予算委員会第二分科会 第2号
- 発言数
- 581 件
- 登壇者
- 55 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1984/03/12
会議録
○相沢主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。 昭和五十九年度一般会計予算、昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算中外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。安倍外務大臣。
○安倍国務大臣 昭和五十九年度外務省所管一般会計予算案の概要について御説明申し上げます。 外務省予算の総額は、三千七百八十六億六千三百六十万八千円であり、これを昭和五十八年度予算と比較いたしますと、百九十五億二千五百六十八万八千円の増加であり、五・四%の伸びとなっております。 一段と厳しさを増す国際情勢下にあって、近年国際社会における地位が著しく向上した我が国が、世界の中の日本として各国からの期待にこたえてその地位にふさわしい国際的役割を果たし、積極的な外交を展開していくためには、外交実施体制を一層整備・強化する必要があります。この観点から、昭和五十九年度においては定員・機構の拡充強化、情報機能の強化、在外公館勤務環境の整備等に格別の配慮を加えました。特に外交強化のための人員の充実は外務省にとっての最重要事項でありますが、昭和五十九年度においては、定員八十六名の純増を得て、合計三千七百九十八名に増強されることになります。 また、機構面では、本省においては情報調査局、外務報道官、文化交流部、国際報道課等を設置し、在外においてはブルネイに大使館を開設することが予定されております。 次に、経済協力関係の予算について申し上げます。 経済協力は、平和国家であり、自由世界第二位の経済力を有する我が国が世界の平和と安定に寄与するための主要な手段の一つであります。中でも、政府開発援助の果たす役割はますます重要なものとなっております。このため政府は、五十六年から六十年までの五年間にわたる中期目標を設定し、経済協力の強化に努めております。そのような努力の一環として、五十九年度予算においては、無償資金協力予算を前年度より七十五億円増の一千六十五億円としたほか、技術協力関係予算の充実にも努め、なかんずく国際協力事業団交付金を前年度比八・二%増の七百七十七億円とした次第であります。 また、各国との相互理解の一層の増進を図るための文化・人的交流予算についても、格段の手当てを講じております。 このほか、海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事の一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校二校の増設を図る等の配慮をしております。 以上が外務省関係予算の概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。 なお、時間の関係もございますので、詳細につきましてはお手元に「国会に対する予算説明」なる印刷物を配付させていただきましたので、主査におかれまして、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。
○相沢主査 この際、お諮りいたします。 ただいま安倍外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明は省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○相沢主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ――――――――――――― 〔参照〕 外務省所管昭和五十九年度予算案の説明 外務省所管の昭和五十九年度予算案について大要をご説明いたします。 予算総額は三千七百八十六億六千三百六十万八千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費二千七百二十三億八千六百四十二万六千円、エネルギー対策費二十四億八千七百十一万九千円、その他の事項経費一千三十七億九千六万三千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省三千百三億二千五百十七万円、在外公館六百八十三億三千八百四十三万八千円、であります。 只今その内容についてご説明いたします。 (組織) 外務本省 第一 外務本省一般行政に必要な経費百八十二億八百四十七万四千円は「外務省設置法」に基づく所掌事務のうち本省内部部局及び外務省研修所において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一、六〇三名の人件費及び事務費等、並びに審議会の運営経費であります。 第二 外交運営の充実に必要な経費二十一億一千三百五十一万七千円は諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種の条約協定を締結する必要がありますが、これらの交渉をわが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。 第三 諸外国に関する外交政策の樹立等に必要な経費三十一億一千七百六十一万四千円はアジア、北米、中南米、欧州、大洋州、中近東、アフリカ諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整を行うため必要な経費と財団法人交流協会補助金十億一千百七十七万九千円、財団法人日本国際問題研究所補助金一億八千三十九万九千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金三千六百四十七万一千円及び日中友好施設建設費等補助金八億七千六十三万八千円並びにインドシナ難民救援業務委託費六億七千六百七十二万九千円であります。 第四 国際経済情勢の調査及び通商交渉の準備等に必要な経費九千百十七万五千円は国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を適確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。 第五 条約締結及び条約集の編集等に必要な経費四千四百七十六万三千円は国際条約の締結及び加入に関する事務処理並びに条約集の編集及び先例法規等の調査研究に必要な事務費であります。 第六 国際協力に必要な経費十二億九千三百七十二万二千円は国際連合等各国際機関との連絡、その活動の調査研究等に必要な経費及び各種の国際会議に我が国の代表を派遣し、また、本邦で国際会議を開催するため必要な経費と財団法人日本国際連合協会等補助金三千九百一万二千円であります。 第七 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費五十億二千三百七十二万七千円は国際情勢に関する国内啓発、海外に対する本邦事情の紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金二十五億四千三百五十八万六千円及び啓発宣伝事業等委託費五億三千二百五十八万六千円等であります。 第八 海外渡航関係事務処理に必要な経費四十六億三百五十二万四千円は旅券法に基づき、旅券の発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費二十四億三千六十一万五千円であります。 第九 経済技術協力に必要な経費十九億五千百五十九万七千円は海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施の総合調整並びに技術協力事業に要する経費の地方公共団体等に対する補助金十一億三千二百九十六万一千円等であります。 第十 経済開発等の援助に必要な経費一千六十五億円は発展途上国の経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助等に必要な経費であります。 第十一 経済協力に係る国際分担金等の支払に必要な経費八百十五億四千九百四十一万六千円は我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。 第十二 国際原子力機関分担金等の支払に必要な経費二十四億八千七百十一万九千円は我が国が加盟している国際原子力機関に支払うため必要な分担金及び拠出金であります。 第十三 国際分担金等の支払に必要な経費九億五千五百十万九千円は我が国が加盟している各種国際分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。 第十四 国際協力事業団交付金に必要な経費七百七十七億三千四百四十一万三千円は国際協力事業団の行う技術協力事業、青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。 第十五 国際協力事業団出資に必要な経費四十六億五千百万円は国際協力事業団の行う開発投融資事業及び移住投融資事業に要する資金等に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。 (組織) 在外公館 第一 在外公館事務運営等に必要な経費五百五十九億百八万九千円は既設公館百六十二館五代表部と五十九年度中に新設予定の在ブルネイ大使館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館の職員の増加合計二、一九五名の人件費及び事務費等であります。 第二 外交運営の充実に必要な経費五十四億七千七百五十五万五千円は諸外国との外交交渉の我が国に宥和な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。 第三 自由貿易体制の維持強化に必要な経費四億八千四百八十三万六千円は自由貿易体制の維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動を実施する等のため必要な経費であります。 第四 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費三十三億七千九百三十九万二千円は我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流の推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。 第五 在外公館施設整備に必要な経費三十億九千五百五十六万六千円は在サウディ・アラビア大使館公邸・事務所(新営第三期工事)、同宿舎建設(新営第二期工事)並びに在米大使館事務所(新営第一期工事)の他二公館の増築等の建設費及び関連経費であります。 以上が只今上程されております外務省所管昭和五十九年度予算の大要であります。 慎重御審議のほどをお願い申し上げます。 ―――――――――――――
○相沢主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。 ―――――――――――――
○相沢主査 この際、分科員各位に申し上げます。 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部一郎君。
○渡部(一)分科員 我が国にとりまして、諸外国との相互理解の促進と友好親善関係の維持発展は我が国の存立と繁栄の重要な基礎であると存じます。このような観点から、政府としては今後一層海外啓発、文化交流に力を注いでいただきたいと存じます。昭和五十九年度予算案においてはこのような考え方が十分反映されていなければならないと思いますが、実態はいかがでありましょうか、お尋ねしたいと思います。 先日の百一国会における安倍外務大臣の外交演説におきましても、我が国の政府の態度といたしまして「政府は、今後できる限り多くの機会をとらえ、多種多様の方途により、我が国の実情について諸外国の認識を深めるよう海外啓発活動を一層強化するとともに、学術、教育、芸術、スポーツ、日本語の普及等の文化面における交流や協力を促進し、特に、将来を担う青少年を中心とする国民レベルでの人的交流を一層拡充していく所存であります。」とお話が明示されているわけでございますが、従来、ともすればこうしたことについては非常にレベルが低かったと存じます。その点いかがでございましょうか。
○安倍国務大臣 まさに、諸外国との相互理解と友好親善は我が国存立のかぎであると考えております。今次国会の冒頭におきましても、私も外交演説におきましてこの点にも触れておる次第であります。 昭和五十九年度予算案作成に当たりましては、情報文化局は、上記の視点に立ちまして海外啓発活動の促進、人的交流計画の拡充、国際文化交流事業の拡充を三本の柱としまして、この柱のもとに各種の海外啓発活動の一層の拡充強化を図ることといたしました。 今次予算案においては、上記諸点を中心に、海外啓発、文化交流に係る経費として、昭和五十八年度当初予算約七十億円に比し一〇%増の七十七億円が計上されることになりましたが、これは現下の厳しい財政状況のもとにおいては大幅な拡充と言えると思います。諸外国との相互理解の促進と友好親善関係の維持発展は我が国の存立と繁栄の基礎であるという考えに立ちまして行った予算編成でございます。それなりの成果を上げ得たと確信をいたしておるわけであります。
○渡部(一)分科員 例えて申しますと、留学生交流が諸外国との間の相互理解の増進に果たす役割というものは非常に大きいものであると存じます。我が国の留学生の受け入れ状況は先進諸国に比べて受け入れ数が少なく、受け入れ態勢も十分とは言えないと存じます。今後我が国の留学生受け入れを拡大するための方針というものはどういうふうにお立てになっておられるか。 また、一般論に続けて申しますが、海外啓発、文化交流関係予算の総額は、他省庁予算に比べても他の先進諸国に比しても著しく低いと思うのであります。今後、中長期的な計画を立て、予算の拡充を図るよう抜本的な対策を考えるべきではないかと存じます。海外啓発、文化交流というものは外務省だけで行われるべきものではなく、各省庁、地方自治体、民間とも連携して効率的に行われるべきであると存じますが、どのような連携体制をとっていかれるか、あわせてお尋ねいたします。
○三宅政府委員 お答えいたします。 まず第一の留学生につきましては、先生御指摘のとおり、先進諸国と比べまして数の面で必ずしも十分と言えないわけでございます。特に私費留学生につきましては先進諸国と比べまして数が依然として少ない。国費留学生につきましてはかなり最近ふえてまいりまして、一部の国に近づきつつあるというわけでございます。したがいまして、留学生全般に対しましては今後いろいろな施策、単なる予算のみならず日本での受け入れ態勢その他を強化するということで、実際には昨年「二十一世紀への留学生政策に関する提言」、これは総理に対する諮問委員会の提言でございますが、その中にいろいろな点が指摘されております。例えば日本語の普及、留学情報の提供とか帰国留学生に対するアフターケアの充実という面も含めまして、今後体制の整備を図るよう努めていきたい。文部省とも十分協議しながら、この問題につきましては単なる量の拡大のみならず、一層受け入れ態勢の充実を図っていきたい、こう考えております。 これが第一の点でございます。 第二の点につきましては、確かに文化交流予算につきましては他の先進諸国と比べましてまだ不十分であることは事実でございます。今次の予算案の作成に当たりましても、この問題につきましてはただいま大臣から御答弁しましたように、外務省の重点事項として最も大きな伸びを示したわけでございますが、まだ十分でないということでございますので、今後ともこのような努力を一層続けてまいりたい。また御指摘のような中長期のプランを考えてやっていくことにつきましても非常に有益な御示唆でございまして、厳しい財政状況下ではございますが、これを含めて十分今後検討してまいりたい、こう考えております。 それから第三点でございますが、海外啓発、文化交流は単なる外務省のみで到底できることではございません。各省庁、地方自治体、さらに民間とも連携を行いながらやっていく必要がございます。この点につきましては、まず外務省といたしましては関係省庁との非公式の会合を既に昨年二回しておりますし、またことしもやっております。大体年に四回くらい連絡協議をやっていきたいと考えておりますし、また地方自治体に対しましては、大臣みずからが姉妹都市の関係者をお呼びになったり、あるいは文化広報に関する連絡会を開いております。また民間との関係につきましては財団法人との連絡会ということで、大臣の外交演説にありますように、地方自治体、民間との連携に意を用いて全体としての文化交流を進めていきたい、こう考えております。
○渡部(一)分科員 年度別の過去六年間における外国人留学生の数字を見ておりますと、これは文部省でお出しになった数字だそうでございますが、このリストの中に「主要国における留学生の状況」という欄がございます。これは大体単年度でございますし、年次は多少ばらつきがございますが、アメリカにおきましては三十一万、イギリスにおいては五万、西ドイツにおいては五万、フランスにおいては十二万、それに対して日本は一万という数字でございます。アメリカが図抜けているわけでございますが、三十一万に対してヨーロッパ各国合わせて二、三十万のランクに達する。それに対して日本は一万人の留学生しか受け入れていない。 その受け入れるに当たりましても、GNP世界第二位の経済力に対しまして非常にまずいのは、外国人を受け入れた際の受け入れ方に非常に問題点が多い。ただ学校で勉強するだけで、日本の社会自体としてそれらの学生を受け入れて、物事を語り合ったり理解を深めるという点で問題点が多いということは指摘されているとおりであります。これらについての対策はある意味で抜本的な対策を必要とする。小手先の対策ではだめなのではないかと思う。 例えば国費留学生の種類にいたしましても、アメリカならばフルブライトがあり、ナショナル・インスティチュート・オブ・ヘルスがあり、ナショナル・サイエンス・ファウンデーションがあり等々いろいろな奨学金留学生のシステムがございますし、イギリスには有名なるブリティッシュカウンシル奨学金留学生があり、西ドイツにおいてはDAADの奨学金留学生がありというふうでございますが、日本の方は国費外国人留学生の制度が唯一と言っていいほどのレベルである。こうした制度を設けるためには、税法上あるいは各省庁との関係におきましてさまざまな配慮を必要とするものだと思われるわけであります。したがって、こういうのも配慮しなければならない。 また、宿舎その他の設備が非常に不十分なため、貧民化する留学生がしばしば存在し、これらの人々はせっかく日本に留学したにもかかわらず、日本に対して十分な理解も持てなければ好感も持てないという状況になってくる。こうしたいろいろな問題があると思われるわけであります。したがって、まずこの留学生のレベルを数字的に引き上げる、質的レベルも引き上げるという意味で今後どういう施策をお立てになるのか、今重大なところではないか。今直ちにお答えは無理かもしれませんけれども、次年度におきましてこれらに対して抜本的な施策をつくり上げていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○三宅政府委員 留学生の問題につきましては、先生御指摘のとおりいろいろな問題がございます。特にまだ数が十分でないということ、その中には日本語ではどうしようもない語学の問題とか、そういう問題もございますけれども、まだまだ日本の受け入れ制度というものを拡充しなくてはいかぬということにつきましては、実は二十一世紀への留学生政策懇談会というのがございまして、そこでかなり詳細な提言が昨年の八月になされております。先生の御指摘の宿舎の問題も含め、あるいは日本における博士号の取得の問題、あるいは日系企業の就職の問題、あるいはその他経済的な対策の問題、たくさんございますが、この提言を踏まえまして文部省、外務省が中心になりまして、確かに難しい問題を含んでおりますが、できるだけ量、質の改善に向けて努力したいということで、事務的に現在この提言に沿いながら検討中でございます。
○渡部(一)分科員 その文部大臣の私的機関である二十一世紀への留学生政策懇談会が行った提言によれば、フランス並みの十万人近くのレベルに一気に引き上げようというお話もあったというふうに承っているわけでありますが、この提言に対してどういうふうに詰めてかかるのか、どのくらいの期間相談すれば詰まるのか、そうしたところをお聞かせいただきたいわけであります。この提言に対して関係各省庁の懇談も含めて、見通しを教えていただきたい。
○岡村説明員 ただいま外務省の情文局長の方から御説明がございましたとおり、「二十一世紀への留学生政策に関する提言」におきまして、二十一世紀を目指して欧米諸国並みの留学生の受け入れを図っていく、そしてそのためには、私費留学生の増加を中心に留学生受け入れのための基盤体制の整備を考えていく、こういう御提言をいただいておるわけでございます。これにつきましては、文部省、外務省のほか、法務省その他関係する省庁もございますし、また大学のほか民間関係の団体、その他いろいろな諸機関と連携をとりながら、いろいろな側面につきまして総合的な検討が必要でございます。 そこで、私ども、ただいま文部事務次官サイドで留学生問題調査・研究に関する協力者会議というものを設けておりますが、そこの御意見を聞きながら検討を進めているところでございまして、一応の結論を夏ぐらいまでには得たいものということで鋭意検討を進めております。
○渡部(一)分科員 アジア学生文化協会の田井重治さんによりますと、これは国会図書館を通しまして御返事を求めたわけでございますが、従来の留学生の問題で一つ問題点があると指摘されております。それは何かというと、せっかく日本へ留学した人々が自分の国へ帰ってきた場合に留学生として資格が認められない。 少し古くなるのでございますが、数年前私がインドネシアをお訪ねいたしましたとき、あそこでしみじみ言われたことでございますが、日本への留学生の中で留学生として認められる者は、水産大学の水産学部とそれから長崎大学の水産学部とそれから北大の水産学部、三つの水産学部だけである、他の学部は認められないと現地で聞かされまして、びっくりしたわけであります。というのは何かというと、英連邦バカロレアのエリアに属するこれらの東南アジアの国々においては、英連邦バカロレアのエリアから留学して帰った者は、政府の公職につくことも容易であるし、それから自国内の企業の幹部に登用されることも事実であるし、そうしたことは明示されたルールになっておる。また、それに対して日本の方は大学と認めておらない。水産問題に関しては確かに日本は優秀であるから、水産学部についてのみ、その三校だけについては大卒と認める。ところが、あと東大だか京大だか早稲田だか慶応だか知らぬけれども、そういう田舎の、地方学校のごときは大学にふさわしくないというのが現地側のルールであると言うので、私はびっくりいたしました。そういうルールが明示されているために今度はどういうことになるのかというと、一流品は日本に来ない。いいのは全部欧米系の大学に入る。そして今度は、来るのは二流だけが来る。二流品が来るからまたまたその二流品が帰っていくというサイクルができ上がっておる。これはどうしてこんなようになったのか。つまり、英連邦バカロレア型の相関関係が非常にぐあいが悪いことに、我が文部省の方針として英連邦がバカロレア・エリアとの相互乗り入れができていないところに一つの重大な問題があるんだけれども、それと同時に、単位の互換性とか大学自体の資格の相互認定とか、そうしたものが全然ルールとして確立していないところに大きな問題があるのではないかという認識を持つに至ったわけであります。 そこで私は、私の単なる一つの意見だけではだめなので、その他の国はどうなっているだろうと調べ始めたわけでありますが、東南アジアの国々におきましては、これほどのひどいレベルではないにしても、実質的には英連邦のバカロレア、アメリカのバカロレアというようなエリア、こうしたものを受け入れているこれらの国々に対しては、日本の大学の卒業資格というのはほとんど意味を持っていないということがだんだんはっきりしてきたわけであります。 これはアジア学生文化協会の田井重治氏の回答でありまして、ちょっと読み上げさせていただきます。 従来、日本の学卒が東南アジア諸国でそのまま学卒として認められてはいなかったが、八○年代になってマレーシア、タイ、インドネシア、シンガポールなどで医学部などを除き、完全とはいえないが、公務において日本の大学を卒業した者も大卒として認める方向が出始めている。しかし、たいてい大学は指定されている。 マレーシアのリストがここについておりまして、マレーシアのリストによりますと、日本の大学も相当たくさんあるのですが、二十だけそれに対して大学卒と認めている。しかも、二十のすべての学部ではない。例えば慶応大学では商学部だけ、明治大学もそれに同じ、早稲田においても商学部と理工学部だけ、こういうふうに極端に指定されている。こういうふうになっておる。また本人の話に戻りますが、 欧米の大卒は、日本の大卒にくらべて、東南アジアの大部分の国で大卒として認められてきた。特に旧英領諸国にその傾向が強い。医学部でも大部分認められており、従って、医学部志望の学生は欧米に留学している。 それから、 欧米の大学を卒業した者にくらべて日本の大学を卒業した者は、上記1、2の理由から分野が限定されているので不利である。また一般的に公務においても第一に言葉の問題で、英語が重要な役割を果しており、日本語は嫌われているので不利であり、第二に日本への留学の歴史が浅く、帰国後に公務につく際、人間関係やコネがないので上昇ルートが少く不利になっている。 これは田井さんがまとめてくだすった報告であります。私はこれを見れば見るほど、こうした問題について経済協力というお金を出すばかりが教育じゃない。両者の間に、どぶにごみがつっかえているように、こちらの意思として援助したからいいんだろうというようなものではなくて、知的なパイプがつっかえているのではないか。そして、今までの文部行政というのは余りにも独善的であり過ぎて、こうした諸外国の実情に疎過ぎたのではないか、こういうように思うわけであります。この問題について御見解を示されたいと思います。
○三宅政府委員 先生御指摘のとおり、確かに留学生の学位の認定につきましては、最近インドネシアとかシンガポール、マレーシアではかなりよくなってきておりますけれども、それは過去から比べますとよくなっておりますが、依然として限定的である。したがいまして、現在の状況をそのまま放置できないということで、これまた鋭意文部省とも相談しながら各国と交渉をしている状況でございます。これは各国の従来の歴史、特に英連邦とのつながりの問題、言葉の問題、それから基本的には内政問題ということもございますものですからなかなか難しい問題がございますが、最近では一部ながら各国において理解を得ております。したがいまして、欧米諸国にできるだけ近づける方向で今後とも鋭意努力してまいりたい。 それから、それ以外につきましても、例えば就職の問題その他につきましては、確かに語学の問題、それから今言った学位の問題のほかに不利な面がございますが、最近留学生の質も、日本の経済的な地位の上昇、それから留学生制度がかなりよくなってきたということもありまして、レベルがかなり上がりつつある、こう承知しておりますが、現状では御指摘のとおり不十分でございますので、今後一層これら諸国との交渉を通じまして誠心誠意努力してまいりたい、こう考えております。
○安倍国務大臣 今の問題は本当に私も大事だと思います。去年私もASEANを訪問しまして日本で学んだ人たちと懇談したわけですが、その人たちの大半の人が、自分の子供は日本には送りたくない、欧米の国々に送りたい、こういうことを言っておりまして愕然としたわけであります。彼らは日本に対しては非常にいい印象を持って帰っておりますし、日本との関係をさらに深めたいと思っておるけれども、子供たちの将来を考えると日本に送るわけにはいかない。それは今おっしゃるような大変な障害がある。例えば政府の役人になるにしても、あるいはまた民間に就職をするにしても、あるいは資格を取るにしても大変な障害があるということですから、やはりこれからの日本とASEAN、東南アジア、そういう国々との本当の交流というものを深めていくには、まずそうした基本的な障害といいますか、今知的なパイプと言われましたが、そういうものをきちっと開いておかないと、本物の親善友好関係というものは生まれない。幾ら日本が経済協力しても、それだけでは将来に向かって、日本と東南アジアとの関係を思うと、この辺が非常に重大であるということは私も痛感をいたしました。 これもいろいろと提言等も出ているようですから、これはもちろん文部省、外務省、その他関係各省一緒になって真剣に取り組むべき重要な課題であるということを私は感じます。
○渡部(一)分科員 ここへ文部大臣をお連れした上で議論した方がいいテーマであることはわかっておりますが、まず外務省によほどよくわかっていただかなければならぬことであります。それは日本の大学教育というのが異常であるということです。それは、他の諸国と比べますと日本語だけで教育する、日本の大学は用語は日本語だけという極めて特殊なルールで形成されており、ごく特殊なところでない限りは英語で講義もドイツ語で講義も行われない。ところが、ヨーロッパ系の学校でございますと、その中でドイツ語と英語とフランス語で講義するぐらいのことは常時あることであって、極端な言い方をすれば、英語しかわからなくてもあるいはドイツ語しかわからなくても学力の相当程度というのは確保することができる。そういうルールがある。ところが、日本だけはどういうわけだか、日本の大学は文部省の強烈な陰に陽にわたる御指導によって日本語だけ、そして他の外国語は絶対にうまくならないようにしつけるようにその精力の大部分を尽くしておられる。全く何のためにやっておられるのか。国際化時代に背を向けるような人材を養成するために努力しているとしか思われない。だから、ここの部分をひとつ突破する必要があるのではないか。上手な英語、上手な外国語は必要でないとしても、大学教育の中で多数の語学で教育が行われるというのはもう当然のことだし、国際化時代においてそうしたレベルというものは達成されるのは当たり前ではないかと思うわけです。 第二は、バカロレアとの関係であります。日本の大学教育というのはことごとく日本のルールでなければいけないという厳たるルールを持ち過ぎておる。だから、一つの大学が他の外国大学と交流するにしても、その大学の単位の認定、相互認定に対しては猛烈なブレーキをかけておる。きょうはその問題は余り議論しません。材料を持ってきていませんが、例えば何々大学の何学部の何々学科と向こうの何々大学の何学部の何々学科と一人ずつ交換するというような、単位の相互交換にもそういうブレーキがついておる。何のためにこんなばかなブレーキをしょっちゅうかけるのか、私はもうあきれ返って物が言えない。こういう時代おくれというかルール外れというか異常な状況の中で日本の大学教育は行われ続けてきた。そこへもってきて、遅刻があろうが何しようが共通一次を通らない者は大学への入学資格は認めないという猛烈な方針をお立てになり過ぎておる。大学の入学資格についてはその辺は相互乗り入れができるように改善するのが普通なのではないか。もし日本の共通一次と英連邦バカロレア並びにアメリカのバカロレアとの間に、三者の間で相互に認めるというルールが一つできた瞬間に、本日のこの問題や東南アジアの知的交流の基本的部分というのは突破できるのではないかと私は思うわけなんです。それは今後日本が考えなければならないテーマだろう。日本の特殊化、世界の中で孤立する日本を招きそうなこうした政策については外交的配慮を加えるべきことが現実に出てきたのではないかと思われますが、きょうは文部省の方に答えさすのはちょっと気の毒過ぎる今の意見だから、あなたの答えられる部分だけまずお答えいただいてから外務省からお答えください。
○岡村説明員 まず、大学におきます使用言語の問題でございますが、日本語でなければ絶対いかぬという方針はございませんで、現に私学におきましては英語で教育をやる学部もございます。また、大学院に参りますと、これは英語、フランス語、ドイツ語等適宜必要に応じまして外国語を使って講義をするという実態がございます。特に留学生につきましては、東京大学の工学研究科の社会基盤工学コースとか、ことしの十月から開設されます埼玉大学の政策科学研究科等におきましては英語によりまして授業を行う留学生のための特別のコースを設けており、このように改善も進んできておる次第でございます。ただ、先生の御指摘の趣旨を踏まえまして、今後とも努力してまいりたい。 それから、留学生の日本の大学への入学試験についてでございますが、確かに共通一次を課す大学がないわけではございませんが、一般的には日本国際教育協会が留学生のための統一試験を行っておりまして、その統一試験を受ければ各大学でその試験の成績に基づきまして入学させるかどうかという判断をいたしているところでございます。
○三宅政府委員 先生御指摘のとおり、英語教育ということが現在非常に重要になっておりまして、今留学生課長の方から話がありましたが、最近確かにそういうようなことがふえております。二十一世紀の提言の中でも、国際化を進めるためにはもう少し英語教育ということを重視すべきであるという点が明記されております。この点につきましては文部省とも協議しながら、できるだけ英語教育の充実に努めてまいりたいという全般的な方針でございます。
○渡部(一)分科員 私は小さな問題を申し上げているのではなくて、極めて大きな日本の教育の成り立ちと、そして東南アジアを主として申し上げましたが、世界の国々における知的な交流の最大の障害点を申し上げたわけであります。これらにつきましては、日本の教育制度も日本の外交当局の御方針も両方とも関与することは当然でございますが、特に強い関心をお抱きいただきまして、現状を早く直していただきたいですね。この話はもう何年も前から議論されている。それで、文部省は絶対今まで何もしなかった、一つもしなかった。そして、ただただ古い、こそくな文教政策にこびりつき過ぎた。外務省はこの大問題については所管外として研究しなさ過ぎた。そして、あげくの果ては日本の国際的な孤立、知的孤立状態は続きつつあり、その知的な孤立から、今度はシステム上の孤立状態にまで今や変化しようとしている。こうした状況というのは極めて危険だと私は考えるわけであります。過去における我が国に対するインドネシアの留学生たちが、今、日本の企業の皿洗いや玄関番しかできない。日本の大学を出ても向こうへ帰るとこのざまです。そして、我が一族を二度と日本の大学に入れたくないと言っている状況は重大であり、深刻であります。この際既存のルールを徹底的に再考慮されることを私は望みたいと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
○安倍国務大臣 おっしゃるように、日本はこれからますます国際化の道をたどっていかなければなりませんし、世界の中の日本としての責任を果たしていかなければならぬ、そういう立場に立つわけであります。それだけに諸外国からの留学生の受け入れ、国の留学生はもちろんですが、私費の留学生についても受け入れ態勢を充実していくということは極めて大事なことであろう、むしろ現在の状況から言えば、戦前の方が外国から日本に入ってくる学生の方が多かった感じすら私たちは持つわけでございます。それには今おっしゃるようないろいろな障害があるわけですから、この障害を抜本的に見直して取り払っていくという努力を、これは文部省だけの問題ではなくて各省相協力してやっていかなければならぬ国の一つの大きな課題である、こういうふうに認識して、そういう方向で私も努力してまいりたいと思います。
○渡部(一)分科員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
○相沢主査 これにて渡部一郎君の質疑は終了いたしました。 次に、井上一成君。
○井上(一)分科員 私は、まず最初に経済援助の問題について伺っておきたいのです。 とりわけ経済援助は我が国の外交指針の中で柱の一つでもあります。もちろん、国税をそこに注ぐわけでありますから、内容等についても慎重かつ十分な調査が必要だと思います。 それで、前もって一遍対フィリピン援助について質問の焦点を絞っておきたい、こういうふうに思うのです。時間が大変限られておりますので、私の方から当分科会で予算委員長に資料要求をお願いしたい、こういうふうに思います。 第十次、十一次の対フィリピン経済援助の中身についての資料、さらには第十二次、これは円借款でございますが、要請の内容とその対応方針についての資料をぜひ御提出いただきたい、こういうふうに思います。 そこで、フィリピンに対する商品借款が供与されたのは、私の承知する範囲では一九七一年から七八年まで、七四年はこれはなかったわけでありますが、七九年以降供与されていなかった理由については何なのか、このことについてまず聞いておきます。
○相沢主査 ただいまの井上一成君の資料要求につきましては、政府もお聞き及びのとおりでありますから、しかるべく措置をお願いいたします。
○柳政府委員 商品借款につきましては、開発途上国の国際収支状況が非常に悪くなりまして、民生の安定、経済の運営に最小限度必要なものすら輸入する外貨準備がなくなったというような苦しい状況になったときに初めて私どもは商品借款を出すことにいたしております。七九年度以降はフィリピンにおいてそういう状況はなくなりましたので、商品借款の供与を取りやめたわけでございます。
○井上(一)分科員 外務大臣に伺いたいのですが、アキノ氏暗殺事件後のフィリピンは、マルコス長期独裁政権に対する世論の不満が表面化して、現在のフィリピンに対する私のとらえ方は、政治的にも社会的にも不安がある、不安定であるというとらえ方をしております。外務大臣は、フィリピンの政情をどう御認識なさっていらっしゃるのか、まず最初に聞いておきたいと思います。
○安倍国務大臣 アキノ氏暗殺以来、フィリピンの政情は大変混乱をいたしたわけでございます。さらに、それが経済的な混乱というところまで進んでいく状況すら示したわけでございますが、その後最近の状況では、我々が憂慮しておりましたような政治的にも経済的にも混乱が極度になってそして爆発するのじゃないか、こういうおそれすら持っておりましたが、どうにかその辺のところは乗り越えてマルコス政権としては不安の中でも一応小康を得た。ただ、経済の面においては、貿易関係も芳しくない、ストップしているという状況でして、大変混乱の状況が続いておる、これがまた民生にも相当影響が出ておる、こういうふうに考えております。 したがって、いまの状況では、おっしゃるように確かに政治、経済とも全体的に不安定であると言わざるを得ないと思います。
○井上(一)分科員 その不安定の大きな要因の一つにアキノ氏の暗殺事件を見逃すわけにはいかない、それは大きな要因であり、それが一つの大きなきっかけになったと私は認識するわけですが、大臣はいかがでございましょうか。
○安倍国務大臣 もちろんアキノ氏の暗殺が契機となって一挙に政治不安が噴出した、こういうことになるのではないかと考えております。
○井上(一)分科員 そこで、フィリピンの政情を安定させ、かつ日本・フィリピンの友好関係を深めるためにもアキノ氏暗殺事件の真相が明らかになるということは非常に大事だと思うのです。大臣はいかがでございましょうか。
○安倍国務大臣 ああしたテロ行為というのはいずれにしても排除されなければならない憎むべきことであろう、こういうふうに思いますし、そういう立場でこのテロ行為の真相が明らかにされることを我々は心から期待をしております。
○井上(一)分科員 その真相究明に対して我が国としてはできる限りの協力を惜しまないというお考えをお持ちでしょうか。
○安倍国務大臣 日本のできる協力はしなければならない、こういうふうに思います。
○井上(一)分科員 そこで、具体的にお尋ねをいたします。 せんだって、アグラバ委員長を中心に我が国に真相究明という一連の調査の協力要請がなされたわけであります。そのときに声紋分析の問題が一つの大きな議論の中に入りました。これは同僚の石原慎太郎議員が、私の承知する範囲では、外務省の橋本アジア局長に問い合わせたということでありますが、フィリピン政府は既に口上書をアグラバ委員長に渡したと言っているという回答をしたということであります。我が国政府はこれまでにフィリピン政府からどのような形であろうとも、どのようなルートであろうとも声紋分析を依頼する口上書を既に受け取ったのかどうか、まずこの点について聞いておきたいと思います。
○橋本(恕)政府委員 現在までのところ声紋鑑定に関する依頼についての口上書は受け取っておりません。
○井上(一)分科員 受け取ってないということは、フィリピン政府は声紋分析を我が国に依頼をする、真相を追及していく努力、そういう意思がないというふうに私は理解をするのですが、外務省はどう理解されますか。
○橋本(恕)政府委員 先生御承知と思いますが、アグラバさんを委員長とする真相究明のためのいわゆるアグラバ委員会の方々が日本に来られまして、その際に我が国政府は、国際捜査共助法という法律に基づきまして、この法律の範囲内で最大限の御協力をいたしますということで、口上書、つまり国と国との、政府と政府との正式の公文書を持っていらしてください、そうしたらその範囲内でちゃんとやります、そういうことを明確に申し上げたのでございますけれども、現在に至るまでその口上書による依頼が行われていないということでございます。 ただ、フィリピン政府の中におきましてもいろいろお考えがあろうかと思います。私どもは口上書の到着を待っておった、こういうことでございます。
○井上(一)分科員 アグラバ委員長以下一行が日本に来られてこの真相究明に努力をされたわけですけれども、その調査団から政府に対する声紋分析の意思表明というものはなかったのでしょうか。正式、非公式は別としてなかったのでしょうか、
○橋本(恕)政府委員 正式のものということになりますと、先ほど申し上げましたとおり、口上書による依頼ということになろうかと思います。 ただ、これは公式か非公式か存じませんけれども、アグラバさんが日本に来られまして、そのアグラバ委員長ほか数名の関係者と私ども政府関係者とで詳細に打ち合わせをいたしました。そのときに、公式か非公式かは私はよくわかりませんが、アグラバさんの方から声紋鑑定についての関心が表明されたというお話は承っております。
○井上(一)分科員 まあ正式、非公式は別として表明された。 さらに私は、先ほどの局長のお答えで、日本政府は口上書が届くことを期待しているというふうに受けとめたわけでありますけれども、声紋分析を依頼するという口上書が届くことを、正式なルートで届くことを我が国は期待しているんだ、協力を惜しまないんだ、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
○橋本(恕)政府委員 口上書による、つまり公式のフィリピン政府からの御依頼がございますれば、私どもとしては声紋分析、声紋鑑定にできるだけの御協力を申し上げるという気持ちは持っております。
○井上(一)分科員 外務大臣既に御承知のように、アメリカはこの問題については一定の意思を表明しているわけなんですね。我が国としてこの問題をどのように位置づけているか、この問題に対する我が国の、外務省としての、外務大臣としての認識はどうなんでしょうか。この点について承っておきたいと思います。
○安倍国務大臣 アキノ氏が暗殺されましてから私もしばしば表明をしてきたわけですが、こうしたいわゆるテロ行為ということは憎むべきことであって、絶対にこれは排除されなければならない。同時にまた、この事件について一日も早く真相が解明されることを望んでおる、そして同時に日本としても日本の立場で協力すべきことは協力しましょう、こういうことを言ってきております。これが日本の公式な考え方であります。
○井上(一)分科員 先日の報道で、「商品借款三百五十億円など 対比供与を来週決定」こういう見出しの中で、今までは経済協力についてはちゅうちょされてきたわけでありますけれども、ここに来て決定を急ぐのはIMF関係の手続がおくれており、完了を待っていてはフィリピン経済がさらに悪化するということですね。そして反日感情を招くおそれがあると判断したからだ、こういう報道がなされているわけです。これは、報道でございますから、改めて外務省は、今援助を急がなければ反日感情が高まる、そういう認識を持っていらっしゃるのかどうか、その点について聞いておきます。
○安倍国務大臣 おっしゃる件は、五十八年度対フィリピンの円借款であろうと思いますが、現在フィリピンが非常な経済困難にあるわけでありまして、我が国としましても国際協調のもとで応分の資金協力を行うべく現在関係の省庁間で最終的な検討を取り進めておるわけでございますが、今週中というお話でありますけれども、果たして今週中に決定できるかどうかということになりますると、まだそうしたはっきりした見通しは立っていない。いずれにしても五十八年度の円借款を中心とする経済協力については、今各省間でこれをまとめておる最中であります。
○井上(一)分科員 後段の、この援助を急ぐということは反日感情を高めないのだという認識なのか、そういうふうなことは全くないというふうに考えていらっしゃるのか、いかがですか。
○安倍国務大臣 これまで日比の間では経済協力はずっと毎年積み上げてきておるわけでございます。そして今日は特にフィリピンで非常に経済的な困難に直面しておる、民生も動揺しておる、こういう状況であるわけでございますが、この経済協力というものは続行して行うべきである、こういう基本的な立場で今取りまとめを行っておるわけでございます。 反日感情といいますか、これは、もちろん部分的にはこれまでのフィリピンにあることは事実でございますが、そういう日本とフィリピンの関係をよくしていこう、そして人道的相互依存関係を強化していこうという目的でやっておるわけでございますから、それなりの成果、効果というものを今日まで上げてきておる、こういうふうに思っておる次第でございます。
○井上(一)分科員 アメリカの下院外交委員会のアジア・太平洋小委員会、委員長ソラーズさんですね、対フィリピン援助に関する決議がこの二月に行われておるわけです。決議の要旨というのは、フィリピンに対する軍事援助費六十億ドルについてはアキノ氏の暗殺事件の解明と、五月の総選挙が公明正大に実施されるということを見るまで見合わすべきだ、こういうふうな決議なのです。これは御承知ですね。 私自身は、反日感情が高まるから援助をするという認識は全く逆さまである、こういうふうに思います。そういう認識を持たれているとすればこれは大いに改めなければいけないし、もっともっと取り組みを原点から変えていかなければいけない。むしろ逆に真相究明をこのままにして援助をすれば、私は、反日感情が逆に高まっていくんじゃないか、どうしてこのアキノ氏の暗殺事件の真相を明らかにせずして日本はマルコス政権に経済援助を続けるのか、むしろ日本を正しく理解してもらえない、そういうフィリピンの世論が沸き上がるであろうと予測をします。 大臣、私は経済援助を一般論としては大いに、世界平和のために我が国の今後の外交指針の大きな柱として取り上げていくべきだ、これは冒頭申し上げました。しかしながら、その取り組み方に十分な配慮と正しい認識を持つことが大事である、このことを私は申し上げているわけです。具体的な問題としてフィリピンのこの問題を取り上げたわけであります。 政情も不安定である。これは、ニカラグアに対しては政情不安定を理由に現在は援助を中止しているわけです。そこと対比して、ニカラグアがそうだからフィリピンにこうしなさいというのではなくして、むしろアキノ氏の暗殺事件の真相が判明するまでフィリピンに対する援助は当分見合わせるべきではないだろうか、こういうふうに私は思うのです。そのことがフィリピンの国民の日本に対する理解を十分深めることにもなるのではないだろうか。別にアメリカと同じように、五月の総選挙が公明かつ正大に行われるようにとか、国会の決議までしなくても、それは外務省の判断の中でそういうことを私は期待したいわけであります。外務大臣いかがでしょうか。少なくともアキノ氏の真相究明には積極的にできる範囲で調査、協力を惜しまないのだ、せめてそれが明らかになるまでは、そういう点について大臣の見解を聞いておきます。
○安倍国務大臣 確かに真相究明は極めて重要であると思います。したがって、真相究明が行われることを期待し、日本もそれなりの協力もしておりますし、今後とも協力をしなければならない、こういうふうに考えておるわけですが、真相究明と経済協力というのは別じゃないかと私は思っております。というのは、経済協力はこれまで毎年ずっとフィリピンに対して行ってきておるわけでありまして、そして既に五十八年度についてはフィリピンとの間でプレッジしておる中身でございます。また特にフィリピンは現在経済が大変困難な状況にありまして、そして民生等が混乱を起こしそうだ、こういう状況にありますから、私たちは、隣国としてのフィリピンの経済の安定のための決められた経済協力を行うことが日比間の将来を考える上においても大事なことであろう、こういうふうな判断で進めております。 しかし、おっしゃるように経済協力もやはり慎重に行わなければならない点もあると思います。いまちょうどIMF等が調査しております。そういった調査報告等も相まってこの協力は実施する、こういう段取りで今取りまとめを進めておるわけであります。
○井上(一)分科員 私は、経済援助とアキノ氏の問題を切り離すべきであるという認識は間違っていると思いますよ。アキノ氏の問題がフィリピンの政情、民生を不安定にしているのです。ここで混乱がさらに激化した場合、本当にその経済援助が生きた経済援助になるのかどうか。さっき資料要求しました。あなたは約束をしているんだと。確かに約束をしているでしょう。しかし、その中身にもいろいろな問題があるのですよ。しかし、中身の問題については時間がないから議論ができないわけなんです。日本の外交ルートによる正しい認識の情報を大臣は持たなきゃいけない。そういう意味で、これはどうしてもアキノ氏の問題と今フィリピンの国民が一番求めているものは何だとお考えですか。
○橋本(恕)政府委員 フィリピンに対する経済協力の問題でございますが、これは、昨年来現在に至りまして外貨が非常に底をつきまして、フィリピン経済は先生御存じのとおりに重要な原材料を外国から輸入してそれを製品化して出すという、つまり加工産業が非常に重要な役割を占めております。その重要原材料さえ輸入できないような状況にございますので、今の苦しいフィリピンの現実におきましては、日本からの経済協力、しかも早急の経済協力が必要である、こういう状況でございます。
○安倍国務大臣 今答弁したようなことはもうすでに御承知のとおりだと思いますが、いずれにしても、日本としましてはフィリピンの政治が安定をしていく、同時にまた経済が安定をしていく、そして日比間の親善友好関係がさらに将来に向かって前進をしていくということを我々としては心から念願しておるわけです。
○井上(一)分科員 我が国の資本がフィリピンに進出している。我が国の企業が八百社から向こうに進出をしているのですよ。そして今、経済が非常に不況。例えばその資本を擁護してあげるために――我が国資本も本来なら倒産するんだ。倒産を救うための商品借款につながるということを私は予言しておきます。これまた改めて問題を指摘します。 大臣、私は、フィリピンが今求めているものは本当の自由だ。そして公正だ、公平だ、公明正大な世の中だ。そして民主主義だ。金じゃないのですよ。金で済まされないものがこの三点だと思うのですよ。大臣、そんな認識をお持ちになりませんか。
○安倍国務大臣 我々日本は今おっしゃったような民主主義、自由というのを享受して、我々としても、そういう意味では大変すばらしい国であるという誇りを持っておりますが、しかし、それぞれの国がそれぞれの国民の意思によってその政体とか、その国の方向というものが決まるわけです。それに対して日本政府の立場でどうだこうだということは言えない。やはりフィリピン国民の意思によってフィリピンの政体あるいはまた国の方向というものは決まっていくべきである、こういうふうに思います。
○井上(一)分科員 何を言っているのですか。あなたは今フィリピンの民生の安定には経済援助が、金が必要なんだ。そうじゃないのだと私は言っているわけだ。日本の持っている自由、民主主義、公正、これをフィリピンに定着さすために日本はどうあるべきか、そのためにはアキノ氏の暗殺事件の真相が究明されるまでは援助は差し控えるべきだ、こういうふうに私は言っているのですよ。それでもなおかつあなたは援助、金が必要なんだ、そういう認識なんですか。
○安倍国務大臣 いや、私が言っているのは、フィリピンの政体はフィリピン人が決めるべきことですから、我々が何だかんだ言う筋合いはないと思います。しかし、今フィリピンで政治が安定をし、それでまたフィリピンの経済が安定することは大事だと私は思っておる。それは、日本の隣国ですから、特にこれまでずっと経済協力を続けていた国だけにそういう安定を望んでおるわけです。そのフィリピンの経済が非常に混乱をしておる、そして国民が大変困っておる、そういう状況にあるわけですから、これに対してせっかく約束した日本の経済協力は、これを十分慎重な配慮のもとに続けていくということが日比間の将来のために必要だ、こういうふうに私は考えております。
○井上(一)分科員 混乱をした原因が何なのかということを突きとめていかなきゃいけない。そして混乱をした原因はアキノ氏の暗殺事件だ。そうなんでしょう。それをはっきりせずして上乗せしていくということはよろしくない。むしろフィリピンに軍事基地を置くアメリカが軍事援助を今中止しているわけです、留保しているわけです。逆に言えばそれの肩がわりではないんだろうか、そういうふうに受け取られても仕方がない。そういうような援助は差し控えるべきだ。不安定の原因をはっきりした上で大いに経済援助をすべきだ、私はこういう論理なんです。大臣、いかがですか。
○安倍国務大臣 それはわかります。ですから、我々としても、ああいうテロが再び起こってはならない、憎むべき行為でありますから、真相は究明されるべきである、日本もそれに対しては協力しますということでありますし、また、フィリピンの政治が不安定になった、急にああいうふうな状況に追い込まれたというのは、これは確かにアキノ氏の暗殺の結果である。これはもう客観的に明らかだと思うのですね。 ただしかし、今のフィリピンの経済が混乱して国民がそういう生活不安というふうな状況に追い込まれておる、こういう中で、これまで続いておる日本の経済協力、そしてまた約束しておる経済協力をここで打ち切るということは、これはむしろかえって混乱を助長させることになるのではないだろうか。そういうことで、しかし、そのやり方については慎重にしなければなりませんから今いろいろと検討しておる、こういうところです。
○井上(一)分科員 私は約束をした中身についても疑問があるのです。しかし、それは別途また質疑をしましょう。 今申し上げたいのは、フィリピンの国民がさらにこの経済援助の取り組みを見守っている中で強い意思表明があった、それをよせと。経済援助を、今金じゃないんだというような大きな意思表明があったとしたら、あなたはどうするのですか。どういう対応をなさるのですか。そこまで持ち込んでまで日本の政府が先を読めないで現状認識を誤っちゃいけないから、ここで強く留保すべきだ、経済援助を留保すべきだ、せめて真相究明の見通しがつくまで、こういうことを私は申し上げているのです。いかがなものでしょうか。正式な口上書が向こうから来るまで、声紋分析のそれまででもせめて待つんだとか、何かもうちょっと、本当に真相究明に我が国が真剣に取り組むという姿勢を表明すべきだと私は思うのですが、いかがでしょうか、外務大臣。
○安倍国務大臣 ですから、これは最終的には政府の判断だと思うのですが、おっしゃるように真相究明の方は、政府としてはこれに対して協力するのはやぶさかではないということはしばしば申してきておるとおりでございます。ただ、一方においても経済協力の面につきましては既に五十八年度約束済みのことでありますし、同時にまた、これまで長い間日比間では経済協力してきておる。そして今のフィリピンが非常な生活の困難を来しておる、こういう状況でございますから、やはり我々は真相究明は真相究明として、これは、非常に苦しい状況にあるところのフィリピンの経済の回復のために約束をした措置は進めるべきではないかというのが我々の判断であります。 それはそれぞれの見方があると思います。我々の判断でございます。ただ、それについては慎重にやろうということで、まだ最終的に決めておるわけではございませんで、今政府間でそういう方向で検討している、こういうことです。
