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97回国会衆議院1982/12/03

本会議 第3号

発言数
8
登壇者
4
会派数
2
開催日
1982/12/03

会議録

福田一無所属議長

○議長(福田一君) これより会議を開きます。      ────◇─────  国務大臣の演説

福田一無所属議長

○議長(福田一君) 内閣総理大臣から所信に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣中曽根康弘君。     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕

中曽根康弘自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(中曽根康弘君) このたび、私は、内閣総理大臣に任命されました。決意を新たにし、国民の皆様の御信頼と御期待にこたえてまいります。  いまや世界情勢は、問題山積の中に、いよいよ厳しい様相を呈し、さらに、内政もまた重大な転換期を迎えております。私は、この風雪を突破して、日本に新たな黎明をもたらすよう全力を尽くします。(拍手)  それは、各党、各会派の御協力はもとより、全国民の皆様の御支援なしにはできません。私は、「わかりやすい政治」、国民の皆様に「話しかける政治」の実現を心がけ、政治が国民に密着し、国民の気持ちをくみ上げる場として、常に、そしてさらに健全に機能するよう懸命の努力を続けます。  政治を支えるもの、それは国民の信頼であります。私は、各党、各会派、そして議員各位の御協力のもと、政治の倫理を確立し、(発言する者あり)清潔で効率的な政治を目指します。  私の政治目標の第一は、内外における平和の維持とわが国の民主主義の健全な発展を図ることにあります。このことは、国民生活の安定のための基盤をなすものであります。  平和の維持にとって大切なのは、これを可能ならしめる国際環境をつくり出すことであります。この現代の至高かつ緊急な課題を実現すべく努力することにより、恒久的な世界の平和の確保のために貢献したいと念じております。地上の平和、人類の共栄こそ、われわれが共同責任で追求すべき現代の大きな課題であります。われわれは、誠実に、かつ真剣に、あらゆる機会を通じて、この人類悲願の大目標の達成に邁進すべきであることをしっかりと心に刻んでおきたいと思います。(拍手)  また、私は、先人の営々とした努力と、貴重な犠牲の上に実現し、いまや国民共通の財産となっている民主主義の確固たる基礎の上に、自由と基本的人権の保障をさらに確かなものにしていきたいと思います。  政治目標の第二は、「たくましい文化と福祉の国日本」をつくることにあります。  終戦直後、人々は空腹を抱え、トタン屋根の仮住まいの中で、文化国家、福祉国家の理想を掲げました。昭和二十二年、私は、初めて国会議員に当選して、瓦れきとやみ市の間を縫って登院しました。そのときの光景が目に浮かびます。焼け跡に立っての、文化国家、福祉国家の叫びは、戦前の日本の軍事優先の考え方や自由の拘束された時代から解放された国民が熱望した新しい価値であります。  しかし、当時、国民が直面していた困難の前には、それは一片の理論や理想にすぎませんでした。その後三十余年、いまや日本は、高度経済成長を経て、自由世界第二位の経済大国に発展しました。国民は、手にし得た物の豊かさの上に、心の豊かさ、真の文化を心から求めるに至っております。また、いわゆる西欧型の福祉国家とは異なった、日本的な充実した、家庭を中心とする福祉を求める切実な声が上がっております。われわれの経済力は、すでに、そのような国民の理想を、手の届くところに望み得る基盤をつくり上げております。  私は、いまこそ、戦前の日本に対して、戦後の日本の国の理想として、「たくましい文化と福祉の国」をつくるという新しい目標を高く掲げるときが来ていると思うのであります。(拍手)それこそ、二十世紀に生きるわれわれの、次代に引き継ぐピラミッドでなければなりません。  「たくましい」とは、人間の自由と創造力、生きがいという心の内なるものを尊重する考え方を指すものであります。それは、国民がわが国のよき伝統である連帯と相互扶助の精神をとうとび、生涯を通じて互いに学び合い、切磋琢磨する姿勢の中から生まれてくると思います。  政治は、この文化と福祉に奉仕するものであります。  「たくましい文化と福祉の国」をつくるに際して、私は、「思いやりの心」と「責任ある実行」を政治の基本に据えます。  私は、何よりも心の触れ合う社会、礼節と愛情に富んだ社会の建設を目指したいと思います。(拍手)特に、政治の光を家庭に当て、家庭という場を最も重視していきたいと思います。