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101回国会衆議院1984/02/24

予算委員会公聴会 第2号

発言数
99
登壇者
16
会派数
5
開催日
1984/02/24

会議録

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 これより会議を聞きます。  昭和五十九年度一般会計予算、昭和五十九年度特別会計予算、昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十九年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず水野公述人、次に飯塚公述人、続いて松川公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず水野公述人にお願いをいたします。

水野正一名古屋大学教授

○水野公述人 ただいま御紹介にあずかりました名古屋大学の水野でございます。ただいまから、昭和五十九年度予算案につきまして、私の意見を述べさしていただきます。  まず最初に、予算案についての全体的な評価について申し上げまして、次に、特に税制改正につきまして意見を述べさせていただき、最後に、今後の問題と我が国財政のあり方についての私見を述べさせていただきたいと存じます。  まず五十九年度予算案についての全体的な評価について述べさしていただきますが、五十九年度予算案は、厳しい財政事情のもとで所得税減税を実施するとともに、財政再建の再発足の二年目に当たりまして、財政再建への展望を開くための最大限の努力が払われたものとして、評価したいと存じます。  新年度予算編成の財政事情は極めて厳しいものでありました。昨年後半から景気回復が本格化し、五十九年度も順調な景気拡大の道をたどるものと予想されておりますが、六%弱の名目経済成長率で、税収の伸びは約七%程度しか見込めないと思います。この税収の増加分は、ほとんど国債費と地方交付税の増加によって食われてしまうわけです。また、五十八年度予算におきまして計上されました五十六年度決算不足補てん繰り戻し分二兆二千五百二十五億円というものが不要になりますが、一方、やはり前年度におきまして特別に調達した税外収入、これは一応除外して考えなければなりませんし、所得税減税を実施しなければならないということ、それから国債発行額を一兆円減額するという目標を達成しなければいけない、こういう点を考慮しますと、税外収入について特別に捻出の方法を考えない限り、一般歳出を大幅に削減しなければ予算が組めないという事情でありました。  このような厳しい事情のもとで、歳出の削減、抑制に努めまして、税の増収を図ることによって国債発行額の減額を実施し、財政再建への着実な前進を示したのが五十九年度予算案であります。これを若干敷衍して申し上げますと、次のようであります。  第一に、社会保障関係費や地方財政関係費のように、従来とかく聖域化されがちでありました分野にもメスを入れまして、制度改革あるいは施策の見直し、これを行うことによりまして歳出の抑制、削減を図っております。これは来年度予算におきまして、一般歳出を対前年度当初予算比マイナス〇・一%減とすることを可能にしたばかりでなく、将来にわたって歳出抑制効果を持ちますし、財政再建への展望を開くものとして重要な意味を持つものと考えます。  第二に、所得税減税によりまして、広く庶民の願望にこたえるとともに、他方、これによる税収減を補てんするために、法人税、酒税、物品税等の増税を行いまして、税収の確保に努めております。  第三に、各種公共料金の引き上げ、医療保険制度の改革等によりまして、費用負担における受益者負担の適正化、あるいは費用負担と受益の対応の適正化を図っております。  第四に、景気の回復については、主として経済の自律的回復力に期待しまして、景気拡大的財政政策を特にはとらず、財政再建を優先させて緊縮型の予算を貫いたことであります。もちろん景気の動向には十分留意する必要があることは言うまでもありませんが、このような予算が大きく景気回復に水を差すとは考えられません。まずは経済の自律的回復力と適切な金融政策の運用に期待すべきであります。我が国では、景気が思わしくないとすぐ拡張的財政に依存しがちであります。また、財政再建のためには財政赤字を拡大させて拡張的財政政策をとるべきであるという意見もかなりありますが、過去五十二、五十三年度の経験からもわかりますように、これらの考え方は誤りを含むものであります。  第五に、以上のような努力によりまして、当初の目標でありました一兆円にはかなり及ばなかったものの、六千六百五十億円の国債発行減額を見込むことができまして、財政再建に向かって着実に歩を進めることができたわけであります。  要するに、厳しい経済的、社会的、政治的な事情のもとで財政再建に向かって最大限の努力が払われた予算であると考えられまして、及第点をつける次第であります。  次に、税制改正について意見を申し上げます。  今回の税制改正における大きな特徴といいますのは、第一に所得税関係の減税、第二に法人税、酒税及び物品税等の増税、第三に納税環境の整備であります。以下これらについて簡単に述べてみたいと思います。  まず、所得税、住民税の減税でありますが、所得税につきましては、五十二年度に課税最低限が二百一万五千円に引き上げられまして以来六年間も据え置かれまして、低いベースアップ率と物価上昇によって税負担感が強まりまして、減税要求の声が高まっておりました。厳しい事情のもとにおきまして財政再建を進めなければならない折、財政的には減税の余地はほとんどないにもかかわらず所得税減税に踏み切ったことは、このような多数国民の切実な願望にこたえようとしたものであると考えられます。  所得税減税の内容は、課税最低限の引き上げ――二百三十五万七千円に引き上げられました――が中心になっております。これによりまして、すべての所得階層に減税の恩恵が行き渡ることになるとともに、減税率は、所得の低い方あるいは中堅所得層等の扶養家族の多い者ほど減税の効果が大きいという結果になります。  諸控除の引き上げとともに、税率構造につきましても、最低税率を〇・五%引き上げて一〇・五%にし、他方、最高税率を五%引き下げまして七〇%に改めることにしたのも注目すべき点であります。これは一見金持ち優遇の批判を招くかもしれませんが、むしろこれまで過度に強過ぎました累進構造をやや緩やかなものに改めたものと解すべきであります。我が国の所得税の累進度は主要先進国に比べましても高過ぎます。それが勤労意欲や納税意欲への悪影響をもたらすという懸念があるところでありました。所得税の累進構造というものは、課税の垂直的公平の観点に基づくものでありまして、所得分配の平準化に大きな役割を果たすものでありますが、これが余り強過ぎる累進度というものは、公平性、効率性のいずれの見地からも望ましくないと考えられます。したがって、今回の税率構造の改正は、これらの是正への第一歩を踏み出したものとして妥当な措置であると考えます。  次に、法人税、酒税、物品税の増税について述べます。  これらの増税措置は、所得税減税による税の減収を補てんするためにやむを得ないものと考えられます。また、増税だけ行うのではなく、一方で所得税減税を行うわけでありますので、「増税なき財政再建」の基本原則にも矛盾しないものと考えております。  法人税の税率引き上げにつきましては、我が国の法人企業の税負担は国際的にもかなりの水準に達しておりまして、これ以上の引き上げは国際競争力の観点から問題であり、また、景気動向にも望ましくない影響をもたらすものとして反対する向きもかなりありました。しかし、法人税引き上げの余地はまだ残されていると考えられまして、また、法人税負担の引き上げが設備投資や景気にそれほどの悪影響を及ぼすものとも考えられません。所得税減税の見返りとして増税が必要であるとすれば、法人税負担の引き上げはやむを得ないところであると考えられるわけであります。  同様なことは、酒税と物品税の増税についても言えることであります。酒税は酒という嗜好品に対する課税でありまして、税の増収が必要とされる折、それの引き上げはやむを得ないところであると考えます。また、物品税につきましては、その増収を図るというねらいとともに、消費の実態に合わせて税制の合理化を図るという意味も含まれていると思われます。  第三に、今回の税制改正におきまして、納税環境の整備のための諸施策を講ずることにしたことは、課税の公平の見地から極めて重要なことであります。すなわち、取引に関する記録及び書類の保存、簡易記帳、総収入金額報告書の提出等の義務づけなどがその主内容であります。  よく、課税の公平あるいは逆に不公平ということが問題にされます。このことは、課税の基本原則に関することであります。しかし、いかにして課税の公平を実現するかあるいは不平等を是正するかということについての実効性のある議論は、これまで比較的少なかったようであります。課税の不公平は多くの要因によって生じますが、所得の捕捉が不十分であることによってもたらされることが最も重要であると考えられます。所得の捕捉における不公平を是正するための措置として、今回の納税環境の整備のための諸措置は大きな意味を持っているものでありまして、申告納税制度についての画期的な改正であるとも言えます。しかし、今回の改正で十分であるとは言えず、これを契機にさらに改善の努力を重ね、税の公平の一層の確保を図るべきであると考えます。  以上、今回の税制改正に関しまして主要ポイントについて意見を申し上げました。  ただ、極めて財政の苦しい状況におきまして、所得税減税を実施することにしたために、税体系に無理が生じたことは否定できません。今後、財政再建を正面に据えて、中長期的観点から税制のあり方を検討する必要があると考えます。また、利子配当所得の課税に関して、グリーンカード制実施の延期の措置がとられたままであります。グリーンカード制を含めまして、利子配当課税のあり方につき早急に結論を出す必要があると考えます。  以上申し上げましたように、新年度の予算案は、税制改正とともに、その置かれた諸条件を考慮しますと、まずまずの評価を与えてよいのではないかというふうに思われるわけであります。しかしながら、今後の我が国の財政を考えますときに、多くの重要な問題を残していると思われます。以下、主として財政再建の観点から論じてみたいと存じます。  今後の我が国の財政を考えますときに、まず特例公債発行依存から脱却するために、財政収支の改善を図ること、すなわち財政再建を図ることが最重要かつ緊要な課題であることは言うまでもありません。  ところで、財政再建の達成のためには、歳出歳入の両面にわたって財政収支の改善のための諸方策が講じられなければなりません。このため、歳出の抑制を徹底的に行うことが必要であることは言うまでもありません。これについては、特に五十五年度以降、一般歳出の伸び率を一けた台に抑えまして毎年伸び率の低下を図り、五十八年度に続き五十九年度もマイナスの伸び率にするという厳しい抑制を続けております。  既に申し上げましたように、五十九年度予算では地方財政対策、医療保険等におきまして制度、施策の根本にまで踏み込んだ改革を行いまして、また、食糧管理費の節減合理化、国鉄経営の合理化等をさらに推進しまして、補助金等について思い切った整理合理化を行うことによりまして歳出の徹底した抑制を図っております。これによりまして財政再建は大きく前進するものと期待されます。しかし、制度改革を伴う歳出抑制の余地はまだ残されておりまして、今後、手綱を緩めることなく、さらに取り組んでいってもらいたいと存じます。  ところで、財政再建におきまして歳出抑制が中心課題であるとしましても、六十五年度までに特例公債発行依存かる脱却するという財政再建目標を達成するためには、歳出抑制のみでは無理でありまして、また、歳出抑制のみの財政再建では財政力を弱め過ぎます。そして政府の適正な活動というものに支障を来すと思われます。このことは、先般発表されました「財政の中期展望」及び「中期的な財政事情の仮定計算例」こういうものを見ましても明らかであります。  私は、六十五年度までに特例公債発行依存から脱却するという財政再建の目標を達成するためには、政府は「増税なき財政再建」の基本方針を変更して、「増税も含む財政再建」へ転換する必要があると考えております。これは、今申し上げましたように、歳出抑制のみでは極めて困難であるとともに必ずしも望ましいものではないということのほかに、税制面のあり方という点からも考えられることであります。すなわち「増税なき財政再建」ということが、経済、社会の変化に伴う税制の合理的なあり方の検討に際しまして大きな束縛になって、税体系のゆがみの拡大が生ずることになっております。  例えば、今回の所得税減税と、法人税、また間接諸税の増税問題であります。多くの国民の願望に基づく政治的要請とはいいましても、財政再建途上における所得税減税というものは元来無理なことではないかと思うわけであります。しかし、一種の至上命令のような形で所得税減税をやろうとしますと、どうしても法人税、物品税、酒税というような点の増税をやらなければならなくなりまして、税体系を大きくゆがめることになるおそれがあります。このようなことは五十九年度税制改正で終わりにしないと、我が国の税制はがたがたになってしまうというおそれを持っております。  以上の理由によりまして、「増税なき財政再建」の基本方針を転換し、歳出と歳入の両面からの財政再建の具体的方策を確立すべきであります。増税そのものは歓迎すべきことではありませんが、財政再建のためには不可避であると考えます。現実を直視し、適切な方策を講ずることこそ、政治に対する信頼を確保する道であると信じます。  最後に、財政再建の具体的方策を確立するに当たりまして、特に税制面につきましては、税制調査会の中期答申(五十八年十一月)及び五十九年度税制改正答申(五十九年一月)におきまして述べられておりますように、今後課税べースの広い間接税について検討していく必要があるという提言をしておりますが、これを十分に尊重されることを希望する次第であります。  以上で私の公述は終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 どうもありがとうごさいました。  一次に、飯塚公述人にお願いいたします。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 TKC全国会会長、公認会計士、税理士飯塚毅、ただいまから公述申し上げます。  先ほど委員長さんが、忌憚なく意見を言え、こういうふうにおっしゃいましたので、きょうは忌憚なく意見を言わせていただきます。  私は、昭和五十九年度政府予算案に絶対反対し、かつ、大至急で部分修正を行い、再提出することを求めます。  では、絶対反対と申し上げる根拠は何か、何がその理由が、それを申し上げます。  理由の第一は、鹿内さんが社長をやっているサンケイ新聞が、この一月以来「ペテン予算」「まるで手品師大蔵省」などの表現で論じているように、この予算案は、政府・与党による正真正銘の公約違反予算案であって、国民をだますこと古今未曾有のものだからであります。  二番。理由の二は、昨年九月十三日午後三時二十五分、中曽根総理は、衆議院の本会議における公明党の浅井議員の質問に答えて、歳入歳出の構造的見直しを行いますと公約しながら、構造的見直しは歳出についてだけ行っていて、歳入については構造的見直しをやっていないのです。この点は、大蔵大臣の提案理由説明要旨の第一ページ、「予算編成の基本方針と予算の概要」と題する文章の二行目と三行目に明白にその告白文が載っていますから、御参照願います。  三番。理由の三は、この予算案は、土光さんの第二臨調の勧告である財政再建のための条件としての記帳義務の強化と総収入基準の採用について、いかにもそれらしき点に一歩的前進を図った形跡が見える点を歩といたしますが、その実体は土光勧告の改造、変造であり、第二臨調の全委員の横っ面を張り倒した観がある点です。誠実に土光臨調の趣旨に沿ってはおりません。  第四の理由。昭和五十九年二月、大蔵省主税局提出の「昭和五十九年度税制改正の要綱」という文書の第三ページにあります。その中央の2には「納税環境の整備」とあり、その(1)は、「記録及び記帳に基づく申告」として①から⑤まで述べております。これは全く素人だましの文章であって、専門家の作成すべき文章ではありません。その①は、取引記録の保存義務に関しますが、これにはこう書いてある。「前々年分の所得税の確定申告書又は総収入金額報告書を提出した者等は」と、こういうふうな限定がついている。これは大蔵官僚の伝統的発想法に基づく表現でありますけれども、これでは課税の公平は全く実現できません。なぜかならば、前々年分の確定申告書を提出した者というのは、現時点で言えば、昭和五十八年三月十五日、去年の三月十五日までに昭和五十七年分の確定申告書を出した者ということですが、これでは確定申告書を出さなかった膨大な脱税者群の捕捉を念頭に置いていません。これでは不公平税制そのものは少しも是正されません。西ドイツ国税通則法第百四十条第二項は、記録保存や記帳義務の前提として、税務署からの告知を定めています。記帳義務者の範囲を特定する、行政行為としての告知が前提となっています。ことしの四月には西ドイツ大蔵省のムース国税通則法担当課長がやってきますから、この点を聞いていただきたい。こういう体制でないと、膨大な脱税者群の捕捉ができません。今回の税制改正の要綱にはこれが入っていません。膨大な脱税者群を捕捉せんとせずして何が課税の公平か。私はその点で反対であります。  理由の第五。我が国の現行の国税通則法と法人税法と所得税法、どこを見ても、正しい納税をすべき義務というのは書いてない。よく調べてください、国会議員諸公。これはうたってない。したがって、申告書の内容の品質を納税者が保証すべき条文がない。これはないのは世界に日本だけです。そこで国民は、納税申告書に自署捺印することの重大さを知りません。これは国会議員及びこれを補佐すべき大蔵官僚が無能である証拠であると考えるものであります。ただし、本日御列席の国会議員諸公は例外とする、こういうふうに言わないとまずい。(笑声)  そこで、ハンブルク大学の法哲学教授ヘンケルが言ったように、法は社会を形成していく原動力だとの認識が欠けている結果であります。英米独仏の申告書と比べてごらんください。そこには必ず、納税者の署名欄に、「偽証罪に問われることを承知して、私は、私の申告書が、真実、正確、完全であることを宣言します」、こういうふうに書いてあります。自分が申告した内容にうそ偽りがないことを厳粛に保証しています。不公平税制の是正を叫びながら、なぜ申告内容の品質保証条文を設けないのか。これも反対の理由であります。  理由の第六。税制改正の要綱の四ページには「総収入金額が五千万円を超える者は、確定申告書を提出した場合を除き、総収入金額報告書を提出しなければならないこととする。」とあります。これくらい土光臨調の勧告をなめ切った改正要綱はありません。土光臨調の勧告した総収入基準というのは、所得の申告書を出すべきか出さないでもいいかの判断基準に総収入金額を持ってきなさい、こういう意味であります。西ドイツの国税通則法第百四十条第一項は、この総収入金額が三千万円、三十万ドイツマルクですけれども、三千万円を超える者としております。五千万円とするか三千万円とするか、それは政治家の判断でしょうから、私は触れません。問題は、総収入基準というのは、申告書の提出、不提出の区分基準に関することなんです。それを総収入金額報告書などという変なものにすりかえてしまったのでは、何のために第二臨調を設置して、高齢な土光さんや多くの学識経験者を動員して勧告書を出してもらったのですか。不誠実きわまる裏切りであると私は考えます。  理由の第七。税制改正の要綱の三ページの②に「所得の金額が三百万円を超える者等は、取引に関し、簡易な記帳をしなければならないこととする。」と書いてあります。簡易な記帳ということを強調しております。しかし、商法第三十三条は、帳簿には整然、明瞭に記載することを要すと規定し、商法第四百九十八条一項十九号には、会計帳簿には取引を網羅的に記載すべきことと真実を記載すべきこととが定めてあります。大蔵省当局は、従来、商法の記帳義務の原則を無視して、税法上では記帳の義務を定めず、任意性のあるものとしてきました。「簡易な記帳」という表現は、従来と同様にこの市民法の一般原則を無視ないし裏切る傾向を持つと判断されますので、法の整合性を守る見地からも重大な過ちを犯したものと考えます。  また、前々年分の所得金額が三百万円を超える者というのは、過去の事実を正当なものとみなして未来を規定するというものであって、これでは脱税していた人たちの捕捉ができず、したがって、不公平税制の是正には連なりません。  理由の第八でありますが、我が国の税法は、脱税というものを国家と国民に対する偽証罪としてはとらえていない。刑法第百六十九条参照。のみならず、未遂罪はこれを罰しない。刑法第四十四条参照。さらに脱税を詐欺罪ともしない。これは団藤重光先生の「刑法綱要・各論」の四百九十一ページを参照していただきます、こういうふうになっている。先進文明国とは著しくかけ離れた法制となっている。これは国際的に異例なものである。そのくせ、善意の営業者で――ここから先生方、本気に聞いてください。善意の営業者で、他から不渡り手形をもらって倒産した場合、その場合に会計帳簿が不完全であったときは「五年以下ノ懲役又八三十万円以下ノ罰章二処ス」という規定がある。破産法三百七十五条に書いてある。こういう過酷な刑罰規定を設けている。こういう奇形的な法制を先進文明国の平均値並みぐらいに引き直し訂正することが税法の構造的見直したと言うべきである。  ちなみに、米国の内国歳入法六千六百五十三条には、脱税を詐欺罪と断定する明文規定があります。西ドイツの大学の科目には、租税刑法学という独立の学科目さえあります。立法に携わる者は、いたずらに職人的なつじつま合わせに目を奪われず、法制の大局が整合性を持っているか、国際的な普遍性を持っているかについてもっと真剣に吟味し、改善すべきである、こう私は思います。  理由の第九は次のとおりであります。  イギリスの勅許会計士協会の「ゼ・アカウンタント」という機関誌があります。それの去年の九月二十二日号には、ダーリック・オウルズ教授の論文「合衆国における脱税と租税回避」が掲載されております。これによると、米国の内国歳入庁の発表によれば、一九八一年には九百六十億ドルの脱税による税収漏れがあった――これは正式発表ですよ、と言っている。これに対してアメリカの公認会計士協会は反論を発表し、脱税による税収漏れは米国の国家予算とほぼ同額であると言っている。どうです、先生方、お考えください。米国ほどの脱税に対する重罰体制を持っている国でもこれほどの脱税があるのであります。教授によれば、その原因は資料収集制度の不備にあったという。そこで、レーガン政権になってから、八二年の法律改正によって、資料不提出者には一日当たり十ドルの過料に処すと法律を改めました。だから、十日もサボっていると百ドルになっちゃう、百日サボっていると千ドルになっちゃう。資料不提出者には一日当たり十ドルですからね。一日当たりですよ。  各位は、ことしの二月十八日付の読売新聞第十三版第一面の正面に大きく「農家の脱税、大量摘発」との見出しで、東京国税局が資料収集の結果、五十七年分の申告納税額七億円に対し、その約二倍に当たる十三億円を追徴課税したとの記事を注目されたい。政府は、昭和五十九年度予算案に、農民から百七十億円の税収を予定しているが、今回の東京国税局のように正しい納税を確保する行政処置をとれば、農業者からの税収はおよそ三倍の四百八十億円ともなるのである。  また政府は、申告所得の納税収入を三兆三百五十億円と予定しているけれども、資料等の不提出者に対して、米国並みに、一日のおくれについて二千五百円程度の過料を取るように資料収集制度を法的に整備するならば、税率を働かさず、一円の増税も行わず、収入予算の二倍に当たる六兆円程度の税収をおさめることはいとたやすいことであると、職業会計人としての実感から申し上げたい。公平な課税のための見識と勇気とを欠くがゆえに、政府は、あえて公約違反の愚を犯しているのである。猛省を催すゆえんである。  要するに、歳入の構造的吟味という総理の公約の実行を大蔵省は裏切っているのであります。慶応大学の加藤寛教授が言われたように、第二臨調を悪者として、第二臨調の勧告のせいにして不公平税制を是正すればよいのである。  反対理由の第十を申し上げます。  現在、我が国の所得税法には、納税有資格者に確定申告書を送達するための根拠条文がない。行政はやむなく申告相談実施要領という内部通達をつくり、これに基づいて送達している。しかしこれは課税権の行使を法律によるべきことを定めた憲法三十条、八十四条違反であるばかりでなく、憲法尊重擁護の義務を定めた憲法九十九条にも違反している、こういうことなんであります。  そればかりではない。申告書用紙送達の職権規定がなく、納税有資格者の範囲確定の職務規定がないということは、予算見積もりの確たる根拠がないことを意味しておる。したがって、主税局の言っている最近までの課税実績等を勘案して算定したなどというのがせいぜいであって、根拠なき想像数値を提出しましたということと同義語となり、算定根拠の数字に蓋然的な確実性すらもないので、賛成できない理由ともなるわけであります。  理由の第十一を申し上げます。  商売人が商売を始めたり、営業所を設けたり、移転したり、廃止したりした場合に、所得税法第二百二十九条により、一定の届け出書をこれらの事実があった日から一カ月以内に税務署に提出すべきことになっています。しかし、この届け出義務には、欧米と異なり、罰則規定がありません。西ドイツでは、営業法第百四十三条により、不真実の届け出をしたり、届け出をしなかったりしますと、懲役刑まで科されることになっています。ここが日本と欧米とで全く異なるところです。最近も、東京国税局の調査で、無届けの所得者が管内で二万七千人も見つかったということが、二月十五日の日本経済新聞に報道されましたけれども、良心のある人は届け出てくれというだけの話で、脱税を国家が公認していることになるわけであります。  ましてや、匿名預貯金や架空名義預貯金も大蔵省が一片の通達で容認していますから――たしか池田内閣時代です。政府は脱税資金の隠れ場所までも用意してくださっているわけでございますから、まことに御立派と言う以外はないと、こういうことでございます。  反対理由の十二を申し上げます。  我が国が米国に次いで世界第二の電算機の普及国であることは御承知のとおりです。日本の大中法人はもちろんのこと、最近は年間百万台以上と言われるコンピューターがどしどし中小企業に入り込んで、電子計算機による自社経理の企業がふえております。二月十三日付の日本経済新聞にも十段抜きで載っていました、「ザ。税務署」という題で。電子計算機は簡単に脱税プログラムがつくれて、しかも脱税処理の痕跡が残りません。脱税は思いのままにできます。この点に気づいた米国は、二十年前に内国歳入法六千一条附属の法規命令を制定し、電算機による脱税をがっちりと防止しております。私の調査では、西ドイツでは電算機のソフトウエアを規制する法律を現在五十七本持っております。日本にはかかる法律は一本もありません。ですから、脱税処理は自由自在です。法人の実地調査率が年間九%、個人が年間四%という調査状況ですから、それらの脱税のほとんど全部は時効で助かってしまうことになります。  さらに重大なことは、大中法人のほとんどは、個々の取引の詳細について、法人税法施行規則別表二十の記帳条件を無視し、取引の全部を帳簿に記載せず、電子計算機の記憶装置であるいわゆるブラックボックスにため込んでいて、調査官に要求されたときに初めてこれをプリントして見せるという態度をとっています。行政はため息をつきながらこれを眺めているだけで、記帳条件の違反としてその企業の青色申告の否認処分を実行していません。別言すれば、官民がぐるになって脱税処理を黙認し、推進しているわけであります。だから、反対であります。  反対理由の十三を申し上げます。  記帳義務の強化を打ち出したのは一歩的前進であると評価しますが、記帳義務に明確な担保処置がなく、単に推計課税に不満な者にはそれだけの所得がない旨の立証責任を負わせよとの政府税調の意見だけではうまくいかないことをあらかじめ予告申し上げておきます。  今世界で、推計課税に不満な納税者に立証責任を負わせている国がありますか。二十年前のイタリアは、そのテスト・ユニコ(統括法)という法律の第百十八条で納税者に立証責任を負わすことを規定していました。また、イギリスの一九五二年所得税法第三十六条も、同様に推計課税に不満の場合の立証責任を納税者に課していました。しかし、イギリスでは十四年前にこの条文を廃止し、今では偽証法第十一条を適用するようになっています。  担保規定がなければ課税の公平化は期せられません。米国では、重要事項についての虚偽記帳は一九三三年証券法第二十四条によって五年以下の懲役または罰金、その他の虚偽記帳または記帳不実行については、内国歳入法第七千二百六条によって三年以下の懲役または罰金。フランスの場合は、国税通則法第千七百四十五条によって五年以下の懲役または罰金。イギリスは、個人については前述の偽証法、会社については一九七六年会社法第十二条によって二年以下の懲役または罰金、または両罰の併科。西ドイツでは、刑法第二百八十三b条によって二年以下の懲役または罰金となっています。これが担保規定なんです。こういう担保規定の断固たる設定がなければ課税の公平は実現できないとするのが世界の通説であります。税制改正の要綱ではこの点が欠けているので、この予算案には賛成できません。  さらに、反対理由の第十四を申し上げます。  税務行政のあり方は、国民に税の公平感を与え、財政再建に積極的な協力を求める上で極めて重要だと考えますが、政府は少なくとも次の欠陥については一刻も早く改正すべきだと考えます。  第一に、税法は国民に対して厳然たる規律を求めてもよいが、同時に税務行政に従事する税務官吏に対しても襟を正して税務に後事することを求める法条を持つべきである。例えば、米国の内国歳入法七千二百十四条は税務官吏の非行を九項目に分類し、懲戒免職のほか、五年以下の懲役または一万ドル以下の罰金、または両罰の併科を定めています。シンガポール共和国でさえも、その所得税法九十四条から九十七条まで同様の規定を持っております。  第二の著しい行政の欠陥、それは納税者が税務署の決定に不服である場合、国税不服審判所に提訴するわけですが、その審判宮は行政上の公平な独立機関としての地位を与えられていないことです。審判官の人事権や給与権は国税通則法七十八条以下によって国税庁長官に与えられており、実際の権限行使は国税局長を補佐する中堅官吏に任されています。その結果、審判官は後で自分が不利な人事配置を受けることを恐れて、戦々恐々として原処分庁を勝たせようとします。私はその恐怖感の告白を何回も受けています。納税者に課税の公平感を与えないこの体制は、一刻も早く改善すべきであります。  第三の甚大な欠陥は、行政が憲法第三十条、八十四条を踏みにじって租税法律主義を貫いていない点でございます。  ちょっと省略いたしまして、反対理由の第十五を申し上げます。もうそろそろ時間が来ているからやめろと言われていますからね。  財政再建必達のためには、財政収入の一端を担う税理士の職業法規、つまり現行税理士法の欠陥是正もまた国家のために重大だと考えます。  改善すべき欠陥の第一は、税理士法第四十五条に業務の品質に関する義務規定を欠いていること。  改善すべき欠陥の第二は、税理士法三十三条の二の添付書面の提出を任意事項としながら、処罰規定を追加してしまった点です。これで税理士は処罰を恐れる余り、体を張って業務の水準を守るという点から完全に逃げてしまいました。  改善すべき第三の欠陥は、税理士法人設立の自由を認めず、かつ複数事務所の設置を認めない点です。あとは省略します。  改善すべき欠陥の第四は、我が国の税理士、公認会計士には懲戒事案の除斥期間の規定がないことです。弁護士は三年、西ドイツの税理士は五年の除斥期間を持っています。日本の税理士、公認会計士は一生涯その責任を追及されるという立場にある。これはめちゃくちゃですよ。  改善さるべき欠陥の第五は、日本の税理士は業務上の損害賠償責任保険制度が与えられていないということです。西ドイツでは、税理士法第六十七条によって強制されています。  吹っ飛ばします。  以上申し上げた十五項目の反対理由は、それがすべてではありません。そういう構造上の欠陥や法の不備を見て見ぬふりしながらつくった予算案ですから、全く恐れ入ったものです。大多数の大蔵官僚は保身と栄達にのみ明け暮れ、本日御列席の先生方は例外として、大部分の国会議員は商人化してしまって選挙民の顔色ばかりをうかがっておる。では、一体だれが本気になって国家と国民の運命を憂えるのか、そこを申し上げたい。  以上、私が申し上げた諸点の改善をやりますと、税率はそのままで、増税は一円も行わずに財政の健全化が達成できることと確信いたします。  失礼いたしました。(拍手)

