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102回国会衆議院1985/06/04

商工委員会流通問題小委員会 第1号

発言数
8
登壇者
4
会派数
1
開催日
1985/06/04

会議録

上坂昇日本社会党・護憲共同

○上坂小委員長 これより商工委員会流通問題小委員会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  先般、私が流通問題小委員長に選任をされました。小委員各位の格別の御協力をお願い申し上げます。  ただいまから流通問題に関する件について調査を進めます。  本件に関しまして、通商産業省から「流通業の動向と流通関係予算」、経済企画庁から「流通政策の現状と課題」、公正取引委員会から「流通行政の現状と課題」、農林水産省から「食品流通の現状と施策の概要」の資料が提出されました。それぞれの資料の配付をもって政府からの説明にかえさせていただきます。  それでは、本日の議事に入ります。  去る五月三十日は、消費者保護基本法の制定を記念する消費者の日でございました。同基本法が昭和四十三年に制定されましてから満十七年が経過したわけであります。この間、消費者保護行政は徐々に整備されてきてはおりますが、消費者をめぐる商取引のトラブルは依然として後を絶たず、その態様は、取引形態の多様化等に伴ってますます複雑化、深刻化する傾向にすらあると言うことができます。特に、最近現行法制の盲点をつきました詐欺まがいの悪質な商法が横行し、高齢者、主婦などを中心に多くの被害者を出す等深刻な社会問題となっております。  そこで、本日は「悪質な商取引の実態と対策について」と題しまして、参考人から御意見の開陳をいただき、意見交換を行い、その実態について認識を深めるとともに、対策のあり方について検討を行うことといたした次第であります。  本日は、参考人として日本弁護士連合会司法制度調査会第四部会商品先物取引に関する小委員長大深忠延君、悪徳商法被害者対策委員会会長堀次夫君及び東京大学法学部教授竹内昭夫君に御出席を願っております。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。最近の悪質な商取引の実態と対策について忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、堺参考人、大深参考人、竹内参考人の順でそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただきました後に、参考人に対して、速記をとらずに懇談の形式で質疑を行いたいと思います。  なお、念のためでございますが、政府当局も出席いたしております。  それでは、まず堺参考人にお願いをいたします。  御着席のままで結構です。