国民の皆様の具体的な幸せは、一体どこにあるのでありましょうか。家族が家路を急ぎ、夕べの食卓を囲んだときに、ほのぼのとした親愛の情が漂います。このひとときの何とも言えない親愛の情こそ、幸せそのものではないでしょうか。夕べの食卓で孫をひざに抱き、親子三代の家族がともに住むことが、お年寄りにとってもかけがえのない喜びであると思うのであります。勤勉な向上する心、敬虔な祈る心もそうした家庭に芽生えます。明るい健康な青少年も、節度ある家庭の団らんから巣立ちます。  この幸せが、一億一千万集まって、日本の幸せができるのであります。この幸せの基盤である家庭を大切にし、日本の社会の原単位として充実させていくことこそ、文化と福祉の根源であるとかたく信ずるのであります。(拍手)  また、目指すべき社会は、政府と国民の皆様が手を携えて建設してまいらねばなりません。国民の皆様が自立自助の精神に立って、互いの協力の中からそれぞれに求められた責任を果たすことが政治を円滑に進める原動力であります。政府もまた、必要な施策を責任を持って果敢に実行いたします。  以上申し述べました基本的考えを踏まえ、当面する諸問題について所信を申し上げます。  行政改革は、行政の姿をこれからの時代にふさわしいものにつくり変えていこうとするものであります。それは単に過去のひずみやアンバランスの是正のみを目的とするものではなく、わが国の将来への明るい展望を開くための国民的課題であります。また、私の唱道する「たくましい文化と福祉の国」をつくるための突破口でもあります。私は、前内閣において行政管理庁長官の任にありましたが、今後とも行政改革の推進に一層の努力を傾ける決意であります。(拍手)  去る七月に臨時行政調査会から第三次答申が提出されました。私は、これを最大限に尊重し、当面、具体化を急ぐべき措置については、速やかに施策を実施に移し、地方公共団体の協力も得て計画的に諸改革の実現を図ってまいります。  特に、緊急を要する国鉄の事業の再建につきましては、今国会に国鉄再建監理委員会を設置すること等を内容とする法律案を提出した次第であります。(発言する者あり)  私は、また、臨時行政調査会から今後提出される答申も含めて、各界各層の御意見に十分留意しつつ、行政の改革を総合的に、かつ、強力に推進してまいりたいと存じます。  次に、財政の問題について申し述べます。わが国財政は、いまや九十兆円を超える多額の国債の累積を抱えるに至りました。現状のままでは、高齢化社会の到来等の社会経済情勢の変化に対応することができません。そればかりか財政金融政策の円滑な運営に支障を来し、わが国経済の発展と国民生活の安定を図る上で重大な障害となるおそれがあります。したがって、できるだけ早期に特例公債依存の体質から脱却することがどうしても必要であります。政府は、これまでその方向を目指して、歳入歳出両面にわたり、できる限りの努力をしてまいりました。  しかしながら、第二次石油危機の後、世界経済が大きく低迷する中で、わが国経済もその影響を受けて成長率が低下することとなり、税収の伸びも急激に鈍化するに至りました。昭和五十七年度においても、六兆円を超える大幅な減収が見込まれております。今回提出いたしました補正予算は、これに伴う歳入不足に対処するとともに、過去最大の規模に達した今年度の災害に対する復旧事業費の追加等を主たる内容とするものであります。  また、この補正予算におきましては、歳出について、人事院勧告に基づく国家公務員給与の改定を見送るといったきわめて異例の措置をも講じて、(発言する者あり)その切り詰めを図りました。しかし、なお、やむを得ざる措置として特例公債の追加発行に踏み切らざるを得なかったのであります。事情を御理解の上、速やかな御審議をお願いする次第であります。  このように、わが国財政を取り巻く環境は大きく変化し、昭和五十九年度に特例公債依存体質から脱却することはきわめてむずかしくなったと考えざるを得ません。  しかし、私は、このような困難に憶することなく、最も緊要な政策課題の一つとして財政再建に全力で取り組む決意であります。(拍手)  そのためには、まず、社会経済情勢の変化に応じて、歳出の見直し、合理化を徹底的に行う必要があります。当面早急に取り組むことになる昭和五十八年度予算編成においても、この方針を貫き、具体的には、国債費と地方交付税交付金を除く一般歳出を前年度同額にまで圧縮する意気込みで努力してまいりたいと存じます。  また、これに合わせて、歳入についても、増税なき財政再建の基本理念に沿いつつ、その見直しを行い、新しい時代の要請にこたえ得るよう財政の対応力の回復を図っていきたいと考えております。  わが国経済の現状は、厳しい情勢にある諸外国に比べれば良好でありますが、世界経済の停滞もあり、依然として景気の足取りは力強さを欠いております。  