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 どうもありがとうございました。  次に、松川公述人にお願いいたします。

松川道哉日興リサーチセンター取締役理事長

○松川公述人 日興リサーチセンターの松川でございます。  本日は、昭和五十九年度予算の審議に際しまして、最近の世界経済の動向について意見を述べてほしいというお話でございましたので、まず世界経済全般について私が感じておりますところを簡潔に申し上げ、い次いで当面しております幾つかの問題について触れてみたいと思います。  まず、世界経済全体の流れについて大胆に単純化して申し上げますとすれば、昨年は、二度にわたったオイルショックの後遺症から脱却したという記念すべき年であったと思います。  すなわち、資源をぜいたくに消費しながらひたすらに高度成長の道を歩んでまいりました一九六〇年代に続いたものは、資源の有限性を訴えたローマ・クラブの宣言であり、そして、やがては二度にわたって世界を揺るがせたオイルショックでございました。その結果、一九七〇年代においては、世界経済の成長率は鈍化いたしまして、またインフレ率は高騰し、やがてスタグフレーションの時代に突入したのであります。そしてその結果、内にあっては失業者が増大し、外にあっては、第二次大戦後一貫して増加し続けてきた世界貿易が、一九八〇年をピークといたしまして毎年減少するという深刻な問題に当面するに至りました。  ところが昨年の春には、世界的な省エネルギー努力や、またスタグフレーションを背景といたしまして、原油の価格が約一五%下げられることとなりました。またさらに、主要諸国の政策努力の効果と相まちまして、世界経済は久方ぶりにやっとゼロ成長から脱却することとなりました。そして、例えばOECD諸国全体のGNP成長率でございますが、昨年初めには一・五%と予測されておりましたものが、年末には二・二五%と上方修正されるということになりました、このような成長率見通しの上方修正は、オイルショックが起こりました一九七三年以降久しく見られなかったことでございまして、昨年は大局的に見てオイルショックの後遺症からようやくボトムアウトすることができた年と言ってもよいだろうと思います。  そしてこのような展開は、原油価格の引き下げとともに、米国経済の立ち直りによってもたらされたものであることは御高承のとおりでございます。そして現在、本年の世界経済を展望してみますと、成長率と物価の両面において昨年を上回る安定成長が見込まれておりまして、オイルショック後のスタグフレーションがようやく克服されたものという感じを持つ次第でございます。  しかしながら、苦渋に満ちた十年間の諸問題、オイルショック以降の問題が全部片づいたわけではございません。例えば、先進諸国を通じまして財政赤字の問題は依然大きな問題として残っております。とれは日本や米国だけの問題ではありません。例えば、先進七カ国の政府の債務の累積残高はオイルショック以降急速に増大し続けておりまして、一九七三年には七カ国のGNP合計の三七%にしかすぎなかった債務の累積残高が、十年後の一九八三年にはGNPの半分を超える五一%にまで達したものと推定されております。  このような情勢を背景に、去る二月十三、十四の両日、パリにおいて中長期的な経済展望とこれに対応する政策をめぐってOECD閣僚セミナーが開かれまして、今後の財政のあり方についても意見交換がなされたとのことでございますが、スタグフレーション克服後の世界経済において、財政赤字が大きな問題の一つであることについての共通の認識があったように思われます。これからの世界経済の安定成長を目指して何をなすべきかについて、共通の認識を模索しながら世界的規模で政策を展開しようとする、このような努力が始まっているわけでありまして、これからさらにロンドンでの首脳会談に向かって話し合いが続けられていくものと期待いたしております。  さて、本年の世界経済は、昨年にも増して、より高い成長とより安定した物価の二つの目標を同時に達成し得るであろうと予測されております。しかし、まだ幾つかの問題が残っております。  そこで、国際経済上重要な幾つかのポイントにっきまして、順次私見を申し上げてみたいと思います。  まず、アメリカの経済についてであります。御承知のように、米国経済は先進諸国の経済全体の中で約四割のシェアを持っておりまして、世界経済の動向を左右する重要なものでございます。また、ドルが世界の通貨制度の基軸となりておりますために、その動向は直接世界各国に大きな影響を与えるものでございます。  その米国経済は、一昨年マイナス成長を記録いたしました後、昨年の第一・四半期以降急速に回復してまいりました。特に第二・四半期には対前期比伸び率は年率換算九・七%に達し、その後も、第三・四半期には七・六%、第四・四半期には四・九%と、伸び率そのものは若干鈍化いたしましたものの、着実な成長を続けております。  また、かつて一〇%を超えていた失業率も次第に下がってまいりまして、昨年十二月には八・一%、本年一月には八%となりましたし、二、三年前には対前年同月で二けたもの上昇率であった消費者物価も、昨年中は二ないし三%台で終始するという落ちつきを見せております。  これらの経済活動の基幹を示す指数は、本年もさしたる波乱を伴わずに推移するものと思われますし、成長率そのものも五%前後、すなわち一九七六ないし七八年以来の高い成長率になるものと見込まれております。  このように米国経済が堅実さを取り戻し、米国経済に対する信認は着実に回復してまいりました。そして、これがことしの世界経済を明るくしている大きな要因となっております。しかし、これで何も心配することはないのかということになりますと、なかなか簡単にはいかないのでございまして、特に世界経済という観点に立ってみますと、何といっても現在の大きな問題はドルの異常な高値であり、そしてその原因となっている高金利であります。  現在、米国の金利は、長期金利が一二%程度、短期金利が九%前後でございまして、一九八一年から八二年にかけての超異常ともいうべき高金利の時代と比べますと大幅に下落しており、特に短期金利が下がっておりますが、それでも昨年の五月ごろを底として緩やかな上昇傾向をたどっております。そしてこれからも上界傾向を続けるのではないかと懸念されております。さらに、物価上昇率が三%台にまで下がってきましたために、いわゆる実質金利は長期が八%超、短期で五%超と極めて高いレベルにとどまっております。  このような高金利の背景としてはいろいろな理由が挙げられております。例えば、所得税は減税されたが、貯蓄率は上がるどころかかえって下がってしまって、金利の下支えになってしまったためであると言う方もおられますし、金融に関する規制緩和やコンシューマリズムの高まりに伴いまして資金コストが上昇してしまったからであると言う人もおりますし、さらに、米国連銀がインフレ再燃を恐れる余り、マネーサプライの管理を厳しくし過ぎている結果であるとか、いろいろの要因が重なっております。  しかし、多くの人の見るところでは、米国の高金利の基本的な原因は連邦財政の大きな赤字でございます。レーガン政権発足当時の青写真によりますと、財政赤字は今ごろではほとんど解消するはずでございましたが、現実には赤字は増大するばかりでございまして、今や年額二千億ドルになんなんとしております。そのGNPの中に占めるシェアも、一九八一年にはわずか二・一%であったものが、八三年には五・四%にまで急速に増大してしまいました。  米国における貯蓄率の低さを考え合わせますと、この膨大な財政赤字が金融市場に与えるインパクトはまことに大きなものでございます。この赤字をいかにして削減するかが緊急な大問題でございますが、本年十一月に大統領選挙を控えまして、具体的かつ有効な削減策が出てくる気配はまだ見えておりません。  しかも、景気回復に伴いまして民間企業部門における資金需要もやがて大きくなっていくものと思われますので、米国の高金利はしばらくは続くものと見込まれます。結局は、財政赤字が縮小するめどがつくまで今の状態から大きく変わることは望めないのではないかと思います。  このような高金利は、もちろんいろいろの方面に好ましくない影響を及ぼしております。中でも重要なものとしては、第一に米国の景気回復の足を引っ張っていること。第二に巨額の外国資金流入のもととなり、ドル高を招き、貿易の赤字が著しく拡大してしまったこと。そして第三には、開発途上国の債務処理を難しくしていることなどが挙げられると思います。  第一の景気に対する影響は、既に一応の見通しを申し上げましたので省略いたし、ドル高と貿易赤字について御説明いたしたいと思います。  ここ二、三年の米国の国際収支には幾つかの顕著な変化がうかがわれます。それはまず貿易収支の赤字の拡大であります。第二次オイルショックの前後を通じて赤字幅は約四百億ドルでございましたが、昨年には六百九十四億ドル、すなわち約七百億ドルまで拡大いたしました。本年はさるに大風にふえて千億ドルに達するのではないかと言われております。この大幅な貿易赤字は、雇用面などでも大きな問題を投げかけております。そのため、特に輸出入関連業界を中心といたしまして、一昨年来、円安について多くの批判を生じ、いわゆる日米間の貿易摩擦が声高に議論されましたが、これは日米間のみならず、米欧間にも、また米国と他の国との間にも同様な問題を生じておりまして、米国内の保護主義的風潮を高めてまいりました。  次には、外国からのおびただしい資金の流入でございます。一九八一、八二年の両年にわたりまして、米国の対外民間債務はそれぞれ八百億ドル以上も増加しております。そして、この傾向は八三年にも及んでおります。その原因としては、米国と諸外国、例えば米国と日本との間に見られる金利の格差が大きいことが挙げられておりますが、そのほかにも、米国の政治経済の安定性に魅せられまして移動してくる資金も相当にあったものと思われます。  そして第三には、国際収支統計上の誤差脱漏が極めて大きな額に達してきたことでございまして、一九八二年には四百十三億ドルにも上ったため、その原因についての分析が行われましたが、真相を解明するには至っておらず、いたずらに統計の信憑性が疑われるという状態であります。ただ、この誤差脱漏のうち相当の部分は、統計をくぐって米国内に流入してきた海外からの利益送金や逃避してきた資金ではないかと見る向きが多いようでございます。  これらの統計から推察されますことは、米国の高金利が海外からの資金流入を招き、これが米ドルの高騰をもたらし、その結果、米国の製品の海外競争力が低下して貿易の赤字幅を増大するという一連の動きでございました。その中で、ドル高をさらに加速させましたものが大きな誤差脱漏であったと推測されるのであります。しかし、これらの推論が米国側の政府当局者によって曲がりなりにも肯定されるようになりましたのは極めて最近のことでございまして、ようやく、ドル高是正のためには高金利の是正、財政赤字の削減が必要であるとの意見が聞かれるようになりまして、ひところのように円は不当に操作されているという非難は聞かれないようになってまいりました。  昨今では、逆に、ドルが暴落するかもしれないという説が聞かれるようになりました。その理由としては、今のようなドル高が続いて米国の貿易収支の赤字が拡大してまいりますと、やがて貿易外収支を含めた経常勘定をも大きな赤字にしてしまい、米国経済の信認が損なわれてドルは売られてしまうであろうというものから、今のドルの強さは米国への資金流入が続いているからであって、外国からの資金流入が細まってきたときには、ちょうど支えを失ったようにドルは暴落するであろうというものまでいろいろでございます。  確かに、今のドルは過大評価されております。長期に安定した為替レートは、やはり購買力が一致する点を基礎としたものになるでしょうから、その意味では、例えば円とかマルクとかに対してドルは過大評価されており、いつかは調整、すなわち切り下がっていく日が来るものと思われます。  例えば、一昨年の十一月から昨年の一月にかけまして、円は一ドル二百七十円台から二百二十円台に、二カ月間に二〇%以上切り上げられました。裏から見ますと、ドルが二〇%以上暴落いたしました。今、ドル暴落の可能性を説いている人たちは、このころのようなことを考えているのか、それとももっと別の暴落を考えているのか、まずその辺からして不明確でございます。  一昨年のドル下落の背景は、一言で申しますと、暴落に先立つこと三、四カ月の間の動きの反動でございました。すなわち、その年の夏ごろ、ちょうどメキシコが債務支払い不能になったころでございますが、恐らく幾つかの国から巨額な資金が米国内に移動してまいりまして、そのためにドルがどんどん買われて高くなりました。そのころには米国の金利が二〇%に近いところから急速に下がってまいりまして、日米間の金利格差が急速に狭まってまいりましたので、金利格差が為替レートを決定するという考え方からすれば、当然円が高くなるはずでございましたが、実際には逆にドルが高くなってしまいました。そして、一ドルが二百七十円台まで行ったのですが、やがて正体不明の資本移動がおさまりましたときにドル買いの圧力も細まって、ドルが急速に切り下がったのであります。  今でも米国への資本流入は続いております。世界のどこかで政治的、軍事的な事件が起こりますと、ドルは買われて高くなる傾向が続いております。しかし、一昨年の夏ごろのような大規模の資本移動は見られませんし、したがってドルの暴落とか暴騰とかをもたらすほどではございません。  暴落と言うにふさわしいような状態を考えますときに。すぐ思い出されますのは一九七八年十月の状況でございます。ドルはその前年から切り下がってまいりまして、七八年に入りましてからも、いろいろの政策が打たれましたが下げどまらず、とうとう一ドル百七十円台という円高・ドル安の状況にまで至りました。恐らくドル暴落をひそかに憂えている人たちの脳裏には、当時のことが思い出されているものと思われます。あのときのドル暴落の背景は、第一次オイルショックの結果スタグフレーションに陥った世界経済を活性化するために、米国が音頭をとって景気刺激策をとったのでございますが、これがかえって米国経済を弱体化させてしまったために生じたものでございます。  しかし、現在の米国の政策当局者のスタンスは当時とは非常に異なっておりまして、連銀はインフレが再来しないよう極めて慎重でありますし、また、米国経済全体の動向も、当時よりはるかに堅実なものであるように見受けられますので、今のところ、一九七八年の経験のようなドル暴落もまずないものと思っております。私自身としましては、ドル暴落説を唱えている人たちは、米国の政策当局者に高金利の是正や財政赤字の削減を求めて警鐘を乱打しているのではないかと思っております。  最後に、開発途上国の累積債務の問題について簡単に付言いたしたいと思います。  いわゆる新興工業国を中心といたしました国々の債務が巨額に上り、金利や元本の返済に支障が生じ始めてから約一年半の歳月が経過いたしました。昨年末における開発途上国の債務の合計額は、世界銀行の調べによれば八千億ドルに上っていると報道されておりまして、依然世界経済にとって重大な問題として残っております。もしこの返済が大きく遅延したり不払いに陥るようなことがございますと、世界の信用制度、金融制度に大きな破滅的な影響がありますので、一昨年八月、メキシコの弁済が遅延いたしましたときには、大変な緊急事態が生じたとして世界はこれを深刻に受けとめたのでございます。そして、果たしてこれらの累積債務は弁済してもらえるのだろうか、弁済の遅延は一時的な金繰りの問題だけなのだろうかと真剣に討議が繰り返されたのであります。幸いにも現在までのところ、金繰りの問題として処理されてまいりまして、何とか破綻せずに本日に至っておりますが、これから正常の姿に戻るまでにはまだ相当の長期間を要するだろうと思われます。  その間、先進諸国としては、世界的な金利水準の低下と途上国の外貨獲得を容易にするような配慮が求められますと同時に、今日のような状況を生ずるに至りました原因の一つには、オイルショック後に産油国に集中したいわゆるオイルダラーを開発途上国にリサイクルする過程にあったのではないか。すなわち、オイルショック以前には先進国の国際収支余剰が、あるいはバイラテラルな援助として、あるいは国際機関の貸し出しとして途上国に回っていたものが、オイルダラーのリサイクルに当たっては主として民間金融機関が中心となって行われ、これが本日のようなひずみを生じた背景ではないかと思われます。そのため、今後この問題の処理に当たりましては、国際機関の役割がますます大きくなっていくものではないかと思っております。  限られた時間の配分がうまくいきませんで、一部には説明を省略いたしましたが、この辺で私の意見の表明は終わらしていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 どうもありがとうございました。     ―――――――――――――

