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101回国会衆議院1984/03/22

科学技術委員会 第5号

発言数
6
登壇者
2
会派数
1
開催日
1984/03/22

会議録

大野潔公明党・国民会議

○大野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興の基本施策に関する件、特に新素材の研究開発の問題について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として松下電器産業株式会社専務取締役技術本部長早川茂君の御出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大野潔公明党・国民会議

○大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。

大野潔公明党・国民会議

○大野委員長 この際、早川参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  本日は、新素材の研究開発の問題につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでありますが、まず参考人に五十分程度御意見をお述べいただき、次いで懇談に入りたいと存じます。  それでは、早川参考人にお願いいたします。

早川茂松下電器産業株式会社専務取締役技術本部長

○早川参考人 ただいま紹介にあずかりました松下電器の早川でございます。本日は本委員会にお招きにあずかりまして、ありがとうございます。  きょうは、新素材の研究開発の問題点ということで意見を述べろというお話でございますので、話をそういうことに集中して御意見を申し上げたいと思います。その話の流れといたしまして、まず現在の技術の状況、それからその中での材料の問題点、それからそれに対して私が現在考えております考え方、それをきょうはお話しさせていただきたいと思います。話の要点をレジュメにしてまいりまして皆様のお手元にあると思いますが、このレジュメに従いまして話を進めていきたいと思います。  現在は、皆さん御存じのように情報化社会に移行しつつあると言われております。人間のこの社会を考えていきますと、情報というものはどんどんとふえる一方である。現在の情報の増加の度合いというのは非常に激しいものがあるわけです。したがいまして、そういう情報をいかに手際よく、また速く処理するか、自分のものにしていくかということが、情報化社会へ移行する場合の一番大きな問題になります。  そういう手段を提供するものがエレクトロニクスの技術でありますから、そのエレクトロニクス技術に関連する材料というものが新素材の場合には一つの大きなポイントになると思います。もう一つ材料の場合に考えなければなりませんのは、省資源、省エネルギーの問題であります。一九六〇年代の末にローマ・クラブの提言がありまして、地球の資源というものは限られておるということが提唱されました。七〇年代に入りますと、二回の石油ショックがありまして、エネルギーも限られておるということが非常に明確になりまして、省資源、省エネルギーということがこの材料の場合にも非常に大きな問題になります。省資源、省エネルギーに向くような材料を開発しなければならぬという問題があります。この二点が現在の時代における社会の要請であると我々は考えております。  この時代の要請に基づきまして材料を開発研究する場合のポイントと申しますのは、したがいまして、できるだけ効率の高い材料を開発するということ、それからできるだけ細かい材料を使う、できるだけ材料の量を少なくするということ、それからもう一つは、材料の量を細かくする一つの方策でありますけれども、材料を薄くするといいますか膜にして使う、今まで塊で使っておった材料をできるだけ膜にして使うという、この三つの方向を材料の研究開発の場合には基本的に考えなければならぬと思うわけでございます。  例えば、細かくして使うということの一つの方向が現在のICとかLSIと言われる技術でありまして、これはシリコンの単結晶のチップの上にトランジスタをつくり込んでいくわけですけれども、今から数年前までは大体一年間で半分になるという速度で細かくなってきました。最近でも二年間で半分になるというスピードで細かくなってきております。現在、最高の細かさでつくられておるICというのは、一ミリ平方に約一万個のトランジスタが載っておるというのが最高の細かさであります。この方向でどんどんと細かくしていこう、またしていかなければならぬというのが材料の研究開発の一つの方向であります。  