営規模を拡大して生産性を上げるということが急務なわけでございますけれども、こういうことと並行いたしまして、地域の実情に応じていろいろな作物を効率よく組み合わせるというような地域的な複合、あるいは消費者のニーズなり地場のいろいろな能力に応じて、特産物あるいは付加価値のついた生産出荷というようないろいろなものをつけ加えまして何とか所得の拡大を図っていきたいということで、行政といたしましてもそういうことにつきましてきめ細やかな指導なり支援を今後とも続けてまいりたいと思っております。
○井上(喜)政府委員 保険料の御質問がございましたのでお答えいたしたいと思います。 保険料の額は、年金給付に要する金額、それに資産を運用するわけでありますが、その予定の収入、それから国庫負担がございますのでその額を考慮いたしまして、将来にわたりまして年金財政の均衡を保つことができる水準に定めるというふうになっております。 今回の財政再計算の結果では、その平準保険料の金額は昭和六十二年一月一日現在で一万三千二百三十八円と、五十九年度価格でありますが算定をされております。これは、六十年現在の保険料の金額が六千六百八十円でございますので、その約二倍の水準になるわけでございまして、農家負担の能力を十分考える必要があるということで、六十二年の保険料を八千円水準にいたしまして、以後昭和六十六年まで毎年八百円ずつ段階的に引き上げる、こういうことにいたしたわけでございます。 この保険料が農業所得なり農家所得の中でどの程度の割合を占めるかということでございますが、農業者年金保険料を八千円に引き上げた場合には、年の負担で申しますと農業所得全体に占める割合は四・七%ということになるわけでございます。それから、農業者年金加入者は国民年金に加入しておりますのでその保険料を考えますと、夫婦二人で考える必要がございますし、また国民年金の付加年金に入るということも前提にする必要がございますので、そういうのを合計いたしますと月額二万二千六百円になるわけでございます。これも年額で年の農家所得の中でどの程度の割合かといいますと、五・一%というぐあいになるわけでございまして、確かに保険料の引き上げをお願いするわけでございますけれども、この程度の保険料は農家にとっても受け入れていただける、そういう可能な水準であるというふうに考えております。
○菅原委員 さらに、同一保険料を納めながら後継者によって年金額が異なるのはどうも農村の実態になじまないのではないかと思うわけでございます。これは政策年金的な趣旨から見てくると、当然こういうような対応になっていくのではないかということはうなずけるわけなんですが、公的年金的な配慮からこのことについてどのようにお考えなのか。お伺いいたしたいと思います。
○井上(喜)政府委員 現在の農業者年金制度の中におきましても、経営移譲をしました人と経営移譲をしなかった人の間には年金に差があるわけでございます。今回、経営移譲いたします場合にも経営移譲先によりまして年金額に差をつける、こういうことでございますが、政策年金の性格に照らしまして、よりその政策の適合度の高いものにつきましては従来の厚生年金並みということにいたしたわけでございます。 この格差につきましてはいろいろな考え方があろうかと思いますし、また本委員会で委員の皆様方からいろいろな御意見をいただいておりますが、私どもといたしましては、やはり政策年金といたしまして、より望ましい経営に移譲していくという方向に誘導していく必要があるということで、年金額に差を設けてする方法を考えたわけでございます。 その程度につきまして、これもかなり大きな差をつけるべきだという意見もございましたけれども、私どもといたしましては、老後の生活費の問題等勘案をし、かつまた農業者年金制度研究会の御意見等も伺って四分の一というような格差にいたした次第でございます。
○菅原委員 また、今回の改正で、サラリーマン後継者に経営移譲した場合年金額に差を設けたわけでございますが、この場合従来どおりの、差の生じない年金額がもらえる特定譲受者の範囲はどうなっているのか、まずお伺いしたいと思います。
