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101回国会衆議院1984/02/18

予算委員会 第7号

発言数
295
登壇者
35
会派数
6
開催日
1984/02/18

会議録

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算、昭和五十九年度特別会計予算、昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。二見伸明君。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 最初に政党法についてお伺いをし、それから、質問要旨には載せておりませんでしたけれども、共通一次についてその次に若干お尋ねをしたいと思います。  最初に、政党法でございますが、政党法の法制化ということについては、昭和二十二年に内務省案を第一号として、その後、憲法調査会あるいは選挙制度審議会において賛否の論議が闘わされてまいりました。さらに、四十一年の黒い霧や四十九年のいわゆる田中金脈問題、こうした政治の腐敗が表に出たときにも、政党法というものを制定すべきではないかという動きがありました。しかし、今回総理が法制化の検討を指示されたのは今までとは違った背景があるのじゃないか。と申しますのは、昨年、比例代表選挙が初めて行われました。もともとこの政党法というのは、むしろ政界浄化というよりも選挙制度のあり方とワンセットで論じられてきたものですから、しかも、昨年比例代表選挙が行われ、政党選挙への幕あけがあったわけであります。私たちは、比例代表選挙に対しては、これは小選挙区制を将来導入する布石ではないかということで御存じのとおり反対したわけでありますけれども、そうした背景を考えますと、総理が改めて政党法制定を指示されたということに軽々しく見過ごすことのできない問題があるのではないかと思います。  それで、総理が今回これを指示されたその目的というかねらい、さらに、小選挙区制の導入ということも将来考えてのそのための布石なのかどうかをまずお尋ねしたいと思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 まず政党法に関しましては、制定を指示したとか制定を検討したとかということではございません。政党法の可否について御検討を願いたいと要請をしたところであります。  第二に、小選挙区制度は考えておりません。それとは全く関係はございません。  では、しからばなぜ政党法の可否について検討を要請したかと申しますと、今お話がありますように、昨年の全国区比例代表制度というものが出てまいりまして、これは個人に投票するのでなくして政治団体に対して国民が投票するということになります。そうすると、対象となる政治団体というものは、ある程度公的資格を持ってくる。今までは個人が対象であったのが、政治団体自体が直接の対象になりますから、そういう意味におきましてはやや公的性格を帯びてここへ登場してきている。そういうことが一つございます。  それから、政治腐敗を断とうという点から、政党自体が選挙資金、政治資金の獲得について今までのような状態だけでいいのか。もちろん政治資金規正法とかあるいはその改革法案というものもございますけれども、しかし、そういう面からも、例えばドイツにおきましては、総選挙のときに全有権者一人についてたしか五マルク出してそれを得票によって分配する、そういう方式を一九七七年、あのころから実行しております。そういうドイツにおける先例等も見て、やはり勉強に値する問題ではないだろうか、そういう意味においてこれは勉強していただきたい、そういう意味で申し上げておるのであります。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 実は、政党法の問題というのはいろいろございまして、総理もちろん御存じだと思いますけれども、一つはやはり憲法の結社の向山との関係が私は出てくると思います。ただ、実際に政党法そのものができ上がっているわけではありませんから、その政党法が憲法に抵触するかどうかということはここでは論じられないわけですけれども、これは絶えず頭に置いておかなければならない問題だと思います。  私は、その政党法というものが、もし政党を取り締まったりあるいは不当に規制するものであれば、これは憲法違反というのは間違いなく出てくると思いますけれども、しかし、そうではなくて、今総理がおっしゃったように、例えば西ドイツのように国が政党にいわゆる補助金を出す、国が政党に補助金を出すことによって金絡みの政治が薄まるのじゃないかというそういう御発想があるとしても、やはり問題点は出てくるのだと思うのです。  例えばこれは昨年五月に自民党の方でまとめられた政党法要綱というのでは、政党の要件というのは、国会議員の数で言えば三十五人以上ということになっております。例えばこういう形で政党の定義というか決め方をミニ政党や少数政党が適用にならないような形で決めるということになると、やはり問題が出てくると私は思うし、これは結社の自由に抵触するか、あるいはしないまでもお金が出ると出ないとでは政治活動に大きな違いが出てまいりますので、しかも、政党政治という実態を考えれば、参政権にもかかわる問題だと思います。そういう点については、総理はどういう御認識でいらっしゃいますか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 私は、政党法を制定したからといって結社の自由に反するとは思いません。要は、そのつくり方により、規制の仕方あるいは援助の仕方によるのではないかと思います。  それよりも大事な点は、やはり日本にしますれば百年になんなんとするこの長い議会政治の伝統的な原則というものがございます。西欧においてもあったと思います。例えば先般来問題になった一審有罪判決に対する国会法の改正という問題については、今までの日本の議会主義の原則というのは院内活動に対する懲罰という形で自主規制を行ってきたわけですけれども、院外の行動についてそういうような形が延長し得るかというのは、今までの明治以来の議会主義の原則に対する重大なる変更であります。もちろん選挙法その他で有罪の判決を受けてそして刑が確定した、そういう場合には立候補できないという制限はございます。ございますが、議会自体が自律的にやるということについては議会内の行動である。それはやはり官憲の弾圧やら政府の陰謀によって議員が容易に逮捕や何かやられて、そして国会活動が規制されて、言論あるいは政治活動の自由が奪われるのを防ぐために、政党側がそういうことで院内活動にだけ限ったわけです。明治の時代におきましてもあるいは外国の例におきましても、ややもすれば政府権力が過大になりますと、反対党の議員をそういうふうに容易に逮捕したり拘束したりして意思を通すという傾向が絶無ではなかったわけです。そういう面から、議会側も、自分たちの権限を守るという意味からもああいう院内行動主義に限定したわけです。今、日本は民主政治でそういうことは全然ないと思いますが、しかし、将来のことまでよくおもんぱかって考えておく必要はあるのではないかと思います。そういう点であの国会法問題については民主政治の一つのプリンシプルの問題として考えなければならぬ問題があるのだと申し上げました。  政党法につきましても、今までの伝統的な考え方は、政党は割合に私的な団体であって、そのかわり何ら拘束を受けずに自由活発に活動して、全国を飛び回って活動を行う、そういう原則であった。ですから、外国では政党というものは憲法や法律のところへ顔を出さない。民主政治の恥部である、恥ずかしい部分、パルティ・オントゥーズという言葉がありますが、民主政治の恥部である、そういうふうに言われておった。そういう形にしておくのか言論の自由や政党活動の活発さを保障するためにいいのか、あるいはさらにもう少し、今度は政党法という形で自主規制ということを込めて一面においては選挙資金あるいはその他の浄化のために一定の規制を伴いつつ国家から補助をするというやり方をとって、今や公然と顔を出すような形にしていいのか、そういう民主政治のプリンシプルの問題があるわけです。  こういう、今の国会法の問題にしても、政党の問題にしても、明治以来の立憲政治の基本原則というものに触れるものでありますから、これはよく慎重に検討して、学者の意見も聞いて、そして次の世代、将来まで見据えた判断でやらなければいけない、そういう考えもあわせて申し上げておるのであります。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 自治大臣にちょっとお尋ねしますけれども、実はこの政党法の問題は、委員会で言うと公選法で議論されるわけでありますけれども、実物がないのにここでいろいろ議論するのは変なものなんですけれども、例えば国が補助金を出すという西ドイツ方式ですね。これは私、一つ問題があると思うのは、例えば昭和五十五年十月二十九日の衆議院の公選法特別委員会で、当時の自治大臣が、国が補助金を出すということになれば、国民から要望があればそのお金がどう使われたかというようなことになれば、「立法機関に行政権が介入していいものかどうかというような問題もありましょう。」と御答弁なさっているわけです。金は出しました、それについて検査も何もできない、国民から要求があればやはり検査もしなければならぬと思います、ですから、補助金を出すということはある面では検査等の名目で公権力が政党内部に介入する、そういうこともあるのじゃないか、当時自治大臣はそういう御答弁だと思います。田川さんはいかがでしょうか。

田川誠一自由民主党・新自由国民連合自治大臣・国家公安委員会委員長

○田川国務大臣 前の不破元自治相がそういうことを言われたということは、私も伺っております。それは、今おっしゃったように、国が政党に補助金を出し、そしてその補助金の使途をいろいろと追及するとかそういうようなことが立法府に対する行政府の介入ではないかということを懸念したのでありまして、本来の政党法、仮に政党法ができるとすれば、そうしたことは恐らくあり得ないのではないか。ですから、不破さんのおっしゃられたのは、そういう補助金を出した場合にいろいろと行政府がチェックする、そういうことを指して懸念をされたというふうに見ております。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 政党法がもし制定されるとすれば、公権力が政党の内部に介入できないようなものでなければならないというふうに今の御答弁を理解するわけであります。  それで、確かに総理がおっしゃられましたように、西ドイツでは憲法の中に規定されておりますね、政党というものを。日本は、政党というのは公選法で政治団体という規定があるぐらいで、法的には、おっしゃられたように私的な団体でいるわけです。私は、例えば政党法というものが制定されて、その結果――私、政党というのは本来自由濶達であるべきだと思うし、またその自由濶達であることが民主政治を支えていく土台になると思うのです。それが何か規制されて一定の方向に行かなければならぬようなことになったらば、それは民主主義の崩壊だと思います。たとえ政党法が制定されたとしてもその原則だけはゆがめることはできないだろうと私は思います。  それで、もう一つ問題は、例えば財政の厳しい折から、西ドイツ方式で補助金を政党に出したとします。今でも立法調査費とか選挙の公営とかいろいろな名目で現実には政党あるいは政治家に税金の一部が充てられているわけです。ところが、今度は政党ということが法制化されて堂々と補助金をもらうということになる、果たして国民が納得するのだろうか。コンセンサスを得るというのは非常に難しいのではないかと思います。  西ドイツは、去年の暮れに有権者一人当たり五マルクに額を上げたですね、三・五マルクから五マルクに。五マルクですと、今、円換算すると四百三十円ぐらいになりましょうか。(「五百円ぐらい」と呼ぶ者あり)五百円ぐらいですか。そうすると、有権者が八千四百万ですから、五百円ということになれば四百何十億になるし、私、四百三十円で計算したのですけれども、そうすると三百六十二億円というかなり莫大な額になります。果たしてそうしたことに現時点において国民がうんと言うかどうか、そこら辺の御判断、いかがでしよう。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 全く二見さんがおっしゃるようにこれは国民の御意見を聞いて一つはやるべきものでありまして、選挙とか政党政治とか民主政治というものは国民が主であって、我々はその上に踊っている人間にすぎないので、主人公である国民の皆さんのお考えを十分聞いてやるべきものであると思っております。したがって、我々だけで独断的に物を考えたり行動したりすることはいけないと思うのです。ですから、これにつきましてはよく国民の皆様方にその判断の材料を提供して、時間をかけて、そしてよく練った上で最後的判定は行うべきではないか、こう思っております。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 西ドイツでは、一九六七年の七月二十二日に政党法ができたのですけれども、当初は、政党が国庫から補助金を受けるための要件が第二投票の二・五%以上の得票を有することとされていた。これが小政党を不当に不利にするという理由で連邦憲法裁判所で違憲判決があった。そしてこの違憲判決に基づきまして一九六九年、昭和四十四年七月二十二日に二・五%からこれが〇・五%に引き下げられた。しかし、これも連邦憲法裁判所では違憲判決、違憲だということになりまして、一九七九年十二月二十一日に、一選挙区で一投票の一〇%以上の得票を獲得した無所属候補も補助が受けられるということになっております。憲法に政党というものの規定があり、それに基づいて政党法を制定している西ドイツですら、このようにやり方によってはかなり厳しい違憲判決が出てくるということになると、政党規制のあり方というか、政党法というものにはやはり限界があるというふうに私は思います。ですから、政党法というのは、総理おっしゃられたように、慎重の上にも慎重を期さなければならないと思うし、また、先ほど申し上げましたけれども、五十五年十月二十九日の公選法の特別委員会で、不破自治大臣がこの政党法について、「憲法の保障します政治結社の自由の問題等に触れるところはないかどうかというような点も若干の問題が残されておるようにも思いますし、何も政府が責任回避をしようとは思いませんけれども、これは議会制民主主義の根本にも関します問題でございますので、しかるべき方法によりまして国会御自身の御判断をむしろ積極的にお願いした方が適当ではなかろうかと一応考えております。」と御答弁されております。私もこのとおりだと思いまして、じゃ政党法というものは、総理が政党法の可否について自民党の総裁として党内に指示されるのは全く自由でございますし、これは構いませんけれども、しかし、政党法を制定するかどうか、これはむしろ政府が主導してやるべきものではなくて、政党自身にかかわることですから、これは国会が判断すべきであり、各政党がお互いに知恵を出し合ってやっていくものだと思います。賛成する政党があり、それから真っ向から反対する政党がある段階では、こうしたものの法制化というのは見送るのが民主主義の原理からいって妥当なのではないか。むしろこうしたことが対立の原因となるというのは、対立の中からもし政党法が生まれるというようなことがあれば、それは日本の民主主義にとって非常に不幸な結果をもたらすのではないかと思うわけですけれども、総理、この点はいかがでしょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 私は、党に対しまして、党の総裁として御勉強をお願いした。それで、制定の可否を検討してください、制定していいのか悪いのか、その点からまず勉強してください、そういうふうに申し上げているので、制定するとも申し上げておりませんし、いわんやこういう重大問題を日民党だけで独断で行おうなどとは考えておりません。ただ、こういういろいろな問題が起きているときでございますから、我々がいろいろなあらゆる努力をしてみなければいけない。しかもまだ、非常に時代も変わってきて、今のように、政党というものがどっちかといえば民主政治上における日陰者であったのが、ドイツにおいては正式に顔を出してきている、そういう情勢であり、日本におきましても、戦前は政治資金規正法なんかなかったのですけれども、戦後はできた。そういうふうに、意識の変化や社会的位置の変化も出てきておる。片方においては労働組合という団体、あくまで結社の自由でやっておりますけれども、労働組合法という法律もある。あるいは消費生活協同組合、ちゃんとそういうものもある。しかし、それは主として経済団体でありますが、政党の場合は、これは言論の自由、表現の自由に一番関係してくる大事なポイントであって、性格は違います。違いますけれども、一種の社会的存在であることについては間違いありません。そういう点でやはり考えてみる必要が絶無とは言わない、こういう大きな時代の変化に伴うて民心がどういうふうに動いているかという点も調べてみる必要がある、そういう意味におきまして非常に注意深く勉強してください、そういう意味で申し上げておるので、自民党だけでやろうと思っておりません。しかし、勉強してみることまで否定すべきものではない、そう思います。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 私も、勉強することまで否定する気は毛頭ございません。それは、やはり法制化すべきかどうかということの可否については検討してしかるべきだと私も考えております。しかしこれは、例えば制定するとしても、反対する政党の意見を押しつぶしてまでやるべき筋合いのものではない。例えば制定した方がいいという結論を自民党さんがお出しになったとしても、あるいは一部の政党に反対する党があれば、その反対意見を封じ込んでまでやるべき筋合いのものではないというのが私の考え方でございます。その点をまず申し上げておきます。  それから自治大臣、きょうは党大会だそうでございまして……。  実は、質問通告にはなかったのですけれども、共通一次にまつわる問題を二、三お尋ねしたいと思います。  実は、教育問題というのは、私は教育問題のずぶの素人でございますので、これから申し上げることは大変粗っぽい意見かもしれません。しかし、時と場合によれば、粗っぽい素人の乱暴な意見が的を射ることもあるのじゃなかろうかと思います。しかも教育問題というのは、自分も小学校、中学校、高校、大学と受験戦争を経てきているし、あるいは子供を持っていれば子供を通してやはり教育問題にそれぞれ一家言皆さん持っているわけです。一億一千万総評論家の時代で、教育問題に関しては十人十色、百人百様の意見があります。素人は素人なりに自分のったない体験の中から教育に関する意見を持っているわけであります。  そうした点でお尋ねしますけれども、まず共通一次の実施時期について、初めてこれが導入されたときは、たしか十二月に行われました。しかし、そのときには、十二月にやったのでは大事な高校の最後の一年間の教育体系が共通一次に振り回されてどうしようもないじゃないかという意見が予算委員会でも展開されて、そして今、一月十五日に繰り下げられたわけです。しかし、私の同僚なんかでも、高校で教頭をやっていたり、あるいは学務主任ですか、そういうポストについている連中からは、共通一次の実施時期をもっと繰り下げてもらえないかという要望が非常に強いわけです。この点について、できれば来年度からでも共通一次の実施時期が繰り下げられるのかどうか、その点についてお尋ねしたいと思います。

森喜朗自由民主党・新自由国民連合文部大臣

○森国務大臣 お答えいたします。  共通一次は五十四年度から実施をいたしまして、六回実施をいたしたわけであります。当時は難問奇問というようなこともございましたり、大学受験というものはいろいろな大変難しい社会的な問題も起こしたわけでございまして、そういう意味で、大体高等学校の学習の達成度を評価をしていこう、こういうことで全国一斉に始めたわけであります。これは全国三十数万を超える受験生を一どきに一斉に沖縄から北海道までやるわけでありますから、これは大変な難事業でございますが、もう既に来年については準備もすべて始めているというような状況でございます。  御指摘の少し期間をおくらせる、こういう意見や、あるいは科目も非常に多いではないか、こういう意見も非常にございまして、国大協の入試センター、いろいろ入試改善懇談会で検討いたしまして、ぎりぎりのところ二週間おくらせようということで、この十一月十六日にそのことは決定をいたしまして、六十年度からは現行よりも約二週間おくらせる、一月の下旬にと、こういうふうに考えております。でき得れば三学期まで高等学校は楽しく愉快に、最後に先生方とも別れるわけですから、本当の意味での学園生活を送らせてあげたいというのが私どもの願いでございますが、実質的に大体二週間おくらせるということはもう限度ぎりぎりであるということであろうと思います。  今後のことにつきましては、また改めて高等学校側の意見もちょうだいをしながら六十一年度以降についてはさらに検討していきたい、こんなふうに考えております。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 共通一次の五教科七科目ですか、これが難しい、あるいは多過ぎるという議論がここのところございます。文部大臣は、たしかここで、共通一次の五教科七科目について、私の聞き間違いだったら申しわけないのだけれども、国大協の先生にお目にかかったところ、学問のレベルを下げる気かと言われて、私も文部大臣としてなかなか言いにくかったというお話がありました。あなた、早稲田でしょう。私も早稲田で、早稲田大学というのは三科目なんですよ。五教科七科目の関門を突破しないと優秀な学者が出ないと。我我早稲田の三科目はどうなんですか、これは。(「優秀になってきたよ」と呼ぶ者あり)ありがとう。総理は、早稲田の三科目でも優秀だと――五教科七科目でなければ優秀な人が大学に入ってこないというこの発想を改めてもらわなければいかぬ。これは文部省が減らせとは言えないわけですな、決めるのは向こうで決めるのだから。しかし、文部大臣として、国大協に、六十年度から科目を減らすように、国会からの議論もある、何とかしてもらえないかと強い要請はできないのでしょうか。何とか六十年から五教科七科目を、早稲田と同じように三科目にしてくれればもっとありがたいですけれども、そうもいかぬでしょうから、減らす方向で何とかしてもらいたいと思うけれども、いかがでしょう。

森喜朗自由民主党・新自由国民連合文部大臣

○森国務大臣 早稲田だけではなくて、慶応大学も三科目、その他の私立大学も三科目と選択をされているわけでございます。この議論は大変難しいところで、大学の入学の試験というのは、その問題を全部クリアしなければ高等教育機関に入れないのか、あるいはその学問を学ぶことによって頭の錬成を図るのか、これも私は国大協の皆さんとも議論いたしたところでございます。いろいろな学問があることを知るということはとても大切なことだと言う学長さん方もいらっしゃいましたし、五教科七科目を過重負担だと考えるような人は国大には要らないのだということをおっしゃる学長さんもいらっしゃいました。しかし、総理も強く国大協の学長さんとの会談では、もう少し人間的な面を掘り下げていただけないだろうか、こういう総理からの御意見もございました。私もまさにそのとおりだと思います。  そこで、二見さんも御承知のとおり、文部省からこれをやれと言うことはできないわけでありまして、やはり大学の試験、そしてどういう人を採るかということは大学の学長にある権限でございまして、私どもとしては要請をするというよりも指導をしていく、助言をしていく、お願いをしていくということになるのかもしれません。私としては、このことは大臣就任以来大学関係者に絶えずお願いをいたしているところでありますが、これは二見先生にもわかっていただきたいと思うのですが、今次の二年生の人が勉強しているのです。果たしてこのことができるかできないかということは、今勉強しておる子供たち、今の高等学校の生徒に非常に影響を与えておりますので、具体的にどのような方向になるというようなことはここではなかなか申し上げにくいところでございますが、でき得れば五教科七科目を少し減らす方向、もしくは公明党さんなんかからも意見書が出ておりますが、俗に言うアラカルト方式というふうに少し考えてもらえないだろうか。特定分野の大学、例えば芸大へ行く人たちに数学、理科をそんなにやってもらわなければならぬようなことがいいのかどうか。そういうふうに考えますと、例えば文系と理系と分けて、とにかく英、数、国だけはきちっと決めておくが、あとの社会とか理科の問題は選択にしていく、こういうようなやり方を少しお考えをいただきたいということで、今国大協で抜本的検討に入っていただいておるようでございます。それが六十年度からやれるとか何年度からやれるということは、ここで私から申し上げることは先ほど申し上げた理由で非常に難しいところでございます。  なお、先日私立大学の先生方にもお目にかかりました。国大協の皆さんから言えば私立が三科目しかない、今三科目だからということを二見さんおっしゃったけれども、三科目しかないから逆に私立の問題の深みが物すごく深まってきまして、余り大学の名前を言っていいかわかりませんが、業者による偏差値の数字を見ると、早稲田や慶応の一部の学部は東大よりも偏差値が高くなっているということは事実でありまして、そういう面では国大協の皆さんは私大に対する不信を持っていることも若干聞いております。そこで、この共通一次は、先ほど申し上げたように学習の一つの達成度を見るということであったわけですから、このこと自体は悪じゃなかったわけですから、私立大学にもぜひ参加してもらえないだろうか、入試センター、共通一次に参加してもらえないだろうかというようなことも私大の関係者にお願いをいたしておりますが、私大の関係者は、もし入試センターとしてアラカルト方式、そういう形をとってくれるならば私大も参加することを考慮してみたい、この間、十六日に大体そんな意向を話していただいておりますから、もしそういうような形になれば、これからそういう高等学校の生徒たちへの過重の負担はかなり解消できる、そういう方向に今文部省も国大協も私大協も私大連盟もみんな一生懸命に努力しておるということを御報告申し上げることができるのではないかと思います。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 御努力を多とするわけでありますけれども、確かにおっしゃられるように、高校をことし卒業する人を除いて現在一年、二年、特に二年生は来年の入試でもう頭いっぱいだと思います。五教科七科目が減るのか、あるいはアラカルト方式になるのか、これはできるだけ早く結論を出さなければ、今の高校生の勉強といいますか受験態勢に影響が出てくると思うのです。なるたけ早くこの結論を国大協の方にお願いをして出していただきたいのですけれども、この結論はかなり長くなりますか、割と早く出そうですか。

森喜朗自由民主党・新自由国民連合文部大臣

○森国務大臣 先ほども申し上げましたように、学問というものをきわめていくにはいろいろな考え方があるようでありますから、私どもからはできるだけ早く改善が望ましいという方向でお願いをいたしておりますが、今大変努力をいたしていただいておるところでございます。この程度のことでひとつお許しをいただきたいと思います。  なおまた、別の角度でもう少し推薦入学の枠や、あるいは一斉にやってしまいますので後がないという感じになってしまいますから、今各大学によっては一%ぐらい二次募集という分で残してありますけれども、これをせめて一〇%ぐらい各大学が残してくれればもう少し余裕を持って受験生が構えられるのではないか。総理も常々言っておられるようにチャレンジ精神で、このことによって、よし、僕もひとつ東大をやってみよう、やってみてうまくいったらそれを乗り越えてみたい、しかしだめであっても次の二回目のチャンスというのがあるんだ、こういうやり方も当然大事だということで、クラブ活動を評価していくようなやり方、面接を評価していくやり方というような多様化の方向と、二次募集ということの枠をもう少し広げるようなことができないだろうか、そんなことも今検討をお願いいたしておりますので、二見さんのようにすぐ早くやれ、こうおっしゃっても、私がやるのじゃありませんので、そういう方向で文部省は一生懸命に指導いたしておるというところでございます。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 国立大学は、今文部大臣がおっしゃられましたように、昔は一期校と二期校がありまして、一期校で落ちた場合は二期校へ行く、チャンスが二度あったわけです。その結果、一期、二期で二期校の一期校に対するコンプレックスみたいなものがあったわけですけれども、今度は共通一次で同じ日に一発勝負でしょう。一発勝負というのは、考えてみれば夢もロマンもないですね。敗者復活戦というのはスポーツの世界にもあるのですから、各大学、例えば東大が先頭で、定員千名のところを八百名あるいは九百名でもいいですが、ここまでは第一次で採る、第二次では一割なら一割、二割なら二割はあけておく、落ちた連中の中でもう一度そこヘチャレンジしてみる。わずか一点か二点の差で落ちるわけでしょう。人間の能力というのは五点や十点そのときの体の調子でどうにでもなる。そういうことを考えれば、第二次募集というか、各大学とも一割とか二割とか枠をあけて再挑戦するチャンスを与えるということは学生にとってもいいと思うし、例えば東大を落ちた、じゃ二次募集では向こうの大学へ行こうということになれば、その向こうの大学の学生の質も上がってくるのじゃないかと思う。向こうの大学で落ちた、よし、どうせ玉砕するならば東大を受けて玉砕しろというのでまた受けて落ちてもいいと思う。たまたま一発勝負で、この間のスケートの北沢じゃないけれども入っちゃったということもあるかもしれない。私は、そういう荒っぽい学生が出てきても世の中というのはいいのじゃないかと思うし、大変荒っぽい議論で、だから素人は困るんだとおっしゃられるかもしれないけれども、その点は改めてお願いをしたいと思うし、国大協の方にもお願いをしたいと思います。  と同時に、実は総理、私も教育改革、教育の荒廃というか、教育制度の改革というのは非常に大事だと思っております。ただ私は専門家じゃないから深い議論ができないだけの話で、今ここでかなり雑な議論を文部大臣としたわけでありますけれども、これに関する総理の御所見もあわせて承りたいと思います。総括して承りたいと思います。敗者復活戦の話です。

森喜朗自由民主党・新自由国民連合文部大臣

○森国務大臣 これも個々の大学の名前を挙げるのはこの場所では差し控えたいと思いますが、かなりその敗者復活戦をやってくれている大学もあるのですが、端的に申し上げて旧帝大などではないわけであります。したがいまして、旧帝大も含めてできる限りそうした二次募集の枠を、先ほど申し上げたように、これは私見ですけれども、一〇%ぐらい広げてくれたらなあという気持ちは持っておりますが、そのことも含めて国大協は今真剣に本格的な検討を開始しておりますので、その結論をもって文部省として善処をしていきたい、こう考えております。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 教育あるいは試験問題に関する基本的考えにつきまして、私は二見さんのお考えに全く同感で共鳴いたします。  先般、国大協の幹事の先生とお会いしました。東大の学長それから工業大学の学長それから新潟大学の学長、そのほかの方々にお会いしました。これは責任者でございます。我々は我々の考えや希望を率直に申し上げましたが、国大協のその先生方の中におきましても、共通一次テストというものについては若干の危惧を持っておられた方々がやはりなきにしもあらずのようで、あれがベストとは思っていないようであります。それから今の試験のやり方自体についても問題がある。しかし、大学側としてはやはり質のいい、そして安全率をとったいい学生を採りたい、そういうような仕込みの考えがありまして、そういう安全率というような感じが多少あります。ありますけれども、今の試験のあり方について非常にごうごうたる世評を浴びているという点もよくわきまえておられるようでありました。  その先生方の率直な意見といたしまして、私は千点満点で二百点もとれなかった、そう言いましたら、東大の学長までもが自分でもそんなにとれるかどうかわからぬ、皆さんが、大体我々戦前ああいう試験のないときに生まれてよかったねと率直にそんな話も実は出たわけなんです。これが私は本当の腹の底にある考えじゃないかと思いますね。そういうような原点もお持ちのようでございますから、専門家同士でいろいろ御検討願って、そしてアラカルトの話も出ました、選択制とか今の敗者復活戦の話も出ました、それもの御意見も十分わきまえて御審議くださることであると期待をいたしております。  教育の基本に関するお考えにつきましては全く同感であります。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 次に、サイエンスに関する議論をしたいと思います。私もこの道は専門家じゃありませんので、あるいは論議が間違えるところがあるかもしれませんけれども、ただ、いわゆるバイオテクノロジーという問題は先端技術であり、これからの日本、これからの社会に大きな問題を提起してくるのじゃないかと思いますので、ここできちんとその健全な育成のための議論というものをしておきたいと思って、きょう実は、予算の審議にはちょっとなじまないかもしれないけれども、提起したいと思っているわけです。  総理は、昨年ワシントンのジョンズホプキンズ大学高等国際問題研究所の卒業式の講演で、「遺伝子の操作技術は、新たな可能性を開くと同時に、人間の存在とその尊厳にかかわる重大な問題を提起するところまで到達してきております。」とお述べになられまして、さらに「その推進や規制について、これを各個人や各国別の判断のみにゆだねるべきことではなくなっております。」と申されております。私もこの認識は同じであります。バイオテクノロジー、特に遺伝子組みかえあるいは細胞融合技術、細胞大量培養技術、バイオリアクター、この応用範囲は保健医療から農業化学工業、食品工業、資源エネルギー等非常に広い分野にわたっているわけでありまして、それだけにこのバイオテクノロジーの健全な発展というのは非常に大切なことだと思います。と同時に我々一般人、こういうことがよくわからない者にとっては、そこに大きな夢と期待を抱くと同時に、何か言い知れぬ不安感というか本能的な恐怖感というものが絶えずつきまとっていくのじゃないか。私も頭の中では理解している反面、心の中では、間違ったら怖いなという気持ちも正直半分あります。  総理は、このジョンズホプキンズ大学の講演のときに、人類共通の最大の課題どこの問題をとらえておられまして、必要とあらば本件技術の使用に関する国際条約の締結も検討することになろうとお述べになられております。そしてベルサイユ・サミットでは、フランスの、ミッテラン大統領からバイオテクノロジーなど先端技術について国際協力の話があったと承っております。総理は、このバイオテクノロジーという新しい技術についてどういうふうにお考えになっているのか。また総理は、ジョンズホプキンズ大学の高等国際問題研究所の卒業式の講演で国際条約の締結にも言及されましたけれども、総理としてどういうような構想をこの国際条約に私案としてお持ちになっているのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 遺伝子が発見され、その組みかえの技術が進むにつれて科学は非常に進歩いたしましたが、明暗両方が出てきておると思います。例えば、そのために農業技術研究所等において植物の新しい品種が改良されてきておる、あるいは薬がいいものが出つつある。そういう点は明るさの方でありますけれども、しかし暗さの面におきましては、今言った恐怖感というものが身にしみて出てきつつありますと同時に、それは結局は人間の尊厳というものにかかわってきている問題であります。ここまで科学が発達してまいりますと、生命の根源に突き入れば突き入るだけ人間の尊厳という問題が浮かんできて、神を恐れなければならない、そういうところに来つつあると思うのです。私は、ですからジョンズホプキンズ大学の卒業式の講演では、パスカルが十七世紀に「人間は考える葦にすぎない」と言ったけれども、この言葉をもう一回我々は見直す必要のある時期に来た、そういうことを申し上げたのはそのためでございます。  そういうことでございますから、この問題は一国家や一大学の問題でなくして全人類共通の課題としてとらえよう、しかし、それを行うためには世界の賢人、各国各国の賢人が自分たちの意見を出し合うことがまず大事だ。こういうものは国家規制とか国際条約にすぐなじまないものであります。したがいまして、今のところは徳島大学でこういう基準をつくっているとか、あるいは実験指針を科学技術会議でつくって各都道府県、研究所に通達しているとか、そういう程度で、ばらばらで多様性を持って自由に行われている。スタートとして私はこれが好ましいと思います。ですから、地域的なあるいは局部的な問題として自由に議論をして、それがだんだん合成され、輪を広げまして一つのコンセンサスに成長していく、そのときに政治というものが出ていくべきである、そういう考えを持っているわけであります。そういう意味のことも実は考えて内容には盛ってあります。しかし終局的には、もし必要あらば国際条約の問題も考えていいのではないだろうか、これは今言ったコンセンサスのできた終局の話でございます。そういう用意をもってお話を申し上げました。  それで、この問題につきましては世界の賢人が集まってみんなで討論してもらおう、それは結論が出なくてもよろしい。しかし、今遺伝子の組みかえによって、例えばネズミについてはクローンネズミといって、全く同じ中曽根康弘というネズミが十匹も二十匹も出るようになって、これはもう既に成功して出てきているわけですから、ネズミに出てきたものが人間に出てこないという保証はない。同じ中曽根康弘という全く変わらないのが十人も二十人も出てきたら大いに迷惑するわけであります。そういう意味からしても、これは非常に重大な問題を内包しておる。ですから、科学技術庁が中心でやりました科学技術会議の実験指針におきましても、その媒体といいますか種の選択の問題あるいはそれが外へ漏れないというための厳重な防護措置の問題、こういう問題については非常に注意深く規定しておるところでございます。  それで、今そういうことはやっておるけれども、しかしもっと大きな哲学とか思想的なあるいは人類全体を見通した議論というものはないわけです。それは非常に危険である、そういうところから私はウィリアムズバーグのサミットで提唱いたしまして、このサミット構成国の各国から最大の権威者を集めてディスカッションしてもらって、それを世界に流そう、それを見てみんなが何を考えるか、必要に応じてまた会議を開こう、そういう意味で提議しましたら各国非常に賛同していただきまして、三月十九日から東京とそれから箱根で賢人に集まってもらいます。各国の大統領、首相は積極的に非常に協力してくれまして、大体候補者も出していただきました。大体今人選が進みつつあるところで、近日中にその名前あるいはその経歴等も発表の段階に至ると思います。日本側も京都大学の岡本前総長を中心にいろいろ準備もしていただいております。  そういうことでございますので、この問題は文化国家日本という面もだんだん認識される面でもあるだろうと思いますけれども、それ以上に人類の運命に関する大きな問題として真剣に取り上げてまいりたいと思っておるところであります。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 遺伝子組みかえの唯一の基準である組換えDNA実験指針、これは五十四年の八月二十七日に決定されまして、その後五十五年の四月、五十五年十一月、五十六年四月、五十七年八月、五十八年九月とこう改定されてきたわけであります。今回、高等生物への遺伝子組みかえを認める基準がつくられ、いわゆる感染実験というものが認められることになったわけであります。こうした規制の緩和というのは研究する立場からすれば非常に自由でやりやすいわけでありますけれども、我々は、このようにどんどん緩和していって本当に大丈夫なのかという危惧が一方ではあるわけであります。この危惧というのは絶えず持ち続けていかなければならない大事な危惧だと思います。  それで、これは科技庁ですか、この指針を近い将来緩和を含めてさらに改定することはありますか。当分この今の基準、五十八年九月の基準でずっと行くわけですか、近い将来変える方向性はありますか。