○井上(一)分科員 もう時間がありません。慎重に検討しているんだ、こういうことですが、最後に、声紋分析の口上書をむしろ我が国の方からフィリピン政府に、督促をするといえばおかしいのだけれども、それぐらいの申し入れを、ぜひ協力をしたいというぐらいの意思表明をなさるお考えはお持ちじゃございませんか。向こうから持ってくるのを期待しているのだというのではなく、一歩踏み込んでフィリピン政府にそれぐらいの勇気ある対応をとるんだというお考えを持ってませんか。
○安倍国務大臣 これは相手の国の問題ですから、日本としては協力します、口上書が来ればさらに協力しますということを言っているわけですから、ですから、あとはフィリピンのその委員会が、相当これは中立的な委員会として積極的に調査活動をやっておられるようですから、フィリピンの政府との間の話し合いで口上書を出されるということになることを我々は期待をし、また、そういうことになればこれに対して協力をするということです。
○井上(一)分科員 もう最後にしたいと思います。 期待をしているというのはさっきから言われているわけです。そして経済援助の問題も絡んでくるから、私は、もうよせ――経済援助に慎重に取り組むというその中で少なくともせめて口上書についてはもう少し我が国政府からフィリピン政府に対するアプローチをしてもいいのじゃないか、こういう私の質問なんです。これを最後にします。お答えください。
○安倍国務大臣 これは先ほどお答えをしましたように、フィリピン政府が口上書――相手の出す口上書ですから、日本がどうだこうだということじゃなくて、フィリピン政府が決められるべき問題であろう、こういうふうに思います。
○井上(一)分科員 終わります。
○相沢主査 これにて井上一成君の質疑は終了いたしました。 次に、三浦隆君。
○三浦(隆)分科員 日韓関係についてお尋ねをしたいと思います。 さきに首相の施政方針演説あるいは外相の外交演説を通じまして、日韓関係のより一層の緊密化を中心としながら国際化へ向かっての開かれた姿勢が表明されました。よかったなと思って聞いておりました。今後さらに、自由主義国家を代表していきます日本と韓国との関係をより親善強化していくために、外務省として今後具体的にどのような策をお考えになっておるのかどうか。特に来年は日韓国交正常化の二十周年を迎えようとしておりますので、この祝賀行事に向けまして、官民、各省庁挙げまして盛大にお祝いしていくのが望ましいのじゃないかというふうに私は思うのですが、これにつきましての大臣なり担当者の方の御見解をお伺いしたいと思います。
○安倍国務大臣 日韓関係は現在良好に推移をしておりますが、政府としましては今後とも日韓間の緊密な対話を維持しつつ、両国が単に二国間のみならず広く国際問題についても話し合うような多元的な関係を樹立し、また、両国の各界各層の協力を促進して、国民的な基盤に立脚した関係を発展させるように努めてまいりたいと考えます。先般の日韓高級事務レベル協議の開催や日韓文化交流基金等民間の交流強化の動きに対する政府の側面的支援はこうした考えに基づくものであります。また、自分としましても、政府レベルの緊密な対話の一環として、できれば早期に訪韓をいたしまして、李源京外務部長官と会談したい、こういうふうに考えております。 特に、今お話しの日韓国交回復二十周年を期しての政府間、さらに国民間の行事は、今後の日韓の将来というものを考えて、ひとつできるだけ大々的に行うように努力をしていきたいと思っております。
○三宅政府委員 日韓正常化二十周年記念の行事の準備状況、若干補足いたします。 これにつきましては、すでに大臣の方からも御答弁ありましたように、日韓の定期閣僚会議、それから実務者協議で大々的に相互に開催しようということになりまして、双方において準備中でございます。具体的には、各政界、財界、文化、有識者から成ります大臣の諮問のための懇談会を三月の末にも催しまして、皆さんの御意見を聞きながら準備を進めていきたい。これは政府のみならず民間を含め、地方自治体を含め、協力しながら一致してやりたいということで、非公式な意見交換をまず第一回やりたいということで、現在着々と準備を進めておるという状況でございます。
○三浦(隆)分科員 同じように、関連しまして、来年二十周年ということで――今、日中会館の建設が進められておると思います。本年度の予算につきましても七億五千万円でしょうか、計上されているやに聞いております。私は、この際、日韓会館の建設ということが考えられないかどうかというふうに思っております。 といいますのは、ちょっとデータが古いのですが、昭和五十五年十二月三十一日現在の国籍別の外国人登録人員を見ましても、ここでは七十八万二千九百十人のうち韓国、朝鮮の方が六十六万四千五百三十六名ということで、ほとんど韓国の方が大変な数を占めているわけです。また、現在外国人留学生ということで、国費留学生あるいは私費留学生を含めまして韓国からも大変多くの方が日本に見えているわけです。にもかかわらず、日韓会館といいましょうか、そういうたまり場が現在ないということでありますので、この来年の二十周年を控えてそういうものを検討していただく余地があるのかどうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
○安倍国務大臣 日中会館の例に倣って日韓会館の建設をという非常に示唆に富む御指摘でございますが、会館の建設といった問題は、これは政府だけでできるわけではございませんで、やはり広く両国民間の各方面の意見といいますか、発意に基づくことが極めて重要ではないか、このように思います。したがって、今後ともこうした問題についてひとつ各界の意見等も聞きながら判断をしてまいりたい、こういうように考えます。
○三浦(隆)分科員 ぜひとも日韓会館の建設に向けまして外務省としても御努力をいただきたいと思います。 次に、日韓文化交流を深めようということで日韓文化交流基金というのがつくられております。三月末までが一応の準備期間ということで、この四月から本格的な事業に着手するものと思います。 本来、この事業は、「日韓両国民間の文化的交流を強化し、相互理解と信頼を深かめることによって日韓両国ひいてはアジアの安定と繁栄に寄与する」という設立の目的を持っております。具体的に「日韓間の文化交流、調査研究、広報等を主催または助成する。」ということでつくられているやに聞いております。 こうした文化交流推進ということの見地から、こういう財団の活動に対して外務省としてもどの範囲ぐらいまで御支援ができるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
○三宅政府委員 政府といたしましては、この種の日韓文化交流基金ができますことは非常に結構だということでございまして、今後いろいろな情報の提供とか、あるいは便宜供与のみならず、具体的に基金が実施する事業を見きわめました上で、政府として協力できる点につきましては大いに協力してまいりたい、こう考えております。
○三浦(隆)分科員 次に、指紋の問題その他をめぐりまして、今微妙な問題が日本と韓国との間でございます。来年度の二十周年記念行事をスムーズに盛り上げていきますのに一つの障害は、この指紋問題ともう一つは教科書問題だろうと思います。教科書問題がまた大きな話題になりませんように、あわせまして指紋の問題でも来年大量の切りかえが予想されておりますので、それに対する対応策というのを今から相当慎重に配慮していかなければならないと思っております。 私、本来政治とか法というのは、よくことわざにありますが、法にかない、理にかない、情にかなうと言っております。この場合のまず法にかなう、これは、外国人登録法の規定そのものだからと言えば確かにそうなんですけれども、本来この法の目的は居住関係なり身分関係を明確にするという趣旨のものです。ところが、現在この目的を超えまして、むしろ犯罪取り締まりのためにこの法そのものが使われかねない、少なくともそのように外国人の人、特に協定永住者の人たちは思っている人たちがおります。この点もお考えいただきたいと思うのです。 また、理にかないといいますが、余りかなっていないようにも思うのです。というのは、来年切りかえで、例えば各市役所、区役所の窓口の人たちが、一々その切りかえの指紋をどこまで照合するか、現実にはやってないと思います。あるいはまた証明書の常時携帯を義務づけられておりますが、現場の第一線のお巡りさんがその証明書を見て、その証明書に張ってある指紋が本人かどうかの確認、照合は、これまた一々できるものでもなかろうというふうに思うのです。そしてまた同時に、来年大量の指紋押捺拒否というのが出た場合に、この人たちをすべて違法だということでもって告発なり云々ということはできるものだろうか。現実に今告発の事例というのがどんどん年々減っているということ自体がこの問題だろうと思っております。 特に最後の情にかなうといいましょうか、これまで多年にわたりまして在日の韓国の人たちが有形無形のいわゆる差別的な生き方の中で大変苦しまれてきたことは事実であります。そして最近はとてもよくなりました。しかし、子供のころに受けた痛みというか痛手を忘れてないし、今でもなおかつそういう痛みを持って生きている小さい子供さんたちもたくさんいるわけです。そういう人たちが指紋というものを押すことが、実に何というか、気持ちが本当に釈然としないと言っているわけです。そういう意味では、こうした法の取り扱いというものが情にかなうといった面での対応も必要だと私は思っております。 ひとつ大臣にお願いしたいのですが、この外国人登録法の問題につきまして、今後法務大臣と大臣同士の折衝を特に早晩行っていただきたいなというふうに思うのですが、どんなものでしょうか。
○安倍国務大臣 指紋の問題で、いわゆる外国人登録証常時携帯等の義務につきましては、当省としましては直接所管する立場にないわけでございますが、いずれの義務も最近かなり改善が図られてきておる、こういうふうに承知をしております。また、諸外国でもこのような義務が採用されておりまして、我が国がこれらの諸外国に比べて特に重い義務を課しておる、こういうふうには考えておらないわけでございます。 しかし、いずれにしましても外務省としましては、在日韓国人の待遇改善につきましては、他の外国人の待遇問題を勘案しながら、できる限り日本人と同様な取り扱いを享受し得るようにしていくことが重要であると考えておりまして、今後とも引き続き関係当局とも検討してまいる考えでございます。
○三浦(隆)分科員 法務省としてはもちろん登録法の法というものがありますから、その限界というものがあると思っております。また、確認申請の期間の問題なり、あるいは年齢の問題なり、努力されていることも認めるところであります。にもかかわらず、なお今まだまだ大きな問題があるということですので、一法務省という枠を超えた大きな日本としての外交上の配慮、そういうものをぜひお願いしたいと思っております。 今月の二日でしたか三日でしたか、実は韓国国会で李外務部長官が教科書問題について発言されております。外務省としてどうお考えでしょうか。
○橋本(恕)政府委員 先生御案内のとおり、いわゆる教科書問題につきましては、昭和五十七年八月に官房長官談話という形で日本政府の考え方を明確にいたしました。それを韓国側も受け入れまして、いわゆる外交的には、つまり政府と政府、国と国との間におきましては外交上の決着がついたというふうに私どもは了解しております。 ただ、これはいわゆる原則合意でございまして、具体的に外交的に決着のついた話し合いが実際の教科書検定あるいは現実に出てまいります教科書にどのように反映されていくかということにつきまして、韓国側は依然として注意、関心をお持ちになっておられる、こういうふうに理解しております。
○三浦(隆)分科員 実は本来、日本の教科書ですから、日本がもちろん主導的な役割で自国の教育を行うのは当たり前のことだと思うのですが、しかし、とにかく韓国あるいは中国の人にとっては、かつての日本の戦争的な被害とか、そうした意識を、明治以来のものを忘れがたく思っております。そして、特に日本と韓国は一番親しい国であるにもかかわらず微妙なところで感情の食い違いがございます。そうしたものが一つ教科書として爆発したのだ。ですから、教科書だけではないと思うのです。仮に日韓関係の国民の気持ちがぴったしうまくいきませんと、何らかの形で幾つでも同じようなことが出ると思います。ですから、単に教科書は文部省だということでなくて、ひとつ外交上の大きな配慮の中からお考えをいただきたいと思います。 次に、韓国にとってみればことしで六十五周年、この三・一記念式典というんでしょうか、そこで民団の張聡明中央団長が外国人登録証の指紋押捺及び証明書常時携帯制度の撤廃というふうなことで発言しておりますし、また、この問題に対して大変心配しておりまして、日韓議連の安井謙会長あるいは春日一幸会長代行が中曽根首相に同じ趣旨の善処要請をしておりまして、首相の答弁もかなり前向きであったようにお伺いしておりますけれども、大臣どうお考えでしょうか。
○安倍国務大臣 先ほどもこの点については申し上げましたけれども、これは法務省の所管する問題ですが、今お話しのように、やはり教科書問題とともに、日本政府全体としても非常に重要な関心を持っておるわけでございます。したがって、そうした立場で今後とも関係各方面とはまた相談をしていきたい、こういうふうに思うわけであります。
○三浦(隆)分科員 法というのは、制定しますとある時点でストップするものでありまして、それに対して、社会状況は一日一日大変変化していくものだと思います。そこで、実はこの間、この問題について法務委員会でもあるいは予算委員会の一般質問の中でもさせていただいたのですが、その後にまた新しくこうした張聡明中央団長の発言なり、あるいは安井先生なり春日先生のこういう動きが出ているわけであります。このようにどんどん出てきているということ自体が、来年の二十周年ということを控えて何とかうまく乗り切っていきたいというあらわれだと思います。首相も直接法務大臣と話そうと言っております。外務大臣としても、そういう意味で前向きの姿勢の中で検討していただきたいと思います。 特に外国人登録法の改正というふうなものは、これは外務省の管轄でないとしましても、これまでに日韓基本条約あるいは日韓の法的地位等の協定が結ばれてきたわけです。その中の例えば第四条では「教育、生活保護及び国民健康保険に関する事項」というふうなことで、前向きな検討をしてくれというふうなのがございます。事実これはとってもよくなっただけでなくて、昨今は国民年金法までどんどん対応が変わってまいりました。まさに国籍条項を変えた取り扱いが行われているわけです。 そこで、お願いしたいというか検討していただきたいのは、この第五条の規定その他を考えながら、特にこの協定永住者に対しては、協定改定ということを行うような形で何とか外国人登録法から抜け出すことができないだろうか。少なくともそういうふうな協定改定に向けての検討をしていただくような余地は外務省としてお持ちじゃないかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
○小和田政府委員 条約に関連の御質問でございますのでお答え申し上げますが、御指摘のとおり、法的地位協定には第四条、第五条等の規定がございまして、今問題になっております事柄は協定の第五条に関連する問題であろうかと思います。 ただ、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、問題は実質がございまして、その実質をどう処理するかということについての政策の問題が一つございます。その上で協定をどういうふうに処理するかという問題が出てくるわけでございます。ところが、この実質の問題は当省が直接所管している問題ではございませんので、その辺について関係省庁と十分話をいたしまして、関係省庁の方でそこの点についてどういうふうに対処するかということが決まりまして、協定の問題を考えるという順序になろうかと思います。
○三浦(隆)分科員 とにかく日韓基本条約あるいは日韓法的地位等の協定も結ばれたのは一九六五年ですから、かなりの年月も費やされているということですから、新しい時代の移り変わりということを考慮に入れまして、するかしないかは別としまして、とにかく協定改定を踏まえての検討をぜひ行っていただきたいというふうにお願いしておきます。 次に、新国際センター、これは仮の名前でありますが、そうしたものの建設についてお尋ねをしていきたいと思うのであります。 といいますのは、現在、大使館とかあるいは公使館とか領事館とかいろいろな名目でのものが日本にございます。そこで、大使館はともかくとしまして、領事館なりあるいはいろんな国々の連絡事務所的なもの、そうしたものがまとまった一つの建物というのが現在我が国にはないと思うのであります。同時に、百カ国も百五十カ国もというたくさんの国々になりますと、豊かな国もあれば貧しい国も現実にはあろうかと思います。日本にそうした領事館なり何らかの連絡事務所を持ちたいと思いながら、持ち切れない国もたくさんあると思うのです。そうした国にとりましても、東京というのはもはや空き地もないし、しかも地価も大変に高いということが言えます。それから、仮にそれが克服し得たとしても、諸国家の友好促進ということを考えて、いろいろな国々が一堂に会するビルというのがあったら大変都合がいいじゃないかということ。 それから、さらに日本が二十一世紀を目指しまして、いろいろな国々のそういうビルをつくって、東西間、南北間、いろいろとありますけれども、むしろ日本が主導的な役割でそういうセンター的なものをつくって、入る入らないはもちろん相手国の意向もございますけれども、積極的に、むしろ日本はこういうものをつくっていくぞ、ぜひともお入りになりませんかというふうな意味合いを込めて、そういうセンターをぜひつくっていただきたいと思うのです。 また同時に、東京に政治から何から余りにも集中し過ぎておりますので、そうした新しい産業面だとか文化面でのそうしたものが、東京といってもほとんど大差ない時間的な距離にある横浜に持ってくるのが、私は国際港都横浜にとっても大変ふさわしいし、日本にとってもイメージ的にとてもいいのじゃないかというふうに考えます。 それから、時間の都合もありますので一括しまして、そうしたセンターの中に、先ほど留学生の御質問もあったようでございますが、現在、留学生も方々に散らばっていて、留学生全体がまとまって寄ってくる、気安く寄れる場所というものもございません。これは文部省管轄ではございましょうけれども、留学生あるいは学者、芸術家、文化人という人たちもどんどん、現在なお将来ますます交流が盛んになってくると思うのですが、そういう人たちの研修の施設なりサロン的なものなり、あるいは宿泊的なものなり、そういうふうなものもそういう国際センター的なものに入れたらどうだろうか。 あるいはまた、通産省の管轄ではございましょうが、貿易センター的なもの、あるいは諸製品の展示場的なものというふうなものを踏まえまして、今大きな意味で国際交流の一大拠点とでもなるべきものが今後我が国としてもあった方がいいんじゃないか。もちろん今検討しましてもできるのは大分先のことになろうかと思うのですが、そういうふうな仮の名前ではございますが、新国際センターというものの建設に向けて、外務省が主導的にそういうものを持っていこうというふうなお考えをお持ちいただけるかどうか、お尋ねしたいと思います。
○三宅政府委員 先生御指摘の新国際センター、これは横浜市で現在この構想が進んでおりまして、外務省も関係省庁とともに準備会合に何回か出ておりまして、海外の諸施設の状況とか、あるいはそれ以外のデータ、御助言も実は申し上げて、何回か協力しているわけでございまして、今後ともこの種のセンターの準備会合に当たりましては、側面からできるだけの協力を各省とともにやりたいと考えております。 それから第二の点でございますが、仮にこの種の国際施設ができた場合に、その中に例えば横浜における総領事館あるいは文化広報センターとか、このような施設が入るかどうか、これはもちろん相手国の希望その他にもよりますが、そういうものができればそこに入ってくる可能性もあり得ると思いますし、またそういうことを勧誘することも一つの有益な点かとも思われます。 また、先生御指摘の例えば留学生のサロンとか研修センター、あるいは学者、芸術家の研究またはサロン的な場所としてこのようなセンターが利用されるということも、もちろんこの団体の希望にもよりますが、そのことができればこれまた有益であろうかと思います。 また、貿易センターとかいうようなこととか展示場ということで、また仮にこういうものが、今すぐの問題ではございませんが、将来できた場合にはそれを活用していくということはございます。 ただ、何分資金的にもかなり大きな計画でございますものですから、建設の問題、運用の問題、今後どうするかということにつきましては、横浜市を中心としながら現在検討が進められているということでございまして、その検討の中の一環として将来どういうようにやっていくかということも、外務省としても側面から御協力申し上げたいと考えております。
○三浦(隆)分科員 今度の法案の中で、在ブルネイ及び在セント・クリストファー・ネイヴィースの各日本国大使館を新設するというふうなものが入っておりますが、本当に小さな国々と言ってはおしかりを受けてしまうことがあると思うのですね。我が国は現地に仮に大使館ができても、向こう様は日本に持つのにも大変苦しいというのが現実に世界の中に幾らでもあり得ることだと思っておりますので、将来の構想としてそういうふうないわゆる新国際センター的な建設の中で、あるいは外交官ビルと言ってもいいですけれども、そういうものをぜひおつくりいただきたいと思います。 今の御答弁の中でもかなり前向きのお話をいただきましたし、また横浜は本当に一番ふさわしいところだと私は思っております。そして、御回答の中にも横浜の可能性もあるやにお伺いさせていただきました。ぜひとも積極的に御検討いただきたいと思います。 次は、港湾運送事業法の改正についてお尋ねをしたいと思うのです。 といいますのは、横浜は国際港都ということもありまして、また東京と横浜の間に今新しく道路をつくったり、あるいは港湾の整備事業を行っております。そこで現実に働いております人たち、港湾運送事業法の適用を受けている業者の人たちがおるわけでありますが、こうした人たちに向けての港湾運送事業法というものが今改正されようとしております。これは五十七年の十二月十三日の行政管理庁勧告というのがございまして、それを受けた形で出ているかと思います。 そこで、今回の法改正と行管庁勧告との関係がどうなっているか。もう一つには、現行法の中で免許業者であっていわゆる法六条の免許基準に達しない業者があるわけですが、これに対する対策をどういうふうに立てられているのか。あるいは法九条でしょうか、認可料金というのが定まっておるのですが、これに対する遵守状況がどうなっているのか、あるいは認可料金を守らない業者に対してどのような対策をとっておられるのか。こうした業界の健全な発達というふうなことを踏まえながら、ひとつ運輸省からお答えいただきたい。
○一色説明員 お答えいたします。 先生御質問ございましたように、現行の港湾運送事業法といいますものは実は昭和四十一年に改正されておりまして、それ以降今日まで十八年の間改正されておりません。一方、港湾におきます輸送革新というものは、コンテナ船の出現でございますとか、サイロのような俗に言われます革新荷役が大幅に進展しておりまして、今や港の取扱量の中でそういうような新しい荷役方針といいますか革新荷役のものがもう七割を超えてございます。 そういうことで、先生の御指摘のありましたように、五十七年の十二月に行政管理庁の方から運輸省の方に対しまして、事業規制の見直しについて実は勧告がなされております。その中身は二点ございまして、事業区分の中で船内荷役と沿岸荷役について統合しなさいという点が一点でございます。あと一点は免許基準について見直しをしなさい。この二点について運輸省の方へ御指摘をいただいております。 私どもとしては、事業の実態と見比べますとやはり乖離があるのではないかというようなことで、実は今国会に港湾運送事業法の一部改正について成案を得まして上程して御審議をいただきたいというふうに実は今考えて準備を進めているところでございます。 それから、もう一点御質問ございました免許基準につきましても、十八年前の免許基準が今なお生き続けているということでございますが、これにつきましては、実は去年の九月に施設と労働者にかかわります免許基準について見直しを終えてございまして、現在各海運局におきまして事業者を指導しているというところでございます。 それから三番目の御質問でございますが、料金について遵守の指導方をやれという御質問だろうと思います。港湾運送事業法に基づきます認可料金でございますので、完全収受ということで私どもは横浜を初め各海運局を通じまして現地の港湾運送事業者の方たちを指導しているというところでございます。
○三浦(隆)分科員 港湾運送事業法の第一条の「目的」に「港湾運送に関する秩序を確立し、港湾運送事業の健全な発達を図り」とありますので、今後ともひとつ業界の健全な発達に向けての法改正なりをさらにさらに進めていただきたいというふうに思います。 最後に一言だけまたお尋ねをいたします。港湾運送量に占める革新荷役の比率というのは、今のお話にもありましたように、年々増加の一途をたどっているわけであります。そういうことで、日本を代表します国際港都としての横浜港の場合につきまして、港湾整備について国は国の直轄事業なり補助事業、起債事業などを通じましてどのような対策を講じられているか、特に横浜にとってプラスになるようなそういう対策をどういうふうにとられているか、お尋ねをしたいと思います。
○上村説明員 お答えいたします。 先生御指摘のとおり、横浜は神戸と並びまして我が国の外国貿易の増進上極めて重要な拠点でございます。そのために、私どもといたしましては内陸部と港を結ぶ臨港道路の整備でございますとか、あるいはともすれば機能に偏りがちでありました従来の港湾整備に欠けておった緑地の整備などとあわせまして、先生御指摘の革新荷役に対しました施設の整備をやっておるところでございます。 具体的に申し上げますと、横浜港の本牧埠頭の一番南側の水際線でございますが、そこで五十八年度から外貿コンテナの埠頭の整備にかかっております。これは六十年度に供用開始したいと思っております。 また、新たに五十九年度から外貿埠頭のコンテナ埠頭をさらにワンバース六十一年度供用開始を目途に整備にかかってみたいと考えておるところでございます。
○三浦(隆)分科員 質問を終わります。
○相沢主査 これにて三浦隆君の質疑は終了いたしました。 次に、上田卓三君。
○上田(卓)分科員 私は、まず外務大臣に基本的な日本の外交姿勢につきましてお聞かせいただきたいと思うわけであります。 特に日本が今経済大国と言われるようになりましたのは、日本人が非常に勤勉な民族であるということ、それから軍事負担が非常に少なかった、こういうことが挙げられるのではないか、こういうように思っておるわけでございまして、そういう意味で、経済的にも軍事的にもアメリカ一辺倒といいますか追随ではだめだ、自主的なそういう判断が大事であろう、こういうように思うわけでございます。特に我が国は広島、長崎に原爆が投下されまして、世界唯一の被爆国でもあるわけでありますから、平和外交に徹するということが一番大事ではないか、このように考えておるわけであります。 それともう一つ大事な問題は、日本人は何といいましてもアジア人であり黄色人種でもあるわけでございまして、戦前、戦後、現在もそうでありますが、少数民族として世界各国において日本人が差別をされてきておるということもこれまた事実ではないか、こういうように思うわけでございます。そういう点で、世界から一切の差別をなくする人権外交を積極的に推し進めるということは、日本の平和と安全という立場からも非常に大事ではないか、こういうように思っておるわけでございます。 ところが、この平和の問題あるいは人権の問題ということになりますと、どうしても日本が立ちおくれておるという現状があるのではないか。そういう意味では、経済大国にはなったが、いわゆる平和大国というか人権大国にはなっていない。こういう現状に対して、外務大臣の基本的な認識についてお聞かせいただきたい、このように思います。
○安倍国務大臣 今おっしゃるように、我が国は戦後の破壊の中から立ち上がって今日の経済的な繁栄を図ることができた、世界の中でも非常に大きな存在になったということは、日本人の持っておりますおっしゃるような勤勉性、それから日本が軍事大国の道を歩まず平和外交を推進してきた、同時にまた、日本がいわゆる平等主義という立場で国内的にもいろいろな施策を講じてきた、こういうことがいろいろと積み重なって日本の今日の平和と繁栄と安定があった、こういうふうに思っております。 我々は、これからの外交も平和外交に徹していかなければならない。日本の場合は外交の基軸は日米ですが、同時に体制の違う国々とも、濃淡の差はあっても広くつき合うという全方位的な外交をとっていくことが大事じゃないか、私はこういうふうに思うわけでございます。 同時にまた、お話しのような人種差別、日本もかつてはそういう中で非常に被害を受けた国でもあるわけですから、特に人権差別あるいは差別反対、そういう面については、人権外交と言われましたが、外交の一つの大きな方向としてこれからも国際社会に対応していかなければならない、私はまさにそう思うのでございます。
○上田(卓)分科員 我が国は国際人権規約の批准を一九七九年にしておるわけでございまして、私どもは民間組織で政府に対して相当強く働きかけて、やっとこさ批准をしていただいたわけでありますが、非常に不十分、不完全なものになっておるわけでございます。特に自由権規約に関する選択議定書は批准していないわけでございます。それだけじゃなしに、社会権規約についても、公休日の報酬、それからスト権の原則的付与、高等教育の漸進的無償化について留保されておるわけでありまして、国会の附帯決議でも、事態の推移を見守り前向きに対処する、このようにされているところであります。 そこで、お尋ねしたいわけでありますが、選択議定書の批准は現在何カ国に達しておるのかということが一つでございます。それから、先ほど申しましたところの、規約に批准した先進国で、さきの三条項に留保している国がどれだけあるのか、御報告をいただきたい、このように思います。 〔主査退席、中村(正三郎)主査代理着席〕
○山田(中)政府委員 選択議定書を批准いたしております国は、北欧を中心といたしまして三十一カ国でございます。それから、先生御指摘ございました、我が国が昭和五十四年人権規約を批准いたします場合に三点について留保いたしておるわけでございますが、この条項についてほかの国の状況はどうかというお尋ねでございました。私、ちょっと今全体をあらわすような資料を持っておりませんので、早急に作業をいたしましてお届けいたします。
○上田(卓)分科員 選択議定書は現在三十一カ国が批准しておるということでありますから、ぜひとも我が国も早急にこの選択議定書を批准するように準備を願いたい、このように思うわけであります。 それと同時に、社会権規約について三条項が留保されておるわけでありますが、留保しておる国の実態について今十分なお答えがなかったわけでありますが、大臣、実は我が国が留保している三条項につきましては、既にイギリス、フランス、西ドイツなどが批准しておるわけであります。だから、いつまでも日本が留保するのじゃなしに、早急に国際人権規約の完全な批准が大事ではないか、このように思いますので、その決意のほどと、最近の実情について後ほど詳しく報告していただくことをお願い申し上げたい、このように思います。
○安倍国務大臣 今おっしゃるように、留保の三条項についてイギリスとか西ドイツとかフランスがもう既に批准したというお話でございますが、私もその辺のところをもう一回確認をいたしまして、そしてどういうわけで留保しておるのか、その点につきましても再検討して努力はしてまいりたい、こういうふうに思います。 なお、詳しいことにつきましては、局長から改めて御説明あるいはまた報告させていただきたいと思います。
○上田(卓)分科員 それは後からまたやっていただきます。 それで、国連を中心といたしまして世界の各国が取り決めております国際条約というものは、全部で十九あるわけでありますが、我が国が批准しておるのはたったの六条約でございます。国連では賛成しながら我が国での批准は非常に渋っておる、外向きはいいが内部では非常に辛いということで、日本は外ではいいことを言っているが国内では何もしてないじゃないかという非難があることは先刻御承知のことではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。 まだ批准してない十三条約の中に、女性差別撤廃条約あるいは人種差別撤廃条約など、非常に重要な問題があるわけでございます。この問題につきましては、我が党の石橋委員長が代表質問で中曽根総理に質問いたしまして、その中で、趣旨には賛成である、国内法の整備を急いで早急に批准をしたい、特に女性差別撤廃条約につきましては六十年度中に批准ができるように云々ということがあるわけでございますので、私は特にその中で人種差別撤廃条約につきまして若干質問を申し上げたい、こういうように思っておるわけでございます。 一昨日の分科会におきまして大原亨委員に、人種差別撤廃条約の第四条、差別扇動について検討のためしばらく時間が欲しい、こういうように答弁をされておるわけでございます。これは外務省の方が答弁されておるわけでありますが、国際人権規約の中で、自由権規約の第二十条に、戦争宣伝と差別扇動を法的に禁止する、こういう文言が入っておるわけでございますが、日本はこの人権規約の批准に際しては、この第二十条に対しては留保してないわけでありますから問題はない、私はこのように考えておるわけでございます。我が国の憲法は思想、信条の云々というものがあるわけでございますが、これは戦争を扇動する思想とか信条というのは、私は平和憲法の理念から見ても禁止されていると見てもいいだろうと思うし、いわんや人間が人間を差別するような、基本的人権を侵すようなことは、基本的人権を守る日本の憲法の精神から見ても、これは抵触しない、このように思っておりますので、第四条云々ということは本当に責任逃れではないか、このように考えておるわけでございます。 特に、法務省でも認めておりますように、昨年は人権侵害が著しくあることを自覚している人がふえているということ、あるいは全国各地で悪質な差別落書きを初めとする部落差別事件が頻繁に起こっておるというようなことであるわけでございまして、特にフランスは人権差別撤廃条約を一九七一年、既に十三年前に批准しておるわけでございまして、国内法として人種差別禁止法を制定しているのが現状であるわけでありますから、我が国も早急に国内法として差別禁止法を制定して、人種差別撤廃条約を批准することが一番大事だと思うわけでありますが、大臣の見解を聞きたい、このように思います。
○安倍国務大臣 人種差別撤廃条約は私も批准すべきじゃないか、そういうように思います。しかし、そのための国内法体制の整備というものが必要でございましょうし、そのための努力をやらなければならない、そういうことで外務省も鋭意努力を進めておるわけでございますが、今のお話の具体的な問題点につきましては、局長から答弁させていただきます。
○山田(中)政府委員 今、大臣から御答弁申しましたように、人種差別撤廃条約につきましても、私どもといたしましてはできるだけ早い機会に批准するようにいたしたいと思っております。先ほど先生御指摘ございましたように、我が国の憲法体制の枠内でこの条約は当然批准できるものだと思っております。 ただ、先ほど先生四条の御指摘ございましたが、人権規約の場合、確かに戦争を唱道するような実態を特に法律で規制しなくても大丈夫である、日本の憲法体制からいきまして大丈夫であるということで、その部分について法的手当てをせずに批准したわけでございますが、人種差別撤廃条約につきましては果たしてそれでいいのかどうか、そこのところの詰めを今行っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、最初に申し上げましたように、できるだけ早い機会に批准したいということで鋭意努力しております。
○上田(卓)分科員 基本的人権を守っている我が国の憲法からしても、差別扇動する行為に対して法的に規制をすることは私は十分合法的であるというふうに考えておりますので、早急にそういう間違った考え方を改めていただきたい、このように思います。 さらに、人種差別撤廃条約の第一条の「人種差別の定義」があるわけでございまして、この条約でいうところの人種の定義は、広く人種、皮膚の色、門地、民族的もしくは種族的出身に基づくあらゆる区別、除外などをいう、こういうようになっておるわけでございます。特に門地と訳されるディセントとは、家柄や血筋あるいは身分にかかわった差別であり、いわゆる封建社会の身分差別に起因する部落差別も、この条約の対象になってくることは明らかであろうというふうに私は考えておるわけでございます。 さらに、もう一点つけ加えるならば、この条約に基づいてつくられた人種差別撤廃委員会での討議を見ても、性に基づく差別と宗教に基づく差別以外、さまざまな差別が実は議論されておるわけでございます。そういうことを考えますと、部落問題は当然のことながら、我が国に存在するところのアイヌ差別の問題、沖縄出身者に対する差別の問題、あるいは在日韓国人、朝鮮人、その他のアジア系の外国人に対する差別などが対象になってくることは明らかではないかと私は考えておるわけでございます。 そういうことを考えると、この人種差別撤廃条約は、外国にあるところの差別をなくする条約であると同時に、我が国に存在するあらゆる形態の差別にも反対する条約であるということを認識していただきたい、こういうように思っているわけでございます。 〔中村(正三郎)主査代理退席、主査着席〕 外務大臣も御存じだと思いますが、昨年は、アメリカのデトロイトにおいて、日系人と間違えられて中国系のアメリカ人が白昼公然と射殺されるという悲しい出来事も起こっておるわけでございまして、一日も早くこの人種差別撤廃条約の批准をすることが一番大事だし、またそのために国内法として、今同和問題の解決のために地対法がございますが、これをもっと完全な部落解放基本法に制定し直すとか、あるいは人権基本法などを国内法として制定する。それは、差別行為については法的に禁止するということが明確に位置づけられたものでなければならぬと思うわけでございますが、この点についてひとつ大臣の見解を聞かせていただきたい、このように思います。
○安倍国務大臣 人種差別撤廃条約は、今御指摘のように、外国におけるあらゆる差別の撤廃を位置づけるとともに、我が国自身が今お話しのようなあらゆる差別を排除し、その撤廃をしなければならぬという意思を、批准することによって内外に明らかにすることにつながっていくであろうと思いますし、また、批准した以上はそのための努力を、法制的な面においても、その他あらゆる面において努力をして実績を上げていかなければならない、こういうふうに考えるわけでございまして、お話しのように、いろいろと我が国にも差別といわれる問題があるわけでございます。日本の憲法、それから戦後の国民の意識から見ましてもこういう点はやはり我々としては恥ずかしいことだ、こういうふうに思っております。 こうした差別をなくしていくための努力は、今日までも続けられてきてはおりますが、さらにこうした条約を批准することによっていろいろ体制を整備して、さらに大きく差別撤廃という方向に向かって前進をしていかなければならぬ、こういうふうに思います。そのために政府としてもいろいろとまた努力を重ねてまいる考えであります。
○上田(卓)分科員 去年は、世界人権宣言が発布されまして三十五周年ということで、世界各国でもそうでございますが、我が国においても大きな意義ある記念の日であるということで、大々的な行事が計画されたわけでありまして、民間においても、私たち部落解放同盟を中心に、学者、文化人その他各界の方々と連携いたしまして三十五周年実行委員会なるものをつくりまして、その代表の、先刻安倍外務大臣にお会いしていただきました磯村英一先生を先頭といたしまして、外国のゲストを御招待して、十二月の人権集会には東京、大阪を中心にいたしましてそういう催し物をいたしたところでございます。特に、昨年八月のジュネーブでの人種差別と闘う第二回世界会議の小委員会の委員長でもございましたチョードリというバングラデシュ元大統領を初め三名の方を御招待して用意をいたしたわけでございますが、それに関連して、昨年八月のジュネーブでの第二回の世界会議において採択されました宣言と行動計画に対して、外務大臣はどういう評価をされておるのか。 それから第二点目は、これを誠実に履行するお考えがあるのかどうかということ。 三番目には、この宣言と第二次行動計画を関係省庁に知らせ、それに関した具体化を図る必要があると思うが、どのように考えておられるか。 それから四番目には、第二次行動計画の国内での取りまとめをする所管を明確にする必要があるのじゃないかと思いますが、この窓口をどうするのか、この四点について御答弁をいただきたいと思います。
○安倍国務大臣 我が国は、従来より一貫してあらゆる形態の人種主義あるいは人種差別及びアパルトヘイト政策に反対しているところであります。第二回の人種差別撤廃世界会議において採択されました宣言、それから行動計画には、我が国の基本的な考え方が盛り込まれております。我が国としても重要なものと考えまして、右宣言及び行動計画に賛成票を投じたわけであります。 なお、日本政府としてはこれを誠実に履行するかどうか、こういうことでありますが、申し上げましたように、我が国は、宣言及び行動計画に盛り込まれた考え方を基本的に支持しておるわけでありますから、この宣言、計画を可能な限り履行すべく努力をしてまいりたいと考えております。なお、ただいま申し上げましたとおり、我が国は第二回人種差別撤廃世界会議で採択された宣言及び行動計画の趣旨について賛成をしておりますし、またその内容については、外務省の情報文化局の出しておる月刊誌に掲載をしてその広報にも努めておるわけでございます。また、これらを具体化するため関係省庁と協議する必要があると考えております。 それから最後の、第二次行動計画の国内での取りまとめをする所管を明確にする必要があるという御指摘でございますが、御指摘のように、行動計画を具体化していくためには、それぞれの所管官庁の協力を得る必要があります。国内での取りまとめをする官庁を明確にする必要があると考えております。今後関係各省庁と協議を行いまして検討していく所存でございます。
○上田(卓)分科員 国連の人権擁護活動に対して我が国が積極的に協力することは非常に大事ではないか。私も国会でもそういうことを強く要求したことがあるわけでございます。 そこで、具体的に提案申し上げたいわけでありますが、国連の人権委員会のもとにあるところの差別防止・少数者保護小委員会とか、あるいは国際人権規約に基づいて設定されております規約人権委員会を日本に招待して開催してはどうかという提案でございます。ちなみに、日本の報告書が審理されましたところの規約人権委員会は、西ドイツ政府の招待によって一九八一年にボンにおいて開催されておるという経過があるわけでございます。国連においては、国連自体の活動はもとより、地域的に人権擁護活動がなされておるわけでありまして、例えばヨーロッパ人権条約とか、米州人権条約とか、あるいはアフリカ人権憲章などがあるわけでございます。 そういう点で、先ほどの日本に招待してはどうかという問題にあわせて、このアジア版的な、アジアでの人権侵犯状況を把握する、そういう官民一体のアジア人権情報センターといったような、これは仮称でございますけれども、そういうようなものをつくっていくことが非常に大事ではないか。特に国連大学は東京に存在するわけでありますから、アジアと関係の深い関西に、ぜひともこういう情報センターなども設置することが大事ではないかと思いますので、大臣の賢明な御答弁をお願いしたいと思います。
○安倍国務大臣 今の御招待の方については十分考えてみたいと思います。 それから、今の、アジアで人権を守るためにアジア全体としてどういう取り組み方をするかといった点については、局長の方から答弁させていただきます。
○山田(中)政府委員 大変御貴重な御意見を伺わせていただきましてありがとうございました。 最初に、差別小委員会でございますが、従来日本は委員が出ておりません。先生御指摘のように、我が国としてはこういう問題に積極的に取り組まなければいかぬということで、現在ジュネーブで人権委員会が開かれておりますが、そこで選挙がございますので、我が方も差別小委員会に入りたいということで今努力いたしております。 それから、アジアにつきましては、我が国での人権思想の高揚といいますか、皆様方の御理解に役立つような方策、これなどはいろいろ考えさせていただきたいと思います。今先生から御指摘いただきました御構想も、十分検討させていただきたいと存じます。
○上田(卓)分科員 アジアは非常におくれておるわけであります。そういう意味で、日本の積極的な役割が大事ではないかと思いますので、ぜひともひとつ積極的に取り組んでいただきたい。我々も民間サイドで大いに頑張りたいと思っております。 そこで、アメリカの国務省の中に実は人権局というものが設置されておるわけですけれども、我が国の外務省にそういう人権局というようなものを設置する意欲があるのかどうか、必要性がありと考えておられるのかどうかということでございます。特に、在外公館においても人権問題の担当者を置くとか、そういうことも非常に大事かと私は思うわけでございます。あるいは、人権に関した重要な文書を系統的に翻訳して、国内において紹介するというような活動も非常に大事であるにもかかわらず、おくれておるというのが現状ではないかと思っておるわけでございます。あるいは、外務省の職員に対して、部落問題を初めとした人権問題の研修というものもぜひともする必要があるのではないか。特に、アメリカと日本の留学生の交流の中でも、アメリカの学生は積極的に我が国にあるところの部落差別の問題について非常に関心を持っておられる。ところが、それに対して日本の学生が何ら答えるべき知識を持っていない。アメリカの学生は、そういう意味では差別の問題について非常に敏感にとらまえておるにもかかわらず、日本の学生はそういう点が疎いというようなことも指摘されておるところでございますので、そういう点はひとつ十分考えていただかなければならぬのではないか、今こういうように思っておるわけであります。 それに関連いたしまして、先ほど申し上げましたように、女性差別の撤廃条約と人種差別撤廃条約を含めて、まだ十三の国際条約が批准されていないわけでありますから、他の条約につきましても早急に批准するために準備をしていただく必要があるのではないか、このように思いますので、外務大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
○安倍国務大臣 先ほどから申し上げましたように、やはり人権問題は我が国にとりましても世界にとりましても極めて重要な課題であると思いますし、人権を守るための努力を、これはもう官民ともに積極的に続けていかなきゃならない、そういうふうに私も信じております。そのための、いわゆるまだ批准してない条約に対する積極的な批准ということに対しては、今後とも政府として努力をしていきます。婦人差別撤廃条約につきましては六十年ということでありますし、また人権差別撤廃条約についてもできるだけ早く批准の方向で国内体制を整備してまいる所存でございます。 なお、外務省だけがこの問題を取り扱うということじゃなくて、これはやはり政府全体として、政府の各省各局にも絡んでおることでありますし、政府全体としてこの問題に対しては取り扱っていかなければならない。同時にまた、外務省は、国際的にも国内的にも、条約という問題を中心にいたしましてこの人権問題に対して積極的な取り組みをしていきたい、こういうふうに思います。 ただ、中の局等を今つくるという考え方はありませんが、国連局を中心に今後ともこれに対応してまいる考えであります。
○枝村政府委員 ただいまの御指摘の点、幾つかお答え申し上げます。 まず機構の点でございますが、これは、大臣申しましたように、一挙に局というわけにはまいりませんが、国際連合局の中に人権難民課というものを設けまして、課のレベルでは専門に難民の問題とあわせて人権の問題を扱うような機構を発足させたいということでやっております。 それから、外務省員に対する研修の問題でございますが、これは、外務省員が赴任いたします前に各種の研修を行っておりますけれども、その中に同和問題に関する特別の講義を組み込んでおりまして、磯村元東洋大学学長に特別の講義をいただいておるところでございます。 また、先ほど、日本の学生がアメリカの学生などとこの問題を討議するときに十分知識がないのじゃないか。これは、英文の資料「同和問題」というのをつくりまして、そういう場合にも使えるような対策を立てておるわけでございまして、各般の面で外務省としてもこの人種差別、人権の問題については格別の努力をしておるということについては御理解をちょうだいしたいと思います。
○上田(卓)分科員 質問を終わります。 ありがとうございました。
○相沢主査 これにて上田卓三君の質疑は終了いたしました。 次に、小川新一郎君。
○小川(新)分科員 最初に、通告がおくれて失礼いたしましたが、例のソ連の問題について大臣にちょっとお尋ねします。 ソ連政府が、このほど山村農林水産大臣の訪ソを招請してきたことが明らかにされましたが、これが実施されれば、昭和五十四年の渡辺農水相の訪ソ以来のものでございます。特に、ソ連のチェルネンコ政権が新しい政権として誕生したわけでございますが、例の大韓航空機撃墜事件以来冷え切っております対ソ外交路線というものが大きく変革を遂げるのかどうか、ただいま事務次官レベルの会議に中島審議官も訪ソしておるようでございますが、その辺の御見解をひとつ。
○安倍国務大臣 日ソ間は、御承知のように、大韓航空機撃墜事件以来さらに急激に冷え込んでまいったわけでございますが、私も外務大臣に再任をいたしまして、やはり日ソ関係の改善を図りたい。基本的には領土問題あるいはまたソ連の極東における軍事力の増強問題といった対立があるわけですが、日ソは隣国でありますから何としても改善を図りたいということを考えておりまして、たまたまアンドロポフ書記長が亡くなられるということでモスクワを訪問するに当たりまして、グロムイコ外相とも初めて会う機会を得まして、十分間にわたり会談をいたしまして、その席上、基本的にはいろいろと対立する問題もありましたが、日ソの対話を促進しようということについては意見の一致を見まして、きょうから日ソのまず高級事務レベル会談がその一環として開かれることになっておるわけでございます。 同時にまた、今お話しのような、山村農水大臣に対しましても訪ソ招請が行われるということでございます。正式な招待はまだないようですが、近々行われるというふうに承知をいたしておりまして、これは日ソ対話の一環として非常に歓迎をされるべきことである、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。
○小川(新)分科員 チェルネンコ新政権に対する、山村農水相の招請という一つのあらわれでございますが、これは非常に好感を持って迎えるということでございますが、きょうからの日ソ事務レベル協議においてはどういうことが主に議題になるのですか。
○安倍国務大臣 これは日ソの二国間の問題と、それから広く国際情勢というのが高級事務レベル会談の議題となっておるわけでございまして、もちろん日ソ間につきましては領土問題、どうしても日本としては取り上げざるを得ません。さらにまた、最近のSS20の配備増強を初めとするところのソ連の極東における軍事力の増強といった問題に対しても、日本も強い懸念を表明することになるわけでございます。さらにまた、大韓航空機撃墜事件につきましてもソ連の責任を求めておるわけでございますが、損害賠償等も要求しておるわけですが、何らのこれに対しては誠意ある回答が行われておりません。こういう点も日本としては持ち出さざるを得ないと思うわけでございます。同時にまた、しかし反面、日ソの経済の交流、それから人的交流、文化交流、そういった面についての、日ソのいわゆる積極的な協力面についての交流関係についての論議も行われる、こういうふうに判断しております。 同時にまた、国際問題としては米ソ、特に中断しておるINF交渉、STARTの交渉、これをどういうふうに持っていくのか、やはりソ連の真意というものを知りたいわけでございます。あるいはまた、中東に対するソ連の考え方、イラン・イラク問題に対する考え方、またこれに対する日本の考え方、あるいは朝鮮半島に対する、その緊張緩和に対する意見の交換、そういった今の世界の流動しておる情勢について両国の考え方を率直に話し合うということも一つの大きなテーマであります。
○小川(新)分科員 そこでお尋ねしたいのですが、例の対ソ制裁措置の再検討を加えるわけでございますが、人的交流の抑制については、ただいま外務大臣からお話があってよく理解いたしましたが、公的信用供与の輸銀の使用はケース・バイ・ケースということでございました。これをどう扱うのか。それからココム、すなわち対共産圏貿易の規制強化を緩めるのかどうか。こういった面が、山村農水大臣が招請されているということを踏まえた中で、今大臣としてはこういう問題をどうお扱いになられるのでしょうか。
○安倍国務大臣 対ソ措置につきましては、これはアフガニスタンに対するソ連の侵入あるいはポーランドに対するソ連の厳しい姿勢、措置、そういうものを受けて西側全体としてこれに対しての措置をとったわけでございますし、現在に至るもアフガンの状況も改善されてないという状況でございますので、基本的に対ソ措置というものを撤回するという状況にはないわけでございます。しかし、米ソ間におきましても対話の空気が出ておるわけでございますし、また、日ソ間におきましても、先ほどから申し上げましたように対話、交流の空気も出ておるわけでございますから、そういうものを踏まえて、これに対しては適宜対応していく。 ただ、しかし、経済措置については、やはり日本としてはケース・バイ・ケース、そして、これは特に公的信用供与についての経済措置についてはケース・バイ・ケースという考え方、措置というものを今改めるという考え方は持っておらないわけでございます。具体的にもこういうケース・バイ・ケースでもってこれまで処理してまいりましたし、今後も私はそういう全体の雰囲気の中でこれは処理していけるのじゃないか、ケース・バイ・ケースで処理していけるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。
○小川(新)分科員 六月のイギリスでのサミットに、対ソ政策の再検討、特に対ソ措置撤廃などについては、これは出す御予定でございますか。それをまずお尋ねします。
○安倍国務大臣 これは西側全体の問題でございまして、今の状況から見て、この問題が提起されるというふうには私どもは承知しておりませんし、今個人代表がいろいろと議題を協議しておりますが、これは中身の中を明らかにしないということになっておりますけれども、私は、全体の状況からいいますとこの問題が出てくるというふうにも思えませんが、しかし、やはり米ソの問題あるいは東西関係というのは、このサミットではどうしても大きな議題にならざるを得ないのじゃないか、そういう一環として出てくる可能性もまたあり得る、こういうふうにも見ておるわけであります。
○小川(新)分科員 そうすると、当面は、きょうあした行われている問題については、この問題は事務次官レベルでは取り上げない。もっときつく言うべきであるのかどうか、一言で結構ですが……。
○安倍国務大臣 いや、これは恐らく事務レベルの会談ではどういうことになりますか、まだ何とも……。二国間と、それから国際問題ということで広い立場でやるわけですから、そういう問題も出てくるかもしれないわけです、経済交流の中では。と思うわけでございますが、しかし、この措置はやはり西側全体の措置としてやってきておるわけでございますから、日本一存でどうだこうだ、例えばココムの問題にしても、言える性質のものではないわけでございます。緩和するにしても、西側全体の連帯という中で緩和されるべきである。いずれにしても、対話とかそういう状況が生まれてきているわけですから、強化するという方向には行かないわけですから、むしろこれをどういうふうな形で弾力的に運用していくかということが、これからの東西関係、米ソ関係、日ソ関係を考えるときに我々が考えなければならぬ一つの点であろう、こういうふうに思っておるわけであります。
○小川(新)分科員 二十三日からですか、総理の訪中でございますが、外務大臣、御参加になるのですか。
○安倍国務大臣 これは、国会のお許しが出れば参りたいと考えております。
○小川(新)分科員 そこで、これは国会審議との絡みの中でいろいろとあるのでございますが、一部新聞ではもう同行するように報道されておりますが、まだこれは決定しているわけじゃないのですね。
○安倍国務大臣 もちろん、これは国会がお許しが出なければ行けないわけでございますが、国会のお許しが出れば参りたい。特に、実は呉学謙外相が李先念国家主席に同行して諸外国を回るという予定をわざわざ変更して、中国で私を迎えたい、こういうようなことで待っておられるので、できればお許しを得て参りたい、こういうふうに思っております。
