災害対策特別委員会 第7号
- 発言数
- 68 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1984/07/11
会議録
○佐藤委員長 これより会議を開きます。 災害対策に関する件について調査を進めます。 本日は、異常気象に伴う災害対策につきまして、参考人として財団法人日本気象協会副会長高橋浩一郎君、京都大学教授山元龍三郎君及び東京大学教授浅井冨雄君、以上三名の方々に御出席をいただいております。 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。 本日は、御多用中にもかかわりませず当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人各位には、最近の異常気象に伴う災害問題につきまして、それぞれ専門家としてのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。 なお、議事の順序について申し上げます。 御意見の開陳は、高橋参考人、山元参考人、浅井参考人の順で、お一人十五分程度お述べいただき、次に委員から質疑がありますので、これにお答えいただきたいと存じます。 それでは、高橋参考人にお願いいたします。
○高橋参考人 高橋でございます。 初めに、異常気象と気候の変動という言葉の定義のようなことを申し上げてみたいと思います。 初めの災害の経年変化の図をごらんいただきたいと思います。 この二番目の図に、今世紀初めからの日本の平均気温の年々の変化が書いてございます。これを見ていただきますと、年々非常に複雑に変動しておりまして、全般的に少しずつ上がっているという模様がおわかりになるかと思います。異常気象というのは、例えば昭和二十年、一九四五年に当たりますが、このような年を見てみますと、非常に下がっているわけです。こういったように、平年の状態から非常に下がった状態が異常気象でございます。それに対しまして、もとは気候というものは余り変わらないと考えていたのでありますが、実は、長い目で見てみますと、少しずつ上がっていくわけであります。こういった長い変化のことを気候変動あるいは気候変化、こういうように言うわけでございます。 そして、この異常気象につきましては特徴がございまして、一つは、例えば日本が異常気象で気温が低いといいますと、世界じゅう気温が低いように思われるのでございますが、決してそういうことはないのでございます。 その次の北半球気温偏差図、これを見ていただきたいと思います。 これは、ことしの二月の北半球の各地の気温の平年からの差を書いたものでございます。これを見ていただきますと、御承知のように、日本はことしの冬は寒かったわけでございまして、確かに日本は寒くなっております。しかしながら、シベリアの北だとかカナダ、アラスカの方を見ますと、逆に非常に温度は高いのであります。日本ですと二度くらいですが、この辺ですと八度以上も高いところがございます。そうかと思いますと、北極海あたりはまた逆に物すごく低いのでありまして、非常に低いところがございます。このように、プラスの変化がありますと、必ずどこか逆のマイナスのところがある、これが異常気象の特徴でございます。 こういうことがございますので、実は、現在、気候の平年の値というものは過去三十年間の平均、こういうふうに定義しております。そういう関係もありまして、過去三十年間の統計的にはとても起こりそうもないと思われるように変わった場合を異常気象、こういうふうに名づけているわけであります。年々高いからとか低いから異常気象というわけではなくて、その程度がひどいものを異常気象、こういうふうに言っているわけでございます。 こういうように、年々の気候を見ておりますと、年によって高かったり低かったり、あるいは大雨があったり干ばつになったり、いろいろするわけでございます。この異常気象と気候変動というものは、こういう意味で申しますと、別なものでございます。関連はありますけれども、一応別なものでございます。 こういった現象が、社会にいろいろな影響を与えるわけであります。その影響の与え方といたしましては、やはり異常気象の方が一般的には強い影響を与えるわけであります。というのは、異常気象の方が変動幅が大きいわけでありますから、当然大きな影響を与えるわけでございます。 次に、元へ戻りまして、災害の経年変化の図を見ていただきたいと思います。 この一番下は、日本の年々の風水害に伴います被害、これを一つの指数にかえて、年々の被害の状況を書いたものでございます。これを見ていただきますと、年々非常に大きく変動をいたすわけでございます。時には物すごく大きい年があるかと思えば、少ないときもある。この大きい年というのは主に強い台風が来た場合とか集中豪雨が来た場合、こういうときに非常に大きくなるわけでございます。ところが、全般的な傾向で見ていただきますと、この図でもおわかりのように一九四五年ごろ、第二次大戦の前後を見ていただきますと、その周りよりも平均的に大きくなっていることがおわかりになるかと思います。 この原因は、二つございます。一つは、言うまでもなく、社会の災害に対する対策でございましょうか、その影響が大きいのでございます。第二次大戦中は、戦争のために災害に対する対策が非常に手薄になった、それで非常に被害が大きくなった、そういうことでございます。最近になってまいりますと、この図でもおわかりのように、非常に減っているのでございます。第二次大戦のころと現在と比較いたしますと、概略な数でございますけれども、二十分の一くらいに減っているのでございます。この原因といたしましては、今申しましたように二つあるわけでございまして、災害に対する対策と、それからもう一つは、気候変化と申しましょうか、それがあるのでございます。ちょうど第二次大戦の前後は非常に強い台風が来た時代でございます。その両方あるわけなのですけれども、被害に対する影響といたしましては、何と申しましても対策の方が重要でございます。余り詳しい数字は申し上げられないのですけれども、ごく大ざっぱに申してみますと、人間の対策によって現在は当時と比べると七分の一ぐらいに災害が減っている。一方、気候の変化に対しましては約三分の一程度、これくらいではないかと思うわけでございます。 ですから、当時と比べると現在非常に災害が減っているというのは、要するに人間の対策、それから自然、気候変化一両方あるということでございます。ただ、この気候変化を見てまいりますと、長い間には変わるわけでございますので、実は現在は非常に強い台風が余り来ていない時代なのでございますけれども、これから先は、またもう一度第二次大戦の前後のように強い台風が来る可能性は十分にあるわけでございまして、今少ないからといって防災に対する対策を怠るということはいけない、やはり将来を考えておく必要があるのではないかと思うわけでございます。これは年々のことでございまして、いわば異常気象と申しましょうか、によるものでございます。 次には、気候の変動のことについてお話し申し上げたいと思います。 図の③の十年平均気候、災害などの長周期変化、これを見ていただきたいと思います。 これはイギリスの気温だとか風水害の指数、米の作柄、そういったようなものにつきまして十年の平均をとって、それが過去どういうように変わってきたかということを見たものでございます。 気候の変動となりますと、異常気象と違いましてかなり世界的に広い範囲でほぼ一様に変わります。厳密に言いますと、極と赤道で違うとか地域によって差はございますけれども、大体においてはかなり並行した変化が見られるわけでございます。これでイギリスの気温を見てみますと、十七世紀ごろには非常に温度が下がっている。それがだんだん変動しながら、今世紀に入りますと非常に気温が上がって、また最近少し下がりぎみであるということがおわかりになると思います。こういった変動は、気候といたしましては数字的にはそれほど大きいものでございませんで、一度から二度、こういうものなんです。しかし、この一度か二度というのは十年の平均で一度なのでありまして、これが社会に及ぼす影響は決して小さくないので、実は非常に大きな量なのでございます。 それに対応いたしまして、日本の米の作柄の変化を見てみますと、米というのは日本の場合には温度の高いときにできるわけですが、十八世紀から十九世紀の半ばごろまで見ていただきますと、年々非常に大きく変動があって、いわゆる飢饉が非常に頻発した年がございます。例えば有名なのは元禄とか天明、天保、こんなような時代がございます。最近も起きておりますけれども、江戸時代と比べますとその変動幅がかなり小さくなっているということがおわかりになると思います。これはやはり農業技術の進歩によるところでございますけれども、しかし、現在でも冷夏の影響は非常に残っているわけでありまして、例えば一九八〇年、昭和五十五年でございますが、あの年は凶作になったわけですけれども、そういう影響があるわけでございます。 この変化で一つ注意すべきことは、冷夏といったようなことが単独であらわれるわけではなくて群発すると申しましょうか、異常気象のあらわれやすい時期と割合穏やかな年というものがサイクリックに繰り返しているということでございます。この気候には長い周期の変化、短い周期の変化といろいろございます。非常に複雑でありまして、その原因も実はなかなか難しいのでございますけれども、現在いろいろの説が言われておりまして、太陽黒点だとか火山活動あるいは海の影響などと言われております。このうち割合はっきりと見られるのは、火山活動の影響でございます。今の図を見ていただきますと、一番下に十年間に起きました大噴火の回数、これは世界じゅうの火山の大噴火の起きた回数でございますが、この変化とイギリスの気温などを比較していただきますと、厳密ではございませんけれども、一般的に申しまして火山噴火の多かったときには温度が下がる、こういう傾向がはっきりと見られるのであります。そして、この火山噴火を見てみますと、余りはっきりした周期とは言えないかもしれませんけれども、大体において七十年ぐらいのサイクルで繰り返している傾向がございます。それがやはり日本の凶作を見ましても、そういった傾向が見られます。イギリスの気温になると、若干位相のずれがあったりなんかいたしますけれども、そういった傾向が見られるわけでございます。 最近数年、冷夏、凶作のような状態が続いておりますけれども、これは過去の歴史から比べてみると、そういうことが当然あり得るわけです。ただ、これがずっと続くわけではなくて、やはり上がったり下がったりいたしますので、何年か後にはまたいい状態に戻るのではないかと思われるのでございます。 以上が大体のあらましてございますけれども、ここでもう一つ申し上げておきたいことは、日本の異常気象というものは、先ほどの図でもおわかりになりますように、世界の異常気象と比べると比較的、比較の問題でございますが、割合小さいのです。ところが、大陸国家ですと、非常に大きな変動がございます。昔でありますと、日本のことだけ考えておればよろしかったのでございますが、現在でありますと、農作物を非常にたくさん輸入しておるわけです。したがって、世界の異常気象というものは、日本のいろいろな社会にも非常に大きなインパクトを与えるわけであります。そういう意味で、日本だけではなくて世界の異常気象についても関心を持って調べておく必要があるかと思います。 それから、もう一つの点は、科学技術の発達によりまして、異常気象の影響というものが小さくなったような感じも受けるのでありますけれども、しかしまた、反面におきまして、人口がふえてくる。それから、科学技術が発達するということはいいことなのでありますけれども、同時に、それが自然を極度に利用するということになりますので、そのためにかえって気候変動の影響というものが大きく社会にのしかかってくる可能性もあるわけでございます。 こういうことを考えてみますと、異常気象とか気候変動という問題に対しましても、学問的にそういうものがなぜ起こるかという原因をはっきりつかんでおく必要もありますけれども、それと同時に、こういったようなことが起きた場合にどんなふうに対策をしたらいいかということを、あらかじめ検討しておく必要が十分あるかと思います。この問題になってまいりますと、気象だけではなくて農業もありますし、工業とかいろいろな面があります。極端に言うと、人口問題ということまでいくと思うのでありますが、そういった広い目でこの気候変動と関連して考えていく必要があるのではないかと思っておるわけでございます。 簡単でございますが、一応これで終わらしていただきたいと思います。(拍手)
○佐藤委員長 ありがとうございました。 次に、山元参考人にお願いいたします。