赤羽信久科学技術庁計画局長

○赤羽(信)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように基準は、一番最初はよくわからないという前提に立ちまして、完全な安全を確保するという立場から非常に厳しい基準で出発したわけでございます。その基準に基づきまして実験を進める。我が国でもそうでございますし、特にアメリカは非常にたくさんのデータが出てまいりました。そうなりますと、それほど厳重にやらなくてもできた生物、特に微生物でございますが、危険性がないということが逐一確かめられてきたわけでございます。そういう世界的なデータを集積いたしまして、扱います品種それから扱います実験室の基準、これを現実に合ったように順次拡大してきたということでございます。最近ではかなり大きい改定をしてございますので、すぐ次の改定ということにはなりませんけれども、御承知のように日進月歩データが非常に多いときでございますので、またそれがたまりましたら新しい基準に持っていく。その間の基準に載っていないものは、科学技術会議のライフサイエンス部会で個別に審査しながら認めておるという現状でございます。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 アメリカでは新しいDNAを導入した植物の栽培実験について、NIH、国立衛生研究所はオーケーを出した、認可した。ところが環境保護庁がそれに待ったをかけ、民間の環境保護団体が差しとめの訴訟を起こしてその実験は中止になったという報道がありました。我が国ではこうした屋外実験というのは認めるのでしょうか、それともストップなんでしょうか、これはどうなんでしょうか。

赤羽信久科学技術庁計画局長

○赤羽(信)政府委員 科学の報道などでなされておりますように、植物に新しい品種あるいは今までにない性能を持った品種を育てるというようなことが遺伝子組みかえにとっても将来のテーマなわけでございます。したがいまして、将来は一般の農場でも栽培できるということが究極の目的ではございます。しかし、先ほど申し上げましたとおり、一歩一歩安全を確かめながらやるという建前からいたしまして、現在そういう実験をするにしましても、それは密閉した実験室の中でだけ行う、環境に持ち出すのはそういう実験を通して十分なデータが集積した後で行うという手順になろうかと思われます。現在の実験の段階からしますと、またそれはある程度先のことになると想像されます。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 それから、一九八○年にカリフォルニア大学のクライン教授が、遺伝子組みかえ技術によって血液病の少女の治療を行ったという報道がありました。これはいろいろな波紋、議論を呼んだわけでありますけれども、この種の治療、いわゆる人体実験というのは我が国でも起こり得る可能性なきにしもあらずだと思います。こういうものについてはどういうふうに御判断なさいますか。許されますか、それとも日本の場合は明確にノーということになりますか。

大崎仁文部省学術国際局長

○大崎政府委員 大学等におきます研究につきましては、科学技術会議の指針と厳密な整合性を保ちまして、学術審議会の建議に基づいた指針を制定して実施をしておるところでございます。一般に、安全性の確認が基準化できるものにつきましてはその基準に従ってやっているわけでございますが、確認ができないものにつきましては、個別の実験計画につきまして慎重な審査を経た上で可否を決しておるわけでございます。その考え方としましては、現在は、人間を対象とする遺伝子実験組みかえは認めないということが学術審議会の態度であります。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 京都大学の名誉教授で、元日本学術会議人間と科学特別委員会の委員長をされておりました西山さんという方がある新聞に投稿されておりまして、「遺伝子組み換えを含む生命科学の研究は、一歩踏み違えると、今日の核戦争の危機をもたらしている原子力開発に劣らない災厄を招く恐れがある。この分野では、金もうけのための企業間の競争といったことが秘密裏に研究者を危険な研究へ踏み込ませ、取り返しがつかぬ事態を起こす公算が極めて大きい。」こう述べられております。ガイドラインに明記されている実験、例えば政府の個別の許可を得てする実験、あるいは大学や企業の安全委員会の許可にかかわる実験、今の基準にありますね。そうした例えば政府の個別の許可を要する実験、これに違反して、そんなことは無視して、要するにこの西山さんの言葉をかりれば、企業間の競争といったことが秘密裏に研究者を危険な研究へ踏み込ませる、こういう事態もあると思います。政府の個別の許可を要する実験に違反する、無視して行われた場合にはどういう処置になりますか。

大崎仁文部省学術国際局長

○大崎政府委員 大学関係について申し上げますと、各大学にまずその審査のための安全委員会というものを設置をしていただいておりまして、第一次的にはその安全委員会で厳重な安全性の審査をしていただくということが大前提でございます。したがいまして、大学内でその安全委員会が知らないうちにそのような実験が行われるということは、私どもとしてはないと確信をしておりますし、またその種の実験については相当の施設、経費を伴うのが通常でございますが、当然のことではございますが、そのような施設、経費の措置も一切しないということで実効を確保するという体制でございますが、これまでのところは実験指針は完全に遵守をされておるというのが実情でございます。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 要するに科学者の良心というか、科学者の倫理に任されている面が非常に強いわけです。この西山さんもいみじくもその点は指摘しておりまして、西山さんの文章によりますと、「そこで私が一番心配したことは、その研究にかかわる個々の研究者はいずれも良識ある科学者で、彼らが人類を破滅に陥れるような研究をやるとは思えないが、それを推進する者が「科学の論理」ではなくて、産業や経済の論理であるならば、利潤追求が第一義となる。」必ずしも科学者の倫理だけでは済まない問題が出てくるのだと私は思います。  また、大阪大学の医学部の教授で本庶佑さんという方が昨年某紙のインタビューで、この人は一生懸命やっている方なんだけれども、遺伝子操作について、「遺伝子操作を六、七年やってきて、むしろ安全だという実証が増えてきた。が、何をやってもいいということではない」と、こう本庶教授は申されまして、そうしてこういう質問、「米最高裁はことし、」ことしというのは去年のことだと思いますけれども、「米最高裁はことし、遺伝子操作でつくり出した人工の微生物を「製品」と認定し、特許の対象とする決定を下した。企業間の開発競争が激烈になって研究者が企業ペースに振り回される心配もあります。」という質問に対して、本庶教授は、「十分考えられますね。インターフェロンや食用タンパク質をたくさんつくる微生物の開発など、すでに目の色が変わっている。もっと心配なのは細菌兵器といった軍事面の利用です。すでにエレクトロニクス、半導体といった技術は軍事面に協力させられている。バイオロジーをそうさせないためには、政治や社会の仕組み、人間の価値観を、少しずつ変えていかねばならない。それは、分子生物学、とりわけ遺伝子工学の分野だけではできないことです。あらゆる学問を動員、人間の英知を集める以外に道はない。」と申されておりまして、まさに私はこのとおりだと思います。ですから、遺伝子組みかえのことについてここで法律でがちっと決めるのがいいのかどうか、これは確かに今後の発展を考えるならばいろいろ問題はあるけれども、ただ科学者の良識、倫理だけに任しておくと大変なことにもなりかねないのじゃないかという率直な不安というものを持っているわけです。  それで、総理も御存じのように、例えば去年のある新聞に出ておりましたけれども、ある研究室で、人間とチンパンジーの混血をつくりたいという研究者がいて、それを担当の教授がとんでもないことだと言ってやめさせるのに苦労したという新聞報道がありました。結局その研究はできなかったわけです。それから、ヤギと羊のあいのこを誕生させたというような実験の報告も最近新聞で見ました。今、総理も、クローン中曽根ができたら恐ろしいことになるというお話がありました。まあ科学者に言わせると、クローン人間なんていうのは先の話で、当分まあ絶対不可能だと申されておりますけれども、将来、キメラ人間とか、クローン人間、そういうものができるのじゃないかという言い知れぬ恐怖感というのは私も非常に持っているわけです。  小松左京の「地球復活の日」だったですか、ある細菌学者が何か変な細菌をつくり出して、それが飛行機で飛んでくるときに不時着か何かしておっこちちゃって、その細菌が世界全体を覆うて、風邪を引いたみたいな形になって死んでいく、南極の探険か何かで行っていた者だけが残ってという、そういう大変ショッキングなSFの小説がありましたけれども、私はSFの世界だと笑っていたことが何かSFでなくなってくるのじゃないかという感じがいたします。  それで、私は総理にお尋ねしたいというか、やはり総理にも検討していただきたいのですけれども、原子力研究には、自主、民主、公開という三つの原則があって、我が国ではその原則を一つの歯どめとして研究が行われている。バイオテクノロジーが応用の仕方によっては細菌兵器がつくれないという保証はないと私は思います。そうすると、やはり、バイオテクノロジーを健全に育てていくためには、そうした基本原則というか、基本法というか、そういうことが私は絶対必要になってくる。しかも、バイオテクノロジーというのは、科学技術庁だけではなくて、文部省だ、厚生省だ、農林省だ、至るところに、多岐の省庁にわたっております。個別にやっているだけでは済まなくなって、個別のいろいろなガイドラインや何かの基礎になる基本原則というものを私はもうそろそろ検討されてもいいのではないかと思うのです。  我が党では、実はバイオテクノロジーの研究に関する基本方針と原則というのを提唱しております。その基本方針というのは、「人類福祉の向上に資するため、人間生命の尊厳を大前提に、軍事利用の禁止、事前評価による安全確保と、社会的合意のもとに、研究・開発・利用を推進する。」というのが我が党で提唱している基本方針でありまして、五原則というのは、一つは平和利用の原則、すなわち、バイオテクノロジーの研究開発の目的は、あくまでも平和利用のみに限る、細菌兵器をつくるなんていうものじゃないのだということが一つの原則であります。もう一つは安全の原則、遺伝子操作等は、人間及び環境に対する安全の確保のもとに行う、そういう安全の原則。もう一つは民主の原則。もう一つは同意の原則、特に人間に対する遺伝子操作というのは、適正な情報の告知、要するに知らせること、そのもとに、当該者または保護者の同意を必要とする、そうした同意の原則ということも必要なんじゃないか。さらに、これは企業間秘密があるので大変難しいのだけれども、公開の原則だ。バイオテクノロジーの研究開発に関する情報は公開されなければならない。これは企業秘密と絡んでくるので大変難しい原則かもしれないけれども、こうした原則のもとに行われなければバイオテクノロジーの健全な発展というのはないのじゃないか。こういう原則が確立されれば、我々素人のような者でも恐怖感というのは若干なりとも薄らいでくるのじゃないか。一般人に恐怖感を抱かした上で健全な発展というのはないと私は思う。私はそうしたことでこうした考え方を持っているわけでありますけれども、別にこの考えに同調しろと言うわけではありませんけれども、こうした意味での基本的な原則、基本法というものについて総理はいかがお考えでしょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 私は、昭和四十七年に通産大臣と科学技術庁長官を兼任して職につきましたときに、今日のライフサイエンスの研究スタートを命じた人間であります。そのときから遺伝子組みかえその他の問題については重大な関心を持っておりました。そういう青信号を出してスタートを命じた人間であるだけに、責任も感じておるわけで、そういう点から今回箱根会議を開きまして世界の賢人に集まっていただいて、何らかの指針を見出そう、そういう努力をしておるところでございます。  今、二見さんがお話しになりました点は、私と憂いをともにしている点が非常に多々ございます。そういう面も踏まえまして、今度の箱根会議等における議論等をよく点検をしてみまして、政策的にいろいろ将来検討してみたいと思っています。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 ぜひそうした方向で基本原則あるいは基本法、これは直ちにきょうとかあしたとかという生易しい問題じゃないと思いますけれども、じっくりと検討していただき、そうした上でできるだけ早期にそうした原則を確立していただきたいと思います。  さらにこの問題について若干お尋ねをしたいと思います。  昨年東北大の病院で体外受精児が誕生したというニュースがありました。これは秘密が漏れたということで新説でもかなり問題になりましたけれども。また、今月の三日にはアメリカで受精卵移植による出産が成功したという報道もありまして、その赤ちゃんの写真が載っておりました。アメリカにはノーベル賞級の学者の精子を冷凍保存した精子銀行がある。オーストラリアでは受精卵の凍結保存技術も登場して、凍結卵をもらった女性が妊娠しているというこういう報道も私見ました。こうしたことは子供に恵まれない人には朗報かもしれないけれども、例えば、体外受精だとかあるいは人工受精、精子銀行、受精卵の凍結保存、そうしたことが優生学的に組み合わされて、場合によっては両親とは全く違ったこういう子供が生まれてくるということになると、これは子宝に恵まれない人には朗報かもしれないけれども、それ以上にやっぱり大きな社会問題になってくるのじゃないか。これは、今のうちにきちんとした歯どめを考えなければ、将来大きな問題になるのじゃないかと私は思っているのですけれども、総理はこれはどういう御認識でございましょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 その点も非常に重大な関心を持っておるところで、今度の箱根会議というのは、科学と人間の社会あるいは科学と人間、そういうものを一つのテーマとしてやっていただく予定で、すべてそういうものも含まれると思います。それに、それは生まれてくるときのいろいろな条件であります。今度は、死んでいく場合の安楽死を認めるのか、機械をいつ外すのか、そういうような問題につきましてもまた同じような人間の尊厳の問題が入っておるわけです。そういうもの全般についていろいろ御議論も願い、我々も政治的立場からもよく深く検討していきたい、そう考えておるところであります。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 確かに臓器移植というのがありまして、北海道で心臓移植の問題がありましたけれども、そうなれば、脳死の時期をどう判定するか、臓器移植も、死後何日もたった臓器ではだめなわけですから、ある瞬間移植しなければならぬということになれば、人間の死をどこで決めるかというやはり大きな問題があって、これは、政治で決めるとか法律で決める以前に、そのそれぞれの立場から議論を深めてもらう以外にないと思います。  ところで、文部大臣にお尋ねしますけれども、体外受精を実施している大学あるいはこれから研究をしたいなと予定している大学の数はどのぐらいございましょうか。

森喜朗自由民主党・新自由国民連合文部大臣

○森国務大臣 体外受精は、基本的には不妊治療に関する臨床研究として研究を進めておるものでございますが、今大体日本では約十大学が取り組んでおるというふうに承知をいたしております。東北大学が今お話がありましたように出産に成功いたしました。徳島大学と東京歯科大学と東海大学が妊娠に成功した、こういうふうに聞いております。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 この体外受精については、日本産婦人科学会だとか東北大学、徳島大学でそれぞれ体外受精についてのガイドラインというのを発表しております。大体内容は似たようなものですね。それほど大きな差はないと思います。このガイドラインについて、妥当なものだというお考えか、もっと厳しくした方がいいという考えか、もう少しやわらかくした方がいいというお考えか、そのお考えをひとつ、所見を述べていただきたいことと、それから、これは文部省か厚生省がわかりませんけれども、例えば十大学が実施しているということになると、恐らく大学じゃなくてほかの機関でもこの問題を研究しているところがあると思います。しかもこれから大きな問題になってくるということになれば、個別の大学、徳島大学や東北大学や日本産婦人科学会のそれぞれ個別のガイドラインに任じておいていいのか、むしろ、外国にもいろいろな事例が出てきているわけでありますから、今この段階できちんとした規制なり基準なりを決めておいた方がいいのじゃないかという考えも持つわけでありますけれども、これは文部省ですか、厚生省ですか。――文部大臣。

森喜朗自由民主党・新自由国民連合文部大臣

○森国務大臣 徳島大学は、世界医師会のヘルシンキ宣言にのっとって、倫理委員会を設置しておると承知をいたしております。東北大学は、日本産科婦人科学会の定めた留意事項を採用しておるということでございます。  体外受精の倫理基準につきましては、日本産科婦人科学会が統一的な基準を公表いたしておりますので、当面はこの学会の動向をしばらく文部省としては見守っていきたいというように考えております。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 要するに、日本産婦人科学会にしろ、東北大にしろ、徳島大学にしろ、この基準というのは医師の倫理で行われているわけであります。しかし、例えば体外受精は戸籍上の夫婦に限るとかと、こうなっているわけです。これは法律で決まっているのではなくて、医師の倫理あるいは当事者の倫理として決まっているわけです。しかし、例えば妻以外の女性から卵子を提供を受けて妻が子供を産むということだって、法律的にはこれは規定されないのでしょう、日本では。どうなんですか、これは。医師の倫理でもってできないだけの話で、やったらどうということはないでしよう。

住栄作自由民主党・新自由国民連合法務大臣

○住国務大臣 お答えします。  現在の法体系の中では、そういうものはいかぬ、いいと、こういうことは決めておりません。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 決められていないということは、やっても構わないということでしょう。医師の倫理でできないだけの話で。どうなんですか。決められていないと法務大臣おっしゃるのだから、これは逆に言えば、やっても、それは倫理上はいろいろな問題はあるとしても、目をつぶってやればやれないことではないのじゃないですか。

枇杷田泰助法務省民事局長

○枇杷田政府委員 民法的な面から申しますと、そのようなことは何も規制がないわけでございます。あと、そのようなことが許されることであるかどうかということは、行政法の分野で定められるものが残るかと思いますけれども、その面につきましても、立法があるというふうには承知しておりません。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 私はだから医師の倫理だけに任しておいてまずいのではないかという気持ちを持っているわけです。それは御研究いただくとして、たしかアメリカで精子銀行ができるとか、こういうことになりますと、アメリカではもういわゆる商売になるのでしょう。我が国ではそうした生殖細胞の売買というものはどういうことになりますか。アメリカではもうこれは商売になっているのだから、日本でもこれを商売にされたら、これはたまったものではないし、古いやつかもしれないという歌があったけれども、感覚は、価値観や道徳観は古いのかもしれないけれども、非常に気持ちが悪い。そんなところで、そういう生殖細胞の売買によってできてきた子供がこれから社会にふえてきて、将来それが総理大臣になったなんということになると、何か非常に気持ちの悪い社会、我々が考えていなかった異質の社会が二十一世紀にでき上がってくるのじゃないかという感じもするわけです。  そうすると、我が国では生殖細胞の売買を認めるのかどうか。アメリカでは精子銀行があるそうだけれども、そういうことは日本では認めるのかどうか。私はむしろ禁止してもらいたいという気持ちの方が強いのですけれども、やはり人間は自然の摂理で生まれるのがいいのだと思うのです。しかも、例えばアメリカと同じようなことになれば、生まれた子供が異常者だった場合、責任がだれにあるのかだとか、いろいろな問題が起こってくるわけです。今の法体系では考えられないようなことが。その点についてどう考えているのか。  それから、体外受精が今の医師の倫理規定のとおりにきちんと実用化されたとして――今、実験段階ですね。私も医療だとか保険だとか全くわからないで我が大学の大先輩に質問するのですけれども、実用化されるとかなりの費用はかかると思うのですよね。その場合、今現在の保険医療体系というのですか、その中でこれをどういうふうに組み込んでいくのか、それをお尋ねしたいと思います。

渡部恒三自由民主党・新自由国民連合厚生大臣

○渡部国務大臣 二見委員御質問の体外受精の問題、これは、おっしゃるとおり、不妊症に苦しんでいる夫婦にとっては確かに朗報かもしれませんが、しかし、それ以上に、これは人間の尊厳という面からはかり知れない社会的な影響あるいは哲学の問題を含んでおりますので、これは単に現在の医学的な面とかそういう面だけで解決できない面がありますので、今厚生省としては生命と倫理に関する懇談会というものをつくりまして、幅広い立場で検討してまいりたいと思います。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 ちょっと繰り返して申しわけないのだけれども、これは実用化された場合には医療体系の中ではどういうことになるのか。例えば保険の適用がきくとか、どういうことになるのか。  それから、これは厚生省なのかな。いわゆる生殖細胞の売買については、厚生省としてはノーということなのか、まあアメリカもやっていることだからしようがない、イエスというふうにいくのか、どうですか。

吉村仁厚生省保険局長

○吉村政府委員 体外受精に対する医療保険の適用の問題につきましてお答えを申し上げます。  今大臣から申し上げましたように、現時点におきましては、学問的にもいろいろな問題がございますし、また社会的あるいは倫理的にもいろいろ問題がございます。確かに体外受精につきましては費用がかなりかかるわけでございますが、体外受精というものが保険適用になじむかどうか、そういう問題から問題があるわけでございまして、私どもとしては軽々に医療保険の適用をすべきではないと現在は思っておりますが、いろいろな観点から検討をしてまいりたいと思っております。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 二見さんが提起されました問題は非常に重大な問題であると思いますので、この際、私の考えを申し上げてみたいと思います。  私は、個人といたしまして、あなたと同じように、今の体外受精等の問題につきましては自然摂理派に属すると思っております。したがいまして、人工的な操作によって人間の生命が生まれるとか変化を生ずるというような問題については、社会的に見て本当に必要やむを得ざると認定されて、それがしかも社会的に納得される条件下でなければあってはならない問題だと思います。いわんやそれが商売の道具、商売の商品みたいに扱われるということは、人類の尊厳を汚す結果になるということを恐れます。私はそういう基本的立場を持っておりまして、この問題に対して関係者、専門家がどういう態度をとられるか、見守ってまいりたいと思いますが、私の基本的立場はそういうことであるということを申し述べておきます。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 それでは、いわゆる日米摩擦について伺いたいと思います。えらく体外受精から日米摩擦で百八十度違いますけれども、時間もありませんのでかいつまんでお尋ねいたします。  まず最初に、牛肉とオレンジが現在日米摩擦の象徴的な品物で、象徴的な対象になってアメリカの攻撃を一身に受けているわけであります。外務大臣はこの問題で一月の末にアメリカに行かれましたけれども、日本の新聞では牛肉一万トンだとか二万トンだとかいろいろな数字が出たのですが、具体的にトン数の話は出たのかどうか、また、たとえ出なかったとしても、日米間の開きというのはかなりあったのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 私が一月に参りましたときいろいろと話をしましたが、交渉に行ったわけではありませんし、数字は私自身も承知して行っているわけではありませんで、数字の話は一切出ません。ただ、牛肉、かんきつについての日米間の開きは相当大きいということは認識して帰ってまいりました。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 牛肉について、政府は、国民に、対して牛肉を安定的に供給するため、極力国内生産を振興し、国産牛肉の安定的供給を図るとともに、国内生産で賄い得ない数量は豪州、米国等から計画的に輸入する、これが牛肉の基本方針できょうまで来ているわけです。ですから、例えば五十八年は、日豪の間で合意がなかったけれども、需給を見て、前年よりも六千トン余分に輸入しているわけですね、割り当てを。十四万一千トンでしょう。その前が十三万五千トン。六千トンふやしているわけですね、例えば合意がなかったとしても。ところが、伝えられるところによると、新聞報道では、今、外務大臣の方から向こうではトン数の話は出なかったというお話ですけれども、例えば一万トンだ二万トンだという要求をもし認めたとしますと、牛肉の需給というか、日本の牛肉に対する基本的な政策に大きな問題が残ってくるのじゃないか。一つは、これは畜産振興事業団が一括して買ってきますね。例えば一万五千トンだ二万トンだということになれば、需給を完全に超えるわけです。そうすると、それは畜産振興事業団が持たなければならない。余分なものを抱え込むということで、事業団にとってはこんな迷惑な話はありません。その財政負担に耐えかねてということでそれを全部放出するということになれば、今の安定価格帯を下げるか、あるいは今までの価格制度を取っ払っちゃって自由にするか、このどちらかきり私はないと思うのです。そうすると、今農林省が一生懸命進めている牛肉対策というか肉牛対策というか、これは根本的に見直しを迫られることになるし、そればかりではなくて、これは養豚だとかブロイラーだとか、そこら辺の生産農家にも深刻な影響が私はあると思います。ですから、二、三カ月の間に決着をするという政府のお考えのようでありますけれども、政治決着すると言っても決着の幅には限度がある。しかも農民団体は一トンたりとも枠をふやすなど目の色を変えて頑張っているわけであります。したがって、今、外務大臣は日米間の開きはあるとおっしゃいましたけれども、この開きはあると思うし、農林大臣もこの点についてはそこら辺のことを十分わきまえて、政治決着するとしても、額には、トン数には限度があるのだ、そんな法外なことはできないという決意を持っておられるのかどうか。私は、あくまでも需給のバランスが崩れないように、今まで進めてきた肉牛対策が台なしにならないように、その点だけはがっちりとやってもらいたいと思いますが、どうですか。

山村新治郎自由民主党・新自由国民連合農林水産大臣

○山村国務大臣 先生今おっしゃいましたように、これからの交渉でございますが、前大臣の金子先生がおっしゃっておられましたのは、要らないものまで輸入して冷蔵庫の中で腐らせるようなやり方はやるべきではないというようなことを言われておりましたが、私も同じ考えでございます。この農産物交渉に当たりましては、日本の農業、どういうように今日本の農業があるのかというのをよく説明してまいります。例えば、今日本で輸入する農産物の四〇%はアメリカから輸入しておるわけでございます。また、アメリカが輸出しておる農産物全部のうちの一五%、これを日本が買っておるわけです。牛肉にしましてもアメリカの全輸出の六割、オレンジにしましても四割、これらの数字もよく向こう側に説明をしながら、粘り強く、要るものは要る、先ほどの、前農林水産大臣の金子先生が言われたように、要らないものまで輸入して冷蔵庫の中で腐らせる、そういうようなことはやるべきではない、私も同じ考えでございます。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。  日米経済摩擦というのは、農産物が対象になっておりますけれども、やはりその根底にあるのは、年間二千億ドルにも達するアメリカの財政赤字とそのことによる高金利がまさに対日二百十六億ドルの赤字の大きな原因だと思いますし、日本ばかりでなくて、アメリカの貿易収支あるいは経常収支はまさに財政赤字と高金利以外の何物でもないというふうに思います。これが解決しない限り、例えば今回政治決着したとしても、根っこは残っているのですから、この問題は事あるごとに私は噴き出してくるのだろうと思うのです。それで、フェルドスタイン大統領経済諮問委員長は、増税と――アメリカですよ、我が国じゃありませんからね、増税と軍事費を含めた歳出の削減が必要だと強調しておりますし、私は、アメリカが本気になって例えば対日貿易赤字を何とかしたいと思うならば、増税と軍事費を含めた歳出削減に踏み切る以外にないんだと思うのです。そうすれば円ドル問題というのは若干緩和してくるのじゃないかと思います。そういう点で政府は今まで以上にこの点をアメリカに強い要求をしてしかるべきだと私は思いますけれども、その点はいかがでしよう。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 フェルドスタイン委員長の発言を引用しての御質問でございますが、基本的には私はそのとおりだというふうに思っております。したがって、今までそういう考え方に基づいてあらゆる機会をとらえ、特に一つはサミットであると思います。それから私どもがおおむね二カ月に一回日米両方の財務当局の会合をやっております。さらに、レーガン大統領が訪日されましたときに合意いたしました日米蔵相共同新聞発表、それに際しても、これはかなり正確でございますが、両国はインフレの抑制、金利の引き下げ等適切な財政金融政策を進めることが表明された、また、米側では今後できるだけ早急に米国の財政赤字を削減するよう努める旨明らかにした、こういうことでございます。今度二十三日からまた日米円ドル委員会等を開きますので、そういう機会を通じまして不断の、選挙で言えば連呼みたいに、そのことを強調していきたいと思っております。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 日米経済摩擦を伺いながら、小此木彦三郎大臣に、日米経済摩擦が今非常にクローズアップされておりますけれども、日本とECの間でも、日米ほどではないけれども、やはり緊迫した状況があるのじゃないかと思いますが、若干御報告をしていただきたいと思います。

小此木彦三郎自由民主党・新自由国民連合通商産業大臣

○小此木国務大臣 二月二日から始まりました日本とECとの通商代表会談がでざいまして、その一時期をかりまして私はパフェルカンプEC副委員長とお会いしたのです。そのときいろいろ話しました中に、日本とECとの関係は非常に好転している、しかし貿易の不均衡というものはだんだんだんだんと大きくなっている、これは非常に残念なことだ、そこで自分は日本に対してドラマチックな措置を願いたい。ドラマチックな措置はどういうことだと言ったら、製品輸入に一つの目標を掲げてその目標どおり製品輸入をしたらよろしいのだということでございました。そこで、私は、そのような数字を掲げて製品輸入を行うようなことはできない、製品輸入に対して最大限の努力はするけれども、その目標を掲げるということはできないということをはっきり言ったのでございます。と同時に、例えばフランスにおけるVTRですか、その輸入規制、あるいはECがDADの関税の引き上げをしている、こういうようなことはまことに遺憾であるというような日本側の意思を表明したわけでございますが、結局はそういうような貿易代表同士の話し合い、常に話し合いを持てることが日本とECとの関係をもっともっとよくすることでございますし、お互いに言いたいことを言い合う。言いたいことを言い合うというところに今後意味が出てくることではないかと思うのです。結局は日本とEC、要するに私とパフェルカンプさんとの間では、最終的にはとにかく自由貿易体制というものを維持推進していかなければいけないということで意見が一致したわけでございまして、今後も事あるごとにいろいろな意味での話し合いが必要であると私は考えております。

二見伸明公明党・国民会議

○二見委員 日米経済摩擦でやはり影響力の大きいのは金融資本市場の自由開放だと私は思います。  もう時間が四分きりありませんのでまとめて端的にお尋ねしますけれども、政府がCDの小口化などそれなりの努力をしていることは私は百も承知しておりますけれども、さらにはアメリカは金利、特に預金金利の自由化を我が国に要求してきているそうであります。大体アメリカは我が国に、金融資本市場の自由化については、おれのところでやっていることを日本もやれという、向こうに言わせれば相互主義で臨んできているわけですね。アメリカの言う相互主義をそのとおりやれば、世界じゅうアメリカと同じ金融制度になってしまう。金融制度というのはそれぞれ国に歴史がある。伝統もあり慣行もある。それをアメリカの言うとおりやれということになれば、世界が一つの制度に統一されてしまうことになってしまうということに極論すればなると私は思います。アメリカの相互主義の考え方を日本としてはどういうふうに考えているのか、まずそのことが一つ。  それから、預金金利の自由化、特に金利の自由化、なかんずく預金金利の自由化ということに対して、大蔵省は今後どう踏み込んでいくのか。金融制度調査会では絶えずこれの議論があって、いろいろ問題はあるけれどもやらなければならないのじゃないかというようなことが金融制度調査会の小委員会か何かの報告にありましたね。ただ、これをやる場合には問題が二つありますね。一つは郵便貯金。国民の貯金の三分の一は郵便局だ。その郵便局の利子をそのままほっといて預金金利だけを上げ下げするということができるかどうかという問題があるわけでしょう。去年の十月の末に公定歩合を下げた。本当は預金金利もそれに連動して下げなければならないところを、郵便貯金の方の金利が下がらなかったために、公定歩合は下げたけれどもことしの一月の四日まで預金金利が下がらなかったというようなことがある。この連動性の問題がある。銀行と郵便局を比べますと、郵便局の方は、どこにもありまして、隣近所にあって、サービスもいいし、非常になじみがある。銀行の方は、支店長がゴルフに行って、威張っていて、金を借りに行けば冷たい顔をするというので、銀行の方が大変評判が悪いわけであります。庶民にとっては郵便局の方がよっぽどありがたい。だから私は郵便局を悪者にする気は全くありませんし、いじめる気はありませんけれども、金利を自由化するという場合にはどうしても郵便貯金の金利というのが問題になってくる。この連動の問題。民間預金金利と郵便貯金とが連動する、片一方が下がれば片一方も自動的に下がる、上がれば上がる。上がる場合は簡単なんだよ。下がる場合が問題なんです。そうしたルール、システムが確立されるのかどうか。それから、金利を自由化した場合に、金融機関に経営上の格差がありますから、中には、非常に厳しい状態になってくる、経営が悪化して信用秩序を阻害するようなおそれもなきにしもあらずだと私は思います。そうした問題点を踏まえながら、金利の自由化というものを基本的にどうするのか、進めていくのか、進めていくとしても、そうした問題にどのように対処していくのか、この点をまず大蔵大臣にお尋ねしたいのと、もう一つは、野村証券とモルガン銀行が合弁による信託銀行を日本に出そうとしていますね。日本は銀行が信託業務をしないことになっている。大和銀行だけは唯一の例外でありますけれども。信託銀行が新たにできるということになると、現在信託銀行は七社ありますが、それの経営にもかかわることだし、日本の銀行のシステムというのか秩序というのか、それにも大きな変動が起こってくるのだと思いますけれども、その点についてもどうお考えになっているのか、お答えをいただいて、この質問を終わりたいと思います。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 まず、相互主義についての定義でもございませんがお尋ねが最初にございました。確かに、おっしゃいますように、相互主義ということは定義は必ずしも定かではございません。我々が今日まで、いわゆる内国民待遇、双方の国々の法律に基づいて支店なり外国法人が進出してきた場合それを平等に扱う、これならば今できておると思うのです。これ以上のことになりますと、今おっしゃるように、世界共通法でもつくらなきゃならぬようになるかもしらぬ。したがって、そこのところがいわゆる金利の自由化も含めて、金融市場の自由化の俗にソフトランディングで行うべきだというゆえんのものもあるわけでありますが、一つの例で申し上げますならば、アメリカにはいわゆる銀行が一万四千五百ございますし、日本は百五十七あります。そうしてまた、この歴史をさかのぼりますと、アメリカの方はどっちかといえば自己責任主義、日本の方は預金者保護、投資家保護、被保険者保護、そういう時代から今日に至っておると思っております。しかしながら、私どもやはり貿易の自由化というものが、およそ地球上に生存する人類が安価にして良質なものを自由に交易できるという状態からすれば、その後は、その媒体となる金融の問題、なかんずく世界経済の一割以上を占めるということになれば、自由化の方向というのはこれは必然的な一つの流れであります。したがって、これに対応していかなければなりませんが、それで、さらにそれを金利に限定してのお尋ねということになるならば、まず一つは郵貯問題というものがございます。幸い整合性を持って機動的に行おうという三大臣合意というものがございますので、その線に沿って私どもは絶えず努力をしていかなければならぬ問題だというふうに考えております。だから、完全自由化の場合の、御指摘のありましたCD等の問題は別として、小口預金の完全自由化の場合になりますと、根本的な議論はまたそこに当然起きてくる課題だと思っております。  それから、いわゆる弱肉強食とでも申しましょうか、民間金融機関にやはり大変差がございますから、その問題につきましてはいろいろ議論がございますけれども、確かに一部金融機関の経営悪化をもたらすような影響がないとは言えない。しかし一方、自由化による競争の促進によって金融機関経営の効率化とそして経営の自己責任原則を徹底させるという効果もございますので、したがって、この問題につきましては、まさに主体性を保ちながら、しかも積極的に取り組んでいかなければならぬ課題だ、まずは金融制度調査会の小委員会で一応の大局的な意見が出され、それを今度は個別的にフォローしていく問題ではないかと思っております。  それから信託の問題につきましては、これは御指摘のとおりでございます。我が国のいわゆる信託業務というものが、戦後、信託銀行だけに認めた、そういう専門機関制度ということになっておりますので、それの影響とか、そうして外国の資本に認めれば当然都市銀行もそれに積極的に希望してくるだろう。それらはまた銀行薬務の再編成につながらないとも限りませんので、これは総合的にこれから、個別問題は別として、金融制度全体の中で調整していく課題であるというふうに理解しております。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十一分開講