○小川(新)分科員 私、個人的な見解では御参加をいただきたいと思っております。個人の考えでございますが。 そこで、外務大臣が日ごろ持論としていらっしゃいます、朝鮮半島の緩和のために北朝鮮と韓国との対話、二者間の対話、これはなかなか困難な、当事者間でございますから当然大変だと思いますが、北朝鮮ではアメリカを参加させた三者会談、それからアメリカとしては中国も参加させたい、その中での四者会談を提案している。それに日ソを加え六者会談ということを、安倍外務大臣のお考えをあるところで聞いておるのでございますが、もし仮に中国へ行かれるとするならば、こういう問題は、総理並びに外務大臣としては、こういった朝鮮半島緩和のための会談のあり方についてはどのようなお考えを持っていらっしゃって、またどのように中国側にそういったあっせんをするのか、それが一つ。 もう一つは、韓国から中国に対して友好的なあっせんの依頼があったと聞いておりますが、この点はどういうことなのか、これはどうあっせんするのか、こういう点ですね。
○安倍国務大臣 中曽根総理とともにもし行くようになれば、朝鮮半島の情勢、特に緊張緩和するための対話の促進といった問題につきましては、これは首脳の間でも、あるいはまた私たち外相間でも当然話が出るわけでございます。それほど朝鮮半島情勢というのは、日本にとりましてもあるいは中国にとりましても重要な課題であろうと思うわけでございます。 そういう中で、南北の対話を行うべきである、いわゆる両当事国によって朝鮮半島情勢の緩和を進めるべきであるという考え方、あるいはまた北朝鮮が言っておりますように、韓国と北朝鮮とそしてアメリカを交えた三国会談によって事態の収拾を図るべきである、あるいはアメリカがこれに対して言っているような中国も加えた四者、さらにまた言われておりますソ連と日本も加わった、あらゆる関係国が加わった六者会談、こういうこともいろいろと出ておるわけでございますが、これにつきましてはそれぞれ一長一短もあるわけでございます。その国のそれぞれの立場もあるわけでございますから、今後の情勢を見きわめなければならぬわけでございますが、日本は基本的にはやはり両当事国がまず話をすべきじゃないかということを主張してきておるわけであります。 それに対して中国は、恐らく北朝鮮との関係から三者会談というものを主張をするであろう、こういうふうに思います。そういう中で、中国と日本との会談がどういうふうに展開をしていきますか、これは行ってからの会談によるわけでございますが、しかし、いずれにしても今の日本と中国とは大変いい関係にありますから、お互いに緊張緩和をめぐる考え方については多少の考え方の差はありましても、私は相当踏み込んだ意見の交換ができるのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
○小川(新)分科員 そこで、南北国連同時加盟ということを提案なさるお考えがあるのかどうか。今までそういう提案はなさったやに聞いておりますが、アクションを起こしていないわけでございます。そこで、今回の訪中に当たっては、中国側にこの理解を求めるために南と北が同時国連に加盟するということを提案するお考えはございませんか。
○安倍国務大臣 これは、日本としましては、やはり緊張緩和という立場から南北の同時加盟ということは歓迎すべきことである、こういうふうに考えておりますが、しかし、これは日本がそういうふうに期待をし歓迎をするとしても、具体的にはそういう方向へ運ぶかどうかということはなかなか困難な問題もあるわけでございます。そういう点も含めて、やはりこれはいろいろと朝鮮半島情勢を論議する中で、意見の交換をいろいろな角度からいろいろな問題について話し合うことになる可能性もあるのではないか、そういうふうにも思っております。
○小川(新)分科員 相手のあることでございますし、一方的にこちらが言うということだけではなくて、その問題については朝鮮半島の緊張緩和に重要なかぎを持つものであるということであるならば、中国に対して韓国が何らかのアプローチをしてくれということを言っているわけですね。その点はいかがなんですか。それが要するに、南北朝鮮が同時国連加盟という我が国の提案を一つの足場として緩和の中の伝え方、これが大事だと思うのですね。その点のところを、一言か二言で結構ですがお願いしたいのです。
○安倍国務大臣 これは、我が国としては南北統一の一つの過程への措置として歓迎するものですが、しかし北朝鮮も反対をしておりますし、こうした問題、やはり実現というもの、可能というものを考えて判断をしていかなければならぬ。恐らく中国においてもこの点については必ずしも賛成でないと思いますので、意見の交換はしなければなりませんけれども、ここで今はっきり打す出すというところは、外交ですから問題があるんじゃないか、よくコンセンサスをつくった上でやるということが大事だ、私はそういうふうに思います。
○小川(新)分科員 竹島問題について一、二問聞いておきたいのですが、竹島問題は分科会で私も何回か取り上げております。この問題を取り上げることによって、韓国に敵対するとか韓国の感情を損なうとか、そういう意味で申し上げるのではないことをまず前提としておきたいのは、韓国と我々は仲よい友だちとして、また友好的立場に立って、これからも極東の安全と繁栄のために寄与しなければならぬ両国であることを十分理解した上で申し上げたいのでございます。筋は筋、言いたいことは言うのが友だちでございます。 そこで、一つお尋ねしたいのは、この竹島問題については、日本としては非常に不愉快な面もあるわけですね。竹島領土の歌をつくったり、そこに軍隊を派遣したり、また領土、領海、領空を侵犯したという理由で韓国の軍艦が日本の漁船に発砲したり、こういった問題が重なっている中で、それはそれとして日本としては経済協力も惜しまないという態度で、我々のとうとい税金を四十億ドル、韓国にお貸ししているわけですね。 私はこれは必要なことだと思います。これは反対しているわけではございませんが、そういう感情の裏の中に、領土問題がこじれている一つの要因は、余りにも相手の無理解さがこういうことになったんでは、これはお互いのために不幸でございますので、この問題についてどう具体的な抗議をなされ、どう扱ってきたのか。竹島問題は重要な国際問題として、実はこの後に海洋領土の問題として海洋法の問題が出てまいります。二百海里の問題が設定されますと、当然これは大きな重要問題になってまいります。この辺のところを踏まえてひとつ御答弁いただきたいと思います。
○安倍国務大臣 確かに今、小川委員のおっしゃいますように、外交というのは、幾ら親しくても筋を通すことは通さなければなりませんし、間違ったことは間違ったで厳しくきちっと指摘をすることが必要である、私はこういうふうに思っております。そういう意味で、日韓関係は大変良好な関係にあるわけでございますが、しかし、竹島問題に限っては、お互いに日韓間で残念ながらその主張が対立をしております。そして、依然として韓国がこの竹島を占拠しておる。こういうことに対して我々は極めて遺憾に存じておるわけでございます。 したがって、日韓でいろいろと協議を持つ際におきましても、例えば外相会談あるいはまた日韓の閣僚会議、そういう際には必ずこの竹島問題を我々は主張いたしまして、日本の立場を明らかにいたしてきております。今後ともこの方針で進んでいく考えでございます。これはなかなか簡単に解決できるという問題でもございませんが、日韓間の良好関係というものを壊さないという大前提の中で、我々はあくまでも粘り強く解決を求めてまいりたい。平和的手段で解決するということで、粘り強く頑張ってまいる考えであります。
○小川(新)分科員 そういうお答えは、もう何回も同じように各大臣がこの分科会でしているわけですね。そのたびに、年々状況は韓国の既成事実の積み上げの中に推移しているということは事実でございますね。私に言わせるならば、あのとき、軍艦の発砲事件のときに、自衛隊はどうしていたのか、こういう問題でさえも日本の国民としては重大な関心を持たざるを得ないわけですよ。しかも私は、外務大臣が強烈な抗議をしたという認識も不勉強ながら持っていないわけです。こういう点はまことに遺憾に思うのです。 さらに大事なことは、国連海洋法条約が今成立し、やがて日本も同条約の批准、承認をする時期が来るのですが、そうなりますと、国連海洋法条約と竹島との関連で、一体どういうことになるのでしょうか。
○小和田政府委員 国連海洋法条約は、案文が確定いたしまして、採択され、我が国も署名したわけでございますけれども、御承知のとおり、実はまだ発効には至っていないわけでございます。政府としては、できるだけ早くこの条約に入りたいという見地から、いろいろの問題点を今検討中でございますが、今御質問のございました大陸棚の関係につきましては、関連する規定として、例えば大陸棚の境界を相手国との間でどう画定するかという規定がございます。この規定は、御承知のように、公平な解決を達成するために、国際法に従って、合意によって行うのだという規定でございます。それから、他方、その大陸棚を画定する場合に、どういうものが考慮の対象になるかということで、例えば島についての定義というような規定もございます。それらのものをいろいろと勘案いたしまして、案文作成の経緯等も踏まえて検討してまいりたいということで考えております。
○小川(新)分科員 そういたしますと、仮に、竹島は棚上げのまま日韓でもって領海の設定を行うのか。どういう格好に二百海里というものの設定をお互いにしていくのでしょうかね。
○小和田政府委員 我が国の大陸棚というのは、御承知のとおり、我が国の主権的な権利が及ぶ地域でございますので、これにつきましては、国際法それからこの国連海洋法条約に合致した形で処理が行われなければいけないわけでございます。 他方、先ほど来大臣から御答弁申し上げておりますとおり、竹島が我が国の領土であるという我が国の法的な立場も確保していかなければならない、こういうことでございますので、今の段階で、相手国との間でどういう処理が行われるかということについて私がここで申し上げるのは、ちょっと差し控えさせていただきたいと思いますけれども、そういう二つの立場を踏まえて検討していきたいということで、目下検討中の段階でございます。
○小川(新)分科員 これは大臣にお答えいただきたいのですが、結局、自分の国なんですね、竹島は。相手もそう思っているのです。だから、今はお互いになかなかできないことは、尖閣列島もそうですが、北方領土もそうですね。だけれども、私どもは、この韓国との問題、外交問題、国際問題、極東問題を踏まえた中での案件処理という大事な問題になってきますと、経済水域二百海里の設定については一つの妥協案というものが出てくると思うのですが、この妥協案というものが、我が国の主権の及ぶ領土としての認知をしないままそういう経済水域を設定すること自体問題になるのですか。その辺のお考えは、大臣としてはお持ちになっていると思います。が、今ここで御発表は差し支えるものなのかどうか。また、それが大きな影響を与えることになれば、これは私もあえて追及いたしませんけれども、私どもの感情といたしましては、これは、こういう国会の場において大臣の御認識、御見解というものがはっきり表明されたということで一つのステップを踏むことにも相なりますので、お願いしたいと思います。
○安倍国務大臣 二百海里問題を処理するにしましても、竹島についての日本の領土権というものはきちっと守る。日本の領土権を放棄するわけにいきませんから、竹島の領土権はあくまでもこれを守る。こういう中で国際的に処理していかなければならない課題であろう、こういうふうに思うわけであります。
○小川(新)分科員 その問題は、非常に厳しい理解度に立たなければならないことは私もよく承知をしております。 そこで、こういう海洋問題を基本的に考えるとき、私どもが出しております海洋開発基本法というものを制定しなければならぬのじゃないか。国連海洋法条約が成立し、我が国も批准するということになれば、こういう基本法というものを制定する考えが当然出てまいりますが、当然これは準備を進めるべきだと思います。いかがでございましょう。
○小和田政府委員 ただいま御指摘のありました点につきましては、確かに御指摘のとおり、今度新しくできました国連海洋法条約というものは、非常に広範の海洋に関連する問題を含んでいるわけでございまして、我が国における所管の官庁、関連する法律等も非常に大幅に広い範囲のものを含んでいるわけでございます。そういう見地から、これらのものを総合的な形で見ていくことが必要であろうという認識は私どもも持っております。ただ、それを一本の法律で処理をすることがいいのか、それとも、それ以外のいろいろな形で問題を処理するのがいいかというような問題につきましては、若干法技術的な問題もございますので、今のところ、関係省庁との実質における調整ということを中心にして作業を進めておるという段階でございます。
○小川(新)分科員 もう時間がございませんから端的に一問だけお尋ねいたします。 大臣、韓国には、在韓米軍は核兵器を置いてあると私は承知しているのでございますが、外務大臣としての御見解はいかがでございますか。
○安倍国務大臣 かつてアメリカの権威筋がそういうことを示唆したということも聞いておるわけですが、日本としては、また日本の外務省としては、外務大臣としましては、韓国にあるのかないのか、その辺のところははっきり承知していない、こういうことです。
○小川(新)分科員 極東の安全のために重大な今関心を持つ朝鮮半島、在韓米軍の実態については、西側の一員として我々は自覚を持っているわけでございますが、そういう中で、NATO諸国においては、この間の質問でもございましたが、核兵器があれば、これに対して、両国間において、アメリカはそれを極秘のうちに、要請があれば、その国の核兵器の存在については報告をするということが言われておりますが、韓国には、これは我々の国ではございませんから内政干渉になりますが、外務大臣としては、まずあるともないともわからない。こういうことはアメリカに聞いておいてもおかしくない問題でもあるし、その問題、私の考え方が唐突なのか非常識なのかわかりませんけれども、私は、今非常に重大な関心を持っている朝鮮半島対話の中に、在韓米軍の核兵器の存在すら日本の外務大臣、外務省がはっきりわからないということは非常に残念にも思う。それを思う方がおかしいのか、ちょっとその辺のところわかりませんけれども、端的に御質問させていただきたい。
○安倍国務大臣 御承知のように、アメリカは、核の有無というのは明らかにしない、こういうことであります。ただ、アメリカの議会での報告なんかで見ますと、NATOについては、アメリカも、部分的には核の存在を言っている国もあるようですが、これは、NATOそれ自体がやはり核を持っている、こういうことで、お互いに調整とかそういう面での連絡もあり得ないことではないと思うわけでございますが、日本は全然核を持っておらない国であります。そういう立場でございますし、また韓国についても、韓国自身が核を持っている国でもありませんから、アメリカがそういう中で核の有無を明らかにするということはあり得ないだろうと思いますし、また日本もこれを知る、また聞く立場にもない。アメリカは、核の有無は明らかにしないという原則ですから、これをまた聞く、また知る立場にもないということだと思うわけであります。 ただ、我々としては、朝鮮半島情勢の緊張緩和ということについては、もちろん重大な関心をもって日米関係では話し合っておりますけれども、そうした核の問題等については、日米間で話し合うということではありません。
○小川(新)分科員 終わります。
○相沢主査 これにて小川新一郎君の質疑は終了いたしました。 午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時十一分休憩 ――――◇――――― 午後零時三十分開議
○相沢主査 休憩前に引き続き会議を開きます。 外務省所管について質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)分科員 私が疑問に思っておることをお尋ねしたいと思うのですが、分科会ですから時間も短いし……。 まず疑問に思っておりますことは、事前協議ということが条約の中にありますけれども、日本はノーと言うことが決まっている、こういうことですね。そうすると相手方アメリカは、ノーと言うことが決まっておるのに対して、核の持ち込み等について日本に相談するはずがないというふうに私は思うわけです。それから同時に、アメリカの国内法の中で、核を持っているかどうかということを公表してはいけないということの法律があるようにも私は聞いているのですが、それがあるかないか。となりますと、結局事前協議ということは言うけれども、ノーと言うことがわかっているのに、それを相談すれば核を積んでおることがわかってしまうわけですから、そんなことを相談するわけはないというふうに論理的に私は思うわけです。その点に関して事前協議の規定はあるけれども、実際問題としては起こり得ない、こういうふうに考えておるのですが、この点はどうでしょうか。
○北村政府委員 まず、装備の重大な変更に関する事前協議についてでございますが、これについて先生今、アメリカには核の所在を明らかにしないという一般的な政策があるので、だから事前協議をしてこないのじゃないかということをおっしゃいましたのですが、それについては、昭和四十九年でございますが、この点については今までからも国会で御説明したことがございますが、要するにアメリカ政府の一般政策である核兵器の所在を明らかにしないということと、それから、かかる合衆国政府の立場は、合衆国の権限を付与された合衆国政府の官吏が、事前協議に関する約束を履行することを禁止しまたはこれを妨げるものではないという趣旨のことを我が方に過去に言ってきておることでございまして、この点も前から国会で御説明しておるところでございますので、私どもといたしましては、核の持ち込みがある場合にはアメリカは条約上の義務として必ず日本政府に対して事前協議をかけてくる、こういうふうに考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)分科員 昭和四十九年の十月十六日に決算委員会がありまして、閉会中審査ですが、当時木村さんが外務大臣だったのですが、その点について私が質問をいたしておるわけですね。木村さんはこういうふうに答えておるのですよ。「非核三原則で、事前協議を受けてもわがほうはノーということははっきりわかっておりますから、そういうような通常の場合における事前協議の場合はまず想像し得ない、こう考えます。」木村さんはこう言っておるわけです。その後が問題なんですよ。「ただ、危急存亡の場合には、単に外交ルートを通じての事前協議があるのかあるいはホットラインを通じてやるのか、そういうことはその場でまたわれわれが考えなければならぬ問題だと思います。」こういうふうに言っておるわけですね。ここまで言う必要があったかどうかは別ですよ。別だけれども、こう言って議事録に載っているわけですが、そこで私がお聞きをいたしますのは、「通常の場合における事前協議の場合はまず想像し得ない、」木村さんはこう言っておるわけですよ。ここに議事録がありますから、あるいは御用意なかったかもしれませんけれども、それが一つ。 それからあとの場合、「危急存亡の場合には、」「外交ルートを通じての事前協議があるのかあるいはホットラインを通じてやるのか、」ここがよくわからないのですがね。この「ホットラインを通じて」ということは一体どういうことを意味しているのか。これから見ると、ノーと言うのは通常の場合に言うのであって、こういうような「危急存亡の場合」というのは何を言うのかわかりませんけれども、これは日本では国是であるわけですね。国是というものをさらに超えた一つの大きな公共的な利益というか国益というか、そういうようなものがあるとするならば、このイントロダクションについてはイエスということもあり得るのだ、こういう意味にとれるのですがね、この問題は。議事録ありますか。ちょっと……。
○北村政府委員 ただいま見せていただきました木村大臣の御答弁と、私ども今ちょっと記憶のあれで確かじゃないのですけれども、有事の際でも事前協議を受けた場合は核の持ち込みについては常に政府が非核三原則を堅持してノーと言うという御答弁がたしか後であったように思っております。今までからも政府は、この問題につきましては、通常いわゆる有事であるかないにかかわらず、常に核の持ち込みに対しては、事前協議に対してはノーと申し上げるということで御答弁をしてきております。
○稲葉(誠)分科員 そうすると、事前協議を向こうから申し立てるとすれば、核を持ち込んだということが世界じゅうにわかってしまうのじゃないですか、事前協議してくれば。そうすると、核の抑止力の効果というものはそこで減殺されてしまうのじゃないでしょうか。そんなことをすることはあり得ないのであって、だから結局、事前協議ということはあり得ない。形は書いてあるけれども、実際にはないということになるのじゃないでしょうか。
○北村政府委員 事前協議を受けた場合に、それに対してどういう返答をしたかということにつきまして、国会への報告あるいはいわゆる公表といいますか、そういうようなことが今までからも国会で論議されまして、政府といたしましては、いわゆる通常の場合には事前協議が行われた場合国会に御報告をいたす、しかし特別の事由のある場合、すなわち日本の安全保障にも非常に重要な影響を与えるような場合などは特別の事由に該当すると考えて御報告しないこともあるというような答弁を今までからもいたしております。そういうことでございますので、核の所在を明らかにしないというアメリカの一般的な政策と、それから事前協議という条約上の義務は必ず守るというアメリカの条約上の義務、と同時に、それを誠実に遵守するという今までからのアメリカ政府の言明というものがございまして、私どもとしましては事前協議を受けた場合、それを公表するとかしないということは、そのときの具体的な事例に即して特別の事由がない限りは公表するということで考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)分科員 そうすると、公表しない場合というのは、具体的に言うとどういう場合が想定されるわけですか。
○北村政府委員 この問題につきましては、昭和五十七年三月の参議院予算委理事会に提出をいたしました政府の見解がございます。そこに「全く仮定の事態を想定して、何が「特別の事由」に該当することとなるかを予め確定的、網羅的に述べることはできない。しかし、敢えて一般論として述べれば事前協議の事実が公表されることにより、米国の軍事機密が直接、間接に明らかとなり、我が国自身の安全保障にも重大な影響を与える場合等が「特別の事由」に該当することとなると考えられる。かかる場合には、国益上の見地から、事前協議の事実を国会に報告しないことがあることについては御理解を賜わりたい。」こういう政府の見解を提出しております。
○稲葉(誠)分科員 私は非核三原則という問題について、これは三つを、やはりジャンルを二つに分けて考えるのが常識じゃないかと思うんですがね。つくらず、持たせずというか、それはアメリカとしても当然アメリカの利益になることなんですね。これは、今アメリカが一番考えているのは、敗戦国である日本、今は敗戦国とは言わないですね、随分たちましたけれども、日本がこれだけの実力を持ち、これだけの科学力を持って非常に強くなってきてアメリカに大きな脅威になってくることをアメリカとしては非常に恐れているわけですね。これは常識的だ。 もう一つ、ことしの最大の課題は、ある人に言わせると、例えば細見卓さんが話したという話に出ておりますけれども、「自由民主」という雑誌、今度の三月号ですか、竹村健一が書いていますけれども、八四年度の最大の課題は西ドイツの中立性だ、こう言うんですね。西ドイツがアメリカからどういうふうに離れていくかということ、これが非常に大きな課題だと言っているわけです。 だから、このつくらず、持たせずということについてはアメリカの利益に合致するけれども、このイントロダクションの場合、これはトランジットを含む、その場合はアメリカの利益からいって、そうすることがアメリカの利益になるわけですから、ジャンルは二つに分けて考える必要があるというふうに私は思っておるんですよね。だから非核三原則、三原則と言うけれども、こういうふうに問題は分けて考えるのが正しいのじゃないでしょうか、その点はどうでしょうか。
○小和田政府委員 御承知のことの繰り返しになって恐縮かと思いますけれども、安保条約における事前協議の問題が条約の不可分の一部として交換公文で合意されました経緯について簡単に御説明をいたしますと、その辺のことについてのお返事になろうかと思うのですが、御承知のとおり、交換公文で三つの問題が事前協議の対象となったわけでございます。 この三つの問題につきましては、もちろん日本の立場とアメリカの立場とが必ずしも一〇〇%一致しない場合がその具体的なケースにおいてあろうかと思います。そうであるからこそ、そのための調整の機能を果たす規定として第六条に関する交換公文が設けられたわけでございます。その中で、装備における重要な変更に関しましては、日本側の政策として、非核三原則の政策に表明されておりますような、核の持ち込みは日本としては一切ノーですよということが表明されておるということでございますので、条約の仕組みといたしましては、あくまでもその三つの問題について、アメリカ側の立場と日本側の立場との調整の問題があり得る。ただし、この核の持ち込みの問題に関しては、日本側の非核三原則に基づく基本的な政策の問題として日本は常にノーと言いますよということをあらかじめアメリカ側に対しても明確にしてある、こういうことでございますので、確かに非核三原則の内容によって、非核三原則の内容を構成しております三つの問題のそれぞれについて日本側とアメリカ側との間の距離と申しますか、日本側とアメリカ側との調整と申しますか、そういう問題が、必ずしも同じニュアンスで出てくるということはないというのは御指摘のとおりだと思いますけれども、条約の仕組みといたしましては、あくまでも先ほど申し上げたようなことになるということだと思います。
○稲葉(誠)分科員 海洋法条約が、これはアメリカ、イギリス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、スペイン、不署名ですね、日本は署名しておりますけれども。一体外務省当局は、これはアメリカはアメリカの理由がありますけれども、これは別として、これが成立するという前提で物を考えているのか、あるいは、これはもう成立しないという前提、前提というとおかしいのですけれども、そういう理解のもとに、あるいは成立は困難だろうという前提で考えているのか、一体どっちなんですか。
○小和田政府委員 判断の問題についてのお尋ねでございますので、私も実は非常に断定的なことは申し上げにくいわけでございますけれども、この国連海洋法条約というものが成立するに至りました経緯というものを考えてみますと、御承知のとおり、非常に長い年月をかけてようやくこの条約がまとまったわけでございます。その前の段階で既にジュネーブの一九五八年の第一回の海洋法会議というのがございます。それから一九六〇年に第二次海洋法会議というものがございまして、それでも必ずしもまとまらない問題がいろいろ残ったという経緯を踏まえて今度の海洋法条約ができた。その過程において、国際的なコンセンサスをつくるために最善の努力が払われたということから判断いたしますと、世界の大勢といたしましては、この条約を認めていこうという方向で国際的なコンセンサスが形成されつつある。それが、この条約が採択されるに至った背景であるというふうに考えております。
○稲葉(誠)分科員 そうすると、あなたの方としては、いつごろどういうふうになるというふうに見ておられるのですか。だって、アメリカもイギリスもみんな入っていないんですよね。署名する見込みがないでしょう。アメリカが署名しない理由というのは別で、私どもわかりますけれども、そういう西側のいわゆる大国が入っていないで、これが成立するということは、するには違いないとしても、いろいろな曲折があると思うのですが、それはそれとして、これが成立したときに、国内法が一体どういうふうにどこに影響してくるのか、こういう点についてはどういうふうにお考えになっているか。今はまだそこまで考えはいっていないということなんでしょうか。例えば今度の「判例タイムス」を見ますと、一番新しい「判例タイムス」ですけれども、国際法条約と刑事法の問題でいろいろいい論文を書いている人がいるんですね。これは法務省の大野という若い検事ですけれども、いろいろ書いておりますけれども、その他いろいろな問題が出てくると思うんですね。だから国内法との関連がどういうふうになるかということですね。そこのところはどうなんでしょうかね。
○小和田政府委員 ただいま御指摘のありました問題は全くそのとおりでございまして、今度の国連海洋法条約と呼ばれますものは、一九五八年にできました四つの海洋法条約のすべてを網羅し、かつそれ以上の範囲の広い問題を扱っていることは御承知のとおりでございます。したがいまして、これが我が国の国内体制に及ぼす影響というものも非常に広範でございまして、各分野につきましてどういう対応をしなければならないのかということにつきましては、我が国といたしましては、昨年署名をいたしましたことを踏まえまして、究極的にはこの条約に我が国としても当然参加すべきものという前提で作業は部内で開始しているわけでございます。ただ、先ほども御指摘がありましたように、この条約は非常に総合的な条約でございまして、従来の伝統的な海洋法条約あるいは国際海洋法でカバーされる問題の範囲を超えまして、例えば新しく設定される排他的経済水域であるとか、あるいは深海底の資源の開発の問題でありますとか、あるいは科学調査でありますとか、海洋環境の保護、保全でございますとか、いろいろな新しい問題を含んでおりますので、関連する省庁の数も非常に多くなりまして、目下どういうところでどういう手当てが必要であるかということについての検討を各省庁にお願いをしてやっていただいておるという状況でございます。
○稲葉(誠)分科員 私、この条約の中で、今あなたはおっしゃらなかったのですけれども、あなたがおっしゃったところが、分量で言えば一番ウエートがあるところなんですよね。少ないところは、国際海峡の問題は余り多くないわけですね。だから領海内の無害通航権の問題と、それから国際海峡、まず領海と国際海峡と公海、公海は航行自由の原則がありますけれども、そこら辺の三つがどういうふうに違うかということが非常に問題になってくると思うのですが、そこで非核三原則との問題が出てきているわけですね。 昭和五十二年四月二十日に衆議院農林水産委員会で、あなたの方の人、これは説明員の方ですけれども、こういうふうに答えているんですね。国際海峡についての質問です。国際海洋法会議のことに関連しての質問なのですが、「非核三原則の問題に関しましては、当然、わが国の主権の及ぶ範囲においてこれを維持するというたてまえで臨んできております。」こう答えているんですね。しかし、ずっと聞いておりますと、後で統一見解が出たり何かした経過もありますけれども、主権という言葉を使わないで権限の及ぶという言葉を使っておるんですね。この前の予算委員会でも、私、後ろで聞いておりまして、井上議員の質問のときにふと気がついたのですが、あれっと思ったのですが、そうすると、ここで外務省の人が言っている「わが国の主権の及ぶ範囲においてこれを維持するというたてまえで臨んできております。」というのは間違いなんでしょうかね。どうなんでしょうかということが一つと、なぜ権限の及ぶということを言うのか。権限の及ぶということを言うなら、その権限というのはある一つの権利に基づいて権限が出てくるのであって、ただ権限が及ぶと言ったって漠然としていて何だかわからないでしょう。基本的なものは一体なんなんですか。主権とは違うものを言っているのですか。そこら辺のところの問題が私はあると思うのです。
○小和田政府委員 今御指摘のありました農林水産委員会における説明員の答弁というのは私ちょっと不勉強でございまして承知していなかったわけでございますけれども、従来この問題につきまして予算委員会であるとかあるいは外務委員会等で政府委員がお答えをしてまいりましたラインというのは、非核三原則の問題に関しましては我が国の権限の及ぶ範囲においてこれを遵守するということでお答えをしてきているわけでございます。 それでは主権と権限というのは違うのかというお尋ねでございますけれども、これは若干言葉の定義の問題がございまして、非常に技術的な話になって恐縮でございますけれども、国際法的に申しまして、主権というのは国が対外的な関係において持っておる最高の権利ということで、ほかの国がそのことに対して侵犯することができないというような意味において、主権ということが包括的にとらえられた国家権力の概念として使われているわけでございます。他方、権限ということは、そういう主権の内容になっておりますような具体的な一々の権利という方に着目をいたしまして、そっちからとらえていけば権限ということになってくる。ですから、言っている実体はそれほど違うわけではございませんけれども、しかし包括的な国が及ぼす作用、その作用のもとになっている力という意味から見れば主権という表現になり、一つ一つの権利の行使という見地に着目して申しますと権限という言葉になってくるわけでございます。 それではどうして主権という言葉を言わないで権限ということを言っておるのかという御質問かと思いますが、これは御承知のとおり、海洋法条約におきましては、一九五八年の領海条約もそうでございますし、今度新しくできました国連の国連海洋法条約においてもそうでございますけれども、領海というのは国の主権の及ぶ水域だという定義をすると同時に、その主権というものは一般国際法とこの条約の規定に従って行使されるんだ、いわば当たり前のことを言ったことではございますけれども、一般国際法の枠の中において主権というものが行使されるのだ、こういう考え方になっておるわけでございます。したがいまして、国際海峡の問題を扱います場合に、私どもとしては、その国際海峡における国の権限という具体的な権利というものに着目して申し上げた方がより正確であろうという判断からそういうお答えを今までしておるということでございます。
○稲葉(誠)分科員 ちょっとよくわからないのですね。意識的に主権という言葉を避けているのですよ。権限という言葉と主権と違うといっても、普通なら主権という言葉を使うのは当たり前の話なんで、津軽海峡ほか四海峡、全部で五海峡、それについては三海里のものについて、十二海里になったのだけれども、当分の間は九海里については特定水域というのですかそういう形をとるわけですね。それは主権というものがあるけれども潜在的に制限されるというような形になるというのか、あるいはへこんでしまうという形になるのか、そこら辺のところが私は議論として残っていくのではないかと思うのです。 そこで、いろいろ聞きたいのですけれども、私が非常に注目しております論文は、防衛研修所の教官で高井晉という人がいるのですが、この人の書いた「核の持ち込みと無害通航権」その他、それからドイツの大学の教授でカール・ゲックという人の「新海洋法条約における軍艦の航行の自由」という論文が国会図書館で五月か六月に翻訳ができるのですよ。「レファレンス」で出ますからね。これは非常にいい論文のようですから、この論文ができればまた十分研究させていただきたい、こういうふうに私も思っているわけであります。本来ならこれは総括なり一般質問で資料を全部集めてゆっくりやるのが筋だと思いますが、きょうは分科会ですからそういうこともできませんので、この程度にしておきます。「日米関係を問いつめる」という本がありますが、非常にいい本ですね。だれが書いたかよくわからないのですが……。ここに書いてありますからわかりますけれども、私、非常にいい本だと思います。私もほとんど全部読みました。この中で私気がつきましたのは、村田さんが言っていることですね、岡崎さんもちょっとあれしていますが、生産性でも技術でもアメリカが上だということを二百三十七ページのところでずっと言っておられるのです。「日本経済全体の生産性といえば、まだまだアメリカにはるかに遅れをとっています。サービス業、農業までいれた国民経済全体の生産性は、おそらくアメリカのやっと六割くらいになったというところでしょうね。」こう言っているわけです。で、岡崎さんが「農業の生産性の差が主な理由ではないのでしょうか?」こう言っているのですけれども、ここのところは、これは個人の見解だといえば個人の見解かもわからぬけれども、こんなにも違うものですかね。それを疑問に思ったのが一つですね。 時間がないからもう一つ聞きますが、安倍さん、日米関係を問い詰めるというのは非常にいいことですよ。「問いつめる」というのはだれが書いたのか、雑誌社が書いたのかわかりませんけれども、同時に日ソ関係、日中関係というものを皆さん方が問い詰めてみて、こういうような本にして出してみたらどうなんでしょうか。これはアメリカ局長が加わるわけにいかないけれども、経済局長と調査企画部長が加わって、もう一人欧亜局長がなにか加わるのか知らぬけれども、これを書いてみたら非常におもしろいと思いますよ。そっちの方が売れると思いますよ。今の点が一つと後の点ですね、これをお聞きしているわけです。 それから大臣、今言ったような関係の中で日米関係は大体常識的にはわかるので、日ソ関係、日中関係というものを今後、ただ全方位外交、全方位外交じゃわからないので、具体的にどういうふうにしていこうかということを大臣からお答え願って、時間が来ましたので終わりにいたします。
○村田(良)政府委員 生産性の点につきましては、中でも指摘しておりますけれども、我が国は相当でこぼこがございます。もちろん特定の分野におきましてはアメリカを凌駕している生産性の分野もございます。しかし、農業等は非常におくれておるわけでございます。また、例えば平均労働賃金というふうなところではかなり一国の生産性があらわれてくるわけでございますから、平均でとりますと、六割という数字が科学的にぴたりと正しいということは私言い張るつもりはございませんが、おおよそその辺の見当という感じでございます。
○安倍国務大臣 私もその本を読みまして大変いい本だと思っております。私なんかアメリカでも勉強しておりませんし、著者は皆ちゃんと勉強して、我々とは違ってまたもっと深い立場でアメリカ人というのもよく知っておりますし、我々もこれまで二、三年アメリカと交渉をやってまいりましたが、そういう立場から見ましても大変今後の参考になったわけであります。 それから、日ソの関係、日中の関係もこれから日本の将来を考えますと、日米とともに非常に重要な関係だと思っておりますし、そういう意味でこれから日ソ関係あるいは日中関係をどういうふうに進めていくかということは外務省にとりましても最も大きな課題の一つだ。幸いにして日中関係はこれまでにない非常にいい関係にあるわけでございますが、日ソの方はまた今までの中で一番冷たい関係にある、非常に対照的でありまして、そして同じような体制であるわけですが、この外交をどういうふうに進めていくかということはこれから我々としても大いに勉強していかなければならない、外務省においても日米関係とともに大いに勉強していかなければならぬ課題であろう、私もそういうふうに思います。
○稲葉(誠)分科員 私、この本を読みまして、それから岡崎さんの「戦略的思考とは何か」――あの本も非常にわかりやすい本ですね。内容は必ずしも全部私は同意しているわけじゃありませんけれども、殊にアメリカとイギリスを一緒にしたような理解の仕方はちょっと私には納得できないところがありますけれども、それはそれとして、外務省の中でこの前村田さんが書いた「中東という世界」、これもなかなかいい本ですね、簡単すぎるという点がありますがね。それから重要な点は、やはり現職が書いているんだから、ちょっと抜いているような印象を私読んだときに受けましたが、それは無理もないと思うところもありますけれども。それから日ソ関係、日中関係というのも十分研究していただいて、これは今後の大きな問題ですから、十分書いていただいていいと私は思うのです。 それから最後に、お願いなんですが、これは総括質問の中か一般かでやるつもりだったけれども、大臣が内閣委員会でブルネイか何かのことで質問があるというので行かれたものですから、質問しなかったのですが、外務省の人員の問題ですね。これは前から問題になっているものですが、インドより少ないというわけでしょう。イタリアより少ないというわけですね。これは日本の外務省としてはいかがかと思うので、将来のことを考えますと、もっともっと有能な人員を一層ふやすような格好で努力していただきたいと思うし、それから予算の問題でも、私去年中国へ行ったんですよ、新聞をとっているかと聞いたら、ある特定の新聞しかとっていないんですよ。どうしてほかの新聞をとらないのかと聞いたら、そうしたら、東京から新聞を飛行機で送るんですってね。そうすると、日本でいうと月二千円か三千円ですか、飛行機で送ると一万円かかるんですね、新聞が。だからとれないんだ、こう言うんです。そんなことを言ったってしょうがないじゃないかということを言ったんですけれども、人員の問題、予算の問題、これは本当は大蔵大臣なんかがみんないるところでやるのが筋なんですけれども、そういう点についての外務大臣のお答えを願って、これは超党派で協力すべき問題だと思いますが、お答えを願って、質問を終わります。
○安倍国務大臣 いつも稲葉委員の、外務省の外交機能を強化すべきである、人員をもっと充実し、さらに予算も各国と比べてもう少し充実すべきであるという議論に対しまして、我々非常に感謝しております。確かに、日本が世界の中で占める役割、発言力、責任、そういう面から見ますと、今の外務省の機能、人員、予算等は大変おくれていることは間違いありませんで、五千人体制と呼号はしておりますけれども、いつのことになるやら見通しが全くつかない。そういうことを私が言っては差し支えがありますけれども、目標は持っておりますけれども、どうも見通しかつかないという状況であります。もちろん今度の五十九年度予算の中でも、各省の中では人員は多少伸ばしてくれましたけれども、また予算も伸ばしてはくれておりますけれども、まだまだこれで十分だとは到底言える状況にはありませんから、財政再建も続くわけですが、そういう中でできるだけのことをしながら、財政再建が終われば、飛躍的に世界の日本にふさわしい役割を果たす外務省に持っていくように我々もこれから努力を重ねていかなければならぬ、そういうふうに思います。
○相沢主査 これにて稲葉誠一君の質疑は終了いたしました。 次に、岡田正勝君。
○岡田(正)分科員 大臣、きょう私がお尋ねするのは、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国、略称して北鮮と以下申し上げたいと思いますが、北鮮に在住しております日本人妻の件につきまして、昨年もお願いをしたのでありますが、本日もその件についてのみお願いをしたいと思うのであります。 大臣は御就任になりまして以来、外務大臣としては一つの、一年間なら一年間の間に外国の要人に会うことの数の新記録をおつくりになったほど非常に活躍をされておる人でありまして、私は敬意を込めながら質問をしたいと思うのであります。 さて、大臣も御承知のように、昭和三十四年十二月十四日に日本から北朝鮮へお帰りになる第一次帰還船が始まって以来今日まで二十五年、その間にお帰りになりました人は全部で九万三千三百人程度と承っております。その中に日本国籍を持った人が六千六百七十名、中でもいわゆる日本人妻として渡られた人が千八百七十三名もいらっしゃるわけでありますが、いまだに一人もお帰りにならない、里帰りもしないというようなことで、辛うじて漏れてくる手紙によって消息を知るという状態であります。 そこで、安否調査の問題につきまして外務省を煩わしまして、今までの経過を申し上げますと、一九八〇年の十月に家族の方から請願をいたしました件数が五百三件、そしていわゆる安否調査の処理をしていただきましたのが二百六十五件、これは処理したといっても外務省から日赤に渡していただいたということであります。それから、一九八〇年の十二月二十四日、二百十件、この照会をしていただいております。そのうち六名は里帰りの依願も含めております。この結果がどうなったかというと、一九八二年の十月二日に北鮮の方からの回答がございました。これはどういう回答かといいますと、御承知のとおり、第百八十六次帰還船の上で北鮮の赤十字会金帥万氏から日赤の外事部長渡辺晃一さんに対して手渡されたものでありますが、これが二百十件の照会に対してわずかに九件であります。そのいただきました九名の中で五名というものは、既に手紙のやりとりその他で安否がわかっておりました。二百三十九名のうちの五名でありまして、その回答の数が少ないのにまことにがっかりしたということは、昨年も申し上げた次第でございますが、それから早くも一年四カ月がたちました。今日まで北鮮の方から回答があったのかなかったのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
○橋本(恕)政府委員 残念ながら、回答に接しておりません。
○岡田(正)分科員 この一年四カ月の間回答がないままに過ぎてきましたが、八二年の十月二日に回答を受けた九名の中で、この日本におられる留守家族の中で早くも三名が死亡しております。その中で、非常に悲惨なんでありますが、とにかく写真があるのはお一人だけでありますけれども、宮崎県の平木ムメさんという方、この方が八十歳でとうとう亡くなってしまいました。これは、大臣、回答をもらったときに大変喜んでにこにこして笑っていらっしゃるお姿でありますが、これが最後であります。その方もとうとう八十で亡くなりました。そしてそれ以外に、宮下さん、これはお父さんが亡くなりました。それから、鈴木光子さんのお姉さんが日本で留守家族としておりますが、竹野さんとおっしゃいますが、その方の御主人も亡くなってしまいました。こうやってどんどんお年寄りが、父兄が亡くなっていく。その中で、一年四カ月の間に手紙が向こうから来たというのはたった一人です。照会があって九名返ってきた、その中のお一人でありますが、鈴木光子さんという方からの便りがあっただけ。それも皆朝鮮語で書いてあるので、中身は、無事であるということしか書けないのではないかと思うのです。ともあれ、中身の重要なところは何かといったら、非常に苦しい、金を送ってくれ、これが内容でありました。 こういう悲惨な状況の中で、留守家族の人も、一体どうなっているのだろうかという切実な願いを込めて今日まで待ちに待ってきておるのでありますけれども、北鮮の対応というのは非常に鈍い。これは本当にポーズだけを示しているのではないかというようないら立たしさを感ずるわけでありますが、その後、政府の方といたされましては何かアプローチをされたのかどうか。例えば、政府直接か、あるいは日赤を通じてか、あるいは第三国を通じてか、何かアプローチをとられたかどうか、その点についてお尋ねをしたいと思います。 それからいま一つお尋ねしたいと思いますのは、どうもこのごろ妙な情報が伝わっている。情報過多時代でありまして、こういう情報があるのですね。北鮮からの船がどうやら最近来るらしいぞ、三月か四月じゃないのかな、それで、そのときに荷物を持っていきさえすれば、その船で届けてやるよというようなうわさが流れておるのであります。それで、これの真否はいかがであろうかということをお答えいただきたいと思います。
○橋本(恕)政府委員 ただいま先生の御指摘の、寄港地、港まで荷物を持ってくれば必ず北朝鮮にいる日本人妻まで届けるといううわさは、正直言って私本日初めて伺いまして、私どもはそういう確実なる情報としては承知しておりません。
○岡田(正)分科員 確実なる情報としては聞いていないが、うわさでは小耳に挟んだのではありませんか。
○橋本(恕)政府委員 率直に申し上げまして、私はただいま先生から伺いましたのが初めてでございます。
○岡田(正)分科員 こういううわさが相当流れておるということは、留守家族の人にとりましては大変貴重な情報なのですね。それが本当なのかうそなのかということを確かめることができません。きょう私が質問をいたしましたので、ぜひ当局の方としてそのうわさの真否を確かめて、それで日本人妻往来の会、それから里帰り実現を期する会の方に御連絡、情報を入れていただくか、私の方にその情報を入れていただくか、何か一つしていただきたいと思いますが、約束してもらえますか。
○橋本(恕)政府委員 せっかくの先生の御提言でございますので各方面、関係各省とも協力いたしまして、そういう話があるのかないのかということを調査して御報告したいと思います。
○岡田(正)分科員 それから、いま一問御質問いたしました、その後一年四カ月の間に何かアプローチされましたかということについてはいかがでしょうか。
○橋本(恕)政府委員 この問題につきましては、私ども非常に強い関心といいますか、心配しておるわけでございますが、先生御案内のとおりに、外交関係もございませんので、現在直接話し合うチャンスに恵まれませんで、日赤でありますとかあるいは第三国を通じてという隔靴掻痒の感がございますが、そういうことで進めておりますが、まことに残念ながら、はかばかしく事が動いていない、こういうことでございます。
○岡田(正)分科員 そうすると、政府の方といたしましては、全然何もせずに手をこまねいておるというのではなくて、やはり日赤を通じてとかあるいは第三国を通じて、何とかひとつ安否調査の結果を知りたいというアプローチはとっておるのだけれども、なかなか返ってくるものがない、こう理解してよろしいですね。
○安倍国務大臣 今局長が答弁しましたように、政府としては、直接な外交関係がないですから、日赤を通じましてアプローチをしております。同時にまた第三国を通じて、これは名前を挙げることは容赦させていただきたいのですが、第三国を通じましていろいろとアプローチをしておるわけでございますが、残念ながら、これまでのところいい返事がもたらされていないということでございます。
○岡田(正)分科員 ありがとうございました。ぜひともひとつ、これは相手があることですから、結果が悪いからといって私は決して責めるものではありません。しかし、その努力はぜひとも今後とも続けていただきたいと思います。 さてその次に、里帰り問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、北鮮の金日成主席が、一九八〇年九月十日、AA研の藤井勝志先生を団長とする御一行の方と会談をした際に、日本人妻の日本への里帰りを歓迎するという発言をなさいました。その翌日九月十一日玄峻極という対文協会の副委員長の方が団の方の宿舎までお越しになりまして、相互主義ということを大変強調されまして、北朝鮮の方としては、このためには相互主義をぜひひとつ尊重してもらいたいということを強調した。ただ残念なことに、その相互主義というのは、北朝鮮の方が日本に来られる、それに対して日本におられる北鮮系の方が祖国訪問をするという、そういう相互主義の意味なのか、いわゆる向こうからもこっちにおいでになる、こっちにいらっしゃる方も向こうに行くが、向こうの日本人妻も、金日成主席の御発言のように、日本人妻そのものが里帰りをする、そういうことがいわゆる相互主義なのではないか、我々だったらそう判断せざるを得ないわけでございますが、その点の確認というものがどうなっておるのだろうか。金日成主席がAA研の一行の方にそういう発言をしたということは、参議院の質問の際にも、すでに八〇年十一月十三日、伊東外務大臣の時代でございますが、それは大臣としてもまさしくそういうことがあったということは聞いておりますということをはっきり御回答になっております。それで北鮮側としては対文協会が窓口だよ、そして現在の大臣が昨年御発言いただきましたように、日本側としては北東アジア課、これが窓口だよということで、一応両方の窓口はそろった格好になっているのですね。だから、この点で私は相互主義というのはどういう意味だったのかということですね、これを例えばAA研の方を通じてとか、あるいは日赤を通じてとか、そういう手段を講じて相互主義の意味を確認していただくことができたのであろうかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
○橋本(恕)政府委員 確かに先生御指摘のようなお話が、日本のAA研代表の方々が北朝鮮を訪問されましたときにあったということを私も伺っております。その際におきます金日成主席の発言も承っておりますが、相互主義云々につきましては、やはり何度も申し上げておりますとおりに、我が国と直接、政府と政府との間で話し合いの場が、二国間直接におきましても、第三国を通じましても、なかなかはかばかしく動いていないという状況下にございまして、具体的にどのような意味合いを持つかということまでしかと承知するに至っていないというのが現状でございます。
○岡田(正)分科員 それでは時間の関係がありますので、法務省の方に入管の関係でお尋ねをいたします。 国交関係がありませんけれども、日本と北鮮との間では往来が進められております。しかも近年加速度的にその数はふえておるのでありまして、一九六五年にわずか三名であった再入国許可、いわゆる向こうにおられる方が日本に来て、また向こうへお帰りになる。これが六五年には三各であったものが八〇年には四千二百四十五名、物すごい飛躍であります。そのうち三千二百四十九名の方がいわゆる人道上の理由によって日本へおいでになっては向こうへお帰りになっていますね。そこまでの発表は我々は聞いておるのでありますが、それ以降の八一年から八四年まで、これがわかりません。その数を発表していただきたいのと、それから向こうにいらっしゃる北鮮の方がスポーツだ、文化だ、学術だ、いろいろな目的があって日本へお越しになっていますね。これが六五年から八〇年までの間に千五百三十九名お越しになったということは今までに聞いております。それ以後八一年から八四年までどの程度の方が、いわゆる目的別に分けて、スポーツ関係ならスポーツ関係で何名ずつ来たというようなことを、その人数について発表をお願いしたいと思います。
○宮崎説明員 お答えいたします。 八十四年までとたしかにおっしゃいましたが、ことしの分はまだ統計が拾ってございませんので、昭和五十六年から五十八年までの数字を申し上げます。 まず、在日朝鮮人で北朝鮮向けに再入国許可を取得した者の数でございますが、昭和五十六年に四千百一名でございまして、このうち人道ケースは三千九十九名でございます。五十七年につきましては、四千二百十五名のうち人道ケース二千九百十三名でございます。それから五十八年につきましては、総数四千百三十三名のうち人道ケースが二千九百十四名となっております。人道ケースと申しますのは、御承知のとおり親族訪問、墓参りのことでございます。 それから、こちらの方から行く人ではなくて、北鮮の方からこちらに来られる方でございますが、これは昭和五十六年二百七十名となっております。内訳はスポーツが二名、学術交流が九名、商用が二百三十名、文化交流二十五名、国際会議四名でございます。五十七年につきましては、総数二百四十六名、うち学術交流が十四名、商用が二百二十五名、文化交流が四名、国際会議三名でございます。五十八年につきましては、四百五十五名のうちスポーツが四十名、商用が二百九十九名、それから芸術文化交流関係が百十二名、国際会議が三名、そのようになっております。
○岡田(正)分科員 この数を聞きましてもわかりますように、大臣、いわゆる人道ケースで向こうからこちらへ来てまたお帰りになるという方が二千九百名を超えているわけですね。大変な数であります。そういうことを日本は許し、そして国交がないのに向こうの方が日本へ、スポーツだあるいは文化だ学術だ国際会議だというのでお越しになる方が早くも四百五十名を超えているというような状態でありますのに、向こうにいらっしゃる日本人妻、これが一人もお帰りにならぬということはまことに奇妙きてれつ、不思議という以外は何もないと思います。私は、今法務省の御発表になりました数字を聞くたびに腹立たしく思うのですが、日本ばかりが何でこんなに譲歩しなきゃならぬのでしょうか。貿易の関係なんかにいたしましても、これは国交がないのですから、言うならば政府が黙認をしているから密貿易ではないのでありますけれども、国交がないからというのでそれを正面から盾にとっていけばこれは明らかに密貿易でありますが、それが一年間に日本から向こうへ輸出する金額が早くも三億ドルを超えていますね。そして向こうからこっちへ輸入される金額が一億五千万ドルを超えているような状況でしょう。今の向こうから来られる人の中でも一番圧倒的に多いのは商用で来られる人でしょう。そういうことを考えますと、こういう点では全く国交があるのと同じ状態に、緩やかになっておりますのに、なぜ日本人妻だけがそんな粗末な扱いを受けるのか、粗末というよりは無視された扱いを受けるのか、これに対して大臣の御感想を伺いたいと思うのです。