このような状態に対処するため、去る十月に決定されました総合経済対策に基づき、今後、内外の経済動向を注視しつつ、内需の拡大を図り、不況産業対策、雇用対策を機動的に実施してまいります。また、特に中小企業につきましては、きめ細かい政策的配慮を行う所存であります。  今後のわが国経済社会の課題は、ゆとりと活力のある安定社会の実現であります。そのためには、内外の厳しい環境のもとではありますが、労使関係の円滑化に十分配慮しつつ、創意と活力に富んだ経済の持続的な安定成長を図り、量的拡大よりも質的向上を目指した国民生活の一層の充実をもたらすことが必要であると考えます。  このためには、新しい時代に適合した産業構造への転換、資源エネルギー及び食糧問題への適切な対応、先端技術の研究開発、高齢化社会に適合した雇用や社会保障制度の体系的整備など、多くの分野での経済社会の変化に対応した創意工夫が求められます。  このような観点から、新しい長期経済社会計画の策定に当たっては、今後のわが国経済社会が向かうべき姿を明らかにすべく、十分に検討してまいる所存であります。  わが国外交の基本は、欧米を初めとする自由主義諸国の一員として、これらの国々との協調のもとに、自主的な外交努力を行うことであります。  特に、米国は、わが国にとって、政治、経済等の広範な分野において固いきずなで結ばれた最も重要なパートナーであります。私は、日米間の信頼関係を、今後、一層強化してまいりたいと考えます。  また、アジア諸国との一層の相互理解と友好関係の強化が重要であります。地理的にも密接な関係にあるこの地域の平和と繁栄のために、積極的な役割りを果たしてまいります。  最近、ソ連においては新指導部が誕生しましたが、ソ連との関係においては、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的な日ソ関係を確立すべく、全力を尽くしていく決意であります。  国際経済の分野においては、高まりつつある保護主義の圧力をいかにして食いとめるかが最大の課題であります。わが国みずからの貢献を通じ、自由貿易体制の維持強化と世界経済の再活性化のために、外交、内政両面で努力を重ねてまいる所存であります。また、新中期目標のもとで開発途上国に対する経済、技術面での協力に一層力を注ぎます。  わが国の安全保障に関する基本姿勢は、日米安全保障体制を維持し、自衛のための必要な限度において、質の高い防衛力の整備を図っていくことにあります。  同時に、軍事大国にならず、近隣諸国に軍事的脅威を与えることのないよう配意いたします。また、平和外交の基本方針を堅持し、国際的な軍縮の努力に貢献してまいります。  さらに、わが国の平和と安全を確保するためには、総合的な安全保障の視点から、自由貿易の一層の発展、資源エネルギー及び食糧の安定的確保、経済協力の拡充など、各種の施策を総合的に推進していくことが必要だと存じます。  二十一世紀への道のりを考えるとき、そこには幾多の困難が待ち受けております。  世界的な政治、経済の不安定性など現在われわれが直面している問題の多くは、大きな時代変化の潮流がもたらしたものでもあります。また、あるものは、いわば文明の相克とも言うべき問題の根深さを持っております。もろもろの国際秩序や国内における社会条件は、いま、新しい時代の胎動を始めているとも感じ得るのであります。  したがって、問題の解決は、容易ではありません。私は、心がけて国民の皆様に事態をよくお知らせし、皆様の御意見を承り、また時によっては忍耐をお願いしなければならないこともあると思います。  また、わが国だけでなく国際的協調のもとに解決すべきことも多いと考えます。必要なことは、問題から逃げないで皆様の御協力を得て、一つ一つ着実に解決し前進することであります。(拍手)  わが国は、明治以来、幾たびとなくこのような国家的困難にかかわる重大な場面に遭遇し、その都度これをみごとに乗り切りました。それは民族の伝統的底力によってであります。  わが国に対してさらに積極的役割りを求める世界の期待は、年を追って強くなっております。日本は、いまや世界経済の一割を担う国力を持つに至り、日本の寄与なくして地上の平和と人類の共栄の前進はありません。  われわれは、勇気と英知をもってこの難局を乗り切り、清新の気と、思いやりと連帯感にあふれる「たくましい文化と福祉の国」の建設に、希望を持って立ち上がろうではありませんか。(拍手)  私は、わが国が人類の平和と繁栄に積極的に貢献し、よき隣人として信頼され尊敬され、国際社会において名誉ある地位を占めることをひたすら念願するものであります。  以上申し述べました基本姿勢をもって、私は、負託された重大責務に、厳粛な決意でこたえていく所存であります。  ここに重ねて国民の皆様の一層の御理解と御協力をお願い申し上げる次第であります。(拍手)     ─────────────