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。稲葉誠一君。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 予算委員会の今までの質問をずっと聞いておりまして、私の質問するところというか、聞きたいところはほとんど出ちゃったわけです。後になると損だなとしみじみ思うのだけれども、なもんですから、私自身が聞きたいということよりも、むしろ国民の皆さん方が聞きたがっておるところ、これはまだ相当残っているのじゃないかと私は思うものですから、そういうふうにお聞きをしたい、そういうふうに思うわけです。決して声を大きくしたりなんかして聞くわけじゃございませんから、上品に聞くわけですから、ひとつお答え願いたい、こう思うのです。  最初にお聞きをいたしたいのは、田川さんにお聞きをいたしたいのですが、それは、国民の皆さん方が一番聞きたいと思っていますのは、フランスやドイツやその他で連立内閣があったとかなんとかということはもうみんな知っているわけですから、そういうことじゃなくて、田川さんかどうして、新自由クラブというか、それがどうして自民党と連立するようになったのだろうか。そのあなたの真意をお聞かせ願いたいというのが、私は国民の皆さんの気持ちじゃないかと思うのですよ。そういうわけでしょう。だからあなたの言葉、何といいますか、あなた自身のお考えを相当長くお述べになっても私は結構だと思うのです。

田川誠一自由民主党・新自由国民連合自治大臣・国家公安委員会委員長

○田川国務大臣 私個人で行動したのではなくて、私どもも小なりといえども政党でございまして、役員の幹部の一致した決断でこういう事態になったのでございます。  連立のお話は自民党から当初ございまして、これは統一会派をつくったらどうか、こういうお話がございました。そして、あわせて連立の話ができたのはしばしば述べましたとおりでございます。野党の一部の方々から、せっかく与野党の伯仲ができた、そういうときに野党の一つである私どもがその野党勢力から離れて与党と連立を組んだのは裏切りであるとか、あるいはせっかくつくった伯仲、野党勢力の言い分を国会に反映することができなくなったのではないかという厳しい御批判がこの委員会でもございました。  しかし、私どもがこうした選択をとりましたのは、確かに数の上では伯仲になったけれども、それでは私どもが統一会派もつくらず、連立をしなかった場合に一体どうなるか、こういうことを考えますと、一つは、野党が一致して結束できるような状態にあれば、それはある程度野党のおっしゃることもうなずけるわけでございますが、これまでの私ども七年有余の野党生活を振り返ってみますと、野党が一致結束して事に当たるような場面はほとんどなかった。例えば稲葉さんの所属する社会党と民社党とはかなり違う、こういう傾向もあるし、共産党はまた別個の行動をとられるという場合も随分ございます。ですから、言葉が過ぎるかもしれませんけれども、野党というものがもうとうにばらばら、ばらばらと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、一つの勢力としてまとまっていくということは非常に困難である。そういう意味からしますと、野党勢力といったって、国会にまとまって意見を反映するようなことはなかなか難しいという判断が一つございました。  それからもう一つは、私どもも政党でございますから、政党である以上、我々の政策を実際に実現させる努力をしなければならない、こういうことを考えますと、自民党と合意して政策を実現させるのと、野党の内部にいて、野党の一員として国会で活動をやるのと、どっちが自分たちの政策を国政に反映することができるかということを考えてみますと、野党の勢力の中では私どもの占める立場というのは非常に小さい、微々たるものであって、発言力も非常に少ない、こういうことを考えれば、政権をとっておられる政党と重要な政策で合意ができるならば、政権の一翼を担う方がより私どもの政策を実現することができる、こういう判断のもとに立ちまして、私どもは連立に踏み切った次第でございます。  それからもう一つ、たびたびこの席でもどなたかがおっしゃられたように、連立はわかるけれども、統一会派というのをつくったのはおかしいじやないか。統一会派はどうのこうのとおっしゃる方がございましたけれども、これはほかの国でも統一会派をつくっている国はあるわけです。そういう例もございまして、例えば西ドイツなんかの例を見ますと、やはりキリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟と統一会派をつくって、そして連立政権をおつくりになっているところもあるわけですね。政党が存立している以上、それは明らかな連立政権である。ですから、そういう意味で私どもは連立政権と申し上げているわけでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 私というか国民がお聞きをしたいのは、連立をされてあなたが大臣として入られて、中曽根内閣の中であなた方は一体何をやろうとされておられるのか、それを国民の皆さんは一番聞きたいのじゃないかと私は思うのですね。  例えば、こういうふうにいろいろあなた方の政策合意がありましたよね。政党法の話が午前ありました。その「政党法制定の意義について」という文書、これはあなた方と自民党との間の合意事項の中に入っていますね、この政党法の問題について。それを見ますと、こういうふうに書いてあるのですよ。ちょっと長くなりますけれども、読んでみましょうか。   さらに、政党の運営に関しても私的団体とは同列に論じられない問題がある。議院内閣制のもとでは、与党の党首が行政府の長となるのが常態であり、与党の党内運営が国民に与える影響は極めて大きい。これにもかかわらず、実態の政党運営は闇に包まれており、国民には全く無縁の密室での決定によっている。   このような政党の病理現象を放置することは、議会制民主政治を根底から覆す大きな要因ともなる。この病理現象の解消は、政党の自己規律に求めるのが本来の姿である。しかし、ロッキード事件にみるまでもなく、政党、特に政権政党において利益誘導や恣意的な利権配分が行なわれ、それと引換えに政治献金を入手することが常体化し、それなしには政党の維持と運営が図れない現状さえ生まれている。もはや自己規律に解決を委ねられる状態にはない。 これがあなたの方の去年の十二月の文書ですね。  その後、政党法の大綱案がありますけれども、私は政党法のことを質問しているのではないのです。いいですか、違いますよ。今あなたのここに言われておる、新自由クラブが提起をされておりまする政権政党、つまりこれは自民党のことです。「利益誘導や恣意的な利権配分が行なわれ、それと引換えに政治献金を入手することが常体化し、それなしには政党の維持と運営が図れない現状さえ生まれている。」こういうふうにあなたの方では書いておられるわけです。まず、このことがあなたの方の認識として今も生きておられるのかどうか。仮に生きておられるとすれば、それを中曽根内閣の中において一体どうやって生かしていくのか、これは国民が一番知りたいところです。もしそれが生かされないときにはあなたはどういう態度をとられるかということを、これは第三の問題として国民が聞きたいところだ、こう思うわけです。  以上についてお答えを願いたいというふうに思います。

田川誠一自由民主党・新自由国民連合自治大臣・国家公安委員会委員長

○田川国務大臣 今稲葉さんがお読みになった文章は、私もよく目を通しておりませんけれども、機関紙の中に恐らく事務局の者が個人として書いたものだというふうに思います。そういうような文書を公式に出したものとは私、思いません。幹事長なりあるいは代表が発したものではありませんから、それはもう一度私、検討さしていただきます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 あなたの方の事務局が書いたものにしろ、あなたの方の機関紙に載ったものにしろ、あなたが知らないと言われるにしても、じゃ、ここに書いてあるこういうことが一体あるというように思っておられるのですか。政権政党自由民主党において「利益誘導や恣意的な利権配分が行なわれ、それと引換えに政治献金を入手することが常体化」しておる、こういうようなことが今の自民党に行われておるというふうにあなたはお考えなんですか、それともそうではないというふうにお考えなんですか。

田川誠一自由民主党・新自由国民連合自治大臣・国家公安委員会委員長

○田川国務大臣 今までの政治の中にそういう傾向が全然なかったかと言えば、それは多少なりともそういうような傾向はあったと私は思っております。それがすべてではありませんけれども、そういう傾向をやはり直していくことが、国民の政治に対する信頼を取り戻していく道である、そういうふうに思っております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 あなたは選挙の最中に、戦後政治の総決算ということについて中曽根さんが言われておることをいろいろ批判をされましたよね。選挙のときだから、言ったことはまあ適当にオーバーに言ったのでこれは責任持てないというふうに言われるならば、それはそれでいいのですよ。いいのですよと言うのもおかしいけれども、それならそれでしようがないけれども、どういうふうにあなたは中曽根さんがこの戦後の総決算を言っておられるかという意味を理解をされておられて、それに対してどういうふうなことを選挙民に対してお訴えになられたわけですか。

田川誠一自由民主党・新自由国民連合自治大臣・国家公安委員会委員長

○田川国務大臣 これまでもしばしば申し上げましたように、政党が存立している以上、我々の政党とよその政党との違いを鮮明にしていかなければ、国民の理解を得るわけに、有権者の理解を得るわけにいきませんから、それぞれの違い、例えば社会党と私どもの違い、自民党と私どもの違いがどういうところにあるかということを主張するのがやはりこれは遊説であり、政党としての宣伝でもある、PRでもあると思うのです。そういう意味から私は、中曽根自民党総裁のお考えと私どもの考えとの違いというものは幾つか申し上げたわけでございます。  きのうの委員会でもお答え申し上げましたように、単に批判をするだけではない、もちろん評価もいたしているわけですけれども、批判だけがひとり歩きしちゃいまして、評価する方が全然なくなっている。私は社会党の批判もいたしますけれども、社会党のいい点も評価して今日まで来ている。合法的な日本の政党ですから、いい点も随分ある。野党のお互いの批判、野党同士で批判もしますけれども、いい点がある。そういう評価する点が欠落して、新聞に批判する面だけ出た。そこをどうするかと言われても困るわけでございまして、たびたび申し上げたとおりでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 今まであなたがおっしゃったこと、たびたび申し上げたと言われていますから、たびたび言ったことはもうここで言わなくて結構ですよ。同じことを聞いたってしようがないですからね。  選挙の最中に、これは例えば川崎市のどこかの個人演説会であなたが言われたこと。新聞記者がずっとついてきているわけですね。それだと、「中曽根首相の戦後の総決算という考えには、憲法改正とか軍事力増強とか」こういう考え方がある、こういうふうにあなたは批判されているわけですね。自分の言う戦後政治の総決算というのは「利益誘導の田中型の政治なんです」ということを言われておる。言われたことは間違いないようですな。そうすると、言われたとするならば、その真意はどこにあるわけですか。

田川誠一自由民主党・新自由国民連合自治大臣・国家公安委員会委員長

○田川国務大臣 先ほども申し上げましたように、戦後の総決算の意味というものは、私どもは中曽根さんがそれまでおっしゃっていたこととは違うということをわかりやすく申し上げたわけでございます。今おっしゃった田中型の政治云々というようなものは、今度の選挙でも自民党の方々が反省をせられ、あるいは中曽根さんが自民党の総裁として声明を出された、こういうようなことを、そういう反省されたような意味のことを私が演説会で言ったものと思います。  それから、新聞に書かれたことを稲葉さんがおっしゃいますけれども、新聞に書かれたことは一時間話したことの中のほんのちょっとのことでございますし、ほかの続いていることを書いてないわけですよね。ですから、そういう意味で、私は今そこに新聞の例を出されても、それを説明しろと言えばまたほかのことをお話ししなければならない、こういうことになります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 だから、国民の皆さんから、今あなたの答弁を聞いておられる方というかそういう人から見ると、結局あなたが中曽根内閣に入って一体何を主眼としてやろうとされておるかということはどうもよくわかりませんね。私にはよくわからぬ。あなたに課せられた使命というのは、今そこにある田中型の利益誘導型の政治というものを、あなた自身が中曽根内閣の中にあってなくすのだというところにあなたの使命があるのじゃないのですか。そういうふうに国民は考えておるのじゃないかと私は思うのですよ。だから、それをあなたがやられて、それが実現できなかったときには、あなたとしては潔く出処進退を決めるということになるのが筋ではないでしょうかね。私はそういうように思うのですが、最後にもう一遍お答え願いたい。

田川誠一自由民主党・新自由国民連合自治大臣・国家公安委員会委員長

○田川国務大臣 私が閣内に入ったということばかりでなく、自民党と国会の会派を同一にする、あるいは連立内閣をするということは、自民党の皆さんも、総裁以下、選挙の結果を踏まえて、新しく出直していこうというお考えをお持ちで私どもと連立の話をされたわけです。そういうことがあるからこそ私どもはそれに応じたので、選挙が終わって、ただ負けた、自民党が負けた、それだけで私どもは連立政権に応ずるわけがないわけでです。そういうことを考えますと、私どもが一緒に政権の一翼を担うということは、やはり出直して新しい政治を打ち立てていこう、改革していこう、こういう気持ちがあらわれてきたからでございまして、そういう意味からすれば、今稲葉さんがおっしゃったように、私どもと自民党が連立を組んだことによって従来の政治を改めて、そして政治倫理の確立に向かっていこう、こういうところに意義があるというふうに思っております。ですから、今あなたがおっしゃったように、それができないということになれば私どもは腹を切らなければならぬ、こういうことでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 中曽根さん、お聞きをいたしたいのは、これまた国民の皆さんがよくわからないことは、あなたの総裁声明がございますね。総裁声明というのは自民党総裁としての声明でありますけれども、この中で「いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する。」ということが第三項にあるわけですね。これは私もよくわからないし、国民の皆さんもわからないのですけれども、一体何を言っているのか、何をあなたがしようとしておられるのか、どうもよくわからない。わかっているといえばわかっているのかもわからないけれども、僕にはわからない。国民の皆さんも十分わからないのじゃないでしょうか。何か今までのあなたのお話を聞いていますというと、田中氏の政治的影響なんて今まで一切なかったんだ、これは全く国民がみんな誤解しているんだというような意味にも私にはちょっととれたのですね、私が十分聞かなかったからかもわかりませんけれども。ですからお開きしたいのは、「いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する。」という意味はどういう意味なんだ、どういう心境でこういうものをつくられたのか、そして今後どういうふうにしていかれるのか、この点についてお答えを願いたいと思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 私は、昨年来御答弁申し上げましたときに、自由民主党は公党でありまして、政策でも党運営でも人事でも、みんな機関、機関が決定して、そして順序を経て私のところに来て、私が最高的判断をいたして運営をしております機関中心主義であります、個人が外から影響を及ぼすというようなことはあり得ないし、また、ありません、そういうことを申し上げてきたわけであります。  しかし、選挙であれだけ我々の方は負けましたものですから、しかもそれが政治倫理、田中判決というようなものを中心に選挙が行われたというところもよく反省をいたしまして、そして党の幹部に対しまして、将来にわたってそういう外部の人から政策やら党運営やらあるいは人事等について口出しされているような印象をいやしくも国民に与えないようによく注意してやる、そういうことをはっきり申し上げて、国民の疑惑を払拭しよう、そういう考えで申し上げたわけであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 防衛の問題とかその他についてはあなたは非常な指導力を発揮されるわけなんですけれども、こういう問題についてはどうも何かはっきり指導しないと言うと語弊がありますが、機関中心、機関中心というところに逃げてしまわれるわけですね。すると、「田中氏の政治的影響を一切排除する。」ということはあれですか、率直な話が、こんなことは著かなくてもよかったようなことなんですか、どうなんですか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 選挙でともかく政治倫理問題等でこれだけ批判を受けたから、世の中の人はそういう疑惑を持っておるであろう、そういう疑惑を払拭する必要がある、そういう意味で私からそういうふうに申し上げたわけであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そうすると、この前から聞いておるとそうなんですね、世の中の人が疑惑を持った。では疑惑を持ったことはあれですか、何か間違いだったという意味なんでしょうか。だからそれをこういうふうに書いただけだ、こういう意味のことなんですか。本来疑惑を持たれる筋合いのものではないんだ、こういう理解の仕方でよろしいんでしょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 党の運営等について一番知っているのは、私や党の皆さんでございます。特に私であるだろうと思います。そういう意味において、しかしともかく選挙でああいうふうな結果になったということは、国民の皆様方にそういうふうに考える節があったからそういうふうな結果になったのだろう。私の側からすれば、今までのそういう政策や人事の問題について、とやかくあれこれ外から注文がましいことを言われたことは一回もないのです。しかし、選挙の結果等を見れば、国民の皆さんにはそういう疑惑があったから負けたのだろう、そういう意味において、その点は自分はこういう考えでしっかりやっていきますと、そういうことを鮮明にしたわけであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そうするとあれですか、質問を変えますと、今後はあなたは田中氏とは政治家としてのおつき合いは一切しない、こういうこととして承ってよろしいでしょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 私は昭和二十二年に第一回国会へ出てきましたが、そのときの選挙で一緒に出てきたのが田中さんであり、あるいは石田博英さんであり、あるいは櫻内義雄さんであり、あるいは鈴木善幸さんでありまして、その同期生というものは相むつみ、相親しみ、助け合っていくのが、これは東洋の美徳だろうと思うのです。だから、公の場と私の場はもちろん区別をいたしますが、個人的に同期生としての友情というものはやはり持っていく、そういうことは個人的な道として間違いだとは思いません。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 お答え願えればお答え願いたいことなんですけれども、あなたから見た田中角榮さんというのはどんな方なんでしょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 その点はもう何回か申し上げましたから十分お知りと思いますが、私は昭和二十二年に一緒に出てきてから三十八年間政治を一緒にやってまいりましたが、非常に直感力の鋭い、そして人情に厚い、そして何といいますか、世の中の非常な苦しみに耐えてあそこの地位まで上がった人でありますから、酸いも甘いもかみ分けた、しかも決断力のすぐれたものを持っておられる、そういう点もあると思っております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そうすると、今あなたが申されたような点については田中さんを尊敬しておられる、こういうことでございますか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 もちろん、人間ですから欠陥もあります。何といいますか、非常に気短な点があったり、まあいろいろ私にも欠陥があるように、人間には欠陥がみんなあります。しかし、こういう席で人のことは、いいことは言っても悪いことは余り言わないのが道徳だろう、私はそう思います。そういうような点からいたしまして、自分よりすぐれている点があるところは立派だと思うし、自分より足りない点があると思う点には、自分はますます精進しなければならぬと思っております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 この前、あなたのある人の質問に対するお答えを聞いておりまして、連立の問題でお答えがございましたね。そのときに、新自由クラブ以外の会派の人とも何か連立があることもあるようなお話がありましたよね、ちょっと速記録ができていませんから正確ではございませんけれども。そこら辺のところのあなたのお考えというか、真意というものをお聞かせ願いたいというふうに思うわけです。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 ここでいろいろお答えいたしましたり、あるいは本会議でいろいろお答えいたしました中のことは、政策問題について話がある、また、意見が一致する、そういう場合には両方で、ある場合には協議機関を設けて相談し合いましょう、そういう趣旨の話があり、私も賛成ですと、そういうふうに申し上げた。政策問題について、そしてお互いがこれは大事なことであるから協力しようという問題があれば、そういう協議機関等を設けて、お互いに考えが合うか合わないか、どこを一致させるか、それが国のためにどういうふうに役に立つか、そういう問題について話し合っていこうということであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そうすると、基本的な問題は、防衛の問題あるいは行革の問題、教育の問題もありますかな、そういうような点だ、こう思いますが、そういう点で、新自由クラブを別にして、あなたの方とより近い関係にあるというか親しいというか、そういうようなのはどこになるというふうにお考えになったわけですか。頭の中にはどこを置いてお答えになられたわけでしょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 社会党もありますし、公明党もありますし、民社党もあります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 私の方は、あなたの方とそういうことをするということを決めているわけではございません。私の方で質問をしたのではないわけですね。  当たり前のことですけれども、聞くだけやぼですけれども、質問者の意向を頭に受けて、そういう新自由クラブ以外とも連立することはあり得る、こういうふうにあなたとしてはお答えになられた、こういうわけでしょうね。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 連立という言葉は、私は言っていないのです。個別政策の協議機関をつくろう、そして例えばその政策を推進するという場合に協調するものは協調する、あるいはある法律を出そうという場合に協調し得るものは協調する等々の、そういう個別政策に関する協議を行おう、そういうことであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 「政治倫理を高揚し党体質の抜本的刷新に取り組み、清潔な党風を確立する。」これは、「党体質の抜本的刷新」とかなんとかということは、党内問題であるということにあるいはなるかもわかりませんけれども、「政治倫理を高揚」するということがあなたの総裁声明に入っている以上、この具体策というものは当然なければならないわけですね。  じゃ、田中問題というものは、「金権政治であり、利益誘導型の政治である」というふうに今の新自由クラブの機関誌の中にも書いてあるのですけれども、そういうふうなこと全体を含めて、どうやって、どんなような政治倫理を高揚して、そして、ただあなたも何とか協議会へ任せっ放しということではないんでしょう。あなた自身がどういうリーダーシップを握って、どういう点をどうしょうというふうに考えておられ、実行しようとされておられるのかということをここではっきりお答え願わないと、国民は、あなたはそういう場合になってくると単に言葉だけだという印象を受けているという感じが私はしてならないので、しっかりとした具体的なお答えを願いたい、こう思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 施政方針演説でも申し上げましたが、政治倫理の問題は、第一義的には政治家の良心と責任感の問題である。これは政治家個人の内面の問題であります。それと同時に、政党等政治団体が共同して改革すべき問題、あるいは政治団体内部においてみずから改革すべき問題、そういう問題に関係してくると思うのです。しかし、政治家個人個人の良心と責任の問題というのが非常に大きな分野を占めていると私は思っております。そういう意味において、自粛自戒をし合っていくということが一つあると思うのです。  それから、政党内部あるいは政党同士の間で全体として政界を浄化し、政治を澄明にしていこうという共同作業の問題があります。これらにつきましては、今党におきまして倫理調査会をつくりまして、具体的な検討をお願いもし、幾つかのその対象については私からもお願い申し上げておる次第なのであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 だから、そういう話は党の方に任じておく、任じておくと言うだけなんですね、あなたのお話は。それは政治家個人の問題でもあり、政党の問題でもあると思いますけれども、ほかの防衛問題あるいは今度の教育問題にしても、非常なリーダーシップを発揮されているあなたが、事政治倫理の問題になると任せっ放しということのような印象を与えるわけですよね。  それで一体いいんでしょうかね。選挙民はそれで納得をするのでしょうか。具体的にあなた方としては、今言った金権政治というか利益誘導型というか、そういう体質があるというのか、ないというのか、そういう点をどうお考えになっているのか。あるとすれば、一体どうやってそれをなくしていくのか、その点についてはっきりとしたあなた自身の考え方が当然出てこなければならないんじゃないでしょうか。どうなんでしょう。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 内閣がやることは、内閣総理大臣としての責任においていろいろやれることがあるわけです。しかし、政党の問題あるいは政治家としての問題という中におきましては、総理大臣でない、内閣でない、別の分野の問題でありまして、この問題は、国会の意向とかそういうようなものを無視して、総理大臣としてそう軽々に青明できる問題ではないわけであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 それがおかしいというか、私にはおかしいと思うのですね。それはなるほど国会の問題ですよ。国会の問題ではあるけれども、総理大臣であり総裁であるあなた自身が、しっかりとした具体的内容を持った決意というものを表明できるのが筋だというふうに私は思うのですが、これは議論してみても、あなたの方ではそれ以上答えられないわけですから、まあいたし方ないというか何といいますか、どうも政治倫理の確立ということについては十分な熱意というふうなものはないというふうに考えざるを得ない、こういうふうに私自身は判断をいたします。  そこで、いろいろな個別的な問題があるわけですけれども、もうさっきは政党法の問題が出ましたよね。それから政治資金の問題等いろいろございましたね。そこで私、今の自由民主党が資本主義政党である、これは当たり前な話です。資本主義というのは、どうしたって大企業中心にならざるを得ない。大企業から金をもらわなければ、言葉は悪いかもわかりませんけれども、政党の運営はできないということになれば、自由民主党が大企業寄りの政策を展開せざるを得ない、こういうのはもう筋だというふうに私は思うのです。別に不思議はないと思うのですよ。いいか悪いかは別ですよ。  そうなってきたときに、我々は政治資金規正法の中で、企業から一億円以上のものをもらっちゃいけないということを、この前、三木内閣のときに決めた。このことを、またどんどんふやしていこうという動きがあなたの方にあるわけですね。このことに対して、自治大臣は一体どういうふうにお考えなんですか。この前、何か、いかがかと思うというような答弁があったけれども、しっかりとした答えをしていただきたいと思うのです。新自由クラブというものに対して、あなたが勇気を持ってしっかりしたことを言うことを国民は期待しているわけですよ。それを言えなくなったらもうおしまいですよ。そう思いませんか。

田川誠一自由民主党・新自由国民連合自治大臣・国家公安委員会委員長

○田川国務大臣 政治資金の企業献金に対する枠の拡大の問題ですけれども、私どもは企業献金が即悪である、いけないというふうには毛頭思っておりません。五人や十人の中小企業が浄財を政党にあるいは政治家に献金する、これも企業献金でございますから、私どもは企業献金がすべていけない、こういうふうには見ていないのでございます。ただ、今政治資金規正法に言われております企業の献金の限度枠というものは、これは正確な積み重ねで計算してできたものではありませんけれども、こういう企業献金の枠というものはそれ相応に維持していくべきものである、今これを枠を拡大していくということは、国民感情から見ても今の環境から見ましても好ましいものではない、いかがなものか、こういうのが私どもの考え方でございます。  しかし、政治資金規正法というものは、各政党のいろいろな利害にかかわる重要な問題でありますし、そして各政党の基盤がみんな違うのです。社会党のよって立つ基盤と自民党のよって立つ基盤とは違うわけですから、各党の利害関係がいろいろふくそうしております。そういう意味で、政治資金規正法を見直すとか改正するとかというような問題は、ただ単に自治省が決めるべき問題でなくて、やはり各党が十分話し合ってお決めになることが一番よろしいのではないか。  今稲葉さんは私の考え方をお聞きになりましたから、私は私の考え方を申し上げたわけでございます。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 今の「しかし」以下というのは要らないのですよ。「しかし」以下は要らないというふうに私は理解するのでね。それがあるのでは、何のために新自由クラブが閣内に入ったのか、国民から見てわけがわからないですよね、と私は思います。だから、「しかし」以下は不必要な答弁だったというふうに私は思う。不必要というか、あなたが言いたいことを言われたんだからそれはもうあなたの御自由ですけれども、私としてはそれは要らないというふうに思うわけです。  そこで、いろいろお聞きをいたしたいのですけれども、まず外交の問題から入っていきたいというふうに思います。外交の問題を聞いて、それから河本さんの方にお聞きしたいと思うわけです。  安倍さん、去年も言われたのですけれども、韓国の大統領の訪日というのは、これは具体的にはどういうふうになっておるわけですか、どういうことが問題になっておるわけですか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 全斗煥大統領については、招請を総理からいたしておりますので、日本としては大統領の訪日は歓迎する、こういう態度でありますけれども、韓国との間でまだその件については何も協議はいたしておりません。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 それからもう一つお聞きをいたしたいのは、非核三原則に関連をいたしまして、武器の三原則のときに、去年の一月十四日の閣議了解事項として、日米安保体制の重要性にかんがみ、対米武器技術供与は武器輸出三原則の例外とし、その実施は日米云々というようなことになって、例外という形といいますか、それが認められましたよね。それで包括協定ができましたね。  では、非核三原則については、その寄港なりあるいは導入といいますか、そういうようなものを含めて、一切こういうふうなアメリカの関係で例外は認めないということを、ここでしっかり断言できますか。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 政府としては、非核三原則はいわゆる国是ということで、非核三原則は今後とも厳守していく、こういうことであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そこで、まだほかにいろいろ聞きたいこともあるのですけれども、時間の関係もありますから、河本さん、実は私も「エコノミスト」の論文を、論文といいますか、これはあなたの言われたことを書いたようなものですから、あなたが直接書かれたものではございませんのであれかとも思いますけれども、これとも関連するわけですが、きのうも質問が出てしまったわけですが、あなた自身としては経済の運営等についてどういうような意見を――何かどこかへ意見を具申されたというお話がございましたね。それは、どこでどういう意見を具申されたのかということをお聞かせ願いたいというふうに思うわけです。

河本敏夫自由民主党・新自由国民連合経済企画庁長官

○河本国務大臣 今経済政策で一番大事な課題は、日本の持っておる経済の潜在成長力、これをできるだけその力を引き出していくということ、ここにあると思います。  そこで、その方法として二つが考えられるわけでありますが、一つは税制の改革であります。現在の税制を抜本的に改革する、こういう問題があろうかと思います。経済政策と表裏一体の関係になっておるものですから、私も非常に関心を持っております。そこで、先月の政府・与党連絡会議というものがございますが、そこで大蔵大臣と自由民主党の政策担当者に若干の税制改革について私の意見を提案いたしまして、検討をしていただくようにお願いをいたしました。  それから第二の方法といたしましては、こういう激動期でありますから、財政政策と経済政策を機動的に運営をしていくということが非常に大事だと思います。この点につきましては、予算編成の最終段階で政府と自由民主党との間で合意をいたしまして、今後その方針でやっていきましょう、こういうことを決めたのでございます。財政の機動的運営といいますと、時には財政を拡大する、時には財政を縮小する、こういうこともあろうかと思いますが、拡大するという場合は補正予算というようなことも考えられますが、縮小するという場合には、たとえば昭和五十四年には景気の状態が大変よくなりました。そこで公共事業を後倒しをする、翌年に繰り越す、こういうこともやっております。したがって、時の情勢に応じて財政を機動的に経済の実情に合ったように運営をしていくということでございますから、そういうことを含めまして財政と金融政策の機動的な運営ということを決めております。  以上の二点を中心にしてこれからの経済政策を十分考えていく必要があろうか、このように思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 今の河本さんの言われたことは、別に特にそういう意見を具申しなくてもいいようなことじゃないですか。それは当たり前のことじゃないでしょうか。特にあなたがそれを具申しなければならないほどのことはないと思うのですね。私が今お聞きしている範囲では、当たり前のことじゃないですか、財政とか金融を機動的に運営するというのは。だから、なぜあなたが特にそういうことを言われたのですかということを、私ども国民は聞きたいところです。そうでしょう。これは当たり前のことです。そうじゃないでしょうか。

河本敏夫自由民主党・新自由国民連合経済企画庁長官

○河本国務大臣 財政を機動的に運営する、金融政策を機動的に運営するということを具申したわけじゃありません。その点は、さっきも申し上げましたように、予算編成の最終段階で政府と与党との間でそういう方針でやりましょうということを正式に決定した、こういうことでございます。私が意見を具申したということは、税制に関することでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 その税制について、あなたがこういうことを本会議でも言われていますね。昭和四十九年かな、あのときに一兆八千億ですか何か減税をやった、それが今の経済規模に直すと四兆円ぐらいになるということを、本会議でもあなたは答弁されておられましたね。そうすると、それはどういう意味で今四兆円になるというようなことをあなたは言われたのでしょうか。私はあれを本会議で聞いておりまして、何でこういうことを言われたのか。これは質問があったから言われたに違いないけれども、なぜわざわざそれを引き直して四兆円ということに減税がなるというようなことを言って、それは参考になると思うというようなことを言われたのでしょうか。