○安倍国務大臣 日本としまして、また日本人として北朝鮮で苦労されておる日本人妻の消息を知りたいという気持ちは当然でありますし、また、居所を明らかにして日本にも帰って、一時墓参でも帰ってもらいたい、こういうことはまた当然なんで、また家族の皆さんからの熱烈な要望等もあって、政府としましては、国交がないわけですから、日赤あるいは第三国を通じて何とか消息を明らかにして、そしてその道を講じたいということで努力をしております。また議員の方でも、さっきお話がありましたように努力をしていただいておるわけでございますが、残念ながらどうも私もその辺の理由は、今岡田議員がおっしゃるように私自身も釈然としないのですよ。全くわからないわけでございまして、これはこれからの、やはり日本と北朝鮮との、国交がなくても経済交流を進めていく、あるいは人的交流を進めていくという考え方を政府はとっておりますから、それだけに非常に残念だと言わざるを得ないわけでございます。したがって日本としましても、政府のやれることは限界もあるわけでございますが、しかし引き続いて日赤あるいは第三国を通じまして辛抱強くアプローチをしてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。 同時にまた、政府は限界がありますから、それ以外は団体であるとかあるいは議会であるとか民間であるとか、そういう面で、こういうのはまさに人道的な問題ですから、ひとつ大いにそういう方向で努力が続けられることを心から期待をするわけでございます。
○岡田(正)分科員 大臣も率直な御意向を表明していただいて、ありがとうございました。全く不思議きわまることでございまして、先ほども触れましたが、金日成主席の言葉が生かされていない。日本人妻の里帰りを歓迎するとおっしゃって、あれほどAA研が確認して帰っているのに全然実現しない。そして相互主義ということも、何が相互主義なのかさっぱりわかりません。我々が期待したのは、その相互主義をおっしゃる限り日本人妻も帰ってきてくれるんだな、親の顔を見に帰るんだなということが実現できると思って物すごく喜んだのですよ。それがどうも相互主義の中には全然入っていないというような気がいたしまして、残念でなりません。少なくとも今発表のあったような数字、何千名という単位でなくてもいいですから、そのわずか千分の一でもいい、百分の一でもいいから日本人妻の里帰りが実現できるように私は強く政府にお願いをしたいと思うのです。 それで、時間がありませんので、次の問題に移らしていただきますが、さてこれから外務大臣非常に日程が、大変お忙しくなりますね。三月二十三日、もう間もなく中国にもお行きになります。また韓国からは三月か四月中には大統領も日本へお見えになるのではないかというようなこと。それから最近の南北関係からいいまして、今のラングーン事件に相前後いたしまして、提案合戦とでもいうべき、北鮮から三者会談をやろうとか、あるいは韓国側の方では六者会談をやったらどうかとか、アメリカの方では四者会談をやったらどうかとか大変にぎやかになってきておりますね。このことにつきましても、外務大臣のときどきの新聞に発表されておるお言葉によりますと、積極的に韓国におる、いわゆる中国に残っておる人とのばらばらになった関係をお互いに面会をさせて交流させてやりたい、中国にそれも頼みたい。そして南北の関係では、これも和平がもちろん先でありますけれども、ぜひ一千万人から離散させられた家族同士が会えるように、人道的問題だから一肌も二肌も脱いでやりたい。いろいろな前向きの姿勢を示していらっしゃいまして、私ども大変頼もしい大臣だなと思って喜んでおるのであります。 さて三月二十三日に訪中されますが、その訪中の中で韓国の方の中国へ分離された家族同士の対面、これを実現させてやりたい。例えば日本でその面会の場を設けてやったらどうかというような非常に前向きな御意見を持っておるようでありますが、そのときに中国側と、北朝鮮におられる日本人妻のいわゆる里帰り問題、こういうことなんかについてもこの際だというので御発言を願いたいという希望を持っておるのでありますが、大臣いかがでございましょうか。
○安倍国務大臣 人道的な問題につきましては、やはり日本としても積極的に努力をしていくのは当然だ、こういうふうに私は思っております。したがって、韓国から今直接委嘱を受けているわけではありませんけれども、例えば中国におるところの韓国人と韓国の親族との対面といったものが日本で行われることを韓国が期待をしていることは事実であります。韓国人でも非常に期待をしている方も、家族としては熱烈にこれを期待している方もおるわけでございますから、そういう取り持ち等は日本としてできればしてあげたい。一部は実現しておるようでありますが、そういう点についてもかつて中国とも話したことがありますし、今後もそういう問題について話し合う機会も持ちたいと思っております。 同時に、今お話しのような北朝鮮における日本人妻の日本への墓参といったような問題も、中国が北朝鮮と大変深い関係にあるわけでありますから、そういう点等も人道的問題ということで話し合える機会を持てば、何とかこういう問題も広く人道的という立場で話し合ってみたい、こういうふうにも思うわけでございまして、そういう今の御意見等は十分頭の中に置いて、そして参りたいと思います。
○岡田(正)分科員 最後に要望を申し上げて、大臣のお答えをいただいて終わりたいと思います。わずかな時間でございましたが、人道上の問題ですから非常に重要な問題でありますので……。 今、留守家族の人たちは本当に次から次へとくしの歯が抜けるように亡くなっていくんですね。本当にやり切れないと思います。向こうへ行っていらっしゃる日本人妻の人でも、早くも五十歳を超えている人が随分おります。こういう状態でこのまま推移したらどうなるのだろうという心配があるのですよ。ですから、何とかして日本人妻の里帰りが実現するように――中国なんかは特に儒教の関係もあるのでしょうか、大国としての矜持があるのでしょうか、日本人の残留孤児の問題でも随分前向きに取り組んでくれているような話のよくわかる国でありますから、そこと北朝鮮とは非常に親密な間柄にあるわけですから、例えば日本から留守家族が向こうへ行って、一カ所なら一カ所で限定された所でもいいから、とにかくお互いに無事な顔を確認したいというぐらいのことは、墓参がなかなか早急に実現できぬということになれば、その次善の策として、向こうの土地において、ある一定の決められた所で決められた時間で面会だけでもさせてもらえるというような、そこまでは何とか取り計らってもらえるように実現方をお願いしたいと思うのでありますが、大臣のお考えを承って終わりたいと思います。
○安倍国務大臣 おっしゃることはよくわかりますし、私としましても、今日本におられる留守家族の皆さんがどうしても北朝鮮におられる日本人妻と再会したいという気持ちを痛切に持っておられる御心情も理解できるわけでございます。今政府として直接やれることは、今申し上げましたように非常に限られておるわけでございますから、先ほどから第三国というものを通じていろいろと努力を重ねておるということを申し上げたわけでございますが、そういう中で、中国ともそういう立場でいろいろと話をして、人道的な問題としてまた中国に配慮をお願いすることができればしたい、こういうふうに思っております。
○岡田(正)分科員 大変ありがとうございました。ぜひ前向きに取り組んでいただきまして、留守家族の人たちの要望、そして向こうにおられる日本人妻の要望が何とか花が咲くことができますように一段のお力添えをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○相沢主査 これにて岡田正勝君の質疑は終了いたしました。 次に、矢山有作君。
○矢山分科員 予定した質疑に入ります前に、外務大臣にちょっと一言お伺いしておきたいのですが、フィリピンに対する援助で、IMFの結論はもう出たのですか。
○安倍国務大臣 まだ出てないというふうに承っております。
○矢山分科員 まだ出てないということですと、何か三月十日の報道によりますと、日本政府の方では、フィリピンに対する経済援助について、来週中に供与の方針を正式決定し、相手側に伝えるのだ、こういう発表なんです。私が三月一日ですか、外務大臣にお伺いしたときは、たしか御答弁が、IMFがいろいろ調査して結論を出すのを待っておるわけで、そうした結論が出て、フィリピンのこれからの再建計画等が明らかになった段階で考える、こうおっしゃっておったのですが、正式結論が出ないうちに政府の方針を決められたというと、これはいささか食い違うのですが、どういうことでしょう。
○安倍国務大臣 これはもちろん日本としてはやはり慎重にこの問題を扱わなければならぬという考え方で、IMFの調査の結論が出るのを待っておるわけでございます。そこで、日本の方もまだ結論を出しておるわけではないわけで、新聞等その他報じられておりますが、各省で検討はしておりますが、結論はまだ出してないということであります。
○矢山分科員 それでは重ねてお伺いしておきますが、IMFの結論が出てフィリピンの経済の再建計画等がはっきりした段階、つまり、それについてIMFの理事会が正式決定した段階でやるということですね。だから、今はそういうことにしてないということを確認してよろしいですね。
○安倍国務大臣 正確を期するためにちょっと局長から答弁させます。
○橋本(恕)政府委員 フィリピンに対します本年度の経済協力につきましては、先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおりに、現在関係各省で慎重に協議中でございます。ただ、一方フィリピン政府側から、最近相次ぎまして、今本当に外貨事情が苦しくて困っている、もう一日も早くお願いしたいという要請もございますので、現在どうするかということを検討中でございまして、一方、IMFは、フィリピンの経済再建計画その他、あるいは外貨事情その他、フィリピン政府とこれまた非常に詳しい話をしておる状況でございます。それやこれやをにらみ合わせまして、やはりフィリピン国民に対する日本の友情をどのような形で実現するかということで、現在政府部内で一生懸命検討している段階でございます。
○矢山分科員 だから、私の聞きたいのは、大臣の御答弁は、IMFが結論を出すのを待って日本政府は態度を決める、こうおっしゃっているのだから、IMFが結論を出すまでは日本はフィリピン援助を決めるということはありませんね。簡単に答えてください。
○橋本(恕)政府委員 状況によると思います。つまり、IMFが結論を出すまでは日本政府として一切何もしない、そういうことに現在政府が方針を決めているということでは必ずしもないということでございます。
○矢山分科員 大臣の御答弁はすこぶるはっきりしておるのです。IMFの結論が出るまでは出さぬ。あなた、大臣の言われたことを事務当局がはぐらかすようなことではいけませんよ。 それと、しかもフィリピンの国情は御存じのとおりです。アキノ元フィリピン上院議員の弟で、マルコス大統領に対する反対運動を行っているアガピト・アキノ、この人が何か日本へやってきて、どこかよそへ行くのに立ち寄ったらしいのですが、記者会見をやって、とにかくフィリピンに対する援助については慎重を期してもらいたい、特に現在のマルコス政権が五月の国会選挙のてこ入れにこの日本の経済援助、特に商品借款だと思いますが、使うおそれがあるから、これはぜひ慎重にやってもらいたい、少なくとも選挙の済むまでは決めてもらいたくない、やってもらいたくない、こう言っているわけですが、こういう点は一体あなた方はどう解釈しますか、理解しますか。
○橋本(恕)政府委員 事故に遣われましたアキノ氏の実の弟さんが日本に来られまして、先生御指摘のような発言をされたということは私も承っておりますが、日本政府のフィリピンに対する経済協力というのは、あくまでもフィリピン国民が現実に財政経済上の、特に外貨が非常に苦しくなりまして困っておられるという状況に対しまして、何とか御協力できないものかということで検討しているというのが現状でございます。
○矢山分科員 たてりはそうですね。しかしながら、これまでのいろいろな経済援助を振り返って検討してみますと、特に商品借款等が時の権力者の権力維持のためのてこに使われておるという場合が間々あったわけです。今度のフィリピンにおいては特にその見込みが強いような情勢にあるわけですから、したがって慎重にやってもらわなければ困る。特に、大臣はIMFの結論が出るまではやらぬと言っておるのだから、それを事務当局の方で勝手に解釈するというのはなってません。これは大臣、あなたの権威にかかわる問題です。私は、あなたは実に率直に正直に言われたと思って感心しておったのですが、あなたは権威を守るためにもIMFの結論が出るまでは事務当局に先走りさせてはだめですよ、どうですか。
○安倍国務大臣 私も、この問題は、一面においてはフィリピンに対して約束ですから、実行しなければならぬ、ただ、中身を少し変えていくわけですから、それだけに慎重にやらなければならぬ、こういうふうに思っておったわけです。同時にまた、今のアキノ暗殺事件によって政治の不安、経済の不安が起こったことは事実ですけれども、しかし、事件の真相は真相として究明していかなければならぬけれども、それとは別に、やはりフィリピンの経済が崩壊をしてフィリピンの国民が非常に危殆に瀕するということは、これは隣国として日本として見過ごすわけにはいかないので、そこで経済協力を約束したことでもあるし、これは実行しなければならぬ、こういうふうにも考えておったわけですが、その際、フィリピンの経済が立ち直るかどうかという問題については、これはIMFが調査をしているわけですから、IMFのある程度の方向が出ないと、日本が経済協力をしても、国民の税金でやるわけですから、それはそれなりに政府としても慎重にやらなければならぬ。 だから、IMFのある程度の調査というものの結論が出て、同時に日本が開始するということが方向としては、筋としてはいいのじゃないか、こういうことで考えてそういう発言もしたと思うわけでございますが、その後の状況がどういうふうに変化しておるか知りませんが、どういうふうな状況になっておるのか、IMFの調査がどういうふうに進んでいるのか、あるいはまたフィリピンの経済の状況がどういうふうになっているのか、私自身も確たることはまだ承知しておらないわけでございますが、基本的な方向としてはそうあるのが筋じゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけであります。
○矢山分科員 ぜひ、大臣がおっしゃっておるように、IMFの結論が出たか出ないかどうかよくわからぬということで決められたんじゃたまりませんので、あなたのはっきりした発言ですから、IMFが結論を出したのか出さぬのかということを確認した上で対処していただきたいということを重ねて申し上げておきます。 そこで、対米武器技術供与の問題について少しばかり伺っておきたいのですが、交換公文を私よく読んでみても、日本語に翻訳したのがややこしいのかどうか、なかなかわからぬのですが、前の方は省略いたしまして、「関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。そのような供与は促進されることとなりましょう。」こういうのです。どうも私よくわからぬのですが、これはどういう意味なんですか。
○北村政府委員 ただいま委員が御指摘になりました箇所は前文のところでございますが、ここで申しておりますことは、要するに武器技術以外の防衛分野における技術の日本からアメリカへの供与というものは、従来からも現在においても原則として制限を課されてないのだということを確認した上で、そこで防衛分野における技術、すなわちこれは武器技術も含むものでございますけれども、その防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与というものは関係当事者の発意に基づいてかつ相互間の同意により、すなわち、例えば民間の武器技術を持っておる人が出すのは嫌だと言えばそれはもう絶対出さない、そういうことですべてこれは発意と同意に基づいて行われる、そういうようなことであれば、防衛分野における技術の交流というものは、今回の武器技術をアメリカに出すということを決定しましたことにより、それはそういう供与というものは促進されることになりましょうという政府の見通しを述べたわけでございます。
○矢山分科員 外務大臣、よくわかりますか。原則として制限を課されてないで日本からアメリカに供与されておったわけでしょう。そうしたら、わざわざ何でこの交換公文をつくらなければならぬほど――また、この交換公文をつくることをアメリカがやかましく言ってきて、日本もいろいろと国内で論議もあったけれども、最終的に踏み切ったわけですね。何でそんなことをやらなければならぬのですか。原則として別に障害なかったわけでしょう、過去も現在も。過去も現在も、日本からアメリカに防衛分野における技術を供与するについて何も障害なかった、円滑に行われておった。それなのになぜこんな交換公文をつくったのですか。 私はやはり、そこは「原則として」としているところに非常に大きな意味があるのじゃなかろうかと思う。防衛分野における技術、つまり汎用技術だといったらいいと思うのですが、それをアメリカが供与を要請しても、日本には武器技術三原則というものがある、そういうことを盾にして日本の民間企業はなかなか技術供与には応じてくれない、まして、いわんや純粋に軍事に利用するんだということになれば、それをたてりにして拒否される、そこでそういうような状態をなくするためにこの交換公文をつくったというのが真相じゃないのですか。
○北村政府委員 まず、この武器技術供与の取り決めと申しますのは、武器技術をアメリカに供与するその枠組みを決めたものでございまして、したがいまして、武器技術でない汎用技術は、防衛分野における技術であろうとも、これは今委員がおっしゃいましたように、過去、現在ずっと自由であるわけでございますから、この取り決めの対象ではないわけでございます。それがまず第一点申し上げておきます。 〔主査退席、中村(正三郎)主査代理着席〕 それから、その次に「原則として」というところについて何か大きな意味があるのじゃないかというお尋ねでございますが、この「原則として制限を課されていない」という意味は、日本は一定の技術のものにつきましては、武器輸出三原則とは別個にココムの規制の観点というものがございまして、これが外国為替及び外国貿易管理法あるいは外国為替管理令並びに貿易関係貿易外取引等の管理に関する省令に基づきましてその対外提供取引を規制の対象としておりますので、そこで対米供与に当たりましても制度上は通産大臣の許可を得なければならないということになっておりますので、こういう点を踏まえてここに「原則として」という文言を挿入したものでございまして、特にココム規制以外の点については、従来からも現在も海外に出ることは自由であるということでございます。
○矢山分科員 汎用品、つまり防衛分野における技術というのは汎用品のことを言っているのですね。武器技術そのものではないということでしょう。私は、この汎用品を含ませて交換公文をつくったところに意味があるのだろうと言っているのです。日本には武器輸出禁止三原則がある。だから、アメリカが欲しがる先端技術の供与を求めても、あなたがおっしゃるように、民間企業は応じない場合がある。それでは先端技術はなかなかスムーズにアメリカの方に供与されない。その障害を除くというのがこの交換公文の意味でしょう。防衛分野における技術が対象になってないのじゃない。防衛分野における技術をスムーズに、何の障害もなしに、武器輸出禁止三原則を盾にさせることなしに供与させる、そういう道を開くところにこの交換公文の意味があるのでしょう。 そのことは次のところにもはっきり出ているでしょう。「防衛分野における技術の日本国からアメリカ合衆国への流通を容易にするための方途について討議を行い、」そのための枠組みを設けることを決定したということで交換公文が交わされている。ごまかしてはいけませんよ。そこに焦点があるのでしょう。
○北村政府委員 防衛分野における技術という言葉と武器技術という言葉が使われるわけでございます。防衛分野における技術と申しますのは防衛に関連する技術でございまして、その中には日本武器技術と、汎用技術であって防衛分野の技術とその二つが含まれるわけです。そういう仕組みといいますか仕分けをしておるのは日本側でございます。それは武器輸出三原則というものがあるので、武器技術という概念が出てくるわけでございます。 しかし、アメリカの方から申しますと、武器技術という概念があるわけでもない。向こうにあります概念はいわゆる防衛に関連する技術、すなわち防衛分野における技術ということでございます。そこで、仮にアメリカがこういう技術が欲しいということを日本に言ってまいります場合に、日本から申せばそれは武器技術である場合と武器技術でない汎用技術である場合とがあるわけでございます。そこで、この仕分けをしなければならぬわけです。というのは、アメリカにはそういう仕分けがないわけでございますから。
○矢山分科員 わかっている。だから、その汎用品が何の障害もなしにということは、武器輸出禁止三原則を盾にして拒否されることのないような道をつけるための交換公文だったのだと私は言っているわけです。 そこで、一つところへとまっておるわけにはいきませんから、あなたの方は盛んに、関係当事者の発意に基づき、そして相互間の同意によって行われるのだから、例えば民間の企業が開発したその汎用技術は、民間企業が同意しなければ供与されない、民間企業は拒否できる、こういうふうにおっしゃるのですね。
○北村政府委員 まさに委員が御指摘になりましたように、その技術を持っておる者が同意しなければそれは供与の対象にはならないわけでございますので、仮に民間の会社が特定の技術を持っておる場合、それは武器技術であろうと――汎用技術の場合は何の制限もないわけですけれども、民間の会社が提供を拒めばそういう提供は絶対行われないということでございます。
○矢山分科員 それでは確認しておきます。 一番問題になるのは、民間企業が開発した先端技術を汎用技術と言って、いわゆる武器にも使えるがそうでない民用にも使えるという技術だと私は思っている。そういう先端技術の供与の要請があった場合に、日本の企業はそれを拒否することができる、その拒否した企業に対して政府が政治的な力を行使するということは絶対ありませんね。
○渡辺説明員 お答え申し上げます。 御質問の民間企業を所管しておりますのは通産省でございますので、通産省の方から今の点説明させていただきます。 先ほど来の御説明で申し上げておりますように、供与要請のあった技術を出すか出さないかというのは、一義的に民間企業がコマーシャルベースに基づいて判断するものであるという原則、これはかねて予算委員会を含めて関係大臣から申し述べているとおりでございます。こういう考え方に基づきまして当該企業が供与すべきだという観点から国が行政指導をする、そういったようなことは一切いたすつもりはございません。
○矢山分科員 一義的には民間企業の自発的な意思だろうが、二義的に対米関係を考慮して行政指導だ何だといって強圧を加えるんじゃなかろうか、こういう心配を多分に持っておりますし、またそういうことが一般には盛んに論議をされておるだけにそのことを私は申し上げたわけであります。しかしながら、責任のある通産省当局が絶対に圧力はかけぬ、行政指導はやらぬとおっしゃるのだから、今のところそれを私はそのまま受け取っておきます。 そこで、米国以外の国々から武器技術供与の話が出ておるようにいろいろと最近伝えられております。これは事実かどうなのか、事実とすればこれにどう対応しようとしておられるのか、承りたいと思います。
○西山政府委員 正式に政府間でそういう要請があったことはございません。
○矢山分科員 それじゃ申し上げておきますが、私どもは残念ながら新聞報道で知る以外には手はないわけでありますが、イギリスの国防省から電荷結合素子技術供与をソニーに申し入れた、こういうふうに報道されております。通産省は武器輸出禁止三原則からこれは供与しない方がいいのではないかというふうにソニーに伝えたと言われております。 それからもう一つは、航空機兵器メーカーのメッサーシュミット社と日本の富士電機製造が対戦車ミサイルの共同開発をやろうとしておる、これに対して外務省が可能であるという見解を示したというふうに伝えられております。この点は事実なんでしょうか、事実でないのでしょうか、確かめておきたいと思います。
○西山政府委員 先生御指摘の前者の例につきましては全く我々承知いたしておりませんが、後者の点につきましてはただいま御指摘がありました外務省のコメントというものが出ておりましたので、私どもの方も調査をいたしましたが、そういう事実はないということでございます。
○矢山分科員 私はなぜそんなことをお聞きしたかというと、大臣、たとえ汎用技術といえども、イギリスの国防省が申し込んできたということになれば軍事利用は明確なわけですね。それからまた、航空機兵器メーカーのメッサーシュミット社と日本の富士電機製造とが対戦車ミサイルの共同開発をやるということも、軍事利用ということは明らかなんです。この両者の扱いにおいて、前者においては通産省はちょっとぐあいが悪いのではないかと言ったと伝えられ、後者については外務省の方がそれをいいということになると、政府の中で武器技術の供与について取り扱いが違ってくる。たとえ汎用技術であろうとそれが軍事に利用されることが明確になっておるものについて、アメリカ以外の国からいろいろ提供を要請されたからといって提供するということは武器輸出三原則の上から問題があるんじゃなかろうか、私はこう思っておるのですが、大臣どうでしょう。
○安倍国務大臣 これは、アメリカには武器技術を提供するということで例外措置をとったわけですが、その他の国については武器輸出三原則というのがありますし、これからも維持していくという方針は明らかでございます。 そういう中で、武器技術と汎用技術、これは明確に区別されてわるわけですから、そういう定義に従って、汎用については恐らく通産省が処理されるわけでございますが、そういう方向できちっと今後とも貿管令等でやっていくわけです。
○矢山分科員 じゃ通産省にだめ押しをしておきますが、汎用技術であろうとも軍事利用が明確だ、例えばイギリスの国防省から申し入れがあった、あるいは先ほど言いましたように西ドイツの航空機兵器メーカーから共同開発を申し入れた、こういった場合には武器輸出禁止三原則に触れるものとして通産省は対処しますね。
○渡辺説明員 お答え申し上げます。 先ほど第一点の御質問のございました富士電機云々の件でございますが、新聞報道に基づきまして早速我々の方で事情を聴取いたしましたところ、武器の共同開発を行うという意思は今のところ全く持っておらないということでございまして、新聞の取材等に対しましても、しかるべくそういう誤解を招かないように対処したい、こういうことでございましたので、その点をまずお答え申し上げておきます。 それから御指摘の汎用品もしくは汎用技術について相手先からの注文、その相手先というのが個別具体的にわかる場合にいかに対処するかという点でございますが、武器輸出の問題につきましては、これは汎用技術の問題も含めまして武器汎用品という品物に関しての従来からの国会の議論その他の論点というのは、武器はもちろん三原則でだめでございますが、汎用品の場合にはいかに対処するかという議論が従来から行われております。基本的な考え方は、輸出段階におきまして、当該貨物が輸出後仕向け地で実際に何に使われるかということは、客観的にこれを判断するのは極めて困難でございまして、そういう観点から、輸出規制を行う水際段階での公正さ及び実効性を確保するという観点から、当該品物の物性に即しまして、それが武器であれば三原則に基づいて対処する、汎用品であればそれは自由に認める、こういうのが従来の武器輸出三原則の原則に基づきます汎用品の取り扱いでございます。 今回、武器技術供与に関しまして、同じような汎用技術の問題に対しましても、以上、従来から我々が解釈しておりました物に関する武器と汎用品、それの取り扱いと同じ扱いで対処してまいりたい、かように考えております。
○矢山分科員 時間がありませんので、もうちょっと詰めたいのですが、きょうのところはやめておきます。 そこで通産省にお伺いしておきたいのですが、アメリカで最近いろいろな問題が起きていますね。先端産業の京セラが国家安全機密法ですか、これを盾にとった国防総省の圧力で同社の米現地の子会社の化合物半導体メーカー、テクセル・インコーポレーテッド社ですかを米国大手の軍需産業のグールド社に売却させられた。これが報じられていますね。 それから、住友金属工業を初め住友グループ四社が、米国鋼管継ぎ手メーカー、チューブ・ターンズ社買収に当たって、これも国防総省の圧力で艦船用部品をつくる秘密工場を分離させられ、これを切り離して買収せざるを得なくなった。これも伝えられておりますね。 それから、三菱化成工業が米国の半導体メーカーを五十六年十二月に米メジャーから買収したのでありますが、八三年八月、米軍用機メーカー、マクダネル・ダグラス社に、これまた国防総省の圧力で転売させられた、こういうことが報ぜられております。 さらに、新日鉄が新素材分野進出の一環で買収契約を結んだ米国の超合金メーカー、スペシャルメタルズについて、同じく国防総省の圧力で破談になった。 こういうことが最近、これは八三年だけなんですね。これだけ伝えられておるのですが、こうした実態についてどういう見解を持っておられますか。
○矢部説明員 通産省といたしましては、日米間の投資交流の促進を図るという観点から、企業の自由な投資活動を制限するような障害の除去ということは従来から努めておるのでございます。 対米投資の阻害要因といたしましては、最近問題となっておりますユニタリータックスのほかに、御指摘のような国家安全保障上の綱領に基づく制約も指摘されておるところでございまして、このような問題が対米投資の阻害要因とならないように、あらゆる機会をとりましてアメリカ政府に対しましては申し入れを行っておるところでございます。 通産省としては、引き続きこうした問題点の解決に努力いたしまして、投資交流の促進を積極的に図っていくということでございます。
○矢山分科員 そこで、続いて防衛庁に聞いておきたいのですが、最近、対日武器技術のライセンス供与等についてアメリカが非常に制限を強化してきておる、ブラックボックス化を図っておるというふうに言われておるのですが、この状況はどうですか。
○沼倉説明員 お答え申し上げます。 最近、米国におきましては、国内での雇用の確保というのが非常に大きな問題になっておることは先生御存じのとおりでございますが、この雇用の確保などの見地からの議会の意向もございまして、ライセンス生産を承認するに当たりまして技術開示の範囲をどうするかということについては、慎重に対処する傾向が見受けられるということでございます。
○矢山分科員 きょうは時間がありませんから、細かいことは指摘いたしません。 そこで、一方では日本に対して先端技術を供与しろと言って大変な圧力をかけてくるわけですね。他方では自分の国の先端技術の流出を防ごう、こういうので、日本に軍事技術を供与する場合に、先ほど言ったようないろいろなブラックボックス化を図る、あるいは日本の進出企業に対してさまざまな圧力をかけてくる、こういった現象を、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
○安倍国務大臣 それはそれぞれの国の国益というものもありますし、それぞれの国の企業の自主性というのもあるでしょうから、千差万別、いろいろとあるんじゃないかと思うわけなんです。しかし、基本的には、日米関係で言えば、武器技術を供与する、そういうところまでいっておるわけで、これはあくまでも安保体制の効果的運用という観点からこれに踏み切ったわけでございます。それほど日米関係というのは深い、いわば同盟的な関係にあるわけでございますから、いろいろ問題はあったとしても、基本的には相協力していくということでなければならないし、そういう方向で進んでおる、こういうふうに思っております。
○矢山分科員 これでやめますけれども、最後、私はそういう楽観的なお考えに対してひとつ警告を発しておきたいのです。 というのは、八一年度の軍事情勢報告というのがありますね。これを見ますと、アメリカは軍事技術の優位を維持する、こうはっきり言っているわけですね。その上で兵器の共用化、標準化の努力をする、こう言っておる。それから八四年度の軍事情勢報告を見ると、日本の先端技術分野の優秀性に触れて、技術分野での主導力が失われることでアメリカの基礎的な最新防衛機器の重要構成材を他国から求めざるを得なくなるということに強い警戒感を表明したわけです。しかも、さらにつけ加えて、米国とその同盟国は軍事共同生産計画及び兵器体系の選択生産の専門化を一層推進する必要がある、こういうふうに言っているわけです。 こういうアメリカの考え方を総合して考えてみますと、私は、日本側の考え方いろいろあると思うのです。外務大臣がおっしゃったような考え方もある。しかしながら武器技術の供与を求めておるアメリカの本当の意図というのは、先端技術の優位性を確保する、そしてみずからの軍事技術、兵器技術の優位性、独占的支配力を維持して日本の技術の優秀性を封じ込める、そこにあるのじゃないかと私は考えておるのです。アメリカの考えておるのは、先端技術を独占する、その体制のもとで日本の兵器産業を米独占体の下請として位置づけ、同時に、米国製兵器の対日輸出を確保しようというところにあるのじゃないか。これは私が言うだけじゃないのです。和田さんといって、前に装備局長をしておった人が大体こういうような意見を述べておる論文を発表されておるのです。私はその見方というのは案外当たっておるのじゃないかな、そういうふうに思っておるわけです。 したがって、軍事技術の問題というのは、ただ単なる純軍事的な側面だけじゃありません、経済的な面も非常に多く絡んでおる。まさに日米の国益をかけた問題になっておると思うのです。アメリカは先端技術の優位性を確保する、そして軍事的な支配力を確立することはもちろんであるが、その先端技術を独占的に支配することによって産業界にも独占的な力を及ぼそう、私はこういうアメリカの戦略だと思うのです。ですから、大臣の極めて楽観的な物の考え方というのは十分御注意いただかなければ、我が国の国益に反するようなことになるのじゃなかろうかと思います。ひとつ御感想を伺いまして質問を終わります。
○安倍国務大臣 今、矢山委員のおっしゃいます判断も、部分的には私も同感するところもあります。しかし、軍事技術、今までアメリカが一方通行で日本に供与しておった、武器も武器技術も。今度この相互交流で武器技術だけが日本がアメリカに供与するということにしたわけですが、まだどういうものを欲しいなんて全然言ってきていないのです。あれだけ去年、おととし論議して、そして交換公文までやったのですが、まだそういう具体的なアメリカの要請も何らないわけです。これからどういうことになるかわかりませんが、もちろんアメリカはアメリカなりの世界戦略があるでありましょうから、それに基づいてのことだろうと思います。また、日本は日本なりの平和と安全を守るための安保体制がありますから、そういう中で日本も日本の国益を守るという意味で判断していくわけでありますし、また、これから武器技術を供与するにいたしましても、あくまでもこれは日本が自主的に判断して決めるべきことであろうと思います。また、汎用品、汎用技術についても、これは企業の独自性によって決まるべきことであろうと思うわけでございます。 いずれにしても、今後いろいろな展望と状況が開けてくるとは思いますけれども、日本は日本の国益を守る、そういう中で、また安保体制の効果的運用を図っていくことによってこれからの世界の平和と日本の平和に貢献していかなければならないというのが我々の基本的な考え方であります。
○矢山分科員 終わります。
○中村(正三郎)主査代理 これにて矢山有作君の質疑は終了いたしました。 次に、佐藤誼君。
○佐藤(誼)分科員 それでは、私は朝鮮半島の緊張緩和の問題から質問してまいりたいと思います。 御承知のとおり、今、韓国には最低六百五十発ないしは一千発の核兵器が配備されていると言われています。その中で、アメリカ陸軍参謀総長マイヤー氏は、昨年一月ソウルで行われた記者会見で次のようなことを言っております。レーガン政権の基本戦略概念は、戦争が起きた場合在来型の戦争で長期対応し、避けられない場合は戦術核兵器を使用するもので、この概念は韓国にも適用されると述べておると報道されています。今、朝鮮半島を中心に二月一日からチームスピリット84が始められ、それは核戦争の演習とも言われ、参加要員はアメリカ軍六万人、韓国軍十四万七千人、合計二十万七千人で史上最大の規模であり、一方それに対して朝鮮民主主義人民共和国は、二月四日、戦闘動員態勢の強化を命令したと言われております。 このような状況の中で、朝鮮半島に一たん有事の事態が起これば核戦争に発展する可能性は十分持っておりますし、当然そのことは日本とアジアの人民にとって大変な事態を招くことは御案内のとおりであります。したがって、このような朝鮮半島をめぐる状態を考えたときに、アジアと日本の平和と安全にとって何といってもこの朝鮮半島の緊張緩和と平和の維持が極めて重要な政治的な課題であるというふうに私は思います。まずその点、基本的な考え方として外務大臣の所見を伺いたいと思います。
○安倍国務大臣 まさに朝鮮半島の平和はアジアの平和、世界の平和にもつながる問題である。朝鮮半島が有事になればアジアに何が起こるかわからない、世界に何が起こるかわからないというような予想すら出てくるわけでございます。したがって、この朝鮮半島の緊張をいかにして緩和していくかということが最大の今の課題ではなかろうか、こういうふうに存じております。日本はそのためにできるだけの努力をしなければならない、こういうふうに考えて今日までもやってきております。今後ともそういう方向で進んでまいる考えであります。
○佐藤(誼)分科員 外務大臣の朝鮮半島に対する基本的な認識はわかりましたが、このような緊迫した朝鮮半島の情勢の中で、御承知のとおり朝鮮民主主義人民共和国からいわゆる三者会談の提案がなされました。その中身を見ますと、まず第一に述べていることは、米朝平和協定の締結、二番目が朝韓不可侵宣言の採択、三番目が南北共同声明に基づく平和統一のための対話、こういうことを提案しております。 この提案してきたこと、並びに今申し上げた内容ともに、外務大臣も所信表明で「北朝鮮が朝鮮半島の緊張緩和に向けて真摯な努力を傾けることを期待する」と述べられましたが、この緊迫した状況の中で朝鮮民主主義人民共和国がこのような形で三者会談の提案をされてきたことは、まさにあなたが期待する「真摯な努力」に当たるのではないか、しかも、私が今述べた三点についても、先ほどあなたも言われた朝鮮半島の緊張緩和、平和と安全にとって歓迎すべき内容ではないのかと私は思うのですが、その点どうですか。
○安倍国務大臣 私どもは、朝鮮半島の緊張緩和を図るためには、まず第一に大事なことは、両当事国が対話を進めるということであろうと思います。すなわち、韓国と北朝鮮がまず話し合うことが何よりも大事ではないかということ、これは日本政府の正式な見解といたしまして内外に伝えておるわけでございます。 そういう中で、今、三者会談あるいは四者会談あるいは六者会談というふうな動きが出ておるわけでございます。いずれにいたしましても、我々は、そうした会談の動きが出ておるということは歓迎いたしております。それはそれだけ緊張緩和の方向へ事態が動いていくということですから、これがどういう結論になるかは今後の問題としても、そういう動きが出るということは歓迎するわけでございます。 そういう中で私どもは、韓国と日本とは御承知のように非常に友好的な安定した関係にありますから韓国の真意はよくわかっておるわけでございますが、北朝鮮の場合は、国交がないということでその真意がわかっていない。残念ながらああしたラングーンの事件も起こりまして、そういう中で三者会談を提案された。北朝鮮が一体どういう真意で三者会談を提案したのか、その辺まだ理解できない点もありますけれども、しかし、最近のいろいろの動きを見ておると、緊張緩和のために各方面が真剣に動いておるなという感じは持ってきておるわけでございます。
○佐藤(誼)分科員 外務大臣が言われるように、確かに朝鮮半島の韓国とは国交があり、しかも、朝鮮民主主義人民共和国とは残念ながら国交がない、ただし文化、経済については民間ベースの窓口があるというのが実態だと思うのです。ただしかし、この朝鮮半島の予測される有事の事態とか、我々が望む緊張緩和というのは、国交があろうがなかろうが、それはそれに関係なく、起こる場合は起こると思うのです。したがって、そこのところ、国交があるからとかないからとかいう前提で対応していくことは極めて時宜に適したものではないだろうと私は思うのです。 そこで、今、両当事国の対話と言われましたが、確かに韓国の場合にはそういうことを言っております。朝鮮民主主義人民共和国の場合にはアメリカ合衆国を入れて三者会談と言っておるわけでありますが、私はどうもその二者会談ということにこだわり過ぎているのではないかという感じがしてならないわけです。新聞にも報道されているように、三月二十二日からですか、総理並びに外務大臣が中国を訪問されますね。新聞等の報道によれば、そのときにその環境づくりに努力したい旨のことを言われておりますが、一方、その報道の中には、韓国の方から日本に対して、中国に対して南北対話についての橋渡しをしてほしいというのですか、紹介というのですか、そういうような趣旨のことを言われているやに聞いておるわけです。したがって、二者、三者、四者といろいろなスタイルがありますが、中国は極めて重要な地位にあるわけですから、対談されるときに今の問題についてはどのような立場で中国と話し合うつもりなのか。その辺の基本的な考え方はどうですか。
○安倍国務大臣 中国と日本の関係は非常にいいわけですし、これまでの日中関係では相当腹を打ち割っていろいろ問題を話し合っております。特に、朝鮮半島の状況については日本と同じように中国も心配しております。したがって、今回の総理の訪問はちょうどいい機会ですから、この朝鮮半島の情勢をめぐって、さらにこれからの緊張緩和の方向を進める上における日中間のいろいろな意見の交換というものは大変有意義ではないか、こういうふうに思うわけです。そういう中でいろいろな日本の考え方、中国の考え方というものも出てくると思いますが、これは十分議論をする、そういう中から何らかいい方向が生まれてくることを我々は期待をしておるわけです。 ただ、中国は北朝鮮とこれまた正式な国交があるわけでありますし、そしてまた北朝鮮の三者会談というものを中国が支持しておる、こういうことでございますので、この辺のところをこれからどういうふうに日本と話し合って、そしていろいろと意見の調整等を図っていくか。これはこれからの会談に入ってみなければ、会談がどういうふうに展開していくかということはここでははっきり申し上げる段階ではない、こういうふうに思います。
○佐藤(誼)分科員 会談に入ってみなければ何とも言えないという旨のことを言われましたけれども、私は今までのことをずっとたどって新聞の報道などを見ますと、確かに韓国の場合には、簡単に言えば二者会談、それから共和国の場合には三者会談、そして日本の場合には南北の対話が先決だ。しかも、韓国から要請を受けて、言うなれば中国に橋渡しをするというようなことも報道されている。だが、私が言わんとするのは、それは話してみなければわからぬけれども、どうもその南北対話というスタンスが、言うなれば韓国というゾーンに沿い過ぎているのではないかという感じがしてならないわけです。 御承知のとおり、いろいろな関係国がありますけれども、アメリカのレーガンの場合には、三者会談のときに四者会談ということをすぐ提案されたわけです。しかし、三者会談を否定はしてないですね。そしてまた、アメリカは三百会談を提起した経過もあるわけです。中国の場合には、三者会談ということを支持はしております。しかし、御承知のとおり、この間の万里副首相ですか、この声明などを見ましても、三者会談は支持しておりますが、しかし、それは本来は二者会談だけれども、アメリカが朝鮮半島におり、しかも軍事的な関係を持っている限り、要請されれば当然それは入るのが至当ではないか、こういう言い方をしておりますね。 それから一方、アメリカにおいて趙首相が一月の訪米の際に、三者会談を入り口にして、その状況を見て中国が参加してもいいのではないか、こういう趣旨のことを言われているわけですね。ですから、中国の場合には確かに三者会談は支持をしておりますけれども、非常に柔軟な幅の広い対応の仕方を持っていると思うのです。 それから朝鮮民主主義人民共和国の場合、この間も七日ですか、韓国に対する返書の中で、新聞の報道の限りですけれども、「朝鮮半島につくり出された今日の緊張状態を緩和し、軍事的対峙状態を解消して、自主的に平和統一問題を解決できるならば、南北双方会談だろうと三者会談だろうと会談形式にこだわることはない」という旨のことを言っておるわけです。 つまり私が言いたいことは、二とか、三とか、四とか、いろいろ言っておりますけれども、当事国もそうですし、関係国も言っております。しかし、極めて柔軟な対応をしている。その中で極めてかたくなに言っているのは、どちらかと言えば韓国の南北対話、それと連動するような形で日本の政府がどうしても南北対話が先行すべきだ、環境づくりだ。しかも、韓国から依頼された形で中国にその問題を持っていくという。私は日本が当事国でもないということを考えますと、中国なりアメリカなりあるいは当事国である朝鮮民主主義人民共和国がそういうことを言っておりますから、もう少し柔軟な対応で臨むべきではないか。これは中国との会談だけではなくて、この問題全体についてそういうことがあってしかるべきじゃないか。しかも日本の立場というのはこの朝鮮半島の動きと密接な関係を持っていますから、したがって二者、当事国というだけではなくて、もっとスタンスを広くして、そして、三者会談も含めていかにしたならば緊張緩和を進めていくためにその会談を成功させるか、そういう立場で臨むのが、朝鮮半島とかかわりある日本の立場を考えたときに今日極めて重要じゃないか。その辺の基本的な立場について、私は柔軟であっていいと思うのだけれども、どうなんでしょうかね。 〔中村(正三郎)主査代理退席、主査着席〕
○安倍国務大臣 別に日本は韓国から頼まれまして中国に対して二者会談を伝えるとか、そういうことではないのです。日本は日本の外交の基本として、朝鮮半島の緊張緩和を進めるにはまず第一に当事国同士の話し合いというものが先決ではないか、これはずっと言い続けてきている日本の基本方針でございます。しかし、今出ております三者会談、四者会談、六者会談、いろいろの構想がありますから、そういうものに対しても我々は非常に注目をしておるわけでありまして、そして、いずれにしても、そうした関係当事者が納得した形でこの会談が開かれるということが必要だ、そのためには日本も協力を惜しまないということを我々は言っておるわけですから、日本の基本的な考え方ははっきりしておりますが、しかし、反面、また朝鮮半島の緊張緩和のためには、今おっしゃるような、私自身にとりましても相当柔軟な、弾力的な立場でこれに臨んでおる、こういうことでございます。
○佐藤(誼)分科員 三者、四者、その行方を注目するということなんですけれども、結局、三者会談は否定すべきものだとか、望ましくないものだという考え方は持っていないですね。この点どうなんですか。
○安倍国務大臣 ですから、三者会談につきましても、あるいは四者会談につきましても、あるいは六者会談、こういうふうなことも言われておりますが、そうした会談等につきまして我々は注目をしておる、こういうことでございます。
○佐藤(誼)分科員 南北対話、それを軸足にして動かさないでただ注目をしておるのでは柔軟な対応にならぬじゃないですか。従来からそういう方針をとってきたかもしらぬけれども、それぞれの当事国はもちろんですよ、関係国も三、四、六というような形でいろいろな柔軟な対応まで考えておるわけだ。しかも、朝鮮民主主義人民共和国の見えまでも考えておるわけですよね、これは。 ですから、そういうことを考えますと、日本の場合には何も南北ということにこだわらないで、それは従来そうであったかもしれぬけれども、三でも四でも、特に三に焦点が当たっていますから、この辺も含めて柔軟に対応しているのだということであってしかるべきだと思うのですが、重ねてどうですか。
○安倍国務大臣 これは重ねて申し上げますが、日本は、これまで日本が申しておりましたように、また、朝鮮半島の状況からいうと、やはり当事国同士が話し合うということがまず先決じゃないかという基本的な考え方は持っておるわけです。今でも持っておるわけですから、言っておるわけです。しかし同時に、この朝鮮半島の緊張緩和というのは二者会談だ、三者会談だ、四者会談だ、お互いに言いっ放しではどうにもならぬわけですから、当時者同士が話し合い、コンセンサス、円満な形で会談に参加することにならなければいかぬわけですからね、どういう形でも。それに対して我々は環境をつくるために協力をしますし努力もしなければならない、要するに緊張緩和のための努力ですね。それに対して我々は柔軟に臨んでいこう、こういうことで注目している、こういうことなのですね。
○佐藤(誼)分科員 時間がないのでなんですが、緊張緩和について臨んでいきたいという大筋のスタンスは持っているわけですが、ただ、私は例えば南北の対話を、まず当事国の話し合いだと言われるならば一韓国との接近は私は非常にあると思うのですね、もちろんこれは国交のある国ですからね。しかし南北対話の、北の方との国交はないと言いながらも、それじゃ日本の場合、どういう対応をしているのか、どういうふうに接触しようとするのか。何にもない。 むしろ逆に言えば、今までは国交はなかったけれども、文化や経済については民間ベースの窓口があった。ところが、ラングーン事件でああいう規制措置をとらざるを得なかった、またとった、つまり切れている。むしろそういう規制措置によって朝鮮民主主義人民共和国とは民間ベースの窓口さえ切ってしまっている。そこに何らの対話がない。韓国だけは一方的にツーカーツーカーいっている。それで南北の対話がまず前提だとかなんか言ったって、日本のとり方として、外交があろうがなかろうが朝鮮半島の有事はどんなことが起こるかわからぬわけですから、そのことを考えたら、どのような形で朝鮮民主主義人民共和国と緊張緩和の方向においてパイプをつないで緊張緩和のための会談を促進していくか、むしろその点をもう少し外務省は考えなければならぬじゃないですか。どうですか。
○安倍国務大臣 これは我々が両当事国の間の対話を期待をする、それが朝鮮半島の緊張緩和を進める上においては非常に大事であるということと、それじゃ日本が北朝鮮とこれからさらに、国交とまでいかなくても関係を深めていくということとは別に直接的につながる問題じゃないと思うのですね。我々は今北朝鮮に対しましては国交は持ってない、そして今これを持とうとも思ってないわけです。ただしかし、敵視しているわけじゃありませんし、同時にまた民間の人的交流とか経済交流とか、そういうものは進めていきたい、こういう方針は今日まで貫いてきておるわけです。 ただ残念なことは、ああしたラングーン事件が起こりまして、そしてビルマがあの事件はやはり北朝鮮がやったんだという断定をしたわけですね。そういうことによって、我々はああいう国際テロ事件、爆弾テロ事件というものは絶対に許すことができないという日本の立場を貫くために北朝鮮に対する措置をとったわけなのです。そしてこれは状況が変わっておりませんから、その措置は今日も続いておる、これは私たちは非常に残念なことだと思うわけでございます。しかし、我々としてはそういう中にあってこの北と南との関係が何とかひとつ緊張が緩和される方向に進むことを期待をしておるわけでございますし、それなりにまた、これからの状況によっては日本と北朝鮮との間の民間の関係が正常化していくということに対しても期待を持っておるわけであります。
○佐藤(誼)分科員 日本と朝鮮民主主義人民共和国が民間の関係を通じてより発展していくということを期待しているという旨を言われました。 それじゃ時間がありませんので、次のことに関連していきますけれども、外務大臣御承知のとおり、日朝漁業民間暫定合意、残念ながら一九八二年六月三十日で失効したわけですね。その結果、共和国の一方的な好意によって生まれたこの暫定合意、これによって働いてきたところの日本海沿岸の漁民は今日まで大変な事態に立ち至っていることは、再三外務大臣もいろいろ陳情があったからおわかりだと思うのですね。ことしも失効のままで日本海のマス流しは三月一日から始まりました。非常に寂しい思いで船が出ていっているのです。これは何とかしなければならぬと私は思うのですよ、外務大臣。 長い経過を申し上げませんけれども、ここに日朝漁業協議会の要請の文書がありますけれども、その中に「漁業交渉の再開に応じない最大の原因は」と言って、例の北朝鮮代表が日本に暫定合意の予備折衝のために入るときに、残念ながら日本の外務省がそれに対してイエスの返答をしなかった、このことについてまず一つ書いてあります。その後ずっといろいろな努力もありまして、私も、昨年の七月に朝鮮民主主義人民共和国へ行ってまいりました。そして、御承知のとおり、日朝漁業暫定合意の延長についての枠組みをつくってまいりました。そのときの話は、これを有効に延長し、また場合によっては協定を結ぶために有効な雰囲気づくりをしようじゃないかということで、そのとき同時に、朝鮮民主主義人民共和国から日本で開催される原水禁世界大会に参加する旨のことで話をしてきたわけだが、これも残念ながら、政府は政府の考えがあったかもしらんけれども、入国はできなかったわけです。遠のいてしまった。 それがまた今度はラングーン事件で、規制措置によってさらに日本と朝鮮民主主義人民共和国の関係が遠のいて、そして今の日朝漁業暫定合意がまたまた遠のいた感じになっているわけですよ。こういう状況を考えますと、政府は政府の考えがあったかもしらんですが、そういう一連の政策上の扱いによって漁民は大変な事態に立っているわけだ。言うなれば、漁民の皆さんには直接的な責任はないわけです。そうでしょう。つまり、共和国のそういう恩恵をこうむってきたところが、日本の、言うなれば政府の政策上のそういう扱いによって、本人たちの瑕疵や非違ではないけれども結果的には失効することによって関係漁民は今日まで大変な苦しみと操業の危機、倒産の状態にまで来ているわけです。 したがって、私はここで何とか政府、外務省の力を中心として暫定合意の再開、延長に向けて打開策を考えなければならぬじゃないかというふうに思うわけですけれども、どうですか。
○安倍国務大臣 民間漁業協定が切れてしまった、そして暫定的な合意が生まれないということは、私も極めて残念だと思います。漁業者の皆さんもそういう意味では大変お気の毒だと思うわけであります。しかし、政府はこれには初めから関与できる筋合いのものではないわけです。国交がないわけですから関与していないわけでございます。民間漁業協定が暫定的に合意されないということにつきましては、確かに日本と北朝鮮との間のいろいろな問題、北朝鮮のラングーンで起こしたああした事件等が一つの要因となっておることも事実でございますが、結論的に申しますと、政府としてはこれに対して何ら介入はできないわけです。しかし、民間漁業暫定協定が成立するということは心から期待をしているわけです。 これは民間間の極めて純粋な、漁業問題に絞っての話し合いということでやっていただけばできるのじゃないか、こういうふうにも考えておりますし、せっかく国会の議員連盟の皆さんも苦労されておられるわけでございますから、そういう立場でひとつ御配慮していただいて、そして何とかこれを暫定的に合意できる方向へ進めていただきますように期待をいたすわけであります。
○佐藤(誼)分科員 私はちょっと真意をはかりかねる点もあるのですが、民間漁業暫定合意が延長なりあるいは新しい協定なり、これはわかりませんけれども、何らかの形で実を結ぶことを期待している、それは民間ベースで云々、努力すればできるのじゃなかろうか、こういうことですね。そして、国交もないし、政府が直接介入することもできないしというような趣旨のことを言われたわけですけれども、私は少なくともその期待しているということはいいと思うのです、まだ国交がないわけですから。しかし、政府は直接関与できない云々ということを言いますけれども、政府の行為によってそれが促進されるという環境が、むしろマイナスになってくるという場合があるわけだ。 例えば、これは先ほどから言っているように、予備会談のために朝鮮民主主義人民共和国の代表が入ろうとすればいろいろなことで規制が加わる。それから、代表が原水禁世界大会に参加して雰囲気づくりをやればいろいろなことでちょっと問題だということになっちゃう、入ってこない。それから、ラングーン事件で今もなお続いている。政府だって、国交はないけれども、それを促進するための間接的なよい雰囲気をつくる環境づくりに努力してもらわなきゃ困るわけです。外務大臣、幸い今三者会談という、朝鮮半島をめぐりまして非常に友好的な雰囲気が生まれつつあるわけであります。しかも日朝漁業暫定合意も非常に切実な問題になっている。その辺を考えてつなぎ合わせてみたときに、よい環境づくりをするために、ラングーン事件の規制措置などはこの辺で考えてみてもいいんじゃないか。政府も、それを中心としながらよい環境づくりを間接的にやっていくという努力があってしかるべきじゃないか、このことを漁民は期待していると思うのです。このことが一つ。 それからもう一つは、時間がありませんので、水産庁にも関連してお聞きしますが、昭和五十七年六月三十日に失効したことによって、漁民の皆さんは大変な被害と影響を受けているわけです。漁民の皆さんから言えば、自分たちの非違や瑕疵でもないのに――朝鮮民主主義人民共和国の一方的な好意を受けることができない、非常に悔しがっているわけです。したがって、そういう点から言うならば、これらの方々に何らかの救済措置、もちろんこれは延長を図るということが基本なんですけれども、同時に、今日まで大変な事態になってきていますから、この救済措置を何か考えることはできないのか、何か知恵はないのか、この二点をお聞きしたいと思います。