○山元参考人 山元でございます。 異常気象、気候変動の予測の可能性と原因等につきまして、主として過去百年間、実はこれは世界的な気象観測網ができ始めたころでございますけれども、過去百年間のデータを中心にお話しし、私の意見を述べさせていただきたいと思います。 まず、お手元の資料の①と書いております図からお話ししたいと思います。 この図は、下に説明がございますように、若干古うございますけれども、一九五四年及び五五年、二カ年における北海道根室におきます日最高気温、朝、昼、晩と気温が変わりますけれども、一日の間の一番高かった気温を日々、線でもって連ねたものでございます。そして、太い滑らかな線が走っておりますけれども、これは過去三十年間、日々のデータの平均をとりまして、いわば平年値として示したものでございます。左側の一年間、一九五四年は、いわゆる冷夏と呼んでいいのかと思いますが、そして右側の五五年は、逆に平年よりも夏としましては暖かかった、あるいは暑かったと呼んでいい年かと思いますが、ごらんのように日々かなり大きく気温が変化しております。 いわゆる冷夏と申しますのは、夏毎日が平年値よりも低いというのではなくて、日によっては平年値よりも高い日もあれば、うんと寒いといいますか、冷たいという日がある、こういう変化をしておるわけでございます。問題は、このように日々激しく変化しておる状況のもとで十数日あるいは一カ月平均した場合に、平年よりも寒かったかどうかということで、寒かった場合、先ほどお話しのように異常気象ということになるわけでございます。 さて、このように日々変化しておりますのは、多くの場合いわゆる移動性の高気圧あるいは低気圧が大体西の方から東へ移動する、根室を通過するときにこういう激しい変化をもたらすわけでございます。そのような日々の変化に関する予測といいますか、天気予報に関しましては、先生方御存じだと思いますけれども、気象庁で毎日予報が出ております。実はこれは基本的にはいわゆる数値予報という方法をもとにしておりまして、例えば、昨日の観測データをもとにして大気の状態変化あるいは運動変化を支配する物理法則をコンピューターで解いて、本日あるいは明日の状況をコンピューターの上で予測する、こういうことでございます。 それで、そのような方式を例えば一カ月先あるいは一年先まで続ければ予測できるのじゃなかろうかということは当然考えられるわけでございますが、右の二番目の図をごらんいただきたいと思います。これは、地球全体を対象にしましたコンピューターのモデルを使った結果でございます。説明にございますように、一九七六年一月一日の観測データをもとにしまして、地球全体の気温の変化なりあるいは風の変化をコンピューターで予測した結果でございます。ただし、ここの結果は日本の北部のかなり広い領域の平均的な状況でございます。 横軸に1、10、20とございますが、1というのは一月一日でございまして、20というのはコンピューターで予測した二十日後の予測値、30というのは三十日後の予測値でございます。三本の線がございますが、まず実線は、一月一日の観測データをもとにした結果でございまして、大きく変化しております。ところが、その一月一日の観測値にごくわずか観測誤差を取り入れて初期値といいますか、一月一日のデータを変えますと、その結果は、破線なり点線で示したものでございます。 ごらんのように、十日あるいは十二、三日ごろまではその三つは非常によく一致しておるわけでございますけれども、それ以後は大きく外れてきております。結局どういうことかと申しますと、気象観測網で分解できない程度のごく小規模の現象が日がたつにつれてどんどん増大している。十日ないし二週間程度だったらそういう分解不可能な小規模現象の影響はおもてに出ないけれども、二週間を超えると、図では右の方になりますが、ごくわずかの差が大きい変化をもたらすということでございます。これは結局、誤差が増大するということでございまして、しかも、その誤差たるや、原理的には観測網の充実によってはほとんどカバーできないようなものでございまして、予測の限界をこれで例としてお示しすることができるかと思います。このような誤差が増大して予測ができなくなる、これをノイズといいますか雑音 テレビの画面に絵が映ったりするのは信号でございまして、それを邪魔するような雑音がどうかすると入るわけでございます、雑音と呼んだりしております。 今ごらんいただきましたこの状況は、大気を取り巻く状況、例えば海面水温は変わらない、太陽活動はなしといいますか太陽からの放射は変わらない、あるいは火山噴火の影響もなしという大気を取り巻く状況が全然変わってないときにおいてさえ実はこれだけ変化するといいますか、ノイズが生ずるということでございます。問題は、このようにノイズが大きくて予測の限界があるんだということで、全く悲観的な話になりそうでございますけれども、例えば、太平洋東部のペルー沖でのエルニーニョ等のように海面水温の上昇が起こるという場合、これは大気に大きい影響を与えるわけでございますが、その影響が日本にどういうふうにあらわれるかというのは、いわば雑音に対しまして信号と呼べることかと思いますけれども、その信号が予測の対象になるということになってまいります。 先ほど申し上げましたノイズ、雑音は、根室だったら根室という、局地的な気温なりに対しては実はかなり大きい値でございます。ところが、先ほど高橋先生のお話にもございましたけれども、全地球的あるいは北半球全体を考えて、平均的な状況がどう変わるかということを見ます場合には、そのノイズはかなり小そうございます。したがって、海面水温とか太陽活動の影響等によるシグナル、信号がどうなっておったかということをデータでもって見ようとしますと、根室とか局地的な場所のデータではなくて、北半球全体の平均気温がどうなったかということで見れば、信号がキャッチでき、そして原因との関連性をお話しできるかと思うわけでございます。 そういう意味で、二枚目の③図と④図、特に③図でございますけれども、北半球全体の平均気温が過去百年間どのように変わったかということを示しております。ちょっと図が複雑になってわかりにくいかもしれませんけれども、影をつけた部分をごらんいただければ幸いでございます。これは北半球全体の平均気温といいましても、例えば太平洋のど真ん中のように観測データのないところがございます。そういうところは推定をして求めたものでございまして、推定誤差を考慮しますと、本当の値は影をつけた部分に入るだろう。ただし、影をつけた部分は五年間の平均値の平年偏差でございまして、十九世紀の終わりごろに最低であったものが、一九四〇年ごろに最高になり、その後一九六〇年代まで徐々に下がってきて、後は上昇傾向にあるということでございます。 このような北半球の平均の気温に関連しまして、原因について若干お話しさせていただきたいと思うわけでございます。 次の紙の⑤図についてお話ししてまいりますが、その前に、地球の気候というものは太陽から熱をもらっています。その熱と同じだけの熱を地球が赤外線として宇宙へ出しております。特に赤外線として宇宙へ返しております熱量は、地球の温度が高くなれば大きくなります。それで、もしも太陽からもらう熱がふえれば当然赤外線としてもたくさん出す必要がございますので地球の気温も上がる、こういうことです。 さて、第⑤図、図が二つございますが、上の方はおおよそ過去百年間の太陽の黒点の数の変遷を示しております。御存じのように、おおよそ十一年の周期でもってふえたり減ったりしておるわけでございます。下の図は、先ほどもごらんいただきました北半球の平均的な気温の変遷を、平年値からの偏差を示しておるわけでございますが、左側、一九二〇年代よりも以前について見ていただきますと、黒点の数が多いときに気温がむしろ下がりぎみだ、逆に黒点の数が少ないときには気温が上がりぎみだ、こうなっております。ところが、一九二〇年を越えますと、その関係が崩れてまいります。ところが、一九六〇年代に入りますと、どうも以前の関係が復活しているやに見えるわけでございます。このように昔から太陽黒点というのは太陽からの熱のインデックスとして注目されてきておったわけでございますけれども、単純に黒点が大きければ気温が低いとかあるいは逆だということがどうも言えそうもない。これは、大気が太陽熱を受けとめる場合、特に雲の分布なりあるいは雲の特徴が変わっておるせいじゃないのかと思われるわけでございます。 それから、右側の⑥図でございますが、これは火山の噴火の影響を見たものでございます。 やはり過去百年の間、火山の大噴火によって生じました成層圏、大気の高層でございますけれども、そこでの粒子の量を算定したのが縦軸でございます。横軸は、そのような粒子が存在したときの北半球の平均気温でございます。それでごらんいただきますように、縦の軸のおおよそ30という数字から上の方では粒子の量、エアロゾール量と呼んでおりますけれども、これがふえるにつれて北半球の気温が下がっているということがごらんいただけるかと思います。しかし、それよりもエアロゾール量の少ない場合にはそれほど明確な関係はないということでございます。しかし、先ほど申し上げましたノイズとシグナルという関係からいいますと、どうして30という数字以下のところで大きく点がばらついておるのかということは問題がございます。 最後に、次のページに移っていただきまして⑦図でございますが、大気中の二酸化炭素、CO2の増加が着実に進行しているということは御存じのことかと思うわけでございます。 先ほども申し上げました太陽から入ってきます熱が仮に同じだとしましても大気中の二酸化炭素、CO2が増加しますと、実は地球が宇宙空間へ出す赤外線の熱を、シャットアウトまでいきませんが、邪魔をする割合がふえてまいります。したがって、太陽からもらう熱と同じだけのものを赤外線として出すためには温度が高くなければならないということで、CO2の増加に伴いまして地球の気温が高くなるだろうということで心配されておるわけでございます。 第⑦図の特に左側でございますけれども、これは過去百年間のデータにつきましてCO2の増加による影響を見たとすれば、その図の枠の中に一番上と真ん中と下と三つ図がございますけれども、一番上の太線のようになるだろう。それから、火山の噴火を考えれば真ん中のような太線になるだろう。点線が実測値でございますが、それとの対応からわかるわけでございます。最後に、太陽活動を考えれば一番下のようになって、かなり過去のデータが説明できそうだというのが実はアメリカのある学者の説でございます。 ところが、これは問題がございます。といいますのは、太陽活動といいますか、太陽からの熱が過去百年間どのように変わってきたのかという推定をするのにかなりあいまいな点がございまして、必ずしも多くの研究者の支持するところではございません。といいますのは、太陽から地球へやってきます熱量を正確にはかることができるようになりましたのは、ここ数年来でございます。アメリカの人工衛星に載せました非常に安定した優秀な機械でやっとはかれるようになってきまして、この種のことは今後の研究にまたざるを得ないということでございます。 最後にといいますか、その右側の図は、これはほんの笑い話に近いお話でございまして、今までの話は気温について申し上げてまいりました。ところが、異常気象、気候変動としてもう一つというか、ある意味ではさらに重要な要素は、雨といいますか、降水量でございます。それで、大気中のCO2の増加によりまして気候が変わるだろう、来世紀には地球全体の気温が二度ぐらい上がるのじゃなかろうかという予測をする学者が多数おられるわけですけれども、じゃ、そのときに雨の分布はどうなるだろうかということは当然問題になるわけでございます。ところが、雨は、冒頭で申し上げましたノイズ、雑音が気温に比べますと非常に大きいわけですので、予測は一層難しいわけでございます。この第⑧図は、下の説明にもございますように、数千年前地球がかなり暖かかったころの土壌水分のデータから、来世紀地球全体の気温が高くなったときに数千年前と同じようになるだろうということで、図をアメリカの学者がかいたわけでございます。しかし、この図の真偽のほどはまだわからないというのが現状でございます。 本当に最後にいたしますけれども、このように予測の限界あるいはその原因につきまして、やっと半球規模、グローバルな規模で物が言えるようになってきました。ただ、我々の実際の日常の生活からいいますと、じゃ北海道なりあるいは西日本、東日本という地域的あるいはある特定の場所で予測の可能性がどの程度なのかということは当然重大関心事でありますが、実際そこへ近づくためには多くの研究を要します。 この種の問題は日本だけではございませんで、例えば、御存じのように、アフリカで大干ばつで多くの方が亡くなったり被害を受けております。国際的にも重要な問題といたしましてユネスコの下部専門機関でございます世界気象機関、WMOが提唱してワールド・クライメート・プログラム、WCPと略しておりますけれども、世界気候計画というのが一九七九年に提唱されました。 その中身には実は四つ柱がございまして、データに関する計画、WCDPと略しておりますけれども、ワールド・クライメート・データ・プログラム。それから、気候の応用に関する計画、WCAP、ワールド・クライメート・アプリケーションズ・プログラム。それから、影響の研究調査計画、WCIP、ワールド・クライメート・インパクト・スタディーズ・プログラム。最後に、WCRP、ワールド・クライメート・リサーチ・プログラムという四つの柱になっております。 この最後のWCRP、日本語では気候変動国際協同研究計画、最後の次のページをめくっていただきましたらその概略が載っておりますけれども、WCRPという計画がございまして、これは先ほど申し上げましたWMO、世界気象機関と学術会議の理工系の部分に対応します国際的な組織であります国際学術連合合議、ICSUとの共同提案でございまして、昨年秋、学術会議から政府の方へ勧告されて、これを実施に向けて、それの受け皿でございます文部省の測地学審議会で恐らく近く検討が始められるものと期待しておる次第でございます。 以上でございます。(拍手)
○佐藤委員長 ありがとうございました。 次に、浅井参考人にお願いいたします。
○浅井参考人 浅井でございます。 私は、異常気象と気候変動に海洋がどのようなかかわりを持っているか、どういう影響を及ぼすかということを中心にお話し申し上げたいと思います。 気候変動あるいは異常気象に海洋はどのようにかかわっておるのかということを考える前に、なぜそういう役割を海洋が果たすのかということを考えてみますと、最も大きな原因の一つは、海洋というものは熱に対する保存性が非常に高いということでございます。これは皆さんも日常経験されますように、大陸上では昼間と夜との気温差が非常に大きい。一方、海上では非常に小さいということ、あるいは夏、冬の気温差は大陸内では非常に大きいけれども海洋上では非常に小さいということは日常経験されることでありまして、大陸性気候であるとか海洋性気候であるとかと言われるのは、端的に海洋の気候に及ぼす影響というものを表現しているんではないかと思います。つまり、海水の持つ熱の保存性が高いということは、言いかえるならば水温の変動が小さいということ、つまり、温度を一定に保とうという性質が非常に強いということでございます。つまり、海洋は非常に熱しにくくて冷めにくい、熱せられにくいけれども一たん熱せられますといつまでもその温度を維持する、そういう傾向が非常に強いわけでございます。したがいまして、夏に蓄えた熱を冬に大気に与える。そういう意味では大気の気候というものを非常に温和にする、マイルドにするという非常にいい面を海洋は果たしているわけでありますが、時たま海面水温に異常が生ずることがございます。その異常といいますのは、平年から大きくずれたような水温を示すということが時たまございます。 これは資料の一枚目をごらんいただきたいと思いますが、上の方の図でございますが、本州の東方海上の月平均海面水温、一カ月間にわたって平均した月平均海面水温の推移をことし、昭和五十九年の一月、三月、四月、五月、六月、ごく最近まで一月ごとに示しております。それは実線で示されております。五度、十度、十五度の等値線が入れられております。一方、破線の方は長年にわたっての各月の平均値でございます。平年値と呼んでおりますが、それが破線で入っております。 これをごらんいただきますとおわかりいただけると思いますが、東北地方の太平洋岸では平年に比べまして三度から五度くらい表面水温が低くなっているということがおわかりいただけるかと思います。