○井上(喜)政府委員 今回、特定譲受者の概念を導入いたしまして、この特定譲受者に経営移譲いたしました場合に従来どおりの厚生年金並みの年金を給付することにいたしております。その特定譲受者の範囲は今後検討いたしまして政令で定めるというふうにしているわけでございますが、とりあえず現在考えておりますのを申し上げます。 まず、第三者移譲の場合でございます。第一は、農業者年金の被保険者、これは当然入るわけでございます。次に、農業に常時従事する者であって、農業者年金加入者と同等規模以上の農業経営を行っており、また被用者年金に加入してないこと、かつまた農業者年金の加入資格がないということ、さらには六十歳未満である、こういった要件を満たす農業者を考えているわけでございます。その次は、農業者年金基金、農地保有合理化法人、農業生産法人、農業協同組合等、地方公共団体とか畜産公社等の公益法人等を考えているわけでございます。それに、第三者移譲の相手方が二人以上あります場合には、経営移譲の相手方すべてがただいま申し上げましたような場合に該当するということが必要であるというふうに考えております。 それから後継者移譲でございますが、この場合には、第一は経営移譲時までに農業者年金の被保険者となっている後継者、農業者年金に入っている後継者ということでございます。第二は農業に常時従事する者でありまして、被用者年金に加入してないこと、次に、農業者年金の被保険者資格がない、これは親の面積が三十から五十アール未満の者等は被保険者資格がないわけでございますので、こういった要件をすべて満たす人でございます。 今考えているのは大体以上のような状況でございます。
○菅原委員 農業者年金の年金財政の安定を図るためには、未加入者の加入促進対策を図ることが重要な対策でもある、こう考えているわけでございますが、未加入者が加入しない理由を政府はどう考えているのか。また、加入促進に当たっては制度に対する不安を解消することが重要であると思うわけですが、どのような対策を考えているのか、まずお伺いします。
○井上(喜)政府委員 この点につきましては、先ほどもお答えしたわけでございますけれども、五十八年十月一日現在の未加入者数は、当然加入資格がある未加入者が七万四千人、任意加入資格のある者で未加入の者が十七万人、合計で二十四万四千人であります。加入対象者が百十七万人ありますので、約二一%の者が未加入者となっているということでございます。 未加入の理由でございますが、譲受後継者に対する農業者年金基金の調査でございますけれども、それによりますと、加入するのにはまだ早い、もうちょっと待ってくれというような者でありますが、これが六一%。二番目が農業経営の将来が不安であるというのが一二%でございます。それから保険料が高いという者が九%、その他が一八%というふうになっております。 年金基金を長期に安定していくためにはいろいろな方策が考えられますけれども、その一つは加入促進にあろうと思います。したがいまして、制度に不安があるということで加入を渋っているというような場合もあろうかと思いますが、そういう点については、まず制度の内容が十分理解をされてないということからくるものもありましょうし、あるいは年金受給者がふえるのにもかかわらず加入者が減ってきているので、どうも年金財政が今後悪化していくのではないかというような財政問題に関連すること、あるいは遺族年金がないといった制度的な問題に起因するもの等もあろうかと思います。 加入促進に当たりましては、こういった制度に対する不安感といいますか、不安に思っている原因に即しまして、そういった不安感を十分解消していく必要があろうと思います。そのためには農業委員会あるいは農業協同組合等の年金の業務の受託をやっております受託機関にお願いいたしまして努力をしていく必要があるわけでございますけれども、私どもといたしましても、そういった受託機関に対しまして、研修会等におきまして制度の仕組みとか年金の財政状況、それから保険設計の基本的な考え方等につきまして具体的に説明をしていきまして、こういう制度に対する不安感等を解消してまいりたいと思います。具体的な方法といたしましては、パンフレット等もございますので、パンフレットなり各種の広報誌等を通じまして、なるべく丁寧にこういった説明を打ってまいりたいというふうに考えております。
○菅原委員 農業の担い手である若い農業後継者に対する保険料、特定保険料についての補助を廃上したのは問題ではないか、私はこう思うわけでございます。また、農業委員会、農協は、複雑多岐にわたる事務を処理するため大変苦労しているわけでございます。業務委託費の引き上げ等、業務体制の整備拡充をも図るべきじゃないか、こう考えているわけでございますので、この点に対してひとつ国の対応をお伺いしたいと思うわけでございます。