また、薄くするということで申しますと、太陽電池が例えば我々の身近な例で言いますと時計とかあるいは電卓に使われておりますけれども、あの時計とか電卓に使われております太陽電池のひところの厚みは〇・二ミリありました。しかし、現在電卓あるいは時計に使われております太陽電池の厚みというものは大体千分の一ミリであります。したがいまして、約二百分の一に薄くなったということが言えるわけですが、そういうふうに薄くそうして細かく、しかも効率の高い材料をつくり上げる、そういうものを研究開発するというのが一つの方向であります。  そういう材料をどうして見つけ出すかという方策になるわけですけれども、これには、御存じのようにシーズ指向といいますかネタを探す方向と、それから世の中にありますニーズ、要望を先取りしてそれを満たすような材料を見つけるという方向と、二つの方向があります。現在は、どちらかといいますと後の方のニーズ指向であります。世の中でいろいろあります材料に対する要望をできるだけ満たしていくような材料を見つけていこうという方向に現在の材料の開発はあるわけでありますけれども、基本的にはシーズ指向、ネタを探すという材料の研究開発も必要であります。極言する人は、現在の材料の研究開発のもとのネタは十九世紀に発見されたものであって、それを現在は応用しておるんだ、ニーズに結びつけておるんだと極言する人もあります。例えば先ほどお話ししました液晶などというものは、これは十九世紀に全部発見されております。それを例えば電卓とかあるいは時計の表示に使うというふうな応用を見つける、ニーズに結びつけたのは今世紀一九六〇年以降のことでありますけれども、材料そのもののネタは十九世紀に見つけられておったわけです。  しかしながら、そういう形で材料の研究開発を進めていきますと、当然これはネタ切れということが起こるわけでありまして、そういう意味でも、ある程度のネタ探しの研究開発が必要であるというふうに思われます。そういう意味での研究開発の一例としてお話をいたしますと、例えば日本で世界に先駆けて発見された材料にフェライトという材料があります。これは日本独自の材料でありまして、現在そういう磁気を使うような材料としては非常に広く世界で使われておる材料でありますけれども、これは東京工業大学の加藤与五郎という先生が亜鉛の電気精錬の研究をやっておるときに副産物として発見した材料でありますが、そういうふうな別の目的で研究をしておる過程で副産物として材料のネタが出てくることもあるわけでございます。  以上が、現在の材料の研究開発における一般的な問題点でありまして、次に主な新素材について現状と問題点を少しお話ししたいと思います。  最初に、セラミックエンジンというのが現在材料開発の一つの問題になっております。セラミックというのは、皆さん御存じのように焼き物でありまして、非常に温度の高いところでも使える材料であります。瀬戸物であります。これをエンジンの金属のかわりに使おうということでございます。そうするとどういうことが起こるかといいますと、エンジンを動作させる温度が非常に高くなります。例えば現在の金属材料を使っておるエンジン、ガスタービンなどを考えますと、これは大体五、六百度で動作しておるわけでありますけれども、それがセラミックを使いますと千二、三百度という高温で動作させることができます。そういう高温で動作させることによって、約三〇%から四〇%効率が上がるわけでございます。それから、現在の自動車のエンジンでもそうですけれども、金属でございますので熱が外へ逃げる、また逃がさなければならぬ、冷却しなければならぬという問題があるわけですが、セラミックは熱が外に逃げないし、また冷やさなくてもいいという点で、同時にまた効率が数%上がるというメリットもあります。  そういうふうなことで、全世界でこのセラミックエンジンが取り上げられておるわけでありますけれども、どこに問題があるかといいますと、セラミックというものと金属というものはそもそも材料の成り立ちが違います。金属というものは、ある程度のショックがありましてもそのショックを逃がすといいますか、ショックに耐えることができます。ところが焼き物は、ある程度のショックがありますと、そのショックによって割れることがありますね。金属というのは、例えば金属のお皿を投げつけても割れませんけれども、セラミックの焼き物のおわんを投げつけますと割れてしまうということで、その機械的強度を上げるという問題があります。現在のエンジンというのは、基本的に金属の材料を使ってエンジンが設計されておりますので、そのままセラミックに置きかえるということになりますと、セラミックは非常にぐあいが悪いわけです。