特に沿岸付近では顕著でございます。この傾向は昨年も六、七月ごろに見られたわけですが、それが一たん弱まりまして、昨年の十一月ごろから再び低水温、異常に低い水温が東北の沖合で見られるようになりまして、それが今日まで続いております。こういうふうに表面の水温が異常に低くなりますと、そして、しかも海面の水温の低い海域の方から風が吹いできますと、その風下では非常に気温が低くなる、そういう現象が起こるわけでございます。 いずれにいたしましても、これは海面水温の持続性が高いということの一つの反映でございます。普通短期予報と呼ばれておりますきょう、あす、あさってのような天気予報をする場合は、海面の状態というものは余り問題にならない。つまり、現在の状態を与えておいて、それが変わらないものとして大気の変動だけを考えればよろしいという短期予報についてはそういう現状でございますが、時間が長くなるに従って、一月先、二月先あるいは一年先、数年先ということになってまいりますと、海洋の温度の持続性が高いとはいいましても、それくらいの時間スケールになってまいりますと、水温が変わってまいります。しかも、一たん変われば、先ほど言いましたように、他方では持続性が高いという側面があるものですから、長期の大気の状態の変化に対する予測、長期予報に対しては海洋の重要性がますます増してくるというのはそこに大きな理由があろうかと思います。 もう一つの側面は、海洋は大気に対する熱源であるということでございます。もし海洋がなければ、大気だけを考えますと、現在の大気の状態ではほぼ一日に一度当たり気温が下がっていくわけでございます。これは太陽から獲得するエネルギーに比べまして大気自身が失っていくエネルギーの方が大きいものですから、気温は次第に下がっていくわけですが、実際にはそういうふうになっていないということは、絶えず海洋から熱エネルギーを補給されているということでございます。 先ほど、海洋は大気に対して非常に気候をマイルドにする、一種の鎮静剤的な役割を果たすということを申し上げましたけれども、海洋が絶えず大気に対する熱源になっているという意味では、また逆に興奮剤的な役割も果たしているわけでございます。例えば、非常に激しい台風というような現象は、熱帯の海洋上で発生、発達するわけでございます。海面水温が二十六度以下のところではほとんど台風というのは発生しない、二十七度以上のところで台風の発生が多く見られるということからも、これは大気が絶えず海洋から熱を補給されて、その熱エネルギーによって大気の運動が駆動されているんだということの一つの証拠でございますが、これは単に台風というような規模の運動だけではなくて、全球的な、全地球的な規模の運動に対しても同じような役割を果たしているわけでございます。 二枚目の図をごらんいただきたいのですが、これは太平洋の海面水温の平年値からの偏差をとっております。我々よくアノマリーと呼んでおりますけれども、平年値からの偏差を、四つの図がございますが、一昨年、昭和五十七年の八月、それから十二月、それから昭和五十八年、昨年の八月、十二月というふうに太平洋上における海面水温がどういうふうに変化してきたか、その推移を示しておるわけですが、一昨年の夏ごろ、太平洋の赤道海域の東部赤道海域、南アメリカ沖をごらんいただければいいかと思いますが、平年に比べて少し水温が高くなっております。この影をほどこしたところが平年よりも水温が低いというところ、白いところは高いというところでございます。一度ないし二度くらい水温が高い部分が、南米のペルー、エクアドル沖あたりの赤道付近に見られるわけでございますが、それがその年の暮れ、十二月ごろになりますと、プラス五、六度くらいの非常に大きな正の偏差、つまり非常に暖かい海面水温がそこに発生、発達しているということがおわかりいただけるかと思います。ところが、その後翌年、昨年、昭和五十八年の夏ごろになりますと、その偏差は小さくなってまいりまして、昨年の暮れにはほぼそれが消滅したというような状況をたどるわけでございます。 これは今日エルニーニョという名前で呼ばれる非常に有名な現象でございまして、当時、この現象は南米のペルー、エクアドル沖で見られる局地的な現象であるというふうに数十年前までは思われておったわけでございますが、最近のグローバルなこういう観測資料に基づきまして、こういう現象は決して局地的な現象ではない、太平洋規模で起こっておる現象であるということが明らかになってきたわけでございます。そして、海面水温がプラス一度とか二度とか、四、五度というのは非常に大きいわけですが、それくらいの海面水温の異常が生じますと、しかも太平洋規模で生じますと、世界各地に異常気象をもたらす。これは北米大陸上でもアジア地域でもオーストラリアでも南米でも、これまで雨の非常に少なかったところが非常に多雨に見舞われる、あるいはこれまで雨が多かったところは干ばつぎみであるとか、非常に高温であるとか低温であるとか、そういう異常気象が各地で頻発するわけでございます。また、それだけではなくて、本来南米沖は寒流域でございまして、しかも底層の水が湧昇してくるというような海域でございまして、非常に好漁場であるわけです。カタクチイワシが非常にたくさんとれる世界有数の漁場でございますが、こういうふうに水温が異常に高まりますと、その漁場が壊滅的な打撃を受けるということも今日ではよく知られたことでございます。こういうふうに漁業に対しても非常に大きな影響を及ぼしているということが知られております。このように海面水温のアノマリー、異常が地域的な気候あるいは異常気象にも影響を及ぼしますし、同時にまた、世界的なグローバルな気候に、あるいはグローバルに異常気象をもたらすということが今日ではよく知られている事柄でございます。 しかしながら、それでは、どういうふうなメカニズム、機構でこういうような気候変動あるいは異常をもたらすのかということが我々としては非常な関心事でございますが、残念ながら、今日のところはこの機構はよくわかっていない。その大きな理由は、一つは、海洋が大気に影響を及ぼすということは先ほど申し上げましたけれども、同時に、大気が海洋にも影響を及ぼしているわけでございます。例えば、風が吹けば、その風に引きずられて海水が運動する、つまり海流が生ずるわけです。だから、非常に暖かい海水が冷たい海域に流れ込む、あるいは冷たい海水が暖かい海域に流れ込む、そういうことによっても海水温の異常が生ずるわけでございます。 もとへ戻りまして、最初の一ページに日本付近の、東北地方の太平洋岸沖の海域の水温分布をお示ししましたけれども、その下の図は表面水温ではなくて、深さ百メートルにおける水温でございます。そして、影を施したところが水温が五度よりも低いところです。この五度をとりましたのは親潮、これは寒流でございますけれども、寒流の存在領域のインディケーターとしてよく使われる量でございます。これは千島列島沿いに南下してくる親潮が平年に比べて異常に南下しているということ、三陸沖から常磐沖、房総半島付近までことしは南下しているということを示しているわけでございます。 それで、その表面水温は変わりにくいとはいいましても、その気象の影響を受けている、その上から非常に加熱されるというような現象が起こりますと、比較的昇温ということが起こるわけでございますけれども、もう少し深いところへまいりますと、その変化はますます鈍くなってくるわけです。長期間にわたって保存されるという状態があるわけです。だから、長期の変動を考える場合には、表面だけではなくて、さらに深いところの海洋の状態を調べなければいけないということになるわけでございますが、残念ながら、現在のところ、海洋観測というのは大気の気象の観測に比べまして相対的には非常に乏しいということがございます。特に、海面の資料は比較的多いけれども、海洋の中の観測資料は今日非常に乏しいわけでございます。それが、大気と海洋とが相互に作用し合っているということと同時に、海洋に関する観測資料が乏しいということが、海洋の大気に及ぼす気候変動あるいは異常気象についての機構、メカニズムを考える上で最も大きな障害、ネックになっているのではないかと思います。 そういうことがございまして、今日、関係者が非常に鋭意努力しておりまして、先ほど山元先生が、世界気候研究計画が国際的に現在検討立案されつつあるということを申されましたけれども、それに呼応いたしまして海洋学の関係者たちは、国際的にはユネスコの中にあります政府間海洋学委員会、IOC、もう一つは、国際的な学術組織の中にあります海洋研究科学委員会、SCOR、そういう政府間の組織と学術サイドの組織が協力し合いましてCCCO、コミッティー・オン・クライマティック・チェンジ・アンド・オーシャン、気候変動と海洋に関する委員会という合同委員会を設けまして、WCRP、世界気候変動研究計画にかかわる海洋に関する研究計画を立案推進すべく、その推進に当たっているわけでございます。 最後に、資料といたしまして1、2、3と三つつけてございますが、きょうは時間の都合で十分お話しできなかったのですが、資料1は、先ほど話しましたもののバックグラウンドをもう少し理解していただきやすく書いているものでございますし、資料2は、世界気候研究計画の最近の国際的な動向を取りまとめてございますし、その中で特に海洋にかかわる研究計画の国際的な動向についてのまとめが資料3でなされております。折がございましたならば、御披見いただければ幸いに存じます。 以上でございます。(拍手)
○佐藤委員長 ありがとうございました。 以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。
○佐藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中直紀君。
○田中(直)委員 諸先生方におかれましては、本日はお忙しいところをわざわざ参考人としておいでいただきまして本当に感謝をいたしております。 異常気象の問題につきましては、昨今の新聞等で各地のことがいろいろと報道されておりますが、今後の気象状況がどうであろうかというような地域の皆さんの不安の問題が一つございますし、また、ことしは豪雪がございまして、冬が寒いときには夏はどうなのかということが関心事になっておろうかと私は思います。 私は福島県の出身でございますし、海岸沿いのところでございます。そういう意味で、まず浅井先生に、海洋の問題につきまして少しお聞きをしたいと思います。ただ、諸先生方、非常に学問的にお話しをいただいておりまして、そういう意味では、我々の生活実感から来る問題とどの程度かみ合うかなという感じもいたしますが、お話をいただければありがたいというふうに思います。 私の出身でございます福島県の浜通りの常磐沖でございますが、従来にも増して親潮の影響で、三月から五月が大体三度から五度の低温だったという状況でございます。聞くところによりますと、房総、いわゆる犬吠埼のあたりまで親潮が来ておるという状況でございました。アワビだとか昆布、またホッキガイというのがございますが、凍死をするという状況なのかどうか、もう少し聞いてみなければいけませんが、そういう育てる沿岸漁業における影響が非常に大きい状況になってきておるということでございます。また、とれる魚も今回は非常に違う。寒流の魚がとれておるということで、漁業も非常に戸惑っておる状況でございますが、親潮の状況が、ことし一年を通してこういう状況にあるのかどうかということを少しお聞きいたしたいと思います。
○浅井参考人 大変難しい御質問でございますが、親潮の異常南下、この現象は、これまで過去にさかのぼってみますと、一昨年の夏にもそういう現象が見られました。ところが、その場合には、年末にはもとに回復したわけです。昨年も同様な経過をたどったわけですが、昨年からことしにかけては、一昨年に見られたような、冬にはもとに戻るという傾向が見られないままに、昨年の十一月ごろから今日までずっと親潮が異常に南下しているという状況が継続しているわけですね。それは観測事実としてそういうふうになっているわけでございます。 今後それがいつまで続くかということでございますが、それについては、どうして親潮が南下するかというそのメカニズムをよく理解しなければ、それが将来いつまで継続するかということについてはそう軽々とお答えするわけにいかないと思うのですが、このメカニズムにつきまして幾つかの説がございます。 一つは、アリューシャン低気圧、アリューシャン域に、通常、低気圧域ができるわけでございますけれども、それが異常に強い。低圧部が例年になく異常に強化されているわけですね。そうしますと、オホーツク海、千島あたりは、どちらかといいますと、北寄りの風が強まる、そういう傾向がございます。北寄りの風が強まりますと、先ほども申し上げましたように、北風に引きずられて海水が南下するわけでございますが、ちょっと話がややこしくなりますけれども、地球が自転しているということの影響で、南に向かって引きずられたら、そのまま南に下がってくるということをしないで、北半球においては風下に向かって少し右側の方へずれようとする、つまり、今の状況で申しますと、より三陸沿岸の方へ、東北地方の沿岸域の方へ押し寄せられる、そういう傾向があるわけです。 したがいまして、そういうべーリング海、アリューシャンあたりの低圧部のアノマリー、異常が持続いたしますと、今言ったような親潮の南下傾向というのは当分持続するのではないか、そういうふうに考えられるわけですけれども、果たしてアリューシャン低気圧のその異常がいつまで持続されるかという問題はそれほど明らかになっていないものですから、現状としては海水の持っている慣性の大きさ、持続性の大きさということから、急には変わらないのではないかというふうに私は思っております。
○田中(直)委員 もう一つお聞きいたしたいのですが、先ほど、海面水温というものは気候をマイルドにするというお話でございましたけれども、逆に言いますと、夏になりまして、寒流が大気によってどの程度影響されるか。聞くところによりますと、水面は温度が少し暖かくなってきたということでございますが、水面から二、三十メートル下は非常に温度が、寒流の影響がある、こういうことでございます。 そういう意味では沿岸漁業にとって影響があろうかと思いますし、海洋観測につきましてはまだまだ乏しいという状況にあるとのお話でございますが、その辺も含めて影響を研究していただき、その資料に基づいて漁業の皆さんにもお話ができるようにしてまいりたいと思いますが、気候との関係で海面にどの程度の影響があるかをお伺いしたいと思います。