○安倍国務大臣 確かに、今朝鮮半島には緊張緩和のためのいろいろな動きがあります。これは心から歓迎するし、その動きがさらに拡大するように日本も努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。そういう意味では多少いい雰囲気が出ていると思うわけですが、反面、またビルマの事件、あれは北朝鮮がやったということについてはビルマがはっきりと言っているわけですし、それに対して、日本も国際テロ反対という立場から措置をとっているわけです。その措置を今すぐここで崩せと言われても、その後、事件に絡んだ変化はないわけですから、今すぐここでその措置を崩すというわけにはいかないわけです。 ですから、我々は、民間協定に反対するわけでもないし、そしてまた、純粋に漁業問題を通じて交渉が行われることも期待しているわけですから、この枠組みの中でそういう動きが進むことをこれまた我々としては希望をするわけです。これはそれぞれの国の立場があるわけですから、日本は日本の立場というのがありますから、そういう中でまた北朝鮮も十分日本の立場というものを踏まえてもらってやれば、これは民間間の漁業協定を結ぶにしても延ばすにしても、交渉に入ることは決して難しいことではないんじゃないか、そういうふうに思っております。政府が直接そういうことに努力するわけにもいきませんが、これは佐藤委員初め関係者の皆さんが努力されることを我々は大いに歓迎するわけであります。
○尾島政府委員 関係漁業者に対する対策でございますが、暫定協定の期限切れに伴いまして、経営状況が悪化してきつつある漁業者に対しましては資金手当てをしなければならぬということでございまして、イカ釣り等の関係漁業団体とも協議をいたしました結果、漁業者が既に借り入れを行っている農林漁業金融公庫資金とか、あるいは漁業近代化資金等につきましては、極力中間据え置きを設定するとか、あるいは償還期限の延長をする等の償還条件の緩和等を行うこととするということと、あるいは漁業経営維持安定資金の運用について円滑な融資を行うということ等について既に関係団体と話をしておりまして、関係道県あるいは農林漁業金融公庫につきましても、このような方針に従いまして具体的な対応を進めているという状況でございます。
○佐藤(誼)分科員 これで終わりますが、この問題、外務大臣とやるとかなり時間がかかるのですけれども、ただ私は一言言うと、この枠組みの中で努力すれば光が出てくるのじゃないか、こういう言い方をされますけれども、その枠組みじゃ無理なんですよ。例えばラングーン事件の問題から何からずっとあるでしょう。そういう枠組みでやれといったって、それは無理なんですよ、大臣。だから、民間が暫定合意が有効に延長できるような枠組みも弾力的に考えてやらなければ無理なんだよ。 そこのところはいろいろ経過もあるでしょうから、大臣もよくおわかりですから、今後十分そういう一つの枠組みについても考えてもらいたいと思う。民間を中心に暫定合意の延長のためにも頑張っていかなければならぬと思いますから、それはぜひ、大臣も山口県出身ですからよくおわかりだと思いますから、その点、心して政府の側としても努力してほしい、このことを最後に申し上げまして、終わります。
○相沢主査 これにて佐藤誼君の質疑は終了いたしました。 次に、松本善明君。
○松本分科員 トマホークの第七艦隊への配備問題などが起こってきまして、この日本への核持ち込みの問題、事前協議の問題、これは新たな重大な問題になってきておると思います。今国会でもいろいろ議論をされましたし、今までも無数にと言っていいぐらいこの問題は議論をされておりますが、私はこの際、今までの議論を全部、過去のものも含めまして整理をして、政府が考えていることがどういうことなのかということを国民の前に明らかにしたい、こういうふうに思うわけです。 そういうことで質問するわけでありますが、かなりたくさんのことをお聞きしたいと思っておりますので、一時間ございますけれども、簡明に率直にお答えをいただきたい。私の方も、私の考えを押しつけるというような考えはさらさらございませんので、ただ国民の前に事実を明らかにしたいということでございます。 最初に、外務大臣にお伺いしたいのでありますが、ライシャワー発言がありましたころに、外務大臣の岳父でもあり、六〇年当時の総理でもあった岸元総理が、この問題について、八一年五月十九日付の読売新聞に載っておるのでありますが、読売とのインタビューの記事でこういうことがございました。「あの当時(安保改定時)は「領海通過」を事前協議の対象とは考えていなかった。私がハーター国務長官との交換公文で事前協議の対象に「装備における重要な変更」を明記した時は、この「装備の変更」とは「核装備」であり、この「核の持ち込み」は事前協議の対象とすることを確認した。しかし、核を積んだ船が(領海内に)入ったからといって、それは装備の変更ではない。」「非核三原則は、弟(佐藤首相)のころからのもので、私の時は問題にならなかった。弟のころから非核三原則などがやかましくなった。私の当時は「核持ち込みとは核の装備であり、寄港や領海通過は含まない」というもので、その点で議論はなかった。」それに対して記者が「それでは、現実に核積載艦が日本に寄港していると思うか。」と質問をしたのに対して、岸氏は「そういう事態はあると思う。米第七艦隊は核を積んでいると思うし、日本に寄港するためにいちいち核をおろすなどのことはしていないと思う。大体、それは当然のことで、寄港、領海通過もいけないというのは、つまらん議論だ。」こういう発言をしておられるのでありますけれども、外務大臣、この岸見解についてどのようにお考えでございますか。
○安倍国務大臣 政府としての私の考え方は、これはしばしば国会でも申し上げましたように、非核三原則を守っていかなければならない、やはり事前協議の対象として領海通過あるいは寄港等もこれに含まれる、そしてその場合は日本はあらゆる場合においてノーである、こういうことが日本の公式な、正式な政府の見解でありますし、私も外務大臣としてこの立場を貫いておるわけであります。
○松本分科員 政府の正式見解は私もよく存じておるわけでありますが、当時の総理大臣の見解と今の政府の見解とが全く違うということは一体いかがなものなんだろうか。この点についてどういうふうに考えておられるんだろうか。藤山・マッカーサー口頭了解を岸元総理が知らなかったということはあり得ないというふうに思うのでありますけれども、その点について、外務大臣はいかがお考えでございましょう。
○安倍国務大臣 このイントロダクションの中に寄港、通過が含まれていることについては、合衆国軍隊の「装備における重要な変更」を事前協議の対象とする交換公文の規定及びいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解からしても十分に明らかでございまして、この点に関しては日米間に了解の違いはない、こういうふうに思っております。 確かに、今の岸元総理の発言があるわけでございますが、これはいわば元総理としての発言であるわけでございますし、報道されておるような発言を行っておるとしましても、それは、核持ち込みの問題につきまして二十年前の記憶に個人的な見解をも加えながら述べておる、こういうふうに思われるわけであります。この点は、例えば核持ち込みは領海を通過したり寄港したりすることまでは意味しないと思う、または、このようなことまで含めるのはおかしいという表現からも、うかがえるところでございます。したがって我々としては、今の政府の見解で首尾一貫して十分事足りる、こういうふうに判断しておるわけでございます。
○松本分科員 確かに、現在の見解の部分もあるのですけれども、事実を語っておられる点もあるのですよ。もちろん、岸元総理が藤山・マッカーサー口頭了解を知らなかったということはあり得ないでしょうね。その点は確認できると思うのです。 では、この中で、この点についての議論はなかったんだということを言っておられるわけですね。それを自分の記憶として言っておられる。当時実際に担当した人のことですから、記憶がどうなっておろうと、ほかの人は直接担当してないわけですから、これはやはり尊重しなければならぬと私は思うのですけれども、この当時の事実についての岸見解、これは間違いだというのが政府の立場ですか。
○安倍国務大臣 もちろん、当時藤山・マッカーサー口頭了解があったということは、政府間において十分明快な事実でありますから、そういういわゆる公式な両国間の了解によってその後の政府の方針が決まってきておる、こういうふうに思っております。
○松本分科員 私のお聞きしておりますのは、寄港や領海通過はこの中に含まない、この点の議論はなかった、こういうふうに岸元総理が言っているということは間違いかどうか、この点について一体政府は岸元総理に確かめたことがあるのかどうか、それから、あなた個人も大変深い関係があるわけですから、個人的にもお確かめになったことがあるのかどうか、その点も含めて岸元総理のこの点の記憶は間違いなんだ、こういうふうに言われるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
○安倍国務大臣 私は具体的に聞いてはおりませんけれども、しかし、二十年前の記憶のことですし、そしてそうじゃないかと思うということも言っておるわけでございますし、当時の記録から見れば、藤山・マッカーサー口頭了解みたいなきちっとしたものがあるわけですから、当時として議論になったという事実はやはり間違いないと我々は判断をしておるわけですね。
○小和田政府委員 当時の政府の考え方につきましては、昭和三十五年の新しい日米相互協力安全保障条約が国会で審議をされました機会に議論の対象になったわけでございまして、例を申し上げますと、赤城防衛庁長官が、第七艦隊が核装備をして横須賀なりその他に入港してくるときは事前協議の対象になるという答弁、あるいは当時の高橋条約局長の答弁として、質問者の、この第七艦隊が核装備をして横須賀に入港してくる、こういう場合にはこれは事前協議の対象となる、これはそのとおりかという質問に対して、お説のとおりでございますというふうに答弁をしている例がございます。
○松本分科員 私の聞いたのは、岸元総理に政府としてこれを確かめたのかということを聞いたのです。これからもそういうことは聞きますから、時間はたくさんありますので、質問をよく聞いて、余計なことは答えない、そういうふうにしてほしいと思うのです。 外務大臣、問題は、藤山・マッカーサー口頭了解はあるけれども、寄港、通過の問題については、これは明文で入ってないから問題になるわけですよ。そして、これは岸元総理は、そう思うというのではなくて、読売に対するインタビューでは、少なくともこの点の議論はなかったんだということをはっきり言っておられるのですよ。その点でどうかということを聞いておるわけです。 それで、その点では政府も、それから外務大臣としても、個人的にも、岸元総理にはこの点について確かめておられないということで確認してよろしゅうございますか。
○安倍国務大臣 これは確かめるとか確かめないとかいう問題じゃなくて、今少なくとも私、外務大臣として日本政府の正式な、公式な見解を申し述べておるわけでございますから、それで結構じゃないかと思います。
○松本分科員 結構じゃないのです。やはり国民はそういう点が知りたいわけです。現在の政府の見解ということは、もう何遍も言っておるのですけれども、一体事実はどうなのかということを聞いておるのです。何回聞いてもお答えにならぬわけで、これは政府としても、あなた個人としても、確かめていないというふうに理解する以外になかろうと思います。 それで私は伺いますが、藤山・マッカーサー口頭了解について、核持ち込みには寄港、通過が含まれているんだ、これが政府の見解でありますが、これについては何らかの取り決めとか合意議事録などはない、これが今までの答弁でありました。五十六年六月一日に、園田外務大臣や当時の淺尾アメリカ局長がお答えになっておりますが、これは間違いありませんか。
○北村政府委員 核の持ち込みには寄港及び領海通過が含まれるという日本政府の解釈につきましては、委員が御指摘になりましたように、私どもは藤山・マッカーサー口頭了解そのものから読んで解釈をしているわけで、この点につきまして藤山・マッカーサー口頭了解以外の文書とか取り決めとか、そういうものはございません。
○松本分科員 これは五十六年六月一日の答弁でしたが、現在までも、その後もないということでよろしいですね。
○北村政府委員 そのとおりでございます。
○松本分科員 そうしますと、今までの政府の説明で、藤山・マッカーサー口頭了解の中で寄港、通過問題は含まれているんだ、こういうふうに言われるのだけれども、しかしそれを取り決めたものはない、議事録もない。というと、ラロック証言とかライシャワー発言などがあって、アメリカ側はそう解釈していないのじゃないかという疑問はどうしてもぬぐい切れないわけですよ。そこがこの問題の中心点でもあるわけです。政府がそういうふうに解釈しているということが一体正しいのかどうかという問題を判断をするということになりますと、私は、実際にこの藤山・マッカーサー口頭了解をつくりました交渉当事者の発言が重大なんだというふうに思います。 そういう点で、岸元総理は直接の当事者ではなかったけれども、当時の責任者であったからお聞きをしたわけですが、当時の藤山外務大臣、この藤山外務大臣については、やはりライシャワー発言がありましたころの八一年五月十四日、毎日新聞のインタビューに答えてこういうふうに言っています。 ――核兵器を搭載した艦艇の寄港について米側と話し合いましたか。 藤山 それが、私は話し合ったという記憶がないんです……。だけども、核を積んでいてそれを上陸させないでほかへ行く、という場合まで寄港できない、というようなことまで議論したようなことはなかったと思います。 藤山さんははっきりとそういう議論はなかった、こういうことを言っておられるわけです。この点についてはいかがでしょう。
○北村政府委員 一般に、外交交渉の経過あるいはその内容というものについてはつまびらかにいたさないわけでございますし、またその交渉当事者の方も、その当時を離れて記憶に基づいて御発言なされた点もあろうかと思います。私どもといたしましては、先ほども答弁いたしましたように、寄港及び領海通過も核の持ち込みに含まれるというのは、この藤山・マッカーサー口頭了解の文章から当然出てくるところであって、この点について日米間に了解の違いはないというふうに考えておりますし、今までもそういう御答弁をいたしてまいりました。 委員も御承知のことかと思いますけれども、藤山・マッカーサー口頭了解には「同軍隊の装備における重要な変更」という言葉がございまして、その「同軍隊」というのは、これは単に日本に駐在する合衆国軍隊だけではなくて、日本に配置された軍隊及び我が国の施設、区域を一時的に使用している軍隊及び領海、領空を通過するなど我が国の領域にある軍隊、その三つの軍隊を意味することは、交換公文の文脈上からも明らかな点でございまして、私どもは、こういうことから寄港及び通過も核の持ち込みに含まれるというふうに解釈をしておるわけでございます。
○松本分科員 文脈上、文章上当然だというのが政府の見解だということは百も承知で聞いているのですけれども、しかしそれでは国民の疑惑は解けないわけですよ。そうだけとは言えないのじゃないかということで何人もの人が国会で議論をしているし、むしろそれはあいまいにしておいた方がいいんだ、灰色の領域があることがここの妙味だということさえ議論されているということだから聞いておるわけです。それで、外務省として、政府として、藤山元外務大臣にこの発言について確めたことがありますか。あるかないかをお答えください。
○北村政府委員 先ほども申し上げましたように、外交交渉のそれぞれの経過についてはいろいろな紆余曲折があったことだと思いますし、そういうことで、我々はそういう外交交渉の経過を一々つまびらかにはいたしませんし、また、その当時交渉された方がもうその職を離れられて、当時のことを自分の記憶で申し上げておられる場合には、一々それについて私ども政府としてチェックをするということはいたしません。
○松本分科員 そうすると、政府に何か資料がありまして、そして藤山発言というのが間違っているとかなんとかいうようなことになるならば、これはまた一つの信憑力といいますか説得力を持つわけですが、この経過についての資料というのは日本政府にはないのですか。先ほどはないということでありましたが、全くない、それから藤山発言を覆すような資料もない、こういうふうに伺ってよろしいですか。
○北村政府委員 もちろん、その当時の交渉について会議の議事録というようなものもあることはありますけれども、しかし、先ほど来申し上げておりますように、今問題になっておる核の持ち込みという問題につきましては、特に私どもが申し上げてきておること、特に合意議事録であるとかあるいは別の文章をつくってそれを確認した、そういうものはないわけでございます。
○松本分科員 なかなか大事な発言でございました。当時の記録はあるけれども、この部分についての記録はないという話でありました。私はそれは一つの重要な資料であろうかと思いますが、もう一つの交渉当事者でありますマッカーサーであります。これは、やはりライシャワー発言のころの八一年五月十六日の毎日新聞のインタビューです。これは実際にインタビューした古森さんが後で詳しく全記録も発表をしておりますが、このマッカーサー氏もこういうふうに言っています。 古森さんが「岸元首相や藤山元外相や当時の外務省の幹部の記憶では、日米交渉で通過の話は出なかった、というふうに伝えられている。」マッカーサー氏は「私は通過の問題が言及されたという記憶はない。」ということをはっきり言っておるわけです。この点について外務省はどう思いますか。
○北村政府委員 先ほど来御答弁いたしておりますように、当時そういう交渉に関係を持たれた人であろうとも、もう既に私人の立場に立っておられる方が記憶に基づいて発言されておることについて、政府としては一々その内容をチェックするということはいたしておりません。
○松本分科員 ライシャワー発言のときも、当時宮澤外務大臣でしたが、私人としての発言だからということで、切り抜けられたと言ったら悪いのですが、やられたわけです。しかし、マッカーサー氏や藤山氏の場合は、私人と言っても交渉の当事者ですからね。私は、ライシャワー氏の場合とは全然違うと思うのです。公式、非公式を通じまして、このマッカーサー発言についてアメリカ政府としては何も発言していないのかどうか、伺いたいと思います。
○北村政府委員 私どもの今持っております資料その他から見まして、アメリカ政府が何かそれについて発言したということは承知しておりません。
○松本分科員 そうしますと、これは一般人になっているから無視したというか、それとも本人の言ったことだから正しいのだということか、どっちかだと思うのですけれども、そういうようなことについて、日本政府はアメリカ政府にこのマッカーサー発言についてただしたことがありますか。
○北村政府委員 マッカーサー発言についてアメリカ政府にただしたことはございません。
○松本分科員 なぜしないのですか。
○北村政府委員 私どもは、先ほどから繰り返し御答弁申し上げておりますように、核の持ち込みには寄港、通過が含まれる、それがマッカーサー口頭了解から出てくる我々の解釈であり、かつ、この問題について日米間には何ら了解の違いはないということでございまして、この点につきまして特に私人の方の記憶に基づく発言を政府に対して確認する、あるいは照会するということはいたさないわけでございます。
○松本分科員 結局、日本政府はもう解釈上明らかだということで、事実関係については何ら関心がないということのようですね。そういうふうに考えざるを得ません。アメリカにこの問題についての記録が、日本側はないということを先ほど伺いましたが、アメリカ側にあるかどうかについてただしたことがあるかどうか、伺いたいと思います。
○北村政府委員 その点、ただしたことはございません。
○松本分科員 アメリカ側にこのマッカーサー発言を覆すような反対の証拠があるということがあるかどうか、これは御存じでしょうか。
○北村政府委員 別にマッカーサー発言を否定するとかいうような文章があるとかということは聞いておりません。
○松本分科員 そうすると、結局藤山氏の発言についても、マッカーサー発言についても、あるいは岸さんの発言についても、真偽も確かめない、それから、それについての反対証拠があるということもない、しかし文脈上明らかだということだけで日本政府は対応しているということですね。私はそうじゃなくて、やはり事実をちゃんと突きとめ、相手にも確かめて明確にするという必要が、もし過去のことがわからなければ今明確にするという必要があるんだというふうに思います。 そういう点でちょっと角度を変えて伺いたいと思います。 藤山・マッカーサー口頭了解、これについてでありますが、これはちょっと歴史的に振り返ってみますと、もちろん六〇年の安保条約の改定のときにやったわけですが、これがあるということは、昭和三十九年、一九六四年の十月七日に、藤山・マッカーサー口頭了解があるということが国会で、当時は藤崎条約局長だったのですが、明らかにされて、それから一九六八年、昭和四十三年一月十八日に、佐藤首相がこの口頭了解の文書化をするということを約束をされた。それから、その年の四月二十五日に藤山・マッカーサー口頭了解が国会に提出をされている。それから大分たった一九七五年、昭和五十年三月二十六日に、この問題についてはアメリカ側は異存なしということであったということが明らかになった。これは、宮澤外務大臣がホッドソン大使を呼んで、そしてシュースミス臨時代理大使が山崎アメリカ局長にそういう返事をしてきた、こういう経過、私が調べた範囲ではそういうことでございますが、間違いございませんか。
○北村政府委員 今、委員のおっしゃったそういう経過であると承知いたしております。
○松本分科員 これは条約の性質を持っているということは、五十六年五月二十九日に土井委員に対して伊達条約局長が答えていますが、そうでしょうね。
○小和田政府委員 両政府間の合意という意味では、そうでございます。
○松本分科員 そういたしますと、アメリカ側の解釈と日本側の解釈がやはり一致していなければならないし、その点については、その解釈を交換すべきものではないかと私は思うのですけれども、そうではないでしょうか。
○小和田政府委員 国際約束の解釈につきましては、当事者間の合意でございますから、当事者間に実質的な合意が存在していることが必要でございますけれども、その解釈について相手方との間で一々、一つ一つの字句について確認をして取りつけなければならないというようなことは必ずしもないと思います。先ほど北米局長から答弁申し上げましたように、この内容につきましては、その意味するところは文脈上非常に明らかであるというふうに考えております。
○松本分科員 一九七五年、昭和五十年にアメリカ側が、異存なしということを回答してきたということになりますと、アメリカ側もこの問題についての解釈についての文章とかメモとかそういうものがあるはずではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○北村政府委員 そういうものがあるかどうかについては、私どもは承知しておりません。
○松本分科員 一九七五年、昭和五十年にアメリカ側が確認したわけですが、アメリカ側の五十年までの解釈はどうだったのでしょうか。
○小和田政府委員 昭和四十九年ないし五十年の当時に国会で政府委員が御説明していると思いますが、我が方の考え方につきましては、従来から国会においてたびたび政府委員あるいは大臣から御説明しているところでございます。それでアメリカ側は、その我が方の国会における政府の立場というものを十分に承知してきているわけでございますので、私どもといたしましては、アメリカがこの点について、今御指摘の時点以前の段階において別な考え方をしていたというふうには考えておりません。
○松本分科員 この点でも、やはり根拠といいますのはどうもないようですね。文脈上ということだけに尽きるようですが、もう一つ角度を変えてお聞きしたいと思います。 核積載艦の領海通過問題についてでありますが、これも一九六八年、昭和四十三年に三木外務大臣が領海条約加入のときに、核積載艦の領海通過、これも「無害通航とは考えない」ということを言って、そしてさらに一九七四年、昭和四十九年に再確認の政府の統一見解が出ました。これは「領海を通過する核積載艦は、昭和三十五年以来事前協議の対象とならなかった。しかし、昭和四十三年の統一見解以降、政策の変更に伴い、領海を通過する核積載艦は無害とは認めず、事前協議の対象とすることになった。」こういうことが確認をされ、そしてその点についてアメリカ側も確認をしたということが、ちょっとたちまして、一九八一年、昭和五十六年になってから、これは確認をしたんだということが伊達条約局長によって答弁をされました。この経過はそのとおりですか。
○小和田政府委員 昭和四十二年の佐藤内閣におきます三木外務大臣の答弁につきましては、今御指摘のあったような経過をたどった経緯がございます。ただ、一言補足して、誤解がないように申し上げたいと思いますが、先ほど私が御説明いたしましたように、寄港につきましては、新しい安保条約が審議されました一九六〇年、昭和三十五年の国会において、既に当時の防衛庁長官あるいは外務省の条約局長が、これは事前協議の対象であるということを御答弁申し上げているわけでございます。 他方、同時に、当時の条約局長の答弁が一つの典型的な例でございますけれども、一般国際法上無害通航権というものがあって、領海を通過する無害通航権を行使する艦船についてはこれは別でございます、これは一般国際法上の制度としてそうでございますというふうな答弁があるわけでございます。それが昭和四十三年までそのまま推移いたしまして、昭和四十三年に我が国が一九五八年のジュネーブ領海条約に入ることになって、国会の承認を求めるために御審議願った過程におきまして、政府として、核常備艦についてはその領海通過は我が国としては無害通航としては認めない、こういう決定がなされたわけでございます。その結果として、我が国が無害通航と認めないような艦船の領海内における存在というものは、一般国際法上の無害通航権を享受し得ないことになりますので、したがってこれは事前協議の対象になってくる、こういう考え方をそのときにとりまして、それが昭和四十九年の国会において問題になったときに政府が御説明した考え方でございます。つまり、もう一度言い直しますと、事前協議に対する日本の基本的な考え方は変わっておらないけれども、一般国際法上いかなる範囲の船が無害通航権を認められるべきかということにつきまして、昭和四十三年に我が国が領海条約に加入いたします際に我が国の考え方をそこで確定した、その結果として四十九年の政府答弁が出てきた、こういうことでございます。 なお、最後の御質問の点でございますが、我が国の考え方につきましては、その当時アメリカ側に説明をいたしまして、アメリカ側もその点について特段の異存はなかったというふうに私は承知しております。
○松本分科員 今の話は誤解もせず区別をして聞いているつもりです。 昭和四十三年までは核積載艦が日本の領海を通過したことがあり得るということは、伊達条約局長が五十六年五月二十六日参議院外務委員会で述べておりますが、そう考えでいいですか。
○小和田政府委員 事実関係の問題でございますので、私としては的確な御答弁はいたしかねるわけでございますけれども、それはあったかもしれないしなかったかもしれないということであろうと思います。
○松本分科員 そうしますと、四十二年にとどまらず、四十九年になって初めてアメリカ側が確認をするということになるわけですから、四十九年までも核積載艦が日本の領海を通過していたかもしれないし、通過していないかもしれないが、通過していたこともあり得る、こういうことになるのではありませんか。
○小和田政府委員 先ほども申し上げましたように、事実関係について私が的確な御答弁を申し上げるのはいかがかと思いますけれども、昭和四十三年の領海条約加入に際して行われました政府統一見解というものは、我が国が全世界に向かって我が国の無害通航に関する考え方、国際法上の立場というものを明らかにした宣言でございます。したがって、その時点以降、我が国の無害通航に関する考え方は、各国がそういうものとして承知をし、かつ尊重すべきものであるというふうに考えられると思います。
○松本分科員 そうすると、四十九年の政府統一見解はアメリカ側に確認させたということはどういう意味を持つのでしょうか。アメリカ側も合意をしたということになるのじゃないですか。
○小和田政府委員 昭和四十九年の議論の際に、昭和四十三年の政府統一見解につきまして御質問がございまして、そのことにつきましてこれを論理的に整理すればこういうことになるという政府の考え方を、改めて昭和四十九年に政府統一見解という形で当時の宮澤外務大臣からお示しをしたわけでございます。そのことをアメリカ側に対して念のために説明したということでございますので、これは四十三年以降の日本政府の立場を四十九年に改めてアメリカ側に対して示した、こういう趣旨であろうと思います。
○松本分科員 この確認は条約というような性質を持ちませんか。
○小和田政府委員 まず、何が無害通航に当たるかということの判断は、第一義的に沿岸国が決定すべき問題でございます。で、四十三年の領海条約に我が国が加入するに当たりまして、そういう立場を我が国としては内外に宣明したわけでございます。したがいまして、この我が国の宣明した立場をアメリカに対して知らせた四十九年当時の我が国のとった措置は、我が国の立場を明確にするという意味で確認的に行ったものでございます。国際的な約束であるというふうには考えておりません。
○松本分科員 ついでにちょっとお聞きしておきますが、この当時の統一見解では、核常備艦というのはポラリスその他の核積載艦ということになっておりますが、これにポセイドンが入るということを五十年六月十八日に衆議院外務委員会で丸山政府委員から答弁が行われました。今何が入るでしょうか。例えばトライデントとかその他……。
○北村政府委員 私も余り兵器の機械的なことについて詳しくは存じませんが、ポラリスがポセイドン、そしてトライデントというふうに発展してきております。そういうことから申し上げれば、そういうような艦船がいわゆる核常備艦、核を積まないでは本来的に意味のない艦艇である、そういうふうに解釈をしております。
○松本分科員 もちろんこれはアメリカもそう考えているのでしょうね。
○北村政府委員 アメリカは、先ほどから御議論になっております核の持ち込みという観点ですべてを判断しておりますから、当然そういうふうに考えておると思います。
○松本分科員 昭和五十年二月四日に、当時の外務大臣が衆議院の予算委員会で、核常備艦のポラリスについての質問の後で、「これは無害航行とは言えないという解釈を今日までとっております。それを演繹いたしますと、核常備艦でありませんでも、核を積み得る艦が仮に核を積んで、公海から公海への途中わが領海を一時通る、この場合にも、やはりこれは無害航行とは言えない、こういうふうに考えておるわけで、それが先般申し上げました統一見解です」こういうふうに言っておるわけですが、核常備艦でなくても核を積み得る船が核を積んで通るという場合には、これは事前協議の対象になる、これは当然のことであろうと思いますが、改めて伺っておきます。
○小和田政府委員 四十九年の統一見解は、松本委員御承知のとおり「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦によるわが領海の通航」というふうに言っておりますので、四十九年の統一見解が対象にしておりますのは、そこに書かれていることでございます。ただし、その考え方の背後にありますのは、核を我が国の領海に持ち込むということが事前協議の対象になる、あるいは無害通航と認めない、こういうことでありますので、実際に核を積んだ船が通るということになれば、御指摘のようなことになろうと思います。
○松本分科員 これはアメリカは確認していましょうか。
○北村政府委員 これは先ほどから条約局長から答弁がありますように、我が方の見解は周知徹底されております。
○松本分科員 それでは、寄港、通過問題にまた戻って伺いたい、こういうふうに思います。 昨年の二月五日の衆議院予算委員会で、我が党の不破議員がこの問題で質問いたしました。安倍外務大臣、当時も外務大臣でおられましたけれども、これは国会でいろいろ答弁をしておるので、それをアメリカ側も十分承知しているところだと思うという答弁をされましたけれども、今でもそういうお考えでございますか。
○安倍国務大臣 そのとおりでございます。
○松本分科員 結局、国会で答弁をしておることだからアメリカ側もその解釈を知っているはずだということは、ずっと政府が述べていることでありますけれども、改めて確認をいたしますが、この問題についてはアメリカとの合意はしていない、解釈上の合意はしていない、国会で答弁をしているから知っているはずだというだけなんだということかどうか、改めてこの際はっきりお答えをいただきたいと思います。
○小和田政府委員 解釈上の合意をしていないという松本委員の御指摘あるいは御質問の意味が的確につかみかねますけれども、この問題につきまして、領海通過あるいは寄港の問題そのものを取り上げて日米間の国際約束の対象にしたかという御質問であるならば、そういうことはいたしておりません。 他方、この問題について日米間に意思の一致、合意があるかという御質問でありますならば、先ほど来るる申し上げておりますとおり、我が方の立場というものはアメリカ側に十分通じており、アメリカ側がそのことについて何ら異論を唱えず、我が国のとっておるこの政策というものについて重ねて十分な理解を示してきておる、こういうことにかんがみまして、日米間に意思の一致が存在しているということは、先ほど来申し上げているとおりでございます。
○松本分科員 意思の一致は存在しているというのだけれども、結局その根拠は、国会で言っている、それをアメリカ側は知っているはずだということ以外はないんですね、説明は。もしほかにやったというならば、それはここで言ってほしいのです。それはないのでしょう。特にそういうことをしたことはないということですね。
○北村政府委員 特にそういうことをいたしたことはございません。
○松本分科員 解釈の問題だから、一々合意して条約の性質を持つようなことにする必要はないという話でありましたけれども、無害通航についても確認をさせたわけでしょう、先ほど言いましたように。それは条約の性質までは持たないけれども、念のために確認をさせたというんですね。領海を通過をして、ちょっとかすめていくだけでも確認をさせているわけですよ。そうしたら、寄港するというようなことならもっと大きい問題なんだから、実はそれを、日本側はこういうふうに確認をしておるのだ、これを確認してくれるかということで、なぜアメリカ側にやらないのですか。それをなぜやらないのかというのは、これは私だけでなくて、だれに聞いてもわからないと思うんですよ。やってないなら、なぜやらないかという理由を説明してほしいのです。
○小和田政府委員 松本委員のせっかくの御質問でございますが、私が申し上げたことが若干舌足らずで誤解を生んでいるといけませんので、一言念のためにつけ加えたいと思いますが、昭和四十三年の我が国の領海条約加入に際しまして、我が国は無害通航、一般国際法上の無害通航の制度というものについての我が国の考え方を改めて確定し、そこで一つの新しい考え方を打ち出したわけでございます。これは先ほども申し上げましたように、沿岸国が第一義的に、自分にとって何が無害通航であるかということを決定する判断の権限を持っておりますから、我が国として国際法上当然なし得ることをやったわけではございますけれども、少なくともそれまで明確になっていなかった、あるいは国会答弁ではそれとは若干違うようなニュアンスの答弁が行われていた、そういう問題について、我が国として一つの新しい考え方をここで確定したということでございますので、そのことを通知する、知らせるということは、特におかしい、あるいは特別なことをやったということではなくて、そういう立場を明確にしておくことが必要であると考えられたからやったわけでございます。 したがいまして、先ほど来申し上げておりますような藤山・マッカーサー口頭了解あるいは岸・ハーター交換公文の解釈に関して、日米間で意思の一致を見てでき上がった国際約束というものの内容について、この内容はどうであるかこうであるかということについて改めて日米間で合意をしなければならないかどうかという問題と、先ほど申し上げました無害通航についての我が方が四十三年に打ち出しました考え方を連絡するという問題とは、おのずから別な問題であろう。新しい考え方を打ち出した段階においてこれをアメリカ側に連絡するということは、当時においては極めて妥当な措置であったであろうというふうに考えております。
○松本分科員 必要ないんだ、こういう話ですね。だけれども、それをやったらなぜ不都合なのかということについての説明は全くないんですよ。やる必要はないんだということは何遍も聞きましたけれども、じゃ国民がこれだけ疑惑を持っている、国会でこれだけ問題になっているということをはっきりと伝えて、合意をするということがなぜできないのでしょうか。それをやったら外交上の何らかの不都合が生ずるのでしょうか。これは広く一般に言われている、灰色の領域を残しておかなければいかぬのだ、アメリカ側と日本側との解釈が違っていることに妙味があるんだという説が非常に説得力を持ってくるわけですよ。なぜいけないのか、そこの説明がありますか。あれば聞きましょう。なければ余計なことを言わなくてもいいですが、あれば聞きましょう。ありますか、ありませんか。
○北村政府委員 日米間において藤山・マッカーサー口頭了解の内容については何ら了解の違いがないということは、これは長年来政府が国会でも御説明し、その国会での審議というものはアメリカも十分承知しておるところでございまして、そういうことから私どもはこれを改めて確認するという必要を認めないわけでございます。
○松本分科員 何回聞いても、必要は認めないという答弁だけしか返ってこないということを確認する以外にないと思います。 ところで、この国会、ニュージャージーの寄港問題で社会党の田邊さんも質問をされ、私たちの党の不破議員も質問をいたしました。中曽根総理は「非核であるということで我々は入港を認める、そういうことにいたしたいと思います。」ということを田邊さんに答え、不破議員はこの問題をさらに詰めまして、「従来は、非核三原則があり、事前協議があるのだから、核を持ってきているときはアメリカから言ってくるだろうというのが政府の答弁でしたね。しかし、ニュージャージーに関しては、日本側から、寄港問題が問題になったらそれが非核であることをアメリカに問い合わせて確認した上で対処する、ニュージャージーに関してはそう理解していいんですね。」と中曽根総理に確かめて、中曽根総理は「そうです。」と言い、不破議員は、これは公式の発言として確認をしますということで次へ移っているわけです。ところが、安倍外務大臣は九日の予算委員会で、この確認をするということは、駐日アメリカ大使を呼んで日本の非核三原則を改めて強調して、安保条約関連取り決め及び事前協議制度について念押しをしたいということなんだという趣旨のことを答弁されたということであります。これは明らかに総理の答弁と食い違うのじゃないかと私は思いますが、この答弁は総理と打ち合わせ済みのことでありますかどうか、伺いたいと思います。
○安倍国務大臣 二月十五日の衆議院予算委員会における不破議員に対する総理の答弁ですが、かかる政府の一貫した考え方を、いわゆる核持ち込みの事前協議が行われない以上は米国による核持ち込みがないということについては寸毫も疑いがないという政府の一貫した考え方を明確にした上で、なお最初のトマホーク積載艦であるニュージャージーの本邦寄港については、既にこれまで種々国内的に議論が行われていることにもかんがみ、念には念を入れるの観点から、かつ全くの特例として、仮に将来同艦が我が国に寄港する場合には、その時点において米側に対し、改めて我が国の関心を伝え、我が国としては、当該寄港に当たり、安保条約及びその関連取り決めに従って厳格に対処する、すなわち核持ち込みの事前協議が行われた場合には、政府としては非核三原則に従って対処する、この考え方を明確にしたいとの趣旨を述べたもの、こういうふうに我々は理解しております。
○松本分科員 総理と打ち合わせ済みの御答弁であったかどうかということをお伺いしたいのであります。今の答弁も、総理とこの点ではお打ち合わせ済みのことでありますか。
○安倍国務大臣 私は、総理の答弁は大体こういうことを言っているのだろう、そういうふうに判断をしております。そういうもとで私は先般の答弁をいたしたわけです。
○松本分科員 そうすると、これはもう明らかに後退の答弁、総理の答弁とは食い違っておるというふうに私は思います。これは、総理が言ったとおり、確認をすべきであるというふうに思いますが、きょうの議論を私聞いておりまして、やはり日本の国民はラロック証言、ライシャワー発言などで疑問に思っていることは納得しないと思うのですね、外務大臣の答弁を聞いても、北米局長や条約局長の答弁を聞いても。それで、その結果が出ているわけです。八二年の十二月放映のNHKの世論調査では、寄港や領海通過は核を持ったままやっていると思うというのが四九%、陸揚げ、貯蔵までやっていると思っている人が三〇%、計七九%の人がそういうふうに思っているということですよ。あなた方の答弁は全く成功していないのですよ。先ほど私が言ったようなことをなぜ確認しないのだということについては、必要がない、必要がないと言って、それをやったら都合が悪いんだということは一言も言えないのです。 今度は北米局長から聞いてみましょうか。あなたはこの世論調査の結果についてどうお考えですか。
○北村政府委員 世論調査の結果というのは、私どもからコメントをするものではないと思います。それは私どもが再三申しておりますように、核の持ち込みについての日米間の事前協議を軸とする仕組みというものは、これはやはりきちっと守られておるということを了解しておられる人もたくさんおられると私は信じております。
○松本分科員 そんなにたくさんいないのですよ。外務大臣、政治家としてどうお考えになりますか。
○安倍国務大臣 私は多くの国民はそれとは全く逆に、日米間の信頼関係、条約というものは守られているのだ、そして政府が言っているように、核を積載した艦船は日本の港には入っていない、日米間の約束をちゃんと守っておるのだ、こういうふうに見ておるのではないか、そういうふうに思います。
○松本分科員 非常に説得力がありませんが、もうちょっと聞いておきます。 これはもう当然のことですが、領空を核積載の航空機が飛ぶのは、もちろん事前協議の対象になるわけでしょうね、これは確かめるまでもありませんが。
○北村政府委員 そのとおりでございます。
○松本分科員 それで伺いたいのはトマホークの問題です。トマホークは広島型原爆の二十倍の水爆弾頭をつける。この核弾頭つきのトマホークが日本列島の上を飛ぶ場合、これはどうなりますか、事前協議の対象になりますかどうですか。
○北村政府委員 これはどういう事態にそういうことになるのか、仮定の問題でございますけれども、全く一般的、理論的に申せば、そういう核を積んだミサイルが我が上空を飛ぶということは、核の持ち込みになろうと思います。
○松本分科員 そうしますと、核弾頭つきのトマホークは、事前協議なしでは日本列島の北側からでないと発射できないということになりますね、理論的には。要するに日本海側からでなければ撃てない。
○北村政府委員 先ほども申し上げましたけれども、こういう問題につきまして、仮定の問題について、仮定に立った上での議論を進めるということは、いろいろ将来にも誤解を催すことにもなりかねませんので、その点は余り仮定の上に立った議論をすることは差し控えさせていただきたいと思います。
○松本分科員 これは、きょう一時間かけて議論をいたしましたけれども、私はやはり政府は国民の疑惑にこたえて、アメリカに対して、寄港、通過の問題をアメリカがどう考えているかということについて確認をすべきだと思います。そうでない限り、ますます政府の見解についての不信は広がります。これはむしろきょう私が質問をいたしまして、玉虫色で灰色の領域を残しておくのがいいのだということなんだということをますます確信をするということになったというふうに思います。 今トマホークが配備をされるということになってきまして、日本が核戦争の戦場になるという危険性は、今までよりもはるかにふえてきておる。この点について私は、政府が非核三原則を完全に守るという立場を厳格に守るべきだ、そのためにアメリカ政府に対してこのことをはっきり要求し確認すべきであるということを要求して、私の質問を終わりたいというふうに思います。
○相沢主査 これにて松本善明君の質疑は終了いたしました。 以上をもちまして、外務省所管についての質疑は終了いたしました。 ―――――――――――――
○相沢主査 次に、法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。住法務大臣。
○住国務大臣 昭和五十九年度法務省所管予定経費要求の内容につきまして、大要を御説明申し上げます。 昭和五十九年度の予定経費要求額は三千七百四十七億八千二百九十三万四千円であります。前年度予算額三千五百九十四億六千三百六十一万円と比較しますと、百五十三億一千九百三十二万四千円の増額となっております。 さて、予定経費の増減について、内容を大別して御説明しますと、第一に、人件費関係は、百六十七億八千五百八十九万七千円の増額となっております。これは、昇給等の原資として職員基本給が増額されたほか、昭和六十年三月三十一日より施行される定年制への移行に伴う退職手当の増額分が主なものでありますが、そのほかに、法務事務官、検察事務官等の新規増員四百十八人及び部門間配置転換による法務事務官等の振りかえ増員三十二人に要する人件費が含まれております。 ここで、増員の内容を申し上げますと、一、特殊事件、財政経済事件、公安労働事件、暴力事件、公害事件等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため、検察事務官九十八人、二、登記事件、国の利害に関係のある争訟事件及び人権侵犯事件に対処するため、法務事務官百七十二人、三、刑務所における保安体制及び医療体制の充実を図るため、看守部長二十人、看守九十四人、看護婦(士)五人、四、少年院及び少年鑑別所における処遇体制の充実を図るため、少年院教官十人、少年鑑別所教官十三人、五、保護観察活動の充実を図るため、保護観察官二十一人、六、出入国審査及び在留資格審査業務に対処するため、入国審査官十七人となっております。 他方、昭和五十六年九月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第六次)の実施について」による昭和五十九年度定員削減分として四百四十四人、その他の削減分として八人、合計四百五十二人が減員されることとなりますので、差し引き二人の定員減となるのであります。 第二に、物件費関係は、二千九百二万二千円の減額となっております。 これは、昨年七月に施行された参議院議員通常選挙の取り締まり経費等選挙取り締まり経費が前年度限りの経費として減額されたほか、刑務作業の運営方法の変更に伴う原材料費の減、供託法の改正に伴う供託金利子の減額等が計上された反面、積算単価の是正、事務の合理化・能率化を図るため事務機器等の整備充実に伴う経費の増額等が図られたことによるものであります。 次に、主なる事項の経費について概略を御説明いたしますと、一、法務局、地方法務局において登記、供託、戸籍等の事務を処理するために要する経費として三十七億三千四百七十二万四千円、二、検察庁において刑事事件を処理する等検察活動に要する経費として二十八億四千二百九十八万五千円、三、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の被収容者の衣食、医療、教育、作業等に要する経費として二百三十三億六百四十五万五千円、四、保護観察に付された少年等を更生させるための補導援護に要する経費として三十七億九千三百三十一万七千円、五、出入国の審査、在日外国人の在留資格審査、難民の認定等及び不法入国者等の護送、収容、送還等に要する経費として七億一千二百八十八万九千円、外国人登録法に基づく在日外国人の登録等の事務を処理するために要する経費として十一億六千七百四十四万九千円、合計十八億八千三十三万八千円、六、公安調査庁における破壊活動防止のための調査活動に要する経費として十八億二千八百万四千円が計上されております。 第三に、施設費関係といたしまして、法務局、検察庁等の庁舎及び刑務所、少年院等の収容施設の新営及び整備に要する経費として九十二億九千九百十五万四千円が計上されております。 なお、この際、昭和五十九年一月二十五日の閣議決定「行政改革に関する当面の実施方針について」に基づく昭和五十九年度における法務省関係の改革案について概要を説明いたしますと、第一に、内部部局の再編成といたしまして、公安審査委員会事務局について、業務の実態等にかんがみ、その内部組織を簡素化するとともに、定員四人を縮減することとしております。第二に、附属機関及び地方支分部局の整理合理化といたしましては、少年院及び婦人補導院について、業務を停止している少年院一カ所、婦人補導院二カ所を廃止することとしております。 次に、矯正管区及び地方更生保護委員会について、内部組織を簡素化することとし、十六課の整理統合及び定員二十人の縮減をすることとしております。 また、地方公安調査局について、これを廃止し、現地的事務処理機関として公安調査事務所を配置するとともに、事務の整理合理化を図り、定員について、公安調査局及び公安調査事務所を通じ、二十五人を縮減することとしております。 さらに、法務局及び地方法務局の出張所について七十二カ所、地方入国管理局の出張所について一カ所を整理統合することとしております。 最後に、当省主管歳入予算について一言御説明申し上げます。 昭和五十九年度法務省主管歳入予算額は八百九一億七千三十一万八千円でありまして、前年度予算額七百二十六億六千八百五十八万九千円と比較しますと、八十三億百七十二万九千円の増額となっております。 以上、法務省関係昭和五十九年度予定経費要求の内容について、その概要を御説明申し上げました。 よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。
○相沢主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。 ―――――――――――――
○相沢主査 この際、分科員各位に申し上げます。 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。 なお、政府当局におかれましても、質疑時間は限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
○土井分科員 きょうは私は、国籍法の一部改正に向けての作業をお進めになっていらっしゃる法務省に、その中身についてお尋ねをしたいと思います。 婦人の差別撤廃条約批准に向けて、国内法整備の中で、今回国籍法の一部を改正する法律案要綱が発表されたわけです。まだ法律案そのものはこれからでありまして、私どもはまだそれを知る由もないわけですが、この法律案要綱に従って考えてまいりますと、父母両系主義を採用したことで、「出生による国籍の取得」「子は、出生の時に母が日本国民であるときも、日本国民とするものとする。」とございますから、改正後生まれてくる子供は、このことによって父または母が日本国民であることによって日本国籍を取得できるということになります。これは大変な前進だと言わざるを得ないし、当然のことだと私は思うのです。ところが、改正前に生まれた子供について考えてみますと、これは多くの問題を残した改正案要綱ではないかと思うのです。 まずお尋ねをいたしたいのですが、今回の経過措置の中身を見ますと、「改正法の施行の日に二十歳に達していない外国人」で云々と、こうなるわけですが、二十歳ということで切った理由はどこにございますか。
○枇杷田政府委員 外国人で既に成人に達しているような方は、外国人としてそれぞれ社会的な基盤を設けて生活をしておられるわけでございます。場合によっては兵役等の問題が生じているケースがございます。したがいまして、一律に単純な意思表示だけで日本の国籍を取得させるということは適当ではないのではないか。したがいまして、日本の国籍を取得したいとお考えの方は帰化の申請をしていただければ、個別に審査をした上で日本の国籍を付与する、そういうことの方が適切であろうというのが法制審議会の結論であると承知しております。
○土井分科員 外国も同じようなぐあいになるのですか。外国は、この婦人の差別撤廃条約を批准するために国籍法を改正した国もありますし、それ以前に国籍法を改正した国もございます。ヨーロッパあたりでも二十歳ということで切るような場合の物の考え方は、そういう考え方ですか。私はそうは承知していないのですが。
○枇杷田政府委員 諸外国でどのような考え方をとったかということは必ずしも明らかではございませんけれども、例を見ますと、経過措置を設けました国も二十年というのが最高のようでございます。十年というのもございますし、それからまた経過措置を全く設けていないという国もあるように聞いております。
○土井分科員 ただ経過措置を設けなくて、その国籍法を改正したことがいずれまでよみがえって行われるかという問題は、むしろ西ドイツの場合なんかは憲法施行時ということになっているんじゃないですか。正確に言うと、西ドイツは基本法ですね、施行時ということになっているんじゃないですか。これはやはり、西ドイツの国籍法改正のときの非常に大きな一つのメルクマールだと私は思って見ているわけですが、いかがです。
○枇杷田政府委員 西ドイツにつきましては、今おっしゃったような法制をとっているように承知しております。
○土井分科員 その西ドイツの基本法の場合にも、日本国憲法十四条に言うのと同じように、性別によって差別されてはならないということが法規定としてあったために、これは問題になって、向こうの憲法裁判所で憲法違反であるという判決がそのときの国籍法に対して出されたという経過があるということはよくわかっているわけですが、そういう経過を踏んまえて憲法施行時ということになったわけですね。日本国の場合も、同じく憲法十四条を見ますと、性別によって差別されてはならないという規定がございますから、西ドイツの国情と照らし合わせた場合に、その点においては隔たりはないと理屈の上で言わなければならないのですが、いかがお考えになりますか。
○枇杷田政府委員 私どもは、日本国憲法との関係におきましては、現行の父系血統主義が憲法違反になるものというふうには考えておりません。その点につきましては、法制審議会においても一つの問題点として検討されたわけでございますけれども、憲法に真正面から違反するものではないという考え方を皆さんお持ちになりまして、それを前提として、国籍法独自の考え方でどのように経過措置を定めるのが適当かという観点で結論が出たものでございます。
○土井分科員 これはその論争をやっておりますとそれだけで時間が非常に経過するわけですが、従来、法務省側が憲法十四条違反に当たらないとおっしゃってこられた論法というのは非常に説得性に欠けていると私は思うのです。それならば、なぜ十四条違反でないか。その点に対するいろいろおっしゃってこられた中身というのが、私たちからするとどうも納得できない。どうも説得力に欠けているということをまず申し上げねばならないのです。ぶんぶんと言って首を振っていらっしゃいますけれども、本当にそのとおりなんです。 そういうことを踏まえて、ひとつ具体的にお尋ねをしましょう。 これは、今までに私は、外務委員会もそうでございます、法務委員会もそうでございます、きょうのように予算の分科会でもそうでございますが、取り上げて問題にしてきた問題点なんです。御承知だと思いますが、沖縄に無国籍の人たちがいるのです。この無国籍の人たちが今回のような経過措置をとられますとどういうことになるかというのをお考えになっただろうと思いますが、これは中にはちょっと困る話が出てまいりますよ。 理屈を言わないで具体的ケースについて申し上げたいと思います。沖縄県民のある無国籍者の女性が、国籍法の中間試案が昨年二月に発表されたときに、新聞報道をごらんになって、沖縄の国際福祉相談所を訪れられたわけです。そこで、改正によると、複雑な帰化手続をしなくても簡単な届け出で日本国籍が取得できると書いてあったから、それに対して大変期待をかけて、やっと私は日本国籍が取得できる、届け出だけで今回は日本国籍が取得できると大変期待を抱き、望みを抱いてそこを訪ねられたわけですが、しかし今回のこの法律案要綱を見ますと、改正法施行のときに二十歳未満でないとそういうことにはならないのですね。この訪ねられた沖縄の女性は当時十九歳なんです。したがいまして、一年たってもう二十歳を経過してから改正法は施行されることになるわけですから、届け出だけで国籍が取得できるというその特典は適用され得ないわけです。既に成人になってしまった人に対しては一律にこれが言えるのじゃないですか。 今まで幾たびとなくこの国籍のない人たちに対してどういう取り扱いをされますかということを言ってきたら、帰化手続でやってください。帰化手続といったって煩雑ですよ、大変煩雑な手続が必要じゃありませんかと言ったら、沖縄県の場合はやはり事情がある、したがってそれに対して簡易帰化にして考えてみたい。さらに進んで、これは便宜的な表現だと思いますが、超簡易帰化なんという表現までそのためにとられるような帰化手続についてまで考えを進めてこられたようでありますけれども、それでもなおかつ帰化手続が非常に複雑で煩雑でできない人たちというのが成人した人たちの中に多いというのが現実なんですよ。この方々はどうなります。