福田一無所属議長

○議長(福田一君) 大蔵大臣竹下登君。     〔国務大臣竹下登君登壇〕

竹下登自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(竹下登君) ここに、昭和五十七年度補正予算の御審議をお願いするに当たり、その大綱を御説明申し上げ、あわせて当面の財政金融政策の基本的な考え方について、私の所信を申し述べたいと存じます。  まず、今回提出いたしました昭和五十七年度補正予算の大綱について御説明申し上げます。  一般会計予算につきましては、歳入面において、世界経済停滞の影響等による経済情勢の変化に伴い、当初予算に対し、租税及び印紙収入の減収が避けられない見通しとなりましたので、六兆一千四百六十億円を減額いたしました。このため、従来にも増して既定経費の徹底した節減、税外収入の確保、追加財政需要の圧縮等を行ったところであります。  しかしながら、これだけをもってしては今日の事態に対処できません。このため、異例の措置として国家公務員の給与改定を見送るほか、当初予定した国債費の定率繰り入れを停止することとし、今国会に所要の法律案を提出いたしました。  このような措置を講じましても、歳入不足額は、なお約三兆四千億円となります。この歳入不足につきましては、残念ながら特例公債の追加発行によって対処せざるを得ません。  このほか、災害の早期復旧に要する経費につきましては、建設公債の追加発行によることとしております。  歳出につきましては、景気の回復及び史上最大規模となった災害の早期復旧のために、公共投資の追加を行うとともに、義務教育費国庫負担金等の義務的経費等、真にやむを得ない経費につきましても、所要の措置を講ずることとしております。その結果、歳出の追加総額は、一兆二千二百八億円となっております。  他方、厳しい財政事情にかんがみ、既定経費の節減に努め、三千二百五十四億円を減額するほか、予備費についても、一千二百億円を減額することとしております。また、税収の減額に伴い、地方交付税交付金につき、一兆六千九百五十七億円の減額を行っております。さらに、国債費の定率繰り入れを停止することにより、一兆一千九百八十四億円が減額され、歳出の修正減少額は、三兆三千三百九十五億円となります。  以上によりまして、昭和五十七年度一般会計予算の総額は、歳入歳出とも、当初予算に対し二兆一千百八十七億円減額され、四十七兆五千六百二十一億円となります。  公債の追加発行額は、三兆九千五十億円となり、うち特例公債は三兆三千八百五十億円となります。この追加発行される公債につきましては、その円滑な消化に鋭意配慮してまいりたいと考えております。  地方財政につきましては、一般会計からの地方交付税交付金が一兆六千九百五十七億円減額されますが、交付税及び譲与税配付金特別会計において、資金運用部資金から一兆五千四百三十三億円の借り入れを行うことにより、所要の地方交付税総額を確保して、地方団体の財政運営に支障の生じないよう配慮することとしております。  以上の一般会計予算補正等に関連して、特別会計予算につきましても、所要の補正を行うこととしております。  さらに、一般会計及び六特別会計において、総合経済対策の一環として、一般公共事業に係る国庫債務負担行為総額二千七百七十四億円を追加することとしております。  なお、財政投融資計画につきましては、総合経済対策を推進するため、すでに弾力条項を発動して、住宅金融公庫の貸付枠の追加に要する資金等について機動的に対処し、総額三千三百二十億円の追加を行ったところであります。  以上、昭和五十七年度の補正予算の大綱を御説明申し上げました。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。  