ですから、セラミックをエンジンに使うという形で、エンジンを基本的に設計し直すという、エンジン設計の基本思想を変えるという考え方が必要であります。  こういうことは、これはなかなか一企業とかあるいは一団体で取り上げるのには非常に難しい問題でありまして、国家間でもこの問題はなかなか一国で処理するというのは難しい問題であると思います。現在アメリカでは西ドイツと共同してこの問題に取り組んでおりますし、日本に対しても、特に、先ほど申しますようにセラミックというのは非常に割れやすいですから、どういうふうにその割れるものをエンジンとして使うようにできるかということを評価する技術、これが非常に大変なわけでありますけれども、その評価技術を共同でやろうということを言っているようでございますが、それが現在の材料として問題を持っている一つであります。  次は強化材でありますけれども、材料を強くしようということは、どの材料においても、このセラミックエンジンにおいて言われますように当然の目標でありますけれども、その材料を強化するのにカーボンファイバーというものが開発されております。現在、これはスポーツ用品に主として使われておりますけれども、もともとはこれは航空宇宙用に開発されたものであります。ところが現在はほとんどスポーツ用品であって、航空宇宙用にはまだ大幅には使われておりません。  これの一つの問題は、やはり先ほど申しますセラミックエンジンと同じように、カーボンファイバーで強化した材料の評価の技術ですね。どの程度強いのか。例えばゴルフのシャフトに使うのだったら、たとえ折れたって大したことはありませんけれども、これが例えば航空機に使ったということになって破壊を起こすということになりますと大変な問題が起こりますので、そういう評価、どの程度にもつのかという評価に対する技術がないということ。それから、コストの問題で、これは大量に使うことによってコストダウンは十分考えられるわけですけれども、現在のところは非常にコストが高い。これは大体キロ一万円ぐらいいたします。これが大量にあらゆる材料の強化材に使えるようになるためには、キロ千円を切らなければならぬと言われておりますけれども、そういう量をこなすのと、その量をこなすための用途開発といいますか、その場合の材料の評価の技術が問題になるわけでございます。  次にエネルギー関連でございますが、まず太陽電池があります。これは、現在は多少エネルギー問題が緩和されておりますけれども、当然エネルギー問題は将来大きな問題になることが予想されるわけでありまして、そのためには太陽のエネルギーを使う、そういう太陽電池を開発することが一つの大きな目標になりまして、現在、そこにありますような、アモルファスシリコンとか硫化カドミウムあるいはテルル化カドミウムという材料が研究されております。  これの問題点は一にコストにかかっております。現在太陽電池のコストはワット当たり二千円いたします。したがいまして、電卓とかあるいは時計とかいう小物の電気製品に使われておる段階でありますけれども、これを大量に電力を取り出すというふうに使うためにはワット百円にならなければ、他の発電の方式例えば原子力発電とかあるいは火力発電とかいう発電方式がありますが、到底そういうものに対抗できないということになって、大量の利用というのがとんざを来しておるわけでございますけれども、これも一に、先ほどの強化材料と同じように量の問題が関係いたします。そのための大規模な実用テストというものが必要であります。概算計算をいたしますと、日本の国土で屋根の面積は全国土面積の五%を占めると言われておりますが、その五%の屋根のうちの約三分の一の屋根を例えば太陽電池でカバーいたしますと、現在日本の家庭とかあるいはオフィスにおける電力需要をすべて賄うことができると言われております。  そういう意味で、将来のエネルギー源として太陽電池は欠かせない材料でありますけれども、いかんせん小規模の用途に対応するところしか今使われておりませんので、大規模の実用テスト、いわゆるフィージビリティースタディーが太陽電池の場合には必要であります。そういう大量使用、大規模実用テストというのはなかなか急にはできませんので、こういうものはなかなか一企業で対応できる問題ではないと考えます。  それから水素吸蔵合金というのがありますが、これは、水素を吸わせて、それを適当な時期に吐き出して使おうという材料でありまして、鉄とかチタンあるいはチタン・マンガン合金が使われております。大体この金属一グラムで現在のところ二百ccの水素を吸蔵いたします。したがいまして、重さで言いますと、ボンベに水素を入れて使っておりますけれども、そのボンベに対して約三〇%の重量減になります。