○浅井参考人 今御質問ございましたように、海面水温自体は比較的早く大気の変動に順応する傾向がございます。特に夏季、上から加熱されるような場合に、しかも比較的穏やかな好天が続きますと、海面水温は比較的急速に昇温する、そういうことがございます。先ほどの資料でもございましたように、親潮域、東北地方の太平洋岸沖の水温が現在かなり平常値に戻りつつあるということは、その傾向を示しているのではないかと思います。ただ、それでもとへ戻るかというふうに思いますと、これは早計ではないかという意味で、もう少し海洋の深いところを見てみると、決してもとには回復していないということを指摘したわけでございます。 それで、こういう現象はこの地域だけではなくて、ほかの海域でもしばしばあらわれまして、夏には一たん平常値に戻りますけれども、いわば記憶は海の底深く蓄積されているわけです。だから、急には忘れないという性質がございますので、再びその翌年の冬になりまして、そして上下の海水の混合が盛んになりますと、海の底深く記憶されておったものが表面に出てくる。つまり、海水の深いところに存在した異常値が表面にあらわれてくるということがしばしばあるわけでございます。そういう意味で、長期の変動に対しては海洋の変動というものに十分注意しなければいけないということを申し上げたわけでございます。 そこで、海面水温が沿岸地域の気温にどういう影響を及ぼすかということでございますが、これは空間的なスケール、例えば海面の影響というのはそれほど大気の高いところまで即座に及ぶわけではない。海面付近の地上数十メーター、数百メーターという比較的低いところで顕著に海面水温の影響が大気にあらわれてくる。そのエリアというのは、それほど水平方向には大きく占めない。例えば秒速数メーターくらいの風がそういう水域を吹送しているとしますと、大体数百キロくらいの地域にわたっての地上気温には影響を及ぼすだろうけれども、それ以上の広いエリア、あるいはそれ以上の高いところには直接的な影響は、そう局地的な水温の変化の影響としては及ばないだろう、そういうふうに思っております。
○田中(直)委員 どうもありがとうございました。 最近の異常気象によりまして、各町村は異常気象対策本部というものも設置をされてきておるような状況にございます。また、海岸地区におきましてはやませの影響が出てきておる。また、標高四百メートルくらい以上のところにおきましては、引き続き冷害が起こるような形も出てきておろうかというような状況になってきております。一つは、冬が寒いと、いわゆる寒冬暑夏というような言葉もございますが、大寒冬冷夏といいますか、非常に冬が寒いと夏も寒いというようなケース、これは五十五年くらいのケースだと聞いておりますが、そういうことになりますと、私どもも対策を講じなければいけないというふうに考えておりますし、また、先ほどの高橋先生の、対策が重要であるというお話もあろうかと思います。 そういう状況の中で、これはなかなか予測がつかないというふうには思いますが、十年周期等の周期を考えて、ことしは非常に冬が寒かったので、夏は本当にどうなるのかな、冷夏になりそうなのかどうかというところを少し高橋先生にお聞きしたいと思います。
○高橋参考人 来年のことを言うと鬼が笑うと申しまして、特に長期予報となりますと非常に難しいので、余り断定的なことは申し上げることはできません。先ほどの、冬が寒ければ夏が暑いということわざがございますけれども、実は逆のこともございまして、必ずしもはっきりそうとは言い切れないようでございます。そういう面で申しますと、春の気温が割合にいい目安になるようでございまして、春が暖かければ夏が暑いというのが一般的な傾向のようでございます。その点で言いますと、若干悪い傾向もあるかと思います。 それから私、そういった意味で前々から調べておりますと、うるう年は割合温度が高い傾向がございます。また、災害が少ない傾向がございます。そういう点で申しますと、ことしはいいということにもなりますが、ただ例外もございまして、昭和五十五年、一九八〇年でございますか、あれはうるう年だったのですが、非常に冷夏になりました。 それからもう一つは、日本と言っても南北に長いわけでございますので、西日本と北日本とでは大分状況が違います。例えば、昭和九年は凶作でございましたけれども、しかし、あのときは西日本はむしろ干ばつでございまして、多少温度が高いというような状況でございますので、一律に言えない点もございます。それからまた、火山の噴火の影響がございます。一昨年でございますか、エルチチョン火山の噴火がございまして、それの影響で悪くなるのではないかというような説もございまして、その辺いろいろな根拠があってどうもはっきりとは申し上げかねます。 ただ、私個人の感じで申しますと、ことしは西日本の方はどちらかというと温度が高い。北日本の方も、冷害になる可能性もあるけれども、大体半々ぐらいじゃないか、そんな感じもしております。その問題につきましては、気象庁の方でいろいろ資料を集めて詳しい分析をしております。私のは、何もないから勘でやっておるようなものでございます。やはり気象庁の予報を見ていただいた方がいいのじゃなかろうかと思っております。
○田中(直)委員 私も気象庁の予報を聞いてみましたら、七月の後半は少し寒い、低温の日があるのではなかろうか、こういうようなこともございます。また、地域的なお話もございましたが、北海道と東北という地域を見てみますと、一概に北海道も東北も両方寒かったというようなこともないようでございまして、そういう意味では観測のデータも非常に大変でしょうし、先を見通すというのも大変なことだとは思いますが、せっかく山元先生いらっしゃっておりますので、北海道と東北あたりのことしの傾向、それから、やませの影響の度合いがどういうふうな感じになるか、お聞かせをいただきたいと思います。
○山元参考人 御質問は北海道、東北地方の夏に関する予測についての意見を述べろということかと思いますが、率直に申し上げまして、残念ながらお答えできない。私個人としましては、先ほどお話し申し上げましたように、ノイズといいますか雑音をきちんと算定して、そして、ことしの夏に影響を与えると思われる諸現象、例えば先ほどお話しのエルニーニョなりあるいは一昨年のエルチチョンの影響、私から言いますとシグナルということになりますが、そういうものをきちんと押さえることができましたら、ただいまの御質問にもお答えできますのですが、もう数年間お待ちいただければ、先ほど申し上げました国際協同研究計画もございまして、それが進捗いたしますれば恐らくお答えできるかと思います。そういうことで、お答えできないので、どうも申しわけございません。
○田中(直)委員 どうも質問の方が少しアカデミックでなかったようでございますので、申しわけございませんでした。 時間になりましたので、諸先生方の御意見、そしてまた御発言をもとに当委員会として対策を、特に冷害に不安になっておる地域の視察等も実施していただきたい、こういうふうに御要望いたしまして、終わらせていただきます。 どうもありがとうございました。
○佐藤委員長 次に、田中恒利君。
○田中(恒)委員 参考人の先生方、お忙しい中、貴重な御意見をいただきまして大変ありがとうございました。 時間が限られておりますので、要点だけ三人の先生方にそれぞれ御質問申し上げたいと思います。 まず、高橋先生に最初にお尋ねいたしますが、私ども専門家ではありませんので、一応国民の一般的常識で、一体これから気候というものがだんだん暖かくなっていくのか寒くなっていくのか、こういう素朴な質問があると思うのです。最近、気象庁が異常気象白書ともいうようなものを出しまして、国際的な異常気象の現実分析をやっておるわけですが、あれを見ると、どうも炭酸ガス等地球表面のエネルギーの発散が非常に強くなって、炭酸ガスなどの影響でだんだん温暖化の方向へいくのじゃないかというふうにも受けとれるし、また一方、氷河が小さくなって海面が冷たくなっていって寒冷化といったような節もある。そういう局面が、今はいろいろ細かいデータで御説明の中にもあったわけでありますが、そんなふうに見受けられるわけですが、一般的にはこれからどういうふうに気象というものが動こうとしているのか、この辺の特徴がございましたら、一口で結構でございますが、お知らせをいただきたいと思います。
○高橋参考人 ただいまの点についてお答えいたしま先 これは、実は気候と申しましても、地球の極の方と赤道と大分違うわけでございます。それからまた、日本も世界全体の状況とは若干違います。 世界的な規模で申しますと、やはり最近注目されておりますのは、先生おっしゃいましたように、炭酸ガスの増加による温室作用で温度が上がる、こういうのが一般的な見解でございます。ただ、それがいつごろから本当に効いてくるかということにつきましては、人によって若干差はございますけれども、一応次の世紀の半ばごろには非常に大きな影響力になってくる。最近はその影響が出ているか出ていないか、ちょうど境の状態と考えていいのじゃないかというふうに思われるわけでございます。そういうふうな一般的な傾向から申しますと、やはり一般的には少しずつ上がっていくというふうに考えた方がいいのじゃないかと思います。 それは人間の働きによる変化でございまして、それ以外に自然のいろいろな条件、この条件は、よくはわかりませんけれども、火山の活動だとか、先ほどからもお話がありましたように太陽黒点の影響とか、そういう面もございます。 火山活動と申しますと、先ほど申しましたけれども七十年くらいのサイクルがあるようで、一九五〇年ごろが高くて、そのころから下がってまいりましたが、それはかなり火山活動の影響があるのじゃないかと思います。ただ、その状況は、これからだんだんどちらかというと薄くなる状況でございますので、どちらかというとこれからは少しずつ上がる方向にだんだんいくのではないかというふうに思われます。 それから、黒点につきましても、黒点の多い時代から少しおくれまして一般的に温度が上がる傾向がございます。そういう点から申しましても、これにつきましてはいろいろな意見がございますので、人によって違いますけれども、やはり若干上がる気味があるかと思います。 ただ、日本の場合は、世界と比べると若干おくれるわけでございます。そのために、世界の気温が少し下がってまた最近上がりつつあるわけでございますが、そのおくれの下がった状態がまだどのくらい続くかちょっとわかりませんけれども、数年くらいは続く可能性はある、その後また上がる、そんなふうに考えたらいいのじゃないかと思っております。 炭酸ガスの増加の問題につきましては、実はこれは人間がつくるのでございまして、経済活動の将来のこともあるのでそういう点で非常に不確定性がありますので、そういう状態がずっと続くかどうかにつきましてもいろいろ問題があるので、そういった点につきましても今後いろいろな面で検討していく必要があるのじゃないか、こう思っております。
○田中(恒)委員 次に、山元先生に御質問します。 これもなかなか断定はしにくいんだと思いますが、実は私ども今非常に心配しておりますのは、日本の最近の気象、異常気象という言葉が非常に一般化されてきたわけであります。確かに戦後、まあ私どもこの異常気象というものを結果としてやはり食糧、特に米と結びつけて考えるわけでありますけれども、昭和二十九年にたしか大凶作がありまして、それから大体順調に進んでいったと思うのですね。例のやませというのがあのころから十四、五年とまっておったわけですね。そして、たしか三十九年から四十年代に入ってやませが吹き始めて、五十一年、五十五年ころから大分問題になりまして、冷害ということになりまして、五十五年はたしか作況が八七、それから五十六、七、八と九六、これはずっと続きまして大体四年連続、我が国の稲作の史上では明治以降三回というのがあるわけですけれども、四回連続で作況がこういう状態というのは初めてなんですね。ことしのこの状況を実はまた非常に心配をしているわけでありまして、これがもし昨年と同じようになりますと、五年連続我が国の作況というものが平年作を下回る、こういうことになりますので、これは一つは気象、それからいま一つは稲作技術の問題が確かにあると思うのです。今御指摘にもなりましたが、確かに技術体系が今日の気象条件の変化に対応しているかどうか、この問題があるわけです。ありますが、大きな原因の中には気象という問題があると思うのですが、ことしからまだ五、六年この状態が続くのだ、こういうふうに言われる人も学者を含めて相当いるわけなんですけれども、これはどういうふうに見られておるんでしょうか。こういう傾向が、今高橋先生が何か変わり目のときのようなとおっしゃられたわけですが、これが安定するんじゃなくて、今のような状態がまだしばらく続くというふうに考えたらいいのかどうか、この辺について山元先生はどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
○山元参考人 非常に難しい問題なんですが、私が申し上げるとしたら、先ほどの田中先生の御質問と同じくまことにそっけないことを言わざるを得ないのでございますが、先ほどの私の話にございましたノイズといいますか雑音が、不幸にして日本の夏、北日本の冷夏なりやませを吹きやすくするようにした、これはたまたまそうなったということと、それ以外に信号としてエルチチョンの噴火の影響が重なったりして今先生のおっしゃったようなことに今までなったんじゃなかろうか。 したがいまして、今後どうなのかという点に関しまして、雑音がどういう格好で日本を覆うかということなんですが、本質的にいわば無秩序なもので予測不可能なものを雑音と我々の分野では申しておりますので、雑音がまことに不幸にして日本の冷夏をもたらすように起こるのか、それともそれをキャンセルするような大気を取り巻く環境条件が何か起こるのかということでございまして、しかも、その後者が起こったとしましても、その程度が少なければ雑音をキャンセルすることなしに雑音が残るということにもなりますので、まことに申しわけございませんけれども、率直に申しまして非常にお答えにくい御質問だということでございます。
○田中(恒)委員 次に、浅井先生にお尋ねしておきますが、先ほど資料で三陸の海面水温が低くなってきておるという御説明があったわけですが、これはどういう理由なのか。これは先ほどお話もありましたが、北極の氷が解け始めて、それがずっとおりてくるとかというような、まあ雑音なのか、そういう話があるのですが、そんなものがやはり影響をしておるという断定、それだけではないのでしょうが、そういう要素も考えられるわけでしょうか。