河本敏夫自由民主党・新自由国民連合経済企画庁長官

○河本国務大臣 私が大蔵大臣と自民党の責任者に提案をいたしました内容は、一つは税体系の根本的な見直しということであります。直間比率の是正を含む税体系の根本的な見直し、そうしてそれに関連をいたしまして所得税の大幅減税、それから時期を見て間接税の増徴、しかし、それにはやはり国民の理解を得られるような方法を考える必要がある、大体こういう内容でございます。  いまの御質問は、先般の本会議で四兆円云々ということが出たがどうかという御質問でございますが、実は私はそのときは、提案に際しましては四兆円ということは言っておりません。大幅な所得税の減税、そういう提案をしております。四兆円ということを言いましたのは、質問の中に、四兆円という所得減税を言っておるではないか、こういうお話がございましたから、それはそうではございませんで、四十九年の一兆八千億の所得減税というものは今の経済規模に引き直すとおよそ四兆円になります、それは一つの参考になりますよ、こういう解説をした、こういうことでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 それはあなたのおっしゃるとおりなんですね。実は私も、そのときの議事録を早くできないかと思って、その議事録に基づいて質問をしないといけませんから、できないかと思って探したのですが、まだできていないのですよ。所信表明がやっとこさきょうかきのうかボックスに入った程度で、あの答弁のあれがまだできていないものですから、新聞の記事でお聞きをしておるわけで、これは私の方も失礼をしているというふうに思います。  そこで、今河本さんの言われましたので、いろいろ問題が出てきましたね。大幅な減税の問題、直間比率の是正の問題なり、ということは結局間接税を増徴する、こういうことになるわけでしょう。そういう御意見と承ってよろしいですか。  そうすると、今の河本さんの御意見に対して、大蔵大臣はどういうふうにお考えになられるのでしょうか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 去る政府・与党連絡会議の席上で、その前あらかじめ私にも予告がございましたが、河本大臣から考え方をお述べになりました。それは今申された大筋そのとおりだと私も記憶をいたしております。したがって、私どもが今考えておりますことの一つといたしましては、税というものは絶えず見直していかなければならぬ。ところが、今日まで党税調というようなことになりますと、その年度の予算ができますもとになる税大綱ができますと、一応開店休業に間々なりがちでございます。したがって、たまたま今度は利子配当課税等について八月をめどとして政府税調でも勉強してもらっておる、さようしからば党税調においてもそういう勉強が当然なされるであろう。そういう中で私は、絶えず見直していくべき税問題というのは御検討がいただけるであろうという一つの期待を持っておるわけであります。  基本的には、税の問題に対しては、絶えず見直すべき性格のものであるだけに、そういう場所が適当ではないだろうかな、党におかれては。政府税調は、たまたま今利子配当課税を引き続きやっていただくことになっているものですから、税調というところは、きょうこういう御議論をいただいたことを、あすの日ではございませんが、しばらくしてお伝えする、なかんずく政府・与党連絡会議においてそういう意見があった問題については、当然のこととしてこれをお伝えするわけでございますから、そういうような中でこれからも議論が詰められていくことになる、こういうふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 河本さんからは大幅に減税をしてほしいという意見の具申があったのではないですか。ちょっと今お聞きしますと、そういうふうにとれるのですけれどもね。具体的にはどんな話なんでしょうか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 まず、私との話の中で、昨年本院でたびたび議論いたしましたいわゆる景気浮揚に役立つ大幅規模の減税、しかし、現実この問題は五十八年中から実行しようということから、おのずからその規模が限られてきた。したがって、財政が景気に対しては中立的な役割しか果たしていないという前提がお互いあると思うのであります。したがって、いわば所得減税をも含めて税のあり方についてこれからも検討すべきであるという意見具申であって、これは稲葉さんとかつても議論したことがありますが、大幅か大型かということになりますと、これは主観的に必ずしも定説をつくるわけにはまいりません。が、およそ幾らの所得減税をすれば、それがどういう景気に対する相乗効果があるとかいうようなことの基準はいろいろ勉強しておりますが、いわば大幅とか大型とかいうようなことを一つの定説に基づいて議論をしておるということではございません。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そうすると、今の税制の中であなた方が、大蔵大臣が問題としておる、あるいは問題として解決をしなければいけない、こういうふうに考えておられるのは、何と何と何でしょうか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 これは、昨年いただきました中期答申、この中でそれぞれ検討すべき課題であるということで指摘されておるものは、総じて皆その中に入るであろうというふうに思われます。そういたしますと、私も全部ここですらすらと述べる自信はございませんが、幾らか例示をいたすといたしますならば、「今後、これまでの審議の経緯に配慮しながら、社会経済情勢の変化を踏まえ、間接税体系の合理化を図るため、物品、サービス等に係る課税ベースの拡大等について検討を続けることとすべきである。」とかいうような問題が一つ指摘されるのかなという感じもいたしております。それからまた、貸倒引当金等でございましょうか、「制度自体を政策税制と考えることは適当ではないが、その繰入率等については実態に即して常に見直しを打っていく必要がある。」とか、あるいは、いろいろあるが、利子配当課税等今後なお時間をかけて検討を進めることが適当であるとか、そのようなものが一応例示できることではないかというふうに思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そこで、間接税の問題、直間比率の問題が出てまいりましたね。なぜ直間比率を今の段階で問題に、しなれけばいけないのですか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 これは、一番最初の御指摘は税制調査会の御指摘にもございます。それから臨調の御指摘にも最初はございます。が、その直間比率ということがいわば結果として出てくるものであるから、やはり税体系の見直しと言った方が適当ではないか、こういう議論になって、その後、税調の方の答申等からいいますとそういう言葉が使われておりますが、内容は常識的におっしゃった直間比率という言葉で別に間違ってないと私も思っております。  それで、そういう指摘から見ますと、諸外国との均衡等から見れば、確かに書かれておりますとおり、私はこれは幅広く検討すべきであるというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そこで、問題となってくるのは、課税ベースの広い間接税、こういうことですな。そこで、今あなた方が言われておる間接税の問題で、これの中で、この政府税調のあれにもありますけれども、その間接税、今物品税ですね、物品税というのはこれは個々のものですね。これは課税ベースの広いというふうに言えるのですか。そこはどうなんですか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 一般論として申しますと、日本の現行の物品税ということになりますと、個別の物品に対して、その物品が奢侈品であるとかあるいはぜいたく品であるとか、あるいは協議に基づくものだとかいうような形で、個別にかけられておるものは、課税ベースの広い間接税の類型の外にあるんではないかと思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 だから、あなた方が間接税について言うときは、個別の物品税を引き上げるということではなくて、課税ベースの広い間接税というものを政府税調も考えておられる、それから大蔵省もそれを考えておられる、こういうふうに承ってよろしいのではないですか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 「課税ベースの広い間接税につき、当調査会は、前回中期答申において、「避けて通ることのできない検討課題であり、引き続いて論議を重ねることが適当である」としたところである。」したがって、今後その「拡大等について検討を続けることとすべきである。」こういうふうに中期答申ではなされておるわけであります。だから、その中期答申の趣旨に沿ってやはり検討は続けていかなければならぬ課題だと思っております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 これは総理、きのうですか、質問の中で、渡辺幹事長代理がいろいろ記者会見をされたということで、六十年度に大型間接税導入検討を公式表明したというふうに一部にとられておるということについて、あなたは何か、これは渡辺氏の個人的見解であるというようなことを言われましたよね。しかし、今幹事長が風邪引いたか何かの病気で、そのかわりとして公式に記者会見をして言っているのですから、これは党として言っておる。導入すると言っているんじゃないですよ。導入するとかそれを入れるということを言っているわけじゃありませんけれども、それを検討するということを言ったということは、これは公式見解ではないんですか。どうなんでしょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 あれは渡辺君の個人的見解の表明だろうと思います。党として総務会や政調会で審議を経て、それを受けて表明した党の正式の見解ではありません。日常やっておる記者会見におきまして彼の個人的意見を表明した、そういうことはしばしばあると思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 だから、意見の表明の仕方は、それじゃ総裁は、何か物を言うのに全部下の方から積み上げていってからでないと物を言えないということになれば、何も言えないことになってしまうのですよ。全部そういうことになる。それはおかしいので、幹事長が今風邪引いて休んでいるんでしょう。そうじゃないのですか、内部のことに立ち入っては悪いけれども。だからかわりに会見したのじゃないのですか。公式の記者会見ならば、見解としては公式見解ですよ。だから、入れると言うのは、それは行き過ぎかもわからぬけれども、そういうようなことについて検討すると言うことは、これは一つの公式な見解として見るのが当たり前ではないですか。そんな、彼の個人的見解だなんということはおかしいのです。  幹事長も一つの機関じゃないのですか。重要な執行機関でしょう。重要な執行機関であって、幹事長が風邪引いていれば代理がかわるのは当然です。公式な機関ですから、それが表明したことはあれだというふうに考えられていいわけであって、いいですか、それはあなたの国会での答弁にも合うのですよ。なぜ合うかといいますと、あなたは国会で、これは今申し上げましたようにまだ議事録ができてないのですよ、だから議事録をもとにして質問できないのは私も非常に残念なんですけれども、あなたの答弁を私も聞いておりましたけれども、大型間接税については、課税ベースの広い間接税を今は考えていない、こういうことですね。だから、まず問題になるのは、大型間接税の大型という意味がどういう意味かということは、これは議論があるかもわからぬけれども、これは竹下さんと私と随分やるんだけれども、結局要領を得ないわけですよ。竹下さん、のらりくらりしているから、でもないけれども、よくわからぬ。  そこで、今は考えてないということを言っている。それじゃ、渡辺幹事長代理の記者会見というのはどういうことを言っているかというと、国会終了後直ちに。党機関で検討するというのだから、これならば、執行部ですから、執行部が言っていることなんだから――どうでもいいですけれどもね、公式見解であろうとなかろうと、本音を吐いたということになると思うのですよ。渡辺君というのは正直な人ですからね。(「一般的に」と呼ぶ者あり)いやいや、一般的にも何も、そういうふうに言っているんだから。     〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕  記者会見やったのは、幹事長としての記者会見でしょう。いいですか。税の構造を抜本的に見直すべきだ、その際直間比率の是正も当然検討する、それから福祉目的税の性格を帯びた大型間接税導入も議論すべきだ。これは議論のあるところですよ。議論のあるところだけれども、それを入れると言っているんじゃない、導入すべきだということを言って、歳出カットによる財政再建、予算編成はもう限界だ、これは大蔵大臣もそう考えているんでしょう。歳出カットによる財政再建、予算編成はもう限界だ、こういうふうに考えているんじゃないですか。  だからこそ、あなた方の配った試算書ありますね、あれは歳出をゼロ%、三%、五%にしているのであって、歳出をカットした案、出してないでしょう、ここに配ったものは。それはそのことを意味していることとマッチするんじゃないですか。五%上がるのと三%上がるのとゼロ%で、マイナスにするのはあなた方は出してないわけですから国会へも。(「ゼロにするのは」と呼ぶ者あり)ゼロにするというのは前と同じだということだ。  そこで問題は、だから私の言っているのは、歳出カットによる財政再建、予算編成はもう限界だ、このことはあなた方も認めているんじゃないのですか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 渡辺君が幹事長代理として正式に言う場合には、やはり役員会の了承をとって、そして言うのが自民党のしきたりなんです。役員会の了承をとらないで言うという場合には、幹事長として正式な発言ではないのです。それは自民党のしきたりであります。ですから、これは党の公式見解ではありません。それはきのうも私は総裁として否定しているところで、自民党というのはこういうふうに運営されているのですと申し上げたとおりです。  それから第二に、私の発言について誤解がありましたから、きのう正式に否定しておきました。それは私の言葉足らずでそういうふうに誤解を受けましたが、大型間接税導入は考えておりませんと、きのうはっきり申し上げたとおりであります。なるほど税制全般の勉強ということはいつも必要であり、政府税調というものも存在して、政府税調は政府税調として独立の機関としていろいろお考えではございましょうが、私が自民党として大型間接税の導入を考えてはいないということをはっきり申し上げているとおりであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 それは二つのあやがあるのですよ。まず、大型というところのあれがあるのです。かぎ括弧がある。もう一つは、「今は」というところにくっつくんですよ。二つひっかかりがあるのです。「今は」というのは、こういうことですか。この予算が衆参で通ったまでを「今は」と、こう言うわけじゃないでしょうか。それはお互いわかっていることだから、それは聞かなくたってわかっている、そんなことを聞くなよと言うならば私も聞かないけれども、とにかく今はあなたの方でこの予算を国会を通したい、それは当たり前の話です。予算が通ってしまって、そしてどうせ八月か何かには概算要求になるわけですから、通ってしまった後には当然これは考えなければならないのだ。だから歳出カットによる財政再建、予算編成はもう限界だ、こういう言葉も出てくるし、あなたの「今は」という言葉も出てくる。「今は」というのを、直ちに六十年度から導入するとかなんとかということを私は言っているのじゃないのです。新聞で大きく書きましたけれども、私はそんなことを言っているわけじゃないのです。そうじゃないのですよ。ただ、「今は」というのは――日本語はなかなか意味深長で、それは言葉のいいところでもあるけれども、「今は」というのは、将来は考える。将来というのはいつかと言えば、近い将来である。近い将来というのはいつかと言えば、この予算案が通った後には考えざるを得ないでしょう。これが筋ではないでしょうか。中曽根さんというのは正直な人だということを僕は聞いていたのですけれども、あなた、その辺のことをもう少し答えてくださいよ。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 私は一貫して、大型間接税は考えておりません、そう申し上げてきておるのです。本会議でもそのように御答弁申し上げておるのです。ただ、この間の答弁がちょっと誤解を受けましたから、本来こう考えておる、その筋を明らかにしておく、そういう意味で申し上げたわけなんです。その考えは変わっておりません。  それから、歳出カットはもう限界だと思っておりません。補助金あるいはそのほかの部面において、さらに歳出カットに向かって努力していくつもりであります。これで限界などということではありません。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 それでは、大変しつこいので恐縮なんですけれども、あなたの考えておる大型間接税というのはどういうものでしょうか。それが明らかでないと、大型間接税は考えていない考えていないと言ったって、大型間接税というのはどういうものであるか、自分の考えている大型間接税というのはこういうものだということを説明していただいて、考えていないというのなら話はわかりますよ。そうでしょう。あなたの考えている大型間接税というのは一体どういうものか。いいですか。国会で決議されたいわゆる一般消費税(仮称)、これとEC型付加価値税とは、違うならどういう点が違うんだということをはっきりさせないと答えにならないのですよ。  細かい点は総理からはちょっと御無理かと思えば大蔵大臣でもいいし、大蔵大臣も無理だということになれば、無理でないかもわからぬけれども、政府委員でもいいかもわかりませんが、大型間接税は考えていない考えていないと言ったって、大型間接税というものの中身がわからないのですから、答えにならないでしょう。私の今言った国会決議の一般消費税とEC型付加価値税と一体違うのか同じなのか、はっきりしてくださいよ。それでなければ答えにならないですよ。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 間接税の中でも小型でないもの、中型でないもの、すなわち大型である、そういう形になると思います。大型、小型、あるいは間接税、直接税、要するに間接税という言葉は直接税の対比において言われておる言葉だと思うのです。そういう意味において、その定義は主税局長から御説明を申し上げます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 ちょっとその前に。  大型というのは、これは中型と小型と比べるのは当たり前の話で、大変失礼な話だけれども、ここにいっぱい並んでおられるわけでしょう――これはまずいかな、この中にだって大型政治家もおられるし……(「問題発言だ」と呼ぶ者あり)いや、今のは取り消し、取り消し。(発言する者あり)余りおどかすなよ、間違った、全部大型政治家。だから、そういう言葉ではわからないのですよ。幾らでも逃げられるのです。  だから、私が聞いているのは、それでは大蔵大臣、大型間接税が国会で決議された一般消費税と同じものか違うものか、EC型付加価値税と同じであるのか違うのか、ちゃんと一覧表を出してごらんなさいよ。それでなければわからないでしょう、大型間接税は考えていないと言ったって。(「やらないのだから」と呼ぶ者あり)だから、やらないのならば、こういうふうなEC型付加価値税と同じものはやりませんとか、こういうものはやりませんということをちゃんと言って、選択の幅をきちんとさせてくださいよ。当たり前の話でしょう、これは。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 主税局長から御説明申し上げます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 いや、大蔵大臣から答弁しなさい、政治的な問題だもの。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 稲葉さんとこの大型という問題について、過去渡辺大臣も議論しております。私も議論しております。  これはやはり、今総理からもいみじくも正確におっしゃったと思いますのは、大型間接税という言葉はうんと使われておりますが、一体本当に大型間接税とは何ぞやという議論は、終局的な結論というのは私はまだないと思うのであります。何に比べて大きいか、何に比べて中くらいか、何に比べて小型か。強いて言うならば、要するに課税ベースの広い間接税で税収規模がかなり大きいものというような、抽象的に言えばそういうことになるものかな、このように思っております。竹下国務大臣としては割に正確に答えたつもりでありますが、こういう感じを持ちました、

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 確かにそうなんですよね。幾らここで大型という議論をしたところで、意味ない。意味ないとは言いませんけれども。  これだけはわかったわけですよ、今の物品税というものは課税ベースの狭いものであるということがわかったのです。今政府税調で考えているものは、課税ベースの広い間接税であるということがわかった。そうすると、課税ベースの広い間接税というものは、EC型の付加価値税あるいは国会の決議のあれとどういう関係にあるかということはまだわからない、こういうことですよ。そして、出てくるのは、国会でこの予算が通ってから後になるだろうということは、あなた方の方では言わないけれども、まあ推測というか、渡辺氏はそういうような意味のことを言った、こういうふうに考えられるわけですね。  そうすると、課税ベースの広い間接税というものはやらないということですか。いいですか。これも議論が出てくるのですよ。じゃあ課税ベースの広いというのはどこまでを言うのかということになって、また同じ議論になってしまうのだけれども、とにかく課税ベースの広い間接税はやらないということですか。それなら話ははっきりしているのですよ。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 当時私が大蔵大臣でございましたが、いわゆる一般消費税(仮称)、これの問題につきましては、その取引段階の事業者について売上課税を行う。EC型付加価値税との違いは、いわゆるインボイスを必要としない仕入れ控除方式を採用するというふうな形のものは、あの時点においては国会決議において否定をされ、したがって、当時の言葉で言うならば、財政再建のためには歳入歳出両面にわたって純粋なこの手法以外のことで考えろ、こういう一つの決議の形で我々に対して枠がはめられ、今日までこれを守り続けてきたということであるというふうに私は理解しております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そうすると、EC型のいわゆるインボイス型のものはやらない、やれないということになる。そうすると、個別な物品税ではないということになってくると、私はその間の範囲はだんだん狭まってくるというふうに思うのです。そうすると、個別なものでないで、そしてとにかく一般にかかる間接税であるということは間違いないわけですか、そのいわゆる大型間接税という意味は。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 ここに最終的に書かれてありますのは、十一月の中期答申は、先ほどもちょっと読み上げましたが、途中省略したところが大事でございます。「今後、これまでの審議の経緯に配慮しながら、社会経済情勢の変化を踏まえ、間接税体系の合理化を図るため、物品、サービス等に係る課税ベースの拡大等について検討を続けることとすべきである。」こういうふうに政府税調の中期谷中はちょうだいをしておる、こういうことであります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 そうすると、政府税調の今あなたのお読みになったところは、大蔵省としては検討の余地があるということでしょうか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 いつも申しますように、この政府税調というのは、三年に一度内閣総理大臣の諮問機関としてお願いをする。そして国税、地方税のあるべき姿について、こういう大諮問をいたしまして、その都度答申をいただいておるわけであります。したがって、その権威ある政府税調においてこのような答申をいただいておるというのは、我々は絶えずそれは勉強していかなければならぬ一つの指標だというふうに受けとめなければ非礼に当たると思っております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 今度大蔵省では、法人税率の引き上げと、それから退職給与引当金の四〇%を三五%にするというのがありましたね。これは大蔵大臣、毅初から両方通るという意味で提案していたわけですか。国会じゃないですよ、出していたわけですか。あるいは片一方だけ通ればいい、こういうふうな考え方で二つのものを出していたのでしょうか。どういうわけなんですか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 私どもといたしまして、この減税財源を言ってみれば後の世の人にツケを回すわけにはいかぬ。これは各党の代表による小委員会の結論もそうなっておる。さようしからば、その減税財源は、減税の額の範囲内においてこれを増税によってやろう。そこで、酒税、物品税、なかんずく酒税は、三年間値段は上がっておる、したがって率は落ちておる。ある意味においてでこぼこ調整とも言えるかと。そして、なお足らざるところを法人税でお願いをした。  その中で、恐らく稲葉委員が御指摘になっておりますのは、退給などもいわばメニューとして、素材として出しておったじゃないか。それをどれを選択するかということは、政府税調あるいは党税調等の意見を聞きながら、最終的には政府自身の責任において選択をした、こういうことになろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 私は、問題として前から言っているのですけれども、日本の税制の中の問題点は大きく分けて二つあるというふうに考えているのですよ。  一つは、非課税貯蓄の問題です。これは物すごいですよ。ちょっと端数は別として、今二百二十六兆でしょう、四十八年三月、古い統計ですけれども。それで所得が一千万円以上ある人が大体やっていますかな。八九・九%非課税貯蓄を利用していると言われる。それから百万円の人は四一・三%しか利用してないわけですよ。この非課税貯蓄をどうするかということが一つ非常に大きな問題ですね。  もう一つは、ここに「一大蔵官僚の眼」というので福田幸弘さんの書物があるのですが、これは昔書いたものも入っておりまして、恐らく古い、中の一部のエッセイに「租税特別措置を排す」というのがあるのですが、これは主税局の総務課長の時代のころかな。私は、税の問題では、主税局長から国税庁長官をやった泉さんと、それからこの福田さんの論文を主として読むんです。非常に冷静な分析と公平なあれですね。このお二人は専門家であって、ちょっと行き方が違うとは思いますけれども。  そこで、この福田さんは、「租税特別措置を排す」という中でこう言っているのですね。「税の減免による助成は「隠された補助金」といわれるが、」云々というようなことをいろいろ言われておって、「租税特別措置という方法による税の減免措置は、諸外国ではきわめて例外的にしか認められていないようである。また企業会計上認められる多くの負債性引当金も、税務上は否認されるし、債権の貸倒れについても個別的な引当てが原則で、概算率による例外としては金融機関があるだけである。 わが国では六つの引当金は別として、現在、約一五〇項目を上回る特別措置があり、その多くは業種別、機種別の特別償却である。」こう言っていますね。これは古いことで、あれは変わりましたからね、現在は随分減ってきましたから。これは本は新しい本ですけれども、論文は四十九年の十一月のをそのまま引っ張ってあるんです。  そこで、私は前々から言っておりますように、この引当金というのは問題なんですよ。日本とアメリカの銀行の自己資本率の計算のときでも、この引当金というのは日本では所得の中へ入れて計算しているわけですよ。これはよくおわかりでしょう。例えば、この貸倒引当金が今二兆二千四百四十四億ある。国税庁の一番新しい統計ですよ。そして、実際にそれを利用しているのは三一・一%ですね。それで退給は七兆三千七百五十億。これは利用している会社はわずかに七・四%。賞与引当金は四兆八百二十二億、一五・二%しか利用していない。この三つだけで約十五兆。貸倒引当金についても、このうち実際に貸し倒れになるのは三分の一以下です。これは御案内でしょう。だから、ドイツやアメリカのようにちゃんと実績でやれば、約二兆の差が、所得が出てくるでしょう。三兆円のうち約一兆円ということになれば、二兆円は浮くわけでしょう。すると、残り二兆円については、これは利益留保性の性格なんだから、これに四三・三を掛ければ八千六百六十億の収入というものが当然入ってこなければならないんじゃないかと私は考える。だけど、それはすぐ一遍にやれば大きな影響があるかと考えられるけれども。  そこで、このことについては、昭和三十五年の政府の税調の中で答えが出ているはずですよ。それをまず説明してください。そしてこれを一体どうするのか。ここでこれをちゃんと変えていけばもっと収入はふえるはずだ、こう私は思うのですね。まず貸倒引当金のことからお尋ねをしていきたい。

梅澤節男大蔵省主税局長

○梅澤政府委員 お答えいたします。  引当金というのは、稲葉委員御案内のことかと思いますけれども、先ほど挙げられました準備金とは違いまして、企業の所得計算をする上での費用収益対応と申しますか、期間計算を厳密にやるという手法の一つでございます。貸倒引当金と申しますのは、各企業の債権が将来の損失を、貸し倒れ損失を見込んだ場合に、当期に一体どれだけ損失分として見込んだらいいかということでございまして、これは各国の税制を見ましても、実績率でやっているところもございますし、概算率でやっているところもございます。我が国の場合は、実績率と概算率の併用というのを、五十四年度からそういう制度にしたわけでございますが、同時に、貸倒引当金の残高のうち、これは当然のことでございますが、金融保険業のウエートがかなり高いわけでございます。  この金融保険業の貸倒引当金につきましては、五十六年度の税制改正で千分の五から現在千分の三に引き下げでございます。同時に、五十八年にも縮減をいたしております。その結果、たとえば先進諸外国におきましても、金融機関の貸倒引当金につきましてはほとんどの国が概算繰入率を認めておりますが、今日日本の千分の三という水準は、その中でも一番低いような水準にまで私どもは縮減をしてきておるわけでございます。  ただ、ただいま御指摘になりましたように、政府の税制調査会の累次にわたる中期答申におきましては、この貸倒引当金のみならず、各種の引当金については常に実態に応じて繰入率を見直していくという態度を表明しておられますし、私どもも年々の税制改正におきまして実際に即した改善に現在までも努力してまいりましたし、今後も努力する覚悟でございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 三十五年の十二月の政府税調の答申を見てごらんなさい。はっきり書いてある。「利益留保的なものとなってくるし」と言っているでしょう。だから、今までの実績に、売り上げなら売り上げが伸びたというものを加えて計算していけばいいんで、しかも、これが国税庁の報告書があるでしょう。いいですか。「退職給与引当金、賞与引当金、貸倒引当金の三つは、資本規模が大きくなればなるほどその利用が大きい」と書いてあるでしょう、はっきりここに。だから、大企業を利すために、結果として利す方向に、この三つの引当金は特に行っているんですよ。これを直さなければいけませんよ。  だから、私が言ったように、今例えば二兆円がその間の所得と差があるわけですから、税金がからないわけですから。全部で三十何%しか利用していないのですよ、三一%しか企業の中で利用していないのですからね。金融機関のものはあります。金融機関のは、実績はもっともっと低いですよ。ほとんど千分の〇・〇幾つですよ。そういうことを考えれば、これはもう当然直さなければいけないのですよ。そんなことわかり切っているはずなんですが、これをやらないのですよ。できないわけでしょうが、あなた方としては。  さらに問題になっているのは、退職給与引当金でしょう。七兆三千七百五十億あるでしょう。大蔵大臣、ありますね。それで、企業の中で七・四%しか利用していないじゃないですか。しかもこれは大企業を中心に利用しているということを、はっきり国税庁の報告で書いてあるでしょうが。これをどうして繰入率を四〇%を三五%にしなかったのか。三五にすれば、この場合には約二千億の金が入ってくるじゃないですか。これは大企業で、全体の企業のうちの七・四%しか利用していないのですから。これはあなた方もやろうと思って出したじゃないですか。しかも、全部の従業員が一遍にやめるなんということは、企業の存続ということから考えて考えられないことの前提の上に立っているのですよ、この制度は。おかしいのですよ。しかも、この積み立てられた引当金に対する法的保護なんか何もないじゃないですか。実におかしな制度です。これは日本だけでしょう。もっとも、退職金というのは日本しかないから日本だけだと言われればそれまでだけれども。それはわかっていますけれども、この制度はおかしいですよ。  だから、積み増し停止があるから、これを四〇%を二〇%にしても、積み増し停止をそのままにしていくならば二千億ですよ。だから積み増し停止をなくすれば、これはずっと変わってくるのですよ。八千億や九千億の金は浮かんでくるんじゃないですか。当たり前じゃないですか。これをどうして今度やらなかったのですか。  あなた方、案を出したじゃないですか。出したけれども、この方が大企業に影響するでしょうが。そうでしょう、国税庁のあれにちゃんと大企業が多いと書いてあるのだから。資本金別に見ると、大企業に多くなると書いてあるわけですからね。大企業の方に大きいから退給を引っ込めちゃって、法人税率を一・三上げるだけならば、これは中小企業の方にも影響してくるから、全体がなべて上がるから、まあ中小企業の場合は率は違うけれども、上がるのは一・三なんだから、あなた方としては法人税率のあれをとって、そして計算をやってきたということじゃないですか。  だから、退給の引き当てというものはもう再検討しなければいけませんよ。これは政府税調でもちゃんとはっきり出ているのだから。これは積み増し停止はやめて、半分にしたっていいですよ。これは幾らでも変えてできるのですよ。だって、全体の七%しかやっていないのでしょう。これが七割、八割やっているというのならまた話は別だけれども、それじゃ、やっていないところは退職金払っていないかと言えば払っているのですから、だからこれはおかしいのですよ。みんな利益留保性の性質を持っているのですよ。これはもう直さなければだめですよ、どうですか、大臣。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 梅澤主税局長。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 ちょっと待ってよ。これは政府委員の答弁じゃない。大臣が政治的な決断をすべき問題ですよ。ちょっと、あなた、いいよ。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 梅澤主税局長。――ちょっと稲葉委員に申し上げますが、税の基本的な仕組みの問題、それで、しばしばこれは議論されている問題ですから、わかりやすく的確に答えてください。

梅澤節男大蔵省主税局長

○梅澤政府委員 先ほども申し上げましたように、引当金というのは企業の優遇税制という議論をいつもされるのですけれども、これは本質的にそういうものではないはずでございまして、若干の時間をお許し願いたいのですが、今委員がお挙げになりました二つの引当金がございますが、賞与の引当金、これは現在四兆円ぐらいの残高がございますけれども、これは従業員の盆暮れのボーナスを払うわけでございますが、たまたま支払い時期が翌朝になる場合に、当期分に対応する部分というのはいわば未払い金的な性格のものでございまして、翌朝になりますと、これは実際は取り崩して支払うわけでございますね。だから、こんなものには税金はかけられないということをまず御理解願いたいと思うのでございます。利益留保ではございませんですから。  それから、退職給与引当金は、これはいつも申し上げておりますように、企業が、労働組合と労働協約等を通じて、これは確定債務を負っているわけでございます。この確定債務を当期のコスト分としてどれだけに評価するかという極めて技術的な問題でございまして、現在は、退職予定期間に一定の割引率で割り引いて原価に評価した場合に、どれぐらい積み立てておくのが適当かという議論で、これは五十五年の改正によりまして、それまでの累積限度額を五割から四割に引き下げた。昨今、定年制の延長等の事情がございまして、この期間が延長される傾向にございますから、これもことしの税制調査会の答申にございますように、引き続きこの繰り入れ率を見直していくということになっておるわけでございます。  それからもう一つ、誤解のないように、大企業の利用が非常に高いではないかということでございますが、これは事柄の性質上、そういう労働協約のような格好できちんとした退職金の支払い契約を結ぶというのは、どうしても大企業になるわけでございますが、一方、中小企業につきましては、労働省で所管しております中小企業の退職金事業団というのがございます。これにつきましては、毎期毎期の中小企業が掛け込んでおります掛金そのものは、毎期毎期の損失として損失計上されておりますので、たまたま引当金として大企業が出てまいるわけでございますけれども、特に大企業だけに優遇しておるという税制の仕組みにはなっていないということは、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 その点は確かに議論があるのですよ。それはわかっていますよ。引当金というのは優遇税制がどうかということは、学者の間でも議論があるのですよ。だからわかっているのですよ。それはわかりますけれども、退給の場合なんかは実際七%しか利用してないのですよ、七兆幾らあるのですから。だから、この繰り入れ率をなぜ四〇から三五にしなかったかということについては、私は理解できないのです。これは大企業だけに影響があるということでやらなかったのですよ。法人税を一・三上げるのならば、大企業だけでなくてほかの方にもあって、大企業の負担もその割に少ないからということでやったのですよ。そういうふうに考えられてくるのですよ。  そこで、いろいろな税制の中でもう一つ、前にお話ししました問題で、非課税貯蓄二百二十六兆というのは、いかにもあれじゃないですか。これはなかなか難しい問題がありますよ。これは郵便局が入ってくるから問題は難しくなってくる、郵便貯金がありますから。これはわかりますよ。わかるけれども、その二百二十六兆というような莫大な非課税貯蓄があるということについて、大蔵省なり政府としては一体これはどういうふうにしていくのですか。  それから、これはグリーンカードの問題と関連しますな。グリーンカードは六十一年一月一日まで凍結ですかな。このグリーンカードをまずどうするのか。それとの関連において、一体この利子配当の問題をどういうふうに処理していくのか。これは政府税調では夏までに回答を出す、こういうふうになっていますな。どういうふうにしていくのか、これをお答え願いたいと思います。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 今の利子配当課税のあり方、これは税調が五十九年度答申で、これは前の答申ともやや似ておりますが、「多数の貯蓄音及び貯蓄取扱機関等に関係するほか、金融市場に大きな影響を与え得る問題であるので、中期答申に示された考え方を踏まえつつ、今後なお時間をかけて検討を進める」ということがあって、しかし、今おっしゃったとおり、「グリーンカード制度の凍結期間との関連から、できれば今年夏頃までに結論を得ることが望ましい。」こういうことになっておるわけでありますので、引き続きこれは税制調査会で御検討をいただいて、予見をもって申し上げてはいけませんから、その推移を見ながら対処していく、原則的に言えばそうなると思うのであります。  したがって、今御指摘のとおりでございますし、そうしてまた、預金口座数にしても三億口座とか、こういうふうに言われるわけでございますから、この問題については各方面の議論も大変やかましくなってもきておりますし、まさにこの夏ごろまでに結論を出すべき環境もまた熟しつつあるではないか、こういうふうに理解しております。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 グリーンカードはどうするのですか、あなたの方の考え方としては。それは国会に任せるということですか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 これはいろいろな議論――この問題になりますといささか私もじくじたるものがありますが、私が前大蔵大臣のときに通してもらって、私が再び大蔵大臣になって凍結した、こういうことでございますが、その凍結期間中それぞれの異論がないように、まずは、このいわゆる利子配当課税の問題の結論が出ることによって、その推移を見ながらその後判断をしていく、こういうことになろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 いろいろな問題の中で、殊に配当の問題などは十分に政府税調の中で論議されてないんじゃないですか。  例えば配当所得の源泉選択制度、これなんかあれでしょう、源泉選択制度というのは政府税調になかったのですよ、御案内のとおり。昭和四十年かな、なかったものを税制改正で、これは田中さんが大蔵大臣のときにやったのですよ。それに対して当時の主税局長は反対して、田中大蔵大臣のところまで行っているんじゃないですか。そうしたら、田中さんから頼まれてかなんか知らぬけれども、結局しようがないということで、山一證券かなんかが倒産、倒産でもないか、何か問題があってやったということで、そのときの国会の答弁を見るというと、あなた、泉さんは、この制度というのは税制上、殊に負担の公平という点から非常に問題のあるところだと、はっきり言っているのですよ。昭和四十年三月二十四日衆議院大蔵委員会。こういうような配当の源泉選択制度、こういうようなことなんか、あなた方御存じでしょう。これは政府税調になかったものを無理にくっつけたわけですから。  そういうふうなことやなんか含めて、利子配当全体が非常に大きな問題なんですよ、この問題は。これはあのとき泉さんが、二つのかぎをくっつけてできるだけ実現させないようにしたとかいろいろ言っておられますけれども、こういうふうな問題がありますから、今言った全体の非課税が二百二十六兆というのはいかに何でも大き過ぎますよ。これに対してはしっかりした対策を立ててもらいたい。ただ、まあ営々として積み上げた郵便貯金その他ありますけれども、家庭の主婦やなんかの方の預貯金なんかがありますから、そういうところに影響してはいけませんけれども、それは十分に大蔵大臣としても私は考えていただきたい、こういうふうに思うのですね。再度御答弁をお願いします。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 基本的に先ほど申し上げたとおりでありますが、今の稲葉委員の最後の、そういうことを踏まえて対応すべきであるというのは、私は、所々方々で今その議論がなされておるある種のコンセンサスとまで言える議論じゃないかと思いますので、そういうことを十分税制調査会にもお伝えし、我々も、そういう意図を体して対応すべき問題であるというふうに考えます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 いろいろ聞きたいことがあるわけですけれども、厚生大臣、児童扶養手当の問題なんですけれども、これ、なぜこういう制度をわざわざやらなければいけないのか。これは自治体に二割負担させるわけですね。それから、七年間で打ち切る。それから、だんなさんに六百万の収入があればこれはやらないとか、いろいろな複雑な仕組みをしているわけですね。こういう制度をどうしてやったのか。もうこれは私は現行どおりでいい。それで、年に百五十一万以下かの人はちょっと上がるわけですけれども、上げるのはいいと思うのですが、これは大臣の御見解というものを承っておきたいというふうに思います。  その前に、難病対策や何かでは、総理や大臣、大変お世話になりましたので、これはここでお礼申し上げておきます。