ただ、これが広く使い切れてないのは、もう少し水素の吸蔵量をふやす、例えばグラム五百ccぐらい水素を吸蔵することができて、それからもう一つは、その水素を吐き出すのが容易であるようにしないといかぬわけですが、現在は二百度Cぐらいまで温度を上げないと吸い込んだ水素を吐き出しません。それをもっと簡単に、例えばボンベの場合ですとコックをひねれば水素が出てくるわけですけれども、そういうように比較的簡単に水素を吐き出すというふうにしますと、これは無公害のエネルギー源として、特に水素自動車などが考えられておりますが、そういう方面に使えるということで研究開発が一部進められております。これも、そういう効率の問題もありますけれども、やはり量の使用というものに伴う材料のコストの問題があるわけでございます。  次に、先ほどお話し申し上げましたエレクトロニクスの材料で言いますと、一番大きな材料が半導体であります。  半導体では現在シリコンが主として使われております。シリコンの単結晶の薄板の上にトランジスタをつくり込んでいきまして、それが先ほど申しましたように、現在ですと一平方ミリ当たり一万ぐらいのトランジスタがつくり込まれておるわけですけれども、さらに五万あるいは十万とつくり込まれていくことが今問題になっております。この場合に問題になりますのは、例えば一平方ミリに一万個のトランジスタをつくり込もうと思いますと、そのシリコンの薄板結晶の薄板をチップといいますけれども、そのチップの上につくり込んでいくトランジスタの線の幅は千分の二ミリの幅になります。これが例えば五万個のトランジスタをつくり込んでいこうと思いますと、千分の一ミリになります。この場合に非常に大きな問題になりますのはほこりの問題でありまして、千分の一ミリの線をかいていこうと思いますと、ほこりは約その十分の一、一万分の一のほこりが問題になります。現在、そういうほこりについて規格の一番厳しいアメリカの二〇九Bという規格がありますけれども、この規格ではもう既に現在半導体の工場でつくられておりますICの規格をオーバーしておりまして、規格が開発の後を追っかけておるという状態になっております。要するに、技術の方がどんどん進んでいきまして、規格がとても追っつかなくなってきているという段階になっております。  それから現在のところは、ICというのは全部シリコンが使われておりますけれども、シリコンの中を動く電子の速度は比較的遅いものですから、余り高い周波数、例えば今度打ち上げられました人工衛星用のトランジスタということになりますと、シリコンが使えません。もっと速く電子が動くような材料、それがその下にあるガリウム・砒素でありますが、この材料を使いますと、現在の衛星が上空から地球上に放出しております十二ギガヘルツの周波数に対応して動作することができます。したがいまして、シリコンの次にはガリウム・砒素が半導体の主体になると考えられておりまして、その研究も大いに進めなければならないわけでありますけれども、現在ガリウム・砒素というのは非常に欠陥の多い材料でございまして、これをいかに欠陥をなくするかということ、それからシリコンのようにいかに細かく使っていくかということが問題になっておるわけでございます。  それから、最後にもう一つ材料のお話をいたしますと記録材料というのがあります。コンピューターというのは、これは情報をためて、その情報を処理する機械であります。ためるというのはコンピューターの非常に大きな役割であります。現在、そのためる装置としていろいろの装置が使われております。大型のコンピューターが各事務所などに入っておりますけれども、あの大型コンピューターのキャビネットの大部分はこのためる装置、蓄積装置であり記録装置であります。したがいまして、非常に大きな面積をとるということになっております。それを小さくしようということでいろいろの材料の開発が進められております。現在使われておるものよりも百分の一小型になる、ためる量が結局百倍になるということになりますが、そういう材料として、そこにありますような垂直磁化あるいは光磁気あるいは光という材料が使われておるわけであります。これらの材料について共通して言えることは、大量の製品をいかにしてうまくつくるかということと、それから先ほどから何回もお話ししておりますけれども、そういう新しい材料を使っていく場合の評価技術あるいはその材料を実用していくための実用技術が問題であります。  さらに、こういう大きな容量の記録装置ということになりますと、世界でスタンダードをつくらなければいけない、標準化しなければいけないという問題がありますけれども、その問題もなかなか大きな問題であって、難しい問題になっております。  