堺次夫悪徳商法被害者対策委員会会長

○堺参考人 御紹介いただきました悪徳商法被害者対策委員会会長の堺でございます。  庶民をえじきにする悪徳商法の摘発、その撲滅運動、被害の未然防止運動、被害者の被害回復等の指導に携わって、ことし十二年目になります。一貫して、もうけ話に絡む利殖勧誘詐欺商法を追及してまいりましたが、昨今、この商法は全国的に蔓延し、それとともに被害が増大しております。  中でも、全く野放し状況にあるパラジウムの私設先物取引市場を舞台にした取引、あるいは規制する法律があっても規制する対象を政令で一つ一つ追加しなければいけないことから、政令で指定すれば逃げていくというイタチごっこを繰り返している海外商品先物取引といったようなものが被害をまき散らしておりますけれども、本日私は、その中でも特別被害が多い、いわゆる金の現物まがい商法、別名ペーパー証券商法とも言われておりますが、これとマルチまがい商法の問題のこの二つに絞って実態を申し上げ、早急な取り締まりと対策をお願いする次第であります。  まず、金の現物まがい商法でございますが、お手元に御案内のように、この手口は五十六年の春から始まりまして、一人暮らしのお年寄りあるいは老夫婦、主婦等を電話で「金を買いませんか」あるいは「利殖に関心ありませんか」と言って勧誘し、客がうなずきますと早速セールスマンがやってきまして、なかなか帰らない。一たび部屋に入りますと三時間はざら、寝たきり老人のところに五時間半居座ったという例さえございます。一晩泊り込んだという例まであるぐらいの強引な勧誘でありまして、金は大変もうかるという話をした後、客がその気になりますと、お客さんが金(きん)を持っていても盗難に遭うおそれがある、あるいは金(きん)そのものは利息を生むことがないから、それを我が社で運用してあげましょう、五年契約にすれば一年に一五%の利息を上げます、銀行利息よりも、貯金の利息よりも、ビッグよりもワイドよりもよいと言って一枚の紙を置き、お金を巻き上げていきます。  形の上では、客は金の購入をし、会社と賃貸借契約をする形になるのでありますが、こういった一連の会社は、会社が言うだけの金そのものの保管がありません。そしてまた、置いていく一枚の預かり証の紙は担保保証力が全くありません。無論のこと、会社が、金地金の購入先、保管場所、その運用先、運用方法等も明らかにしておりません。私企業であるわけですから、当然気になりまして客が解約を申し込みますと、高額の違約金を取ります。満期が来たものは、五年物の場合まだ来てないものもありますけれども、一年物の場合は満期が来ても返さない、強引にまた契約の延長を図る。こういった業者が、豊田商事株式会社を筆頭といたしまして、全国に十数社存在いたします。  最近では、金の現物まがい商法どころか、ゴルフの会員権をだしにしたゴルフ会員権現物まがい商法といったような商法まで生まれております。鹿島商事という会社でございます。  この被害の恐ろしいところは、私どもの方に訴えられた数字から見ますと、年々七十歳以上の被害比率が増大しておりまして、昨年は三三・一%でございましたが、ことしは三七%に達しております。最高齢者は、これまで、男性九十五歳、女性が八十四歳でございまして、当然のことながら老人性痴呆症の方もいらっしゃいますし、精神障害者であるとか先ほどの寝たきり老人であるとか、そういった方々がこのえじきに遭っているわけであります。  ここに、今、豊田商事株式会社の被害者の訴え状がございます。一人暮らしの七十五歳のおばあさんでございますが、こういうことを訴えております。お金を取られたのは五十九年十一月二十日、百二十万ばかり取られております。   子供たちからいただいたお金や自分がこつこつためたお金を全部出してしまって、何一つ買うこともできず、食べるにも節約しなくてはならなくなりました。   ばかな取引をしたと長男や次男からもしかられ、今は口も余りきいてくれません。毎日寂しい思いをしています。こんな苦労はたくさん。やめさせてください、お願いいたします。   憎らしくて憎らしくていっぱいです。こんなインチキ会社が早くなくなればよいと思います。こんな会社がある限り毎日何人かの人が泣かされるのかと思うとやりきれません。こういう訴えは一件でありませんで、全国から今殺到している状況にあります。末端における外務員の検挙事件は数件等ございますけれども、このシステムそのものはなぜ詐欺にならないのか。金(きん)を持ってもいない、金(きん)をだしにして、一般大衆から現金を集め、それを各種の投資、投資資金に使っている。自社の経費で半分ぐらいを使っているといった分析も出ております。  豊田商事株式会社に関しましては、六十年五月二十二日の大阪地裁刑事公判におきまして累積赤字が四百十七億円に上るというようなことが明るみに出ております。その時期から豊田商事は中途解約の受け付けをストップをいたしました。満期が来たものについても六カ月間払っていないといったものもございます。