渡部恒三自由民主党・新自由国民連合厚生大臣

○渡部国務大臣 難病対策に御理解を賜りまして、ありがとう存じます。  今の児童扶養手当の問題でありますけれども、これは稲葉委員にぜひ御承知願いたいと思いますのは、この制度が発足した昭和三十七年当時と、母子世帯の内容が非常に変わっております。三十六年には、死別した、これは本当にだんなさんを失ってしまった人が七七・一%、これに対して生別、生き別れが一六・八%、そういうことで、死別した母子年金を補完する意味で、一六・八%の離別した母子世帯に対して児童扶養手当を支給したわけでありますが、その後、社会のいろいろな情勢の変化がありまして、今では、昭和五十八年、死別母子家庭は三五・二%、離別母子家庭が四九・三%。別に、私はこの扶養手当が離婚を奨励しているとは申し上げませんけれども、非常に情勢が変わっておりますので、今回は三百万以上の所得のある人には御遠慮願う。これによって御遠慮をいただく方はわずかに二%。そして逆に所得の低い八五%の方は、大変わずかな金額ではありますが、いままでより手当がふえる。つまり、上に薄く下に厚い本来の社会福祉に手直しをしております。  それから、もう一つの改正案である生別時に六百万以上の所得のある父親には、民法上の親の子供に対する扶養義務、これは稲葉委員の方が大変権威のある方で、御理解いただけると思いますが、これを六百万というのは、私も最初いろいろ考えてみたのですが、日本の所得構造の中で、上位一〇%が六百二十三万でありますから、やはり今の所得構造の中で上から一〇%ぐらいの父親の方は、まず国民の税金を当てにする前に親としての扶養義務を持ってもらおうじゃないかというような考え方。しかし、これも十分に配慮をいたしまして、両親を扶養しておる父親は七百万とか、あるいはこの運営に当たっては弾力的な運営を行って、本当に困っておる母子家庭の手当を取り上げるというようなことはないように配慮をしてまいりたいと思いますし、今御指摘のありました都道府県、地方負担の問題でありますが、これは、出発の際には年金の補完的役割を果たすという考えがありましたから国が持っておりましたが、今回の考えは、もう時代が変わってまいりまして、これは純粋に福祉施策としてこの手当をやろうということでありますから、横並びに都道府県に負担していただこうということで、これは自治大臣とも大蔵大臣とも協議し、また都道府県からも御理解を得ておるものと考えておりますので、御了承いただきたいと思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 地方自治体が二割負担することについて、地方自治体が理解している。そんな理解していないですよ。だれがあなたのところへそんなこと言うの。そんなことないです。みんなどんどん反対してきますよ。それはいろいろ議論があるところだけれども、これは反対しているわけですよ。それはよくわかっていただきたい。  それから、離婚をした女の人は子供さんを抱えているでしょう。その人が、別れた父親から扶養してもらっているというふうに、法律はそうなっていますよ、民法でね。まだもっとほかにも、三親等の間は扶養義務はありますよ。だが、実際は扶養してくれないですよ。養育費払うといって決めたって、あなた、払やしないよ。僕は実際いろいろ知っていますけれども、男というのは勝手なものだとかなんとか言うとまた語弊があるかもわからぬけれども、これは別れたらどこへ行ったかわからなくなっちゃうのが多いのですよ。どこへ行ったかわからなくなっちゃうのは適用はない、こういうわけでしょうけれども、実際にあったって払わないのですよ。あったって払わないのが多いということを、よく事実を知ってもらわないと困りますよ。  家庭裁判所へ行って聞いてごらんなさいよ。家庭裁判所で決まるでしょう。養育料が決まったって、養育料を払わないですよ。履行確保の申し立てをするんだけれども、まだ払わないですよ。払わなければ執行するといったって、なかなか執行できないから払わないということが非常に多いので、扶養義務があるから払うという前提は、これは実際問題としては非常に事実と違いますよ。これは考えてみなければいけませんよ。  これを実際に現行法どおりにして、それで人数がふえるでしょう。件数がふえますわな。(「払わないのをそうしちゃだめよ」と呼ぶ者あり)何も払わないのをそのままにしておくわけじゃないけれども、予想ではこれは五十五万件が六十万件になるわけでしょう。そういうことから考えてみて、そして従来どおり国は十割負担しておる、そして今の法律のままでいった場合には、一体幾らぐらいのあれがふえるということになるわけですか、計算上は。

吉原健二厚生省児童家庭局長

○吉原政府委員 現在、児童扶養手当の総費用の額は、五十九年度で約二千五百億円に達するという見込みになっております。約十年前に比べまして十倍近い大きな額になっているわけでございますが、そのうちの新規分、これから離婚される新規の方の分について今後都道府県に二割の負担をしていただくということでございまして、五十九年度は実施時期が本年の十一月でございますので、地方にお願いする分は約五千四百万というふうに踏んでおります。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 地方に負担を願う分のことを聞いているわけではなくて、全体として、仮に五十五万件が六十万件にふえたところで、現行法でやっていったところで一体幾ら金が余計に要るということなんですか。五千四百万だけですか、そんなことないでしょうが、わずかな金じゃないんですか。

吉原健二厚生省児童家庭局長

○吉原政府委員 もし仮に現行制度のままで今後ともやっていくということになりますと、五十九年度は先ほど申し上げましたように約二千五百億でございますが、大体ここ数年間の伸びが三百億程度、大体一割以上の伸びになっておりまして、毎年大ざっぱに計算をいたしますと、離婚の伸びに従って年々三百億ぐらいな金額がふえていく、こういうことになるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 実際に離婚した場合に、それから金をもらうまでの間にどうしても相当日にちがかかるのですよ。その間に一番子供の養育に金がかかるのですよ。それは私どももう何回もそういう経験ある人の話を聞いていますからよくわかるわけです。だからそういう人に対して、現行法のままでいってわずか三百億ぐらいの金のことを、そんなにあなた、五十万人ぐらいの人になりますか、そういうようなことに対して温かい配慮をしていくのが、これが僕は政治じゃないかと思うのですよね。離婚して小さな子供さんを抱えておる母親の気持ちになってごらんなさいよ、このお金が来るのを待っているわけなんですからね。だから、そのことをよく考えなければいけないと思うのです。  それは、離婚についてはいろいろな考え方がありますよ。離婚がどんどんふえていることについていろいろな意見があるかもわからぬけれども、昔ならば我慢に我慢をして泣き寝入りしていた人が、自分に目覚めて離婚する場合が非常に多いし、同時に、いろいろな理由で離婚するのであって、一概に考えられないいろいろな複雑な理由があってするんだし、何もしたくてするんじゃない方も多いわけですから、子供さんを抱えておる母親のことをもっとよく考えてあげるべきだと思いますね、その程度の金のことで。(「子供のためにも離婚しない方がいいんだ」と呼ぶ者あり)いや、それは子供のために離婚しない方がいいことはわかっているのですよ。それはわかっているけれども、せざるを得ないところに問題があるのだ。  僕らもそれで随分、率直な話、子供さんが二人いて、それをあれしたり何かしまして実に複雑な思いに駆られること、私いろいろと相談を受けた中であるわけですけれども、支給期間の有期化の問題でも、十八歳までの児童を対象に七年間支給する、何もそんなことをする必要はないのじゃないですか、これ。どうしてこういうふうにするのですかね。だから、行革というのが非常に冷たい。福祉の切り捨てという言葉を使うけれども、私は切り捨てという言葉は使いませんけれども、福祉の切り下げという言葉を私は使いますけれども、こういうところなどを考えてきたときに、もっともっとこういう方々に対して温かい配慮というものをしてあげるべきだ、それが僕は中曽根さん、あなたの政治だと思うのです。これはいろいろなことがあるでしょうけれども、この程度のお金のことなんですからね。これは離婚して子供を育てている、こういうふうなお母さん方のことをもっと温かく、パートの問題と同じように考えてあげてくださいよ。中曽根さん、いかがでしょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 厚生大臣が先ほど来申し上げましたように、事情やむを得ざる措置であると考えて、御理解いただきたいと思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 私は、この制度を変えるという積極的な理由ということについてはわからないのですよ。パートの場合にあれだけあなたの方で理解を示してくれたのですから、これらの方々に対してももっと温かい理解を示すべきだというのが私の考え方です。今、死別の方が非常に減っておられて、生別の方がふえておられる。逆になっておるわけですね。  そこで、きょうのを見ますと、児童扶養手当の見直しに対して社会保障制度審議会が、別れた夫の収入でのこの案に対して、扶養履行の保証をしろ、こういうような意見をつけておられますね。これは大河内さんが会長ですが、これについては民法上の扶養義務が十分に履行される保証をしてくれというようなことですね。これは具体的にどうやったらいいというふうにお考えでしょうか。

吉原健二厚生省児童家庭局長

○吉原政府委員 昨日いただきました社会保障制度審議会の答申の中で、考え方はよくわかる、父親の所得によって支給を制限するという考え方はわかるけれども、実際問題として、民法上の扶養義務が十分に履行されるような何か方策、そういったものを今後検討してもらいたい、検討すべきであるという御意見、御答申をいただいたわけでございます。  私ども、やはり第一次的に民法上の扶養義務というものが十分履行されるということが一番大事であると考えますので、具体的にどういった方法をとるか、法律的にも実務の上でも大変難しい問題があろうかと思いますので、これは今後検討さしていただきたい、こう思っておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 この答申の中にも出てくるのですけれども、「改革が財政政策にとらわれるあまり真に援助を要する者が対象からはずれてはならず、」まずこういうふうにありますね。そこで切りましょう。これについては厚生大臣、どうお考えですか。

渡部恒三自由民主党・新自由国民連合厚生大臣

○渡部国務大臣 ただいまのような御指摘もございます。この制度は臨調からの強い要請もあり、やはり何でもすべてこれ税金という時代ではなくなってきた方向の中で、所得の高い父親の方には、親としての扶養義務をまず強く問われるべきものであるという考え方から、こういう制度を出したわけでありますが、父親がいない母子家庭に対する思いについては、私も先生に劣らない気持ちを持っておりますので、これらは今後弾力的に、ただいまの先生の御指摘等の問題で、この制度のために本当にお困りの母子家庭が苦労するようなことはないように、弾力的な運営を図ってまいりたいと思いますので、先生の御理解を賜りたいと思います。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 この問題については、後から同僚議員からもいろいろ質問があると思うのです。私は、今の段階ではどうもまだ了解ができません。  あとのがん対策や難病対策は一般質問の中に譲らせていただきたい、こういうふうに思うのです。  これは経済企画庁の担当になるんでしょうか、公共料金の問題で、五十八年度は落ちついておるけれども、五十九年度に向けては値上げが相次ぐことになりますということを、企画庁の次官の田中誠一郎さんがある会合で述べておるのですが、きょう昼間いただいたものだから、公共料金が今後どういうふうに上がっていくのか、それに対してどういう態度を企画庁としてとるのか。また、公共料金が上がっていくことについては、これは所得税や何かと違って所得の低い人ほど影響を受けるということになろうかと私は思うのですが、その点についてひとつ説明をお願いしたいというふうに思います。

赤羽隆夫経済企画庁物価局長

○赤羽(隆)政府委員 お答えいたします。  ことしの公共料金につきましては、五十八年度に比べまして若干上昇率が高まる、こういうふうに見てございます。具体的に申しますと、一%程度消費者物価を押し上げる、こういうことではなかろうかと思います。これを含めまして、一般物価と合計をして二・八%程度の消費者物価の上昇率になろうか、こういう見通しを立てております。  公共料金につきましては、従来から、国民生活に対する影響、物価への影響、こういうものを深刻に考えまして厳正に対処をしている、こういう方針を今後とも続けてまいりたい、こう考えておる次第でございます。  この所得階層別の影響でございますけれども、公共料金につきましては低所得者層の方が負担の比率が大きい、こういうことは事実でございますけれども、その反面で、いわゆる非消費支出、税金、税外負担でございますけれども、これが高所得者層においては大きい。両方合わせますと高所得者層の方がいわば広義の公的負担は大きい、こういうふうに見ております。いわば累進性は従来から変わっておらない、むしろ最近高まっておる、こういうふうに理解をしてございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 これはそのとおりでして、ちゃんと企画庁でつくった表があるわけです。  そこで、これはやはり企画庁のあれですか、ことしの一人当たりの雇用者所得を五・二%と見ていたんだけれども、三・五%にとどまる、こういうふうなことを田中さんが言っているのですよ。これはどういうことですか。

谷村昭一経済企画庁調整局長

○谷村政府委員 お答えいたします。  当初、政府の経済見通しにおきましては、今御指摘ございましたように、一人当たり雇用者所得を五・二と見ていたわけでございます。年末につくりました五十八年度の実績見込みでは、今御指摘の三・五%程度になるという形になる、こういうことでございます。

稲葉誠一日本社会党・護憲共同

○稲葉(誠)委員 時間がありませんのであれですけれども、そうなってくると、公共料金は上がる、しかも、一%程度かどうかわかりませんけれども、一%程度物価を押し上げる、そして雇用者所得は当初の予想よりも低い、こういうことになってきて、そして全体四・一%のうちの三・何%を内需でやらなければならないということになってくると、どうしても春闘の賃上げというものを相当大きくやらなければ、殊に低所得者はやっていけないということになるのではないか、こういうふうに私は考えるわけです。これは労使の当事者間で決めるのが主として考えられるわけですけれども、そういうふうなことから、ことしの春闘は非常に大きな課題であり、大幅な賃上げがどうしても必要で、それがないと内需の拡大ということはできないと私は考えておりますけれども、これはまた恐らく同僚議員から、人勧の問題、そしてその問題に関連しては別な角度から聞かれるのではないかというふうに考えております。  私の質問は、もう時間が参りましたのでこれで終わりになりますけれども、私は、私が聞きたいということよりも国民の皆さんが聞きたいと思っていることを相当聞いたつもりです。私の勉強が不足なものですから皆さん方のお答えが十分でなかったようにも私にもとれるのですけれども、これはまた再度私自身がもっと勉強をいたしまして、国民の生活をどうやって守るか、殊に低所得者や母子家庭や難病の患者や、そうした社会的な弱者と言われる方々をどうやって守るか、そういうことを中心にして、今後、これからの活動といいますか勉強を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。  そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次に、工藤晃君。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 日本共産党・革新共同を代表して質問します。  まず、中曽根首相に、ただいまも言明がありましたけれども、大型間接税は考えていないと言われました。同時に、渡辺幹事長代理の記者会見という問題がありましたので、私は一言だけ、自民党の党内にいろいろ考えがあるというときに、中曽根首相、総理・総裁として今言明された方向でイニシアを発揮されると考えますが、どうですか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 イニシアを発揮するしないにかかわらず、ともかく考えてない。誤解がありましたから、明らかにしたわけであります。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 そう言われますと、党議いかんによってはどうなるかわからないということになるし、今国民の間にはこの問題をめぐって大変不安がございますので、やはり今のはっきりした言明のもとでイニシアを発揮するかどうかはっきりさせる必要があると思いますが、どうですか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 政府税調の審議であるとか、あるいは将来そういうような問題が出てきた場合にイニシアを発揮するので、政府は今のような立場を守ってまいるつもりでおります。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 この問題は一応これだけにしまして、私の質問も、イニシアという大変抽象的な聞き方に終わっております。  さて、私は、まず五十九年度予算の国民生活への影響の問題を取り上げたいと思います。  今度の予算編成をめぐって非常に特徴的であったのは、国民の間に生活をめぐっての不安が広がったということです。そして、それは考えてみると、結局、健康保険制度もそうですが、これまで当てにしてきた制度が突然悪くなっていくということが一つ。もう一つ、低所得層ほど重い負担がやってくるのではないか、こういうことだと思います。  私は、ここでは特にこの負担の問題で取り上げたいわけでありますが、これは本会議でも取り上げられました五十八年度国民生活白書に、五十年から五十七年の間に実収入がどうふえて、契約的支出がどうふえて、非消費支出がどうふえて、結局、実質任意可処分所得は八百円だけということが問題とされましたけれども、私は、今も議論になりました公共料金支出というものも加えてこの問題を考えなければならないという立場で、資料①として「勤労者世帯の家計構造の変化」というものを提出しました。これはもとより政府の調査に基づいております。若干工夫といえば、公共料金支出というのを下の説明のように組みかえなどを使って行っているわけであります。やはり新しい予算の問題を考えるときに、この数年国民の暮らしがどうなったのか、私たちはこういう資料に基づいて真剣に考える必要がある、こう考えます。  これで見ますと、いわゆる非消費支出、それから公共料金支出、それにローンの支払いなどの契約的支出ということで見ますと、平均して、七七年から八三年に三一・〇から四一・九と大変重くなってきている。これを五分位で、表を簡便にするためにⅠ、Ⅲ、Ⅴで見ましたが、一分位を見ますと三二から四二・五、そしてⅠ、Ⅲ、Ⅴの比較でいいますと、Ⅴの方が四一・七である。もちろんⅤの方も税金などの負担は重いわけでありますが、こういう結果になってきているわけであります。  そういうことで、私は企画庁長官に伺いたいし、また、提案したいわけでありますが、国民生活白書などで実質任意可処分所得など、こういう新しい考え方を取り入れられておりますけれども、こういう公共料金支出も加えて、今国民の家計がどういうふうに移り変わっていくのか、各何分位でどういうふうに変わっていくのか、そしてそういう係数みたいなものをつくられてはどうか。従来、エンゲル係数というものがありました。これは今も大事な意味を持っていると思いますけれども、しかし、今の生活の実態が変わってきているときに、ともかくこれらの支出で家計は火の車であるということから、ここには拘束的支出という言葉も使ったのですが、家計火の車係数でもいいですけれども、何かそういうものをつくって絶えず示し、そして予算編成のとき、それがどういう方向に向かうのか国民の前に明らかにすると、それこそ国民にとってわかりやすい予算になると考えますが、どうでしょうか。

及川昭伍経済企画庁国民生活局長

○及川政府委員 お答え申し上げます。  五十八年度の国民生活白書で実質任意可処分所得という新しい考え方を採用しているわけですけれども、それを採用いたしましたのは、従来家計を分析するときに、実質実収入と実質可処分所得を中心に分析いたしておりました。現在でも実質実収入、実質の総収入が幾らになるかというのが一番大事な指標であり、実質可処分所得、それから税金や社会保険料の天引きされる分を差し引いた手取りの額が幾らであるか、実質可処分所得が幾らであるかということが基本的な指標であると思っております。  五十八年度の国民生活白書で実質任意可処分所得というものを取り上げましたのは、最近、消費者ローンであるとかサラ金であるとか、借り入れに依存する生活の態度が非常に普及してまいりまして、先に楽しんで後から払うという暮らし方の結果、生活設計として借金払いが多くなって、実際は生活はよくなっているのに暮らしに余裕感がないという考えで任意可処分所得というものを採用したわけでございます。  今、工藤委員から御提案、御提示がありました「勤労者世帯の家計構造の変化」でございますが、拘束的支出の割合ということでだんだんふえているという御指摘、特に低分位でふえているという御指摘がございましたけれども、これを見ますと、まず非消費支出、これは非常に拘束的な支出でございますが、公共料金につきましては、価格については政府が関与いたしますが、支出についてはむしろ、どれをどのように消費するかということについては、国民それぞれが任意に処理ができる性格のものでございますし、さらに、契約的支出というのは、これは言うなれば借金払いが大部分でございまして、現に借金払いに支出しておりますのが、この五、六年の間に一世帯当たりで二万円から五万円ほどにふえているわけでございますが、それは、契約的、義務的になったのは、自分の判断によって先に消費をした、先に資産を形成した結果拘束的になったということでありまして、一律にこのような形で拘束的支出を支出として採用するのはいかがかというふうに考えているわけでございます。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 私は長官にぜひ答えていただきたいのですが、今の答弁の中にも、拘束的支出は言ってみれば勝手に家を買ってしまったからと言いますけれども、よく考えてください。日本は、公共住宅政策なんかイギリスなどと比べても大変おくれている、それでマイホーム、マイローンということを政府の住宅政策としてきた結果として、今大変な住宅ローンということになっている。そういう政府の政策の反映もありますし、公共料金支出について、国鉄、私鉄の運賃でもこれは政府がかかわっているわけですから、それはそういう説明だけではとても通りません。  私の提案したいのは、やはり今の国民の家計がどうなっているのか。何も拘束的と呼ぶ呼ばない、いいですよ、それは。そういうことに私はかかわっているわけではないけれども、こういうものを示して生活の実態を明らかにして、それを予算審議のときに出してきたらどうか、そういう提案について長官、お答えしていただきたいと思います。

河本敏夫自由民主党・新自由国民連合経済企画庁長官

○河本国務大臣 今、政府委員から答弁をいたしましたが、任意可処分所得あるいは実質任意可処分所得という考え方は昨年初めて取り入れた考え方でございまして、これまでの実質可処分所得のほかに、ローン、住宅ローン、それから生命保険料、それから一般の借入金、それから掛買金、まあツケで買った支払いです、こういうものをすべて含めて、その後で残るお金は幾らあるかということを九千世帯について調べた調査でございますが、その調査で結局八百円しかふえていない、ここ数年の間に。  これはこの間からいろいろ議論になっておるわけでございますが、今のお話は、そのほかになお公共料金を加えてそして参考にすべきではないか、こういうお話でございますが、実質任意可処分所得のほかに別にそれをつくる考え方はありませんけれども、しかし、公共料金は当然負担になりますから参考にしなければならぬ、このように思います。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 そこで、これまでも今度の予算編成をめぐって、減税、増税、公共料金の引き上げなどのバランスシートは国民にとってどうなるか、いろいろ試算が出されましたし、この委員会にも既にそういう資料も出されております。私も一応計算してみたものを持っておりますけれども、これは昨年一-六月期まで、一応それをとって延ばした計算でありますが、第一・五分位で減税は一万八千九百円、しかし間接税の増税だとか公共料金負担増、これは地方の公共料金は含めなくて二万三千二十八円、そうすると結局負担増が四千円以上残る。第五分位になりますと、四万九千七百円の減税に対して負担増が三万七千円余り、これは地方公共料金は入ってませんよ、それでともかく一万二千円余りが減として残る、こういうことになっているわけです。  そういうことで、いろいろな計算をやられますが、どの計算をやっても同じような答えになってきているというところに今度の予算の大きな問題がありまして、きょうこの問題についてもう少しいろいろ伺いたいのがありますが、ともかく国家財政というのは所得再配分機能というのを果たしていかなければならないけれども、最近そういう姿をとらなくなってきて、低所得者層ほど重くなっている。そうしてまた、税収の二六・五%が国債保有者への利払いに消えていく、来年度はいよいよ重くなっていく。こういうことを含めて、あるいは公共サービスといっても、医療を本人負担にすれば、結局それで受診制限を受けるのはやはり所得の低い人になるではないか、こういうことを含めて検討しなければならないと思いますが、それについて我が党としても今後具体的な組み替え案を提示していきます。  そこで、前提となる財源の問題として、次に税制の問題に移っていきたいと思います。  ことしの正月の読売新聞に「大手七商社法人税ゼロ」という見出しでニュースが出ました。これは正確に言いますと、五十八年三月期決算で、法人税がゼロじゃなしに、法人税の納付がゼロという意味であります。各社違いがありますが、三菱商事について言うと、五十六年三月からゼロがずっと続いている。ほかの社も似たような状況になっております。そこで、私、きょうこの委員会で取り上げるに先立ちまして、これら税金の納付がゼロであったという各商社に伺いまして、どういうことか伺ったところが、納付ゼロだということは事実であるというお答えが返ってきたわけであります。もちろん、あの新聞の取り上げ方にはいろいろ御意見があるということでありました。  それで、これを事実という前提で、この問題は国民にとって大変わかりにくい問題なのであえて取り上げてきたわけであります。どこがわかりにくいか。何といっても、総合商社といえば世界の総合商社ということでありまして、例えば三菱商事、三井物産、丸紅、伊藤忠、日商岩井の五社の八二年度の売上高は合計五十九兆円です。これは二百三十円で換算すると二千五百六十五億ドルでありますから、八一年のカナダのGNPに近いような、そういう規模になっている。五社の輸出入を見ても、それぞれ我が国全体の輸出の三七%、輸入の五〇%を占める。そのほか大きな三国間貿易を持っている。また、海外投融資は九千八百三十八億円と、この期、前期と比べて一四%もふえている。経常利益も千七百五十二億円で、前期と比べて三四%増、特に三井物産は史上最高ということでありました。  こういう総合商社がなぜ日本の法人税の納付がゼロになるのか。これは大変わかりにくいことでありますが、指摘されてきたことは、外国税額控除制度が利用されていると考えますが、そのとおりですか。これは簡単にお答えいただきたいと思います。

冨尾一郎国税庁調査査察部長

○冨尾政府委員 お答えいたします。  本年一月一日の読売新聞の記事で先生の御指摘のような報道があったことは承知しております。これは、今御指摘のように、商社の場合には外国税額控除制度がございまして、これによって税額を計算いたします結果このようなことになっているという一面がございますが、この外国税額控除制度につきましては、国際的に二重課税を排除するということを目的とした制度でございまして、(工藤(晃)委員「その説明はいいです、後でやりますから」と呼ぶ)それでは、それで、なぜ先生が今おっしゃったように納付税額がゼロになるかという仕組みだけちょっと御説明をさせていただきますと……

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 いや、もうそれは、あとはいいです。外国税額控除制度があるというだけで結構です。  そこで、この制度そのものを検討しなければならないのですが、やはり資料②として「外国税額控除額と法人税額の推移」というのをぜひ見ていただきたいのでありますが、これで見ますと、七二年から八二年の間に大体八・五倍という伸びであります。法人税額に対する比率もほとんど五%になっております。これは算定法人税額でありません。一応納付したものであります。特に、資本金百億円以上の企業の利用が圧倒的に多い。これは九〇%になっており、これら大法人の場合は、法人税額に対し多い年は二〇%近くにも及んでいるという点がこの表からわかるわけであります。そこで、もう一点、制度上の問題で伺いたいのは、これは国税としての法人税に限っているわけでありまして、仮に法人税の納付がゼロの企業があるとすると、やはり地方住民税もゼロになっていることが多いのではないか。これも簡単にお答えいただきたいと思います。

冨尾一郎国税庁調査査察部長

○冨尾政府委員 お答えいたします。  外国税額控除の適用を受けた結果、法人税の税額がゼロになるというケースにおきまして、算出された法人税額よりも控除を受けるべき外国税額が多い場合には、一部法人住民税の方から控除されるという場合もございます。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 そういうことでありますが、そこで、もう少し外国税額控除の問題点に入っていく前に、私の方から「外国税額控除のしくみ」という③の資料をつくりましたので、これに基づいて私の後の質問を進めたいと思いますので、簡単にこれについて述べたいと思います。これはもちろん国税庁から何度も私教わりまして、そして大体こういうことだということでできております。  一つはどういうことであるかというと、まず全体所得というのを世界、国内合わせて千なら千でつかんでしまいます。それで国外所得が幾らあるか。この図の場合は四百、こうなるわけです。そして今度法人税の地方税、その前に法人税ですね、法人税を決め、地方税を決めて、仮に法人税額が四百だとすると、この斜線を引いたところが控除限度額になります。そして、右手に書かれました外国税額がこれだけあるとすると、控除額百六十だけ法人税から引きましょう。なお地方税からも引きましょう。これが全体のことになっておりますが、この図を見てもわかるように、この国外所得というものがともかくふえてくる。これは事業そのものの展開によってふえることもありますし、いろいろ計算上の問題がありますが、ともかくふえると控除限度額がふえて外国税額の控除がふえてしまうということが第一のことから出てきます。  二つ目に、もっとややこしいのは、間接控除という制度がありまして、この下の図でありますが、これは何もある日本の会社の支店とかそういうものではありません。ジョイントベンチャーでいいんです。その場合、フィフティー・フィフティーで持っているとして、外国子会社の所得金額が八百として親会社がこれだけ配当を受けた。これは親会社の益金に算入されます。ところが、この外国法人である子会社が払った法人税額三百二十あるとすると、下の点々線の斜線のところも親会社が払ってもいないのに納付したとしてみなされて、これがやはり控除の対象になるということであります。  三つ目は、もう少しややこしいのでありますが、これは十三カ国との間の租税条約の中にタックス・スペアリング・クレジットというのがありまして、例えば外国企業優遇ということもあるでしょう、三〇%の税率を一〇%にする。例えばそういうときに、払わなかった二〇%分も払ったとみなすみなし税額というのが出てまいります。それはそこへ出た会社の支店とかそういうものだけでなしに、やはりジョイントベンチャーで完全にそこの法人になった場合には親会社が、この右の図ですね、二百四十という配当を受けると、実際に払った法人税額の半分がやはり間接控除になるのに加えてもう一つみなし税額が加わって控除されるという、大体こういう制度になっております。  そこで、ここでぜひ総理にも大蔵大臣にも考えていただきたい問題でありますが、やはり日本企業の直接投資がふえればふえるほど、多国籍企業化が進めば進むほど、この外国税額控除というのがもう急速にふえていってしまうということであります。これはちょうど直接投資の累計でありますが、四十七年度末と五十七年度末と比べますと約八倍ふえておりますが、この数に大体見合って八・五倍もふえてしまった。そして、本格的な拡大期が今始まっているということが言われている。こういうときに、海外への直接投資の本格的な拡大が広がり、しかも財政危機は非常に厳しくなってきているときに、ほっておけばこれがどんどんふえるという問題、これを一体どう見るのか。ただ仕方がないとしてほっておくのかどうか。この問題について大蔵大臣。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 この問題、いわゆる異なる限度額を設けるというようなことにつきましては、本制度の趣旨からいたしますならばこれは適当でないというふうに言わざるを得ないと思います。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 主税局長、何か補足してください。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 今の答弁がちょっとわからない。異なる限度額というのは何ですか。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 主税局長から答えさせます。

梅澤節男大蔵省主税局長

○梅澤政府委員 ただいま大臣の答弁にもございましたように、この外国税額控除制度というのは、国際的な二重課税を排除するということで、各国それぞれ租税条約に基づきまして各国で租税権と申しますか課税権を確定いたしまして、そういたしますと、先ほど委員がおっしゃいましたように全世界所得で課税標準を出し税額をはじくといたしますと、当然外国で稼得した部分については外国が課税権を持っておるわけでございますから、それをそのまま日本でも課税してしまいますとその部分が二重課税になるということで、現在国際的にもこれは確立されたルールでございますけれども、外国税額控除あるいは国外所得の免除制度と、国によってはそれを併用しているところもございますけれども、いずれにいたしましても全部こういう仕組みをもって現在国際的な課税関係は処理されているということでございます。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 今の答弁は不正確なところがあると思いますね。  これはやはり国税庁の中の方で渡辺淑夫さんが書いておりますけれども、これは現行制度というのは、「この場合、課税を受けた外国とわが国との間に租税条約が存在するかどうかは関係がない。租税条約のない外国で課税された場合にも当然に適用がある。」というので、これは国内法に基づいてつくられている制度だ、そういう意味で今の答弁、不正確だと思います。