○浅井参考人 冷たい水がそこに存在し、持続するということの原因をさかのぼって考えてみますと、幾つかの原因が考えられるわけですね。一つは、そこで冷やされるということ、つまりそれは、そこで蒸発が盛んに起これば海面水温は非常に下がっていくわけです。その蒸発を起こすためには、強い風が吹くということと、それから冷たい空気がその上にやってくるということですね、相対的に乾いた冷たい風が。そうしますと蒸発が非常に盛んになりまして、そこで蒸発のときに潜熱という熱エネルギーが奪われるわけで、水温が下がるということが一つございます。それはそこのローカルな問題でございます。 もう一つは、もともと冷たい水がそこへやってくるというもう一つの機構が考えられるわけですね。その冷たい水がやってくるという場合には、より冷たい水が存在する北の方から、例えばオホーツク海なり千島列島沿いの北の方から南下してくる、そういうことがもう一つ考えられるわけです。それと同時に、今先生の御指摘がございましたオホーツク海あたりには冬季たくさんの氷ができるわけでございますけれども、それが異常に多くてそれが南下してくるということの結果としてその海域の水温が下がるのではないか。 そういう幾通りかのことが考えられますが、その最後の氷の問題につきましては、私自身が調べたわけではないのですけれども、これまでに発表されております資料等を参考いたしますと、今冬は必ずしもオホーツク海内における海氷の量が特に多かったわけではない、どちらかというとむしろ例年に比べて少ないぐらいである。ただ氷の南下する経路が沿岸沿いに、非常にタイトに沿岸に沿って南下してきたということですね。だから、量よりはむしろ経路がどうであったかということが大きかったのではないかと思います。 その経路について考えますと、オホーツク海高気圧あるいはアリューシャン低気圧、それが非常に強まることの結果として、先ほども少し申し上げましたけれども、北寄りの風が非常に強まる。そうしますと、南下と同時に、先ほど言いました地球が自転しているということの結果として風下に向かって右側にそれようとする、つまり沿岸沿いにぴたっとくっついた形で南下しやすい、そういうことの反映ではないか。これはまだ想像の域を出ていないわけで、必ずしもそれだけで説明ができるかどうかは問題があると思いますが。
○田中(恒)委員 高橋先生に重ねてお尋ねをしておきますが、確かにアフリカに起き、ソビエト、それからアメリカ。日本はあんなに大きな規模ではないけれども、どうも日本もおくればせながら妙な現象が起きるような感じが非常に強いわけであります。 そこで、今お話もありましたが、WMO、世界気象機関ですか、ここでいろいろ各国の情報、データ、共同調査、そんな作業が本格的に始まっておるということでありますが、我が国の研究体制の上からもやはり国際的な協力体制をとらないと、単に短期の気象予報ということではなくて長期の気象展望ということになると、相当成層圏の状況も把握をしなければいけないでしょうし、そんなふうになった場合には、どうなんでしょうか、例えば中国、大陸、こちらからこちらへ移ってくるわけでありますが、ソビエト、それから北極関係、南の方は気象のいろいろな体制や資料などがそんなに古くから整っておるのかどうか。つまり、一つは国際的に今集められる体制を強められているのでしょうが、日本の場合に、日本の周辺でそういう相当長期の気象予報というか分析をするに必要なデータが周辺の国から集まるような状況になっているのかどうか、この点をひとつお尋ねしておきたいと思います。
○高橋参考人 先生御指摘のように、気象の問題につきましてはどうしても国際的にデータを集める必要がありますし、いろいろな情報を交換する必要があるわけでございます。そういう関係で、これは日本だけではなくて世界各国でそういう関心を持っておりまして、気象に関しましては各国との間にWMO、世界気象機関で協定がございまして、世界で地上観測はもちちん高層観測、こういったものを国際的に交換するようなシステムができてきております。したがって、現在におきましては毎日、日本でも世界じゅうのデータが短時間に集まる体制にございます。そういった点では、データとしては一応そろっているかと思います。 なお、一つこの際申し上げておきたいのは、日本の場合でございますと、農作物に与えます影響というのは温度が主に効いてまいります。高ければ一般的に作柄がよろしいし、それから低ければ作柄が悪い。しかし、世界的に見まして実は温度ではないのでございまして、雨の量なのでございます。世界で何百万人といった餓死者を出した例が過去に何回かございます。その原因を調べてみますと、実はそのほとんど大部分が干ばつなのでございます。これは日本の気候的な条件とそこで栽培しております作柄の関係もございます。要するに、日本はふだんから雨が多いので、多少雨が少なくなりましても、作物に対する影響は比較的少ないのです。ところが、中国、それからインド、ソビエトもそうでございますけれども、ああいうところは割合雨が少ないのです。そこで雨が少なくなりますと水不足になって、それで干ばつによる飢謹が起こる、これが現状でございます。 とかく気候変動あるいは異常気象と申しますと、日本の場合は気温を考えがちなのでありますが、世界的に見ますと、要するに雨の問題が非常に重要でございます。そして、気候が変わってまいりますと大気の流れが変わってまいりまして、雨の降る位置が非常に変わってくるということです。これは非常に大きい問題でございまして、日本の常識で世界の気候を考えるとそこに非常に大きな過ちが出てくるので、そういった点で日本といたしましても、世界の気候、それが社会にどういう影響を及ぼすかにつきましても十分考えておく必要があるのではないかと思っておるわけでございます。
○田中(恒)委員 時間が参りましたが、最後に一問だけ、高橋先生に重ねて御質問しておきます。 私どもも最近の気象の状況というのは非常に心配をしておりまして、お話の中にもありましたが、予報なりいろいろなデータを集める、対策を立てるということは必要ですが、なった場合にどうするか、こういうことも含めて考えておかなければいけないわけです。いろいろ国の財政などの関係もあって、例えば気象庁のいろいろな測候所なり要員の配置なり、そんなものも必ずしも十分かどうか心配をいたしておりますが、国際的に見て我が国の気象分析、気象予報、そんなものの状況はどうなのか。しかし、こういうみんなが非常に心配をしておる状況の中で、国として何を特にお求めになっていらっしゃるのか。アメリカなどは何か気象五カ年計画といったようなものを、政府が相当予算をつくって本格的に取り組むというような話も聞いておるわけでありますが、その辺で、もし当該関係機関の中で御意見などございましたら、最後に御指摘をいただきたいと思うわけです。
○高橋参考人 この問題につきましては日本でも非常に関心を持っておりまして、例えば気象庁といたしましては五年ほど前に気候問題懇談会という会議をつくっておりまして、年に数回、委員の方が集まりまして、こういった問題に関しての検討会を開いております。それには政府の委員の方も大分入っております。 実はこの問題につきましては、社会に対する影響が非常に大きいので、またそういった点を浸透させていく必要があるのでありますが、非常に難しいし、それから気象庁といたしましては気象が専門でございますので、主に気象に関する情報をそれに対して提供する、そういう態度で、各省では恐らくそれによっていろいろ検討しておられることと思います。 それから、学問的なことにつきましては、先ほど山元参考人からもございましたように、世界気候研究計画というのがございまして、日本にもそれに対応する委員会がございまして、そこでやっております。 それからまた、昨年、気候影響利用委員会という、これは有志の任意団体のようなものでございますが、それができまして、気候変動によってそれがどういうような影響を与えるか、そういった問題に関する研究を、研究というよりはいろいろやっている方が大勢おりますけれども、その間の情報交換をいたしまして、こういった問題を進めていきたい、そんなようなことを進めております。そういう点でかなり進んでおりますけれども、やはり将来を考えてみますと、もう少しこういった問題については、いろいろ積極的に政府としても進んでいく必要があるのではないかという感じはいたします。 もう一つ申し上げますと、気象庁の方に気候変動対策室ができまして、こういった問題に取り組んでいるわけでございます。
○田中(恒)委員 ありがとうございました。
○佐藤委員長 次に、薮仲義彦君。
○薮仲委員 きょうは、諸先生には大変お忙しいところ、当災害委員会におきまして、非常に貴重な御意見を開陳いただきまして、本当にありがとうございました。 私は、何点か素朴な質問をさせていただきたいと思いますので、質問が素朴でございますから大変無理な点があるかもしれませんので、お答えいただける範囲で結構でございますからお答えいただければと思います。 最初にお伺いしたいのは、率直に言って、ことしは異常気象なのかどうか。これは高橋先生と山元先生にお伺いしたいのでございますが、ことしは異常気象なのか。先ほどのお話のように、三十年間の観測データをもとにして、あるいは異常高温、異常低温あるいは多雨あるいは雨が少ないというようなことでの、平均より甚だしくかけ離れていなければ異常とは言わないということでございますが、ここ数年来、お米のとれる量等が非常に不安定な状態にございます。さっき高橋先生も、日本の国は南北に長いから局地的な問題であるというような話もございました。十分それは認識いたしておるわけでございますが、最近気象庁が軌を一にして「異常気象レポート」、御承知のようにこれをお出しになったわけなんです。 そういうことが出てくると、何となく異常なのかなというような国民感情になりまして、これは読んでみれば、決して異常ということではなくて、アンケート調査のような形でできているわけでございますが、しかし、やはり我々の認識として、現時点、ことしの日本の気象は異常なのか。と同時に、これから、日本の国も含めまして世界的な気象状況が、夏は暑くて冬は寒くて春、秋は温暖な気候というのが我々は一番好ましいと思うのでございますが、こういう正常な状態にはならないのだろうか。今の時点を異常ととらえなければならないのか、そういう点は国民が非常に不安に思う点でございますので、気象庁のこういう発表等もマスコミに載りますと、何となく今国民の気持ちの中には、天候異変かなという感じをずっとここ数年来持っております。 そういう意味を含めまして、簡単で結構でございますから、ことしは異常なのか、また、これから世界全体、グローバルな地球全体として、気候というのはそんな不安定な、あるいは不安な要因はございませんよ、正常な状態には必ず戻りますというような御認識なのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
○高橋参考人 この異常気象というのは、先ほど申しましたように、非常に変わった状態が異常気象でございます。ただ、そこで非常にややこしい問題が一つございます。と申しますのは、異常に対して平常があるわけで、それが気候の平年値です。その気候の平年値も非常に長い年月を考えてみますというと、変わってまいります。そうすると、昔は別に異常ではなかったのが、最近の状態で見れば異常である、そういう問題もございます。それで現在は、その異常気象といたしましては、先ほど申しましたように、過去三十年くらいの平均を平常と考えて、それからの変動が過去三十年間に起こらないと思われるほど変わった場合を異常気象と言う、そういうふうに定義しているわけです。そういう点で見てみますと、最近世界的に見まして異常気象がふえているというのは大体本当のようでございます。ただ、過去の記録を見てみますと、そういう状態が多い時期と少ない時期といろいろあって、それが変わっていくわけです。 そういう点と、もう一つは、気象と言ってもいろいろあるわけで、気温もあれば、それから降水量もあれば、雪の降り方もあるわけであります。ですから、ある要素については別に異常ではないけれども、ある要素については異常である、こういうこともございます。ことしの二月あたりの状況を見ますと、これはやはり異常と言っていいのではないかと思います。非常に気温も下がりましたし、雪がよく降りました。東京の例で申しますと、最深積雪ではそんなにひどい異常ではないのですが、大雪の降った回数は非常に多いので、そういう点では異常と言っていいかと思います。世界的に見ましても、先ほど、北半球のことしの二月の図をお見せいたしましたけれども、平年よりも八度以上も高いとか低いところがあったわけです。こんなことはめったにないのでございまして、そういう点では異常と言っていいかと思います。 それから、それじゃ二月が異常だったから夏が異常になるかというと、実はそうは簡単にいかないので、そういった点が非常に難しいところでございます。それで、昭和五十五年が異常なデータでございましたけれども、あんなような異常、冷夏というようなことはことしはとても考えられない。あれは本当に百年に一回ぐらいでございまして、多少は北日本の方が低くなる可能性はありますけれども、ことしの夏に関しては、あんなような異常なことは起こらないというふうには現在考えております。
○山元参考人 高橋参考人からもうほとんどおっしゃいましたので、余りつけ加えることはないかと思いますが、私は先ほどからも雑音と信号の話ばかりしておりますが、そういう立場から申しますと、一昨年の五月でしたか、メキシコのエルチチョンの火山の大爆発がございましたが、その影響は、まだ今後の詳しい研究を必要といたしますけれども、大体の推測では、数年間は続くだろう。そういう意味で、雑音のほかに火山噴火の影響が去年からことしにかけての天候にかなり影響を与えておるのじゃなかろうか。したがいまして、今後の見通しについては、若干、火山噴火の影響が残るのじゃなかろうか。しかし、そのいわゆる雑音というものがどういう形で火山噴火の影響、シグナルに重なるのかという予測が、先ほど申し上げました雑音の予測というものができないということでもって、結果としてこういう異常さがどの程度続くのかということはわかりませんけれども、申し上げられることは、エルチチョンの火山噴火の影響という信号は、まだしばらくは続くだろうということでございます。