弁護士を立てた示談金も支払いがストップしております。にもかかわらず、依然としてもうかると言って勧誘すること自体これは詐欺ではないか、なぜ詐欺罪で摘発できないのか、これを私は強く訴えたいと思います。もし詐欺罪あるいは出資法違反ということで摘発できないのであれば、当然新立法を早急につくっていただいて、こうした悪徳商法を根絶やしにしてほしいと考えるわけであります。  続きまして、マルチまがい商法の問題でございますが、御承知のように、昭和四十年代後半から五十年代初めにかけまして自殺者を十人も出したマルチ商法というものは、昭和五十一年に制定された訪問販売等に関する法律で規制されております。当時通産省は、この法律が施行されれば悪質なマルチ商法組織の残存する余地は全くなくなる、こういう発言をされまして、実際これまでに警察当局は十三の業者を摘発していただいております。また、当時通産省は大変積極的にこの問題に対処されまして、業者名を公表されたことがあります。  ところが旧マルチ商法、私はあえてそのころのマルチ商法を旧マルチ商法と呼ぼうとしておりますが、この当時のマルチ商法は訪問販売等に関する法律第十一条で定義された連鎖販売取引と名づけられたものでありまして、そのときの条件は五つございます。一番は、物品の販売の事業であること、二、再販売する者を勧誘すること、三、特定利益を収受し得ることをもって勧誘すること、四、特定負担をすることが取引の条件になっていること、これは政令で二万円以上ということになっております。五番目は、適用対象は無店舗個人であること。この五条件のうち一つでも外れると、これは実は連鎖販売取引ではなくなってしまいまして、訪問販売法は発動できないのであります。  法律が網をつくれば、その網をくぐるのが悪でありまして、現在、世上マルチまがい商法と呼ばれておりますものは、この脱法連鎖販売取引でございまして、しかし、その原理、本質はかつてのマルチ商法と全く変わるところはありません。つまり、マルチまがい商法と呼ばれているものは新マルチ商法でありまして、かつての訪販法をつくったときの立法趣旨からいえば、このマルチまがい商法というものを一刻も早く訪販法の第十一条の定義を広くして、それを加え、取り締まることは必然かと思われますのに、通産省当局はまだそういう意向を示してもらっておりません。  中でも、一番被害が殺到しておりますものが、大阪に本社を置くベルギーダイヤモンド株式会社でございまして、たくさん被害訴えが来ておりますが、神奈川県の横浜の主婦の方の訴えをちょっと読ませていただきます。   一生懸命パートで働いてためたお金、まさか友人の一本の電話でダイヤに消えようとは……。   夕食も終わったころ、友人から電話がかかり、私につき合ってほしいと言われた。毎日対人関係の複雑な気持ちで働いている私にとって、夢の園に連れていってあげるという言葉にだまされ、田舎育ちの私は何やらわからないうち、ダイヤを買う羽目になった。二日たって気持ちが落ちついて考えると、何とばかだろうと自分が嫌になった。主人になぐられ、子供にばかにされ、このダイヤがうらめしい。通産省の役人が社長だと聞いた。いつも頭のよい人が勝ち、貧乏ながら一生懸命生活する者が泣き面をする。これでいいのかと思う。この商法がうらめしい。被害者の当然の声でございます。被害者は単にお金だけの被害で済んでおりませんで、経済的な被害のみならず、精神的、社会的被害が大きいのがこのマルチ商法の特徴でございまして、被害者が加害者になっていく、ここに大変なこわさがございます。  このマルチまがい商法と呼ばれるものは、その半数は私どもはネズミ講の禁止法で摘発できるのではないかと考えるわけであります。事実、昨年十月とことしの三月には大阪と福井におきまして人工宝石を扱う会社と印鑑を販売する会社が同法違反で摘発をされております。であるならば、なぜ商品は隠れみのにすぎない金銭配当組織のネズミ講であるという判断を下して摘発がなされないのかということを考えるわけであります。  いま一つ、公正取引委員会は、かつてマルチ商法が日本にアメリカから入ってきたときに、独禁法第十九条、不公正な取引方法の禁止規定を発動いたしまして、ホリデイマジック社という業者を摘発したことがございます。これは勧告審決で確定しております。であるならば、その解釈は今でも生きているはずでございまして、この種の商法に対して公正取引委員会の再度の発動を求めるものでございます。  一般的に、もうけ話に乗った被害者というものは大変に欲深ではないかと思われがちでございます。なるほど甘いかもわかりません。甘いかもわかりませんけれども、では、だます方は一体どうなるのですか。だます方がびしびし摘発されて初めてその論理が成り立つものでありまして、被害者は本当は大変に人のよいごく普通の一般人でございます。  行政府の一刻も早い対策と立法府の対処を求めるものでございます。とにかく今は一刻も猶予がならないそういう事態になっていることを最後に申し上げたいと思います。ありがとうございました。