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。

小杉隆自由民主党・新自由国民連合

○小杉委員 私は、自由民主党・新自由国民連合の立場から質問をしたいと思います。  きょうは、それぞれの先生方が専門的な御意見を開陳していただきまして、非常に参考になりました。それでは、時間も限られておりますので、順次お伺いをしたいと思います。  まず、水野先生に伺いたいんですが、先生のお話の中に、財政の抑制策にはもう限界がある、したがって、医療とか地方財政の面でいわゆる制度改革にメスを入れてきたのは大変評価するという御発言がありました。しかし、まだまだこれから制度改革の面で不徹底な面があるということですが、先生がお考えになる、これからもっと思い切った制度改革に手をつけるべき事項はどういうものがあるとお考えか、それをお答えいただきたいと思います。  それから、先生のお話ですと、昭和五十二年度、五十二年度のころに行った拡張的な財政政策は財政赤字をさらに増大させるということで、否定的なお考えでございます。  そこで、先生の場合は「増税なき財政再建」ではなくて、増税も含めた財政再建だという大変思い切った御提言を聞きましたのですが、この今回の予算に盛られた一兆一千八百億円の所得税減税については、先生のお話をずっとお伺いしていますと、このような深刻な財政難の中で所得税減税をやるのは果たしてどうなんだろうかというニュアンスが含められていたと思うのですが、私どもは、国民の消費意欲を拡大をして景気回復に役立つという側面もあると思いますし、六年間据え置かれたために、実質的にいわゆる可処分所得が低くなってきたのが回復されるということで国民生活にプラスになると思われるわけですけれども、その辺の、所得税減税の今回の予算に盛られたその意味というもの、私がなりあると思うのですけれども、その点に関してはどうお考えでしょうか。その二点、お伺いしたいと思うのです。

水野正一名古屋大学教授

○水野公述人 私に対する御質問ですが、まず第一点の方の、歳出の抑制についての制度改革、施策の見直してまだ不徹底な面があるというところがどういうところかというお尋ねだと思いますが、これは、制度改革あるいは施策の見直しによる歳出の抑制、削減というのはまだ要するに入り口に差しかかったばかりだという感じがしております。まだ全般にわたって旧来の陋習といいますか、こういうものを打破していかなければいけない面は至るところにあるのではないか。  例えば、社会保障の面にしましても、今回医療保険についてのかなりの改革が行われましたが、まだまだ医療保険について、またいろいろ改善策も盛られておりますけれども、これが今後このとおりに効果をあらわしていくかどうかという点はさらに見守らなければいけませんし、年金制度についての改革というものも、まだこれもはっきりした方針も出ておりません。近いうちに出るようでありますが、こういう年金制度の改革、大問題であります。それから、あるいは食管制度なり国鉄の赤字問題なりあるいは教育費の負担の問題なり、まだまだ合理化あるいは抑制、こういうものを図っていかなければいけない余地はかなりあるというふうに見ております。  それから第二の方の、所得税減税の意義でありますが、この意義については、私は積極面を評価することについては賛成であります。  ただ問題は、財政再建の過程で、財政再建はやはり急がなければいけない、また優先すべき課題であるという点を考えますと、また所得税の負担につきましては、おっしゃるようにここ数年減税が行われてなくて、負担がかなり高まっているという点、国民の強い願望もあるという点、いろいろありますけれども、客観的に見れば、個人所得に対する所得税の負担というものもそれほど高いものとも考えられませんし、私の個人的意見としては、財政再建が何とかめどを見るまでは所得税減税というものも我慢すべきでないかという考えを持っているわけですね。そういう点からのやや否定的な見解も述べたわけであります。積極面を評価するという点は十分評価しているということも申し上げたつもりでございますが、疑問点をかなり強調しましたので、そちらの方が強く出たかもしれません。  以上です。

小杉隆自由民主党・新自由国民連合

○小杉委員 いま先生が、社会保障の面で、例えば年金を初めとして各種制度の見直しはまだまだたくさん余地があるという御指摘でしたけれども、先ほどの御意見の中で、増税も含めた財政再建ということで、財政再建の方にかなりウエートを置かれたお話を承ったのですが、私どもが危惧するのは、増税を含めた財政再建を強調する余り、そのことで制度にメスを入れるという点が鈍りはしないか。むしろ優先順位としては、制度改革にもっともっとメスを入れて、それがどうしても限界に来たという段階で増税も考えざるを得ない、そういう順序になると思うのですけれども、もっと制度改革が行き渡ってから税のあり方を考えて財政再建を図るという行き方の方が国民のコンセンサスが得られやすいのじゃないかという点をもう一度お伺いしたいと思います。

水野正一名古屋大学教授

○水野公述人 おっしゃる点は、「増税なき財政再建」という考え方というのはまさにそれだと思うわけです。  ただ一方、私は、「増税なき財政再建」で制度改革に切り込んで、まず十分やった上でさらに必要があれば増税を考えるというのでは遅過ぎるのではないかという気がするわけです。すなわち今までの経過を見ておりましても、歳出抑制というのはなかなか難しいし、時間もかかる。しかし、財政再建の方は、ゆっくりやれという説もあるのですけれども、私は、ゆっくりやっていると――財政再建というのはいろいろな面で国民にいろいろな我慢をしてもらうということが基礎にないとできないと思います。減税も我慢する、歳出抑制の方も我慢するという、いろいろな意味での我慢がないとできないと思うのです。ところが、人間の我慢の限度というのは、やはり時間的な問題でそう長い間耐えられるものではないと思うのです。数年あるいは十年以上も減税もない、また財政も苦しいという状況で、景気が悪くなっても景気刺激策もとれないというような状態はそう長く続かない。その再建途上において必ずまた減税なりそういう要求が出てくる。また逆戻りをするというおそれが多分にある。やるのなら思い切った措置で短期間にやるのがいい。そのためには歳出の抑制は、もちろんそれが前提になりますけれども、それとあわせて増税の措置というものもやらないと時間的な関係でだらだらするのじゃないかという点を一番恐れている、そういう意味で申し上げたわけです。

小杉隆自由民主党・新自由国民連合

○小杉委員 次に、飯塚先生にお話を伺いたいと思うのです。  大変単刀直入に、いわば非常に正論だと思いますけれども、かなり専門的な立場で詳細にわたる御意見をいただきましたので、私も全部これをフォローし切れないのですけれども、その中で私が一番関心を持ちましたのは、今コンピューター時代と言われまして、ほとんどの企業がコンピューターで経理を処理しておられる。それに対してコンピューターを規制するというか、法律が一本もない。アメリカ、西ドイツはそういう点では非常に進んでいるというお話、非常に興味を持って伺いました。  聞くところによりますと、コンピューターで毎日の経理を処理していて、銀行で金を借りる場合には自分の利益が非常に上がっているように見せて出す、一方、税務署に対してはプログラム、ソフトウエアをかえて、非常に赤字で困っているというふうに自在に操作ができるような実態があるということを私もしばしば聞くのです。先生がたくさん指摘されたのは、要するにまじめに納税する者がばかを見ない、とにかく税の公平感というものを国民に徹底をしていただく、そういう熱意のほとばしりであるような非常に厳しい指摘がされたと思うのですけれども、コンピューターに対する今までの政府の対応なりこれからのあり方について、もう一言突っ込んだお話というか御感想がいただければと思います。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問は、まさにずばりと今の段階における日本で一番大切なこと。というのは、大中小あらゆる企業が脱税の誘惑を受けているわけです、何にもソフトウエアの法律がないのだから。だから、つくらなければいかぬ。つくる場合に、アメリカには一九六四年、まあ二十年前につくった、非常に簡単であるけれども急所をついた法律があります。たしか先生方に参考資料に配付してあるはずです。私は、それを自分で責任持って翻訳しました。これをどうしても、せめてこれぐらいは日本の国会は法制化してくれ。そうじゃないと、大中小残らず脱税ばかり強いられるということになる。これはおっしゃるとおり。  それから、こういうのは大変いけないのかもしれませんけれども、先ほど先生から水野教授に対して御質問がありましたけれども、いわゆる税の公平を確保した上において、それから後に増税すべきでないかという御見解の吐露があったように拝聴しましたけれども、これは敬服にたえません。御立派なことでございます。要するに、ドイツの場合はちょっと複雑でございまして、私が母校の大学に学位請求論文で出している「正規の簿記の諸原則」という中に、ドイツのプログラム、ドイツのソフトウエアに関する立法の詳細が載っておりますから、御参照願えればありがたいのですけれども、せめてアメリカぐらいの条文はつくるべきだというのが私の見解です。

小杉隆自由民主党・新自由国民連合

○小杉委員 最後に松川先生に伺いますが、開発途上国の累積債務が八千億ドルに達しているということで、これは経済力が出てきた日本に対して、アメリカの銀行なりアメリカの政府が当然その肩がわりを相当求めてくると思うのですが、そういう面で日本の金融あるいは財政に相当大きなしわ寄せがもたらされる心配はないかどうか、その点、先生のお考えを伺いたいのです。

松川道哉日興リサーチセンター取締役理事長

○松川公述人 債務の救済をいたしますときに、やはり第一義的には当初の債務を供与した債権者、この人たちが責任を持って面倒を見るというのが原則でございます。その意味で、債務の繰り延べないし救済の交渉がございましたときに、あるいは米国あるいはその他の国々が供与いたしました債権に係るものにつきまして、すぐに日本の銀行ないしその他の国がどうのということにはならないであろうと思います。  ただ、先ほど……(小杉委員「肩がわりを求めてくる……」と呼ぶ)肩がわりを求めてくることはないだろうと思います。ただ、これが民間としてどれだけできるかということになりますと、そこに限度がございまして、ある程度は国際機関を経由するものに肩がわりをする。そうすると、国際機関の出資比率はそれぞれの国の債務の構成比率とは違いますので、非常に間接的ではございますが、日本もその限りであるいは肩がわりによって処理するものがふえたり、あるいは場合によっては減ることもあるかもしれない、そういうような状況にあろうかと思っております。

小杉隆自由民主党・新自由国民連合

○小杉委員 以上で終わります。ありがとうございました。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 次に、武藤山治君。

武藤山治日本社会党・護憲共同

○武藤(山)委員 公述人のお話を聞いて、大変感銘を受けた点が多いのであります。結局、水野先生と飯塚先生の話を聞いて特に感じたのは、水野さんは歳出削減には結局限度がある、したがって、歳出を徹底的に切り込むことは必要だが、結局は歳入増を図る必要がある、こうおっしゃって、そして税制答申の課税ベースの広い税制を考えるということに落ちつく。結局一般消費税の導入ということを考えているような発言でありました。いずれにしても、水野さんも何らかの歳入増を図らなければもう財政はどうにもならぬところに来つつある、こういう認識、飯塚先生も同じだと思うのですね。ただ、飯塚先生の場合は、課税ベースの広い一般消費税にいかなくとも可能性があるんだ。ここが大変違うわけですね。  そこで、飯塚先生にお尋ねをしたいのでありますが、今アメリカのビジネスウイークという雑誌をちらっと見たのでありますが、その雑誌によると、それぞれの国のアングラマネーの率が掲載されておりました。西ドイツではGNPの一〇%ぐらいがアングラマネーだ。フランスでは一〇から一五%、イタリアは二五%、アメリカでも、いろいろな説があって、GNPの五%から二七%、これがアングラマネーで税が捕捉されていない。したがって、日本もどんな計算をしてもGNPの一〇%を超える部分がアングラマネーであることはやや想像にかたくない。  そうなりますと、一〇%にしても、日本で約二十八兆円ぐらいの金は税金のかからない、やみからやみへ流れているお金である。日銀のあの研究所の副所長鈴木先生も、アングラマネーが大変ふえてきて経済運営に大変な支障が起こりつつあるということを日本経済の実態の中でえぐり出しておりますね。そういう点あれやこれやを考えてみると、今飯塚先生がおっしゃった十五項目のこの批判点というのは、まさにこういう問題を片づけたり、あるいはもう一点後で聞きたいのでありますが、非課税マル優貯金あるいはそれ以外の税を納めていない約百五十兆円の預貯金、こういうものをきちっと整理をしない限り租税正義の実現というのはできないんだ。飯塚先生の国家国民を思う憂国の至情というか、租税正義というか、そういう憂える情熱に私は今大変感銘を受けたのでありますが、第一にお尋ねしたいのは、そういう観点から先生のおっしゃる十五項目の、大衆課税しなくとも今の制度、今の法秩序を改革をすることによって可能だとおっしゃる点では私も大変同感なんでありますが、大変難しい計算ですが、大ざっぱに計算して、こういう先生の発想を実現をしたとしたら何兆円ぐらい税金が取れるとお考えですか。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 お答え申し上げます。  職業会計人の立場と大蔵省の役人の立場とでは非常に違う。アメリカの場合は、内国歳入庁は一九八一年の歳入について九百六十億ドルの税収漏れがあったと言っている。それに対して、アメリカの公認会計士協会の団体は正式に反駁して、冗談言っちゃいかぬ、アメリカの国家予算と同額が実は脱税になっておるんだということを言っておる。したがって、先生の先ほどのアメリカの雑誌を引用されたのも一つの参考資料であると思います。  同じような参考資料を申し上げます。  例えば、二、三日前、谷村さんという大蔵のOB、大先輩でありますが、この方と会談したのでありますが、偶然意見が全く一致してしまった。それは、何もグリーンカード廃止とか何だとかそんなくだらぬことやらなくたっていい。要するに現在の預貯金は全部一律に三五%源泉徴収しちゃえ、そうしといて後はいわゆる所得税法九条、所得税法十条、郵貯法十条等のいわゆる少額預貯金あるいは少額の証券、こういうものの利子配当はちゃんと還付してもらったらいいんだというんだ。非課税分だけちゃんと届け出て還付してもらったらいいんだ、そうすれば残るやつは大体二兆円を超えるというのは、二人で意見が一致した点でございます。そんなようなわけでございまして、預貯金だけで二兆円出てしまう。したがって今回の一兆五百五十億円の増税なんというのはナンセンス。  それからもう一つ。十五項目私は申し上げましたけれども、実はこれを断行するのには自民党の国会議員先生が、与党ですからね、この先生方が高い見識と同時に断固たる勇気を持たないとできない。だから、私は今日の土光臨調のあの横っ面を張り飛ばすような改造、変造、なぜこういう裏切りが起きたのかと言えば、与党の国会議員諸公が選挙民の顔を眺め過ぎておるというふうに私は感じておるわけであります。ここは願わくは土下座でも何でもいたしますから、願わくは先生方は勇気を発揮して、そうして断固として改革のメスを振るっていただきたい、そう願うものであります。(「野党が反対するんだよ」と呼ぶ者あり)

武藤山治日本社会党・護憲共同

○武藤(山)委員 飯塚先生は、元大蔵省事務次官の谷村さんだと思うのでありますが、利子配当、マル優、こういうような問題を一回、名寄せなんかしなくてもいいから、いずれにしても一律全部三五なら三五をかけて取れ、そして一定の所得以下のものは返せばいいんだ、こういう発想でいくと二兆円ぐらいは増収になるという計算ですね。それはそうなると思いますね、そういう方法を政府・自民党がやれば。今マル優二百六十兆円、それ以外に税を納めてない貯金が百五十兆と言われているわけだし、そういうものを一回一律課税をきちっとやる、あるいは法人の預金も全部やる。そういうことを本当にきちっとやれば私は二兆円以上出ると思うのですが、二兆円ではちょっと今の財政再建は厳しいんですね。  そこで、さっき先生に聞いたのは、記帳義務やいろいろ十五項目のものを自民党の諸君が勇気と決断を持って良識が作用したと仮定をして実行したとしたら、どのくらい税収がふえると考えるか。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 そこのところを御回答申し上げはぐってしまったので、恐縮に存じます。  職業会計人の、私は四十年近くやっておりますが、実感から申し上げますと、これをきちんと実行されるとおおよそ六兆以上、十兆は楽々と税収ができます。ただし、先ほど自民党席に声あり、野党が反対するんだという話でございますので、野党の先生方もこの改革については足並みをそろえてひとつ協力を願いたい、こういうふうにやればうまくいく、こういうふうに思っております。

武藤山治日本社会党・護憲共同

○武藤(山)委員 飯塚先生はTKCの全国会会長、公認会計士、学者でもある。ドイツ語、英語の堪能な翻訳業もやるような大変な先生でありますから、純理論的、純学問的租税の正義という立場からのみ論述をされる傾向があると思うのであります。この十五項目のうち一つ一つみんな利害が絡まってきて、なかなか政治家の諸君がああそうか、よし、これは正義じゃ、結構だと言えない項目もかなりあるんですね。しかし私はやはり今飯塚さんが指摘したような今の法の整備というものは緊急を要する問題である。特に中曽根総理はきのう参議院で、自分が総理をやっている間は一般消費税の導入は、大型間接税はやらない、こう言い切ったわけであります。でありますから、こういう個々の改正ということが大変重要な時期でもありますので、大いにひとつ具体的にこれから中身についての提言をあらゆる場所で行っていただきたいものだ、こう思いますので、先生の所感をちょっと聞かしてください。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 やがては一般消費税の導入は不可避であろうと考えております。しかし、それには前提条件として、国民全般が税の不公平感を抱かないという法律体制をつくる必要がある、つまり、課税正義の実現あるいは犠牲の平等というものがきちんと国民全体に行き渡ったときに、そのときに一般消費税を導入する、これはいいだろうと思うんです。ただ、御注意いただきたいことがあります。国会議員諸公に御注意いただきたいことがあります。  ドイツでは現在、売上税法、ウムザッツシュトイエルというのがまことにうまくいっております。しかし、実はこれは一九一九年、エーベルト、シャイデマンの内閣ができたとき、あのときに、ワイマール憲法が作成された当時に、ウムザッツシュトイエルゲゼッツという、売上高税法というのができたのです。六十五年間かかっている、六十五年間。その間に練りに練ってつくっている。だから、私が大蔵当局に願うのは、やがてはそうなるだろう、三年後か五年後にはなるかもしれぬ。その前に租税の完全な平等、犠牲の平等を実現するということをやってくれ、そしてその次に実は一般消費税の法案というものを公表して、そしてそれは有識者の十分な討論にまつということが必要だろうと思います。そういうことをやらずしてのっけに、ただもうのっけに短絡的に一般消費税を導入した方がいいんだなんていう議論にはくみするわけにはいかない、こういうわけであります。

武藤山治日本社会党・護憲共同

○武藤(山)委員 それから飯塚さんの中で、記帳義務の問題ですね。もう一つは収入基準に切りかえる、所得税法百二十条ですか、その場合の収入基準に申告基準を切りかえたときの業種別の限度ですね、これは非常にむずかしいですね。例えば、農業だったら幾ら以上、大工さんだったらどうという業種別の収入申告基準額、これはほかの国の例で簡単に説明していただいた場合は一体どんな金額ですか。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 西ドイツの国税通則法という法律があります。その法律の百四十条第一項を見ますというと、総収入が幾らであるか、つまり売り上げが幾らであるか。さらに総資産が幾らであるか。さらに経常利益が幾らであるか。大体この三つを基準にしているんですね。そして、今武藤先生がおっしゃったような業種別というのは非常に大まかであります。つまり、一般の事業者と農民と林業者というふうに三種類にしか分けていない。アメリカは分けておりません。一九五九年から六二年にかけては、アメリカの内国歳入法の六千一条には農民には記帳義務を課しておりませんでした。ところがその後改正になりまして、今はサラリーマンを除くすべての事業者は記帳義務を課せられております。しかもそれを怠った場合は三年以下の懲役です。まあドイツは二年以下ですから、ドイツぐらいがいいんじゃないかと思っております。

武藤山治日本社会党・護憲共同

○武藤(山)委員 時間がありませんから、もう一問松川さんに、ちょっと常識的なお伺いでありますが、今アメリカの財政が大変赤字で、今度千八百三十億ぐらいの財政赤字ですか、それに軍事費がかなり増大をしてきて、どうも経済全体に与える影響がちょっと心配されるわけですね。クラウディングアウトが起こって結局また金利はもう下げどまりで、年の中央以降、後半には金利が上がるんじゃないかな、こういう観測がありますが、大体、調査専門の立場から見て、そういう要因は心配ないものだろうか。  もし金利が上がってくるとなると、上がり方にもよりますが、インフレ的要因にまでそれが及ぼせば外資は逃げる、資本流入は減ってくる。資本流入が減ればドルは低落をする。ドルの値段が今二百三十四円ぐらいのところが、年の終わりごろ、あるいは大統領選挙の結果にもよると思いますが、ことしじゅうに二百十円ぐらいがあり得るのじゃないか、そういう観測もありますが、もと大蔵省にいた細見さんなんかはそういう読みをしていますね。二百十円レートぐらいになるだろうという見通しを立てていますが、松川さんのところではどんな見通しでございますか。

松川道哉日興リサーチセンター取締役理事長

○松川公述人 御質問の第一点のクラウディングアウトの件でございますが、最近のアメリカの金融市場の特色の一つは、企業のキャッシュポジションが非常によくなってきたということが言えようかと思います。これは、御承知のようにレーガン大統領になりましてから設備の償却期間を非常に早めました。そのために償却相当分が企業の手元に残っておる。その結果、今までの動向をずっとグラフにかいてみますと、アメリカのキャッシュポジションはここ一年ないし一年半ばかりの間に急速に改善してきております。そのために、金利が若干高目なんですけれども、最近アメリカの設備投資というのはやはり動意を見せております。これは自己資金で手当てができる。したがって、設備投資をするかしないかの判断というのは、どちらかといえば金利が幾らであるということ、これももちろん重要な要素でございますけれども、それよりも短期的にどれだけの収益が期待できるか、こっちの方にだんだんウェートがかかってきている、このような一般情勢でございますので、確かに財政赤字がふえてまいりますと、それだけ金融市場が逼迫することにはなりますが、民間の方の資金需要というのは、従来のような形で、金利が下がったからすぐに出てくるとか、そういう形ではない。重要な分野につきましでは多少金利が高どまりであっても出てくる。その意味でクラウディングアウト――最近はどちらかというとクレジットクランチという別な言葉をみんな使っておりまして、クラウディングアウトとはちょっとニュアンスが違った動きになるのではないかと思っております。  それからもう一つ、こういう金利が高く続くと資金が逃げていくのではないかという御指摘でございますが、もちろん金利差がどれだけあるというのは、資本を投資いたしますときの一つの基準ではございますが、国際的な投資の場合にはもう一つ、為替がどうなるか、御指摘のとおり為替の利益が得られるのか、または為替の損失のリスクをとりながら出ていかなければいけないかという、この要素が一つございます。確かに金利が高いということで、金利差はございましても、アメリカの経済自体の体力が弱くなっていくということになりますと、将来のドルレートはどうか、その資金を引き揚げるときに一体現実には通算してどれだけの利回りになるか、この辺が問題になってこようかと思います。  そこで、おっしゃいますようにこれからのアメリカのレートでございますが、私どもとしましては、日興リサーチセンターもそうでございますが、私自身としましてもドルはやはり今、購買力平価その他の物差しからはかってみましても確かに過大評価されております。特に物の貿易の方から見ると著しく過大評価されております。そこで、資本面からの支えがいささかでも少なくなってまいりますと、これはドルは下がることは避けられないと思います。そこで、どの程度かということになりますが、ドル全体として下がります過程でもいろいろな波乱がございまして、あるいは二百二十円よりもドル安、すなわち二百円というようなことがあるかもしれませんが、そんなに急速に下がることはないのではないかと私どもは思っております。そして、これから年末にかけまして金利の動き自体も急速に上がっていくというようなことは、今の連銀の理事長がボルカーさんである限り、十分な経験もございますし、十分政策手段の選択も心得ておられますので、そういうような金利の暴騰とかいうような事態は恐らくお避けになるのだろうと思っております。