○薮仲委員 それでは、次の点でございますけれども、高橋先生は随筆「天気十話」の中でコンピューターにちょっと触れられておりますけれども、先ほど来お話を伺っておりまして、山元先生も、いわゆる大気大循環モデルを用いられまして、予測の困難さをちょっとお話しになられました。いわゆる現在のコンピューターを駆使しても、先ほど雑音というお話もございましたけれども、予測は十日、十二、三日まではある程度数値も出てくるけれども、それから先は非常に困難であるという御指摘がございました。我々もよくわかるわけでございますが、この予測という問題について二つあると思います。二つといいますか、これは私の考えであります。一つは、コンピューター等でいろいろな条件を入れて台風の進路あるいは天気図を修正していきながら予測するという方法があろうと思います。現在の天気などはそういうことだと思いますけれども、しかし、もう一つは、過去のデータを五十年、百年を積み重ねて、同じような気象条件があるということもあるいは可能性としてあるかもしれません、類似のケースが。そういう実績、資料あるいはこれからのいろいろな条件を積み重ねた上での予測の可能性ということを考えるときに、これからの気象条件の予報の可能な時代といいますか、可能な限界といいますか、今のお話ですと十日前後ということですが、将来長期予報は可能なのか、それとも、ある程度まではできるけれども大変だなというお考えなのか。時間の関係もございますので簡単で結構でございますが、山元先生、高橋先生にお答えいただきたいと思います。
○山元参考人 予測の可能性でございますが、先生のおっしゃるとおりでございまして、私は、先ほど雑音、信号ということを強調してお話しいたしました。過去にさかのぼって、例えばほとんど同じような冬の状況がある、そうすれば夏はほとんど同じような状況が起こるのではなかろうかということは、確かにおっしゃるとおり非常に有望かと思われるわけでございます。ところが、例えば気圧配置が同じようでございましても、大気の変化に影響を与えますほかの要素、例えば雪、氷の分布が違うとか、あるいは海面温度が必ずしも同じじゃないというような点でもって、大気の変化、運動を支配する条件がすべて同じだということを確認することが過去のデータにおいてはかなり難しい。しかし、現在の状況でなし得る長期予報の方法としては、おっしゃる方法が最も有望な方法かと思うわけでございます。しかし、大学におりまして研究する者といたしましては、先ほど申しましたようなことで、過去の、例えば五十年前とことしの冬が非常によく似ている、しかし、完全に全く同じだ、アイデンテイカルだというような状況はない、ごくわずか違っても、先ほどのコンピューターの結果でごらんいただきましたように、十数日から大きく外れるということでございまして、むしろ私どもはその辺を目指す。 しかし、では全く悲観的なのかという御質問に対しましては、私自身はむしろ楽観しております。例えば、先ほどお話しのエルニーニョというような熱帯太平洋の海面水温が高まる、そのときに日本なりあるいは世界じゅうの海面水温上昇による影響といいますか、シグナルがどうなのかということをよく調べる。しかし、そのときに、例えば海面水温の変化が仮に全く同じであっても、それを受け入れる大気の状況が違う場合にはどれだけモディファイされるのかというようなことも含めて、大気を取り巻く環境条件が違った場合、大気はどのように海面水温の上昇に対応して変化するのかというようなことを調べて結論を得ることができましたら、おっしゃる長期予報の可能性は開かれてくるものだろう、大学におる研究者として私はそういうふうに考えております。
○高橋参考人 予測というのはなかなか難しいものでございまして、何を予測するかによっても違うわけでございます。毎日毎日の天気予報でございますと、予報の限界というのは、理論的に見て大体十日ぐらいだろうと言っております。しかし、それじゃその先わからないかというと、毎日毎日の状況としてはわからないけれども、平均の気温はこれくらいになるだろうというような、いわば気候的な状態でございましょうか、これならばある程度予報、予報と言っていいかどうかはわかりませんけれども、それはできるわけです。極端なことを申しますと、来年の夏の東京の平均温度が例えば二十五度くらいといいますというと、恐らく二度か三度の範囲で当たるわけです。冬は寒い、そういう予報ならできるわけです。 長期予報というのはそれからの偏差を予想するわけで、そういうことになってまいりますと、非常に難しくなってまいります。それをやりますのにはいろいろな方法がありますけれども、先ほど先生がおっしゃいましたように、過去の似た状況をいろいろ調べるというのもその一つのやり方であります。そういったことをやりますと、ある程度進んでまいります。ただ、それですと限界があるわけで、それを進めていくためにはどうしても学問的に気候がなぜ変わるか、どういう要素が効いているか、そういうことを明らかにしていく必要があるわけでございます。そういった点は、世界の資料もだんだん集まってまいりましたし、もうちょっとそういうデータも集まって、そういうものを分析してまいりますと、大分精度が上がっていくかと思います。ただ、その場合にはやはりある程度の限界はあるわけでございまして、来年の夏の八月の上旬はどうとか下旬はどうとかということまではちょっと簡単にはできないかと思います。ただ平均的に、比較的いいとか悪いとかという、何と申しましょうか、ポテンシャル予報といったようなことならばある程度できていくんじゃないかという感じがしているわけでございまして、それにはやはり気象学、気候学、こういったものの研究の進展が望まれるわけでございます。
○薮仲委員 浅井先生にお伺いしたいのでありますけれども、気象の部分でなぜの部分の解明、先ほど来諸先生からお話がありましたように、例えばエルニーニョ現象あるいはまた親潮の南下の問題、こういうことがなぜそうなるのかという、なぜの部分ですね。そのほかにもいろいろあるわけでございます。さっき高橋先生は、異常気象といっても、北半球を例にとれば、例えば片っ方で高温であれば片っ方は非常に低温であるとか、あるいは片っ方で干ばつであればこっちは大洪水であるとか、プラスもあればマイナスの部分もあるというお話もあったわけでありますけれども、気象現象の中でなぜという部分の解明はどの程度可能なのか、あるいは百あるとすれば、ほとんどなぜの部分は未解明なのかどうか、その辺いかがでございましょう。
○浅井参考人 一つエルニーニョの例を挙げて申し上げますと、海洋学者の方は、まず大気に変動が起こる。例えば、熱帯地方では通常東寄りの風、貿易風と呼んでおりますけれども、東寄りの風が卓越している。それによって、太平洋上の赤道付近を考えますと、絶えず東の方から西の方に向かって引きずられているわけですね。したがって、東の方では底の方の冷たい水が絶えず上がってきて、上の方の温かい海水が西の方にパイルアップ、蓄積されていくという状態で、通常、太平洋の赤道海域を見ますと、東の方は低温で西太平洋の方は高温な状態になっているわけです。ところが、ときたま熱帯付近で吹いております東寄りの風が弱くなりますと、水温の分布が、ちょうどシーソーのように、今度は西の方が相対的に低くて東の方が高くなる、そういう現象が起こります。これは恐らく大気の方の風の変動に起因しまして、それの結果として海水温に異常を来すのではないか、そういうふうな仮説、これはまだ仮説でありまして、この仮説を目下検証しようとして努力しつつあるわけですが、そういう仮説がございます。 ところが一方、気象学者の方は海洋の方に原因を求めまして、その結果として大気が変動するであろう。東太平洋の方の水温の異常、つまり東側で非常に温かく、西の方で相対的に冷たくなりますと、東の方で上昇気流が起こり、西の方で下降気流が起こる。こういう一種の東西方向の循環が生ずるわけですね。そうしますと、その結果として熱帯地方における通常吹いております東寄りの貿易風が少し弱まるのではないのか。 つまり、大気側に着目している人は、海洋の方にその変動の原因を求めようとして話を始めるわけですね。で、海洋の方は逆でございます。今日はその両者がジョイントしてまいりまして、これは一方的な因果関係ではなくて相互作用を及ぼしているんだ。大気の方が変動することによって海洋が変わりますし、海洋が変わることによってそれが大気の方へフィードバックされる。だから、これはそれぞれ別々に研究しておったのではいけない。大気の方の気象学者と海洋の方をやっております海洋学者とが協力し合ってこの問題を究明しようではないかということで、先ほども話がありましたように、目下、国際的にも両方の研究者たちが協力し合って、これを一つの相互作用し合うシステムとしてその変動の機構を考えていこう、そして、今言いましたような仮説が果たして正しいものかどうかということを検証してみようという動きが現在非常に活発でありまして、恐らく私の推測では、これは日本の気象学者、海洋学者も非常にこぞってこの問題に参加しておりますし、国際的にも非常にその参加を期待されている分野でございまして、ここ数年の間にこの方面の研究は格段の進歩が期待されるのではないか。そのためには立派な、しっかりした研究計画を立てなければいけないということで、政府サイドの気象庁の関係者、それから学術サイドの大学の方の研究者とが協力し合ってこの研究の推進に当たろうとしているわけでございます。数年たてばこの問題に対する見解もかなり具体性を持ってお返事できるのではないかと思っております。
○薮仲委員 時間が参りましたので、最後に、我々政治の場にある者の期待を込めてお願いをしつつ、最後の問題は高橋先生に簡単にお答えいただければと思うのです。 希望の点は、諸先生に我々政治の場におる者の気持ちでございますが、異常気象とけうものが出てくるわけでございますが、それに対応して、気象変動、異常気象に対応するような国民生活をどう確立するか、日本の経済をどうするかというような問題がこの委員会では論ぜられることだと思うのでございます。では、どうやって災害を、あるいはまた経済活動をどう維持していくかというような問題が数多く論ぜられると思います。その異常な気象に対して立ち向かう方策を我々は努力していきたいと思いますし、また、それを裏づけるような諸先生の研究の成果というものを我々は大変期待をいたしております。 と同時に、これは諸先生に御検討いただきたいのは、気象庁を初めこういう気象通報というものが国民の経済活動に与える影響性、それから人心に与える影響性というのは非常に大きいものがあると思うのです。異常気象かなと思うと、何となく気もめいってまいりますけれども、夏、暑くなるぞというとうれしくなるわけで、これは不思議なものでございますが、そういうものの国民経済や国民の意識活動の中に与える影響性というものも、これからの御研究の中で、発表の仕方や、どういうことがよりベターなのかという点もいろいろとこれからまた次の機会には教えていただきたい、こう思っております。 最後の点でございますけれども、高橋先生、「天気十話」の「雨の国日本」という中で緑の問題を取り上げていらっしゃいます。先ほど先生は、科学技術の進歩というものは災害対策や何かで非常にプラスの面があるけれども、自然を極限まで開発してしまうという点でマイナスであるというお話もありました。緑がなくなる、あるいは炭酸ガスの問題等も指摘されておりましたけれども、国民生活の気象に与える影響が大きいというお話もあったわけでございます。 そういう意味で、これからの科学技術あるいは人類の進歩に対して、緑を大切にしろとか、気象学者のお立場から警告を発することがございましたら、ごく簡単で結構でございますから、やはり自然も昔と大分違うよということも含めまして、一言警告がございましたらお教えいただきたいのでございます。
○高橋参考人 この問題はなかなか難しい問題でございまして、やはり両面があるわけで、いい面と悪い面とあるわけです。 それから、もう一つの問題は、日本だけではなくて、非常に人間活動が大きくなってまいりましたので、グローバルに考えなければいけない問題であります。日本の場合には雨が多いので、割合緑が豊かでございます。ところが、国によっては非常に少ないところもある。そして、炭酸ガスに関する影響を考えてみますと、日本はエリアが小さいので割合その影響が小さい。しかし、例えばアマゾンあたりの森林の問題につきましては、あれは、非常に大きな問題があるわけで、あれがなくなると、炭酸ガスの増加に対して相当悪い影響と申しましょうか、炭酸ガスがふえるのではないかというような考え方もございます。 しかし、同時にまた、炭酸ガスが増して気温が上がった場合に、その影響がいいか悪いか、これも実は簡単には言えない問題がございます。と申しますのは、日本の場合には温度が上がりますというとむしろ農産物なんかふえるわけでございますから、そういう点ではプラスかもしれないのです。ただ、世界的に見ますというと、気候が変わってまいりまして雨の降り方が変わってくる、そうすると、国によっては雨が降らなくなって穀物がとれなくなってくる、そういう国に対しては非常に大きなダメージを与えるわけです。一方においてはまた逆によくなるところもあるかもしれません。そういう点で見ますと、世界全体で見るとどうなるかということは簡単に判断できないのであります。その点が非常に難しい点かと思います。 ですから、この問題につきましては、確かに異常気象が影響を与えることは事実でありますが、それが社会にどういうような影響を与えるかということにつきましてはやはり慎重に検討する必要があるのではないか。この面で悪いから悪いと簡単に言い切れない面があるので、この問題については十分注意をして、特に経済、産業に与える影響も十分に考えて、こういうときにはこうなる、こういうときにはこうなるということを検討しておく必要がある。まず、それが現在やるべき第一のステップではないか。それだって、本当にこういう悪いことが起こるとすれば、それを総合的に、やはり社会心理学のこともありますので、そういうことも入れて慎重に発表する必要がある、そういうふうに考えております。
○薮仲委員 どうもありがとうございました。
○佐藤委員長 次に、安倍基雄君。