上坂昇日本社会党・護憲共同

○上坂小委員長 どうもありがとうございました。  次に、大深参考人にお願いいたします。

大深忠延日本弁護士連合会司法制度調査会第四部会商品先物取引に関する小委員長

○大深参考人 御紹介いただきました大深でございます。私は法律実務家の立場から参考人として意見を述べさせていただきます。  日本弁護士連合会では、従来司法制度調査会の第四部会で悪質商取引等の問題を取り扱ってきたわけでありますが、先般、新しい時代の新しい課題に即応するため、消費者問題対策委員会の設置が決まりまして、早ければ今秋にも、この委員会を中心に消費者保護の立場から、より系統的な取り組みが始まろうとしております。  御承知のとおり、日本弁護士連合会では、昭和五十六年十月「金先物取引実態調査報告書」並びに「金先物取引被害防止に関する意見書」を公表いたしまして、私設市場での金先物取引の実態を踏まえ、政府に対し、今後予想される被害防止のための適切な措置をとっていただくべく要請をいたしました。  当初、前記第四部会の中に金の先物取引に関する小委員会が設置されたわけでありますが、昭和五十六年九月金が政令指定されて以来、国内私設市場での金先物取引被害は終息いたしましたものの、新しく、国内私設市場ではプラチナ等の先物取引、香港等の海外市場を舞台とした先物取引、さらには、先ほど堺参考人から紹介のありました金、プラチナの現物まがい取引等による被害が続出いたしまして、その被害は複雑多様化いたしました。  日本弁護士連合会では、前記小委員会を商品先物取引に関する小委員会と改めまして、先物からの転進商法であります現物まがい商法は先物取引の類型から外れますが、これも含めまして引き続き被害の防止と救済を目指し、検討してまいった次第であります。  全国各地の弁護士に寄せられた多数の被害者の訴えに対し実務家として正しく相談に応じることができるように「先物取引被害救済の手引」を、これでありますが、発行いたしまして、昭和五十九年十一月にこれに改訂を加えました。また、海外先物取引被害の被害防止及び救済のため、さらには商品取引制度一般のあり方を研究するため、昭和五十九年五月、米国に商品先物取引事情調査団を派遣いたしまして、この成果を報告書にまとめ、五十九年九月これを公表しております。  以上が日本弁護士連合会の取り組みの概要でありますが、この活動の基盤を支えておりますのは各地の弁護士会、研究会、弁護団等の幅広いかつ熱心な取り組みであろうかと存じております。私は、これらを踏まえまして意見を申し上げたいと思います。  私は、本日参考人として国の施策について幾つかの意見を述べさせていただきたいと思っておりますが、まず何をもって悪質商法というかについて、その特徴というか本質といいますか、一言申し述べさせていただきたいと思います。  一つは、システム自体がいかがわしく、反社会的で公序良俗に反すると考えられるものであります。金、プラチナ、さらには現在のパラジウムにおける私設市場での先物取引、豊田商事の純金契約ファミリー証券など、あるいは人狩り、ヘッドハンティングと言っておりますが、それと集団催眠を用いたマルチ商法などが端的な例だと思われます。  二つは、システム自体の疑問はさておいても、システムの悪用、乱用の例があるということであります。通産省がいわゆる海外先物規制法に基づき立入検査をし、三カ月間の業務停止命令を出しました日本貴金属では、顧客の買い注文に対して必ず同数の売り注文を自己玉として建てまして、売り買い同数にして香港に注文していたことが指摘されております。いわゆる向かい玉の方法で反対のポジションに立つ会社が顧客を操作して利益を上げていたなどはその例でありまして、私設市場ないし海外市場の先物業者のほとんどはその形態をとっていることが巷間のうわさとなっております。国内の公認市場に加盟する商品取引員の中にもダミー等を用いてこの手口を使う不心得者がいると言われておりますが、本日の本筋ではないのでこれ以上立ち入らないことにいたします。  悪質商取引の三つ目の特徴は、勧誘してはならない者、つまり取引不適格者を勧誘し、その勧誘方法が重要事項の不告知、不実の告知など詐欺的であること、さらには誇大な成功例、握手、拍手、正装、映画等を用いた集団催眠によるもの、攻撃的、脅迫的で契約を押しつけるものなど、社会的に許容される範囲を逸脱するもので、しかも、それは会社の営業方針でいわば組織的、構造的に行うものが要注意業者ということになりますが、他の訪問販売にも共通する問題でもあり、本日はやはりこれ以上立ち入りません。  私は、一番目に指摘しましたシステム自体の問題について三点ほど意見を申し述べたいと思います。  第一点は、商品取引所法八条の解釈をどうするかの点であります。  政府は、八条一項に定める商品取引所類似施設禁止の解釈につき、昭和五十五年四月、従来の立場を変更しました。先日来、経済企画庁は、新聞紙上に「悪徳商法に、ご注意!」の政府広報を出して、パラジウムなど私設市場を利用した悪質商法被害がふえていることを警告しております。もちろん警告等の御努力を多としないわけではありません。しかしながら、どうして政府は社会的、経済的に意義のない、というよりも百害あって一利なしの私設市場を野放しにし、見て見ぬふりをするのか、どうして抜本的な対策がとられないのかという疑問であります。  八条の解釈といいますと、素人目にはいかにも専門家に任せなければならない難解な法律解釈のように思われがちですが、そうではありません。要は、先物取引を原則的に自由と見るか禁止と見るかの問題であると考えます。  私設市場は、金に始まりましてプラチナ、現在はパラジウムなどに変わり、十年になろうというのです。私は、問題の解決方法は実に簡単明瞭であると考えます。八条の旧解釈、すなわち私設市場は政令指定商品に限らず、すべての商品において禁止されることを明示すれば足りるのです。仮に政府は、解釈変更ということでメンツ上旧解釈に戻ることができないというのであれば、新規立法の提案を考慮すべきです。