次に、財政再建の問題について申し述べます。  政府としては、これまで財政再建のため、昭和五十九年度に特例公債依存体質から脱却することを目指して、歳入歳出両面にわたり、できる限りの努力をしてまいりました。特に、歳出面におきましては、国債費と地方交付税を除いた一般歳出の伸びを厳しく抑制いたしました。昭和五十年代前半には各年度平均一八%にも達していた一般歳出の伸びを、昭和五十五年度には五・一%、昭和五十六年度には四・三%にまで圧縮し、また、昭和五十七年度には予算編成史上初めてゼロシーリングを採用して、これをわずか一・八%にまで抑制したのであります。  しかしながら、第一次石油危機に次ぐ第二次石油危機を契機として、世界経済は大きく低迷いたしました。先進諸国はインフレと世界恐慌以来と言われるような失業に悩み、世界経済は第二次大戦後最悪とも言える状態にあります。世界は一つの舟、一つの共同体と言われるほど、相互に密接につながっております。世界経済が低迷を続けている中で、日本だけがひとり高い成長を達成することは不可能であり、わが国の成長率も低下し、税収の伸びも急激に鈍化することとなったのであります。  このように、わが国財政を取り巻く環境は大きく変わり、昭和五十九年度に特例公債依存体質から脱却することは、きわめてむずかしくなったと言わなければなりません。  諸外国に比べて比較的良好な状態にあるわが国経済の中で、財政は未曾有の困難に直面しており、最優先に取り組むべき課題として残されているのであります。  財政がこのような困難に直面している現在、これを一日も早く再建し、新しい時代の要請に沿い得るよう、財政の対応力を回復することが、わが国社会の前進のために何よりも必要であります。いまや、行政改革とともに、財政再建についての国民の世論は盛り上がっております。今日ほど財政再建が幅広い国民の支持を得ていることは、かつてなかったことであり、心強い限りであります。  昭和五十八年度予算におきましても、すでに概算要求の段階で画期的なマイナスシーリングを採用し、要求額を大きく抑制してまいりました。予算編成に当たりましては、現下の諸情勢に即応した行財政の守備範囲の見直し、歳出構造の一層の合理化を図ることを基本として、歳出をさらに厳しく切り込んでいく考えであります。また、歳入構造の合理化、適正化にも努めてまいる所存であります。  今後とも、困難に憶することなく、財政再建のためにできる限りの措置を進めていく決意であります。国民の御理解と御協力を得て、国民各層で痛みを分かち合っていただくように切にお願いする次第であります。  次に、最近の経済情勢と当面の財政金融政策の運営について、一言申し述べたいと存じます。  世界経済は依然として困難な状況にあります。先進諸国はおおむねインフレ抑制を第一とし、厳しい引き締め政策を実施してきております。この結果、ようやくインフレは全般的に鎮静化しつつありますが、世界景気の回復はおくれており、OECD諸国全体の失業者数は、三千万人を超えるに至っております。  一方、わが国経済は物価、成長率、雇用、いずれの数字をとりましても、諸外国に比べてすぐれた実績を示しております。特に、物価はきわめて安定しており、景気は基調として内需を中心に緩やかな回復の方向にあります。しかしながら、輸出の減少の影響もあり、生産、出荷には伸び悩みが見られます。  このような情勢にかんがみ、景気の回復を着実なものとし、わが国経済を持続的安定成長路線に円滑に乗せていくため、先般、政府は総合経済対策を決定いたしました。災害復旧事業のほか、債務負担行為による一般公共事業の追加、地方単独事業の活用、住宅建設の促進等、総額二兆円強の事業規模の公共投資等の追加を行うことといたしました。