武藤山治日本社会党・護憲共同

○武藤(山)委員 ありがとうございました。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 それでは、草川昭三君。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 公明党。国民会議の草川昭三でございます。  三人の先生方から非常に貴重な御意見を賜りまして、大変参考になりました。心から御礼を申し上げる次第でございます。  まず水野先生にお伺いをいたしますが、先生の御意見を拝聴いたしておりますと、増税をある程度考えながら財政再建の道を歩まなければというような御趣旨のような御意見もあったわけでございます。その中で、歳出抑制の余地はまだかなりある、こういうような御発言もございましたのですが、大蔵当局等は、臨調の答申に基づく自己採点の中ではかなり高い評価をしておみえになるわけでございます。先生の御意見の中で、目立つごく簡単な点だけでも結構でございますが、まだこのような点で抑制の余地はあるというような御指摘があれば、参考になりますので、お答えを願いたいと思うわけでございます。  もう一点、実は増税を含めたという将来展望でございますけれども、今いろいろと議論があるところでございますが、使途を特定しない間接税的なものと、一般の国民の理解を早く得るためにも社会保障財源的な目的を持った福祉税的な構想というのが一つ今あるわけでございますけれども、その点について先生の御意見をお伺いしたいと思います。

水野正一名古屋大学教授

○水野公述人 最初の点、歳出抑制の余地がまだどういうところにあるかというお尋ねですが、これは先ほど小杉さんの御質問でお答えをしたんですが、やはり社会保障関係のいろいろな医療保険あるいは年金保険関係、それから教育費の面でも、義務教育教科書無料配布の見直しであるとか私学助成の見直しであるとか、あるいは各種の補助金の整理というのもまだまだやる余地はあるというふうに思います。それから、食管制度の改革なりあるいは国鉄赤字問題、これはほんの少数の例ですけれども、まだまだそういう多くの面であるのではないかというふうに思っております。  それから第二の点につきましては、増税が避けられないとして新しい税として福祉税というふうな考えについてでありますが、これは、例えば課税ベースの広い新しい間接税を導入するといった場合に、それの使途を社会保障財源の方に特定化して、例えばそれを国民福祉税なり社会福祉税、こういう名前をつけて国民の理解を求めるということは、国民の理解を求めやすいというメリットはありますけれども、他方、使途を特定化するという点ではやはり問題があるのではないかというふうな気がいたします。理解を求めやすいという点と、使途の特定化による財政の硬直化といいますか、そういう要因を持ち込むというところの兼ね合いであると思いますが、どうしてもやはり必要で立国民の理解をこういう形にでもしなければ得にくいというのであれば、そういうものでもいいのではないかというふうに考えております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 では続いて、飯塚先生の方からいろいろと貴重な御意見を賜ったわけでありますが、先生の中では脱税をしていた人たちの捕捉ということをかなり強烈に御発言なさっておみえになったわけでございますが、いわゆる脱税を防止するために、特に制度面で早急に手当てをすべき問題が当然のことながら出てくるのではないか、そのような御指摘もあったと思うのでございますけれども、具体的に制度面で何か触れる点があるならば御意見を賜りたいというように思うわけであります。  それからもう一点、理由の第九に先生おっしゃっておられますけれども、資料の収集制度を法的に整備すれば収入予算がふえるではないか、このような御指摘があったわけでございますが、資料収集制度の不備ということでアメリカ等の例だとか、農業問題等が出ておりますが、もう少し立ち入った具体的な提案がございましたらお伺いをしたい、こう思います。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 お答え申し上げます。  脱税を防止するということが実は不公平税制を是正する大きなポイントでございますから、先生の御指摘はまさに的を射ているものだと思いますけれども、私どもの見解によりますと、早急に当面改善すべき点は、開業等の届け出に関する所得税法二百二十九条には罰則規定がない。ドイツの場合は一年以下の懲役、こういうふうに懲役刑がくっついている。だから、日本の場合は、バーのマダムにしてもキャバレーのマダムにしてもその他たくさん逃げ回っちゃっていてつかめないということなんですね。  今回、御承知のように東京国税局では農家の資料を取った。取っただけで当初の納税額の七億に対して十三億の増税があったというわけなんで、大体三倍ぐらい出ちゃうのですよ。そこでやはり二百二十九条の開業等の届け出について歯どめをかける。例えばドイツの場合は、商法二十九条によって、開業したときは一定期間以内に登記所に登録しなさい、同時に国税通則法の百三十七条から百三十九条によりますと、税務署と市町村役場とに届け出なさい、こういうふうに各所に届け出ることになっている。だから逃げ切れない。そういうことが日本では行われていない。つまり届け出について網羅性を持つことと、それから罰則規定を設けるということ、歯どめをかけるということ、これが第一だろうと思うのです。  それから次に、今回東京国税局が資料収集をやったのでありますが、実は資料収集というのは、資料せんの提出を求めるというのは、一種の質問検査権の行使である、こういうふうに思いますので、できるならば資料収集については所得税法の二百三十四条の質問検査権の条項を適用するといったような、やはり質問検査権に基づいて資料収集するのだよ、こういうことになりますと、二百三十四条という質問検査権の反対者または応じない者、こういう者は一年以下の懲役ということになっていますから、一年以下の懲役または二十万円以下の罰金ですから、こういう歯どめがかかってないとだめだということでございます。  さらに、この委員会ではちょっと無理かもしれませんけれども、世界で脱税というものを国家機関に対する偽証または国に対する詐欺であるという位置づけをしていない国は日本だけ。日本の場合は、どこかで証言して、それがしゃべった場合に、うそを言ったときは偽証だということになるので、それが刑法の百六十九条に書いてある。きょうは稲葉元検事もいらっしゃいますから、刑法の専門家がいますからお聞きくださるとわかると思いますけれども、刑法の百六十九条はあれは偽証罪であるけれども、脱税は偽証にならないのだ、どんな不真実な申告を出してもそれは偽証にならないのだ、どんなうその申告書を出しても詐欺にならないのだ、そんな国は日本だけですよ。だから、先生方は与野党足並みを一致させて改革していただきたいと思うわけです。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 松川先生に最後の御質問をさせていただきます。  一つは、今非常に話題になっております金融の自由化というものが各面に出てきておるわけでございますが、これが今後どのように発展をしていくのであろうかということについて、簡単で結構でございますが御説明願いたいということと、先ほどお話がございました発展途上国の債務の問題でございますが、日本は、私ども、被害と言っていいのかどうか知りませんけれども、情報のキャッチが非常におくれて対応がおくれた。そのために、トランプで言えばばばつかみという感じの不良債権が金融機関に膨大に残っている。ことしの間に損金として落とすようにというようなことも指導があったわけでございますが、その情報のおくれというものがあるのかないのか、お伺いをしたいと思います。

松川道哉日興リサーチセンター取締役理事長

○松川公述人 御質問の第一点の金融の自由化、これがこれからどのように進んでいくかという見通しでございますが、私は常々、日本の金融制度、これは最近三十年間というのはほとんど大きな変更がなくて今日に至っておりますが、例えば日露戦争から第二次大戦の始まるまでの三十年間に金融制度がどれだけ変わったかというようなことを思いあわせますと、この三十年間の金融制度が余りにも落ちついておったというのは、経済の実体の発展にあるいは即応しない面が出てきておるのではないかという感じを強くするわけでございます。特に、最近の十年間、日本の金融機関が海外においても非常な活動をいたしております。そういうことになれば、外で活動するからには、日本の国内においてもある程度それにふさわしい体制を整えていかなければいけない。そういった観点から見ますと、今外国からの圧力があろうがなかろうが、やはり金融制度というのはある程度の進化をしていかなければいけないと思っておりますので、ちょうど今いろいろな形での検討がなされるのを機会に、多少の近代化と申しますか、その方向に変わっていくことが望ましいであろうと思っております。  次に、開発途上国の債務の問題でございますが、これもいろいろ外国のケース、情報がたくさんあったというケースを見ておりますと、あるいは個々の政府あるいは偶々の金融機関が、実は長い間にわたってそれぞれの国との関係を持っております。したがって、情報のパイプも太いわけでございます。ところが、残念なことに、日本の金融機関はいろいろな場面におきまして、最近そこへ融資をするようになってきた。したがって、パイプもあることはあるけれども細いという実情でございまして、そういう情勢を背景といたしまして累積横務の問題が起こってまいりましたので、どうしても日本の金融機関なり日本の政府なりが得た情報というのは、他国に比して細い面が多かったろうと思います。  ただこれも、ほかの国の場合でございましても、自分の国が非常によくつき合っている国については情報が多いということでございまして、平素からのつき合いの濃淡、これが情報量の多い少ないと絡んできておるのだろうと思います。私ども見ておりましても、日本の金融機関がこれからは長い間それぞれの開発途上国との関係を続けていきますと、おのずから情報の量はふえてまいりますし、また、そのような観点から情報収集の努力も急速に進められていくものであると信じております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 どうもありがとうございました。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 次に、大内啓伍君。

大内啓伍民社党・国民連合

○大内委員 民社党の大内啓伍でございます。きょうは三人の公述人の諸先生、それぞれ専門的な立場から貴重な御意見を拝聴させていただきまして、厚く御礼申し上げます。  まず、飯塚公述人にお伺いをいたします。  先ほど来、多方面にわたりまして大変いろいろな公述を拝聴いたしました。税の公正を図るための先生の情熱に対して、深く敬意を表します。中曽根総理がこの座に座っておればなおよかったというように思っておるのですが、できたら連れてきたいと思っておりますが、なかなかそうもまいりません。  先生の発言の中で、第一に挙げられた点といたしまして、「この予算案は、政府・与党による正真正銘の公約違反予算案であって、国民をだますこと古今未曾有のもの」であると。これは自民党の皆さんにとってはなかなか耳の痛いところでございますが、この「公約違反予算」という点をどういう点でとらえておられるか。  順次お伺いしたいと思うのですが、それから「国民をだますこと古今未曾有」という点は、これは我々にとってもそういう実感を持っておりますが、先生はどのような諸点をそういうふうに決めつけられたのか、まずお伺いをしたいと思います。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 お答え申し上げます。  この前の選挙のときに当たって、中曽根総理初め自民党の議員各位は、一兆円減税は叫んでおられた。しかし、一兆五百五十億円の増税は言っていなかった。もしそれを同時に言っていれば、自民党はもっと減ったと私は見ております。  同時に、最大の公約違反であるというのは、去年の九月十三日の午後三時二十五分に、衆議院の本会議において公明党の浅井議員の質問に答えて中曽根総理が、歳入及び歳出の構造的見直しを行いますと言っている。しかるところ、予算の説明書である大蔵大臣が出された説明書によると、歳出の構造的見直しは行いましたと書いてある。それで、歳入の構造的見直しはやったと書いてない。ただ、歳入は見直しましたというだけなんです。  そこで、つまり構造的見直しについて中曽根総理は、実は歳入と歳出と両方とも構造的見直しを正式に国民の前で公約されたにもかかわらず、その指揮下にあるはずの大蔵大臣が、単に歳出の構造的見直しのみを行われたということは、歴然たる前古未曾有の公約違反だと私は感じているわけであります。終わります。

大内啓伍民社党・国民連合

○大内委員 続いて飯塚公述人にお伺いをいたします。  今中曽根内閣は、増税なき財政再建、六十五年度赤字国債発行からの脱却という二つの公約を掲げておりまして、私は、それぞれこれは重要な公約だと思っているのであります。先ほど飯塚先生が言われましたように、財政赤字に対して構造的な見直しをしないで、むしろ大増税すらもくろんでいるのではないか。昭和五十九年度末における公債発行の累積残高は約百二十二兆円、大変重大な事態を迎えているわけでございまして、したがって、その赤字というものは、言うまでもなく、一つは構造的な赤字と、もう一つは循環的な赤字とございますが、先生の御意見を拝聴しながら、日本の税制の構造のファンダメンタルズというものが、いかに先進国に比べて整備されていないかということがよくわかったのでございます。  この歳入構造の欠陥を是正するためには不公平税制の早期の是正が必要だ、こういうふうに主張されておったのでございますが、国民一人一人が、自分だけが被害者であるという考えではなくて、申告ができる体制をつくるということは非常に重要だと思うのですが、この税負担の公正を厳しく求めていくために、税法上どういう条件が早急に整備されなければならないか、きょうの公述の中でも触れている諸点でございますが、改めまして先生の御見解を承りたいと思います。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 お答え申し上げます。  決して単一な法律をちょっと直せばそれで公平が実現してしまうといったような簡単なものではございませんで、税の不公平というのは、非常に総合性といいますか多角性を持っております。ですから、先ほど武藤先生にもお答え申し上げましたように、少なくともこの十五項目ぐらいは直してください、こういうことで申し上げておるわけで、さらに、そのほかにと言えば、いわゆる利子配当課税の問題とかあるいは資料せんの整備の問題がある。特に日本の税法では、資料せんを当局が取得することに関する権限規定がない、職権規定がない、何もない。だから、単にただ国会に隠れて、国権の最高機関であるはずの国会に隠れて、そうして資料をとっているというだけなんだ。そういうことがいけない。やはり資料せんをとるということは厳然としてやるべきなんだ。レーガン政権もそれにやっと気がついて、八二年の法律改正で、資料せんを提出しなかったときは一日当たり十ドル取るぞというふうに厳しい姿勢を出して脱税を防止しようとしているわけです。  脱税防止の妙薬というのは、一点ではございませんで非常に多くございますので、願わくはもう一回私の公述の資料をお読み返し願えればありがたい、こう思っておる次第であります。

大内啓伍民社党・国民連合

○大内委員 私は、今度の財政再建という問題は分析をすればするほど非常に深刻なんですね。やはり税務行政に携わる方が、この問題についても相当真剣に取り組まなければならないと思うのです。そういう点について先生もこの配付されました公述書の中でるる述べておられるのですが、やはり何といっても財政再建に真に協力できる体制が税務行政上整備されているかどうかということが一つ問題ですね。  それからもう一つは、その税務行政の一端を担われている税理士の職業法規ですね。これまでも税理士法の改正というのはたびたび行われてまいりましたけれども、まだ先生から見ても、このところでもるる指摘されておりますように不備な点がある。つまり、税理士の職業法規はどの点を改善すれば財政収入の一端を担う活躍がそういう方々から期待できるようになるのか。これは私は割合重要だと思うのですね。いろいろなマクロ的な政策以上にこういう実務的な問題が非常に重要だと思っておりますので、改めて先生の御見解を承りたいと思うのであります。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 お答え申し上げます。  税務行政の欠陥についても申し上げましたが、さらに実は税務行政に片棒を担いでいる税理士関係の法律ですね、ここに実は大きな不備があるということですね。これはどうしても先生方のお力によって直していっていただきたい、こう思うわけであります。実はこの前の税理士法の改正のときに、私は自民党の親しくしている国会議員の先生方に本部に集まっていただいて、自民党のかつて国税庁長官であった方を追い詰めたのでありますけれども、後で泣きが入りまして、もうおまえの意見を五項目ぐらい取り入れたんだから、ここらで勘弁してくれと大蔵の理事の先生から言われちゃって、泣く泣く引っ込んだという事例があります。  そこで、まず第一点でございますが、今日の税理士法は税理士が真正の事実、本当の事実に基づいて業務を執行しろという規定がないのです。これは最大の欠陥ですよ。つまり、真正の事実に基づいて常に業務を執行しなければならないという大切な規定がない。不動産鑑定士の法律にはその規定があるのです。だけれども、税理士法にはないのです。これはひどいものですよ。それが第一点。  それから第二点としては、税理士法第三十三条の二の添付書面というのが今度できたんですよね。ところが、全国見て四万三千人もいる税理士の中で、この第三十三条の二の添付書面というのを出している人がほとんどないのです。それじゃ三十三条の二というのはどういう中身なんだというと、決算申告書をつくる場合に、計算、整理、または相談を行ったときは計算、整理または相談を行った内容を紙に書いて出せというのが三十三条の二の文章なんです。ところが、ここで先生方は良識の府の方々だからおわかりいただけると思いますけれども、決算申告書をつくるときに計算、整理、相談を行わずして決算書をつくることはできない。したがって、計算、整理、相談を行ったことを素直に届け出しなさい、報告しなさいというふうに書いてあればいいのに、計算、整理、相談を行ったときはその旨を書いて提出することができると書いてある。「できる。」と書いてある。そうして、それに不実記載したときは懲戒だよと書いてあるのです。税理士というのは、御承知と思いますが、頭はまあ割といいんでしょうけれども割と度胸がない、先生方ほどのような度胸がない。それでそのために結局罰則規定が急にくっついているものだから、そこでみんなおびえちゃって三十三条の二を出さない。言いかえれば、良質な申告書を出すことを保障する何らの職業法規がないということなんです。これは先生重大ですよ。これはやはり予算委員会で堂々と取り上げていただくに値する、私はそう思っております。(「第一条から変えなきゃならぬ」と呼ぶ者あり)そうです。  そこで、さらにもう一つ注意しなければならぬことは、先生方は御存じないかもしれませんね、政治家であって会計人じゃないですから。つまり、アメリカやイギリスの第一級の会計事務所は、監査の手引き書というのは大体五百ページから七百ページの監査手引き書を持っております。では、なぜそんなのをつくれるのだというと、法人化されているから、したがって会計事務所は永久に残っていくから、したがって大体三世代ぐらいかけて五百ページから七百ページぐらいのがっちりした監査手引き書というものをつくれる。ところが、日本はだめなんです。日本はもう税理士が死んだということになると、同業者がどっと集まってお通夜になる。目がらんらんと輝いておる。そうして、早く言えば、戦国群盗的ハゲタカ集団のごとく、つまり、この先生が今まで持っていた顧問先をどうやっておれがかっぱらうかということに重点がいってしまう。それは法人化なされていないからですよ。ところが、法人化なされていないのは、二十年前のスウェーデンだけなんです。あとは全世界の国々が法人化を許しているのです。そういうことなんです。そういうのが第三番目の問題です。  それから第四番目の問題でございますが、弁護士法は第六十四条によって三年間の除斥期間がある。法律の専門家である弁護士の先生でさえも三年間の除斥期間がある。ドイツの税理士法では、六十七条によって五カ年間の除斥期間がある。日本の税理士だけは死ぬまで責任を追及される、日本の公認会計士はもう生きておる間じゅう死ぬまで責任を追及されるという法体制になっておる。これはちょっと権衡を欠いている、見識を欠いている。やはり国権の最高機関であり、そうして国民の良識の代表者である先生方は、与野党こぞって除斥期間は設けていただきたい、こう願っているわけでございます。  そういう点で幾つかあるのですが、さらに問題は、どういうわけだか日本の国税庁は税理士に対して損害賠償保険制度を設けようとしない。公認会計士の一部にだけ設けておる。ところが、西ドイツの税理士法の六十七条、これは損害賠償保険契約というものを強制しているのです。税理士は不意の損害賠償、いつ来るかわからぬ損害賠償請求に備えて損害賠償保険に加入していなければならないという規定がある。ところが日本にはない。だから、そういう点で非常に不備であるということですね。  そういう点は、私は財政再建の一端を担う税理士の職業法規に関して着目くださったという点で、大内先生を最高に尊重申し上げる次第であります。

大内啓伍民社党・国民連合

○大内委員 私の時間もほとんどございませんのですが、せっかく他の先生もお見えでございますが、時間的にちょっとございません。  それで、一言だけ水野先生にお伺いをいたします。  先ほどお話の中で、五十九年度予算は財政再建に向けて最大限の努力が払われたと思う、そういう財政再建という問題が着実に前進していると思うという趣旨の御発言があったと思うのでありますが、私が今日の財政の診断をする限り、昭和五十五年の七月十八日に鈴木総理が財政再建の方針を打ち出されて以来、日本の財政はむしろ悪化の方向にある。例えば赤字国債の発行高一つを見ましても、あるいは税収の伸びを見ましても、あるいは一般歳出の伸びを見ましても、あるいは最近とられつつある定率繰り入れやあるいは赤字国債の借りかえの問題一つをとりましても、あるいは五十八年度予算、五十九年度予算に見られる、臨調で禁止しているような緊急避難的な措置、つまり粉飾予算の編成等を見ましても、私はむしろ日本の財政は再建の方向ではなくて悪化の方向に向かっているのではないかと思われるのですが、先生の御発言によりますと、むしろ着実によくなっているという御発言でございますので、財政が改善されているという事実があれば具体的にお教えをいただきたい、この一点だけ質問させていただきます。

水野正一名古屋大学教授

○水野公述人 今の大内議員の御質問にちょっとお答えしたいと思うのですが、何といいますか、外側だけから見ると、おっしゃるように財政再建が私は後退しているとは思わないのですが、遅々として進んでいないというとおりだと思います。しかし、もう少し中身を検討いたしますと、例えば歳出の削減の方でも、昭和五十五年度予算あたりから一般歳出に関しては、それまで毎年二けたの伸びを示していたのが一けた台になり、だんだんその率も小さくなってまいりまして、昨年度は、昨年というか五十八年度はマイナス〇・〇といいますか、マイナスの伸び、それから今度の五十九年度もマイナス〇・一という伸び率になっているわけですね。その中身は、いろいろな点で臨調の方の行政改革のいろいろな提案を受けて、歳出の抑制というのをかなり検討して、できるものについては取り上げて進めているという、いわゆる歳出の構造面についてかなり改善を図っているという点は言えるのじゃないかと思うわけです。  それから、外見的に余り進んでいないと思われるのは、やはり大きなのは五十六年、五十七年度の税収不足が大きく響いたのじゃないかと思うわけです。この税収不足が生じたのは、御承知のように第二次石油ショックの影響で、当初見込んでなかった経済の意外な停滞というところから税収が大きく落ち込んだというのが理由で、それによって、それまでは割に順調に財政再建が進んでおりまして、五十九年度に特例公債依存から脱却するといったそれまでの政府の公約というのは、若干無理をすればできるのじゃないかという見通しが、五十六年度の予算編成あたりのところではかなりそういう楽観的な見通しも生まれたほどであったわけですが、五十六、五十七年の大きな税収不足でそれが一応御破算になってしまって、また振り出しに戻ったというのが実情じゃないか。  それで、財政再建についてはそういう財政の収支の改善はさることながら、歳出構造について従来非常に困難視されていたところをどんどん切り込んでやっているという点で、私は着実に進んでいるというふうに見ているわけです。