○井上(喜)政府委員 保険料の拠出時におきます補助につきましては、当分の間行うということになっていたわけでございますが、今回の改正では、公的年金制度におきまして拠出時と給付時の双方に国庫補助を行っている例がないということ等から、拠出時補助を廃止したわけでございますけれども、かわりまして、急激な年金財政に対する影響を回避するということから、現行の経営移譲年金の給付時補助三分の一に六分の一を上乗せするという措置をとったわけでございます。そういうことの一環といたしましてただいま御指摘の特定保険料に対する補助も廃止をされることになったのでございますけれども、最近のような財政事情のもとでございますので、特定保険料というこれも一定の目的を持ったものでございますが、これだけを残して助成していくことが困難な状況になった関係からでございます。ただ、農業後継者の育成確保ということにつきましてはやはり重要なことでございますし、今後ともこういう点について配慮していく必要があるということで、この特定後継者の保険料につきましては、自主財源によりまして通常の保険料に比べまして約三〇%程度の軽減措置を講じているところでございます。 それから、年金の第一線業務でございますが、確かに農業委員会、農協等で複雑多岐な事務を処理していただいているわけでございます。私どもといたしましては、そういった委託業務が円滑に行われますように業務委託費の充実に努めてまいったわけでございますけれども、これを飛躍的に増額していくというのはなかなか難しい状況でございます。私どもといたしましては、所要の委託費の確保はこれからも努力をしてまいりたいと思いますけれども、同時に業務の委託機関の職員の資質向上を図るための研修制度の整備等にも努めてまいりたいと思います。 それから、最近の年金に関する相談業務の件数の増加というのがございまして、内容も非常に複雑多岐にわたっておりますし、専門的な知識を要するケースも多い、こういう状況になってきておりますので、昭和五十八年度から都道府県の農業会議でありますとかあるいは農協中央会に相談専門の担当者を設置いたしまして、年金に関する広範な相談需要に応じます農業者年金相談サービス事業を発足させてこういった需要に対応しているところでございます。今後とも委託機関の業務体制の整備充実につきましては努力をする必要がございますけれども、あわせまして事務の簡素化、合理化も図っていかなければいけない、このように考えている次第でございます。
○菅原委員 資格関係でございますが、後継者の資格条件で農業経営三年以上を一年以上に短縮することが要望されております。殊に、Uターン後継者の農業従事経験年数はぜひ一年にしてほしいという声が強いわけでございます。Uターン後継者は年も重なっておるわけでございますし、また必ず農業をもって生業としてやっていこうという決意で帰ってくるわけでございますので、何とか一年にしてほしいというわけでございますが、この点に関してはどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
○井上(喜)政府委員 経営移譲の相手方になります還流後継者等につきまして農業従事経験期間の短縮も各方面から言われているわけでございます。 現在の通常の後継者移譲の場合におきましては引き続き三年以上の農業従事経験を持つということが要件でございますけれども、還流後継者につきましては経営移譲時までに引き続き六カ月以上の農業従事経験を有し、かつ以前の期間と合算して三年以上の農業従事経験を有する、こういう要件を定めております。したがいまして、通常の後継者の経営移譲の場合よりもかなり要件の緩和がされているというふうに思います。また、合算して三年という農業従事経験でございますけれども、これも、還流後継者の場合は、一般の後継者と同様に大学とか高等学校の農業に関する学科を勉強していた場合はその期間、あるいは学生生徒または給与所得者として農繁期に休祭日だけ農業に従事をした場合というのがあるわけでありますが、そういった期間についても通算をするということになっておりますので、これ以上の緩和はいかがかと思うわけでございます。 経営移譲をする者の立場から見ましても、農業というような自然条件、気象条件を相手に経営をいたします場合に、非常に不安に思うのではないかと思うわけです。やはり三年とかあるいは四年、五年というような経験が普通だと思います。合計して三年、それから、引き続きまして六カ月というような条件というのは、経営を移譲する側から見ましても最低の条件じゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。