その他、中小企業対策、不況産業対策、雇用対策等にも配慮いたしました。これらは、財政再建と両立できる範囲で、当面考えられる有効な措置を盛り込んだものであります。これらの対策の着実な実施により、わが国経済は内需を中心とした自律的な回復への道を歩んでいくものと期待いたしております。  金融面では、一昨年八月以来一連の金融緩和措置を講じてきており、現在では、金融は緩和した状態にあると考えております。今後とも、適切かつ機動的な金融政策の運営に努めてまいることは申すまでもありません。  対外経済関係につきましては、保護貿易主義の台頭を抑え、自由貿易体制を堅持していくことは、わが国の最も重要な課題であります。このような観点から、政府はさきに、二次にわたる市場開放対策を決定いたしました。これらの対策が所期の成果を上げるよう、引き続き努力してまいりたいと考えております。  また、開発途上国の経済発展のための自助努力を支援するとの観点から、今後とも経済協力の効率的実施に十分配慮してまいる所存であります。  夏ごろから懸念され始めた国際金融不安については、今後とも債務国、債権国、IMF等当事者が適切に対応することによって、当初心配されたような深刻な事態には至らないものと考えております。  さらに、国際通貨の安定は、わが国経済のみならず、世界経済の円滑な発展のために欠くことのできないものであります。年初来十月までの為替相場は、米国の高金利、国際金融不安等を反映し、全面的なドル高となっておりました。しかし、日米金利差の縮小、わが国長期資本収支の赤字幅の縮小などから、行き過ぎたドル高・円安は次第に是正され、円相場は、わが国経済の良好なファンダメンタルズを反映し、円高方向に改善されつつあります。今後とも関係諸国と密接な連絡を保ちつつ、円相場の一層の安定に努めてまいりたいと考えております。  いまや、国際社会におけるわが国の重要性はいよいよ高まってきており、国際経済社会に貢献することはわが国の大きな責務であります。  現在、先進諸国はいずれも大きな財政赤字に悩まされております。先般のIMF・世銀総会でも広く認識が得られたように、財政赤字を縮小し、経済の活力を回復することは、世界共通の課題であると言っても過言ではありません。  わが国経済の世界経済に対する影響力が大きなものとなっている現在、日本経済がその最大の弱点である財政赤字を率先して克服し、健全な発展を遂げることは、世界経済の発展にとりましても、その基礎的な条件を提供するものであります。  すでに、石油危機からの回復過程において、国民は賢明に対応し、世界で最も円滑にこの危機を乗り越えてまいりました。特にインフレ抑制、省資源等の面で示された国民の英知には、卓越したものがあります。この英知が財政再建に結集されたとき、私は、道は険しくとも、必ずや財政の対応力は回復し、国際社会にも積極的に貢献し得る日本社会の構築に向かって、大きな前進ができるものと確信をいたしております。  国民各位の御理解と御協力をお願いする次第であります。(拍手)      ────◇─────

保利耕輔自由民主党

○保利耕輔君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、本日はこれにて散会されんことを望みます。

福田一無所属議長

○議長(福田一君) 保利耕輔君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福田一無所属議長

○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十分散会

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