○安倍(基)委員 どうも諸先生方、お忙しいところ、非常に参考になる御意見を承りましてありがとうございます。 私、どういう質問をしようかなとずっと並べておりましたら、そのほとんどの部分が既に同僚委員によって質問されておりますので、ある程度重複があるかもしれませんけれども、私なりにお教え願いたいと思っております。 さっき田中委員からも質問がございましたが、我々、今、米の備蓄を本当にどうするかということを中心に論じているわけでございます。いわば、何年か続きの冷害で大分不作である。先生クお話しのとおり、これは米だけに限らず、要するに世界的な食糧の問題が起こってくるかもしれない。ですから、日本だけの気候では不十分で、世界的に見ていかなくてはいけない。そのときに、これは単に冷害とかだけではなくて、雨の問題もあるというふうな先生のお話でございました。 この点につきまして一つお伺いしたいのは、世界にいろいろ食糧機構というものがある。それと気象学者というのがどういうぐあいにタイアップしてこの点を検討しているのかどうかということがまず第一点。 それから、私はいろいろオカルト的な本をよく読むのでございますけれども、二十一世紀までにはいろいろな天体の変化がある。惑星直列があるとか、これが太陽の黒点に影響する一さっきのお話だと、太陽の黒点とのいわば連動と申しますか、そういったようなお話もございました。こういう天文学者、地球物理学者との関連において、例えば太陽の黒点がどういったことで生ずるのだろうかという場合、例えばそういった天体の動きも関係があるのかというようなこともございますので、気象学者の方と地球物理の連動と申しますか、例えばさっき、いまに暖かくなるだろうというような御意見もございましたが、反面氷河期に入るのではないかという話さえもある。 そういったことでございまして、まことに初歩的な御質問かもしれませんけれども、現代における気象学者が、これから二十一世紀に向けてこの十数年間どういうぐあいに見ておられるのか、暖かくなるのか冷たくなるのか、そういったことをいわば世界的な食糧機構的なものとの協力関係あるいは地球物理学者、天文学者との協力関係においてどう見ているのかということにつきまして、ちょっと話は大きいのでございますけれども、高橋先生の御意見を承りたいと思います。
○高橋参考人 氷河期になるとかあるいは逆に温度が上がる、こういう問題がございます。その点についてもう一つ申し上げておきたいことは、予測する期間によってそれは実は違うのでございます。何万年という時間帯で考えてみますと、過去の記録を調べてみますと、過去何回か氷河期がありまして、現在はその氷河期と氷河期の間の間氷期にある比較的暖かい時代である、こういうふうに言われております。そういう点で考えてみますと、何千年後あるいは何万年後にはまた氷河期になるという可能性は多分にございます。そういう点ではこれから氷河期になるだろうという予測も成り立つわけでございます。しかし、その間にも割合短い、最近ですと七、八十年から九十年の変化が目立っております。そのほかに数百年の変動もあるわけであります。比較的短い、例えばここ数十年の場合でございますと、やはりその気候変化に及ぼすのは数十年の変化の方が効いてくるわけで、そういう点で見ますと、これから先はあるいは二十一世紀の初めのころはどちらかというと温暖になる傾向が強いんじゃないか、それと炭酸ガスの問題がございまして、そういう意味では次の世紀あたりには温度が上がると考えるのが一般的な見方ではないかと思います。 それからまた、この気候変動というのは非常に面倒でございまして、数十年の変化を支配いたします因果関係と申しますか、それと氷河期が起こるといったような原因とは実は違うのでございます。数十年でありますと、火山活動だとかあるいは海の影響、先ほど浅井教授の方からもありましたように、海というのは非常に熱を蓄える要素があるので、一度温まりますとなかなか冷えないし、冷えるとなかなか温まらない、そういったことで割合数十年の変化は起こりますけれども、もっと長い何千年、何万年となりますと、むしろ太陽活動の影響といったようなものが特に効いてくるんじゃないか。氷河期の起こる原因につきましてはいろいろ説がございまして、ミランコビツチという人が言っているのでは、地球が太陽の周りを回っているわけですが、その地球の回転だとか軌道が少しずつ変わってくる、それで日の当たり方が変わってそういった氷河期が起こるんだ、そういう説がございます。それについてもいろいろな問題がございますけれども、一応かなりその説が現在はいいんじゃないかと言われています。 そういったように時間スケールによって暖かくなるか冷たくなるかという判断が違うので、そういった点がなかなか難しいのでありまして、世間に対してもそういった点の誤解が出てくるといったところではないかと思います。
○安倍(基)委員 私はそういう何万年という意味ではなくて、後十年あるいは十五年のサイクルで考えたときに、我が国が食糧備蓄の方に踏み切るべきなのかどうなのかという一つの判断のポイントといたしましてどう考えるのかということでございまして、この点どうなんでございましょう。さっきちょっと第二番目の問題としてお話しした世界食糧機構とかそういったところとの協力関係とか、データのいわば融通し合いとか意見の交換的なものがあるんでございましょうか。
○高橋参考人 農業のことに関しましては私、素人なものですからどういうふうにやっているか、よくはわかりません。気候の問題につきましてはいろいろ議論をやって国際的な研究もやっております。しかし、これは国際的に検討していく必要があるかと思います。 その場合のもう一つの問題点は、世界全体としての食物の量というものだけではなくて、むしろ偏在という問題でございましょうか。ある国で非常に足らなくなる、ある国はたくさんできる、また逆になるかもしれません。そうすると、食糧の輸送の問題が大きくなってくる。それには国と国との関係といったことがあってくるので、将来のことを考えてみますと、気候の変動がそういった分布に影響を与えて、それが国際的な問題になってくるといった可能性が非常に大きいのじゃないかというふうに感じております。
○安倍(基)委員 私、実は予測の問題をお聞きしようかなと思っておりましたら、薮仲先生から既に幾つかの問題が提起されておりますけれども、さっきのモデルとかいう話でございます。 これは山元先生にお聞きしたいと思いますけれども、例えば第②図で大気大循環モデルというようなことが出ておりますが、この変数というのは具体的には何を変数にしてモデルをつくっておられるわけでございますか。
○山元参考人 実はこの第②図の結果は私自身の研究結果じゃなくて、ほかの人の研究結果を引用させてもらっておるわけでございます。大気の運動及び状態をすべて変数としております。具体的には温度、気圧、風、水蒸気量といいますか湿度といいますか、それから雲、それから山といいますか、ヒマラヤ山脈とかロッキー山脈という地形、まあ変数じゃなしにむしろ境界条件と我々申しておりますけれども、それから海面水温の分布、それから太陽からの熱、そういうものを境界条件として取り入れて、先ほど申しましたものを変数としてコンピューターで計算した結果でございます。
○安倍(基)委員 さっき薮仲委員から、二つのアプローチがあるだろう、過去のデータともう一つはどういったものを条件として拾い出すか。いわゆるいろいろな式でやるわけでございましょうけれども、私ども最近、毎日毎日の天気予報を人工衛星から送られてくるああいったもので見る時代になってきた。その意味でいわば技術の進歩ぶりと申しますか、そういったものが日常に非常に使われ始めたなという感じがするのでございます。その意味におきまして、私はこれからの予測というものが、変数の選び方によっては意外と当たってくるのではないかなという気がするのでございます。例えば私どもの選挙区ではお茶なんかの冷害というのがございまして、こういったものはある程度気象の配置図とかいろいろな要素を持ってくれば何カ月前くらいからか予測できるのではないかという気がいたします。 したがいまして、今までいろいろ来年どうなるか、再来年どうなるかということでございましたけれども、まだもうちょっと待ってくれというお話がございますけれども、こういった意味のいわば衛星とか新しい宇宙空間あたりの研究とかそこからの観測とか、そういったようなことにつきましての協力関係と申しますか、これは気象学者だけの話ではないかもしれません、軍事的な問題もございましょうけれども、その辺がどういうぐあいに進められておるのか、また、これから我々政治家といたしましてどういうところを突いていって国際協力を要請するのかということについての現状と御意見などを承りたいと思います。これは高橋先生でも山元先生でもどちらでも結構でございます。
○山元参考人 いわゆる長期予報、季節予報ができるのじゃないかという御激励と私としては受けとめたいわけでございますが、その線で研究計画を立て、また頑張ろうとしておるわけでございます。 先ほどから申しておりますように、大気を取り巻く環境が変わった場合にいわゆる異常気象が起こる、それを信号と申しておりますけれども、例えば火山噴火一つ例をとりました場合に、実は、先ほどから話をいたしております一昨年のメキシコのエルチチョン火山大噴火と同程度の火山噴火が約二十年前にインドネシアのバリ島の火山で起こりました。そのときに、ある場所では実は平年よりも気温が高かったけれども、地球全体として見ると気温は低かった、そういう意味で、はっきりとした信号が出ておるわけでございます。それで、同程度のエルチチョンの噴火が起こった場合に、同じように熱帯地方の火山であるので、例えば気温の変化、冷夏等の発現が全く同じように起こるのかといいますと、どうもそうではなさそうだ。といいますのは、噴火に際して成層圏まで火山灰あるいは火山性のガスを噴き上げるわけですが、火山灰は割合早く落ちまして、火山性のガスが成層圏の上空で太陽紫外線の影響でもって水蒸気と結合して液滴になるわけでございますが、そういうものが熱帯だけじゃなしに極地方の方へ拡散します。ところが、成層圏の状況が違いますと拡散の程度が違う。そういう意味で、二十年前のインドネシアの噴火の場合と一昨年の噴火の場合とはどうも違いそうだ、そういうことでございます。 ただ、先ほどから申しておりますように、大気を取り巻く環境が変わりましても、それを大気が受けとめるわけでございますけれども、大気の受けとめ方の状況はどうなのかということまで考慮して研究を進めれば、かなり信頼の置ける信号の検出といいますか、あるいは予測というものができるのであろう、こういうふうに私なりに研究の筋書きを描いておるわけでございます。 実は、同じような性格かどうかは別といたしまして、世界じゅうの多くの学者が、そのような信号といいますか、大気を取り巻く環境の変化による気候変化といいますか異常気象を検出し、また予測できるようにしたいというのが皆様の考えでございまして、先ほど申しました、昨年の秋、日本学術会議から政府に勧告されました気候変動国際協同研究計画でもって各国とも案を固め、国際協力で進めようということで、たびたび国際的な打ち合わせ会といいますか、そういうものを持ち、また研究集会を持ってやろうとしておるのが現状でございます。恐らくそれが、打ち合わせ会といいますか研究集会が固まりまして、近い将来に、各国が協力しながら気候変動の、先ほど御質問のようなことに向かって力を合わせてやっていくことになるだろう、こういうふうに期待しております。
○安倍(基)委員 そうすると、いわゆる国際協力、例えば衛星の問題というのは、軍事的な問題もございまして、データが公開されないという要素もあり得るかと思いますけれども、我々として何かお役に立つことがございますれば御意見を承りたいと思います。
○山元参考人 気象衛星に関しましては、非常に有力な情報を、我々おかげで得ておるわけでございます。御存じのように、日本の気象庁が運用しております「ひまわり」は、日本付近と言うと語弊がございますけれども、日本が位置しております東経百三十五度と赤道を中心にして描いておるわけでございますけれども、気候変動、異常気象の問題に関しましては、地球の裏側といいますか、大西洋あるいはインド洋の状況ももちろん問題になります。 それで実は、国際的に協力をするということで、先ほど申しました気候変動国際協同研究計画の一環として、アメリカとかヨーロッパ諸国がほかのセクターで観測しておる雲のデータを持ち寄って一つのデータセット、ファイルにしようということが昨年の七月から実際に行われつつありまして、もちろん日本の気象庁もその有力なメンバーとして参加しておるわけでございますが、当面五年間に限って、要するにグローバルな、南北両半球、赤道、全部を含めた雲のデータを一まとめにするというISCCP、国際衛星雲気候計画と訳すのですか、というのが既に始まっております。 何か希望はないかという御質問だったかと思いますけれども、強いて申し上げますと、一応国際的に五年というふうにそのISCCP、国際衛星雲気候計画の年限が限られておりますけれども、できましたら、私としてはもう少し延長してほしい。これは日本だけの問題ではなしに国際的な問題ではございますけれども、例えば十年というふうに延長してほしいという希望を持っております。
○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、気象というものの経済全体に及ぼす影響は非常に大きい。昔ある学者などは、景気循環を気候変動に求めたというようなこともございましたけれども、そういう面におきまして、私は、この気象問題は、災害のみならず、世界経済全体に対する動きをとらえながら、しかも食糧問題を踏まえながら進めていただきたいと思うのでございます。 時間も参りましたので終わりますが、貴重な御意見をどうもありがとうございました。
○佐藤委員長 次に、中川利三郎君。
○中川(利)委員 どうも御苦労さんでございます。全く素人でございますからあるいはピント外れになるかもわかりませんが、あらかじめ御了解いただきたいと思います。 まず、高橋参考人にお聞きするわけでありますが、小さいことで、来年、再来年、当面の日本の稲作はどうなるだろう。先ほど先生は、日本というのは地理的に非常に長い、ですから、いろいろばらつきがあるようなことを言っておりましたけれども、いずれにしても日本の稲作地帯と言えば、どう言っても東北や北陸ですね。こういうことを中心にして見た場合に、気象庁は、先ごろ、ことしの夏は短い、こういうような予報を出したようでありますが、同時に、先ほど浅井参考人が、いろいろなグラフ、海水温の分布状況を見ますと、深さ百メートルの親潮、冷水が本州の方へずっと来ているのだ、南下しているのだ、こういうお話もありますね。ですから、マクロじゃなしに、本当に手近な問題として、さしあたっての稲作ですね、こういう問題で心配あるのかないのか。長い御経験のある高橋参考人でございますから、そこら辺について具体的にお教えいただければありがたいと思います。