先物先進国と言われる米国におきましても、すべての商品について先物取引は禁じられております。既に国会でも一部紹介されましたとおり、金私設市場での救済判決例が全国的に相次いております。大津地方裁判所彦根支部が昭和五十六年十月三十日に言い渡した判決を皮切りにしまして、大阪、神戸、札幌等、相当多数の判決が、八条につき、政府の旧解釈が正しい旨判示し、政府の新解釈を支持するものは見当たらないのであります。  付言いたしますと、私自身が関与しました大阪地方裁判所、昭和五十八年二月二十八日の判決も同じく八条違反を明言し、大阪高等裁判所も同様の結論を出し、業者の方から現在上告をしております。同事案につきましては八条解釈のみが争点になっているわけではありませんが、最高裁が速やかに積極的な判断を示し、司法の分野から被害の未然防止にも役立つ正しい判断を下されることを念願しております。  次に第二点目は、いわゆる海外先物規制のあり方の問題であります。  国会で御審議いただいて今なお記憶に新しい法律であります海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律が唯一の規制法であります。もちろん世の中に完璧な法律など存在しないでありましょうが、国会で俗に言うクーリングオフ条項が付加されたものの、前記のとおり、八条の解釈変更後、政府から提案された法案だけに海外市場の商品先物取引へ一般大衆が参加することの危険性が十分認識されていない嫌いがあり、その基本法制が全面禁止でも許可制でもなく、単なる行為規制に後退したのはまことに残念と言うほかありません。  しかも、規制市場が政令指定市場に限定されるため、業者は当初九〇%方香港を舞台としていたものが、昭和五十八年一月十五日同市場が規制されるや、市場を香港から米国、ロンドンの市場にくらがえするありさまで、しかも政府の方針では、被害の多発により随時政令指定市場を追加するということですから、業者と政府のイタチごっこで、これではモグラの穴たたきだとか後追い行政だとか言われてもやむを得ない状況であります。  昨年十二月二十五日、政令指定市場として、ニューヨーク、シカゴ、ロンドンの六市場八商品が追加されたのでありますが、我々の認識ではこれで事足れりとは決して考えておりません。業者は次に、どこの市場のどの商品で新たな商法を展開するのかということに考えがいくのであります。果たして、右の政令指定を前後にいたしまして、業者の中には、シカゴ・マーカンタイル取引所の金融部門である国際金融取引所のSP五〇〇という株式指数等の取引を始めております。  翻って考えてみますのに、第一の点とも関連いたしますが、同じ商品取引でありながら国内と海外で適用される法律が異なり、さらに政令指定市場とそうでないとで適用が左右されるというのでは、一般投資家保護の立場からしても規制につき一貫性を欠くものと言わなければなりません。  海外先物規制法が衆議院で可決承認されるに当たり、附帯決議の一つとして「商品取引所法第八条の解釈変更により、商品市場類似施設開設の規制に問題を生じている状況にかんがみ、早急にその対策を講ずるよう検討するとともに、商品取引の健全な発展に資するため、引き続き商品取引所制度全般について見直しを行うこと。」が挙げられていますが、政府は早急にこの問題に着手していただきたいと存じます。  最後、第三点でございますが、パラジウム被害と同様、政府広報に取り上げられております金の現物まがい商法についてであります。  この商法は証券商法ともペーパー商法とも呼ばれております。その最大手が豊田商事でありまして、国会でも何回かセールスが老人、精神障害者などをねらって、執拗にあるいは甘言を用いて生活資金等を巻き上げている事例が報告され、問題とされております。現在、全国的にこの商法を摸倣する業者が増加し、商品も金のほかにプラチナ、ダイヤモンド、ゴルフ会員権などと多様化しております。  豊田商事の純金ファミリー契約証券という商法は、要するに顧客に金を売却いたしました業者が、さらにこれを顧客から賃借して、年一割ないし一割五分の賃料を払うというシステムでありますが、この商法の問題点は、一つはシステム自体の破綻の危険性を内在させていること、二つは取引の勧誘対象また勧誘方法において欺瞞的で反社会的であることにあります。既に我々は、企業の社会的責任という観点から、同社に対しましてシステム上の疑問点につきその開示を求めてきたわけでありますが、会社の方では機密を盾にとりましてこれに応じませんでした。私は、会社の内外、会社の従業員あるいは顧客だけでなく、企業の責任という観点から、疑問を呈された問題については、これを開示する義務があると考えるのであります。  ところで、先般、元会社幹部らが会社の機密書類を持ち出して会社を恐喝した事件が発覚いたしました。大阪地方裁判所で現在刑事裁判を受けておりますが、去る五月の公判で、豊田商事は昭和五十八年度だけで約三百四十七億円、累積で約四百十七億円の赤字を抱えていることが暴露され、業務の行き詰まりの懸念が現実化されております。堺参考人から先ほど指摘がありましたが、五月末の和解金の支払いが全国一斉に滞ってきたようでもありまして、その理由が取りざたされております。  右の被害の救済法でありますが、被害の相談を受けた弁護士は、事件依頼者の救済と未然防止とのジレンマに陥っております。示談交渉、民事訴訟、刑事告訴などが個別的な事件解決法でありますが、前述いたしましたとおり、かかる商法は組織的、構造的なものだけに、国として抜本的な対策を講じてもらいたいと念じております。その国の施策を促す観点から、全国の弁護士有志の間では同社に対し商法五十八条に基づき法務大臣に対し解散命令を申し立てすることが予定されております。大阪地検に告訴事件がかかっておりますが、取り締まり当局といたしましても厳正に対処していただきたいと考えております。  以上のとおり参考意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。