○菅原委員 この資格関係についてまた一つ要望だけしておきますが、実は婿、嫁の経営主の後継者指定要件についての問題でございますが、養子縁組の場合は問題はないわけでございますが、ほとんど、農村においては嫁は養子縁組というのはどうも慣例になっていない。それから婿の場合も、養子縁組をしない婿があるわけでございますが、このことを直系卑属に準じて何とか今後対象とする処置を講ずることができないか、ひとつ要望しておくわけでございます。 次に、今回の改正においては、農協の組合長等の在任期間が空期間通算されることになったわけでございますが、このことは市町村長まで対象とならないのかどうか、ひとつお伺いするわけでございます。
○井上(喜)政府委員 今回、農協なりあるいは土地改良区等の組合長に就任いたしました場合には、その就任期間につきまして、それ以前に加入しておりました農業者年金の期間と通算をする措置をとることにしたわけでございますけれども、基本的な考え方を申しますと、今度空期間を通算いたします。その団体の常勤役員といいますのは、農業者等が組織をしている団体でありまして、また、原則的にはその農業者等が組合長なりあるいは常勤役員になるというような団体の役員でございます。農業等と非常に密接な関係にある、農業の振興等についても直接関係のある団体の役員、こういうことを考えまして、その空期間通算の場合の団体の範囲を定めようとするわけでございますけれども、町村長の場合には、必ずしも農業者であるというのが原則であるとも申せませんし、また、農協の組合長等の場合は、推されましてやむを得ず引き受けるというような場合もあろうかと思いますが、町村長の場合は、そういう場合もあるかと思いますが、ケースとしては非常にまれなケースではないか、こんなふうに考えまして、今回の改正では一応、農協でありますとか土地改良区等の、そういった農林漁業者と非常に関係の深い団体の常勤役員に限ったわけでございます。
○菅原委員 次に、農業者年金の積立金の運用状況はどうなっておるか。農業者の保険料が積み立てられておりながら、これが農村へ還元されないということになりますと、どうももったいないことでございますので、農村還元を図っていただきたい。そのために、農業者年金基金の福祉施設等の設置など、そういう事業をこれでもって行えないか、このことについてお聞きいたしたいと思います。
○井上(喜)政府委員 農業者年金の積立金につきましては、これは年金給付の重要な財源になるわけでございますので、安全かつ効率的というのが運営の基本的な原則でございます。また同時に、農業者の拠出いたしました保険料を積み立てたものでありますので、農村還元にも意を用いていく必要があるというふうに考えております。 今、積立金の総額、これは五十九年三月末現在で押さえておりますけれども、五千四百四十二億円でございます。その内訳は農地の売買とか融資勘定への貸し付け、これは年金の加入者が農地を買うような場合でございますけれども、その場合に農業者年金基金が中に入りまして売買をいたしましたり、あるいはその農業者に融資をする、そういう事業でございますが、そういう貸し付けが四百五十億円ございます。全体の八・三%です。それから農林債券とか国債等の有価証券の購入に四千四百八十二億円、これは八二・三%でございます。それから三番目が預金とか金銭信託等でございますが五百十億円、九・四%、こういう内訳で運用しているわけでございます。 農村還元については、これは農地の売買勘定への貸し付けが八十七億円、それから農地等の融資勘定への貸し付けが三百六十三億円ということで、これは、先ほど合計いたしました四百五十億円というのはこれでございます。それから農林中金の発行します農林債券の購入が二千百六十四億円ということで、全体を合計いたしますと二千六百十四億円ということでございまして、積立金総額の相当部分が農村に還元されているというふうに考えるわけでございます。 それから、法律で年金基金の業務といたしまして、福祉施設の運営等の業務がございますけれども、これにつきましては、やはり長期に資金を寝かせることになるわけでございます。私どもといたしましては、法律上、そういう業務が基金の業務であるということは承知をしておりますけれども、最近のような財政状況でございますので、福祉の方にまで手を伸ばしていくということについては、これは相当慎重に考えていく必要があるだろう、こういうふうに考えております。