大内啓伍民社党・国民連合

○大内委員 どうもありがとうございました。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 正森成二君。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 まず、水野先生にお伺い申し上げたいと思います。  先生は、本年度の予算について評価する、まずまず及第点であるという前提のもとにお話しになりました。私どもが今年度の予算で非常に心配しておりますのは、赤字国債の借りかえをやらざるを得ないようになったということであります。御承知のように、財政法の四条では赤字国債は出さないことになっていたのを特例法で例外を設けましたが、それも十年間で現金償還するということであったわけですが、それをさらにまた崩すということになったわけで、端的に、多少柄の悪い言葉で言えば、サラ金を返すのに別のサラ金会社から借りるということになったわけですね。  そういう状況でございますが、先生も御引用になりました「中期的な財政事情の仮定計算例」というのを大蔵省が予算委員会に出しました。これを見ますと、六十年以降の財政の姿が書いてありますが、その中では定率繰り入れを行うということで収支計算が行われております。御承知のように、この三年間、背に腹はかえられぬということで定率繰り入れは行っておりませんでした。  そこで、サラ金を返すのにサラ金をもってするという状況下での定率繰り入れについての先生のお考えを伺いたいと思います。

水野正一名古屋大学教授

○水野公述人 今の正森委員の御質問ですが、償還期限が来た特例公債についての借換債の発行は従来やらないということになっていたのを、今回、来年度から本格化する特例公債の償還について、やはり借換債の発行で償還財源を賄わざるを得ないというふうに変わっております。それから、定率繰り入れの問題も現在停止の措置がとられておる。  そもそも、特例公債を発行するということ自体が財政法の建前からすれば本来ないわけで、例外規定でもただし書きにもないわけです。したがって、特例法でやっているわけでありまして、そういう点で、国債発行の歯どめに関するいろいろな制度的歯どめというものが次から次と守れなくなって、事実上こういう赤字財政を続けているということについては、私は非常に残念で、なるべく早くそういうことから脱却をする必要がある。  問題は、ですから財政収支の改善によってそういう特例公債の依存から脱却するという、財政再建を着実に進めていくということがまず根本であって、その過程で、例えば特例公債の借りかえをせざるを得ないとかあるいは定率繰り入れを停止せざるを得ないというのは、これはそういう過程でのいわば一種の金のやりくり上やむを得ない措置であって、もっと基本的には、やはり財政再建を進めていって特例公債の発行をだんだん減らしていくということが必要だと思うのです。  それで、財政の現状からすれば、そういう定率繰り入れの停止あるいは借換債の発行、こういうものはやはり望ましいことではないし、また、いろいろ問題を心配をされますけれども、現実としてやむを得ないのじゃないかという気がしているわけです。  以上です。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 財政制度審議会中期財政運営問題小委員会というところが「公債残高累増と我が国経済社会」という、未定稿でございますが、論文を出しております。これは大蔵省が出している「ファイナンス」というのに載っているのですね。  その中ですら、公債の利払いが非常にふえる、これが来年以降大体一兆円ずつふえていくだろう。今、今年度予算でも九兆一千億円で予算全体の約一八%、税収の二六%を占めております。このことについて、この財政制度審議会の小委員会でも「公債の元利払いは、国民間の所得移転ではあるが、多額になると、所得再分配上の影響も生ずる。」こう書いて、相対的には国債保有者は高額所得者である、こういう指摘をしております。これはいわば政府関係の機関が指摘していることであります。  そういうように、国債費の累増は財政を非常に硬直化させまして、予算が持っている所得再配分機能を著しく損なうものであるというのは識者の言うところですが、この点についての先生のお考えを伺いたいと思います。

水野正一名古屋大学教授

○水野公述人 国債発行に伴う所得分配への影響という問題でありまして、これは今御指摘のありました大蔵省の資料に書いてあること、私も大体そういう考え方をしております。難しく言いますと、国債の所有者というのはかなり高額所得者も多い。そういう者に対して予算の上で国債費を組んで国債の利払いが行われる、そういうことが高額所得者の方に偏った所得の再分配をもたらすという面とか、それから世代間にわたって所得の分配面に影響を与えるという、そういう指摘があると思うわけでありますが、前半の件については、私若干理論的には問題があるというふうに考えております。  しかし、国債の発行というのは、財政の財源として税で賄うことに比べてやはり所得の分配面に大きな影響を与えるということは確かであります。でありますが、どういう意味でその再分配、所得の分配に影響を与えるかという点について、やはりもう少し検討する必要はあるというふうに考えております。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 それでは、水野公述人にもう一問だけ伺います。  先生は、増税がなければ財政再建は無理であろうという御判断のもとに、増税は不可避であるというようにお考えになった上で、税調の中期答申で述べられている「課税ベースの広い間接税」、これは尊重されるべきであるという御見解をお述べになりました。このごろ各紙に、大蔵省のリークの形かもしれませんが、いろんな増税の方策が載っております。その中には、先ほどこの委員会での公述人の御意見でも出ました、グリーンカードが実行されませんのでそれにかわる利子捕捉、それからあるいは所得型の付加価値税というようなもの、これも最近日経新聞等で載りました。これらのうち、特に先生が課税ベースの広い間接税というものを尊重すべきであると御推薦なさる御理由を端的にごく簡潔にお示しを願いたいと思います。

水野正一名古屋大学教授

○水野公述人 そこに「課税ベースの広い間接税」と申し上げているのは、かなりいろいろなタイプのものが考えられているわけで、前に導入しようとしてできなかった一般消費税というのもそういうものに入ります。それから、そう余り違いがないのですが、EC諸国でやっている付加価値税もそういうタイプであります。それから、もっと素朴な形で、我が国でも一度やったことがありますが、取引高税というようなもの。それから、製造業者とか卸売とかそういうある段階に限っての売上税、あるいは小売についての一般的な売上税、いろいろなタイプがあると思うわけですが、どのタイプがいいかというのはこれから十分検討し、また、私は個人としてはやはりEC型の付加価値税のタイプが最も洗練された、また多くの国で長い経験を経た末に出た税であって、理論的にはすぐれた性格の税だというふうに考えておりますが、ただ、一般消費税とほとんど余り違うものではなく、一般消費税について失敗したいきさつがありますので、そういう国民の世論なり感情というものを十分考えなければいけないと思います。そういう点は慎重に考慮する必要があると思います。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 飯塚先生に伺いたいと思います。  先ほどから伺っておりまして、先生の大蔵省の役人、国会議員頼むに足らず、国家を憂えるはただ我にありという気概と、特に声の大きさには印象を強くしたものでございますけれども、先生の御見解の中で一、二点だけお聞きしたいのです。  日本とそれから欧米諸国では罰則の規定が非常に違っておって、日本は不備であるということを指摘されまして、例えば米国の内国歳入法では詐欺罪とするとかいう御指摘ですね。それから、電子計算機についてももう二十年前から内国歳入法でがっちりと脱税を防止しているとか、あるいはそのほか、重要事項についての虚偽記載が、証券法と内国歳入法で五年あるいは三年の懲役もしくは罰金に処せられるということがございました。  同時に、先生の公述を聞いておりますと、ダーリック・オウルズ教授の論文で、米国の内国歳入庁の発表によれば、一九八一年には九百六十億ドルの脱税、それに対して米国公認会計士協会は反論を発表して、米国の国家予算とほぼ同額である、こう言っているのですね。そうすると、九百六十億といっても日本の円に直して今の円レートでは約二十二兆円くちい、歳入と同じになるということになれば、ほとんどそれの十倍ということになるわけです。結局、罰則を整備しておってもこれだけ脱税があるということは、これは刑罰をもってしては脱税をなくすことはできない、やはり税制体系が国民の合意と理解を得られる合理的なものでなければならないということを示しているのではないでしょうか。その点について一言伺いたいと思います。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 お答え申し上げます。  もちろんそれは、国民の意思の代表者は国会議員でありますから、国会議員諸公が与野党ともに手をつないで、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という式で先生方、与野党全員が足並みをそろえれば簡単に増税をせずに可能なんです。ましてや赤字国債などというのは、この改革案を実行すると実は三年くらいで解消しちゃう、簡単なんです。そこで、それをやるだけの見識と勇気をお持ちかどうかということなんです。  それから、国と国民を憂えるのは飯塚一人だなんて私、言ってません。だれが国と国民を憂えるのかということを言うた一種の問題提起をやっただけなんです。  なお、注意していただきたいと思いますことは、重罰のことでございますが、これは評論家の山本七平先生に幾らかスポイルされている面がありまして、日本はそういう点は非常に刑罰が軽いんだというふうに言われたものですから、私は貞永式目を徹底的に調べてみた。さらに、東京大学で出している「中世の罪と罰」という書物を調べてみた。さらに、早稲田大学の杉山教授ですか、「日本法史」という日本の法制史、これを調べてみた。  ところが、とんでもない、八代将軍吉宗以後、日本はとにかく死刑の数が多いこと、それから刑罰の仕方が残酷であること、市中引き回し、はりつけ、獄門というようなのはざらだったのです。そういう非常な重罰の中を我々日本国民は生き抜いてきたんであるということを考えると、この際、市中引き回し、獄門じゃなくて、せいぜい二年か三年の懲役くらいでございますから、やっぱり脱税者などというものはきちんと社会から葬るべきである。なお、その点について、政治家の先生方は政治資金規正法の適用を受けておりますから、だからもう安心していられるので心配ないのですから、どうか脱税をぶっとめるようなことだけはがっちりとやっていただきたい、そのように願います。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 時間がございませんので、この一問だけで終わりますが、同じく公述の中で、問題は、総収入基準というのは、申告書の提出、不提出の区分基準に関することですということですね。その収入によって申告するかどうかを決めるべきであるという御趣旨だと思いますが、そうすると、今の日本の税制は所得のある者がその税額を申告するということになっておって、収入がいかほどありましても、支出がこれを上回って所得のない場合は税がかからないわけで、それを今度の法律は特に、五千万円以上収入のある者は、幾ら支出が多い、経費が多いといっても所得を生んでおる可能性があるから報告しろ、こうなっておるので、あなたの御議論では、日本の今の税制の、所得ある者が申告するという原則に対する大きな変革を結局提言しておられるわけですか。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 基本的な問題ですけれども、時間がございませんから簡潔にお願いします。

飯塚毅公認会計士・税理士

○飯塚公述人 簡単に申し上げます。  総収入基準というのは申告書を出すか出さないかの基準でありますから、それは所得税法百二十条の抜本的改革を要求しているわけでございます。ところが、それを今回の予算はやってない。だから土光臨調の横っ面を張り倒していると同じだと言うゆえんでございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 終わります。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開講

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十九年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず春山公述人、次に小山公述人、続いて小田公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず春山公述人にお願いをいたします。

春山明統一戦線促進労働組合懇談会事務局長

○春山公述人 私は、この百一回国会に政府から提出をされている昭和五十九年度総予算案に、基本的には反対の立場で意見を述べさせていただきます。なお、私の意見は、統一労組懇に参加をしている百五十万人を超える労働者、並びにこの一月までの半年間に統一労組懇が集約をした暮らしと平和を守る諸課題での政府や国会への要請署名を行った約一千三百万人国民の総意を踏まえたものであります。  私は、まず第一に、政府予算案の基本にかかわる次のことについて根本的な見直しを進めるべきであると思います。  一つは、軍事費を、アメリカの核戦略構想に日本を組み込む軍備拡大の方向で膨張させるのではなくて、軍縮の方向で、当面主要装備費を中心に大幅に削減することです。  一例を挙げてこれに触れたいと思います。この予算委員会の議事録によりますと、二月十四日のこの委員会で、首相は、自衛隊が戦術的核兵器を持つことは憲法に違反しないという法制局の見解がある、しかし今は非核三原則に基づいて戦術的核兵器は持たないと述べています。今までも同趣旨の見解を政府は繰り返しています。しかし、非核三原則は現に法律としての拘束力を持ってはいません。しかも一方で、防衛庁は核砲弾装着可能な百五十ミリあるいは二百三ミリりゅう弾砲を既に二百門以上も全国に配備しようとしていますし、アメリカではそのりゅう弾砲に現実に装着可能な核砲弾、81号核兵器とか言われておりますが、それが開発済みであると言われます。また、アメリカの核巡航ミサイルトマホークの日本周辺への配備がこの夏までに予定されていると言われ、それらを積んだアメリカの艦船の日本寄港の懸念も強まっています。既に国連軍縮特別総会では、軍事力均衡論に基づく軍備の拡大は地球の破滅につながるし、第一次世界大戦以来の歴史的な教訓を今こそ踏まえて生かすべきときだとしているのにもかかわらず、世界の核保有二大国のはざまにある日本の政府が、解釈によって憲法をゆがめ、日本を核戦場にしかねない危険な核装備への道を準備し、軍備増強を図るようなことに強く反対をします。  政府が非核三原則を法制化せず、非核宣言も行っていないもとで、NHKの昨年発表された世論調査でも五四%の国民が日本の核戦場化を危惧している事実があるのですから、日本はいかなる国との軍事同盟、軍事ブロックからも離脱をして、軍事費を削減し、軍縮を断行し、平和を守る世界史的な潮流の拡大にこそ努めるべきであります。  二つには、大企業の利益擁護の現在の行財政の仕組みと運用を抜本的に国民本位のものに改め、また、圧倒的多数の労働者と国民に犠牲と負担を強要している第二次臨時行政調査会答申の実施を根本的に見直し、国民の暮らしと福祉、教育の充実を予算と政策の上でも積極的に図るべきです。  我が国の大企業が労働者と国民の犠牲と負担の上に世界でも有数の巨額の利益を蓄積していることは、政府資料や国運あるいはILOその他の国際的な調査研究所などの資料で明確です。例えば、私どもとの関連で言えば、昨年の労働者の賃金の引き上げは、当然の定期昇給分を別にして、わずか二%にすぎませんでした。しかし、日本経済新聞などが取り上げている約八百社大企業の年間の経常利益は対前年比で一三六・六%になると言われていました。また、経済企画庁の国民生活白書などによれば、労働者、国民の所得は一九七五年から一九八二年までの七年間で名目では一・六七倍になっているとも言われていますけれども、実質増税分や物価上昇による目減り分を差し引くなどしますと、実際化自由に消費できる実質任意可処分所得の伸びでは七年間でわずかに一〇〇・三%、つまりほとんどふえていません。財界、大企業の他の先進国対比でも厳し過ぎる賃金抑制攻撃と、そのもとでの大企業利益の巨額な蓄積が現にあります。例えば、通産省の世界の企業の経営分析資料や国連統計年報などによれば、日本の大企業の売上高の中での人件費の割合や付加価値額の中での労働者の賃金の割合や人件費以外の福利費の割合などは、ある業種、企業の例では、アメリカや西ドイツのそれの四分の一以下と著しく低いものさえあります。全体として、それらの結果として、ここ十年ほぼ一貫して日本の労働者の実質的な賃金水準は、イギリス、西ドイツ、アメリカ、イタリアの労働者の賃金水準と比較すると、それらを大幅に下回って最低の水準です。労働省の統計の中にも、また日本の大企業がみずから調べた資料の中にもその種の裏づけはあります。  それにもかかわらず、我が国では、政府が大企業に対しては、実際に支払われた退職金総額の数倍以上の積立総額を持っている退職給与引当金や、実際の貸し倒れ発生率の数倍の枠で認められる貸倒引当金など、内部留保の各種の引当金、準備金について税制上多くの優遇措置を講じて高蓄積を許しているのは行き過ぎであり、是正されるべきであります。財政投融資資金の開銀、輸銀での大企業利用の平均貸付利率でも中小企業に比べて有利な取り扱いがされており、改善されるべきです。中小企業対策費は前年度分に対して昭和五十九年度には五・五%城となっているのに、大企業向けの補助金や関連する予算の異常な大幅増が目立ちます。  財界が、例えば昨年の経団連月報、たしか十月号だったと思いますが、賃金コストと福祉コストの抑制を言い、臨時行政調査会の答申を盾に国民総我慢を主張し、また中小企業と労働者、国民に、日経連が一月に出した労働問題研究委員会報告にあるような賃金、労働条件の改善に対する露骨な規制、抑圧を行う一方で、大企業がこのような優遇税制措置を受けていることは、日本経済をますますゆがませ、不均衡を拡大し、一面では財政危機を広げることに通じるものであります。大企業の優遇税制を是正をし、大企業奉仕の財政体質を改善をし、また国際的にも不公正な競争条件を指摘されている労働者に対する低賃金や権利抑圧を改めさせ、社会的に不公正な利益は国民に還元させるなどして、行財政を圧倒的多数の労働者と国民本位の仕組みと運用に民主的に転換させることが必要であります。  次に、第二に医療保障問題であります。  健康保険医療費の本人給付率は十割を守り、今政府が提起している本人負担制度は導入すべきではありません。また、退職者医療制度の創設に当たっては、国と大企業の費用負担を基本とすべきです。医療保障を全体として拡充改善して国民の命と健康を積極的に守る道こそ、日本国憲法で言う「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という国の社会保障的義務に沿う道であります。  健保本人の負担制度について、繰り返し反対の立場で若干触れます。  政府管掌健康保険の適用されている中小企業労働者の賃金水準は、通産省の工業統計表で見ても、製造業では大企業労働者の賃金水準のわずか五八%程度であり、もしこれらの人々が病気により長期の休業を余儀なくされる場合には、その低水準の賃金のさらに六〇%にしか当たらない傷病手当金から医療費の本人負担分を支払わなければならぬ例も出まずし、その場合、家計は著しく圧迫されることになります。そうではなく、十割給付を崩さず、むしろ保険財政に寄生している製薬大企業の不当なもうけを規制をし、また、中小企業労働者のための政府管掌健康保険と企業別に組織をされている大企業、一部中小企業労働者の健康保険組合相互の財政援助を広げ、また、それらの健康保険の保険料は、負担割合を事業主七、労働者三として、中小企業の負担増分は国が補助するように改めるべきです。ILOの統計でも、労働者の負担を大幅に上回る事業主負担を西ドイツ、カナダ、アメリカ、フランス、イギリス、イタリアなどでは既に制度化しているところです。  最近一部で言われている福祉税構想は、社会保障財源づくりを口実にするかのごとく見せかけていますけれども、実質は間接税増税であり、反対であります。  また、政府の各種年金制度の抜本改革案についても、保険料は中期的には三倍増などを見込みながら、保険給付、年金給付の面では被用者分を大きく低下をさせるし、現在の約四十兆円と言われる積立金の民主的運用や保険料負担割合の是正その他のなすべき手だてをおいての改革は改悪であり、見直すべきであります。  第三に、所得税減税、公共料金値上げ抑制についてです。  大幅な所得税減税、住民税減税を実現し、また減税を口実にした酒税、物品税などの大衆増税あるいは大型間接税導入は行うべきではありません。  公共料金についても、消費者米価、国鉄運賃、大学授業料、自治体ではバス、地下鉄、上下水道、高校授業料、保育料、あるいはNHK受信料などの引き上げが見込まれていますが、既に触れたように、この七年間実質的には全く改善されていない労働者、国民の生活、所得に大きく食い込み、生活をさらに圧迫するものであり、反対であります。  賃金抑制、増税、負担増で四千万人の労働者とその扶養家族四千万人、さらには家内労働者、零細自営業者の生活困難を増進させる今日の臨時行政調査会の答申の実行路線は、大企業活力だけは強めても、圧倒的多数の国民、特に低所得者層に対してほどその打撃は強く、内需を圧迫し、消費不況を停滞させ、結局は外需依存を高め、貿易摩擦を激化させ、国際非難を広げるもととなりかねません。大幅な減税、負担減を実現してこそ賃上げとあわせて国民購買力を引き上げることとなりますし、経済民主主義、財政民主主義の基盤を広げていくことこそバランスのとれた日本経済の発展につながる道であると言えると思います。  第四に、労働政策についてであります。  今、失業者はかつてなく増大しています。そのもとでの雇用保険法の改悪は、当然やるべきではありません。また、雇用対策は積極的に、単に労働力の需給調整だけにとどまらず、経済、産業、公共事業、中小企業、通商諸政策を総合した上に立って対策を講ずべきであります。特に、今高齢化が急速に進行しているもとでの高齢者雇用の拡充は重要です。したがって、今の時期、失対事業は打ち切るべきではないし、大企業ほど多い高齢者雇用率未達成企業への指導を思い切って強める必要があります。かつて政府首脳が国会で口にした雇用率未達成大企業の公表なども考え、強い措置をとるべきであります。また、現に検討されている労働関係を悪化させる人材派遣事業、形を変えた労働者供給事業は、認めることには大きな問題があります。また、ここ最近実効ある男女雇用平等法の制定を求める動きが広がっていますが、それと引きかえに労働基準法の改悪を持ち込む動きも出ていますが、私どもは反対であります。何十年かの世界の歴史の中で、日本がチープレーバーとして低賃金、長時間労働、女子年少者の労働条件をほかの諸国よりも大きく切り下げていたことに対する国際的な非難をこそ思い起こすべきであり、歴史を逆行させる暴挙は慎むべきであると思います。  第五に、中小企業問題であります。  中小企業で働く労働者の労働条件の改善をやるためには、政府や大企業が必要な措置を各方面でもっと充実させる必要があります。例えば、国や自治体の官公需の発注についても中小企業を優先的に取り扱う措置が必要でありますし、建設業法での大企業の一括下請制度にかかわっても、現実にいろいろな矛盾が生じていることについての規制が要ると思います。下請中小企業が六割から業種によっては九割まで大企業に系列化されているという我が国の中で、下請代金の支払いについて下請中小企業の経営とその安定を守る上でも必要な制度の改善、代金支払い期間の短縮などを行う必要がありますし、下請企業の親企業に対する交渉権についても、これを制度的に保障する道を開くべきであります。また、現に多くの自治体が大企業、工場、関連する下請企業を誘致をしている実情がありますが、住民の費用をもとにしたこれらの誘致にかかわって、自治体が中小企業を育成する立場で必要な調査、勧告権を行使できるよう保障することも大切だと思います。我が国に昔からあるさまざまな地場産業の振興あるいは生活関連公共事業の拡充なども、今日、雇用の拡大との関連で必要であります。  最後、人事院勧告問題であります。  人事院勧告の凍結は解除をし、また年金、恩給などのスライド制についても凍結を解除をすること、これは国民の声に耳を傾けるべきであるし、当面緊急に措置をしなければならないことだと思います。人事院の総裁すらが勧告の凍結解除を支持していますし、この勧告の凍結は、事実上の賃金抑制につながるだけではなくて、その制度的な沿革からすれば、労働基本権、生存権の否定につながりかねません。このような憲法上の権利を侵す暴挙は直ちに是正をすべきでありますし、それは民主主義の根本を守るということにそのままつながるものでもあると思います。  以上で私の公述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 どうもありがとうございました。  次に、小山公述人にお願いいたします。