そのほか、超電導材料とかあるいは表示材料、センサー材料というようなものがありますが、これはすべて人間と機械のインターフェースといいますか、人間と機械の境界といいますか、人間が例えば情報を入れるあるいは情報を取り出すという、その入れ方、取り出し方がいかに簡単に、いかに気軽に使えるようになるかということに関係する材料でありまして、こういう材料の開発が今後の情報化社会に対応する一つの大きな問題であろうと思います。情報化社会ということが盛んに言われますけれども、そういう人間に受け入れられやすい形でないと、情報化というものも一応限界があるのではないかと思うわけでございます。  そこで、締めくくりといたしまして、私の考えております材料の研究開発の問題、それに取り組む考え方、そういうものを少しお話ししたいと思います。  研究開発に対して官学産の三者がいかに協調をしてやっていくべきであるかという、官学産の研究開発のあり方ということに対して、私の考えをまず最初に述べるわけでございますが、研究といいますと、例えば材料の研究でもあるいはその他のいろいろな研究でも、研究開発が一応スタートいたしまして、そうしてそれが実用化されるのにかかる年月は約二十年というふうに考えられております。一番最初の基礎的な研究、いわゆるシーズ研究になると思いますけれども、そういうものは学が担当していただく。それから、そこで出てきたシーズを実用化に結びつけるためのいろいろの基礎的な検討といいますか、そういう応用のための研究というものを官が考えていただく。産はそれを実用化するための研究を行うというふうに分担をするのが一番いいのではないか。また、今まで成功した材料の研究開発の役割というのは、こういうふうな役割をしております。  例えば先ほどのフェライトですと、基礎研究というのは、先ほど申しますように亜鉛の電気精錬の段階で副産物として磁気を持っておる材料を発見されたというのがシーズの研究で、これは東京工大がやられたわけであります。それを応用研究に結びつけようとしていろいろな研究所、そのころの電気試験所などが中心になっていろいろやられまして、それを企業が実相化したというサイクルができて、そうして世界に先駆けてフェライトという材料の実用化ができたわけであります。  もう一つは、産業構造というのは当然これは時代とともに変化していくわけでありますけれども、現在は、産業構造が変わるといいますよりも産業構造の境界がだんだんぼけてきていると思います。例えば電機産業といいますと、電機だけをやっておるのかというと、そうではなくて機械もやっておるあるいは中には化学もやっておる。化学工業と言われるカテゴリーに入る会社が化学だけをやっておるかといいますと、機械もやっておるし電機もやっておるというふうに、産業の境界がぼけてきておるということが言えると思います。  それから、我々のエレクトロニクスの産業で言いますと、一番基礎に材料の産業がありまして、その材料を使って部品をつくる、部品を組み立てて機器をつくる、その機器を組み合わせてシステムをつくるという垂直構造もあるわけですけれども、この垂直構造においても境界がだんだんとぼやけてきているといいますか拡散しておるというのが、現在の産業構造の変革であると思うのです。この変革をもたらしたものは何かといいますと、これはエレクトロニクス技術であります。  エレクトロニクス技術というのは一つの基盤技術でありまして、これはいろいろの産業に適用できるわけです。化学産業でもエレクトロニクス技術が必要でありますし、機械産業でもエレクトロニクス技術が必要であります。そういう意味で、エレクトロニクス技術を使われる、使われるとそのエレクトロニクス技術によって製品ができるということで、だんだんとエレクトロニクス技術が各産業に拡散することを通じて産業構造が拡散しているというふうに思います。そのエレクトロニクス技術が拡散するもとになっておるのはもちろん材料でありまして、最近は、化学工業というカテゴリーに入っておられるメーカーでもエレクトロニクスの材料をどんどんつくっておられます。例えば、セメント屋さんが先ほど申しますようなフェライトをつくるあるいは電気部品をつくるということもどんどんやっておられるわけであります。そういう意味で、材料というのは産業構造変革の基盤になるものでありますから、非常に大切な技術であるということが言えると思います。  そこで、情報化時代の企業の材料開発でありますけれども、そういう産業構造の拡散が起こると同時に、非常に広い分野にわたってエレクトロニクスの技術が広がっていくわけでありますから、とてものことには一つの企業で全部を賄うことができない。したがって、例えば研究開発においても、そこに書いてありますようにデベロプメント・シェアリングというものをやらなければならないようになってきていると思うのです。