○枇杷田政府委員 いわゆる沖縄の無国籍児の方々の実態は、完全には承知しておりませんけれども、外国人登録等で把握している限りにおきましては、来年の一月一日現在で計算いたしますと、その母親が日本人であるという無国籍児の方は大体二十一名ぐらいになるかと思います。そのうちで、その時点で未成年の方は二十人で、成人を超えられる方が一人おられるのではないかというふうに考えております。まだほかにもおられないというわけではありませんけれども、まあその程度というふうに考えております。したがいまして、数の上から申しますと、この経過措置によって大半の方は日本の国籍が取得できることになるわけでございます。 なお、若干の方は、この経過措置によっての国籍取得はできなくなることになるわけでございますが、母系による国籍取得の関係は沖縄ばかりではございません。日本におられる方の中にも、あるいは外国に住んでおられる方の中にもおられるわけでございますが、法律というと、ある程度どこかの線で引かなければならないということになりますと、ある程度その差は、手続が変わってくるということは避けられないことであろうかと思います。 ただいまお話ございましたように、沖縄での無国籍児の方々は、いろいろな経過の方がおられますけれども、戦中戦後の特殊な事情ということがございますので、そういう事情も考慮いたしまして、先ほどお話ございました、言葉としては適切であるかどうか知りませんけれども、超簡易帰化のようなやり方で現在までも帰化を取り扱っておりまして、現在まで十五人の方が帰化申請をされまして、いずれも、一人残らず帰化の許可になっておる次第でございます。したがいまして、新法ができた後になりましても、成人に達しておられた方で日本の国籍を取得したい方があれば、法務局の方でも十分御相談に乗って、そんなに厄介な手間がかからないような形で日本の国籍を取得する道を十分に考えてまいりたいと思っておる次第でございます。
○土井分科員 大臣、毎回こういう御答弁なんです。こういう御答弁であって、申請された人はすべて帰化が済んでしまっているがごとくに言われるのですが、向こうの方では、法務局の窓口ではなくて、国際福祉相談所というのがございまして、そこに相談に来られる方が多いのです。いまだに国籍を取得することができない。帰化申請が非常に複雑である、煩雑である、難しい、どうしたらいいかという悩みの相談というのは、法務局の窓口に行かないで福祉相談所の方に来られるというケースがあるのです。 今、事もなげに一人くらいのものだとか、二人くらいのものだ、こうおっしゃいますけれども、事はもっともっと深刻なのではないでしょうか。私どもが掌握している数は、福祉相談所へ何人ぐらいでしょうと電話をかけて聞いてみたり、実情はどうでしょうというのを尋ねてみたりいたしますけれども、人数はそんなどころじゃないですよ。そして、帰化申請をしてもこれは難しいというケースもございます。こういうことについて今回、従来どおりの考え方で臨まれて二十歳でぶち切って、二十歳をオーバーした人に対しては従来と同じ取り扱いでは、救いようがないです。 沖縄の問題は法務大臣御承知のとおりで、特殊な事情を抱えて今日まで来たのです。アメリカの施政権下にあった時代は長いのです。戦後処理ということからいうと、そういう点で沖縄に対してはやはり本土と違う事情というものを考えてやらなければならないこともございますよ。これはその中にはまった話ではないか。だから、今まで法務省はこういう質問をすると、必ずそういう御答弁なんですが、この点の御配慮が、どういう考え方で今回のこういう経過措置がとられたのかということを私はつくづく考えてもう一度聞いているのですが、大臣、これでは浮かばれない人が多いです。どうでしょう、二十歳を過ぎて無国籍者であって、そして帰化申請をするのも以前と同じように難しい。今回は、二十歳以前の人たちに対しては届け出だけで国籍を取得することができる。なぜか、母が日本人だからです。同じ母、日本人であって取り扱いがこのように違う。大臣、どうお考えになりますか。
○住国務大臣 私も沖縄の事情を必ずしも知ってはいないのでございますけれども、今の民事局長から御答弁申し上げたことがそうだとするならば、それも一つの考え方である、こういうように思っているわけでございますが、今の土井先生がおっしゃるような事情がどうか、そしてそういう事情があるとすれば、私はこれは慎重に考えないと、取り扱っていかないといかぬのじゃないだろうか。国際福祉相談所と同時に、私はやはり法務局の方においでいただいて本当に相談していただければそこらあたりの点はもう少し何とかなるのじゃないかなという気もするのでございますけれども、いずれにいたしましても沖縄の特殊事情おっしゃったとおりでございますから、そういう点も十分考えましてこれで対処できるのじゃないかな、こう考えておるわけでございますけれども、なお少し実情その他よく調べまして考えていかなければならぬのじゃないかと思っております。
○土井分科員 それは大臣には実情についてもう少しフォローアップをお願い申し上げねばなりません。 さらに今度は、無国籍ではなくて米国籍を持っているという人たちが母親が日本人であってあるわけなのですね。これは沖縄の場合は特に本土と比べるとそういう可能性は高いわけですが、その二十九歳になったある米国籍を持っている男性は、米国籍を持っているという立場で米国人らしい教育をということで米人学校に通ったわけです。ところが、復帰後沖縄の状況というのが大きく変わりまして、安定した仕事を持つということのためには日本国籍が必要だということが現実の問題として出てまいりました。中には日本国籍を持つことというのを不可欠な条件にしている仕事場も多いことは御承知のとおりです。成人になりまして帰化を申請した、ところが、独立生計要件ということがここに出てまいりますことのために、帰化をするという道に対して非常にこの道を阻んでいるということになります。安定した仕事につかなければ帰化はできない、こういうジレンマの中に立たされまして今日に及んでいるという事情を持っている人もあるわけです。 今回は、この経過措置を見てみますと、中間試案に比べて、母の親権に服していることという条件が以前中間報告にあったのが削除されたのは一つの前進として見なければいけないだろうとは思いますけれども、その適用を二十歳未満の子に限っているわけです。既に成人になっている人に対しては、依然として国籍の問題については以前と同じ取り扱いという格好になるわけですから、この点また米国籍から日本国籍にということを考える沖縄の人にとっては非常に難しいということがありますが、この点どうでございますか。
○枇杷田政府委員 帰化の関係につきましては、原則的に現行法と同じでございますけれども、ただいまお話ございました生計要件につきましては、現在の法律が帰化の申請をされます。その方一人だけを取り上げて独立して生計を営むことができるかどうかというような形での条件になっておりますのを、不合理であろうということから、生計を一にする世帯ごとに生計を営めるかどうかということに要件を変えようというふうに審議会の答申はなっております。したがいまして、通常お仕事をなさって家族全体で生活をしておられる場合には生計条件は満たされることになるでございましょうから、今の問題の一つは解消するのではなかろうかと思っております。
○土井分科員 しかし、簡単な届け出だけで日本国籍を取得できるという人と、非常に煩雑な帰化という手続をとらないと日本国籍が取得できないという人と、同じ日本人を母としている子供の間に、沖縄県人に対してもこういう差がどんどんこれから出てくるのです、二十歳以前と二十歳以後では。こういう取り扱いについて何らかの考え方がもうちょっと整備されないといけないのじゃないか。つまり、今まで日本国籍を取得することを希望したのになぜ帰化ができなかったかというのは、大抵はそれは小学校の入学のときであるとか、高等学校進学のときであるとかいうことを、その時期を考えて帰化を一生懸命になってされたという経過があるケースが多いようですけれども、二十歳を過ぎても帰化をすることができなかったという人たちは、何らか帰化が困難な事情を抱えているということを考えざるを得ないのです。 だから、そういうことを考えてまいりますと、同じ兄弟の中でも、二十歳過ぎて帰化がまだできていないという子供と、二十歳以前で、今回のこの措置に応じて届け出をして、今度は帰化でなくてすなわち日本国籍が取得できるというのと差ができるわけですから、同じ兄弟の上でもいろいろ社会的事情や経済的事情や政治的事情からすると、帰化をして国籍を取得するのと、届け出で国籍を取得するのとでは取り扱いが違うでしょう。大変ここで差が出てくるということも現実の問題とすれば出てくるのです。大臣、沖縄の場合こういう煩雑な事情がございます。いかがです。どうお考えになりますか。
○住国務大臣 一つは、二十歳という区切りで国籍選択制度を区切ったというところから、そういうような問題が出てくるのだろうと思うのでございますが、二十歳以上の方はそれぞれ立派な判断も十分できますし、どの国籍をどうするかということは二十歳以前の方と差を設けてもやむを得ないのじゃないだろうか。そして、今も説明しましたように、帰化手続につきましても、改正と同時に従来よりは簡易な制度で認めよう、こういうことでございますので、そこらあたりをあわせ考えていただいてやっていくのがいいのじゃないだろうか、こういうように判断をいたしておるわけでございます。
○土井分科員 私の言い方が足りなくてその辺の御理解がまだいただけないのかもしれませんが、日本人を母親として生まれた子供という意味では同じなんです。ところが、二十歳を超えても、今まで帰化を希望して帰化申請をしても、いろいろな条件が整わないためにだめだったというそれなりの事情がそれぞれにあるものだから二十歳を超えているわけです。そして、国籍がいまだに取得できないという格好なんです。今回はそういう条件がいかがであろうとも、二十歳未満の人たちに対しては、届け出をすれば日本国籍が取得できるのです。帰化をして初めて国籍が取得できるというのと、本来この人には国籍というものが取得できる条件があるのだというのでは違うでしょう。これは国籍を問題にする場合全然違いますね。今回の取り扱いではその違うということが同じ母親から生まれた子供に対して兄弟の中で出てくるのですよ。大きな目で見ると、沖縄県の中に、二十歳を過ぎている人たちについて無国籍である、外国籍である、しかし母親が日本人である、その取り扱いをどうするかという問題は従来と一つも変わりがない。そういう人たちは今回の改正をどれほど待ち望んでいるかわからないのですよ。しかし、それについては従来どおりという線を一つも出ない、こういう格好になるわけで、したがってどうも二十歳で線を引かれたという根拠が、今おっしゃったような根拠で一律にこういうものを律せられても、その根拠としての意味がない、こうなるのじゃないですか、どうでございますか。
○枇杷田政府委員 経過措置の問題は、まず一番基本的には、新法が施行された後に日本人である母親から生まれた子供が日本国籍を取得し、新法の施行の前日に日本人である母親から生まれた者は日本国籍を取得しないということでは余りにも違いが多過ぎるのじゃないか、したがってある程度経過措置的にさかのぼって新法のような考え方を及ぼすのが適当であろうというのが大体経過措置の考え方でございます。そういう点から施行日というものをどこまでさかのぼらしたらいいかということが一つ問題になるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、国籍法の考え方から申しますと、一つの国籍が確定するというのはおかしゅうございますけれども、二重国籍等の場合に、確定しないという時期が未成年の間だというふうな考え方も一部ではございます。そういうようなことから二十歳が適当である。それから、先ほど申し上げましたけれども、成人になっておりますと既に日本国籍がない者として、外国人として社会の中でそれぞれ生活が営まれておるわけでございますので、一律に日本国籍の取得の道を認めるというのは少し問題ではないかというふうなことを考え合わせて、二十歳、未成年ということを一つの基準としてとったということでございます。
○土井分科員 聞けば聞くほど二十歳ということで線を引かれた根拠がどうもいいかげんなもので、適当な時期によみがえって考える、その適当なということをどう考えるかということでいろいろと今のような御説明なんですが、その説明を聞いても、もう一つ沖縄の場合は本当によみがえった意味がないということになるのです。二十歳に達していないか達しているかを考えたということが、沖縄の場合むしろあだになるという点も出てくるのです。 法務大臣、ひとつこの点は再考を求めたいと私は思うのです。つまり、よみがえるのだったらどうして日本国憲法施行のときによみがえらないのか、どうしてそこまでよみがえることができないのですか。二十年に限るということにしないで、憲法施行時までよみがえるという考えがどうして持てないのか。そうなると、今私が問題にしているような物の言い方というのはある程度解決できますよ。しなくて済むのです、私のように言わなくて、と思いますよ。だから、その間の事情をもう少しわかりやすく、時間をとって大臣のところに行って御説明しましょう。これはぜひとも再考をしていただかなければならないなと私自身思います。 時間の方が気にかかりますから、さて、法務局の方に相談に来てもらいたいのに、なぜ国際福祉相談所の方に行かれてもそちらの方に足が遠のくのだろうというふうな思いも込めての御発言が先ほどございました。ちょっとここでお尋ねをしたいのですが、帰化の申請をいたしましたときに日本語の能力をテストされていますか、どうなんですか。
○枇杷田政府委員 一応は日本語の能力をテストいたしております。一般原則としてはテストいたしております。
○土井分科員 それは話せるということですか、書けるということですか、読めるということですか。それ全部ですか。
○枇杷田政府委員 一応その三つにつきましてできるかどうかということは調査はいたしておりますが、その三つが全部できることが帰化の場合の必要要件だというふうな取り扱いは必ずしもいたしておりません。
○土井分科員 それはどういうふうなわけで――話せることは大事でしょうが、読み書きがどうしても必要だという認識なんでしょうか。高見山さんなんかは読み書きできるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 特定な方の点は答弁は御容赦いただきたいと思いますが、先ほどおっしゃったとおり、話ができることが基本だろうと思います。なお、例えば話は若干たどたどしくても読み書きができるということになりますと、またそれも一つの補完の事由にはなるだろうというふうに考えておる次第でございますので、一応全部どの程度できる方かということは調査の対象にいたしております。
○土井分科員 これはいろいろな例がございますけれども、お母さんが日本人でございましても、沖縄の場合は、お父さんの国籍で米国系の学校に通っているという例もございます。また、母親が日本人であり、父親が外国籍、例えばフィリピンの国籍であるために外国系の学校に行って教育を受けたという例もございます。そういう場合は、横文字の読み書きは我々は遠く及ばないですよ。ところが、日本語の読み書きになると少し不如意であるという人たちがあるわけですね。在日韓国人の方々の、特に高年齢の方にもあるのじゃないでしょうか。これは経済的事情とか、その他の社会的事情のために教育を満足に受ける機会がなかったということのために読み書きができないという方もありますね。ところが、沖縄の例なんかを見ますと、帰化申請を提出したときに小学校の三年生くらいのテキストを持ってきて、読みなさい、日本語を書きなさいというテストを必ず受けるのです。それができなければ、あなただめですから、もう一度勉強して申請ができるようにひとつ努力してくださいと言われるのですよ。こういうやり方というのは全国一律なんでしょうか。こういうことをもし全国一律にやっていらっしゃるとするなら、私は大問題だと思うのです。どういうわけでしょうと私は電話で尋ねてみたのです。そうしたら窓口の方では、同化の程度をやはり考えなければなりませんと言われたのです。日本人をお母さんとして生まれてきた子供に対して日本国籍を認めるか認めないかのときの問題ですよ。同化の程度と言われたのです。読み書きができなければだめだ、こうなるのですよ。どうお思いになりますか、大臣、これは現にやっているのです。
○枇杷田政府委員 法律上も日本人になるという場合には、日本人としての最低生活が維持できる程度の日本語ができるということが望ましいわけでございまして、全国的に小学校三年生を基準にしているかどうかは知りませんけれども、それは一律にはいってないと思いますが、ある程度のものができるかどうかは先ほど申し上げましたように調査はいたしております。しかし、先ほど申し上げましたように、必ずしもそれがなければ絶対に帰化を許可しないというものではございません。韓国の老人で先ほどおっしゃったような方々については、読み書きできなくても帰化を許可している例はたくさんございます。したがいまして、帰化の場合に読み書きというのは一つの条件でございますので、ほかのいろいろな条件と総合的に考えまして、現在は読み書きが十分でなくてもこれからはだんだんと能力が伸びていくであろうと認められる例えば中国からの帰還者であるとかそういう方については、そういう将来のことも考えた上で帰化を許可するということもあるわけでございます。
○土井分科員 しかしおかしな御答弁ですよね。同化の程度と言われるのも私はいかがかと思うのです。電話で聞いたときにそういうお答えだったのですがね。 しかし、これは必ずしも条件としていないとおっしゃいますけれども、それが一応の条件となっていれば、これによって選別されて、一回そういうふうに取り扱われますとおじけづいちゃって、これはもうとてもだめだと思う人と同時に、それを聞いて、ああ私もだめだ、じゃ申請してもだめかもしれないと思う人たちもあるのですよ。こういうふうなことがある中で、どうか法務局の方に足を運んでいろいろ御相談をしてくださいとおっしゃっても、そういう雰囲気でないということもあるんじゃないでしょうか。いかがです、大臣。これはちょっと考え直してもらうというよりも手直しをしてもらわないと困りますよ、こういうのはいかがですか。
○住国務大臣 私も出先の実際の取り扱いがどうなっておるかよく承知しておりません。おりませんけれども、いろいろな点を総合判断して帰化を決定するわけでございますから、読み書きで全部できなければどうだこうだということでも必ずしもなさそうでございますので、そこらあたり、私率直に申し上げますと、沖縄の例で、やはり法務局においでいただいても親切に相談に応ずるように指示はいたしたいと考えておりますし、帰化の問題は大変国際関係ということも背景にあるわけでございますから、全国的にも親切に取り扱うのは本当じゃないか、こういうように考えております。
○土井分科員 最後に、今の母親が日本人である人に対して読み書きができなければだめだという取り扱いをやって沖縄から外に出られない人たちですよ。日本に生まれてからこの方ずっと今まで生活をしてきた人たちです。そういう人たちに対して、読み書きでテストをやって判定をしていくというやり方は、大臣どうお思いになりますか。
○住国務大臣 私も実際の取り扱いがぴんと来ないものですから、どうだこうだということを申し上げることはできないのでございますが、一般論といたしまして、民事局長から御説明申し上げましたように、読み書きというものが必ずしも絶対的な要件でないような受けとめ方を私自身しておるものですから、そこらあたり一般論としてはそうだ。そうしたら具体的な取り扱いでどうなるかということになると、やはり個別的に見ていかなければいかぬ問題じゃなかろうかな、こう思っております。
○土井分科員 現にそういうことになっておりますから、これはやはり法務省としてはそれは知らない。問題というわけにはいかない話であって、全国に対してどういう指示を出していらっしゃるのか、それ自身が私は非常に問題だと思い始めたのです。これは法務省の方から何か内部通達か行政通達のような格好で出していらっしゃるのですか、こういう帰化の申請に対する取り扱いについて。
○枇杷田政府委員 一応どのような状況であれば帰化が認められるというふうなことは、行政庁内部の基準としては各法務局に流しております。ただ、沖縄の関係では、先ほども超簡易帰化という言葉が出ましたように、日本人の子供である、ところが現在の国籍法のもとでは日本国籍を取得できない方の帰化の場合につきましては、超簡易帰化ということで沖縄の法務局の方にも指示をいたしておりますので、読み書きの関係については、ほかの方とは一味も二味も違った感覚で取り扱っておるものと思いますし、もしそうでないとすれば、改めてその関係は沖縄の法務局の方にも十分に連絡をいたしたいと思います。改めていたすつもりでございます。
○土井分科員 最後に一言だけ申し上げて私終えますが、先日この要綱案について御説明を賜ったときに、日本語がある程度生活に不自由がない程度にしゃべれるということは大事でしょう。ただ読み書きまで要求するというのはいかがかと思うと言ったら、そんなことはいたしておりません、帰化のときに読み書きをテストしてそれを一応にしろ条件にするということは今までいたしておりませんとおっしゃたですよ、法務省の説明として。ちょっときょうの答弁は違うじゃありませんか。したがいまして、この点は大臣、もう一度再吟味をお願いします。これを一応の要件とするのが私はおかしいと思っているわけですから、大臣、その点はよろしゅうございますね。ちょっと声を出しておいていただいて、私は終えます。
○住国務大臣 さらによく実情を聞きまして、今も答弁ではっきりしたわけでございますから、沖縄の場合については十分前向きに検討させていただきたいと思います。
○土井分科員 終えます。
○相沢主査 これにて土井たか子君の質疑は終了いたしました。 次に、草川昭三君。
○草川分科員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。まず私は法務省に、外国人登録法の指紋押捺の問題について質問いたします。 私も何回か法務委員会なり外務委員会なり、いろいろと取り上げてきておるわけでございますけれども、今この指紋押捺の是非をめぐりまして、非常に大きな話題になってきておるわけであります。特に五十五年の外国人登録法の改正により、来年六十年には大規模な登録切りかえの時期を迎えるわけでございまして、昨今、指紋押捺の拒否者が訴訟を起こすケースが見受けられるなど、また一方では大がかりな押捺反対の運動等が出てきておるわけでございます。 そういうものを踏まえましてひとつ質問をしたいと思うのでございますけれども、現在、日本に一年以上住む外国人で新規の登録や切りかえの際に市町村が保管をするところの登録原票というのですか、本人が常時携帯すべき登録証明書あるいは法務省へ送る指紋原紙、計三枚に指紋押捺をすることになっております。これに違反をすると一年以下の懲役あるいは禁錮か二十万円以下の罰金ということになるようでございますが、現在このことに違反をする検挙件数というのはどうなっておるのか、これをまず、これは法務省ではなくて警察庁になりますか、法務省ですか、お答え願いたい。
○田中(常)政府委員 お答えいたします。 本年二月末現在で二十八名の者が指紋押捺拒否をしております。このうち十四名が今月まで告発され、現在八名が裁判続行中でございます。
○草川分科員 実はその問題に至るまでにいろいろな日本の過去の歴史的なこともあるわけでございますし、私も今外国人登録と言っておりますけれども、その中で恐らく大多数の方々は歴史的な経過のある在日韓国・朝鮮人の方々が多かろうと思うわけでございますけれども、その外国人登録の歴史は五十七年の法改正で対象年齢が十四歳から十六歳に引き上がり、切りかえ時期も三年から五年に延長されておるわけであります。あるいはそもそもこの外国人登録制度というのは、昭和二十二年のポツダム政令に基づいてスタートをしておるわけでございますが、この在日韓国・朝鮮人の方々の強い反対で延期になっておるというような経緯もあるやに聞いておるわけでございまして、非常に歴史的な経過があるわけでございますが、この歴史的な経過ということがどの程度今日反映をしておるのかどうか。 ひとつ自治省の方にお伺いをしたいと思うのでございますけれども、今地方議会でこの問題をめぐる決議がたくさん行われているやに聞いておりますが、どのような決議がなされているのか、あるいは五十八年に全国の市長会がこの指紋制度の廃止を決議しておるというように聞いておりますが、どのような決議になっておるのか、二点にわたって質問したい、このように思います。
○小島説明員 お答え申し上げます。 地方自治法の第九十九条第二項の規定に基づきまして、地方公共団体が意見書を提出することができるわけでありますが、今お尋ねの指紋押捺に関します件につきましては、私どもといたしましても各地方団体がいろいろな決議をしておることは承知をいたしております。 ただ、この決議書は必ずしも私どものところへ全部参るわけでございませんが、去年の一月からことしの二月までに私どもに提出されました意見書を見てみますと、おおむね、今のところ百五十九という数字が出ておりますが、恐らくまだこれよりも多いのではないかというように思います。 それから、決議の内容でございますけれども、この決議の内容の第一点を見てみますと、指紋押捺については廃止をすべきじゃないかということと、もう一つは、いわゆる常時携帯についても改善をなすべきじゃないかというようなことが、私どもの手元で整理しますとそういうものが大部分でございます。それから、市長会の昨年の御要望も大体同趣旨でございます。
○草川分科員 今百五十九だと言っておりますけれども、私どもが知り得た情報では、市町村の地方議会は約四百、今のような趣旨で決議をしておるということでございますので、これは直接自治省の方へ来るというわけではございません。 法務省の方にも来ておると思うのでございますけれども、どうでしょう。法務省の方は、今このような全国でいろいろと過去の歴史的な経過を踏まえた上でのいろいろな要望が出ておることについてどのように受けとめておられるのか、お伺いしたいと思います。
○田中(常)政府委員 最近、指紋押捺制度を廃止すべきである、または改善すべきであるという御意見を承っております。またそれと同時に、外国人は日本に在留する限り日本国の法令を守るべきだという御意見も我々に寄せられております。我々といたしましては、硬軟いかなる御意見といえども非常に虚心坦懐聞いておるつもりでございます。 しかしながら、正規に在留する外国人に対して、入管行政上または教育、福祉、租税その他各般の行政を的確に運用するためにはやはり在留する外国人の居住関係、身分関係を正確に把握することは必要不可欠と考えております。この見地から我々としましては指紋押捺制度を採用しておるわけでございます。
○草川分科員 私の質問に答えていただきたいのですが、今のような答弁になれば国際人権規約をなぜ結んだのか。特にB規約七条には品位を傷つける取り扱いをしないというようなことにもなっておるわけでございますし、指紋押捺はいわゆる犯罪人捜査にかかわり非常に人権上問題があるという反論もあるわけです。在日韓国・朝鮮人の方々がなぜ日本にいるかという歴史的な経緯を素直に踏まえてもらえないか。特に、来年は日韓基本条約が結ばれてから二十年になるわけでございます。あるいは日韓議員連盟というのがございまして、これは大臣からちょっと御答弁していただきたいのですけれども、議連の方でもこの問題は大きな議題になっておるわけです。でございますから、形式的な答弁でなくて、大臣はさまざまな要望が出ておることをどのように受けとめていくのか。今のは本当に形式的な答弁でございますから、それはそれでいいのですけれども、過去の歴史上からの問題提起ということをどう大臣が受けとめるか、簡単で結構でございますからお答え願いたいと思います。
○住国務大臣 この問題が特に大きな問題になっていることは承知しております。私も法務大臣に就任してから、この問題についていろいろなお話を承ることが一番多いわけでございますが、考えてみますと、五十七年に法改正をやっておるわけですね。この指紋問題についていろいろ御議論があったということも速記録等で承知をしておるわけでございます。そういうような経過で、この問題が一応の決着を見たことはつい最近のことでございますので、それから、施行したのはたしか五十七年十月からでございますから、まだ一年ちょっとしかたっていない。それじゃそんな事情の変化があるのだろうかということについても、私自身、率直に疑問を持っておるわけなんです。ただ、今もおっしゃいましたように、日韓議連その他で非常にこの問題について議論をしていただいておる、各党各会派でこういう問題についていろいろ御相談していただくことについても、それはそれとして大変ありがたいことだ、私はこういうようにも思っておるわけでございます。 〔主査退席、中村(正三郎)主査代理着席〕
○草川分科員 事情変更というよりは、そもそも決まったときから問題が残っておるのですよ、私もこの問題をやってきているので。残っておりながら、しかも、来年は大量の切りかえの時期ですから、本当に日本の過去の歴史を行政の皆様方が心の中にどう受けとめられるか。しかも、簡単に申し上げますけれども、地方議会から三百から四百の決議というのは大変なことだと思うのです。そういうものは日本の将来にとっても、あるいは隣国との将来にとっても重要だと思うのです。だからこれは大臣に、今のような御答弁ではなくて、少し前向きにぜひ取り組んでいただきたいと思うのです。法務省という役所の性格もございますから簡単なものではないと思いますけれども、真剣に取り組んでいただきたいということだけ要望して、きょうは時間がございませんので、次に移りたいと思います。 これは、法務省の方は後ほど最後に刑事局長から私の問題提起を聞いていただいて御答弁を願うことになると思いますが、今、全国で被害者が非常に多く出ておる事件でございますけれども、金の地金の現物販売と見せかけて、実際は現物をお客さんに渡さなくて代金と引きかえに預かり証券を渡しまして、満期になっても現物を渡すことができないシステムになっている会社があるわけでございます。 具体的な名前は豊田商事というのですが、大阪に本社があり、かつて私の選挙区に登録の籍があったわけでございますけれども、今、この被害者は数万人に及ぶとも言われております。結局、金を百万円で三百グラムなら三百グラム買いますよという契約はするのですが、金の現物を渡さなくて、そのお金を私に預けなさい、私が年に一割運用してあげますよと言って預かり証券だけを渡すわけであります。これは今、何千人かのセールスマンが全国を飛び歩いておりますし、この豊田商事を退職したセールスマンがまた新しい会社をつくるというようなことで相当なことになりますけれども、最後は、この会社がつぶれてみないと被害総額がわからないという大変悲劇的な状況になっておるわけでございます。これは一私企業の問題ではなくて、重大な社会問題ではないかと思うのでございますが、この辺の事実について、金を扱う役所としてはどこになるのですか、通産省になるのですか、エネルギー庁の方から御答弁を願いたいと思います。
○高木説明員 ただいま先生御指摘の点でございますけれども、私ども通産省におきましては、本省あるいは各地方通産局におきまして消費者相談室というのを設けておるわけでございますが、ここで各種の消費者の相談を受けているわけでございます。 この相談件数でございますが、昭和五十八年度は、五十八年の四月からでございますけれども、四月から十二月まで五千七百九十三件の相談を受けております。そのうち、先生御指摘の金の取引にかかわるものにつきましては八百四十二件でございまして、全相談件数の約一五%ぐらいに相当するのじゃないかと考えられます。この金額でございますけれども、約十七億四千万円程度と計算されております。この中には先生御指摘の金の現物まがい商法と申しますか、それにかかわるものが相当含まれておると聞いております。
○草川分科員 それで、この豊田商事の実情について、通産省はどのような対応をされたかわかりませんが、わかっておる範囲で結構ですから、概要を一回お示しいただきたいと思います。
○高木説明員 私どもこの会社の掌握というのはなかなか難しいわけでございますけれども、私どもが入手いたしました同社が発行いたしておりますパンフレットによりますと、大体次のような状況でございます。 豊田商事株式会社、昭和五十六年四月設立、社長は永野一男、本社は大阪、資本金は二億五千万円、事業所は七支社、四十六事業所、社員は五千六百八十二名、年商は五十七年度三百五十億円程度、以上でございます。
○草川分科員 年商三百五十億円の売り上げを上げている会社でございますけれども、この会社が金の地金をどの程度手元に持ちながら金の売買の商いをしているのか、私どもぜひ知りたいわけでありますし、預かって一割の配当をするだけの運用方法がどの程度担保されているのかということも私どもぜひ知りたいわけであります。そうしませんと、何せ五千六百八十二名の営業マンが全国を飛び歩いて金を売り、しかも、一割配当を約束しながら現物を見せないわけでありますから、一体将来どういうことになるのか、大変恐ろしいようなことも予想されるわけでございますが、今、私が質問したこの企業の内容について一体どのようにつかんでおみえになるのか、あるいはやり方としては、満期の前に危ないというので解約を申し入れする場合には三〇%の違約金を取ったり、非常に悪どいやり方をしておるわけでございますが、その点、どのようにつかんでおみえになりますか。
○高木説明員 ただいまの先生の御質問でございますけれども、私ども通産省ではいわゆる立入検査権、そういうものがないわけでございますので、今現在、先生が御指摘になりましたような点については掌握いたしておりません。
○草川分科員 掌握を本当にしておみえにならないところに歯がゆい点もあるのですが、私が事前にいろいろお伺いしてもこれ以上の突っ込んだ指導ができないというところのようでございますけれども、通産省はこういうような取引については決していいとは思っていないと思うのです、個別事業については。何かいろいろと政府の広報等を通じて注意を呼びかけておみえになると思うのですが、どのような考え方を持っておみえになるわけですか。
○高木説明員 私ども金を所管する官庁といたしましては、国民の皆様方が安心して金を購入していただけるようなシステムをつくり上げることが大事かと思っておるわけでありますけれども、まず第一は、やはり模造品の排除とか売買に伴うトラブルの防止等々という観点から、信用ある地金商の店頭で現物と現金とで交換していただく、こういう購入が最も望ましいものであろうというふうな考え方を持っております。 したがいまして、このような観点から、私どもといたしましては、健全な金地金の流通機構の中核的機関と申しますか、そういうものを設立してきたわけでございます。五十四年にそういう社団の法人を設立したわけでございますが、金地金流通協会と称しておりますけれども、この協会の中に登録店制度を設けておりまして、ここで販売店のネットワークの拡充に努めておる、こういう次第でございます。 この登録店でございますけれども、これは国民の皆様方が安心して金売買を行うための店舗選択の一つの目安として機能していくのではなかろうか。それと同時に、私どもとしても本制度を大きく拡充していきたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、その一環といたしまして、通産省におきましてもいろいろなPRを行っておる次第でございます。 今日まで私どもどういうことを行ってきたかということを簡単に申し上げますと、広告等で行ってきているものもございますし、女性の方々がそういうチャンスにお遭いになるというところから「主婦の友」で広告してみたり、あるいは私ども実際にポスターを作成いたしておりますし、それからテレビあるいは新聞等にも政府広報を出しております。最近では、五十九年の一月二十二日から二十八日の間でございますけれども、中央紙はもとより地方紙に至ります約五十七新聞でございますけれども、こういう新聞等に政府広報といたしまして各種の広告、広告と申しますか政府広報を出している次第でございます。また、先ほど申し上げました日本金地金流通協会におきましても同様の広告を「週刊女性」あるいは「週刊新潮」みたいな一般的な雑誌等にも出して、そのPRあるいは注意喚起に努めているところでございます。 以上でございます。
○草川分科員 念のために聞きますが、この豊田商事は今の協会なり登録店には入ってないのでしょう。
○高木説明員 入っておりません。
○草川分科員 そういう入っていないところが現実に金の地金を売りますよと言って五千六百名から六千名近いセールスマンを使って仕事をするのを放置するということはいかがなものか、私はこう思うわけであります。 そこで、またおかしな話が出てきたわけでありますけれども、これはつい最近名古屋で起きたことであります。この会社の金商法に批判が高まっているために、実は従業員の募集を労働省は安定所で断わっているわけであります。これは、昨年の九月から名古屋の北職業安定所では求人のあっせんを断わっているわけであります。ところが今度は、豊田商事というのは別会社の名前で、株式会社豊田という名前で従業員の募集をする。そして応募した主婦に今度は豊田商事の社員がビデオを見せたり、その主婦に金を買わないかということで、まずその金をあなた自身が手にしてみなければだめだというような言い方をしてこの金を買わせるということをするわけです。いわゆる金の買い手を募集する手段として労働者募集の広告を出しておるわけでありますけれども、これは求人広告としては極めて不適切であると思うわけでありますし、許せない問題だと思うのですが、労働省としての対応はどうか、お伺いしたいと思います。
○鹿野説明員 通常、労働者を募集します場合に、新聞広告等文書でもって、しかも通勤圏内から募集します場合は自由に行うことが職業安定法で定められているわけでございます。ただ、虚偽の広告をしたような場合については一定の罰則が科せられるようになっておるわけでございます。 今、先生御指摘のございました案件につきましては、その広告の方法とかあるいは募集の条件だけを見てみますと、必ずしも職業安定法に違反するとは言いがたいわけでございますが、ただ、先生御指摘のように金を買わせるために労働者を募集するという、そういうことは私どもとしては好ましいものとは考えておらないわけでございます。したがいまして、このような案件につきましては、求人広告の適正な運営を図るための自主的な財団法人の新聞広告審査協会という機関があるわけでございますが、こういうような機関との連携を図りつつ、先ほど御指摘のように私ども職安の方で仮にそういう実態を把握しました場合には、新聞社等の募集媒体と申しましょうか、実際に募集を取り扱うところに通報するという措置などをとることによりまして不適正な労働者の募集を排除してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○草川分科員 こういう動きを見ておりますと、この企業もそろそろ行き詰まってきておるのではないか。もしある日、契約者の方々が一斉に、地金を私の手元に戻してもらいたいというようなことをすれば、これは一挙に倒産というのですか、過去に三十億程度で倒産をした例があるというような話もあるわけであります。もしこういう企業が許されるとするならば、名前を変えて新しい企業がどんどん生まれてくる。また事実、セールスマンが新しい会社を設立するというような動きもあるわけでありまして、特にこういうような経済情勢になってまいりまして、小金を持っておる定年退職者の方々だとかあるいはおとなしい、まじめな方々を言葉巧みに誘うということが今後全国的に増大をするということになると大変なことになると私は思うのです。この会社だけではなくて、金または白金等の商法で類似的な事件というのも最近多くなってきておると思うのです。 それで、通産省としては協会等を通じていろいろ指導をしておるというお話もありましたが、警察庁として、今私が問題提起したようなことを聞いておられてどういうような対応を立てられるのか、あるいはまた、既に全国的にどのような実態になっておるのかお聞かせ願いたい、こう思います。
○清島説明員 お答えいたします。 お尋ねの豊田商事につきましては、警察としても関心を持って調査をしているところでありますが、具外的な事案にかかわりますので答弁を差し控えさせていただきたいと思います。 その他、ここ数年苦情等の多い金とか大豆、砂糖、プラチナ等もありますが、これらの商品取引をめぐる不法事案につきましては、消費者保護の観点から取り締まりに努めておりまして、五十七年八月以降既に七業者、百十四名を詐欺等で検挙をしております。今後ともこの種事案についての厳正な取り締まりに努めてまいりたいというふうに考えております。
○草川分科員 これはもう本当に市民生活と非常に密接している場所でのこういう事件が多いわけでございますので、ぜひ厳正な関心を払っていただき対応していただきたい、こういうように思うわけであります。 時間が来たようでございますので、最後に、刑事局長がお見えになるわけでございますから。特に具体的な事例というのがどの程度上がっておるかわかりませんけれども、今警察庁の方からいろいろと御発言がございましたが、法務省としても十分今後こういう問題についての関心を払っていただかなければいかぬことだと私としても思います。ひとつ御答弁願って、私の質問は時間が来たようでございますので終わりたいと思います。
○筧政府委員 お尋ねの事件につきましては新聞等で報ぜられておるようでございますので検察当局でも承知していることと思います。今警察庁から御答弁がありましたように、第一次捜査機関でございます警察当局で関心を持って調査を進めておられるということでございますので、検察といたしましてもその推移に応じまして適宜適切な対処をするものと考えております。
○草川分科員 終わります。
○中村(正三郎)主査代理 これにて草川昭三君の質疑は終了いたしました。 次に、東中光雄君。
○東中分科員 最近、借地借家の宅地建物についていわゆる底地買いというのが非常にふえてきまして、いろんなトラブルを起こしているわけであります。特にここ三、四年非常にふえてきました。二十年も三十年も、あるいは五十年も前から何のトラブルもなしに賃貸家屋で生活をしておった人たちが、ある日突然、数人の男がやってきて、私がこの所有者になったということで、所有権を取得したからすぐ出ていけという形で、非常に問題が起こっています。 私は大阪ですが、大阪でもこういう問題の発生というのは非常にひどいようですね。都心部の古い借地借家のある地域は、今、マンション建設あるいはビル建設というようなことで敷地を確保するという大きな資本の動きの中で、こういう底地を買って、そして半ば暴力的に借地権、借家権を認めないような形でトラブルが起こっています。こういう傾向に対して何とか手を打たなきゃいかぬのじゃないかと思います。 去年、練馬区の一家五人惨殺事件がありましたけれども、あれも結局一億五百万ですかで第三者の居住している宅地建物を買い取った不動産業者がわずか四カ月くらいで立ち退きが実現できぬからといって五人の家族、居住者を皆殺しにした、こういう悲惨な、ちょっと考え及ばぬような事態が起こっているわけです。同じような時期に九州では、福岡市博多区中洲で二十六軒の店舗が焼けた。これは立ち退きを要求して、ついに放火した。放火者を雇って立ち退きをやらせた、こういう事態が起こっているわけです。これが大阪だけじゃなく大都市及びその周辺、あるいは最近では東京、大阪、神戸だけじゃなくて長野とか埼玉というところでも起こってきています。非常に重要な傾向だと思うのですけれども、これに対して借地あるいは借家人の居住権を確保するという点でどういう措置がとられているのか、法務省はこの法律の所管庁でもあるわけですので、何か検討されておるのかどうか、お伺いしたいと思います。
○枇杷田政府委員 底地買いの問題は、いろんな形があるかもしれませんけれども、主に土地とか家屋とかの所有権を買い受けた者が借地人あるいは借家人に対して所有権に基づく明け渡しを求めるという形で行われているものだと思います。 これに対しまして、申し上げるまでもございませんけれども、借地人の場合にはその借地権が新しい所有者に対する対抗要件を備えている場合がほとんどだろうと思います。それから借家人につきましても、引き渡しを受けて住んでいるわけでございますので、借家権をもって新所有者に対抗することは十分にできるわけでございます。したがいまして、新しい所有者からの明け渡し請求に応ずる必要はないということは法律上決まっておるわけでございます。 しかし、問題はおとなしい明け渡しの要求ではなくて、いろいろな形のものを伴ったいわば追い立て、強制追い立てのような形になるのが問題でございますので、その点につきましては、私人間の権利関係を調整するという、私法の分野でどこまで手が出せるかという問題もございますけれども、場合によっては差しとめ――隣の家を壊しにかかるとかいったような場合に、自分の借家権なり借地権なりとの関係で権利が主張できる場合には工事差しとめの仮処分の申請などもできるケースもございましょう。そういうふうなことをフルに使えば現在の私法の体系の中で対処できる形にはなっております。 しかし、そういう権利があるとかないとかということを無視していろいろな形での強硬な追い立てをするというところに実は問題があるのではなかろうかと思いますので、この点については、私法関係の分野外で検討されなければいけないことではないだろうかというふうに思っております。
○東中分科員 借地借家関係の法律の歴史を見てみますと、明治三十七、八年ごろのあの日露戦争の後で地価が非常に高騰した。こういう中で、いわゆる地震売買、借家の下の土地の売買でどんどん追い出されるという問題が起こって、明治四十二年、一九〇九年に建物法ができました。御承知のとおりであります。これも明らかに、安定した借地権というものを保障していこうという動きだったわけですね。その次には、御承知のような第一次大戦の後、物価高騰で住宅不足という問題が起こってくるという中で、借地借家人の権利を保障していく、あるいはそういう権利を継続させていくという観点からの立法として借地法、借家法ができた。昭和十六年になって、戦争が苛烈になる、いよいよ住宅不足になるという状態で、これがさらに強化された。戦後も、昭和四十一年には、高度成長の中で、結局借地権の物権化の方向というのが非訟手続という形でとられてきたと思うのです。ところが、今、土地再開発という形でビルやマンションを、民間活力を大いに使うということでやるものですから、地域においても中心的な土地では古い借地借家の底地買いをやっていく。一つの周期的な形で今やってきていると思うのですね。 今、私法的な関係以外の措置ということも言われましたけれども、暴力的に、しかもそれが利益と絡んで仕事としてやられてくるというところに非常に問題があるように思うわけであります。私は、そういう点で、現行法でやれることというのは後でお聞きしたいと思うのですけれども、これに対する措置を考えられてもいいのじゃないか。例えばサラ金の問題について言えば、あれは取り立てが非常に厳しいということが問題になって、そしてサラ金規制法が立法されましたですね。サラ金の場合はまだ短期の金を借りたということがあって、それの返済を要求してくるという関係なんですけれども、この借地あるいは借家の人たちで言えば、二十年も五十年も前から入っている。何の落ち度もないという状態で、相手がかわったということだけで暴力的にいろいろやられる。こういうことについての規制ができなかったら、今までの借地借家人の保護の大きな動きからいって問題なんじゃないか。住宅政策として民間活力を活用するということで都市再開発というようなことを打ち出す、資本が大きくそういう方向に動くという中で起こってきている現象ですから、そういうふうに思うのですが、そういう点について、今具体的にどうこうと言うわけではありませんが、大臣、何か考えなきゃいかぬのじゃなかろうかと思うのですが、いかがでございましょうか。
○住国務大臣 借家権、借地権は非常に強い権利としてある程度確立されておると思うのでございますが、今おっしゃったようなことは借地、借家法の制度の中で解決するのか、それともそれ以外の点で考えるのか。特に、今もおっしゃいましたように、サラ金業法等の問題につきましては、取り立てという点についても非常に配慮を払ってあるわけでございますけれども、そういうような非常に広い範囲で考えないといかぬ問題も含んでおると思いますので、私どもの方でもそれぞれの省庁と連絡いたしまして研究してみる必要があるんじゃないか、こういうような感じを今持っております。
○東中分科員 私もこれは何とか考えなきゃ、マスコミなんかも取り上げて、もう社会問題になっていると言ってもいいような状態が起こっています。そのやり方が、借地権あるいは借家権を意識的に無視してやっているというところに非常に問題がある。しかもそれは、東京練馬の五人惨殺、一家皆殺し事件なんかは、一億五百万自分が融資を受けて借りた、去年の二月に借りているんですね。そしてもう六月には立ち退きを要求して惨殺している。居住者にとってはたまったものじゃないですね、そんなところへいくとは思ってないのですから。その人は、一億五百万の融資を受けてやっているんだから金利が大変だということなんですね。だから、立ち退かすのにまさかりを持っていって惨殺をする。これはもう特異な形態で出ていますけれども、そういう凶暴な動きというのは、いわゆる底地買いの業者の中にはそういう方向性があるものですから、早急に何とかした処置をとらなきゃいかぬのじゃないかと思っております。 〔中村(正三郎)主査代理退席、主査着席〕 例えば、ここで一つ例を申し上げますと、大阪の都島区で起こったことですけれども、工場と住宅をずっと前から賃借りしている。そこへある日全く突然数人の男性が来て――今までの貸し主との間ではトラブルは何もないわけです。普通にちゃんと義務を履行している借家人です。ところが、家主からこの土地を買ったということで立ち退きを要求している。そんなこと言ったってと言っても、いやなら敷金二千万円出せ、わしは所有者だ、おまえには貸してないのだ。前のことには一切触れないのです。そして家賃は五百万円にする、それがいやなら坪八十五万円で買い取れ、そうでなかったら出ろ、こういう要求ですね。では、これは本当の所有者かどうかというと、わからないのです。家主から何にも言ってこない。こういう状態が起こると、これはもう借地権あるいは借家権、物権化しているそういう権利に対する恐喝みたいな感じさえするぐらいなんです。そういうのが実際に来て、しかも一人が平穏に話をするのではなくて数人来るという場合に、借地権者あるいは借家権者は一体どう対応したらいいのかということについて、民事局としてはどういうふうに思われますか。それから、いやですとはっきり否定をしていても頑張っているという状態にどういうふうに対応したらいいんだろうかということを警察からも承りたいと思うのです。
○枇杷田政府委員 民事的に考えますと、今の例のような場合でも、借家人の借家権というのは新所有者に対して十分対抗できるわけでございますので、借家権を主張して、立ち退く必要はない。それから、一方的な条件の変更に応ずる必要はない、そういう義務はないんだというふうなことが主張できて、それでおさまるはずでございます。少なくとも裁判所でそのことの是非が判断されればそういうことになる筋合いのものだろうと思います。 ただ問題は、そういうふうなことについて借家人の方々が借家法なり借地法なりについて、あるいは建物保護法について十分な知識がおありとは限りませんし、そしてまたかなりの威圧をもってやられますと、権利を持っておるという主張がどこまで事実問題として貫き通せるかという問題はあろうかと思います。そこら辺になりますと、私人間の権利関係の問題ではなくて、次の警察的な問題であるとか、あるいは弁護士さんに依頼をしてその関係の処理を委任するとかという問題に移っていくことだろうと思いますが、民事的に申しますと、ともかく権利をあくまでも主張し、それを主張する場としての裁判所で何らかの救済の方法を講ずる、その道がなかなか素人の方がわからなければ、やはり弁護士さんなどに御相談になるということで解決するしかないんじゃなかろうかというように考えます。
○三上説明員 ただいまお話しありましたような事案でございますと、権利関係そのものに立ち入ってまいりますと大変複雑で難しい問題になってくるわけであります。したがいまして、警察としてそういった状況があります場合に、そこに強要罪なり脅迫罪なり、あるいは具体的に建造物を損壊するというような行為がございましたらば、それに対する警察措置は当然とらなければならないと思いますが、そうでない両者の話し合いというものが、相当エキサイトはしてくると思いますが、その状況に対しては、その場で権利関係を一々明確にして我々が裁きをするというわけにいきませんので、現状を凍結してよく話し合えという形にならざるを得ないのではないか、もちろん当然法に触れるような行為がありましたらば厳正な処置をとりたいというふうに考えております。
○東中分科員 警察にお聞きしたいのですけれども、今私が申し上げた場合は、対抗要件がある。私の申し上げた範囲で対抗要件があるということは、民事局長も言われているとおりなんです。だって、この人は三十年ほどずっとそこに住んで、公然と営業もし、住んでいるわけですね。そこへもってきて、ある日突然来て、そして敷金二千万円よこせ、出ろ、出なかったらよこせ、そうでなかったら買え、これは全く押し売りと一緒ですね。それが五人も来るということになって、いや、そんな寝耳に水、だめだ、嫌だと言っても帰らないという場合、もう借地人の方から、私はそういう話は一切――第一あなたが所有者であることもわからないんだ。だから、一切、話には応じません、帰ってくださいという要求をする。しかし帰らない。そんなことを言わぬで、わしは所有者なんだというようなことを言うというふうになったら、私は不退去罪になるんじゃないかと思うのですね。やぶから棒に来られたわけですから、五人も六人も来ますと、こっちはびっくりしますよ。しかし必死になって帰ってくださいと言う、それも言えないような状態に追い込んでいく、こういう事態を民事上の問題ということで私は済まないと思うのですね。 そういうときに警察へ通報をし、警察の方はいわゆる底地買いによるそういう借地権、借家権の権利を侵害していくといいますか事実上取り上げてしまうというような交渉を押しつけることは、場合によっては強要罪になりますよと言って制止をするなり、あえてなおそれをやるんだったらそれは強要罪になるかもしれないというふうに思うのですが、そういう措置がとれぬものだろうかと思うのですが、どうですか。
○三上説明員 現場に通報がありまして赴いた警察官等のこれまでの措置状況等も見てみますと、第一段階では警告、制止といいましょうか、具体的な状況がございますれば、そういう措置をとる。もちろん、それに対してさらに具体的な行為が行われておって、それが違法状態であるというような状況であれば、現行犯なりそれなりのいわゆる刑事的な措置をとっていく、こういうことであろうかと思います。
○東中分科員 これは旭区の新森七丁目での事件でありますけれども、具体的な内容は申し上げませんが、山本商事と称する業者が入って立ち退きを強要してくる。この人たちは、もし立ち退きに応じないときは放火してでも立ち退かしてみせるぞというふうなことを言うのですね。すごむわけです。これはまさに、対抗要件のある借地借家人に対して、立ち退きの要求だけじゃなしにさらにそういうことまで言うということになりますと、これはもう明白に二百二十三条の強要罪になると思うのですが、どうでございましょうか。
○三上説明員 一般的に今どういう状況にあるかということがつまびらかでありませんので、今御指摘のあったようなことだけを取り上げてみれば、当然脅迫なりあるいは強要罪に当たるというふうな状況が出てこようかと考えております。