○菅原委員 この積立金の運用につきましては、地方自治体への融資等も考えられるわけでございますので、ひとつ要望事項として要望しておくわけでございます。 次に、後継者の使用収益権を設定した農地等については、特定処分対象農地等として厳密な管理が行われ、地域の農地流動化を進める上で支障となっていると思われるわけでございますが、その支給停止要件の緩和についてどのようにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。
○井上(喜)政府委員 特定処分対象農地となりましたものにつきましては、経営移譲後、さらにだれかにそれが貸される、こういうことになりますと、経営移譲年金の停止要件に相なるわけでございまして、これが農地の流動化の上で支障になっているといいますか障害になっているというような御意見が多いわけでございます。したがいまして、これは法律事項じゃございませんで政令事項でございますので、今回の法律が成立いたします場合には、その関連の政令改正のときに、あわせまして農地の流動化を促進するというような観点から改正をいたしたいと思います。 具体的にはこれから検討していくことでございますけれども、例えば農用地利用増進事業等によりまして第三者に権利を移転をしていくような場合等については経営移譲年金の支給停止要件にはしないというようなことを考えているわけでございます。
○菅原委員 昭和五十八年度から相談サービス事業を実施していると聞きますが、その実施状況がどうなっているのか、また、この相談員を市町村段階にまで置くことができるのかできないのか、このことについてお伺いいたします。
○井上(喜)政府委員 五十八年から実施しておりますサービス事業につきまして中身を御説明いたしますが、農業者年金相談員の設置数は百四十一名でございます。それから、農業者年金相談指導員の設置数が三人、こういうことになっております。 この農業者年金相談員でございますけれども、これは都道府県の農業会議あるいは中央会段階に設置をしておりますし、それから農業者年金相談指導員につきましては全国段階、全国の農業会議所それから全国の農協中央会に設置をいたしておるわけでございます。前者が具体的な年金業務の相談、後者がそういう都道府県の相談員につきまして教育指導をする、こういうことをやっているわけでございます。予算といたしましては、五十九年度予算で二億六千万程度、こういうぐあいに相なっております。 ただいまお話がございましたように、これを農協、単協のレベルまでおろしていくということにつきましては、経費の点もなかなか大変でございますので、現在はこういう全国段階から都道府県の段階におきまして設置するということにいたしております。相談の中身についてもいろいろな中身があるようでございまして、中には専門的な質問もあるわけでございます。そういう点を考慮いたしますと、財政的なこともございますけれども、まずまず今のような状況で対応をしていくのが適当ではないか、このように考えているわけでございます。
○菅原委員 次に、離農給付金は昭和六十五年五月に期限切れとなっているわけでございますが、どのような措置を考えておるのか。 さらに、年金法の充実強化のためには農村婦人の年金への加入の道を開き、婦人がもっと加入するようにすべきではないか、こう考えているわけでございます。この点に対する政府の見解をお伺いしたいと思います。
○井上(喜)政府委員 離農給付金でございますけれども、これも先生御案内のとおり、この制度発足当初におきましては、農業者年金の加入対象から除外されておりました高齢者等を救済するということと経営規模の拡大に資するということで、十年間という期限を切りまして発足いたしました制度でございますけれども、昭和五十五年五月に、構造政策上の要請もあるということで、安定兼業農家の保有する農地を中核農家に集めていく、こういうことに変更いたしまして、これを十年間延長したわけでございます。そのときに、これは離農給付金でございますが、一件につき六十二万円という定額の補助にいたしております。 なお、これは全額国庫負担ということでやっているわけでございますが、その後の運用状況を見ますと、それを譲り受けた方の経営規模の拡大にかなりつながっておりまして、具体的に見ますと北海道の道北などでは十二ヘクタールから十五・七ヘクタールというような規模拡大が行われているような状況でございます。内地等の方では二・四から二・九ヘクタールというふうに、今、経営規模を拡大する人がそういった農地を取得しているわけでございます。 