○高橋参考人 稲作にとりまして天候は非常に問題でございまして、御心配のことは私もよくわかります。なるべくいい天候になることを望むのでございます。 ただ、予報の問題になってまいりますと非常に難しいのでございまして、何ともはっきりしたことは申し上げかねるわけでございます。ただ、一般的な感覚といたしましては、先ほども申しましたけれども、最近冷害が四年くらい続いております。ことしも多少北日本の方は冷害になる可能性がありますけれども、もうそろそろ終わってもいいのじゃないかなという感じはいたします。 それともう一つは、異常気象の場合におきましてはプラス・マイナスが共存するものですから、その位置がちょっとずれますと、寒い方が逆に物すごく暖かくなってしまうこともあるのでございます。その点の微妙なところになってまいりますと、どうも簡単に判断できないので、なかなか十分お答えができないというのが現状でございます。一般的な傾向といたしましては、昭和五十五年のようなあんな異常なことはまずないだろう、多少地域によっては夏に寒気が入っていくことはあるけれども、日本全国的に見れば大体平年並みになると考えるのが今のところでは穏当な見解ではないか、そんなふうに考えております。
○中川(利)委員 気象の中でも農業気象というのは一番手数がかかるものだというふうに聞いているわけです。そういう意味で、今気象庁ではアメダス、「ひまわり」、レーダー、これをいわば三種の神器だという格好でやられているわけでありますが、先ほどお話がありましたように、農業というのは地域的な特性、そういうものによっていろいろ支配される要素が非常に強いわけであります。ですから、ああいうアメダスだとかそういうもので具体的な地域の農業の気象をカバーできるのかどうか、この点は私ちょっと心配でありまして、かつて昭和三十四年でありましたか、答申の中で、農業や畜産に対してそういう大まかな気象だけでは非常にうまくないのだ。そういう点で、今まで全国に何カ所かありましたね、気象通報所といいますか測候通報所、こういうものをきちっとやるべきだという答申が、よほど昔でありますが、あったように思うのですが、逆に今それが全部廃止されて何もないという状態ですから、私は逆な方向に今行っているのじゃないかなという感じがするわけでありまして、こういう面での先生の御見解をもう一回お聞かせいただければありがたいと思います。
○高橋参考人 農業につきましては、先生おっしゃるように、確かに非常に局地的な現象もかなり効いてまいります。それから、日々の状況も効いてまいります。ただ、それを予報するということになりますと非常に難しい点がございまして、やはりもうちょっと粗くてもいいから非常に広い範囲を十分に解析する、特に長期予報となりますと、もうちょっと大きな目で見る必要があると思うのでございます。 それから、もう一つは通報上の問題でございますが、現在ではいわゆるアメダスでございましょうか、そういうもので非常に細かいデータが集まっておりますので、そういうものを利用すればむしろ前よりはよくなっていると思います。 それともう一つは、やはり農業に関しましては非常に細かい気候も効いてまいります。ただ、それにつきまして早い時期にそれを察することは困難であります。そういう点で考えますと、農業をやっていく場合にもこういうことがあり得るということでありまして、ある一本の推理を立ててそれにきちんと合うようにやるよりは、それに幅があることを考えてそれでやっていくのが今の技術段階では一番安全な行き方ではないか、また、そういう道をとるべきではないかと思っております。もちろん正確な予報ができることが一番望ましいのでございますけれども、山元教授からもお話がありましたように、予報というものはなかなか一筋縄でいくものではないので、予報技術に余りおんぶするよりはやはりある程度幅を考えて農業対策をやっていただくのが一番望ましいのではないかと思っております。
○中川(利)委員 確かに広い分野から測定することは必要だと思うのですが、農業というのはどうしても地域的な偏りの中でそれぞれのあれをやっているわけでありますから、そういう面と同時に、例えば土壌の水分が蒸発する量がどうだというような、昔はそこまで測候所が農民の立場に立ってやった、そういう過去もございます。そういう面からすれば、やはり小さい分野からも、そういう地域地域の分野からもそういうものがあって、両々相まってより確かなものに、より農民に信頼されるものになっていくだろうと思うのですが、この点のお話をしておりますと時間がかかりますので、次に移ります。 先ほど「ひまわり」のお話がございました。私、「ひまわり」のことをいろいろ調べてみましたら、せっかく国の大変な金をかけて打ち上げておるわけでありますが、今いろいろ故障もあります。あれを肝心の気象庁が、全国でたったの十九カ所しか利用局がない、こういうことなんです。例えば、私、秋田の一区でありますが、秋田市に秋田気象台というものがあるわけであります。ところが、そこでは、そういう「ひまわり」の画像を受像できない。何で解析し、分析しているかといいますと、NHKのテレビを気象台がビデオにとって、それを土台にして勉強している、こういうことですから、私は全く逆だと思うのです。もともと、測候所、気象台に入った情報をNHKへ流すということが建前としても筋だと思うのです。 そこまでせっかくのものをつくりながらそれを余り利用することができないような状況になっていることについて、具体的な地域で言えば秋田の気象台のような状況がたくさん全国にあるということについて、どのような御見解をお持ちでいらっしゃいましょうか。
○高橋参考人 私、実は気象庁を大分前にやめましたものですから、現在、中の状況がどうなっているか、よく存じません。しかし、やはりそのデータは、ある程度別な意味で流れているわけでございます。 それで、実はその予報のやり方につきましても、いろいろなやり方があると思います。もちろん各地方気象台で全部やればよろしいわけでございますが、それを処理するためには相当の金がかかるわけで、そういった国全体としての経済の面も非常に問題があるところなわけです。それで、現在では仕事を組織化して分担をして、出た結果を細かいデータを流してやる、そういうやり方を進めているようでございます。そういう体制になってまいりますと、技術の問題だけではなくて、技術のシステムの問題になってくるわけで、それがどういうのが一番いいかという点に関してはいろいろな意見があると思います。ただ、それには、やはりバックになりますのは経済とか人手の問題とかいろいろあるので、ちょっと簡単にはお答えできないような状態でございます。
○中川(利)委員 高橋参考人は前の気象庁長官ですね。そのことも存じ上げておるわけでありますが、今気象予報に、曇り後時々晴れだとか、どっちでもいいんだというようなことがやられていますね。曇り後時々どうだ、受け取る方にしてみますと、よくわからないのです。同時に、降水率の問題も、何%の確率というような言い方がありますね。あれも新聞の投書に載っておりますように、どうもはっきりわからないのです。今のこれだけ進歩した技術がありながら、ああいうやり方しかないものでしょうかな、前の気象庁長官としての参考人にお伺いしたいと思うのです。
○高橋参考人 今の問題は非常に難しい問題でございます。と申しますのは、一つは、天気の本質と申しましょうか、それから来ている面もございます。例えば、夏を考えてみますと、夕立がございます。その場合、東京都でありましても、ある場所では大雨、ある場所ではかんかん照り、そういうところがございます。ほんのわずか違っても非常に天気が違うわけです。そういうことを仮にNHKか何かで放送しようと思いましても、仮にそういうことがわかったといたしましても、それを放送するのには相当間がかかってとてもできない相談でございます。そこで、やむを得ずある程度漠然としたポテンシャル予報と申しますか、そういう予報を出して、使われる方がある程度それを参考にして判断する、そうせざるを得ないのじゃないかということでございます。 ただ、特殊な目的になってまいりますと、例えば野球放送なんかやっていく場合に、雨のときに困る。そうすると、その野球場の天気が問題になる。そういうときには特別にそういうところを研究して、そして、それに合うような予報をやるということがあり得ると思います。ただ、それを全部のところを国でカバーするということはとても不可能でございますので、そういった問題につきましては、いろいろな民間の気象会社が最近出ておりまして、そういうところで請け負ってやるというシステムになっております。現在ではそういったようなやり方をせざるを得ないのじゃないか。 それから、確率予報につきましては、確かにこれはある程度学問的な面がございますので、一般の方にはおわかりにくい面もあるかと思います。ただ、天気の影響というのは受ける方の状況によって違うわけで、例えば台風が来た場合の影響が大きいところですと、来る確率が小さくとも対策をとらなければいけないし、余り影響がないところでありますと、かなり確率が高いときに対策をとらないと、かえってほかの対策のための経費がかかって損をしてしまうということがあるわけで、実はそういう意味で確率予報というものは発達したわけで、おわかりにくい点はあるかと思いますけれども、実際の経済的な面ではあれは非常にいい方法だろうと思っております。
○中川(利)委員 それでは、山元参考人にお聞きします。 ある学者の説によりますと、太陽黒点がごく長期になれば凶作というか、大変な不作になって、ちょうど天明の飢饉がそういうときに当たったんだ、こういう説を言う方があるわけであります。同時に、一九八五年、六年、つまり来年、再来年ですね、やはり同じような状況の、太陽黒点がそういうあれに近づく、そういうふうな現象があらわれる兆候があるということをおっしゃっていることをお聞きしたことがありますが、そこら辺についてどういうふうにお考えなんでしょうか。
○山元参考人 先ほど冒頭で具体的な気温の変化と黒点数の関係を図でもってお話ししたわけでございますが、おっしゃるとおり、過去の凶作等と太陽黒点の関係等を調べて結論をお出しになっている方もいらっしゃいますし、その結論をもとに将来予測について発言されている方もおられますが、私としては、大学におる研究者として、仮に凶作ないしは低温が起こるとかいう結論を出すためには、そのメカニズムといいますか、それを押さえていきたい、そうじゃないと物が言えない、こういう立場でございます。現に先ほども、第何図でしたか、太陽の黒点数と北半球の平均気温が時代によっては逆相関であり、時代によっては正相関になるというようなこともお示ししたわけでございます。 その点、実は一番期待しておりますのは、先ほどもちょっと触れましたが、人工衛星で太陽からの太陽熱といいますか、これを直接観測できるようになりましたのはここ数年来でございまして、現在四年半ぐらいのデータがたまっております。その結果では、日々少しずつ太陽からの熱が上がっております。ところが、そのとき、そのときあらわれる黒点数との関係を見ますと、逆相関といいますか、黒点が多いときには太陽からの熱が少ない、そういうことでございます。ですから、もしもそのようなことが、例えば黒点が大きく変化する十一年周期変動にもあるのか、さらに長い周期においても黒点が多ければ太陽からの熱が少ないという関係が起こっておるのかどうか、この点は人工衛星による直接的な太陽熱の測定データの集積を待たざるを得ないということでございます。それが果たされれば、メカニズムも頭に入れたストーリーがつくれるのではないか、むしろ私自身、今から楽しみにしておる次第でございます。
○中川(利)委員 最後に、浅井参考人にお聞きいたします。 海洋学といいますか、気象学といいますか、地球物理学といいますか、全体的にそういう方を御専攻なさっていらっしゃるわけでありますが、先進諸国と比べまして例えば日本の場合の位置づけでありますが、予算の問題だとか、あるいは、レベルの非常に高いのはわかっておりますけれども、力の入れ方だとか、そういう先進諸国と比較した印象、研究者としていろいろ要望なり、外国と比べて予算の配分が非常に悪いとか、いろいろな御不満みたいなものを、満足しているかどうかということはともかくといたしまして、いろいろな要求が当然おありだろうと思うのでございますけれども、海洋学そのものから少し離れておりますが、研究者の立場として率直に国に物を申す、こういうものがもしございましたならば、この機会にお聞かせいただけたらありがたいと思います。
○浅井参考人 私、先ほど話に出ました世界気候研究計画、あるいはそれに伴う海洋研究者の研究集会、そういうものに割に頻繁に出席できるチャンスを与えられまして、幸いにしてこの数年間は国外のこれに関連した研究の動向というものもかなりよく把握ができていると私自身思っているわけです。気象学、海洋学いずれにいたしましてもこの分野の研究というのは、研究者サイドの人たちと、それからオペレーショナルに、つまりルーチン的に観測を維持されているかバメンタルサイドの人たち、そういうグループとのコオペレーションが不可欠である、非常に重要であるということは国内的にも国際的にも古くから理解されておりまして、現在はそういう方向で進んでいるわけでございますが、こういう気象、海洋という問題になりますと、どちらかというと学問よりはまず現実の予測という、災害対策ということも当然あるからでしょうけれども、そういう問題がとかく先行しているわけですね。だから、他の研究の分野ではいろいろな現象のメカニズムというものがわかった上で、現在こうであれば将来どうなるであろうかというふうな予測をするわけですけれども、気象、海洋の分野におきましてはわからなくても予測をしなければいけないという社会的な要請が非常に先行しておりまして、そういう形でこの学問が進展してきた。ある意味では非常にいい面もあったわけですが、ある面ではそれがやや跛行的な形であらわれるという点も時々見受けられるわけでございます。 それで、もとに戻りまして、これはどの分野の研究者に対してもこういう質問をされれば似たような回答になると思うのですが、研究面ではかなり不十分である。ただ、こういう気象、海洋の問題は、ある特定のポイントで観測すればそれで飛躍的に研究成果が上がるかというと、そういうものではなくて、非常に広いエリアにわたって、そして継続的に長期にわたって観測をしなければいけないという、その割には著しい成果は上がらないということで、我々研究者サイドも予算の要求という点では非常にやりにくい面もあるわけですが、これはかなり長期的な立場で、広い視野で政府の方でもぜひともこの分野の研究に対しても配慮をしていただきたいというふうに思っておりますし、他の諸国でも現在はそういう方面の研究が非常にエンカレッジされつつあるというのが現状ではないかと思います。
○中川(利)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。
○佐藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時五十一分散会