小山路男上智大学教授

○小山公述人 私は、五十九年度予算案に賛成の立場から、また特に社会保障を専攻しておりますので、その観点から、社会保障関係予算についてお話をさせていただきたいと存じます。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕  最近、財政が非常に逼迫してまいりまして、国家財政の状況は極めて厳しいものがございます。そのために、本年の予算を拝見いたしましても、一般歳出予算は対前年比で〇・一%マイナスという、非常に厳しい状況にあるのであります。しかるにこれに対しまして、社会保障関係費と申しますのは国民生活に直結するものでございますので、そう簡単に予算の事情によって引き下げるというようなわけにはまいらないのであります。  しかしながら、そうは申しましても、財政事情を無視した方策を今後とっていくというわけには到底まいらない。社会保障もまた国家財政の重要な一部局でございますので、その観点から申しますと、今回、国家予算五十兆六千二百七十二億、対前年比で〇・五%増、うち一般歳出が三十二兆五千八百五十七億、対前年比で〇・一%の減でありますが、厚生省予算は対前年比で二・一%、九兆二千五百億ということになっておりまして、乏しい中で財政的な対策を講じながら予算を編成したものと認められるのであります。  特に、重要な予算関連法案及び制度改正の法案として今国会に提出が予定されております健康保険並びに厚生年金、国民年金等の年金制度の改革について、私は直接にそれに関与いたしました者として若干意見を申し述べさせていただきたいと思います。  まず、健康保険の問題でございますが、以上お話し申し上げましたような一般的に非常に窮屈な財政状況の中で、どうしても医療保険関係で六千二百億ほどの財源を捻出せざるを得ないというのが政府の言うところでありまして、そのために本人給付率を十割からとりあえず九割に引き下げる。薬価を引き下げ、診療報酬を上げたにいたしましても、薬価が一六%以上切り下げられまして、診療報酬が国民医療費ベースでわずか二・七%程度しか上がらぬというような非常に厳しい医療費適正化対策をとる一方で、保険制度について手をつけざるを得なくなったというのが全くのところであります。  そこで、そういう観点と同時に、もう一つ、これは保険でも年金でもそうなんでありますが、中長期的な観点に立ちますと、我が国は今や急激な高齢化社会の真っただ中にあるわけでありまして、あと二、三十年先というのは非常に老人がふえ、したがいまして医療費がかかり、年金に関する費用負担も増大するのであります。  そういう点から考えまして、健康保険の場合におきましても、一方で一昨年本国会の御審議の結果成立した老人保健法という法律がございます。あの結果、老人医療費の対前年増加率はここのところ安定化の兆しを見せております。制度の運営はまだ少し十分なものではない。もっと例えば疾病予防あるいは保健増進、健康づくりといったことについて政府がより積極的に取り組むべき課題が多いのでありまして、簡単に保健福祉活動をやったから医療費が下がるというものでないことはよくわかりますけれども、それにいたしましても、我々としてはまだ将来展望と申しますか、日本の医療制度をどう持っていくのかという将来展望に欠けることをうらみとするものであります。  しかしながら、本人十割給付ということをいつまでも続けてまいりますと、結局費用負担の意識がなくなるのでありまして、従来から十割給付であったものを九割に下げる、さらにはもっと八割に下げるというようなことは、被保険者であるサラリーマン、勤労者にとっては非常に大きな苦痛であることは私よくわかっております。しかしながら、この問題は、結局、中長期的に長い目で見ていただけば医療費の適正化につながり、適正な受診ということにもつながるわけでございまして、そういう点で国民の御理解が得られるものと私は信じております。  この点につきまして、非常に強い反対が被保険者側からもまた医療担当者側からも出されたのでありますが、それを承知した上でなおかつある程度の費用負担意識を持っていただくことはやむを得ない措置だと私どもは考えた次第であります。  高額療養費につきましては、この限度額の引き上げはまだ日が浅過ぎるということのほかに、レセプトの暦月であるとか一人一レセプト方式であるとか、かねてから指摘されている問題がございまして、いずれ高額療養費制度につきましてはやはり何らかのルールづくりが必要であろうかと思います。  一体幾らになったら、どの程度の限度になったならばどの程度の負担をしていただくかというようなルールづくりが必要かと思いますが、その点はまず今後の問題であろうかと思います。  退職者医療制度について申し上げますと、これは本人の給付率を引き下げた余裕財源でもって、健保制度から国民健康保険の方へ退職者医療費を拠出するということでございまして、要するに、本人給付率の引き下げを前提とすることなくしては退職者医療は成り立ち得ないという性格であります。その退職者医療を導入することによりまして、国民健康保険に対する国庫補助を削減するというのが政府の考えている案でありまして、これもいろいろ検討いたしましたが、やはりそうせざるを得ない、被用者保険で定年まで勤めた方が地域に移って地域の国民健康保険の負担になるというのは、どう考えても筋が通らないのでありまして、私どもはやはり、サラリーマンの老後はサラリーマンが社会連帯的に扶助し合うというのが当然の姿であろうと信ずるのであります。  そのほか、日雇い労働者健康保険につきましては、これも長い間非常な累積赤字に苦しんでおりまして、制度の存立が非常に心配であったものを、ともかくこの際政府管掌健康保険の中に取り入れまして、共同負担で日雇い労働者の皆さんの健康保険を何とか維持するようにしたという点では、いろいろ被保険者側としてはまだ御不満があろうかと思いますけれども、我々としてはこの辺が限度きりぎりというように思うのであります。  他方、年金について申しますと、今後の急激な高齢化の加速に伴いまして、年金の負担は急激に増大いたします。この状態を放置しておきますと、被保険者期間四十年の受給者が一般化する。そうなりますと、一般勤労者の七六%近いような高額な年金が支給されまして、現役労働者とのバランスの問題が出てくるというのが一つございます。いま一つは、制度が三種八制度に分立いたしまして、いわゆる官民格差と言われるような制度間のアンバランスが、このところ国民の強い批判の対象になっております。さらにまた、年金制度と申しますのは、現役労働者とそれから年金受給者との数のバランスの問題でございまして、今後、年金受給者がふえれば当然それに対する費用負担は重くならざるを得ない。もし現行のままほうっておきますと、二十年後の保険料率は恐らく現行の一〇六の料率の三倍程度に上がると思われます。そのような高率な負担に加えて、医療保険の費用負担が、もし医療費適正化がうまくいかないといたしますと、西ドイツ並みに一二〇ぐらいにはなるであろう。そうすると、給料の四五%が保険料として負担せざるを得ないというようなことになるわけでありまして、したがいまして、年金制度につきましては、給付水準を現行のまま横ばいにして、四十年たっても現行の水準に維持するというのが一つであります。いま一つは、制度間格差の是正のために基礎年金を導入いたしまして、一人今五万円というのが当局案でありますが、現行価格で一人五万円の基礎年金をすべての国民に共通する基礎的部分として保障する、その上に所得比例部分が乗るという形になるわけであります。こういう方式を講じますと、共済組合もまたこの方式に乗ってもらいますと、いわゆる官民格差と言われる現象はこれで解決できるのでありまして、今回の年金改正法案というのは、そういう意味では画期的な改善であります。もとより、過去の経緯もありまして、過去の期待権と申しますか、既にもう受給権が確立している方については今回の改正は及ばないのでありまして、これから発生する方について所要の調整が講じられるところであります。いずれにいたしましても、年金改正というのはそういう意味で避けて通れない大きな課題であることを申し上げておきたいと思います。  次に、それならば福祉後退の一歩ではないか、こういうような御批判があろうかと思います。しかしながら、よく眺めてみますと、厚生省予算の中で社会福祉関係費は四・二%の伸び、約二兆円でございますが伸びております。それはどういうことで伸びているかと申しますと、一つは身体障害者福祉法の改正であります。それから家庭奉仕貝を増員する、あるいはいわゆる痴保性老人対策を講じるというように、従来障害者であるとか高齢者で寝たきりの方とか手が及ばなかったところに余計に予算を回す、国費をそっちの方に重点的に指向するということが言われているわけであります。それから保健衛生対策にいたしましても、これは老人保健事業の推進に三七%も費用増を見込んで、これからは、病気になる前に病気にならないような対策を講じようというのが今回予算の特色であります。なお、年金等につきましては、年金のスライドを今回は二%といたしまして、四月から実施することになりました。これは御存じのとおり、物価が五%以上上がった場合に年金がスライドするという規定でありますが、二年分合わせましても四・六%の物価上昇でありまして、公務員のベースアップ等の見合いから二%ということで、今年四月からというふうにこの間答申をしたところであります。また事後重症と申しまして、一度障害の程度が認定されましても、その程度が重くなりますとさらにまた重い等級の障害年金が支給されるという制度がございます。これを厚生年金保険法では五年間というふうに限定しておりましたのを、今回はこの期間を思い切って外してもらうことにいたします。これはどういうことを言うかといいますと、例えば筋ジストロフィーの方のようにだんだんと障害の程度が重くなる方につきましては、その程度に応じて障害年金を支給するということになるわけであります。  このような観点から申しますと、いずれにいたしましても財源が極めて限られておる、その中でかなり思い切った制度改正を年金についても健保についてもこの際行わざるを得ないというところに、我々の一番苦心、苦労したところがございまして、私どもも何とか国民の健康と福祉の増進、老後生活の安定ということを期したいわけでありますが、それについては、従来のままの制度をそのまま将来に延ばしまして、そうしてその制度によって従来と同じような給付を行うということはもはや不可能である。その理由は、何と申しましても高齢社会がすぐ目の前に来ているということであります。さらにまた、経済の基調が変わりまして、せいぜい四%程度の成長しか期待できない、こういう厳しい財政状況の中では、やはり制度を思い切って抜本的に改善する以外に、ほかに方法がない。私は、社会福祉、社会保障の専門家といたしましてやはりこれはやむを得ない措置である、このように思い、今回の社会保障関係予算については賛成の意を表するものであります。  どうもありがとうございました。(拍手)

山下徳夫自由民主党・新自由国民連合運輸大臣

○山下(徳)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、小田公述人にお願いいたします。

小田実作家・評論家

○小田公述人 私は、日本の市民として、また世界人類社会の一員としてこの防衛予算案に反対します。あえて防衛予算案と言います。  反対の理由を申し上げます。  私は、何事であれ人間の行為には、究極の目標は何であるのかということを考えないといけないと思うのです。人間の生き死ににかかわるような政治について、殊に私はそれを痛感いたします。もちろん、ここにいらっしゃる議員諸氏は国民の委託を受けでそのことを日夜考えていられると思います。それで、私も忙しい中をこの公述を引き受けてわざわざ大阪からやってきました。  究極の目標として一体何がこの予算案から浮かび上がってくるか。私はこれを端的に言うならば、ただ一つ考えていることは、あらゆる犠牲を払ってでもいいからこの国を軍事的に守るということじゃないかと思います。しかし、それは本当に守ることになるのだろうか。防衛という名前においてすべてを犠牲にするような予算が組まれた。それは去年からことしにかけてその傾向は顕著であります。緊縮予算と言いながら防衛費だけは突出している。これはあらゆる新聞が書いています。これは多くの国民が感じていることじゃないかと思います。  もう一つの問題を少し考えてみる必要があるのじゃないかと思います。自分の国だけ軍事的に守るということで、一体守れるのかという一つの問題があります。それからもう一つは、究極の目標として人類社会に我々日本人としていかに生きるか、そのことをやはりここでちゃんと考えないといけないときに来ていると思うのです。つまり世界がどうあるべきか、世界の未来がどうあるべきか、何をもって我々人類は生きていくのか、我々日本はそれにいかに貢献していくのか、そのことを考えない政治は政治ではないと思います。それは地方政治のレベルではいいかもしれませんけれども、国会で国民の委託を受けて厳粛にやっている政治ではないと思います。  軍事的な防衛の名前においてさまざまなことが行われてきたが、実は日本の戦後というのは、その根本的な反省に立って始まっておると思います。防衛の名前において、例えば満州を生命線と称した、そして我々は中国へ進出していく、次から次へと生命線を拡大していく、いつの間にか聖戦という観念が打ち立てられる、大東亜戦争というものに発展する、すべて出発点は防衛という名前において行われた。そして最後は、我々は防衛の名前において中国を侵略し、さまざまな残虐行為を行って、太平洋戦争も行った。多くのアジアの民が怒っています。いかなる保守的な態度をとる人もそれは痛感されていると思います。そして結局最後はどうなったか。最後に恐るべきことが起こった。殺し、殺し、殺しの歴史の連続のもとに、我々は殺される歴史を持って、広島、長崎で戦争が終わります。このことを我々は痛感したのです。  現代世界においても、例えば一昨年夏に行われたイスラエルのレバノン侵略を見ますと、そのイスラエルのレバノン侵略を行った軍隊の名前はイスラエル防衛軍であります。防衛の名前において、イスラエルは、レバノンという国家主権を持っている国際連合に加盟している国に、宣戦布告なしに侵入して残虐な限りを尽くした。これは歴史が明らかにしています。そしてその結果として、ごらんなさい、今イスラエルはどんな状態になっているか。イスラエルは大変な状態になってしまった。泥沼に入ってしまった。あるいはそれに加担した形のアメリカ合衆国は、ついに海兵隊を引き揚げざるを得ないところに来た。何が何だかわからない状態に追い込まれている。泥沼にみずから足を入れ、かき回してつくっていった、そのことの事実の重さということを考えてみる必要があります。  というのは、私たちは過去にそれを行ったからであります。そして、その根本的反省の上に立って私たちは憲法をつくった。憲法を採択した。そして我々は、その憲法を守るということを国民の名誉として行っている。国会議員の皆さん方はそれを守ることを義務とされている。国会の議員になる前に、憲法をお読みになったらもちろんおわかりだと思います。  憲法の前文にはまさにその事実が明らかに書かれています。世界の人類の一員として日本がこれからどう生きるのかということを根本的な問題として提起しています。そして、間接的には世界のあり方は間違っていたのじゃないかということも言っております。新しい世界をつくろうじゃないか、そのために我々は努力する、そのことによって我々は、過去に過ちを犯したけれども、新しい人類社会の一員として生きる権利ができるんだ、あるいは義務があるんだということを憲法の前文は明らかに書いています。これはその意味ですばらしい憲法であります。どういう世界をつくろうとしたのか。それは憲法の前文が明らかにしています。日本の問題ばかりじゃありません。この憲法はなかなかおもしろい憲法で、世界の問題に言及している憲法です。どういう世界をつくろうとしたか。それは戦争のない世の中、民主主義の世の中、自由と平等の世の中、そして専制と隷属のない世の中、これは非常に大事だと思います。抑圧の関係に絡み、第三世界との関係に絡んで非常に大事な問題提起をこの憲法はしています。そのために我々は邁進しようじゃないか、そのことによってのみ日本はやっと国際社会に復帰できるんだということを宣言しました。私は、子供のときにこの憲法を感激をもって受けとめた。その憲法の精神をもって、私は日本の市民として誇りを持って生きているつもりです。私はこのことをまず問題にして考えたいと思います。  だから、一番大事なときに我々は来ています。単なる一つの予算案の審議ではないと思います。そのことを議員諸氏に銘記していただきたい。保守革新の別を問わず、これは単なる予算案の審議をしているのではない、そのことを心に銘記しない限り私たちは国会に信頼できない感じを持ちます。世界大につながる人類社会の一員として、これからどう生きるのかということを、誇りある日本国会の名前によって審議していただきたい。私は国民の一人としてお願いします。  その見地に立つと、よく国家予算というものは国家百年の計、政治というのは国家百年の計とおっしゃいますが、私はもっと大きな意味で考えていただきたい。世界百年の計を立てるのだ、それほどこれは重大な意味を持つ予算案をここで審議しているんだということを忘れないように願います。単なる数字の大小とかそういうことを私はここで一切問題にしょうとは思いません。私はそんなことは不得手です。それよりはむしろ、世界百年の大計の中で我々日本国民はこれからどう生きでいくのかということを審議しているのだ、そのことをまず考えていただきたい。一国の問題ではない、世界につながっていく問題だ、そしてそれがまた我々一国の問題に返ってくる、日本を守るという問題を考えればそこまで根本的に考えていただきたい。この予算案は残念ながらそこまで根本的に考えていません。それは世界の百年の大計に反するものだろうし、そしてそれは、翻って我々のところに立ち戻ってきて我々に災禍をもたらす、災厄をもたらすものであろうことを私は確信します。  私は今理想を申し上げました。しかし現実でもそうです。幸か不幸か、私は幸いだと言いたいけれども、日本は大きな力を持っています。経済大国と言われています。かつて我々がこの憲法を採択したころと違って、我々の一挙一動は世界の大勢にすぐ影響するくらい大きな力を持っています。これは大事なことなんです。小さな国の国会で審議しているのではありません。その意味で私は大変なところに来ていると思います。一つにはもちろん経済大国としての力を持っています。一挙一動を世界は注目しています。昔は日本の国会が何を審議しようと、私は世界各国あちこち歩いていて、日本のことが新聞に載ることはめったにありません。しかしこのごろやっと載るようになった。これは日本国民の一人として誇りだと思います。  しかしもう一つの側面がある。これは忘れていただきたくない。それは日本国民がやはり平和への努力をしているということなんです。広島、長崎を我々は受けた。その後何とかして平和に生きようとしている意思、このことがやはり世界各国には伝わっていると思います。私はあちこちの国際会議に出る体験がたくさんあります。平和についての国際会議、東西が対立するあるいは南北が対立する。そうすると私のところへやってきて、これ何とかならないかというような問題を持ってこられる。ですから、そこでは東西あるいは南北の中にあって我々日本が一つの大きな地位を占めているのだ。もし我々が平和に対しで大きな力を尽くす意思を持つならば、これは大変な力を持っているのだ。経済大国としての力以外にもう一つの力を持っているのだ。このことは非常に大事に考えていく必要があります。  対米関係を考えるときも同じことであります。この防衛優遇の予算はアメリカに対しての貿易摩擦をなくすために必要なんだということをおっしゃった。これは国家百年あるいは世界百年の大計を考えているような言葉だろうか。今のは中曽根さんの新聞記者に対する発言であります。アメリカ合衆国に対して余りにも単純な理解をなさっている。ロンだけがアメリカ合衆国じゃない。私はアメリカ合衆国は非常に親しいです。たくさんの友達がいる。ロンに反対している人はたくさんいる。黒人もいる。黒人の大統領候補さえ出ようとしている世の中だ。そういう世の中の動きをつかんで、世界百年の大計の中で一体対米関係を本当に考えているのだろうか、そのことを私は憂えます。そして、もし対米関係を本当に考えれば、日本人の平和への意思、これを例えばアメリカは考慮しなければいけないところまで我々は追い込む必要がある。我々はアメリカの戦争熱に追い込まれてしまっている。我々は逆に、この平和大国の力を使って、我々の平和の意思でもってアメリカの政策を変えさせていく、そこまでの気概を国会議員諸氏に持っていただきたい、日本の国会は持つべきだと思います。というのは、憲法はそれを明記しているからです。単なる保守革新の別を超えて私はそれを言いたい。  私は、世界の体制を考えるときに二枚の写真をいつも思い浮かべます。  一つは広島、長崎のキノコ雲の写真です。大きなキノコ雲の写真がある。私たちの世界はそれに直面している。いわゆる核戦争の危機だ、これはだれも言います。中曽根さんも言うし、皆言っている。それから、東西対立の中にあって我々は振り回されようとしている。そして我々は西側に加担することを決めている。非常に強固に決めている。その加担も平和的、文化的な加担ではなくて軍事的に結合するもので、既に日米安全保障条約は軍事同盟であるということを中曽根首相は明言した。そういうような結合の仕方でやっていけるだろうか。そのことが一つあります。そういうものに対して反対している人たちがいる。私も含めてそうです。そういうやり方で、核戦争の脅威をもたらすようなやり方で軍事緊張を高めていくことが、本当に平和をもたらすかということを根本的に思っている人たちが世界にいる。多くの人々がいます。私自身もそうです。日本にもたくさんいます。  もう一枚の写真があります。それはだれもが御存じでしょうけれども、飢えたる子供の写真です。アフリカの飢えたる子供の写真を皆さんもちろん御存じだと思うし、現場を視察された方もいらっしゃると思います。この写真は否定しがたい。何が否定しがたいか。第三世界と私たちの間に根本的な圧倒的不平等と不均衡があること、これはだれもが否定しがたい。議員さん諸氏はジョギングをなさっているから割とちゃんとした体をなさっていますけれども、日本の人たちは太って、今やせることに必死になっている。アメリカ人もそうだ。しかし、片っ方では飢えたる民がばたばた死んでいる。これは一体何だ。これは天災のせいではありません。これほど豊かな国がなぜそういう人たちに対して手を差し伸べられないか。その問題が一つあります。  しかし、この裏を考えます。私は世界各国を歩いてみていろいろな人としゃべり、自分で本を書いていきながら考えていく中で、世界にただ一つ共通したイデオロギーを持っていることがあります。それは「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」というイデオロギーだと思います。福沢諭吉はその点偉大でした。つまり、こういうような圧倒的不均衡、不平等にはもう黙っていられないのだということを第三世界の人たちは考えます。それが今根本的な問題として存在している。  ところが、現在の情勢の中で、核を背景とした強大な軍事力が、そういう第三世界の立ち上がりを押さえつけようとする傾向に動いていることは事実です。これはアメリカの世界戦略体系、私は時間がありませんのでここで申し上げませんけれども、お暇があったら私の本を読んでください。幾らでも書いてあります。世界の戦略体系の展開の中でいかなるものが行われているかということを私は痛感します。  ニカラグアのある人がこういったことを言っていました。私たちの問題は根本的に南北問題なのだ、その根本的南北問題をどうして東西の問題に入れてしまうのか。多くの南北の根本的に解決しなければならない問題が、東西のイデオロギーの対立の中にいつの間にかほうり込まれて処理されようとしている。例えばグレナダもそうでした。もう一方の側を見ます。もう一方の側も大事です。アフガニスタンを侵略した国があります。ソビエトはアフガニスタンを侵略した。ポーランドの連帯の運動を抑圧した。これも事実です。それで何が今起こっているのか。  私は、さまざまな会議に出て痛感することは、第三世界が軍事緊張が高まれば高まるほどどちらかの側につくことを要求されて、自主独立の精神を失っていく、自主独立のスタンドポイントを失っていく、位置を失わざるを得ないところに追い込まれていく。日本でさえがアメリカに加担することによって、アジアの諸国は平和への第三の道を選択することができなくなっている。この事実をちゃんと考える必要があります。  やはり世界は、今違う世界のあり方を求めていると思います。アラブ人たちは盛んに言いました。保守派も革新派も私に言うことは、アラブ人の世界をつくりたいのだ、アラブはアラブなんだ、アメリカ合衆国もソビエトも出ていってくれと。それは根本的にそうであります。そのことに対して私たちは連帯しない限り、我々の未来はないだろうと思います。私はあえて言います。日本は日本なんだと。そのことをちゃんとやってほしい。この予算を見た場合そのことをやってないと思うのです。  非同盟という運動があります。さまざまな障害がありながら非同盟にかけている人たちもいます。あるいはヨーロッパの反核の運動を含めてヨーロッパの運動家たちが言っていることは、やはりヨーロッパはヨーロッパなんだ、平和に生きようじゃないかということを盛んに論じています。あるいはギリシャの社会党はやはり同じような独自の道をやろうじゃないかということも主張しています。そのことによって世界のあり方を変えていく、これしか本当に根本的には守ることはできないのだ。小さな国は皆アウトになっていくのだ。どこかの国の家来になるかあるいはまたじゅうりんされるかそれしかないのだ。そのことはやはり考えていく必要があると思います。  そして、私はキノコ雲と飢えたる子供の写真の話をしました。飢えたる子供の写真の背後には、我々日本の手が添えられていることも事実です、現在においても。あるいはまた、過去においても我々はアジアを侵略した。抑圧し支配し差別し収奪した。これは事実です。あるいはまた、キノコ雲は殺し、殺し、殺し、そして殺された歴史のことを象徴しています。これも事実です。この歴史を忘れて何が政治がありましょうか。私はそう思います。  そうすると、この予算案を見ますと、軍事力増強だけが聖域としてこんなにたくさん、こんなにたくさんの軍事力増強が行われている。これは事実です。世界第八位と言いながら、GNPの比較からいうと一%と言いながら、これはもうじき超えるでしょう。すでに超えています、後年度の負担分を含み込めて。あるいはアメリカに対する協力を含み込めてもう超えていますけれども。そしてこれから超えていくだろう。一体これは何をもたらすのか。世界のGNPの巨大な国の一%はすごいものであります。世界第八位と言いながらアジアにおいては第一等の軍事力を今持ちつつあります。そのことを私は考えます。一体どうしたらよいのか。  そうすると、一方的に軍事力を増強していくこと、そして軍事同盟を強化していくこと、日米安全保障条約が軍事同盟であるということを総理大臣は明言した、あるいはこれからトマホークがやってくるだろう、そしてこの世界戦略の中で日米安全保障条約の範囲はどんどん拡大していく、アラブ世界にも拡大した、あるいは太平洋の真ん中にまで拡大していく。私はこれについてくだくだ説明をしようとは思いませんが、例えば核兵器を積み込んだ航空母艦の航路を見たらわかります。例えばミッドウェー、カール・ビンソンがどこからどう走ってくるのか、どこからどう走っていくのか、日本を母港としてどこへどう行くのか、この一つの軌跡の中に我々は入っていることを考えます。そして、私たちが一方的に加担すればするほど何が起こるのか。他方の側で軍事緊張を高めるような軍事力増強が行われて当然です。我々の側が行えば、我々の強大な国がアメリカと加担しながら軍事力を増強していけば、世界第八位と言いながら強大な国であります、その強大な国がアメリカと一緒になれば、反対側の陣営はもちろん軍事力を強化していくでしょう。一体これは何が起こるのか、これで一体我々の安全は守れるのか、世界の将来はどうなるのか、そのことを一つ一つ考えていただきたい。  一つには、それだけの金があったら南の世界に回せばいいのかという議論があります。そのとおりであります。しかし、もう一つ隠れた問題としてぜひ考えていただきたいのは、我々が加担して軍事緊張が高まれば高まるほど第三世界は自主独立を失っていく、いよいよもってどちらかの側に加担せざるを得ないところに追い込まれていく、世界はどんどんと戦争の危機が高まっていく、そして最後に我々はどうなるか、資源のない日本はどうなるのか、そのことを根本的に考えていただきたい。一方的な加担をすることによって何を我々得ることができるのか。過去の歴史が大いに語っているじゃありませんか。やはり世界に対して我々は一体何ができるのか、世界のあり方が間違っているとすれば何が悪かったのか、何をしていけばいいのか。それが結局私たちにつながる問題として考えていただきたい。  例えばこの予算を見ますと、第三世界に対する援助というのはうたわれている。確かに増額した。しかし内訳を見ましょう。これは外務省がすでに明言しているように、総合安全保障の問題として援助の問題を取り上げています。そして対象としても例えば韓国、フィリピン、そのような国々、つまり我々と密接な関係を持つであろう、そして我々の軍事的な連関の中でうまくやっていくだろう国々だけに援助をするというようなことが現にうたわれています。これも一体何をもたらすのか。例えば韓国、フィリピンにおいて一体どういう情勢の展開があるのかわかりません。フィリピンにおいてあすにも政権がかわるかもしれない、そして例えばフィリピンの政権が、アメリカも嫌だ、日本も嫌だという自主的な政策を持ち出すかもしれない、そのときには一体我々はどうするのか、そのことを一つ一つ我々はここで考えていく必要があります。  中曽根さんが三月に中国へ行かれるそうです。私も三月に中国へ行きます。ただ、私にとっての中国と中曽根さんにとっての中国は違うようです。中国自体は一つでしょうけれども、中曽根さんにとっての中国は、それはアジアの大国としての中国、ソビエト戦略の中の一環としての中国かもしれません。私にとっては中国は第三世界の一員としての中国であります。自主独立の精神を持ち、非同盟の原理をこれから追求していこうとする中国であります。  昨年の五月、私が中国へ行ったときに、中日友好協会のかつての代表であり、そして外務省の顧問をしている張番山氏から、私たちは非同盟の原理を持ってこれからいくんだということを明言するのを聞きました。大変いいことだと思います。アメリカからもソビエトからも日本からも等距離に離れてみんなと仲よくしていく、それによって第三世界の未来を開いていく。この中国というものの存在を重要視するならば、そういう中国と我々これからつき合っていきたい、私はそんなふうに考えます。(発言する者あり)いろいろなことをおっしゃる人が横にいますけれども、もう少し勉強してから話をしたらいいと思います。  それで、軍事勢力の一方への援助ばかりやっていないで、これからの新しい世界の未来を考えていく中でこれからの予算を審議していただきたい、そのことをお願いいたします。  では、終わります。(拍手)