上坂昇日本社会党・護憲共同

○上坂小委員長 ありがとうございました。  それでは次に、竹内参考人にお願いいたします。

竹内昭夫東京大学法学部教授

○竹内参考人 竹内でございます。  きょうは、マルチまがい取引など一連の悪質商法につきまして、法律が取り組む姿勢について私としての意見を申し上げたいと存じます。  第一に、こういう悪質取引の被害者に対しまして世上よく言われることは、欲が深いからひっかかったんだとか、被害者も悪いというような声であります。先ほど堺参考人も言われましたように、もちろん欲が深いからこそ甘い話に乗せられるわけでありまして、しかし、そのことを最も痛切に恥じているのは被害者であります。したがって、被害者にも落ち度があるなどということなら、何も他人が利口ぶって指摘するまでもないことであります。まして政府や役所がそんなことを言う必要は毛頭ないと私は思います。大体、人間に欲がなければ詐欺も泥棒もないはずでありまして、法律というものがありますのは、我々が大なり小なり愚かなくせに欲が深いためにその弱みにつけ込むやからが後を絶たないからであります。  もちろん法律の世界でも愚かな者は救われないという原理で成り立っている分野もございますけれども、消費者を保護するとか、あるいは投資家を保護するというような法律の分野ではそういうプリンシプルが成り立たないと私は考えております。そうではなくて、要するに人の弱みにつけ込むことは許さないという原理に立たなければならないはずでありまして、そうでなければ他人をだまして暴利をむさぼった者のもうけ得ということになります。それは悪人の天国ということに帰するからであります。  第二に、何でも政府に頼るのはよくない、自己責任の原則に立つべきだということもよく言われます。おんぶにだっこというのが消費者保護の正しいあり方でないことは、これは申すまでもありません。しかし詐欺的な商法の取引方法の取り締まりは、これは政府の責任であります。株にいたしましても商品取引にいたしましても、インチキは取り締まりました、だから後の選択はそれぞれの方が自分の判断でやってください、どういう株が値上がりするか、どういう商品が値上がりするかということは政府といえども予測できないことなんですから、政府のできることはインチキを抑えるところまでです、後は御自分の責任でやってください、これが自己責任と言われることであろうと思います。ところが、そういう詐欺的な商法の横行を許しておきながら自己責任を説いているとすれば、それは政治、行政の責任放棄ではないかという批判を免れないのではあるまいかと思います。  第三に、この種のインチキ取引方法は手をかえ品をかえて出てまいります。まさに浜の真砂であります。したがって、一つ一つの被害類型に対処しようといたしますと、これを抑えてもほかのところへ頭を出すに決まっている、だからここを法律で規制するというのは何ともむなしい、そういう気持ちがすることは私も否定いたしません。そういうペシミズムは先の見える人ほど陥りやすいわけであります。  しかし、仮にモグラたたきにせよ、もし、たたかないとすれば頭を出すモグラの数はどんどんふえるでありましょうし、大手を振って詐欺をすることになりましょう。そうだとすれば、一つの法律をつくりさえすれば社会から詐欺がなくなるんだというような甘いことはだれも考えてはいないわけですけれども、にもかかわらず、そういうことは百も承知の上で現に行われている欺瞞的な取引を取り締まるための法制の整備をしなければならぬ、このように考えるわけであります。  それから第四に、こういう問題に取り組むときに、消費者保護も大事ではあるけれども過剰規制になってはならない、正常な取引を阻害するようなことになってはならないということが言われます。確かに一般論としてはこれも正論であります。しかし、過剰規制が不当だからといって、例えば警察は犯罪が確かに実行されたということを見きわめた上でなければ何にも手を出しちゃいけないなどということは恐らくどなたもおっしゃるまい、かように思います。被害者が出るのを待った上で後追い規制をすべきだということになるわけではもちろんありません。過剰規制がいけないということをおっしゃる方でもそんなことを考えているわけではもちろんないわけであります。  