そこで、お尋ねは恐らく、これは六十五年五月で期限切れになるわけでありまして、その後の扱いをどうするのかというような御趣旨かと思いますけれども、この制度が構造政策の中で果たしておる役割を十分考えながら、その時点までに十分検討いたしましてその後の取り扱いについて結論を出したい、このように考えております。 それから、農業に専従するといいますか農業をやっております主婦に農業者年金の加入資格を与えるべきではないか、こういうことでありますけれども、この年金の主たる目的が経営者の若返りでありますとか農地の細分化防止というような、つまり土地の権利に直接関連をした制度として仕組まれているわけでございまして、どうしても経営主であります地権者あるいはその後継者がこの制度の対象になるわけであります。そういうことで、ただ一般に農業に従事しているということだけでは主婦は加入できないといいますか、そういう主婦に加入資格を与えるのは非常な問題があるわけでございます。 もっとも、現行制度の中におきましても、夫から使用収益権を得まして農業に従事しております主婦の場合には農業者年金に加入する道が開かれておりまして、現に全体の年金加入者の中で四%ぐらいのウエートを占めている、三万七千人ぐらいの加入者があるわけでございます。
○菅原委員 農業者年金制度の充実を含めまして農村の高齢者対策を充実していかなければならない、今そういう事態にもきているわけでございますので、この対策につきましても政府の見解をお伺いしたいと思います。 さらに最後に、日本の農村の立たされている現状からして、農業者の意欲が今減退しております。しかし、日本農業を魅力あるものとしてぜひこれを再建していかなければならないのが私たちの使命でございますので、どのような施策を展開していくか、大臣の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○井上(喜)政府委員 今回の農業者年金制度の改正は、公的年金制度の改正の方向を踏まえて改正をいたすことにしておりますが、同時に構造政策をさらに効果的に誘導していくための措置もその中身といたしているわけでございます。 農業者年金制度も一般の年金制度と同様でございますけれども、最近の高齢化に対応していく必要がございます。年金の発足当初に予想しておりました以上のテンポで高齢化が進んできているわけでございますし、また兼業化につきましても、当初予定しておりました以上に兼業化が進んできておりまして、この年金を受けます後継者等についても、当初の予定とはかなり違ったものが出てきているわけでございます。我々といたしましては、この年金制度発足十五年ということで、かなり農家の間には定着してきている制度でございますし、それだけに今、長期にわたりまして安定した運営がどうしても必要になってきているわけでございます。 そういうことで今回、給付と負担の適正化を図る措置をとったわけでございますが、実質的に給付額が引き下がってくるわけでございますけれども、老後の保障という点につきましても、他の年金制度等も考慮いたしまして、我々としてはできるだけの配慮はしたつもりでございます。実質的に厚生年金並みという、そこの原則は維持できたものと考えているわけでございまして、確かに制度全体が相当変わることになっておりますけれども、今申し上げましたような制度の根幹というのは維持していると考えておりますので、その点ひとつ御理解を賜りたいと考える次第でございます。
○佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。 先生のおっしゃった魅力あるものとしていくためには、やはり農業の体質強化と農村社会の活性化を進めることが非常に大切であると考えております。そんなことで、私は就任以来、三つの施策を中心にやりたいと思っております。 その一つは、技術や経営能力にすぐれた中核農家の育成や需要の動向に応じた生産再編成等により、生産性が高く、土台のしっかりした農業の実現に努める。また次には、二十一世紀に向けてバイオテクノロジーや情報技術などの先端技術の開発、活用に力を入れる。また三つ目には、農業に携わる方々が意欲と生きがいを持てるように活力ある村づくりを進めていく考えでございます。
○菅原委員 以上をもって終わります。
○今井委員長 次回は、明二十二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時五十二分散会