山下徳夫自由民主党・新自由国民連合運輸大臣

○山下(徳)委員長代理 ありがとうございました。     ―――――――――――――

山下徳夫自由民主党・新自由国民連合運輸大臣

○山下(徳)委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。

上田哲日本社会党・護憲共同

○上田(哲)委員 御苦労さまでございます。  後の議事の日程への制約がありますので、私は一つだけに絞ってお伺いをいたしたいと思います。  小田公述人に御意見をいただきたいと思います。  今お話を賜りました中で、公述人が、わずか三日前まさに同じこのテーブルに立って、あなたではなくて中曽根首相が日米は軍事同盟であるということを明言されたことを指摘をされました。これは私どもにとっては大変大きな刺激であり、はっとさせられる中で、この閉ざされた院内の中のやりとりだけでなくて、それを受けとめておられる、まさに公述人の言葉を使えば、市民の一人として、あるいは特に小田公述人の広い海外体験を含めた見識等々の立場から、感性の問題としても、ぜひ、閉ざされたこの場の議論に向かって御意見、御感想を承りたいという趣旨でございます。  と申し上げるのは、軍事同盟というのは単なる言葉のやりとりではなくて、およそ立法府の、最高機関の、しかも第一委員会たるべき予算委員会の中で、行政府の条約締結当事者である総理がそういう立場を背中に背負って発言された用語としては極めて重大な意味を持つわけであります。もちろん、これは新たな条約の締結があったわけではありません。しかし、私の認識では、日米安保条約は、一九八一年五月八日の鈴木・レーガン共同声明から大きく変質をしている。しかも、その上に積み上げられたさまざまな日本の軍事努力によって、今や総理大臣がこれを軍事同盟、特に国際的な見方から言えば軍事同盟以外にないという表出をされるに至った実質がそこに堆積をされたと言わなければならないと思うのでありまして、この点について私たちは目を開いて直視しなければならない課題があると認識をいたします。もし日本の外交史の上で軍事同盟という言葉が使われたとするならば、それは一九四一年の日独伊三国同盟にさかのぼるわけでありますから、日本の政治に携わる者が軍事同盟という言葉をこの同じ国会のテーブルの上で発言をし、それを耳にするということになれば、私たちはその苦い歴史に徴して、深い反省とみずからへの警告を新たにしなければならない問題があるであろう、ここに怠慢であってはならないという気持ちがするわけであります。  そこで、今そうした軍事同盟のもとにおいて、日本の軍事的努力として最も焦点を合わせておりますのがシーレーン防衛であります。結論を先に申し上げるならば、シーレーンとは実に虚構の構図でありますから、そのこと自体には何の戦略もないのでありますが、一にかかって集団自衛権の発動というものとしてのまさに軍事同盟でありますが、その大きな一翼としての軍事増強努力というものがシーレーンという仮構の言葉の中で進められており、それが今、飛躍的なレベルに達しようとする年が一九八四年であり、特に四月であります。これは五九中業に長官指示が出るときであり、その内容は、日本の護衛艦のすべてにミサイルが装備されるという非常に大きな区切りとなるのであり、既に二年前から、ハワイ会談の日米協議に示されたアメリカ側のシーレーン防衛のレベルに向かって、これははるかに「防衛計画の大綱」、五六中業を超えるものでありますが、ここに向かって積み上げられてまいります内容が日米シーレーン共同研究というものによって確かめられているのですが、このおくれに対して、ドネリー在日司令官から、これも本年の四月までにその研究を終われ、こういう指示が出る、あるいはまたワインバーガー国防長官から、まさに鈴木、中曽根、二人の総理大臣の誓約としてこのことを実現をせよという大きな要求が公式、非公式に突きつけられてくる、こういう事態の中であります。  そこで、軍事同盟であると言われた総理が、同じ言葉で、そのシーレーン防衛はアメリカに対する日本の公約ではないということをここに明らかにされたのであります。私は、まさにその視点が大事だと思っておりました。八一年五月八日の共同声明をどんなに読んでも、シーレーンのシの字もありません。一千海里も数百海里も書いてありません。どのような外交的手続もとられておりません。その後、ナショナル・プレス・クラブで記者団を相手にスピーチをした、そのスピーチの中にもありません。たまたま質問が出た中で、日本の庭先一千海里、数百海里は第七艦隊のために守ってみせると総理が言われた、その発言がどうして外交上の公式な公約たり得るか。ところが、それがいかにも公約のように受け取られ、そこへ向かってまさに軍事突出の予算が進められていく五十九年度予算であります。  そこで、私はそのことを総理に迫り、総理はここで、一方では軍事同盟であると言い、一方ではシーレーン防衛は公約でないと言われたのですが、それはこれまでの政府のあり方と違うではないかという指摘に対して、つまり、世論はこれを公約と思っていた、こういうふうに私は指摘するのですが、総理はここで言われました、日本国民はシーレーン防衛を対米公約だとは思っていない。対米公約だとは思っていない、また、そういう報道をしているマスコミは、まさにマスコミが走り過ぎているのである、こういう表現なんであります。  小田公述人に伺いたい。まさに市民と言われる立場で私ども国民が受け取っているニュアンスとしては、当然このシーレーン防衛は日本政府における対米公約の扱いとしてここまで進められているのではないか。となれば、ここで総理が、これは対米公約でないと言われたことは極めて重大であり、対米交渉の基軸としてひとつページを改めなければならないときに来ているのではないか。また、同じくGNP一%、この一%は御指摘のようにもう実質的に破られているのでありますが、総理はここで平然と一%を守ると言われた。しかし、一方では、新しい基準は必要だと言われる。私は、将来の問題は別にしても、一%を最小限五十九年度じゅうは守るのは政治責任である、それを破る場合には責任をとるべきであるということを迫るのですが、総理は明言されない。市民の立場でこういう欺罔を許されるであろうか、こういう問題があると思っております。  以上、一問だけに絞りましたのであれもこれも含めたような感じがするのでありますが、今公述人が御指摘になりました日米同盟という、日米軍事同盟という語彙を明確に総理大臣が使われた三日後という状況の中で、一%の欺罔と、そしてシーレーン防衛の危機に向かって、総理の言われるように、こんなものは対米公約でもなく、したがって危険なものでないなどと国民が思っているのだという総理の見解に、果たして市民の立場からどのような感性を表示されるか。また、あえてつけ足すならば、平和を希求する、超党派だと一言われましたけれども、国会はこうした総理の歴史的認識に対してどのような反応の感性を持つべきであるか、このことを私はお伺いをいたしたいと思います。

小田実作家・評論家

○小田公述人 中曽根さんの人格を疑うのではありませんけれども、おっしゃったとおり、感性としてやはりおかしいですね。一国の総理大臣の発言としては矛盾だらけであると思います。だから、ここのところをちゃんとしてもらわない限り信頼することはできない、これは国民の多くの感情じゃないでしょうか。  それからまた、シーレーンというものが着々と公約のように進行しておって大変なことになるのじゃないかという気持ちは多くの人たちが持っております。それは、私も市民の一人として持っております。そして、その結果としてこの間の選挙には、政治倫理の問題ともう一つは中曽根さんの一連の発言に対する不安、それから今の政策に対する不安が批判票としてたくさん出たと思います。そのことを政府は謙虚に受けとめるべきであったと思いますけれども、それがいつの間にかうやむやになってしまった。私は、あの予算案において一つ疑問なのは、私たちは国民の審判として、今の政府のやり方に対してこれではいけないのだという判断を下したはずです。それにもかかわらず、前と同じような予算案、前以上に防衛に傾斜した予算案が出てきたことは、国民に対する扱いが大変嘲笑的である、あるいは愚弄していると考えざるを得ないと私は思います。  それからもう一つ、日米安全保障条約あるいはシーレーンに関連して考えますと、この問題は太平洋の問題に大きく絡んできています。  私は今から四、五年前に、アメリカ合衆国の太平洋戦略のかなめであるところへ行くことができました。それは、マーシャル諸島、かつて日本の南洋群島と呼ばれて、今現在ミクロネシアと呼ばれるマーシャル諸島のクェゼリンという基地であります。クェゼリンという基地の中では、大変な住民の反対運動が起こっている。住民反対運動で、私はその引きでミサイルの基地の中に入ることができた。ミサイルの基地のそばで私たちは住民と語ることができた。その中でいろいろな問題が出てきたのですけれども、そこで気がついたことは、やはりアメリカの世界戦略体系というもので太平洋の占める地位は大変なものである。それはひとえに言いますと、アメリカの防衛を目的にしたものである、これは明らかであります。つまり第一線として――ちょうどこれは太平洋戦争の戦訓を生かすことができます。私たち、南洋を植民地化することによって軍事基地をつくっていく、第一の線がマーシャル諸島の線であります。第二の線がトラック島を中心としたカロリン諸島、第三の線がマリアナ諸島その他であります。そうして続いていった。総反攻が始まったときに大本営が、防衛の第一線として絶対国防圏を設定する、第一線がマーシャル諸島、第二線がトラック島を中心としたカロリン諸島、第三線がマリアナ諸島を中心としたものであります。それから第四線がフィリピン、沖縄というように設定した。どんどん敗れていく、そして、ついに沖縄戦で、あるいは硫黄島へ来て、そしておしまいになる、広島、長崎でおしまいになったという線であります。そのことを、まさにそのことを彼らは考えて基地を続々つくっておる、このことは非常に大事であります。  今一番大事なことは、ミクロネシアの去就であります。国連の信託統治として最終的に残っているのはミクロネシアであります。ミクロネシアについて、アメリカは永久にそれを軍事基地として保持したいというソロモン報告という報告が、ハーバード大学のソロモン教授によって出されました。これは秘密報告とされていましたけれども、ミクロネシアの新聞が暴露した。そして、そのとおり今行われているとこれは言わざるを得ない。そして、ミクロネシアを分断しながら、例えば北マリアナは今から四、五年前にプエルトリコと同じ位置を持つところの植民地になった。そしてグアム島を中心として――グアムは直接の領地であります。グアム島を中心として軍事基地がこれから整備されていこうとしている。そしてマーシャル諸島にはクェゼリンの基地があります。そして硫黄島には新しい日米合同のものをつくろうとしている。  そうすると、これは考えてみますと、太平洋の真ん中において物すごい戦略体系を展開していくということになれば、シーレーンもヘチマもないじゃないか、みんなその一環じゃないかということが言えると思います。そして、その基地の人たちが言っていました。私たちは戦争が起こったら大変なことになる、あなた方も今度は大変なことになるだろう。  そうすると、これを考えてみますと、アメリカ防衛の第一線としてあるいはアメリカから攻撃する第一線として日本本土、韓国、沖縄、フィリピン、これは軍事基地だらけであります、これはつなぐことができます。あるいは第二線として硫黄島を整備する、あるいは北マリアナ、グアム、それから今度はベラウ共和国、非核憲法を求めているベラウ共和国においてトライデントの基地をつくろうとする動きが今強力に行われている、そしてつながっていくだろう。そして第三線、最後のとりでとしてクェゼリンの基地がある。  そんなふうに見ていきますと、これはやはり太平洋戦争を戦訓として我々は受け取るならば、大変なところに巻き込まれているだろう、その一環としてシーレーンなりリムパックなり、さまざまなことが行われているのだという深い認識に我々は立つ必要があります。  そして、もう一言申し添えるならば、クェゼリンの基地にはかつて玉砕した六千人の人たちの遺骨が眠っています。その戦争が済んだ後、玉砕した戦いの後、穴を掘って、日本兵と朝鮮人労働者の遺体は全部そのまま穴の中に埋めた。そして、その上にミサイルの基地をつくっております。中曽根首相は靖国神社にお参りして、英霊に対して大変思いやりの深い方と思いますけれども、その事実について一体どういうふうに考えているのだろうか。遺骨の上にミサイル基地ができ上がり、そのミサイル基地はどこへ向かって撃つのか。  一言申し添えれば、そのクェゼリンの基地は、この間MXミサイルの実験が成功したところであります。このミサイルの基地の下に遺骨が眠っているのです。そして住民たちはそこを追い出されました。隣のイバイ島に追い出された。イバイ島は太平洋のスラムという島であります。たくさんの人がそこへ住まわされている。その下、また遺骨であります。というのは、日本海軍の水上機の基地がそこにあった。この間、反対運動の人たちが来ました。そのうちの一人が私としゃべっているときに、こんな話をしたのです。どんな話かというと、自分は食堂をそこで経営している、クェゼリンの基地に反対しているのだけれども、その食堂を経営してやっと食っているのだ、自分は鉄筋コンクリートのものにしたいのだが、お母さんは反対する。彼は歌を歌っていました。桃太郎さんの歌です。桃太郎さんの歌を深夜歌っていました。それは一体どうしたんだ、習ったのかと言うと、お母さんから習ったと言う。それほど日本を愛していた人です。その人はこう言った。鉄筋コンクリートのものに自分のレストランを改造することをやめて、やっぱりお母さんが提案したように木造のまま置いておこうじゃないか、なぜならば、それは日本兵の遺骨が下にあるのだ、これは日本のお墓なんだ、いつか日本人たちが平和になったらこれを掘りに来るであろう、そのとき一緒にやりたいのだということを言っていたといいます。  その意味で、日米安全保障条約はそこまで延びている、シーレーンがそこまで延びているとすれば、やはり私たちは根本的にその住民たちの問題も考えて、私たちの問題、私たちがかつて日本人として取り扱っていた人たちの問題も考えて、これからの世界を生きていかなければならないと思います。  そういう大きな見地に中曽根さんは立っていただきたい。残念ながら、さっきのような発言をなさっていれば、感性としてもそういうところになかなか立っていないのではないかということを憂えます。

上田哲日本社会党・護憲共同

○上田(哲)委員 どうもありがとうございました。

山下徳夫自由民主党・新自由国民連合運輸大臣

○山下(徳)委員長代理 草川昭三君。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。時間の関係がございますので、小山先生に絞ってお尋ねをいたします。  先生の方から、社会保障関係のことについてのお話があったわけでございまして、十割給付は費用負担の意識が少ないのではないかというような基本的なお言葉もあったわけでございます。実は、先生も触れられましたけれども、老人保健ができてから一部負担によりまして患者の受診率がかなり下がってきておる、そのためにいわゆる早期発見ということがおざなりになり、重い手おくれの患者が出ておるのではないか、こういうような意見も実は診療側の方からかなり問題提起があるわけでございますが、その点についてのお考えはどうかということが第一番であります。  第二番目に、いわゆる退職者医療、私はOB健保と言っておるのでございますけれども、これを四百万人ほど国保の方から抜き出しましてやるわけでございますけれども、いわゆる原資というものは、本人の当時の国保の負担と同じものが出るわけでございますけれども、基本的には出身のそれぞれの健保組合、すなわち労働者側と使用者側との負担ということになり、国の負担というのがないわけであります。そうすると、公の国の保険制度というものに対して国のいわゆる支出というものがないということが果たして公的年金制度というものになじむかどうか、この点が第二番目にあるわけであります。  それから同じく三番目に、日雇い健康保険が今度廃止になったわけでございますけれども、これも当初三千億程度の赤字が累積、いわゆる資金運用部の借りかえで七千億を超したわけでございまして、これが結局健康保険勘定に残るわけであります。これがどのように返還をされるかということについては、ことしたしか五十九年度の予算で利子相当分として二百八億ついたわけですが、これも単年度の赤字を埋めるわけにはいかないわけでございます。そういう意味で、日雇い健保の残ったお金を政管だけが引き受けることの是非という問題が一つ当然出てくるわけでございますけれども、その点についてのお考えを伺いたい。  それから、最後に年金の方になりますけれども、自主運営について先生の御意見は、どのようにお考えになっておられるのか。  以上お尋ねを申し上げて、終わりたいと思います。