そうだといたしますと、そういう点から考えてみますと、先ほど問題になりました海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律、これが政令で商品ごとに海外市場を指定してそこで行われる先物取引の受託に適用するという仕組みをとっておりますのは、もちろんそれなりの理由があってそのような立法の原則がとられたのだとは思いますけれども、私はまだ賛成いたしかねるという感じがいたしております。  と申しますのは、海外先物取引の受託の勧誘が問題になりますのは香港の先物市場がインチキをしているからではないわけでありまして、日本の国内における受託の勧誘が不当、不正に行われるからであります。そうだといたしますと、つなぐ先の海外市場はどこだっていいわけでありまして、どこの市場につなぐという場合でも適用される法律にすべきではないか。現に最初は香港を指定したのは、先ほどもお話がありましたようにニューヨーク、ロンドン、シカゴというように次次と指定を広げているという形で委託者の保護を図っておりますのは、やはりどの市場であるかということは重要な問題ではない、受託行為あるいは受託の勧誘行為そのことが問題なんだということを明らかにしているように思うわけであります。それと同様に、過剰規制にならないように要件を絞って法律をつくったところが、これをくぐり抜ける者が出てきたような場合には法律の適用範囲を拡大すべきであろうと思います。  現在、マルチまがいと言われておりますものの中には委託販売あるいは買い主の紹介という形をとって、だからこれはマルチまがいかもしれぬけれども、マルチそのものではないと主張している者もあるようであります。しかし、これがマルチそのものなのかマルチまがいなのかにつきましては、まだ裁判所の判決は出ていないようであります。そうだとすると、これは裁判所としてはこれにもマルチとして法律を適用すべきだという判断をあるいはされるかもしれません。  と申しますのは、会員になって子をつくれば、子が孫をつくって自分に巨額の利益が還元されるという勧誘をして特定負担をさせる。その点に一番の問題があるのだといたしますと、売買であるか委託販売であるかということは必ずしも決定的なポイントではないという解釈もあるいは裁判所はなさるかもしれない。しかし、現行法の解釈として、もし所管官庁が、これはマルチまがいであってマルチそのものではないというのであれば、同じような被害を生んでいる以上はこれを規制対象に取り込むような法律の改正をすべきではあるまいか。それは所管官庁といたしまして過剰規制にならないように要件をきちっと絞った。ところが、現にそこをねらって、そこを逆手にとって出てきた業者があり、そのために現に被害者が出ているということであれば、要件を拡張したからといって、それは過剰規制と批判される理由はない、かように考えるからであります。  もっとも、マルチまがいと言われるものの中で、マルチとは全く原理を異にする、最も中心的な点で原理を異にするものがあるといたしますと、例えば商品を買った上で見込み客を紹介すれば、その紹介された客が商品を買ったときにリベートを出すというようないわゆる紹介販売、こういうものがもしあるといたしますと、そういうものについてもアメリカの州法では規制しておりますから、紹介販売自体について規制すべきではないかということも一つの検討課題になり得ようかと思います。  第五に、以上のように私は申したからといって、私は決して法律万能論を主張するものではございません。法律は万能であるとかあるいは法律は全く役に立たないというのは法律の素人の方のおっしゃることでありまして、法律はほどほどにしか役に立たないけれども、ほどほどには役に立つというのが玄人が常に感じていることでございます。したがって、こういった一連のインチキ取引を抑えて消費者を守るために、多様な手段を組み合わせて対処するということが必要なことは私も全く同感であります。しかし、法律をうまく利用すれば能率的、経済的に規制できるのに、法律をつくることを避けるとすればそれは賢明ではないというふうに思います。  私は、その意味で行政庁が法律の制定、改正に消極的にならないように望みたいと思っておりますし、また国会といたしましても、法律案について慎重な審議をされることは当然のことでありますけれども、法律案を出してまいりました行政庁の努力に、対しては評価をしていただきたい。ただ、がみがみ言われるだけですと、やはりやる気をなくしはしないだろうかということをはたで見ておって感ずるものですから、一言最後に申し添えさせていただきます。  以上でございます。