○東中分科員 これは、昨年の五月二日に大阪地裁が、昭和五十八年(ヨ)第一三〇七号事件ということで立ち退き強要禁止仮処分決定を出しておるわけです。家主、建物の所有者及び山本商事、これは立ち退き請負屋ですが、この二人その他は借地人に対して「自ら又は第三者をして各申請人らに対し脅迫的言動を用いて」「立退を強要してはならない。」という仮処分決定が、断行の仮処分が出ておるわけです。これはもう、そういうことがあったからこそ、継続する権利関係について今後そういうことをやってはいけないという仮処分が出ているわけです。裁判所があったという事実を認定しているわけですね。 ところが、裁判所へ持っていってそういう決定をもらっても、警察がなかなか動いてくれない。今申し上げたように、こっちに何の責任もないのに、ある日突然そういう事態が起こってくるわけです。仮処分申請をやって、供託金を積んで、決定をもらってというと、それ自体が大変な被害ですよ。そこまで行くまでの心労といい応対といい、大変なんですね。だから、自殺する人が出たりするわけですけれども、そういうときに、脅迫的言動を用いて強要してはならないということを裁判所が仮処分決定で出すような事件については、やはり現場を警察もよく見ていただいて、制止行為もあるでしょうし、あるいは検挙行為もあると思いますけれども、予防、鎮圧という立場からぜひ厳正にやっていただきたい、そういう点で社会的な問題になっておりますので。 最近警察の方で署によっては、ちゃんと言っていけばすぐにやってくれるというふうなところも大分出てきているのですけれども、なかなかそうでない、民事不介入の原則だと言って――こんなものは民事でも何でもないのですよ――ということがありますので、その点、警察の方での厳正な措置をお願いしておきたいのですが、どうでしょうか。
○三上説明員 底地買いの事案につきましては、不法事犯については徹底的に検挙するという考え方で臨んでおるわけでありますが、昨年は八件三十二名を検挙いたしておりますし、本年に入りましても、家族の留守中に建物を居住できないように損壊をしたということで、悪質なグループを九名検挙するというような状況になっております。 私どもといたしましては、市民生活を脅かす事案であるという観点から厳しく取り締まるという方針で臨んでおります。
○東中分科員 立ち退きを要求していきまして、立ち退かないというので夜中に戸をドンドンたたいたり、一部あいたところでじゃんじゃん騒ぎをやって嫌がらせをやったり、住宅の通路の辺にトタンを置いて、そこをドンドン夜中に走り回る、場合によっては壁を破ったりということで、大阪でも逮捕されている例もあるわけであります。逮捕されたけれども、また釈放されて出てくるという状態があるのですね。 刑法二百二十二条の場合は、脅迫は、先ほどのような放火してでも追い出すぞ、これはもうはっきり脅迫だと思いますし、暴行の場合は、人の身体に対する暴行じゃなくて、相手方に対する暴行でさえあればいいわけですから、ドンドン戸をたたくということだって立派な暴行で、立ち退きを強要する強要罪になるのではないかというふうに私は思うのです。そういう点での厳格な解釈をやってもらわないと、警察官がそばにおって、それでドンドン走り回っておる。戸をつぶしたから告訴した、それでやっと逮捕した。それまではじっと警察官は横で見ている、こういう事態さえあるのですね。だから、強要罪の暴行というのは、人に対することであって、人の身体に対するものではない、それから脅迫は、告知があればそれでよろしいということですので、そういう点は厳格にやっていただきたいということを特に要請しておきたいと思います。 時間がありませんので、もう一点。 こういうことをやる不動産業者がおるのです。ビルや建物を建てるために、土地を買います、「マンション用地を求めています。」こういう大がかりな広告が出されています、何百坪かまとまった敷地があれば買って、どんどん建てていきますと。それを受けて不動産業者が動き出す。その業者は、この土地を所有者から底地で買って、そして更地にしたかのようにして転売をしている。そして今度は、更地で買ったんだから、あなた出なさい、こういうふうなことを言ってやっていく。 これはまさに業者としては非常にけしからぬやり方だと私は思うのですけれども、宅建業法上の業者であるならば、底地を買ってそれを転売するのに、更地ということで転売をするというふうなことをやっておるということになれば、建設省としては、この業者に対する取り締まり、指導、行政上の措置をとられるべきだと思うのです。 同時に、届け出をしていない業者の場合はいわゆる潜り業者、無免許業者でありますから、宅建業法の十二条違反の罪になるわけですから、そういうのは建設省としてどうされるのか、それから警察としてはこの宅建業法違反に対する検挙、捜査というふうなものをやられるのかどうかという点についてお聞きをして、質問を終わりたいと思います。
○斉藤説明員 先生御質問の、借地権が存在するにもかかわらず、借地権のない更地であるというようなことで業者がまた別の方にお売りするというようなことがあったといたします。それは、取引におきまして大きな重要な事項を告知をしなかったわけでございますので、もう明らかにその点につきましては宅建業法の規定に違反することになろうかと思います。
○清島説明員 不動産事犯につきましては、市民生活を脅かす重大な事犯であるということでこれまでも厳正に取り締まってまいっております。ただいま建設省の方からの答弁もございましたので、先ほどからの底地屋の問題、宅建業法に違反するということでありまして、我々もその観点から取り締まりをやってまいりたいと思います。
○東中分科員 終わります。
○相沢主査 これにて東中光雄君の質疑は終了いたしました。 次に、中野寛成君。
○中野(寛)分科員 在日韓国人を中心にした在日外国人の人権問題等についてお尋ねしたいと思います。 まず厚生省にお伺いをいたしますが、国民年金法等の一部改正案が提案をされまして、これによって社会保障制度上のいわゆる行政差別については、まずほとんど在日韓国人等外国人の問題については問題が解消されたと言っても過言ではないのじゃないか、こういうふうに考えておりまして、大変その御決断に敬意を表するわけでありますけれども、もちろんまだ一〇〇%というわけではございませんで、しかし、それは日本人も含めて今後の課題としてまた論議をしていきたいと思っておりますが、少なくとも日本人と同じように扱うという意味では問題が解消されるのではないかと期待をしているわけであります。 今日に至るまでの経緯と内容について、外国人の立場を中心にして御答弁をまずお願いしたいと思います。
○山口説明員 ただいま御紹介がありましたように、私ども、今の国会に年金法の改革案を提出して御審議をいただいておりますけれども、その中で、いわゆる制度的な無年金者の解消ということを一つの大きなテーマにしております。その一環といたしまして、御指摘がございましたように、外国人の方に対する国民年金の適用の問題も含めて対応をいたしております。 具体的に申し上げますと、難民条約の加入に伴いまして従来の国民年金の国籍要件を撤廃をいたしまして、五十七年一月一日から、日本に住所を有される方については国民年金に加入をしていただくということになったわけでございますけれども、そのときに、いろいろ御議論があった末ですけれども、経過措置を設けないで適用いたしましたために、特に高齢の方については過去に加入しておられなかった期間がございますので、せっかく国民年金を適用しても老齢年金に結びつかないというような方もおられたわけでございます。この関係につきましては、外国人の方に限らず日本人でありましても、海外の居住期間が長い方等につきましては同じような問題があったわけでございます。 今回の改正でその方々も全部含めまして、制度的に無年金になってしまわれる方については極力対策を講ずるという方針のもとに、過去の期間につきましても、老齢年金の資格期間をカウントいたしますときに、その資格期間の計算に、例えば在日の韓国人の方々の五十七年以前の期間についてもカウントをするということにいたしまして、老後はそういう方々にも必ず老齢年金を受給していただく道が開かれるようにしようということで、ただいま国会に提出をしております年金法案の中で措置をしているような状況でございます。
○中野(寛)分科員 この問題も長年の懸案でございました。私もこの問題をこの席に立って取り上げますのが七回目、言うならば、毎年同じことを申し上げてきて、ことしやっと厚生省の御決断によって――去年までの御答弁は、それこそもうとんでもないことだという御答弁であったわけですね。それだけに、私は、大変な御決断であったし、大変な御勉強であったろうと思うのです。そういう意味で心から敬意を表したいと思いますし、同時に、その運用面について十分な周知徹底を図って、そしてその充実を図っていただきたい、心から要望を申し上げておきたいと思います。年金課長さん、結構でございます。 さて、この厚生省所管、また文部省所管、建設、大蔵等々いろいろな問題がございました。実は公営住宅への入居、それから金融機関の融資の問題等々いわゆる行政差別と言われた問題等につきましては、逐次これが改正をされまして、これは平等に適用をされるというふうなことになったわけであります。今残っております一番大きなものは、しかもこれはもう唯一と言ってもいいくらいのものは、例の指紋押捺の問題でございます。 これから私が申し上げようとしておりますのは、実はすべての在日韓国人を特別扱いしろという意味ではありません。またすべての永住者を対象としてこれから申し上げようとしているのじゃありません。協定永住者について申し上げようとしているわけであります。すべての者ということになりますと、諸外国との相互主義の問題等が出てくると思います。私は相互主義を否定するものではありません。しかしながら、その相互主義の枠の外にこの在日韓国人の協定永住者は置かれてしかるべきではなかろうかということを申し上げたいわけであります。 なぜ協定ができたのか。それは言うまでもなく、この協定永住者の皆さんは、一九六五年六月二十二日に協定を結ばれましたいわゆる韓国との法的地位協定に基づくものであります。この協定は――言うならば、戦前、戦時中日本の国策によって韓国人の皆さんが強制的に日本人とされたわけであります。戦争が終わって、今度は、あなた方はもともと韓国人だから、はい韓国ですと、一部の方々はこれでもう日本におれないんだということで韓国に帰った方もいらっしゃいます。しかし、この協定もしくはそのときに出された法務大臣声明によって、一たん韓国へ帰国した人たちも好意的な取り扱いをするということで、言うならばこの協定永住者が今日存在をするわけであります。日本でこの協定永住者と称される者は、在日韓国人の皆さんを除いてほかにないからです。もともと特別の扱いがされている。それは日本の昔の国策によって特別な扱いを受けた。日本のそういうやり方に対する反省と償いの中からこの協定というものは生まれたはずであります。ゆえに、このような方々については特別な措置が講ぜられるべきではなかろうか、こういう観点に立ってお尋ねを申し上げたいと思いますが、この認識について法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○田中(常)政府委員 お答えいたします。 委員御指摘のように、昭和四十年に在日韓国人の法的地位の問題につきましては日韓間で協定が結ばれました。その協定の第五条によりますと、協定永住者は「すべての外国人に同様に適用される日本国の法令の適用を受ける」このことが日韓両国間で確認されております。外国人登録の基本は、在留経緯のいかんを問わず、また国籍のいかんを問わず、すべての外国人を同等に取り扱うことを考えている次第でございます。
○中野(寛)分科員 その協定、今おっしゃられたその前に「この協定で特に定める場合を除くほか、」こう書かれているわけですね。そして幾つかの措置が協定では記されているわけであります。しかし、この協定に流れる精神というものは、結局在日韓国人の皆さんは戦前から日本に居住をした、させられた、そういう方々について特別の措置が必要だからこういう協定が結ばれたわけですね。そして特別な扱いがされた。それ以外のことについてはすべての外国人と同様に適用される、こういうふうに決められているわけですね。 そういう中で、その特別な措置がなぜ必要であったのか。現在の指紋の押捺制度があることは、今局長がおっしゃられた第五条によってもそれは裏づけられると思います。だから、そのことが現在違法だと申し上げようとしているわけではありません。それはそれとして、役所の運用、適用としては当然であろうと思います。しかし、私は、根本的な精神の問題について、先ほどむしろ法務大臣にお聞きしたいと申し上げたわけであります。今日まで各省庁せっかくの御努力をいただきました。もちろん法務省も御努力をいただきました。入管局もまたその精神を踏まえて、運用面において大変御努力をいただいたことも承知をいたしております。 しかしながら、私はこの協定永住者というのは将来どうなるのだろうか、いつまでも協定永住者というのは在日韓国人として存在し続けるのだろうか、既に二世、三世、四世も生まれているわけです。そして、その人たちの処遇については、この協定によると、この協定の発効以来二十五年を経過するまでに韓国政府の要請があれば協議をするということになっております。しかし、その二十五年というのはもうあと七年ほどで迎えようとしているわけであります。何も七年待たなければならないということではないわけであります。一日も早い方が、この方々にとっては安定した措置が講ぜられることになるわけであります。将来ともにこの協定永住者は、あくまでも外国人として存在をするのか、日本で生まれ、日本語しか知らない人たちの方が圧倒的に多く、日本の教育を受け、日本人の社会で生活をして、韓国へ帰ったってその生活の基盤はない。そして、そのお父さんやおじいさんたちは一時は強制的に日本人とされた人たちなわけであります。 明確に申し上げますが、この問題について将来どうするか、この在日韓国人の皆さんの社会でもまだコンセンサスは明確にできておりません。しかしながら、私は、日本政府の責任として、もっと言えば日本人の責任として、これらの問題については、一日も早く彼らの生活の上での、また精神的な上でのロイヤリティーの上での安定を確保するという責任がまだ残念ながら残っている。その問題を解決しなければ、終戦処理、戦後処理の問題が一つ残ったままである、こういうふうに申し上げざるを得ないと思います。 在日韓国人は永遠のエトランゼでなければならないのかという問題提起があります。私は、むしろこの際、日本政府の積極的な検討の中で韓国系日本人として位置づけていく、日本人として位置づけていく。一人一人の帰化を申請すればいいじゃないかという論議があります。しかし、七十万になんなんとする人たちの帰化申請をどうして処理するのでしょうか。また、現実に安定した生活を営めるだけの条件が整っていなければならないとか、また交通違反一つ起こしただけで既にその帰化条件が外されるとか大変厳しい条件があるのです。不可能です。そして永住権を与えているのです。彼らは韓国に帰っても生活の場はないのです。日本人と同じように生活しているのです。そういう状態の中で、コンセンサスこそまだきちっと生まれてはいないけれども、しかし腹の中では、ほとんどの方たちが、特に二世、三世の皆さんは、そのほとんどの人たちが日本人として生活をしたいと望んでいる、私は、こう断言できると思います。 これらの問題にむしろもっと積極的に法務省としてお取り組みになる姿勢が必要ではないのだろうか。いつまでも協定永住者という極めて不安定な状態の方々が存在をするということは、私は、やはり問題だと思います。この問題を解決すれば、あとはそれ以外の国々から日本に来られた方々とすべて同じように、それこそ相互主義で同じように諸外国の人たちを扱えばいいわけです。そういう処理ができるわけです。けじめがつけられるわけです。そういうことについて今考えるべきときを迎えているのではないか、こう思うわけであります。法務大臣に改めて御所信をお伺いいたします。
○住国務大臣 在日韓国人、特に協定永住者の歴史的な経緯あるいは日本において生活されている事情、これは私なりに承知をしておるつもりでございます。 そこで、今もお話がございましたが、やはり国家としてどの国に属するか、こういうことになりますと、このこと自体、大変慎重な取り扱いを必要とするのじゃないか、国籍問題でございますけれども。そこでそれ以外の特別な身分としての協定永住者というものが一体考えられるのだろうかどうだろうか。現在、協定としてそういうように呼んでおるのでございますけれども、これは扱いとしては、それぞれの国の国籍を持っておられるわけでございますから、そういうものを離れて協定永住者という特殊な身分というものをつくり得るのかどうなのか、これはなかなか難しい問題だろうと思うのです。 そこで、その問題をどういうように解決していくか、これは衆知を集めなければならぬのじゃないか。例えば、それはどの国籍を選ぶかということ、これについては帰化ということもございますし、これはやはり本人の意思も尊重しなければならないわけでございます。そういうようなことを考えまして、例えば日本の国籍を取得したい、そうなると、帰化ということについては、一般の外国人と同じようにそれなりの条件がございます。だから、例えば協定永住者の帰化についてどのように考えていくか。これはこれとしての一つの考え方も出てくるのじゃなかろうか、こういうような気もいたします。今は指紋問題と離れての御質問でございますので、そこらあたりの点をいろいろ考えなければいかぬ問題があると思うのでございますが、お互いにこの協定永住者あるいは在日韓国人の事情について、私は議員としてもみんなわかっていることだろうと思うのです。ですから、そういう中で例えば日本人としてあるいは協定永住者として、特別な地位としてどう認めていくかとか、そういうような問題は両国政府との関係もございますし、私は法務省の一存だけでは決められない問題でもあると思いますので、そういうことも含めて検討しなげればならぬのじゃないかなと思っております。
○中野(寛)分科員 大臣、大変的確に御認識だと思うのですが、私が申し上げているのは、当然二重国籍者にしろと言っているのではないのです。もちろん御本人の意思も尊重しなければなりません。ゆえに、協定永住者については日本国籍の資格を申し出れば取得できますよ、ただ、今のような非常に難しい帰化手続、これは実際言って不可能なんです。毎年何人かの人たちは帰化していますよ。私も何人か身元保証人になったことがあります。しかし、大変困難です。しかし、協定永住者についてはそれなりの生活の基盤、そして今日までの歴史、そして実績とがあるわけです。今日までのそれぞれの方々の生活の歴史からいって、日本国籍をあなたがもし希望するなら取得できます。ここで日本の国籍を取得するのでなければ、もちろんそのときは韓国籍を離れるわけですが、それでなければあなた方は韓国人として扱いますが、それはその他の諸外国の国籍を持つ外国人の皆さんと同じ扱いですよ。協定永住者とかなんとか特別な扱いはいたしません。そういうけじめがつけられるのではないかということを申し上げているわけです。そういうことをすることによって多くの懸案が解決されるのではないでしょうか。 例えば指紋押捺の問題も、私たち実はこの協定永住者に限って今申し上げているのです。いろいろありますよ。国連で取り上げられているのは、もっと広範な方々についての問題です。しかし、それは法務省お得意の相互主義その他で解決したらいいではありませんか。協定永住者については歴史的な特別のいきさつがあるわけでしょう。そういう方々については指紋押捺の問題も含めて、また日本国籍の取得の問題も含めて特別の配慮というものがなされるべきではないでしょうか。こういうふうに申し上げているわけです。法務大臣いかがでしょうか。
○住国務大臣 おっしゃることは私十分わかります。ところが、協定永住者は特殊な地位のある人だということで、その他の外国人と差別することが果たしてできるのかどうかということについては、私を含めまして法務省としてはまだ十分な自信を持っていない、こういうことでございます。
○中野(寛)分科員 他の外国人と区別して考えられるかどうかということで法務大臣もおっしゃったけれども、もともと協定というもので特別に扱われている存在ではないのでしょうか。彼らは一たん日本人とされた時期があったのです。おわかりでしょう。戦時中日本人だったのですよ。日本国の勝手な施策でそうされたのです。そして日本人として日本で生活し始めたのでしょう。戦争が終わったら韓国人ですよ。そういう方々にもはや韓国人としての――韓国人としての血が流れているプライドはお持ちでしょう。そのことと国籍の問題とは切り離して考えることもできるのです。むしろそうしたいと本心では願っている人たちの方が多いのです。ただ、いろいろないきさつやその他の条件でそれを自分から言い出せないということもあるのです。そういう状態の中で、日本政府が戦後処理の問題としてけじめをつけるためにもっと前向きに検討なさってはいかがでしょうか。その時期を迎えているのではありませんか。 指紋押捺の問題、ことしの秋から来年にかけてこれは大変ですよ。新たに拒否者がどんどん出てきたらどうなるか。二十万人とも三十万人とも言われる方々がこれからその時期に差しかかるのでしょう。地方自治体はもう大変です。お手上げです。もう堪忍してくださいと決議しているでしょう。緊急を要する問題でもあります。この問題について、法務省として前向きの御検討をなされなければいけない時期を迎えている、その責務が日本にはあるということを、くどいようですがもう一度申し上げます。大臣、いかがでしょうか。
○住国務大臣 現在の私の立場から申し上げますと、協定永住者ということはそういう特殊な身分として認められておるわけでございますけれども、あくまでも外国人であるということは否定できないわけでございます。その上に立って協定永住者をどのように扱っていくか、日本の諸制度の中で特に考慮するしないの問題があるかと思うのでございますが、外国人ということで考えるならば、特に差をつけるということについては今のところ非常に慎重にならざるを得ぬのじゃないか、こういうように考えておるわけでございます。
○中野(寛)分科員 外国人であることは事実です、国籍は韓国籍ですから。しかしながら、私が申し上げたのは、歴史的ないきさつその他を考えれば、特別の措置が講じられているわけですし、二世、三世の時代になって、その問題さえも今考えざるを得ない状態になってきているわけですから、積極的に御検討なさったらいかがですか。問題が起こってきてから検討したのでは手おくれでしょうと申し上げているわけです。難しい問題がいろいろあるであろうことは国籍の問題なんですから当然だと思います。そう軽々に扱われる問題でないことは事実です。 しかし、今日までの歴史から考えて、日本政府の責任においてこれらの問題を積極的に考えざるを得ないのではないですか。言うならば、日本の戦争中の問題でしょう。それが尾を引いているのでしょう。だから、協定が結ばれたのでしょう。それがなければ協定なんか存在しなかったし、最初から一般の外国人として同じように扱われたのでしょう。それがこういう状態にあることを十分御認識の上で御検討もいただきたい、こう申し上げているわけです。もう一問あるので、今私が申し上げたことについて、大臣、一言だけ。
○住国務大臣 せっかくの話でございますので、検討するにはやぶさかでございませんけれども、大変難しい問題だ、私はそういうふうに考えております。
○中野(寛)分科員 これからまたしつこく検討を迫ってまいります。というよりも、ともに検討させていただきたいと思います。 最後に一点だけ。二月十七日にフィリピンのミンダナオ沖で日本の日正汽船の瑞鵬丸が沈没直前の船に乗っておったフィリピンの六人の船員を救いました。そして、千葉の川崎製鉄に二十四日に入港したわけであります。そこで入管、保安部等々と受け入れ態勢について協議をしたわけでありますけれども、手続、滞在費、期間、帰国費など明確にしない限り上陸許可証は発行できない、費用なども日本政府は関係ないということで、結局船乗り仲間の善意に頼る以外になかったということが実は海員組合の皆さんから指摘をされているわけであります。 これは、海洋国日本としてこんなことでいいのだろうか。こういう事例はこれからも起こり得ると思うのです。まして、日本人がそういう災難に遭って外国の船に助けていただくことだって起こってくると思うのです。こういう問題は条約その他いろいろあるのかもしれませんが、本当はもっと温かい措置が講ぜられないとゆゆしい問題だと思いますが、いかがでしょうか。
○田中(常)政府委員 お答えいたします。 今委員御指摘の問題でございますが、二月十七日に日本船がフィリピンの船員六名を救助したということは、その時点において入管は知っております。二月二十二日の時点におきまして、在京フィリピン大使館がその人たちの面倒を見ようということを連絡してきております。そして、その船は二月二十四日に千葉港に入港いたしまして、入管の職員は直ちにそれに臨船いたしまして、そしてその場で上陸許可書を発給しております。入管法の第十八条に、遭難した場合の特例上陸ということが決めてございまして、事緊急事態である、事人道上の問題であるということで、そのような場合には直ちに特例上陸を許せということが決めてありまして、これはそのとおりにしたわけでございます。したがいまして、どうしてそのような記事になってしまったのか、私も実はよくわからない次第であります。
○中野(寛)分科員 これは、きょうの朝これを担当した人が私のところへ来まして、そして新聞のコピーもお渡しいたしましたが、こういう陳情があったのです。私はもう一度御調査をいただきたいと思います。そして、この記事に書かれているとおりだと、これはやはり局長も問題だと思うでしょう。書かれているとおりだと、問題だと思うでしょう。だから、このことについては十分御調査をいただいて、そして今後に問題を残すようなことがないようにお願いを申し上げたいと思います。このままだと、余りにも冷たい仕打ちだということになってしまいますから。
○田中(常)政府委員 けさ委員からこの新聞のことで御連絡を受けまして、私もまさかと思いまして、直ちに担当の部局に連絡いたしまして、直接臨船してその上陸許可をした人に当たったわけでございますけれども、二十四日臨船し、直ちに上陸許可が出ております。 それから、費用の問題につきましても、それより二日前にフィリピン大使館から、費用は持つと。それで、費用の件でございますけれども、そういうふうに遭難したかわいそうな人たちが港に来ると、通常、最終的には実は船主がその費用は持つわけでございます。(中野(寛)分科員「船主というのはどっちの船主ですか」と呼ぶ)最終的には沈んだフィリピン船の船主でございます。しかし、とりあえずの問題といたしましては、エージェントかまたは在京の各国大使館が一時負担をするということが通常でございまして、その通常の形式がそのままこの件についても行われたということでございます。さらに調べるようにいたします。
○中野(寛)分科員 終わります。
○相沢主査 これにて中野寛成君の質疑は終了いたしました。 次に、井上泉君。
○井上(泉)分科員 きょうの夕刊の記事、そしてまた号外、すべてに一面のトップ記事として、谷口被告無罪、財田川事件の再審の判決、これが大きく取り上げられておるわけですが、この再審のことにつきましても、これを強力に推進をした矢野元判事、弁護士が、この裁判所の中に届いておった手紙を五年ぶりに見出して、そのことによって、これは谷口君が無罪である、こういう確信の中で、裁判官としての活動に限界を感じて弁護士になってやられた。そういう形の中で、この長い長い闘いの結果、きょうの無罪、こういうことになって事が報道されたわけですが、これは正義感の強い、そしてまた正義と人権を守らなければならぬ法務大臣といたしましても、私はこれについてしかるべき考えがあろうかと思うわけですが、どういうふうなお気持ちを抱いたでしょうか。
○住国務大臣 死刑という重大な事件につきまして、再審によりまして無罪という判決が出た、このことにつきましては、いろいろな角度から慎重に検討を加えて、今後こういうような問題が起こらないように十分配慮をしなければならない、私はこういうことを感じておるわけでございます。
○井上(泉)分科員 今後慎重にというのは、真実が立証されてその結果無罪になったということに対して、まだ法務大臣としてはこのこと自体を慎重に考えなければいかぬと考えておるのか。こういうふうな結果が出た以上は、検察当局としてもこれを控訴するとかそういうような愚かなことはもうやるまい、そう思うわけですか。まだそのことについても慎重に検討する、こういうことですか。
○筧政府委員 お答えいたします。 ただいまの判決につきましては、本日言い渡された段階でございまして、現在その内容を検察当局において検討中でございます。したがいまして、控訴するかどうかは、これから慎重に検討した上、決定されるものと考えております。
○井上(泉)分科員 それはそつのない言い方だと思うわけですけれども、そのことは、結局、再審というものによって無実が立証されてきたわけなんで、再審というものがいかに大事なものであるかということ、このことは法務大臣としても十分心せねばならないことだ、私はこういうように思うわけですが、どうでしょう。
○住国務大臣 再審制度があるわけでございますし、特に死刑という問題についてこういう判決が出た、こういうことにつきましては、これは私は深刻に受けとめておるわけでございます。
○井上(泉)分科員 深刻に受けとめるのは結構ですけれども、受けとめることによって、現在の再審法というもの、つまり再審が決定されてから今日まで、谷口さんの場合にも七年かかっておるわけですよ。ところが、まだ中では再審を要求してもなかなか再審の決定が得られない、こういう方がおるわけでありますし、そういう点からも、再審法というものは今日もう改正をしなければならぬ、こういう議論が法曹界の中にも非常に強く出ておるわけで、そういう点からも再審法改正を検討すべき今日の段階ではないか、私はかように思うわけです。 そこで、例えば狭山事件の石川一雄君、これも現在無期懲役で服役中でありますが、新しい証拠がたくさん出て、そうして再審を要求しておっても、なかなか再審が認められるような状態にはなっていない。これはあしたになるかもしれない、あさってになるかもしれないけれども、今までの情勢によると、なかなか再審の決定が出ない。再審の決定が出てから、今度は七年も十年もかかったら、これはなかなか出所ということは考えられない状態になる。 そういう点からも、今日段階に即応した再審法の改正、つまり刑事訴訟法が改正されても、再審の問題についてはそのまま何らの前進を見ていないわけですから、そういう点からも再審法の改正をすべきであるという意見を強く申し上げておくと同時に、特に占領下の死刑囚というか、死刑判決を受けた者が七人おる。その七人の中で今日残っておるのは、いわゆる帝銀事件と言われる平沢さんがただ一人である。このことは大臣も御承知でしょう。
○住国務大臣 ええ、承知いたしております。
○井上(泉)分科員 この平沢さんは今日九十二歳という年である。そして、三十四年という長い年月の間拘置所の中におるわけですが、その平沢さん、いわゆる占領下における死刑囚については再審をすべきだということで、西郷法務大臣のときに、法務大臣が法務委員会でそのことを述べられて、その述べられたことによって、平沢さんの釈放というものも近いのではないか、私どもはこういうように非常に喜んだわけです。私も西郷法務大臣のところへ面会を求め、平沢さんの釈放について要請した記憶があるわけですが、幾ら法務省でも、行政府の一環としては、やはり行政府の一貫性というものから考えて、西郷法務大臣が言ったことは歴代法務大臣が受け継いでしかるべきだ、こう思うわけですけれども、そういう点について法務大臣はどうお考えになっていらっしゃるでしょうか。
○吉田(淳)政府委員 当局の方からお答えを申しますが、当時西郷法務大臣が昭和四十四年七月八日、衆議院法務委員会で御指摘のような点についてお答えをしております。 その答えの要点を申し上げますと、「犯情、行状並びに犯罪後の状況等にかんがみまして、特に恩赦を行なうことが相当であると認められるものにつきましては、これを行なうべきこともまた当然でございます。」ということを前提にいたしまして、「今般この再審特例法案が提案されましたことを契機といたしまして、この法案の対象となるもののような死刑確定者に対しましては、この際、さらに右の観点から十分の検討を遂げ、恩赦の積極的運用について努力いたしたいと考えておる次第でございます。」というふうに答えておられます。この趣旨につきましては、西郷法務大臣がお答えになった趣旨は以上のとおりでございます。
○井上(泉)分科員 そのことは今日も法務省の中に生きておる、こう理解していいでしょうか。
○吉田(淳)政府委員 お答え申します。 当時の大臣のおっしゃいましたことは、ただいま申しましたように、犯情、行状並びに犯罪後の状況等にかんがみて、特に恩赦を行うことが相当であると認められるものについては、これを行うべきことが当然であるとおっしゃった趣旨は、そのとおりだと思っております。
○井上(泉)分科員 今日もそうだとしても、七人のうち一人が処刑をされて、そうして残る六人のうち三人は恩赦、特赦を受けている。それであとの三人のうちの二人が免田さん、谷口さん、これが全部再審で無罪になった。残るのは平沢さんただ一人になっておるわけですが、平沢さんがなぜ残っておるのか、そういう点については、せっかくの西郷法務大臣の言ったことが事務当局において握りつぶされておった、こういうふうに考えざるを得ないわけですけれども、そういうことがないとするならば、これはやはり平沢さんの場合にも特赦を検討すべきである、こう思うわけですが、これはひとつ局長ではなしに、大臣としての見解を承りたいわけです。
○吉田(淳)政府委員 まず、私の方からお答えさせていただきます。 平沢貞通の恩赦出願に対しましては、御承知のとおり、過去三回恩赦不相当の議決がなされております。最後は昭和五十五年十二月十六日でございましたが、同月二十二日付で代理人の方から第四回目の特赦、恩赦の出願がなされております。この点は中央更生保護審査会におきまして現在、先ほどお話があったかと思いますけれども、同人につきましてさらに再審請求が係属中でございまして、そういう司法の裁判所に再審請求が係属しているという推移、その事件の審理の推移等を見ながら、慎重に審理が行われるものというふうに考えております。
○住国務大臣 いろいろな過去の経緯につきまして承知をしておるわけでございますけれども、現在恩赦の件につきましては、今も説明がございましたように、中央更生保護審査会でこれは係属しておりますので、私からとやかくこの件について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。
○井上(泉)分科員 それほど遠慮していると、これは法務大臣としては何のために存在をするか、こういうふうに思わざるを得ないわけですが、やはり法務大臣としてのきちっとした姿勢というものがそれぞれの担当局の日々の業務の上に生かされるようになるべきだと私は思うわけですけれども、今法務大臣の言葉をお聞きすると、何か私はこれは造船疑獄だとかあるいは田中問題だとかいうようなことでの指揮権発動とは全く趣を異にするわけなので、その点についても私はきちっとした処理を進めていただきたいと思います。 その後再審の請求も出させる、それはもちろんそうです。しかし、それよりも今日はもう平沢さんを出してもらいたい、出してくれ、こういう要請を強くしておる。それよりもというと、出しておることに対して悪いのですけれども、私はそういうことを強く要求をしてまいったわけですが、殊に日本では昔から九十歳以上の者あるいは七歳以下の者、そういうものは、たとえ死刑に当たる罪を犯したとしても、これを罪しないということに古来からなっておる。これは人権擁護の精神から法の根幹になっておるわけで、既に今日平沢さんが二月十八日で九十二歳になりました。その年齢から考えても、そして日本の古来からの伝統的な人権擁護の精神から考えても、これはやはり法務大臣が特赦の道を一日も早く講ずるのが法務大臣としての極めて大切な任務ではないか、こういうふうに私は思うわけですけれども、そういうふうなお気持にはならぬですか。
○住国務大臣 先生百も御承知のことで、こういうことを殊さら申し上げるのもどうかと思うのでございますが、中央更生保護審査会で恩赦、特赦のことを扱っておるものですから、私からとやかく言うことはできない。これはもう先生も御承知のとおりだと思うのでございます。そこで十分判断をしていただけるものだというふうに考えております。
○井上(泉)分科員 しかし、僕には何らの権限もない。そのことをあなたに要求をして、そうして法務省の行政措置として平沢さんの一日も早い釈放をお願いするということ以外に、私は議員としての力は何もないわけですから、私がこれに関係し出したのは西郷法務大臣のときからでありますが、歴代法務大臣にこのことについては陳情もし、要請もしてきたわけであります。まだあなたにはそのことを要請に行く日程がなくて、この問題についてはじかに要請には参っていないわけでありますけれども、私は平沢さんが今日まで、九十二歳というこれまで頑張ってこられたということは、やはり自分が無実である、その無実が立証されて、そして釈放されるまでは断固として死ぬことができない。私も何回かお会いをしたわけですが、そのときにいつも言う。これは百まででも私は生きます、頑張ります、まさにそういう悲壮な真実を求めるその気持ちというものに、会うたびに涙せざるを得ない心境になるわけです。何でこんなに、九十二歳にもなった者をいつまでも拘置所の中にとどめておくのだろうか。再審の要求を出して、仮に再審が決定されても、免田さんの事件を見てもあるいは谷口さんの事件を見ても、決定から裁判まで、判決までの時間というものは道のりは随分遠いわけですから、そうなりますと、これはもう百まで絶対かかる。人間の命ですから、百歳で死ぬとか百五歳で死ぬとかいうことは言えませんけれども、およそ常識を超えた、本人が健康管理にも十分意を用いて今日まで生きておるわけだから、やはり私はそのことから考えても、いわゆる人権を守るということなり、それから法の情というものを考えても、もう平沢さんを釈放してしかるべきではないか、こういうことを私は常に思うわけですけれども、中央更生保護審査会で審査する、これもたびたび聞く言葉なんですけれども、ちっとも結論が出ない。これはどうなっているんですか、審査会の審査の状況というのは。
○吉田(淳)政府委員 お答えいたします。 中央更生保護審査会におきましては、昭和五十五年十二月二十二日付で恩赦の四回目の出願を受けて以来、審査会において、その立場におきまして慎重に検討されているものというふうに思います。 ただ、いろいろ御指摘いただいた点、あるいは昨年もそうでございますけれども、いろいろ要請がこの問題についてございます。そういうことにつきましては、いずれもその都度審査会の方にも全部報告いたしまして、すべてこれを十分承知しておるところでございます。審査会の委員の方々は、私から申すまでもなく、国会の承認を得ました、それぞれ学識経験に富んだ方々でございますし、司法にもいろいろ関係をした方々も含まれております。ただいま御指摘のような点も十分踏んまえておると確信しておるのでございますが、ただ一言私の立場から申し上げさしていただければ、現在再審請求事件が係属している、やはり司法の裁判所が事実の問題についてその取り扱いをどうするか、これについて司法の裁判所が決定をしなければならない立場にいるわけでございます。中央更生保護審査会と申しましても、やはり行政機関の一種でございます。その辺につきまして、十分中央更生保護審査会としても慎重に、再審の請求事件の推移を見守りながら対処していくということは、やむを得ない点があると思うわけでございます。
○井上(泉)分科員 私は、鈴木人権擁護局長にお尋ねをするわけですが、これは九十二歳のお年寄りを、そして無実を訴え続けておるこういう人たちを今日まで三十五年も獄舎にとどめておくということは、人権問題から考えてもどうかと思うわけですけれども、人権を守るという立場から考えてどういう御心境にあるのですか。――おいでじゃないですか。
○吉田(淳)政府委員 人権局の関係者がおりませんので、私の方から答えさしていただきたいのでありますが、ただいま御指摘のような点も含めまして、中央更生保護審査会では、慎重に再審請求事件の推移を見守りながら審理を行うというふうに考えております。
○井上(泉)分科員 保護局長、非常に温厚な人柄のように考えられるわけですが、そういう温厚な人柄である以上、やはり温かさというものがあるんじゃないか。いわばいんぎん無礼という言葉があるけれども、そのいんぎん無礼という言葉は保護局長には当たらぬのではないか。私もたくさんの人に接するわけですから直観的でありますけれども、そういうふうに感ずるわけであります。あなたの言われていることにうそがあるとは思いません。うそがあるとは思いませんけれども、少なくとも三十五年も獄舎の中におって、そうしてそのときの事件というものが、何一つ物的証拠もない中で平沢さんは死刑の判決を受けている。 過日私が平沢さんの話をしておったときに、平沢さんとはどんな人ですか、こう言うから、僕も最初は非常に、白衣を着た、すらっとした長身の人だ、こういうふうに思っていたら、平沢さんにお会いしたところが、あにはからんや長身どころか、背も僕より小さい。そうして体重も大体四十五キロから五十キロの間、本当に優男であって、その瞬間にも、あの当時の新聞記事に載った平沢さんの写真と称せられる、白衣を着ておる平沢さんとは似ても似つかぬ、想像もできないような温厚そのものの人柄でありますよ、こう話をすると、いや私たちも平沢さんは、うんと背の高い人だったか、こういうふうに思ったけれども、そうですか、こう話をしておったわけです。 それで、きょう無罪が確定された谷口さんも、自分の無実を立証するために血のにじむような努力をし、その努力を、裁判所の判事さんがそのことに対して大きな力になってくれて今日の結果になったわけですけれども、絶えず仏画をかく、あるいはまたマリアの像をかくとかいうようなことをしておる。人間の、心のよい者でなければ、そういうことはできない。平沢さんもそういう像を絶えずかき続けている。それから見ても、平沢さんの心というものがいかに純粋なきれいな、芸術を愛する、芸術に打ち込むひたむきな心境にあるということを私は肌で感ずるわけです。あなたも一遍どんなものだろうと、保護局長でありますから、自分が保護の衝にある者として、平沢さんどうだろうと一遍面会にでも行かれたらどうですか。そんな気持ちは起こらぬですか。
○吉田(淳)政府委員 ただいまのようなことをするかどうかはともかくといたしまして、私どもといたしましては、このような事件につきまして恩赦の出願がなされておるわけでございます。したがいまして、中央更生保護審査会がいろんな事情をすべて勘案しながら審理を進めるものというふうに考えておるわけでございまして、いつどのような結論を出すかということについては、私から申し上げることはできないわけでございます。
○井上(泉)分科員 死刑が確定後三十年おれば、死刑の時効が完成して執行が免除されるという規定が刑法三十二条にあるわけですが、来年の五月が来るとちょうど平沢さんは三十年を超すわけになる。こうなりますと、今の刑法の条項からいっても、もうぎりぎりの線に来ておる。来年の五月が来れば法的に時効ということになるわけですが、これはどうでしょう。刑事局長、専門家ですから、これについてはどういうふうにお考えになりますか。
○筧政府委員 平沢の時効の点でございますが、今先生御指摘の三十年経過によりましても、平沢氏の場合には時効が完成しないというふうに私どもは解釈いたしております。
○井上(泉)分科員 その時効が完成しないという理由は、どういうところですか。この法律は空文ですか。
○筧政府委員 その理由でございますが、申し上げるまでもなく、時効と申しますのは一定の期間刑罰権が行使されないことによりましてそれを消滅させる制度でございます。したがいまして、現に刑が執行されている間は、もともと時効の進行という問題を生じる余地はないものというふうに解されるわけでございます。 ところで、死刑の執行に至るまでの拘置といいますものは、死刑の執行のために法律上当然に予定されておる身体の拘束でございまして、死刑判決という裁判の執行としてなされるものでございますから、拘置が現に行われている以上、時効に関しましては刑が執行されている場合と全く同視すべき状態にあるのでございまして、その間は時効の進行の問題は生じない、このように解しております。
○井上(泉)分科員 それは刑を執行したらもう釈放も何もない、命がなくなるわけですから。それでは、刑法三十二条によって、刑の執行はもうしない、死刑に対する時効という条項があっても、実際問題としてはこれは当てはまるようなことはない、こういうことですか。
○筧政府委員 刑法三十二条の解釈といたしまして、時効の制度の本来の趣旨等から解しますと、今私が申し上げたような解釈をいたすべきであるということでございます。
○井上(泉)分科員 それでは、解釈ということになると、その解釈のしようによっては時効もあり得る、こういうことになるのですか。
○筧政府委員 私どもはそのように解しておるということでございます。
○井上(泉)分科員 人の命を絶つか絶たぬかという大事なことでありますので、そういう点では、この事件の実情から考えて、そして平沢さんの今日までの訴え、再審の願い、そういうものを考えましても、平沢さんの場合にはこの条項を適用するのがやはり法の精神の解釈の仕方ではないか、私はこういうふうに思うわけですけれども、あなたたちは一遍こうやってやったら、例えばきょうの谷口さんにしても、死刑を求刑しておったから、それで今ここで、裁判で、判決で無罪になったといっても、これは必要な書類が来てないからまだそれらを精査してみなければ控訴するかしないかということは決められないというような形で、何とかして罪につけよう、刑を執行させようという心境で法というものを運用しているのですか。
○筧政府委員 どういう気持ちとおっしゃられても困りますが、やはり刑法あるいは刑事訴訟法、刑罰の問題は、実体的真実を発見してそれ相応の刑責を問うということのほかに、人権保障ということも常に考えなければならないことと考えております。それらの精神を体して、私ども各条文の解釈をいたしておるつもりでございます。
○井上(泉)分科員 時間がないので、きょうの谷口さんの問題の方は、物的な証拠がないという中で死刑が決定されておる、しかしそれはやはり疑わしきは罰せずという大原則が再審で貫かれたということになるわけなので、そういう点からも、平沢さんが再三再四再審を出しておるということは、そこに大きな疑点を持っておるということを何よりも立証しておるものだと思うわけなので、私は、平沢さんの再審の早期実現、さらにはそのことを踏まえて、年齢的なもの、そして今日までの拘置所における拘束の年数、そうしたものを考えても、法務大臣としては速やかに特赦の道を検討していただきたい。ここですぐという返事はいただかなくても、検討するだけの余裕は持って対処してもらいたいと思うが、どうでしょうか。
○住国務大臣 何回も繰り返すようで恐縮でございますが、とにかく、中央更生保護審査会で現在審査している最中でございますから、その結論を待ちたい、こう考えております。
○井上(泉)分科員 では終わります。
○相沢主査 これにて井上泉君の質疑は終了いたしました。 次に、春田重昭君。
○春田分科員 私は外国人登録法の改正問題につきまして、先ほど同僚議員の同じような趣旨の質問があったと思いますが、この問題につきまして御質問したいと思います。若干重複する点があると思いますけれども、御了解いただきたいと思います。 外国人登録法では、我が国では指紋の押捺制度を採用しているわけでございます。この制度につきましては、在日外国人、また学者や専門家の間では、存続また廃止、さまざまな論議が展開されているわけであります。法務省の見解をまずお伺いしたいと思います。
○田中(常)政府委員 お答えいたします。 在留する外国人に対しまして、入管行政を初めとして教育、福祉、社会保障、その他各般の行政を的確に遂行するためには、在留外国人の身分事項それから居住環境を的確に把握することが必要と考えられております。したがいまして、この見地から外国人登録法は指紋制度を採用しているわけでございます。 それでは、指紋以外に外国人の同一人性を確認する方法があるかということでございますが、まず、サインというわけにはいかないわけでございます。サインは、我が国においては社会慣習化されておりません。また、我が国に在留する外国人の大部分はアジア人でございまして、これも同じようにサインということが社会慣習化されておりません。また、サインが社会慣習化されております米国においても、外国人の同一人性を確認するためには指紋制度を採用しているということもつけ加えて申し上げたいと思います。 〔主査退席、中村(正三郎)主査代理着席〕
○春田分科員 今日までの法務省の見解をいろいろ調べてみますと、この登録制度を採用している理由としては、登録証明書の不正発給、偽造を防止するためである、さらに、登録証明書の正当な所持する人を証明するために必要である、このような理由が出されているわけでございますけれども、私は不正利用のチェックは、今お話がございましたけれども、もっと工夫すればできないことはないと思っているわけでございます。 例えば、先進国のいろいろな登録制度の内容を調べてみますと、法務省も御存じのとおり、先進国の中では英国、西ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、こうした国々の九カ国が、いわゆる完全な義務化ではなくして部分的な義務化をしている。例えば英国では「外国人登録証明書及び警察側の登録カードに署名するが、識別可能な署名のできない場合に押捺する。」西ドイツの場合は「身分または国籍に関して疑いのある場合には、強制的に鑑識調査を実施できるため、その際に指紋押捺を強制できる。」フランスが「有効な旅券またはこれにかわる証明書を所持せずに入国した外国人に対しては、本人であることを識別するため、指紋の押捺が要求される。」こういったいわゆる部分的な義務化を課しているわけでございます。そういった面で、完全に押捺義務化をしているのはアメリカ、日本、それからスペインですか、三カ国だと聞いているわけでございます。私は、こうした先進国の例も十分に参考にしながら、我が国でもいわゆる緩和措置といいますか、制度改正ができないものか、こう思うわけでございますけれども、法務省の御見解をいただきたいと思います。
○田中(常)政府委員 委員御指摘のとおり、ヨーロッパの九カ国においては部分的に指紋押捺制度を採用しております。ただ、ヨーロッパ各国は、日本と違った方法によって在留外国人の同一人性を確認しているわけでございます。 まず写真、これは日本でも同じようにやっております。 それから、サイン。サインにまつわる問題は、先ほど御答弁いたしましたように、日本では社会慣習化されておりませんが、ヨーロッパ各国においては社会慣習化されて、同一人性を確認するための手段として非常に有効に利用されております。 それから、ヨーロッパ各国、特にフランスとかスイスなんかでは、日本にない制度があるわけでございます。それは、ヨーロッパ各国は外国人の登録を担当している省は内務省、具体的には警察でございますが、警察官が、外国人がその国を移動することを確実に把握している制度があるわけでございます。特にフランス及びスイスにおきましては、職業的または非職業的を問わず、外国人に居所を提供した、もっと簡単に申しますと外国人がホテルヘ泊まったということになりますと、ホテルの経営者は二十四時間以内にそのホテルに泊まった事実を地元の警察署に報告するわけでございます。したがいまして、そういう形によって国内を移動する外国人というものを確実に把握する、そういう制度がありますが、日本にはそのような制度はございません。 私、思いますに、各国の登録制度というのは、その国の歴史的、社会的、経済的経緯がございまして、それぞれ独自の制度があるわけでございますが、一般的に眺めまして、独自の出入国管理機構を持っている日本、韓国、米国というような国は、指紋押捺制度ということをもって外国人の同一人性を確認している、そういう姿になっております。
○春田分科員 在住外国人に対して指紋押捺の制度を要求している国というのは、世界の中で何カ国ぐらいあるのですか。
○田中(常)政府委員 我々約五十カ国について調べまして、そのうち全面的または部分的に採用している国を数えますと三十三カ国でございます。実は、我々調べるに当たりまして、例えばソ連、共産圏、これは初めから調査の対象外にしております。委員もよく御存じだと思うのでございますが、ソ連、共産圏はそれぞれユニークな出入国管理制度というものを持っておりますもので、我々の参考にならないということで初めから外しておりますし、またアフリカ諸国等々につきましても、それぞれユニークな出入国管理制度を持っておると思いますもので、調査の対象にいたさなかった次第でございます。
○春田分科員 いずれにいたしましても、世界百六十数カ国の中で三十三カ国しか実施していない。こういう面から考えてみても、また完全実施しているのは三カ国ぐらいであるという点から考えても、これから国際化社会に向かっていく中にあって、また世界は一つという点から考えても、私は、国際社会の中で生きていくためには、日本はそうした制度そのものもやはり見直していく必要があるのではないかという考え方を持っているわけでございますので、そうした先進国の例も十分参考にしながら研究をしていただきたいと思うわけでございます。 さらに、こうした拒否をする方たちの中からは、人権侵害という問題がよく言葉に出てくるわけでございまして、指紋というと犯罪を連想させるものである。また、国際人権規約の第七条には「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。」この「品位を傷つける取扱い」に当たるのではないか、こういうような主張をなさっております。御存じのとおり、国際人権規約は我が国は七九年に批准しております。さらに、憲法十三条の個人の尊重、十四条の法のもとに平等、こうした我が国憲法に照らしてみても人権侵害の疑いがあるのではないか、こういう主張、強い声があるわけでございますけれども、この点に対して法務省はどういう御見解をお持ちですか。
○田中(常)政府委員 お答えいたします。 まず、人権規約との関係でございますけれども、あることがあったときにそれが人権に違反しているか違反していないかというのは、受けとめ方というのは、人によっていろいろパーセプションもございますが、これを人権規約に照らして我々考えますに、人権規約等にはいかなる意味においても違反していないと考えております。 委員御指摘の第七条でございますけれども、いかなる意味においても人の品位を傷つけることがないということは、実はその条項ができました討議経過を克明に調べますと、それは第二次大戦のときのナチスドイツのコンセントレーションキャンプにおける生体実験を前提としたあれでございまして、生体実験のようなものはいかにもひどいではないか、そうかといって、はっきり生体実験と書くわけにもいかないもので、人間の品位を傷つけるようなものはいかぬという表現になって、その条項ができ上がったと考えております。 それから、今委員御指摘の憲法第十四条でございますが、私の記憶が正しければ、確かに法の前において平等という項目がそこに入っていたのではないかと思うのでございます。この問題でございますけれども、現代の国際社会というものは、やはり主権国家が併存しているということを前提としてすべてでき上がっている構造でございます。そして、その構造ということを前提にしますと、内国人と外国人との間で身分事項、基本的な地位についての差異というものがあるのはやむを得ない事態でございます。それで、基本的な差異がある以上、やはり取り扱い上においても差異というものが出てくるのではないかと思います。 それこれ等考えますと、内国人と外国人というものを区別するというのは、何も日本だけの問題ではございませんで、これは国際慣行となっていることでございます。
○春田分科員 さらに、日本で生まれた、また日本で育った二世、三世にも十六歳になれば強要されるわけでございます。彼らが母国に帰って生活するということは考えることはできないわけですね。ほとんど日本で生活し、永住する方たちばかりであります。また、彼らは、要するに十六歳という年齢は自我に目覚める多感期なんですね。そういった面からも、この指紋押捺を強要することは教育上でも非情にまずい。要するに踏み絵なんですね。そうしたいわゆる大人社会へ出発するための一つの踏み絵にもなってくるという点から考えれば、社会的にも大きなマイナスになってもプラスにならない。こういった点から、全廃とは言わないまでも、こうした二世、三世の方たちについては何とか軽減措置ができないか、緩和措置ができないか、私はこういう考え方も持っているわけでございますけれども、こうした方々に対しての法務省のいわゆる緩和措置といいますか、それを望むわけでございますが、どうでしょうか。