梅澤節男大蔵省主税局長

○梅澤政府委員 外国税額控除の制度は当然それぞれの国の国内法で決めておるわけでございますけれども、現実の実態は、私どもは今三十四カ国と租税条約を結んでおりますが、条約上でもそれをきちんと確認をしておるということを申し上げたわけでございます。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 それは国内法があるから条約を結ぶときにそこに触れるのは当然だと思いますが、国内法に基づいているということをまずはっきりさせる必要があります。もちろん、さっきのタックス・スペアリング・クレジットの場合にはこれはその中に入ってくるということであります。  そこで、やはり二重課税防止というと、当然のことのように聞こえるわけでありますが、我が国の制度にいろいろもっと検討する余地があるということであります。  それは、一つの点を申し上げますと、地方税を含めて外国税額控除を行っているということです。これはフランス、西ドイツ、イギリス、アメリカは地方税を含めて行っておりません。これはいろいろ説明があると思いますが、おりません。  二つ目。それから二重課税を防止といいますけれども、さっき言いましたように、間接控除一の場合、外国子会社の払った外国法人税の一定部分を親会社が払ったとみなすわけですよ、親会社が払ってもないのに。親会社が払ったものを支店とかが控除を受けるというならまだ二重課税防止というのが成り立つかもしれませんけれども、外国の法人となったジョイントベンチャーがあって、そこの払った法人課税を親企業が払ったとみなすというわけでありますから、これは厳密に言うと二重課税防止ということが成り立たない。それからまた、タックス・スペアリング・クレジットに至っては、実際に払ってない税額まで払ったとみなすわけでありますから。  そういう点で、私はここで次のような提案をしたいわけで、これに対して御答弁願いたいわけでありますけれども、それはやはり今外国税額控除がもう既に四千億円を超えて、地方税を合わせると恐らく五千億円を超えるという規模でしょう。竹下大蔵大臣、もう少しこの財源が欲しいような顔をしてお答えになるかと思いましたけれども、これがどんどんふえて、ほっておけば一兆円近くなるかもしれない。超えるかもしれない。こういうことに対して、特に今の財源がどんどん厳しくなっている折から、この問題、少しは検討するという態度が必要ではないでしょうか。  それで具体的な点として言えば、地方税を外してはどうか。これは三十七年度改正でこれが入ってきたので、昔からあったわけではありません。二つ目に、間接控除も再検討する必要がありますし、タックス・スペアリング・クレジットは、租税条約ありますけれども、これは実際の運用面での再検討ということをやる必要がある、そして全体として外国税額控除制度を残すとしても、ある程度この上限を抑えるという考え方をとらないと、どんどんふえていってしまう。先ほど言いましたように、三菱商事が、最も多国籍企業化を進めている大商社が、三年間続いて法人税全く払わないという異常な事態、これはほっておくとどんどん広がってしまいます。それを防ぐためにも、一応ある程度控除を受けるとしても、ある上限を設けるという考え方はあっていいのじゃないでしょうか。

梅澤節男大蔵省主税局長

○梅澤政府委員 二、三の点の御指摘があったのでございますが、順次申し上げますと、地方税を税額控除の対象にしているのはどうかという議論でございます。ただいま御指摘になられましたように、この地方税を対象にいたしましたのは三十八年でございます。この制度ができましたのが実は昭和二十八年でございますけれども、三十七、八年ごろの経済の国際化、資本の自由化等を背景にいたしまして、先進国並みの税額控除制度を整えたのが実は三十七、八年でございます。各国によって、地方税を含めていないところがあるではないかという御指摘でございますけれども、例えば英国とかフランスはそもそも地方税というのはないわけでございます。いずれにいたしましてもこの考え方は、企業が、日本の場合で申し上げますと、国税、地方税を含めまして、実効税負担というものがございますが、その部分を限度にして、外国で受けた課税分については二重課税にならないように調整しようという考え方でございますので、この地方税を外すということは、制度の本旨にかんがみまして、私ども考えられないというふうに思っております。  それから間接税額控除の問題でございますが、これも昭和三十七、八年のころに制度として完備されたものでございまして、諸外国いずれもこの制度を持っております。先進国の税制におきましては、法人間の配当はそもそも課税をしないという基本的な原則でございまして、子会社と親会社の関係におきましても、国内法の関係でも、これは課税にならないわけでございます。もしこれを税額控除を認めないということにいたしますと、子会社で得た利益、留保利益が親会社へ配当として還流しない、つまりこれは結局そういう面で経済なり資金の交流を阻害するということで、各国ともこの制度を採用しておるということで、これをやめるわけにはいかないということでございます。  それからタックス・スペアリングの問題でございますけれども、これは先生御案内のように、租税条約には二つのタイプがございまして、OECDのタイプとECOSOCのタイプと二つございます。先進国同士のものはOECDモデルでございまして、これは先進国相互間で結ぶものでございますから、タックス・スペアリングの制度はないわけでございますけれども、発展途上国と条約を結ぶ場合には、これは発展途上国の非常に強い要請がござまして、発展途上国が先進企業を誘致する場合に、課税上、税率を軽減したり、あるいは非課税にするという措置を講ずる場合がございます。この場合に、そのまま放置いたしますと、発展途上国が課税を免除した部分を、実は進出しております先進国側の課税で全部吸収してしまうということになりますので、発展途上国のそういった租税政策が生きないということで、私ども発展途上国と租税条約を結ぶ場合に、発展途上国側が一番関心を持つのはこのタックス・スペアリングの制度でございまして、先般締結いたしました中国との租税条約でも、経済協力上の観点から合理的な基準の範囲内でこのタックス・スペアリングを我が国は認めておるわけでございます。  最後に、限度額を下げたらどうかということでございますけれども、これは先ほども申し上げました租税条約で、私ども現在三十四カ国と租税条約を結んでおるわけでございますけれども、それぞれの条約におきまして税額控除の限度額をそれぞれの国の実効負担の税額の限度でお互いに認め合うという約束をしておりますので、我が国が勝手に引き下げるわけにはいかないということでございます。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 外国税額控除がこのように急速にふえていって、そしてこれを利用しているのは本当に少数の資本金百億円以上の企業だけである。こういうことで、しかも財政の収支のバランスを見れば、もう中期の展望を見てもおわかりのようなありさまになっているときに、こういうやはり税制の見直し――これはもう決まったものだ、見直しする、すると言うけれども、どうも大きな企業の利益にかかわるところはさっぱり見直しが進まない、こういう印象を強く受けますが、あくまでこれは私の提案として残しておきますが、もう一つ、一点だけ伺っておきたいことがあります。  それは、企業のこの制度の悪用に対して、税の調査体制が一体どうなっているのだろうか。これも国税庁から伺ったところが、資本金四十億円以上の企業に対しての担当者は、東京、大阪、名古屋で二百五十名おられるけれども、海外調査に出かけられるのは年間三十人から四十人ぐらいである。今、大きな商社とこをとりましても海外の支店、事務所あるいは現地法人、あるいはジョイントベンチャー、いろいろな事業所というのは少なくとも二百くらい持っていて、数十カ国に配置されている。そういう数がまたどんどんふえていっている、どういう折であります。しかも実際に調査に行っても、取引相手の外国銀行あるいは外国の会社から、ちょうど国内でやるような取り調べ、調査というのができないのは当然でありますから、事実上これは制度として見直し、かなり厳格にやらないと相当抜けていくのではないかと思いますが、その調査体制の問題についてだけ伺いたいと思います。それに限って説明していただきたいと思います。

冨尾一郎国税庁調査査察部長

○冨尾政府委員 お答えいたします。  大会社の税務調査につきましては、現在重点的に、例えば一社当たり数百人日という事務豊を投入して重点的な調査を行っておりますが、この中でも特に海外関係の不正取引がないかという点に目を光らした調査をやっております。  なお、私どもとしては国内の調査だけではどうしても解明できないものにつきましては、海外支店もしくは日本から一〇〇%出資した海外子会社に対しましては直接調査官を派遣するなどしておりますし、また、必要に応じ外国政府に対しても情報提供の依頼を租税条約に基づいて行って、この回答に基づく処理を行うなど、そういう海外取引の実態の解明には大きな力を注ぎながら調査を行っている、そういう体制をとっている次第でございます。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 国会の答弁ではそう言われますが、直接いろいろ伺いますと、実際はお手上げだというのが本当です。それはもう一商社に書類だけでもこんなに出て、そして向こうの、裏からの調査もできないという状態なんです。そういうことで共産党、こういう問題を取り上げますが、これはただ、大企業性悪説だとか、そういうものではありません。大きな企業が社会的な存在となり、国際的な存在になっているだけにふさわしい責任というものを持たせなければならないし、それから、現に、今の税制の見直しということを考えたとき、真っ先にこういうところから見なければならないという立場であります。  なお、この問題につきましては、タックスヘーブンでの課税の問題だとか、あるいは新しい外為法のもとでかなりおかしな調整金の移動が押さえられないというような問題もありますが、これらの問題、また別の機会に追及することとしまして、次の問題に移りたいと思います。  さて、竹下大蔵大臣に対しまして、四年前、私はここで六十年度から第二の財政危機がやってくるのではないか、そして、だから今から徹底的に財政、税制の仕組みにメスを入れる必要があるし、当時五三中業といった中期業務見積もりが事実上軍備増強計画になっているから、中止を求めるようなことを述べました。実は、私も、その後議席を失いまして、今回返り咲いたものでありますので、四年ぶりの竹下さんとの対面ということになりましたけれども、しかし、この第二の財政危機という問題は、今度の「財政の中期展望」を見ても、中期的計算を見ても、もう泥沼になったような強い印象さえ受けるわけであります。そして、大変これは重大な問題でありますが、特に大蔵大臣が借換債の発行を行わないという従来の方針は、遺憾ながら見直さざるを得ないということを言われたわけであります。従来、特例債発行のたびに、これは昭和五十年度から九年連続でありますが、借りかえやりませんという法案を国会へ通してきたはずでありますが、借りかえをやりますということになると、これは財政制度の大変大きな転換になるのではないか。そこで、金繰りのためなら何をやってもいいというわけにはいかないと思います。その場限り、その場しのぎはその後に一属大きな災いをもたらすということも考えなければならない。  そこで、この特例公債の借りかえということをやるとすると、我が国の財政、経済、政治にどういう影響を与えるだろうか、この問題は大蔵大臣の御返答をお願いします。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 情勢の変化というものをまずどう認識しているかというところから申し上げますならば、工藤さんとここで論議をしたその五十五年度予算というのは、前年度、それまでがおおむね一八%弱一般歳出が伸びておる、それを一〇%プラスでシーリングを決めたという段階であります。工藤さんのその六十年以後の第二の財政危機というのは、いわゆる償還期がやってくるということが前提に立っておったと私なりに記憶をしております。そういうことから考えてみると、その後の五十六年、五十七年、これがやはり国際的な不況の中において税収も一番落ち込んで非常に苦しい状態であったと思うのであります。にもかかわらず、当時財政再建という旗のもとに次は七・五%プラスシーリング、それからゼロシーリング、マイナス五、マイナス一〇、こう至ってきたわけであります。したがって、その予期せざる状態に対して対応するぎりぎりの選択が今日ではなかろうか。  そこで、今度は公債政策、管理政策の問題に入ると思うのでありますが、言ってみれば、我々は借りかえも努力してできるだけしないようにしようということで今度の法律案もお願いするわけではございますが、借りかえをするということは、言ってみれば新たなる施策を行うためのいわばこれは新発債ではなく、現金償還をするための手段として借りかえを行う、こういうことになるわけであります。だから、考え方によれば、今まで既存の出ております債券、国債というものは、一応今日時点における国民の貯蓄の中に吸収されておる。したがって、新発債というのは、これから伸びていくであろう貯蓄に対して、これを対象として発行するわけでございますから、総合して、私はこういう厳しいときには、やはり既発債の償還に際しては、今日までの金融行政の中に埋め込まれておるという前提で御理解をいただかなければならぬことである。ただ、御指摘のように、これはやむを得ざる措置であるという認識は十分持っております。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 財政法四条は、申すまでもなく「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」ということになっている。そうであるからこそ、特例公債を年々出したことは四条に穴をあけてきたことというふうに見られたわけでありますが、それでも償還は借りかえをやらないということで来ましたね。今度の場合はほっておけば、このままでいくならば、当然一般会計からの国債整理基金への予算繰り入れで賄うべきところを、国債整理基金が借換借を発行するということになると、事実上財源のための公債発行になるのではないか。こうなると、完全に財政法四条というのは骨抜きにされてしまうのじゃないかと思いますが、その辺竹下大蔵大臣、どうでしょうか。

山口光秀大蔵省主計局長

○山口(光)政府委員 借換債の発行を検討せざるを得ない状況に立ち入りましたことにつきましては、ただいま大臣から申し上げたとおりでございますが、借換債を発行するケースと、発行しないケースとの違いというのは、私どもが仮定計算例というのをお出しいたしましたが、いずれのケースでもいいのでございますが、aケースとbケースで比べていただきますと、例えば六十五年度で見ますと、五兆円ぐらい要調整額が違うわけでございます。したがいまして、借換債を発行しなければ五兆円という要調整額、つまり歳入歳出のギャップでございますが、これを歳入歳出の両面のあらゆる項目にわたって、努力を重ねて埋めなければならないわけでございまして、借換債を発行するケースにいたしましても、十兆円という大きな要調整額がある上に、さらに五兆円ということで、いかに大変かということでございます…・

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 財政法四条が骨抜きになるかどうかということを聞いているのですから、委員長、固いたことに答えてください。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 工藤君の質問は、借換債を発行することが財政法第四条に違反しやしないかという趣旨の質問ですから、事実関係よりも的確にひとつ答えてください。

山口光秀大蔵省主計局長

○山口(光)政府委員 丁寧に御説明しようと思いましてお話し申し上げた次第でございますが、今のような状況でございます。  そこで、借換債をそれでは発行するということになりますと、これは財政法の規定によるのではございませんで、国債整理基金特別会計法の規定によるものでございます。現に建設公債についてはそういう方式をとっているわけでございますので……(工藤(晃)委員「建設公債は財政法で認められているんだから、四条で」と呼ぶ)建設公債は財政法で認められている。それでは特例債はどうか。毎年度財政特例法を出してお認めいただいているわけでございます。  ただ、財政特例法につきましては、従来借りかえ禁止規定を入れておった。今度はそれを改めまして努力規定にする。その結果借換債も発行し得ることになる。法律的に言えばどういうことになるか。特別会計法の規定によって発行するということでございますから、財政法四条との関係は何ら矛盾がございません。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 全くそういうのは言い逃れということでありますが、きょう参考人として前川日銀総裁がおいでになっていると思いますが、前川総裁にお伺いしたいと思います。  きょうは大変ありがとうございました。またお忙しいと思いますので、私の質問もごく縮めて三点にわたって、それをまとめてお答え願いたいと思います。  それで日銀の立場から、借換債を発行するようになると金融上どういう問題が考えられるかということであります。  私もここへ持ってきておりますが、例えば三井銀行の「調査月報」の昨年の二月号あるいは「東京銀行月報」の昨年の十二月号は、そろってこの問題を検討しておりますけれども、三井銀行の場合、二十兆円もの国債発行、これは借換債を含めてですね、円滑に消化することはシンジケート団引き受け方式だけでは限界があると。それから東京銀行の方は、借換債をすべて中長期債発行でやるとすれば、市場規模から見てかなり困難だとして、やはりクラウディングアウトになっていくのではないかという心配をそろってあらわしていると思います。これまでも、いつの時期も同じではありませんが、国債大量発行時代になってから事業債の発行が困難になったというような形でのクラウディングアウトはありましたが、今度はこの問題で一層強まるという懸念がされております。この点をどうごらんになるかが一点であります。  二つ目は、そういうことでこれらの調査月報は、恐らくこれは大蔵省で検討しているのだと思いますが、一年未満の新型短期公債の公募入札発行を検討しているということを挙げまして、そして新型の短期国債が出てくるという、それでいろいろ市場での消化の困難というのを解決するということを図っているということでありますが、これは従来の大蔵省証券などの六十日の短期証券とは違った性格になると思います。違った性格になり、そして恐らく公募入札ということでやろうとするわけでありますが、こういう公募入札ということが事実上消化困難ということになると、これまでは政府短期証券などは日銀の引き受けということをやっておりましたけれども、新型のこういう短期国債については、日銀が引き受けするということは絶対ないと考えますが、それでよろしいかどうかということであります。  三つ目の点としては、いずれにせよ、こういうものが出てきますと、短期国債市場が広がる。それから、アメリカ側も日本の預金金利の自由化ということを非常に求めているということをあわせまして、預金金利の自由化というのがこれをきっかけに進んでしまうのではないか。そうすると、これは金融界にとっても大変大きな波乱をいろいろもたらすことだと思いますが、この三つの点について、お考えになっていることをぜひ伺いたいと思います。

前川春雄日本銀行総裁

○前川参考人 借換債が大量に市場に出るということで、金融上どういう問題があるかという点でございます。  新規債と違いまして、借換債は旧債が償還になるということでございまするので、借換債は発行されまするけれども、それに見合うものが償還されておるということがございます。したがいまして、金融市場に対しましては、資金総量としては、ネットではプラス・マイナス・ゼロになるということがございます。その点で新規債とは金融市場に対する影響は違うということは言えるわけでございますが、それは資金総量の問題でございまして、個別に旧債の保有者が自動的に借換債を引き受けるということではございませんので、どうしても資金の偏在が起こるということがございます。したがいまして、それだけ金融市場に対する影響が出てくるということは否定できないところであろうというふうに思います。したがいまして、そういう事態に対応するためには、新規債、借換債の発行の条件を、市場実勢に合わせた、その市場のニーズに合ったようなものにするということが必要であろう、条件といい、また国債の多様性といい、種類といい、そういう考慮が必要であろうかというふうに思います。  それから第二の御質問は、一年未満の短期債というものが発行されるというが、その点について日本銀行はどういうふうに考えるかという御質問であったと思います。  一年未満の短期債が出るのかどうか、私も詳しいことは大蔵当局の意図を聞いておりませんのでわかりませんが、私どもは財政法上、年度内の歳入をもって償還される大蔵省証券、これは引き受けますけれども、それ以外の国債、公債については、財政法五条で引き受けを禁止されております。日本銀行が持っておりまする分の借換債については引き受けることが特例をもって認められておりまするけれども、それ以外のものは引き受けをいたしません。そういう意味で、日本銀行はこれを引き受けるつもりはございません。  第三番目に、短期の国債市場がだんだん広がってくるということから、預金金利の自由化ということにもひいては及ぶのではないかという御質問がございました。  預金金利の自由化は、金利の自由化と金融の自由化の大きな柱として、それ自体私どもが推進しておるところでございます。そういう意味で、これからの国際的な金融市場、金融情勢に対応するためにも、預金金利の自由化ということによる金利の自由化ということをどうしても図っていかなければならないというふうに考えておるわけでございまして、短期の国債市場が拡大することによって直接預金金利の自由化ということに結びつく、間接的にはもちろん影響がございまするけれども、そういう種類のものではございません。私ども自身は、金融政策の一つの大きな柱として、預金金利の自由化をぜひ進めていきたいというふうに考えております。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 どうもありがとうございました。参考人への質問を終わらせていただきます。  続いて、財政法四条に触れていないということを言いましたが、これは私も、財政法四条を直接政府が変えようとしているというようなことを言っているわけではありませんから、問題は、解釈の問題として骨抜きになるのではないかという危惧をあらわしたわけでありますが、一つだけここで確認しておきたいことは、財政法四条がつくられた歴史的経過は何であったか。  これは憲法の九条の中の戦争放棄の規定の裏書保証だと言われていて、戦争危険の防止規定としてつくられたということになっております。それは当時の解説書を見ましても、大蔵省主計局の平井平治著「財政法逐条解説」の中にも、このことは大変はっきり書いてありまして、「戦争危険の防止については、戦争と公債が如何に密接不離の関係にあるかは、各国の歴史をひもとくまでもなく、我が国の歴史を観ても公債なくして戦争の計画遂行の不可能であったことを考察すれば明らかである、又我が国の昭和七年度以来の公債を仮に国会が認めなかったとするならば、現在の我が国は如何になっていたかいわずして明らかである。換言するならば公債のないところに戦争はないと断言し得るのである、従って、本条は又憲法の戦争放棄の規定を裏書保証せんとするものであるともいい得る。」これは、当時大蔵省の説明としてこうしてつくられたものであります。  このことを見ても、四条がそのまま消えていないとか、いわゆる法制上矛盾しないでつくっていると言いますけれども、事実上一般会計から予算繰り入れで賄わなければならないのを、こちらの特別会計の方が借金をしてそうしてかわりに払っていくというのは、やはり新たに財源をひねり出したということになりますし、それこそ公債発行の禁止ということがまさにずぶずぶの状態になってくるということ。そして、時あたかも、今中曽根内閣の軍拡政策が進められているということを考えますと、国民にとっては非常に不安に感じるわけであります。  そういう点で、この財政法四条の歴史的な経過、そういうこととしてできたということを、竹下大蔵大臣、どのようにお考えになっおりますか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 これは、同条が戦争危険の防止をねらいとしたものであるという説は、戦前の我が国において巨額な公債の発行による軍費調達を許したことが戦争の遂行、拡大を支える一因となったという認識から、無原則かつ歯どめのない借金財政を戒めるとの意味では、その限りにおいては理解し得るところでございますけれども、やはりこの趣旨そのものはあくまでも健全財政のための財政処理の原則を明定したものでありまして、戦争と関係がない。  結局、今度またお願いいたしますところの外国市場での公債発行問題等から見ますと、かつての時代と今日これほど国際化した状態とが違うと同じように、財政なかんずくその四条が、今の時代で防衛費なり戦争とこれが直につながり得るという認識は適当でないというふうに思います。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 私は、すぐに、直につながるということを言っておりません。私が伺ったのは、今はどう解釈するかというのでなしに、当時財政法四条がつくられるときに、どういう認識で、また国会におけるどういういろいろな説明でこれがつくられたかということで、こういう説明においてこれが日本で成立したという、そのいきさつを忘れてはいけませんよということを言っているわけであります。  そういうことで、財政問題でもう一遍だけはっきりさしておきたいわけでありますが、今言ったような公債発行の制限というのが事実上ずぶずぶになるようなことになっていく、そして同時に軍備の拡張の方はかなり急速に進むということでは、これは財政再建を進めると言っても、事実上できないのではないか、こう考えます。それで、財政再建ということを言う以上、今、財政再建でなしに財政改革だと言いますが、ともかく再建ということを目指す以上、その条件づくりとして、これだけは聖域だというようなものを設けていたらできないと思います。さっき言った、大企業が大きな利益を得ている税制の問題もしかりであります。大企業に対する補助金の問題もいろいろあります。それとともに、例えば昭和五十五年から五十九年を見ても、防衛関係費は三一・六%も伸びた。社会保障は一三・五、文教は六・八。年率七・一で防衛関係費が伸びる、そしてまた後年度負担は年率一四%で伸びる。こういうことは一方ではもう聖域にして当然のこととしている。しかし、財政破綻というのはますます泥沼みたいになっていく。そして結局そういうことを続ければしわ寄せは国民にかかってくるわけであります。  だから私は、もう一度このことを総理にもはっきりさしていただきたいのでありますが、本当にこの財政の破綻の問題ということを真剣に考えるならば、やはり軍事費の削減とか軍縮とか考えなきゃいけない。もちろん日本共産党の立場は、ここで不破委員長からも述べましたように、今の軍拡というのが国民の安全、生命を守るものになっていないという立場からの要求でありますが、同時にさっき言った第二の財政危機がやってくる。軍事費だけは年々七%という調子で伸びていくという、こういうことをやったら、これはもう国の財政としても体をなさなくなっていく。現に中期展望を見ても、来年の年度を見ますと、税金のうちの三十数%が国債費に充てられる。そしてまた、いわゆる防衛関係費を合わせますと四一%にもなる。税金の四一%がそういう方向に使われるというような財政というのは、本当に崩れていく第一歩になりますので、その意味から、財政を守る、財政再建という意味からも軍拡政策をやめるべきである。このことを強く求めまして、そして私は次の質問に移りたいと思います。  さて、障害者の問題として問題を取り上げます。  最初の問題は、肺結核による低肺機能あるいは肺結核による呼吸不全症対策について伺いたいと思います。  厚生大臣に伺いたいと思いますが、昨年七月、十一月にNHK名古屋が、そしてことしの二月四日にNHKの土曜リポートがこの結核後遺症の問題を取り上げたところが大変大きな反響があったと聞きます。NHKにもいろいろ問い合わせが殺到しましたし、また東名古屋病院にも殺到しました。また、東京にも低肺機能者の運動をやっておられるもみじ会というところがありますが、ここにも殺到しております。聞くところによりますと、厚生省にもこういう問い合わせがたくさん来たと聞いております。  実は、私もふだん行きますところの東京都下の清瀬、東大和、武蔵村山、東村山にはもとの結核病院あるいは国立療養所がありまして、その近くに患者が大勢お住まいです。その中には低肺機能者の方が大変ありますが、私たち、何度聞いても、何といいますか、本当に長い間苦しい日々を送ってきたということを感じるわけであります。ちょっと友達とおしゃべりをしていても呼吸困難になってしまう。それから絶えず生命の危険にさらされる。特に十一月から三月の季節になりますと、うっかり風邪を引いたらそれがもとで命取りになってしまう。ですから部属の湿度とか温度とか絶えず気を配っておらなければならないし、また、冬の寒いときは、風邪を引くのが心配で買い物にも行けなくなるという、そこで仲間が助け合うというようなこともやってこられたわけであります。  しかし、この問題を今、国会で大きく私が取り上げなければならないというふうに考えたのは、戦争中それから戦後、結核患者が我が国で大変ふえまして、そしていろいろな治療が行われたと思います。肺の切除の手術なども行われましたが、今では結核は治る病気だということになってきました。そこで、今どういうことが起きているかといいますと、そのときの患者、これは何も手術を受けた方だけじゃありません、その方が、自分では元気だと思っていたところが、五十歳、六十歳過ぎて体力が下り坂になったときに、この低肺機能というのがあらわれるようになってきた。ところが、それに対して全体として医療保険の体制を見ますと、結核への関心が薄れているといいますか、もっと言いますと、結核後道症としての低肺機能、これに対する対応の体制というのがとられないで、結核はもう過ぎ去ったという形で来てしまいました。もちろん、熱心に一貫してこれを取り上げてきたところはあります。しかし、全体としてのことを私、言っているわけであります。そういうときに、この低肺機能者の方がいろいろありまして、一一九番で救急病院へ送られるときも、必ずしも適切な措置がとられないために、落とさなくてもいい命を落とすという結果も出てきているわけであります。そうであるからこそ、このNHKの放送があったとき、たちまち大変な反響が来て、一体どこに相談しに行ったらいいのか、来たのだと思います。  そういうことで、厚生大臣にまず伺いたいことは、全国にどれだけこういう患者がいるのか、厚生省、今調査をしたのか、これからする予定なのか、その点について伺いたいと思います。

渡部恒三自由民主党・新自由国民連合厚生大臣

○渡部国務大臣 御指摘の問題でありますが、現在我が国には約四万人から五万人の低肺機能(呼吸不全)患者がおり、そのうち約半数が肺結核によるものと推定をされております。  また、新規発生は年間三千人から約四千人であり、そのうち約二千人が肺結核によるものと推定されております。  厚生省は、結核問題は終わったなどとは全く考えておりませんで、極めて重要な問題だと思ってこれに取り組んでおります。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 そうはいっても実際にこういう放送をすると大勢の方が問い合わせてくる。名古屋でやられたのですが、福井県からも東名古屋病院にやってくる、こういう状態になっているわけですね。ですから、忘れたわけではないと言われるけれども、事実上そういう体制が弱まっていることは、これははっきりしているわけで、そこで、私の提案として、すぐにやれること、やるべきこととしてぜひ厚生省でこういうことをやってほしいし、これは県の衛生部にもこういう形で伝えていただきたいということがあります。  それは、各府県で、各地域にいる患者の方が相談できる窓口を何らかの形でつくっていただきたいということであります。さっき言ったように、この放送をきっかけに、それこそ東北からもどこからも、これは名古屋でやった放送なのに東北からも問い合わせが来るというような状況でありますから、身近に相談するところがないということが問題になっております。  二つ目の問題としまして、この低肺機能の問題として大変大事なのは、一つは日常の健康の管理になっております。そういうときに、例えば保健所だとかあるいは国立病院、国立療養所、そういうところが積極的にその低肺機能者に対して日常の健康管理をやる体制をぜひとるべきではないかということであります。例えば名古陸市の千種保健所の非常に積極的な活動、患者に対して健康手帳を出して、もし倒れたとき、これを見たら救急車の方もこういう手当てをしなければならないとわかるような、そういうことまでやっているわけであります。  それから三つ目のこととして、しかし同時に、先ほど言いましたように風邪も引けないようなことでありますから、急性増悪になったとき、緊急入院のできるIRCU室を持った病院、これは国立療養所にありますが、それをもっとふやすようにしていただきたい。  最後に、酸素療法の有効性ということから、在宅でもこれをやれるようにする必要がありますが、ボンベをそろえて酸素を買ってということになりますと月何万もかかる。これに対する補助、助成を考えていただきたいが、以上の具体的な提案、ぜひ厚生省としてとるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

渡部恒三自由民主党・新自由国民連合厚生大臣

○渡部国務大臣 先生御指摘の問題、これは患者にとって大変大事な問題ですので、できるだけその趣旨に沿って処置させてまいりたいと思いますが、専門的な個々の問題については政府委員から答弁をさせたいと思います。