かつてドラッカーは、これは世界的な規模での話ですけれども、これからの産業が生き残っていくためには、伸びていくためにはプロダクション・シェアリングをやらなければいかぬということを、たしかあれは何とかいう本に書いておりましたけれども、そのプロダクション・シェアリングよりもむしろ現在はデベロプメント・シェアリングを各企業間ではやらなければならぬと思います。あるいは企業だけではなくて、学、官も入れたデベロプメント・シェアリングが必要であるのではないかと思うのです。  我々の会社はVTRをつくっておりますけれども、VTRは日本が独特の立場で世界的に非常に優位に立っておるわけであります。このVTRがなぜ優位に立てたかということを考えてみますと、これは日本でVTRの本体もつくっておりますし、日本でテープもつくっておりますし、それから日本でテープのベースフィルムもつくっておる。ベースフイルムはもちろん化学工業でつくっておられるわけでありますし、テープは磁気テープのメーカーさんがつくっておられるわけでありますし、VTR本体は電機メーカーがつくっておるわけであります。この三者がすべて日本において先行したというところに日本のVTRの強みがあるわけであります。もしもこのテープが他国が先行しておるあるいはベースフイルムで他国が先行しておるという状態でありましたならば、本体だけで先行するということは非常に難しいと僕は思います。そういう意味で、我々はVTRを開発するときにテープメーカーさんあるいはベースメーカーさんとデベロプメント・シェアリングを密接にやってまいりましたけれども、そういう開発の分担というもの、それぞれの産業の強い要素技術を組み合わせた開発の分担というものが必要であると思うわけであります。  それから、世界に先行して材料を開発するためには、まずニーズ指向の場合は材料の理解が第一であります。例えばアメリカで今世紀最大の発明と言われるトランジスタがいかにして発明されたかということを考えてみますと、あのトランジスタに使われますゲルマニウムにしましてもシリコンにしましても、既に十九世紀に発見された材料であります。それの材料をよく理解した、特にその表面を理解したということが、トランジスタ発明のきっかけになっておるわけであります。  先ほどのセラミックエンジンあるいはエレクトロニクス材料でもそうですけれども、いずれも材料の表面、あるいはセラミックの場合ですと、セラミックというのは、焼き物といいますと小さな結晶が焼き固まっておるわけでありますけれども、その小さな結晶と結晶の境界、これを界面と言いますが、この界面あるいはエレクトロニクス材料の場合の表面、例えばICとかあるいはセンサーというものは全部材料に表面を使うわけでありますけれども、こういう表面とか界面というものを理解しないと、本当にその機能を持った材料というものが出てこないということが言えるわけであります。その理解ができたときに初めてセラミックエンジンが実用化するし、あるいはIC、LSIもさらに微細なものができていく、さらに高周波のもの、さらに感度のいいもの、さらに効率のいいものができていくということが言えると思うのです。  それから、シーズ指向の研究開発でありますけれども、これはそこにちょっと書いておりますが、設計思想の変化とかパラトロニクスというのは、今までの材料というのは材料一つで一つの性能を出す、一つの材料が一つの性能を出すという使い方をしておったわけですけれども、そういう材料の使われ方というものを生物はしておらないわけであります。生物というのは全体として機能をするというものであります。そういうような発想といいますか、そういうような考え方、これが最近パラトロニクスという考え方で打ち出されてきておるわけですけれども、あるいは第五世代のコンピューターなどというのもその一つの例でありますが、そういう全体として何か動作させる、機能させるという生物的な考え方、今までの材料は無生物的な発想で物をつくっておるわけですが、そういう生物的な発想が今後の研究開発に必要ではないであろうかと考えるわけであります。  以上で終わります。(拍手)

大野潔公明党・国民会議

○大野委員長 どうもありがとうございます。  それでは、これより懇談に入ります。     〔午前十時四十七分懇談に入る〕     〔午前十一時二十三分懇談を終わる〕

大野潔公明党・国民会議

○大野委員長 これにて懇談は終わりました。  早川参考人には、本日長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時二十四分散会

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