○田中(常)政府委員 委員御指摘のとおり、在日韓国人の二世、三世は確かに日本社会に非常に密着している人々でございます。我々といたしましても、この人たちをどういうふうに取り扱うかというのは非常に重要な問題でございますし、また日韓両国の友好親善というのは、今後とも我々としては一生懸命に増進したいという気持ちは非常に持っているわけでございます。 しかしながら、日韓地位協定に基づいて永住資格を与えられた在日外国人、具体的には韓国人でございますけれども、その特殊な立場を考慮いたしましても、なおかつ我が国に外国人として居住しているわけでございますもので、やはり外国人として取り扱わざるを得ないわけでございます。その外国人登録の基本は、いかなる在留経緯を持とうと、いかなる国籍を有そうと、すべての外国人と同様に取り扱うということが基本でございます。それで、これらの日本社会に密着した人々でございますけれども、いろいろせんじ詰めましても、これらの人たちは韓国籍を持った方々で日本人ではないわけでございます。それからまた、これらの人々は韓国に忠誠を誓った人々でございます。したがいまして、我々はやはり外国人と内国人というものに対しては区別をせざるを得ないと考えておるわけでございます。
○春田分科員 近々国籍法の改正案が国会へ提案されるみたいでございますが、この改正案が出れば、従来の父系主義から両系主義になってくるわけでございます。となれば、いわゆる親権者の届けいかんによりましては、兄弟姉妹の中でも押捺する人としない人に分かれてきて、兄弟の中、家族の中でも溝ができてくるわけでございまして、こういった点も考えてほしいと思うわけでございます。 さらに、切りかえの時期が三年から五年になったということで評価する人もいるわけでございますが、やはり切りかえのたびに押捺の義務があるわけです。写真とかといったものは歳月とともに変わるかもしれませんけれども、指紋というのは変わらないわけでございますので、そういった面からもこの指紋を保存しておけばいいわけでございまして、要するに切りかえのたびに押す必要はないわけです。こういったいわゆる切りかえ制度についてもこれは廃止すべきではないか、こういう強い意見が出ております。私は、こういった面でも法務省の軽減といいますか緩和を強く望むわけでございますが、こういった面でもひとつ善処していただきたいのです。どうでしょうか。
○田中(常)政府委員 お答えいたします。 我々は、外国人の同一人性を確認するために指紋制度を採用しているわけでございますけれども、一度指紋をとる以上、せめて五年以内においては再度指紋をとって、そしてその在留する外国人の連続性と申しますか、継続性というものを確認いたしたいと考えておるわけでございます。 在日韓国人の件でございますけれども、現在、毎年約五千件の自分の姓名の訂正申告または生年月日の訂正申告がございます。姓名とか生年月日等は、身分事項の中でも非常に基本的なものでございますが、それについて訂正申告が五千件ほどもあるということに接しますと、きのうまでのAさんときょうからのBさんというのは同じであるかないかということが、やはり根本的に問題になってくるわけでございます。こういう事態を踏まえますと、その在留している外国人が我が国において連続しているんだということを確認するためには、どうしてもやはり最終的には指紋に頼らざるを得ないと考えておる次第でございます。
○春田分科員 毎年五千件ものそうした修正申告といいますか、案件が出てくるということでございますが、もっと別な考えでやればできないこともないわけですよ。そういった面で、こうしたいわゆる二世、三世の問題、また五年ごとの切りかえ時の押捺制度については、考える必要があるのではないかと私は思うのです。 それから、外国人登録証の常時携帯についても異論を唱える人がたくさんおるわけです。私も先日、民団のある方に会いましたけれども、特に夏なんか困ってしまうと言うのですね。そのたびにかえるわけですから、つい忘れてしまう。そういった面で、永住権を持っている人につきましては常時携帯はいいのではないかという意見も強いわけです。この点はどうですか。
○田中(常)政府委員 委員の御質問でございますけれども、非常にかたい答弁になってしまいますけれども、外国人登録法の目的の一つは、いかなる外国人がどこに住んで、いかなる職業を持っているかということを確実に把握することでございます。外国人は日本において社会生活を行っておるわけでございますから、その生活の場において直ちにその人がいかなる外国人であるかということを把握することが必要だと考えております。 委員御指摘のように、例えば夏暑いときに入れる場所もないということを指摘されるとつらいのでございますけれども、しかし常時携帯というのは非常に必要なことでございまして、しかし、常時携帯を的確にやると申しましても、しょせん法というのは常識的に運用されるものと考えております。
○春田分科員 時間もございませんので、最後に大臣の御見解をお伺いしたいと思うわけでございますが、この指紋押捺制度につきましては、直接の窓口になります地方自治体においても、いわゆる全廃ないし軽減措置をとっていただきたいという声が非常に強いわけです。また、この指紋押捺の制度改正につきましては、今署名運動が非常に盛り上がっておりまして、国会にもそうした請願があるやに聞いておるわけでございます。また彼らの主張とすれば、日本に住んでいて税を初めいろいろな義務が強要されるのに、一方ではそうした権利が得られないというのは差別ではないかという意見もあるわけでございます。そういった面では、この問題につきましては局長の御答弁は、法務省のガードは非常にかたいわけですけれども、そうした盛り上がった中で今改正要求が強いわけでございますから、大臣におきましても、全廃は無理としても、若干の制度改正、軽減ができないかという点で照らしてみて、ひとつ検討していただきたい、こう思うわけでございますけれども、大臣のひとつ前向きな御見解をいただきたいと思います。
○住国務大臣 私ども外国人登録、これは日本の国内でいろいろの活動をしていただくわけでございますが、これは外国人であるだけに、その取り扱いに手違いが起こったりしますと、国際問題その他大変なことになるということも十分考えられるわけでございます。したがって、身分関係、居住関係等を正確に把握しておるということは、一面には外国人に対する配慮からきておるわけでございます。 日本の今までの経緯、そして法改正の経緯等を考えてみますと、この登録制度は逐次改善はされてきておりますけれども、それなりのことを考えて、この制度として実際に運用をしておるわけでございます。 地方公共団体等からの要望等についても承知をいたしておりますけれども、今まで局長から答弁申し上げましたように、この制度改正後まだ一年ちょっとでございますし、それほど客観情勢が変わったとも考えておりませんので、今直ちにこの制度をどうするこうするということについては、その必要は今のところないのじゃないか、私はこういうように考えておるわけでございます。
○春田分科員 今の大臣の、客観情勢が変わってないというのは、私は、甚だ認識不足じゃないかと思うのです。客観情勢は変わりつつあるのですよ。法務省は、事件、事故が起こることだけを想定しながらこうした制度存続を考えるのではなくして、人権尊重の立場に立って、そうした方々の立場を考えて、ひとつ前向きな御検討をいただきたいと思うのです。時間がございませんので、この問題についてはそういった点で御配慮いただきたいと思うわけでございます。 最後に、衆議院の定数是正の問題でございます。この問題は法務大臣に直接なじむかどうか非常に難しい問題だと思うのですが、法を守る大臣として、若干の御心境なり御見解をいただけたらありがたいと思うので御質問いたしますが、昨年の十一月七日の最高裁の大法廷で、大都市の住民から訴訟が出ておりました、昭和五十五年の衆議院選挙の訴訟につきまして判決が下されたわけでございます。 御案内のとおり、五十五年選挙の一対三・九四の有権者格差については違憲である、しかしながら選挙自体は合憲とされているわけでございまして、最後に、定数是正は、七年を経過していることであることも考え、できるだけ速やかに改正されることを強く望んでいるという三点、大まかに分けたら大体そうした内容になっているわけでございます。こうした衆議院の有権者格差というものは、今日一対四・四一倍にも広がってきているわけですね。こういった面で大臣、こうした最高裁の判決が違憲という形で出たわけでございますから、大臣としてはどういう御見解をお持ちなのか、お答えいただきたいと思います。
○住国務大臣 法務大臣として最高裁判所の判決を考えてみますと、この最高裁判所の判決が明瞭に指摘をしておるわけでございまして、現実もそのとおりでございますから、こういう判決を考慮してそれに対応していただく、こういうことを私は切に願っておるわけでございます。 議員としては、お互いに違憲議員などと言われると、これは大変面目ないことでございますから、ひとつできるだけ早い機会にこの問題について合意が得られて、違憲議員などと言われぬようにさしていただきたいものだ、こう思っております。 〔中村(正三郎)主査代理退席、主査着席〕
○春田分科員 そんな人任せみたいなことは言わないで、直接作業は自治省がやるわけでございますけれども、閣議等でもあったらどんどん積極的に発言されて、是正の促進を図っていかなければいけないのじゃないかと思うのです。 各党の試案みたいなものも報道されております。例えば、自民党の一部の方々の考えということで大体三倍の格差是正の案が出ておりますし、野党においては大体二倍程度に縮めるという形になっておるわけでございますけれども、大臣自身としては大体何倍くらいがこの時点で妥当なのか、個人的な見解でも結構でございますからお答えいただきたい。
○住国務大臣 今申し上げたとおりでございまして、私は、自治省あるいは国会議員の基本に関することでございますので、各党でもいろいろな検討が行われておる、そしてそれがまとまる方向にいくように願っておるわけでございますし、今も御指摘のように国務大臣として、閣議等で機会がございますれば、この最高裁の判決が生かされるように努力をしてまいりたいと思っております。
○春田分科員 終わります。
○相沢主査 これにて春田重昭君の質疑は終了いたしました。 次に、中西績介君。
○中西(績)分科員 私は、九州産業大学問題について二、三の問題を質問申し上げたいと思いますけれども、まず最初に、文部省大学課長おいでですからお聞きしますけれども、時間がないから簡単に答えていただきたいと思います。 まず第一に、不正受給問題等々たくさんの問題を抱えておる九州産業大学に対しまして文部省は補助金カットを五年間、ペナルティーを科しておるわけですね。そして、もしこれが実現できない場合には継続するということにもなっておりますが、刷新のための改革五項目を文部省から提示をしておりますけれども、このことについて九州産業大学の方から正式に何らかの回答なり措置がされておりますか。
○福田説明員 五項目についての指導は先生も既に御承知のとおりでございます。これにつきまして二月二十六日に一応大学から回答があったわけでございますが、この中で特に理事体制の刷新、運営体制ということも含めてでございますが、この理事体制の刷新等の問題について私どもの指導に対して十分な対応になっていないということで現在まで引き続き指導してまいっておるところでございます。
○中西(績)分科員 そうなりますと、文部省から見て九州産業大学、特にこの鶴岡氏の場合には理事長をやめたと言っておるけれども、今なお公邸に住んでおるし、公用車を乗り回しておるし、理事長室に来ていろいろ学長に対して指示をするようなことを言っておるわけでありますけれども、特にまた副理事長であった平野氏あたりを含めまして、今回の不正受給では一応平野氏がその中心的な人物ということになっておるようでありますけれども、反省をしたという認識を持つことができますか。
○福田説明員 いろいろな経緯で当時の理事長である鶴岡さんが理事、評議員、理事長を辞任した、そしてあわせて若干の理事体制の刷新を図った、こういうことになっておりますが、文部省といたしましては、これにつきましては実質的な改善になっていないということでさらに刷新を求めているところでございます。
○中西(績)分科員 ですから、この五項目について全く改善されてないということになれば、反省をしたというそうした状況は全然ないと確認していいですね。
○福田説明員 大学側が今申し上げましたような事柄をやったということは、大学側としてはそれなりの考えを持ってやったことだと思いますけれども、文部省といたしましては十分な刷新と受けとめていないというふうに思っております。
○中西(績)分科員 十分な刷新をしてないということは、その改革案についても、あるいはこの刷新すべき五項目についてはされておらないということでありますから、常識的に考えれば全く反省の色なし、こう理解をしていいわけですね。ということは、このままでいけば、この五年間どころか将来継続をしてカットをせざるを得ない、こういう状況が出てくるわけですね。
○福田説明員 補助金の問題につきましては、御承知のような状況から今後五年間補助金を出さないということを予告することによって大学側ができるだけ速やかに事態の改善をして正常な形に戻っていくことを期待しておるわけでございますが、これは将来どうなるかという問題がございますけれども、私どもとしては一刻も早く大学が正常化いたしまして立派な姿になっていただきたいということを念願し指導を続けてまいりたいと思っております。
○中西(績)分科員 いや、回りくどいあれではなくて、補助金カット五年間、これはもう示しているわけですから、現状のままではこれを取り消すとかあるいは変更する、こういうことにならぬでしょう。
○福田説明員 現状の段階で補助金を復活するという考えは持っておりません。
○中西(績)分科員 それからもう一点お聞きしたいと思いますが、国際経営学科新設申請のときに十三人の履歴書偽造をやっております。文部省は、もしこの十三人を欠いてそこには全く記入せずにこれを提出した場合、基準に照らしてこの設置認可をしますか。簡単に答えてください。
○坂元説明員 御承知のとおりに、国際経営学科を新設するときに私どもで審査いたしますのは、当該学科の教員組織とそれから教養部の教員組織でございます。 教養部につきまして、たまたま私どもの不明で若干の改ざんがあったという事実を承知しないで、一応問題がないということで認可をいたしました。国際経営学科の方の教員組織はちゃんとしておりましたので、教員組織上は問題ないということで認可をいたしましたが、仮にそういう事実が明確にあの段階で私どもにわかっておれば、私どもとしましては、一応申請を取り下げなさい、教養部の教員組織を充実することが先ではないかという行政指導を強くしておったであろうというふうに考えております。
○中西(績)分科員 恐らくこのように申請を出しても、そういう十三人を完全に欠如したということになれば申請書を取り下げさせる、こういうことですね。そう理解していいですね。 そうしますと、同じくこの新設の申請書を提出する書類の中に教授会の新設同意の議事録なり確認書が必要だと思いますが、これがまた偽造されて出されておるわけですね。したがって、もしこの議事録を提出しなかった場合には、認可しますか、どうですか。
○坂元説明員 今先生から御指摘がございました議事録という点は、私どもの認可申請をする申請書の中に添付する書類の一つとして、当該申請にかかわる部分に関する学内の決議書とかそれから議事録を添付しなさいというふうになっております。当然私どもとしまして、まず学校法人の最高の意思決定機関であります理事会の議事録というものはいかなる認可申請の場合でも添付しなければならない。それから教授会の議事録を添付する場合は、個々のケースによって違うわけでありますが、ちょっと長くなって恐縮でございますが、例えば新しく大学をつくるなんというときは教授会がない、それから新しく学部をつくるという場合は関係学部が教養部だけでございますが、そういうような場合で個々新しく大学をつくる場合それから新しく学部をつくる場合を除きまして、学科増設の場合には、関係学部としまして教養部の議事録と当該学部の議事録は添付するようにということで指導いたしております。 その場合に、その議事録の持つ意味というのは、最高の意思決定機関であります理事会の議事録があることは当然でありますが、学部あるいは学科の増設という教学側に極めて関係のある部分については教学側のコンセンサスを十分学内で得ていなければならないという考え方で、それの証拠になるものとして議事録の添付を私どもとして求めておるところでございます。 もし、私どもに申請があった段階で教授会の議事録が改ざんされておったというようなことが極めて明確であった段階では、私どもとしましては、先ほど申し上げました教員の数の場合と違いまして、その場合にはもう一度関係学部の、九産大の場合ですと教養部の教授会のコンセンサスを明確に得たんだという議事録を持っていらっしゃいと言って、これは申請書を取り下げるということではなくて、申請書の添付書類を補正させるという手順を踏んだであろうというふうに考えております。
○中西(績)分科員 そうしますと、最後に聞きますけれども、その際に、教授会の議事録というのは形式か何かを問うておるわけですか。
○坂元説明員 特に形式は問うておりません。
○中西(績)分科員 そうしますと、教授会の同意を得たという場合には印鑑か何かついているのか、全くそういうものなしに、ただ書きっ放しでいいのか。
○坂元説明員 認可申請書に添付する書類でございますので、私どもとしましては、それは当該大学の理事長名で認可申請書が出てくるわけでございます。そこの中の附属資料として議事録が添付されておるわけですから、個々の議事録の中には、理事長が署名し印鑑をつくようにという、そういう形式的な求め方はしておりません。
○中西(績)分科員 いずれにしましても、これをちょっと見てください。こういう形式のものが出ていたと思うのですね。あなたじゃなかったからわからぬと思うけれども、議事録、それでもってかえておると思うのですね。これは後でまた聞きます。一応文部省、それで終わりますけれども、後でそうした問題についてちょっとお聞きします。 時間がありませんから、次に、法務省の方にお聞かせいただぎたいと思うのですけれども、今、いろいろずっと文部省の方に聞きましたけれども、特にこれは大学課長なんか知っていると思いますけれども、国際学科の新設の場合には、これは五十五年にやったわけですから、その前年に、五十四年度に流通経営学科の申請をして不認可になってますよ。そうしたことがあってその明くる年には、今度こういうふうに変えてやったわけですよ。ですから、前の年にはそうしたものが不認可になっている。そういう経緯があって、そしてまた今度同じように不認可になるべきはずのものがこうしてやられたということをまず法務大臣、ちゃんと認識の中に入れておいてください。これは後で私が問題指摘をするときに大変重要な課題になりますから。 そこで、まず一点聞きたいと思いますのは、補助金の不正受給の問題でありますけれども、これは、この前から法務省の刑事局の方からおいでいただいていろいろ理由を聞きました、新聞に出ているのでは信頼できませんから。そうしたところが、この補助金不正受給の問題で、当時、平野副理事長がそうした不正受給をした事実があったということは明らかです。ただ、これが今度は不起訴になっておりますね。不起訴になった理由は、二十五億返済した、反省している、私学財団から告訴状が出ていない、こういうことを言っています。 ところがその中で、ちょっと新聞に出ておったので聞いたのだけれども、そういうことは全然言ってないということになっておりますが、地検が財団の理事を呼んで告訴を求めたが財団は応じなかった、こういうことを正式に記者会見の場で当時の検事正から発表されておるんですよ。このことが、言っておらないということを言っておったんですけれども、この点はどうですか。再度私は、その記者に聞いてもらったんです。そうしたら、こういうように言いましたということまで明確に言っているのです。
○筧政府委員 ただいまの点でございますが、私ども承知しておりますところでは、その点は記者会見で検事正が述べたものではなく、記者の方で判断、推測で書かれたもの、そのような記事になっておるというふうに理解いたしております。
○中西(績)分科員 だから、そういうふうに勝手に後になると言っておるんだけれども、その人の言ったことであり、そのときの態度なり何なりを私鮮明に聞き直したわけですよ、おたくがそう言うからね。そうしたら、それはこういうように言いました、地検が財団の理事を呼んで告訴を求めたが、財団は応じなかったということを言っておるのです。これは将来的に非常に重要なことなんです。 ですから、いずれにいたしましても、そういう状況ですが、問題は、反省しているということになりますけれども、先ほど文部省と私たちのやりとりの間で、文部省から大学はかくあるべきだということが示されておるのに全く反省の色はなし、全然それはこたえてない。そしてなおかつ、私は後で言いますけれども、暴力事件がその後に次々に出てきておる。ちょうど国士館と同じような状況にまたなるのではないかということを私は一番恐れているのです。そういう状況が既にある。 その中には鶴岡氏あるいは平野氏が中に入ってちゃんとやっている、こういう状況で、それではだれがこれを反省したかどうかということを言っておるのですか。平野氏ですか、時間がないから、それだけ答えてください。
○筧政府委員 検察官が証拠に基づいて被疑者平野何がし氏が反省しているというふうに認定したわけでございます。
○中西(績)分科員 そうすると、今言うような、外部から見たら、外部よりも客観的な問題として、一番指摘をされている部分については全然解明をされていない。なのに何で反省したかという、その中身について言ってください。
○筧政府委員 一般論になりますが、ここで反省という不起訴理由でいろいろ述べられておりますのは、当該不正受給の事実についての平野氏の反省でございます。したがいまして、あと大学、今文部省等からお話しのそういうこととは関係ございませんで、不正の手段で補助金を受け取ったという点については事実を認め、それについて反省をしておるということでございます。
○中西(績)分科員 そうすると、それが何かに出てこぬと、口でぺらぺらと言ったらそれでなるのか。涙を流せばそれでなるのか。何をもって反省の材料とするのですか。
○筧政府委員 涙を流したから直ちに反省というわけにもまいりませんし、流さなくても……(中西(績)分科員「客観的なものは何もない」と呼ぶ)そういうことではなくて、その場合にほかのいろいろな証拠資料等がございます。それと、当該平野何がし氏を調べたときの心証、その他諸般の事情を考慮いたしまして、反省の色があるというふうに認定したわけであります。
○中西(績)分科員 そうしますと、告訴された中にはこれ以外にたくさんありますよね。これがどこで起こったかということをまず第一に考えてないのじゃないですか。学校という大変重要な公共の場でこれが行われたということですよ。今あなたはそういうことを言っておりますけれども、私がこれを見ると、全くそうしたことが考えられてない。そしてその結果はだれに及ぼされているか。学生でしょう。学校の地位の低下は、だれですか。個人が反省しているとかなんとかという問題じゃないのです。泣いたか何か知りませんけれども、あるいは言葉が丁寧になったか何か知りませんけれども、さっき申し上げたように、その後に出ているいろいろな学校内における事象は、全く大変なことじゃないですか。いかに多くの学生に、多くの地域の皆さんに影響を及ぼしたかということを考えると、いわゆる大学校としての品位は全く阻害されてしまうわけでしょう。低下する。こういうことを全く考えずに、反省をしたなどということを勝手につけたのでは、周囲の人たちはもう全部――だから今度読んでいただくとわかりますけれども、あの地域の新聞で、投書欄がたくさんありますね。この不起訴が出てからどんなに一斉にそれに対する不満の投書をされたか知ってますか。こういうことを調べてから、もう一回今度法務委員会でやりますけれども、こうした大変な問題を含んでいるということを完全に無視してやっておる、このことがまず第一に問題であろうと私は思う。 そこで、時間がありませんから二点目の問題に入りますけれども、二点目の問題は国際経営学科の問題であります。 先ほどお聞きしましたように、結局、わかっていれば申請を取り下げさせる、そういう中身です。ところが、おたくが言ったのは、文部省の設置認可に特段の影響を与えたとは認められないなどということになっております。そして、検察官がそのように認定した、収集した証拠によってこう認定したということを言っています。今文部省に聞くと、もし十三人が欠落をしておったということになれば申請したということにならぬ、突き返す中身になっておるのです。そうなりますと、認可に特段の影響がないとは何でしょう。
○筧政府委員 検察官が調べました結果、何名かちょっと細かい数字を覚えておりませんが、それの偽造部分といいますか偽った部分がなくても、それがあるなしによって直ちに許可、不許可になる、直接つながるものではないという判断に到達したということでございます。
○中西(績)分科員 ですから今言っているのは、まさにそれがあるなしにかかわらず認可をしたという、こういうことを言っているわけですね。ところが文部省が言っているのは恐らく突き返した。ですから私は先に聞いたわけです。じゃ検察官自体が大学の認可のそういうことをやるのですか、検察官が大学認可にこうしたことは特段の影響がないといってやるのですか、ちょっとお聞きします。
○筧政府委員 そういうことはやりません。
○中西(績)分科員 やらないところがそうした判断をするなどということは、だれが聞いても我々納得できませんね。こういうことを検察官がやったらどんなことになるかだ。これはむちゃくちゃですよ。そしてしかも、これはだれが実行したかわからぬとかいろいろなことを言って、事実は認めておるわけですから、事実は認めておるんだけれども、私が今申し上げるように、五十四年の流通経営学科のときに申請したけれども不認可になる、明くる年に今度また名前だけを変えて中身をこうしてやっておるにもかかわらずこうした問題が出ている。それは何も特段の影響がない、与えなかったという認定をしておるということになると、まさに文部省の言うところ、認可すべきところと判断が全然違う。ですから、これはまさに検察官がこれを認めたということになるのですね。 そして、今度は先ほど言いました教授会の申請の問題でありますけれども、この場合でも教学側のコンセンサスというものは全然受けてない。先ほど提示をしましたね、ここに議事録がありますけれども、そのときには教授会が開かれておらないのに出席の教授の名前を全部細かく羅列しまして、一時間開いてこういうことだという文章を細かく書いて提出をしておるのですよ。しかもはっきりしているのは、その文書はじゃどこから手に入れたかというと、それは警察です。警察署に呼び出された学部長が、そういうものが出ておったということを言って、やったということを具体的に持ち帰ってコピーしたものなんです、それは。だから、それじゃそうしたことが検察官にわかっておらなかったかどうか、どうですか。
○筧政府委員 ただいま御指摘の教授会の議事録の偽造でございますが、これは受理いたしましたときに既に公訴時効が完成しておりますので、事実の内容までは判断はいたしておらないわけでございます。
○中西(績)分科員 時効になったということで全部また逃げているわけですね。 ところが、これはあなたにちょっと聞かなきゃならぬことがあるのですが、それは、おたくから告発した方に出された文書があります。その文書を見ますとこういうことになっているのです。これですね。おたくの言う「時効完成」というものです。「不起訴処分理由告知書 五十九年三月九日 大久保隆司殿」ということで出ています。これを見ますと「有印私文書偽造等被疑事件の不起訴処分の理由は、左記のとおりである。時効完成」とある。私が調べてきたところでは、有印の私文書偽造の場合は刑法百五十九条の一項、二項に該当し、それの時効は五年になっています。これはおたくから出されたのですよ。福岡地方検察庁の寺岡忠昭という人から出されたのです。これに書かれているのは「有印私文書偽造」になっていますね。ところがおたくは今度は私文書と言って百五十九条の三項によって時効は三年だと、時効完成ですと、こう言ってますけれども、これから見るとそうじゃないのですね。正式に書いてあります。これは差し上げてもいいです。「有印」になっていますよ、五年でしょう。
○筧政府委員 その通知書と申しますかその書面は私も見ておりませんのでわかりませんが、原庁における不起訴処分、告訴状等も無印私文書偽造になっております。
○中西(績)分科員 これは「昭和五十八年検第七〇七九号」になっています。これは正式なものです。それをコピーしたものですから間違いありません。ですから、この問題は少なくとも私さっき聞きましたように、形式的なもので有印であるか無印であるか知りませんけれども、おたくの場合はこうして正式に「有印」として、しかも「時効完成」などということを言っておるということは大変な誤りであるということを認めなくちゃならぬと思うのですが、その点どうですか。
○筧政府委員 その点調査いたしましてお答えいたします。
○中西(績)分科員 調査するよりこれを見たらいいんですよ。これを今差し上げますからね。これがうそだというならなんだけれども、正式なものですよ。調査する必要はないのです。 そこで、もう時間がございませんから、あと大変な問題になっております点について一、二もう少し質問したいと私は思いますが、これはまた法務委員会等で具体的にこの内容を明らかにしていきたいと思いますが、成績原簿の書きかえ、そして採点報告表の毀棄の問題ですね。これもおたくが十分注意しておかなければならぬのは、反省をしたというそういう時期にこれが一緒に論議されている問題ですよ。五案件なり出ているものを全部一緒の時期に、これは三月二日の日に全部発表しているわけですから。 そこで、成績原簿書きかえの問題について申し上げますけれども、私がここで一番の問題、鶴岡氏についてもあるいは平野氏についても非常な問題を感じますのは、まず第一に、この成績原簿をなぜ書きかえたのかということを考えますと、これは入学のときに多額な裏口入学を取ったという形跡がある。なぜかといいますと、年度別に学校の会計の中に入った金額が明らかになっています。しかし、その金額は明らかになっておるけれども、大事な証憑書類がない。裏づけが何にもないのです。焼いたりなんかして捨ててしまったんですよ。そして、これは告発できなかった。そういうふうにして入ってきた子たちが、成績が今度とれなければどうしたかというと、今言ったように成績を書きかえなければ卒業ができないでしょう。そのために今度は成績原簿書きかえ、こういうことが明らかになってきたわけです。おたくが調べたところ、書きかえの事実があった、こう言っていますよ。一たん記述されたものが消され、その上に記入されている、これは認めているわけです。書きかえた事実はある。 それともう一つは、だからこれでは卒業判定なり何なりはできぬということでもってやったのが、採点報告表をちゃんと出してくれ、これは教学側がみんなを言ったんだけれども、理事者側は出さぬわけですよ。そして、たくさんのものがなくなっておる。焼いたか捨てたか、あるいは保管すべきところを調べてみるとなくて、倉庫の中にあってみたりなんかしている。こういう状況になっているのに、この採点報告表については、これは告訴権者は学校法人だから告訴されてもだめですということで門前払いされているんですね。これがなければ判断できぬわけですよ。学校というところの一番大事なところを抜かれてしまったわけですね。だから、成績そのものが判断できないわけです。だから、これでもっていろいろ問題が出てきたわけです。ところが、これがどうなったかというと、門前払いですよ。悪いことをした平野、平松、岡田、理事者側のこういう人たちが出すわけはないでしょう、だれが考えても。自分たちが悪いことをしているんだから。 それで、これをしましたね、そうするとどうなるかというと、入るときにたくさんの金を取って、そしてそれが原簿になる裏づけのあれがない。確かに金は納めたようになっているけれども、裏づけがない。そして、今度は成績原簿の書きかえをして卒業をさせようとする。そのときに今度は、教学側の皆さんの良心がある人たちは、それじゃだめです、だから採点報告表を出してください、こうなった。ところが、このときに、それはない、それはあなたたちの権限でない、こう言われたら、どんなことだってできるということですよ。金を取って中に入れ、そして今度は成績を書きかえて、そして学長までそれに従わなかったといって、成績原簿で全部進級判定なり卒業判定なり単位認定をやれと言ったから、やらぬ、そんなことはできません、良心にかえてもできぬ、これの首を切ったのですよ。御存じでしょう。首切られた人が、今度はそれを裁判所に提訴して、それは認められなかったんだけれども、またちゃんと権利は認められたんだけれども、いずれにしても、こうなってまいりますと、成績原簿をかえても、それを捨てても、おたくのあれからいくなら、全部自由にそれは卒業していく、こういうことになるのですが、おわかりですか。 今までずっと私が申し上げてきたのも要約だけです。まだほかにもたくさんあります。こういう流れの中でやられたこと、これは全部不起訴、しかも反省したということになっている。やった人はみんな同一人物ですよ。時期についても、これらについては後になって出てきた問題ですから。今一番最後に言ったのは、法務大臣、どうですか、感想を述べてください。――法務大臣の感想を私聞いておるのです、今まで聞いてくれと言っておるのだから。
○住国務大臣 事実問題、御指摘あったわけでございますけれども、私その関係を十分承知しておりませんので、とやかく申し上げることはできないのでございますが、おっしゃるようなことがあれば、これは大変ゆゆしき問題だというふうに感じております。
○中西(績)分科員 もう時間が参りましたのでやめますが、いずれにしましても、こうしたことが行われるとするならば、それはいわゆる学校社会というものが成り立たない。そして教学部門は、その権限なり何にもそこには認められていない、こういう状況でしょう。 警察庁からお見えになっているけれども、大変恐縮ですけれども、時間が参りましたのでやめますが、一言だけ言っておきます。 こういう状況になっておる中で、今度は学長を、新しくなった理事長、前鶴岡理事長、前副理事長の平野、今理事に格下げになっていますけれども、こういう面々が全部そろい、そこに今度は同和会と銘打った人が入って、しかもその学長が前に事件があった、その事件のあったことに対してどういうように言ったかというと、差別事件があるからということで学長を追及しておるのですよ。八時間も軟禁をしてやっています。いいですか。差別がないのに差別事件といって、全日本同和会の人であろうと思いますけれども、今度はその人を使わせてそれをやらせるということは、だれが差別しているかということです。それをやらせておる人が大変な差別であると私は思っています。こういうことが学内で平気で行われておるということになれば、これは大変なことです。ですから、私はもう答弁をお求めすることはできませんから、警察庁としてもう一回この点について十分調査をしていただきたい。このような差別を許しておくなんということは、これは今私は一番怒りに震えておるわけです。こんなことが許されたら大変です。差別者はだれかといえば、やらせる人ですよ。差別がないのにそういう人を入れて、そうして差別しているという恫喝みたいなことをやらせるということになれば、これは最大の差別です。ですから、この点は十分認識をした上で、この問題についてはこれから後もう一度法務委員会でやりますから、その節に十分お答えをいただきたい。大臣はそのときに十分この点については勉強しておいていただきたい。 以上です。
○相沢主査 これにて中西績介君の質疑は終了いたしました。 次に、湯山勇君。
○湯山分科員 最後の質問者になったようでございまして、まことに御苦労でございますが、しばらくひとつお許しをいただきます。 私は部落差別の問題でお尋ねをいたしたいと思います。 国会で部落差別の問題が取り上げられてからもう二十数年経過しております。法律によってこれを解消していこうというので法律ができてからでも既に十五年たっておりますから、本来なら差別はだんだん少なくなってきていると言いたいのですけれども、現実はそうでなくて、むしろ増加の傾向にある。非常に残念なことだと思います。ただしかし、そのことは必ずしも一概に悪いとは言えないので、こういうことが法律的にもあるいは政治の場でも取り上げられ、自治体もこれと取り組むということから、差別を受けた人たちが人権意識に目覚めて、従来の泣き寝入りというのがなくなって、顕在化してきたという点は評価しなければならないと思いますけれども、何にしても、こうどんどんふえ続けているということは放置できない。やはりこれについての対策がまだまだ不十分であったというようなこと等が挙げられるかと思います。 それについては数字を挙げてお尋ねしたいと思っておりましたが、時間もありませんから数字の問題は省きます。ただ、とにかく、だんだん数だけじゃなくて質的な変化も来しておりまして、それらの点について法務省の方で把握になっておられることをひとつ簡単にお述べ願いたいと思います。
○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。 最近における同和問題に係ります差別事象の傾向を見ますと、差別言辞、言動、これが相変わらず多うございます。それから、人生の重大事である結婚や就職、これに関する差別事象が後を絶っておりません。また、悪質な差別落書きや差別文書等の差別事象も目立っております。簡単に申しますと、大体そういうところでございます。
○湯山分科員 結婚、就職の問題は随分以前からもありましたが、最近特に落書きというようなものが相当ふえてきているということは特徴的なことだと思います。 文部省お見えになっていますか。差別事象、各省別にずっととったのを見ましたが、労働省だけでも千件を超えています。文部省は百にも足りないのですが、これは把握が十分できていないんじゃないでしょうか。これも簡単に。
○熱海説明員 お答えします。 教育現場における差別事象の実態把握については、文部省では各都道府県にお願いを申し上げて、毎年定期的に調べておるわけであります。実際の発生状況を見ますと、五十五年度が大体百七十二件、それに対して五十六年度が百二十九件、それから五十七年度はまだ十二月までしか上がっておりません、これが八十五件ということでございます。
○湯山分科員 いずれにしても、結婚あるいは就職、落書き、いまの学校の中、意識的なものが多くなってきているということは否めないと思います。 その意識差別の典型的な例として、福岡の大蔵住宅事件というのがございます。これは、私の方から申し上げてまた再確認というのも時間がかかりますから、法務省の方で――大臣は御存じないでしょう。委員長にも聞いていただく必要がありますから、ごくここが差別のポイントだということで、大蔵住宅事件、当局から御説明願います。
○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。 先生おっしゃいました事案は、昭和五十二年の九月ごろに大蔵住宅株式会社から、土地、建物を購入した者が、その後、その土地、建物の所在地が同和地区内にあるということを知り、大蔵住宅があらかじめこのことを告知しなかったことを理由に同社に買い戻しを要求いたしましたが、同社がこれに応じなかったことから、昭和五十八年、去年でございますが、六月、十一月、それからことしに入って二月の三回にわたりまして、福岡市内の大蔵住宅の社長宅や福岡市内の住宅団地等に大蔵住宅を非難する部落差別にわたる文書を約一万二千枚配布したものでございます。さらに同人は、今後も右差別文書を配布し続け、最終的には十万枚配布する旨言明しておる、こういうことでございます。 これに対する対応でございますが、当局といたしましては、部落差別に係る人権侵犯事件であり、同和問題の解決への行政の努力に逆行するものである、このように考え、配布をした者が東京都内に在住していることから、東京法務局において同人の啓発に努めております。これは四回ほど接触して啓発を行っております。また、福岡法務局を中心に法的手段も含めてとり得る措置を検討しておるところでございます。なお、福岡法務局は「福岡市政だより」に啓発文を掲載する予定にしております。 以上でございます。
○湯山分科員 大臣、今お聞きのとおり、十万枚のビラを地区へまく。これは差別を拡大しますし、そこに住んでいる人にとっては大変な問題です。いろいろ対策を立てておられるようですが、効果はありましたか、やめることになりましたか。
○鈴木(弘)政府委員 多くの場合には説得することによって聞き入れられることが多いわけでございますが、この人は頑固というのでしょうか、なかなかわかったとは申しませんので、そこで、先ほど申しましたように、今後の配布をとめる手段は何かないかということ、法的な措置というものを目下いろいろ考えておる、こういうことでございます。
○湯山分科員 そこに問題があるのですけれども、また後にします。ほっておけない問題です。 それから、似たような、今度は直接当事者を差別した事件で代表的なものに、丸八真綿の差別事件、この概要と対策をひとつお述べ願いたいと思います。
○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。 この事案は、昭和五十三年ごろから五十七年ごろまでの間、株式会社丸八真綿及びその関連会社におきまして、商品の販売に伴う紛争や不良債権の発生を防止するため、過去において割賦代金の回収に困難を来したりあるいは販売に際して紛争を生じたことのある地域のほか、多くの同和地区を含む地域を一覧表に掲げ、これらの地域住民に対し商品の販売を一律に禁止し、また同様のころ、代金の回収をめぐる紛争の発生を防止するため、外国人や風俗営業、廃品回収業等の特定の職業従事者らを一律に販売注意対象者とする基準を作成し、これらの人たちに対する販売に当たって注意を促し、あるいは契約条件を厳しくしていたものでございます。 当局といたしましては、これらの行為は営業の自由、契約の自由の域を出た差別的営業であって、人権擁護上看過し得ないとの観点から、人権侵犯事件として大阪法務局を中心に事案の解明に努めてまいったのでございますが、ほほ事実の調査を終えて、近く関係者に対し勧告、説示等の最終処理を行う予定でございます。もっとも、調査の過程におきましても説示、啓発は行ってまいりまして、関係者も現段階では大いに反省しているところでございますが、ただいま申しましたように、最終的な処理をもう一度やろう、このように考えておるわけでございます。
○湯山分科員 今お聞きのとおり、いろいろな、こういうところには売るな、売ってはいかぬというその対象者の中に被差別部落を入れて、部落は生活のレベルが低い、不良債務が多発しやすい、あそこへは売るなと信用販売を禁止した。これもまことにゆゆしき差別事件だと思います。この対象の結果、その内容等はまた後でお聞きすることにいたします。 それから、こういうのがあるかと思えば、差別があってはならない公務員、またはこれに準ずる人たちの差別事件、これも決して少なくなってはおりません。例えば、文部省関係で申しますと、教頭がそこの事務職員で被差別部落出身の女の子に、ちゃんとしないとおまえは嫁に行けぬぞと言った。その理由として部落の出身であるということを暗に言ったので、これも大きな問題になりまして、ついにその学校の校長もやめました。こういうことを文部省はわかってないでしょう。
○熱海説明員 具体的にはつかんでおりませんけれども、ただ教職員にかかわるものが全体として一三%程度あります。
○湯山分科員 教育の場でもそういうことがあります。 それから、最近落書きに関係して、国鉄松山駅で顕著な事件がありました。その内容を簡単に述べていただきたい。これは国鉄の労働組合の役員に部落の出身者がおりました。これについていろんな落書きがたくさんありますので、そのことについて抗議があって、管理職、責任者が差別してはいかぬというビラを張ったわけです。その当人がある事件、これも不当な事件ですけれども、組合の旗を国鉄の庁舎のところへ立てておったのをおろせと言ってもおろさないというので、管理職がそれをおろした。おろしたので、抗議して突いたら倒れてけがをしたというのですが、それを暴行傷害、業務命令違反、公務執行妨害というようなことで当局は首にしました。 ところが、首にした途端に、差別しちゃいかぬというビラが張ってあったそのビラに――ほかの人は知らぬことです。にもかかわらず、首になったからもう要らないというのが追い打ちして書かれている。こういったことが絶えず起こっております。 大臣、法務省もこのらち外ではないのです。刑事局長お帰りになりましたか。――今の刑事局長のずっと前ですけれども、稻葉法務大臣のときに差別的な言辞がありました。それから高知では検事にあったのです。私も調査に行きました。そのほか人事院の局長の事件、それから電電公社にもあるし、林野にもありましたし、郵政にもありました。拾っていけば、文部省も今言ったとおりですし、おひざ元の法務省自身にもそういうことです。 そこで、当時の稻葉法務大臣は、これは大変だということで法務省の全幹部を集めてそこでこの問題の再教育といいますか、あるいは研修をやった。各省もやってくれというので閣議か何かで要請して了承されたし、さらに検事総長にも言ってやっておりましたから、高知で検事の差別事件があったときに行って、言ってきておるでしょうと言ったら、言ってきました、これを読めといって法律を送ってきておるというようなことでした。最高裁へも要請してやったはずです。これだけ問題になっているときに公務員もしくはこれに準ずる者の中にまだこんなに差別事件があるということは、私はほうっておけない問題だと思います。大臣、どうお考えでしょうか。
○住国務大臣 この差別問題は、私ども法務省も常に頭に置いてやってきておりますし、そしてまた、各省挙げてこの問題を取り上げて、そういうことの起こらないように努力を続けてきておる、にもかかわらずこういうことが根絶できない。これは、一つには、まだまだ努力が足りない、こういうところもあるのじゃないだろうか。そういう意味で、法務省人権擁護局を中心にしてさらに努力しなければならぬのは当然でございますけれども、この問題は総理府が中心になって各省の関係もいろいろやっていただいておるのじゃないか――これは間違いでございましたら訂正いたしますけれども、そういうように政府挙げてこの対応をきちっとしていかなければいけない問題だと考えております。
○湯山分科員 大臣おっしゃるように、同和対策あるいは地域改善対策の直接の責任官庁は総理府で、総務長官の担当になっております。しかし、総理府というのは差別事件があったからといってこれを排除することもできないし、ただそういった連絡調整というようなことが主なる仕事で、若干の広報活動もやっております。しかし、広報活動にしても、総理府がやっておる人権あるいは部落差別の問題の広報は、総理府自身がこれはもう法務省でやってくれておるからということです。実際、そうでしょう、擁護局長。
○鈴木(弘)政府委員 人権擁護局では、差別意識の解消ということで啓発面を担当しておるわけでございますが、なお関係省庁もございますので、協力しながら、場合によっては総理府へ集まりましていろいろ協議するというようなこともいたしまして啓発をやっておるわけでございます。
○湯山分科員 今の答弁のように、実際は総理府は、人権問題という枠で法務省でやってもらっておる、こういう寄っかかりで、私、この前のとき取り上げまして、政府の広報活動を担当しておる総理府がそんなことではいかぬじゃないかというので随分やりまして、多少やるようになりましたが、しかし、そういうことで総理府は今のような問題について排除することも勧告も何もできない。やはり法務省がしっかりやっていただかなければならぬということになっております。 そこで、取り残されておる大きい問題は、例えば興信所だとか地名総鑑とか、こういうもので差別をむしろ食い物にするというか売り物にするというか、身元調査などを商売にしている、あるいは地名総鑑のような形でそれを金もうけの材料に使っている、こういうことは断じて許せないと思うのですが、これの排除がまだできていないのです。何とかならぬでしょうか。現に地名総鑑の第八が出たのは御存じでしょうし、これについては何か処分もなさったそうですが、そういう事実はありますか。
○鈴木(弘)政府委員 細かいことにつきましてはきょうはちょっと資料を持ち合わせておりませんので、第八自体についてどうこうは責任を持ってはお答えできませんが、先ほどから部落地名総鑑の規制の問題などについておっしゃっていらっしゃいますので、それについてこの際お答えしておいてよろしゅうございますか。(湯山分科員「はい、結構です」と呼ぶ) 先生のおっしゃいましたとおり、差別を商うというようなことが一口で言うと言えるわけでございますが、本当に甚だけしからぬ問題だと思っております。 それで、法務省といたしましては、従来から営利を目的として悪質な差別図書を出版、販売する行為等に対しては何らかの法的規制措置が可能かどうかということ、これは本当に真剣になって検討を重ねてきたわけでございます。しかしながら、これにつきましては、憲法二十一条の言論、出版の自由とか、三十一条の法手続の保障というような関連もございまして、実際問題として、いざ規制するとなりますと合理的かつ有効な規制措置というものは見出しがたい、このように思うわけでございますが、事柄が重要でございますので、今後もなおこれらの点について検討を続けてまいりたいと思っておるわけでございます。 なお、御指摘の地名総鑑も興信所等の調査も、これを利用しようとする者があるからでありまして、このような者の差別意識解消が最も重要なことと思われますので、今後もなお啓発活動をいたしたい、努力してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
○湯山分科員 御答弁そのとおりだと思うのです。 そこで、利用しようとして例えば第八次地名総鑑を買い求めた企業、これはわかっているはずですが、購入者をここで発表できませんか。
○鈴木(弘)政府委員 企業名の公表は従来から考えておるわけでございますが、私ども啓発を担当するのを職といたしておりまして、制裁をするというような立場にはございませんので、従来いろいろ検討した結果やはり企業名自体をここでお明かしするのは問題があるのではないか、かように思って、従来も発表はいたしておりませんし、ただいまも発表するということは考えていないわけでございます。 ただ、議会の方で手続を踏んでいただけましたら、先生のお手元までそういうものをお知らせするということは可能ではないか、これが従来やっておる手続でございます。
○湯山分科員 それでは、都合でこれを請求するかもしれませんから、その節は今のように対応していただきたいと思います。委員長もそのようにお計らい願います。
○相沢主査 はい。
○湯山分科員 そこで、時間がないので大事なところが抜けますけれども、大臣、お聞きになっておって、もっとぴしっとやらぬといかぬなというお気持ちをお持ちになられたと思いますが、いかがでしょう。
○住国務大臣 この差別問題、特に文書等の問題ですね、これは本当に一刻も早くなくさなければならぬ問題だと私も思います。そういうものにつきまして、文書に対する対応をどうするか、従来も検討しておるようでございますし、なお引き続いて重要な問題として検討をし、どういう結論が出るかわかりませんけれども、結論を急ぐ。それと同時に、言辞、言動という問題につきましては、やはりそういう考え方をできるだけ普及していく、PRしていく 啓蒙していくということが必要だと思っております。いずれにいたしましても、現在やることとしましては、制度的には許された最大限のところで対応を考えると同時に、啓蒙運動をさらに徹底をしなければならない、こういうように考えております。
○湯山分科員 時間がありませんから、まとめでお聞きするようになると思います。 お聞きのように、最初に申し上げました大蔵住宅等についてはまだ決め手がない。いろいろ苦労なさっています。それから丸八真綿については対応ができて何とかいきそうだというのですが、地名総鑑については今のような状態。 そこで、結局自治体もこれはいかぬというので、大阪府が部落差別につながる身元調査の禁止条例をつくるというようなことを聞いておりますが、これについてどうお思いになりますか、局長。
○鈴木(弘)政府委員 先生おっしゃいました条例につきましては、大阪の方で条例をつくることで検討しているということは聞いております。先ほど先生おっしゃいました地名総鑑とか、あるいは興信所の調査における差別とかいうものに関連することでございますが、先ほど申しましたように、いろいろ問題があるわけでございまして、条例につきましてもどういうようなことを考え、規制するのか、そういうものを参考にさせていただいて今後考えていきたい、かように思っているわけでございます。
○湯山分科員 前向きに見ておるのか、それは問題がある、やらぬ方がいいと見ておるのか、簡単にその点だけ。私は、今のような状態だから、自治体もほっておけないというので難しい問題と取り組んでいるとむしろ評価すべきだと思うのですが、局長、どうでしょう。
○鈴木(弘)政府委員 先ほど申しましたように、事柄が地名総鑑とかあるいは興信所による差別調査とかにかかわりますので、それが先ほどの憲法上の問題をクリアできれば非常に結構だと思うわけでございます。ただ、それが非常に難しい問題でございますので、相当検討しないといい悪いというのは私ちょっと申し上げにくいわけでございます。
○湯山分科員 お気持ちはわかりました。しかし大阪府がそこへ踏み切った、これもひとつ十分評価していただかなければならないと思います。 そこで、もう時間がなくなりましたが、大蔵省お見えですか。これは大臣にお聞きする点でもあったのですけれども、大蔵省にお聞きする方が本当だろうと思いますので、あわせて……。 今申し上げましたように、まだまだ対応しなければならぬ。今の法律の期限はあと三年ですけれども、現実に物の方はある程度進みましたが、意識差別はむしろ悪質化し、ふえていっている。これは将来にわたってなくしないといかぬけれども、長い期間を要する問題。そこで、今申し上げましたように法務省は対応が大変だと思います。しかも今のように意識の差別ということになってくれば、個々に対応していかぬといかぬわけです。道をつくるとか学校をつくる、保育所をつくる、これはぱっと全体いきますけれども、意識差別になったら個々に対応していかなければならない。それに当たる職員の数ですが、今全国の法務局で人権担当の職員の数、公務員の数は何名くらいですか。
○鈴木(弘)政府委員 現在定員が本省で十五人、法務局あるいは地方法務局で合計二百五名でございます。
○湯山分科員 二百五名で一億二千万の人たちの人権を守っていくというのは、一人当たり約六十万ですよ。ですから、とても対応できない。今のように、大蔵住宅にしても、大勢行って大勢やればまた方法はあるのです。大臣、頑張ってくれぬといかぬじゃないですかと言おうと思いましたけれども、あなたに来ていただいているし、考えていただけると思います。以前にも若干ふやしてもらったことはあるのです。しかし、今この人権担当の人は大事なときですから、この人たちがもっと仕事ができやすいように、端的にふやしていただくことをぜひお願いしたいと思いますが、主計官、いかがでしょう。
○吉本説明員 人権の擁護の問題につきましては、人権擁護の担当局だけで処理できるような問題ではなくて、全国民的な課題であると考えます。 なお、その人権擁護に従事する職員自体の問題につきましてどうするかという個別の問題につきましては、全体の国家公務員に関する定員の管理その他の諸般の情勢もございますが、なお今後法務省における検討結果等も伺って検討を進めたい、こう思います。
○湯山分科員 理解しておられるような御答弁でございますから、大いに御期待申し上げておきます。 最後に、大臣、お願いですけれども、こうなりますと、落書きだって毒ガスで殺せというのがありますし、甲子園、あそこへ集めておいて一遍に殺してしまえというような落書きまであるのです。落書きの実態を見ていただくし、意識差別というのはどんなのか、こういうことについてぜひひとつ法務大臣も実態の調査ですね、直接なさっていただくし、部下の者にもやらせるということをぜひお願いいたしたいと思いますが、最後に御答弁願います。
○住国務大臣 私も私なりに今までずっとこの問題についていろいろ考えさせられることが多かったと思います。特に今法務省へ参りまして人権擁護という立場からこの問題に取り組む。これは本当になかなか根絶できない。悲しいことでございますけれども、こういうことは放置することはできないわけでございますから、ひとつ御趣旨を十分体しまして全力を挙げてまいりたいと思います。
○湯山分科員 どうもありがとうございました。終わります。
○相沢主査 これにて湯山勇君の質疑は終了いたしました。 以上をもちまして、法務省所管についての質疑は終了いたしました。 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。 この際、一言ごあいさつ申し上げます。 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。 これにて散会いたします。 午後八時十二分散会