大池眞澄厚生省公衆衛生局長

○大池政府委員 ただいまのお話の中で幾つかの御提案があったわけでございますが、呼吸器あるいは肺結核、こういったものに取り組む専門的な部門を有している医療機関におきましては、先生の御指摘のようなことは当然治療の一環として配慮が加えられているわけでございましょうし、必要な療養指導が行われておるということを期待するわけでございますが、地域の問題としていろいろそういう御不安の方に相談に乗るという点については、保健所も本来結核対策というようなことで各種の相談にも応じ、また必要な訪問指導も行うという業務を現在も行っているわけでございますが、その一環として必要な配慮を行っていくことは大変結構だと思います。  それから、家庭における酸素というようなお話もございましたが、これはかなり専門的に御論議がある分野であろうかと存ずるわけでございます。これが治療の一環として行われるものでございますと、あくまでも主治医の的確な医学的管理のもとで行われる必要があるのは当然でございます。治療をほかで、そういうようなことが医師の管理でない形で行われるということは、これはちょっと問題があろうかと思うのでございまして、あくまでも主治医の管理のもとに通常は医療機関において行われるわけでございます。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 まあこの問題についてもっといろいろ伺いたいことがありますが、しかしこのほか身体障害者福祉法の内容をすべての障害者に適用するとか、いろいろ多くの問題がありますが、ここで小沢和秋委員の方から関連質問がありますので、委員長によろしくお願いします。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 この際、小沢和秋君より関連質疑の申し出があります。工藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小沢和秋君。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 私は、一月十八日に起こりました三井三池有明鉱の大災害の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  御存じのとおり、この大災害で八十三名のとうとい生命が奪われたわけであります。昭和三十八年に、この三井三池では戦後最大の災害が発生いたしまして、四百五十八名の方が犠牲になられたわけでありますけれども、その同じ三池でまたもこのような大災害を引き起こしたということについて、私は、会社、またこの監督の責任のある政府に対して厳しい怒りの抗議をしなければならないと思うわけであります。  私は事故直後に大牟田に飛びまして、その後、党の有明鉱の災害対策本部長にもなりまして、この大牟田には前後四回入ったわけでありまして、いろいろお見舞いやあるいはまた調査などをしてまいりましたけれども、そういう中で、今回の災害が人災であるということを痛感させられたわけであります。  ところで、私は総理にまず質問したいと思うのですが……。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 いますぐ参りますから、どうぞ、時間がないですから。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 そうですか。では、ちょっと待ちましょう。その間、時間に勘定しないでくださいよ。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 通産大臣もいますから、どうぞひとつ。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 いやいや、先に総理にまず開かなきゃこれはちょっと話ができないです。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 余り形式にこだわらないでやってください、ひとつ。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 ちょっと私も待ちますよ、武士の情けで。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 もう少し弾力的にできませんか。やってください、通産大臣もいますし、三池の災害のこと。――小沢君、これには書いてないですよ、総理は。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 そんなことないですよ。きのう私は事前レクでちゃんと総理に二、三回質問すると言ってあるのですから。それは私ははっきり言ってありますよ。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 小沢君。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 最初に総理に御質問したいと思って待っておりました。まあ生理現象だそうですからしようがないと思いますけれども。  総理は、先日からこの有明鉱の大災害につきまして、大変遺憾だということを何遍も言われたわけはすけれども、私は、国の最高責任者としての反省が本当ににじんだ発言だというふうに、率直に言って聞こえないわけであります。今までも、戦後何遍も大災害が繰り返されてきました。本当に残念なことです。私が調べてみますと、いわゆる石炭産業の大合理化が始まったころから今日までというのをざっと調べてみても、十名以上の方が亡くなられたという大災審だけでも、二十回からあるんですね。そういう関係で亡くなられた方だけで千三百名からおられる。だから、恐らく戦後の犠牲者の総数というのを調べてみたら数千名になるだろうと思うのですけれども、こういうような大災害が起こるたびごとに、遺憾だと言うことが繰り返されてきているんです。  私、調べてみたのですけれども、二年余り前に、北炭夕張で九十三名が亡くなられた、あの大事故のときにも、時の鈴木総理は、保安第一で今後進めていかなければならないというふうに発言されて、石炭関係の鉱山については総点検をいたしたいというようなことまで約束をされておるわけです。本当に保安第一ということがこの災害を契機にして確立されておったら、私は今回のような大事故はなくなっておったのじゃないか、そういうふうに思われてなりません。ですから、総理が遺憾だ、遺憾だというふうに言われるけれども、今までそういうふうに遺憾だと言われ、いろいろ改善を約束されてきながら、今回またしてもこのように繰り返された原因はどこにあるのか、その点について総理がどう反省されているのかということを明確にしていただかないと、私はもう今度は繰り返されないだろうというふうに国民が納得することはできないのじゃないかと思うのです。まずどうしてもこれは総理にお答え願いたい。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 とうとい人命を失いまして、御遺族の皆様方にも、あるいはお亡くなりになった皆様方にも本当に心から御冥福をお祈り申し上げ、そして政府といたしましても、こういう事態を繰り返さないようにお誓いしなければいけないと思っておるところであります。  原因は合いろいろ調査中でございますが、有明鉱は日本の炭鉱の中でも最も近代設備を持ったものであると言われておったようですが、新聞報道の伝えるところによりますれば、まだ原因はよくわかりませんけれども、注意すればあるいは予防できたことがあったのではないかというふうに、新聞報道を読んだ限りでは感ぜられます。そういう意味において、機械に安心し過ぎたとか頼り過ぎたとかという点があって、人間による点検を少しずさんにした点があったのではないかというふうに私自体は感じております。いずれこれらは調査の結果明らかになることであろうと思います。  政府は、厳しい行政改革の中にも、鉱山保安関係の技術者は減員をしないように、むしろできるだけふやす努力をして、事務官を減らしても技術官はふやしている。そういう努力をして今までやってきたところでございます。今回の事態は、まことに残念な、申しわけない事態でありまして、繰り返してはならないと思っております。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 今の総理のお答えでは、私はまだはっきりしないと思うのですが、二年前の夕張の大災害のときに、もう二度とこれを繰り返さないためには、保安第一主義に徹するように今後しなければいかぬというふうに時の鈴木総理が約束をされた、このことというのは、本当にはその後の鉱山保安行政の中で貫かれてこなかったのではないか。この点を私は明確に反省される必要があるのじゃないかということを申し上げているのですが、いかがですか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 鉱山保安行政をなおざりにしてきたわけではございません。ただいま申し上げましたように、行政改革で人員を減らしている中でも、そちらの方の専門家は減らさないように、むしろふやすように努力をしてきておる現状でありまして、決してなおざりにしておるわけではございません。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 それでは、私が、さっきも申し上げたのですが、ここのところ四回ほど大牟田にも参りましていろいろ調査をしてきた、その中でいかに保安がなおざりにされて今度の災害が起こったかということについて、一、二ですけれども申し上げてみたいと思うのです。  私の一番驚いたのは、火元になりました十番と言われるベルトコンベヤーのところに、当然配置されておるべきいわゆるコンベヤーの当番の人が当日はいなかったということです。これは会社も認めているわけです。ところが、このベルトコンベヤーというのは、かつて北族平和鉱で坑内火災を起こして三十一名ものとうとい命を奪ったというようなものでありまして、ですからこれは当然危険なものとして重視をしなければならないはずのものだったと思うのです。ところが、そこの部分について当日全く人を配置していなかった。だから、発見が手おくれになってしまったわけです。私がその後さらに調べてみたら、当日この十番のベルトに人が配置されていなかっただけでなく、どうもそこはずっと無人になっておったようであるし、さらにその隣接の十一、十二、十三というようなベルトもあるのですけれども、ここは会社は何も言いませんけれども、第一発見者がそっちの方からずっと走ってきたというような状況から考えて、そこのところも無人であったとしか考えられないのですね。こういう危険なベルトコンベヤーについて、かつて三十一名もの方が北炭平和鉱で亡くなったというような苦い経験のあるこのベルトコンベヤーのところが、もうほとんど無人状態になってきている。かつてはベルトコンベヤーというのは一台に一人配置をされておったというような時代もあったそうです。その後どんどんどんどん人減らしがこういう部門について行われまして、私が、実際調査で大牟田でお会いしたベルトコンベヤーの担当の方は、自分は六台持っているというようなところまで今人減らしがいっている。そしてとうとうもう恒常的におらないのじゃないかというようなところまでそういう危険な部分について出てきている。共産党は、この前の年末行われました総選挙のときにも、そういうような人減らしの状態を指摘して、これは非常に危険だということをその当時も言っておったのですけれども、それからもう一カ月余りでこういうような大災害になってしまった。だから、こんなような保安に絶対欠かすことのできないような要員をどんどんどんどんそうやって減らして、面接部門にだけ人を集めてくるような結果というのが当然招いた災害ではないかということを私は指摘せざるを得ないわけです。  それから今、機械に頼り過ぎたというような点が言われているようだというふうに総理おっしゃいましたけれども、この点についても、会社は、煙センサーなどは決して万能なものではないということはもう十分承知をしていたはずなんです。今既にお手元に配付してありますけれども、この「技術ダイジェスト」、これは三井石炭鉱業の社内の技術関係者に配られているものです。これの五十八年十二月といいますから、もうまさに災害が起こる直前に発行されました分の巻頭言、一番しょっぱなに、本店の保安部長といいますから、全社でもこの保安関係については最高責任者の方だというふうに思いますけれども、この方が論文を書いております。この中でどういうことを言っているかといいますと、「炭坑の自動化や遠方監視制御、言いかえれば保安生産技術の向上を阻むものはセンサー開発の遅れにあると言っても過言ではない。」つまり、煙感知器のようなものがセンサーというふうに言われておるわけですけれども、こういうようなものがコンピューターなどの技術に比べると非常におくれていて信頼性に欠けているということを、会社の責任ある幹部の人が社内誌に書いておるのです。だから会社は、人を減らしてそういうセンサーをつけたからいいと思ってなかったはずなんですよ、本当は。ところが、それを理由にしてどんどん人減らしをやっておったようですね。それで、いよいよこういう事件が起こってしまったら、いや、せっかくつけたセンサーが効かなかったようだなんというようなことを言っているけれども、私はこれは、会社はちゃんと知っていてやったとしか言いようがない、非常に悪質な行為だというふうに言わざるを得ないと思うのです。  そこでお尋ねをしたいと思うのですけれども、こういうように保安を軽視して、間接部門、保安の大事なところに配置をすべき要員などをどんどん減らしておる。無人化の状態のところも出てきておる。これは当然監督官が月に一度は立入検査をすることになっておるわけですから、こういうようなことは当然気がつかなければならなかったはずです。保安第一ということで監督官が日を光らしておったら、これを是正させてなければならなかったはずだと思うのですよ。ところが、そういう是正させた風がないように私には思われるわけですけれども、政府当局はこのことを知っておったのか、どういうような是正の指導をしてきたのか。私は非常に責任を問われるところでないかと思いますが、この点について明確な答弁をお願いいたしたいと思います。

石井賢吾通商産業省立地公害局長

○石井政府委員 三池有明鉱に関しましては、昨年の実績ではほぼ一月に一度立入検査を行っております。お尋ねのベルトコンベヤーにかかわります保安状況に関しましては、全体で約七カ所程度、炭じんその他の清掃の必要性を指摘いたしまして、その改善方を指示した実績がございます。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 今、総理に、生産現場ではこの保安第一主義ということがどのように軽視をされておるかということについて、私、若干の点を申し上げたわけでありますけれども、今後日本の石炭を国内の大切なエネルギー資源として掘り続けていくためにも、どうしても私は、保安をこの機会に確立して災害を根絶しなければならないと考えます。総理に、その点についての決意を再度お伺いをしておきたいと思うのです。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、このような不幸な事態を再び繰り返さないように、通産省はもとより関係各省を挙げまして厳重に督励をし、戒めていきたいと思っております。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 私がお伺いしたいのは、保安第一主義が生産現場まで貫かれていないということを申し上げたわけです。だから、そこのところを本当に変えるように、総理が責任を持って今後指導をしていただけるのかどうかということを私は伺っているわけですよ。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 指導いたします。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 この機会に通産当局にも、監督の姿勢のことで一言申し上げたいと思うのですけれども、現場の労働者の中には、監督行政に対する不信、厳しい批判があるということも言わざるを得ないわけです。  それは、どういう点で特に言われているかというと、監督官が立入検査をするときには、当局が事前に連絡をしているのじゃないか。必ず会社は知っておって、前日ぐらいには現場をせっせと手入れをし、掃除をし、あの岩粉という、炭じん爆発が起こらないようにまく粉をまいて、もう真っ白に雪が降ったようにして、それでお迎えするというのですよ。これは一目見れば監督官も、ははあ、自分が来るのをちゃんと待ち受けているなというのがわかるはずだと思うのですけれども、そういう状態で、ああいいですかと言ってすっすすっす入っていって坑内を見てくる。やはりこれでは、私は、現場の労働者は、監督行政の中で本当のことはつかまれないだろうというふうにみんな不信の気持ちを持つんじゃないかと思うのですね。だから今度も、災害が起こってみたら、消火栓がさびついているのが大部分であったとか、ホースが足りなかったとか、いろいろなこと、そんなのはちょっと回ってみたらすぐ層につくようなことがいっぱい、問題だということで新聞などで書き立てられるような状況になるわけですね。この点私はどうしても改めて、本当に実効のある監督行政をやっていただくようにしなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。

石井賢吾通商産業省立地公害局長

○石井政府委員 鉱務監督官によります炭鉱の立入検査に関しましては、原則は抜き打ち検査でございます。年に一度行います総合検査、この場合には約七、八名の鉱務監督官によって行いますので、あらかじめ通告をいたします。しかし、一般的な自主検査におきましては二ないし四名の監督官の立ち入りでございますので、直前に通告をする。これは人車その他の配置を、入坑が可能なような状態にしてもらう必要がございますから……(小沢(和)委員「直前というのは何時間ぐらい前ですか」と呼ぶ)二時間ぐらい前と聞いております。その段階で通告をするというふうに聞いております。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 今二時間ぐらい前というように言われましたけれども、実際には前日、どうかすると前々日からもうそういうようなことをやることがある。だからどこかから漏れるというようなことが実態なのかもしれませんけれども、いずれにしろ漏れるというようなことだったら、またこれはなお大変なことで、それも含めて姿勢を正していただきたいと思います。  それから、総理にもう一度お尋ねをしたいのですが、先ほどから総理は、鉱務監督官などについては減らさないように努めてきたということを言っておられます、そういう答弁を実際に前にもされておるということは、私、確認してきましたけれども、まあ総理はもう既に言っておられるから、そのことを前提としてお尋ねしたいと思うのですけれども、福岡鉱山保安監督局の職員の員数の推移というのをきのう見せていただいたのですが、この五年間で監督官が五十名から四十二名に八名減、事務官が三十一名から二十五名に六名減となっております。  それからまた、この機会にもう一つ申し上げたいのですが、炭鉱の保安技術を開発するためにつくられております九州石炭鉱山技術研究センターというのがありますけれども、このセンターの定員は、この八年間で研究員が二十三名から二十一名に二名減、一般職員が十七名から十五名に二名減らされているわけです。だから、こういう実態を見ると、どちらも減っておるのです。  特に私が聞かされるのは、監督官とか研究員というような人を確保してくれても、その手足になって一緒に仕事をする人を削られてしまったら、手足をもがれただるまさんみたいになっちまって、なかなか仕事が思うようにできないという点が非常に悩みだというわけですね。だから、そっちの本体は残しているからということをさっき言われましたけれども、本体も減っておるのです。どうしてもこれは、こういう人命にかかわるような部分については少なくとも、行革だとかいろいろ言われても、私は充実をするということは考えなければならないんじゃないかと思うのです。いかがですか。

石井賢吾通商産業省立地公害局長

○石井政府委員 御指摘の監督官の実員が減っておりますのは事実でございますが、これはむしろ監督官の高齢化によりますリタイアという結果でございまして、これを補佐いたします、したがいまして将来監督官に昇格することが期待されます技官の数は、当初の、小沢先生御指摘の五十四年度との対比で申しますと十名から二十名にふえているわけでございます。したがいまして監督官の実員といいますものは、確かに、形式上の監督官とこれを補佐する技官、これを合計いたしますれば、一応五十四年六十名から現在は六十二名になっておるというのが実情でございます。  それから、ほかの分野で定数を削減したのでは力がそがれるではないかという御指摘でございますが、これらにつきましては極力会計事務の合理化、効率化、こういったことによりまして対処してきておるところでございます。

小沢和秋日本共産党・革新共同

○小沢(和)委員 あと労働大臣や国家公安委員長に質問する予定にしておりましたが、私の持ち時間が来ましたので、終わります。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 工藤兄君。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 残された時間、障害者対策の問題でもう少し伺いたいと思いますが、先ほどの低肺機能者の問題で、最後私いろいろ提案しまして、そして厚生大臣お答えになったと思いますが、以上のような趣旨で、県の衛生部を通じてとか国立療養所へいろいろ御指導されるというその点はよろしいですか、やっていただけますか。

渡部恒三自由民主党・新自由国民連合厚生大臣

○渡部国務大臣 御趣旨に沿って善処してまいりたいと思います。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 それではもう一つの問題として、国際障害者年から三年、それから政府の長期行動計画がつくられてから九二年という年になりますが、障害者対策の問題はこれまで国会においても大変多く取り上げられてきたわけでありますが、あえてここで私がもう一度取り上げなければならないのは、ことしが身体障害者福祉法を見直す年であるということになっているからであります。そして、そのとき、私が申し上げたいことは、国際障害者年を通じていろいろ運動をやってこられた方、また我々政治家も強く感じたのは、日本の障害者対策というのが国際的にもいろいろ立ちおくれた面があった、これをどうしてもこの際前進させる必要がある。確かにいろいろ前進あったと思いますが、特に福祉法の見直しというときには、それが重要な課題になっていると思います。  そして障害者の概念として、国連総会決議がどういうことを言っているのか、もう皆さんよく御存じだと思いますが、あえて「障害者の権利宣言」(七五年十二月九日)をもう一度述べますと、「「障害者」という言葉は、先天的か否かにかかわらず、身体的又は精神的能力の不全のために、通常の個人又は社会生活に必要なことを確保することが、当分自身では完全に又は部分的にできない人のことを意味する。」と言って、例えば精神障害者はどうだとかそういうとらえ方は決してしておりません。  あるいは八二年十二月三日の国連総会で採択された「障害者に関する世界行動計画」では、特にWHOの定義を取り上げながら、この中でインペアメント、ディスアビリティー、ハンディキャップの区別が要るということを青い、インペアメントというのは精神あるいは体にある不全のところがある、それが能力の上で、日常生活の上でいろいろ機能の障害としてディスアビリティーがある。もう一つのハンディキャップというのは、社会の環境、それが不利をつくり出している、これを非常に頂視しているわけであります。そういうことで、この後に書いてある中に、精神障害者と精神薄弱者、視力、聴力、言論機能障害者、移動性を制限された人々あるいはいわば段学的阻害者として九一体的な内容も盛っているわけであります。ところが、わが国の精神障害者に対応しては医療ケアだけの衛生法があるだけで、福祉法がないということが問題になっておりました。もちろん、そのほか内部障害者、難病の方も同じようなことがあります。  そこで、ぜひこの際、総理そして厚生大臣、ここではっきりお答え願いたいことは、身体障害者福祉法の改正に当たりまして取り入れる範囲に、今までの限られた障害でなしに、精神障害者も含め、さらに実際にこういう国連などで障害者として扱われるその分野まで取り入れられるような方向で見直すということをぜひやるべきだと考えますが、どうでしょうか。

渡部恒三自由民主党・新自由国民連合厚生大臣

○渡部国務大臣 障害者の問題は極めて私どもは重要な問題と考え、今回の予算編成に当たっても、大蔵大臣に、非常に厳しい予算の中でありましたけれども、これらの予算、ほとんど要求して擁護していただいておりますので、これは御理解いただきたいと思います。  精神障害者の方々については、その症状が固定しておらず、また常に適切な医学的管理のもとに置く必要があるので、基本的には福祉法の体系でなく、医療の範疇で処理していくべきものと現在考えております。  なお、精神障害者の方々は社会復帰をしていただくことが何よりも大切でありますので、今後ともこれらの方々の社会復帰対策を充実してまいりたいと思います。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 工藤君、時間が参りました。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 今の御答弁は大変おかしいと思いますね。そういうことで、社会復帰のためにも社会のハンディキャップをなくせという趣旨に全く沿ってないと思います。例えば……

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 工藤君、時間がもう参りました。

工藤晃日本共産党・革新共同

○工藤(晃)委員 では、最後だけ。  例えば身体障害者福祉法をつくられたとき、厚生省の松木征二さんという方が薄かれたこのいきさつを見ても、当時身体障害者福祉法になぜ精神障害者などを入れなかったかというと、当時ドッジ・ラインなどで財政が非常に苦しい、当時も入れるべきだという意見が非常に多かった、だけれども残念ながら入れられなかったから、その後入れる予定にした。三十数年間たってしまったわけであります。そういうことで、私の時間はもうこれでなくなりましたけれども、三十数年間もほったらかされたというのは明らかに国際的な立ちおくれであります。どうしてもこれを直していくという決意を述べまして、私の質問を終わらしていただきます。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。  次に、渡辺朗君。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 本日の日程では最後の質問者になりました。総理初め閣僚の皆さんもお疲れであろうと思いますが、大所高所からのお考えを、幾つかの問題についてお聞かせいただきたいと思います。  一つは、まず総理にお伺いしたいのですが、日本とソ連、これは好むと好まざるとにかかわらず、引っ越すことのできない隣人であります。そのソ連に新しい書記長が登場いたしました。早速にも総理は、この新しい書記長の体制に対しまして、事態打開のチャンスを期待する旨表明しておられます。このソ連という国とどのようにつき合ったらいいのか、つき合えるのか、つき合い方についての総理の御認識を私はお聞きしたいと思うのです。  アメリカでも、あなたのよく御存じのように、キッシンジャーさんは力の均衡で融和をという形を唱えました。ブレジンスキーさんは、力なくしてソ連を追い込むことはできないんだという考え方も持っておられます。いろいろな考え方があると思いますが、総理の哲学、認識をぜひお伺いをしたいと思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 みんな国々によって民族的な体質もあり、あるいは政権の性格もあり、あるいは地政治学的な環境もありまして、固有のものがあると思います。ソ連につきましてはソ連特有のものがやはりあると思っております。それは、一つにはスラブ民族特有の民族性からくるものもありますし、あるいは共産主義政権という世界革命を目指した今独特の世界政策を持っておる、そういう独特の性格もありますし、あるいはまた資本主義国によって包囲されておるという警戒感というものもあるでしょう。そういういろいろな面から、ソ連は近来におきましては非常に軍事力を増強して、そして均衡論に立った防衛政策あるいは外交政策を展開しているように思います。  そういうところから、自由世界の国々は、やはり均衡論に立った外交政策あるいは防衛政策を持って、それで戦争を抑止し、平和を維持していこうという考えに立っておるわけです。特に、最近ソ連の軍事力の増強が非常に著しいし、アフガニスタンにおけるああいう侵略的な行動が目に見えてきてから、西欧側の警戒心もさらに強まってきておる。これが現実であるだろうと思っています。そこへ大韓航空機の事件のようなああいう不幸な事件が起きましたから、ソ連の軍部の内部の情勢というものに対する警戒感も深まったというのが現実ではないかと思います。  しかし、さりながら、そういう性格は性格として我々は認識を持ちつつ、やはり日本一国でソ連のような膨大な軍事力を持っている国に相対することは、外交的にも防衛的にも難しいのでありますから、自由世界の国々と緊密な連携のもとに、日本は日本特有の憲法あるいは防衛戦略というものを抱えて相対処しておる。基本的には平和共存を望みつつ、今領土問題という重大問題を我々は抱えておりますが、ともかく粘り強く対話の糸口を見つけ、そして今の状態を打開するように今後とも努力してまいりたい、そう思っております。粘り強くやるというのは日本の特色ではないか、そして話し合いで平和をつくっていくというのが特色ではないかと思っております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 総理は、これから数カ月の間に、中国それからインド、パキスタン、伝えられるところによりますと、それらの国々を訪問される日程になっているやに聞いております。そして、六月にはサミットがございます。これら総理の一連の外遊計画、そこには、今おっしゃったような認識のもとに、一つのモチーフといいますか、ベースになる一つの方向といったものを持っての御訪問でございますか。どのような御日程あるいは目的を持っての歴訪でございましょうか。そこら辺、お聞かせいただきたいと思います・

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 今割合に決まりかけておりますのは、三月に中国へ参る。それから、六月にロンドン・サミットへ参る。これが決まっておりまして、そのロンドン・サミットの前後にかけてヨーロッパのサミットの国々等を歴訪しよう、そういう考え方でございます。  外交政策の基本というものは、やはり一番の基本は、平和を探求し、世界恒久平和を実現すべくたゆまず努力していくということが基本でありまして、そのためのやり方は、今までここでしばしば述べましたように、国際国家日本として出ていくという考えに立ってやっていきたいと思っておる次第であります。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 総理の中国訪問直後には、四月にレーガン大統領は中国訪問だと聞いております。それからまた、そのような米中間の首脳の会談があるいは相互訪問が行われる、その直後だと報道がございましたけれども、アルヒポフ第一副首相がソ連から中国に行く、あるいは中国から招かれるということが報道されておりました。  そうした一連の動きの中で、総理として、中曽根総理はどのような役割を演ずべきだとお考えでございましょうか、あるいは日本としてどのような役割を演ずべきだと。私は、アジア・太平洋地域における平和、安全、それの構築の問題については大変重要なモメントであり、チャンスでもあると思いますが、どのようにお考えでございましょうか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 やっぱり世界の今の直面している大きな関心事は、軍縮、特に核軍縮への道であるだろうと思います。その具体的な方法は、やはりアメリカとソ連がこの問題について話し合う、そしてお互いが妥協し合って、話し合いを成立さして、世界の人を安心さしてもらう。そういうことをモメントにして世界各地における、東西関係からきていると思われるような緊張関係を緩和していく、そして平和への希望を各地によみがえらせる。それはレバノンにおいてもそうでありましょうし、ベトナムにおいてもそうでありましょう。そういうふうにして平和を呼び返すというところに世界を持っていきたい、日本もそういうために努力をしていきたいと思っております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 最近のように、これは中曽根総理も含めてでありますけれども、非常に活発な首脳の往来がある。これは従来の外交のあり方あるいはスタイルというものをかなり大幅に変えてきているのではあるまいかと思います。あるいは別の角度から見たら、それほど国家間の対立やらあるいは問題が多岐にわたり過ぎて、首脳の決断が大変求められている時期になってきているのではなかろうか。もちろんそれと同時に、ややもすると議会やあるいは政府機関というものがないがしろにされるおそれなしとはいたしませんけれども、私、中曽根総理は賢明なる総理でありますからそのようなことはないと思いますけれども、積極的に取り組むべき問題は取り組んでいくということで、積極的な行動をしていただくことを望みたいと思うのです。  その一つの問題は、やはり日ソ関係の打開だと思います。この日ソ関係の打開について具体的なお考えを持っていらっしゃいませんでしょうか。例えば直接にソ連の首脳との話し合いであります。いかがでございましょう。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 ソ連は最近チェルネンコ政権ができましてまだ早々でありまして、これから恐らく半年、一年は、新しい政権の政策形成期に入るだろうと思います。あるいはクレムリンの内部におきまする最高首脳部間の集団指導体制の組織づくり、そういうことがこれから行われるのではないかと思います。したがいまして、しばらくの間、ソ連が積極的に案を示したりあるいは具体的行動に出てくることはちょっと時間がかかるのではないか、そういうふうに私は思っております。しかし、政策形成期にあるということは、やはり新しい方向を見出すチャンスでもありまして、決してこれを等閑視していいということではございません。やはり水かきでやるべきことは懸命にやるべきでありますし、また、友邦各国と連携して共同作業でやるべきことはまた積極的にやるべきである。  いずれにせよ、私は、ソ連との間におきましてはお互いに話し合いをできるだけ広げ、そして現状を打開する、そういう熱意を持ってたゆみなく、粘り強くこれをやっていく、手ごわい相手に対しては、それだけさらに対話の機会をつくって、意思疎通をしていくという必要があると思っております。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 今お聞きすると、一面においては待ちの姿勢であり、他面においてはチャンスをつかめばというふうに積極性もおうかがいができるわけであります。特におっしゃったように、ソ連という国が今政策形成期にある、このときは一つのチャンスかもわからないという点は、重要な御指摘であろうと思います。その際に、高級事務レベルを積み重ねていくということが、果たして今いいことなのかどうか、いいことというよりも効果的かどうか。  昨年でございましたが、INF交渉の決裂の前であります、それが決裂するかどうか懸念されていたときでありますけれども、私、たまたま佐々木委員長のお供をしてフィンランドあるいはスウェーデンの方に参りました。そのときに、ちょうどパルメさんとそれからウィリー・ブラント元西独首相、これが会談をしておりまして、そのときに提案したのは、このデッドロックを打開するために、当時のアンドロポフさんとそれからレーガン大統領が直接にサミットをやるべきだということを提案しておりました。これは実現はいたしませんでしたけれども、そのときに直接にお尋ねをしました。そのような方法というものはリスクが大きいのではないか。そうしたら、答えてパルメさん、ブラントさんいわくであります。お役人というものが準備したサミットというのは、これは必ず成功することが一〇〇%確実なもの、それしかやらぬだろう、しかし、首脳というものが、直接に首脳同士話し合いをするというのは、問題が解決できるかできないかわからない、山積している問題がある、困難が大きければ大きいほど、リスクはあるかもわからぬけれども、それに取り組むことが首脳外交の意味なんだということを言っておりました。  私は、今総理の慎重な姿勢、これは決して否定するものではありませんけれども、機を見て新しいソ連の首脳部に、かたい扉をたたくということをあえてされてはいかがかと思います。よく言われるように、ダンスは一人では踊れない、やはりプロポーズしなければならぬと思いますが、総理、ひとつ勇敢に扉をたたいて、今政策形成期だからこそやるべきではないでしょうか。そこら辺、御判断をいま一度聞かしていただきたいと思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 物事は機が熟したと判定したときにやるべきで、私が今すぐモスクワへ行ったり首脳会談が行われる機が熟しておるとは思いません。しかし、事務レベルで交流が盛んになり、あるいは民間人の間でいろいろ交流が盛んになり、そういう交流が盛んになることによって機が熟してくるということは十分あり得ると考えております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 次に、もう一度西側のサミットの性格について総理の御見解をお尋ねしたいと思います。  御存じのように第一回のランブイエ・サミット、これはもう経済サミットでございました。世界不況からの脱却であります。それが目的でありましたし、そのための話し合いでございました。しかしながら、ベネチア・サミットあるいはオタワ・サミットを経て一九八二年のベルサイユ・サミットあたりから、性格が経済的なものからすぐれて政治的なものに変わってきたように思えてなりません。特にウィリアムズバーグでは、総理出席されて核に関する軍事的な議論も行われました、そのように聞いております。日本も西側の一員としての議論に参加したわけであります。そのことによって、はっきりと政治的な性格、特に西側の力を結束させ、そしてソ連に対抗するという政治的なスタンスが生まれたのだと思います。  そのように質がサミットにおいて変わってきた、こういう見方は私が間違っているのでしょうか、どうでしょうか。そしてまた、今回行われようとしているロンドン・サミットは、その延長線上にあるというふうに判断していいのでしょうか。私は、そうであればここに御提案をしたいと思うのは、今までのサミットがそういうふうに西側の総束を固めてきたわけでありますから、今度はソ連側の方にマントを脱がせるような形のものを行動しなければいけないのではなかろうか。サミットの議題、中心的な課題というものを、ロンドン・サミットに向けて総理はどのようにお考えでございましょう。お聞かせいただきたいと思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 サミットの性格がランブイエ以降多少変わりつつあるということは、御指摘のとおりであると思います。  ロンドン・サミットの性格いかんという御質問でございますが、やはり基本的には平和の探求、それが経済の繁栄の基本をなしている。そういう意味において、平和の探求ということ、特にパーシングⅡ展開あるいはソ連における新政権の誕生、そういう現実を踏まえた上での平和の探求という問題がいろいろ話し合われる可能性はあると思います。特に核軍縮を推進するということは、東西間の大きな課題になってきていると思っております。  それから、世界経済の繁栄、景気の上昇、そういう問題につきましても、さらにこれに弾みをつけていくために、いろいろ議論がなされるでありましょう。そういう過程において、自由貿易の推進、保護主義の抑制あるいは制圧、そういう問題も十分討議さるべき問題でございましょう。あるいは発展途上国に対する諸般の政策等もまた論ぜられるし、科学技術の問題等もフォローアップされるであろう、そういうように考えておりますが、いずれにせよ、これらの問題はまだ白紙の状態におりまして、これから各首脳の個人的代表が何回か会合しまして、これからアジェンダを決めていく、そういう段階にある状態であります。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 次に、外務大臣にお尋ねをしたいと思います。  けさの新聞を見ておりまして大変心配になってまいりました。イラン・イラクの戦争が重大局面に至っている。それでなくても、ほかにも中東情勢悪化が報ぜられているところでありまして、レバノンを中心にした情勢であります。  ところで、全面攻勢に出るようなイラン・イラク戦争の局面というものが懸念されますけれども、今情勢はどのような現状でございましょうか。また、見通しはどうでしょうか。外務大臣みずからが、かつては現地にも行かれて調停役を提案しようとされたことも存じております。しかし、最近のIJPCに対する爆撃などという事件は、まさに調停者に対して、差し出したこちらの手を何かたたかれたような感じでもあります。今の情勢について御存じのことをひとつ聞かしていただきたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 イラン・イラク情勢は、我々非常に心配をいたしております。御承知のように、イランとイラクがお互いに都市攻撃を始めるというふうな状況が続いておりますし、また、イランがイラクの国境を越えて侵入するという事態にもなっておるわけでございます。  そういうことで、これから一体どうなるかということは、我々も情報をキャッチしながら注目をいたしておるわけでございますが、これはなかなか予断を許さない。これから、このまま一挙に拡大をしていくのか、あるいは両国のこの衝突が一時的なものであって、ここでまた小康状態に入っていくのか、予断は許さないわけでありますけれど、私は、両国の戦闘の状況を見ておりますと、例えばイランの石油の積み出し港であるカーグ島に対するイラクの攻撃、爆撃というようなものが行われていない。あるいはまた、IJPCに対する攻撃も確かに行われておるわけですが、決定的な攻撃ではないわけでありますし、また、イランはイランでまだまだ大規模な攻撃というものは差し控えておるというようなことで、全体的な両国の全面衝突、戦争の一挙の拡大ということはまだ両国が自制をしているのじゃないか、こういうふうに思っております。  そういう中で国連も調査団を派遣をする、それをイラン、イラク両国も受け入れる、こういうふうな状況にもなりつつあるわけでございますし、日本といたしましても、両国には深い関係がありますから、両国の大使をしょっちゅう呼びまして、戦争拡大に対する自制を求めておるわけでございます。この数週間というものが山場じゃないか。そういう中で何としても全面衝突、そして一挙に戦闘が拡大して、あるいはガルフといったペルシャ湾に戦火が及ぶというようなことだけは何とか避けるべく、やはり日本は日本なりの努力をしていかなければならない、こういうふうに考えております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 今お聞きしますと、やや楽観をさせられるようなお話もありましたが、外務大臣、実際どうなんでしょうかね。この間も、レバノンはかなりこれで小康を保つかなと思っておりましたら、にわかに激動してしまいました。しかも、大使館では退去勧告を出しまして、米軍のヘリコプターで脱出し、そして米国の海上にいる軍艦に行き、そこからキプロスに邦人が行くというような事態も起こっております。  つい二、三日前までは大変晴天でありましたけれども、こんなに大雪がゆうべからけさ、降るとも思いませんでした。やはり国際情勢、特に中近東における情勢というのは大変に予断を許さないものがある。そういう中で、では日本人がどうしているのか。世界の局地紛争の地域、いろいろな地域がありますけれども、どのくらいの日本の方方がいらっしゃるのか一遍教えていただきたいと思っておりますけれども、あのイラン、イラクの地域にはかなりたくさんの方々がいらっしゃるわけであります。この救出問題というのは、これはやはり余り楽観しないで今のうちに考え、講じておかなければならぬのではなかろうかと思います。  私の知る限りでは、今現在の時点でイランにいる邦人は八百三十四名、イラクは二千九百九十六名、合計すると四千名弱の人々がおられるわけです。特にまた、外電その他では、イラクのバスラ、これが今危ないのではないか、さしあたって危険ではないか。外務大臣が余り楽観的なことを言われると、みんな本当に安心してしまいます。ところが、今のバスラだって八十名近くの日本人がそこにいる。万が一事態が悪化するというようなことがあったときに一体どうしたらいいのだろうか、こういうような問題に対処しておくということが非常に大事なことに今なっているのではなかろうかと思います。  私はそういう意味で、外務省というのは海外における邦人の保護、これは外務省設置法の中にはっきりと書いてあります。この保護を任務としておりますから、私はやはり対策が講じられていいと思うのですが、いかがなものでございましょうか。外務大臣、救国策というものを持っておられるかどうか、もう一遍お聞かせいただきたいと思います。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 私がイラン・イラク情勢について楽観的なことを述べたというような御認識ですが、決して楽観的なことを言っているわけじゃないのです。しかし、今の戦闘が、それじゃ大規模な全面衝突の破局的なところに移っていくかどうかということになりますと、私は、そこまでは行かないのじゃないか、その辺のところは両国がまだ自制をしているという状況じゃないか、しかし、戦闘が続いていることは事実でありますし、大変心配もいたしております。  確かにお話のように、バスラにもイランが砲撃を加えるということで、あそこには邦人がおります。やはりそうした邦人の救出につきましては、外務省としましても、これまでも万全な措置をとっておりますし、今回もこうした戦闘状況の中で、大使館を中心といたしまして緊密な連絡をとりながら、刻々電報も入ってきております、緊密な連絡をとりながら対策は進めておるわけでございます。  レバノンにおきましても、御承知のようなああした一挙に政府軍が崩壊するというような事態がありまして、そうして我が国の大使以下、在留邦人挙げて脱出をしたわけでございますが、その際も、大使以下お互いに密接な連絡をとって、特にアメリカ政府の協力も得ながら、万全な、無事脱出を行ったわけでございますし、イラン、イラクにおいては、特にこれまで革命、戦争が五年間続いておりますし、そういう点では大使館も、さらにまた現地の商社やあるいは企業、邦人等も、そうしたいざという場合の救出であるとかあるいはまた脱出の態勢というものは完全に整っておりますから、我々は状況を見きわめながら、その点については対策を進めていきたい、こういうふうに思っておるわけであります。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 古い話になって申しわけありませんけれども、ホメイニ革命の直前に日本の総理はイランをお訪ねになっていた。そういうケースも前例もあります。それからまた、昭和五十五年の十月でございました。イラン・イラク紛争勃発のとき、国会において在外邦人の救出問題について非常に議論が行われました。それを思い出すのでありますけれども、私は、繰り返すようですが、今のうちに対策を講じておかなければならない。あの当時の、昭和五十五年の当委員会におきまして、わが党の大内委員の方から質問が出ております。そのときには、民間航空路などの混乱で正常な交通手段がなくなったときに、自衛艦やその他の手段で救出避難できないものであろうかという質問でありました。そのときには、そのようなことはなかなか難しいということの返事でございました。現地の外交ルートを通じて、そうして周辺国との話し合いを通じて救出していくという方針が述べられておりましたけれども、現実はどうだったかというと、イラン・イラク戦争の激化でイラン在住の邦人はバンダルホメイニから、それらの地域からバスで脱出、そしてその途中で、これは国境を越えたところでありましたけれども、銃撃などにも遭って負傷する、こういうケースもあった。当時決死の覚悟でバス脱出をしたという談話があったことを覚えております。  私は、今あのときのことを思い出しますと、今日の時点、もっともっと日本人がたくさん紛争地域に行っておられる。現在でも、これは総理も施政方針の中で述べておられましたけれども、海外に在住している日本人は約四十七万人、あるいはまた年間の旅行者というものは四百五十万、日本人が、邦人が百名以上一つの町に住んでいるという都市は、世界で二百数十あると言われております。ですから、日本国内で今自分は行ってなくても、自分の親戚縁者、これで海外に行ってない者はいない、それほど海外で働く人々、日本人の規模が大きくなった、拡大されておりますが、そうした際に、そうした時点でありますから、余計に紛争発生時に、また緊急事態が起こったときに、今おっしゃいましたどのような手段があるのか知りませんが、相手国政府の便宜を要請し、平和的な手段のみで万事解決できるだろうか、平和的手段という意味は通常のルートでという意味でありますが、そういうことができるんだろうか、私は疑問を持つわけであります。  特に、これは私、防衛庁長官に確認したいのですけれども、五十九年度予算案ではC130H、これを二機購入するということになっておりますが、そうですね。それからまた、航空自衛隊では六十二年までですか、今後このC130の輸送機、十二機ぐらいを購入ということになっていると聞いておりますが、どうでしょう。そうですか。