小山路男上智大学教授

○小山公述人 ただいま草川先生から御質問がありましたことにお答えいたします。  給付率の引き下げは受診率の抑制につながるのではないかという御指摘でございます。この点につきましては、国民健康保険の給付が現在七割である、そのことによって著しく受診率が抑制されて国民の健康と福祉が阻害されているとは、私どもは承知いたしておりません。もちろん、十割給付を九割に下げるということになりますと、新しい費用負担をお願いするということで、国民にとっても大変つらい選択になるわけでありますが、先ほども申しましたように、医療経済の安定というようなことを考えますと、これはやむを得ない処置であろうかと思います。  なお、第二に、退職者医療の問題でございますが、退職者医療に国庫補助をつけるべきであるというのは、実は事業主側もそういう意見でございました。何か新しい制度をつけると、国が費用を負担するのが社会保障だというのは、少しおかしいのではないかと私はかねがね思っております。給付費に対する国庫補助は行わなくても、事務費その他につきましては当然国の責任においてやるわけでございまして、社会保険というものが余り国庫補助に依存いたしますと、財政事情によってその運用をとかく左右されるということがございます。したがいまして、私は、国庫補助に依存するような制度というのは望ましくないというのが本当のところでありまして、社会保険方式即国庫補助の導入というわけにはまいらぬと思います。  第三番目に、日雇い健保のことでございますが、私どもは、日雇労働者健康保険の累積赤字七千六百億余りと承知しておりますが、これを政府管掌健康保険で引き受けると言った覚えはございません。これは一般会計で当然償還をしていただかなければならない筋合いでございまして、もしほかの健康保険でこれを償還せよということであれば、政府管掌健康保険のみならず、組合健康保険、大企業の健康保険でございますが、そういった健康保険からも当然拠出すべきものと承知しております。あの話し合いのときは、累積赤字は棚上げするということで労使公益三者一致した意見でございましたので、の念のために申し添えます。  最後に、年金積立金の運用についてでございます。  これはかねてから、事業主も被保険者もまた我々公益も、年金資金の自主運用が望ましい、少なくとも拠出者の意図が反映できるような運用にしてほしいということを強く申し入れておるところでありますが、なかなかこれが実現しない。なぜかと申しますと、それはやはり日本全体の金融、経済秩序の維持という、あるいは安定的な運用という資金運用部独特の論理がございまして、それを踏みにじって、厚生年金ないしは国民年金の積立金だけを有利運用せよというのは、実はできない。現に四十兆を超えてまいりますと、そういうことが無理だということでございます。ただ、これも、共済年金の積立金はより有利な運用の方法がございますので、官民格差という観点から申しまして、年金資金のあり方につきましては、我々も今後言うべきことは言ってまいりたいと考えておるところでございます。  以上でございます、

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 先生、済みませんけれども、もう一つ。  今の先生のお言葉でございますけれども、実は健康保険の棚上げは二回ございまして、もう先生御存じのとおり、二回目の分については昨年度で埋めたわけでございますが、第一回の方-は棚上げになっておるわけでございます。棚上げというのは、我々の常識の棚上げと違いまして、結局、資金運用部の短期借り入れの借りかえということになりますと、利子がついておるわけでございます。この日雇いの七千億も当然のことながら棚上げでございますけれども、健康勘定にこれが入っていくわけでございますので、私は、今の政管の黒字がやがてはこれを埋めていくことになるのではないか、こんなような感じを持っておるわけでございますが、いろいろな各種の審議会等で、第一次の棚上げ分の処理については、これも一般会計から繰り入れるという約束事にはなっておるのですが、実施をされていないわけであります。その点についてのみ、先生の御見解を賜りたいと思います。

小山路男上智大学教授

○小山公述人 第一次の棚上げ分につきましては、これば当然一般会計から償還すべきものと承知しております。したがいまして、当面財政事情が苦しいためにそのような対策が講じられないといたしましても、国会で御決定願いまして棚上げをしていただくということになっておるわけでございますから、それをほごにされますと、私どもは制度の運用にまことに困るわけでございます。  それだけ申し上げます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 どうもありがとうございました。

山下徳夫自由民主党・新自由国民連合運輸大臣

○山下(徳)委員長代理 木下敬之助君。

木下敬之助民社党・国民連合

○木下委員 三人の公述人の皆さん、大変御苦労さまでございます。  私も、恐れ入りますが、小山先生に質問させていただきたいと思います。  先ほどからお話をずっと聞かしていただきましたが、その中で、四十年先現行水準を維持する、こういったようなお話があったのですが、その四十年先の現行水準というのはどういった比較で考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

小山路男上智大学教授

○小山公述人 現在の給付水準が、平均の標準報酬に対して六五、六%のところでございます。それを四十年後でも六九程度までということでございまして、これはあくまでも毎月の平均賃金に対する年金の比率というふうにお考え願いたいと思います。その間物価騰貴等があれば当然スライドして名目額が上昇する、そういうふうに考えております。

木下敬之助民社党・国民連合

○木下委員 先生、また先生ばかりの質問になって悪いのですけれども、健保、今度から自分で負担するようになる。私みたいに若くて健康であっても、もし病気になったらどうしようということを時々思います。そんな中で、我々、働いておる皆さんともいろいろな相談をする中で、今日までの日本の繁栄を築いてきたのには、がむしゃらに働いてきた皆さんの努力、また安心して働けたという状況というのも大きいのではないか。それから、資源のない日本の将来に、少しぐらい体を壊しても大丈夫だというくらいの気持ちがあったからこそ働けたのではないか、こういうことを考えておるのですが、どう思われますでしょうか。

小山路男上智大学教授

○小山公述人 確かに先生のおっしゃるとおり、安心して医者にかかれるからまあ一生懸命働けた、そういうことも多分にあろうかと思います。  ただ、本人一割程度の負担というのは、それほど大きな負担でないことだけは申し上げておきたいと思います。と申しますのは、最近の疾病の特徴は、慢性病、成人病、特に疾病の日常化という現象が強いのでございまして、例えば月に一万七、八千円ぐらいでしょうか、血圧降下剤とかあるいは心臓の薬とか、医療費はその程度でありまして、そうすると、千八百円から二千円程度というのが、成人病の場合でも負担しなければならない限度であります。現在は初診時一部負担八百円で、そのままでございますけれども、その点で負担が重くなることは否定いたしませんが、しかし、医療資源の適正配分というような観点からいいますと、この程度は何とか耐えていただきたい、このように思います。

木下敬之助民社党・国民連合

○木下委員 その負担が大したことないという感覚は、私ども、やはりそうは思わない。ぎりぎりのところで、蓄えもないような状態で生活しておる方がたくさんおる。特に若い人の場合、若い人でもし病気になったときは本当に心配なんじゃないか。やはりこれ以上詰めると病気になるというところを、少しでも病気のことを気にして働くことを途中でセーブすれば、これは大変問題じゃないかな、こんなふうに思っております。  あとちょっと、先生のお話と少し外れるかもしれませんけれども、私、日ごろ老人問題とかそんなことで考えていることをちょっと申し上げてみたいと思うのです。  一つは、ぼけ老人対策みたいなことも先生の言葉の中にありましたけれども、家庭奉仕員、こういったものもあるということですが、多くの方に聞きますと、在宅で、家でぼけ老人等を抱えている方なんかは、ホームではいろいろな補助があって、そこで働いていれば、お金をもらってそういう人の世話をしている。家庭奉仕員もそういうことである。そのときに、自分の家で自分のところをしているのに少し補助が出るのなら、自分がやりたいという方もいたり、親を直接面倒見れるのじゃないかとか、こういう話があるのですが、この点はどんなふうに考えられますか。  もう一つ。もう時間もあれですから、もう一問お伺いしますと、老人ホームに行きまして小遣い等やいろいろもらうお金をためておると、あれは相当たまるのですね。そして亡くなられたりすると、通帳の中に百万円近い金があったりする。今まで全く顔も出さなかったような方が、何よりも先にそれを探しに来るというようなことがあったりする話をよく聞くのですね。こんなのが、故人の残した遺産とはいいながら、国の費用、そういった形でたまっていったものが、そういう何も世話しなかったような方に相続していく権限があるのかな、こういう感じを持ったりするのですが、こういった老人問題を含めてお答えをいただいて、私の質問を終わりにしたいと思います。

小山路男上智大学教授

○小山公述人 前段のぼけ老人の在宅ケアの問題でございますが、御質問の意味がよく私には聞き取れなかったのでございますが、在宅ケアはやはり今後充実していかなければならない。そのために、従来は低所得者に限定されておりました家庭奉仕員の範囲を拡大するという方策を今後とっていく必要があろうかと思います。私ももう六十を過ぎておりまして、いつぼけ老人になるかわかりませんので、そのときはやはり在宅でケアを受けるということになろうかと思います。そういうことを考えまして、やはりホームヘルプサービスの充実というのは、今後の施策の中心になろうかと思います。  それからもう一つ。後段の方でございますが、後段の問題につきましては、こう考えております。  どこの国――これは私が見ましたのは西ドイツとソビエトでございますが、老人施設に入っている方は年金の八割を費用徴収するのでございます。日本の場合は、これが七万五千円程度、最高限度額がその程度である。そういたしまして、何となく年金が出る翌日になると孫が小遣いを取りに来るというようなことがございます。そして亡くなりますと、ひどいときには遺骨も引き取らないで遺品だけを取って帰っていくというようなことで、随分施設関係者から、その点は問題があるんじゃないか、どうも変な言い方をいたしますが、施設をつくり福祉を充実することが親不孝を助長するような対策はこれはとるべきではない。したがいまして、私どもといたしましては、適正な費用負担を老人について行うということが必要であろうと思っております。

木下敬之助民社党・国民連合

○木下委員 最初に御質問いたしましたのは、家庭で自分の親を普通に面倒を見ている人、しかし大変手がかかるので働きに行くのも相当制限されてくる。それですから、外で働いてするよりも、幾らかでも自分に援助がもらえるものなら、自分自身が外で働いているものを少なくして家庭で自分の親を直接見れるじゃないか、こういう問題でございます。

小山路男上智大学教授

○小山公述人 わかりました。失礼いたしました。  実はそういうような税制上の配慮をイギリスではしております。ホームケアのために、本来なら賃金が稼得できる者が、例えばお嬢さんならお嬢さんがつきっきりで世話している、その場合、我が国では今同居高齢者について特別控徐が認められておりますが、もう一段上の控除が認められておりまして、そういうようなことも将来はぜひ国会あたりで御論議願えればありがたいと思います。

木下敬之助民社党・国民連合

○木下委員 どうもありがとうございました。終わります。

山下徳夫自由民主党・新自由国民連合運輸大臣

○山下(徳)委員長代理 瀬崎博義君。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 公述人各位御苦労さまです。  まず春山公述人に伺いたいのですが、先ほどの公述の中でも、昨年大企業八百社の年間利益は前年比で一三六・六%になっているにもかかわらず、労働者の賃上げの方は定期昇給分を除けばたったの二%であった、こういう前提をお述べになった上で、大幅な賃上げは、社会保障や福祉の充実、公共料金の抑制とともに国内需要の喚起、特に消費購買力の拡大に役立つし、また貿易摩擦の解消にもいい影響を与えるのだ、こういうお話でありました。おっしゃるように、労働者の今日の切実な生活擁護の上でも、また中小企業を含めた国民全体の景気対策にも有効なはずのこの大幅賃上げが、にもかかわらず今日なかなか実現し得ないその理由についてどういうふうにお考えになっているのか、特にきょうは予算審議と絡んでおりますので、政府の労働行政などの問題点も触れながら御意見をいただければ幸いだと思います。

春山明統一戦線促進労働組合懇談会事務局長

○春山公述人 先ほどは、我が国の財界、大企業が労働者の賃金を極端に抑制をして、一方で巨額の利益を蓄積をしているというふうに申し上げました。その実情についてでありますけれども、例えば、先ほどは控え目な政府や国連やILOの統計に若干触れさせていただいたのでありますけれども、住友商事が海外駐在員を動員をして二、三年前に、東京の大学率初任給月額約十七万円だったと思いますけれども、これを、同じような先進国十四カ国の大都市の労働者のと比較をした資料がございます。これを見ますと、日本の場合一〇〇といたしまして、小さいものでも一四〇、大きいところは二百数十というふうに高い賃金水準を示しています。それなのに日本の場合には、世界のGNPの二一%を越える工業生産力を持っていながら、そういうふうに十数番目という低いところに置かれている。これはとりもなおさず、我が国の政府の労働者政策あるいはそれを支援をする財界、大企業の利益蓄積のための賃金抑制というものが、世界の先進諸国の中でも極端に強いということのあらわれだと思います。例えば、ことしの一月十一日に日経連の労働問題研究委員会報告というのが出されましたけれども、それを見ますと、恐るべきことに、中小企業の労働者の賃金や労働条件について、韓国、台湾などアジアの発展途上国の労働者の賃金、労働条件、労働時間などと比較をいたしまして、今でも国際的には低い日本の中小企業の労働者の賃金、労働条件を、さらに低いそれらの台湾や韓国の労働者の水準にまで陥れようとするかのような言辞さえも見られるところでありまして、私どもからすれば、憲法二十五条で言っている健康で文化的な生活水準云々というものをはるかにもっと押し下げる強い衝動意欲、これは世界の中でもまれな高蓄積意欲、つまり非人間的な政策というものが我が国の大企業、それを代表する財界の中に強くあるのだと思います。残念ながら、それを受けて、例えば政府の中期経済計画も労働者の所得については抑制を基本にした考え方の上に立っております。その政府の全体の所得との関連で労働者の所得を抑え込むその考え方に、残念ですけれども、労働組合の中の一部の方々も、経済整合性という言葉を使いながら同調しているということがありまして、そのために労働者の賃金が低く抑えられていて、今日、例えば、大学のある先生の言葉をかりれば、最終需要の中の五〇%近い消費需要というものがありながら、四千万人労働者の賃金が抑え込まれていて消費需要が冷え込んでいて、そのために不況からの脱出ができず、また日本の貿易も、内需がどうしようもないものですから外需に目を向けて、この前のように、貿易黒字が約五兆円近いというふうにOECDからの指摘を受ける、貿易摩擦が強くなれば、その見返りとしてアメリカからも、例えば軍備増強圧力が強まるというさまざまな矛盾を引き起こしているというふうに考えています。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 引き続いて春山公述人に伺いたいのですが、随分と軍事費の拡大に対して懸念を表明されたのですが、御承知のように、この軍事費の歯どめに関連して、先般この委員会でも、中曽根首相はある党の質問に答えて、三木内閣の閣議決定の方針を守ってまいります、つまり当面GNP一%以内に抑える方針を守っていく、こういう答弁をしているわけなんですね。  そこで、もし、軍事費の方なんですが、五十九年度の当初予算に計上された防衛費をそのままにして、人勧が三%以上で実施されますと、これはもうGNP一%を超えてしまうことは御存じのとおりであります。一方、人勧の方は、今後出されるものではありますが、昨年大幅に値切られて、四・五%値切られているわけですから、普通にこれまでのやり方で計算されれば、この四・五%プラスアルファになることは自明のことなんですね。したがって、人勧を完全に実施する、誠実に実行するというのであれば、これはGNP一%を必ず超えてしまう、GNP一%を超えないというのなら、頭からもう人勧は実施する意思がない、このどちらかになって、非常にこれは矛盾した答弁をしておると思うのですね。  そういう意味で、もしGNP一%以内を守るということと人勧の尊重の両立を本当に図るというのなら、当初予算の防衛費をこの際削減修正する、こういうことでなければなるないというふうに我々は思っているのですが、あの中曽根首相の答弁をお聞きになっている春山さんは、この点をどうお考えでしょう。

春山明統一戦線促進労働組合懇談会事務局長

○春山公述人 来年度の防衛予算、軍事予算はたしか二兆九千億円、GNPの〇・九九一%と言われているようです。しかし、例えばNATO方式で計算すれば、軍人恩給などが入りますから、とっくに一%を超えているというのが国民の一般的な常識であります。しかも、後年度負担が二兆何千億円がありまして、足して五兆円を超える。五六中業を見ましても、これからの五年間の国民の税金の軍事費負担というのは、私の計算ですと二十兆円をはるかに超えるという、そういう大枠に追っていると思っています。ですから、GNP一%枠にこだわるというそのこと自体は、やはり国民の意識の反映だというふうにとりますけれども、それを防衛庁の自衛官の人件費とのかかわりで物を言うというのは、私は率直に言わせていただくならば、これはためにする論理だと思います。  アメリカのワインバーガー国防復官が我が国の防衛費の増額について、NATOの枠を超えて日本は軍事費を伸ばしているし、これは首相個人の努力にも負うところが大きいというふうに言っておられるのを聞きましたけれども、日本の軍事予算をふやす上で、その一%のところで何やかや言いながら、事実上既成事実をつくっていく、一方では人事院勧告に対する抑制効果をねらっている、私はためにする論理であるというふうに思いますし、国民的な立場からするならば、それは間違った方向に国民世論を誘導する、ためにするものだというふうに強く反対をしているところです。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 もう一点春山公述人に伺いたいのです。  北炭夕張炭鉱の大きな事故に続いて、先般三井三池炭鉱でまた大事故が起こりました。私たちも本当に犠牲となられた方々、御遺族に対して心の痛みを感じているのですが、しかし、それだけではなくて、今日、労災あるいは職業病は百万人に達するような状況で、一方では大企業を中心に随分近代化、合理化が進められていると言いながら、それにつれて安全の面も向上しているのかと思ったら、現実はこういうことですね。こういうことが今日の減量経営とか近代化、合理化の中で起こってくる大きな原因、とりわけ政府の労働安全行政面で春山さんの指摘される点があればお答えをいただきたいと思うのですが……。

春山明統一戦線促進労働組合懇談会事務局長

○春山公述人 私は、労働災害問題では相当以前から関心を持って政府のさまざまな資料を見ているのですけれども、日本の労働者がどこでどのぐらい殺され、またけがをし、病気になっているかについての正確な統計を日本の政府は持っていないというふうに思っています。それは持とうとしないからだということだとも思うのです。労働省が発表している内容だけで見ましても、年間百万人を超える労働者が死亡し、傷つき、病に倒れています。この百万人の労働者災害や職業病の根絶についていろいろな観点から私どもも勉強しているところでありますけれども、少なくも今の労働省の資料をもってしましても、今日の労働災害は人災だというものが恐らくほとんど全部に近いぐらいを占めているのではないかというふうに思えます。労働省が出しているさまざまな資料から見ましても、労働者が作業中に事故に遭う、その事故を防ぐ手だては安全衛生関係法令上も、また今日の日本の到達している科学技術水準においても十分に予防が可能なのでありまして、それらの我が国が持っている全財産を傾倒するならば、労働者の命が失われ、傷つき、家族ともども悲しみに暮れるようなことをなくすことは相当多くの分野でできるのではないかと思っています。細かいところは避けますけれども、労働省がもっと災害原因の追及に当たって、その人的な原因に一人的な原因というのは、人が起こす、労働者が起こすという意味ではなくて、会社側が作業をする環境整備や必要な安全装備のための費用の節約をするという意味での人間の起こす災害という意味ですが、そういう資本の側の災害原因なり、その原因責任というものをもっともっと人の命を大事にする立場で追及をするならば、今日のような災害多発ということは防げるのではないだろうかというふうに思っています。  交通災害でもたくさんの今やあるいは健康が失われでいますけれども、労働災害はそれにまさるとも劣らないものがありますし、それはひいては公害問題であるとかあるいは薬害問題であるとか、さまざまな人命軽視の風潮とも結びついていて、ちょっと極論のように聞こえますけれども、命を粗末にするような傾向、考え方と結びつくときに、私は日本の未来にとっても大変恐ろしい状況ができるのではないかと思っています。  また今日、ME化が進みまして、産業用ロボットであるとかNC工作機械が数多く職場に入ってきて、労働者がたくさんのそのような先端的な機械を扱う中で精神的な障害を受ける、また、だれもいないところで一人で事故に遭って、事故の原因がわからないまま、例えば死んでしまう、そういうようなことも大企業や軍事産業の中では起きているように思います。手だてを尽くすことが必要だと思っています。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 それでは小山公述人に伺いたいと思うのです。  社会保障の御専門でいらっしゃる先生から社会保障のむしろ切り下げ的御意見を伺ったのは大変残念なのですが、まず第一点は、六千二百億円の財源を捻出するために健康保険制度の見直しに手をつけざるを得ぬのだというお話だったのですが、少なくとも社会保障分野の専門とおっしゃるのなら、社会保障の制度改悪に手をつける前に、今も春山さんの方から大分お話がありましたですね、五十九年度三兆円、後年度負担二兆円に達するこの軍事費の方をまず削れないのかな、そういうお考えをお持ちになったことがないのか。これが一点です。  それから二つ目は、健康保険制度は昭和二年以来、あの太平洋戦争中の東条内閣のときを除いては、加入者本人についてはずっと十割給付をしてきているわけですね。それほど長い歴史を持つ本人に対する十割給付の根本的な精神はどこに置かれていると先生はお考えなのか、これを第二番目に承りたい。  三つ目、先生は、本人負担導入の理由として、費用負担の意識を持たせる必要があるとおっしゃったのですが、本人に費用負担の意識を持たせることと、それから一家の大黒柱の健康に不安なからしむる十割給付を続けることと、どっちが本来の社会保障のあり方として大事とお考えになっているのか。この三点、お伺いしたいと思います。

小山路男上智大学教授

○小山公述人 お答えいたします。  最初に、社会保障費と軍事費との関係でございますが、それはまさに政治の選択の問題でございまして、私は社会保障の専門家として社会保障関係予算について申し上げたのでございまして、これ以上のことは私の分に過ぎたことだろうと思います。  第二に、社会保障の切り下げを社会保障の専門家が言うのはおかしいではないか……(瀬崎委員「いや、十割給付の歴史です」と呼ぶ)はい。十割給付のことでございますが、十割給付が発足いたしましたのは、元来、労働者保険として労働者保護立法の一環として健康保険の十割給付というものが行われてまいったところでございます。しかしながら、昭和三十六年以降皆保険体制になりまして、いわば従来の労働者保険だけではどうもいき得ないといいますか、国民健康保険という地域保険もございます、すべての労働者あるいは市民が何らかの健康保険に加入しているということになりますと、制度間のバランスの問題もやはり考えでいいのではないか。殊に、国民健康保険と組合健保の場合では、余りにも格差が大き過ぎるというのが私の感じであります。元来、八割給付ないしは九割というような考え方は突然出てきた問題じゃないのでありまして、昭和四十年代からの長い積み重ねの歴史がございます。かつて、本国会に提出されたかされなかったか覚えていませんが、薬剤費の給付を保険から外すという案を保険局がつくったことがございました。あのときのねらいは、本人給付を八割程度に下げるということでございます。それが今回は給付率というものを直接にいじるということに相なったわけであります。  それからもう一つ、一家の大黒柱の健康をおまえはどう考えるんだ、まことにおっしゃるとおりでございますが、本人の受診率も、それから費用もこのところ横ばいでございまして、むしろ上がっているのは家族療養給付費関係であるということに御着目を願いたいと思います。医療費が上がるとすれば、そればむしろ高齢化に伴う老人の増加でありまして、老齢者の医療費が非常に高くなってきている、そのことが全体を圧迫しているのだ、こういうふうにお考えになっていただいた方がよろしいと思います。  私どもは決して社会保障の給付水準を下げよと言っているわけではないので、むしろ制度間のアンバランスを是正しながら将来にわたって財政的に安定させませんと高齢化社会が乗り切れないんだ、こういう意識の方が強いということだけを申し上げておきたいと思います。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 どうもありがとうございました。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  明二十五日は、午前九階より委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十四分散会

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