上坂昇日本社会党・護憲共同

○上坂小委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。  これより懇談に入るのでありますが、懇談の進め方について一言申し上げます。  まず、質疑を希望される小委員は挙手をお願いをいたします。  また、質疑にお答えをいただく参考人のお名前を初めに御指名の上、質疑をしていたたくようにお願いをいたします。  次に、参考人に申し上げますが、発言の際は、挙手の上、小委員長の許可を得ることになっております。また、時間の制約がございますので、お答えはなるべく簡潔にお願い申し上げます。  なお、竹内参考人につきましては、大学における講義のため、午前十一時四十分に退席いたしたいとの申し出がございますので、竹内参考人に対する質疑をできるだけ先にしていただきたいと思います。  それから、政府も関係しておりますけれども、政府に対する質疑につきましては一般質問等で委員会で行うことができますので、できるだけ参考人からいろいろ御意見をいただくということで皆さんでお考えをいただきたいと思います。  それでは懇談に入ります。  速記を中止いたします。     〔午前十時五十三分懇談に入る〕     〔午後零時二十三分懇談を終わる〕

上坂昇日本社会党・護憲共同

○上坂小委員長 速記をお願いします。  以上で懇談は終了いたしました。  本日の参考人各位の御意見及び懇談におきまして、次の諸点が論議の中心になったと存じます。  第一は、商品取引所法第八条の解釈をめぐる問題でありまして、これについては、現在、政令指定商品以外の商品を対象とする商品市場類似施設に対しては、その開設を禁止する第八条の適用がないと解されておりますが、商品市場類似施設の開設は、これを広く規制することが必要でありますので、第八条の解釈を従前の解釈に戻すか、あるいは現在の解釈が第一条の目的の規定との関連から変更されたとするならば、第一条を改正することにより第八条を従前のとおり解釈するか、あるいは第八条を改正すべきではないかという点であります。  第二は、海外商品市場における先物取引をめぐる問題でありまして、現行の海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律は、政令で指定する海外商品市場における特定の商品についての先物取引の受託を規制するものでありますが、問題が生じた場合に、海外商品市場及び商品を指定して規制する現行法では、委託者の利益の保護が十分に図れないので、委託者の利益保護を徹底するよう検討することが必要ではないかという点であります。  それから第三は、マルチまがい商法等の、いわゆる悪質な商行為に対する規制、取り締まりにつきましては、これは現行法で、たくさんありますけれども、なかなかできないという点がかなり多くの方々から出ておりますので、これについては早急に解消するように、当委員会としても考えていかなければならないし、その点については政府関係筋に要望していきたいというふうに思います。  それから第四は、いわゆる市民の相談という面で堺参考人から御指摘のありました交番に対する考え方、これは市民生活の面にとっては非常に重要ではないかと思うのです。具体的に相談に乗れるような状況というものを警察の方にもお願いして、きちんとしてもらうことが一般の人たちを救う道につながるのではないか。特にテレビを見ない寝たきり老人、新聞もとっていない老人の方々が非常にふえております。そういうところには家族も訪問しないというのがほとんどになっておるわけでありまして、そこにつけ込まれて面倒を見てもらうということになれば、ついほだされて預金通帳を渡してしまうという形も出てくると思います。そういうことを突き詰めていくならば、交番とか民生委員という方々にお願いをしてPRをしていくということが必要ではないか、こんなふうに感じました。  まだ、たくさんございましたけれども、今私が申し上げたようなことで御了承いただければありがたいと思います。  参考人各位には、お忙しい中を御出席を賜りまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十四分散会

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