矢崎新二防衛庁防衛局長

○矢崎政府委員 防衛庁といたしましては、そのような計画を持っております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 私の知っている範囲内では、C130というのは、従来自衛隊が持っておられる輸送機とは違いまして大変足が長い。搭載量二十トンで航続距離というのは四千キロ近いものがある。四千キロというと、これは東京からビルマの北端あるいはミッドウェー島、アラスカ半島まで、北極圏にまで行くことができる。また、搭載量が九トンぐらいになると八千キロの航続距離を持つことができる。そうなると、ホルムズ海峡やイランの北部、黒海あるいはノルウェー、スウェーデンの方にまで行くことができる。赤道の半径が約六千三百キロでありますから、C130の航続距離というものはすばらしいものだと私は思います。  ただ、このような強力な輸送力を持つC130、自衛隊の国内における訓練にだけしか使わないというのはいかがなものでしょうか。在外の邦人の救出にも役立てる、そういうことが必要なんではないでしょうか。それがまた、首相の言っておられるみずからの国をみずから守る体制ということも意味するのではあるまいか、そう思うのですが、防衛庁長官、いかがお考えでございます。

栗原祐幸自由民主党・新自由国民連合防衛庁長官

○栗原国務大臣 この問題は毎回の国会で取り上げられておるようでございますが、御案内のとおり、海外の邦人を救出する、その場合に自衛艦あるいは自衛隊の航空機というものを派遣する、その場合、軍事といいますか、武力行使を目的として救出に行くということは、憲法上これは許されない、相手国の要請なりあるいは相手国の同意を得て平和的手段で救出に行くということは、憲法上これは可能である。ただ、我が国の自衛隊法上そういうことが、海外へ自衛隊を派遣するということが規定をされておりませんので、現実的にはできない、そういうところでとどまっているわけです。  今いろいろと渡辺さんのお話を聞いておりまして、こういう国際情勢でございますから、私どもとしてこれに対して重大な関心を置き、対応に万全を期する、そういう御意見につきましては、国務大臣の一人といたしまして同感でございますが、自衛隊によるそういうことは現状においてはできないということを、残念ながら申し上げる次第であります。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 その点で、もうちょっと突っ込んでいろいろお聞かせをいただきたいと思うのです。  昭和五十五年の当時、当委員会における質問に対して、内閣法制局長官は次のように、まず憲法上の見解を述べております。「武力行使の目的を持たず、当該外国の要請または同意を得て、単に平和的手段によって在外邦人を救出することを任務として自衛隊をその外国に派遣することは、もとより憲法上許されないわけではありません。」ですから合憲である。政府は認めておるわけです。ただし、今おっしゃったように、現行の自衛隊法に海外邦人救出を任務として書いてないので自衛隊としてするわけにはいかない、こういう今防衛庁長官の意見でございました。  南極観測隊を輸送する「しらせ」というのは、これは海上自衛艦、海上自衛隊の護衛艦であります。南極は明白に海外です。海外である南極に自衛艦が航海できる。しかし、海外にいる邦人救出に同じ「しらせ」は出航することができない。これは確かに自衛隊法、それを見ればわかるかもわからぬけれども、書いてないからということであります。しかし、一般国民は、別に自衛隊員を運ぶわけではない、武器弾薬を運ぶわけではない、たまたま自衛艦があるいはまた自衛隊機が、避難をしようとするあるいは大変苦境にある邦人を救出しようとするために派遣される、そのことが不可能などということは、ちょっと常識では考えられない。確かに今の「しらせ」の問題でも、南極観測というのは自衛隊法にちゃんと書いてあって、「政令で定める輸送その他の協力を行なう。」ということになっておるからできるんだということであります。そうであるならば、自衛隊による海外邦人の救出問題も、南極観測に対する協力事業と同じように、その事項と同じように、自衛隊法に条項を設ければ法律上可能となると思いますけれども、もう一度防衛庁長官、お考えを聞かせてください。

栗原祐幸自由民主党・新自由国民連合防衛庁長官

○栗原国務大臣 自衛隊法を改正するという問題、これはきょうの渡辺さんの御発言もその一環でありますが、議会における論議とか国民の世論とか、そういうものを背景として慎重に検討をされるべきものだと考えます。これはむしろ防衛庁というよりも、政府全体ということで取り組まねばならぬと私は考えております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 世論なり国会論議なり、それを見た上で政府全体として判断をする、これは前にも大村防衛庁長官も同じことを繰り返しておられました。ただここで、そうであるならば本当に考えていかなければならぬと思うのです。一部では、現実的にこういうことをすると紛争に巻き込まれるおそれがあるからだ、こういう議論もありましょう。あるいはまた、それが海外派兵につながるかもわからぬ、こういう議論もあるかもわかりません。しかし、先ほども申し上げたように、あくまでも在外邦人の救出が目的であります。それに限られるという場合に、繰り返しますけれども、海外にいる四十七万人の生命財産の安全確保、これはだれに頼ってしたらいいのか、それに対して積極的に日本の国として手を伸ばしていくというのは、これは当然のことだし、人道上の問題ではないだろうか。私は今それらのことを考えると、総理、ここら辺で、今もう本当に国際化時代を迎えているのです。実際問題として紛争地域にたくさんの日本人が行っておられるのです。そういう問題にかんがみ、今の私の提起した、幾度も今まで国会で議論はされてまいりましたが、この問題を総理、自衛隊法改正あるいは条項追加というような点、総理の御判断をお願いをしたいと思うのです。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 ただいま粟原長官がお答えしたとおりに考えております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 私は自衛隊の――これは国民の気持ちですね。これをもう一遍ひとつ知っておいていただきたいと思うのです。自衛隊の災害派遣活動というのは、もう国民には大変なじみの深いものになってまいりました。台風、地震、洪水、きょうもまだ大変な雪でなかなか動けませんけれども、豪雪地帯では、恐らく黙々として自衛隊の人たちが雪どけをやっておられるかもわからない。そういう姿に感謝する人々は大変多い。これは保守革新の別はなく感じているところであります。今国民が素直に感じていることは、もう一度申し上げますが、外国で天災や紛争が起こったとき自衛隊機が救援に行く用意がある、これは自衛隊が行くのではなくて、自衛隊機が行くわけであります、輸送機。これは心強いということを感じるのではないでしょうか。そういう点で、自衛隊法の改正問題には真剣に真正面からの取り組みをひとつ私は要請をしたいと思います。  さて総理、もう一度、私の言ったことの判断をお願いをいたしましたけれども、その検討もできませんか、いかがでございますか。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 渡辺さんのおっしゃっている意味はよくわかりますが、この問題が取り上げられますとどういう波紋、影響を及ぼすか、そういう点についてやはり政府としては深く考えてみる必要があると思いますので、ただいま粟原長官のお答えのとおりに考えております。このように申し上げた次第でありまして、あなたのおっしゃることはよく理解できるところであります。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 じゃ、この問題はまた改めて別の角度から、別の機会に議論をさせていただきたいと思います。  さて総理は、施政方針演説の中で、これは意識されたかあるいは無意識であったのか知りませんが、国際国家日本という言葉を六カ所使っておられます。それから、ちなみに私、数えてみましたら、二十一世紀に向けてとかあるいはそれを目指してという言葉が七カ所ございました。この二十一世紀というのは、確かに時間的、物理的な問題でもありますから別に問題にはいたしませんが、しかし、国際国家日本という言葉には、恐らく総理としてのビジョンなり、何か思いみたいなものがこもっいるのではなかろうかと思うわけであります。     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕 したがってお聞かせいただきたいなと思うのですが、どのような構想を持っての言葉であったのか、国際国家日本、いま少し具体的にお聞かせいただきたいと思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 前に申し上げたことがございますが、私は、戦後の政治の中で次のように考えておるものでございます。  すなわち、吉田さんは日本を平和と経済の国にしようと心がけられました。あの瓦れきの中で、食糧もない状態から日本を復興させようというところでありますから当然のことで、平和と経済ということを心がけられたと思うのです。歴代内閣はそれを相次いでやりまして、日本は立派に平和と経済の国になったと思います。しかしその反面、今度は経済的利益を追求するということばかりが目についてきて、外国からはエコノミックアニマルというような酷評まで出てまいりました。また、経済摩擦を世界じゅうに起こしてきて、いろいろ批判も受けるということにもなり、日本人のイメージというものは、ややもすると、非常に経済にはたけてるが、ずるい利己主義の国民という間違った印象を世界に与えたのではないかという気がいたしました。  私はそれを非常に心配しておりまして、我々民族は少なくとも二千年の文化の伝統を持っている、そしていわゆる東洋道徳なり精神文明を持ってきておる。しかも、お茶の場とか生け花等にも象徴されるような非常に高度の文化力を持っておる国民であります。そういう国と国民が、利己主義の経済ばかり追求しているというような間違った印象を与えられたままで子孫に渡すということはまことに申しわけない、そういうふうにも感じておったところです。  そういうときに私は総理大臣を拝命しまして、日本はある意味においては世界から孤立しておった状態であったと思います。一年前の日本を思い出していただきますと、そういう状態に近かったと思うのであります。それを、その世界的孤立から脱出して、そうして日本を世界から再評価してもらうような国にしていきたいという念願に燃えまして、そこで諸般の外交政策を展開いたしました。  その目標としているところは、国際国家という言葉で表現をいたしまして、平和と経済の国という概念から、経済力を一つのばねにしまして、平和と政治と文化の国まで前進していく、そういうふうに念願をしたわけでございます。  午前中御質問もありましたような、生命の尊厳と科学の問題をウィリアムズバーグのサミットで取り上げたり、あるいは西欧と協調して核軍縮の問題展開のために積極的行動をとったりしてきたというのは、みんな政治と文化の面に日本が前進しつつあることを世界にも認識させようという気持ちであります。もちろん、我が憲法の範囲内において既存の国策を守りつつそれをやってきているところで、それを国際国家という表現でシンボリックに申し上げている、そう申して差し支えないと思っております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 私は、大変格調の高い言葉だと思いますし、それを今度は中身のあるものにぜひぜひしていきたい、これは国民としても同じ願いを持っております。  ところで、そういう立場から、総理も言っておられますけれども、国際国家としての重要な責務の一つに開発途上国への協力がある、私は、この責務を果たすために、予算編成は大変厳しい財政事情であるけれども、経済協力の費用について、経済協力費についての特段の配慮をいたしましたというふうに言っておられます。確かに一部新聞などにも報道されておりますけれども、経済援助費は防衛費と同じような突出をしております。これはいい意味での突出だと思いまして敬意を表するにやぶさかではありません。  しかし、二つ問題があると思うのです。一つは、ODAの予算を五年間に倍増するというこの計画というのは、経済協力費の中の柱になってくると思いますけれども、このODAの予算が倍増できるかどうか。これはもうちょっと、今計算上公約達成――これは国際公約だったと思うのです。外務大臣、後でお尋ねをいたしますのでお願いをします。これは国際公約だったと思うのですけれども、これは残る六十年度の伸び率を大変大きなものにしないと不可能でしょう。しかもOECDなんかで、理由をくっつけてできなかったというような口実を言わないでくれというふうにも、くぎを刺されている問題でもあります。それからまた、国連においても外務大臣、あなたはやはり演説もしておられます。いかがですか、これ本当に国際公約ですよ、それが実現できますか。これを実現するためには毎年、年率で七%ずつふやさなければならぬはずだ。私は歴代の外務大臣に念を押してきたんですが、その都度、大丈夫できる、何とかその目標は達成しますということで言っておられました。安倍外務大臣、いかがにされますか。この責任の問題であります。  しかももう一つ。実際問題としてこのODAの予算が突出しているというのは見せかけであって、本当は、本年度の経済協力基金への赤字補てん交付金が入っております。したがって、これを差し引いたら、この伸び率というのは、九・七%という数字は実際にはもう五%以下になってしまう。ということは、もう本当に総理が国際国家日本の一つの責務としてやりますと言っているお言葉がその足元から崩れるというのでは、これはリップサービスとして世界各国から失望を買うことになりはしないだろうか。まず外務大臣、ちょっとお聞かせいただきたい。

安倍晋太郎自由民主党・新自由国民連合外務大臣

○安倍国務大臣 ODAの五年間倍増計画につきましては、私も国際会議でその日本の目標を明らかにいたして、その努力をしておるということを演説もいたしておるわけであります。また事実、我が国として厳しい財政状況の中で確実にODA予算の増額を図っておりまして、五十九年度予算は御承知のように九・七%という、全体の予算の中において最も突出した増額を図ったところであります。しかし、今の状況でいくとそれでは必ず五年間で倍増できるかということになりますと、今の状況ではなかなか難しい面もあります。しかし、私は決してこの望みは捨てておるわけではありませんし、今後ともさらに来年、再来年と、国民の皆さんあるいはまた与党・政府の協力も得まして、何とかひとつ倍増目的を達成すべく懸命な努力を重ねてまいりたい、こういうふうに考えております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 国際公約としての経済協力の実態も、ODAの問題を一つとってみても、望みを捨てていないという言葉で表現されるような状態。外務省が出している「経済協力に関する基本資料」、これによりますと、これは一九八二年でありますけれども、経済協力の中で今のODAの我が国の実績三十億ドル、先進国DAC十七カ国の中で第四位、対GNP比は第十三位。これではちょっと何か、望みを捨てたわけではないというだけでは、これはお答えにならぬのではなかろうかと思います。  また、通産省の産業構造審議会の答申、あるいはまたそれに基づいてまた出した、これは昭和五十七年の分ですけれども「経済安全保障の確立を目指して」、こういう報告があります。それなんかを見てみますと、これは経済安全保障の確立のためのコストだ、だから経済協力費というのは高い水準に置くべきだ、GNPの三・五というような数字まで提示して言っている。これは我が国の経済安全保障のコストなんですね。それだったらば、これから大蔵大臣、外務大臣の方は希望を捨ててないと言っておられますけれども、それを裏打ちされるような御発言はいただけるんですか。

竹下登自由民主党・新自由国民連合大蔵大臣

○竹下国務大臣 総理に対していわゆる国際国家ということからの御質問でありまして、したがって、それを受けた私ども、この五十九年度予算におきましても、「経済協力費につきましては、国際社会の一員としての責任にかんがみ、個々の施策の優先度について十分吟味を行った上で、重点的に財源を配分することとし、前年度当初予算に対し七・九%増の五千四五三十九億円を計上しております。」こういうふうに正確に申し上げたわけであります。  私は、経済協力の考え方について、今この委員の考え方に私も同感でございます。私どもとして、この国際社会の一員としての責任にかんがみて、まさに優先度については十分吟味してかからなければならぬ課題であるということはよく承知しております。したがって、外務大臣からもお答えがありましたが、まだ今二年たったところの実績が出ただけであります。そうして、この問題について一番問題になりますのは、カウントいたします際には、一つは為替レートの問題でございます。それからいま一つは、各種国際機関に対する出資の問題が、いわば思うように先進国の合意が必ずしも順調にいつも進まないということからおくれておるという面があろうかと思うのでありますが、外務大臣が申しましたように、なお望みを捨てたものでもなく、私どもも選別して重点的配分で対応すべき課題であるという認識をいたしております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 これはせっかくの努力をこれからお願いをしたいと思います。  今の経済協力問題については、幾つも問題がありますので触れたいと思いますが、時間の関係でまた別の機会にそれはさしていただくとして、先ほど総理の方が国際国家日本についていろいろお話をされた中にあった教育問題、これに関連して私、文部大臣に一、二お聞かせいただきたいと思うのです。  南北問題というのは、これは途上国に対して金や物やあるいは技術を出せば、それで済むという問題ではもちろんありません。やはり基本的には納税者の人が、自分たちの出したお金がどういうふうにいわば生きて役立っているのかということがわかること、また、相手側とこちら側の人づくりという問題にこれは関連してくると思うのですね。  御存じのように、開発教育という言葉が今使われておりますけれども、これをやはり子供たちからやっていかなければならないのではなかろうか。どうも日本の教育の中では、先進国あるいはヨーロッパ志向型が非常に強く出ておりまして、アジアだとかアフリカというと、非常に間違ったイメージや何かが定着してしまっている。私は、各国の開発教育の実際を見て回ったことがありますけれども、ある国では副読本が使われて、アジア、アフリカ、そういうところのいろいろなことを子供のときから教えているのです。あるいはまたある国では、生活展示館みたいなものを常設しまして、そういうところで子供たちが、写真やら模型やらそういうものを見ながら、貧しいかもわからぬけれども、よその国は豊かな文明があるぞ、文化があるぞということを理解している。やはりそういう理解がないと本当の南北問題、これは前進しないと思うのですね。  特に、これはちょっと古い資料になりますけれども、数年前でありますが、日本の子供たちが今先進国についてはよく知っているけれども、途上国についてはほとんど知らない、その一つのサンプルでありますが、南北問題という言葉すら余り理解されていない。先進国と途上国の問題だと答えたのは三〇%ちょっとぐらいだ。あとは南北朝鮮問題とか、あるいは南北アメリカの独立戦争とか、そういうふうな答えをしている人もある。子供たちであります。これは青年海外協力隊の調査の中にありました。こういうようなことを考えますと、私は、青少年教育の中で南北問題というのをひとつ大きな柱の中に入れていただき、推進していただく必要があると思うのですが、いかがでございますか。

森喜朗自由民主党・新自由国民連合文部大臣

○森国務大臣 渡辺さんの御指摘がありましたように、国際社会の中で信頼と尊敬を受ける日本人の育成を図るということは、極めて重要なことでございます。再三総理も申しておりますし、また先ほど総理の御答弁にもございましたように、まさに二十一世紀を志向する教育というのはこのところに視点を置きたいというのが、私どもの願いでもございます。そのためには、やはり教育の中には、日本人がまず日本の国を愛し、そして日本の国の発展のために尽くすということと、もう一つは、諸外国の正しい知識と理解を得るということ、この二点を基調にしていくのがこれからの日本の教育の最も大事なことだと考えております。  御指摘がございました南北の問題等を初めとするこの教育につきましては、教育課程の中に十分配慮をいたしております。先生御指摘でございますが、質問の御趣旨をきのうちょうだいをいたしましたので、教科書も少し調べてみましたけれども、中学、高校についてはかなりのページを割いて、南北問題という形で特記もいたしておりますし、あるいは対外経済援助あるいは人口の問題、食糧の問題という形で、かなりのスペースを割いております。今先生がお話ございましたいわゆる平和部隊にも、最近第三世界あるいはこの南側の国、こうした国々を希望する青年たちが非常に多いということも、こうした教育のあらわれが少しずつ顕著に出てきておることだろうと思います。  今後とも文部省といたしましても、新しい教育を考えていくこの機関の中においても、将来のいわゆる国際国家としての日本という立場を十分に考えた、二十一世紀への教育の柱を打ち立てていきたい、このように考えております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 私は、もっともっと、例えば留学生なんかも招いていただきたい。よその国の留学生が日本にどれだけいるのか、いろいろ数字なんかを見ると、もっとこれは積極的に招かないといけないなというような数字を見出すことができます。そういうような点、特にそれもアジア、アフリカからの留学生、そういった者たちと若者たちが交流し合うというようなチャンスも多くしていただきたいと思います。この問題でもまたいろいろと触れたいと思いますけれども、別の問題に入らしていただきたいと思います。  東西関係の現状であります。先ほども総理からいろいろのお話がありましたけれども、今国民がやはり非常に不安感を持っているというのは、最近のINF交渉の決裂あるいはSTART交渉の中断、こういうようなものがあり、その中で、極東にソ連のSS20が配備されており、それがふえてきているという報道がありました。  私、防衛庁の方にお聞きしたいのですけれども、極東のSS20の配備ということは、一番新しい状況というのはどういうところまで来ているのでしょうか。また、できれば、北方四島にソ連軍の軍事的な力なりあるいは基地というものはどういうふうな形になって今展開されているのだろうか、手短にお知らせいただきたいと思います。

古川清防衛庁参事官

○古川政府委員 お答え申し上げます。  まず、SS20でございますけれども、私どもが得ております情報によりますと、現在アジア方面に配置されておりますところのSS20の総数は、昨年よりもふえておりまして、百三十五基の発射機があると理解をしております。  また、この北方四島におきますところのソ連軍の現状につきましては、これは昨年と余り変わっておりませんで、大体師団規模の軍が置かれておりまして、これに加えまして約三千名の国境警備隊が置かれておるということでございます。さらに、そこに駐留しておりますソ連軍の中には、ミル24というふうな攻撃用のヘリコプター等も含まれておるようでございます。島ということもございまして、普通のソ連の陸軍の編制と若干違っておるようでございますけれども、規模といたしましては師団規模というふうに私どもは把握しております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 国民が非常に不安に思うのは、これは今のような数字を示されると余計にそうなんですけれども、核兵器を含む軍事力が我が国周辺にどんな意味を持って配備されて増強されているのだろうか。言葉をかえて言うと、因果関係というのがよくわからぬで、そこに数字だけ、SS20が幾らだ、あるいはまたトマホークだ、こういうふうなことになってくる。  先ほどアメリカの国防省の発表した国防白書、これにはソ連の軍事投資の量について触れているくだりがあったといいますけれども、外務大臣、その点、何が教えていただけますか。

北村汎外務省北米局長

○北村政府委員 お答え申し上げます。  アメリカの国防白書の中にソ連の脅威という項がございまして、過去二十年間にわたってソ連の軍拡というものにいろいろ説明を加えております。ソ連はGNPの一五%を軍拡に充当しておる。ちなみに、米国の国防費のGNPの比率は、七〇年代を通じて平均五・九%であると言われております。今後ソ連のGNPの伸びが鈍化いたしますと、ソ連の軍事費のGNP比は二〇%にも達するであろう、こういうようなことを書いております。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 ますますそれで恐怖心あるいは恐れみたいな気持ちが増幅されていくわけでありますけれども、これは一体とういうふうに、国民としては心理的な安心感をどこに求めたらいいんだろうか。しかも、最近の動きなんか見てくると、どうも地域紛争や何かが収拾つかなくなる事態というのが多々あり得る。つまり、米ソというところの危機管理能力みたいなものがだんだん弱くなってきているのじゃなかろうかというような懸念も加わりまして、余計に心配があります。  私は、一番先に総理に、少なくとも極東において信頼醸成措置ということができる前の信頼感の醸成ぐらいを、道を開くべくひとつ行動してもらいたいという要望をいたしましたけれども、本当にこれ、何か我々の国というのは、東西関係の枠組みの中しか動けない。独自の動きというのはなかなかできないものでしょうか。例えばヨーロッパであれば、中部ヨーロッパの兵力引き離し交渉であるとか、あるいはまた、少なくともストックホルムの軍縮会議であるとか、全欧州安保会議、そういうものが開かれているところに何か期待感も持てますが、その結果うまくいかなかったら、今度は日本の方にあるいは極東の地域にしわ寄せが来るような今日の軍事情勢、つまり、あなた任せでなければならぬというところに非常な不安感があるわけです。日本で何ができるのか、本当にできないのか、もう一遍そこら辺、私はお聞きしてみたいと思うのです。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 日本で独自の行動、もちろんとれます。我々は、いわゆる西欧陣営の一員としての連帯と協力関係の中にあって、特にアメリカとの友好協力関係を基礎としつつ、その上に立って対ソ関係をみずからの責任と決意において打開していくという基本的考えを持っております。そういうチャンスを今見つけようと努力しておる。しかし、そのチャンスを見つけるについて、余りせっかちにやり過ぎることは必ずしも適当でないと思っておるだけのことであります。  おっしゃるような、いわゆる信頼醸成措置というようなことは、ヨーロッパにおきましては、ヘルシンキとかあるいはマドリードとかあるいはストックホルムとか、そういう点で集団的に行われております。それで、演習をやる場合の相互通知であるとか、そういうようなことも行われております。アジアにおきましては、まだそういうシステマチックなことは行われてはいない、また行われる情勢にもないと思いますけれども、しかし、個別的にお互いができるだけ氷を解かして春を迎えるような情勢をつくっていく、そういうことはお互いが努力していくべきことであるだろうと思っておる次第です。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 ぜひ、そのような好転する事態というものを私どもも期待をしたいと思います。  さて、あと時間もなくなってまいりましたので、短く一、二だけお聞かせください。科学技術庁長官、いらっしゃいますか。  レーガン大統領が年頭教書を発表されました。その中で、なかなか壮大な宇宙基地、有人基地の建設、そしてそれを通じての新しいフロンティア、これをうたい上げておられるわけでありますが、まさに二十一世紀向けのプロジェクトだと思います。これにつきまして、NASAの方からの協力依頼はございましたか。というのは、資金的な、あるいは技術的なそれも含まれるのかもわかりませんが、協力を求めるのだということがレーガン大統領の教書の中にも入っております。それからまた、新聞にもそのような報道がありました。また、資金分担というのは、求めてきていたとするならばどのくらいなものを求めてきているのでしょうか。そこら辺、ちょっと聞かしていただきたいと思います。

岩動道行自由民主党・自由国民会議科学技術庁長官

○岩動国務大臣 渡辺先生の御指摘のとおり、アメリカのレーガン大統領が年頭の教書におきまして、宇宙基地構想を進めるということを申されました。そして直ちに、この件につきましては、中曽根総理大臣にも直接、書簡が届いていると承っております。また、私にあてましても、直接、書簡が届いております。これにつきましては、かねてから事務的には、このような構想についての協力というような形で、今までも私どもの方からも参画をしてまいりましたが、正式にこのことが決まったわけでございます。  そこでまず、書簡によりまして、かいつまんでどのようなことを考えているかを申し上げたいと思います。  まず第一に、大統領は、NASAに対しまして、十年以内に宇宙において生活、活動ができるような恒久的有人宇宙基地の開発を至急に開始する、第二に、民生宇宙プログラムにおいて国際参加に関することを考える、こういうことでございます。そしてまた、宇宙の平和的な探査の利用であるということも申しております。  このような大統領の基本的な方針に従いまして、NASAのベッグズ長官が大統領の要諦を受けまして近いうちに日本にも訪問する、そしていろいろな計画について、その協力の可能性について話し合いをしたいということでございます。この宇宙基地計回は、まずシャトルによって打ち上げられる、そして補給が行われる、さらに三カ月ないし六カ月の交代で、六人ないし八人の乗組員の居住と活動の施設を持つことになる。そういう中におきまして、第一には、科学研究及び技術の開発、また地上ではできない重要な材料や薬品の製造、また衛星及びその他の大型宇宙構造物の組み立て、補給、修理等が計画の中に入っているわけでございます。  したがいまして、私どもは、ベッグスNASA長官が来日をされました際にはお目にかかりまして、計画をさらに具体的に伺い、そして、どのような形で御協力できるかは今後検討さしていただきたい、かように考えているところでございます。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 なかなかこれは大事な問題だと思います。科学技術発展のためにも重要であります。  しかし同時に、やはり二つ問題が出てくるのじやなかろうか。一つは、費用を一体どれだけの分担をするつもりなのか。それからもう一つは、これらの科学技術というもの、特に宇宙における有人基地の問題、これはどこからどこまでが軍事的で、どこからどこまでが平和的なのかということになると、大変に難しい問題があります。一体全体この平和的利用、軍事的利用のけじめといいますか、歯どめといいますか、そういったものはどのような形でお考えでございましょうか。これはやはり科学技術庁長官に聞きましょうかね。短く頼みます。

岩動道行自由民主党・自由国民会議科学技術庁長官

○岩動国務大臣 まず、私ども宇宙開発につきましては、基本的に国会の決議で平和利用であるということが一つございます。また、事業団法によりまして、これまた平和に限る、こういうことになっております。したがいまして、具体的にはどういう点がどうだということになりますと、先方の具体的な計画を詳細に伺った上で、どういう分野で御協力ができるかということになりますが、基本的に大統領の意向は、平和的な利用ということを基本として各国の協力を要請したい、こういうことでございます。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 実はレーガン大統領は、一九八二年でありますけれども、やはり宇宙というものに対して軍事的目標を持った科学技術の開発、この政策を打ち出しました。これはもう明らかにされておるところであります。特にまた八三年には、宇宙を拠点とする防衛システムによってアメリカに飛んでくるミサイルを撃ち落とすんだというような、いわゆる宇宙防御システム、防衛システムの提案が行われております。そういう面も考えると、総理、これはなかなか本当に、今平和的な範囲内での協力という言葉がありましたけれども、とても難しい問題なんです。私は別に抽象的な平和論で言っているのではなくて、現代における平和と軍事という、この境目というのは非常に難しくなってきている。この問題をどういうふうに本当に取り組んだらいいんだろうか、考えたらいいんだろうか、ここら辺を総理、一遍聞かしていただきたいと思います。これがはっきりできないというような問題点であるならば、やはりここで十分に考えてみる、国会の中でも議論をやってみるということを、もう一度検討してみる必要がありはしないだろうかと思います。総理、いかがでございましょう。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 現実問題としまして、なかなか情報も必ずしも十分でなく、まず我々は実態と実情をよく見きわめた上で判断をするということが大事であるだろうと思います。そういう点からいたしまして、科学的にもあるいは外交的にも情報活動をもっと活発にして、我々の手元に十分判断できるような素材を蓄積するということがまず第一に大事であるだろうと思います。その素材をお互いが提供し合って、その上に立って、できたら超党派的に判断を形成していく、それが超党派外交にもつながるゆえんではないか、そういうふうに考えます。でき得べくんばそういう方向に持っていきたいと思います。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 時間もなくなりましたので、最後の一問、お聞かせをいただきたいと思います。  総理は、戦後三十八年の総点検という言葉を言われました。確かに多々総点検をしなければならぬ問題があると思います。同時に、戦後いまだ終わっていない問題も残っているわけであります。中国残留の日本人孤児の問題一つとってみても、私、旧満州で育ったものですから特にひとしおで、その思いは深刻なものがあります。さらに、戦時中の徴用によってサハリンに、連れていかれ、残留させられた朝鮮人問題、数千の方々がいらっしゃる。そしてまた、台湾人元日本兵士に対する補償問題があります。これらの問題というのは、これは日本にとっても人道的な問題であり、国際的な信義が問われている問題だと思います。  ここに新聞、小さな記事でありますが、こういうのがあります。一月二十七日付であります。そのニュースがありました。それは、アメリカのロサンゼルス市において、第二次大戦中に日系人であるという理由だけで解雇されたロサンゼルス市の元職員に対して、当時の処置は不当であった、誤りであった、そのようにしまして、一人当たり五千ドルの補償金を払うことを市議会が決議したと報道しております。四十数年たった今日において、このような措置が今とられている。あるいはまた、アメリカの議会においては、決議されまして、日系人の強制収容問題、これは御存じのように委員会が設置され、報告書がまとめられ、そしてこれは過ちで謝罪すべきである、さらにさかのぼって赦免をする、三番目に、生存している日系人六万人に対して一人当たり二万ドルを払う、あるいは十五億ドルの特別基金をつくって、そして日系人社会のためにいろいろ役立てる、そのような報告が出されております。法案はこれから論議されるというふうに問いておりますけれども、その推移を日系人たちは見守っているわけであります。  そういうニュースを聞きますと、総理、ぜひお考えをいただきたい。やはり社会的な公正というものが生きている、そういう社会だなということを感じます。民主主義というものが息づいているということを感じて、拍手も送りたくなる。やはり、よその国が日本を見る目がそうであってほしいと思います。  特に台湾人元日本兵士、二十万九千人でしたか八千人でしたか、その方々が徴兵令でもって徴用され、あるいは兵士として出陣をしていきました。死んだ方も数万人ある。これは超党派で今まで取り組んできた問題です。どのような配慮があったかわかりませんけれども、少なくとも私は、あしたすぐに問題が全面解決ということはだれしも望んでいないと思います。不可能だということは知っていると思います。しかし、どのように解決するぞということを明らかにすることは、先ほども申し上げました国際信義の問題として大事なことであると思います。これが国際国家日本というものの出発点にもなってくるのではないかというふうに思いますので、総理の御判断と御決意を聞かしていただきたいと思います。

中曽根康弘自由民主党・新自由国民連合内閣総理大臣

○中曽根内閣総理大臣 今いろいろ挙げられました第二次世界大戦の後遺症の諸般の問題につきましては、日本といたしましても適切な判断を持って解決していきたいと考える次第です。

渡辺朗民社党・国民連合

○渡辺(朗)委員 では、終わります。ありがとうございました。お疲れさまでした。

倉成正自由民主党・新自由国民連合

○倉成委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。  次回は、明後二十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十七分散会

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